決定会合議事要旨や金融経済月報などについて
(2008年度下期に書いた分)

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2008年下期の見出し

2008/03/30「3月金融経済月報より」
2009/03/25「2月会合議事要旨より」
2009/03/19「輪番増額/景気認識は厳しいままの状態を維持」
2009/03/18「日銀、金融機関に劣後ローン供与へ」
2009/03/16「決済システムに関する日銀レポートから」
2009/03/03「2月月報、殆ど1月と同様の判断継続」
2009/02/20「決定会合結果、いろいろなものが延長&社債買入」
2009/02/19「今更ですが1月の金融経済月報(判断下げまくり)」
2009/02/12「短期市場レポート続き、フェイル問題に関して」
2009/02/10「日銀の短期市場レポート」
2009/02/04「日銀株式買取発表/日銀の購入債券明細1月末分」
2009/01/29「12月17・18日決定会合議事要旨より(続き)」
2009/01/28「CPレート公表関連続き/12月利下げの金融政策決定会合議事要旨」
2009/01/27「大幅引き下げとなった金融経済月報/短期市場レポート/CPレート公表に苦言」
2009/01/23「決定会合結果あれこれ出ましたので」
2009/01/19「さくらレポートは案の定景気大悪化モード」
2009/01/15「生活者意識アンケート、実はまだ陰の極じゃないのですね」
2009/01/05「11月決定会合議事要旨より」
2008/12/30「日銀乗換を再乗換しましたというメモ/インフレ期待に関するレポート」
2008/12/26「11月ゼロ回答決定会合の議事要旨より」
2008/12/22「決定会合結果のまとめ」
2008/12/16「短観は案の定ズタボロ」
2008/12/05「11月の月報を今更、判断下げまくりです」
2008/12/03「流動性対策の臨時会合が出ましたが、さて・・・・・」
2008/12/01「利下げ決定会合要旨より(続き)」
2008/11/28「利下げ決定の会合要旨から、0.30%への反対理由」
2008/11/25「何というゼロ回答な政策決定会合」
2008/11/11「10月6、7日の政策決定会合議事要旨より(続き)」
2008/11/05「10月6、7日の政策決定会合議事要旨より」
2008/11/04「付利金利の件/展望レポートより」
2008/11/01「決定会合0.2%引き下げですが・・・・」
2008/10/27「主要銀行貸出動向調査アンケート」
2008/10/21「さくらレポート、全部下方修正」
2008/10/20「9月定例会合、臨時会合議事要旨、10月金融経済月報」
2008/10/16「オペの拡充策追記」
2008/10/15「臨時政策決定会合関連」
2008/10/09「欧米協調利下げ共同声明」
2008/10/08「決定会合、当然ながら下向きに」
2008/10/06「生活意識アンケートより」
2008/10/03「日銀保有国債に変なものが/インタゲに関するレポート」
2008/10/02「短観です」

2009/03/30

○3月金融経済月報から

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0903.pdf(3月)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0902.pdf(2月)

経済の基本的な所で変化があるのは生産の先行き部分でして、普段あまり見ない金融面の方が変化しているという感じです。

・基本的な経済の部分で変化があったのは生産の先行き

『以上の需要動向を背景に、生産は減少を続けるとみられるが、在庫調整圧力が減衰するにつれて、生産の減少テンポも次第に緩やかになっていくと予想される。』(3月)

『以上の需要動向と在庫調整圧力の高まりを背景に、生産は減少を続けるとみられる。』(2月)

ということで、在庫調整圧力が軽くなってくる点について言及しています。その他に関しては先月とまるっきり同じ表現が続いているので引用は割愛しますです。「景気は大幅に悪化」「先行きは当面悪化を続ける」というのは変化なしということですね。


・物価も基本的に同じ見通し

現状判断部分は企業物価のベクトルがちょっと変わり、消費者物価の水準表現がちょっと変わったのですが、まあ事実関係の話なのであまり気にしなくていいかな。一応引用。

『物価の現状をみると、国内企業物価は、国際商品市況の下落を主因に、3か月前比でみて下落を続けている。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、石油製品価格の下落や食料品価格の落ち着きなどを反映して、ゼロ%まで低下している。』(3月)

『物価の現状をみると、国内企業物価は、国際商品市況の下落を主因に、3か月前比でみて大幅に下落している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、石油製品価格の下落や食料品価格の落ち着きなどを反映して、プラス幅がゼロ%近くまで縮小している。』(2月)

先行きに関しては、国内企業物価に関して国際商品市況の影響が緩和されるという点に言及しています。消費者物価は変化なしです。

『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、国際商品市況下落の影響が残り、製品需給の緩和も続くもとで、当面、下落を続けるとみられる。』(3月)

『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、国際商品市況の下落や製品需給の緩和などを背景に、当面、下落を続けるとみられる。』(2月)

ということで。


・金融環境で気になったのは・・・・・

金融環境で最初に気になったのは語順だったりします(^^)。

『金融面をみると、わが国の株価は、米欧の株価の動きにつれて下落した後、最近は前月を上回る水準にまで上昇している。為替は、対ドル相場でみて、円安になっている。この間、短期金融市場では、オーバーナイト物コールレート(加重平均値)は、引き続き0.1%前後で推移している。ターム物金利や長期国債金利も、横ばい圏内の動きを続けている。』(3月)

『金融面をみると、短期金融市場では、オーバーナイト物コールレート(加重平均値)は、0.1%前後で推移している。もっとも、国債レポ市場金利は振れやすい動きとなっているほか、ターム物の銀行間金利は高止まりを続けている。この間、円の対ドル相場および株価は前月と比べ下落しているが、長期国債金利は前月と概ね同じ水準となっている。』(2月)

いやまあどうでもいいんですけど、前回は短期金融市場の話が先に来て、後から株価の話とか来たのですが、今回は株価と為替の話が先に来ているのはどんな意味があるのかなあとか思ってみたりして。

まあそれはともかく、金融政策の最近の柱になっております企業金融環境に関する部分はこのような認識になっています。

『企業の資金調達コストは、政策金利引き下げの波及やCP発行市場の改善を受けて、昨年末に比べ低下している。』(3月)

『信用スプレッドは多くの先で拡がった状態が続いているものの、政策金利の引き下げなどから、資金調達コストは昨年末頃に比べれば低下しているものとみられる。』(2月)

「低下しているものと見られる」が「低下している」と改善していますな。

『企業の資金調達動向をみると、CP・社債の発行はひところに比べ回復してきているうえ、銀行貸出は大企業向けを中心に高い伸びを続けている。』(3月)

『企業の資金調達動向をみると、各種の政策対応もあって、CP発行には一部に改善の動きがみられるうえ、銀行貸出は大企業向けを中心に高い伸びを続けている。』(2月)

銀行貸出は変わらないですけど、CPや社債の発行が回復となってますな。まあそのあたりは改善しましたよという話で。CPに関しては既にこの時点で結構な阿片窟状態になってる(今はもう完璧な阿片窟ですなあ)ような気がするのですが、それに関しては月報本文で何かこんな書き方になっているのが微妙に如何な物かと思うのですが。

『昨年末にかけて高騰したCP発行金利は、1月に低下した後は横ばい圏内の動きとなっている。』(3月月報本文14ページより)

・・・えーっと、CP発行金利がドカンと下がったのは2月の最終週からだと思うのですけれども横ばい圏内ですかそうですか。何だかなあ(なお巻末の図表にはCP金利のレートとかは特にございませんです)って感じなんですけど。

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2009/03/25

○2月決定会合議事要旨からちょっとだけ(たぶん後日に続く)

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g090219.pdf

正直色々忙しくて斜め読みしかしてない(米国の勉強に時間掛かりすぎ、汗)ので話は明日に続くと思う。ということで『[.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』部分のお話を少々。

・ターム物金利誘導に関して

『委員は、やや長めの金利に働きかける方法について議論を行った。』

『何人かの委員は、スプレッド貸出等の基準金利として用いられるTI BORは、@ 実際の取引レートではなく、そのベースとなっている無担保ターム物の取引量が少ないこと、A クレジットリスクをオペで直接コントロールすることは難しいことを踏まえると、これに直接働きかけていくことは難しいとの見方を示した。』

そこで窓口指導ですよ(そんなものはもう存在しませんので念の為^^)。

『複数の委員は、1月から開始した企業金融支援特別オペは、当初の見込みを上回る約4 兆円の資金供給を既に行うなど、企業の資金調達環境の改善に効果を発揮していると指摘した。何人かの委員は、このオペを更に活用するとともに、日々の金融調節において、引き続き市場機能を活かしながら、必要に応じて長めのオペを実施するなどにより、ターム物金利に働きかけていくことが重要であると指摘した。』

だから20日にいきなり4か月(2月24日スタート6月15日エンドの共通担保全店オペ8000億円)のオペを打ち込んだんですね、判ります(^^)。

#でもその一発だけ4か月物だったというのが実にアレなのですが

『こうした検討を踏まえて、委員は、企業金融支援特別オペを強化するとともに、既存の流動性供給手段を活用することにより、ターム物金利の低下を全般に促していくことが適当であるとの認識を共有した。』

まあ実際問題としては、長いタームをバンバン打つよりは、共通担保オペの担保事情を考えますと2週間から6週間程度のオペをコンスタントに厚めに打つ(このコンスタントというのが重要という話は後ほどざっくりと)ようにしておいてGCレートを押さえておけばターム金利もそう上昇しないというのはあるかと。ただしクレジットスプレッドに関してはそれだけではどもならんので。

『そこで、委員は、企業金融支援特別オペの強化・延長について具体的な検討を行った。委員は、@ 資金供給期間を長期化させて3 か月に統一すること、A 実施頻度を週1 回ペースに引き上げることが適当であるとの認識を共有した。実施期限について、委員は、9 月末まで延長することが適当であるとの見方で一致した。また、複数の委員は、年度末にかけての金融調節について、金融市場は神経質な動きを続けており、これまで同様、金融機関の資金繰りや市場の動向に目を配りながら、肌理細かく行っていく必要があると付け加えた。』

ということで、企業特オペを強化したらどうも閾値を越えてしまったようで、この後1週間でCPレートの一部が官民逆転し、その2週間後には見事な阿片窟状態になってしまった(現在も阿片窟状態なので、一般人が近寄れない雰囲気になっておりますな、苦笑)のはご案内の通り。


・社債オペに関して

まあ何で導入したかというのは声明文にあるとおりなので、須田さんの反対理由をみてみましょ。

『買入れの実施について、一人の委員は、@ 発行額が過去に比べ特に減少しているとはいえず、対国債スプレッドも全体としてみれば大幅には拡大していないなど、企業金融全体の逼迫に繋がるほど社債市場の機能は低下していないこと、A 残存期間1 年以内の社債の買入れが企業金融円滑化に与える効果は限定的と思われることから、実施の必要性に関する条件を満たしているとはいえないとの認識を示した。』

うーむ、これも決定会合の公表文書に出てたか(汗)。まあその後の講演でもあるように、須田さん的には「やるなら効果のあるように」って主張をしているみたいなので、解釈が微妙な気がする。

それはそれとして財務省がこんな話を。

『金融市場調節方針に関する議案の提出の後、財務省の出席者から、以下の趣旨の発言があった。
(途中割愛)

・最近の金融市場の動向をみると、3月期末越えに向けた不安心理の高まりから資金を抱え込む動きがみられるなど、不確実性が高い状況にある。こうした点を踏まえ、日本銀行におかれては、更に積極的な資金供給を行い、金融面から経済を下支えして頂きたい。また、日本銀行の行う各種措置が一層効果的なものになるよう、情報発信についても、一段と工夫して頂きたい。社債の買入れについては、更なる拡充策を検討して頂きたい。』

ほほう、社債買入の拡充策を検討して頂きたいとな。この辺は財務省も損失負担に関するアコードをきちんと結ぶという話をせんといかんのではないかという気は思いっきりする次第でございまする。英国にしても米国にしても、中銀はマネーの供給で損失負担部分は政府がケツ持ち(中銀が買取を行うケースでも損は政府が持つという形になっている)するという分担がちゃんと出来てると思いますので。

まあ政治情勢がこんな感じだから何とも財務省としても動きにくいのは判りますけれども、日銀にお願いするのも良いけど、一方でターム物金利が下がらない事に寄与する(苦笑)3か月TBの大増発とかへの配慮も願いたい(まあ税収とか資金繰りの問題でしょうがないのは判りますけど)ものであります。

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2009/03/19

今朝一番泣いたのは公共放送ニュースで「FRB 異例の長期国債購入へ」と見出しを出し「中央銀行である米国FRBが長期国債の買入を行なうことは異例の政策です」と紹介している事でして、従来から長期国債買ってた日銀の立場は(苦笑)。


○輪番増額

今回の日銀決定内容。
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/k090318.pdf

既に増額のニュースが出てた(のも如何なものかと思いますが)輪番がいきなり月4000億円増額されたのはちょっとビックリだったので債券先物は威勢よく反応しましたが、超長期とか妙に重くて長いところも微妙に引っ張られたのか終わってみればまた10年1.3%でございましたが、中短期の3年とかのオフザランの10年長国に買いもあったようですにゃ。各種レポート見てるとスティープ要因という解釈なのでふーんという感じです。

で、4000億円増額の理由をテキトーに考えてみたのですが、(1)事前に増額が報道されてしまったので2000億だとパッとしないから増やしてみました、(2)多めに出して打ち止め感が出ると良いなあ、(3)輪番のゾーンわけを細かく行ってしまったので2000億円の増額だと比例配分で割り振るのが難しいんですよ、などなど考えたのですけれども(^^)、まあ一応いつもよりも威勢よく増額したのは結構でしたなあ(棒読み)というところで。

ちなみに輪番増額による年限別割り振りの比率はほぼ変わらないようにバランスさせています。
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/mok0903a.pdf

で、今回の公表文ですけれども、まずは輪番増額の理屈。

『2.金融市場における年度末越えの資金調達は概ね目処がつきつつあるが、年度明け後も、後述するような厳しい金融経済情勢を背景に、市場の緊張が続く可能性が高い。このような状況下、日本銀行は、金融市場の安定を確保するため、引き続き、積極的な資金供給を行っていくことが重要であると判断した。こうした観点から、長期の資金供給手段を一層活用し、円滑な金融調節を行っていくため、長期国債の買入れを以下の通り増額することとした。』

市場の緊張ですかそうですか、ふーん。まあ金融調節で長めの資金を出しますよという話ですが、これによって短期のオペレーションを徐々に減らされますと困ります(短国の増発が見えているので)、そっちはそっちで継続的に実施して欲しいものです(が、また23日の余剰日を前に資金供給を絞ったからGCレートがこの大事な時に上昇してるんですけど、何回同じことやってるんだか・・・・)。趣旨は金融市場の緊張緩和の為という何となく緩和チックな怪しげな話なのは前回と同じっすね。


○景気判断は基本変わらず

それから、経済情勢に関する説明とかですが、基本的な判断部分は前回の公表文と思いっきり同じです、一部違うところがあるのですが、まずは引用。

『3.わが国の経済情勢をみると、海外経済の悪化により輸出が大幅に減少していることに加え、企業収益や家計の雇用・所得環境が悪化する中で、内需も弱まっている。金融環境をみると、CP・社債市場の発行環境は改善しているものの、全体としては厳しい状態が続いている。これらを背景に、わが国の景気は大幅に悪化しており、当面、悪化を続ける可能性が高い。』

ということですが、今回は金融環境のところで「CP・社債市場の発行環境は改善しているものの」という文言が入ったのが変化したところですが、現状認識は2月に示した厳しい状況と同じです(じゃないと緩和しませんわな)。

で、物価の見通しとかリスク要因とかの話は前回と全く同じです。最後の所にちょっと面白い表現がありましたのでそいつを紹介。

『日本銀行は、金融政策面からわが国経済を支えるため、昨年秋以降これまでの間、政策金利の引き下げ、金融市場の安定確保、企業金融円滑化の支援という3つの柱を中心に、様々な措置を実施してきた。』

似たような文脈は前回もあったのですが、今回は堂々3つの柱という言い方をして、元々時限措置だった企業金融円滑化措置が堂々の柱に昇格したでござるの巻になっちゃいましたね。

・・・・ということはどっかで絶賛開店中の阿片窟相場は継続するんですかねえ。いやまあ政策目的だから仕方ないけど、官民逆転現象という状態が長期化しちゃいますと最終投資家が離散してしまいまして、それが暫く続くと投資家の方でもちゃんと売買(というかCPの場合買切ですが)することができる人が段々減って来るので阿片が切れた時に「振り向けば投資家不在」という素敵な事態になり兼ねませんがその辺り白川総裁如何お考えでしょうか(苦笑)。


○というわけで

今回は何か事前に微妙に話が出るという毎度のパターンはどないかならんのかと思う(事前に出ないほうがサプライズ効果が出るじゃろと思いますし)のもありますが、輪番増額に関して物凄い勢いでメディア(というかどこぞの経済新聞)が食いついてもう観光釣堀園の魚状態だったようですにゃ。

えーっと、財政マネタイゼーションで長期国債買入ってロジックにするとそれは普通に金利上昇要因になるのですが、何で質疑応答で話をそっちに持って行こうとするのかねと。

まあこの辺をご覧になると吉かと。
http://hongokucho.exblog.jp/10536209/

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2009/03/18

○劣後ローン購入(というか貸出というか)ですかそうですか

#そういや大昔「レッツ碁」という月刊囲碁誌が日本棋院から出てましたな。どうでもいい上に一部の人しか判らん話で恐縮(笑)

日銀の公表文
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/fsky0903a.pdf

例によって例の如くプルーデンス政策ということで通常の政策委員会で決定だったのですが、金融政策決定会合の合間に政策委員会ってナンノコッチャという感じです(大昔に金融機関の株式購入を行った時には決定会合終了後に通常の政策委員会を実施しました)。

まあ唐突に新聞に話が出て、昨日は公共放送ニュースなんぞにも出やがりまして、何だかな感はあったのですが、結局大手銀行に劣後ローン貸出ですかそうですかという感じ。何か政府のサポートもないまま特攻モードで大丈夫か日銀という話ですし、そもそも当座取引先の与信をとるのは特融レベルの話(そういや特融が大規模に飛んだことありましたねえ)になるので、結構チャレンジャーな話だと思います。

しかしそういうチャレンジャーな話なのにメディアの扱いの低さが泣けるとしか言いようが無いですな。いやまあ出し先が国際統一基準銀行限定という微妙な所もあるんでしょうが。

『日本銀行による金融機関向け劣後特約付貸付の供与について』

『1. わが国金融機関は、昨年秋以降における、CP・社債市場の機能低下等に伴なう企業金融の逼迫のもとでも、貸出の増加を通じて金融仲介機能を相応に維持してきた。しかしながら、国際金融資本市場における緊張の持続や内外経済環境の悪化を背景に、有価証券関係損失や信用コストが増加するなど、金融機関経営全般に悪影響が及んできている。』

『2. 今後、国内外の金融資本市場の緊張がさらに強まり、個々の金融機関が、先行きの株価の下落等に対する懸念から自己資本制約を強く意識する場合には、円滑な金融仲介機能の維持に支障が生じる可能性がある。また、国内景気悪化の影響とも相俟って、金融機関の経営体力が低下し、金融システムの安定性に影響が及ぶ可能性もある。』

というご認識のようですが、実務的に期末に間に合いそうもないタイミング&大手銀行が個人向け劣後債などで資本調達をやった直後というこのタイミングというのに微妙な間の悪さを感じるんですが、まあオトナの事情とかあるんでしょうな。で、3番飛ばして4番目。

『4. 日本銀行による今回の措置は、厳しい経済金融情勢の下でもわが国の金融機関が十分な自己資本基盤を維持し得る手段を整えることにより、円滑な金融仲介機能を確保するとともに、これを通じて金融システムの安定を図ることを目的とするものである。本枠組みの検討に当たっては、中央銀行による資本性資金の供与が極めて異例の措置であることに配意するとともに、本措置が金融機関自身による市場調達や金融機能強化法に基づく資本調達と相俟って、金融機関の自己資本基盤強化に資するものとなるよう留意していく。』

金融機能強化法を皆さんもっと使えということですかそうですか(苦笑)。

ということで後は端折って(別紙)を見ると、

『2.対象金融機関

本件貸付を希望する自己資本比率規制上の国際統一基準行(銀行)で、日本銀行が適当と認めた先』

とございますので大手銀行対象。まあミクロ的にはこれにより自己資本が強化されるので貸出等の余力が増すという話になりますから効果はあるんでしょうけれどもねえ(マクロ的に意味あるのかいというとどうも)という感じです。

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2009/03/16

お題「決済システムレポートから」

保有有価証券の評価替え抜きベースで黒字確保宣言ってどっかの国で散々聞いた「不良債権処理は峠を越えた」を・・・いやまあいいです。

#しかしAIGの幹部報酬とか見てると「当時の」邦銀経営者って・・・・


○決済システム関連のレポート

http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/research07/ron0903a.htm
リーマン・ブラザーズ証券の破綻がわが国決済システムにもたらした教訓

本文はこちら
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/research07/data/ron0903a.pdf
(PDFで34ページ組です)

んでまあ内容はリーマン破綻に伴う決済の混乱度合いの分析と今後の課題に関してでして、まあその手の話に興味のある人は読んでおくべき(というかもう読んでるでしょ^^)かと存じます。で話を終わりにしてしまうと駄文のネタになりませんので(汗)、少々愚意見をば。

全体感としては本文19ページにあります、

『以上の整理を踏まえると、今回の破綻では、相応の市場プレゼンスを有していたリーマン証券の資金・証券の支払が全て予定どおりに履行されない中にあっても、清算機関の設立やそのリスク管理策の整備をはじめとする決済リスク削減策が一定の機能を発揮したことにより、決済面での混乱が金融システム全体に長期に亘って幅広く波及する事態は回避できたといえる。』

ということでして、関係者の皆様お疲れ様でしたという所なのですけれども、まあ微妙に愚考してみます。


・まあ正直言ってタイミングと相場動向に助けられた面もあり

本文17ページの上場デリバティブ取引の処理に関する説明部分から。

『東証・JSCC、金融取および大証では、リーマン証券による再生手続開始の申立等を受けて、業務方法書の定めに基づき、同社を当時者とする新規取引と債務引受の停止措置を講じるとともに、同社が保有している建玉の処理に着手した。』

『リーマン証券が破綻した時点で保有していた建玉のうち、顧客からの委託分については、他の清算参加者への建玉移管または反対売買のいずれかにより処理が実行された。また、同社の自己保有分については、反対売買により処理された。このような対応を経て、まず、金融取が9 月22 日に同社の保有建玉の処理を全て終えたのに続き、25 日にはJSCC、30 日には大証において、それぞれ処理が完了した。』

ってまあさっくりと書いているのですが、リーマン破綻がメジャーSQおよび債券先物限月交代の直後だったからこれセーフだったのでして、委託建玉の処理に数日掛ける余裕があったんですよね。いやまあ初のケースだから仕方ない面は多々あったのでキツイ事は言いたかあねえですが、業務停止命令発出直後って信用取引(は上場デリバティブじゃないですが)の反対売買もできないとかいうお洒落な状態になって、先物も当初どう手続きするのか見事に硬直状態になって、それはもうエライコッチャだったようで何とも。

#限月交代やらSQ直後で、中間決算まで2週間というケツがあったのも逆に処理が迅速化された要因だったりするような気がせんでも無いですね

で、本文20ページの今後の課題に関する分析部分にはこれまたさらりと書いてますが重要な点が(^^)。

『また、今回、全体として決済面での大きな混乱を回避することができた背景には、リーマン証券による決済不履行の規模が、各清算機関のリスク管理の枠組み等によって比較的迅速に対応できる範囲に収まった面があることも否定できない。実際、一部の清算機関では、既に、より大きな決済規模の市場参加者が破綻した場合であっても決済履行の安定性を確保できるよう、リスク管理策の強化を指向する動きがみられている。』

『更に、決済不履行に起因する損失(再構築コスト等)への対応についてみると、各清算機関では、前述したように、いずれの先でも、リーマン証券から事前に徴求していた担保でカバーすることができ、他の清算参加者に負担を求める事態は生じなかった。一方で、今回の破綻対応の経験等を踏まえると、現行のロスシェア・ルール ―とりわけ、清算参加者からの担保徴求のあり方― について合理性を向上させる余地がないかといった点を改めて検証してみる余地があると考えられる。』

ということでして、その下に脚注とグラフがあるのですが、その脚注が重要
だったりします(^^)。

『今回の破綻では、各清算機関がリーマン証券との決済に関してポジションの解消や再構築を行っていた間、国債・株式市況は相対的に落ち着いており、これが損失額を抑制した面がある。清算機関では、その後市況のボラティリティが大幅に上がった局面を含め、清算参加者から徴求している担保の所要額が「通常の市場環境下での価格変動リスク」を適切にカバーする仕組みとなっているか改めて検証してみることが適当と考えられる。』

例えば新発国債をリーマン証券から購入した投資家ですけれども、業務停止命令が発出された直後に市場は大爆発して先物で高値3円高とかやらかしてくれたのですが、その後連日相場は下落してくれたので、例えば5年新発国債は18日木曜日に入札時の平均落札価格より値下がりし、取引のキャンセルを行って再構築しても大きな損益が発生しなかったという状況になりまして、お蔭で取引が無事キャンセルできたというのもある訳で、これが16日その日にいきなりキャンセルですとか言っても大踏まれしている中で誰がキャンセルに応じるんですかという状態な訳ですよ。

ということなので、レポやらフェイルに関する部分はまあ良いとしても、実はアウトライト取引に関する部分については市場動向で助かった面が多々あるものかと存じますです、はい。


えーっとですね、それからもう一つはツッコミなのですが、本文21ページにある市場動向のグラフなんですけどね、「リーマン証券の破綻」って線を引いている日って値動きからして16日の引け値の所に引いているのですけれども、実務的な問題というか分析という面で言えば、16日には既にリーマン証券は業務停止状態だったのでして、取引回復の為の損益計算の出発点は「破綻直前」の価格である筈(日々値洗いという前提)でして、破綻したのが出て債券先物や株式市場がぶっ飛んだ直後からの数字と比較するような線の引き方をしない方が宜しいかと思いますです、はい。


・今後の課題に関してですけど・・・・・

んでまあ今後の課題なのですが、今後の課題に関しては微妙に日銀毎度お馴染みのべき論になっているのでして、いやまあべき論は結構なのですが、世の中は日銀当座預金取引先みたいに全部対応可能な人たちだけではないという点に関して、もうちょっとご理解を賜りたいものえだると思う次第で。

本文27ページから。

『ロ.清算機関のカバレッジ拡充

(国債取引に関する清算参加者の拡大)

現在、レポ市場における一部の主要参加者はJGBCC に参加しておらず、そうしたこともあり、JGBCC を介した国債DVP 決済のシェアは全体の4 割程度に止まっている。JGBCC による決済不履行リスクの遮断機能の意義は、今回の経験を通じて、JGBCC に参加している先をはじめ多くの市場参加者によって改めて確認されたところである。国債決済全体の安定性を一層高め、破綻時におけるレポ市場の機能低下をできる限り抑制していく観点から、JGBCC には、イ.で述べた機能向上に加え、制度参加者の拡大に向けて、個々の事情やニーズに十分に配慮しながら、可能な範囲で工夫していく取り組みが求められる。』

そらそうなのですが、JGBCC相手だとフェイルされた時の文句の持って行きように困るという実務的問題コレ有りでして、フェイルに関する各種事務的な面倒を回避しようとしたら相手を選んで相対で取引した方が投資家的に楽という話もある訳で、清算参加者を投資家に拡大という話をする為には課題があるでしょうなあ。



『ハ.市場全体として取り組むべき課題:国債決済サイクルの短縮

市場参加者の破綻に伴って顕現する決済リスクについては、イ.(清算機関におけるCCP 機能の向上)とロ.(清算機関のカバレッジ拡充)で掲げた課題が実現すれば、相当程度に抑制を図ることが可能になると考えられる。加えて、決済規模が突出して大きい国債取引については、決済サイクルを短縮することができれば、清算機関を軸とする上述の取り組みを補完・促進し、市場全体における決済リスクの更なる抑制を効果的に実現することが可能になると考えられる。』また、決済リスクの抑制がこのようにして図られることで、国債を予定どおり受取れないリスクに敏感なわが国最終投資家等の運用スタンスを多少なりとも緩和し、破綻時における市場流動性の維持に寄与する効果も期待できる。今後、市場関係者においては、今回の経験の検証を踏まえつつ、国債決済サイクルの短縮を目指して検討を推進していくことが適当と考えられる。』

出たな国債決済T+1話。いやまあ仰ることは一面において全く仰せの通りで国債決済期間の短縮ができれば良いのは判っているのですが、決済期間の短縮をするにはそれに対する事務管理負担をどうするかって話がありますのよ。

日銀当座預金取引をバカスカやってる大手銀行とか証券会社とかですと、当然ながら債券ポジションの日中モニタリングとか普通にやっていると思いますけれども、投資家サイドになりますと、そもそもそんな頻繁な売買を前提としていない建付けになっている事情もあり、そこまで管理が進んでいないという所だって平気であるんですよね。どうも日銀はこの手の話に投資家をあまり呼ばない傾向があるようで、(まあ取引先じゃなかったりしたら仕方ないけど)大手証券とか大手銀行なら出来る話をそのまま全部スタンダードで持って来るのもちと何だかなあ感はございます、はい。

何か上記の部分でも「国債を予定どおり受取れないリスクに敏感なわが国最終投資家等の運用スタンスを多少なりとも緩和し」って如何にもフェイルを容認しない最終投資家が愚昧で遅れていると言わんばかりの書きっぷりな所に敏感に反応するのは敏感すぎですかそうですか。いやまあフェイル容認しないのは確かにどうかとは思いますけどね(^^)。

話は横ですけど、本文20ページにはこんな記述がありましてですな・・・・

『また、市場取引の動向に目を転じると、国債レポ市場では、リーマン証券による国債の引渡不履行や市場参加者間での連鎖フェイルが前例のない規模に上ったことにより、最終投資家の運用スタンスが萎縮し、市場流動性の低下が惹き起こされる結果となった。』

「萎縮」って言葉のニュアンスがどうも何か投資家のスタンス後退が悪いような気がするのは反応しすぎですかそうですか。だってあーた間もなく中間期末決算があるのにフェイルだの約定事後取り消しだのに巻き込まれたら最悪だから取引を絞り込むの当たり前じゃないですか・・・・・・確かに萎縮なんですけど(苦笑)、ここは「極めて慎重になり」と表現して頂きたく存じます(^^)。

いやまあそういう意味で書いたのではないとは思うのですが、こーゆー微妙な言葉使いに一々反応しちゃうあたくしもあたくしだったりします(滝汗)。

#他のネタもあったのですがこいつが意外に長くなったので明日にでも

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2009/03/03

○2月金融経済月報

虫干しネタシリーズ。

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0902.pdf(2月)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0901.pdf(1月)

例によって概要の比較なのですけれども、今回はあまり変わらなかったりするのですよね。

・現状判断部分

『わが国の景気は大幅に悪化している。』

という総括判断は変化なしでして、各項目別展開を見ますと・・・・

『輸出は大幅に減少している。企業収益の悪化幅は拡大しており、設備投資も大幅に減少している。個人消費は、雇用・所得環境が厳しさを増す中で、弱まっている。また、住宅投資を新設住宅着工戸数でみると、再び減少している。この間、公共投資は低調に推移している。以上のような内外需要を反映し、生産の減少幅はさらに拡大している。』(2月)

『輸出は大幅に減少している。企業収益は悪化を続けており、設備投資も大幅に減少している。個人消費は、雇用・所得環境が厳しさを増す中で、弱まっている。また、住宅投資を新設住宅着工戸数でみると、再び減少している。この間、公共投資は低調に推移している。以上のような内外需要を反映し、生産の減少幅はさらに拡大している。』(1月)

ということで、企業収益の部分が「悪化幅は拡大」と更に判断を下げた以外は1月のゲロゲロ判断を維持しているということで更にゲロゲロに。


・先行き判断部分

『景気は、当面、悪化を続ける可能性が高い。』

これまた変化なしで、各項目別展開はこうなっています。

『すなわち、輸出は、海外経済の減速や為替円高を背景に、減少を続けるとみられる。国内民間需要も、企業の収益や資金調達環境が悪化し、雇用・所得環境も厳しさを増すもとで、さらに弱まっていく可能性が高い。この間、公共投資は低調に推移すると考えられる。以上の需要動向と在庫調整圧力の高まりを背景に、生産は減少を続けるとみられる。』

で、1月の引用が無いのは何でかと申しますと、これがまた華麗に全部同じなのでありまして、引用すると同じ文章を並べるだけなので割愛しました。ということで先行き見通しも暗いままということで。


・物価に関して

『物価の現状をみると、国内企業物価は、国際商品市況の下落を主因に、3か月前比でみて大幅に下落している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、石油製品価格の下落や食料品価格の落ち着きなどを反映して、プラス幅がゼロ%近くまで縮小している。』

これは現状判断部分ですが、これは1月対比で見れば「プラス幅がゼロ%近くまで縮小している」ってところが変わっているのですが、まあこれは現象面の話なのであまり気にしないでよい話。

『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、国際商品市況の下落や製品需給の緩和などを背景に、当面、下落を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、石油製品価格の下落や食料品価格の落ち着きに加え、経済全体の需給バランスの悪化などを背景に、マイナスになっていくと予想される。』

需給バランスの悪化に関する記述は変化なしです。1月対比での変化は「さらに低下し」の文言が消えたことですので、まあマイナスになってもドンドンマイナスが拡大してデフレスパイラルになるという話ではないですよという事を言いたいんだと思います。細かい話ですけどね。


・金融面

『金融面をみると、短期金融市場では、オーバーナイト物コールレート(加重平均値)は、0.1%前後で推移している。もっとも、国債レポ市場金利は振れやすい動きとなっているほか、ターム物の銀行間金利は高止まりを続けている。この間、円の対ドル相場および株価は前月と比べ下落しているが、長期国債金利は前月と概ね同じ水準となっている。』(2月)

『金融面をみると、短期金融市場では、オーバーナイト物コールレート(加重平均値)は、日本銀行による誘導目標の変更以降、0.1%前後で推移している。こうした政策金利の引き下げや年末資金需要の一服もあって、国債レポ市場金利は低下しているほか、各種の政策対応を背景に、高騰していたCP金利も年末以降幾分低下した。もっとも、ターム物の銀行間金利は高止まりを続けている。この間、株価は前月と比べ下落しているが、円の対ドル相場および長期国債金利は前月と概ね同じ水準となっている。』(1月)

まあ正直レポが振れやすいのはオペがアレだったのが原因で、ちゃんと厚めの資金供給を当座預金付利を背景に行えばレポ金利は落ち着いて来ると思うのですけれど。

『わが国の金融環境は、厳しい状態が続いている。』(2月)
『わが国の金融環境は、厳しさが増している。』(1月)

厳しさの悪化は止まりましたと。

『コールレートはきわめて低い水準にあるが、大幅に悪化している実体経済活動との比較でみると、緩和度合いは低下している。信用スプレッドは多くの先で拡がった状態が続いているものの、政策金利の引き下げなどから、資金調達コストは昨年末頃に比べれば低下しているものとみられる。』

『企業の資金調達動向をみると、各種の政策対応もあって、CP発行には一部に改善の動きがみられるうえ、銀行貸出は大企業向けを中心に高い伸びを続けている。しかし、そうしたもとでも、下位格付先のCP・社債発行は前年割れを続けているほか、中小企業を中心に資金繰りや金融機関の貸出態度が厳しいとする先が増加している。この間、マネーストックは、前年比2%程度で推移している。』(2月)

長いので途中で段落わけしちゃいましたが、1月の当該部分はこんな感じ。

『コールレートはきわめて低い水準にあるが、大幅に悪化している実体経済活動との比較でみると、緩和度合いは低下している。企業の資金調達コストは、政策金利の引き下げなどから貸出金利は幾分低下したものの、CP・社債の信用スプレッドは拡大した状態が続いているため、全体としては、横ばい圏内で推移している。』

『CP・社債の発行残高は、投資家の選別姿勢が厳しい状態が続く中、前年水準を下回っている。銀行貸出は、企業の手許資金積み増しの動きの広がりやCP・社債発行からの振り替わりを受けて、大企業向けを中心に伸びを高めているものの、資金繰りや金融機関の貸出態度が厳しいとする先が増えている。この間、マネーストックは、前年比2%程度で推移している。』(1月)

ということでして、CP市場の改善はされているものの、下位格付け企業や中小企業に関しては金融環境は厳しい状態が続いているという認識になっております。まあ銀行貸出が伸びている状況ではTIBORは下がらんわなという感じですよね。量的緩和時代みたいに企業の手元資金が豊富だったら別ですが、今は借入需要旺盛なので、むざむざ貸出基準金利のTIBORを下げわせんわなという所ですな。

ではでは♪

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2009/02/20

お題「決定会合あれこれ」

ドル円相場は中川酒効果ですかねえ(たぶん違う^^)???

