福間年勝前審議委員
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福間年勝審議委員
福間さんの略歴(日銀Webより)
昭和12年4月23日生
昭和35年3月広島大学政経学部卒業
昭和35年4月三井物産株式会社入社
同社資金部長、プロジェクト財務部長を経て平成3年6月取締役財務部長
平成6年6月に代表取締役常務、その後専務、副社長を歴任し平成13年6月同社顧問
平成13年4月より経済同友会副代表幹事
平成14年4月5日より日本銀行政策委員会審議委員
(前職:三井物産株式会社代表取締役副社長)
平成19年4月4日に任期満了で退任となりました。お疲れ様でした。
詳しくはこちら→http://www.boj.or.jp/type/list/pb_member/fukuma.htm
2006/11/27「資産バブル懸念が気になる講演(しかし超久しぶりなんですね)」
2005/09/27「今更ですが14日の講演後の記者会見」
2005/09/15「それはギャグで言っているのか?(またまた電波講演)」
2005/02/28「我田引水理論大爆発の講演及び記者会見」
2004/10/04「ターム物取引の低迷は銀行間信用縮小の結果??」
2004/10/01「相変わらず現状認識がなっていないお人」
2006/11/27
お題「福間審議委員講演:あたくしは資産バブル懸念が気になりましたが」
まあ債券市場の材料にはならなかった福間審議委員の講演でございますが、あたくし読んでおりまして「資産バブル懸念のくだりが気になるなあ」という印象を受けました。
http://www.boj.or.jp/type/press/koen/ko0611d.htm
○景気の見立ては中立という感じでしょうか
もともと福間さんはハト派寄りなんで、(12月3日追記:必ずしもそうではなく、市場機能回復論者というのが正しいので、景気の見立て以上に「市場機能回復」に固執しがちで、量的緩和解除前に当座預金残高を下げろと言うのが氏の従来の主張でした。あんまり久しぶりだから忘れてましたよこのセンセイの主張^^)景気に対する見方が比較的慎重になってもあまり相場的には材料になりませんが、各項目に関して強気でも弱気でもないという感じ。
・海外経済
『まず、海外経済については、米国では、景気拡大のテンポが一頃に比べて鈍化していますが、軟着陸に向けた動きが続いています。』
『図表1−1をご覧頂きますと、その他の地域では、欧州で景気回復の動きがより確かなものとなっているほか、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)等の新興国も高い伸びを示すなど、概ね順調に拡大が続いています。』
ということで海外経済に関しては強気のようですが・・・・
・国内経済、企業部門
『日本経済は、図表3でご確認頂けますように、基調としては、内需と外需がともに増加するもとで、展望レポートの標準シナリオにほぼ沿って、緩やかに息の長い拡大を続けています。もっとも、内需では一部にやや芳しくない指標もみられており、景気情勢は引続き丁寧にみていく必要があると考えています。』
ということで、日本経済に関しては「丁寧に見ていく必要がある」という話からスタートしています。冒頭を見ると慎重派ではあるのですが、中身を見てると必ずしも弱気な訳でもないという感じです。トータルしてチャラって感じなのかなあ。
『まず企業収益については、図表4にありますとおり、本年度は、製造業・非製造業とも5期連続の増益となる見込みです。もっとも、下期については減益見通しとの一部の集計もみられています。これは、基本的には、企業が期初予想を上回る上期決算を受けても通期決算を上方修正しないなど、保守的な姿勢を堅持している結果とみられますが、今後の企業業績の動向については、丁寧に点検していく必要があると思われます。』
で企業業績の話と設備投資の話をしておりますが、こちらの内容は「企業業績の好調は輸出とグローバル展開の好調が背景」「設備投資は堅調」という内容でして、割と中身を見ると堅調認識です。要点が分散してて引用するとやたらと長くなるので引用割愛します。
・国内経済、個人部門
『こうした企業部門の好調は、徐々に家計部門に波及していますが、今のところ期待したほどではありません。』
ということで雇用者所得の伸びがパッとしないという話と、株式市場における資産効果の剥落から逆資産効果へという点を新興市場の下落を引き合いに出して指摘してます。結論は以下の通り。
『こうしたもとで、個人消費関連指標は、夏場の天候要因もあって、図表10にありますように今一つ芳しくありません。もっとも、最近の労働需給の逼迫を受け、所定内賃金についても、まず非正規雇用で引上げる動きが広がりつつあるほか、正規雇用のベースアップに踏み切る動きも一部にはみられ始めています。また、このところの灯油・ガソリン価格の下落は、個人消費の下支え要因になるとみられます。今後の個人消費動向については、これらの要因を総合的に勘案しながら、丁寧にみていきたいと考えています。』
ということで、基本的には展望レポートに示された標準シナリオと同じ見立てになっております。この先に物価と金融面の話もありますが、標準シナリオのお話になってまして、別に「弱気」なのではなくて「慎重」であるという所かと存じます。
○金融政策運営に関しては資産バブルへの言及が気になるんですが
後半の金融政策運営に掛かる部分ですが、先行きリスクの部分、即ち展望レポートにおけつ「第2の柱」相当の部分と思われますが、こちらについて資産バブルに関する言及をしているのがあたくしとしては気になる話。
福井総裁の講演などでは、先行きリスクに関しては資産バブルよりも低金利が長く続きすぎることによるマインドの楽観が起こす設備投資の過熱って論法になっていたと思うのですが、福間さんは資産バブルに直球を投げてる感じです。
『持続的成長を実現していくうえで留意しなければならないのは、現在の成長率は2%程度とはいえ、景気拡大がさらに長く続けば、物価に加えていずれ資産価格への影響も出てくる可能性があるという点です。近年において持続的成長を実現してきた英国やオーストラリア、さらには米国においても資産価格の急激な変動がみられましたが、これらの国では、過去の苦い教訓も踏まえ、今のところうまく対応しています。FRBのコーン副議長は、87年のブラックマンデー、98年のLTCM危機などにおける資産価格の急激な変動を踏まえた教訓の一つとして、「わずかな予防は、膨大な事後対応にも値する(an
