決定会合議事要旨や金融経済月報などについて(2009年度上期に書いた分)
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2009/09/28「8月議事要旨より、議論の9月での行方を注目したい部分が少々」
2009/09/25「金融経済月報は足元は上方修正しているものの・・・・・」
2009/09/18「決定会合声明文、判断は足元前進先行き不変と言う器用な変化です」
2009/09/02「銀行勘定の金利リスク管理に関する日銀ワークショップの質疑から/雑談」
2009/08/19「1999年4月決定会合での量と金利の論議、三木委員と中原委員の意見」
2009/08/17「7月決定会合議事要旨より」
2009/08/14「金融経済月報では金融環境の表現に変化が」
2009/08/12「見事に不動の決定会合声明文」
2009/08/11「1999年4月会合での量と金利の論議、後藤委員と武富委員の指摘から」
2009/08/05「昨日の追記」
2009/08/04「金融市場レポートより、企業特オペ恐るべし」
2009/08/03「1999年4月決定会合で時間軸の話が/金融市場レポート」
2009/07/30「各国の金融政策まとめペーパーより」
2009/07/29「ハイブリッド型日本経済モデル」
2009/07/27「7月金融経済月報は結構上方修正/その他ペーパー」
2009/07/22「6月会合議事要旨より、1名の委員が臨時措置見直しに言及」
2009/07/21「銀行決算レポート/日銀ネットのシステム変更」
2009/07/16「各種措置は3か月延長になりました」
2009/07/13「国際金融ネットワークに関するレポート&電子マネーに関するレポート」
2009/07/10「生活者意識アンケートなど」
2009/07/07「さくらレポートは上方修正だけど全然上方修正じゃないですね」
2009/07/06「日銀レビューから、スワップスプレッドに関する考察」
2009/07/02「日銀短観6月、まあ数字は良くないと」
2009/06/22「5月会合議事要旨、6月日銀文学への布石」
2009/06/19「金融経済月報より」
2009/06/17「決定会合声明文でで日銀文学が登場」
2009/06/15「金融調節レポートより、続き」
2009/06/11「金融調節レポートより」
2009/06/05「キャリートレードに関する日銀レビューシリーズ」
2009/05/28「金融政策決定会合4月30日議事要旨から、出口への言及」
2009/05/27「金融経済月報比較」
2009/05/25「決定会合声明文比較/外債の適格担保化」
2009/05/13「4月会合議事要旨から(続き)」
2009/05/11「4月会合議事要旨から」
2009/05/08「在庫調整に関する日銀レビュー」
2009/05/01「展望レポートを素直に読むと時間軸」
2009/04/23「日銀の金融恐慌関連日銀レビュー」
2009/04/20「さくらレポート、まだ下げる余地があったとは」
2009/04/14「3月議事要旨続き」
2009/04/13「3月議事要旨、長期国債買入ロジックに関して」
2009/04/10「金融経済月報、基本的にはほぼ同じ」
2009/04/08「決定会合結果、担保範囲の拡大」
2009/04/03「日銀の保有国債がちょっと長期化/生活意識アンケート」
2009/04/02「3月短観と生活意識アンケート」
2009/09/28
○8月決定会合議事要旨から
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g090811.pdf
とりあえずあたくし的に気になったところから少々。
・物価に関して
最近は物価に関する論議の部分が気になるあたくしです。ということで『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』の消費者物価に関する部分から。
『消費者物価( 除く生鮮食品) について、多くの委員は、経済全体の需給が緩和した状態が続く中、前年における石油製品価格高騰の反動などから、前年比の下落幅が拡大していると述べた。先行きについて、委員は、前年における石油製品価格高騰の反動などから、当面、下落幅が拡大していくものの、2009
年度後半以降は、下落幅は縮小に向かうとの見方を共有した。』
というのは声明文や月報で示されている部分ですわな。で、その先です。
『その上で、多くの委員が、先行きの物価動向に関する論点を指摘した。』
つまり百家争鳴ですね、わかります(^^)。
『何人かの委員は、今後の賃金動向とそれを反映したサービス価格の展開が1
つのポイントであると述べた。また、多くの委員は、需給バランスと物価の関係をどうみるかも別のポイントであると述べた。何人かの委員は、価格下落品目の範囲が拡がりをみせており、需給バランス悪化の影響が徐々に拡がっている可能性が注目されると述べた。』
つーことで、賃金が伸びずにサービス価格が下がるとか物価下落品目が増えているとかいうのを見てますと、あたくしの身の回り3メートル的な感覚的な話をしてもしょーがないですけど、実は消費者のデフレマインドは結構広がっているのではないかという気がするんですが。
『この点、ある委員は、わが国の90 年代後半以降の経験をみると、需給バランスの大幅な変動に対し、消費者物価の前年比の変動はごく僅かであり、両者の関係の強さには留保が必要であると述べた。』
『更に、何人かの委員は、やや長い目でみた場合、世界の中央銀行が緩和的な金融政策を維持する中で、上振れ方向のリスクについても注意が必要であると指摘した。』
何人かの委員が指摘するとな。
『ある委員は、輸出や生産の回復ペース、物価の低下ペースがいずれもこれまでの想定対比幾分速めとなっており、こうした一見相反する動きについてどのように解釈するかが、今後の情勢判断のポイントになると述べた。』
とまあこの辺読んでてもう大分前の話になりますが、時事通信が出している「金融財政」って雑誌みたいなのがあって、2004年の8月号にあった山口泰元副総裁のインタビュー記事を思い出す次第なのですが、何でそんなもん思い出したかと言いますと単に資料の整理してて見つけたのですけどね(^^)。
そちらでは「経済成長する中で物価下落」という現象に対して『物価リンク型金融政策の是非−「成長下の物価下落」への対応』ということで今読んでも興味深い話をしているのですが、それを書いてると話が終わらないので、まあそれは聞き手の本石町日記さんの方で一つフォローをお願いしたく(何と言う無茶振り)。
と、ちょっと話が横になりましたが、その続き。
『この間、ある委員は、主要先進国で消費者物価指数前年比が過去1 年間に大幅に低下し、多くの国でマイナスに転じている点を指摘した。その上で、この委員は、今回の危機では、世界経済に過去例をみない大きなショックが加わったことを踏まえると、日本を含め、いずれの国・地域においても物価上昇率が物価安定と考えられる水準に復するまでには時間がかかる可能性が高いと述べた。』
・金融面に関しての論議
その次が金融面の話。
『わが国の金融環境について、委員は、なお厳しい状態にあるものの、改善の動きが続いているとの認識を共有した。』
というのはこれまた8月声明文通りの話ですが。
『企業の資金調達コストについて、何人かの委員は、資金余剰感が強いもとで、社債・C
P 発行金利の一段の低下や、中間期末越えプレミアムの低さなどに示されるように、改善が続いていると述べた。また、複数の委員は、高格付けC
P の発行レートが短国レートを下回る官民逆転現象が再び定着してきていると指摘した。』
『企業の資金調達動向について、何人かの委員は、社債発行額が銘柄の拡大を伴いつつ高水準となっているほか、金融機関の融資姿勢も積極化してきていると述べた。もっとも、多くの委員は、大企業の資金調達環境が大きく改善している一方で、中小企業や下位格付先の改善度合いはなお限定的なものに止まっていると指摘した。』
『また、何人かの委員は、企業の間では、先行きの業況や資金調達環境に対する不透明感が依然として根強く残っていると述べた。』
ということで、先行きの不透明感についての指摘もございますが、この辺りが9月会合での論議でどう変化したのかを見たいところであります。
・臨時措置関連
『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』から。
『金融調節上の各種臨時措置の扱いについても議論が行われた。何人かの委員は、金融環境の改善の動きが続いているものの、企業の警戒感がなお払拭できていないこと等からみて、先月の会合で措置の延長を決定したことは適切であったと述べた。』
『これに関連して、複数の委員は、市場において、時限措置の廃止・見直しと金融緩和政策からの転換を直接結びつける見方があることを指摘し、そうした見方は適切でないことを丁寧に説明する必要があると述べた。』
まーこれに関してはさすがに市場での誤解は無いと思うのですが、GC上昇している中で「地均し」とかいうようなコメントが飛び出すような状況ですと、実は誤解もあるのかもしれませんなあ、という気はして参りましたです。いやまあ普通の参加者は「金利の緩和」と「ぶっ壊れ市場の救済措置の解除」は分けていると思うのですが・・・・・
『また、ある委員は、米国等で、中央銀行がミクロの資源配分に関与することについて、特定の金融機関や企業の優遇に繋がっているとの批判が出始めていることにも注意する必要があると述べた。』
ほっほー(^^)。
・ところでこの指摘は微妙な気が
で、最後にこういう指摘があるのですが、それはちょっと微妙な気がする。
『この間、複数の委員は、民間金融機関がオペ調達への依存度を低下させており、日銀当座預金残高の水準が低下する一方、無担保コール市場残高が若干増加していることは、金融市場の機能の改善を示すものであり、前向きに受け止めているとの意見を述べた。』
とは言いましても、結局のところターム資金に関してはオペ依存だったりする(特に無担保コールへのアクセスが厳しい証券の債券ディーラー)ような気もしますが、タームのGCとかも確かに結構出合うようになっていますので、その点は市場機能の改善ちゃあ改善なのですが、単に資金余剰感が高まってタームの資金でも出さないと話にならないからという状態になっていた事の反映のようにも思えますし。
『このうちの一人の委員は、金融調節に当たっては、この市場機能の自律的な回復の動きを阻害しないよう留意しつつ、潤沢な資金供給を続けることが重要であると指摘した。』
何と言う難しい話を(^^)。
・あとちょっと気になった部分
話は戻って経済情勢に関する部分でこんなのが。
『この間、何人かの委員は、各国で講じられている積極的な財政・金融政策が、やや長い目でみると世界経済に過度な振幅をもたらすリスクや、経済に新たな歪みを蓄積させるリスクについても指摘した。』
ほほう何人かの委員ですかそうですか(^^)。
ということで、9月会合で足元が上方修正される布石はそこここにあったという感じなのでしょう。
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2009/09/25
○9月金融経済月報(概要)は足元の景気判断引き上げですが・・・・
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0909.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0908.pdf(前回)
・現状判断は微妙に引き上げ
『わが国の景気は持ち直しに転じつつある。』(今回)
『わが国の景気は下げ止まっている。』(前回)
というのは声明文にもあったとおり。
『公共投資が増加を続けているほか、輸出や生産も増加している。一方、厳しい収益状況などを背景に、設備投資は減少を続けている。』(今回)
『公共投資は増加している。輸出や生産は、大幅に落ち込んだあと、持ち直している。一方、厳しい収益状況などを背景に、設備投資は大幅に減少している。』(前回)
輸出や生産が持ち直しから増加に上方修正してますが、設備投資は減少を続けているなのであまり変わらないのかな。
『雇用・所得環境が厳しさを増す中で、個人消費は弱めの動きとなっており、住宅投資は減少している。』(今回)
という部分は前回と同じ。
・先行き見通しも微妙に引き上げています
『先行きについては、景気は持ち直していくと考えられる。』(今回)
『先行きについては、景気は次第に持ち直しに向かうと考えられる。』(前回)
というのは声明文の通りですが個別項目に関しても引き上げ部分が。
『すなわち、輸出や生産は、海外経済の改善が続くことなどから、増加を続けるとみられる。また、公共投資も増加を続けると見込まれる。』(今回)
『すなわち、輸出や生産は、内外の在庫調整の進捗や海外経済の改善などを背景に、持ち直しを続けるとみられる。また、公共投資も増加を続けると見込まれる。』(前回)
ここの輸出や生産に関しては引き上げっちゃあ引き上げですが、足元が持ち直しから増加になっている事に対応して表現を変えたという所でしょう。
『一方、国内民間需要は、耐久財の消費が各種対策の効果などから当面堅調に推移するとみられるが、全体としては、収益・資金調達環境の厳しさが残り、雇用・所得環境が厳しさを増すもとで、引き続き弱めに推移する可能性が高い。』(今回)
『一方、国内民間需要は、厳しい収益・資金調達環境が続き、雇用・所得環境も厳しさを増すもとで、引き続き弱めに推移する可能性が高い。』(前回)
財政による景気対策の効果に関する説明が入ってますが、「全体としては」弱めに推移するという言い方になっていますので、あまり上方修正している感じでも無さそうです。まー「全体としては」という微妙なヘッジクローズが入っているので、先行き弱め一辺倒でも無いという所でもあろうかと。
・物価はこれまた微妙な
『物価の現状について、国内企業物価の3か月前比をみると、製品需給緩和の影響は続いているが、国際商品市況が強含んだため、概ね横ばいの動きとなっている。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、経済全体の需給が緩和した状態が続く中、前年における石油製品価格高騰の反動などから、下落幅が拡大している。』(今回)
『物価の現状について、国内企業物価の3か月前比をみると、製品需給緩和の影響などから、緩やかな下落を続けている。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、経済全体の需給が緩和した状態が続く中、前年における石油製品価格高騰の反動などから、マイナス幅が拡大している。』(前回)
と、一気に引用しましたが、国際商品市況が強含みになったことへの言及が入った部分が違うのと、「製品需給緩和」の部分が変化しております。その点は先行き見通しに反映されていまして・・・・・
『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、当面、横ばい圏内の動きを続けるとみられる。消費者物価の前年比は、下落幅が幾分拡大したあと、前年における石油製品価格高騰の反動の影響が薄れていくにしたがい、下落幅が縮小していくと予想される。』(今回)
『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、製品需給が緩和した状態が続くもとで、当面、緩やかな下落を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、前年における石油製品価格高騰の反動などから、当面、下落幅を拡大していくと予想される。』(前回)
ということで、国内企業物価に関して「製品需給が緩和した状態」というのが抜けまして、その結果先行き見通しが「横ばい圏内」に上方修正となっています。ただまあ消費者物価に関しては説明がこれまたややこしくなっていまして、「下落幅が拡大した後に縮小する」という説明に。単に「下落幅拡大」という見通しだけだと「じゃあ何で金融緩和をしない」と言われるので上記のような器用な(苦しいとも言うが)説明になっているのでしょうな。
・金融環境
後半は概ねスルーしますが。
『わが国の金融環境は、厳しさを残しつつも、改善の動きが拡がっている。』(今回)
『わが国の金融環境は、なお厳しい状態にあるものの、改善の動きが続いている。』(前回)
ということで上方修正しているのですけれども、個別項目になるとあまり書いている事に大きな変化が無かったりなのです。違っているのは企業金融に関する所なのでまあ政策的に言えば重要な点ですけれども。
『CP・社債の発行環境は、信用スプレッドの低下や社債の発行銘柄の拡大など、改善傾向が続いている。ただし、下位格付先の社債の発行環境は依然として厳しい状態にある。』(今回)
『CP・社債の発行環境は、下位格付先では依然として厳しい状態にあるが、全体としては、信用スプレッドの低下や社債の発行銘柄の拡大など、改善傾向が続いている。』(前回)
まずは毎度あたくしが気が付くのは「語順の変更」でして、前回までは厳しい話を先に持って来たのを今回は厳しい話を後ろに持っている事ですな。それから改善傾向に関して前回あった「全体としては」が無くなっていますので、これは改善に関するヘッジクローズが外れたという事になりますので、これは判断引き上げになりますわな。さっきの国内民間需要の先行き見通しで「弱めに推移」に対してヘッジクローズが挿入されたのは「下向きにヘッジクローズが入る」でこちらは「上向きに入れてたヘッジクローズが外れる」となりますので、まあこの「全体としては」マジックという所でございましょうな。
ということで、細々とあちこちでちょっとづつ上方修正という感じの匍匐前進ちゅう感じなのではないでしょうか、と思いました。
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2009/09/18
というわけで決定会合。
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/k090917.pdf(今回の声明文)
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/k090811.pdf((前回の声明文)
○現状判断をあちこち上方修正
基調判断から上方修正ですな。
『わが国の景気は持ち直しに転じつつある。』(今回)
『わが国の景気は下げ止まっている。』(前回)
ということで上方修正ちゃあ上方修正なんですけど、まあ恐らくは「底打ちして緩やかに回復へ」という従来の見通しの線上にありますよという話だと思いますけどね。
・公共投資、輸出、生産
『公共投資が増加を続けているほか、内外の在庫調整の進捗や海外経済の持ち直し、とりわけ新興国の回復などを背景に、輸出や生産も増加している。』(今回)
『公共投資が増加しているほか、輸出や生産は持ち直している。』(前回)
ということで、新興国の回復といういつまで続くのか微妙にアレな物な気がしますが、まあその要因が登場しております。上方修正。
・生産、消費、雇用
『一方、厳しい収益状況などを背景に、設備投資は減少を続けている。また、個人消費は、各種対策の効果などから一部に持ち直しの動きが窺われるものの、雇用・所得環境が厳しさを増す中で、全体としては弱めの動きとなっている。』(今回)
『一方、厳しい収益状況などを背景に、設備投資は大幅に減少している。また、個人消費は、各種対策の効果などから一部に持ち直しの動きが窺われるものの、雇用・所得環境が厳しさを増す中で、全体としては弱めの動きとなっている。』(前回)
大幅に減少しているのが減少を続けているとなっているので大して変化はございませんな。雇用所得環境と個人消費に関しては全く変化無し。
・金融環境
『この間、金融環境をみると、厳しさを残しつつも、改善の動きが拡がっている。』(今回)
『この間、金融環境をみると、なお厳しい状態にあるものの、改善の動きが続いている。』(前回)
「厳しさを残しつつ」に変化とはこれはこれは(^^)。ということで、どうせ利上げなんぞ遠い先の話ですから、金融政策云々という話になると臨時措置の扱いという話になりますことから、こっちの認識の改善の方が「ほほー」という感じになりますわな。
・物価
『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、経済全体の需給が緩和した状態が続く中、前年における石油製品価格高騰の反動などから、下落幅が拡大している。』(今回)
『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、経済全体の需給が緩和した状態が続く中、前年における石油製品価格高騰の反動などから、マイナス幅が拡大している。』(前回)
マイナス幅というのが下落幅になったのは意味があるのか無いのか微妙ですけど、次のパラグラフ(先行き見通し)では従来より下落幅って言ってるので、ワーディングの問題からしたら「下落幅」という方が自然でしょう。前回はまだ下落って言葉を使いたくなかったという事なのかも知れませんが(^^)。
○先行き見通しは変化があまりない
『2010 年度までの中心的な見通しとしては、中長期的な成長期待が大きく変化しない中、本年度後半以降、海外経済や国際金融資本市場の回復に加え、金融システム面での対策や財政・金融政策の効果もあって、わが国経済は持ち直していく姿が想定される。』(今回)
という部分は同じなのですけど、前回あったこの文が削除されてます。
『先行きのわが国の景気は、内外の在庫調整が進捗したもとで、最終需要の動向に大きく依存する。』(前回)
ここが削除されたのは、まあ回復(ただし非常に緩やか)に対する自信度はちったあ上がったという事でしょうな。
で、物価見通し。
『物価面では、消費者物価の前年比は、当面、下落幅が幾分拡大するものの、中長期的なインフレ予想が安定的に推移するとの想定のもと、石油製品価格などの影響が薄れていくため、本年度後半以降は、下落幅を縮小していくと考えられる。』(今回)
『物価面では、消費者物価の前年比は、当面、下落幅を拡大していくものの、中長期的なインフレ予想が安定的に推移するとの想定のもと、石油製品価格などの影響が薄れていくため、本年度後半以降は、下落幅を縮小していくと考えられる。』(前回)
下落幅が「幾分」拡大ということで、先行き下落は継続するものの、そのうち下落も底打ち(変な言い方ですが^^)するでしょうという話ですかそうですか。まあ物価下落からの立ち上がりには時間が掛かるという見通しには変化がないという所だと思います。従って利上げって何の話でしたっけ状態もこれまた継続ということで。
『こうした動きが持続すれば、わが国経済は、やや長い目でみれば、物価安定のもとでの持続的成長経路へ復していく展望が拓けるとみられる。もっとも、海外経済や国際金融資本市場の動向など、見通しを巡る不確実性は大きい。』(今回)
というのはこれまた前回と変化がありません。
つまり、先行き見通しが殆ど変化無しという事は、展望レポートで示された基本的な見通しの通りに経済情勢が進行しているというお話になると思いますので、まー何と申しますか引き続き金融政策の金利の方はまったりモードになるんでしょう。
金融環境に関してはどのような認識になっていくのかという点は異例措置をどうするのか(と言ってもセーフティーネットというかバックストップになっているCPと社債の買入は本当に利上げできるような経済情勢になるまで引っ張り続けると思いますけど)という観点からちょっと見ていく必要があるかもしれませんな。まー短観が次にありますからそこ辺りからなんでしょうけど。
○リスク要因に上振れ要因が!!!!
『リスク要因をみると、景気については、新興国の回復といった上振れ要因が生じているが、国際的な金融経済情勢、企業の中長期的な成長期待の動向など、景気の下振れリスクが高い状況が続いている。物価面では、景気の下振れリスクの顕在化、中長期的なインフレ予想の下振れなど、物価上昇率が想定以上に低下する可能性がある。』(今回)
『リスク要因をみると、景気については、国際的な金融経済情勢、企業の中長期的な成長期待の動向、わが国の金融環境など、景気の下振れリスクが高い状況が続いていることに注意する必要がある。物価面では、景気の下振れリスクの顕在化、中長期的なインフレ予想の下振れなど、物価上昇率が想定以上に低下する可能性がある。』(前回)
前回との比較では見れば判るように上振れ要因が!!!!なのですけど、新興国の回復とはこれまた持続性がどうなよのという要因なのが残念なところです。新興国じゃなくて海外経済だったらかなりオシャレなのですが。
○でも意識するのは下振れリスクです
ということで、最後の所も変化が無いのですなこりゃ。
『日本銀行としては、当面、景気・物価の下振れリスクを意識しつつ、わが国経済が物価安定のもとでの持続的成長経路へ復帰していくため、中央銀行として最大限の貢献を行っていく方針である。』(今回)
前回と同じなのでありまして、上振れ要因は発生してますけど、意識するのは引き続き下振れということで、結局の所今回の会合は「足元の判断は上げたけど先行きの判断には変化がございませんなあ」という話になりますわなということで。
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2009/09/02
○銀行勘定の金利リスクがどうしたこうした
暫く前にこういうものが出てたんですけど。
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/fsc0907a.htm
ワークショップ「銀行勘定の金利リスク管理の高度化に向けて」を開催
でまあこちらにありますように、『金融高度化センターでは、6月30日に「銀行勘定の金利リスク管理の高度化に向けて」というワークショップを本店で開催いたしました。ワークショップの資料については以下をご参照ください。』というお話だったのですが、資料が基本的にパワーポイントのプレゼン資料形式だった(と記憶してますが違ってたらごめんなさい)ので「ふーん」で終了していたのですが、質疑応答が掲載されたので興味深く拝読。
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/data/fsc0907a6.pdf
中々面白い質疑応答でありまして勉強になるのですが、数学と言えば微分積分・確率統計と大学入試までしか脳味噌がついて行けなかった頭の悪いあたくしと致しましては小難しい話はさっぱりなので、精々定性的なツッコミしか出来ないのですけどちょっとだけ雑感。
コア預金の話とか、住宅ローンなどのキャッシュフローモデルとかの話ってのが銀行勘定の金利リスク把握の中でも重要な話になるのですかねというのは把握したのですけど、日本の場合っていうのはこれらの概念およびこれらの商品が普及拡大して以降に本格的な金利上昇局面というのを殆ど経験してないと思います。つまり、リスク管理という観点から一番重要なストレステストを今まで体験していないという点がとってもこう微妙だなと思うのですよ。
住宅ローンに関して言えば、90年代の頭の急激金融引き締め局面を経験していますが、当時は長期固定のローンって住宅金融公庫の20年物以外にあまり無くて、銀行業態で持ってたのは殆ど長プラ連動のローンでした(あの時は元利均等払いの均等払い額が利払いに間に合わないという泣ける事態や、均等払い額の見直しが金利上昇期にぶち当たった為に月々の支払いが困難になるというこれまた泣ける事態などが色々とありましたなあと遠い目)し、貸し出し期間も30年がギリギリだったように思えますが、今はその辺りの商品も多様化してますわな。
まーそれよりも気になるのはコア預金の概念でして、この考え方を某大手銀行さんが提唱して長期のレシーブとか長期債の安定購入とかして債券5勘定尻で安定的な収益を上げていた(一方でどこぞの大手銀行ではスワップなどで渾身のポジション組んで収益上げてましたな、余談ですが)りしてますが、実際問題として粘着性のある底溜まりのコア預金とかいう概念が一般的になって以降で本格的な金利上昇局面を全然経験していない(ゼロ金利解除だの0.5%だのは本格的な金利上昇とは言わんでしょ)ので、そーゆー意味ではこっちの方こそストレステストの経験が無かったりします。
#何せその前の金利上昇局面では臨時金利調整法がやる気元気井脇だったのですからねえ
もしかしたら当時民間が扱っていなかった10年固定という恐怖の定額郵貯を持っていた(てか今でもあるけど商品性も変わって最近は別に世の中の定期性預金対比でフツーの商品になりましたね)郵政省貯金局(当時)の動きが参考になるのかもしれませんが、当時の郵貯と市中銀行ではこれまた顧客の資金の粘着性や決済性資金の動きとかも違っていたでしょうし、中々分析は難しい気がします。
と、うだうだ申し上げましたが、まあ無知なあたくしとしては、高度化するのは良いけど、変なモデルの高度化ばっかり頑張ってストレス掛かった時に使いものにならない「高度な金融工学を駆使した管理」にならないようにしましょうねと思うのでありました。
○これはプレミアム(雑談)
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/cur0909.pdf
一部が変色した貨幣について
『1.平成21年8月5日、造幣局は、神奈川県内の金融機関が保管していた造幣局封緘の貨幣袋の中の500円ニッケル黄銅貨幣約300枚について表面の一部が変色していたとの連絡を、日本銀行から受けました。』
・・・・・マニア歓喜の展開ですかそうですか。
『3.変色が生じた原因を解明するため、造幣局において科学的分析を含む各種の調査を行った結果、貨幣の変色は、日本銀行がメーカーから調達した貨幣袋の底部の縫合部に使用されていた接着剤の影響によって生じたことが確認されました。貨幣袋の製造は縫製によることとしており、その過程で接着剤を使用することは想定されていませんでした。』
これは業者バカス。というか貨幣袋ってあのマグロの事ですかな???
『4.日本銀行としては、自らが調達した貨幣袋が原因となって貨幣の変色が生じたことは遺憾です。今回の教訓を踏まえ、貨幣袋の調達のあり方などについて、具体的な再発防止策を講じてまいります。』
まあそうですね。管理はしっかりお願いしたいと存じます。
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2009/08/19
お題「量的緩和に関する各種論点:1999年4月9日会合から」
諸般の事情により今日も虫干しネタです。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gijiroku/data/gjrk.htm
先日来引用しています1999年4月9日の決定会合における議論の続きです。ゼロ金利政策のようなもの(まずは0.15%に下げてその後出来るだけ低下させるという誘導目標ね)を2月に実施し、3月の期末越えでも0.03%〜0.05%で推移していた頃で、まだまだ都銀などは超過準備を積まないような運営をしていたという時代でした。
ちなみに、この時の議事録の最初の方では金融市場情勢について山下金融市場局長の説明および質疑があったのですが、超過準備に関する所で、引き続き都銀には超過準備を積まないようにしているという話をしていて、本文10ページから11ページで、3月積み期に都銀2行が超過準備で着地してしまったので、「ブタ積みしてどうもすいません」と担当部長が謝りに来たという話が紹介されていて、おお懐かしい話じゃと思いましたですよ。
ということで、積み上1兆円くらいでの運営の結果そんなレートが形成されてましたという状況だったということを念頭に置きつつ、今日は三木審議委員と中原審議委員の意見をまたまた全文引用しつつ、当時今の非伝統的政策に関して色々と整理されつつある論点が議論されていたことを見ていきたいと思います。
○三木委員の論点から:出すのは良いけど資金需要があるのか
三木委員が企業金融の現状について指摘しています。
『企業向けの貸出マーケットにおいては、正常な企業活動に必要な資金は十分に出回っている状況にある。むしろ企業の設備資金や運転資金需要が細っているために、銀行側がいくら企業の前に資金を積んでも借り入れにつながらないという状況になっているのではないか。また、そうした銀行の融資スタンスの前傾化を受けて、企業の流動性リスクに対する疑念が大幅に後退しており、4月に入ってから多くの企業が手許流動性を取り崩しつつある。』
なるほどなるほど。
『この間、銀行間の資金マーケットをみると、必要な資金は十分に取れる状況が続いており、余資がマーケットに滞留する中で、予想外の資金放出圧力から技術的にも短期金利のコントロールが難しくなる場面が散見されるような状態である。』
という状況ですよとなってます。で、この指摘っていうのは10年後の今になって考えてみると重要な論点でありまして、先日ご紹介した同じ席での武富審議委員の指摘にも通じるのですが、資金需要の無い所にマネーを出すという行為をしても、結局使う人がいないのであれば短期金融市場の中で金がババ抜きのように回るだけであって、究極的にはブタ積みが積みあがるだけとなるという話ですねという事に繋がる指摘だと思います。
つまり、昨日ご紹介した白川総裁の非伝統的政策に関する論点整理(悪態もおまけについてましたが)にもございましたが、量そのものが定性的には意味があったのは確かですけれども、それが定量的な効果を出していたのかが微妙ではございませんですかという話になる訳でありまして、当時量的緩和がどうしたこうしたという論議を行う中で、量の定量的効果に関する指摘がこのように行われていたという事なんでしょうね。
『こうした点を考えると、本行の現在の金融政策は当面十分に目的を達していると評価し得る。短期金融市場の市場機能を損なわないように、資金の流れに注意深く目配りする配慮は怠れないが、漸く経済にみえ始めたコンフィデンスの回復の動きを確かなものにするとともに、構造調整問題に積極的に取組もうとする実体経済に対して、引き続き資金を潤沢に供給し、オーバーナイト金利をゼロ近傍に据え置くことが望ましい。今回は現状維持である。』
ということで。
○三木委員の論点から:財政と金融について&政策の手段について
で、その続き。
『若干付け加えると、前回も申し上げたように、現在の日本は金利収入が経済活動から消えかけている世界で唯一の国になっている。これは正常な経済の安定成長を考えた場合には、企業にとっても、個人にとっても誠に異常な事態である。その点を明確に認識しておかなければならない。』
そういやこのときは日本だけがこんな有様でしたね(涙)。
『本行のゼロ金利近傍への誘導と潤沢な流動性の供給は、日本経済がデフレの悪循環に陥ることを回避するために行っているのであり、企業の構造調整リストラ、銀行貸出の増加、設備投資へと繋がっていく期待を込めた、財政政策をサポートする金融政策である。』
ということで、その辺は「低金利政策で財政サポート」というのは当時は普通に話をしてたんですね。まだ財政マネタイズがどうのこうのとかはあまり言われてなかったのでしょうか。
『この金融政策の置かれているポジションと、政策の効果を十分に引き出すことを考えると、金融政策へのさらなる過度の期待は日本経済再生にとってもマイナスの副作用が非常に大きいと思う。』
当時の論点がどうなっていたのかとかさすがに記憶が怪しい(というかこの頃短期金融市場から遠い所にいたので正直よく判らん)ので何ですけれども、何か意見の流れを見ていると「闇雲にマネーの量を拡大させる政策をして効くのか」という話をしているのか「財政マネタイズ政策をするのはマズイんじゃないか」という話をしているのか、それとも他の話をしているのか良くわかりませんが、まあこういう指摘をしているということでそのまま引用してみました。
『後藤委員が言われるように、量的緩和という言葉が一人歩きしているという感じが非常に強い。この問題について具体的なアイデアがある訳ではないが、政策の目的は何かということと、政策目的を達成する金融調節の手段の問題とは峻別して議論をしておく必要がある。本会合での議論でもこの点を明確に分けて考えていかないと、量的緩和論の一人歩きはいつまで経っても直らない懸念がある。』
後藤審議委員の論点は先日武富審議委員の論点とともにご紹介したのでそっちをご覧頂きたいのですが、コントローラビリティーとフィージビリティーの件と、インフレ期待を醸成するのはいいけどそれって長期金利が上昇して金利ルートでの悪影響の方が先にでてこねえか?という話ですな。
○中原委員の論点から:名目金利がゼロになった後の量は・・・・・
次の発言者は中原伸之審議委員です。
『私は現状維持には反対であり、後程別途の提案をする、委員方と私の一つの大きな違いは、前途に対する見方が非常に異なることである。私は先行きをシビアに考えており、一段と金融政策で手を打たなければ益々失速するということをまず申し上げておく。』
という景気認識だったんですな。ほほう。
『また、先ほどの山口副総裁の指摘もそうであるが、名目金利がゼロになっていない段階までは名目金利と量は確かに裏表の関係がある訳であり、なかなか区別し難いところがある。ただ、2月の積み期では4兆1500億円、今月は昨日までで約7兆円の過剰準備があった訳であり、量的な緩和が裏腹の裏の関係であるにしても効果が出ている。私はそれでは不十分だと言っている訳である。』
実はここだけを読むと中原さんが何を言っているのかというのが10年後の今読むとイミフな所が思いっきりあるのですが、どうも前後の発言を読みながら中原さんがどういう認識をしていたのかという事を想像すると、金利を下げて当面の低金利が継続するという市場の認識が広がって金利が低下していく動きに対して、中原審議委員的には超過準備の「量」が「定量的に」効果を現しているという認識を持っていたのではないかと思われます。
10年後の後知恵で考えると、超過準備が4兆だろうが7兆だろうが、その金が短期金融市場の中で留まっているだけであったら定量的な効果ってそんなに変わらない(なお、突っ込まれるのやだからこの辺で申し上げますが、「じゃあバーナンキの背理法」とか言われるのですが、それは財政の話が絡んでくるので話が違ってきますよね、あくまでも財政中立の命題で定量的な効果がどうのこうのという話をしているので念のため)ように思える(「ように思える」と書いたのは、本当の所が今でも良く判らないからですな)わけでして、ここでの中原審議委員の主張も何か微妙な気がするのですけど、当時はそういう事を世界初に実施しましたという状態ですから、手探りで色々な意見が出るのは当然だと思います。
『仮に、本当に名目金利がゼロになれば、そこで裏腹の関係は切れ、今度は実質金利と量が裏腹の関係になる。現時点はそこまで到達していないため、山口副総裁と私の違いは裏腹でも構わない。』
中原審議委員的にはマネーの量を出す事によって実質金利の引き下げを行うという話をしたのかなあという気がしますが、また後日紹介しますが、ここの部分に植田審議委員が壮烈なツッコミをしてお互い湯気ポッポー状態になったのではないかと思われる部分があるのですけど、まあそこは後日お楽しみに。
『しかしその先、私が申し上げていたようなマネタリーベースの伸び率が10%ということになれば、全く違った世界である。2月の超過準備が1000億円とすれば、3月は恐らく約3000億円という感じであろうが、まだそれよりも上のオーダーの話をしている訳であり、それは全く別の世界の話である。量的緩和とは、名目金利がゼロになった後の話だと理解している。』
名目金利がゼロになった後では超過準備の機会費用がゼロ近傍に低下するから量を出しやすくなるということで、「量的緩和は名目ゼロの後の話」というのは誠にその通りであります。量が定量的にどうなのという話はまあ兎も角と致しまして。
『さらに、武富委員がマネー需要の有無を言われたが、それは大量に資金をつけた時に貸出先があるかどうかという話であり、幾つかのルートが考えられる以上、それがなくても緩和をする必要があるというのが私の意見である。マネー需要がないとしてもやらなければならない状態であると申し上げている積りである、ターゲットをどうするとか、コントローラビリティ、フィージビリティについては、一応それなりの研究を済ませており、量的緩和は十分に可能だと信じている。』
まあ確かに後日30兆円というのを実施したので、中原審議委員の言うように量的緩和は可能だったのですけれども、マネー需要が無い中で30兆円出した時の効果としてどうだったのかというのはまた別問題でしたわなという所で。
ただ、中原審議委員が出していた提案によるディレクティブでは、マネタリーベースの前年比増加率をターゲットにしていたのでありまして、それってコントローラビリティーやフィージビリティ的にどうなのよというのは今読んで疑問が物凄い勢いで起こる所であります。研究してるなら具体的にどういうオペレーションをするのかとかの研究結果を説明している部分を見たかったなあとは思います。もしかしたら他の所にあるのかもしれませんが・・・・
○中原委員の論点:じゃなくて指摘というか苦言です
『ここで是非申し上げておきたいことは、色々なマスコミに日銀幹部という名前で色々な意見が出てくる。例えば、ブリッジニュースの4月2日号に「日銀のある幹部は、量は十分出して、下手なターゲットは作らない」とある。こういうことを言われたければ、政策委員会で堂々と言ってもらいたい。マスコミを使って言うのであれば、名前を出して言ってもらいたい。本当に透明性、あるいは独立性、アカウンタビリティーというのであれば、政策委員会に出てきて議論すべきである。こうしたところで勝手な意見を流さないでもらいたい。執行部の方も宜しくその辺をお願いしたい。』
これは全く仰るとおり。まあ旧法時代の残滓って所で、最近この手の匿名幹部氏による発言みたいなのって出てこなくなりましたよね。
続きはそのうちやるでしょう。今日も虫干しネタで夏休み中のような話でどうもすいませんでした。
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2009/08/17
で、7月会合議事要旨なんですけどね。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g090715.pdf
○企業金融環境の認識を確認
執行部の報告部分は月報どおりなのでスルーしまして、政策委員の討論内容を。本文9ページから。
『わが国の金融環境について、委員は、なお厳しい状態にあるものの、改善の動きが続いているとの認識を共有した。』
という所から始まるのですが、途中をスルーして問題点を。
『多くの委員は、下位格付先の社債発行が依然として厳しい状況にあるなど、二極化現象は解消されていないとの認識を示した。こうした中で、資金繰りや金融機関の貸出態度について、委員は、大企業、中小企業とも幾分改善しているものの、厳しい状態が続いているとする先がなお多いとの見方を共有した。』
『何人かの委員は、企業による金融環境に対する見方について、厳しい収益環境が続く中で、在庫調整が一巡した後の景気回復の足取りなどについて、なお不確実な面が大きく、今後の資金調達環境に対する不安感を払拭できない状況にあるのではないかとの認識を示した。』
ということで、二極化問題と今後の調達環境悪化への不安感というのがキーワードになっていて、企業金融特別措置の延長という結論に繋がっています。
先日ご紹介したように、8月の金融経済月報(基本的見解)では金融環境に関る部分の表現に変化がありましたが、変化があったということはこの辺りの論議にも変化があったと考えるのが妥当ですので、この部分、来月見るべしということで。
○各種措置の延長について、CP買入延長
本文11ページ以降で、各種措置について議論しているのですが、まずはCP買入に関する部分を選んで引用します。以下引用は途中を飛ばしてピックアップした格好になっているので、『』で分けた部分は段落分けしたのではなく、途中飛んでたりしますのでその辺よろしゅうに。
『その上で、大方の委員は、わが国の金融環境について、格付間での二極化が依然解消されていないことや、景気回復の不確実性から先行きの資金調達環境への企業の不安感が解消されていないことなどから、全体として、なお厳しい状態にあるとの見方を示した。これを踏まえ、委員は、企業金融の円滑化を引き続き図っていく観点から、措置の延長が適当であるとの認識を共有した。』
『何人かの委員は、C P 買入れは3 月以降大幅な札割れとなっているが、安全弁として資金調達に対する安心感を与える役割を引き続き果たしていると指摘した。また、ある委員は、C
P 買入れの大幅な減少などにみられるように、これらの措置の必要性は大きく低下しているが、現時点では、措置を取り止めることに伴う心理面への負の効果は無視できないと述べた。』
まあ妥当な話ですけど、二極化云々はCP買入で対象になっていない銘柄に関して直接どうこうできる話でも無い訳で、そりゃまあ高格付けのCP買入でモノ無くなりとなって仕方が無いから低格付けを買える人はそっちも買うという流れになりますけど。まあバックストップで置いておく意味は大きいですからその点は仰るとおりかと存じます。
○各種措置の延長について、企業金融特別オペ
ターム物金利云々に関して。
『多くの委員は、これらの措置について、昨年秋以降の金融危機の中で企業金融の円滑化に果たしてきている役割が大きいこと、企業金融支援特別オペはターム物金利の安定化にも寄与していることを指摘し、現在の金融環境のもとでは、こうした支援措置が引き続き必要であると述べた。』
ということで、ターム物金利の安定化の話が出ているのですが、それはまあ副次的な効果であって、あまりその話を出すのはどうかという気も。まあそこまでターム物金利を抑制したいのでしたらECBみたいに指値オペを共通担保でやれば良いだけの話でして、企業金融オペだからという訳ではなく、指値無制限オペだからターム物金利が下がっているという事じゃないでしょうかねえ。まあいいけど。
『また、別の複数の委員は、ターム物金利の安定について、企業金融支援特別オペの効果が過大視されており、実際には、長めの共通担保オペ等その他のオペも含めた潤沢な資金供給全体としての効果が出ている点に留意する必要があると述べた。』
指値無制限オペとしての効果は大きいのですが、実際問題としてはたぶん大手中心に銀行業態の資金ポジションが3月以降徐々に変化し、たぶん6月以降益々金余り状態になってきているという状態になっていると思うのですよね。銀行業態が金取り状態になっていた時だと、タームの共通担保を打ったら銀行がGCレートとかの位置をあまり気にせず上のレートでゴッソリ持っていってしまい、債券(というか国債)業者は仕方が無いので現先オペでショートファンディング状態にならざるを得ないという状態になっていたのですけれども、銀行がタームの資金を無理無理に取りに行かなくて良くなり、長めの共通担保で債券業者が安定的にファンディングできるようになって、益々タームやら短期国債やらの金利が安定して、おまけに期末越えのプレミアムも潰れてきたという事でしょうな(文章が長いって)。
ということで、まあ指値無制限というのは効くのですが、共通担保じゃなくて企業金融という所が微妙で(共通担保で指値無制限をやってたら大変なターム物金利潰れまくりになってましたわな)、この効果がどの位なのかというのは複数の委員の指摘どおりだと思われます。
で、副作用に関して順番逆ですが上記の直前の指摘を引用します。
『この間、何人かの委員は、企業金融支援特別オペに関し、高格付C P の発行金利が国庫短期証券の金利を下回る副作用をもたらしている可能性はあるが、当オペの見直しや終了については、部分的な影響や副作用だけではなく、金融市場・企業金融全体の状況やこれに与える影響を踏まえて判断していくことが大事であると述べた。』
という話で、さっきのターム物金利云々の話になるのですね。うだうだとさっき
書きましたが、現状では銀行業態の資金ポジションが変化して金余りでござるの巻となっているのでして、共通担保を今のように普通に打って、CP買現先オペを多く打って(今はCP買現先って概ね0.10%ですわな)おけば、そんなにターム物金利が跳ねる気もしませんけどねえ。
○各種措置の延長について、3か月後の見直し
『もっとも、委員は、措置の延長にあたっては、金融環境が昨年度末までとは異なり、改善の動きが続いていることにも留意する必要があるとの認識を共有した。この点を踏まえ、委員は、臨時措置によるサポートの必要性について、年末までに改めて点検することが適当であるとして、延長期間は3
か月とすることで一致した。何人かの委員は、今後、情勢が一段と改善していけば、新たな期限である年末には、時限措置の終了または見直しを行うことが適当だが、情勢が十分に改善せず、必要と判断する場合には時限措置を再延長することもあり得ると述べ、予断を持たずに判断していくことが大事であると付け加えた。』
とまあそんな感じで、一応ベースとして改善しているから6か月じゃなくて3か月にしましたよという話なので、まー今後は(どうせ利上げなんぞ遠い未来の話ですから)企業金融を含めた金融環境への認識がどのように変化していくのかを見るのが大事という話でしょうな。
○各種措置の延長について、超過準備付利の常設ファシリティ化??
