決定会合議事要旨や金融経済月報などについて(2006年度下期に書いた分)
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2007/03/28「議事要旨から(続き)」
2007/03/27「2月決定会合議事要旨から」
2007/03/22「決定会合は全員一致/国内企業物価先行きをしらっと強めにした月報」
2007/03/13「金融システムレポートを読んでみる」
2007/03/12「レポ指標レートWGについて」
2007/03/06「短期市場フォーラム追記」
2007/03/05「短期市場フォーラム雑感」
2007/03/02「短期市場フォーラムのネタメモ」
2007/02/27「1月議事要旨、利上げの論理と据え置きの論理」
2007/02/22「利上げの公表文は第2の柱?/物価の先行き下方修正の月報」
2007/02/14「これは評価したい取り組みです/企業物価品目項目に歴史あり」
2007/01/24「12月議事要旨に見る路線の分裂」
2007/01/23「短期市場レポート」
2007/01/19「金融経済月報は内容不変/票決が割れました/TBSの報道」
2007/01/15「さくらレポートメモ」
2007/01/12「日銀の生活意識アンケート12月分の結果:マインドやや悪化」
2006/12/25「決定会合議事要旨2本:主に11月会合について」
2006/12/22「小ネタ:政策決定会合の今後の日取り」
2006/12/21「月報全文を読んだら個人消費の先行きも下方修正してました」
2006/12/20「個人消費判断を微妙にトーンダウンした12月金融経済月報」
2006/12/18「日銀短観について」
2006/11/22「10月決定会合議事要旨」
2006/11/17「総裁記者会見と金融経済月報」
2006/11/02「展望レポートを受けた総裁記者会見なのでこちらにも載せておきます」
2006/11/01「展望レポートに関して:これは実質トーンダウンと見ましたが」
2006/10/24「主要銀行貸出動向アンケート調査:何か貸出変調じゃね?」
2006/10/23「景気に対するヘッジクローズが増えてきた9月決定会合議事要旨」
2006/10/20「全国で景気回復/拡大のさくらレポート」
2006/10/19「材料になる筈がない9月議事要旨なのですが相場は動きました」
2006/10/18「日銀の生活意識調査アンケート」
2006/10/16「またまた判断変らない10月金融経済月報」
2006/10/03「日銀短観を楽しく?読みましょう」
2007/03/28
○2月決定会合議事要旨から(昨日の続き)
昨日はCPIの部分に注目してみましたが、もうちょっと景気に関する審議委員の検討内容を見ておくのも吉かと存じますので、『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』(本文4ページ以降、ファイルでは6ページ以降)のあたりから読んでみます。
・米国経済に関して(本文5ページ)
『米国経済について、委員は、住宅市場の調整が続いているものの、この調整が他のセクターに広範な影響を与えるには至っておらず、雇用者所得の増加やガソリン価格の低下などを背景に、足もと、個人消費は堅調であるとの認識で一致した。』
2月21日の時点では左様でございましたが、ご案内の通りで、審査基準がゆるゆるの住宅担保貸付(またの名をサブプライムローン)問題がどうなのよという話が盛り上がっているのが昨今の情勢。ということで、政策委員会で多くの人が懸念していた、
『多くの委員は、住宅市場の調整の帰趨はなおみえていないほか、食料品・エネルギーを除いたコア・インフレ率は引き続き高めであることなどを踏まえると、先行き、上下両サイドのリスクに引き続き注意を払っていく必要があると付け加えた。』
の下サイドのリスクが発生しているような気がしますが、さて・・・
・個人消費に関して(本文6ページ)
『委員は、底堅く推移しており、先行きについても、雇用者所得の緩やかな増加などを背景に、緩やかな増加基調をたどる可能性が高いとの見方を共有した。』
で、以下は個人消費が堅調ですという見方の人たちの意見が並びますが、先行き懸念してる人(=岩田副総裁)の見方はどうなっているかと言いますと、
『一人の委員は、10〜12月のGDP統計の個人消費を前年比でみると雇用者数の伸びに満たず、また、賃金の動きが鈍いといった弱めの動きがあることにも留意する必要があると述べた。』
・雇用・所得に関して(本文7ページ)
『委員は、労働需給を反映する諸指標が引き締まり傾向を続ける中、雇用者所得は緩やかな増加を続けているとの見方を共有した。先行きも、企業の人手不足感が強まる方向にあり、企業収益も高水準を続けるとみられることから、雇用者所得は緩やかな増加を続ける可能性が高いとの見方で一致した。』
ということで、こちらに関してはさすがに「弱めの指標がでてるけど色々と勘案すると堅調です」というトーンの意見が多く、個人消費の部分ほど威勢良く無いのですが、まあこちらに関しても先行き堅調という意見が大勢なのですが、一人の意見はちと弱め。
『一人の委員は、4 月に初任給、パート賃金などが上昇する可能性はあるものの、ここにきて賃金は予想以上に伸び悩んでおり、これが個人消費や物価の下押しに働く可能性には注意を払う必要があると述べた。』
ということで、この辺りを見ておりますと、引き続き雇用者所得の動向を注目する必要があるという感じになると思います。岩田副総裁(上記の一人の委員が必ずしも岩田さんである保証はございませんが、為念)が今後判断を強気転化していくとすれば、雇用者所得の動向に力強いものが見えてくる場合というのは一つの目安になるという事でしょう。
・資産価格に関して(本文8ページ)
『一人の委員は、都心における企業のオフィス需要は高まっており、不動産市場の活況には注意を払う必要があると述べた。その上で、この委員は、全体としてみれば、これまでのところ、企業は採算を慎重に見極めて不動産投資を行っており、実勢に見合った価格形成が行われているとの見方を示した。』
この資産価格に関する話は「一人の委員」さんが毎度毎度言及しております。今回もまあ一人の委員のコメントだけなんですが、これが複数委員とかになると恐らく会議場でのトーンが変わって来るという事になるんでしょうな。しかし企業の不動産投資云々ですけど、どっちかというと「まあラッキー♪」とばかりに企業は前回のバブルで売り損なった不動産売ってるような気がしますけれども、まあいっか(^^)。
地価が上昇しても、容積率が緩和されたり用途規制が緩和されてオフィスや住宅の供給が増えれば、不動産の利用者でありますところの一般ピープルにとっては無問題というか喜ばしい話でして、地価だけに注目して用途制限を厳しくするとかいうようなお馬鹿な施策は国民厚生上極めて宜しくないというのは前回バブルの教訓だと存じますが、今回はそのような事は無いように願いたいですな。
#しかし高さ規制が厳しい(56メートルでしたっけ)銀座4丁目山野楽器前が平米単価最高というあの算定基準もシロートとしてはよー判らん話です。収益還元法での取引という観点だったら高さ制限が緩い土地の単価の方が高いだろ常識的に考えて・・・・
と、最後は脱線しましたが、まあこのあたりが気になった所でございます。
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2007/03/27
お題「利上げした時の議事要旨」
2月の決定会合議事要旨がでましたのでその辺のお話を。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g070221.pdf
○第2の柱ですか?
『当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』ということでどう検討したのかを読みませう。本文9ページ(ファイルでは11ページ)から。
『大方の委員は、今回の会合までに明らかになった内外の指標や情報をもとに、日本経済の先行きを展望すると、生産・所得・支出の好循環のメカニズムに変調は生じておらず、物価安定のもとで、息の長い成長を続ける蓋然性が高まっているとの認識を示した。』
『さらに、このように、経済・物価情勢の改善が展望できることから、現行の政策金利水準を維持した場合、金融政策面からの刺激効果は次第に強まっていくと考えられ、仮に低金利が経済・物価情勢と離れて長く継続するという期待が定着するような場合には、行き過ぎた金融・経済活動を通じて資金の流れや資源配分に歪みが生じ、息の長い成長が阻害される可能性がある、との見方を示した。』
声明文(最終ページにもございます)で公表されていたのと同じ話ですな(当たり前といえば当たり前ですけど)。これを見るとどうも「第2の柱」にウェイト置いて利上げしたんじゃネーノって思うんですけど・・・・
『また、このうちのある委員は、経済情勢の改善が展望できるのであれば、資産や設備の中長期的な予想実質収益率も回復すると指摘した上で、長期的な物価安定のもとで息の長い経済発展を実現するためには、予想実質収益率の回復に対応して、実質利子率を調整し、資源および資金の効率的配分を促すことが望ましいとの見解を示した。』
福井総裁でしょうかね、この資源及び資金の効率的配分ってのこの前国会でも言ってましたな。
○消費者物価指数が目先マイナスになるかもという話
消費者物価指数の先行きに関してですが・・・
・執行部報告(本文4ページ、ファイルの6ページ)
『先行きについては、目先、原油価格反落の影響などからゼロ近傍となる可能性があるが、より長い目でみると、マクロ的な需給ギャップが需要超過方向で推移していく中、プラス基調を続けていくと予想される。』
これは当月の金融経済月報と同じですな。
・審議委員の検討(本文8ページ、ファイルの10ページ)
『委員は、小幅のプラスで推移しており、目先、原油価格反落の影響などからゼロ近傍となる可能性があるが、より長い目でみると、マクロ的な需給ギャップが需要超過方向で推移していく中、プラス基調を続けていくと予想されるとの見方を共有した。』
というのが一応結論のようですが・・・・
『大方の委員は、このところの原油価格の反落が当面の消費者物価の前年比の下押しに働くとみられ、場合によっては一時的に前年比がゼロ%ないし若干のマイナスとなる可能性があると指摘した。このうちの何人かの委員は、原油価格反落に加え、携帯電話の新料金プラン導入も、下押しに働く可能性があると述べた。』
ということで、大方の委員はマイナスの可能性を指摘してるのですが、最終ページにございますように、当日公表された声明文では
『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)は、小幅の前年比プラスとなっており、原油価格の動向などによっては目先ゼロ近傍で推移する可能性がある。』
という風になっておりまして(ちなみに月報も同じ)、マイナスの可能性に関してはここでは触れてないんですな。今月の月報でもマイナスの可能性については書いてなくて、今月の総裁記者会見でしらっとマイナスの可能性についてコメントしております。
ま、確かに利上げしてる側から「コアCPIが目先マイナスになることも」とは言いにくいというのは判るんですが・・・・・
・利上げの議案検討時点では(本文9ページ、ファイルの11ページ)
『これらの委員は、今回、政策金利引き上げが決定された場合には、その判断は、1〜2年先の経済や物価の姿を展望した上での、フォワード・ルッキングな視点に基づくものであること、いいかえれば、目先、消費者物価が弱含みに推移し、場合によってはマイナスとなることは十分念頭に置いた上で、その先を展望したものであることを明確に説明するべきとの見解で一致した。』
と言うことで、「1〜2年先」の経済物価情勢を展望した「フォワード・ルッキング」だそうですので、1〜2年先になってもコアCPIがゼロ近傍だったり瞬間マイナスになったりということにはならないという事でよろしゅうございますでしょうか、おっほっほ。
○岩田副総裁の反対意見
本文10ページ(ファイルで12ページ)より。
『一方、ある委員は、フォワード・ルッキングな視点に立った上で、賃金、個人消費の弱めの動きが払拭されておらず、生産面で、軽度であれ踊り場となる可能性が高いという状況のもとで、物価上昇率の先行きに不透明感が強いことから、無担保コールレート(
オーバーナイト物) の誘導目標を、現在の0.25% 前後に維持することが適当であるとの意見を表明した。この委員は、2008
年度を含めた物価の先行きについて、「展望レポート」などで説明した上で、政策金利の引き上げを行っても遅くないのではないか、と述べた。』
前段と最後の展望レポート云々の部分で何かニュアンスが違う気がする(フォワードルッキングで利上げできないなら展望レポートで説明しても利上げできないんじゃないのかなあ)けど、要はCPIの先行き上昇に対する不透明感が払拭されてから利上げをすれば良いじゃないかという話でしょう。
○市場との対話
同じく本文10ページ(ファイル12ページ)以降。
『市場との対話について、多くの委員は、日本銀行が発信すべき情報は、具体的な政策のタイミングではなく、あくまでも経済・物価情勢に関する判断や金融政策運営に関する基本的な考え方であると述べた。』
でも、その「金融政策運営に関する基本的な考え」に具体的な金融政策の方向性がでまくるのは如何なものかと思うのですが。いやあの正常化路線で利上げバイアスってのならそれはそれで堂々主張していただければ宜しいのですけれども。
『その上で、日本銀行が発信した情報を受け止めた市場参加者がこれを自らの経済・物価に関する判断とすり合わせて金利観を形成し、日本銀行は市場で形成された金利から市場の経済・物価観を知る、という双方向のコミュニケーションのプロセスが重要であるとの認識を示した。一人の委員は、簡潔な情報発信に努めることが重要であると述べた。』
最後の人の「簡潔な情報発信」に関しては同意です。双方向のコミュニケーションってのは何かこう円環性の香りがするのでどうもなんだかねって気はするんですが。
○採決前の議事中断タイミング
本文12ページ(ファイル14ページ)を見るとこうなっております。
『議長が金融市場調節方針の変更などについての議案を取りまとめたことを受け、財務省および内閣府の出席者より、議案への対応について両者の間で協議するとともに、必要に応じ、財務大臣および経済財政政策担当大臣と連絡を取るため、会議の一時中断の申し出があった。議長はこれを承諾した(午後1時01
分中断、午後1時26 分再開)。』
ということで、議長提案が出て議事中断したのは午後1時なのですが、よくよく考えてみるとその前の段階で多数意見が利上げになっていたというのは議事要旨にある通りでございますので、少なくとも議事の内容が判っていれば「今回は利上げの提案が出るでしょう」というのは想像がつくような希ガス。さて・・・・・・
○何で内閣府は議事延期請求しなかったの?