ounce of prevention is worth many pounds of cure)」ことを指摘しています。』
『わが国では、70年代初のニクソン・ショック後や、80年代後半のプラザ合意後には、資産価格の変動のために多大な清算コスト(3つの過剰の解消、バランスシート調整を10年以上に亘って行わざるを得なかった)を要したという、苦い歴史があります。足もとの不動産市場をみると、一部にはやや投機的かと思われる取引も散発的にみられますが、今のところ全体としてみれば収益性に見合った価格で取引が行われているとみてよいかと思われます。また、一部の金融機関では、先行してノンリコース・プロパティ・ローンの利益確定売りに動いているなど、不動産市場は必ずしも強気一辺倒という訳でもありません。このように、資産価格については、今直ちに警戒される状況ではありませんが、今後ともよく見ていく必要があろうかと思います。』
で、この後にも「展望レポート第2の柱」ということで資産バブル(講演では資産インフレと表現しています)に関する言及をしています。まあバブル懸念だけではなく、反対側の言及もしてバランスはとっているのですけれども。
『第2の柱では、より長期的な視点を踏まえつつ、確率は高くなくとも発生した場合に生じるコストも意識しながら重視すべき様々なリスクを点検しています。こうしたリスクとしては上振れ・下振れの双方が考えられます。例えば、資産インフレについては、今直ちに警戒される状況ではありませんが、一たび発生した場合には、中長期的にみて経済活動の振幅が大きくなるといったリスクは意識する必要があります。一方、今後の展開次第では、景気拡大や物価の上昇が足踏みするリスクも意識しておく必要があります。』
ということで、福間さんが引用したFRBコーン副議長の言葉と、これらの指摘をあわせると、福間審議委員は資産インフレに関してはかなり気にしてるんじゃないかなあと思わせてくれる内容でした。
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2005/09/27
お題「古い話で恐縮ですが福間審議委員の14日の記者会見」
諸般の事情により社会復帰してませんのでまぁ軽く。先々週の話で恐縮ですが、相変わらず何だかな〜という講演をした福間審議委員の記者会見もまた何だかな〜でございました。
http://www.boj.or.jp/press/05/kk0509b_f.htm
○当預引下げの意味が結局量的緩和解除の前段階のようですが
冒頭の質疑がこれ。
『(問)福間委員はかねてより当座預金残高目標の減額を提案されてきたが、量的緩和政策の枠組みの変更については「焦らずゆっくりと漸進的に」と発言されている。(質問一部割愛)福間委員は、量的緩和政策の解除のタイミングとその後のイメージについてどのようにお考えか。』
こんな質問をする方もする方だが、そもそもこれに答える人がいるから困るのでありますわな。この手の質問に対して福井総裁はさすがに心得ておいでのようで、「そんなものはその時の状況次第」としかお答えにならないのですが、どうも「市場出身者として市場を熟知している」とお考えの方は違うようで。と毎度毎度イチャモンをつけるあたくしも相当しつこいが。
やたら答えが長いので分割して引用。
『(答)(割愛部分に対応した箇所は省略)当座預金残高目標については、ご指摘のとおり私は4月の金融政策決定会合以降、27〜32兆円程度に引き下げるべきだと提案してきた。同時に、この残高目標の引下げと量的緩和政策の枠組みの変更は別であるということも申し上げてきた。私が残高目標の引下げを提案するのは、量的緩和政策の先にある金利政策、あるいはゼロ金利を通っての金利政策に移行する前に環境整備を行っておく必要があるからである。』
「量的緩和政策の枠組みの変更とは別」だけど「金利政策への移行への環境整備」って一体全体何なんでしょう?環境整備をしたらその先には枠組みの変更があるという事であれば、環境整備が即ち量的緩和政策の枠組みの変更に繋がると考えるのが自然に思えるのですが。それが「別になる」いう理屈が1ミリも理解できません。
『(途中割愛)ただ、残高目標を引き下げるに当たっては、5月の議事要旨にも書いてあるとおり、「慎重にゆっくりと減額していく必要がある」と考えている。本日の講演では、この考え方がもう少し具体的に伝わるように、「焦らずゆっくりと漸進的に」という表現で申し上げた。私がなぜこうしたことを申し上げるかと言うと、残高目標を一気に落とすと市場にショックを与えるので、市場と並走しながら漸進的に落としていく必要があるからである。私としてはできるだけ市場に痛みを与えず継ぎ目のない形で金利政策に移行していきたいと考えている。』
この理屈も意味不明。一気に落とすのか数ヶ月掛けて落とすのかは技術的な問題であり、その時の状況が一気に落とすのを容認するようなら一気に落として問題ないでしょうし、そうじゃなければ数ヶ月掛けて落とすという話ではないかと。どうして決め打ちするですかこの先生は。
『残高目標の引下げについては、3条件が達成してからでも遅くないのではないかという意見も聞かれるが、CPIがプラスになったからといって焦って残高目標を引き下げると、市場にショックや痛みを与える惧れがある。そうならないようにするために残高目標を金融機関の当座預金需要の減少に合わせて引き下げておくことが、過去の経験に照らしても適当なのではないかと考えている。FRBもBOEも過去の経験に学びその教訓を活かしながら、ディス・インフレ下での金融政策あるいはディス・インフレが一応止まった後の金融政策を行っている。その教訓とは、金融政策は追い込まれてから対応するのではかえってリスクを大きくするということである。これはわが国も例外ではない。』
さっき指摘しましたように、残高目標の引下げが金利政策への移行への環境整備であるという理屈を援用致しますと、量的緩和政策のコミットメント3条件の達成前にその「環境整備」を行うというお話になりますが、そりゃコミットメントの前倒し化に繋がる話でよっぽど「市場にショック」を与えると思いますが。大体今までやった事の無い政策を運用してるのにこういうときだけ「過去の経験」とか言い出すのは牽強付会ですわな。
で、この部分もう一つおかしいのですが、現在の政策の枠組みは「ビハインド・ザ・カーブ」を前提にしている訳でして、「追い込まれてから対応するのではかえってリスクを大きくする」とか言ってるのは現状の量的緩和政策の枠組みの放棄でありますからして、本来福間審議委員が金融政策決定会合で提案すべきは「コミットメント3条件の撤廃」ではございませんでしょうかと存じますが如何なもんでしょう?
