金融政策概観(2005年度上期分)


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2005年上期

2005/09/30「ついに福井総裁までもが本格地均し発言(総裁記者会見より)!」
2005/09/28「ハト派相対性理論(笑)」
2005/09/13「金融高度化雑感」
2005/09/12「総裁記者会見その他」
2005/09/09「景気回復宣言キターーーーーー(金融経済月報)」
2005/09/07「反応する2年債/興味深い議論」
2005/09/02「テイラールールを引っ張り出してきた微妙な内容の日銀レポート」
2005/09/01「金利の正常化ねぇ・・・」
2005/08/31「市場との対話を上手く行うためには」
2005/08/30「財務省の国庫金管理効率化」
2005/08/24「日経金融の勘違い記事で2年ゾーンが動いたらしいのですが・・・・」
2005/08/23「現状読みかけの金融庁・日銀関係資料(備忘メモ)」
2005/08/17「丹羽伊藤忠商事会長、行政改革と郵政民営化に意見する」
2005/08/04「月刊現代記事、内幕ドキュメント第2弾」
2005/07/29「福井総裁記者会見」
2005/07/28「いい加減しょうもないリークは止めて欲しいと思うのですが/外準の逆ザヤ?」
2005/07/26「明日の決定会合はとりあえずノーケアーで」
2005/07/21「技術派ニヤリの展開」
2005/07/20「6月14、15日の金融政策決定会合議事要旨」
2005/07/15「景気には強気、政策は慎重な総裁記者会見(続く)」
2005/07/14「景気判断強気の金融経済月報と総裁記者会見」
2005/07/12「金融政策決定会合のポイント/ブラックアウトに関するメモ」
2005/07/06「月刊現代記事『日銀激震、福井総裁「恥辱の大敗北」−独立性はいまや風前の灯火』より」
2005/06/23「決定会合議事要旨を見て思ったメモ」
2005/06/20「総裁記者会見続き」
2005/06/17「総裁記者会見」
2005/06/16「決定会合点描と雇用に関する判断前進の金融経済月報」
2005/06/14「金融政策決定会合ですが・・・(メモ)」
2005/06/10「全店手形オペが札割れしてますが・・・・」
2005/06/09「当預目標下げの票読み/フェードアウトする資産担保証券の買入(補足付き)」
2005/06/08「当預目標:結局引き上げも引き下げも論理性はないのね(メモ)」
2005/06/06「水野審議委員講演を更に読む」
2005/06/03「あっさり30兆円割れ/水野審議委員・・・・・(-_-メ)」
2005/06/02「30兆円割れ目前ですが」
2005/06/01「当預残目標下げたいのでしょうか???」
2005/05/31「とことん供給してますか?/審議委員活躍する」
2005/05/30「金曜の当預動向や総裁発言」
2005/05/27「執行部以外で6分の4/昨日の当預動向」
2005/05/26「どうも引っ掛かる日銀の資金供給/ありゃりゃの議事要旨」
2005/05/25「その後の相場展開を見つつ政策決定の影響を見る」
2005/05/24「政策決定を受けた総裁記者会見」
2005/05/23「なお書き追加に関してあれこれ/判断を前進させた月報」
2005/05/20「金融政策決定会合です/中原伸之元審議委員の指摘する「政策変更三原則」」
2005/05/19「当座預金残高目標下限割れ容認観測(日経スクープより)」
2005/05/17「日銀バランスシート話続き/当座預金目標引き下げで盛り上がりますが・・」
2005/05/16「13日の補足と総裁の経済同友会における講演(当預引き下げ説明行脚)」
2005/05/13「日銀の財務の健全性とは?というお題から話しが適当に発散」
2005/04/28「金融政策決定会合ですが/国債投資家懇談会」
2005/04/20「日銀は裸単騎待ちの勇者か」
2005/04/19「山口前副総裁の講演と当座預金残高目標引下げ問題」
2005/04/15「FB入札問題補足」
2005/04/14「FB落札価格100円とか当座預金残高維持に協力とか」
2005/04/11「当座預金残高目標引下げに関するあたくしの考え」
2005/04/08「当座預金目標引下げに踏み込んだ総裁国会答弁と記者会見」
2005/04/07「金融政策決定会合あれこれ」
2005/04/06「相対性緩和論の落とし穴」
2005/04/05「お勉強コース驀進の日銀と仕切り大魔王の金融庁」

2005/09/30

○とどめの福井総裁記者会見

須田審議委員の記者会見(http://www.boj.or.jp/press/05/kk0509e_f.htm)をネタにする積りでしたが、福井総裁の記者会見の方が話としてデカイのでそっちが先行。で、本日のソースはブルームバーグニュースのネット版を見ることにしましょう。えーっと多分http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=90003017&sid=af3g3UXXqLb0&refer=jp_news_index#で読めると思うのですが、リンク切れとかしてたら.comまででトップページに入って「ニュース/コラム」からヘッドラインを探すと見つかると思います。

昨日は大阪経済4団体共催懇談会における総裁挨拶がありまして、そちらのニュースは4時過ぎくらいに流れていたのですが、記者会見のほうに関してはどの辺まで織り込んでるか微妙ですか。まぁ本日のCPIの方が効きそうですけど。。。

総裁挨拶はhttp://www.boj.or.jp/press/05/ko0509h_f.htmですが、経済の見方云々は兎も角として、金融政策に関する最後の部分ですな、注目する所は・・・・

『いつ量的緩和政策解除の判断ができるかは、もとより今後の経済・物価情勢次第ですが、先ほど述べたような見通しを前提にすると、2006年度にかけて、その可能性が次第に高まっていくと考えています。』

2006年度じゃなくて良く見りゃ06年度にかけてな訳でして、その具体的な意味に関しては記者会見で出ております。

『その際には、日々の金融調節における操作目標を日銀当座預金残高から短期の市場金利に戻すことになります。先ほども述べたように量的緩和政策が実態としてゼロ金利に近付いていることを考えると、政策枠組みの変更はそれ自体で、金融政策が不連続に変化することを意味するものではありません。金融政策の姿は、先行きの経済・物価情勢により左右されますが、4月の展望レポートで述べたように、経済がバランスのとれた持続的な成長過程を辿る中にあって、物価が反応しにくい状況が続いていくのであれば、引き続き緩和的な金融環境が維持されていくことになると考えています。』

一応こっちの発言で「量的緩和政策は解除するけど金利は低位安定させますよ」という話にしてバランスを取っている積りなんでしょう。この次にご紹介する記者会見記事にありますように、量的緩和政策コミットメントの第一条件が達成される前に「次の金利水準は幾らになるのか」が相場としてのネタになってしまうという見事なコミットメントの形骸化になってしまいましたな。本石町日記さんも早速エントリー上げておられましたが、こりゃもう流れは止まりませんな。


ではブルームバーグニュース(インターネット版)より引用させていただきます。

『9月29日(ブルームバーグ):日本銀行の福井俊彦総裁は29日夕、大阪市内で記者会見し、量的緩和政策の解除について「06年度にかけてそういう可能性が出てくるだろう」と述べたうえで、「『06年度にかけて』という意味は、06年に入る以前の段階をまったく否定していない。しかし、06年度以前の段階に確実に、とも言っていない。つまり、06年度の入る前か、入って数カ月か、というふうな感じに普通は読めると思う」と述べた。』

ということでして、2006年4月プラスマイナス数ヶ月で解除ですと総裁御自らが言明されてしまったら最早時間軸もへったくれもございませんな。

まぁ「金利をいきなり上げると市場にショックを与える」→「市場にショックを与えないように事前に地均しをする」という発想で「やるぞやるぞ」という話を事前にしておくということで、それが「市場との対話」とは言いませんわなぁという話は既に百回位(そんなにはしてないか)してますな。

結局量的緩和政策のコミットメント3条件を自ら形骸化させる方向に勝負してしまった日銀様。まぁインフレ期待でも醸成されて金利を引き上げても大丈夫って状態になっちゃえば物忘れの激しい金融市場的(まぁそれじゃぁイカンと思うけど、べき論とは別に考えるとそんなもんでしょう、はぁ)には結果オーライになると思いますんで、そうなっていただくことをこころからきぼうしたいものでございます(棒読み)。

まさか自分たちで時間軸の短期化をしておいて「市場金利は先行きの物価上昇を見込んでいるので金利を上げても無問題」とか言い出さないですよねえ・・・・

会見記事をまぁご覧いただければと存じますが、ふ〜んと思った部分をば引用。

『(量的緩和解除後にゼロ金利にするのか金利を引き上げるのかの点について)今この段階でそこまでは予見できない。量的緩和の枠組み自身の修正のタイミングがいつごろになるのか明確に予想しにくい段階にあるので、その先の金利の操作について何か予断を持てるかというと、それはない。そういう予断を一切持たないで、今後の経済、物価情勢にきちんと符合するような政策をしていかなければならない』

一昨日の須田審議委員の「予断」と違いまして、福井総裁におかれましては既に「次の金利操作に関しては予断を持ちません」と仰せでございまして、もうやる気満々とはこのことです。

『(海外で「量的緩和解除=金利引き上げ」と取られているようだが、という指摘について)海外で、とおっしゃったが、わたしはこの間、海外に行って帰ったばかりだが、日本経済について何か、段差を設けて引き締め方向への金融政策が必要だとか、そういうことを日銀が意図しているのではないかというふうな感じで、日本経済や日銀の金融政策をご覧になっている方はあまりいらっしゃらないのではないかと思っている』

引き締め方向への金融政策が必要と考えている人はいないと思いますが、金融政策の「先行き予想」に関しては・・・・・(-_-メ)

『とりあえず、最も最適なタイミングで量的緩和政策の枠組みの修正を図る。そのタイミングを過たずにきちんとつかみたいということであって、そこから先のことはまだ、今から予見を持って考えない』

副総裁時代の「ジャストタイミング」発言を彷彿とさせて下さる懐かしい香りが致しますな。

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2005/09/28

○相対性ハト派(笑)

昨日ご紹介した(だいぶ前の)福間審議委員の記者会見や、(まだご紹介してませんが)水野審議委員の講演なんかを読んでおりますと、妙に「漸進的な緩和解除プロセス」という部分が目についちゃったりします。

もともと「金融政策の正常化」とか「市場機能の回復」などという趣旨で当座預金残高目標の引下げを提唱しているこのお二方ですが、(量的緩和政策のコミットメント3条件が達成される前に引下げに着手するという部分に関しては兎も角)量的緩和政策解除→金利政策への移行に関してはできるだけスムーズに実施したいという発想(それがちと変じゃネーノというツッコミはありますが)がありますわな。となりますと、ここの所景気に関して無茶苦茶強気になっている日銀公式見解(金融経済月報)と比較するとこのお二方(というより特に福間さん)の主張がある意味「慎重派」に見えてきてしまいますわな。

ま〜景気動向に関するコメントだけの執行部と技術論を引っ張り出す人の違いと言ってしまえばそれまでなのですが、いつの間にか相対的にハト派に見えてきてしまうというのも何か騙し絵みたいで面白いなぁと思った次第。

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2005/09/13

○金融高度化雑感

日銀の看板施策にまたイチャモンをつけるのですが(^^)。

先日、日本銀行様主催の「金融高度化セミナー」というものが実施されたようです。7月に行われた日銀の組織改編で出来た「金融機構局」の中に「金融高度化センター」というのが出来まして、日銀のWebを見ると色々書いてあるのですが、まぁ専属10人他部署との兼任21人とかいう豪華陣容で金融高度化を行うそうな。

で、先般の初回公開セミナーで福井総裁がご挨拶してたので、それにグダグダと非生産的なケチをつけるあたくしなのでありました。

http://www.boj.or.jp/press/05/ko0509a.htm

『皆様、本日は、金融高度化センター主催のセミナーに、全国各地から、多数ご参加いただき、真にありがとうございます。』

という事で全国各地から多数ご参加した金融高度化とは何ぞやという事で。

『こうした金融システムの安定性回復(引用者注:不良債権処理とペイオフ全面解禁)を踏まえ、日本銀行は、金融システム面での政策運営の舵を、従来の「危機管理重視」から、「公正な競争を通じて金融の高度化を支援していく」方向へと切り替える必要があると判断いたしました。』

ペイオフ全面解禁は思いっきり尻抜けなんですが・・・というツッコミはさておいて、金融の高度化についての必要性をこの後話しているのですが、正直あなたそれはお節介というものではないかという話が延々と続くのであります。

『より良い金融サービスの提供によって、金融機関自身が安定的に収益を確保していく必要があります。そのために基本となるのは、金融機関のリスク管理や経営管理の高度化と、それに基づいた金融サービスの向上――すなわち金融の高度化、だと思います。金融の高度化というと何か特別のことに聞こえるかもしれません。しかし、それは基本的には、メーカーやサービス業がそれぞれの業務特性に応じて行っている取り組みと同列のものに他なりません。』

ということはですな、日銀さまにおかれましてのご認識は、「日本の銀行は世の中の一般的企業が取り組んでいるような企業努力やっていない」ということであらせられる訳でして、そのために日銀さまがわざわざ金融高度化センターをお作りになられて業界のご指導を実施あらせられるという事で宜しゅうございますでしょうか?

いやまぁ金融庁さまが年がら年中出している施策にも同じような香りを感じるのですが、お前らは昭和30〜40年代の通産省かと小一時間(監督権限があるので昔の通産省よりもタチが悪いのですが)問い詰めたくなるような産業政策状態で、幾らなんでも銀行業界そこまで前時代的では無いと思うんですけど。というかリレバンの具体的施策みたいな話って各行創意工夫して昔から色々やっていたと思うぞ。最近の監督ガチガチ+法人取引の集約化で支店における裁量範囲が狭くなっている(らしいと聞いたのですが)現状ではどうだか知らんが。

『金融機関が、企業や家計によりよいサービスを継続的に提供するためには、メーカーやサービス業と同様に、金融サービス提供に伴うコスト・リスクと採算を的確に管理する必要があることは言うまでもありません。そのためには、様々な金融資産のリスク量を計測したり、それを統合して金融機関全体のリスクを把握することが大変重要になります。』

で、この後リスクの計測をする事によって新たな金融サービスがどうのこうのとか色々と話をしてるのですが、計測できない部分というのがあるからこそ経営ってのは面白いのでして、どうも話のトーンを読んでいると行間から「最先端の金融技術を使うと素晴らしい未来が待っている」的な金融工学熱烈信奉的な香りを感じるのが非常に気にかかるところであります。

『金融工学の発達とともに、リスク量の計測技術やコントロール手法が近年めざましい進歩を遂げている現在、私どもでは、先端的な金融技術の研究・開発やセミナーの開催を通じて、民間金融機関における金融高度化の進展をしっかりとサポートしていきたいと考えています。』

金融の高度化は特別の事では無いという話をしているうちにいつの間にか最先端の金融技術の開発という話になっているのが実に香ばしいのですが、結局最先端の金融技術を使いやがれゴルァという香りがすると思うのはあたくしの悪意のこもった読み方ですかそうですか。

まぁ別に先端的な金融技術を否定する気は無いんですが、こういうのを日銀が一々手を出してやるものなのかというのは甚だ疑問を感じますわな。大体先端的な金融技術(といわれるもの)ってそれなりの陣容を揃えた大手の金融機関や専門的な企業が開発して利用し、時と場合によっては(昔の大手米銀みたいに)リスク管理モデルとして売って歩くものでございまして、日銀が研究開発をして公開セミナーでお勉強会をするのは民業圧迫(笑)ではないでしょうか?

だいたい須らく金融機関が金融高度化をする必要があるのかと言えば、それは各企業体の判断によるものであって、必要だと思えばやればいいし、必要じゃないと思ったらやらなければいい話。その結果として優勝劣敗が出てくるから結果として高度化が進むんじゃネーノって思うのですが。日銀や金融庁が一々手取り足取り「ご指導」する話じゃなかろうに。最先端の金融工学を導入して新しい運用商品に手を出した結果アヒャヒャヒャヒャになるケースだって有り得るんですし、やるかやらないかは各金融機関の自己責任じゃネーノ?

『また、本日は、地域金融機関の方々も多数ご出席頂いていますが、中には、金融の高度化は、地域金融機関とは縁遠いことと受け止めている方もおられるかもしれません。しかし、金融の高度化は、いわゆるリレーションシップ・バンキングと矛盾したり、対極にあるものでは決してありません。(中間割愛)この目標(引用者注:顧客ニーズに応えて収益を上げる)を達成するには、結局のところ、リスク管理や経営管理を高度化することによって、経営資源を有効に使っていくことが鍵になると思います。』

と、結局「金融の高度化」というお題で最先端の金融工学を駆使した(笑)リスク計測管理手法のお勉強をしようとしているのか、一般的な経営管理をしようとしているのか(どうもその両方をしようとしてそうですが)何とも曖昧模糊としたお話で、日銀の中の人たちも大変でございますなぁとしか申し上げようがございませんし、んなセミナーに出頭する全国金融機関の中の人たちも大変でございますなぁという所ですか。ナムナム。

と、イチャモンつけても生産性がございませんですかそうですか。最新の金融技術の研究を日銀が行うことは別に悪い事とは思いませんけど、それをコンサル会社よろしく組織として「金融高度化センター」とかの企画をおっぱじめるのはちょっとねぇ・・・・って思ったので全面これ悪口雑言を並べさせて頂きました。

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2005/09/12

お題「余裕を持った対応とは?(福井総裁記者会見)」

○一応選挙雑感

いや〜、ここまで大差が付くとちょっとどうよって思うけど、まぁ単独過半数の方が良いですかね。法案の国民投票とか言いながら法案の中身の話にならなかったのは誠に遺憾なのですが、対案が無くて法案の比較に話が行かなかったというのもあるけど、一応案らしき物も出てたんですからもうちょっと報道すりゃあ良かったのにねって感じです(が、そもそも報道する方が判って無いでしょ)。現在の6法案は郵政焼け太り法案にしか見えないんですけど、まいっか。

しかし3分の2確保なので全く同じ法案を出して参議院で否決されても衆議院で全部再可決可能。何と解散理由が達成されたとは何ともまぁビックリ。そんな中で共産党以下の各党が議席を減らさなかった(自民党分派は死滅状態ですが)のは興味深いですな。

ま、今後は(も)構造改革に反対しても仕方ないので、中身を骨抜きにする(道路公団みたいに)とか焼け太りを狙うとか、改革の対象になっている方々におかれましては大変に難しい作戦を練ることが必要でしょうな(^^)。


○先行きの金融政策に関して慎重な物言いの福井総裁会見

http://www.boj.or.jp/press/05/kk0509a.htm

会見要旨を見ると、月報で景気判断を上方修正した割には大人しい内容になっております。

・物価に関しての質疑応答

長い質問なのですが、押さえるべきポイントを押さえているので質問も引用します。

『(問)物価の評価とその総合判断について伺いたい。先程から、年末頃にかけて物価がプラス方向に行く可能性が高まっている、と言われているが、原油高という背景もあるが、基本的には、物価がプラスになるということは、景気が回復していることを裏付けていると思う。現状として、日本銀行の政策は物価にコミットメントしており、先行きデフレに戻らないということを考えるうえで、物価の先行きをどうみるかも重要であるかと思うが、それはやはり景気の持続性や強さにかかっていると思う。これが、日本銀行で言われている総合判断という考え方で良いのか。景気の持続性や物価の強さを含め、考え方を伺いたい。』

『(答)年末頃にかけてゼロ%ないしプラスに転じていく可能性があると申し上げたのは、前々から皆さんと関心を共有している生鮮食品を除く消費者物価指数の前年比変化率についての話である。これについても、原油高の影響がガソリン等の最終製品にどのように転嫁されるかということとある程度絡んで動いているということは、ご指摘の通りである。』

『金融政策との関連では、そうしたことを含めて、少なくとも消費者物価指数が安定的にゼロ%以上になるまでは、現在の量的緩和のフレームワークは続ける。これは、固い約束であるので最後まで堅持されるということである。』

『先行き、このフレームワークの修正如何という判断になった場合は、単に表面的な物価指数の現れ方というだけでなく、本当に日本経済がデフレに逆戻りしないかどうかについて、より踏み込んだ判断が必要である。まず景気回復の持続性の確かさをしっかりと確認しなければならないし、物価の面でも、表面的な動きだけでなく、その時あるいはそれ以降の経済の中で、生産性の上昇がどのように展開していくか、一方でユニット・レーバー・コスト(単位当たりの労働コスト)がどのように変化していくのかというような基本的な物価形成メカニズムの部分について、踏み込んだ分析と判断をしていかなければならないと思っている。』

ということで、とりあえず「持続性の確かさをしっかりと確認」とかいう辺りで月報での判断の強い内容を緩和するような感じになっています。月報をまんま読むと既に確りと確認しているような気もするんで、踏み込んだ判断もへったくれもないのですがそこはそこって感じですかね(^^)。


・金融政策の「余裕を持って」とは?

『(問)先程、コアの消費者物価指数の前年比変化率が年末頃にかけてプラスになる可能性が強く、景気についても持続可能性のある軌道に向かいつつあるとの判断を示された。量的緩和の解除についてもそう遠くない将来に展望できる状況になってきているのではないかと思われるが、一方で日銀が金融政策運営について、余裕を持って対応するとしていることもあって、金融市場では量的緩和の解除後も相当期間にわたって、金利がゼロ%に据え置かれるのではないかという見方が根強くある。この「余裕を持って」という言葉の解釈としてこうした見方が正しいかどうか伺いたい。』

まぁ相当期間にわたってゼロ金利政策が続くと考えている人だけではないと思いますが(ちなみにあたくしは当座預金残高30兆円を6〜8兆円程度に落としていく段階で結果としてゼロ金利状態になっている事はあってもゼロ金利政策にはしてこないと思ってます)、確かにこの様な解釈をする人は結構多いというか今はメジャーな見方かもしれない。

『(答)「余裕を持って」というのは、景気が着実に回復しても物価上昇圧力が相対的にかかりにくい経済、インフレ期待が急に昂進するリスクが比較的少ない経済として進展していく限り、私どもとしては緩和政策の維持ないし緩和政策を修正する場合にも、その修正のテンポというものにゆとりを持たせながら金融政策運営をしていけるのではないかということである。少なくとも、消費者物価指数の前年比変化率が安定的にゼロ%以上になるまでは、明確にそのことが言えそうだということで、先般からそう申し上げている。』

で、この後も答えは続きまして、そちらもお読みいただければとは思いますが、要するに上記の部分にもありますように、その時点でのインフレ期待がどうなっているかという事によって「余裕をもって」金融政策の対応が出来るのかが決まるというお話をしております。従いまして、この「余裕をもって」というのは実は金融政策のペースに関する話をしているのではなくて、あくまでも現在の経済動向を踏まえて、「インフレ期待が発生していない」と言っているに過ぎないという意味と見た方が宜しいのではないでしょうか。

ですから、実際にCPIがプラス転換した場合にその時点でインフレ期待が高まっていれば別に「余裕を持った」対応をするには及ばずということでもありますので、「量的緩和解除の3条件成立後にゼロ金利が長期間続く」という考えをあまり固定するのも如何なものかという所でしょうか。


この点に関して同じ質問が最後の方に出ております。

『(問)先程の量的緩和解除後もゼロ金利が相当期間続くという見方について、総裁のお答えからして、そういう可能性もあると理解して良いか。』

あたしゃー上で書いたように、そういう可能性もあるけどその時次第でしょって読んだのですが、どっちかというとこの質問は「続く」方に力点置いてますな。

『(答)そこのところについては全くのオープン・クエスチョンである。量的緩和解除後、ゼロ金利の状態が短期間で終わるという材料を持ち合わせていないし、それが非常に長く続くと判断する材料も今のところ存在してない。』

『普通の経済──普通というのはおかしいが──、昔の経済であれば、量的緩和が終わって景気回復が着実であれば、当然中立的な金利を目指して金融をさらに正常化させていくことを一挙に視野に入れながらでなければ、正しい金融政策にならないと思うが、先程も経済の姿が変わっていることを申し上げた。つまり物価の形成のされ方が昔と違っているので、そこを当然考慮に入れながら、どの程度余裕を持つことが適当であるか、もう一枚スクリーニングをかけた判断がいるかどうか、ということを申し上げた。しかしそれが、長い期間になるかどうかの判断は、その時点においてきちんと判断しなければならないことなので、前もって予見を与える──いくら予見性のある金融政策をするといっても、根拠なく予見性を与えることは無責任である──ことを今はできないということを申し上げた。』

ということで、解除の進め方とかに関しては出来るだけオープンというか話を決め打ちさせないようにしてます。当然では有りますが。

まぁそんなところで。

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2005/09/09

お題「景気回復宣言キターーーーー」

○銀行貸出がプラス云々

昨日発表された8月の貸出・資金吸収動向等で、銀行の貸出が特殊要因調整後ベースの8月平残が前年同月比プラスになったというのが結構話題になっていました。

http://www.boj.or.jp/stat/zan/kasi0508_f.htm

それは良かったですねぇという話で、銀行貸出復活でどうのこうのってコメントがあちこちから聞こえて来るのですが、ちょっとイチャモンを付けさせていただきますと、この貸出増加に際して平均約定金利がどうなっているんでしょうなぁというのが気にかかる所。

貸出の約定金利が上昇しながら貸出が伸びているというのであればこれはもう資金需要大復活で景気回復万々歳ということになるのですが、貸出の平均約定金利って相変わらず下げトレンドだったような気がしてますが、調べている暇がなかったのでとりあえず疑問点として書いておくだけに致します(何と無責任な>自分)。

ま、減るより増える方がパイ拡大なんですから良いんですけどね。


○景気回復宣言ですよ先生

昨日の金融政策決定会合で発表された手形オペの電子化と適格担保の掛け目云々というのはわざわざ金融政策決定会合で議決するような話なのかイマイチ判らん話なので割愛。で、材料投下なのは金融経済月報でして、先日あたくしがドラめもんで「今月はそんなに判断動かさないだろう」などとテキトーに考えていたら判断が結構前進状態で個人的にはちと驚き。もうちょっと経済指標を見て来月の展望レポート中間評価のタイミングでやるのかなぁと思ってたんですが。


今回は景気の基調判断を思いっきり強くしてきたのと、物価の先行きにプラス転換という見通しをぶち込んできたのがとにかく目立ちます。これじゃあ量的緩和政策のコミットメント3条件のうち、何故か2番目と3番目が先に達成とも取れてしまう訳でして、正直日銀落ち着けと思うのですが。

例によって前月と比較。
http://www.boj.or.jp/seisaku/05/pb/gp0509_f.htm

・総合判断

(9月)『わが国の景気は、回復を続けている。』
(8月)『わが国の景気は、IT関連分野における調整が進むもとで、回復を続けている。』

既に本石町日記さんがご指摘のように、ヘッジクローズが抜けて直球ストレートで景気は回復を続けているという事ですので、これはインパクトございますな。福井総裁の会見でも「回復しているとシンプルに言える」と発言しておられたようです。


・景気の現状判断

総じて言えるのは、総合判断の変化に見られるようにヘッジクローズが抜けているという点でしょう。

輸出と生産
(9月)『輸出は緩やかながら増加を続けており、生産も振れを伴いつつ増加傾向にある。』
(8月)『輸出は緩やかながらも増加しており、生産も、IT関連分野の在庫調整が進むもとで、振れを伴いつつ増加傾向にある。』

輸出は「増加しており」が「増加を続けており」と変化。生産はヘッジクローズが抜けました。


設備投資と企業収益
(9月)『設備投資は、高水準の企業収益を背景として、引き続き増加している。』
(8月)『設備投資は、高水準の企業収益を背景として、増加を続けている。』

この「増加を続けている」が「引き続き増加している」になったのもは表現的には強調と思われますが。


雇用者所得と個人消費
(9月)『雇用者所得も、雇用と賃金の改善を反映して、緩やかな増加を続けており、そのもとで個人消費は底堅く推移している。』
(8月)『また、雇用面の改善や賃金の持ち直しから、雇用者所得は緩やかに増加しており、そのもとで個人消費は底堅く推移している。』

雇用と賃金の状況が「持ち直し」→「改善」と判断を前進、雇用者所得も増加を続けておりという上昇トレンドを連想する表現になってます。


住宅投資と公共投資は毎度同じなので割愛。


・先行き見通しについて

先行き見通しの文で一箇所変化がございます。

(9月)『IT関連分野の調整一巡』
(8月)『IT関連分野の調整進展』

総合判断の部分でIT関連文分野の云々という箇所がなくなったのと同じ話でして、以前「先行きの懸念材料」とされていたIT関連分野の調整が一巡したというのは誠に結構なお話でございます。


・物価について

(9月)『消費者物価の前年比は、需給環境の緩やかな改善が続く中、米価格のマイナス寄与が剥落していくことや、電気・電話料金引き下げの影響が弱まることなどから、年末頃にかけてゼロ%ないし若干のプラスに転じていくと予想される。』

(8月)『消費者物価の前年比は、需給環境の緩やかな改善が続くとみられるものの、電気・電話料金引き下げの影響もあって、当面は小幅のマイナスで推移すると予想される。』

プラス予想キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!!

ということですが、まぁ今のところ過去のマイナス要因が剥落するからプラスになるっちゅう言い方にして微妙にヘッジを入れている気がしますが、プラス予想はプラス予想。ま、実際にコアCPIがどのようなトレンドを辿って推移するかという問題で先行きのインフレ期待がどうのこうのって話になってきますので、今から大騒ぎする話でもないかなって気もしますが。


・おまけ

その他の表現は前月比変らずなのですが、量的緩和政策の継続への確信が少々剥落している今日この頃のため、札割れ現象もだいぶ緩和されてきた(ご紹介省略しましたが、先日の武藤副総裁のインタビューでもその点の言及がありました)事もあり、資金供給オペレーションにおける札割れ云々という話は無くなっております。


なお、記者会見の方では割と抑え気味のトーンでお話をしていたように(ヘッドラインや会見関連記事をざっと見ただけの印象ですが)感じられました。

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2005/09/07

お題「市場の相手をどうしましょ」

ニューヨーク原油先物、やっとハリケーン前の水準に戻ったようで。

まぁ何ですな、いつまで経っても復興しない訳はないし、そもそも何の為に原油(など)を備蓄しているのかというわけでして、原油価格が上りっぱなしというのも妙な事ではあるのですが、この手の自然災害はその規模が「今まで見たこと無い」ものであればあるほど目先過剰反応しちゃうってことなんでしょう。まぁ仕方の無い話ではありますが。

本日から明日までの日程で金融政策決定会合が実施されます。で、まぁ金融政策に何かアクションがあるとは誰も思っていないのでそれはよいのですが、明日(全文は明後日)に公表される今月分の金融経済月報は確認かと思います。恐らく今回に関しては景気判断を前回と変らずという形にしてくるのではないかと思いますが・・・・・・

という話は兎も角、昨日も相場の動きに半ば呆れながらつらつらと「市場との対話」に関して思っていたので、その辺を(今までの話の重複部分もございますが)徒然なるままに。


○昨日もぶれる中短期ゾーン

先日の武藤副総裁のブルームバーグインタビューは意外に効果(?)があったのかど〜か知りませんが、昨日の債券市場でもまた中短期ゾーンが見事にヘロヘロの巻。朝っぱらから前日比1毛甘の0.145%ヒットとなっていまして、さすがに引けに掛けて持ち直しの動きもあったのですが、債券先物は前日比プラスだというのに、ずーっと前日比利回り上昇の香りがしておりまして、誠に遺憾の極みでございます。

毎日2年債の話ばかりで実に恐縮ですが、先週金曜日の高値が0.105%で昨日の安値が0.145%ってのは利回り変化が0.04%ですから元々の金利が0.1%台の債券としては中々素晴らしい変化率(まぁミクロの世界ではありますが)とも言える訳で(^^)。

まぁ将来短期金利が動くようになったらこんなもんじゃないと考えれば良い演習になっているのかも知れませんが、何か米国債券市場が動けば反応し、そんなに過激発言をしているとも思えない(昨日と一昨日のドラめもんをご参照下さい)武藤副総裁のインタビュー記事に反応してみたりと、まぁご苦労なことでございます。

過去に金利が付いていた時と比べて2年以下のゾーンの国債流通量が物凄い勢いで増えているので、ちょっとした動きでも結構相場へのインパクトがあり、昔から一方方向に振れ易い傾向のあるこのゾーンが将来どうなるのよって考えると若干ガクブルの香りも致します。とは言いましても、そんなことは別に今から騒ぐ事でもないのでして、せいぜいゼロ金利のアンカー付きとなっている今のうちに「一々材料を見つけて反応する」ことのアホらしさを勉強して欲しいものです。


○興味深い議論

人のブログの議論を勝手にネタに使ってすいませんすいません。

先日日銀レポートでテーラールールを具体的に取り上げながら「金融政策ルールと中央銀行の政策運営」ってのが発表されていましたという話をネタにしたと存じますが、紹介しただけで放置していたら(大汗)、毎度ご紹介している(ので読者の皆様もご覧になったかも知れませんが)本石町日記さんの所で面白いエントリーがあったのでご紹介。

http://hongokucho.exblog.jp/3422113/

あたくしは前回のゼロ金利解除の時には債券市場周りに居なかった事もあり、詳しい状況を判っていないのですが(残念!)、なるほどそんなこともあったのねと勉強をしつつ、当エントリーのお題に思わず笑ってしまう(ちとブラックですな^^)次第ですが、最後のまとめ部分には激しくうなずくのでありました。

『量的緩和が解除されるとき、テーラールールを前面に持ち出すかどうか何とも言えないが、仮にそうする場合、取り扱いは相当に慎重にしないといけないだろう。下手な使い方すると、マーケットが恐怖してしまう。』

『教訓 ルールは、その使い方によっては政策を正当化するために改ざんされるリスクがある。テーラールールなら、テラー(恐怖=テロ)ルール、エラー(間違い)ルールとなってしまう。』

まぁ当座預金残高目標下限割れ前後での騒動(苦笑)も、一部からは「当預残高目標引下げありき」みたいな感じで理屈(市場機能だの金利機能だのの正常化という奴)が持ち出されていたような印象を受けた(あくまでもあたくしの個人的感覚ですが)んですが、どうも昔から理屈後付けの傾向はあったのでしょうかね。

あたくしはルールを厳格に決めてその通りに運用しろとは全く思わない人ではあるのですが、その時々に応じて適当に政策を正当化する理屈を持ち出してくるのは益々如何なものかと思います。本来「総合判断」でやるべきものだと思うのですけど、どうもその「総合判断」に自信が無いから何か理屈を持ち出してくるのでしょうかねぇなどと意地の悪い見方をするあたくしなのでありました。

まぁ「○○先にありき」で何かやらかそうとするのではなく、経済状況をじっくりと見て金融政策の対応を行うって姿勢を維持していれば、「総合判断」だけで十分だと思うんですがね。現在の状況で言えば要するに「量的緩和解除先にありき」は止めてくれということですが。最近ようやく落ち着いてきたのは喜ばしいことです。


ところで、上記エントリーに送られたコメント欄での論議もまた興味深いものがありまして、あたくしも先週金曜日にこのレポートのお話をした時に「別に他意はないんでしょうが・・」と言いながらもこんなことを書いたので、ラスト何マイル?さんのコメントとその後の議論については頷くものがございました。

あたくしは(金曜のドラめもんで)こんな事を書きました。
『いやまぁ公表のタイミングが2週間早かったらまたぞろ日経新聞あたりがネタに取り上げて「テイラー・ルールが示す金利政策の復活」みたいな観測記事を書かれて大騒ぎになったかもしれませんなぁという感じ。たまたま米国ハリケーン攻撃で金利低下の雰囲気がでているので話題にはならないんでしょうけれども、市場の時間軸に関する見方が揺らいでいた時にこういう燃料を投下するのはどうかとおもいますけどね。』

で、ラスト何マイル?さんのコメントとしてこんなのが(勝手に引用してスイマセン)。
『「市場の感覚」ですか・・・あまたある個人名論文の1つ1つの公表タイミングについて、どこに軸があるのか分からない「市場の感覚」に合わせて、執行部がコントロールしようとすることが、適切かつ現実的だと思うその感覚に、私はむしろ疑問を覚えます。』

確かに一々コントロールするのは現実問題として不可能ですし、そのためにちゃんと「個人論文であって日銀の見解を示すものではない」と書いてあります。一々反応する(今回は反応しなくて良かったですねって所ですが)方がおかしいですな。

ただまぁあたくしが上の方で書いたように、問題なのはその手の個人論文が「日銀からのメッセージ」と取られる風潮があることでして(本石町日記さんが続くコメントで指摘しているのですが)それを煽っているのがメディアというか思いっきり個別名を名指しすると日経新聞だったりするのが困りものであろうかと。

まぁそんなのは無視すれば良いのですけれども、たちの悪い事に、このメディアさまにおかれましては、直近実績として「なお書き修正リーク」ってのが(内容に一部誤解がありましたが)あったりするので、年がら年中日銀に粘着している暇の無い人たちにとっては「やはり日経の報道はエライ」って話になり、そうなると市場の自己実現機能が発揮されて益々その通りになるという困った状況に陥るわけですな。


書いているうちに話が発散してきたので、ぜんぜん纏まって無いですけど本日は一旦ここで終了してもうちょっと考えてみます(ナンノコッチャ)。

(翌日に書いた続き)

○その前に昨日の続きになっていない昨日の続き

昨日話が発散したまま片付いていない「市場との対話」ネタも大変示唆に富むお話で、http://hongokucho.exblog.jp/3422113/のコメント欄での議論が益々興味深くなっております。別に特段の意図も無い一挙手一投足に一々「意図」を妙に深読みされて日銀も大変ですなぁという気もしますが、まぁ永遠のテーマなのかもしれませんな(と訳の判らぬお茶の濁し方をするあたくし)。

以前ご紹介したアラン・ブラインダー元FRB副議長の著書にありました指摘、「中央銀行がマーケットのご機嫌とりに力を注ぎすぎると、マーケットの持つ極端な短期的視野を暗黙のうちに採用してしまう可能性が高い。すなわち、マーケットは中央銀行が何をするかを予想し、ともすればそれに過剰に反応することになる。一方で、中央銀行は、政策をどうするべきかを考えるにあたって、マーケットの動向に注目する。経済学者が使う専門用語でいえば、単位根(unit root)を持つ差分方程式をつくりだしそうな、危険な状態ということになる。」ってあたりが誠に頷けるものでして、まぁ難しい話でもございます。

・・・結局結論になってない(滝汗



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2005/09/02

○今回の「日銀レビュー」は・・・

「日銀レビュー」というのが毎月日銀から出ておりまして、日銀によりますと『日銀レビュー・シリーズは、最近の金融経済の話題を、金融経済に関心を有する幅広い読者層を対象として、平易かつ簡潔に解説するために、日本銀行が編集・発行しているものです。』ということで、毎度出るたびに読むようにしております。

で、今回でた日銀レビューは「金融政策ルールと中央銀行の政策運営」というペーパー。金融政策をマクロ経済指標に連動した形で運営する方式ってどうよ?ってお話でして、まぁ本件に関してはちゃんと下調べをしてから書かないと恥ずかしい思いをするネタですので、ちゃんとした話は週末の宿題(と言ってやらないのがドラめもんクオリティだったりするのですが、汗)と言う事で。

http://www.boj.or.jp/ronbun/05/rev05j13_f.htm

まぁこの関連のネタは時々日銀レビューで取り扱われている話題ですし、日銀としては常に研究しているテーマなので、発表するのは全く他意は無いと思うのですけれども、この中のレビュー本文(上記URLのリンク先にPDFファイル形式で本文があります)の5ページ目のグラフなんぞを見ますと、「オリジナルのテイラー・ルールが示す日本の政策金利の例」ってのがあって、「テイラー・ルールから算出される政策金利」ってのが(グラフが長期間なので細かく見難いのですが)2003年だか2004年には絶賛プラス転換していますが何か?って図になっているんですよ先生。