採決前に財務省と内閣府の出席者から発言がありました。
『先ほど、政策金利を0.25%から0.50%へ引き上げる旨の議案が議長より提出された。政府としては、従来から申し上げているように、最近の経済・物価情勢に鑑みれば、景気回復を持続的なものとするため、経済を金融面から支えて頂きたいというのが基本的な考え方である。その上で、具体的な金融政策運営については日本銀行に委ねられており、政策変更については政策委員会のご判断にお任せしたいと考えている。』
というのが財務省の発言。経済を金融面から支えるという基本的なラインから今回の決定は逸脱してないという認識だとあたしゃ理解しますけど、そんな認識で良いのでしょうか。
で、内閣府の発言がやたら長いのですが、結論部分と思われる所はこうなってるんですよね。
『ほど、利上げに関する議長提案がなされたが、現在は、デフレから脱却するかどうかの正念場であり、また消費も足もと弱いという極めて重要な局面であることに鑑みれば、責任を持って金融面からしっかり経済を支えていただくことが重要であり、利上げを急ぐ局面ではないものと考える。』
『具体的な金融政策運営は金融政策決定会合において政策委員の過半数をもって決せられるものであるが、こうした点を十分考慮して、慎重にご判断いただきたいと考える。』
そこまで言うなら(否決されるにせよ)議決延期請求をすべきではないかと思うんですが、内閣府は何だか言うだけ言ってやることやらないっていう印象を受けてしまうのは内閣府にキビシイですかねえ。
ということで本日はこの辺で。
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2007/03/22
○金融政策決定会合
正直、今回に関しては別に何が出る訳でもねえと思ってたので、決定会合の結果が出て「ありゃ会合終わってました」くらいのノリでございましたが(苦笑)、ふと結果を見ると「全員一致で金利据え置き」ですかそうですか。岩田副総裁も現状維持に賛成という事ですな。
前回の会合で利上げに反対したので利下げ提案するのかという期待はほんのちょっとだけありましたが、先日講演を行った際の記者会見で言ってたのは「利上げは4月の展望レポートなどでロジックを出してからでもよいのではないか」という感じで、要はタイミングの問題で利上げに反対してたということなんでしょうな。
#まあ中長期の金利は利上げ前よりも下がってますしねえ
○金融経済月報
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0703.htm(3月)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0702.htm(2月)
景気と物価の部分で前回と比較して表現ひ変化があるのは3箇所です。
・景気の現状判断の生産部分
『このように、内外需要の増加が続く中で、生産も増加基調にある。』(3月)
『このように、内外需要の増加が続く中で、生産も増加を続けている。』(2月)
えーっと、この「増加を続けている」というのと「増加基調にある」というののどっちが強い表現なのかという話ですが、多分2月の方が表現強いと思うんですが、それで解釈合ってましたっけ。
・消費者物価の現状判断
『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、原油価格反落の影響などからゼロ%近傍となっている。
』(3月)
『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、小幅のプラスで推移している。』(2月)
まあここは物価統計の結果としてそうなってるのでこうなりますな。
・国内企業物価の先行き見通し
『国内企業物価は、国際商品市況の反落の影響から、目先、弱含みないし横ばいで推移するとみられる。』(3月)
『国内企業物価は、国際商品市況の反落の影響から、目先、弱含みで推移するとみられる。』(2月)
ということで、こちらは「弱含みないし横ばい」ということでやや先行き判断を上向きにしております。
ということで、総体としての変化はあまり無いのですが、先行きの物価に関しては国内企業物価下げ止まりということで、まあ国内企業物価下げ止まりから消費者物価のゼロ近傍状態も将来的に見れば上昇に転じますよという事を言いたいというのは把握しましたですよ。
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2007/03/13
○金融システムレポート(ただしざっと見ただけの雑感)
他にネタもないので日銀が昨日公表した金融システムレポートでも、と申しましてもざっと見ただけでまだ精読していないのでとりあえず思いついたところを。
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/fsr/fsr07a.pdf
PDFで43ページもございますのでご注意。
ファイルで6ページ目からが「金融システムの現状と評価:概観」がございますので、その辺を読むわけですが。
・貸出利鞘問題
『3.銀行の金融仲介機能は、資本制約の緩和によるリスクテイク能力の拡大を背景に引き続き向上している。銀行貸出が緩やかな増加基調で推移しているほか、貸出先や貸出形態の多様化が進んでいる。また、業種別配分からみた銀行の貸出ポートフォリオの効率性も改善傾向にある。こうしたなか、銀行の貸出利鞘は引き続き縮小傾向にある(第2章)。』
とか、その前の部分とか現状の理解はヒジョーにきっちりとしておられるのは相変わらず流石(ちなみに、本文では『今後とも、貸出利鞘のほか、経費率、信用コスト率も含めた貸出採算の動向をみていく必要がある。』とございます)なのですけど・・・・
『6.こうしたもとで、金融システムにおける金利や信用コストの変化への頑健性は、引き続き向上している。金利の上昇は、短期的には保有債券の時価評価額を毀損させる方向に働くものの、中期的には資金利益の回復から収益基盤を改善させるとみられる。また、景気が大幅に後退するとのストレスシナリオのもとでも、大手行の信用リスク量は近年大きく低下しており、大口の不良債権処理の進展等を背景に、貸出ポートフォリオの質が改善していることが確認できる(第3章)。』
どうも斜め読みしたところでは、イールドカーブの変化のシミュレーションをして資金収支がどうなりますという話をしててそれはそれで大変精緻(前回対比で大幅改善^^)に分析しとるのですが、そもそも論として前半の方で貸出利鞘が縮小傾向にある(ただし第2章の中で「先行きの貸出利鞘は拡大を見込んでいる向きが多い」ともありますけど、為念)というのがあるんで、将来的な金利上昇において貸出利鞘がどうなるんでしょうか(今の状況で利上げをそのまま転嫁しにくかろう)という話が華麗にスルーされてるのはどうなんでしょとふと思いましたが、そこまで突っ込みだすと分析のしようが無いですな(^^)。
・不動産貸出問題
『4.この間、不動産業に対する資金供給の動向をみると、銀行自身の貸出残高は緩やかな拡大にとどまっているものの、不動産市場には銀行セクター以外の投資家からの資金流入が続いている。そうしたもとで、J-REIT
価格指数は上昇テンポを速めている。金融システムの持続的な安定を実現していくため、不動産市場の先行きと、その金融システム面への影響を注意深くみていく必要がある(第2章)。』
ほほうなるほど(ちなみにこの部分の資金流入の試算も中々面白いです)。
#あたくしも年末あたりからのJ-REITの上げっぷりはやり過ぎだと思うし、特に都心部レジデンシャル系の強気っぷりもちょっとどうなのよという印象はあります
『7.金融システムの安定性が損なわれると、これを回復するためには極めて大きなコストを要する。したがって、金融システムの不安定化を未然に回避することが重要である。今後とも、金融システムと実体経済の相互作用を念頭におきつつ、金融システムの安定を脅かしかねない潜在的な不均衡・脆弱性について、的確に分析していくことが大切である。』
どう見ても第2の柱です。本当にありがとうございました。
#などと書いてましたら、本石町日記さんと見事にネタがかぶっていることに気が付きorzなあたくしでございました。
ページ数が多いので敬遠しそうですが、こりゃオモロイのでお勧めです、と言ってるあたくしもまだ全部読んでませんけど。
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2007/03/12
○レポ指標レートに関するWG
資料に関しては初回会合の日(だか翌日だか忘れましたが)に早速アップされてたのですが、議事要旨に関しては暫く前にアップされておりました。
http://www.boj.or.jp/type/release/zuiji07/data/tanki0703d.pdf
でまあこちらは極めて技術的というかマニアなお話で、一部の関係者以外の方が読んでも何のことやらという感じかもしれませんが、もし周りにレポ市場の関係者がいたら(証券のフロントには必ず一人はいる筈ですが^^)ここで展開されている議論が何の話をしてるのか聞いておくのが吉だと思いますが、というか短期をノーケアーな人がちょっと多過ぎでしたから(最近はさすがにそんなことは無いでしょうが)、もうちょっと気にしてねって感じです。
さて、こちらの議論ですが、指標レートが出てくるのは有用というので当然一致すると思いますが、あたくしも指摘されているように『指標レートの有用性は、指標レートの質次第』でしょうなと思うのでした。例えばかつてあたくしが「こりゃどう見ても鉛筆舐め舐めでレート出してるだろ」と悪態をついたTIBOR(最近だいぶまともになってきたようですが)なんかは、銀行対企業のスプレッド貸しみたいにまあ市場性のようで市場性じゃないものなら兎も角、市場的にはTB/FBの利回りの方が基本的にリファレンス扱いされてあまり相手にされないという状況がある訳でして、この指標レートに関しても、ちゃんとした質を伴ったものにして頂きたいと思う訳ですな。
で、レファレンス方式にするのかブローカー加重平均方式にするのかという点ですけれども、あたくしの愚見を申し上げればレファレンスレートで、報告各社のレートを開示する方式が望ましいんじゃないかと思います。開示しないと自社のポジションに都合のよいポジショントークレートを出す誘惑が待っておりますので、開示しないレファレンスというのはちょっと如何なものかという感じですな。ブローカー加重平均方式だと議事要旨にもありましたが、ブローカーのシェアが大きいわけでもないのでレート操作のリスクが生じやすいですからちょっとねえって感じです。
で、どの辺の期間のレートをどのようにして出すかって話に関しては、結局のところ「指標レートの有効性が担保される」というのがポイントというかそれが全てかなと。期間も1年とかまであればそれはそれで結構ですが、そこのレートが鉛筆舐め舐めレートになってしまってもそれはそれで意味がない(まあどーせレートだすならTB/FBのカーブから引っ張って出すんでしょうけど)話でして、あたくし的には1か月くらいまでで、極力トレーダブルレートに近いもの(それこそオファービットが出るほうが尚良いのですけど、出す方はそりゃ大変ですからねえ・・・・)が出て暮れた方が良いような気もするんですけど、まあ色々と意見はあるでしょうね。
などなど、思いつくまま勝手を申し上げてますが、レートの話を始めとして、レポ市場のインフラ整備(最大のネックは投資家サイドの制度問題と、取引インフラの貧弱さだと思うのですが)には期待したいところでございます。
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2007/03/06
○短期金融市場フォーラム関係の追記
昨日思いついたことをつらつら並べましたがその続き。
http://www.boj.or.jp/type/release/zuiji07/tanki0703b.htm
に市場参加者のスピーチへのリンクがあるのですが、この中で一番良かったのは農中の二岡さんのスピーチでして、まあ全部読むほどヒマではないお方もこれだけは熟読すべしかと存じます。(追記:短期市場のディーラーと呑みに逝ったときにも、「外資2名のスピーチはポジショントーク、野村のはまあ良く纏まってるけど普通、二岡さんのはマジで素晴らしく、市場の事を考えたスピーチ」と絶賛されてましたな)
で、国債決済インフラとしてのJGBCCの加入推進(二岡さんのスピーチで触れられてます)に関してですが、お題が短期市場でそこまで話をすると話題が発散するのでスルーしたんだと存じますが、これはフェイル慣行の定着という問題が強烈にネックとしてございまして、国債決済の決済慣行をどうするのかという問題にも繋がってくる話でございますなあと思った次第。
国債を死ぬほどお持ちの大投資家様に置かれましては、引き続き「フェイルするのはケシカラン」という前提のお方が多うございますし、他人勘定で国内債券運用する人たちもフェイルが前提になって無い状況(外債は昔からフェイル当たり前でしたが)ですし、結局この話を突き詰めると、国内債券運用サイドの問題にもなってくるのでありますよね。JGBCCは取引のネッティングという意味では非常に重宝するんですが、ことフェイルに関しては逆に相手方が見えなくなるのでフェイルを前提にしてない人としては困るのですよね。てめえコノヤロ粗相しやがってとできませんから(笑)。
全然話は飛びますが、昨日「これは素晴らしいポジショントーク」とCS(銀行)の市東さんスピーチを絶賛(嘘)しましたが、GSの植田さんのスピーチの冒頭部分も中々ですな。「日本国債発行残高が米国債発行残高くらいあるのに、一日の取引高が少ないとかレポの取引高が少ないから日本マーケットがローカル化懸念」とはこれまた面白い理屈ですな。一々ツッコミ入れるのも面倒ですのでツッコミは華麗に割愛しますが、後ろの方で問題提起されてるネタにツッコミますと、ブローカーフィーが高いという指摘は同意だが、下げれば売買が活性化するもんでもないでしょとか、呼び値が単利になってるのをグローバル化と絡めてケチつけるならてめえのところが複利(または単価)でマーケットメークすりゃ良いじゃんとしか申し上げようがなく、文句のつけ方が妙ですなあといったところですか。
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2007/03/05
○短期金融市場フォーラムとりあえず雑感
市場参加者によるスピーチ(へのリンク)はこちら。
http://www.boj.or.jp/type/release/zuiji07/tanki0703b.htm
フォーラムでの議論と言うのもアップされてます。
http://www.boj.or.jp/type/release/zuiji07/data/tanki0703c.pdf
・短期国債のSCレポ取引とかターム物取引とか
金曜書いたあたくしの勝手な雑感その1であります所の「短期国債のSCレポ取引」に関して(野村證券中村執行役の指摘)は金曜に書きました投信(短期国債持ってる投信と言えば短期公社債投信)の制度上の課題に加えて、短期国債の買いオペやら資金供給オペが多いことから、SCレポ取引に手間隙かけて出すよりも裁定機会があるってこともあるのかなあと思いましたです。はい。
でね、皆さんのスピーチの中で「ターム物取引が広がらない」って話をしてまして、確かにその通りではあるんですけど、ゼロ金利政策の前(でかつ世の中で信用収縮とか無い平和だった頃)と今とを比較して短期の世界で一番違ってるのは「大手銀行の資金ポジション」と「流通可能な短期国債のロット」じゃないのかと思いまして、前者によってそもそも無担保でのターム物資金の取りニーズが減り、後者によって「リスクフリーのターム物運用市場」が拡大したということで、まあ結局はTBとFBの発行を減らすか、FBの日銀引受復活させて必要に応じて売りオペを実施するというどっちもやり難そうな事しか咄嗟には思いつきませんな。
ま、無担保市場がイマイチ広がらないのは、資金ポジションの変化もありますし、短期市場に流通する国債が無茶苦茶増えたのもありますし、他にはかつての信用収縮時代を前提にした制度が足かせになってるとかあるんでしょ。ターム物自体は短期国債市場があるので別にイラネーヨという感もありますが。
・これはまた見事なポジショントーク
ターム物取引を活発化汁!無担保コールに資金を出しましょう!という話をしてたのはクレディ・スイス銀行の市東本部長でした。有担市場であるレポの金利が無担保コールよりも高いのは如何なものかとか、有担保コールから無担保コールに資金を運用しましょうというように市場間裁定がもっと進むようにしましょうというのはそれはそれである意味正しい。「リスクはチャンス」とか「サムライ・マインドを持って」とか確かにそれはそうですな。
・・・ではあるのですが、信用収縮時代に邦銀相手にジャパンプレミアムふんだくって散々稼いだおまいらが言うなとしか申し上げようがございませんでして、素晴らしいポジショントークだわとその香ばしさに落涙を禁じ得ません。
てか、スピーチの中で全編これポジショントークにしか読めなかったのはこのお方のスピーチでして、ある意味正直なお方だと思うのですが、市場整備の観点から言うとどうなんでしょうかねえ。
・T+0のレポ取引
T+0のレポ取引の発展が求められますなあという話は複数のスピーカーから指摘されてました。まあ最大のネックは「事務対応」であることは間違いない所(SCの場合はフェイル慣行をどう定着させるかの問題もあるが)ですな。実はT+0で翌日物のGCレポ取引が出来れば、現行の先日付のレポと違いまして担保値洗いで悩む必要が多分無い(とは言え、レポやるのに担保評価しないって訳にもいかんでしょうが)ので、ちゃんと始まれば有担コールをかなりの勢いで駆逐しそうな気もするんですけど。
しかし議論の中で『T+0市場を伸ばすための即効薬は、日銀がレポを誘導目標にすること。』ってあったのはこれまた正直だけど本末転倒もいいところですなあと思いましたよ。市場が整備されてないのに金融政策の誘導目標に出来ないだろ常識的に考えて・・・・・