○思いっきり自家撞着に陥ってませんでしょうか?
そのちょっと後の質疑がまたトホホなわけで。
『(問)「焦らずゆっくりと漸進的に」というスタンスが重要ということだが、現在の残高目標を徐々に引き下げて金利政策が遂行できる段階に至るまで、どれ位の時間を掛ける必要があるとお考えか。また、福間委員の主張は未だ少数派であり、多数派は量的緩和政策を解除するまで現在の当座預金残高を維持した方がよいと主張しているように思われる。仮に量的緩和政策を解除した後に残高目標の引下げを開始した場合、金利政策が遂行できるまでにはかなりの時間を要すると考えられるが、そのように捉えてよいか。』
だからこんな質問はその時になってみないと意味が無いんですな。具体的に申し上げるとすれば、時々話題になる「資金供給オペレーションの期間」ですけど、世の中で金利変更時期の予想が近くなればなるほど、より短い期間の供給オペレーションでも所謂「札割れ」が発生しにくくなる訳で、うまいこと資金供給オペレーションを短期化していけば将来の当座預金残高の引下げが現在想定されているより迅速に進む(オペの期落ちが早く来るから)かも知れない訳でして、こんな話は現在の延長線上で考えていてもあまり意味は無い(とまでは言いませんが)話でしょう。で、これに対する答えがまた長い。
『(答)まず申し上げたいことは、量的緩和政策の枠組みを変更するまで現在の残高目標を維持し、3条件を達成してから残高目標を引下げるのは、私としては最も採りたくない政策であるということだ。』
「目標残高の引下げ=金利政策への移行の準備」という位置づけになって(以下同文^^)。
『本日の講演の図表でもお示ししたように、既に市場の景況感は変化し金利先高観が出始めている。キャッシュ・マーケットでもイールド・カーブが立ち始めている。このように市場は先取りしながら動くため、金融政策が後追いになると、結局は景気拡大が加速し、市場の景況感も急激に変化することで、市場金利とオペ金利の乖離はますます大きくなる。』
市場金利とオペ金利の乖離という意味不明な理屈に関してはあたくしのお休み前にもケチつけましたが、この理屈ばかりはさっぱり判らん。どうも後の質疑なんかを見るとユーロ円金利先物取引から出てくるインプライドフォワードレートなんかを参考にして「市場金利とオペ金利の乖離」とか言ってるらしいのですが、そもそも金先とキャッシュのマーケットで完全裁定が働くかといえばそういうメカニズムにはなってませんわな。まぁそれを持ち出して「市場金利」とか言われても困りますわな。そんな事言い出したらJGBの現物債のイールドカーブからインプライドフォワードレート出したら物凄いグラフが書けると思うんですが。
ま、それ以前にデフレ脱却前なのに「結局は景気拡大が加速し」とか言い出すのがどうかと思う訳ですが。この直ぐ後に「リスク」とか言っちゃってるのはもうねぇ・・・・
『こうしたリスクを回避するためには、不要となった当座預金を事前に取り除いていく必要がある。残高目標を引き下げる前にあれこれと心配するよりも、現在のようにまだ余裕がある時期に引き下げ、それに対する市場の反応を見て行き過ぎがないかどうかを判断し、さらにその時の景気実体や市場動向を見極めながら次のアクションを考えていく、そういうアプローチが現実的ではないかと思う。』
では景気が逆に行った場合はどうするんでしょうか?まさか当座預金残高目標を引き下げてから景気が後退したから目標を引き上げるなどと言い出さないですよね〜。
で、市場との対話がどうのこうのというお馴染みの理屈が始まるのでありまして・・・・
『3条件を達成してから一気に引き下げるというのは、色々な意味で市場に痛みをもたらすし、長期金利に与える影響も大きいと思う。講演要旨に当面の望ましい金融政策は「二刀流」と書いたが、これは残高目標の引下げという刀とゼロ金利という刀の2つを持ちながら進んでいき、やがて金利が反応し始めたら少し考え方を変えるというものである。3条件を達成して初めて残高目標を引き下げるというのは、私のような実務上がりの人間からすると、あるいは市場との対話を重視する観点からすると、理想論に過ぎる。』
だから残高目標を下げてから景気が後退したらどうするのかと小一時間(以下省略)。
『いずれにしても1つだけはっきりしていることは、景気・物価動向、市場動向が我々を導いてくれるということだ。そのためには不必要な当座預金を積んで金利機能を動きにくくし、市場との対話ができない状態にしておくよりも、市場が反応できる状態、息のできる状態にしておくことが必要と思っている。』
当座預金残高目標を維持していても市場は反応してますが何か?で、ここからがなお判らん。
『金利政策への移行に要する期間については――この移行が最も難しい局面であるが――、予め残高目標を軽くしておけば、移行が間近に迫った段階で市場の方から移行後の金利水準を示し始めるはずである。そうでなければ金利政策には移れない。』
この後にぶっ飛ぶような発言があるのでまぁアレなのですが、正直意味が判らん。結局市場の後追いで金利政策をするって言ってるように見えますが、さっきの発言では「市場に追い込まれて実施するのはリスクが大きい」って言ってませんでしたっけ????しかしこの後が凄い。
『かつてのように日本銀行が裁量的に金利水準を決めるという時代ではない。』
いやあの普通の中央銀行というのは短期市場金利(まぁ良くあるのは銀行間翌日物金利)の誘導目標を決めて金融政策を運営していると思うんですが、何を仰りたいのやら。
『市場との対話を通じて市場が示す金利を参考にしながら金融政策あるいは金利政策は動くべきだと思う。市場におもねる必要はないが、市場の考えを表象している金利がどういう動きをしているのかを注視する必要はあるし、その前提として金利が動く状態にしておかなければならない。(以下割愛)』
最初の発言と矛盾してますが・・・・・・(-_-メ)