いやまぁ公表のタイミングが2週間早かったらまたぞろ日経新聞あたりがネタに取り上げて「テイラー・ルールが示す金利政策の復活」みたいな観測記事を書かれて大騒ぎになったかもしれませんなぁという感じ。たまたま米国ハリケーン攻撃で金利低下の雰囲気がでているので話題にはならないんでしょうけれども、市場の時間軸に関する見方が揺らいでいた時にこういう燃料を投下するのはどうかとおもいますけどね。まぁ「必ずしも日本銀行の見解を示すものではありません」ってペーパーまで一々考えて出してられるかゴルァというのは判りますが、ど〜もこう「市場の対話」がどうのこうのという割には変な時に変な燃料を投下する傾向が昔からあるのが気になる所でありますわな。>日本銀行

市場で時間軸に関する思惑が変に揺らいでいたので発表のタイミングをずらしていたのであれば素晴らしいですけど(^^)。

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2005/09/01

○「金利の正常化」という論理にあたくしが感じるもの

東短リサーチレポートで紹介されていた「グループ提言」のWebおよびグループが行っている提言を拝読いたしました。(http://www.teigen.jp/

で、このWebで政策提言第1回として本年2月10日に「金融政策の正常化を通じて財政規律の強化を」というテーマで提言を行っています。2月に行った提言ですので、オペ札割れ問題に関する話あたりはその後の市場情勢の変化で「うーむ」という点も散見されるのですが、まぁそれはともかくと致しまして、提言はこちら。http://www.teigen.jp/teigen/teigen1_sum.pdf

まぁだいぶ前の提言ですので、既にご覧になられているお方も多いかと存じますんで誠に恐縮至極でますが、この提言を呼んで思ったことを少々。

提言の中で述べられている「国債市場が横並び意識が強く少数寡占のプレーヤーによって成立しているので、金利変動のトリガーが引かれると変動率が加速度的に高まる危険と隣り合わせになっている」というのはまさにその通りですわなとか、「金融行政は政治的に中立行うべきであり、金融行政のトップは国務大臣ではなく政治的に中立な役職にすべき」というような指摘はなるほどと思ったりしました。

全体的には(作ったメンバーがメンバーなだけに)なるほどと感心する点が多いのですが、どうもあたくしが引っ掛かるのは「金利の正常化を通じて財政規律の強化を」ってフレーズでございます。

提言の中にも勿論「金融政策の正常化にあたっては財政規律の回復に政府が最大限の努力を払う事が前提で、そうでなければ有効性を失う危険性が高い」とありますので、何が何でも金利の正常化をしましょうって話ではないと信じる所ではあるのですが、提言の要旨の部分だけを拝読(http://www.teigen.jp/teigen.html)しておりますと、そこのあたりが『金融を取り巻く環境を見てもゼロ金利の元で財政と金融が互いに規律をなくしモラルハザードを発生させている。金利の正常化を通してこの先の政策経路を示すことが国民の利益と一致すると考える。』って表現になっておりまして、何かこう構造改革主義というか清算主義というか、かつての「銀行シバキアゲ政策を行うと不良債権問題が解消される」という話を思い出す次第でございます。

かつてはあたくしも構造改革原理主義というか清算主義に傾いていた頃もあったのですが、実際問題として銀行シバキアゲ政策を取って何が起きたのかという事を考えますと、さすがに清算主義は如何なものかという考えになっておりますです。

提言を全部読んだら別に清算主義的なお話ではないのでこ〜ゆ〜文を書くのも言いがかりっぽくてアレなのですが、どうも「金利の正常化」というフレーズが一人歩きして、「金利の正常化を行う事によって財政の健全化を促進する」とかいうような本末転倒のお話が出てくるのではないかと不安になってしまう今日この頃。どこぞで「量的緩和政策の早期解除」とかいうのを言い出した党がいましたように・・・・

昨日の時事メインコラム「金融観測」でも「量的緩和政策が微害微益なら解除条件が満たされた場合であっても、解除が必要なのは成長期待が強まり、インフレリスクが台頭する場合であり、そうでないのに解除を強行すると、日銀の、日銀による、日銀のための解除になってしまうのではないか」という記事がございました。全く同感でして、あまり「金利の正常化」とか「市場機能の回復」というような点を強調するのは如何な物か、というか本末転倒になってしまうのではないかと思うのでありました。目的はデフレ脱却、景気回復であるわけですから・・・・

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2005/08/31

お題「市場との対話を上手く行うには(という雑談)」

うーん、幾ら大型台風と言っても台風如きで原油精製能力が通常の10%から20%程度まで落ちるというのはそりゃちと安普請なのではないかという気が少々しますが。まぁ自然災害恐るべしですな。

○国債市場特別参加者懇談会にあった意見より

http://www.mof.go.jp/singikai/kokusai/gijiyosi/c170829.htm

今回のお題は相場時事放談と物価連動国債だったようでして、相場について延々と参加者のコメントの要旨が出ております。

で、まぁ見ておりますと、今月の金利上昇→やや低下という相場(何せ2年国債が0.1%台でそれなりに動きましたし)に関して投資家行動と申しますか需給に関するコメントが結構多いですなぁという感じでして、まぁ今月の相場は「景気指標の改善と株価の上昇で金利が上昇したものの、最終投資家の債券購入意欲によって上昇が抑えられました」と物凄く割り切って言えるのでしょう。

まぁ相場時事放談部分は「はぁそうですねぇ」という以上の感想はあまり起きないのですが、今回の金利上昇は「景況感改善による海外勢の売りVS運用圧力が相変わらず高い国内投資家の買い」であって、投資家の投げ売りが入った相場ではない(いやまぁ全く無いとは思いませんが)ので、そんなに派手派手な動きにはならなかったというお話が延々と続いています。そんな中でちょっと苦笑したのはこのコメント。

『引き続き穏やかな金利上昇が継続する可能性は高いとは思うが、やはり大事なのは、日銀がいかにマーケットと対話をしていくかであると思う。今回の上げ局面は、そういった意味で、うまくいったのではないかと思っており、こういった形で継続していくならば、量的緩和の解除も、あまり大きなレンジの触れがなくできるのではないかと思っている。』

最初さらっと読み流したのですが、よくよく考えてみると中々含蓄の深いコメントでございます。ということで「市場との対話がうまくいったのはなぜでしょ?」という事を8月相場を思い出しつつつらつらと考えてみるのでありました(笑)。



○さて何で今回上手く対話ができたんでしょう?

今回の金利上昇と申しますと、概ね7月下旬からおっぱじまったのでありますが、この間の最大特徴は日銀審議委員の講演らしきものがろくすっぽ無かった事でございます(笑)。あったのは金融政策決定会合が2回と、それに伴う金融経済月報の発表と福井総裁記者会見でございました。

で、この間の総裁記者会見はご案内の通り「景気には進軍ラッパ鳴りまくりの強気発言をしつつ、金融政策スタンスに関しては慎重な物言いに終始していまして、それだけ景気回復デフレ脱却に対して自信満々なんでしょうという見方が多かったかと存じます。

要するにですな、将来の金融政策がどうのこうのとかいう仮定の話を審議委員が勝手気儘に言わなきゃ「本来日銀がどのようなスタンスで金融政策運営をやっていましたっけ?」って問題をちゃんと市場が考えて行動するから、金利上昇が「メジャードペース」になるんじゃネーノと思う訳でございます。

「市場との対話がうまくいった」のが「金融政策に関する審議委員の余計な発言が無かった」事によって達成されたというのが実に香ばしい限りでございまして、この発言者がそこまで考えて皮肉を飛ばしたのか、議事要旨を作成した(しかし前日夕方の会議の議事要旨を翌朝アップするんですから国債課の中の人は大変ですね)理財局国債課の方が上手に(笑)纏めたのかどうか存じませんが、中々皮肉が利いているコメントであったと思います(笑)。

この一文を重く(?)受け止めていただきまして、審議委員の皆様におかれましては、講演その他で量的緩和政策の解除がどうのこうのとか市場の正常化がどうのこうのというようなお話をするのではなく、自らの景気見通しなどのような点に関して(資産価格がどうのこうのという話も含めると思うが)力点を置いたお話なんぞをして頂きますと誠に結構至極な「市場との対話」になるのではないかと存じます。



○ベシャリもほどほどにor発言と決定会合の行動を一致させなさい?

で、つらつらと考えは続くのですが・・・・

そもそも量的緩和政策の解除において「解除条件が揃う際の景気、物価のベクトル」によって解除の方法とかその後の金利政策への移行方法や、先行きの引き締め速度とかは変り得るものであって、決め打ちができる代物ではない筈。然るに、審議委員の皆様におかれましては、各位がご想定になられますところの景気シナリオを引っ張って将来の金融政策をどうするのかというお話をしたがる傾向をお持ちのお方がおられるようで(全員とは申しませんが)やはり如何なものかという気もしますわな。

まぁ景気シナリオを考えて景気見通しをするのは当然として、その仮定に則って金融政策運営がどうのこうのという話をおっぱじめるのは、それが近い先の話(この前の当預引下げみたいに)なら兎も角として、あまり先行きの話の場合は市場に対してあらぬ誤解を招く可能性があるのかも知れません。


もう一つの考えですが、当預引下げ騒動のあたりで一番撹乱要因になっていたのはご案内の通り水野審議委員の「金利の正常化」だのの強い調子の発言であった訳でして、当初水野審議委員の「タカ派丸出し発言」は「実は審議委員の大勢も同じなのではないか」と思われていた節がありました(福井総裁の意向を受けて露払いをしているという見方も結構ありましたし)ので、なおのこと市場が反応したという状態でしたわな。しかしその後、決定会合の議事要旨が公開されるに至り、政策委員会の大勢意見と水野審議委員の意見が相違するという点が明らかになり、その分水野審議委員の発言が「少数意見」として見られるようになった(議事要旨だけではなく武藤副総裁や福井総裁の発言も効いたと思いますが)事によって、市場のあらぬ誤解が発生しにくくなったという事も言えるかも知れません。

ま、その辺はあたくしの脳内妄想部分が多分にあるので微妙な所ですが、まぁあまり余計な事をペラペラ喋るよりは、市場が好き勝手言っている事を聞いて回る方が吉(現場ではヒアリングを熱心に行っているようですが)なのでしょうかねぇと思ってしまいました。ま、物分りが良すぎると市場のポジショントークに乗せられる場合も無きにしも非ずなんでそれはそれでどうかと思いますがね。

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2005/08/30

○財務省の国庫金管理効率化

昨日すっかり取り上げるのを忘却していたら既に本石町日記さん(http://hongokucho.exblog.jp)で取り上げられているのでそちらを読みましょうで終了しちゃうのも何ですので。

http://www.mof.go.jp/jouhou/sonota/kokko/kk170826.htm

『国庫金は、その受払いの時期が様々であるため、国庫収支は時期によって資金不足や資金余剰が生じる。財務省としては、このような国庫収支の過不足の調整を行い、国庫金の効率的な管理に努めてきているところであるが、今般、次のような施策を実施し、その取組を強化する。』

インターバンクでの資金需給のぶれの大きさ(と、かつては都銀が恒常的に大幅不足だった資金の偏在、今はオーバーローンが解消された上に資金がじゃぶじゃぶですが)は国内短期金融市場の特色でもある訳ですが、資金需給のぶれは銀行券選好の強さに加えて財政資金の受払いのぶれがやたらと大きいというのが要因でございます。で、芸術的な資金過不足調整を日銀オペレーションで均すのですが、かつては(旧法時代)そのオペレーションに色々とシグナルを込めてコールレートの誘導を行っていたという実に職人的な手法(?)が発達しておりまして、国内インターバンクの人には職人同士の阿吽の呼吸で日銀のシグナルを読んでいたものの、ガイジンにはさっぱりワケワカメと不評な状態でございました。それはともかく。

「国庫金の効率的な管理に努めてきているところであるが」っていうかやっと手をつけましたかっていうのが正直な感想ではありますが(苦笑)、まぁ放置しているよりはやった方が遥かにマシな話ですので、今後も財政資金需給のブレを小さくしていくような施策を望みたい所です。

で、これをもって「日銀が当座預金残高目標を達成しやすくなり(財政資金需給のぶれが小さくなると一時的なブレを均すための無理なオペレーションをしなくて済むようになるから)、財務省が日銀に対して量的緩和政策の側面支援を行っている」というようなことを陰謀論が好きなどこぞの新聞あたりは言い出しそうです。確かにその手の意図が全く財務省にないと思いませんが、それよりは、これまで国庫金の効率管理にあまり熱心に取り組んでいたとは思えない財務省が本来やるべき事をやっと本格的に手をつけたという解釈が正しいと思います。

と思って昨日の恐怖金融新聞を見ていたら2面の囲み記事で本件に関して「財務省が日銀に貸しを作ったともいえそうだ」などと解説しているのにはかなーり呆れてしまいました。「貸しを作った」のではなく「借りを少しだけ返済した」というべきではないかと思うのですが、この新聞社の記事は時に財務省ぁwせdrftgyふじこ。


ま、政府の資金繰りの為に発行されているFB(政府短期証券)の金利が延々とゼロ近傍(というか最近暫くは本当にゼロだった訳だが)に張り付いており、短期資金繰りの金利負担が激しく小さかった(今も小さいですが)為にあまり今まで「資金の効率管理」という発想をする必要が無かったという事もあるので、財務省が怠慢とか言うのもちょっと言いすぎかなとも思いますけれども、為念。(蛇足ですがFBの市中公募が始まる前は公定歩合よりも低い金利で発行されていたので、実質日銀の全額引受でした)

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2005/08/24

お題「変な相場になってきましたな」

○ああ勘違い

さてどこから話をしようかと思う昨日の相場。ちょうど目の前の番組で米国のなんちゃらというガイジンの人が為替見通しの話をしていたのを聞き流していたら、物凄い勢いで腰が砕けるコメントがあったので朝からぶっ飛んでしまいました。曰く、

「日本銀行はいずれ量的緩和政策の解除を検討する事になるだろう(まぁそこまでは判る)。早ければ10月にも」

ええええええええええ!って感じですが、こんな講釈であたくしの20倍位(もっとか?)の年収があるのではないでしょうかなどと思ってしまうと物凄い勢いで血圧急上昇ですわな。んな訳ネーだろというのは量的緩和政策のコミットメント3条件を読めば誰でも判る事ですがなというのはドラめもん読者の皆様におかれましては自明ですが、そういう発言が平気で(生放送とは言え)テレビ番組でのたまう人が米国にいるちゅう事は、結構マジでそういう事思ってる海外の人っているのかもね。


で、昨日もまた恐怖金融新聞は香ばしい記事を並べてくれたのですが、1面トップのお題「銀行株高、上昇余地探る」ってのがいつもの法則発動で昨日の銀行株反落を招いたというのはご愛敬と致しまして(笑)、「アナリストの見方」として某黄金人間証券の著名な外国人アナリストのコメントとして「なお3割近く余地」とありました。

ほっほーと思って読んでみると、前提として「短期金利の水準が2009年3月末ごろまでに1.25%に上ると仮定すれば」って書いてありまして、今の日本国債のイールドカーブを見て書いているのかおまいはと小一時間問い詰めたくなるようなお話でございました。そういうことはせめて5年国債が1%になってから言えという感じですな。逝って良しということで。

ま、何ですな。海外投資家がどうのこうのってやたら有り難がる傾向がございますが、そんなにエラソーなものでも無いちゅうことで宜しいのではないかと大和魂重視のあたくし(ナンノコッチャ)は思うのでありました。



○馬鹿馬鹿しいほどに動く2年ゾーン

まぁそんな「ああ勘違い」が横行する昨今ではございますが、昨日の債券市場では2年国債が朝っぱらから売り物がちになり、前場からいきなり前日比2毛甘の0.16%なんぞが出合う有様。10年20年よりも金利上昇幅がでかいってそりゃ何よという感じ。後場には0.165%まで売られて目を疑いましたよ全くもう。(引けは0.145%)

20年国債入札後に株式市場が頭打ちになったこともあって債券先物などが上昇した為に、終わってみればイールドカーブ上2年近辺が一番お安いというかなーり豪快な相場になってしまいました。

今月の2年国債は0.12%からスタートしたのですが、8月11日の5年国債入札の時に0.185%の安値までマークして反発。先週は(ドラめもんでもご紹介しましたが)週初0.145%まで戻ったと思ったら0.17%まで売られ、水曜日からは猛反発して先週末は0.125%まで上昇したのに、昨日の安値は0.165%と言う事で、まぁ動くわ動くわ。


金融政策変更の思惑がそんなにぶれるような材料がでてますかねって思うような動きですし、以前(12日)に5年国債入札レビューを書きながら「何か妙なタイミングで中短期がボロボロになりました」と書きましたが、昨日に関してもいきなり2年債がボロボロになるのは意味判らんですわな。

株価堅調で量的緩和政策の時間軸が短くなるっていう発想が起きるのであれば、月曜に平均株価が爆騰した時に売られる筈でして、何というかやたら反応するタイミングが変でございまして、まぁ量的緩和ゼロ金利時代のご到来以来「短期資金運用」の名目でご参入の大手銀行の資金部門あたりの人たちが暴れているのではないかと勝手に想像しておりますが、何かモメンタムというか勢いで売ったり買ったりしてませんかねという印象を強くします。

別にあたくしが当事者として詳しい訳ではないので聞いた話を組み合わせて好き勝手に想像しますと、大手銀行の資金部門は長引く量的緩和でベテランディーラーのノウハウの継承が上手く進んでおらず、年寄り絶滅後の若い衆は短期金利が動くという世界への経験が乏しい為に、量的緩和政策の出口がどうしたこうしたって状況になってきた昨今金融政策に関するちょっとした新聞記事やら相場の勢いやらでドタバタしているのではないかなぁという感じです。あくまでもあたくしの好き勝手な想像であって実態はどうなんでしょうとは思いますが、業者の債券ディーラーだけで2年の金利がこんなにアホのように動く事は考えづらい。


○で、またお得意の吹かし記事が見つかる訳ですが

上に書いた「金融政策に関するちょっとした新聞記事」ってのが毎度お馴染みの日経金融新聞2面の「ポジション」欄。お題が何と「1年もの金利高め誘導?短期市場の機能復活狙う」という記事でして、年寄りのあたくしなんぞは見出しを見た瞬間に小一時間問い詰めたくなるような記事なのですが、この記事を真に受けたのかどうか判りませんが、朝っぱらから1年TBを売っていた人もいたらしいので世の中わからんものです。

で、まぁ朝っぱらからそんな動きで、短期商品やっている同僚から日経金融新聞が話題になっているというのを聞きつけて読んでみたら危うく茶を噴き出しそうになりました。謝罪と賠償を要求したいものです。

記事では「5月中旬以降週に1〜2回のペースで実施していた期間の長い全店手形オペが8月8日以降全く入らなくなったのは、オペ期間の短期化で長めの短期金利の上昇を促そうとしている」という趣旨でお話が展開されておりました。好き勝手ペラペラ喋って相場を混乱させるのが得意技なのではないかと思われるどこぞの少数派審議委員が腹話術でも使っているのではないかという記事で思わず笑ってしまいましたが・・・・

今月初の資金不足を通過した後は当座預金残高は34兆円とかを維持していまして、そもそも資金供給オペを実施する必要性が薄い状態が続いているので全店手形オペを打っていないだけの話しで、それを取り上げて大騒ぎするのは明らかに為にする論議ですわな。そして、オペの期間に関しては、そもそも「札割れ回避」(=資金供給をちゃんと行う)が目的であって、長めの短期金利を下げるのが目的ではございませんわな。札割れが続いていたので仕方なく資金供給オペ期間を長くしていたのであるからして、無事に資金供給できるのであれば期間を短くするのが当たり前で、それを「市場機能の復活を狙う」というのは話がおかしい。

ちなみに、昨日久しぶりに実施された全店手形買いオペは4月14日エンドと前回のオペからエンドを2ヶ月ほど短くしてきましたが、何を慌てたのか落札利回りは前回から0.002%上昇して0.007%となってました。いやまぁ節操ねぇなあと思いますが、1年ものTBが0.01%乗ってますんで、この辺りの金利上昇はまだそんなに驚くほどではないでしょうな。(つーか先週もオペ金利上ってたと思うのだが)

で、まぁ今日あたりも日経新聞あたりで「オペ期間の短期化によって量的緩和政策の出口に向けたシグナルが出た」とか言い出すのではないかというあたくしの珍説を某通信社の短期市場担当記者に話したら電話口の向こうで爆笑の発作が起きていたのはここだけの話しです(^^)。本当にそんな話題が出かねないのがアレですが。


念の為申しあげますと、量的緩和政策で短期金利だけでなく、より長めの金利の低下を促すって話を量的緩和導入の時にしておりますが、これは短期金融市場へのオペレーションで金利誘導をするのではなく、あくまでも時間軸効果によって長めの金利を低位安定させるという意味であって、そもそもが時間軸を市場機能に働きかけて長めの金利に影響をさせるというお話。よって「オペ期間の短期化によって市場機能の復活云々」という理屈は筋違いな理屈であるとあたしゃー思うのですが、どうなんでしょうね。

ま、その辺「何でもあり」というか鵺のような政策なんでまた話がややこしいのですが、相変わらず無茶な解釈をして吹かしますな〜と感心した次第であります。

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2005/08/23

○宿題リスト

ここの所金融庁や日銀から色々なペーパーが出ておりますので、そちらについてご紹介しないといけないのですが、何かと雑事が立て込んでいて読んでいる時間がございませんで、すっかり放置プレイとなっておりまして恐縮至極。

という訳で宿題リストです。

その1:バーゼルU関連資料

バーゼルU関連の資料がいくつかあるのですが、その中で債券売買にモロに影響しそうなのは金融庁あんど日銀のWebに載っております「トレーディング業務に対するバーゼルUの適用およびダブル・デフォルト効果の取扱い」についてのペーパー。こちらはカウンターパーティーの信用リスクの扱いとかレポ取引に関する扱いとかを(なぜかプレゼンテーション用のソフトで)書いてあるのですが「なんちゃら方式による算定がどうのこうの」として数学が苦手なあたくしにはお経よりも難しい式が幾つも入っていて誠に遺憾です。

正直、この手の資料に出てくるの「式」ってのは「計算の式」ではなくて「算定に関する基本的な考え方」を書いている事が多いので、わざわざ式にしないで日本語で説明して頂きたいものだと思います。経済学の本を見てても同じ事を思うのですが、基本的なものの考え方を文章でうだうだ書くと冗長になるのは判りますが、読んでる人が読み下しながら「ほうほう」と思うような記述を工夫されたしと前々から思いますな。

などと自分の頭の悪さを棚に上げて勝手な事を言うあたくしでありました。

最後のレポ・フェイル関連の所をざっと見たんですが、現在の実務から見て無理のない(というかいきなりリスク賦課が増える事が無いと申しますか)扱いになっているようですな。DVP決済(証券と資金を同時決済すること)推進の為に非DVP取引の扱いを厳格化するのかと思ってましたが、国内でのヘルシュタットリスクは考慮しない(意訳)というのが最初に目に入りまして、「まぁあまりガチガチにしないんですね」との第一印象です。資金に関しては「内国為替決済における銀行間決済途上の資金」は全額保護ですけど、証券決済って保護対象でしたっけと思いつつも。


その2:金融庁の監督指針

これがもう莫大な量ありまして、おまけに「概要」と書いてあるペーパーを読んでもこれが単なる本の見出しみたいなもんでこれを見ても何の事やら内容が全く判らんという代物。これはちょっとパスかもしれんね。


その3:証券取引等監視委員会関連

証券取引等監視委員会の年度は何故か7月からスタートになってまして、実は7月21日に既に平成17事務年度の証券検査方針に関するペーパーが出ております。まぁこれも読んでおかないとという感じですが、既に出てから1ヶ月経過していて証文の出し遅れですかそうですか。

9月半ばになりますと、「証券取引等監視委員会の活動状況」という本が監視委員会編集で出版(政府刊行物を置いているようなところで売っているものと思われます)されますので、そちらを読むとこれがまた面白い人にはかなり面白いという代物です。特に犯則事例の紹介が中々勉強になるというか示唆に富むというか。まぁお勧めです。

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2005/08/17

○これはまた正論ではないかと(丹羽さんのインタビュー)

昨日の日経新聞5面経済面のインタビュー企画「どうする構造改革、識者に聞く」の第5回目に登場したのは伊藤忠商事会長の丹羽宇一郎さん。

構造改革と郵政民営化問題に関してコメントをしていまして、丸々引用する訳にも参りませんので当該新聞記事を読んでいただければとは思いますが、経済同友会の行政改革委員長として郵政民営化を支持してきた事から現状の郵政民営化問題に対するコメントをしてまして、このくだりにあたくし感心することしきりでございます。以下同記事より引用します。

『(郵政民営化は)白紙に戻し、やり直したらいい。窓口サービス、郵便、郵便貯金、簡易保険の4事業体に分割する民営化にはリスクがある』

『貸し出しなどの銀行業務部門は素人ばかり。そもそも民間企業は借金を返しており借り入れ需要は少ない。潤沢な資金を官だけで使わず、民間に流すことが郵政改革の根幹だったが、350兆円の資金を民間に流すといっても今となってはありがたくない』

『むしろ必要なのは郵貯と簡保の将来的な廃止だ。郵便事業は当面、必要なものを税金で運営すれば済む。郵貯と簡保が消えていけば350兆円の資金は民間に自然な形で流れてくる』

民営化して新事業を展開して収益を上げるというバラ色のシナリオが先日の民営化法案の前提としてあったりしていた訳ですが、「民間でできる事を民間に」というスローガンに則るという話であれば、何も元官営金融事業を大々的に展開するこたぁねぇだろうと(民営化ったって元は官業だったんですから)いうわけで、郵貯簡保の将来的な廃止で規模を縮小していくっちゅう方が筋は通ってますわなぁと思う次第。

この前の日曜夕方にどこぞの報道番組をちょっとだけ見てたら、郵貯限度額を引き下げると言ってる政党の人と竹中大臣様が議論をしてましたが、脳内メモリーによりますと竹中センセイ「限度額引下げで雇用の確保はどうなるんだ」とか突っ込んでいましたが、そりゃお前さん突っ込む所間違ってませんかって思う次第。民営化の一つの目的ってリストラだと思ったのですが・・・・・


話はなおずれてきますが、郵貯の限度額をいきなり引き下げると国債が暴落するという懸念もあるようですが、まぁそれは工夫次第でしょうなぁと思います。郵貯の限度額を引き下げればその分資金流出は発生しますが、全額タンス預金にでもならない限りは1日なのか1ヶ月なのか判りませんがその資金は民間金融機関に預入されますわな。今は金融不安もございませんのでそんなに多くはタンス預金化しないでしょ。

で、現在民間金融機関に資金が回ってきても(丹羽会長のご指摘のように)民間企業の資金需要が少ない現状では結局国債を買うしかない訳でして、タイムラグを置いて郵貯の保有する国債が民間金融機関に振り替わるだけのお話。従いましてこのタイムラグに相当する期間の資金繰りの面倒を日銀(とか国債整理基金とか)が行って移行期間に市場でバカスカ売却させるのを止めれば宜しいかと。そもそも郵貯の負債デュレーションってそんなに長くないので、資産のデュレーションもそんなに長くないと思うので、長期国債が売られまくって阿鼻叫喚って感じにはならんでしょとは思いますが。つーか資金繰り上では金余ってなかったっけ?


で、丹羽さんのインタビュー記事に戻りますと、丹羽さんの行政改革に関する発言も中々の物でしたが、そちらまで引用しだすと記事を殆ど引用する事になってしまい誠によろしくございませんので、「政治に改革の旗手を期待できるか」という質問に対する丹羽さんのコメントもまた中々のものでございまして、最近の「構造改革は正しい→小泉改革は正しい→小泉首相に反対するのは既得権者の抵抗勢力」という奇妙な理屈が罷り通る風潮の中、企業経営者としての立場でこの発言は結構勇気いるんじゃないのって思いました。同じく同記事より引用。

『巨人軍元監督の川上哲治さんに「V9」の秘訣を聞いたことがある。川上さんは王や長嶋ら実力者がいたからだと言った。どんな名監督でもその思いを実行する実力者がいなければ、偉業は成し遂げられない。企業も人も一人では改革はできない。小泉政権の場合、小泉監督の下に実力者がいなかったのではないか』

『王や長嶋がいないなら育てなければいけない。小泉さんが一人でスターになり、国民は小泉さんだけに拍手するから、ますます一人でやれるとの自信をお持ちになったのではないか。それはごう慢でもある』

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2005/08/04

○備忘録:月刊現代記事

前回の続きと言う事で「大反響、内幕ドキュメント第2弾」の日銀ネタが出ていてまたしょうがないので月刊現代を購入して読んだのですが、いやまぁ大反響なのは書いてある話しの事実関係は兎も角として、ブラックアウトがどうのこうのという話をあんた思いっきり誤解してるでしょうというような反響はございましたが何か?って所なんですが、相変わらずブラックアウトは誤解したままですし、稲葉理事が大阪支店長になったのを左遷扱いしてますけど大阪支店長も理事ですが何か?(この辺のことは正直あまり詳しくないので余計な事はあたくしもよー書きませんが)とか、武藤さんが福井総裁を完全に抑えたとか書いているけど、福井総裁はデフレ脱却と景気回復に自信を深めているから余計な動きをしなくなっただけでは無いかと思うのですが?とか(文が長いって>自分)色々と突っ込みどころがあって、正直前回の作品からみると大幅に???でございますな。(追記:何の事はない本石町日記さんが例によってちゃんと分析してました、大汗)

まぁこの手の内幕ネタが面白い人はどうぞ。内幕よりも景気動向の方が重要なんでこのネタは正直旬を過ぎてますな。

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2005/07/29

○総裁記者会見

記者会見要旨はhttp;//www.boj.or.jp/press/05/kk0507b.htm

・表現は控えめかもしれないけど景気の先行きに自信ですな

幾つかの質疑応答の応答部分を注釈なしで引用しておきます。

『本日も情勢をつぶさに点検した。前回の金融政策決定会合以降、多くの経済指標が公表されているわけではないが、個別の情報を刻々と把握している限り、日本経済全体としてじわじわと良い方向に動いているという印象を持っている。公表された指標等は、日本の景気が踊り場脱却に向けて着実に回復を続けていることを裏付けるものであったというのが、本日の金融政策決定会合で共有された判断である。』

『物価に関しての私どもの判断は、先程も申し上げた通り、前回から変わっていない。人によっては、あるいはそれぞれ持っているデータによって、予測のニュアンスに幅があることは当然である。しかし全体として、前回以降、物価についての判断を私どもは変えていない。 あえて言えば、今年末から来年初めにかけて、生鮮食品を除く消費者物価指数の前年比がプラスの領域に入っていく可能性が少し見えている。そういうことまでは言えると思うが、あくまで幅を持ってこれをとらえる必要がある。』

『前回以降、新しい経済指標が多くは発表されていないと申し上げたが、新しく発表された数少ない経済指標の中では、輸出入に関する統計がある。輸出の動向を見ると、全世界向けの輸出として全体をとらえた場合には、輸出の伸びに少し回復の兆しが出ており、これは良い指標と見ている。やや仔細に見ると、中国向け輸出はあまり好ましくない状況であるが、全体としてみると、少し良い感じが出てきている。一方、内需を見ると、設備投資は前回以降新しい数字が出ていないが、夏のボーナスを中心に家計の面に経済の良い影響が均霑(きんてん)してくるという印象もあり、足許の動きにも少し良い感じが強まってきているとみられる。従って、地味だが内需と外需の両方のバランスが比較的良い、地道な回復というシナリオが、新しいデータで少しずつ補強されつつある。』


・当座預金残高目標の「技術的」引下げを排除してませんな

こちらは微妙な質疑応答です。

『(問)量的緩和の枠組み修正という意味を確認したい。量的緩和の枠組み修正の中には、量的緩和の解除はもちろん入ると思うが、現在の当座預金残高目標を積極的に切り込んで減額していくということも、この枠組み修正に含まれると考えて良いか伺いたい。』

『(答)量的緩和の枠組みについては、繰り返して申し上げている通り2つある。1つは、所要準備額を大幅に上回る流動性を供給すること。これは、30〜35兆円程度というような具体的な数値とは切り離した概念である。もう1つは、消費者物価指数の前年比変化率が安定的にゼロ%以上になるまで続けるということである。この2つに修正を加える以前の段階は、枠組み修正とは言わない。』

『私が時々申し上げている、積極的に目標値を切り下げるとは、市場条件の変化に則して私どもが受身で何か調整する必要があるかどうかという問題と切り離して、目標値を積極的に切り込んでいくことがあるかどうか、ということを言っている。積極的に切り込んでいくというのは、枠組みの修正に着手したということになっていくだろうと思う。それ以前の段階で──5月に「なお書き」を修正したのもそうであるが──、市場の条件が変わったことに対して受身で現実的な対応をするというのは、基本的なスタンスの修正ではない。別の言い方をすれば、量的緩和の枠組みの修正ではないと明確に言える。そこはセパレートして考えて頂きたい。(以下長いけど同じ話なので割愛)』

要するに「市場の資金需要が乏しく、下限割れを延々と続いた場合の技術的対応はするかもしれませんよ」という事でしょう。会見の度に微妙に強調する部分が違っているようにも(その場にいないからわかんないけど)思えますが、どうも「技術的対応による当預目標引下げ」の願望は強いものと見ましたが
どうでしょうか?

ただ、最近あまり刺激的な言い方をしないのは、景気と物価の先行きに自信を持っているので、そんなに当預目標下げに拘泥しなくても自然と量的緩和政策の解除条件が満たされてくるでしょうって思っているんでしょうかね。


・郵政問題への質問で政治にコメント

会見要旨では最後から2番目の質疑応答部分に相当しますが、例によって本石町日記さんが取り上げておられますので、テキスト引用はせずに、当該エントリーのURLをご紹介しますのでそちらをお読みくださいませ(と手抜き)。

http://hongokucho.exblog.jp/3199278/

ここで『日本の民主政治のレベルを上げる方向』というところに対して、「では政策委員会での金融政策議論のレベルも一つ宜しく」などという野暮な突っ込みをしてはいけませんのでご注意ください(^^)。

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2005/07/28

○いい加減に黙れや「関係者」(怒)

昨日の金融政策決定会合は1日日程のくせに11時台の昼休みタイムに目出度く終了と言う事で予想通りの平穏無事会合。今回はとうとう結果発表に併せて「賛成多数」の票決内容が発表されることになって、今回の結果は「7対2」とのことで、まぁこれも予想通りでしょう。票決に関してはここのところ毎度毎度話題になり総裁記者会見で質問されるうえに、会合出席者の中で制度の趣旨を理解してないで会合の内容をペラペラ喋るアホウが1名いるのでそもそも記者会見の前に内容がリークされてしまうので、まぁある意味現状追認の発表という感じ。

まぁそこまでは良かったのですが、昨日の債券相場を動かすきっかけになったのはまたまた毎度お馴染みの「関係者」発言だったのが馬鹿馬鹿しい限りなのですよこれがまた。後場寄り付き直後の12時31分に日本語版ロイターで出てきたフラッシュが2発ありまして・・・・・

「踊り場脱却と言い切れないが、経済指標安定し改善の認識でほぼ一致」「秋から年末にCPIがプラス推移との見方が複数あった」

で、この2発目のフラッシュに相場は思いっきり反応する形になってしまい、中短期ゾーンと債券先物に売りが嵩む展開。時間軸短期化とか政策金利変更とかいう話題に弱い2年あたりの現物債のヘロヘロ振りが豪快でして、日本相互証券の債券引値の2年234回債が前日比1.5毛甘の0.095%と下落するわ、(引値ベースではそうなってませんが)3年ゾーンあたりの現物債が5年カレント物あたりと同じくらいの勢いで売られるわと激しく香ばしい相場展開。

まぁ週末のCPI発表を前にここのところ中短期ゾーンの現物債が重いという傾向が続いていたので、5年47回債の100円(=0.5%)は下げ止まりポイントになるのか???だったのですが、物の見事に後場寄り付き後の売りでぶち抜けてしまい、結局昨日は10年1.3%でいったん下げ止まったような形にはなりました。

いやまぁ決定会合結果にノーケアーだけど、週末の経済指標が気になりだす所に「CPIがプラス推移」という心理的インパクトのある発言が出たのは効きましたわなあ。物価や経済の先行きに日銀政策委員会が強気ですよってぇのは前回までの総裁記者会見や日銀の出している金融経済月報に粘着しているあたくしあんどあたくしの駄文を飽きもせず詠んで下さっておられます皆様にして見りゃ「そんなの前から判ってる事じゃん」というところではあるのですが、何事にも市場心理とかタイミングっちゅうもんがございまして、これが引け後の総裁記者会見で同じような発言がでたとしても、身構えているのでここまで動かなかったかも知れませんな。いやまじで。

何と昨日は午後1時にオファーされた手形オペ8000億円で何を考えたのか0.002%で全額落札した人が一人(じゃないかもしれないけど多分一人でしょ)おいででございまして、まぁ「関係者」発言によって時間軸の短期化を懸念した人がファンディングを確保しに行ったというお話になりますわな。何となくわざとらしいけど(^^)。これによって「金利先高感というか量的緩和政策の出口が意識されるとオペの札割れが回避できる」ということが実証されましたねよかったですねということにしておきましょう。

と、書いていて思い出したというか気が付いたのですが、本当に量的緩和政策の出口が意識されると、短い期間の資金供給オペは忌避されて、益々長い期間のオペが選好されますし、将来の金利感を反映した落札利回りが現出されますので、最近政策委員会で議論されている「オペ期間の短期化」というのは基本的に論議の方向が変ですわな。近い将来政策金利が上ると意識されればオペがどうなろうとも短期のイールドカーブは立ってくるものです。


で、話を戻しますとこの「関係者」。毎度毎度自分が決定会合の内容をリークするのが仕事と勘違いしているのか、票決に関して政策委員会がリリースしたもんだから「CPIがどうのこうの」とか言わずもがなの発言をして金利を見事に上げてくれましたが、金融政策決定会合の情報公開に関するポリシーに反する事夥しいお方でございまして、可及的速やかに行動を改善されたいものだと思う今日この頃でございます。

つーか福井総裁が決定会合の議長として一言警告すれば良いのではないかと。

総裁記者会見に関しては明日にでも。まぁ相変わらず強気だったようですが。


○中国人民元切り上げネタで「???」な論点

先週金曜日に人民銀行のリリースも見ないでテキトーな雑談をしましたが、どうも最初に思っていた(けど本当にそうなのかなぁと少々疑問でしたが)変動相場制への移行という感じではなく、「俺様がレートを決めるんじゃゴルァ」という「通貨バスケット(ただし内訳はブラックボックス)導入」のようでナンノコッチャという感じでございますわな。

で、バスケットの中身が何だかワケワカメなので中国人民銀行の保有する外貨準備の構成にJGBやらユーロやらが増えるかもしれませんなぁという思惑は無いではないんでしょうなぁという所なのですが、そんな話題の中で大変に「???」な視点による論考をしている人がおいでのようなので少々。

とある著名マーケットエコノミストのレポートで人民銀行が保有する外準(米債がやたら増えている)の調達金利である国内金利が高く、「JGBを購入すると、所要準備への支払利息や売出手形(介入資金の不胎化のために行う資金吸収なので日本で言えば外為特別会計の発行する為券に相当しますな。為念)の支払利息と逆ザヤになってしまう。(ので保有しにくい)」という指摘がございまして、どうも同じような意見をちらほら聞くわけでございまして、あたくしはどうも「???」なんですな。

いやまぁ運用機関なら「逆ザヤだから買いにくい」って理屈は判るのですが、中央銀行(というか政府部門というか)で保有する外準はそもそも運用するのが目的じゃあ無い筈なんで、その理屈はどうよってことになると思うんですが。それを言い出したら外準でJGB持つ人が皆無になっちゃいますが、そんな事はないでしょう。

物凄く勘違いしてるかもしれませんが、「低金利の外債を買う」→「高金利で国内調達」って流れなら、中央銀行(というか統合政府というか)部門が赤字でも、国内民間部門は黒字になるので無問題ではないか(かなりインチキくさい説明なのは自分でも承知してますが、上手く説明できない)という気もしますが。じゃあ黒字を出している日本の外為特会はどうよって言われるとあれはあれで無問題に思えるので激しく意味不明になってきましたすいませんすいません誰か教えて(滝汗)。

結局「中央銀行のバランスシートってどうよ」っていう以前いくつかの経済系ブログで話題になったお話に帰着しそうな気がする。

で、ちと話がずれますが、現在の中国人民銀行のように「自国通貨切り上げ防衛」のために介入するというのは、自国通貨売り+外貨買いであって、売る通貨は何とでもなる話であり、実はそんなに大した問題ではなく(自国通貨切り上げ防衛で過剰流動性を発生させてエライコッチャになった国もありましたからそう簡単な話ではないでしょうが)、本当にヤバイのは「自国通貨防衛」の為の介入じゃないかと存じます(外準がカラになったら終了確定なので)がどうなんでしょうかねぇ。


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2005/07/26

○明日の金融政策決定会合はとりあえずノーケアーで

明日は1日間の日程で金融政策決定会合が実施されます。先日は当預30兆円割れ問題に関してどうのこうのと申しあげましたが、何故か先週の短期国債買入と昨日の手形買入が札割れしなかったので、30兆円割れはそんなに大騒ぎする事もないのかも知れませんな。というかそもそも金利先高感が出てくると応札意欲が高まるので札割れが回避できるという皮肉な流れがありますけど。

とは言え、とりあえず今週末はこの調子だと30兆円割れの可能性もあるようですし、10打席連続札割れとかまぁ札割れ話は当然ながら議題に上ってくるでしょうから、その辺の議論がどうなるのかは会合後の福井総裁記者会見に注意しておく必要はあるでしょう。それから何故か意見が分裂(詳しい解説は本石町日記:http://hongokucho.exblog.jp/3156756/)していた当預目標引下げ派の2名の提案が変化するのかしないのか、多分そのまま分裂しっぱなしだと思いますが。

何も無しというのはもう当たり前なのでそちらに関してはノーケアーで良いようです。次回の決定会合(8月8〜9日、えっもう8月になるの?)時に当預残高が30兆円割りっぱなし状態とかになると緊張が走るかもしれませんので、どっちにしてもあまりのほほんとしているのは如何なものかとは思いますが。

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2005/07/21

お題「技術派ニヤリの展開か?」

○怪しげな中短期ゾーン

昨日の債券市場は、連休明けの火曜日と同様に先物が現物債の動きをあまり見ないで動くといった風情が漂っておりました。ただ、火曜日は何だかんだと言っても先物の日中値幅26銭などと動いておりましたが、昨日の値幅は15銭と見事にトホホな展開でした。

さてそんな中で昨日の相場で目に付いたのは、20年以降のゾーンについて弱めだったのと、中短期ゾーン、特に3年〜4年あたりがよわよわだったことです。20年ゾーンに関しては来週火曜日に入札を控えているのでヘッジがどうのこうのって話なのかも知れませんが、気になったのは3年ゾーンあたりが妙に弱いことでございます。

で、よくよく見るとユーロ円金先市場でも期先限月が妙に重くなっていたりする訳で(あまり真面目に見てないけど)、ちと怪しげな雰囲気を醸し出しているのですが、これは昨日の短期金融市場で起きていたことを反映している可能性がございます。


○3ヶ月FB落札価格3打席連続100円

昨日実施された3ヶ月もの政府短期証券の入札は毎度お馴染みの最低落札価格100円で按分比率が42%でした。これで3打席連続100円入札なのですが、按分がこの間に98%→68%→42%と低下しておりまして、益々短い期間のTBFB需給逼迫を感じさせる入札とあいなりました。

3ヶ月程度のTBFBの在庫逼迫→短期国債買入オペでの資金供給が難しくなる→当預残高目標維持マズーという話になりますので、そりゃどうよって連想が働く訳ですな。で、午後の定例オペレーションでちょっとサプライズな事が起きてしまったわけです。


○来年GW明けエンドの手形オペが札割れ

13時の定時オペでオファーされたのは全店方式の手形買入オペレーション。期間が7月22日〜来年5月10日という事で、半期末2回(本年9月末越えという話は意味があまり無いけど)と年末とGW越えという資金供給になります(勿論今回がGW越え初回)のでさすがに札が集まるでしょうって話だったのですが・・・・・

蓋を開けてみればオファー額8000億円に対して応札が7962億円と惜しくも札割れとなりました。昨日は国債発行日にあたるので資金不足気味で当座預金残高が前日の予想時点で30.2兆円(当日引け後に日銀から発表された速報は30.3兆円でしたが)と中々キビシイ状態でございましたので、双方相まって「8月初旬の資金不足期(15日に年金定時払いで不足は解消予定)は当預目標30兆円割れが続く懸念あり」という観測が益々強まって参りました。

今回の札割れはちとタチが悪いお話で、資金供給オペレーションを一応工夫して(って単に期間を延ばしているだけですが)実施しているのに札割れが起きているというのがややマズーな所であります。6月2日、3日の30兆円割れの場合は当時ドラめもんで散々っぱら罵倒しておりましたように供給オペレーションを工夫しない(というか逆方向に工夫するというか)で「ヤラセ」的に30兆円割れを起こしていたという感じでしたが、今回はガチで札割れ連発。札割れが連発すると資金供給オペレーションに応札する人もそれを前提に動くようになるので、益々札割れが恒常化するという悪循環になるのがまた香ばしいのですが。


○30兆円割れ中に8月の決定会合?

