決定会合議事要旨や金融経済月報などについて
(2010年度下期に書いた分)

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2011/03/18「2月決定会合議事要旨から:包括緩和の効果と時間軸に関する議論から」
2011/03/16「金融経済月報:判断を引き上げながら先行き見通しはヘッジクローズ」
2011/03/15「東北関東大震災を受けて追加緩和決定、内容は信用緩和的なものです」
2011/03/07「商品市場高は緩和的金融政策というポジショントーク的なレポートが」
2011/02/23「1月議事要旨から、実はトーンはそんなに上がっていないという感じです」
2011/02/22「1月議事要旨から、オペレーションに意図が出るのはそもそものディレクティブが曖昧だからでは」
2011/02/17「金融経済月報は割と抑え目のトーン」
2011/02/16「金融政策決定会合声明文は見通しは変えずだがトーンは明るく」
2011/02/08「金融市場レポートから、内容は全般良いのだが短期市場のレビューが我田引水過ぎです」
2011/02/02「12月議事要旨から(その2)、市場に関する認識が妙なのですが・・・」
2011/02/01「12月決定会合議事要旨から、景気認識はかなり慎重」
2011/01/27「金融経済月報も上方修正気味の内容(概要)」
2011/01/26「決定会合声明文より、内容はそんなに大きく変わっていないがトーンが明るくなっています」
2011/01/17「さくらレポート、今回は7地域下方修正なのですが内容的には下方修正っぽくないです」
2011/01/13「12月金融経済月報から、現状認識は下がるが先行き見通しには変化なしとな」
2010/12/30「短期市場レポートから、リスク管理強化は重要ですが参加者を置いてきぼりにしないのも重要では」
2010/12/28「10月28日議事要旨で展望レポートの反対意見が/短期市場レポートに引かれものの小唄が^^」
2010/12/27「市場機能論全開の短期市場レポート」
2010/12/22「決定会合声明文は微妙に弱そうな印象を与える空気読んだ内容ですな」
2010/12/08「10月包括緩和決定の会合ですが・・・政策決定がどう見ても結論先にありきです本当に(ry」
2010/11/16「日銀からの素晴らしいペーパーと机上の空論ペーパー」
2010/11/09「展望レポートから改めて少々」
2010/11/08「決定会合声明文を過去2回の会合関連文書と比較するとリスク認識がバランスに変化」
2010/11/02「展望レポートの構成が微妙に変わっていますな」
2010/10/29「決定会合では会合日程前倒しという謎の結果と強気の展望レポートが」
2010/10/19「さくらレポートは下方修正もさほど悲惨でもなく」
2010/10/06「思い切って色々な緩和措置を出してきました」
2010/10/04「生活者意識アンケートから」

2011/03/18

○2月決定会合ですか、何か遠い遠い昔の話のような気がしますが

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2011/g110215.pdf

まあ正直経済見通しに関する話を今更読んでも何ですのでそっちの引用はしませんですが、一応何となく纏めると・・・・

・米国経済:もちろん先行き強めに見ていますが議論のトーンは割と警戒的・ユーロ圏:域内経済の2極化に伴う金融政策運営の難しさを指摘・中国経済:明らかにバブル警戒モード

という感じでして、国内経済に関しては物価の部分でやはりと申しますか、需給ギャップが相応に残る中で原材料価格の上昇を転嫁する動きがあるのではという指摘がございましたな。あと、商品価格の中ではリスク要因の意見の中でこんなのがありましたのでそれだけ引用。

『こうしたリスク要因に関する議論の中で、ある委員は、金融のグローバル化やインデックス取引の拡大を背景に、コモディティ市況や株価を含め、市場間の価格変動の相関が高まっていることなどを踏まえると、リスクを個々に評価するのではなく、それらが同時に顕現化し、その影響が相乗的に拡大する可能性も念頭に置いておく必要があると指摘した。』

なるほど。


でもって、まあ引用するのは『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』の中にある包括緩和の効果に関する部分。

『委員は、包括的な金融緩和政策の効果についても議論を行った。』

ほうほう。

『多くの委員は、基金を通じた資産買入れの効果として、社債スプレッドの縮小や社債発行企業の裾野の拡がり、REIT市場における増資や投資法人債発行の活発化などを指摘した。』

社債スプレッドに関してはこの会合後になってきた所で決算益出しとか、中短期ゾーンでの大量発行があって(震災前の段階でも)特に短いゾーンで重めになっていましたけれども、まあ大量発行できていた、というのが効果です(キリッ)と言われてしまえばそうですねという所ですかな。

『ある委員は、今後とも、こうした効果と、資源配分の歪みや市場機能の低下といった副作用の両方を点検しつつ、政策を行っていく必要があると述べた。』

まあ副作用の話をする時代は昔の話ですな。

『このほか、何人かの委員は、日本の長期金利の上昇幅が他の先進国に比べて小幅にとどまっていることについて、時間軸の明確化が効果を発揮しているとの認識を示した。』

いやそうではなくて単に日本のインフレ期待と成長期待が全くもって盛り上がらないからだけだと思うのですけれども・・・

『もっとも、複数の委員は、2年債の利回りなどが上昇傾向にあることを指摘し、市場では、日本銀行による時間軸に対するコミットが弱いのではないか、との声も聞かれていると述べた。』

うーむ、ここは微妙。単に基調的な物価が思いのほか強いという話で動いている面とか、先行きの金利引下げ期待が無い(当時の事よ)状況下で短期金利から見た場合に絶対水準的に買えても、より長い金利との比較間で買いが少なくなっている、という見方もいえるので正直微妙。

『また、ある委員は、景気が回復していく過程では、日本銀行によるコミットメントの意味するところが、折に触れて試される状況が続くことになると指摘した。』

この指摘は全く仰るとおり。2003年の金利上昇過程では最終的にコミットメントの明確化を行うことになったのはご案内の通りでございます。

『こうした点に関し、多くの委員は、物価の安定が展望できる情勢になったと判断するまで、実質ゼロ金利を継続していく方針であることを粘り強く説明し、時間軸に対する市場の理解と信認を確保していくことが重要との認識を示した。』

『ある委員は、現在の金利水準をいつまで続けるということではなく、時間軸政策の枠組みと、その背後にある経済、物価、金融情勢について丁寧に説明していくことが必要であると付け加えた。』

とまあそういう事ですわな。

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2011/03/16

○金融経済月報:判断を上げながら先行きはヘッジクローズとな

http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2011/gp1103.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2011/gp1102.pdf(前回)

まあ簡単に概要部分の比較だけ参ります。

・現状判断

『わが国の景気は、改善テンポの鈍化した状態から脱しつつある。』(今回)
『わが国の景気は、改善テンポの鈍化した状態から徐々に脱しつつある。』(前回)

上方修正、というよりは展望レポートのシナリオ通りの展開、という事なのでしょう。

『輸出や生産は、増加基調に復する動きがみられる。』(今回)

というのは前回と同じですが。

『設備投資は持ち直している。』(今回)
『設備投資は持ち直しつつある。』(前回)

と、こいつも上方修正。

『雇用・所得環境は引き続き厳しい状況にあるものの、その程度は幾分和らいでおり、個人消費には、持ち直しの動きがみられている。』(今回)

『雇用・所得環境は引き続き厳しい状況にあるものの、その程度は幾分和らいでいる。個人消費は、一部の財に駆け込み需要の反動がみられる。』(前回)

と、個人消費も上方修正。

『住宅投資は持ち直しつつある。一方、公共投資は減少している。』(今回)

というのは前回と同じです。


・先行き見通し

『先行きについては、緩やかな回復経路に復していくと考えられる』(今回)『先行きについては、景気改善テンポの鈍化した状況から脱し、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(前回)

ということで、そこだけは何となく確り目になっていますが・・・・・

『もっとも、今回の地震によって、わが国は、地理的にも広範囲な被害を受けており、当面、生産活動の低下が見込まれるほか、企業や家計のマインドの悪化も懸念される。』(今回)

まあその悪化が早速株価に出ているのですけどねorz

で、項目別見通しが何気にチャーミング。

『輸出は、海外経済の改善を背景に、基調的には緩やかに増加していくとみられる。』(今回)
『輸出は、海外経済の改善を背景に、緩やかに増加していくとみられる。』(前回)

「基調的には」というのは日銀お得意のヘッジクローズでありまして、こういうのが出てくると一旦踊り場入りするか、下方修正になるかのどちらかというのが仕様になっている所でございますので、輸出の見通しが微妙にヘッジクローズ入りというのは先行き不透明感高まるという感じではないでしょうか。

『個人消費は、持ち直していくとみられる。』(今回)
『個人消費は、駆け込み需要の反動が薄まるにつれ、再び持ち直していくとみられる。』(前回)

まあ上方修正というほどでもないですかな。

『この間、設備投資は、企業収益が改善基調にあるもとで、持ち直しの動きを続けるとみられる。もっとも、設備過剰感が残ることなどから、そのペースは緩やかなものにとどまる可能性が高い。』(今回)

とまあこちらも同じです。

『こうしたもとで、生産は、基調的にみると、緩やかに増加していくと考えられる。』(今回)
『こうしたもとで、生産は、緩やかに増加していくと考えられる。』(前回)

うげげげげ、生産にもヘッジクローズが追加されている、ということで、まあ追加で何らかの緩和があってもおかしくはないという所だとは思います。


・物価に関して

現状判断。

『物価の現状について、国内企業物価の3か月前比をみると、国際商品市況高の影響などから、上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、マクロ的な需給バランスが緩和状態にあるもとで、下落幅は縮小を続けている。』(今回)

『物価の現状について、国内企業物価の3か月前比をみると、国際商品市況高の影響などから、上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、マクロ的な需給バランスが緩和状態にあるもとで、基調的にみると下落幅は縮小を続けている。』(前回)

こちらは現象面の話だから上方っぽく見えますが、だから何といわれても困る(^^)。

先行き判断

『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、国際商品市況の動きを反映して、当面、上昇を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、当面、小幅のプラスに転じていくとみられる。』(今回)

『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、国際商品市況の動きを反映して、当面、上昇を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、マクロ的な需給バランスが徐々に改善することなどから、基調的にみれば下落幅が縮小していくと予想される。』
(前回)

先行きに関しては、小幅のプラス、という予想そのものの上昇は実はまあ従来の見通しのトラック上にあるという話かと思いますが、前回声明文で指摘した「マクロ的な需給バランスが改善」という部分が抜けていまして、需給ギャップで勝負してこないということへの布石になるかなあとは思いますが、まあ現状の金融市場は先行きの出口の話ではないですからあまり今のところは影響なし、ですな。

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2011/03/15

○リスク資産買入を主にサポートした今回の追加緩和

今回の決定内容
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/k110314a.pdf

『(2)資産買入等の基金

企業マインドの悪化や金融市場におけるリスク回避姿勢の高まりが実体経済に悪影響を与えることを未然に防止する観点から、リスク性資産を中心に資産買入等の基金を5兆円程度増額し、40 兆円程度とする(注3)。』

『増額分の買入対象資産ごとの内訳は、以下のとおりとし、2012 年6月末を目途に増額を完了する。ただし、指数連動型上場投資信託、不動産投資信託については、日銀法上の認可取得を条件とする。

長期国債 :0.5 兆円程度
国庫短期証券:1.0 兆円程度
CP等 :1.5 兆円程度
社債等 :1.5 兆円程度
指数連動型上場投資信託:0.45 兆円程度(認可取得を条件とする)
不動産投資信託:0.05 兆円程度(同上)』

で、前回対比でそうなっているのか、と考えますと・・・・・

長期国債 :1.5兆円→2.0兆円
国庫短期証券:2.0兆円→3.0兆円
CP等 :0.5兆円→2.0兆円
社債等 :0.5兆円→2.0兆円
ETF:4500億円→9000億円
J−REIT:500億円→1000億円

ということで、非国債にウェイトが思いっきり掛かっている訳ですな。

これって即ち(会見でのヘッドラインにもそんなのがありましたが)日銀がリスク性資産の買入強化を行ってリスクプレミアムを下げていく、という意思を示したということですが、先ほどの小見出しの最後の方であたくしが申し上げましたように、短期金融市場のオペレーション実施でとりあえず「ソルベントだけど流動性が落ちている」日銀取引先の流動性確保を担保している訳ですが、その外側にいる人たちに対しても日銀が流動性供給を行う事によって、流動性低下によるリスクプレミアムの拡大を抑えたい、という意思を示したという事もいえるかと思います。

そーゆー意味では時宜を得た施策だとは思いますが、まーそこまでやるのがどうかという議論はあるかもしれませんが、今後の流れの中で保険業態さんのところでのファンディング需要が高まるケースを鑑み、何らかの流動性補完みたいなものが(超時限的な措置で良いので)出来ればなあとかも思う(まあ昨日の今日で案ができる訳ないですけど)所ではあったり無かったり。ま、こういう日の為に保険業界さん高収益叩き出しておられるのですけれども、債券市場の流動性が落ちた状態が続いた場合には(そうならないとは思うが)何らかの流動性補完みたいなものが臨時措置で出来ると良いのではないかなあとか思ってもみました。まーあっしの勝手な妄想ですが。

ちなみに須田さんが「拡大するのはリスク性資産だけで良い」という主張をして反対していますが、これが仮に「国債市場の流動性補完の為に臨時的に国債の買入を追加実施」とかだったらどういう意見になったのかはお聞きしたい所ではございますわな。



○声明文比較をすると物価の見通しが微妙に上昇していますな

今回声明文
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/k110314a.pdf(再掲)

前回声明文
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/k110215a.pdf

今回の声明文を主に引用しますね。

『1.東北地方太平洋沖地震の発生後、日本銀行は、金融市場および金融機関の業務遂行への影響を把握するとともに、金融機能の維持および資金決済の円滑を確保するために、万全の措置を講じてきている。また、適切な金融市場調節の実施を通じて弾力的な資金供給を行っている。』(今回)

『2.わが国の景気は、改善テンポの鈍化した状態から脱しつつある。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、下落幅が縮小を続けている。先行きの中心的な見通しとしては、わが国経済は、緩やかな回復経路に復していくという判断を維持した。消費者物価の前年比は、当面、小幅のプラスに転じていくと考えられる(注1)。もっとも、今回の地震によって、わが国は、地理的にも広範囲な被害を受けており、当面、生産活動の低下が見込まれるほか、企業や家計のマインドの悪化も懸念される。』(今回)

(注1)本年8月の基準改定に伴い、消費者物価指数の前年比は、下方改定される可能性が高い。


前回声明文ではこんな感じ。

『2.わが国の景気は、改善テンポの鈍化した状態から徐々に脱しつつある。すなわち、世界経済の成長率は、新興国・資源国に牽引される形で再び高まってきており、その下で、輸出や生産は、増加基調に復する動きがみられる。設備投資は持ち直しつつある。雇用・所得環境は引き続き厳しい状況にあるものの、その程度は幾分和らいでいる。個人消費は一部の財に駆け込み需要の反動がみられるが、住宅投資は持ち直しつつある。この間、金融環境をみると、引き続き、緩和の動きが強まっている。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、基調的にみると下落幅が縮小を続けている。

3.先行きの中心的な見通しとしては、わが国経済は、景気改善テンポの鈍化した状況から脱し、緩やかな回復経路に復していくとみられる。物価面では、引き続き、消費者物価の前年比下落幅は縮小していくと考えられる。』(前回)

という事で、細かい説明はいいんだよ!というのが今回の声明文でありますが、一応物価見通しは前回の見通しから上がっています、というかこれもまあ展望レポートの見通しにトラックした上方修正という事でしょう。


では、その上方修正があったから金融政策に出口政策方面のインプリケーションがあるかといいますと、あたくしがこの声明文を読む限り、どう見てもそんなのは全く無く、それよりも状況次第では追加緩和のおかわりを打ち込むという表明をしておりまして、まあそれをやるのかどうかは兎も角、少なくとも状況悪化に対しては機動的に対応するから安心しなさいというのを見せてはいるかと思われるところでございます。

つまりですな、

『もっとも、今回の地震によって、わが国は、地理的にも広範囲な被害を受けており、当面、生産活動の低下が見込まれるほか、企業や家計のマインドの悪化も懸念される。』(今回、再掲)

というのがある上に、最後の所に、

『日本銀行は、引き続き、先行きの経済・物価動向を注意深く点検したうえで、必要と判断される場合には、適切な措置を講じていく方針である。』(今回)

とありますけど、これは前回の表現は・・・・

『今後とも、先行きの経済・物価動向を注意深く点検したうえで、適切に政策対応を行っていく方針である。』(前回)

となっていて、「措置を講じる」という追加策を行うニュアンスっぽい言い方にしているのはそれなりに見せ方に工夫をしているのかな、とは思います。ちなみにこの部分英文だとこうなっています、

『The Bank will continue to carefully examine the outlook for economic activity and prices, and, if judged necessary, take policy actions in an appropriate manner.』(今回)

『The Bank will continue to carefully examine the outlook for economic activity and prices, and take policy actions in an appropriate manner.』(前回)

まあif judged necessaryなら適切な措置を講じるってある意味当たり前なのですけれども、この文言が声明文にあったのって昨年の9月7日の声明文まで遡る訳ですが、その次の決定会合(10月頭)で包括緩和を実施してまして、まあそういう前例から考えると、今後も必要があれば追加緩和を実施する事になるという話で、そのトリガーとしてはやはり地震の影響が幅広く実体経済に下押し圧力をかけることが確認される、ということですから各種指標なのか、電力問題の長期化なのか、はたまた株価あたりなのかというのはよー知らんですが、まあ必要ならば突っ込む覚悟は十分です、という所なのではないでしょうか。

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2011/03/07

○これはまた微妙なタイミングで微妙なレポートが

日銀レビューシリーズである。

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2011/rev11j02.htm(概要)
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2011/data/rev11j02.pdf(本文)

最近の国際商品市況上昇の背景
― 世界的に緩和した金融環境とコモディティの金融商品化の影響 ―

でまあ中身は面白いので皆さん読んでちょという感じでありますが、日銀レビューなので内容自体は思いっきりコンパクトになっていますが、何気にネタにしようと思って赤ペン片手に読んでいたらそこらじゅう線と文字が書き込まれてしまうという代物になりますので、内容紹介しているうちにうっかりすると殆ど全文引用状態になる惧れがございますので(^^)、内容は華麗にスルーの所存(おいおい)。

本文の『はじめに』の所から少々引用。

『国際商品市況の上昇に伴うインフレ圧力の高まりに対して、中央銀行がどの程度積極的に政策対応をすべきであろうか。その判断は、国際商品市況の上昇の原因や持続性をどう評価するかにまず依存する。』

『しかし、最近の商品市況の上昇は、コモディティの需給逼迫というファンダメンタルズ、投機要因、地政学リスクなどが複合的に影響しており、いずれが主因であるかに関してコンセンサスが得られていない。』

さいざんすな。

『例えば、新興国の政策当局からは、米国をはじめとする先進国の低金利政策の継続が、投機資金のコモディティ市場への流入を後押ししているという見方が聞かれる。一方、米欧当局からは、新興国の高成長に伴うコモディティの実需増加が主因であるという見方がしばしば聞かれる。前者の立場に立てば、新興国の金融引き締めだけでは、インフレ抑制に限界的な効果しか得られないことになるが、後者の見方に立てば、新興国が十分に金融を引き締めればインフレ圧力を抑制できることになる。』

なるほど。

『こうした二つの見方のうち、いずれが適切であるか評価することは難しいが、コモディティの需給というファンダメンタルズにせよ、あるいは投機要因にせよ、いずれにしても世界的に緩和した金融環境が影響していると考えられる。』

金融緩和影響キタコレ。

『また、近年、金融投資家によるコモディティの先物投資が大幅に増加するなど、「コモディティの金融商品化(Financialization of Commodities)」が進む中で、ファンダメンタルズの動きが増幅されて、国際商品市況の変動につながっている側面もある。以下では、これらの点について、整理する。』

・・・・・で、その内容に関してですが、どういう話の流れかというのだけ書いておくだよ。

(1)需給要因
需給要因の中では商品そのものとしての需給がどのように逼迫しているかという点を新興国の成長という観点から分析して、その上で最近の商品価格上昇をグローバルGDPギャップとの乖離を指摘して、投資対象としてのコモディティ要因の分析を行っています。

(2)金融緩和要因
引き続き上記のグローバルGDPギャップからの話で、グローバルGDPギャップのマイナス拡大という金融緩和要因の話がある(という話の中で「中国の金融引き締めが足りないのが要因の一つ」という風に言っているとしか思えない部分があるのがチャーミングなのですが)のと、投機的な先高期待の話を先物市場価格が逆鞘となっている事から分析しています。

えーっと、話が逸れて恐縮ですが、「バックワーデーション」とか「コンタンゴ」とか言われますと何が何やらでございまして、「順鞘」「逆鞘」と言う昔から使われていた用語を使っていただきますとあたくし理解できるのでありますが、とか言うのはジジイの証拠ですかそうですかorz

(3)金融商品化要因
金融商品化が進んでいるというのを商品ごとの価格推移の変化によって説明し、その背景に取引所のインフラ整備やETFなどの商品の拡大があるという話をしています。

という事で、興味を持たれた方は是非ご覧あれという所です。ちなみにあたくしは久々に商品の本でも読んでやろうと思って梶山季之さんの「赤いダイヤ」を買おうと思ったら行った書店では在庫無しの為トボトボと帰宅したのはここだけの話です(相場関連の名作と言われるのはだいぶ読んだ積りですが、恥ずかしながらこれはまだ読んでいない)。

・・・・勉強の方向性が違いますかそうですか(汗)。

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2011/02/23

お題「今日の議事要旨ネタは普通です(^^)」

昨日のネタは超一部の人向けで誠に恐縮でございましたm(__)m

ではそれ以外の決定会合議事要旨ネタから。
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2011/g110125.pdf

○景気認識は12月の割と警戒的なトーンがそんなに変わっていない

ご案内の通り、1月に入ってから日銀から出てくる景況感に関しては、先行きの見通しは変えていないものの、内容的に言えば足踏み局面を脱していく段階というトーンを徐々に強めていましたが、さて決定会合における景気認識は12月から1月ってどうなっているのかなあというのは結構興味があった部分でありました。

で、まあその辺を示す『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』の辺りからまずは少々。今回はちょっと前回の議事要旨も引っ張り出して比較してみるという微妙にそれはどうなのかというのをして見ますね。

ちなみに前回のはこちら
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2010/g101221.pdf(12月分)

・米国経済の先行きに関して

『多くの委員は、このところ多くの経済指標が堅調な動きを示していることや、昨年末にかけて、FRBによる追加緩和策や減税措置の延長などの政策対応が取られたこともあって、米国経済の先行きに対する懸念は、一頃に比べればやや後退しているとの見方を示した。』

『もっとも、多くの委員は、住宅市場の低迷が続いているうえ、雇用・所得環境の改善のペースについても、民間雇用者数の増加ペースは緩慢であり、失業率が高止まっているなど、捗々しくないと述べた。多くの委員は、消費の本格的な回復には、雇用・所得環境の改善とバランスシートの修復が不可欠であり、そのため、米国経済の回復ペースは当面緩やかなものにとどまる可能性が高いとの認識を示した。』(ここまで今回)

『ただし、多くの委員は、家計がバランスシート問題を抱え、雇用・所得を巡る環境が引き続き厳しい中で、国内民需の回復ペースは緩やかなものにとどまり、リスクの面でも、景気は上方に弾みにくく、下方に振れやすい状況が続くとの見方を示した。』

『何人かの委員は、金融・財政両面からの景気刺激策が発動されているほか、株価が堅調であることなどから、景気下振れリスクは幾分後退した可能性があると述べた。一方、複数の委員は、このところの長期金利の大幅な上昇が住宅投資などにどのように影響するか十分に注意する必要があると指摘した。』(ここまで前回)

当然ながら論点が時間の経過と共に変わってくるので、直接比較してどうのこうのというのは微妙ではありますが、こうやって並べてみると「下振れリスクが下がった」という認識になっていますし、先行きの見通しに関してもややトーンは明るくなってはいますが、基本的な懸念材料は(モノが構造的な要因だからというのもありますが)あまり変化が無いですねという所ではないかと思います。


・ユーロエリアの先行き懸念

『もっとも、多くの委員は、財政問題を抱える周縁国では、緊縮財政の影響もあって厳しい状態が続いており、中心国との格差が際立っているとの認識を示した。ある委員は、域内格差が際立っている中、ユーロエリア全体としての金融政策面での対応は難しさを増しているとの見方を示した。』(今回)

『ただし、大方の委員は、財政運営が緊縮的となることや、周辺国のソブリン・リスク問題が燻ぶるもとで、長期金利が高止まるなど、金融市場の不安定な地合いが続くとみられることは、長期にわたって景気回復の重石となりうるとの認識を示した。』(前回)

ということで何か相変わらず先行き懸念だったりしますし・・・・・


・新興国のインフレ懸念

1月会合ではこの海外のインフレ懸念ネタが(まあそらそうなのですが)議論として増えています。

中国について。

『また、大方の委員は、基準金利や預金準備率の引き上げにも関わらず、金融環境はなおきわめて緩和的な状況にあるとみられ、インフレ圧力は十分に沈静化されていない状況にあるとの認識を示した。この点について、ある委員は、先進国の金融緩和が、固定相場的な為替制度のもとで、中国国内のインフレ圧力として波及してきているとの見方を示した。』

その他アジア新興国について。

『こうした中、複数の委員は、中国同様、金融環境が依然としてきわめて緩和的なことが、インフレ圧力を高めているとの見解を示した。』

前回はこの辺りの話はそんなに無かった訳でして、まあ今年に入って流れがちょっと変わったですなあという所でしょうかね。


・更に国際商品市況に関しての話も

という事で今回は国際商品市況に関する話も出ています。

『最近の市況上昇の背景について、多くの委員は、天候不順による供給不安の高まりなどの一時的な要因を指摘しつつも、基本的には、新興国の経済成長に支えられた需要の増加による部分が大きいとの見解を示した。』

