決定会合議事要旨や金融経済月報などについて(2007年度下期に書いた分)
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2008/03/21「2月会合議事要旨では銀行の貸出態度にちょっと注目かな?」
2008/03/10「3月月報は減速を認めて、ヘッジクローズを大幅に増やしました」
2008/02/21「1月会合議事要旨より」
2008/02/18「判断を下げた2月月報」
2008/01/29「議事要旨続き:景気判断を下げた辺りから」
2008/01/28「12月決定会合議事要旨」
2008/01/23「何故か今月はアセスメントが変っていない金融経済月報」
2008/01/16「さくらレポート」
2008/01/07「10月30日および11月12、13日会合議事要旨から」
2007/12/21「票決全員一致、月報下方修正」
2007/12/17「いつもの短観チェック」
2007/11/19「10月10、11日決定会合では慎重な議論が増える」
2007/11/14「内容不変の月報/票決も同じく8対1」
2007/11/07「9月会合議事要旨、政策委員会と総裁の温度差か?」
2007/11/01「空元気気味の展望レポート」
2007/10/16「さくらレポートは若干下方修正」
2007/10/15「月報には一箇所変化ありました」
2007/10/12「政策決定会合は拍子抜けに無風/月報も変化なし」
2007/10/02「短観を少々不真面目にいつもどおり読んでみます」
2008/03/21
だいぶ前に出てたので今更ですけど。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g080215.pdf
この時は金融経済月報におきまして、先行き見通しの内容を下方修正しておりましたが、その背景には主に米国経済に関する下振れリスクの増大がベースにあるという感じですな。
○米国経済に関して
『海外経済に関して、委員は、全体として拡大が続いているが、国際金融市場が依然として不安定な状況にある中で、米国経済を中心にダウンサイド・リスクが高まっているとの認識を共有した。』
ということで、米国経済に関してですが。
『米国経済について、委員は、景気の減速傾向が一段と強まっているとの見方で一致した。多くの委員は、住宅着工や販売が減少を続ける中、住宅在庫が高止まっており、住宅価格の低下傾向が強まっているとの認識を示した。複数の委員は、住宅市場の調整が完了する時期は依然として見通し難いと付け加えた。』
『委員は、設備投資は緩やかな増加基調を維持しているものの、個人消費は、足もと減速傾向がやや明確になっているとの認識を共有した。大方の委員は、金融機関の与信姿勢が幅広い分野で一段とタイト化している点に言及し、これが先行きの個人消費や設備投資に与える影響に注意する必要があると述べた。』
『複数の委員は、特に商業用不動産向け与信基準が急激にタイト化しており、これまで好調に推移していた建設投資に悪影響を及ぼす可能性があると付け加えた。このほか、何人かの委員は、住宅価格や株価の下落による逆資産効果や消費者マインドの悪化などが個人消費に与える影響を注視する必要があると指摘した。』
ということで、住宅から来る個人消費の悪化に注意が必要という話になっております。与信に関しても注目されてますが、不動産向けはこちらにあるように厳格化してますけど、かつての日本の信用収縮みたいに何でもかんでも与信が締まっている訳でも無いという所は注意した方がいいんじゃねえのとはあたしゃ思うのですが(信用収縮というと本邦での貸し出しが味噌も糞も締まるというイメージがどうしても日本人にはつきまといますからつい過度の悲観をしやすくなるんジャマイカ)。とは言いましてもマインドの悪化はマインドの悪化ですから・・・
『生産面について、何人かの委員は、製造業の生産が弱い動きを続けていることに加え、非製造業のI
S M 指数が、改善・悪化の分岐点である50 を下回るなど、住宅セクター以外にも減速感が拡がりつつあるとの見方を示した。』
『また、雇用面について、多くの委員は、非農業部門の雇用者数が1 月に減少に転じたことについて、振れが大きい統計であるため、単月の動きは割り引いてみる必要があるが、ここにきて雇用者数の増勢鈍化ペースは一段と強まっているとの認識を示した。』
んでまあその後欧州経済、その他地域の経済に関しても論議がある訳ですが、欧州に関しては『ユーロエリアでは、緩やかに減速しつつも拡大を続けている』、アジアに関しては『中国では、高成長が続いており、N
I E s 、A S E A N 諸国・地域でも、総じて緩やかな景気拡大が続いている』となっています。
これもまたあたくしの超雑感なんですけどね、ユーロエリアで景気が最も失速していると言われるグループになっているスペインでこの前総選挙あったけど与党ちゃんと勝利して政権継続してましたわなってのを見ますと、ユーロエリアってそんなに景気悪くないんちゃいまっかと思うんですけど。ただし欧州の場合は金融機関がサブプラ問題でいかれている状況を何となくこう官民挙げて誤魔化して時間を稼ぐ(時間を稼いでいるうちに実体経済の堅調さで何とかなるのスキーム)の巻なんて雰囲気はあるのですが。
○日本経済に関して
で、先行き見通しをこのとき下げた日本経済ですが、基本的な見方を維持しつつも、先行きへの注意事項として色々と出ておりますです。で、そいつを引用するとこんな感じ。
『複数の委員は、中国の米国向け輸出が減速している点に言及し、米国の景気減速が、アジアの輸出鈍化を通じて日本のアジア向け輸出に影響を及ぼす可能性に注意する必要があると述べた。』
『複数の委員は、中小企業では、原材料高の影響を受けて業況感が悪化しており、設備投資に弱めの動きが出始めていると指摘した。多くの委員は、中小企業における業況感の悪化や一部業種に対する金融機関の貸出態度の慎重化が、中小企業の支出行動にどのような影響をもたらすのかを、注意深くみていく必要があると述べた。』
『何人かの委員が、石油製品や食料品の価格など、身の回り品の値上げが続いていることから、消費者マインドが慎重化していると指摘し、先行きについては注意してみていく必要があると述べた。』
雇用や住宅投資、生産に関しても先行きの注意事項が勿論出ているのですが、こちらに関してはあまり大きく懸念している感じではありません。ただし賃金に関しては弱気でして、
『賃金について、多くの委員は、中小企業の冬季賞与が減少したことなどを指摘し、原材料高などによって、中小企業の収益が鈍化していることを踏まえると、賃金の弱さは続く可能性があるとの見方を示した。』
となっておりまする。またQEに関しても指摘がありまして、
『07 年10〜12 月期の四半期別GDP速報(1次QE)について、何人かの委員は、輸出の増加、個人消費の底堅さ、住宅投資の減少という判断を裏付ける内容であったが、設備投資は予想以上に強く、今後公表される2
次Q E や他の統計と合わせ、判断していく必要があると述べた。この間、ある委員は、最近のG
D P の動きについて、原材料高による交易条件の悪化が、実質所得の海外流出を通じて、内需の伸び悩みをもたらしているとの見方を示した。』
となっています。
○日本の金融面についてちょっと変化した部分(貸出態度)
あまり気にしない金融面なのですが、今回はこのような指摘が。
『何人かの委員は、中小企業では、業況感が悪化する中で、資金繰りが悪化しているほか、建設、不動産、流通等の一部の業種では貸出態度が慎重化するなど、企業金融がタイト化の方向にあり、その影響を注視する必要があると述べた。』
この部分は1月までの議事要旨には見られなかった指摘です。従来は、その前段の『金融機関の貸出態度も、引き続き緩和的な状態が続いている。』で話が終了しておりましたが、今回(2月の決定会合ね、為念)この点に指摘が入っておりますのは注目でございますなということで。
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2008/03/10
○またヘッジクローズが増えています(金融経済月報)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0803.htm(今回)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0802.htm(前回)
・総括判断:ヘッジクローズ増加(追記:減速を断言もありました)
『わが国の景気は、住宅投資の落ち込みやエネルギー・原材料価格高の影響などから減速しているが、基調としては緩やかに拡大している。』(3月)
『わが国の景気は、住宅投資の落ち込みなどから減速しているとみられるが、基調としては緩やかに拡大している。』(2月)
減速の理由が一つ増えております(^^)。あらあらという感じですが。(追記:うっかりしましたが前回は減速しているとみられるだったのが減速しているになってまして、減速を思いっきり認めた形になっています)
・現状判断:企業収益、生産を下げて住宅投資を上げました
『以上のような内外需要のもと、生産は、やや強めに推移した昨年後半の反動もあって、このところ横ばい圏内の動きとなっている。』(3月)
『輸出や生産は増加を続けている。』(2月)
輸出は下げてませんですが、生産はこのように思いっきり下がりました。
『企業収益が伸び悩みつつも高水準で推移する中』(3月)
『企業収益が総じて高水準で推移する中』(2月)
「総じて」が「伸び悩みつつも」と益々訳の判らんヘッジクローズに(^^)。
『住宅投資は、回復に向けた動きがみられるが、なお低水準となっている。』(3月)
『住宅投資は大幅に減少している。』(2月)
上方修正してますけど「なお低水準」でございますな。
・先行きに関しては変更なし
一応1箇所だけ表現が変ってますけど。
『生産は、当面横ばい圏内で推移するが、その後増加していくとみられる。』(3月)
『生産は、当面横ばう局面を伴いつつも、増加基調をたどるとみられる。』(2月)
ただまあこの部分は生産の現状判断を下げているのでこうなるのはまあ当然なのですけど。
ということでまとめますと、今回は現状判断部分を結構下げてきたということになりますなという所かと存じます。まあ4月末の展望レポートでのロジック変更に向けて着々と準備が進んでいるってえことなんでしょうかねえという所で(^^)。
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2008/02/21
まずは1月の決定会合議事要旨。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g080122.pdf
○株価がドカンと下げていることに関して