さてまあ決定会合の結果が出ましたので少々。

決定会合決定事項、声明文
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/k090219.pdf

企業特別オペの延長と内容手直しに関して
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/un0902b.pdf

社債買い入れの概要
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/un0902c.pdf

社債買い入れの基本要綱の概要
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/mok0902b.pdf

各種オペの期間延長に関する文書
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/mok0902c.pdf

政府保証CPが発行される事への対応(今日入札が行われますね)
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/mok0902d.pdf

国債補完供給関連(変動利付と物価連動が輪番拡大によって本格的に日銀の手持ちになる(本格的じゃない持ちはあったけど^^)ことへの対応)
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/mok0902e.pdf

まあ細かい意味では最後のも「なるほど!」なのですけれども、まあ声明文と社債買入のあたりから少々と市場の反応への雑感。


○景気認識に変化なし(つまり厳しい判断のまま)

最初の声明文のある所から。

『わが国の経済情勢をみると、海外経済の減速により輸出が大幅に減少していることに加え、企業収益や家計の雇用・所得環境が悪化する中で、内需も弱まっている。金融環境をみると、厳しい状態が続いている。』

から始まる部分なのですが、このくだりは展望レポートの中間レビューに関する部分(2月は中間レビューが無いのでその分バッサリ無い)と日銀の施策に関する明部分以外、つまり景気の現状認識、先行き見通し、リスク要因の部分になりますけれども、ものの見事に同じ文章になっています。違っているのは金融環境の所ですが、前回と比較するとこうなります。

『金融環境をみると、厳しい状態が続いている。』(2月)
『金融環境をみると、厳しさが増している。』(1月)

ということでありまして、まあ環境は厳しいままということですが、前回から益々悪化しているとまでは行きませんと。そりゃまあCP買入の本格稼動があったので、その辺りは改善されてますし、最近妙に評判がよくなった「やればできる子」オペレーションによってターム物金利が落ち着いて推移していることも良い傾向。

ただまあそれは市場の中だけの話でして、全体的に見て改善しているかというとそりゃまあ改善してないんでしょうという所なのでしょう。

経済情勢に関する判断部分は前回と同じなので比較引用はさぼってとりあえず引用だけで勘弁(手抜き)。

『わが国の経済情勢をみると、海外経済の減速により輸出が大幅に減少していることに加え、企業収益や家計の雇用・所得環境が悪化する中で、内需も弱まっている。金融環境をみると、厳しい状態が続いている。これらを背景に、わが国の景気は大幅に悪化しており、当面、悪化を続ける可能性が高い。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、石油製品価格の下落や食料品価格の落ち着きを反映して足もと低下しており、春頃にかけては、需給バランスの悪化も加わって、マイナスになっていくとみられる。』

『景気・物価の先行きについては、2010 年度までの中心的な見通しとしては、中長期的な成長期待やインフレ予想が大きく変化しないもとで、2009 年度後半以降、国際金融資本市場が落ち着きを取り戻し、海外経済が減速局面を脱するにつれ、わが国経済も持ち直し、物価の下落幅も縮小していく姿が想定される。こうした下で、見通し期間の後半には、物価安定のもとでの持続的成長経路へ復していく展望が拓けるとみられるものの、このような見通しを巡る不確実性は高い。』

リスク要因部分は引用割愛します。


○各種オペの期限延長

発表文別紙にございます(ちなみに発表文別紙は決定会合結果リリースの一発目文書(=ワードか何かで打った文をスキャンしてPDFにしたモノ)では間に合いませんので改めて見るのが吉^^)が、

『3.各種時限措置の期限延長(公表資料4参照)
@ コマーシャル・ペーパー等買入れ(3 月31 日→9 月30 日)
A 民間企業債務の適格担保としての格付要件の緩和(4 月30 日→12 月31 日)
B 資産担保コマーシャル・ペーパーの適格担保要件の緩和(4 月30 日→12月31 日)
C 補完当座預金制度(4 月15 日→10 月15 日)
D 米ドル資金供給オペレーション(4 月30 日→10 月30 日)』

(機種依存文字は原文ママなので勘弁)

微妙に期限がずれておりますが、概ねオペは9月の中間決算越えを意識してますわなという所ですね。担保の緩和に関しては年内まで延長と。


○で、ターム物誘導の話が無いといえば無いのですが・・・・

昨日はこの発表があって暫くしてからユーロ円金先が売られたり、中短期の国債が売られたりしておりました。情報ベンダーの後付け講釈としては「ターム物誘導に関する決定が無かった」という話になっていますけれども、プライスアクションを見ていると「補完当座預金制度の実施期限延長」というのがベンダーのヘッドラインに出たところから反応したようにも思えます。まあどっちでも良いのですが、この反応に関して超短い所、即ちレポとかをやっている短期の人たち的には「ポカーン」という感じでありました。

と申しますのは、本石町日記さんのところでもありましたが、2月の最初の週あたりから、それまでやたら細々と微調整を繰り返してオペの足が短めのウェイトが高い感じだった日銀の資金供給オペが変化しておりまして、安定的にターム物の共通担保オペなどを打つようになり、当座預金残高もやや増えた状態で推移しておりまして、その結果としてGCレートなどが落ち着くようになり、タームのオペ金利も低下。需給悪化懸念とかで3か月TBで0.3%乗せとかになっていた短期国債の金利も0.25%をちょっと切る位の水準で安定推移するようになっているという環境になっているので、今更ターム物金利どうこうと言わなくても現状のオペを継続してくれれば結構という感じだったからというのがございます。

また、決定会合の公表文の中にもこう書いてあるので、まあ読み方によってはファジーですけれども、これも一応「ターム物の金利を落ち着かせます」って言ってるという解釈になるんでしょとも思う次第。

『@ 企業金融支援特別オペレーションを強化し、期間3か月のやや長めの資金を低利・安定的に供給する。』

これは企業金融オペに関する長めの金利供給って話ですけれども、この意図するところは名目上では企業金融に関するコストを下げて企業金融に係る実効的な金利を下げていきましょうということ(効果の程は知らんが)でしょうから、普通にこれを読むと当然ながらリスクフリーの部分のターム物金利に関しても上昇しないように注意していきますという話になるんでしょう、と思うのだが。

あと、どこぞの情報ベンダー見てたら「短国買入増額されず失望」とかいうコメントをしている本職のストラテジストとかいたりするのですが、そもそも常に申し上げておりますように、短国買入は単純にオペレーションの問題でありまして、増えたり減ったり割と変動してたものです。逆に言いますと、これを変に「増額する」とか「減額する」とか決めてしまうとオペがやりにくくなるので、「活用する」位の事は言っても「増額する」とか公表文ベースで明言することは普通有り得ません。

ということは短期の人(金先の人たちは別世界なのでここでは別、現物の資金取引とか国債とかCPとかやってる人ね)たちは先刻ご承知の助でありまして、「短国買入増額の発表がなく失望」とかいうコメントを見てまたまた「ポカーン」という所でしょう。普段トレードで忙しい人たちはそこまで細かく見てないと思いますからまあ仕方ないのでしょうが、本職ストラテジストからそーゆー類のコメントが出るのは勉強不足にも程があるので看板を(以下自粛^^)。


○超過準備付利10月15日まで延長

公表文にはこんなのもありました。
『C 補完当座預金制度(4 月15 日→10 月15 日)』

まあこれはどう見ても「ゼロ金利にはしたくないなあ」という所ですが、この金利そのものは別に途中の決定会合で0.05%にしたり0.01%にしたり0%にしたり出来ますので、ゼロ金利が100%無いかというと必ずしもそうではないという話。

ただまあ「誘導目標=付利金利」政策が決定された時に期待されていたオペレーションが最近行われておりまして、ターム物金利もいい感じで落ち着いておりますのでとりあえず無問題じゃねえのという所です。

会見では市場機能が云々という話がまた出ていたようですが、市場機能というか市場の「体温」という感覚的な話を持ち出しますと(判りにくい言い方ですまん)、無担保コール翌日物は12月の「誘導目標=付利金利」以来すっかり体温が低下してゼロ金利量的緩和時代のような温度になっているようですし、ここもとの長めのオペを厚めに安定供給という動きによってGC市場関連の体温もすっかり低下気味となって、オペの度に金利幾らよとかシャカリキになって悩むような地合いからすっかり変化しているようですな。GC市場とかはここ2週間くらいですね。

まあ市場機能をするならもっと広義の話をする方がよいのではと思います。


○社債買入実施ですかそうですか

まあそんなもんですかねえという所です。

概要の説明から

『社債買入れの概要
1.買入対象
担保適格社債のうち格付がA格相当以上のものであって、買入日の属する月の月末日において残存期間が1年以内であるもの。』(2以下割愛)

要綱の決定から

『4.買入対象
以下の要件を満たす社債(短期社債を除く。以下同じ。)のうち、買入対象とすることが適当でないと認められる特段の事情がないものとする。

(1)「適格担保取扱基本要領」(平成12年10月13日付政委第138号別紙1.)に定める適格担保基準を満たすものであること。

(2)適格格付機関からA格相当以上の格付を取得していること(発行企業またはその元利金の全額につき連帯保証している企業もしくは当該保証企業が発行する社債(保証付社債を除く。)がA格相当以上の格付を取得している場合を含む。)。』(3以下割愛)

えーっと、CP買入の場合はこんな書き方になってました。

『以下の要件を満たすコマーシャル・ペーパー(資産担保コマーシャル・ペーパーを除く。以下同じ。)、短期社債、保証付短期外債、資産担保コマーシャル・ペーパーおよび資産担保短期債券(本要領において「コマーシャル・ペーパー等」と総称する。)のうち、買入対象とすることが適当でないと認められる特段の事情がないものとする。

(1)通則
イ、「適格担保取扱基本要領」(平成12年10月13日付政委第138号別紙1.)に定める適格担保基準を満たすものであること(「資産担保コマーシャル・ペーパー等の適格性判定に関する特則」(平成20年10月14日付政委第93号別紙2.)に定める適格担保基準を満たすものを含む。)。』(ロ以下割愛)

ということで、こちらでも同じように書いているのですが、『買入対象とすることが適当でないと認められる特段の事情がないものとする。』という表記になっておりますので、基本的にはこちらに関しても個別に信用判定を行って買入の可否を判断するという話になるかと思います。証券会社はこの信用判定関連ってあまり慣れていない(一部CPを熱心にやっている証券会社を除く^^)と思います(期間がCPより長くなりますので、当然ながら信用判定の基準がCPと微妙に変化するでしょと思いますがそこまでやらないかもね)ので、買入要綱の説明会の後にはブーブー文句垂れレポートが出てくる事でしょう、と予言しておきます(笑)。

まあこれがあったからと言って社債の発行が増えるかというと全然そんな事は無く、単に証券会社の在庫繰りが楽になるだけの話だと思うので、何をわざわざ実施するのよとは思います(CP発行市場と社債発行市場では引受ディーラーまたは引受業者の位置づけが全然違うという話は既に何度かしておりますよね)けど、まあアナウンス効果も含めて別に効果無いとは思いません。ただCP買入みたいな顕著な効果は出ないでしょと思いますので、コスト(発生しないで済むかもしれないけど)と効果を天秤に掛けると割に合わない施策だなあとは思います。

レートはこんな感じだそうで。

『以下の区分で下限利回りを設けたうえで、当該利回りからの利回り較差(ゼロ以上)を入札(下限利回りは状況に応じて変更がありうる)

・残存期間6か月以内:無担保コールレートの誘導目標+40bps
・残存期間6か月超:無担保コールレートの誘導目標+60bps 』

まあそんなもんですかね。これだとAA以上のクラスで格付けが安定している(最近は安定してないのが多いので、安定的と見れるのは希少です)銘柄はハイランチ会長でございますな。

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2009/02/19

○すっかり忘れてたネタ(1月の!金融経済月報)

決定会合があって金融経済月報が出ようという今日になって1月の月報を読むのを忘却していたのを思い出しました(大汗)。今更の話なのですが、こちらはあたくしの備忘メモでもありますので、1月分抜けを補完ということで恐縮至極。

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0901.pdf(1月)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0812.pdf(12月)
PDFで60ページ近くあるのでご注意ください。

よく見ると(よく見なくても)物凄い勢いで判断を下げているのがわかります。月報の概要部分から。

・総括判断

『わが国の景気は大幅に悪化している。』(1月)
『わが国の景気は悪化している。』(12月)

大幅悪化と。

・現状判断要因分解:輸出、企業収益、設備投資

『輸出は大幅に減少している。企業収益は悪化を続けており、設備投資も大幅に減少している。』(1月)
『輸出は減少している。企業収益は減少を続けており、企業の業況感も悪化している。そうしたもとで、設備投資も減少している。』(12月)

業況感のところは短観を受けた部分なので抜けているのですが、輸出の減少は大幅になるわ、企業収益は悪化になるわ、設備投資の減少は大幅になるわとゲロゲーロであります。

・現状判断要因分解:消費、住宅投資、生産

『個人消費は、雇用・所得環境が厳しさを増す中で、弱まっている。また、住宅投資を新設住宅着工戸数でみると、再び減少している。この間、公共投資は低調に推移している。以上のような内外需要を反映し、生産の減少幅はさらに拡大している。』(1月)
『個人消費は、雇用・所得環境が厳しさを増す中で、弱まっている。また、住宅投資は横ばい圏内で推移している。この間、公共投資は低調に推移している。以上のような内外需要を反映し、生産は大幅に減少している。』(12月)

個人消費は変わっていませんが、住宅投資が再び減少というのもキツイ話で、生産は前月に大幅に減少だったのが更に拡大とは・・・・ちーん。


・先行き見通し総括判断

『景気は、当面、悪化を続ける可能性が高い。』(1月)
『景気は、当面、厳しさを増す可能性が高い。』(12月)

厳しさを増すから悪化を続けると更に下げましたと。ところが要因分解するとこちらは前回と同じなのですぞ。ということで、下向きな流れが続けば前月よりも水準が悪化するということなのでしょう。

・先行き見通し要因分解

『すなわち、輸出は、海外経済の減速や為替円高を背景に、減少を続けるとみられる。国内民間需要も、企業の収益や資金調達環境が悪化し、雇用・所得環境も厳しさを増すもとで、さらに弱まっていく可能性が高い。この間、公共投資は低調に推移すると考えられる。以上の需要動向と在庫調整圧力の高まりを背景に、生産は減少を続けるとみられる。』(1月)

『すなわち、輸出は、海外経済の一段の減速や為替円高を背景に、大幅に減少するとみられる。国内民間需要も、企業の収益や資金調達環境が悪化し、雇用・所得環境も厳しさを増すもとで、さらに弱まっていく可能性が高い。この間、公共投資は低調に推移すると考えられる。以上の需要動向と在庫調整圧力を背景に、生産は大幅な減少を続けるとみられる。』(12月)

「大幅な減少」ってのが「減少を続ける」になっておりますが、まあそりゃ大幅減少が無限に続いたらゼロになっちゃいますので、下げ止まりしてくれませんかなあというところですか。この月報の後に出た経済指標の一部には下げ止まりになるのかもという数値出てましたもんね(とポジティブ思考)!


・物価に関しては製品需給の話が出ています!

まずは物価の現状。

『物価の現状をみると、国内企業物価は、国際商品市況の下落を主因に、3か月前比でみて大幅に下落している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、石油製品価格の下落や食料品価格の落ち着きなどを反映して、プラス幅が縮小している。』(1月)

『物価の現状をみると、国内企業物価は、国際商品市況の下落を主因に、3か月前比でみて大幅に下落している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は+2%程度となっており、石油製品価格の下落を主因にプラス幅が縮小している。』(12月)

と、こちらでは食料品価格の落ち着きというのが消費者物価に加わったのですが、これは次に引用する先行き見通しで指摘されていたことの現われです。で、先行き見通しなのですが・・・

『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、国際商品市況の下落や製品需給の緩和などを背景に、当面、下落を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、石油製品価格の下落や食料品価格の落ち着きに加え、経済全体の需給バランスの悪化などを背景に、さらに低下し、マイナスになっていくと予想される。』(1月)

『当面の物価動向についてみると、国内企業物価は、国際商品市況の下落を主因に、下落を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、石油製品価格の下落や食料品価格の落ち着きを反映して、低下していくと予想される。』(12月)

製品需給の緩和というのと需給バランスの悪化というのが見通しにしらっと出ておりまして、いやまあ悪化のオンパレードですねという所であります。


・1月になっても金融環境は厳しくなっていると

マーケットだけ見てるとそうなのかと思ってしまいますが、経済全体では利下げを行っているのに(追加利下げしたのは12月ですぞ)12月より金融環境が厳しいというイメージなのですね。

『わが国の金融環境は、厳しさが増している。コールレートはきわめて低い水準にあるが、大幅に悪化している実体経済活動との比較でみると、緩和度合いは低下している。』(1月)

ちなみに12月は「厳しい方向に急速に変化」だったのですが、各種緩和措置をアナウンスしたり実施した後の1月月報でもこの有様ということですから、これはまあ素直に読めばこれからも追加緩和措置をどういう形かは兎も角実施しますよという話になりますわな。

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2009/02/12

○火曜日の続き、レポ取引に関連していくつか

http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/research07/data/ron0901a.pdf

・カウンターパーティーリスク

リーマン破綻後の市場の影響が良く分かる表がごさいます。ではその影響とは何ぞやというと「カウンターパーティーリスク」って奴でございますな。上記PDFの本文23ページから。

『レポ市場では、カウンターパーティ・リスクやフェイルへの懸念から、資金や債券の運用を停止したり絞込んだりする動きがみられている。』

『GC 取引では、外証との取引を敬遠する動きがみられたほか、都銀や信託でフェイル回避や資金繰りの慎重化から、取引自体を忌避する動きもみられた。このように限られた出し手が資金放出を絞ったことでGC 取引の流動性は低下した。』

資金繰りの予備的需要が増大した場合、最初にやるのは「不要不急の資金放出を控える」となる訳ですから、フェイルに巻き込まれたくないのでレポ取引に慎重というのは致し方ない所です。ということで、火曜日にご紹介した部分で、

『こうした有事においては、信用枠の制約を受けずに資金をやり取りできる有担保資金取引市場が、安全確実な資金の調整手段として重要性を一層増すことになるが、』(本文16ページ)ってあるのですが、レポ市場では資金だけではなく「モノ」のやり取りも発生し、その「モノ」は金と違って色々と種類が沢山あるという点において、据置担保型の有担保取引とは違う側面があるでしょという話ですわな。っていうかそういう指摘って昔からしてる人沢山(あたくしも含めて)いたと思うが。まあそれは兎も角。

『取引を継続した先でも、ターム物や先日付、週末跨ぎの取引を避ける先が増えたほか、JGBCC に参加していない金融機関の中には、JGBCC を介して決済を行っている先を取引の間に入れることで、間接的にカウンターパーティ・リスクの軽減を図る動きがみられた。』

火曜日にご紹介したように、JGBCCが大規模フェイル絶賛継続中だった時にこの逆の事例も見られていました。つまりカウンターパーティーリスクを取ることによってフェイルリスクを回避する動きですな。

『また、流動性が低下し、価格変動の大きい変動利付国債や物価連動国債を担保とする取引を避ける動きが拡大した。』

まあ当然ですな。特に物価連動は担保処分で売るとかやったらエライ事になる(変動の方がまだマシ)ので普通はノーサンキュー状態(ただそれそれ自体はリーマンどうのこうのとは関係ないと思いますが)ですわな。

『この結果、GC レポ・レートは無担保コールレートを大きく上回って推移し日本銀行の補完貸付制度の適用金利を上回る水準まで上昇する場面も散見された。』

で、その図表が本文24ページにあるので見てくださいな。


・フェイルに関して

SC取引に関しては本文24ページから。

『SC 取引では、投資家が国債の貸出を停止または絞込んだことに加え、新発国債の減額発行の影響などから、一部の銘柄の需給が極度にタイト化した。また、このような市場混乱の中でもフェイルを容認しない投資家への国債の引渡しを確実に履行するため、コスト度外視で対象債券を調達する動きが強まったことから、SC レポ・レートが大幅なマイナスとなる銘柄がみられた。この間、市場流動性の低下とショートカバーコストの上昇もあって、意図的なフェイル(いわゆるバッドフェイル)が増加しているとの見方が生じ、バッドフェイルに対する疑心暗鬼が更なる流動性の低下を招く悪循環に陥ったとの指摘が多く聞かれた。』

ということで、レポ市場の課題として本文25ページ目に指摘あるのですけれども、まあ毎度毎度この指摘見てて何だかどうですかねという部分もあるのでツッコミつつ。

『このように短期金融市場の中でもとりわけレポ市場の機能低下が大きかったが、この間、市場関係者からは、レポ市場の当面の課題として、フェイル慣行の定着・見直しなどの「市場慣行の整備」や「清算機関の機能改善と利用促進」を挙げる意見が多く聞かれた。』

まあそうですな。で、日銀のレポートでこういう指摘をしているのですが、肝心の日銀のオペレーションではフェイルって相変わらず不可ですよね。いやまあ「日銀のオペは金融市場への資金需給の調節の為に行っているのだからオペレーションでフェイルすると資金需給に意図さざる変化が生じる結果になるから、フェイルされるのと金融調節の運営に支障を来たすのでフェイル不可」っていう理屈は全くもってその通りなんで反論の余地は無いのですけどね(^^)。

『さらに、未決済残高の積上りによるフェイルの増加や、担保処分損を被った事例を眺め、「国債決済期間の短縮」やリスク管理面で貸借取引より優れた「新現先取引の普及」を検討課題として挙げる先がみられた。』

これはまあ大口参加者の理屈だなあとか思うのですけれども。国債決済期間の短縮をするのだけでも事務的に手間隙掛かる参加者からすれば、決済期間の短縮やら新しい取引導入でコストかける位なら取引先を厳選した方が楽じゃんという話になると思うのですよ。非常に後ろ向きな意見ですが正直なところね。

『わが国では従来から、フェイル慣行が十分に定着していないため、債券・レポ市場における取引の効率性や市場流動性を歪める場面があるとの指摘があった。リーマン証券の破綻に起因してフェイルが多発する状況においてもこれを容認しない先が多いことが、レポ取引の混乱に拍車をかけたとの認識から、市場関係者の間でフェイル慣行に関する問題意識が一段と高まった。』

今回の場合はまあ緊急事態だから仕方ねえなという話もありましたけど、アウトライト取引のキャンセルとかやられちゃった日にはフェイルされた後からキャンセルされたらどうしようとかいう話になるから、本音で言えば「決済されるまで心臓に悪いのでうちの取引はフェイルすんなよ」って話になるかと(苦笑)。

あと、これまた火曜日に申し上げましたが、取引が事後的にキャンセルされた場合に他人勘定の場合、そのキャンセルによって生じたP/Lのブレを受益者に公平に分配(または徴収)という話になると思うのですが、その間に資金の出入りやら決算分配などが出ていたらもう処理がエライコッチャになるリスクがあります(基本的に約定ベースで損益を認識する計理処理になっているから、事後的な約定取り消しに対応するのが大変)ので、まあフェイルよりもキャンセルのリスクが怖いですわな。

#キャンセルといえば相手がデフォルトになった時に債券売ってたりGCレポ買っていたりすると、その分の自己ファンディングが事実上困難というのも他人勘定クオリティでありますがそれはまあフェイルとは別の話。

『フェイルに対する理解不足からフェイル慣行を容認しない先もあるとみられること、また、実務上フェイルに全く対応できない状況は緊急時の市場運営に支障をきたすことから、債券やレポ取引先(特に役員レベル)の理解促進に努めるとともに、これらの先でもフェイル対応が可能となるよう体制整備に向けた働きかけを行うことが重要との意見が多く寄せられた。』

まあそういう事なんでしょうが、「体制整備に金掛ける位なら取引先を厳選」って話になり兼ねないのが低金利クオリティなのであります。


・フェイル慣行の定着に関連して

本文27ページから。

『現行フェイル慣行による安易なフェイル容認は、意図的なフェイルを助長することにもなりかねないとの懸念を払拭し、投資家を含め広く市場参加者がフェイルを受入れやすくするため、フェイルの受け方の経済的便益を高める(フェイルする側にこれを回避する一定のインセンティブを付与する)方向での見直しが必要との意見が少なくなかった。』

さよですな。

『このほか、現行フェイル慣行を悪用し、ショートカバーコストの高い銘柄を意図的にフェイルする行為が増えているとして、フェイルした渡し方がみえないJGBCC 経由決済分を含め、意図的なフェイルを監視・牽制する仕組みの導入を望む向きもあった。』

これはまあリーマン以前からそうなのですが、確信犯的にフェイルする参加者がいるのは指摘されていましたんで、フェイルをした側のコストを高めないといかんでしょという話ではないかと思います。

『このような意見は、再調達コストの請求を可能とする現行フェイル慣行の暫定措置が利用されておらず、手許に滞留する資金の運用益だけではフェイルを受けたデメリットをカバーできない状況を踏まえたものであり、フェイルを受けた不利益と経済的便益が均衡する一定水準、例えば、「取引金額の数%相当額」をペナルティとする提案などがあった。』

で、その辺りの事情については本文26ページのBOX3っていう説明コラムに詳しくございます。

『海外主要市場では、債券・レポ市場の拡大や決済の円滑化のためにフェイルを許容する必要があることから、「多発は避けるべきであるが、発生自体は忌避するべきではない」という認識が定着しており、その多発が回避されるような経済合理性のある仕組みが確保された中で、フェイルが容認される必要があると考えられている。』

で、どういう仕組みかと言えば。

『フェイルの受け方は、フェイル期間中に当該債券を売却することはできないが、同期間中の債券の経過利子に加え、決済未了により手許に滞留する資金の運用益を得ることができる。こうした市場メカニズムを利用した仕組みによってフェイルの発生し易さは自ずとコントロールされると考えられてきた。』

なのですけど、現在の米国の事例ではこうなっています。

『もっとも、現在の米国では、低金利環境下で上記の市場メカニズムが働かず、フェイルが増加し易くなっていることから、市場関係者の間でペナルティの導入が検討されている。』

おお!低金利!!・・・・まあいずこも同じ話でして、日本に関して記述してある次の部分が要するに日本においてフェイル慣行が定着しない背景を説明するものなのでしょう。

『低金利環境の下で、フェイルの経済効果が十分機能しないことも相俟って、フェイル慣行が市場全体で十分に定着しているとは言えないとの指摘がある。』

『なお、低金利環境下では、フェイルした国債の渡し方に十分な経済的デメリットが生じないことから、意図的なフェイルやフェイル慣行の乱用を抑制するための暫定的な取扱いが定められている。これによれば、フェイルの受け方は、国債の渡し方に対して、フェイルされた国債を債券貸借取引等で調達した場合等に要した費用を請求できる(「国債の即時グロス決済に関するガイドライン」)。もっとも、費用の詳細な計算方法が規定されていないこと等もあり、当該取扱いは利用されていない。』


・ファイル慣行の定着状況

本文28ページにあるBOX4を見て微苦笑。

『サーベイ結果をみると、債券やレポ取引においてフェイルを容認する市場参加者は、都銀や証券が中心であり、全体の半数に満たない状況にある。』

どう見ても業者と超アクティブな自己勘定だけです。本当にありがとうございました。

で、その人たちがフェイル慣行定着の為に必要などうのこうのとか言われましてもそれはあまり意味の無い話でして、フェイル容認していない人の意見を聞くのがよろし。

『他方、フェイルを容認していない理由をみると、従来と同様、フェイルを受けた際の社内の取扱いが確立していないとの理由が過半を占めた。』

これ社内の問題だけじゃなくて業界としての会計処理方法の問題とかもあるような気がする。

『一方で、「フェイルを受けた際に余剰資金を運用する機会がない」あるいは「SCレポ市場で国債を別途調達するのが困難」とする先も相応にみられ、市場慣行の整備(例えば、市場取引のタイムスケジュールの見直しやT+0 レポ取引の拡大)も検討課題であることが示唆された。』

この部分は結論が我田引水の香りが。決済期間を短縮しろとかいう話じゃなくて、そもそも建て付けとしてレポでのカバー出来ませんとかいう人とかもいますし、そういう人だと例えばの話SCレポで保有債券を貸出したらフェイル食らいましたとなればその間ポートフォリオ上にある保有債券の売却が出来ないという話になるので、T+0市場を整備すりゃあいいって話では無いと思いますよ。まあ日銀としては決済期間を短縮化してT+0市場を作って欲しいと思っているのは判りますけど、ちょっと強引な気がするだよ。


ということでレポの話に関して色々と引用しましたが、正直このネタに興味があるのは100人も居ないのではないかと思うのでありました(苦笑)。ちなみにもっと訳のわからん話をしますと、レポに関しては現金担保債券貸借取引だから本源的な所有権は元の所有者にあり、当事者間の契約上は取引を清算できそうですが、第三者対抗要件的にどうなのよというのは前から気になっているのですけれども。つまり相手がいきなり破産(破産法に基づく破産)になったときに担保処分を本当の本当に勝手にできるのかってどうなのかしらんとか気にしてる(第三債権者から処分無効とか言われた時に裁判上大丈夫なのって話ね)のですが誰か詳しい人教えてジェネラル!