という話の後に金融政策の話が出てくるのが日銀クオリティ。

『複数の委員は、実需面での動きに加えて、コモディティの金融商品化が進んでいるもとで、先進国の金融緩和も背景となって、投機資金の流入が拡大していることが市況の押し上げ要因になっているとの見方を示した。』

日銀クオリティとか申してますが、まあ「国際商品市況の上昇はQE2のせいじゃないですよ!!!」と主張しまくるバーナンキとかイエレンの話の方に無理があるでしょうと思うのでありまして・・・・・・

『その証左として、ある委員は、今次局面においては、株価と国際商品市況の相関が非常に高くなっていることを指摘した。』

ほほう。で、先行き見通しですが。

『何人かの委員は、国際商品市況は、新興国の需要に支えられて、今後も上昇基調で推移するとみられるが、同時に、投機資金の流入の影響が強まっていることなどから、ボラティリティも高い状態が続くとの見方を示した。』

そうですな。

『ある委員は、そうしたもとでは、国際商品市況の上昇がファンダメンタルズに沿ったものであるかどうか、丹念に点検していくことが大切であるとの認識を示した。』

これはもしかして第二の柱ですかね?とか思ってしまうのは日銀ヲチをしているとつい連想しちゃいますが、まあ常識的に考えて国際商品市況に関しては物価の上昇という政策直球ストレート部分で対応する話ですからこの部分に特に政策インプリケーションは無い、と思うのですけどね。

『この間、ある委員は、先進国の金融緩和の波及ルートとして、商品市況の上昇が、資源国における景気の上振れにつながり、これが資源国で活動する多国籍企業の業績・株価に影響してくるというルートの役割は小さくないとみられるとの見解を示した。』

というのはこれまたオモロスですが、つまり新興国景気の上振れからのポジティブなフィードバックという面もあるから金融緩和で国際商品市況上昇が一概に全部ダメという話をするもんじゃないのではないかという話ですかね。何かこの辺りの評価に関しては実際にどういう話をしているのかってちょっと興味深いですにゃ。



○更に日本経済に関する部分ですが

『委員は、わが国景気の現状については、緩やかに回復しつつあるものの、改善の動きに一服感がみられるとの認識で一致した。』

というのは12月会合と同じですな。でまあ色々とお話があるのですがまとめとしては・・・・

『多くの委員は、わが国経済が緩やかな回復経路に復していく蓋然性は、これまでに比べて高まっているとの認識を示した。』

キタコレ。

『その時期について、ある委員は、不確実性は残るものの、大きく後ずれするリスクは後退しており、春ごろが展望できると述べた。また、ある委員は、ヒアリング情報などを踏まえて考えると、この1 〜 3 月期に緩やかな回復経路に復していく姿は十分に展望可能であると述べた。』

と、威勢のいい話が2名から示されたのですが・・・・

『もっとも、何人かの委員は、緩やかな回復経路に復する蓋然性は高まっているが、その後の景気展開については、不確実性が残っているとの認識を示した。』

ということで、1月会合では「警戒的だけどやや楽観的なトーンに」という感じになったという感じです。需要項目に関する部分ですが、一々引用するとクソ長くなるから引用しませんけれども、各需要項目に関して見ると内容が思いっきり同じという感じになっておりまして、そういう意味からすると1月会合後の総裁会見などから受けた印象でありますところの「1月会合では特に日銀の先行きに対する見方が前のめりになった訳ではないですなあ」というのが確認できたかな、という所かと思います。


さっきの国際商品市況ネタの関連ですけれども、物価に対する影響についての議論もありました。

『多くの委員は、最近の国際商品市況の上昇が消費者物価に波及する可能性を指摘した。』

『ある委員は、国際商品市況高が食品・エネルギー価格の上昇をもたらし、それが産業連関を通じ、他の財・サービスに波及する可能性が高いと指摘した。一方、何人かの委員は、国際商品市況の上昇が最終消費財の価格へ転嫁されていくとしても、マクロ的な需給バランスが依然として緩和状態にあるもとでは、その程度は限定的と考えられるとの見方を示した。』

上昇指摘が1名に対して経済のスラックが基調的な物価上昇を抑制するという人が数名ということですからまあ引き続き物価見通しは慎重と。

『この間、何人かの委員は、物価上昇率が中長期的な予想物価上昇率に収束していく力について、引き続き慎重にみていると述べた。こうした見方の背景として、ある委員は、フィリップス曲線の傾きがフラット化していることや労働分配率が基調的には低水準にとどまる可能性が高いことを指摘した。』

ただまあ2月会合後の総裁会見では基調的な物価下落が止まりつつある件について指摘があったので、この辺に関する議論とか認識とかについては2月議事要旨を見たいなとは思うのであります。

あと、展望レポートに関する部分でリスクバランスに関する部分がありますが、まあそこは基本的に展望レポートで示されている話と同じなので割愛します。


○金融市場に関して微妙な語句が

金融面の動向部分に関して。

『わが国の金融環境について、委員は、引き続き、緩和の動きが強まっているとの見解を共有した。複数の委員は、現在の金融環境を全体としてみると、すでに緩和的な状況に達していると判断できる部分と未だ緩和的とまでは言えない部分が混在しているが、後者の部分についても改善が続き、緩和的な状況に近づきつつあるとの認識を示した。』

ほほう。

『この点、ある委員は、物価との関係でみて低金利の効果はなお減殺されているほか、中小企業の金融環境には引き続き厳しさが残るなど、なお緩和的とは言えない側面も残っているが、金融環境を全体としてみると、緩和の動きが強まっているとの見方を示した。』

なるほど、とまあここは微妙な話ではなくて、その次が微妙なのですな。

『多くの委員は、短期金融市場は、日本銀行による一段と潤沢な資金供給もあって、落ち着いた状況となっていると述べた。』

「一段と潤沢な」というのが有りますので、つまりこれは12月の2年金利上昇以降に資金供給が拡大されて、更に12月決定会合以降に基金買入や短国買入をわんこそば大会のような勢いで打ち込んだ事を意味していると思いますが、それが昨日ネタにした話と関連していると思われますのでして、そーゆー意味では供給を拡大しましたというのはこれはこれで認識があるっちゅう事なのでしょうけれども・・・・・・

なお、昨日のネタに関してはオペレーションがどうのこうのとかに興味津々のマニア以外の人には判りにくく書いているのはわざとですので念の為(^^)。

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2011/02/22

お題「1月決定会合議事要旨を見て不思議に思った事から少々雑談」

モーサテが「ブラジル経済が景気がいいですよウエーッハッハッハ」という話をわざわざJETROの駐在員を呼ぶという素敵な新企画を行って絶賛報道しているのはどう見てもフラグです本当にガクガクブルブル。

さて上記のネタでありますが、正直マニア向けの話と思われますのでオペレーションがどうのこうのとか興味ない方にはどうもすいませんとしか申し上げようが無いです、と先にヘッジクローズ。

ところで、このお題と関係ないのですが、G20絡みでフランス中銀がグローバルインバランスに関するフォーラムみたいのをやったようで、講演とかを白川さんとバーナンキ議長がしてたりしましたが、バーナンキ議長の講演の方を斜め読み(本当に斜め読み)したんですけどね。

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20110218a.htm(HTML版)
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20110218a.pdf(PDF版)

この講演を50字以内で要約すると「グローバルインバランスも新興国のキャピタルインフローも私たちのせいじゃないですよ(キリッ)」で宜しいのかとは思いますが、国債買入プログラムに関するFOMCの見解も固め切れないバーナンキ議長などの執行部が何でもいいから無理繰り理屈を展開しているの図と読みますとこれはこれで味わいがありますなあ。

つーかさ、昨日軽く流しましたけど1月FOMC議事要旨の中でイールドカーブのスティープ化(即ち長期金利の上昇)に対して「景気回復期に見られる状況」とか言い出してあたかも国債買入プログラムの効果のような開き直り状態を示すとか何と言う厚顔メリケンクオリティーと思うのでありますけどね。

という別件の前振りは兎も角日本の方の1月決定会合議事要旨から、と申しましても今日は景気認識とかの話はスルーでトピック的なネタです。

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2011/g110125.pdf

○不思議に思った箇所とはオペレーションに関する部分

『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』のケツの方に『委員は、包括的な金融緩和政策の効果について、議論を行った。』ということで包括緩和の効果に関する議論の部分がありまして、ああでもないこうでもないという話をしてるんですけど、最後の最後に微妙にアレな一節が。

『この間、複数の委員は、今後とも、市場の状況に応じて、機動的なオペレーションを実施していくことは重要であるが、日本銀行の金融市場調節方針は、金融政策決定会合において決定されるものであり、日々のオペレーションや当座預金残高の推移によって金融政策運営についての情報発信が行われる訳ではないと述べた。』

微妙に微妙な文言になっているような気がしますので、こういう時は英文議事要旨(http://www.boj.or.jp/en/mopo/mpmsche_minu/minu_2011/g110125.pdf)の当該部分を読んでみます。

『A few members, while acknowledging that it was important for the Bank to continue conducting money market operations in a flexible manner in response to changes in the market situation, commented that the guideline for money market operations was decided at Monetary Policy Meetings, and that the Bank's communication regarding its conduct of monetary policy was not made through the daily market operations or the changes in the outstanding balance of current accounts at the Bank.』

・・・・・うーむ。

いやね、これって流して読むと「シグナルオペのような事はしていないという事を強調すべきですよね」という原則論を述べているようにも見えますけれども、それだと「日々のオペレーションや当座預金残高の推移によって金融政策運営についての情報発信が行われる訳ではないという点を折にふれて説明すべきである」というような言い方になると思いますし、英訳された(この英文の底本は日本語の議事要旨でして別個に独立したものではない)方でも市場の認識に対してどうこうというよりは「シグナルオペ、あるいはシグナルオペと取られるような事を実施すべきではない」という発言をしたと解釈した方が自然な英文っぽいんですけどね、the Bank's communication ・・・・・ was not madeっていう構文を見ますと。

とまあそんな話を昨日とかも一部のマニアの方とああでもないこうでもないと議論してたのでありまして、まあその辺りから出てきた想像の世界であって実際にどうなのよというのは内容無担保無保証である事はお断りしつつ話は続くのですけどね。


○12月会合でその辺って議論してたのかと思ったのだが・・・・・

んーっとですな、12月会合議事要旨ネタって結構後回しで書いたのですけど、この時に当時の金融市場に関する認識部分が妙だなと思ったんですよ。で、その時の駄文はこちらね。
http://www.h5.dion.ne.jp/~bond7743/seisaku10-02.html#seisaku110202

長々と引用するのも何なのでそっち見てちょという事ですが、まあその時に書きましたように、というか12月に散々声明文詐欺だの何だの悪態をついておりましたときの駄文でも見ていただきますとなお判りやすいと思いますが、12月に2年の金利が0.2%台に乗ってから迎えた1年TB入札が大コケした所から大供給が始まり、その後の決定会合で議事要旨に『この点と関連し、何人かの委員は、包括緩和における時間軸の明確化などが、短期ゾーンの市場金利を低位安定させる作用を持っている点を改めてしっかり示していくことが大事であると述べた。』とあったように、短期ゾーンの市場金利安定ということで更にオペレーションを強化する話でもあって、その流れとして年末対策にしては勢いの良すぎる短国買入連発攻撃とかによって短国市場の玉をカラカラにするわ当座預金残高はつみあがるわという流れになったと思ったのですよね。

ところが今回公表された議事要旨を見ると、その辺の市場的に見ればどう見てもオペレーションのスタンス変更っぽい動きに関して「シグナルオペは日銀は実施しないんですよ」という指摘が出てくるというのがちと不思議ちゃんでありましてまあマニア同士の議論も尽きないのですがそこは大人の事情で華麗にスルーの方向で(^^)。


○そもそも包括緩和のディレクティブが曖昧なのが良くないのですよ

いやまあ確かに政策委員会・金融政策決定会合において金融政策の方向性を決めて、それに則ったディレクティブが出てきて、そのディレクティブに沿った日々のオペレーションが行われる、というのが新法下における動きでありますから、いわゆる「シグナルオペ」と取られるような動きをオペレーション部隊が実施するのは越権行為と言われてしまえばどうもすいませんという話になるのでしょうけれども、小見出しに書いているように、そもそも足元で実施している包括緩和実施における政策の枠組みが微妙に曖昧であって、それが問題の根っこにあると思うのよね。

http://www.boj.or.jp/mopo/outline/sgp.htm/
物価安定のもとでの持続的成長へ向けた最近の政策運営

『(1) 金利誘導目標の変更
無担保コールレート(オーバーナイト物)の誘導目標水準を「0〜0.1%程度」とし、実質的にゼロ金利政策を採用していることを明確化

(3) 資産買入等の基金の創設
短期金利の低下余地が限界的となっている状況を踏まえ、金融緩和を一段と強力に推進するために、リスク性資産を含む資産買入等の基金の枠組みを整え、この活用を通じて、長めの市場金利の低下と各種リスク・プレミアムの縮小を促進』

ということで、(2)はまあ良いのですが、(1)と(3)って言うのが曖昧な部分になっているんじゃネーノって思うのですよね。


まず、(1)のディレクティブでの0〜0.1%というのが曖昧であって、そもそも原則的にどの金利に持って行こうとしているのかが訳わからんですよね。で、ディレクティブには書いていませんが、預金ファシリティ(に相当するもの)の金利が0.1%に設定されている事を鑑みると「0.1%前後で若干下回る程度の水準」を意識するのかなあとか思うのですけれども、まあその辺に関するMPMのコンセンサスってあるのかねというのが微妙ですよね。

で、この点に関連して大昔の低め誘導(0.5%をやや下回る誘導目標というのをやっていた10年以上前の話ですが)時の議事録が暫く前に公開されていましたけれども、その中で金融市場局長が「どの程度まで下がるのを容認するのかとかをこちらで勝手に決めろというのも困る」的な話をしていたり、中原伸之さんだか武富さんだか忘れましたが(その両方かも)、「低め誘導の中でどの辺のレンジに持って行くのかは公開する必要は無いがある程度議論すべきではないか」というような話をしていたというような記憶がありまして、昨日ちょっとサルベージを試みましたがサルベージ失敗したので記憶だけで勘弁。

まあつまりですね、まず第1にディレクティブの「レンジ」というのがどうなのよという部分があって、まあその辺に関して何らかの内部的な意思表示が政策委員会の方で実施されているならそれはそれで良いのですが、そうじゃないと曖昧にも程があるような気がしますなあというのが第1点。

#どっかの取り手が「ストレステストで試し取り」とかやった途端に加重平均が0.10%台に乗ってしまうコール市場の薄さが金利0.1%攻撃で促進される中で無担保コールを誘導目標にしたままでどうなのよという議論もあるがそれは別の大ネタ


まあそれよりも問題なのは(3)でして、リスク性資産の買入のほうはまあ良いとしまして、『長めの市場金利の低下』というのが曖昧にも程がある話でありますわなと思う次第。

いやまあ勿論こういう事を書かれて、2年までの国債を買いますとか言われますと、そらまあ市場のファーストアクションは「なるほど2年までの金利を下げようということですね」と反応したくなるのでありますし、まあオペレーション部隊としては12月に2年金利が0.2%に上昇と包括緩和どころか0.1%への利下げ以降にそんなレートついてましたっけ状態になってしまった所で「長めの市場金利の低下」に適合するようにオペを実施し、それを12月中旬以降は更に強力に実施しましたですよ、という話だと思うのですが、そうは言いましてもその前の動きがどちらかと言えば中立的な調節で放置プレイだったので「これはスタンスが変更になった」とゆー認識に市場ちゃんがなる訳ですな。

で、その市場ちゃんの認識が(ってあたくしもそういう話をしましたけど)起きたのが如何なものかという話をされましても、それはまあ困りますがなというのがオペ部隊の本音ではないかと思われる(勝手に妄想しているだけなので違ったらゴメンナサイ)のですが、結局のところこの「長めの市場金利の低下」の「長め」とはどの程度なのというような点もこれまた曖昧じゃないのと思うのでありますよ。

一方で、さっき引用した過去の駄文にありますように、ディレクティブにも包括緩和の考え方のどこにも書いていませんけれども、12月決定会合議事要旨においては『ある委員は、包括緩和の中で時間軸を明確にしているにもかかわらず、一部のターム物金利が強含んだのは、短期金融市場の裁定機能が損なわれつつあることを反映している可能性があると述べた。』という微妙にアレな発言がありますように、短期市場の「市場機能論」みたいなのが一方であって、その市場機能論とやらを受けると中立的なオペレーションをするようなイメージが沸いてくる部分もある訳で、そらまあオペやる方はあれもこれもみたいな話をされると困りますわなという感じですよね。


つーことでですな、包括緩和で示している文書が曖昧かつ市場機能がどうのこうのとか、そもそもオペレーションは中立で実施すべきという理念的な問題(それは平常時はそうだと思いますが、足元では包括緩和でじゃぶじゃぶにしますと言っているのですから、基本的には市場に対してわんこそば状態で供給オペレーションを実施するのが正しいと思うのですが・・・・)とか、まあその辺の諸々の部分とのコンフリクトが起きたのが包括緩和決定以降12月半ばくらいまでの短期市場の波乱を招いた要因だと思われる訳でして、まあ今後のことも考えますと、包括緩和政策に関しては、現状の微妙に曖昧な部分があちこちある状態に対してもうちょっと詰めた議論が必要だと思うのですよ。

で、その結果に関してはまあ出すか出さないかというのは微妙(例えばコールレートを実際問題としてレンジのどの辺を中心に見るのかという問題とかは、足元のようにある程度レートがコントローラブルになっていると市場が見なしているときに公表すると却って話がややこしくなるから別に公開する必要は無いと思います)ではありますが、というか多分出す必要は無いのですけれども、金融市場局の現場にマルナゲータされても困りますがなという所なので、どの辺までの「長めの金利」なのかとかコールのレンジのどの辺を意識するのかとかと言った面に関しての政策委員会のコンセンサスはコンセンサスで取っておくものではないかと思います。まあ既に取っているのならそれで良いのですけれども、今回公表された議事要旨の引用部分を見ますとそういう感じがしませんので・・・・・

しかしまあどうでも良いですがよくよく考えたらこの2年国債とか短期国債の買入がそもそも金利を下げたいのか量を出したいのかがここまで来ると何だか良く判らんですわな(基金等買入ということで量を幾ら出すという話をしているのですから)という気もしますし、というか少なくとも力技で2年の金利を下げるというのは物理的に無理があると言うのが明白になってきましたし、そういう論点からもこの包括緩和に関する棚卸をした方が良い(公表文書にするのかどうかは兎も角として)のではないかと思いますけどねえ。

以上、超マニアのみにしか意味プーな話が延々と続きまして誠に恐縮でありました。

#最後まで書いてから気がついたのですが、そもそもディレクティブが「コール」だけど「長めの金利低下」にはGCレポ市場のコントロールをしなければいけないという話もありましたな、時間が無いから追記だけで勘弁。

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2011/02/17

ということで決定会合関連で金融経済月報(ただし概要だけ)を。

http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2011/gp1102.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2011/gp1101.pdf(前回)

○声明文と微妙にテイストが違います

というのが最初に読んだ印象でございます。と申しますのは、声明文を見た場合に受ける「これは随分明るくなりましたなあ」というイメージ(実際の内容を比較すると需要項目で上がっているのは輸出と生産なのですけれども、文章構成が強いですねという感じですし、需給ギャップの存在に関する記述が抜けてみたりという流れになっている事もありますし)でしたが、金融経済月報の概要部分を見るとそんなに強い感じがしないなあという所でありまする、あくまでもあたくしの印象ですが。

○現状判断は当たり前ですが声明文と同じ

・総括判断

『わが国の景気は、改善テンポの鈍化した状態から徐々に脱しつつある。』(今回)
『わが国の景気は、緩やかに回復しつつあるものの、改善の動きに一服感がみられる。』(前回)

ということで基調判断は同様に引き上げているのですが、こちらでは文章構成上当然ちゃあ当然なのですが、声明文であった「世界経済の成長率が高まって」云々がございませんで、この先は需要項目についての話が淡々と続くので、声明文のトーンとはテイストが違って来るというものであります。

・輸出、生産

『輸出や生産は、増加基調に復する動きがみられる。』(今回)
『輸出はやや弱めとなっており(途中割愛)、生産はやや減少している。』(前回)

ということでこちらが上方修正なのは声明文通りですな。

・他の項目は変化なし

『雇用・所得環境は引き続き厳しい状況にあるものの、その程度は幾分和らいでいる。個人消費は、一部の財に駆け込み需要の反動がみられる。住宅投資は持ち直しつつある。一方、公共投資は減少している。』(今回)

細かく言えば住宅投資について「持ち直しに転じつつある」が「持ち直しつつある」に変わっています。これまた声明文どおり。


○経済先行き見通しはほぼ同じ

ってまあ声明文の先行き見通しも同じでしたけれどもね。

『先行きについては、景気改善テンポの鈍化した状況から脱し、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(今回)

『輸出は、海外経済の改善を背景に、緩やかに増加していくとみられる。個人消費は、駆け込み需要の反動が薄まるにつれ、再び持ち直していくとみられる。この間、設備投資は、企業収益が改善基調にあるもとで、徐々に持ち直しの動きがはっきりしていくとみられる。もっとも、設備過剰感が残ることなどから、そのペースは緩やかなものにとどまる可能性が高い。こうしたもとで、生産は、緩やかに増加していくと考えられる。』(今回)

『輸出は、海外経済の改善を背景に、再び緩やかに増加していくとみられる。個人消費は、駆け込み需要の反動が薄まるにつれ、再び持ち直していくとみられる。この間、設備投資は、企業収益が改善基調にあるもとで、徐々に持ち直しの動きがはっきりしていくとみられる。もっとも、設備過剰感が残ることなどから、そのペースは緩やかなものにとどまる可能性が高い。こうしたもとで、生産は、緩やかな増加基調に転じていくと考えられる。』(前回)

めんどいのでまとめて引用しちゃいましたが、よく見るとお分かりのように、変化があるのは輸出の「再び」が抜けたのと生産の「基調」というのが抜けただけで、それはまあ現状判断での判断引き上げに呼応した分でありますので、実質的に先行き見通しには変化が無い訳です。


○物価の所に「マクロ的な需給バランス」の文言がこっちには残っていました

実は個人的に昨日一番注目していたのはここの部分。つまりですね、今回の声明文で物価の現状判断及び先行き見通しの所で「マクロ的な需給バランスが緩和状態にあるもとで」という文言が外れまして、それはどういう事ですねんというのが微妙に気になっておりましたのですが・・・・・

『物価の現状について、国内企業物価の3か月前比をみると、国際商品市況高の影響などから、上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、マクロ的な需給バランスが緩和状態にあるもとで、基調的にみると下落幅は縮小を続けている。』(今回)

『物価の現状について、国内企業物価の3か月前比をみると、国際商品市況高の影響などから、緩やかに上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、マクロ的な需給バランスが緩和状態にあるもとで下落しているが、基調的にみると下落幅は縮小を続けている。』(前回)

ということで、今回は企業物価の3か月前比が「上昇」に変わったのが変化になっていますが、それはそれとして注目していた「需給バランス」云々の文言は残りました。

まあどっからどう見ても需給ギャップは残存していると思われるのに、声明文でその文言削ったのはどうしてなのよという話ですが、総裁会見の冒頭部分で

『物価面では、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、基調的にみると下落幅は縮小を続けています。特に、高校授業料の実質無償化等の影響を除いてみると、このところ、前年比はゼロ%ないしごく小幅のプラスで推移しています。』(15日総裁会見)

ということになっていて、まあ需給ギャップの改善よりも先に基調的な物価がゼロ近傍まで上昇してきているという動きになってきているので余計な話はしないという所のようではないかという事を人様とお話をしながら認識した次第(有体に言えばこの点に着目している人と話をしながら教わったのですが、あっはっは)ではございます。つまり、今回の声明文での文言カットは別に「需給ギャップが改善して無くなりましたよ」というような政策インプリケーションがある訳では無い、という事になろうかと思います。

『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、国際商品市況の動きを反映して、当面、上昇を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、マクロ的な需給バランスが徐々に改善することなどから、基調的にみれば下落幅が縮小していくと予想される。』(今回)

『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、国際商品市況の動きを反映して、当面、上昇基調で推移するとみられる。消費者物価の前年比は、マクロ的な需給バランスが徐々に改善することなどから、基調的にみれば下落幅が縮小していくと予想される。』(前回)

国内企業物価の先行きは更に見通しが強くなっていますが、まあそれはそれとしまして消費者物価に関する先行き見通しについてもマクロ的な需給バランス云々の文言は残っていますな、うんうん。

ということで、この需給ギャップ云々のところの文言が「声明文で削り、月報の概要では残す」という器用な事をしている訳ですが、当然ながら声明文で削った事にはそれはそれで意味があると思われますけれども、じゃあそれが「需給ギャップが解消されたと日銀が認識した」という事にはなっていないという点は留意すべきでございますな。

じゃあどういう事かというのは何となくイメージあるけどパス(^^)。


金融面に関してはまるっきり前回と同じなので割愛します。

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2011/02/16

さて決定会合は超無難な結果になったのですが(^^)。

声明文はこちら→
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/k110215a.pdf(今回)
前回声明文はこちら→
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/k110125a.pdf(前回)

○上方修正といえば上方修正ですが「見通しの修正」ではないですから

声明文を読みますと判りますが、見通しが上方修正されている訳ではなく、足元の現状判断の部分の変化というのは従来の見通し部分にあった、『世界経済の成長率が、新興国・資源国に牽引される形で再び高まっていくと考えられることなどから』という部分が足元の現状判断に反映されたという変化でありまして、つまり「従来の見通しの線上にある」ので、「時間の経過と共に徐々に景気が回復していきますよ」というだけの話でもあったりしますわな。

ただまあ皆様読んでお分かりのように、今回は先行き見通しの中の文言が上記の理由で現状判断に反映されることになった事から、先行き見通しが従来と同じではあるものの、表現がスッキリした感が強まりまして、そういう意味ではまあ先行きに自信を深めているという印象を与えますわな。

