金融政策(2003年下期分)
政策内容・議事要旨・短観・展望レポート等
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2003年下期分です。今後過去のメモ更新予定です。
2003年下期
2004/03/05「1月19・20日分の議事要旨(追加緩和に関する議論)」
2004/02/27「日銀保有国債の品貸しに関して」
2004/02/06「金融経済月報(2004年2月)」
2004/01/27「金融経済月報(2004年1月)」」
2004/01/26「12月の金融政策決定会合議事要旨を読む」
2004/01/21「『金融政策変更』を過去の発言などから整理しました」
2004/01/20「金融政策決定会合の注意点」
2004/12/22「11月20・21日分議事要旨を読んだ只の雑談」
2003/12/18「17日の補足メモ」
2003/12/17「金融経済月報(2003年12月)/資産担保証券買入見直し」
2003/12/15「日銀短観メモ」
「量的緩和政策を巡る政策委員会の議論」(2004/03/05)
昨日はとりあえず「止め男」が出たと言うほどでもないのでしょうが、超長期ゾーンに買いが入ったようで、一旦は全般復活の香りとなったのですが、不安定な動きで先物ベースでは寄りから上げ下げ約2往復って感じでした。本日はまたまたドル円がドル高に振れております。さてどうなる事やら。
ドル円に関しては相変わらずの円売り介入が行われているとの市場観測が報道されております。グリーンスパン議長に為替市場介入の苦言を呈された後に介入しているのであれば、またも意地になってやってますな〜って感じですか。米国の低金利をサポートしている(積りでやっているのかは知りませんが)のですから介入に感謝して貰いたい所ですけどね。
それはさておきまして本題。
さて、景気回復という認識の中で当座預金残高目標額をまたまた引き上げるという論理的整合性が見事に破綻した政策を決定した1月19、20日の金融政策決定会合の議事要旨が日銀Webにアップされております。景気認識や、資産担保証券の買入基準緩和といった問題の議論もあり、結構な量になるのですが、本日は「当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要」部分についてご紹介。
http://www.boj.or.jp/seisaku/04/pb/g040120.htm
○当座預金残高目標額引き上げを正当化する論理は
『多くの委員は、当座預金残高目標を引き上げることで、日本銀行のデフレ克服に向けたスタンスを改めて明確に示し、景気回復の動きをより確かなものとすることが適当である、との意見を述べた。』
『ある委員は、量的緩和政策は、流動性懸念の払拭や長めの金利を含めた金利・信用スプレッドの低位での推移など金融市場の安定や、緩和的な企業金融環境を維持することに寄与し、実体経済をしっかりとサポートしている、としたうえで、今回、一段と潤沢な資金供給を行うことを通じて、日本銀行のデフレ克服に向けたスタンスを改めて明確に示すことは、市場や人々に安心感を与え、ポジティブな行動を促すことにもつながる、と述べた。』
『また、別の複数の委員も、景気回復の動きが明確になってきている中で、前向きのモメンタムを促す効果が期待できるのではないかとの見方を示した。これらの委員の中からは、こうした点は伝統的な金利低下の効果のように波及のメカニズムが明確ではないだけに、今後とも、効果や副作用をよく点検しながら政策運営を行っていく必要があるが、今回の目標引き上げによって経済主体のマインド面に好影響が生じることを期待するとの認識が示された。』
短期金利はもはや下げようがない訳ですから、金利を経路とした金融政策を打つことはまず出来ません。本当のことを言えばゼロ金利にした時点で短期金利コントロール政策は「打ち止め」状態になっているのですが、「量的緩和政策」という名目で「日銀当座預金残高目標のコントロール」で有効な政策が取れるという理屈を持ち出して自称金融緩和政策の拡大を続けているのが現実だというのが結論になる訳でしょう。何らかの荒業(非伝統的政策とも言われますが)をするのでなければ。
この発言要旨を拝読致しますと、当座預金残高の目標額引上げの論拠は「デフレ克服に向けたスタンスを改めて明確に示し」「市場や人々に安心感を与え」「マインド面に好影響が生じることを期待する」という風に読めます。目標引上げ賛成論者の中にも「伝統的な金利低下の効果のように波及のメカニズムが明確ではないだけに、今後とも、効果や副作用をよく点検しながら政策運営を行っていく必要がある」と認めている方もいるように、「波及効果がよく判らない中で期待形成が進む事を希望します」というのが当座預金残高目標引上げの論拠となっています。
何と申しますか、論理的整合性がどうのこうのというよりは「こういう期待が生まれて欲しい」という願望の世界で金融政策を運営を続けているのが今の日銀だという事を見事に現す議論かと思います。
しかし何ですな、「期待形成に働きかける政策」を取るのであれば日銀総裁様も『私の使う単語について、あまり厳密にその連続性をご理解頂かないほうが会話がしやすい気がする。』などいう不用意な発言は慎んで頂きたいものですな。
○実態は為替市場無限介入へのご協力ですかね
経済状況に関する議論の中でも「円高が景気を下押しするリスク要因」という話が何度も出てきます。そのため、金融政策に関してもこういう論点が示される訳です。
『複数の委員は、輸出中心の回復過程にあることを踏まえると、円高に伴う将来のリスクの芽をつむとともに、経済を下支えしていくことが重要であるとコメントした。』
で、その中では当然ながらこのような指摘が出てくるわけです。
『もっとも、このうちひとりの委員は、ターゲットの引き上げが直接的な円高対策のための追加緩和と受け止められるリスクもある、と付け加えた。』
で、短期金融市場の技術論と絡めて指摘がなされる訳でして、
『別の委員は、為替市場介入の増加などによって市場では日本銀行の資金供給オペが減少するのではないかといった不安感があり、ターゲットの引き上げによって本行のスタンスを改めて示すことが適当であるとの見方を示した。もうひとりの委員も、資金吸収オペの頻度が高まり、介入資金の流入により金融機関間で資金の偏在がみられることなどを考えると、オペ技術上の観点からも引き上げが適当であるとコメントした。』
というお話になっていますが、これって結局上段で指摘されている「ターゲットの引き上げが直接的な円高対策のための追加緩和と受け止められる」事を「その通りでございます」と認めている話ではないでしょうか。日銀執行部(除く岩田一政副総裁)は認めたがりませんが・・・・・
○妙な指摘
ところで、上記議論の中で妙なコメントがあります。
『ある委員は、短期金融市場が落ち着いていることは事実であるが、金融機関のALM上のニーズなども踏まえれば、オペに対する需要はあるのではないかと述べた。』
今や預金超過になっている金融機関のALMにおいて短期金融市場での資金調達のニーズは乏しい(目先の資金繰りという観点は別問題)筈なのですが、何でこんなコメントが出るのでしょう??
