決定会合議事要旨や金融経済月報などについて(2005年度下期に書いた分)
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2006/03/22「1月2月の議事要旨、まあこの時点で解除のレールは引かれてましたと」
2006/03/20「ちと遅くなりましたが3月月報、政策転換があったのに2月と同じですなあ」
2006/03/13「記者会見での総裁の説明ですが・・・」
2006/03/10「量的緩和解除のディレクティブ、公表文書を読む」
2006/02/28「燃料投下論文」
2006/02/24「CPIの上方バイアス(読者様からのメールより)/ちょっと不用意な発言?」
2006/02/21「量的緩和解除後の理論武装用レポートですよ」
2006/02/15「論点の多い総裁記者会見(10日分の補足)」
2006/02/10「2月月報と総裁記者会見、強気姿勢です」
2006/01/27「26日分エントリーの補足」
2006/01/26「12月14、15日の金融政策決定会合議事要旨」
2006/01/23「1月金融経済月報、総合判断などが前進」
2005/12/22「10月31日、11月17、18日の決定会合議事要旨」
2005/12/19「資産担保証券買入予定通り終了へ/12月金融経済月報」
2005/12/15「日銀短観メモ」
2005/11/25「割とツッコミどころの多かった10月11、12日の決定会合議事要旨」
2005/11/21「11月金融経済月報と総裁記者会見」
2005/11/08「また金融政策レポートが出ています」
2005/11/04「白塚レポートに対するツッコミ(読者様からのメールより)」
2005/11/02「企画局白塚さんのCPI上方バイアスに関するレポート」
2005/11/01「展望レポート、量的緩和解除事前宣言キターの図」
2005/10/18「9月7日、8日の決定会合議事要旨」
2005/10/13「10月金融経済月報、要所で判断前進」
2005/10/12「2005年10月版、審議委員のスタンス小まとめ」
2005/10/07「手形オペの期間短縮」
2006/03/22
お題「棚卸しその2は1月2月の決定会合議事要旨」
米国はまたまた利上げ継続の見通しですか。コロコロ見方が変りますわなあという感じですが、市場なんてえのは人々の貪欲と恐怖感が集合してる所なんでまあ所詮はそんなもんですがな。でね、そんな市場を一々相手にして対話がどうのこうの(どうみても対話じゃなくて地均しだが)とするこたあねえのよ日銀さん。
まあとりあえず本日も宿題の棚卸ですが、金融政策決定会合議事要旨の格納場所は日銀のウェブページの右側フレームの下のほうにあ「文書タイプ」って箱の一番下にある「公表資料」ってリンクをクリックして、そのページにあります「定期公表資料」ってリンクをクリック。で、そこに「金融政策決定会合議事要旨」ってリンクがあるので、そこから過去の議事要旨へのリンクが出てきます。
もうちょっと楽な探し方があるのかもしれませんが、前のウェブサイトの時に比べて本文に辿り着くまでの手間が余計に掛かるような気がするだよ。
んでまあ1月19、20日の議事要旨は
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g060120.htm
2月8、9日の議事要旨は
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g060209.htm
なんですが、新しいウェブで気になるのは、この公表文書のフォントのサイズが以前の12から11(単位は何というのか存じませんが)に縮小していること(IEのデフォルト設定で見た場合)でして、前のサイズに慣れているせいもありますが、オッサンにはフォントが小さくて読みにくいがな。普段よく見る政府関連のウェブサイトの文書のフォントは12だったと思うのですが。
あと、リンク先文書に行っても右側にフレームがある(今までは一番下にフレームがありましたが)のは個人的な趣味ですけどイマイチですなあと思うのでした。と、ウェブサイトへのいちゃもんは兎も角。
○フォワードルッキングですかそうですか
1月の『III.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要 』から。
『枠組み変更後の金融政策運営に関する情報発信についても、議論が行われた。』
ということで、1月からまあ準備万端余念無しですかそうですか。
『量的緩和政策の枠組みの変更という先例のない状況のもとで、金融市場において経済・物価情勢に応じた円滑な価格形成を促していくためにはどのような具体策が考えられるのかという観点から、今後、さらに議論を深めていく必要があるとの見方を示した。この点に関し、何人かの委員は、フォワード・ルッキングな姿勢が重要であることを強調した。』
「円滑な価格形成を促す」というその発想が如何なものかというツッコミもあるのですが、それを言い出すとまた以下同文ですので省略しまして(笑)、量的緩和政策解除後はフォワード・ルッキングで先手先手を打った政策をするっちゅう話を1月の時点で何人かの委員が強調しておりますわな。
で、2月の議事要旨でこの話がどう纏まったのかと申しますと、
『委員は、金融政策運営の透明性確保のための具体的な方法は、今後、諸外国の例も参考にしながら検討していく必要があるが、(1)基本は、金融経済情勢に関する判断と政策運営に関する考え方を丁寧に説明していくことである、(2)その上で、フォワード・ルッキングな視点を組み込んでいく、(3)その際には、透明性と柔軟性のバランスの取れたものとすることが重要である、との認識を共有した。』
フォワードルッキングで柔軟性を確保しておいて透明性がどうのこうのというのはその時点で話に無理があるような気がしますし、その上ここに到るまでの地均し路線で「日銀は超越インフレファイター」という評価が共有されているんで何ちゅうかこうあんまり頑張らなくて良いと思うんですがねえ。
まあとにかくフォワードルッキングですんでその辺勘違いないように。
○インタゲに関して
1月の議事要旨ではこんな提案がありました。中原審議委員ですかね。
『この間、一人の委員は、量的緩和政策の下では、消費者物価指数を基準とするコミットメントが物価の先行きに対するアンカーとして機能してきたと評価したうえで、金利政策に移行する際には、望ましい物価上昇率を示すことにより、これに代わる新たなアンカーを設定することが必要であるとの見解を示した。』
んでまあこの物価上昇率アンカー論に対しまして、
『これに対して、別の一人の委員は、現在、わが国経済は、物価が需給ギャップに反応しにくいという90年代後半以降の経済構造からの転換点にあり、このように経済構造に関する不透明性が高い状況下において、不確実な知識に基づいて長期的な物価安定の数値目標を徒に拙速に示すことは、政策運営の透明性向上につながらないだけでなく、場合によっては金融政策に対する信認に悪影響を及ぼすことにもなりかねないと指摘し、数値目標の設定は中長期的な検討課題とすべきであると述べた。』
と反論してるんですが、まあ当然ながらこれには再反論が入ります。
『これに対し、先の委員は、経済構造の不確実性は常に存在しているとしたうえで、各国の中央銀行も、同様の問題に直面しながら政策運営の透明性を高める努力を行っていると指摘した。』
で、まあこの先も引用してるとここのくだり全部引用になっちゃうのでこの辺にしておきますが、2月はこんな話になっております。
『複数の委員は、いわゆるインフレーション・ターゲティングについて、本来は、中長期的に物価目標値の実現を目指すものであり、経済情勢等に応じて柔軟な政策運営を行うことが出来る枠組みとして位置付けられているが、この点の理解がわが国で十分浸透しているか疑問があると述べた。』
『別の複数の委員は、望ましい物価上昇率について何らかの数値を示していくのであれば、その際に、政策運営の機動性と柔軟性が確保できるかどうか、という点も踏まえつつ、検討していくことが大事であると述べた。』
ということで、要するに政策運営の手足を縛るような政策の枠組みは実行したくありませんよということでございます。そうなりますと、既に皆さんもご指摘しているように3月の決定会合で公表された謎の「考え方」には政策の手足を縛るような意味合いはまあございませんですなあと理解する方がよさそうですな。
○その他少々ツッコミどころに関して
1月の議事要旨を読んでいておいおいと思った場所。
『委員は、量的緩和政策の解除は、今後の経済・物価情勢を丹念に点検したうえで、予断を持つことなく、あくまで「消費者物価指数の前年比が安定的にゼロ%以上」と言えるかどうかという基準に沿って適切に判断していくとの認識を共有した。』
と書いてあるその直後に
『枠組み変更後の金融政策運営に関する情報発信についても、議論が行われた。』
いやまあそりゃ議論はしておかなきゃいけないかもしれないけど、1月の会合時点ってコアCPIがプラスになったばかり(11月末公表分がゼロ、12月末公表分がプラス0.1%)で、東京都区部がやっとゼロになった所だったんですが、随分とまあ気が早いお話ですわなあって感じですわな。
2月の議事要旨ではこんな指摘をする人がいまして、例の「考え方」にもこの指摘は反映されていましたなあ。何と申しますか。
『ある委員は、わが国では、過去の経験からも、国民の予想物価上昇率は低く、インフレに対する拒否反応が強いことを意識することが大事であると述べた。』
いやあのそりゃあたくしも石油ショックとか知らんわけでも無いです(記憶の片隅にある)から狂乱物価みたいなのも困りますけど、デフレも困るんですけどねえ。しかしよく考えると「インフレに対する拒否反応が強い」と「国民の予想物価上昇率」って低いのか?拒否反応が強いということは国民のインフレ警戒感が無駄に強いって結論になるような気がするんだが、考えているうちに頭が痛くなってきたので本日はこの辺で。
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2006/03/20
○3月の月報は2月と同じなんですが・・・・
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0603.htm
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0602.htm
まあURL読めばお判りのように上が3月下が2月でございます。量的緩和解除の発表と一緒に出てたのでちょっとご紹介するのが遅れましたが、今回のポイントは何かと申しますと「月報の内容が2月と思いっきり同じ」ということですな。
・現状判断で変化があるのは個人消費の一箇所だけです
『わが国の景気は、着実に回復を続けている。』って所から始まる月報の現状判断ですが、まあ景気の良い文言が並んでおりまして、3月月報で2月と違う箇所は個人消費です。
『雇用者所得も、雇用と賃金の改善を反映して、緩やかな増加を続けており、そのもとで個人消費は底堅さを増している。』(3月)
『雇用者所得も、雇用と賃金の改善を反映して、緩やかな増加を続けており、そのもとで個人消費は底堅く推移している。』(2月)
ということで、「底堅く推移」→「底堅さを増している」と当然ながら上方修正。
・先行き見通しは何と一言一句同じ
同じなのでまあURL先でも見ていただきたいのですが、しかしまあいつまで「海外経済の拡大を背景に、輸出は増加を続けていくとみられる。」って書き続けてるんでしょうかというくらいここの文章見慣れてしまいましたな。
・物価の先行きに関して
物価の現状に関しては「円安」の文言が消えたくらいであとは基本的に事実関係の話をしているだけなので省略。消費者物価の先行き見通しですが・・・・・
『消費者物価の前年比は、需給環境の緩やかな改善が続く中、若干の振れを伴いつつも、プラス基調で推移していくと予想される。』(3月)
『消費者物価の前年比は、需給環境の緩やかな改善が続く中、電話料金引き下げの影響が剥落していくこともあって、プラス基調になっていくと予想される。』(2月)
まあプラス基調で推移していくと予想されないと量的緩和政策の解除はできませんので(笑)、先行きに関してはこんな感じになるんでしょう。
・ということで書いてあることが殆ど2月と同じなのですが・・・・・
えーっと2月の月報と書いてあることが殆ど同じって事はですな、2月の時点でまあ経済見通し的には量的緩和解除ですがなあっはっはということで、1月分のCPIを一応確認したらもう解除解除ってことでしたって事なんですかな。で、2月の月報は2月9日に出たのですが、こいつを紹介した2月10日の駄文にありますように、実は2月の月報は1月の月報から生産の現状判断と消費者物価指数の現状判断を前進させただけでして、月報の内容がカンカンの強気になっていたのは1月の時点でございました。
ということで、まあ1月の月報(出たのは1月20日)時点で物凄く強気になってるたのが伏線にございましたなあという事だったんでしょうな。この辺りから総裁の発言もカンカンの強気になっていましたし(1月23日、24日あたりのドラめもんご参照)。
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2006/03/13
○そんなわけで日銀総裁記者会見
総裁記者会見の前に国会での説明に関して気になったのが一点あったので付け加えておきます。事実関係は会議録を見ないと判らんのですが、インターネットでの国会中継を見ていたら、金融政策に関して岩田副総裁が「政策はフォワードルッキング」という事を発言してたように聞こえたのですが、岩田副総裁ってビハインド路線じゃなかったのかなあと思いまして、いつの間に宗旨変えしたのだろうと思いつつ、こりゃ政策委員会の止め役は中原審議委員しかいないようですなあとちょっと不安。
時間も長く量も多いのであたくし的に気になった部分を。多分明日に持ち越しになるものと思われます。
http://www.boj.or.jp/press/05/kk0603a.htm
・フォワードルッキングでありルールベースではありません
最初の説明の部分で早速発言してますが。
『「中長期的な物価安定の理解」を示し、それを念頭に置いてこれから金融政策を行っていくが、いわゆるインフレーション・ターゲティングというものと違って、ルール・ベースの金融政策の運営をするわけではない。物価についての理解を念頭に置いて金融政策を行っていくが、金融政策運営そのものはフォワード・ルッキングであり、総合判断でやっていく。』
別の質問に対する回答ではこんな感じです。
『それから先程、皆様のご理解を頂くためにわざわざ、ルール・ベースの政策運営をするわけではない、フォワード・ルッキングで総合判断でやっていくとわかりやすく申し上げた。各国の中央銀行の政策運営のやり方をみても、ルール・ベースに近い運営とか裁量による運営など、概念的な整理を試みることはある程度可能である。しかし実際には、例えば、インフレーション・ターゲティングを採用している国の中央銀行でも、文字通り、機械的なルール・ベースの政策運営をしている中央銀行は殆ど存在しないと認識している。』
フォワードルッキングで、物価安定の理解が総合CPIで0−2%って組み合わせは物凄い勢いでインフレバスター政策になるようにしか思えないんですが。
「参照値でも無い」と最後の質疑で言ってますんで念のためそちらも引用しておきますね。
『政策委員の認識を数字で表すと、こういうことになる、ということである。これは金融政策の透明性と機動性の両立を真剣に考えて出てきた新しい知恵のようなものであり、私ども自身が出した知恵を私ども自身が活かしていくことによって、おっしゃるような懸念を払拭していくことができると思われる。そのためにも、「理解」というものの概念を、皆さん方からもきちんと報道して頂きたい。「参照値」と同じようなものだと報道されると、世の中に混乱をおこすと思われる。「理解」については、英語で言えばunderstandingという言葉を私どもは使用していく。そういうunderstandingを政策委員会のメンバーでbroadly
shared(広く共有)するというものである。新しい概念なので、日本だけでなく海外においてもきちんと理解してもらうためには、しばらく努力がいると思うが、こうした新しい知恵がきちんと理解されれば、そういうリスクは減っていくであろう。数字が一人歩きする心配を私どもも持っているが、それを打ち消していく努力をこれからもやっていかなくてはならない。』
・経済物価情勢に見合った金利水準
という言葉を福井総裁はよく使います。で、質疑の最初の方ではこんなことを言ってたのですが・・・・・
『それでは、所要準備額までの調整が終わったらすぐゼロ%でなくなるのかというと、私どもはそういうことを言っているわけではない。つまり、準備を削減していく過程は基本的にゼロ%で、おそらくその後もしばらくはゼロ%で、その次に極めて低い金利となり、さらには経済・物価情勢に見合った金利水準への調整過程となろう。』
ほほうゼロ金利長期化ですか・・・・と思いたくなるのですが、最後の質疑ではこんな表現をしております。
『量的緩和政策の枠組みからの脱却によって、イールドカーブのショーターエンド(オーバーナイト物)以外のところにまで強い下方プレッシャーをかけるというディストーション(歪み)は一応なくなる。この意味では、金利機能を封殺している度合いは少し緩和されると思う。しかし、経済・物価情勢に見合った金利水準という意味では、まだかなり離れた状況にあるのではないのか。これから相当時間をかけて、ギャップを埋めていくことになるので、本当の意味での金利機能が生きて、資源再配分機能を本来金利が持っているキャパシティの通りに機能を発揮していくということと比較すると、極めて低い金利を続けている以上は、そこに何がしか犠牲が生じていることは否めない。』
どうもここを読むと福井総裁がイメージする「経済物価に見合った水準」はゼロ金利じゃあないと思うんですけどね。
それから、金曜もご紹介しましたが、こんな事も言ってますんで。
『量的緩和政策そのものも、極めて大幅なビハインド・ザ・カーブの金融政策である量的緩和の枠組みを脱出してゼロ金利からスタートするが、消費者物価指数がプラスの領域に動き、実質経済成長率がかなりのプラスを続けている状況のもとでは、これはかなりビハインド・ザ・カーブのところを出発点にした金融政策である。この金融政策との組み合わせで、緩和のしすぎのリスクが中長期的にあるということを指摘しており、一方を強調しているということにはならない。』
現状で既にビハインド・ザ・カーブ状態だそうです。それで政策をフォワードルッキングにした場合に何が起きるのでしょうかねえ。
・別にダイナミックにならなくて結構なんですが
『これから市場と日本銀行のコミュニケーションは非常にダイナミックになる。ある意味では本来の姿になる。市場は市場の見方を市場レート、特に先物の市場レートの中に反映するだろうし、私どもは毎月の金融政策決定会合の後、あるいは展望レポートの中で私どもなりの先行きの見通しを出していく。それが市場の見通しと合っているか合っていないか、合っていない部分については市場が改めてレビューしながら、市場金利の変動というかたちで映し出してくる。私どもはそれを読み取りながら、私どもの情勢判断を更に磨いていく。こういう市場金利の動きを仲介項としながらのコミュニケーションになっていく。量的緩和政策のもとでは、市場機能を封殺していると申し上げていたが、封殺している限りはそういう仲介項がないために、さかんに日本銀行の言葉のみを探るということがあった。これから先はそういうことはなくなり、よりダイナミックになっていくと思う。』
いやあの日銀がもうちょっと黙って頂ければ別に言葉を探る必要もないのですが、そうするとドラめもんのネタも無くなるという諸刃の剣(笑)。今までも経済状況とか見ながら相場が動いてた面もあると思うんですが、自分で書いた駄文を週末せっせと読み直しながら整理してると、やっぱ日銀の偉い人喋りすぎ(喋らされすぎの面もありますが)ではないかと思いますけどね。まあ頑張ってくださいね〜。
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2006/03/10
○ゼロ金利長期化?どう見ても勘違いです。本当に(ry
で、この結果に関してですが、どうも「物価の安定化」についての明確化という所を「ゼロ金利政策が長期化される」という香ばしい解釈をした人が多く平均株価上昇。債券先物は上昇したあと「物価水準の下限0%ってどうよ」と思う人もいたようでやや上昇を打ち消しました。で、ユーロ円金利先物市場は一旦上昇して反落したあと、夜間取引でまたまた上昇。
色々なマーケットストラテジストの見解をざっと斜め読みしたのですが、とりあえず最初からいきなり冷水ぶっかけ系の「ゼロ金利長期化は誤解でしょ」ってレポートは2本か3本位しかみつからず、「これでまたゼロ金利長期化ですよウェーハッハッハ」というものの方が圧倒的に多かった印象。
まあね、今回の文書ですけど、読めば読むほどよく出来ていまして、日銀文学の最高傑作のひとつに挙げられるんじゃないのって思いますよ。市場(と政府)に妙な期待はさせているものの何のコミットもしていないというとても凄い内容でございます。まずは決定内容部分に相当する「金融調節方針の変更について」という部分をば。
○金融市場調節方針の変更について
http://www.boj.or.jp/seisaku/05/pb/k060309_f.htm
順序が逆ですが、最後の「当面の金融政策運営の考え方」の部分から先に。
・時間軸は存在してませんが何か?