という訳で、今月は来週の27日と来月8〜9日に金融政策決定会合が実施されるのですが、この調子だと下手をすると当座預金残高が30兆円を割れ割れ状態継続のさなかで8月の決定会合が行われるという事になりそうで、「技術派」の皆さん大喜びの図という形になりそうでございます。

となりますと、「現状追認型の当預目標引下げ」という訳の判らん事態が生じる悪寒もございますな。昨日ご紹介した6月14〜15日の金融政策決定会合議事要旨に見られるように当座預金残高目標引下げの潜在的賛成者は提案者の2名以外にも最低1名恐らく2名いるという状況ですので、「現状札割れが続いており、30兆円割れ状態が継続的になっているので現状追認で当預目標下げ」というまぁ技術論的な話が浮上してきても何ら不思議ではないという悪寒。

ちなみに8月と言えばゼロ金利解除5周年記念日だったりしますが(笑)。


○ということで・・・・・

ユーロ円金先の期先が重くなっていたり、3年〜4年あたり(5年カレント物は0.5%というお買い上げポイントが近いので確りですが)の現物債が重いというのは、このあたりの観測も少し入って来たということなのかもしれませんわな。考えすぎかもしれないけど・・・・・

とりあえず今のところは1年までのオペは打ってくれるので、そのゾーンあたりまではそこそこ安心です。ただ、市場機能の回復がどうのこうのとか言い出して梯子を外すような懸念(普通そういう話にはならないのですが、何せ今の日銀は「何やってもおかしくない」という認識がありますからねぇ)も出てくるかもしれませんし(つーか当預目標下げたらその分オペ減るし)、まぁ短期金融市場のイールドカーブが立つ(それを時間軸の短期化という筈なのですが)と直撃弾を受けるのは2年〜3年あたりのゾーンになりますから、動きとしては自然といえば自然。そんなに大きい動きにはなってませんが、この動きが継続するのかどうかは気になりますわな。

CPIがプラスになってくると益々香ばしい展開になりそうな悪寒。。。。


○さて政府はどうするよ?

以下与太話なので話半分でお願いします(^^)。

とまぁそうなってますので、政府におかれましては当預目標維持に向けて何かぶち込むというのは如何ではないかと存じます(嘘)。で、超閑散な国債市場を見ながらつらつら下らん対策を考えるあたくし(^^)。

一番効果てきめんなのは「円売りドル買い介入」ですが(^^)、ちょうど中国人民元の切り上げがどうのこうのと微妙に揉めている昨今なので為替操作をおっぱじめるのは明らかに間が悪いので却下(笑)。で、次に考え付くのは「やっぱり決済性預金の全額保護はしないで上限設定するね(はぁと)」という恐怖梯子外し攻撃。どうせ信用不安は払拭されているそうですので(笑)、アフォな国庫負担の元になりそうな施策は排除するに如くは無し(かなりギャグで書いてます)ですわな。

ま、日銀も資金供給オペで漫然と同じ額を実施するんじゃ無くて、一回の額を減らして回数を増やすとか工夫の余地はあるでしょって話なんですが、短期国債買入オペの銘柄選定基準をいじってきたように、どうもあまり「何としてでも供給」という熱意は感じられなかったりする感があるのもまた事実ではございますが。

という訳で、ノーケアーで良かったはずの今月末と8月の決定会合も注目しないといけなくなってきたかも知れませんね。どうなる事やら・・・・・

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2005/07/20

お題「会議は踊りっぱなしのようですが」

昨日は知人に久々に会い、今朝は少々マーライオン(にはなってませんけど^^)。よって今朝はちと簡単にさせていただきまして、明日までネタを引っ張ると言う作戦(でもなんでもない)に出る訳ですが。

6月14日〜15日の金融政策決定会合議事要旨が昨日公表されました。

http://www.boj.or.jp/seisaku/pb/g050615.htm

場中に発表された割には相場にインパクトが無かったのは、そもそも昨日の債券市場そのものが動意が碌に無かった(上る時も下がるときも先物がフラフラ動いただけで現物債の売買を伴っていたとは思えない動きでした)こともありますが、この頃絶賛話題沸騰だった「当座預金残高目標引下げ論」がその後の武藤副総裁や福井総裁の発言で一旦冷やされた(先日の決定会合での福井総裁記者会見でなお強調)ために、「まぁ決着済みでしょ」という認識になっている事も大きいのでしょうな。

でも、こ〜ゆ〜ノーケアーの時も注意してみておくのがBOJストーじゃなかったヲチャーのあたくしクオリティなのでありました(^^)。とりあえず相変わらず論議が続く「量的緩和政策の弊害論」について審議委員の皆様どうお考えかという所を今朝はチェックしておきませう。


○政策効果を弊害として捉える人3名也

『また、量的緩和政策のもとでの資金供給が市場機能へ及ぼす影響についても議論があった。』

例によって『IV.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』の部分から引用しますが、本日は何故かこのコーナーの一番最後のあたりからスタートします。

『ある委員は、資金供給オペレーション期間の長期化により、例えば短期国債の金利がほぼ一様にゼロに貼り付くなど、タイム・バリューのない異常な金利形成になっていると述べた。』

タイムバリューなどという小難しい言葉が出てきているところを見ると水野審議委員のご発言ではないかと推測されますな。こちらの先生は何せ「今までの政策は政策として、ゼロベースで新たに政策のあるべき姿を考える」というちゃぶ台ひっくり返しモードも辞さず的なお方なんで、金融政策の継続性に関してきゃあきゃあ言うあたくしのような者とは話が根本的にずれちゃいますけど・・・・・。この先にご紹介されているように「そりゃ量的緩和政策の政策効果じゃねぇの」って話ではありますが、ゼロベースで考えりゃ弊害と見えても仕方なしと言ったところですか。

『また、一人の委員は、2006年度にかけて量的緩和政策の枠組みを変更する可能性が徐々に高まると想定されるもとで、長めの資金供給オペレーションにより金利を無理に押し下げてしまうと、金利に関する市場の情報発信機能を損なうことになるため、オペレーション期間の長期化は避けるべきであると指摘した。別の委員は、同様の観点から、オペレーション期間の短期化を進めるべきとの見解を示した。』

同じような理屈。サラリーマン効果(勝手に考えた造語じゃが読者様には意味通じますよね^^)のせいか年がら年中オーバーシュートしまくる市場の情報発信機能ってそんなにエライ物なのか甚だ疑問を感じたりるのでございますが、まぁそんなに短期金融市場の市場機能がどうのこうのって大騒ぎするんかいなとも思いますな。

で、上記引用にもありますように、この「市場機能封殺論」というのを唱えているのが合計で3名いるというお話になりますして、9名中3名って言いましても正副総裁はあまり積極的に会議をリードする訳にも行かないでしょうから、よくよく考えてみると6名中3名という見方も出来る訳でして、目先何となく当預目標引下げ話は封印された格好ですが、このあたりの展開を見ると「札割れ」が続いた場合に技術論で蠢動が起きるリスクは考えておいた方が良いでしょうな。


○市場機能封殺論に対する他の意見

で、この続き。

『これに対して、複数の委員は、市場機能の尊重は中央銀行にとって極めて重要なテーマであるが、潤沢な資金供給がイールドカーブを押し下げる効果を持ち得ることは量的緩和政策の宿命でもあると指摘した。』

ま、宿命ってのも大げさですが、本来の政策効果でしょ。

『別の一人の委員は、量的緩和政策は、当初から市場機能への影響と政策目的達成との間のバランスを保ちつつ進められてきた政策であるとした上で、経済金融情勢が変化してきている中で、当座預金残高目標が自己目的化し、市場機能に過度の悪影響を及ぼすことは出来る限り避けるべきであると述べた。』

これが微妙な発言でして、技術論というよりは相対性緩和論の香りもしてくるものでございますわな。「当座預金残高目標が自己目的化」っていうフレーズはどこかで見た気がするのですが、アーカイブ調べを手抜きの介により明日にでも追加しておきます。上記の発言は先ほどからご紹介している流れでの表現なので「別の一人」っていうのは「市場機能封殺論」を唱える3名とは違うような気もしますし、単に水野審議委員あるいは福間審議委員の発言を「別の一人」って言ってるのかも。少々謎ですが、これが4人目だとすると、どうも当預目標引下げは予断を許さずって所かも。


○当預目標引下げ提案に対する意見

当預目標引下げはご案内のように福間委員(27〜32兆円)と水野委員(25〜30兆円)から提案があったわけですが、この辺りに関して。

福間委員と水野委員の意見はこんな感じです。

福間さん:『一人の委員は、金融環境が変化しているにもかかわらず巨額の当座預金残高を維持することは市場機能の回復を妨げるほか、金融規律の低下に繋がるリスクがあるなどデメリットの方が大きいとして、当座預金残高目標を「27〜32兆円程度」に減額し、「なお書き」を前回決定会合での修正前の文言に戻すことが適当であるとの見解を示した。』

水野さん:『また、もう一人の委員は、当座預金残高をある程度引き下げていかないと短期金融市場の機能は回復しないと主張し、当座預金残高目標を「25〜30兆円程度」に減額することが適当であると述べた。』

はぁはぁそうですか。で、他の人の意見。

『多くの委員は、景気が「踊り場」にある中で、金融市場調節方針の変更を行うと、日本銀行の金融緩和スタンスが後退したと誤解されるリスクがあるとの認識を示した。』

ということで、どんなことを言ってるのかと思えばこんな感じ。

『一人の委員は、デフレ克服にマイナスの影響が出ないことへの理解を得ながら、慎重に当座預金残高目標を減額していくことは将来の選択肢の一つと指摘しつつも、景気が「踊り場」にある中では、現状の金融市場調節方針の継続が適当であると述べた。』

こりゃ須田さんっぽいですな。

『ある委員は、量的緩和政策の効果の中には家計・企業の期待に働きかける効果があると思うが、金融市場調節方針の修正にあたっては、こうした期待に働きかける効果を損なうことのないよう、極めて慎重な配慮が必要であるとの認識を示した。』

『別の一人の委員は、当座預金残高目標を減額することは、量的緩和政策の時間軸効果を減殺してしまうリスクがあり、現在の目標水準を維持することは、デフレ克服を確かなものとし、市場機能の回復を可能とする最短の途であると述べた。』

まぁ最後の意見が現在の金融政策の枠組みから行くと最も正論ですわなぁって思いますが、植田審議委員の残した遺産は継承されているようで(本当は全員継承して欲しいものですが)誠に結構でございます。


○なお書きの扱いについて、そして水野審議委員少数意見認定の件

何故か議論をしています。

『前回決定会合で修正した「なお書き」の扱いについて、一人の委員は、金融機関の流動性需要の減少やそのもとでの「札割れ」の頻発といった基本的な構図に変化がないもとで、今後様々な要因によって、金融機関の資金需要が減少するような場合には、市場機能への影響に配慮しつつ、最大限の資金供給努力を行っても、当座預金残高目標の維持が難しくなる場合も考えられることから、「なお書き」を維持することが適当であると述べた。』

『また、何人かの委員も、「なお書き」を修正した趣旨については、市場でほぼ正確に理解されてきており、「なお書き」を変更する必要はないとの見解を述べた。』

『この間、一人の委員は、前回修正した「なお書き」を維持することには敢えて反対するものではないが、発動基準や配慮すべき市場機能の内容について、必ずしも明確でない面もあることから、今後とも議論を行いつつ、残高目標達成に向けてのオペレーション上の努力を一貫して続けていくことが重要であると述べた。』

この「一人の委員」が誰なのかは判りませんが、オペレーション上の努力をしろってのはあたくしも同意でございます。この議論の中で微苦笑したのはこの先にあるくだり。

『複数の委員は、金利の正常化に向けた第一歩というような今後の政策と結びつけた形で解釈されることがないよう、対外的な情報発信には正確を期す必要があると付け加えた。』

水野審議委員の意見は少数意見ですよってメッセージが発信された(まぁ票決見れば既に確定の赤ランプですけど)ということでございまして、まぁやっと正式(?)に晴れて少数意見認定されましたので、後は何言っても「ふ〜ん」としか市場は反応しなくなるでしょうなぁという感じ。他の審議委員が水野審議委員に同調するようになってくれば話は別ですが、目先は水野さんの発言で無駄に相場が撹乱される事も無いでしょうな。

ちなみに財務省さまにおかれましてはこんな事を仰せでございました。

『また、前回会合においては、技術的な観点から「なお書き」を付記することが決定されたが、これについてもその趣旨に沿った適切な運用を図って頂きたいと考えている。』

若干こめかみのあたりがピクピクいってる感じもしますが(^^)。


○やや余談ですが:なぜ「8対1」??

話はやや余談ですが、お笑いだなぁと思うのは当座預金残高目標引下げを提案した2名のそれぞれの議案が何故か両方とも「8対1」で否決されていること。あたくしの同僚なんぞはそのフラッシュを見た瞬間に爆笑の発作を起こしていましたが(^^)、そもそもこの引下げの数字そのものに科学的根拠(笑)があるとも思えず、別に二人でわざわざ別の提案をしておまけに相手の意見に反対票を投じる事もあるまいと思うのはあたくし達だけではありますまいて(^^)。

という訳で本日の議事要旨ウォッチは例によって金融政策運営に関する部分だけご紹介致しました。景気に関する部分も見たほうがよさげではありますが、まぁその部分を見るなら判断内容を前進させて月報の表現を随所でいじってきた7月の議事要旨のほうが注目でしょうな。

#結局途中で復活していつものペースになっていました(汗)

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2005/07/15

お題「総裁記者会見(続き)」

会見要旨が日銀Webにアップされましたので昨日の続きをば。

http://www.boj.or.jp/press/05/kk0507a.htm

○景気に関する質問が目立つ会見でした

今回の記者会見要旨を読みますと、(昨日ご紹介した)金融経済月報において景気に関る部分の文章構成を組み替えて、強気っぽい書き方が増えたり、先行きの懸念材料の部分を削除したりと「強気トーン」が目立つものだった事もありまして、景気に関する質問がうじゃうじゃ。全部引用していると例によって記者会見要旨の3分の2くらいを使ってしまいますんで。

会見の冒頭で述べた景気に関する現状認識と先行き見通し&踊り場脱却云々の部分。

『若干敷衍すると、日本の景気は、IT関連分野における調整の動きを伴いつつも、回復を続けている。今申し上げた通り、輸出は伸び悩んでいるが、IT関連分野の在庫調整が進むもとで、生産は緩やかな増加傾向にある。企業収益が高水準を続ける中、企業の景況感にも再び改善がみられ──これは短観が示している通りである──、設備投資は増加し続けている。そして、雇用面の改善や賃金の下げ止まりから雇用者所得は緩やかながらも増加しており、そのもとで個人消費は底堅く推移している。』

『先行きについても、海外経済の拡大が続くもと、輸出の伸びが次第に高まっていくとみられるほか、国内民間需要も、高水準の企業収益や雇用者所得の緩やかな増加を背景に引き続き増加していく可能性が高い。こうしたことから、緩やかながらも息の長い景気回復が続くと判断している。』

『踊り場脱却に関するお尋ねであるが、わが国の景気は踊り場を脱却したとまで明確に言い切れないものの、脱却しつつあると判断して良いのではないかと思う。IT関連分野の調整は、なお若干尾を引いているが、企業部門の状況の良さが家計部門に次第に浸透してきており、景気回復が当初のシナリオよりは少し広がりを持って動いて来ている。そこまで含めて私どもは踊り場を脱却しつつあると判断している。』

ということで、景気に関しては昨日ご紹介したように「内需が予想より好調で、外需の伸び悩みをカバーという好循環」になっているというお話で、その結果として好調な企業業績が家計部門に浸透するという昔の「ダム論」的な表現に自信を深めているという所でしょう。


○物価に関して

『消費者物価指数については、本日の中間評価においても、2005年度中は前年比ゼロ近傍、2006年度は前年比プラスに転じるとの見通しであり、前回の展望レポートの見通しに概ね沿って推移すると予想している。私どもは、本年末から来年初にかけて、米価格の下落や電気・電話料金引き下げといった特殊要因の影響が順次消えていく過程で、消費者物価指数の前年比がプラスに転じる可能性が少しずつ見えて来ていると思っている。』

『もっとも、こうした見通しには、原油価格の動向をはじめとして、様々な不確定要因、上振れ・下振れ要因があり、今の段階では幅をもって見ていく必要がある。なお、物価情勢の基本的な判断については、消費者物価指数の動きだけでなく、他の物価指標の動き、その背後にある経済の動向等を総合的に検討していく必要があるという点は、これまでも繰り返し申し上げている通りである。今後ともそうした立場に立って、物価動向を丹念に点検して行きたいと思っている。』

で、原油価格が高止まりしてCPIがプラス転換した場合の「経済と物価の関係」に関する質問に関してはこういう風に答えております。

『いずれにせよ、仮に原油価格が比較的高い水準に止まり、人々の事前の予想よりも高止まりするという動きをする場合には、程度の差はあれ、物価には上昇要因、そして経済にとってはマイナス要因となる。従って、その場合には、いわゆるデフレ経済からの脱却についての判断は非常に複雑なことになってくると思う。』

CPIプラス転換に関しても自信を持っているということのようですが、原油価格要因で物価が上昇した時点での景気動向に関しても注意しておきますよって言っており、CPIの先行き見通し強気発言が過度にマーケットに思惑を呼ばないように気を使っていると見ました。


○やはり家計部門への波及を重視していますな

先ほどと同じ質疑応答で家計部門への景気回復効果波及が物価に及ぼす影響との関係を述べてます。

『一方、景気については「踊り場を脱却しつつある」というように申し上げたが、景気が踊り場を脱却しそれが順調に推移していく中で、家計部門への好影響が順調に進むということであれば、それはユニット・レーバー・コスト(単位当りの労働コスト)の上昇というかたちで、物価面に徐々に浸透してくる可能性がある。この場合は、景気の堅調さと物価の上昇とが両立してくるケースであるから、デフレ経済からの脱却という点では、原油価格の場合よりは方向性が揃っているので判断がしやすいと思う。』

『しかし、今後は原油価格の要因、ユニット・レーバー・コストを通ずる要因、両方が複雑に絡み合って出てくると思うので、良く噛み分けながら正確な判断が必要だということである。』

強気コメントをしながらも、余裕綽々といった雰囲気が感じられますわな。


○「余裕を持った対応」の大切さ

てな訳で、昨日も申しあげたように「余裕」が見られる総裁記者会見。

景気の先行きに関して自信がより強くなったので「余裕をもって対応」できるようになったという事のようで、誠に結構なお話ではございますが、裏を返せばちょっと減速するとまた「余裕が無くなる」のではないかという悪寒もする訳ですが、まぁこの調子で落ち着いて欲しいものです。

つーかこうやって総裁が景気の先行きに自信をもって落ち着いた対応をしていれば、マーケットも「なるほど景気回復ですかそうですか」という反応を示すというもの(あまりにも根拠レスな自信だったらダメでしょうが^^)でございます。ここもとの当座預金残高目標引下げ論議大迷走状態の時は「今の機会に当座預金残高目標を引き下げて置かないと、目標引下げのチャンスを失うかもしれない」というような日銀の「焦り」のようなものが感じ取られるというものでして、その辺の微妙な焦りを感じた市場が、10年金利1.2%割れを演出したなどというのはちょっとマーケットを褒めすぎのような気もしますが(苦笑)。

勝手な推測になりますが、景気が回復傾向→財務省の財政再建路線が炸裂→景気が頭打ち→量的緩和継続→日銀マズーという流れになる前に当預目標を下げておきたいっていう思惑も頭をかすめたのかも知れませんが、まぁ兎も角4月くらいからおっぱじまった「当座預金残高目標引下げ騒動」が日銀の「余裕の復活」で収まったというのは結構なことであります。


○ということで、もう一つのポイントだった今後の金融政策に関る総裁コメント

昨日引用した部分の再掲になりますが、ここの質疑はポイントですんで質問も含めて引用します。

『(問)総裁が景気認識で踊り場を脱却しつつあるとおっしゃった一方で、当座預金残高目標を変更しなかったことは、景気が踊り場から完全に脱却したことを確認しないと当座預金残高の目標を引き下げないという理解で良いのか、あるいは違うのかを伺いたい。』

『(答)これも繰り返しお答えしてきたことをもう一度きちんと申し上げる。量的緩和の枠組みの修正という意味において、当座預金残高の目標額を日本銀行として積極的に切り込んでいくというアプローチは、消費者物価指数が安定的にゼロ%以上になるまでは行わない。つまり、3条件を満たしたと政策委員会が判断するまでは行わない。』

質問では「景気認識の上方修正と当座預金残高目標減額をリンクさせるか否か」という意味も込められていると思いますが、この答えによりますと、景気認識そのものだけでの当座預金残高目標減額は行わない(量的緩和政策解除の条件が整えば話は別)ということになる訳ですわな。つまり「解除する時に金利ターゲットに切り替えます」って話でして、まぁ一気に当預残を30兆円減らすのは技術的に問題があるでしょうから半月とか1ヶ月とかかけて減らすんでしょうが、とりあえずそういう対応を取る所存ってことでしょ。その続き。

『もう1つは、先般「なお書き」をつけたように、枠組み修正ということとは全然別に、金融市場の状況の変化に即して現実的な金融政策としての何がしかの調整が必要かどうか。この点については前々回「なお書き」を修正することによって、この金融市場における流動性需要の大きな波という厳しい局面に対応し得るようになった。今後の市場状況の変化と照らし合わせながら、よく観察していけば良い。今のところ、ここで何らかの予定的行動を隠し持っているということはない。今後、全くオープンに判断していけば良いと思っている。』

別の質疑ではこういう話も。

『(問)先程の質問で当座預金残高目標を切り込んでいくといったお答えがあったが、流動性の需要が非常に厳しい状況には、現実的な政策で対応すると言われたということで良いか。』

『(答)対処していくと申し上げたわけではない。そこは全くオープンである。金融システムの安定度合いが強まるにつれて、金融市場の中の反応がどのように変わるか、それは今までのところ「なお書き」措置で十分だということで対処したわけである。今後、市場がどのような反応をさらに示してくるかということによって判断していかなければならない。今のところ「そうしなければならない」という感じで見ているわけではない。 なお、量的緩和の枠組みそのものを修正するということとは別の話としてお答えしたところである。』

つー事で、「技術的対応」に関してはなお書き修正を行ったので当面の対応は済んでいますという立場。まぁ確かに先々の「更なる技術的対応」は排除してませんので、また「やらせ割り込み」でもやらかす可能性は否定できませんが、まぁとりあえず余計な騒ぎを起こさないようにしましょうって事かと。



○「市場との対話」を阻害するもの

えーっとですな。そんな記者会見を受けて某恐怖金融新聞さまにおかれましてはその1面トップ記事の見出しに「秋にも当預残高目標引下げ議論再燃も」というものを掲載して、「次回の展望レポートで景気に関してより判断を前進させて、当座預金残高目標の引下げ議論が再燃するでしょう」みたいな見通し記事を書いておられたりする訳ですが、あんたアフォですかと小一時間ですわな。

だいたい金融政策に関して折角日銀が色々アナウンスしているのに、何故か予断をもって解釈してるんだか何だか知りませんが、素直じゃない珍解釈をおっぱじめて電波な解説を流しだすというのが時折見られるこの新聞社。困ったことに経済のクォリティペーパーなもんで、偉い人とかが見ちゃいまして、ここの言説に思いっきり世の中が誘導されやすいのは悲しいかな現実としてある訳
でございます。

てな訳で、どうも折角の「市場の対話」に関してノイズ発生あるいは増幅装置としての役割を果たしているのではないかと思われるこの新聞社はもうちょっと勉強して欲しいものです。

あ、そうしたらドラめもんの存在意義(んなもんあるかどうか知らんが)無くなるか(爆)

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2005/07/14

お題「景気判断強気の金融経済月報と総裁記者会見」

まずは金融経済月報から。

http://www.boj.or.jp/seisaku/05/pb/gp0507.htm

○月報を見たあたくしの総体的印象

景気に関して強気のトーンになっております。今回は「基調判断」を堂々上方修正しているのと、IT分野の在庫調整と原油価格に関する「先行き懸念」部分が削除されたのが目立ちます。

また、読者様におかれましてはご存知の通り、あたしゃ毎回毎回ドキュメントチェックのように月報の前月比較をおこなって行っておりますが、今月の月報は景気に関する書き方が前月までと言い回しと言いますか、書き方の順序と申しますか、まぁそのあたりを変えている箇所が多くなってます。表現の仕方を変えたというのを勝手に深読みしますと、景気認識と景気先行き見通しについてより強気に設定してきた(うーん、何か上手く表現できないけど言いたいこと伝わりますかねぇ・・・)となるのですが、どうでしょ?


○景気判断を前進、IT調整の先行きに楽観的

上で申しあげたように、いつもの前月比較をしようとすると基本的見解の3分の2位を全部引用する事になってしまいますので、あたくしの勝手な判断でポイントと思われる部分のみ前月比較。

・現状の景気判断(最初の一文)

(7月)『わが国の景気は、IT関連分野における調整の動きを伴いつつも、回復を続けている。』
(6月)『わが国の景気は、IT関連分野における調整の動きを伴いつつも、基調としては回復を続けている。』

「基調としては」というヘッジクローズが外れていますな。


・IT調整と原油価格の「なお書き」削除(^^)

今まで入っていた「景気先行きの懸念材料」に関してIT調整と原油価格動向について言及していた「なお書き」が今月削除されました。前月まで入っていた「なお書き」を念の為。

(6月まで、7月に削除)『なお、IT関連需要や原油価格の動向と、その内外経済への影響については、引き続き留意する必要がある。』

先行き懸念材料としてみていた部分を削除。何か鉱工業生産統計とか原油市況とか見てると今この文言を敢えて外す意味がイマイチ判らんのですが、まぁ日銀としては総裁記者会見で言及されていましたが、個人消費や設備投資などの好調さがあるので、こっちの悪影響は薄れてきましたってイメージなんでしょうかね。


・なぜか「札割れ」話

あんまり読まない金融面の現状判断部分に何故かこの一節。

(7月新規登場)『金融市場の動きをみると、日本銀行による潤沢な資金供給のもとで、資金供給オペレーションに対する「札割れ」が続くなど、短期金融市場ではきわめて緩和的な状況が続いている。』

総裁記者会見によりますと(ソースは時事メイン昨日17:58のニュース)『「なお書き」を付け加えて(中略)金融調節をしているのだからその後の市場状況を述べる場合に札割れ現象に全く触れないでいくということはあまり正直ではないだろう』というコメントで深読み無用だそうで。

記者会見で総裁が同時に「コミットメント3条件達成前の当預目標引下げを否定」しましたので、変な憶測は発生しないと思います。つーかその言及が無い状態でこの一節を入れるとちょっとややこしいことになったかも知れませんな。


ま、総じて強気のトーンという事で。


○総裁記者会見:景気には強気、政策スタンスは緩和維持の腰が強くなる

以下のソースは昨日18時22分のブルームバーグニュース。会見要旨は本日日銀Webにアップされると存じます。

・景気は踊り場を脱したんでしょうなぁという認識

『まだ景気が踊り場を脱却したとまで明確に言い切れないところが残っているが、脱却しつつあると判断できるのではないか。IT関連分野の調整がなお若干尾を引いているが、企業部門の状況の良さが家計部門に次第に浸透して、景気回復が当初のシナリオより少し幅を持って動いている、広がりを持って動いている。そこまで含めて、われわれは踊り場を脱却しつつあると判断している。』

コメント付け加える必要もない強気トーン。


・コミットメント3条件達成前の当座預金残高目標引下げ否定

『これまで繰り返してお答えしたことをもう1度きちんと申しあげると、量的緩和の枠組みの修正という意味で、当座預金残高の目標額を日銀として積極的に切り込んでいく、というふうなアプローチは、消費者物価指数が安定的にゼロ%以上になるまではしない、つまり、3条件を満たしたと政策委員会が判断するまではしない、ということだ』

『もう1つは、先般、なお書きを付けたように、枠組み修正ということとは全然別に、金融市場の状況の変化に即して、現実的な金融政策としては何がしかのアジャストメントがいるかどうか、この点については、なお書きを修正することによって、金融市場における流動性需要の大きな波という厳しい局面には対応し得るようになったので、この状況で、今後の市場の動向、推移というか、市場状況の変化と照らし合わせながら、よく観察していけばよい。』

『今のところ、ここで何らかの予定的行動を隠し持っているということはない。まったくオープンに今後判断していけばよい。こういうふうに思っている。』

じゃぁ「技術的に」目標を下げないのかという点は巧みに回避してますが、まぁこの部分を市場参加者がフツーに読みますと、上記小見出しのような解釈になるのではないかと思いますんで、市場は「やっと落ち着きましたか」とホッとしている(除く短資会社)かと存じます。


景気判断を前進させるとこれまでの場合は大はしゃぎモードになって当預目標引下げがどうのこうのとかもっと昔は緩和解除をどうするのか何て話で盛り上がるという悪癖がありましたが、今般のなお書き修正騒動が相当堪えた(かどうかは知りませんが)のか、今回はヒジョーに「落ち着いた対応」になっておりまして、誠に結構でございます(^^)。というか本来こうあるべきであって(だいたいまた書きだって本来当預残高目標に「程度」って入っていたんだからイラネェ筈だったんですけれども)、やっと本来の落ち着きを取り戻したというのが正しい。

まぁそれだけ先行きの景気に対して強気なんで、「果報(=量的緩和解除の条件が満たされる)は寝て待て」モードになってきたんだと見るのが妥当な所でしょう。

記者会見はもうちょっと見るところがありそうなのでまた明日。


○おまけ:また「関係者」か!