意味がさっぱり判らないのですが、想像を逞しくして無理矢理こじつけるとすれば、短期ゾーンの債券を買い捲り過ぎてショートファンディング(=恒常的に短期金融市場での資金調達が必要な状態)に陥っている金融機関がいるというお話なのでしょうか。つい最近までTB、FBどころか2年国債まで入札が絶賛大過熱しておりましたが・・・・・・・・
謎の論点です。
○岩田副総裁、田谷委員、須田委員の論点と思われる部分
誰が言っているのかはこっちで勝手に想像しているのですが、まぁ過去の発言から類推すると「この人が話しているだろうな〜」という感じです。
・岩田副総裁
『ひとりの委員は、財政政策をあまり急速に引き締めないことで名目公債残高が伸びることと、マネタリーベースが伸びることが相俟って、デフレから脱却できる』
何度聞いてもこの理屈が判らないのですが。誰か教えてください(涙)。以下ご紹介だけでノーコメント。
・田谷委員
『ひとりの委員は、量的緩和政策には、長めの金利を含めた金利の低下、スプレッドの低下など金融市場の安定や、流動性懸念の払拭など金融システム面の安定に効果があったとしつつ、こうした効果は、当座預金の積み増しによってこれ以上強まるとは考えられない』
『また、短期金融市場は落ち着いており、金融機関の一部には日銀当座預金を圧縮する動きもある、と述べた。さらに、この委員は、短期金利がほぼゼロ%となっている下では、マネタリーベースと成長率・物価変化率・為替レートなどとの関係は理論的に明確でないし、特に90年代半ば以降は経験的にもはっきりしない』
『現在の状況で引き上げを行えば、マネタリーベースの低下に対応したものといった誤解を生じかねず、市場との対話を困難にさせる惧れがある』
・須田委員
『また、もうひとりの委員は、量的緩和政策は金融システムの安定性の維持・景気の下支えに貢献してきたが、(1)景気は概ね標準シナリオに沿った動きを続けており、むしろ足許ではやや上振れ気味で推移している、(2)金融システム不安の後退を背景に、短期金融市場も安定しているなどの状況下では、ターゲットの引き上げは、効果よりも副作用の方が大きく適当でない』
『時間軸に対する市場の信認は十分高くなっている』
『また、マネタリーベースは、ストックとしては十分供給されており、今はそれが動き出し、経済活動の活発化につながる芽が出てきているかどうか見極める時期にある』
『量的緩和政策の副作用として、問題企業の退出や金融機関の不良債権問題への対処を遅らせてきた面があるほか、短期金融市場の機能を犠牲にしてきた』
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「日銀保有国債の品貸し検討」(2004/02/27)
昨日の金融政策決定会合では「日銀保有の国債を品貸しする制度」の導入の検討を行うことになったそうであります。まぁやらないよりはやった方がいい制度なのでして、情報が出た当初はあたくしも手放しで喜んでいたのですが・・・・・・・
○そもそも遅きに失した「品貸し導入」
いわゆる時点決済(同時刻に全部の取引参加者の決済が行われる)からRTGS決済(決済時点がバラバラ)への移行が行われた際に問題になったのは「現物国債の需給がタイトになりやすくなること」でありました。
何せ時点決済の時代は帳尻があっていれば良いので、業者が手持在庫の無い銘柄を投資家に売却する場合に「売却した投資家から同じ銘柄を借りてくる」という妙な取引が可能だった為、当時の国債指標銘柄なんぞは流通玉の推定数倍(というか多分発行額の数倍かも・・・・)にあたる玉が普通のように売買されていたという素晴らしい時代でありました。RTGS決済導入によりこの技は不可能になった(時点決済なら売却と借入、即ち売り買いを同時にガッチャンコできるのですが、RTGSの場合は取引がループしてしまう)ために「流通量>発行量」などという訳のわからん事が起きなくなってしまっております。
同じRTGSを導入している資金取引に関しては、日中の一時的な当座預金不足に対する流動性供与といった対策がRTGS導入時からきちんと確立しております。「債券のRTGS導入に関しては日中流動性供与の何らかの措置あるいはフェイル慣行の定着が求められる」という話は制度の導入前から散々言われていたお話でして、やらないよりは遥かに良いとはいえ、「何で今更?」という印象を受けるところであります。
○品貸しの前にフェイルを認めるほうが先なのでは?
昨日は虫の知らせでもあったのか(^^)、「日銀が『フェイルは許さん』というスタンスでは・・・・・・」というような事を書きました。書いたその日に突如あのような金融政策決定会合での決定が行われるとはかなーり笑ってしまいましたが・・・・・
昨日も申し上げましたが、日本銀行の売買オペではフェイルが起きると事実上の事務ミス扱いとされておりまして、必然的に実質「フェイルは許さん」というスタンスになっております。ちょっとソースが見つからないのですが、以前日銀から「国債決済RTGSの現状」みたいなレポートらしきものが出た時にも「フェイルの件数、フェイルの解消に有する時間ともに減ってきていて大変結構」というのもあったと記憶してますが、これも意地悪く解釈すると「フェイルは異常な状態であり撲滅すべきものである」という思想を背後に感じてしまったりする訳で。
勿論、フェイルが頻発するのは如何な物かと思うのですが、(直接レポ関係のお仕事をやっている訳ではないのであまり断定的に言うのも何ですが)現在の国債決済取引ではフェイルの発生に神経質になり過ぎな状況に追い込まれているような気がするんですけどね。これで国債決済T+1なんかになったらまさに利益無き繁忙。。。。
○需給の歪みを利用した裁定機会が無くなると言われますが・・・・・・
「SCレポ(=特定銘柄の品借り目的)取引市場の機能が喪失してしまう」というような意見も言われております。まぁ皆が日銀の「品貸し」に頼るような市場になったら馬鹿馬鹿しいの限りでありまして、補完的な機能として使うようなもので十分だとは思いますが、あたくしのような国債流通市場でのマーケットメーカーの立場から申し上げますと、そもそも現在のSC市場の一部で起きている事の方がよっぽど異常でございます。
具体的には2年中期国債の流通市場なんですけど、例えば2ヶ月前に発行された2年216回債のレポレートが概ねマイナス0.1%と聞いております。この債券、クーポンが0.1%ですから、216回を保有してレポ市場に放出すると実質0.2%の期間収入があるという状態。当然ですが、ショートになった業者はこんなコスト払ってられませんので買戻しに走る訳でして、引け値ベースでは一応順イールドになっていますが、実態は償還のより短い銘柄よりも利回り低い価格でないと買戻しができないと言う有様(というか業者間で売り物が無いのですが)。
まぁこんなことが最近は年がら年中おきておりますので、業者としては2年国債をまともにマーケットメークしたくなくなるのが当然の行動。「持ってりゃ販売しますが、持っていない銘柄の大口買い注文はレポコスト勘案しますと非常に割高になりますがよろしゅうございますか?」という行動を取らざるを得なくなります。
足元のファンディングコストが0.001〜0.003%(GC)の状況で流通利回りが0.05%を切っているような債券を品借りするコストが0.1%もかかると言うのは最早お話にならない状態だと思いますが如何でしょうか?
ひと銘柄で1兆7000億円も発行されている債券で何でこんな話が起きるかと申せば、要するに特定銘柄を狙い撃ちして「買占め」に近い行為がどこかで行われている可能性が高いということでありまして、そんな荒業が通用するのもひとえにゼロ金利と量的緩和のなせる技でしょう。資金が短期金融市場で余りまくっているのでこういう所で変な動きが起きるという訳でして。「銘柄毎の需給のゆがみを利用した裁定取引」といえば聞こえはいいのですが、どちらかというと「銘柄ごとの需給のゆがみを自ら作り出して力技で行う取引」と言った方が現状にマッチしているのではないかと思いますがね〜。
量的緩和の長期化というか無限化によって短期金融市場での資金ディーリング機会が無くなってしまっているので、開店休業を余儀なくされている状態の資金ディーラーが2年債市場に「出稼ぎ」にお見えになるのは、必然と言えば必然でありまして、仕方が無い面が有るのは良くわかります。まぁこうやって量的緩和の波及効果が発揮されると言うことで、とほほ。
結局何が悪いって量的緩和が市場機能を封殺しているって事なんですけどね。
そういえば昨年は久し振りに先物受渡際割安銘柄での仕手戦もどきが行われておりました。あいかわらずスクイーズ行為に対して甘々の債券市場でありますが、ちったあ改善されて欲しいものであります。
○日銀の保有する国債必ずしも・・・・・・
日本銀行の保有する国債の銘柄別残高っつーのは毎月月初近くに日銀から発表されております。で、この残高を見ますと、天下御免のショート銘柄と言われる銘柄が必ずしも入っている訳では有りません。既発2年国債の中で唯一0.2クーポンの2年212回債(半月だか1ヶ月前だかにどこかの業者間スクリーンで何と0%で取引されていましたな)なんかは7568億円保有してますが、例えば先物受渡最割安銘柄時代にスクイーズ騒ぎの起きた10年221回債はわずか221億しか保有しておりませんで、まさしく焼け石に水状態。ついでに申し上げると、上記で例に出した2年216回債は日銀の買入対象銘柄になっていないので保有していることになっていません。
本当は国債買現先オペでの保有分(銘柄差替えが可能なので保有分としてカウントするのは無理があるが)がありますので、実際は日銀に幾ら吸い上げられているのかがブラックボックスになっているのがまた困り者なのですけど。
てな訳でして、今回の措置をもってして直ぐに銘柄間の馬鹿馬鹿しい需給の歪みが全て是正されるかと言うと、そこまで期待するのは酷でしょうな。
本当にやる気があるなら、日銀の売買オペにおけるフェイルを制度として認めるとか、流通市場でのスクイーズを監視するとか、やる事は幾らでもあるんですけどね〜。
○何か動かないと気がすまないのでしょうか?
今回もまた唐突に「検討を指示」することになった施策なんですけれども、何でこのタイミングでやるのかもそうですが、一々「検討を指示」してから施策が出て来るというのは何なんでしょう??