決定会合やっている時はまさしく一番下げやがっていた時でございまして(話は全然違いますが、このときの緊急利下げを米国祝日明けじゃなくてその前にやって置けよとか、昨年末の追加資金供給だってFF下げの翌日にやるなよなとか、FRBの施策が微妙に変なテンポなのは何なんでしょと思うのですけど)、さてそれに関してどんなお話になるのかなという所を拝見。
『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』以降で政策委員会での討議がどうなったのよというのが出ています。
『ただし、委員は、国際金融市場はなお不安定な状態が続いているほか、原油をはじめとする国際商品市況の高騰や米国の下振れリスクが高まっているなど世界経済の不確実性が増していることから、国際金融市場や世界経済の動向を引き続き注視する必要があるとの見方で一致した。』
引き続き注視ですかそうですか。
『また、多くの委員は、株式市場では、米欧金融機関の追加損失懸念や米国の弱めの経済指標を受けて、年末以降、世界的に大幅な下落が続いていると述べた。更に、何人かの委員は、モノライン保証会社の格下げによって、その保証債券の信用力が低下し、金融機関収益、株価などに影響する可能性があると指摘した。』
『多くの委員は、市場は米欧金融機関の追加損失に対する警戒感を緩めておらず、金融機関の資本政策の帰趨が注目されるとの見解を示した。こうした議論を経て、委員は、国際金融市場全体としては、不安定な状態が続いているとの認識で一致した。』
ということで現状認識及び先行きはまだまだ不透明という話でございますのは当然ちゃあ当然ですが、ではまあこれがどう影響するのかという議論でして、株価がどうのこうのという話が出ているのはこのあたりでございました。
・米国経済の家計部門について
『複数の委員は、ガソリン高や株価下落などもあって消費者マインドが低調であり、これが今後の消費に影響する可能性があると述べた。』
・日本経済の個人消費について
『大方の委員が、石油関連製品や食料品価格の上昇などから、消費者マインドが慎重化していることを指摘し、これが、株価下落による影響とともに消費支出に与える影響を注意深くみていく必要があると述べた。』
同じ話でございますが、個人消費のマインド悪化に影響するというお話ですな。で、まあ他の部分ではその話が出てこない次第でして、かつてのように株価下落が信用不安の非金融部門への波及を招き、金融面がタイトになるという話にはなっておりませんようで。特に日本の場合ですけど・・・・
『わが国の金融面について、委員は、引き続き緩和的な金融環境が維持されているとの認識を共有した。複数の委員は、国際金融市場の不安定性の国内金融環境への影響は、引き続き限定的だと述べた。ある委員は、C
P ・社債市場では、下位格付先では発行スプレッドがやや拡大しているが、全体としては緩和的な状態にあると述べた。また、その委員は、金融機関の貸出態度も、引き続き緩和的な状態が続いていると述べた。』
米国の場合は必ずしもそうは行かないようで。
『金融面について、何人かの委員は、金融機関の与信姿勢がタイト化している点に触れ、これが実体経済に影響する可能性に注意する必要があると述べた。』
ふむふむ。結局のところこの辺がどうなるかなんでしょうかね。
○国内物価上昇をどう位置づけるかの話リターンズ
『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』部分。
『また、これに関連して、原油価格をはじめとする国際商品市況の高騰によって国内物価が上昇することを、政策運営上、どう位置付けるかについて、前回に引き続き議論が行われた。』
でまあ随分と色々な意見が出ているのでありますが。
『何人かの委員は、現在の世界的な物価上昇圧力の高まりは、供給ショックという面もあるが、新興国の成長という需要要因も働いていることから、これらがそれぞれどの程度寄与していると判断するかが重要だとの認識を示した。』
でもそのプラス側は貿易統計に出てくるんじゃないでしょうかという気もするんですけど。うむむ。
『この点について、一人の委員は、日本にとっては、交易条件悪化による所得流出と世界需要の拡大に伴う輸出増加という、プラスとマイナスの双方の要因があり、これらがどの程度、経済・物価の先行きに影響するか、を評価することがポイントとなると述べた。』
と思ったらそういう話になってました(汗)。
『一人の委員は、足もとの物価上昇は国際商品市況の高騰による部分と需給ギャップの需要超過が続いてきたことの影響が浸透し始めた部分との双方によるところがあると述べた。』
そうなんすか。
『このほか、ある委員は、足もとの物価上昇が、企業や家計のインフレ期待を高め、将来の物価見通しに影響するか、丹念に点検していくことが重要だとコメントした。』
これについては次に議論が出てまして・・・・・
『この点について、何人かの委員は、サーベイ調査では、民間経済主体のインフレ期待が変化しつつあるように窺え、こうした動きについて、今後十分注意を払っていくべきであると述べた。』
『一方、一人の委員は、サーベイ調査に示された家計の物価先行き見通しは、ごく足もとの物価の変化に強く左右されて高めとなっている可能性があるので、現時点では、インフレ期待を通じた物価上昇のリスクは大きくないのではないか、との見方を示した。』
あたくしは後者の「一人の委員」さんに賛成ですな。サーベイ調査だって生活商品の値上げ攻撃の前&税源移譲+定率減税廃止で住民税大幅増加攻撃の後くらいに確かいきなり下がりやがったと記憶しておりまして、いやまあ賃金でもちゃんと上昇しないと持続的なインフレ期待にはならんと思われるんすけど。
とまあそんな感じであっさりと。もうちょっと突っ込む点があれば続きは明日ですが、何せこのときって12月の月報を全然下げなかったこともあり、あんまり前回と大きく変わった話がでてないように見えますもんで。。。。。
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2008/02/18
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0802.htm(2月)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0801.htm(1月)
○今回はまあ下がったわけですが
後でご紹介しますが、今回は先行き見通しにヘッジクローズ入りまくりの巻。いやまあヘッジクローズ入るのは違和感ないのですが、1月に全然下げないで今回下げるというのにはあたくし的には違和感が。
いやまあ確かに12月と1月の間だとハードデータが全然揃ってませんでしたので、下げようが無いというのもそのとおりなのかもしれませんけど、どうも市場の周囲でおこぼれを拾っておりますあたくしと致しましては、株価という先走り反応するものに影響されちゃう面が強いせいか、1月に全然アセスメント下がらないで2月に下げるっていうのがナンノコッチャ感は致します。
ま、あたくしの場合は市場コンセンサス比景気に対して強気(株価戻ればマインド戻って消費だって戻るでしょ&皆さん大デフレ+大リストラ時代の記憶引っ張りすぎ&米国がこれだけ利下げしてるし、まだ利下げするのに効かない訳は無いという根拠レスな根拠です、為念)なあたくしと致しましては、最近ようやくモーサテなんかでも「もうダメですおしまいです」みたいな論調が多くなり、日銀も下げたとはこれはそろそろ陰の極に近づいたかなとか思うのは楽観ですかそうですか。
まあもう一回株価がアホほど下がると急に慌てるのがあたくしの仕様なのですけどね(汗)。
○現状認識不変、先行き見通しにヘッジクローズ満載
『わが国の景気は、住宅投資の落ち込みなどから減速しているとみられるが、基調としては緩やかに拡大している。』
という基本的な部分は変化ございませんですわな。引用するのもめんどいので引用しませんが、問題は先行き見通しでございますな。
『景気の先行きについては、当面減速するものの、その後緩やかな拡大を続けるとみられる。』
という器用な先行き見通しの基本部分に変化はないのですが、中身にヘッジクローズが入っております。
・ヘッジクローズその1
『すなわち、輸出は、海外経済が減速しつつも拡大するもとで、増加を続けていくとみられる。』(2月)
『すなわち、輸出は、海外経済が全体として拡大するもとで、増加を続けていくとみられる。』(1月)
もともとは「海外経済が拡大」だったのが「全体として」が入り、今回は「減速しつつ」と入るという器用なヘッジクローズに変化しております(^^)。いやあのその「減速しつつ拡大」ってそりゃまたややこしい話で。ということで海外経済の先行き見通しを下げました。
・ヘッジクローズその2
『また、設備投資や個人消費も、総じて高水準の企業収益や雇用者所得の緩やかな増加を背景に、増加基調をたどる可能性が高い。』(2月)
『また、設備投資や個人消費も、高水準の企業収益や雇用者所得の緩やかな増加を背景に、増加基調をたどる可能性が高い。』(1月)
「高水準の企業収益」に「総じて」というヘッジクローズが入りましたな。
・ヘッジクローズその3
その次の住宅投資はまあ元々悪いので変化無く、その次ですな。
『こうした内外需要の動向を反映して、生産は、当面横ばう局面を伴いつつも、増加基調をたどるとみられる。』(2月)
『こうした内外需要の増加を反映して、生産も増加基調をたどるとみられる。』(1月)
ということで、ここにもヘッジクローズなのですが、この文書をあたくしのMS-Wordに落としたらWord先生か「ばう」の所に赤い波線を入れて下さいましたな、いやはや何とも。
・ヘッジクローズその4
『なお、海外経済や国際金融資本市場を巡る不確実性、エネルギー・原材料価格高の影響などに、引き続き注意する必要がある。』(2月)
というリスク要因に関する部分は今回新たに付け加えられた部分でございます。
というわけで、経済の先行きに関して強気見通しに関するヘッジクローズ入りまくりでございますな。いやはや何ともでございますけれども、まあ執行部が変って新体制になった所で先行き見通しなどを含めた基本的なシナリオを書き換える布石っぽい感じは致しますわなあという所でありまする。
○物価に関してですが
『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、石油製品や食料品の価格上昇などから、プラス幅が拡大している。』(2月)
『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、プラスとなっている。』(1月)
ちなみに12月までは『ゼロ%近傍で推移』でありました。ということはゼロ%近傍の定義はえーっとえーっと幾らになるのかな?