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2007/03/02
○メモ
http://www.boj.or.jp/type/release/zuiji07/tanki0703b.htm
短期市場フォーラムのスピーチ、最初の二つだけ斜め読みしたのですが、中々面白そうですね。
で、2番目の人の話にあった短期国債のSCレポ取引に関しては、債券型の投信が貸出有価証券をして現金担保が入ってくると結果としてレバレッジを効かせた事になってしまう(元本が増えてますよね、で、その金をコールでも何でも出した途端に運用したことになるから)ので、その辺をどう回避するか(現金担保じゃなくて短期国債を担保にして、キャッシュの出入りを貸出料の受けだけするか、短期国債の担保を多めにして運用側が金を出して短期資金運用する形にすれば回避できるような気がするが)でしょうかね、と直感的に思ったのでした。
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2007/02/27
ということで1月の決定会合議事要旨。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g070118.pdf
○一人の委員の発言ではございますが・・・・
『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』というコーナーがございまして、まあここの部分を12月と比較して色々と読むとか、来月になって出るであろう今回の議事要旨と比較して5名様のご意見がどういうロジックで変化したのかを読むのも面白いのですが、あたくし真っ先に目が行ったのは本文7ページ目(ファイルでは8ページ目)の最後に3行しらっとある部分です。
『資産価格の動向に関連して、一人の委員は、都心の一部ではややバブル的な取引もみられるが、全体としてみれば、実勢に見合った価格形成が行われていると述べた。』(原文では「資産価格」が下線付きです)
この資産価格に関してですが、10月13日の決定会合では「地価」、11月16日の決定会合では「資産価格」に下線付きで言及がございますが(12月は言及無し)、例えば11月の会合では『ある委員は、金融機関の不動産融資に対する姿勢は慎重化する方向にあること、金利上昇にもかかわらず住宅を買い急ぐ動きは乏しく、値上がりは高額物件に限定されていることを挙げ、現在の商業用不動産および住宅に対する需要回復の動きは底打ち後の自然な過程であり、今後も不動産投資が過熱する可能性は低いと述べた。』とございまして、今回は「ややバブル的」という表現になったのは「ほほー」と思いました。
ま、どう見てもそこに値上がりを含めないと収益還元的に話に無理があるだろというのが散見される今日この頃ではございますというのは同意ですが、それを金融政策でどうこうするのはちょっと。あえて言えばブルーデンスの方で個別対応する話でしょうかねえ。。。。。
○展望レポートの中間評価
『一人の委員は、わが国の景気は、昨年10月の展望レポートで示した「見通し」に概ね沿って推移していると考えられると述べた。』
理由に関してはその直後にありますが、要するに過年度のGDP改定で発射台が上っているだけですから無問題とのこと。
『これに対し、ほとんどの委員は、景気は、昨年10月の展望レポートで示した「経済・物価情勢の見通し」に比べて、これまでのところ、天候要因等一時的な下押し要因もあって個人消費を中心に幾分下振れていると考えられると述べた。』
でも発射台が上ってることも考慮しないとね、とのこと。
『一人の委員は、「見通し」に沿った景気の拡大や物価の上昇が実現する時期が後ずれしており、先行きの経済・物価の展開については不確実性が依然存在していると付け加えた。』
途中をめんどいので端折りましたからこの「一人の委員」(たぶん岩田副総裁)が景気弱気みたいな引用になっちゃいましたが、中身をもうちょっと読みますと、不確実性についての言及であって、先行き弱気というまでではなさそうです。
ここを読むと、景気にやたら強気の人が1名いて、慎重な人が1名(岩田さん)いるというのは把握した。
○利上げ提案をした人のロジック
本文9ページ目から。
『次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針について、何人かの委員は、無担保コールレート(オーバーナイト物)の誘導目標をこれまでの0
. 2 5 % 前後から、0 .5 % 前後へ引き上げることが適当であるとの見解を示した。』
『これらの委員は、最近の経済指標の動きが経済のメカニズムについての評価を変えるものではないことを踏まえると、今後とも経済・物価が望ましい姿で推移していくためには、ここで政策金利の調整を行うことが適当であり、こうした措置は長い目でみて物価の安定と持続的な成長に資するものであるとの考え方を示した。』
『これら委員は、現行の政策金利水準を維持した場合のリスクとして、金融政策面からの刺激効果が強まり過ぎる可能性や、低金利が経済・物価情勢と離れて長く継続するという期待が強まる可能性を指摘した。』
ということで、まあ今までの「緩和的な環境を保ちながら、経済・物価情勢にあう金利水準まで政策金利を徐々に調整する」というロジックに則ってまして、リスクとしての第2の柱を見ているという理屈ですわな。
あたしゃ別にそんなに急いで利上げしなくてもいいんじゃねえのかという気はする(どっちかというと引っ張ってからドカドカ上げるというスタンスの方が長期金利が経済情勢を反映して上りやすくなるようにも思えますし)のですが、まあこれはこれで一つの理屈なんでしょうなあとは思うのでした。要するに正常化路線(会見要旨見てると福井総裁が無茶苦茶嫌っている表現のようですが^^)ですわな。
○利上げを見送った人のスタンス
『これに対し、多くの委員は、「無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0.25%前後で推移するよう促す」という現在の金融市場調節方針を維持することが適当であるとの見解を示した。』
『これらの委員は、海外経済の拡大を背景とした輸出の増加を起点とする生産・所得・支出の好循環のメカニズムに変化はないと判断されるものの、このところ強弱様々な指標が出ていることから、今後公表される指標や様々な情報を引き続き丹念に点検し、経済・物価情勢をさらに見極めることが適当であるという考え方を示した。』
『これら委員は、フォワード・ルッキングな金融政策運営を行っていく上では、先行きの見通しに十分な確信を得ることが重要であり、現時点においては、そうした確認作業を行う時間的な余裕があるとの考え方を示した。』
うーむ、そして1月会合後に出た経済指標でそんなに強い先行指標ありましたっけというツッコミをしたくなるのはあたくしだけではありますまい。ってか1月時点で確認作業を行う時間的余裕があるのでしたら2月もあったような気がするんですけどね。
『このうち複数の委員は、こうした確認作業を経て経済・物価の先行きが見通しに沿って展開していくことについて十分な確信が得られた段階では、遅滞なく政策金利の調整を行い、低金利が経済・物価情勢と離れて長く継続するという期待が定着しないようにする必要があると付け加えた。何人かの委員は、今後のチェックポイントとして、米国をはじめとする海外経済の状況、家計部門の動向、物価を巡る環境などを挙げ、これらの分析を通じて、将来の経済のトレンドを的確に判断していくことが重要であるとの考え方を示した。』
ほうほうさようでございますか。このあたり2月にどのようになっているのか興味深いでございますよ。ワクワク。
○情報発信問題
『この間、金融政策運営に関する情報発信について議論が行われた。多くの委員は、このところ政策変更タイミングに関する市場の予想が大きく変動したことを踏まえ、市場との対話のあり方について問題を提起した。』
案の定キタコレ。
『何人かの委員は、フォワード・ルッキングな金融政策運営という表現が、一定のスケジュールに基づく政策運営と誤解されているのではないかと指摘した。この点に関して、委員は、金融政策運営は、あくまで毎回の金融政策決定会合において経済・物価情勢に関する議論を尽くした上で判断すべきものであり、一定のスケジュールやインターバルに基づくものではないという認識で一致した。』
そうではなくて「経済物価情勢に応じて徐々に金利水準の調整を行う」というロジックとフォワードルッキングのコンボが原因だと思うのですけど、それを言い出すと現行の政策ロジックの修正になりますからねえ。と思ったらその次にこんな話が。
『また、何人かの委員は、フォワード・ルッキングな金融政策運営を行う上では、それまで得られた指標や情報を丹念に分析し、先行きの経済・物価情勢を適切に判断することが前提となると述べた。これらの委員は、展望レポートで記述した「経済・物価情勢の変化に応じて、徐々に金利水準の調整を行うことになる」という金融政策運営方針について、より一層の理解を求めていく必要があると述べた。』
ですからそれを説明していただきたく・・・・
『こうした議論を経て、委員は、1.日本銀行としては、金融政策運営に当たって、時期を予め特定化する考え方は採っていないこと、2.金融政策運営に当たっては、足もとまでの指標や情報を丹念に分析し、それをもとに先行きの経済・物価情勢を展望していくべきであること、3.その意味で「フォワード・ルッキング」と「データ・ディペンデント」は矛盾する概念ではないこと、4.これらの点について丁寧に説明していくことが重要であること、を確認した。』(原文は○数字です)
うーん、判ったようで判らん話ですな。
『あわせて、情報発信に当たって留意すべき点についても意見が述べられた。複数の委員は、市場との対話を行っていく上で、市場参加者等から、日本銀行の金融経済情勢の判断や金融政策運営の基本的な考え方に関する理解を得られるよう努めていくことが重要であり、その際、決定会合での議論を経て政策委員間で共通の認識になっている内容を基本とすべきであると付け加えた。』
うん、この点は重要ですな。まあカラーが全然出ないのも困りますけど、あまり突拍子もない話をされても困るので。
ということで、例によって金融政策の部分を中心に読んでみました。
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2007/02/22
○どう見ても第2の柱です。本当に(略
http://www.boj.or.jp/type/release/zuiji07/k070221.pdf
今回の政策判断の理由が出たわけですが・・・・
『3.会合までに明らかになった内外の指標や情報をもとに、日本経済の先行きを展望すると、生産・所得・支出の好循環メカニズムが維持されるもとで、緩やかな拡大を続ける蓋然性が高いと判断した。すなわち、米国経済など海外経済についての不透明感は和らいでいる。そのもとで、企業収益の好調と設備投資の増加が続くとみられる。個人消費については、昨年夏場の落ち込みは一時的であり、緩やかな増加基調にあると判断される。』
『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)は、小幅の前年比プラスとなっており、原油価格の動向などによっては目先ゼロ近傍で推移する可能性がある。もっとも、より長い目で消費者物価の動きを見通すと、設備や労働といった資源の稼働状況は高まっており、今後も景気拡大が続くと考えられることから、基調として上昇していくと考えられる。』
目先消費者物価ゼロ近傍の可能性ありますが、将来的には上昇するのでというのもちょっとアレな理屈だと思う訳ですけれども・・・・・
『4.経済・物価情勢の改善が展望できることから、現在の政策金利水準を維持した場合、金融政策面からの刺激効果は次第に強まっていくと考えられる。このような状況のもとで、仮に低金利が経済・物価情勢と離れて長く継続するという期待が定着するような場合には、行き過ぎた金融・経済活動を通じて資金の流れや資源配分に歪みが生じ、息の長い成長が阻害される可能性がある。』
『日本銀行としては、2つの「柱」による点検を踏まえた上で、経済・物価が今後とも望ましい経路を辿っていくためには、この際金利水準の調整を行うことが適当と判断した。この措置の後も、極めて緩和的な金融環境は維持され、中長期的に、物価安定を確保し持続的な成長を実現していくことに貢献するものと考えている。』
という文言を読んでおりますと、どう見ても「第2の柱」による利上げですなあって感じです。これなら正常化路線を前面に出した方がまだ話がすっきりするというものです。本来的には第1の柱(引用の3.以下の部分ですね)で利上げするもんじゃないんですかねえと思うのですが。
ま、4月の金融経済月報あるいは今後の議事要旨の中でロジックの立て直しが模索されるんでしょうけど。物価安定の理解+第1の柱+第2の柱というセットは理屈的に混乱しやすいように思えるのでした。
○判断が前進してない金融経済月報
えーっとですな、昨年7月にゼロ金利解除をした時の金融経済月報はそれはもうノリノリでして、何か物凄い勢いで威勢の良い内容に判断が大前進してたんですよね。で、今回はどうなのかと申しますと、何かこうしょんぼりしちゃいますなって感じがするのは気のせいであろうか・・・・
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0702.htm
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0701.htm
例によって上が今回、下が前回の金融経済月報。で、前回と表現が変った箇所は5点ございます。
・景気の現状判断部分の要因部分
公共投資
『公共投資は、足もと幾分増加しているが、基調としては減少している。』(2月)
『公共投資は減少傾向にあるが、』(1月)
個人消費
『個人消費は、底堅く推移している。』(2月)
『個人消費は、やや伸び悩みつつも増加基調にある。』(1月)
何かどー見ましても判断が上向いてる感じがしないのですが・・・
・物価の現状判断部分
『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、小幅のプラスで推移している。』(2月)
『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、プラス基調で推移している。』(1月)
まあここはそうなりますわな。
・物価の先行き部分
国内企業物価
『国内企業物価は、国際商品市況の反落の影響から、目先、弱含みで推移するとみられる。』(2月)
『国内企業物価は、国際商品市況の反落の影響から、目先、弱含みないし横ばいで推移するとみられる。』(1月)
消費者物価
『消費者物価の前年比は、目先、原油価格反落の影響などからゼロ近傍となる可能性があるが、より長い目でみると、マクロ的な需給ギャップが需要超過方向で推移していく中、プラス基調を続けていくと予想される。』(2月)
『消費者物価の前年比は、マクロ的な需給ギャップが需要超過方向で推移していく中、プラス基調を続けていくと予想される。』(1月)
いやー、どう見ても先行き見通しが下方修正されてるんですよね。まあそういう見通しになるのは衆目の一致するところではあるのですが、先行きの見通しが強くなってないのに利上げするってのも何だかな〜って感じ。いやまあ利上げをすることによって景気拡大のスピード調整が行われるから先行きを見通しが少し弱くなりますって理屈なら兎も角、今回はそういう感じでもないしなあ・・・・
ということで、やはりどう見ても第2の柱がメインの利上げです。本当にありがとうございました。
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2007/02/14
○「短期金融市場の機能向上への取組み」について
昨日の夕方近くにしらっとこんなものが↓
http://www.boj.or.jp/type/release/zuiji07/tanki0702a.htm
『日本銀行は、短期金融市場の機能向上に貢献していく観点から、半年間程度を目途として、標題の「取組み」を行っていくこととしました。概要は、以下のとおりです。』
ということで、具体的施策として取組み内容が書いてありますが、まあこーゆーのは昔は市場の中の人たちというか日証協とか全銀協とかがか取りまとめる(実際の議論を回すのは昔だったら4社とか都銀+興銀とかだったりするのですが)ものだったような気もしますが、今や日銀が取りまとめないと話が進まない(で、何かおっぱじめる奴は勝手におっぱじめる)という所でしょう。
まあ出来ましたらフロントで業務回したり受渡実務をやってる人たちが参加するような方向(まーそういう人たちは日頃の仕事が忙しいのでマンドクセでしょうが)かつ、今参加してないけど将来参加しそうな人(業態)にも入りやすい(参加者を余りにも絞ると、自分達以外の業態の都合をあまり考えない議論になりがちな気がするんで)議論を期待しております。
で、その別紙とやらを見ると、『レポ指標レートに関する検討ワーキング・グループ』を作るようで、もしかしてTIFFEがやると言って市場の100人中99人から「アホス」と言われている「レポ金利先物」をマジでやるんでしょうかねえと呆れるのでした。そういや2月からTIFFE様におかれましてはユーロ円金先の夜間取引を毎日夜8時まで絶賛営業延長してまして、ユーザーの声を聞いての措置らしいのですが、何か国内ドメドメの目から見ると「ハァ?」って施策を連発するのがTIFFEクオリティ。
といつの間にか話があらぬ方向に逸れましたが(笑)、レポ指標レートって要るのかなあというのはちょっとこう???なのですが、まあレポ先物がどうのこうのとかいう話があるのでその辺の大人の事情もあるんでしょ?ね?ね?