まぁかなりの人々が指摘していますが、「検討を指示」して「具体策を発表」すると、1本のネタで2度の「金融政策」が実施できるわけでございまして、「機動的に動く日銀」の看板維持には絶大なる効果を発揮するという事ですかね。「一粒で2度美味しい」ってお菓子がありましたな。
金融政策決定会合でそう毎回毎回何かを決めなければいけない訳でも無いと思うのですが、総裁就任直後に大見得を切って「臨時政策委員会」を召集してしまった所から始まった「よく動く日銀総裁」もそろそろいい加減に落ち着いて貰いたいものであります。
だいたい政府側の構造改革も財政再建も遅々として進まないのに、日銀だけ一人踊りつづけていても仕方無いと思うのですけれども・・・・・・・
本日は一部「資金力もポジション力も無い人の遠吠え」的な部分がある事をお詫び申し上げますm(__)m。
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「金融経済月報」(2004/02/06)
昨日の金融政策決定会合はさすがに昨日の今日(ではないが)で再度何かやるという事もありませんで、全員一致で現状維持と相成りました。しかし「何をやるのかわからない日銀」という評価が次第に定着しつつある昨今ですので、直前まで「長期国債の買入増があるのではないか」といった観測もあったようです。
ちなみに長期国債買入増に関して決定会合後の記者会見での総裁コメントは(時事通信報道によりますと)「長期国債買入の無闇な拡大は国債への信認を失わせる」とまぁその通りなのですが、その他でなんでもあり政策をやっておいて何を今更というものでした。
それは兎も角として、昨日の金融政策決定会合では金融経済月報の2月分が決定され、基本的見解が公表されました。この金融経済月報なんですが、当然というか恐ろしいというか、1月とまるまる同じといっても差し支えない内容。まぁ前回が1月20日で、そこから2週間しか経っていないので当たり前といえば当たり前です。
1月22日のドラめもんで「1月の金融経済月報は12月とまるで同じですな〜」と申し上げましたが、2月の月報もまたまるっきり同じ状態。相違点は実質的には1箇所だけです。
経済の現状認識にあたる部分で1月までは『輸出は増加しており』と言っていたのですが、今月分は『輸出はこのところ大幅に増加しており』となっているところです。
基本的に輸出主導による景気回復という話ですので、先ほどは「まるで同じ」と申し上げましたが、この「大幅増加」という所は微妙な表現ながら「また判断前進」という事なのかもしれませんので、一応注意しておいた方がよいのかもしれませんね。
その他微妙に表現を変えているのが金融情勢に関する部分でして、マネーサプライにも関連する銀行融資のところに関してどういう意図かよくわかりませんが表現が微妙に変わっています。1月分では『民間銀行貸出は減少幅が僅かながら縮小してきている。』という表現でしたが、今月分は『民間の資金需要は減少テンポが幾分緩やかになってきている。』となっております。
「何だ、同じじゃないか」と言われそうですが、この手の文書で表現が変わる事にはそれなりの意味がある筈でして(と勝手に言ってますが)、この表現変化は「主語が違ってますな」という所にあるかと言う事で。つまり、前月は「銀行貸出の減少」という現象面への言及であった部分を「民間の資金需要の減少」という表現で、「銀行貸出の減少は銀行によるいわゆる貸し渋りが原因なのではなく、民間の資金需要が減少していることが原因である」と言いたかったのではないかと勝手に解釈しております。
今年も金融庁による大手銀行への特別検査(毎年やるのに何で特別検査なのかよくわからんですが)が行われます。特別検査は大口債務者の債務者区分に関するものですので、中小企業貸出目標の話は関係ないのですが、これもまた「銀行貸出が伸びないのがケシカラン」みたいな理不尽なる批判を受けている大手銀行への援護射撃を意識しているのではないかと思う訳です。考えすぎかな??
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「金融経済月報」(2004/01/27)
すっかり忘れていましたが、先日の金融政策決定会合で金融経済月報が公表されております。今回は昨年10月末に発表された所謂「展望レポート」の標準シナリオからの乖離状況についてのコメントもあるという割と重要なものになる筈でしたが、ご存知のとおり名分無しで金融緩和をしてしまったので、月報の意味付けが益々訳判らん状態になっております。
と言う事にめげずに月報を読みますと・・・・・これがまた何の為に金融緩和したのか理解に苦しむほどの情勢判断でございます。何せ今回の月報は「まるっきり12月と同じ」となっております。何とも素晴らしい。
念の為主要な記述を抜粋しておきます。
『わが国の景気は、緩やかに回復している。』
『輸出は増加しており、設備投資も緩やかな回復を続けている。こうした動きを背景に、鉱工業生産も増加している。また、雇用者所得は徐々に下げ止まってきており、個人消費は横ばい圏内の動きとなっている。一方、住宅投資は低調に推移しており、公共投資も減少している。』
『先行きについては、景気は回復を続けるが、そのテンポは緩やかなものにとどまると考えられる。』
『海外経済が高めの成長を続けるとみられるもとで、輸出や生産は増加を続け、設備投資も回復傾向がより明確化していくと予想される。もっとも、過剰債務などの構造的な要因が根強いことを踏まえると、設備投資の増勢は力強さを欠くものにとどまると考えられる。また、個人消費は、雇用・所得環境に目立った改善が期待しにくいもとで、当面、横ばい圏内の動きを続ける可能性が高い。この間、公共投資は減少傾向をたどると見込まれる。』
『物価の先行きについて、国内企業物価は、目先は強含みで推移するとみられる。消費者物価の前年比は、米価格の上昇などから、当面ゼロ%前後で推移する可能性が高いが、需給バランスが徐々に改善しつつもなおかなり緩和した状況のもとで、基調的には小幅のマイナスを続けると予想される。』
ということで、この辺の記述は12月と全く同じでして、並べてチェックしていますと、正本と副本のドキュメントチェックをしているのではないかと錯覚するような状態であります。ちょっと違うのはこの辺。
『銀行券発行残高の伸びが金融システムに対する不安感の後退などから低下傾向を続ける中で、マネタリーベースの伸び率は、前年比1割台半ばに低下している。マネーサプライは、前年比1%台の伸びとなっている。』
昨日のドラめもんでご紹介した12月の金融政策決定会合議事要旨にもございましたが、マネーサプライのお話が最近特によく目立つというものです。最近は政府に迎合じゃなかった政府よりも先に手を打つ機動的な日銀っていうのが定着したせいか政府サイド(というかヘイゾー大臣ですが)からマネタリーベースがどうのこうのと五月蝿い五月蝿い。今回もまた政府及び御用学者への言い訳のためにマネタリーベースの鈍化について言及していると言う事なのでしょうな。
量的緩和してもマネタリーベースには殆ど影響がなく、もっと別の要因で動いているのではないかという仮説が成り立ちそうな昨今の動きなんですけれども、この調子では何らかの景気失速的状況(株式市場の下落ですな)が発生したときに、犯人がマネーサプライと言う事になって、マネーサプライ真理教とリフレ派の皆さんが「国債の買入を増やせ」とか「日銀は国債を引受すべきだ」とかまたまた無茶なお話になるのでしょうな〜。
その時、元々は日銀マンである福井総裁はどうするのでしょう。今となっては原理原則を重視する速水総裁が懐かしいですな。あのお方も原理主義者なのでそれはそれで困るところもありましたけどね。
今回の金融経済月報の眼目は「展望レポート」の四半期ごとのレビューだった筈なんですけれども、こちらにつきましてはこんな感じになっております。
『わが国の経済・物価動向は、昨年10月の「経済・物価の将来展望とリスク評価」(展望レポート)で示した経済・物価の標準シナリオに概ね沿った動きを続ける、と予想される。』
基本的に標準シナリオどおりという事ですので、まぁ回復するけどテンポは非常に緩やかということでしょう。標準シナリオはそんなにカンカンの強気シナリオではありません。念のため。
『こうしたシナリオが上振れまたは下振れるリスク要因としては、引き続き、海外経済の動向、金融・為替市場の動向、不良債権処理や金融システムの動向および国内民間需要の動向が挙げられる。このうち、海外経済については、下振れるリスクが展望レポート公表時に比べ小さくなっていると評価できる。一方、金融・為替市場の動きとその影響には注意が必要である。』
海外市場が牽引して回復基調にあるという認識なのですから、『海外経済については、下振れるリスクが展望レポート公表時に比べ小さくなっている』という表現になるのは当たり前なのですけれども、これだけでは追加緩和をする大義名分に激しく乏しい訳でして、お為ごかしもいい所なんですけれども『金融・為替市場の動きとその影響には注意が必要である。』という表現を最後に加えております。
国内金融市場のどこをどう探すと不安要因があるのか全く理解に苦しみますので、結局は為替市場が円高に振れると問題なんでしょうけれども、正直申し上げてこんなに緩やかなペースで進んでいるドル円相場で何で大騒ぎになるのか理解できん。