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2009/02/10

1月26日に出たモノなのですけどね(大汗)。
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/research07/ron0901a.htm

わが国短期金融市場の動向と課題
――東京短期金融市場サーベイ(08/8月)の結果とリーマン・ブラザーズ証券破綻の影響――

本文はこちら(PDFで39ページ)
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/research07/data/ron0901a.pdf

○前半のサーベイはさっくり流して

前半は去年8月に実施したサーベイの結果分析なのですが、誠に残念なことに9月のリーマン破綻以来世の中が変わってしまった面がありますので、まあこちらは参考という話になるかと思いますがその中から少々。

・レポ市場

本文6ページ以降が今何気に話題のレポ市場のお話。

『現金担保付債券貸借(いわゆる「現担レポ」)および買戻・売戻条件付売買(いわゆる「現先」)の取引市場(以下「レポ市場」と総称)の残高は、概ね横這いで推移したが、2008 年3月に急増後、減少に転じている。取引手法としては、現担レポ取引が引続き多く、課題とされてきた、リスク管理や取引の柔軟性に優れた「新現先」取引への移行はみられない。』

で、以下色々と分析しているのですが、まあそちらにあるように減少したのはSCレポ市場の縮小、即ち業者のグロスポジションを縮小する動きが強まってロングショートが減った事に起因するものでしょうと。

『従来から課題とされてきた参加者の拡大といった観点から、この間のレポ取引への取組み状況をみると、新規先は少なく、裾野の広がりに乏しい点に変化はみられない。また、既にレポ取引を行っている先の一部で取引を拡大したとする先もみられたが、大半の先では、取引頻度・ボリュームに大きな変化はないとしている。』

実に残念ですな。

『なお、レポ取引の開始・拡大に必要な事項として、従来と同様、自社システムや事務体制の整備を挙げる先が多いが、次いで運用利回り(収益性)の向上を挙げる先が目立った。また、外資系証券(以下「外証」)を中心に引続きクリアリングバンク・サービスの普及を望む声が聞かれた。』

事務体制やシステム整備をするには金が掛かる訳でして、GCで資金放出するサイド、SCで保有玉を貸し出すサイド(要は投資家)としては、それだけの金と管理の手間を掛けても見合う運用利回りの上乗せが見られないと導入するメリット無いので、結局このあたりって「収益性」の話に収斂されるかと。

あと、クリアリングサービスの話はこれ永遠の課題なのですけれども、上記と同じ話でクリアリングサービスに払う手数料が出ないのでは話にならないですし、昨今の米国ではカストディバンクなのに株価が絶賛下落してどうのこうのとか言われますとそもそも話の前提が壊れるのでありまして、何と申しますかまあ課題の多い話なのですよね。

もっと詳しい話が本文にありますので読んで味噌。



・OIS市場

本文14ページから。

『短期金利デリバティブ取引は、総じて低調に推移した。日本円OIS 取引では、政策金利の変更が当面見通せなかったことや、主たる参加者である外証のリスクテイク余力が低下したこともあり、取引高や想定元本残高は大幅に減少した。』

『また、日本円OIS 市場の参加者は、上位5先で残高の8割強を占めるなど、引続き限定的となっている。この1年間で新規の取引開始先は1先に止まるほか、取引予定のない先が大宗を占めるなど、レポ取引以上に市場参加者の裾野拡大が課題といえる。』

5社で8割というよりもそちらの表にあるように「3社で66.1%」って方が問題でして、まあ参加者3人の市場を捕まえて「市場が織り込む将来の政策金利」とか言われても困るんですよね。そこの取引予定なしの人たちの意見があるのですけれども、「OISを利用したヘッジの必要性を感じていない」「市場参加者が少なく流動性が不足している」ってのもさることながら、「取引単位が大きく、利用しづらい」ってのが13先ありまして、まあそれが一番でかいんじゃないでしょうか。3社で60%以上のシェアで大玉打ち合い(500億で端モノ扱いとかじゃなかったでしたっけ)してりゃあそら実需が入らんわな。

ま、この件に関しては市場の片隅におります弱小参加者としてはプギャーとしか申し上げようがございませんが、では一方で上場モノはどうなっているのでしょうかと申しますと、まあこの構想出たときに散々悪態ついたと思いますけれどもこんな感じ。

『上場金利先物取引に目を転ずると、2007 年12 月物より取引を開始した東京金融取引所の翌日物金利先物取引(無担保コールO/N とGC 取引S/N が対象)は、取引開始後1ヶ月程度は若干の取引がみられたものの、その後は利上げ観測の後退もあって取引が薄くなり、無担保コールO/N 物については2008 年8月以降、GC 取引S/N 物については2008 年1月以降、建玉残高はゼロで推移した。この間、ユーロ円金利先物取引は、取引数量・建玉数量とも減少傾向にあるが、取引の厚みはある程度維持された。』

だってこの商品って取引所主導で頑張って導入したようなもんでしたからねえ。東京金取と言い、東証と言い、(新商品導入の業務目標でもあるのかも知れませんけど、笑)ニーズがあるのか無いのか判らん商品をぶちこんで無駄な投資をしますわなあと思います。はーナムナム。


○で、本題のリーマン破綻の影響に関して

本文16ページ以降。

『同社破綻を受け、無担保コール市場では、カウンターパーティ・リスクをより強く意識するようになった資金の出し手が、外資系金融機関等向けの資金放出を絞込んだため、その市場機能が低下した。こうした有事においては、信用枠の制約を受けずに資金をやり取りできる有担保資金取引市場が、安全確実な資金の調整手段として重要性を一層増すことになるが、現実には、リーマン証券が主要な市場参加者であったレポ取引は前例のない混乱を呈し、その市場機能が大きく低下するなど、同市場の課題が浮き彫りとなった。』


・レポ市場

で、レポ市場の話は19ページから。

『9月15 日に発出された金融庁の業務停止命令や、16 日の裁判所の保全命令では、顧客資産の払戻し等に加え、約定済みの証券取引等について、リーマン証券の判断でその一部の決済を実行できるよう、保全処分等の対象から除外する措置が採られた。しかしながら、実際には、民事再生手続開始の申立により、契約に基づき一括清算となったレポ取引をはじめ、同社との約定済みの国債取引が履行されることはなかった(受払計で2千件、7兆円程度<9月分>)』

結局ね、まあ法律的に手当てしてなかったから仕方ないのですけれども、この時点で初動が遅れて数日間「取引が行くのか行かないのか判らない」という状態となったのが問題でして、本文20ページ目にもその点が述べられています。

『なお、米国では持株会社の破綻後も決済が行われていたことや、日本における業務停止命令や保全処分上の取扱いを眺め、仕掛り中の決済の履行を期待して様子をみていたため、初動が遅れた先が少なくなかった。このため、破綻先に決済方針を確認し、早期に市場参加者にアナウンスする仕組みを求める声が聞かれた。』

この件に関しては(そりゃまあ初ケースだから仕方ないですし、法律的整合性をどう取るのかというのが難しかったのかも知れないけど)保全管財人は何をやっていたのですかとしか申し上げようが無いです。


で、同じく本文20ページにもこのような記述があります。

『これまで経験のない大量のフェイル処理と並行して、初めて破綻対応を迫られた相対決済の相手方やJGBCCでは、対応マニュアルの未整備、破綻対応と通常事務(フェイル処理を含む)を同時に行うための人員不足、異例処理にかかるインフラ整備不足といった問題に直面した。このため、急遽、具体的な処理方法を定め、他部署や関係先の応援を得て緊急に対応する先がみられた。』

ということで、まあこの事態進行中はJGBCCの取引が一時ワケワカメになったのが結構ブーイングでしたわな。本文21ページ。

『JGBCC では、リーマン証券との間で予定されていた決済について、民事再生手続開始の申立のあった16 日に業務方法書の定めに基づき一括清算を実施した。その後、JGBCC は、同社から受取ったうえで受方参加者に引渡す予定であった国債の調達や、同社に引渡す予定であった国債を払方参加者から受取るための資金の確保に取組んだ。』

『前者の国債調達については、JGBCC がリーマン証券から国債の引渡しを受けることができず、受方参加者に対するフェイルが発生した。こうしたフェイルが積上り、他の参加者とJGBCC との間でもフェイルが連鎖する中、JGBCC によるフェイルは、国債調達に数営業日要したことや、T+3 決済による未決済残高の積上り等もあって9月24 日にピークに達した。その後、JGBCC で国債の市場調達を行い受方参加者への引渡しが進むことで、こうしたフェイルは、9月末にかけて解消した。』

で、リーマン破綻後の1週間は結構JGBCC取引がブーイング状態だった理由は以下の通りであります(本文21ページより)。

『この間、参加者側からは、当初は、フェイルの対象債券の割当ルールが見えにくいことや、26 日までの間、処理状況に関する情報開示が行われなかったこと(この結果、JGBCC による国債調達・処分に伴う損失発生懸念や突然のフェイルを避けるため、JGBCC を介さず相対で決済する動きもみられた)等を踏まえ、情報開示の充実を求める声が聞かれた。』

そうそう、この時期まではGCとかでも「JGBCCじゃなくて直取引で」という話になったりしてたらしいですね。

『その後、月末にかけて破綻対応が着実に行われていることが明らかとなってきたこと、JGBCC による国債調達・処分に伴う損失がリーマン証券の差入担保でカバーされたことなどから、JGBCC 利用による破綻対応に関する事務コストやカウンターパーティ・リスクの削減効果を評価する意見が次第に高まった。』

ということで、現在ではそういう評価になっているようです。まあ事前および初動の対応は悪かったけれども事後的には処理が良かったという事なのでしょうか。まあ次に何かあった時(無い方が良いけど基本的にあるものとして考えないとね)に迅速な処理が出来て、状況を参加者にアナウンスして頂ければと思います。


・一般売買取引

この先にフェイルの話があるのですが、その前にちょっと話を一般売買の話に。

本文20ページより。

『相対決済の相手方では、レポ取引については基本契約書に基づいて契約解除をした後に一括清算を行う一方、アウトライト取引では当事者間で破綻の際の取扱いが定められていないため、事後的に契約自体をキャンセルする事例が多くみられた。』

リーマン破綻後に債券市場って急騰した後、下落(先物ベースで言えば16日に210銭上昇して17日から19日に掛けて243銭下落したので週末には前週末比23銭下落)したので、その間のどさくさで売買取引の再構築コストがゼロまたは殆どマイナスにならない瞬間ってのもありまして、まあそのタイミングで契約をキャンセルできれば実損があまり出なかったケースもあるとは思いますが、実損出た場合はリーマンに対する債権が発生する(けど多分取れない)という話になりますな。5年新発国債とか同社は沢山落札してて当然ながら投資家にも販売していた筈ですが、たまたま相場が上昇したあと下落してくれたから取引再構築コストが大して掛からんで済んだのですが、これ上昇しっぱなしだとか、いきなり破産法適用で初日に取引終了確定だったらどうなっていたのでしょうという所です。

で、このレポートでも惜しくも触れていないのですけれども、というかあまりにも細かい話なのでスルーしたのかもとは思いますけど、他人勘定の場合これまたヤヤコシイ話が。即ち、さらっと「契約自体をキャンセルする事例」って言ってますが、これさらっとできるのは手前の損益だけの問題になる自己勘定の業者や投資家などでして、他人勘定だとまたこの事後処理が大変になると思われます。

つまり、取引を事後的にキャンセルすると、その時点に遡及して資産構成が変化してしまいますので、たまたまその前後に信託財産に追加の預け入れや払い出しがあった場合に調整が必要になったりするケースがあるかと。まあ決算跨がな場合ならそんなにややこしくならないと思いますが、決算跨いだ場合は物凄くややこしい事になりそうですし、オープン投信のように毎日基準価格が変動してしかも毎日資金の受け入れ可能とかだと基準価格が遡及訂正になったらもうそれは涙目の展開になるかと。

従いまして、この手の問題が起きたときって自己勘定よりも他人勘定の方がより一層ナーバスになる(そりゃまあ手前の金よりも人様の金の方がよりナーバスになるのは当たり前ですが)のでして、恐らくはリーマン破綻以降に他人勘定が取引する場合にカウンターパーティーの絞り込みやら取引の見直しやら色々と行われたのではないかと思料されます。

で、あとフェイルに関する話が続くのですが、例によって時間と量の関係上明日ちゃんと元気に起きてやる気あったら休日特別版でフォローしますし、そうじゃなかったら木曜に続きを参ります(^^)。

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2009/02/04

○日銀の株式買取復活

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/fss0902a.pdf

前回同様にプルーデンス政策の一環での買取。1ページ目に声明文がございますのでそちらを読んでみましょう。第2段落の途中から。

『わが国の金融システムの現状をみると、全体としては安定性を維持してきましたが、国際金融資本市場における緊張の持続が、株価の下落や信用コストの高まり等を通じて、資金仲介機能と金融機関経営の両面に大きな影響を及ぼしてきています。』

ほほう。

『とくに株価の影響についてみると、わが国金融機関の株式保有額は2000 年代初頭に比べ減少をみましたが、現在発表されつつある今年度第3四半期決算では多額の減損や評価損が計上されるなど、わが国金融機関にとって、株式保有リスクへの対応が引き続き極めて重要な経営課題となっています』

保有していることのリスクですかそうですか・・・・・

ま、持ち合い解消で売らざるを得ませんでした状態だったのが前回でありまして、このときは市場への売却を一旦日銀が受ける事によって市場への売却インパクトを軽減するという形でしたが、今回はそちらは問題になっていませんのでこういう言い方になるのでしょう。でも「株式保有リスク」って何か嫌な響きだなあ。

『こうした状況を踏まえ、日本銀行としては、金融機関による今後の株式保有リスク削減努力を支援し、これを通じて金融システムの安定確保を図る観点から、年度末を控えたこの時期に、金融機関からの株式の買入れを再開することが適当と判断したものです。』

ということで「株式保有リスク削減努力」と来ましたけど、政策投資で持ってるのを今更ここで叩き売りとかするのかなあ。

『日本銀行としては、今回の買入れの対象となった金融機関から、株式保有リスクの削減に向けた中長期的な取組みについて考え方の提示を受け、その後の具体的な取組みをモニターしていく方針です。』

何か売れ売れと言ってるように見えるのがちょっと気になる所です。


・・・・ということで、まあ別にこの施策自体は「今更こんな安いところで株を売るかいな」って思うのですが、「株式保有リスク」って話が出ているのに微妙にアレな物を感じるのは考えすぎですかそうですか。ちなみに基本要綱はこうなっています。前回の直しを行った表示になっているので、編集して前回と今回を比較できるようにしますとこんな感じで。

『この基本要領は、金融機関による株式の削減努力を支援し、これを通じて金融システムの安定確保を図る趣旨から、本行が金融機関の保有する株式の買入等を行うために必要な基本的事項を定めるものとする。』(今回)

『この基本要領は、金融機関による保有株式の価格変動リスク軽減努力をさらに促し、金融システムの安定を確保するとともに、金融機関が不良債権問題の克服に着実に取り組める環境の整備を図る趣旨から、本行が金融機関の保有する株式の買入等を行うために必要な基本的事項を定めるものとする。』(前回)

価格変動リスクじゃなくて削減努力支援ってのが何とも。いやまあとりあえず適当な大義名分が無いからそういう言い方にしたっつー事なのかもしれませんけど・・・・・

前回は金融機関保有株式自動売却状態だったのに「削減支援」という言い方じゃ無かったのに今回入るのもオモシロイですねという所ですが、今回はそーゆーことで自動売却状態じゃあないので、そもそも論として金融機関の保有株式売却が市場への圧力になっていませんのであまり市場にはインパクトないんでしょう、と思ったら株式市場も後場寄り付き後30分くらいしか反応してませんでしたね(^^)。


○毎度お馴染み国債買入明細などなど

http://www.boj.or.jp/type/stat/boj_stat/mei/mei0901.htm

例によってあたくしの手控えエクセルファイルで計算させた結果ですが、1月は月を通して長めの所が弱めに推移(というか12月の末にかけての日米の超長期爆発振りが凄かったのでその反動なのだと思いますが)したので、割と長いところが入ったでござるの巻。

増加額の額面14212億円に対して1年以内に償還を迎える銘柄の打ち込みが1月は3561億円と近来稀に見る少なめの展開。これはまあ市場環境の影響とか次の大量償還が3月ですからまだ時間が有りますねとか何ですけれども、たまにはやれば出来るじゃん状態になるんですね(笑)。

ということで、2月買入オファー分からはゾーン別入札になりましたので、この楽しみ方もまた変わってくるのでしょうな。とりあえずこの前のゾーン別輪番は1年以内と1年から10年の2本立てでしたが、1年から10年の方も短いゾーンが入った雰囲気でございますけどね。

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2009/01/29

では昨日の続きから。

○金融環境の認識とかCP買い入れに関する議論とか

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g081219.pdf

CPの買い入れを決定しましたという議論の部分から。

『委員は、現在の情勢を踏まえると、年度末に向けて企業金融が一段と逼迫する可能性があることから、一段と踏み込んだ企業金融円滑化措置が必要との認識を共有した。その上で、委員は、CP の買入れを時限的に実施する必要があるとの見方で一致した。』

ということで、その理由。

『ある委員は、C P を金融機関から買い入れることは、その分だけ、金融機関の資本制約が緩和されることになるため、現在、貸出姿勢が厳しくなっている中小企業などへの貸出が増加することも期待できると述べた。その上で、この委員は、この効果は金融機関の行動を通じて発揮されるため、日本銀行の政策意図を金融機関と共有することが重要と述べた。』

ま、微妙に強引な部分もあるけど、「CP買入で大企業だけ救済するのか」というような批判に対する理屈的な反論としてはこうなりますという話でござんす。

『複数の委員は、日本銀行がC P を買い入れることが呼び水となり、C P 市場の流動性が高まるという効果も期待できると述べた。一人の委員は、日本銀行のC P 買入れは、C P 市場の価格発見機能にもプラスの効果を与えると付け加えた。』

まあそうですかね。

『委員は、中央銀行が個別企業の信用リスクをとる政策に踏み込むことは異例のことであるとの認識を共有した。また、多くの委員は、中央銀行の財務の健全性と通貨に対する信認を確保する手当てが必要と述べた。こうした議論を経て、委員は、信用リスクをとる政策について、どの範囲でどの程度の期間行うことが必要かつ適切か、また、中央銀行の財務の健全性と通貨に対する信認を確保するために、政府との関係も含めどのような対応が必要か、といった点から検討する必要があるとの見解で一致した。』

ま、ここで述べられている話をもうちょっと身も蓋も無く解釈しますと、「政府は日銀にやれやれ言うだけで、いざとなったら梯子外す攻撃をしないようにね」って事でしょ。まあつまり、CP買ったら発行体がお父さんになってしまった(今後もし社債買うとなったら益々問題が発生しやすくなる)時に急に政府というか政治サイドが逃げモードになってしまい、「日銀が勝手にやりやがってケシカラン」みたいな話になったら適わんがなって所なんでしょうと勝手に解釈しとるんだが。

FRBみたいに中央銀行が財政政策やってる状態に出来るのは、政府とのがっちりとした提携(品の無い言い方をすれば「握り」)が出来ていて、いきなり「うちは知らん」攻撃が出ない事というのが重要だと思われますのでね(従って財政政策やる主体と金融政策やる主体の握りが出来ないユーロエリアは中々しんどいですねという話になるのですが)。

で、その金融環境の政策委員の認識ですが。

『わが国の金融環境について、委員は、全体として、厳しい方向に急速に変化しているとの見方で一致した。』

さいですな。

『複数の委員は、信用スプレッドの上昇によって、C P ・社債の発行金利が上昇しているほか、銀行の貸出金利も幾分上昇している可能性があり、このところ、企業の資金調達コストは強含んでいると述べた。企業の資金調達環境について、何人かの委員は、C P ・社債の発行減少が続いているほか、企業からみた金融機関の貸出態度は、12 月短観で、大企業まで「厳しい」超となるなど、アベイラビリティの面で厳しさを増しているとの認識を示した。また、複数の委員は、C P ・社債の発行環境が悪化する中で、金融機関は大企業向け与信を増加させており、金融機関の資本制約のもとで中小企業金融を巡る環境が悪化していると述べた。』

ということで、まあこの辺りは12月の声明文および金融経済月報で指摘されていた話と同じですな。当たり前ですが。

『こうした議論を経て、委員は、企業の資金調達環境は一段と厳しさを増しており、低金利の効果が、実体経済に浸透しにくくなっているとの認識を共有した。』

だから10月にさっさとやっておけば良かったんですけど、どうもこの部分に関してはお得意のフォワード・ルッキングで早期対処して欲しかったですね。市場なんてもう動き出したらあっという間に暴走しますから。

#景気認識の話とかもありますが、まあ月報などでも触れましたのでパス

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2009/01/28

お題「しつこくCPの話/12月18、19日決定会合議事要旨より」

まずは昨日書いたCPレート公表に関する補足を。

○レートがまともに透けて見える事は無いようですが・・・・

珍しくパブコメスルーで今般いきなり実施となった(短期市場フォーラムとかで検討したというのは判るが、その時と今は事情が違うと思うのですけどねえ)CP出合いレートの公表ですが、昨日あたくし「発行繁忙日じゃない時なんかだとうっかりすると発行体の条件バレバレになりますがな」という話をしましたですが、さすがにこれは避けられそうです。

と申しますのは、日銀の公表文にはそこまで詳しくは書いて無かった(と思う)のですが、出合いの平均レート公表という趣旨からしまして、発行が1社しかなかったようなケースですとレートの公表は行われないようですな。ちょっとだけ安心しました。

とは申しましても、CPって個別発行体にとってのオーダーメイド的な性格がより強いもの(資金繰りなのですから)でして、逆に投資家の方も短期資金運用の事情(大口の入出金が確定してるとか)によって償還日や発行日が1日違うだけで全然ニーズが違ってくるようなケースも多々あるモノでして、GCレポ取引みたいなある程度定型化されているもの(でもやっぱり色んな個別事情でぶれますが)とはまた違う金融商品でございまする。

そーゆー商品の出合いレートを実質的に取引が全部集中されているほふりが個社名出ないとは言え、堂々集計して公表して良いものなのでしょうかという点はちょっと何だかねえ感があるのですけど(そんなの別に公開しないで日銀だけ把握しておけば良いじゃんという感じですけどねえ・・・)。

つまり、昨日も申し上げましたが、CPというのは基本的には私募形式で発行されているものでありまして、公募発行していない事の意味を考えた方が宜しいのではないかという話ですわな。「透明性の向上」というのが何か錦の御旗みたいな扱いになっているのですが、もともと私募発行という事になっているのはそれなりの理由がある訳でして、CPの場合で言えば、あたくしが思うに、上記したような個別事情によって色々なケースがある金融商品なので、公募形式よりもより機動的かつ個別対応のしやすい少人数私募発行をしているという事ではないかと。然るに、あたかも錦の御旗の如く「透明性向上」を持ち出して少人数私募発行されている取引を、集計値とは言え、日々細かに公表するというのは、CPの商品の法的な建て付けを形骸化する畏れがありませんですかねえ。と思うのですけど。

なお、あたくしも何となくCPレートの話をしてますし、情報ベンダーなどでも発行レートがどうのこうのと割と話は出るんですけど、あれって全て「市場推計」の話でして(従いましてあたくしがCPレートの話をするときはおおまかな話だけで基本的に個社の条件がわかるような具体的な書きかたはしないようにしてますし、やや具体的な数字らしきものが出る時ってのはどっかのプロ向け情報ベンダーやらプロ向け市場レポートで出た後付けのお話でございますので念の為申し添えます)、まあそういうベースのファジーなお話なのですよね(私募だから別に世間に公表する義理は無いので表に出ない発行だって沢山ある、と思う)。然るに、ほふりがCP発行レート公表って事になりますと、この人は実質的に取引のほぼ全てを把握しているのでありまして、出てくるものも正真正銘マジレートとなりますので、これはやはりどうなのかと思うのでございます。

本当に透明性向上云々が然るべきものだと言うのであれば、そもそもCPを公募発行で行うべきとか、まあそういう根本的なお話をして頂きたいと思うのでありますけどね。なし崩しみたいなのは如何なものかと。

#何でもかんでも「透明性向上」するなら通常の政策委員会も含めて全部ライブ中継くらいして欲しいものですな(=ただの悪態)

あとね、これまた昨日の繰り返しになりますけどね、こーゆーの公表することによって市場のボラティリティって基本的に上がる方向になるんですよ。その学問的理由は無学のあたくしにはさっぱり判らないですが、市場の片隅でささやかなポジションを持ってきゃあきゃあ言いながらメシ食ってる経験値はそのように申しておりますです、はい。で、まあそういう性質がある施策を危機モードに出すっていうのはタイミングどうなのよと。昨日なんか金融ファクシミリ新聞が「BIS規制の一時凍結を検討も」みたいな記事出してましたけど、まあ流れって今はそっちのほうでしょ??

ま、本件に関しては透明性向上を進めて本来公募発行で行えば市場がもっと拡大するのではないかという論点もアリだとは思いますけどね。



○12月19日会合より:金融政策運営に関わる部分だけで恐縮ですが

CP話かいてたら思わず長くなってしまったのでサラサラと(多分明日に続く)。

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g081219.pdf

本文9ページから15ページのあたりです。

・利下げ反対論と市場機能

野田審議委員の意見ですな。

『一人の委員は、現在の政策金利の水準は既に極めて緩和的であり、0.1% への利下げは、景気刺激策としての効果が限定的である一方、金融機関が資金を市場に放出するインセンティブが低下し、市場取引が不活発になるため、市場機能が大きく損なわれるリスクが高いことから、現在の水準を維持すべきとの意見を表明した。』

白川総裁のいう「市場機能」を突き詰めるとこういう話になるのでして、やはりあたくし思うに「市場機能」論ってのは危機脱出するまではあまり持ち出さない方が良いのではないかなあと思いました。利下げの反対理由を見るとそのあたりがなお良く見えてくると思いますので引用。

『野田委員は、@ 市場機能の低下が問題となる中で、それを大きく減じることは不適切であること、すなわち、市場機能を維持するためには、補完当座預金制度の適用利率、およびその政策金利とのスプレッドを一定水準以上にする必要があり、0.1% への利下げが行われると、両者間のスプレッドが確保されないため、金融機関が資金を市場に放出するインセンティブが損なわれ、市場取引が不活発になるリスクが高いこと、A 現在の政策金利の水準は既に極めて緩和的であり、0.1% への利下げは景気刺激効果が限定的な一方、市場機能の低下というデメリットが大きいため、むしろ、高止まりを続けているターム物金利に働きかけることが適当であることから、反対した。』

で、1番にあるのは「市場機能」という論点からすればまさにその通りとしか申し上げようが無いのでして、まあ要は市場機能という話を全面に出すと話がややこしくなるから止めましょうね白川総裁(はぁと)という所でしょうな。

で、この2番のところも注目なのですけど、実は野田審議委員は単純に利下げ反対しているのではなくて『高止まりを続けているターム物金利に働きかけることが適当である』と言ってまして、金利下げることに関して単純に反対してる訳ではないのですね、というのは判りました。


・補完貸付金利と市場機能

補完貸付金利0%(要は付利撤廃)を主張したのは水野審議委員。

『水野委員は、先行きターム物レートへの働きかけを強める可能性もある中、必要に応じて潤沢な資金供給を行うと、無担保コールレート( オーバーナイト物) に低下圧力が生じるが、自然なレート形成を損なわないために、この際、付利水準は0%とするのが望ましいとして、反対した。』

これまた「市場機能」論を詰めますとこうなるというのと、将来のターム物誘導をする時には恐らく資金をジャンジャン出しますよ攻撃になる筈だから、足元金利をゼロまで下がるようにしておいたほうが良かろうという話ですね。

とまあそういう事で、市場機能論を散々言ってるのですけど、今の政策の建て付けで市場機能というのも何か無理があるんですよねという所なんですよね。


・金融緩和をどう行いますかという話

検討の概要の最初の部分から。

『一人の委員は、政策運営の考え方として、@ 現在は、企業金融の目詰まりを解消するための対応を進める必要があること、A 政策金利を引き下げるかどうかについては、企業金融が目詰まりを起こしている中での効果と市場機能低下というデメリットの両方の観点から考える必要があることを指摘した。』

結局ね、10月末のところで超過準備付利の話がやたらクローズアップされちゃって、そこに利下げが入ってしまう事によって、企業金融目詰まり対策が出遅れてしまったというのが問題をややこしくした原因だと思うんですよね。結果を見れば極端な話利下げよりもCP買入を先にやっていた方が、実質的な緩和効果が先に出てたでしょという事ですわな。

『金利引き下げの効果について、ある委員は、10 月末の政策金利引き下げにもかかわらず、インターバンクのターム物金利はむしろ上昇しており、今回、更に政策金利を引き下げたからといって、カウンターパーティ・リスクへの警戒感が強い中で、ターム物金利が大きく低下するとは限らないと述べた。』

このとき利下げだけだったら確かにそうでしたわなという所です。

『この点について、別の委員は、0.1% への利下げよりも、高止まりを続けているターム物金利に働きかける方が望ましいとの認識を示した。これに対して、何人かの委員は、企業金融円滑化措置とセットで政策金利を引き下げれば、金利引き下げの効果が実体経済に波及しやすくなり、効果が見込まれると述べた』

まあそういうことで。


・今後の方向性ですけど

先行きの金融政策の運営についての議論部分をまともに引用。

『まず、政策金利の引き下げ余地について、何人かの委員は、0.1% が市場機能を維持するぎりぎりの水準との見解を示した。』

『一方、ある委員は、経済情勢が今後一段と悪化する可能性が高い中で、政策金利を0.1% から更に引き下げる選択肢も排除すべきでないとの見方を述べた。』

ほっほー。

『政策金利の引き下げ余地が乏しい中での追加的な政策対応について、ある委員は、今後は、より長めの金利への働きかけや企業金融円滑化措置に重点を移していく必要があると述べた。何人かの委員は、ターム物金利が高止まっている状況を踏まえると、ターム物金利への働きかけを強めることが一案になると述べた。』

で、具体的にどうするのかが見えないのが実にこうアレなのですが(一番簡単なのは指値オペをタームで打てばよいのですが、その場合市場機能というのはもう寝言になってしまいます^^)、水野審議委員の先ほどの意見が一つの参考に。要するに明示的なゼロ金利をするかどうかは兎も角として、資金供給を増やして量的緩和状態にするというような感じなのでしょうかね。

ま、それは良いのですが、何故か現在のオペレーションがGCレポレートをあまり下げないような運営になっているのは何なんでしょと軽く悪態ついて時間の都合上本日はこの辺で明日に続くでござるの巻。

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2009/01/27

お題「遅れましたが決定会合/日銀から出た短期関連の話を少々」

○今更ですが決定会合での経済見通し関連をサラサラと

金融経済月報の話もしないといかんのですが、まあ今更でありますので、とりあえず今日は声明文の比較と展望レポートの中間レビューから参りましょ。

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/k090122.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc/k081219.pdf(前回)

当面の金融政策運営について(12月は「金融政策の変更について」ですが^^)という最初のところですけれどもにゃ。

『わが国の経済情勢をみると、海外経済の減速により輸出が大幅に減少していることに加え、企業収益や家計の雇用・所得環境が悪化する中で、内需も弱まっている。』(1月)
『わが国の経済情勢をみると、海外経済の減速により輸出が減少していることに加え、企業収益や家計の雇用・所得環境が悪化する中で、内需も弱まっている。』(12月)

輸出が「大幅に」減少とグレードアップ(というかグレードダウンですが)ですね!


『金融環境をみると、厳しさが増している。』(1月)
『金融環境をみると、全体として厳しい方向に急速に変化している。』(12月)

金融環境は益々悪化となってます。まあ企業のキャッシュフローが悪化していますという話でしょう。でもまあCP発行市場とか、ターム物金利の動向という意味で言えば、マーケット面だけで言えば12月の方がしんどかったですね。まあこのあたり詳しくは月報全文を見たほうが良いです。


『これらを背景に、わが国の景気は大幅に悪化しており、当面、悪化を続ける可能性が高い。』(1月)
『これらを背景に、わが国の景気は悪化しており、当面、厳しさを増す可能性が高い。』(12月)

大幅悪化だわ今後も悪化と、ナムナム。


『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、石油製品価格の下落や食料品価格の落ち着きを反映して足もと低下しており、春頃にかけては、需給バランスの悪化も加わって、マイナスになっていくとみられる。』(1月)
『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、足もと+2%程度となっているが、石油製品価格の下落や食料品価格の落ち着きを反映して、低下していくと予想される。』(12月)

展望レポートの時点(10月)には片足マイナス予測でしたが、今回の見直しで思いっきりマイナスの世界に入りましたね。

『景気・物価の先行きについては、2010 年度までの中心的な見通しとしては、中長期的な成長期待やインフレ予想が大きく変化しないもとで、2009 年度後半以降、国際金融資本市場が落ち着きを取り戻し、海外経済が減速局面を脱するにつれ、わが国経済も持ち直し、物価の下落幅も縮小していく姿が想定される。こうした下で、見通し期間の後半には、物価安定のもとでの持続的成長経路へ復していく展望が拓けるとみられるものの、このような見通しを巡る不確実性は高い。』(1月)

『経済・物価の先行きについては、物価安定のもとでの持続的な成長経路に復していく、との見通しに関する不確実性は高く、世界経済の減速や国際金融資本市場の動揺を踏まえると、わが国経済の回復に向けた条件が整うには、相応の時間を要するとみられる。』(12月)

回復に関連する表現の変化が泣けますよね。12月は「わが国経済の回復に向けた条件が整う」という書き方だったのが1月「物価安定のもとでの持続的成長経路へ復していく展望が拓ける」となってまして、回復の文言も無いですかというお話で(涙)。

で、その次がリスク要因ですが、こちらは比較じゃなくて前回対比増えた分ということで、今回増えた分は以下の通りでありまする。

『企業の中長期的な成長期待が低下し、設備や雇用の調整圧力が高まることを通じて、国内民間需要が一層下振れるリスクもある。』

『金融環境が厳しさを増す場合には、金融面から実体経済への下押し圧力が高まり、金融と実体経済の負の相乗作用が強まる可能性がある。』

『この場合(引用者追記:物価が下振れた場合)、企業や家計の中長期的なインフレ予想が下振れるリスクに注意する必要がある。』

ということで、まあ下げまくりですわな。金融環境云々は何か証文の出し遅れ感があるのですけれども、まあ今回企業金融関連の施策を出したからってことなんでしょうね。


で、展望レポートの中間レビューの部分ですが、2010年の見通しで何とか明るくしていますが、来年度の数値は物価も成長率もマイナスという事になりますので、これはまあ普通に考えて来年度は金融政策は緩和的に推移させるしかないでしょという所かとは存じます。思いっきりマイナスの数字がでまくっているのが今回のポイントだと思います。

#と、ざっとで恐縮でございました


○短期市場レポートが出ました

http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/research07/ron0901a.htm
わが国短期金融市場の動向と課題
――東京短期金融市場サーベイ(08/8月)の結果とリーマン・ブラザーズ証券破綻の影響――

本文はこちら。
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/research07/data/ron0901a.pdf

えーっと、これは中々の大作でありまして、中々の大作なだけにまだ実は全部読めていない(ちょっと忙しいもんで)ので、詳しくはまた改めてですけど、HTMLの方から少々。

『日本銀行は、わが国短期金融市場の機能向上への取組みの一環として、2007年8月以降の1年間を対象に、サブプライム住宅ローン問題が深刻化する中での短期金融市場取引の動向や参加者構造の変化と、同市場の諸課題への取組み状況を点検するため、「東京短期金融市場サーベイ」を実施した。』

ほうほう。

『また、同サーベイ実施直後の2008年9月中旬に発生したリーマン・ブラザーズ証券の破綻について、市場参加者への追加ヒアリング等を通じて得られた情報をもとに、破綻直後の短期金融市場への影響のほか、とくに市場機能が大きく低下したレポ市場について今後の検討課題を取りまとめた。ポイントは以下のとおりである。』

ということでポイントが並んでいるのですが、ちょっと微妙だなと思ったのは、市場動向の計数関連の部分が2008年7月末というマーケットがグチャグチャになる前の話になっているので、前半と後半で別世界の話になっている所。HTMLのまとめで言えば4番目までが昨年7月末までのレビューで5番目がその後の話になっておりますので、中身読まないで見出しだけ読むと勘違いしそう(勘違いするほうが悪いと言えばそれまでですけれども)な所っすな。

で、その見出し見ててちょっとあっちゃーと思ったのはこの辺ですかね。

『3.レポ市場については、引続き増加したGC取引では、T+0やT+1スタートの取引やターム物の取引が拡大するなど、前向きな動きもみられた。』

で、ターム物の方は良いのですが、手前スタート取引の方でありまして・・・・・

いやまあ平常モードだとこれでも良いのですけれども、そもそも証券決済がT+3で動いている中なので、証券決済によって生じた資金繰りの尻をあわせるという意味で言えば別にT+0やT+1が増えなくても良い話で、手前の取引が増えて結構という認識は「有担保資金取引市場」という面を重視してると思うのです。で、その市場を育成するという面も考えて、オペも工夫していたと思うのですよ。

『また、翌日物取引をみると、取引の中心であるT+2 スタートが増加した。この間、T+3 スタートの取引が減少する一方、T+1 やT+0 スタートの取引が着実に増加した。T+1 やT+0 スタート取引の増加の要因として、日本銀行の資金供給オペレーションが、T+1 スタートで安定的にオファーされるようになったことを指摘する先が多い。』(これは本文の10ページです)

さっきも言ったように、平常モードだとこれでも良いのですけど、いざ金融市場にストレスが掛かって資金繰り確保に市場参加者が走り回るという状態になりますと、当然ながらショートファンディングよりは早めに資金を確保しようとなりますから、証券決済のT+3の尻が固まった時点から資金確保をするインセンティブが生じる訳ですよ。

然るに、危機モードにおいても、T+0やT+1の取引が活発化するのが「前向きな動き」という認識のままで資金供給オペの運営を行っておりますと、当然ながら資金繰り確保をしたい市場参加者との間にギャップが生じちゃう訳ですな。

10月以降の資金の逼迫感が高まりに対して、GCレポレートの上昇を抑える為にもうちょっと先日付スタートの資金供給したほうが良いのではないかと、あたくしも何度も指摘したと思うのですが、中々先日付オペのオファーが出なかったのはこの辺りの認識から、あまりT+2以降の先日付モード資金供給を出したくなかった(出すと折角増えたT+0やT+1取引がT+2やT+3に食われちゃうから)のかなあなどと大変に意地の悪い事を思いましたです。

え、意地が悪すぎですかね(苦笑)。

もっとちゃんとしたレビューは追々。



○やるなら市場が落ち着いてからではないかと・・・・(CPレート関連)

暫く前に金融ファクシミリ新聞で報道されてて、これは発行体が文句言って流れるでしょうと思ってたら何と表に出てしまいましたのでビックリの巻。

http://www.boj.or.jp/type/release/nt_cr09/re0901b.htm
CP平均発行レート統計の拡充に関する証券保管振替機構との合意について