(当日夜間追記:指標レートがイラネって事はねえだろうというツッコミを多数頂戴しましたので言い訳を少々。T+0からT+3までの取引があって、現在だとT+3のポジションが確定しだした時間帯から取引されるT+3のレポGCが一番取引多いというか殆どなのですが、そーゆー先日付取引が何本か動いてる中で指標レートを一本化するのはどうでしょうかねえってのが書いてるときの意識でして、まあ公表する方法を工夫すればそれは問題ない話ではないかと思います。ただ、そうなった場合にTIFEEが「レポ先物」として何をリファレンスにするんでしょうねえというのは気になりますが、まあ東京金先の事などシラネーヨということでレポレート公表を推進していただきたく存じます。明日の駄文で同じ事書いときますが、決して褒め殺しではありませんので一つヨロシク^^)
まあ実りのある議論が行われますように有力市場参加者の皆様におかれましては、てめえの都合だけではなくて市場全体として使いやすくなるような観点で参加されたいと存じます、と無力参加者のあたくしは思うのでありました。
・・・・そしてネタクリップの為にNIKKEI NETを見たら相変わらずミスリードなお題にさすがニッケイクオリティと感心。
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20070213AT2C1303V13022007.html
『日銀、短期金融市場の機能向上策を発表』ってありますが、日銀が公表してるのはお題も中身も「これから機能向上の具体的施策を検討しますよ」という話であって、「向上策の発表」じゃないと思うんですが・・・・本文では『短期金融市場の機能を向上するための取り組みを発表した。』ってあって、最後の方に『来月1日に市場関係者を集めたフォーラムを開き、課題を整理して必要な対応についての意見をまとめる。』と書いてますが、日銀公表文書を読まないと何か具体的な向上策があって後は実行するだけって読めそうなんですが。
新聞(ネット版でもそうですが)って一々記事の中身見ないでヘッドラインだけ見る場合も多いですし、こーゆー細かいところを正確に報道してこそ経済クオリティーペーパーなんじゃないんでしょうかね。「日銀の市場との対話がナットラン」とか言う前にてめえが正確な報道をしやがれと小一時間問い詰めたいですな。
#と話が最後に大いに脱線しまして恐縮至極
○これはオモロイ
日銀から「企業物価指数の明治以来の基準改定ごとの改廃品目一覧の掲載について」というのが出てました。
http://www.boj.or.jp/type/release/nt_cr07/ntcgpi13.htm
『毎回の基準改定では、基準時点における産業・貿易構造に合致するよう、取引額が一定の金額に達した品目を新たに採用する一方で、取引額が減少した品目を廃止することを、原則としています。従って、基準改定ごとの品目改廃を過去に遡って眺めることにより、わが国における産業構造の長期的な変化の一端をみることができるものと考えられます。』
ということで、 その改廃品目一覧は
http://www.boj.or.jp/type/exp/stat/pi/index.htm#hinmoku
のあたりにありまして、経済分析を本職にしている人にとっては最近の改廃品目とかを見るのが重要なのですが、興味本位の野次馬であります所のあたくしが最初に見るのは当然ながらそのリストの一番下にある「改廃品目一覧(1900年基準〜1980年基準)」でございますな。明治33年とか昭和8年とかもうあたくしメロメロでございます(^^)。PDFファイルで20ページありますが、まあそーゆーの好きな方は是非ご一読を。
http://www.boj.or.jp/type/exp/stat/pi/18871980r.pdf
昭和8年基準が昭和23年基準に変った時の食用農産物品目の変化に思いっきり歴史を感じてしまいましたが。。。。。。
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2007/01/24
12月の決定会合議事要旨が公表されましたのでその辺りから。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g061219.pdf
まあ今回の注目は利上げ云々に関する議論はどうだったのよという所ではないかと思うのですが、市場の反応的にはあまり新味ありませんなあという感じだったのかなと思います。でもまあ色々考えさせられる(というか考えると頭が混乱してくる^^)ネタなのでこのあたりを。
本文8ページ目(PDFファイルで9ページ目)からが「当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要」でしてそこから。
○この辺は正常化路線っぽいお話に見えますな
『この間、一人の委員は、次回会合における展望レポートの中間評価で、経済・物価情勢が展望レポートで示した見通しに沿って展開していく蓋然性が高いと自信を持って判断できるのであれば、政策変更を行うべきであると述べた。』
『複数の委員も、金利調整を急ぐ必要はないが、経済・物価情勢の見通しがより確かなものとなれば、1月会合以降の適切なタイミングで、異例の超低金利からの調整を進めることが適当であると述べた。』
恐らくこの中の委員が1月会合で利上げ賛成に回ったんでしょうなという事ですが、ここの発言(の要旨)から読み取れるロジックはそもそも日銀が展望レポートなどで示しているものですな。で、「異例の超低金利からの調整」ってありますように基本的には「正常化路線」がクローズアップされているような印象を受けます。
「異例の超低金利から」中立金利への調整を徐々に行うというのはグリーンスパンがやってたメジャードペースでの金利調整と同じような話だと思いますが、このロジックを量的緩和解除直後に持ち出した水野審議委員は余計なことに中立金利水準の数字をやたら高い数字を言ってしまって物議をかもしてその後中立金利水準の話が持ち出しにくくなってますが、まあ12月要旨のこの部分を見ますと「メジャードペースでの正常化」論をちゃんとするようになってきましたなあという感じ(まあ元々の展望レポートなどのロジックを突き詰めるとそうなるのですけど)。
じゃあ現在の経済状態が「メジャードペースでの金利正常化」に着手するタイミングなのかというとこれまた議論になりそうなのですけれども、展望レポートでの見通し不変とすればそのタイミングですって話になっちゃう訳でして、まー昨年4月の威勢の良さげだった景気状況で威勢良くぶち上げた展望レポートが却って重荷になっておりますな、合掌。
もう一つですが、後半の発言にあるように、利上げに関してそもそも『金利調整を急ぐ必要はないが』『1月会合以降の適切なタイミングで』という風に述べられていることでして、この点はあたくし従来から受けていた印象と合致するのですけど、もともと日銀的には利上げにそんなに前のめりな訳ではなく、「まあ年度内のどこかで金利調整をするタイミングがあるだろうからそこで次の調整でしょうなあ」ってなのんびりした感じだと思う次第でして、まあその印象を裏付けているようにも読めますが、それはあたくしの印象が正しかったと勝手に喜んでいるためにバイアスが掛かってる可能性もありますので念の為。
ということで、12月の時も今回もそうですが、「今回利上げできないともう当分利上げ全然ムリムリですよ」という話になってくるのは、(特にガイジン様から見て)理屈としては判りやすいのですが、どっちかと言うと「まあどっかのタイミングでやるんじゃないですかねえ」というファジーな考えで構えてた方が良いような気もするのでした。後は経済物価情勢次第でして、据え置き長期化観測で為替や株価に影響が出るとまあそれが経済物価情勢にも影響が出てきてって話になるとは思いますが、何せ市場は極端から極端に振れやすいっすから。
○足元重視だと展望レポートと話の整合性が・・・
さて、ではまだ据え置きの主張はどうなのかと見ますと・・・
『別の複数の委員は、政策金利の調整を進めていく際は、経済・物価見通しを巡る不透明感がある程度晴れるまで、様々な材料を丹念に点検し、タイミングを適切に見極めていく必要があると指摘した。』
こちらの意見は先ほど申し上げた話を敷衍すると、「現在はまだメジャードペースの金利調整をする段階には至っていない」という意見になるかと存じます。でもこの主張するなら展望レポートの書き方を変える必要があるんじゃないですかねえと思うのですが。
というのと、この主張だとフォワードルッキングというよりはデータ重視の時間軸に近い話になってくると思うのですが、結局のところ量的緩和解除の時に出された「物価安定に関する理解」と展望レポートでの「フォワードルッキングによるメジャードペースでの金利調整」という話が現在の物価情勢だと不協和音を起こしている為にロジックがワケワカランというか混乱しております(混乱してるのはあたくしの頭の中だけかもしれませんが)なあという所なのではないかと存じます。
例えばの話、CPIが前年同月比+1%くらいで推移していて、その中で中立金利への調整をするからメジャードペースで中立水準まで利上げするって話ならまあ(CPIが+1%の時に中立金利って幾らなのよという話はありますがその話をしだすとあたくしの手に負えないので華麗にスルー)話として両立しそうな気もするのですが・・・・
1月会合後の総裁記者会見で総裁様が賛成票と反対票の間の「意見の違いはほんの僅かですよ」と言ってましたが、どうも12月の議事要旨を見ると、意見の相違は表面上はタイミングの問題かもしれないけど、その中身は正常化路線VS時間軸という内容になっているようにも読めます(もちろんあたくしの勝手な誤読かもしれませんけど)んで、結構これは1月会合記事要旨をとっとと公表してくれと言いたくなる所ですな。
というか、議事要旨次回の会合前に(2回ある月は仕方ないけど)議事要旨を公表してくれると誠に有り難しと申しますか、ここまで思惑で大盛り上がりしないんじゃないですかと思うのですけど、ご検討あられると誠に幸いでございます。
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2007/01/23
○日銀の金融市場レポート
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/mkr/mkr0701a.pdf
半期に一回のペースで出てくるのですが、こういうのを金曜の午後に出されますと、週末に読むのには良いのですが、うっかりエライ人に見つかって「このレポートのここについて教えてくれ」との質問攻撃が来ると大変なことになるという説も(笑)。
ページ数は14ページになりますが、図表などが多くてまあ知ってる人にはあっさり読めるし、あまり馴染みの無い人でも読みやすいのではないかと思います。何せこのレポートは日銀様が良く出されるペーパーと違いまして難しい数式が1つも出てこないという誠にありがたいお話。
で、最初のページにサマリーがあるのですが、短期金融市場の機能回復がまた進みましたよでもまだまだ課題はあるねというのがまとめだとは思うのですが、こちらであまり強調されてない論点について少々。
レポートの中では市場間の裁定が徐々に進んできているという話になっているのですが、実感としてはまだまだ歪みまくっているという気はします。その最大の原因としてあたくし思うのは何と申しましても大手銀行(というかメガバンク)様が機動的に動かないことでして、最も売り買い(資金の出し入れ)をしやすく、その体力もある人たちが市場間分断モードから中々脱却できていないなあと思うのですよね。
と、大手銀行様に悪態つくわけですが、メガバンクの立場を思うと同情すべき点も多々ございまして、何せ市場に対するメガバンクのシェアがでかすぎなので、自分達のマーケットインパクトがでかい(昔のように上位行同士での打ち合いとかができない)こととか、商品ごとにセクションが分かれてて機動的に動きにくいとか、まあ市場という観点からすると、参加者のメガ化というのは市場機能の阻害要因でございますわなあという感じでございます。んあ訳で悪態をついても解決しない部分というのがあるとは思う。
それから、今絶賛話題のOIS取引なんですが、やたらBOJタームの取引ばかりが出来てるようでして、あたくしこの前も申し上げましたが、BOJタームのOISって要するに次の政策金利の当てっこですがなとおもう(当てっこと言えばこれは合百とどこがどう違うとか言うと総スカンを食らうのでそのようなことは言ってはなりません^^)次第でして、短期資金取引のヘッジ目的で入る人たちが増えてくる前にロットだけでかくなちゃうと、金先同様にバンクALMと巨大ポジションを振り回すディーラー(のような人)の特殊格闘場になっちゃうんジャマイカと少々懸念。
「日銀様も注目してる」とか言うと、じゃあ市場の見方をここで出してやろうじぇねえのと振り回しだす人は世の中にいます(参加者が薄いと特に)んで、あまりそういうこと(どの市場を注目してるとか)は名言しないほうが宜しいのではないかと思うのですけどね。もちろん現場の人たちは色々なレートを見ながら「総合判断」して「市場の考える先行き金利見通し」を見てると思いますが。
あとまあ有担保コール取引がバーゼルUの関係でややこしい話になるらしいというのをちと聞いた(というか年末にペーパーが出てた)のですが、有担保取引の拡充をどうするのという話は本編でも触れられてますが課題ですなあという話とか、オペ先以外の参加者の話も一つお願いしますとか思いつくことは少々あるような気もしますが、気が付けば時間が無いので本日はこの辺で勘弁してください。
ま、このレポートは17ページなので一瞬読むのを躊躇しそうになりますが、先ほども申し上げたように図表を駆使し、難しい計算式とか全くございませんので、短期市場に興味のある方にはマジでお勧めです。
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2007/01/19
お題「金融政策決定会合であれこれ書いてみる」
まあドタバタ劇場だと思えば随分と楽しませてくれましたな。さてどこから逝きましょうか。
#福井総裁会見まで手が回らないと思います。総裁会見で為替とか債券先物とかがやたら反応してましたが、ヘッドラインだけ見てると何でそんなに反応するの?って感じなんですけれども・・・・ま、ガイジンの考えることは判らん
○金融経済月報は実は12月とほぼ同内容なのです
金融経済月報の基本的見解が本日公表されまして、その中に展望レポートの中間レビューもございます。で、中間レビューでの現状判断部分の下振れが当たり前のように注目されるのですが、ふと冷静に月報を読んでみると、12月と判断を殆ど変えていないことに気が付くのでありました。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0701.htm(今回分)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0612.htm(12月分)
でまあ、この2つの文書を紙にでも打ち出して比較すりゃいいのですけれども、経済の見立てに関わる部分で前月と比較して表現に変化があるのは2箇所だけでして、そのうちの1箇所は短観を受けた企業業績に関わる表現ですので、実質的には1箇所を直したに留まっております。
その箇所は国内企業物価の現状判断部分でして、このようになっております。
『国内企業物価は、国際商品市況の反落が影響し、足もとでは3か月前比でみて弱含んでいる。』(今回)
『国内企業物価は、原油価格の反落が影響し、足もとでは3か月前比でみて横ばいとなっている。』(12月)
ということで、現象というか事実に関わる部分に関して弱含みという表現をつかっておりますが、他の部分に関する記述は物の見事に12月の判断を踏襲した形になっております。
で、下振れだの弱含みだのという話は中間レビュー部分にございまして、こちらはどのような表現を使っているのかと申しますと・・・・・
『わが国の景気は、昨年10月の「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)で示した「経済・物価情勢の見通し」に比べて、これまでのところ、天候要因等一時的な下押し要因もあって個人消費を中心に幾分下振れている(注)。』
ご丁寧にも注記がありまして、そこを読むとこう書いてあります。
『(注)成長率の下振れについては、2005年度計数が確報化により下方修正されたことに伴い、2006年度への発射台(年度中の各期の前期比伸び率がゼロであった場合の年度平均の前年比)が0.3%ポイント縮小したことも影響している。』
ということで、「下振れしているけれども、それは一時的な要因です」と主張しておいででございますので勘違いの無い様にしたいものです。
『先行きについては、生産・所得・支出の好循環のメカニズムが維持されるもとで、「見通し」に概ね沿って推移すると予想される。』
ということで先行き判断は不変ですという少々アクロバットな形になっておりますが、要は「今の状況は一時的要因」だと言いたいのでしょうな。はいはい一時的要因一時的要因。
『物価面では、国内企業物価は、原油価格反落の影響などを背景に、「見通し」に比べて幾分下振れるものと見込まれる。この間、消費者物価は、「見通し」に比べて、これまでのところ、原油価格反落の影響もあって幾分下振れているが、先行きは、「見通し」に概ね沿って推移すると予想される。』
ということです。総じていえば、決定会合後に出てきた文書ベースでの発信を見ると「とは言っても相変わらず強気の旗は降ろしません」という雰囲気が伝わってくるなあというのは何となく理解した。
○票決が割れたのは本来あるべき姿ではないかとも思いますし
えーっと、6対3と言うことは正副総裁が議長提案に賛成するのですから残り3名の審議委員の票が綺麗にスプリットということで両論分かれて喧々諤々っぽくていいじゃないですか。というか反対3票で短期はともかく債券先物がスルスルと売られたのはナンノコッチャでございますけれども、まー「1月無ければ当面無い」というのも理屈としては判らんでもないので、その期待がちょっと剥がれた分ということでしょうかな。何か判ったようなわからんような話だが。