佐藤藍子ですが導入された時から臨時措置じゃ済まなくなると思ってました(^^)。
『補完当座預金制度の取り扱いについて、多くの委員は、本制度は、日本銀行が金融調節を通じてコールレートを適切に誘導しながら、積極的な資金供給を行い得るよう導入したものであることを踏まえて、検討する必要があると述べた。その上で、委員は、わが国の金融環境がなお厳しい状況にあり、景気の下振れリスクに注意が必要な状態が続いている中では、引き続き、潤沢な資金供給を通じて金融市場の安定を確保するため、本制度も期限を延長することが適当との認識で一致した。』
と、ここまではよろしい。
『このうち、何人かの委員は、本制度は、市場金利の下限を画するという金融調節のインフラとしての役割を持っていることを指摘し、海外の金融調節の仕組みなども参考にしながら、今後、将来的なあり方を検討していく必要があるとの意見を述べた。』
まあそうなるんじゃないかと思ってましたよ。
○偽りの夜明けじゃないかもしれないという指摘
政策委員が経済情勢を点検している部分で「ほほー」という箇所を。まあ議論の基本は予想の通りで下振れ懸念のオンパレードにも程がある展開なのですけれども、本文7ページの米国経済の点検部分でオモロイ指摘が。
『(状況改善してるけど下振れリスクと言う話が続いて・・・)更に、何人かの委員は、不良債権問題の解決、家計のバランスシート調整の完了までには、なお相当の時間を要するとの見方を示した。』
のですが、ある委員が敢然と(?)ツッコミ。
『この点について、ある委員は、米国経済の回復テンポについて、バブル崩壊後の日本の経験に引き摺られて過度に慎重な見方になっていないかどうか、という観点からの検討も必要ではないかと述べた。』
・・・・・・確かにそれはそうなのかも知れません。まあ米国が完全に立ち上がったのを見てから重い腰をのんびり上げておけば良いのでそうナーバスになる事もないとは思いますけどね(^^)。
ま、あと景気に関連する話とかは基本的に声明文や金融経済月報に示される通りでありますので、引用は割愛しますです。
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2009/08/14
○金融経済月報(概要)は金融環境に変化がありますが・・・・
全文は結構な量(56ページとか)がありますのでご注意を。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0908.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0907.pdf(前回)
でまあ例によって【概要】部分を比較するのですが、これがまた声明文と同様に景気に関する所の変化がろくすっぽ無いのよ。
『わが国の景気は下げ止まっている。
公共投資は増加している。輸出や生産は、大幅に落ち込んだあと、持ち直している。一方、厳しい収益状況などを背景に、設備投資は大幅に減少している。雇用・所得環境が厳しさを増す中で、個人消費は弱めの動きとなっており、住宅投資は減少している。』(今回)
という部分では、声明文と同様に企業の業況感部分が抜けただけでして、それは短観絡みなので特に変わった意味はないですな。
『先行きについては、景気は次第に持ち直しに向かうと考えられる。
すなわち、輸出や生産は、内外の在庫調整の進捗や海外経済の改善などを背景に、持ち直しを続けるとみられる。また、公共投資も増加を続けると見込まれる。一方、国内民間需要は、厳しい収益・資金調達環境が続き、雇用・所得環境も厳しさを増すもとで、引き続き弱めに推移する可能性が高い。』(今回)
ここでは前回に無かった「海外経済の改善」という文言が入って来ました。まーサラッと入れているのですが、先行き見通しの中で海外需要動向というのは大きなファクターを占めるので、この部分がしらっと改善するのはポイントとしては大きいですね。
んでもって物価の所はスルーしまして今回表現が変化しているのは金融環境。
『わが国の金融環境は、なお厳しい状態にあるものの、改善の動きが続いている。』(今回)
というのは変化無いのですが、今回は語順からして色々と変化がございまして、まあこの辺りの改善について認識という所なのではないかと思われます。
『コールレートがきわめて低い水準で推移する中、企業の資金調達コストは、低水準で横ばい圏内の動きとなっている。ただし、実体経済活動や企業収益との対比でみれば、低金利の緩和効果は減殺されていると考えられる。』(今回)
『コールレートがきわめて低い水準で推移する中、企業の資金調達コストは、CP・社債発行金利や貸出金利の低下から、一段と低下している。ただし、実体経済活動や企業収益との対比でみれば、低金利の緩和効果は減殺されていると考えられる。』(前回)
言ってることは基本的に同じだと思います(「低水準で横ばい」というのはそもそも論としてかなり下がった状態にあるから)。相変わらず「低金利の緩和効果は減殺」というのは残っているので、企業金融関連の各種施策を延長したのは妥当でしたという話になる訳で(^^)。
で、今回の書きっぷりが変わっているのは企業金融に関して需要要因と供給要因を分けた所でしょうか。ということ比較の都合上前回分を先に引用します。
『企業の資金調達動向をみると、銀行貸出は、伸びは低下しているものの、大企業向けを中心に高めの伸びを続けている。CP発行は減少しているが、これは手許資金積み増しの動きの一服や運転資金需要の後退による影響が大きいとみられる。社債発行銘柄の拡大等もあわせて考えると、CP・社債の発行環境は一段と改善してきている。ただし、下位格付先の社債発行は依然低い水準にとどまっている。』(前回)
で、今回ですが。
『資金供給面では、企業からみた金融機関の貸出態度は、なお厳しいとする先が多いものの、幾分改善している。CP・社債の発行環境は、下位格付先では依然として厳しい状態にあるが、全体としては、信用スプレッドの低下や社債の発行銘柄の拡大など、改善傾向が続いている。』(今回)
『一方、資金需要面では、企業の運転資金需要、設備資金需要とも後退しているほか、一部に、これまで積み上げてきた手許資金取り崩しの動きもみられている。以上のような環境のもとで、企業の資金調達動向をみると、銀行貸出は、伸びが鈍化してきている。社債の発行は高水準となっている一方、CPの発行は減少している。』(今回)
書き方が変わっているので一瞬比較しにくいのですが、企業金融面に関して言えば、資金需要の面では資金需=調達圧力が緩和されてきたというのが変化としては大きく、資金供給の面では改善傾向が続くものの二極化的な状態は依然として継続という書き方になっているものかと思われます。
で、最後の部分。
『こうした中、企業の資金繰りは、なお厳しいとする先が多いものの、改善の動きが続いている。この間、マネーストックは、前年比2%台半ばで推移している。』(今回)
『こうしたもとで、資金繰りや金融機関の貸出態度度については、なお厳しいとする先が多いものの、大企業、中小企業とも幾分改善している。この間、マネーストックは、前年比2%台半ばで推移している。』(前回)
改善進行ということで、金融環境の改善は着実に進行というところでしょう。ということで、今回の月報(概要)では金融環境の部分に関する書きっぷりが変化しているのが目立ったかなと思います。
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2009/08/12
お題「動かざること山の如しとな」
ということで決定会合結果ですが。
○これは速い
結果の公表文を読む前にトップページの新着情報を熟知すべし。
http://www.boj.or.jp/
『2009年 8月11日 当面の金融政策運営について(現状維持、11時51分公表)』
>11時51分公表
>11時51分公表
>11時51分公表
・・・・午前中に終わったのってかなり久しぶりだと思うので、これはもう何と言う速さという所ですが、まあ各種宿題を前回会合で全部片付けてましたからね。ということで、佐藤藍子ですが今回の会合は速いだろうなあとは思ってました。ヒルメシ前に「今日は午前中終了あるで」とか言いながらメシサクサク終了して正解でした(^^)。
・・・・って別にこの結果だから慌てて見なくても無問題なのですが(爆)。
その割には総裁会見が45分とかやってたのが(前回は各種措置の延長をしたというのに30分)極めて謎なのですが・・・・・
○声明文比較・・・・をしようとしたのですが
てな話はともかくとして声明文はこちら。
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/k090811.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/k090715.pdf(前回)
ここで声明文を比較するのが毎度の仕様なのですが・・・・見事に前回と同文が並ぶと言う動かざること山の如し状態。景気判断が全くウゴカンチ会長とはやりますな。まあ金融経済月報今日出るのでそっちも読まないといけませんけど・・・・・ということで、以下の引用は全部今回の声明文からの引用でござりまする。
・景気の現状判断
『わが国の景気は下げ止まっている。』
『すなわち、公共投資が増加しているほか、輸出や生産は持ち直している。一方、厳しい収益状況などを背景に、設備投資は大幅に減少している。また、個人消費は、各種対策の効果などから一部に持ち直しの動きが窺われるものの、雇用・所得環境が厳しさを増す中で、全体としては弱めの動きとなっている。この間、金融環境をみると、なお厳しい状態にあるものの、改善の動きが続いている。』
ということで今回の声明文を引用したのですが、景気に対する現状認識部分の中で、今回変化している部分は日銀短観を受けた企業の業況感に関する表現が抜けただけです。企業の業況云々というのは日銀短観が出た直後の声明文のみに入る表現ですから、実質的なことを考えますと、景気の現状判断に関して、総括判断及び需要項目別の判断も全く変化が無いですねという話になります。
・物価の現状判断
『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、経済全体の需給が緩和した状態が続く中、前年における石油製品価格高騰の反動などから、マイナス幅が拡大している。』
マイナスとなっている要因に関しても変化は無く、変化があるのは現象面の部分だけでして、今回『マイナス幅が拡大』となっているのが前回は『マイナスとなっている』となっていました。ということで現象面の話だけ変化ということで、これまた実質的に変化無しの助であります。
・先行き判断、リスクバランスは全く同文です
ということで、今回はまあ物の見事に7月の声明文を踏襲していまして、先行き判断、リスクバランスに関しては7月会合の声明文と全文一致という素敵な状態。違うのは頭についている番号だけ(7月は各種オペの期限延長と展望レポート中間レビューがあったので)という素晴らしさで、改行位置まで全部同じですから、7月声明文と8月声明文をプリントアウトして当該部分を透かし読みすると綺麗に一致しますよ(^^)。
・・・・で終了すると書き物が終了してしまいますので今回の声明文を引用してお茶を濁すこととしましょう(汗)。
『先行きのわが国の景気は、内外の在庫調整が進捗したもとで、最終需要の動向に大きく依存する。』
『2010 年度までの中心的な見通しとしては、中長期的な成長期待が大きく変化しない中、本年度後半以降、海外経済や国際金融資本市場の回復に加え、金融システム面での対策や財政・金融政策の効果もあって、わが国経済は持ち直していく姿が想定される。』
『物価面では、消費者物価の前年比は、当面、下落幅を拡大していくものの、中長期的なインフレ予想が安定的に推移するとの想定のもと、石油製品価格などの影響が薄れていくため、本年度後半以降は、下落幅を縮小していくと考えられる。こうした動きが持続すれば、わが国経済は、やや長い目でみれば、物価安定のもとでの持続的成長経路へ復していく展望が拓けるとみられる。もっとも、海外経済や国際金融資本市場の動向など、見通しを巡る不確実性は大きい。』
つまり標準シナリオどおりに推移しているということですね、わかります。
『リスク要因をみると、景気については、国際的な金融経済情勢、企業の中長期的な成長期待の動向、わが国の金融環境など、景気の下振れリスクが高い状況が続いていることに注意する必要がある。物価面では、景気の下振れリスクの顕在化、中長期的なインフレ予想の下振れなど、物価上昇率が想定以上に低下する可能性がある。』
ということで、相変わらずの下振れリスクのオンパレード。月曜にご紹介したECBの「Overall,
the risks to this outlook remain balanced.」「Risks to the outlook for
inflation are broadly balanced.」とかいう端から見てるとナントカ蛇に怖じずと申し上げさせて頂きたくなるようなリスクバランス認識とは大違いなのでございます。
○会見もたぶんネタが無さそうな悪寒
ということで昼休み中に堂々結果が出るわ、内容が全然変化が無いわと意外感が1ミリも無い結果になったのですが(というか意外感があったらビビるわ^^)、何も動きが無いということは総裁記者会見もスルーで良いのでしょうという感じになりやがりまして、会見がエンバーゴになって各ベンダーがヘッドラインを打ち出しても債券先物が微動だにしないというとってもお洒落な展開に。確かイブニングセッションって上下3銭位しか動いてなかったような気がするのですが・・・・・・(汗)
ということで、ネタを無理やり拾う為には金融経済月報を熟読すべしということにでもなるんでしょうか(^^)。まあそれよりも何故か45分も会見をやってたことの方が気になりますけどね。
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2009/08/11
お題「量と金利に関する論点:1999年4月9日会合から」
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gijiroku/data/gjrk.htm
に一覧がありますが、その中の1999年4月9日議事録を。
先日(8月3日)の駄文で時間軸の概念に関する山口副総裁の発言をちょっと引用しました。当面の金融政策に関する各委員の意見表明部分でして、本文62ページからなのですけれども、山口副総裁に続いて発言をした後藤審議委員および武富審議委員(肩書きは当然ながら全部当時のね)の意見を引用するでござるの巻。
で、まあ一部切り取りというのも何ですので、頑張って全部引用してみますです、なお一応タイポは確認した積りですけれども、転記間違いがございましたらご勘弁頂くという事で、議事録の本ちゃんを当たっていただきとう存じます。なお、適当に改行を入れます(本文は一段落がとても長い)のでよろしゅうに。
また、2月に事実上のゼロ金利政策を実施して1か月強経過し、色々と見えてきた物がある中での議論となっているので、本当の意味で手探りっていう感じを受けまして、まあ10年後にのうのうと後知恵でああだこうだ言うのは簡単ですけれども、それよりも現在の欧米の金融政策に関する論点にも通じる考察を手探りで行っていたという事に対して敬意を表するべきものであると考えます。
○後藤審議委員の意見から:(1)量と金利の関係、ターゲットの実現可能性
『私も現状の思い切った緩和スタンスを継続する下で、これまでの緩和が呼び起こしつつあるいろいろな変化を見定めていくことで宜しいのではないかと思う。』
現状維持に賛成ということです。
『中原委員と山口副総裁の間でご議論があったことにも関連して若干申し上げさせて頂く。量的拡大とか量的緩和という言葉が両義的に使われ、やや混乱しているのではないかという気がする。金利と量は同時決定であり、金利をターゲットにすれば量はマーケットの需給均衡点として決定されるし、量をターゲットにすれば金利は市場で事後的に決定される。』
『これまで金利をターゲットにして金利を引き下げてきた訳だが、これまでの利下げの誘導も各種のオペ手段を駆使して積み上供給を行ない、また為決時点の余剰資金を放置するといった量的な拡大により利下げを図ってきた。その意味で、金利をターゲットとしつつ、量的な拡大により金利の引き下げを誘導してきた訳である。狭い意味の量的緩和とは、そうした金利と量の関係を一応前提にしながらも、金融政策の操作ターゲットをどうするかという議論において、量をそのターゲットにする立場を量的緩和の立場と呼んでいるのだろうと思う。』
名目ゼロ制約に引っ掛かって物理的な低下余地が無くなるまでは後藤さんの指摘の通りかと存じます。で、その次にターゲットをどう置くべきかという話になります。
『確かにターゲットとしてどちらを採るかについては、先験的にどちらが良いか悪いかはなかなか断定し難いところがある。その時点の経済状況が例えば期待インフレ率が非常に振れ易いような状況であれば、名目金利のターゲットをみているだけでは、場合により間違うリスクを抱えることになる。反面資金需要が実体経済とは離れてシステム不安や2000年問題等により振れ易い状況であれば、量的なターゲットの下で量を拘束的に固定してしまうと、他の要素、例えば金利が乱高下するリスクを伴う。』
『その時々の状況判断が選択の条件になるだろうし、量の目標の算定値がフィージブルであるのかどうか、また拘束的な目標としてのコントローラビリティが十分にあるのかどうかを踏まえて、検討されるべきである。』
これは重要な論点でして、量の目標を作るにしてもその数値が日銀の日々の金融調節でコントロールが可能なもので、目標数値として現実的なものであるかどうかという観点が抜けると、通常の金融調節で何をやりゃ良いのよという話になり、結果として市場に影響するとすれば金利が不安定になっちゃいますよという事になるんでしょうな。
じゃあ「金利目標を設定しながら量の目標を」という意見もあるのでしょうけれども、この場合は両方の目標を同時に満たせなくなるケースでどちらを優先するのかという議論が生じる訳でして、まあそんな細けぇこたあいいんだよ!とか言われそうですけれども、政策実務面で立ち往生するような施策を出されましても政策運営担当者も困りますし、市場の方はもっと困りますのでありまして、政策運営の細部設計っていうのはとっても重要な話だと思うのですよね。
○後藤審議委員の意見から:(2)実質金利の話、期待形成の話
『さらに申し上げると、量的ターゲット論が特に実質ゼロ金利の状態が達成された後でリザーブの供給を増やすことにより、デフレ的な状況の下で期待インフレ率を高める実質金利の引き下げ策として提唱されている面もある。』
ということで実質金利の話。
『これは色々な期待形成に関わるため、植田委員もご意見があると思うが、一つのポイントは実質金利を引き下げ、かつマイルドなインフレに止めるというコントロールが巧く出来るかということである。』
『第二に本当にインフレ期待が生じるとすれば、長期の名目金利がそれを織り込んで上昇する可能性はないのだろうか。仮にそれを織り込んで長期の名目金利が上昇すれば、実質金利の引き下げにならない可能性がある。』
この辺の論点に関しては(今日は引用しませんというかできませんが)この後に植田審議委員や中原審議委員の意見表明部分でも更に論じられています。
で、この点をどうにかする為に長期国債買入っていう話もあるのでしょうけれども、実際問題として「民間クレジット環境の改善の為」と称して事実上は市場に対して「長期金利引き下げの為」と解釈できるような長期国債買入を行った昨今のFRBが結局長期金利を下げられませんでしたという状況もこれありという事で、短期と言うか政策金利という部分での実質金利引き下げというのは(政策金利はコントローラブルだから)議論として有りであっても、中期以降の金利という話になると実質金利がどうこうという話をするとこれがまた難しいパズルのようになるので、論点として持って来るとこういう話になるのではないかと。
で、第三のポイントは10年後の今読みますと「????」という感じなのですれども、当時の状況ってこうだったんですねという事で歴史的な背景が透けて見えるのではないでしょうか。
『第三に政策的にインフレ期待を醸成するということは、ここ3年余りの長きに亘って継続・強化してきた低金利政策に対する社会的な批判を激化させることになりはしないかということである。』
・・・・・・!!
『仮にそうした政策を採った場合にどうなるかはなかなか予測し難いが、名目金利ゼロでも必ずしも貸出が伸びていない状況下で実質金利を引き下げても、−金融機関のリスクテイク姿勢が藤原副総裁の言われたように進んでいけばともかく-流動性が証券投資に向かってしまい、投資や消費を刺激するよりも、円安を通じて経常黒字の増加や資本の流出という結果に終ることになりはしないかが気になる。』
・・・・・・!!
『全てに確定的な答えを持っている訳ではないが、そうした問題を検討してからでなければ、実質金利ゼロの下で期待インフレ率を高めるための量的ターゲット論に踏み切るのは難しいのではないか。』
○武富審議委員の意見から:(1)量を人工的に出せるのか
『私も結論は金融政策は現状の極めて大胆な緩和姿勢を継続するということである。』
ということで現状維持賛成。
『翌日物の金利が実質ゼロになった下で、これまで明らかになったこと、あるいは分からないことが明らかになったことを少し申し述べたい。』
『中央銀行はシステムに対してリザーブを人工的に注入出来るのか、あるいはコントロールが自由自在なのかといえば、そこにマネー需要さえあればかなりのことは出来る。しかし、マネー需要がそもそもない場合は、それはやはり出来ない。』
ここで「でも結局当座預金残高目標が出来たじゃないか」とツッコムのは多分各委員の発言の真意からするとズレたツッコミだと思うのですよ。つまり、福井総裁時代に当座預金残高目標30兆円とかやりましたけれども、この時ってその積み上がった当座預金残高って金融市場的にはブタ積みが積み上がったでござるの巻でありまして、勿論時間軸だとかそういう効果はあったと思われますけれども、量そのものに定量的な効果があったのかというと(ゼロ金利にして超過準備を出すという定性的な部分での効果は当然あったのですけれども)微妙な話だと思う(まあそこは議論が分かれるところで、あくまでも当時の市場現場労務者のあたくしがそう思うというだけの話です、為念)次第でして、ここで武富さんが言っている話と30兆円の話はちょっと意味合いが異なると思います。
『仮に、マネー需要があるならば、極端な言い方をすれば金利水準がゼロでも0.5%でも同じ量は出ていくとみている。0.5%の時点では調節が色々難しく、足の長いものを出して、最後は0.5%に収めるために回収するといった調節を要したのは、市場に個別金融機関の信用リスク問題がある大変異常な事態が発生していたからである。これがある程度正常化してくる中では余り複雑な調節をしないで済む訳であり、そこにマネー需要さえあれば現在供給しているのと同じ程度の量も本来出せたはずだと思う。』
ちょっと話は違いますけれども、このくだりを読んでいたら、FRBの資産買入が金融市場正常化と共に自然減になっている姿とダブって参りました。
○武富審議委員の意見から:(2)期待形成の話
『マネーサプライ目標の議論やインフレ目標の議論は結局その中に期待形成という非常に分かり難いものが入っており、これについては議論しても恐らく始まらないと思う。むしろ問題はこちらサイドが金融調節で出来ること、出来ないことを明確にわきまえた上で、市場や世の中に良い意味の錯覚-金融の量と実体経済なりインフレとの間に安定した関係があるという錯覚-があるとすれば、それをどう巧く活用するかということだと思う。』
『その観点からは、ゼロ金利に見合うリザーブの残高は、ある程度マネー需要がある時には程々伸びるところに着目し、それを今少し見えるようにしていくことは量に対する期待にもある程度応え得ると思う。つまり、仮に量から出発し、期待形成というブラックボックスを通じて実体経済に何か波及するルートがあるとすれば、それも遠望して使っていくのが良い。』
ということで、実務的に出来る事を使って期待形成をどう行っていくのかということを考えていかなければいかんのじゃないかという意見だと思います。
で、この先は武富さんの市場に対する現状認識と見通しの話ですが、折角ですので引用させて頂きます。ということで、後藤さんと武富さんの意見を今日は引用したでござるの巻です。
『現在は市場の良い流れが続いており、大変結構であるが、撹乱要因があるとすれば、内外の資本移動がどのようになるかであり、その点を多少用心してみておくべきである。例えば、国内に入ってくる外国資本が対象として株式市場に向うと、当然円高の方向で為替市場にも響く訳であり、現在の微妙な市場全体の均衡がどこから向きを変えるかが心配である。さらに、企業収益の実体と株価形成の整合性、あるいは非整合性が出発点になるかもしれないし、当面一部の金融機関の破綻が起きた場合に個人資金の動きがどうなるか気掛かりである。この面ではまだ枠組みが出来たとはいえ、安心していられる問題ではなく、現状の枠内でいかにスピーディーに運用管理していくかが小康を得ている広い意味の市場の均衡を維持していく上で極めて重要である。』
ほほー。
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2009/08/05
○昨日ご紹介した金融市場レポートネタの追記(雑談ネタ)
まあ追記と言うか何と言うかなんですけど。
実は昨日金融市場レポート引用するネタ書いている時に、小見出しを最初「ターム物金利の引き下げと企業金融支援オペ」というような感じで書いていたんですが、引用大会が終わってふと見ると話の流れが特オペ効果恐るべしというのになったので小見出しを変えた次第。
それはつまり何でしょと申しますと、後半の「企業金融支援オペがCPのレートを引き下げました」の要因分解に関する引用と雑感の方が長くなってしまいましたので、話の流れがそっちになっちゃったなあと思って変えたという事なんですけど、実際問題として最初に読んだ時に気になったのは先に引用していた本文部分なのですよ。つまりですな、昨日引用したのの繰り返しになるんですけど。
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/mkr/data/mkr0907a.pdf
『(金利上昇圧力の緩和)
日本銀行が積極的な資金供給を続けたことで、短期金融市場における需給の逼迫感は徐々に後退していった。また、年度末に向けた企業の予備的な資金調達が一巡してからは、企業向け貸出に備えた銀行の資金需要も減少したため、銀行間取引金利の上昇圧力は弱まった。こうした中、TIBOR
などの銀行間ターム物金利は、緩やかながらも着実に低下し、先行きも当面、低水準で推移することが見込まれている。』
『CP 市場では、企業の在庫調整の進捗などにより運転資金需要が減少する中、日本銀行による一連の企業金融支援措置等の効果もあって、高格付け銘柄については、発行レートがTIBOR
を安定的に下回るようになったほか、ロットやタームの面でも特段の制約を受けることなくCP
を発行できる企業が増加した。また、企業金融支援特別オペの担保繰りのため、オペ対象先の金融機関が高格付けCP
を抱え込む動きがみられたことから、国庫短期証券利回りを下回る発行レートも散見されるようになった。』
『大手銀行の短期余剰資金は、短期国債運用やレポ運用にも振り向けられたことから、証券発行増加による需給悪化が懸念されていた国庫短期証券の利回りや、そのファンディングを行うGC
レポのレートに対する上昇圧力も徐々に緩和された。』(本文40ページ)
ということで、企業金融支援措置における資金供給が増えることがターム物金利の低下を促しているという話になっていたりしまして、まー結果としては仰せの通りなのですが、先日ご紹介したように、企画局謹製『今次金融経済危機における主要中央銀行の政策運営について』では『また、日本銀行が導入した企業金融支援特別オペは、期間は最長3か月と既存のオペの範囲内であるが、翌日物コールレートの誘導目標水準の固定金利で、民間企業債務の担保範囲内であれば金額に制限を設けずに資金供給することにより、ターム物金利の低下を促す効果が期待されている。』となっていまして(http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/research07/data/ron0907c.pdfの本文5ページ目ね)、何か「企業金融支援の為に実施した施策が結果的にターム物金利を下げた」というのが、いつの間にか「ターム物金利に働きかける為に企業金融特別オペを実施する」という話にすり変わるのではないかというのが微妙に気になります。
入り口と出口で言う事が違って来ますと、本来の政策意図を逸脱した使い方になりますねという話になる訳でして、企業特オペで言えば企業金融支援じゃなくてターム物金利誘導というのに使うのであれば、本来的に言えば個別市場に突っ込むのではなくて、それこそ共通担保指値オペでも実施するとかすれば良いのであって、手元にある果物ナイフが便利だから魚でも捌くかっていうような使い方は、魚が小魚だったら良いですけど、大きくなった時には困るでしょと(例えがヘタクソでスイマセン)思うのですな。
何かこの前も同じ話してねえかという説もあるのですが、CP市場の阿片窟というか銘柄間の信用力格差も無い弛緩しきった状態を見てると何ともねえって感じになるもんでまた書いてしまったという所です(汗)。
ところで、しらっと書いてありますけど、良く見たら金融市場レポートで特別オペの恐るべき効能「後から担保繰りの為にCP買いますか攻撃」についてしらっと『企業金融支援特別オペの担保繰りのため、オペ対象先の金融機関が高格付けCP
を抱え込む動きがみられたことから』って指摘してありますね(^^)。つい読み流してしまいましたけど良く判っていらっしゃる(^^)(^^)(^^)(^^)(^^)。
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2009/08/04
んでまあ金融市場レポートから少々。
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/mkr/data/mkr0907a.pdf
(PDFで表紙を含めて65ページでございますのでご注意を)
○やっぱり特オペ恐るべしという話
今回の金融市場レポートは(毎度面白いのですが^^)中々読み応えがございまして、各市場のリスク許容度復活の状況が市況のグラフなどと共に紹介されているので楽しめます。でもって今日はターム物金利が抑制されましたねという話のあたりから。本文38ページ(ファイルだと41ページ)から。
(日本銀行による積極的な資金供給)って辺りからなんですけど、まあ色々なオペを実施しましたねという話が色々と書いてありますけれども、企業特オペが増えていますというあたりが次の話のマクラになるのれす。
『積極的なオペ運営の結果、資金供給残高(長期国債買入れを除く)は、08 年末に続き、08
度末も50 兆円を上回る水準となり、その後も高水準での推移が続いた。内訳をみると、企業金融支援特別オペが、国債買現先オペに並ぶ割合を占めるようになった。』
で、ど〜なったかというと次の小見出しが(金利上昇圧力の緩和)でありまする。
『日本銀行が積極的な資金供給を続けたことで、短期金融市場における需給の逼迫感は徐々に後退していった。また、年度末に向けた企業の予備的な資金調達が一巡してからは、企業向け貸出に備えた銀行の資金需要も減少したため、銀行間取引金利の上昇圧力は弱まった。こうした中、TIBOR
などの銀行間ターム物金利は、緩やかながらも着実に低下し、先行きも当面、低水準で推移することが見込まれている。』
『CP 市場では、企業の在庫調整の進捗などにより運転資金需要が減少する中、日本銀行による一連の企業金融支援措置等の効果もあって、高格付け銘柄については、発行レートがTIBOR
を安定的に下回るようになったほか、ロットやタームの面でも特段の制約を受けることなくCP
を発行できる企業が増加した。また、企業金融支援特別オペの担保繰りのため、オペ対象先の金融機関が高格付けCP
を抱え込む動きがみられたことから、国庫短期証券利回りを下回る発行レートも散見されるようになった。』
えーっと、散見どころの騒ぎじゃないのですが・・・・・
『大手銀行の短期余剰資金は、短期国債運用やレポ運用にも振り向けられたことから、証券発行増加による需給悪化が懸念されていた国庫短期証券の利回りや、そのファンディングを行うGC
レポのレートに対する上昇圧力も徐々に緩和された。また、地銀や外銀などでは、運用難の余剰資金が日銀当座預金に滞留する傾向が強まった。』
となった訳ですが、企業特オペがCPレートに与えた影響という説明が本文40ページ以降にあるのですけれども、CPのスプレッド(ところでこの分析でリスクフリーレートらしきものを短国レートじゃなくてOISレートを取ってくるのは何でじゃろと思うのですけど)を要因分解して分析したのでありますが、途中を割愛して企業金融措置でCP発行残高のうち幾らが吸収されているのかという要因を分析した結果部分を引用。
『(1)企業金融支援措置による資金供給が増加するにしたがって、CP 発行レートに低下圧力がかかっていった。このことは、政策金利の引き下げという伝統的な政策トランスミッションを経由せずに、企業金融支援措置によって、CP
発行レートを引き下げる政策効果があったことを意味する。』
まあそう言ってしまえばそうなのですが、そもそも論として企業金融特別オペが「金利指値オペ」というモノでありますので、それこそかつての公定歩合貸出みたいなもんで、市場金利を強力誘導するツールとして機能する訳ですわな。つまりアレですよ、指値オペって規制金利の残滓みたいなもんでありまして(おおげさ^^)そりゃもう別の意味で言えばこれこそ「伝統的政策トランスミッション」だったりするのではありませんかとか言うのは屁理屈ですかそうですか(^^)。
まー指値オペ最強という事実に加え、企業特別オペの場合は入札形式ではない「全部出します」攻撃な上に、現先オペのように資金供給と担保玉が1対1で対応する訳ではなく、資金供給に見合う担保を出せばよいという話になるので、在庫ファンディング空振りリスクが現先と比較して皆無というオソロシスな話ですからそら効くわ・・・・ということで、企業支援措置の効果でこのような指摘があるのですが、体感的にはちょっと違和感がございまする。
『2008 年秋以降、企業の資金調達環境を取り巻く不確実性が増加し、CP 投資家のリスク・アペタイトが低下する中――つまり、株価のインプライド・ボラティリティが大幅に上昇する中――、CP
の発行レートに大幅な上昇圧力がかかったが、日本銀行による企業金融支援措置はその影響がCP
市場に波及するのを最小限に食い止めることに貢献してきたと解釈できる。』
で、その部分なのですが、脚注でこういう説明を。
『2008 年10 月以降、企業金融関連オペを増加させても、CP 発行レートの上昇傾向が続いたが、このことは、オペが効かなかったことを意味するのではなく、オペの増額がなければ、CP
レートはさらに跳ね上がっていたことを示唆している。』
えーっとですね、10月14日の臨時政策決定会合で資金供給の強化という決定したのですが、何故かその後の資金供給が市場の期待に対して出し渋り感がございまして、特にCP現先オペに関しては拡充すると決定したのにその頻度が少なくてオペが足りなかった(「効かなかった」ではなく)という事だったんじゃないですかねえと思うのですけど。
で、企業特別オペを打ち込んだ上にその額がジャンジャン増えてきて、当初導入時に白川総裁が発言した数値を思いっきり上回りだした以降から官民逆転とかおっぱじまったような気がするので(もうちょっと途中色々とあったのですが書き出すと話のポイントがボケそうなので割愛^^)、やはり企業特別オペのツールとしての強力性があるという話になるのかなあと。
それから、株価下落が止まって、大手銀行を中心とする資本増強策が実施されて、企業の予備的資金需要および売上減少に伴う運転資金需要増加が売上サイクル一巡で減退したこととかも要因だと思いますが、まあその辺は要因分解の別の項目で説明できるのでしょうね。
『(2)CP 発行レートに対する引き下げ効果は、格付けによって異なり、a-1
格において最も大きくなっている。2008 年秋以降の金融混乱の過程でも、高格付けであるa-1+格については、投資信託など最終投資家の購入ニーズが引き続き存在したため、a-1格に比べると、需給環境はまだ良いほうであった。つまり、a-1+格に対しては、a-1格に比べ、政策効果の及ぶ余地がもともと小さかったと考えられる。また、買入れオペの対象はa-1
格以上であり、対象外のa-2 格に対する政策効果は小さくなっている。』
これはそうですなと思いつつ、a-1+とa-1でそんなに違ったっけとか一瞬思いましたが、そもそもa-1というのも幅が広い話ですから平均するとそういう話になるんでしょうな(^^)。
『(3)なお、買入れオペの対象外であるa-2 格に対しても、不確実性(信頼区間)が大きいとはいえ、引き下げ効果が発生しているのは、オペのスピルオーバー効果によるものと考えられる。すなわち、オペによって、a-1+やa-1
格など高格付けCP の市場環境が改善したことから、銀行などの投資家による低格付けCP
の引受け余地が何某か増したものと考えられる。』
ここの所はa-2とかをホイホイ買う人じゃないと正直よーわからんですが、高格付けCPでそこそこレートが出るうちは別に格付けが1枚下のモノを頑張って買う必要が乏しくなると思われますので、そーゆー効果はあるんでしょうなと。
ところで、ここのBOXでの分析ですけれども、TIBORの説明でここの部分は余計じゃないですかね。超蛇足ですけど。
『また、TIBOR は、本来、銀行の資金調達コストでもあり、CP のファンディング・コストが上昇すれば、CP
の発行金利にも上昇圧力がかかる。』
えーっと、本来はそうなのですけど日本のTIBORって・・・・・(^^)
という事で、ダラダラ引用しましたが、お前は何を言いたいかと突っ込まれますと、あたしゃ要するに「指値無制限オペ恐るべし」と言いたいのでありました(笑)。
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2009/08/03
○1999年4月19日の金融政策決定会合議事録
1999年前半の金融政策決定会合議事録が公開されていました。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gijiroku/data/gjrk.htm
でね、まあ普通は2月12日の会合での利下げの話を見るのですが、あたくしは何故か「量的ターゲットVS時間軸」の議論があった4月9日の会合議事録を先に熟読するでござるの巻。
こちらの議事録はワープロソフトで作成した議事録の冊子をスキャナーか何かで読んでいるという代物ですので、引用となると手打ちをしないといけない(それ用の装置とかもあるのでしょうけれど持ってません)ので、準備しておりません(週末は読み物で忙しかったので、と言い訳)ので本日はちょっと引用できないのですけれども・・・・・・
えーっとですね、議事録本文の60ページから75ページのあたりに、量的ターゲットを出す話と、それよりもゼロ金利の時間軸政策(という用語は当時ありませんでしたけれども)を実施した方が良いのではという議論がございまして、興味深く読む事ができました。
議事録63ページにある山口泰副総裁(当時)の発言から一部引用します。
『ただ、このオーバーナイトレート・ゼロという政策をいつまで続けるべきかについては、あるいは今少し明確にした方が良いのではないかとも感じている。この点、総裁の様々なご発言の中でかなり明確な方針が表明されてきているし、ターム物金利の低下振りなどをみると、マーケットの中での理解も徐々に浸透している。しかし、現在の政策は経済の自律回復がみえ、且つ物価の下落圧力が減衰し始める局面までは維持する必要があると個人的には思っており、そのことを今少し鮮明にする方が良いのではないかという趣旨である。』
『換言すると、現在のオーバーナイトレート・ゼロ金利政策がある程度長期化するのを覚悟するということであるが、その点を鮮明にすることにより、結果的には金利の全期間にわたる低位安定を促し、政策効果を極大にしていくことになると思われ、その方がこの期間が比較的短くて済むことに繋がるかもしれない。』
ということで、まともに「時間軸政策でイールドカーブ全体を低位安定させる」という話をしていますね。他の審議委員もこのあたりの議論で色々と良い論点が出ているので、この15ページの部分はお読みになりますと吉かと存じます。
#そのうちテキスト起こしする積りではございます
○金融市場レポートが出てました
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/mkr/mkr0907a.htm
本文はこちら
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/mkr/data/mkr0907a.pdf
国際金融市場におけるリスク・アペタイトの回復と世界経済の脆弱性
2009年上期の本邦金融市場の動向 ―― 市場環境の改善と神経質な展開 ――金融資本市場の今後の展望
ということですが、これまた長いので後日ネタにするかもしれません。基本的には今年前半の流れを細かく追っていまして、図表も豊富なので相場レビューにいかがでしょうかというところですが、PDFの本文が64ページという中々の長いものですので念の為。
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2009/07/30
お題「各国中銀の政策まとめペーパーが来ました」
ネタなし相場ですので熟読されるのが吉かと(^^)。
ということで、『今次金融経済危機における主要中央銀行の政策運営について』というペーパーが企画局から出まして、これがもう大変に良くまとまっておりますので、夏枯れ相場の中熟読されるのが吉かと存じますがどうでしょ。
要旨
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/research07/ron0907c.htm
本文(PDFで51ページ)
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/research07/data/ron0907c.pdf
ちなみにこちらの文章部分は22ページ(と最初の要旨3ページ)でして、後は各種資料の表とかグラフになっています。でまあこれを読めば宜しいんじゃないですかで話が終了するとあたくしの駄文のネタが無くなりますので(^^)、別にツッコミどころの無い(当たり前ですが)ペーパーですがご紹介。
○ところで紹介の前に何でこういうファイルの作りにしたんすか??