業種と格付けと期間の区分で割と細かくレートが公表されるとの事ですな。

えーっと、さっきの短期市場レポートの本文の頭の方に、本件に関しての話も書いてありましてですな、思いっきり本文1ページ目なんですけどね。

『I. 東京短期金融市場サーベイ

1.短期金融市場の機能向上への取組みとサーベイ実施の狙い

日本銀行では、2006 年3月の量的緩和政策解除後の短期金融市場の自律的な機能向上プロセスを支援・促進するため、2007 年2月から約半年間のプロジェクトとして「短期金融市場の機能向上への取組み」(以下「取組み」)を推進した。同プロジェクトでは、主として実務的な視点から、短期金融市場における課題の洗出しを行うとともに、早期に対応が可能なものについては順次実現を図ってきた。』

で、途中を端折りまして、その結果として今回の施策が出ましたと。

『また、市場に関する情報を更に充実させるため、証券保管振替機構や市場参加者の協力を得て、CP 発行レート統計の見直し(本年秋を目途に実施予定)に取組んでいる。』

・・・・・・・うーむ。


えーっとですね、この件に関しては去年の7月に実施した東京短期金融市場サーベイの結果を受けたことなのか、それとも量的緩和解除後の「取組み」の結果を受けてのことなのか存じませんけど、どちらにしてもCP市場がおかしくなる前に企画された話を、オペ効果によって回復に向かいつつありますけれども、まあ市場が変になった後に通常運転状態で実施するのってどうなのよという気が思いっきりするのですけれども。以下理由をつらつらとあまり整理しないままに。

#いやまあ実施予定の今年の秋に企業金融関連の市場が完全回復していれば杞憂でして、当然ながらその方が良いのは言うまでもありませんが

・CPは少人数私募発行しているのですがという論点

まあ確かに個社名は出てこないと言ってしまえばそれまでですが、CPってのは別に国債市場みたいなのと違いまして、定例的にいつも均等に発行が出る訳ではないので、うっかりすると個別の発行条件がモロに判ってしまう惧れがございます。いやまあ公募発行している債券などだったらそれが当然なのですが、CPは少人数私募で発行しているという法律上の建てつけがありまして、あくまでもプロ同士の相対の世界で運営という話になっております(ので、随時に相対で発行されているような発行体あるいは投資家にとってオーダーメイド的なものも当然ながらある)。それを場合によっては個別の発行条件が透けて見えてしまうような細かい公表をするというのは、何のために少人数私募形式の法律上の建てつけにしたのかという趣旨にそぐわないのではないかと思われるのでありますが。


・個社別のレートが開いている時に出すのはどうなのかという論点

ま、上記の話は「でもやっぱりこれは公募でやるべき」という論点もありますので、まあ現状を是とした上での理屈なんですけど(笑)、それはそれとして、この話が最初に出た時と比較した場合、現在って個社別のレート較差がアホのように拡大している(オペ効果で改善傾向ですが)ので、その日の発行状況によっては同じ業種で同じ格付けの同じ期間でも、加重平均した出来上がりのレートが高かったり低かったりというような事態が生じるのではないかという気が物凄くするのであります。

そうなるとどういう話になるかと言いますと、レートが急に上がったり下がったりするような事態を見て、その度に「企業金融が逼迫した」だの「緩んだ」だの一々反応する人が出てきたりしますと、変なバックラッシュが起きる可能性これありという所でありまして、クレジット市場に変な悪影響(スプレッドのボラを増幅する装置になるとか)与えるとか、それこそ下手すると個別企業のネームまで出てきてややこしい事になりかねませんがなという懸念なのであります。

#例によってあたくしお得意の懸念のし過ぎだと思いたいのですが、リーマン飛んだ時にレポ市場で法律的な問題が思いっきり発生したことを思います(この件は前々から悪態ついておりましたんですよ)と、危機の時には何が起きるか判らんと思わナイト。

また、当然ながらこの数字が出ることによって、まあもちろん時価でも何でもないとは言え、日銀の肝いりでほふりが出した出合いレート集計となりますと、それなりにオーソライズされた数字と見做される訳でして、その数字が何となく時価みたいなイメージになったりするような、数字一人歩きリスクもあるかと。

で、今申し上げたように日によってレートが上がったり下がったりとなりますと、実際問題としては全然そうじゃないとしても「CPってのは結構時価が乱高下するもんだ」というような話を判らん人たち(またの名を会議が好きな偉い人^^)はするのでありまして、「買って償還まで持ち切り」という本当の意味での最終投資家からしますと却って投資しにくくなるという懸念(杞憂とも言う^^)もあるのですよね。保有期間中に妙に乱高下するマーケットってのは持ち切り前提の投資家的には入りずらいもんですから。


ということで、他に論点がありそうな気がしますけど、この施策ってのは少なくとも市場が正常化する前に出すのはちょっと何だかねという感じがしますがどうでしょ。

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2009/01/23

お題「決定会合いろいろと」

色々とあったのでちゃんと全部網羅出来るかなという感じですけど(汗)、決定事項はたくさんですよと。

金利据え置き、展望レポート中間評価、
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/k090122.pdf

金融企業金融に係る金融商品の買入れについて
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/un0901d.pdf

CP買入基本要綱
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/mok0901a.pdf

輪番オペのゾーニング関連
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/mok0901b.pdf(要綱)
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/mok0901c.pdf(概要)

投資法人債の適格担保化関連
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/mok0901e.pdf

これはテクニカルな話ですが割引短期国債と政府短期証券が国庫短期証券に統合される件に関連して
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/mok0901d.pdf


で、たくさんありますのでまずはCP買入と社債関連に関する所から。

○CP買入に関して

買入の概要は
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/un0901d.pdf
の3ページ目にありまして、基本要綱は
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/mok0901a.pdf
ですな。

・買入銘柄は適格担保銘柄

買入対象は『CPおよびABCP(担保適格かつa-1 格相当、既発行、残存期間3か月以内)』となっております。ここのポイントは何と言っても『担保適格』でございまして、a-1だから全部買うという訳では無い所に注意が必要。

ま、短期格付のa-1(R&I式の表記ですな)というのはかなーり広い範囲になりますので、形式要件でa-1全部おっけーにしちゃうとちょっとどうなのよというのもありましたので、結局担保適格銘柄が対象となりました。a-2でも担保適格っていうのもありますし、海外格付け機関の2格と国内の2格はだいぶ違うので、『a-1 格相当』として「相当」をつけましたということですかね。

こりゃまた信用判定死ぬほど忙しそうで大変だと思いますが、措置としては極めて妥当だったと思います。


・3か月もので0.4%を切るものは入りませんよ

『3.買入方式

コンベンショナル方式による入札

以下の区分で下限利回り(CP・ABCP 共通)を設けたうえで、当該利回りからの利回り較差(ゼロ以上)を入札(下限利回りは状況に応じて変更がありうる)

残存期間1か月以内:無担保コールレートの誘導目標+20bps
残存期間1か月超3か月以内:無担保コールレートの誘導目標+30bps』

最初ロイター英語版のヘッドライン見たとき指値かと一瞬焦ったのですが、上記のレートが入札下限利回りになるということですから、まあ期末越え3か月もののレートの方にプレミアムがついている(期末のリスクアセット保有プレミアムだから当たり前)のでそっちが入るとして、最近のCP発行市場の状況を勘案すると上位格付け銘柄のレート押し下げはしませんよという所でしょう。例えば最上位格の電力会社さんの3か月物CPレートとかは0.4%を思いっきり下回っていますので、そういう銘柄はとりあえず入りませんなあという所ですね。

で、入札はレート競争入札になりますので、とりあえずは発行レートが高い銘柄から順に入って行くという流れになりますので、これは「目詰まり対策」という意味では一番正しい方式。正直言って電力CPばかりバカスカ購入されても意味無いですもんね。


・買入総額3兆円とな

『4.買入額

買入総額の残高上限は3兆円(CP・ABCP 合計)

発行体別の買入残高の上限は1000 億円(CP・ABCP 共通)

―― ただし、買入残高が、昨年7 月から12 月の各月末の発行残高のうち最大の残高の25%を超えた発行体については、償還により買入残高が当該金額を下回るまで、買入れ対象から除外』

2兆円と報道されていましたが、3兆ってまあ多いかもです。これはまあ足りなきゃ増やすでしょうし、別に買わなきゃいけないものでもなく、そもそも論で言えば市場がちゃんと機能していればこーゆー政策を実施しなくても良いはずでありますと考えますと、買い切れなくても(ちゃんと政策効果が出ていれば)それはそれで良しという事でしょう。

発行体別の買入残高上限はまあこんなもんでしょう。レートの高い順に入って行きますけど、別に全部が全部入る訳では無いですから、「早い者勝ち」であったりするのですけどね(^^)。

で、時限措置になってますけど、9月末の所に向けては状況によってはまた実施という事になるんでしょう。そのままロールオーバーになるかもしれませんけど(^^)。

なお、要綱にきっちり書いてますが、REIT発行のCPは対象除外です。まあそりゃそうだという感じですけどね。


○投資法人債の適格担保化

後でご紹介しますが、『企業金融に係る金融商品の買入れについて』の基本的な考え方に『個別企業への恣意的な資金配分となることを回避すること』って思いっきり書いてある中でモロにREITがドカンと出てくるのも何だか妙な感じが致しますけれども、まあ買入と適格担保化じゃあ全然話のラベルが違いますので・・・・とは思いますが何だか国土交(以下保身の為自粛^^)いやまあいいです。

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/mok0901e.pdf
に書いてますけど、要するにAA格の投資法人債が適格担保になるのですけれども、信用判定をこれも行いますし、そもそも適格担保にするというだけの話でありますから、実際の効果としてはどうなのかねという所で。

ま、在庫の投資法人債の在庫ファイナンスが出来るようになる証券会社にはアリガタヤな話になりますので、これはこれで良しと。どうせ担保ですから減価したり飛んだりしたら担保出してる先が担保差し替えしないといけないだけの話ですからね。

#とか言ってたらこの前はリーマンが飛んで変な国債が日銀の在庫に増えましたが


○輪番ゾーニングの影響を愚考

概要はこちら
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/mok0901c.pdf

月別に引き直すと・・・・・

1年以下:4600億円
1年〜10年:8000億円
10年超:750億円
15年変国:500億円(2ヶ月に1回)
物価連動:150億円(2ヶ月に1回)

となりますが、発行量やら市中残存量を勘案し、ついでに従来1年以内ばかりアホのように入ってた状況を是正するという観点で言えばまあこんなもんでしょというか、市場中立的な内容になっています。超長期ゾーンがもっと買われるかと期待していた向きが業者中心に結構あったみたいですけど、そもそも超長期はニーズがあるから増発とか言ってた筈なんで、そっちを厚くするのもスジとして変でしょうな、と思う。

従来は殆ど同じゾーンばかりが叩き込まれる(当日カーブ上安い所が入りやすいのですから当たり前ですが)格好だったのが、ゾーニングによって1回につき2ゾーンで入札する格好になりますので、より相場に対しては中立になるようにという事を考えているのはまあ良く出来ていると思います。1回の入札における各ゾーンの額そのものは減る(分けるのだから当たり前ですが)ので、突拍子も無いレートまで入ってウハウハみたいな事は起きにくくなり、業者としては残念感があるかもですけどね。

で、問題は今まで期近債のゴミバコ状態だった輪番がこうなることによって、当然ながら期近債の需給が悪化する可能性があること。まあ悪化してレートで調整されれば売りに行く投資家もわざわざ叩きには行かないとは思うのですけれども、ちょっと注意が必要でしょうなと。そもそもFBだって増発傾向なのですし・・・・・・


○社債買入検討

次で書きますけど、残存1年以内の社債買入の検討指示って何か微妙。まあこれはやるこたあねえと思う(ので須田審議委員に賛成^^)のですけれども、何気にそれに付随して書いてある「考え方」でガチガチにコンサバなことを書いているんですよね。

#ど〜せ世間的にはそこはスルーなんでしょうが

残存1年以内の社債で、それなりに格付けの高いものという話になると、それはまあ既に投資家のニーズはあるのでして、んなもん買わんでも良かろうと思いますし、やはりこれは政策金融の世界であって、きちんと議会で審議して予算措置を取った形で実施するのが筋ではないかとも思いますので、本当にやるなら日本政策投資銀行に対して政策金融措置の一環として予算を取り、その買入の資金繰り支援を資金供給オペレーションの形で日銀が実施するのが筋じゃないでしょうかね。

ということで次に続く。


○実はこの考え方が重要ですよん

これですよこれ。
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/un0901d.pdf

『日本銀行は、本日、CP買入れを含む企業金融面での追加措置について検討し、企業金融円滑化の観点から企業金融に係る金融商品の買入れを行うことについて、基本的な考え方を下記の通り整理した。そのうえで、こうした考え方に基づき、@CPおよびABCPの買入れを別紙の内容により今月中に開始することとしたほか、A残存期間1 年以内の社債の買入れについて、実務的な検討を行い速やかに成案を得るよう、議長から執行部に対し指示した。』

ということで、その考え方。

『1.企業金融に係る金融商品の買入れの性格』

『企業金融に係る金融商品の買入れは、これを金融機関に対する与信の裏付けとなる担保とする場合に比べ、民間部門の個別先の信用リスクを負担する度合いが高い。このため、こうした政策手段は、損失発生を通じて納税者の負担を生じさせる可能性が相対的に高く、また、個別企業に対するミクロ的な資源配分への関与が深まるという特徴をもつ。』

左様でございます。

『さらに、他の政策手段に比べて、損失発生により日本銀行の財務の健全性を損ない、ひいては通貨や金融政策への信認を損なうおそれが、相対的に高くなる。』

実際にはしょぼいみたいな額のデフォルトであっても変なインパクトを与える可能性もある訳で。国債買って金利上昇したから損したとかいうのはどうでも良い(どうせ償還されますから)話ですけど、それとはまた別の話ですからね。

『こうした点を踏まえると、企業金融に係る金融商品の買入れは、中央銀行の政策手段としては、異例の措置と位置付けたうえで、実施の可否や方法を検討する必要がある。』

世の中が平穏だったらやらんでも済む話。ということでして、FRBみたいなバランスシート絶賛大利用政策というのはまあぶっちゃけ中央銀行が財政政策やってるようなもんですから、そこをやるのはまた別次元の世界になるというのを認識しましょうねということでしょう。


『2.実施の必要性に関する判断』

『日本銀行が、企業金融円滑化の観点から、企業金融に係る金融商品の買入れを実施するのは、次のような場合に限られる。』

『@ 当該金融商品の市場金利が発行企業の特性如何にかかわらず全体として高騰する、あるいは、当該金融商品の市場取引が成立しにくい状態が継続するといった市場機能の著しい低下が生じており、これが企業金融全体の逼迫につながっていること。』

これはFRBもそういう趣旨の指摘をしながら政策実施をしていると思いますが、市場機能の大幅な低下により、個別の金融市場において問題が生じている所に流動性を供与して、市場機能を中央銀行が担うという話ですよね。

『A こうした状況を改善するため、下記の諸点に十分留意した上で、異例の措置として金融商品の買入れを実施することが、日本銀行の使命に照らして必要と認められること。』

で、その留意事項。

『3.実施に当たって留意すべき事項』

『(1)個別企業への恣意的な資金配分となることを回避すること

・ 日本銀行による買入れの実施が個別企業への恣意的な資金配分となることを回避しうるよう、例えば、@発行体からの直接買入れではなく日本銀行の取引先である金融機関等を通じた買入れとすることや、A入札方式による買入れとすることなど、適切な買入れ方式を採用する。』

日銀による個別企業特別優遇みたいなことはしませんよという理念ですな。


『(2)必要な期間に限り、適切な規模で実施すること

・ 必要な期間に限って実施する観点から、実施期限、あるいは終了の条件を設ける。

・ 日本銀行の買入れへの過度の依存による市場機能の一層の低下といった事態が生じないよう、適切な規模で実施する。

・ 市場機能の回復に応じて日本銀行への売却のインセンティブが低下していくような仕組みとするなど、適切な規模での実施や円滑な終了に資する買入れ方式を採用する。』

つまり、今回のCPがそうですけれども、あまりにも低利まで買入をすることにしちゃうと市場が全部オペ頼みになっちゃうという弊害を避けないといかんという話ですな。今回のフロアレート設定なんかは、市場が回復してきてレートが全体的に低下したらCP買入に応じる必要も無くなるという作りこみになっているので(実際にやってみるとどうなるか判らないけど)中々宜しいのではないかと存じます。FRBのリスク資産買入でも「保証料」みたいなのを徴収したりしてまして、これもまあ「本来の市場が回復したら市場で売却した方がお得ですよ」という状態にすることによって、オペ中毒状態にならないようにする仕掛けなんでしょうと思います。


『(3)日本銀行の財務の健全性を確保すること

・ 他の政策手段に比べ損失発生の可能性が高まることを踏まえ、買入れから生じる信用リスクを適切に管理する。こうした観点から、買入れ対象とする金融商品の信用度や残存期間に関し、一定の制限を設ける。また、買入れ総額に限度を設けるほか、特定企業の信用リスクを集中的に負担することを回避する手段を講じる。

・ こうした信用リスクの管理に加え、日本銀行の決算において、損失が生じた場合の処理や自己資本の確保を適切に行っていくことを通じて、財務の健全性を確保していく。日本銀行としては、こうした考え方について、政府の理解を求めていく。』

最初の方はCP買入にもこの内容が織り込まれていますね。で、後半の方がポイントでして、FRBのリスク資産買入でも政府のサポートがある訳でして、日本でやる場合は、あたくしの個人的意見としては、さっき書いたような政策金融スキームでやる方がよさそうだと思います。まあそうじゃないとしても買い取った社債に政府保証つけるとかね。まあその辺は政府と日銀が強力にタッグを組まないといかんでしょと思います。


#ということで肝心の展望レポート中間評価まで予想通り行きませんでした(汗)

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2009/01/19

お題「ボコボコのさくらレポート(今日は引用で手抜き増量)」

さくらレポートは中身を詳しく読むと更に味わいが深いのですが、概要部分を駆け足で見るだけでも結構長いですので、今日は手抜き引用大会で申し訳なしでござるの巻。

概要はこちら
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/chiiki_rep/chiiki0901.htm
図表付き本文はこちら(量多いです、63ページ)
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/chiiki_rep/data/chiiki0901.pdf

ちなみに前回の概要はこちらです
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/chiiki_rep/chiiki0810.htm


○まだまだ下方修正できますかそうですか

最初は『地域からみた景気情勢』というお題ですが、その結論はこのようになっています。

『なお、昨年10月の支店長会議時と比べると、総括判断は、雇用・所得環境が厳しさを増すなか、個人消費が弱まっているほか、生産も大幅に減少していること等を反映して、前回に引き続き全9地域で下方修正した。』

直近1年の下方修正推移はこのとおりになっています。感動した!

2009年1月(今回):9地域で下方修正
2008年10月:9地域で下方修正
2008年7月:8地域で下方修正
2008年4月:8地域で下方修正
2008年1月:5地域で下方修正

で、これまた前回もやったのですが、今回は直近1年間という事で、同じく2008年1月からの判断からの下がりっぷりを地域ごとに並べてみます。最初に書いてあるのが去年の1月。

北海道
やや弱めの動きとなっている
→やや弱めの動きが続いている
→弱めの動きとなっている
→やや厳しい状況にある
→厳しさが増している

東北
全体としてみれば、緩やかな回復を続けている
→足踏み感がみられている
→足踏み感がみられている
→弱めの動きが広がっている
→悪化している

北陸
一部で弱めの動きがみられるものの、緩やかに回復している
→減速している
→減速感が幾分増している
→停滞している
→悪化している

関東甲信越
緩やかな拡大基調にある
→やや減速している
→減速している
→停滞している
→悪化している

東海
緩やかに拡大している
→緩やかな拡大基調にあるが、その速度は足もと鈍化している
→引き続き高水準にあるが、足もとは減速がはっきりしてきている
→なお高水準を保ちつつも、下降局面にある
→急速に下降している

近畿
緩やかに拡大している
→一部に減速の動きがみられるが、基調としては緩やかに拡大している
→減速している
→停滞している
→悪化している

中国
全体として回復を続けている
→一部に弱さがうかがわれるものの、全体として回復を続けている
→全体としては緩やかな回復を続けているが、そのテンポは、このところ鈍化している
→一部に弱い動きがみられるが、全体としては概ね横ばいで推移している
→悪化している

四国
緩やかながら持ち直しの動きが続いている
→持ち直しの動きがやや弱まっている
→横ばい圏内の動きとなっている
→やや弱めの動きとなっている
→弱い動きが広がっている

九州・沖縄
緩やかな回復を続けている
→回復に足踏みがみられる
→足踏み感が強まっている
→停滞している
→悪化している

1年前には「やや弱めの動き」が北海道で他は回復だの拡大だったのですが、今回は「悪化」が7地域で「急速に下降」が東海で、「弱い動きが広がっている」が四国ということで、この間の下がりっぷりが急だったというのが思い出されますわなあという所であります。四国がまだ「悪化」じゃないのですが、これは「山高くないので谷が深くない」なのかそれとも取りまとめ店の支店長の個性なのかどうなんでしょ(^^)。

前回(10月)はこんな事書いたのですが・・・・

>まだ悪化という状態ではないのでメタメタではない(というか悪化だったら金融大緩和でしょ)のですが。(前回昨年10月のさくらレポート見ての駄文)

まあ金融緩和は前回以降行われたということで、その流れを追認する格好になったということでありましょうか。


○項目別展開

まあここに関しては概要説明部分を読めばもうその通りですという感じですが、項目別展開はものの見事に下がってまして、これは酷いという結果。

・個人消費

『個人消費は、北海道で「厳しい状況」と判断しているほか、その他の地域でも「弱めの動きが広がっている」ないしは「弱まってきている」などと判断している。』

『前回報告との比較では、北海道、四国、九州・沖縄がやや下方修正、その他の6地域が下方修正した。』

まあ要するに全部下方修正と。ちなみに10月はと申しますと、『北陸、東海は現状維持としたものの、東北、中国が下方修正、北海道、関東甲信越、近畿、四国、九州・沖縄がやや下方修正した。』となっていまして、前回よりも下げっぷりが激しくなっております。


・設備投資

『設備投資は、企業収益の減少が続いており、企業の業況感も悪化していること等を背景に、ほとんどの地域で「減少している」ないしは「減少幅が拡大」、「下方修正の動きが広がりつつある」といった判断となっている。』

『前回報告との比較では、四国が前回並の判断を維持した以外は、北海道、九州・沖縄がやや下方修正、その他の6地域が下方修正した。』

現状維持1地域で残りが全部下方修正とな。こちらの10月ですが『北海道、東北、中国、四国は現状維持としたものの、北陸が下方修正、関東甲信越、東海、近畿、九州・沖縄がやや下方修正した。』とこのときは現状維持が4地域ありまして、今回は来ちゃいましたねという所でございますな。


・生産

『生産は、濃淡はあるものの、全地域で減少している(「大幅に減少している」等:関東甲信越・東海・近畿、「減少している」等:その他の地域)。』

『前回報告との比較では、全9地域が下方修正した(前回の前々回対比:「現状維持」1地域、「下方修正」8地域)。』

何と言うひねりの無い結論(^^)。で、何故か生産と次の雇用・所得環境については前回の前々回対比というのが入っているので、10月の引用どうしようかと思いますが一応引用すると『北海道は現状維持としたものの、東北、北陸が下方修正、関東甲信越、東海、近畿、中国、四国、九州・沖縄がやや下方修正した。』となってましたので、こちらもまた下がりました。内容も四国の「弱い動き」という以外は全部「減少」とか「大きく減少」とかヘロヘロ感溢れるものとなっています。

ちなみに、前回調査時点で明確に「減少」といってたのは東海でして、ここは元の水準が高かったというのがあり(支店長の個性による厳しい認識もあるかと思いますが^^)、他の地域では「弱め」という表現はあるにせよ「横ばい圏内」とかいうのもありまして、今回判断がドカンと下がった項目は生産ですかねという感じです。


・雇用・所得環境

こちらは前回10月調査時点で全地域が下向きベクトルという素敵な展開になったのですけれども、今回はどうなったかと言いますとこんな感じ。

『雇用・所得環境をみると、雇用情勢については、製造業の生産が全地域で減少していること等を反映して、全地域で悪化している。雇用者所得も、所定外給与や冬季賞与の減少などから、全地域で弱含んできている。』

生産調整で雇用調整ということで(-_-メ)。

『前回報告との比較では、雇用情勢、雇用者所得とも、北海道、近畿、四国、九州・沖縄がやや下方修正、その他の5地域が下方修正した(前回の前々回対比:<雇用情勢>「現状維持」1地域、「下方修正」8地域、<雇用者所得>「現状維持」4地域、「下方修正」5地域)。』

ここの部分の説明文だけちょっと長いのですが、ざっと見ますと「悪化」「弱含み」のオンパレードで、上記の説明の所にもありますように、雇用者所得が弱めの動きになっているというのが目立ちます。



○毎度お馴染み「地域の視点」

今回のお題は『わが国中小企業の経営の現状および当面の見通し──最近の収益環境、企業支出、資金繰りの動向等を中心に──』という物でして、内容に関しては最初のまとめの部分にありますように、ここもと急速かつ派手派手に悪化しているという話になっています。

『最近の中小企業の収益環境についてみると、製造業では、08年10月頃を境に、これまで好調であった、自動車、電気機械、一般機械関連を中心に、大半の業種で売上・受注の急速かつ大幅な落ち込みに見舞われているうえ、為替円高の進行と相俟って、輸出採算も悪化している。』

そりゃまあそうでしょうなあ。

『一方、非製造業では、消費者の節約志向の強まりや自動車・電機メーカー等における生産調整の影響、企業のコスト削減圧力の強まり等から、卸・小売、サービス等を中心に、売上が減少傾向にある。加えて、非製造業の多くの業種では、既往の仕入コスト上昇分の価格転嫁が不十分な中で、需要減少を背景に顧客獲得競争が激化しており、数量面のみならず、採算面でも悪化傾向が強まっている。』

コストは上がるわ需要は減るわと。

『地域別では、東海、関東甲信越、近畿等、近年、好調な輸出に支えられて、全国対比でみて順調な景気拡大を続けてきた地域において、足もとの収益環境の悪化は急速かつ大幅である。』

とまあそういう感じで続くのですが、資金調達面に関してはちょっと注目してみます。本文だと10ページの部分になります。

『ロ.民間金融機関貸出

● 民間金融機関の貸出スタンスについては、従来と変わりはないとする先もみられるが、建設・不動産等の業種に加えて、製造業(自動車、電気機械)、その他業種の業績悪化先を中心に、貸出スタンスが厳格化しているとの声も多く聞かれている。こうした状況下、政府が資金繰り対策として新たに打ち出した緊急保証制度や公的金融機関のセーフティネット貸付制度等の利用が急増している。』

で、『【金融機関の貸出スタンスの厳格化を指摘する声】』というのもあるのですが事例紹介は割愛します(本文見てくださいませ)。その事例紹介の後に『なお、金融機関からは、「トップ自ら指示を出して、中小企業への貸出増加に努めている」、「緊急保証制度(後述)も最大限活用して中小企業の資金需要に対応していきたい」といった声も聞かれている(松山などの支店、本店)』とフォローがあるのがチャーミング(^^)。

で、その次に微妙に素敵な指摘があるのですが、何故か概要の方(HTML版)には記載が無いというのがこれまたチャーミングなので、折角だからご紹介します。

『● この間、金融庁の「リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラム」(03 年3月公表)を契機に一部の優良先中小企業で広がりをみせていた、新たな資金調達手法(私募債の発行、シンジケート・ローンの利用、グループ金融の活用、各種ファンド、ABL等)を活用する動きは、未だ限定的な動きに止まっている。』

いやーあっはっは。

ということで(その他の部分端折って)中小企業の資金繰り動向への認識はこうです。

『● 以上を踏まえて、中小企業の資金繰り動向をみると、年末については、総じてみれば、手元資金取り崩しのほか、緊急保証制度や公的金融機関貸付の利用、地域金融機関の繋ぎ融資、その他当局の各種施策も奏効して、乗り切れた先が多いものの、これから年度末に向けては、通常の年度末資金手当に加えて、「10〜12 月の売上・受注の減少に伴う後ろ向きの資金需要が本格化する」との声が少なくない。このため、年度末にかけて引き続き厳しい状況が続くものとみられ、中小企業の資金繰りの動向については、今後もきめ細かくみていく必要がある局面が続くと思われる。』


まあ厳しい状況にあるということで、このお題引っ張ってきたのはCP買入だの企業金融支援特別オペとか実施したことに対する後付けふがふがもごもごなどと野暮な話をしてはいけません(^^)。

なお、この「地域の視点」のお題を過去2年分並べるという企画を前回同様に行いますと、これまた悲しい。

・『わが国中小企業の経営の現状および当面の見通し
──最近の収益環境、企業支出、資金繰りの動向等を中心に──』(今回)

・『1.各地域からみた最近の個人消費動向と消費関連企業の対応』
 2.地域経済における原油価格等上昇の影響とその対応─水産業のケース─』(2008年10月)

・『最近の企業の設備投資動向 』(2008年7月)

・『1.グローバル需要の取り込みに向けた企業の対応について
── 中堅・中小製造業や非製造業の動きを中心に
 2.地域からみた最近の雇用・賃金情勢について』(2008年4月)

・『原材料価格上昇のもとでの企業の対応
── 最終消費者に近い「川下」段階にある地場企業を中心に』
(2008年1月)

・『1.最近の企業立地の動向と立地戦略の特徴点
 2.北海道農業の現状と新たな取り組み』(2007年10月)

・『中小企業の収益動向と支出行動の特徴点』(2007年7月)

・『1.各地域からみた最近の雇用・賃金情勢について
 2.近年の東京における高額消費市場の特徴
――海外ブランドや外資系ホテルの動向を中心に』(2007年4月)

・『各地域からみた最近の住宅投資動向について』(2007年1月)

今回は直球ストレートに景気悪化モードになりましたという感じですね、ちーん。


#引用大会で恐縮でございました

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2009/01/15

○生活意識アンケート

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/ishiki/ishiki0901.pdf

結果詳細は16ページ目以降にあるので、そっちを見たほうが一覧性が高いです。で、景況感のところあたりを引用するのですけど、今回は一ひねり致しまして前回調査と前々回調査の数値を並べてみます。最初の数字から順に、今回(12月)、前回(9月)、前々回(6月)でございます。

Q1. 1年前と比べて、今の景気はどう変わりましたか。

1 良くなった0.6 (0.6) ( 1.7 )
2 変わらない16.0 (18.0) ( 28.8 )
3 悪くなった82.5 (81.0) ( 69.0 )

Q3. 現在の景気をどう感じますか。

1 良い0.1 (0.1) ( 0.0 )
2 どちらかと言えば、良い0.6 (1.3) ( 2.4 )
3 どちらとも言えない9.7 (10.4) ( 17.5 )
4 どちらかと言えば、悪い45.9 (52.8) ( 54.1 )
5 悪い43.6 (35.3) ( 25.8 )

Q4. 1年後の景気は、今と比べてどうなると思いますか。
1 良くなる4.8 (3.2) ( 2.2 )
2 変わらない42.0 (38.4) ( 36.9 )
3 悪くなる52.7 (57.9) ( 60.5 )

現状判断の数字が最悪を更新って話になっているのですけれども、実は落ち込みぶりは前々回→前回の方がでかく、しかも先行きに関しては(まあここまで悪化したのだからいい加減戻るでしょうという事なのでしょうけれども)戻りを見てる向きが増えているという結果は、景気ウォッチャー調査が勢い良く低下して2002年の最悪期を絶賛下回るとかいうような状態と比較するとちょっと意外感があったのですけれどもどうでしょう。

ま、まだ陰の極じゃないのでコリャダメダという事かも知れんが・・・・

ところで金利ですけど(^^)、利下げしたのですがこのような結果になったのはちったあ良い話ですかねえ。

Q5. 景気の状況を考えたとき、現在の金利水準をどのようにお考えになりますか。

1 金利が低すぎる46.2 (51.7) ( 53.3 )
2 適当な水準である34.2 (28.5) ( 28.8 )
3 金利が高すぎる15.6 (14.1) ( 14.0 )

やっと「適当な水準」+「高すぎる」が「低すぎる」を上回りました(^^)。

んでまあその先を引用すると長くなるのでざっと申し上げますけれども、物価の上昇に関して「かなり上がった」という見方が減っており、物価上昇に関する見方が前回調査よりも緩和されている所は(でもまだ物価上昇意識強いですけど)まあそんな感じなんでしょうねって所だと思います。

確かにまあ内容は悪いのですけれども、他のマインドサーベイの数値がアホのように悪化している中でこの数字を見せられるとちょっと意外感もありという所ですかね。自分の周囲3メートルに関するマインド関連調査ってのを受けると、それはまあメディアで言われる雰囲気じゃなくて、自分の身に降りかかってるか降りかかってないかによってだいぶ答えは違ってくるでしょう。で、そのわが身に云々ってのはデジタルな話だから、サンプルの取り方が難しいのかもしれませんですな。とちょっと思いましたが的外れな印象だったらゴメンナサイ。

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2009/01/05

○12月金融経済月報より(古い話でスイマセン)

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0812.pdf(12月)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0811.pdf(11月)

本文を読む根性はありませんので概要部分を比較。

・総括判断

『わが国の景気は悪化している。』(12月)
『わが国の景気は、既往のエネルギー・原材料価格高の影響や輸出の減少などから、停滞色が強まっている。』(11月)

ストレートに「悪化」になりましたな。悪化してるのに緩和策無しというのも変なのでこりゃ利下げでしょ利下げという感じで。


・現状判断

『輸出は減少している。企業収益は減少を続けており、企業の業況感も悪化している。そうしたもとで、設備投資も減少している。個人消費は、雇用・所得環境が厳しさを増す中で、弱まっている。また、住宅投資は横ばい圏内で推移している。この間、公共投資は低調に推移している。以上のような内外需要を反映し、生産は大幅に減少している。』(12月)

『輸出は減少している。企業収益の悪化などを背景に、設備投資も減少している。雇用者所得の伸び悩みやエネルギー・食料品価格の上昇などから、個人消費は弱めの動きとなっている。また、住宅投資は横ばい圏内で推移している。この間、公共投資は低調に推移している。以上のような内外需要を反映し、生産は減少を続けている。』(11月)

めんどいので一気に引用しちゃいましたが、企業収益が「悪化」→「減少を続けている」になったのが下方修正っぽいですが、何といいましても今回下げているのは「雇用・所得環境」と「生産」の部分でして、「雇用・所得環境が厳しさを増す」という部分と、「生産は大幅に減少」という部分が思いっきり下方修正になっています。


・先行き見通し、総括判断

『景気は、当面、厳しさを増す可能性が高い。』(12月)
『当面の景気は、海外経済の減速が明確化するもとで、停滞色の強い状態が続く可能性が高い。』(11月)