という訳で、なんちゅうかご本人の中では理屈として完結しているのかもしれませんが、あたくし如き人間で論点の矛盾が見つかるというのは日本銀行政策委員会審議委員としていかがなものかと正直思うのでございますが。
で、最大級に問題なのはこの審議委員先生は「自分が市場を熟知しており、市場の声を伝える立場にある」と恐らく真剣に思っている事ですわな。全く困ったお話ですが、べき論とは別に予想屋として考えた場合、もう一人の市場関係者と共にこのお方が当預引下げ論者であるというのは現在少数意見であるとは言え、予想の上では重要なファクターになるでしょうな。
まぁそんな感じで古いネタで大変恐縮ですが。
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2005/09/15
○「それはギャグで言っているのか」の福間審議委員
何か地均しをしているつもりなのか何だか判りませんが、毎度毎度この人が講演をすると実に香ばしいネタが投下されまして、一々ツッコミを入れていると2日分くらいのネタになってしまうという実に素晴らしいお方が福間年勝審議委員でございます。
どうもこのお方と水野審議委員さまにおかれましては、「我こそはマーケットを熟知した市場の代弁者」という意識がお強いようでして、まぁその気概をお持ちになられるのは壮としたいですが、その意識によって出てくるコメントは正直市場に手を突っ込んで誘導しよう(「地均し」などという発想がそもそもね)という物であって、昨日も申し上げましたが、類は友を呼んでいるあたくしの市場の現場労務者であるところのディーラー仲間には「市場の対話じゃなくてお前が市場を撹乱してるだろう」と評判が宜しくありませんな(ここの所は私の類友なので割り引いてね)。
という訳で、昨日は福井県金融経済懇談会で福間審議委員が講演をしてまして、経済情勢と金融政策に関して箇条書き形式で原稿がございまして、やたら図表も満載ですのでまぁ読むには面白いのかもしれませんが、本日はこの中で驚愕の福間大先生の新理論(笑)について肴にしたいと思います。
http://www.boj.or.jp/press/05/ko0509c.htm
・福間審議委員の珍理論
上記講演録の最後の方になりますが(3−3−3)「現状維持」のデメリットって小見出しの部分に福間大先生の素晴らしい理論が展開されています。
『景気が持続的に回復し、消費者物価のプラス転化が視野に入りつつある中では、私は残高目標を金融機関の所要準備額を遥かに上回る水準に据え置くことについては、主に2つのデメリットがあると考えています。』
で、そのデメリットの第一が実に素晴らしい。
『第一は、巨額の資金供給によりオペ金利が低位に抑えられる中では、ターム物の市場金利がファンダメンタルズの改善を背景に上昇すれば、それに伴いオペ金利と市場金利の差がさらに拡大すること』
オペ参加者を2名とか3名とかに限定して、カルテル的状況が発生しているのなら兎も角、普通にオペを行っていればオペ金利≒市場金利になるんですが、この大先生におかれましては「市場金利」ってのは最新の金融工学でも駆使すると(笑)算定できるものであって、オペの金利は市場金利じゃないとでも仰りたいのでしょうか。
で、この珍理論が技術論的当預目標引下げ主張の理由の一つになっていたというのはもう情け無いというか何というか。
『第一のオペ金利と市場金利の乖離については、4月の展望レポートに記されているように、来年度にかけて量的緩和政策の枠組みを変更する可能性が徐々に高まっていくと見られる中で、日本銀行としては、より自然な形で金利が形成される環境を整えながら、市場との対話を行っていくことが必要です。そのためにはできるだけオペ期間の短縮化を図る必要がありますが、現行の方針の下では30〜35兆円程度という残高目標は変わらないため、目標レンジを下回っても、極力短期間のうちにレンジ内に戻すこととなります。このため「なお書き修正」ではオペ期間の長期化を抑える効果は限定的と考えられます。この点が私が前月まで残高目標の減額を提案してきた主な理由の一つです。』
どこをどう突っ込んだら良いのかと言いたくなる全面これ突っ込み所満載状態ですが、こういう人に「市場の対話」などと言ってもらいたくは無いですな。血圧急上昇です。昨日ご紹介した8月8〜9日の金融政策決定会合における議論の中であたくしが「それは因果関係が逆だと思うぞ」ってツッコミを入れたくだりがございましたが、どうもこの辺を見てるとあの話は福間さんのお話だったんでしょうね。
で、その後の記者会見では量的緩和解除の進め方について色々とお話しているのですが、コミットメント3条件を達成してから当座預金残高目標を引き下げていくのでは遅いという趣旨の話をしておりますが、あーた3条件達成前に引下げを始めて条件が達成しなかったらどうするのよと言いたい訳でして、ニュースソースから読める記者会見を見るともうひたすら市場を俺様の思うように誘導しまくりたいんじゃネーノこの人はって感じで実に困りますな。
いやまぁ誘導したけりゃしてもいいんですが、その場合誘導する方は景気や物価見通しに対して神のように正確な見通しを持つ事が必要不可欠になると思うんですが、それでもいいんですか??
ま、会見要旨もネタの宝庫になりそうな予感。
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2005/02/28
お題「福間審議委員の講演と記者会見なんですが・・・」
先週木曜日に行われた福間審議委員の講演&記者会見でありますが、何といいますかもう突っ込みどころ満載と申しますか、ちとアレなものがございまして。
講演→http://www.boj.or.jp/press/ko0502b.htm
会見→http://www.boj.or.jp/press/kk0502b.htm
この講演なんですが、図表付きになっておりまして、この図表もまた中々オモロイので図表(講演のアドレスにリンクがあります)もご覧頂くことをお勧めします。
○同床異夢の量的緩和政策??