で、この本文ファイルなんですけどね、いやまあ『本稿の内容について、商用目的で転載・複製を行う場合は、予め日本銀行企画局までご相談ください。転載・複製を行う場合は、出所を明記してください。』っていうのは毎度の事ですので承知致しております(あたくしは商用ではございませんので念の為)が、PDFファイルをテキスト引用しようとすると文字化けして引用できないという新しい種類のプレーが登場したのは何か意図でもあるんすか???
いやまあ今後PDFで出す物に関しては、引用したけりゃおまいら文字起こしを自分でしやがれっていう方針に突如変更になられたのならそれはそれなのですけど、昨日出てた他のPDFで『「適格外国債券担保取扱要領」の実施日および適用開始日について』ってのは普通にテキスト引用できるので益々謎。まあ「引用ご相談」に関して簡単には引用させねえぜ!っていう事なのかもしれませんけどね!!(というか、こちらの文章もテキストに落とした時にアルファベットとかはちゃんと落ちているみたいだったりします)
ということで、散々確認した為に時間が無くなって若干トサカに来ておりますので(−−)、意地になってテキスト文字起こしする(htmlのところにあるのはコピペしますが^^)よって、今日の引用は少量になるかと存じます、と事前予告。
・・・・と書きましたが、単にあたくしの個人で使ってる年代物PC(確か6年選手くらいのノート)に存在する何らかのソフトのバージョンの関係だったりするというのがオチのような気もしますが、無事にテキスト引用できた人がいらっしゃいましたらご教授頂きますと有りがたく存じます。
追記:上記の件、特に他意はなかったようで、30日の昼間にファイルが差替えになっていました。ちゃんとテキストに落とせます。
という前置きは兎も角。
○金利引き下げ+時間軸
今回のペーパーで言及されている主要中央銀行は、『対象とする中央銀行は、日本銀行のほか、米国連邦準備制度(FED)、欧州中央銀行(ECB)、イングランド銀行(BOE)、カナダ銀行、スイス国民銀行、スウェーデン・リクスバンクの7行である。』ということで、この7行になっているのですが、今回の特徴として、金利政策部分においては「利下げ(ただし完全なゼロ金利にはしない)」と「時間軸のようなもの」のセット販売というのが一つの特徴として挙げられますというお話。
本文3ページ目から(テキスト起こし中に乱丁落丁があるかもしれませんのでその時はゴメンナサイです)。
『いくつかの中央銀行では、政策金利の引き下げに加え、ターム物金利など長めの金利を低位安定化させる目的で、政策金利の先行きに関する方針を表明することによって、金融緩和効果を補強している。』
というのが時間軸のようなものですな。具体的には・・・・・
『カナダ銀行は、2009年4月に政策金利である翌日物レートの誘導水準を0.25%に引き下げた際に、それを実質的な下限としたうえで、同時点のインフレ見通しを前提とする限り2010年第2四半期末までこの誘導水準を継続する方針であることを表明した。カナダ銀行は、その趣旨について、政策の透明性の向上によって将来の短期金利に関する市場の期待に働きかける効果を狙ったものと説明している。』
『また、リクスバンクは2009年7月に政策金利を0.25%に引き下げ、同水準程度の低金利が2010年秋まで継続するとの見通しを示した。』
『このほか、FEDも、一定の金利水準を継続する期間や金利水準を変更する条件を明示しない定性的な表現ながら、2009年3月以降、「経済情勢を踏まえると、極めて低水準のFFレートが長期間に亘って続く蓋然性が高いと考えている」と先行きの金融政策運営に関する基本的な考え方を表明している。』
ということで、カナダとスウェーデンと米国の話をしているのですが、まあそれを言い出すと日銀の場合は展望レポートにおける物価見通しの表明によって、堂々物価マイナス予想が来年度まで出ていますので、「結果的に時間軸みたいなもん」状態になっていると言えるでしょうが、これは時間軸としての意思決定をしたというよりは、物価見通しから考えると結果的に時間軸になっているという事なので、そーゆー意味からここに日銀の例を入れてないのですなあと思ってしまいました。
○ターム物金利誘導の話の中でどさくさに紛れて・・・・・
で、金利を下げて時間軸のようなものを設定したりしなかったりする各国中銀でございますが、潤沢な資金供給の一環としてターム物金利の上昇を抑えるオペレーションを行っていますという話が本文5ページに。
『加えて、各中央銀行はターム物金利の跳ね上がりに対応するため、通常よりも期間を延長したターム物オペを活用した。』
『カナダ銀行は、危機前には原則として翌日物オペのみを利用していたが、危機発生後は、ターム物レポ・オペの実施頻度を当初は臨時措置として高め、その後、定例的に実施する事にした(オペ期間は最長1年間)。』
『また、スイス国民銀行およびリクスバンクでは、平時におけるオペ期間は1週間であるが、それぞれ、3か月物、3〜12か月物のオペを導入・実施した。』
『ECBは危機前から長めの資金供給手段として、予め定めた資金量に対して入札で金利を決定する3か月物オペを有しているが、定例の実施に加えて臨時のオファーを行ったほか、固定金利かつ金額無制限とする措置を講じたうえで、最長1年物までタームを延長した。』
『この間、FEDは、入札型ターム物資金供給ファシリティ(TAF)の導入により、ターム物資金をより積極的に供給するとともに、既存のオペの枠組みの中においても、平時におけるオペは14日物までであったが、28日物のオペを定例的に実施するなどの対応を採った。』
で、日銀とBOEは元々そういうオペがありましたので・・・・・
『日本銀行とBOEは、危機以前より翌日物から最大1年物までの多様なオペ手段を有し、実際にその多くを比較的頻繁に利用していたが、危機発生後は年末越え資金の供給などに際して長めのオペを通常より多用した。』
ということですが、その次に何か微妙な説明が。
『また、日本銀行が導入した企業金融支援特別オペは、期間は最長3か月と既存のオペの範囲内であるが、翌日物コールレートの誘導目標水準の固定金利で、民間企業債務の担保範囲内であれば金額に制限を設けずに資金供給することにより、ターム物金利の低下を促す効果が期待されている。』
・・・・・・えーっと、企業金融支援特別オペに関しましては、導入当初このように説明していた筈なのですけれども、ついに「ターム物金利引き下げ」を全面に出すようになったということでしょうか???
『企業金融支援特別オペレーション基本要領』
『1.趣旨
この基本要領は、最近の企業金融情勢を踏まえ、適切な金融調節の実施を通じて、金融市場の安定確保を図るとともに、企業金融の円滑化に資する観点から、企業金融支援特別オペレーション(適格担保を根担保として、共通担保として差入れられている民間企業債務の担保価額の範囲内で、金額に制限を設けずに、無担保コールレートの誘導目標と同水準の金利により、年度末越え資金を供給する公開市場操作としての貸付けをいう。)を行うために必要な基本的事項を定めるものとする。』(昨年12月の導入当初バージョンの基本要綱より。期限延長した時に年末越え云々が改正されていますので念の為)
・・・・いやまあ「金融市場の安定確保」にターム物金利の安定も含まれますよと言ってしまえばそれまでなのですが、上記の理屈を逆に言えば企業金融支援特別オペを廃止あるいは手直しをする場合はターム物金利上昇を容認というメッセージになりますよという話になりゃせんですかと思う次第でありまして、何かそれって「企業金融支援」と別物の話になってるような気がするのが何だかなあという感じであります。
と、ここまでやった所で(一番最初の所と、特オペの要綱以外の)引用手打ち大会に力尽きましたので、本日はこの辺で。
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2009/07/29
○これは何だか難しそうな話
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/wps/wp09j06.htm
ハイブリッド型日本経済モデル:
Quarterly-Japanese Economic Model (Q-JEM)
『本稿は、日本銀行のスタッフが開発したマクロ経済モデルの一つである「Q-JEM」の2009年5月時点版の解説論文である。Q-JEMは、海外経済、原油価格、金融変数、人口動態といった日本経済を分析するうえで重要な多くの変数を持つ大規模モデルである。また、経済理論との整合性を考慮した長期均衡を持ちつつ、データとの整合性も重視したハイブリッド型モデルである。』
ということで、本文はこちらなのですが、PDF99ページにもなりますのでご注意を。
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/wps/data/wp09j06.pdf
何せこちらのWPは本文が19ページで残りが延々とモデルの計算ロジックの説明になっているというものでありまして、ハクション大魔王よりちょっとマシな程度しか数学の知能が無いあたくしと致しましてはもう何がなにやらという話なのですが、序論のところと読んでて「ふーん」と思ったところだけ引用を。
最初の所から。
『中央銀行におけるモデル開発は、1970 年代以降、Lucas (1976)による理論なきモデルへの批判もあって、理論をより重視する方向で発展してきた。まずは、経済理論との整合性を考慮して決定される長期均衡の概念を導入し、短期的には均衡からの乖離を許容してデータとの整合性を高めつつ、最終的には経済変数が長期均衡に収束していく誤差修正のメカニズムを持つモデルが導入された。このようなモデルは、理論と実証のバランスを取ることからハイブリッド型と呼ばれ、FRBのFRB/USが例として挙げられる。』
『近年は、短期的な動学まで含めて理論的な整合性を重視したDSGEモデルの開発が盛んになってきており、中央銀行の政策分析や経済見通し作業においても用いられ始めている。もっとも、FRBが最近でもハイブリッド型モデルを利用しているように、主要な中央銀行では、必ずしもDSGEモデルのみに依存したモデル運用を行っている訳ではない。』
だそうですが、何がなんだかよく判りませんが、DSGEとかいう言葉だけ聞いた事があるので何となく引用してみた。意味は特にない。
で、本文15ページのところで、『4−3.ゼロ金利下での期待』っていう分析があるんですけどね。
『前小節では、民間主体が金融政策ルールに基づいて政策金利に対する期待を形成することなどを説明した。これに続き、本小節では、Q-JEM
で期待が果す役割に対する理解を深めるため、ゼロ金利時のエピソードを例に挙げる。』
『具体的には、2005 年7〜9月時点のことを考える。このときは量的緩和政策の最中であり、政策金利がほぼゼロ%に固定されていた。また、インフレ率、GDP
ギャップともに低かったことから、すぐに利上げされていくとはみられておらず、将来の政策金利に対する期待も低かった。』
ということで分析して結果が出ているのでありますが・・・・・
『ここで、長期期待政策金利(ZCALL10)をH-VAR を用いて計算すると、7〜9月時点では約0.6%であったが、10〜12
月には約0.8%まで0.2%ポイント程度上昇したとの結果が得られた。この間、実際の長期金利(IRL)は1.3%から1.5%まで上昇しており、その上昇幅は、H-VAR
で算出した長期期待政策金利の上昇で概ね説明できるものであった。なお、長期金利から長期期待政策金利を差し引いたものとして定義されるターム・プレミアムは、概ね0.7%で安定していたことになる。』
ほほう。ではこの間の背景はと言いますと(引用としては文の順番を逆に引用してます)・・・・
『もっとも、H-VAR の算出結果をみると、政策金利、インフレ率、GDP ギャップの全てに対する期待が、ほとんどの期間で上昇した。この背景には、インフレ率やGDP
ギャップのマイナス幅が縮小し、期待を形成するうえでの発射台が、それぞれ−0.2%、−0.6%程度まで上方シフトしたことがある。また、GDP
ギャップに対する期待形成式の特性として、一度GDP ギャップが上昇すると、慣性が働き上昇を続けやすいとの期待が形成されることも寄与していた。結果として、政策金利がプラスになるのは2006
年4〜6月と期待されることになり、2四半期先まで一気に近づいた。』(ちなみにその前の四半期は8四半期先という期待の形成になっていたという分析です)
えーっとですね、実際問題としては2005年7−9月期って景気回復期待の中で量的緩和のコミットメントがあるから短期金利動きませんがな状態だったのが、「急に地均しが来たので」状態になって2年とかの金利がいきなりどどーんと上昇した時期でして、ついでに9月には郵政解散があって自民党圧勝で株価まで上昇したので金融政策変更の期待がいきなり盛り上がった時期でもありまして、ケースとしては前章で説明があった『金融政策ルールが政策金利に対する期待に影響する』という話なのかなあなんて思ったりするのですが(^^)。
まー長期金利がどう動いたかという話になりますと、確かにこの時期に上昇したのは中短期の金利であって、長期の期待という点では中短期ほどぶれていない(から変動利付国債が死亡したのですけど)ので、そーゆー意味ではこちらでの分析が上記のようにどんぴしゃになっているのですよね。
何か良く判らないけど引用してみた。少し反省している。
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2009/07/27
○7月金融経済月報(概要)はしらっと上方修正
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0907.pdf(7月)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0906.pdf(6月)
声明文では引き続き下振れリスクてんこもりですし、白川総裁や山口副総裁の会見などでは同じく先行きへの厳しい見方を示しているのですが、月報概要は色々と芸を駆使して上方修正をしております。
・日銀文学その1:水準の話を削除
まずは冒頭部分。
『わが国の景気は下げ止まっている。』(7月)
『わが国の景気は、大幅に悪化したあと、下げ止まりつつある。』(6月)
前回「下げ止まり」を入れた時に変に出口政策への思惑が出るのを気にした為に入れたと思われる「大幅に悪化したあと」が1か月にしてさっくりと削除されたでござるの巻(^^)。
まあ市場的には企業金融関連などの臨時措置を延長したり、先行きの下振れリスクを強調したり、物価が相変わらず弱かったり雇用関連が弱かったりと、どちらかと言えば時間軸を意識するような展開になっていますので、メディアが変に回復宣伝で出口政策みたいな事を言い出さなくなった所でさっくりと削除ですかそうですか。
・日銀文学その2:語順の変更
これがまた芸が細かいとしか申し上げようがありません。冒頭の次なのですけど、長いけど引用しますね。
『公共投資は増加している。輸出や生産は、大幅に落ち込んだあと、持ち直している。そうしたもとで、企業の業況感は、製造業大企業を中心に、悪化に歯止めがかかっている。一方、厳しい収益状況などを背景に、設備投資は大幅に減少している。雇用・所得環境が厳しさを増す中で、個人消費は弱めの動きとなっており、住宅投資は減少している。』(7月)
『企業収益が大幅に悪化するもとで、設備投資は大幅に減少している。また、雇用・所得環境が厳しさを増す中で、個人消費は弱まっており、住宅投資も減少している。一方、輸出や生産は、大幅に落ち込んだあと、持ち直しに転じつつある。この間、公共投資は増加している。』(6月)
で、小見出しとして「語順の変更」と書いたので何の事かは判るかと存じますが(^^)、6月は「(悪い話)。一方(良い話)」という順番になっていたのですが、7月は「(良い話)。一方(悪い話)」という順番になっておりまして、当然ながら先に良い話が来るので、現状判断の文面が何となく前月より明るくなっている訳ですな。
ちなみに、先行きの部分に関しても同じ芸を見せておりまして、今回の月報で語順を変更して良い話を先に持ってきており、全体のトーンが明るくなっているのですな。何という芸の細かさ(^^)。
・現状判断の項目別展開
で、現状判断部分は上で全部引用したので改めては引用しませんが、比較をしますとこんな感じです。
(輸出、生産)『持ち直しに転じつつある』(6月)→『持ち直している』(7月)
(個人消費)『弱まっており』(6月)→『弱めの動きとなっており』(7月)
というのが上方修正。
(企業収益)『大幅に悪化するもとで』(6月)→『厳しい収益状況など』(7月)
これは微妙なのですが、方向感が底ばいになったという感じだと思います。後の文章とか見ますと特にここの部分で上方修正をしたという感じにはなっていなさそうです。
あと、業況感のところは短観を反映したもので、四半期ごとに入るお約束です。
・先行き見通し
『先行きについては、景気は次第に持ち直しに向かうと考えられる。』(7月)
『先行きについては、景気は下げ止まりの動きが次第に明確になっていく可能性が高い。』(6月)
これはまた上方修正で。
・先行き見通しの項目別展開
語順が変わっている点は先ほど申し上げたとおりです。まとめて引用してご鑑賞ありたし(^^)。
『すなわち、輸出や生産は、内外の在庫調整の進捗を主因に、持ち直しを続けるとみられる。また、公共投資も増加を続けると見込まれる。一方、国内民間需要は、厳しい収益・資金調達環境が続き、雇用・所得環境も厳しさを増すもとで、引き続き弱めに推移する可能性が高い。』(7月)
『すなわち、国内民間需要は、厳しい収益・資金調達環境が続き、雇用・所得環境も厳しさを増すもとで、引き続き弱まっていく可能性が高い。一方、輸出や生産は、内外の在庫調整の進捗を主因に、持ち直しを続けるとみられる。この間、公共投資も増加を続けると見込まれる。』(6月)
で、項目別で言うと変化は微妙でして、雇用、所得の部分で、『引き続き弱まっていく可能性が高い。』(6月)→『引き続き弱めに推移する可能性が高い』(7月)となったところだけだったりするのですけどね。
・物価に関して
ここでは低下要因の中にあった「国際商品市況の下落」が外れたという点があるのですけれども、まあそれは現象面の話でして、消費者物価の見通しの中で微妙な一節が。
『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、経済全体の需給が緩和した状態が続く中、前年における石油製品価格高騰の反動などから、マイナスとなっている。』(7月)
ここに「経済全体の需給が緩和した状態が続く中」という表現がありますが、6月月報では物価の先行き見通しで需給バランスについて言及しています。
『消費者物価の前年比は、石油製品価格の下落や食料品価格の落ち着きに加え、経済全体の需給バランスの悪化などを背景に、マイナスになっていくと予想される。』(6月)
さて、この「悪化」(6月)というのと「緩和した状態が続く」(7月)というのはどっちがどうなのか微妙ですね!
それから、消費者物価が前年比マイナスとなった訳ですが、さて先行き見通しはどうなのでしょうかと言いますと。
『消費者物価の前年比は、前年における石油製品価格高騰の反動などから、当面、下落幅を拡大していくと予想される。』(7月)
「当面」ですかそうですか(-_-メ)。
・金融環境の全体感でも語順の変更が(^^)
『わが国の金融環境は、なお厳しい状態にあるものの、改善の動きが続いている。』(7月)
『わが国の金融環境は、改善の動きがみられるものの、全体としては、なお厳しい状態が続いている。』(6月)
えーっと、こちらでは結語部分が「厳しい状態が続いている」から「改善の動きが続いている」となっていますので、単純に語順を変更したのではなくて結論が変わっているのでありますが(^^)。
じゃあ内容はどうかと言いますと、金融面の現状についてはマーケット数値通りなので変化どうこうは割愛。金融環境に関しても内容には変化は無く、変化があるのは全体感の部分だけなのですな。一応基本部分だけ引用しますが、6月と同様なので今回分だけ引用します。
『コールレートがきわめて低い水準で推移する中、企業の資金調達コストは、CP・社債発行金利や貸出金利の低下から、一段と低下している。ただし、実体経済活動や企業収益との対比でみれば、低金利の緩和効果は減殺されていると考えられる。』(7月)
・ということで
今回の金融経済月報の(概要)部分は何気にいろいろな芸を駆使して細かく上方修正を積み上げている印象でして、声明文や会見のトーンよりも経済に対して強めの物を感じましたです。しかし細かい芸には感心しました。
○またまた日銀ペーパー関連で読んだもの2題(メモ)
『近年の中国におけるホットマネーの動き』
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/rev09j08.htm(紹介ページ)
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/data/rev09j08.pdf(本文)
内容は正直あたくしにはよー判らんというかほほーそうですかで終了してしまう(あほです)所なのですが、一つだけの統計数値では読みにくい資金の動きをきちんと捉えるために各種データを積み上げていって分析する進め方に感心するのでありました。
『わが国の「都市化率」に関する事実整理と考察
─ 地域経済の視点から ─』
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/wps/wp09j04.htm(紹介ページ)
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/wps/data/wp09j04.pdf(本文)
もはや金融政策とかの話では無いのですが、これまた中身が面白く読めましたです。
ちなみに、読んでてウケたのは「英国の都市化率89.7%」って所でして、そりゃまあ一極集中だけど英国ってそんなに都市化してたっけとか思ったら、その定義を日本にあてはめて試算したら日本の都市化率100.0%になってしまった辺りとかですが、まあそんな事よりも、各県の都市化率とか、一例として埼玉県の地図から都市化している地域の分布図とか、いろいろと面白い図表がてんこ盛りでございまして、こちらに関しては紙に打ち出して本文編と図表編に分けてから読むのを強力推奨いたします(^^)。
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2009/07/22
6月15、16日の決定会合議事要旨から。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g090616.pdf
○まあこの辺は声明文にございましたが
『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』から。
海外経済が下げ止まってますけど金融情勢に関しては必ずしも先行き楽観できませんねえという話をしてまして、国内経済についてはこのようなお話に。
『こうした海外の金融経済情勢を踏まえて、わが国の経済情勢に関する議論が行われた。』
『現状について、委員は、下げ止まりつつあるとの認識を共有した。また、多くの委員は、大幅に悪化した後の下げ止まりであり、経済活動の水準は低いと付け加えた。』
ということで6月声明文が妙に器用な日銀文学になった訳ですな(^^)。
『その上で、委員は、当面の経済情勢について、国内民間需要は引き続き弱まっていく可能性が高いが、内外の在庫調整が一層進捗するもとで、輸出・生産は持ち直しを続けるとの認識で一致した。また、委員は、こうした動きに加え、これまで講じてきた経済対策が執行段階に入ってくることから、公共投資も増加を続けると見込まれるとの認識でも一致した。これらを踏まえて、委員は、わが国の景気は、下げ止まりの動きが次第に明確になっていく可能性が高いとの見方を共有した。』
『こうした見通しについて、委員は、4 月末に公表した展望レポートに概ね沿った動きであるとの認識で一致した。』
ということで、先行きに関してもございますがめんどいので引用割愛しますが、要するに声明文どおりでありまする。で、個別の需要項目に関してですが、これまた一々引用するのは長いので割愛しますけど、やたらめったら下振れリスクの懸念が示されているのも先月と同じですが、需給ギャップのマイナス幅に関する部分に関してはこのような指摘が。消費者物価に関る部分からです。
『一方、複数の委員は、産業構造の変化に伴う既存設備の陳腐化などを考慮すると、需給ギャップのマイナス幅が過大に計測されている可能性があるという認識を示した。』
これは(とりあえず直近3回分見ましたが)今回初めて出て来た指摘ではないかと思います。ただまあこれ以外の指摘部分はひたすら下振れ関連の話でして、特に雇用調整圧力が個人消費や消費者物価動向に与える悪影響を大きく懸念しているというのは把握しました。
○金融面に関して
まーそれはそれとしまして、どっからどう考えても金利政策の出口がどうのこうのという話は1年以上先のお話(これで10月の展望レポートで2011年度のCPI見通しがマイナスになったら尚のこと先になりますなあ)でありますので、そっちより先に動く可能性があるのは各種時限措置なのでございまして、そーゆー意味では金融面の検討の方が市場現場労務者としては気になるのですが・・・・・・
『わが国の金融環境について、委員は、改善の動きがみられるものの、全体としては、なお厳しい状態が続いているとの認識を共有した。多くの委員は、C
P 発行金利の更なる低下や社債発行銘柄の拡大など、企業金融に改善の動きがみられるとの認識を示した。』
『もっとも、何人かの委員は、下位格付先の社債発行は依然として厳しい状況にあるなど、二極化現象は解消されていないとの見方を示した。また、複数の委員は、資金繰りや金融機関の貸出態度について、悪化に歯止めがかかる動きはみられるものの、なお厳しいとする先が多いと述べた。更に、複数の委員は、企業業績の悪化が続く中で、先行きの資金繰りに関する企業の不安心理は依然として払拭されていないと指摘した。』
ということで、まあ大体声明文やら金融経済月報で示されている通りでこの辺りに関してはあっさり味の話になっていますわな。
○で、時限措置の扱いについて
『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』ですが、金利据え置きに関しては物凄いあっさり味で見解一致となっています。まあ当然ですけどね(^^)。で、時限措置の取扱についての議論があったそうでございますわな。
『各種臨時措置の取り扱いについても、議論が行われた。まず、委員は、基本的な認識として、@
金融経済情勢が改善した後も長期間にわたって維持した場合に、景気や物価の振幅をかえって大きくするリスクを意識しながら、こうした措置の制度設計や運営を行っていること、A
各々の措置は、その目的や仕組みが異なっているほか、金融市場や金融環境に与えている影響も様々であるため、一律ではなく、措置毎に取り扱いを検討する必要があること、B
金融市場や企業金融全体の動向をよく見通した上で、検討していくべきであることを共有した。』
6月会合後の総裁記者会見だと「企業金融措置」はその範囲内でワンセットというようなニュアンスに取れる話をしていたようですが、こういう表現をされると個別措置についての検討の余地もありそうな書き方になってまして微妙ではございますな。7月会合での議論も見たいと思います。
『ある委員は、各措置の効果を評価する際には、実際に介入している市場だけでなく、関連する市場への影響も含めて総合的に検討することや、安全弁としての役割も考慮することが重要であると指摘した。』
企業金融特別オペの結果短国の金利が下がっているという効果がでて国債増発懸念がちゃっかりどっかに逝ってしまった件ですね、わかります。
『その上で、各種措置の現状について、何人かの委員は、高格付けのC P の発行金利が短期国債金利を下回るなど、効果がかなり強く出ているという面もあるが、企業金融を取り巻く環境がなお厳しいことを踏まえると、市場参加者に資金調達にかかる安心感を与えるという役割は依然として大きいとの見方を示した。』
効果がかなり強く出ているというか、高格付けCP発行体とCP引受およびオペへのアクセスが可能なディーラーへの・・・いやまあいいですけど。
『ある委員は、やや長めの金利に働きかけるという目的で企業金融支援特別オペを実施し、効果が出ていると指摘した。』
これまた短国金利から1年とかまでの金利がフラット化した件ですかな。
とまあそんな訳で、企業金融特別オペに関しては効果が派手派手に出ているのですけど、じゃあこれからCPを外すとかしたらどうなるのかというと、CP金利が上昇した場合(目の子でAA格の3か月で10bpくらい上昇するんじゃないですかね)にCP市場だけで影響が止まるのかというとそこもまた不透明な面が。とは言いましても「影響があるから短国金利とCP金利の逆転現象を未来永劫容認」という訳にも行かない筈でして、どーゆー匙加減になるのよという所でしょう。
まー企業金融面という点では何だかんだと言いましても銀行業態の資本制約が軽くなるのが企業金融対策としては効果がでかい筈でございまして、そう考えますと株価水準がここから2〜3割くらいは上昇してくれないと話としては難しいのではないでしょうかとは思う所でありまする。
#その前に米国が出口政策を本格的に開始しないと動けないでしょって話もあるが(^^)
『C P ・社債の買入れでオファー額に応札額が満たないケースが頻発していることについて、何人かの委員は、市場機能の回復に伴う応札額の減少は、制度設計の時点で予想されていたことであるとの見方を示した。』
まあこれはその通りですが、とは言え情勢の悪化に対応するためには安全弁としての買入措置は継続しておいた方が宜しいんでしょうな。
『ある委員は、C P ・社債の発行環境が更に改善していることなどを踏まえると、企業金融全体の逼迫という状況ではなくなりつつあるため、今後は、臨時・異例の措置の解除に向けて、具体的な検討を行っていくべきであるとの認識を示した。』
ということで、別に複数委員の提案と言うわけでもないようで、「ある委員」さんの意見のようですが(須田さんですかねえ)、まあこういう指摘が出た流れが7月の決定会合での延長措置決定に絡んでどういう論議になっていたのかは注目したいですねえ。ということで夏休みの楽しみは決定会合議事要旨ですかそうですか(^^)。
『最後に、本件に関する情報発信という観点から、何人かの委員は、各種措置は金融市場の安定確保や企業金融の円滑化に大きく貢献しているだけに、市場参加者の予測可能性に十分配慮しながら、9
月末までの適切な時期に判断するべきであるとの見解を示した。』
ということで7月に決定されましたという事ですが、先ほどから何度も申し上げておりますように、7月会合でどのような線で議論が進行したのかが議事要旨である程度読めますと吉かなとは思いますです、はい。
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2009/07/21
○銀行決算に関する日銀レビュー
概要
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/rev09j10.htm
本文はこちら
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/data/rev09j10.pdf
先般決算が出た銀行の財務状況に関して簡単に纏めてあります。毎年出てるのですが、今年のもまた興味深いものでございまする。まあ本文嫁という感じですが(^^)、あたくしが読んでほほーと思った所を少々。
・フローベースは悪化している割にはストックが悪化していない
というのが今回の銀行決算の最大の特徴の一つとされています。本文4ページ目の『(6)金融システム面での施策による下支え』という小見出しの頭の所にあるのですが。
『2008 年度の銀行決算では、銀行収益が悪化するなか、自己資本比率が上昇したほか、不良債権比率も地域銀行では改善するなど、フロー・ベースの悪化にもかかわらず、ストック面の指標はあまり悪化していない。』
ということで、その背景に制度面のサポートがあるという話が。
『すなわち、日本銀行金融機構局の計数調査に基づいて、2008 年度下期に導入された主な制度変更(@金融商品会計基準の見直し、A貸出条件緩和債権の要件見直し、B自己資本比率規制の一部弾力化)が2008
年度決算に与えた影響を試算すると、損益面では、大手行では約2,100 億円、地域銀行では約1,800
億円の税引前当期純利益の押上げ効果があったとみられるほか、信用コスト率については、大手行では約▲4bp、地域銀行では約▲8bp
の低下効果があったとみられる。』
時価評価の緩和とか分類債権区分の緩和とかで嵩上げされている部分がありますよってな話ですが、冷静に考えると欧米金融機関の決算ではもっとインチ(自粛)。
『また、財務面では、純資産のうちその他有価証券評価差額金が、大手行では約3,800
億円、地域銀行では約2,500 億円増加し、不良債権比率は、大手行では▲0.2%ポイント、地域銀行では▲0.6%ポイント低下した。』
その他有価証券評価差額金って変動国債っすか?