ということで中身を確認、まずは現状判断から。

・総括判断

『わが国の景気は、改善テンポの鈍化した状態から徐々に脱しつつある。』(今回)
『わが国の景気は、緩やかに回復しつつあるものの、改善の動きに一服感がみられる。』(前回)

ご案内の通り引き上げ。

・輸出・生産

『すなわち、世界経済の成長率は、新興国・資源国に牽引される形で再び高まってきており、その下で、輸出や生産は、増加基調に復する動きがみられる。』(今回)

『輸出はやや弱めとなっている。こうした内外需要のもとで、生産はやや減少している。』(前回)

でもって、この世界経済云々の部分と総括判断部分の上方修正というのは、前回までの先行き見通しにあった、

『わが国経済は、世界経済の成長率が、新興国・資源国に牽引される形で再び高まっていくと考えられることなどから、景気改善テンポの鈍化した状況から徐々に脱し、緩やかな回復経路に復していくとみられる。』(前回)

という見通しが実現しましたね、という事でありまして、その結果として輸出と生産も回復経路に復したとゆー話ですわな。

・・・・ということでまあここの判断はどどーんと上がっているのですが、他の需要項目はそんなに変わっていないのでして。


・設備投資・雇用所得環境

『設備投資は持ち直しつつある。雇用・所得環境は引き続き厳しい状況にあるものの、その程度は幾分和らいでいる。』(今回)

前回と文言同じなので今回分のみ引用しました。


・個人消費・住宅投資

『個人消費は一部の財に駆け込み需要の反動がみられるが、住宅投資は持ち直しつつある。』(今回)
『個人消費は一部の財に駆け込み需要の反動がみられるが、住宅投資は持ち直しに転じつつある。』(前回)

個人消費は変わらずですが、住宅投資に関して持ち直しに「転じつつ」だったのが「持ち直しつつある」に微妙に上方修正となっていますな。


ということで、よくよく見ると掴みではインパクトがあるものの、需要項目に関して言えば輸出と生産(まあその2項目はとてもでかいと言えばその通りなのですけれども)の引き上げ以外は引き上げになっていませんので、そーゆー意味では掴みのインパクトほどの上方修正でも無いですよね、という話かと。


・金融環境

これまた前回と同じです。

『この間、金融環境をみると、引き続き、緩和の動きが強まっている。』(今回)


・消費者物価

『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、基調的にみると下落幅が縮小を続けている。』(今回)
『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、マクロ的な需給バランスが緩和状態にあるもとで下落しているが、基調的にみると下落幅は縮小を続けている。』(前回)

需給バランスの緩和状態文言削除キタコレ。といいましてもだからどうなのと言われると相変わらず下落は下落なのですけど、まあ先行き物価見通しがプラスになりますよという願望に繋がる話にはなりますわなという感じですかそうですか。


・先行き見通し

『先行きの中心的な見通しとしては、わが国経済は、景気改善テンポの鈍化した状況から脱し、緩やかな回復経路に復していくとみられる。物価面では、引き続き、消費者物価の前年比下落幅は縮小していくと考えられる。』(今回)

『先行きの中心的な見通しとしては、わが国経済は、世界経済の成長率が、新興国・資源国に牽引される形で再び高まっていくと考えられることなどから、景気改善テンポの鈍化した状況から徐々に脱し、緩やかな回復経路に復していくとみられる。物価面では、引き続き、消費者物価の前年比下落幅は縮小していくと考えられる。』(前回)

ということで、最初に書きましたように、世界経済の成長率が云々の部分が現状判断部分に移動した事からかなりすっきりした表現になっています。まあこの手の文学っていうのは表現がスッキリしている事が即ち自信の表れでありまして、ああでもないこうでもないというヘッジクローズが多い文章の場合は自信が無かったり何か話を韜晦しようとしていたりというのが基本だったりしますし・・・・・とか書いていたら何かブーメランが飛んできたような気がするorz


・リスク要因

あんまり変化は無いのですが。

『リスク要因をみると、景気については、上振れ要因として、旺盛な内需や海外からの資本流入を受けた新興国・資源国の経済の強まりなどがある。一方、下振れ要因としては、引き続き、米欧経済の先行きや国際金融市場の動向を巡る不確実性がある。』(今回)

『リスク要因をみると、景気については、上振れ要因として、旺盛な内需や海外からの資本流入を受けた新興国・資源国の経済の強まりなどがある。一方、下振れ要因としては、米国経済に対する懸念は一頃に比べて後退しているものの、米欧経済の先行きや国際金融市場の動向を巡る不確実性がある。』(前回)

米国経済に対する懸念云々が抜けましたが、でも米国経済ってどちらかというと足元楽観モードですからこれが抜けたのは不思議ではないですかね。それとも米国経済が楽観に振れているから反動のリスクはあるという含意・・・・というのは読みすぎですかそうですか。

『物価面では、新興国・資源国の高成長を背景とした国際商品市況の一段の上昇により、わが国の物価が上振れる可能性がある一方、中長期的な予想物価上昇率の低下などにより、物価上昇率が下振れるリスクもある。』(今回)

物価に関しては前回と同じであります。

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2011/02/08

○金融市場レポートは中々面白いのだが・・・・・・

http://www.boj.or.jp/research/brp/fmr/fmr110204a.htm/(概要)
http://www.boj.or.jp/research/brp/fmr/data/fmr110204a.pdf(72ページあります)

冒頭から中々面白くて、昨年の米国での景気減速懸念→QE2実施に向けたヒャッハー相場→実際に長期国債買入が始まったら金利が急上昇したでござるの巻、という米国債券市場における長期金利推移に関して要因分解をしている部分というのが本文の3ページ目にあって中々オモロイです。BEIを使って要因分解を期待インフレと実質金利に分解しています。

中々美しい結果が出ているのですけれども、ただまあそもそも論としてBEIを見ると確かに投資家の期待インフレ率ってアンカーされているように見えますけれども、金融政策の時間軸(ちなみにFEDは明示的な時間軸は設定してませんので念の為、まあある意味for an extended periodが時間軸という説明を先日の講演でバーナンキ議長はしていましたけれども)の豪快なぶれ方からするとBEIの推移と実際の市場参加者の認識とはちとズレがあるような気もしますから、美しい結果が出たからと言ってあまり信用しない方が良いとは意識しながら読むのが吉な気はします。

んでね、今回は特に前半部分の米国市場の話が(相場があれだけ動いた、というかFF先物とかで判るように、金融政策の期待がいきなり反転する勢いで動くというオモシロ展開になったからというのもありますが)色々と興味深いというか面白い分析をしていまして、中々読みでがあるのですな。

で、そういうところをネタにするかと思えばネタにしないのがドラめもんクオリティでございまして(ちなみにその辺はネタにはしないが読んで味噌、オモロイと思う)、日本の短期市場の部分に反応するのでありまする(^^)。

本文24ページより引用。

『また、短期金利は、国内の金融緩和期待が強まった10月初にかけて、低下圧力がかかった後、幾分振れる場面もみられたものの、日本銀行による潤沢な資金供給が継続するもとで、概ね低水準横ばい圏内で推移した。』

いやあの確かに達観するとそうなんですけれども、その「幾分振れる」で大騒ぎをしていたと思うのですけれども(大騒ぎをしたのはお前だろというツッコミはしないのがオトナの対応です^^)。

本文25ページより引用。

『レポ市場では、追加金融緩和期待が強まった局面で、目先の資金調達をターム物から期間の短い翌日物にシフトする動きがみられた。また、11 月以降の長期金利上昇局面においては、都銀などによる国債売却の受け手となった証券会社の在庫ファンディング需要が強まった。この結果、レポレートに一時的な上昇圧力がかかる場面もあったが、こうしたファンディングが一巡するとともに落ち着きを取り戻し、通期でみれば、GC(General Collateral)レポレート(スポット・ネクスト物)は、0.1%台前半で推移した。』

いやあのそうじゃなくて市場機能云々みたいな話をしている執行部の誰かさんとかがいて、包括緩和実施後のオペレーションも資金の過不足を市場で調整させようという動きになったからレポレートに上昇圧力が掛かったと思うのですが。

本文26ページより引用。

『ターム物金利のうち国庫短期証券(T-Bill)の利回りは、円高や株価軟調を受け、追加金融緩和期待が高まった局面や、包括緩和政策導入直後に、低下余地の残る1年物を中心に低下した(図表2-5)。もっとも、その後は、円高傾向に歯止めがかかったことを眺め、海外投資家による買い圧力が弱まったことや、長期金利が2 年物など、短期ゾーンも含めて反転上昇したことを受け、レートは上昇した。』

何かその辺の因果関係が怪しげなのですけれどもねえ。GCレートが落ち着かなくなったから3か月の金利が上昇していたと思うのですが。

実際問題として、5年金利が0.5%台で貫禄の推移となっている足元の債券市場の影響を受けて2年金利って0.22%とかにまで上昇していますけれども、連日の札割れ供給攻撃に伴いまして足元のGCレートが堂々の0.100/0.105状態で絶賛安定推移になっている事も影響しているのか、3か月TBはカレント物で0.1075/0.1100の気配でこれまた絶賛安定推移している(6か月TBはご案内の通り昨日の新発が0.12%台まで上昇しましたが、それと比較して3か月TBは不動の三塁手イ・マオカ選手の如く推移していることが判るかと)のでして、まあ長い所は別ですけれども、メインの3M以内に関しては恐らくは足元のGCレートの安定性に依存する所が多いのではないかと。


とまあ肝心の短期のところに微妙なツッコミ所があるのですが、まあ色々とオトナの事情もあるでしょうし、金融市場局の中の人的にもアレな部分があろうかと勝手に忖度する所でもありますので、そんなに盛大に悪態はつかない所存。

まあ今回は色々とテクニカルな分析をしている箇所が多くて、これはこれで面白いと思いますのでその辺は中々読みでがあります(固定オペの超過需要に関する話もオモシロかったですが、今後の課題は固定オペの札割れなので、応札倍率が下がる方のインプリケーションも欲しかったです)が、まあGCとか短国市場に関する部分についてはこれで良いのかねという気が思いっきりするのであります。いやまあその辺に関しては中でちゃんとレビューしているんだったら良い(それを一々表に出す必要もないですし)のですけれども、強力な緩和政策を実施しましょうとか、ショックに対応しましょう的な力技が必要な時に、市場機能重視的な発想で対処すると、市場が意図しない方向に暴れた時にそれを収拾するコストが高くつくというリスクがあるという点に関してはきちんとレビューしていて欲しいものだと思って止みません。

ところで、何時の間にかこのレポートって『本レポートの内容について、転載・複製を行う場合は、予め日本銀行金融市場局まで ご相談ください。』って扱いになっているのですが、以前は『本稿の内容について、商用目的で転載・複製を行う場合は、予め日本銀行金融市場局までご相談ください。転載・複製を行う場合は、出所を明記してください。』って話だったのですが、ここでの引用は転載や複製の範囲にはならない「引用」と勝手に解釈しちゃいましたけれども(なので「引用」としつこく書いた^^)、これが転載や複製の範囲になるということでありましたらご指摘いただければ当該引用部分は削除致しまして内容を再検討いたします。あたくしの微妙な悪態(というほどでもないと思うのだが^^)は残す方向で内容を検討するんですけどね(^^)。

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2011/02/02

○決定会合議事要旨ネタの続き:短期市場の動向の話がどう見てもイカサマです本当に(ry

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2010/g101221.pdf

昨日は前のめり感も無く慎重な見方で結構ですなあと申し上げました『V.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』部分でありますが、『2.金融面の動向』部分に関しては誠に遺憾な部分がございますな。

『短期金融市場について、複数の委員は、一部のターム物金利が長期金利につれて強含んだものの、総じて金利は低水準であると指摘した。』

>一部のターム物金利が長期金利につれて強含んだものの
>一部のターム物金利が長期金利につれて強含んだものの
>一部のターム物金利が長期金利につれて強含んだものの

一部じゃなくて全部のターム物金利が上昇しましたし、長期金利に引っ張られた部分よりも市場機能重視ちっくな中立型っぽいオペレーションをしてGCレートが低位安定しなくなってタームプレミアムが全体的に付いたという要因も思いっきりあったと存じますが。

『ある委員は、包括緩和の中で時間軸を明確にしているにもかかわらず、一部のターム物金利が強含んだのは、短期金融市場の裁定機能が損なわれつつあることを反映している可能性があると述べた。』

>短期金融市場の裁定機能が損なわれつつあることを反映している可能性がある
>短期金融市場の裁定機能が損なわれつつあることを反映している可能性がある
>短期金融市場の裁定機能が損なわれつつあることを反映している可能性がある

この期に及んで市場機能論とか意味判んないんですけど。大体からしてタームのリスクプレミアムは時間軸あっても付きますし、そもそも論から言って「ターム物金利の引き下げ」というのと「市場機能の重視」というのは両立しない概念なんですけどねえ。

えーっとですな、現状では本来の「包括緩和政策」と整合的なオペレーションが淡々と実施されていますので、あまり悪態を蒸し返したくは無いのですけれども、まあ何か市場の認識と違う認識を政策委員の方々が持たれてしまいますと、今のように平和なときは良いですけれども、何かあったときに打つ手が遅れたり斜め上になったりするという懸念がある訳でして、何でこういう事になったのよという分析に関しては、別にまあそれを表に出さなくても良いと思いますけれども、フラットな見方で分析して頂きたいものだと存じます。

でね、まあそうは申しましても、12月の会合以降オペレーションが包括緩和政策の趣旨に沿った打ち方になった(当初は買入オペを連発して金利を抑えに来ましたし)ということで、それなりにやってるのかなあと思わせる部分もありまして、『W.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』の所から。

『続いて、委員は、包括的な金融緩和政策の効果について、議論を行った。大方の委員は、長めの金利の低下を促す効果について、基金導入後の金利低下が示したとおり、基金を通じた多様な金融資産の買入れと長めの資金供給は、金利を押し下げる方向で作用しているとの認識を共有した。』

は??

『もっとも、現時点では、海外の長期金利上昇につれた長期金利の上昇などの影響もあって、その効果がみえにくくなっているとの指摘を多くの委員が行った。』

は??????ということでここまでは悪態ですけれども・・・・

『この点と関連し、何人かの委員は、包括緩和における時間軸の明確化などが、短期ゾーンの市場金利を低位安定させる作用を持っている点を改めてしっかり示していくことが大事であると述べた。』

という事で、しっかり示した結果として「短国などの基金買入オペを前倒しで実施」「札割れするまでオペを続ける」という積極的なオペレーション姿勢っつー事なんですかにゃと存じます次第ですが、それは勝手に妄想しているだけのお話ですので念の為申し添えます。

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2011/02/01

ということで12月会合議事要旨。

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2010/g101221.pdf
↑見た瞬間に思いっきりアドレスが変わっているのが良く判りますがな

○基本的には割と警戒的なスタンスになっています

まず読んだあたくしの勝手なまとめですけどね。

えーっとですな、まあ短観出た直後ですし、米国の年末商戦ヒャッハーの前でございますが、この時点で米国市場はそれなりに景気回復祭り相場の様相を呈していた(米国金利の上昇にはマーライオン要因もあったかもしれませんけれども^^)割には結構警戒スタンスっぽい内容です。

つまりですね、1月会合議事要旨を見るときのポイントは、この12月のスタンスがどの程度変化した/していないのかという所でありまして、さくらレポートやら決定会合声明文や白川総裁の会見やらを見ますと、基本的には「展望レポートで示された見通しにトラックして推移」という感じで、足元急に前のめりになったという感じは無いように見せている(内心は知らんが^^)というイメージなのですが、さてその辺りはどうなのというのが1月議事要旨(が出る頃には2月の会合が終わっているのだが)を見る際に注意したいなあと思います。

特に、景気のところでの討議で「ほほー」と思ったのは米国の景況感に関してでして、悲観と楽観の間でスイングするという雨公クオリティーについて指摘していて、悲観に振れた場合の円高に警戒してまして、まあ結局円高は要注意なのね、というのは把握した。


○結構景気に関しては警戒的

『V.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』から。

・米国経済

『多くの委員は、11 月以降、大方の経済指標が事前の予想を上回っており、米国経済は減速局面を脱し、再び緩やかな回復軌道に復しつつあるとの見方を示した。』

『この間、米国で長期金利が大幅に上昇した背景として、多くの委員は、良好な経済指標などを受けて米国経済の先行きを巡る悲観論が修正されたことや、追加金融緩和への期待が後退したこと、財政面からの景気刺激策が合意されたことなどを指摘した。』

でもって・・・・

『米国経済の先行きについて、委員は、新興国の高めの成長と緩和的な金融環境などを背景に、回復基調が続くという認識で一致した。』

ということになっているのですが、

『ただし、多くの委員は、家計がバランスシート問題を抱え、雇用・所得を巡る環境が引き続き厳しい中で、国内民需の回復ペースは緩やかなものにとどまり、リスクの面でも、景気は上方に弾みにくく、下方に振れやすい状況が続くとの見方を示した。』

と、多くの委員が下方リスクに言及している訳でございまして、結構警戒的なのですわな。で、更に金融市場に関する部分でさっき申し上げたお洒落な指摘があったりするのですよ。

『ある委員は、米国経済を巡る市場の景況感が、本年春の楽観論から夏場の悲観論、そして足もとの楽観論へと大きく振れており、そうした状況においては、金融政策上のコミュニケーションが難しくなると指摘した。』

とまあこれは金融政策の話ですけれども、為替に関しても同様に指摘がありまして、先行きのリスクに関する部分でこんな指摘が。

『更に、一人の委員は、米国で市場の景況感が振れやすいことを踏まえると、米国経済の先行きを巡る楽観論がいずれ後退し、長期金利が低下する可能性があり、その場合には、為替市場で円高が進み、日本経済にとっての下押しリスクとなりうると述べた。』

(;∀;)イイハナシダナー


・先進国の金融緩和の効果がどうしたこうした

こんな議論が。

『何人かの委員は、先進国の積極的な金融緩和策について、先進国と新興国の景気回復スピードに顕著な違いがある中で、為替レート、商品市況や資本移動といったルートを通じて、世界経済の持続的成長にどのような影響をもたらすかという点が、重要な論点のひとつとなっているとの認識を示した。』

ほほう。

『この点について、ある委員は、新興国の中には、固定相場的な為替政策を採っている国もあり、その場合、資本流入が国内の景気拡大に直結する点には注意が必要であると述べた。また、別のある委員は、国際商品市況は、新興国が高めの成長を続けている中で、先進国の金融緩和を睨んだ投機的な動きも加わり、全体として高水準で推移しており、今後の推移に注意が必要であると指摘した。』

ということで、本件に関してはまあ計ったように12月22日(会合は20と21ね)にこんなのが出てまして、ネタにはしなかった(海外中銀ネタとオペレーションネタで多忙だったもんで)のですが、まあ読んで味噌。

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2010/rev10j22.htm/
新興国への資本流入と米国への還流について

本文はこちら。
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2010/data/rev10j22.pdf


・先行きリスクに関して

新興国の上振れと先進国の下振れという話なのですが、この部分に関しては1月の声明文ではリスクバランスが微妙に変わった気がします。まあ元々白川総裁は「リスクはバランス」と発言していましたが、他の委員とかでは「リスクは下方」という人もいましたし、その点で言えば、今後の各委員の講演等でリスク認識に変化があったかどうか、というのと1月の討議内容を見たいと思います。

ちなみに、『先行きのリスクについて』から始まる部分ですが、今回は上振れの部分が6行分(実質的に5行分)、下振れの部分が14行分(実質13行分)ありまして、この行数とかどうなるかなとか思うわけで(^^)。ま、当然ですが行数が多いからウェイトが高い訳ではないのですからそれはちゃんと中身を読まないといけませんけどね(^^)。

この時点では下方リスクの話の中で、米国のリスクが軽減されたという話もありますので、まあそーゆー意味では12月会合でもリスク認識は改善されてはいるのですけどね、ということで先進国の方だけ引用。

『委員は、バランスシート調整の重石を抱える先進国経済では、依然として下振れリスクが大きいとの見方で一致した。ただし、複数の委員は、先進国のうち米国では、良好な経済指標や景気刺激策などを受けて先行きの下振れ懸念が後退した一方で、欧州では、ソブリン・リスク問題の再燃に伴う長期金利の高止まりや緊縮的な財政運営などが、景気の足かせとなるリスクが高まっていると指摘した。』

まあ話が逸れますけど、昨日引用したコチャラコタ総裁の講演でもバランスシート調整圧力の問題の深さを指摘していますけれども、この辺りの議論は日本市場でヒーヒー言ってたクチとしては極めて親和的ですなあとか思うのでありまする。

『この間、ある委員は、情報関連財の世界的な在庫調整が長引く可能性を下振れリスクとして挙げた。また、別のある委員は、国際商品市況の上昇が日本経済にとっては交易条件の悪化につながるとの懸念を示した。』

交易条件の悪化キタコレですな。


・個別項目に関して少々

国内経済の個別項目に関してはまあ声明文および金融経済月報の通りなのですが、読んでてほほーと思ったところだけ引用。

雇用所得に関して:
『最近の厳しい就職環境との関連で、ある委員は、若年層の就業機会が失われることは、次世代の生産性低下につながり、将来の日本の潜在成長率を押し下げる方向で作用しかねないと懸念を示した。』

さいざんすな。

住宅投資に関して:
『住宅投資について、ある委員は、住宅取得促進税制が相応に効果を発揮する中、下げ止まっているが、雇用・所得環境の厳しさが残ることなどから、回復の明確化にはなお時間がかかる可能性が高いと指摘した。』

住宅投資の現状認識は1月に変わっているのですが、この辺りの委員の認識はどう変化したのか(してないかも知れませんが)。

消費者物価に関して:
『ある委員は、価格下落品目数から上昇品目数を引いた値が減少しており、価格下落の拡がりに歯止めがかかっていると述べた。』

ほほう。


○で、金融市場に関してと包括緩和に関する所ですが・・・・

例によって例の如く、時間配分を間違えた為に明日送りになってしまいましたが、金融面の動向に関する部分では何と申しますかこう禿しくアレな表現がございまして、明日は微妙に悪態成分が入る予定になりますので何卒よろしくお願いします(何を?)。

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2011/01/27

○金融経済月報の概要も上方修正ですわな

金融経済月報の比較、と言いましても概要の所だけといういつもの手抜きパターンでどうもすいません。

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp1101.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp1012.pdf(前回)

・現状判断の個別項目での変化は住宅age輸出sage生産がわずかにsage

基本的には昨日ご紹介した声明文のベースをもうちょっと丁寧にしたというものですので、前回比変わっていない所とかは割愛しますね。

『住宅投資は持ち直しに転じつつある。』(今回)
『住宅投資は下げ止まっている。』(前回)

『輸出はやや弱めとなっており』(今回)
『輸出は、横ばい圏内で推移している。』(前回)

『生産はやや減少している。』(今回)
『生産はこのところやや減少しており、』(前回)

まあ生産のところは激しく微妙なのですけど一応ほんのちょっとだけ下がった事にしておきますが、正確には本文を読むと判ると思う(のだがめんどいので今回はパス)。

・先行きはどう見ても上方修正です本当にありがとうございました

これは声明文と同じですが総括判断が上昇と。

『先行きについては、景気改善テンポの鈍化した状況から徐々に脱し、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(今回)

『先行きについては、景気改善テンポの鈍化した状況がしばらく続いた後、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(前回)

で、需要項目では輸出と生産の見通しが上昇となっています。つまり現状認識で下げた部分はここでチャラになっているのですな。

『輸出は、海外経済の改善を背景に、再び緩やかに増加していくとみられる。』(今回)
『輸出は、当面、横ばい圏内の動きを続けたあと、海外経済の改善を背景に、再び緩やかに増加していくとみられる。』(前回)

『生産は、緩やかな増加基調に転じていくと考えられる。』(今回)
『生産は、耐久消費財を中心に一時的に弱めの動きとなったあと、増加していくと考えられる。』(前回)

ということですので、まあ全体としてはやはり強めだと言う事になるでしょう。


・物価も先行き見通しが何気に上昇、ただし企業物価ですが

現状認識に変化は無いのですが、先行き見通しが上昇。

『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、国際商品市況の動きを反映して、当面、上昇基調で推移するとみられる。』(今回)

『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、国際商品市況の動きを反映して、当面、緩やかな上昇基調で推移するとみられる。』(前回)

緩やかな、が抜けましたわな。


・金融面のターム物金利には微苦笑

『ターム物金利は、総じて弱含んでいる。』(今回)
『ターム物金利は、一部の金利が強含んでいるものの、総じて低水準にある。』(前回)

前回は「一部の金利」ってどういう事やという悪態を付きましたが、まあ今回は無事に落ち着いているからこれで良いと(^^)。


・金融環境では社債の発行体の裾野拡大に言及

『わが国の金融環境は、引き続き、緩和の動きが強まっている。』(今回)
『わが国の金融環境は、企業の資金調達コストが低下傾向にあるほか、金融機関の貸出態度が改善するなど、緩和方向の動きが強まっている。』(前回)

という総括判断部分は声明文にもありましたので昨日ご紹介しましたが、今回じゃあどの辺りに緩和の動きが強まったのかと言うと、社債の発行体の裾野が拡大したという指摘をしています。

『CP・社債市場では、社債の発行体の裾野が拡がるなど、発行環境は一段と良好になっている。』(今回)
『CP・社債市場では、良好な発行環境が続いている。』(前回)

まあこれはそうですなという感じですので、特に違和感無いです。


ということで、月報は全体として(声明文と同様に)トーンが明るくなったという感じではないかと思います。

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2011/01/26

お題「上方修正は控えめですがトーンが明るいのでやはり強く見えるかなあ」

ということで決定会合がございました。声明文はこちら。

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc11/k110125.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k101221.pdf(前回)

○現状判断部分

・総括判断

『わが国の景気は、緩やかに回復しつつあるものの、改善の動きに一服感がみられる。』(今回)

