決定会合議事要旨や金融経済月報などについて
(2010年度上期に書いた分)

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2010/09/30「9月短観ってそんなに悪い数字に見えないのですが・・・・」
2010/09/13「8月議事要旨を見ると声明文よりもトーンが弱めに見えます」
2010/09/09「9月月報は先行きを下方修正」
2010/09/08「決定会合声明文にサービスフレーズが加わる」
2010/08/31「臨時会合レビュー」
2010/08/27「物価形成に関するレポートについて・・・・だがこんな時期に出すのかよ」
2010/08/23「7月会合議事要旨(その2)景気認識は比較的強気/銀行決算に関するレポートより」
2010/08/17「7月会合議事要旨(その1)先行きリスクバランスの認識は?」
2010/08/16「8月月報は前月とほぼ同じ」
2010/08/11「決定会合声明文はひっそりとヘッジクローズが加わっています」
2010/07/28「新興国の資金フローに関する日銀ペーパーから」
2010/07/23「6月会合議事要旨では新興国の上振れ話はあるのですがやや唐突な感じが」
2010/07/20「金融経済月報は足元を上方修正」
2010/07/16「足元を上方修正してリスク認識は何故かバランスを維持したのは間の悪い気がする」
2010/07/13「金融機関の流動性リスク管理に関するペーパーから」
2010/07/12「短観のCP系列は若干後退」
2010/07/09「さくらレポートも足元の景気に関しては強い内容」
2010/07/08「生活意識アンケートも日銀歓喜の内容のようですな」
2010/07/02「比較的内容の良い日銀短観」
2010/07/01「中国の金融政策に絡んで窓口指導に関するペーパーが面白い(その2)」
2010/06/30「中国の金融政策に絡んで窓口指導に関するペーパーが面白い(その1)」
2010/06/21「5月定例会合では景気見通しが結構強めで、リスクは上下拡大の認識」
2010/06/17「金融経済月報の内容もほぼ微修正程度に留まる」
2010/06/16「声明文はほぼ変化無し/成長基盤強化施策は金利に影響を与えないように実施」
2010/06/15「金融市場調節に関するレポートから少々」
2010/05/27「4月後半金融政策決定会合議事要旨から」
2010/05/26「金融経済月報は声明文程ではないが上方修正」
2010/05/24「声明文は結構な上方修正/謎の施策に関して」
2010/05/13「ドルオペはとりあえず1本実施」
2010/05/12「4月前半会合の議事要旨より、オペの効果はどうかと思うのだが」
2010/05/11「ECBの信用緩和と日銀の協調措置」
2010/05/07「循環論と構造問題のバランスを取った展望レポート」
2010/05/06「摩訶不思議な指示が出たので雑感も含め少々」
2010/04/16「さくらレポートは上昇修正だが水準はまだ低い」
2010/04/13「3月決定会合議事要旨は中々オモシロス」
2010/04/09「金融経済月報も判断前進は若干程度」
2010/04/08「決定会合声明文は若干の判断前進(だが総裁会見では1歩前進発言)」
2010/04/07「短観参考系列、CP発行企業ベースの統計は使えるわ」
2010/04/02「短観&生活意識アンケート、景況感は上振れも期待物価にはやや暗雲も」

2010/09/30

○短観雑談

http://www.boj.or.jp/type/stat/boj_stat/tk/gaiyo/tka1009.pdf

事前予想よりもマシだったような気もするのですが、債券市場の勢いは別に売り材料にしないというのが市場クオリティ。

・業況判断DIの達成度合い

前回はその前に引き続き全セクターでの改善が継続するという素晴らしい結果で、回復期によくあるパターンですなあという感じだったのですが、今回はどうなったかと申しますと・・・・


        (6月時点)      (9月時点)
        現状→9月予測     現状→12月予測
製造業大企業   +1→+3       +8→▲1
製造業中堅企業  ▲6→▲8       +4→▲10
製造業中小企業 ▲18→▲19     ▲14→▲22

非製造業大企業   ▲5→▲4      +2→▲4
非製造業中堅企業 ▲13→▲14     ▲8→▲15
非製造業中小企業 ▲26→▲29    ▲21→▲29

・・・・・うーむ、ここのDIだけ見てると今回の短観も別に悪くは無いという気がするんだが。つまり先行き予測が下向きというのは12月以降ずーっと同じ、というか前回の景気回復期でも同じような傾向が見られた所でして、まあ今回ちと違うのは6月時点での先行きDIの予想がそんなに下になっていなかったのに対して、今回の予想は下になっているという所なのですが、全ての規模において6月のDIよりも改善しているという今回の結果を捕まえて悪いというのはちとどうなの、とその後の部分を見ないでまず最初に思うのですけど。単に足元の金融緩和観測ネタに引っ張られているだけなんジャネーノと。


・雇用判断DI

前回は「改善傾向継続。非製造業の改善がイマイチなのが微妙ですが、製造業は改善継続という所ですな」っつー感じでしたが、さて今回は。

        (6月時点)      (9月時点)
         現状→9月予測    現状→12月予測
製造業大企業  +10→+8      +9→+9
製造業中堅企業 +14→+11     +9→+10
製造業中小企業 +17→+13     +11→+12

非製造業大企業  +7→+3      +5→+3
非製造業中堅企業 +7→+4      +4→+2
非製造業中小企業 +10→+8     +7→+5

何と雇用判断に関しても改善(といってもまあ「過剰」超状況ではあるのですけれどもね)が継続しているのか。何か報道ベースでの話(新卒の就職がエライコッチャみたいな話とか雇用対策しないとエライコッチャみたいな話)と微妙に違うのはナンデヤネンという感じです。


・資金繰り判断DI

      (6月時点) (9月時点)
大企業    +13     +15
中堅企業   +6      +7
中小企業  ▲11      ▲10


・貸出態度判断DI

      (6月時点) (9月時点)
大企業    +7      +10
中堅企業   +5      +6
中小企業   ▲6      ▲4

うーむ、これもまた改善で金融環境が改善しているという話にも平仄があっておりますな。何かまあ本職の人が真面目に分析しているからそっちが正しいのでしょうけれども、いつも面白がって見ている所だけ拾うと実は別に悪くもないというか比較的良い結果ジャネーノという気がするのは気のせいでしょうか。


#で、証券業のDIというのが非常に毎度面白かったので、金融商品取引業という括りではなく証券業という括りで業況判断DI集計を復活させて頂きたく(^^)

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2010/09/13

○8月決定会合議事要旨から少々

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g100810.pdf

・先行きリスクの認識が声明文のトーンよりも下向きだった件について

景気見通しのところでは、先行きの下振れリスクに関する意見がちらほら出ていたのですが、声明文のトーンに今一歩反映されていませんでしたなあ、というのが今回の議事要旨の感想だったりするのであります。結局緊急会合とか謎の事をする破目になった訳でして、んなら定例の時点でもうちょっと下振れの声明文を出しておけばよかったじゃないのよと思いますが、まあ白川総裁の会見の流れをみておりますと、ここの時点では「麿は追加緩和したくないでおじゃる」だったというのが声明文のトーンに影響を与えてしまったんじゃネーノという気がするのでありました。

ちょっとだけ引用しますが例えば米国経済に関して。

『何人かの委員は、わが国のバブル崩壊後の経験から、厳しいバランスシート調整に直面する米国経済について、もともとかなり慎重な見方をしており、米国経済の現在の姿は、こうした見方に概ね沿ったものとなっているとの認識を示した。ただし、これらの委員も含め、多くの委員は、回復テンポの減速を示す指標がみられ、市場では米国景気の先行きに不透明感も出ていることには留意が必要と述べた。』

というような感じでして、先行きリスク要因に関しましてもこのような話になっておりまして。

『他方、下振れリスクとして、委員は、一部欧州諸国のソブリン・リスクを巡る動きや米国経済を巡る市場の不透明感の台頭などが、為替などの国際金融資本市場の動きを通じて、内外の経済に影響を与える可能性があるとの認識を共有した。』

『欧州のソブリン・リスクの影響について、複数の委員は、ストレステストの結果公表を受けて欧州金融システムに対する不透明感は幾分和らいだものの、財政問題そのものが解決されたわけではないとの認識を示した。』

『米国経済について、複数の委員は、回復の遅れを示唆する指標がみられていると指摘した上で、下振れリスクを以前よりも強く意識していると述べた。』

ということで欧州はともかくとして、米国経済と為替市場動向に関する指摘があるわけですけれども、決定会合の声明文ではリスク要因に関わる部分の言及ってこんな感じでした訳で。

『一方で、国際金融面での動きなど下振れリスクもある。この点、一部欧州諸国における財政・金融状況を巡る動きなどが、国際金融資本市場の動きを通じて内外の経済に与える影響に注意する必要がある。』(当該決定会合の声明文より)

つーことでですな、この議事要旨でのトーンが声明文にもうちょっと反映させておけば今回の謎のドタバタに関してもうちょっと違っていたのではないかと思いますと実にこう残念感が漂うものでございます。


・金融面の動向のところから少々

長期金利の低下に関して。

『最近の長期金利の低下について、何人かの委員は、直近で金利が1%を下回る水準まで低下した2002年から2003年頃と比較した評価を、金融機関行動の観点などから行った。これらの委員は、当時と比べると、金融機関の収益や自己資本の状況が改善している点や、リスク管理が高度化している点が、異なっていることを指摘した。』

たぶんリスク管理は表面上高度化してるかもしれません(笑)が、金融機関行動の本質は変わっていないと思います(−−;)。ただまあ2003年の超絶金利低下の時は金融機関は後ろから刃物か鉄砲で脅されて収益を上げないといけないと言う状態でございましたので、その辺が違うちゃあ違いますが、たぶん上記の「金融機関の収益や自己資本の状況が改善している点」というのはそれを美しい表現で指摘しているのでしょうなあと思いながら微苦笑するのでありました。

『これらの委員も含め、委員は、長期金利の動向に関しては、予断を持たず、金融機関の有価証券投資の動向などを、引き続き、注意深くみていく必要があると指摘した。』

別に気にせんでええんちゃいますかねえ(^^)。


貸出条件が緩和している件に関して。

『企業からみた金融機関の貸出態度や企業の資金繰りについて、委員は、緩和方向の動きが続いているとの見解で一致した。複数の委員は、企業からの資金需要が弱いことを背景に、貸出残高の前年割れが続く中、貸出条件が緩和されていると述べた。』

これはそうらしいですな、うんうん。


為替と企業生産の海外移転に関して。

『最近の為替動向について、多くの委員は、円高が輸出や企業収益の下押し要因になりうると述べた。また、多くの委員は、円高やそれに伴う株安が、企業や家計のマインドに与える影響にも、注意が必要であると指摘した。ある委員は、足もとの円高水準が持続するリスクが高まっているとの見方を示した。』

なんつーかこういう話をしているのに、何で声明文でそのトーンが出ないのよと・・・・

『何人かの委員は、円高が生産拠点の海外移転を加速させる可能性があると述べた。この点に関して、ある委員は、生産拠点の海外移転が進んでいる背景としては、円高よりも、新興国の高成長の方が大きいとの見方を示した。』

まあ為替は加速させる要因になるとは思いますが、やはり本質的には日本の成長期待が低くて、一方で新興国が高成長をしているから、という風に思いますけどねえ、とか書くと日銀の成長基盤強化貸出制度のロジックに見事に嵌ってしまいますかそうですか(^^)。

という事で、まあ8月の議事要旨を見ますと、「何で声明文のトーンをもっと下げておかなかったんですかねえ」という感じですな。結果論ちゃあ結果論ですけどね。

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2010/09/09

○金融経済月報を見ると結構見通しが下がっているように見える

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp1009.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp1008.pdf(前回)

・現状判断部分はあまり変わらん

『わが国の景気は、緩やかに回復しつつある。』(今回)
『わが国の景気は、海外経済の改善を起点として、緩やかに回復しつつある。』(前

余計な修飾部分がなくなったので上方修正に見えてしまうが、まあ実際問題としては全体が下げているので、この部分は上方修正じゃあないんでしょうな。ただしヲチャー的には瞬間上方修正と思ってしまうという話は昨日申し上げた通りでございまする。

『輸出や生産は、一頃に比べ増加ペースが鈍化しているが、増加を続けている。設備投資は持ち直しに転じつつある。雇用・所得環境は引き続き厳しい状況にあるものの、その程度は幾分和らいでいる。そうしたもとで、個人消費は持ち直し基調を続けており、とくに最近では猛暑の影響や耐久消費財の駆け込み需要がみられる。住宅投資は下げ止まっている。この間、公共投資は減少している。』(今回)

『輸出や生産は増加を続けている。設備投資は持ち直しに転じつつある。雇用・所得環境は引き続き厳しい状況にあるものの、その程度は幾分和らいでいる。そうしたもとで、個人消費は持ち直し基調を続けている。住宅投資は下げ止まっている。この間、公共投資は減少している。』(前回)

めんどいのでまとめて引用しましたが、輸出、生産の増加ペース鈍化というのと、個人消費の猛暑効果+駆け込み需要に関しての言及が入っています。昨日引用した声明文と同じですわな。


・先行きが結構下がっている

『先行きについては、景気は改善の動きが一時的に弱まるものの、緩やかに回復していくと考えられる。』(今回)
『先行きについては、景気は緩やかに回復していくと考えられる。』(前回)

ヘッジクローズキターーーーーーーーー(・∀・)。

『輸出は、海外経済の改善が続くもとで、当面そのペースは緩やかながら、増加を続けるとみられる。企業収益が改善基調にあるもとで、設備投資は徐々に持ち直しの動きがはっきりしていくとみられる。もっとも、設備過剰感が残ることなどから、当面、そのペースは緩やかなものにとどまる可能性が高い。個人消費は、猛暑効果の剥落やエコカー補助の終了などから一時的に弱めとなる可能性が高いが、均してみれば持ち直し基調を続けるとみられる。この間、公共投資は、減少を続けるとみられる。そうしたもとで、生産は、耐久消費財を中心に一時的に弱めの動きとなるものの、均してみれば増加基調をたどると考えられる。』(今回)

『すなわち、輸出や生産は、増加ペースが緩やかになっていくとみられるが、海外経済の改善が続くもとで、増加基調を続けるとみられる。国内民間需要は、持ち直しを続けるものの、設備・雇用の過剰感が残ることや、各種対策の効果が薄れていくことなどから、当面、そのペースは緩やかなものにとどまる可能性が高い。この間、公共投資は、減少を続けるとみられる。』(前回)

えーっとですな、あえてこの部分を項目別に分けずに全部まとめて引用してみましたが、前回と今回の違いで一番目立つのは「文章の長さ」でございまして、基本的に文章が長くなるというのは色々とヘッジクローズやら何やらが入るという事でもございまして、文章が短い時には見通しがシンプルという事でもありますので、これ即ち先行きの見通しが不透明というか自信度が下がっている訳でして、先行きの回復シナリオを下げてきているちゅうことですな、うんうん。

で、需要項目別に見てみると、輸出は「当面そのペースは緩やかながら」と入って若干下げ、設備投資は「徐々に持ち直しの動きがはっきりしていくとみられる」とこいつはやや上げ、あと今回2度出てきていますが「均してみれば〜基調を続ける」のはこれまたヘッジクローズ入りですのでやや下げと言う事で、個人消費と生産は下げですな。これは政策効果の剥落分は兎も角として、その先の回復見通しに関してのヘッジクローズが入ったという感じですかね。

で、物価と金融環境ですけれども、こちらについては国内企業物価の現状分析で「弱含み」と下げになったのと、ターム物金利の現状分析で「弱含み」と金利が下がっていますねという話をしている以外は内容に変化は無いので面倒なので引用割愛。

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2010/09/08

○追加緩和を示唆なのですかねえ

決定会合結果
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k100907.pdf(今回)

前回の臨時会合と前回の定例会合の声明文はこちら。
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k100830.pdf(前回の臨時)
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k100810.pdf(前回の定例)

とりあえず声明文を比較してみる。

・現状判断

『わが国の景気は、緩やかに回復しつつある。』(今回)
『わが国の景気は、海外経済の改善を起点として、緩やかに回復しつつある。』(前回定例)

臨時会合の声明文はコンパクト版なので前回の定例と比較してみましたけれども、「海外経済の改善を起点として」というのが抜けているのでありまして、これって普段から日銀文学の鑑賞に勤しんでいるマニア的には第一感として「上方修正」と思うのですけれどもね。即ち、「海外経済の改善を起点として」というヘッジクローズのような物が抜けるという事で自律的な回復の経路に乗ってきているんじゃネーノというイメージになってしまったりする訳でござんすが、実際のところ後のほうのリスク要因で米国経済の先行き不確実性の高まりというのが入っているので、結局どうなのかがサパーリ判らんという部分でもあります。ただまあヲチャー的にはこの部分を単独で切り出すと「上方修正」と読んでしまいますなあというところで。

・現状判断の個別需要項目

『すなわち、輸出や生産は、一頃に比べ増加ペースが鈍化しているが、増加を続けている。設備投資は持ち直しに転じつつある。雇用・所得環境は引き続き厳しい状況にあるものの、その程度は幾分和らいでいる。そうしたもとで、個人消費は持ち直し基調を続けており、とくに最近では猛暑の影響や耐久消費財の駆け込み需要がみられる。公共投資は減少している。』(今回)

『すなわち、新興国経済の高成長や世界的な情報関連財需要の拡大などを背景に、輸出や生産は増加を続けている。設備投資は持ち直しに転じつつある。雇用・所得環境は引き続き厳しい状況にあるものの、その程度は幾分和らいでいる。そうしたもとで、個人消費は持ち直し基調を続けている。公共投資は減少している。』(前回定例)

輸出と生産に関しては判断を引き下げ、その他は変化無く、足元の個人消費に関しては猛暑と駆け込み需要要因が発生しているという話ですので、全体としては判断がちと下がった(上がった方は一時的要因を挙げているだけで基調的な部分の文言に変化が無いから)というところですわな。

・金融環境の現状判断

『この間、金融環境をみると、緩和方向の動きが続いている。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、経済全体の需給が緩和状態にあるもとで下落しているが、基調的にみると下落幅は縮小を続けている。』(今回)

これは前回と変化はありません。


・先行き見通し

『先行きの中心的な見通しとしては、わが国経済は、回復傾向を辿るとみられる。物価面では、中長期的な予想物価上昇率が安定的に推移するとの想定のもと、マクロ的な需給バランスが徐々に改善することなどから、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、下落幅が縮小していくと考えられる。』(今回)

はいはい前回と同じ前回と同じ。


・リスク要因

『リスク要因をみると、景気については、新興国・資源国の経済の強まりなど上振れ要因がある。』(今回)

しぶとく残っていますなあ(前回と同じ)。

『一方で、米国経済を中心とする先行きを巡る不確実性の高まりと、これを背景とした為替相場や株価の不安定な動きが続くもとで、わが国経済の下振れリスクに注意が必要である。』(今回)

『この間、米国経済を中心に、先行きを巡る不確実性がこれまで以上に高まっており、為替相場や株価は不安定な動きを続けている。こうしたもとで、日本銀行としては、わが国の経済・物価見通しの下振れリスクに、より注意していくことが必要と判断した。』(前回臨時)

『一方で、国際金融面での動きなど下振れリスクもある。この点、一部欧州諸国における財政・金融状況を巡る動きなどが、国際金融資本市場の動きを通じて内外の経済に与える影響に注意する必要がある。』(前回定例)

ということで、前回の臨時会合からの変化はなく(まあ先週ですから当たり前ですが)というところです。

『物価面では、新興国・資源国の高成長を背景とした資源価格の上昇によって、わが国の物価が上振れる可能性がある一方、中長期的な予想物価上昇率の低下などにより、物価上昇率が下振れるリスクもある。』(今回)

物価の部分は変化ないっす。


・毎度お馴染みの決意表明部分

『日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することがきわめて重要な課題であると認識している。そのために、強力な金融緩和の推進、金融市場の安定確保、成長基盤強化の支援を図ってきており、こうした中央銀行としての貢献を粘り強く続けていく。金融政策運営に当たっては、きわめて緩和的な金融環境を維持していく。日本銀行は、先行きの経済・物価動向を注意深く点検したうえで、必要と判断される場合には、適時・適切に政策対応を行っていく方針である。』(今回)

『日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することが極めて重要な課題であると認識している。こうした認識のもと、強力な金融緩和の推進、金融市場の安定確保、成長基盤強化の支援を図ってきた。日本銀行としては、今後とも、中央銀行として最大限の貢献を粘り強く続けていく方針である。』(前回臨時)

『日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することがきわめて重要な課題であると認識している。そのために、中央銀行としての貢献を粘り強く続けていく方針である。金融政策運営に当たっては、きわめて緩和的な金融環境を維持していく考えである。』(前回定例)

ということでですな、前回の定例会合以降の変遷としては、まず前回の臨時会合で「強力な金融緩和の推進、金融市場の安定確保、成長基盤強化の支援を図ってきた」(キリッ)というのを入れたのですが、今回は更にサービスフレーズが入りまして、それが「先行きの経済・物価動向を注意深く点検したうえで、必要と判断される場合には、適時・適切に政策対応を行っていく方針である」というのですわな。

まあよく見たら別に当たり前の話をしているだけ(必要と判断されたときに適時適切に対応するのは当たり前ですよね^^)なのですが、まあやっとサービスフレーズ入れやがったかとゆー感じでありますな。

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2010/08/31

○決定会合レビュー

#しまった、時間があんまり無い・・・

これが結果
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k100830.pdf

実際に行うオペに関して
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/un1008d.pdf

とりあえず駆け足であたくしめが勝手にポイントと思った事を箇条書きモードで。

・「量」ではなく「金利」とな

『1.日本銀行は、本日、臨時の政策委員会・金融政策決定会合を開催し、固定金利方式の共通担保資金供給オペレーションについて、期間6か月物を新たに導入したうえで、同オペを通じた資金供給を大幅に拡大することとした。これにより、市場金利の低下を促し、金融緩和を一段と強化していくこととした。』(声明文より)

>これにより、市場金利の低下を促し
>これにより、市場金利の低下を促し
>これにより、市場金利の低下を促し

ということで、従来のロジックの踏襲なのですが、今回の措置に関しては「金利の低下を促す」というのを目的および波及経路として考えているという事です。まあ足元勝手に市場が全部以上織り込んでしまったので、既に市場金利は下がっていますが何か?という無粋なツッコミは兎も角として(^^)、期間6か月を打ち込むことにしたのは、あくまでも「より長めの資金を供給することによって長めのターム物金利の低下を促す」という建付けにするということですな。

従いまして、仮に次に何かやらにゃあ行かんという場合には(白川さんが急にポッキリ折れれば別ですが^^)、方向性としては「より長いターム物金利の低下を促す」というのがロジックの踏襲としては普通の考え方ということになると思いますので、方向としては「今の3か月で回っているものを6か月にする」「今回っているものを1年にする」というようなオペ手直し方向、もうちょっとやる気を出せば時間軸的なコミットメントという話になりますが、時間軸のコミットメントは「展望レポートでの見通し公表と、先般更に明確化した中長期的な物価安定の理解で示しています」というのがまあ日銀の理屈だと思いますので、コミットメントをする時にはそこの所を整合性つける(まあちょっとした屁理屈で良いと思いますが^^)ちゅう所でしょうな、と思います。


・やっと下振れ意識ですかそうですか

『2.わが国の景気は緩やかに回復しつつあり、先行きも回復傾向を辿るとみられる。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、基調的にみると下落幅が縮小を続けており、先行きも下落幅が縮小していくと考えられる。この間、米国経済を中心に、先行きを巡る不確実性がこれまで以上に高まっており、為替相場や株価は不安定な動きを続けている。こうしたもとで、日本銀行としては、わが国の経済・物価見通しの下振れリスクに、より注意していくことが必要と判断した。』(声明文より)

何かまあやっと「下振れリスクにより注意」っていうのが出ましたが、その前段に「景気認識は変わってませんよ〜♪」とか「下振れするのは米国ですからね〜♪」とかわざわざ打ち込む所がチャーミングというか白川総裁意地っ張りというか何だかなあという感じではあります。詳しくは会見要旨を見つつ考えます。


・オペ供給額だけであれば期間3か月の方が早く10兆円積みあがりますが

『日本銀行では、本日の政策委員会・金融政策決定会合において示された方針を踏まえ、固定金利方式・共通担保資金供給オペレーションの運用について、これまでの期間3か月の資金供給の残高20 兆円を確保したうえで、追加的に10兆円程度の期間6か月の資金供給を開始することとしました。』(実施の具体的説明文より)

ということで、従来のは3か月のままで6か月を打ち込みますよと。

『2.期間6か月の資金供給

・オファー頻度:月1〜2回
・資金供給額(1回あたり):8千億円程度』(実施の具体的説明文より)

つまりですな、3か月のオペなら10兆円になるのに3か月ですけど、6か月のオペを6か月掛けて10兆円にするのですから、まあオペ実行額という意味で言えば実は期間が短いほうが残高が先に積みあがるという実にシュールな今回の決定。何だかねえという感じですが、まあそもそも肝心の短期ゾーンの金利が(超足元のGCだけ高いですがそれは兎も角)下がりきっているので、金利的にはどっちもどっちだったりしますけどね。まあ先に来ればそらまあ6か月の方が3か月よりも効いて来るでしょうけど。


・須田さんが反対とな

『(注1) 須田委員は、本文中、固定金利オペに関し、期間6か月物を新たに導入したうえで、同オペを通じた資金供給を大幅に拡大することについて、反対した。』(声明文脚注より)

・・・・さて、この理由については今度出る(来月は間に合わなくて再来月でしょうなあ)議事要旨で反対理由をみたいものです。

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2010/08/27

○これは空気を読んでいるというか読んでいないというか

月末が近くなると中々忙しいのでまだ中身はあんまり読んでいない。

http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/wps/wp10j14.htm(要旨)
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/wps/data/wp10j14.pdf(本文)
マネーと成長期待:物価の変動メカニズムを巡って

『マネーと物価の中長期的な変動について、OECD諸国を対象に国際比較を行うと、両者の間には明確な正の相関が確認される。日本は、マネーの伸び率と物価上昇率の双方が国際的にみて低いところに位置しており、これを貨幣数量説に基づいて解釈すれば、マネーの伸び鈍化が日本の物価上昇を抑制してきたという見方(Money view)につながる。』

とあるので「おや?」と思ったらその次が本旨ですな(^^)。

『一方、主要先進国別に、マネーと物価の変動について時系列上の関係をみると、1990年代半ば以降、日本を含む先進各国において両者の相関は低下している。さらに、この時期において、日本では潜在成長率と中長期的な予想インフレ率の間に強い正の相関が観察され、これらの事実はMoney viewとは整合的ではない。』

つまり相関関係があるのと因果関係があるのは別だから「マネーを増やしてデフレ脱却」という話は必ずしもワークしないということをチクチクと指摘しておられるということですね、わかります(^^)。

『日本の潜在成長率の大幅かつ長期にわたる低下は、国際的にも目立っており、それだけ日本では成長期待が明確に低下し、このことが物価上昇を抑制してきた可能性も考えられる。すなわち、(1)成長期待が低下すると、民間部門にとって将来にわたる財政負担や債務返済負担が高まる、(2)民間部門はこの将来負担に備え、貯蓄を増やし支出を抑制するようになる、(3)その結果、需要が長期にわたり低迷し、財市場の需給緩和から物価の低下圧力が強まったという見方(Expected Burden view)もできよう。』

成長期待の形成が重要、ということですかな。

『本稿では、マネーや成長期待の変化が物価変動に影響を与えるメカニズムの妥当性について考察するとともに、日米欧の物価動向の現状について整理する。』

で、実際は中身をたいして読んでいないのですが、最終章からちょっと引用しますと。

『日本の中長期的な物価変動について、Money view とEB view のいずれか一つの見方で全てを説明しようとするのは適当ではないと思われる。1990年代、特に90年代前半のディスインフレは、銀行貸出減少によるマネーの低迷期と重なり、これはMoney view と整合的であるとみることもできよう。しかし、中長期的な予想インフレ率と潜在成長率の間の正相関という日本特有の事実は、Money view では説明できない。EB view に立った場合、日本がデフレから脱却するには、成長期待(潜在成長率)を高めていくことが必要である。成長期待が高まれば、民間部門の支出が増加し需要低迷も解消され、物価は上昇に転じていくと考えられる。』

ということで、まあ結論としては「マネービューでも期待形成のビューでも、そのどちらかだけで説明するというのは無理で、話はそう簡単なものではない」という極めて穏当かつ当然な話になっているような気がしますが、週末に真面目に読んでみますです、はい。

しかしなんちゅう時期にこういうペーパーが出てくるのよ♪

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2010/08/23

○今更7月会合議事要旨でも無いですが一応虫干しで

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g100715.pdf

展望レポート中間レビューに関する部分で「リスクは上下に中立」と言っていた人が「何人かの委員」にいたのは判ったが、他の委員のリスク認識はどうなっているのか書いてませんなあというのだけ引用しましたが、その続きから。

・7月時点での景気認識は強めなんですねやっぱり

中間レビューのリスク認識に関する部分ではまあ上記のような所を注目して読みましたが、景気認識に関する議論の部分を見ると、下振れリスクへの言及もあるものの、まあ強めのトーンですなという感じです。

米国経済に関して

『米国経済の先行きについて、委員は、全体として回復傾向が続くとの認識を共有した。ある委員は、今後とも、堅調な企業業績が、設備投資や賃金等に波及し、景気を下支えするという、基本的なメカニズムは機能していく可能性が高いと付け加えた。』

『もっとも、何人かの委員は、家計のバランスシート調整圧力が残存する中では、景気回復ペースは当面緩やかなものになるとの見方を示し、このうちの一人は、リスクは下振れ方向にあると指摘した。こうした議論を経て、委員は、足もと弱めの各種指標の今後の動きを含め、米国経済の先行きの展開には十分な注意を要するとの認識を示した。』

ということで下振れ意識ですが、その後の日本経済の所ではダム論らしき話が。

『こうした海外の金融経済情勢を踏まえて、わが国の経済情勢に関する議論が行われた。委員は、わが国の景気は、海外経済の改善を起点として、緩やかに回復しつつあるとの認識で一致した。何人かの委員は、輸出や生産の増加を背景に、企業部門に改善の動きが拡がっており、その影響が、家計部門にも緩やかながら波及してきていると指摘した。』

ダム論ですかそうですか(棒読み)。

『ある委員は、6月短観の結果を取り上げ、製造業に加え、運輸や情報サービスといった企業サービス関連の非製造業の業況感も大きく改善していると述べた。また、何人かの委員は、企業収益の回復や雇用不安の和らぎを反映して消費は持ち直し基調を続けており、各種の消費者マインド指標も総じて改善傾向にあると述べた。』

と割と威勢の良い話が続き・・・・

『この間、何人かの委員は、足もと、鉱工業生産の伸びが鈍化し、機械受注や失業率などにも弱めの動きがみられると指摘した。』

とケチをつける向きもあるものの・・・・

『この点に関し、複数の委員は、わが国の景気は、昨年春のボトムから最近まで、米欧を上回る急速な持ち直しをみせてきただけに、在庫復元効果の一巡や政策効果の減衰に伴い、回復ペースがある程度鈍化すること自体は避けられないとの認識を示した。』

という話も出るとな。で、先行きですけど。

『景気の先行きについて、委員は、緩やかに回復していくとの見方で一致した。何人かの委員は、本年度後半にかけて各種対策の効果は薄れていくものの、基本的には、企業活動の回復に伴い、雇用・所得環境は次第に改善し、国内民間需要の自律的回復力は高まっていく可能性が高いとの認識を示した。』

ということになっておりました。個別項目の部分は長くなるので割愛しますけれども、キモは企業収益の拡大から雇用所得環境がちゃんと改善してくれるでしょうという部分になるのですが、さてその辺ってどうなんでしょうかねえという所かと。


○銀行決算の概要がどうのこうのというペーパー

だいぶ前に出てたネタでどうもすいません。

http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/research07/ron1008a.htm
2009年度銀行決算の概要

本文はこちら
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/research07/data/ron1008a.pdf

本文14ページなのでサラサラ読めると思います。2009年度銀行決算の収益状況に関する概観が記述されてまして、まあ中々面白いです。ここで示された状態から恐らく現時点になる段階で更に貸出利鞘が縮小して、一方で債券関連の有価証券関連収益は拡大しているのでしょうなあとか思うのですが、引用するのはまとめの部分(本文14ページ)の『おわりにかえて〜決算から示唆される課題』という所を。

『先に触れたように、2009年度の当期純利益は、有価証券関係損益の改善や信用コストの減少を主因に、大手行、地域銀行ともに4 年振りの改善となり、2008年度の赤字から黒字に転化した。もっとも、わが国銀行部門が抱える収益構造上の課題は、引き続き残存している。すなわち、基礎的な収益力が弱いなか、信用コストと有価証券関係損益によって当期純利益が大きく左右される点には、目立った改善はみられていない。以下では、この特徴点について若干敷衍しつつ、決算から浮かび上がるわが国銀行の課題を考えることとしたい。』

『まず、第1に、前述の通り、銀行の基礎的な収益率を表すコア業務純益ROAが、2005年度以降、低下傾向を辿っている。2009年度決算時に発表された2010年度の収益見通しをみても、借入需要の低迷により貸出の伸びが低迷していることや、厳しい競争が続くなか、貸出利鞘の縮小が続いていることなどを背景に、慎重なものとなっている。』

『第2に、前述の通り、不良債権比率は、大手行では小幅の上昇、地域銀行では小幅の下落となったが、これには、貸出条件緩和債権に関する要件見直しも影響しているとみられる。こうしたなか、企業再生への取組みの帰趨や今後の経済情勢次第では、やや長い目でみて信用リスクが表面化する可能性がある。また、基礎的な収益力の低下が続くなか、信用コストが増加する場合、決算が赤字化する可能性がより大きなものとなっている。』

『第3に、有価証券保有残高の推移をみると、大手行、地域銀行ともに、株式保有額の削減テンポが緩やかである一方、2009 年度には、貸出の伸び悩みを反映して、国債・地方債の保有残高が急増している。』

『このように、基礎的な収益力が低下しているだけに、適切なリスク管理を通じて、信用リスクや市場リスク等から生じる損失を抑制し、収益性の改善を図ることが、極めて重要である。』

と、手抜きでひとコーナー丸々引用しちゃいましたが(だって中身引用するよりこのまとめの部分引用するほうが要点全部網羅しているんですよ〜)、基礎的収益の低下が問題という事で、貸出利鞘が低下しているのが09年度決算時点でも問題というのは中々マズーな話なんでしょうなあと思われます。貸出はその後も全然伸びないですし、TIBOR低下に見られるように利鞘は確実に縮小していると思われますけれどもどうなんでしょ。

国内外における足元の金利低下は債券部門の収益押し上げには繋がり、目先はウハウハなのでしょうけれども、この金利低下が長期化して貸出需要も伸びないということになった場合は、やはり長期的にはマズーな話でしょうなあと思う次第。

という話だけでは面白くないので微妙に悪態成分も入れますけど、第2の論点も第3の論点も御尤もでありまして、最後に述べられているように「適切なリスク管理を通じて信用リスクや市場リスク等から生じる損失を抑制」するのはまあそれもまた御尤もなのですが、そうは言いましてもじゃあ銀行はどこで収益上げればええねんっちゅう話になるわけでして、リスク管理がどうのこうのというよりは「どの部門でリスク取って儲けましょか」という話にならないと今後も厳しいんじゃネーノと思うわけで、何でもかんでもリスク管理(そらまあリスク管理するなとは言わないけど)となると縮小均衡になりそうな悪寒も。

あとそれからまあ何と申しましても、貸出利鞘が低下して基礎的収益の低下が問題というレポートが出るのは全くその通りですが、一方でどこぞの局長様が「TIBORは是正されるべき」と受け止められるような発言をするというのも何だか部分最適の世界に陥ってねえかと思うのでありました(−−;)。

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2010/08/17

○7月決定会合議事要旨からちょっとだけ(たぶん続編あり)

これまた金曜に出たものを今更で恐縮ですが(汗)。

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g100715.pdf

いやまあ景気に関する議論の部分とかも中々興味深いので明日に続くのですけれども、展望レポート中間評価のリスク認識に関する部分に関して今日はメモ的に引用。

『リスク要因について、多くの委員は、景気面では、上振れリスクと下振れリスクが、それぞれ4月時点に比べて幾分高まっていると指摘し、何人かの委員は、リスクは概ね上下にバランスしているとの認識を示した。』

あれ、「何人かの委員」なの?