講演で注目されていたのは金融政策に関るお話でして、当座預金残高目標をどうしましょって問題に絡んで堂々と「危機管理の為に実施した当座預金残高引き上げ」という理屈の展開が行われてしまいました。まぁいいけど。後半の「日本銀行の金融政策運営」の3−1−2「日本銀行当座預金残高目標値の引き上げ」であります。
量的緩和政策のそもそも論について。
『量的緩和政策については、まず図表20-1をご覧下さい。これは量的緩和政策を導入した際の対外公表文を基に作成したものです。いわば量的緩和政策の「枠組み」を纏めたものです。その「目的」や「内容」欄にあるように、量的緩和政策は、第一に、日本銀行当座預金残高という量をターゲットにして金融市場へ潤沢な資金供給を行うこと、第二に、コア消費者物価が安定的にプラスとなるまでじっくりと潤沢な資金供給を行い、その時間軸効果を通じて、より長めの短期金利の低下を促すこと、第三に、補完貸付制度を無制限に利用できるようにすることで無担コール・オーバーナイト物レートの上限を現在0.1%となっている公定歩合に画すること、それらによりゼロ金利政策の有する金融緩和効果をさらに浸透させ、デフレからの脱却を図るという政策です。』
何かどさくさに紛れて「量的緩和」の説明の中に「ゼロ金利政策」が入っているところが既にそもそも論を理解していないのではないのかという疑問あり。ちなみにこの図表20−1ってのは量的緩和政策導入時の対外公表文を基に作成した事になっているのですが、量的緩和政策実施時に政策を説明した資料がありまして、そこにはゼロ金利政策という文言は入っておりませんなぁ。
http://www.boj.or.jp/seisaku/01/pb/k010319a.htm(公表文)
http://www.boj.or.jp/seisaku/01/pb/k010319b.htm(参考説明)
http://www.boj.or.jp/seisaku/01/pb/k010319c.htm(Q&A)
まぁ確かに量的緩和政策のキモが「ゼロ金利+時間軸」ではないかというお話はよく言われている話ではあります(たぶんそうではないかとあたくしも思うのですが)が、一応曲がりなりにも「量」に金融緩和効果があるという名目で金融政策をこれまで運営しているのにあれれ?って感じですが、これは後に続く福間さんの主張に繋がるマクラな訳ですよ。
量的緩和政策の拡大は危機管理でしたという理屈
『このような危機的な状況を受けて、日本銀行は、金融市場の安定確保のためのいわばクライシス・マネジメントとして市場に一段と潤沢な資金供給を行い、銀行の流動性不安とそれに伴う日本銀行当座預金に対する予備的需要の増加に応えることとしました。』
まぁ確かに「金融システムの安定」って言葉はありましたが、速水総裁時代は勿論ですが、福井総裁になってからも途中までは「経済への悪影響を緩和する」というのが一応の大義名分だったと思いますし、「量的緩和政策の強化」って言い方だったのですわな。そもそも単なる危機管理で流動性を追加したのなら「りそな銀行処理問題」を名目にし実施した量は処理問題にメドが付いたら回収しないと話が変なのに回収してないでしょ。
何か銀行に関して妙な理解をしてそうなこの続き
『只今ご説明したような当時の極めて厳しい金融経済情勢を踏まえると、97〜98年の金融危機のときのように銀行の流動性不安が「貸し渋り」や「貸し剥がし」を引き起こし、それによって経済にさらなるデフレ・インパクトが及ぶ事態は何としてでも回避する必要がある――そうした強い危機感があったからです。日本銀行は、この当座預金残高の引上げに加えて、コール市場でターム物取引が成立し難くなった状況にも対応して、オペを通じて1〜2週間という短期間の条件で市場から資金を吸収し、3〜6ヶ月あるいはそれ以上の長めの期間で市場に資金を供給しました。結果的に日本銀行は金融市場の「ブローカー役」となり、銀行のALMにも配慮した格好となりました。』
てめぇの流動性に不安があるから貸し渋りや貸し剥がしが起きるというのは理屈として話が通っているように見えますが、短期の流動性問題が起きたからと言っていきなり回収できるほど貸し出しってのは流動性があるものではないですし、大体貸し渋りだの貸し剥がしだのって問題になったのは中小企業の話でしょと思うのですが。
話の後半では短期金融市場でのツイストオペの話をしているのですが、足元で資金の吸収をしてたら流動性危機対応になりませんが何か?という話もあるのですが、どうも以前ドラめもんで指摘したこのお方の誤解「ターム物取引が出来ないのは金融システム不安があるから」という珍理論に基づくお話になっているのが実に???であります。そもそもツイストオペを打つ破目になったのは足元の短期間の資金供給では金利がゼロに張り付いてしまい「イラネーヨ」状態になったのでより長期間のオペを実施して資金供給(というか当座預金残高維持)を円滑に行ったというのが真実に近く、日銀の資金大供給が原因でターム物の金利がゼロにはりつきだし、結果ターム物取引が出来なくなったというべきではないでしょうかねぇ。
おまけに「銀行のALM」って言いますけど、短期資金の1週間とか6ヶ月とかの世界はALMでも何でもなくてただの資金繰りの問題でしょ。何でALM??
○ということで量を減らしても良かろうという結論になる訳ですが
そんな訳で、福間審議委員のお話は「量的緩和の拡大はクライシスマネジメント」というような方向に話が進む訳ですが、その辺は端折りまして結論らしき部分。
『こうした金融環境の改善が進む下で、このところ資金供給オペの「札割れ」が頻発するなど、図表26が示すように、オペのパフォーマンスが低下しています。これは、銀行の流動性リスクや金融システム不安が後退し、コール市場での取引が成立し易くなる中で、日本銀行当座預金に対する銀行の予備的需要が減少しつつあること、また銀行が、ROEと並んでROAを向上させ、自らの格付けのさらなる向上を図るため、総資産の圧縮に動き始めたこと、これらの影響が大きいと考えられます。私としては、こうした市場の地合いも十分に踏まえながら金融政策運営に当たっていく必要があると考えています。』
銀行の流動性リスクだの金融システム不安だのというのはりそな銀行絶賛大救済財政大盤振る舞いスキームが確定したあたりから既に無問題状態になっておるのですが、どうも何かこの結論に持って行きたいらしい。
『現在までのところ日本銀行は、札割れが頻発するという状況の中で、さらに長めの資金を供給するなど金融調節上の工夫を凝らしながら現行の目標値に基づく資金供給に努めています。こうした政策運営に対して、「実体経済や金融環境の変化と整合性を欠くものであり、市場への資金供給が自己目的化している」といった批判を頂くようになりました。』
この批判は誰がしてるのか存じませんが、だいぶ的が外れていませんかねぇ。量的緩和政策は「CPIにコミットメント」している政策で、実体経済をあらわす指標の一つでもあるCPIは絶賛マイナス継続中ですが何か??