これはまた厳しい先行き見通しになりました。というかやっと追いついた感じでもございますが、苦笑。


・先行き見通しの項目別展開

『すなわち、輸出は、海外経済の一段の減速や為替円高を背景に、大幅に減少するとみられる。国内民間需要も、企業の収益や資金調達環境が悪化し、雇用・所得環境も厳しさを増すもとで、さらに弱まっていく可能性が高い。この間、公共投資は低調に推移すると考えられる。以上の需要動向と在庫調整圧力を背景に、生産は大幅な減少を続けるとみられる。』(12月)

『すなわち、輸出は、海外経済の減速や為替円高を背景に、減少が続くとみられる。国内民間需要は、企業収益や家計の実質所得の減少を背景に、弱めに推移する可能性が高い。この間、公共投資は減少傾向をたどると考えられる。以上の需要動向のもとで、生産は減少を続け、目先はそのテンポが速まるとみられる。』(11月)

海外経済が「一段の」減速と更に減速見通しになり、輸出の見通しが「大幅に」減少と引き下げ。民間需要も雇用・所得環境の悪化を踏まえて「さらに弱まっていく」と下げ、生産も「大幅な減少」と下げました。それから「在庫調整圧力」も指摘しているということで、もうお先真っ暗みたいな内容ですな。ちーん。


・物価に関して

まあ正直物価は市場的には注目範囲外になってしまいましたが。まずは現状。

『物価の現状をみると、国内企業物価は、国際商品市況の下落を主因に、3か月前比でみて大幅に下落している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は+2%程度となっており、石油製品価格の下落を主因にプラス幅が縮小している。』(12月)

『物価の現状をみると、国内企業物価は、国際商品市況の反落を主因に、3か月前比でみて下落に転じている。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、エネルギーや食料品の価格上昇などを背景に、+2%台半ばとなっている。』(11月)

まあ現状は現象面の説明ですので。上昇モードじゃないのであまりネタにならんです。デフレスパイラル懸念とかになったら別方向でネタになるのですが。で、先行き。

『当面の物価動向についてみると、国内企業物価は、国際商品市況の下落を主因に、下落を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、石油製品価格の下落や食料品価格の落ち着きを反映して、低下していくと予想される。』(12月)

11月と全部同じなので11月分引用は割愛(^^)。


・金融面に関して

金融面の現状に関しては引用を割愛致しまして、金融環境に関する部分を引用します。

『わが国の金融環境をみると、CP・社債市場での資金調達環境が悪化しているほか、中小・零細企業に加えて、大企業でも、資金繰りや金融機関の貸出態度が厳しいとする先が増えており、全体として、厳しい方向に急速に変化している。』(12月)

『わが国の金融環境は、中小・零細企業で資金繰りが悪化しているほか、大企業においても市場での資金調達環境が悪化している先が増えるなど、全体として緩和度合いが低下している。』(11月)

えーっとですな、認識がワンテンポ遅いのではないかと。金融政策はフォワードルッキングだそうですので、「厳しい方向に急速に変化」する前に手が打たれて然るべきではなかったかと。突発事態でどうのこうのというのなら仕方ないですけれども、11月決定会合時点で何もやらなかったら年末越えの所を意識した動きが急速になる事は皆さん指摘してたと思うのですが。

ちなみにその細かい部分に関して12月の分だけ引用。

『コールレートは、実体経済活動や物価動向との比較でみて低い水準にある。しかし、CP・社債の信用スプレッドが拡大していることなどから、企業の資金調達コストはこのところ強含む気配が窺われる。』(12月)

利下げ前の段階でコールレートは「低い水準」という認識なんですね。企業金融に関してはその通りで。

『この間、CP・社債の発行残高は、投資家の選別姿勢が厳しい状態が続く中、前年水準を下回っている。銀行貸出は、中小・零細企業向けは前年割れを続けている一方、CP・社債発行からの振り替わりや手許資金積み増しの動きを受けて、大企業向けを中心に増加している。そうしたもとでも、大企業も含めて、資金繰りや金融機関の貸出態度が厳しいとする先が増えている。(以下割愛)』(12月)

ということで、短観でも指摘されてましたが、金融環境の悪化を指摘となってます。

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2008/12/30

年末ですが前のネタ登場なのれす(汗)。

○日銀再乗換に関して

既にご案内の話だとは思いますが、いちおうこちらはあたくしの俺様備忘録でございますので、クリップは必須なのれす。ちなみに22日のリリースなので大昔の話なのでありますが。
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc/mpo0812a.htm

『2.償還期限到来国債のうち、平成20年度中に借換引受けを行った割引短期国債については、以下のとおり取扱うこと。

(1)額面総額3兆円については、割引短期国債をもって、借換引受けを行うこと。

(2)(1)以外の割引短期国債については、本行資産の状況等に照らし支障がないと認められる場合には、割引短期国債をもって、借換引受けを行い得るものとすること。』

ご存知の通り、輪番オペで1年以内の債券がバカスカ打ち込まれる傾向が高まっておりまして、償還乗換分を現金償還すると余力がでまくるでござるの巻ですから、まあこうなるでしょうという話は本職の方からご指摘ありまして、市場の中の皆さん既にご案内の通りで、関係者以外何の事か良く判らんと思いますが、まあそういうことねということで(^^)。


○このレビューは面白そうです

インフレ予想(Inflation Expectations)について
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/rev08j15.htm

という日銀レビューの本文はこちら。
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/data/rev08j15.pdf

中身は非常に興味深く、毎度のように日銀レビューシリーズなのであたくしのようなシロートでも読める(計算式がアホウ程出てくるワーキングペーパーシリーズを見ると悶絶してしまうのが浅学菲才なあたくしの仕様です)のでお勧め。

で、色々と論点があるのですけれども、物価連動国債のBEIに関する論点から引用させていただきます。4ページ目から5ページ目のあたり。

『物価連動国債から求められるBEI は、あらゆる裁定機会を活用して収益をあげようとする、多様な市場参加者の見方を集約した指標とも考えられるが、実際のところは、市場流動性の状況によって影響される。とりわけ最近のように金融市場が混乱しているときには、情報価値が大きく低下するという問題がある。例えば、日本のBEI については、本年9 月から大きくマイナスとなっているが、これは、家計、企業、エコノミストのインフレ予想の変化幅に比してもかなり大幅な修正である。』

さよでございます。ついこの前は物国の利回りが軒並み4%台とか卒倒しそうなレートになっていましたが、最近はだいぶ復活傾向になってますなあ。

『こうしたことから、BEI のマイナス転化は、今後10 年間物価下落が続くとマーケットが予想しているというよりも、そもそもわが国の物価連動国債の市場流動性が低い中にあって、国際金融資本市場の混乱の影響で、一部マーケット参加者が物価連動国債の売却を急いだため、「物価連動国債の急激な利回り上昇」=「BEI の急激な低下」がおきたものとみられている。』

ということかと存じます。

『日本の物価連動国債の歴史は他国に比べて浅く、発行規模の大きさや発行年限の多様性で限られている面があるが、他国でも、物価連動国債の市場流動性が固定利付国債に比べて低いという問題は多かれ少なかれ抱えている。』

図表がついているのでそれは本文をご覧になると宜しいかと存じます。

『こうした中にあって、物価連動国債に比べて市場流動性の問題が小さい固定利付国債の名目金利や、それを変換したインプライド・フォワード・レートの動きにより着目するという考えもあろう。名目金利は、@実質金利、Aインフレ予想、B各種プレミアム(流動性プレミアム、インフレ・リスク・プレミアム等)の和と考えられる。中長期的には、仮に実質金利や各種プレミアムが安定的に推移していると考えれば、例えば、中長期のインプライド・フォワード・レートの時系列変化をみることにより、マーケットのインフレ予想に大きな変化がないか、大まかなチェックは可能である。』

まあやはり市場からのデータ取得という面で言えば、データを取ってくる市場の価格流動性の面とか、価格流動性はあるけれどもその市場自体があまり実態と関係ないただの場外乱闘場になっていないかどうかとか、まあそういう点を良く考えて市場を分析しないと「市場が織り込む」といいつつ思いっきり訳判らん結果を導出する結果になりかねませんので要注意ちゅうことでしょう。

『海外の中銀では、最近のファイナンス理論の発展を応用して、物価連動国債の情報を使わずに、名目金利を上記の3 つの要素にモデル分解して、マーケットのインフレ予想を抽出するといった試みもなされている。』

なるほどです。

ちなみに、今回はちょっとテクニカルな部分の引用でしたが、政策的なインプリケーションという点で言えば引用しなかった別の所の方もご覧になられると宜しいかと存じます。

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2008/12/26

○11月の決定会合議事要旨よりちょっとだけ

今年は年末にネタが多くて積み残しが溜まっていかんですな。後入先出ということで昨日公表された議事要旨からちょっとだけ。

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g081121.pdf

この時の決定会合では見事なゼロ回答となり、流動性対策に関して何か出るのか、なお書き修正みたいなことをしてくるのかとか、まあ幾らなんでも何か出るでしょうとか申し上げていたあたくし涙目の会合でございましたわな。

で、『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』の『2.金融面の動向』を見るとこんな認識になっていたようで。

『わが国の金融環境について、委員は、中小・零細企業で資金繰りが悪化しているほか、大企業においても市場での資金調達環境が悪化している先が増えるなど、全体として緩和度合いが低下しているとの認識で一致した。委員は、国際金融資本市場の混乱や世界経済の減速の影響が、様々なルートを通じて、国内の金融環境にも大きく影響してきており、わが国においても、金融と実体経済の負の連鎖を意識する必要がある局面に差し掛かりつつあるとの認識を共有した。』

まあ直接金融の人たちは反応がやたら早いという事はありますけれども、あたくし的にはこの時点(11月21日)で既に結構洒落にならない状態になっていたと思いますです。もうちょっと切迫感あるのかと思ったんですが。

『委員は、C P ・社債市場において、信用スプレッドが拡大しているほか、起債見送りの動きが拡がるなど、市場での資金調達環境は悪化しているとの認識で一致した。』

たぶん悪化の度合いは10月以降急速という感じだったと思うのですよ。

『多くの委員は、投資信託などの投資家が、信用リスクに対して慎重になっていることに加え、解約による資金流出リスクに備えるために、キャッシュ比率を引き上げており、C P への投資スタンスを後退させていると指摘した。』

さよですな。

『また、これらの委員は、社債についても、9 月中旬以降、起債中止・延期の動きが続いており、発行企業は、電力などごく一部の高格付け銘柄に限られていると述べた。もっとも、何人かの委員は、マクロでみると、C P ・社債による調達額の減少は、銀行貸出でカバーされており、個別企業ごとのばらつきはあるものの、99 年のような大規模な信用収縮が起こってはいないと述べた。』

つーか99年と同じだったらとっくの昔にお父さん続出なんですが。

『多くの委員は、中小・零細企業では、資金繰りや金融機関の貸出態度が厳しいとする先が増えており、中小企業向けの貸出残高は前年比減少幅を拡大していると述べた。何人かの委員は、株価の下落や倒産の増加によって一部の金融機関は資本制約を意識せざるを得ない状況になってきており、リスク・テイク姿勢の変化に十分注意する必要があると述べた。』

直接金融がシュリンクしたら間接金融に皺寄せ来るでしょうという話は議論としてあったのでしょうか。まあ当然その論点もあったと思いますけど・・・・

『これらの議論を経て、委員は、わが国の金融環境は、依然として米欧ほどは厳しくないが、このところ緩和度合いは低下しており、実体経済面への影響が懸念される状況になりつつあるとの見解で一致した。』

ま、12月になって対策打ったから良いようなものの、この時点での切迫感はイマイチだったのかなあと。もちろん一番の直撃弾食らっているのが直接金融のCPのあたりでその直撃弾食らっているのがあたくしのとこだったりするので、危機感を過剰に感じてますというのはありますけどね。


でもって『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』を見ると・・・・

『多くの委員は、@ 企業に対する直接の資金供与は、民間金融機関が担う分野であり、仮に何らかの政策対応が求められる場合でも、政府との役割分担や、中央銀行のバランスシートの健全性という観点から、慎重に対応する必要がある、A 企業金融の円滑化のために中央銀行がなし得る施策の基本は、流動性供給の分野である、との原則をまず認識することが重要であると述べた。』

いやそりゃそうなんですけれども・・・

『加えて、何人かの委員は、現在の日本の金融環境は、中央銀行が、直接、信用リスクをとる必要があるほど悪化している訳ではないのではないか、と述べた。』

・・・・・・うーむ。

『また、何人かの委員は、金融システムにストレスがかかる状況下における企業金融の対策としては、信用保証制度の拡充など信用リスクに直接働きかける施策や、金融機関の資本制約を緩和する施策などの役割も重要であると述べた。』

なんつーかね、そりゃ正論なんですけれども、時間がかかる話でしょと。目の前に年末越えがあり、それを越えてもより問題な年度末越えがありという状態で予算措置だの法律手当てを伴うような話が今の政治状況で間に合うのでしょうかという現実的な問題を考えていただきとう存じます。

『なお、ある委員は、先行きの情勢次第では、上記の原則にとらわれることなく、中央銀行が信用リスクをとっていく政策も視野に入れる必要があるのではないかと述べた。』

やっとここでホッとする意見が(^^)。

と言う中で、財務省の出席者までこういう指摘をしているのに泣いた。

『短期金融市場については、例えばC P 市場では、発行残高が減少し、低格付け企業の発行金利が上昇するなど、引き続き緊張状態にあり、年末に向けて注意が必要である。』

このあたり見てますと、どうもちょっと先行きの金融政策でもまた「追い込まれ型」をやらかしそうな悪寒がするのは今朝の寒波のせいだけではなかろうと。

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2008/12/22

お題「決定会合結果あれこれ」

19℃の南風で枯れ葉が落ちるというのは何ともシュールですが、まあ経済も気象も訳判らんということで。

ということで今回の決定事項はこちら。
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc/k081219.pdf

・景気判断とかリスク要因とか下げまくり
・コール誘導目標0.1%に引き下げ、付利金利0.1%とロンバート0.3%
・CP買取の実施を決定
・輪番増額(月2000億円増額)
・輪番の対象拡大(30年国債、物価連動国債、変動利付国債)とゾーニング決定
・政策投資銀行のCP買取への資金繰り支援決定
・CP以外の企業金融モノの買取検討

という所で、まあ市場的には満額回答以上の結果でした。なお、あたくしが自信満々に「やる」と予想していた適格担保の緩和は実施されませんでした。外してどうもすいませんm(__)m

○コールレート誘導目標と付利金利が一緒に(^^)

利下げに反対したのは野田委員(この前の利下げでは0.3%の執行部案に賛成してました)で、総裁会見のヘッドラインを読みますと利下げそのものに反対ということで、反対理由は良く判りませんけど、この前下げたばっかでございますがという事なのでしょう。

で、付利金利の0.1%に反対したのは水野さんですが、これはまあ勝手な想像をすると付利撤廃して通常の調節を実施する中でコールレートが0%まで下がっても良いじゃないのという意見なんジャマイカと思われます。

まー今回の決定ですけれども、これによってコールレートの下限が付利金利くらいになる(テクニカルには付利金利と関係ない出し手と取りサイドの都合でちょっとだけ下の可能性もあるけど限界的な話かと)ので、今度こそオペはジャンジャン打ち込めるというものです(というか既に打ち込んでますが^^)。それから売出手形で引く必要が無くなりましたので、まあ売手で鞘抜きの小商いしてた人残念無念という感じですか(^^)。

そんな訳で、とりあえずジャンジャン供給してもディレクティブ違反にはなりそうもないということで、見かけ上のマネーはジャンジャン増えるでしょうから、マネー増やせという人もニッコリですかね、単に信用乗数がアホほど低下するだけの話ではございますが。「金利つきの量的緩和」っていうのに何か意味あるのかよという話(つーかそれってインチキ量的緩和でしょ)は死ぬほどございますが、まあこれで円売り介入の不胎化しなくてもよいですし政府日銀どっちもニッコリということですか(本当か?)。FRBの付利はFFレートの下限になっていない(どころか預金と貸付のファシリティのバンドが誘導目標の外側になる時点でもうカオスなのですが)のですが、日本の場合はそんなに下にぶち抜けるという事もないでしょう(追加利下げ観測が出た場合は別)。

ちなみに、これって一番の涙目は短資会社でして、コールに0.10%で放出しても手数料持っていかれます(しかも多分1bp+消費税だと思うのだが)し、日銀ネット稼動料金も掛かりますし、管理の手間も掛かりますなあとか考えると、普通に当座預金に積み上げて居た方が良いという人が続出すると、無担保コール取引はまさしく当日の限界的な部分と無担保の限界的な人の参加する市場になるんでしょうなあという感じです。

なお、一番ホッとしているのは調節担当の中の人かもしれませんが、この制度建てつけだと調節は適当にドバドバ供給しておけば良いという話になりますので、長期化すると調節能力の低下が発生しそうな悪寒(笑)。まあ当座預金付利も一応時限措置ですからね。

ということで、このパターンだと基本的にコールの下限は0.1%と理解しておけばよく、年末越えで資金を出している状態ですからそうそうコールが上昇することもなかろうと思料されます。その中でGCレートがいくらになるかという話ですが、第一勘では0.15%がセンターで上か下かが微妙だけど多分上。FB3か月は0.20%がセンターかなあ。ロンバートが何気に0.25%じゃなくて0.3%なのがちょっとだけチャーミングなのですよね。


・・・・で、こういう結構な結果でも悪態をとりあえずつくのがあたくしクオリティなのれすが、えーっとこの「誘導目標=付利金利」っていうのは前回の利下げで付利設定と市場機能とやらに拘ってわざわざ0.30%にした時の無理矢理ロジックはどこの彼方に旅立ったのでございましょうかと白川総裁を小一時間問い詰めたいものです。下限金利設定で市場機能思いっきり封殺してるじゃん。

まあ付利先にありきで訳の判らん理屈を持ち出してオペレーションを混乱させてしまった「市場機能」というアホアホテクニカルタームがこれで引っ込んでくれたのは誠に結構なことでございます(^^)。


○CP買取の決定

利下げとCP両方やってくれるとは中々結構。上記URLの中だと別紙の『金融調節手段に係る追加措置について』という所になりますけれども。

『(2)CP買入れを含めた企業金融面での追加措置の導入・検討

今後、年度末に向けて企業金融が一段と厳しさを増すおそれがあることを踏まえ、時限的に、CPの買入れ(買切り方式)を実施することとする。それとともに、企業金融に係るその他の金融商品についても対応を検討することとし、それらの検討結果をできるだけ速やかに金融政策決定会合に報告するよう、議長から執行部に対し指示した。』

CP買入を実施(時限的措置ですけど)する上にプラスアルファの話もあるとはこれはまたという感じですが、CP買入に関してもまあ今回の他の措置も含めまして、社債でも買うんかいという気はしますが、社債は別に企業の資金繰り支援とは話が別問題でして、短期資金が回らなくて黒字倒産というのは政策的に何とかする必要があると思いますが、財務内容がアレのため社債発行できないという企業まで支援するこたあねえと思いますがね。

ま、今回の措置って(あとでも申し上げますが)割と地味目だけど有効な施策というのがちょこちょこ入っていまして、そーゆー玄人受けする内容が入っているという所からすると、今回のCP買入スキームは有効に機能しそうな期待はございます。有効に機能ってのは、単に超優良企業発行のCP金利を下げる結果に終わるのではなく、必要な所に回るようなスキームになるということね。

『これらの措置は、結果的に個別企業の信用リスクを負担することになるものであり、中央銀行としては異例の対応となる。この点を踏まえ、議長からは、中央銀行としてどの範囲でどの程度の期間行うことが必要かつ適当か、また、中央銀行の財務の健全性と通貨に対する信認を確保するために、政府との関係も含めどのような対応が必要か、といった点からの検討を求めた。』

買い取ったCPに政府保証付けるのかな。まあ統合政府と言う意味ではどうでも良いじゃんとは思いますが、CP買取って要するに企業への直接融資と本質的にはあまり変わらんという事ですから(FRBがやってるのはどちらかというと昔のABCP買取に近く、日銀のやってるほうがモロ出しスキームです)、そりゃ財政政策よという理屈も成り立つの巻ですから。


○輪番の拡大とかゾーニングとか増額とか

これは正直嬉しいサプライズでした。で、最初の部分も何気に読み飛ばしてはいけない表現が少々。

『1.長期国債の買入れに係る措置

短期の資金供給オペレーションの負担を軽減するため、長めの資金供給となる長期国債の買入れを増額することとし、併せて買入対象国債の追加を行う。』

ここの部分も読んでて「ほほー」と思ったのですけれども、長期国債買入(輪番)は従来「成長通貨の供給」という名目だったと思うのですが、今回の公表文には「短期の資金供給オペレーションの負担軽減」「長めの資金供給」という表現になっておりまして、長期国債買入も資金供給オペの一環ですよという書き方になりました。いやまあ実態面を踏まえるとそれはその通りなのですが、このロジック構成にすることによって輪番の増減(特に減)をする時の説明ロジックが楽になりますなあと(調節技術上の問題ですから)。

一方でFRBはクーポンパスという長期国債買入の短期オペレーションが存在するのにも関わらず勿体付けて「長期国債買入の実施を検討」とか言ってるのと比較しますと中々味わいの深いものを感じます(^^)。以下続きます。


『(1)長期国債買入れの増額

これまで年14.4 兆円(月1.2 兆円)ペースで行ってきた長期国債の買入れを、年16.8 兆円(月1.4 兆円)ペースに増額する(当月より実施)。』

当月より実施ってことは今月輪番増えるのですね。こりゃラッキー。その後は増額分が変国物国に化けるとは思いますが。


『(2)買入対象国債の追加、残存期間別買入れの実施

買入対象国債に、30 年債、変動利付国債および物価連動国債を追加する。また、買入国債の残存期間が極端に短期化あるいは長期化することを避けるため、残存期間別の買入れ方式(残存1年以下、1年超から10 年以下、10年超区分)を導入する。これらの措置については、実務的な検討を行い、できるだけ速やかに成案を得るよう、議長から執行部に対し指示した。』

追加銘柄に関しては業者も投資家も歓喜。特に変動利付と物価連動のお助けオペ実施はサンタさんありがとうと大歓喜という感じですが、この2つに関しては利回り競争入札が馴染まないので、変動と物価連動に関しては価格競争入札になって、各1000億だか500億円づつとかになるんですかね(1000億じゃ多いかな)。

ゾーニングに関しては地味ながらとても有効な施策でして、従来より指摘しておりますように、輪番オペが償還まで1年以内の中長期国債の成れの果てのゴミ箱状態になっていたので、残存期間別の入札を行うことによって、きちんと長期なり超長期なりの債券が打ち込みやすくなる(1年超からって所はちょっと微妙ですけれどもまあよかろう)という点で玄人受けする話ですわな。


○政策投資銀行をCP現先オペ対象に

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc/mok0812d.pdf
「株式会社日本政策投資銀行との金融市場調節に係る諸取引の取扱いに関する特則」の制定等について

公表文の一部を引用しようと思ったらそもそも一文でした(^^)。

『日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、最近の企業金融情勢を踏まえ、適切な金融調節の実施を通じて、金融市場の安定確保を図るとともに、企業金融の円滑化に資する観点から、株式会社日本政策投資銀行が、株式会社日本政策金融公庫法(平成19年法律第57号)第2条第5号に定める危機対応業務またはこれに関連する業務として実施するコマーシャル・ペーパーの買取業務を支援するための時限措置として、「株式会社日本政策投資銀行との金融市場調節に係る諸取引の取扱いに関する特則」を別紙のとおり制定することを決定しましたので、お知らせします。』

頼むからどっかで文を切って欲しかったのですが(苦笑)、まあそれはそれとしまして、今回は政策投資銀行のCP買入の資金繰りをつけますよと(現先方式ですが購入CPは政府保証してますね)いうことでちゃんと明言したのは政府日銀の連携という見せ方として結構と。


○景気判断とかリスク要因とか下げまくり

例によって前回と比較。

・景気判断

『わが国の経済情勢をみると、海外経済の減速により輸出が減少していることに加え、企業収益や家計の雇用・所得環境が悪化する中で、内需も弱まっている。金融環境をみると、全体として厳しい方向に急速に変化している。これらを背景に、わが国の景気は悪化しており、当面、厳しさを増す可能性が高い。』(今回)

『わが国の景気は、既往のエネルギー・原材料価格高の影響や輸出の減少などから停滞色が強まっており、当面、こうした状態が続く可能性が高い。』(11月)

景気停滞から悪化更に悪化方向と思いっきり判断下げてますわな。これで利下げしなかったらウソという話になりますのでそらそうよという感じで。


・物価

『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、足もと+2%程度となっているが、石油製品価格の下落や食料品価格の落ち着きを反映して、低下していくと予想される。』(今回)

『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、足もと+2%台半ばとなっているが、石油製品価格の下落や食料品価格の落ち着きを反映して、低下していくと予想される。』(11月)

思いっきり同文ですね(^^)。


・先行き見通し

『経済・物価の先行きについては、物価安定のもとでの持続的な成長経路に復していく、との見通しに関する不確実性は高く、世界経済の減速や国際金融資本市場の動揺を踏まえると、わが国経済の回復に向けた条件が整うには、相応の時間を要するとみられる。』(今回)

『先行きについては、わが国経済は、やや長い目でみれば、物価安定のもとでの持続的な成長経路に復していく可能性が相対的に高いと判断される。ただし、こうした見通しに関する不確実性は高く、世界経済の減速や国際金融資本市場の動揺を踏まえると、回復への条件が整うには、相応の時間を要するとみられる。』(11月)

こっちは不確実性は高いとなりました。


・リスク要因

『リスク要因をみると、米欧の金融情勢や世界経済の動向次第では、わが国の景気が更に下振れるリスクがあることに注意する必要がある。また、金融機関の貸出姿勢や社債・CP市場の動向など金融環境が一層厳しさを増す場合には、金融面から実体経済への下押し圧力が高まる可能性がある。』(今回)

ここまでは前回と同文なので前回分割愛。

『物価面では、景気の下振れリスクが顕在化した場合や国際商品市況が更に下落した場合には、物価上昇率が一段と低下する可能性もある。』(今回)

『物価面では、上振れリスクは以前と比べ小さくなっている一方、景気の下振れリスクが顕在化した場合や国際商品市況が更に下落した場合には、物価上昇率が一段と低下する可能性もある。』(11月)

ということで物価の上振れの話もすっかりなくなりまして、リスクは完全に下方向のみになりましたとさ、ちーん。


・・・・ということで、景気に関しても当然ながら下げましたねというお話でした。


○雑感

ということで、今回の措置は「地味ながらも有効性の高い」ものが入っていたりするのでございまして、「見た目派手だけど・・・」というなんちゃって施策とは違いますねというのが好感されるところでございます。

一方で残念なのは総裁会見(詳しくは会見要旨出てからフォローしますが)でして、折角こういう施策を出したのですから、こういうときこそどこぞの福井の俊ちゃんみたいにインチキハッタリパワーを発揮して「もう大変な画期的な施策ですよ凄いですよ日銀バンバンやりましたよ」ってアピールすりゃ良いと思うのですが(ど〜せやるという事実に変わりは無いのですから)、ヘッドラインを見るとどうもイマイチ感が。だから土曜に見た東京新聞とかでは「日銀”出し渋り”」とか書かれる訳で。

どうせやるんだから気持ちよく威勢の良い事言って景気付けりゃ良いのに、会見でミソつけるとか白川さんちょっとなんだかねえという感じであります。会見要旨関連は後日。

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2008/12/16

○ということで短観

http://www.boj.or.jp/type/stat/boj_stat/tk/gaiyo/tka0812.pdf

悪い数字にも程があるのですけれども、市場的には事前にもっとクソのように悪い結果(大企業製造業の業況判断DIが▲30とか)まで想像してたので、この程度でしたかということで債券先物が下げ(NY株上昇が効いた面もありますが)たのは苦笑しましたけど。で、例によって例の如くシリーズ物で確認。

・業況判断DIの達成度合い

9月調査時点での先行き見通しがどのくらい達成出来ているかという話。6月調査では見通し達成ならず、でも市場の予想したDIよりは良い。9月調査時点では見通し未達相次ぐもそんなにドカンとは下げず、市場の予想したDIよりは小マシ。という展開でしたが、今回調査はだいたい市場予想よりちょっと悪いかほぼ予想通りという感じですので、まあダメダメですね。

            (9月時点)      (12月時点)
           現状→12月予測   現状→3月予測
製造業大企業   ▲3→▲4      ▲24→▲36
製造業中堅企業  ▲8→▲12     ▲24→▲45
製造業中小企業  ▲17→▲25    ▲29→▲48

非製造業大企業  +1→▲1      ▲9→▲14
非製造業中堅企業 ▲12→▲17    ▲21→▲32
非製造業中小企業 ▲24→▲31    ▲29→▲42

えーっと、これを見ておりますと何気に「企業規模が大きい方が相対的に前回対比の落ち込み度合いが激しい」という状態になっているのですね。まあ色々な解釈は可能な気がしますけど、金融市場の動向の直接的な影響が相対的に大きいのが企業規模の大きいところだと思うとそういう事なのかなあとか。


・雇用判断DI

これも延々とチェックしておいて良かったですが、結果は別に良くはございませんので嬉しくはない。

            (9月時点)      (12月時点)
           現状→12月予測   現状→3月予測
製造業大企業   ▲2→0         +8→+15
製造業中堅企業  +2→0        +14→+21
製造業中小企業  +6→+6       +16→+26

非製造業大企業  ▲10→▲13    ▲7→▲7
非製造業中堅企業 ▲6→▲8     ▲3→▲1
非製造業中小企業 ▲6→▲7     ▲2→+2

製造業の人員過剰判断っぷりに泣くのと、先行きの予測方向性が過剰方向に向かってきているのに泣けます。非製造業の不足って言っても景気に思いっきり遅行しそうな数値ですからねえ。

そりゃまあアレだけ減産とかしたらこうなるわなとは思いますが、それにしましても今回の下げ速度の速さには正直ビックリでありまして、あたくしもこんなに速いとはって感じです。


・証券業の業況判断

前回掲載した長期時系列をリバイスします。昨年の6月調査分から並べてますが、今回も残念ながら▲70ですな、ちーん。

        現状→次回予測
(6月時点) +34→+52
(9月時点) ▲30→+23
(12月時点)▲26→+4
(3月時点) ▲55→▲15
(6月時点) ▲45→0
(9月時点) ▲70→▲44
(12月時点)▲70→▲59

先行きの予測数値が前回よりも悪くなっているのは証券業の先行き業況判断の過去の外しっぷりからすると明るい材料・・・・の訳無いか(汗)。


ちなみにオマケですが、金融機関の業況判断といえば銀行業の現状判断DIが(ちゃんと過去の時系列みてないけど)久々のマイナスになっていて、▲9と前回から大幅悪化しているのが実に宜しくありませんな、と思います。

その他ちゃんとした分析は本職の人のレポートを見てくださいませ。

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2008/12/05

○遅くなりましたが金融経済月報11月分、判断下げまくりです

すっかり遅くなりましたが金融経済月報。今更何ですのと言われそうですが、まあそもそもここはあたくしの俺様備忘録でもありますので勘弁してちょ。

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0811.pdf(11月)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0810.pdf(10月)

例によって概要部分だけですが。

・総合判断

『わが国の景気は、既往のエネルギー・原材料価格高の影響や輸出の減少などから、停滞色が強まっている。』(11月)
『わが国の景気は、エネルギー・原材料価格高の影響や輸出の増勢鈍化が続いていることなどから、停滞している。』(10月)

輸出が増勢鈍化から減少に下げたのが大きいですよね。総合判断も下げているの巻ですね。

・現状判断部分、輸出、企業収益と設備投資

『輸出は減少している。企業収益の悪化などを背景に、設備投資も減少している。』(11月)
『輸出は増勢が鈍化している。企業収益は交易条件の悪化等を背景に減少を続けており、企業の業況感もさらに慎重化している。そうしたもとで、設備投資は減少している。』(10月)

輸出を先ほどご紹介したように下げていますが、企業収益も「減少を続けている」が「悪化」と下向きに。設備投資は減少のままです。

・雇用、個人消費、公共投資

『雇用者所得の伸び悩みやエネルギー・食料品価格の上昇などから、個人消費は弱めの動きとなっている。また、住宅投資は横ばい圏内で推移している。この間、公共投資は低調に推移している。』(11月)

こちらは10月と一言一句同じです。

・生産

『以上のような内外需要を反映し、生産は減少を続けている。』(11月)
『以上のような内外需要のもと、生産は弱めに推移している。』(10月)

「弱めに推移」から「減少を続けている」とこちらも下げまして、今回は輸出、企業収益、生産と思いっきり重要なものに関して現状判断を引き下げましたという結果に。


・先行き見通し、総合判断

先行きの回復経路がこっちでも無くなっていました、というのは既にご案内の通りですけれども。

『当面の景気は、海外経済の減速が明確化するもとで、停滞色の強い状態が続く可能性が高い。』(11月)
『当面の景気は、海外経済の減速が明確化するもとで、停滞を続ける可能性が高い。先行きについては不確実性が大きいものの、やや長い目でみれば、エネルギー・原材料価格高の影響が薄れ、海外経済も減速局面を脱するにつれて、次第に緩やかな成長経路に復していくと予想される。』(10月月報)

・・・・ということですが、んじゃあ利下げのときはどうでしたかと言いますと、

『3.現在、世界経済は、2000 年代央の数年にわたって蓄積された様々な不均衡の調整局面を迎えており、当分の間、厳しい経済情勢が続く可能性が高い。こうした世界経済の動向を背景に、日本経済の回復に向けた条件が整うには相応の時間を要するとみられる。』(10月31日の声明文より)

ということで、まあ10月31日の時点では成長経路に復する云々に関しては微妙な表現になっていますが、11月の月報では本格的に舵を悪化警戒コースに切ったという事ですから、まあ今後の流れは緩和傾向ですよとは言っているんですな。


・先行き見通し、輸出、国内民間需要

『すなわち、輸出は、海外経済の減速や為替円高を背景に、減少が続くとみられる。国内民間需要は、企業収益や家計の実質所得の減少を背景に、弱めに推移する可能性が高い。』(11月)
『当面の動向を需要項目別にみると、輸出は、海外経済の減速が明確化するもとで、横ばい圏内の動きにとどまるとみられる。国内民間需要は、企業収益や家計の実質所得の減少を背景に、弱めに推移する可能性が高い。』(10月)

輸出の見通しを下げていますね。

・先行き見通し、公共投資、生産

『この間、公共投資は減少傾向をたどると考えられる。以上の需要動向のもとで、生産は減少を続け、目先はそのテンポが速まるとみられる。』(11月)
『この間、公共投資は減少傾向をたどると考えられる。以上の需要動向を踏まえると、生産は、当面弱めに推移するとみられる。』(10月)

減少し、テンポが速まるということで、かなり予想を下げていますよね。

で、物価に関しては正直注目材料ではなくなりましたのでパス。一応見通しを引用。

・物価の見通し

『当面の物価動向についてみると、国内企業物価は、国際商品市況の反落を主因に、下落を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、石油製品価格の下落や食料品価格の落ち着きを反映して、低下していくと予想される。』(11月)