『この結果、自己資本比率ベースでは、大手行では+0.3%ポイント、地域銀行では+0.5%ポイント程度の押し上げ効果があった。』
ということで、ストックの改善は制度改正の寄与が大きいという話ですな。
・基礎的収益力の低下
本文5ページ目のまとめの所にもう一つの特徴として基礎的収益力が低下していることが挙げられています。
『このように、わが国銀行の収益は、信用コストと有価証券関係損益の動向によって大きく左右されてきており、2008年度決算でもその特徴が色濃く表れているが、2008
年度決算のもう一つの特徴は、基礎的な収益力が低下したことである。先述のとおり、コア業務純益の収益率(対総資産比率)は、2008
年度では1990 年代前半の水準まで低下した先が多い(前掲図表6)。コア業務純益の低下に伴い、信用コストの増加や有価証券関係損益の悪化により赤字決算に陥る可能性がより高まっているといえる(図表16)。』
んでこの図表6というのが2ページ目に示されているのですけれども、これを見ますと(図表は引用できないので勘弁)2005年度決算をピークにコア業務純益ROAが趨勢的に低下しているという図になっていますわな。
2005年度決算がピークということは特に経済状況やら金利水準に対してどうのこうのという関係ではないように見えます。単に不良債権処理を終わらせて拡大路線を復活させたら例によってコア業務純益ROAが低下傾向になったでござるの巻というようにも見えますが、そう考えると銀行経営って何なのよという気もするのですけど。
ちなみにコア業務純益の減少に関しては1ページ目から始まる『(2)コア業務純益の減少』という所に解説がございます。2ページ目から引用。
『コア業務純益が前年対比悪化した最大の要因は、非資金利益が顕著に減少したことである。すなわち、1998
年から2002 年にかけて認められた投資信託や保険商品の窓口販売が手数料収入をもたらし、これらは大手行の外国為替・デリバティブ関係利益とともに2003
年度以降の銀行収益に大きく寄与してきたが、2007年度には減少し、2008 年度には市場環境の急速な悪化から、さらに大幅に減少をみたものである(図表4)。』
ニヤニヤ。
『他方、資金利益は、大手行で若干の増加、地域銀行ではほぼ横這いの動きとなった(図表5)。大手行では、リーマン・ブラザーズ破綻以降の企業金融の逼迫を受けて、大企業向け貸出が増加したことに加え、2008
年度前半までは国際部門の資産が順調に積み上がっていたことが、資金利益の押し上げ要因として寄与していたものである。』
なるほど。
『この間、地域銀行は、大企業向け貸出の伸びが相対的に小さかったことに加え、2008年度後半の貸出については、緊急保証制度を利用した利回りの低い案件が多かったことなどから、利鞘も悪化した。』
・有価証券に関する部分はどうなんでしょうかね
2ページ目からの『(3)有価証券関係損益の悪化 』部分。
『2008 年度銀行決算の最大の特徴の一つは、世界的な金融資本市場の動揺の影響を受け、有価証券関係損益が大幅な悪化をみたことである。すなわち、大手行では前年差▲1.5
兆円の▲1.4 兆円、地域銀行では前年差▲1.0兆円の▲1.1兆円と大幅な損失超となった(図表7)。これは、大手行、地域銀行ともに、株価下落を受けて株式関係損失が大幅に増加したこと、地域銀行では、株式投信やREIT
などの減損や売却損が嵩んだため、債券関係損失も大幅に増加したことなどによるものである。損失額は、大手行、地域銀行ともに、コア業務純益の約6
割に達している。』
まあ皆様ご案内の通りでありますがこういう結果に。でまあ株式関係の損益に関して分析をしているのですがその部分は飛ばして結論部分を。
『この結果、有価証券関係損益(実現損益)と有価証券評価差額(含み損益)の増減額を合算した有価証券総合損益は、大手行、地域銀行ともに、2
年連続で大幅な損失超となった(図表10)。損失規模は大手行で5.3 兆円、地域銀行で2.7
兆円と、いずれもコア業務純益水準の約2 倍に達している。このことからもわかるように、わが国の銀行にとって、株式保有にかかるリスクを削減していくことが、引き続き重要な課題である。』
ということでまあいつもの結論になるのですけれども、そうは言いましても貸出が趨勢的に伸びるような経済状況でも無い中では有価証券投資はしない訳にも行かないのかと思いますけど、その辺はどうなんしょと思いますです、はい。
まあとりあえずそんな感じですが中身は面白いです。
○新日銀ネットの構築について
日銀ネットの構築について
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/set0907a.htm
基本的な考え方
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/data/set0907a.pdf
まあマニア向けの話かもしれませんけど、これは結構な大ネタでございます。とは申しましてもあたくしも実務知ってる訳ではありませんので(汗)、中を見ながら勉強しなきゃと思うのですが。
読んでおりまして、ほほーと思ったのは本文3ページの所にある『(3)「新日銀ネット」構築の狙い』あたりからですけど。
『たとえば、日銀ネットの柔軟性やアクセス利便性が高まれば、金融機関におけるSTP
化の一層の推進が容易になり、オペレーショナル・リスクの削減や、コスト縮減に繋がることが期待される。また、他の証券決済インフラと日銀ネットを接続することにより証券決済のSTP
化が一層進展すれば、決済リスクの削減や安全性の高い有担保の資金取引市場のさらなる効率化にも繋がっていくと考えられる。』
つまりSTPの推進を行って証券決済期間を短縮しましょうというのは理解した。
『また、アクセス利便性を高め、稼動時間の拡大が可能となれば、金融取引のグローバル化へのより柔軟な対応や決済の一層の円滑化が展望できるようになり、新たな金融サービスの提供の可能性が拡がるものと期待される。』
(後でも書いてますが)外国為替決済におけるPVP(DVPと同じ話)決済化を可能にして更に外貨VS邦貨決済の決済リスクを削減するという話ですな。
で、システム的な電文フォーマットとかプロトコルの話とかは金融機関関連のシステム屋さん必見の話だと思うのですが、あたくしさすがにそこまでは存じませんので証券決済関連に関する部分をもうちょっと。
5ページ目以降に『3.新日銀ネットの機能面における主な変更点』というのがございまして、幾つか書いてあるのですけれども。
『○ 資金決済の分野においては、待ち行列および複数指図同時決済による流動性節約機能を利用できる取引を拡大し、金融機関等の資金効率の向上を一段と進めることを想定している。
具体的には、現在は、国債以外の証券に関するDVP の資金決済はこの機能の対象となっていないが、新日銀ネットの構築後はこの機能の利用を可能とする予定である。』
ということで保振をかました決済に関してRTGS化するという話みたいです。
担保関連のところを華麗にスルーして国債関連事務に関してはこのような話が。
『(振替停止期間の短縮ないし廃止)
・現行の国債振替決済制度では、元利払日前の2 営業日間を振替停止期間としているが、新日銀ネットの構築後は、振替停止期間を短縮ないしは廃止する。』
となりますと、当然ながら償還銘柄を償還まで担保に使えるように変更という理解で宜しゅうございますでしょうか。というかそうならないのだったら別にユーザーにメリット無いのですけど・・・・・
『(国債の利子配分方法の見直し)』
当期利払口の廃止を行うって話ですが、思いっきり事務的なお話になるので引用割愛します。ちなみに当期利払口に係る決済指図の従来の具体的事務に関しては本文にあります通りでございまして、まあフロントの人間も理解はしておくべきではないかと思われますが(^^)。
『(他の証券決済インフラとの接続等)
・他の証券決済インフラとの接続を可能とすることにより、国債決済におけるSTP
化の一層の進展に寄与する対応を展望する。』
ということで、こちらでもSTPの話となっています。
・・・・・でですな、これ見てて思ったのですが、何でもRTGSとかSTPとかになるのは方向性としては良い方向なんでその通りですなあという話なんですけれども、そうなってきた場合に日中資金繰りが益々複雑になってくるので、日銀ネットに直接アクセスしておらず、日中当座貸越が利用できないような業態がフルインベストをした場合に資金繰りがちゃんと回るのかというのが最初に感じる疑問と言うか不安でございます。何せそういう業態(だけでは無いですが)の場合各種制度の建付けが古ければ古いほどつぎはぎ状態でござるの巻となってるので、決済のプロセスを改革するとなると民間の制度設計の方もそれに合わせて改革しないと不具合が生じるかと思われます。でも制度いじってる人たちって決済事務とか知らねえから困るのよね(愚痴)。
まー裏の意図として付いていけない連中は振り落として、カストディ専業銀行にぶら下がる形にさせたいっていうのはあるのかも知れませんが、カストディ専業で商売が成立する為には、トランザクションフィーを取れる位の金利水準にならないとこれまた不具合が生じるかと。米国だって金利が絶賛低下して色々不具合が生じているようですし。
などということを最初に考えたのですが、『以上を踏まえ、日本銀行は、本ペーパーでお示しした構想に関するご意見を、以下の要領で募集します』ってなってますので、精々考えて見ます。
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2009/07/16
お題「ほうほう3か月延長」
決定会合結果
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/k090715.pdf
政策投資銀行との取引にコミライン設定支援を追加したみたいです。よー知らんが。
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/mok0907a.pdf
各種オペレーションの延長措置明細
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/mok0907b.pdf
FRBとのスワップ取引期限延長
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/un0907a.pdf
○各種オペは3か月延長でした
暫く前から報道されていましたように、各種臨時措置に係るオペは一律3か月延長となりました、3か月延長という事ですので、年末越えのファンディングに関しては引き続き面倒見ますけど、3月末に関してはまたこれから考えますとな。
結果発表後ちょっと金先とか2年とかが反応しておりましたので、6か月延長への期待というか楽勝ムードがあったんですなという所ですが、前回2月に各種措置延長した時は「6か月延長」でしたので、今回も6か月という期待もあったという事ですな。
と言いましても、冷静に考えますと今年の2月は金融環境的が世界的にメタメタだった時でして、この時分だったら安心感を出す為に6か月延長というのもあったのでしょうけれども、現在は金融環境が少なくとも市場性の所に関してはかなり改善している訳ですから、別に6か月延長せんでもええという話になるのはフツーの考え方ですわな。
いやね、あたくし的には次回延長の時に政治的に変なリスクが発生する環境になってたら嫌ですなあとか思ってたので、ど〜せ3か月後も普通に延長になるんだろうから期末越えの所まで延長となる6か月延長になるのかなあとか思ったりもしたのですが、まーそれは民主党様がそこまで無茶苦茶じゃなければ発生しないリスクでもありますので(笑)、それよりは足元の金融環境改善に対応して、市場動向の点検サイクルを短くするのが筋が通った話ですわなという所かと。
で、会見でもあったようですけれども、8月ではなく7月に各種措置を延長したのは「そうは言っても金融環境はなお厳しい状況」だという認識になっているのですから、別に8月を待たなくても良いという話になったんでしょうな。FRBだってこの前12月末期限の措置を延長(1か月ちょいですけど)したので9月末期限の延長を7月に決定しても普通ですという事ですわな。BOEとは全然違いますが(^^)。
それから、特に今回は中身をいじる(=企業特別オペからCPを外すとか)ことはせず全部そのままで延長となりましたので、トータルするとまあ予想通りという話になるんでしょうね。いつまでも未来永劫延長する訳ではないですよというメッセージも伝わったと思われますし、まあ良かったのではないでしょうか。
ニュースのヘッドラインでは「情勢改善したら終了または見直しするのが適当」というのが出てて、それに過剰に反応したのではないかと思われる節もあるのですが、別に臨時措置に係らず、金融政策というのは未来永劫変更なしな訳は無いのですから、その話は「犬が西向きゃ尾は東」位のことであって、それを殊更に記事の題名にしちゃうどこぞやどこぞの情報ベンダーは豆腐の角に頭をぶつけて反省すべきではないかと思いますが。
会見要旨は今日アップされると思いますが、「顕著な改善が見られなければ再延長」という趣旨の発言を総裁はしていたようでして、前任の某福井の俊ちゃんみたいに出口政策を強調する姿勢は見られないので、まー見てて安定感があって誠に結構でございます。
市場的には2年0.225%まで低下(金曜の場中)してたりして、6月の国債大量償還資金が余っていた事情もあると思いますが、過度な安心感でリスクプレミアムを潰し過ぎた面もあったのかも知れませんなあという事で、ここもとの反応は「過度の楽観の修正」で良いのではって気はします、はい。
追記:ここで書いた文が意味不明ですので、改めて翌日に補足しました。
○一応昨日の補足
何か色々と考えながら書いていたら頭の中で話の筋が混乱しまして、勝手に端折ったり話が飛んだりという感じで、あたくしここもとの暑さにちょっと頭がやられておりましたようでございます。
つーことで、同じこともう一回書きますと、今回の「全部の施策を条件変更せず3か月延長」というのは、ある意味で言えば予想の中央値みたいなもんなのですが、「6か月延長」とか「一部の条件の手直し(きつくする)」というような予想(というより思惑)もある中で思いっきり直球ど真ん中施策だったので大変結構だったのかなという感じだと思います。
8月ではなく7月に延長決定(先月の今頃は8月に延長がコンセンサスだったと思います)したのは無用な不安が発生するのを避ける意味で日銀の意思を示したという格好ですし、6か月延長ではなく3か月延長になったのは金融環境が改善傾向にあるという現状認識からすればこれもまた良く考えれば順当な話で、前倒しの延長決定と見直しサイクルの短縮化がコンボになって丁度良いバランスですねという所なのでしょう。
この決定が出た後、金先やら2年がやや売られたのは、延長長期化の期待がちょっと高めだったのと、キャッシュに関しては6月大量償還に伴う運用資金余剰状態による金利低下の反動も加わったんでしょうね。
というようなことを書いた積りだったのですが、微妙にアレな文章になっておりましてどうもすみませんでしたm(__)m
○結局は「シナリオどおり」なんでしょうかね
声明文比較をば。
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/k090715.pdf(7月)
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/k090616.pdf(6月)
・基調判断
『わが国の景気は下げ止まっている。』(7月)
『わが国の景気は、大幅に悪化したあと、下げ止まりつつある。』(6月)
ということで、下げ止まりになりました(^^)。
・現状判断項目別展開
『すなわち、公共投資が増加しているほか、輸出や生産は持ち直しており、企業の業況感は、製造業大企業を中心に悪化に歯止めがかかっている。一方、厳しい収益状況などを背景に、設備投資は大幅に減少している。また、個人消費は、各種対策の効果などから一部に持ち直しの動きが窺われるものの、雇用・所得環境が厳しさを増す中で、全体としては弱めの動きとなっている。』(7月)
『すなわち、企業収益や雇用・所得環境が厳しさを増す中で、国内民間需要は弱まっている一方、輸出・生産は持ち直しに転じつつあるほか、公共投資も増加している。当面は、こうした景気下げ止まりの動きが次第に明確になっていく可能性が高い。』(6月)
ということで、6月に示された下げ止まりの動きが明確になった結果が今月ですよって話になってるっちゅうことでしょうかね。企業収益環境が悪くて、それに関連して設備投資や雇用環境が悪いという話は相変わらず継続中という所のようでございます。
・金融環境
『この間、金融環境をみると、なお厳しい状態にあるものの、改善の動きが続いている。』(7月)
『この間、金融環境をみると、改善の動きがみられるものの、全体としては、なお厳しい状態が続いている。』(6月)
あんまり判断が前進していませんな。
・物価
『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、経済全体の需給が緩和した状態が続く中、前年における石油製品価格高騰の反動などから、マイナスとなっている。』(7月)
『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、石油製品価格の下落や食料品価格の落ち着きを反映して足もと低下しており、今後は、需給バランスの悪化も加わって、マイナスになっていくとみられる。』(6月)
ということで、6月の予想通りマイナスになったと。
・先行き見通しには物価の部分がちょっと
『先行きのわが国の景気は、内外の在庫調整が進捗したもとで、最終需要の動向に大きく依存する。2010
年度までの中心的な見通しとしては、中長期的な成長期待が大きく変化しない中、本年度後半以降、海外経済や国際金融資本市場の回復に加え、金融システム面での対策や財政・金融政策の効果もあって、わが国経済は持ち直していく姿が想定される。』(7月)
基本的に書いてあることは変わっていないのですけれども、実は物価に関する記述が微妙に変わっていまして、6月はここの文に有る『中長期的な成長期待』ってのが『中長期的な成長期待やインフレ予想』となっていまして、物価に関する記述が独立した文として今回掲載されました。
『物価面では、消費者物価の前年比は、当面、下落幅を拡大していくものの、中長期的なインフレ予想が安定的に推移するとの想定のもと、石油製品価格などの影響が薄れていくため、本年度後半以降は、下落幅を縮小していくと考えられる。』(7月)
こちらで中長期的なインフレ予想が安定的に推移するという話が出ていますが、やはり物価下落をしているので丁寧に説明した方が良いという配慮が働いているのかなあと思いました。
で、基本的にシナリオどおりですか全体感としての先行き見通しも同じとなります。
『こうした動きが持続すれば、わが国経済は、やや長い目でみれば、物価安定のもとでの持続的成長経路へ復していく展望が拓けるとみられる。もっとも、海外経済や国際金融資本市場の動向など、見通しを巡る不確実性は大きい。』(7月)
ということで、基本的に標準シナリオどおりの推移という結論でよろしいかと。
○展望レポート中間レビュー
『4月の「展望レポート」で示した見通しと比べると、成長率は、概ね見通しに沿って推移すると予想される。物価については、国内企業物価・消費者物価(除く生鮮食品)とも、原油価格上昇の影響などから、2009
年度は、見通しに比べてやや上振れるものの、2010 年度は、概ね見通しに沿って推移すると見込まれる。』
ということで、相変わらず2010年度まで物価はマイナス推移予想になっておりますので、普通に考えると来年一杯くらいまでは現状の金利が継続するんでしょという話になるかと思います。
で、ちょっと脱線しますが、補完当座預金制度も1月15日まで延長されてまして、とりあえず政策金利0.1%は当面継続という話になるかと思います。
○リスク要因に変化なし
『リスク要因をみると、景気については、国際的な金融経済情勢、企業の中長期的な成長期待の動向、わが国の金融環境など、景気の下振れリスクが高い状況が続いていることに注意する必要がある。物価面では、景気の下振れリスクの顕在化、中長期的なインフレ予想の下振れなど、物価上昇率が想定以上に低下する可能性がある。』
ここに関しても6月と同じで、「全部下振れリスク」という素敵な状況。まー少なくとも債券とか短期金融市場という国内ドメドメで金利もんやってる人たちにはこのあたりの「白川日銀の慎重姿勢」というのは浸透しているものと思われるのですけれども、メディアが福井俊ちゃん時代の延長で物事を考えているような報道姿勢なのがどうなのよ(さっきのヘッドラインとかね)と思うのですが、それも最近はだいぶマシになってきたような感じがせんでもないですな。
会見と月報と何か補足があったらそれも明日ということで。
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2009/07/13
○日銀から出てるペーパー2題
国際金融ネットワークからみた世界的な金融危機
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/rev09j09.htm
本文はこちら
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/data/rev09j09.pdf
まあ要するに国際金融ネットワークが緊密化する中で、ネットワーク上のハブの役割を果たす所に今般の金融危機が直撃した為に、金融ショックの波及が素早くなりましたという分析でして、そーゆー状況の中で効率的に危機を沈静化させるにはハブ部分の機能を維持するのが有効という話。
国際金融取引の量とかの統計から、金融取引の構造をネットワークとしてモデル化して考察ということで、なるほどさよですかという話であります。
本文の最後の部分から。
『こうしたショックの波及過程でもたらされた資金仲介機能の低下は、国際金融ネットワークが緊密化し、ハブに対するショックをより連鎖させやすい構造になっていたことから、世界中に広がることになった。特に、欧州金融センターを中心に、流動性リスクをとりながら、対外債権・債務の両建てで資金ポジションを拡大していたことで、ハブを中心にネットワーク全体としての結び付きが強まっていた。こうした状況の下で、ショックがハブを直撃したことが、市場流動性を収縮させ、今回の世界的な金融危機に発展する一因になったと考えられる。』
ということで、欧州のドルファンディング問題が金融取引的に脆弱ポイントになっていましたという話は皆様におかれましても記憶に新しいところかと存じますが、欧州金融センターが国際金融ネットワークのハブとしての機能をしていたという話ですわな。
#米国金融の話ばかりする日本の経済メディアは何だかねって感じで
こちらのレポートでは国際金融ネットワークに関する話ですので最後はこうなっています。
『グローバル化につれて緊密化が進んだ国際金融ネットワークの下では、個別金融機関レベルの資金ポジション管理の工夫や、各国中央銀行レベルの自国通貨建て資金供給の枠組みはもちろんのこと、混乱時には、連鎖的な影響を遮断するために、各国中央銀行の国際的な協調の下、ハブに対して集中的に資金を供給する体制にも有効性が認められた。今後、副次的な影響も含め、こうした施策の効果を検証していくことは、金融市場のダイナミクスを理解し、金融市場の安定を図るうえで重要といえる。』
それはさよですなという話ですが、マクロプルーデンスという話からすると、自分たちがハブだから最終的には救済されるというような金融機関が出てくるとまた話がややこしくなるので、そーゆー観点からすると国際金融ネットワークをどう監督していくのかというのも難しい話になるんでしょうね。
こっちは新聞ネタになっていたと思われ。
最近の電子マネーの動向について(2008年度)
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/research07/ron0907b.htm
本文はこちら
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/research07/data/ron0907b.pdf
あたくしは現金をぶつける人なので(海外旅行くらいでしかカードを使わない)電子マネーってナンジャソリャ状態とは言え、仕方が無いのでスイカは使いますが、電車乗るとき以外には使わないという所は妙に徹底しています。
ということで、レポート読んでもはあはあそうですかという話なのですけれども、現在の利用状況に関して本文4ページ(PDFの6ページ)にこんな話が。
『上記電子マネー発行残高について、現金通貨と比較すると、2009 年3 月末における電子マネーの発行残高は、貨幣流通高の2.02%、銀行券発行高の0.12%、現金通貨全体(貨幣流通高+銀行券発行高)の0.11%に相当する。また、民間銀行の預金を含むマネーストック(M3
末残)に対する電子マネー発行残高の比率は0.009%に相当する。』
ちなみに、「上記電子マネー」とは、Edy 、Suica 、ICOCA 、PASMO 、nanaco
、WAON、SUGOCA、Kitacaの8種類だそうですが、あたくしの知らないものが幾つかあるのはここだけの話(汗)。
暫く前に「紙幣や硬貨を廃止して電子マネー化してマイナス金利も自由自在」みたいな与太記事が海外メディアに載っていたようですが、日本におかれましては現状のこの利用状況で言えば与太以外の何物でも無いというところでございましょうか。現金その場限り主義のあたくしとしては誠に結構な話ですが(^^)。
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2009/07/10
○生活意識アンケートからメモ少々
出遅れましたが。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/ishiki/ishiki0907.pdf
・どう見てもただの底ばいです本当にありがとうございました
話の都合上(^^)Q4から引用。
Q4. 1年後の景気は、今と比べてどうなると思いますか。
1 良くなる13.9 ( 8.5 )
2 変わらない61.6 ( 49.2 )
3 悪くなる23.8 ( 42.0 )
・・・・おお!良くなるが増えてるし悪くなるが激減!!!!!
と思いますが、当然ながらベースラインはこの有様。
Q1. 1年前と比べて、今の景気はどう変わりましたか。
1 良くなった0.5 ( 0.2 )
2 変わらない17.1 ( 10.0 )
3 悪くなった81.9 ( 89.1)
Q3. 現在の景気をどう感じますか。
1 良い0.0 ( 0.0 )
2 どちらかと言えば、良い0.6 ( 0.4 )
3 どちらとも言えない9.6 ( 5.4 )
4 どちらかと言えば、悪い41.8 ( 36.6 )
5 悪い47.7 ( 57.4 )
えーっとですね、ほら、谷がずーっと続けばそこは平地ですから・・・・・
・物価の先行き見通しはあまり下がらないの巻
で、物価に関して。
Q12.次に「物価」についておうかがいします。
あなたご自身の感じでは、「物価」は1年前と比べてどう変わりましたか(「物価」とは、あなたが購入される物やサービスの価格全体のことです)。
1 かなり上がった8.1 ( 17.8 )
2 少し上がった39.4 ( 48.8 )
3 ほとんど変わらない29.2 ( 22.1 )
4 少し下がった21.0 ( 9.8 )
5 かなり下がった1.3 ( 1.0 )
まだ上昇の方が多いですが、下落が増えて来たのは怪しい傾向。
Q14. 1年後の「物価」は、現在と比べるとどうなると思いますか。
1 かなり上がる3.4 ( 5.1 )
2 少し上がる34.5 ( 40.3 )
3 ほとんど変わらない44.5 ( 37.6 )
4 少し下がる15.6 ( 14.6 )
5 かなり下がる0.5 ( 1.1 )
ということで、上がるがちょっと減って下がるがちょっと増えた程度です。
これを数字で見るとこうなりまする。
Q13. それでは、1年前に比べ現在の「物価」は何%程度変わったと思いますか。
―― 数値をご記入のうえ、上・下いずれかに○をお願いします。なお、「0%」と思われる方は、記入欄に「0」とご記入下さい。
平均値:+3.5 ( +6.4 )
中央値:+1.0 ( +5.0 )
Q15. それでは、1年後の「物価」は現在と比べ何%程度変わると思いますか。
―― 数値をご記入のうえ、上・下いずれかに○をお願いします。なお、「0%」と思われる方は、記入欄に「0」とご記入下さい。
平均値:+2.2 ( +2.9 )
中央値:0.0 ( 0.0 )
ということで、足元で物価が上がったという人が大きく減った割には、先行きの物価に対するマインドはあまり変わっていないという感じです。
○その他少々メモです
日銀からこんなのが出てまして。
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/fsc0907a.htm
ワークショップ「銀行勘定の金利リスク管理の高度化に向けて」を開催
そーですなー。まあ金利リスク管理ってのも重要ですし、計測しやすいから管理を高度化しやすいですなあとは思うのですが、市場現場叩き上げ労務者のあたくしと致しましては、計測しにくいリスクこそ重要と思うのでありまして、具体的には金利リスクの高度化する労力を与信先管理(信用リスク管理)とか、流動性リスク管理(色々な観点での流動性リスク管理)などに振って頂いた方が吉なのではないかと思うのですが。
いや勿論金利リスク管理するなという話じゃないですからそれはそれでしっかり実施する話なんですけどね。
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/rev09j09.htm
国際金融ネットワークからみた世界的な金融危機
本文はこちら
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/data/rev09j09.pdf
面白そうだがまだ読んでいないので後日。
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2009/07/07
まずはさくらレポートから少々。
概要
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/chiiki_rep/chiiki0907.htm
本文(量が多いので注意)
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/chiiki_rep/data/chiiki0907.pdf
○涙ぐましい芸の細かさ
今回の概要を見て最初に直ぐに目に付くのは『I. 地域からみた景気情勢』の判断前回対比の表に付けられた脚注です。曰く、
『(注)前回との比較の「」、「」(斜め向きの上と下の矢印ですが、貼れないので「」で勘弁)は、前回判断に比較して景気の改善ペースまたは悪化ペースが変化したことを示す(例えば、改善ペースの加速または悪化ペースの鈍化は、「(斜め上矢印)」)。なお、前回に比較し景気の改善・悪化ペースが変化しなかった場合は「(横向き矢印)」となる。』
前回の概要をご覧頂ければ判りますが、
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/chiiki_rep/chiiki0904.htm
この脚注は今回わざわざ新しく設けられたものでありまして、今回「全地域で現状判断が改善」となってニュース的に「良い」と言われるのを何とかして沈静化させようという意図が露骨過ぎで涙が出てしまいます。
よーするに今回は上記脚注にある『悪化ペースの鈍化』ですよと仰せになりたいという事のようですが、ここまで露骨に「丁寧な対外情報発信」をしないと行けないっていうのも何かこう幼稚園児扱いされているみたいで悲しくなって参りますな。
つーかここまで丁寧に言われてしまうっていうのは、「報道機関が日銀の意図を正確に伝える能力が低いから噛んで含めるような説明しないといけない」って言われてるに等しいのですから、報道機関の皆様におかれましては恥ずかしいとか思わないのかなあって感じなのですけどねえ(苦笑)。
で、ここまで細かくというか丁寧な対応が効を奏したのか、どこぞの経済新聞のネットニュースは時間の経過と共に書きっぷりの景気が悪くなっております(笑)。
7月6日配信記事ですが・・・・
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20090706AT2C0600306072009.html
日銀総裁「景気の先行き、下げ止まり明確に」 支店長会議 (10:38)
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20090706AT3L0604H06072009.html
景気「下げ止まりつつある」 日銀地域経済報告、判断引き上げ〔NQN〕(06日 16:01)
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20090706AT1C0600B06072009.html
地方景気に「薄日」、日銀の地域経済報告 全9地域で改善。(06日 22:01)
ヘッドラインが時間の経過と共に(まあ最初のはさくらレポート出る前ですから仕方ないですけど)徐々に穏当になっておりますが、内容的にも、2番目よりも3番目の方が「でも水準はダメダメですよ」というのがより明確になるような書き方で、日経にしては珍しく、『北海道を除く8地域が景気の現状判断に「下げ止まり」の表現を使ったが、個人消費を含め先行き不透明感はなおぬぐえず、経済活動が低水準の域から抜け出せていないことに変わりはない。』(3番目の記事より)と穏当な書きっぷり。
まー細かい説明(^^)が効果を表して良かったですなあという所でしょうか(^^)。
#あと、もうちょっと細かい話をしますと、2番目の記事は〔NQN〕ってのが入ってますので、日経新聞本紙じゃなくて、クイックの出している記事だと思われますので念の為申し添えます。
○概要および地域別の現状判断時系列
『各地域の取りまとめ店の報告によると、足もとの景気は、悪化ペースが鈍化しており、下げ止まりつつあるものの、引き続き厳しい状況にある。』
ということで、厳しい状況というのを継続してまして、今回はあくまでも『悪化ペースの鈍化』ですよという話。
『すなわち、公共投資は、増加している。また、在庫調整の進捗等を背景に、輸出、生産は、低水準ながら持ち直しに転じつつある。一方、設備投資は、企業収益の大幅な悪化等から、大幅に減少している。また、雇用・所得環境が厳しさを増すなかで、個人消費は弱い地合いが続いている。住宅投資も減少している。』
というのは金融経済月報で示されている通りです。
『こうしたなか、地域別総括判断をみると、前回との対比では、全地域で悪化ペースの鈍化が報告されている。もっとも、北海道が「低迷」、東北、北陸、近畿が「厳しい状況」としているほか、関東甲信越、九州・沖縄でも「大幅に悪化したあと」等を付言し、引き続き厳しい状況にあることを強調している。』
ひたすら「厳しい」のオンパレードになっていまして、福井の俊ちゃん時代のように「ちょっと良くなったと思うと鉦や太鼓で大騒ぎ」というような雰囲気が微塵も感じられない所に素晴らしさを感じますな。まー世間様的には過去のイメージから「日銀には引き締めバイアス」って言われますから、そーゆー点からも今回の「上方修正」に対して丁寧に「水準はダメです」という話をして火消しをしないといかんのでしょと思っているんでしょうかね。
直近1年間の推移はこうなります。
2009年7月:9地域で上方修正
2009年4月:7地域で下方修正
2009年1月:9地域で下方修正
2008年10月:9地域で下方修正
2008年7月:8地域で下方修正
2008年4月:8地域で下方修正
で、折角ですから前回からの継続で、昨年1月以来の1年半時系列で各地域の基調判断を引用してみましょうです。
北海道
やや弱めの動きとなっている
→やや弱めの動きが続いている
→弱めの動きとなっている
→やや厳しい状況にある
→厳しさが増している
→厳しさを増しており、低迷している
→低迷している
東北
全体としてみれば、緩やかな回復を続けている
→足踏み感がみられている
→足踏み感がみられている
→弱めの動きが広がっている
→悪化している
→大幅に悪化しており、厳しさを増している
→厳しい状況が続いているが、下げ止まりつつある
北陸
一部で弱めの動きがみられるものの、緩やかに回復している
→減速している
→減速感が幾分増している
→停滞している
→悪化している
→大幅に悪化している
→依然として厳しい状況にあるが、下げ止まりの兆しがみられている
関東甲信越
緩やかな拡大基調にある
→やや減速している
→減速している
→停滞している
→悪化している
→大幅に悪化している
→大幅に悪化したあと、下げ止まりつつある
東海
緩やかに拡大している
→緩やかな拡大基調にあるが、その速度は足もと鈍化している
→引き続き高水準にあるが、足もとは減速がはっきりしてきている
→なお高水準を保ちつつも、下降局面にある
→急速に下降している
→急速に下降している
→輸出と生産の持ち直し等から、下げ止まりつつある
近畿
緩やかに拡大している
→一部に減速の動きがみられるが、基調としては緩やかに拡大している
→減速している
→停滞している
→悪化している
→大幅に悪化しており、厳しい状況にある
→なお厳しい状況にあるが、下げ止まりつつある
中国
全体として回復を続けている
→一部に弱さがうかがわれるものの、全体として回復を続けている
→全体としては緩やかな回復を続けているが、そのテンポは、このところ鈍化している
→一部に弱い動きがみられるが、全体としては概ね横ばいで推移している
→悪化している
→悪化している
→下げ止まりつつある
四国
緩やかながら持ち直しの動きが続いている
→持ち直しの動きがやや弱まっている
→横ばい圏内の動きとなっている
→やや弱めの動きとなっている
→弱い動きが広がっている
→悪化している
→悪化を続けているが、一部に下げ止まりの兆しがみられる
九州・沖縄
緩やかな回復を続けている
→回復に足踏みがみられる
→足踏み感が強まっている
→停滞している
→悪化している
→大幅に悪化している
→大幅に悪化したあと、下げ止まりつつある
まあ水準感は低いままですなということで、需要項目別の展開は長くなるので割愛しちゃいますが、生産が持ち直しに転じているものの、設備投資と雇用環境の悪さは止まらず、特に雇用の悪化傾向が強調されている感じで、まあ内容的にもあんまり宜しくはないですわな。
○地域の視点
毎度お馴染みの地域の視点ですけれども、今回のお題は
『最近の個人消費動向の特徴点と消費関連企業の対応』
でありまする。でまあこちらなのですが、本文の方には図表入りで色々と詳しい話をしておりまして中々なのですが、概要での説明を引用しておきますね。
『最近の個人消費動向をみると、昨年秋以降、雇用・所得環境が厳しさを増す中、弱い地合いが続いている。5月には、近畿を中心に、新型インフルエンザの影響がみられたが、足もとでは小康を得ているほか、政府の経済危機対策が、自動車販売や家電販売等において一定の需要下支え効果を発揮している。』
という所に関して、本文の方では定額給付金、エコポイント、高速道路料金引き下げ(特に地方では高速道路料金引き下げって効いてるんでしょうかね)に関する調査の表とかもあってオモロイです。
『この間の消費行動については、節約志向・低価格志向が強まっているが、単純に消費マインドが冷え切っている訳ではなく、少ない予算で効率的に満足を得ようとする傾向がみられる。具体的には、(1)部分的節約志向(消費の基本的行動パターンは変えず、頻度の抑制や部分的にダウングレードする)や、(2)選択的節約志向(自らこだわりがある商品・サービスへの支出は可能な限り維持しつつ、その他の商品等への支出は徹底的に節約する)、(3)徹底した事前リサーチ(購入に先立つ事前リサーチ<例えば商品・店舗間比較>を入念に行う)といった行動が、各地域で指摘されている。』
『この結果、個人消費の弱さの影響は、選択的支出品目(贅沢品)、基礎的支出品目(生活必需品)を問わず顕現化しており、同じ財・サービスの中で、商品間や企業間の格差が広がっている。また、元々価格設定が低めの商品・企業や、政府の経済危機対策関連の財・サービスでは、需要が増加する傾向もみられる。』
どう見てもデフレ圧力です本当にありがとうございました。
まあ詳しくはまた紹介するかもしれません。
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2009/07/06
○日銀レビューから少々
金曜にはこんなの出てました。
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/rev09j07.htm
金融混乱下のスワップ市場と国債市場の価格発見機能
―― スワップスプレッドの動きから何を読み取るか? ――
本文PDFはこちら(9ページ(実質8ページ)です)。
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/data/rev09j07.pdf
HTMLの最初の所にどういう分析してるか話をしてますけど、
『2007 年夏のサブプライム住宅ローン問題を契機とした金融混乱の影響が拡がる過程で、内外の金融市場は、金融経済状況に対する市場参加者の見方を価格に映し出す「鏡」としての機能(価格発見機能)の低下に直面した。例えば、銀行間取引金利をベースにしたスワップ金利と国債金利の乖離として定義されるスワップスプレッドが低下傾向を辿り、08
年秋のリーマンブラザーズ破綻後はマイナスにまで落ち込んでいることは、その一例である。』
『同スプレッドのマイナス化をそのまま解釈すれば、市場参加者は、金融混乱下にあって、国よりも金融機関の信用度が勝ると認識していることになるが、それは非現実的なシグナルと考えられる。こうした現象は、市場参加者の資金流動性制約がタイト化したり、彼らのリスクアペタイトが低下した結果、裁定取引や投機的取引が減少し、市場の価格発見機能が低下したことが影響しているとみられる。(以下略)』
ということで、スワップスプレッドの説明と、昨年秋以降の動きをそれ以前と比較して分析してます。で、中身はそんなにややこしい話ではなく、サラサラと読めてしまいますが面倒なので引用は割愛して雑感を。
まず、LIBORとGCレポレートのスプレッドで銀行部門のリスク要因を把握する代わりに6か月TB金利を使っていますが、まあ他に適切なものが無いですからそんな感じで良いのかなとは思いますが、そもそも東京レポレートの6MGCって多分TBの金利見て出している節がありますので(^^)、ちょっと微妙っちゃあ微妙かもしれませんね。
とりあえず「現物VSスワップ」ポジションの構築および維持という点で言えば、現物に関るポジションは実際問題としてはGCまたはSCをショートタームで繋ぐしか無いので、そーゆー意味で言えばLIBORとGCレポレートの裁定関係というアプローチも実際問題を考えた場合もう一段階の考察が必要になるんでしょうなとも思いますが、まー今回のテーマは参加者の金利感の反映がどうのこうのという話ではないので、分析としてはこんな感じかなあって思います。
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2009/07/02
ということで短観。
http://www.boj.or.jp/type/stat/boj_stat/tk/gaiyo/tka0906.pdf
○ちゃんとした分析は本職の方のを読みましょう
まずはいつも見てる奴を。
・業況判断DIの達成度合い
3月調査時点での先行き見通しがどのくらい達成出来ているかという話。前回は12月時の予測の斜め上を行く悪化を特に大企業が演じましたでござるの巻でして、中堅中小企業よりも大企業の悪化が目立つという結果でした。
で、今回はと申しますと・・・・・
(3月時点) (6月時点)
現状→6月予測 現状→9月予測
製造業大企業 ▲58→▲51 ▲48→▲30
製造業中堅企業 ▲57→▲61 ▲55→▲46
製造業中小企業 ▲57→▲63 ▲57→▲53
非製造業大企業 ▲31→▲30 ▲29→▲21
非製造業中堅企業 ▲37→▲45 ▲36→▲32
非製造業中小企業 ▲42→▲52 ▲44→▲45
今回は前回から大企業製造業DIが10も改善ということですが、そもそも論として前回の予測で8改善になっていたので、その程度の改善はしていただかないと困りますがなという所でしょうか。
3月時点での予測数値よりも実際に6月になった時の数値が好転しているのってえのは、実は上向き方向になっている時の仕様でもありますので、次回短観で今回の予測数値を達成し、それ以上にDIが改善という事になると、中々美しい話になると思います。
・雇用判断DI
前回は全カテゴリーで余剰になるわ、製造業のDIが猛烈に悪化するわという泣きそうな結果でしたが。
(3月時点) (6月時点)
現状→6月予測 現状→9月予測
製造業大企業 +35→+32 +33→+24
製造業中堅企業 +39→+37 +37→+29
製造業中小企業 +39→+40 +40→+34
非製造業大企業 +3→+6 +7→+4
非製造業中堅企業 +7→+10 +11→+8
非製造業中小企業 +8→+12 +13→+11
相変わらず全部余剰なのは変化なし。3月時点での見通しから殆ど外れていません(6月だからなのかな?)。今回の先行き見通しが正しければ、製造業中心にだいぶ改善してくれるという話になるので、これはこれで先行きの希望だけは持てるような気がします。気のせいかもしれないけど。
・証券業の業況判断
今回も長期時系列を更新。サブプライム爆発前でありますところの昨年6月調査分から並べますね、前回▲76でしたが・・・・・
現状→次回予測
(6月時点) +34→+52
(9月時点) ▲30→+23
(12月時点)▲26→+4
(3月時点) ▲55→▲15
(6月時点) ▲45→0
(9月時点) ▲70→▲44
(12月時点)▲70→▲59
(3月時点) ▲76→▲68
(6月時点) ▲29→▲21
さて、このインプリケーションですが、この流れを見ると「株式市場は当面堅調に推移する」という答えになるのです!