そもそも論で考えますと、前回のゼロ金利解除がそうですが、その直前まで全員一致で現状維持で、1か月経ったら全員一致で政策変更なんていう方が気持ち悪いこと夥しい(量的緩和解除の時は当座預金残高目標引下げ提案という形での反対はありましたが、解除すべしという反対提案は出ていないので、まあ似たようなもんですわな)わけですがな。票決が毎度毎度割れまくるのが仕様のような中央銀行はあちこちにある訳でして、これはこれで良かったのではないかと存じます、利上げの是非はさておいて。
というかね、12月に全員一致だったのが理解に苦しむ訳でして、まあこの票決差が動くことによってボードメンバーの意見の推移が判って、「ボードメンバーの見方」が発信されるというのが本来の「市場との対話」の一つなんじゃないですかねえと思います。それから、正副議長の票が毎回一致するというのも変な話で、執行部が自動的に3票持ってるというのも何なんでしょうねと思うのでした。
#というか「政策変更は全員一致じゃないと説明責任が云々」とかいう論調を時々見るのですが、それはちょっとおかしくねえかと
まーあまり頭数を絞るのも何なんでしょうが、執行部3票っての止めて議長1票+審議委員3人にして、2対2の場合は今回は決定事項無し(なので事実上は現状維持)ってのどうかな何て勝手に妄想してみるテストなのでした(あくまでも咄嗟に思いついた妄想ですが)。
○これは酷い
今回もまた決定会合中にNHKが「今回は執行部からの利上げ提案はなかった」というようなフライング報道をしてて、どういう根拠でそういう報道をしてるのかと話題になってましたが、それよりもTBSが凄い事を放送してるぞって話題沸騰になったのはこのニュース。
http://news.tbs.co.jp/20070118/headline/tbs_headline3472551.html
日銀、「利上げ見送り」事前に政府側に
『(前半略)こうした中、日銀は、今週初めまでに、政府側に対して「今回は金利の引き上げを見送る見通しである」と非公式に伝えていたことが、JNNの取材で明らかになりました。(以下略)』
ニュース映像もリンク先で見れますので拝聴しましたが、どうもこの内容の重大性を認識して放送しているような雰囲気は1ミリも見受けられませんで、これを世の中では俗に「知らぬが仏」と申します(または放送禁止用語を使用した諺もありますが自主規制)。しかし「金融政策劇場1月公演」の締めを飾るのには誠にふさわしいというか花を添える実に香ばしいニュースでございました。
えーっと、まあこちらの駄文をお読みの皆様には先刻ご承知かと存じますが、これが事実だとするともう無茶苦茶なお話でございます。従ってこれはもう徹底的に誤報として華麗にスルーし続けるものと思われますが、こんな巨大な釣り餌には釣られない事にはあたくしの沽券にかかわりますので釣られて見ますよ。
報道が事実だった場合(絶対に誤報扱いになるに100福井)の問題点としてはまあ色々とありますが、何といいましても日銀および政府は「金融政策決定会合を何だと思ってるんでしょうか」という事でしょうかな。審議委員をコケにした話もいいところで、これじゃあスリーピングボード+マル卓時代に逆戻りですかそうですかって感じで、中原伸之さんが著書「日銀は誰のものか」で指摘していた「旧法時代に先祖帰り?」という現象ではないでしょうかという所でございます。次回の会合で審議委員の皆様におかれましては全員揃ってどんな提案であっても議長提案に反対されることを強く推奨致します^^(冗談ですよ、じょうだん)。別にマル卓ならマル卓でも結構なのですが、独立しているようで独立していない機関なんて責任の所在が一番ワケワカラン無責任な話ですから、まあちゃんとしていただきたいものですな。あ、報道は誤報ですよね(爆)。
で、報道は誤報なのでしょうが(笑)仮に事実だったとして話を続けると、「今週初めまでに」非公式打診があったということは日銀法改正まで持ち出してしまい、「与党からの圧力」を強く印象付けた中川幹事長(巨大与党の幹事長という立場は「日銀法改正」をする力があるものと見做されるので、他の与党議員が発言するのとは重みが違う)の発言は、もしこの経緯を知ってて言った(日銀法改正云々は日曜の発言なのでそこでは微妙ですが、月曜は「日銀法改正」には触れませんでしたが、発言は続いてましたわな)のならば、状況を徒に混乱させ、中央銀行が政治圧力に屈したという印象を作ってしまったということですし、経緯を知らないで言ってたのなら何か劇場に飛び込んできて勝手に大暴れした感じで何ともアレな話ではございます。あ、報道は誤報ですのでこれはあくまでも虚構のお話ですんで念の為。
まあそれはそれとして、この誤報(しつこい)がどのような経緯でJNNの取材するところとなり、ニュースになったのかという点は非常に興味のあるところでして、どうしてこんな話が出たのかは考察の余地があるかと存じます。情報管理体制どうなってるのよとか、そもそも金融政策の決定に関する理解に欠ける人がJNNの取材対象にいますなあってところですわな。うーむ恐ろしい話だ。
なお、誤報誤報とTBSとJNNに対して申し上げておりますが、是非JNN様におかれましてはこの報道について突っ込んだ追加取材をしていただきたいものと存じます、オッホッホ。
#「意見や情報の交換」で政府と日銀の連絡をどんどん取るのは非常に大事なことで、それに文句をつける気は1ミリもございませんので念の為付け加えておきます
○政府、日銀の景気認識の共有に関する素朴な疑問
手元にニュースのクリップが無いのでアレなのですが、中川幹事長が金融政策の現状維持に関してコメントを発表したそうで、その中で「政府、日銀は景気認識を共有して・・・」という話をしてたそうです。そりゃまあ政府と日銀が全然違う景気認識の元に政策運営をしてたらポリシーミックス無茶苦茶になるのでそれは正論なのですが、ちと素朴な疑問もあるんですよね。
と申しますのは、その政府の景気認識ですけれども、最終決裁権限者は大臣様なのでして、そこに「政治的ご配慮」が働かないための担保をどうするのよってお話でして、まあだからこそ中央銀行の独立性がどうのこうのって話があるような気もするんですが。
そこで思い出すのが2006年10月31日の参議院財政金融委員会における沓掛委員と尾身財務大臣の質疑応答でして、あたくし11月14日の駄文で国会会議録から引用して『政府が「大本営発表」をしても良いという超越議論』という小見出しでお話したんですよね。尾身財務大臣が経済企画庁長官時代のお話について尾身さんご答弁の部分を再掲致します。(ちなみに、同日の委員会会議録の冒頭部分(発言番号で6番以降です)ですので、割とあっさり見つかると思います)
『平成九年の秋に、私が、桜の咲くころは日本景気は良くなるということを経済企画庁長官のときに申し上げました。景気が正にどん底でございまして、言わば末期のがん患者が死の直前にあるというような景気の状況でございました。そのときに、更に景気の悪い状態が続くというようなことを私が責任者として申し上げたならば、いわゆるコンフィデンスといいますか、将来に対する展望が一層悪化して、それが心理的な影響を持って景気の崩壊といいますか、を加速するのではないかという実は心配がございまして、あえて向こう傷を負うのは承知の上で、いずれ良くなると言ったのでは印象が薄いものですから、桜の咲くころ良くなると申しましたら、三月になってもなかなか良くならない。』
まあ確かに「見通し」であって「現状認識」ではないかも知れませんが、政治的ご配慮は政治的ご配慮な訳でして、その後の質疑応答を見ても「ああいうことはしてはいけない」というような雰囲気はあまり漂ってきませんでした(会議録に当たって読むのが吉)訳なんですよね。
そーゆー事をつらつら考えておりますと、「政府と日銀の景気認識の共有」ってのはある意味正論は正論だけど、何か落とし穴もあるんじゃないのかなあって気がするんですよね。まあムツカシイ話ですけど。
#政治的ご配慮が今そこにあるとは申しておりませんのでこれまた念の為。
まあ景気認識と先行き見通しに絶対正しいものがあるのかというとこれまたややこしい話になるような気がしますのでそこまで立ち入らないで逃げ帰ってしまいましたが・・・(滝汗)
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2007/01/15
○で、さくらレポートですが
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/chiiki_rep/chiiki0701.htm
実際はこのURL先にリンクが貼ってある全文を読むと物凄く面白いのですが、まだ半分も読んでない(週末に中々読まないのは怠け者たるあたくしの仕様です)ので中身の話は兎も角。
表にあるように、全地域で持ち直し、回復、拡大の前回総括判断を維持しております。で、注目されるのは「12月以降に新しく出た材料」に該当する部分でして、表の続きに書いてあります要因分解の部分にはこのような記述がございます。
(個人消費)『なお、歳末商戦・初売りの状況をみると、食料品(お歳暮、おせち料理等)や高額商品等の販売が好調に推移するなど、多くの地域で前年を上回る盛況となった。』
(雇用・所得)『所得面は、労働需給の改善や好調な企業収益などを背景に冬季賞与も前年を上回っている中』
ということで、まあ理屈としては「年末に新たに明らかになった経済の状況は改善が続いており、緩やかな景気拡大という動きに変化はない」というのをサポートしてます。てか結果から逆(ry
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2007/01/12
○生活意識に関するアンケートがでてましたが
半年に一度の生活意識に関するアンケート
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/ishiki/data/ishiki0701.pdf
ちなみに前回(2006年10月公表)のURLは皆様の予想通りに
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/ishiki/data/ishiki0610.pdf
であります。
まあこれを細かく見て行くと中々味わい深いのですが、ちと時間切れの香りですので今回公表(12月調査)分について簡単に。
・景況感ダメじゃん
資料16ページ目からがアンケート調査の内訳を箇条書きしてるのでこっちの方が読みやすいと思います。で、その16ページ。
(引用開始)
問3. 現在の景気をどう感じますか。※今回新設
1 良い0.6
2 どちらかと言えば、良い13.2
3 どちらとも言えない40.7
4 どちらかと言えば、悪い35.6
5 悪い9.5
(ここまで引用)
・・・・・どう見てもマインドがダメダメです。本当にありがとうございました。
・しかも前回対比で全般マインド低下ということですが
(引用開始)
問4. 1年後の景気は、今と比べてどうなると思いますか。
1 良くなる10.3 ( 13.8 )
2 変わらない67.5 ( 65.7 )
3 悪くなる21.7 ( 19.7 )
問5. 景気の状況を考えたとき、現在の金利水準をどのようにお考えになりますか。
1 金利が低すぎる63.5 ( 64.2 )
2 適当な水準である23.0 ( 25.4 )
3 金利が高すぎる10.9 ( 7.7 )
(ここまで引用)
()内は前回調査の数字でして、このあたりを見ますと「フォワードルッキング」の精神から致しますと、マインドが悪化傾向にあるのですから、足元の数字が良くても慎重に対応した方が良いって話になりませんかねえと思う訳ですが。
金利水準にしても、低すぎるという方が物凄い勢いで多いですが、それにしても低いが減って高いが増えてるわけでして、そのあたりはご考慮頂きたいものです。
・物価に関しても・・・・
18ページから物価の質問ですよ先生。
(引用開始)
問12.あなたご自身の感じでは、「物価」は1年前と比べてどう変わりましたか。
1 かなり上がった7.5 ( 11.2 )
2 少し上がった39.0 ( 48.0 )
3 ほとんど変わらない45.5 ( 36.1 )
4 少し下がった7.0 ( 3.5 )
5 かなり下がった0.3 ( 0.2 )
問13. それでは、1年前に比べ現在の「物価」は何%程度変わったと思いますか。
平均値: +2.9 ( +4.2 )
中央値: +0.5 ( +2.0 )
問14. 1年後の「物価」は、現在と比べるとどうなると思いますか。
1 かなり上がる6.7 ( 14.4 )
2 少し上がる60.9 ( 65.0 )
3 ほとんど変わらない28.2 ( 18.9 )
4 少し下がる3.5 ( 1.4 )
5 かなり下がる0.2 ( - )
問15. それでは、1年後の「物価」は現在と比べ何%程度変わると思いますか。
平均値: +3.5 ( +5.1 )
中央値: +2.0 ( +3.0 )
(ここまで引用)
ちなみに、質問文の一部と、回答部分の注記を割愛して引用しておりますので、原資料に当たってご確認いただきたいのですが、足元の意識として「物価が最近上昇したなあ」というイメージが涌かず、先行きの物価上昇への意識もやや低下しているという結果になっているようです。とは言えまあ物価が下がると思ってる人はあまりいないのはまあ良かったですねという感じですが。
まあこのあたりの数字を見てると、消費者マインドは夏ごろから比較して悪化してますねえという所で、まあそうでしょうなという感じですが、個人消費の先行き見通しもどうなのよという結果でございました。
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2006/12/25
お題「決定会合議事要旨2つ」
金曜日には過去2回の金融政策決定会合議事要旨が公開されました。展望レポートを公表した10月31日分と先月の11月15、16日分です。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g061116.pdf(11月)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g061031.pdf(10月)
○11月会合時点でトーンダウンかよ・・・・
何はともあれ決定会合議事要旨を見て最初に「ほほう」と思ったのは11月の議事要旨の『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』部分の冒頭。
『経済情勢について、委員は、わが国経済は、10月の展望レポートに概ね沿って、引き続き、緩やかに拡大しており、先行きについても、内需・外需がともに増加し、企業部門から家計部門への波及が進むもとで、息の長い拡大を続けていくとの見方を共有した。』
ここまでは10月31日の議事要旨(ちなみにその前も)と同じ文言です。で、今回はここにただし書きが着くのでした。
『ただし、最近の経済指標に強弱双方の数字が混在していることについては、これまでのところ、展望レポートで示した経済のメカニズムについての評価を変えるものではないものの、今後の経済・物価情勢の展開をよくみていく必要がある、との見方で一致した。』
11月会合の時点で足元弱いって議論をしたいたということのようですよ。しかも「よくみていく必要がある、との見方で一致」ですよ一致。そんな議論してたのに何で地均しモードの雰囲気になったのかよというところでございますわな。足元の数字が悪いという認識があったから審議委員の皆様から妙に第2の柱への言及が多くなったのかも知れませんが、こんな議論になってると市場の人たちは知らんですから、「第1の柱を気にしないで第2の柱を持ち出してくるとは何たる利上げバイアス」となるのは(そもそも「日銀には利上げバイアスがある」と見てる人が多いんだし)仕方ないと思うんですけどねえ。
まーしかし11月決定会合後の地均しっぽい雰囲気とこの「ただし書き挿入」のギャップはもう脱力するしかございませんですな。
○個人消費について
11月の議事要旨より。
『個人消費について、委員は、増加基調にあり、先行きについても、雇用者所得の緩やかな増加等を背景に、着実な増加を続ける可能性が高いとの見方で一致した。』
『ただし、何人かの委員は、天候が回復した8月以降の販売指標は持ち直しているものが多いが、賃金の上昇が明確化しない中で、消費に力強さが窺われないのも事実であり、今後の動きを注意深く点検する必要があると指摘した。』
ちなみに、10月31日の議事要旨ではこのただし書きに相当する部分はこんな感じ。
『ただし、複数の委員は、このところの個人消費関連指標の弱めの動きがどの程度一時的な要因に基づくものかについて、今後も注意を払う必要があるとコメントした。』
で、10月13、14日の議事要旨ではこうなっております。
『複数の委員は、消費者コンフィデンスの足踏みや消費における高額品と安値品の二極化進行などを挙げながら、企業部門の好調さが家計部門へ波及するスピードは比較的ゆっくりとしたものであり、個人消費は着実に増加しているが、力強く増加しているとまでは言えないとコメントした。』
どう見ても時間を追うごとにトーンダウンしておりますわな。政策委員会の皆さん何だかんだと言っても国内景気は結構慎重にみてるじゃないですかという議事要旨なのですが、第2の柱をあれだけ持ち出している所はやはり気になると言いますか、「でも利上げ」って話になるのかよという疑問は払拭できません。
○で、何で「ギャップが存在」になるの?
先ほど「でも利上げ」って話になってるのかよと疑問があると申し上げましたけど、それは何故かといいますと、『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』の最後の方でこんな話をが出てるところだったりするんですけど。
『何人かの委員は、一部の経済指標に弱めの動きがみられたことなどを背景に、市場参加者と日本銀行との間で景況感に関するギャップが存在しており、今後、経済・物価情勢を点検していく中で、そうしたギャップについても検証を行ったうえ、市場との対話を密にしていくことが望ましいと述べた。』