『下振れリスクとして、多くの委員は、国際金融面での動きを指摘し、特に、欧州における財政・金融状況を巡る動きが、国際金融や世界経済に与える影響に注意する必要があると述べた。ある委員は、こうした動きに加え、耐久消費財を中心とする各種対策の効果の反動等を踏まえると、本年度後半にかけては、下振れリスクの方が意識されると指摘した。また、何人かの委員は、米欧におけるバランスシート調整の帰趨をリスク要因として指摘した。』

ふむふむ。

『この点に関連し、ある委員は、バランスシート調整の継続などから、米国経済の中長期的な成長期待が低下している可能性があり、その影響についても注視する必要があると付け加えた。このほか、ある委員は、必要以上に長期に亘って拡張的なマクロ政策が維持されると、構造変化への取り組みの遅れから、わが国経済の生産性が高まらず、結果として中長期的な成長期待が下振れる可能性があると指摘した。』

最後の構造改革の遅れの人の指摘も毎度おなじみだなあと思いつつ、下振れの話をしている中で「何人かの委員」以外がリスクのバランスを下にみているような気が思いっきりするのだが、何せこちらには「何人かの委員」以外のバランス認識に関しては明確な記述がないので行間から想像するしかないのれす。

何かあたしゃーこの会合で結構下振れリスク警戒の意見もあって割れてたんじゃないのかねえという気がする(白川総裁はおそらく堂々のリスクバランスを主張しているっぽいので総裁の見方がそれなりに結論に影響を与えたのではないかと妄想)のですが、まあ正直よー判らんので以下、上振れリスク部分の議論を引用しておきますね。

『他方、上振れリスクとしては、大方の委員が、新興国・資源国経済の更なる強まりを挙げた。何人かの委員は、新興国の場合、元々成長のモメンタムが強い上、先進国の景気回復の弱さが自らに波及することへの懸念などから、金融緩和政策の修正が遅れ気味となる可能性があることには注意が必要との認識を示した。複数の委員は、仮にそうなれば、新興国の景気が一段と過熱するリスクがあり、その後の経済・金融活動の急激な巻き戻しにも繋がる可能性があると述べた。』

『このほか、ある委員は、先進国から新興国への資本流入や今後の情報関連財需要の動向如何では、新興国経済の成長スピードが一段と速まる可能性があると述べた。このうち、後者の点については、ある委員が、過去の経験からいっても、情報関連財の需給バランスは比較的短期間で大きく変動し得る点には留意が必要との見方を示した。』

『こうした議論を経て、ある委員は、新興国、先進国に関する上下のリスク要因は、相互に独立したものではなく、複雑に絡み合っているため、わが国経済への影響を点検するに当たっては、この点をしっかりと念頭に置く必要があるとの認識を示した。』

とりあえず引用だけで勘弁。ということで恐らくその他の話は明日に続く(手抜きですいません)。

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2010/08/16

その前に金融経済月報から。

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp1008.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp1007.pdf(前回)

○変化は輸出・生産と金融環境のごく一部だけ(月報概要)

今回はろくすっぽ変化が無いので殆ど今回分の引用で終わってしまうのですよね。まあ引用大会ということで。

『わが国の景気は、海外経済の改善を起点として、緩やかに回復しつつある。

輸出や生産は増加を続けている。設備投資は持ち直しに転じつつある。雇用・所得環境は引き続き厳しい状況にあるものの、その程度は幾分和らいでいる。そうしたもとで、個人消費は持ち直し基調を続けている。住宅投資は下げ止まっている。この間、公共投資は減少している。』(今回)

という景気の現状に関する部分は短観がらみの業況感の表現が抜けただけでものの見事に同じですので前回分の引用は割愛。

『先行きについては、景気は緩やかに回復していくと考えられる。

すなわち、輸出や生産は、増加ペースが緩やかになっていくとみられるが、海外経済の改善が続くもとで、増加基調を続けるとみられる。国内民間需要は、持ち直しを続けるものの、設備・雇用の過剰感が残ることや、各種対策の効果が薄れていくことなどから、当面、そのペースは緩やかなものにとどまる可能性が高い。この間、公共投資は、減少を続けるとみられる。』(今回)

で、この部分ですが、輸出や生産の部分が前回とちょっとだけ違いまして。

『すなわち、輸出や生産は、増加ペースが次第に緩やかになっていくとみられるが、海外経済の改善が続くもとで、増加基調を続けるとみられる。』(前回)

・・・・えーっと、何が違うと申しますと「次第に」という文言が抜けているという所でござんして(^^)、つまり増加ペースがより緩やかになっていくででしょーって所でしょうか。単に足元でペースが緩やかになったことの反映でもありますので殆ど変わっていないっちゃあ変わっていないのですが。


で、物価とかの部分もあるのですが、ものの見事に前回と同じ文言が続くので引用するのも面倒になってまいりまして(こら)華麗にスルーして金融環境の部分をば。

『わが国の金融環境は、緩和方向の動きが続いている。

コールレートがきわめて低い水準で推移する中、企業の資金調達コストは、低下傾向が続いている。実体経済活動や物価との関係でみると、低金利の緩和効果はなお減殺されている面があるが、企業収益との対比では、その効果は強まりつつある。資金供給面では、企業からみた金融機関の貸出態度は改善している。』(今回)

『CP・社債市場では、良好な発行環境が続いている。資金需要面では、企業の運転資金需要、設備資金需要とも後退しているほか、一部に、これまで積み上げてきた手許資金取り崩しの動きもみられている。以上のような環境のもとで、企業の資金調達動向をみると、銀行貸出は減少している。社債の残高は前年を上回っている一方、CPの残高は減少している。こうした中、企業の資金繰りをみると、総じてみれば、改善の動きが続いている。この間、マネーストックは、前年比2%台後半の伸びとなっている。』(今回)

前回との違いですけれども、マネーストックの数値という事実に関する部分は別にしまして、現状認識で違っているのはCP・社債市場のところでして。

『CP・社債市場では、総じてみれば、良好な発行環境が続いている。』(前回)

「総じてみれば」が抜けているので良好な発行環境という認識という所ですが、そらまあ運用難で発行環境は良いわなというか、これで発行環境があまり良くないとか言ったらそれはあり得んわなという所で。

ということで引用しましたが、よーするに(前回)とあるところ以外は揃いも揃って前回と同じという大変に素敵な金融経済月報でございました。

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2010/08/11

○まあ予想通りですが殆ど変化無い中でヘッジクローズがひっそりと

毎度の声明文比較で恐縮ですが。

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k100810.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k100715.pdf(前回)

小見出しに書きましたように、まあ今回に関しては、予想通りだが何というサービス精神が無いというか雰囲気読まないというかという感じですわな。いやまあ日銀は元々「景気回復はスローで今年の夏ごろに一旦回復ペースが減速する」という見通しだったので足元の状況も普通に予想通りですよ、と言われればまあその通りですねとしか申し上げようが無いのですけれども、やはりまあ白川総裁様がもうちょっと景気の悪い話をしてくれりゃ良いのにとは思うのでありますけどねえ。

ということで比較なのですが、これがまた前回と同じなので比較もへったくれも無いのですけれども引用をば。

・現状認識は前回と同じ

『わが国の景気は、海外経済の改善を起点として、緩やかに回復しつつある。』(今回)

という所から始まるわけですが、前回と同じのオンパレードなので前回分の引用はしないのだ。

『すなわち、新興国経済の高成長や世界的な情報関連財需要の拡大などを背景に、輸出や生産は増加を続けている。設備投資は持ち直しに転じつつある。雇用・所得環境は引き続き厳しい状況にあるものの、その程度は幾分和らいでいる。そうしたもとで、個人消費は持ち直し基調を続けている。公共投資は減少している。この間、金融環境をみると、緩和方向の動きが続いている。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、経済全体の需給が緩和状態にあるもとで下落しているが、基調的にみると下落幅は縮小を続けている。』(今回)

前回との比較ですが、短観を受けた業況感に関する部分が今回抜けていますが、これは短観発表直後に出る声明文の仕様ですので、結論から言えば今回は前回と全く同じという素敵な展開。


・先行き見通しはもっと見事に前回と同じ

『先行きの中心的な見通しとしては、わが国経済は、回復傾向を辿るとみられる。物価面では、中長期的な予想物価上昇率が安定的に推移するとの想定のもと、マクロ的な需給バランスが徐々に改善することなどから、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、下落幅が縮小していくと考えられる。』(今回)

全部文言が同じなのでこれまた前回分を引用せずと(^^)。


・リスク要因に微妙なヘッジクローズが入っています(^^)

ここが中々チャーミング。

『リスク要因をみると、景気については、新興国・資源国の経済の更なる強まりなど上振れ要因がある。一方で、国際金融面での動きなど下振れリスクもある。』(今回)

というのは前回と同じですが、その先に微妙なヘッジクローズが。

『この点、一部欧州諸国における財政・金融状況を巡る動きなどが、国際金融資本市場の動きを通じて内外の経済に与える影響に注意する必要がある。』(今回)

『この点、一部欧州諸国における財政・金融状況を巡る動きが、国際金融や世界経済に与える影響に注意する必要がある。』(前回)

まずですな、ここの「など」というのがとてもチャーミングなヘッジクローズな訳でして(^^)、まあ資料作るときの困った時には「等」を入れてお茶を濁すのは読者の皆様におかれましても基本的な技として使っておられるものと存じますけれども(^^)、まあそういう事ですわな。

それからですね、「国際金融資本市場の動きを通じて内外の経済に与える影響」と言う文言ですが、これはまあ要するに「円高が国内の経済に与える影響」というのを露骨に言いたくないのだけれども、一応円高がどうのこうのといわれた場合にヘッジを打っているという解釈になるかなあと思います。あともう一つの可能性としては、円高に関する懸念が政策委員会の全員に共有されている訳ではなく、現値の状況を既に大きく懸念している人と、そうじゃなくてまだ様子見でええんちゃうのという人との温度差があるので、その辺を折衷して上記のような表現になったとも言えそうですな。

『物価面では、新興国・資源国の高成長を背景とした資源価格の上昇によって、わが国の物価が上振れる可能性がある一方、中長期的な予想物価上昇率の低下などにより、物価上昇率が下振れるリスクもある。』(今回)

こちらは前回と同じです。


・例の決意表明みたいな部分も変化なし

『日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することがきわめて重要な課題であると認識している。そのために、中央銀行としての貢献を粘り強く続けていく方針である。金融政策運営に当たっては、きわめて緩和的な金融環境を維持していく考えである。』(今回)

まあこれは変化ないわな。


ということで、まー下振れリスクの所で何となく為替に触れたような触れないようなという所がチャーミングですが、何も変化なしで来やがりましたなあというのが白川日銀らしくて中々な味わいでございまする。

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2010/07/28

○その他少々

・こんなペーパーが出てました

先週出てたのですが。

新興国を巡る資金フローと景気動向
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/rev10j11.htm
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/data/rev10j11.pdf(本文)

お題の通りで資金フローに着目したアプローチなんで「ほほー」と思いつつ読めるのではないかと。最後の結論部分だけ引用します。

『欧州の財政問題の影響で国際金融市場が不安定な間は、グローバル投資家は新興国市場への投資に対して、慎重姿勢を維持する可能性がある。また、仮に欧州問題の深刻化などによって市場が一層不安定化するようなことがあれば、新興国市場から大規模な資金流出が発生するリスクは排除できない。』

『もっとも、資金の地域別アロケーションの観点では、投資家の多くが、欧州に対する投資比率を引き下げる一方、高い経済成長と良好な財政状況を維持している新興国への投資比率を引き上げることを計画していることは先に見た通りである(前掲図表7)。また、欧州の問題によって、先進国の利上げのタイミングが後ずれし、世界的に流動性が潤沢な状況が続くとの見通しが市場で広がっている。このため、市場の混乱が収束していけば、新興国への資金流入の増勢が再び強まるとみられる。』

さいざますな。

『そうした地合いのもとで、新興国の中央銀行が、欧州問題に伴う国際金融市場の不安定化の影響やインフレ率の安定に目を奪われ過ぎると、緩和的な金融政策の継続が資産市場の過熱感を高め、その後の大幅な景気振幅という調整圧力を溜め込んでしまうリスクがある。』

ほほー。

『この点については、1980年後半の日本のケースが教訓となろう。日本銀行は、先行きの公定歩合の引き上げを展望し、1987年8月末から短期市場金利の高め誘導を行った。しかし、同年10月のブラック・マンデーにより国際金融市場が不安定化したことを背景に、短期金利の高め誘導をいったん中断したことで、短期金利は再び低下した。そして、市場の混乱を乗り越えると、市場参加者の期待は、日本銀行が低金利政策を維持するもとで強気化していき、日本でバブルが膨張していくこととなった。』

『今回の局面では、一部の新興国において、短期の資金流入を抑制することを企図した資本取引規制の強化が発表されている。もっとも、こうした規制の実効性や持続性に対しては様々な見方があり、大幅な景気振幅の調整圧力を溜めこんでしまうリスクを回避するには、資本取引規制によって補完しつつも、金融財政政策を適切に運営していくことが重要である。新興国の政策当局は、既に利上げ方向に舵を切り始めており、政策効果も含め今後の景気展開が注目される。』

と言いつつも、何か中国あたりは引締めモードから再転換しているような気もするのですが、いやまあどうでも良いですけど。

#小ネタのつもりが引用大会になってしまいましたorz

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2010/07/23

○6月会合議事要旨

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g100615.pdf

『V.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』の経済に関する部分から少々引用をば。

・米国経済

『米国経済について、多くの委員は、緩やかに回復していると指摘した。』

まあこれはいつもの事ですが、先行きに関してはこんな感じ。

『米国経済の先行きについて、委員は、全体として回復傾向が続くとの認識を共有した。ただし、多くの委員は、家計のバランスシート調整圧力が残存する中では、景気回復ペースは当面緩やかなものにとどまるとの見方を示した。また、何人かの委員は、このところの不安定な株価の動きが、個人消費に与える影響に注意する必要があると述べた。』

ということで、まあやや慎重っぽくなってきてますわな。


・ユーロエリア経済

先行きの部分だけ。

『多くの委員は、緊縮財政の影響などによって、ユーロエリア経済の先行きは、幾分下振れる可能性があると指摘した。これらの委員は、金融資本市場の緊張が続けば、金融と実体経済の間の負の相乗作用が働くことによって、更に成長率が下振れる可能性も排除出来ないと述べた。』

ほほうこちらも下振れ。


・中国経済

『中国経済について、委員は、内需を中心に高めの成長を続けており、先行きも高い成長を維持する可能性が高いとの認識で一致した。』

という話から始まるのですが、この中の話がかなり長いのは中国経済の影響の大きさを示しているんだろうなあと思うのであります。

『何人かの委員は、個人消費や固定資産投資が、高い伸びを続けていると述べた。多くの委員は、不動産価格抑制策の効果があらわれ始めてきており、今後、中国経済の過熱感は抑制されていく可能性が高いとの見方を示した。もっとも、ある委員は、引き締め政策が実施されているにもかかわらず、住宅向けの銀行貸出は、高い伸びが続いていることについて注意する必要があると述べた。』

過熱抑制でソフトランディングの見通しと、必ずしもそうではないとの見通しですな。

『一方、複数の委員は、金融引き締めが、今後、景気を過度に抑制する可能性にも注意する必要があると述べた。また、ある委員は、在庫の積み上がりにより鋼材など一部商品市況が下落しているが、中国経済の基調の変化を示唆しているとの見方もあり、注視する必要があると指摘した。』

鋼材価格の下落に関しては、資源国様であります豪州の中銀(RBA)が先般出していた議事要旨でも指摘されていましたな(引用は割愛しますが)。まあ豪州だと鋼材価格や鉄鉱石の価格がモロに自国経済に影響するでしょうから。

『何人かの委員は、消費者物価上昇率の加速傾向が続いているほか、労働争議の増加を背景に賃金の大幅な引き上げが各地で行われており、インフレ懸念が高まっているとの見方を示した。』

これもまあ懸念される話ですわな。

『こうした議論を経て、何人かの委員は、金融政策を含むマクロ経済政策の今後の展開とその影響について、引き続き注意が必要と指摘した。』


・で、この流れで何で上振れ拡大になるの???

そしてその後日本経済のリスク要因なんですけれども・・・・

『わが国経済のリスク要因について、多くの委員は、基本的に展望レポートで指摘した点と同様であるが、リスクは上下両方向に拡大しているとの認識を示した。』

下というのは判るのだが上に拡大というのが謎なんですけど・・・・

『これらの委員は、欧州経済の不確実性の高まりが、わが国経済に与える影響について、現時点では限定的であるとみられるが、国際金融資本市場や貿易取引など様々なルートを通じて世界経済を下振れさせるリスクには十分注視していく必要があると述べた。また、ある委員は、各種対策の効果の反動等も踏まえると、本年度後半にかけては、下振れリスクの方が意識されると指摘した。』

まあここまでは判るのですが。

『他方で、何人かの委員は、新興国・資源国の力強い成長は、引き続き上振れぎみであり、先行きも上振れの可能性があるとの認識を示した。』

『複数の委員は、欧州経済の不確実性の高まりを背景に、先進国において金融緩和が長期化し、新興国・資源国において引き締め政策が遅れることになれば、新興国・資源国景気が過熱する可能性があり、その後の経済・金融活動の急激な巻き戻しが発生するリスクがあることに、引き続き留意する必要があると述べた。』

先進国の緩和政策が長期化する時は先進国の需要が減るのですから、それによって新興国経済にもマイナスの圧力が掛かるのではないかという気がせんでも無いのですけれども・・・・

というのと、これって結局「最終的には新興国や資源国がバブルになってバブルが崩壊したらエライコッチャ」という話なので、上振れリスクと言っても普通の意味での上振れとちょっと話が違うんじゃないかという気がします。

『また、ある委員は、必要以上に長期に亘って拡張的なマクロ政策が維持されると、構造変化への取り組みが遅れ、わが国経済の中長期的な成長期待が一段と下振れるリスクがあると指摘した。』

・・・・うーむ、風が吹けば桶屋が儲かる位の話で、それよりも足元の経済状況を勘案したら拡張的なマクロ政策の維持は仕方ないんじゃないですかねえ。

という所で今日は引用大会でした。

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2010/07/20

○金融経済月報(いつものように概要だけという手抜き)

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp1007.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp1006.pdf(前回)

先行き見通しを大きく変えている訳ではないですが、文言はあちこちで変わっていますわな。

・現状判断部分

『わが国の景気は、海外経済の改善を起点として、緩やかに回復しつつある。』(今回)

という総括判断は声明文にもありましたように変わっていません。

『輸出や生産は増加を続けている。企業収益や企業の業況感は引き続き改善しており、設備投資は持ち直しに転じつつある。雇用・所得環境は引き続き厳しい状況にあるものの、その程度は幾分和らいでいる。そうしたもとで、個人消費は持ち直し基調を続けている。住宅投資は下げ止まっている。この間、公共投資は減少している。』(今回)

これまた声明文の所と同じなのですが、今回は短観に関る部分が入っているのと、個人消費に関しては各種対策の効果げ抜けて、一方で持ち直しという判断に関して「基調」というお馴染みのヘッジクローズが入っています。という話は声明文の方にもあった通りです。


・先行きに関してはちょこちょことこれまた変わっています

『先行きについては、景気は緩やかに回復していくと考えられる。』(今回)

というのは同じでして。

『すなわち、輸出や生産は、増加ペースが次第に緩やかになっていくとみられるが、海外経済の改善が続くもとで、増加基調を続けるとみられる。』(今回)

ここも同じ。

『国内民間需要は、持ち直しを続けるものの、設備・雇用の過剰感が残ることや、各種対策の効果が薄れていくことなどから、当面、そのペースは緩やかなものにとどまる可能性が高い。この間、公共投資は、減少を続けるとみられる。』(今回)

『国内民間需要は、持ち直しを続けるものの、設備・雇用の過剰感が強いことなどから、当面、緩やかな持ち直しにとどまる可能性が高い。この間、公共投資は、減少を続けるとみられる。』(前回)

国内民間需要に関してですが、「設備・雇用の過剰感」に関しては見通しを好転させている一方、「各種対策の効果が薄れていく」という点を指摘していて、結論が前回の「緩やかな持ち直し」から「持ち直しを続けるものの、当面、そのペースは緩やかなものにとどまる」となっているので、これがまたワケワカランチンでして「緩やかな」というのと「当面そのペースは緩やかなものにとどまる」のどっちが強いのよという話ですわな。

たぶん「当面は緩やか」というのはその裏に「当面は緩やかだけど、その後はペースが拡大する」ってのがあると思いますので別に下向きの話にはなっていないと思いますが。ちなみに、先行き見通しに関して本文の方を見ますと、個人消費に関しては本文7ページの方ではこんな感じになっています。

『先行きの個人消費は、持ち直し基調を続けるとみられる。もっとも、雇用・所得環境の厳しさが残る中、各種対策の効果が薄れていくことなどから、当面、そのペースは緩やかなものにとどまる可能性が高い。』(今回)

『先行きの個人消費は、各種対策の効果が下支えに働くものの、雇用・所得環境の厳しさが残る中、当面、緩やかな持ち直しにとどまる可能性が高い。』(前回)

でもって雇用に関する先行き見通しも実は本文(本文9ページ)をみても変わってないのよね。

『先行きの雇用者所得については、次第に下げ止まりが明確になっていくとみられるものの、雇用の過剰感が残ることなどから、当面、はっきりした増加には至らない可能性が高い。』(今回)

『先行きの雇用者所得については、次第に下げ止まりが明確になっていくとみられるものの、雇用の過剰感がなお強いことなどから、当面、はっきりした増加には至らない可能性が高い。』(前回)

過剰感云々に関しては内容を改善させているのですが、肝心の先行き見通しには変化がないとはこれいかに。


・金融環境に関して

物価の部分はスルーします(声明文と同じです)。

『わが国の金融環境は、緩和方向の動きが続いている。』(今回)
『わが国の金融環境は、厳しさを残しつつも、緩和方向の動きが続いている。』(前回)

というのは声明文通り。で、緩和効果に関しては・・・・

『実体経済活動や物価との関係でみると、低金利の緩和効果はなお減殺されている面があるが、企業収益との対比では、その効果は強まりつつある。』(今回)

『実体経済活動や企業収益との対比でみると、低金利の緩和効果はなお減殺されている面があるものの、その度合いは、企業収益の改善などを映じて低下している。』(前回)

企業収益が改善と言う事になっているので、低金利の緩和効果を減殺するのが企業収益じゃなくてしらっと物価になっているのがチャーミングですが、緩和効果が強まるという認識に。


『資金供給面では、企業からみた金融機関の貸出態度は改善している。』(今回)
『資金供給面では、企業からみた金融機関の貸出態度は、なお厳しいとする先が多いものの、改善している。』(前回)

貸出態度が改善とな。で、同様に中小企業に関する資金繰りも改善。

『こうした中、企業の資金繰りをみると、総じてみれば、改善の動きが続いている。』(今回)
『こうした中、企業の資金繰りをみると、中小企業ではなお厳しいとする先が多いものの、これらも含め全体として緩和方向の動きが続いている。』(前回)

しかし、肝心の銀行貸出が残念な現状認識に。

『企業の資金調達動向をみると、銀行貸出は減少している。』(今回)
『企業の資金調達動向をみると、銀行貸出は、前年における著増の反動もあって減少している。』(前回)

・・・・・えーっとですな、つまり特殊要因を除いたベースでも銀行貸出は減少しているということで実に残念なお話ですな、ってまあ今に始まった話でも無いですけれども、ベースラインで貸出は落ちているという事ですな、ナムナム。

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2010/07/16

まずは決定会合声明文比較から。

○足元を上方修正して先行きは同じ、項目別に幾つか改善

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k100715.pdf(今回声明文)
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k100615.pdf(前回声明文)

・基本的な部分は同じですが

『わが国の景気は、海外経済の改善を起点として、緩やかに回復しつつある。』(今回)

というのは前回と同じなのですが、次の輸出・生産ではこんな事が。

・輸出・生産

『すなわち、新興国経済の高成長や世界的な情報関連財需要の拡大などを背景に、輸出や生産は増加を続けている。』(今回)
『すなわち、新興国経済の高成長などを背景に、輸出や生産は増加を続けている。』(前回)

「世界的な情報関連財需要の拡大」というのが新しく入りましたな。

・設備投資

『企業収益や企業の業況感は引き続き改善しており、設備投資は持ち直しに転じつつある。』(今回)
『そうしたもとで、設備投資は持ち直しに転じつつある』(前回)

設備投資は前回と同じですな(業況感云々は短観直後の時だけ入るものなのでこれは変化を云々しなくてもまあ無問題です)。

・雇用・所得

『雇用・所得環境は引き続き厳しい状況にあるものの、その程度は幾分和らいでいる。』(今回)

これは前回と同じなので前回分の引用は割愛。


・個人消費と公共投資

『そうしたもとで、個人消費は持ち直し基調を続けている。公共投資は減少している。』(今回)
『個人消費は、各種対策の効果もあって、耐久消費財を中心に持ち直している。公共投資は減少している。』(前回)

この個人消費に関しての書き方は「持ち直している」が「持ち直し『基調』を続けている」ということで、基調というヘッジクローズが入った分は若干下げている感じですが、「各種対策の効果もあって」というのが外れている中で「基調は持ち直し継続」と言っているのは、基調判断を下げつつも「各種対策の効果が剥落しながらも持ち直しは続いています」と言っているのでまあ差引チャラなんですかねえ、よー判らん。


・金融環境

これは明確に引き上げ。

『この間、金融環境をみると、緩和方向の動きが続いている。』(今回)
『この間、金融環境をみると、厳しさを残しつつも、緩和方向の動きが続いている。』(前回)

いやね、昨日ご紹介したFOMC議事要旨(の最後の部分だけですけれども)では「金融環境の緩和度合いがやや薄れている」という指摘がある中で日銀様は金融環境の緩和度合いが強まっているという認識なのが実にこうチャーミングとしか言いようがないのですが、「海外経済の改善を起点とした回復」という認識の下で、米国の景気認識が下がって来ているという状況に対して日本が上がるというのも何だかねえと。いやまあ国内経済が自律的な回復基調にありますという認識なんでしょうとしか申し上げようが無いのですけれども、雇用所得環境が依然として厳しい状況にある中で自律回復するんですかいなという風に思うのですけどねえ。


○先行き見通しの文言に変化無し

変化がないので引用だけ。

『先行きの中心的な見通しとしては、わが国経済は、回復傾向を辿るとみられる。物価面では、中長期的な予想物価上昇率が安定的に推移するとの想定のもと、マクロ的な需給バランスが徐々に改善することなどから、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、下落幅が縮小していくと考えられる。』(今回)

ここは変わりません。


○展望レポート中間レビュー

『4月の「展望レポート」で示した見通しと比べると、成長率は、新興国の一段の高成長などを背景に2010年度は上振れるが、2011年度については概ね見通しに沿って推移すると予想される。物価については、国内企業物価・消費者物価(除く生鮮食品)とも、概ね見通しに沿って推移するものと予想される。』(今回)