な、なんだってー!(AA略)と言われそうですが、前回の時にあたくしこんな事を(半ばヤケクソで)書いたんですよ。
(4月2日に短観のインチキ分析をしながら書いた文を引用)
唯一の救いは今回の先行き予測から願望成分がかなり払拭されてきたことではないかと思います(^^)。パリバショック以降毎度毎度先行きの予測に願望成分が入っていて「3か月後は今よりも改善ですよ!」という数値になっていたのですが、願望成分の多さをもって鳴る証券業の業況判断からかなりそれが除去されてきたのは底打ち確認サイン近しということで(本当か??)。
(以上引用終了)
・・・・良く見ると、次回予測が前回同様に、足元の数字とあまり大差が無いのでござんすな。ということは、願望成分入れまくって外すのが仕様となっている証券業DIクオリティを勘案すると、株式市場は当面堅調推移というのが結論になる。とまあこういう話になるのであります、ゲラゲラ。
#なお、念の為申し添えますが、投資は自己責任かつ自己判断で行って頂きたく存じますので、株式市場が底割れしても謝罪も賠償も致しません(^^)。
○企業金融関連は読むのがコツがいりそう
で、短観のもう一丁のネタの企業金融なんですけれども、これマジメに読んで見ると中々読むのにコツがいるのかなあと思いましたです。はい。
・資金繰り判断DI
(3月時点) (6月時点)
大企業 ▲4 +1
中堅企業 ▲11 ▲7
中小企業 ▲23 ▲20
大企業がプラスに復活していますが、中堅中小企業はまだまだ厳しいですねという絵に描いたような結果になっております。
・貸出態度判断DI
(3月時点) (6月時点)
大企業 ▲17 ▲9
中堅企業 ▲11 ▲9
中小企業 ▲14 ▲13
中堅中小ほど貸出態度の好転度合いが低いと。しかし3月時点での貸出態度判断DIが大企業の方が悪いってのは何か悪い冗談みたいですね!!
ということで、アンケートだけに微妙な結果も出るんですねとか思いながらその先の結果を見ると、これまた謎な結果が出てくるのです。
・借入金利水準判断(プラスが金利上昇です)
(3月時点) (6月時点)
現状→6月予測 現状→9月予測
大企業 +6→+17 +5→+15
中堅企業 ▲8→+9 +3→+14
中小企業 ▲10→+2 +2→+12
中堅中小企業の借入金利水準が前回低下してたのに上昇ですかそうですかというのは残念感が漂うのですが、大企業では基本的に足元の資金需要が一巡して年末から年始に掛けてウハウハ金利で貸出をしていた銀行のローンがロール時期になっているので、もうちょっとこの辺の数字が改善してるのかと思いましたが。
で、もっと不思議なのは先行きの金利に関して「上昇する」が現状判断よりも増えていることなのですが、これってどうも短観の仕様みたいでして、過去の短観データをクリッククリックしながら眺めていたのですが、量的緩和実施の2001年3月調査時点でも「先行き予測数値」は金利上昇という結果になっていたりするので、どうも「先行き借入金利上昇」というのは仕様ということで。ちなみに、先行き予測で「現状よりも好転」という話になるのは97年とか98年くらいに遡るみたい(全部見てないので見落としはあるかもです)な気がします。もしかしたら、「借入金利が上昇する懸念を持ってると思われた方が日銀に対するプレッシャーになる」っていうような事を答えながら思ったりしてるのかな(^^)。
・CP発行環境判断DI(プラスが楽でマイナスが厳しい)
(3月時点) (6月時点)
大企業 ▲24 ▲14
えーっと、各種オペを継続して欲しいので厳しいと答えているんですね、わかります。マジメな話、a-2以下の企業とかa-1だけど長期格付的にはちょっと微妙な発行体さんの環境は楽とは言いがたいですけれども、発行している企業の頭数的に考えたら調査時点で発行環境が厳しいとかナンジャソリャという感じなんですが・・・・・
ちゃんとした分析はちゃんとした本職の人のを読みましょう。それから今日出る業種別の細かい計数がマニア向けには大変に楽しいらしいですよ!
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2009/06/22
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g090522.pdf
○6月日銀文学炸裂への布石
『W.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』から。
最初の所の話は後にしまして。
『この間、委員は、経済情勢及び金融政策に関する情報発信について議論を行った。』
ほいほい。
『ある委員は、経済情勢の現状評価について、「上方修正」という方向感のみ強調されかねないことから、情報発信の際には、経済活動の水準評価も含め、丁寧に説明していく必要があると述べた。また、別の委員は、景気は4
月の展望レポートに概ね沿って推移していることについても、対外的に説明していく必要があると付け加えた。委員は、これらの認識を共有した。』
ということで、6月の決定会合声明文でいきなり水準の話が出て来たという事になるんでしょうな(^^)。ここの所は議事要旨最初に読んでいきなりツボに嵌ったところです。
○暗黙の時間軸発生に関して
こういう指摘をする委員もいました。
『ある委員は、4 月末に公表した展望レポートにおいて、先行きの経済・物価情勢の不確実性を強調したことから、市場では、当面、金融緩和が継続するとの予想が形成されていると指摘した。この委員は、このように日本銀行と市場が、先行きの経済・物価情勢についての見方を共有しながら、市場において、先行きの金融政策に関する予想が形成されることは、望ましいと述べた。』
これに対しては認識を共有とかいうような文言が入っていないので、さっきのような「これを受けて6月決定会合の声明文に変化」みたいな話にはならないのですけれども、まあこーゆー感じで指摘が入り、特にカウンターの意見らしきものが無い所を見ると、まあ「日銀の見通しを前提にすれば暗黙の時間軸」というのは察してね(でも明言してる訳じゃないからそこんとこ宜しく)という所なんでしょうなあ。
○FRBやBOEのバランスシートと比較する人たちがいるので・・・・・・
その次にこんな指摘が。
『このほか、別の委員は、金融資本市場の機能障害に対処する非伝統的政策の効果について、日本銀行のバランスシートの拡大・縮小をみて、その度合いを測る向きもあるが、中央銀行のバランスシートの変化は、市場環境の改善度合いにも依存するため、政策効果を対外的に説明する際には、こうした点も含め丁寧に説明していく必要があると述べた。』
バランスシート拡大=マネーの供給というマネタリー的な側面にやたらフォーカスした議論をすると(勿論マネタリー的な部分も重要ですけど)、米国でもその論議がございます(というのは先日ご紹介したと思いますが)が、ちょっとズレた話になるという点に関しては・・・・・上方修正云々であの有様な日本のメディア相手に説明するのは無理でしょと思います。
BOEのように直球ストレートでマネタリー的拡大政策と銘打って実施するのであれば説明としては判りやすいですけれども、FRBの場合は特に政策ロジックが何だか訳判らんでござるの巻で展開しているので、米国でもあんな議論が出てくる次第なのですが・・・・・
○CP阿片窟に関して
同じく当面の政策運営に関する議論の部分から。
『多くの委員は、一部銘柄のC P 金利が短国金利を下回るなど、措置の効果が強く出ている面もあるが、金融環境は全体として引き続き厳しい状態であるため、これまでに導入した様々な施策を着実に実施していくことが望ましいと述べた。何人かの委員は、各種臨時措置の9
月末以降の取り扱いについては、今後の金融市場や企業金融の動向を丹念に点検した上で判断すべきであると述べた。』
ということで、各種施策が「強く出ている」点に関しては5月会合時点でも論点になっていた訳ですが、金融環境が全体として厳しいので継続っちゅう話にはなっているようです。ということで、毎度申し上げていますが、企業金融に関する認識がどうなっていくのかというのが、今後の施策の行方を考える意味では重要ですよという話になろうかと思います。
当面、利上げがどうのこうのという話よりも、金融政策運営の3つの柱のうちの残り2つ(潤沢な資金供給を通じた金融市場の安定確保、企業金融円滑化の支援)の出口がどうなるのかという話の方が普通に考えて先に来る(仮に先に来ないにしても利上げだけ先に来るのは考えにくいので同時でしょ)と思われますので、まー暫くは経済に関する議論もさることながら、金融面に関する話を見るのが良いのかなあとか勝手に思って金融面に注目するでござるの巻なのです。
で、その金融面ですけれども、『V.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』の部分で金融面に関してどのような話をしているかと言いますと。
『わが国の金融環境について、委員は、一頃に比べて緊張感が後退しているものの、なお厳しい状態が続いているとの認識を共有した。』
5月声明文にあったとおりです。
『多くの委員は、C P の発行金利が更に低下しているほか、社債発行銘柄も拡大しており、政策効果が浸透してきていると述べた。もっとも、何人かの委員は、市場の企業に対する選別姿勢は根強く、下位格付先の社債発行は依然低い水準にとどまっているほか、資金繰りや金融機関の貸出態度が厳しいとする先は引き続き多いなど、二極化の様相を呈していると指摘した。』
で、さっきの「措置の効果が強く出すぎている面もある」という話が当面の政策運営に関する部分にあったのですけどね。
以下かなり妄想寄りになりますけど、このCP金利の短国金利との逆転現象に関して、『V.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』ではなく、『W.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』に載っているというのは、即ち5月会合時点では現状認識の中の大きなネタにはなっておらず、単に「発行金利が更に低下」という認識だというのが政策委員会を全体としてみた場合の見解という事になるのですかねえという感を受けましたです。
ま、マーケット的にはこの会合以降最近までの動きが強烈でして、既に低下しきっている電力会社などの超優良発行体は兎も角として、A格くらいの銘柄であっても信用スプレッドをホイホイ潰しに行くような動きが継続して、メーカー系で日銀オペに入るような銘柄だと何でもかんでもレートが短国以下とかいう信用リスクプレミアムまる無視状態の阿片窟状態になり、ついでに金融系ネームでもレートがどんどん低下する有様となっておりまして、まあ緩和効果っちゃあ緩和効果になっております。何せCPに引っ張られて短国の金利も下がるくらいですから(CPだけの要因じゃないのでそれは大げさですが^^)ねえ。
では、そもそも論として執行部報告ではどのようになっているでしょうか。
『短期金融市場では、金利の上昇圧力が緩和されてきているが、市場流動性の低い状況が続き、市場間での裁定が十分には行われないなど、神経質な地合いが続いている。』
ほっほー。で、具体的にはこんな感じだそうです。
『すなわち、G C レポレートや短国レートは、概ね横ばい圏内で推移しているが、需給の変化に反応しやすい地合いが続いている。ユーロ円レートは、緩やかな低下傾向を辿ってきたが、取引の薄い状況が続く中、長めのタームを中心に、なお高めの水準となっている。C
P 市場では、投資家の銘柄選別姿勢が依然強い状況にあるが、企業の資金需要の低下などを背景に、比較的落ち着いた発行環境が続いており、高格付先の発行レートは、TIBOR以下の水準で推移している。』
てな状態でしたっけねえとか思うのですが、確かにまあこの1か月でこの辺の状況は変わったですねえと思うのでして、この辺りの書きっぷりを来月もチェックしないといかんかなあと思ったのであります。
○金融面に関しては下向きリスクのオンパレード
さっきの金融面に関する委員会の議論の部分からですが、金融環境に関する議論では下向きリスクのオンパレードであったりするのです。
以下「ある委員」さんの指摘なのですが。
『ある委員は、景気低迷の長期化により不良債権が増加し、金融機関の資本制約から、企業金融面に悪影響が及ぶリスクがあると指摘した。』
『また、別の委員は、今後、景気の低迷が長引いた場合、営業キャッシュフローも低迷し、市場の企業をみる眼が再び厳しくなるリスクがあると述べた。』
『このほか、ある委員は、今後、国債発行の増加が見込まれる中、長めの金利のボラティリティーが大きくなる可能性も含め市場動向に注意する必要があると述べた。』
ということで、この辺の問題は6月相場に入ってやや改善された部分もあり、企業収益などに関する部分で言えば別に改善されていない部分もありという状況になっておりますが、6月会合でどのような話になったのかが注目される所です。
ま、その議事要旨がでる前に短観が先に出ますけどね!
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2009/06/19
お題「例によって金融経済月報(ただし概要部分)の比較」
ほっほー、「個人投資家に劣後債がブーム」でございますか。今流行の人気商品(棒読み)を早速紹介するとはさすが経済クオリティーニュース番組でございますなあ(棒読み)。
#新大臣が西川さんに辞任打診してたってどんな迷走だよ・・・
○景気認識、物価動向に関して
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0906.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0905.pdf(5月)
・現状認識部分
『わが国の景気は、大幅に悪化したあと、下げ止まりつつある。』(今回)
『わが国の景気は悪化を続けているが、輸出や生産は下げ止まりつつある。』(5月)
これは一昨日ご紹介した通りの日銀文学炸裂です(^^)。
・現状認識部分、項目別展開
『企業収益が大幅に悪化するもとで、設備投資は大幅に減少している。また、雇用・所得環境が厳しさを増す中で、個人消費は弱まっており、住宅投資も減少している。』(今回)
・・・・とここまでが前回と同じでして。
『一方、輸出や生産は、大幅に落ち込んだあと、持ち直しに転じつつある。この間、公共投資は増加している。』(今回)
『一方、輸出や生産は、大幅に落ち込んだあと、下げ止まりつつある。この間、公共投資は増加に転じつつある。』(5月)
輸出、生産が「下げ止まり」→「持ち直し」となり、公共投資は増加に「転じつつある」というのが増加「している」と言いきり型になってまして、これは皆様ご存知の通り、言い切り型になっているのは表現として前進ですね。
・先行き予想部分
『先行きについては、景気は下げ止まりの動きが次第に明確になっていく可能性が高い。』(今回)
『景気は、当面、悪化のテンポが徐々に和らぎ、次第に下げ止まっていく可能性が高い。』(5月)
ということで、まあ前進っちゃあ前進なのですが、下げ止まりの「動き」が「次第に」明確に「なっていく」「可能性」が高いってあーたヘッジクローズがいい感じで入りまくりにも程がありますわな。
・・・・まあこの部分に関しましては、そもそも先行きの回復にそんなに自信度が高くないというベースがある筈なのですが、それに加えて昨今の「底打ち」宣伝モードに対して楽観の広がりを牽制する日銀文学でもあるという話でしょうな。
・先行き予想、項目別展開
『すなわち、国内民間需要は、厳しい収益・資金調達環境が続き、雇用・所得環境も厳しさを増すもとで、引き続き弱まっていく可能性が高い。』(今回)
この下向き予想に関しては5月と同じ表現を継続しています。先行き暗いですね。
『一方、輸出や生産は、内外の在庫調整の進捗を主因に、持ち直しを続けるとみられる。この間、公共投資も増加を続けると見込まれる。』(今回)
『一方、輸出や生産は、内外の在庫調整の進捗を主因に、下げ止まりから持ち直しに転じていくとみられる。この間、公共投資も増加していくと見込まれる。』(5月)
ということで一応こちらは先行きの表現が強くなっていますが、まあ現状認識部分で「下げ止まり」「増加」にした分の反映でもありますので、そう考えますと別に先行き見通しの項目別展開が上方修正になった訳では無いという残念な結論になる訳ですな。
・物価の現状部分で・・・・・・
国内企業物価の現状認識部分で軽く表現の変化が。
『物価の現状について、国内企業物価の3か月前比をみると、既往の国際商品市況安や製品需給緩和の影響から、緩やかな下落を続けている。』(今回)
『物価の現状について、国内企業物価の3か月前比をみると、既往の国際商品市況安や製品需給緩和の影響から下落を続けているが、下落幅は縮小してきている。』(5月)
「下落幅は縮小」が外れているのですが、「下落を続けている」が「緩やかな下落を続けている」に変わっております。後で出てきますが、先行き予想に関して5月も「緩やかな下落」の表現になっているので、そういう意味ではこちらも予想シナリオどおりとは言えます。
・・・・・ま、下落継続というのは変わらないってえ事ですけどね。
『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、石油製品価格の下落や食料品価格の落ち着きなどを反映して、ゼロ%程度まで低下している。』(今回)
こっちは前月と変わらず。
・物価の先行き見通しは前回と全く同じっす
全く同じなので引用だけ。
『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、製品需給が緩和した状態が続くもとで、当面、緩やかな下落を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、石油製品価格の下落や食料品価格の落ち着きに加え、経済全体の需給バランスの悪化などを背景に、マイナスになっていくと予想される。』(今回)
○今後注目の金融環境に関して
ではまあ今後注目の金融環境ですけれども。
『わが国の金融環境は、改善の動きがみられるものの、全体としては、なお厳しい状態が続いている。』(今回)
『わが国の金融環境は、ひところに比べて緊張感が後退しているものの、なお厳しい状態が続いている。』(5月)
ということで、これもまあ全般ご紹介した通りですが「厳しい状態」という認識に変化は無いという点からすると、各種時限措置の出口って話はちとまだ時間掛かりますわなって話になるんでしょ。
ただし、今回は方向感として「改善の動きがみられるものの」というだいぶヘッジが入った状態ではありますけれども上向きになっていて、厳しい状態に関しても頭に「全体としては」というヘッジ文言が入りまして、金融環境に関しては方向性としては改善傾向って話になりますので、こちらは今後の表現変化に注目したいところです。
・企業の調達コスト
『企業の資金調達コストは、CP・社債発行金利の低下などから、一段と低下している。』(今回)
『企業の資金調達コストも、本年初に低下した後、低水準で横ばい圏内の動きとなっているものとみられる。』(5月)
ということで、一段の低下になりましたわな。CPレートは銘柄間格差も潰れて来ましたもんね〜。
・企業に対する低金利の緩和効果
『ただし、実体経済活動や企業収益との対比でみれば、低金利の緩和効果は減殺されていると考えられる。』(今回)
『ただし、悪化を続けている実体経済活動や企業収益との対比でみれば、低金利の緩和効果は減殺されていると考えられる。』(5月)
ということで、低金利の緩和効果は減殺されているというのは継続でして、今回は実体経済活動や企業収益に関して「悪化を続けている」というのが抜けたのが改善点となるかと。
・社債・CPの発行環境は更に改善
『社債発行銘柄の拡大等もあわせて考えると、CP・社債の発行環境は一段と改善してきている。』(今回)
『社債発行銘柄の拡大等もあわせて考えると、CP・社債の発行環境はひところに比べ改善してきている。』(5月)
ということで、一段と改善という事になっていますが・・・・・
・でも二極化なのですよね
『しかし、そうしたもとでも、下位格付先の社債発行は依然低い水準にとどまっている。また、資金繰りや金融機関の貸出態度については、悪化に歯止めがかかる動きがみられるものの、なお厳しいとする先が多い。』(今回)
『しかし、そうしたもとでも、下位格付先の社債発行は依然低い水準にとどまっているほか、資金繰りや金融機関の貸出態度が厳しいとする先は引き続き多い。』(5月)
ということで、逆に言えば二極化拡大という話にもなっている次第でございますな。
・・・・と、この辺見てますと、CPや社債などの部分では改善しているものの、その辺りの恩恵を直接享受できない人たちに関してはまだまだ改善しちょりませんという話になってまして、まー各種特別措置の出口論議をするにはもうちょっと改善したっていう認識にならないと土俵に上がってこないでしょという所なんですかねえ。
以下雑談。
○素敵な金余り(ただし超短い所)
えーっと、水曜に3か月TBの入札があったんですけどね、相変わらずの落札レート堂々の0.17%台とか言ってた訳ですが、セカンダリーで更に強くなって0.16%までレート低下。引け値ベースでは0.165%とかになっているのですが、昨日は新発どころか1個前の3か月ものも0.165%の引けへと強いほうに収斂されて来てますので、まー普通に考えてこれは実力0.165%より強いんじゃないですかねえって感じなんでしょ。
CP発行金利も何か銘柄間格差が潰れるわ短期国債よりレート低いわという流れは継続しておりますし、GCレートもちゃっかり低下してますという事で、何かよー知らんが超短い所ではそこら中で金余っている感じ。
まー何かとにかく余資の積み上がりが超短い所にやってきて、この辺のレートが見事に潰れているという状態でして、昨年11月頃に見られた「短期が妙に高止まりするので中期あたりまで金利が下がりにくい」という状況の逆のような感じになっているのですかねえって感が致します。まーイールドカーブの短期の部分がとにかく安定するっていうのはまあ良い話なんでしょ。
ただ、余資が積み上がったモノってえのは金融緩和効果という点ではその金がもうちょっとリスクのある所に染み出して頂くというお馴染みのポートフォリオリバランス効果が望まれる所なのですが、現在の現象面は「短期」で「日銀オペ適格レベルの信用リスクの高い銘柄群」に対してカーブやスプレッドをひたすら潰しに行くという動きでありまして、よくよく考えてみれば「金は余っているけれどもリスクの低い所に滞留しっぱなし」という状況でもあります(と思います)。
・・・・うーむ、そう考えると一面「金が回っていない」という言い方も出来るようでもありますな。まー昨年10月11月の「金が回っていない」とは全然違う贅沢な「回っていない」ではありますけどね(^^)。
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2009/06/17
お題「上方修正?出口政策?またまたご冗談を・・・・と声明文は言ってます(と思います)」
お題が長いですかそうですか(^^)。ということで、何も無かった割に色々と見所のあった今回の決定会合でした。
で、今回の声明文
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/k090616.pdf
前回はこちら
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/k090522.pdf
見た瞬間に前回対比で書きっぷりが妙に変わっていることに気が付くかと思います。で・・・・・
○本石町日記さんが指摘しています(^^)
http://hongokucho.exblog.jp/11278464/
日銀って本当に面白いことするね(苦笑)=日銀ヘッジ文学の妙?
というお題でエントリーがございまして、まあ背景などはそちらをご参考にされると吉かと存じますが(また人のふんどし)、あたくしも今回の声明文見て「おお!これはまた芸が細かい」と感心した口でございまする。
で、本石町日記さんがご指摘の通りで、今回の声明文から一番強烈に伝わるのはあたくしがお題に書いた通りのメッセージ(?)でございまして、とにかく「上方修正」というのに対して火消しをしたいというのが判る書きっぷりであります。
でも政府の見通しが妙に威勢が良くなっているので、それに対して「まだ偽りの回復かもしれんじゃろ、政府の早とちりにも困るわな」とか冷やすのも微妙にアレな所があって、あまり暗い一辺倒の話もできないという所で、まあそんな辺りも配慮せにゃならんというヤヤコシヤな所なのでしょという感じかと思います。
ただまあ本石町日記さんが懸念する日経辺りが鉦や太鼓で出口政策炸裂で債券市場のショート筋歓喜の展開ですけれども、さすがに債券市場はそこまではやらない(現状では金利がちんたらと上昇する分には困る人が少ない(爆発的に急じゃ困るが)のもありますし)でしょとは思いますです、はい。
と申しますのも、今般「上方修正」とかメディアが踊っていますが、日銀から出てくる情報発信からは「出口模索」みたいなものは殆ど感じられない訳でございまして、白川総裁の会見(今日要旨が出ますが、内容見たら結構色々なインプリケーションがありそうです)や最近の講演などから見ても、前任者の量的緩和解除への一連の流れ時に見られたような「隙あらば出口政策」というような雰囲気は全然感じられませんし熱気もなさそうという所でして、まー金利市場におきましてもその辺りのニュアンスはきっちり伝わっているかと思います。
まーそんな訳で、「上方修正」報道が連発してもそっちには全然市場が反応しないのであります。
しかしまあ何ですな。会見でも(時事メインの会見詳報とか見た感じでは)白川総裁は「今回は別に上方修正では無い」って言ってるのに、その発言が出た後でも相変わらず「上方修正」とか報道するのはどういう了見なんでしょうかって感じです。
さて、中身に参りましょ。
○わざわざ「大幅に悪化」を遡及して入れるでござるの巻
『わが国の景気は、大幅に悪化したあと、下げ止まりつつある。』(今回)
『わが国の景気は悪化を続けているが、』(5月)
はてわざわざ大幅に悪化を入れてますがという話は先ほどの本石町日記さんの指摘の通りでございますが(^^)、ではこの大幅に悪化というのはいつの話かと申し上げますと、4月7日会合の声明文にはこんなのがございました次第で。
『わが国の経済情勢をみると(途中割愛)わが国の景気は大幅に悪化している。』(4月7日会合声明文)
ということで、5月に引っ込めた大幅に悪化をわざわざ突っ込んでおりますし、そもそも方向性に関しても下げ止まり「つつある」であって下げ止まりを明言している訳でもないということで、実は先行き慎重かつ警戒モードなのは全然変わっていませんがなというのが判る筈なんですが、大手メディアにおきましては(以下悪態につき自粛)。
で、項目別展開ですが、項目別には上げてるものもあります。一応先行指標らしきものが上がってますが、基本的に厳しいものも多いですから、これまた従来の流れどおりかと思います。
・現状判断、輸出、生産、公共投資は引き上げ
『輸出・生産は持ち直しに転じつつあるほか、公共投資も増加している。』(今回)
『内外の在庫調整の進捗を背景に、輸出や生産は下げ止まりつつある。』(5月)
・現状判断、雇用、消費、企業収益を今回挿入とな
『企業収益や雇用・所得環境が厳しさを増す中で、国内民間需要は弱まっている』(今回)
これは前回の声明文に対応する部分が無くて、金融経済月報(概要)から該当する部分を引っ張ってくるとこうなります。
『企業収益が大幅に悪化するもとで、設備投資は大幅に減少している。また、雇用・所得環境が厳しさを増す中で、個人消費は弱まっており』(5月金融経済月報)
ということですので、まあ基本的な所は前回同様の判断という事になるのでしょうが、今回この部分をわざわざ声明文の方に打ち込んだ事に意味があるのでしょう、即ちさっきの「大幅に悪化した後」を挿入したのと同じ理屈で、「判断上方修正」とされるのはミスリードだよって事を言いたいんでしょうねという所かと。
・先行きの総括判断
『当面は、こうした景気下げ止まりの動きが次第に明確になっていく可能性が高い。』(今回)
『このため、わが国の景気は、悪化のテンポが徐々に和らぎ、次第に下げ止まっていく可能性が高い。』(5月)
まあここだけ切り取れば上方修正なんですけど、元々の展望レポートの見通し通りであるという点には留意が必要。
・金融環境は全体として厳しいとな
『この間、金融環境をみると、改善の動きがみられるものの、全体としては、なお厳しい状態が続いている。』(今回)
『金融環境をみると、ひところに比べて緊張感が後退しているものの、なお厳しい状態が続いている。』(5月)
ということで厳しいという判断が継続していますので、所謂企業金融に関る時限措置の出口がどうのこうのという話はまー普通に考えたら出てこないですねという話になるかと思います。
市場の中の人的にはCP市場がびっくりするほど阿片窟になってしまって、そこだけは激しく改善しているのですけれども、逆に言えばそこで信用スプレッドを無茶苦茶潰されてしまったので、一般的な企業金融環境に対する市場からのインプリケーションが得られませんですがなという状態になっているので、全体感という話は短観の数字でも見るしかございませんなというところであります。
・物価は相変わらず
会見では「マイナス」見通しをより強調していたようなヘッドラインが出ていましたが。
『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、石油製品価格の下落や食料品価格の落ち着きを反映して足もと低下しており、今後は、需給バランスの悪化も加わって、マイナスになっていくとみられる。』(今回)
5月の引用は割愛します。何故なら一言一句全部同じですので(^^)。
○もうちょっと先行きの見通しにも日銀ヘッジ文学(by本石町日記さん)が見られます
『2010 年度までの中心的な見通しとしては』から始まるより長い期間での見通しですけれども、こちらの部分には最初にこんな文言が挿入されました。
『先行きのわが国の景気は、内外の在庫調整が進捗したもとで、最終需要の動向に大きく依存する。』(今回)
前回までこの文言はございませんでして、まあこれもわざわざ「先行きも最終需要の動向に大きく依存する」というのを強調(で、肝心の最終需要のうち国内民間部分に関しては先行き見通しを厳しいとしているのですよね!)してまして、変に「偽りの夜明け」的な回復期待が盛り上がるのを避けようとしているのが良く判ります(^^)。
なお、標準シナリオどおりで推移しているので、前月とまるっきり同じ話になっています。一応引用しますね。
『2010 年度までの中心的な見通しとしては、中長期的な成長期待やインフレ予想が大きく変化しないもとで、本年度後半以降、海外経済や国際金融資本市場の回復に加え、金融システム面での対策や財政・金融政策の効果もあって、わが国経済は持ち直し、物価の下落幅も縮小していく姿が想定される。』(今回)
『こうした動きが持続すれば、わが国経済は、やや長い目でみれば、物価安定のもとでの持続的成長経路へ復していく展望が拓けるとみられる。もっとも、海外経済や国際金融資本市場の動向など、見通しを巡る不確実性は大きい。』(今回)
前月と一言一句変わりありません。
○リスク要因も全然変化無し
で、リスク要因も一言一句変化無しというところがチャーミング(^^)。
『リスク要因をみると、景気については、国際的な金融経済情勢、中長期的な成長期待の動向、わが国の金融環境など、景気の下振れリスクが高い状況が続いていることに注意する必要がある。物価面では、景気の下振れリスクの顕在化、中長期的なインフレ予想の下振れなど、物価上昇率が想定以上に低下する可能性がある。』(今回)
下振れリスクしかねえええええええええ!!!