まぁどちらにしても今回の金融緩和の大義名分になりそうなものを日銀の公表文から探すとなると上記の一文しか無い訳ですから、結局は「景気に悪影響を与える為替市場の動きに対処する為の金融緩和」としか申し上げようがありませんな。
しかし何ですな。金融経済月報での情勢判断を何も変えず、「下ぶれリスクに注意が必要」というだけの理由で金融緩和をするってぇ話ですから、日銀自らが先日のコミットメントを軽いものにしているとしか申し上げようがありませんな。日銀にいわせれば「あのコミットメントは量的緩和解除の必要条件(十分条件ではない)について述べただけだ」という事なのでしょうが、金融緩和に大義名分も論理的整合性も無いお方が金融緩和終了時には大義名分どおりに動くのでしょうか。甚だ疑問ですな。
とまぁそんな事を思いながら今月の金融経済月報チェックはこの辺で。
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「12月の金融政策決定会合議事要旨を読む」(2004/01/26)
12月15〜16日に実施された金融政策決定会合の議事要旨が公開されました。相変わらず2日間の1日目が1時間半位しかやっておりませんで、何ざますかって気がしますがそれは兎も角。
http://www.boj.or.jp/seisaku/03/pb/g031216.htm
○景気の基調判断は徐々に上方修正
前半は景気の現状及び先行きの見通し。基本的には金融経済月報に反映される内容ですので、そっちをチェックしておいたのと同じではありますが、改めて念のため確認。
国内金融経済情勢の基調判断の部分では次第に表現が強気になっておりまして、景気判断を明確に「回復」とスタンスを変えてきていることが確認できます。
実体経済に関する記述を見てみましょう。まずは輸出から。
『輸出は、米国や東アジア経済の好転を背景に、7〜9月に増加に転じた後、10月も7〜9月対比でかなりの増加となった。地域別にみると(中略)8月までは弱めであった米国向けも、自動車の在庫調整が進んだことなどから、ここへきてはっきりと増加に転じている。(以下略)』
この部分では『はっきりと増加に転じている』という表現がこれまでになかった所でして、景気回復の牽引役である輸出に対する強気な見方が窺えるというものです。
設備投資は「回復はしているけれども慎重」で前回と全く同じです。
家計部門は「雇用者所得は下げ止まっているが目立った改善は期待しにくい」でこれもまた前回と全く同じ。
個人消費部門に関しては表現が前進しておりまして、
『個人消費関連指標をみると、耐久消費財についてはデジタル家電を中心に堅調な動きとなっているほか、7〜9月には天候要因のため弱さが目立っていた全国百貨店やスーパー売上高などにも持ち直しの動きがみられる。また、消費者コンフィデンスを示す指標も概ね改善している。もっとも、先行きの個人消費については、雇用者所得に目立った改善が期待しにくいことなどから、横這い圏内の動きを続ける可能性が高い。』
前月の表現が現状に関して「弱めの動きが続いていると判断される」、先行きが「引き続き弱めないし横這い圏内で推移」となっており、内需の大きな柱となる個人消費に関しては情勢判断を上方修正させております。
物価については表現をあまり前進させると量的緩和解除の思惑が出て来るということもあるんでしょう。基調判断は前月と同じです。つまり「特殊要因の影響でゼロ%前後で推移するが、基調的には小幅のマイナスを続ける」という先行きの予想になっております。
○マネーサプライに関する議論
経済情勢に関する委員の議論もそれなりに興味深いのですが、何と言うかまとめにくい(毎回話が違うから)ので議事要旨をお読みいただきますと致しまして、その他のお話に関して。
『このところ、マネーサプライの伸び率がやや低下している背景について、何人かの委員が意見を述べた。これらの委員は、マネーサプライ、とりわけM2+CDの伸び率が高まるためには金融機関貸出が増加する必要があるが、現在のように構造調整が進捗する下では、企業は有利子負債の圧縮を優先するため、景気が回復基調にあるにもかかわらず、金融機関貸出が増加しにくい状況にある、との見方を示した。』
『このうち、ひとりの委員は、M2+CDと実体経済活動の間には、非常に長い目でみればある程度の関係がみられるが、90年代後半以降、そうした両者の関係が不安定化している、との見方を示した。別のひとりの委員は、最近の数年間については、マネーサプライの伸びは金融システム不安と正の相関を示しており、金融システム不安が高まればマネーサプライの伸び率が高まり、金融システム不安が鎮静化すればマネーサプライの伸び率が低下するということもできる、と述べた。』
『また、さらに別の委員は、構造調整の過程においては、金融政策の効果をマネーサプライの伸び率で判断することは適当ではない、との見方を示した。』
という話が金融情勢に関する議論で行われております。相変わらずマネーサプライ議論が行われているのですが、これに関しては盛り上がったと思われる節がございます。その後の「金融政策運営に関する検討の概要」でも同じ話がされております。相当話したんでしょうな。
『ひとりの委員は、金融政策運営に当たっては、様々なマネー指標の中でもマネタリーベースに注目すべきであり、その伸びを中長期の名目成長率に見合ったかたちで安定的に増加させる政策運営が、デフレの克服だけでなく、長期金利の安定化にも資する、との見方を示した。』
大体誰が言ったか想像がつくのですが、マネーサプライの伸びがちょっと鈍化すると直ぐにどこかの大臣が「マネーサプライを増やせ」と言い出しまして、こういう議論が決定会合(政策委員会)で行われているのでしょう。
思いっきり深読みすると、マネーサプライの伸び鈍化をネタに金融政策に下らない政治圧力が掛かることをかわす為に先日当座預金残高目標の引き上げを行った(介入サポートが最大の理由だと思いますが)という面もあるのではないかという事になりますな。
本来はマネーサプライを増やすという政策の実現性の難しさと、政策効果が有るのかが不明だという事に関して、岩田−翁論争ばりの議論をしていただきたいのですが、中々そうは行かないのでしょうな。
『別のひとりの委員は、マネタリーベースの約7割を占める銀行券については、そもそも日本銀行が直接的にコントロールするのは困難であるうえ、現在の銀行券発行残高の対名目GDP比率は長期的なトレンドを大きく上回って推移しており、金融システムの安定化などに伴って減少する可能性があることなどを考えると、マネタリーベースに注目した政策運営には問題が多い、と述べた。』
マネーサプライ真理教の学者先生たちはこの「銀行券発行残高は日本銀行が直接的にコントロールするのが困難」という理屈がさっぱり判らないらしく、「銀行券発行によって発生する通貨発行益の活用のためにドンドン日銀券をだせ」といった無意味な話(発行しても過剰な分は還流してきますよ)をしてみたり、しまいには「政府紙幣を発行しろ」と言い出したり(スティグリッツの説なのですが、リフレ派の皆様にとっては定説らしい)しているようであります。政府紙幣を発行したら、その分日銀券の流通が落ちるだけ(地域振興券でしたっけ?独身世帯のあっしは支給されませんでしたが)でしょうし、過剰に発行したら悪性インフレになるだけでしょう。
○資産担保証券買入絡みのお話も
資産担保証券買入に関しては一応ちゃんと議論をしていたようですな。
『何人かの委員は、資産担保証券の買入基準については、制度発足時より、資産担保証券市場の発展の状況等を踏まえて見直すこととしていたところであり、日本銀行によるこれまでの買入れの実績や、証券化市場フォーラムで出された市場関係者の意見も参考にしつつ、見直しの余地があるかどうかについて検討を行うこととしてはどうかとの意見を述べ、すべての委員がこれに賛同した。』
ということですが、こんな意見も出ていたようです。
『ある委員は、見直しに当たっては、現行スキームの導入時の考え方の基本線はしっかりと守るべきである、と述べたほか、何人かの委員は、市場の健全な発展を主眼とすべきであり、日本銀行による買入実績を増やすことに重点を置くべきではない、との見解を示した。』
せっかくそんな議論がされていた割には、結局の所「ただの骨抜き」としか思えないような要件緩和が発表されてしまいましたし、おまけにこれが全員一致だったということでしたな。少なくともこの「ある委員」は物申して反対票を投じても良かったのではないかと思いますけれども。
『中堅・中小企業金融の円滑化に資するとの観点から、「中堅・中小企業」をより肌理細かく定義する』(前回の金融政策決定会合での発表文より)といかにも定義を明確化しているかのような表現でやっている事は定義の大幅緩和という何とも強引なお話が通ってしまったのは何故なのか、個人的興味として気になる所ではあります。
本日はこんな所で。
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「『金融政策変更』を過去の発言などから整理しました」(2004/01/21)
昨日の金融政策決定会合。ほぼ大勢は「追加緩和なし」と見ていたようですが、あたくしも伊達に自称日銀ウォッチャーやってません。とうとうやりやがってくれました。あまり当って欲しくない予想が当るのも複雑な気分ではあります。
それでは今回の金融政策決定会合での変更点をチェック、あるいは罵倒してみましょう(^^)。
○当座預金残高目標の引き上げ