という総括判断は同じですが、その後の文章は需要項目で微妙に下がっているのがあるのですがトーンが明るくなった感じがするという中々器用な内容に見えますにゃ。まずは各需要項目から。

・輸出

『輸出はやや弱めとなっている。』(今回)
『輸出は、横ばい圏内で推移している。』(前回)

ま、これが下がっているのはややマズーな話ではあるのですが(汗)。

・生産

『こうした内外需要のもとで、生産はやや減少している。』(今回)
『こうした内外需要の動きを反映して、生産はこのところやや減少しており』(前回)

何か物凄く微妙なのですがこれも下がっているのかいな。

・住宅投資

『住宅投資は持ち直しに転じつつある。』(今回)

・・・・あれ?こんなのがしらっと入っているがなと思ったわけですが、前回の金融経済月報(概要)の住宅投資部分はこうなっています。

『住宅投資は下げ止まっている。』(12月金融経済月報より)

ということでこちらが珍しく上方修正でどどーんと出て来ました。

・設備投資、雇用・所得、個人投資

『設備投資は持ち直しつつある。雇用・所得環境は引き続き厳しい状況にあるものの、その程度は幾分和らいでいる。個人消費は一部の財に駆け込み需要の反動がみられるが、』(今回)

『設備投資は持ち直しつつある。雇用・所得環境は引き続き厳しい状況にあるものの、その程度は幾分和らいでいる。個人消費は、一部の財に駆け込み需要の反動がみられる。』(前回)

ということで、全体的に内容前回と同じじゃネーノと言われそうですが、前回との違いは文章構成の変化でして、この部分を全部並べるとこうなるのでございます。

『すなわち、設備投資は持ち直しつつある。雇用・所得環境は引き続き厳しい状況にあるものの、その程度は幾分和らいでいる。個人消費は一部の財に駆け込み需要の反動がみられるが、住宅投資は持ち直しに転じつつある。一方、輸出はやや弱めとなっている。』(今回)

『すなわち、輸出は、横ばい圏内で推移している。企業収益は、改善ペースに一服感がみられるが、増勢を維持しており、そうしたもとで、設備投資は持ち直しつつある。雇用・所得環境は引き続き厳しい状況にあるものの、その程度は幾分和らいでいる。個人消費は、一部の財に駆け込み需要の反動がみられる。こうした内外需要の動きを反映して、生産はこのところやや減少しており、企業の業況感も、最近は、製造業を中心に弱めとなっている。』(前回)

最初の掴みの所で前回は「横ばい」の文章になっていましたが、今回は良いほうの話がつかみに来て、最後に前回より下がっている輸出が入っていまして、更に短観を受けた企業の景況感の話が抜けている事から、全般的なトーンが明るめになっていますよね、という印象をあたしゃ受けたのですがどうでしょうかね。

・金融環境

ここも改善。

『金融環境をみると、引き続き、緩和の動きが強まっている。』(今回)
『金融環境をみると、企業の資金調達コストが低下傾向にあるほか、金融機関の貸出態度が改善するなど、緩和方向の動きが強まっている。』(前回)

ということで「引き続き」改善中とな。

・物価

『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、マクロ的な需給バランスが緩和状態にあるもとで下落しているが、基調的にみると下落幅は縮小を続けている。』(今回)

これは前回と同じです。


○先行き見通しが明るくなったでござるの巻

これは「展望レポートで示した『踊り場を経て回復へ』というメインシナリオに沿った動きです」という事なのである意味「予定通り」ではあるのですけれども。

『先行きの中心的な見通しとしては、わが国経済は、世界経済の成長率が、新興国・資源国に牽引される形で再び高まっていくと考えられることなどから、景気改善テンポの鈍化した状況から徐々に脱し、緩やかな回復経路に復していくとみられる。』(今回)

『先行きの中心的な見通しとしては、わが国経済は、景気改善テンポの鈍化した状況がしばらく続いた後、世界経済の成長率が、新興国・資源国に牽引される形で再び高まっていくと考えられることなどから、緩やかな回復経路に復していくとみられる。』(前回)

ということで、

『景気改善テンポの鈍化した状況から徐々に脱し』(今回)
『景気改善テンポの鈍化した状況がしばらく続いた後』(前回)

てな感じで明るい未来キタコレという事ですが、さくらレポートで示されていたので、特にビックリ感はなかったりします。というかもうちょっと強気のトーンになるのかと思ってた位で。

ちなみに物価見通しは同じです。

『物価面では、引き続き、消費者物価の前年比下落幅は縮小していくと考えられる。』(今回)


○リスク要因:景気

上振れ要因がさらに詳細になり、一方で下振れ要因が弱まっているという中々結構な内容。

『上振れ要因として、旺盛な内需や海外からの資本流入を受けた新興国・資源国の経済の強まりなどがある。』(今回)

『新興国・資源国の経済の強まりなど上振れ要因がある一方で』(前回)

というのが上振れ。

『下振れ要因としては、米国経済に対する懸念は一頃に比べて後退しているものの、米欧経済の先行きや国際金融市場の動向を巡る不確実性がある。』(今回)

『米欧経済の先行きを巡って、なお不確実性の強い状況が続くもとで、景気の下振れリスクにも注意が必要である。』(前回)

国際金融市場(欧州のソブリン問題ですわな)が加わったものの、不確実性の部分の表現や米国経済の懸念の表現がトーンダウン。いやまあ不確実性はともかくとして、米国経済の方はすっかり雨公の皆様は我慢が足りないというか気が早いというかすっかり景気回復ヤッホーホー状態になっておられますからそらそうかと。

でですね、更に今回工夫が凝らされているのは、上記の部分の文章を元のまま読んだ場合に変化が生じていることであります。さっきと同じような話なのですが。

『リスク要因をみると、景気については、上振れ要因として、旺盛な内需や海外からの資本流入を受けた新興国・資源国の経済の強まりなどがある。一方、下振れ要因としては、米国経済に対する懸念は一頃に比べて後退しているものの、米欧経済の先行きや国際金融市場の動向を巡る不確実性がある。』(今回)

『リスク要因をみると、景気については、新興国・資源国の経済の強まりなど上振れ要因がある一方で、米欧経済の先行きを巡って、なお不確実性の強い状況が続くもとで、景気の下振れリスクにも注意が必要である。』(前回)

つまり、前回のリスク要因の文章は締めが「下振れリスクにも注意が必要」という一文の中に収めていて、「良い所もあるけれども悪い所に注意が必要」って文章構成だったのですが、今回は上振れ分が文として独立しましたので、そういう意味ではリスクバランスが展望レポートの中間レビューのチャート面ではあんまり変化が無さそうに見えるのですけれども、ここの文章のトーンとしてはリスクバランスがやや上方修正されたような印象を受けますわな。ただし、恐らくは公式見解としては「上下リスクはバランス」という事にすると思うのですけどね。


○リスク要因:物価

『物価面では、新興国・資源国の高成長を背景とした国際商品市況の一段の上昇により、わが国の物価が上振れる可能性がある一方、中長期的な予想物価上昇率の低下などにより、物価上昇率が下振れるリスクもある。』(今回)

『物価面では、新興国・資源国の高成長を背景とした資源価格の上昇によって、わが国の物価が上振れる可能性がある一方、中長期的な予想物価上昇率の低下などにより、物価上昇率が下振れるリスクもある。』(前回)

資源価格の上昇というのが国際商品市況の一段の上昇とややトーンが強くなりましたが、まあ基本的にはそこまで派手に替わっている訳では無いのかと。


○展望レポート中間レビュー

2012年度の所はそんなに大きく変わっていない(GDP見通しの入り繰りは10年度の数値が上がった分のゲタの関係ですよね)のですが、まあ物価に関しては元々10月の展望レポートの内容が「ちょっと強いんじゃネーノ」と申し上げておりましたので、変わらずではあるのですが、これやっぱり強くねえかと思うのですよ。

2012年度の見通し中心が+0.6%なんですけど、物価安定の理解っていうのは「CPI総合で+2.0%以内のプラスの領域、中心は+1.0%」でありますので、トレンドとしてプラス幅が拡大する予想の下で2012年度の通年見通しが+0.6%だと12年度の後半には+1.0%近傍は楽勝で展望できてくる数字でありまして、そうなって来ると普通に「包括緩和政策の正常化であって引き締めではないですよ」とか言いながら実質ゼロ金利政策とやらの解除が来年度後半には展望できちゃうという数字ですよねというのは前回の展望レポートの時も書きましたが、足元では米欧でインフレ懸念がどうのこうのというのがすっかり材料化しつつある中ですので、日本でもそのあたりを意識する動きがなんらかの拍子に出てもおかしくはないですわな。

で、その何らかの拍子になりかねない白川総裁講演に関しては今日の会見要旨を詳しく読んでみたいとは思うのですが、ニュースベンダーのヘッドラインやら記事やらを読んだ印象では、今回は麿節を封印して引っ掛け質問にもガードをきっちりと行って対応しているような感じを受けました。

あと、何らかの拍子のもう一つとしては金融調節の方になるのかなと思いますが、足元では引き続き金利入札オペで絶賛札割れとなっておりまして、一時トムのGCでオペ待ってた向きもちゃんとスポットスタートのオペで資金を取るようになってトモネのGCオファーもすっかり軽くなったのでGCレートは0.100-0.105で安定しているようですし、その辺の金利が落ち着いていてオペが札割れ状態だったら別に当座預金残高が18兆でも騒ぐ話ではないとは思います。ただし、オペが札入りまくる状態で当座預金残高が増えないでGCレートが上がりだすとそれこそ時間軸がーとかの思惑を呼びかねないですなあという所っすな。ま、今の資金供給オペのペースだと特に問題は無さそうですけれども。

ま、外部環境が好転中だから変に一緒になってはしゃがないでじっくり構えておく方が良さそうですよね。


○おまけですけど

さっきのリスク要因の所なんですけどね。

『リスク要因をみると、景気については、上振れ要因として、旺盛な内需や海外か』

という所で改ページしてまして、

『らの資本流入を受けた新興国・資源国の経済の強まりなどがある。』

となっておりまして、これって普段読み慣れないでぱっと見ると「旺盛な内需」が新興国・資源国に掛かるというのが読み難いと思うのですが。一瞬あたくしも「あら?」と思ったのですが、こういう時には英文を見るのが実は良いというナイショの技があります、ここだけの話ですが(おいおい)。

http://www.boj.or.jp/en/type/release/adhoc11/k110125.pdf

『In the area of economic activity, there are some upside risks such as faster growth in emerging and commodity-exporting economies due to robust domestic demand and capital inflows from overseas.』

ということですので、旺盛な内需というのは新興国、資源国の国内需要というのが判ります(^^)。なお、英文の声明文とかを読むとこれまた味わいが深いと教わったのでございますが、中々そこまで読んでいるヒマが無かったりするのが残念。

ちなみに、日本語で出ているのが正本で、英文は参考文の筈ですから(違ってたらゴメンナサイ、というか教えてにちぎんさま!)それはそれという事で宜しゅうに。

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2011/01/17

○7地域下方修正ですけれども内容がそんなに下方修正ではない件について

小見出しが長いですかそうですか。

http://www.boj.or.jp/type/ronbun/chiiki_rep/chiiki1101.htm(概要)
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/chiiki_rep/data/chiiki1101.pdf(全文)

前回は3地域で下方修正でしたが、今回は何と7地域で下方修正って事ですのでヘッドライン的には「おお!」という感じなのですが、今回の方が内容的にはそんなに弱い感じはしないなあと存じます。

冒頭部分なんですけどね。

『最近の景気情勢については、基調として「緩やかな回復」、「持ち直し」と判断する地域が多いものの、7地域(北海道、北陸、関東甲信越、東海、近畿、中国、四国)が、このところ「改善の動きに一服感がみられる」あるいは「足踏み状態となっている」等と報告するなど、前回(10年10月時点)との比較では、改善ペースの一服感を指摘する地域が広がった。』

『こうした変化の背景としては、情報関連財における在庫調整や海外経済の減速等を背景とした輸出の弱まり、一部の耐久消費財における駆け込み需要の反動減、これらを主因とする生産活動の弱まりを指摘する地域が広がったことが挙げられる。』

前回のさくらレポート(昨年10月)バージョンではこの部分がこうなっておりましてですね。

『最近の景気情勢については、全地域が基調として「緩やかに回復」または「持ち直し」と判断しているが、3地域(関東甲信越、東海、中国)が政策効果の弱まりと海外経済の減速を主因に、このところ回復ないし持ち直しのペースが鈍化していると報告した。この間、先行きの不透明感の強まりに言及する地域もみられた。』

『また、引き続き、多くの地域が水準の厳しさ(北海道、北陸、近畿、四国、九州・沖縄)ないし地域や業種間のばらつきの存在(関東甲信越)に言及している。』(こちらは前回のさくらレポートです)

という感じになっておりまして、判断そのものは下がっているのですけれども、先行き不透明感だの水準の厳しさだの業種間のばらつきだのというような表現が前回は入っていまして、今回の方が先行きに関して希望が持てそうな感じになっておりますわな。


個別項目ですけれども、今回は生産が下がっているのですが、他の項目が微妙に「下げ止まり」とか「厳しさの度合いが緩和」というのが並んでおりまして、その辺からも「7地域下方修正!!」という程の厳しさを感じないなあと思うのでございまする。以下各項目のリード部分に関して前回(http://www.boj.or.jp/type/ronbun/chiiki_rep/chiiki1010.htm)と並べて比較してみましょう。

・公共投資

『公共投資は、全地域が「減少している」等と判断した。』(今回)
『公共投資は、全地域が「減少に転じつつある」または「減少している」と判断した。』(前回)

これは下方修正。

・設備投資

『設備投資は、5地域(北海道、近畿、中国、四国、九州・沖縄)が「持ち直し」または「持ち直しつつある」、「低水準ながら増加」と判断したほか、2地域(北陸、関東甲信越)も「下げ止まっている」と判断した。この間、東海は「持ち直しつつあるが、そのペースは幾分鈍化している」と判断した一方、東北は「減少しているものの、一部に動意がみられ始めている」と判断した。』(今回)

『設備投資は、6地域(北海道、東海、近畿、中国、四国、九州・沖縄)が「持ち直し」または「持ち直しつつある」、「低水準ながら増加」と判断したほか、他の2地域(北陸、関東甲信越)も「下げ止まっている」と判断した。この間、東北は「減少」と判断した。』(前回)

東海が鈍化(エコカー関連ですかね)しているものの毎度弱い東北が持ち直しとな。


・個人消費

『個人消費は、雇用・所得環境の厳しさが緩和しているもとで、引き続き6地域(北海道、東北、北陸、関東甲信越、近畿、九州・沖縄)が、基調として「持ち直し」または「下げ止まりつつある」等と判断した。もっとも、多くの地域で冬物衣料品販売等で持ち直しの動きがみられた一方で、全地域が一部の耐久消費財における駆け込み需要の反動を報告した。こうした中で、中国は「持ち直しの動きが一服している」、東海、四国は「全体としては弱めの動き」等と判断した。』(今回)

『個人消費は、雇用・所得環境の厳しさが緩和しているもとで、6地域(北海道、東北、北陸、関東甲信越、近畿、九州・沖縄)が、「持ち直し」または「下げ止まりつつある」等と判断した。もっとも、ほとんどの地域が、乗用車販売における駆け込み需要の反動を指摘しており、こうした中で、東海は「弱含んでいるとみられる」、中国は「持ち直しの動きに一服感がみられる」、四国は「全体としては弱めの動き」と判断した。』(前回)

微妙に上がっていますな。


・住宅投資

『住宅投資は、引き続き水準の低さに言及する地域がみられるものの、6地域(北海道、東北、関東甲信越、東海、四国、九州・沖縄)が「持ち直している」または「一部に持ち直しの動きがみられる」等と報告したほか、他の地域(北陸、近畿、中国)でも「下げ止まり」と判断した。』(今回)

『住宅投資は、引き続き水準の低さに言及する地域がみられるものの、5地域(北海道、東北、関東甲信越、東海、四国)が「持ち直している」または「一部に持ち直しの動きがみられる」と報告したほか、他の地域(北陸、近畿、中国、九州・沖縄)でも「下げ止まり」がはっきりしてきた。』(前回)

上がってますがな。

・生産

『生産については、ほとんどの地域で、情報関連財における在庫調整や海外経済の減速等を背景とした輸出の弱まりと、一部の耐久消費財における駆け込み需要の反動減を背景に、生産活動の弱まりがみられた。こうした中で、6地域(北海道、東北、北陸、近畿、中国、四国)が、「増勢一服」、「横ばい圏内の動き」等と判断しているほか、関東甲信越は「このところやや減少」、東海は「自動車を中心に減少している」と報告した。この間、九州・沖縄は「緩やかな増加基調にある」と判断した。』(今回)

『生産については、引き続き4地域(東北、北陸、四国、九州・沖縄)が、「増加」等の判断を維持しているが、東海は「減少に転じているとみられる」と報告したほか、4地域(北海道、関東甲信越、近畿、中国)が増勢鈍化を報告した。』(前回)

ということで生産が下がっていますけれども、要因として在庫調整とか駆け込みの反動とか微妙に「これからドンドン悪化する訳ではないですよ」っぽいモノが並んでいるというテイストを感じるのであります(^^)。

・雇用、所得

『雇用・所得環境については、引き続き厳しい状況にあるが、ほとんどの地域で、その厳しさの度合いが緩和していると報告した。この間、東海は「このところ改善の動きに一服感がみられる」と報告した。』(今回)

『雇用・所得環境については、引き続き厳しい状況にあるが、全地域が、その厳しさの度合いが緩和していると報告した。』(前回)

これまたお車関連の東海さんがアレですが、他は引き続き改善傾向は継続とな。


ということで、まあ前回のさくらレポートを見た時は「総括判断では先行きリスクに関しての言及が目立ってあまり宜しくは無い(そらまあこのレポート出る直前に包括緩和実施したのですから冷静に考えたら当たり前なのですが)という感じでしたが、前回の時も「良く良くみると個別項目ってそんなに極端に悪くなっているわけでもないですな」などと申し上げたのですが、今回はそもそもの全体のトーンに「先行き不透明」的な部分が外れている事もあるせいか、ヘッドラインの見た目程悪い印象を与えませんでした。

とあたくしは思いましたが勘違いだったらサーセン。

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2011/01/13

○超越的に今更ですが12月金融経済月報比較(大汗)

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp1012.pdf(12月)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp1011.pdf(11月)

俺様備忘録の為誠に恐縮ですが今更ネタを。

例によって概要部分だけ比較なのですが。

・景気の現状判断

『わが国の景気は、緩やかに回復しつつあるものの、改善の動きに一服感がみられる。』(12月)

というのは前回と同じですが、個別項目部分のトーンが弱めになっています。生産の減少という部分と日銀短観を受けての企業の業況感の部分が弱くなっている感じですな。

『輸出は、横ばい圏内で推移している。企業収益は、改善ペースに一服感がみられるが、増勢を維持しており、そうしたもとで、設備投資は持ち直しつつある。雇用・所得環境は引き続き厳しい状況にあるものの、その程度は幾分和らいでいる。個人消費は、一部の財に駆け込み需要の反動がみられる。住宅投資は下げ止まっている。この間、公共投資は減少している。以上のような内外需要の動向を反映して、生産はこのところやや減少しており、企業の業況感も、最近は、製造業を中心に弱めとなっている。』(12月)

『輸出や生産は、このところ横ばい圏内の動きとなっている。設備投資は持ち直しに転じつつある。雇用・所得環境は引き続き厳しい状況にあるものの、その程度は幾分和らいでいる。個人消費は、一部の財に駆け込み需要の反動がみられる。住宅投資は下げ止まっている。この間、公共投資は減少している。』(11月)

全体の文章量が長いのは短観部分を反映させているからですけれども、個別項目で言えば設備投資の持ち直し傾向が継続しているというのがプラスですけれども、生産と企業業況感に関しては厳しい見方になっています。

・景気の先行き判断

なのに先行き判断はまるっきり同じという器用な内容です。

『先行きについては、景気改善テンポの鈍化した状況がしばらく続いた後、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(12月)

『輸出は、当面、横ばい圏内の動きを続けたあと、海外経済の改善を背景に、再び緩やかに増加していくとみられる。個人消費は、駆け込み需要の反動が薄まるにつれ、再び持ち直していくとみられる。この間、設備投資は、企業収益が改善基調にあるもとで、徐々に持ち直しの動きがはっきりしていくとみられる。もっとも、設備過剰感が残ることなどから、そのペースは緩やかなものにとどまる可能性が高い。こうしたもとで、生産は、耐久消費財を中心に一時的に弱めの動きとなったあと、増加していくと考えられる。』(12月)

11月とまるっきり同じ文言です。生産の現状判断下げているのに見通し同じなのかよという感じですが、上記にあります生産の先行き見通しは「一時的に弱めの動きとなったあと、増加」という判断を維持しているということですので、つまり「足元の生産は減少しているが、この減少は織り込み済みなのでメインシナリオには変化がありません(キリッ)」と言う事なのでしょうな。その見通しで平気かよという気はするけど・・・・


・物価では「為替円高」と「製品需給緩和」がしらっと抜けています

『物価の現状について、国内企業物価の3か月前比をみると、国際商品市況高の影響などから、緩やかに上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、マクロ的な需給バランスが緩和状態にあるもとで下落しているが、基調的にみると下落幅は縮小を続けている。』(12月)

『物価の現状について、国内企業物価の3か月前比をみると、製品需給緩和や為替円高の影響などから下落しているが、国際商品市況の動きを背景に下落幅は縮小している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、マクロ的な需給バランスが緩和状態にあるもとで下落しているが、基調的にみると下落幅は縮小を続けている。』(11月)

国内企業物価の部分ですけれども、商品市況高の部分が強調されているのもさることながら、国内企業物価の下落の背景とされていた為替円高と製品需給緩和という文言が外れているのが「ほほう」という感じ。

先行き見通しは同じなので引用割愛。


・短期金融市場のターム物金利部分でカフェオレ吹いた

金融面ですけどね。

『金融面をみると、短期金融市場では、オーバーナイト物コールレート(加重平均値)は0.1%を幾分下回る水準で推移している。ターム物金利は、一部の金利が強含んでいるものの、総じて低水準にある。この間、前月と比べ、長期金利および株価は上昇しているが、円の対ドル相場は下落している。』(12月)

『金融面をみると、短期金融市場では、オーバーナイト物コールレート(加重平均値)は概ね0.1%を幾分下回る水準で推移している。ターム物金利は弱含んでいる。この間、円の対ドル相場は前月と比べ上昇しているが、長期金利および株価は前月と概ね同じ水準となっている。』(11月)

>一部の金利が強含んでいるものの
>一部の金利が強含んでいるものの
>一部の金利が強含んでいるものの

・・・・・・「一部の金利」ですかそうですか、へーへーへーっと。


・金融環境は改善を強調

包括緩和の効果を強調したいのですね、わかります。

『わが国の金融環境は、企業の資金調達コストが低下傾向にあるほか、金融機関の貸出態度が改善するなど、緩和方向の動きが強まっている。』(12月)

『わが国の金融環境は、緩和方向の動きが続いている。』(11月)

で、個別項目の引用をすると長くなるので変化のあった所だけ引用しますが。

『資金供給面では、企業からみた金融機関の貸出態度は一段と改善している。』(12月)
『資金供給面では、企業からみた金融機関の貸出態度は改善している。』(11月)

『こうした中、企業の資金繰りをみると、総じてみれば、改善している。』(12月)
『こうした中、企業の資金繰りをみると、総じてみれば、改善の動きが続いている。』(11月)

ということで、今更ネタの虫干し(しかも長い)で誠に申し訳ございませんでした。

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2010/12/30

○短期市場レポートネタ続き

この前の短期市場レポート関連ですけどね。
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/research07/data/ron1012a.pdf

第3章の『リーマン・ブラザーズ証券破綻後のレポ市場の課題への対応状況』っていう部分なんですけど、まあ一つ一つおっしゃっている事は左様ですなという話なんですが、実際にこの辺を詰めていくと色々と実務上の課題が出てきそうですなという話が多いと思った次第で、まあそれこそ色々と詰めるとそれだけで大ネタになると思いますが、まあ詰めるのはスルーして雑談程度に。


本文29ページから。

『リーマン証券の破綻時には、同社と約定済みの国債取引が一切履行されず、国債取引のデフォルトの規模は7兆円以上に上ったほか、デフォルトに連鎖する形で市場全体にフェイルが拡がった。市場参加者では、これまで経験のない大量のフェイル処理と並行して、レポ取引での一括清算により同社から受け取れないことが確定した資金や国債のポジション再構築のため、担保国債の処分や国債の調達等に初めて取り組むこととなった。』

でまあ先日も申し上げましたが、この時は破綻処理がいきなり「業務停止命令」という形で飛んできたので、債券のアウトライト取引が履行されるのか履行されないのかが判らんという状態になった(レポ取引は一括清算条項で清算したものと思われますが)りしたのも困りましたし、本来取引所取引なのですから問題が起きては困るデリバティブ取引や信用取引に関しても当日は何も出来ない状態(東証の上場先物に関しては翌日になって建玉移管に関する措置の着手が始まった)でして、リーマン証券が一般個人投資家向けの取引を大してやっていなかった(と思われるのですが)のでエライ騒ぎにならないで済んだのですけど、どう見ても今般の破綻処理は出だしの不手際が目立ったと思われます。

というのは決済期間の短縮とは関係ない話ですが、まあ「取引が宙に浮く状態」のリスクを久しぶりに感じることになったのですが、年寄り的には97年の山一證券破綻後の金融危機状態の時にもアウトライト取引をどうするこうするとか有ったので、まあ一応心の準備が無かった訳でもございません(^^)。

『こうした経験から、市場参加者においては、市場参加者の破綻等のストレス時にデフォルトやフェイルに伴い「資金や証券を予定通りに受け取れない流動性リスク」が、概念上の存在にとどまらない現実的なリスクとして強く認識された。』