○ところで特別措置の延長関連ですが
一応ヘッドラインではとりあえず9月末までに判断って話にはなっていますが。
16:12 16Jun09 RTRS-市場参加者から見て予測可能性ある形で9月末までに判断=出口論議で白川日銀総裁
16:12 16Jun09 RTRS-時限措置ごとに対応検討する必要ある=出口論議で白川日銀総裁
と、こちらは日本語版ロイターからですけれども、まー先ほど申し上げましたように、現状の判断は「金融環境は厳しい状態が続いている」ということですので、現状判断が継続するようでしたら普通に延長でしょという話になるんでしょ。ということで今度の短観での金融環境関連の数値に注目なのと、結局は株価水準次第という所が多分にあるのが金融環境クオリティでもありますので、やっぱ株価注目という話になるんでしょ。
しかし企業金融の中でも銀行貸出ルートに関しては金融政策だけでどうこうするのは難しい話で、政策金融ルートもそうですけれどもやはりこれは最終兵器金融庁様の活躍(?)が待たれる所では無いかと思いますが(^^)。
ところで、どこだか忘れましたが、このあたりの発言を受けて何故か「CPや社債買入の解除の方向性のアナウンスが企業金融支援特別オペより先に出る」というコメントをしている人がいたような気がするのですが、CPや社債買入はバックストップとして必要な措置であって、現状は利用率(?)が低下していますが、また何らかの事情で短期金融環境が悪化した場合に必要なモノ。一方で企業金融特別支援オペは手形貸付や証書貸付などの市場性の無い債権に対して0.10%でのファンディング催行確約という点で貸出に対するフォローになるのですけど、まあこれらのモノって共通担保でも使える訳ですから、共通担保オペでもファンディングは可能な話でありまして、あくまでも特オペはその名の通りで企業金融向け債権に特別優遇措置を行うものであります。
と考えますと、もし企業金融関連措置におけるCP、社債買入と企業金融支援特別オペを分離して考えるのであれば(これって一連のセット措置であって分離して考えるのが正しいのかどうかという議論もあるような気がするのだがここでは措く)、普通に考えれば特オペ見直しの方が先に来るんじゃないですかと思います。どうも「今現在残高があること」と「必要なセーフティーネットであるか否か」という事に関して判ってないのか判っていてポジショントークするのか存じませんが、何だかとーっても???なコメントがあったので一応あたくしの愚意見を申し上げた次第でございます。
まーこの辺りの論点はもうちょっとあって、順序が逆にも程がありますが、企業金融支援特別オペがCP金利の絶賛低下をもたらして官民逆転状態になった結果、従来CPを購入していた最終投資家の資金が短期国債に流れて(逆転してるのだから当たり前)実は絶賛増発中の短期国債(国庫短期証券ね)市場の需給を大いに支えているのではないか(というか多分結構な支えになっている)という思わぬオペの効用(企業金融優遇措置が国債市場の金利低下に繋がるとはオシャレですな^^)もあって(って市場規模の差から言ってそれだけで説明するのは少々無茶なのは念のため申し添えますが)、中々一筋縄ではいかない絶賛金利優遇措置でもあったりするのですが、その辺の話はまた追々。
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2009/06/15
○超過準備に関するお話:金融調節レポートより
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/research07/data/ron0906a.pdf
の本文20ページのコラムから。超過準備等の保有状況って話からなんでございますが。
『超過準備や準備預金制度非適用先が保有する日銀当座預金は、9月積み期以降、地方銀行、第二地方銀行、外国銀行、信託銀行、証券会社等を中心に大きく増加した(図表15)。』
ということで、9月以降は保守的な資金繰りやクレジットラインの絞込みによって運用しないで足元に抱える動きがあったのが原因という話を。
『さらに、12 月19 日以降、補完当座預金制度の適用利率と誘導目標水準が同水準(いずれも0.1%)となり、超過準備等を保有する機会費用がほぼゼロとなった。この間、外国銀行の中には、海外市場の不安定化等を背景に、為替スワップ(ドル投・円転)やユーロ円により0.1%を下回るレートで資金調達し、日銀当座預金に置くことにより裁定を行う先もみられた。また、こうしたもとにあっても、補完当座預金制度により、無担O/N
コールレートが誘導目標水準から下方乖離しにくくなったことから、年末までに比べて資金吸収オペの頻度を大きく減少させたことも、超過準備等が大きく増加する背景となった。』
『補完当座預金制度による付利対象預金(準備預金制度適用先が保有する超過準備と準備預金制度非適用先のうち証券会社、短資会社等が保有する日銀当座預金)の金額をみると、11
月積み期が1.0 兆円だったのに対して、12 月積み期が3.9 兆円、1月積み期が4.3
兆円、2月積み期が5.3 兆円、3月積み期が7.1 兆円と大きく増加している。』
としらっと書いてありますが、12月に利下げをするちょっと前までってそもそも資金供給をした側からツイストで引いてコールレートをディレクティブ通りに推移させる事を中心にした運営(ディレクティブがそうなっているのですから当たり前ですが)をしていた結果として、そもそも超過準備があまり溜まらなかったですがなという話ではネーノという気がしますな。
当時は「潤沢な資金供給」というような話があり、かつ補完当座預金制度導入の時にも「潤沢な資金供給を行った時に金利の下限を設定しておく」っていうような話だったのですが、そっちの「潤沢な供給」というのがディレクティブに反映されなかったので、事実上のトン調節みたいな動きが続き、結果GCなどのレートがやたら高止まりしてしまったという事になったんですよね。
で、補完当座預金制度の金利が誘導目標と一緒になった後も、何故か当初は0.10%よりちょっと上で無担保コール取引を推移させるような感じの調節が続き(大手銀行の取りベースで0.08%が出来て、翌日調子に乗ったどこぞの大手銀行が0.07%の取りとかやったらいきなり売手(だか売現先だか忘れましたが)を打ち込んだってえのもありましたね)、1月にまたGCレートが上昇とかしておった訳でして、その後何かが吹っ切れたのか何だか知りませんが、やっと潤沢な供給をしたのが最近の流れって感じですな。
まーこーゆーレポートでそういう話をしにくいのはよーく判りますけど、その辺りの微妙な匙加減が主にGCやら現先レート経由で色々と波及しておりましたのでありまして、その辺りに関しては内部的にはきっちり考察をお願い致したいものでございまする。ってやってると思いますが。
というのが現象面の話で、調節運営上の話が続きます。
『金融市場調節運営の観点からみると、日本銀行が積極的な資金供給を行うもとでも、超過準備等は市場運用されずに日銀当座預金に止まるため、無担O/Nコールレートの下限を画す機能はかなりよく発揮されている。反面、高水準となった超過準備等は日々の振れが大きくなりやすく、結果的に準備預金残高も振れることから、準備預金の積み進捗を調整することにより無担O/N
コールレートを誘導するもとではやや撹乱的な要因となり得る点に留意が必要である。』
ほほう。
『市場機能の観点からみると、日本銀行が、金融市場の安定確保等の観点から、補完当座預金制度の適用利率と誘導目標水準を同水準としたもとで積極的な資金供給を行うことは、無担保コール市場残高の減少等市場機能の低下に繋がっている面がある。こうしたもとで高水準の超過準備等の保有が市場参加者間で定着していくと、市場流動性の一段の低下に繋がる惧れもある。』
まあ無担保コール翌日物とかは見事に取引落ちてますけど、積極的な資金供給するんだからそれは仕方ないんじゃないでしょうか。金利がついているのでとりあえず(かなり息絶え絶えですが)完全死滅にまでは到っておりませんから。
『この点、所要準備額が大きい都市銀行が、余剰資金をレポ市場で運用すること等を通じて準備預金の積みの進捗管理を維持し、超過準備をほとんど保有しない運営を続けているのは、短期金融市場の機能維持の面で重要な意味を持っている。』
ここの所が微妙に良くわからん。どっちかというと振れやすい余剰資金のケツをそのまんまレポ市場に持ってこられる(実際はそういう動きにはなっていないと思われるのですが)とレポ市場の金利が振れやすくなるのではないかという気がせんでも無い。どっちかといえば最近は都銀がせっせと市場間で金を拾おうとして動くから無担保コール翌日物金利を押さえつけ攻撃があちこちに波及(企業特別オペに関しては波及しすぎですが、笑)している気がする。まあそれが市場機能っちゃあ市場機能なんだが。
『また、このことは、日銀当座預金が高水準となるもとでも1日当たりの残り所要準備額が安定的に維持される背景となっており、無担O/N
コールレートの安定的な形成に資する面がある。』
ほほう。ということで、微妙に判ったようなわからんような話でした。判らんのはあたくしの頭が悪いからのような気がするが(自爆)。
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2009/06/11
お題「金融市場レポートから」
金融市場は米国だけじゃないのですが米国の話一辺倒なのが仕様の某モーサテによりますと、ダメリカ様での流行語がグリーンシュート(新芽の芽生え)とはまたまたご冗談を。昨日のガイトナーの「欧州銀行にも厳格なストレステストを」ネタも中々のヒットでしたが、連日モーサテの米国市場コメンテーターのネタ振りが面白いっす。
しかしまあ何ですな。メリケンの辞書に最も必要なのは「謙虚」という言葉であって、それを持ち得ない連中の集団という中身が変わらないのであれば、連中の強欲がまたまた暴走して馬鹿バブルを作るんでしょうなあ。で、そーゆー「アメリカ脳」の連中が考えるからFEDビューになるんでしょうなとも思うのであります(既に諦観)。
さて金融市場レポートから。
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/research07/ron0906a.htm(紹介ページ)
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/research07/data/ron0906a.pdf(本文、長いです)
○今回は色々ありましたので
2008年度という事ですが、流れとしては9月のリーマンあぼんぬまでと、その後、それから12月の各種政策打ち込み後に効果が出て来た1月以降という感じで大別されると思いますが、この間の各市場の流れと施策について比較的詳しくかつコンパクトに書いております。
まー実際問題としては10月以降に「潤沢な資金供給をする」と言ってる割には何故か潤沢な資金供給というのには足りなかったですねとか、0.1%に利下げして付利金利も0.1%に下げたのに何故か「金利付き量的緩和」への移行が遅れてその間はレートが中々下がりませんでしたなあとか、ツッコミ所はあるのですけれども、同期間にあたくしが散々悪態ついておりましたので、その繰り返しになりますから割愛。
と言いつつ、スイッチが入ったら急にネタにして悪態モードになるかも(笑)。
まあそれは兎も角、そんな感じですので関係者の皆様は読むもんでしょこれって感じです。特に昨日も申し上げたように、図表コーナーが中々面白いのでお勧めです。
ところで、リーマン破綻に関連してですけれども、取引のフェイルによる市場の縮小に関しての話は良くされるのですけれども、実際に売買をする立場になってみますと、取引がフェイルになる事もそりゃ面倒なのですが、実際問題としては約定が遡及でさっくりとキャンセルされてしまった方が困る話でございます。
と申しますのも、まあレポに関しては取引そのものはでかいですけれども、ポジション的な金利エクスポージャーが巨大になるのはアウトライトの約定がキャンセルになる方でありまして、リーマン破綻に伴い売買約定の決済履行が止まって結局(後付けで)全部取り消し状態になったのが非常に困る事態。
と申しますのも、当然ながら売買取引って約定時点でポジションを認識する訳ですから、約定したものが事後的にキャンセルになると遡及でポジションがずれることになりますし、当然ながら遡及で損益もずれることになります。そうなりますと、まあふつーに自己勘定の所(証券会社とか銀行ポートとか)だとまだ何とかなるのですが、例えばオープン投信のように他人勘定で常時資金の出入りがあるような物だと遡及で基準価格を変更する破目になる訳でして、顧客向けに遡及訂正をするという話になると手間は大変だわ、顧客への補填をしないといかん(この場合補填は正当な行為ですので念のため)ので運用会社涙目だわと、結構痛いのよねこれが。
勿論決算跨ぎで遡及訂正されたら自己勘定でも面倒な話になりますし、まあ約定キャンセルリスクってのを意識するとアウトライトの取引もやりにくくなるんすよね。だから証券決済の期間短縮という発想そのものは方向として正しいのですが、事務的に全然耐えられない人が投資家の世界に多いので、そっちも中々難しい話だったりしますし・・・・・
んな訳でございまして、リーマン破綻後の市場混乱に関連してレポ市場のシュリンクの話が多いのですが、約定のキャンセルに伴うアウトライト取引先の絞込みという観点も結構大事な要因だったと思うのでありまする。
従って、市場取引の約定だけはちゃんと履行させるべきであったという結論でありまして、金融庁が取引全部止めてしまった事に関してはどう見ても過去の教訓活かしてねえだろ感が強いのでありました。
○長期国債保有に関するコラム
本文26ページにございますコラム。
『BOX2 金融市場調節と日本銀行のバランスシート』
『金融市場調節を通じて取得した資産や負担した債務は、日本銀行のバランスシートに計上される。日本銀行のバランスシートをみると(図表25)、主な負債項目として、銀行券、当座預金および政府預金等がある一方で、主な資産項目として、長期国債、引受国庫短期証券のほか短期資金供給オペに係る資産(以下「短期オペ資産」)を保有するかたちになっている。』
ということで説明があるのですけれども、内訳は割愛しまして・・・・
『日本銀行は、銀行券や財政等の受払いによる当座預金残高の増減を予測した上で、それを勘案して必要な資金供給オペや資金吸収オペを行い、これにより当座預金残高をコントロールすることを通じて、無担O/N
コールレートを誘導している。』
という入り口の時点で話が噛み合わない方が相変わらず存在するのが甚だ遺憾としか申し上げようが無いのですがそれは兎も角。
『これをバランスシートの動きでみると、銀行券残高や政府預金等残高が増減(下記図表中@)する結果、当座預金残高が増減し得る(同A)のに対して、必要に応じて短期資金供給オペ残高や短期資金吸収オペ残高を増減させる(同B)ことにより、当座預金残高をコントロールしている(同C)。』
図表は引用できません(というか図表の貼り方判らんのですが)ので本文見てちょ。
『こうしたもとで、短期的な振れが大きい政府預金等や機動的に残高をコントロールする必要がある当座預金といった短期負債に対しては、短期資産である短期オペ資産を保有する一方、長期的な負債である銀行券残高に対しては、長期資産である長期国債を保有することにより、円滑な金融市場調節運営が可能になっている。』
でも準備預金制度で積むことが義務付けられている部分に関しては当座預金=長期負債あるいは永久負債であるという認識で宜しいのではないでしょうか。それに預金受入金融機関の預金量って基本的に経済成長すれば伸びるものだと勝手に思っているので、法定準備預金量って結構下方硬直性があるんじゃないのかなあとか妄想。
ま、それはそれとしまして。
『仮に長期国債残高が増加し銀行券残高を上回るような場合には(下記図表中(参考))、短期負債である政府預金等や当座預金に対しても長期資産である長期国債を保有することになる。この場合、金融情勢に応じて当座預金残高を機動的にコントロールするために、例えば長期国債の市場での売買を頻繁に行ったり、資金吸収オペを継続的に実施すること等が必要となる可能性があるが、これは市場金利を大きく変動させる等市場に攪乱的な影響を与える惧れがある。特に足許のように市場流動性が低下し、市場分断が強まっている状況のもとでは、こうしたオペにより市場に大きな影響を与える可能性が高い。』
これもまーさよですなという話。
『こうした事態を避け、政府預金等や当座預金の増減に応じて機動的に残高を調整できる短期オペ資産を保有することにより、円滑な金融市場調節運営を確保する観点から、長期国債の保有残高については、銀行券発行残高の範囲内とするようにしている。こうした取扱いは、同時に、長期国債の買入れが、国債価格の買支えや財政ファイナンスを目的とするものではないという趣旨を明確にするという役割も果たしている。』
という説明をしているのですが、この説明のロジックは実務担当者的にはとても判りやすいのですが、実は一つ重大なツッコミ所が生じるのではないかという気が致します。
と申しますのは、バランスシート的に言えば「長期国債を短期オペ見合いで売却するなんてもうエライコッチャですよ!」という話なのですが、長期国債と申しましても残存期間が色々とある訳でして、例えばの話残存3か月になった長期国債となりますとそれは短期オペの世界と変わらない(実はちょっと違うが)のではないでしょうかという話になりますわな。それこそ残存1年の国庫短期証券の売り切りオペやるのと残存1か月の中期利付国債の売り切りオペやるのとどっちがエライコッチャになるのよという比較をおっぱじめると素敵な話に。
ということでですな、この理屈推し進めると、残存1年以内の長期国債買入は実質短期オペレーションではないか(実際は中長期国債を買入すると償還時に償還乗換が発生するので実質的なオペの足は1年を超えるし、再乗換をやったらもっと長くなる)という議論になってくるのでして、中々素敵な諸刃の剣な説明ですなあと思うのでありました(^^)。
#米国10年金利3.9%超えでヒャッハー状態なのですが、その話はまたいずれ
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2009/06/05
○日銀レビューがまた来ました
これはまた出るタイミングが微妙な(^^)。
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/rev09j05.htm
キャリートレードと為替レート変動
―― 金利変動が市場参加者のリスク認識に与える影響 ――
本文はこちらです。
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/data/rev09j05.pdf
んでまあ最初にあります要約部分でござんすけどね。
『2007 年夏まで続いた世界的なマクロ経済の安定化や先進国の緩和的な金融環境は、投資家のリスクアペタイトを高め、様々な金融資産価格の上昇をもたらした。為替市場におけるキャリートレードを背景とした投資通貨の増価もその一例とみることができる。』
これはまた微妙なネタを投下しますな(^^)。
『円キャリートレードの超過収益の発生は、新たな投資家を次々と呼び込み、投資通貨の増価と調達通貨である円の減価をもたらし、それがまた、トレードの収益拡大を自己実現化させるという循環につながった。しかし、キャリートレードの超過収益は、「カバー無しの金利裁定式」からの乖離によって発生するものであり、収益が拡大するほど、投資通貨の急落リスク(円の急騰リスク)を溜め込んでいく性質がある。』
これはまあ市場現場的には経験的に当たり前っちゅうかその辺の感覚が無い人間は相場反転の時に大怪我して退場になる話。本文にあるように『しかし、標準的な為替レートチャネルの基礎となる「カバー無しの金利裁定式(UIP:Uncovered
Interest Parity)」は、現実には――少なくとも短期的には――成立しないことが多くの実証研究により指摘されている。』とあるように、実証研究とかもあるんですな。
『その意味で、キャリーポジションの拡大は、いわゆる「金融の不均衡」の拡大の一形態と解釈することもできる。サブプライムローン問題の顕在化やリーマンブラザーズの破綻を契機とした、金融経済環境の不確実性の拡大や資金流動性制約のタイト化が、投資家によるキャリーポジションの巻き戻しを誘発し、投資通貨の減価と円の増価という形で、為替レートの大幅な変動を引き起こす一因になったと考えられる。』
というのが冒頭のまとめの部分でして、中身に関してはまあその分析するのに微妙に式が入っている所もあってアレですけど、別に式をいじって訳判らん話をしている訳ではなく、フツーにサラサラ読めます。まあ市場の中の人よりは外の人向け(ただし基礎知識無いと何がなにやらなので単に外のひとだとこれまたちょっと難しいかもです)というかポジション持ったことの無い人向けという感じでございますかね。
まあ内容は読んで味噌なのですが、各項目の最初の所を数行読むだけで読み飛ばしてもまあオモロイです。
3ページ目の小見出し『円キャリートレードの超過収益』の冒頭。
『為替レート変動に関する標準的な理論であるUIP によれば、投資通貨と調達通貨間の金利差収益は、投資通貨の減価によって相殺されるため、キャリートレードの超過収益率の期待値はゼロとなるはずである。しかし、現実には――少なくとも短期的には――、UIP
が成立せず、キャリートレードにおいて超過収益が発生し得ることが、多くの実証研究によって示されてきた。』(フォントの関係上計算式部分を割愛して文章の繋がり上一部削除しています)
7ページ目の小見出し『市場参加者のリスク認識と金利変動』の冒頭。
『投資通貨と調達通貨の金利差が大きいほど、あるいは、キャリートレードの超過収益が大きいほど、先行きにおいて、投資通貨の急落リスクが高まるにもかかわらず、なぜ、投資家はキャリートレードのポジションを積み上げるのであろうか。』
『個々のファンドマネージャーが、通貨急落のリスクを認識していても、他のファンドがキャリートレードで収益をあげている時には、ファンドの顧客の維持・獲得のために、自らも収益を拡大させる必要がある。このため、他ファンドと同じ投資戦略を採用する誘因が発生し、これが群集行動(herd
trading)へとつながっていく。』
・・・・・耳が痛い(汗)。
・市場の中の人的にはレポートを7ページ目から読むとヨロシアルね
まあそれはそれとして、最後の小見出しの『金融政策の波及:リスクテイキング・チャネル』って所の最初にこんなもんが。
『金利の変化が、投資家のリスク認識やリスクアペタイトを経由して、為替レート変動の動学的特性に影響を与え得るという点は、金融政策の波及においても発現し得る事象として意識しておくべきであろう。』
『これまでの経済理論は、利下げが自国通貨安(減価)をもたらすという為替レートチャネルに関して、UIP
をベースに標準的な理解を形成してきた。また、多くの中央銀行のマクロ計量モデルにおいても、為替レートチャネルはUIP
に基づいてモデル化されている。』
『UIP によれば、内外金利差の変化を相殺するように、将来にかけての為替レートの期待変化率が瞬時に調整されるため、利下げは、当期の自国通貨安と来期以降の通貨高(予想)をもたらす。自国通貨が調達通貨の場合であれば、中央銀行の利下げによって、「投資通貨は、エレベーターで急上昇した後に、階段でゆっくり下る」というパスを描くことになる。』
ほほう。
『しかし、既述の通り、UIP は現実の為替レート変動を正しく描写していない。金利差の拡大が持続するという予測のもと、投資家のリスクアペタイトが高まれば、キャリートレードを促して、「投資通貨は、将来いずれかの時点でエレベーターで急降下するというリスクを抱えながらも、階段を何段も上っていく」ことになる。』
さよですな。
『したがって、金融政策の波及を考えるうえでは、金利の動向が市場参加者のリスクアペタイトの変化を経由して、彼等の投資行動と資産価格変動に大きな影響を与え得るという、「リスクテイキング・チャネル」について認識を深めておくことが重要だといえる。』
ということで、以下なんか大事な話をしている気がしますが(^^)、後は本文を読んで下され。
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2009/05/28
○展望レポートのときの決定会合議事要旨
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g090430.pdf
・企業金融環境に関連して
『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』の金融市場に関する部分から。
『わが国の金融環境について、多くの委員は、C P や社債の発行環境は改善しているものの、全体としては厳しい状態が続いているとの認識を共有した。』
『ある委員は、企業収益の低迷などを背景に、企業の資金調達を巡る不安は根強いと考えられるものの、在庫調整の進捗や原材料価格の低下などによって資金需要が減少するほか、資金供給面では、貸出が比較的高い伸びを続け、C
P の発行環境も改善していることから、今後、企業金融の逼迫度合いは、次第に緩和していく可能性があると指摘した。』
『他方、別のある委員は、既に2008 年度の業績見通しの下方修正が相次いでおり、5月の決算発表後、企業の格下げが増える可能性は否定できないと述べた。その上で、この委員を含む何人かの委員は、企業業績の悪化が、金融機関の融資姿勢の慎重化を通じて実体経済に及ぼす影響について、注意深くみていく必要があると指摘した。』
この辺に関しては銀行貸出計数とか短観とかを見ていく必要がある話ですね。後でご紹介しますが、このあたりの推移次第ではまた追加施策という話にもなるんでしょということで。
で、景気関連の話も大事な論点なのですが、引用してると終わらないので華麗にスルー。ネタが無かったら明日に続きますけど。
・国債増発に関して
『このほか、ある委員は、今後の国債増発が、債券市場にどのような影響を及ぼすのかという点についても注意を払う必要があるとの意見を述べた。』
ま、日本の前に米英の増発が影響与えちゃいましたが(^^)。日本の場合は7月から増発だから云々ということで目先は様子見モード、実際に増発入札が近くなってくると買わない言い訳に使われるってえ所じゃないかなという所です。短期国債市場が増発何のそので順調に消化されているのも結構安心っぽい気分にさせてくれていると思われますが。
ただまあ国債増発対応で長期国債買入を増やして長期金利上昇抑制というのが絵に描いた餅であるというのをバーナンキ先生の所が身を切って実演していただいておりますので、んじゃあどうするのよという話になるとそれはまたムツカシヤという所になるのかもしれません。まーFRBの身を張った長期金利炎上劇場によって最近は「長期国債を沢山買って長期金利を押し下げろ」的な話が減ってきたのであまり輪番のネタで盛り上がらなくなってきましたが、市場的には。
まー輪番ゾーニング効果でやっと日銀保有の長期国債残高増加傾向になってきました(ただ本当は償還乗換の短国買入分も含めて残高を考えないといかんと思うのですけど、一昨年の分再乗換とかしてるから償還乗換まで含めて考えたらもうちょっと違う話になるのかなあと思ってみたり)ですけれども、輪番ど〜すんのという話は実際に7月の増発、今年度の税収不足対応の増発などをこなしていく段階でまたネタになる事もあるでしょう。
・物価安定の理解に関連して
『V.「中長期的な物価安定の理解」の点検』は面白い。
『複数の委員は、わが国の消費者物価指数のバイアスは引き続き大きくないとの認識を示した。また、何人かの委員は、わが国では、過去長期間にわたり、平均して1
% 弱という低い物価上昇率を経験してきたため、物価が安定していると家計や企業が考える物価上昇率は海外の主要国よりも低く、こうした水準を前提に、経済活動にかかる意思決定が行なわれている可能性があることは変わっていないとの見方を示した。』
だから現状追認を前提に政策組むのが良いのかというとそれはまた別問題のような気もするんですが。
『ある委員は、過去1 年のサーベイ調査によると、消費者物価指数の上昇率が1
〜 2 % 程度の時期に、殆どの人が「物価は上昇した」と回答し、かつ、その多くが物価の上昇を「困ったことだ」と答えていることを指摘し、国民の物価観は引き続き低位にあると述べた。』
逆に考えると、その辺の物価観をほんのちょっと上昇させるだけでも効果抜群なのかも知れないですな。いやまあ正直どっちが良いのかとか言われるとよく判らんのでありますけど。
で、その後に「物価上昇率の糊代論」で意見が分かれたという興味ある下りが。
『また、何人かの委員は、潜在成長率が低下傾向にあることや、金融環境の厳しさなどを勘案すれば、物価下落と景気悪化の悪循環に備えた「のりしろ」が必要であると述べた。』
『このほか、何人かの委員は、最近の経済の大きな変動を踏まえると、「のりしろ」がどれほどの意義を持つのかについて留意する必要があるのではないかとの意見を述べた。』
・・・・・ここの所ってさらっと流れてますけど、結構議論になったんじゃないかと勝手に妄想したいのですが、出て来た数字はあまり「のりしろ」議論での差が出たような数値(下限数値の違い)になってないのが残念(^^)。
で、そこの所は割愛して、この論点。
『この間、何人かの委員は、今回の展望レポートの見通し期間において消費者物価のマイナスが続くことを「中長期的な物価安定の理解」との関係でどう整理するか、という点について意見を述べた。』
ええまあ身も蓋も無い言い方をすればどう理屈の帳尻をつけるかって話になるのでしょうけれども、まあ最初に出てくる意見が実体面からしたらそうでしょという事なのでしょうか。
『ある委員は、経済に対する今回のショックは非常に大きく、当面、現実の物価上昇率が下方に乖離することは止むを得ないとした上で、重要なことは、やや長い目でみて、物価安定のもとでの持続的成長経路に向かうことが展望できているかどうかであると述べた。その上で、この委員は、時間軸を長くとれば、両者に不整合はないとの認識を示した。』
ただまあこうなってタイムスケールを長くしていくと、物価安定の理解を示して数値を出す事と、「総合的判断」で突き進むのとにどういう違いがあるのかという議論にもなってくるのではないかと存じますがどうなんでしょ。
『また、別の複数の委員は、こうした状況は、インフレーション・ターゲットを採用している国を含め、欧米主要国でも同様であると付け加えた。』
まあそうなんですけど(^^)。
『更にある委員は、金融政策の効果が波及するには、通常長い期間を要することから、中央銀行は、十分長い先行きの経済動向を予測しながら金融政策を運営する必要があると述べ、その上で、現在のように経済の変動が大きい時期だからこそ、「物価安定の理解」における「中長期的」の意味が、従来にも増して重要になっていると指摘した。』
何と言う蒟蒻問答(^^)、いやまあ言いたいことの趣旨は何となく伝わりますが、説明は難しそうですなあ(棒読み)。
・追加策or出口政策?
『W.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』から
『先行きの政策運営について、何人かの委員は、今後、市場環境や企業金融環境が想定以上に厳しさを増すなどした場合には、状況の変化に柔軟に対応し、必要に応じて、追加的な措置を検討していくことが適当であるとの意見を述べた。』
こりゃまあそうですねって話ですが、この時点では米銀ストレステストとかの前でもありますから、結構先行き不安モードであったのはございますわなという感じですか。その一方でこの論点はキタコレという感じ。
『この間、ある委員は、先行き、中心的な見通しに沿って、わが国経済が回復に向かうこととなれば、現在講じている臨時・異例の措置を、どのような方法で解除していくかについて、検討する必要が生じ得ると述べた。』
まーこれはどうやっていくのか難しいところだと思います。特に企業特オペ。社債とCPの買切は市場レート低下すると応札減るようになってますけど、企業特オペの金利はそもそもが大サービスレートなので依存症になり易く(というかなっているが)、出口をどうするのか難しかろうとは思います。ま、米国の各種政策の出口の難しさから比較したら屁のようなもんかもしれませんけどね!
・・・・ところでこれ誰が指摘したんでしょ。うーむ。
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2009/05/27
○金融経済月報
では金融経済月報を。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0905.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0904.pdf(4月)
で、本当は中身を仔細に見ないといけないのですが、例によって手抜きで概要部分だけで勘弁。月曜日にご紹介した声明文比較と重なる部分もありますが。
・現状判断
『わが国の景気は悪化を続けているが、輸出や生産は下げ止まりつつある。』(今回)
『わが国の景気は大幅に悪化している。』(4月)
ということで、声明文と同じですな。以下需要項目別展開になりますが、記載順が変わっているのでぶつ切りにして比較してみます。順序のベースは今回の月報に致しますが。
・企業収益、設備投資
『企業収益が大幅に悪化するもとで、設備投資は大幅に減少している。』(今回)
『企業収益の減少幅は拡大しており、企業の業況感も著しく悪化している。そうしたもとで、設備投資も大幅に減少している。』(4月)
企業収益部分を下方修正(業況感に関しては短観結果を受けているものなので今回は言及なし)、設備投資は変わらずにしています。
・雇用、所得、個人消費、住宅投資
『また、雇用・所得環境が厳しさを増す中で、個人消費は弱まっており、住宅投資も減少している。』(今回)
『また、雇用・所得環境が厳しさを増す中で、個人消費は弱まっており、住宅投資も減少している。』(4月)
ここは前回と同文。
・輸出、生産、公共投資
『一方、輸出や生産は、大幅に落ち込んだあと、下げ止まりつつある。この間、公共投資は増加に転じつつある。』(今回)
『輸出は、海外経済の悪化などを背景に、大幅に減少している。この間、公共投資は低調に推移している。以上のような内外需要の動向や在庫調整圧力を背景に、生産は大幅に減少している。』(4月)
これらの項目は上方修正と。
・先行き判断
『景気は、当面、悪化のテンポが徐々に和らぎ、次第に下げ止まっていく可能性が高い。』(今回)
『景気は、当面、悪化を続ける可能性が高い。』(4月)
というのは声明文比較の通りです。こちらも需要項目別にぶつ切りして比較します。
・国内民間需要
『すなわち、国内民間需要は、厳しい収益・資金調達環境が続き、雇用・所得環境も厳しさを増すもとで、引き続き弱まっていく可能性が高い。』(今回)
『一方、国内民間需要は、厳しい収益・資金調達環境が続き、雇用・所得環境も厳しさを増すもとで、さらに弱まっていく可能性が高い。』(4月)
さらにというのが引き続きに変更になったのはプチ改善ですが、まあそんなに言うほどの改善ではなく。
・輸出、生産、公共投資
『一方、輸出や生産は、内外の在庫調整の進捗を主因に、下げ止まりから持ち直しに転じていくとみられる。この間、公共投資も増加していくと見込まれる。』(今回)
『すなわち、輸出や生産は減少を続けるとみられるが、内外の在庫調整圧力が減衰するにつれて、減少テンポは緩やかになっていくと予想される。この間、公共投資は、低調に推移すると考えられる。』(4月)
こちらは「減少テンポが緩やか」から「下げ止まりから持ち直し」と上方修正。で、昨日ご紹介した白川総裁定例記者会見にありますように、今回の「上方修正」に関しては前回の金融経済月報における見通しがその通りに進行している結果だという話になるかと思います。
ということで、まあひじょーにざっくりと言ってしまえば、遅行指標項目に関しては一部下方修正しているものがあって、先行指標項目に関しては上方修正をしているという事になるので、まあ内容としてはやはり「底打ち」って奴じゃないのって所かと思いますです。はい。
・物価
物価に関しては前回と殆ど変わらず。国際商品市況の下落の影響が一巡気味になっている所くらいしか変化はなく、先行きもマイナス予想のままです。
・金融環境
『わが国の金融環境は、ひところに比べて緊張感が後退しているものの、なお厳しい状態が続いている。』(今回)
『わが国の金融環境は、厳しい状態が続いている。』(4月)
これまた声明文と同じですけど、若干明るくなったけど厳しいという感じで、市場調達の部分+市場調達できる人という点では昨今の金余り相場状態によって印象としては更なる絶賛緩和(まあ4月の時点でも緩和されてますけど)状態だったりするのですが、全体という意味ではこんな感じなのでしょうか。
『コールレートがきわめて低い水準で推移する中、企業の資金調達コストも、本年初に低下した後、低水準で横ばい圏内の動きとなっているものとみられる。ただし、悪化を続けている実体経済活動や企業収益との対比でみれば、低金利の緩和効果は減殺されていると考えられる。』(今回)
『コールレートはきわめて低い水準にあるが、大幅に悪化している実体経済活動との比較でみると、緩和度合いは低下している。企業の資金調達コストは、政策金利引き下げの波及やCP発行市場の改善を受けて、昨年末に比べ低下している。』(4月)
文章の切れ目の関係でぶつ切り出来なかったので2つの論点を並べてしまいましたけど、今回「ほっほー」と思ったのは金融緩和効果に関して前回対比で厳しい見方になっていること。いやまあ物価上昇率が低下して企業の稼働率とかも低下しているのですから理屈上当たり前と言ってしまえばそれまでなのですけれども、緩和効果の減殺をやっと明記しましたねえって感じです。
『企業の資金調達動向をみると、銀行貸出は大企業向けを中心に高い伸びを続けている。CP発行は減少したが、これは手許資金積み増しの動きが一服したことによる影響が大きいとみられる。社債発行銘柄の拡大等もあわせて考えると、CP・社債の発行環境はひところに比べ改善してきている。』(今回)
『企業の資金調達動向をみると、CP・社債の発行はひところに比べ回復してきているうえ、銀行貸出は大企業向けを中心に高い伸びを続けている。』(4月)
企業の手元資金積み増しの一巡に言及し、社債発行「銘柄」の拡大に言及とこれは白川総裁の講演や会見でも言及されていますが、やや改善という認識になっています。
『しかし、そうしたもとでも、下位格付先の社債発行は依然低い水準にとどまっているほか、資金繰りや金融機関の貸出態度が厳しいとする先は引き続き多い。』(今回)
『しかし、そうしたもとでも、下位格付先の社債発行は依然低い水準にとどまっているほか、資金繰りや金融機関の貸出態度が厳しいとする先が増加している。』(4月)
というころで、こちらに関して引き続き懸念というのがさっきの講演でしたね。
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2009/05/25
ということで決定会合なのですが、今日は声明文の書きっぷりがちょっと変わった感じがしたので、4月7日分と比較して結局全部比較引用大会でござるの巻。長くてスイマセン。
決定会合結果公表文
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/k090522.pdf
外国債券担保適格化
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/mok0905a.pdf
○一応上方修正という話ですけど・・・・そうかなあ??
んでまあ結果の公表文なんですけど、そちらの中にある景気認識の部分を4月7日(=展望レポート公表前の方です、展望レポートの方が近くに公表されてますが、中長期的な話になっているので)の決定会合公表文と比較するでござるの巻。
・現状の全体観
『わが国の景気は悪化を続けているが、内外の在庫調整の進捗を背景に、輸出や生産は下げ止まりつつある。金融環境をみると、ひところに比べて緊張感が後退しているものの、なお厳しい状態が続いている。』(今回)
『わが国の経済情勢をみると、海外経済の悪化により輸出が大幅に減少していることに加え、企業収益や家計の雇用・所得環境が悪化する中で、内需も弱まっている。金融環境をみると、CP・社債市場の発行環境は改善しているものの、全体としては厳しい状態が続いている。これらを背景に、わが国の景気は大幅に悪化している。』(4月)
いやまあこれだけ出すと一応大幅下向きから底を見に行く動きって話だから落ち方が緩やかになってきたという意味では改善は改善なんですけれども、絶対的水準という意味では当然ながらそこまでの落ちがでかく、かつ方向が上に向いている訳では無いのですから、「上方修正」とまで言うのはちょっと煽り気味ではないかと思いますけど。
・先行きに関して
『今後は、国内民間需要は引き続き弱まっていくとみられるが、輸出・生産は下げ止まりから持ち直しに転じていき、公共投資も増加していくと予想される。このため、わが国の景気は、悪化のテンポが徐々に和らぎ、次第に下げ止まっていく可能性が高い。』(今回)
『今後は、内外の在庫調整の進捗を背景に、輸出・生産の減少テンポは緩やかになっていくと予想されるが、国内民間需要は更に弱まっていくとみられるため、わが国の景気は、当面、悪化を続ける可能性が高い。』(4月)
まあ同じことですけど、先行き次第に「下げ止まり」であって、「上向き」という話をしているわけでは無いので、そーゆー意味では金融市場がいい感じで値動きをしているのに比較すると温度差があるかなと思いますがどうでしょ。
・物価に関して
これは前月と同じなので今回の分だけ引用。
『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、石油製品価格の下落や食料品価格の落ち着きを反映して足もと低下しており、今後は、需給バランスの悪化も加わって、マイナスになっていくとみられる。』
○海外の回復と財政金融政策効果への期待
4月7日対比ですからまあそうなのでしょうが、もうちょっと先行き見通し。
『2010 年度までの中心的な見通しとしては、中長期的な成長期待やインフレ予想が大きく変化しないもとで、2009
年度後半以降、海外経済や国際金融資本市場の回復に加え、金融システム面での対策や財政・金融政策の効果もあって、わが国経済は持ち直し、物価の下落幅も縮小していく姿が想定される。』(今回)
『景気・物価の先行きについては、2010 年度までの中心的な見通しとしては、中長期的な成長期待やインフレ予想が大きく変化しないもとで、2009
年度後半以降、国際金融資本市場が落ち着きを取り戻し、海外経済が減速局面を脱するにつれ、わが国経済も持ち直し、物価の下落幅も縮小していく姿が想定される。』(4月)
回復していくモノが出てきましたってことですからここは上方修正かも(^^)。
『こうした動きが持続すれば、わが国経済は、やや長い目でみれば、物価安定のもとでの持続的成長経路へ復していく展望が拓けるとみられる。もっとも、景気・物価の先行きは、海外経済や国際金融資本市場の動向に大きく依存した展開を辿る可能性が高く、見通しを巡る不確実性は大きい。』(今回)
『こうした下で、見通し期間の後半には、物価安定のもとでの持続的成長経路へ復していく展望が拓けるとみられるものの、このような見通しを巡る不確実性は高い。』(4月)
見通し期間の後半(=2010年度後半)に回復コースに復帰という見通しが、やや長い目でみればという表現になりましたが、これはまあやや見通しを前進させていると見るべきでしょう。「見通し期間の後半」なんてどう見ても無理無理つけてましたって感じですからねえ。
○リスク要因をシンプルに下だけにした理由は・・・・
まずは今回のリスク要因ですが、やたら短くなっているのが目に付きます。
『リスク要因をみると、景気については、国際的な金融経済情勢、中長期的な成長期待の動向、わが国の金融環境など、景気の下振れリスクが高い状況が続いていることに注意する必要がある。物価面では、景気の下振れリスクの顕在化、中長期的なインフレ予想の下振れなど、物価上昇率が想定以上に低下する可能性がある。』(今回)
前回はこうですもん。
『リスク要因をみると、世界的な金融情勢や海外経済の動向次第では、わが国の景気が下振れるリスクがあることに注意する必要がある。また、企業の中長期的な成長期待が低下し、設備や雇用の調整圧力が高まることを通じて、国内民間需要が一層下振れるリスクもある。金融環境が厳しさを増す場合には、金融面から実体経済への下押し圧力が高まり、金融と実体経済の負の相乗作用が強まる可能性がある。物価面では、景気の下振れリスクが顕在化した場合や国際商品市況が下落した場合には、物価上昇率が一段と低下する可能性もある。この場合、企業や家計の中長期的なインフレ予想が下振れるリスクに注意する必要がある。』(4月)
随分シンプルになりましたなと思いますけど、細々見ますと、まず最初に景気の下振れリスクに関して「リスクがある」というのが「リスクが高い状況が続いている」と変化させていまして、これはまあ表現的にはあんまり変わってませんが、言い切り調じゃ無くなったので表現緩和なんじゃないかと。また、中長期的な成長期待低下やら金融環境悪化に関する細かい記述が削除されたのはまあリスク認識を後退させたって事でしょうね。
ところが、何故か今回はリスク要因で上方向が削除されております。じゃあ展望レポートはどうでしたかって話ですけれども、展望レポートでは(この声明文よりも見ている期間が長いですけれども)上振れ・下振れ要因に関して(大体下振れの方が多いのですが)上振れの話も入っているのですな。
つーことで、今回いきなり上振れリスクの話が無くなっていますが、全体的なトーンを勘案しますと、どちらかといえば前回までに掲げていた「上振れ要因」というのがもう何かとりあえず景気の良い事書かないと暗くなっちゃうから無理無理入れてますっていうような感じでしたので、様子見継続ながら先行きのこれ以上の悪化が食い止められてきているという所にやや自信を持って来たって感じなんじゃないかなあと思いました。
ということで、トーンは全般やや明るめになっているけど別に上方修正じゃないって感じだと思います。
○最後の所も表現がシンプルに
『日本銀行としては、当面、景気・物価の下振れリスクを意識しつつ、わが国経済が物価安定のもとでの持続的成長経路へ復帰していくため、中央銀行として最大限の貢献を行っていく方針である。』(今回)
シンプルなんですよ。前回はこうでしたから。
『日本銀行は、金融政策面からわが国経済を支えるため、昨年秋以降これまでの間、政策金利の引き下げ、金融市場の安定確保、企業金融円滑化の支援という3つの柱を中心に、様々な措置を実施してきた。本日の適格担保範囲の拡大措置も、金融市場の安定確保の観点から、決定したものである。また、金融システムの安定を図るため、金融機関保有株式の買入れを再開したほか、金融機関向け劣後特約付貸付の供与に向けて具体的な検討を行っている。日本銀行としては、今後とも、わが国経済が物価安定のもとでの持続的成長経路へ復帰していくため、中央銀行として最大限の貢献を行っていく方針である。』(4月)
施策の部分があるので長いってのもありますけれども、そこを捨象して読んでも短くなっておりますわな。施策の3つの柱の表現は外しましたが、一方で「下振れリスクを意識」という表現が入っています。
これをどう解釈するのかと言われますと別にあたくし中の人の訳じゃないからあくまでも年がら年中見ている(そこのあなた、すとーかあとか言わないように)あたくしとしては、基本的に「表現がシンプル」というのは「自信度が上昇した時」という解釈になります。で、景気の猛スピードでの悪化が止まりそうですよって見通しが多いトーンになっているという事を勘案すると、下げ止まりに対する自身度が上昇したという事であり、今後の施策に関しては「とりあえず今後の施策に関しては様子見ですよ」という話になるんでしょうかね。ただまあ下振れリスクに関しては勿論気にしてますよって感じなんでしょう(ボードの中でも先行きのリスクに関する意見は割れてそうな気がします。いえ何となくですけど)。
○まさに「次はイタリア抜きで」(違)
ということで、英米仏独の国債を適格担保という事になりましたが、同じくユーロエリアの大国でありますところのイタリア国債だのスペイン国債だのは今回対象外になっております。
具体的にどのような事務実施要領になるのか公表文だけだと何か今一歩良くわからなかったのですが、要するに海外中銀で担保取っている分で余力があったらそいつをクロスボーダーで使えるようにしましょうってイメージなんですけどそれで合っているでしょうか????