『量的緩和政策の経済・物価に対する効果は、現在、短期金利がゼロであることによる効果が中心になっているため、今回の措置により非連続的な変化が生じるものではない。』
えーっと、これは「本件の措置は金融引き締めではない」と言ってるのですが、同時に「別にゼロ金利にコミットはしてませんよ」ということも意味してますわな。コミットすれば時間軸が発生するわけですから。
・景気過熱リスクに言及
『先行きの経済・物価情勢については、物価安定のもとでの持続的成長を実現していく可能性が高いと評価できる。ただ、企業の収益率が改善し、物価情勢も一頃に比べ好転している状況下、金融政策面からの刺激効果が一段と強まり、中長期的にみると経済活動の振幅が大きくなるリスクには、留意する必要がある。』
景気が悪化するリスクには言及してません。そりゃまあ悪化するリスクが極めて少なく言及する必要も無いって判断で量的緩和政策を解除した(んですよね?)のですから書かないって事なのかもしれませんが、本件に関しては記者会見で突っ込みを受けてまして、それに対する福井総裁の答えはこんな感じだったようです(9日19時19分配信のブルームバーグニュース記事より)。
『量的緩和政策そのものも、きわめて大幅なビハインド・ザ・カーブな金融政策だ。量的金融緩和の枠組みを脱出して、ゼロ金利からスタートする、消費者物価指数がプラスの領域に動き、実質経済成長率がかなりプラスを出している状況のもとで、これはかなりビハインド・ザ・カーブを出発点としてスタートしているので、金融政策との組み合わせで、緩和のし過ぎのリスクは中長期的にあるということを指摘しているのはフェアだ。』
『ビハインド・ザ・カーブの金融政策でも、物価上昇率に圧力がかからない限りは、なお当面かなり緩和的な環境が維持される可能性が高いと言っている。両面フェアに記述している。一方にウエートをかけて書いているという理解はされないでいただきたい。』
どうみても量的緩和解除をビハインド・ザ・カーブで実施しているとのお考えにしか見えません。本当にありがとうございました。
・短期のターム物金利は下がりにくいというか上昇圧力かかりやすいというか
『当座預金残高の削減は、短期の資金オペレーションにより対応する。長期国債の買入れについては、先行きの日本銀行の資産・負債の状況などを踏まえつつ、当面は、これまでと同じ金額、頻度で実施していく。補完貸付については、適用金利を据え置くとともに、2003年3月以降、利用日数に関して上限を設けない臨時措置を実施しているが、この措置は当面継続する。』
まあ予想通りちゃあ予想通りですが、これはFBの素晴らしい発行残高とあわせますと、やはりターム物の短期金利は需給関係で下がりにくいというか上りやすいという状態が続くと思います。一応ロンバート(補完貸付)のキャップはありますが、ロンバートに使えない担保では意味がないですし、政策をいじればロンバートの金利も変化するでしょうからそこまでの金利に何となくキャップが掛かりますなあって感じですな。勿論翌日物金利はそれなりにキャップがかかるでしょうが、何せロンバートは有担保貸し出しですんで、限界的な部分での無担保コール翌日物金利が上昇することはあるでしょうね。
○新たな金融政策運営の枠組みの導入について
http://www.boj.or.jp/seisaku/05/pb/k060309b_f.htm
・「物価の安定」で言われてるのはコア指数じゃないですよ〜
「物価の安定」についての考え方の後ろの方をみませう。
『消費者物価指数の前年比で表現すると、0〜2%程度であれば、各委員の「中長期的な物価安定の理解」の範囲と大きくは異ならないとの見方で一致した。また、委員の中心値は、大勢として、概ね1%の前後で分散していた。』
「消費者物価指数」としか書いておりません。コア指数ではないんですが(記者会見でもその部分の質疑はあったらしいが手元に記事なし)、最近のCPIの推移がこの辺http://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/index-z.htmにありますが、総合の前年同月比を見るとここ1年は前年同月比マイナスの月の方が多いような気もするんですけど(苦笑)。まあ解除しても緩和状態だっていうことだからいいでしょって理屈なのかなあと思いますが。
で、その前の部分ですが。
『本日の政策委員会・金融政策決定会合では、金融政策運営に当たり、中長期的にみて物価が安定していると各政策委員が理解する物価上昇率(「中長期的な物価安定の理解」)について、議論を行った。上述の諸要因のいずれを重視するかで委員間の意見に幅はあったが、現時点では、海外主要国よりも低めという理解であった。』
ってことなので、やはり物価に関しては低めを見ていますって話ですわな。しかし下限0%ってのには引っ掛かりますなあ。せめて1%〜3%なんじゃないかと思うのですが。
で、中心が1%にあるからゼロ金利が長く続くぜウエーハッハッハとう見解が出てくるのですが、あたくし思いまするにこのレンジだと現在のCPI0.5%(総合もコアも)でも「物価水準は現在中立的な状況にある」といえる訳ですから(だってレンジ内だもん)「今後の過熱を予防する為に中立的な金利水準に戻しますが何か?」といっても思いっきり政策ロジックに整合性が取れていると思います。
・これはリフレ政策提唱の皆様への燃料でございましょうか
何か後ろから戻ってくるような書き方で恐縮ですが。
『わが国の場合、もともと、海外主要国に比べて過去数十年の平均的な物価上昇率が低いほか、90年代以降長期間にわたって低い物価上昇率を経験してきた。このため、物価が安定していると家計や企業が考える物価上昇率は低くなっており、そうした低い物価上昇率を前提として経済活動にかかる意思決定が行われている可能性がある。金融政策運営に当たっては、そうした点にも留意する必要がある。』
世の中の「物価上らないマインド」を十分に留意するということですかそうですか。。
・この部分今の時点での小まとめ
これは物価水準の話をしているのですが、現在の物価水準は既にここで述べているレンジ内に入ってますし、だいたい0%でも安定範囲内って話だと、まあ制約条件なしに等しいですわな。これを見てCPIが1%になるまでゼロ金利が続くと理解するのはもうすこしがんばりましょうって判子を押したくなりますわな。もし2%を抜けそうになったらもう一大引き締め大会になるんですけどねえ。
という訳で大いなる勘違いをしているようですが、まあ暫く日銀さまにおかれましてもおとなしくして長期金利が上昇するのは避けるように動くとは思いますんで、変な期待が蔓延するようなことになるんでしょうなあ。で、また金利上げようって話になると地均し一座の公演を見る事が出来ますので乞うご期待(吐息)。
しかもこの参照値(もどき)は政策運営に関して何のコミットもしてませんので、まあアレですな、政府への「おみやげ」って奴でな。
で、この2つの公表文書に関してもまだ読むべきところあると思いますし、記者会見に関しては重要な発言が色々とあったようです。また金融経済月報の公表も同時に行われていますので、そのあたりも盛りだくさんなのですが、さすがに時間と労力がそこまで回りませんので、週末にも書き物をしようかなどと言うと将来の予定を縛ることになって休日の柔軟性を阻害致しますので注意しましょう(笑)。
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2006/02/28
○どうみても燃料投下です。本当に(略
昨日の日銀ワーキングペーパーシリーズがまた素晴らしい燃料投下。
http://www.boj.or.jp/ronbun/05/wp06j04_f.htm
お題は「バブル崩壊後の日本の金融政策 ――不確実性下の望ましい政策運営を巡って――」ということで、上記URLから論文のPDFファイルにリンクが貼ってあるのですが、図表を含めて56ページもある大作(本文は34ページ)でございますので、最初の方をパラパラ斜め読みしただけです。ちゃんと読まないといけませんな。
で、URL先には「要約」があるのですが、そこにはこんな一節が。
『日本経済の大型マクロモデルであるJEM(Japanese Economic Model)を用いた確率シミュレーションによると、政策効果(政策乗数)の不確実性を考慮した場合には、当時の日銀の政策運営はほぼ最適なものであったとの結果が得られた。』
はあそうですか。
『一方、インフレ過程の不確実性を重視した場合には、実際の政策よりも積極的な対応が望ましかったとの結果が得られた。このように、どのような不確実性を重視するかによって結論は大きく異なるが、結果的に、1990年代後半以降デフレ克服が重要な課題になった点を踏まえれば、90年代前半においてインフレ過程の不確実性をより重視し、積極的な金融緩和を行うべきであったとの議論は可能であろう。』
ふーん。
で、あたくしの場合はこちらの要約を見る前に本文スーパー斜め読み(式の部分は全部飛ばしてキーワードしか拾わないで読む、というより眺める)したのですが、そこの13ページから14ページには中々結構な一節がございましてあたくしの心を大変に触れて下さいました。
『1990年代前半の日銀の政策運営について、テイラールールをベンチマークに評価した先行研究をみると、使用するGDP
ギャップによって、実際の金利がテイラールールに比べて引締め的であったのか、あるいは中立的であったのか異なる結果が得られている。政策評価を行う分析者が、当時の日銀にとって利用可能でない――とりわけ「後知恵」による――情報を用いて、「日銀は本来こうすべきであった」と言っても、意味のあることではない。日銀が、当時利用可能な情報に基づいて、何ができて、何ができなかったのかを明確に区別しておくことは重要である。』
あえてこの部分に関して感想は申すまい。
ま、しかし何でまたこんなタイミングで出すんでしょうねえ。調査統計局様におかれましてはもちろん市場に喧嘩を売るつもりは全く無いのでしょうが、どうみても燃料投下です。本当にありがとうございました
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2006/02/24
○CPIの上方バイアス
先日ご紹介した日銀レビューに関して「転載可」ということで解説を頂きましたので、さっくり引用させていただきます(引用部分は『』です。誰ですか「また手抜きか!」と言うのは^^)。
『日銀たるもの物価を商売の種にしていながらCPIとGDPデフレーターの違いの基本中の基本を書いていない。』
ということで、では華麗にスルーされていた部分は何かと言いますと、
『それは、何かといえばCPIはラスパイレス、GDPデフレーターはパーシェということ(ここまでは書いてある)。ここから出てくる結論は、ラスパイレスは基準時固定だから上方バイアスがある(誰だって高くなったものは買い控えて安くなったものを買うのにラスパイレスではその効果が出てこない)し、パーシェは下方バイアスがある(ただしGDPデフレータは連鎖方式だからバイアスありとはいえないかもしれない)。』
『真実は中間にありということですが、そんなことは間違っても言わない。かつてはCPIの上方バイアスに文句をつけていたのに。。。(血圧急上昇中)』
なるほどなるほど。このあたりのポイントってのはあまり詳しくない(というのは自分が単に勉強不足なだけですが、汗)あたくしなんぞ指摘されないとうっかり流す所でございます。
『ついでに付言すると、GDPデフレーターが輸入物価を反映しない(だからこそホームメイドインフレの指標だとされている)のは、物価状況を判断をする上で優れた点です。輸入物価が上昇して(要するに交易条件が悪化して日本が貧乏になるということ)デフレ脱却といっても誰も喜びません!』
日銀レビューで物価ネタが出るとそのときは「これからの金融政策の基本だからこのあたりのロジックを勉強しないといけない」って思うのですが、ついさっくり流してしまうあたくしです。でもさすがにこれからは勉強しないといけませんね(って泥縄とも言われるが)。
ちなみにご教授いただきました方も『コアCPIを重視すべきという結論自体は反対しませんが。』と仰っていますので一つよろしくです。
#ご教授メール大変ありがとうございました
○ちょっと気になった報道
日銀の中曽金融市場局長が「量的緩和解除後の当座預金残高は6兆円程度に」と発言したという報道があったと仲間から聞いた(おい)んですがって要するに当該情報ベンダーを見ていないって事ですが(笑)。
この発言自体は「量的緩和解除後の当座預金残高は所要近辺で運営する」というごく当たり前の事を言ったに過ぎない(所要準備は全国銀行4兆の日本郵政2兆で6兆円と言ったところです)のですが、このヘッドラインだけ見せられると「えっ?」となってしまう人もいるかと思います。
と申しますのは、現在言われていることとして、「解除後に当座預金を引くとしてとりあえずどの辺がメドなんでしょう」って時に、「量的緩和の世界が長かったんで、暫くは日中資金繰りが慎重になる人も多いだろうか8兆円とか10兆円とかで運営するのかなあ」何て見方が多いんですな。
そういう雰囲気が漂っている時の「6兆円」というのは「バッファー無しにいきなり持っていくのかよ!」という印象を与えかねない言い方でして、発言するならもうちょっと気を使うと申しますか、どういう報道のされ方になるかを考えた物言いをしていただきたいものだと存じます。
今まで日本銀行から出ていた表現ベースで説明するのであれば、上記発言は、「当座預金残高は最終的には当然ながら所要額程度になるが、政策決定会合で決定する金利水準近辺で短期市場金利(無担保コール翌日物金利)が推移するように運営を行う」というような表現にしないと。
大体からして、量的緩和政策を解除したら日銀が誘導目標をおくのは「金利」であって「当座預金残高」はその「金利」を操作させるための道具として調整されるものでございますので、当座預金残高がいくらという数字に殊更意味を持たせる必要は無い(そりゃまあ日々の調節で所要対比いくら準備預金が進捗しているかというのは意味がありますが)のであって、「6兆円」という言葉が一人歩きしだすような可能性だってあるので、まあもうちょっとその辺の微妙な機微についてお勉強ありたいです。