で、先行き見通しには変化ございません。一応念の為。
『消費者物価の前年比は、当面は、石油製品や食料品の価格上昇などから、また、より長い目でみると、マクロ的な需給ギャップが需要超過方向で推移していく中、プラス基調を続けていくと予想される。』
ということであります。以下金融関連に関しては前回と変らず(株価が上がったとか下がったとかの話に変化はございますが)となっておりまする。
総裁会見もどちらかと言えば景気弱気っぷりが目立つようでありましたという感じですが、そちらに関しましては会見要旨が本日アップされる筈ですのでそちらを読んでからという感じであります。
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2008/01/29
まずは昨日の続きから。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g071220.pdf
○12月月報でアセスメントを下げた辺りに関して
『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』から。
『経済情勢について、委員は、前回会合以降に公表された経済指標を踏まえると、わが国経済は、住宅投資の落ち込みなどから一時的に減速しているとみられるが、基調としては緩やかに拡大しているとの見方で一致した。(先行き部分略)』
ということで、12月の金融経済月報で現状判断に減速というのが入ったのはこのあたりの議論によるということになります。
『ただし、一人の委員は、「生産・所得・支出の好循環のメカニズム」において「所得」、「支出」の観点から点検を要するデータ等がでてきたとの見方を示した。』
ということで、12月時点で「一人の委員」は好循環のメカニズムが家計部門で成立してないんじゃないかという指摘をしている訳ですけれども、これが1月の会合でどのような見方になっているのかは注目したいです(が、議事要旨が公表されるのって2月会合が終わってからなんですよね。うーむ)。これは水野審議委員でございましょうかな。
んでまあ12月20日時点の海外経済見通しに関しての議論を拾っても状況がその後大きく変わってしまっているのでアレでございますが、基本的にはこんな所かと思います。
『こうした議論を経て、委員は、今後の国際金融市場の動向について、それが実体経済にどのような影響を及ぼすのかという点を含め、引き続き注視する必要があるとの見方で一致した。』
要するに実体経済にひびくかどうかという話ですわな。
○国内経済について
・住宅関連投資に関して
『住宅投資については、改正建築基準法施行の影響から大きく減少しているとの認識で一致した。何人かの委員は、住宅投資の落ち込みは、一頃予想していたものよりも深くかつ長いものとなっており、その影響も幅広くみられるようになってきていると指摘した。』
『先行きについて、多くの委員は、当面は低調に推移するとみられるが、次第に回復に向かい、やや長い目でみれば、雇用者所得の増加や緩和的な金融環境などを背景に、底堅さを取り戻すとの見方を示した。』
とか言っていますものの・・・・
『ただし、何人かの委員は、マンション価格の上昇などが、基調的な住宅需要の押し下げに寄与していると述べ、建築基準法改正の影響が一巡した後も、弱めの動きとなる可能性があることを指摘した。』
ということで、こちらの懸念は引き続き高いという感じですかな。設備投資の部分でも住宅関連に関する指摘がございまして・・・・
『複数の委員は、改正建築基準法の影響が、構造物投資にも影響しており、今後の動きに注意していく必要があると指摘した。』
となっております。不動産価格に関しては(場所にもよりますが)ここ暫くの間上昇してると理解してますが、まあそういう状況だと一次取得者以外の人たちも動きやすいんじゃないかとは思いますが、今後の動きには注目でございますな。ちと先行きは怪しげですけど。
・マインドに関して
短観を受けまして。
『企業の業況感については、やや慎重さがみられているとの見方で一致した。委員は、こうした慎重化の背景には、原材料高に伴う収益の圧迫懸念、住宅投資の減少、世界経済の不透明感の高まりなどが影響していると指摘した。』
『複数の委員は、原油などの原材料高を製品価格に転嫁できない中小零細企業の収益は厳しい状況となっていると指摘した。』
このあたりですが、景気が厳しくなると相対的に立場の弱いものに皺寄せがいくというお約束の展開で中小零細企業に皺寄せが来ていますという指摘は別の所でもなされておりまして、これが経済全体に与える悪影響に懸念しているというところでございましょうな。
『また、複数の委員は、改正建築基準法の施行や信用保証付き融資における責任共有制度の導入などが、中小企業に対して追加的な負担となっている可能性があると指摘した。』
ほほう官製不況話(^^)。
とまあそんな感じで、景気のアセスメント下げているのですから当たり前でございますが、12月の会合では景気に対する慎重姿勢が目立つというところでございましょう。
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2008/01/28
○決定会合議事要旨なのですがちょっと時間が無いので簡単に
ちょっと時間がなくなってしまいましたので簡単で恐縮。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g071220.pdf
・水野審議委員の現状維持賛成理由
まあ既にでておりましたけど。
『これまで現状維持に反対してきた委員は、建築基準法の改正をはじめとする制度変更や原材料高などによるマイナスの影響が当初の想定を上回っており、わが国経済の「好循環メカニズム」が機能し続けるかについて点検を行う必要が生じたため、今しばらく様子をみたいと述べ、現状維持に賛成した。』
ということですので、メインシナリオを下げているともいえますな。
・景気の現状評価を変更した点についてとか
『市場との対話について、多くの委員は、今回、景気の現状評価を変更したが、@10
月の展望レポート対比では、本年度の成長率は下振れる可能性が高いこと、A
もっとも、先行きについては持続的な成長路線に復帰していくことがメインシナリオであることについて、対外的に丁寧に説明していく必要があることを強調した。』
いやーん、わかりにくですわー。
『また、何人かの委員は、F O M C のアカウンタビリティー向上策について触れ、日本銀行の金融政策の枠組みと同様の問題意識をもって構築されており、共通する部分も多いと述べた。』
まずはその前に訳判らん状態になっとる政策ロジックの建て直しをしていただきとう存じますでございます。
・物価に関して
『原油価格をはじめとする国際商品市況の高騰によって国内物価が上昇することを、物価判断においてどう位置付けるかについて、前回に引き続き議論が行われた。』
『ある委員は、輸入物価の上昇は、物価に対しては上昇圧力となる一方、景気や賃金に対しては下押し圧力となると指摘した。これに対して、何人かの委員は、現在の原油価格の上昇は、新興国などの成長に伴う世界的な資源需要増加を反映している面もあり、これは、日本の輸出の増加にもつながっているため、交易条件の悪化は、かなりの程度相殺されていると述べた。』
こでは最初の「ある委員」に乗りたいですが、何人かの委員さんの方が多いんですね。うーむ。
『また、複数の委員は、エネルギー原単位の持続的な改善も交易条件の悪化をある程度相殺していると指摘した。ただし、何人かの委員は、輸出やエネルギー原単位の改善に伴う恩恵は、大企業ではみられるが、中小企業にとってはマイナスの影響がかなり効いており、影響の出方は、企業によってばらつきがみられると述べた。』
まあこういう二極化というか淘汰みたいなのが起こると言うのがそもそも景気悪いんじゃないのですかという話になるんでしょうな。(あたくしは株さえ戻ってくれればマインド好転して消費戻るでしょとその辺は結構強気にみてますけど)
『ある委員は、90 年代後半以降、日本では名目賃金の引き下げに対する抵抗がなくなったのではないかと指摘し、そうした中で生じた原油価格の上昇は、実質賃金の低下を通じて個人消費に対して悪影響を及ぼす可能性があると述べた。』
これは確かにと思いまする。
『一方、ある委員は、インフレ期待の重要性を指摘した上で、インフレ期待が修正され企業の価格転嫁が容易になれば賃金抑制姿勢も弱まる可能性があると指摘した。』
それが弱まらないから困るのよ。。。。。
『こうした議論を経て、委員は、原材料価格上昇がもたらすマクロ的インパクトについて、景気と物価の両面について、今後、一層注意深くみていく必要があるとの見方で一致した。』
ということで、引き続き時代はCPI上昇=デフレ脱却=金利正常化という過去のステージを脱却して来ましたということでございましょう。
#続きは明日
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2008/01/23
○金融経済月報の基本部分が全然変っていないんですが
12月にアセスメント下げた金融経済月報。今月も下げるでしょとか思ったら、こちらは前月と同じ文言が並んでおります。いやまあマインドは株価戻ったらあっさり戻るんじゃねえのとは思うので、悲観することも無いのかも知れませんけれども、12月に下げているのに1月変らずというのはちと不思議でした。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0801.htm(1月)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0712.htm(12月)
えーっとですね、これがまた12月月報と思いっきり同じでして、違うのは金融市場で円高長期金利低下株安が進行しているって所と、先日公表された日銀短観に関連する企業の業況感に関する記述が外れた所だけでございます。あたくし的にはちょっと意外でしたけど。
まあそのあたり引用するまでもないですが一応。
『わが国の景気は、住宅投資の落ち込みなどから減速しているとみられるが、基調としては緩やかに拡大している。』
『景気の先行きについては、当面減速するものの、その後緩やかな拡大を続けるとみられる。』
『物価の先行きについて、国内企業物価は、当面、国際商品市況高などを背景に、上昇を続ける可能性が高い。消費者物価の前年比は、当面は、石油製品や食料品の価格上昇などから、また、より長い目でみると、マクロ的な需給ギャップが需要超過方向で推移していく中、プラス基調を続けていくと予想される。』
ということで、展望レポートの中間評価部分に参ります。
『わが国の景気は、昨年10月の「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)で示した「経済・物価情勢の見通し」に比べて、これまでのところ、住宅投資の減少が長引いていることなどから幾分下振れて推移している。このため、2007年度の成長率は潜在成長率をやや下回る水準になるとみられる。』
まあこんな感じの表現だと思いっきり想定の範囲内ですにゃ。
『もっとも、生産・所得・支出の好循環メカニズムは基本的に維持されており、住宅投資が次第に回復に向かうことから、2008年度の成長率は、「見通し」に概ね沿って、潜在成長率をやや上回る水準になると予想される。』
でも決定会合の議論の中ではこの住宅投資大丈夫なのかってのが前から出てますよね。そういう意味ではリスクを見てますねってことでしょう。
『こうした「見通し」については、引き続き、海外経済や国際金融資本市場を巡る不確実性、エネルギー・原材料価格高の影響などに注意する必要がある。』
『物価面では、国内企業物価は、国際商品市況高などを背景に、2007年度、2008年度ともに、「見通し」に比べて上振れるものと見込まれる。この間、消費者物価は、石油製品や食料品価格が上昇していることから、2007年度は「見通し」に比べて幾分上振れるとみられる。2008年度は、石油製品や食料品価格の上昇の影響が残る一方、景気の一時的な減速の影響が現れることから、「見通し」に概ね沿って推移すると予想される。』
ただまあ既に物価に関してはコアCPIが上昇したから金利正常化という話は12月の時点で封印モードになっているでしょというのは、12月時点は兎も角、現状では市場の共通認識となってますので、その点ではコアCPIが少々上昇しようとも(2%より高くなったら話は別でしょうが・・・)あまりそれで利上げを意識することはないので、こっちの数字が強めでもあまり驚きませんわな。
しかしCPI見通しに関しては上にあるように『景気の一時的な減速の影響が現れることから』とわざわざ入れているのが中々チャーミングですね。
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2008/01/16
○さくらレポート(ですが中身はあまり読めてない)
概要http://www.boj.or.jp/type/ronbun/chiiki_rep/chiiki0801.htm
詳細http://www.boj.or.jp/type/ronbun/chiiki_rep/data/chiiki0801.pdf
このレポートの見所はたくさんあるのですが、まず見ておくべきなのは『地域の視点』って部分でして、これは毎回何かのお題が設定されてそのお題についてレポートするというものなのですが、今回のお題は『原材料価格上昇のもとでの企業の対応──最終消費者に近い「川下」段階にある地場企業を中心に』でございます。
どう見てもコストプッシュインフレ懸念です。本当にありがとうございました。
一応お話としては前向きな施策のご紹介とかをしておりますけれども、まあ原材料価格の上昇が消費者価格に波及する前に企業業績に下押し圧力をかけ、例の前向きメカニズムに悪影響を与えるという面も日銀の中の人たちは懸念しているんだろうなあとか思ってしまったのはまとめの中(全文PDFのファイルで言うと6ページ目、本文の4ページ目)にある囲み部分のこのあたりから感じましたよ。