まあそうっすね。


・金融面

こっちが何気に問題になってきているのですけれども、現状部分での短期市場に関わる部分はこんな話に。

『一方、ターム物の銀行間金利や国債レポ市場金利は高止まりを続けるなど、市場参加者がリスク回避姿勢を強めている影響が引き続きみられる。』(11月)
『もっとも、市場参加者のリスク回避姿勢の強まりから、コールレートのばらつきが拡大し、ターム物の銀行間金利は強含んでいる。』(10月)

ということで、レポ市場金利に関する言及が入りました。


『わが国の金融環境は、中小・零細企業で資金繰りが悪化しているほか、大企業においても市場での資金調達環境が悪化している先が増えるなど、全体として緩和度合いが低下している。』(11月)
『わが国の金融環境は、総じて緩和的な状態が続いているが、中小・零細企業や一部の業種で資金繰りが悪化している先がみられる。』(10月)

金融環境に関して従来の「緩和的な状態」が「緩和度合いの低下」ということで、まあ緩和は緩和なんですけれども、漸くこのあたりの認識がってところですわな。本当はリーマン破綻以降悪化して10月になってから更に悪化していたので、11月の終盤になってやっと認識変更というのは遅いのですけれども、認識しないよりはマシ。

#ということで今更の俺様備忘録がやたら長くてスイマセン

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2008/12/03

お題「施策は出ましたが、さて・・・・」

色々と論点がございまして上手くまとまるかなあ・・・・・

○まずは結果こちらね

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc/un0812b.pdf
新しいオペレーション概要
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc/mok0812a.pdf
担保要件緩和概要
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc/k081202.pdf
金利の変更はございませんでした

ということで、今回市場が反応したのはたぶん「新しいオペレーション」の方だと思います。何せ最初に情報ベンダーのフラッシュで「無制限で政策金利水準での供給」ってのが出たので、おお!無制限!!ってなもんで反応したんじゃねえのかとは思いますがさて・・・・・・・

では以下論点をあまり纏まらないけどグタグタに。


○まあ担保不足な向きとか、既存の部分には効果ありますが・・・・・

今回の措置のうち、担保基準の緩和部分に関してはまあ効果あるにはあるでしょうとは思いますが、ちょっと出すのが遅れた感は強いですね。まーそれはそれとして、昨今担保不足になっている向きもありましたので、担保基準が緩和されたのは結構な話。別に担保不足じゃなくても既存のCPや社債とかでファンディングがつくものが増えるのは結構な事です。

その点で効果は勿論あるのですけれども、結局のところあくまでも「担保要件の緩和」でありまして、バランスシートから外れる話ではないので、これが出たからホイホイとCPや社債の購入を増やせるかというと残念ながらそういうわけには行きませんでしょう。再三再四申し上げているように、問題は期末のBISというバランスシート制約でして、何ぼ日銀にオペ入れましても金融機関のバランス上は残る話ですからね。

大体からして3月末のファンディングが回るからという理由だけで新規にBBBの社債を買うという奴はこの状況下でいない訳でして、この施策で社債発行環境が改善とかせんわな。アナウンスメント効果は無いとは言わないけど、ここもとの動き見てると持って1週間ですかねえ(苦笑)。



○ベンダーのフラッシュはどう見ても大げさです本当に(ry

ということで、例えば日本語版ロイターのヘッドラインでは

14:34 02Dec08 RTRS-民間企業債務担保に無制限で政策金利と同水準の金利で資金供給する制度を新設=日銀臨時会合

となっておりますが、上記リリースのオペレーション概要を見ればお分かりのように(というか上記ヘッドラインも良く見れば判りますけれども)、無制限と言っても「民間企業債務担保」の範囲内でありまして、それならCP現先オペを札割れするまで打ちまくっても同じ(というかそのほうがレート低くなる)なのでして、米国のTAFみたいなのを想定して反応するのはちとどうなのよという感じ。

#ま、最初聞いたときのインパクトはあるんですけどね

で、本石町日記さんがこう指摘してますが、実はこのオペの概要を見て「そんならロンバートのレートを下げれば同じじゃないか」という指摘をする人が複数いたことを付け加えさせて頂きます(^^)。

http://hongokucho.exblog.jp/9971300/
>私なら、ロンバート0.3%に下げて3カ月べた貸しOKにするが…。
>企業債務に限定したベタ貸しできるなら、それでもいい。


そもそも論として、資金繰り制約なのであればCPオペをバンバン打ってそれでも足りなければロンバートをどんどん利用してもらえば金が出て来る筈なのですが必ずしもそうじゃないというのが現状の問題でして、わざわざややこしいオペを抜き出して作りましたねえと本石町日記さんの見解に同意です。日銀企画の目くらまし力恐るべし。



○12月から実施しないとはしょぼさ爆発

オペ導入その他の施策に関してのリリースを改めて読みますと・・・・
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc/un0812b.pdf

『(2)民間企業債務を活用した新たなオペレーションの実施

(途中割愛)。本措置については、12 月18・19 日に開催予定の金融政策決定会合において基本要領等を決定し、来年1 月中の実施に向けて実務的準備を進める。』

・・・・・えーっと、年末は間に合わないんですかそうですか。いやどうしても間に合わないというのなら仕方ないのですが、ドル資金供給オペレーションはリリースして実施まで神速の勢いで9月期末越えを間に合わせましたと思うのですけれども、えーっとえーっと、国際協調で海外中銀にいい顔するのは熱心だけども国内は市場機能とやらで頑張れですか、わかりません><;



○やっぱり数字が一人歩きしやがったか・・・・

昨日の会見をフラッシュ見てたらこんなのが。

16:06 02Dec08 RTRS-適格担保拡大、社債で4500億円・企業向け証書貸付債権で1.6兆円程度見込める=白川日銀総裁
16:28 02Dec08 RTRS-民間企業債務を活用した新オペ、3兆円程度の資金供給見込める=白川日銀総裁

あーあ、数字言っちゃったよ〜と思ってたら案の定昨日の夜と今日のニュースや新聞報道では「3兆円の企業金融対策」という話が一人歩きを始めております(--)。

世間様的には3兆円というのアピールするのかもしれませんけど、金融市場的に言えばこの数字しょぼいですねと言う感じでして、CP現先オペが一発4000億円から6000億円とか打っているので、何だオペ6回分くらいじゃないのそんなら最初からややこしいことせずに打てばって感覚になりますわな。

#だいたい3兆円ったって担保に取るだけなのですから

あのですな、こーゆー時はマーケットがポジティブサプライズで驚くような巨大な数字なら兎も角、しょぼい数字だったら言わない方が良い訳で、たぶんインチキ俊ちゃんが質問されたら具体的な話は適当にぼかしながら「今回の措置で企業向け貸出やCP発行が飛躍的に増えて、資金供給が飛躍的に増えることを期待します」というような威勢の良い話をすると思うのですが、ハッタリが効かないのは残念ですなあ。

というのもありますけど、案の定数字が一人歩きしだしているのが問題でして、これでオペ実施額が3兆円にならなかったらまた公約違反とか言われるし、そもそもその3兆円の積算根拠と効果はどうなのとか国会でしょうもないツッコミを食らって益々訳の判らん話になるに100万ジンバブエドルなのです。



○とりあえずアナウンス効果のあるうちに・・・・というのは無理でしょうな

CP買入や株式買入をやりたくないということで今般微妙なオペを作りましたという感じが色々な人と議論を重ねるうちに理解できたのでありますが(--)、とりあえず今般の施策を好感してレートが低下しているうちに次の施策を前倒しで打ち込んで、とにかく先手先手で進まないといけないと思うのですよね。

でもまあ10月以来悪態ついてますように、何か施策を打つとか言って期待させながらそれを裏切ってしまい、事態が悪化。その悪化した事態に後追いで次の施策っていうのを繰り返しておりますので、少なくとも日銀直下のマネーマーケットでは期待値が随分下がっていると思われます。債券市場とかはまだ期待してると思いますので、まあ別にあたくし1ミリも期待してない(もう期待するの止めました)のですけど、アナウンスメント効果の残っているうちに次の決定会合で何か施策を出して欲しいものですな。

#実は金先や債券市場の利回り低下は「こんな施策如きだったら早晩利下げに追い込まれますね」って読み筋で動いているのだったら笑えるけど笑えません



以下テクニカルな論点。

○証書1兆6000億円も集まるの??

証書を担保に入れる場合、債務者の承認が必要になるので判子貰いにいかないといけないのですが、その作業の手間隙を考えるとさてどうなんでしょと思いますけれども。ついでに下らない事を言えば、「低金利で日銀が融資」というのを報道で宣伝されまくっておりますので、判子貰いに行ったら利下げ(というかスプレッド減らせ)要求されそうですが(^^)。

社債とかCPとかのように、そもそも転売されることが前提になっている法律的な作りこみになっていないので、担保不足で困ってない人までがこれにジャンジャン行くとは思えずなのですけれども。


○オペ形式がイマイチ読めませんが

何となくリリース文書見てますと、形式上はドル資金供給オペみたいな感じになるみたいですが、どうせならロンバート型にしてくれた方が使い勝手良い(ただし銀行などの社内仕切りの問題が起きるという点はある)ですし、それならそもそもロンバートの金利を下げればというさっきのループに戻るの巻(^^)。

ま、週に1回とか打つんでしょうとは思いますので、それは一応安心してますけど。



○ま、これもよいリトマス試験紙でしょ

ということで、適当にイチャモンつけましたが、そりゃまあやらないよりはやった方が良いので効果があるといいですね(棒読み)という所ですが、この施策に関してどーゆーコメントするのかは良いリトマス試験紙でございます(ニヤニヤ)。

それから、確かにやらないよりはやった方が良いのですが、最近の日銀クオリティは「新しい施策の効果を見極める」とか言い出して次の施策を出し渋るという恐ろしいものでありまして、そうなりますと「あまり効果の無さそうな張り子の目くらまし施策」というのは「有効な施策の出遅れ」に繋がるマイナス要素でもあるという点がございますので注意が必要です。


#うーむ、全然纏まってないし昨日色々考えた事から抜けがありそうな気がする


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2008/12/01

○利下げ会合議事要旨

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g081031.pdf

経済面に関してよりも金融面に注目と言う感じですので、経済に関しては上振れ下振れ要因のあたりから少々程度。

・上振れ・下振れ要因に関して

『以上の見通しに関する上振れ・下振れ要因について、委員は、実体経済については、@ 米欧の金融危機の帰趨とその影響、A 新興国・資源国の動向、B エネルギー・原材料価格の動向、C 企業の成長期待の動向、D 金融環境の動向の5 点に、物価については、@ 経済活動の変化に伴う変動、A 家計のインフレ予想や企業の価格設定行動、B 輸入物価の動向の3 点に、それぞれ整理できるとの認識を共有した。』

で、その内容に関しては議事要旨の方に断片的にあるのですが引用割愛。で、最大の下振れポイントである金融問題に関してはこのように悲観的です。

『米欧の金融危機の帰趨とその影響に関して、委員は、各種対策にもかかわらず金融資本市場の緊張が更に強まる場合には、金融機関や投資家のリスクテイク能力が低下し、金融・実体経済の負の相乗作用が強く働き、米欧を中心に景気が下振れる可能性があるとの認識を共有した。』

共有ですかそうですか。

『複数の委員は、米欧金融システムの混乱の出発点である米国住宅市場の調整は進んでおらず、金融と実体経済の負の相乗作用が既に生じていることを踏まえると、短期的には海外経済の回復を展望できないとの見方を示した。このうちの一人の委員は、やや長い目でみた世界経済にとっての課題として、米国における過剰消費とその背後にある過剰債務の調整が、今後どのように進んでいくのかという点に留意する必要があると指摘した。』

ということで、話のトーンは暗いですな、当たり前ですが。


・とは言いましても

第1の柱の所ではこのようになっています。

『委員は、「金融経済情勢に関する検討」を踏まえ、第1 の柱、すなわち先行き2010 年度までの経済・物価情勢について相対的に蓋然性が高いと判断される見通しについて、わが国経済は、やや長い目でみれば、物価安定の下での持続的な成長経路に復していく可能性が相対的に高いと判断されるとの見方で一致した。』

で、すっかりご紹介をスルーしていますが、11月の金融経済月報におきましてはこの部分に相当するものが削除されておりまして、即ち第1の柱が外れているの巻になっているのですがその話は後日再度。

どっちかと言うと、利下げした時点でここの部分が変わっている方が政策ロジックとしてはスマートだと思うのですけどねえ。ここ変えないで利下げってのも何だか。


・金融環境に関して

まず現状認識の部分。

『わが国の金融環境について、委員は、@ わが国の金融資本市場は、米欧に比べると、市場流動性の面での問題は小さく、金融資本市場における信用スプレッドの水準も総じて低い、A しかし、短期金融市場では神経質な展開が続いているほか、株価が大幅に下落するなど、国際的な金融面での動揺の影響がここにきてわが国の金融資本市場にも波及してきている、との認識を共有した。』

だから流動性対策をやれと・・・・

『複数の委員は、C P の発行スプレッドが大きく拡大し、社債市場では起債の中止や先送りの動きが続くなど、国際金融市場の動揺を受けて投資家のリスク回避姿勢が目立ってきており、今後の動向を注視する必要があると指摘した。別のある委員は、C P など資本市場からの調達環境が悪化し、企業は間接金融への依存度を強めているが、金融機関の融資姿勢は厳格化しており、緩和的な金融環境が損なわれてきているとの見方を示した。』

亀崎さんと中村さんと水野さん(野田さんも?)ですね、わかります(^^)。


んで今後の見通し。

『金融環境の動向について、委員は、今後、国際金融資本市場の緊張が更に高まる場合などには、わが国でも、金融面から実体経済への下押し圧力が高まる可能性があるとの見解で一致した。』

全くその通りでございます。

『ある委員は、有価証券の評価損や信用コスト増加を背景に、足もと金融機関にとって資本制約が意識される状況になり始めており、金融環境は引き締まり方向に変化していると述べた。』

そうですね。

『一方、ある委員は、やや長い目でみると、緩和的な金融環境が金融・経済活動や物価の振幅を大きくするリスクには引き続き注意が必要であると指摘した。』

・・・・・・(゜д゜)

ちなみに、金融政策をどうするの話に関しては各委員の反対意見を金曜に引用しましたあたりが一番わかりやすいので(^^)、まあ今回は引用割愛。その中でこんな意見が出ていましたが。

『また、適切な金融市場調節を行うことで、金融市場の安定確保に万全を期していくとの認識を共有した。この点、ある委員は、低金利による金融緩和効果を最大限に発揮するためにも、金融市場の安定は重要であると述べた。』

ある委員とは水野さんですね、わかります(^^)。

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2008/11/28

○利下げ会合議事要旨(今日はイントロで恐縮)

悪態つきで時間がなくなったので(笑)、今日は「各委員の反対理由」を鑑賞致しましょう。下記URLの15枚目(本文13ページ)から。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g081031.pdf

25bp下げの人たちから(機種依存文字は原文ママなので勘弁)。

・須田さん

『須田委員は、@ これまでの政策変更時とは異なる引き下げ幅にする点について、市場機能を阻害するという理由だけでは説明が難しいこと、A 今後、金利の変更幅について不確実性を高めるおそれがあることから、反対した。』

「市場機能を阻害するという理由だけでは説明が難しい」に拍手です(^^)。


・中村さん

『中村委員は、引き下げ幅が0.25%でも市場機能の維持は可能であるため、これまで同様、0.25% 刻みで政策変更を行うことが適当とみられることから、反対した。』

付利開始後の無担保コールレートの推移を見れば中村さんが指摘する「引き下げ幅が0.25%でも市場機能の維持は可能」というのが全く正しい事は明白でございます(^^)。


・亀崎さん

『亀崎委員は、政策金利の引き下げに際しては、経済のダウンサイドリスクの顕現化を未然に抑え、成長を下支えするという毅然とした姿勢を市場や経済主体に示すことが肝要だが、引き下げ幅を0.2% という小刻みなものとした場合、政策の出し惜しみや更なる引き下げの余地ありといった印象を与えてしまう可能性があることから、反対した。』

・・・・(;∀;)何と言う良い指摘。

「政策金利の引き下げに際しては、経済のダウンサイドリスクの顕現化を未然に抑え、成長を下支えするという毅然とした姿勢を市場や経済主体に示すことが肝要」

「政策の出し惜しみ」

と言った辺りに、こりゃまあ相当揉めたんでしょうなあというのが伝わります。この会の議事録は恐らく2019年の半ばになると公表されると思われますので、その議事録を読むのが今から楽しみでございます。


では、従来より審議委員中一番景気認識が厳しかった筈なのに据え置きを主張した水野さんはどういう論拠だったのかというのを見ましょう。

・水野さん

『水野委員は、@ 現下の政策課題は政策金利引き下げよりも、C P ・G C レポ市場等の現状を踏まえた資金の目詰まり対策であること、A 景気が一層悪化した場合の対応について更に議論が必要であること、B C P ・社債市場の機能低下等を踏まえると、利下げの効果が実体経済に波及するメカニズムがはっきりしないこと、C 追加利下げ期待からコールレートに低下圧力がかかり、金融市場調節上、潤沢な流動性供給が却って難しくなるリスクがあること、D 全員一致で現状維持を決定した会合から時間が経っていないことから、反対した。』

なるほど。1と3に関しては現在起きている事態がまさに水野さんが懸念した事の具現化でございまして、折角利下げしているのに利下げ効果はインターバンクの無担保コール金利およびその周辺に留まり、オープンやらTIBORやらの金利にその効果が十分に発揮されていないという状態。つまり、資金の目詰まりを解消してからでないと利下げ効果が出ないのだから、まず先に議論すべきは流動性対策ですよというのは同意でございます。

2は端折りすぎで良く判らんです。景気が更に悪化した時に下手に付利があるとゼロ金利に出来ないから反対と言う話なのかしら??4も端折られててよく判らんのですが、大量に供給して吸収をしないという事をすると、レートが低下しちゃうので「0.30%の誘導目標」というのと、「当座預金付利で供給拡大」というのが両立しないって話ですかな???

5にはワロタ。前回会合からの変化って株が下がって為替が円高に振れた以外に何かフォワードルッキング(笑)な指標とかありましたっけという所ですか。


その他の論議内容についてはまた後日ということで。

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2008/11/25

お題「何というゼロ回答(決定会合結果)」

何か出るかと思ったのですが、これは何ということ。また期待空振りになってしまいましてどうもすいませんm(__)m

これが決定会合結果ですな。
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc/k081121.pdf

○まずはステートメント:経済見通しがイマイチ下がってません

利下げする前の10月8日公表のステートメントと比較するの巻で。

『わが国の景気は、既往のエネルギー・原材料価格高の影響や輸出の減少などから停滞色が強まっており、当面、こうした状態が続く可能性が高い。』(今回)

『わが国の景気は、エネルギー・原材料価格高の影響や輸出の増勢鈍化が続いていることなどから停滞しており、当面、海外経済の減速が明確化するもとで、こうした状態が続く可能性が高い。』(10月8日)

「停滞しており」→「停滞色が強まっており」っていう変化をさせた意味がイマイチ判らん。たぶん「強まっている」だから表現的には今回の方が停滞観を強めていますという事なのでしょうが、普通に言い切っている前者の方がヘッジクローズ入りじゃない分だけ「停滞」がすんなり入ってくる感じもする。ま、何はともあれ、後退やら悪化という表現が入っていないのは・・・・

物価の話はまあ織り込み済みだと思いますのでスルーして先行きの話ですけれども、今回はしらっと先行きのこの分を割愛しているように見えます。

『先行きについては不確実性が大きいものの、やや長い目でみれば、エネルギー・原材料価格高の影響が薄れ、海外経済も減速局面を脱するにつれて、次第に緩やかな成長経路に復していくと予想される。』(10月8日)

ええっと、この10月8日まであった部分が今回は見当たらないでござるの巻となっておりまして、ええもうこの部分に関する文章は今日公表の本文を読めですかそうですかという所です。辛うじてこれは残ってますが。

『先行きについては、わが国経済は、やや長い目でみれば、物価安定のもとでの持続的な成長経路に復していく可能性が相対的に高いと判断される。』(今回)

ちなみに利下げ前の10月8日ではこの通り。

『このように、わが国経済は、やや長い目でみれば、物価安定の下での持続的な成長経路に復していくとみられる。』(10月8日)

ヘッジクローズが入りましたね。「可能性が相対的に高いと判断される」というのはこれはこれは。会議資料で使いたくなりますね(^^)。


○ステートメントつづき:リスク要因

リスク要因に関しては文章の利下げ前と比較して量が減っております(^^)。ということはヘッジクローズが減っているという事を意味する訳で・・・・・

『リスク要因をみると、米欧の金融情勢や世界経済の動向次第では、わが国の景気が更に下振れるリスクがあることに注意する必要がある。』(今回)

『リスク要因をみると、米欧の金融機関の破綻などを背景に国際金融資本市場の緊張が強まっており、また、世界経済には下振れリスクがある。国内民間需要については、これまでの交易条件の悪化を反映した所得形成の弱まりから下振れるリスクがある。設備・雇用面での調整圧力を抱えていないとはいえ、景気の下振れリスクには注意が必要である。』(10月8日)

利下げ前は細々と書いてあった部分が割愛されているのは、本文での表現が下向きになったことを反映しているのではないかと思いますが、内容に関しては今日公表の本文をみたいです。


『また、金融機関の貸出姿勢や社債・CP市場の動向など金融環境が一層厳しさを増す場合には、金融面から実体経済への下押し圧力が高まる可能性がある。』(今回)

今回新しく出た項目です。これに関しては既にだいぶエライコッチャになっているところですので、まあちゃんと入っているのはホッとしましたが。

物価に関しての上振れリスクを下げています。

『物価面では、上振れリスクは以前と比べ小さくなっている一方、景気の下振れリスクが顕在化した場合や国際商品市況が更に下落した場合には、物価上昇率が一段と低下する可能性もある。』(今回)

『物価面では、世界的に高い物価上昇率が続いている。わが国の物価については、エネルギー・原材料価格の動向に加え、消費者のインフレ予想や企業の価格設定行動の変化など、上振れリスクに注意が必要である。』(10月8日)

誠に結構。そして今回やっと削ったのは従来までのこの表現。

『この間、景気の下振れリスクが薄れる場合には、緩和的な金融環境の長期化が経済・物価の振幅をもたらすリスクが高まると考えられる。』(10月8日)

今回の表の部分からこれが削除されましたな。結構結構。



○で、肝心の流動性対策がゼロ回答とはどういうことや

ステートメントの4番目にその手の話が。

『また、上記の金融環境を踏まえ、企業金融の円滑化に資する観点から、当面、CP現先オペを一層活用していく。さらに、同様の観点から、民間企業債務の適格担保としての取扱いや民間企業債務を担保とする資金供給面の工夫について速やかに検討を行い、その結果を決定会合に報告するよう、議長より執行部に対し、指示がなされた。』

・・・・・CP現先オペですけれども、一層活用もクソも既に毎週実施していて札割れ(直近は札割れしませんでしたが)する勢いでやってるせいで落札レートが毎度毎度やたら低いのですけれども、そのオペを「一層活用」とは何をどう一層活用するのか全く意味が判らん。少なくともちゃんとオペ結果とかフォローしている市場の人からすると「ナンジャソリャ」状態になると思うのですが、もしかしてこれはあの「ぶぶ漬けでも食べていかれますか」なのでしょうか。

で、「民間企業債務の適格担保としての取扱いや民間企業債務を担保とする資金供給面の工夫について速やかに検討を行い」ってのもこれまたワケワカメなのでありまして、そもそも民間企業債務は適格担保になっているものが多々ある訳でございまして(そうじゃなかったらCPオペとか存在しません)、担保基準の緩和でもするのでしょうか位しか思い浮かびませんなあ。

まあそういうことで、一応検討する話は出ていますが、こちら(でも市場の中の人でも)で申し上げておりますが、年末まで日数無い状態で市場は二極化状態になっているという状況なのでして、今更のんびりした「指示」出してる場合じゃないと思うのですよね。正直日銀がこんなスタンスですと、年末と年度末この調子で大丈夫なのかという感じになるでしょうから、まあ資金の抱え込み傾向は益々強まるでしょうな。困ったもんであります。

てかね、会見(については今日の公表見てからですが)のヘッドラインでもどこぞの情報ベンダーでは「追加利下げは弊害大きい」みたいな題名を打ち込まれたりしていましたように、今回の公表内容って「白川総裁(または執行部)のゼロ回答」的な印象が強いものでありまして(金先が決定会合後に下落したのは無縁ではあるまい)、この状況でそんな状態でよいのかと小一時間ですな。

利下げはしない、なお書きはしない、CP買入などはやらない、株は買わないと、まあやらないのオンパレードですが、どうせ何かやらざるを得ない状況なのですし、状況が悪化して追い込まれて実施するとなるとより筋悪の政策をうたざるを得ないことになるんですから、それよりもほらあれ、フォワードルッキングで先手先手に対策打った方がよろしいんじゃないですかねえと思います。



○ちなみに10年前にはこんなのが

10年前にこんな施策があったと人から指摘をしてもらいました。
http://www.boj.or.jp/type/release/zuiji/kako01/k981113a.htm

これを見ますと、2番がほほーと思うのでありますけどね。

『2.企業金融支援のための臨時貸出制度の創設

 年末・年度末にかけて、金融機関の企業向け貸出を資金繰り面から支援していく趣旨から、企業向け貸出が季節的に増加する10〜12月期における金融機関の貸出増加額の一定割合(50%)を対象に、リファイナンスのための日銀貸出制度を新たに設ける。その際、担保は国債のほか、日本銀行が適格と認める民間企業債務(手形<含むCP>、社債、証書貸付債権)とし、原則として、担保価額の50%以上は、民間企業債務を差し入れることを条件とする。』(上記URLの1998年11月13日公表文書より)

ここを見ますと判るように、本件は「リファイナンスの貸出制度」でして、企業金融を増やしたらその半分の資金繰りは面倒みますよ(ただし有担保)というお話ですね。

えーっと、この時期ですけれども、問題になっていたのは金融機関の資本不足よりも、資金繰りの問題の方が大きかったので、こーゆー施策になった(実際問題としてあまりワークしなかったのではという記憶が微かにありますが)と思うのですけれども、現在の場合は98年と違って全体的に見れば金があるのに世の中に資金が回ってこないというのが問題なのですね。

即ち、金融機関(銀行とか証券)のリスク許容度が低下してしまった為に金の回りが悪くなり、金の回りが悪いから金融機関も企業もいざという時の為に資金を抱え込もうとする為により一層金の回りが悪くなるという状態なのでして、まあそこを止めるにはリスク許容度回復(というか要するに持てるCPなどの枠が足りないという状態)が必要なので現先オペだけじゃ不足だと思いますけど・・・・・

#というか、状況違うのだから10年前みたいな施策だすのは勘弁

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2008/11/11

○10月7日の決定会合議事要旨から(続き)

先日は金融政策運営に関する部分だけで終了しちゃいましたので、念のため経済情勢とか金融情勢とかの部分を。

・下振れリスク満載

景気先行きの要因分解をしますとこれがまた見事に下振れ満載。

(輸出)

基本的な見通しは横ばい圏内なのですが・・・・

『ある委員は、短観の今年度輸出計画の伸びが鈍化しており、先行きを従来よりも慎重にみていく必要があると述べた。何人かの委員は、自動車関連の輸出が減少していることに言及し、その動向は国内の生産や雇用に大きな影響を及ぼすため、今後の動きを注視する必要があると述べた。』

という感じで下を見る向きが増えるの巻。こんな調子で各項目が続くのでございます。

(設備投資)

こちらは明るめの話と暗めの話が両方ございますが、後付けになりますけれども昨日の機械受注を見ておりますと強気にはなれまへんなあ。

『ある委員は、大企業の一部では省資源・省エネルギー関連などの投資意欲は根強いと述べた。また、何人かの委員は、資本ストックの過剰感はみられていないと指摘した。』

『一方、何人かの委員は、自動車や電気機械で投資先送りの動きがみられており、今後、設備投資計画が下方修正される可能性があると述べた。また、ある委員は、海外景気の下振れリスクが顕現化した場合には、内外経済に関する企業の期待成長率が下振れ、設備の過剰感が生じるリスクには注意する必要があるとの認識を示した。』

で、1か月たった現状では後者の認識するリスクが徐々に具現化という感じっすかねえ。

(生産)

『ある委員は、8 月の生産指数が大幅なマイナスとなったほか、予測指数も弱めとなっており、生産調整が急速に進みつつあると述べた。別の委員は、出荷と在庫のバランスが悪化しており、先行き、在庫調整圧力が強まる可能性には注意する必要があると述べた。』

という所で、下振れへの懸念は企業部門の方が先に来る(個人に来るのは後ですから当然ですが)の巻という感じでしょうか。その他の項目はまああまり委員の先行き見通しに意見の相違は無さそうなのですが、雇用の所を見ますと中々アレな表現が。

(雇用・所得)

『ある委員は、企業の支出抑制の動きが名目賃金の伸び率低下をもたらしていると述べた。別の委員は、非正規雇用比率が上昇しているため、雇用の調整は過去の景気の停滞局面に比べ、容易かつ速やかに行われる可能性があると指摘した。』

これって書きっぷりが企業ベースになっているから読みながらあまり深刻にならんのですが、良く考えると「名目賃金は伸びませんなあ」に加えて「非正規雇用が物凄い勢いで削減されるんじゃないでしょうか」という話をしているので何気に寒さが増すのでありました。

とまあそんな感じで経済情勢の見通しに関しては下振れリスク満開という感じなので、政府の経済対策とぶつからなければ展望レポートで見通しを大幅に下げて今月の会合で25bp利下げという感じだったのかなあとか思うのですけれども(とちょっと外れた言い訳を)。


・金融情勢に関して

まあこの時点でもリーマン破綻などを受けて状況は悪化してたのですが、10月になってからは海外の悪化が国内のオープン市場の金利形成に波及したの図だったりします。

執行部の報告から。

『金融環境は、総じて緩和的な状態が続いているが、中小・零細企業や一部の業種で資金繰りが悪化している先がみられる。(途中割愛)ただし、中小・零細企業では、資金繰りや金融機関の貸出態度が厳しいとする先が増えている。一部の業種では、起債環境の悪化や金融機関の貸出態度慎重化から、資金調達環境が悪化している。また、9 月中旬以降、C P ・社債の信用スプレッドは拡大し、社債発行が減少している。(以下割愛)』

委員会の検討から。

『わが国の金融環境について、委員は、総じて緩和的な状態が続いているが、中小・零細企業や一部の業種で資金繰りが悪化している先がみられるとの認識を共有した。複数の委員は、日本のクレジット市場は、米欧に比べ落ち着いているものの、信用スプレッドの拡大や起債の延期など、国際金融市場の緊張の高まりが国内にも影響を及ぼしていると述べた。また、何人かの委員は、建設・不動産業や中小企業に対する金融機関の貸出態度が慎重化しており、注意してみていく必要があるとの認識を示した。』

でまあ金融環境という点で言えばやはりこちらの状況を(以下いつもの話^^)。

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2008/11/05

決定会合議事要旨が2本出ていましたが。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g080929.pdf(9月29日臨時会合)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g081007.pdf(10月6、7日会合)

臨時会合の方はパスして、10月6、7日の会合の方を少々で。少々と申しますのは、既にこの会合の時の相場レベルって過去のもの状態になっていますからあまりこの時点でどうのこうの言っても仕方ないですねという面がありますんで。

ちなみに、10月6日、7日時点での状況っていうのはどういう時だったかというのを手元の帳面で確認すると、この直前にスッタモンダした米国の金融安定化法案が可決。欧州に華麗に飛び火して公的資金注入だのアイスランドが破綻寸前だのという頃で、ダウが1万割って日経平均は1万円接近でドル円は前週の105円から100円割れに接近という状況なので、それを踏まえつつ読まないといかんです(じゃないと違和感が出るから)。


○金融政策運営に関する検討部分

まずは『W.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』を読まないといかんですな。ということでそこから。

決定会合での公表文で思いっきり下方修正されていたのはご案内の通りですが、その点に関しては、第1の柱の点検部分でこんな感じで。

『こうした見通し(引用者追記:やや長い目でみれば成長経路に復するって奴ね)を巡る不確実性は増大している、との認識で一致した。。多くの委員は、アンケート調査やミクロ情報は景気の停滞感が強まっていることを示していると述べた。また、このうちの何人かの委員は、持続的な成長経路に復していくタイミングは不確実性が高く、従来に比べ後ずれしていると付け加えた。』

まあこの時点ではこんな感じですかな。

で、第2の柱の部分ですが・・・・・

『実体経済面では、委員は、@ 米欧の金融機関の破綻などを背景に、国際金融資本市場の緊張が強まっていること、A 米国経済の停滞や欧州・アジアの景気減速の明確化など、世界経済には下振れリスクがあること、B 国内民間需要については、これまでの交易条件の悪化を反映した所得形成の弱まりから下振れるリスクがあること、を指摘した。』

とまあどう見ても下振れリスクの話ばっかなのですが、その後の方ではこんな指摘も。

『この間、複数の委員は、景気の下振れリスクが薄れる場合には、緩和的な金融環境の長期化が経済・物価の振幅をもたらすリスクが高まるとの認識を示した。』

こりゃまたお約束ですが、次回の会合(先日の会合)でこの「複数の委員」がどの位減っているのかとか気になりますな(^^)。

『これに関連し、ある委員は、実質短期金利と潜在成長率の関係など、様々な観点から金利水準の妥当性を点検し続ける必要があると述べた。』

これはどういう観点なのかしらんという所ですが、この辺りって基本的に推計が入る話だからあまりゴリゴリと詰めて論じても出てきた数字が妥当なのですかというのは疑問符がつきそうなのですけれども。


物価の上振れ部分は割愛して、『先行きの金融政策の運営』部分から。

『ある委員は、潤沢な流動性供給という観点から、金融調節手段の拡充に向けて検討する必要があるとの見方を示した。』

と言う指摘がございましたが、まあこの時点って既に期末越えで潤沢に出されていた資金が徐々に吸収される(正確に言えば期越えで打った資金供給オペをちゃっかり減額ロールしたりロールしなかったりという方法を使い、露骨な吸収をする訳ではない)段階にあって、足もとのGCレートが上昇しやがっている段階。この後株価急落をする中でGCレポレートがロンバートより高いとかいう無茶な状況になって、インターバンク対比でのオープン金利上昇が顕著になったんですな。

ま、調節手段の拡充もそうなんですが、このあたりでもツイストオペの活用とかもうちょっと議論できていればという感じです。

なお、この翌日に欧米の協調利下げが打ち込まれまして、その際に日銀は「当座預金付利の検討」などという話をしたら、そんな場合ではなく利下げに追い込まれたでござるの巻になったので、先般のブサイクな利下げになったというのはご案内の通り。