『日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、金融調節の主たる操作目標である日本銀行当座預金残高の目標値を、これまでの「27〜32兆円程度」から「30〜35兆円程度」に引き上げることを決定した。』
と言う事でして、大体3兆円の目標値引き上げであります。既に先日来ドラめもんだけでなくほんまものの有識者からも「円売り介入の不胎化操作によるクラウディングアウトを防止するための引き上げに過ぎない」と言われておりますし、昨年10月2日にはマネーサプライ真理教徒の岩田日銀副総裁が記者会見で以下のように言及している事は以前こちらのドラめもんでご紹介しているかと存じます。
『8月18日の記事についてであるが、先週、内閣府の国際セミナーでも同様のことを申し上げた。すなわち、今年に入ってからの為替介入額は、財務省の発表によると、現時点では13.5兆円、先月までは9兆円程度であった。一方、年初からの日本銀行の追加的な流動性の供給額は計10兆円──3月2兆円、4月5兆円、5月3兆円──で、偶然ではあるが、為替介入額と追加的な流動性の供給額がほぼ同額であった。このように、国内の流動性の供給と介入を併せて行うと、事後的には、「非不胎化政策」と呼ばれる政策を実行したのと同じ効果が出る。また、これも結果的にはであるが、日本銀行が米国債を購入するのと同じ経済効果が生じる、ということを申し上げた。』
まぁ事後的であれ、従来の日銀理論では実行し得なかった「非不胎化政策」が実施できているのですから岩田副総裁もニッコリと言う事でしょう。一応岩田副総裁はこの(昨年10月の)会見では「あくまでも事後的に発生していることだ」というスタンスでして、同じ会見で「だからと言って介入額の増加=追加的金融緩和の量」である必要は無いとの趣旨の発言もしております。
何はともあれ、今回の当座預金残高目標額の引き上げの理由はこんな感じです。
『日本銀行は、以上のような情勢(引用者注:景気は緩やかに回復し持続性もある。物価は需給バランス改善しつつも小幅下落で、金融為替市場の動きがリスク要因)を踏まえ、デフレ克服に向けた日本銀行の政策スタンスを改めて明確に示し、今後の景気回復の動きをさらに確かなものとする趣旨から、当座預金残高の目標値の引き上げを行うことが適当と判断した。』
もはや説得力皆無です。まるで何処かの国の首相がやっている事と同じではないかと申し上げておきましょう。そういえば瞬間的に話は飛びますが、某国首相はイラクへの派兵の言い訳に事もあろうに「兼愛」「非攻」「尚賢」をモットーにした(尚賢はどうでもよいが)墨子の言葉を引用したそうですな。もうアフォかヴァカかと。
という余計は話は置いておくとしまして、岩田副総裁が過去に指摘しているように
・事後的には、「非不胎化政策」と呼ばれる政策を実行したのと同じ効果が出る
・結果的にはであるが、日本銀行が米国債を購入するのと同じ経済効果が生じる
という当座預金残高目標の引き上げ。金融経済情勢がより一層の緩和を求めるような状況でもないのに目標額を引き上げると言うのでは、岩田副総裁の指摘通りのことが政策目的になっているのではないかと言われても全く反論できないでしょうな。
と言うわけで、金利をゼロにして流動性を供給することによって「ポートフォリオリバランス効果」を期待していた現在の金融政策の枠組みはとっくの昔に崩壊しておりますが、その代わりに日銀の流動性供給で米国債券市場が堅調に推移するために世界景気の下支えが出来きるという無茶苦茶な経路で、量的緩和が国内へ波及効果をもたらしたという事になるのでしょう。
軍事でも経済でもご奉仕とまるで宗主国の手先(以下自主規制)・・・・・
さて、この論理的破綻を来たしている当座預金残高目標額の引き上げなんですけど、もう一つ寒いものを感じたのは総裁記者会見で明らかにされたのですが、「反対が2票しかなかった」という事です。
ご存知の通り、最初は田谷さん、その後は須田さんも反対に加わり、最近は植田さんも「理念無き当座預金残高目標引き上げ」に反対票を投じていると言われておりました。ところが今回、そのうちの1名が脱落(予想では植田さん)してしまったのです。
明らかに今回の当座預金目標引き上げは「円売り介入の事後的な非不胎化」を狙ったものであって、「財務省の円売り介入への強力なサポート」として位置付けられるべきものであります。その性格は前回の引き上げと全く同じであり、なお露骨になってきております。
然るに、今回反対票が1票減ったというのは、完全諦観モードになっているのか、はたまた円売り介入非不胎化賛成なのか良く判りませんが、何はともあれ日銀の政策委員会の機能が壊れてきているという事を意味するのではないかと思う訳でございます。
もはや中央銀行としての矜持も理念もなくなった日本銀行はどこに行くんでしょうかね〜。
○資産担保証券買入の基準緩和
福井総裁の提唱で始まったような鳴り物入りの資産担保証券買入。元はといえば就任記者会見におけるこんな所から始まっている訳ですな。
『日本銀行としては、この面で、国民の皆様の期待に応えられるように、引き続き、知恵を出してまいりたい。「知恵を出してまいりたい」という意味は、日本銀行の最も有力な武器である金利機能が使えない状況に至っているということであるので、日本銀行の総力を挙げて知恵を絞り出し、それによって適切な対処をしていきたいということだ。』
『流動性をより多く供給することによって、マネーサプライ増加につなげる、あるいは実体経済に対して良い影響を与えていくということであるから、それは日本銀行が流動性を供給したその後の伝達径路が、十分磨かれていないと目的を達成できない。お金は供給したけれど、金融部門の中で空回りする事態になる。これまでのところ、そういった状況がかなり現出しており、いわゆる「流動性の罠」にはまったような状況が続いているということである。』
『従って、デリバリー・チャネルというか、お金を末端にきちんと届けるという「出前持ち」のような仕事は、大変地味に見えるが、そこを愚直にやっていきたい。そのためには、銀行貸出のルート、あるいは銀行貸出のルートを通じない場合には、債券市場その他のマーケットの機能の活用を通じて、お金が広く伝播することを考えていかなければならない。』
このあたりが福井さんお得意の「企業金融の目詰まり論」の基本となる部分であります。現実問題ということでは、業務内容は良いけれども財務内容やら何やらの事情で中小企業を中心として企業金融が円滑に機能していないために、乃公いずくんば蒼生をいかにせんって感じで開始した訳であります。>資産担保証券買入
で、始めてみたものの、元々根本であります現状認識が変なので、ニーズがある訳なし。よってオペが機能しない。という悪態は昨日も申し上げたと思います。残念ながら予想通りに(-_-メ)、政策目標の達成よりもオペを機能させる事が日銀にとっては重要だそうで、オペの存続というか拡大解釈によってオペを実施することが目標に摩り替わってしまいました。
で、この内容なのですが、中々香しいものを感じさせます。
元々が「企業金融に目詰まりが生じており、本来資金が供給されるべき優良な中堅・中小企業に資金が回りにくくなっている」という(ありもしない)問題を解決する政策目的で始まった政策ですので、買入対象となる資産担保証券には要件がありました。曰く、
(1)中堅・中小企業関連債権比率要件
・裏付資産に占める中堅・中小企業関連の割合が「金額ベース」で5割を下回らないこと。
・中堅・中小企業は「資本金10億円未満」の会社と定義。
(2)正常先要件
・裏付資産に金融機関の貸付債権が含まれる場合、各貸付債権の債務者が自己査定上の「正常先」に分類されていること。
(3)格付要件
・ABCP等は、a−1格相当の格付を複数取得していること。
・ABS等は、BB格相当以上の格付を複数取得していること。
本来の政策目的を達成する為には実に当然な要件でありますが、ABSのBB格ってのは結構ゆるゆるな要件ですな。で、今回はこれが緩和されたのですが・・・・・・・
(1)の要件については
・5割の算出ベースを「金額または件数」に拡大(件数ベースで5割も可とする)。
・中堅・中小企業の定義を「資本金10億円未満または常用雇用者数999人以下」の会社に拡大。
と言うことです。幾ら何でも最初から極端な事はしないと思いますが、この定義ですとお為ごかしに数千万円程度の中小企業債権を件数稼ぎにプールしておいてドカンと大企業向けの債権をぶちこんだ資産担保証券も対象になるという訳です。実に香しい。
おまけに「常用雇用者数999人以下」という事ですが、なんちゃらホールディングなどという持株会社を始めとして、大企業の金融子会社あたりも見事に対象になってくる事でしょう。非常に香しいものを感じます。要件緩和で骨抜きもいいとこ。
この骨抜きの言い訳がお笑いなのでご紹介しておきましょう(-_-メ)。
・中堅・中小企業関連債権を裏付資産に組み入れるインセンティブを高めるため、新たに「件数」に関する基準を追加し、当該基準を満たす資産担保証券も買入対象に加える。
・中堅・中小企業金融の円滑化に資するとの観点から、「中堅・中小企業」をより肌理細かく定義する。
特にお笑いなのは2番目ですな。「きめ細かく定義」っていうのは定義を厳格化する場合に言う言葉であって、「または」で対象を拡大しておいて「きめ細かく」もあった物ではないでしょう。もしかしてギャグですか??