つーか市場についてコメントする時はあまり具体的な事を言わない方が良いと思うんですよ。昨日軽く悪態をついた日銀総裁の輪番がらみ発言(「中期ゾーンの国債の需給が引く手あまたで、民間でさばけているのだろう」)に関しても、総裁は最近のイールドカーブのフラット化傾向とか中期ゾーンが売られているとか言う話は先刻承知の介だと思ってたんですが、瞬間的な需給のよさ(というか売られすぎの巻き戻しというか)を切り取って「引く手あまた」と表現すると「総裁に債券市場の現状がちゃんと伝わっているのだろうか??」って市場の現場にいる方としては懸念しちゃうんですよね。
色々とコメントしてくれるのはそれはそれで有り難いのではありますが、まあ一般的な話をしておいた方が無難ではないかと思います。「引く手あまた」なんて「サービス発言」をしないで「当日のイールドカーブ変化によって発生した偶発的な事だと理解している」とでも言っておけば良いのよ。
なお、このお話は報道されている内容が事実であるという前提ですから、実は記者が端折って書いたというのであればスイマセン。
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2006/02/21
お題「量的緩和解除後を見据えたペーパー(か?)」
○金融政策の説明にGDPデフレーターは使いませんですか
見事なタイミングで発表された毎度お馴染み「日銀レビュー」。いつもはだいたい4〜6ページのものが多い(ちゃんと統計取ってる訳ではございません、為念)のですが、昨日でました「金融政策の説明に使われている物価指数」は10ページの大作でございまして、気合の入り方が判るというものでございます(^^)。
http://www.boj.or.jp/ronbun/05/rev06j02_f.htm
本文はこちら(PDFファイルです)
http://www.boj.or.jp/ronbun/05/data/rev06j02.pdf
で、まああたしゃーひたすら「ほうほう」と字面を追うくらいしか能は無いのですが、このペーパーは3ページ目からいきなり
『各種の物価指数には、カバーする取引範囲が異なるだけでなく、作成方法が異なることに起因する特性もある。消費者物価指数、企業物価指数、および企業向けサービス価格指数などの物価指数は作成方法がある程度共通しているので、本節では、作成方法の異なる消費者物価指数とGDPデフレータとを対比させながら説明する。』
とGDPデフレータに砲撃を加えております(^^)。比較するというよりは物価指数のほうが良いのではないかというお話ですな。
で、その後は「じゃあどの物価指数を使うのか」とか「主要国の中央銀行はどういう物価指数を見ているのか」ってお話が続きまして、読みやすく出来ております。6ページの図表8とか、7ページの図表11なんかが判りやすいのではないかと(図は引用しませんよ)。
『第1 に、インフレーション・ターゲティングや物価安定の数値定義の採用の有無にかかわらず、殆ど全ての国は消費者物価指数を使っている。米国はPCE(個人消費支出)デフレータを用いているが、いずれにせよ、金融政策の説明にあたっては、家計の消費支出を対象とする物価指数を使っている点では共通している。この間、GDP
デフレータは利用されていない。』
「この間」ってのが金融経済月報の概要部分で毎月見る言葉なので(=「この間、公共投資は減少傾向にある」)思わずニヤリとしてしまいました(^^)って話は兎も角、きっちりとGDPデフレータにここでも砲撃でございますか。
『第2 に、インフレーション・ターゲティング採用国、物価安定の数値定義採用国ともにコア物価指数ではなく総合物価指数をターゲットないし定義として使っている。一方、米国は食料品・エネルギーを除くPCE
デフレータを重視しており、日本と共にコア物価指数を使っている。』
『以上のように、主要国中央銀行が金融政策の運営スタンスを説明する際には、家計の消費支出を対象とする物価指数が用いられるとともに、コア物価指数が用いられることは少ないようである。』
ということで、金融政策の指標として見ていくのは(まあ最終的には総合判断なんでしょうが)消費者物価指数総合(時と場合によっては一部を切り取ったコア部分も)を使うんでしょうなっていうお話をしているようでございます。
日銀レビューシリーズは基本的に毎回読むようにしておりますが(ところでこれって活字媒体でまとめて入手(購入)できるんでしたっけ?Webよりも本になってた方が後から読むときに便利なんですが・・・いやまあ紙に出せと言われそうですけどね)、説明に数式が出てくる時点で頭が痛くなるという困ったちゃんのあたくしにとっては今回のような概念的な説明は判り易くって助かりますなあ(って自分の頭の悪さを主張してどうする)。
どこぞの新聞では、このペーパーを「解除に向けた日銀の理論武装の一環」と書いていましたが、あたくし思うにこれは解除後の「道しるべ」に関する考察であると考えるんですけど。というか解除に関してはもう日銀お好きにどうぞ状態になってると思うんですが。
○で、一々悪態も忘れずに
いやまあこちらのレビューもそうなんですが、時々「これは随分とタイムリーなレポートですな」ってのが出てくるのが、これはまあ一番最初に紹介したURLにあるように、『日銀レビュー・シリーズは、最近の金融経済の話題を、金融経済に関心を有する幅広い読者層を対象として、平易かつ簡潔に解説するものです。』ってんだからまあそういうこともありますわな。
でも『ただし、レポートで示された意見や解釈に当たる部分は、執筆者に属し、必ずしも日本銀行の見解を示すものではありません。』ちゅうのもまあ確かに言わんとすることは判らんとは申しませんが、それって何か随分ご都合のよろしいお話だことっていう気は思いっきりするのでございます。まあこれで前向きの議論になればそれはそれでよい話なのかもしれませんが、何か「これは正式に決定した主張ではない」で済ませられるような形式でこういう政策の根本に関わる問題をペーパーにしていくというのも(しかも日銀のWebで公表して「日銀レビュー」って名前をつけてるし・・・)何だかなあと思うのでありました。
いやまあ別に日銀が好き勝手やってケシカランって言うつもりでも何でも無いのですし、まあある意味で言えば先に手の内を見せているとも言えそうなんですけどね。
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2006/02/15
お題「今更ですが総裁記者会見」
今朝のモーサテ東京スタジオの最初のお話。「」は本村ゆっこさんのお話で()内はあたくしの声ですが^^;
「量的金融緩和の解除がマーケットの注目を集めていますが、気になるニュースがありました(ほほう何でしょう)。時事通信が有力エコノミスト10名にアンケートを行った結果(量的解除で流動性縮小から株が下げるとでも出たのかねえ?)、10名中8名が4月の量的金融緩和の解除を予想しています(いやあの市場でとっくに織り込み済みの話をマーケット情報番組で大ニュースのように言われても。一般ニュースならともかく)。」
いやまあ本村キャスターは言わされているだけでしょうから別にゆっこ様のせいでも何でも無いんですが、朝から物凄い勢いで脱力するのでありました。この番組の編成をしている人間を捕まえて小一時間問い詰めてみたい(そんなことは時間の無駄だが)ものでございます。今朝も「2月15日水曜日です」っていう矢吹さんの声のトーンを聞いただけでNY株式大幅上昇を予想したらその通りだし(笑)。まあお笑い番組だと思って見てるんで余程とんでもない話でも出てこない限りは血圧も上がらないのですけれども、やはり朝は仕事モードで脳内活性化したいですからねえ。
そんな訳で、最近6時からはMXテレビ(と南関東UHF3局でやってる)ブルームバーグテレビの方がまだマシなのでそっちに切り替えてしまうのでありました。まあそもそも日経新聞を定期購読してないんでそれ以前の問題ではありますが(苦笑)。
という訳で遅くなりましたが2月9日の総裁記者会見。質疑応答を読むと中々オモロイのですが、オモロイ部分を引用してると結構長くなりそうな気がするのでテキトーに。それから金曜にブルームバーグニュース記事から引用させてもらった分は今回割愛。
http://www.boj.or.jp/press/05/kk0602b.htm
○明示したコミットメントは取らないという見解ですな
政策枠組みの透明性や期待の安定化をしていくための施策について。
『(前半割愛。一言で言えば「現在検討中」って感じ)従って、今ここで何がしかの方向性、イメージを申し上げることはできない。ただし、毎回申し上げている通り、量的緩和政策は、消費者物価指数を軸にして日本銀行自身の手足を縛ることに意味を持たせた政策として行ってきたが、量的緩和政策解除後は透明性確保と、金融政策の機動的・弾力的な運営つまり柔軟性とが明確に両立するようなメッセージの出し方でなければならない。この点は非常に明確なポイントとして、各委員とも揃って重視しながら検討を続けている状況である。』
ということで、明示的なコミットメントを設定して政策を行うと言うのはあまり採用したくないらしいですなあ。
○今後の情報発信について:展望レポートなどに関連して
展望レポートを今後どうするかという質問がでましてその回答部分。
『もう一つ重要な話であるが、展望レポートについて皆様がどのように評価されているかわからないが、私どもとしては展望レポートの中の特に金融政策に関する部分において、私どもの先行きの政策径路について、できる限りのメッセージ、最大限のメッセージを盛り込んできているつもりである。量的緩和政策の枠組み修正のタイミングについても触れてきているし、枠組み修正後の金利政策の運営についても、私どもとしては相当程度のメッセージをそこに既に盛り込んできているつもりである。』
『今後の私どもの作業としては、仮に枠組み修正後ということになると枠組み修正までのプロセスは終わるわけであるが、その後の金利をターゲットとする通常の金融政策の運営について、既に書いている部分もある。それを今後の新しい経済のアウトルックとの対比において、これで十分かどうか、さらに追加的に情報提供できる部分があれば惜しみなく情報提供していくことになると思う。ごく自然体に考えて、経済の見通しと政策の径路について、できる限り整合性のとれたかたちでメッセージを出していくということであり、ここで離れ業的なことをするつもりは全くない。』
どうもこの辺りのコメントを聞いて(読んで、ですけど)いると引っ掛かってしまうのですが。と申しますのは、どうも今までの実績を勘案するに、これからも「日銀は経済の先行きがこうなると思うから今後の金融政策は引き締めだよ(または緩和だよ)」とかって言い出すんじゃないかという風に思ってしまうのであります。今の「地均し」路線と同じことを今後もやりだすんじゃないかという漠然とした不安が。。。。
昨日ご紹介した(というか記事の引用ですが)水野審議委員の寄稿がまさにそうなのですが、日銀の審議委員が一々市場に手を突っ込むような話をして、それをもって「市場との対話」とか言われても甚だ迷惑。何か日銀が情報を発信してそれに市場が反応するのを見て「期待の安定化をしないと」となって更に情報発信っていうようなアホアホな事態が発生するのは勘弁していただきたいものです。まあ余計な話をするなと思うのだが。
でも福井総裁はこういうコメントをしているのですが。別の質問に対する答え。
『私どもの頭の中に最後に残る長期金利の姿は、基本的には将来の経済や物価に関する市場の見方を反映して、市場そのものが決めるというものである。理論が決めるものでもないし、誰かパワフルな人が決められるものでもない。市場そのものが、将来の経済や物価に関して貪欲なまでのエネルギーを注いで眺め尽くした後、市場自身が判断して決まると思っている。』
その割には地均しとかしちゃうってのがどうもよく判らん。イールドカーブの見通しまでコメントする水野審議委員は論外ですけど。
○ビハインド・ザ・カーブは反故ですかそうですか
今更驚かないけど、総括しないで有耶無耶のうちに反故にするというのは甚だ遺憾でございます。
『毎回申し上げているが、金融政策は、経済・物価情勢の流れの中でもっとも適切なタイミングを、遅からず早からずという意味で適切なタイミングを掴んでいかなければならないので、情勢判断を離れたイベントが、金融政策の判断のタイミングを決める上で、非常に重要なウエイトを占めるということはない。』
ほほうそうですか。
○景気と物価の見通しに関してはいつもどおりの強気です
まあこういうコメントになるのはいつものことですが、益々意気軒昂と行った所で。
『ご説明した通り、日本経済については、理想的とまでは言わないが、どの角度から見ても比較的バランスの良い経済の姿になっている。生産が強く、企業投資、企業所得がしっかりし、それが家計部門にも均てんして雇用者所得も増え、消費も底堅い。つまり国内経済の循環メカニズムが上手く作動しているが故に、着実な回復、持続性を強めながらの回復になっている。別の言い方をすると、外からのショックに対しても、かつては脆弱性を持っていたが、脆弱性の少ないあるいはショックに対してより強い経済になりつつあると思う。しかし、引き続き、特に外から来るショックに対して、日本経済が本当にどれくらい吸収していける力があるかを、十分見定めていかなければならないと思っている。』
そのショックの中で挙げているのが一次産品や原油価格の上昇と、地政学的リスク(イラン問題が日本に対する地政学的リスクなのかよというツッコミはさておいて)です。
『物価は既に3か月連続でゼロ%以上になっており、見通しとしては、1月分以降はより明確なプラスの数字が出るであろうということである。その背後にある経済情勢の分析を加えて判断していけば、物価のプラス基調がより強く定着していくという合わせ技の判断が出てくると思う。その根底は、経済の持続的な拡大の中で需給が改善し、ユニット・レーバー・コスト(単位当り労働コスト)が物価を押し下げる方向に働く力が減衰していくというように、物価形成の基礎がしっかりしてくるということであり、そこが非常に重要な判断の土台である。消費者物価指数自体が、特殊要因、一時的要因で多少上下することはいつでもあるが、その一時的要因で上下するという物価指数の表層部分の動きをそれほど重視して考えなくても、基調がしっかりしてきたという判断があれば、それは私どもの「安定的にゼロ%以上」という判断に結びつきやすいと考えている。』
いやまあ強気ですなあ。
その他、物価安定目標に関する見解とか(金曜日に引用しましたが)のあたりもまあ読んでおくと吉かと。要するに最初に引用した所にあるように、福井総裁としては数値目標を出すのは相当抵抗あるようですな。そう考えるとまあ(ビハインド・ザ・カーブの反故もそうですが)福井総裁は今まで随分一生懸命に猫をかぶっていたんですなあと思ってしまうのでございました。