今回の決定会合でも総裁記者会見前に「票決が7対2」というのが「関係者」のコメントとして流れておりました。今回は仕方が無いので総裁も記者会見で票決について答えていたようですが、今の枠組みでは議事要旨発表時点でないと票決が何対何だったか公表しないことになっていたはずでして、まぁ相変わらず意識の低い「関係者」だなぁと思う訳です。ちなみに出席者はここの下の方に書いてあります。→http://www.boj.or.jp/seisaku/05/pb/k050713_f.htm

ま、言いそうな人は一人しかいませんわな。お前は黙ってろと。

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2005/07/12

まぁあまり大ネタはございませんですな。(無いわけでも無いのですが、下準備が必要っぽいネタになりそうですので・・・・)

○金融政策決定会合ですが

今日から金融政策決定会合ですが、金融経済月報での景況感判断がどうなるかってのが注目材料でしょうな。ここもとの経済指標を見るとどうも「IT部門の在庫調整」がイマイチなのではないかという気もしますが、恐らく短観の数字が良いほうに反応した月報になるでしょうなぁと思われます。

先日短観をほんのちょっとだけご紹介した際に申しあげましたが、金融機関の業況判断DIって物凄く良い状態でして、金利市場の参加者がだいたい金融機関の人間であることを踏まえますと、市場の雰囲気的にはやっぱ「景気は良いでしょ」って話になり易い傾向にあると思うんですよあたしゃ。で、気分的に好調の業界の人々が集う雰囲気がどうしても日銀に伝染しやすくなってその結果が日銀の強気の景況感に反映しとりゃせんかっていうのは考えすぎなのかもしれませんが、素朴な疑問として思うのでありました。

個人的には回復感を全然実感してない負け組君ですので(自爆)、景気が良い良いという話にはどうも???なんですけどね。個別銘柄は賑わっても平均株価は上らないってイメージですなぁ。


○ブラックアウトに関して

先日のドラめもんで月刊現代の記事をご紹介しましたが、その最後のほうでブラックアウトがどうのこうのという話をしたら、本石町日記さんがブログで解説をしてくれました。(http://hongokucho.exblog.jp/3090355)で、まぁそれを読んでね(はぁと)で話は終了してしまうのですが、要するにブラックアウト期間って言ってるのは日銀内での自主ルールであって、そもそも官庁と国会は対象外。あんなに国会に引っ張り出されて金融政策についてああだこうだと喋らされているのだからブラックアウト期間もあったあもんじゃねぇなと思ってましたが、なるほどそういうものでございましたか。

まぁ政策決定に関して日銀の独立性がどうのこうのって話は確かにあるのですが、月刊現代の当該記事にある「今回のケースが問題なのは、決定会合直前の「ブラックアウト」期間中のトップ会談が、「一般的な意見交換」と言えるかどうか疑問が残るからだ。」という記事は少々ピンボケですわなぁという所で。惜しいですな。

つーか政策遂行に関して政府と日銀が打ち合わせをするのは普通だと思いますが、月刊現代の記事にもありますように「日銀が財務省の意向に従属するかのように、具体的な政策手段を含めて財務省の言うとおりに動くとしたら問題だ。「政策の方向は政府と一致しても、具体的な政策手段は日銀に委ねる」という日銀の独立性は、歴史から生まれた知恵のようなものだ。日銀が政府の財布にならないようにするための担保である。」ってところが問題のポイントですわな。上記リンクで本石町日記氏も指摘しておられますが。

じゃあ決定会合の前々日にどこぞの新聞がリークするのはありゃ何なのよって所ではございますが(笑)。

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2005/07/06

○月刊現代の記事

bewaadさんの所で紹介(http://bewaad.com/20050705.html)されていたので珍しくも購入して読んでみました。ジャーナリストの桜井慶二さんが書いたもので、「日銀激震、福井総裁「恥辱の大敗北」−独立性はいまや風前の灯火」って記事です。うーん、720円かぁ・・・・

まぁ内容はといいますと、先日の「なおがき修正」の内幕記事という感じで、当預目標の扱いについてタカ派とハト派の間の落とし所として武藤副総裁が「なお書き修正」の線をまとめたものの、福井総裁が谷垣財務大臣に「なおがき修正は政策転換」を認めさせようとしたが敗北しましたって話。

どうも読んでいると「日銀に介入した財務省はケシカラン」という論調にも見えるのですが、どうも「???」と思うのは、結論部分にあるところ。

『今回のケースが問題なのは、決定会合直前の「ブラックアウト」期間中のトップ会談(注:記事によると武藤さんや福井さんが谷垣さんと相談したということになっています)が「一般的な意見交換」と言えるかどうか疑問が残るからだ。』

いやまぁ決定会合が形骸化するのはケシカランというのは判りますが、ブラックアウトがどうのこうのって話をしだすと、ブラックアウト期間中に日銀総裁を委員会質疑に呼び出して金融政策に関して話をさせる国会はどうなってるのよって思いますが。

まぁそんな突っ込みはともかく、福井総裁がタカ派ってのは過去の言動を追っかけていると、別に内幕的な話を持ち出すまでもなく「まぁそうでしょうなぁ」というところではないかとは存じます。内輪で「早く、金利を復活したい」と言っているという記事中のお話はちとその文脈によりけりだと思いますがね(「早くデフレ脱却して欲しい」って意味なのかも知れませんし)。

記事最後の「ある日銀ウォッチャー」のコメントが妙に変なのも「??」でございます。同じく記事より。

『「もともと日銀内でも、デフレが続いているのに、どうして引き締めができるのか、という疑問が出ていた。それが有力な勢力にならず、結局、タカ派は財務省に挑戦して一敗地にまみれた格好です。今回の措置は引き締めではないことになっているから”敗北”がはっきり見えないが、ホンネの戦いでは完全に負けている。一方、市場はとっくに日銀のホンネを見透かしている。これでは日銀への信頼が高まるはずもありません。」』

えーっと、第一文と第二文のつながり方が妙。日銀内では結局引き締め派が優性だったって言いたいのでしょうか?それはどうかなぁと申しますか、そもそも福井総裁トップダウン型なので日銀内がどうのこうのという話も変なんですが。で、今回の措置が引き締めでないことになっているから「敗北」というのも訳判らん。措置が引き締めじゃないけど引き締めの第一歩というホンネがあるのであれば「ホンネの戦い」は勝利ではないかと存じますが。。。。

まぁご興味のある方は月刊現代8月号126〜132ページをご覧下さい。




2005/06/23

○ま〜突っ込みどころはいくらでもありますが

金融政策決定会合議事要旨に関しては色々と「それはどうよ」って話をしだすと延々と出来ることは出来るのですけれども、物凄くざっくりと集約しちゃうと・・・・

1.自分たちが実施した政策の結果として生じた事象を殊更「弊害」呼ばわりするのは如何なものか。
2.金融政策を「ゼロベースから見直す」のは一つの考え方だけど、「期待に働きかける政策」である「時間軸」を実施してる時にそりゃねぇんじゃないかね。
3.量的緩和政策における当座預金の「量」の効果で意見が全然集約できてないのに「量」を減らすという方向に走るのは、景気がシナリオ通りにいかなかった場合のリスクがでかかろう。

てなことですかね。日銀が景気に対して強気なのは良く判るんですけど、別に今「インフレ警戒」をする必要はなかろうって思う訳で。

どうも不動産証券化絡みで証券化商品の価格が美しく上昇したり、関連貸出が素晴らしく伸びたりというような香ばしい動きは確かにありまして、その辺を日銀が懸念しているというのは何となく判るのですが、そーゆー局地的な問題に関して経済活動全般に網をかける結果になる金融政策で対応しようとするのはちと問題があるのでは無かろうかと存じますが。局地的問題に関しては局地的対応で・・・・

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2005/06/20

お題「総裁記者会見続き」

今やっている某経済ニュース番組のコメンテーターさまは米国債券市場について、「原油価格上昇→消費減退→債券買い」だが、「原油価格下落→景気減速→債券買い」だと堂々コメント。ギャグというか債券市場の地合いが良いという事を例えるために言ってるのかと思えばどうも大真面目らしく、ポジショントークもほどほどにしましょうと思うあたくしなのでありました。

どうもネタがあんまり無いので総裁記者会見の続き。

○市場機能がどうのこうのという話

ほとんど蒟蒻問答の世界となっている質疑応答。

『(問)今までの記者会見でも何度か使われている「市場機能を過度に封殺する」ということについて、もう少し具体的にどういうことを言っておられるのか、説明頂きたい。』

『(答)長い期間にわたって、日本銀行は大量の資金供給を市場に行ってきており、その結果として、日本銀行のオペレーションへの民間金融機関の依存度が、実体的にも心理的にも高まっている。また、市場での価格形成も、日本銀行のオペレーションに左右される度合いが強まっている。』

まずこの時点でマッチポンプな訳でして、金融機関が必要とする量を大きく上回る資金を供給した結果ですから、依存度が高まるもへったくれも無いわけですが。

『本来、市場においては、市場参加者が自らの金利感あるいは資金ポジションの動向等を考えながら資金の取引を行う。これが市場本来の機能であるが、そこが必ずしも十分には働きにくいという状況になっている。』

上に同じ。ここから先が判ったような判らんような理屈。
 
『もともと量的緩和を進める以上、そういうことになりかねない、あるいは、現になるだろうし多少はなっても仕方がないと、ある割り切りを持ってやってきていることは事実である。その程度があまりにも行き過ぎないかどうかという極めて難しい判断である。』

いやまぁ量的緩和政策を長期化してるからそうなるもんなのでして、それは量を減らせば済む問題なのかというのは微妙な気がしますし、そもそも当座預金残高目標を設定する根拠の数字が訳判らんから環境に変化(為替市場への介入が無くなったのが主要因かと存じますが)が生じた時にどうなるのかという検討ができませんなぁという話でしょうか。先日申しあげたように、いざ当預目標引き下げの提案って話になったらいきなり引き下げ額の数字が違っているわけですし、あはは。

『ある数字で示すということはできない世界である。実際の市場の中で、市場関係者の主体的な動きがどれくらい弱まっているか、あるいは逆に甦りつつあるのかということは、現実にオペレーションの舞台の主役として市場の中に入っていけば、非常に明確に感じることであるが、一歩離れて数字だけで判断しようとするとなかなか難しい話だということをご理解頂きたい。』

そんなもの市場にいても判断できませんが何か?短期金融市場の市場機能がどうのこうのって問題は量的緩和政策を行うコインの裏表みたいな話ですから、どうもこの「市場機能の封殺がどうのこうの」っていうのを見るにつれ、「短期金融市場(と、直接的表現を避けるあたくし)>>当預残高の量」というスタンスが見えてきますわな。



○でまぁ市場機能の回復をしたいのかと思えば・・・・・

その後の方での質疑応答では上記の「市場機能封殺」問題と話のケツが合わないお話をしているのですが、大丈夫でしょうか??

『(問)先程、当座預金残高目標の下限割れの話の中で、市場からは不規則な反応がなかったという話をされていた。そうした反応がなかったことは良いのだが、そうだとすると、今まで維持してきた30兆円という数字の意味合いというのは、以前と今とでは違ってきているということなのか。29兆数千億円でも市場がそういう反応であるということは、30兆円という金額にどのような意味があるのか、意味が変わってきているとお考えなのか、ということについて伺いたい。』

『(答)消費者物価指数の前年比変化率が安定的にゼロ%以上となるまで所要準備を大幅に上回る流動性を供給するという意味は、流動性を大量に供給することによって短期を中心に金利を低めに抑えるとともに、金融システムにおいても資金繰り面での安心感を恒常的に与え続け、そしてコミットメントによって時間軸効果を働かせて金利の安定を一層補強する、というメカニズムは一切変わっていない。』

えーっとそれは量的緩和政策の極めて公的な見解でございますが、さっき話していた「市場機能を封殺しない」だの「市場の金利発見機能を損なわない」という話と整合性が取れないように思えますな。「短期を中心に金利を低めに抑える」とか「時間軸効果を働かせて金利の安定を一層補強」って・・・・・



○そして禅問答

この質問者はどうも「量的緩和の量」に関して突っ込みをしたかったらしく、次に量についての突っ込みをしているのが惜しい所です。市場機能に関するツッコミをして欲しかった所です。

『(問)下限を割っても市場が反応しないということになると、所要準備より多ければ何兆円でも良いのではないかという話になりかねないと思うのだが、そういうことにはならないのか。』

『(答)意味のない流動性の供給をしてきた覚えはない。実際に金融システムに不安がある時には瞬間蒸発的に日本銀行の供給した流動性が消えるという状況であった。今はその状況が変わってきているということは繰り返し申し上げてきたところである。そういうふうに市場の状況が変われば同じ大きさの金額であってもメリットとデメリットの相関関係は微妙に変わってくるということは正直に申し上げているが、基本的な流動性供給の機能、コミットメントの効果、これは変わらないということである。』

この後の質疑応答で「金融システム不安」というところに対してツッコミがありましたが、その質問に対しては『ペイオフ全面解禁が終わったから金融システムの問題について量的緩和の必要がなくなったというのは、極めて皮相的な見方だと言わせて頂く。』と言っておりまして、もはや何が何だか訳のわからない状態になっておりまして実に香ばしい。正直、引用しているあたくしも一体全体何がどうなっているのかワケワカメになってくる一連の質疑応答でございました。


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2005/06/17

お題「相変わらずアレな総裁記者会見」

総裁記者会見がアップされたのですが、それを見た所昨日書いたことの勘違いに気が付きましたので最初に訂正を。

昨日のドラめもんでは「金融政策決定会合で当預残目標下げに関して2種類の提案がされた」という報道に関して「総裁会見で明らかにされたんでしたっけ」と(脳内メモリーが怪しかったので断定せずに)書いてしまいましたが、記者会見で総裁は反対票やら反対提案の内容に関して「内容については後日発表する議事要旨を見るように」ということでノーコメントとしております。

よって昨日書いた中で「反対提案の内容が総裁記者会見で明らかにされたと思うが」と申しあげたくだりは完全にあたくしの記憶違いでした。誠に恐縮至極で伏してお詫びして訂正いたします。(ちなみに票決の7対2に関しては会見で触れております)

まぁしかしそう考えますと、決定会合終了後にペラペラお喋りしていた「関係筋」の方は金融政策決定会合の何たるかを全く理解していないという事になりますな。その任に極めて適正でない人が「関係筋」の中の人であるということでございまして、昨日は豆腐の角に頭をぶつけてと申しあげましたが、本日は可及的速やかに出処進退を考えた方が宜しいのではないでしょうかと申しあげておきましょう。


○総裁記者会見

前置きが長くなってしまいましたが、金融政策決定会合結果を受けた総裁記者会見はこちら→http://www.boj.or.jp/press/05/kk0506b.htm

例によって紙に打ち出すと9ページと内容豊富ですが、勝手にポイントを拾ってみますと(1)調節現場はつらいよ(2)景気認識のダム論話(3)日銀のバランスシートに関する言及と言った所でしょうか。

(1)調節現場はつらいよ(あるいは営業局手法の復活?)

先日からその気配はあったのですが、総裁記者会見では「当座預金残高下限割れは現場の判断」という大変に香ばしい理論が展開されております。

『(問)前回の金融政策決定会合以降、6月2・3日にいわゆる「なお書き」を適用したと見られる当座預金残高目標の下限割れという事態があった。これに関して、総裁は直前に何らかの場で「現場の判断である」とおっしゃったが、その判断についてどのように評価されているか。また一部には、年度末にあったようなオペをすれば、下限割れは回避できたのではないかという指摘もあるが、総裁がこの間繰り返し話されている「市場機能の封殺」というものとの兼ね合いで、どのような市場機能を封殺しないために、そのような下限割れの容認というかたちになったのか伺いたい。』

『(答)(前半部分割愛)前回の金融政策決定会合以降、今日までの金融市場局における具体的な市場調節振りを見ていると、政策委員会が示したディレクティブ通りの調節が行われてきていると思う。かなり期間の長いオペレーションを多用しながら、基本的にはターゲット達成のための資金供給を相当な努力を払いながら続けてきた。しかし、おっしゃった通り、6月2・3日の2日間について言えば、調節部署の市場の中における感触として、極端に無理な調節をするということと、市場機能を過度に封殺するということとの矛盾のひとつの場面に遭遇したということである。その結果として下限割れを容認したということであるので、文字通り、ディレクティブ通りの調節が行われてきたと理解している。実際、市場のほうでも、そうした調節と呼吸を上手く合わせたかたちで市場地合いが円滑に形成されてきていると思っている。市場と日本銀行の調節とのコミュニケーションは、円滑に進んできていると理解している。』

金融調節に関しては政策決定会合で方針を決定する訳で、金利ターゲットであれば誘導金利の目標水準が決定された方針通りに運営されるように行い、現在の当座預金残高ターゲットであれば当座預金が・・・って筈なのですが、どうもこの理屈では調節現場が目標下限割れ容認の判断をするらしいですな。

・・・・大丈夫か政策委員会。。。

ちなみに、6月2日、3日の当座預金30兆円割れに絡んでより直球をぶち投げた質問がございます。紙に出すと3ページ目になるのですが、質問に対する総裁の答えがもう何というか営業局時代のシグナリングオペの容認みたいな話をしたりしてるんですが、引用すると量が多くなりますし、はてさて?って感じですので、楽しい質問に関して引用しておきましょう(^^)。

『(問)6月2・3日の当座預金残高が29兆円台になったことについて伺いたい。5月31日に金融市場局が通知した手形買入全店オペでは、1兆円の供給枠に対して3兆618億円の応募があり、超過的な資金需要がさらに2兆円あったはずである。つまり、6月2・3日に即日オペをやらなくても、前日にオペをやれば不足を埋められたはずである。今、市場からはなんなく受け入れられたとの話しであったが、私の聞くところによると反論もかなりあった。市場の地合いを見ながらオペをやるというのは十分わかるが、5月31日の全店オペ時の2兆円の「落選した資金需要」をなぜ6月2・3日につぎ込まなかったのか。また、「なお書き」で、「資金需要が極めて弱いと判断される場合には」とあり、英語でも「it is judged」となっているが、この判断は誰がするのか。金融市場に普段関わりがある人であれば、以心伝心で何となくわかるかもしれないが、世間一般の人が読んでも、全然わからないと思うが如何か。』

実に素晴らしいツッコミです。答えは会見要旨をご覧下さい。もちろん最初の第一声は『最終的な判断は、現実に市場の中にあって、市場と直面しながら市場の感触というものを全面に受け止めながら調節にあたっている調節責任者に委ねられている。』でして、その後に延々と理屈を並べているのが香ばしい。

この観点の質疑はもうちょっとありましたが、まぁ代表的な質疑はこの2つかな。いつの間に政策決定会合で決めていた判断が現場に降りて来たんでしょうな。


(2)景気認識のダム論

金融経済月報に関してあたくしが「企業収益の向上が雇用環境の改善に向かう」という話が書いてありますなぁと思ったら、同じ事を質問している人がいました。

『(問)景気について伺いたい。金融経済月報にもあったが、輸出は足許少し伸び悩んでいる、生産は4〜6月は少し停滞気味になるだろうという見方が多い中で、企業の収益が雇用や賃金に波及して消費が底堅さを増しているという状況については、企業から家計へのメカニズムという部分が少しクローズ・アップされてきたような感触を受ける。そう考えると、5年前に「ダム論」というのがあり、その時は結局ITバブルの崩壊によって、そこで唱えられていた家計への波及メカニズムというバトン・タッチは行われなかったのだが、足許と5年前の類似点および相違点について総裁の見解を伺いたい。』

『(答)IT調整については、5年前の大きなハイテク・バブル崩壊後の調整と比べ調整の深度が違うという点は明確に言えると思う。現に、足許のIT調整は順調に進捗中だということにそれが表れていると思う。家計のほうについても、これも企業のリストラの進展度合いが5年前と現在とでは大きく違っているわけで、短観などでも人手不足感という世界に一歩足を踏み入れつつあるところまでリストラが進んでいる。雇用の増加、そして雇用者所得の増加、いずれも今回のほうがより確実性をもって、しっかりした土台の上にそれが実現してきているということが言えると思う。従って、両面からの景気回復への軌道の築かれ方というのは、5年前に比べてはるかに安定したものだということが言えると思う。(後半部分割愛)』

もう一回短問短答がございましたが、景気に関しては「回復の裾野が広がっている」という認識のようです。ちなみに総裁は「派手な回復ではなく、地味で息の長い回復」と言ってましたんで、まぁ景気に関しては自信満々でしょう。しかし地味に回復する景気だったらそんなに慌てて量的緩和の出口論を唱える必要は無いんじゃネーノ?慌てるのはインフレ昂進懸念がでるような回復速度の時でしょうに・・・・


(3)日銀バランスシートの話

『(問)日本銀行のバランスシート問題について伺いたい。先日発表された決算で日銀の資産規模は、6年連続で拡大を続け、過去最高を更新したということだが、これは量的緩和政策によって積極的なオペや長期国債買入を行った結果だと思う。先日の水野審議委員の講演では、量的緩和政策の副作用の一つとして日銀のバランスシート肥大化の弊害を挙げているが、改めてGDPの3分の1に達している日銀のバランスシートの規模──諸外国と比較しても極めて突出した状態だが──についてどう見ているのか伺いたい。』

『(答)日本銀行のバランスシートが肥大化するということ自体は、量的緩和政策をとる以上必然的な現象だと思う。従って、そのこと自体が問題というよりも、量的緩和政策をとり続けることによって、市場の中にディストーション(歪み)が生じ過ぎないかということが論点の一つである。』

ここまでは話わかるのですが、

『また、日本銀行のバランスシートについて関心をお持ちであるとすれば、例えば、日本銀行のバランスシートが、期間の長い資産が多くなり硬直化し過ぎていないか、将来の金融調節のフレキシビリティに対して懸念を持たせる材料を累積していないか、といった点が重要だと思う。』

問題は資産の質であって、持ってるものが国債でそんなに問題なのか??

『バランスシートが大きくなる過程で、資産の中身を見た場合に、極めて期間の短い資産で積み上げられている場合と、期間の長い資産で積み上げられていく場合とでは、そのリスク度に対する判断は随分変わってくると思う。最近までのところを見ると、日本銀行はかなり期間の長いオペを多用しながら流動性供給目標を達成してきており、その結果、日本銀行の資産の平均的な期間は長くなってきている。市場の機能を封殺し過ぎていないかということと、日本銀行のバランスシートの資産面での期間の長期化ということは裏腹の関係にあり、どちら側から見ても、同じ判断に結びつくような状況が出てきているということは確かで、私どもは強い関心を持って見ている。』

うーん・・・・・


ちなみに、他にも結構お笑い(というか笑えない)質疑応答(市場機能がどうしたとか、「関係筋」によると議論が白熱したはずなのに、何か淡々と議事が進行したかのようないい方をしてますなぁとか)があるのですが、まぁ来週ネタが無かったら掲載致します。

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2005/06/16

お題「金融政策決定会合と金融経済月報」

総裁記者会見の要旨はまだ日銀Webにアップされてません(いつものパターンですが)。金融政策のディレクティブを下限割れ容認のなお書き修正して、お約束どおり(一応日銀的には「意図的に30兆円割れをやった訳ではない」となりますが^^)に当座預金残高30兆円割れを実施したことによって一旦作戦成功なので、今回はあまり刺激しない方が吉だという感じなのか、ヘッドラインにはそれほど刺激的な話はなかったよう(突っ込みたくなる件は少々)ですな。


○当預減額提案が何故か2本出ていたようですが

(たぶん)総裁記者会見で明らかにされてましたが(6月17日追記:総裁記者会見では言ってませんでした。当たり前ですわな。やはり関係者コメントでした)、今回の「現状維持」の票決は7対2と前回と同じ。で、その2票なんですが、当座預金残高目標引き下げの提案が出ていたようなのですが、その提案が「25−30兆円への引き下げ」と「27−32兆円への引き下げ」との事。

何も別々の引き下げ幅で提案するこたぁねぇだろうなどと思ってしまいましたが、まぁどうせ「腰だめの数字」って奴なんでしょうなぁと思う次第。「27−32兆円」の方は福間審議委員が以前も提案していたので今回も福間さんだとして、いきなり5兆下げるというのはここもとの言動からすれば水野審議委員なんでしょうな。まぁ政策委員会の外で金融政策の現状方針を変えようっていう話をするんなら金融政策決定会合で議事提案と投票をして下さいなって文句が聞こえたようですな。

しかし引き下げ派2名いて提案する引き下げ幅が違うってのもそこはかとなく香ばしいものを感じない訳でもありません。どういう根拠でその数字を出したんでしょう(ってそもそも引き上げの時も数字の根拠は良く判らんでしたんですが。実質ドル買い介入支援だったんでしょうが)かねぇ。


○決定会合の内容をペラペラしゃべる「関係筋」は誰??

金融政策決定会合結果が出てから暫くして各情報ベンダーが「関係筋」の話として決定会合の議事についてヘッドラインを打っておりました。「決定会合の票決は7対2」だの「議論が白熱したが皆納得している」だのというようなお話なんですが・・・・・

決定会合の票決については「全員一致」か「賛成(あるいは反対)多数」という発表をしてますんで、何対何だったかというのは議事要旨の公表を待つことになっている筈でして、まぁここの所福井総裁が記者会見で「反対が何票」とか言うのも趣旨としては余計なお話ではありますわな。ただまぁ総裁としては変な思惑を出したくないから総裁の判断で何対何というのを公表しているんだと思います。

などと考えますと、決定会合の内容に関して総裁記者会見の前にペラペラ喋っている「関係筋」の行動は政策決定会合が現在行っている対外公表のやり方を無視とは言わんが軽視しているものでして、そのようなお方は可及的速やかに豆腐の角に頭をぶつけていただきたいものだと思うあたくしは原理主義者ですかそうですか。

誰が関係筋なのかと思って昨日の決定会合結果発表文を見て参加者をチェック(http://www.boj.or.jp/seisaku/05/pb/k050615_f.htm)すると、まさか審議委員でそんな不見識なおしゃべりさんはいないと思います(つーかいたら嘆かわしい)し、日銀事務方やら政府官僚でそんなことする人はいないと考えると消去法で1名浮上しちゃいますが、まぁその方かもしれませんしその方じゃ無いのかも知れませんが、なんちゅうかもうちょっと何とかならんのかと思います。

っていうか、そもそも結果発表の際に「票決が何票だった」とか「否定された議案が何だったか」ってのを発表しない理由が良く判らんので改善キボンヌでありますわな。ただ今の枠組みでは票決だの反対議案だのは議事要旨発表時のお楽しみになっているんで、そのあたりを形骸化するおしゃべりは如何なものかと思いますがね。


○金融経済月報は雇用の改善についてコメント

今月の月報はこちら→http://www.boj.or.jp/seisaku/05/pb/gp0506.htm

小見出しにありますように、今回の月報は雇用状況に関る部分の現状判断、先行き見通しが前進しております。「ダム論」というとアレですが、「企業収益の改善が雇用情勢の改善につながり景気回復の裾野が広がる」という理屈が現出してますよってお話ですんで、日銀としては「景気回復シナリオ」に自信って所でしょうか。5月分と比較。

・基調判断と先行き見通しは変わらず

『わが国の景気は、IT関連分野における調整の動きを伴いつつも、基調としては回復を続けている。』
『先行きについても、景気は回復を続けていくとみられる。』

これらは5月分と同じです。

・雇用に関る部分

現状判断で「雇用者所得の増加」について言及しています。

(6月)『雇用面の改善や賃金の下げ止まりから、雇用者所得は緩やかながら増加しており』
(5月)『雇用面での改善傾向が続き、雇用者所得もはっきりと下げ止まる中で、』

先行きに関しては企業の人件費抑制姿勢が改善するような説明ですな。

(6月)『企業は人件費を抑制するよう慎重な姿勢を続けていくとみられるが、』
(5月)『企業の人件費抑制姿勢は引き続き根強いとみられるが、』

・設備投資

設備投資が製造業中心から非製造業にも広がり、はっきり増加してると言いたいようですな。

(6月)『設備投資は、高水準の企業収益を背景として、増加している。』
(5月)『設備投資は、高水準の企業収益を背景として、製造業を中心に増加傾向にある。』

あとは「輸出か持ち直し→伸び悩み」って微妙な変化がありましたが、今回は雇用と設備投資の判断を微妙に前進させているのが目につくところです。景気回復の足取りは確りしているって判断なんでしょうね。


ではでは〜♪

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2005/06/14

○金融政策決定会合

今日と明日行われますが、さすがに当預目標はいじらないと思います。ここもとのオペ札割れ攻撃を受けて「市場機能の低下」がどうのこうのって話に対して記者会見で総裁が何を言い出すのかが楽しみです。なお書き修正後、総裁の「とことんオペを行う」発言にも関らず(っていうか恐らくその場の勢いで言っちゃったんでしょうな)あっさりと6月2日、3日に当座預金残高30兆円割れをやってしまった点に関しては突っ込みがあるのかな(多分そういう話は出てこないと思いますが)とか、当預30兆円割れ後の水野審議委員の「ゼロベースで金融政策を見直す」というちゃぶ台をひっくり返す星一徹のような意見表明に対する評価とか、色々と聞いてみたいものですな。

総裁記者会見内容は明日の4時過ぎとかになると報道されると思います。

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2005/06/10

○ところで全店手形オペが札割れしてますが

昨日は全店手形オペが札割れしておりましたが、ここのところへ来て少々長めの期間の資金供給を熱心に実施しておられるようですな。まぁ資金供給を「とことん」実施しているのはお約束どおりなんでしょうが、そんなら何で5月末はあんなにあっさりとした供給をしてたんでしょうなぁと思う次第。

まぁ以下あたくしの激しく意地の悪い読み筋なので話10分の1くらいでお願いしますが(^^)、6月2日の資金不足時期に関しては「なお書き修正」を決定した手前、当預下限割れを一度はやっておかないとって事で自然体供給を行い、今度は量的緩和政策の副作用として宣伝されておりますところの「市場機能の低下」をアピールするためにバンバン資金供給(ただし精々年末越えなのでまぁ猛烈に行っているという程ではない)を行って「札割れ頻発で市場機能が低下してますなぁ」という展開を狙っているのではないかと超邪推(^^)。

ま、それじゃあただの猿芝うわなにをするやめろkljgふkぉkdh

という訳で来週は金融政策決定会合でございますな。

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2005/06/09

まぁ何と申しますか、当預目標下げましょうってのは金融市場の輿論(金利が上らないと困る人たちが多いので)という雰囲気になっているようで、当預目標下げに関しては思いっきり「理解ありあり」状態のようになってますな。という訳であまりうじうじ粘着していても空しいあたくしなのでありました。

○当預目標下げの票読みまとめ

・目標引き下げ今すぐやれやゴルァ!派
→福間さん、水野さん

・目標引き下げ積極容認派
→須田さん、春さん(春さんは4月の決定会合議事要旨から類推)

・目標引き下げ理解ありあり派
→西村さん、いちおう福井総裁(総裁の場合本音は積極派と思われ)

既にこの時点で6票。福井さんは立場上に多数派に賛成となるので5票とも言えますが、どっちにしろ9人中5人ですわな。

・目標引き下げ消極派
→武藤副総裁

・目標引き下げ反対派
→中原さん、岩田副総裁

ということで、あとは上手い「言い訳」さえあれば当預目標引き下げって話になるんでしょうな。「債券市場を崩さなければ当預引き下げ成功(by水野審議委員)」などという意見もあるくらいですから、そーゆー意味ではとっととやったら如何でしょうかねぇ(棒読み)。というか、景気が本格的に好調って経済指標が連発して、株式市場が上昇してきたら債券市場も反応しちゃうでしょう。その時にCPIがマイナスなのに当預目標を下げだすと(プラス転換してるならそもそも市場が量的緩和解除を織り込んでくれますので無問題)時間軸が思いっきり短くなりますから、当預引き下げは債券相場崩しますわな。

・・・でもそれで良いんでしょうかね??その理屈から逝くと、景気の先行きが不透明だと思っている人が多くて債券市場が買い優勢の時には当預残高引き下げが出来るって不思議な話になるんですけど・・・・・


○正常化にはABCP買入の終了宣言もどうでしょう?

昨日実施されたABCP買入。もともとろくすっぽ応札の無いという素晴らしいオペでしたが、昨日の応札額はとうとうこのオペ発足(初回実施が2003年8月11日オファー)以来初の2桁億円(28億円!)となりました。

このオペは「企業金融の円滑化」と申しますか、福井総裁に言わせますと「資金の出前持ち」という譬えになるんですが、まぁ当時鳴り物入りで導入したオペレーションですが、よくよく考えますと速水前総裁の置き土産みたいな面もあったオペでございました。

http://www.boj.or.jp/seisaku/03/pb/k030611b.htm

本来この施策ってプルーデンスじゃねぇのかと今更ながらに思う(速水さんの時はプルーデンスに関る施策は金融政策決定会合ではなく通常の政策委員会で決定してましたな。銀行保有株買取が具体例)のですが、この買入実施にあたって日銀はこんな表明をしておりました。

『資産担保証券については、信用リスクを全体として削減し、投資家のリスク許容度に応じたリスク移転を図ることを通じて、企業金融の円滑化に貢献する効果が期待される。中央銀行が民間の信用リスクを直接負担することは異例であるが、わが国の金融機関の信用仲介機能が万全とはいえない現状においては、時限的な措置として買入れを行うことを通じて資産担保証券市場の発展を支援し、金融緩和の波及メカニズムを強化することは意義があると判断した。』

ということであれば、金融政策の正常化って文脈であれば、資産担保証券の買入を一旦終了させるちゅうことで宜しいのではないかと存じますが、なぜか進軍する時は鉦や太鼓で鳴り物入りモードなのに、撤退する時はこっそりと行うというのが得意技のようですので、このままフェードアウトなんでしょうかね。

ま、機能しなくてある意味良かったですなぁと思いますが、変に制度として残しておくと、遠い将来に復活して筋悪政策として利用される可能性もありますから・・・

(追記:メールでのご指摘により10日に訂正。以下10日のエントリー)

○資産担保証券買入は今年度で終了でした

まずは昨日の訂正というか補足。

資産担保証券の買入スキームに関してですが、引用した日銀の発表文にありますように、このスキームは「時限的措置」です。で、その時限は今年度一杯ということですんで、延長措置でもしない限り今年度末をもって無事フェードアウトと相成ります。制度が残るような書き方をしておりましたが、あたくしの思いっきり勘違いですので謹んで訂正致します。メールでのご指摘ありがとうございました。m(__)m

ま、いつものように「終了時はフェードアウト」というのも良いのですが、半年前に終了を前倒しで実施してアナウンスメント効果を出しても宜しいのではないかとは思いますが。


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2005/06/08

○まぁしかし何と申しますか当座預金残高目標

6日のドラめもんで「過去の当座預金残高目標引き上げの経緯とその時の言い訳」についてご紹介しましたが、当座預金残高目標を引き上げる時の理由も「とって付けた様な」ものでしたし、最後の上限35兆円への引き上げなんぞは「景気見通しは上方修正なのに目標引き上げ」という素晴らしい理由。

その間の当座預金残高目標引き上げに関しては岩田副総裁が以前講演で指摘していたように、事後的には「為替介入のファイナンス」になっていた訳ですが、そのあたりに関するレビューも無いままですと、どうも「無計画かつ根拠薄弱に当座預金を拡大しておいて、やり過ぎとなったら一転して弊害だの副作用だのと言い出し、今度は技術論とか言い出しながら当座預金の引き下げをする」の図にしか見えないですわな。そんな無計画っぷりでどうなんでしょうかねぇ。

#ま、そんな感じで理論的整合性もへったくれも無い動きなんで、真面目に突っ込みを入れるあたくしもだいぶ空しくなってきましたな。

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2005/06/06

お題「水野審議委員講演をなおも読む」

○その前に債券相場

金曜の債券市場では5年より短いゾーンの債券はダメダメ状態で、先物から長期ゾーンに関してはやたらと堅調という展開。まぁ長めの短期金利を上昇させようって人がいるんだからイールドカーブが中短期金利の上昇幅>長期金利の上昇幅って形のフラットニングになるのは分かり易い結果ではありますが、それにしても長期債やら超長期債を買い上げ(金利低下)る勢いで相場が上昇するというのも中々恐れ入ったお話ですわな。ま、先日申しあげた某有力生保の偉い人発言に見られるように、皆様長期債買えてなかったんですかそうですかって所でしょう。

金曜も堂々の30兆円割れとなり、なし崩し的当座預金残高の減額という事で、事実先行によるなし崩し的解釈による政策の転換という、我が国の伝統芸能として古来親しまれている事象が発生しておる訳ですが、ようやっと債券市場はそれを解釈した(割には長期金利が低下すると言うのも?????ではあるのですが・・・・)ということにして置きましょう。よーわからんが。


○水野審議委員の講演と記者会見を読む

記者会見要旨が金曜の夕方過ぎにやっとこさアップされておりました。http://www.boj.or.jp/press/05/kk0506a.htm

講演と記者会見を読んでますと、水野審議委員の主張するところってのは「要するに過去の経緯はさておいて(というのがポイント)今必要な政策は何かと考えるとこのようになりますが何か?」って事のようでございます。道理で先週末に講演について論理的整合性はちゃんとなっているので憎たらしいなどと思った(というか書いたんですが)訳ですわな。

ま、それならそれもひとつの考え方でしょうが、それなら政策決定会合の場で、(水野さんの主張を敷衍すると)「ゼロ金利政策(多分時間軸付きになると思うのだが)への政策転換」の提案をしてからこの手の主張を外部に向かって行うべきであり、政策委員会の外でいきなり発言するのは、金融政策決定会合の形骸化になりゃしませんかねぇと思いますよ。

どうも記者会見とかまで読みますと、「景気が回復する」というメインシナリオに向かった時には「金融政策の正常化」が出来ますよってことらしいので、そういう意味では「まだ政策決定会合で提案すべき経済情勢ではないので提案しない」ということなのでしょうけれども、それなら尚更そのような発言を軽々にすべきではないでしょうと思うところでございます。

・水野審議委員トロイの木馬説

金曜にもご紹介した講演(http://www.boj.or.jp/press/05/ko0506a.htm)の一節を読むと、何気に日銀にとってはどうよって件もありますわな。

「4.金融政策の正常化(ノーマライゼーション)について」より

『個人的には、量的緩和継続のコミットメントによる長期金利安定の効果はあるものの、30〜35兆円程度という大量の当座預金残高目標を維持することから期待できる景気押し上げ効果はほとんどないと思っています。』

と、量的緩和政策の「量」の効果に関して否定的な主張をしていますが、こりゃまぁある意味諸刃の剣というか村正の妖刀と申しますか。。。。ってなもんで、その後には日本銀行身も凍るって話をしている訳です。

『景気がリスクシナリオに沿った展開をみせた場合、デフレ克服を目指すため量的緩和政策の枠組みに変わる新しい金融政策の枠組みを求める声が強まってくる可能性があると考えています。現時点で、量的緩和政策よりも景気刺激効果が大きい具体的な枠組みが念頭にあるわけではありませんが、景気回復が途切れた場合の金融政策運営面での対応についても考えておく必要があると思っています。』

そりゃまぁ当座預金残高目標を持ち上げても景気押し上げ効果が無くて、将来的に副作用が出るって言ってるんですから、別の枠組みが必要になるという訳ですわな。で、その枠組みって何でしょう??

ここで水野さんは「量的緩和政策よりも景気刺激効果が大きい具体的な枠組みが念頭にあるわけではありませんが」とその「枠組み」に関して話をしていないのですが、フツーに考えると国債引受あるいはそれに類するような財政マネタイゼーションとか、日銀特融乱発とか昔の震災手形類似行為のような結果的には無原則な通貨濫発となるような制御不能なインフレ政策の実行に追い込まれませんかねぇってことになるというのはあたくしの杞憂ですかそうですか。

でも、「量的緩和政策よりも景気刺激が大きい政策」って言われると、どうもそういう筋悪政策を連想しちゃうんですけどね。



かつて、「量的緩和政策の継続に批判的な水野氏の審議委員就任に財務省サイドが異を唱えなかったのは、水野氏をして日銀に『拙速な緩和解除』をさせ、失敗させることによって日銀を政府(というか財務省)の支配下に置く」という「財務省陰謀説」を日銀OBのどこぞのストラテジスト様が言ってまして、ドラめもんで「んなアフォな」と悪態をつきましたが、水野審議委員のこの「地雷付き量的緩和解除提唱」を見ておりますと、しょうもない「陰謀説」を信じたくなってきますな。

あ、勿論我が国の財務省が日銀の政策失敗を望むなんて事をする訳はないと確信しておりますので念の為(^^)。

問題は水野審議委員が確信犯でやっているのか、単に福井総裁を始めとする日銀の「量的緩和解除したい症候群」を慮って「人の切れ目が政策の切れ目」理論を引っ張り出してきたのかって所でしょうか。自ら「トロイの木馬」役を確信犯でおっぱじめているとすれば相当の狸ですな>水野さん



・「真の説明責任」を果たしてないのは誰でしょうかねぇ?

「5・真の説明責任」の件から。

『一部の市場参加者、メディア(勝手にコメント:もしかしてこれはあたくしと本石町日記さんでしょうかってのは自意識過剰ですかそうですか^^)は「真の説明責任」と「表面上の説明責任」を混同しているのではないでしょうか。私は、「真の説明責任」、「透明性の高い政策運営」とは、ある政策についてその目的を適切に説明できると同時に、その結果について責任を持てる政策運営である、と理解しています。』

そりゃそうですけど。。。。。。

『これを当座預金残高目標の引き下げ問題に絡めて言えば、「30〜35兆円程度という当座預金残高目標をあくまでも維持することが説明責任を果たしていることにはならない。物価と金融システムの安定、持続的な景気拡大、想定される副作用の最小化をできる限り全て満たすことができる適切な当座預金残高目標をボードメンバーが責任をもって決定する」ことであると思います。』

という御尤もな理屈なのですが、それでは、福井総裁就任後の日銀は何をやっていたんでしょうかと申しますと・・・・・

「イラク戦争を理由にして臨時政策委員会実施して補完貸付の強化(2003年3月25日→http://www.boj.or.jp/seisaku/03/pb/k030325.htm)」を実施。蛇足ですが、4月1日の日本郵政公社発足に伴い当座預金残高目標を純粋技術的に2兆円引き上げ(15−20兆円→17−22兆円)。

その後矢継ぎ早に当座預金残高目標の引き上げを行いましたが、その理由はと申しますと、「SARS騒動によるアジア経済の影響(2003年4月30日→http://www.boj.or.jp/seisaku/03/pb/k030430.htm)」そして「りそな銀行問題(2003年5月20日→http://www.boj.or.jp/seisaku/03/pb/k030520.htm)」。

で、これらの「懸念材料」(笑)が片付いたと思われる後でもそのまま放置して、量的緩和政策コミットメント3条件の明文化をする破目に陥った2003年10月10日には「金融調節の柔軟性を高め、流動性供給面から機動的に対応する余地を広げる観点(http://www.boj.or.jp/seisaku/03/pb/k031010.htm)」から27−30兆円の目標を27−32兆円に引き上げましたわな。

その後、金融経済月報で景気判断を上方修正しているのにも関らず当座預金残高目標を「デフレ克服に向けた日本銀行の政策スタンスを改めて明確に示し、今後の景気回復の動きをさらに確かなものとする趣旨(2004年1月20日→http://www.boj.or.jp/seisaku/04/pb/k040120.htm)」という理由を持ち出して引き上げておりましたな。

で、これら政策の説明も結果のレビューもございませんですなぁと存じますがどうでしょうか?


・金融政策の自由度を縛ったのは自業自得なんですが?