と、悪態をついた所で(2)の要件ですが、こちらの緩和は簡単でして、
・本要件を撤廃する。
です。元々ABSに至ってはBB格付け(元利金の回収に懸念があるって奴ですな)のものまで買入というゆるゆる要件があるので、この要件を撤廃した挙句に(1)の要件が緩和されると、ど〜ゆ〜事になるのでしょうか。
極端な話しをすれば、大口要管理先以下へのでかい貸出債権としょぼい中小企業への貸出債権をプールしたABSを組成しておけば、そのABSのうちBB格部分までは日銀がお買上してくださるという実に美しい話になる訳ですな。
現状では投資適格部分については世の中の機関投資家様が先を争ってお買上となっていますので、不適格部分だけ日銀に押し付ければ良い訳ですな。そのうち格付け要件も緩和されるのではないか(今回も緩和されてますが大勢に影響がない緩和です)という気がしてきます。
本来の政策目的がどこかに行ってしまい、総裁の鶴の一声で鳴り物入りで始まった「画期的な新政策」それ自身を実行させるために驀進する日本銀行。もう情けないとしか申し上げようがありません。世界に稀なる中央銀行です。
○と言うことで、今回の政策レビュー
散々書きましたのでまとめも何もあったものではありませんが(と、あたくし既に激怒状態ですな^^)、今回の政策は近代国家における中央銀行設立の意義、即ち「中央銀行の政治からの独立」を自ら破壊するという実に素晴らしい行為でありまして、そのような歴史的な大仕事を達成された福井総裁さまの英断には実に頭が下がる思いです。
特に大衆民主主義における政治っつーのは極めて場当たり的目先的な政策に走るというのは致し方無い面がございます。そういう意味では某学者大臣さまなんぞ政治における素晴らしい活躍をする資質をお持ちのお方ではございます。
しかし、通貨の番人(正確には通貨価値の番人ではないかと思いますが)たる中央銀行は政治とは一線を画して良くも悪くも安定して構えていないと、通貨の番人たる役割が果たせないというものです。
この調子では、政治からの要求に対して日銀は何でもやるという状況が益々進行することになるでしょう。政治としては結構な打ち出の小槌が出来たわけでして、日銀法改正の理念も全て崩壊という事でしょう。
行き着く先は財政インフレだと思いますよ。何時やってくるのか判りませんが。
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「あまり纏まっていないので箇条書きモード」(2004/01/20)
や〜(^^)、調子に乗って2日連続で相場見通しについて能書きを垂れたらきっちりと外しましたな。とほほのほ。
通常国会も始まりますし、金融政策決定会合も実施という事で、やっと政策も動き出す(かど〜かは知らんが)のでもう直ぐネタには困らないでしょうな。只今端境期。
○金融政策決定会合の注目点
本日の決定会合は日銀の「展望レポート」の四半期ごとの見直しというのが(後日追記:発表されるのは通常の金融経済月報で、位置付けが記述の通り)公表されるらしく、ど〜ゆ〜内容になるのかが注目される所です。
と、申しましても最近の政府経済見通しなんかを見ていると、「景気は回復傾向だけど物価は横ばいないしは弱含み」という従来の見通しの延長線上になるでしょう。あたくしの考える理由は非常に単純でして、「まだ時間軸を短縮する訳に行かない」と言う事。あまりにも早くに景気回復モードになってしまった為に、債券市場は暴落スパイラルから早期利上げまで織り込んでまった昨年の反省からして、時間軸が短期化するというような印象を持たせる訳には行かないでしょう。
ところで、昨日もNY市場の祝日を狙ったのかどうか知りませんが、円売り介入があったのではないかと思われる動きが為替市場にございました。相変わらずの円売り介入で、短期金融市場での日銀のオペレーションがややしんどくなっている印象があります。資金供給オペを長めの期間で実施しようとすると、同時または予め資金の吸収オペを実施しないといけない(当座預金残高目標を理由も無く突破しちゃうから)状況になってしまいました。
そんな訳でして「円高への経済への悪影響を緩和する為」と銘打って当座預金残高を引き上げる(実態は介入の非不胎化というマネーサプライ真理教の皆様大喜びの政策なのですが)という苦し紛れの政策もありかなとは思うわけであります。何せ介入の向こうは財政赤字絶賛拡大中の米国大統領でございますから、弾は用意しておかないといけませんな(-_-メ)。
○金融政策にも「損切り」が必要なのではないかと
福井総裁になってからというもの、色々と新たな機軸を打ち出すのがお得意な技となってしまいました。まぁあまり意味があるのかどうか良く判らないけれどもとりあえずサプライズみたいな政策を出すのがお好きな方(どこかの首相みたいですな)だと言うのは良く判りましたが・・・・・
資産担保証券の買取りは本来の「企業金融の目詰まり論」が事実誤認に基づくものだったと思われまして、政策目標に合致した形で実施したオペレーションは開店休業状態(-_-メ)。で、開店休業ならば廃業(オペから撤退)すれば良い物な筈ですが、先日の証券化市場フォーラム(何で日銀が主催しているのか理解に苦しみますがそれは兎も角)では「資産担保証券の買取をより利用しやすくする」などとあらぬ方向に驀進中。本日の金融政策決定会合で何らかの進展があるはずです。
一たび政策が動き出すと政策の実施それ自体が目的になってしまい、本来の目的たる「政策目標の達成」がどこかに行ってしまうというのでは、どこぞの干拓やら河口堰やらダムなんぞを笑えないというものです。というか、土木系公共事業は中止すると雇用が喪失しますが、機能しない金融政策を止めても別に誰も困らないと思うんですけど、どうなっているんでしょうね〜♪
あ、強力に実施を言い出したとある人物の体面上困るのか(-_-メ)。
折角おっぱじめた「長期間の手形オペ、債券買現先オペ」も碌に実施していない(まぁこれもやりすぎると技術的に逆効果なのでやらない方がよいのですが)わけですし、何とかならんもんですかね。訳の判らんものまで日銀が買い取って、震災手形状態になったら洒落にならんのですが。
○構造改革と経済財政の中期展望
http://www.kantei.go.jp/jp/kakugikettei/2004/040119kaikaku.html
昨日の閣議で正式に決定した表題の「中期展望改訂版」をパラパラと眺めていたのですが、何をどうやりたいのかあたくしの知能では判りかねる所が多々ありますので困ったものだと思いつつ。
金融政策に絡むお話は当たり前ですがヘイゾー先生の面目躍如。金融政策に直接絡む話しはそんなにありませんが、その中には「資金供給」のお言葉が並ぶ並ぶ。
『金融仲介機能を回復することや産業金融機能を強化することにより、資金供給を円滑化する。』
『日本銀行は(中略)コミットメントをより明確化した。このコミットメントに従った、潤沢な資金供給が期待される。』
『さらに、政府の行うより強固な金融システムの構築に向けた取組と、日本銀行による金融政策の波及メカニズムを強化するための取組などにより、資金供給が増大していくことが期待される。』
マネーサプライを増やすと何故景気が好転するのかさっぱり判らない、と申しますか通貨やら国債やらへの信認を維持したまま人為的にマネーサプライを増大させる方法(減らすのは可能だとおもうが)が有るのでしょうか??という疑問がありますな。しかもその疑問に関する答えは既に実証されているような悪寒が・・・・・・
「金融政策の波及メカニズムを強化するための取組」って資産担保証券の買取なんでしょうから、残念ながら当分は撤退しないようですな。泥沼化しないようにしましょう。
ま〜よくもまぁこれだけ訳の判らん文章を作りますな〜という感じなのですが、どこがどう変なのか良く判らんという情けない状況ですので、また後日考えてみます。それにしても「改革工程表」をまた改定するそうで、子供の「お勉強計画」じゃあるまいし・・・・・・と思うのでありました。
甚だ纏まっておりませんがこんな所で。
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「11月20・21日分議事要旨を読んだ只の雑談」 (2003/12/22)
金曜日はヒマヒマ相場の中で金融政策決定会合の議事要旨が公表されました。10月31日分と11月20〜21日分の議事要旨が同時に発表となっています。
http://www.boj.go.jp/seisaku/03/pb/g031031.htm
http://www.boj.go.jp/seisaku/03/pb/g031121.htm
で、まぁ比較的ど〜でもよいチェックが入るあたくしであります。
○2日間かけて何の話をしているんでしょ?