・・・・ということで、この時点での会合では下振れリスク意識は全開でしたけれども、利下げ議論は無く、流動性供給の話がちょっと出ていました位ですが、まあこの後の市場の急展開というのもあるので、何も無かったのに君子豹変ですねえというイヤミを言うのは止めておきますね(^^)。市場だって10月の頭の時点では「展望レポートでどの位下振れさせてくるか」程度の認識でしたからね(あたくし的には展望レポートで利下げ観測がテーマになるかもしれないな位のイメージでしたけど)。

他の部分はちょっと宿題にさせてちょ。

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2008/11/04

お題「決定会合あれこれ(続き)」

30bpになったのはあれですよほら、「世界のBOJ」。

○付利金利がちゃんとフロアになるのかという論点

ちなみに、この超過準備付利って次回の積み期間から開始になりますので、今日のフロアは0%になります。お間違えの無いようにお願いします。と言ってもたぶん普通のオペが行われるだけだと思いますよん。で、その超過準備付利に関して少々気になったのが1点。

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc/mok0810g.pdf

こちらの4ページ目を読んでて「???」というのがございます。

『4.適用利率

(1)本行が金融市場調節方針において誘導目標として定める無担保コールレート(オーバーナイト物)の水準から本行が別に定める数値を差し引いた利率とする。

(2)5.に定める積み期間の期中に(1)による利率に変更が生じた場合には、当該期中の最も低い利率とする。』

で、次の項を読みますとこうなっています。

『5.利息の計算方法

対象先ごとに、準備預金制度に関する法律第7条第3項に規定する1月間(以下、この期間を「積み期間」という。)の毎日の終業時における当座預金または準備預り金の残高を合計し、その合計金額から、当該積み期間の起算日の属する月における当該対象先の法定準備預金額(準備預金制度に関する法律第2条第2項に定める法定準備預金額をいう。)に当該積み期間の日数を乗じて得た積数を控除し、その金額(零を下回る場合を除く。)に、4.に定める適用利率を乗じたうえ、365で除して算出するものとする。』

ということですので、積み期間中に政策金利が変更になった場合はその間の一番低い利回りが当該期間に渡って適用されるというお話と読めます。

するってえと、積み期間途中の決定会合で誘導目標金利の引き下げが行われた場合はそこまでの超過準備積み分の付利金利が空しく引き下げになる(ただし政策金利引き上げになっても上がりません)という仕組みになっている訳でありまして、そーゆー意味では途中で利下げ観測が物凄い勢いで盛り上がった場合にこのフロア0.1%というのが役立たずになる可能性もあろうかと。

たぶん途中で金利変更になった場合に付利金利を変更した場合に、利息計算が大変だから簡便な方法にしたのではないかと勝手に想像するのでございますが、次に利下げ(ゼロ金利なのか0.1%なのか知りませんが)という話になったら「スプレッド0.2%」を真に受けて考えれば普通にフロアゼロになっちゃいますから、「利下げがある」という話が出てきた瞬間にこの超過準備付利が役立たずになる悪寒が。

(以下翌日の追記)

○ちと昨日の訂正

超過準備への付利のレートに関してですが・・・・・

良く考えたら所要準備が幾らですかっていう数値は積み期間の計数確定まで判明しないのでして、半月後積み方式なのでそもそも論として積み期間前半の所要準備額ってのは暫定値なので、適用レートを途中で変更というのは技術的に問題があるのでした。ご指摘多謝であります。

(追記終了)


と思って今後の決定会合の日程を見たら、大体積み期間の頭の方に組んでいるので大丈夫かなとか思ったら、最後に4月7日ってのがございまして、どう見てもこれが爆弾です本当にカムサハムニダという所ですな。これはきっと4月7日会合で利下げ追い込まれフラグが立ったのか、それともその前に利下げ追い込まれフラグが立ったのかという所でしょう(^^)。


○展望レポート(基本的見解)から

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/tenbo/gor0810a.pdf

今回の展望レポート(基本的見解)は(経済情勢の見通し)に入る前にこのような文章が入っています。

『2008 年度から2010 年度にかけてのわが国の経済・物価を取り巻く環境を展望すると、国際的な金融情勢の展開やその実体経済への影響、国際商品市況の動向など、著しく不確実性が高まっている。こうした状況下では、先行きの経済・物価動向を見通すに当たって、中心的な見通しの蓋然性が、これまでに比べて高くないことを踏まえ、リスク要因を注意深く点検することが従来以上に重要である。以下、この点を十分に踏まえた上で、経済・物価情勢を検討することとする。』

ということで、中心的な見通しの蓋然性が高くないですというのを最初にわざわざ謳っていまして、これがまた次の所にあるのですが、よく見りゃ中心的な見通しって1年くらい後ずれしてるシナリオに読めるのですけれどもですが・・・・ということで(経済情勢の見通し)の見通し部分ですけど。

『先行き2008 年度後半から2010 年度を展望すると、2009 年度半ば頃までは、停滞色が強い状態が続くと見込まれる。すなわち、既往の交易条件悪化の影響などから、国内民間需要は弱めに推移する可能性が高い。輸出についても、海外経済の減速や為替円高を背景に、弱めの動きとなるとみられる。その後、エネルギー・原材料価格高の影響が薄れ、海外経済も減速局面を脱するにつれて、成長率が徐々に高まっていく姿が想定されるが、その時期は2009 年度半ば以降となる可能性が高い。2008 年度、2009 年度の成長率は、年度平均でみると、それぞれ0%程度、0%台半ばで推移した後、2010 年度の成長率は潜在成長率並みになると考えられる。』(今回の展望レポートによる見通し)

これが前回4月の展望レポートではこういう記述になっていました。

『先行き2008 年度から2009 年度を展望すると、概ね潜在成長率並みの緩やかな成長を続ける可能性が高い。すなわち、2008 年度前半は、住宅投資が次第に回復に向かうものの、米国を中心とした海外経済の減速やエネルギー・原材料価格高の影響などから、景気は減速を続けるとみられる。その後は、海外経済が次第に減速局面を脱し、エネルギー・原材料価格高の影響が薄れてくるとみられるため、成長率は徐々に高まっていく可能性が高いと考えられる。その結果、2008 年度の成長率は前回見通し対比で下振れ、1%台半ば程度になるとみられる。また、2009 年度の成長率は1%台後半程度になると考えられる』(4月の展望レポートより)

・・・・・となりますと、これって回復見通しを後ズレにしていて、足元の見通しは当然ながら下がっているので、そりゃまあ見通しを下げてはいるのですけれども、「2010年度は潜在成長率並み」という回復シナリオになっているのが(日銀のことだからある程度来るとは思ってましたが)ふ〜んという感じです。即ち、回復シナリオそのものは相変わらず捨てていないという事ですので、金融政策のタイムラグという話からして、ここから更に利下げだ量的緩和だ(金利付きの量的緩和はなんちゃって緩和で、本当の量的緩和はゼロ金利とセットでしょ)という話になるのはこのシナリオの「先は回復」というのを引っ込めてくる必要があろうかなと思います。


で、もっと微妙なのは(金融政策運営)の「2つの柱」の部分でして・・・・

『まず、第1の柱、すなわち先行き2010 年度までの経済・物価情勢について、相対的に蓋然性が高いと判断される見通しについて点検する。上述した通り、わが国経済は、2009 年度半ば以降、潜在成長率に向かって成長率が徐々に高まっていく姿が想定されるが、当面は、停滞色が強い状態が続くと見込まれる。また、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比は、当面は、2%台半ばの水準から徐々に低下し、2009 年度に0%前後となった後、2010 年度には0%台前半になるとみられる。このように、わが国経済は、やや長い目で見れば、物価安定のもとでの持続的な成長経路に復していく可能性が相対的に高いと判断される。』(今回の展望レポートですな)

ということで、持続的な成長経路に復していく可能性が相対的に高いということなのですが、ではそういう見通しなのに何で利下げしたんですかという疑問が少々ございますのですが。と思って4月の展望レポートの当該部分を拝見しますとこんな感じ。

『まず、第1の柱、すなわち先行き2009 年度までの経済・物価情勢について最も蓋然性が高いと判断される見通しについて、政策金利に関して市場金利に織り込まれている金利観を参考にしつつ点検する。上述した通り、わが国経済は、当面減速するが、見通し期間全体では、概ね潜在成長率並みで推移するとみられる。また、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比は、均してみれば1%程度で推移する可能性が高い。こうした動きは、「中長期的な物価安定の理解」に概ね沿ったものと評価できる。このように、わが国経済は、物価安定のもとでの持続的な成長を実現していく可能性が高いと判断される。』(これは4月の展望レポートです)

4月にあった『政策金利に関して市場金利に織り込まれている金利観を参考にしつつ点検』というのが外れたのは今回利下げしたからですねとか思うとその芸の細かさに感心しますが(苦笑)。「持続的な成長実現」じゃなくて「成長経路に復する」だから正常化がどうのこうのという話は「復する」となってからのご相談だというのは把握しました。

でも何か決定会合の声明文と微妙にニュアンスが違う気がするのはどうしてなのかなあと思ってみたり。

『3.現在、世界経済は、2000 年代央の数年にわたって蓄積された様々な不均衡の調整局面を迎えており、当分の間、厳しい経済情勢が続く可能性が高い。こうした世界経済の動向を背景に、日本経済の回復に向けた条件が整うには相応の時間を要するとみられる。日本銀行としては、今後とも、緩和的な金融環境の確保を通じて、物価安定の下での持続的成長経路への復帰に向け、最大限の貢献を行っていく方針である。』(決定会合声明文より)

これと展望レポートでの見通しやら第1の柱やらの文章を見ますと、何か微妙にニュアンスが違いますわなと思うのれす。声明文での話と展望レポートの話は対象としている時間の長さが違いますって答えが返ってくるのでしょうが、利下げした声明文に対して展望レポートのこの辺のニュアンスの相違がちと気になったのでありまする。

他に気が付いたらまた書きますかもしれません。

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2008/11/01

お題「どうみてもブサイクな利下げ関連(超過準備付利と利下げ幅に関連して)」

いやはや、何というずっこけ茶番利下げなんでしょ。まあ思いつくままにテキトーに指摘しておきますね。

#連休初日、こんな良い天気なのに何やってんだか(^^)

で、今回出てたリリースはこのあたりです。

・金融政策変更の声明文
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc/k081031.pdf

・補完当座預金制度の導入(超過準備付利)
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc/mok0810f.pdf
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc/mok0810g.pdf
(上が制度概要、下が導入に関する説明)

・展望レポート(基本的見解)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/tenbo/gor0810a.pdf


○大型(かどうか知らんが)経済対策とセットなのは良かったですが

アホウ新聞のリーク記事らしきものでスタートした今回の利下げ云々でございますが、国際協調の枠組みもさることながら、今回は前日に政府が真水5兆円という一応規模はそれなりの景気対策(でも消費税増税を言い出したらダメでしょ。「対策要らないから増税すんな」ってなるだけだと思いますが・・・・という点でローゼンに絶望した!)を打ち込んだ為に、「財政政策と金融政策が協力して景気対策」という格好になったので、それはまあそれで形としては美しくなったので結構でございました。あたくし的には「金融緩和するなら財政も出さないと」って申し上げていたクチなのでその点は中々(・・・でも増税発言は最悪)。

#てめえのところでは恒久的措置だった筈の定率減税を廃止して財政引き締めやっておいて「利上げするなら日銀法改正」とか発言だけは威勢の良いどこぞの誰かさんとはテイストが違いますな。

でもまあ日経新聞(あら)の記事が出ちまった事から、日銀は結局追い込まれて利下げしましたねって言うのは何ともいただけない話でありまして、日銀の金融政策を予測する為には何を持って判断すれば良いかって議論になる訳ですよね。物価の安定って期待に働きかける要素がそれなりに大きく寄与する筈なんですが、その期待を安定化させる為に政策委員会での議論とその公表があり、展望レポートなどの情報発信がありという話だと思うのですが、今般はその流れを全部無視という話になる訳でして、「期待の安定」という観点からすると今回の流れは大いに退行したものであり、日経新聞はしょせん中外商業新報であり、経済のクオリティーペーパーとしての意識は持ち合わせてませんですなと存じますがね。

従いまして、別にECBみたいに公式に中央銀行が事前アナウンスをしている訳でもなく、市場が勝手に織り込みに行った状況だというのに「市場がこれだけ織り込んだのだから利下げしないのは市場との対話と言う面でおかしい」とか言っている人が結構存在してたのですけれども、その理屈は明らかにおかしい訳で、市場が勝手に追い込んで恫喝したら中央銀行はその通りに動くと思われるほうがどうみても間違っておりますわな。市場の中の人ほどそういう発言してる人が多くて、相変わらずマーケットというのはポジショントーク野郎の集まりですなあと思った次第。え、お前も市場参加者だろって?いやまあそれはそうなんですけどね。


○要するに執行部は付利をしたかったと

賛成4で反対4、しかも賛成4のうち3票は執行部の票ですので、審議委員の5名中4名までもが反対するという今回の結果。

当初は据え置き4かと思ったのですが、会見によれば0.25%への引き下げというスッキリした提案が3票に、据え置きというこれはこれである種イヤミな票と思われますが(^^)、要するにこの4名は「付利するなら据え置き、0.25%に下げるなら付利なんぞややこしいことはするんじゃねえ」という筋論での反対なのではないかとあたくしは勝手に推測致しました。

(追記@11/01 12:15)日経新聞の報道によりますと、「現状維持を主張したのは水野審議委員」だそうです。水野審議委員は政策委員の中で一番景気に弱気で金融緩和に積極的と見られますので、従来からの政策ロジックの継続性で反対したのか、それともマジで「付利するなら据え置きやがれ」というイヤミなのかという所ではないかと推察。ちなみに審議委員5名の金融政策に関する現状の見解は、ハト派の順に水野さん>野田さん>亀崎さん>中村さん>>>須田さんくらいのイメージなんですけど、0.25%を主張した須田、中村、亀崎の3氏は「下げるなら中途半端なことしないでスッキリ下げろよ」って事だったのでしょう。(更に追記@11/01 17:05)日経本紙読んだら「水野審議委員と思われる人」が現状維持主張となっていて確証が取れませんので、上記追記部分取り消します。

山口副総裁は先週頭の就任会見でやたら「流動性」を強調してましたし、白川総裁は昨日の記者会見(アップされたらよく読みたいです、一応ベンダーの記事などでは読みましたが)では「今回の利下げを決断したのは直前になって判断」というような発言をしていましたので、まあこの状況から推測しますと、元々今回の会合では以前ぶち上げた「当座預金の付利」に関する話が先にあったのですが、まあオトナの事情(苦笑)によって利下げすることになりましたと。で、どうしても付利をぶつけたいもんだからこんな不格好な結果になってしまいましたと。

どう見ても付利なんぞ後の話でも良いと思うのですが、当座預金付利でインチキ量的緩和というのを先にぶち上げたのを引っ込めたく無いという小役人的発想が先に立った決定としか申し上げようがございませんで、実に残念と言うか絶望な0.30%なのでございます。


○肝心の流動性対策が全然出てませんが

それどころか、コリドー設定で(設定しなくても0.25%の政策金利に下がゼロでロンバートが0.50%だったら50のコリドーではありますが)流動性対策という観点からすると問題は悪化しているのであります。短期市場的に言えば何のための決定会合だったのか意味わからん。

・・・・と申しますのは、こんなナローコリドー(上下0.4%)を設定しますと、コリドーの無い時点と比較した場合、資金の取り手は直ぐにロンバートに駆け込みますし、資金の出し手はコリドー下限でも別にいいやってブタ積みが増えますし、要するに短期金融市場における資金の巡りが悪くなるだけなのですよね、ということでして、付利してコリドー作るよりも前にやるべき事があるでしょうという事です。

で、あたくし以前から延々と申し上げていたと思いますが、足元の金融市場の問題点っていうのは、「資金が円滑に回っていない」という所にありまして、その結果として例えばCPの発行金利がやたら高くなってしまったり、GCレートがやや高い状態が続き安定もしないので債券市場の参加者(業者)がポジションを持ちにくくなり、結果として債券市場の不安定化に繋がるとか起きているわけです。

特に切実な問題としては「相対的に流動性の低いモノのファンディング」という所でありまして、それこそ物価連動国債(いやまあ日銀適格ではあるのですが、普通にGCの担保にするのはかなり厳しい)に始まりまして、最近増えてるらしいCPの代わりに出て行くローン(これもまあ相手によっては担保になりますけど)とか、勿論その他色々とある訳ですが、こいつらの問題ってのは当初は仕組みモノとか在庫豊富な外資系の話だったと思うのですけれども、最近は国内勢でも影響でてる訳で(だから債券やらCPの市場が不安定化する)、金融環境の改善するなら流動性対策やる方が効くんですけどね。



という一般的悪態に続きまして決定内容に関して。

○執行部は来年の4月まで追加利下げしたくないのですかねえ(苦笑)

まずこのブサイクな0.3%という金利に超過準備付利がセットになっておりますけれども、内容としてはこうなっております。(決定会合の結果公表文書より)

『(3)補完当座預金制度の導入(全員一致)

金融市場の安定を確保する観点から、年末、年度末に向け、積極的な資金供給を一層円滑に行い得るよう、日本銀行当座預金のうち所要準備額を超える金額について利息を付す措置を臨時に導入し、11月積み期から来年3月積み期までの間、実施することとする。適用利率は、0.1%とする。』

ということで、来年の3月積み期が終了するのが4月15日でして、金融政策決定会合は4月6、7日と28日に実施されますので、来年度頭の展望レポートまでは利下げしたくないという意思ですかそうですかってなもんです。だって次に利下げしたらどう見たって適用利率0%ですよね。何のためにわざわざ実施するのでちゅかねえ(笑)。

#しかも今回の「臨時措置」というのも訳判らん

今回わざわざ0.3%金利に超過準備付利がセットになっているのは、「これ以上利下げはしたくないです」って事あるいは「次に利下げしてもゼロ金利じゃないですよ(まあ順当に考えれば0.10%に下がるんでしょ)」という意思表示という風に見えてしまう訳でありまして、引け後の会見で「反対のうち3票は0.25%への引き下げ」というので瞬間債券相場とか金先とか好感してましたが、その後ヘロヘロになったのは「執行部の方が下げる気無いのならダメじゃん」という理解を市場がしたからだと思われます。

経済情勢的に考えて、別に来年の1−3あたりに向けて追加利下げ必要な場面がやってきてもおかしくないという状況だと思うのですが、さてどうなることやらという感じではあります。

と、ここまで作ったところで続きは明日か明後日か休み明けに。

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2008/10/27

○主要銀行貸出動向アンケート調査

ちと前にでたんですけど。
http://www.boj.or.jp/type/stat/boj_stat/loos/loos0810.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/type/stat/boj_stat/loos/loos0807.pdf(前回)

前回は7月調査でしたが、ちょっと比較するとほほうという感じ。ほんのちょっとだけで恐縮ですが。

・全体の資金需要

『過去3ヶ月間において、「企業向け」、「地公体等向け」、「個人向け」の資金需要がどのように変化したか。』って質問に対して資金需要判断DI(プラスが大きいほど需要が高い)の推移がこうなってます。

          (10月)  (7月)  (4月)
企業向け     ▲5    ▲14   ▲2
地公体等向け   1      17   29
個人向け     ▲5      3    1


地公体はちとスルーしまして、企業向けと個人向け見てると、企業向けの資金需要が一旦落ちたあとまた戻り気味というのが(一回だけでは判断できませんけど)微妙に宜しくない感じ。前向きの資金需要が落っこちた後に後ろ向きの資金需要が出ているのだと嫌〜ですね。個人向け落ちているのはまあ住宅とか見たらそうでしょうかと。

で、その要因に対しての質問もあるのですが、資金需要が増加、減少した要因に関して前回と今回とを(めんどいので大企業だけ)比較します。()が前回数値です。

まず資金需要増加要因。

@売上の増加       1.40 (1.00)
A設備投資の拡大    1.40 (1.00)
B資金繰りの悪化    1.00 (1.00)
C手許資金の積み増し    1.80 (1.33)
D他の調達手段からのシフト 1.00 (1.00)
E貸出金利の低下    1.60 (1.33)
Fその他          1.20 (2.00)

で、減少要因。

@売上の減少    2.67(2.00)
A設備投資の減少 2.67(2.00)
B資金繰りの好転  1.67(1.14)
C手許資金の取崩し 2.00(1.14)
D他の調達手段へのシフト 1.67(1.00)
E貸出金利の上昇   1.33(1.14)
Fその他        1.67(1.14)

・・・・うむ、まあこの辺見ていると(回答数が少ないですけど)今のところ資金繰りが悪化まではなってないと。「手元資金の積み増し」が増えているのは気になりますけれども・・・・・・・

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2008/10/21

○全地域下方修正来ました

ところで今回のさくらレポート概要なんですけどね。

さくらレポート概要
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/chiiki_rep/chiiki0810.htm

なのですが、前回(7月7日)の概要はこんな感じでして、今回は概要部分の量が多く(というか説明が長く)なっています。
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/chiiki_rep/chiiki0807.htm

なお、本文(PDFで58ページあります)はこちら。
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/chiiki_rep/data/chiiki0810.pdf

ま、余談は兎も角、話題になっていたのは全地域下方修正ということでして、概要のところにもこのように説明されています。

『なお、7月の支店長会議時と比べると、総括判断は、個人消費や生産等において弱めの動きが広がっていることを反映して、全9地域で下方修正した(うち東北、北陸、東海、中国は下方修正、その他の5地域はやや下方修正)。』

この下方修正はここもといい感じで連発しておりまして、

2008年10月(今回):9地域で下方修正
2008年7月:8地域で下方修正
2008年4月:8地域で下方修正
2008年1月:5地域で下方修正

となっていますので、前回もやったのですが、今回は今年の1月時点の判断からの下がりっぷりを地域ごとに並べて涙すると致したく。

北海道
やや弱めの動きとなっている
→やや弱めの動きが続いている
→弱めの動きとなっている
→やや厳しい状況にある

東北
全体としてみれば、緩やかな回復を続けている
→足踏み感がみられている
→足踏み感がみられている
→弱めの動きが広がっている

北陸
一部で弱めの動きがみられるものの、緩やかに回復している
→減速している
→減速感が幾分増している
→停滞している

関東甲信越
緩やかな拡大基調にある
→やや減速している
→減速している
→停滞している

東海
緩やかに拡大している
→緩やかな拡大基調にあるが、その速度は足もと鈍化している
→引き続き高水準にあるが、足もとは減速がはっきりしてきている
→なお高水準を保ちつつも、下降局面にある

近畿
緩やかに拡大している
→一部に減速の動きがみられるが、基調としては緩やかに拡大している
→減速している
→停滞している

中国
全体として回復を続けている
→一部に弱さがうかがわれるものの、全体として回復を続けている
→全体としては緩やかな回復を続けているが、そのテンポは、このところ鈍化している
→一部に弱い動きがみられるが、全体としては概ね横ばいで推移している

四国
緩やかながら持ち直しの動きが続いている
→持ち直しの動きがやや弱まっている
→横ばい圏内の動きとなっている
→やや弱めの動きとなっている

九州・沖縄
緩やかな回復を続けている
→回復に足踏みがみられる
→足踏み感が強まっている
→停滞している

前回も同じ事申し上げましたが、今年の1月における判断では北海道以外で「回復」「拡大」「持ち直し」という上向きベクトルの表現になっていたのですが、今回を見ますと全地域横向きか下向きベクトル。東海地区だけ水準を「高水準」としておりますが、その東海地区でも下降局面と判断してますので、もう何か全然さえませんなという感じです。まだ悪化という状態ではないのでメタメタではない(というか悪化だったら金融大緩和でしょ)のですが。


○項目別展開

ここの説明部分ですが、前回対比の地域数の表が追加されているので、見やすくなりましたなあという所であります。

・個人消費

『個人消費は、北海道、中国で、「やや厳しい状況」ないしは「低調」と判断しているほか、その他の地域でも「弱めの動き」ないしは「弱含んでいる」と判断している。』

『前回報告との比較では、北陸、東海は現状維持としたものの、東北、中国が下方修正、北海道、関東甲信越、近畿、四国、九州・沖縄がやや下方修正した。』

ということで、表にありますように、前回対比 「上方修正」0地域 「現状維持」2地域「下方修正」7地域となっておりますです。その個人消費に関しては別項で詳しい分析がございます。

・設備投資

『設備投資は、「増勢が鈍化」ないしは「高水準横ばい」といった報告がみられる一方で、交易条件の悪化等により企業収益が減少していることなどを背景に、「減少している」ないしは「幾分弱めの動き」といった判断が目立ってきている。』

交易条件悪化に関しては前回も指摘されていました。

『前回報告との比較では、北海道、東北、中国、四国は現状維持としたものの、北陸が下方修正、関東甲信越、東海、近畿、九州・沖縄がやや下方修正した。』

で、前回対比 「上方修正」0地域 「現状維持」4地域 「下方修正」5地域 ですな。

・生産

『生産は、北海道、中国、四国で、「横ばい」ないしは「高めの水準を維持」と判断している一方、東海で「減少している」、その他の地域では、「弱めの動き」などと判断している。』

『前回報告との比較では、北海道は現状維持としたものの、東北、北陸が下方修正、関東甲信越、東海、近畿、中国、四国、九州・沖縄がやや下方修正した。』

で、前回対比 「上方修正」0地域 「現状維持」1地域 「下方修正」8地域 ですな。

・雇用・所得

『雇用・所得環境をみると、雇用情勢については、全地域で弱めの動きとなっている。北海道、関東甲信越、中国、四国、九州・沖縄で、「弱めの動き」ないしは「改善が一服」などと判断しており、東北、北陸、東海、近畿でも、「有効求人倍率の低下が続いている」ないしは「雇用者数が伸び悩んでいる」などと判断している。』

雇用情勢に関しては前回までは地域差があって、ベクトルが一応上を向いている地域もあった(東海・近畿・中国)のですけれども、今回は貫禄の「全地域で弱めの動き」という状態になっちゃいました。これはいかんでしょ。

同じ部分を7月のさくらレポートから引用するとこんな感じに。

『雇用・所得環境をみると、雇用情勢については、北海道、東北、北陸、関東甲信越、四国、九州・沖縄で、「やや弱めの動き」ないしは「改善に足踏み」、「横ばい圏内の動き」などと判断している。一方、東海、近畿では、「雇用者数は緩やかに増加しているが、有効求人倍率はこのところ幾分低下」などと判断しているほか、中国では、「有効求人倍率が引き続き高めの水準を保っている」と判断しており、地域差がみられる。』(7月のさくらレポートより)

前回と今回とを比較すると情勢の悪化が見て取れるかと。で、続き。

『雇用者所得は、関東甲信越、東海、近畿、中国で、「伸び悩んでいる」ないしは「横ばい圏内の動き」と判断している一方、北陸、四国、九州・沖縄で、「やや弱めの動き」などとしているほか、北海道、東北で、「厳しい状況が続いている」ないしは「減少している」とするなど、地域差がみられる。』

こちらに関しても前回7月時点では関東甲信越と東海は良い状態という所でしたので、これまた情勢の悪化ですかな。7月のさくらレポートから同じ部分を引用します。

『雇用者所得は、関東甲信越、東海が、「緩やかな増加」ないしは「改善」と判断しているほか、北海道、東北が、賃金引き上げに抑制的な動きがみられるなどとしつつも、「一部に持ち直しの兆し」ないしは「緩やかな改善を続けている」と判断している。この間、北陸、近畿、中国、四国、九州・沖縄が、「前年並み」ないしは「横ばい圏内で推移」と判断している。』(7月のさくらレポートより)

情勢はあまりよろしくないという感じですな。

『前回報告との比較では、雇用情勢については、東北は現状維持としたものの、その他の8地域がやや下方修正したほか、雇用者所得については、北陸、関東甲信越、東海、四国、九州・沖縄がやや下方修正した。』

ということで、雇用情勢の前回対比が 「上方修正」0地域 「現状維持」1地域 「下方修正」8地域。雇用者所得の前回対比が 「上方修正」0地域  「現状維持」4地域 「下方修正」5地域だそうで。

まあ総括してヘロヘロでございますなという事でして。


○これまた毎度お馴染み「地域の視点」

今回のお題は二つありまして、
『各地域からみた最近の個人消費動向と消費関連企業の対応』
『地域経済における原油価格等上昇の影響とその対応─水産業のケース─』
ということで、お題を見れば判るように景気の良い話ではございません(^^)。

ちなみにですな、こちらの1番目のお題に関連する分析が本文の方に結構詳しく掲載されていまして(本文4ページ目〜本文12ページ目、PDFファイルで6ページ目〜14ページ目になります)、その中で『ロ.消費者の支出行動の抑制色の強まり』ってあたりから見てると中々オモロイです。ちょっとだけ引用します。

『消費者の支出行動が抑制色を強めていることの顕れとして、全国的に、節約志向や低価格志向等、消費支出節減の動きが一段と強まっているとする声が多く聞かれる。こうした傾向は、家計支出に占める燃料費のウェイトの相対的に高い地区でより顕著にみられているといった指摘もある。なお、食の安全に対する意識の高まりを背景とする国産・高品質志向の強まり等、消費支出を下支えする動きも一部にみられなくはないものの、今のところその効果は限定的との見方が多い。』

ということで、【節約志向の強まりの具体例】とか【低価格志向の強まりの具体例】とか【商品・サービス代替の具体例】というような事例の報告があったり、一方で景気の良い話として【食料品等における国産・高品質志向の具体例】という所では【健康志向の具体例】とか【こだわり消費等の具体例】なんかがありまして、紹介すると長くなるので割愛しますが、さくらレポート本文もご覧になると吉かと存じます。

#なるほどだから最近銀座やら新宿やらって人大杉状態なのねと思いますが


んでまあ毎度恒例になってしまいましたが、こちらは2007年1月分という景気の良かった時からの「地域の視点」のお題を並べると寂寥感が出て実に味わいの深いものがございます(^^)。

・『1.各地域からみた最近の個人消費動向と消費関連企業の対応』
 2.地域経済における原油価格等上昇の影響とその対応─水産業のケース─』(今回)

・『最近の企業の設備投資動向 』(2008年7月)

・『1.グローバル需要の取り込みに向けた企業の対応について
── 中堅・中小製造業や非製造業の動きを中心に
 2.地域からみた最近の雇用・賃金情勢について』(2008年4月)

・『原材料価格上昇のもとでの企業の対応
── 最終消費者に近い「川下」段階にある地場企業を中心に』
(2008年1月)

・『1.最近の企業立地の動向と立地戦略の特徴点
 2.北海道農業の現状と新たな取り組み』(2007年10月)

・『中小企業の収益動向と支出行動の特徴点』(2007年7月)

・『1.各地域からみた最近の雇用・賃金情勢について
 2.近年の東京における高額消費市場の特徴
――海外ブランドや外資系ホテルの動向を中心に』(2007年4月)

・『各地域からみた最近の住宅投資動向について』(2007年1月)

・・・・・・景気の流れが良く判りますなあ。。。。

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2008/10/20

○決定会合議事要旨から:通常会合

まずは9月16、17日の会合です。リーマン破綻直後の週初(火曜日)から2日間行われた通常会合から少々。

・リーマン破綻の影響について

『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』より。

『国際金融市場の現状について、委員は、最近の米国金融機関を巡る情勢を背景に、不安定さが増しているとの見方で一致した。多くの委員は、米欧金融機関の経営を巡る懸念は、G S E 二社の救済策発表後に一旦落ち着く兆しをみせたが、米国大手投資銀行の破綻等を受けて再び高まっているとの認識を示した。』

という事で・・・・

『この点に関して、何人かの委員は、足もと市場参加者のリスク回避姿勢が急速に強まっており、市場流動性が大きく低下しているとの認識を示した。また、ある委員は、金融株が大きく下落しているほか、社債スプレッドやC D S プレミアムが拡大していると指摘した。』

確かにこのようになっていました。で、その後益々拡大したんですよね。

『何人かの委員は、これまで米欧金融機関は計上する損失に対応させるかたちで資本増強を進めてきたが、今後資本の調達が困難になる可能性に注意が必要であると述べた。これらの委員は、この背景として、@ 住宅価格の下落が続く中での追加損失発生への懸念、A これまで金融機関の増資等に応じた投資家が含み損を抱えていること、B 米欧金融機関の今後のビジネスモデルに対する不透明感、などを指摘した。』

という認識に対してその後の展開がここでの議論での懸念どおりに進行したという感じです。第二の柱で何を懸念していたかは金融経済月報にもあるのですけれども、議事要旨にはこのように。

・第2の柱から

『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』から。

『実体経済面では、委員は、@ 最近の米国金融機関を巡る情勢を背景に、国際金融資本市場は不安定さを増しており、米欧の短期金融市場では再び緊張感が高まっていること、A 米国経済が停滞しているほか、欧州やアジアで景気減速が明確化してきており、世界経済には下振れリスクがあること、B 国内民間需要については、これまでの交易条件の悪化を反映した所得形成の弱まりから下振れるリスクがあること、を指摘した上で、設備・雇用面で調整圧力を抱えていないとはいえ、景気の下振れリスクには注意が必要である、との認識を共有した。』

ということでして、上記のうち1番目は10月に掛けて更に高まり、これに対処すべく各種施策が打ち出されたという状況になっています。2番目も顕在化していて、3番目に関しては株価は下がってますけど経済指標的には微妙なのかな。でも短観悪かったし。

『特に、世界経済について、複数の委員は、米欧金融機関のリスクテイク能力は低下しており、融資姿勢の一層の厳格化など実体経済に対する金融面からの下押し圧力に注意が必要であると述べた。この間、わが国経済の先行きについて、何人かの委員は、成長経路に復するというメインシナリオに変化はないものの、その時期が後ずれする可能性は意識しておく必要があるとの認識を示した。』

ということで、何か9月時点で認識していた下振れリスクが益々顕在化している気がするんですが。

一方物価に関しては・・・・・

『物価面では、委員は、@ このところ国際商品市況は反落しているが、世界的にインフレ圧力が高い状況が続いていること、A わが国の物価については、エネルギー・原材料価格の動向に加え、近年にない物価上昇率が続いているもとで、消費者のインフレ予想や企業の価格設定行動が変化する可能性もあること、を指摘し、引き続き上振れリスクに注意が必要であるとの見方で一致した。』

ほほう。

『何人かの委員は、国際商品市況は足もと反落しているが、新興国を中心とする需要増加や地政学的リスクへの懸念などを踏まえると、再び上昇に転じる可能性も否定できないとの認識を示した。このうちのある委員は、世界的に緩和的な金融環境が維持されていることからみても、インフレ・リスクに引き続き注意が必要であると述べた。』

この時点から現在に掛けての動きだけ見るとこっちに関しては顕在化していませんねという感じですわな。

『この間、多くの委員は、景気の下振れリスクが薄れる場合には、緩和的な金融環境の長期化が経済・物価の振幅をもたらすリスクが高まるとの認識を示した。』

しかし下振れリスクは濃くなっているのでありました。残念無念。


○決定会合議事要旨から:ドル資金供給オペレーション実施

続きまして9月18日の米ドル資金供給オペレーション実施の会合から。

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g080918.pdf

執行部の説明から。

『米ドル資金の調達環境が世界的に顕著に悪化している。すなわち、9 月15 日の米リーマン・ブラザーズ( 持株会社) の破綻等を契機に、欧米金融機関の信用不安が再燃し、株価が急落、C D S プレミアムも急拡大している。こうした中で、米ドル資金の調達金利は、ターム物、オーバーナイト物ともに急上昇し、かつ、日中の振れの大きい状況が続いている。』