「6.金融政策の自由度がない状況は国益に反する」ってお題も中々凄いのですが、その前の「5.真の説明責任」って所から既に「金融政策はフォワードルッキングであるべき」という話をしております。現在の金融政策に関しては総裁を始めとしてほぼ全ての審議委員が今まで「量的緩和政策のコミットメントによるビハインド・ザ・カーブのリスクと、政策の効果を比較勘案してます」って発言を折に触れてしておりますので、その前提条件を根本から覆す話ではございますが、もともと「ゼロベースであるべき金融政策を語る」というのがこの講演の趣旨ですんではぁはぁそうですかって感じですわな。

「5.真の説明責任」より。

『量的緩和解除の3条件については、現時点で解除条件を見直すと、「市場との対話」で不都合が生じます。しかし、量的緩和解除の3条件は、様々な問題を内包していることも事実です。例えば、金融政策は本来、「フォワード・ルッキング」であるべきです。その観点からは、足許のインフレ率よりも、将来のインフレ率とも言える「インフレ期待」をにらみながら金融政策運営を行う方が良いと思っています。』

『金融政策の最終目標は、物価の安定・金融システム安定・持続的な景気拡大の実現です。量的緩和解除の3条件は強い「コミットメント」ですが、割り切った言い方をすれば、金融政策運営における中間目標という位置付けに過ぎません。持続的な景気回復が展望できる状況となった場合は3条件を柔軟に解釈しても日銀の信認は低下しないと思います。』

そりゃまぁ金融政策をゼロベースで見直しますよって話をするならそういう理屈も大有りでしょうけれども、これもまた歴史的経緯(というと大げさだが)を無視している訳ですな。あ、ゼロベースで見直すから良いのか(苦笑)。

そもそも量的緩和政策のコミットメント3条件を明文化したのは2003年の10月で(http://www.boj.or.jp/seisaku/03/pb/k031010b.htm)、コミットメント明文化をする破目に追い込まれた経緯はといえば・・・・・

りそな銀行絶賛税金投入の大救済スキーム発動による「銀行シバキアゲ政策の転換」によって株価が反転。おまけに株価反転に気を良くした日銀方面からの強気発言やら金融政策決定会合議事要旨から「量的緩和の早期解除があるのではないか??」という疑念が金融市場に流布された事と、それまでの長期金利の低下のし過ぎによる金融機関の債券投資の大拡大の反動。

これが相まって、「量的緩和解除織り込み相場」状態ともいえる5年国債1%超えだの2年国債0.25%超えだのという阿鼻叫喚相場が現出してしまったために「時間軸は揺るぎないもの(2003年9月3日の福井総裁発言)」とわざわざ言わざるを得なくなったわけでして、その一環として「量的緩和コミットメント3条件の明確化」をする事になったわけですわな。


ということで、そもそも量的緩和政策の3条件というものを設定したのは、「日本銀行が政策の自由度を持っていると見做されると問題がある」(これもまた情けない話ではあるが)というのが根底にある訳でして、それを捕まえて「金融政策の自由度がない状況は国益に反する」って言われましても、あたくしのように金融政策を粘着して見ている人間に取っては「ハァ??」ってなですわな。

まぁ金融市場参加者が皆粘着しているかって申しますと、そりゃま粘着していない人の方が多いのではないかと存じます(苦笑)し、「過去に必要以上に拘る事はない」というお方もまたあまたおいでのようですので、あたくしからみればこんな暴論はねぇと思いますが、まぁどうなんでしょうね。


・当座預金残高目標の引き下げに関する説明が微妙に変化するのはどうかと思うぞ

いやまぁ一々引用しているとやたら長くなりそうなのですが、とにかく今回の措置やら将来の当座預金残高目標の引き下げに関して、「金融政策の正常化」という言い方を振り回しながら、金利を上げたいような言い方をしてみたり、量的緩和政策の枠組みは不変だという言い方をしてみたりという感じで、都合よくコロコロと言ってる事が変化しているというのが非常に気に食わない所です。だいたいからして、長めの短期金利の引き上げを狙いながら時間軸効果は不変というのは矛盾というか詭弁の世界ではないかと思うのですが。「4.金融政策の正常化」から。

『短期金融市場を正常化させるためには、当座預金残高目標を段階的に引き下げて、無担保コール翌日物金利はゼロ近辺で安定させる一方、短期のイールカーブは将来の金融引き締めを多少意識して緩やかにスティープ化している状況が望ましいと思います。』

で、この後にはこういってます。

『当座預金残高目標を引き下げることは、「量」の効果の部分について調整を加える措置であって、時間軸に影響を与えることを狙った措置ではありません。』

その直後には・・・・

『また、当座預金残高目標の引き下げ、あるいは、一時的な目標割れ容認のどちらについても、「技術的な対応」と言うよりも、「金利の正常化」、あるいは、「金融政策のノーマライゼーション」に向けた一歩という意識で政策対応をすべきであると考えています。』

一体全体どっちなんでしょうという感じです。良く判らんというか小一時間問い詰めたいです。


・まとめにならないけど(というか記者会見まで逝かなかった)一応まとめ

今の所あたくしが思うところの小まとめ。

1.金融政策見直すなら政策決定会合で提案するのが先で、「個人的見解」という形で外部発表するのを先行させるのは金融政策決定会合の軽視じゃないでしょうか?

2.ゼロベースで過去の金融政策見直すというのはひとつの見解かも知れんが、やはりそれは政策決定会合(以下同文)。

3.ところで見直すなら過去の清算もちゃんとしてね。量的緩和政策の枠組みとして今まで積み上げてきたものの相当部分を否定しているんですからね。

まぁ何ですな、そんなに慌てずにCPIがゼロになるまで何故待てぬと言った所でしょうか。

それに債券市場が今高値圏で堅調だから当預目標即座に下げてもオッケーみたいな話を記者会見でしてるんですが、あたくしが本年1月31日にご紹介したブルームバーグニュースとのインタビューでの当座預金残高目標引き下げ否定論と全然話が違うというのも困ったものです。無原則もいいとこ。ストラテジスト気分が抜けてないんじゃないの???

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2005/06/03

お題「あっさり30兆円割れ/水野審議委員・・・・・(-_-メ)」

燃料投下し過ぎです。何と申しますか言いたいことが山のようにあってこっちも整理しきれないというのが正直な所です。さてどこから書きましょうか・・・・・

○アリバイオペは実施せず

昨日の即日オペ時間ですが、オペ実施せずとアリバイオペ(一番有力な線は15日の年金定時払いの資金余剰にエンドを合わせた2週間の即日オペ1兆円。以前のように即日オペで300日以上の期間のものが実施されるとはさすがに誰も予想してませんでした)実施の意見がありました。ど〜せならアリバイオペを実施した所に神ディーラーが降臨してオペ札割れせずに30兆円維持って図が一番笑えたのですが。どうもその雰囲気を察知したのか(爆笑)、オペ実施せずで堂々の30兆円割れを達成しました。

で、まぁつい2週間前に記者会見で総裁の言った「オペはとことんやる」というのは一体全体何の発言だったのかという話になる訳ですが、もともとこのお方のご発言はその場の勢いで調子の良い事を言うという極めて悪質な問題点(恐らく悪意で言ってるのではなくて、勢いで言ってるんだと信じたいですが)がございまして、この人の発言を公式資料や報道から就任以来チェックしているあたくしとしては、「またいつもの食言か」って所ですわな。

当座預金残高目標を引き下げたいというのであれば、今までの政策を政策委員会としてきっちりレビュー(効果が分からないという部分があっても然るべきですわな)して、今後はどういう政策の枠組みで当座預金残高目標というものを捉えていくのかというような話を政策委員会として機関決定すべきものでしょう。それを行わないで、「政策の枠組みは変っていない」「技術的対応」と説明し、その上「オペはとことん実施する」と言いながら全然とことん実施しないで、「当座預金残高は市場が決めること(昨日ご紹介した総裁発言)」などという発言までしちゃうという「政策の欺瞞性」に対して物凄い勢いで血圧が上昇しております。


○水野審議委員講演と記者会見(記者会見まで手が回らず!)

昨日福島県金融経済懇談会で水野審議委員が講演を行いまして、この内容がかなりやんちゃな内容。10年国債入札実施日にこの講演はどうよって思ってたのですが、その後に行われた記者会見の内容が報道されると債券市場は急速に値を崩す展開。講演の内容もやんちゃなものでして、もうちょっと債券市場でもちゃんと読めよって気はしましたが、その後の記者会見が益々過激な内容だったのは呆れました。

10年国債入札日の午後2時過ぎといえば沢山落札した大手業者の方はまだヘッジを全部している訳じゃねぇと思うのですが、そのタイミングで債券相場が相当嫌気するような発言をするというのは一体全体どういう神経をしているのか。とても「債券市場関係者」だったお方とは思えない見事な「相場とのゲーム(後述しますつもりが時間切れ。記者会見でのご発言です)」ですなぁとその見識に関して激しく疑問をぶつけたくなります。っていうか、ちょっと青臭い言い方すれば「相場を泥靴で踏みにじった」って思うんだけどね。

大体この講演内容が6月2日という当座預金目標下限割れの日に予定されていたという時点で「おまえら端から30兆円維持する気なかっただろう」と言いたくなる訳でして、何と申しますかもうこの素晴らしい予定調和茶番劇に対しては呆れてものも言えないといいながら文句を垂れるあたくしでございました。

で、まぁその講演というか挨拶要旨はこちらです。
http://www.boj.or.jp/press/05/ko0506a.htm

もう突っ込みというか文句言いたくなる所満載なのですが、突っ込みだすとこっちの方が論点が拡散しちゃうという素晴らしい代物ですので、まぁ本日は軽めに反駁してみます。続きは週明けにでも(^^)。


・目次を見た瞬間にのけぞりましたが(--)

目次の後半部分に呆然。曰く、
『4.金融政策の「正常化(ノーマライゼーション)」』
『5.「真の説明責任」』
『6.金融政策の自由度がない状況は国益に反する』。

いやまぁ凄い題名で、まぁこの内容をもうちょっと熟読する暇が債券市場関係者にあれば昨日の入札実はもっとボロボロになったのかもしれませんが、当然熟読する間もなく入札締め切り時刻と相成る訳でして(--)、記者会見でよりこの講演より過激な内容が報道されて中期債中心にボロボロ相場になるのでありました。


・ストラテジスト気分が抜けて無いですなぁ

「1.はじめに」ってところで水野審議委員はこう言いました。

『今年の金融市場をみると、事前の市場のコンセンサスが外れることが多いように思います。』

えーっと、それはメディアのインタビューにしゃしゃり出てきて「世界的に金利が特に超長期ゾーンでフラットニングする」とか発言すると日本の債券市場で超長期ゾーンを中心にしたスティープニングが起こる事を指して仰せなのでしょうか(笑)????まぁそれはともかく。

『金融市場のボラティリティーは低い状況にありますが、ヘッジファンドに巨額な資金が流入していることもあって、なぜか居心地の悪さを感じます。日本銀行は金融市場の動向を常にウォッチしていますが、今年は株価・長期金利が実体経済を正確に反映していないような気がします。』

この部分が記者会見では「長期金利の低下が実態経済と違う踏み上げ相場になっている」などと益々具体的な言い方になるのですが、別にマーケットストラテジストのごたくなんぞ聞きたかぁございませんが。

と軽く突っ込みまして肝心の金融政策運営に関る部分。


・言ってる事があちこちで自己矛盾してるようにしか読めないのですが

このセンセイの挨拶要旨なんですが、一つ一つの内容は「左様でございますか」となるのですが、全体を通して読んでみるとそれこそ物凄い「居心地の悪さを感じます」って所です(笑)。よってちゃんと突っ込もうとすると結構下準備が必要なのですが、下準備不足なので(スイマセン)、ほんのさわりだけ。

例えば、「4.金融政策の正常化」って所で(A4の紙に打ち出すと6ページ目のあたり)水野さんはこう言ってます。

『当座預金残高目標の引き下げは、結果的に、量的緩和政策の方向転換の第一歩と解釈される可能性があるため、慎重な議論が必要であることは理解しています。ただ、当座預金残高目標を数兆円程度引き下げても引き続き潤沢な流動性を供給していることに変わりはありません。個人的には、金融市場に悪影響を及ぼさない幅で、当座預金残高目標を引き下げに踏み切っても良いと考えています。』

で、このちょっと後ではこう言っている訳ですが・・・・

『当座預金残高目標の引き下げ、あるいは、一時的な目標割れ容認のどちらについても、「技術的な対応」と言うよりも、「金利の正常化」、あるいは、「金融政策のノーマライゼーション」に向けた一歩という意識で政策対応をすべきであると考えています。』

その後では今回のなお書き対応についてこう発言。

『総裁をはじめボードメンバーがこれまで対外説明に時間をかけてきたので、「当座預金残高目標は資金需要の減退に対応した受身的な対応であって、金融引き締めではない。」という我々の考え方は、金融市場では相当程度受け入れられていると理解しています。』

一応この間の文を一生懸命に読むと、かなり強引な理屈の展開にしか思えませんが、さすがに頭のよろしい方が講演しているだけに、論理的に明白な破綻は無いところがまた憎たらしいのですが(^^)、こう並べると(゜д゜)ハァ??って感じになりませんか??

それに政策決定会合後の総裁記者会見では「なお書き対応は技術的対応」となっておりましたて、それが政策委員会の公式見解であると理解しておりますが、それを技術的対応じゃないというのであれば、水野さんは政策決定の場でちゃんと議論を行い、「技術的対応という位置づけならば反対」とするのが審議委員としての筋というものでは無いでしょうか????


こんな所でも自己矛盾。さっきの「当預残目標引き下げオッケー」の続きにこんなことを仰せでございます。

『短期金融市場を正常化させるためには、当座預金残高目標を段階的に引き下げて、無担保コール翌日物金利はゼロ近辺で安定させる一方、短期のイールカーブは将来の金融引き締めを多少意識して緩やかにスティープ化している状況が望ましいと思います。』

ところが、この後に「量的緩和政策はゼロ金利+時間軸」って話をしておりまして・・・・

『長期金利の低位安定は、量的緩和政策の効果というよりも、ゼロ金利政策の効果であると判断しています。(中略)仮に私が「現在のわが国の経済金融情勢に最も適当と思われる金融政策の枠組みは何か?」と聞かれたならば、ゼロ金利政策であると答えると思います。』

・・・・・・・・・(-_-メ)




・日銀批判に答えておりますが・・・・

あたくしの悪態が聞こえているのであれば誠に光栄でございます(^^)。

「4.(以下面倒なので目次は数字だけ)」の前半部分。

『一部に、人が変わると金融政策が変わることは危険であるという考え方もあるようですが、任期5年の政策委員会のメンバーが複数入れ替わる頃には、経済・金融システムなど金融政策を取り巻く環境は変化していると考えるのが自然です。また、政策委員会のメンバーは、金融政策運営についての考え方、哲学が異なります。』

じゃあ政策運営が「前後不接連」でも宜しいと仰るわけですかそうですか。そうであれば、今後は量的緩和政策に関して「期待に働きかける」だの「時間軸効果」だのということは有りえませんな。何せ人が変ると金融政策が変るんですから、あっはっは。

『金融市場では、どのメンバーはインフレ・タカ派、あるいは、インフレ・ハト派であると言った議論をしますが、その背景には金融政策に関する政策委員会のメンバーの考え方が異なるとの判断があるはずです。米国では、FRBの理事の任期が終了すると、新政権の考え方に近いメンバーがFRBの理事に任命されます。ですから、まさに「人が変われば、金融政策が変わる」と言えるかもしれません。』

と、こういうときにさっくり米国様の事例を持ち出しますが、そもそも日本の行政機構は「ビューローは変らず」となっているので、都合のいいところだけ引っ張ってきて比較するというのは科学的態度とは申せませんなぁ。

しかし本石町日記の中の人を意識したかと思われるこの件はシビレました。



「5.」の最後の方。

『一部の市場参加者から、量的緩和解除の3条件が満たさないうちに当座預金残高目標を引き下げることは約束違反である、と批判を受けることがあります。個人的には、この見解は金融のプロらしからぬ見解だと思います。』

もしかしてこれはあたくし向けですか(なんて訳はございませんですね^^)??

えーっとですな。約束違反などとは申しあげてませんが、んなこと言う方もいるのでしょうか?約束違反なんじゃなくて、当座預金目標を引き下げるなら引き下げるでちゃんとした政策ロジックを組んでいただいかないと、その政策の妥当性に関して論議も出来ないと思うのですが。

『ここでは、2つのことを指摘したいと思います。第一に、日本銀行は、量的緩和解除の3条件が満たされるまで、量的緩和政策の「枠組み」を変更しないとコミットしているのであって、当座預金残高目標を30〜35兆円程度に維持することをコミットしているわけではありません。』

素晴らしい屁理屈。ではこちらからも。誘導目標を幾らにするというのを「金融政策」として決定しておりますが何か?誘導目標を引き上げる時に「量的緩和政策の強化」と言ってますが何か??

『第二に、仮に日本銀行が量的緩和政策の枠組みの「量」の部分について当初期待していたほど効果がないと判断したならば、30〜35兆円程度という巨額な当座預金残高目標を維持することは、「真の説明責任」を果たしているとは言えないと思います。むしろ、量的緩和政策の副作用を少しでも和らげることが国益に合致していると思います。』

それは機関決定されてますでしょうか?先日の展望レポートでは副作用の話はありましたが、効果と副作用を比較論じて副作用の方が大きいというような話ってありましたっけ??その説明抜きで「金融政策の正常化」とやらに手をつける欺瞞性に関して悪態ついてるんですが。


○えーっと時間もなくなりましたので・・・・・

やっぱり時間切れになってしまったので、記者会見に関して書けませんでした。ブルームバーグニュースの昨日17時5分付のニュースに詳しく(また日高さん福島にご出張ですな^^)ございますので読んでいただければ(つーか多分今日の夕方になると日銀Webにアップされるでしょう)血圧が上昇することうけあいです(-_-メ)。

当座預金残高引き下げのスケジュールを延々と話したり、「不謹慎な言い方だが」と断りは入れながらも「日銀がゲームに勝つためには、債券市場を崩さなければ結果責任を果たせるのではないか」と話をしたりもう言いたい放題で誠に香ばしい。

でも、あんたの発言が報道されてから中期債中心に相場は下落しましたから〜残念!って感じですわな。まぁたかだか30銭程度の下げでは下げとは言わんけど、入札日の後場という業者がロングになっている所でそれを言うなって感じですなぁ。

それから「わたし自身は5月の債券相場は絶対に堅調だと思っていた」などとも会見で話していたようですが、あんたはストラテジストじゃないですから〜残念!イールドカーブスティープニング斬り〜!って感じですな。正直、この人が債券市場代表者として扱われるのは物凄く頭が痛い。

詳しくは週明けにでも。

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2005/06/02

お題「結局30兆円割れですな」

○昨日の金融調節と債券市場

昨日もしかしたら翌日スタートの資金供給があるかもしれないという期待がかすかにあったのですが、まぁ案の定昨日のオペもは6月3日スタートでおまけにエンドが10月4日で本店オペとまぁ相変わらずの自然体オペレーション。結局本日の当座預金残高見通しは1日残高速報31.36兆円から現時点では2.21兆円マイナスで29.15兆円となる見込み。本日即日供給オペが実施されないとそのまま無事に(?)30兆円割れがスルーとなる見込みでございます。詳しくはこの辺をご覧下さい。

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/jp050602.htm
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/jx050601.htm


ところで、債券市場は相変わらずの状況で、火曜日に米国10年もの国債が4%割れ(今朝はもう一発金利低下してますが)となり、こっちの10年国債入札が翌日に控えているのにまぁ見事な上昇と相成りました。昨日は一応押し戻しましたけど、まぁこの買い方は久々に見る「踏み上げ相場」の様相でしたわな。

どうもここ2年ほど6月になると株高債券安ってのが記憶にあったこともあって「6月暴落説」ってのが結構信じられていたようですが、この手の話は皆が信じると逆に行くというお約束通りにまず最初にショートの踏み上げをやる破目になったようですな。ナムナム。

本日は10年国債入札なのですが、余計な事に米国債が大幅続伸しておりますので、1.2%クーポンでも無問題くらいの勢いになってしまいましたわな。昨日の高値近辺では戻り売り(カバードコールも含め)がそこそこ出たようですが、昨日の高値をあっさり抜いちゃうと益々踏み上げという実に涙無しでは見られない展開の悪寒も。

いやはや驚きましたが、31日のドラめもんで生保決算での偉い人コメントを捕まえて「結局買えてないんでしょうなぁ」などとやや本人半分軽めのタッチで書いた通りの動きですか。もっと前に日経公社債情報での大手銀行運用計画アンケート結果が揃いも揃って本年度10年金利下限1.3%になっていて、その記事が出た時に既に1.3%割れていてその後も全然金利上らないという香ばしい現象の再来となってしまいましたな。

まぁどうでもいい話かも知れませんが、金融機関のメガ化によって大手運用機関の一挙手一投足がそのまま相場のファンダメンタルズを形成しちゃうようになっている昨今ですし、一々この手の運用計画に関して具体的な金利水準とか投資予定額とかを開示する必要があるのか、質問されたからといってホイホイ答える必要があるのかという点については考え直した方が良いのではないかと思いますがね。そりゃまぁ開示してくれた方が局外者にとってはウッシッシではありますが(^^)。


○総裁、その発言はどうかと思うぞ

時事通信の報じる所によりますと、福井総裁は経済財政諮問会議終了後に当座預金残高の目標下限割れが起きるとの見方について、「あすになってみないと分からない。市場の中で自ずと決まる」と答えたそうです(ソースは1日19時11分配信の時事メイン)。

まぁお馴染みのその場での当意即妙なるご発言だと存じますが、今現在まさしく当座預金残高の誘導を政策として行っている筈なのですが、「市場の中で自ずと決まる」ってそりゃ何よという感じでございますな(-_-メ)。まぁ要するにその辺が福井総裁の本音ってことで今まで良くもまぁ猫をかぶり続けたとそっちのほうに感心するやら呆れるやらと言ったところです。

ちなみに、そのニュースでは調節方針について「(現場に指示は)しない。現場の責任でやらなければうまくいかない」とも仰せでして、「市場機能を封殺しないでとことん供給」という訳の判らん方針にのっとってオペレーションをしなければいけない現場の中の人に対しては激しくご同情申しあげたいところです。

昔々あたくしがとあるところ(今いる所ではないので念の為^^)でディーラーをやっていた時に、一日終わってから日中のチャートを見ながら「ここで売ってからこのあたりで買い戻しをしていくんだ」と得々と解説したり、「良い所で買っとけ」などという発言をする素晴らしい上役がいましたなあそういえばあのひと元気でやってるかなあなどと懐かしく思い出してしまうような福井総裁様の「現場の責任」発言でありました。あっはっは。



○で、本日の予想

資金供給オペレーションに関しては、一応30兆円維持の茶番もとい努力の姿勢はお見せしないとアレでしょうから、本日は9時20分に即日供給オペ8000億円とか1兆円とかやってくるのかと思います。即日オペの場合は事務作業の都合上だと思うのですが、基本的に本店オペ形式で実施する筈ですんで、そもそも札が集まりにくいのですが、念には念を入れて(笑)期間2週間とかで益々札の集まりにくいオペレーションを実施するものと勝手に大予想。

これでノーオペだったらもうやる気無し無しもいいところなんで、中々根性の入った姿勢だという感じですが、はてどうなるんでしょう。結構楽しみではございます。


○債券市場は当預目標下げを織り込みに逝ってるの鴨・・

まぁ与太話ですが・・・・

ここもとの債券市場上昇。需給関係とか米国の長期金利低下に引っ張られているとか色々要因はあるのですが、以前ちょっとギャグで申しあげたように「景気先行き不透明な中での日銀逆噴射の悪寒」というのがメインシナリオだという事になりますと、米国債券市場でまさに起きている長期金利低下&短期金利はあんまり下がらない、(つーか米国だと政策金利は上るので上る)というセットが発生しても何らおかしくはないとなりますか。日本の場合は日銀逆噴射でオーバーキル懸念ってことになるかと思いますが。おーおそろし。

まぁ短期金融市場と債券市場だけ見てる分には、明日いきなり当座預金残高目標を引き下げても何ら問題ないって相場の様相でございますんで、中央銀行の皆様に置かれましてはウハウハなのかも知れませんが、ちょっと落ち着いて欲しいなぁとあたしゃー思うのでありました。いちトレーダーとしては相場が暴れた方が楽しいというのはありますけどねぇ。。。。。

という訳で10年入札に関してコメントする気力が起きませんでしたが、どうせ踏み上げ入札になるんでしょとしか言いようがありませんな、とほほ。

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2005/06/01

お題「当預残目標下げたいのでしょうか???」

日銀方面から連日大量のネタが投下されておりまして、フォローが全然追いつきません(涙)。

○昨日の資金供給オペも自然体?

昨日の資金供給オペは通常6月2日スタートになりますので、最も注目を集める所なのですが、実施されたオペレーションは手形オペ1兆円。このオペ実施まで織り込んで6月2日の当座預金残高を推測すると28.5兆円〜29.5兆円程度と想定される(予想する人によって少々違うが大体29兆円くらい)ようで、いよいよ30兆円割れが眼前に迫って参りました。

しかも今回はどう見ても総裁の言う「とことん」でも何でもないオペレーションでして、当座預金残高目標の30兆円を何としてでも維持しようという姿勢に著しく欠けるオペレーションですわな。

その割には某経済新聞あたりからはあまり「30兆円割れを意識的にやってるだろうゴルァ!」という声が聞こえないのは、日銀の宣伝が効いているのか、それとも目先の損得勘定が得意な金融市場と致しましては金利が上昇してくれた方が利益に繋がるので敢えて余計な事を騒ぎ立てないうわなにをするkmjhgぃjr。


・・・・以前もちょいと書きましたが、これは金融市場が誤解されている面なのですが、債券市場って確かに暴落されると困る人は多いのですが、少々の下げあるいはペースのちんたらとした下げであれば「運用環境の改善(債券は持ってるポートフォリオが時間の経過と共に利払いあんど償還されていくので再投資リスクというものがある)」と歓迎される傾向にございます。

ということで、今のところ債券市場は当預30兆円割れとその先にあるものに関して織り込んでいるのか織り込んでいないのかよく判らんといったところでしょうか。まぁ昨日ご紹介した生保決算での生保の偉い人コメントなんか見てると運用圧力は相変わらずですんで、下がっても限定的でしょっていう目先の需給問題が大きいのだとは思いますが。


○2004年度の金融調節

26日に「2004年度の金融調節」というお題で本文20ページに図表つきまくりで40枚分くらいの大作が日本銀行金融市場局のお名前で出ておりました。40枚あるので読むの後回しにしていたら早速各所でネタになっておりまして、某マーケットエコノミスト様におかれましては「日銀が行っている資金供給オペが、短期金融市場の機能を破壊していることに明確に言及している」「金融市場局は常日頃、市場と直接対話しているだけに、量的緩和策が市場機能にダメージを与えていることに対する問題意識は強い」などとわが意を得たりと意気軒昂の図と言ったところですな。

で、まぁ量が多いのでとりあえず話題になっている「金融調節に関する留意点」ってところを読むと、確かに「???」な記述が。

http://www.boj.or.jp/ronbun/05/data/ron0505b.pdf
の18ページから始まる部分です。

『一方で、これまで上述のような金融調節を行なってきた結果として、次のような現象が生じている点にも留意が必要である。』

『第一は、短期金融市場の機能についてである。高水準の当座預金目標を達成するために、資金供給期間の長期化や需要が見込めるオペ手段の機動的な実施が必要となり、結果として、関連する市場のリスク・プレミアムを、需給を通じて直接的に縮小させる面があった。』

いやあのそれは量的緩和政策の企図した所の筈なんですが。

『こうしたプレミアムは、民間経済主体の将来に対する予測に基づいて変動するものである。日本銀行がオペを積極的に活用することは、自らこのような市場機能を代替することとなるため、市場取引を減少させる面がある。』

総裁様は就任記者会見(http://www.boj.or.jp/press/03/kk0303c.htm)でこんなことを仰せでしたが、そのご発言の目的が達成されているのであれば、例えば資産担保証券の買入は廃止するとかアクションは無いのでしょうか。どうもこう整合性の取れないというか広げてる大風呂敷の右と左でやってる事が違いませんかねぇと思います。

『従って、デリバリー・チャネルというか、お金を末端にきちんと届けるという「出前持ち」のような仕事は、大変地味に見えるが、そこを愚直にやっていきたい。そのためには、銀行貸出のルート、あるいは銀行貸出のルートを通じない場合には、債券市場その他のマーケットの機能の活用を通じて、お金が広く伝播することを考えていかなければならない。』(2003年3月20日の就任記者会見)

つーかそれ以前の問題として、銀行貸出って伸びてるんですか?不動産向けは絶賛大拡大でしょうけど。

『例えば、コール市場取引をみると、金融機関の信用力の改善に伴ってある程度回復しているが、(以下馬鹿馬鹿しいので引用略)』

で、また金融機関の信用力の改善によってコール取引が活発化(この時点で変だが)する時に資金供給をしまくるのはけしからんという無茶苦茶な理屈が爆裂しております。そんなに短資会(自主規制)。次に参ります。


『第二は、日本銀行の資産の流動性についてである。』

ってな事でオペ期間が長い事と保有国債が多いことを問題視しているという誠に意味の判らん話が延々と書いてあるのですが、そもそも短期市場金利がゼロになっておらず、金利操作をやっている国の金融調節とわが国の金融調節を比較して論じる時点で訳判らんのですが、これはいわゆるひとつの我田引水ってやつですかそうですか。

『また、短期資金供給オペについては、2000 年度末時点のオペ残高は、3 か月以内に満期を迎えるものが全てであったのに対し、2004 年度末時点でのオペ残高の残存期間をみると、半分近くが3 か月以上となり、2 割程度が半年以上となるなど、かなり長期化している。』

2000年度末は量的緩和政策導入直後で当座預金残高目標は5兆円でしたが、その時点と今を比較してオペの期間が長くなったって当たり前のような気がしますが、どこがどう問題と仰せで??

『主要国中央銀行は、オペの期間を短期に設定するなど、資産の流動性確保に努めているが、日本銀行にとっても、金融政策の遂行能力に対する信認を確保するために資産の流動性を維持することは重要な課題のひとつである。』

あまりそういう意味での流動性は意味あるのかねって思う(以前申しあげた理由ですな)のですが、百歩譲って流動性を維持するのが重要な課題だというのであれば、流動性を維持することによって量的緩和の量を削減する場合のデメリット(デメリットは無いと言うのであれば、今までの金融政策は全部茶番だったと言う事になりますが・・・・)と比較論評して然るべきではないでしょうかと思うのですが、当座預金残高目標の維持に問題ありありという論理展開は中々豪快で頭の下がる思いであります。


○備忘録:福井総裁のソウルでの発言

ブルームバーグニュースに発言内容が載ってましたな。5月27日13時55分配信のニュースでした。しかし日高記者@ブルームバーグってソウルにもお出かけだったんですね。まさに東奔西走(^^)。

「市場のなかで、従来の(景気が)悪いとき、日銀という一種の散水車が水を撒いても何も芽が生えてこなかったのと比べると、今は、散水車が同じように水を撒き続けているわけだが、地面は水浸しになっている。しかし、その中から『取引は自分たちでできる、少しは金利機能を生かしながらできる』という新芽が出てきている」

「そんなに新芽が一夜空け(原文ママ)たら出揃うわけではないにしても、ポツポツと新芽が出てきたとき、散水車がそれを全部踏みにじったり、それで根腐れを起こしても平気だ、というのは、やはり将来のことまで考えて良い結果を出そうとする金融政策の姿勢からすれば、無責任になる。引き続き、散水車は水を撒き散らして走るが、新芽には注意深くいかなければならないのではないか」

以上自分の備忘録のために引用しておきました。まぁこれら状況証拠を並べると当座預金残高目標引き下げはもう目前ですな。なんちゅうか人から聞いたゼロ金利解除前の日銀驀進モードに似ている気が・・・・(-_-メ)。

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2005/05/31

お題「とことん供給してますか?/審議委員活躍する」

○結局買えてないんでしょうなぁ

昨日は生保各社の決算が発表されてましたが、その中で情報ベンダーがフラッシュ打っていたのは日本生命様の偉い人のコメントでして、曰く「今の長期金利水準は低すぎて異常。下期の長期金利は1.5%以上と想定」。暫く前にご紹介した日経公社債情報での大手銀行運用部門アンケート(記事が出た月曜に10年金利が1.3%割れたのですが、アンケート結果は「本年度の10年国債金利のレンジ上限が1社を除いて全員1.3%でした。当然ながらそれから相場は堅調ですが・・・)を思い出しますわな。そんなに異常だと思うのでしたらお売りになられた方が吉かと存じますが、まぁ売る人がいないというか売る物売っちゃった後なんで、やりようが無しと逝った所でしょうなぁという感じです。足もと見透かされるからあまりコメントしない方がいいんじゃネーノって気もしますが。こりゃ下がらんわ。

というような需給動向がバックにあるので、あたくしが毎日のように金融調節が妙で当預目標引き下げを視野に思いっきり入れてるんじゃネーノって思っていても、債券市場としては「やるかやらんか分からない金融政策話よりも目先の好需給」って感じで金融調節をあまりネタにしていないですわな。


○昨日の金融調節

昨日の資金供給もまたちと「とことん」的な雰囲気の無いものでございました。10時10分に国債買現先がオファーされましたが、期間が6月1日〜7月28日ということでまぁそんなに応札の少なさそうな設定になっておりました。案の定4000億の予定額に対して落札3100億円と見事に札割れ。おまけに13時の手形買入オペはちゃっかり見送りとなりまして、さて税揚げの6月2日の資金不足での当預目標維持は出来るんでしょうかって所ですわな。まぁ今日はそこそこオペを打ってくるとは思いますが。

昨日も申しあげましたが、今回の資金不足に対応するオペの打ち方は今までのパターンとは違う「自然体」という感じです。基本的に今までですと「とにかくこれでもかと資金供給をしておいてから、後で調整を行うために吸収をしてくる」というパターンでした。ところが調整吸収が3月末の時は4月を待たずして実施されたので、慌てた人たちの取り上がり攻撃で期末のレポ金利が上昇しちゃったりしたのですが、まぁその時点から深慮遠謀があったのかもしれませんな。好き勝手な推測ですが。

恐らく「市場機能を封殺しないオペレーション」という何かわかったような分からないような総裁の宣言(?)に対する現場のお答えがこのオペレーションなのかなぁという感じです。「とりあえずこれでもかと供給してから後で考える」ってパターンが「まぁ不足分を大人しく埋めていきましょ」ってのに変っておりまして、先日の総裁記者会見における総裁の「とことん」の方は例によってお為ごかしのリップサービスというか売り言葉に買い言葉発言だったようですにゃ。いい加減その「売り言葉に買い言葉」は止めた方がよいのでは。

ちなみに総裁の謎発言再掲します(5月20日記者会見)

『今回「なお書き」を設けて対応する場合にも、オペはとことんまでやるということであり、「とことん」という意味は、市場の中で市場機能を封殺する度合いがあまりに行き過ぎないかということを、現実にオペレーションをしつつ感じながら、ぎりぎりまで限界を追求する。』

こんなこと言わなきゃいいのにと思うのはあたくしだけでしょうか??


○審議委員走る

週末から今週にかけて審議委員の皆様があちこちで発言やら講演やらなさっておられます。先週は中原審議委員の講演(26日)をご紹介しましたが、週末には金融学会で岩田副総裁の講演が行われた(講演内容がどこにあるのか判らんです。苺BBSの経済板で講演の要点を報告したレスがございましたが、今のところそれしか見てないです。学会に行けば資料とか配布されたと思うんですが、日銀Webにのっけてくれないかなぁ・・・・・と思いますが内容の話によるとちと無理ぽの悪寒も^^)ようですな。

昨日の福井総裁は、国際コンファランスでの開会挨拶でまた発言。週末には日経新聞のインタビューに西村審議委員が答えているようですが、日経読まない無精者なので内容は存じません(大汗)。つーか特定メディアとのインタビューの時は後で残るのが新聞記事のテキストだけになっちゃっうので、後からトレースできねぇじゃねぇかよと思いますが。


・中原審議委員記者会見での発言より
http://www.boj.or.jp/press/05/kk0505c.htm

『日本銀行はこれまで量的緩和政策下における当座預金残高目標の引上げを「緩和」という表現で説明してきたこととの延長線上で考えれば、個人的には、当座預金残高目標の引下げは、「引き締め」と受け止められる可能性に注意しておく必要があると思う。海外の機関投資家の中には、当座預金残高目標の水準自体が緩和度を表す指標であると理解している先も少なくない。そうした中で、景気情勢の微妙なこの時期に、当座預金残高目標を引下げることが果たして妥当かどうか、大いに疑問がある。』

『私は、就任当初から金融政策の透明性向上を重視してきており、そのフレームワークとして、インフレ参照値――これは「望ましい物価上昇率」といったほうが正しいが――の導入を主張してきている。ただ、日本銀行が望ましい物価上昇率を具体的な数字で示すことによって、人々のインフレ期待を高める効果については「全くゼロではない」と思っている。なお、長期国債買入の増額は、様々な副作用を伴うため、現時点では実施すべきではないと考えている。』

というのが基本的スタンスなのですが、長期国債買入増額に否定的だったり、量的緩和の期待への働きかけについてあまり積極的な評価をしていない(上記引用部分でも「全くゼロではない」という言い方ですし)あたりがどうも今一歩何を言いたいのか良く判らんところではあります。


・福井総裁の国際コンファランス(日銀金融研究所主催)での挨拶より
http://www.boj.or.jp/press/05/ko0505d.htm

『中央銀行にとって最も重要な成果は、特定の数値目標を達成すること自体ではないと考えています。ある一つの特定の物価指数が現在安定していることは、将来の持続的な成長を常に保証するものではありません。それゆえ、中央銀行が持続的な成長と整合的な物価の経路を追求していくようなインセンティブを生み出すように制度を設計していくことが重要だと考えます。』

いやまぁ経済の持続的な成長が最大の目的ってのはそりゃそうですけど、インフレ参照値を主張する人も経済の持続的な成長に寄与するための手段として参照値を入れましょって言ってるんじゃあーりませんかねぇと思うのですが。この調子では景気が無事に回復したらそのまま昔の金利政策に戻るだけになりそうですな。国会なんかではインフレ参照値に理解ある振りをしてますがね。

『私自身は、日本銀行政策委員会議長としていくつかのことを心に留めています。第一に心にとめている点は、反論や少数意見を歓迎することです。そうした意見は最終的には良い決定に貢献するものだからです。第二に、私の姿勢が議論にあまりに大きな影響を与えないようにすることです。』

ひょっとしてそれはギャグで言って(以下略^^)

金融政策の方向を変えようという動きをしだしたら急に反論少数意見大歓迎ですかそうですか。今までそんなこと言ってませんでしたけどね。

岩田副総裁と西村審議委員の件に関してはソースを鋭意捜索致します。

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2005/05/30

お題「やっと反応したのか?」

只今放映中の某経済お笑い(じゃなくてニュースらしいが)番組で某経済評論家が「グローバル市場の勝ち組負け組」ってお題で話をしてます。で、各国株式市場のインデックスが上昇しているのを「勝ち組」とか言いながら話をしているのですが、勝ち組負け組の判定がわずか直近2ヶ月の株価推移でございますかそうですか。そりゃまた素晴らしい「グローバル」な視点ですなぁ。さて、東京MXでも見るか。

などという悪態はさておき、月曜は毎度の如く調子がでませんのでヘロヘロと。

○金曜日の金融調節

金曜日は10時10分のオペで短期国債買入を実施したものの、13時のオペでの手形オペの実施は無し。ということで、先週と同じく短期国債買入は週に1回という形になりましたんで、暫くはこのペースになるのでしょう。

それにしても金曜日の金融調節も「とことん」とは言い難いオペレーションでして、そんなに30兆円維持が楽勝なのか、それとも総裁の口は「とことん」と言いながらも「とことん」じゃないのか難しいところです。まぁ今週後半になれば嫌でも結果は判明しますがどうなんでしょう??