たぶんフェイルに関しては市場全体にストレスが掛かっていなければ別にどうという事ではないと思うのですが、デフォルトに関してはモロに取引再構築のリスクがありまして、これがまた自己勘定ならてめえの損益部分で話が済むのですけれども、他人勘定ですと取引実施時点と取引再構築時に受益者が違っている場合(追加設定解約に伴う受益者の変動ね)に受益者間の公平をどう担保するのかとかいう話を詰められた場合にどう処理すべきかというような問題が生じるので、自己勘定以上に取引実務上ややこしい事になりますわな。

となると、一番手っ取り早いのは「ラインカット」ということになってしまいますので、やはりこの辺りに関しても破綻時の処理ルールを関連業界だけではなく、立法面でも考慮していただきたく存じます次第です。


『現在、わが国では、国債のアウトライト取引ではT+3決済、GCレポ取引ではT+2決済が主流となっているが、約定日から決済日までの期間が長いほど未決済残高が積み上がり、取引相手が破綻した場合に顕在化するリスクの規模が膨らむことになる。こうしたリスクやこれに伴う混乱を効果的に抑制・解消するためには、未決済残高の縮減やフェイル解消対応の迅速化等が有効であり、市場参加者においても、決済期間の短縮はこれらを実現する上で、欠かせない課題として認識されている。』

まあそれはそうなのですが、市場参加者と言いましても証券の流通を業としている証券会社さんや、資金決済を業としている銀行さんのように、金やら証券やらの流通が本業の人と、投資家というカテゴリーの人がいるのでありまして、決済期間を例えばの話いきなりT+1とかにされた場合に、そーゆーショートセトルに対応できるような人員もいなけりゃそもそもシステムがそーゆーのに対応していない(全てをリアルタイムのポジション管理じゃなくてバッチ処理となっている部分が多分にあると思う)でしょうし、制度的にもその辺が追い付けないというのがいると思いますのよね。

ということで、一つのやり方としては、投資家も当然ながらそういうリアルタイムの資金・証券管理をするようにしましょうって持って行くというのもあるのですが、何せこの低金利状態ですと決済部門に中々こう金を回すと言うのが難しい面も多分にございますし、そもそも全ての投資家がそういう対応をするのが世の中全体を見た場合に効率的なのかという観点もあろうかと存じます。

でまああたくし最近つらつら思うのですが、この手の証券決済短縮とか、レポ取引のリスク管理の強化(というのは次の章になりますが)という話を考えた場合に、資産管理系の専業信託さんあたりがこの部分を担っていくというのが世間全体のコストという意味では有益なんじゃネーノとか考えておる訳なのですよね。まあ証券決済の短縮とかリスク管理の強化という流れ自体は方向としてその通りなのですが、それを支えるインフラという意味で考えますと、日本の場合は中央決済機関(つまり日銀)に直接参加している参加者がやたら膨大という現状は非効率な部分があろうかと思いますです。

#ただ問題は今の金利だと決済専業信託という業務が相当の規模を集めないとペイしなさそうな事なのと、規模拡大で手間が全体として軽減できるのかが微妙なところで、数増やすと増やしただけ管理コストが上がるように思える所だったりするのですけど、まあ決済にそこまであたくしも詳しくないので詳しい人に一度じっくりと教えて貰いたいものでございます

とか何とか書いておりましたらレポのリスク管理云々の引用を忘れましたが(汗)、まあさっき書いたように、「それは正論だが今の金利環境でそんな面倒な事を要求したら普通の投資家めんどくさがって入ってこなくなるって」という話が『レポ取引におけるリスク管理の強化』というところで展開されていました。

本文31ページより。

『この点、前回のサーベイにおいて、リーマン証券破綻時に破綻対応の一環としてポジション再構築に取り組んだ先を中心に、レポ取引のリスク管理について、日々のきめ細かなマージンコールの実施や、流動性が著しく低下した担保国債に対するヘアカットの実施の必要性を指摘する声が聞かれた。また、国際的にも、金融機関や決済インフラ機関等におけるレポ取引のリスク管理のあり方について検討が行われ、将来的な市場環境の悪化に備えた保守的なヘアカットの設定等、適切な担保管理の必要性が指摘されている(BOX4「レポ取引等のリスク管理強化に関する国際的な議論」)。』

という事で、まあこれもその通りとしか申し上げようが無いのですけれども、そんなの投資家業の人に求められても取引開始のハードルが上がるだけでございますので、この辺りの部分まで含めて専業信託さんの進出で新たなインフラが整備されていくようになって行くのではないか、とそこはかとなく思うあたくしなのでありました。

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2010/12/28

○展望レポートが楽観的ではないかとの須田審議委員の指摘とな(10月28日議事要旨)

昨日は議事要旨が2発ございましたが、とりあえず10月28日の展望レポート分から。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g101028.pdf

展望レポートの討議の部分が議事要旨本文8ページ『2.経済・物価情勢の展望』からなのですけれども。

『経済情勢の先行きの中心的な見通しについて、多くの委員は、10月5日の金融政策決定会合において、物価安定のもとでの持続的成長経路に復する時期が後ずれする可能性が高いと判断したが、その後、包括緩和を導入したことや、政府の緊急総合経済対策が明らかになったこともあって、なお時間を要するものの、物価安定のもとでの持続的成長に向けて、着実な歩みを進めていくとの認識を示した。』

ということで展望レポートが妙に強気に見える結果になったのですけれども、真面目な話この包括緩和にしろ緊急総合経済対策にしろ、その効果がどのように出てくるのかというのはこれからの話(つーか包括緩和の具体的な内容の第一弾をこの会合で決定したんですし)なのですが、それを堂々と効果として入れて良いのでございましょうかと。

つまりですな、これを入れることによってやや強めの展望レポートを出して、時間軸が妙に長くなるのを避けようというような意図があるんじゃネーノという香りがプンプンとするのでありまして(展望レポートの数字だと「中長期的な物価安定の理解」の達成は実はそんなに先ではない(ですが、そもそも市場の方が「それはアリエネー」という認識なのであまり時間軸が揺らがなかったりする)のですよね)、何かこうどうなのよという風に思うのであります。

と思ったら展望レポートに反対意見というのがあるというお洒落な事態が(^^)。

本文15ページでございますが。

『続いて、「経済・物価情勢の展望」の「基本的見解」の文案が検討され、採決に付された。採決の結果、賛成多数で決定され、即日公表することとされた。また、背景説明を含む全文は、10 月29 日に公表することとされた。』

ほほう賛成多数とな。

『なお、須田委員は、展望レポートで示した見通しに比べて、マクロ的な需給バランスの改善が物価上昇率を引き上げる力や包括緩和の効果を控えめに判断し、物価の先行きを慎重にみていることや、消費者物価指数の基準改定などに伴う不確実性に一段と配慮した情報発信が必要と考えていることから、反対した。』

>マクロ的な需給バランスの改善が物価上昇率を引き上げる力や包括緩和の効果を控えめに判断し
>マクロ的な需給バランスの改善が物価上昇率を引き上げる力や包括緩和の効果を控えめに判断し
>マクロ的な需給バランスの改善が物価上昇率を引き上げる力や包括緩和の効果を控えめに判断し

・・・・・・(;∀;)イイハナシダナー

ということで、物価の見通しに関して楽観的ではないかというツッコミでございまして、まあこれは展望レポートで(普段そういうの見込まない筈の)これから実施する経済対策やら金融緩和の効果を思いっきり織り込んだ楽観ちっくな展望レポートに反対と言う事で、これは示唆する事がある反対理由ではないかと存じます次第。

つまりね、白川総裁のご趣味だか何だか知りませんけれども、市場機能論位ならまあいいですけど、マクロプルーデンスとか金融の不均衡の拡大防止(ってまあマクロプルーデンスと言う話ですか^^)とか言い出してあっという間に包括緩和解除モードになるべくシナリオ逆算型の見通しみたいなのをぶち上げそうな懸念を、ってまあそれは考えすぎの杞憂であると思うのですけれども、微妙にその辺りの危うさが現在の白川体制に内包されているのではなかろうか、などというのをこの須田さんの反対理由およびその前の議事要旨部分を見て思うのですよあたしゃ。

いやね、ただの杞憂だと思うのですがど〜も心のどこかに引っ掛かるのよね〜という事で。




○昨日の短期市場レポートから雑談

昨日は市場機能論がどうのこうのという話で悪態放題でしたが、今日は別のネタですが悪態ではございません(^^)。

http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/research07/data/ron1012a.pdf

本文11ページ以降に『(BOX1)本邦金融市場における外国金融機関のプレゼンス低下』というコーナーがあったのですが、その最後の部分で盛大にカフェオレ噴いたのでその辺りを(^^)。

『但し、外銀においても、中長期的にビジネスを継続していくにあたって本邦円市場において安定的に資金調達を継続できる体制を整備する必要があるとの認識は多くの先において共有されており、コール市場において本邦金融機関と同様の条件で調達できない状況を憂慮する声が多く聞かれている。』

>コール市場において本邦金融機関と同様の条件で調達できない状況を憂慮する声が多く聞かれている
>コール市場において本邦金融機関と同様の条件で調達できない状況を憂慮する声が多く聞かれている
>コール市場において本邦金融機関と同様の条件で調達できない状況を憂慮する声が多く聞かれている

いや〜「ジャパンプレミアム」とか何とか言って邦銀から散々吹っ掛けレートで運用してウハウハだったのはどこのどなたでしたっけ〜〜〜〜(^^)


で、本文23ページからが『3. リーマン・ブラザーズ証券破綻後のレポ市場の課題への対応状況』という内容がこれまた重要なネタなのですが、どう見ても時間が無くなってしまいましたのでまた後日にやるかもしれませんしやらないかも知れません。

一応あたくしの愚意見を申し上げておきますと、リーマン証券が飛んだ時に困ったのは未決済約定の履行がキャンセルされるというのが確定的になるまでに日数が結構掛かった印象がありまして(というか最終的には「キャンセルするなら勝手にどうぞ、取引修復において損が出た場合はこちらにお届けを」的な対応だったというような記憶があるんすけど)、ここで述べられているフェイル慣行の定着や決済期間の短縮などの話も当然ながら重要なのですが、破綻時における法制(慣行ではなく)整備とかの方面におかれましては日銀の力に待つ所大だと思いますので、決済関連の法制整備面に是非力を注いでいただきたく存じます所です。

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2010/12/27

お題「市場機能論全開の短期市場レポート」

中国が利上げしたみたいだが華麗にスルーして今日は日銀の市場機能論全開のレポートなどを見ながらひとしきり雑談でも。

ということでネタはマニアしか読まないと思われるこのレポートから。
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/research07/data/ron1012a.pdf
わが国短期金融市場の動向と課題


○そもそも市場機能論が重要なのは何故かと愚考する

いきなりそもそも論になりまして恐縮なんですけどね。

このレポートってあちこちに「市場機能論」が出てくるという代物でありまして、その「市場機能論」の認識が微妙にどうなのよというツッコミ所もありまして、まあそれはそれで後ほど書きますけど、それ以前の問題として市場機能が重要なのは何でですねんという事をこのレポート読みながらつらつら考えていた訳よ。

でですね、短期金融市場(だけではなくて一般的にも言えるけど)における市場機能が必要ですよ云々という話ってえのは、金融政策のトランスミッションメカニズムと言いますか、要するに金融政策の効果を浸透させる為にマーケットが重要なのであって、そーゆー意味で市場機能が壊れた時に金融緩和政策の効果が浸透しないからと言って各種の信用緩和政策が実施された訳ですわな。

然るに、現在日銀が実施している事になっている筈の「包括緩和政策」においては、通常のオーバーナイト金利操作だけでは金融緩和に限界があるからということで、各種リスクプレミアムの縮小を行ってみたり、長めのターム物金利の押し下げを行ってみたりというのが触れ込みになっている訳ですよね。そもそもこれらの各種市場っていうのは普通にワークしている(J-REIT市場だけちょっと怪しかったけどね)市場であって、その市場に手を突っ込んで追加の金融緩和効果を出そうとしているという事ですよね、ね、ね。

と考えますとですな、そもそもの位置づけとして重要なのは「金融政策の効果が波及する事が重要である」という話であり、その時に波及するチャネルとして重要なのが市場であり市場機能である筈なのですが、今回のレポートにおける市場レビューを見ますと、ここもとまで実施した挙句に短期市場のGCレポ金利が不安定になって結局の所市場のターム金利に対するリスクプレミアムが拡大し、包括緩和時点で新たに導入して影響を及ぼそうとしていた筈の2年物金利などが大幅に上昇して包括緩和導入どころか昨年の固定金利オペ導入前の水準にまで金利が上昇しているという実態があるわけでして、これ即ち「本末転倒」という奴ではないでしょうかと思うのでありますよ。

いやね、包括緩和で表明していた『短期金利の低下余地が限界的となっている状況を踏まえ、金融緩和を一段と強力に推進するために、長めの市場金利の低下と各種リスク・プレミアムの縮小を促していくこととした。』(10月5日の金融政策決定会合声明文より)という中の「長めの市場金利の低下を促す」というのは実は為替や株価対策で元々そんなのやる気無いやるやる詐欺ですよってえ事でありましたらまあ整合的ではありますけれども、何か市場機能論をこれだけ前面に押し出して短期市場のレビューを出されますと、包括緩和の声明文はマジで詐欺だったのですかそうですかという認識を持たざるを得なくなる訳でございまして、まあそれならそれで良いのですが、少なくとも市場に対して期待ルートでの効果を今後金融政策で出しましょうという事になった場合に、日銀が何か言っても市場が信用しなくて効果が出なくなるかもね♪って事だけは申し上げておきたいなあ〜♪と存じます次第、特に緩和方向の場合にね〜♪

なお、本文(というかリード部分)3ページに小さく『(注)本稿は、基本的に2010年10月までの情報に基づいている。』と書いてありますので、本件は包括緩和実施後に関するレビューも兼ねているかと存じますが、一応市場レビューの部分は包括緩和前の今年7月末の計数を使っておりますので、「いやいやこれは包括緩和前の話ですから今は別ですよ」みたいなエクスキューズは可能なシステムになっておるのですが、普通に考えて金融市場局の名前でこれだけ市場機能論全開のレポート出されたら「ああやっぱり市場機能重視オペが続くんですね」という風に受け止めるとあたしゃ思うんですがどうでしょうかねえ〜。

と、ひとしきり悪態をついて中身に少々。


○何のための補完当座預金制度(超過準備付利)なのか意味がわかんないんですけど

最初にまとめみたいなのがあって、その次に短期市場レビュー、その後がレポ市場の課題への対応という話になるのですが、早速まとめの部分から微妙な話が。

本文32ページ目のケツから。

『このように、コール市場やレポ市場では、資金調達のニーズや裁定取引等の取引機会が減少している。また、地方銀行(以下「地銀」)・第二地方銀行(以下「地銀U」)や外銀等の市場参加者が大幅に減少しており、金融機関等の取引スタンスが消極化している。但し、都市銀行(以下「都銀」)では、超過準備を保有せず、余剰資金を市場で運用するスタンスにあるなど、一定の市場機能が維持されている。』

サラリと読むと「ふーん」で終了しちゃう(市場レビューの所に詳しい話がある)のですけれども、よくよく考えると何か違和感のある話でございます。

と言うのはですね、「金融機関等の取引スタンスが消極化している」「ただし都市銀行では超過準備を保有せず(略)一定の市場機能が維持されている」という文脈でコール市場やレポ市場の現状認識を示しているのですけれども、そもそも超過準備を付利したのは「市場金利の下限をゼロにしない」為に実施したのでありまして、市場金利が補完当座預金金利(超過準備付利金利ね)に接近したら市場運用が減るのはそもそも制度導入時点で企図した事ではなかったのでしょうかと小一時間問い詰めたい訳ですよ。

上記部分(本論部分を見ると更によく判りますが)では「市場機能が維持されていて結構結構」とお考えと言う風に読めてしまうのですけれども、包括緩和実施でディレクティブも変更になりましたが、ここの辺りを読んでいますとよーするに基本的にコールはそんなに下げたくないしレポも下げたくないという風に読めてしまいまして甚だどうなのよという感じでございますけどね。


○都銀が超過準備を持たないのがどうのこうのに関して

本文19ページに『(BOX2)短期金融市場における市場参加者の取組み状況』というのがあるのですが、まあそこで上記の話が詳しく書いてあります。

『コール市場やレポ市場においては、ターム物を含む金利が低下している下で取引機会が減少し、金融機関等の運用、調達スタンスが消極化している。例えば、余資運用について、「基本的に運用するようにしている」と回答した先は、補完当座預金制度により、超過準備を保有することの機会費用が低下している中で、全体の4割強に止まった。』

いやまあそうなんですが、補完当座預金制度ってそもそも(以下同文)。

『無担保コール市場、レポ市場における事務体制の面をみると、これまでのところ量的緩和時とは異なり、殆どの先がフロント・バックともに取引を行うために必要な事務体制を維持している。こうした背景には、日本銀行が長めのタームでの資金供給の割合を増やす一方で、日々の資金偏在については、市場で調整する余地を残していることや、都銀が超過準備を保有せず、余剰資金を市場で運用するスタンスにあることがあり、一定の市場機能の維持につながっていると考えられる。』

いやですから市場機能の維持と包括緩和という話はとりあえずさっきしたので良いと致しまして、「都銀が超過準備を保有しない」のが何で市場機能の維持に繋がるのかさっぱりそのロジックが判らん。

つまりですね、都銀が超過準備を保有しつつ通常のフローを回しながら、市場の需給(あるいは資金の偏在状況)に変化が生じてGCレポ市場の金利が上昇したり、短期国債のレートが上昇したりした場合にすかさずGCレポで資金運用に回ってみたり、短期国債の購入を行ってみたりというオペレーションをしたって別に市場機能は維持されていると思うのですよね。逆にGCレポ市場で圧倒的に資金の出しサイドであります都銀がカツカツのトン調整をしながら準備預金操作をしていると、マクロで足りていても市場の資金偏在がちょっと生じたり、資金繰りが読みにくい時とぶつかるとあっという間に都銀の資金ポジションが変わってしまい、その結果として(11月下旬までのように)GCレートが何かの拍子に跳ねるようになって、ターム物金利が上昇しやすくなるというデメリットがある訳で、いやまあ包括緩和政策やっていないのならそれはそれで良いのですけれども、仮にも包括緩和政策と言うのを実施している中で上記の「都銀が超過準備を持たないのは市場機能の維持に重要」という認識を持っているのはちょっと違うんじゃないかなあと思いますですよ。

何かね、量的緩和政策の時の短国モノ無し無し状態で短国が100円入札になってターム物金利も潰れてどうしようもないという状態のトラウマがあるのかも知れませんけれども、当時と違って短期国債の発行量がアホのように多くなっており、少々の量的緩和状態になっても短期金融市場の玉が枯渇する訳ではないので、都銀が超過準備を少々持っても短国市場が死ぬ訳でもなく、短国市場が死なないのであれば別にそこまで懸念する話じゃないと思うのですけれどもねえ。


ということで、最後のまとめ部分の本文37ページにはこんなことが書いてあったりするのですが、当然ながら非常に違和感がある市場機能論全開ですわなという話でござんすけど同じ事何度も書くのもうっとうしいでしょうから突っ込み部分割愛。

『このように、短期金融市場では、金融機関等の取引スタンスが消極化している。他方で、日本銀行では、短期金融市場の機能維持にも配慮する観点から、長めのタームでの資金供給の割合を増やす一方で、日々の資金偏在については、市場で調整する余地を残す運営としている。また、都銀が超過準備を保有せず、余剰資金を市場で運用するスタンスにあるなど、短期金融市場においては、なお日々の流動性の調達や余剰資金の運用の場として引続き取引が行われており、一定の市場機能は維持されている。』

つまり包括緩和実施後の調節も意図して実施した結果声明文詐欺状態になっているということですかそうですか。でもそれって決定会合の結果との整合性ってどうなっているんでしょうかねえ(−−)。

で、本文38ページ(最後の最後ですが)にもこんなコメントがある訳でして。

『このように短期金融市場をみると、市場参加者の市場機能の維持に対する理解もあって、取引機会が減少する下でも、なお一定の市場機能は維持されている。』

えーっと、正直イミワカンネ。基本的に市場参加者はコスト対比でペイするかしないかというのと、インフラとして確保しておかないと不味いかどうかというような観点で動いているだけの話で、「市場機能の維持に対する理解」とかで市場参加者は動かんと思うのですけどねえ。いやまあ都銀あたりは(以下自主規制)。


○いや別にそれは市場機能がどうのこうのと違うと思うのだが

更にツッコミでレポ市場に関する話の部分で本文15ページから。

『債券の出し手をみると、リーマン証券破綻後は、全業態でSC取引が減少した。その後、2009年夏以降は、品貸料が低下傾向にある下で、引続き多くの業態のSC取引が減少しているものの、信託では、有価証券信託における国債の運用稼働率を維持する方針にある中で、取引を増やしており、こうした取組みが市場機能を下支えしている。』

・・・・いやあの別に市場機能を下支えするとかいう話じゃなくて、それは単にビジネスとしてニーズがあるかどうかの問題でありまして、別にレポ信託が市場機能を下支えしようとして動いているのではないと思うのですけど何か認識が妙な気がするんですよね。引用文の中にもあるように「品貸料が低下」したから他の業態がSCでの品貸しを減らしただけの事であって、それは専業でやっているレポ信託と、ポートやらトレジャリー部門での運用のおまけでやっている他業態との間での損益分岐点の違いだけの話では無いでしょうかと思うのですが、何でこう「市場機能」の話に持って行こうとするのかが判らん、というか判るのですけれども(−−)一々市場機能市場機能となるのは包括緩和実施後の現在を考えた場合にどうなのかねと思うのでございました。


・・・・ということで市場機能論の所に盛大にツッコミを入れていたら量は増えるわ酔っ払いのオッサンのように同じ悪態が繰り返されるわ肝心の時間がなくなってくるわとなって参りましたので、その他雑談的なネタもあったのですが、それは明日以降(他にも何か積み残しネタと読んでないネタがありまして年末年始間に合うんかいな状態で正直焦っているあたくしがいる)にでも参りたいと存じますです、はい。

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2010/12/22

まずは声明文比較から。

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k101221.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k101105.pdf(前回)

○微妙に弱い印象を与えるのは景気現状判断部分の書きっぷりによります

景気判断の部分を見るとやや下がっているように見えます。

・総括判断

『わが国の景気は、緩やかに回復しつつあるものの、改善の動きに一服感がみられる。』(今回)

というのは前回と同じです。

・輸出

『輸出は、横ばい圏内で推移している。』(今回)

輸出に関しては文章のワーディングの関係で微妙に前回と書き方が違いますが、内容としては横ばい圏という判断を据え置いています。

・企業収益・景況感

これは短観直後に出てくるのが仕様となっています(ので前回は該当部分は無い)のですが、ここの表現はやや弱めっぽい印象を与えますな。

『企業収益は、改善ペースに一服感がみられるが、増勢を維持しており、』(今回)
『企業の業況感も、最近は、製造業を中心に弱めとなっている。』(今回)

特に業況感の所が弱めっぽい印象を与えますわな。

・設備投資

『設備投資は持ち直しつつある。』(今回)
『設備投資は持ち直しに転じつつある。』(前回)

傾向としての設備投資の持ち直しが継続していますという事で若干引き上げとな。

・雇用・所得

『雇用・所得環境は引き続き厳しい状況にあるものの、その程度は幾分和らいでいる。』(今回)

変化ないです。

・個人消費

『個人消費は、一部の財に駆け込み需要の反動がみられる。』(今回)
『個人消費は、耐久消費財に駆け込み需要の反動がみられる。』(前回)

ワーディングが変わっていますが政策効果の剥落が継続中という事でしょうか。

・生産

『こうした内外需要の動きを反映して、生産はこのところやや減少しており、』(今回)
『生産は、このところ横ばい圏内の動きとなっている。』(前回)

ということで今回下がったのは生産の現状判断なのですが、ここの部分の文章を一文そのまま引用するとこうなります。

『こうした内外需要の動きを反映して、生産はこのところやや減少しており、企業の業況感も、最近は、製造業を中心に弱めとなっている。』(今回、再掲)

ということで、景気の現状部分のまとめっぽい所が弱めの印象を与える表現になっているのが、今回の声明文を一見したところで「若干弱めかな」という印象を与えるのかなあと思います。


○包括緩和効果の自画自賛ですかそうですか

金融環境の部分が今回表現が変わっているのですけれどもね。

『この間、金融環境をみると、企業の資金調達コストが低下傾向にあるほか、金融機関の貸出態度が改善するなど、緩和方向の動きが強まっている。』(今回)

『この間、金融環境をみると、緩和方向の動きが続いている。』(前回)

短観(そういや短観をネタにしてないorz)を受けまして改善したというには今回の短観での判断DIってそんなに劇的な改善をしている訳ではない(貸出態度判断DIは全規模で若干改善しているがそんなに顕著な改善をしている訳でもなく、借入金利水準判断DIは大企業は改善しているけれども、中堅は変わらず、中小は若干悪化している)のでありまして、この「企業の資金調達コスト」ってもしかしてTIBORの事かいなという気もします。

ま、何はともあれ、何か予定調和っぽい金融環境緩和のアピールというのを感じる次第でありまして、自画自賛系の香りがプンプンと漂ってくるような気がするのは気のせいですかそうですか。


○その他に関しては殆ど変化なし

以下は前回と殆ど変わらないのでダラダラと引用。

・物価の現状判断

『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、マクロ的な需給バランスが緩和状態にあるもとで下落しているが、基調的にみると下落幅は縮小を続けている。』(今回)

前回と全く同じです。

・先行き見通し

これもまた見事に前回と同じです。

『先行きの中心的な見通しとしては、わが国経済は、景気改善テンポの鈍化した状況がしばらく続いた後、世界経済の成長率が、新興国・資源国に牽引される形で再び高まっていくと考えられることなどから、緩やかな回復経路に復していくとみられる。物価面では、引き続き、消費者物価の前年比下落幅は縮小していくと考えられる。』(今回)