『一方で、競合の激化や差別化の困難さ、需要の弱さ等を背景に、依然として、値上げに踏み切れない先や値上げの浸透が進まないとする先も少なくない。例えば、戦略的に価格を据え置いている総合スーパーとの競合に直面する地場スーパーや、価格以外に差別化が難しい中小のサービス業(ガソリンスタンド、クリーニング等)などでは、「コスト上昇分の販売価格への転嫁が十分でないほか、顧客を繋ぎ止めるため、場合によっては値下げせざるを得ない」との声も聞かれており、今後も、大手や他社の動向を眺めながらの受身の対応を余儀なくされるとみられる。こうしたもとで、中小企業の収益が一段と圧迫されるのではないかと懸念する向きも多い。』
で、今回のお題ではないので触れられてませんが、政策委員会の方では家計所得が伸びない中での消費者物価上昇を消費減退から景気下押しリスクとして捉えるという議論が行われてますとなりやすと、まあここもとの消費者物価指数の上昇に関して利上げに直接結びつけるような発想は日銀的にはちょっと無いと見るのが至当ではなかろうかと(景気がよくなりゃ話は別でしょうけど)存じますですよ。
ところでここ最近の「地域の視点」のお題を並べるとこうなります。
『原材料価格上昇のもとでの企業の対応
── 最終消費者に近い「川下」段階にある地場企業を中心に』(今回)
『1.最近の企業立地の動向と立地戦略の特徴点
2.北海道農業の現状と新たな取り組み』(2007年10月)
『中小企業の収益動向と支出行動の特徴点』(2007年7月)
『1.各地域からみた最近の雇用・賃金情勢について
2.近年の東京における高額消費市場の特徴
――海外ブランドや外資系ホテルの動向を中心に』(2007年4月)
『各地域からみた最近の住宅投資動向について』(2007年1月)
・・・・えーっと1年ほど遡っているうちに何か目から汗が出てきたような気がするんですけど目は汗をかかないですよねえ(ToT)。
さてその汗を拭いまして、去年の1月の住宅投資動向のまとめの最後を拝読しますと、
『 先行きについては、雇用所得環境の改善が続き、緩和的な金融環境が維持されるもとで、今後も世帯数の増加が見込まれることから、当面の間は堅調に推移するとの見方が多い。ただし、分譲マンションや貸家においては、供給サイドの積極的なスタンスがみられている一方、足もとでは供給過剰となっているとの指摘も一部に聞かれている。』(去年の1月のさくらレポートですのでお間違えのないように)
まあこの時点で堅調推移と予想するのはそんなもんかなと思いますけど、実は足元では供給過剰になっているとの指摘もってこの時点で既に出てたんですよね。なるほどなるほどという感じでありまする。
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2008/01/07
お題「大分前のネタですが金融政策決定会合議事要旨」
昨年の26日に公表されたものを今更でございますが、10月31日の会合と11月12、13日の会合の議事要旨から少々。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g071031.pdf
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g071113.pdf
で、まずは10月会合議事要旨から。
○米国景気に関して(10月)
『米国経済については、委員は、住宅市場の調整が当初予想よりも深いものになっているが、これまでのところ個人消費や設備投資は堅調な動きを続けており、緩やかな減速過程にあるとの見方で一致した。もっとも、何人かの委員から、ミクロ情報では商業用不動産などにサブプライム住宅ローン問題の影響が波及しつつあることや、消費者コンフィデンスが悪化していることなどから、ダウンサイド・リスクが高まっているとの指摘がみられた。』
ということで、まあ10月末の時点で指摘してたダウンサイドリスクが出てきたってことになるんですかね。展望レポートよりはこっちの議論内容の方がちょっと先行きのダウンサイドを意識しているような気がしますな。
○国内景気に関してと、中小企業の弱さについて(10月)
『個人消費は、9 月の失業率が上昇するなど気懸かりな指標はあるが、雇用者所得の緩やかな増加を背景に、底堅く推移しているとの認識を共有した。』
『住宅投資については、改正建築基準法施行の影響から大きく減少しているとの認識で一致した。何人かの委員は、改正基準法の運用面での緩和が住宅投資の落ち込みを小さくする可能性に言及しながらも、不動産業界の一部には、住宅需要が頭打ちになっているとの声があると指摘した。』
ということで、雇用が頭打ちになっている点と、住宅投資に関するいつもの指摘が出ています。で、今回に関しては中小企業が弱いという点についての議論が行われたようですな。
『この間、中小企業関連で弱めの動きを示す指標が多いことを、マクロ的な観点からどのように考えるべきか、議論が行われた。』
で、幾つか指摘されている事があるのですが、原材料価格上昇による交易条件の悪化に複数の委員が10月の時点で指摘していたのはまあそうですなという感じです。
『また何人かの委員は、中小企業は、原油価格など原材料価格の上昇を販売価格に転嫁できず、交易条件の悪化の影響を受けていると指摘した。』
『その上で、委員は、中小企業部門の動向は、マクロ的には、雇用者数・賃金の面に表れやすいため、企業部門から家計部門への波及メカニズムにどのような影響を与えるかという観点から点検していく必要がある、との見方で一致した。』
○展望レポートの第2の柱(10月)
『この点(引用者注:第2の柱)に関して、委員は、低金利期待定着のリスクと経済・物価下振れのリスクの2つが重要であるとの考えを共有した。』
ということですが、
『これに関連して、ある委員は、今般のサブプライム住宅ローン問題や国際金融市場の動揺が持つ政策運営上の意味合いについて、@良好な経済環境が続くもとでのリスク評価の緩みという、これまで展望レポート等で警鐘をならしてきたリスクが現実に生じたこと、その意味で、やや長い目でみれば「経済・物価情勢に応じた金利調整」の必要性を裏付ける事例であること、Aその一方で、市場の自律的調整が働いて巻き戻しが起きた結果、短期的には、経済に対する不確実要因として作用していること、という両面があるとの整理を行った。』
ということで結論つけられてますが、ど〜見ましてもこの理屈だと@の部分に関しては「将来的な問題」でございまして、目先という意味では金融政策正常化路線は厳しいって話になるように思えるんですけれども。だってリスクが現実に生じてるんですからねえ。でまあAは現実の下振れリスクですから、まあ第2の柱での点検からは金利引き上げという話にならんように思えますな。ナムナム。
続きまして11月12、13日の決定会合議事要旨から。
○米国経済に関して(11月)
『こうした点(引用者注:委員会の検討)を踏まえた上で、何人かの委員は、先行き、米国経済は次第に安定成長に向けて軟着陸するという標準シナリオを変更する必要はないが、景気下振れリスクが幾ばくか高まっているとの見方を示した。』
ということで、まあ当然ながら1か月経つとこうなっておりますわな。
○原油価格上昇と物価判断(11月)
国内景気に関しての論議も当然行われてまして、全体的に先行き慎重な見方が目立つ内容でした。引用は割愛しちゃいますけど。で、今回の議論のお題はどうもこれだったようですな。
『原油価格をはじめとする国際商品市況が高騰していることを、物価判断においてどう捉えるかについて議論が行われた。』
ということで原油価格上昇の背景についての議論が行われている中にしらっとこんな指摘が。
『もう一人の委員は、原油価格を除外して物価情勢の判断はできないというのは、欧州や米国でも一致した見方になっているとコメントした。』
米国型コア指数をやたら持ち出す人への嫌味ですかそうですか。まあそれは兎も角として、結論部分はこんな感じです。
『委員は、原油価格の上昇には需給両面の要因が働いており、単純に除外して考えることはできないが、相場の振れが大きく、それが物価の短期的な動きに影響していることも意識しながら、物価の基調を正確に捉えていくことが重要である、との認識で一致した。』
でまあその議論に関連して原油価格上昇とインフレ期待の議論があったようでございますな。
『この点に関連して、ある委員は、日本の場合、エネルギーのほとんどを輸入しているので、その価格高騰による物価上昇は輸入されたインフレであり、国内の需要に基づく物価上昇圧力は強くないと指摘した。』
つまりコストプッシュであるので物価上昇よりも景気下押しを注意しないといかんという指摘なんでしょうかね。
『これに対して一人の委員は、外生的なインフレであっても、人々のインフレ期待を高める可能性があると述べた。』
そりゃまあそれもそうですが。
『別の委員は、こうした議論について、外生的な物価上昇がインフレ期待に結びつくかどうかは内需の強さにも依存するので、両者は同じ問題の違った側面を述べているのではないかとコメントした。』
ということで、もうちょっと突っ込んだ話もあったのかも知れないけど、今回の論議ではそんな話だったようですね。
○展望レポートが難解という話(11月)
そりゃそうでしょうよと思いますが・・・・・
『一方、一人の委員は、これまでに比べ、各委員が考える蓋然性の最も高い見通しには大きな変化がない一方で、先行きの不確実性への言及が多いことから、我々の考え方が難解であると受け止められた可能性もあるとの見方を示した。』
可能性もあるじゃなくて難解にも程があります。
『何人かの委員からは、そのような中にあって、政策変更の時期に関心が集まりがちであり、「見通しが楽観的であり、利上げを急いでいる」とか、逆に「下振れリスクを強く意識しており、当面、利上げは難しい」といった見方が聞かれるとの指摘があった。』
だって短期市場でポジション持ってたら政策変更時期がいつかは死活問題なんだから仕方ないじゃないですか(苦笑)。より中長期になると話は別で、何月にピンポイントで政策変更があるかというよりは政策変更の進めかたがどうなるか(メジャードペースなのかビハインドザカーブなのかとか)がより重要になってくるんですけどね。
『その上で、委員は、1 年半先までを見通した「展望レポート」の標準シナリオや上下両方向のリスク評価、政策運営の基本的な考え方について、引き続き粘り強く説明していくことが大切であるとの認識を共有した。』
正直、相変わらず難しいのですけれども・・・・・・
ということで、決定会合議事要旨2回分をサラサラとご紹介でありました。
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2007/12/21
お題「ここで下方修正ですか」
ネタにならねええええと覚悟してた決定会合が思わぬ展開でネタの山。何か最近いい感じで逆指標となっているのが誠にトホホでございます。
○景気見通し下方修正で全員一致です
http://www.boj.or.jp/type/release/zuiji07/k071220.pdf
ご案内の通り全員一致で現状維持。この結果が出て債券先物は10銭ちょっと上昇しましたが、そもそも市場が既に来年前半中の利上げ確率をまあゼロ近傍(^^)と織り込んでおりますので「ふ〜ん」で終了というところでしょうか。
あたくしは全員一致になったということは金融経済月報を下げてくるでしょうと思いつつ、これでもし下げなかったら絶好の悪態ネタとか不埒なことも考えていましたが(^^)、案の定月報も下方修正。あたくし的にはまだ暫く頑張るのかなあとか思ってた(執行部変ってからがらっと変えると踏んでいた)んでちょっと早めでしたが、まあ先日来申し上げている利上げが前提になっているかのような金融政策の現在のロジックの建て直しには良いお話ですな。
正直、今回は総裁会見よりも水野審議委員の会見を聞きたいところでしたが、報道されている総裁会見(のヘッドライン)によりますと住宅投資の落ち込みと中小企業下振れを理由に判断を変更したそうですので、11月7日の講演で物価の上昇が家計所得の実質的な低下に繋がる点や、中小企業の景況感の弱さを指摘してたことの流れなんでしょうと思われますです。はい。
○12月月報を11月月報と比較する
例によって例の如くですが。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0712.htm(12月)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0711.htm(11月)
・現状判断
『わが国の景気は、住宅投資の落ち込みなどから減速しているとみられるが、基調としては緩やかに拡大している。』(12月)
『わが国の景気は、緩やかに拡大している。』(11月)
まあ言うまでもなしですが、「拡大」の前につくフレーズが長すぎです・・・
・現状判断の展開部分
『輸出や生産は増加を続けている。企業収益が総じて高水準で推移する中、設備投資も引き続き増加基調にある。また、雇用者所得が緩やかな増加を続けるもとで、個人消費は底堅く推移している。一方、公共投資は低調に推移しており、住宅投資は大幅に減少している。こうしたもとで、原材料高の影響もあって、企業の業況感にはやや慎重さがみられている。』(12月)
『公共投資は低調に推移している。一方、輸出は増加を続けており、企業収益が高水準で推移する中、設備投資も引き続き増加基調にある。住宅投資は足もと減少しているが、雇用者所得が緩やかな増加を続けるもとで、個人消費は底堅く推移している。以上のように、内外需要が増加する中で、生産は増加基調を続けている。』(11月)
今日は細々分けるのが面倒だったので全部ベタ引用しちゃいましたが、12月は11月対比で生産を「増加基調」から「増加」と上方修正していますが、住宅投資は「足もと減少」から「大幅に減少」と思いっきり下方修正してます。
・先行き判断