まあ「何人かの委員」であって、別に一致した見解ではないのですが、この辺りを見てると日本銀行の景況感はまだまだカンカンの強気と思わせる(まさか市場の景況感が日銀よりも強いという話をしてることではアルマイト)ものでございます。
ここの辺りがどういう論理展開になっているのか実に謎です。
○市場機能回復に関して
同じく11月の議事要旨、当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要部分から。
『何人かの委員は、短期金融市場において安定的な金利形成が行われていることについてコメントし、その背景として、機動的なオペの実施に加え、市場参加者が新しい市場環境のもとでの取引に習熟してきたため、資金取引が効率的かつ円滑に行われるようになってきていることを指摘した。』
はあそうですか。
『このうち、複数の委員は、このように市場機能の回復が進展していることによって、市場金利が市場参加者の景況感等をより良く反映するようになり、今後、日本銀行は市場との対話を一層建設的に行っていくことが期待できると付け加えた。』
対話を建設的に行っていった結果がアレでございますかそうですか。
#ええ、もうそれ以上の悪態をつく気力も起きませんよ
○トーンダウンしてるのにそうなる理屈が判らんのですが
同じ部分の先行きの金融政策運営に関してですが。
『先行きの金融政策運営について、委員は、今後とも、経済・物価情勢を丹念に点検し、経済・物価情勢が展望レポートで示した見通しに沿って展開していくと見込まれるのであれば、金融政策運営についても、経済・物価情勢の変化に応じて徐々に政策金利を調整するという方針に沿って進めることが適当であることを確認した。』
『この間、一人の委員は、次回の会合以降、展望レポートで示した見通しに沿って経済・物価情勢が展開していることを、より確信を持って判断できるのであれば、政策変更を躊躇なく検討すべきであると述べた。』
さっき『今後の経済・物価情勢の展開をよくみていく必要がある、との見方で一致した。』って議論をしてたのに何故そうなるという感じですが、まあ一人の委員様のお話ではありますが、こういう話が出ているということで、今後も経済指標が好転してきたら利上げの議論は一気に近づくということは変らないと思います。
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2006/12/22
○金融政策決定会合の日程
6月までの金融政策決定会合の日程が前回の会合で決定されておりまして、日程が公表されておりました。
http://www.boj.or.jp/type/schedule/s061219.htm
ふむふむ、金曜に最終日が来るのは6月と4月の2回目だけということで、日程は一応考えてますな(^^)。
市場金利急騰への配慮のためにロンバート金利を0.4%にしてますけど、次回の利上げの際にまた駆け込みロンバートが炸裂してエライコッチャになるものと思料されますので、決定会合のケツは金曜を避けるようにしております。本当は「短期金融市場の機能も回復してきたので、避難的措置で行っていたロンバート金利の0.4%を0.5%に引き上げる」ってのをどっかでしらっとやっておけば良かったのにと思うのですが、何せ利上げ直後の会見で総裁自らがご丁寧に選択肢を排除しちゃいましたので不可能でございます。残念無念。
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2006/12/21
○個人消費の先行き見通しがやや下方修正されてました
昨日ご紹介した金融経済月報の基本的見解(要旨とか言ってましたね、すいません)では、個人消費についての現状判断に一言入りましたなあというお話をしまして、『ただまあ月報レベルでは下方修正というよりは但し書きをつけというべきもの(基調判断そのものが「増加基調」のままだから)であって、「下方修正」と見るのは過大評価ではないかと存じますので要注意』と申し上げたのですが、全文を読むと実は先行き見通しも下方修正しているのでありました。
全文のURLはこちら(PDFで69ページあります)→
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/data/gp0612.pdf
で、11月分はこちらです→
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/data/gp0611.pdf
この中で個人消費の先行きに関しては、12月分では本文9ページ(ファイルだと10ページ目)、11月分では本文7ページ(ファイルだと8ページ目)に記述がございまして、このように変化しています。
『先行きの個人消費については、雇用者所得の緩やかな増加等を背景に、増加基調をたどると考えられる。』(12月)
『先行きの個人消費については、雇用者所得の緩やかな増加等を背景に、着実な増加を続ける可能性が高いと考えられる。』(11月)
とまあ並べて見るとトーンが下がっていることがお判りになるかと存じます。
では何で昨日はあたくし先行きの判断変化ないという話をしたかという言い訳をしますと、基本的見解では先行き見通しに関しては「国内民間需要」という形で括っていまして、そこでは『引き続き増加していく可能性が高い』という表現が継続してたんですな。
ということでございますので、目立たない形ではありますが、個人消費の先行き見通しの強気トーンがやや後退しているというお話でございました。
ちなみに現状弱含みの要因に関しては次のところでさらっと。
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2006/12/20
○金融経済月報:個人消費の現状判断をやや変更
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0612.htm
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0611.htm
(例によって上が12月分)
で、ご案内のように、現状判断部分で個人消費がやや伸び悩んでいるという事をやっと認めましたなあということでございます。
確かにここもとの審議委員の講演でも個人消費関連の経済指標が冴えませんという話は多かったので、こういう風になっても不思議では無かったんでしょうけれども、地均し(というのが悪ければ、第2の柱を全面に押し立てた利上げロジック満載の情報発信)を散々した挙句に決定会合は全員一致で現状維持だわ月報は消費の現状判断に弱めのフレーズ入れるわ、会見ではなおトーンダウンだというのは何だかねって感じです。
正直言って「市場との対話」をしようとして結局のところ「市場をかき回して大騒動を起こして元の木阿弥」と逝ったところでございまして、総裁と水野審議委員イイカゲンにしやがれと思ってる市場の中の人は結構いると思いますけど。
で、くだんの部分ですけど。
『雇用者所得も緩やかな増加を続けており、そのもとで個人消費は、やや伸び悩みつつも増加基調にある。』(12月)
『雇用者所得も緩やかな増加を続けており、そのもとで個人消費は増加基調にある。』(11月)
ということでして、やや「伸び悩みつつ」も「増加基調」という増加基調の旗は降ろしてないのですが、項目が「個人消費」という景気拡大ロジックのキモになっている部分なだけにインパクトがございましたなあという所です。ただまあ月報レベルでは下方修正というよりは但し書きをつけというべきもの(基調判断そのものが「増加基調」のままだから)であって、「下方修正」と見るのは過大評価ではないかと存じますので要注意(ちなみにブルームバーグニュースのヘッドラインでは「下方修正」とは書いてませんでした。時事とロイターは存じませんが)。この調子の個人消費指標が続くとどっかで本格的に下方修正になるんでしょうけれども。ナムナム。
他の部分ですけれども、短観を受けて企業の業況感に一言『業況感も良好な水準で推移する中』と入っている以外で違うのは国内企業物価の部分ですな。
・国内企業物価の現状判断
『国内企業物価は、原油価格の反落が影響し、足もとでは3か月前比でみて横ばいとなっている。』(12月)
『国内企業物価は、原油価格の反落が影響し、上昇テンポが鈍化している。』(11月)
・国内企業物価の先行き見通し
『国内企業物価は、原油価格反落の影響がなお残ることから、目先、弱含みないし横ばいで推移するとみられる。』(12月)
『国内企業物価は、当面、原油価格反落の影響が残ることから、上昇テンポの鈍化が続くとみられる。』(11月)
ということで国内企業物価に関しては弱めになっております。
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2006/12/18
○短観をいつもと同じようにチェック
日銀短観が公表されました。「予想通りなら大してインパクト無いでしょ」と予想してたら、利上げ予想時期が1月に寄せられたインパクトが割とあったのが少々意外でございました。てかまた外した訳ですが(こら)。
短観に関しては本職の方々がレポート出してると思いますので、あたくし如きの出る幕は無いのですが、駄文書き出してから毎度同じパターンでチェックしてるので今回もチェックでございます。ちなみに、短観の1ページ目を見たときの印象は「こりゃ良い数字ですなあ」でございましたので念の為。
・3か月前には先行き下向きでしたが・・・・
ずーっとチェックしてるのが「前回調査での先行き予測が実際にはどうなったか」というお話です。3か月前の現状判断DI、先行き予測DIが今回どうなったかというのを並べて見ましょう。
(9月時点) (12月時点)
現状→12月予測 現状→3月予測
製造業大企業 +24→+21 +25→+22
製造業中堅企業 +14→+11 +17→+12
製造業中小企業 +6→+7 +10→+5
非製造業大企業 +20→+21 +22→+20
非製造業中堅企業 +5→+4 +4→+2
非製造業中小企業 ▲8→▲9 ▲6→▲10
で、あたくしが毎回注目しているのは上記数字で言うと真ん中の2つの数字でございますが、今回もまた殆どのセクターで「前回の先行き予測よりも好転」しておりますわな。ついでに申し上げると、前回時点では多くのセクターで「先行きは今よりも悪化(というか減速というか)する」という予測DIとなっておりましたが、蓋を開けてみれば殆どのセクターで「9月時点よりも現状判断が好転」しておりますわな。
今回の調査でも先行き予測DIが現状判断よりも小さい(またはマイナス拡大)数値になっておりますが、これは景気が緩やかに拡大している(まあ企業部門はそうでしょ)ここまでの局面での短観の仕様みたいなもんでして、ややあたくしの妄想と毒も入りますけど、先行き予測DIが現状より好転するような結果が出るようなら「天井の時には皆さん揃って強気」っていう奴になるんじゃないかなあとも思うのでした。まあ景気弱気派のストラテジスト様やらエコノミスト様(区別が良く判らんが)におかれましては「先行き予測DIが下を向いている」というのを鬼の首を取ったように宣伝する向きもありますが、残念ながらこれは仕様ですのであまり注目しない方が吉かと(^^)。
・雇用判断DI
こちらも最近見るようにしたのですが、こっちは今回も「前回予想するほど雇用の不足感が拡大していない、だけど不足感拡大」という結果になっております。でもどうもこれも短観の仕様のようです。短観概要の6ページ目です。
(9月時点) (12月時点)
現状→12月予測 現状→3月予測
製造業大企業 ▲2→▲6 ▲5→▲7
製造業中堅企業 ▲5→▲7 ▲7→▲8
製造業中小企業 ▲7→▲10 ▲8→▲9
非製造業大企業 ▲13→▲16 ▲15→▲19
非製造業中堅企業 ▲12→▲16 ▲12→▲17
非製造業中小企業 ▲11→▲13 ▲10→▲13
過剰−不足で数字が出てくるので、マイナスのほうが人手不足感が強いっていう意味では良い数字だと思います。
・証券業の業況判断DIはいつ見ても笑えます
7ページ目にある「金融機関の業況判断等」のコーナーで証券業のDIを見ると今回もまた実に香ばしい。
(9月時点) (12月時点)
現状→12月予測 現状→3月予測
証券業 ▲4→+36 0→+40
前回予測がここまで豪快に外れまくっているのは短観概要の1ページ目を見ても見当たらない次第。てかおまいら3月予測でそんなに好転すると思ってるなら冬季賞与のファンドを何でそんなに減らしたのかと小一時間問い詰めたいですが(というのは半分冗談)、いくら市況産業とは言え、この「先行きの楽観予測が見事にダメダメ」というのを見ると、「大本営発表」という文字を大書して証券会社の経営ナンチャラ部の人たちにご進呈申し上げたくなりますな。マッタクモウ。
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2006/11/22
○10月の決定会合は景気楽観も・・・・
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g061013.pdf
10月に行われた決定会合議事要旨に関しては相場に特に影響を与えませんでした。まあその内容は当日の総裁記者会見内容やらそれ以降の総裁講演などに反映されていますんで、今になって反応するような新しいネタが出てるとそれはそれでちとビックリではありますけどね。
景気に関する見立てに関しては本文5ページ目(ファイルだと6ページ目)以降の「V.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要」にございますが、全部見てるとオワランチ会長になりますのであたくし「ほほー」と思った所だけ。
・景気に関する見立て
総論的な部分として「国内民間需要について」という所では引き続き基本的なシナリオには変化なしということでして、ここの記述は前回と同じ。
『国内民間需要について、委員は、企業部門の好調が維持され、それが家計部門に波及しているとの認識を共有した。』
これを項目別に展開した個人消費の部分ではこういう見立て。
『個人消費について、委員は、増加基調にあり、先行きについても、雇用者所得の緩やかな増加等を背景に、着実な増加を続ける可能性が高いとの見方で一致した。何人かの委員は、8月以降の指標に改善の動きを示すものが多かったことからみて、7月の指標における弱めの動きについては、天候不順など一時的な要因の影響による部分が大きかったと考えられると述べた。』
ほうほうさようでございますか。なお続く。
『複数の委員は、消費者コンフィデンスの足踏みや消費における高額品と安値品の二極化進行などを挙げながら、企業部門の好調さが家計部門へ波及するスピードは比較的ゆっくりとしたものであり、個人消費は着実に増加しているが、力強く増加しているとまでは言えないとコメントした。』
「複数の委員」がこのように指摘していますが、前半では「9月の決定会合時点で見られたリスクはやはり一時的でしたね」という風になって相殺されている感じですかね。9月の議事要旨ではこんな記述になっています。
(9月8日の議事要旨から)
『個人消費について、委員は、増加基調にあり、先行きについても、雇用者所得の緩やかな増加等を背景に、増加を続ける可能性が高いとの見方で一致した。何人かの委員は、旅行や外食などのサービス関連消費が増加を続けている一方で、小売関連指標やマインド指標には弱めの動きもみられる点に言及した。これらの委員は、こうした弱めの動きは、天候不順など一時的な要因の影響による部分が大きいとみられることを指摘したうえで、そうした要因が剥落する今後の個人消費の動向を注視する必要があるとコメントした。』
『また、多くの委員は、企業部門の好調さが家計部門へ波及するスピードについて、これまでのところは比較的ゆっくりとしたものになっていると述べた。』
先ほど引用した10月の要旨と比較すると、9月で指摘された現象(=7月の数字が弱い)は問題なかったけど、新たな指摘(=消費者コンフィデンスの足踏み等)が出ていますってことかと思います。
一々引用しませんが、景気の見立てに関する各項目に関して「かくかくしかじかの状況もありそうですが、なあにリスクは小さいぜ」というような「個別委員の指摘」部分がちょこちょことありまして、全体として基本的には相変わらず絶賛強気を維持しているように読めるのですが、ヘッジクローズも見えますなあというのがあたくしの印象でございます。
・ロンバート金利の議論があったんですかな
本文9ページ目の「W.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要」ですけれども、その中にロンバートの話が。
『る委員は、補完貸付の利用が期末日に増加したことについて、補完貸付の適用金利(基準貸付利率)がやや低すぎるのではないかとの問題提起を行った。』
『別の委員は、ゼロ金利を解除して初めての期末日となった9月末においても短期金融市場が安定的に推移したことには、機動的なオペの実施に加え、補完貸付制度の存在が大きいと述べた。』
ということで、ロンバートの話が出ていたようですが、まあオペレーションがかなり上手く機能しているので、ロンバートはあくまでも期末日などのような限界的な資金需要が発生する時に補完として機能するって形になりましたので、まあ後者の意見に賛成って所ですけど、大昔は「末初レートが幾らになる」ってんでショートタームの金利が上ったり下がったりしてそれはそれで市場機能といえば市場機能(単に雰囲気だけで動いてたような気もしますが、爆)ではありますので、そのあたりは匙加減の問題でしょうな。
で、この「補完貸付と誘導目標金利とのスプレッドは幾らが適正か」って話ですが、まあこれって具体的に「○%がイイ!」っていう数字よりも、その時の短期誘導金利目標の位置によって変ってくるもんだと思います。誘導金利が0%の時と3%の時では同じ幅のスプレッドでも大違い。
・・・で、次回利上げになった時は0.25%のスプレッドになるんじゃないですか?