ま、イタリアだのスペインだのはそもそも論としてこっちの金融機関がそんなに持ってないでしょうから担保として使うという話しもないでしょうし、両国の国債をジャンジャン持っているような金融機関が日本で大々的に営業している訳でもない(ABNアムロ買収した時もBSCHはアジア部門興味なしって感じでしたもんね)ので、実際問題として実務上のニーズは大して無いでしょうというのが理由。クロスボーダーで担保を取るなんて実務的には相当面倒だと思いますんで、わざわざニーズの無いものを加える理由は無いでしょという話なんでしょう。
・・・・・というところだと思いますけど、まあこーゆー時は「次はイタリア抜きで」が実践されたというネタにした方がオモロイというものです。いやまあ「イタリア軍武勇伝」じゃないですけれども、円債市場をちょっと長くやっている人だと「イタリアのグローバル円債」というと事務面で「イタリア軍武勇伝」的な印象を持っていると思いますからね(^^)。
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2009/05/13
○先週ネタの続きですが決定会合議事要旨から
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g090407.pdf
『V.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』から
・海外経済
『海外の金融経済情勢について、委員は、海外経済は全体として悪化しているとの認識を共有した。』
昨日ご紹介したBOEの声明文(タイミングが1か月BOEの方が後ですが)では「The
world economy remains in deep recession」というお話でしたが、さてこの部分は英語で何と言ってるでしょうと英語版議事要旨を珍しく見ると・・・・
http://www.boj.or.jp/en/type/release/teiki/giji/g090407.pdf
『Members shared the view that overseas economic conditions had been deteriorating
as a whole.』
ほっほー(^^)。で、あたくしドブ板ドメスティック日本人(留学とか海外勤務とか何ですかそれ状態ですわ、あっはっは)でございますもんで、英語の表現の微妙な違いによる微妙なニュアンスってえのが今百歩判らんして、上記文章で最後に「as
a whole」ってえのが付いているのと付いていないのとの違いがよー判らんのですが、あたしゃ何となく最後にヘッジクローズを入れてるようなニュアンスを感じるのですけど、これってどうなんすか??
まーそれは兎も角として、んじゃ海外経済どうなのよという所を読みますと以下こんな感じになるのでありまする。
『多くの委員は、一部の国・地域では、財政支出拡大の効果や在庫調整進捗に伴う生産の下げ止まりなど、悪化テンポの鈍化の兆しがみられていると述べた。もっとも、委員は、世界的な金融と実体経済の負の相乗作用や、生産・所得・支出の負の循環が続く中で、世界経済の先行きについての不確実性は大きいとの見方で一致した。』
この辺って昨日ご紹介したBOEの認識にも通じる所がある(まー当たり前ですけど)
ところで、下げ止まり感は何となくございますかなって話だとは思いますが、例に
よって例の如く不確実性が高いということで相変わらずリスクに注意という話に
なっておりますわな。
『何人かの委員は、海外経済は、現在、過去数年間にわたって積み上がった過剰の調整過程にあり、その調整には時間がかかるほか、過剰の調整を経た後も、成長率は過去の速すぎた成長スピードに比べ低下する蓋然性が高いとの認識を示した。』
暫く前にご紹介した野田審議委員の講演でもこのあたりは強調されていましたね。で、国際金融資本市場の話をスルーして地域別の話をするとこうなるのです。
『米国経済について、委員は、金融と実体経済の負の相乗作用が強まっており、引き続き景気が大幅に悪化しているとの認識で一致した。』
『ユーロエリア経済について、何人かの委員は、大幅に悪化していると述べた。』
『中国経済について、何人かの委員は、大幅に減速しているとの見方を示した。』
内容部分まで引用してるとキリが無いので(^^)、頭にある全体感部分だけ引用しましたけれども、「全体として悪化」という最初の言葉から感じるニュアンスよりももうちょっと個別に展開するとダメダメじゃんという感じになりますわな。
・で、国内経済ですけど
全体感は金融経済月報や展望レポートでも示されているので引用割愛して、先行きの需要項目別展開の部分を引用しつつ。
『輸出は大幅に減少しているとの見方で一致した。複数の委員は、2 月の実質輸出の前月比減少幅が縮小していることに言及したうえで、中国やN
I E s からの引き合いの増加や現地の在庫調整の進捗などを背景に、3 月短観における先行きの海外での製商品需給判断が幾分改善するなど、輸出を巡る環境が好転しつつあると述べた。これを受けて、委員は、当面、輸出の減少テンポは緩やかになるとの認識を共有した。ただし、何人かの委員は、その先については、海外経済の動向など、輸出を巡る環境の不確実性は高いと付け加えた。』
新興国向け需要が戻りつつあるというのはいい話ですが、現地在庫調整が進捗して需給が改善っていうのは、その後の販売増加が起きないと単なるそれはゲタの問題じゃネーノという感じであります。
『設備投資について、何人かの委員は大幅に減少していると述べた。何人かの委員は、設備の過剰感が大きく高まっており、景気の調整が長引き、回復力が弱くなることにより、企業の中長期的な成長期待が低下し、設備投資に一段と下振れが生じる可能性があるとの認識を示した。また、ある委員は、今後、製造業の業績悪化が非製造業に波及するため、非製造業の設備投資が更に減少する可能性があるとの見方を示した。』
・・・・・なんと言うお先真っ暗。特に「設備の過剰」ってのが実に宜しくないのですが。
『個人消費について、何人かの委員は、雇用・所得環境が厳しさを増す中で、弱まっていると述べた。複数の委員は、労働分配率の上昇を踏まえれば、企業は賃金の引き下げや雇用の削減に一段と踏み込まざるを得ず、雇用・所得環境は一段と悪化することから、個人消費は更に弱まっていくとの見方を示した。』
これまた暗い先行き・・・・・
『生産について、委員は、内外需要の減少や在庫調整圧力を背景に、大幅に減少しているとの見方で一致した。先行きについて、委員は、I
T や自動車関連の在庫調整の進捗を受けて、予測指数が下げ止まっており、減少テンポは緩やかになるとの認識を共有した。ある委員は、内外需要の先行きについての不確実性は高く、販売減少に伴い流通在庫が増加する可能性があるため、在庫調整圧力が高まるリスクには留意する必要があると述べた。』
生産はちったあ話がマシですけれども、先日ご紹介した在庫調整に関する日銀レビューで説明がありましたように、急速な需要減に対応した在庫調整が一巡すると数字上は前期比ベースでの下げ止まりから上向きに転じるという話であって、今後本格的に回復するためには需要が戻らないと話にならんですがなという認識なんでしょう。
・・・・・ということで、全体的には厳しい見方が並んでいまして、何となく株価が戻り歩調でウキウキ気分(かどーか知らんが)の金融市場とは温度がちと違いますかねっていう感じを受けましたがどないでしょ。
ちなみに、最初に突如英文議事要旨をご紹介しましたが、展望レポートとか声明文とか議事要旨とか、実は英文の表現を見るのも中々面白いこともあるのですけれども、さすがにそこまで毎回フォローする訳にも参りませんで(大汗)、こーやって時々思い立って英文に当たってみたでござるの巻となるのです。時々オモシロネタの当たりを引くことも(^^)。
・企業金融に関連して
CPIの話はこれまたスルーして金融環境の部分で企業金融に関する部分ですが、ポイントは3点。
『そのうえで、これらの委員を含む多くの委員は、今後の企業金融に関するポイントとして、昨年度の企業決算公表に伴い、企業の信用リスクに対する金融機関や市場の見方が厳格化する可能性、社債の大量償還が予定される中での社債の発行環境、株価下落によって銀行の資本制約が強まるリスク、の3
点を指摘した。』
『また、ある委員は、こうしたリスクが顕現化した場合には、企業金融面から実体経済への下押し圧力が高まる可能性があると付け加えた。』
ということで、月曜日にご紹介した今後の金融政策運営に関する検討の所に話が繋がるのですけれども、まあこの辺りのリスクが顕現化するのかどうかってえ話はこれからでございますな。とりあえず短期ゾーンの市場だけ見てると全然問題ねえって感じなのですけれども、問題は恐らく金融市場でフォローしてない/できない所って事なのでしょうから、市場の中の人としては中々ムツカシヤな所でもあります。
とまあそんな感じで、展望レポートもそうでしたけど、結構先行き見通し暗いのよね。
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2009/05/11
○決定会合議事要旨より少々
時間の都合上今日は簡単で勘弁(汗)。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g090407.pdf
今日は『W.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』から。
・企業金融対策関連
『委員は、これまでの企業金融面での政策対応の効果について議論を行った。第1
に、企業金融支援特別オペについて、ある委員は、当該オペによる資金供給が増加しており、ターム物金利低下などの効果が出ていると指摘した。第2
に、C P ・社債の買入れについては、多くの委員は、発行環境が改善しており、着実に効果がみられていると指摘した。』
これはその通り。
『ある委員は、C P 買入れは、高格付先のC P 発行環境だけでなく、低格付先の発行や社債の発行環境の改善も後押ししていると述べた。』
まあこれもそうです。
『別の委員は、C P 買入れの効果もあって、高格付ではC P の発行金利が短期国債金利を下回っている銘柄があるとして、こうした状態が長期化すれば、市場参加者の運用機会を奪うことになり、市場機能に望ましくない影響を及ぼす可能性があると指摘した。』
いやもう可能性があるもクソも無い状態で、びっくりするほど阿片窟でございます(苦笑)。
『この間、市場から社債買入れの増額や買入れ対象の年限延長の要望が聞かれている点について、何人かの委員は、日本銀行が社債市場の機能を肩代わりすることは望ましくないとの認識を示したうえで、現在は安全弁として十分機能しているとの認識を示した。』
セルサイドのクレジットアナリスト涙目。
・長期国債買入とか銀行券ルールとか
『次に、先般長期国債買入れ増額を決定したことを踏まえ、日本銀行の国債買入れの基本的な考え方について改めて議論が行われた。』
『ある委員は、先般の長期国債買入れ増額は、長期の資金供給手段を一層活用し、円滑な資金供給を行っていくために行ったものであり、F
R B やB O E の長期国債買入れの目的とは異なる点をよく説明する必要があると述べた。』
まーそもそもFRBとBOEも言ってる事違いますしね。でも長期国債買入が3本の柱のうち、「潤沢な資金供給を通じた金融市場の安定」なのですが、そのことと長期の資金供給手段の額を増やす話をどう整合性つけるのかって難しくないですか??
『これに関連し、複数の委員は、長期金利の変動を抑え込むために中央銀行が長期国債買入れを行うと、かえって長期金利のボラティリティが高まる可能性があると指摘した。』
ボラ云々はどうなんでしょ。ただまあFRBの長期国債買入は全然長期金利の押し下げに効果が無い(瞬間的にはありましたが)のは今まさに実証されておりますから、これはこれでそうですねという話。
『更に、銀行券ルールについても議論が行われ、何人かの委員は、一般に銀行券ルールの内容や役割については、十分理解されているとは言えないため、その重要性を丁寧に説明していく必要があるとの認識を示した。』
ということで、この前と同じ「長期負債は銀行券発行残高」という話が出ています。
『このうちのある委員は、わが国では、制度的・季節的な要因から短期資金需要が大きく変動するため、それが金利の振れをもたらさないよう円滑な金融調節を行うには、準備預金など短期的に変動する負債に対しては短期の資金供給手段を割り当て、長期の資産である長期国債保有高が長期の負債である銀行券発行残高を超えないようにすることが必要であると述べた。』
理念的には保有国債をホイホイ売ればよいだけの話なのですが、現実問題として難しいというか無理なので、まあこういう理屈になっちゃうんですよね。まー長期負債としては底溜まりになっている当座預金残高も同じじゃないのかとは思いますけれども、銀行券残高と比べるとあんまり大きな話にはならないのが残念な所でございます(量的緩和すれば話は別ですが、今度は「金利付き量的緩和」の意味ってナンナノヨという話になるんでしょうね。金利無し量的緩和だと出口で死ねるし)。
『こうした議論を経て、委員は、銀行券ルールは、円滑な金融調節を行うために必要との見方を共有した。』
ってそんなに威勢良く言い切ってハードル高くしなくても良いと思うのですけど・・・・・後から「一時的な逸脱無問題」とか言い出したり、解釈をビミョーにいじってくる時の事を考えたらその辺はうにゃうにゃとしておいた方が・・・・まあいいですけど。
・次の対策はもう一丁企業金融緩和ですか???
で、最後に先行きの金融政策に関してですが、この調子で引用していると全文引用になって誠に遺憾ですので、ここに関しては端折りまくりますと、今後の政策に関して、とりあえず2月3月にフォワードルッキングに実行したので目先はまあ良いとしてという話をしたあと、最後にこのような指摘が。
『ただし、何人かの委員は、想定に比べて企業金融を巡る環境が厳しさを増した場合には、必要に応じて、企業金融円滑化のための追加措置が必要になり得ると述べた。』
ほっほー。で、企業金融円滑化名目で何やるんですか???
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2009/05/08
○在庫調整がどうのこうのという日銀レビューシリーズに関して
きのうちょっと申し上げた日銀レビューシリーズですけどね。
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/data/rev09j02.pdf
折角なのでインプリケーションの所だけでもご紹介致したく。
『わが国のGDP ベースの在庫水準は、前述の通り、2008 年10〜12 月にかけて上昇を続け、実質GDPの落ち込みから在庫率が急上昇するなど、明らかに過大となった。2
月の鉱工業指数統計ベースの在庫残高をみると、既に減少に転じており、GDPベースの在庫残高についても、2009
年1〜3 月以降、上昇に歯止めがかかる、ないしは低下に転じていくとみられる。』
『すなわち、2009 年の早い時期には、上記A、Bの局面を経ることになるため、在庫投資の実質GDP
成長率に対する寄与は大幅なマイナスとなる可能性が高い一方、2009 年の後半から2010
年にかけて、在庫の削減ペースが緩やかになる上記C〜Eの局面が訪れる可能性が高く、その場合は実質GDP
成長率はプラス方向に押し上げられることになる。たとえ在庫が「積み増し」に至らなくても、「削減ペースが緩やかになる」だけで実質GDP
成長率が押し上げられる、というのがここでのポイントである。』
ということで、今般の在庫調整がこれから急速に進みそうな動きを示しており、その進み方があまりにも強烈なので、2009年度前半の在庫調整の影響が実質GDP成長率に大きくマイナス寄与した後、その後はプラス寄与するという見通しだというお話です。
この2だの3だの(機種依存文字は原文ママで勘弁)ですけれども、どういう状況かというのは図表での説明と共に、ちょっと前(本文6ページ)に載っているのですが、引用(図表は引用しない)するとこんな感じです。
『局面@:在庫水準が上昇している局面
局面A:在庫水準の上昇に歯止めがかかり、「不変」となる局面
(それまでの「大幅な上昇」と比較し、GDP 成長率への寄与は大幅なマイナスとなる)
局面B:在庫水準が「大幅な低下」に転じる局面
(それまでの「不変」と比較し、GDP 成長率への寄与は大幅なマイナスとなる)
局面C:在庫水準が「大幅な低下」を続ける局面
(それまでの「大幅な低下」と比較し、GDP 成長率への寄与はゼロとなる)
局面D:在庫水準が「小幅の低下」となる局面
(それまでの「大幅な低下」と比較し、GDP 成長率への寄与はプラスとなる)
局面E:在庫水準の低下に歯止めがかかり、「不変」となる局面
(それまでの「小幅の低下」と比較し、GDP 成長率への寄与はプラスとなる)』
図表がないとちと判りにくいのですが、要するに在庫投資の水準変化がGDP変動に対してどのような影響を与えるかという事を考えた場合、在庫圧縮中は当然ながら在庫投資がマイナス推移するのですが、前期比との差分で考えた場合にマイナスのペースが同じように続けば途中から前期比ベースでの寄与はゼロになり、その後在庫圧縮が止まればその期の在庫投資がゼロであっても前期比ベースでの寄与はプラスになるという、成長率のゲタの話みたいなもんですかこりゃという所です。
という所で時間と分量が長くなってしまったのでまあ本文を読んでちょという話ですが、本職さんにとってみたらまあ当たり前の話ですかそうですか(汗)。
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2009/05/01
お題「展望レポートを素直に読むと時間軸なのだが・・・・・」
H1N1のA型インフルエンザとな。名前なげーよ。
で、決定会合結果は予想通りの現状維持。
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/k090430.pdf
と言うわけで展望レポート。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/tenbo/gor0904a.pdf
○現状認識では政策効果に期待するも・・・・・
1年前の展望レポートや半年前の中間レビューと比較すると落涙を禁じ得ないのであまり比較はしませんが、過去の展望レポートはこちらにリンク集がございますです、はい。
http://www.boj.or.jp/theme/seisaku/sakiyuki/tenbo/index.htm
まずは冒頭部分から。
『2008 年秋以降、米欧の金融システムや国際金融資本市場の動揺が深刻化する中、世界経済は同時かつ急速に悪化した。最近に至り、在庫調整の進捗などを背景に、世界的に景気の下げ止まりに向けた動きがみられ始めているほか、各国当局は大規模な政策対応を検討中あるいは実施途上にあり、今後、これらの政策が効果を発揮していくことが期待される。もっとも、こうした動きが、世界経済の順調な回復につながっていくかどうかについては、なお確実とはいえない状況にある。』
ということですが、従来の金融経済月報ではこの政策効果に関連する記述は無かったのですが、より長期的展望という論点から政策効果で下げ止まりという話が出ているのはちょっとだけ明るい話と。1月の展望レポート四半期レビューではこのように書かれていました。
『景気・物価の先行きについては、2010 年度までの中心的な見通しとしては、中長期的な成長期待やインフレ予想が大きく変化しないもとで、2009
年度後半以降、国際金融資本市場が落ち着きを取り戻し、海外経済が減速局面を脱するにつれ、わが国経済も持ち直し、物価の下落幅も縮小していく姿が想定される。こうした下で、見通し期間の後半には、物価安定のもとでの持続的成長経路へ復していく展望が拓けるとみられるものの、このような見通しを巡る不確実性は高い。』(1月決定会合公表文より)
ちゅーことで、3か月前との違いは各国による政策がより豪華に打ち込まれているところとなるでしょう。効果が出るといいですね(棒読み)。
『先行きの世界経済を展望する上では、米欧の金融システムの建て直しがどのように進むのか、また、新興国も含め世界需要がどの程度のテンポで回復していくのか、といったことが重要な着目点となる。』
つまり最後は毎度お馴染みの外需頼みですね、わかります。
『以下、このような点における不確実性も十分念頭に置いた上で、わが国の経済・物価情勢の展望について、中心的な見通しとリスク要因の双方を検討することとする。なお、新型インフルエンザの拡がりと経済活動等への影響については、今後、注意深くみていく必要がある。』
新型インフルエンザキタコレ。
○回復は外需頼みとな
んでまあ次の経済見通しです。
『わが国経済は、大幅に悪化している。2008 年度のわが国経済は、1月の中間評価時点と比べると、大幅に下振れた。企業部門では、海外経済の急速な落ち込みから輸出が著しく減少したほか、企業収益や金融環境の悪化により設備投資も大幅に低下した。家計部門でも、消費者マインドや雇用・所得環境の悪化を背景に、個人消費が弱まってきた。』
この辺はここもとの金融経済月報と基本観は同じです。で、先行き。
『先行き2009 年度から2010 年度を展望すると、わが国経済は、海外経済や国際金融資本市場の動向に大きく依存した展開を辿る可能性が高い。』
・・・・・・・ということは回復は中々しませんということですね、わかります。
まあその残念な見通し部分を一応引用しますとこうなります。
『2009 年度前半は、国内民間需要は引き続き弱まっていく一方で、内外の在庫調整の進捗を背景に、輸出・生産の減少に歯止めがかかっていくと予想される。このため、わが国経済は、悪化のテンポが徐々に和らぎ、次第に下げ止まりに向かうとみられる。』
まーもしかしたらここの所の経済指標は下げ止まりっぽかったりするんジャマイカという感じではありますが。
『2009 年度後半以降は、各国における各種政策が効果を顕わすとともに、2000
年代央にかけて蓄積された金融や実体経済における様々な過剰の調整も徐々に進捗するとみられるため、国際金融資本市場が落ち着きを取り戻し、海外経済も持ち直していくと考えられる。わが国経済も、こうした海外経済や国際金融資本市場の回復に加え、金融システム面での対策や財政・金融政策の効果もあって、緩やかに持ち直し、見通し期間の後半には、潜在成長率を上回る成長に復帰していく姿が想定される。』
ここなんですけどね、過剰の調整ってそう簡単に片付いてくれるのって疑問は結構あったりします。ただまあマネタリー絶賛大供給時代でございますので、どっかでまたバブルみたいなものが発生して過剰の調整をバブルで誤魔化すという大技はアリかなあとはあたしゃ思っておる次第なので、必ずしも全然ダメでしょとは思いませんけどね。
○物価情勢を素直に読むと時間軸なのですが・・・・・・
で、経済の項目別展開は端折りまして、物価情勢の見通し部分。めんどいので結論部分だけ引用。
『消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比は、石油製品価格の下落や食料品価格の落ち着きに加え、経済全体の需給バランスの悪化などを反映して、2009
年度半ばにかけて下落幅が拡大していく可能性が高い。その後、中長期的なインフレ予想が安定的に推移するとの想定のもと、石油製品価格や食料品価格の影響が薄れていくため、下落幅は縮小していくと考えられる。もっとも、需給ギャップのマイナスが残存し、賃金も弱い動きを続けるとみられるため、2010
年度においても下落が続くと見込まれる。』
ということで、こちらもまあ金融経済月報などでもそんな話になってはおりますが、改めてこれを素直に読めば堅く見ても今年度中、普通に考えたら来年度の前半くらいまで時間軸って話になると思うのじゃが、何で1年から2年の所ってあんなにイールド立ってるのじゃろ(ここ数日レート低下してますけどね)。
○上振れ、下振れ要因
『第1に、国際的な金融と実体経済の負の相乗作用の帰趨である。』
ということで説明が続くのですが、一言でまとめると「色々と下ブレ要因がありますよ」ってな感じです(^^)。
『第2に、世界各国で取り組んでいる各種政策の影響である。』
こちらですが、政策効果に関しては意外にも『上振れ・下振れ両方向の不確実性があることに留意する必要がある。』と、両睨みになっておりますにゃ。効果空振りで下振れ懸念ってのは米国の不良債権処理問題という所なんでしょうか。
『第3に、企業の中長期的な成長期待の動向である。』
悪化が続いて成長期待が下振れしたら設備投資や消費支出が下振れするでしょという話。
『第4に、国内の金融環境の動向である。』
金融資本市場の緊張が高まった場合に金融面から実体経済への下押しという話も毎度のように出ておりますが、今回もこの文言があったのは「ほ〜」という感じ。
『一方、やや長い目でみた場合には、成長率が徐々に高まっていく中で、緩和的な金融環境が続く場合、金融・経済活動や物価の振幅が大きくなるリスクには、引き続き留意する必要がある。』
この部分、昨年10月の展望レポートでも同じ表現になっております。もうちょっと芸が細かい話をすると、昨年4月の展望レポートではこうなっていまして、
『第4に、緩和的な金融環境が続くもとで、金融・経済活動の振幅が大きくなる可能性があることである。』(これは昨年4月の展望レポート)
物価がマイナスの中での金融環境って話になったら緩和もへったくれもないという現状を踏まえまして、なのかどーかは知らんけどまー意識してるでしょ当然とは思いますが、成長率が高まってきたら現在の金融環境が緩和的になるのか、それとも現在の金融環境が既に緩和的なのかは、微妙に断言を避けている表現に前回から進化(?)しているという事が判るかと思います(昨年4月の展望レポートでは現状の金融環境を緩和的という前提になった表現になっておりますわな)。
ま、細けぇこたあいいんだよ!(AA略)と言われそうですが(^^)。
#という所まで引用したら時間と量がなくなったので以下後日に続くかもしれない
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2009/04/23
○日銀レビュー登場
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/rev09j01.htm
両大戦間期の日本における恐慌と政策対応
― 金融システム問題と世界恐慌への対応を中心に ―
というのが昨日日銀のサイトにアップされてました。で上記のHTMLは要旨のページでして、本文は上記ページにもリンクありますけれども、
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/data/rev09j01.pdf
でございます。本文はPDFで9ページでそんなにヘビーじゃありません(日銀レビュー・シリーズは超専門家ではなくてより一般向けです)ので、材料待ちで相場の様子見をしているのであれば(^^)お読みになれば。
#期初だから報告やら事務やらで忙しいですかそうですか
でまあ要旨のほうでこのように書いてありますが・・・・・
『1931年末に5度目の大蔵大臣に就任した高橋是清が「昭和恐慌」への対応として進めた経済政策は「高橋財政」と呼ばれているが、財政政策だけでなく、為替レート政策、金融政策を含むマクロ経済政策の総体として理解する必要がある。』
『「高橋財政」期の日本経済は世界各国に先駆けて回復したが、国際金本位制の崩壊によりそれまで財政を規律付けていたメカニズムが失われるなかで、日本銀行による長期国債の引き受けを伴う財政拡大が行われたことが、財政規律を失わせる結果につながったとの見方ができる。』
で、本文の最後の所(7ページ目)に当時のマクロ経済政策運営の骨子を整理しておりますので、その辺を引用致しますです。
『上記の分析結果を踏まえて「高橋財政」期の日本のマクロ経済政策の運営レジームを整理してみると、当時の政策当局や市場参加者は、日本が固定為替レート制下の開放小国であることを前提として行動していたと考えられる。すなわち、「高橋財政」の初期において、日本は自国通貨を維持可能な水準までいったん大幅に切り下げたうえで、その後は英ポンドへペッグさせた。』
本文中に説明がありますが、昭和6年12月13日に犬養内閣が成立し、当日に金輸出再禁止を閣議決定し(ちなみに金兌換停止の勅令は17日)一旦円安への誘導(というか円安の放置ですよね)を行い、その後昭和7年4月にこれ以上の円安は望ましくないとして円相場を安定させる施策をとったということです。
『「マクロ経済政策のトリレンマ」の観点からみると、固定為替レート制のもとでは、自由な資本移動と自律的な金融政策は両立しない。「高橋財政」期の日本は、主要通貨のうちで緩和的な金融政策を運営する国(英国)の通貨にペッグし、金融政策はその国に追随するという選択を行うと同時に、短期的に国内の財政支出を拡大するというマクロ経済政策を採用したと考えられる。そして、市場参加者も、そのことを意識しながら将来の物価変動を予想していた可能性がある。』
『当時の日本は、貿易面でも、金融面でも、海外市場に依存する度合いが高く、対外経済関係を安定させつつ国内経済を安定化させるとの観点からみると、こうしたマクロ経済政策の運営レジームは相応の合理性を持っていたと考えられる。なお、当時において日本と同様の政策対応を採った国にスウェーデンやデンマーク等が挙げられる。これら諸国は日本と同様、英国に続いて金本位制からの離脱を行うとともに、対英ポンドで自国通貨の切り下げを行い、ヨーロッパにおいて比較的早期の経済回復を果たした。』
で、これまた(ここの引用部分は最後のまとめの所だから当然なんですが)本文の中で自国通貨の切り下げを行った事がインフレ期待へのレジーム転換のポイントになったのではないかという話がございますので読んで味噌。で、財政政策に関して。
『財政規律の観点からは、先行研究では、「高橋財政」下の政策とりわけ日本銀行による長期国債引き受けの開始が財政規律を失わせるきっかけとなったとの論調が多くみられる。この点に関連して、最近の研究では、「高橋財政」の開始を前にした1931
年9 月の時点で、英国の金本位制離脱を契機とする国際金本位制の崩壊によって、金本位制下で国際金融面から日本の財政を規律付けていたメカニズムが有効でなくなっていた可能性が指摘されている。』
ほほう。
『すなわち、国際金本位制下では、日本を含む周辺諸国にとっては、金本下では、日本を含む周辺諸国にとっては、金本位制を維持すべく健全な金融財政政策を行うことが、欧米主要国の資本へのアクセスを容易にするものであり、そのことが国内の政策決定過程において軍事費等の過大な支出を抑制する機能を果していた。国際金本位制への参加を前提とすれば、金融政策だけでなく財政政策にも規律が必要となり、このことがいわば国際金融面から財政を規律付けるメカニズムとして働いていた。』
『しかしながら、国際金本位制の崩壊によりこうしたメカニズムが失われるなかで、日本銀行による長期国債の引き受けを伴う財政拡大が行われたことが、財政規律を失わせる結果につながったとの見方ができる。』
で、この次の「6.おわりに」という本当のまとめの部分で財政規律に関する説明がもうちょっと書いてありますのでまたまた引用(引用ばっかりでどうもすいません)。
『1930 年代初頭の「昭和恐慌」とその後の「高橋橋財政」期の予算編成においては、制度として財政規律を確保するメカニズムが存在せず、財政規律は高橋是清という個人の能力と意思に委ねられていた面が大きかった。「高橋財政」後期になって、政治的な歳出増大圧力が金融市場において許容される範囲を逸脱するようになると、予算編成を巡る高橋と軍部との対立が激化した結果、高橋の暗殺とその後の財政規律の完全な喪失を招き、戦時統制経済と戦後の急激なインフレーションにつながった。』
『1930 年代の日本においては、金本位制に代わる財政規律メカニズムを見出すのではなく、高橋是清という個人の能力と意思に依存しつつ、日本銀行による長期国債引き受けを導入したことが、財政政策のガバナンスを弱めたとみることができよう。』
シロートのあたくしがコメントするのも何ですが、言外に色々と主張したい事があるのではないかというのは把握致しました・・・ってのは深読みのしすぎですがそうですか。
なお、以前ご紹介したと思いますが、昭和恐慌に関する読み物であたくしめの知能でも読めました本としてはこの2冊がございますです。前者は経済政策面、後者は金融システム問題や不良債権問題を中心に説明しております。
・中村隆英「昭和恐慌と経済政策」講談社学術文庫
・高橋亀吉・森垣淑「昭和金融恐慌史」講談社学術文庫
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2009/04/20
○さくらレポート
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/chiiki_rep/chiiki0904.htm(概要)
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/chiiki_rep/data/chiiki0904.pdf(本文)
本文はドカンと68ページありますのでご注意を。以下引用は主に概要の方から参ります。ちなみに前回の概要
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/chiiki_rep/chiiki0901.htm(1月概要)
ということで今回なのですが、前回からなおも下方修正。まだ下方修正する余地があったのかよ!という感じですが、まあよくよく考えれば前回が1月調査だったので、下方修正なのでしょうな。どうも株価とか見てばっかりの人的には判断下げられると「ふーん」って感じですけど(気が早すぎ)。
『各地域の取りまとめ店の報告によると、足もとの景気は、若干の地域差はあるものの、大幅に悪化している。』
大幅に悪化ですかそうですか。
『すなわち、海外経済の悪化などを背景に、輸出が大幅に減少している。また、企業収益が大幅に落ち込み、企業の業況感も著しく悪化するなか、設備投資も大幅に減少している。個人消費については、雇用・所得環境が厳しさを増すなかで、弱まっている。住宅投資も減少している。こうした環境のもとで、生産は、大幅に減少している。』
『こうしたなか、総括判断は、中国、四国で「悪化」、東北、北陸、関東甲信越、近畿、九州・沖縄で「大幅に悪化」としている。』
『総括判断については、東海、中国で1月の支店長会議時の判断を据え置いたが、その他の地域では、設備投資が大幅に減少していること、雇用・所得環境が厳しさを増すなか、個人消費も弱まっていること等を反映して、下方修正した。』
ということで華麗に7地域下方修正。直近1年間の推移を見るとこの有様。
2009年4月(今回):7地域で下方修正
2009年1月:9地域で下方修正
2008年10月:9地域で下方修正
2008年7月:8地域で下方修正
2008年4月:8地域で下方修正
10月時点では悪化という表現ではなかったのですが、1月で悪化が続出(7地域)。今回は前回悪化じゃなかった四国も悪化になって、急速に下降が継続しているのが東海地方と見事なボロボロ状態ですし、大幅に悪化というのが増えておりますわな。
ということで、1月のときは色々と引用しましたが、まあ今回はそのうち一部に致しまして、総括判断の推移を前回と同様並べてみるのだ。で、これは昨年1月判断から並べてみると実に悲しいので1月以降順にどうなったかを→で。
北海道
やや弱めの動きとなっている
→やや弱めの動きが続いている
→弱めの動きとなっている
→やや厳しい状況にある
→厳しさが増している
→厳しさを増しており、低迷している
東北
全体としてみれば、緩やかな回復を続けている
→足踏み感がみられている
→足踏み感がみられている
→弱めの動きが広がっている
→悪化している
→大幅に悪化しており、厳しさを増している
北陸
一部で弱めの動きがみられるものの、緩やかに回復している
→減速している
→減速感が幾分増している
→停滞している
→悪化している
→大幅に悪化している
関東甲信越
緩やかな拡大基調にある
→やや減速している
→減速している
→停滞している
→悪化している
→大幅に悪化している
東海
緩やかに拡大している
→緩やかな拡大基調にあるが、その速度は足もと鈍化している
→引き続き高水準にあるが、足もとは減速がはっきりしてきている
→なお高水準を保ちつつも、下降局面にある
→急速に下降している
→急速に下降している
近畿
緩やかに拡大している
→一部に減速の動きがみられるが、基調としては緩やかに拡大している
→減速している
→停滞している
→悪化している
→大幅に悪化しており、厳しい状況にある
中国
全体として回復を続けている
→一部に弱さがうかがわれるものの、全体として回復を続けている
→全体としては緩やかな回復を続けているが、そのテンポは、このところ鈍化している
→一部に弱い動きがみられるが、全体としては概ね横ばいで推移している
→悪化している
→悪化している
四国
緩やかながら持ち直しの動きが続いている
→持ち直しの動きがやや弱まっている
→横ばい圏内の動きとなっている
→やや弱めの動きとなっている
→弱い動きが広がっている
→悪化している
九州・沖縄
緩やかな回復を続けている
→回復に足踏みがみられる
→足踏み感が強まっている
→停滞している
→悪化している
→大幅に悪化している
まー昨年1月ってそんな感じでしたっけという所ですが、この後(実際にさくらレポートは昨年1月15日に出た)にベアスターンズショックがあって9月にはリーマンショックがあってという流れでありますわな。何と言う残念な流れ。
・・・・と残念がっても仕方無いですが項目別展開に関しては前回結構下げた上にまた今回も下げたでござるの巻となっておりますがそこは割愛して、それに繋がる話を『地域の視点』の所でしているのでそっちの引用を。
毎度見ております『地域の視点』なんですけど、今回のお題は2つ。
『1.地場企業を取り巻く経営環境の悪化とその対応──設備投資、雇用を中心に──』
『2.各地域からみたインバウンド観光の現状と課題』
でまあ2番目の方はスルーしまして(久々にちょっとだけ前向きチックなお題なのは良い話なのですが、トーンが全体的に暗いから明るい話題を入れようとしたのではないかという気もする・・・・)、1番目の方を見てて気分もトホホに。まず最初から。