『景気の先行きについては、当面減速するものの、その後緩やかな拡大を続けるとみられる。』(12月)
『先行きについても、景気は緩やかな拡大を続けるとみられる。』(11月)
これはまた器用な見通しですな。
・先行き判断の展開部分
『すなわち、輸出は、海外経済が全体として拡大するもとで、増加を続けていくとみられる。また、設備投資や個人消費も、高水準の企業収益や雇用者所得の緩やかな増加を背景に、増加基調をたどる可能性が高い。住宅投資は、当面低調に推移するものの、次第に回復へ向かうと予想される。こうした内外需要の増加を反映して、生産も増加基調をたどるとみられる。この間、公共投資は、減少傾向で推移すると考えられる。』(12月)
『すなわち、輸出は、海外経済が全体として拡大するもとで、増加を続けていくとみられる。また、国内民間需要も、高水準の企業収益や雇用者所得の緩やかな増加を背景に、引き続き増加していく可能性が高い。こうした内外需要の増加を反映して、生産も増加基調をたどるとみられる。この間、公共投資は、減少基調で推移すると考えられる。』(11月)
なんでそういう器用な見通しになるかというと、住宅投資の減少は一時現象であり、今後は回復に向かうという以外は先行き判断を変えていないということなんですな。
ちょっと話が逸れますが、確かにまあ建築基準法改正の影響で住宅着工が遅れているのはエライコッチャなんですが、本当に需要が大盛り上がりだったら、供給が減った分だけ住宅販売が大盛り上がりになって住宅価格がもう大変なことですよ先生となると思うんですが、とんとそういう話を聞きません(販売数減るのはまあ供給の問題かもしれないけど、需要がそもそも強いのなら成約率が上がって然るべき)わなあと思いまするに、近年の強気にも程がある(とあたくしは思うのだが)価格設定によって需要が実は減退してて、建築基準法改正での着工減少は需要減退が顕在化する引き金になっただけじゃねえのかとか思ったりもするのでありますが。
・物価
『物価の現状をみると、国内企業物価は、国際商品市況高などを背景に、3か月前比でみて上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、ゼロ%近傍で推移している。』(12月)
『物価の現状をみると、国内企業物価は、国際商品市況高などを背景に、3か月前比でみて上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、ゼロ%近傍で推移している。』(11月)
全く同一文言です。いやまあ10月全国コアCPIがプラス転換したのでここを「若干のプラス」と書いたら早速「物価表現の非対称性」に悪態をつこうと待ち構えていたのですが、マイナス0.1%がゼロ近傍ならプラス0.1%もゼロ近傍ということになったのは待ちぼうけでした、って待ちぼうけの方が良かったのは言うまでもありません(^^)。
『物価の先行きについて、国内企業物価は、当面、国際商品市況高などを背景に、上昇を続ける可能性が高い。消費者物価の前年比は、当面は、石油製品や食料品の価格上昇などから、また、より長い目でみると、マクロ的な需給ギャップが需要超過方向で推移していく中、プラス基調を続けていくと予想される。』(12月)
『物価の先行きについて、国内企業物価は、当面、国際商品市況高などを背景に、上昇を続ける可能性が高い。消費者物価の前年比は、目先、ゼロ%近傍で推移するとみられるが、より長い目でみると、マクロ的な需給ギャップが需要超過方向で推移していく中、プラス基調を続けていくと予想される。』(11月)
先行き見通しは強くなっていますが、これが利上げに結びつくかと言えば、これまた先般ご紹介した水野審議委員の指摘にありますように、家計所得の増加を伴わない状況における物価上昇はただのコストプッシュなので利上げに結びつかないでしょという話になっている・・・・と思うんですけど。
金融環境に関してはいつものことですが割愛。
○もうちょっと月報ベースでの柔軟な動きが出来ると良いように思えます
いやまあ小見出しの通りなんですけど、せっかく毎月金融経済月報をだしているのですから、本来で言えば月報で現状判断(や先行き見通し)をホイホイいじるのもアリだと思うんでございます。もうちょっと柔軟に対応できんもんかと思います。
ただまあそれが難しい理由としては、やはりこれがまた展望レポートにおけるロジック展開に結びつくのでありますが、もともと展望レポートで出していたロジックが「前向きの循環」全開状態で先行きの政策金利調整(要するに利上げ)を全面に押し出した物になっている所が柔軟対応への阻害要因となっているんじゃないのかなと思うのであります。
即ち、先行きのアセスメントを下げる(今回もまあ下げてるには下げてますけれども、あくまでも先行きはヘッジ文言満艦飾ながら「拡大」になっているわけですし)と展望レポートのロジック修正という話になってしまいますので、話として重くなるんでしょうな。君子豹変大いに良かろうと思うのですが、豹変すると「それ見たことか責任取れ」となるのも残念なところであります(無責任になられても困りますが)。
でですな、そういうややこしい話にならないようにするためには、やはり展望レポートの段階ではあくまでも両睨み(世の中何が起こるか判らないんですから)でリスクアセスメントを淡々と記述し、展望の方はまあ上もあるし下もありますなあという形にして、目先の判断は月報ベースでホイホイいじっても良いんじゃねえのかとも思うんですよね。ただまあそうすると一々市場が反応するリスクがあり、ブラインダー元FRB副議長の指摘する「自分の尾を追う犬」状態になるかも知れませんが・・・・・まあ今回やっと判断下げましたけれども、市場の見る景気の先行きは量的緩和解除以降随分を揺れ動いた訳でして、その間日銀の判断が基本的な部分で全然変ってないんで、次第に市場との距離が出てきてるんじゃねえのかと懸念するのですよ。というか市場は既に福井総裁が何言っても反応しなくなっているんですけど・・・・・
ま、この辺りに関しては政策委員会の中の人たちが一生懸命考えてくれていると思いますが、少なくとも今生きてる展望レポートにあります「前向きの循環」というダム論的な前提はとっくの昔に崩壊してると思われますので、そのあたり1月の中間レビューで見直してくれることを期待したいですな。
#今年もあと1週間ですね
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2007/12/17
○例によって短観
http://www.boj.or.jp/type/stat/boj_stat/tk/gaiyo/tka0712.pdf
大企業製造業の業況判断DIが+19と世間様の事前予想より芳しくなかったのですが、よくよく見ると中小企業製造業の業況判断DIが+2と前回調査比改善してまして、大企業と中小企業の格差がどうのこうのという話はどうなっとるのという結果でもありましたな。まあそんな調子で、ヘッドラインの数字はあまりよくないのですが、前回は大企業の内容が良い中で中堅中小企業の数字がパッとしないという状況だったのですが、その点では今回の短観の中身は微妙っぽいですな。
ではまあちゃんとした分析は本職の方がするでしょうからいつもの趣味的チェック。
・業況判断DIの達成度合い
いつものでございます。
(9月時点) (12月時点)
現状→12月予測 現状→3月予測
製造業大企業 +23→+19 +19→+15
製造業中堅企業 +10→+10 +10→+6
製造業中小企業 +1→+3 +2→▲3
非製造業大企業 +20→+21 +16→+15
非製造業中堅企業 +4→+3 +2→▲3
非製造業中小企業 ▲10→▲11 ▲12→▲17
実は製造業は前回時点での業況先行き判断DIが概ね達成されているという結果だったりしまして、あまり前回予想通りに行ってないのは非製造業大企業だけだったりしますが、そもそも論として前回時点での先行き予測が堅めだったんでこのくらいは達成してくれませんととも。ちなみに9月の短観では6月時点での比較的弱めの先行き予想DIを中堅中小企業が達成しませんでしたなあという内容でして、その点では前回よりは(絶対水準は別にして)マシと言えばマシ。
ただまあ先行きの予測DIは今回厳しめに出ております。そりゃまあご時世がご時世ですから当然ですけれども。
・雇用判断
前回は雇用不足感拡大は止まったものの不足状態継続という感じ。
(9月時点) (12月時点)
現状→12月予測 現状→3月予測
製造業大企業 ▲7→▲8 ▲7→▲7
製造業中堅企業 ▲8→▲10 ▲8→▲12
製造業中小企業 ▲3→▲6 ▲3→▲7
非製造業大企業 ▲17→▲21 ▲20→▲22
非製造業中堅企業 ▲14→▲18 ▲13→▲18
非製造業中小企業 ▲9→▲13 ▲11→▲12
9月時点で想定していたよりは雇用不足感は拡大していないけれども、じゃあ9月時点と比較して雇用不足かどうかというと不足感拡大という数字になってます。どうもこの雇用判断DIに関しましては、先行き予想DIが常に「現状を拡大する方向(=不足時は先行きの不足拡大、過剰時には先行きの過剰拡大)」に出る傾向があるので先行き予測はひっくり返りでもしない限りあんまり気にしなくて良いのかもしれません。
・今回はどうだったか証券業の業況判断
前回9月は▲30でしたが、その前のDIは現状判断+34で先行き判断が+54でして、3か月でそこまで下方修正とは市況産業とは言えそれはあまりにも短期的な視点でも判断で実に香ばしいというかお経営お企画部門のおエリートの皆様におかれましては何考えてるんでしょうかねえとか悪態の一つもつきたくなるのはあたくしがおエリート様の部門に1ミリも縁が無いからですかそうですか。
(9月時点) (12月時点)
現状→12月予測 現状→3月予測
証券業 ▲30→+23 ▲26→+4
前回比の変化幅は+4なんでそれだけ見たらはあそうですかという数字なのですが、よくよく見りゃ9月時点での先行き予測DIは超大幅改善というものだったのにまるで改善してないという大本営発表にも程がある内容でございましたわな。
で、今回はさすがに先行き予測DIがゼロ近傍まで下がってきましたが、まあ逆に言えばこの予測数値が先行き悪化になる頃には証券業を取り巻く環境が改善するってことじゃないですかねえ。あっはっは。
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2007/11/19
○決定会合議事要旨を見ながら微妙に雑感
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g071011.pdf
10月10日、11日の議事要旨はやや慎重な議論が増えてきたような感じですが、まあこの時点から世の中だいぶ進展しているのであまり材料にはならなかったようですね。
・米国経済に関して
議事要旨の6ページ目(PDFファイルの8ページ目、以下同様です)から。
『大方の委員は、先行きについて、現在までのところ、次第に安定成長に向けて軟着陸するというこれまでのシナリオは維持されているが、景気下振れリスクが高まっているとの見方を示した。』
大方の委員ですかそうですか。
『その背景として、何人かの委員は、住宅販売や新設住宅着工の件数が減少しているなど一段の悪化がみられており、住宅市場の調整は長期化の様相を呈していると述べた。複数の委員は、住宅価格の低下幅次第では、家計の保有資産が減少するルートや、金融機関のバランスシートが悪化し、与信基準が厳格化するルートなどを通じて、経済全体に対する影響が大きくなる恐れがあると述べた。別の委員は、住宅価格が下落している州ほど売上税の伸びが低いという傾向が窺われており、住宅価格の下落が個人消費に影響を与え始めている可能性がある、と指摘した。』
最後の指摘なんてなるほどでございますな。
・国内住宅投資について
『住宅投資については、改正建築基準法施行の影響から一時的に大きく減少しているとの認識で一致した。先行きについて、ある委員は、不動産業界の一部には、住宅需要が頭打ちになっているとの声があるとしたうえで、特殊要因が剥落した後の住宅投資の動向をよくみていく必要があると指摘した。』
何かシロート考えになりますけど、実は業者の値付けが強気過ぎで住宅需要が価格上昇に伴い頭打ちになっているんジャマイカという気はあたくしもするところでございまする。大体からして法令施行要因で供給が細くなったら需要が変ってなければもうニーズ大爆発でウハウハですよ先生となる筈なのですが、住宅販売の方が大盛り上がりという話はついぞ聞きませんわな。
特殊要因が剥落したら本来ならV字回復する筈なんですが、さてどうなることやらでございます。
・当面の金融政策運営に関して
9月の会合対比慎重派が拡大しています。
『複数の委員は、日本経済は、物価安定のもとでの持続的な成長を続ける蓋然性が高く、経済・物価情勢の改善ペースに応じた政策変更は必要であるが、現在は金融市場や世界経済の状況とその影響を丹念に点検していく余裕はあると述べた。』
この部分なんですが、9月会合ではこの冒頭の部分が『ある委員』となっておりまして、「ある委員」→「複数の委員」ということで、慎重派拡大と見て宜しいかと存じます。
『このうち一人の委員は、物価・成長の足取りは、見通しの範囲内にあるものの、その下方で推移している、と付け加えた。』
9月会合の議事要旨では上記の「ある委員」の指摘に対して「複数の委員」がツッコミを入れて「それならどういう状況を見るべきなのか」という話をしているように読めたのですが、今回は慎重派の発言が増えたんですねという感じです。
慎重派が10月11日時点で増えているってことでしょうね。そうしますと現時点ではもっと増えてるかも・・・・・・
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2007/11/14
金融政策決定会合は案の定でございましたが、結果が出た後場の頭あたりから買いが入ってたように見えるのはありゃ何だったんでしょうか?警戒する必要あったんか??