では。
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2006/02/10
お題「2月金融経済月報/総裁記者会見をちょっと」
本題に入る前に昨日のエントリーの訂正を致します。と申しますのは、昨日「次回の展望レポートは4月上旬の決定会合で公表」と書きましたが、展望レポートが出るのは4月28日でございました(大恥)。ごみんなさいごみんなさい。ちなみに4月上旬の決定会合で公表されるのは4月分の金融経済月報でございました。ご指摘有難うございます。
よく考えるとこの日程の組み方は去年と殆ど同じですな。
○2月の月報は前月比穏当に
というか既にカンカンの強気になっているのですが。
http://www.boj.or.jp/seisaku/05/pb/gp0602.htm
前回の月報と毎度お馴染みの如く比較する訳ですが、よくよく見ると変っているのは生産の現状判断部分と、消費者物価指数の現状判断部分なのでありました。
・生産の現状判断
(2月)『輸出や生産は増加を続けており、』
(1月)『生産も増加の動きが明確になってきている。』
ということで、「増加の動き」だったのが「増加」ということで判断前進。
・消費者物価指数の現状判断
(2月)『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、若干のプラスで推移している。』
(1月)『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、若干のプラスに転じている。』
ええまあ確かに事実関係を書いているだけと言えばその通りなのですが、2ヶ月目のプラスでさっくりと「転じている」が「推移している」という言い方になっていることに関してはあたくし的には一応ブックマーク(^^)。まあ先月末に公表された物価統計で1月の東京都区部消費者物価指数(除く生鮮)がプラスになったんで自信満々ってことなんでしょうな。プラスに転じて2ヶ月目であっさり「プラス推移」というのは中々。
これだけ見ると、量的緩和政策のコミットメントのうち「コアCPIが安定的にゼロ以上」ってのが満たされていると取ろうと思えば取れない事も無いですなあ。言葉の上では、ですけれども(ちなみに記者会見ではさすがに『今日もなお安定的にゼロ%以上とは言えないという判断となった(ブルームバーグニュースより)』という発言を福井総裁がしておりますので念の為)。
○総裁記者会見
日銀発表の会見要旨は本日午後にでもアップされますので、とりあえずブルームバーグニュースのURLを置いときます。
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=90003017&sid=a9QUtHHxukFM&refer=jp_news_index
最近は諸般の事情(でも何でもなく単にそんなに情報ベンダー持っててもしょうがないでしょって理由ですが)により、同時に複数の情報ベンダーのニュースフラッシュを見ながら画面に向うなどというような器用なことをしておりませんので、人に聞いて回った結果なのですが、各情報ベンダーのフラッシュの打ち方を見ると「強気の記者会見」という印象を与えるものと、「配慮をした記者会見」という印象を与えるものと微妙に違っているようでございました。まあどっちとも取れるような会見だったんでしょうね。
で、ブルームバーグニュースの上記記事にあります一問一答から引用致しますが。
――前回の会見で、量的緩和の解除について「冷静かつ適切に判断していく重要な局面に入っている」と述べられた。解除を判断するにあたって、後は何が必要か。
「日銀の姿勢は極めてクリアだ。コアCPIの前年比が安定的にゼロ%になるまで(続ける)というのが、量的緩和導入時に公表した明確な約束だ。それにそって緩和政策を継続しているわけで、枠組みの変更にあたっては、まさにこの条件が満たされたかどうか、それは、経済・物価情勢全体を十分点検したうえで、この約束が満たされたどうか、ということをきちんと判断していく。予断を持たず、冷静に判断していく、ということに尽きる」
「何か後1つ、具体的なものが加われば、というようなことではない。CPIとか、いろいろな経済指標そのものは、いちいち重要な判断材料だが、背後にある経済全体の動きをきちんと点検することが一番大事なことだと思っている。毎回そうした観点から政策決定会合では議論を重ね、判断を続けてきているが、今日もなお安定的にゼロ%以上とは言えないという判断となった」
「今後はどうかと言うお尋ねなので、1月分以降の消費者物価指数は比較的はっきりとしたプラスになると見込んでいる。したがって、次回の会合以降のこうした経済全体を見据えた指数の判断ということは、より重要になっていると考えている」
――3月の決定会合で量的緩和の解除を判断する際、たとえば年度末が近くて金融調節が難しいとか、国会の会期中だとか、自民党の金融政策に関する小委員会の報告書がまだまとまっていないとか、解除の障害になり得るような要素はあるとお考えか。
「来月に限らず、あるいはそれ以降も、年末であるとか、いろいろ政治的なイベントであるとか、いろいろなことは常にあるわけで、そうしたことは毎回申し上げているが、金融政策は経済、物価情勢の流れの中で最も適切なタイミングを、遅からず早からずという意味で、適切なタイミングをつかんでいかなければならない。情勢判断を離れたイベント事項が金融政策のタイミングを決める非常に重要なウエートを占めることはない。これは明確にないと申し上げる」
まあ3月以降のあと3回ある決定会合のうちのどこかで解除になるんでしょうなあ。CPIがいきなりマイナスとかになっちゃったら話は別ですが。
いやまあ今のところ日銀の裸単騎突撃は順調に行っておるようでございますが、読者様からは「裸単騎よりもオープンリーチの方が感覚的に近い気がします」とお話が(^^)。確かにそうですなあ。そういや学生の時に5面チャンで8巡目リーチしたら実はフリテンで、ハイテイで発単騎の緑一色に振り込むという素晴らしいことをした事がございますが(意味の判らない人は周囲のロクデナシに聞いて下さい)、まあ色々と悪態はつきまくっておりますが、事ここまで到ったら「何とか日銀のシナリオ通りに経済が推移して下さいますように」と申し上げるしかございませんな、と言ってる側からハイテイで役満振込などと書くあたくしは性格が悪いですかそうですか。まあ最も遅くても5月の決定会合までに解除しないと流局の悪寒が致しますが。
今後のことを考えますと、まあ全局オープンリーチされても困りますんで、あまり決め打ち勝負しないで金融政策運営を行っていただきたいのと同時に、今回の決め打ち大作戦に関しても「結果が良かったからプロセスは無問題」ということにならんようにお願いしたいものです。まあ当然ながら中の人たちは皆様よく考えておられるものと信じています。
それから、本日は引用してませんが、上記の会見記事にも「解除後に関してはまだ白紙」というニュアンスの発言があったようですので、さすがに解除後の短期金利引き上げに関しては決め打ちを行わないものと期待(?)しておりますです。
インタゲ等に関しては相変わらず否定的でありまして、望ましい物価上昇率に関しても欧米よりも低いのではないかという発言もありまして、その辺ちとオーバーキルの不安もあるのですが・・・・・・
同じく記者会見記事より。
「多くの識者の方でさえ、簡単に海外ではインフレターゲットは2%くらいではないかとか、2%から3%くらいではないかとおっしゃる。これは私にとっては非常に不思議なことだ。日本の国民の物価観はどうですかということは、われわれは本当は正しく知りたい。そういうことを共有しなければ、正しいメッセージを作ることは難しい。概要を言ってみればそんなことだが、まだ具体案は持っていない」
「望ましい物価上昇率ということを簡単に言う人も多いが、そんなことがアプリオリに(先天的に)あるわけはないし、何かこう計算上すぐに出てくるものではないと思う。要するに、金融政策は人々に物価に関して、余計な心配をしていただかなくて、100%経済活動にいそしんでいただくためにやっている。そういう意味での経済的なウエルフェアー(福祉)を確保するために金融政策をやっている」
「人々が物価に対して心配される領域をもし仮に数字で表せば、ひょっとしたら日本の場合は過去の系譜から言って他の国よりは低いのではないかという感じを私自身は持っていると申し上げた」
だそうです。
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2006/01/27
お題「議事要旨の補足を少々」
きゃあ寒さで寝坊!で昨日の補足で勘弁ですが、その前に雑感。
ふと気が付けばやっと月末ですが、月末と言えば物価統計。本日はCPIが発表されますが、コアCPIの市場予想は横ばいの+0.1%ですので、今回に関してはどっちにぶれてもインパクトがあるのではないかと勝手に想像中。米国の株式相場は何をテーマに動いてるのか良く判らん動きで、値幅以上に「何か荒いですね」ってのが個人的印象です。
まあ日本株もさっくり戻った上に、ソニーの決算が珍しく良い方でぶれたようですので平均株価で16000円奪還ですかそうですか。これじゃ調整にも何にもなってませんな。昨日とかだと証券決算が良いから証券株が大幅上昇(いきなりストップ買い気配になってたのもありましたが)してたとかいうのを見ると、早速またまた調子に乗ってるんじゃないの(証券決算が良いなんちゅうのはこの市況なら当たり前でしょうが)って気もせんでもないっす。
○実質金利の低下に関する議論
今回発表されたのは12月15、16日の議事要旨ですが、「III.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要」の中で実質金利がどうのこうのって議論がこのように書かれています。
『何人かの委員は、経済・物価を巡る環境が好転する中で、実質金利が低下し、株高、為替円安が進行するなど、金融環境の緩和度合いは実態的に強まっているとの認識を示した。』
これが11月17、18日の決定会合議事要旨ではこのように書かれております。
『何人かの委員は、物価見通しの改善により実質金利が低下していることが、株高や円安の進行をもたらしている面があり、金融の緩和度合いは足もとで一段と高まっている可能性があると指摘した。』
そりゃまあCPIがプラス転換してるから当たり前って言われてしまえばそれまでかもしれませんけど、このようなロジックで「実態的な緩和度合いが高まっている」と政策委員会で認識がされてきているという事に関して債券市場も短期金融市場もちと楽観視してるんじゃネーノという気は致します。まあ「世界的に生産能力が上っているから物価が上がりにくい」ってロジックが最近の流行でもありますので、そうは言っても物価は上がりにくいから金利は上がりませんよっていう理屈もあるのですが、何だかんだと悪態つかれながらも日銀はここまで意思を通し続けている(良いか悪いかの問題は別にして)という印象は強いので、その辺をあまり軽く考えるのはどうなんでしょうというあたくし。
ちなみに、実質金利云々という話に関しては11月の決定会合議事要旨にまとまった形で出てきた筈ですので念の為。
○各種の物価指標の扱いについての議論
議事要旨を見るとこの話も結構スペースが割かれていますが、CPIの何を使うかという話が妙に盛り上がったのでしょうか。
『消費者物価の動向を判断する上で、総合指標を見るべきか、一時的な要因を除いたコアベースの指標を見るべきかについて、ある委員は、一時的な変動要因を除くことで基調が見やすくなる一方、その結果として、消費者物価全体に占めるウェイトがあまりに小さくなると、全体の動きが見えなくなるという問題もあると指摘した。また、多くの委員は、一時的な変動を除くという観点からは、エネルギー価格を除外するか否かも論点となり得るが、このところのエネルギー価格の上昇はエマージング諸国の需要増に起因するところが大きく、必ずしも一時的な要因とは言えないため、これを除外して見ることは適当ではないとの見方を示した。』
そんな中にさらっとGDPデフレーターの話が一言入ってます。
『一人の委員は、GDPデフレーターを点検する場合には、GDP統計の改訂の際に、同デフレーターは何度もかつ大幅に改訂される可能性があることも十分踏まえる必要があると指摘した。』
まあ実際にどういう議論が行われていたのかは知る由もありませんが、この議事要旨の書き方を見ておりますと、金融政策運営の関係で見る物価指標はCPIであって、内閣府方面から毎度毎度出てくるGDPデフレーターについては勿論見ない訳じゃないでしょうが、指標あるいは物差しとしての優先順位は低いですが何か?って事なんでしょうなあと思わせてくれる書き方だなあと読みました。
○そういやうっかりしてましたが
どうでもいいのですが、前回の決定会合から「当預引下げ提案コンビ」の議案が揃ったんですね。今回読んで前回分を見直していたら気が付くとは不覚でした(笑)。
しかし何ですな、この「VI.採決 」のところも『以上の議論を踏まえ』って踏まえたら引き締めそうな勢いなんですがとか、水野委員の当預下げ議案提案理由の『金利を通じた市場との対話』ってのは(言いたい趣旨はわかりますけど)、それは量的緩和政策の今までの政策ロジックとまるっきり整合性取れてないんじゃねえのかとか突っ込みたくなりますが(笑)、寝坊したので以下省略。
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2006/01/26
まずは議事要旨。色々とあるのですが、ざっと見て目立ったのは3点。
http://www.boj.or.jp/seisaku/05/pb/g051216_f.htm
○物価見通しに関する部分ですが
「III.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要」の部分です。
『中長期的な物価の動向に関して、複数の委員は、短期的な振れはあるにせよ、物価の基調としては、(1)需給バランスが改善していること、(2)賃金が上昇方向にあること、(3)人々の物価見通しも改善していることを踏まえると、上昇を続けるとみられると述べた。』
まあこれが一応の大勢見解のようですが、次の「ある委員」は中原さんか岩田副総裁かどっちなんでしょう?