ま、議事要旨ってぇのは基本的に一定のフォームがあるのは1年以上に渡って読んでいればさすがにあたくし如きでも判ります。判るんですけど、この2回の議事要旨。紙に打ち出してみますと10月31日分が9ページ分、11月20〜21日分が10ページ分となっておりまして、いくら定型フォームだからとはいえ思わず「何で1日の会議と2日かけた会議の議事要旨の量が殆ど同じ?」と突っ込みたくなる訳であります(-_-メ)。
実は10月30日の会合では展望レポートの発表という大仕事があったので議事要旨が長くなっているというのはあるのですが、展望レポートの内容に関して討議、決定するくらいの重い内容が一日でできるんでしたら、わざわざ2日間かけて会議をする必要も無さそうなものです(-_-;)。
ちなみに、11月の2日間実施の会議なんですけど、初日は何と13:59〜15:37と、何でそんな時間帯に、しかもたった1時間半かよ!という時間であります。どうりで最近情報ベンダーで「金融政策決定会合が始まった」ってニュースにならんわけですな。恐らくそんな時間に「金融政策決定会合が始まった」ってニュースが出ると市場関係者が脱力するので、是非次回の2日開催の際にはフラッシュを出して頂きたいものであります(^^)。
それはそれとして議事要旨。11月分のみです。
○資産担保証券の次はシンジケートローンですか
シンジケートローン債権がこの会合の終了時から日銀の適格担保になったのですが、それに対する言及が2箇所にございます。
最近の金融為替市場動向に関する執行部からの報告部分でこのように。
『この間、シンジケート・ローンの組成は趨勢的に増加している。一件当たりの組成額については、徐々に小口化が進む傾向にある。なお、9月11、12日の決定会合でも報告した通り、執行部は証書貸付形態で実行されているシンジケート・ローン債権を日本銀行の適格担保として受け入れるための実務面での検討を進めてきたが、今般これを適格担保として受け入れることが可能となったため、明日(11月21日)から受け入れを開始する予定である。』
当面の金融政策運営に関する委員会の検討の部分ではこんな感じです。
『また、信用仲介ルートの育成という観点から、ひとりの委員は、(1)執行部から報告されたシンジケート・ローン債権の適格担保化は、市場型間接金融の発展に向けた取り組みの一つである、(2)この11月に始まった「証券化市場フォーラム」でも、実りのある議論を期待したい、と述べた。』
ふーんって感じなのですが、市場型間接金融とやらを発展させたいのであれば、市場介入にあたる日銀の適格担保化をするのは如何な物なんでしょうかな。
速水総裁は在任の最後の方では「クレジット・カルチャーの定着」などという言葉を使って要するに「市場にもっとリスクマネーを供給すべし」と主張していました。で、この「市場型間接金融」。こんな言葉いつの間に出てきたのか知りませんが、とりあえず市場型と言うくらいですから、日銀(というか日銀総裁)があちこちで講演している通りに「リスクに見合った金利」という体系が市場を通じて構築されるという発想なのでしょう。
然るに、市場発展のために日銀の適格担保化というよーするに「日銀がファンディングのお手伝いをする」という事をするのは、実際的ではあるかもしれませんが、結局は現在の金融機関貸出(手形オペの適格担保には一般の手形貸付形式での手形も含まれます)が中途半端に適格担保化されているのと同じ事になってしまい、価格形成機能がおかしくなってしまうのではないかと思いますけどね。
○また横文字か!
フツーに読んでいたのですが文中に一箇所思いっきりあたくしを固まらせる場面がございました。肩凝りが酷いので、そういう語句は入れないで欲しいものですな、全くもう(-_-メ)。
金融経済情勢に関する委員会の検討の部分にその記述はございます(^^)。
『別の何人かの委員は、現在の設備投資の増加は、IT関連に集中していた2000年度の回復局面と比べ、家電や素材関連なども含め業種的な広がりを伴っていると指摘した。このうち複数の委員は、ヴィンテージの高い設備の更新需要も踏まえると、今回の回復は2000年度の回復局面よりも持続性があるといえるのではないかと発言した。』
「ヴィンテージの高い設備」ですよ先生、なんすかその用語は????ってところですな。普通こういうのは「老朽化した設備」って言うのではないでしょうか?と思う訳であります(-_-メ)。
この不要な部分での外来語、しかも「ビンテージ」じゃなくて「ヴィンテージ」という使い方といえば誰が発言したものかが良く判るというものであります。おまけに言えば、議事要旨を作るのは当たり前ですが事務局として出席している日銀の政策委員会室や企画室といった事務方です。この人たちまでわざわざこんな表現を使う事もないと思うのですが。
ま〜事務方が総裁にヨイショしているのか、それとも総裁おん自らが書けと命令したのかは判りませんが、どっちにしてもろくなもんじゃないですな。
大体ですな、不必要な洋行かぶれ的な外来語の使い方って、たぶん誰もが読んだことのある夏目漱石の「坊ちゃん」に「赤シャツ先生」というキャラクターで登場するくらいでありまして、文明開化以来「恥ずかしいインテリ」の典型として扱われている筈なのですが・・・・・・・
いまさら「洋行気取りのインテリ」的なキャラクターという最早お笑いを通り越してしまう存在であります日銀総裁。ま、その点におきましては某学者大臣様とよく似ておりまして、このお二方実にいいコンビでございますな。全くもう。
○一応真面目に読むとこんな感じです
基本的には金融経済月報と同じなのですが、足元の景気については企業部門を中心に非常に順調。特に今回の景気回復の持続性については、設備投資を中心に持続性への可能性が高い。一方、物価に関しては構造調整が依然進行中であり、やや弱含みが継続するも、再度のデフレスパイラル入りは考えられない。という感じでの認識になっていると読めます。と言う訳で5行で片付くのでありました(^^)。
よ〜するに強気の見方ですな。念のため。
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「金融経済月報に関する補足メモ」(2003/12/18)
昨日金融経済月報の本文が公表されたのですが、一昨日先行して発表された「基本的見解」と比べてちょいとばかり気になる部分がありましたのでご紹介。
昨日のドラめもんで、企業物価の見通しについて「強含みに推移」という点が目に付いた所だと申し上げました。確かに基本的見解ではこういう表現をしております。
『物価の先行きについて、国内企業物価は、目先は強含みで推移するとみられる。』
ま〜先生「強含み」ですよ〜ってなもんで驚いてしまいましたが、昨日公表された全文を見ますとこの「目先強含み」というのはどうも「特殊要因のせいだ」という事のようです。人騒がせな。
『以上を踏まえつつ、国内企業物価の先行きを展望すると、米価格の上昇の影響が残る目先は、強含みで推移すると見られる。』
そんなに米価って影響あるのかよという突っ込みはさておき、どうも国内企業物価が強含みとなっても「特殊要因たる米価上昇のせい」にしてしまうようですな。
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「金融政策決定会合結果」(2003/12/17)
昨日は皆様ノーケアーの金融政策決定会合。確かに金融政策の変更は「全員一致で変更なし」ということでありましたが、それはそれとして2つほどございました。
○金融経済月報
現在の量的緩和政策の時間軸に関しては、展望レポートを中心に注目しておけばよいのですが、だからと言って毎月出てくる月報をおろそかにしていいとは言えません。基本的な見解の部分で微妙に表現が前進しちゃったりしている訳ですな。11月分と比較しつつ見てみましょう。
http://www.boj.or.jp/seisaku/03/pb/gp0312.htm(今回)
http://www.boj.or.jp/seisaku/03/pb/gp0311.htm(前回)
@情勢判断上方修正
最初のひとことが、『わが国の景気は、緩やかに回復している。(前回:回復しつつある。)』となっております。前回から微妙に表現を強気方向に変化させている訳であります。また、経済の現状に関する判断についても、微妙に強気になっております。引用内の()は前回11月の表現です。
『鉱工業生産も増加している。(横ばいから増加に転じている)』
『個人消費は横ばい圏内の動きとなっている。(弱めの動きを続けている)』
また、今回は日銀短観を受けまして企業収益と業況に関してもコメントしておりまして、『企業収益は増加基調にあり、企業の業況感も改善を続けている。』という表現になっております。
A先行きの情勢見通しは変わらず
先行きに関する表現はこうなっております。ちと長いですが丸々引用します。
『先行きについては、景気は回復を続けるが、そのテンポは緩やかなものにとどまると考えられる。』
『すなわち、海外経済が高めの成長を続けるとみられるもとで、輸出や生産は増加を続け、設備投資も回復傾向がより明確化していくと予想される。もっとも、過剰債務などの構造的な要因が根強いことを踏まえると、設備投資の増勢は力強さを欠くものにとどまると考えられる。また、個人消費は、雇用・所得環境に目立った改善が期待しにくいもとで、当面、横ばい圏内の動きを続ける可能性が高い。この間、公共投資は減少傾向をたどると見込まれる。』
ここの文章、先月と違うのはたった一箇所。個人消費の部分が「弱めないし横ばい圏内」という表現から「弱め」の部分がカットされただけですな。
まぁ先行きの見通しを目立つ形で表現前進させてしまいますと、量的緩和政策の終了が見えてきたという思惑を生みかねない所でありますので、ひじょーに表現を抑えないといけないという話もありますが。
B企業物価はデフレ終結?