○月報基本的見解は今回もまたまた同じ
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0711.htm(今回)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0710.htm(前回)
サブプライム問題について何か追加あるかなというのは実はあまり期待してませんで、まあそのあたりは今日公表される全文を読まないといかないですかなと思うのです(がその時間があるのかどうか怪しい)けれども、これはまた見事に何もなかったような月報です。
・景気の現状認識、先行き見通しは全く同じ
10月は短観を受けて企業の景況感に対する言及がありまして、その部分が当然割愛されているのですが、それ以外に関しては冒頭の『わが国の景気は、緩やかに拡大している。』からまるっきり同じであります。しかし海外経済の見通しの『すなわち、輸出は、海外経済が全体として拡大するもとで、増加を続けていくとみられる。』ってのはどうなのよとは思いますが、この「全体として」に何かを加えるとなるとリスクアセスメントがより下方シフトしますって話になるんでしょうかにゃ。
・企業物価の先行き見通しを上方修正
『物価の先行きについて、国内企業物価は、当面、国際商品市況高などを背景に、上昇を続ける可能性が高い。』(今回)
『物価の先行きについて、国内企業物価は、当面、上昇を続ける可能性が高いが、そのテンポは鈍化していくとみられる。』(前回)
まあこれに対して消費者物価指数は上らないのですから困ったもんです(いち消費者としては困りませんけど)わな。
・金融面でも特にサブプライムの言及は無しですな
これまた基本的見解では言及無し。まあいつもの事ですが、金融面に関しては引き続き良好な環境にありますなあというお話になっておりまする。
という訳で金融経済月報は淡々と従来のトーンを継続しているのですけれども、あんまりこうトーンが変わらない状態が続くと「お約束の作文でございますかそうですか」と見做されるかも知れませんねえとは思うのでありますけれども。。。。
○票決が8対1
で、水野審議委員が利上げ提案というのはもうここまで来ると様式美の世界になっておりますな(^^)。まあ材料にはなりませんですし、理屈はともかく反対論が出ればそれに対して議論が発生する訳ですから、宜しいのではないでしょうか(??)。
総裁記者会見に関しては特にこう衝撃のヘッドラインとかも出なかったようでして、今回は(そりゃまあここの所総裁会見連発してたから何を今更というのもありますが)特にどうというのは無かったようですわな。
というわけで平和な決定会合でありました。その次まで6週間ほどあるというのもちと困るなあと。まあ展望レポートなので特殊要因とは言え、前回からから2週間しか経ってない決定会合(金融経済月報ベースでは1か月経ってますが)というのもなんですかなという感じはします。まあ諸々の日程があるんでしょうけれども、どうせなら決定会合は全部積み最終日にやってくれると楽(ある意味詰まらんが)なのですけど・・・・・(^^)
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2007/11/07
まずは議事要旨。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g070919.pdf
○やはり米国サブプライム懸念
『V.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』の海外経済の部分ですが、米国サブプライム懸念てんこ盛りの図となっています。
『金融市場の動向について、委員は、米国サブプライム住宅ローン問題に端を発した国際金融市場の動揺が続いているとの認識を共有した。』
で、色々と指摘があるのですが割愛します。
『こうした議論を経て、委員は、今後の金融市場の動向については、A B C
P のロールオーバーの進捗状況や金融機関による流動性・信用補完実行の動き、金融機関の収益やバランスシートの状況などを含め、注視する必要があるとの見方で一致した。』
結論としては先行き要警戒という当然の物になっています。
で、このサブプライム問題に関連して、米国経済や欧州経済に対しても警戒モードになっているというのは当然ではございますわな。
『米国経済について、委員は、個人消費や設備投資を中心に、減速しつつも緩やかに拡大しているとの認識を共有した。サブプライム住宅ローン問題と金融市場の動揺が米国経済に与える影響について、複数の委員は、企業のバランスシートは健全であり、クレジット市場の機能低下が信用収縮を招いていないなど、これまでのところ、悪影響が生じているわけではないとの認識を示した。』
と、まずは強気の見方になるのですが、先行きのリスク認識はいきなりこれです。
『もっとも、先行きについては、大方の委員は、景気下振れリスクが高まっているとの見方を示した。』
で、要因分解の部分は勿論住宅市場の実体経済に対する影響を見極めないといけませんという議論が続いております。
で、欧州経済。
『欧州経済について、委員は、ユーロエリアでは、内外需要のバランスのとれた景気拡大が続いており、英国経済も高めの成長を続けているとの見方で一致した。そのうえで、多くの委員は、金融市場の動揺が続いており、その実体経済に与える影響に注意する必要があるとの認識を示した。』
ということで、こちらでは金融部門の動揺が実体経済に与える悪影響に関しての言及もございます。
ということで、サブプライム問題が欧米経済に与える影響についての警戒は(当然ですが)結構議論されてて、かつリスクとして認識していますわなという当然の結論。
総裁記者会見では(後でも紹介しますが)「実体経済の好調にも関わらず金利を上げられないという認識が定着する」のをやたら警戒している物言いが目立つ今日この頃ですが、まあ政策委員会のリスク認識は総裁記者会見での空元気じゃなかった強気姿勢とはちょっと温度差あるんじゃネーノというところではないかと存じます。
○実はバブル警戒じゃなくて・・・なのかな?