『ある委員は、潜在成長率が足もと高まっているとすれば、予想したほどには需給ギャップが縮小していかない可能性もあるのではないかとコメントした。』
えーっと、この部分しれっと流されていますが、パンドラの箱を開けるようなお話でもございまして、潜在成長率を上回る経済成長により需給ギャップ改善って話で一家団欒している所でちゃぶ台ひっくり返す類のもの。で、詳しくは本石町日記さんがエントリーを上げてますのでそちらをどうぞ(人のふんどしで手抜き)。
→http://hongokucho.exblog.jp/4075394
○バブル警戒問題
同じく金融経済情勢に関する検討部分から。
『金融・資本市場の動向について、多くの委員は、最近の株式市場や為替市場の動向には、わが国経済が改善する中で、わが国投資家のリスクテイク能力・リスク選好の高まりや、内外金利差を巡る思惑が影響しているとの見方を示した。このうち一人の委員は、わが国の超低金利が長期化するとの予想が過度に強まれば、為替市場等における価格形成が不安定になる可能性も否定できないと指摘した。また、別の委員は、株式市場において投資家のリスクに対する認識がやや楽観的になっているのではないかと指摘した。』
低金利継続の弊害のお話をしている人が最低でも2名いる訳ですが・・・・
『この間、複数の委員は、最近の株価の上昇は、企業収益の上方修正などを受けたものであり、資産バブルというような状況ではないとの見方を示した。別のある委員は、そうした見方に同意しつつも、一般物価が安定していても、景気が力強さを増す中で、超緩和的な金融環境が継続すれば、資産価格の大幅な上昇を招きやすくなり、そのような状況になれば、リスク、リターンのバランスを欠いた投資が増加し、経済の過熱とその後の反動が生じる可能性があることには留意する必要があると述べた。』
と、こう並べられるとざっくり字面をおってますと何となく資産バブル警戒のように見える並び順ですが(^^)、資産バブルというような状況ではないという人が複数委員というあたりも拝見すると、今のところそこまで気にはしてないでしょうし、さすがに資産バブル潰しに金融政策を使うってのは現状の物価上昇率ゼロ近傍段階でやらかす事はないと思いますが。資産価格の上昇が物価に悪影響与えそうだって話になれば別でしょうけれども、一般物価の状況が全然そうなってませんわな。
ということで、あたくしは、このくだりに関しては「日銀のバブル警戒というのはちょっと読みすぎ(=まだ警戒してないでしょ)」と見立てをしておきます。
○インタゲ等に関わる議論
「IV.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要 」の半分くらいのスペースを使っているのが『さらに、金融政策運営との関係で各種の物価指標をどう扱うかについて、意見が出された。』って事でインタゲ等に関わる議論。
色々な話が書いてあってまあ意見が錯綜したんでしょうなあと思われるところです。是非このくだりはご一読ありたいです・・・・・で、終わらせると意味無いのでそのまた後半部分が一応まとめらしくなっています。多分岩田副総裁の見解と見られる所から話が始まります。
『この間、一人の委員は、経済・物価の先行き見通しにアンカーを提供し、市場における安定的な期待形成に資する観点から、日本銀行が望ましい物価上昇率を示すことを検討すべきとの見解を示した。』
で、これに対する反論がわんさか登場。
『これに対して、ある委員は、インフレーション・ターゲティングとは中長期的に物価目標値の実現を目指すものであるが、こうした点が十分理解されないまま導入されれば、金融政策の機動性を犠牲にする面があるほか、目標を高いところに設定すれば、期待インフレ率やリスク・プレミアムの上昇を通じて、長期金利が上昇する可能性もあると指摘した。』
それの理屈だと「ちゃんと説明して理解されるのであれば導入しても良い」という事になるような気がする諸刃の剣(^^)。
『また、別の一人の委員は、インフレーション・ターゲティングと言っても、諸外国で実施されている内容にはかなり幅があり、金融政策の透明性向上のための枠組みについては、わが国の実情に合わせて考えていく必要があると指摘した。』
・・・・・うーむ。。。。
『さらに、複数の委員は、わが国経済は、物価安定のもとでの持続的な成長に至る途上にあり、経済・物価の形成メカニズムが変化しているため、現段階で中長期的に望ましい物価上昇率を見極め、公表することは難しいとの見解を示した。』
いやあの経済や物価形成のメカニズムって常に変化してると思うんですが、それは要するに絶対やんねーよーと言うことでございましょうか?他にはどんな議論があったのかは10年経たないと判らないのは残念無念。
現状では量的緩和政策解除の後でもインタゲ等の導入の実現性は低そうですなあ。
○政策の非連続的変化という話に関して
3点と言ってた割には4点目が出てくるのは気にしないように(笑)。
この話の前に毎度お馴染み情報発信論議がございまして、どうも個人的に引っ掛かるのはこの部分でございます。
『これに関連し、一人の委員は、金融市場関係者に加え、企業関係者や国民においても、量的緩和政策の解除が経済に非連続的な変化をもたらすものではないという点について理解が十分に浸透するように、丁寧な説明を続けていく必要があると述べた。』
この「非連続的変化をもたらさない」ってのは量的緩和解除の話をする時に政策委員の皆様が揃ってこの話をするのですが、金融政策の変更ということに関してこの「非連続的な変化をもたらさない」ってのをあまり意識しすぎるのはどうなのかなあって思いますのでこの際一言。
まあ確かにマーケットが先行きの経済状況を正確に反映して価格形成されているって事であれば、適切な将来の金融政策を全部織り込みに行くから「市場容認型」みたいな金融政策の変更によって「経済に非連続的変化をもたらさない」という結果になると思いますが、市場なんてえのは基本的には年がら年中間違えているものだというのがあたくしの経験的感覚(なので科学的根拠はございません。悪しからずご了承下さい^^)でございまして、その市場を意識して「非連続的な変化を与えないようにしよう」と考えると「地均し」の発想が出て来るのではないかと推測するのはあたくしだけでしょうか?
政策運営で無用のショックを与えないようにするという事は誠に結構ではございますが、その配慮もやりすぎると「地均しやって予定が狂ったらどうするのよ」って落とし穴が待っているように思えます。過度にその点を意識しない方が良いのではないでしょうか??
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2006/01/23
○という訳で月報
例によって12月と比較。
http://www.boj.or.jp/seisaku/05/pb/gp0601.htm(1月)
http://www.boj.or.jp/seisaku/05/pb/gp0512.htm(12月)
・総括判断に文言が追加されましたよ〜♪
(1月)『わが国の景気は、着実に回復を続けている。』
(12月)『わが国の景気は、回復を続けている。』
景気回復の足取りが着実だそうです。これって判断前進ってことでしょうな。
・生産の現状判断を前進
で、総括判断の次に現状判断があるのですが、この中では生産の判断が前進。
(1月)『生産も増加の動きが明確になってきている。』
(12月)『生産も振れを伴いつつ増加傾向にある。』
・先行きの判断もこりゃ前進なんでしょうな
(1月)『先行きについても、景気は着実に回復を続けていくとみられる。』
(12月)『先行きについても、景気は回復を続けていくとみられる。』
自信度が上っているということで宜しいでしょうか(^^)?その内訳に関しては文言同じでございます。先行き見通しの総括部分だけ前進ってのも珍しい気がしますが。
・物価の先行きに関して「円安の影響」を追加
物価の現状に関しては当たり前ですがプラスに転換したって話をしてますが、そこは当たり前の部分なので引用省略。で、物価の先行きに関して、国内企業物価のところで、将来の上昇要因として円安というのを挙げています。ただし、この円安に関してはここもとの国内企業物価上昇の要因としても挙げていましたので、まあ現状程度の円安であればそれほど気にはしない(継続的に強含み要因になるんでしょうけれども)のかなあ。
・金融面に関しては前月と同じです
強いて言えばマネーサプライの数字だけですが、これは実績数値の話なので前月と違いが出る時には違っているのは当たり前ですんで引用割愛。
ということで、総括しますと判断が前進と申しますか、景気の先行き拡大に関して自信をより一層深めているという風に読むのが吉かと存じます。
○総裁記者会見要旨は本日ということで
一応ブルームバーグニュースなどでも報道されてますが、まあ景気には益々強気のようでございますな。ヘッドラインには「冷静かつ適切に判断する重要な局面に」ってありましたが、瞬間2銭くらいしか反応してませんで、もう福井総裁の強気発言には慣れてしまったのか、週末で今更反応する気力が涌かなかったのかは知りませんが(笑)、全体を通して読まないと何とも。
まあ本日の会見要旨のアップを待ちたいと思います。
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2005/12/22
金融政策決定会合議事要旨が2本出ておりました。ざっと読んだ感想を少々。
http://www.boj.or.jp/seisaku/05/pb/g051118.htm(11月17、18日)
http://www.boj.or.jp/seisaku/05/pb/g051031.htm(10月31日)
○情報発信に関して
10月分ではこんな話がでてまして、まぁ予想される論議ではあるのですが、相変わらず脱力させてくださいます。
『また、多くの委員は、市場の金利形成が経済・物価情勢に応じて円滑に行われるよう、金融経済情勢に関する判断や政策運営の基本的な考え方を丁寧に説明し、期待の安定化に努めることが重要であると述べた。』
経済・物価情勢に応じた市場の金利形成を期待するのであれば、日銀の実施することは、経済や物価に関る統計を迅速かつ正確に公表して、経済実態が良く判るように努力するのが筋ではないでしょうか。まあその点については日銀は良くやっていると思いますけどね。で、その経済統計やら企業業績やらと言った所から市場が経済・物価情勢を判断して価格の形成が行われるというのが上記の趣旨に叶う状況ではないかと思料。
地均しとかってのは結果として日銀の経済見通しが合っていればそりゃまあより効率的な運営に資するのかもしれませんが、逆に行った時に自分の手足を縛るような地均しを行うのはやはり如何なものかと思うのでございますがどうでしょうか。
『このうちひとりの委員は、市場金利は先行きの経済物価見通しや政策運営の予想によって変動するため、円滑な金利形成のためには、政策運営のタイミングを誤らないことが何よりも大事であると指摘した。』
尤もらしい意見ですが、よく考えると何かトートロジーみたいな気がする。
『また、何人かの委員は、情報発信によって、完全に期待を安定化できるわけではなく、この点に誤解が生まれないようにすることが大事であると述べた。この間、ひとりの委員は、何らかの形で物価安定のアンカーを示していくことも考えられるとの意見を述べた。』
「物価安定のアンカー」話については後述。
11月の議事要旨では情報発信問題に関してこんな議論が。
『また、今後の金融政策運営に関する情報発信のあり方などについても、議論が行われた。委員は、先日公表した展望レポートにおいて十分な記述を行ったこともあり、少なくとも市場参加者の間では、(1)景気回復の持続性は高まっていること、(2)消費者物価(全国、除く生鮮食品)の前年比は、年末にかけてゼロ%ないし若干のプラスに転じた後、プラス基調が定着していくと考えられること、(3)そうしたもとで、現在の金融政策の枠組みを変更する可能性は、「2006年度にかけて」高まっていくこと、などの日本銀行の見方はかなり浸透してきているとの認識を共有した。』
そりゃまああれだけ鉦や太鼓を打ち鳴らしていただければ浸透しますわなと思うのですが、経済実態に応じた市場の金利形成と日銀(の政策委員会の中の人たち)が言うのが何なのかというのが端的に判ってしまう部分でございます。いやー吐息がでちゃいますわな。
○物価安定のアンカー話
先ほどご紹介しましたように、10月31日の決定会合で「ひとりの委員」が指摘した「物価安定のアンカー」話ですが、11月の決定会合では複数の委員が本件に言及して議論になった模様。
『この間、複数の委員は、経済・物価の先行き見通しにアンカーを提供し、日本銀行の政策意図を分かりやすく伝えていく観点から、金融政策が目指すべき物価上昇率として望ましい物価上昇率を示すことは検討に値するとコメントした。これに対し、何人かの委員は、(1)望ましい物価上昇率はあくまで中長期的に目指すべきものであり、そのことが国民に十分に理解されることが不可欠であること、(2)物価安定のもとでの持続的成長に向けての途上にある現在は、中長期的に望ましいと考えられる物価上昇率を示すことが困難であること、(3)わが国では、低い物価上昇率が続いてきており、経済主体の意思決定もある程度低い物価上昇率を前提に決定されている可能性があること、などを指摘した。』
この論議に関して経済理論的突っ込むのはより詳しい人にお願いするとして(手抜き)、政策運営のテクニック的な観点で考えますと、現状の日銀政策委員会が「期待の安定化」をどのように図ろうとしているかって点になりますけれども、先ほどご紹介したように「日銀の経済見通しや先行きの政策運営に関する考え方を丁寧に説明する」というのが「期待の安定化」に資するという理屈でございますわな。
その理屈に則しますと、「アンカーの提供をして」云々というのは現在のメンバーでは中々ムツカシイのではないかと思いますが。アンカーを提供して判断は市場でやってくれってスタンスでは無さそうに見えますんでね。
○バブル警戒はまだ早かろう
11月の議事要旨で、貸し出しがプラスになったという話をしてまして、その中にこんなお話が。
『そのうち一人の委員は、家計の資産保有の対象が貯蓄型からリスク選好型にも広がっているなど、貸出の動きだけでなくマネーフロー全体の変化を捉えていく必要もあるとコメントした。』
貯蓄から投資ってのは政府も日銀も重要な方向性として推奨していたのではないかと思うんですが、株価がやっとの事で威勢良く上昇してるのを見て早速資産インフレを警戒しちゃうのはちょっと。まあそういう意味で話をしている訳では無いと思いたいのですが、その先でもこんな話がありまして。
『ある委員は、株価の上昇は、株式益回りの低下を通じて、これまで大幅なマイナスで推移してきたイールド・スプレッド(=長期金利−株式益回り)に変化をもたらすものであり、投資家の感じる株式保有に伴うリスクが低下してきている可能性があるとの見方を示した。何人かの委員は、物価見通しの改善により実質金利が低下していることが、株高や円安の進行をもたらしている面があり、金融の緩和度合いは足もとで一段と高まっている可能性があると指摘した。』