『ただ、日本銀行が、過去、金融市場の安定化に配慮して目標値の引上げを行った経緯を踏まえると、私としては、少なくとも金融システムの安定化が確認されるまでは現行の「30〜35兆円程度」という目標値に基づいて資金供給を行っていくことが適当であると思います。そしてその金融システムの安定化の試金石となるのは、これまでこのような場で繰り返し申し上げてきたとおり、4月のペイオフ全面解禁ではないかと考えています。』
会見でも「金融システム安定化の説得材料はペイオフ全面解禁」というような話をしている訳でして、要するに「4月以降も金融システム安定が確認できたら危機回避の為に出した流動性の吸収を検討できるのではないか」って話をしておりますわな。マーケットの常識として「今は考えないが」って言っても、「4月以降の動向を見て考える」というのは「絶賛大検討中です」と言っているのと同じだというのは判って言ってらっしゃるのだとは思いますがどうなんでしょうね〜。
○「特殊要因を除く分析」って何よ?
福間審議委員の講演でもう一つ「????」だったのは消費者物価に関する分析。先ほどの金融政策云々の前に消費者物価の分析があるのですが、これが何というか我田引水的な香ばしさを感じるものがございます。
『一方、コア消費者物価は小幅のマイナスが続いていますが、企業間競争と規制改革の成果として新たに固定電話通信料や電気代の引下げ等の物価押下げ要因が加わったため、来年度中も「コア消費者物価が安定的にゼロ%以上」と判断される状況に至るかどうかは微妙であると思っています。』
『ただ、一時的な物価押下げ要因を除くベースで消費者物価の推移をみると、図表17が示すように、徐々にそのマイナス幅が縮小しています。これは景気回復を背景とした需給ギャップの縮小による物価の押上げ効果が、企業のユニット・レーバー・コスト引下げによる物価の押下げ効果を僅かながらも上回り、その結果、物価の下落率が徐々に縮小しているためと思われます。』
図表17ってのは上記講演のアドレスから講演テキストに当たりますとその最初に図表へのリンクがありますので、それをご覧頂くとしまして、物価の一時的な押し下げ要因を物凄い勢いで並べて「総合除く生鮮食品(←ここまでが金融政策のコミットメントで言うコアCPI)から更に特殊要因を除く」という素晴らしい物価指数の推移を並べておりまして、「総合除く生鮮食品から更に特殊要因を除く」消費者物価(笑)が順調にゼロに向けて上昇してきているというグラフがあります。
・・・・・・何というかまぁお遊びとしては面白いかもしれませんが、それに何の意味があるのか小一時間問い詰めたい分析です。ちなみにその中にある「特殊要因」には何故か「石油製品」とか「米類」と言った(ちなみにコメは保存が利くので物価統計上の生鮮食品には含まれません)それは特殊要因じゃねぇだろうと言いたくなるようなものが混ざっているのですが。
ま〜何というか他にも突っ込みどころは満載なのですが、とにかく激しくアレなお方ですなぁという感じであります。
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2004/10/04
○この方が日銀政策委員会における「財務のプロ」とは・・・・
金曜の続きです。
福間審議委員の記者会見要旨が日銀Webにアップされておりまして、そちらを読みますと、金曜のドラめもんで申しあげた「この人本当に現実を判っているのかいな」という懸念が益々強くなるわけです。
『(問)金融経済懇談会での基調説明において、量的緩和政策を解除する際の条件――具体的には3つの条件のうちの3つ目のいわゆる総合判断と言われている条件であると思うが――に金融システムの問題をあえて取り上げていたが、その背景について伺いたい。これはある意味で解除のハードルを少し厳しくしたというように受け止めてもよいのか。
』
『(答)そのようなことはない。事実として、いまだ金融システム問題が残っているということが一つ。ただ、それに対しては今度の2兆円の措置により、地銀等を中心に金融機関が対応できるようになっている。また、メジャーバンクについては、預金保険法第102条による対応が残っている。システム全体については、これだけ揃えば心配はしていない。システムではなく、個別の問題が依然あるかもしれないということを申し上げた。』
まぁこの部分もやや??なのですがスルーしましょう。問題はこの先の答え。
『もう一つ、量的緩和のところであえて申し上げたかったことは、金融市場、コール市場がスムーズに動いていないということである。スムーズに動いていないという意味は、要するに、日銀の量的緩和を前提に動いているということである。銀行間のクレジット・ラインの復活・拡大がまだスムーズにできていない。オーバーナイト市場には自律的かつ機動的な動きが出てきたが、ターム物市場にはそうした動きがまだ殆ど出てきていない。こうした中で、今、量的緩和を急に止めると、そこに不安定な動きが出る危険性がある。』
日銀が「量的緩和政策の強化」と称して当座預金残高を野放図に拡大する中で、目標となる当座預金残高になるように資金を供給するためには、技術的問題として長め(3ヶ月とか)の資金供給を行う必要が発生(長めの資金にしないと所謂「札割れ」が頻発し、当座預金残高目標が達成できない)したというのがそもそもの始まりです。日銀が当座預金残高目標達成の為に無理矢理長めのターム物資金を供給すれば、あえて銀行間で資金を取りに行く必要は無いわけでして、その結果が福間審議委員のいう「ターム物市場にはそうした動きがまだ殆ど出てきていない」という状況な訳です。
まさに因果関係を見事に取り違えた論理でありまして、そんなにターム物取引を活発化させたければ当座預金残高を引き下げればよい訳でして(そうなれば必然的に取引需要が発生する)、自分たちでターム物取引が不要な状況を作っておいてから「ターム物取引市場がダメダメだから量的緩和を終了させられない」ってお前はマッチポンプかと小一時間問い詰めたくなるような論理展開です。
『それをどうしたら一番良いのかというと、やはり、クレジット・ラインを相互に拡大して、ターム物取引ができるほどまでに、金融機関の格付・体力が回復することが必要であると思う。それを見定めなければ、あまり中途半端なところで量的緩和を止めるわけにはいかない。これは、私が2002年に日銀に来てからずっと言っていることである。』