問題の物価に関してです。まずは国内企業物価ですが、現状に関してはこんな感じで表現されております。
『国内企業物価は、米価格の上昇や内外の商品市況高から強含んでいる。』
当然ながら先月は横ばい圏内という表現になっておりました。物価については数字がまともに出てしまうので表現前進なのは当たり前なのですが、その中で「内外の商品市況高から強含んでいる」と商品市況について言及しているのが目に付きますな。で、先行き見通しはこんな感じです。
『物価の先行きについて、国内企業物価は、目先は強含みで推移するとみられる。』
前月は「当面、引き続き横ばい圏内で推移する可能性が高い」となっておりまして、国内企業物価に関してはデフレ脱却の見通しになっているという訳ですな。うーむ。
C消費者物価も判断前進
消費者物価の現状に関してはこんな感じ。
『10月の消費者物価(除く生鮮食品)前年比は、米価格の上昇の影響もあって+0.1%とプラスとなった。』
ちなみに先月は「医療費自己負担やたばこ税の引き上げといった一時的要因がかなり影響して、下落幅が縮小しており」と表現されております。9月は前年比-0.1%です。念のため。
で、先行き見通しもこれがまた表現が前進しているわけです。さっきと同様に()内は前回の表現です。()内以外は変わっていないということですな。
『消費者物価の前年比は、米価格の上昇などから、当面ゼロ%前後で推移する可能性が高いが(一時的にゼロ%以上となる可能性も考えられるが)、需給バランスが徐々に改善しつつもなおかなり緩和した状況のもとで、基調的には小幅のマイナス(緩やかな下落)を続けると予想される。』
ちなみに、上記の中で「米価格の上昇」が先月は「米価上昇の影響」などと書いてあったりして、プリントアウトした紙を並べて透かし読みするという手抜きチェックができなかったりする訳です。そこまで狙っているなら芸が細かいですな。
んなわけで、消費者物価の判断も何気に前進しています。これもまた表現を強くすると、金融緩和政策の終了を予感させてしまうので痛し痒しといった所でしょう。ただ、前段で見られるように国内企業物価に関しては強含みという先行き見通しになっている所には留意すべきではないかと思ってしまう訳であります。
○資産担保証券買入基準見直しの検討
昨日のドラめもんで丁度悪態をついた資産担保証券の買入。政策目的である「本来資金が供給されるべき中小企業への資金の目詰まり状況を解消する」という課題に沿って実施した筈の施策が全然ワークしていないのですから、本来は「現状認識に問題があったのではないか」という検討も行う必要があるような気がするのですが、何せカリスマ総裁様の鶴の一声で実施の運びとなった政策ですんで、止める訳にはいかないようであります。どこかのダム工事や干拓事業みたいなもんですな。
で、日本銀行の主催する証券化市場フォーラムで出された市場関係者の意見などを参考にして、資産担保証券の買入基準見直しの検討をするそうです。そんな訳で、あまり読む気力がなかったフォーラムの議事要旨を読んじゃいました。横文字の多い議事要旨でして、舶来大好き総裁様がお喜びになっている姿が目に浮かびますな。
http://www.boj.or.jp/seisaku/03/mpo0311a.htm
最後の方で、資産担保証券の買入れスキームについての意見っつーのが出ております。
『「裏付資産に占める中堅・中小企業関連資産の割合が、金額ベースで5割以上であること」との要件は、企業金融全体の円滑化あるいは証券化市場全体の活性化という観点から、これを緩和する方向で見直しを要望したい。』
何か元々の政策趣旨と違う提言ですな。緩和が進めばそのうち大企業向けの資産担保証券ばかりになるような気がしますけど、それで本来の政策目的は達成できるのでしょうかね〜
『「裏付資産が金融機関の貸付債権である場合には、その債務者が金融検査マニュアルに定める「正常先」に分類されているものであること」との要件は、証券化商品の特性を勘案すると、不要ではないか。』
えー、証券化商品の特性を考えるとその通りなのですが、本来の政策意図は「資金を供給されるべき中堅中小企業金融の目詰まりを解消する」という事なので、要管理先以下の債務者の貸付債権の流動化商品を買取るというのは、これまた政策目的の達成と違うお話ですな。
まぁまずは債務者区分を緩和して、そのうち流動化商品のメザニンどころかもっとリスクの高い部分を買えだという話になるんでしょうな。となれば目出度く「震災手形」となるんですな。実に香しいお話であります。
あと2つあるのですが、技術的というか手続的な話ですので省略。
やはりこの政策は、導入するという話が出た時に「日銀が死んだ日」などと申しあげて散々罵倒したように、本来の政策意図を逸脱して暴走する危険性のある諸刃の剣、というか余り役に立たないので諸刃ではないような気もしますが、まぁともかくあまりよろしく無い政策であるという事が見えて参りましたな。
政策目的を達成するために導入した筈の資産担保証券の買入。何時の間にか資産担保証券の買入実績を上げて、オペレーションとして機能する事が目的化しつつあるのではないかと感じております。困ったものですな。
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2003/12/15
お題「材料の整理」
年末なので整理整頓(謎)
○日銀短観を簡単に読む
あたくし的には短観のポイントは2つ。
ひとつは例によって「前回予測DIと実際のDIのギャップ」ですが、製造業は「前回予測のDI」に比べて7〜9ポイント好転しておりますが、非製造業は▲1〜2とほぼ前回時点での予測値と変化がないという結果でした。(添付ファイルご参照)
全般的な景況感の数値は改善しておりますが、例によってその改善は製造業が中心だという所でしょう。まぁ数字だけ見ているとようやく主要製造業の大企業中心の回復が製造業の中小企業などにも波及して来たって感じでしょうか。
非製造業への波及は今一歩といった所なんでしょうか。
もうひとつは「先行きのベクトル」です。恐らく金曜日の債券市場ではこちらの材料をネタにして相場堅調という形になったのではないでしょうか。
今回の業況判断DIと先行きの予測DIを比較致しますと、製造業で先行きのベクトルが下を向いているというのが特徴的であります。非製造業は次回のDI予測数値が今回のDIとほぼ変わらずという数値でして、製造業は今回よりも悪化していまして、いかにも「景気回復一服」って雰囲気を醸し出しております。
これが循環的な回復過程の踊り場なのか、循環的回復がピークアウトしてしまったのかは謎ですが、基本的に(真面目に統計取ってないから何ともいえませんが)短観の数字って株価によく影響を受けているようであります(どっちがどっちか良く判りませんな、ちゃんと統計とっている人はいると思います)ので、株価の頭打ちと平仄を合わせているだけなのかもしれません。
あまり債券の買いで反応するほどの材料でもなさそうですが。
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