まあ現象面について話をしているんだと思いますが、どうも今までの言動を見ていると、金融緩和政策の効果が今まさに発揮されている状態を早くも警戒しているんじゃないかと(まあ色々な面で分析するのは大事なことではありますが)引っ掛かるものがございますな。
何か他にも突っ込みどころはあるような感じですが、とりあえず気になったのはこの3点でございますわな。
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2005/12/19
お題「資産担保証券買入終了/金融経済月報」
○予定通り資産担保証券買入終了
今回の決定会合で予定通りに資産担保証券の買入が今年度末に終了の運びと相成りました。
資産担保証券の買入は2003年の4月に実施決定されまして、その時には「とうとう日銀が震災手形を再開したか」などと悪態をついていたのですが、その後も「何でも買いますシニアだけじゃなくてメザニンも」などという勢いだけは示しながらも実際問題としてろくに利用されずという状況になりました。
まあ2003年5月というか6月以降のりそな救済スキーム発動という政策転換(銀行シバキアゲ政策から一転して救済スキーム発動)が効いて、それまで極度に嫌われていたクレジット物が一転して俺にもよこせ状態になったのでろくに利用されなかったという面はあると思います。
それにしてもこの「資産担保証券買入」施策を発表した時は「もう何でも買いますよ皆さんいらっしゃい」って感じのリリースをしておいて、いざ実際に導入という段になると微妙に使いにくいスキームにして時間を稼ぎ(メザニンを買うて話は後から出た)その後利用がろくに無い状態になっている時に総裁自ら国会で「ええ、利用されなくても市場が育成されているからより結構なことですよおっほっほ(意訳)」とご発言されてましたわな。
この資産担保証券がどうのこうのって話は速水総裁時代からの宿題的な部分もあったのですが、スキームをぶち上げておいて結局「震災手形」化は実施段階で避けるという作戦に、福井総裁の深慮遠謀(というか猫のかぶり方が上手いというか)を感じる訳でございます(ここの所突然本卦帰りしているのは我慢不足と申し上げておきましょう)。
まあ何が何だか判らんスキームではございましたな。札割れにならなかったオペの方が少ないという施策ってそりゃ何なのよという感じで、よく言えば抜かずの宝刀ですが、まあハリボテみたいなスキームではございました(笑)。
○金融経済月報
12月の月報はこちら→http://www.boj.or.jp/seisaku/05/pb/gp0512.htm
例によって11月分と比較する訳ですが、まあ今回に関しては事実としてのCPIゼロ%に加えて先行きの見通しに「プラス転換を予想」というのが直球で入ってきましたってのがあるって所ですか。診療報酬がまた引下げ(財政問題がどうのこうのと美しい話ばかり聞くのですが、首相の強い意向と聞いたあたくしにはてっきり政権に批判的スタンスだった日本医師会への嫌がらせだと思ってしまいましたよええ勿論そんなことは毛頭ございませんですよねあひゃひゃひゃひゃ)という事で、CPI引下げの「特殊要因」は後から後から出てきますわなあって感じです。日銀も大変だ(苦笑)。
てな余談は兎も角として。まあ大体内容的には同じなんですけどね。
・現状判断・総括判断
(11月と同じ)『わが国の景気は、回復を続けている。』
ということで、他は11月と違っている所をご紹介しておきます。
・輸出
(12月)『輸出は増加を続けており』
(11月)『輸出は緩やかな増加を続けており』
・住宅投資
(12月)『住宅投資も、強含みの動きが続いている。』
(11月)『住宅投資も、強含みの動きとなっている。』
輸出の増加傾向が「緩やか」が外れ、前月から強含みになった住宅投資が強含み継続ですという形で、まあ引き続き細かい表現の違いだけですけど景気判断的には今回もまた前進方向への書き換えになっております。
・物価について
現状がゼロになったというのは事実認定の問題ですから引用は省略しますが、先行き見通しでも堂々プラス予想になっております。
(12月)『消費者物価の前年比は、需給環境の緩やかな改善が続く中、電話料金引き下げの影響が剥落していくこともあって、若干のプラスに転じていくと予想される。』
特殊要因剥落の為にプラス転換ってのも書き方としては弱いというか抑制的になってますが、まあさすがに散々政治サイドと揉めたのでここは抑制的に書いているんでしょうなあと勝手に想像しております。ちなみにこの部分の11月はこんな感じになっております。
(11月)『消費者物価の前年比は、需給環境の緩やかな改善が続く中、米価格のマイナス寄与が剥落していくことや、電気・電話料金引き下げの影響が弱まることなどから、年末頃にかけてゼロ%ないし若干のプラスに転じていくと予想される。』
当然ですが方向性は変ってないんですけどね。
まあこれで今月発表のCPIがなお上昇すると解除に向けてまた攻防戦が始まるんでしょうかね。総裁記者会見はあまり見てませんが、一応前のめり姿勢を(今更になって)否定しているようですけれども、やる気は満々なんでしょうねえ。
(補足)
・先日ご紹介した日銀の月報ですが、12月分を11月と比較した中で漏れがございましたのでご紹介します。すいません。
(12月)『国内民間需要も、企業の過剰債務などの構造的な調整圧力が概ね払拭されたもとで』
(11月)『国内民間需要も、企業の過剰設備・過剰債務などの構造的な調整圧力が概ね払拭されたもとで』
過剰設備の文言が消えておりましたな。
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2005/12/15
○日銀短観
大企業製造業の業況判断DIが+21だったんですが、もっと良いって話が直前は出てたような気もします。でもあたくし的には毎回毎回ちと違う所から見るのでございまして・・・・
・業況判断DIの「前回予想からの達成度合い」
実際に出てくるDIの数値が一番注目されるのは当然の話ですけれども、あたくしが毎回見ているのは「3ヶ月前に回答していた先行き予測と今回のDIはどう乖離してますか」って話。
この数値を見ますと、「9月短観時点での先行き予想DI」よりも今回のDIの数値は概ね改善しております。
大企業製造業+18→+21、非製造業+16→+17
中堅企業製造業+6→+9、非製造業+2→+1
中小企業製造業+4→+7、非製造業▲12→▲7
(左が9月調査時点での先行き見通し、右が今回の業況判断)
この中では、9月の業況判断DIに対して先行きのDI数値が低かった(=先行きに慎重な見方)大企業製造業と中小企業非製造業の12月DIが9月対比改善しております。今回の短観では全体的に先行きの予想DIが12月対比低い数値が出ておりますが、ここまでのパターンを見ているとその「先行き慎重」ってのは毎度お馴染みの高値警戒感みたいなもんではないかと存じます。
で、これだけ株価が堅調であられます昨今ですが、それを考慮に入れてこのDIが思ったほど伸びてませんなあと見るのか、引き続き堅調と見るのかはあたくしよー判らんのでそーゆーものは本職の人が書いたものを参考にしませう(おい
・雇用判断DIは・・・・
日銀さまが単位労働コストがどうしたこうしたとコメントしている訳でして、雇用関係のDIは気にしない訳には参りますまい。雇用関係の数値は短観(概要)の6ページ目になります。
で、雇用判断DIを見るんですが、ややこしい事にこの雇用人員判断DIってのは「過剰」−「不足」で出してくるので、ここはマイナスになっている方が良い数字ですわな。この手の結果をまず斜め読みする人間にとっては一瞬「あれどっちだったっけ」と固まるので困るんですが(苦笑)。
で、この雇用判断DIなんですが、さっきと同じ見かたをするとこちらは案外な内容だったりするんですよこれが。
大企業製造業▲1→+2、非製造業▲8→▲6
中堅企業製造業▲3→▲2、非製造業▲10→▲9
中小企業製造業▲4→▲3、非製造業▲6→▲7
(左が9月調査時点での先行き見通し、右が今回の業況判断)
前回対比で言えばプラス幅縮小かマイナス幅拡大となってはいるものの、9月時点で予想していた「先行き見通し」ほど雇用判断が良くなっていないという次第。こーゆー辺りが業況判断先行きDIの慎重姿勢に影響を与えているのかもしれませんなあと思いながら。
ちなみに、どうでも良い話ですが、7ページ目にあります金融機関の業況判断DI等を見るとまあ証券業の業況がよろしいようで誠に結構でございますな(笑)。
別に悪い数字でも何でもないですけど、全体的には事前に囃されていたほど良くもないけど、かといって先行きを懸念するほどのものも無いという感じではないかと思うのでした。
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2005/11/25
さあ、CPIですよ♪ってな訳でまずは決定会合議事要旨から甚だ簡単に。
http://www.boj.or.jp/seisaku/05/pb/g051012_f.htm
○情報発信を自賛してるよおおおお
毎度毎度最初に見るのが3番目の「当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要」で、肝心の経済見通しをろくに読まないというのも実にアレでございますが(汗)。
『この間、今後の金融政策運営に関する情報発信のあり方についても、議論が行われた。委員は、これまでの情報発信によって、市場参加者の間に、景気回復の持続性や、「2006年度にかけて」量的緩和政策の解除の可能性が高まっていくとの見方が浸透したとの認識を共有した。』
いや何と申しますかウェーハッハッハハと申しますかああそうですねよかったですねと申しますか。市場機能を封殺するのがケシカランという議論をしている側から市場誘導の成果を自賛(しかも認識を「共有」してるんですけど。特定委員の発言なら兎も角)されてもなぁとしか申し上げようが無いのですが。何度もお話してるので言う方も疲れてきたよパトラッシュ。
『また、多くの委員は、解除後の金融政策運営に関する情報発信に当たっては、金融市場における円滑な期待形成に配慮する一方、金融経済情勢の変化に応じた機動的な金融政策運営が可能となるようバランスをとっていくことが重要であると述べた。』
それを人はマッチポンプと言うのであった(-_-メ)。黙ってりゃあ別に「お前のやってる事はこの前言ってたことと違うじゃねーか」という突っ込みを受ける事も無くって思うんですが。
『そのうえで、委員は、こうした点については、展望レポートに向けてしっかりと検討していく必要があるとの認識を共有した。複数の委員は、情報発信に当たっては、決定会合での議論を経て共通の認識になっている内容を出発点とすべきであると述べた。』
展望レポートに関してはその通りの内容で。共通の認識云々は、各委員から出てくる話のどこからどこまでが個人的見解と決定会合での共通認識なのかが曖昧じゃねーのかって事なのかなあと勝手に想像しますが、まぁ最近の水野&福間審議委員のように、議事提案とかの行動を伴ってくれれば別に良いのじゃないかと思います。
○ここのやり取りは(10年後に忘れてなければ)見たいもんです
今回は前回比妙にこの「当面の金融政策・・・」部分が短くなっております。前回は結構長くなっておりまして、まぁそういう意味では政策委員会の多数は金融政策の方向性で意見一致という理解でよいのかなあと勝手に思うわけですが、実はその前の部分でオモロイやり取りがございまして、そこで何気に議論が盛り上がったのではないかと愚考(^^)。
『この間、ある委員は、(1)デフレか否かの判断のために、家計が消費する対象となる消費財やサービスの価格を中心にみるなら、民間投資、政府支出、純輸出等を含むGDPデフレーターは必ずしも適当な指標ではない、(2)仮にGDP統計でみるのであれば、家計最終消費支出デフレーターを使うべきであるが、その場合でも、連鎖方式化されたとはいえ、パーシェ指数としての下方バイアスがあり、パソコン等の価格下落を過大に反映する傾向がある点に留意する必要がある、と指摘した。』
なるほど、下方バイアスですかそうですか、って突っ込みが次に入るのであった。
『別の委員は、物価情勢の判断に当たっては、消費者物価指数の上方バイアスも考慮した実勢ベースでみていくことが重要であるとコメントした。』
当然ですわな。えー何と申しますか、下方バイアスを強調して上方バイアスはスルーという最初の「ある委員」様の意見に「ざけんなてめぇ」って勢いでバトルでもやっていると楽しいのですが(おいおい)、このあたりのやり取りは10年後に公表される予定の議事録を読んでみたいものです。
『また、別のある委員は、デフレという言葉は多義的なので、注意して使う必要があると述べた。』
これは多分この前の記者会見内容からして福井総裁の発言ですな。
#まぁ議事要旨はとりあえずそんな所で。金融面の動向ってところで妙に細かい話をしてますなあってのもあったんですが割愛。
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2005/11/21
○金融経済月報(11月)
今回はまーそんなに過激路線ではありませんが。
http://www.boj.or.jp/seisaku/05/pb/gp0511.htm
前月と比較してどうよって話で少々比較。
・住宅投資強含みキター
(11月)『住宅投資も、強含みの動きとなっている。』
(10月)『住宅投資にはこのところ増加の動きがみられる。』
そうなんんですかという印象しかないのですが、まぁ住宅投資が強いというのは景気判断的には効くんですかなってところで。
・円安キター
(11月)『国内企業物価は、国際商品市況高や円安などを背景に、上昇を続けている。』
(10月)『国内企業物価は、原油価格上昇の影響などから、上昇している。』
(11月)『国内企業物価は、国際商品市況高や円安などを背景に、上昇を続けている。』
(10月)『国内企業物価は、原油価格上昇の影響などから、上昇している。』
「円安の影響」キターですな。昔のことを思うとこの程度の速度と値幅で円安の影響ですかあと思うのですが、まぁそういうんだからそうなんでしょう(謎)。
あと一箇所あるのは銀行貸出がプラスになってますよって所ですが、引用を省略致します。他の部分は10月と11月で同じ事を書いてますが、いじったところが住宅投資と為替市場ということなので、それはそれで一応気にはしておく必要ありかなあと思いました。
○総裁記者会見ですが
記者会見要旨は例によって例の如く本日午後にでもアップされるのですが、ブルームバーグニュースが行う会見ストりーミング放送(ただし録画もの)を3分の2ほど見た感想を少々。
・だから今からインフレファイターになってどうする
「インフレマインドが来る前に解除(手元のメモにはそう書いてあるけど、表現は違うと思う)」という部分でかなり腰の砕けたあたくし。いやまぁもうインフレファイターですか今はデフレですよ総裁って感じなんですが。
全体的にインフレ抑制っぽいトーンの発言が多いというか、インフレという言葉に妙に反応するのは日銀マンの仕様でしょうか?
・一応撤退路確保作戦もしてるのかな?