んでまあ後ろにその大勢見通しの表があるのですが、2010年度のGDPを引き上げてゲタが上がっている分があるので11年度が下がってますがこれは全体で見た場合は引き上げは引き上げになってますなあという感じです。

で、それよりチャーミングなのはCPI見通しでして、2011年度の大勢見通しの下限数値が▲0.1%から0.0%に上がっているのがお洒落な所でありまする。全員の見通しでは一番下が▲0.1%なのは前回も今回も同じなので、マイナス予想の人が2名だったのが1名になったというお話ではございますな(^^)。

まあ予想通りの引き上げですが、上げたのは基本的に足元という見せ方にはなっておりますわな。


○リスク要因の所がこれまた微妙

『リスク要因をみると、景気については、新興国・資源国の経済の更なる強まりなど上振れ要因がある。一方で、国際金融面での動きなど下振れリスクもある。』(今回)

『リスク要因をみると、景気については、新興国・資源国の経済の強まりなど上振れ要因がある一方で、国際金融面での動きなど下振れリスクもある。』(前回)

何と上振れ要因が「新興国・資源国の経済の『更なる』強まり」となっているのがオソロシス。そんなに上振れるんですかいなという感じがひじょーにするのですが。

あと超越的に細かいのですが、前回はここの文章が一文になっていて、かつ「一方で」の言葉が入っている箇所の関係を勘案しますと、前回の場合には「上振れ要因がある一方で、下振れリスクがある」という風に文章の結論部分は下振れリスクなのですが、今回はここの文章が分かれたので、「上振れ要因があります。一方で下振れリスクがあります。」と上振れと下振れが並立状態になり、しかも「一方で」の位置が変わっているので、これを見るとリスクバランスが上に寄ってるのかとも思ってしまいそうになります。

まあ会見内容の報道を見るとそこまでの事はなさそうにも思える(ただしそれは会見要旨を見てから判断)のですが、ここの部分だけ見るとリスク認識を下げる気配は全くなしとしか思えません。それでいいのかねえと思いますけど。

『この点、一部欧州諸国における財政・金融状況を巡る動きが、国際金融や世界経済に与える影響に注意する必要がある。』(今回)
『この点、一部欧州諸国における財政状況を巡る動きが、国際金融や世界経済に与える影響に注意する必要がある。』(前回)

さすがに今回欧州の「金融状況」に関する部分がリスク認識に加わりましたわな。正直何で前回からこれが入らなかったのかは意味が判らん。

なお、物価に関する部分は同じです。

『物価面では、新興国・資源国の高成長を背景とした資源価格の上昇によって、わが国の物価が上振れる可能性がある一方、中長期的な予想物価上昇率の低下などにより、物価上昇率が下振れるリスクもある。』(今回)


○ということで間の悪さは日銀の伝統芸能ですなあという雑感

さっきも書きましたように、今回はちょうど前日に6月FOMC議事要旨が出て、FOMCの景気認識がやや下方シフトした所でしたが、そんなタイミングで日銀の景気認識が足元引き上げ、リスク認識も特に変わらず(とゆーかもしかしたら上かよという気までする位)というのが堂々と出てくるのが実にこう日銀様の伝統芸能を感じさせる素晴らしいもので、予想通りとは言え大変に心温まる物を感じるのであります。

足元上げるんだからせめてリスク認識をもうちょっと厳し目にしておけばバランス良いんじゃねえのと思うのですけれども、そういう微妙な匙加減をしないのが白川日銀の良い所と言えば良い所なのかもしれませんが、日銀を取り巻く外部環境が悪化する中でそう来るのかねというのは外野から見てると残念感が漂います。

いやね、金利正常化だの何だのを早期にやりたいという強い意志でもあるのでしたらどんどん突っ込んで行って頂いても宜しいのかとは存じますが(まあかつての量的緩和解除に向けた俊ちゃんスキームみたいなもんね)、物価見通しをみても別に早期どころか向こう2年近くは利上げもへったくれも無いという状況になっている中で、何もこのタイミングでそんなに強い見通しの印象出さんでもええんちゃうのと存じますけど、何でそうなるんじゃろうかのうと不思議ちゃんな所です。

と言う事で、またぞろ渡辺善美喜美(また間違えてしまいました、汗)先生や山本幸三先生あたりが「国際的にも景気先行きの懸念が高まっている中で、日銀は危機意識が完全に欠如している」と思いっきり批判するに1万バーナンキとしておきましょう(^^)。

#まあ政策的なインプリケーションは特になかろうという感じです

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2010/07/13

○結局メモ程度になりますが金融機関の流動性リスク管理に関して

今般(7月2日)出たペーパー
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/data/fss1007a.pdf
国際金融危機を踏まえた金融機関の流動性リスク管理のあり方


ベースとなっている昨年(昨年6月29日)出たペーパー
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/data/fss0906a.pdf
金融機関の流動性リスク管理に関する日本銀行の取り組み


金融機関の流動性リスク管理に関する問題ですけれども、これって流動性規制とかの問題も絡みますが、管理監督という点で言えば考査とかモニタリングの中で金融機関に対してああでもないこうでもないという話が出てくる訳でして、まあ金融機関における市場部門のポジショニングのやり方にも影響を与える話だと思うのですよね。

ということで今般のペーパーの本文7ページ以降が今回の問題提起部分です。

『今回の国際的な金融危機の経験を踏まえると、わが国に所在する金融機関は、流動性リスク・プロファイルの把握、ストレス局面での対応力の強化、グローバルな流動性リスク管理体制の整備等の面で、流動性リスク管理を一層充実させることが必要である。日本銀行としては、各金融機関がこうした課題に積極的に取り組むことが、流動性リスクに対する耐性を強化するために不可欠であると考えている。』

という所から始まるのですが、その課題として挙げられているのは以下の4点。

(1)流動性リスク・プロファイルの把握とコントロール
(2)ストレス局面での対応力の強化
(3)グローバルな流動性リスク管理体制の整備
(4)中央銀行の流動性サポートの適切な利用

ということで、まあ詳しくは読んで味噌(本文7ページから11ページの部分です)といういつもの結論になるのですが、微妙にツッコミとか雑感とかをクリップしておきますです。

まずですな、(1)の『流動性リスク・プロファイルの把握とコントロール』という所なんですけれども。

『今回の金融危機は、金融機関の流動性リスク・プロファイルは業態やビジネスモデル等によって異なるという点を浮き彫りにした。すなわち、外貨資金繰りの面では、為替スワップ市場での市場流動性低下の影響を強く受けた。また、証券会社等は、従来安定的と考えられていたレポ取引等の有担保調達において困難に直面した。例えば、担保資産の価格低下やカウンターパーティ・リスクへの懸念の高まりから、マージンの増加やラインの縮小を迫られる先がみられた。』

という話ですが、現場労働者的な感覚からすると海外市場は兎も角として日本のレポ市場って資金の出し手が大手銀行にかなり偏っているので必ずしも安定的という認識は持ってないと思うのですがどうなんでしょ。まあリーマンショック後暫くの期間のようにGCレポレートが貸出ファシリティ近辺まで上昇するというのは斜め上の事態だったとは思いますけど。

まあそれは兎も角。

『このように、金融機関が直面する流動性リスクの量やその顕在化の仕方は、国際業務や証券関連業務の取り組み度合いや、預金と市場調達の割合などの調達構造、さらには運用資産と調達方法のマッチングの程度などに大きく依存する。』

そらまあそうですわな。

『今次金融危機を通じて明らかになった課題のひとつは、金融機関が各々の流動性リスク・プロファイルを的確に把握し、それに見合った管理体制を構築しているかという点である。とくに、預金という安定的な資金調達源を持たない金融機関(証券会社等)の流動性リスク管理体制は、総じて改善の余地が大きいように窺われる。』

・・・・うーん、そうは言いましても証券会社というのは銀行とは基本的にビジネスの形態が違う訳でして、商業銀行は預貸の部分で期間ミスマッチを取ったり規模の経済を働かせたりクレジットリスクを取ったりしながら(というかその合わせ技で)収益を稼ぐのが基本形ですけれども、証券会社っていうのは(確かにまあ投資もしてますけど)基本はブローカー業務な訳でして、ブローカー業務なだけに市場がいきなりフリーズしてしまうと如何ともしがたい部分があるとは思うのですけど、どの程度までの事を念頭において「改善の余地が大きい」という話なのかはちと興味があります。

銀行並みの流動性バッファーを持てという話になったら、そもそもプローカレッジ業務というものが成り立たないというか、ブローカレッジ主体での業務モデルを持つなという話になってしまいますので、何ぼ何でもそこまでは考えてはいないと思いますけど、あまり流動性リスク管理についてガチガチやっちゃうと特に債券市場のブローカーのリスクテイク能力を下げる結果になりゃあせんかという気がせんでも無い訳ですな。


あと(4)の部分なんですけれどもね(本文10ページ以降)。

『今回浮き彫りとなった課題のひとつには、金融機関が中央銀行の流動性サポート措置にどの程度依存して良いかという点もある。』

という話なのですが。

『他方、流動性リスク管理との関係では、個々の金融機関が公的サポートに過度に依存することなく、流動性リスクを自律的に管理できる体制を整備する必要がある。国際機関や各国金融当局における議論でも、中央銀行の流動性支援策が金融機関の流動性リスク管理におけるモラルハザードを生じさせてはならないという点が十分意識されている。』

というのはそらまあ正論で、まあ本論に関しては前のほうにありますように、念頭においているのは所謂スタンディングファシリティの利用問題という話がメインなのですけれども、これを見てちょっと別の事を思ったのでその辺の雑感をば。

まあ話というのは通常のオペの部分なんですけど、本邦の場合は債券ディーラーの資金繰りが日銀のオペに大きく依存してますし、GCレポ市場だってさっき書いたように資金の出してが偏在している状況ですから、スタンディングファシリティどうのこうのという話の前に資金取引市場の構造という面で本質的に問題含みというのは今に始まった話でも無かったりするような気がするんですな。

でですな、短期金融市場でターム物取引が不活発にも程があるという状態になっているのもこれまた今に始まった事では無いのですが、ターム物取引がある程度活発になって来るという話になりますと中央銀行のサポート策に過度に依存しない資金調達構造という話になるんじゃねえのとも思うのですけれども、これまた日本の場合には「ターム物金利を低位安定させる」という金融調節を行うという話になっていますからターム物取引が活発になろう筈もありませんし、別にそういうことになる以前から低金利政策の時間軸が効いている状態が長かったのでターム物取引をするインセンティブが調達側に起き無くなっていたので、市場が見事に縮小しちゃいましたというのがございます。

欧米での短期市場取引に関してそんなに詳しくはないですけれども、ECB辺りはLTROとかでフルアロットメント攻撃をしていまして、これもまあやり過ぎになると日本みたいにオペを回さないと市場の資金が回り難くなるというような状態になり兼ねない所でして、まあオペで市場資金を回した方が中央銀行のモニタリングができた状態でもあるので逆に管理上は良いという気もせんでもないですけれども(^^)、兼ね合いが難しいんじゃないのかなあとも思ったので本論とポイントがずれていますが雑感絡みで。

で、前回のレポートに関してはスルーしましたが、今回のレポートは題名にもありますように、今次金融危機を受けた内容になっており、金融危機における問題って短期金融市場およびそれによって資金繰りをしている債券市場に影響をしましたので、前回レポートでは主に預金金融機関の話が多かったように見えましたが、今回は市場性資金の話が多いように感じました。

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2010/07/12

○そういえば書き忘れてましたが短観のCP時系列

CPの発行環境(発行企業ベース)
http://www.boj.or.jp/type/stat/boj_stat/tk/ref/tkref1006.pdf

今回CPの発行環境に関しては「楽である」が若干減ってその分が「さほど厳しくない」にシフトしています。一応の所は企業金融支援特別オペの新規オファーが無くなったので、その分だけ発行利回りが上昇したという事を反映したという事になると思いますが、そもそも短期国債よりも低い利回りでホイホイ発行ができる方がどうなのかという所ではありますので、別にまあこれで問題があるとも思えませんが。

ただまあCP市場ちゃんの話をついでに少々すると、暫く前からずーっとそうなのですけれども、9月の期末越えプレミアムもへったくれも無いという素敵な状況が続いていまして、おまけに金利の方も低く、さすがに短期国債より低いという逆転現象は無いですけれどもそんなに大きな差も無いです。それから、4月に企業オペの新規オファーが無くなってから若干付いて来た銘柄間格差の方も足元へ来てまたまた縮小しているという動きもありまして、足元で潰すべきキャッシュが多くて運用難ですなあというのは恐らく4月あたりよりも現状の方がその傾向は強まっていると思われます。

#発行もすくないですもんね

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2010/07/09

今頃気がついたというのも我ながらお間抜けな話のですが、先月末にかけて妙に盛り上がった米国の2番底懸念って、もしかして単に6月末に向けたリスク資産ポジション整理の為の言い訳だったのでしょうかねえ。ということで米国10年金利3%ですかそうですか。

ということでまずはさくらレポートから。

http://www.boj.or.jp/type/ronbun/chiiki_rep/chiiki1007.htm(概要)
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/chiiki_rep/data/chiiki1007.pdf(本文)


○今回は基調判断を上方修正

冒頭部分から。

『今回の地域別総括判断を前回(10年4月時点)と比較すると、8地域(北海道、東北、北陸、関東甲信越、近畿、中国、四国、九州・沖縄)では、改善の動きがよりしっかりしてきたと判断した。また、今回は4地域(関東甲信越、近畿、中国、九州・沖縄)が「緩やかに回復している」と判断した。』

『項目別にみると、多くの地域が、生産の増加が続く中、設備投資の下げ止まりや持ち直し、雇用・所得環境の厳しさの緩和の動きがみられていると報告した。なお、過半の地域が、個人消費の下げ止まりや持ち直しの動きを報告した。』

『この間、多くの地域が水準の厳しさ(北海道、北陸、近畿、四国)ないし地域や業種、企業間の格差の存在(関東甲信越、九州・沖縄)に言及している。』

まだ水準は低かったり爬行色はあるものの、回復は明確化してきましたというのが結論でして、まあ内容としては強いですよね。

前回はこの冒頭部分はこうなっていました。

『各地域の取りまとめ店によると、最近の景気情勢について、前回(10年1月時点)同様、ペースや広がりに差異があるものの、全ての地域が基調判断を「持ち直し」の動きがみられると報告した。』

『今回の地域別総括判断を前回と比較すると、2地域(四国、九州・沖縄)が基調に変化なしと判断したが、それ以外の7地域(北海道、東北、北陸、関東甲信越、東海、近畿、中国)では、改善の動きの広がりやペースの加速など、基調に改善方向の変化があると判断された。』

『もっとも、ほとんどの地域が水準の厳しさ(北海道、東北、北陸、近畿)ないし地域や業種、企業間の格差の存在(関東甲信越、東海、四国、九州・沖縄)に引き続き言及している。』(以上4月のさくらレポートより)

前回はその前と比べると(引用してたらキリがないですが、4月16日に本件に関する駄文を書いておりますのでご参照ありたし)持ち直しの「明確化」という感じで、基調判断の引き上げは行っていませんでしたが(その前は「持ち直しているんですけどねえ・・・」というような留保付きというイメージ)、今回は基調判断そのものが「回復」へと前進しています。

もちろん、この流れは従来から日銀が言っている「景気の緩やかな回復」というメインシナリオのラインに沿った流れだという事になるとは思うのですけれども、先般の短観と今回のさくらレポートの合わせ技で今月の展望レポート中間見直しは恐らく「見通し通りに緩やかな回復が継続している」ので「メインシナリオに対する確信度が上がった」という話になるのでしょうかねえと勝手に想像。

一応折角ですのでここ2年間の流れを書いておきましょう(^^)。

2010年7月:8地域で上方修正
2010年4月:7地域で上方修正
2010年1月:4地域で上方修正
2009年10月:9地域で上方修正
2009年7月:9地域で上方修正
2009年4月:7地域で下方修正
2009年1月:9地域で下方修正
2008年10月:9地域で下方修正
2008年7月:8地域で下方修正
2008年4月:8地域で下方修正
2008年1月:5地域で下方修正


○主要な需要項目に関して

・設備投資

『設備投資は、4地域(北海道、東海、近畿、九州・沖縄)が「持ち直し」または「持ち直しつつある」、「低水準ながら増加」と判断したほか、他の4地域(北陸、関東甲信越、中国、四国)も「下げ止まっている」と判断した。この間、東北は「減少」と判断したが、減少幅の縮小に言及している。』

地域差がありますが、前回ほど水準が低いという話がございませんな。

『内訳をみると、製造業では、引き続き維持・更新投資の再開や能力増強投資に踏み切る動きがみられるほか、新商品・研究開発投資の計画を上積みする動きがみられると報告された。また、非製造業では、引き続きインフラ関連産業の大型投資がみられるほか、複数の地域が、小売業における新規出店の動きを報告した。』

ほほう。


・個人消費

『個人消費は、政策効果の持続に加え、雇用・所得環境の厳しさが幾分緩和していることもあって、5地域(北海道、北陸、関東甲信越、東海、中国)が、全体として、「持ち直し」、「持ち直しの動き」または「下げ止まりつつある」と判断した。この間、4地域(東北、近畿、四国、九州・沖縄)は、全体としての地合いは弱い、との判断を続けている。』

前回は政策効果で何とか支えられてますねという話だったのですが、トーンは全体的な弱さを指摘していた前回よりも強い感じですな。

『品目別の動きをみると、家電および乗用車販売は、引き続き、全地域が政策効果による増加を報告した。百貨店等大型小売店については、全体としては厳しい状況が続いているが、6地域(北海道、東北、関東甲信越、東海、中国、九州・沖縄)が「売上高の前年比減少幅は縮小している」等と報告した。このほか、7地域(北海道、東北、北陸、関東甲信越、東海、四国、九州・沖縄)が、旅行関連需要の増加ないし下げ止まりの動きを報告した。』

まだ政策効果が続いている訳ですが、さてこれが切れたらどうしますかという話は前田名古屋支店長が会見で指摘してましたな。


・生産

『生産については、全地域が、「増加」または「持ち直し」との基調判断を示した。この間、4地域(東北、北陸、中国、四国)が、海外経済の改善等を背景に増勢が強まっていると報告した。一方、自動車関連業種の動きを主因に、北海道、東海が一時的な増勢鈍化を報告した。』

やはり海外様次第で、どうせ海外ってアジア様(中国様)な訳ですな。

『業種別の主な動きをみると、自動車・同部品では、一部の地域が一時的な増勢鈍化を報告したものの、一般機械、電子部品・デバイスについては、多くの地域が「増加」ないし「高操業」と報告した。また、鉄鋼、非鉄、化学、金属製品などでも、多くの地域が「増加」や「高操業」、「持ち直し」等と報告した。この間、紙・パルプ、繊維については、一部地域が減少ないし低操業が続いていると報告した。』

中々内容的にはよろしいようで。


・雇用・所得

『雇用・所得環境については、引き続き厳しい状況にあるが、多くの地域が、厳しさの緩和の動きがみられていると報告した。』

厳しさの緩和キタコレ。

『雇用情勢については、3地域(北陸、関東甲信越、東海)が労働需給の緩やかな持ち直しを報告したほか、中国も一部業種における新規求人増加の動きを報告した。また、雇用者所得についても、3地域(東北、関東甲信越、四国)が「下げ止まりに向けた動き」を報告した。』

でまあ下げ止まりに伴い昨日ちょっとだけネタにした生活者意識アンケートでも景況感の回復が窺われるという話で、何だか知らんけど短観、生活者意識アンケート、さくらレポートと妙に流れが美し過ぎる気がせんでもない(^^)。


・地域の視点

毎回お題が興味深いのですが、今回のお題は、『最近の家計支出の動向と関連企業の対応』でございまする。

で、これまた引用してるとエライ長い上に中身は中々味わいの深いものがありますが、キリがないので思いっきり端折って引用。

まず現状認識。

『各地域における最近の家計支出の動向をみると、各種対策の効果や雇用・所得環境の厳しさの緩和等から、地域によるばらつきを伴いつつも、持ち直しの動きがみられている。こうした動きは、耐久消費財が中心であるが、耐久消費財以外の財──例えば、高額品(宝飾品、呉服等)、値ごろ感のある商品(食料品、日用雑貨等)──や、サービス──例えば、宿泊、教育等──でもみられており、徐々に広がりをみせているようにうかがわれる。』

ほほう、雇用所得環境改善とな。で、こんな話だそうで。

『家計の支出スタンスに対する企業の見方をうかがうと、厳しい雇用・所得環境が続く中、基本的に抑制的な支出スタンスが維持されているとの声が引き続き聞かれる一方、基調変化の兆しを指摘する声が聞かれている。すなわち、@大部分の家計では、一部の財・サービスを除き、引き続き節約志向あるいは低価格志向を維持しているとの声が多く聞かれる。その一方で、最近では、A高齢者層や富裕層を中心に、高額品への支出スタンスが積極化しているとか、B20〜30 歳代のOL層あるいは30〜40 歳代のファミリー層の一部を中心に、「節約疲れ」あるいは「プチ贅沢」の動きが顕れ始めているといった声が聞かれている。』(機種依存文字は原文ママ)

プチ贅沢なんですかそうですか、ふ〜んそうなんですか。

ただまあ先行きに関しては・・・・・

『先行きについては、雇用・所得環境が緩やかに回復することが見込まれるなど、家計支出は、振れを伴いつつも、持ち直しの動きを続けていくとの見方が多い。』

とあるのですが、

『もっとも、先行きについて慎重な見方も?なくない。具体的には、9月に終了となるエコカー補助金の反動減といった今後の各種対策効果の弱まりを懸念する声が聞かれる。また、消費マインド改善の要因の一つに春先までの株価上昇が指摘される中、足もとの株価下落が消費マインドの悪化につながることを懸念する声が聞かれる。雇用・所得環境が大幅に改善する見込みがない中、足もと顕現し始めた「節約疲れ」や「プチ贅沢」といった動きが一過性のものに終わることを懸念する声も相応に聞かれている。こうした懸念もあって、先行きの家計支出の回復ペースについては、緩やかなものにとどまるとみている先が多い。』

ということで、まあ先行きに関しては慎重でして、この辺りのニュアンスがどのくらい展望レポートの中間レビューに反映されるのか、というのも注目される所になるんでしょうな。つまり足元の強さと先行きの不透明要因のセットという話になる訳ですが・・・・・・・

#と、殆ど引用で手抜きモードですいません

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2010/07/08

○日銀の生活意識アンケート

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/ishiki/ishiki1007.pdf

これは細かく見ると中々味わいがありますが、まあ景況感の所と物価の所でも。

アンケート16ページ以降が質問と回答状況をシンプルに並べたものですのでそちらから引用しますね。()内は前回(3月)調査数値。

Q1. 1年前と比べて、今の景気はどう変わりましたか。

1 良くなった 6.2 ( 2.0 )
2 変わらない 45.8 ( 33.8 )
3 悪くなった 47.4 ( 64.0 )

Q3. 現在の景気をどう感じますか。

1 良い 0.2 ( 0.1 )
2 どちらかと言えば、良い 2.1 ( 0.7 )
3 どちらとも言えない 18.4 ( 11.4 )
4 どちらかと言えば、悪い 49.5 ( 47.5 )
5 悪い 29.4 ( 40.0 )

まあ素敵な。悪いが減っているざますわよ。しかも味わいが深いのはその理由の部分でして・・・・

Q2.Q1のご回答について、そのようにお考えになるのは、主にどのようなことからですか。【2つまでの複数回答】

1 マスコミ報道を通じて 28.6 ( 32.8 )
2 景気関連指標、経済統計をみて 10.6 ( 12.3 )
3 勤め先や自分の店の経営状況から 39.6 ( 40.4 )
4 自分や家族の収入の状況から 51.3 ( 49.6 )
5 商店街、繁華街などの混み具合をみて 22.6 ( 25.7 )
6 その他 4.3 ( 2.8 )

ほほう収入の状況が改善してますかそうですかという所ですな。


で、物価に関して。

Q12.次に「物価」についておうかがいします。あなたご自身の感じでは、「物価」は1年前と比べてどう変わりましたか(「物価」とは、あなたが購入される物やサービスの価格全体のことです)。

1 かなり上がった 5.2 ( 3.4 )
2 少し上がった 30.6 ( 20.2 )
3 ほとんど変わらない 37.7 ( 36.0 )
4 少し下がった 22.9 ( 35.9 )
5 かなり下がった 2.6 ( 3.9 )

・・・・・物価上がってるが増えてるのは個人的印象では若干違和感があるのですけれども(最近またスーパーの安売りが増えてみたり、夏物バーゲンの割引も結構良い感じ(まあ夏物バーゲンは先週からですからこの統計とは関係ないけど)じゃねえのと思うのですけど)、上がったが増えてるんですかあという所で。

Q13. それでは、1年前に比べ現在の「物価」は何%程度変わったと思いますか。

平均値(注1):+1.6 ( ▲ 0.6 )
中央値(注2):0.0 ( 0.0 )

(注1)極端な値を排除するために上下各々0.5%のサンプルを除いて計算した平均値。
(注2)回答を順番に並べた際に中央に位置する値。

―― 全サンプルの単純平均値は +1.8 (前回調査<22/3月実施>:▲0.5)。

・・・・・何と下落から上昇になっております。そんなもんなのかなあ、春先の天候の影響で農作物(葉物野菜)が高かった時期があったという記憶があるからその辺が影響してるのかなあとかしばし悩むあたくしなのでありました。


よって1年後の物価もこの通り。

Q15. それでは、1年後の「物価」は現在と比べ何%程度変わると思いますか。

平均値:+2.9 ( +1.7 )
中央値:0.0 ( 0.0 )

―― 全サンプルの単純平均値は +3.0 (前回調査<22/3月実施>:+1.8)。

まあ物価が上昇で庶民のお財布を直撃でございますわよ奥様、困りますわねえとかいう感じなのですが、そうなんですか、うーむ・・・・

まあ5年後の方はほとんど変って無いのですけどね。

Q17. それでは、5年後の「物価」は現在と比べ毎年、平均何%程度変わると思いますか。

平均値:+3.9 ( +3.0 )
中央値:+2.0 ( +2.0 )

―― 全サンプルの単純平均値は +4.0 (前回調査<22/3月実施>:+3.2)。

何となく日銀歓喜の結果のような気がしますなあ。うーむ・・・・・

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2010/07/02

○日銀短観のどうでも良いネタでのヲチ

http://www.boj.or.jp/type/stat/boj_stat/tk/gaiyo/tka1006.pdf

大企業製造業のDIが+1ということで、マイナス一桁前半予想よりも強いですし、まあプラスですかそうですかという感じですな。まあ全体的によろしかったんじゃないですかこれって。いやまあV字回復が永遠に続くと思ってたらちょっと回復速度減速とか言うのかも知れませんけれども、水準が何せ大企業製造業でプラスなんですよプラス。

・業況判断DIの達成度合い

前回は「9月時点ではもうちょっと改善するつもりだったのにあんまり改善しませんでしたね」という感じだったのですが、今回はどうなったかと申しますと・・・・


        (3月時点)      (6月時点)
        現状→6月予測     現状→9月予測
製造業大企業  ▲14→▲8       +1→+3
製造業中堅企業 ▲19→▲20      ▲6→▲8
製造業中小企業 ▲30→▲32     ▲18→▲19

非製造業大企業  ▲14→▲10     ▲5→▲4
非製造業中堅企業 ▲21→▲21    ▲13→▲14
非製造業中小企業 ▲31→▲37    ▲26→▲29

今回もまた3月に引き続き前回の予測DIよりも全セクターで改善という素晴らしい結果が継続。まあ大体回復期に良くある仕様なのですけれども、先行き見通しが割と足元に近い所で固めに出てくるのはアンケート調査の仕様みたいなもんですし、大企業の先行き見通しが引き続き改善方向に向かっているのは良い感じではないかと思います。

ということで、先行き予測数値が中堅以下で横ばいまたは下向きに出ているのですけれども、これはまあ12月以降同じ状況になっておりまして、この辺りの数字は(前回は「次回コケなげれば堅調継続なんじゃないっすか」と書いたのですけど^^)堅調継続を示す内容となっていますわな。


・雇用判断DI

前回は「9月調査時点で改善が頭打ちになりやがったけれども、今回に関してはお先真っ暗みたいな話が出ている程悪くは無いですね、先行きも判断タイト化してるし」という結果でしたが。


        (3月時点)      (6月時点)
         現状→6月予測    現状→9月予測
製造業大企業  +17→+13     +10→+8
製造業中堅企業 +18→+16     +14→+11
製造業中小企業 +22→+21     +17→+13

非製造業大企業  +9→+6      +7→+3
非製造業中堅企業 +7→+8      +7→+4
非製造業中小企業 +8→+13     +10→+8

非製造業の改善がイマイチなのが微妙ですが、製造業は改善継続という所ですな。ここもまあ改善が継続してまして、この辺を見ておりますと「景気回復はそのまま継続してますな」という所にはなるのでしょうかな。とはいっても相変わらず「過剰」超なのは変わりませんが(−−)


・資金繰り判断DI

      (3月時点) (6月時点)
大企業    +9     +13
中堅企業   +1     +6
中小企業  ▲14     ▲11


・貸出態度判断DI

      (3月時点) (6月時点)
大企業    +2      +7
中堅企業   ▲1      +5
中小企業   ▲8      ▲6

前回の資金繰り判断に続き貸出態度判断DIでも中堅企業がプラスになりましたな。まあこちらは当然ながら改善してますわなという所で。

#で、証券業のDIというオモシロネタが無くなったのは残念無念


○短観関連ネタ

とまあそういう訳で(って全然まともな分析じゃないですが、本当のちゃんとした分析は本職の方に)まあ「緩やかな改善」のオンラインにあるという結果だと思うのですが・・・・

何かこの結果を捕まえて財務副大臣が発言してる報道が出ていまして、この発言が報道通りだったとすると(まあ解釈にもよるのだが)かと微妙に変なバイアスが掛かっているような気がせんでもないのが気になる。

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=a.b2oCXwbBdk
池田財務副大臣:短観の業況判断先行きは良くない−定例会見

『7月1日(ブルームバーグ):池田元久財務副大臣は1日午後の定例会見で、日銀短観で示された製造業業況判断の先行き見通しについて良い内容ではなかったとの認識を示した。』

・・・・まあV字回復を前提にして「良い内容」と思っているのならそらまあ「良い内容では無い」という事にはなりますけれども、そもそも景気の見方が「緩やかな回復」でありまして、その内容に沿った結果が出ているのに「良い内容では無い」というのはちょっとおかしいと思いますが。

ちなみに、公共放送様では「中小企業で回復に遅れ」って足元の株安や円高にモロに影響を受けた話をしていますが、そもそも論として中小企業までDIがプラスの時って景気循環的に思いっきりピークにも程がある状態なのでして、まあそこの数字が遅れているとか言うのも何かまあバイアス報道にも程がありますし、そもそもさっき引用したようにマイナス幅が中小製造業なんて急縮小してる訳でして、何でこういうバイアスが出てくるのか(ちなみに公共放送様は「円高ユーロ安が中小企業に打撃」というストーリーでニュースを作っているというのはニュースを見てると判るのですけれども・・・・)の裏読みでもした方が面白いかもしれません。ただし、この手の裏読みをあまりやり出すとわけ判らん陰謀論ばかり考えるようになって頭が変になりますので要注意(^^)。


一方、これまた空気嫁という感じなのが日銀クオリティ。

http://www.jiji.com/jc/c?g=eco_30&k=2010070100888
成長率・物価見通し、引き上げ検討=予想以上の景気回復−日銀

いや確かに短観的にはそうなのですけれども、足元で米国2番底懸念(はあたくしもさすがに行き過ぎだと思うが)とか円高進行とか株安進行とか、金融面で先行き懸念がてんこ盛りになっている今日この頃なのですから、別にあーた今この時点(今月の決定会合は14と15日で丁度まずい事に展望レポートの中間レビューがある)であんまり「引き上げ」がヘッドラインに出るような流れにするこたあねえとは思うんですけどねえ。