・雑談ですが思わずこの前のインタビューを思い出してしまったんで
金融面の現状見立ての部分でこんな話がございました。
『別の一人の委員は、実質実効為替レートは、プラザ合意前後の水準まで円安化していると指摘した。』
えーっと、そういえばどこかの政策通な副大臣様がどこぞのインタビューで同じ話をした後に『いよいよ米国は来年から利下げのトレンドに入るかもしれない。そういう時に利上げをしたら、またプラザ合意の際の超円高の二の舞を繰り返しかねない。』なんて話をしてましたが、ここからの「超円高」ってどんな超円高になるのか小一時間問い詰めたくなって苦笑致しました。
#ってか超円高って1ドル100円割れの時代を指すと思うんですが
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2006/11/17
お題「金融経済月報、総裁記者会見」
米国株式市場と債券市場の後講釈をするのに、背景になる景気というかインフレに関する説明が物凄い勢いで矛盾しているモーサテの番組編集はもうちょっと物を考えて頂きたいものです。
○先に総裁記者会見
昨日は総裁のスケジュールの関係上会見時間が短かかったので、ブルームバーグの会見中継録画(というか実質音声だけですが)を放送を全部聴く時間がございました。
で、聴いた印象ですが、「総裁随分おとなしいな」というところでございました。まあさすがにこれだけ散々事前に注目注目と言われただけに変な話をしなくて良かったですねという所ではございますが、別の言い方をすれば金利市場の方が既に12月か1月の利上げですなあっていう価格形成になっているのでこれ以上地均ししても軋轢だけ増える結果になるので、余裕綽々という心境なのかもしれませんし、その辺までは判らん(のは当たり前ですが)。
で、会見内容が流れている間に債券先物はちょっと上昇(その後下がったりして結局小動きだったんですが)したようですが、まあそれだけ総裁のタカ発言に警戒が強かったということなんでしょうか。どうもよく判らんです(てかそもそもイブニングセッションですから板薄いですし)。
記者会見を聞きながら適当に取ったメモと、16日18時05分配信のブルームバーグニュースからまあ気になったくだりを少々。
・12月利上げの可能性について
『いかなるタイミングも排除して考えない、というのが、われわれは予断を持たない、ということの定義と一番平仄が合っている』
・財政健全化のスケジュールに絡めて、金融政策正常化のスケジュールのタイムスパンはどうなっているかという趣旨の質問に
『多分、金融政策というのは、そういうカレンダーをにらんで、日にちをにらんで見通しを立てると必ず失敗するのではないか。経済は本当に生き物で、そんなに予定通り動いてくれない。だから、それはやはり情勢を丹念に点検しながら、十分フレキシブルに対応していかなければならない。そうでなければ、予定表の通り行動すれば、景気の芽を摘んだり、逆に景気を過度に刺激したりするリスクの方が大きいのではないか。』
まあこんな感じの質疑応答で、金融政策のタイミングという問題に関する言及は恐らく意識して控えめにしてたんでしょうな。つーか地均しとかすんじゃねえと思うのですけど、苦笑。でもまあ景気に関しては「基本シナリオのままよん」って言ってるのですな。
・金先市場を引き合いにだして、「市場が日銀のシナリオ通りに動いてきたと考えてますか」という質問をした人がいたんですが(^^)
『市場は新しい指標にいろいろ反応しながら、引き続き基調判断を固めようとして、市場自身も努力を続けている状況だと思う。日銀の方では、これまでのところ、さまざまな現象を分析して、展望リポートでお示ししている基本的なシナリオから経済・物価の動きがずれ始めているとは、われわれはみていない。市場の方は今後とも新しい指標にかなり敏感に反応しながら織り込んでいくということだと思うので、市場が判断を固めつつあるとはまだ言えないのではないかと思う』
何か判ったような判らんようなお答えではございますが、ここの発言とか聴いて(って結構聞き流しながらでしたが、爆)た感じだと、まあ総裁余裕モードって印象をあたくし的には受けましたが。
とまあ(非常にちょっとだけですが)総裁記者会見の一部を拾いましたけれども、まあベンダーのヘッドラインと債券先物の反応を見ても判るように、当初の印象は「思ったほど突っ込んだ話が無かったですねえ」というものだったのですが、一晩明けてモーサテを見ると「日銀総裁、年内利上げを否定せず」ってなってまして、「12月の決定会合までこんな経済指標が出ますが、この数字を見て12月に利上げをするのではないか」というようなトーンのお話になっておりましたですな。メディアがせっせと鉦や太鼓を打ち鳴らすの図になっているような気が致しますが・・・・
○金融経済月報は今月も変化なし
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0611.htm(今回)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0610.htm(前回)
紙に打ち出して2枚重ねてすかし読みをするのが比較するのに速いというくらい同じ文章が続いております(^^)。
・景気の現状判断
『わが国の景気は、緩やかに拡大している。』から始まる現状判断ですが、10月分には短観を受けた企業の景況感に関する言及がありまして、この部分が今回削除されていますが、これは順当。
・景気の先行き判断
これも相変わらず同じ。記者会見でも福井総裁は「バランスの取れた景気拡大が続く」という話をしてました。本当かよというツッコミはございますけれども。
・物価の現状判断
(今回)『国内企業物価は、原油価格の反落が影響し、上昇テンポが鈍化している。』
(前回)『国内企業物価は、既往の国際商品市況高などを背景に、上昇している。』
ということで原油価格の反落について言及してます。
・物価の先行き判断
(今回)『国内企業物価は、当面、原油価格反落の影響が残ることから、上昇テンポの鈍化が続くとみられる。』
(前回)『国内企業物価は、最近の国際商品市況の反落が影響し、当面、上昇テンポが鈍化していくとみられる。』
まあ変らんといえば変らんのですが、影響が「残る」って所に「影響は長続きするもんじゃないですよ」という気持ちがこもっているのではないかと言い出すあたくしは裏読みのし過ぎですかそうですか。
・金融面
これは市場実勢に関わる部分だけ前回と表現が違いますが、現実に起きている話の部分なので特筆する話ではないかと存じまして引用割愛。
・・・・という訳で、まあ見事に今月も変化なしという月報でございました。
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2006/11/02
お題「総裁記者会見」
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken/kk0611a.pdf
○会見内容の前にあたくしの見立てでも
昨日展望レポートをご紹介したときに申し上げましたが、ここもとの経済指標を受けて「現状の金利水準が長期化するという見方が固定化するのはイクナイ!」というニュアンスが一貫しているように見えました。ということで、あたくしの見立てとしては(1)10−12がマイナス成長とかになったら(追記:よく考えたら3QのGDP出るのはずっと先ですね)話にならないので年度内利上げはかなり難しい、(2)先月末に出た経済指標の水準だと、さすがに目先の利上げは難しく、(3)年末に掛けての経済指標がそれなりにちゃんと好転して短観が横ばい圏以上だったら「日銀の標準シナリオに則った金利水準の調整」って話で1−3に利上げできるかなあ、くらいに考えております。
リスク要因としては昨日も申し上げましたが、外部から妙な茶々が入ることでして、変に「利上げしたい日銀」VS「利上げ許さんという政府与党」などという対立をフレームアップされちゃうと、中央銀行の独立性を守るとか変な方向に話が進んで、無理気味な利上げをしないと「政治圧力に屈した」となるような状況に追い込まれるなんて最悪の事態は一応妄想しているあたくしなのでした。
それではまあそんな妄想はさておいて会見から。
○最近の経済指標について
最近の経済指標についてどう考えるかという質問に対して2ページ半ほどの量の回答がございまして、まあこの辺が景気に関する見立てとしてのポイントかと存じます。会見要旨の6ページ目から8ページ目あたりです。
『短期的には、米国経済の特に住宅市場を中心とする調整が現実に始まり、少なくとも住宅市場については事前の予想よりも早く調整が進んでいるということをどう理解するか、あるいは国内的にも、最近の消費者物価指数、生産、あるいは家計調査の指標は、少し弱めの数字が出ているのではないか、これらのことが私どもがより短期的に経済・物価の動きをみるときの判断に強い影響を及ぼすものであるかどうか、この面からも十分な点検が必要です。』
十分な点検が必要ということで、まあ余裕を持って対応の感じが出ているとは思うのですが、何で金先は火曜日の引け後に下がった所から戻らんのかなあ。まあ色々見立てはあるだろうけれども・・・・
『米国経済については、先程のご質問に対して答えたことにほぼ尽きています。GDP統計が低く出ましたけれど、今のところ米国経済のソフト・ランディング・シナリオの枠内で動いており、このシナリオが全うされる可能性がまだ相当程度残っているということであります。』
先ほどの質問の引用は割愛しますが、住宅投資の落ち込みについて事前想定よりも厳しいという認識をして、今のところは軟着陸シナリオとしながらも、『現実の軟着陸のシナリオを、これから歩きながら描き直さなければならない部分が残るかもしれないと思います。』としておりまして、割と慎重。
そのため「このシナリオが全うされる可能性がまだ相当程度残っている」という必ずしも先行き楽観じゃない表現になっていると存じます。
国内に関しては、直近の指標についてコメントしてます。
『9月の消費者物価指数の数字が+0.3%から+0.2%に0.1%ポイント下がりましたが、石油製品や帰属家賃の寄与度が下がったということであります。しかし、東京の指数がひと月先取りしながら出ています。東京の10
月の計数などから類推しますと、物価のトレンドに変化が生じたというようには見ていないということです。』
ということで物価についてはまあフツーのコメントかと。生産に関してのコメントは長いのですが、電子部品に関する部分を付け加えたのが注目される所かと。
『あえてひとつ付け加えれば、9月の計数の中で特に電子部品・デバイスの在庫が若干跳ね上がっています。経済全体としては出荷と在庫のバランスは比較的良くとれたまま推移していますが、電子部品・デバイスに限定してみれば、9月は出荷と在庫のバランスが若干崩れ、在庫が跳ね上がったという印象を持っています。これは一体どういうことが背景にあるかということはもう少し詳しく突きとめたいと思っています。』
『特殊要因であれば特殊要因として理解すればよいのですが、いわゆるITの循環的調整サイクルみたいなものがこの中に潜んでいるとすれば、景気判断の中で重要なファクターとしてとり入れていかなくてはなりません。』
IT関連の調整サイクルという話は、金融経済月報などでもリスクシナリオとして時々登場するものですんで、本件に関しては見極めをしたいということなのかと思いますが。
家計調査に関しては率直に判断に迷うとコメントしてますな。
『本日公表された家計調査については、世帯の支出額の前年比が−6%と、率直に言って、私どもにとって若干パズリングな(判断に迷う)難しい数字が出たと思います。公表されたばかりで内容をよく分析できておりません。今後、きちんと分析したいと思っております。』
『ただし私どもは、これまでの色々なデータを全部総合してみると、個人消費がそんなに弱いとは思っていませんし、逆にそんなに強いとも思っていません。(中間割愛)本日公表の家計調査の数字がそうした私どもの判断を根本的に塗り替えるものであるとは今のところ思っておりませんが、よく分析したいと思っています。』
と基本判断は変えないで済むとは思いますがとなっていますが。
最後のまとめのところではこうなっておりますので、まあ白旗モードではございませんですよって言いたいんでしょうな。
『そうしてみますと、物価、個人消費、鉱工業生産、米国経済をはじめ、短期的にみても私どもの情勢判断を今のところ大きく塗り替えなくてはならないような要素は出てきていないと考えています。』
○でもまあ「政策金利の調整」スタンスは不変でありますので
こんな質問がありました。
『(問)上振れリスク、下振れリスクともに等しいという趣旨のご発言がありました。リスク・バランスがとれているとすれば、今後政策変更で追加の利上げを検討する際には、例えば上振れリスクが少しでも強まった時に政策変更を具体的に検討するのか、それともリスクが均衡している状態とは切り離して金利水準を調整することがあり得るのかについて、お考えをお聞きしたいと思います。』
回答はこのようになっています。
『(答) リスクの均衡が崩れ始めるということは、私どもが第1の柱でお示ししている標準的なシナリオが狂う可能性が出てくるということですので、その場合には、先々の金融政策の運営方針についてより深い検討を重ねていく必要があります。』
ここまでは当たり前の話。次の部分は展望レポートの第2の柱にリスク要因として挙げられていた「経済実態を反映しない低金利が長期化するという認識が発生する」という点を考慮に入れればこういう話が出てくるのは当たり前だけどこれもポイントですな。
『それでは、両サイドのリスクがずっとバランスのとれたまま推移すれば金利の変更の必要性がないのかというと、そうではなく、やはりあります。なぜならば、私どもの標準的なシナリオは、物価安定のもとで息の長い景気回復が続くとしていますが、政策金利がある程度上昇するということを前提としたシナリオだからです。政策金利のある程度の上昇については、市場関係者も程度の差こそあれ、それを市場金利で表現しており、その中で先行きの経済を見極めようとしています。』
『従って、望ましいシナリオ通り、つまり展望レポートの第1の柱でお示ししたシナリオ通りに経済が推移する場合に、ゆっくりと金利水準の調整を行っていくことは整合的です。むしろ調整をしないと、政策的に不突合な部分を生じさせることになると思って頂きたいと思います。そういう意味では非常に長い時間をかけてゆっくりと、と今まで申し上げてきた政策スタンスの基本的な考え方は変わっていないということです。』
ということですんで、まあ今後は「日銀の描いている標準的シナリオ」がその通りに進んでいるのかってのを経済指標見ながら判断していく作業が大事じゃないかと思うのでした。その点検のポイントがどこかという話は本職の方が詳しいと思うのですが(と、肝心な所で逃げを打つあたくし)。
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2006/11/01
お題「展望レポート、どちらかと言うとトーンダウンじゃないのかと」
ネタはいつでもまとめて来ます、ということで他にもお話あるのですけれども、とりあえずは展望レポートをメインで、総裁記者会見はとりあえず現時点で手元にある資料などから(続編は会見要旨が出てから)ということで。
まずは展望レポートです。
今回分→http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/tenbo/gor0610.htm
4月分→http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/tenbo/gor0604.htm
○長くなりそうなので先にまとめてみます
まず全体的な印象ですが、利上げに対する前傾姿勢が今回の展望レポートからは感じられません。4月の展望レポートでは物凄い勢いと言うか意気込みを感じたのですが、今回に関してはヘッジクローズ入りで、まあ一応強気姿勢は継続しておきましょうって感じがします。
ちと話が脱線しますが、総裁記者会見の内容が「利上げに積極姿勢」と取られて引け後に中短期ゾーンやら金先やらがヘロヘロになっておりましたが、こちらも記事(あたくしの出典はブルームバーグ)をよく見てみると両論併記でニュートラルって感じ。ただまあ相変わらずヘッドラインで誤解してみたり、日本語ではニュアンス伝わるけど英語ニュースになるといきなり強烈なタカ発言をしているように見えたりという事も相まってあーゆー相場付きになったんでしょうかね。まあ海外ファンドの皆様方がせっせと東京市場で損こいてお金を落としていただくのは大歓迎でございますが(またそれか)。
ということで、引け後の反応はちと過剰反応というかミスリードに引っ掛かってるように思えます。前回の展望レポートではもう直ぐにでも利上げしそうな論法でしたが、今回は「まあ様子見ながらチャンスを待ちますか」というような雰囲気を感じます。ただまあ「もう利上げは無理ぽです」という白旗降参モードではなく、「機会があれば現在の緩和的な金利水準の調整、要するに利上げを行いますよ」という旗は降ろしませんよという所でしょうか。あんまり利上げに対して前のめりな印象は受けませんでした。
#現状の水準が本当に緩和的なのかというツッコミはここでは措く
では個別にどの辺がどうなのかというのを前回と比較してみたりしながら申し上げたいと存じます。
○いわゆるダム論の実現蓋然性に関して
『前回(2006年4月)の「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)で示した「経済・物価情勢の見通し」と比べると、これまでのところ、企業部門は幾分強め、家計部門は幾分弱めとなっているが、全体として概ね見通しに沿って推移している。』
というのが冒頭にございして、先行きに関しては・・・
『先行き2006年度後半から2007年度を展望しても、内需と外需がともに増加し、企業部門から家計部門への波及が進むもとで、息の長い拡大を続けると予想される。』
というのがメインシナリオでございます。まあいわゆるダム論って奴ですが、さてその前提条件として企業部門から家計部門への波及はどうなのよという見込みは、直後にある前提の第3部分に書かれています。曰く、
『第3に、雇用者所得や配当の増加などを通じて、好調な企業部門から家計部門への波及が進んでいくとみられる。雇用者数は着実な増加を続けるとみられる。賃金の上昇は、これまでのところ、企業の根強い人件費抑制姿勢などから緩やかであるが、労働市場の需給が着実に引き締まってきていることを踏まえると、いずれは上昇が明確になる可能性が高い。こうしたもとで、個人消費は、着実な増加を続けるとみられる。』(これが今回の展望レポート)
前回の展望レポートでこの部分どう書いてあったかと申しますと、
『第3に、企業部門から家計部門への波及がより明確になってくるとみられる。企業部門の好調の影響は、雇用や賃金の増加に加え、配当の増加や株価の上昇を通じて、家計部門にも波及している。そうしたもとで、個人消費は、着実な増加を続けると予想される。住宅投資も、都心部などで地価が上昇に転じる中で、金利の底値感が台頭していることもあって、緩やかな増加基調を辿る可能性が高い。この結果、家計支出は、国内民間需要の主たる牽引役になっていくとともに、その堅調が企業部門にフィードバックして、前向きの循環メカニズムが維持されていくと考えられる。』(これは4月の展望レポート)
ざっと見て前回のほうがトーンが強いという事が窺えるかと存じます。まあ書き方がくど・・・じゃなくて丁寧なのは前回までの仕様(本石町日記さんの見立てでは白川方明前理事の影響だそうです)ですのでそこの所は措くとしましても・・・・
個人消費の見通しに関して「着実な増加を続けると予想される」が「見られる」と微妙に表現を変えてみたり(「予想される」の方が意思入ってるでしょ)、「家計支出は国内民間需要の主たる牽引役」だの「前向きの循環メカニズムが維持」だのというような威勢の良い部分がさっくりと無くなっておりますわな。トーンダウントーンダウン。
で、肝心の賃金に関しても、前回はもう賃金が上昇するのは確定事項のような勢いだったんですが、今回は「いずれは」上昇が明確になる「可能性が高い」と何気にヘッジクローズ入り。まあ確かに4月のシナリオ通りに景気の牽引役が家計にバトンタッチされているかと言えば、誠に心許ないものがございますので、このトーンダウンも当然とは存じますが。
○しらっと入るヘッジクローズ
今回何気にヘッジクローズが散りばめられている印象が。
・海外経済の前提に関して
『米国経済は足もと減速しているが』
・設備投資の前提に関して
『もっとも、企業が投資採算を厳しく見定める姿勢を堅持している点を踏まえると、』
(前回レポートでは『グローバルな競争環境も意識した上で、基本的には、慎重な姿勢を続けてきており、』でして、書き方のトーンがちと後退してる印象)
・先行きのリスク要因でIT関連の在庫調整に言及
『海外経済が予想外に減速した場合などには、供給拡大のペースが速いIT関連財などで在庫調整が発生する可能性もある。』
この点に関しては、記者会見でも触れられていました。
○上振れ要因やリスク要因
経済見通しの上振れ、下振れ要因に関して今回も列強しているのですが、まずは順番逆になりますが今回「第2」の要因として示しているものについて。
『第2に、企業の投資行動の一段の積極化である。(中略)もっとも、極めて緩和的な金融環境のもとで、企業が、期待成長率や資金調達コスト・為替相場見通しなど、採算に関する楽観的な想定に基づいて投資を一段と積極化する場合には、成長率が一時的に大きく上振れる反面、その後は資本ストックの過剰な積み上がりの反動が生じ、調整を余儀なくされる可能性がある。』
前回レポートではこれが第3だった(第2は在庫調整)のですが、リスク要因として指摘しているロジックは同じように「投資行動が積極化しすぎると反動のリスクあり」という話です。
でも、先ほど引用した設備投資に関する指摘で「企業の設備投資に対する姿勢は採算に厳しいスタンス堅持」という認識を示し、4月時点よりもちと厳しい目に見ているのではないか(ここはあたくしの読んだ印象なので必ずしも正しいか判らん)という点からすると、この上振れ要因はちと苦しくなってるのかなって思うのでした。
また、金融政策運営の第2の柱として指摘している『より長期的な視点を踏まえつつ、確率は高くなくても発生した場合に生じるコストも意識しながら、金融政策運営という観点から重視すべきリスク』に今回も挙げている「金融政策の刺激効果が強くなりすぎるリスク」ですが。
『仮に低金利が経済・物価情勢と離れて長く継続するという期待が定着するような場合には、金融行動・投資活動などを通じて、中長期的にみて、経済活動の振幅が大きくなり、ひいては物価上昇率も大きく変動するリスクは意識する必要がある。』
前回はこの部分こうなってました。
『現在、需給ギャップの水準がゼロ近傍にあることから、中長期的にみると、経済活動の振幅が大きくなり、ひいては物価上昇率も大きく変動するリスクは意識する必要がある。』(これは4月の展望レポート)
前回の言い切り体(とでも言うのか)から比較してトーンダウンしてますなってのに気が付くとは思います(政策金利水準が違うのだからトーンダウンしててもおかしくはないとも言える)が、もう一つ注目されるのは今回指摘している『低金利が経済・物価情勢と離れて長く継続するという期待が定着』という条件でして、あくまでもフォワードルッキングの旗は降ろしませんって言ってる訳ですなこりゃ。フォワードルッキングを止めてビハインド・ザ・カーブになるとリスクがありますよと言ってるわけですからね。
ということで、最初に申し上げましたが「もう利上げはダメポ」というのは見せないでチャンス待ちという所でしょう。先月末にかけて出た指標が悉く弱めに出てきているのを見ると、目先は大人しくするしか無さそうですけれども。特に海外系が懸念する逆噴射利上げはやらないのではないかと思うのですが、あたくしちょっと懸念してるのは変に政治的な圧力が掛かる可能性でして、反動で日銀の独立性を誇示するために逆噴射が起きねえかと。裏読みしすぎかな?
○なおも上振れ下振れ要因など
・地価動向への言及が増えてますが・・・・
『大都市を中心に地価の上昇地点が広範化してきていることなど、資産価格の動きも、民間需要を押し上げる方向に作用することが考えられる。』
4月はどう書いていたかというとこんな感じ。
『最近における地価、株価等の資産価格の動きも民間需要を押し上げる方向に作用している。』(これは4月の展望レポート)
株価へのコメントが外れたのはまあ当然として、地価上昇に関してこのようにちと詳しくなっているのは資産バブル懸念をしているようにも読めますが、実は今回の展望レポートでは『中小企業設備投資や住宅投資の増加』という点への言及が外れておりまして(ここは先行きのシナリオ部分で言及してたんですが)、さてどうなんでしょうって感じですね。
・需給ギャップと物価に関して
『第1に、需給ギャップに対する物価の感応度に不確実性がある。需給ギャップの需要超過幅が緩やかに拡大していけば、インフレ予想の上昇とも相まって、賃金や物価に上振れ圧力が加わる可能性がある。一方、景気拡大の長期化にもかかわらず、生産性の上昇が継続し、賃金の上昇が遅れる場合には、物価が上昇しにくい状態が続くことも考えられる。』
前回はどう書いているかと申しますと、ちと長いのですが引用。
『第1に、需給ギャップのプラス転化(需要超過)の影響である。需給ギャップに対する消費者物価上昇率の感応度の低下傾向はわが国だけでなく、世界的にも観察されており、(以下背景説明部分割愛)もっとも、需給ギャップがゼロ近傍から徐々に需要超過に転化すると予想される中では、いずれかの時点で、予想インフレ率の切り上がりを伴いつつ、賃金・物価上昇率が上振れする可能性もある。』
(これは4月の展望レポート)
どう見てもトーンダウンです。本当にありがとうございました。
・潜在成長率に関して
これは前回から上方修正しております。
『わが国の潜在成長率は近年上昇しているとみられる。』(今回)
『わが国の潜在成長率は、様々な構造調整を経て、足もと上昇方向にあると考えられるが、その変化をリアルタイムで認識することは難しいだけに、この面からも不確実性が存在する。
』(4月)
#という訳でここまでで結構な量になってしまいましたな。
総裁記者会見に関してはブルームバーグニュースの31日19時51分配信の記事から(展望レポートが多くなったので)簡単に。
○また発言に反応しちゃいましたな
昨日は中短期債が強くて長期ゾーンパッとしないという展開だったのですが、引け後は総裁会見を受けて金先や債先下がって、2年だの5年だのも2.5毛〜3毛甘くらいになってたらしいですな。その一方で超長期だの30年だのビット確りという真逆の展開。
反応したヘッドラインは恐らく『市場と日銀の判断、いずれ一致−追加利上げ』(ブルームバーグニュース16時39分)あたりだと思うのですが、特に英文でどう報道されてたのかなあって所もありまして、まあ日本語のヘッドラインでも「利上げ積極姿勢」と解釈されてもおかしくない(あたくしには強がりに見えますが、笑)状況なんで、英文報道だと売りたくなるんでしょうな。
当該発言は「市場が年内や来年1月あたりの利上げ困難と見ている動きに関してどう考えるのか」という質問に対して出たものでして、発言部分以降をブルームバーグニュース記事から引用させて頂きますと、このようになります。
『したがって、強い指標が出たから市場が一時的に金利の引き上げを手前に引き寄せてみる、あるいは弱い指標が出たから一時的に市場は金利の引き上げのタイミングを先ずれさせてみる、こういうことを繰り返しながら、いつしか日銀の基調判断と市場の基調判断が次第に擦り寄ってくる可能性、それは常にあるのであって、今もその事情に変わりはないと思う』
『8月のCPIの基準改定でいったん市場が非常に弱気になり、その後の短観その他の動きを見てかなり修正し、またこの最近の一連の指標で少し弱気に修正し、市場としては非常に自然な動きをして、その中で基調的な判断にいずれ行き着くであろうし、われわれも今申し上げたようにこれから勉強しなければならない材料もいろいろあるので、両方の判断が一致する時期が必ず来る。それが遅いか早いか、今のところ分からない。オープンだ。こういうことだ』
強気な前のめりという感じは致しませんですな。というかどっちかと言うと「必ず来る」の後に「だと良いなあ」ってつぶやきが入っていそうな気がするのは展望レポートのトーンに幻惑されているのかな?