『地場企業を取り巻く経営環境は、きわめて厳しい状態が続いている。足もとの収益環境をみると、製造業では、内外需要の更なる落ち込みから、売上・受注が一段と減少している。また、原材料価格は下落しているものの、過去に仕入れた高値の原材料在庫の処分の遅れから、採算面の改善が進んでいない、との声も多く聞かれる。また、非製造業では、企業の生産活動の落ち込みや消費者の生活防衛意識の強まりを反映して、売上の減少傾向が続いている。企業間の競争激化が採算悪化に拍車をかけているとの指摘も少なからず聞かれる。先行きについては、製造業の一部業種(輸送用機械等)で、大手メーカーの減産緩和等から、4月〜6月以降、売上・受注が若干持ち直すと期待する声が聞かれるものの、その他の多く業種では、当面、需要回復は「期待薄」との厳しい見方をする先が多い。』
ということで、現状と先行きが残念無念というのはさいですなあという話なのですけど。
『設備投資面についてみると、製造業を中心に、2008年度までに高水準の投資を行っていることもあり、設備過剰感が著しく高まっている先が多い。すなわち、地場企業では、需要環境が急激に悪化した2008年度下期以降、案件の絞り込みあるいは実施見送り等、設備投資の抑制に急速に舵を切ったものの、設備過剰感は依然として強い。このため、2009年度についても、設備投資を一段と絞り込むとする先が多くみられる。』
『雇用・賃金面についてみると、非製造業の一部業種(小売、介護、情報サービス等)で人員不足感が依然としてみられる一方、その他の大方の業種では、製造業を中心に、人員過剰感が著しく高まっている。地場企業の多くの先では、2008年度下期以降、非正規雇用を中心とする人員削減、役員報酬カットや給与・賞与引き下げ等を実施しているが、人員過剰感は引き続き強く、2009年度もこうした対応を継続する見通し。』
ということで、短観でも示されていましたが、こちらでも「設備」「雇用」に関して「過剰」という話がどどーんと出てきている訳でして、バブル処理時代の「3つの過剰」という実にいやーな言葉を思い出すのでありました。残りの一つの企業金融面では現状では債務過剰という訳ではなく、手元資金の取り崩しなどでの対応のようですけれども・・・・
『企業金融面の動きをみると、資金需要は、売上・受注の減少を背景に、引き続き高水準で推移しているとみられる一方、資金調達面では、企業間信用のタイト感が増していること、民間金融機関の貸出態度が厳しいとする先が増加していること、等から緊急保証制度や公的金融機関貸付を活用する動きが続いている。』
ということで、資金需要の拡大によって債務負担も増してきそうな勢いですね・・・・・
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2009/04/14
○決定会合議事要旨続き
最近は状況変化が素早いので1か月前の議事要旨を見ても「えーっと、この時って不良債権買い取りプログラムは出てましたっけ」とか悩んでしまいますが(汗)、タイミング的には「FOMCの直前」であり、「AIGの幹部報酬問題で大騒ぎになっていた時点」というまあ先月の雰囲気の悪い中でしたねという所を考慮に入れたく。
『金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』
・海外経済
『海外の金融経済情勢について、委員は、世界的に金融と実体経済の負の相乗作用が強まっており、海外経済は全体として悪化しているとの認識を共有した。多くの委員は、米欧のみならず、新興国、資源国でも景気が大幅に落ち込んでいるとの見方を示した。』
で、先行きですけれども。
『多くの委員は、世界的にみて企業や家計の支出スタンスは依然として慎重であると述べた。このため、多くの委員は、雇用・所得環境や金融環境の厳しさを考えると、最終需要が回復していく展望は未だ拓けておらず、下振れリスクに注意すべき状況が続いているとの判断を示した。』
ということで、世界的な落ち込みと。各地域別の展開ですけれども、全部引用してると長くなるので米国だけ引用するとこんな感じ。
『米国経済について、委員は、金融機関や投資家のリスクテイク余力が大きく低下するもとで、金融と実体経済の負の相乗作用が強まっており、引き続き景気が大幅に悪化しているとの認識で一致した。』
ということなのですが、住宅市場に関して。
『住宅市場について、多くの委員は、住宅価格の下落が継続しており、住宅市場の調整は当面続くとの見方を示した。また、多くの委員は、雇用環境の悪化が顕著であり、これが個人消費に与える影響が懸念されると述べた。これに対し、ある委員は、住宅着工件数が久々にプラスとなるなど、プラス面の材料が少し出てきていると述べた。』
昨日引用しませんでしたが、住宅着工件数に関してはFOMCでの景気議論でも話題になっていまして、そちらでは住宅着工件数のプラス転化は新しいトレンドの始まりではないが、今後の更なる住宅市場の悪化は限定的と見られるのではないかという指摘がありました(ただし現状の中古住宅などの販売に関しては厳しい)ので、会合の時期が同じなので当然ちゃあ当然ですけど、シンクロしててほっほーという感じです。
・展望レポート下方修正
まあ当然ですけどね。
『多くの委員は、足もとまでの経済状況は、一層厳しさを増してきており、更に、雇用・所得環境の悪化の影響は、これから本格化する可能性もあるので、当面は、下振れリスクに注意する必要があると述べた。何人かの委員は、1
月の中間評価以降、足もとまでの経済指標の動きを考慮すると、景気は下振れてきており、4
月の展望レポートでは、成長率見通しについて下方修正する可能性が高いと述べた。』
まーそりゃそうですなという所ですが、個別の需要項目に関してはこんな感じ。
・輸出
『輸出は大幅に減少しており、当面、減少を続ける可能性が高いとの見方で一致した。何人かの委員は、中国では金融・財政政策の効果により、内需に明るい動きがみられるが、これが、直ちに日本の輸出に好影響を与えるかどうかは不透明であると述べた。別の委員は、自動車など製造業分野で世界的に在庫調整が進めば、夏頃にかけて、日本の輸出も下げ止まる可能性があると指摘した。もっとも、この委員も含め何人かの委員は、日本の輸出回復の前提となる世界的な最終需要の動向には不確実性が大きいとの見方で一致した。』
ということで、まあ一番でかい輸出がこの有様ですから後は推して知るべしなのですけれども(−−)。
・設備投資、個人消費
『設備投資について、何人かの委員は、海外経済の悪化、企業収益の減少、企業の資金調達環境の悪化などから、当面、大幅な減少を続ける可能性が高いと述べた。複数の委員は、景気後退が長引くことにより中長期的な成長期待が低下することで、設備投資に一層の下振れ圧力がかかる可能性があるとの懸念を表明した。』
ということで、景気悪化の長期化による負のフィードバックを懸念していますね。
『個人消費について、多くの委員は、引き続き弱まっていくと述べた。ある委員は、雇用面での調整が、所定外労働時間や非正規雇用の削減から、足もとでは、正規雇用の調整にまで進む動きもみられ始めていると指摘した。』
その上、雇用情勢の悪化がなお拡大する懸念という話ですからもう真っ暗。
・生産
『生産について、委員は、内外需要の動向や在庫調整圧力の高まりを背景に、減少幅が更に拡大しているとの見方で一致した。先行きの生産について、多くの委員は、3
月の鉱工業生産予測指数がプラスとなったことや、夏頃にかけて、減産幅の縮小や増産といった声も聞かれるなど、下げ止まりの兆しを示す情報が徐々に現れていると述べた。』
と、ここでやっと明るい話が(^^)。
『もっとも、何人かの委員は、生産の下げ止まりというシナリオは、もともと中心的な見通しに織り込んでいたものであり、世界的な需要動向を踏まえると、引き続き下振れリスクに注意すべきであると述べた。』
でもやっぱり残念な見通しと。
・・・・でね、この前出た4月の金融経済月報では基本線をこの3月ベースから変化していませんので、まあ展望レポートの見通しを下げるという話になるんでしょう。
・物価に関して
先行きの所なんですけどね。
『何人かの委員は、需給ギャップが更に拡大していく中で、物価低下圧力が強まっていくため、企業や家計の中長期的なインフレ予想が下振れるリスクに注意する必要があると指摘した。複数の委員は、価格上昇品目数と下落品目数の差は、引き続き縮小してきていると指摘した。何人かの委員は、厳しい経済情勢が続く中、消費者の生活防衛意識の高まりや流通業における競争の激化が物価を更に押し下げる可能性があり、実際にそうした動きがみられ始めていると指摘した。』
この見通し部分を2月会合の同部分と比較しますと(引用するとうっとおしいので引用割愛します。確認する場合は2月会合議事要旨見てちょ)、「需給ギャップの拡大」というのと「実際に出ている動き」という部分でありまして、物価の先行き見通しに関してもより厳しくなっているという感じです。
『一方、ある委員は、長い目でみれば、世界経済が回復する過程において、適切な政策対応が採られないと、国際商品市況が再び上昇し、世界的にインフレ率が予想以上に高まるリスクもあると述べた。』
こりゃまあ先の話ですわなと思いますが、2月会合では「金融緩和策による国際商品市況上昇のリスク」を指摘する人と、「足元の穀物価格上昇など、インフレリスクは消えていない」という人がいました。
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2009/04/13
○3月決定会合議事要旨、長期国債買入に関連して
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g090318.pdf
本文8ページの『当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』から。
『委員は、年度明け後の金融市場の動向を踏まえた政策対応について議論を行った。多くの委員は、年度末越え資金の調達は概ね目処がつきつつあるが、年度明け以降も、厳しい金融経済情勢を背景に、市場の緊張が続く可能性が高いとの見方で一致した。このため、委員は、金融市場の安定を確保していくため、引き続き、積極的な資金供給を行っていくことが重要であるとの認識を共有した。』
ということで長期国債買入の増額という話になります。
『こうした点を踏まえ、委員は、長期国債の買入れについて議論を行った。多くの委員は、長期の資金供給手段を一層活用し、円滑な金融調節を行っていくために、長期国債の買入れを増額することが適当ではないかとの意見を述べた。』
ほほう。
『何人かの委員は、増額する場合には、年度明け以降の市場安定に向けた日本銀行の強い意志を示すためにも、銀行券ルールのもとで、出来る限り大幅な増額を行うことが適当であると述べた。』
えーっと、長期国債買入は調節上の問題じゃなくて「日本銀行の強い意思」ですかそうですか。つまり「意図のある金融調節」ですね(違)。
・・・まーぶっちゃけちゃえば長期国債買入はやたらめったら意味付けがされていますので、この会合時点で2000億円増額とか言われている中で4000億円増額したのはメッセージとしては効いたのですが、これもまた諸刃の剣で、あまり意味ある意味あるとしちゃいますと、何かの事情で買入減らさないといけないという時に負のフィードバックがやってきますので、あまり「日本銀行の強い意思」とか持ち出さない方が無難な気がするんですけど。
#逆方向の強い意志を示す総裁も如何なものかと思いますが、苦笑
『ある委員は、そうしたルールのもとでのラフな試算では、年間5 兆円程度の増額が可能ではないか、と述べた。その上で、委員は、これらの点について、執行部の見解を求めた。』
ほうほうそれで?
『執行部からは以下の説明が行われた。1 月に導入した残存期間別買入れによって、長期国債の満期構成を、厳密ではないにせよ、ある程度コントロールすることができるようになった。このため、銀行券ルールのもとで、従来の増額幅以上に買入れ額を増やすことが可能となっている。』
えーっと、従来は買入の半分くらい(下手したらそれ以上)が残存1年切るようなセクターに集中していたのが、輪番ゾーニングでその辺が緩和されたというのが現実なので、「ゾーニングで買入を増やせる」という話にいきなりズッコケてしまいました。
ま、この理屈って「ゾーニングすると何が入ってくるか判らない(確かに場合によっては超長期ゾーンばっかり入るという回だってありますからね)ので、買入シミュレーションをする際には超長期ばかり入って来るケースを考慮に入れないといけませんから」ってお話なのでしょうけれども、この部分を読んでいて一瞬「ナンジャソリャ」と思った市場関係者は多いに違いない。
『具体的には、ある時期は長期国債を買入れ、次の時期には売却するといった振れの大きい対応を回避しながら、先行きの銀行券発行高と長期国債保有残高のギャップをフルに利用する金額として、現在の年16.8
兆円ペースから、年21.6 兆円に年4.8 兆円増額することが可能である。もっとも、このペースで国債買入れを行っていくと、先行きの銀行券の伸び次第ではあるが、数年間のうちに銀行券発行高に近接していく可能性は高く、追加的な買入れ余地は自ずとかなり限定されてくるとみられる。』
これは白川総裁も会見で説明してまして、やたらと「買入を増やせません」という話になっていましたが、所詮「数年間のうち」の話でしょと思いますし、1年から10年って残存の所の買入だってここもとの結果みてると残存2年以内のものがそこそこ入っているようですから、シミュレーションよりも保有長期国債の残存が短くなるかもしれませんですよね。何か白川さんの話を聞いていると直ぐにでも銀行券残高に到達しそうな勢いで言いますけど、まー「数年間のうち」という話なら極端に言えばFRB流に時限切って買入増額したって良いじゃないのと思いますけどねえ。
で、結論。
『こうした執行部の見解に対し、大方の委員は、年21.6 兆円のペースに増額するという方針に違和感は無いと述べた。その上で、多くの委員は、長期国債の買入れに関する対外的な説明は、従来以上に丁寧に行っていく必要があるとの認識を示した。』
『委員は、銀行券ルールは、第1 に、円滑な金融市場調節を確保するという目的を示す、第2
に、長期国債の買入れが、国債価格の買い支えや財政ファイナンスを目的とするものではないということを明確にする、という点で重要であるとの認識で一致した。』
あれ日銀の強い意志は??ということで、白川総裁が丁寧に説明したら残念な説明になってしまったという事でしょう。
『複数の委員は、円滑な金融市場調節を確保するという点について、日本銀行のバランスシート上、長期的な負債である銀行券に対しては、長期資産である長期国債を割り当て、準備預金など短期的に変動する負債に対しては短期の資金供給手段を割り当てる、という原則であると敷衍した。』
しらっと流していますがここもトンマな話でして、準備預金って準備預金制度が存在して法定準備率を大きく変化させないのであれば、積まないといけないものであるという点で一種の「コア預金」みたいなもんで、長期負債みたいな見方をするのが妥当だと思いますけどね。5兆円位の話ですけどね。
『その上で、こうした点は、金融政策の機動性・弾力性を維持する上で極めて重要であり、あらゆる機会を捉えて、丁寧に説明していくことが大切であると述べた。』
で、丁寧に説明したら白川総裁(以下同文^^)。
ということで、他の部分はまた別途。
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2009/04/10
○金融経済月報(4月)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0904.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0903.pdf(前回)
まあ要するに悪い状況が継続なんですけどね。
『わが国の景気は大幅に悪化している。』というのは前回と同じでありますけど、項目別展開を前月と比較してみます。
・企業部門
『輸出は、海外経済の悪化などを背景に、大幅に減少している。企業収益の減少幅は拡大しており、企業の業況感も著しく悪化している。そうしたもとで、設備投資も大幅に減少している。』(4月)
『輸出は大幅に減少している。企業収益の悪化幅は拡大しており、設備投資も大幅に減少している。』(3月)
企業収益の悪化幅というのが減少幅になってたりして、下げてるのか上げてるのか良く判らんですな。業況感は短観を受けた結果ですね。
・個人部門
『また、雇用・所得環境が厳しさを増す中で、個人消費は弱まっており、住宅投資も減少している。』(4月)
『個人消費は、雇用・所得環境が厳しさを増す中で、弱まっている。また、住宅投資を新設住宅着工戸数でみると、再び減少している。』(3月)
ということでこちらは変わらず
・公共投資、生産
『この間、公共投資は低調に推移している。以上のような内外需要の動向や在庫調整圧力を背景に、生産は大幅に減少している。』(4月)
『この間、公共投資は低調に推移している。以上のような内外需要の動向や在庫調整圧力の高まりを背景に、生産の減少幅はさらに拡大している。』(3月)
生産の言い回しが変わってますが、これは下げてるでしょう。で、先行きに関して続いて引用。『景気は、当面、悪化を続ける可能性が高い。』というのは変わらないのですけれども・・・・・
・先行き見通し、項目別展開
『すなわち、輸出や生産は減少を続けるとみられるが、内外の在庫調整圧力が減衰するにつれて、減少テンポは緩やかになっていくと予想される。一方、国内民間需要は、厳しい収益・資金調達環境が続き、雇用・所得環境も厳しさを増すもとで、さらに弱まっていく可能性が高い。この間、公共投資は、低調に推移すると考えられる。』(4月)
『すなわち、輸出は、海外経済の悪化や為替円高を背景に、減少を続けるとみられる。国内民間需要も、企業の収益や資金調達環境が悪化し、雇用・所得環境も厳しさを増すもとで、さらに弱まっていく可能性が高い。この間、公共投資は低調に推移すると考えられる。以上の需要動向を背景に、生産は減少を続けるとみられるが、在庫調整圧力が減衰するにつれて、生産の減少テンポも次第に緩やかになっていくと予想される。』(3月)
先行き見通しですが、前回「減少テンポも次第に緩やかになっていくと予想される」とされたものは生産でしたが、今回は輸出もそれに加わっています。理由は引用文にあるように「在庫調整圧力の減衰」になってます。国内民間需要の先行きに関しては引き続き「今後も弱まる」と厳しい見方を踏襲しています。
ということで、微妙に底打ち感みたいなものも仄めかしている感じっすか。
物価の部分は割愛しまして(基本的に前月と同じ)、金融環境の所なんですけどね。
『コールレートはきわめて低い水準にあるが、大幅に悪化している実体経済活動との比較でみると、緩和度合いは低下している。』(4月)
となっている(前月と同じ)のですが、コアCPIがゼロだマイナスだという話になっているときに0.1%のコールレートって「緩和度合い」という状況なのですかねえと思うのですけど、緩和状況というのは引っ込めたく無いんですかそうですか(−−)。
とまあそういう感じで、見方自体は相変わらず厳しいのですが、声明文よりは月報の概要部分の方がちょっと底打ち感を見せるような書きっぷりになっているのが今回は気になりました。
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2009/04/08
お題「決定会合結果、担保範囲の拡大」
まあ予想通りという感じでしたが・・・・・
○景気認識は基本的には変化ないですけれども・・・・
今回の決定会合声明文
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/k090407.pdf
今回は適格担保の拡大を行いまして、地方公共団体向けと政府に対する証書貸付債権を適格担保に新たに加えたという結果になったのですけど、まあそっちに関しては後ほど書くとして、まずは経済情勢に関する部分を前回と比較してみます。3.の所ね。
『わが国の経済情勢をみると、海外経済の悪化により輸出が大幅に減少していることに加え、企業収益や家計の雇用・所得環境が悪化する中で、内需も弱まっている。』(今回、前回と同じ)
『金融環境をみると、CP・社債市場の発行環境は改善しているものの、全体としては厳しい状態が続いている。これらを背景に、わが国の景気は大幅に悪化している。』(今回、前回と同じ)
という調子で、前回と同じ文章が続くの巻でありまして、まあ厳しい見方は変わりませんということで。
『今後は、内外の在庫調整の進捗を背景に、輸出・生産の減少テンポは緩やかになっていくと予想されるが、国内民間需要は更に弱まっていくとみられるため、わが国の景気は、当面、悪化を続ける可能性が高い。』(今回)
『これらを背景に、わが国の景気は大幅に悪化しており、当面、悪化を続ける可能性が高い。』(前回)
当面の話に関して、結論の「悪化を続ける可能性が高い」というのは変化ないのですけれども、ここもとの経済統計などを受けたのか要因分解をして見通しを述べています。まあしかし国内民間需要が更に弱まっていくというのは見方としては厳しいのではないかと思料。
物価の見方、先行き景気の見方に関しては前回と同じですので一応引用だけ。
『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、石油製品価格の下落や食料品価格の落ち着きを反映して足もと低下しており、今後は、需給バランスの悪化も加わって、マイナスになっていくとみられる。』(今回)
『景気・物価の先行きについては、2010 年度までの中心的な見通しとしては、中長期的な成長期待やインフレ予想が大きく変化しないもとで、2009
年度後半以降、国際金融資本市場が落ち着きを取り戻し、海外経済が減速局面を脱するにつれ、わが国経済も持ち直し、物価の下落幅も縮小していく姿が想定される。』(今回)
『こうした下で、見通し期間の後半には、物価安定のもとでの持続的成長経路へ復していく展望が拓けるとみられるものの、このような見通しを巡る不確実性は高い。』(今回)
で、リスク要因も同じ話をしておりますが、引用するのも芸が無いので引用割愛。
○今回の措置は「金融調節の一層の円滑化」だそうで
んでまあ今回は適格担保の拡大を行ったのですけれども、声明文では導入の意図をこのように説明しています。
『日本銀行では、金融調節の一層の円滑化を図るため、以下のとおり、適格担保の範囲を拡大することを決定した。』(今回)
では輪番増額の時にはどういう話をしていたかと見ますと。
『日本銀行は、金融市場の安定を確保するため、引き続き、積極的な資金供給を行っていくことが重要であると判断した。こうした観点から、長期の資金供給手段を一層活用し、円滑な金融調節を行っていくため、長期国債の買入れを以下の通り増額することとした。』(前回)
ということで、輪番増額は「長期の資金供給手段の活用」で「円滑な金融調節を行う」という理屈で実施しましたが、今回の担保拡大は「金融調節の一層の円滑化を図る」ということで根っ子の部分は同じ理屈になっています。ほっほーという感じですけどね。
従いまして、今回の声明文でもこのようになっています。
『日本銀行は、金融政策面からわが国経済を支えるため、昨年秋以降これまでの間、政策金利の引き下げ、金融市場の安定確保、企業金融円滑化の支援という3つの柱を中心に、様々な措置を実施してきた。本日の適格担保範囲の拡大措置も、金融市場の安定確保の観点から、決定したものである。』(今回)
ということで、まあ政府や地方公共団体向けの証書貸付債権の適格担保化を企業金融に絡めて話をするのは無茶なので「金融市場の安定確保」という話になったのでしょう。
○で、内容ですけれども
具体的な内容はこちら。
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/mok0904a.pdf
従来は政府向け貸出で適格担保になっていたのは、上記URLの2ページ目にある変更内容ご案内の部分で斜線が引いてある「交付税及び譲与税配付金特別会計に対する証書貸付債権」「預金保険機構に対する政府保証付証書貸付債権」「銀行等保有株式取得機構に対する政府保証付証書貸付債権」だったのですけれども、今回はそれ以外(国有林野会計などだと思いますが)にも拡大という話。
それから、地方公共団体向けに関してですが、公募地方債は従来より適格担保になっていますが、非公募地方債に関しては日銀から適格判定を受けたものに関しては従来より担保として使えていると認識しておりまして、そういう意味では「縁故債も対象になりました」というのは微妙にミスリードな気がする報道だと思うのですが。
#証書貸付債権まで縁故債というカテゴリーで扱う場合もあるので全然違う訳でもないけど
今回は地方公共団体向け(地方公共団体の公社とかは含まれない)の「証書貸付」を新たに適格対象に加えますという話になりますので、普通に解釈すると「債券」形式じゃない「証書貸付」という譲渡性が一段落ちるモノを日銀が担保に取りますよという話で宜しいかと思います。
時期的に言えばこれから出納整理期間になって地方債やらローンやらが出る時なので、まあ一応そういう意味では美しいタイミングなのですけれども、どっちかといえばこういう担保拡大は担保繰りが逼迫気味だった昨年の10月以降の早い時期に実施して欲しかったなあという感じです。現状ではそんなに担保繰りが大変になっているような話は聞こえて来ませんので・・・・・
で、これって日銀が適格判定するのですが、日銀がダメというラインってどの辺になるのでしょうかねえ。
『(1)入札等の貸付条件の決定方法、債務者における公募地方債の発行実績等を勘案して、本行が適格と認めるものであること。』
一応補足しておきますと、非公募地方債の場合、基本的には公募地方債に準ずる流動性がある(要するに債券市場で普通に売買されるような非公募地方債)ものだと普通は適格になる筈ですし、そもそも手間隙の点からして、そういうモノしか担保に入れにいかないと思われますので、まー実務上は従来の適格担保になっている地方債を発行している地方公共団体向けの証書貸付を担保に出すって話になるんでしょうけどね。
もうちょっと早く実施する、というか措置として確かに世間アピールイマイチなのですけれども、10月から12月に掛けての金融環境の元では特にこの措置て地味ながら効くし、それこそ社債を買うとかいうような話と比較して別に筋の悪い話でもない(と思う)ので、順番逆だったですねとは思いますが、やらないよりはやる方が良い話なので、良い話だったのではないでしょうか。
#会見に関しては明日
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2009/04/03
○さて恒例の日銀保有長期国債残高と
http://www.boj.or.jp/type/stat/boj_stat/mei/mei0903.htm
手元のエクセルさんでシコシコ計算した結果ですので内容無保証でお願いしますが・・・・
償還分を置いといて前月比での残高増分を見ますと1.4兆円ちょっとになるみたいですが、うち残存1年以内(3月末時点での1年以内だから輪番オペオファーベースの1年以内と銘柄が微妙に違う)の残高増加額が4200億円ちょっと。で、2年以内が3100億円ちょっととなりまして、残存2年以内の残高増分が増加額の約半分となりました。
やはりゾーニングの効果が出て、下手したら従来の短国買入よりも短い打ち込みばかりじゃねえか!状態がだいぶ緩和されたのは結構なお話でございます。というか輪番が期近債のゴミ捨て場状態になっていたここ暫くの状況が如何な物かという所でしたのですけどね。
なお、償還が額面ベースで2兆2000億円ほどございますが、これは1年物政府短期証券に償還乗り換えされている筈ですので、その分の資金吸収は発生しておりませんので念の為。
#と、これだけのことを書くのにエクセルでペタペタ計算するのに時間を食うのですよね。一応作ったシートを改めて見直してから書いたのでそんなに外してないとは思いますが。
○企業金融特別オペが7兆円ですかそうですか
http://www.boj.or.jp/type/stat/boj_stat/juqf/juqf0903.htm
日銀当座預金増減要因と金融調節 (2009年3月実績)
下の方に残高ございますが、そこにこのような華麗な数値が。
『企業金融支援特別 74,777』
・・・・うーむ、当初の見通しから超越的に残高が拡大しましたが、証書貸付もさることながらCPの打ち込みも随分来たようで、CP市場が見事に阿片窟状態になってしまったのは常々申し上げております通り。何と言う恐怖のオペという感じでございますが、このオペ続く間は阿片窟相場は続くでしょうと思われます。
「担保があれば全部出す」攻撃というのはやはり恐るべしとしか言いようが無いのですが、まあこれが普通の利回り競争入札になったら全然状況が違っていたであろう事を考慮しますと、効果は凄まじく出てよかったですね(出過ぎで阿片窟市場になったという困った市場もあるが)という所でございましょう。
○生活者意識アンケート続き
昨日の続きの雑感なんですけど。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/ishiki/ishiki0904.pdf
最初の質問(と言っても本文15ページ目です)を引用します。
(引用開始)
Q1. 1年前と比べて、今の景気はどう変わりましたか。
1 良くなった0.2 ( 0.6 )
2 変わらない10.0 ( 16.0 )
3 悪くなった89.1 ( 82.5 )
Q2.Q1のご回答について、そのようにお考えになるのは、主に
どのようなことからですか。【2つまでの複数回答】
1 マスコミ報道を通じて49.5 ( 43.3 )
2 景気関連指標、経済統計をみて18.8 ( 20.2 )
3 勤め先や自分の店の経営状況から38.3 ( 34.6 )
4 自分や家族の収入の状況から36.3 ( 36.5 )
5 商店街、繁華街などの混み具合をみて19.3 ( 20.5 )
6 その他5.0 ( 5.2 )
(以上上記URLから引用)
・・・・・まー3か月前からあんまり変わらないのですけど、「景気が良くなった」が0.2%とかナンジャソリャという数字で泣けます。で、悪くなったと考える理由を見ると案の定というかいつもどおり「マスコミ報道を通じて」なのですけれども、この数値がやたらいい感じで伸びている(他の理由よりも前回対比の数字の伸びがよろしいですわな)のを見ますと、メディア様におかれましてはそのやたらめったら暗い調子で景気悪化だ何だって火事場の野次馬のような報道するの自粛して貰えませんかねえとか思っちゃいますです。
もうちょっと引用しますね。(また引用開始)
Q3. 現在の景気をどう感じますか。
1 良い0.0 ( 0.1 )
2 どちらかと言えば、良い0.4 ( 0.6 )
3 どちらとも言えない5.4 ( 9.7 )
4 どちらかと言えば、悪い36.6 ( 45.9 )
5 悪い57.4 ( 43.6 )
Q4. 1年後の景気は、今と比べてどうなると思いますか。
1 良くなる8.5 ( 4.8 )
2 変わらない49.2 ( 42.0 )
3 悪くなる42.0 ( 52.7 )
(以上上記URLから引用)
・・・・・「良い」が華麗に「0.0」という数字になっているのも泣けますが、先行きの所では「ここから更に悪化」という回答が減って、「横ばい」(というか底ばいですが)と「さすがに良くなるでしょう」が増えているのは、各種マインド指標の推移と整合性のある結果になっておりますわな。
で、以下暮らしぶりの質問とかが続くのですが、まあ先行きの個人消費はマインドを見ていると厳しいですねとしか言いようの無い結果が延々と続いておりまして、株価とかは景気良く上昇しておりますけれども、実体面で言えばまあどうでしょうねという感じになるんでしょう。
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2009/04/02
ということで新年度開始で短観なのですが・・・・・
http://www.boj.or.jp/type/stat/boj_stat/tk/gaiyo/tka0903.pdf
で、最初にお詫びですが、昨日「市場予想▲60越え」とか申し上げましたが、よくよく見たら市場予想は▲55あたりだったようでして、伏してお詫びいたします。市場予想は勝率2割3分を切ってますのでやっぱりやる大矢もビックリ(^^)。
で、大企業製造業の業況判断DIは▲58になりましたので、勝率2割1分でやる大矢どころか近鉄パールズもビックリでありましたけれどもね!
・・・・わけわからんネタ振りでどうもすいません
○いつものインチキ分析を(^^)
・業況判断DIの達成度合い
12月調査時点での先行き見通しがどのくらい達成出来ているかという話。6月調査では見通し達成ならず、でも市場の予想したDIよりは良い。9月調査時点では見通し未達相次ぐもそんなにドカンとは下げず、市場の予想したDIよりは小マシ。12月調査ではだいたい見通しよりもビックリするほど悪い上に市場予想よりちょっと悪いかほぼ予想通りという感じでダメダメでした。
で、今回はと申しますと・・・・・
(12月時点) (3月時点)
現状→3月予測 現状→6月予測
製造業大企業 ▲24→▲36 ▲58→▲51
製造業中堅企業 ▲24→▲45 ▲57→▲61
製造業中小企業 ▲29→▲48 ▲57→▲63
非製造業大企業 ▲9→▲14 ▲31→▲30
非製造業中堅企業 ▲21→▲32 ▲37→▲45
非製造業中小企業 ▲29→▲42 ▲42→▲52
これを良く見ますと、中堅中小企業の方が前回の先行き見通しに対して今回の実績値が近い(非製造業中小企業なんてピタリ賞ですよ!)ことが判ります。これがどういう意味なのかは判りかねますが(汗)、まあ何となく微妙な香りが。
・雇用判断DI
だいぶ前から良く見てまして、前回の急速な悪化振りにビックリしたのですが、今回は更に涙が出る悪化。
(12月時点) (3月時点)
現状→3月予測 現状→6月予測
製造業大企業 +8→+15 +35→+32
製造業中堅企業 +14→+21 +39→+37
製造業中小企業 +16→+26 +39→+40
非製造業大企業 ▲7→▲7 +3→+6
非製造業中堅企業 ▲3→▲1 +7→+10
非製造業中小企業 ▲2→+2 +8→+12
ええ見事に全部余剰ですよ余剰。しかし製造業の悪化振りが酷いですね。
・証券業の業況判断
これは毎度笑えるので長期時系列を更新ということで、サブプライム爆発前でありますところの昨年6月調査分から並べますね、前回▲70でしたが・・・・・
現状→次回予測
(6月時点) +34→+52
(9月時点) ▲30→+23
(12月時点)▲26→+4
(3月時点) ▲55→▲15
(6月時点) ▲45→0
(9月時点) ▲70→▲44
(12月時点)▲70→▲59
(3月時点) ▲76→▲68
唯一の救いは今回の先行き予測から願望成分がかなり払拭されてきたことではないかと思います(^^)。パリバショック以降毎度毎度先行きの予測に願望成分が入っていて「3か月後は今よりも改善ですよ!」という数値になっていたのですが、願望成分の多さをもって鳴る証券業の業況判断からかなりそれが除去されてきたのは底打ち確認サイン近しということで(本当か??)。
○まあしかしオシレーターだと思えば・・・・・・
などと書いているあたくしにも願望成分が多いですかそうですか(^^)。
業況判断DIって企業業況判断を相場の上げ下げだと思えば(無茶な前提)オシレーター系のテクニカル指標みたいなもんで、ほらあの相場だと騰落レシオが80越えたり20割ったりしたら相場全体が天井だったり底だったりするじゃないですか。
・・・・などと屁理屈をでっち上げて業種別展開を見ますと、売られすぎのサインがでております業種は(大企業だけで勘弁)、木材・木製品(▲82)、非鉄金属(▲81)、自動車(▲92)の3つの業種になっております。そろそろ底打ちしませんかねえとか願望を。
というか前提が無茶なのでただの雑談ということで。ちゃんとした分析は本職の方がちゃんとやってくれるでしょう。まあゲロゲロな結果でしたが、正直市場はゲロゲロに慣れてしまい「打たれ強い子」になってしまってますので反応しませんでしたなあという所かと思います。
○日銀生活意識アンケート
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/ishiki/ishiki0904.pdf
えーっとすいません、読んでる暇がありませんでした(大汗)ので、ちょっとだけ。
毎度お馴染みの「物価水準」に関するところですけれどもね。以下引用、()内が前回12月調査の数値で今回調査の数値が最初に出てる数字です。
Q13. それでは、1年前に比べ現在の「物価」は何%程度変わったと思いますか。
―― 数値をご記入のうえ、上・下いずれかに○をお願いします。なお、「0%」と
思われる方は、記入欄に「0」とご記入下さい。
平均値:+6.4 ( +10.2 )
中央値:+5.0 ( +10.0 )
Q15. それでは、1年後の「物価」は現在と比べ何%程度変わると思いますか。
―― 数値をご記入のうえ、上・下いずれかに○をお願いします。なお、「0%」と
思われる方は、記入欄に「0」とご記入下さい。
平均値:+2.9 ( +5.7 )
中央値:0.0 ( +5.0 )
(以上引用)
おお!デフレ懸念が近づいて参りました!!!
・・・・と思ったら5年後の物価という調査項目がありました。ということで以下引用。
Q17. それでは、5年後の「物価」は現在と比べ毎年、平均何%程度変わると思いますか。
―― 数値をご記入のうえ、上・下いずれかに○をお願いします。なお、「0%」と
思われる方は、記入欄に「0」とご記入下さい。
平均値:+3.8 ( +5.6 )
中央値:+2.0 ( +3.0 )
(以上引用)
まあ下がってはいますけどプラスですかそうですか(^^)。ただまあパッと見たときに1年後のところが気になったので引用してみましたの巻(^^)。
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