まあ「基調判断を変えないで数値だけは調整したんですよ」という感じで公表するとか、「先行き下振れリスクをちょっと引き上げましたよ」とか言うのなら判らんでも無いですが、素で引き上げて空気読まない攻撃をしそうなのが白川総裁クオリティなのでちょっとオソロシス。そんなに慌てて見通しを上げなくてもどうせ景気回復ペースは緩慢なんだし、金融面でリスクてんこ盛り状態なんですから余裕を持っておけばよいと思うのですけどねえ・・・・・

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2010/07/01

○昨日ちょっと引用した日銀レビューの続き

これは中々興味深いですな。

http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/data/rev10j10.pdf

最初の部分から既にオモシロス。

『中国では、都市部を中心に不動産価格が大幅に上昇する中で、政府は不動産市場の過熱抑制に向けた取組みを強化してきている。不動産取引の実需動向や民間部門のレバレッジをみると、中国の現在の不動産市場は、列島改造論から地価が高騰した日本の1970 年代前半の状況と似た側面がある。当時、日本では都市化に伴う住宅実需が旺盛であったこと、そして、家計・企業のレバレッジが低く、大規模なバランスシート調整圧力を溜めこんでいなかったことが、地価の上昇トレンドを支えたと考えられる。これらの点は、現在の中国にもあてはまっており、過熱抑制策の影響が一部で現れ始めてはいるが、1990 年代の日本のバブル崩壊のような大規模な調整には至らないという見方ができるかもしれない。』

『一方、金融政策運営や金融環境面に焦点をあてると、現在の中国は、1980年代後半の日本の状況と似ている側面もある。当時、日本では銀行貸出が増加し地価が高騰する中で、日本銀行は銀行貸出に対する窓口指導を強化していったが、緩和的な金融環境のもとで金融自由化や規制緩和が進んだ結果、企業の資本市場調達や銀行の迂回融資が増加し、マネーストックの増勢に歯止めがかからなかった。現在の中国も、「貸出とマネーストックが大幅に増加し、景気回復と不動産価格の上昇基調が続く中で、政策金利を据え置く傍ら、窓口指導を強化している」という点で、当時の日本と状況が似ている。もっとも、中国では窓口指導の強化を受けて、貸出の増勢が徐々に鈍化し、これが不動産取引にも抑制的に作用してきており、政策金利が据え置かれる中にあっても、信用総量やマネーストックのコントロールという意味での窓口指導の有効性は、維持されているようにも窺われる。』

つまり、金余り状況下での不動産価格上昇という面で言えば1980年代のバブルにも似ているし、需要サイドのバランスシートという意味で言えば列島改造ブームに似ているという話なのですが、やはりまあ金融屋と致しましては金融面の方を見たくなるわけで、資金が余っている中での窓口指導ってどうワークするのかというのは興味がある所です。

詳しくは上記URL先を読んでちょという話になるのですが、(さすがに列島改造ブームは体感していないので知らんが)1980年代後半のバブルおよびその後は丁度金融自由化をしている所でしたので、まあこういう事になっていた訳ですな。本文5ページから。

『日本の1980年代後半のバブルは様々な要因が複合的に作用して発生したものだが、銀行行動の積極化と長期にわたる金融緩和は、バブル生成と拡大に強い影響を及ぼした。銀行行動の積極化は、1980 年代後半の金融緩和期において突如として現れたものではなく、金融自由化や規制緩和を背景に既に1980年代前半から徐々に始まっていた。』

『自由化や規制緩和について具体的にみると、1980年の外為法の改正や1984年の円転換規制の撤廃等により内外資金取引が活発化していったほか、金融機関の業務や証券市場における各種自由化措置も1980年代に入って徐々に始まり、1985年には預金金利の自由化が段階的に開始された。これら一連の自由化や規制緩和は企業や銀行の行動に大きな影響を与えた。社債市場の規制緩和が進むもとで、これまで銀行借入に資金調達の大部分を依存してきた企業、とくに製造大企業は、社債調達、とくに転換社債、ワラント債によるエクイティファイナンスを進め銀行借入を返済していった。』

『一方、銀行の証券業務進出は段階的にしか認められなかったため、「大企業の銀行離れ」に強い危機感を抱いた銀行は、資本市場にアクセスできない中小企業向けの不動産担保貸出や個人向け貸出、不動産ディベロッパーやノンバンク、建設業を中心とする不動産関連貸出を積極化させるようになった。』

で、途中を割愛して。

『1987年春頃から景気回復が次第に明確になっていく中で、日本銀行は窓口指導において「節度ある融資態度の堅持」を求めるスタンスに転じ、漸次その度合いを強めていったが、公定歩合が据え置かれ、かつ金融自由化や規制緩和が進むもとで、そのマクロ的効果は限定的なものでしかなかった。すなわち、国内貸出の伸びが更に高まることはなかったものの、資本市場調達やインパクトローンの拡大によって、マネーストックは伸びを高めていった。』

インパクトローンとはこれまたナツカシス。

『既述の通り、社債の発行基準が順次緩和されてきたもとで、金融緩和が一因となって実現した株価の上昇は、転換社債やワラント債発行などエクイティファイナンスのコストを引き下げたことから、企業の資本市場調達が大幅に増加した。この点で、銀行貸出のみを規制対象とした窓口指導の効果は大きく削がれることとなった。』

えーっと、何か毎月月末近くになると貸出枠管理とかでああでもないこうでもないと集計をへこへことやっていたのと思いだす訳ですが(^^)。

『さらに、窓口指導は、邦銀の国内勘定の円貨貸付のみを対象とし、海外勘定による貸付は対象としていなかった。このため、1980年の外為法の改正に伴い居住者のインパクトローンの自由化が既になされていたもとで、1986年のオフショア市場(Japan Offshore Market、以下JOM)の開設をきっかけに、銀行は窓口指導による制約を回避するためにインパクトローンを大幅に増やしていった。』

あっはっは。

『JOM は、内外分離型のオフショア市場であり、オフショアで調達した資金はオフショアで運用しなければならず、オフショア資金の国内への貸付には制限が加えられていた。この制限を回避するために、邦銀はオフショアで調達した資金を、香港などの海外支店に貸付け、海外支店はそれを元手に本邦企業へインパクトローンとして貸出するという操作が行われた。こうしたインパクトローンの増加には、JOM 開設といった規制緩和の影響のみならず、長期にわたる金融緩和が、資産価格の上昇を経由して企業の担保価値を増加させた結果、企業の銀行借入能力を高めたことも寄与したと考えられる。』

いやあもう超懐かしいわ。インパクトローンの折り返しといえば仕向送金の仕向先が自行の香港支店でしたわなあ(遠い目)。

・・・・・と年寄りが勝手に文章を読んで懐かしがっている状態ですが(汗)。


一方、中国の場合は現状では本文7ページにありますように・・・

『中国では、金融市場の整備と金融自由化は未だ道半ばであることから、中国人民銀行が信用量やマネーストックをコントロールするうえで、窓口指導の併用がこれまでのところ有効に機能してきたと考えられる。しかし、日本における窓口指導の経験を踏まえると、現在有効に機能している中国の窓口指導について、幾つかの留意点が浮かび上がってくる。すなわち、中国でも、日本において窓口指導の有効性を低下させていった要因――窓口指導を迂回する資金調達ルート――が、今後金融市場の整備や金融自由化によって徐々に拡大していくと考えられる点である。』

ということで、まあこの辺りの窓口指導がワークするうちはマクロ経済のコントロールと貸出ルートからの資産価格のコントロールが独立に出来るのかもしれませんけれども、いつまでもそういう状態でいけるのかというのはムツカシヤという話なのでしょうな。

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2010/06/30

○日銀のこのレポートは面白そう

とりあえず斜め読みしただけ、というかこれは紹介するのが難しいのでURL置いとくわ。

中国の窓口指導の有効性と金融環境
― 日本の金融自由化とバブル期の経験を踏まえて ―
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/rev10j10.htm(要旨)
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/data/rev10j10.pdf(本文)

窓口指導に関する考察が色々と書いてありまして中々面白いです。で、要旨の部分にもありますが、窓口指導の有効性に関する日本の経験からの考察部分(本文4ページ)を一応引用しておきますにゃ。

『(窓口指導の有効性:単独説と併用説)

日本銀行は、窓口指導を活用していた時期において、これを「独立の金融政策手段ではなく、公定歩合の変更その他一般的金融政策の補完手段」と位置付けていた。すなわち、窓口指導は、@公定歩合の変更など諸手段が市場に対して圧力として働くが、さらにこれを側面から補強するものである、A金融政策の補完的手段としての役割を果たすにすぎないのであるから、正統的な金融政策手段の強力な行使を伴うのでなければ、十分な効果は収められない、としてきた。』

つまり併用説ですな。

『もっとも、こうした日本銀行の窓口指導に対する見方――すなわち、窓口指導を他の政策手段と併せ用いるべきという「併用説」――の一方で、窓口指導はそれ自体単独で政策効果を持つという、「単独有効説」が学界を中心に指摘されることがあった。』

ふむふむ。

『いずれの見方に立つかは、金融政策の運営において極めて重要な分かれ目となり得る。併用説に立てば、金融引き締めを行う場合には各種金利の引き上げが必要となるが、単独有効説に立つ場合には、金利を据え置いたままでも、窓口指導の強化によって金融環境を引き締めることが可能になる。仮に単独有効説が正しい場合には、金利引き上げに伴う海外資本の国内流入を抑制しつつ、国内景気の過熱を窓口指導によって抑制することも可能となる。』

なるほど。

『いずれの説が正しいかについて、ここで深入りはしないが、おそらく、窓口指導単独での有効性は金融構造に依存し、時代の経過とともに単独での有効性は低下していったと考えるのが妥当であろう。』

確かにまあ銀行貸出ルート以外の与信チャネルが山のようにあったり、海外経由の抜け穴とかがあったら、単独での有効性っつーのはあまりないのでしょうなあとシロートの直感的には思う所ではございます。

まだ斜め読みしただけですが、結構オモロイので読んで味噌。

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2010/06/21

で、5月は2回決定会合が実施された訳だが、臨時会合の方はスワップ協定だのドル資金供給オペだのの件なのでスルーして定例会合の方から。

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g100521.pdf(5月定例会合)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g100510.pdf(5月臨時会合)

で、定例会合の方から引用するだよ。

○新興国経済の認識を中心に

『V.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』から新興国経済の部分に関して。

『新興国経済について、何人かの委員は、既に生産・所得・支出の好循環メカニズムが働き始めており、国際機関や市場の見方よりも強めの展開となっていると指摘した。』

好循環メカニズムとは要するに高度経済成長モードという事ですかそうですか。

『また、複数の委員は、一部の新興国において景気の過熱感が次第に強まってきていることを踏まえると、これらの国々において政策対応が後手に回っていないかどうか注意が必要との見方を示した。』

というリスクの説明もあるのですが、新興国に関しては明らかに上振れという認識なんだろうなあというのは「新興国経済が引っ張って世界経済を回復させる」というこの続きの部分とか。

『先進国経済について、大方の委員は、緩やかながらも改善の動きが続いていると指摘した。先進国経済の先行きについて、多くの委員は、回復に向けた動きが途切れる可能性は、これまでのところ小さいとの見方を述べた。その上で、これらの委員は、バランスシート調整の帰趨に加え、欧州諸国における財政状況を巡る動きが、金融市場や貿易面など様々なルートを通じて実体経済を下振れさせるリスクには、十分注意が必要との認識を示した。』

というのが金融問題に関する部分(あとでもうちょっと引用します)なのですけれども、この問題に関しては以下のような指摘をしています。

『この間、複数の委員は、今後の世界経済は、欧州経済における不確実性の高まりの影響を遮断して、新興国経済の高成長を起点とし、米国及びわが国経済の堅調な回復が継続するという好循環メカニズムを実現する一種の「デカップリング」が可能かどうかが鍵になると述べた。』

まあ要するに「欧州だけが死んでくれると何とかなるんですけど」という話だと思うのですけれども、その先の方で地域別の認識で中国経済に関する指摘をしているのですが、そちらではこうなっています。

『中国経済について、委員は、内需を中心に高めの成長を続けており、先行きも高い成長を維持する可能性が高いとの認識で一致した。』

ほほう。

『何人かの委員は、個人消費や固定資産投資が、依然高い伸びを続けており、内需の腰は強いとの見方を示した。ただし、複数の委員は、中国の輸出に占める欧州向けの割合は相応に大きく、欧州経済が下振れた場合、中国経済への悪影響は避けられないと述べた。』

とまあそんなことも書いてあるのですが、トータルで見た場合にこういう話になっているのが何と申しますか。

『わが国経済のリスク要因について、多くの委員は、基本的に展望レポートで指摘した点と同様であるが、リスクは上下両方に幾分拡大しているとの認識を示した。』

下が拡大なのは明らか(ギリシャが大火災モードになったのは連休明けですから)なのですが、上方リスクも拡大とな。で、上方リスク部分を引用します(下方の話はまた後で)。

『他方で、多くの委員は、最近の新興国・資源国の力強い成長は予想を上回り続けてきているものであり、上振れリスクとして一層の注意が必要であるとの認識を示した。』

うーん、データ的にもそうですし、その影響で企業マインド強くて今度の短観も強そうですし、確かにその通りかなあとは思うのですけどね〜。

『この点について、何人かの委員は、新興国・資源国における政策対応が後手に回り、景気が過熱した場合には、これらの国で経済・金融活動の急激な巻き戻しが発生する可能性があり、わが国経済にとって、却って下振れリスクとなりうると付言した。』

ということですが、まずは過熱の方が先に来る話なので、新興国の部分を結構上目線で見ているというのは良く把握した。



○では金融と経済の相互作用に関しては

さっき引用した金融市場問題に関してですけれども。

『米国経済について、委員は、緩やかに回復しているとの認識を共有した。』

という米国経済の認識に関しては基本的にそんなに悪い認識じゃない(個人消費やら設備投資やらが堅調で、住宅が弱くて雇用が中々戻らない、というFRBの認識と同じです、当たり前ですが)のですけれども、最後の所ではこの指摘をしています。

『米国経済の先行きについて、委員は、全体として回復傾向が続くとの認識を共有した。ただし、多くの委員は、家計の可処分所得が伸び悩み、バランスシート調整圧力も残存する中では、景気回復ペースは当面緩やかなものにとどまるとの見方を示した。』

ということで、米国に関してはバランスシート調整圧力の話ですな。で、ここで話がいきなりワープするのですが、金融市場現場労働者的な感覚だとどうしても足元の欧州市場の調整およびどう見ても緩やかに金融危機モードという日本の90年代後半のようなテイストを感じてしまう欧州の香りに対してひじょーにナーバスになるのですけれども、恐らく米国経済見通しが比較的確りなのと、新興国経済が比較的強く、ついでに企業マインドが悪くないというのを見ると日銀ちゃん的には強く見たくなってしまうっちゅう事なのでしょうかねえ、とふと思うのでありました。

ま、本邦の金融市場(特に金利系)現場労務者のうち、年寄りに類するあたくしのような人達って不良債権問題が兎に角長期間引っ張られて碌な事が無かった(いやまあ個人的状況で言えばそのネタで商売した人もいますけど)という素敵な記憶がまだまだ残ってますからねえ。

#まてよ、最近の若い衆はよー知らんのかその辺

と、話がそれましたが本命の欧州ちゃんに関して。まず基本的な認識は・・・

『ユーロエリア経済について、委員は、国ごとのばらつきを伴いながらも、持ち直しているとの見方を共有した。多くの委員が、ギリシャなどでは厳しい状況が続いているものの、ドイツやフランスを中心に、域外輸出・生産の増加による持ち直しの動きが続いているとの認識を示した。』

なのですが、

『この点、何人かの委員は、ギリシャ等の財政問題に端を発する欧州金融市場の緊張は、当局の対応もあって状況の一段の悪化がひとまず回避されており、景気持ち直しの動きを途切れさせる可能性は今のところ小さいとの見方を示した。』

という事ですが、この会合を実施していた5月20、21日の金融市場がヒャッハー状態になって、国内債券市場では20年超長期とかが2日で0.1%位金利が下がった(カレントの引値ベースでは2日で9毛5糸強)のがチャーミングなのですがそれは敢えてスルー。

『また、複数の委員は、現在特に財政問題が懸念されている国々の域内に占める経済規模が大きくないことを示した上で、地域全体の実体経済に与える影響が限定的にとどまる可能性を指摘した。』

そらそうですし、まあこの時点ではメインテーマが財政の維持可能性問題という感じでございましたが、その後は問題が金融機関の不良資産がどうしただの、短期のファンディングがどうしただの(まあECBのドルオペとか見るとそこまで深刻じゃなさそうですが)という金融機関問題に発展していると思われますので、この辺りの認識ってどう変化している(あるいは変化していない)のかは6月会合議事要旨を見たいと思います。

『もっとも、これらの委員を含む多くの委員は、ユーロエリア経済が、もともとバランスシート調整圧力や東欧諸国の過剰債務問題を抱え、景気回復のモメンタムが先進国の中でも弱い地域だけに、今後ギリシャ等が財政再建と経済改革に取り組む過程において、金融資本市場の緊張が更に高まった場合、様々なルートを通じて実体経済が下振れるリスクには注意する必要があるとの認識を示した。』

という事ですが、この辺りの認識がどうなるかという話ですな。ただまあ欧州の
場合って金融機関の資産圧縮って話になった時には米国のような過激な動きにならないであろうと想像されるだけに、逆にダラダラと続き、しかもデータとしてあんまり目立たないんジャマイカという気がせんでもないです。


ちなみに、ギリシャ問題が国内の金融環境に何か影響ありますかという議論も別の所にあるのですが、まあそちらは「今の所特に問題ない」という結論です。

『こうした議論を経て、委員は、ギリシャの財政問題に端を発する欧州金融市場の緊張感の高まりが、わが国の金融環境に与える影響は、これまでのところ株式市場など限定的であり、金融環境の緩和方向への動きは途切れていないとの認識で一致した。ただし、何人かの委員は、今後、欧州金融市場が一段と不安定化し、円高・株安が更に進展するような状況になれば、実体面、金融面の様々なルートから、わが国の金融環境が逼迫化する可能性には留意が必要と指摘した。』

ということで、円高と株安に直接繋がらない限りにおいては問題ありませんなっつー話ですので、まー相変わらずではございますが、日銀のケツに火がつくのは円高と株安という構造には変化がないという事ですわな。



○財政問題に関して

まずは欧州経済に関しての部分から。

『複数の委員は、いくつかの国が同時に財政引締めを実施した場合のフィスカル・ドラッグは予想以上に大きなものとなる可能性があると指摘した。これに対して、何人かの委員は、財政の維持可能性に対する市場の信認が回復し、金融市場が落ち着きを取り戻す効果の方が、より大きいとの見方を示した。』

いやーこの件に関しては正直難しいなあと思います。マインド面というのは非常に大事ではありますけれども、財政引き締めは現実問題として実弾が欠乏する話でござんすから、それが一国だけではなくて欧州域内のあちこちで実施ということになりますと、域内で色々と回している欧州圏内としてはやっぱりそっちのエライコッチャの方が問題になるような希ガス。

あとですな、さっきも書きましたように、この時点では市場の関心がソブリン財政の維持可能性問題でしたが、問題が金融機関の不良債権という話になった場合は、財政問題での信認回復とは話が別ということにもなりますし・・・・とは思いますけれどもどうなんでしょ。

で、ギリシャ問題に関連する話で本邦の財政に関する話が別の所に。

『何人かの委員は、今回のギリシャの財政問題から得られる教訓について、わが国とギリシャの経済・金融を巡る状況や制度が異なることを指摘した上で、@ 市場は突然変化するものであることも念頭に置きながら、財政の維持可能性について市場から十分信頼を得られるような取り組みをしていくことが重要であること、A 中央銀行としては、物価安定のもとでの持続的な成長の実現に貢献するという金融政策運営の姿勢をしっかりと維持することが重要であること、を挙げた。』

まあ何ですな、1番目(機種依存文字は原文ママで勘弁)の話って金融市場の現場労務者的には当たり前にも程がある話ですし、同じ状態であっても市場のその時のマインドやらテーマやらで売り材料にも買い材料にもしてしまうのが、市場クオリティなのですけれども、この件に関しては市場現場労務者以外の人と話をすると中々通じてくれない(まあ仕方ないけどね)所でして、所謂「期待に働きかける政策」というのが絵で書いた場合には美しいのですけれども、実際に行うとなった場合に色々と難しい面があって、「正直言ってそりゃワークせん(効かない場合と効き過ぎてやり過ぎになる場合とがありますが)でしょ」というような提言が市場をご存じ無い方から堂々と出たりするのが残念な所ではございますなあと思いまする。まあ余談ですけど。

と、またまた話が脱線しましたが、まあ国内に関しては財政健全化路線が一応担保できるような政策が政府の方から出てくるのであれば、日銀が前向きに協力しましょっていう話はあってもおかしくは無いかなあとは思うのですけれどもねえ。

#まさか例の成長基盤強化だけで逃げきろうとか思ってませんかね(ニヤニヤ)


と言う事で、延々と引用しましたが、よーするに「マクロデータ重視だから仕方ないけど、景気の見通しを引き続き強くみているのね」というのが5月会合のインプリケーションだったという所でしょうか。しかし講演とか見ていると必ずしも全員が全員上下バランスとみている訳でもなさそうですから、バランスを上に見ている人と下に見ている人がいるのではないかとあたしゃ想像致しますがどうなんでしょうかね。

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2010/06/17

○金融経済月報から、微修正程度かな??

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp1006.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp1005.pdf(前回)

概要部分に関しては、声明文同様であまり変化はないです。

『わが国の景気は、海外経済の改善を起点として、緩やかに回復しつつある。』

『輸出や生産は増加を続けている。そうしたもとで、設備投資は持ち直しに転じつつある。雇用・所得環境は引き続き厳しい状況にあるものの、その程度は幾分和らいでいる。個人消費は、各種対策の効果もあって、耐久消費財を中心に持ち直している。住宅投資は下げ止まっている。この間、公共投資は減少している。』

この辺りは声明文と同様ですが、雇用所得環境がどうしたこうしたという所の文言が今回復活したという形になっています。本文での表現に関しては後でご紹介します。

『先行きについては、景気は緩やかに回復していくと考えられる。』

『すなわち、輸出や生産は、増加ペースが次第に緩やかになっていくとみられるが、海外経済の改善が続くもとで、増加基調を続けるとみられる。国内民間需要は、持ち直しを続けるものの、設備・雇用の過剰感が強いことなどから、当面、緩やかな持ち直しにとどまる可能性が高い。この間、公共投資は、減少を続けるとみられる。』

ここは見事に5月と同じです。

『物価の現状について、国内企業物価の3か月前比をみると、製品需給緩和の影響が続く一方、既往の国際商品市況高の影響から、緩やかに上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、経済全体の需給が緩和状態にあるもとで下落しているが、基調的にみると下落幅は縮小を続けている。』

ということですが、こちらもまた殆ど変化無し。変わっているのは国内企業物価の影響の所に「既往の」というのが入ったのと、消費者物価の所に「基調的にみると」というのが入っているのですが、これは現状追認系の話なので、特にこれで判断が上下したというものではないと思料されます。

『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、当面、緩やかな上昇傾向を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、マクロ的な需給バランスが徐々に改善することなどから、基調的にみれば下落幅が縮小していくと予想される。』

で、ここも同じというまるっきりカワランチ会長モード全開です。


さて、金融環境ですが、これまた変わっていないと言うのも何かなあという感じです。

『わが国の金融環境は、厳しさを残しつつも、緩和方向の動きが続いている。』

以下長いので引用はスルーしちゃいますが、その中で前回と変わったのは、低格付け社債の発行状況に関しての部分です、つまり・・・・

『CP・社債市場では、総じてみれば、良好な発行環境が続いている。』(今回)
『CP・社債市場では良好な発行環境が続いており、低格付社債の発行環境にも改善の動きがみられている。』(前回)

ということですので、これはまあ低格付け社債の発行環境も改善し、良好というほどでもないでしょうが、それなりの環境になった(全部が良好だったら今回の文言の中に「総じてみれば」というヘッジクローズが入らない)という事でしょう。



あと、雇用所得環境に関する月報本文の方を比較してみますと・・・・・

『雇用・所得環境は、引き続き厳しい状況にあるものの、その程度は幾分和らいでいる。』(今回)
『雇用・所得環境は、引き続き厳しい状況にあるものの、厳しさは幾分和らいでいる。』(前回)
『雇用・所得環境は引き続き厳しい状況にある。』(4月)

とまあこのような経過を辿っています。4月から5月の所では上方修正しているのは明白ですけれども、では前回と今回の比較ですが、前回は「厳しさは」という言い方になっているのが、今回はその「厳しさ」という文言ではなく「その程度は」という言いかたなって、「厳しい」という文言の登場回数が減っているという事を勘案致しますと、まあ気持ち上方修正(回復中という想定ラインに乗った動きとも言えますが)という所ではないでしょうか、とか読むのは深読みのし過ぎですかそうですか。

なお、今回の月報がヘッジクローズ満載という件について本石町日記さんがブログを更新(本石町日記様におかれましてはついったーじゃなくてブログの更新を是非勢い良くお願いしたいのですが^^)していましたので必読(^^)。

http://hongokucho.exblog.jp/13468194/
最近の日銀文学の傾向について=「つつある」とか…

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2010/06/16

お題「決定会合レビュー」

まあ市場ちゃんの反応は特に無かったんですけどね(^^)。

○景気認識の文言がまるで同じっす

まずは声明文。

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k100615.pdf(今回)

例によって前回と比較するのだ。
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k100521.pdf(前回)

・・・・と思ったのですが、今回の特徴は「前回と認識がまるで変わっていない」ということであります。で、その前回というのは、白川総裁の説明的に言えば「緩やかな回復というメインシナリオに沿った展開に乗っているだけですよ」という事にはなっていますが、5月24日の駄文でご紹介したように、内容そのものは結構あちこちで上方修正をしている、というモノでしたので、よーするに前回の上方修正状態をそのまま継続という内容なのですな。

と書くとそれで終了してしまいますので、一応中身を引用引用。


・現状認識ではこの前削除した雇用所得環境に関する文言が

『わが国の景気は、海外経済の改善を起点として、緩やかに回復しつつある。』

『すなわち、新興国経済の高成長などを背景に、輸出や生産は増加を続けている。そうしたもとで、設備投資は持ち直しに転じつつある。雇用・所得環境は引き続き厳しい状況にあるものの、その程度は幾分和らいでいる。個人消費は、各種対策の効果もあって、耐久消費財を中心に持ち直している。』

で、ここの部分ですが、前回は「雇用・所得環境」に関する文言がばっさりと抜けていて「これはどうした事ぞ」という話をしたと思うのですが、今回は声明文上にこのくだりが復活です。

でですな、この場合は金融経済月報の本文の方をみないといかんのですが、月報本文を比較しますと、5月の金融経済月報の本文8ページ(PDFファイルだと10ページ)にはこのような記述があります。

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp1005.pdf

『雇用・所得環境は、引き続き厳しい状況にあるものの、厳しさは幾分和らいでいる。』(5月金融経済月報本文より)

で、4月の金融経済月報(同じく本文8ページ)ですけど。

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp1004.pdf

『雇用・所得環境は引き続き厳しい状況にある。』(4月金融経済月報本文より)

ということですので、今回の声明文での雇用所得環境の現状認識は5月の状況とほぼ横ばいというようなイメージかと思います。詳しくは金融経済月報を見て確認したいと思いますです、はい。

で、以下の部分ですが一応引用しますね。

『公共投資は減少している。この間、金融環境をみると、厳しさを残しつつも、緩和方向の動きが続いている。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、経済全体の需給が緩和状態にあるもとで下落しているが、基調的にみると下落幅は縮小を続けている。』

この部分で前回と違うのは物価の認識に関して「基調的にみると」という文言が入っている所ですが、これは「高校授業料無償化の影響をスルーした場合に」という事ですのでまあ技術的な改変。

・・・・・で、いつもだと前回との比較を載せるのですが、今回は何せ文言の変更がまるで無いと言う素敵な状態になっています(とあたくしは思うのですけれども、違ってたらゴメンナサイ)ので比較は入れません。


・先行き認識も文言同じ

『先行きの中心的な見通しとしては、わが国経済は、回復傾向を辿るとみられる。』

『物価面では、中長期的な予想物価上昇率が安定的に推移するとの想定のもと、マクロ的な需給バランスが徐々に改善することなどから、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、下落幅が縮小していくと考えられる。』

まあこのあっさり味ぶりは先行きの回復に自信ありということなんでしょう。確かにここもと出てくる経済指標は総じて良い内容の物が揃っているので、そーゆー点から考えても先行き回復シナリオを引っ込めると言う訳にも行かないでしょうなあというのは判りますけどねえ・・・・


・リスク要因もこれまた同じ

『リスク要因をみると、景気については、新興国・資源国の経済の強まりなど上振れ要因がある一方で、国際金融面での動きなど下振れリスクもある。この点、一部欧州諸国における財政状況を巡る動きが、国際金融や世界経済に与える影響に注意する必要がある。』

相変わらず上振れも下振れも同じ。明日ネタにしますけど総裁会見では新興国の上振れについて言及してたみたいで、何か麿が偽りの夜明けまっしぐらでおじゃるという感じがするのは心配性ですかそうですか。

『物価面では、新興国・資源国の高成長を背景とした資源価格の上昇によって、わが国の物価が上振れる可能性がある一方、中長期的な予想物価上昇率の低下などにより、物価上昇率が下振れるリスクもある。』

というのも変わらないので今回は前回と比較するのは割愛。


・おまけに決意表明部分も同じとな

『日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することがきわめて重要な課題であると認識している。そのために、中央銀行としての貢献を粘り強く続けていく方針である。金融政策運営に当たっては、きわめて緩和的な金融環境を維持していく考えである。』

で、その後に今回導入措置の説明がありますが、まあそこはテクニカルな話なので特に関係なく、ここの部分もまたまた同じ文言という感じです。


○ということで(声明文ベースで)下振れリスクが増えないとな

てな訳で今回の決定会合声明文は物の見事に内容が同じという結果になっていまして、報道ベースを見てますと総裁記者会見における景気認識も特に下振れリスクを増やすような話は無いように感じましたが、まあこれは今日出てくる会見要旨を見てまた判断しようかとは思います。

まー3月短観以来すっかりと景気回復モードになってますなあという感じがしますけれども、審議委員の皆様の講演とかを見てますと結構下振れリスクを意識していますし、大体からして欧州のソブリン問題って金融機関不良債権問題になってきて、しかもこの金融機関不良債権問題って日本の状況にも似た部分があって、米国のようにぶん投げてさっさと解決という流れにはならずに、ダラダラと引っ張りそうな構造の香りがする訳ですが、そういうのは(・∀・)キニシナイ!というのが白川総裁クオリティーでおじゃるという所でしょうか。

何かね、昨年の4月に「偽りの夜明けに注意」とか米国に乗り込んで行って話をした人が、いざてめえの話になると下振れリスクに注意しましょうねって他の審議委員までが話をする中で、堂々の景気回復全開モードになっているのではないかと思われても仕方ないような感じになっているのが、何と申しますか「人の振りみて我が振り直せ」というようなテイストが漂って来る今日この頃でありますことよという所ですわな。いやまあ杞憂なら結構なんですけどね(^^)。


で成長戦略ですが・・・・・・

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k100615.pdf
の3ページ目以降と

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/mok1006b.pdf
「成長基盤強化を支援するための資金供給基本要領」の制定等について

にございます。声明文の方から大体引用します。

○理念は禅問答成分が高いですなあ

一応理屈は通ってはいますけどね。

『1.現在、日本経済が直面している最も重要な課題は、潜在成長率や生産性を引き上げていくことである。この点では、企業や金融機関などの民間経済主体の果たす役割が大きい。政策当局も、民間経済主体の革新的な経済活動を促す環境を整備するため、それぞれの立場で役割を果たすことが必要である。日本銀行としては、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長を実現する観点を踏まえつつ、こうした面でどのような貢献を果たし得るか検討してきた。その結果、本日、成長基盤強化に向けた民間金融機関の自主的な取り組みを金融面から支援するため、新たな資金供給の枠組みを時限措置として導入することとした(概要は別添の通り)。』

・・・・どう見ても禅問答です本当にありがとうございました。

『2.本資金供給は、民間金融機関による成長基盤強化に向けた融資・投資の取り組みに応じて、当該金融機関に対し、長期かつ低利の資金を適格な担保を裏付けとして供給するものである。本措置を利用する金融機関に対しては、生産性の向上や新たな需要の創出に資する事業などへの融資・投資を広げていく契機として、本資金供給を適切かつ効果的に活用することを期待している。』

後の概要に出ているのですが、これって貸金を担保に取ってくれるわけでは無くて、共通担保を担保に取るというのが何と申しますかという感じです。

『3.本資金供給の狙いは、金融機関が成長基盤強化に向けた取り組みを進めるうえでの「呼び水」となること、また、金融機関が自らの判断で行う多種多様な取り組みをできるだけ幅広く後押しすることにある。同時に、本資金供給の枠組みを決めるにあたっては、日本銀行自身が個別の企業や業種への資金配分に直接関与しないこと、ならびに資金供給の規模や期間の点で、金利政策や金融調節の円滑な遂行に支障を来たさないことに留意した。』

貸出金を担保に取らないで共通担保を取るという形式なので、そういう意味ではまあ貸金そのものは単なる「通常の資金供給オペの延長」でもありますので、個別企業や業種への直接関与じゃないですよ、という理屈になるのでしょう。でもまあ「成長分野」を列挙したり、「呼び水になること」と期待したりという話ですし、そもそも「成長基盤強化」と言っている時点でそれは何らかの配分が伴うものではないかという気がするのですけどねえ。

でですな、後半の部分にさらっと書いてあるのもまあポイントちゃあポイントでございまして、今回の資金供給が「ターム物金利を押し下げるような物にならないようにする」という事を意図してますよ、という話になりますので、つまりは供給額総額が後にありますように3兆円で、しかも1行辺りの貸出限度額が1500億円ぽっちになるという話になるのでしょうな。あんまりドバドバ出すとそれはそれでターム物金利押し下げ要因になっちゃいますからね。

『4.本資金供給については、本年8月末を目途に開始できるよう、準備を進める。日本銀行としては、本措置の実施を通じて、企業や金融機関などによる日本経済の成長に向けた取り組みが、一段と活発化することを期待している。また、成長基盤強化に資する金融市場の整備などに向けて、中央銀行として引き続き貢献していく方針である。』

だそうです。


○新施策は「ターム物金利に働きかける」気は無いというのは把握した

声明文4ページに『成長基盤強化を支援するための資金供給の概要』がございます。


・金融機関の申し込み受け付けベースじゃないのかよ!