そもそもクレジットラインの問題でターム物取引ができていないのであれば、社債というかこの場合は金融債とか銀行社債って事になるのでしょうが、銀行発行の債券なんぞはもう全然買い手がいないって状況にでもなっていても何らおかしくはない筈なのですが、ご存知のように昨今は銀行社債(だけではないですが)の対国債スプレッドは大いに縮小してますし、銀行発行の劣後債なんかも玉待ち状態と言った方が良い状況になっておりますが、この「財務のプロ」様は一体全体どこに目がついているのかと申しあげたい次第であります。
『けれども、相当良いところまで来ていることは確かである。オーバーナイト市場では取引ができるようになっており、クレジット・ラインも相当復活・拡大が図られている。2002年はこうした動きさえもなかったし、去年は一時的に駄目になっていたこともあった。残る問題はターム物取引である。銀行はオーバーナイトばかりで資金を回しているわけではないので、3か月以上のターム物取引ができるようにならないといけない。この件に関しては、それ以上の含みはない。』
この件もう一回質問されてまして、こんな感じの質疑応答になってます。
『(問)ターム物の話について伺いたい。市場でターム物の取引が少ないのは、ある意味、日銀の量的緩和政策に甘えることができる状況にあるということだと思うがどうか。』
この質問もちょっと??なのでして、そもそも要りもしない当座預金を押し付けてきているのは日銀の方なので甘えるという表現は??なのですが、どうも次の答えを見ると誘導質問だったのかもしれませんし、良く判らんですがそれはそれと致しまして。
『(答)おっしゃるとおりである。ただ、ターム物取引が殆ど出来ていない背景には、ターム物レートを含め金利がほぼゼロであることや、合併・統合により銀行の数が減少していることを指摘する声も聞かれるが、底流には、銀行間で互いの信用力に対する確信が持てない状態が続いていることがあるのではないかと考えている。そういうことを考えると、ここにきて全てを外すのが正しいかと言うとそうではない。もう少し慎重にやらなければいけないと思う。』
ターム物取引が活発化しない→銀行間の信用が復活していない→金融システム不安が払拭されていない→量的緩和解除は時期尚早・・・という福間審議委員流理屈が展開されますと、永久に量的緩和政策が継続するようになってしまうのですが、それでも良いのでしょうかね〜。
どこぞの経済評論家がこういう言説を流しているというのであれば「アフォじゃのう」と笑って済ましていれば良いのですが、このお方は日銀政策委員会で1票を持っておられるお方だというのが実に恐ろしい訳です。日銀の事務方に置かれましてもちょっとこの人の教育が必要なのではないかと切に願いたい所であります。
・・・・って言うか、何でこの人が三井物産の財務畑務まっていた訳?って感じなのですが。あたくし的な三井物産の格付けはもう急低下ですよ先生。
あまり外部で講演とかをしない福間委員ですが、話をするたびに怪電波を発して下さるので、笑いのネタとしては極めて秀逸。ただし真面目に金融政策の今後を考えると笑うに笑えませんな。マッタクモウ。
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2004/10/01
お題「相変わらずアレなお方のようですが」
気がつけば今年も10月。光陰矢のごとしという事ですな。
さて、岩田副総裁の講演っつーのもあるのですが、その前に昨日行われた福間審議委員の講演を読みたいと思います。こちらの審議委員さまはかつて「企業金融における手形の活用をしましょう」というお話をして、その中で「無担保裏書の活用」などという実務で誰がそんなことやっているんだよっていう提言を行われた御仁でありまして、昨今の「現実を見ない政策運営」の典型のようなお方であると感心しているのですが。
http://www.boj.or.jp/press/04/ko0409e.htm
○経済の現状と先行き見通しについて
講演の前半は「海外経済と日本経済の現状と先行き見通し」となっておりまして、まぁ色々な話をしているのですが、そんなに目新しい話はしておりません。福間さんの講演における景気の話で目立つのはミクロの話というか個別具体的な事例を挙げている所でしょうか。さすがは三井物産ご出身と言いたいところですが、どうも所々見ていると「え?」と突っ込みを入れたくなる部分があるのですが、まぁ本日はその点については省略致します。
まぁ端的にまとめた発言はこれですな。
『以上のように、海外経済は、全体として拡大傾向を続けながらも、米国および中国経済の動向や、原油高といったリスク要因が存在しています。日本経済についても、地域間、業種間、あるいは同一業種内であっても規模の異なる企業間で、業況格差の問題が未だ残っています。しかし、全体としてみると、景気は引続き内需と外需を両輪に回復を続けており、後程述べるように、ミクロの構造改革が大幅に進展していることを勘案すると、持続的な成長基盤は整いつつあると考えています。』
まー基本的に無難な現状認識となっておりますが、基本的に「ミクロがうまくいけばマクロもうまくいく」というお話になっておりまして、それはそれで全面的におかしいとは思いませんが、昨今の政策(特に金融行政に関してあたくしは悪態を良くつきますが)のような「合成の大誤謬」という観点がすっぽりと脱落しているのは如何なものかと思う所ではあります。こんな話をしているのですが・・・・・
『次に景気の先行き見通しについて述べたいと思います。只今述べましたように、ミクロの構造改革が大幅に進展する中で、「選択と集中」により新たなビジネスモデルを構築した企業の間では、内外の景気拡大に対応して、拡大路線への転換を図る企業が増え始めています。こうしたいわば「攻めの経営姿勢」の広がりは、景気との関係で言えば、研究開発投資や能力増強投資を一段と増加させるとともに、雇用の増加を通じて個人消費を下支えしていくと予想されます。』
基本的にはそうなるのかな〜と思いつつも、「本当にそうかよ」と思ってしまう訳ですよ。現実にあたくしの周りで起きている事なんかを見てますと。
○物価に関しては弱気ではありません