「資金供給オペはとことん実施」「市場機能を封殺しないようにオペを行う」などの総裁語録によって苦労させられているのは現場の方々ですわなぁと存じます。あたくしの勝手な想像の世界になりますが、恐らく「市場機能を封殺しない」って言葉によって今までの資金不足期に毎度行われていた「先に大量供給しておいて後から余計な分を吸収する」というツイストオペ攻撃がやりにくくなったのではないかと想像しております。そのためにどんどん供給オペを打たずに何となくオペが小出しの印象を与えるのではないかと。

ま、実は「6月は30兆円割れなさい」なんて施策が出ているのであればそれはそれで笑える(笑えないけど)話ではありますが、さすがにそこまでは無いでしょって思いたいです。


○福井総裁の「市場機能」発言またも

金曜日の福井総裁はソウルでの国際金融セミナーのようなものにご出席。そこで「On Stabilization Politics: A Centaral Banker's Reflaction」ってお題で講演をしております。で、本当はこの講演を訳出しておかないとと思っていたのですが、例によってナマケモノモードになってしまい斜め読みしただけだったりします(汗)。ちなみに本文は英語なので、英文ページだけにしか掲載されておりません。(http://www.boj.or.jp/en/press/05/ko0505b.htm)

英語のスピーチと言えば昨年の6月には武藤副総裁がロンドンで行った英文スピーチを誤訳してレポートを作ったどこぞの証券会社のレポートをネタにして債券大いに下落という事件がありましたな。その時の学習効果で今回は日銀Webのトップページの新着情報で「英文スピーチはこちらを読め」というのが出ておりまして誠に結構ですな。で、さっき「誤訳」と言いましたが、どう考えてもそりゃ意図的なインチキ訳出だし捏造じゃねぇのかというレポート書いた張本人は別にお咎めも無かったんですかねぇ。何だかなぁ。

余談はともかく、昼休み時間に情報ベンダーからフラッシュで流れていた福井総裁発言で、「市場機能の新芽が出てきている」という趣旨のものがありました。どうも講演後でのぶら下がりで先般のなお書き追加についてコメントしたことのようです。

先日ご紹介した金融政策決定会合後の記者会見でもそうでしたが、ここの所総裁の口から出てくるのは「市場機能」って言葉でありますな。この「市場機能」って何のこっちゃというのに関しては金曜日の時事メインコラム「金融観測」でも『もっともこの「市場機能」が何を意味するのかは、市場関係者には「分からない」し日銀内にも分かる向きはいない(27日17:09配信記事より)』といわれておりますし、あたくしも実の所よー判らん。

よーわからんのですが、市場機能と言われますとやはり短期金融市場ということになるとおもいますんで、あたくしの解釈は「短期金融市場におけるタームもの取引の活性化」って事になりますんで、必然的に「長めの短期金利が上昇」って発想になりますが、まぁそれも正しいのかどうかは神の味噌汁でして、市場でも解釈に苦慮しているというのが現状ですわな。


○で、相場は反応したのか?

金融政策決定会合後の債券市場は、こちらでも申しあげたように中短期ゾーンの債券がやたらめったら堅調推移となっておりまして、あたくしとしては「何でよ?」という動きが継続しておりました。

しかし、金曜日の午後あたりから債券市場では3年〜5年あたりが妙に重くなってきまして、やっと中短期ヘロヘロの図になってまいりました。まぁここの所強かった分の単なる反動なのかも知れませんが、13時の手形買入見送りと福井総裁の「市場機能」発言に反応したのかも知れませんし、その辺は本日の動きを見ないと何とも言えませんな。

どうも債券市場では相変わらず短期金融市場というか金融政策に絡むお話に関しては反応がワンテンポどころか2〜3テンポ遅いという傾向がございまして、どうもこっちが「市場が反応しないどころか想定の反対に動くって事は市場は織込済みだったのか・・・」と悩む頃に反応するという不可思議な展開が良く発生しております。

今回もそうなるのかな??(って書くとならなかったりするのですが)

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2005/05/27

お題「執行部以外で6分の4/昨日の当預動向」

月末までインデックス系の長期化期待がある筈なのですが、昨日は思いのほかパッとしませんでしたな。まぁ一昨日ちと引けで突如強くする攻撃をやりすぎたと言う事で。それにしても中短期ゾーンがやたら強く、まぁ相場が高値圏という意識で資金逃避的な買いも入っているのでしょうが、当座預金残高がどうのこうのだとか市場機能回復がどうのこうのとか言っている最中に中短期債堅調推移ってのも驚き桃の木。

まぁそれだけ投資家さんが下げ警戒で買えてなかったというのと、期初の想定レンジをぶち抜けてしまって掛けていたカバードコールが悉く行使されてしまい、ポジションすっからかんの巻というのもあるようですな(しかし行使された後に残高足りないとか言って買うならコール売るなよって毎度毎度思うわけですがありゃ何なんでしょ?)。どうも今百歩くらい相場がよー判らん動きですので、相場展開に悩み血圧上げっぱなしの今週でした(ってまだ終わってないが)。

○昨日の補足:結局執行部以外で6分の4な訳だが

昨日ご紹介した4月5、6日の金融政策決定会合議事要旨。福間審議委員の当座預金残高目標引き下げ提案は否決されましたが、「今後の政策について」って事で当預引き下げに賛意を示したのが3人いますがこりゃ誰よ?って話をしてましたが、須田さんと水野さん以外の1名は春審議委員(どうでもいい話ですが、情報ベンダーのフラッシュで「春日銀審議委員」ってのが出てくるとついつい「かすが・ぎん」と読んでしまうのはあたくしだけですかそうですか)だということでファイナルアンサーらしいですな。(編集時追記:消去法で自明という説も。武藤さんと福井さんは無言でしょうし、中原さんは反対でしょう)

となりますと、近いうちに当預目標下げろっていうのが執行部以外の政策委員会審議委員6名中4名になっている訳でして、こりゃまぁちとどうなのよって感じですな。当預目標維持を強調しそうなのは岩田副総裁と中原審議委員くらいでしょうし。



○昨日の当座預金動向:日銀VS財務省????

昨日のドラめもんであまり「とことん」さが見えてきませんなぁと悪態をついたのが聞こえた訳でもないでしょうが、昨日オファーされた手形買入は本店じゃなくて全店オペでして、しかも期間が3月15日エンドなので中間期末と年末越えというオペで、一昨日に実施した10月14日エンドの本店オペと比べるとまぁ札が入りますなぁというオペでした(事実、応札倍率も2倍台後半となっておりました)ので、少々やる気が見えたかなって感じではあります。

しかしながら、短期国債買入は実施されず。一昨日に行われた13週間ものFBの入札が毎度お馴染みの平均落札価格100円となっているので、短期国債買入を「市場に配慮して」行わなかったのかもしれませんが、昨日時点で当座預金残高が31兆円切っている状態で短期国債買入を実施しないで放置プレイとなると30兆円維持がしんどくなるんで、上述した手形オペを「ちゃんと札が入るように」実施したと言う事でしょうね。

本日はさすがに短期国債買入実施するんでしょうが、それだけ「市場に配慮」してくださるのであれば、馬鹿入札合戦が横行する短期国債市場を冷やす意味で本日も短国買入見送る根性を見せていただけると誠に恐悦至極に存じます。ちなみに、国債系のオペレーションは証券会社の落札も結構ございますが、手形オペは準備預金対象の人たちの参加となっておりますので、昔の常識では「日銀貸出>手形オペ>国債系オペ(当時は短期国債の買現先が基本)」の順で準備預金に対して効きがよろしいので、同じ供給金額でも左ほど「緩め調節」というのがありました。まぁ手形オペ頑張って打って下さいね(はぁと)って感じです。


で、もう一つ笑ってしまったのは昨日財務省から発表された「国債等の入札予定の変更について」でした。6月10日ですんで再来週の金曜日に入札をおこなう予定だった政府短期証券(FB)2ヶ月程度ものの入札を行わないことにしたそうで。
http://www.mof.go.jp/jouhou/kokusai/yotei/1706a.htm

まぁここのところ政府短期証券の発行は3ヶ月というか13週ものをメインにするようになっていて、2ヶ月ものの発行を減らして実質的に3ヶ月ものに一本化しましょうって動きの一環のようではあるのですが、公表されたタイミングがちょうど「おいおい日銀当預残維持する気あるのかよ」って懸念を一部のマニアが抱く「短国買入見送り」の直後だったので、なお笑ってしまいました。

と申しますのは、この対比って「資金供給をとことん・・・じゃなくて自然体で実施している(ように見える)日銀」に対して、「すぐに発行額をいじれる政府短期証券の発行を減らす(ことにより当座預金残高維持に協力しようとするように見える)財務省」って対立構図を思わず想像しちゃうわけですな。え、そんなことを考えてしまうあたくしは考えすぎですかそうですか。

まぁそこまで狙ったわけでは無いと思いますがね。

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2005/05/26

お題「どうも引っ掛かる日銀の資金供給/ありゃりゃの議事要旨」

おお!5時36分のNHKニュースで「4月5、6日の金融政策決定会合で当預目標引き下げが初めて提案され、28日には票決が8対2になり、先日一時的目標割れを容認と議論が進んでいます」って報道しとる!!別に解説も何も無い報道ではあったが。

・・・ということで、どうもこう金融政策の変調ぶりは気になるのですが、債券市場はとりあえず「将来の当預目標引き下げ懸念よりは目先の需給要因」って感じで順調に踏み上げモードとなっております。上りだすと上る攻撃恐るべし。

○どうも引っ掛かりますな

何せウン年ぶりにチョー真面目に資金需給のチェックをしだしたので、色々と人に教わりつつ再勉強モードでありまして、少々雑な話になるかも知れないことを予めお断りしておきます。

昨日の資金供給オペは本店手形買入オペの新規実行。一瞬「こりゃ悪態でも聞こえましたかね」などと思ったのですが、蓋を開けてみると絶賛札割れ。「??」と思って短期市場の人に聞いてみるとそもそも手形オペにおいて応札の入りやすいのは「全店オペ」>>「本店オペ」であり、ついでに昨日のオペ期間もそんなに札の入りやすい期間ではないので札割れ当然とのこと。まだまだ勉強不足です>自分

と言う事は、昨日の資金供給姿勢もどこがどう「とことん」供給なのかさっぱり判らんという状況であったという事のようでして、何だか当座預金残高30兆円割れを放置する方向でやっているように見えて来る調節姿勢でございます。本日以降(昨日はこの「いこう」がタイポしまくりでしたな)は短国買入がある筈なのですが、先週1回しかやらなかった訳ですがさて今週はどうなんでしょうという感じです。

もう一つ気になるのは昨日の日経金融記事。2面の「BOJウォッチャー」といういつものコラムがあるのですが、そこを見ると「日銀の積極的な資金供給姿勢は変っておらず、市場は安堵感」みたいな記事がありまして、これまた「????」な訳です。本来資金不足になると長めの期間の資金供給オペをガンガン打っておいて、後から短めの期間吸収オペを打つというのが恒例行事だったのに、このチョー自然体オペはどうも怪しいと思うのだが。日経が妙に日銀の提灯もとい日銀の意向を受けたかのような報道してるのが気になるというか、もしかしてこれは「大本営発(以下自主規制^^)。

引き続き資金供給オペに関して注目していきたいと存じます。


○せいさくいいんかいのゆかいななかまたち(小見出しから棒読みか!)

4月5、6日の金融政策決定会合議事要旨が公表されました。
http://www.boj.or.jp/seisaku/05/pb/g050406.htm

本当は経済情勢の分析とか先行き見通しの話も読まないといけないのですが、あまりにもあまりな内容ですので、紙に打ち出すと6ページ目の後半あたりから始まります「III.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要」ってところをば。

・当預引き下げ提案に賛同した人が3人??

『こうした大勢意見に対して、ひとりの委員は、当座預金残高目標を減額し、「27〜32兆円程度」とすることが適当であるとの見解を示した。』

で、まぁプルーデンスと市場機能復活を理由にしての引き下げ提案(結論読めば福間審議委員の提案である事が確定)でして、まぁこの理屈に関するケチは散々つけておりますので突っ込み割愛。もちろんこれは否定されたのですが(理由の部分がちと引っ掛かるのですが、本日はご紹介割愛とします。議事要旨読んでくださいませ)、問題はこの先にあります。

『何人かの委員は、先行きの調節運営について見解を示した。』

『ある委員は、今後、金融機関の流動性需要が一段と減少する可能性があるが、こうした状況において市場機能を毀損することなく「30〜35兆円程度」という現状の目標値の達成が可能かどうかを検証したうえで、必要に応じて当座預金残高引き下げを含めた対応を考える必要があると述べた。』

『別の委員も、現行の当座預金残高目標の維持が難しくなる場合には、デフレ克服にマイナスの影響が生じないことを確認しながら、残高目標を減額することも一つの選択肢として考えられるとの認識を示した。』

『さらに別の委員は、金融システムが危機管理モードから平常モードに移行したもとでは、短期金融市場の機能を回復し、政策対応能力を確保する観点から、量的緩和政策の枠組みを維持しながら当座預金残高目標を段階的に引き下げることも、将来的には検討課題となり得るとの見方を示した。この委員は、債券市場においては、当座預金残高目標が早晩引き下げられることを織り込みつつあるように見受けられると付け加えた。』

理屈が随分無茶苦茶ですなあという話は繰り返しになるので割愛(とほほ)。

最後の「別の委員」の論旨と「債券市場云々」のくだりからこれは水野審議委員で間違いなかろう。で、従来から当預引き下げの怪電波もとい情報発信をしていたお方は須田委員ですので、前の2名のうち1名が須田さんでしょうなってのは分かるのですが、残りの一人は福間さんじゃない可能性も否定できません。というか、市場機能がどうのこうのってのに記者会見でやたらと強調していた人がいたのですがまさか・・・・・・・

で、こりゃ誰だって読み筋披露大会が一部で盛り上がっているようですが、既に4月に入ったばかりの段階で近い将来の当預目標減額賛同者が3名乃至4名いるという状況には腰を抜かすとしか言いようがございませんです。


しかし「債券市場においては、当座預金残高目標が早晩引き下げられることを織り込みつつある」って何か「???」なんですけど。どうも審議委員の「マーケット枠」は今回で終了になりそうな悪寒を感じさせる水野審議委員の意見でありました。債券市場のイールドカーブについてコメントするとその途端に逆に行くという相場神認定なお方でもありますし・・・・・

作戦参謀会議に戦場の状況が伝わらず、報道機関は大本営発表ってどうよ?


・植田委員最後の意見表明(涙)

これが任期最後の決定会合となる植田審議委員のご意見としか思えない内容がそのあとにございます。涙無しには読めませんなこりゃ。

『この間、ある委員は、強力な金融緩和策を維持することによって将来インフレや資産価格の過度な上昇が生じる可能性は否定できないが、現時点では、依然として物価下落率が拡大した場合のコストの方が大きい、と述べた。さらに、この委員は、資金余剰感の強まりを背景に金融機関が余剰資金の運用に苦慮していることは事実であるが、こうした状況は、金融機関が必要とする以上の流動性を供給することを通じて金融機関行動に働きかけるという観点からは、量的緩和政策の本来の効果が発揮されてきたものとみることも可能であるとして、当座預金残高目標の削減に対して否定的な見方を示した。』

特に後半部分ですなぁ。量的緩和政策の本来の効果が発揮されて行くって時にいきなり量を削減というのであれば、いままでの政策ロジックに関してきちんとレビューをしていただきたい。有耶無耶のうちに話を誤魔化すのはいかんでしょ。

まぁ植田委員退任後2度目の決定会合で決定された「なお書き追加」が当預引き下げを意味しないとかいうのはこの議事要旨を見るとそうは思えませんなぁとしか言いようがありませんね。まさしく「人の切れ目が政策の切れ目(by本石町日記さん)」とはこの事ですな。


・CPIペッグを外そうといいだす人(-_-メ)

『この間、ひとりの委員は、量的緩和政策の解除に関するいわゆる3条件について、金融政策運営の重要な中間目標ではあるが、物価の安定と経済の持続的な成長という最終目的の達成という観点に照らして、将来的に見直す可能性も否定できないとの意見を示した。』

先日(4月21日)ご紹介した共同通信インタビューの内容からしてこれは水野審議委員ではなかろうかと思うわけですが、まぁ「将来的に見直し」って内容はこの後に出てくる反論「現在の3条件は、金融政策の最終目標と十分整合的なものであり、これを堅持していくことが重要」ってのを読むと、恐らくCPIペッグを外す方向に見直すって話でしょう。そんなのありかよっていうか、そういう事を安易に行った場合、将来日銀が行う政策について「ど〜せ適当な時期に反故にするんでしょ」って見方をされちゃうという物凄い問題が多い話だと存じますが、市場参加者は選択的健忘症患者が多くて都合の悪い事はすぐ忘れるから大丈夫だということですかそうですか。


かなり腰の砕ける議事要旨でございました。議事要旨そのものは長いですが、今後の金融政策に関する部分はそれほど長くないので是非ご覧下さい。

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2005/05/25

お題「相場の動きを見つつ色々考えたこと」

あまり上手く纏まって無いのですがつらつらと。

○20年入札と中期債の戻り

昨日の20年国債入札ですが、前場から全体的に相場が上昇して事前ヘッジが踏み上げさせられる展開になりました。前場の引けは先物140円45銭で新発超長期国債の入札前取引で1.935%−1.94%。これに対する入札結果が平均落札価格100円97銭で足切り価格が99円85銭となっていたのですが、概ね業者の入札スタンスが「とりあえず必要な札は確実に落札可能な101円(1.93%))」に入れるけど、後の札は流しました」ってパターンになっていた事を意味します。

ということは、前場からヘッジ踏み上げ攻撃で結構業者の方々はヒーヒー言っていたということでしょう。一昨日まで何だかんだと言ってやたらと頑張って20年を安くしていた動きはあったのですが、昨日の買いは事前ヘッジを吹き飛ばすパワーがありましたっつーことで。


20年はともかくとして、もう一つ「ほえー」と思ったのが中期ゾーンの値動き。昨日というか金曜の決定会合結果を受けてからの動きがそうなのですが、3年ゾーンがやたら堅調に推移しておりまして、昨日も中期ゾーンは5年というよりは3年とか4年が牽引しているような雰囲気(5年も買い入っているようですが)。昨日に関しては明日2年国債入札が1.7兆円もあるというのに2年232回債が前日比1.5毛強の0.075%まで買われました。

これだけみると「当座預金残高目標のなお書き修正に関して債券市場は金融引き締めへの転換と捉えていない」というお話になるのですが、よくよく考えると前月の2年国債入札落札平均利回りが0.074%で、まぁ割高入札だったので実力0.08%だったと見れば実は1ヶ月ロールダウンしている分を考えるとまだ戻っていないとも言えますわな。それまでが安すぎたっつーことでしょう。

どうもついつい日々の目先の動きに気を取られてしまいますが、まぁ入札前にちと売り過ぎたって事なんで戻りに関してそんなに驚く事は無いのかもしれませんが、んじゃあ何でそんなに入札前に売られていたかというと、「当座預金残高目標引き下げも有り得る」という懸念が世の中にそれなりにあったということの反映なんでしょうな。一部審議委員から出てくる強力な情報発信で市場も撹乱されてしまったという事ですか。

まぁ先行き当座預金残高目標削減に動くのはいつかっていう見方に関してはさすがに今回は意見別れまくりですが、まぁ訳の判らん時は「当預目標引き下げ懸念で売った分は買い戻しておきましょう」という原則が働いたんですね。債券市場としてはまぁ日銀に優しい反応を示しているといえますな。


○昨日の資金供給オペレーション:「とことん」vs「市場機能」?

昨日の駄文で「今後は日銀のオペレーションにも注目」と申しあげた手前、8年ぶりだか9年ぶりくらいに丹念に資金需給とオペの確認をしておりました。昔の営業局時代は日々の調節で日銀の「調節意図」が表明されまして、その意図と参加者の相場観が相まって短期金利が形成されるという大変に職人的な世界があったのですが、営業局廃止後はそういうのは無くなってしまいましたなぁなどと思いつつ調節をチェックしてみました。

・・・・木曜に期落ちが来る買入手形(本店)6000億円分がロールオーバーされませんでしたな。

本日が割と大きな資金不足でして、それに合わせるように一昨日は手形オペ2本で1兆8000億円と国債買い現先3000億円(手元のメモ見て書いているので違っていたら訂正します)を打ったのですが、2本立ての手形オペのうち1本と国債買い現先が札割れでございました。

で、6月入ってからの資金不足に対して、「とことん(by昨日ご紹介した日銀総裁記者会見の総裁発言)」供給オペを行うのであれば、昨日の期落ち分も埋めるべく手形オペを打っても良かったと思う(資金不足を乗り切った時点で手形売りオペでも国債現先オペでも打てばよろし)のですが、どうもそこまでシャカリキになって資金供給をするという感じではなさそうな予感。

それとも、実は6月の資金不足を乗り切るメドがついたので余裕かましてるのかも知れませんし、なんちゅうか真意がよく判らんオペレーションなのですが、営業局時代の「意図ありオペ」の意図読み合戦をすっかり忘却してしまったのか、あまりこのオペレーションを訝る向きが少なそうなのも「???」です。


このまま割と淡々とというかシャカリキな印象の無い供給が続いて6月に当座預金残高が30兆円を大きく割れたら「何じゃそりゃ?」ですし、割れなければ「じゃああんなに大騒ぎしたのは何だったんでしょうか?」って話になりますな。まぁ本日意向のオペも見ていかないといけませんが、どうも先週金曜日の「TB買入見送り」あたりからのオペレーションは供給オペを「とことん」実施するという雰囲気じゃ無いんですよね。

まさかとは思うのですが、総裁記者会見における「6月の当座預金残高目標維持は3月より困難」だの「資金供給はとことん行う」というのは「技術論」と同様の「説明責任という名の下に説明してるんだけど実はペテンな建前」って奴ではないかとの疑念が涌き起こるのでありました。


まぁ本日移行の資金供給オペレーションに「とことん」な姿勢が見えるのかが注目されますが、そんなもんが注目されるという昔懐かしい営業局的手法の復活をするのは福井総裁の本意じゃないように思える(機構改革で営業局を無くしたのは当時の福井副総裁と記憶してますが)のですが、ワケワカメ政策によって現場に訳の判らん負担が掛かってきて、金融市場局の中の人も大変ですなぁと存じます。



○裸単騎待ちのリスク

まぁ今回のなお書き修正に関してあたしゃー色々といちゃもんをつけておりますが、あたくしの日頃のロジック重視というのを一旦そこらへんに置いて物凄く現実的な話をしてしまうと、このまま景気回復してデフレ脱却。おまけに財政赤字も削減方向という素晴らしい展開になって、将来もデフレが発生するような事態や資産バブルの破裂みたいな事が起きないというのであれば、今回の「なお書き追加」というロジック崩壊な無茶苦茶政策も結果オーライになっちゃう可能性はありますわな。「終わりよければ全てよし」というのは日本の伝統ですし。

しかし問題なのは今後循環的に景気が悪化するだの、局地的に発生している不動産関連価格絶賛上昇が崩壊して関連融資が見事にお陀仏さんになるだの、まぁその手のリスクシナリオが発生した場合のお話でございまして、今回の「技術論」によって量の効果を否定しておきながら、今度は「景気が悪化したので量を増やす」ってなりますともう無茶苦茶としか言いようがなくなります。

一応総裁の説明によれば、「量の効果」と「時間軸効果」というのがあって、それの比重が相対的に変るとかいう何かパズルのような謎の理屈がありますので、「景気の先行き懸念やデフレ進行懸念があれば量を増やすと効果が出る」って論理展開にはなっており、結局当座預金残高目標を引き上げるって話なんですが、如何にも無理のあるお話ですなぁ。

まぁあたくし思いまするに、今回の決定によって「景気が悪化した場合の打つ手が無くなった」と申しますか、次に金融緩和方向で何かやれって話になると、より強烈な政策をやらざるを得ない方向に追い込まれると思うわけでして、まぁそういう意味で先日来「裸単騎待ちの勇者」などと申している訳です。

今のところは裸単騎に誰も向かってませんが、3面チャンのオープンリーチでも掛けられてもシラネーヨ(この件の意味が判らない人は周囲のバクチ好きにでも聞いて下さい)という感じとでも申しますか。

まぁそんな感じであまり纏まってませんが、つらつらと思うのでありました。

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2005/05/24

お題「ロジックというよりは言い訳なのかな?」

引き続き今回の政策決定問題について。

○昨日の補足:オペ先の拡充ではありませんな

そもそも日経新聞のリークがミスリードだったという事なのですが、思いっきりそのミスリードに乗ってしまったあたくしもアフォでした。金曜日に発表された『「短期国債売買および国債の条件付売買における売買対象先選定基本要領」の一部改正等について』なんですが、これは単に「オペに関る受渡事務を大手銀行などに委託するのもオッケーにするから地方金融機関の皆さんもっと参加しましょう」ってお話でした。まぁ決済システムに直接参加している人が多すぎなのでカストディーというか直接参加者への委託を推進するという意味あいはありますが、日銀当座預金取引先以外にオペ参加を開放すると言うような趣旨の話ではないです。

ま、日銀サイドから今回の件に関して日経新聞報道のような「資金供給手段の拡充」だという説明は一行もされておりませんし、単に日経新聞のミスリード(有体に言えば誤報)だということで。大した問題ではないかもしれませんが、別に「なお書き追加とセットになったオペ拡充策」でも何でもなかったという事ですのでご参考までに。


では総裁記者会見も目出度くアップされたのでそちらに関して。
会見要旨はhttp://www.boj.pr.jp/press/05/kk0505b.htm

#本日は会見引用が多いので増量企画になっております。

○総裁記者会見:最も象徴的な質疑

会見要旨で5番目に出てくる質問が実に素晴らしい。

『(問)2月の時点では当座預金残高が30〜35兆円程度を下回ることは全く見通していないと発言されていたかと思うが、今回「程度をいささか下回る」という表現で、マーケットを封殺することとのトレード・オフなのだろうが、下回る可能性があるとなったのはどういうことか。3月と6月を比べて6月のほうが厳しい状況という認識なのか。これについては3月のほうが厳しかったのではないかという指摘も聞くがどうか。そうでないとすれば3月の時点で市場を封殺し過ぎたという反省なり総括があるのか、その辺りについてどうお考えか伺いたい。』

この質問は実に鋭い点を突いてますな。6月の資金不足に関しては目標割れは回避できるでしょって話が優勢な訳でして、敢えてこの時期になお書き追加をする意味は何でしょ?って点もそうですが、2月には「全く見通していない」と言っていたものがわずか3ヵ月後に前言撤回とはどういうことよって突っ込みもございますわな。それと最近言ってる「市場機能」問題ですか。で、その回答ですが3段落に分かれてます。

『(答)3月も今回も非常に厳しい状況に私どもは直面していると言って良いと思う。ただ3月の場合には、おそらく下限を割らずに済むのではないかという蓋然性をここで申し上げた。少し賭けをしたような気持ちになっていた。結果的に下限を割らずに済んだのであるが、オペレーション上はかなり苦しい操作を用いたと率直に申し上げて良いと思う。』

「少し賭けをした」ってそりゃ何よ??「売り言葉に買い言葉でその場の勢いで強い表現を使った」の間違いのような気が思いっきりしますが、日本語の「賭け」はどっちかというと「背水の陣の鉄砲バクチ」って印象を与えると思うので日銀総裁の発言としては毎度お馴染みの「勢いでの発言」であってもどうかね。まぁ賭けとはケシカランとか言われたら恐らく「政策決定というのは正しさを期しても100%上手くいくとは限らないという意味で賭けだと言った」とでも返してくるんでしょうが。

それはともかく、この部分であるように「3月はオペレーションでかなり苦しい操作をした」という事にしているので、6月はオペレーションで苦しい操作はしませんよと言っているように取れますわな。さてどうなる事やら。では続き。

『これから目先6月の資金不足のピークにかけて、現実にどういう資金需要あるいはその資金需要の後退という状況に直面するか全くわからない。実際に動いてみないとわからないため予測めいたことは申し上げられないが、ペイオフ全面解禁後の全般的な金融市場あるいは金融機関の動向等を見ていると、やはり一段と落ち着く方向にあるので、資金需要そのものは引き続き緩やかに後退の方向にある。逆に言えば、オペレーション上の困難度は徐々に増していくであろうと想定している。従って、今回こういう措置をとったということである。』

市場では「6月の資金不足も無事に乗り切れる公算が高い」だったように思えますが、何か話を捻じ曲げてね? とにかく「ペイオフ全面解禁(そもそもこれが大いなる尻抜けなのだが)」→「金融不安の後退」→「資金需要の減退」→「当座預金残高が減るのは当然」という話にもっていきたがっているわけですな。第3段落はこうなってます。

『「なお書き」を注意深くお読み頂ければと思うが、上限を突破する場合は上限を突破するような調節を行うとしっかり書いてあるわけであるが、今回設けた下限のほうは、「精一杯下限を割らない努力をする、そういうオペレーションをする」ということが前提で、しかし、結果的に下限を下回ることがあり得るという表現になっている。能動的にオペレーションで下限を割るようにもっていくという意図は全くないということが明確に読み取れるのではないかと思う。従って、これは結果が出てみないとわからない部分がある。 』

大幅資金不足の時に結果的に下限を割るだけだったら「程度」の範囲内で全然問題ない筈なのですが、それをわざわざ入れる意味に関する説明がございませんな。で、その他の説明では「資金需要が減っている中で無理矢理オペレーションを実施しない」と言っている訳でして、結局「技術的」と言いながら全然技術的じゃないように思っちゃうのはあたくしが意地悪なだけですかそうですか。


○市場機能がどうのこうのという話題

まぁこの会見は当然ながらツッコミの嵐になっておりまして、会見要旨を見る限りでは(インタビューは見てない)途中から総裁さまご機嫌大いに悪化モードと思われる節がありますが、市場機能の封殺がどうのこうのって話は何度も突っ込まれてます。総裁のご機嫌を損ねるような質問が登場。

『(問)総裁は、最近、量的緩和政策の副作用についても言及をし始めていると思うが、金融システムが安定化する中で、副作用がさらに出てくる可能性があるのかということと、財務大臣が、最近、量的緩和政策に対して発言していたが、この発言が今回の決定に何か影響を与えたことがあるのかどうかについて伺いたい。』

『(答)副作用について最近考え始めたとおっしゃったのは大変心外である。非常に深い緩和政策をやり続けている時は、常時、作用と副作用の関係を真剣に考え続けていると前々から申し上げている。しかも、それは紙の上にバランス・シートを書いてメリット、デメリットと判定できるほどスタティック(静態的)なものではない。実際、市場の中でオペレーションに入って、その手応え、市場の反応というものを感じながら、私どもがここまでオペに突っ込んだ時に市場の中に生じるデメリット、それが拡散していくデメリットというものをダイナミックに感じながら判定し続けていくというものである。従って、今回「なお書き」を設けて対応する場合にも、オペはとことんまでやるということであり、「とことん」という意味は、市場の中で市場機能を封殺する度合いがあまりに行き過ぎないかということを、現実にオペレーションをしつつ感じながら、ぎりぎりまで限界を追求する。しかし結果としていくらかはみ出るリスクがあるから「なお書き」を設けた、ということである。動きながら判定しているということをご理解頂ければと思う。(財務大臣がどうのこうのという後半部分割愛)』

うーむ、「オペはとことんまでやる」「市場の中で市場機能を封殺する度合いがあまりに行き過ぎないかということを、現実にオペレーションをしつつ感じながら、ぎりぎりまで限界を追求する。」「いくらかはみ出るリスクがある」って説明はどうも訳ワカメですな。量的緩和政策の政策ロジックよりも市場機能とやらが重要だと言いたいのでしょうか。なんてしじょうにふれんどりーなそうさいなんでしょうか(棒読み)。しかしとことんまでオペやるけど市場機能を封殺しないってのは良く判らん。だいたい中央銀行のオペレーションってのは「公開市場操作」っていうくらいでまんま市場介入でしょうと思うのだが。

当然ながら上記説明では訳判らんと思うのが人情でして、その後でこんな質問が出ております。

『(問)先程、「市場を見ながらオペをとことんまでやる」とのことであったが、経済情勢によっては「とことん」の部分が変わるのかどうか伺いたい。例えば、オペの期間について、6か月のオペはやるが、8か月のオペはやらないというような状況もありうるのかどうか伺いたい。』

『(答)期間の短いオペに比べてより長いオペをやったからといって、「とことん」になったと理解されるほど、記者の皆さんは市場の取材者としてアマチュアではないと私は理解している。あくまで、市場の機能との対比で、ダイナミックに物事を判断していくということである。記者の皆さんの取材先の答えも常にそうであろうと思う。何か月のオペをやったから日本銀行は「とことんやった」なんていう、そんな単純な答えを出すマーケット・プレーヤーないしマーケット・アナリストはそれほどいらっしゃらないのではないかと思う。それほど市場調節というのは、その時々の市場条件の中における私どものオペが働きかける作用、それに対する市場の反応を見極めつつ判定していかなければならない。「生きた市場」に対する私どもの「生きたオペ」というものは、答えも「生きた答え」ということであるから一律ではない。事前に一定の数字ないしパターンでもって判定できない性格のものである。』

殆ど喧嘩ですなこりゃ(笑)。結局こういう答えになるしかないんですから「とことん実施」とか余計な事を言う必要はないわけですし、「とことん実施」しても残高維持が難しいのであれば、国債の買い切りを増やすというのが量的緩和政策実行時の政策ロジックだったと存じますが。「とことん実施」とか言いながら下限割れ容認をわざわざ文書化するという行為は意味判らん。そんなに市場機能とやらが大事なのでしょうか?それとも市場機能はただの悪魔祓いの呪文で、要するに当座預金を下げたいんじゃねぇのかと小一時間ですな。


質疑の最後の方では、この市場機能がどうのこうのという点について再度突っ込みがされております。

『(問)従来からあった「なお書き」の明確なメッセージは、金融市場が不安定化している中で、それがさらに実体経済に波及するようなことを日本銀行は断固として防ぐという決意を、市場や国民に対して示すということであったかと思う。これに対して、今回付け加えられた「なお書き」は何がメッセージかということだが、今まで話を伺った範囲では──予防線を張っておくというか、やや言い訳めくということでないのであれば──、局面によっては、結果として残高という量よりも市場機能が死なないことのほうを重視する、というメッセージのように、少なくとも今までの発言からは受け取れるが、そういう理解でよいか。』

まぁ普通そういう理解するでしょうと思うのですが、この答えがまた謎。

『(答)そういう理解では困る。私どもは、量的緩和の枠組みを消費者物価指数の前年比変化率が安定的にゼロ%以上になるまで堅持すると言っている。もっとも、デフレ・スパイラルに陥るリスクが高まるという時とは違うわけだから、市場機能を封殺するにも限度があるわけで、そこの限界を見極めながら、適度な現実的対応を施すことによって、この枠組みを長持ちさせることができる。狙いはあくまでも量的緩和の枠組みの堅持であり、これが主たる課題である。そのために、市場機能を過度に封殺しないということが、金融システムの安定度合が増せば増すほど、もう一つの付帯的条件になってきている。この条件の兼ね合いをきちんと調整しながら、量的緩和の成果を上げることをまっとうしていきたい。狙いは量的緩和の維持ということである。』

何回読んでも意味判らん・・・・・この後も一言質問回答が続きますが、会見要旨読んで下さいませ。



○またも「日銀のバランスシート」話ですが

でまぁ国債買い切り問題に関しては同じ事を考える人は当然ながら取材記者の皆様にもおいでな訳でして、この次の質問ではこんなのが。

『(問)3点質問がある。(1点目と3点目は割愛)2点目は、2001年3月19日に量的緩和の導入を決めた際に、必要であるならば長期国債の買い切り額を増やすと書いてあるが、「オペをとことんやる」というならば、選択肢として長期国債の買い切り額を増やすということが念頭にないのかを伺いたい。(以下割愛)』

『(答)長期国債買い切りの増額については、デフレ・スパイラルのリスクを含みながら経済情勢がどんどん悪くなっていく、そして市場の中における信用不安に絡んで資金需要がどんどん増えていくという中にあっては、日本銀行のバランス・シートを極端に歪めてでも対応しなければならないということが、おそらく暗黙のうちに前提となって行われてきたと思う。その点に関しては、今、明らかに状況が違っているわけである。日本銀行のバランス・シートに大きなディストーション(歪み)をもたらすと、将来のオペレーションの弾力性を著しく欠き、将来の金融政策に責任が持てなくなる。長期国債についてオペレーションの額を増やすという考えは、そういう観点から容易に出てこない考えだとご理解頂きたいと思う。』

国債を沢山買うという行為のどこがどう「バランスシートを極端に歪める」のだか1ミリも理解できませんですが、ここでは日銀のバランスシートの話を持ち出しておりますわな。どうもこれも言い訳に持ち出した悪魔祓いの呪文のような気がする。だいたいそうならそうで、ちゃんと量的緩和政策の政策ロジックを見直して書き直しするのが筋じゃねぇの??


いやまぁ政策ロジックもへったくれもないですが、これからどうなっちゃうのでしょうか?期せずして日々の金融調節が注目を浴びる事態になってしまいましたし、なんだか大変なことになってしまいましたな。

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2005/05/23

お題「なお書き追加に関してあれこれ/判断を前進させた月報」

いやまぁ新聞辞令通りに決定会合の結果がでてしまいましたな。
http://www.boj.or.jp/seisaku/05/pb/k050520.htm
http://www.boj.or.jp/seisaku/05/mok0505b.htm

○なお書き追加に関する各種分析ご紹介

金融政策決定会合の結果を受けて情報ベンダーでは早速市場関係者へのインタビューが色々と報道されておりました。あたくしがざっと見た限りでは、債券市場関係者と申しますか、所謂債券系のストラテジスト・アナリストの方々が一番「日銀に対する理解」があるようでして、「技術的問題で影響なし」という見解が大勢。「技術的だとか言うけどやはり政策の転換点である事に違いない」という人も少々いらっしゃいましたが。債券市場の現場から一歩引いている人と思われる立ち位置にいる人では「まずは地均しで早ければ7月には目標削減に動く」という見解もありまして、まぁ面白いなぁなどと思ってしまいました。

既に経済系のブログでは今回の決定に関する興味深い考察が出ておりますので、ご参考までにURLをご紹介致します。ただしあたくしがご紹介するので批判的なものだけだったりするのですが(笑)。

・「期待に働きかける政策」という点を重視(リフレ派の先生です)

田中秀臣先生:http://reflation.bblog.jp/entry/185674/
中村宗悦先生:http://chronicle.air-nifty.com/historical_amnesia/2005/05/post_7f20.html

・新聞各紙の社説紹介とリフレ派の立ち位置からの解説

bewaadさん:http://bewaad.com/20050522.html
(前日にも決定会合に関するエントリーあります)

・日銀内部の政策ラインと政策委員会の関係に関する興味深い考察

本石町日記さん:http://hongokucho.exblog.jp/2771368

・・・・・いやまぁまたお前は人のふんどしかと言われそうですが、既に色々と考察を加えておられるのでまぁ良かろうかなどと思う安易なあたくしでありました。


○で、今回の決定に関するあたくしの愚意見

1.事前リークは何のため?

いちトレーダーとして最もケシカランと思うのは「水曜日に日経新聞でスクープされた通りの結果になった」と言うこと。なお書き追加だけならともかく、長期国債と短期国債の売買オペの対象先拡大策までが同じというのは誰がやったのかはともかくとして事前リークの疑いが物凄く濃厚でしょ?