いやまあ既にそういう話になっていたんでしょうけれども、あたくし的には当然ながらこれって金融機関からの申し込み受け付けベースで実行するもんだと思っていましたが、これは管理上面倒で死亡するからという面はあるのでしょうけれども、また微妙に使いにくくしてやがりますなあというイメージが。

『3.貸付期間、借り換え可能回数

・ 貸付期間は原則1年とし、3回まで借り換えを可能とする(最長4年)。

―― 新規貸付は、四半期に1回のペースで実施する予定。』

新規貸し付けは云々というところで「へ〜」と思った次第でありまして、しかも、

『5.貸付限度額

(1)貸付総額

・ 貸付総額の残高上限は3兆円

―― 1回当りの貸付総額は1兆円を限度とする。

(2)対象金融機関毎の貸付限度額

・ 対象金融機関毎の貸付残高の上限は 1,500 億円
・ 各対象金融機関は、1.の取り組み方針のもとで行った各四半期の融資・投資の実績額の範囲内で、借入れを行うことができる。』

ということですので、1回に1兆円で仮に20行が1500億円とか応札してくると何と按分比率が33.3%になってしまうというお洒落な結果になってしまうという話で、いやまあそんなに札が集まるとも思えないのですが、受け付けベースにしない所が微妙な物を感じます。

#単に申し込みベースだと事務が回らないという事だとは思うのですが


・で、1行あたり1500億円っていう件について

いやね、正直言って全体額はある程度決めるのかなあとは思ったのですが、そもそもこーゆー融資が出ると言う話になると、それこそ大手銀行さんという話になると思いますし、まあこの対象貸出っていうのは理念的には新規貸出を対象にということでしょうけれども、まあ既存の借換に関しても元が成長基盤関連の融資案件だったら話としてアリでしょという事になれば、まあそれなりに数字を出そうと思えば出せそうな話でもあるので、実績を出したいっていうのであれば1行ごとの限度額を設けるのもどうなのという気がせんでもない。

#そもそも金融機関の規模に関係なく応札限度が同じというのも何だかなという気がしますけれども、普通の市場取引じゃないこういう案件の場合は・・・

いやまあもうちょっとメガさんが色々とネタ出しして、メガさんだけで1兆円ちょっと位積み上げるような豪気な話になるのかなとちょっと期待してたあたくしが期待のし過ぎでしたな。

#実際には内容を詰める段階で恐らくこの手の話はあったでしょうから、まあ関係者的にはそんなに期待外れのものでも無いのでしょうけれどもね

まー確かに実施したらいきなりメガあたりからわさわさと案件が出てきたという話になりますと、「銀行優遇は如何なものか」とか「そんなら一般の貸金も金利下げろ」とか「そんなに出来るのなら今まで銀行は何やってたんだ」とか逆に言われかねない気もするので、そーゆー意味ではこのくらいの数字であまり派手でもなく、でも「3兆円」という総額は見せて、という辺りがバランスの取れた所なんでしょ。


・実際は共通担保ですからねえ

で、この資金が入ってウハウハなのかという話ですが、要項にありますように、本件って「共通担保オペで期間がクソ長いもの」という形でもありますので、この資金が入った分っていうのは共通担保の担保繰りに影響を与えますなという話になります。

もちろん、いまどきの銀行さんは普通は担保繰りに余裕がありますので、これを入れる為の担保が足りないですよということは無いと思います(全部入れても1500億円ですからね)けれども、まあ限界的な話をしますと、このオペに入れる為の担保繰りでじゃあ1年借りれるのだから1年TBを買いますかという話になった場合、そのTBのレートって0.13%程度なのですから、貸出の方は兎も角として、ファンディングレートと担保繰りで買ったものの利回り差で言えば3bpという話になって、限界的な部分でどの位コスト削減になるのかっていう話になると怪しさ抜群。

しかもですな、メガさんあたりなら兎も角、地域金融機関さんなんかになりますと、現状でも資金が余っていて超過準備のブタ積みちゃんがあると思われますのでありまして、何も手間暇かけて0.10%で金を借りてこなくてもよかですタイと言う話になるんジャマイカと思料されます。

もちろん、そういう作りになっているのは「この政策は金利政策やら流動性供給の一般的な金融政策ではありません」と言う事を担保するための措置だと思われますので、そこに突っ込んでもまあしょーがないと言えばしょーがないのですが、ターム物金利に働きかける気が1ミリも無いという趣旨だという点は良く覚えておかないと勘違いの元になるかと存じます。

正直、あたくし的にはもうちょっとそのあたりをファジーにしてどうとでも取れるような感じにするのかなあとも思っていましたので、その点では期待はずれの面がありましてどうもすいませんという所ですが、存外この辺りに関しては(理屈としてワケワカメな成分はだいぶありますが)「これは金融政策とは違いますよ」という所を強調したなあと思います。


とりあえず思いついたのはこの辺りまで。また会見要旨見ながら考えたいと思います。

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2010/06/15

実は数日前に出ていたのですが(汗)。

http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/research07/ron1006a.htm(概要)
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/research07/data/ron1006a.pdf(本文)


○足元の上下を放置してもタームは上がりません

んで概要(HTM)の方にこんな事が書いてありますが。

『12月には、やや長めの金利のさらなる低下を促すことを通じて金融緩和の一段の強化を図るため、新しい資金供給手段として固定金利方式の共通担保資金供給オペを導入した。3月には同オペによる資金供給額を大幅に増額し、やや長めの金利の低下を促す措置を拡充した。この間、短期金融市場における市場機能の維持にも配慮する観点から、オペでは、長めのタームでの資金供給の割合を増やす一方で、日々の資金偏在については、市場で調整する余地を残す運営とした。』

長目のタームでの割合を「増やす」というよりは政策決定会合で勝手に「増やされた」だけのような気もしますが(^^)、まあ長目のタームの供給が増えた分の足元の微調節はあまりきっちりとファインチューンニング(というか押さえ付け)をしませんわなという所です。

つまり、今の状態でも本当にファインチューニングしましょって事になったら、吸収オペを交えながら資金供給をするとファインチューニングができるという事になるのですが、それをやってしまうと1から10まで全部日銀オペで運営という話になってしまうからそこまでの事はしませんよというのが現状の金融調節ですよという事なのでしょう。ちなみに足元では積み最終日(今日)に向けて足元のGCレートが若干上昇した(と言っても0.12%とか0.125%とかですが)のですが、タームのレポレートは全然反応せずということで、東京レポレート集計値を見ても足元のレートやら1週間物のレートは上昇してますけれども、1か月とか3か月のレートは微動だにしないというのは、まさしく上記のような調節に対する認識が市場にも浸透しているという事ではなかろうかと存じます。


○金融調節の概要のあたりはオモシロイですよ

本文(PDF)の方は中々良い読み物なのですが、短期金融市場に興味の無い人が読んでも眠気を誘うだけなのであまり万人にお勧めできるものでは無いですけれども、短期市場に興味がある方は一度熟読される事をお勧めします。中々過去の状況の良い整理です。

で、まあマニアには最初の日銀券要因と財政等要因(特に一般財政以外の部分)の辺りから実に面白いと思うのですが、まあ一般的に読むならその次の『2.金融市場調節運営』(本文6ページ、PDFファイルだと8ページ)からがお勧め。

『2009 年度中のわが国短期金融市場の動きを振り返ると、2008 年度末にかけては期末越えに対する警戒感が強い状況が続いていたが、2009 年度入り後は、日本銀行が潤沢な資金供給を続ける中、このような期末越えに対する警戒感は徐々に後退した。すなわち、四半期末越えのターム物レートやGCレポレートは、6月末や9月中間期末にかけて若干上昇したが、上昇幅は2008 年度に比べて限定的であった。』

年度末って警戒感が強いというよりは単に3月の国債償還に関わる資金余剰の山を越えるオペが不足してたのと、末初オペばっかり打って肝心のタームオペが少なく、23日(国債償還日)以降足元のGCが逼迫して、ウィーク物の現先オペの金利上昇からGC市場での資金不足(というか回らない状態)が顕在化したと言う所ではないかと思料されますがまあそれはともかく。

2009年度入り後は確かにまあ短期の金利はじりじりと低下という展開になりまして、GCはそこそこ振れる場面もありましたが、何せ短期市場の金余りモードが出てきているというのはやはり効きましたわな。企業金融特別オペの効果がジャンジャン出てきたのが(最初は2月の終わりくらいからCPレートの低下が始まりましたが)年度替わり後からで、5月の連休明け以降は暗黒時代(運用とかトレーディング的に言えばです)となってきましたなあという感じですな。

『12 月に金融緩和を一段と強化したあとについては、年末や年度末とも、ターム物レートやGCレポレートの上昇は、ほとんどみられなかった。また、CP・社債の発行環境をみると、低格付社債を除けば改善の動きが続き、良好なものとなった。ドルの資金調達環境も改善傾向が続いた。この間、コール市場では、資金余剰感が一段と強まった12 月以降、資金の出し手が外国金融機関等向けの資金放出を再開する動きが一部にはみられた。もっとも、全体としては、外国金融機関等に対するカウンターパーティリスクへの警戒感が完全には払拭されない中、コール・レポ・為替スワップ等の各市場の流動性は、長めのタームの取引を中心に低下した状況が続いた。』

なるほど。また最近はこの辺の状況に変化があるんでしょうかねえ。



で、その後はど〜ゆ〜オペを打ったかという話をしているのですが、これはまた中々興味深い記述があちこちに点在していて、何となく金融市場局的な気持ちのようなものを感じてしまったような気がせんでも無いのは深読みのし過ぎですかそうですか(^^)。


○09年度は補完当座預金が下限機能を維持しているという表現は・・・・

引用部分の続きから。

『こうした動向を受けて、2009 年度の金融市場調節は、2008 年度に続き、金融市場の安定確保に配慮し、市場の状況を踏まえた機動的な運営とした。この間、無担O/N コールレートは、概ね「0.1%前後」で推移した。これは、潤沢な資金供給を受けて日銀当座預金残高や準備預金残高が高水準となるもとでも、補完当座預金制度の適用利率(0.1%)が無担O/N コールレートの下限金利を画する機能がよく発揮されたことによる。こうしたことから、手形売出等の資金吸収は、2009 年度を通じて実施しなかった。』

と言う風に書いてあるのですが、さて最近はコールレートちゃんの方は安定的に0.09%近辺で推移してますし、今月に入ってからは0.09%割れという素敵な推移が続いたりしました(足もとちょっと上昇して9bp台回復)けれども、これはもしかして「預金ファシリティがコールの下限金利を画する機能を十分に発揮できていない」ということではないかとも言えそうな気がするのですが、はてさてどうされるのでございましょうかねえ(ニヤニヤ)。


○これは確かに仰る通り

で、その続き。

『また、補完貸付制度の利用は2008 年度に比べて少額となった。こうした点を含め、わが国短期金融市場は、総じて安定的に推移した。ただし、日本銀行の金融市場調節が市場取引を代替する状況が続いたとも言える。』

これは仰る通りというか、GCレポ市場の構造的な問題でもあるのですが、資金の出し手の中で一部の大手銀行の占める割合が高いので、結局の所市場での調節と言っても限界があって、日銀の金融市場調節が必要不可欠という状態には変わらないという所かと存じます。ちょっと前だったらECBなんてMROを週1で打ちこむ以外には金融調節らしきものをしないで市場が回っていた(今は見る影も無いですが)というのがまあ市場としては美しいのでしょうが、一度こういう状態になってしまうと中々難しいのかもしれませんね。


○出来上がりの0.08%台前半だと低下したという認識なんですね!

で、その後は具体的にどういう時にどういうオペを打ったのかという説明が詳しく書いてありまして、マニア必見の物ではございますが、その辺は華麗にスルーしまして、読んでて「おお!」と思った所をば。

本文12ページ。

『年末日である12 月30 日には、市場参加者の大半が既に資金調達に目処をつけていたことから、無担O/N コールレートは0.094%となった。』

ふむふむそうですな(そういえば「年末年始のプレミアムを織り込んでいない価格形成になっている12月〜1月タームのOIS利回りは低い」という面白レポート(OISの値付けは実際のオーバーナイトレートを使うのですから、末初プレミアムが事前になんぼついていても、当日には下がってしまうという考察がすっぽり抜けているという事は素人ですな)を出している人がいましたなあというのを思い出した)。

本文13ページ。

『年度末日である3月31 日には、市場参加者の大半が既に資金調達に目処をつけていたことから、無担O/N コールレートは大きく低下し0.082%となった。』

つまり、0.082%は「大きく低下」だが、0.094%はちょっと下がった程度の認識という事になるのですね。では6月の頭から延々と0.09%割れ水準で推移していますが、もしかして四捨五入して0.09%になっていればコールの水準としてはディレクティブの0.10%からはそれほど逸脱していないという認識でいるという事になるのでしょうか????

という事をたった一言の文言を見ただけでつらつらと考えてしまうあたくしの方が粘着質ですかそうですか(^^)。


なお、こちらのレポートは色々と読むと実に面白い(ただしマニア限定^^)です。特に短期金融市場に関してはそらまあ日銀の金融市場局が色々と把握できる話が極めて多いですから、内容も詳細なのは当然ちゃあ当然なのですが、マニアとしては実に楽しいレポートでございます。また気が向いたら(またはネタが無かったら)ご紹介するかもしれませんが、興味のあるかたは読むのが吉と思うんじゃがの〜。

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2010/05/27

○4月後半決定会合議事要旨ですが

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g100430.pdf

『V.「中長期的な物価安定の理解」の点検』の所がほほーという感じでありますのでその辺から少々。

『委員は、まず、「中長期的な物価安定の理解」を検討する上での論点について議論を行った。わが国の消費者物価指数のバイアスについて、多くの委員は、引き続き大きくないとの認識を示した。』

ということでこの辺はあまり変わりませんなあという所です。

『また、物価下落と景気悪化の悪循環に備えた「のりしろ」について、多くの委員が、これを勘案する必要があると述べた。』

『ある委員は、ゼロ%を僅かしか上回らないようなプラスでは十分とはいえないとの意見を述べた。別の一人の委員は、競争激化により賃金が下押しされやすい環境が続くことや、潜在成長率が低いこと、財政赤字が大幅に拡大していることなどを挙げ、のりしろを確保する必要性がより高まっているとの見解を示した。』

ということで、のりしろをもっとという話がでるのは「ほほー」という感じではございまする。

『何人かの委員は、今回の金融危機の反省からのりしろを厚めに持つべきとの見解がみられる点についても言及した。これらの委員は、金融危機の発生や趨勢的な成長力の低下といった大きな問題に対しては多少ののりしろを持ったとしてもその意味合いは限定的であり、加えて厚めののりしろが平常時にもたらすコストを踏まえると、厚めののりしろは必要ないのではないかと述べた。』

なんかブランシャール論文への駄目出しみたいなことを言ってるような気がしますが、FRBコーン副議長がブランシャール論文に対して駄目出しをするのは「高インフレ目標を設定するのは不要」という論点なのであって、もともとの数値が低いとみられている日本の場合に同じ話をするのも何だかなあという感じは致しますがどうでしょう。

まあこういうのが出ているという時点で、そんなに物価安定の理解の数字が上がらないんですなあというのは把握した。

『企業や家計の物価観について、何人かの委員は、人々の中長期的な予想物価上昇率は、概ね安定的に推移しているとの見方を示した。ある委員は、わが国は物価が低位で安定する状態が長く続いているため、人々が安定していると考える物価水準は諸外国と比べて低いと考えられると述べた。』

『別の一人の委員は、アンケート調査で「物価下落は好ましい」との回答が減少しており、人々の意識に変化が窺われると述べた。この委員は、今後とも人々の物価観の安定が保たれることが重要であると付け加えた。』

てな感じで、一部では「もうちょっと引き上げた方が良いのでは」っぽい意見も見られるのですが、大勢は現状維持という感じなんでしょうなあと思いましたです。


『こうした議論を踏まえ、委員は、「中長期的な物価安定の理解」の数値についての議論を行った。多くの委員は1 % 程度を中心値として上下0.5% ないし1 % の範囲内であるとの見解を示した。』

さよですか。

『一人の委員は、0.5% 〜 2 % で、中心は1 % より幾分上の値との見方を示した。一人の委員は、1 % よりゼロ% に近いプラスを中心に考えているとした上で、中心値である1 % を過度に強調するのは望ましくないのではないかと述べた。』

高い方はまあそうですなと思うのですが、低い方の人もいるんですなあ。

『以上を踏まえ、委員は、昨年12 月に明確化した表現、すなわち、「『中長期的な物価安定の理解』は、消費者物価指数の前年比で2 % 以下のプラスの領域にあり、委員の大勢は1 % 程度を中心と考えている。」を維持することで一致した。』

と結局は同じ結論なのですが、まあ少し目線が上がっている人がいるのはほほーという感じですが、所詮1名ですからにゃあ。

#で、展望レポートに関する部分は今日はスルー(大汗)

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2010/05/26

○こうなると金融経済月報が様式美の世界に(−−)

今月の金融経済月報
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp1005.pdf

先月はこちら
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp1004.pdf

例によって『概要』部分を何となく比較するのですが、まあ声明文で比較したことと大体重なるのであります。

・現状認識部分

『わが国の景気は、海外経済の改善を起点として、緩やかに回復しつつある。』

『輸出や生産は増加を続けている。そうしたもとで、設備投資は持ち直しに転じつつある。個人消費は、各種対策の効果もあって、耐久消費財を中心に持ち直している。住宅投資は下げ止まっている。この間、公共投資は減少している。』

ということで、こちらは声明文比較にもありましたように、基本的な認識が「回復」になり、設備投資が「持ち直し」になり、おまけに雇用、所得に関しては「厳しい雇用・所得環境が続いているものの」という部分が抜けるという中々の強さ。

で、その雇用なんですけれども、本文8ページ(PDFファイルだと10ページ)にはこのような記述があります。

『雇用・所得環境は、引き続き厳しい状況にあるものの、厳しさは幾分和らいでいる。』

前回はどう書いてあったかと言いますと。

『雇用・所得環境は引き続き厳しい状況にある。』(前回の月報)

ということで、「厳しい状況」というのは変わっていないのですが、そういう認識をしているのであれば声明文および概要の方から「厳しい雇用・所得環境」の文言をわざわざ外したのかというのがどうも微妙ではございますな。


・先行き見通し部分

『先行きについては、景気は緩やかに回復していくと考えられる。』(今回)
『先行きについては、景気は持ち直しを続けるが、当面そのペースは緩やかなものとなると考えられる。』(前回)

ということで「持ち直し」が「回復」に昇格したのは声明文と同じで、その後の部分はこうなっています。

『すなわち、輸出や生産は、増加ペースが次第に緩やかになっていくとみられるが、海外経済の改善が続くもとで、増加基調を続けるとみられる。国内民間需要は、持ち直しを続けるものの、設備・雇用の過剰感が強いことなどから、当面、緩やかな持ち直しにとどまる可能性が高い。この間、公共投資は、減少を続けるとみられる。』(今回)

『すなわち、輸出や生産は、増加ペースが次第に緩やかになっていくとみられるが、海外経済の改善が続くもとで、増加基調を続けるとみられる。設備投資は、収益が回復しているものの、設備過剰感が強いことなどから、当面はなお横ばい圏内にとどまる可能性が高い。個人消費も、各種対策の効果が下支えに働くものの、厳しい雇用・所得環境が続く中、当面、横ばい圏内で推移するとみられる。この間、公共投資は、減少を続けるとみられる。』(前回)

ということで、国内民間需要が「横ばい圏内にとどまる」から「緩やかな持ち直しにとどまる」と判断を引き上げつつも微妙な程度ということで、まあそういう意味では「テクニカルな判断引き上げであって、メインシナリオが上振れた訳ではない」というのはまあそうですねという所ではございます。

で、前回まであった個人消費の所がこれまたバッサリ抜けているのですが、本文の方を見ますと個人消費の先行き見通しは(本文6ページ)、

『先行きの個人消費は、各種対策の効果が下支えに働くものの、雇用・所得環境の厳しさが残る中、当面、緩やかな持ち直しにとどまるとみられる。』

とありますが、ここの文言って前回と全く同じでありまして、声明文ベースや概要ベースでは何か雇用所得環境の見方を強くしたように見えるのですが、本文を見ると必ずしもそうではないという中々芸が細かいんだか何だかよく判らん技を繰り出しています。

ということで、声明文は割と威勢よく見えるのですが、月報概要から本文とみていくとそこまで威勢が良いのかなという面もあるなあとは思ったのですけれども、何せ4月入ってからの白川総裁様の発言が素敵なまでに威勢が良いのでありまして、ど〜してもそちらの印象がまず最初に来て、それが頭にある中で声明文とかを読むのが市場参加者の仕様でありますので、まあ印象として「随分と強気ですなあ」というのを与えると思います。

で、そんな印象を与える中で欧州市場がうんこになって何か円は上がるわ株は下がるわ債券は買われるわという状況になってしまうという間の良さ(悪さなんですけど^^)に様式美の世界を感じてしまうのはあたくしだけではございますまい。

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2010/05/24

○テクニカルとは言ってるけど随分と強くなってますなあ

まずは決定会合声明文
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k100521.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k100407.pdf(前回)

今回は謎政策に最初に注目が集まりますが、良く良く見れば決定会合声明文の方があちこちで上方修正されているのがこれまたアレでございますです。

・景気の基調判断が「回復」に昇格

『わが国の景気は、海外経済の改善を起点として、緩やかに回復しつつある。』(今回)
『わが国の景気は、国内民間需要の自律的回復力はなお弱いものの、海外経済の改善や各種対策の効果などから、持ち直しを続けている。』(前回)

さあ回復ですよ回復♪ということですが、会見(詳しくは今日出る)によりますと「これは景気が緩やかな回復をするというシナリオのラインに沿った中でのテクニカルな表現変更」という事らしいのですが、会見のニュアンスとして情報ベンダーから出ていたヘッドラインを見ると、白川さんはマジで先行きの回復に自信があるっぽいような印象を受けるのでして、それは如何なものかという悪態は後ほど(^^)。


・現状判断の個別項目では設備投資と雇用・所得を引き上げ

雇用・所得の引き上げが結構ビックリしたでおじゃるよ。

『設備投資は持ち直しに転じつつある。』(今回)
『設備投資は下げ止まっている。』(前回)

まあそうですなという所ですが、今回ばっさり抜けたのが前回まであった雇用・所得に関する表現です。

『個人消費は、各種対策の効果もあって、耐久消費財を中心に持ち直している。』(今回)
『個人消費は、厳しい雇用・所得環境が続いているものの、各種対策の効果などから耐久消費財を中心に持ち直している。』(前回)

ということで、早くも「厳しい雇用・所得環境」というのが抜けるって何か随分と強気だなあ(ECBはあんまり詳しく見てないからアレですが、FRBにしろBOEにしろ雇用の部分に関しては随分と厳しい見方をしているのですが、それと比較して日本がそんなに好調なのでしょうか)と思ってしまう訳ですが。


・で、先行きもストレートに「回復」とな

前回までのああでもないこうでもないという表現からいきなり直球に。

『先行きの中心的な見通しとしては、わが国経済は、回復傾向を辿るとみられる。』(今回)

『先行きの中心的な見通しとしては、当面、わが国経済の持ち直しのペースは緩やかなものとなる可能性が高い。その後は、輸出を起点とする企業部門の好転が家計部門に波及してくるとみられるため、わが国の成長率も徐々に高まってくるとみられる。』(前回)


なお、物価に関しては同じ表現(言い回しが微妙に違うが)です。



・リスク要因も何か微妙なのですが

下振れリスク要因のメインに国際金融市場の動向が入ったのは当然なのですけど・・・

『リスク要因をみると、景気については、新興国・資源国の経済の強まりなど上振れ要因がある一方で、国際金融面での動きなど下振れリスクもある。』(今回)

『リスク要因をみると、景気については、新興国・資源国の経済の強まりなど上振れ要因がある一方で、米欧のバランスシート調整の帰趨や企業の中長期的な成長期待の動向など、一頃に比べれば低下したとはいえ、依然として下振れリスクがある。』(前回)

国際金融面に関しては前回はリスク要因のリスク要因(表現がヘタクソでどうもすいません)だったのがメインに昇格したのですが、そのどさくさに紛れて「米欧のバランスシート調整の帰趨や企業の中長期的な成長期待の動向」が抜けているのはどうなのかと。いやまあ企業の成長期待の動向に関しては今回成長力強化の新施策を打ちますっていう事で外すのかも知れませんが、国際金融情勢は単なるギリシャのソルベンシー問題ではなく、リスクリダクションの動きになってきているのではないかと思われる部分が多く、そう考えると欧州のバランスシート調整はこれからなのではないでしょうか。何で外しちゃうのか意味が良く判らないんですけど。

『この点、一部欧州諸国における財政状況を巡る動きが、国際金融や世界経済に与える影響に注意する必要がある。』(今回)

『また、最近における国際金融面での様々な動きとその影響についても、引き続き注意する必要がある。』(前回)

ということで、まあここは国際金融面がリスク要因のメインに昇格した影響。

なお、物価面のリスク要因とデフレ脱却に関する決意表明みたいな文言に関しては同じ表現となっています。


○謎の施策に関して

3ページ目の「別紙」に注目。
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k100521.pdf

わけわからんから全部引用という暴挙に出る。

『成長基盤強化を支援するための資金供給の骨子素案

1.対象先
共通担保オペ(全店貸付)の対象先のうち希望する先

2.資金供給の方式
共通担保を担保とする貸し付け(共通担保オペと同様の方式)

3.貸付期間
原則1年とし、借り換え(ロールオーバー)を可能とする。

4.貸付利率
貸付時の無担保コールレート(オーバーナイト物)の誘導目標水準

5.対象先毎の貸付額
対象金融機関から成長基盤強化に向けた取り組み方針の提示を受け、そのもとで行われた融資・投資の実績に基づき、当該金融機関に対して貸し付けを行う。

6.貸付総額、貸付受付期限等
成長基盤強化に向けた融資・投資への金融機関の取り組み状況等を踏まえ本措置の開始時に、、貸付総額、貸付受付期限(新規に貸付を受け付ける期限)、借り換え可能な回数を定める。』


まず最初にあたくしが思った事を少々。

その1:昭和脳のあたくしは(前も書いたかもしれないけど)「傾斜生産方式」というのを思い出しましたが、ここはどこの昭和20年代かと小一時間問い詰めたい

その2:金融機関が出した案件に関して、日銀が判断できるんですか???何せ「日銀+成長分野への資金供給」というお題を並べると(略)

その3:これって恒常的な措置になるのかねえ

で、会見記事(実際にあたくしが参考にしている記事は共同通信が金曜の夕方に配信した「会見詳報」(一問一答形式)なのですが、共同のサイトを見ても見当たらないので引用しない)によりますと、まあ1番に関しては兎も角として・・・

その2の答え:どうも日銀はそのへんの個別判断は特にしないようですな

その3の答え:どうもこの措置は臨時措置になるらしいですな

と言う事のようですが、まあ詳しくは会見要旨が出てから改めて書きますし、そもそも内容がまだ詰まっていないと思われますので何ともかんともなのですけれども、現在は「貸出はしたいけど肝心の貸したくなるような資金需要が無い(貸したく無いような資金需要ならあちこちにあるでしょうけれども)」という状態になっているのでして、そんな状況の下で臨時措置として実施というのも何かどうなんですかねえという気が思いっきりするのであります。

でもまあそうは言っても日銀様が施策を出して、銀行にヒアリングして回るという話になるでしょうから、銀行も手ぶらという訳にも行かないでしょうと考える訳ですが(−0−)、まさかいきなりの新規先への貸出に対して「成長基盤強化支援融資でござる」と持ちこんで貸出があぼーんと言う訳にも行かないでしょうから(たぶん持ちこみという話になると頭取とは言わないけどかなりの上の方にもお話をするでしょうから、「日銀に持ちこんだ案件の貸金コケた」って訳にはいかない(実際の貸出担保は共通担保だから関係無いっちゃあ無いけど)でしょ)、そうなると最後はヤケクソで今流行りの「スマートグリッド」あたりを「成長基盤強化支援」と称して、東京電力様辺りへの貸金を「成長基盤強化支援」とか言って持ちこむに100ドラクマ(^^)。

5番にあるように、この貸出は「融資または投資を実施した分に対しての実施」となりますので、まあ「この日銀施策をあてにして貸出ましょう」というような直截的な行動には金融機関は出にくいのではないかと思いますけどどうなんでしょうかねえ、金融機関の行動原理からすると。