・リスク要因

米国経済に関するリスクだったのが米欧経済のリスクということで、今回のリスク認識は欧州のソブリン問題と金融機関問題へ関心がシフトしてるんでしょうなあということで。

『リスク要因をみると、景気については、新興国・資源国の経済の強まりなど上振れ要因がある一方で、米欧経済の先行きを巡って、なお不確実性の強い状況が続くもとで、景気の下振れリスクにも注意が必要である。』(今回)

『リスク要因をみると、景気については、新興国・資源国の経済の強まりなど上振れ要因がある一方で、米国経済を中心とする不確実性の強い状況が続くもとで、景気の下振れリスクにも注意が必要である。』(前回)

多分これ米国の下振れリスクの方は軽くなっていると思われまする。なお、物価に関してはリスク認識に変化がありませんです。

『物価面では、新興国・資源国の高成長を背景とした資源価格の上昇によって、わが国の物価が上振れる可能性がある一方、中長期的な予想物価上昇率の低下などにより、物価上昇率が下振れるリスクもある。』(今回)


○着実に進めるですかそうですか

決意表明文みたいな所から。

『日本銀行は、資産買入等の基金を通じた買入れを、すべての対象資産について開始した。今後も、総額35 兆円の基金を通じた多様な金融資産の買入れと長めの資金供給を着実に進め、包括的な金融緩和政策の効果波及を図っていく。』(今回)

『本日の決定により、リスク性資産を含む総額35 兆円の資産買入等の基金の枠組みが整ったことになる。日本銀行としては、週明けに基金による国債の買入を開始し、以後、順次他の資産の買入を進めることにより、包括的な金融緩和政策の早期の効果波及を図っていく。』(前回)

ということで、前回は「順次他の資産の買入を進めることにより」「包括的な金融緩和政策の早期の効果波及を図っていく」という威勢の良い表現だったのですが、今回は「総額35 兆円の基金を通じた多様な金融資産の買入れと長めの資金供給を着実に進め」「包括的な金融緩和政策の効果波及を図っていく」となっておりまして、まあ前回と今回とを総合して勘案いたしますと、包括緩和政策の力点って金利の押し下げよりもリスクプレミアムの押し下げにあるんじゃネーノという匂いがしてくるのですけど。

つまりですね、前回「早期の効果波及を図る」とあって、今回その「早期」がさくっと抜けているというのを勝手に妄想すると、「早期」に実施したかったのは各種リスク性資産の買入であり、まあ買入効果、というよりは買入期待効果だとは思いますが、REITの価格が上がってみたり、比較的格付けの低めな社債スプレッドの縮小傾向が継続している(社債の場合は買入効果より単に運用難のせいのような気もするが)というのが一定の効果を上げましたよね、という認識のもと、まあ長めの資金供給とかはチンタラとやってれば良かろうというお話なんじゃネーノとか思うのは被害妄想ですかそうですか。


ということで、声明文は景気の現状判断部分で若干弱めの印象を与える(ただし月報を見ないと判断しにくい)内容で、何となく空気読んだかなとも思いまする(^^)。

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2010/12/08

○またも虫干しネタですが10月4、5日の決定会合議事要旨という超虫干しで

今更ですが包括緩和決定時の決定会合議事要旨なので2か月前の話ですが・・・・

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g101005.pdf

この会合の議事要旨読んでて腰を抜かしそうになったのは何かと申しますと、「追加金融緩和の決定のロジックが全く判らん」という所でございます(−−)。

つまりですな、『V.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』のところを見ますと。

『海外の金融経済情勢について、委員は、海外経済は回復を続けているものの、そのペースは鈍化しているとの見方で一致した。先行きについては、当面、減速を続けるものの、回復基調そのものは途切れずに続いていくことが見込まれるとの認識を共有した。』

『国際金融資本市場について、何人かの委員は、一頃に比べれば、市場における世界経済の先行きを巡る懸念は幾分和らぎ、リスク回避姿勢も幾分後退しているとの見方を示した。もっとも、何人かの委員は、欧州周辺国の国債の対独国債スプレッドが拡大した状態にあるなど、欧州ソブリン問題はなお燻っているうえ、各国の金融政策運営を巡る思惑などから為替相場の大きな変動がみられるなど、国際金融資本市場は、なお不安定な動きとなっていると述べた。』

『こうした海外の金融経済情勢を踏まえて、わが国の経済情勢に関する議論が行われた。委員は、わが国の景気は、緩やかに回復しつつあるものの、海外経済の減速や、為替円高による企業マインド面への影響等を背景に、改善の動きが弱まっているとの認識で一致した。』

『こうした見通しについて、多くの委員は、7 月の中間評価で示した見通しと比較すると、成長率は下振れて推移する可能性が高いとの評価を示した。』

『以上の経済・物価情勢を巡る議論を踏まえ、委員は、物価安定のもとでの持続的成長経路に復する時期は、従来の想定に比べて後ずれする可能性が強まっているとの認識で一致した。』

『わが国の金融環境について、委員は、緩和方向の動きが続いているとの認識を共有した。』


とまあそんな感じの景気判断が続くのですが、その次の『W.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』ではのっけからいきなりこうなるのよ。

『以上のような経済・物価情勢に関する検討結果を踏まえ、委員は、金融緩和を一段と強力に推進する必要があるとの判断で一致した。』

・・・・・何でそうなるの????という話が完全スルーでありまして、この先は「では更に強力な緩和をするにはどうしたらよいか」の話になる所がチャーミングっつーか何つーかでありまして、この間の論理の飛躍を埋める話が何で無いのよというところでありまする。


いやまあさっき引用した経済情勢の検討部分なのですが、リスク要因の所では下振れリスクの話をしていましてですね、

『リスク要因について、委員は、米欧経済のバランスシート調整の帰趨や不安定な金融市場動向など、先進国経済には下振れリスクが大きいという認識で一致した。また、多くの委員は、為替円高について、輸出や企業収益などを通じた経路に加え、企業や家計のマインド面に与える影響を通じても、経済の下押し圧力として作用する可能性があると指摘した。そのうえで、多くの委員は、米国を中心とする海外経済の不確実性の高まりや、為替円高による企業マインド面への影響などを背景に、経済の下振れリスクには、なお注意が必要であるという認識で一致した。』

為替円高というのが連呼されておりますが、まあ要するに下振れリスク=為替円高という事であって、それに対応する包括緩和でございますよとはさすがに露骨には言わないのですけれども、この辺りの文言を見ておりますと、よーするに包括緩和は主に為替の円高に対応した政策ですよというのが本音に近いんでしょうね、という風に読むのが自然なような気が致します。

となりますと、米国のQE2による金利低下効果不発によって米国金利上昇→ドル安進行のストップというので日銀ウハウハという展開になっているのでGCが上昇してもキニシナイと言う事でございますかねえとか嫌味の一つも申し上げたくなるのですが、財政マネタイズ相場になると金利上昇でのドル高と話が別になってくるのでまたオモローな展開があるのかもですな。


ただまあ政策効果および目的に関してですけどね・・・・・

『委員は、オーバーナイト金利の低下余地がなくなっているもとで、金融緩和を強化するためには、追加的な緩和余地がまだ残っている新たな領域に金融政策の対象を拡張するとともに、幅広く政策措置を実施することが適当であるとの意見で一致した。そのうえで、多くの委員は、新たな領域として、長めの市場金利の低下や各種リスク・プレミアムの縮小を促していくことが適当であるとの認識を述べた。』

長めの市場金利はその後上昇しましたが何か??

『何人かの委員は、日本銀行がリスク・プレミアムに働きかけることで、生産性向上や競争力強化につながるような経済全体のリスクテイク活動を後押しし、金融緩和の効果を一段と高めることが期待されるとの見方を示した。一人の委員は、リスクフリー金利の部分とリスク・プレミアム部分の双方に働きかけることで、借り手の資金調達コストを全体として引き下げるとともに、資金のアベイラビリティを高める効果も期待されると述べた。具体的な措置として、委員からは、金利誘導目標の変更、時間軸の明確化、多様な金融資産の買入れなどが挙げられた。』

まあここはよいとして。

『一人の委員は、政策対応を検討するにあたっては、政策思想や目的に一貫性を持たせつつ、幅広い政策の動員を図ることや、政策に拡張可能性を持たせることなどを念頭に置いておくことが適当であると述べた。』

結果としては何か政策思想の中に市場機能論的な変なものが入って一貫性が持たれていないから(2年くらいまでを含む)ターム物金利の上昇に繋がったんとちゃいますかという気がするのは気のせいですかそうですか(−−)。

ということで、包括緩和実施の金融政策決定会合の割には何か妙に政策決定判断の部分でのブラックボックス振りが気になる議事要旨だったんですよね。まあつまりこの辺りに話の飛躍があるということはきっと皆さんもあたくしも会議やる時にあるアレなのでは無いかと存じます次第です(^^)。

#なお、アレとは何かがピンと来ない人はサラリーマン属性の高い人に聞けば判るかと(^^)

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2010/11/16

○日銀からペーパーが2本

・短観の統計のクセについて

http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/data/rev10j20.pdf
短観の読み方 −主要項目の特徴とクセ−

中々面白かったでございます。各数値の傾向、特に「出てくる足元や先行きの判断DIがどのような引っ張られ方をするのか、その特徴はどの辺りにあるのか」というのはオモシロスなのですが、これある意味ノウハウの世界でもありますので、こういうのをタダで絶賛大公開(しかもあたくしのような無学な者でもわかるように)して頂くと言うのはアリガタヤであると同時にエコノミスト涙目という気もせんでもないですな(^^)。

ということで中身の紹介しないのは時間のせいでもあるのですが(笑)、まあ実際に読む方がオモロイと思いますのでという意味でもございますのでよろしゅうに。


・社債市場の発展がどうしたこうしたというペーパー

http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/data/rev10j19.pdf
わが国における社債市場の活性化に向けて

この前日証協でやっていた(というか今でもやってる)日証協の「社債市場の活性化に関する懇談会」の報告レビューみたいな話で、日証協の出した報告の方は何となく読んでネタにするのを忘れたけど、こっちの方がコンパクトなので読むのが楽だったりします。

ただまあこの話ってつつくと色々と難しい話になると思うのです。つまりですな、『2.社債市場の現状』って所の最後にしらっとこんな話があるのですが・・・・(機種依存文字は原文ママで勘弁)

『@ 企業の資金需要が弱い中で、銀行間の貸出競争は厳しい状況にある。このため、銀行は、企業との中長期的な取引関係や他の取引を含む総合採算を勘案しながら、貸出条件を決定しており、企業の信用リスクに見合った貸出金利を設定できていない可能性がある。

A 社債の投資家は、開示情報のみを基に投資を行う一方、銀行は、企業の担保や資金繰り等の状況を含む詳細な情報を基に貸出を行っている。このため、銀行はリスクをきめ細かく評価し、貸出金利を低く設定している可能性がある。

B 企業が経営困難に陥った場合に銀行がどのような対応を取るのか、不確実性があるため、社債の投資家が要求するリスク・プレミアムが高くなっている可能性がある。

銀行等が貸出の際に適切なリスク・プレミアムを織り込んだ貸出金利を設定することは、効率的な資源配分の観点から、わが国の金融システムにとって重要な課題である。他方で、社債市場においても、@発行の機動性向上、A投資家保護の強化、B流通市場の拡大などを図るための方策が必要との指摘もある。』

ってこんな話をしらっとしているのですが、「じゃあ適切なリスク・プレミアムとやらを織り込んだら中小零細企業の債務負担はどうなるのでしょうか」とか「現状の開示やら企業会計やらをどういう風にする積りなんですか」とか「流通市場の拡大とか言いますけれども投資家の方での規制(開示義務含め)はどうする積りなんでしょうか」というような話をしだすとエライコッチャになる問題であって、何と申しますか外山局長のTIBOR発言みたいな地雷臭がプンプンする話ではございますわなあと思うわけよ。

どの位の地雷かと言うのを実証したければ、とりあえず亀井の静香ちゃんの所に言って「銀行等が貸出の際に適切なリスク・プレミアムを織り込んだ貸出金利を設定することは、効率的な資源配分の観点から、わが国の金融システムにとって重要な課題である」って演説して味噌♪

#また最後が悪態になってしまったorz

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2010/11/09

○展望レポートから少々

基本的見解のところからちょっとだけですけれども。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/tenbo/gor1010b.pdf

・構成が変わって最初にこんなのが入ったインプリケーションは

『見通しを示すに先立ち、若干の留意点を述べる。第1に、日本経済の見通しは、経済・金融のグローバル化を反映して、海外経済や国際金融資本市場の動向に相当程度左右される。第2に、景気・物価見通しと金融政策の関係を評価する上では、金融環境の評価が鍵を握る。このため、本展望レポートでは、海外経済の見通しや国際金融資本市場の動向を最初にやや詳しく記述し、その後、わが国の金融環境の評価をまとめて記述することとした。』

この前もちょっと書きましたが、単に担当が変わると書きっぷりが変わるという話で済むものなのか、それともヘッジクローズというか何かの確認あるいは強調の為に書いたのかというのが微妙に良く判らん所でございます。ということでこの「1.はじめに」というのが入った点についての政策インプリケーションはワカランチ会長なのですけれども、まあそういう点にちょっと何でじゃろって思いますので一応書いてみました。


・先行き見通しが強い気がするんですけれども

海外経済に関してですが。

『先行きの海外経済は、当面、減速していくものの、回復基調そのものは途切れず、2011 年以降は、新興国・資源国経済の高成長が続く中で、成長率が再び高まっていく姿が想定される。世界経済全体の成長率は、2010 年に続き、2011 年、2012 年も、高い成長率を記録した金融危機前の10 年間の平均を上回って推移する見込みである。』

何か強いですなあと思うのですが、この部分に脚注があるのがチャーミング。

『因みに、IMFが10 月に発表した世界経済の成長見通しをみると、2010 年は、大幅な経済の落ち込みからの回復局面となった年前半の高い伸びが寄与するかたちで、4.8%と高い成長率となり、2011 年、2012 年の成長率は、それぞれ4.2%、4.5%となっている。なお、金融危機前の10 年間(1998〜2007 年)の平均の成長率は、4.0%となっている。』

都合の良いときだけIMFの話を引っ張ってくるというのはまあ世の中良くある事でございます罠(^^)。

『米国経済については、新興国・資源国向けを中心に輸出が増加を続けるほか、緩和的な金融環境が維持されるもとで、個人消費や設備投資が緩やかな回復を続けるため、2011 年以降、成長率は再び高まってくると見込まれる。ただし、そのペースは、バランスシート調整の影響が続く中、過去の景気回復局面に比べて緩やかなものに止まると考えられる。』

結局新興国経済次第という事ですが、今回の展望レポートでお茶目なのは、この海外経済の先行き見通しの地域別見通しに関して最初に新興国・資源国経済の話が出てくる事でして、いつものパターンだと海外経済に関する話をするときは米国、欧州と来てから新興国・資源国という話になっておった訳ですが(前回もそうですな)今回は明るい話が先に来るという辺りがまあお気持ちが出ているという所なのでしょうか、よー知らんが(^^)。


・波及メカニズムキタコレ

今回の経済見通しのメインシナリオを読んでいてキタコレというのはこの辺りでございましょうかね「4.わが国の経済・物価の中心的な見通し」のところから。

『2011 年度入り後は、円高の影響は残るものの、海外経済の成長率が再び高まることなどから、輸出が増加を続けるほか、企業収益が改善していくもとで、設備や雇用の過剰感も徐々に解消していくため、わが国経済は緩やかな回復経路に再び復していくと考えられる。』

とまあここまでは良いとして。

『2012 年度は、新興国・資源国を中心に海外経済が高めの成長を続けるもとで、輸出・生産から所得・支出への波及メカニズムが強まり、潜在成長率を上回る成長が続くと考えられる。』

どう見ても前向きの循環メカニズムです本当にありがとうございました。

いやまあ4月の展望レポートでも2011年度になると前向きの循環メカニズムが働いてくるのではないですかねえという説明があるにはあるのですけれども。

『新興国・資源国の力強い成長を背景に輸出は増加を続けるほか、企業収益の回復に伴い設備投資も持ち直す可能性が高い。また、企業活動が活発化するにつれて、雇用・所得環境の改善も次第に明確化していくため、個人消費や住宅投資の伸び率は高まっていくと考えられる。これらを踏まえると、2010 年度のわが国の成長率は、潜在成長率を上回る水準となると見込まれ、2011 年度には更に高まる見通しである。』(4月の展望レポートより)

ということで、まあこの時も前向きの循環メカニズムっぽい話をしているので、そーゆー意味では特にサプライズではないっちゃあサプライズではないのですけれども、今回は前向きの循環メカニズム的なのを思いっきり前面に出して来たのがほほーという感じです。そんなに自信があるのか、単に景気付けなのか、それとも上向きの願望なのかは存じませんけれども、妙に強いなあという印象を与える部分でございました。


・新興国については景気拡大継続への自信度が上昇しているような気がする

上振れ、下振れ要因に関する話ですが、新興国の部分は先行きの拡大継続見通しへの自信度が上昇しているように見えます。

『第2に、新興国・資源国経済の動向である。これらの国の経済は、一時的に幾分減速しつつも、内需を中心に高めの成長を維持する公算が高い。こうした中、先進国における大規模な金融緩和の継続と、その長期化予想は、新興国・資源国経済に対する資本流入を加速する可能性がある。その結果、これらの国の景気が一段と強まれば、輸出の増加を通じて、わが国経済が上振れる可能性がある。』

同じ部分を前回の展望レポートと比較する。

『第1に、新興国・資源国経済の動向である。新興国・資源国では、自律的な成長力の強さに加え、これまでの拡張的なマクロ経済政策の効果などから、内需を中心に力強い成長が続いている。また、国際金融資本市場の改善や先進国における大規模な金融緩和の継続は、これらの国に対する資本流入を促し、この面からも実体経済を後押ししているとみられる。これら新興国・資源国の成長を背景に、国際商品市況も上昇基調にある。こうした新興国・資源国経済が想定以上に強まった場合、輸出の増加を通じて、わが国経済は上振れることになる。』(4月の展望レポートより)

ということで、新興国に関しては「足元幾分減速しているけれども、逆に過熱の懸念も下がっていますよね」という感じになっているように見えます。上振れの部分が「上振れることになる」→「上振れる可能性がある」とトーンを下げているのですな。

『一方、これらの国における経済・金融活動に行き過ぎが生じれば、景気の過熱や、その後の急激な巻き戻しにより、資源価格や資産価格、および実体経済面での大幅な変動が発生するリスクもある。』

ここの部分の前回はこうです。

『ただし、これらの国については、今後のマクロ経済政策運営次第では、景気が過熱するリスクも小さくない。この場合、わが国の輸出がさらに上振れる一方、資源価格の上昇に伴う交易条件の悪化が、わが国の国内民間需要に対する下押し要因となる可能性もある。また、新興国や資源国における行き過ぎた経済・金融活動の急激な巻き戻しが発生する場合、資産価格の大幅な下落や実体経済面での深い調整が発生するリスクもある。』(4月の展望レポートより)

つーことで、ここの話が前回対比あっさり味になっておりますが、今回は新興国の金融引き締め傾向に関する話をしておりまして。

『こうした中、多くの新興国・資源国は金融緩和策の修正を進めているが、これは、短期的にはこれらの経済の下振れ要因となるものの、景気拡大の持続性というより長期的な観点からは、わが国を含めた世界経済にとってプラス方向に作用すると考えられる。』

という前向きな話をしておりますが、はてさて実際問題としてどうなるのかっつーのは神の味噌汁という所でございましょう。で、他にも何かネタがあるような気もせんでもないですがまあこんな所で。

でですな、この辺りの「先進国の金融政策が新興国に影響を与えて、それがフィードバックされる」という論点に関しては先日の総裁会見で詳しく話をしていまして、中々こう良い話っぽいのでそのネタも早いうち(たぶん明日)に参ります所存です。

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2010/11/08

お題「金融政策決定会合声明文をば」

何気にネタが積み上がっている上に、まだ読んでおきたいネタもあるという状況ですが、恐らく月後半に向けてネタが切れると思われるのが困りますな。まあネタというのは来るときに一気に来るもんです。

#ということで他にもネタがあるのですが、月曜日なので頭の稼動に時間が掛かるため(日本シリーズのせいではありません、たぶん^^)決定会合声明文からで勘弁。


今回の決定会合はFOMCの結果で為替が円高にならなかったし、株価は上昇したしっつー事で予想通り何もなしという事になりました次第。いつもの日銀の間の悪さが炸裂しないで良かったですね(棒読み)という所でございますが。

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k101105.pdf(今回声明文)
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k101005.pdf(10月5日声明文)

○リスクがしらっとバランスに変わっていますな

いきなりリスク要因の所に入りますが、今日出る予定の総裁会見でも出てくると思うのですけれども、リスクがしらっとバランスに変化しているのがお洒落ですなという所です。10月5日の声明文は通常の声明文とちょっと書きぶりが違っているので単純比較がしにくいのですけれども、ヤケクソ緩和を決定した時の声明文に関してリスク認識に関する部分を引用して比較するとこんな感じです。

『リスク要因をみると、景気については、新興国・資源国の経済の強まりなど上振れ要因がある一方で、米国経済を中心とする不確実性の強い状況が続くもとで、景気の下振れリスクにも注意が必要である。』(今回)

『また、米国経済を中心とする不確実性の強い状況が続くもとで、景気の下振れリスクには、なお注意が必要である。』(10月5日分)

でもって9月の声明文もついでに出してみるとこうなるのだ。
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k100907.pdf(9月7日声明文)

『リスク要因をみると、景気については、新興国・資源国の経済の強まりなど上振れ要因がある。一方で、米国経済を中心とする先行きを巡る不確実性の高まりと、これを背景とした為替相場や株価の不安定な動きが続くもとで、わが国経済の下振れリスクに注意が必要である。』(これは9月7日分)

為替市場や株価に対する言及が今回抜けていますが、10月5日会合の議事要旨(まだネタにしてませんが、汗)では為替円高というのを連発していましたので、まあ円高に関する懸念自体は変わっていないと思われるのですが、今回の声明文では株価だの為替だのという所への言及は声明文ベースでは外れましたなあというのがチャーミング。で、これまた今日出てからですけれども、先ほど申し上げたように総裁会見でも「リスクはバランス」という話になっています。

展望レポートが妙に強めに見えるというのもありましたけれども、今回のヤケクソ緩和に関しては緩和政策の効果によって下振れリスクが減りましてめでたくリスクはバランスしますよ(キリッ)という話になっているようでござんして、そらまあそれでも良いのですけれども自画自賛の香りもするところではございますな。

でね、まあ自画自賛の方は兎も角として、このスキームの落とし穴とあたくしが思う点は、逆に「リスク認識が高まった場合にはまたまた追加緩和しないといけませんなあ」というのがある訳でして、つまりは今般のヤケクソ緩和が効くのに時間が掛かったり、あるいは効きが悪かったりという風になった場合に、どこまで「リスクはバランス」「緩和政策の効果がこれから出るから大丈夫」という話を押し通せるのかというのが気になる所ではありまする。前回のヤケクソ緩和がリスク意識の下方シフトと改善見通しにおける必要な時間の長期化によるものだったので、時間の経過と共に(まあ無事に回復すれば無問題ですが)徐々にロジックが苦しくなる悪寒も。


○景気の現状認識は下げてますな

ということで順番を元に戻して景気認識に関する部分。

『わが国の景気は、緩やかに回復しつつあるものの、改善の動きに一服感がみられる。』(今回)

『わが国の景気は、緩やかに回復しつつあるものの、海外経済の減速や為替円高による企業マインド面への影響などを背景に、改善の動きが弱まっている。』(10月5日分)

えーっと、一服感なのでこれは下がったという所ですな。

『すなわち、輸出や生産は、このところ横ばい圏内の動きとなっている。設備投資は持ち直しに転じつつある。雇用・所得環境は引き続き厳しい状況にあるものの、その程度は幾分和らいでいる。個人消費は、耐久消費財に駆け込み需要の反動がみられる。』(今回)

『輸出や生産は、このところ増加ペースが鈍化している。企業収益や企業の業況感は引き続き改善しており、設備投資は持ち直しに転じつつある。雇用・所得環境は引き続き厳しい状況にあるものの、その程度は幾分和らいでいる。そうしたもとで、個人消費は持ち直し基調を続けている。住宅投資は下げ止まっている。この間、公共投資は減少している。』(10月5日の金融経済月報から)

10月5日会合では個別項目に関する部分は声明文に盛り込まれなかったので、金融経済月報(http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp1010.pdf)の概要部分から切り取って参りました。

輸出と生産に関しての判断が下げ(横ばいに低下)設備投資と雇用・所得は変化なく、個人消費に関しては駆け込み需要の反動に関してという話でこれまた下げ。

○金融環境と物価環境に関しては変化なし

『この間、金融環境をみると、緩和方向の動きが続いている。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、マクロ的な需給バランスが緩和状態にあるもとで下落しているが、基調的にみると下落幅は縮小を続けている。』(今回)

『わが国の金融環境は、緩和方向の動きが続いている。』(10月5日の金融経済月報から)
『物価の現状について、国内企業物価の3か月前比をみると、製品需給緩和の影響が続く中、既往の国際商品市況の反落や為替円高の影響などから、弱含みとなっている。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、マクロ的な需給バランスが緩和状態にあるもとで下落しているが、基調的にみると下落幅は縮小を続けている。』(10月5日の金融経済月報から)

基本的に変化は無さそう。


○先行き見通しにはヘッジクローズが入りましてですな

『先行きの中心的な見通しとしては、わが国経済は、景気改善テンポの鈍化した状況がしばらく続いた後、世界経済の成長率が、新興国・資源国に牽引される形で再び高まっていくと考えられることなどから、緩やかな回復経路に復していくとみられる。』(今回)

『先行きについては、景気は改善の動きが一時的に弱まるものの、その後は、緩やかに回復していくと考えられる。』(10月5日の金融経済月報から)