先日もとりあえず最初に出てくる数字はサプライズだったGDP発表の前日に妙に債券先物を売る動きがありましたが、どうも日本市場の伝統芸能として各種経済指標が事前にリークされているのではないかという疑念を持ちたくなるような相場の動きが時に起きる(我ながら微妙な言い回しですなぁ)というのがあります。正直気分の良いものではないし、大体インサイダー規制がどうのこうのとかやるんだからこの手の事前リークだって徹底検証してふんじばるようにしないと(つーか米国ってこの手のリークは厳罰でしょ)、日本の金融マーケットではいつまでたっても権力への距離が収益うわなにをするyhkdfjkふkjh(自主規制)。

ええ勿論事前リークなどというふざけたものはおこなわれていないものだとしんじてますが(棒読み)。

・・・・ちと話は逸れましたが、政策決定会合の結果も事前リークかよってなもんでして、んじゃあ何のために政策決定会合実施しているんだよと思う次第。アホクサ。


2.炸裂する「日銀政策変更に関する中原三原則」

でですな、恐らく事前リークした(と勝手に決め付けてますが、そうじゃなかったらゴメンナサイ)のは良くあるパターンの「事前に新聞辞令を出しておいて世間の反応を見る」って奴だと思うのですが、今回は政府が思ったほど厳しい対応をせず、「お手並み拝見モード」になったことで無事になお書き追加ができたという事でしょう。

でも本来は政策決定に関して従来の流れを継続してロジカルに判断を実施しているのであれば、「事前にリークしての反応を見る」などという行為は不必要な筈でして、今回の政策決定に関して今までの政策からの論理的な無理があるという自覚があるからこその「事前リーク」であり、まぁ何だかんだと言っても自信が無かったんでしょうなと思う次第。先日ご紹介した中原伸之さんご指摘の「三原則」が炸裂しているんでしょうな。


3.オペ対象先拡大をセットにするのは如何なものか

某ブログのコメント欄でちと話題になったのですが、今回のオペ対象先拡大に関してあたくしは「目くらましですか」と思うのですが、まぁ元々この「オペ対象先拡大」は既定路線の実施の一環だというお話もあるようです。

で、今回のなお書き追加にわざわざこのオペ対象先拡大をぶつけてくるのは如何にも「セット販売」のような印象を与える訳でして、何も今回わざわざ実施することは無いと思うのですが。オペ対象先拡大に努力してます=資金供給に努力してますって事だとは思いますが、要綱をざっと見たところ、目先そんなにオペ応募が増えるとも思えませんし。


もちろん、今までの政策ロジックがどうよとか上限突破に下限突破ってそりゃギャグですかとかいう話もありますが、その辺は散々申しあげて来たので省略。


○却って調節に注目が集まりますなぁ

まぁ金曜日は10時10分のオペ時刻に資金不足期間だと週に2回のペースで実施される短期国債買入が無かった時点で「ああこりゃはなから6月の税揚げ不足埋める気が無いですなぁ」って見方が流れていたりしていたのですが、金融政策決定会合の結果はご存知の通り。

ってな訳で、お前ら30兆円割れを早速6月にやるつもりだろうゴルァなどという意見がどうせあたくしが言わなくても早速今日あたり出てくると思うのですが、これからもそんな感じでオペの一挙手一投足に注目が集まる事になるでしょう。事務方の皆様は大変ですなぁとしか申しあげようがありませんが、まぁ昔の「営業局時代のシグナリングオペ復活」になるのかもしれませんからそうなればそうなったで事務方の腕の見せ所だと今から腕まくりしてるのかもしれませんな、いや冗談ですが。

で、このあとご紹介する金融経済月報の内容と、金曜のあまりやる気のなさそうな資金供給オペと、申し訳モードのオペ対象先拡大とをセットで考えるとあたしゃーやはり本石町日記氏の指摘する「小さな修正、大きな下心」という見方に与したいと思います。今のところ債券市場はそう思ってないようですが。



○判断の前進と妙に文学的表現が目に付く金融経済月報

毎度お馴染みの前月分との比較です。

http://www.boj.or.jp/seisaku/05/pb/gp0505.htm(5月)
http://www.boj.or.jp/seisaku/05/pb/gp0504.htm(4月)

ますは景気の現状判断部分

・生産
『生産は緩やかに増加している。』(5月)
『生産は横ばい圏内の動きとなっており』(4月)

・企業収益
『設備投資は、高水準の企業収益を背景として』(5月)
『設備投資をみると、企業収益が改善基調を維持するもとで』(4月)

・所得
『雇用者所得もはっきりと下げ止まる中で』(5月)
『雇用者所得も下げ止まりが明確になる中で』(4月)

ほっほーってなもんでしょ。次に景気の先行き部分

・経済先行きリスクとしているIT分野の調整問題
『IT関連分野の調整の影響も薄れていき』(5月)
『IT関連分野の調整の影響が弱まるにつれて』(4月)

・輸出と生産の見通し
『輸出や生産は増加基調をたどるとみられる。』(5月)
『輸出や生産は増加していくとみられる。』(4月)

・企業収益に関して
『企業収益の好調も維持されるもとで』(5月)
『企業収益が増加し』(4月)

最後の2つは微妙なのですが、5月の表現はトレンドとして増加とか好調って言い方に変化していると読めると存じますのでこれまた判断を好転させていると解釈しましたが、どうでしょ?

物価に関して、と言ってもいつものように国内企業物価。現状判断は足もと大幅上昇と指摘してますが、まぁこれは現象を書いているだけなので良いとして先行きに関しては・・・

『物価の先行きについて、国内企業物価は、そのテンポを鈍化させつつも、当面、上昇を続ける可能性が高い。』(5月)

『国内企業物価は、内外商品市況の上昇を受けて、強含んでいく可能性が高い。』(4月)

5月の「そのテンポを鈍化」ってのは現状の足もとの数字が原油価格上昇効果で大幅上昇していることを踏まえた表現となっております。


まぁ基調判断部分は変えて無いのですが、細々と判断を前進させて、ついでに微妙に表現をいじってるなぁという感じです。この判断前進となお書き追加をセットにするとちょっと日銀の下心を感じてしまいますわなって所でしょうか。

まぁ金曜日はまだ消化しきれていない面もある債券市場ですが、今週は20年国債と2年国債の入札がある訳でして、どちらも投資家の今回の政策決定に関する見方が読めるかなぁと存じます。

ではでは。

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2005/05/20

お題「『当預下限割れ容認』を織り込んだようですが・・・」

本日まで実施される金融政策決定会合に関してご存知のように報道大盛り上がり状態で市場でも色々な見解が出てきております。昨日あたくしが「こうやって報道先走りで既成事実状態になってしまうんなら政策委員会における政策決定会合って一体全体どうなっているのよ」と申しあげましたが、はてさてどうなる事やら。と言うことで本日は人のふんどしで相撲を取りつつ俺様備忘録モード。


○「なお書き対応は技術的対応」という解釈のようですな

あたくしは昨日も申しあげたように、なお書き対応での下限割れ容認は技術的対応(ってのも何の事ですかって感じですが)というよりは、当座預金残高目標の形骸化に繋がるゴマカシ政策だと思っている(昨日は「それなら当預目標下げた方が筋が通る」と申しあげましたが、あたくし当預目標下げを現在のロジックで展開するのは全く筋通ってないと思いますので念の為。比較の問題です。)のですが、まぁ金融市場としては「技術的に当預残高が下限を割り込んだ時に『金融引き締め』と言われないようにする為の対応」という理解になっているようです。ものわかりがよいしじょうをもってせいさくいいんかいはしあわせだなあ(棒読み)。

昨日、ロイター通信が「緊急市場調査」をして債券市場あんど短期金融市場関係者29名に質問した結果が12:37配信の記事として報道されておりましたが、そちらでも「なお書き対応(「なお書き」を入れるのではなくて、総裁記者会見で一時的に目標割れをすることもあると明言するのかもしれませんが)」は技術的対応として受け止めるという意見が大勢を占めているようです。

「30兆から35兆円程度」という目標額設定で「程度」というのがあり、わざわざ一時的な下限割れ(当日の資金需給が予想からぶれる事はよくある話です)を容認する事を明記する必要は無い筈でして、それをわざわざ明記するというのは技術的対応以外の意味あるでしょって言うのはきっとお子ちゃまなんでしょうね(--;)。

一応市場コンセンサスでは「目標額の引き下げは量的緩和政策の解除への第一歩」「何らかの形で下限割れ容認を明記するのは技術的対応」となっていて、下限割れ容認までは織り込んだと言う事になっているようです。今日決定される内容も「下限割れ容認まででしょ」ってことなんで、既に織り込み済という感じなんでしょうね。何だかな〜。


○市場との対話というよりは音叉共鳴効果とでも言うんでしょうか

前述のロイター通信記事によりますと、どこぞの債券ストラテジスト様におかれましては「昨年来、量的緩和政策の出口論議などについて、日銀と市場の間でコンセンサスを熟成させてきている」というコメントをしておられまして、あたくしなんそ(゜д゜)ポカーンって感じなのですが、概ね政策ロジック崩壊という点からの追及はあまりお見受け致しませんな。まぁ確かに会社の名前を背負ってストラテジスト稼業をやってるのに正面切って日銀の政策ロジック崩壊ケシカランだとかもうアホか馬鹿か(という奴はいねぇか^^)などというのも言いにくいってのは雇われの悲しさとして極めて良く分かるというものですが、あっはっは(この駄文は当然ながらあたくしの関係する組織の見解とは全然関係ありませんので念の為申し添えます^^)。

で、昨日タイムリーに「当預下限割れ容認をなぜ怖がるのか」というお題のレポートを出した著名マーケットエコノミスト様や、ブルームバーグニュースでインタビューにお答えしておられた著名エコノミスト様などによりますと、金融市場では当預下限割れ容認の方法として現在の金融市場調節方針に「平均的に見て」30兆から35兆円程度の当座預金座残高を維持するという見解があるようですね。あたしゃ実は(金融政策関連では特に人が何言ってるかってのを気にしないし、だいたい業者だと同業他社のレポートって知り合いに一々お願いしないと取れないし)そんな説知りませんでした。不勉強ですな>自分

ま、これもまた「なし崩し的な当座預金残高目標の形骸化」って奴で、政策ロジックもへったくれもないズブズブな「政策提言」ですなぁと甚だ感心する次第です。言葉の遊びで政策転換をなし崩し的に行うというにほんのでんとうげいのうのきほんをはずさないとってもすてきなせいさくあいであですね(また棒読みだ)。


ま、マーケットエコノミストだのストラテジストだのという肩書きの皆様は「中央銀行の政策斯くあるべし」という話じゃなくて、日銀の次のアクションはどうなるんだろうってのを分析するのがお仕事な訳ですから、まぁそういう流れになるのも致し方なしとも思えます。で、そう考えますと、「一部政策委員が意向を強力発信」→「その発信を受けた市場関係者が先行き予想をする」→「市場の見方としてコンセンサスが醸成されていく」→「市場からのシグナルが出ていると政策委員会が認識する」→「その認識を受けて益々方向性が確立される」という音叉共鳴というか自分の鏡に写った動きに自分が反応するというか、まぁそんな感じの動きになっていくのも仕方がない話なのかもしれません。

・・・・でもそんなことで中央銀行の政策が漂流して良いんでしょうか??



○これはウケた!政策変更「中原三原則プラスワン」

一昨日の時事通信社「時事メイン」のコラム「金融観測」に「政策変更『中原三原則』の教訓=日銀欠陥は健在?」という記事がございまして、中原伸之元審議委員の披露した「三原則」を敷衍しつつ昨今の政策論議の混迷を辛口批評していた(ちなみに配信時刻は18日の18時24分)。

この「中原三原則」というのが非常に面白かったのでご紹介させていただきます。詳しくは当該記事をご覧下さい(^^)。

日銀の政策変更に関する三原則(By中原伸之元審議委員)

日銀は
(1)突然に
(2)それまでの議論と180度逆の方向に
(3)十分な説明も無しに
政策を決定する。

まさに至言といえましょう。で、同コラムによりますと、中原伸之さんはこの三原則これに量的緩和政策に関連した「プラスワン」というのを指摘されておりまして、できないできないと言ってきた政策を上記三原則に基づいて導入して、「やった後で『効果がない』という原則もある」ということだそうです。

今回の当座預金残高目標引き下げあるいは下限割れ容認論にもまるっきり当てはまる所が誠に香ばしいものがございますわな。もう血圧が上昇するよりも情けないって気持ちになってしまいます。


さあ、本日の決定会合どうなることやら。政策変更なしでなお書き修正も無しとなってくれとは思いますが、田中秀臣先生がブログ(Ecconomic Lovers Live)で指摘しておられるように、仮に何もしなかったとしても今回の政策論議の混迷と情報発信の混乱によるダメージは後々ボディーブローのように効いてくると思います。困ったもんです。

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2005/05/19

○なお書き下限割れ容認ですかそうですか

昨日の日本経済新聞では最終版だけ1面トップ記事が「量的緩和残高目標、下限割れ容認協議へ」というお題。と言うことは一応スクープ扱いの記事なんで、日経新聞渾身の見通し記事って事なんでしょうか。「協議へ」だから別に決定する見通しじゃない所がヘッジクローズ入りって感じではありますが(^^)。

で、どうも市場の反応としては「当座預金残高目標の下限割れ容認は現実的に妥当な話でしょうなぁ」というのが多いという印象でして、ストラテジストの人のコメントを何となく見てるとそう感じます。

しかしですな。もともと「30兆−35兆円程度」とレンジを5兆円取った上に、「程度」という言い方で、上限下限数値に対する厳密な縛りを設けている筈ではない(厳密というのは昔の準備預金積み最終日みたいな状況という意味ね)訳でして、わざわざ「下限割れ容認」を明記する必要は無いはずです。実質的に下限割れっぱなしにでもするなら話は別ですが。

で、現在「金融市場で突発的に流動性需要が増大した時には上限突破容認」をしているのは、一応危機対応の為に敢えて文言を入れたという意味はあるんでしょうが、下限割れ容認の理由ってどうするんでしょうかねぇ。それに上限突破に下限割れを容認するとなりますと、「じゃあ何の為に当座預金残高目標のレンジを設定しているんですか」と小一時間ですし。

と言うことで、「なお書きで下限割れ容認」ってのは当座預金残高目標の形骸化に他ならない話でして、残高目標の引き下げを行う方がよっぽど政策的に筋が通った(というのは下限割れ容認との比較の問題で、結局は五十歩百歩の屑政策だと思います)お話(理由が無茶苦茶になりそうですが)だと思うんですが、何でそれが現実的な解になるのかが1ミリも理解できないあたくしは原理主義者ですかそうですか(寂)。

もう政策ロジック無茶苦茶もいいところですな。あたくしはそんな政策決定は行われないものと信じたいですが。


○オペ拡充策検討???????

同じく昨日の日本経済新聞1面記事では「オペ拡充策検討」という見出しもついておりまして、記事によりますとどうも「下限割れ容認と同時に資金供給オペの強化策を打ち出す」という毎度お馴染みの目くらましバーター政策が出るという話にもなっております。

もうこのバーター政策が出るっていう時点で胡散臭いものを感じるのですが、国債買い現先オペの参加者を中小金融機関に拡大して一体全体何の効果があるのか全く意味不明(というか効果なし)なので、目くらまし以外の何者でもない政策ですな。記事の通りに話が進むとしたらという前提ですが。

つーか何ですな。下限割れ容認とセットでオペ拡充するってのも妙な話で、容認するなら拡充する必要はないんじゃねぇの??


○しかしまぁ報道先走り恐るべし

記事の最後には『政策委員も、残高目標を維持したまま一時的な下限割れを容認することではおおむね一致する見通しだ。政府内でも残高目標を引き下げるのでなければ、「反対はしない」との考え方が広がりつつある。ただ、政策委員の一部には目標水準自体を引き下げるべきだとの意見もあり、決定会合で協議する見通しだ』(5月18日日本経済新聞朝刊1面最終版)となっておりまして、既に「当座預金残高目標を維持すべきである」という意見は無いものとなっているのが呆れるというか恐ろしい話です。

こうやって報道先走りで既成事実状態になってしまうんなら政策委員会における政策決定会合って一体全体どうなっているのよと物凄い勢いで血圧が上昇(観測記事で一々血圧上げていたら体が持たないですね^^)するあたくしは原理主義者ですかそうですか(しつこいって)。


○相場の影響は・・・・

瞬間的には反応しないかもしれませんが、基本的に「量的緩和の出口政策への方向」であり、かつ「量的緩和副作用論」で良く述べられている「市場機能の復活」を企図した政策であるという事を勘案すれば、当然ながら「長めの短期金利を上昇させたい」というのがこの裏の意図になると考えるのが妥当だとあたしゃー思うのですが、これは別にマーケットコンセンサスでも何でもない(多分コンセンサスは「影響なし」だと思うのだが)ので念の為。

ただまぁ実務的に影響ない下限割れ容認でも、日銀直下の短期金融市場から遠くなればなるほど、「量的緩和政策の出口方向へ」という話になってイールドカーブ的には中期(2年か3年か5年か判らんが)から先物あたりが何となく売られそうだという予想をしているのですが、これまたマーケットコンセンサスでも何でもないですのでヨタ話だと思ってください。

正直言って、瞬間的に先物が20銭くらい売られてその日は終了じゃ無いかと思うんですが(^^)。

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2005/05/17

お題「日銀バランスシート話また続き/当座預金目標引き下げで盛り上がりますが・・」

さてGDPと5年国債入札ですか。

○またまた日銀のバランスシートに関する話

まずは「金曜の続き」として昨日書きました日銀のバランスシート話で怪しい記述がありましたので再度追加させていただきたく存じます。メールでのご指摘ありがとうございました。感謝感謝。

日銀の保有国債がどうのこうのという話に絡みましてあたくしは昨日このように書きました。「金融調節での資金供給として現在行われている形式は「買現先方式(短期国債買入もありますが)」でして、実質的には担保ですが、会計上は担保じゃないのでバランスに上ってくるという形ですわな。」

確かに金融調節の見合い資産は日銀のバランスシートには上っておりますが、債券現先の場合は「現先勘定」を計上するというのが金融機関の基本的な会計処理になりまして、当然ながら日本銀行でもそのように処理しておりますので、日銀のバランスシートで書いてある「国債」というの現先方式の金融調節の見合い資産ではありません。大変失礼致しました。なお、毎月日銀が「営業毎旬報告 」というのを出してます。例えばhttp://www.boj.or.jp/about/05/ac050331.htmを見ますと今年の3月末現在のバランスシートが公表されております。

で、ご覧のように現先勘定があがっておりまして、買入手形というのも上っておりますな。買入手形は手形オペ(CPはこっちなのかな?よーしらんが)ですし、現先勘定の中には外為特別会計への資金繰り支援で行っていた買い現先も含まれる(3月時点ではゼロのようですが)ようですね。

と言うことで、日銀のバランス上の「国債」は短期国債買入オペと長期国債買入(いわゆる輪番オペ)およびその買入債券が満期になった時にロールオーバーする短期国債(日銀乗換って奴だったと思いますが)になるんですなぁという事のようです。間違っているかもしれないのでツッコミ大歓迎です(^^)。


従いまして政策ロジックおよび現象としては「日銀の長期国債買入は成長通貨の供給」ということになっているわけですな。バランス上紐付けできるわけでないですけどね。輪番オペに関して長期金利への関与がどうのこうのとか言うひとが時々いますが、そりゃ影響が全く無いとは言わないけど、一応政策ロジック的には変な話ですなぁと言うことになります。念の為付け加えておきます。

ま〜相変わらずこの「中央銀行の財務ってどうよ」ってのを考えていると頭がいい感じでウニになりまして、結局何が何だかよ〜判らんとなってしまいます。やっぱ自己資本比率がどうのこうのとか財務諸表がどうのこうのというのに拘るのは変というか話の本質ではない気がする。頭の体操にはよさそうですが。



○相場は当座預金残高目標引き下げで盛り上げっているのか?

昨日の債券市場、何だか訳判らんうちに売り込まれまして、先物は安値140円01銭と前日比42銭安の水準まで叩かれました。現物国債の気配を見ておりますと、先物とか6−7年ゾーンが安いのはともかくとして、1年半とか2年とかの現物債も妙に売り物勝ちというのは少々怪しげ。毎度お馴染みのGDPがらみの思惑かもしれませんが、感じとしては当座預金残高ってイメージ。先物オプションの140円プットもやたら堅調でしたし。週末に散々盛り上がった「当座預金残高目標引き下げ報道」に反応したんでしょうな。

そりゃもう昨日は(ドラめもん書いた後だったし、そんなに騒ぐ話か?と思ってたので追加しませんでしたゴメンナサイ)朝7時のNHKニュースでの「今週の予定です」ってのに「木曜日から日銀の政策決定会合です。現在の当座預金残高目標の見直しに関しての討議が行われる云々(記憶が怪しいがまぁそんな感じ)」とか言ってましたけど・・・・

まぁ確かにあの講演テキスト読みますと、今までは展望レポートでこっそりと話をしていたり、須田委員あたりがこっそりと言っていた「量的緩和政策はゼロ金利+時間軸」という理屈が堂々展開されているので、日曜の午後に初めて気が付いたあたくしも「こりゃ月曜のネタが出来た」じゃなくて「おお!これはやりますなぁ」と思ってしまう訳ですな。

ちなみに「量的緩和はゼロ金利+時間軸」という理屈には「従って時間軸効果が維持できてゼロ金利が継続していれば当座預金残高の量の多寡は問題にならない」という理屈がおまけに付いて来ます(^^)。


量的緩和の「弊害論」などによりますと、市場機能の復活が大事だというお話があるわけでして、当座預金残高引き下げ→長めの短期金利が上昇って連想も働く(実際にそうなるかどうかはともかくとして)わけで、そんな話を5年国債という中期国債入札直前にぶち上げてしまう日銀の間の悪さには感心してしまいます。入札前だからヘッジ売りが嵩んだというのもある訳でして、形としては「日銀が当座預金残高目標引き下げの検討を示唆しただけで長期金利が上昇ですが何か?」という事になってしまうという実に香ばしい月曜の相場でありました。

今日の入札が注目されます。普通に考えると無問題のはずなんだが・・・・


○しかしまぁ・・・・

2000年の逆噴射利上げの時もかくありなん(あたくしこの時は金融市場にいなかったのでさっぱり存じませんが)という感じで、裸単騎の勇者として頑張る日銀さま。当座預金残高目標を引き下げてもこのまま無事に景気が回復してくれればその「フォワードルッキング」に対して称賛の嵐になるといった所でしょうか。

ところが、循環的に景気が悪化しちゃった場合にはどうするかと言いますと、今回当座預金残高目標を引き下げてしまうと、次回に打つ手がなくなるという素晴らしい事態に追い込まれます。長期国債買入でも増やしますか?ただ一応、金曜日の講演ではかなりヤケクソな理屈によって、当座預金残高引き上げにも意味があるような言い方をしていますが、そりゃ茶番でしょうなぁという感じ。念の為講演の該当部分を再掲します。

『量的緩和政策の枠組みは、景気が回復に向かえば向かうほど、サポートする力も強くなります。この場合、「量」の効果との比較では、「約束」の効果の方に徐々にウエイトが移って来ます。』

つまり、「景気が悪化した場合には量を増やす意味があります」という理屈なんでしょうが、そりゃちょっと強引過ぎやしませんかねぇ。

まぁ打つ手に関してはお馴染みの誤魔化しロジックでその場を凌ぐんでしょうが、それよりも問題なのは「景気後退の責任を日銀が背負わされるリスク」ではないかと存じますがどうなんでしょうかねぇ。何か2000年を思い出すような動きが日銀だけじゃなく散見されるのが気になる所であります。

そういえば金曜の日経金融の「ポジション」欄で「当預引き下げは政治的中立がどうのこうの」とか言う無茶苦茶な理屈を言っている編集委員様がおいでになっておられまして、今まで目標引き下げを煽っていたのに盛り上がるとこれですかあなたがたはマッチポンプですかそれでも自称経済のクオリティペーパーですかそうですか(ああ疲れた^^)といった所ですな。その記事に関して悪態をつこうかと思っていたのですが、あまりにも馬鹿馬鹿しいのでやっぱ止めます。

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2005/05/16

お題「うやむやのうちに政策ロジックを変更する人(-_-メ)」

毎度お馴染みの某経済ニュース。某経済評論家がライブドアとJR西日本を挙げて「むきだしの資本主義の悪しき面が出た」って話をしているのですが、「ライブドアは結局マネーゲーム」だとか「利益至上で経費削減した結果の悲劇」ですかそうですか。確かこのセンセイ、同じ番組の同じコーナーで以前はリストラ効果を称揚したり、ほりえもんを称揚してたりだったんですけど、過去の言動は完全スルーしてご正論ですかそうですか。

と、血圧を朝から上げると碌な事はないので。

○本題の前に金曜の続き

金曜にお話をしていた「中央銀行の財務健全性とは何ぞや」というネタは金曜日以降経済系のブログで話題になっておりました。その中でbewaad氏がhttp://bewaad.com/20050513.htmlで中央銀行の会計問題について解説するのを読んで、金曜書きながら「???」と思っていた(なら書くなといわれそうですが、汗)点について無い知恵を絞って見ました。

と申しますのは、小見出しで「自己資本の数字よりも資産内容・・・なのかどうかは良く判らん」などというお題で書き出した部分でして、「日銀の資本の部に国債が大量にあるのは他の物持っているよりはマシでしょ」という趣旨のお話をしておったのですが、書いたあたくしも「中央銀行の財務健全性真理教」にいつの間にやら影響されておりやしたな(大汗)。

bewaad氏が上記ブログでご指摘のように、現在日銀の保有国債が多いのは「金融調節の結果として国債の保有が増えている」ということですな。現在の金融調節は基本的に有担保になっており、量的緩和政策をしており当座預金残高を高水準で維持しているので、当座預金残高の見合いになる金融調節の担保がバランスシートの資産サイドに入るということですか。担保というとこれまた話がややこしくなりますが、金融調節での資金供給として現在行われている形式は「買現先方式(短期国債買入もありますが)」でして、実質的には担保ですが、会計上は担保じゃないのでバランスに上ってくるという形ですわな。

従って、仮に日銀の資金供給が「貸出」で行われていれば資産サイドは「貸出金(金融機関への)」だらけになる(仮に国債を担保にしていても、担保はバランスシートには上りませんわな)訳でして、貸出金ならば引当をする必要はあるけど時価評価も糞も無いので・・・・・あれ?

つー事で、金曜日の「中央銀行の資産内容がどうのこうの」って話しはやっぱり考えると頭がウニになってきたので一旦保留。



では本題。

○経済同友会での福井総裁講演・・・・・ロジック変更で当預引き下げか?

13日の金曜日なだけに福井総裁が怪しげな講演をしていたようですな。いつの間に実施したんだって感じで、情報ベンダーなどで見た記憶があまり無いのですが、早速日銀Webにアップされております。

http://www.boj.or.jp/press/05/ko0505a_f.htm

経済同友会会員懇談会での講演で、お題は「日本経済の力強い成長に向けて」ですんで、景気動向と今後の見通しに関連する話もあるのですが、ウォッチャー的に衝撃の内容というか「ああそういう流れになるんでしょうなぁ」という意味では衝撃じゃなかったりしますが、金融政策に関する実に香ばしい言及がございます。多分景気に関する部分も読んでおいた方がよさげな気もしますが本日は金融政策部分だけ。


・「量的緩和政策の枠組み」がいつの間にやら・・・・・

講演の最後の方にある(金融政策運営)以降をご紹介します。

『日本銀行は、現在、日銀当座預金残高という「量」を主たる操作目標とする金融緩和の枠組み――いわゆる「量的緩和政策」――を採用しています。この量的緩和政策の枠組みは、大きく言えば、次の2つから成り立っています。』

枠組みもへったくれもそもそも論として「量を目標にした政策」でしょって言うのは読みが甘い(^^)。今回の講演では堂々と「量的緩和政策はゼロ金利+時間軸」と言い出しております。どさくさに紛れて金利政策に戻るという事のようですが、「量的緩和政策は金利ターゲットじゃない」と言い出して始めた政策を何のレビューも棚卸しもせずになし崩しで変えて良いんでしょうかねぇ。

『先ず、第一に、日本銀行は、金融市場に極めて潤沢な資金供給を続けています。具体的には、金融機関が法律上の義務等で、日本銀行に預けることが求められている資金――これを所要準備預金と言い、現在は6兆円程度ですが――を大幅に上回る資金を供給しています。これにより、金融市場では、流動性に関する安心感が隈なく広がるとともに、コール市場でのゼロ金利が実現しています。』

『第二に、日本銀行は、こうした政策を消費者物価指数(全国、除く生鮮食品)の前年比変化率が安定的にゼロ%以上となるまで継続するという、中央銀行としては異例の「約束」をしています。これによって、市場参加者が、ゼロ金利の継続を予想することを通じて、やや長めの金利を引き下げることとなります。』

いやー、思いっきりロジック変更ですな。こんなに簡単に今までの政策ロジックを放棄するとは思わなかった。こんなのありかよぉぉぉぉ!!!


・相対性緩和論がなお進化しているようですが(-_-メ)

『今述べたような量的緩和政策の枠組みを導入してから、4年以上が経過しました。この間、量的緩和政策の枠組みに変化はありませんが、政策効果は、直面する経済や物価の状況、金融市場や金融システムの状況によって変わって来ます。』

相対性緩和論ですかそうですか、と思うのは同じく読みが甘かった。説明部分をまる引用していると長くなるので思いっきり端折って紹介します。

『こうした金融経済情勢(引用者注:金融不安だのクレジットクランチだのという状況)の下では、機動的に潤沢な流動性を供給することで、人々や市場参加者の流動性に関する不安心理を抑制し、金融市場の安定化を達成することにより、緩和的な金融環境をしっかりと維持することが必要でした。』

『経済・物価情勢が好転すれば、それに応じて金利が上昇するものですが、「約束」があることで、先行きの金利予想を安定させることを通じて、やや長めの金利を引き下げ、企業は引き続き低利での資金調達が可能となります。一方、景気の回復に伴って投資の収益率が高まるため、経済活動における投資採算はそれに応じて改善することになります。』

というこの怪理論はど〜ゆ〜事かと申しますと、要するに上でご紹介した政策ロジックのどさくさ紛れの変更と同じことなのですが、「経済状況が悪い時には量の効果があり、経済状況が良い時には時間軸効果がある」という「相対性緩和論」を発展させた「相対性政策効果論」(命名がイマイチ。誰か考えて〜)だと言うことですわな。

同じ箇所でこういう言い方もしております。

『この時期(引用者注:さっきと同じ時期)、見方によっては、「約束」の効果<いわゆる「時間軸」効果>よりも、流動性不安を鎮めることを通じる「量」の効果の方が大きかったといえるかもしれません。』

『量的緩和政策の枠組みは、景気が回復に向かえば向かうほど、サポートする力も強くなります。この場合、「量」の効果との比較では、「約束」の効果の方に徐々にウエイトが移って来ます。』

まぁ相対性緩和論そのまんまとも言えそうですが(^^)。


・当然ながら当座預金残高目標引き下げの話になる訳で

以前から指摘しているように、当座預金残高目標の引き下げを量的緩和政策のロジックから外すというお話です。

『政策委員会でも、現在のような高い当座預金残高目標をこのまま維持することの是非をめぐり議論が展開されています。ただ、これはあくまでも、金融機関の流動性需要や金融市場の状況が変化している実情に即して、量的緩和の枠組みを堅持して行くためにはどのような対応が適当なのか、という観点に立って行われている議論です。消費者物価指数に基づく明確な「約束」に沿って、所要準備を大きく上回る潤沢な資金供給を続けることでしっかりと金融緩和を継続する、という基本スタンスにはいささかの揺るぎもありません。』


・・・・と言うわけで、経済同友会でまず説明行脚と言ったところでしょうか。この調子だと、あちこち説明行脚して近いうち(まさか今週はやらないと思うが、ありえないとは言えませんな)に当預引き下げですなぁ。困ったもんだ。

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2005/05/13

お題「中央銀行の自己資本話からテキトーに話しが発散します」

本日は人のふんどしで大相撲の巻。と申しますか、一昨日の日銀リリースに触発されて考えていたことを昨日の拙文ネタにしようかと思っていたのですが、目覚めた時にはすっかり忘却しておりまして全然違う話を書いた(笑)という次第。


○日本銀行準備金積み増しというニュースにて思う

先日発表された「日本銀行法第53条第2項に基づく認可申請について」(http://www.boj.or.jp/about/05/zai0505a_f.htm)ですが、既に報道されているように97年の金融危機で自主廃業に追い込まれた山一證券への日銀特融が(まぁある意味予定通り)回収不能になった事に関連して、剰余金から国庫納付に回る額をやや少なめにして日本銀行の財務健全性を確保するってお話ですわな。

で、このニュースを聞いたあたくしは、最近一部で話題になっている「で、中央銀行の財務だの会計だのってのはどういう意味なのよ?」って話に対してつらつらと考える所がございました。

時々話題に上る事として「中央銀行の財務健全性がどうしたこうした」というお話がございます。そりゃまぁ財務が不健全よりは健全であるに越した事はないでしょうが、日銀が保有する国債が金利上昇で含み損になる事を捕まえて「日本銀行の財務の健全性がどうのこうの」って言うのは話の筋が変なのではないかと思うあたくしであります。

・・・・と言うような所から色々と話をしようと思ったら、毎度巡回するページの「本石町日記」氏が早速「中央銀行の自己資本比率論」というエントリーを上げておられる訳ですな。
http://hongokucho.exblog.jp/2708508/

あたくしの思うことが明解に説明されておりまして、「まぁこちらを読んでくれ」で話しは終了(^^)・・・だとネタとして終了しちゃいますので、少々話しが脱線しながら関連話というかその他Webのご紹介をして頭の体操でも。

上記エントリーで本石町日記氏はこのように指摘しています。

『結論として私が思うのは、タイトルに掲げたように、何%とかいう数字はあくまでも結果的にそうなったものであり、日銀資産の健全性を決定的に左右する指標ではないような気がする。もちろん、世間的には「自己資本比率」は健全性を表す一つの指標との認識が浸透しているのは事実で、日銀として気にしないよりは気にした方がいいとは思うが、しょせんはその程度で、強くこだわる必要はないのではないか。』

『管理通貨制度における通貨の信用は、金本位制のように確固たる裏づけはなく、まさに中央銀行に対する信認が通貨価値を裏付ける。やや極論だが、日銀に対する信認が確固たるものであれば、自己資本比率などどうでもいいのではかろうか。人々は日々お金を使うとき、日銀の自己資本比率を気にしているのか。そうではないだろう。ここで具体例を挙げると、かつてブンデスバンクは為替変動の影響で外貨資産に多額の含み損が発生し、一時債務超過になったことがあるやに聞く。では、それでドイツ国民はマルクを見限ったのか、と言えばそうではない。』

で、示唆に富むお話しが続く訳ですが、それに関しては上記URL先をご覧いただくと致しまして、このお話、あたくしも禿げ上がるほど同意でございます。で、こちらのブログにトラックバックされているブログなんぞも拝見した訳ですが、じゃぁ日銀のバランスシートってどうよ?って話しなどでやや話題発散気味な気もしますが、中々考えさせられるブログが2本(今朝時点で)ございましたな。


○自己資本の数字よりも資産内容・・・なのかどうかは良く判らん。

日銀のバランスシートを見ますと、資産として国債がたくさんあるという点について触れているブログもございましたが、まぁ日銀にとって会計上負債計上になります日銀券に対して見合いになる資産は何でしょかって事を考えますと、そりゃまぁ国債になるのは仕方ないというか、一番まともな選択肢になるんでしょうなぁと思う次第。

と申しますのは、日銀がそれこそ「道路」だの「土地(営業上必要なものは別)」だのという資産を沢山持っているという話になったとすると、それは財政政策を日銀が実施しているんじゃ?って話になると思います。じゃあ日銀がETFを買うとかREITを買うとかいう話はどうなのよって言われるとまた微妙な話になりますし、信用秩序維持の為に「最後の貸し手」機能を持っている日銀としては、「最後の貸し手」として動いた際にはある程度必然として「特別融資」という名前の資産が毀損する事だってある訳ですから、国債以外の資産を持つのがケシカランという積もりは毛頭ありませんが。

まぁつらつらとそんなことを考えておりますと、どこぞの経済系新聞社やら、稀にどこぞの政権準備政党(笑)さまあたりが「日銀が大量の国債を保有しており、金利が上昇した時に国債に含み損が発生すると日銀の財務が悪化する」などという話を持ち出して日銀に意見を求めることがありますが、んなこたぁ極めて頓珍漢というか問題から外れまくった指摘であると思う次第。

外部が「日銀のバランスシート」とか言うもんだから日銀としても反応せざるを得なくなって、時々「日本銀行の財務の健全性」について気にしない訳にもならなくなり、それがまた反射作用するという音叉共鳴状態になるのは何とかならないものでしょうかと考える今日この頃であります。


○物凄い勢いでお勧めの「にちぎん☆キッズ」

毎度お馴染みの日本銀行Web(http://www.boj.or.jp)トップページの中段左側あたりに「にちぎん☆キッズ」という素晴らしいコーナーへのリンクバナーがございます。このコーナーMacromediaFlashPlayerを駆使しているのでナローバンドな人にはちと重いかもしれませんが、とにかくお勧めなので読者の皆様におかれましては必見でございます(^^)。URLはhttp://www2.boj.or.jp/kids/です

で、まぁこの中でも当然ながら管理通貨制度に関連するお話をしております。それが「お金のしくみ」ってところの「信じる?/信じない?」ってあたり。日銀の対外公表文と違って内容を勝手に引用しまくると著作権がどうのこうのというお話になりますので、引用を極力自粛しつつ引用。まぁコーナーをご覧頂くとして、そのまとめがhttp://www2.boj.or.jp/kids/matome/shikumi_3.htmlってところにございます。これもまた必見。

『しかし、現在私たちが使っているお札は、ただの紙で、金や銀と交換してもらえません。それでも、お札は、みんなが「これはちゃんと価値がある」と信じているので、お金として通用しているのです。』

このあたり子供向けコーナーというよりは、全国民(そこまで言うか>自分)必見という感じですな。

よーするに「日本銀行の財務の健全性がどうのこうの」ってのは副次的な問題であり、究極的には日本銀行が信用されているかってのが管理通貨制度の維持に必要なお話だと「にちぎん☆キッズ」が言ってるんですから、まぁ自己資本比率がどうのこうのとかいうことにそんなに拘りなさんなってところでしょう。


それよりも、日銀として政策の信頼性に???がつくような迷走政策論議をする方が、保有国債の評価額下落なんかよりも余程問題が大きいのではないかとおもいますがねぇ。ほら、「にちぎん☆キッズ」もこう言ってますし。

『現在、日本には、紙のお金(お札)への信頼を守るために、こんなしくみがあります。』
『★日本銀行がお金(お札)の価値が下がらないようにいろいろな政策を行っています。』

・・・・でもここの部分ってリフレ派の皆さんからは「日銀はデフレ政策をするのかゴルァ!」って突っ込まれそうですな。文脈および「詳しくはこっち見ろ」と書いてあるリンク先を見ると、単に「日銀は通貨増発(追記:成長通貨の供給じゃなくて日本の戦後インフレみたいな「通貨増発」です)あるいは財政インフレみたいな事は起こさないようにしてます」って言ってるだけのようなんですが(ちょっと贔屓目な読み方かな?)。


○財政発散問題といえば・・・・・(大昔ネタにしたお話)

本石町日記さんの当該記事のトラックバック先では日銀のバランスシート話から財政問題に話が発展しておりましたが、財政発散といえば大昔ネタにしたので昔からあたくしの駄文をお読みの方はご存知でしょうが、こんなのがあります。「驚愕の審議会」とかいうお題で内容ご紹介しましたな。読んだ事無い方は是非ご一読ありたし(^^)。

「日本経済の将来ビジョンを語る懇談会」の昨年6月1日の議事要旨。
http://www.mof.go.jp/singikai/vision/gijiyosi/a160601.htm

・ 現在、プライマリー・バランス(基礎的財政収支)の黒字化の目途は立っておらず、足元の回復も構造的な要因ではなく、循環的な要因であると考えられる。過去の経験から名目利子率が名目成長率を上回るという可能性を考慮すると、プライマリー・バランスがゼロになっただけでは、対GDP比債務残高の発散は止まらない。公的債務残高をGDPの2倍程度で安定化させるなら、対GDP比4%程度の黒字化が必要である(名目利子率が名目成長率を2%上回る場合)。

・ なお、巨額の公的債務残高の存在にもかかわらず、世間的に危機感がさほど抱かれていないのは、低金利状況の下で、債務維持負担(debt service burden)が非常に軽いものに済んでいるからである。日本銀行のゼロ金利政策とそれに続く量的緩和政策が、こうした債務維持負担が軽い状況を作り出している。

・ 換言すると、日銀が量的緩和政策を続けざるを得ない経済情勢が続くことが、財政の安定が維持できる条件になってしまっているともいえる。そうした経済情勢とはデフレの持続にほかならず、デフレの脱却による日銀の政策スタンスの変更が財政危機の顕在化につながりかねない状況と言える。