あ、それから(略)の所で「一萬田総裁のぺんぺん草発言」と言われるネタを思い出した方も多いかと存じますが(^^)、」von_yosukeyanさんの過去のエントリーでこういうのがありまして、まあ当時の背景としては当然の発言(発言したのかどうかは不明らしいですが)とも言えるので、そう単純なものではないという説明がございますので御参考までに付け加えさせて頂きたく存じます、と最後はいつものように人のふんどし(^^)。

http://slashdot.jp/~von_yosukeyan/journal/400504
一萬田総裁と「ぺんぺん草」

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2010/05/13

○とりあえず一発実施ですかそうですか

早速ドル資金供給オペの実施日程が。
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/mok1005b.pdf

とりあえず一本実施してその応札状況を見ながら2回目以降をどの程度の頻度でやるかを決めるという感じでしょうか。まあ根本的には東京市場でドル資金の流動性が枯渇している訳でもなく、欧州市場でのドル資金ファンディングの為にわざわざ東京市場でドル資金を取らないと行けないというようなことも無い(取りたきゃECBで取ればよい)でしょうからそんなに札が集まるとは想像しておりませんけど。

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2010/05/12

○4月前半決定会合の議事要旨から

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g100407.pdf

・景気認識に関しては循環と構造のバランスが取れている

えーっとですな、まあ景気認識に関する部分とかは基本的に先日の展望レポートの線とそんなに大きな変化はないと思います。と言いつつ肝心の展望レポートに関してもその他の政策のフォローに追われて結構スルー気味なのですが・・・・(汗)

『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』から色々な話をスルーして日本経済の先行きに関する部分を引用。

『先行きについて、多くの委員は、今後、各種対策の効果が次第に減衰してくることを踏まえると、当面、わが国経済の持ち直しのペースは緩やかなものとなる可能性が高いと述べた。もっとも、何人かの委員は、新興国を中心に海外経済が引き続き改善する中、一頃、市場等でみられた「二番底」に対する懸念は、かなり後退したとの認識を示した。』

『ある委員は、今後、政策効果が剥落していくまでに、足もと僅かにみられ始めた自律的回復の芽がしっかりと育っていくかどうかが、先行きの景気を見通す上で重要なポイントになると指摘した。この点に関し、別のある委員は、グローバル競争を背景とする企業の賃金抑制姿勢といった構造的な要因が、今後の景気動向にどのように作用していくのか、留意する必要があると述べた。』

ということで、基本的には「足元の経済指標および景気は上振れて推移しているものの、構造的には自律回復するのかどうなのよ」という線になっていまして、まあその理屈からすれば先般の謎の成長戦略的な政策を出すというのはロジック的には有りなのですが、しかしそれを中央銀行がやる話なのかというのは超絶的に謎ではございます。

で、その成長期待が低いという話がその次のリスク要因の部分で示されていますので続いて引用。

『わが国経済のリスク要因について、何人かの委員は、企業の中長期的な成長期待に目立った改善が窺われず、引き続き景気の下振れ要因になっていると述べた。この点に関連し、複数の委員は、経済の水準がなお低いことに加え、やや長い目でみた景気回復の道のりやわが国経済の将来像が依然明確に見出せないため、多くの企業で、設備・雇用の調整や積み増しに慎重にならざるを得ない状況が続いていると指摘した。』

だから成長戦略が必要ということですか、よー知らんが。

『何人かの委員は、新興国の更なる経済成長は、わが国経済の上振れ要因となり得る一方で、各国の政策対応次第では、新興国経済の減速や、景気過熱後の大きな巻き戻しを招き、わが国経済の下振れ要因にもなり得るとの認識を示した。』

つまり新興国上昇で日本が恩恵ヤッホーとか能天気に言ってる場合では無いという話ですが、良く良く見るとこのリスク要因の話って(この後は個別の需要項目別の先行き見通しの分析コーナーになるので)下振れの話が殆どという中々お洒落な状態ですな。まあその点でも足元の回復とのバランスは取れた議論になっているような気がする。

・・・・・のだが、何か総裁が会見を行うと循環的な景気回復の話が妙に強調されるのが白川総裁様クオリティなのが微妙なのですよね。コマッタモンダ。


・ところで金融面ではと言いますと

で、同じ部分ですが、経済情勢の議論の次に金融面の議論があるのですけれども、その結論はと申しますと・・・・・

『こうした議論を経て、何人かの委員は、マクロ的にみれば、金融面の動きが景気や企業の支出活動を制約する状況ではなくなっていると指摘した。これに関し、何人かの委員は、中小零細企業では資金繰りがなお厳しいとする先が多いが、この点については、こうした企業を取り巻く経営環境や産業構造といった側面も含めて、点検していく必要があるとの見解を述べた。』

>金融面の動きが景気や企業の支出活動を制約する状況ではなくなっている

・・・・いやまあこの認識はマーケット的にはそうですねと力強く思うのですけれども、そのような認識があるのなら何で4月30日の決定会合での、

『このような議論を受けて、議長は、成長基盤強化の観点から、民間金融機関による取り組みを資金供給面から支援する方法について検討を行い、改めて報告するよう、執行部に指示した。』(これは4月30日の決定会合声明文です^^)

という声明文の文言が「全員一致」で承認されるのかと小一時間問い詰めたい。



・固定金利オペの効果に関して

『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』から。

『委員は、3月に講じた固定金利オペの拡充の効果についても、議論を行った。』

えーっと短期市場的には効果というよりは短いタームの資金供給オペが窮屈になってGCと無担保コールのスプレッドが微妙に開いてしまったような気がするのですが。

『ターム物レートへの影響について、ある委員は、もともとレートに低下余地が乏しくなっていたこともあり、今のところ、追加的な影響は限定的との見方を示した。他方、何人かの委員は、やや長めの金利に対する効果として、短国レートなどが低位で安定しているほか、これまで粘着的であったユーロ円レートが低下するなど、ターム物金利は弱含んで推移していると述べた。』

「これまで粘着的であったユーロ円レートが低下」というのが何かオモシロイ表現ですが、ユーロ円レートってTIBORの話なんすかねと思いますけど、その低下は恐らく期末を抜けて銀行の貸出スタンスに微妙な変化があって金利を下げようとなったとか、リファレンス銀行の顔ぶれを微妙にいじったことの影響とか、まあTIBOR金利がいい加減下がらない件について大人の配慮でもあったのか、正直良く判らんですけど、これは別に固定金利オペの拡大そのものが直接影響しているとは思えんのだが。

それに短国レートって(ちょっと今日の3か月入札は注目と言う話を後で書きますが)3か月物の新発TB入札の落札利回りベースで言えば、最初に固定金利オペ実施のリリースがあった直後の入札が直近で一番利回り低いのでございいますけどねえ・・・・・


『また、何人かの委員は、3月の措置は、中央銀行としての貢献を粘り強く続けていくという、日本銀行の姿勢を改めて明確に示すものであり、これが企業マインドの下支えに寄与している面もあるとの認識を示した。更に、複数の委員は、こうした日本銀行の姿勢の明確化や企業マインドの改善が、最近の株価や為替の動きにも相応の影響を及ぼしている可能性があると述べた。ある委員は、今後、政策効果が貸出金利にどう波及していくかについても、しっかりと確認していく必要があると述べた。』

何か貸出金利に株価の話まで出てくるとか凄いのですが、2年後くらいに「固定金利オペの効果について」とかいうようなペーパーが日銀から出てきて、「増額したら株は上がるわ貸出金利はさがるわともうウハウハです」という内容となって、あたくしがまた「そんな定量的な効果は無かったと思いますけれども」という悪態を書くに100ドラクマ(その頃まであたくしが駄文書きを継続してればの話ですけど^^)であります。

ま、現在の政策って一応お題目としてはターム物金利を低位安定させてその効果がどうのこうのって話にはなってますけど、実際問題としては市場金利ルートでの波及効果というよりは、「世間様の期待に働きかける」という政策メソッドだと思います(ので正直者で狸芝居の苦手な白川総裁が会見をすると微妙にアレなのですが)から、まあこーゆー効果はあるはあると思うのですけれども、それは定量的に「増やしたらどうのこうの」というような計量的な話では無いと思いますけどどうでしょうかね。

『なお、何人かの委員は、固定金利オペを含め、引き続き、潤沢な資金供給を行っていく中にあっても、市場機能の維持に配慮した適切な運営を続けていく必要があるとの認識を示した。』

6か月に延長とかもう10兆円増額とかすると通常の機動的な出し入れに更に支障を来たすのではないかという懸念があるという話は以前申し上げた通りでございます。まあ4月30日の総裁会見を額面通りに取ると固定金利オペをこれ以上拡充するのもどうなのよという話のようですが、白川総裁の様式美の世界もありますので何とも良く判らんっす。

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2010/05/11

お題「ECBの信用緩和キタコレ」

ということで大幅反発ですが、それだけ先週金曜のメルトダウンが凄かったと言う事だったのですな。

で、まずはそこに至るまでのメモからあたくしの備忘も兼ねて。

#なので何か勘違いがあったら是非ご教示頂きたく


○先週末は欧州のドル短期調達がエライコッチャみたいだったのですかね

いやね、一旦片付いてから申し上げるのも何なのですが、どうも金曜の2兆円即日臨時供給を見た時に「これは何としたことぞ」と嫌〜な予感がしてましたのですが、やはり金曜の欧州のドル調達がメルトダウンに近い状況で、まあ日本の円調達がどうのこうのという話では無かったので日本の円金利市場的にオペが必要だったかは兎も角、「まあ落ち着け」というのと「各国で協調しないとこりゃやばいですよ!」という意味もあったのではないかというオペでございましたなというのが結果から後付けすれば言えたっちゅう所なのですかな。

だから昨日はロールした筈の即日オペをご丁寧にもう一発打つという動きになったのでしょうなあ、と思うのですがどうっすかね。

ということで今更先週のニュースですがやはりこうだったのねとゆーところで、まあだからこそ昨日は欧州が寄る前に色々な声明がドバドバと出たと言う所でしょうな。
http://jp.reuters.com/article/domesticEquities4/idJPnTK040655820100507
〔焦点〕ドル不足が深刻化、欧州財政危機が金融危機に転化する兆候(先週金曜時点)

ということでスワップ協定復活とECBの渾身の欧州国債買入攻撃(ただしマネーの供給ではなく信用緩和ですので念の為)となったのですが、そもそも先週の木曜時点では・・・・・・


○先週木曜には国債買う話は華麗にスルーだったのでして

http://www.ecb.int/press/pressconf/2010/html/is100506.en.html#qa

先週木曜のECB定例理事会後のトリシェ総裁の会見から(上の方に行くと決定会合の内容説明部分になります)。

『Question: Mr Trichet, I have three questions for you.

The first one is: is the purchase of government bonds an option to fight the consequences of Greece’s fiscal crisis on financial markets? Did you discuss this option today?(2番目以下割愛)』

『Trichet: On your first question, we did not discuss this option. (2番目以下割愛)』

その他延々と似たような質疑応答があって国債買入の議論はしていませんのオンパレードだったのですがとりあえず話が長くなるので割愛。

いやまあこの辺りが市場の失望を呼んで急速にエライコッチャになったということのようですが、何せこちらは国内ドメスティックな人間でございますので、どうもこの辺りに関しては直接欧州でドルファンディングをやっている訳でも無いのでどうにもこうにもという感じではございますが、まあ過去何度か調達市場が急にシュリンクしたのでというのを体験した(信用不安がどうしたこうしたというのは大きいので3回位っすかねえあっしの場合)身としては何か金曜の東京も気持ち悪かったですわなと。

で、それが欧州時間で案の定出てしまい、週末に何とかしないとおそロシアな事になってしまうのでこらどうにかせねばという話だったという所ですかな。

まあどっからどう見てもトリシェ先生初動で市場の暴走リスクがここまであるとは思って無かったのか、そらまあ国債買入は最終兵器にも程があるから使いたくないというのがあったのか、まあどうなのか知らんっすけど、国債買入の議論はしてませんよと言ったのが木曜で、月曜の朝には君子豹変して対応というのはまあ取り敢えず物凄いにも程がある豹変ですが、豹変しないよりは良い事なので良かったねという所で。

#なのでECBの対応は迅速は迅速でしたが、その前に地雷を盛大に踏んだから火消しに走らないと行けなかったというマッチポンプな面もありまして、リーマン破綻後の対応が迅速と評価する前にリーマンを突然コカした措置がうんこだったというのと流れは似ている(いやもちろん現実にリーマンこかして大混乱を呼んだのに比べれば100億倍マシですけど)と思われますがどうでしょう


○各国中銀でスワップラインの復活と日本は早速ドル供給オペの実施

まあそんな事でスワップライン復活(先週金曜の時点で「どうせ欧州でまたまたドル調達の問題って話になるんですからスワップライン復活でしょ」というような観測は言われてましたけど)となったので日銀のリリースを。

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/un1005b.pdf
中央銀行の協調対応策について

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/un1005d.pdf
米ドル資金供給体制の整備について

『日本銀行は、本日公表した「中央銀行の協調対応策について」に基づき、臨時の政策委員会・金融政策決定会合を開催し、米国連邦準備制度との間で米ドルスワップ取極めを再締結すること、および米ドル資金供給オペレーションの実施体制を改めて整備すること、を決定した。日本銀行としては、今後とも、適切な金融市場調節の実施を通じて、金融市場の安定確保に努めていく方針である。』

まあしかしこれに関しては別に使わない状態でも何かの為に使えるようなセーフティーネットというか保険の為にスワップラインを残しておいても良いんじゃないかなあとか金融危機を何度も見せられた日本人的には思うのですが、本件に関しては米欧(なのか米国様なのか知らんが)の方が出口政策による危機対応終了というのに拘っておられたようで。日本の場合は何故か知らんがこの手の決定をするのに(引用文にもありますように)臨時でMPCを開かないと行けない(他の中銀はMPCマターでは無いみたい)のでヤヤコシヤ。

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/un1005c.pdf
金融政策決定会合の臨時招集について

このヘッドラインが出た瞬間に追加緩和と勘違いした人が債券先物に買いを入れて先物が20銭近く(だったかな?)持ちあがったのは実に香ばしい反応でした(^^)。


んでもって日本ではドル資金供給の復活と。

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/mok1005a.pdf
「米ドル資金供給オペレーション基本要領」の制定等について

基本的には東京でのドル調達が欧州のようにエライコッチャになってという話ではなかったですし、そもそも国内勢はサブプラだのリーマンショックだのという流れの中で外貨資産も相応に圧縮しているんじゃねえのという所ですので、まあそんなに応札が爆発的にやって来るという話にはならんのでしょうが、そうは言ってもご時世がご時世ですので東京にも安全網を張っておかないとっつー所でしょうな。


http://jp.reuters.com/article/jpeconomy/idJPJAPAN-15216420100510?sp=true
今回の日銀措置、市場の困難などの封じ込め期待=日銀副総裁

『そのうえで、日銀の今回の措置については「米欧中央銀行との協調行動の一環として、国際金融市場の状況の改善に資する。わが国金融市場の安定確保に万全を期するもの」として「わが国金融機関のドル資金繰り支援を意図したものではない」と説明した。』

まあそうでしょうね。


○欧州の国債買入ですが・・・・・

日本時間の月曜午前中(なので欧州だと日付は月曜の早朝というか)に出た順で。

http://www.ecb.int/press/pr/date/2010/html/pr100510.en.html
10 May 2010 - ECB decides on measures to address severe tensions in financial markets

『The Governing Council of the European Central Bank (ECB) decided on several measures to address the severe tensions in certain market segments which are hampering the monetary policy transmission mechanism and thereby the effective conduct of monetary policy oriented towards price stability in the medium term. The measures will not affect the stance of monetary policy.』

ということで、各種措置は金融緩和スタンスに影響を与えないとわざわざ言っているので、あくまでも「市場機能の代替を中央銀行が務めます」といういわゆる信用緩和の話ですと銘打ってますな。

『In view of the current exceptional circumstances prevailing in the market, the Governing Council decided:』

『1. To conduct interventions in the euro area public and private debt securities markets (Securities Markets Programme) to ensure depth and liquidity in those market segments which are dysfunctional. The objective of this programme is to address the malfunctioning of securities markets and restore an appropriate monetary policy transmission mechanism. The scope of the interventions will be determined by the Governing Council. In making this decision we have taken note of the statement of the euro area governments that they "will take all measures needed to meet [their] fiscal targets this year and the years ahead in line with excessive deficit procedures" and of the precise additional commitments taken by some euro area governments to accelerate fiscal consolidation and ensure the sustainability of their public finances.』

つまり財政再建に向けて努力する国の国債買入を実施して市場機能の回復を図り、それらの国の市場ファイナンスを確実なものにするという話をしていると思われます。

『In order to sterilise the impact of the above interventions, specific operations will be conducted to re-absorb the liquidity injected through the Securities Markets Programme. This will ensure that the monetary policy stance will not be affected.』

ここがまたチャーミングで、国債買入で供給した流動性はその分吸収オペで吸収しますよということで、この施策は「量的緩和」ではなくて「市場機能の回復の為のオペレーションですよ」というのをわざわざ銘打ってますな。英仏海峡の向こうで「国債買入による量的緩和」(波及効果に関する検討がいつの間にかスルーされながら買入は終了しちゃいましたが)を実施していた中央銀行があるので、それとは違いますよフフンという話でもありますな。

『2. To adopt a fixed-rate tender procedure with full allotment in the regular 3-month longer-term refinancing operations (LTROs) to be allotted on 26 May and on 30 June 2010.』

『3.To conduct a 6-month LTRO with full allotment on 12 May 2010, at a rate which will be fixed at the average minimum bid rate of the main refinancing operations (MROs) over the life of this operation.』

LTROsを固定金利のフルアロットメントで出すのでその傍から結局無制限供給をするのがなおチャーミングな所であります。まあさっきの吸収する云々はあくまでも「ジョンブル野郎の量的緩和とは違うんですよ」と言いたいだけなんでしょう(^^)。

『4. To reactivate, in coordination with other central banks, the temporary liquidity swap lines with the Federal Reserve, and resume US dollar liquidity-providing operations at terms of 7 and 84 days. These operations will take the form of repurchase operations against ECB-eligible collateral and will be carried out as fixed rate tenders with full allotment. The first operation will be carried out on 11 May 2010.』

ドルスワップラインを復活させて7日物と84日物のドル資金供給オペを11日から実施しますと。

んでまあその各国中銀がドル資金供給をしますよという話のECB版は次のURLで、こちら。

http://www.ecb.int/press/pr/date/2010/html/pr100510_1.en.html
10 May 2010 - Reactivation of US dollar liquidity providing operations

http://www.ecb.int/press/pr/date/2010/html/pr100510_2.en.html
10 May 2010 - ECB announces details regarding the reactivation of the US dollar liquidity-providing operations


○さて今後はどうなるのやら

で、何だかにゃあと思うのはどうも買入の状況が良く判らんところで。

http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-15222020100510
ユーロ圏の中央銀行が政府債買い入れ開始、購入規模は未定

ということで買入をしているようなのですが、このへん→http://www.bundesbank.de/index.en.phpとかこのへん→http://www.ecb.int/home/html/index.en.htmlを見ても何がどうなっているのかよく判らんのですんが、誰かどこかにリリースされているのとかご存じないっすかお願いしますお願いします。

しかし米国にしろ日本にしろ、こーゆー時には「このような方法で買入(なり新しいオペレーションなり)を行います」って実施要項と参加要項を世間一般向けにもリリースして対象先に打ち込むというのが仕様だと思うのですが、世間一般へのリリースとか無いのにさっさと実施というのは何と言う欧州的不透明さという所で、さすがはいざとなると不透明にして有耶無耶にする欧州クオリティと感心するものであります。


でまあ国債買入をするのは良いのですが、当然ながらECBなのか加盟国の中央銀行かは知らんですが、楽しい国債を抱えることになりますので、肝心の参加国の国債の発行に対するサステイナビリティーに疑問がありますよという状況が続いたら問題の先送りにしかならないですし、それどころか将来的に問題が放置されてしまうと今度はユーロシステムが通貨としてどうなのよというようなことになるんでしょうな。

つーか、安定化基金をどどーんと作るのは良いのですが、その金を加盟国が負担するったってあーたスペインとかポルトガルとかそんな金どこにあるのよという気がせんでもないですし、IMFが出すという話になった場合に何でうちらが出さにゃならんのよという意見が飴公あたりから出てきたり、英国ちゃんとかも出すという話みたいですし、ノルトライン=ヴェストファーレン州の選挙ではCDU負けちゃうし・・・・とまあ色々と冷静に考えるとここからも中々アレな話ですな。

しかし、この期に及んでこういう事を言うのはもう何だかねえと思うのだが。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15222920100510
ポルトガルを格下げの可能性、ギリシャはジャンク級も=ムーディーズ

・・・・・全く首吊りの足を引っ張ると言うか何と言うか(−−)


なお、あたくしがうだうだと書く駄文よりも毎度お馴染みの厭債害債さんのエントリーの方が参考にするのは吉かと存じます(自爆)。
http://ensaigaisai.at.webry.info/201005/article_1.html

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2010/05/07

お題「展望レポートから」

ダウの瞬間の謎の1000ドル下げはともかくとして、為替市場とか見事にヒャッハー状態ですなあ。いやーあっはっはorz

#本当は総裁会見の補足もしたかった(要するに「追加緩和はしとうないでおじゃる」という話です、で、その話の直後にバルカン半島方面が欧州の火薬庫の名に恥じない働きをしているのが更にチャーミングなのでございます)のですが時間と量の関係で今日はスルーですm(__)m


○冒頭に構造問題を強調した展望レポート

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/tenbo/gor1004a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/tenbo/gor0910a.pdf(前回=昨年10月)

基本的見解の冒頭部分を前回と今回で比較するとだいぶトーンが違うというのが判るかと存じますので比較引用。

まずは今回分。

『わが国も含めた世界経済は、金融危機に起因する急激な落ち込みから脱出し、昨年後半以降は回復基調を辿っている。』(今回)

と回復の話をしていますが、その後は構造的な話を。

『もっとも、世界経済は、危機以前の状態に戻る過程にあるわけではない。この間、世界経済の構造に大きな変化が生じていることや、よりバランスの取れた持続的成長に向けて各国が新たな課題に直面していることも、明らかになってきている。すなわち、新興国や資源国の世界経済に占めるウエイトが大きくなるとともに、それらの国々における経済活動が、資源価格の変動やグローバルな資金の流れに大きな影響を与えるようになってきている。わが国も含め先進国では、大規模な財政支出の結果、公的債務残高が未曾有の水準にまで達している。また、金融危機の経験を踏まえて、金融の規制や監督の見直しの議論が進んでいる。』(今回)

新興国どうのこうのというのが微妙に謎なのですが、先進国での政府債務問題の話までしてますな。

『わが国においては、少子高齢化・人口減少などを背景とした国内需要の減少が見込まれる中、実質成長率や生産性を引き上げていくことが、重要な課題となっている。』(今回)

この結果謎の指示が出たということのようですが。

『以下では、世界経済およびわが国経済におけるこうした中長期的な変化や課題を念頭に置いた上で、わが国の経済・物価情勢の展望について、先行き2年程度の中心的な見通しと、リスク要因の双方を検討することとする。』(今回)

ということで、構造的には問題含みという話をしているのですが、これを読んでいてもう一つチャーミングだと思うのは、日本のデフレ状態に関する問題の話を構造部分に入れていない事ですな。まあ物価見通しが一応先行きにプラスになるからというのを入れたように、そのうち上昇しますよという話をしているのと、そもそもそこの部分を入れてしまうと「じゃあ追加緩和しろ」と言われるからという所ではないかと思いますけどね。


ではまあ前回の当該部分を引用してみます。

『わが国を含め世界経済は、昨年秋以降の金融危機がもたらしたパニック的な経済・金融活動の収縮という深刻な事態からは脱出しつつある。国際金融資本市場には改善の動きが拡がり、世界経済は持ち直している。もっとも、これまでの国際金融資本市場や世界経済の安定化は、民間部門における様々な調整の進捗に加え、各国当局による大規模な政策発動に支えられている面も大きい。』(昨年10月)

『今後の世界経済は、米欧におけるバランスシート調整の帰趨、世界経済の持ち直しに大きく貢献している新興国経済の動向などに左右される。これらに関する不確実性は、一頃に比べ低下したとはいえ、依然高い状況にある。こうした点を踏まえ、先行きの経済・物価情勢を展望するに当たっては、中心的な見通しと様々なリスク要因に十分注意を払って点検を行うことが必要である。』(昨年10月)

前回と違うのは先程申し上げた件に加えて、欧米のバランスシート調整がどうのこうのという部分が抜けています。これは今回の見通しの中で、今後の欧米でのバランスシート調整に関して「着実に進捗する」という見方をメインにおいている所が影響していると思います。

ということで、まあ構造問題を強調しているのは強調しているのですが、その内容がモロに下押し方向でのデフレとかバランスシート調整とかの部分だけでも無い所が微妙は微妙な感じはします。ただまあ前回のトーンよりも「回復していますが危機以前とは違います」というのを冒頭に入れた部分で構造問題を強調してますなあという感じでしょうか。


○循環的には回復を更に強調

で、その次の経済情勢の見通し部分。

『2009年度後半のわが国経済は持ち直しを続けた。すなわち、内外の在庫調整の進捗や海外経済の改善、とりわけ新興国経済の強まりを背景に、輸出・生産は増加を続けた。また、企業収益の回復に伴い、設備投資は下げ止まりに向かった。個人消費も、各種対策の効果などから耐久消費財を中心に持ち直した。この間、公共投資は減少に転じた。』(今回)

というのがレビューでして、その次は見通し。

『先行き2010年度から2011年度を展望すると、わが国経済は回復傾向を辿るとみられる。』(今回)

これが前回はこうなっていたのですな。

『先行き2009年度後半から2011年度を展望すると、わが国経済は、他の先進国と同様、世界経済の動向に引き続き大きく左右される展開を辿る可能性が高い。』(昨年10月)

どう見ても上方修正です本当にありがとうございました。

『耐久消費財に対する各種対策は、その需要刺激効果が次第に薄れていき、2010 年度中には完了すると見込まれる。もっとも、新興国・資源国の力強い成長を背景に輸出は増加を続けるほか、企業収益の回復に伴い設備投資も持ち直す可能性が高い。』(今回)

『また、企業活動が活発化するにつれて、雇用・所得環境の改善も次第に明確化していくため、個人消費や住宅投資の伸び率は高まっていくと考えられる。これらを踏まえると、2010年度のわが国の成長率は、潜在成長率を上回る水準となると見込まれ、2011年度には更に高まる見通しである。』(今回)

どう見てもダム論です本当にありがとうございました。ちなみに前回はどうなっていたかと言いますと。

『現在、わが国の景気は持ち直しつつあり、2009年度後半は、海外経済の改善と経済対策の効果を背景に、景気は持ち直していくとみられる。2010年度もこの傾向は維持されるものの、世界経済の回復のペースが緩やかなものに止まるとみられること、国内においても需要刺激策の効果が減衰する中で、雇用・賃金面の調整圧力が残存することなどから、年度半ば頃までは、わが国経済の持ち直しのペースも緩やかなものとなる可能性が高い。』(昨年10月)

『その後は、米欧におけるバランスシート調整が相応に進捗するとともに、わが国においても、輸出を起点とする企業部門の好転が家計部門に波及してくるとみられる。このため、2011年度には、わが国の成長率は、潜在成長率を明確に上回るペースまで高まる見通しである。』(昨年10月)

で、潜在成長率が実質で『0%台半ば』(この数字は前回と同じ)となっている中で実質GDPの見通しが2010年度で+1.6%〜+2.0%(前回は+1.2%〜+1.4%)となり、2011年度で+2.0%〜+2.2%(前回は+1.7%〜+2.4%)となっている(2011年度の見通しが前回より若干下がっているのは、単に2010年度の見通しを引き上げた分だけ11年度の発射台が変わっている為で、実際には10年度の見通しが0.5%ほど上方修正されているので11年度も上方修正になっていますな)という強い数字を出していまして、そ〜ゆ〜状況だと物価もそのうち上昇するでしょという見通しになりますわな。うーむ。



○項目別展開の企業部門と家計部門

項目別の話はサラサラと流しますが、まずは企業部門の今後の見通しから。

『今後、世界経済に関する企業の中長期的な成長期待が維持される中で、生産は増加基調を維持し、企業収益も回復を続けると考えられる。こうした動きに加え、後述のように金融環境が改善していくことから、設備投資も持ち直していくことが見込まれる。』(今回)

前回との比較で目が行くのは「ヘッジクロースが抜けた事」です(^^)。

『今後、在庫調整の影響が後退していくほか、内外における需要刺激策の効果が減衰するにつれ、生産の増加ペースが一時的に弱まる局面はありうるが、世界経済の緩やかな回復傾向が持続する限り、生産の増加基調は失われないものとみられる。また、グローバルな需要に関する企業の中長期的な成長期待が大きく下振れするという事態が生じない限り、生産の増加や企業収益の復調に伴い、設備投資も徐々に回復していくと見込まれる。』(昨年10月)

前回のヘッジクローズ入りまくり状態からいきなりのヘッジ解除ですよ先生。

『非製造業や中小企業については、製造業におけるコスト削減努力の継続などから、業績の改善は相対的に遅れる可能性があるものの、輸出関連製造業における業績回復の影響は、徐々に波及していくと考えられる。』(今回)

『一方、非製造業や中小企業については、製造業におけるコスト削減努力が需要の押し下げ圧力として働くほか、後述するような家計部門の厳しさを踏まえると、回復は製造業より遅れる可能性が高い。』(昨年10月)

どう見てもダム論全開です本当にありがとうございました。


で、家計部門ですが。

『雇用環境をみると、所定外労働時間が増加を続けているほか、有効求人倍率も緩やかに上昇するなど、一頃に比べ、改善の動きがみられ始めている。こうした状況のもとで、個人消費は、各種対策の効果などから耐久消費財を中心に持ち直している。これらの対策は、2010 年度中に完了すると見込まれるため、個人消費の回復ペースは一時的にやや鈍化するとみられる。』(今回)

ふむふむ。

『もっとも、生産増加の影響は、徐々に雇用・所得環境に波及していく方向にある。また、企業収益の回復を背景に、株価も上昇してきている。今後、企業活動が活発化するにつれて、雇用の回復もさらに明確化するほか、賃金にも改善の動きが出てくるため、個人消費の自律的回復の動きも次第に現れてくるとみられる。また、雇用・所得環境の改善などを背景に、住宅投資も緩やかに回復していくと考えられる。』(今回)

いやあこちらもダム論みたいな話ですな。しかも株価上昇まで(^^)。こちらの前回はこんな話になっていましたです。

『個人消費は、各種対策の効果により耐久消費財で持ち直しの動きが続くとみられるものの、厳しい雇用・所得環境が続く中で、全体としては弱めの動きが続く可能性が高い。』(昨年10月)

『最近では、輸出・生産の増加を背景に、所定外労働時間が増加しているほか、新規求人倍率も下げ止まるなど、雇用指標の一部に変化がみられる。もっとも、労働需給の緩和基調は当面続くとみられるほか、賃金も特別給与を中心に厳しい状況が続くものと考えられる。雇用・所得環境の改善は、企業収益の回復に遅れる傾向があるため、個人消費の持続的な回復が展望できるのは、見通し期間の後半となる可能性が高い。』(昨年10月)

いや〜こちらも強いですなあ。


○ということで循環的には回復を強調するわダム論みたいな話はでるわ

ってな感じでして、企業部門と家計部門をサラサラと(といいつつ殆ど引用したのですがorz)比較してみましたが、昨年10月時点とは随分とトーンが違っていますなあというのが見えて参ります。逆に言えばこちらばかりを強調すると無茶苦茶強いという印象ばかりが目立つ次第なのですが、それを冒頭の構造問題で中和したという感じになってますなあという所ですか。

そんなに強いかねという気もするがとか思ったら5月1日の東京新聞社説が中々良い感じでしたな(^^)。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2010050102000068.html
日銀リポート デフレ脱却はまだ先だ

『日銀は現状で資本と労働を過不足なく稼働した場合に実現できそうな潜在成長率を0%台半ばとみている。したがって、一〇年度は潜在成長率を上回る成長を実現し、一一年度はさらに加速するというシナリオになる。

 だが物価も成長見通しも、いささか手前みそにすぎないか。潜在成長率を低めに見積もったうえで、現実の経済を楽観視したきらいがある。そうすれば景気は過熱気味の形になるから、物価上昇という予想が出てくるのは当然だ。』(上記URLより)

・・・・・・(^^)


○ところで金融環境なんですけど

今回の展望レポートで金融環境の部分ではこのような説明がございます。

『一方、資金需要面をみると、企業収益の回復に伴いキャッシュフローが増加することに加え、これまで手許資金を潤沢に積み上げてきたこともあり、企業の外部資金に対する需要は弱い状態が続くと見込まれる。こうしたもとで、設備投資の回復が本格化するまでは、企業の資金繰りの改善と、銀行貸出やCP発行残高の減少とが、並存していく可能性が高い。』(今回展望レポートより)

・・・・・えーっと、では何で今回成長戦略を資金面から支える施策を実施する必要があるのでしょうか???????????????