『先行きの中心的な見通しとしては、わが国経済は、回復傾向を辿るとみられる。』(9月7日声明文から)

ということで、3発比較してみるとまあ判り易そうな感じですが、景気の回復への流れが10月、11月となるにつれ足元での足踏み傾向という認識が更に強くなって来ましたですねというのがございますし、今回の部分を9月7日と比較すると更に判り易いのは「世界経済の成長率が、新興国・資源国に牽引される形で再び高まっていくと考えられることなどから」というヘッジクローズがきっちり入っている所がまあ下げという感じではございます。


○先行きの物価見通しに関する部分でのリスク認識があっさり味に

『物価面では、引き続き、消費者物価の前年比下落幅は縮小していくと考えられる。』(今回)

『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比の下落幅は縮小傾向を維持しているものの、今後、景気の下振れなど実体経済活動の動きが物価面に影響を与える可能性には、注意が必要である。』(10月5日の声明文から)

『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、既往の為替円高の影響が残ることから、当面、弱含みで推移するとみられる。消費者物価の前年比は、マクロ的な需給バランスが徐々に改善することなどから、基調的にみれば下落幅が縮小していくと予想される。』(10月5日の金融経済月報から)

『物価面では、中長期的な予想物価上昇率が安定的に推移するとの想定のもと、マクロ的な需給バランスが徐々に改善することなどから、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、下落幅が縮小していくと考えられる。』(9月7日声明文から)

ということで、これまた4つもまとめて比較するのですけれども(汗)、今回は物価に関する先行き見通しがしらっとあっさり味になっているのが少々気になる所でございまする。金融経済月報では詳しい話をするのかも知れませんので、そこを見て改めて考えてみたいとは思います。足元物価指標の推移がそんなに悪くない(といってもマイナスはマイナスですけれども)のでちょっと見方が改善しているのではないかという気が致しますです。となると中長期的な物価安定の理解に鑑みてどうしたこうしたとゆー話にも微妙な影響が出てくる話なので、これはまあ今日出る月報を再確認という所ですわな。

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2010/11/02

○展望レポートは構成が微妙に変わっておりまして・・・(まあ雑考だ)

めんどいので基本的見解だけですけれども。

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/tenbo/gor1010a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/tenbo/gor1004a.pdf(前回=4月)

いきなり冒頭部分から書き方が違うので比較のしようが難しいざます。

『1.はじめに

今回の展望レポート(「経済・物価情勢の展望(2010 年10 月)」)では、2012 年度までの日本経済の見通しを示す。見通しを示すに先立ち、若干の留意点を述べる。』(今回)

ということで、構成がちと違うのであります。前回の冒頭部分はこうです。

『わが国も含めた世界経済は、金融危機に起因する急激な落ち込みから脱出し、昨年後半以降は回復基調を辿っている。もっとも、世界経済は、危機以前の状態に戻る過程にあるわけではない。この間、世界経済の構造に大きな変化が生じていることや、よりバランスの取れた持続的成長に向けて各国が新たな課題に直面していることも、明らかになってきている。』(前回)

で、新興国経済の比重が高まっているだの、先進国での財政サステイナビリティーに関する注目だのという話がさらっと続き、そのあとに(経済情勢の見通し)という項目が入って先行き見通しが出てきます。

ところが今回に関しては、上にありますように「先に留意点」ということで、「日本経済の今後の動向は海外経済に左右される所が大きい」という点を指摘しまして、それから「金融環境の評価が重要」という指摘が来るのよね。

『第1に、日本経済の見通しは、経済・金融のグローバル化を反映して、海外経済や国際金融資本市場の動向に相当程度左右される。第2に、景気・物価見通しと金融政策の関係を評価する上では、金融環境の評価が鍵を握る。このため、本展望レポートでは、海外経済の見通しや国際金融資本市場の動向を最初にやや詳しく記述し、その後、わが国の金融環境の評価をまとめて記述することとした。』(今回分より、先ほど引用した冒頭の続きです)

で、当然ながらこの先に海外経済の見通しなどがああでもないこうでもないと続きまして、ページで言えば本文4ページ目(PDFファイルでも同じ)になってやっと『4.わが国の経済・物価の中心的な見通し』というのになるのでありますな。その一方で前回4月の展望レポートでは、先ほど引用した冒頭部分の直ぐ後、ページでは本文2ページ目に(経済情勢の見通し)というのがあります。

ええまあ展望レポートを書く中のメンバー構成が変わっているからだと言ってしまえばそれまでの話かも知れませんが、こういうどうでも良い所も気になるあたくしと致しましては、見通し(即ちこのレポートの結論)に入る前にああでもないこうでもないという文章が入ってくるというというのは、まあ良くある「困ったときの言い訳先行」みたいなテイストを感じるのでございまして(^^)、よーするに先行き見通しに関する部分にそこまで自信が無いのではございませんでしょうかなどとついつい裏読みをしてしまうのですけれども、性格が悪すぎですかそうですか(大汗)。


ま、それは兎も角として、こちらの基本的見解の部分で『第2に、景気・物価見通しと金融政策の関係を評価する上では、金融環境の評価が鍵を握る。』と振りかぶっているので、では金融環境の評価ってどうよと思ってその部分を読むわけですが。

『わが国の金融環境をみると、緩和方向の動きが続いている。すなわち、短期金融市場では、日本銀行が実質ゼロ金利政策など強力な金融緩和を推進する中、コールレートが極めて低い水準で推移しているほか、ターム物レートが低下し、イールド・カーブは一段とフラット化している。また、CPや中高格付社債の発行金利は低位で安定し、貸出金利も低下傾向が続くなど、企業の資金調達コストは既往最低の水準まで低下してきている。企業からみた金融機関の貸出態度も、改善の動きが続いている。』

『一方、資金需要面をみると、収益の回復に伴いキャッシュフローが増加していることもあって、企業の外部資金に対する需要は引き続き弱い。このため、銀行貸出など、民間部門の資金調達残高は前年比でみて減少を続けている。』

金融経済月報での認識と似たようなもんですな。

『こうした中、企業の資金繰りをみると、大企業と中小・零細企業とでは幾分異なるが、全体としてみると、改善の動きが着実に続いている。先行きについても、わが国金融システムが全体として安定性を維持する中、企業収益の回復に伴い、金融緩和効果は強まる方向にあると考えられる。今後、日本銀行による強力な金融緩和政策の効果が一段と浸透していくにつれて、わが国の金融環境はさらに改善し、それが国内民間需要の自律的回復に向けた動きを後押ししていくものと期待される。』

という話になっているのですが、あたくしが勝手に段落わけした最初の部分にありますように、金融市場ルートの金融環境緩和ってかなーり限界的な所まで来ているように思える次第でありまして、まあだからこそ今回の社債買入(正直言ってこれが一番市場的には効くと思う)にありますように、「2年以内のBBB格社債のスプレッドを気合で詰めたるわコノヤロー」というような市場に手を突っ込んでやるわいな攻撃になるのでしょうし、更には昨日引用した総裁会見にあるように、「TIBOR下げやがれコノヤロー」的な最早金融政策というよりは古き悪しき時代の窓口指導じゃネーノ的な世界になってくるんじゃなかろうかと思う次第。

#と考えますと、金融政策でどうのこうのというよりはプルーデンスとか自己資本規制とかの方向での金融環境改善という話になるのではないかと

でですね、まあそういう状況でありまして、そもそも金融市場ルートでのアプローチでは金融環境は散々緩和状態になっていると思われる中で、緩和効果が一段と強まるためには結局は経済状況の改善が必要であり、その経済状況改善は海外経済次第、ということになりますと、今回の展望レポートで「今回の包括緩和の効果も含めて検討しました」というのってよーするに「海外経済が拡大するという前提をおきますと包括緩和の効果が時間の経過と共に高まるんです(キリッ)」という話で、ベースとして「海外経済の順調な進展」というのがありますなあという事になっちゃいますよねえと思うのです。

いやまあだからどうしたと言われますと困りますが、上記の説明文を見ていますと、「包括緩和の効果」と言っても押し上げ効果に作用するのはあくまでも改善した場合における実質的な緩和効果の強まりというアプローチは変わっていないのですねえというそんだけの話ですが(汗)。

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2010/10/29

何か色々と雑談的なネタの多い決定会合ちゃんでございました事よ。

○次回会合前倒しとかワケワカンネ

まずは声明文。
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k101028.pdf

資産買入の明細に関しての話は後ほどという事で、ワケワカンネというか昨日の後場に10年ゾーンの全力買い(引値を見ると10年がやたら強いのでそうなんでしょ)を誘発したのが決定会合前倒しの話。

『3.次回金融政策決定会合の開催予定日の変更

次回金融政策決定会合の開催予定日については、指数連動型上場投資信託(ETF)および不動産投資信託(J−REIT)の買入れを早期に開始できるよう基本要領の審議・決定等を行うため、11 月15 日および16 日から、11 月4日および5日に変更することとした。』

えーっとですな、つまりFOMCが2、3日の日程で実施されるのでその直後に設定しましたという話ですな。大体からして早期に開始するためにどうのこうのって言ったって、市場に問題が発生していて状況が切迫しているとなら別ですが、特に一刻一秒を争うタイミングでもないので、1週間程度前倒しする意味は無いですわな。

とゆー風に考えますと、普通にこれは「FOMCシフトですね」という発想になり、当然ながら「FOMCでの結果次第で円高が進行したら追加緩和措置を実施します」という思惑を盛り上げてくれと言ってるようなもんでして、別にこんな事しなくたって、必要ならば臨時会合開催して追加緩和すりゃ良いですし、そもそも為替介入の番ジャネーノという所であって、まあわざわざ思惑盛り上げてくださいという動きをするのはワケワカンネ。

まー普通に考えますとヤケクソ気味にやる気を見せるという話ですが、従来そういうことやってなかったのに急にやる所が毎度おなじみの「白川節で白川総裁的な威勢のいい話というか白川総裁的正論をぶちあげておいて、いざ差し込まれると急にポッキリ折れる」という白川日銀クオリティーを髣髴させる訳で、就任早々にイラク戦争で臨時会合を召集するという意味不明な攻撃をかました福井の俊ちゃんの「端から開き直りスキーム」に対して見せ方というか一貫性がねえなあという所ですが、その他に雑感を。

まー何ですな、この前倒しって今申し上げたようにわざわざ「期待を盛り上げて下さい」というような動きなのですけれども、これまた後で申し上げる展望レポートの内容がやたらめったら強気の見通しになっておりまして、期待を盛り上げるのは良いのですけれども、実際問題として来週の会合で追加緩和を実施という話になりますと、前回決めた追加緩和が実際にオペレーションに乗ってくる前に更に追加緩和ということで、じゃあ前回の決定はナンダッタンダという事にもなりますし、その上展望レポートが強い内容なのに更に追加緩和決定となりますと、この展望レポートでの景気見通しを1週間で変更したんですか意味判りませんねえという話になりますわな。

ということで、実はFOMC後に円高進行して、追加緩和の追加緩和をしますよという話になった場合に、どういう屁理屈を繰り出してくるのかが今からワクテカしている(している方もヤケ気味ですがorz)のであります。

あとですな、この「FOMCシフト」というのがあたくし的には実にこう味わいを感じる次第でしてですな、FRBに対する新手の嫌がらせではないかという気もするんですよ。9月の仕返しって奴ですな。まあ与太雑談ですが(^^)。

つまりですな、今回のFOMCシフトによって(1)FOMCによる決定は日銀が追加緩和の可能性を考える程のインパクトのある物なのか!!という思惑を与える事によってFRBに追い込みを掛ける、(2)日銀がわざわざFOMCシフトしないといけない位、FOMCで何をやるのかがまだ全然纏まっていないんですよおおおお、とアピールしてFRBに嫌がらせをする、(3)FOMCで何が決まるのかというような中銀同士の連携が全然出来てなくて、FRBがQE2で暴走気味なんですよお、とアピールする、などというようなFRBへの新手の嫌がらせを実施するという意図も実はあるのではないか等と考えるあたくしの根性及び性格が捻じ曲がっておりますですかそうですか(あほです)。

まあいずれにせよ、わざわざFOMCシフトするとか正直イミワカンネというかワケワカンネという感じでございます。


○資産買入明細に関して少々

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/mok1010f.pdf
「資産買入等の基金運営基本要領」の制定等について

内容がやたらあって(PDFで31ページ)中々めんどいのですが、こういうオペレーションに関しては「神は細部に宿る」じゃないですけれども、細かいオペの実施要綱の細かい部分が非常に重要になったりするので、あまり斜め読みベースでお話をするのは何ですからもっと読んでから書くなら書きますが、とりあえず簡単に。

・ETFとかは良く判らないのでパス

ETFとJ−REITの配分がもうちょっとREITが多いのかと思いましたけれども、まあこれはフィージビリティーの問題とかもあるのでしょうからとりあえずスルー、というかREITに詳しい人教えてジェネラル!


・国債と短国は金利的なインパクトはそんなに大きくないと思いますが

で、国債と短国なんですが・・・・

『7.買入方式

売買利回りの下限(以下「下限利回り」という。)を年0.1%とし、買入対象先が売買利回りとして希望する利回りから下限利回りを差し引いて得た値(以下「売買希望利回較差」という。)を入札に付してコンベンショナル方式により決定し、これにより買入れる方式とする。』(別紙2「資産買入等の基金の運営として行う国債等買入基本要領」)

ということは、輪番オペや短国買入と違いまして、出来上がり0.1%未満の利回りでの買入は行われないというのが第一の特色。それから、今回は「前日の引値対比の利回り較差入札」ではなく「絶対金利水準での入札」となりますので、この場合は当然ながら「対象となる期間のイールドカーブを潰す効果」というのがあるでしょうなあという所です。

ま、2年の金利とか大概に潰れていますけれども、ちょっと足元では若干上昇というのもありましたので、それはまあ普通に潰れるでしょうという所かと存じます。ただまあ・・・

『4.買入残高および貸付残高の上限

(1)買入残高の総額は5兆円程度、貸付残高の総額は30兆円程度を上限とする。
(2)3.(2)に定める買入対象資産ごとの買入残高の上限は以下のとおりとする。
イ、利付国債 1.5兆円程度
ロ、国庫短期証券 2兆円程度』(別紙1「資産買入等の基金運営基本要領」)

とありますので、1年から2年の国債に関しては1.5兆円ですから月割りすると1250億円とかになる訳で、マーケットインパクト的にはそんなにあるのかいな(うっかりすると2年新発国債が第U非価格競争入札で追加発行される方が多い)という所でございますので、そうバンバン潰すという話にもならんでしょ。勿論金利上昇のアンカーにはなるでしょうけれども。

あとですな、短国もかつての量的緩和で30兆円をやるのに他にオペ手段が無くなって短国買入を連発して市場の流通玉が無くなって毎度毎度100円(利回りゼロ)入札になるというようなお洒落な事案がございましたが、今回はそもそも短国の発行量が増えている事もありますし、今回の2兆円というのを全部3か月TBが入ったとして目の子計算をすると、月に6700億円とかになる訳でして、一見多そうですけれども、3か月物だけで週に4.8兆円発行されている短国の発行量から勘案するとまあそんなにインパクト無しという所でしょう。

それから、利付国債の方を「1年以上」としているのは何か微妙。短国の方に1年以内の利付国債を入れても良いと思うのですが、残存で切らないでカテゴリーで切る形にした結果、1年以内のところでは短国は入るけれども利国は入らないという珍妙な市場分断状態になるのですよね。まあそんなに価格形成に影響は無いでしょうが。


・CPと社債は影響ありそうですが

(別紙4)の「資産買入等の基金の運営として行うコマーシャル・ペーパーおよび社債等買入基本要領」から。

『4.買入対象

「資産買入等の基金運営基本要領」3.(2)に定めるCP等または社債等であって以下の要件を満たすもののうち、買入対象とすることが適当でないと認められる特段の事情がないものとする。

イ、「適格担保取扱基本要領」(平成12年10月13日付政委第138号別紙1.)に定める適格担保基準を満たすものであること。ただし、格付および残存期間に関し、(2)ないし(7)に定めのある事項については、当該規定の要件を満たすものであること。

ロ、6.に定める入札を実施する日以前に発行されたものであること。』

2番目の方はまあ「買入オファーにぶつけて発行する」というあからさまプレイを避けるという効果の話なのでまあ良いとして、「適格担保基準を満たすもの」という条件がついているので、適格担保銘柄になっているもので、更に格付け要件があるという話ですな。で、どの辺りが適格担保になっているのかという話とかはよー知らんのでパスしますが、よくよく見ると上の方に『買入対象とすることが適当でないと認められる特段の事情がないもの』というのもありまして、よーするに個別審査するという事なのでしょうか。

まあオペ参加希望者向け説明会が実施されるみたいなので、その辺りで内容は見えて来ると思います。

『(2)コマーシャル・ペーパーおよび短期社債

格付について、次のイ、またはロ、を満たしていること。

イ、適格格付機関からa−2格相当以上の格付を取得していること。ロ、イ、に該当しないコマーシャル・ペーパーまたは短期社債であって、その額面金額または元利金の全額につき連帯保証している企業がある場合には、当該保証企業が、適格格付機関からa−2格相当以上の格付を取得していること。

(6)社債

格付について、次のイ、またはロ、を満たし、かつ、残存期間が1年以上2年以下であること。

イ、適格格付機関からBBB格相当以上の格付を取得していること。ロ、イ、に該当しない社債であって、その額面金額または元利金の全額につき連帯保証している企業がある場合には、当該保証企業もしくは当該保証企業が発行する社債(保証付社債を除く。)が、適格格付機関からBBB格相当以上の格付を取得していること。』

ということで、まあ今回はこの部分はインパクトあるでしょという感じですわな。

『5.買入残高の上限等

(2)一発行体当りの買入残高の上限は、CP等については1,000億円、社債等については1,000億円とする。ただし、CP等、社債等のそれぞれについて、買入れの時点において、買入残高が買入毎に日本銀行が別に定める時点における一発行体の総発行残高の2割5分を超えているものについては、買入対象から除外する。』

発行体の総発行残高の25%まで買うという事ですので、社債の場合は全体の発行額が多い場合には対象年限の銘柄全部買えちゃいますよ位のケースもアリエールなのかなあとちょっと思いました。

『6.買入方式

売買利回りの下限(以下「下限利回り」という。)を年0.1%とし、買入対象先が売買利回りとして希望する利回りから下限利回りを差し引いて得た値(以下「売買希望利回較差」という。)を入札に付してコンベンショナル方式により決定し、これにより買入れる方式とする。』

さっきの国債の時と同じ理屈になりますが、利回り絶対水準入札になりますので、これは該当する期間の社債・CPの銘柄間スプレッドが強力に縮小する要因になると思います。社債の場合1年を切るものは買入しませんので、まあ売るなら残存1年切る前に、ということになりますし、オペのタイミングというのもございますから投資家がオペを意識して外すのでしたら償還1年3ヶ月くらい前に売るのが吉と言う事に成りますかな(^^)。

というような事はとりあえず思いつきました。


○展望レポート一言メモ

いやーん、時間が無いわあああ(寝坊するあたくしが悪いのだが)。

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/tenbo/gor1010a.pdf

時間が無いのでメモだけなのですが・・・・

『▽2010〜2012 年度の政策委員の大勢見通し

消費者物価指数(除く生鮮食品)

2012 年度  +0.2〜+0.8 <+0.6>』

えええええええええ!この数字強すぎじゃないですかああああああ!!

と思って基本的見解を斜め読みしたのですが、やたらめったら見通しが明るくて、米国ってコケるリスクが大きいんじゃなかったでしたっけとか、前向きの循環メカニズムって新しい料理の名前でしたっけとか、突っ込みたくなるのですが時間が無いので割愛。

でですな、「2012年度が+0.6%だから2012年度まで利上げ無い」とか言ってるどこぞのモーサテの説明は素人にも程がある話でありまして、物価安定の理解におけるホライズンは「中長期的な物価見通しとして2%以内のプラスの数値で中心が1%」なのでありまして、例えば来年の今頃になって、2012年度の数字をそのまま引っ張って2013年度が+1.0%とかになったら、普通に「中長期的に+1.0%という水準が展望できますので現在の異例の緩和措置は正常化しましょう」ということが理屈上は可能になりますので、そこの数字だけで時間軸が伸びたという訳ではございま千円。

しかも「大勢見通し」で+0.8%が一番上の数字ですから、上下2名を切った数字のベースで+0.8%ということは+0.8%が2名いますよという話ですが、+0.8%だったらそれこそ思いっきり2013年度が+1.0%超えを展望できるという話でして、そらあーた時間軸全然伸びないじゃないのよというような話にも。

勿論、実際問題としてはこのような数字になる訳無いじゃんという経済見通しのもとで「結局緩和は長期間継続するでしょう」という予想はありでして、まあ昨日見た本職の皆様のレポートはさすがにそういう論理展開になっておりましたと思います(全部見たわけではないけど)が、まあモーサテちゃんで「+0.6%で+1%に満たないから2012年度までの現状の政策確定」みたいな話をしておりましたので念の為申し添えますという所でありますけどね(^^)。

一方で2012年度で0.0%予想をしている人もいまして(全員見通しの方にある)、エライまた今回は分布が広いですなあという感じでありまする。いやまあ先の話だから分布が広いのは良いのですが、中長期的な物価安定の理解の数値からすると微妙なラインにある所なので、ここでの広い分布というのは政策インプリケーションがありまくって何ともという感じです。

しかし何ですな、先ほども申し上げましたが、内容的に結構強めのレポートになっていまして、まあ今回の追加緩和を織り込んでいますからという話だとは思うのですけれども、それにしてもこれだと次回追加緩和する時にどういう屁理屈をこねてくるのかが非常にワケワカランチ会長でございまして、わざわざ自分の手足を縛るというマゾ属性疑惑も起こりそうな白川日銀恐るべしという所でございます。

いやまあ一応物価見通しに関しては「CPI改定の影響はスルーしてます」という逃げがありますし、経済見通しでは米国の景気は基本的に回復という話を大前提として維持していますので、そういう意味では「いやあ米国がこけちゃいましたわあっはっは」という逃げも打てそうなのでそれはそれで逃げ場はあるのですけれども、何もこんな強めのトーンの展望レポート(願望レポート)を出さんでもという感じでございまする。


ということで、色々とインプリケーションがあるのですが、表面的な話で突っ込み不足っぽくて誠に申し訳ないです。

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2010/10/19

で、まずはさくらレポート。
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/chiiki_rep/chiiki1010.htm(概要)
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/chiiki_rep/data/chiiki1010.pdf(本文)

○前回までは上げていましたが今回は下げとな

『T. 地域からみた景気情勢』から。

『最近の景気情勢については、全地域が基調として「緩やかに回復」または「持ち直し」と判断しているが、3地域(関東甲信越、東海、中国)が政策効果の弱まりと海外経済の減速を主因に、このところ回復ないし持ち直しのペースが鈍化していると報告した。この間、先行きの不透明感の強まりに言及する地域もみられた。また、引き続き、多くの地域が水準の厳しさ(北海道、北陸、近畿、四国、九州・沖縄)ないし地域や業種間のばらつきの存在(関東甲信越)に言及している。』

という事ですが、今回表現が弱くなったなあというのは東海地方でして、

『持ち直しを続けてきたが、ここにきて急速に減速しているようにうかがわれる』(今回)
『生産の増勢が一時的に鈍化したが、その後は再び増勢が戻りつつあり、全体として持ち直しを続けている』(前回)

つまり製造業特に自動車関連が減速という事ですね、わかります。

でですね、まあ泣けてくるのは前回のさくらレポートとの比較でありまして。

『今回の地域別総括判断を前回(10年4月時点)と比較すると、8地域(北海道、東北、北陸、関東甲信越、近畿、中国、四国、九州・沖縄)では、改善の動きがよりしっかりしてきたと判断した。また、今回は4地域(関東甲信越、近畿、中国、九州・沖縄)が「緩やかに回復している」と判断した。

項目別にみると、多くの地域が、生産の増加が続く中、設備投資の下げ止まりや持ち直し、雇用・所得環境の厳しさの緩和の動きがみられていると報告した。なお、過半の地域が、個人消費の下げ止まりや持ち直しの動きを報告した。

この間、多くの地域が水準の厳しさ(北海道、北陸、近畿、四国)ないし地域や業種、企業間の格差の存在(関東甲信越、九州・沖縄)に言及している。』(前回)

前回基調判断を「回復」に前進させたんですよね〜♪いやもう泣けてきますが2008年以来の流れを見るとこうなります。

2010年10月:3地域で下方修正
2010年7月:8地域で上方修正
2010年4月:7地域で上方修正
2010年1月:4地域で上方修正
2009年10月:9地域で上方修正
2009年7月:9地域で上方修正
2009年4月:7地域で下方修正
2009年1月:9地域で下方修正
2008年10月:9地域で下方修正
2008年7月:8地域で下方修正
2008年4月:8地域で下方修正
2008年1月:5地域で下方修正

まあ今回金融緩和措置をどどーんと実施しているのにさくらレポートが上方修正っていうのも変な話ですからそらまあ下方修正なのでしょうけれども、7月に満を持して基調判断を「回復」に上げた途端にこの有様という辺りが実に落涙を禁じえないですな。


○しかし良く見ると個別項目がそんなに極端に下がっている訳でもない

個別項目のところなんですけどね。

・設備投資

『設備投資は、6地域(北海道、東海、近畿、中国、四国、九州・沖縄)が「持ち直し」または「持ち直しつつある」、「低水準ながら増加」と判断したほか、他の2地域(北陸、関東甲信越)も「下げ止まっている」と判断した。この間、東北は「減少」と判断した。』

『内訳をみると、製造業では、維持・更新投資や能力増強投資を計画しているほか、新商品・研究開発投資や合理化投資を拡充する動きがみられていると報告された。また、非製造業では、引き続きインフラ関連産業の大型投資がみられるほか、一部の地域が小売業における新規出店の動きを報告した。』

ということで設備投資はそんなに下がっているようでもなく。

・個人消費

『個人消費は、雇用・所得環境の厳しさが緩和しているもとで、6地域(北海道、東北、北陸、関東甲信越、近畿、九州・沖縄)が、「持ち直し」または「下げ止まりつつある」等と判断した。もっとも、ほとんどの地域が、乗用車販売における駆け込み需要の反動を指摘しており、こうした中で、東海は「弱含んでいるとみられる」、中国は「持ち直しの動きに一服感がみられる」、四国は「全体としては弱めの動き」と判断した。』

『品目別の動きをみると、家電販売で猛暑やエコポイント制度の効果がみられているほか、多くの地域が、大型小売店売上高における前年比減少幅の縮小等を報告した。このほか、7地域(北海道、東北、北陸、関東甲信越、東海、四国、九州・沖縄)が、旅行関連需要の増加ないし下げ止まりの動きを報告した。一方、乗用車販売は、エコカー補助終了に伴う駆け込み需要の反動がみられていると報告された。』

ということでこちらは引き続き政策効果に支えられているという話ですか。

・生産

『生産については、引き続き4地域(東北、北陸、四国、九州・沖縄)が、「増加」等の判断を維持しているが、東海は「減少に転じているとみられる」と報告したほか、4地域(北海道、関東甲信越、近畿、中国)が増勢鈍化を報告した。』

『業種別の主な動きをみると、自動車・同部品では、エコカー補助終了や米国向け輸出の減少から、多くの地域が「減少」または「増勢鈍化」と報告した。また、鉄鋼、化学でも「増勢鈍化」の動きが複数の地域から報告された。一方、一般機械などでは、多くの地域が「増加」等と報告した。この間、紙・パルプについては、一部地域で低操業が続いていると報告した。』

まあさっきの消費の所と生産のところが下がっていますから総体としては判断が下がるという事なのですが、まー極端に今回さがっている訳でも無さそうな感じはしますわな。

・雇用、所得

『雇用・所得環境については、引き続き厳しい状況にあるが、全地域が、その厳しさの度合いが緩和していると報告した。雇用情勢については、ほとんどの地域が労働需給の改善傾向を報告した。また、雇用者所得についても、全地域が下げ止まりに向けた動きを報告した。』

ここに関しては「厳しさの度合いが改善」が継続しているのが何気にお洒落。


という感じでして(一部の項目をスルーしました)、需要項目別にいきなり下がったという感じでもなさそうな。


○地域の視点

『U.地域の視点』ですけれども、今回のお題は『最近の雇用・所得動向』となっています。前回のお題が『最近の家計支出の動向と関連企業の対応』でして、若干前向きの話だったのですけれどもさて今回はどうかというのを端折って(全部引用すると長いので)引用。

『各地域の雇用・所得動向は、企業が慎重な雇用・賃金スタンスを崩していないことから厳しい状況が続いているものの、これまでの製造業での輸出・生産の増加などから厳しさが緩和している。』

ということはしかし生産の伸びが鈍化気味という中で先行きどうなんでしょ??