その他論点がございまして、個人消費の指数が悪い話とか、電子部品の出荷と在庫バランスが変調という話とかの話もあるんですが、その余の話は明日にでも。
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2006/10/24
お題「主要銀行貸出動向アンケート調査」
○銀行貸出の話
と言ってもこの話は本来銀行の中の人のほうが詳しいので、あくまでもシロートにわか評論でございます(汗)。
先週日銀から地域経済報告(さくらレポート)が公表されていました。ヘッドラインは「全地域において景況感が回復あるいは拡大」というお話になっていたのは既にご紹介申し上げましたが、では仔細に見るとどうなのよというお話ですけれども、本石町日記さんがエントリーを上げてましたので既に皆様ご存知かと。あたくし用に備忘録リンクを貼って置く所存→http://hongokucho.exblog.jp/5901428/
「さくらリポートに見る貸出事情=後ろ向きの資金需要と金利ダンピング」
皆様ご覧になってると思うのでややこしいことは書きませんが、要するに銀行貸出に関しては伸びはあるものの、その中身に「後ろ向きの資金需要」「貸出金利利鞘の縮小」というものが見られるというのがレポートにありますってご指摘でした。
そんな話が出た所で昨日は日銀から「主要銀行貸出アンケート調査」というのが発表されていましたんでつい読んでしまった訳なのですが→http://www.boj.or.jp/type/stat/boj_stat/loos/loos0610.pdf
何か色々と項目があるのですが、前回調査(は7月)と比較してDIに変化があるのは最初の方のページに記載されているあたり。
トップの質問の「資金需要動向」に関しては全体的にDI数値が悪化(=資金需要減少)しておりますが、特に地公体向けと個人向けが悪化。まあ地公体向けは悪化してもそんなに悪い話ではないと存じますが、個人向けも悪化してますな。住宅ローンとかなんでしょうし、季節要因もあるかもしれませんし、そもそもこのアンケートを時系列でフォローしてる訳ではないのですけど(苦笑)、ニュースベンダーでのヘッドラインでもこの部分は報道されていた感じです。
で、2ページ目になりまして、「企業向け」のうちの規模別はどうなのかという話になりますと、大企業向けには著変ないものの、中堅企業向け、中小企業向けと規模が小さくなるに連れて資金需要が増大しているという傾向が見られます。
で、この話は先ほどの本石町日記さんのエントリーにありました指摘、
『後ろ向きの資金需要とは、利益が減少して支払いが苦しくなり、借り入れを増やすこと。簡単に言えば、財務内容の悪化である。後ろ向きの貸出が増えているとき、それを景気回復を裏付ける材料の一つと錯覚して利上げすると、後ろ向きの借り入れを増やした中小企業は打撃を受ける。貸出は増加基調とは言え、後ろ向き・前向の見極めが必要と思われる。』
と重ね合わせて考えてしまうのでありました。まあこういう話は最後の所は金貸し現場に丹念なヒアリングが必要なんですけど、さくらレポートで一部地域から報告されていた話とこのアンケートはまあ話として整合性がございますなあという感じです。
アンケートの8ページ目には「利鞘設定」の話がありまして、こちらに関して見ると、貸出先の格付け(信用格付け)による利鞘設定の変化ですが、利鞘設定が拡大してるのは「下位格付け先」だけで、上位、中位の格付け先に関しては相変わらず利鞘設定縮小と。まあ前回調査でもそんな感じですので相変わらずの状況という所でしょうが。
しかし中小企業資金需要が増大してて、下位格付け先の利鞘設定が拡大っていうのを見ると、景気回復と称するものが実は中小企業への皺寄せで維持されているんじゃねーのかと思ってしまうのでありました。うーむ。(10月29日追記:この部分に関しては「クレジットスプレッド正常化(今まで量的緩和によってクレジットスプレッドが潰れていた面があった為)の動きではないか」という確かにその面もあるかなというご指摘を頂きましたことを追記させていただきます)
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2006/10/23
○よく見るとヘッジクローズが増加中の9月決定会合議事要旨
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g060908.pdf
先週水曜日に公開された9月決定会合議事要旨ですけれども、景気に関する『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』の部分を見ると景気の先行きに関して微妙な意見が増えている事に気が付くのでした。8月の議事要旨と比較して見ると吉かと。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g060812.pdf(これは8月)
8月の議事要旨を読んだ際に(9月21日のドラめもんで書きましたが)、慎重意見がちらちら出てきましたなあと申し上げましたが、日銀のメインシナリオ(外需や企業部門の好調が個人部門に波及して景気の牽引役は個人消費にバトンタッチ)実現の為に重要な個人消費、雇用・所得面に関連する部分で慎重意見が増えていることに気が付くのでありました。
「個人消費について」の最後の部分から。
『また、多くの委員は、企業部門の好調さが家計部門へ波及するスピードについて、これまでのところは比較的ゆっくりとしたものになっていると述べた。』(9月8日)
ちなみに、8月の議事要旨ではこんな記述がありましたわな。
『ある委員は、景気回復が所得層によって異なる影響を与えている可能性があり、その場合、好調な企業業績から個人消費への波及効果が想定比弱いかもしれないと指摘した。』(8月12日)
ある委員の指摘が今回多くの委員の指摘になっております。弱いという表現ではないので表現としては8月のものよりも控え目になってますが、企業部門から家計部門への波及に関してはやや慎重に見だしているということになるかと存じますがどうでしょうか。
「雇用・所得面について」の賃金に関する部分で慎重意見が。
『賃金について、何人かの委員は、所定内給与が足もとやや弱めとなっていることに言及し、この背景には、企業の人件費抑制スタンスが根強いことがあると指摘した。』(9月8日)
先月まではこの部分は威勢の良いフレーズとなっておりました。
『雇用・所得面について、委員は、労働市場の需給は引き締まり傾向を続け、フルタイム労働者を中心に雇用者数が着実に増加しているもとで、雇用者所得も緩やかに増加を続けているとの認識を共有した。』(8月12日)
で、まあ議事要旨ご覧になれば判りますが(てか引用すると量が多くなるんで)、この「雇用・所得面について」という部分が9月8日の会合では量が増えておりましてですな、結論としては8月12日と同じで「今後も緩やかに増加」ってなってますが、途中にヘッジクローズが入った格好になっております。
ということで、まあこの「個人消費」「雇用・所得」の今後の見立てに関してちと先行き懸念っぽい意見が増えてきているという点に関しては注意が必要なのかも知れません(ただし、先日の決定会合後の定例記者会見で妙に総裁が元気になっているように会見要旨の字面から読み取れるので、10月会合でまた強気になっているのかもしれませんけどね^^)。
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2006/10/20
○さくらレポート:景気絶賛拡大中だそうな
何でこうネタがある時はネタだらけになるんだかと思うんですが、さくらレポート(地域経済報告)に関してちらっと。
今回はこちら
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/chiiki_rep/chiiki0610.htm
ちなみに前回は7月に公表されていましてそれは下記URL
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/chiiki_rep/chiiki0607.htm
こういうのは例によって前回と比較するのが一番手っ取り早し。
『各地域の取りまとめ店の報告によると、足もとの景気は、すべての地域において拡大または回復方向の動きとなっており、地域差はあるものの、全体として緩やかに拡大している。』(10月)
『各地域の取りまとめ店の報告によると、足もとの景気は、ほとんどの地域で引き続き拡大あるいは回復方向の動きとなっており、全体として着実な回復が続いている。』(7月)
回復→拡大ですよ先生、で回復/拡大も「全ての地域」だそうです。
この後に項目別に展開した説明になるのですが、これがまた景気のいい記述が並ぶのでありました。アーコリャコリャ。
『企業部門は好調さを増している。』『家計部門への波及も徐々に進んでいる。』『生産の増加も明確化している。』
いやあ景気の良いお話ですなあ。ちなみに、個人消費に関しては7月には『全体として底堅い』だったのが今回『緩やかに回復』と判断を前進させているのも注目される所だと思います。日銀のシナリオでありますところの「企業部門の好調さが家計部門に波及して景気の牽引役が個人消費にバトンタッチされる」というお話が今まさに進行ですかそうですか。
細かい地域別のものも中々オモロイのですが、今回はパス。
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2006/10/19
○9月の決定会合議事要旨
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g060908.pdf
この要旨出た後に債券先物は下がるわ株価指数先物は上るわという展開になっておりましたので、慌てて読んだのですけど、あたくしの読み方がヘボだったせいか特に「あちゃー」というものは見当たりませんでした(幾つか論点はありますが、ちと今朝は時間の都合上そこまで手が回らない)。
情報ベンダーのニュースを見てますと、昨日の一部報道で取り上げられていた「日銀、円キャリー取引の監視を強化」とかいう記事に関連して、「為替市場では今回発表される決定会合議事要旨への関心が高い」とかいうコメントが為替の人から出ているのを見てもう何言ってるんだかって感じですけど、特に円キャリーに関する記述が無かったってのがまた話題になっていたようですな。
一応先行きの金融政策に関する部分を。
『先行きの金融政策運営について、委員は、今後とも経済・物価情勢を丹念に点検しながら運営していくとしたうえで、経済・物価情勢が4月の展望レポートで示した見通しに沿って展開していくのであれば、金融政策運営についても、展望レポートで示した考え方に沿って進めることが適当であるとの考え方で一致した。』
ここは毎度お馴染みの書き方ですな。
『また、今後の政策変更の時期については経済・物価情勢次第であり、現時点で何らの予断も持っていないことを丁寧に説明していくことが大切であるとの認識を共有した。』
年内利上げがどうのこうのとか聞かれたときには上記の文言を呪文のように唱えておれば良いわけでして、何もわざわざ余計な事を言う必要はないのですな。
『こうした基本的な考え方のもとで、具体的な政策のタイミングや金利水準については、経済・物価情勢次第です。これ以上に言いようがありませんが、ご質問にありました年内の追加利上げの可能性云々を問われれば、否定することはできないと思います。しかし、だからといって現時点で利上げの時期を特定して考えているわけでもなく、従来通りオープンです。』(10月13日の総裁会見)
これは13日の福井総裁の記者会見での発言ですけど、「これ以上に言いようがありませんが」以降は余計なフレーズというものです。こういう事言うから発言の一部を切り取られてヘッドライン打たれるんですよって申し上げたいですけどね。マッタクモウ。
消費者物価指数の基準改定についてもこの部分で言及がありましたが、まあ予想通りといえば予想通りの内容です。
『消費者物価指数の基準改定に関連して、委員は、「新たな金融政策運営の枠組み」のもとで示される「中長期的な物価安定の理解」は、中長期的な概念であるため、今回の指数改定に伴って変更されるものではないことを確認した。』
まあそう来るのは想定の範囲内ですが。というところで今朝は時間切れ(汗)。
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2006/10/18
お題「生活意識に関するアンケート調査/その他」
○日銀の「生活意識に関するアンケート調査」
月曜の話ですが、上記アンケート調査が発表されました。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/ishiki/data/ishiki0610.pdf
PDFで24ページもございますので、実はまだ全部読んでない(追記:実はこの駄文書きながら全部読了しました、笑)のですが、まあとりあえず物価に関するあたりを読むのが基本ですわな。と申しますのは、政策委員の皆様の講演などを読んでおりますと物価の先行きに関して「人々の見方」に言及してますからなんですけど。
PDFの19ページ目に物価に関する質問とその回答が出ております。
『問11. 次に「物価」についておうかがいします。あなたご自身の感じでは、「物価」は1
年前と比べてどう変わりましたか(「物価」とは、あなたが購入される物やサービスの価格全体のことです)』
ということで、その回答に関して詳しくはPDFを見て下さいなんですけれども、総じて「物価が上っている」「上昇率が拡大している」「今後も上昇する」という答えになっておりますな。とは言え、その上昇率に関しては回答の中央値が3%になってるので、上ると言ってもまあそんなもんですかという感じですけど。
#ちなみに、極私的な話をしますと、普段の日用品お買物ベースで考えると物価上昇と申しますか、安売り品が段々減ってきているということは感じますな。
生活意識に関するアンケートの部分(17ページ以降)を見ると何か「暮らしぶりが苦しくなった」とか「収入が減った」とかいう答えの割合が増えているのが気になりますが。景気に関しては悪くなったという答えがそんなに増えてるわけでも無いと思うんですが、こりゃ国民負担増がジワリと効いてきてると見たほうが良いのかなあ。
○同じく生活意識アンケートの日銀に対する質問
『(5)日本銀行を信頼していますか』って質問がございまして、これに対してまあ色々とございましたので「信頼しない」の答が増えるのはやむを得ない所ではございますが、この部分を新聞がどう取り扱ってますかというのがオモロイのでまあ小ネタ的に。
まずは皆さんご覧になられる日経新聞ですが、NIKKEI NETより。
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT2C1603F%2016102006&g=E3&d=20061016
『1年後の物価上昇率、5.1%と予測・9月の日銀アンケート』
まあこういうお題になりますわな。実際問題としてはこのアンケートでは極端な数字を出す人がいるらしいので、平均値じゃなくて中央値を重視して「3.0%と予測」と出すべきではないかと思うのですが、まあそれはそれと致しまして。
これが東京新聞(中日新聞)になるとこうなります。
http://www.tokyo-np.co.jp/flash/2006101601000492.html
『「日銀信頼しない」急増 調査、総裁投資問題響く』
何せ昨日の東京新聞朝刊では1面左側の「今日の紙面から」っていうお題ご紹介の経済記事に同じく「日銀信頼しない」急増と出てまして、新聞を見たあたくしは思わず「その発想は無かったわ」と声を出してしまった次第(笑)。
記事の順番ですが、日経は物価の話がほとんどで最後に「日銀信頼しない」の結果に対して触れるという構成に対しまして、東京新聞はほとんどがこの「日銀を信頼するかしないか」の話で、その後物価と景況感の部分に触れているという流れになっております。中々オモロイなあと思いましたよ。
で、まあその東京新聞記事では先ほど引用したように、総裁のファンド投資問題が響くと書いております。記事の冒頭部分は『福井俊彦総裁の村上ファンドへの投資問題などの不祥事が表面化した日銀に対し、「信頼していない」との回答が調査対象の16・4%と、3カ月前と比べ7・3ポイント急増したことが、日銀自身が16日公表した生活意識アンケートで分かった。』と書いております。
さて、日本経済新聞様におかれましてはいかがかと存じますと、上記URL先の記事にはこのように記述されています。
『また日銀の評価に関しては「日銀を信頼していない」が16.4%と前回調査よりも7.3ポイント上昇。職員への出張旅費の過払いなどが響いたとみられる。』
どう見ても誰かさんへの遠慮(配慮?)です。本当にありがとうございました。
○ネタメモ
#以下個人的備忘メモ
・次世代RTGSプロジェクト通信ってのが日銀から出てます。マニア必見(か?)。
http://www.boj.or.jp/type/release/zuiji_new/set0610b.pdf(創刊号)
http://www.boj.or.jp/type/release/zuiji_new/set0610c.pdf(第2号)
・「適格担保取扱基本要領」の一部改正等について
http://www.boj.or.jp/type/release/zuiji_new/k061013b.htm
金融政策決定会合で同時に公表された文書
・「次期日銀ネット端末」の利用開始について
http://www.boj.or.jp/type/release/zuiji_new/set0610a.htm
あたくし的には専用端末の方が安心感あるんですが、まあこれが技術の流れなんでしょうね
・バーゼルU関連
http://www.boj.or.jp/type/release/zuiji_new/bis0610a.htm
「実効的な銀行監督のためのコアとなる諸原則」改定版の公表について
http://www.boj.or.jp/type/release/zuiji_new/bis0610b.htm
「先進的計測手法(AMA)の主な論点についてみられたプラクティスの幅」の公表について
正直、ここまで手が回らない上に、あたくしの知能ではお取扱い致しかねるので、誰か判りやすく解説してくれないかなあとクレクレ君状態。
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2006/10/16
○日銀の判断に変化なし(金融経済月報)
まずは金融経済月報。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0610.htm(10月)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0609.htm(9月)
例によって7月以来殆ど変化のない9月分と比較するのですけれども。これがまた変化ないのよね。
・現状判断は短観が入っただけ
『わが国の景気は、緩やかに拡大している。』から始まる現状判断部分ですが、違っているのは企業収益の部分ですが、これは短観に関する文言を加える為に文言いじっただけでしょう。
『企業収益が高水準を続け、業況感も良好な水準で推移する中』(10月)
『企業収益が高水準で推移する中』(9月)
ということなんで、短観で示された企業の業況感の堅調さを入れただけで、他の文言は一言一句変らないという状態。即ち現状判断に変化は起きてませんってこと。
・先行き判断も見事に不変
景気の先行きに関してはこれまた一言一句変らずでして、輸出は『増加を続けていくとみられる』、国内民間需要は『増加していく可能性が高い』、生産は『増加基調をたどるとみられる』、公共投資は『減少基調を続けると考えられると考えられる』、ということで。
・物価の先行きはちと変化
『国内企業物価は、最近の国際商品市況の反落が影響し、当面、上昇テンポが鈍化していくとみられる。』(10月)
『国内企業物価は、当面は国際商品市況高の影響などから、上昇を続けるとみられる。』(9月)
ということで、さすがに国際商品市況の反落に言及していますが、「上昇テンポが鈍化」という見通しになっておりまして、上昇という見立てに関しては変化がないというのも注意しておくべきでしょうな。
・金融面に関して
CP・社債の発行残高についてちと変化がありますが、まあデータに基づく部分なんでそれほどややこしい話でもないでしょう。
ということで、総じて強気判断を継続しておりまして、7月の月報から内容が変化しておりませんということですわな。となりますと、今月末に出てくる金融経済月報に関しても基本的なトーンは強気で出てくるということになるでしょうな。
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2006/10/03
http://www.boj.or.jp/type/stat/boj_stat/tk/gaiyo/tka0609.pdf
ヘッドラインの大企業製造業の業況判断DIが+24と強かったのですが、暫く前に出てた法人ナントカ統計(忘れた)で強い数字出てたから短観改善という話があったような気もするのです(が、その時は華麗にスルーされてた気もしないでもない)けど、まあいっか。
○前回の「先行き見通し」の達成度合い
シロートなりに延々と小見出しの部分に注目しているあたくしでございますが、今回はまあチグハグというか何というか。要は3か月前の予測DIと実際の今回のDIがどうなってるのかを見る訳ですが(以下6月時点での予想→今回実績の順)。
製造業
大企業:+22→+24
中堅企業:+13→+14
中小企業:+7→+6
非製造業
大企業:+21→+20
中堅企業:+6→+5
中小企業:▲9→▲8
前回予想から改善してるのが製造業大企業、中堅企業に非製造業の中小企業なのですが、まあ今回に関しては前回の先行き予想DIから一番ぶれてるのが製造業大企業の2ポイントということで、そんなにぶれてませんなあとも言えますわな。で、前回の時といえばちょうど株価が絶賛下落してる中で調査期間に入ってたんですが、その割りには短観悪くないし、先行きも予想も下がってない(中小企業は下がってました弱気)ですなあという感じだったんで、あたくしは「まあ良いんじゃないの相変わらず」という印象。
先行きの予測に関してはあまり強く無いのですが、予測DIが業況判断DIから3ポイント悪化してるのはDI改善組の製造業大企業と中堅企業なんで、まあ先行きに掛けても予想しっかりって感じではないかと存じます。というか先行きDIって景気拡大期には基本的に弱めに出るんで、まあ今のところ高原状態って感じじゃないですかねえ。これが先行き予想よりも実際に出てくる数字が悪いってのが続くとヤバスと思うのですが。
○想定為替レート
これまた短観概要の1ページ目の(参考)って所に大企業製造業の「事業計画の前提となっている想定為替レート」というのがありますが、ここのレートが相変わらず111円台にございますな。為替レートはご案内のようにこれよりも数%とは言え、ずーっと円安で安定しているので、製造業では為替でノリシロが出来ているんじゃないかという気も。まあそれが業況判断に既に織り込まれているかもしれないので何とも申し上げられませんが。
○設備投資計画
5ページ目の設備投資計画等の本年度下期の計画が上方修正されているという話に関しては本職の方がご指摘かと存じますのでメモだけ。
○雇用人員判断がちとアレでございますが
6ページ目の雇用人員判断。ここの数字は何故か「過剰」−「不足」という出方をしているので、ここだけはマイナスがでかい方が「良い数字」。
で、ここの数字なのですが、さっきと同じように6月調査時点の予測DIと比較すると、全業種の全規模に渡って「予想よりも悪い数字」になっています。まあ6月時点での雇用人員判断の現状DIと比較すれば数字としては良いのですのでそんなに大騒ぎする話では無いのかもしれませんけれども、「思ったよりも改善幅(というか人員不足度合い)は小さいですなあ」ってのはどうなんでしょう。
いやまあ前回のDIと比較する時に「前回の先行き予想」との比較をするのが好きなもんで、どうも気になるんですよね。ちなみに雇用人員判断の先行き予想DIに関しては基本的に「先行き不足」となっています。
#これが公共放送のニュースにかかると、現状のDIにフォーカスして「人手不足観がバブル期並の水準に」ということになるのですな。うーむ。
○これ何て北浜先生?
まあ雑談ですが、7ページ目(8ページ目以降は参考の図表なんで実質最終ページ)の最後に「金融機関の業況判断等」というものが出てきますが、これがまた実に香ばしい。
業況判断DIなのですが、証券業という欄を見ると6月調査時点での業況判断DIが+20で先行き予想が+36と実に景気が良いのですが、9月の業況判断DIは何と▲4と業況判断ベースで24ポイント悪化なのですが、予想DI対比では40ポイントの悪化。
まあ業種別でぶれの大きいのは他の業種でもございますが、先行き大幅プラス予想が一転してマイナスってのはさすがにここしか見当たらないですわな。市況産業だからまあ仕方無い面もあるのですが、証券業の経営連中の中の人たちは髪様の集団かと小一時間問い詰めたいとはまさにこの事でございますわな、というか頭痛いよ勘弁してくれや。
ちなみに、先行きの予想DIは+36となっているのはどんな大本営発表なのでしょうかとこれまた小一時間・・・・
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