#という悪態で引用大会終了ということで(汗)

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2010/05/06

お題「謎の成長戦略でぽかーんでござるの巻」

展望レポート全文と会見要旨を1日に公表したので、微妙に色々と素材があって困りますな。

○謎の指示がでました

決定会合声明文で市場がぽかーんだったのですが。

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k100430.pdf

『1.日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を、以下のとおりとすることを決定した(全員一致(注))。無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0.1%前後で推移するよう促す。』

『2.本日の政策委員会・金融政策決定会合では、「経済・物価情勢の展望」に関する検討を行なった。会合では、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することがきわめて重要な課題であるとの認識のもと、金融政策運営に当たっては、きわめて緩和的な金融環境を維持していく方針が確認された。』

で終了すれば別に何の問題も無い予想通りの話だったのですが・・・・

『併せて、現下の日本経済の状況を踏まえると、成長基盤の強化を図ることが必要であるとの認識が確認された。こうした認識に基づき、日本銀行としても、成長基盤の強化に資する新たな取り組みを行うことが必要である、との考え方が共有された。このような議論を受けて、議長は、成長基盤強化の観点から、民間金融機関による取り組みを資金供給面から支援する方法について検討を行い、改めて報告するよう、執行部に指示した。』

・・・・・・?????

ナンジャソリャという感じですけど、「成長基盤強化」の為って全く持って意味判らん(いやまあ意味は判るが)ものでございまして、最初「何かあったっけ」と思って人と話をしていたらこんなものがあったのね。

1998年11月13日
http://www.boj.or.jp/type/release/zuiji/kako01/k981113a.htm
最近の企業金融を踏まえたオペ・貸出面の措置について

1998年11月27日
http://www.boj.or.jp/type/release/zuiji/kako01/mok9811b.htm
企業金融支援のための臨時貸出制度基本要領

すっかり忘却の彼方ですが、これは年末と期末の金詰まり対策という面もあって、貸出を伸ばしたらその半分をバックファイナンスしますよという趣旨で、期末に掛けての時限措置としての貸出制度でございましたようです。

でですな、今回の総裁会見でもそのような話が出ていますので、まあそんな感じの物が出るのでしょうかねえ。よー知らんが。

今回の総裁会見から。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk1005a.pdf

『資金供給面から支援する方法と申し上げましたが、これについては成長基盤の強化を支援するという狙いが円滑に実現できるように、民間金融機関や企業のご意見・ご要望を十分踏まえるとともに、日本銀行がこれまで実施した措置を通じて得られた経験も参考にして、検討していきたいと思っています。ちなみに、日本銀行では、これまでも、その時々の経済金融情勢や政策目的に対応して多種多様な資金供給の方法を採用してきており、この点では、日本銀行は先進国の中央銀行の中でも、最も豊富な経験とノウハウを有していると思っています。例えば、1998 年から1999 年にかけて実施した「企業金融支援のための臨時貸出制度」のような枠組みは、民間金融機関の自主的な融資努力を資金供給面から後押しするという点で、今回の検討においても参考になると考えています』(上記URLより)

はあはあそうですか。

ちなみに、あたくしがあと勝手に予想した措置としては(1)保証協会保証付の証書貸出を全部適格担保にする(もともと適格だったら勘違いです)、(2)日本政策金融公庫や日本政策投資銀行の制度融資にバックファイナンスをつける、という程度のものですが、はてさて何をやるのやら・・・・・・

ちなみに市場ちゃんの反応はと申しますと、債券市場は「ぽかーん」状態で反応の仕様もなく、金先が「これはもしかしてTIBORが下がるような動きになるのではないか」という事で若干買いで反応したのですが(1ティックほど)、総裁会見を見ると追加緩和する気無さそうなのでまた元の木阿弥に(^^)。


○ところで企業金融オペを終了したばっかの筈ですが

とまあそういう事で内容が良く判らんのですが、98年の臨時措置みたいなものが出ますという話なのですけれども、えーっとあのその3月末で目出度く企業金融関連の措置を終了して、企業金融特別オペは新規の実行が無くなって後は落ちるだけとなり、行きがけの駄賃でCP買現先オペの残高がゼロになったのですが、いきなりそれと整合性の取れないようなネタが出てくるのは何ということぞという所ですわな。

いやまあこの点に関しては「従来は危機対応の流動性対策で、今回の措置は成長戦略なので話は違う」という理屈で説明してくるとは思うのですが、それにしても話として何だかなあ感は払拭できませんわな。


○日銀が個別企業への資金配分に関与するのですか???

日銀様におかれましては、先般(昨年1月)CPやら社債の買入を公表した時にはこのような文章をわざわざ公表しているのですよね。

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/un0901d.pdf
企業金融に係る金融商品の買入れについて

ええ今回の措置は買入じゃなくて金融機関への融資だから関係無いと言ってしまえばそれまでですけれども、この中には中々良い指針が出ていますよねえ(^^)。

『3.実施に当たって留意すべき事項

(1)個別企業への恣意的な資金配分となることを回避すること

? 日本銀行による買入れの実施が個別企業への恣意的な資金配分となることを回避しうるよう、例えば、@発行体からの直接買入れではなく日本銀行の取引先である金融機関等を通じた買入れとすることや、A入札方式による買入れとすることなど、適切な買入れ方式を採用する。』(上記URLより)

>個別企業への恣意的な資金配分となることを回避すること
>個別企業への恣意的な資金配分となることを回避すること
>個別企業への恣意的な資金配分となることを回避すること

いや勿論今般の措置は買入でも無いですし、どうせ金融機関への貸出なり担保政策なりという話になるので個別企業への恣意的な配分にはならないですという言い訳になると思うのですけれども、今回の総裁会見ではこのような話をしていますよね。

『それから、成長力の強化ということ自体は第一義的には民間経済主体が取り組むことですし、基盤という点については政府が果たす役割が大きいということはその通りです。政府でも昨年12 月に成長戦略をまとめ、現在その肉付け作業を急いでいると認識していますし、民間企業も様々な取り組みを行っています。その意味では、今も様々な主体が取り組んでおり、日本銀行も自らの行動を通じてこうした動きにさらに弾みをつけていきたいという思いがあります。ただし、これは政府に対して要請することが主たる目的ではなく、日本銀行として、日本銀行の持っている機能を使って民間を後押ししたいということです。』(4月30日総裁会見より)

・・・・・はてさて、政府の成長戦略と言いますと、この辺になるのかなあと思いますけれども。
http://www.meti.go.jp/topic/data/growth_strategy/index.html
「新成長戦略(基本方針)〜輝きのある日本へ〜」について

その中に色々と書いてあるのですが、そこの2番目にあるプレゼン用の資料のようなものを見ますと、2ページ目(というか表紙の次のページ)に『新需要創造・リーダーシップ宣言』というのがあって、新たな成長戦略の「第3の道」とやらにこのような事が。

『第3の道 「需要」からの成長
→環境・健康・観光で100兆円超の需要
→国民生活の向上に主眼』(新成長戦略(基本方針)のイメージ資料から)

・・・・・この辺を見てますと、何か日銀が成長戦略に協力という話になると、上記のような分野に対する融資の後押しをしますよというような話にも見えて来る訳でして、確かに個別企業がどうのこうのという訳ではないですけれども、特定の産業分野に対して日銀が融資の後押しをしますよというような話になりますと、ど〜考えても去年言ってた話と違いわせんかなという感じですな。

#「傾斜生産方式」という言葉を思い出したのは昭和脳ですかそうですか


でまあ会見でもその点にツッコミが来る訳でして(^^)。

『(問)(前半割愛)2点目は、今回、中央銀行としての矩(のり)を超えてしまうのではという懸念も与えかねない行動に出ようとしているのは、成長戦略を考える上で、政府から日本銀行に何か新しく政策を出してほしいという要望があってのことなのかを伺います。』

『(答)(前半割愛)オーソドックスな中央銀行の業務ではないという意味では、ご指摘の通りと思いますが、現在、日本経済の最も本質的な問題が生産性の低下である以上、その問題に対して何がしかの貢献をしていくということは必要なことだと思います。』

で、日銀がそういう貢献をするというのは違和感が。計画経済じゃ無いんですし。

『ただ、繰り返しになりますが、中央銀行としての矩を超えることはあってはなりません。何が矩を超えることになるのかと言いますと、1つは個別産業や個別企業に対するミクロの資源配分への介入となることは避ける必要があると思っています。』

成長戦略だの生産性だのという話をしている時点で恣意性が入ると思うのだが。

『また、日本銀行が金融政策を行っていく上で、資産の健全性がしっかり確保されていないと、将来の金融政策の遂行能力に対して信認が低下してしまいます。その2点は少なくともしっかり意識し、矩を超えることのないような制度設計を考えていきたいと思っています。』

資産の買入じゃなくて銀行向け与信だったら別にまあそんなに懸念する話でも無いと思うのだが。

『また、政府の方から要請があったのかということですが、そのような要請があったわけでは全くありません。』

はあそうですか(棒読み)。


○しかし現状の問題は別に金詰まりでも貸し渋りでも無いのだが

金詰まりというのは流動性の問題で、貸し渋りというのはバランスシートの問題でございますが、現状の金融機関の状況を勘案すると、どちらにも問題は無い筈でございまして、巷間貸し渋りがどうのこうのとか言われますけれども、そもそも前向きの資金需要でそれなりにちゃんとした企業さん相手だったら銀行は貸出をしたくて仕方ない状態になっている筈でございますので、そんな中で日銀が何をするのよというか、日銀の変なアピールのダシに使われる金融機関カワイソスという感じがするのですけどねえ。

総裁会見より。

『(問) 成長基盤強化について2点お伺いします。まず、政策の発表を聞いた際に、政府系の金融機関でしっかりやればよいことではないかと感じました。また、民間の金融機関に聞くと、先程おっしゃった1998年の企業金融支援の臨時貸出制度は貸し渋りの改善を促すものであり、今は、成長力のあるところには貸したいけれども貸し出し先がないというジレンマがあると思います。その中で日本銀行が出ていく余地はあるのか、違和感があり理解できないのですが、お考えを伺います。(2点目は先程引用したので割愛)』

どう見ても正論です本当にありがとうございました。

『(答) 政府系の金融機関も、様々な取り組みを行っていると思います。ただ、政府系金融機関の場合には、自らが企業に貸し付けることが業務のベースになるわけです。今回、日本銀行が検討しようとしていることは、日本銀行自身が直接企業に貸し付けようというわけではありません。あくまでも、民間金融機関の取り組みを支援していこうということであり、政府系金融機関とは役割が異なっていると思います。』

?????

『それから、先程も申し上げました通り、日本銀行の出す資金の量によって勝負をしていこうというものでは決してありません。』

ますます意味判らん(ちなみに、この部分って今回の会見でのもう一つのポイントでもあるのですが、「追加緩和はしたくないでおじゃる」という話に繋がるのですな)・・・・

『今、おっしゃったように、金融機関から見ると、資金需要がない状況だと思います。ただ、何か障害があり、工夫をすれば様々な資金需要の芽がもっと生きてくる、という可能性はあると思います。』

いやだからそれは補助金とか予算の世界ですから。

『だからこそ、民間金融機関もこうした面の取り組みを始めているのだと思います。従って、あまり大きなことは言えませんが、日本銀行としても、民間金融機関の業務を見ている立場から、また、中央銀行として資金を供給する立場から、日本銀行がどのような工夫をすれば民間金融機関の努力が後押しできるのかをしっかり考えていきたいと思います。』

これで考えた結果特にありませんでしたという回答が執行部(事務方)から来たら理事や局長の皆様を神認定して毎日崇めたいと思うのですけれども(^^)、まー従来の流れから常識的に判断すると何か無理矢理にでもネタをひねり出すんでしょうな。


○いずれにせよ意味は謎ですな

他にもまあ謎な点は多々あるのですが、本件が(1)マジで日銀が成長戦略を実施するんじゃああああ、といきなり産業金融もどきの話を始める意欲満々なのか、(2)単に日銀の謎のアピールあるいは政府への「御接待」なのか、がさっぱり判らず、実際に出てくる施策を見ないと判断のしようもない所なのですけれども、いずれにせよ上で引用したように「実際には金融機関に貸出のボトルネックがある訳でもない」という状態なのに謎施策の指示を出したと発表するとか、特に量を出したり金利を下げたりという話でも無さそうな時点で、まー今回の対話もまた「市場との対話」ではない所との対話ですなあという感じでございます。

#だからすっかり置いてけぼりとなった市場は反応できずにぽかーんだったのですが

まあしかし市場からすると(つーか市場じゃなくてもですが)企業金融措置を終了させた(企業金融特別オペは残高残ってますけど)直後にいきなりこの施策(指示しただけですが)というのは謎としか申し上げようがございま千円ですなあ。

それとね、会見でも質問されてましたけど(今日は引用割愛)、成長戦略だの生産性向上だのという話になってきたら、本政策が臨時措置で済ませる訳にもいかなくなる(臨時措置如きで成長だの生産性だのが向上したら誰も苦労はしない訳で)と思うのですけれども大丈夫かねという感じもするのでございますがどうなんすかね。


○1998年の決定にあたって中原伸之審議委員(当時)が反対しているのだが

さて、昔話ネタになりますが、さっきURLを乗っけたように98年11月に臨時貸出制度の創設を公表したのですが、まあそれを実施しましょうというのを先行して発表した回の決定会合で当時の中原伸之審議委員が反対しているのでして、その理由が中々読み応えがあるので最後に引用しますね。

1998年11月13日の金融政策決定会合議事録(超どうでもいいけど、この辺りの決定会合には谷垣禎一大蔵政務次官が出席してますな)から。

採決前の各委員の意見表明部分(議事録84ページ)より。

『中原委員

私はCPについては賛成であるが、他の二案については十分に検討し、議決した度毎に公表すべきだと考える。まずCPについては、昨年から一年間オペを行ってきておち、非常に実績もある。今回の措置を採れば、民間の方でも先程2兆円と説明していたが、然るべき反応はあるだろうと思う。また、CPオペの積極化は先般の提案の延長線上としても捉えられるので、賛成である。

他の二つについては、方針自体をここで発表しない方が良い。やはり、実施するのか実施しないのかを確りと詰めたうえで、出来たものから発表すべきである。何か予約の発表のようなやり方が果たして良いのかどうかに疑問を持っている。そもそも今回の議案を企業金融の円滑化として直接打ち出すことにも反対する。やはりセントラルバンキングである以上、まず銀行に対し一般的な形でのオペを行い、先程山口副総裁が言われたようにそれが滲み出る格好であるならば結構であるが、セントラルバンキングの立場として筋を通すべきではないか。特に、証書貸し付けを担保化することは十分考えられるが、現段階で行うことになると、例えば企業のリストラ、再編成の動きに対し、それを緩めるようなことになりはしないか。あるいは、世の中からみて日本銀行は最後の信用の砦であるにもかかわらず、何でもありとなってしまうのか、と受け取られる反応も恐れる訳である。現在の段階で行えることはCPオペの積極的な活用であると思っている。』

もうね、「実施するのか実施しないのかを確りと詰めたうえで、出来たものから発表すべきである。何か予約の発表のようなやり方が果たして良いのかどうかに疑問を持っている。」とか「あるいは、世の中からみて日本銀行は最後の信用の砦であるにもかかわらず、何でもありとなってしまうのか、と受け取られる反応も恐れる訳である。」とかイイハナシダナーと申し上げるしか無いですな(^^)。

また、採決後の中原さんの反対理由部分(議事録106ページ)も内容がだいぶ被りますが引用しますね。

『中原委員

反対の理由を申し上げる。基本的な反対理由は中央銀行としての在り方に関係するものである。中央銀行は主要目的に専念し、その他の機能については出来るだけ保守的に機能すべきであると思う。銀行に対する流動性の供給は一つの大きな業務であるが、企業金融は元々民間銀行の領域であり、そうした仲介機能には極力踏み込まない方が良いというのが基本的な理由である。

具体的に申し上げると、第二の貸出制度は昔の制度が復活する印象を世間に与える。最も懸念すべきは、銀行に対する直接貸出が今後拡大されていくのではないかという危険性をはらんでいることである。第三の社債、証書貸付等については、一つはこれが仮に恒久的な制度になるとするならば、十分考える必要があり、時期尚早だということであるが、もっと根本的には適格の社債が限定されてくるということである。これがエスカレートすると、社債を買え、さらには株式を買えといった要求に発展しかねない。また、証書貸付等については、債務者の承諾が必要な訳であり、むしろ方向としては極力印紙代を200円にして手形に切り替え、その手形をオペに活用するのが正しいと考えている。いずれにしても、CPオペのように実績があり、限られた分野で日銀が重要な役割を果たしてきたものを拡大することは意味があると思うが、現時点において貸出制度を臨時に創設したり、社債、証書貸付等を担保としてオペを行うことについては非常に疑問があるし、日銀の中央銀行としてのイメージを傷つける恐れがある。日銀も信用の最後の砦ではなく、何でもありかと、それならばさらにやれということになりかねない点を危惧する。』

「これがエスカレートすると、社債を買え、さらには株式を買えといった要求に発展しかねない。」と言う部分がスバラシス(^^)。

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2010/04/16

○さくらレポートから少々

http://www.boj.or.jp/type/ronbun/chiiki_rep/chiiki1004.htm(概要)
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/chiiki_rep/data/chiiki1004.pdf(本文)

『各地域の取りまとめ店によると、最近の景気情勢について、前回(10年1月時点)同様、ペースや広がりに差異があるものの、全ての地域が基調判断を「持ち直し」の動きがみられると報告した。』

『今回の地域別総括判断を前回と比較すると、2地域(四国、九州・沖縄)が基調に変化なしと判断したが、それ以外の7地域(北海道、東北、北陸、関東甲信越、東海、近畿、中国)では、改善の動きの広がりやペースの加速など、基調に改善方向の変化があると判断された。』

『もっとも、ほとんどの地域が水準の厳しさ(北海道、東北、北陸、近畿)ないし地域や業種、企業間の格差の存在(関東甲信越、東海、四国、九州・沖縄)に引き続き言及している。』

ということですが、前回1月の冒頭部分ではこういう書き方になっていました(^^)。

『各地域の取りまとめ店の報告によると、全ての地域が足もとの景気について、「持ち直している」との判断を示したが、ペースや広がりには引き続き差異が認められる。』

『また、ほとんどの地域が、業種間、企業間等におけるばらつきの存在を指摘しているほか、引き続き水準の厳しさに言及している地域が多い。』

『なお、今回の地域別総括判断を前回と比較すると、5地域(北海道、東北、北陸、中国、四国)が基調に変化なしと判断した一方、4地域(関東甲信越、東海、近畿、九州・沖縄)では基調に改善方向の変化がみられると判断した。』

ということで、この前回分と上にあります今回分を比較した場合、ひじょーに良く判ると思いますが、前回は「持ち直しているけどねえ・・・」というようなニュアンスが強いですけれども、今回は「いやあ持ち直してきましたな〜」っていうような感じが伝わって来るのはあたくしだけですかそうですか(^^)。

まあ基調判断そのものが大きく変わった訳ではないですが、内容が良くなっているという感じではないかと思います。で、前回は上方修正が4地域だったのが、今回また上方修正が増えています。だいぶ前からの時系列を並べると以下のようになりますです、はい。

2010年4月:7地域で上方修正
2010年1月:4地域で上方修正
2009年10月:9地域で上方修正
2009年7月:9地域で上方修正
2009年4月:7地域で下方修正
2009年1月:9地域で下方修正
2008年10月:9地域で下方修正
2008年7月:8地域で下方修正
2008年4月:8地域で下方修正
2008年1月:5地域で下方修正

こうやって見ますと、11月の政府のデフレ宣言によってマインドが悪化したり、その間の円高やら株式市場の下げなどでヤバそうな雰囲気になっていたのですが、ここもとの環境改善に伴い目出度く回復基調のレールに戻ってきましたよ!!というような美しい絵になるのですが、まあ循環的にはそういう感じっすかねえ。

項目別展開

・個人消費

『個人消費は、引き続き全地域が政策効果の持続に言及しているほか、6地域(北海道、東北、関東甲信越、東海、四国、九州・沖縄)が、耐久消費財以外の分野での持ち直しや下げ止まりの動きを報告した。しかし、過半の6地域(東北、北陸、関東甲信越、近畿、四国、九州・沖縄)が、引き続き全体としての地合いは弱い、と判断した。』

全体としての地合いは弱い上に政策効果次第ですかそうですか。いやまあそうだと思います。

『品目別の動きをみると、引き続き、全ての地域が政策効果による家電および乗用車販売の増加に言及したが、うち2地域(四国、九州・沖縄)から、乗用車販売の増加ペース鈍化が報告された。百貨店等大型小売店については、全体としては厳しい状況が続いているが、4地域(北海道、東北、関東甲信越、東海)は「売上高の前年比減少幅は縮小している」等と報告した。また、6地域(北海道、東北、関東甲信越、東海、四国、九州・沖縄)が、旅行関連需要の増加ないし下げ止まりの動きに言及した。』

ローゼン麻生のエコポイント恐るべしという所ですな。


・設備投資

『設備投資については、6地域(北陸、関東甲信越、近畿、中国、四国、九州・沖縄)が「下げ止まりに向けた動き」を報告したほか、「低水準ながら増加に転じた」との判断もみられた(北海道)。しかし、東北は「大幅な減少」、東海は「低水準での推移」が続いていると報告した。』

水準はまだまだとな。

『内訳をみると、電気機械や輸送用機械等の輸出関連製造業における維持・更新投資の再開の動きを中心に、能力増強投資に踏み切る動きも報告された(北海道、中国、九州・沖縄等)。また、非製造業では、インフラ関連産業の大型投資に複数の地域(東海、九州・沖縄)が言及したほか、小売業での新規出店の動きも報告された(北海道等)。』

で、その設備投資に関しては『地域の視点』でネタになっております。


・生産

『生産については、引き続き全地域で、「持ち直し」ないし「増加」との基調判断が示された。また、一部の地域(北陸、中国等)は、持ち直し傾向を示す業種に広がりが出ていることを報告した。この間、一部地域(東北、四国)は、全体としては持ち直し傾向が続く中にあって、一部高操業先で増産ペースが鈍化していることを指摘した。』

生産に関しては鉱工業生産の数値が良いのと同じく(当たり前か)判断は強めですね。

『業種別の主な動きをみると、自動車・同部品、電子部品・デバイスについては、全地域で「増産」ないし「高操業」の状況にあることが報告されたが、一部地域(東北、四国)で増産ペース鈍化の動きが指摘された。鉄鋼については4地域(北海道、東北、東海、中国)から生産水準の上昇が報告された。一般機械については、6地域(東北、北陸、関東甲信越、東海、中国、九州・沖縄)から生産水準の上昇が報告されたが、四国では低水準の操業継続が指摘された。この間、紙・パルプについては、3地域(北海道、東北、四国)から、減産ないし低操業が続いていることが報告された。』

ということで基本的には強い話の方が多いです。


・雇用・所得

『雇用・所得環境をみると、雇用情勢については、全地域が、厳しい状況が続いていると判断しているが、4地域(東北、関東甲信越、東海、中国)が、改善方向ないし下げ止まりの動きを指摘した。この間、6地域(北海道、東北、関東甲信越、東海、中国、四国)で、有効求人倍率の改善の動きが報告された。』

全体としての水準は低いが、方向性は改善方向と。

『雇用者所得については、ほとんどの地域で減少傾向との判断が示された。この間、2地域(東北、東海)からは「名目賃金の前年比増加」、4地域(北陸、東海、中国、九州・沖縄)からは「所定外給与の増加」が報告された。』

まだ減少傾向ですかそうですか。

・・・・ということで、全体的に水準はダメですなあという感じで、方向性がまあ上向いているから良いようなものの・・・・という所なのではないかと思います。ただまあ方向性が上だから総裁様におかれましては妙に元気になっておられるように見える所がややオソロシスなのですが。


・地域の視点

今回のお題は『最近の地場企業の設備投資動向』となっていまして、この中身はまだざっと読んだだけなのですが興味深いです、がその辺は華麗にスルーして最初と最後の部分だけ。

『各地域における地場企業の設備投資動向をみると、業種間、地域間、規模間に格差を残しながらも、下げ止まりの動きがみられる。即ち、製造業をみると、輸出関連製造業では大企業を中心に、設備投資の抑制姿勢を緩め、能力増強投資に踏み切る先もみられる。一方、内需関連製造業では、需要低迷や価格競争激化による収益悪化を背景に、抑制的な姿勢を続ける先が多い。この間、非製造業については、公共投資の減少傾向や消費者の節約志向、企業の経費節減等を背景に抑制的な姿勢を続ける先が多いものの、生き残りをかけた業種転換や営業力強化のための投資を行う先や、独自の経営戦略で業績を伸ばし、地価下落等を梃子にむしろ投資姿勢を積極化する先も少なくなく、二極化傾向がうかがわれる。』

外需関連は強いけれども内需は厳しいとか、毎度のパターンになっているようで。

『先行きについては、企業による費用構造改善の取組みが進み、世界的な需要回復と相まって収益が改善するにつれて、設備投資も、増加の裾野を広げ、回復傾向が明確化していくものとみられる。しかし、上述の通り、(1)製造業大企業では、今後の需要増加に対応する能力増強投資のかなりの部分を海外で実施することを計画ないし検討している先が多いこと、(2)その結果、一般機械製造業や建設業等の設備投資関連産業への波及効果も割り引かれる可能性があること、(3)下請け中小企業では、取引先の海外進出について行けず、海外企業に受注を奪われる先も少なくないと思われること、等の事情を勘案すると、設備投資およびその関連最終需要の増加テンポは、比較的緩やかなものになる可能性がある。そうした中で、中小企業を中心とした業種転換や業務範囲拡大を企図した新規分野での設備投資の動きに期待が高まる一方、これらの動きを促進、サポートする体制の整備・強化を求める声も強まっている。』

まあ結局の所先行きは慎重な見方になっていまして、元々の基調判断もあまり強く無く、水準感は低いという状態になっていますので、そーゆー点では設備投資はまだまだ回復まで時間が掛かるでしょうなあと。


ということで、つらつら見ると「7地域で回復!」という辺りを見ると強そうに見えるのですが、方向性は上でも水準はまだまだといった所なのではないでしょうか、と思われます。

#ほとんど引用大会でどうもすいません

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2010/04/13

お題「3月決定会合議事要旨から」

中々今回のはワロタ。

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g100317.pdf

○まずは何と言っても2名の反対理由が正論過ぎる件

これは昨日市場関係者の皆様がお読みになられた事かと存じますが、採決の部分での須田さんと野田さんの反対理由がどちらも正論で「いやもう仰る通りですなあ」という感想が多かったのではないかと存じますです、はい。

まず須田さん。

『須田委員は、

@足もとの各種経済指標は概ね想定どおりに推移しており、追加の緩和措置を講じる明確な理由が見当たらないこと、

A 日本銀行の金融政策は、あくまで金利水準を目安にしているにもかかわらず、特定のオペの資金供給量で金融緩和の度合いを測るといった誤解が、市場などに拡がる可能性があること、

B 市場が織り込めば、それに従わざるを得ないとの見方が強まるリスクがあること等から、長い目でみた場合には、実施することのコミュニケーション上のデメリットが大きい

として反対した。』(機種依存文字は原文ママで勘弁)

まず循環的に言えば回復しているという点を突いて、循環的に回復しており景気判断も前進させる中での追加緩和措置の実施という話は、従来のロジックからすれば変というのはまあその通り。これが従来から先走り型というかプロアクティブというかな動きをしていれば別なのですが、まあ12月の対応にしても構造問題(デフレ)対応で動いたのですが、あくまでも「デフレマインドの拡大懸念」というような対応であって、「下振れリスク対応」という名目でしたから、今回の措置は「従来のロジックから飛躍している」という点ではまさにおっしゃる通り。

これがですな、今月の展望レポートで先行きの物価見通しが引き続き基調的にマイナス継続ですよというような見通しでも出る中であれば、「中長期的なデフレ定着を阻止するために緩和拡大」というようなロジックを持ち出す事ができるのでそこまでのロジック飛躍にならんのですよね。と、考えますと本来は4月に追加緩和した方が話には無理が無かったという所でしょう。

で、2番目の論点はまあそうですなということで、金利市場の実際の価格形成という意味で言えば、新型オペの量が幾らだから金利がどうなるという話は実は実態を反映していないのであります。確かに固定金利オペの無い世界からある世界になった場合には意味がある(現実問題として3か月TBの金利は2bp程度低下した)のですが、それを増やしたからどうなのという点に関しては他のトータルの資金需給の関係があって、別に新型オペを増やしたから緩和度が上がるのかというとそれは微妙。つまりまあぶっちゃけ(短期金融市場以外の)ミスリードに期待した措置であり、そのようなインチキはどうなのかという話ですわな。

従って、公表文では新型オペの増額を決定という形にしていますが、公表文の決定事項という意味では『当面の金融政策運営について(やや長めの金利の低下を促す措置の拡充、12時49分公表)』という事で、あくまでも「金利」という事になっているのですが、それはあくまでも表面的な話で、やはりそらインチキでしょというのが須田さんの主張で、それはまあ誠に御尤も。(参考)→http://www.boj.or.jp/theme/seisaku/kettei/index.htm

んでもって3番目は正しくアラン・ブラインダー元FRB副議長が言う「自分の尾を追う犬」状態になる事の弊害でありまして、これは野田さんはより強い調子で指摘していますが、まあ3月の追加緩和(のようなもの)に関してはどっからどう見ても「日銀は差し込めば動く」という印象を与えたのでごさいまして、これはもう仰る通りと。


で、野田委員。

『野田委員は、必要と判断される場合には、迅速・果敢に行動する用意はあるが、

@ 経済見通しが若干上振れ、物価見通しは中間評価での想定に概ね沿って推移し、金融市場の急変等の事情もないこの時点で追加緩和を行うことは、これまでの金融政策の枠組みと整合的ではなく、市場とのコミュニケーションの持続性の観点から不適当であること、

A 追加緩和策による金利低下の効果が限定的であり、アナウンスメント効果も期待しにくい一方で、観測報道等に金融政策が振り回されたとの誤解を与え、金融政策の信認を低下させるという副作用が懸念されること

等から、反対した。』

野田さんの場合は須田さんとややトーンが違うのは「追加緩和を行わないという訳ではない」というのが最初にある所で、従来野田さんは金融機関の不良資産問題が実体経済に与える影響について、かなり厳しく見ており、それは循環的な問題ではなく構造的な問題であるだけに悪影響は長引くという見解を示していましたので、そういう意味では別にタカ派では無いので間違えないようにしましょう。

で、1番目はまあその通りでございまして、「これまでの金融政策の枠組みと整合的ではない」というのが正しく先程も申し上げた通りで、従来の下振れ対応型の政策と話が違うじゃねえのというのは正論も正論。本来は3月のあのタイミングで追加緩和するというのであれば、「日銀はより積極的に緩和を続けるのですよ」というような転換をアナウンスする位であれば良いのですな。

そして2番目ですが、新型オペ20兆円に増額して金利低下の効果が限定的というのは誠に仰る通りにも程があるのでして、3月の財政大幅払い超によって新型オペと企業金融特別オペという長い期間の資金供給オペが短いオペに食い込む形になってしまい、足元で短いオペが足りなくなってきたせいでGCレートが昨日ベースで0.14-0.145とかに上昇している(ただし3か月TBは0.12%のままですけど)というような動きになっておりまして、実際問題として新型オペを増額したからと言って金利が下がるかというと下がらないのでして、これはまあ野田さんの指摘通り。

で、アナウンスメント効果に関しては、金利市場という意味では正直言って無いと思うのですが、金利市場以外の皆様の誤解、あるいは野田さんの反対理由にあるような「従来の枠組みと整合性の無い緩和措置を実施した」という点から来る「ということは日銀は従来の枠組みから踏みこんだ措置を取ったのではないか」という理解(または誤解)を招くという意味での効果はあるのかなあと思うので、その点だけは微妙な気がします。

で、「観測報道等に金融政策が振り回される」という話は全くもってその通りでございまして、最早何を付け加える事もございませんな。

と言う話は昨日の市場で思いっきり話題になっていましたので今更でございますけれども、あたくしの備忘録でもございますので書いておくのだ。


○で、当面の金融政策運営に関する検討部分もオモシロス

ネタが多いので箇条書きで。

・これは4月声明文の布石ですね

検討の最初の所から。

『こうした政策の効果について、何人かの委員は、政策金利を0.1%で維持することで、物価下落幅の縮小に伴って実質金利が低下するとともに、企業収益の回復が鮮明になっていることも相俟って、金融緩和効果が強まってきていると述べた。』

これが4月声明文での金融環境の認識前進につながったという事ですね、わかります。


・新型オペの効果について

まあターム物金利が何となく下がった(3か月TBで0.02%ですけどね)のはそうなのですが。

『多くの委員は、昨年12 月に固定金利方式の共通担保資金供給オペレーション( 固定金利オペ) を新たに導入して以降、

@ 短期金融市場における長めの金利が総じて低下しているほか、貸出金利も更に低下している、

A 企業マインドの下振れを回避するという面でも一定の効果があった、

と指摘した。』

1番目に関しては、総じて低下ってまあ2bp位の世界なのですけど・・・・それが貸出金利に影響するのかというと正直言ってそれよりも別のファクター(銀行の融資姿勢とか企業の資金需要とか)の方が効いてるんジャマイカと思いますが、そう言っては身も蓋も無いというのはオトナの話ですかそうですか。

で、2番目は「ふーん」という感じで。企業マインドもそうですけれども、デフレ克服姿勢を見せる事による企業だけではなく全体的なマインド改善に向けてどうしましょっていう文脈なら判るのだが。

『これらの委員は、景気が持ち直し、物価の下落幅が縮小しているこの段階で追加的な緩和措置を実施することは効果的であり、固定金利オペを大幅に増額することにより、やや長めの金利の低下を促す措置を拡充すれば、経済・物価の改善の動きを確かなものとすることに資するのではないかと述べた。』

ただまあそれが従来の枠組みと整合性あったんでしたっけというのは野田さんの
指摘の通り。


・ところで20兆円は決定会合で決めたのか執行部が決めたのか???