んでまあ欧米経済のサブプライムに関するリスクアセスメントを議論しておりますが、返す刀でアジア経済の好調さや、本邦経済はサブプライム問題の影響は乏しいというお話になっておりますというのは念の為つけ加えておきますね。
さて、その本邦経済に関してですが、国内住宅投資の中でちょっと「ふーん」と思った指摘を。
『ただし、複数の委員は、首都圏の新築マンション契約率が低下していることや、不動産ファンドからの資金流入が減少していることを指摘し、今後の動向には注意を要すると述べた。』
ということでですな、昨日ご紹介した月曜の総裁講演での福井総裁の指摘する『活発な再開発や堅調なオフィス需要などを背景に、9月に公表された都道府県地価で、東京、大阪、名古屋の3大都市圏の地価上昇率が拡大しました。こうした動きも、企業や金融機関の行動を活発化させる方向に作用すると考えられます。』という先行き上振れリスク部分ですけれども、他の「複数の」政策委員におかれましては、必ずしも不動産バブルワッショイじゃないのではと冷静な指摘をしているという所ではないかと思うのであります。
何かこうこのあたりを見ておりましても、記者会見などでの福井総裁の利上げへの積極スタンス(に見える姿勢)と政策委員会での論議の温度差が出ているんじゃないのかなあって思うのであります。ちょっと期待込みではありますけどね。
ということで決定会合議事要旨はそんな感じです。
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2007/11/01
(11月2日追記)
○第2の柱の表現(展望レポート)
展望レポートに関してですが、昨日あたくし華麗にスルーした第2の柱の部分の表現にも味わい深いものがあるという指摘がございまして、例によって本石町日記さんの所で詳しい解説エントリーがありますんでそちらをご参照ありたし(人のふんどし)。
(以上追記終了)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/tenbo/gor0710.htm(今回)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/tenbo/gor0704.htm(前回4月)
○最初にあたくしのまとめ
展望レポートに関しては、先行きのリスクアセスメントが増えているのはまあ当然なのですが、2008年度の実質GDP見通しを下げないとか、コアCPI見通しをちょっとしか下げないとか、足元の経済に対するレビューを「見通しに概ね沿って推移」とするとか、あたくしとしては想定していた以上に強気に設定した内容になっているなあという印象です。
総裁記者会見のヘッドラインもやたら強気なコメントが並んでおりまして、「ふ〜ん」という感じでありますが、意地悪く解釈致しますと、低金利長期化期待が定着すると宜しくないという考えが今回の展望レポートや総裁記者会見に反映されたんじゃネーノと思います。というか市場がろくすっぽ反応しなかったのは「そうは言っても利上げ出来ないでしょ」という見方なのかなあと思いますが。
○冒頭の総括部分は足元そのままで見通しにヘッジクローズ
『わが国経済は、緩やかに拡大している。2007年度前半の経済は、好調な企業部門に比べると、家計部門の改善テンポが緩慢な状況が続いているが、全体としてみれば、前回(2007年4月)の「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)で示した見通しに概ね沿って推移したとみられる。』(今回)
この部分は前回と同じで、見通しに概ね沿って推移したということになっておりますが、「見通しに概ね沿って推移」したということであればその間に政策金利の調整をしなかったのはどうしてなのでしょうなどというツッコミをするのは野暮ですかそうですか(^^)。というかレビューを全然下げなかったのは少々意外でした。「この意地っ張り!」と言ったところでありましょうか。
で、見通しがヘッジクローズてんこ盛り。
『先行き2007年度後半から2008年度を展望すると、後述するように海外経済や国際金融資本市場の動向など不確実な要因はあるものの、生産・所得・支出の好循環メカニズムが維持されるもとで、息の長い拡大を続けると予想される。住宅投資の振れが、2007年度の成長率を幾分下押しする一方、2008年度の成長率を幾分押し上げるとみられるが、成長率の水準は、均してみると、潜在成長率を幾分上回る2%程度で推移する可能性が高い。』(今回)
『先行き2007年度から2008年度を展望すると、生産・所得・支出の好循環メカニズムが維持されるもとで、息の長い拡大を続けると予想される。成長率の水準は、2007年度、2008年度とも、潜在成長率を幾分上回る2%程度で推移する可能性が高い。』(前回)
米国サブプライム問題と、改正建築基準法(これはどう見ても人災)の影響を下振れ要因としまして、結論部分が「均してみると」という表現になっているところが泣かせてくれます。足元の成長率予想を引き下げざるを得なかったのでこういう表現になったという感じでございましょうかねえ。
○海外経済
そりゃまあFRB様が下方リスクを意識して利下げしてるんだから当然といえば当然ですが、米国経済の見通しを下方修正しつつ、別のネタを持ち出して「でも大丈夫」というのが中々。
『米国経済は住宅市場の調整を主因に減速が長引く一方、他の地域が高成長を続けるとみられることから、海外経済全体としては、拡大を続ける可能性が高い。』(今回)
『米国経済は、足もとは住宅市場の調整が続いていることなどから減速しているが、先行きは安定成長へ軟着陸する可能性が高い。海外経済全体としても、地域的な拡がりを伴って拡大を続けると想定される。』(前回)
ということで、見通し部分では米国経済の減速が長引くとなっておりますけれども、先行きの「上振れ・下振れ要因」部分を見ると、米国経済については『安定成長に向けて軟着陸していく可能性が引き続き高い。』と前回の先行き見通しの表現を踏襲しているのですが、全体を読むとインフレリスク部分を削除したり、サブプライム問題の影響に関してより具体的な説明が入るなど、「サブプライム問題が実体経済に悪影響を与える」という点をよりクローズアップしてます。まあ当然ではございますけど。
『米国では、住宅市場の調整が長引いているが、設備投資や個人消費は減速しつつも緩やかな増加基調を維持しているなど、安定成長に向けて軟着陸していく可能性が引き続き高い。』(今回)
『米国では、住宅市場の調整は続いているが、これまでのところ、個人消費が堅調に推移するなど、経済に広範な影響を及ぼしていない。また、設備投資は、このところ先行指標の一部が弱い動きとなっているが、高水準の企業収益を背景に、緩やかな増加基調が維持されるとみられる。』(前回)
『ただし、住宅市場の調整が一段と厳しいものとなった場合や金融資本市場の変動の影響が予想以上に広範なものとなった場合、資産効果や信用収縮、マインド悪化などを通じて、個人消費、設備投資が下振れ、米国景気が一段と減速する可能性も考えられる。』(今回)
『しかし、住宅市場の調整が予想以上に深いものとなったり、設備投資が下振れた場合、景気は一段と減速する可能性がある。また、物価情勢については、設備や労働といった資源の稼働状況が高水準であるもとで、原油価格の動向などと相俟って、インフレ圧力が減衰しない可能性もある。この場合、金融市場の反応等を通じて、米国経済や世界経済全体に悪影響が及ぶリスクがある。』(前回)
それから、海外経済に関しては、今回の「上振れ・下振れ要因」の中で中国経済を外して欧州経済を入れておりまして、その欧州経済にのリスクアセスメントは当然ながらサブプライム問題となっています(引用は割愛します)。
○企業部門から家計部門への波及
ちと長めになりますが、『第3に、好調な企業部門から家計部門への波及が、緩やかながらも着実に進んでいくとみられる』(ちなみに、ここの部分ですが、前回は「緩やかながら着実に」となっていて「も」が入っているのですけどその意味はどうなんでしょ)から始まる部分を前回と今回を並べて引用しませう。
『雇用者数の増加が続く中で、雇用者所得は緩やかに増加し、株式配当の増加など様々なルートによる波及も続くとみられる。賃金については、グローバルな競争や資本市場からの規律の高まり、原材料高などを背景に、中小企業を中心に人件費抑制姿勢が根強いことに加え、賃金水準の高い団塊世代の退職やパート比率上昇に伴う人員構成変化などもあって、やや弱めの動きとなっているが、労働市場の需給がさらに引き締まっていけば、徐々に上昇圧力が高まっていくと考えられる。こうしたもとで、個人消費は緩やかな増加基調を辿る可能性が高い。』(今回)
『グローバルな競争や資本市場からの規律の高まりを意識した企業の人件費抑制姿勢は続くとみられるが、雇用者数の増加が続く中で、労働市場の需給がさらに引き締まっていけば、賃金の上昇圧力は徐々に高まっていくと想定される。加えて、株式配当の増加など様々なルートを通じて、企業部門の好調は家計部門に波及し、そうしたもとで、個人消費は緩やかな増加基調を辿る可能性が高い。』(前回)
大体ですな、こういう時に前回対比で字数が増えているのは結論に至るまでの様々なヘッジクローズが入るからでございまして、その時点で「ああ見通しを下げてるなあ」とか思うのですけれども、まあその通りの展開になっているのが読み取れるかと存じます。
○国内のサブプライム問題は限定的
企業部門の好調と緩和的な金融環境の部分に関しては特筆すべき変化はございません。まあそりゃそうだという所ですが、サブプライム問題に関しては今回言及が入りましたが、こちらについては限定的とのお告げ。
『米国サブプライム住宅ローン問題やこれに端を発する国際金融資本市場の変動がわが国の金融環境に及ぼす影響は限定的であり、』(今回)
ということで、サブプライム問題に関しては、欧米の金融市場における混乱が欧米の実体経済に影響を与えるリスクという径路でのリスク評価となっています。概ねそんなもんでしょうかねえ。
○IT関連財の需給調整リスクは後退
前回の「上振れ・下振れ要因」で独立した要因として言及されていたIT関連財の在庫積み上がり問題に関しては、おまけのように指摘されているという形に降格となりました。
『なお、IT関連財については、昨年来高めで推移してきた国内の在庫は出荷とのバランスを徐々に改善してきているが、海外経済が予想以上に減速した場合などには、世界的な供給拡大のペースが速いだけに、需給バランスが崩れる可能性もある。』(今回)
○例のバブル懸念はほぼ前回通り
上振れ・下振れ要因の中で毎度お馴染みの『緩和的な金融環境が続くもとで、金融・経済活動の振幅が拡大する可能性である。』の部分に関しては概ね前回の表現を踏襲しています。サブプライムに関しては言及していますが、あまり関係ないという感じ。
○今後の金融政策に関して
第1の柱、第2の柱に関してはこれまた前回を踏襲、というか踏襲するのが当たり前のような気がしますのでそれはそれで良いのですが、先行きの金融政策について今回いきなり「引き上げの方向」と書いたのはどういう風の吹き回しなんでしょ。
『金融政策運営については、これまで、(1)金融環境は極めて緩和的であり、日本経済が物価安定のもとでの持続的成長軌道を辿るのであれば、金利水準は引き上げていく方向にある、(2)引き上げのペースについては、予断を持つことなく、経済・物価情勢の改善の度合いに応じて決定する、という考え方で進めてきた。』(今回)
それに対応するのは前回(というか従来)こういう表現になってたんですが。
『昨年3月の量的緩和政策解除以降の金融政策運営を振り返ると、経済・物価情勢の先行きを展望して、(1)生産・所得・支出の好循環メカニズムが働き、息の長い成長が続く中で、(2)消費者物価は長い目でみると緩やかに上昇し「中長期的な物価安定の理解」に沿って推移する蓋然性が高いという判断に基づいて、経済・物価情勢の変化に応じて、徐々に金利水準の調整を行ってきた。』(前回)
ということで、引き上げとは書かずに「金利水準の調整」という言い方になっていたのですが、ここへ来て何で「引き上げていく方向」という書き方になったんでしょ。
で、勝手に意地悪く解釈しますと、さっきも書きましたように環境的にも市場の見方的にも利上げ時期が遅れるという雰囲気が強くなっているので、敢えてここで利上げという文言を入れて市場の楽観(というか経済物価情勢という意味では悲観なのですが)ムードに釘を指そうという所なのではないかと思うんですけど。
で、最後の表の部分でいえば、2008年度の見通しを殆ど下げてないというのが「これはまた空元気ですなあ」などと思った次第であります。
ではでは。
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2007/10/16
ということでさくらレポートから。
全文を読むとこれは中々オモロイのですが、まだ全文読めておりませんでまとめ部分と本文の総括部分しか見てないので甚だ恐縮でありますが。
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/chiiki_rep/chiiki0710.htm(まとめ)