『なお、エコカー補助の終了等に伴う一時的な生産等の弱めの動きが雇用面に及ぼす影響については、企業からは今のところ大きな雇用調整の動きは回避されるとの声が多く聞かれている。』

ほほう。

『企業の雇用・賃金調整の動きは、これまでの製造業での輸出・生産の増加などによる業況回復から全体では落ち着いた状態が続いている。ただし、@直面する需要減や収益低迷を受けて雇用・賃金調整を継続的に実施している先に加えて、A先行きの需要動向次第ではさらなる雇用・賃金調整を示唆する先もみられるなど、今後も雇用・賃金に対する調整圧力が残存するとみられる。』

総体で見たら大きな調整は回避されるけれども、それはあくまでも総体の話で個別では必ずしもそうではありませんと。

『この間、恒常的な人員・人材不足の状態にあり雇用の受け皿として期待されている介護サービスや農漁業関連企業では、介護サービスを中心に雇用者数の増加がみられているものの、求職者のニーズとのミスマッチなどから人材確保が容易でない状況が続いている。』

さよでしょうなあ。

『ただし、ごく一部にはこの機を捉えて人材確保にさらに注力したことや地公体などの就労支援強化の動きもあって、一定の成果を挙げている先もみられている。また、多くの企業が慎重な雇用スタンスを崩していない状況下でも、中小企業の中には、こうした厳しい雇用環境を逆手にとって、「不況の時期こそ優秀な人材を獲得するチャンス」として積極的な採用を行う先や、今後の需要獲得や業容拡大を目的に人材確保を進める先が少なくない。なお、今後の新卒採用スタンスについては、上記のように一部の企業で積極的な動きがみられるが、大方の先では慎重な採用スタンスを続けている。』

ただまあ今の世の中の雰囲気だと先行き不透明なイメージが強くなればなるほど特に若い人たちが大手志向を強めそうですな。で、最後のほうはやはり残念な見通しに。

『先行きの雇用・所得動向は、エコカー補助の終了など政策効果の減衰に伴う生産の弱まりや最近の為替円高などに伴う不透明感の台頭を背景に、「企業は当面、慎重な雇用・賃金スタンスを続けていく」との見方が多い。』

『また、中・長期的な企業の経営戦略が雇用面に与える影響では、@潜在的に需要拡大が見込める海外での生産強化を図り、国内の新規雇用をさらに抑制するとか、A国内需要の減少に伴う国内販売体制の見直しから雇用調整圧力が強まる可能性、B技術革新の流れに乗り遅れた企業での雇用調整、を懸念する声が聞かれている。』

何か結論があまり威勢良くないのですが、前回の「地域の視点」は「家計消費に関して」の話だったんですが、足元は威勢の良い話をしつつも先行きは不透明ですなあという「足元の強さと先行き不透明のセット」だったのですが、今回のこのコーナーはトーンがやはり全体としてはパッとしませんなあという所でしょうか。

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2010/10/06

お題「今回のポイントはパワーアップした時間軸とリスク資産(ETFとREIT)の買入(だと思う)」

2008年12月の決定会合を思い出す展開でしたな♪♪昨日のタイミングで介入すれば完璧だったのに・・・・

#しかし「更にやれ」と言う話が今朝のモーサテで出るとは幾らなんでもお調子者にも程がある。煽り報道の意味が判っているのならモーサテのアホキャスターは肥溜めに頭から飛び込んでそのままの姿勢でまる1日は謹慎すべきであると思いますがねえ。一応仲間内で「次に日経あたりがクレクレ言い出すのいつか」の予想合戦をしたのだが、一番早いのでも来週月曜だったぞ

#雨公やら為替方面の解説の説明が聞いてて不愉快になってきた(佐々木融さんのは別)ので途中でモーサテ見るの止めたからどういう話をしているのか良く判らんですがピンボケの感じがすげーするです

ということであたくしなりにああでもないこうでもないと今回の決定について考えたり人とお話をしたのですが、これは読めば読むほど色々な味わいがありまして、まあその辺を何となく書いてみる。


○マクラ:前場の世間話

昨日の決定会合中の前場は当然ながら結果待ちでダラダラとしていたのでありますが、その間にお友達と話をしていたらこんな感じの会話を何人かとおなじよーにしていたりしてましてね。

ドラめもんの中の人「いやあ会合待ちですなあ」
お友達「何が出るんだかねえ」
ド「そういや○○レポート(海外レポートで日本の金融政策の飛ばしネタを書くので有名な割高レポート)では資金供給50兆円とか言ってるらしいね、人から聞いただけなんど」
友「何かさ、事前の話とかで煽られたけど、新型オペ拡大とか何かそんな事をするならやらない方が良いわな」
ド「そだね、何かアホラシカですぅ」

・・・・てな話をしていたら中々の結果が出たのでありました。いやあまさか「市場の予想以上の本格的な緩和」の方が出るとは思いませんでございました。素直に降参。


http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k101005.pdf
「包括的な金融緩和政策」の実施について


○金利引下げは資産買入によるリザーブ拡大のおまけのようなもんです

最初のヘッドラインは当然ながら「別紙1」の

『当面の金融政策運営について

日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を以下のとおりとし、公表後直ちに実施することを決定した(全員一致(注))。

無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0〜0.1%程度で推移するよう促す』

でありますので、「えー利下げなのかよ〜」と思いつつ「固定金利オペどうすんだバンドにすると」と???感を持った訳ですが、良く良く見たら公表分の脚注にこのような記載が。

『補完当座預金制度の適用利率、固定金利方式・共通担保資金供給オペレーションの貸付利率および成長基盤強化を支援するための資金供給の貸付利率は、引き続き、0.1%である。』

預金ファシリティの0.1%金利が残ると言う事ですので、FED方式のバンド制という形になります。この場合はコール金利は低下(現状でも加重平均金利は0.09%近辺で推移していますが)するのですが、まあ第一勘でコールレートの加重平均が0.06%〜0.07%辺りになるという感じだと思います(将来的に超過準備が大きくなっていけば更に低下するかもです)けれども、取引自体が限界的な部分でして、短期国債のレートやらGCレートがどうなるのという話が問題かと。

で、まあ普通に考えますと、預金ファシリティ以下の金利で資金運用をしないといけない人と言うのは、よーするに預金ファシリティの恩恵を受けない人たちということになりますので、主なところとしては投資信託と生保と海外中銀などの海外勢という事になろうかと思います。で、米国の場合は短期市場におけるGSEといわれる人たちのシェアが大きいのでFFレート(やらT−Billの金利やら)がダダ下がりして制御不能になった結果として、FFの誘導目標のレンジというのが設定された訳ですが、日本の場合は短期金融市場における預金ファシリティの外側にいる人たちのシェアがそんなに大きくなく、TBの発行額はこの人たちの需要だけでは埋まらないので、結論としては「預金ファシリティレートより下の金利でも短国を買う人の需要」<「短国の発行額」という事になると思われますので、とりあえず短国のレートは最終的には0.10%に貼りつくという事になるんでしょう。

で、後で紹介するパワーアップした時間軸が入りますので、まあ常識的に考えて2年位のJGBの金利まで0.10%に貼りつくという形になって、それが後はどの年限まで効いて来るかという話になるかと思いますがその辺は後で。


とは言いましても、まあ日銀が公的にコミットしているのは無担保コール翌日物加重平均金利でして、その誘導目標を下げるのだから利下げは利下げ。実際問題としてはこの先に出てくる各種資産買入によって超過準備額が増えてしまうので、コール金利が低下するのは必至という状態になりますので、金融調節が苦しくならないようにコール金利の低下を容認するというFED方式と同じなのですけれども、当然ながら世の中的に「金利下げ」というのが見せ方として判り易いというのもありますので、公表文書ではこうなっていますわな。

『第1に、実質ゼロ金利政策を採用していることを明確化することとした。』

「明確化することとした」というように、実際は従来の金利も「実質ゼロ金利」と言っていましたので、そーゆー意味では今回は「利下げ」はどちらかと言うと以下に出てくる「資産買入拡大による日銀のバランスシート拡大」に付随して出てくるある意味おまけみたいなもんなのですが、そらまあレートカットの方が判り易いのでこういう書き方になりますわなという事です。良く工夫されていますなあと感心することしきり。

#ですので、朝のニュースで言えば「日銀、ゼロ金利政策復活」という見出しにしているモーサテと、「日銀、基金による資金供給急ぐ」という見出しにしている公共放送ではどちらのほうが政策を理解しているのかは明確という事になるのでありまして、経済専門番組が聞いて呆れるというものであります、余談ですが

ちなみに、「景気の減速場面で日銀はリザーブ拡大を行うからその時に誘導目標を0-0.1%という形にする」とだいぶ前から解説していたのはモルスタの佐藤健裕さんでした。さすがです♪



○パワーアップした時間軸はインフレターゲットにほんのちょっとだけ近づく(のかな?)

『(2)「中長期的な物価安定の理解」に基づく時間軸の明確化』

『日本銀行は、「中長期的な物価安定の理解」(注3)に基づき、物価の安定が展望できる情勢になったと判断するまで、実質ゼロ金利政策を継続していく。ただし、金融面での不均衡の蓄積を含めたリスク要因を点検し、問題が生じていないことを条件とする。』

で、その説明部分ですけれども。

『第2に、物価の安定が展望できる情勢になったと判断するまで、実質ゼロ金利政策を継続するとともに、その際の判断基準が「中長期的な物価安定の理解」であることを確認した。』

とございます。つまりですな、常識的に考えますと、「中長期的な物価安定の理解」というのが・・・

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/un0912c.pdf(昨年12月の「明確化」)

にありますように、

『ゼロ%以下のマイナスの値は許容していない』
『中心は1%程度』

となりますので、何ぼなんでも+0.1%だの+0.2%だのというような数字が数か月続いた程度でいきなり金利正常化とか言い出すことはなかろう、てえ理解になりますわな。ただまあ物価安定の理解に関しては「中長期的な」というマクラがついておりまして、足元で物価上昇傾向が顕著になり、例えば翌年の予想物価上昇率が2%を超えそうというような状態になれば足元の物価上昇率が+1.0%を切っていても金融正常化から利上げという話になってもおかしくは無いのですが、まあそういう時にはさすがに誰も文句言わないでしょと思います。

前回の量的緩和時の途中で明確化された量的緩和政策の解除条件を比較すると、今回の方が解除条件がより景気フレンドリーになっているというのが判ろうかと思いますので念の為URLを乗せておきまする。

http://www.boj.or.jp/type/release/zuiji/kako03/k031010b.htm(量的緩和時の解除条件)

そこの『2.量的緩和政策継続のコミットメントの明確化』をご参考に。

まあこれでちったあ(ベースの「中心1%」という数字が低いんじゃねえのという話はまあございますけれどもそれはさておきまして)インフレターゲットがどうのこうのという話にも0.5歩位かもしれませんが、歩み寄って来たとも言えそうだと思いますので、そーゆー意味ではインフレ目標導入どうのこうのという話にも答えた部分だと思いますけどどうでしょ。

しかも、声明文の中における今回の措置導入の背景説明部分にこのような話がありまして。

『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比の下落幅は縮小傾向を維持しているものの、今後、景気の下振れなど実体経済活動の動きが物価面に影響を与える可能性には、注意が必要である。以上を踏まえると、わが国経済が物価安定のもとでの持続的成長経路に復する時期は、後ずれする可能性が強まっている。』

展望レポートでの先行き見通しは月末に出てきますので、その時点でリバイスされますけれども、ここにあります文章をそのまま素直に読みますと、展望レポートでの先行き物価見通しは当面「中長期的な物価安定の理解」を下回るもしくはほぼ下限の水準になるでしょうから、その点を勘案すると時間軸は相当先に伸びるという風に理解するのが妥当という所でしょう。

で、市場インプリケーションとしては、先ほど申し上げたようにこの時間軸でどの年限まで0.1%の金利が波及するのかという話になろうかと思います。まあ普通に考えて中期ゾーンといわれる5年とかまでは金利が低位安定するでしょうなあという事になる訳ですが、そんな事を言う前に既に昨日の引けの時点で5年カレントは0.22%だったりしますけど(^^)。



○資産買入のキモはETFとREITの買入でしょ

『(3)資産買入等の基金の創設』

『国債、CP、社債、指数連動型上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(J−REIT)など多様な金融資産の買入れと固定金利方式・共通担保資金供給オペレーションを行うため、臨時の措置として、バランスシート上に基金を創設することを検討する(注4)(別添2)。このため、議長は、執行部に対し、資産買入等の基金の創設について具体的な検討を行い、改めて金融政策決定会合に報告するよう指示した。』

バランスシート上に基金を創設ってナンジャソリャという感じですが、要するに特に変なSPCとかは作らないで日銀のバランス上でやるけれども、特別勘定というか別勘定というかで実施しますよってえ事ですな。で、その額ですが。

『2. 基金の規模

@ 基金の規模は、買入資産(5兆円程度)と、固定金利方式・共通担保資金供給オペレーション(30兆円程度)を合わせ、35兆円程度とすることを軸に検討する。

A 買入資産については、買入れの開始から1年後を目途に、長期国債および国庫短期証券は合計3.5兆円程度、CP、ABCPおよび社債は合計1兆円程度、総計の残高が5兆円程度となるよう買入れを進めることを軸に検討する。』

で、ここで引き算をしてみないと判らないのがETFとREITの額ですが、普通に引き算をすると「ETFとREITで5000億円」って話ですからこれは結構大きな額だと思うのですけどどうなんでしょ。上場REITって全部で3兆円とかの世界で、仮にREITを5000億のうち1000億買っただけでも時価総額の3%を吸い上げるという話ですから結構なインパクトあるんじゃないですかねえと思うのですが(REITは爆騰したんでしょ)、そっちをスルーしているレポートが多いのは何だかなあと思う次第で、そ〜ゆ〜意味ではこのリスク資産買入に関する部分の言及に力が入っていないレポートを書く奴はモグリと思われます(次に書くけど市場の反応のインプリケーション考えたら当然ここがポイントと気がつくでしょ)ので、この発表を見て「国債の3.5兆円は少ない」とか力込めて言ってる人はちょっとねえという所ですな(どこの誰とは言わないけれども)。

でですね、国債の買入の方もさることながら、こっちの方がどの位株価に効果が出てくるかと言う風に気にするのが普通の反応じゃないのかなあと思ったら、昨日は超長期がこの決定を受けて売られて中短期やら10年などの金利が低下する一方で15年超の金利が上昇したのを見て「うんうん普通の反応普通の反応」と思うのでありました。


会見でも(詳しくは今日出ます)「日銀に損失が出る場合も」とか「必要があれば拡大も」というようなヘッドラインが出てましたように、まあこの箱自体は増える可能性もある話ですし、それに伴いETFとかの買いが増えますよという話になったらそれはそれで中々の話だと思いますよこれ。

従いまして、(途中でトサカに来たのでチャンネル変えちゃったから良く判らないけれども)「FEDの買入額に比べて少ない」とか言っているモーサテあたりに出てきている為替市場の専門家とやらの人間は「買入資産の質を見ろ」という突っ込みを受けるべきでありますな。即ち、FEDは方向として「バランスシート内容の正常化」という事でMBSをトレジャリーに置き換えましょうみたいな話をしている中で、日銀は堂々のリスク資産「買入」でありまして、そのリスク資産の質がうんこであればあるほどヘリコプターマネーに近くなる訳でありまして、あっという間にトレジャリーへの正常化へと走っておられるケチャップ逆さ絵オヤジに比べて日銀のほうがよっぽど踏み込んでいる、という点に関して無頓着というのは如何なものかと存じます。



○信用緩和と量的緩和のセットという話ですが・・・・・

今回は「包括緩和」とか言うらしいのですが、まあその名前はどうでも良いのですが、今回の「信用緩和」は市場環境から勘案すると本当は「信用緩和」じゃなくて「資産市場への露骨な介入的な性格を有するもの」になるかと思います。

つまりですな、信用緩和というのは実際には「市場機能がぶっ壊れて市場の価格発見機能やら市場仲介機能が喪失しちゃったから中央銀行がカウンターパーティーリスクの受け手となって市場機能の復活を図る」というのがキモだった訳で、だからこそ各種資産買入プログラムに関してはFEDも市場正常化と共に撤退した訳ですよね。

然るに、今回の「信用緩和」ですけれどもCP、社債はもとより、ETF市場だって別に市場機能が喪失している訳ではない(REITは良く判らんけど)ですし、普通に市場として機能している訳なので、従来の文脈での「信用緩和」は不要な状況にある訳ですよね。

そういう中で資産買入を実施するというのは、実際には市場介入以外の何物でもない訳でして、声明文にありますように、

『第3に、短期金利の低下余地が限界的となっている状況を踏まえ、金融緩和を一段と強力に推進するために、長めの市場金利の低下と各種リスク・プレミアムの縮小を促していくこととした。』

ってありますけれども、現状でリスクプレミアムが市場が壊れて異常値を示している訳ではない、という事を勘案するとこれはまあ相当の措置になると思いますし、本来的には通貨減価に繋がる話だと思うのですが、バーナンキ先生の洗脳が良く効いているらしい為替市場の皆様におかれましては、バランスシートの質は見ないで量ばっかり見て反応しているのが残念というか何と言うかな所でございます。


○銀行券ルール逸脱のあたりはまあ微妙ですよね

『このうち、基金による長期国債の買入れは、現行の長期国債買入とは異なる目的のもとで、臨時の措置として行うものである。このため、基金による買入れにより保有する長期国債は、銀行券発行残高を上限に買入れる長期国債と区分のうえ、異なる取り扱いとする。』

『A 買入資産については、買入れの開始から1年後を目途に、長期国債および国庫短期証券は合計3.5兆円程度、CP、ABCPおよび社債は合計1兆円程度、総計の残高が5兆円程度となるよう買入れを進めることを軸に検討する。』

『A 買入れる長期国債、社債は残存期間1〜2年程度を対象とする。』

という事で、まあ(この先増えれば別ですが)この条件だと今回の追加買入分をいわゆる銀行券ルールの範疇に含めたとしても、実は銀行券ルールを逸脱しないんじゃないかなあと目の子の計算では思われますし、仮に超えても残存2年以内なのですから、まあ臨時措置でのマネー拡大という名目を立てているという感じですわな。



○とは言え色々と麿の顔(というと語弊があるが要は従来の日銀の主張ね)も立てている部分もありましてですな

とまあ随分とあちこち踏み込んだ政策決定だったのですが、一応麿の顔を立てている部分もいくつかあるのがチャーミング。上記の銀行券ルールに関する部分もそうですが、他に気がついたのをいくつか。

まず最初にあるのは、時間軸の中にある微妙な但し書き。

『ただし、金融面での不均衡の蓄積を含めたリスク要因を点検し、問題が生じていないことを条件とする』

これは麿の大好きな「マクロプルーデンス」の論点を入れたものでありますが、結局のところ金融の不均衡の蓄積を含めたリスク要因なんぞ崩壊してみないとわからないものでありますので、そう簡単に「これが不均衡の蓄積だから解除します」とは言えんバイとは思うのでありまして、現実的にはまあ悪魔祓いの呪文みたいな効果しかないとは思います(それよりもCPI上昇が現実になるほうが先でしょ)し、その前に米国が金融正常化を行ってくるのが先で、日本が先行して解除とかまーどー見てもないでしょ。


それから、今回「ふーん」と思ったのは固定金利オペを「基金」に入れていること。

『この点を明確にしたうえで、市場金利やリスク・プレミアムに幅広く働きかけるために、バランスシート上に基金を創設し、多様な金融資産の買入れ、およびこれと同じ目的を有する固定金利方式・共通担保資金供給オペレーションを行うことが適当と判断した。』

固定金利オペをどさくさに紛れて「異例措置」である事を明確にするなんて言うところも微妙に麿の顔を立てているなあと思うのでありました(^^)。


○須田さんの反対理由

『(注4) 須田委員は、本文中、資産買入等の基金の創設を検討するに際し、買入対象資産として、国債を検討対象とすることについて、反対した。』

リスク資産の方は反対せずに国債の方を反対するとは妙ですが、どうせ買うなら意味のある買い方をしろという論点なんでしょうか。決定会合議事要旨をマニアとしては楽しみにしたいところです。


○会見ではいつものぶち壊しが無かったのがポジティブサプライズ(^^)

ヘッドラインを見ただけの感想で、会見内容を見てからまた明日続きをしますが、どうも今回に限っては「麿はやりたくなかったが実施したでおじゃる、こんなの効果ないでおじゃる」という総裁の麿節が出なかったようで、大変に結構なお話でございます。

#つーかそれが本来当たり前なのですが

詳しくは明日(^^)。


○しかし今回は短い時間に良くここまで纏めました!!!!

いやあもう企画局恐るべしという所でありまして、一応今日は思いついた点を全部書いたつもり(ですが、ちょっと抜けている部分もありそうです、時間が無いので勘弁)ですけれども、今回の声明文や実施される施策の内容を読めば読むほど非常に良く出来ている内容で、麿の従来の主張も踏まえつつもあちこちで踏み込んだ内容になっておりまして、しかもどう見ても資産市場への直接介入部分まであるというかなりの特攻振りでありまして、この枠組みを作って短い時間でここまでコンセンサス取って、ついでに言えばまあ殆ど情報漏れもしなかったのは素晴らしい頑張りだと素直に敬服する次第です。昨日まで散々悪態ついて(まあ基本的には悪態の方向はメディアと軽薄な市場と一部麿方面でしたけど)どうもすいませんでしたm(__)m

ということで、市場予想が抜けているような気がするが気にしないように(汗)

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2010/10/04

○雑談が長くなりましたが生活意識アンケートから一点だけ

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/ishiki/ishiki1010.pdf

いつもは細々とアンケート結果を引用するのですが、今日は時間と量の関係上引用を割愛して読んだ印象。

えーっとですな、景況感とか物価に関してなんですけれども、これがまた先日の短観と同じような感じでして、足元別に悪化している訳ではない(さすがに短観のように改善と言うほどではないですけれども)のですが、先行きに関しては景況感も物価もちょっと悪化という感じです。

特にまあ先行きの物価に関しては、

Q14. 1年後の「物価」は、現在と比べるとどうなると思いますか。

1 かなり上がる3.3 ( 3.8 )
2 少し上がる39.4 ( 40.4 )
3 ほとんど変わらない43.7 ( 45.1 )
4 少し下がる11.6 ( 9.0 )
5 かなり下がる0.8 ( 0.4 )

Q16. 5年後の「物価」は、現在と比べるとどうなると思いますか。

1 かなり上がる13.1 ( 15.9 )
2 少し上がる53.1 ( 51.9 )
3 ほとんど変わらない20.7 ( 20.5 )
4 少し下がる9.1 ( 8.4 )
5 かなり下がる1.2 ( 1.0 )

ってな感じで、先行き「下がる」が増えてきていますわな。で、この統計常に統計で出てくるCPIよりも高い数字が出てくる(そらまあ生活者意識の中で品質向上修正とか掛けないわな^^)ので上向きなのはどうでも良いのですが、先行きが下がるという点に関しては政策判断的には要注意という話になるのではないでしょうかねえという所です。

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