で、その20兆円に関しての話がややこしい。

『委員からの問題提起を受けて、執行部より、

@ 特別オペの残高は約5兆円だが、4月以降、漸次減少し、6月には残高がゼロとなる予定であること、

A CP買現先オペの残高は約2兆円だが、CP市場の改善を踏まえると、今後、平時の運用に戻していくことが適当であると考えられること、

が説明された。更に、執行部からは、これらの資金供給を代替するとともに、やや長めの金利の低下を促す措置を拡充するとすれば、固定金利オペの資金供給額を10 兆円程度増額し、合計で20 兆円程度とすることが考えられる、と付け加えられた。』

『多くの委員は、固定金利オペの資金供給額を20 兆円程度に増額するという今回の措置の拡充は、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰するために中央銀行としての貢献を粘り強く続けていくとの方針を、改めて明確に示すものであると述べた。』

・・・・・えーっと、これだと20兆円を決定したのが決定会合なのか執行部なのか良く判らん、というか結局決定会合で決めているように見えるけど、特定のオペの増減を一々決定会合で決めるのってどうなのよ、という須田さんの反対理由に繋がるツッコミどころではございます。

しかしまあ何ですな、この説明ですけれども、「改めて明確に示す」ということで要するにマインド面向けの政策ですよという話ですが、こんな話をする人もいるのね。

『何人かの委員は、特別オペが、3 月をもって完了し、4 月以降、オペの残高が漸次減少していく中で、固定金利オペによる資金供給額を大幅に増額することで、追加的な金融緩和の効果が得られると述べた。』

・・・・たぶんそれは無い無い。


・で、須田さんと野田さんはこのように反対してましたと

念の為引用。

『これに対し、複数の委員は、足もとの各種経済指標は概ね想定どおりに推移しており、日本経済は現在持ち直しの過程にあることなどから、今回、追加の緩和措置を講じることは不適当と述べた。このうち、ある委員は、市場機能に与える影響等も踏まえると、追加緩和については、慎重な検討が必要であると指摘した。』

市場機能に与える影響というのは野田さんかなという感じもしますが、固定オペを増やし過ぎると足元のコントロールが難しくなるという点について指摘したのであれば野田さんではなかろうかと。



・要するに日経新聞はケシカランということですね、わかります

『委員は、情報発信のあり方について議論を行った。』

キタコレ。

『多くの委員は、今回の金融政策決定会合のかなり前から、追加金融緩和策を検討しているとの報道がなされ、市場にも様々な思惑が高まったことに言及した。何人かの委員は、事前の報道や市場の思惑が高まってしまうと、金融政策決定会合の結果が予想に沿ったものでも、逆に予想に反したものとなっても、結局、中央銀行の政策運営に対する信認が失われる可能性があると述べた。』

つまり日経新聞は日銀の邪魔ばっかりしやがってケシカランと言う事ですね。

『多くの委員は、金融政策の運営は、あくまで、中長期に亘る経済・物価情勢の判断に基づいて行うものであり、事前報道や市場の思惑と反する場合には、情勢判断や政策運営に関する説明を丁寧に行うことによって、国民の信頼を得ることが出来ると述べた。こうした議論を経て、委員は、情報発信のあり方については、今後、これまで以上に細心の注意を払っていく必要があるとの見方で一致した。』

まあつまらんリークみたいな話は止めなさいなという所ですが、何せ今回の緩和措置のように「従来の枠組みと整合性が無い」事をするのが日銀クオリティなので取材する方もそりゃ頑張るわなと思うのであります。


○物価に関してやたら強気の人が少なくとも一人いるのですが・・・・・

で、更に戻って経済状況の認識についての検討の概要に関してですが、こちらに関しては割と慎重な見方が多くて、引用すると長くなるので引用はスルーしますけれども、輸出と生産が強めの見方ですが、設備投資に関しての先行きは結構慎重で、雇用・所得環境も同様に慎重。個人消費はまあ普通の見方ですが、やや見方が分かれている感じですな。

で、物価に関して。

『消費者物価( 除く生鮮食品) の前年比について、委員は、経済全体の需給が緩和状態にあるもとで下落しているが、その幅は縮小傾向を続けており、こうした動きは、1月の展望レポートの中間評価で示した見通しに概ね沿っているとの認識を共有した。』

『複数の委員は、消費者物価指数の基調的な傾向を示す刈り込み平均の前年比マイナス幅がこのところ縮小してきていると指摘した。もっとも、ある委員は、価格下落品目数が引き続き増加するなど、物価下落の裾野が拡がっていると指摘した。』

ということで、現状に関してはやや弱めの意見1名にちょっと明るめが複数となっていますが、先行きに関しては・・・・

『先行きについて、委員は、当面は現状程度の下落幅で推移したあと、マクロ的な需給バランスが徐々に改善することなどから、下落幅が縮小していくとの見方を共有した。』

まあこれは良いのだが。

『ある委員は、実体経済の持ち直しが物価に波及するには相応のラグがあり、今後、物価面で、景気持ち直しの影響が現れてくる可能性が高いと述べた。』

・・・・・・これはまた強気な。もしかしてもしかしてこの前の会見で妙に強気な事を言ってたどこぞの総裁様ですか????

『ただし、何人かの委員は、需給環境の改善は緩やかであるため、物価のマイナス幅の縮小も緩やかにならざるを得ないと述べた。ある委員は、過去、短期間で物価が大きく上昇したのは、資源価格の高騰や税制の変更といった場合のみであり、需給環境の改善に伴う物価上昇には時間がかかると述べた。』

こっちの見方の方が妥当だと思うのだが。資源価格は上昇気味だからそっちから来る可能性はあると思いますが、それは単なる交易条件やマージンの悪化という話でして、別に嬉しい価格上昇ではないですわな。

『物価のリスクについて、何人かの委員は、中長期的な予想物価上昇率の下振れには引き続き注意する必要があると述べた。一方、ある委員は、新興国・資源国経済の過熱に伴う資源価格の上昇により、わが国の消費者物価も上振れるリスクにも注意する必要があるとの見方を示した。』

また1名上振れリスクとな・・・・うーむ。しかも資源価格の上昇は交易条件(以下同文)。

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2010/04/09

まずは月報(ただし概要部分のみ)比較から。

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp1004.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp1003.pdf(前回)

○月報のトーンを見ると「判断前進」とは普通言わんと思うのだが

という小見出しで正直話は終了しているのですが(^^)、例によって例の如く比較するとこれがまた全然変わらんのよ。

・現状判断

『わが国の景気は、国内民間需要の自律的回復力はなお弱いものの、海外経済の改善や各種対策の効果などから、持ち直しを続けている。』(今回)

『わが国の景気は、国内民間需要の自律的回復力はなお弱いものの、内外における各種対策の効果などから持ち直している。』(前回)

というのは声明文の比較で申し上げたのと同じですが、ここの所持ち直しって言ってるのが「続けている」と入ったのでそりゃまあ表現としては少し強くなったっちゃあ強くなったのですが、これを判断前進というのかよという論点については本石町日記さんがブログネタにしていますのでご参照ありたし(^^)。

その次の需要項目に関しては設備投資の所だけが変わっているのでして・・・・

『輸出や生産は増加を続けている。企業の業況感は、引き続き改善している。設備投資は下げ止まっている。個人消費は、厳しい雇用・所得環境が続いているものの、各種対策の効果などから耐久消費財を中心に持ち直している。住宅投資は下げ止まりつつある。この間、公共投資は減少している。』(今回)

『輸出や生産は増加を続けている。設備投資は概ね下げ止まっている。個人消費は、厳しい雇用・所得環境が続いているものの、各種対策の効果などから耐久消費財を中心に持ち直している。住宅投資は下げ止まりつつある。この間、公共投資は減少している。』(前回)

えーっと、ここでは設備投資が「下げ止まりつつある」から「下げ止まっている」に変化したのと、短観を受けた企業景況感に関する言及だけ変化しているのですな。まあ声明文と同じですが。


・先行き見通し

で、先行きに関してですが、昨日ご紹介した声明文比較では、前回あった「2010 年度半ば頃までは」というのが「当面」に変わっているのはどういう意味でしょうなという事を書きましたが、月報ベースでの表現は前回も今回も同じですな。

『先行きについては、景気は持ち直しを続けるが、当面そのペースは緩やかなものとなると考えられる。』(今回)

『先行きについては、景気は持ち直しを続けるが、当面そのペースは緩やかなものにとどまると考えられる。』(前回)

いつもは並べないのですが、念の為並べてみました(^^)。全く同じでございますので、これはやはり声明文の違いは単に「2010年度半ば頃」という時間が手前にやってきた事によるものと解釈するのが妥当のようですね。

項目別判断も同様に全く同じですので今回分だけ引用。

『すなわち、輸出や生産は、増加ペースが次第に緩やかになっていくとみられるが、海外経済の改善が続くもとで、増加基調を続けるとみられる。設備投資は、収益が回復しているものの、設備過剰感が強いことなどから、当面はなお横ばい圏内にとどまる可能性が高い。個人消費も、各種対策の効果が下支えに働くものの、厳しい雇用・所得環境が続く中、当面、横ばい圏内で推移するとみられる。この間、公共投資は、減少を続けるとみられる。』(今回)


・物価の現状判断

これまた前回と全く同じです。

『物価の現状について、国内企業物価の3か月前比をみると、製品需給緩和の影響が続く一方、国際商品市況高の影響から、足もとは強含んでいる。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、経済全体の需給が緩和状態にあるもとで下落しているが、その幅は縮小傾向を続けている。』(今回)

先行き判断に関しては、消費者物価の判断を若干引き上げていますね。

『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、当面、強含みで推移するとみられる。消費者物価の前年比は、マクロ的な需給バランスが徐々に改善することなどから、基調的にみれば下落幅が縮小していくと予想される。』(今回)

『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、当面、強含みで推移するとみられる。消費者物価の前年比は、当面は現状程度の下落幅で推移したあと、マクロ的な需給バランスが徐々に改善することなどから、下落幅が縮小していくと予想される。』(前回)

ということで、消費者物価の部分で「現状程度の下落幅で推移」という部分が抜けた所が判断を引き上げになっています。なお、「基調的にみれば」という部分は高校授業料無償化によるCPI押し下げ(▲0.5%弱)を意識した部分ですな。


・金融環境が謎なのだが・・・

金融環境に関してですが、市場の価格動向はまあ事実関係であって判断項目ではないのでスルーして、金融環境の総括判断に関して。

『わが国の金融環境は、厳しさを残しつつも、緩和方向の動きが強まっている。』(今回)
『わが国の金融環境は、厳しさを残しつつも、改善の動きが続いている。』(前回)

というのは声明文にあったように変化しているのですが、各項目を見ると特に表現に変化が無いのが謎でございます。

『コールレートがきわめて低い水準で推移する中、企業の資金調達コストは、低下傾向が続いている。実体経済活動や企業収益との対比でみると、低金利の緩和効果はなお減殺されている面があるものの、その度合いは、企業収益の改善などを映じて低下している。』(今回)

『資金供給面では、企業からみた金融機関の貸出態度は、なお厳しいとする先が多いものの、改善している。CP・社債市場では良好な発行環境が続いており、低格付社債の発行環境にも改善の動きがみられている。資金需要面では、企業の運転資金需要、設備資金需要とも後退しているほか、一部に、これまで積み上げてきた手許資金取り崩しの動きもみられている』(今回)

とまあこの部分なのですが、前回と変化しているのは低格付社債の発行環境だけでございまして、今回は「改善の動きがみられている」と前回の「CP・社債市場では、低格付社債を除き、良好な発行環境が続いている」から判断を前進させていますが、まさかこれを持って「緩和方向」という事では無いと思いますのでどこでどう「緩和方向」としたのか謎でございます。

まあ本文中身をもっと読み込めば良いのかもしれませんが(汗)


・ということで

ま、そんな訳でして、月報全体でみるとそんなに前進をしているようには見えないので、声明文を最初に見た時の印象とそんなに変わらないという所でございます。問題は総裁会見なのよね・・・・・・

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2010/04/08

決定会合結果自体はまあこんなものでしたけど・・・・

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k100407.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k100317.pdf(前回)

○声明文はやや判断前進で展望レポートで上方修正ですかね

前回と例によって比較した時に、一番気になったのは金融環境の部分でござんした。まあとりあえず最初の部分から比較しますです。

・現状判断では新興国経済を引き上げ

『わが国の景気は、国内民間需要の自律的回復力はなお弱いものの、海外経済の改善や各種対策の効果などから、持ち直しを続けている。』(今回)

『わが国の景気は、国内民間需要の自律的回復力はなお弱いものの、内外における各種対策の効果などから持ち直している。』(前回)

ということで、持ち直しを「続けている」になってますので、流れの中ですから継続してという所ではありますが、表現としては強くなっていますわな。で、項目別に見た場合には、海外経済というか新興国経済に関しての表現を引き上げています。

『すなわち、新興国経済の高成長などを背景に、輸出や生産は増加を続けている。』(今回)
『すなわち、内外の在庫調整の進捗や海外経済の改善、とりわけ新興国経済の強まりなどを背景に、輸出や生産は増加を続けている。』(前回)

でもって、今回は短観を受けて企業の景況感に関する指摘が入っているのが前景と違いますが、後の部分に関しては同じですな。ということで今回分だけ引用です。

『企業の業況感は、引き続き改善している。設備投資は下げ止まっている。個人消費は、厳しい雇用・所得環境が続いているものの、各種対策の効果などから耐久消費財を中心に持ち直している。公共投資は減少している。』(今回)


・それより重要なのは金融環境かなと思います

今回真っ先に目が行ったのはこちらです。

『この間、金融環境をみると、厳しさを残しつつも、緩和方向の動きが強まっている。』(今回)
『この間、金融環境をみると、厳しさを残しつつも、改善の動きが続いている。』(前回)

・・・・・えーっと、これはどういう話かと申しますと、先般の短観にも出ていましたが、企業収益環境が改善する中で金融緩和の効果がより強まるようになっているという話ですわな。金融経済月報(概要)ではそのあたりを説明していますよね。例えば先月の月報では『実体経済活動や企業収益との対比でみると、低金利の緩和効果はなお減殺されている面があるものの、その度合いは、企業収益の改善などを映じて低下している。』という表現になっていますが、この部分が改善している結果として、緩和政策の効果は更に強まって来ているという説明になっていると思います。よく福井総裁が量的緩和継続する中で景況感が回復するステージでこういう話してましたな(^^)。

つまり、12月以降の日銀の緩和強化+デフレ脱却への姿勢強化という流れからすると、この説明は「緩和政策の効果も強まって来たのでデフレ脱却への効果も強まりますよ!」という事で、ここに「引き続きデフレ脱却の為に粘り強く金融緩和を継続」って姿勢を出しているので、セットとしては「緩和政策の継続で景気押し上げ効果を高めますよ」という話になって、「デフレ脱却に向けて頑張る日銀」という姿勢を明確にできるのですけど、会見で総裁様が何か微妙にぶち壊し発言をしているように見えるのが如何なものかと思ったのですが、その話は後ほど。


・物価判断に変化無し

『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、経済全体の需給が緩和状態にあるもとで下落しているが、その幅は縮小傾向を続けている。』(今回)


・先行き見通しは一言だけ変化

『先行きの中心的な見通しとしては、当面、わが国経済の持ち直しのペースは緩やかなものとなる可能性が高い。』(今回)

『先行きの中心的な見通しとしては、2010 年度半ば頃までは、わが国経済の持ち直しのペースは緩やかなものに止まる可能性が高い。』(前回)

ここは単に「2010年度半ば」というのが時間的に近くなってきたから「当面」に差し替えたのか、それとも「緩やかな回復から順調な回復への進化が前倒しになった」のかは良く判らんのですが、展望レポートでより詳しい話が出てくると思います。ただまあ会見報道を見る限り、やたらめったら回復をアピールしているみたいですから後者なのかもしれませんな。会見報道見る前は前者だと思っていやのですけれども。

『その後は、輸出を起点とする企業部門の好転が家計部門に波及してくるとみられるため、わが国の成長率も徐々に高まってくるとみられる。物価面では、中長期的な予想物価上昇率が安定的に推移するとの想定のもと、マクロ的な需給バランスが徐々に改善することなどから、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比下落幅は縮小していくと考えられる(注2)。』(今回)

で、(注2)というのは高校無償化のCPI低下分は(・∀・)キニシナイ!という話をしていますので、今後原油価格上昇でCPIが上昇しても気にしないんですよね、ウッシッシ。

という悪態は兎も角、こちらは同じです。


・リスク認識も同じ

『リスク要因をみると、景気については、新興国・資源国の経済の強まりなど上振れ要因がある一方で、米欧のバランスシート調整の帰趨や企業の中長期的な成長期待の動向など、一頃に比べれば低下したとはいえ、依然として下振れリスクがある。また、最近における国際金融面での様々な動きとその影響についても、引き続き注意する必要がある。物価面では、新興国・資源国の高成長を背景とした資源価格の上昇によって、わが国の物価が上振れる可能性がある一方、中長期的な予想物価上昇率の低下などにより、物価上昇率が下振れるリスクもある。』(今回)

前回と全く同じです。


・決意表明文では1か所だけ違います

『日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することが極めて重要な課題であると認識している。そのために、中央銀行としての貢献を粘り強く続けていく方針である。金融政策運営に当たっては、きわめて緩和的な金融環境を維持していく考えである。』(今回)

『日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することが極めて重要な課題であると認識している。そのために、中央銀行としての貢献を粘り強く続けていく方針である。今回のやや長めの金利の低下を促す措置の拡充もこうした方針に基づくものであり、金融政策運営に当たっては、今後とも、きわめて緩和的な金融環境を維持していく考えである。』(前回)

緩和措置追加に関する文言部分はさておきまして、どこが違うのかと言いますと、最後の一文でして、『金融政策運営に当たっては、きわめて緩和的な金融環境を維持していく考えである。』って所で先月にあった「今後とも」というのが抜けているので、一瞬「ええ?」と思うのですが、2月の時点ではこの「今後とも」という文言が無かったので、前回追加緩和措置を実施したから「今後とも」というのが入ったのかなあという気はするのですが、こういう所微妙に変化させられると気になって困りますな。


とまあそういうことで、正直言ってこの声明文が出た時にはまあ想定通りですなあ程度だったです。月報ではもう少し強い話を書くのかなあとか思った次第でして。

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2010/04/07

○短観のCP発行環境

この前(3月2日)こんなリリースがありまして、
http://www.boj.or.jp/type/release/nt_cr10/nttk30.htm

その時に過去分の発行環境判断DIに関して「実際に発行している企業ベース」数値も公表されていまして、3月3日の駄文で過去の計数確認をしたら「やっぱり市場環境をきっちり反映してるわ」と感心した訳ですけど、さて今回はと言いますと。

http://www.boj.or.jp/type/stat/boj_stat/tk/ref/tkref1003.pdf

    (発行企業ベース)(全企業ベース:従来の公表値)

2010年03月  +32      ▲6
2009年12月※ +24      ▲9
2009年09月  +23     ▲11
2009年06月  +15     ▲14
2009年03月  ▲22     ▲24
2008年12月  ▲55     ▲20
2008年09月  +13      +1
2008年06月  +18      +3
2008年03月  +17      +3

※2009年12月は調査対象企業の旧ベース(今回より見直し)の数値で、新ベースに直すと全企業ベースの数値が▲10になります。

でこの数値ですが、12月の新型オペで3か月TBの金利が低下して、主に3か月以内の発行が多いCPレートに関してもその分きっちりと低下しましたし、そもそものCP発行が減ってきた事から投資家の要求する銘柄間較差も無くなって来て、何かもう同じようなレートが並ぶでござるの巻という状況になっていましたので、ここでのDI上昇は市場の金利環境をきっちちと反映しています。

つーことで、中々この参考計数は備忘録として有益(実際にCP市場の中にいる人としては発行状況をレート推移を毎日見てますから状況は判りますが、そうじゃない人とか、後からどうだっけと思った時にはこの数字は便利だわという事ね)ですなあという所で。

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2010/04/02

○短観与太分析

まずは短観ですが。

http://www.boj.or.jp/type/stat/boj_stat/tk/gaiyo/tka1003.pdf

大企業製造業DIが▲14ってよくよく考えたら強い結果ですし、市場予想通りではあったのですが、予想じゃなくて期待ベース(^^)では、あたくしも調子に乗って「マイナス一桁あるで♪」とか勝手に盛り上がっていたので数字が出た瞬間はどちらかというとしょぼーんという感じでした(^^)。

ということで、いつもの不真面目なチェックをば。

・業況判断DIの達成度合い

前回は「9月時点ではもうちょっと改善するつもりだったのにあんまり改善しませんでしたね」という感じだったのですが、今回はどうなったかと申しますと・・・・


        (12月時点)      (3月時点)
        現状→3月予測     現状→6月予測
製造業大企業  ▲24→▲18     ▲14→▲8
製造業中堅企業 ▲30→▲31     ▲19→▲20
製造業中小企業 ▲40→▲42     ▲30→▲32

非製造業大企業  ▲22→▲19    ▲14→▲10
非製造業中堅企業 ▲29→▲33    ▲21→▲21
非製造業中小企業 ▲35→▲41    ▲31→▲37

今回は12月の予測DIよりも全セクターで改善という素晴らしい結果。特に企業規模の小さい所で先行き見通し対比大幅に改善しているのはまあいい感じなんじゃないでしょうか。

先行き予測数値が中堅以下で横ばいまたは下向きに出ているのですけれども、これはまあ12月時点でも同じ(9月は中堅以下が横ばいで出ていた)でしたので、改善状況の下でのアンケートの仕様だと思われますが、まあ次回コケなげれば堅調継続なんじゃないっすか。


・雇用判断DI

前回は「9月調査時点で改善が頭打ちになりやがったけれども、今回に関してはお先真っ暗みたいな話が出ている程悪くは無いですね、先行きも判断タイト化してるし」という結果でしたが。


        (12月時点)      (3月時点)
         現状→3月予測    現状→6月予測
製造業大企業  +21→+18     +17→+13
製造業中堅企業 +26→+23     +18→+16
製造業中小企業 +29→+27     +20→+17

非製造業大企業  +8→+7      +9→+6
非製造業中堅企業 +9→+9      +7→+8
非製造業中小企業 +9→+10     +8→+13

まあ一見するとこりゃまあ改善してますねという所ではないかと。予測DIよりも好転しているセクターが多く、特に製造業が全規模で改善しているのは良いお話ではないかと思うのですが。前回の時は「へ〜意外に落ち込まないもんなのですね〜」と心強く思った(何故かと言うと金融市場と報道ベースがお先真っ暗っぽい話だったから)とか書きましたが、やはりそういう事でしたという結果ですな。

とはいっても相変わらず「過剰」超なのは変わりませんが(−−)


・証券業業況判断DIを見ようと思ったら・・・・・

証券業の業況判断DIというのは足元のブレっぷりと、先行き予測数値の外しっぷりの豪快さに定評があるので長期的に楽しんでいたのですが・・・・・

『8.金融機関の業況判断等』の箱を見たら、その中の業種分類に見慣れない文言が。

『金融商品取引業』

・・・・orz

金商法改正がどうしたこうしたの影響があるのですけれども、案の定12月計数を確認したら前回出ていた12月計数と今回出ている12月計数が違ってまして、良く良く見たら前回まで『貸金業・投資業等』というのが『貸金業等』になってまして、こちらも修正になっているのでまあカテゴリーの見直しがあったんでしょう。

ということで、証券業の楽しいDIのブレっぷりを見る事が出来ないというのは実に残念な所でありまする。今回は一回パスということで。


・資金繰り判断DI

      (12月時点) (3月時点)
大企業    +6     +9
中堅企業   ▲3     +1
中小企業  ▲16     ▲14

中堅企業までプラスに(^^)。


・貸出態度判断DI

      (12月時点) (3月時点)
大企業    ▲1      +2
中堅企業   ▲5      ▲1
中小企業   ▲11     ▲8

大企業の+2ってもっと良いだろと思うのだがまあこれも改善と。


ということで与太分析でございましたが、証券業のカテゴリーが変わってしまったので正直しょんぼりしちゃいますなという感じです、とほほ。


○生活意識アンケート

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/ishiki/ishiki1004.pdf

これまた細々見ると味わいが非常に深いのですけれども、とりあえず政策インプリケーション的に重要なのは物価に関する所でしょう、ということで物価に関する部分を見るのだ。ちなみに()が前回調査の数値ですので念の為。

『Q12.次に「物価」についておうかがいします。あなたご自身の感じでは、
「物価」は1年前と比べてどう変わりましたか(「物価」とは、あなたが
購入される物やサービスの価格全体のことです)。

1 かなり上がった    3.4  ( 4.4 )
2 少し上がった     20.2 ( 24.4 )
3 ほとんど変わらない  36.0 ( 35.1 )
4 少し下がった     35.9 ( 31.5 )
5 かなり下がった    3.9  ( 3.4 )』

ということで下がっているというのがまた増えているのですが、前回調査の期間以降に益々デフレがどうのこうのという話が出たという事も勘案すると(前回調査は11月12日〜12月8日が調査期間で、政府様が対策皆無のままデフレ宣言をするという意味不明な供述じゃなかった行動をしたのが11月20日)シャーナイナイという所。

で、問題は先行き見通しだと思う訳ですが。

『Q14. 1年後の「物価」は、現在と比べるとどうなると思いますか。

1 かなり上がる    2.1 ( 3.0 )
2 少し上がる     30.1 ( 30.8 )
3 ほとんど変わらない 50.2 ( 46.2 )
4 少し下がる     16.2 ( 17.3 )
5 かなり下がる    0.7 ( 1.1 )


Q15. それでは、1年後の「物価」は現在と比べ何%程度変わると思いますか。
―― 数値をご記入のうえ、上・下いずれかに○をお願いします。なお、「0%」と
   思われる方は、記入欄に「0」とご記入下さい。

平均値 +1.7 ( +1.7 )
中央値 0.0 ( 0.0 )


平均値:極端な値を排除するために上下各々0.5%のサンプルを除いて計算した平均値。
 ―― 全サンプルの単純平均値は +1.8 (前回調査<21/12月実施>:+1.7)。
中央値:回答を順番に並べた際に中央に位置する値。』

(注釈部分や表記部分を引用の都合上改変していますが数値は表記のままです)

・・・・ほほう、意外に悪化していないですな。

『Q16. 5年後の「物価」は、現在と比べるとどうなると思いますか。

1 かなり上がる    10.2 ( 12.4 )
2 少し上がる     53.6 ( 49.8 )
3 ほとんど変わらない 24.0 ( 23.4 )
4 少し下がる     8.6 ( 10.2 )
5 かなり下がる    1.5 ( 1.6 )


Q17. それでは、5年後の「物価」は現在と比べ毎年、平均何%程度変わると思いますか。
―― 数値をご記入のうえ、上・下いずれかに○をお願いします。なお、「0%」と
   思われる方は、記入欄に「0」とご記入下さい。

平均値 +3.0 ( +3.5 )
中央値 +2.0 ( +2.0 )

(なお、この数値は5年間トータルではなく「毎年平均何%ですかという設問です)

平均値:極端な値を排除するために上下各々0.5%のサンプルを除いて計算した平均値。
 ―― 全サンプルの単純平均値は +3.2 (前回調査<21/12月実施>:+3.6)。
中央値:回答を順番に並べた際に中央に位置する値。』

(注釈部分や表記部分を引用の都合上改変していますが数値は表記のままです)

・・・・・うーむ、平均値が下がっているというのを重視すべきなのか、それとも見通しの向き(Q16)が上昇しているのを重視すべきなのかが微妙。

で、基本的にここで出てくる物価数値っていうのはヘドニックが掛かっていませんので(^^)、実際の物価指数より上にぶれるのは当たり前にも程があるので、そこはフィルター掛けてみないといかんですけれどもね(^^)。


あと、これは何の意味がと思ったのですが、今回からアンケート項目に『電子マネーに関する利用状況等』というのが入りまして、その代わりに『日本銀行に関する認知度、信頼度等』というのが抜けています。まあ最近は電子マネーとかの話って日銀レビューでも出てましたし、この前なんぞあたくしの趣味でRiksbankの副総裁がカード決済に関するスピーチをしていたのをご紹介しましたように(^^)、まあこの点に関しては益々重要性を増してくると言う事でしょう。


なお、景況感に関して言えば、これもまた若干の改善となってまして、雰囲気的には少しはマシになってきたという所でしょうか。

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