「経済に何らかのショックがあれば解除は遅らせるのは当然(脳内メモリーベースの意訳)」という発言がございました。まぁここまで振り上げた拳を下ろすには、まさか「政府のご指導」って訳にも行かないですから、それなりに「経済にショックを与えるような突発事態」というのが言い訳として必要とされる今日この頃ではございます。そのために今回布石を打っているのがこの発言なのではないかとも取れる訳ですわな。
そこで鳥インフルエンザですよ(笑)。先日与太話をしている時に「しかしSARSって言うと語感的に何だか恐ろしい病気っぽいけど、鳥インフルエンザだと何かこう間の抜けた感じがしますわな。日銀の政策決定文書に載せるとなると」などというしょーもないネタで盛り上がりましたが、何か言い訳があれば量的緩和を引っ張るという「名誉ある撤退」もできるかも知れませんな。
○しょうもないおまけ
財務副大臣が替わって最初の決定会合ですが、今回は毎度お馴染みの「決定会合終了後に会合の内容を喋る人」がいなかったようで、その手の報道がございませんでした。大変に結構でございますな。
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2005/11/08
○その先まで周到に用意しているようで
先日の日銀レビューでは「CPIの上方バイアスは以前よりも大したことがありませんな」というのが出ておりましたが、その次に出てた日銀レビューは「新しいケインズ経済学の下での最適金融政策分析:裁量とコミットメントの意義」というお題でして、またまた企画局のお方(三尾仁志さん)のお名前で2日に日銀Webにアップされています。
http://www.boj.or.jp/ronbun/05/rev05j15_f.htm
で、こちらの内容なのですが、恥ずかしながらにあたくしの理解能力ではご説明致しかねますので(滝汗)華麗にスルーしますが(おい)、どうもここの所何回か日銀レビューの形で出ている金融政策の理論的なお話をしているようですな。まぁ色々と先を見据えて企画局におかれましては理論武装に余念が無いという所なのでしょうか。本ペーパーの末尾にはこんな記述がございます。
『こうした限界を意識しつつ、政策運営上の諸問題を理論的に整理し、現実の政策運営に役立つアイディアを抽出する努力を重ねることは、金融政策運営の理論的基礎を固める作業の一環として重要であると考えられる。』
願わくば結論先にありきの理論固めという事になりませんように。
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2005/11/04
さて本題。総裁記者会見のお話の前に水曜日にご紹介したCPI上方バイアス問題に関する日銀レビューシリーズに関しまして、読者様からメールを頂きまして大変勉強になりました、ありがとうございます。で、ご本人の許諾を頂きましたのでメールの内容をご紹介したいと思います。
○以前のレポートはこうなっていた訳ですが
以下『』は頂きましたメールからの引用でございます^^
『いささか血圧が上がったのは、CPIの上方バイアスについて「10年以上過去の1990年基準指数について、筆者自身が行った0.9%という推計値がある」などと、遠い過去のように書いていること。』
ということで、文体まであたくしと同じようにしていただきまして(^^)、大喜びのあたくしなのでありました。って話じゃなくて、水曜にご紹介した日銀レビューはまさに白塚さんが書いていまして、CPI上方バイアス問題に関しては先日の国会で山本幸三議員が過去の白塚さんのペーパーなどにも言及してましたですね。で、その辺は「遠い過去」にして早速新しいペーパー(結論は「CPIの上方バイアスは絶賛縮小ですよ先生(意訳)」ですわな)を出したちゅう事なんでしょうね。
『ちなみに、この分析はhttp://www.imes.boj.or.jp/japanese/all99/abst/me17-3-3.htmlで、アップデートされているようです(0.9%の結論は変更なし)が、言及なし。』
このimes.boj.or.jpというあまりお馴染みでないドメインは「日本銀行金融研究所」のものでして、良く見ると過去の寄稿論文や講演なども掲載されてます。http://www.imes.boj.or.jp/japanese/fkouen_index.htmlに出ている過去のお題を見ていると「おうおう」と思うものが転がってますが、それはまた後で読むとしまして。
で、上記の分析なんですが「Measurement Errors in the Japanese Consumer Price
Index」というお題で本文は英文34ページ(表紙含む)ですのでまぁ要旨だけ目を通すということで。
『この分析をもとにこんなことhttp://www.imes.boj.or.jp/japanese/kouen/ki0103.htmを書いたりして当時の総務庁統計局を論難していたhttp://www.stat.go.jp/data/cpi/3.htmのに、急に遠い過去のことのように言うのは何とも...』
こちらのリンク先資料はどちらも日本語ですのでご安心下さい(^^)。
○で、色々とツッコミ
『だいたい、0.9%という推計値は正しかったのか。2000年基準への変更の際の乖離が0.26%だったことをどう考えるのか。今回は「上方バイアスは縮小している」などと定性的なことしか書かずに数字を出さないのは何故なんだなどと問いつめたいところです。』
皆で小一時間問い詰めにいかないといけませんな。正直この辺のことに関してはあたくし思いっきり不勉強もいいところでして、あのペーパーを単独で読むと「ふ〜んそうなんですか」と思わず納得しかねない(何となく怪しげだと思ったからご紹介したんですが^^)ので、突っ込んでいただける人がいると非常に勉強になりますです。感謝感激。
『くだんの論文は読み返すたびにムムムなのですが、1点だけ』
ということでとりあえず突っ込み場所その1について。
#代替効果によるバイアスは、相対価格の変動が大きくなるほど拡大する。インフレ率が高いほど、相対価格の変動も大きくなる傾向があるため、一般論として言えば、低インフレ国は高インフレ国に比べ、代替効果によるバイアスは小さくなる傾向があると考えられる#
という部分が当該論文にございましたが、この点について色々と疑問というかツッコミをして頂きましたので、以下ご紹介します。『』でくくるとちと読みにくいので頂いた形式そのままで行きますね。
?高インフレ国ってどんな国?過去20年間、ディスインフレという言葉しか聞かないんだけれども。デフレでなければ高インフレということでしょうか。
?インフレ率が高いほど相対価格の変動も大きくなるって本当
?まあ、そういうことは言えるとは思うけれども、インフレ率が高くなったら相対変動などゴミみたいなもの
?そもそも、CPIバイアスの大部分(0.9%中0.7%)は品質変化要因だったはずなのに、何で代替要因がトップにくるの...。
ちなみに品質変化は最近こそ激しいはず。それ故に、代替要因もある。
(ここまで頂いたメール)
ちゅうことで、まぁツッコミどころ満載のようですので、一つ宜しくです(誰に?)。
○結論先にありきですからねぇ
『平成11年当時、CPIがマイナスに沈んでいるときに、これでもCPIには上方バイアスがある(もっと下がっているはずだ)と言っていたのですから、当時の日銀の物価観たるや。。。(今も本質的には変わっていないようなので尚更ですが。)』
ということで、結論先にありきで理屈後付けの香りが漂いまくる今日この頃でございますが、それはそれとして、日銀はどうも望ましい物価水準が本当にコアCPIベース(もしかしてコアじゃないのか??)でゼロと思っているのではないかという気もしてきました、おー恐ろし。
ってあたくしも昔は「ゼロインフレ」という言葉というか宣伝文句にに幻惑されて「物価上昇率がゼロなのは良い事だ」など思っていた時代もありましたので、インフレを極端に忌避するメディアとかを何とかしないと行けないですなぁなどと考えるとちょっと大変だなぁと思う次第です。
2005/11/02
お題「地均し理論武装編」
いつものパターンですと今日は総裁記者会見なのですが、今回は既に展望リポートを見た瞬間に「既定路線キター」状態になってしまい、本質的な興味は失せてしまった(ネタとしての意味はあるが)ので、記者会見分析(笑)は明日じゃなかった明後日にでも。
何せ昨日ご紹介しましたように、4月の展望リポートで量的緩和政策の時間軸効果について「より強い緩和効果を発揮していくと考えられる」と言ってたのに地均しはするわ、公式文書で堂々(記者会見などでは何度もその話になっていましたが、こうやって公式文書になったのは初見の筈)と「量的緩和は現状では実質的にただのゼロ金利」というコメントをしちゃうくらいですから、まぁ量的緩和解除をやりますよ話しかど〜せ無いんでしょって所ですか。
○今度は消費者物価指数の上方バイアスに関して
で、毎度お馴染み日銀レビューシリーズで昨日投下された燃料もといレポートは企画局の白塚氏執筆によるものでございます。で、毎度の事ですが、「レポートで示された意見は執筆者に属し、必ずしも日本銀行の見解を示すものではありません」ってヘッジクローズ入り(そりゃ日銀の最高決定機関は政策委員会ですから当たり前ですが)なんですけど、調査統計局とかの人が書くならまだしも、企画局という肩書きで「日銀レビュー」ってだされて「それは日銀の見解かどうかは存じませんが」と言われましても思惑は呼ぶでしょうなぁ。
http://www.boj.or.jp/ronbun/05/rev05j14_f.htm
上記URLはサマリーのご紹介となっておりまして、そこの先に全文のPDFファイルへのリンクが張ってあります。7ページしかございませんので、ご覧になるとヨロシアルね。
で、あたくしはさっくり手抜きでサマリーを拝見。
『消費者物価指数(CPI)は、消費者の購入する財・サービスの価格変動を捉えるための総合的な物価指数として広く利用されている。現行CPIは、すべての家計が基準時点の財・サービスのバスケットを購入し続けると仮定して、物価変動を捉えようとするものである。このため、相対価格の変動や新製品の登場・旧製品の消滅などに伴う消費者行動の変化を十分的確に反映させることが難しく、上方バイアスが存在すると指摘されてきた。』
ふむふむなるほど。
『しかしながら、わが国では近年、2000年基準改定においてパソコン等新製品の取り込みが行われ、またその後も、プリンタ、インターネット接続料等が新たに採用されるなど、統計作成当局による指数精度向上への対応が続けられている。』
ということで言いたかった結論。
『そうした結果として、上方バイアスは、縮小方向にあると考えられる。もっとも、CPIの上方バイアスについては、その大きさを固定的なものと考えることは適当でなく、統計作成法の改善、基準年からの時間的経過や経済環境の変化によって変動するとの視点を持つことが重要である。
』
サマリー部分(=Webで思いっきり目に付く所)に書くのは刺激が強いとご判断したのかど〜かは知りませんが、本論の「おわりに」という部分ではこのように結論付けております。
『CPIは2000年基準改定において、指数精度の改善に向けて意欲的な対応がなされた結果、上方バイアスも縮小している。このため、上方バイアスの存在自体は、物価情勢の判断にさほど大きな影響を与えるものではなくなってきていると考えられる。』
暫く前に「テーラールールがどうしたこうした」って日銀レビューがでて「適正金利論議キター」と一部の日銀ヲチャー界隈(そんなものがあるのかどうかは知らんが)で大いに話題になっておりましたが、今回は「CPIの上方バイアス物価情勢の判断にさほど大きな影響はございませんが何か?」という事で、CPI基準改定を物ともせずに我往かんという所(とは関係ないというのが日銀のご回答でしょうけど)でしょうな。実に勇壮すぎて涙が出てしまいます。
ちなみに本石町日記さんの所では展望リポートにあった「適正な金利水準」というくだりに関して2000年と同じ事やってますとご指摘が。
本論に関しては本文の方をご覧頂ければと。基本的にあっしのような初心者が読んでも判るように書いてあります(と思う)ので日銀レビューシリーズは毎回読むようにはしております。
○ところであたくしのシロート考えなのですが
もともとがトレーダーのあたくしは興味はあっても結局シロートなので物価統計がどうのこうのって話になるとあまり突っ込めないのが悲しいのですが(ってちゃんと勉強しやがれということですな)ちょっと気になった所。
CPIの上方バイアスの他にある問題として、統計作成技術上の問題点として、なお残るものを列挙しているのですが、その中で家賃の問題に関して触れております。この部分読んでいると「うーむ」と思ってしまうのですが。
・民営家賃には継続賃料のみを対象としており、新規賃料が含まれていない
・帰属家賃の価格データは民営家賃の調査結果が使用されているが、民営借家と持ち家では平均的な質が違う
・しかも帰属家賃はCPIに占めるウェイトが高い(2000年基準ベースで13.6%)
ほほうなるほどと思うのですが、あくまでも個人的体感的なお話をすると、民間借家の家賃ってここの所下がってきてるような気がするんですけど。個人的に一番判りやすいと思うのは入退去コストが比較的安いので結構出入りの多い公営(や公団、家賃が中位以上の物件の方が観測対象としてはオモロイ)住宅の空室状況ですが、これは別にデータが公表されている訳でもないので定点観測あるいは中古住宅空室募集状況(公団はネットで受付してます)を見るんですが(笑)。ご存知のように家賃をあまりいじらない(最近は都心の高額物件中心に家賃を少々下げたらしいのですが)ので、周囲の相場が動くと入居率が動くと言う判りやすい構造になっております。
どうも家賃が下がっているのか需給バランスが崩れているのかは良く判りませんが、まぁ最近は都心の物件を中心に空きが絶賛増加中です。確かに都心部では土地価格は上昇してるんでしょうけれども、そりゃ高度利用によって上っているという面もあると思うのでして、個別家賃はどうよって気もしますわな。
だからどうだと言われると漠然とした感覚で恐縮なんですが、ちと気になったもので自分の備忘録代わりに書いてしまいました。
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2005/11/01
お題「量的緩和解除事前宣言ですかそうですか」
ある意味予想通りではあるのですが、これはやって欲しく無かったという展望リポートが出てしまいましたな。
今回の展望リポート(正式名称は「経済・物価の展望」)の基本的見解が発表されました。いつもだと前回分と比較検討するという感じでご紹介と言いたいのですが、今回は前回と思いっきり違ういわば「量的緩和政策の事前解除宣言」となってしまいました。にちぎんのおもわくどおりにぶっかがちゃんとじょうしょうするといいですね(棒読み)。
今回の展望リポートはこちら
http://www.boj.or.jp/seisaku/pb/gor0510.htm
ちなみに前回(4月)は
http://www.boj.or.jp/seisaku/pb/gor0504.htm
ですんで両方見ると一目瞭然。
○量的緩和政策解除の具体的手順キタ---------!