ということで、本件の実施ってまあ要するにドル資金ファンディングが一番問題になっていたところ、即ち欧州の短期金融市場およびCDS市場などが赤信号出してきたという事に対処するという話だったんでしょうな。と、欧州が大問題になって一気に米国を抜き去る公的支援拡大攻撃となってしまった現在だと明確に判りますな。

『年末越え米ドル資金の調達にかかる不安感も強く、年末越えの米ドルLIBOR− OIS スプレッドは過去に例を見ない高水準に達している。本邦市場関係者からも、現状、必要な米ドル資金は確保できているが、米ドル資金市場の著しい機能低下や、為替スワップでのドル調達環境の明確な悪化がみられることが数多く指摘されている。円投・ドル転コストも、足もと急上昇しており、かつ、振れの大きい動きとなっている。』

ということで、まあこの施策が主に欧州対応で実施されたという事になる次第。

同じ話は討議の部分に関して指摘されています。

『その上で、何人かの委員は、本件の対外説明において留意すべき事項を述べた。すなわち、複数の委員は、今回の措置が本邦金融機関のドル資金繰りの支援を直接意図したものではないことを十分に説明することが必要、と述べた。ある委員は、そうした誤解が生じないようにするためには、国際協調の中での措置であることをきちんと説明することが重要ではないか、と指摘した。』

この時の会見でそのあたりは強調されていまして、また債券市場の中の人であれば本件は国際協調というか欧州か米国の泣きが入ったからというイメージは持っていたと思いますが、報道で変に扱われますと大変ですから、この点は注意して対処してたと思います。

決定会合議事要旨からは以上で。


○10月の金融経済月報から(例によって概要だけですが)

先々週の話でどうもすいません。

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0810.pdf(10月)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0809.pdf(9月)

例によって比較してみますと・・・・

・冒頭部分

『わが国の景気は、エネルギー・原材料価格高の影響や輸出の増勢鈍化が続いていることなどから、停滞している。』(10月)
『わが国の景気は、エネルギー・原材料価格高や輸出の増勢鈍化などを背景に、停滞している。』(9月)

公表文では10月には上記に続いて『当面、海外経済の減速が明確化するもとで、こうした状態が続く可能性が高い。』というのを入れて下振れを強調していたのですけれども、こっちではその部分は先の方にございます。


・国内需要項目現状判断。

『輸出は増勢が鈍化している。企業収益は交易条件の悪化等を背景に減少を続けており、企業の業況感もさらに慎重化している。そうしたもとで、設備投資は減少している。』(10月)

『輸出は増勢が鈍化している。企業収益が交易条件の悪化等を背景に減少するもとで、設備投資は足もと幾分減少している。』(9月)

幾分とか無くなってみたり、減少を続けてみたりと。

『雇用者所得の伸び悩みやエネルギー・食料品価格の上昇などから、個人消費は弱めの動きとなっている。また、住宅投資は横ばい圏内で推移している。この間、公共投資は低調に推移している。以上のような内外需要のもと、生産は弱めに推移している。』(10月)

ここは9月と一致しているので9月分の引用を割愛します。


・先行き見通し

『当面の景気は、海外経済の減速が明確化するもとで、停滞を続ける可能性が高い。先行きについては不確実性が大きいものの、やや長い目でみれば、エネルギー・原材料価格高の影響が薄れ、海外経済も減速局面を脱するにつれて、次第に緩やかな成長経路に復していくと予想される。』(10月)

『景気の先行きについては、当面停滞を続ける可能性が高いものの、国際商品市況が落ち着き、海外経済も減速局面を脱するにつれて、次第に緩やかな成長経路に復していくと予想される。』(9月)

当面の景気云々が挿入されてまして、これが公表文における冒頭に相当しますけれども、当面停滞ってのを入れたということは、先行きの回復見込みが遅れるという事にも繋がるわけですわな。


・先行き見通し需要項目別

『当面の動向を需要項目別にみると、輸出は、海外経済の減速が明確化するもとで、横ばい圏内の動きにとどまるとみられる。国内民間需要は、企業収益や家計の実質所得の減少を背景に、弱めに推移する可能性が高い。』(10月)

『当面の動向を需要項目別にみると、輸出は、海外経済の減速から、ごく緩やかな増加にとどまるとみられる。企業収益が減少を続け、家計の実質所得も弱めに推移するもとで、国内民間需要は伸び悩む可能性が高い。』(9月)

輸出は海外経済減速の明確化でごく緩やかな増加から横ばい、家計の実質所得は弱めから減少、国内民間需要は伸び悩みから弱め、とまあ全部下げていますねという事です。

『この間、公共投資は減少傾向をたどると考えられる。以上の需要動向を踏まえると、生産は、当面弱めに推移するとみられる。』(10月)

ここは9月と同じなので例によって9月分引用割愛で。物価部分はまあ割愛。


・金融市場動向に関して

これは10月だけ引用します。

『金融面をみると、わが国の短期金融市場は、相対的に安定的な状態が維持されているものの、米欧金融機関の破綻等を背景にした国際金融市場の動揺の影響が及んでいる。オーバーナイト物コールレート(加重平均値)は0.5%前後で推移している。もっとも、市場参加者のリスク回避姿勢の強まりから、コールレートのばらつきが拡大し、ターム物の銀行間金利は強含んでいる。』(10月)

左様でございますな。

『わが国の金融環境は、総じて緩和的な状態が続いているが、中小・零細企業や一部の業種で資金繰りが悪化している先がみられる。』(10月)
『また、一部の業種では、起債環境の悪化や金融機関の貸出態度慎重化から、資金調達環境が悪化している。なお、9月中旬以降、CP・社債の信用スプレッドは拡大し、社債発行が減少している。』(10月)

というころで。ちなみに9月ですが、この部分に対応する箇所はこんな感じかと。

『CP・社債の発行環境をみると、下位格付先や一部業種では厳しくなっているものの、全体としてみれば、良好な状況にある。』(9月)
『企業の資金繰りは、全体としてみれば引き続き良好に推移しているが、中小企業や一部業種で悪化している。』(9月)

ということで、9月から10月に掛けて状況は厳しくなっていますねという所かと存じます。

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2008/10/16

○オペ拡充関連の追記

一昨日の夜打ち出されたオペレーションの拡充関連ですが、もうちょっと確認してみたのでフォローの追記をさせて頂きたく存じます。

まず結論を先に言ってしまえば、ドル資金供給の指値方式実施以外はまあ取って付けたような内容でございまして、やらないよりはやったほうが良いけど別に効果抜群という話ではありませんわなという程度で。以下概略をば。


・現先オペの対象銘柄拡充

なのですが、そもそも論として共通担保オペでこれらの銘柄を入れる事はできますし、現先オペの場合は銘柄差替えが利かないので支配玉をオペに入れた時に店頭で買い注文がきたときに今度はオペの足まで借りないといけないという話になるので、共通担保オペに入れるのが一般的(共通担保は銘柄差替えが利く)。ということで、輪番で支配玉を吸い上げてくれるなら物凄く結構なお話ですけれども、現先オペ対象というのは別にねえという話。よって昨日「微妙にケチ臭い」と申し上げた通りという感じですわな。


・補完供給の最低品貸し料引き下げと期限延長

要するにこれは補完供給オペの最低落札利回りが従来の▲0.50%から0.00%に上昇(=借りる側にとってのコスト軽減)になるというお話でした。コスト下がる話ですけど、そもそも▲20%みたいなレートがつく銘柄ってえのは日銀が持っていない銘柄でありますので、やはり「だからどうしたの」位のお話だったりするのが残念無念。


レポ市場の円滑化という話をするなら共通担保資金供給オペをT+3スタートで打ち込むようにした方が宜しいかと存じますが。


・CPオペの拡充、ABCPの適格化

銀行保証のABCP適格化というのは従来の路線からすると踏み込んだ話です。何せ利金債が担保適格じゃないのですから・・・・

ただまあ銀行のエクスポージャー管理という点からしますと、現先オペに打ち込んでも支配玉であることに変化は無く、そうホイホイとリスク許容度が上がる話でもないみたいですな。量的緩和時代みたいに恒常的にCPオペが何本もロールされるというような状態だと話は違ってきますけれども。

まあ何となく思ったのは(日本「銀行」だから仕方ないのかもしれませんが)ABCPに関する施策の方がレポに関する施策よりも充実してますなあという感じで、今回の足元から短期ゾーンにおける金利の上昇がインターバンク要因というよりはGCレポ市場や、債券市場要因(換金売りっぽい一般債や国債の売りによって証券ディーラーの在庫ファイナンスニーズが高まった)で発生した事を勘案しますと、ちょっとピントがずれているように思えるんですけどね。残念無念。


しかしまあそれはそれとして、超短い所のレートはやっと低下してきたので、とりあえずホッと一息という感じでございます。

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2008/10/15

○オペの拡充関連

昨日は臨時政策決定会合があるとアナウンスされましたが、日銀のホームページにお題が書いてあったのですが、それを見る前に「すわ利下げ」ということで金先が爆上げして前日比変わらずのレベルまで復帰したのですが、お題がオペの工夫という話だったので行って来いになったのは落涙を禁じ得ませんでした。

で、そんなのがあったので様子見モードになってしまいましたが、結果は22時前に出ました。で、その説明はこちら。
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc/un0810e.pdf

大体事前に何となく想像していた通りというか、もうちょっと凄いのが出たらどうしようかと思ったのですが、まあ大体思っていた通りのものが出たので構えた分拍子抜けかな(^^)。

箇条書きの順番どおりに読みますと。

・国債現先オペの対象拡大

変動利付国債と物価連動国債と30年国債が入るそうなので、まあ事実上ヘアカットが縮小されたという話なのですが、微妙にケチ臭いなあと。どうせなら輪番対象にしていただきたく存じますのですが。国債現先オペに入れられるようになるとファンディング的に物凄く楽になるというイメージはそんなに無いのですが、あたくしの勘違いであることを強く希望。

・補完供給の最低品貸し料引き下げと期限延長

すいません、これって補完供給で借りるコストが下がるという話になるんでしょうか。レポの人に聞いて追記します。期限の延長はまあそうでしょ。

・CPオペの拡充、ABCPの適格化

これは実施すると思っていました。銀行保証のABCP適格にするのは効果あるでしょう。2009年4月末までの時限措置というのも妥当かな。かつてABCPオペを実施した時に、当初はニーズありありだったのですけれども、金融市場における金融不安が解消された時点でABCPが運用商品としての優位性が高くなってニーズなくなりましたねっていう経緯がありますんで、来年4月末位に時限を設定するのはその頃には金融市場の極端な不安心理は解消されているでしょうという前提に立ってまあ良さげな感じ。

・年末越えオペをじゃんじゃん打ちますよ

別にわざわざ言うまでの事もないような気がしますが(^^)。

・ドル供給オペの拡充

日銀も指値やりますか。指値オペには抵抗あるかなと思ったのですが、円資金じゃなくてドル資金だからまあやったんですね。予想通りではありますけれども、よくお付き合いしました。

・日銀当座預金への付利

日銀当座預金への付利自体は日銀当座預金が臨時金利調整法の適用を受けませんので、通常の政策委員会だか金融政策決定会合だかのどっちかで決定できる話なのですけれども、今回は見送り。売手があるので別に付利せんでも良かろうとは思いますし、付利しちゃうとインターバンク取引に下限金利が出来てしまう(昨日のコールでも判るように今だと0.05%などというような無担保コールの出来がある)ので金利面で言えば緩和にならないのですけれども、この際金融調節やり易くするために預金ファシリティ設定するというイメージがどうも。速やかに結論って話ですけどやるんでしょうねえ。

なお、詳細はこちら。
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc/mok0810d.pdf


○決定会合その他

・結果の「見せ方」に工夫はできないものか

制度の建て付け上仕方ないのかもしれないのですが、今回の決定にあたっても、「金融政策決定会合」を実施する手前この結果が最初に出てしまう訳で。
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc/k081014.pdf

色々と施策を出した会合なのに「現状維持」っていうのが最初に出てしまうのは「見せ方」として印象が悪いにも程があると思うのですけれども。いやまあ制度上こうなっているのは判るのですけれども、政策目標金利の変更を伴わなくても施策が色々出るというケースはあるのですから、せっかく臨時会合をやっても最初に出てくるものが「現状維持」ってのはどうかねえと思います。

制度の変更を伴いそうではあるのですけれどもね。


・日銀保有株式の売却当面停止

そのようなものがあるのをすっかり忘れていました(汗)。
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc/fss0810a.pdf


・ロンバートは下がりませんでしたね

ちなみに、「金利をいじりました」って文脈でロンバート下げるかもしれないかとは思っていたのですけれども、次に申し上げるように、GCレポ取引金利が昨日いきなり0.60%レベルまで急低下しやがりましたので、実際問題としてはロンバート下げても意味があまりなくなってしまいました(そりゃまあ0.50とかに下げれば話は別ですが)。やらなかったのは妥当ですかね。次に金利が変に上昇しそうな時の火消し弾として温存。

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2008/10/09

○ということで協調利下げですかそうですか

日銀は利下げしてませんけどね。
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc/un0810b.pdf

記念に引用しておきますか。

・中央銀行共同声明


『最近の国際的な金融危機に対して、各国中央銀行は、緊密な連絡をとり、金融市場の緊張を緩和するための流動性供給策など、前例のない協調行動をとってきた。』

『いくつかの国では、エネルギーや原材料価格の顕著な下落などを背景に、インフレ圧力が緩和し始めている。インフレ期待は減衰しつつあり、物価安定に対する信頼は高い。最近の国際的な金融危機の高まりによって、経済成長に対する下方リスクが高まっており、このため、物価安定に対する上方リスクは低下している。』

『こうした状況下では、グローバルな金融環境をある程度緩和することが正当化される。このため、カナダ銀行、イングランド銀行、欧州中央銀行、米国連邦準備制度、スウェーデン中央銀行、スイス国民銀行は、本日、政策金利の引き下げを公表した。日本銀行は、これらの措置に対して強い支持を表明した。』

協調利下げですが利下げした国は国内のインフレリスクが低く、景気の悪化リスクが高いので利下げをしましたですかそうですか。


・日本銀行の声明

『日本銀行は、6カ国中央銀行による今回の政策決定を歓迎し、これらの措置が各国の経済と金融システムの安定確保に貢献することを期待している。』

『わが国においては、政策金利の水準は既にきわめて低く、緩和的な金融環境が維持されている。また、日本銀行は、連日の潤沢な円資金供給にとどまらず、ドル資金供給オペの導入を含め、流動性供給面の措置を果断に講じてきている。こうした対応もあって、わが国の金融市場は、欧米と比べ相対的に安定した状態にある。』

とは言え、ここもとオペレート上昇してみたりFB3か月入札が大崩れしてみたり、GCレートが何とロンバート越えしてみたりと宜しくない展開。


『国際的な金融面の動揺が続く中にあって、金融市場の安定を維持していくことは、中央銀行としての最も重大な責務である。日本銀行としては、今後とも、各国中央銀行と密接な連携をとりつつ、適切な金融調節を通じて、金融市場の安定確保に全力を挙げていく方針である。こうした観点から、日本銀行当座預金制度の運用を含め、金融調節面で更に改善を図る方策について速やかに検討し報告するよう、総裁より執行部に対し指示した。』

・・・・・えーっと、日銀当座預金に付利するのでしょうか。別にまあ付利したっていいですけど、日銀が発行する売出手形(なのでじゃんじゃん発行できまっせ)という資金吸収方向の調節手段があるのですから、日銀当座預金に付利せんでも別に問題ないんですけどね。

#というか短期金融市場の金利フロアが出来てしまいますので、量を出してもゼロ金利にならなくなって、緩和効果にならんのですが

まあ売出手形だとマネタリーベース(でしたっけ?)にならないけど、日銀当座預金だとマネタリーベースになるので、見かけとしてはベースマネーが増える話になりまして、如何にも緩和を強化したように見えて、マネーがどうのこうのと言う人に対する絶好の目くらましにはなりますのでそれはなんちゃって金融緩和ではありますが(というか市場機能がどうのこうのという論点からしたら後退の話ですかな^^)。

まあその手のもんですと、期近債がじゃんじゃん打ち込まれた結果として償還過大につき買入余力がアホほどある中長期国債の買入オペを増額するというのもございますが、これ増やすのは良いのですが、減らすときに騒動になるリスクもあるので諸刃の剣。

実際問題としてはCP買現先オペを増額するのが一番手っ取り早くて、まあそれなりに効きそうな感じなんですけれども、それだと通常オペレーションの運用範囲内なので、政策委員会をやってアナウンスするようなショーアップができませんから、世間様へのアナウンス効果が無いのが実に残念でございます(^^)。

どうするんでしょうかねえ。まあもうちょっと考えてみよっと。

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2008/10/08

○決定会合あれこれ

・公表文は明確に下振れ意識

公表文
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc/k081007.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc/k080917.pdf(前回)

前回(=9月17日)のと比較しますと、もう思いっきりあちこち下がっていますわな。冒頭部分から。

・現状認識と先行き見通し

『わが国の景気は、エネルギー・原材料価格高の影響や輸出の増勢鈍化が続いていることなどから停滞しており、当面、海外経済の減速が明確化するもとで、こうした状態が続く可能性が高い。』(今回)

『わが国の景気は、エネルギー・原材料価格高や輸出の増勢鈍化などを背景に、停滞している。』(9月)

ということで、海外経済の減速明確化というのが入るの巻。

『先行きについては不確実性が大きいものの、やや長い目でみれば、エネルギー・原材料価格高の影響が薄れ、海外経済も減速局面を脱するにつれて、次第に緩やかな成長経路に復していくと予想される。』(今回)

『先行きは、当面停滞を続ける可能性が高いものの、国際商品市況が落ち着き、海外経済も減速局面を脱するにつれて、次第に緩やかな成長経路に復していくと予想される。』(9月)

当面停滞ってのは実は前回もあったのですけれども、先行きの所にも「不確実性は大きい」わ先行きの改革も「やや長い目でみれば」と後退するわともうヘッジクローズ全開ですよ奥様。

この次にリスク要因の部分をご紹介しますが、そちらはあまり内容が大きく進んだ訳でもないという感じになっています。ということは「今まで懸念していたリスク要因が顕在化しやがりました」って話ですから、冷静に考えると問題としてはより景気悪化を見ているという事になるのでしょうな。

物価の方はまあいつもの話なので割愛。


・先行きリスク要因

『リスク要因をみると、米欧の金融機関の破綻などを背景に国際金融資本市場の緊張が強まっており、また、世界経済には下振れリスクがある。』(今回)

『リスク要因をみると、国際金融資本市場は不安定さが増しており、また、世界経済には下振れリスクがある。』(9月)

まあこれも当然ですね。

『国内民間需要については、これまでの交易条件の悪化を反映した所得形成の弱まりから下振れるリスクがある。設備・雇用面での調整圧力を抱えていないとはいえ、景気の下振れリスクには注意が必要である。』(今回)

『国内民間需要については、交易条件の悪化を反映した所得形成の弱まりから下振れるリスクがある。設備・雇用面での調整圧力を抱えていないとはいえ、景気の下振れリスクには注意が必要である。』(9月)

ということで、ここの書きっぷりに変化がないのですが、今日内容が公表される白川総裁の会見ヘッドラインを見た印象では、白川総裁は先行きの景気下振れを全力警戒というトーンになっていますので、リスク要因への懸念も高めているという所でしょうか。

物価以下の部分は一応引用しておきますね。

『物価面では、世界的に高い物価上昇率が続いている。わが国の物価については、エネルギー・原材料価格の動向に加え、消費者のインフレ予想や企業の価格設定行動の変化など、上振れリスクに注意が必要である。この間、景気の下振れリスクが薄れる場合には、緩和的な金融環境の長期化が経済・物価の振幅をもたらすリスクが高まると考えられる。』(今回)

『物価面では、世界的にインフレ圧力が高い状況が続いている。わが国の物価については、エネルギー・原材料価格の動向に加え、消費者のインフレ予想や企業の価格設定行動の変化など、上振れリスクに注意が必要である。この間、景気の下振れリスクが薄れる場合には、緩和的な金融環境の長期化が経済・物価の振幅をもたらすリスクが高まると考えられる。』(9月)

「インフレ圧力」が「物価上昇率」に化けてまして、まあこれは下方修正ですね。というかこの辺りの部分が空しく響くのですが(苦笑)。


・総裁会見

詳しくは今日公表される内容を見てからですが、下振れリスクを強く意識した会見内容になっているみたいですね。で、ヘッドライン見ててほほうと思ったのは「政策金利を動かさないでロンバート金利を動かす可能性」について言及した所ですね。

本来はこれって当然ですし、制度的にも何ら問題の無い話なのですけれども、ゼロ金利解除時に当時の福井総裁が余計なことに「ロンバートを独立して動かすことは無い」とか発言しやがった為に妙なことになってしまった訳でありますな。まあ今回白川総裁がこのような発言をしたので、ロンバートだけ下げるという攻撃も可能になって良かったですねということで。


・適格担保の掛け目変更

これは毎度お馴染みの定例(半年でしたっけ)の見直しで、直近の価格推移によって変更になるものだと思いますが、何か全般的に掛け目が上がりましたね。まあ達観すればレンジ推移だからですか。よー判らん。

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2008/10/06

○生活意識アンケート

こちらは短観と同じ日に出た調査。

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/ishiki/ishiki0810.pdf

15ページ目以降に質問が箇条書きになっております。

景気悪化の答えが多いのはまあ当然ですけど、先行き見通しがそれほどメタメタになっていないのはふ〜んという感じです。以下Qとあるところは上記アンケート調査結果引用、()は前回6月調査時点の数値です。

Q1. 1年前と比べて、今の景気はどう変わりましたか。

1 良くなった0.6 ( 1.7 )
2 変わらない18.0 ( 28.8 )
3 悪くなった81.0 ( 69.0 )

Q3. 現在の景気をどう感じますか。

1 良い0.1 ( 0.0 )
2 どちらかと言えば、良い1.3 ( 2.4 )
3 どちらとも言えない10.4 ( 17.5 )
4 どちらかと言えば、悪い52.8 ( 54.1 )
5 悪い35.3 ( 25.8 )

Q4. 1年後の景気は、今と比べてどうなると思いますか。
1 良くなる3.2 ( 2.2 )
2 変わらない38.4 ( 36.9 )
3 悪くなる57.9 ( 60.5 )

ということで足元悪いと思っている人は増えている割には先行きに関して悪くなると思っている人が増えてない(若干減ってる)のはまあ救いという感じが致しますが。

さて、このアンケート調査で毎度毎度思うのですけれども、

Q5. 景気の状況を考えたとき、現在の金利水準をどのようにお考えになりますか。

1 金利が低すぎる51.7 ( 53.3 )
2 適当な水準である28.5 ( 28.8 )
3 金利が高すぎる14.1 ( 14.0 )

・・・・いやあのですな、毎度毎度この低すぎるが過半数って数字を見ますとそれはどうなのかと思う次第ではあります。まあ預金金利は政策金利よりだいぶ下の所にいます(1か月定期預金金利で0.25%とかでしょ)から借金してない人の意識では金利無いに等しい状態というのは継続してるのですけれどもという点を割り引いてもねえ。


支出項目に関するアンケート結果に関しては落涙を禁じえません。あなたの世帯の支出はどうなりましたかという質問に続く質問とその回答はこんな感じ。

Q9-a.(Q9で1(「増えた」)と答えた方への質問)
支出が増えたのはなぜですか。【複数回答】

1 収入が増えたから3.7 ( 3.9 )
2 将来の収入増が見込まれるから0.9 ( 1.0 )
3 不動産など実物資産が値上がりしたから0.5 ( 1.8 )
4 株式や債券などの金融資産が値上がりしたから0.4 ( 0.4 )
5 住居など不動産を購入したから4.6 ( 3.7 )
6 車など耐久消費財を購入したから16.3 ( 16.8 )
7 扶養家族の増加などに伴う支出があったから17.2 ( 20.2 )
8 生活関連の物やサービスの値段が上がったから82.6 ( 80.3 )
9 その他17.4 ( 17.4 )


Q9-b.(Q9で3(「減った」)と答えた方への質問)
支出が減ったのはなぜですか。【複数回答】

1 収入が減ったから72.9 ( 75.9 )
2 将来の収入増が見込まれないから53.6 ( 51.3 )
3 不動産など実物資産が値下がりしたから4.0 ( 4.1 )
4 株式や債券などの金融資産が値下がりしたから12.9 ( 8.5 )
5 扶養家族の減少などに伴い支出が減ったから7.7 ( 9.7 )
6 その他7.1 ( 7.6 )

・・・・・・・・(-_-メ)どっちもダメダメですな。ちなみに家計支出が増えたという人は50.8%で、減ったという人は22.5%となっています。まあ増えたほうも減ったほうも基本的に理由がパッとしないというところが残念な所です。


まあ物価に関するアンケート結果は毎度お馴染みの内容でして、物価は上昇するでしょう&物価の上昇は困ったもんだという内容ですが、1年後の物価予想がちょっとだけ下がっているのがこれまた救いかなという感じです。


ところで、久しぶりに日銀を信頼してるかしてないかという質問に関するこの項目を見たのですが・・・・・

Q23-c.((5)で4または5(「信頼していない」)と答えた方への質問)
信頼していない理由は何ですか。【2つまでの複数回答】

1 日本銀行の活動が物価や金融システムの安定に役立っていると思わないから42.5 ( 40.5 )
2 政策の内容や意図に反対だから5.3 ( 5.1 )
3 中立の立場で政策が行われていると思わないから45.2 ( 43.4 )
4 日本銀行の活動について分かりやすい広報や意見聴取の努力が不足していると思うから32.2 ( 31.5 )
5 組織や職員に誠実なイメージを持っていないから28.9 ( 37.9 )
6 その他6.0 ( 7.1 )

ちなみに、2006年9月の調査結果はこのようになっています。

問22-c.((5)で「信頼していない」(4または5)と答えた方への質問)
信頼していない理由は何ですか。(2つまでの複数回答)

1 日本銀行の活動が物価や金融システムの安定に役立っていると思わないから23.1 ( 32.2 )
2 政策の内容や意図に反対だから4.3 ( 9.8 )
3 中立の立場で政策が行われていると思わないから43.8 ( 47.8 )
4 日本銀行の活動について分かりやすい広報や意見聴取の努力が不足していると思うから
27.5 ( 34.1 )
5 組織や職員に誠実なイメージを持っていないから55.2 ( 25.9 )
6 その他7.4 ( 8.3)

・・・・・・・とある事案のお陰でいきなりジャンプアップした数値がその前の水準に近づいてきて良かったですね(棒読み)。

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2008/10/03

○今回の注目材料はちと別でして(日銀保有国債残高)

月初(正確には月初2営業日目)お馴染みのこれ。
http://www.boj.or.jp/type/stat/boj_stat/mei/mei0809.htm

先月は途中で相場がグチャグチャになりまして、輪番オペが打ち込まれたタイミングで先物独歩安というような素敵な相場な時もあったので先物回りでありますところの10年275回とかがドカンと打ち込まれ、期近債のオンパレードじゃなくて良かったねという話はございますが・・・・・

先月の残高ってこうなのですが。
http://www.boj.or.jp/type/stat/boj_stat/mei/mei0808.htm

・・・・えーっと、物価連動国債と30年国債が何故か新規に残高に入っておりますけれども、これってどういう風の吹き回しなのでしょうかというのと、妙に色々な銘柄で1億だけ増加というのがあるのですけれども、これまたどういう風の吹き回し?

勝手な妄想をするとリーマンが入れた国債買現先オペのエンドがフェイルになったのでそのまま日銀逝きになったとか、共通担保オペの担保権が行使されたとかになるんですけど、本当はどうなのでしょうか。

まあどうでもいいちゃあどうでもいいのですが興味本位。


○インフレーションターゲティングの運用に関するレポート

というのが昨日出ていました。詳しいレポートとダイジェスト版があるのですけれども、レポートの方はページ数が膨大ですけれども、本文は23ページでして、その後に掲載されている補論(論じられている各国の状況推移を時系列に整理した部分が29ページ分)と参考資料の図表が大変に参考になりそうです、と申しているのは実はあたくしまだダイジェスト版とレポートの本文23ページ分だけしかちゃんと読んでませんで、先のページは読み飛ばしているもんで(汗)。

で、ダイジェスト版紹介ページはこちら。
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/rev08j11.htm
ダイジェスト版全文はこちら。
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/data/rev08j11.pdf
(日銀レビューシリーズです)

レポート紹介ページはこちら。
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/wps/wp08j15.htm
レポート全文はこちら。
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/wps/data/wp08j15.pdf
(日本銀行ワーキングペーパーシリーズです)

ダイジェスト版(日銀レビューシリーズ)の方は要約版なのですが要約にも程があるので、レポートの方をご覧になるのが吉かと存じますけれども、インフレーションターゲティング政策を古くから導入しているニュージーランド(1988年4月)、カナダ(1991年2月)、英国(1992年10月)、スウェーデン(1993年1月)の4中銀の事例に関して紹介したものとなっています。

でまあここにあるものをどこをどう引用するかとなると、そういう部分を一晩さっと読んだだけでポイント整理するのも難しいので(アセアセ)、上記レポート(日本銀行ワーキングペーパーシリーズの方)の最後のまとめのところを引用させていただきたく(本文22ページ目以降、PDFファイルだと23枚目になります)。以下引用文中の「IT」は「インフレーションターゲティング」の略称です。

『1 つめの結論は、4 ヶ国(ニュージーランド、カナダ、英国、スウェーデン)の中銀は、IT 導入当初、インフレ期待の安定を重視する観点から、足許の物価安定に向けて厳格な運営を試みたが、1990 年代後半頃から徐々に、足許のインフレ率が目標から乖離するような局面でも、先行きの経済・物価見通しを参考にしながら、中期的な物価と実体経済の安定をめざす運営に変貌していったということである。』

『さらに2000 年入り後、4 中銀は、導入当初1-2 年されていたタイム・ホライズンを長めにすることで資産価格変動にも配慮した政策運営をIT の枠組みの中で試みるように変貌を遂げた。本稿はこの変貌を、足許の物価安定に向けて厳格な運営から、「フォワード・ルッキング」かつ「柔軟」な政策運営への変貌と要約する。』

『2 つめの結論は、この変貌の背景には、(1) 経済に発生したショックの大きさ、ショックの内容(一時的か持続的か、需要ショックか供給ショック等)だけでなく、(2)政治的背景(財政赤字の大きさ、法律上の中銀の独立性など)や、(3) IT の枠組みに対する信認の強さがあったことである。IT の導入によって、インフレ期待が即座に安定化し、長期国債へのリスク・プレミアムが低下したわけではなく、IT 導入当初はむしろIT の枠組みに対する信認は高くなかった。このような中にあって、4 中銀は、足許の物価安定に向けて厳格な政策運営を試み、金融政策の透明性を向上させてきた。』

『その後、4 中銀を取り巻く政治的背景が好転し、4 中銀が自身の行動と説明を通して、インフレ目標を達成していくことによって、IT の枠組みに対する信認が次第に強まっていった。この間にみられたインフレ期待の安定は、再びインフレ率が大きく上昇するリスクを小さくした。このような背景の下で、4 中銀の政策運営は、足許の物価安定に向けて厳格な運営から、中期的な物価と実体経済の安定をめざす運営に変貌を遂げた。』

『3 つめの結論は、4 中銀による金融政策の透明性が、大幅に向上・強化されてきたということである。4 中銀は、定期刊行物や総裁をはじめとする幹部のスピーチなどを通して、物価安定の意義や政策判断の根拠(経済・物価の見通し)などを丁寧に説明してきた。また、BOE やRiksbank は、議事要旨・投票結果の公表、RBNZ やRiksbankは、先行きの金利経路の公表も行っている。(以下引用割愛します)。』

・・・・引用ばっかでスイマセン。とりあえず日銀レビューの方をさらっと読んでから本文レポートを読むのが宜しいかと。

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2008/10/02

○とりあえず短観

http://www.boj.or.jp/type/stat/boj_stat/tk/gaiyo/tka0809.pdf

まあ内容は宜しくありませんで、業況判断もそうですが、在庫判断とかの数字も悪化してましたし、中小企業の資金繰りの所とか悪化してますし、まあ全般メタメタですわな。

という分析は本職の人たちがやってくれるでしょうから、毎度趣味でチェックしている項目をいつものように。

・業況判断DIの達成度合い

6月調査時点での先行き見通しがどのくらい達成出来ているかという話。3月調査時点では前回見通し達成、6月調査では見通し達成ならず、でも市場の予想したDIよりは良い、という展開でしたが、今回調査はだいたい市場予想よりちょっと悪いかほぼ予想通りという感じですので、まあダメダメですね。

            (6月時点)      (9月時点)
           現状→9月予測   現状→12月予測
製造業大企業   +5→+4      ▲3→▲4
製造業中堅企業  ▲2→▲5      ▲8→▲12
製造業中小企業  ▲10→▲15    ▲17→▲25

非製造業大企業  +10→+8     +1→▲1
非製造業中堅企業 ▲5→▲10     ▲12→▲17
非製造業中小企業 ▲20→▲27    ▲24→▲31

非製造業中小企業だけしか9月予測数値よりマシなもの(でもそもそも▲24ですから)が無しという状況で誠に残念。



・雇用判断DIが余剰に転じた所が増え、先行きも製造業で余剰判断増える

6月調査でそれまでの「先行きは雇用判断現状よりも横ばいないし不足方向」っていう流れが止まったのですが・・・・

            (6月時点)      (9月時点)
           現状→9月予測   現状→12月予測
製造業大企業   ▲5→▲5       ▲2→0
製造業中堅企業  ▲3→▲5     +2→0
製造業中小企業  +3→0       +6→+6

非製造業大企業  ▲14→▲17    ▲10→▲13
非製造業中堅企業 ▲8→▲13    ▲6→▲8
非製造業中小企業 ▲6→▲6     ▲6→▲7

救いなのは非製造業の雇用判断が相変わらず不足方向で、先行きの見通しも不足幅拡大方向な所ですが、正直言って非製造業の雇用判断って景気動向に物凄い勢いで遅行するものっぽいで全然当てにならなさそうだというのが実に惜しい所です。


・証券業の業況判断

面白いので前回掲載した長期時系列(笑)をリバイス。昨年の6月調査分から並べております。

        現状→次回予測
(6月時点) +34→+52
(9月時点) ▲30→+23
(12月時点)▲26→+4
(3月時点) ▲55→▲15
(6月時点) ▲45→0
(9月時点) ▲70→▲44

・・・・・・6月時点の9月予測は0なのに今回の現状判断は▲70というのはサブプラ問題が開始になった昨年9月のドテンマイナス程の衝撃はございませんが、いやあの▲70ですかそうですかという感じです。

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