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/chiiki_rep/data/chiiki0710.pdf(全文)
○さくらレポートのトーンが落ちております
まとめページでも本文の冒頭でも良いのですが『T. 地域からみた景気情勢』っていう初っ端の文章。
『各地域の取りまとめ店の報告によると、足もとの景気は、ほとんどの地域において拡大または回復方向の動きが続いており、地域差はあるものの、全体として緩やかに拡大している。』(今回のレポート)
『各地域の取りまとめ店の報告によると、足もとの景気は、すべての地域において拡大または回復方向の動きが続いており、地域差はあるものの、全体として緩やかに拡大している。』(7月のレポート)
読めば一目瞭然ですな(^^)。まあこういう感じでしらっと全体のトーンが下がっているのを読みますと、これまた前にご紹介した9月の金融経済月報で表現が微妙にトーンダウンしてたあたりからの一連の流れですかなあとか思う次第。まあ勝手読みのような気がしますけど(^^)。
んでまあその続きですが。
『すなわち、輸出は増加を続けており、設備投資もすべての地域で引き続き増加傾向にある。こうしたもとで、企業の業況感は、幾分慎重化しているものの、総じて良好な水準にあるなど、企業部門は好調さを維持している。』(今回のレポート)
『すなわち、輸出は増加を続けており、設備投資もすべての地域で引き続き増加傾向にあるほか、企業の業況感も多くの地域で良好な水準にあるなど、企業部門は好調さを維持している。』(7月のレポート)
どう見てもヘッジクローズ入りです。本当にありがとうございました。
『また、家計部門については、個人消費が、雇用・所得環境の改善傾向を背景に、底堅く推移している一方、住宅投資は、足もと、改正建築基準法施行に伴う着工の遅れ等から、すべての地域で減少している。この間、内外需の増加が続くもとで、生産も増加基調にある。』(今回のレポート)
『また、家計部門については、個人消費は、雇用・所得環境が改善傾向をたどるもとで、底堅く推移している一方、住宅投資は、足もとでは弱めの動きとなっている地域が多い。この間、内外需の増加が続くもとで、生産も増加基調にある。』(7月のレポート)
個人消費部分の「改善傾向」というのと「改善傾向をたどるもとで」のどっちがトーンが強いのかという話はさすがにワカリマシェン。何となく言い切っている今回の方が強い気はするのですがどうなんでしょうか教えて中の人って感じですわな(^^)。
住宅投資に関しては建築基準法関連の特殊要因が入っているのでまあこれはこんなもんでしょう。で、その次。
『こうした中、総括判断において、「拡大」としている関東甲信越、東海、近畿と、「回復」方向ないしは「横ばい圏内」にあるその他の地域との間で、依然、地域差がみられている。』(今回のレポート)
『こうした中、総括判断において、「拡大」としている関東甲信越、東海、近畿と、「回復」方向にあるその他の地域との間で、依然、地域差がみられている。』(7月のレポート)
ま、総括判断に「横ばい圏内」が入ったのですからその部分が追加されるのは当然ですが、引き続き地域差が見られるというのは引き続き変らずでございますわな。
んでまあさくらレポートは実はこの部分よりも中身が物凄く面白くて、毎回いくつかのトピックスをピックアップして『地域の視点』として紹介しているのが非常に面白いのですよ。で、これを読んでまたネタにしようかと思ったら早速本石町日記さんのエントリーがございました(^^)。
http://hongokucho.exblog.jp/7581091/
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2007/10/15
○金曜の追加というか訂正
金融経済月報に関して金曜にご紹介しましたが、よくよく見ると本文全部同じじゃなくて1箇所9月と違っている所がありましたので訂正致します(汗)。
生産の現状判断部分ですが、
『内外需要が増加する中で、生産は増加基調を続けている。』(10月)
『内外需要が増加する中で、生産は、足もと横ばいながら、基調としては増加を続けている。』(9月)
となっておりまして、生産の現状判断元に戻しやがりましたですな。不覚にも見落としておりましたm(__)m
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2007/10/12
○全体的には「拍子抜け」ですかね(拳闘ではなく決定会合^^)
昨日終了した金融政策決定会合。市場の中の人たち的には今週になって「反対票が増えるのではないか」とか「ちょっとタカ派っぽい話が出るんじゃないか」というような期待というか不安というか、まあちょっとした思惑モードも入っていたような感じでありましたが、金融政策決定会合の票決も金融経済月報も9月と同じだわ、総裁記者会見は比較的穏健(に見える伝えられ方)だわという結果。
いやまあ別にそんなに慌てて利上げするこたあねえ(今利上げして将来に発生する問題の責任を押し付けられるのは上手くないでしょ)と思うので、この結果それはそれで良いのですけど、何か拍子抜けといえば拍子抜けな結果になりましたなという所でしょうか(^^)。
という訳で妙な盛り上がりは何だったんでしょうかという所でありますが、そもそも論として最近は「日本が利上げできるかどうかは結局海外次第でしょ」ということでサブプライムとか米国や欧州の金融政策がどうなるかとか、そっちの方が気になる中で衝撃の雇用統計過去分まで上方修正攻撃が来たので盛り上がってみましたという所だったんですかね。
ま、株高と円安もでかいと思いますが。
○決定会合が微妙に時間が掛かったので
昨日の金融決定会合の結果発表は13時半をちょっとだけ回りましたが、ここんところの決定会合は票が割れた場合でも13時前半に結果が公表されてたので、もうちょっと長くなったらより思惑が広がったかも知れません(^^)。と言ってるあたくしも「おやこれは時間掛かってますなあ」とか思い出して「何も無いとは思うけど、何かあったら笑えますなあ」とか雑談してる頃に決定会合終了という感じでした。あははのは。
そんな事もあったのかどーかは知りませんが、後場に入って債券先物が微妙に弱く推移してまして、決定会合の結果が何の事は無い8対1で現状維持だったということでいきなり買い気配になって値段が10銭ほど飛んでしまったのには微苦笑と言ったところでした。
決定会合のケツの時間が決まってないので、時間が掛かると色々と思惑が生まれるというのはこりゃまあ仕方ない部分がありますが、とは言えケツを常に一定にすることによって議論が途中で打ち切りになりましても宜しくない(何も無いのに延々とやるのも不経済ですし)というのは確かでありますので、こればっかりは今のやり方で進行する分には致し方無しの巻ではあるんでしょうな。
ということで、決定会合は出来るだけ13時くらいに終わらせるようにして下さい(^^)。
ちなみに最近の履歴はこちらをご覧あれ→http://www.boj.or.jp/theme/seisaku/kettei/index.htm
○金融経済月報は見事に変化なし
の一行で終了になってしまうところが甚だ困る訳ですが(^^)、今月の金融経済月報(基本的見解)は10月の短観を受けた企業の景況感の部分以外は9月分と全く記述は同じです。(追記:実は一箇所違いがありました。15日に追記しました)
最近は展望レポートや中間評価のタイミングで判断をいじってくるという観が強いので、今月末にもう一回ある決定会合で出てくる展望レポートの方が注目されるっちゅうことになるのでしょうな。
一応10月の月報はこちらです。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0710.htm
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0709.htm
9月の月報と比較するといういつもの事をやろうと思ったのですけど、最初に申しあげた通りでございますのでこの際ヤケクソで短観に関わる部分を過去の月報と比較してみましょう。
・短観に関わる部分
『企業の業況感も、部門によって慎重さはみられるが、総じて良好な水準を維持している。』(10月)
『総じて良好な業況感が維持される中』(7月)
『総じて良好な業況感が維持される中』(4月)
ヤケクソで並べてみたら、今回の短観に関して日銀は慎重な評価をしているというのが判って誠に結構でありました(^^)。
○その他少々
・総裁記者会見
詳しくは今日アップされる会見要旨を見ましょうということになるのですけれども、今回「ほほー」と思ったのはブルームバーグニュースの記事見出しでして(^^)、総裁会見内容を報じるニュースのお題が、
『福井日銀総裁:金融市場は幾つか改善の動きも全体として不安定』
となっていまして、一目慎重な印象を与えますわな。ただまあ人々のインフレ期待というか懸念というか、物価観の変化がどうのこうのという所に言及した(というかさせられてるんでしょうが)あたりがちょっと「ほー」と思うところでもありますが。
・「適格担保取扱基本要領」の一部改正等について
http://www.boj.or.jp/type/release/zuiji07/k071011b.pdf
40年国債対応ということになってますが、よく見ると微妙に掛け目があちこちで変化してるような気がする(まあ1%とかの世界ですけど)のですが・・・・・
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2007/10/02
○真面目な分析は本職の人にお願いします
http://www.boj.or.jp/type/stat/boj_stat/tk/gaiyo/tka0709.pdf
というわけで短観ですが、大企業製造業の業況判断DIが事前予想の小幅悪化と違って横ばいだったのが「おお!」でしたし、下方修正かと思われた設備投資計画が全体的に強めで出てきたとか、一見するとかなり良い内容。ただまあ業況判断DIが良いのは大企業製造業でして、中堅中小に関してはあまりパッとしないという結果。まさに先週須田審議委員が講演などで指摘した「中小企業の減速」がモロに出ているという印象でして、ヘッドラインで下がった債券はあっさり上昇してしまいやがりました。オソロシス。
・業況判断DIの達成度合い
いつものアレでございますが(^^)
(6月時点) (9月時点)
現状→9月予測 現状→12月予測
製造業大企業 +23→+22 +23→+19
製造業中堅企業 +13→+14 +10→+10
製造業中小企業 +6→+4 +1→+3
非製造業大企業 +22→+23 +20→+21
非製造業中堅企業 +8→+7 +4→+3
非製造業中小企業 ▲7→▲10 ▲10→▲11
先行きがやや弱めに出るのは景況感が良い時の仕様なのでそれはそれなのですが、今回は「6月に予想してた悪化ぶりよりも悪化してやがってますぅ」というのが中堅中小企業に出ているのがちょっとダメダメ感が漂う所でありますな。と言う話は既に本職の皆様がしておられるかと存じますが。
ちなみに、前回の駄文は7月3日に書きましたが、この時は3月時点での予測数値よりも良い数字が出やがった(非製造業大企業だけ別でした)という結果になっておりまして、今回はちと足踏み感が鮮明といったところでしょうか。まあ元が良いですねと言ってしまえばそれまでではありますが。
・雇用判断
前回は全体的に雇用不足感拡大は止まったという数字でした。
(6月時点) (9月時点)
現状→9月予測 現状→12月予測
製造業大企業 ▲6→▲9 ▲7→▲8
製造業中堅企業 ▲6→▲9 ▲8→▲10
製造業中小企業 ▲3→▲7 ▲3→▲6
非製造業大企業 ▲17→▲19 ▲17→▲21
非製造業中堅企業 ▲14→▲17 ▲14→▲18
非製造業中小企業 ▲9→▲13 ▲9→▲13
まあ今回も前回予測数値よりは雇用不足拡大をしていないという数字になったんですが、これまた前回申しあげたように統計のクセがあるようで、状況として不足気味の時には先行き不足傾向に出るし、余剰気味の時には先行き余剰傾向に出るという代物ですので、先行きの数値はあまり気にしない方が良いかも知れません。
となりますと、雇用不足に関しては引き続き不足状態継続ということで宜しいのではないかと存じます。
・例によって証券業の業況判断
(6月時点) (9月時点)
現状→9月予測 現状→12月予測
証券業 +34→+52 ▲30→+23
前回比の変化幅▲64は全業種全業態の中でダントツの下方修正です。しかも予測対比で見たら▲82って何だそりゃという所でありまして、てめえの業績先行き見通しが世の中で一番達成できてない業界の人たちが人様のレーティングとかしてて良いのでしょうか(いやまあ短観に答えてるのは企画部門様であらせられましてアナリスト様じゃないですけどね^^)と悪態の一つも申しあげたくなります(-_-メ)。
#確かに市況産業ではありますが、他の素材とか化学とかでもさすがに50も60もぶれないと思うんですが。30くらいぶれるのは見たことありますけど・・・・(記憶ベースですけどね)
以上不真面目な分析でした。
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