経済・物価情勢の見通しも何か実に自信満々な内容になっていて実に微笑ましいのですが、そっちまでご紹介しているといつまで経っても終わりませんし、だいたい本職の人が解説してるでしょうから金融政策運営に関する部分を例によって例の如く拝見。
『今回の展望レポートの経済・物価見通しが実現することを前提とすると、現在の金融政策の枠組みを変更する可能性は、2006年度にかけて高まっていくとみられる。』
まぁそうですね物価がちゃんと上昇するといいですね。
『枠組みの変更は、日本銀行当座預金残高を所要準備の水準に向けて削減し、金融市場調節の主たる操作目標を日本銀行当座預金残高から短期金利に変更することを意味する。』
枠組みの変更=量的緩和解除という意味ですが、どうも「ゼロ金利解除」でミソをつけたせいで「解除」という言葉は縁起が悪いとお感じなのでしょうなぁ(苦笑)。
『当座預金残高の削減に当たっては、長期にわたって量的緩和政策が続けられてきただけに、金融市場の状況を十分に点検しながら行う必要がある。もっとも、前述のように、物価見通しの好転とともに、量的緩和政策の効果は次第に短期金利がゼロであることによる効果が中心になってきていることを踏まえると、政策の枠組みの変更自体は、政策効果について非連続的な変化を伴うものではない。』
もっとも云々のところは最近日銀が言い出している「時間軸効果が無くなってきているからただのゼロ金利になっている」という理屈。CPIがまだマイナスなのに時間軸効果が無くなっているとはこれ如何にって感じですが。
『枠組み変更後のプロセスを概念的に整理すると、極めて低い短期金利の水準を経て、次第に経済・物価情勢に見合った金利水準に調整していくという順序をたどることになると考えられる。』
『こうした枠組みの変更やその後の短期金利の水準・時間的経路については、言うまでもなく先行きの経済・物価の展開や金融情勢に大きく依存する。日本銀行としては、経済がバランスのとれた持続的な成長過程をたどる中にあって物価の上昇圧力が抑制された状況が続いていくと判断されるのであれば、全体として、余裕をもって対応を進められる可能性が高いと考えている。』
ということで、具体的にどうするという話まで延々としている訳で、まぁ量的緩和政策を解除するぞ解除するぞと大変に威勢良く宣言しているという所ではあります。緩和解除は既定路線ですんでよろしく。
○しかしまぁ舌の根も乾かぬうちにとはこのことで
先ほど申し上げた「時間軸効果が無くなってきている云々」という部分ですが、今回の展望リポートではこのように書いております。
『また、物価が下落から上昇に転じるとの見方が増加し、市場参加者が予想する量的緩和政策の継続期間も短縮しており、その結果、やや長めの金利形成において「約束」の果たす役割は徐々に後退する方向にある。そうしたもとで、量的緩和政策の経済・物価に対する刺激効果は、次第に短期金利がゼロであることによる効果が中心になってきている。』
市場参加者が予想する継続時間の短縮が皆様の地均しが原因ではないでしょうかなどというツッコミをするのはお約束すぎるので省略(笑)。前回ではちゃんとコミットメントの効果について言及してたんですけどねぇ。
『(4月の展望リポート「基本的見解」より)さらに、消費者物価に基づく量的緩和政策継続の「約束」は、景気回復が続くもとでも企業が低い金利で資金調達することを可能としており、先行き、企業の将来に対する自信が強まっていくにつれ、金利を通じてより強い緩和効果を発揮していくと考えられる。』
と4月には言ってたのに、自ら「地均し」して約束を事実上空文化するという大技を使う日銀に涙を禁じ得ません。
○それはひょっとしてギャグで言っているのか
『資金需要が極めて弱い場合には、調節運営上の対応により当座預金残高目標を維持するとしても、その方法如何によっては、自然な金利形成からの乖離をもたらし、市場機能が十分に発揮されなくなる可能性も否定できない。』
量的緩和政策というのは「緩和効果を出すために金融機関がイラネという位に量を出す」のでは無かったでしたっけ?相変わらずレビューしないでなし崩しで政策を転換するのがお得意ですなぁ。
『最近では、景況感が改善するもとで、期間が長い資金供給オペレーションに対する金融機関の応札が増加しており、このため、本年初以降大幅に長期化したオペレーションの期間を幾分短期化しても、当座預金残高目標の達成が可能となっている。これらの対応は、金融市場において経済・物価情勢を反映した自然な価格形成がある程度回復することに寄与している。』
地均しの効果が出ているのを「景況感が改善」って言われましても「まっちぽんぷ」という言葉しか思い浮かばないあたくしはきっと景気実態をよく理解していない認識不足な人間なんですよきっと。
でまぁ最後の一節も悪い冗談にしか見えないあたくしは素直さに欠けるわけですよ。そういえば小学校の時に担任の先生が産休入りして、代打でやってきた超厳格超真面目なオバハンセンセイが通信簿に「態度が不真面目」と酷評してたという大変に懐かしい思い出(虎馬とも言う)が。PTSDになったので謝罪と賠(ry
『量的緩和政策の導入と同様、枠組みの変更も先例のないものであるだけに、金融市場において経済・物価情勢に応じた価格形成が円滑に行われるよう配慮することが重要である。日本銀行としては、物価安定のもとでの持続的な経済成長を実現していくため、金融経済情勢に関する判断や金融政策運営に関する基本的な考え方を丁寧に説明し、期待の安定化に努めるとともに、今後の情勢変化に応じて適切かつ機動的に対応していく方針である。』
ま、確かに市場っちゅうのは放置しておくと暴走する傾向がございますが、「経済・物価情勢に応じた価格形成」ってその「情勢に応じた」というのを誰が判断するのでしょうかと禿げ上がりすぎてテレビCMでハッピーニューイヤーって言うユル・ブリナー(歳がばれるがな)状態になりそうでございます。で、結局は「優秀な叡智を結集して調査分析をして、ポジショントークとかに無縁であらされる所の日銀様による分析に応じた価格形成をしやがれ」という理解で宜しいのでしょうか?(などと書くから怒られるのですが^^)
まぁそこまで悪態をつくのもアレですが、そりゃ「期待の安定化」じゃなくて「期待の誘導」でしょうね。
まぁそんな感じで。
○内閣改造雑感
いやまぁあんまり興味なかったんですが、竹中さんが金融行政絡みから外れたのはちょっと驚きました。で、与謝野さんが後任なのですが、金融政策的な話になると割と日銀よりな人が金融担当大臣になったんで、日銀としては量的緩和政策の解除(とは言ってはいけません、枠組みの見直しです^^)に対するプレッシャーがちょっと弱くなるでしょうなって感じですか。やや金融市場的には早期解除というか早期の金利引き上げへの思惑が強くなりそうな気がします。
どっちかというと「銀行シバキアゲ」政策が(りそな救済で事実上政策転換しているとは言え)終わってくれるのを期待したいのですが、既に銀行に対する大昔の産業政策状態路線は確立されているともいえるのでまぁどうなんでしょうかねぇという所です。
やたら論功行賞が目立ちますなぁという所でしょうか。ところであの記念撮影で赤い絨毯にやたらと映える青い服を着ていた人がいましたが、あの場所にドレスであの色は(以下自主規制)。
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2005/10/18
本題は9月7、8日の金融政策決定会合議事要旨。
http://www.boj.or.jp/seisaku/05/pb/g050908.htm
○まず解除ありきですかそうですか
例によって「当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要」ってところをネタにするのですが。
『何人かの委員は、長めのオペに対する応札が好調であり、無理なく当座預金残高目標を達成できる状況においては、市場における円滑な金利形成を促すとともに、将来における金融政策運営の機動性・柔軟性を高める観点から、自然体でオペ期間を短縮していくことが望ましいとの見方を示した。』
そもそもオペに対する応札が好調なのは日銀がカンカンに景気に強気になっているのが示されたから「こりゃ量的緩和解除が近いですか」ということになったというのが背景のような気がしますが、それは兎も角。
「市場における円滑な金利形成」「将来における金融政策運営の機動性・柔軟性を高める」って所はもう思いっきり量的緩和政策の解除を前提とした議論になっているようで実に香ばしい。まぁこの日に出た金融経済月報は景気回復を高らかに宣言していた訳で(9月9日にドラめもんネタにしたですけど)、出てきた物との整合性は取れてはいますが(笑)。
この指摘もある意味凄い。
『この間、ひとりの委員は、オペ期間の短縮に当たっては、結果としてターム物金利のボラティリティが過度に高まらないよう配慮する必要があると付け加えた。』
自分たち(この人が中原さんだったら該当しませんので念の為^^)で早期解除期待を振り撒いておいてボラティリティが過度に高まらないようにっていう発想がとっても素敵です。もし解除期待を振り撒いている人たちの誰かがこの委員なら「逝ってよし」といったところでございますわな。
○対外的な情報発信が重要だから皆で期待を振り撒くんですかそうですか
で、最後の部分が実に香ばしさ爆発。
『何人かの委員は、消費者物価指数の前年比のプラス転化が視野に入ってくる中で、量的緩和政策解除の時期や具体的な手順、さらにはその先の金融政策運営に対する市場参加者の関心は高まっており、今後、対外的な情報発信が一段と重要な課題になるとの認識を示した。』
ここを読んで引っ掛からない人は日銀ストー(略)としての修行が足りません(^^)。
本来量的緩和政策のコミットメントというのは「3条件が達成されるまで緩和政策を続ける」というのがミソな訳ですが、ここでは既に「何人かの委員」がCPIがプラスに転じる前から量的緩和政策解除の具体的手順に関して情報発信しておりますわな。条件達成前から「やるやる」と言っていれば市場は勝手にそれを織り込みに逝く訳でして、量的緩和政策の時間軸効果が減殺される事になります。ということは、一昨年の9月に行った「コミットメント」という名前の「お約束」はどうなったんでしょうかと小一時間ですな。
で、まぁこの政策会合以降に立て続けに行われた講演などで各審議委員の言いたい放題が大爆発。確かに講演日程なんかはだいぶ前から決まっていると思うのですが、妙に審議委員の皆様が立て込んでいる直前の会合でこの「情報発信云々」というのは実に予定調和的で、思わず陰謀論を提唱したくなります(笑)。
『この間、複数の委員は、情報発信に当たっては、経済金融情勢の変化に応じた機動的な金融政策運営を損なうことがないよう十分な配慮が必要であると述べた。』
残念ながら無理でしょう。情報発信は金融政策をどうするこうするという話ではなく、景況感に関する話をすべきものではないかと存じますが、「まず解除ありき」という姿勢を出して事細かに解除後の世界の話をするのでは・・・・
『この点に関し、ひとりの委員は、今後、時間軸効果が薄れていく中で、量的緩和政策は、実質的にはコミットメントのないゼロ金利になっていくとの見方を示したうえで、このような政策効果の変化を踏まえた情報発信が重要であるとコメントした。』
こりゃ福井総裁ですな。で、総裁様も情報発信ですか、こりゃ日銀に振り回される日々が続きますなぁという感じです。は〜。
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2005/10/13
○細かいけど結構ポイント突いた所で判断が前進している訳でして
今月の金融経済月報→http://www.boj.or.jp/seisaku/05/pb/gp0510_f.htm
例によって9月分と比較。
・現状判断部分:住宅投資がいきなり上方修正
『わが国の景気は、回復を続けている。』ってあたりの部分は特に9月分と変わらないのですが、「あれ?」と思ったのは現状判断部分のこのところ。
(10月)『また、住宅投資にはこのところ増加の動きがみられる。』
(9月)『この間、住宅投資は横ばい圏内で推移しており、』
住宅投資の横ばい圏ってのはあたくしが毎月飽きもせず月報チェックを始めてから延々と続いていたので正直何年ぶりに上方修正したんでしょうというくらいなんですが、住宅投資の増加傾向ってのがいきなり出てきたのは「そうなんですかねぇ」という感じです。まぁ確かに最近再開発案件の大型マンションが物凄い勢いで売りに出されていますが。。。。そうなの??
・先行き判断部分:IT部門の調整云々が消えました
(10月)『海外経済の拡大を背景に、輸出は増加を続けていくとみられる。』
(9月)『海外経済の拡大が続くもとで、輸出の伸びは次第に高まっていくとみられる。』
米国経済は株価だけみてると若干アレの香りもするなどというツッコミをしてはいけません(笑)。ここで輸出の先行き見通しが若干強めになるのですか。
(10月)『こうした内外需要の増加を背景に、生産も増加基調をたどるとみられる。』
(9月)『こうした内外需要の増加や、IT関連分野の調整一巡を背景に、生産も増加基調をたどるとみられる。』
イット関連分野の調整がどうのこうのというフレーズがとうとう消えました。
・物価の現状と先行きに関しては9月と全く同じです
まるで同じなので比較もへったくれも無いのですが、同じですだけじゃ寂しいので先行き見通し部分を引用しておきましょう。
『物価の先行きについて、国内企業物価は、原油高等を反映して、上昇を続けるとみられる。一方、消費者物価の前年比は、需給環境の緩やかな改善が続く中、米価格のマイナス寄与が剥落していくことや、電気・電話料金引き下げの影響が弱まることなどから、年末頃にかけてゼロ%ないし若干のプラスに転じていくと予想される。』
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2005/10/12
お題「審議委員の小まとめ」
いや昨日は随分と平均株価が強かったですな。債券も後場から下げていたようですが、例によって昨日もまた相場あんまり見てないので、見てきたかのような後講釈は致しません(汗)。
審議委員の講演などが一巡(西村審議委員の講演は最近無いようですが)したようなのであたくしなりに纏めてみようかと思い、あたくしが勝手にポイントかな〜と見ている部分に関してどうなのよってのを並べてみました。一応正確を期したつもりですが、発言の字面を見ているとニュアンスが微妙な所もあるので解釈が変な所もあるかもしれません。念の為・・・・
○最近の講演等のタイミングはこんな感じです
福井総裁=9月30日定例記者会見、10月3日衆議院予算委員会
武藤副総裁=9月5日ブルームバーグインタビュー、6月23日講演
岩田副総裁=9月15日講演
須田委員=9月28日講演
中原委員=10月3日講演
春委員=10月4日講演
福間委員=9月14日講演
水野委員=9月20日講演
西村委員は特に最近講演無かったですが、インタビューがあったかも知れない。
ということなので、念の為この辺にあたって確認される事が吉かと存じます。また、以下のリストに西村委員が入ってないのでまだ出来が悪い事を予めお断りしておきます。(追記;最後に補足訂正あり)
○CPIのプラス転換時期について(以下一部敬称略)
今年末にかけて=福井、岩田、福間
年末頃=中原、春
来年度にかけて=武藤、須田?、水野?
須田委員は強気っぽい言い方をしておいて記者会見で「特定した訳では無いが」みたいな発言でしたが、まぁ強気なんでしょう。水野委員は時期については特にコメントはないですが、「展望レポート通り」という見通しのようです。まぁ要するに皆揃って遅くとも来年度にはプラテンと。
○量的緩和政策の解除時期
福井=来年度にかけて
岩田=「出口は近づいている」
中原=2条件達成後も慎重な対応が必要
春=来年度初以降に
須田委員はCPIの強気と同じく解除時期についても前のめりっぽいニュアンス。福井総裁は国会答弁などで「急にそこから引き締めるというふうなことを一度も申し上げたことはないわけでして」と言ったり、その前の記者会見でも量的緩和政策を解除してもかなりの低金利(もしかしたらゼロ金利)をするという言い方。
福間、水野の両委員は解除前に当預目標の引き下げを提案していますが、これは解除に時間を掛けるというお話でもありまして、解除後に関しても漸進的な対応という感じです。
○量的緩和3条件達成前の当預目標引下げ
引下げの提案中=福間、水野
技術的対応を否定しない人=福井、武藤、春
否定的な人=岩田、須田、中原
で、この中で武藤副総裁は「解除前提の引下げは不可(6月の講演でしたが)」というコメントで、須田委員は「別に技術的に必要ないので不要」というコメントなので、もしかしたらこの二人の位置関係は逆なのかもしれませんが一応こうしてみました。当預目標の引下げが引き締めを意味しているので否定というのは中原委員。
○緩和解除後に新たなコミットメントを設けるかという話
否定的な人=福井、須田、水野
「望ましい物価目標」設定を推奨する人=岩田、中原
この中で須田委員が講演で思いっきり否定してますんでまぁ一番強硬なのでしょうが、福井総裁も国会答弁なんかを読んでいるとどうも否定パワーが強そうですな。水野委員は否定的というよりは慎重対応という感じですか。
○量的緩和政策の「量」の意味
この部分に関しては最近の講演などから拾ってはいますが、「いや他にも意味を認めていますが」とか言われちゃったりして(大汗)。
福井=流動性対応
武藤=企業金融の緩和、物価下落防止
岩田=流動性対応、景気下支え
須田=流動性対応
中原=景気下支え
春=流動性対応、物価下落防止
福間=流動性対応
水野=流動性対応
まぁ金融不安に対する流動性対応というのは全員認めているのですが、それ以上の積極的な意義はどうなのよって話ですな。最近まっきり言わなくなりましたが、以前は岩田副総裁は「事後的に為替介入の非不胎化になっている」という指摘をしておりました。
とまぁそんな感じで作ってみましたが、まだまだ完成品とは言いがたいものもございますのでご指摘などいただければ誠に幸いです。
○審議委員のまとめ(12日)の補足訂正
CPIプラス転換時期に関して武藤副総裁のブルームバーグインタビューを改めて読み返してみると、文脈としては「今年末から来年初にかけて、特殊要因が剥落していく結果プラスに転じる」「来年度にかけては、安定的にゼロ%以上と判断できるようになる可能性が高くなってきている」という風になっておりましたので、まぁ物価の見通しに関してはちと書き方間違いでしたな。謹んでお詫びいたしますが賠償は致しません。
ちなみに、西村審議委員に関しては基本的に福井総裁と同じ見方という所でほぼ問題ないようです。
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2005/10/07
○手形オペの期間短縮
昨日実施された全店手形オペは期間150日となりました。札割れだ何だと騒いでいた時には300日以上の期間で打っていた訳でして、半分くらいまで短縮しましたかそうですかという所です。もともと9月は資金余剰気味なのであまりオペを打つ必要が無い上に、長いオペを打っていた関係上期落ちも少なしという所なのかと(真面目に検証してないけど)思うのですが、ここのところあんまり手形オペ自体がそんなに多くなかったりしますな。
で、そのオペの期間なんですが、直近4回の全店手形オペを見ますと(日付はオファー日)8月8日=309日、8月23日=232日、9月27日=195日、昨日=150日という感じで順調に(笑)短期化中。ちなみに本店手形オペは8月4日=171日、8月18日=170日、9月21日=116日、9月30日=114日という感じですので、やはり9月になってから期間短縮中ということですな。
まーそもそも手形オペの期間を長くしたのは、そうしないと札割れするからなのですから札が入るのに期間を長いまま放置するのは変という結論になる訳ですが、地均しモード全開(除く中原審議委員)状態になっているので、「これもまた地均し」とか解説する人が出てきそうな希ガス。ま、その下心はあるんでしょうけどね(爆)。
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