福間さんは物価に対してどういう見通しを立てているかと言うとこんな感じ。
『消費者物価については、米価の下落や電気料金の引下げといった追加的・一時的な要因を除いても、前年比ゼロ%近傍で推移する可能性が高いと予想しています。
』
『なお、一部に、現下のコア消費者物価の下落基調に歯止めを掛けることに対し悲観的な見方も聞かれますが、1.川上の国内企業物価が高めの伸びを続けていることや、2.潜在成長率を上回る成長が続いて経済の体温が上昇すれば、それに伴い物価上昇圧力も緩やかながら強まると考えられること、さらには、3.先程ご覧頂いた図表6にあるように、日本のユニット・レーバー・コストの低下に足元やや一服感が窺われること、等を勘案しますと、消費者物価がこのまま一方向に動き続けるとも予想されません。』
基本的にインフレ圧力は無いけどデフレには行かないでしょうという誠に無難な予想になっております。
○やたら「総合判断」を強調する金融政策に関しての言及
講演の後半は金融政策のお話で、まぁこっちは表題のように、総合判断がどうのこうのって話がやたらと多いのが目立つところです。
『量的緩和政策については、景気の回復基調が次第に確かなものとなる一方、コア消費者物価は、前年比小幅のマイナスを続けている状況を受けて、2つの対照的な意見が聞かれています。1つは、景気が回復しているにも関わらず、消費者物価の動きとリンクした形で量的緩和を続けることは不適当であり、景気の実体に合わせて、日本銀行当座預金残高の目標値を引き下げ、金利を引き上げるべきだという意見です。もう1つは、景気が回復を続けても、物価の下落基調が収まらない事態を重視して、インフレ・ターゲットの導入等により量的緩和政策の解除条件をより厳しめに設定し、量的緩和の「時間軸効果」を強化すべきだという意見です。』
で、この2つの意見に対して福間さんはどちらにも否定的です。
『しかし、どのような形であれ、現段階で日本銀行が対外公約としている量的緩和政策の解除条件を変更することは、日本銀行の信認低下とともに、金融市場の混乱を招く惧れがあります。』
返す刀でインタゲについても一刀両断。
『また、インフレ・ターゲットについては、図表7をもう一度ご覧頂きたいのですが、そこに示されているように、各国の消費者物価は趨勢的に低下傾向を辿っており、わが国の場合、過去20年間の平均的な上昇率は+0.7%、過去10年間でみるとマイナス0.2%と下方にシフトしています。こうした状況の下で物価を直接的な操作目標とすることは、中長期的に経済に歪みをもたらす可能性が高いと考えます。』
図表7ってのは日銀のWebを参考にしていただければと思いますが、まぁ先日の岩田副総裁の講演やら記者会見(まだご紹介してませんが)に真っ向勝負という感じで実に心温まります。正確に言うと岩田さんは物価を政策の直接目標にしろとはいっていないので、岩田さんと言うよりはヘイゾーに真っ向勝負か。しかし最後の一文はいかがなものかと。
『寧ろ、現在の日本において物価をプラスに持っていくために金融政策に求められることは、ミクロの構造改革を粘り強くサポートし、経済の体温が上昇する基盤を引続き整えていくことであると思います。
』
ミクロの改善が集積するとマクロがうまく行くという理屈を全面に押し出すのは結果として議論の説得力を弱めると思いますが(^^)。
『したがって私は、日本銀行が現行の枠組みの中で引続き量的緩和政策を実施していくことが適当であると考えています。そして、コア消費者物価が安定的にプラスになったと判断するためには、景気・物価情勢のみならず、それらに影響を与える様々な要因も踏まえたうえで総合判断を行うことが必要と考えています。そのような趣旨から、日本銀行も、量的緩和解除の条件に、経済・物価情勢の総合判断という項目を設けています。』
『日本銀行としては、コア消費者物価・前年比が安定的にプラスという条件さえ達成されていない状況下では、今後とも、景気回復下において現在の量的緩和政策を忍耐を持って粛々と継続していくことが重要と考えています。そのうえで、将来、コア消費者物価・前年比が数ヶ月均してみてプラスになった段階で、物価が本当に「安定的にプラスになった」と言えるのか、その裏返しとして景気回復に持続性が確認できるのかを、金融システムの健全化の状況も踏まえて総合的に判断し、慎重に量的緩和解除の可否について判断して参りたいと考えています。』
え、たった数ヶ月なのか?という印象もあるのですが、まぁ現実にCPIは絶賛マイナス継続中ですから、現実にプラス転換してから考えましょって程度の意味だと思ってます。ま〜そんなに過激な話をしているわけでは無いですが、少なくとも岩田副総裁に代表されるような「金融緩和は半永久的にやれや」という御仁で無いことは良く判りました。
○市場との対話はいいのですが・・・・・
「市場との対話の重要性」という項目を作って「市場との対話が大事です」ってお話をしておりまして、それはそれで大変結構なのですが、その後に短期金融市場について言及しておりまして、その中で「市場機能の回復が将来の課題」という話をしております。市場機能の回復も勿論重要な話なのですが、その中で短期金融市場における3ヶ月以上の長めの資金取引が依然低調というか開店休業状態で日銀のオペに依存しているという状況についてこう言及しております。
『その背景については、ターム物レートを含め金利がほぼゼロであることや、合併・統合により銀行の数が減少していることを指摘する声も聞かれますが、底流には、銀行間で互いの信用力に対する確信が持てない状態が続いていることがあるのではないかと考えています。』
この絶賛格上げラッシュの昨今においてそんな事はね〜だろ〜と思うのですが、こればかりは短期金融市場というかインターバンクの関係者に聞かないと判りませんな。という事で教えてね〜(はあと)。
どうも「不良債権処理」と「ペイオフ解禁」を意識しすぎなのではないかと思うのですが、どうなんでしょうね。
というわけで、ほかにもちょこちょこ突っ込みどころがあるのですが、どうも福間審議委員は相変わらず現状認識とその分析に「ちょっとずれてるんじゃないの」って突っ込みたくなる所がありまして、誠に遺憾なところではあります。
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