いやもう付け加える事はございませんな(と、また手抜き^^)。


○で、最後の最後にオチをつけときましょう

えーっと、本当は別のお話にも発散する予定だったのですが、話が上手く繋がらないのと、量も引用ばかりとは言え大量になったので(大汗)、最後にはオチとして元中央銀行職員であらされたいつものお方の怪電波をご紹介しましょう。例によってURL紹介の最初のhを省略してます。
ttp://kimuratakeshi.cocolog-nifty.com/blog/2005/01/post_19.html

『私たちが普段「おカネ」だと思い込んでいるお札の正式名称は、日本銀行券。平たく言えば、日本銀行が発行した借用証書にすぎない。一万円を取り出してしげしげと眺めていただくと、表に赤くて丸い「総裁之印」というハンコが捺してあることに気付く。要するに、一万円札というのは、日本銀行総裁が「一万円分の何かを借りました。いつか必ずお返しします」と約束している借入証文に過ぎないのだ。』

おまえの頭の中では兌換通貨が流通しているのかと小一時間ですな。何と言うかもう呆れて物も言えないとはこの事で、「にちぎん☆キッズ」からやり直せってところですか。

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2005/04/28

○金融政策決定会合ですが

当然ながら何も変更は無いでしょう。というかあったら大騒ぎなのですが、まぁそれよりも来月に発表される今回の会合の議事要旨の方が面白かろうとは思います。景気の先行きが何となく怪しげというか平均株価見てるといつまでたっても踊り場な訳ですが、そんな状況下で当座預金残高目標をどうしましょうかって議論は相変わらず行われると思いますんで、そちらを見ておきたいものであります。

本件に関してはどうも流れとして「当座預金残高目標の引き下げ」方向になっているようですわな。引き下げに際して今までの「量の増加は金融緩和」という理屈は放置して「技術的緩和論」を持ち出すのか「相対性緩和論」を持ち出すのか判りませんが、とりあえず論理破綻モードで突撃の悪寒。まぁ勝手にすればって感じですが。

展望レポートに関してはどう考えても今年度のCPI見通しを下方修正して来年度のそれをプラスにするって話しになるでしょうとしか申しあげようがないです。景気見通しに関しては結構強気なものが出てくるでしょう。

あとは現状維持の表決(追記:票決の誤記ですな、あっはっは)ですか。前回1票反対がありましたが、これが3票くらいまで増えるとそれはそれでインパクトあるかもしれませんが、そもそも債券市場の現状では当座預金残高目標引き下げは材料にならないという扱いになっている(単に外部環境がよいから無視しているだけの可能性も否定できない)ので影響は限定的でしょう。

しかし短期金融市場関係者には申し訳ないが「短期金融市場の市場機能低下という量的緩和政策の副作用がケシカラン」という一部政策委員の理論は相変わらず理解不能である。既にデフレ脱却している状況ならその理論は判るが。。。。。


○国債投資家懇談会

火曜日(4月26日)に国債投資家懇談会が実施されまして、その議事要旨が公表されております。

http://www.mof.go.jp/singikai/kokusai/gijiyoshi/b170426.htm

国債市場特別参加者会合(国債市場懇談会)と比較して参加者数が少ない(どうでもいい事なのですが、当該Webを見ますと国債市場懇談会の参加者メンバーとしてリンクされているテキストが平成16年6月4日時点=国債市場特別参加者制度のスタート前時点の状態から更新されていませんですよ>財務省様)せいなのか(出席するような身分じゃないから中で何がどうなってるのか知らんが)、公表される議事要旨の内容はこっちの方がやや突っ込んだ物になってます。

今回の会合のお題は「国債市場の状況と今度の運用見通し」と「今後やることになってる流動性供給入札ってどうよ(そんな表現じゃないって^^)」ということのようですが、まぁ前半の相場見通しその他のお話は中々面白いですな。

えーまぁ皆さんの意見を勝手に総合すると、「年度前半は比較的堅調な債券相場ですが、秋以降にかけて景気回復で年度後半に金利はやや上昇するでしょう。でも量的緩和というかゼロ金利があるから行って2%までは上昇しないでしょ」という誠にオーソドックスな予想。まぁそうじゃろうなぁとあたくしも思うのですが、世の中皆が思っているようには動かないというのが市場の素晴らしい所ですので、このメインシナリオがど〜ゆ〜事になると崩れるのかという事に考察を加えるのが吉なのではないかと愚考。

変動15年利付国債に関してはその商品性に関してまだ意見が分かれているようでして・・・・

『15年変動利付債については、金利先高期待が強い状況では投資妙味がある。ただ、来年半ば以降に、実際に短期金利が上がり始め、ベアフラット化が進むことになれば、15年変動利付債の価格自体が低下することから追加投資は当面控えたい。』

『15年変動利付債については、金利上昇の際のヘッジとして常に視野に入れている。ただし、負債構成上、金利上昇時に含み益が増加することから、資産サイドに15年変動利付債をあえて組み込む必要があるかについては社内的にも議論がある。』

『今後金利が上がってくると、イールドカーブがスティープ化するのではないかと予想しており、15年変動利付債については、昨年も買い増しをしたが、今年についても買い増しを考えている。』

まぁ人それぞれという感じでオモロイ。

物価連動国債に関しても意見がでてましたが、その中で感心したというか「いや仰せの通りですな」と思ったのはこんな意見。

『時価ベースでみると、不動産及び株式が資産サイドのかなりの割合を占めており、これ以上、インフレに対するヘッジの必要はない。』

物価連動国債に関してはデフレ制約のある状況での発行だったんでややこしい事になったのかもしれませんが、元本がぶれるってのはやはり商品としてどうよってのはありそうですな。と言っておっぱじめたものを今更止めるわけにも行かず・・・・・

コア預金の概念がバーゼルUで堂々ご登場になったので、その話も出ておりますが、まぁ上記URL先をご覧頂ければと存じます。

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2005/04/20

○まぁある意味裸単騎待ちの勇者とも言える訳ですが

昨日も書きましたが日銀の今後について心配しつつ整理してみるのである。

・当座預金残高目標を今更引き上げられない
→「技術的対応」とか「相対性緩和論」とか「流動性対応」だのと理由をつけて「量を減らしても金融引き締めではない」と言っているのに(同じ話なので以下省略^^)

・そもそもそれ以前に政策の整合性が崩壊していた訳だが
→「景気判断を上方修正しているのに当座預金残高目標を引き上げた」というのが政策の論理性を失わせていた訳で、非不胎化介入支援をする積りだったらそうだと言っておけって感じですわな。「景気判断の上方修正をしながら当座預金残高目標の引き上げを行うのは矛盾して無いか」という突っ込みに対して訳判らん応答を総裁は当時してたと存じます。

・けしかけられてその気になったら・・・・・
→まぁしかし日銀も運が無い(本石町日記氏も指摘してますが)わけでして(^^)、当座預金残高目標引き下げの雰囲気が札割れ攻撃やら短期金融市場方面を中心とする「目標下げは技術的対応なので無問題でっせ〜おっほっほ」キャンペーン(?)によって短期金融市場あんど債券市場で織り込みに行った所で平均株価急落、お前は相場神かと(^^)。

・ま、景気に強気なんでしょうな
→景気に強気なので仕方ないんですけど、わざわざ自分で逃げ道を塞ぐ(=景気が失速した時の政策対応余地を狭める)ことをすることはねぇと思うのですが、まぁ政策委員会の「景気回復一点張りモード(に見える)」は何と言うか勇者の香りが致します。

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2005/04/19

○まぁそりゃそうなんですがタイミングが・・・・

理論派で鳴らした(つーか今でも理論派ですが)日本銀行前副総裁の山口泰さんが昨日都内のどこぞで講演をしていたそうです。情報ベンダーにちょっとだけ記事がでてフラッシュを打たれていたのですが、記事によると話の内容はこんなところ。

・量的緩和政策の「量」そのものには意味が無かった(ゼロ金利+時間軸には意味がある)
・札割れ対策で長期国債の買入を増やすと、反対に売却する場合にインパクトが相当に激烈になると思うので日銀が長期国債買入増額に慎重なのは理解できる
・最近の福井総裁発言などを踏まえると日銀は札割れがなくても景気が回復するのであれば当座預金残高目標の引き下げを考えているかもしれない
・量的緩和の出口に向かうと言っても、その先にインフレ的経済や高金利の経済が待っているわけではなく、超低金利が続く可能性が高い
・デフレ下でも景気回復はしている

3番目の話以外は昨年8月にこちらでもとりあげました時事通信社発行の月間誌「金融財政」でのインタビューで同じようなお話をしておりましたな。3番目の点に関してはまぁあたくしも同じ見解だったりする(やるべきではないと思うのと、日銀はこうやるでしょうという見通しは別問題^^)のですが、果たして市場はどこまで織り込んでいるのか。株式市場やら為替市場(はそもそも反応しなさそうですが)なんかはどう反応するのかは未知数の段階ですわな。日銀としてはどうやって織り込ませるのか難しいでしょうなぁってところですな。

ま、それは良いのですが、株式市場が実に怪しい状況になっているさなかに日銀方面から聞こえてくる話は当座預金残高の引き下げだの景気回復だのというものばかりですな。間違って株式市場が腰折れ状態になって景気も怪しくなってきた時に大丈夫なんでしょうか?

山口前副総裁の講演自体は事前準備していることなんで株式市況がゲロゲロになっているから内容いじるって訳には行かないのは判りますが、何ちゅうかタイミングが宜しくありませんでしたなぁ。


○しかし当座預金残高目標引き下げして大丈夫か?

という話になる訳ですよ。どうもここもとの株式市場の下落に関してもそんなに気にしている雰囲気もないし、山口前副総裁の講演を引くまでもなく日銀は相変わらず景気には強気で消費者物価だけは下がらないですねってスタンス。昨日の信託大会での福井総裁挨拶(武藤副総裁代読ですが)でもこんな感じ。

『景気回復の基本的なメカニズムはしっかりと維持されており、最近では、生産も横這い圏内に持ち直しております。わが国経済は、遠からず「踊り場」を脱し、持続性のある成長軌道に向けて回復を続けていくものとみています。』

『この4月1日から予定通りペイオフが全面解禁され、わが国の金融システムは新しい時代を迎えることとなりました。この間、預金者や金融機関の動向は落ち着いたものとなっており、ペイオフ全面解禁は円滑に実施に移すことができたと思います。』

相変わらず強気モードでありますな。そういえばペイオフ全面解禁が尻抜けだという話を特集する積りだったのに調べ物をする余裕が無くてそのまま放置になってましたな。興味深いエントリーが昨日の「本石町日記」にありますんでご覧下さいませ(とまた手抜き)。

それはともかくとして、当座預金残高も「量」に関しては、既に当座預金残高目標引き下げ議論で「テクニカルな減額」だの「流動性対応分の減額」だのという話をしている訳ですんで、山口前副総裁のように断言はしませんが、実質的に「量の増額=金融緩和」と言っていた理屈がなし崩し的に骨抜きになっているのが現状でありまして、仮に景気がマジで腰折れモードになった場合に日銀として次に打つ手は無くなっているという状況になりつつありますわな。ま〜面の皮が物凄く厚ければいけしゃあしゃあと「量を増やしたから金融緩和」とか言って当座預金残高目標増額でお茶を濁すのかもしれませんが、最早そうなったら金融政策支離滅裂ですわな(^^)。

という訳で、日銀の中の人は結構ドキドキしているのではないかと思う今日この頃でありました。

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2005/04/15

○3ヶ月ものFB100円落札問題補足

昨日もあちこち聞いて回った訳ですが、まぁ要するに足元の玉不足を反映したものだという感じ。ちょうど期末にペイオフ解禁という名目があったので運用サイドが足元資金の運用を抑えていた反動で玉不足になっており、そこに期初なので元気な業者が販売用の玉確保をしたがっていた事とぶつかったという感じのようです。

昨日申しあげたように、100円で落札したFBは日銀の資金供給オペがゼロ%にならない(国債買入でも出来上がりがゼロ利回りになる債券は買わないです)ので、普通に日銀相手にファイナンスをつけると見事にコスト割れなんですが、まぁ期初で営業政策上販売玉を確保しておきたいとか、落札実績というかシェアを期初に確保して取引の活発化に寄与したいとかいう、合理的だけど合理的じゃない理由(謎)に伴った動きがこの結果だということで。

昨日は100円落札ケシカランと言うことで短期国債売却オペが実施されました(そういえば昨年12月に短期国債100円落札があったときにも同じように短期国債売却オペがありましたが)。結果は落札利回り0.001%と言うことで、足元の運用圧力も結構ありますなぁって感です。

ま、期末の反動で足元の運用圧力が掛かっている事と、期初の業者の営業政策上の要請のダブルパンチという解釈でよろしいのかと。

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2005/04/14

お題「FB入札と当座預金残高維持問題」

日銀ネタが月末まで一段落しちゃいまして、入札も次の20年国債まではちとネタにしにくい感じですな。本日は30年国債の入札があるんですが、この商品はまだまだ投資家層の広がりとか流動性とかに少々問題があるようで、何っちゅうか別天地の商品って趣が抜け切りませんですなぁと思うわけで。

○FB最低落札価格が100円ですかそうですか

昨日のFB3ヶ月もの入札は最近の短期国債入札の過熱っぷりが見事に影響して期初から景気良く最低落札価格が100円、つまりゼロ%となりました。まーこれも当座預金残高目標30兆円維持の犠牲みたいなもんで、ここの所の動きから見て市場的には「はぁそうですか」くらいのお話だとは思いますが、「短期国債が100円=利回りゼロ%」ってことなんで、金融政策論議で言われる「量的緩和政策(というよりはゼロ金利政策なんですが)によって日銀当座預金=短期国債となる」っていうお話が具現化しましたなぁってのが話題っていえば話題なんでしょうか。

量的緩和政策によってポートフォリオリバランス効果が発揮されるというロジックは割と多くの人がお話している(日銀もそもそもこの政策をおっぱじめる時にポートフォリオリバランス効果を重視した言い方をしていた)のですが、実際はどうよって話になりますと、ポートフォリオリバランスの前に国債のイールドがどんどんゼロに向かっていくのが先に行くというのが市場にいるものの直感でございます。

もちろん「国債利回りの低下」→「財政ファイナンスのサポート」→「財政支出による景気刺激」ってルートを使えば景気回復への効果はあると思うんですが、そこで財政が何もしないと単に国債が買われるだけで意味があんまりなさそうな気も。などとちゃんと経済学をやっている人から思いっきりアホ扱いされそうなイメージ話で恐縮至極。

しかし3ヶ月FBで落札者全員ゼロ利回りってのもようやるわって感じです。日銀の資金供給オペにこの玉応札したら逆ザヤになるわけで(日銀はゼロ%利回りになる資金供給オペを今の所実施していないはず。記憶違いだったらゴメンナサイ)、資金供給オペは益々大変になるでしょうな。まぁ実際はコストゼロ%でのFBであっても短期国債買入とか国債買現先とかにぶちこむと思いますんで無問題なんでしょうが、雰囲気としてはまぁ困ったちゃんって感じですな。


○当座預金残高目標維持に「協力」という茶番

ときどき話題に上るのですが、当座預金残高目標30兆円を維持するために銀行が協力するとかしないとかいう話がございます。昨日の日経新聞にそんな記事があったらしい(読んで無いので良く判らんが)のですが、まぁ要するに「イラネ」って状態の短期資金供給オペに対して金融機関も日銀の顔を潰すのもアレですんで特に資金要りもしないが参加いたしましょってお話。

そうなってくるとこの「当座預金残高目標維持」ってのは一体全体何の意味があるんでしょって話になる訳ですな。今までの政策ロジックを踏襲するのであれば、短期資金の供給オペで当座預金残高目標維持が困難になってきたのであれば、オペ期間の長期化とか中長期国債買入の増額(そもそも速水総裁時代は「当座預金残高目標の引き上げ」と「長期国債買入額の増加」をセットにしていたわけですし)をするのが筋というもので、目標維持に「お願い攻撃」とは何ですかそりゃって所でしょう。

とは申しましても、実際問題として政策の筋を通そうとして長期国債買入の増加を実施というのはまぁ今の体制では考え難いというか多分あり得ない選択肢なんで、そうなりますと日銀としては、何らかの技術的な理由で誤魔化しつつ当座預金残高目標を引き下げて「金融引き締めではない」と強弁するしか無いんでしょうな。政策ロジック支離滅裂ですが。

しかし当座預金残高目標維持のための「努力」って「お願い行脚」では無いと思うんですが・・・・・・


ところでこの当座預金残高維持問題。他市場との関連って話を考えますと、株式市場は3月初旬には「日経平均12000円抜けですよおっほっほ」って勢いを見せていたのですが、まぁ最近は色々と怪しい雰囲気でどうもぱっとしない展開。そんな中で当座預金残高目標維持はというと目先はともかくこの調子では6月以降にはテクニカルに維持困難になってきそうですわな。

まぁその頃になっていれば株式市場の様子も違っているかもしれませんが、このままですと「株式市場はこう着状態なのに当座預金残高目標は引き下げ」という実にお洒落な展開を見る事が出来るかもしれませんな。

他市場への影響をちゃんと止められるんでしょうか?>目標下げ


○いつも書いているがまた整理(結局日銀ネタか・・・)

だいたい目先の金融政策の注目点としては、(1)当座預金残高目標の引き下げ問題、(2)消費者物価指数の定義問題、という辺りになろうかと思います。目先にくるのが(1)でして、まずは「当座預金残高維持がいつまで持つのか」というのが注目。結局テクニカルな理由を持ち出して下げてくるんでしょうなぁってのが結論でしょうが。

(2)の方が実は話題としては重くて、政策の前提になるCPIの定義をいじっちゃいましょうって事ですから、(1)より重大な問題。しかも西村審議委員もこのネタを就任記者会見で話題にしておりますので、今後の展開には注目したい所です。


#今日もまた纏まりのない雑談で恐縮でした。

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2005/04/11

○当座預金残高目標引き下げに関するあたくしの愚意見叩き台

全然纏まっていないので思考の叩き台という感じで簡単に。

まぁ上記のように雰囲気としては「当座預金残高目標引き下げ」の方向のようなんですが、じゃぁそれでいいんですか?って事になりますと、あたくしとしては如何なものかという感じであります。何度もここで書いておりますのでご存知かとは思いますが、政策ロジックとして「当座預金残高目標引き上げ=量的緩和の強化」という事でやっていた当座預金残高目標を「技術的対応」で引き下げるのはそりゃ先生姑息ってもんでしょう。というのが基本的意見。

もう一点としては「量的緩和政策のアナウンスメント効果」部分に関して。あまりアナウンスメント効果に関しては信用してはおりませんが、金利関連のマーケット以外ではそれなりに効果があるのではないかという気もしております。何せ「足元直下の日銀ウォッチャーからは酷評されながらも、世間的には極めてウケが宜しい」という「世界で使えて自宅で圏外」日銀総裁という状況でもありますんで。

金融市場というか債券とか短期金融市場では当座預金残高目標の引き下げに関してだいぶ消化されたような感じ(ただし債券市場が下げないのは単に需給かもしれないですが)ではありますが、いざ当座預金残高目標を引き下げた場合に、株式市場とか為替市場などの他市場や、海外投資家なんかが日銀の意図どおりに材料を消化して反応しないで済むのかという点は大いに懸念されますな。「期待に働きかける政策」っていう部分もあった筈なんで金融市場が織り込んだからと言って喜んで(?)引き下げを急ぐことのないようにって思います。

たぶん金融市場は「技術的対応オッケー」であっても論理的整合性を欠く状況で突っ走ると金融市場の外ではやはり「金融引き締め」とか「緩和政策の終了近し」と受け止めると思いますんで・・・・

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2005/04/08

お題「総裁記者会見と総裁国会答弁」

○参議院財政金融委員会の国会答弁

昨日の参議院財政金融委員会では日銀半期報告質疑が行われまして、福井総裁と武藤副総裁(ほか誰か出席したかもしれませんが)が出席して答弁をしておりました。で、その中で福井総裁は「仮に」ということで「当座預金残高目標を数字の上で調整するとしても、実態的緩和を維持するなかでも技術的調整であるということが理解されるべきであり、日銀としてもそういう説明をすることになろう」(ロイター日本語版)という趣旨のお話をしていたそうな。

一昨日の債券市場では「金融政策決定会合で現状維持に反対票が入った」というのをネタにして債券先物が売られていたというのは昨日申しあげましたが、もし「当座預金残高目標引き下げ問題」が債券相場に対してヒジョーーーにナーバスになるようなお話だとしたら昨日の国会答弁でも債券相場は売られるって事になるんですが、昨日の債券市場は全然売りで反応しないとは誠に遺憾の極みであります。


ま、理由としては、

(1)そもそも当座預金残高目標の引き下げが債券市場的にはテクニカル調整だと解釈されているのであんまり重大視されていない。
(2)まぁ日銀総裁発言に関しては話半分に聞いておかないと2月末の「福井ショック」の二の舞になるから気にしない。
(3)この発言が「当座預金残高目標の引き下げに大きく踏み込んだ発言」だと理解できていない。

なんてののどれか(あるいは合わせ技)が考えられますな。その時の現物債とか先物の売り手と買い手の力関係(一昨日は現物が全般的に重く、昨日は6年〜7年ゾーンの現物と先物が強かった)で「材料にしたり材料にしなかったり」という程度の扱いなのかとも思いますが、実は(3)なのかもしれませんのでご注意を。

しかし当日の答弁のフラッシュが流れましたが、相変わらず金利関連に関する話は金利低下を牽制しているのかなぁってのも散見されまして、相変わらず困ったお方だという感じです。



○珍しく荒れなかったような総裁記者会見

金融政策決定会合を受けた総裁定例記者会見ですが、珍しく平穏な記者会見になったようで誠に結構であります(^^)。http://www.boj.or.jp/press/05/kk0504a.htm

「展望レポートの見通し期間延長問題」に関して

『(答)なぜこの時期にと言われると返事に窮する。この時期とすることに特別の大きな理由があったわけではない。いろいろなかたちで工夫を凝らしながら私どものコミュニケーションを良くしていく。政策決定の前提となる私ども自身の見通しを極力先に延ばしながら、それに基づいて政策決定をしていく。見通しについてはできる限りお示しして、共有して頂きながら、私どもの政策行動についても理解を深めて頂く。こうした以前からの運動の一環であり、別にこれに限らず様々な工夫を凝らしてきているし、今後も続けていくということである。』

以下延々と説明が続きますので上記URLをご参照って事なんですけれども(^^)、いつものパターンならここを先途と「消費者物価指数の今年度見通しが下方修正されるからじゃないんですか」と来てもおかしくないのですが、長々と言い訳をしたことによって「いや日銀様もお苦しいですなぁ」って雰囲気になったのでは無いかと言うのはあたくしの勝手な憶測ですけどね。あっはっは。


ところで、質疑応答の最後の方で反対票(=当座預金残高目標を技術的に引き下げましょうって趣旨での反対)に対する総裁の意見を聞いているお方がおられまして、これに対する総裁発言はちょっと微妙です。

『(答)私自身は議長の立場として、十分議論を尽くした上で、多数意見で本日の結論を取りまとめた。日本銀行の政策委員会は典型的な合議体であり、議論を尽くして一つの結論を導き出すための創造的な過程である。その際に、全会一致の場合もあるし、少数意見が残る場合もある。少数意見については、私は議長として、その中で将来につながる価値ある部分が含まれているかどうかということを、今後よく考えたい。(後半部分割愛)』

最後の一文が実に微妙なんですが、まぁ一般論として言っているというよりは市場としては「こりゃ福井総裁もホンネでは当座預金残高目標引き下げに傾いていますなぁ」って事になるんでしょう。昨日の国会答弁もあわせますと益々その感を強くします。で、まぁこれはさすがに微妙な所なので突っ込みが数本入ります。

『(問)少数意見の中に将来につながる価値があるかどうかについて、総裁は今どのようにお考えか。』

『(答)まだ即断を許さないと思う。これから真剣に考えたいと思っている。』

うーん、やはり総裁は目標引き下げっぽいなぁ・・・・

『(問)以前に、ペイオフ全面解禁後の流動性需要の動向などをみていきたいというご発言もあったかと思うが、即断を許さないと言われるのは、その辺りのこととも絡んでいるのか。』

『(答)この席でも、あるいは国会でご質問があった場合にも、ペイオフ全面解禁後の経済情勢の展開、金融システムの安定化度合いの更なる深まりの状況、それらを背景としながら金融市場がどう変化するか、具体的な流動性需要がどう変化するか、といったことを十分考えながらでなければ結論の出ない問題である、と申し上げてきた。ペイオフ全面解禁後まだ数日の状況であるので、そういう意味で、まだ予断をもって臨むべき段階ではないと私自身は思っている。』

で、この後「じゃあどの程度の期間を見れば見極めがつくのか?」という質問に対しては「期間じゃなくて今後の情勢次第」って回答をしておりまして、まぁこの調子ではある程度経済指標が良くなって来て、その時に当座預金残高目標の維持がしんどくなっていた場合は福井総裁は動きたがりそうですな。岩田副総裁が恐らく反対するとは思うのですが、5月以降とか6月あたりは少々鬼門かもしれませんなぁ。


○「前後不接連」はあるのか??

という訳で当座預金残高目標の「技術的な引き下げ」への道筋を絶賛敷設中となっているように見える福井総裁。今般の金融政策決定会合は植田審議委員の任期中に行われる最後の会合でして、これで量的緩和政策導入(2001年3月)時の審議委員は全員入れ替わりとなりますが、日銀ウォッチャー大先輩(つーかあたくしはなんちゃってウォッチャーなのだが)の某氏は「人の切れ目が政策の切れ目になる、なーんちゃって。そんな馬鹿なこと、あるはずはない。と思う。」って話をしておりましたが、本当にそんなことが起きそうな悪寒。

こんな時は以前ドラめもんでご紹介した深田祐介著の「大東亜会議の真実(PHP新書)」にありました中華民国(いわゆる南京政府ですな)汪兆銘行政院長の言葉を思い出すわけです。再掲になりますが。

「日本政府に対して言いたいことは山ほどある。それを要約すると三つの”不”に到達する。”上下不貫徹”、”前後不接連”、”左右不連携”。上役がよろしいと受けても下が聞かん。前任者が言ったことを後任者はそんなことは俺は全然知らんと問題にしない。左右の連携もまったく欠けている。」(戦後外務次官を務めた黄田多喜夫さんの談話として紹介されています。同書68ページより引用)

つーか前後不接連というか当座預金残高引き上げは今の委員がやっているわけですけどね、あっはっは。

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2005/04/07

お題「金融政策決定会合」

昨日まで実施された金融政策決定会合に関してあれこれ。

○「現状維持に反対票」でしたが

決定会合の結果が毎度おなじみの「全会一致」じゃなくて「賛成多数」だったんですが、債券先物はちょっとだけ売られる結果になりました。昨日の場合はやたらめったら中期債の4年〜5年ゾーンが重い(前日の相場下落の時に下げが少なかったのが影響しているんでしょうが)ため、何となく債券先物を売りたい人もいたので格好の言い訳になったという感じだとは思います。もちろん「当座預金残高目標引き下げ」で反対があったという発想です。

あたくし的には短観を受けて目標引き上げるべしって意見が出てきたら滅茶苦茶面白いなぁと思ったんですが(^^)、惜しくもその後の福井総裁記者会見で「反対票は当座預金残高目標引き下げ方向の反対」というコメントがでておりましたんでまぁ世の中の想定どおりの結果でした(^^)。

ここで反対票が植田さん(今回が最後ですな)だとオモロイのですが、情報ベンダー経由での総裁記者会見を見たところでは、反対理由が「金融市場の(ペイオフ全面解禁実施ってことでしょうな)変化の中で流動性需要がどう後退しているか、その流動性需要の変化に対して最低限、受身で、ある程度の調整がいるのではないか」(時事メインより、カッコ内はあっしのつけたし)って物なんで、まぁ福間審議委員あたり(または須田審議委員)が反対したんでしょうなってところですね。

まぁ講演なんかであれだけ散々当座預金残高目標のテクニカルな引き下げを提唱しているんですから、反対するのが筋というものでしょう、って声が聞こえましたかねぇ。なお、短観の結果があの状態のときに引き下げ方向で反対とは一体全体何を考えているんだヴォケなどという突っ込みはしてはいけません(^^)。ま、反対が一票あっても相場には影響ないでしょうな。


○時間軸効果が出過ぎないようにしてますか??

昨日の金融政策決定会合では所謂「展望レポート」における将来の経済見通しに関して今まで当該年度が対象だったのを翌年度まで対象になるようにしたって発表がありました。(http://www.boj.or.jp/seisaku/05/pb/k050406b.htm)

昨日も早速債券強気派であります某有名ストラテジスト様がこの発表に関してコメントしている訳ですが、まぁあたくしだけでなく市場関係者の多くが思ったのは「今年度のCPI見通しはどう頑張って予想しても前回から下方修正になるから、量的緩和解除に望みを持たせる意味でも来年度見通しも加えるようにしたんでしょ」って所ではないかと。

記者会見で「なぜこの時期に対象範囲を広げるのか?」と質問されたんですが、福井総裁は「なぜこの時期にと聞かれると返事に窮するが、この時期に特別の大きな理由があったわけではない」(時事メインより)と言ってから延々とその言い訳をしておりまして実に微笑ましいというか「この正直者!」って感じですな、あっはっは。

先日のドラめもんで日経金融新聞が「日銀陰謀論」みたいな記事を書いてケシカランと申しあげましたが、その記事どおりに「量的緩和解除の期待(笑)を繋ぐような作戦発動」を日銀が行っておりまして、呆れてしまうとともに当日の日経金融新聞「ポジション」面執筆者様の慧眼(っつーのか?)に敬服する次第であります。

まぁ確かにイールドカーブがある程度立ってないと金融政策もしんどいのは判りますが、そのやり方はどうよって感じですな。時間軸設定の意味はなんなんでしょ??


○「企業業績の改善が家計部門に及ぶ」を継続している金融経済月報

昨日の金融政策決定会合では金融経済月報の基本的見解が決定されて公表されてます。(http://www.boj.or.jp/seisaku/05/pb/gp0504.htm)

内容的には「3月時点の基本的見解+4月短観」ってところです。まずは景気の現状認識部分に関して3月と違っている点。

(4月)『生産は横ばい圏内の動きとなっており、企業の業況感にはやや慎重さがうかがわれる。』
(3月)『生産は横ばい圏内の動きとなっている。』

個人消費に関する『雇用面での改善傾向が続き、雇用者所得も下げ止まりが明確になる』って記述は持続しております。次に景気の先行き見通しに関する部分に関して3月と違っている点。

(4月)『IT関連分野の調整の影響が弱まるにつれて、輸出や生産は増加していくとみられる。』『企業の人件費抑制姿勢は引き続き根強いとみられるが、企業収益が増加し雇用過剰感も払拭されていくもとで、雇用者所得は緩やかに増加していく可能性が高い。』
(3月)『IT関連分野の調整の影響が徐々に弱まるにつれて、輸出や生産は増加していくとみられる。』『企業の人件費抑制姿勢は引き続き根強いとみられるが、企業収益の増加や雇用過剰感の緩和が続くもとで、雇用者所得は緩やかな増加に向かう可能性が高い。』

どうも「雇用面における改善傾向」に関して強調したいようでして、「企業業績の改善が家計に波及する」というお馴染みのダム論的なお話を絶賛継続中って所のようで、景況感や先行き見通しに関してはどうも相変わらず強めに見ているって所のようですな。まさか陰謀(略)。


○不規則発言は出ませんでしたな(^^)

だいたい「総裁記者会見に注目」などと事前に言われるときはそんなに楽しい事にはならないというのが世の常ですが、情報ベンダーに出てきたフラッシュもすぐに終わってしまいましたし、珍しく火だるまでもなく不規則発言もない大人しい記者会見になったようですな。めでたしめでたし。


○記者会見で指摘さた「ペイオフ全面解禁の抜け穴」的な問題(次回予告)

この問題を調べたり書き出すとすんげぇ長くなるので本日は予告編(^^)。

日本語版ロイターの報道によりますと、総裁記者会見の席上ペイオフ全面解禁の抜け穴的(微妙に「的」を入れてヘッジしていることを念のため申し添えます^^)な問題がある話について総裁に見解を求める場面がありました。抜け穴というのは「銀行間での決済未了部分がペイオフ全面解禁後でも保護される」って所でして、もうちょっと調べてから詳しく書きますが、どうも内国為替決済における全銀システム利用部分(いわゆる「銀行振込」ですな)が全額保護されちゃいますってお話です。全銀システムへ決済指図を出した後に金融機関が支払不能になっても決済はしますよって事のようですが、最近局地的にではありますが本件に関して「どうなのよ」って話になっております。

と予告編だけ書いて調べ物はこれからだったりするんですが。上記した話も生かじり状態で書いてますんでその辺宜しくです。

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2005/04/06

○金融政策決定会合ですが

現状維持はまぁ良いと致しまして、またまた会合終了後の日銀総裁記者会見が注目というかネタ投下となるのかと言いますか、まぁ引け後なんで今日の相場には関係ないですが楽しみではあります。

昨日の日経金融新聞2面の「ポジション」欄では「当座預金残高目標維持が技術的に難しくなっている中での日銀短観結果で大変ですな〜」というお話(先週時事メインコラム「金融観測」で同じようネタで話をしていたんですが・・・)がありまして、その中で「日銀としては当座預金残高目標を維持しやすくするためには金利先高感があると結構(資金供給オペへの応札意欲が高くなり札割れが起き難くなるから)だと思っているので、次回の総裁記者会見では景気への強気やら金利先高感を起こさせるような発言が出るかもしれませんね」などという趣旨(脳内メモリーから書き出しておりますので念の為申し添えます)の結論になっておりました。相変わらず妙な話のもって行き方というか陰謀論みたいな書き方が好きな新聞社ですなぁと苦笑しちゃいます。


先週の時事メインコラム「金融観測」で指摘されていましたんですけれども、今回の日銀短観結果は先に「相対性緩和論」のようなお話を展開していた福井総裁としては、頭の痛いところでしょう。「景気回復局面になると同じ緩和でもその緩和の景気に対する効果は高まる」という理屈に即しますと、景況感が悪化すると益々量的緩和の強化=当座預金残高目標の引き上げをしないといけないという理屈になりますわな。どうも福井総裁がおいでのうちは長期国債買入増額はしないようですけれども、このままで大丈夫なんでしょうかねぇ。

ま、よく言えば当意即妙なんですが、咄嗟に気の効いたことを口にしてしまい、前後の論理的整合性をあまり深く考慮していないと思われる不規則発言がお得意の福井総裁の自業自得ではあるのですが、経済指標が好転してくれりゃぁ良いとしてもしこの調子で経済情勢が益々足踏みモードになってきたらどうしちゃうんでしょうかと懸念される所でございます。

金融政策は政治じゃないんですから、あまり反射的に不規則発言をなさらない方が吉だと思うんですが、今日も何かやらかしてくれそうな予感(^^)。

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2005/04/05

お題「お勉強コース驀進の日銀と仕切り大魔王の金融庁」

金融行政ネタであります。

年度替りにかけまして金融庁と日銀から監督だの考査だのという施策に対して色々と発表されております。色々と発表されているだけにまだ全然フォローできてないのですが、まぁとりあえず今までやっている事の傾向が益々加速されて凶暴化しつつありそうですなぁというのを簡単に(^^)。

○「リスク計測オタク」化絶賛進行中のお方

昨日の夕方日本銀行のWebに「平成17年度の考査の実施方針等について」というのがアップされました。大変な力作のようですなぁ。
http://www.boj.or.jp/set/05/fsk0504a_f.htm

力作だけに一々紹介しているといつまで経っても終わらない悪寒が致しますのでまぁ上記URLをご覧頂きたい訳ですが、まぁ読みながら思うのは「リスク管理の精緻化に随分走ってますなぁ」って所でしょう。今年度の考査方針に関してこんな感じで書いてあります。

『考査においては、引続き金融機関の経営実態の把握に努め、最後の貸し手機能の発揮に備えるとともに、今後は、(以下太字になっているのはリンク先文書と合わせてます。日銀の気合を感じますなぁ)金融機関がリスク管理・経営管理の高度化を進め、顧客ニーズに応えて創造的な業務展開ができるよう支援し、それを通じて金融システム全体としての機能度や頑健性の向上に貢献していくことに力点を置く方針である。』

と言うことで、まぁ「金融高度化支援」がどうのこうのという話をしておりますが、この後に延々と書いてある事は(物凄く乱暴な割り切り方でございますが・・・・)あたくしにはどうも「リスク計測の高度化」に走っているようにしか思えん訳です。

『貸出資産については、これまでもDCF(Discounted Cash Flow)法的な考え方を用いて経済価値の適切な把握に努めてきたが、今後もその考え方を広く応用して、金融機関との間で、貸出資産の評価に関する認識の共有を図る。その際、経済価値が金融機関自身の経営状況に応じ変動し得る親密企業向け貸出などについては、その特性を踏まえた評価方法について議論し、評価の精度を高めていく。』

いやもう物凄く難しく書いてありますな。特に後半部分は頭の悪いあたくしにはさっぱりワカランチ会長であります。こんな感じで延々と管理手法の精緻化やら高度化という話をしてます。別にリスク管理をイイカゲンにしろとは申しませんが、どうも努力する方向を間違えているのではないかという気がする訳です。

だいたいモデル化がどうのこうのとかってのは頭が良くて数学のお得意な方が大好きと決まっておりますが、大体からして金融機関経営を揺るがすような大災厄的な変動ってのはモデルで想定している範囲外の時に起きるものですし、そうじゃなかったら昔のベアリングみたいに管理不行き届きによるものでしょう(皆揃って仲良く緩慢に沈没するという国もありますが・・・)。それにモデルに関しても特に信用リスク関係に関してはそんなに理論価格がどうのこうのって割り切れるもんでも無いでしょうと思うんですが。先日はクレジット・デリバティブ市場から信用リスクの市場価値を計算してどうのこうのって話も出てましたが、そもそも市場で付いた値段がまんま正しいかというと、市場規模がそれなりの流動性があって色々なプレーヤーが絶賛ご参加されてる訳でもないですしねぇ。まぁいっか。

最後の方に図表形式で「17年度考査におけるリスク・カテゴリー毎の重点項目」ってのがありまして、まぁ色々と書いてあるんですが、その中でちと笑ってしまったのは「信用リスク」の最後の部分。

『競売や任意売却の実績、担保売却の方針、担保物件の現地での調査結果等を踏まえ、担保の処分可能見込額の適切性を検証。その際、必要に応じて、土壌汚染のある不動産担保の適切な評価が行われているか確認。』

・・・・先日どこぞの不動産会社が土壌汚染地に分譲マンションをぶち建てて問題になった事件を踏まえてますな。何で突然ここだけ急に個別具体論が出てきているのか良く判らんですなぁ。。。何で??


まぁ総じて申しあげますと、兎に角何でも計量化して精緻に管理しましょってお話なんで、まぁその手のご商売をしておられる方々におかれましてはウッシッシという所ですなぁ。しかし小規模金融機関までそんなに精緻な管理って必要なのかねと思うのでありました。



○仕切り大魔王による仕切り行政は終わらないようですな

さて金融庁。3月29日に「金融改革プログラム」の「工程表」やら、「リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラム」などの施策が絶賛大発表されました。で、この金融庁と言うところは相変わらず記者発表はせっせとやってくれるのですが、この手の資料が記者発表当日に全然Webに載らないという特技があります。財務省も日銀も記者発表関連の資料って速攻でWebにも掲載するんですが、誠に遺憾な官庁ではあります。

んな話はともかくとして、金融庁の相変わらずの体質というか、益々凶暴化が進んでいる象徴的な資料ですなぁと思ったのがこのセット。

『金融改革プログラム「工程表」の公表について』
http://www.fsa.go.jp/news/newsj/16/f-20050329-3.html

『リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラム』
http://www.fsa.go.jp/news/newsj/14/ginkou/f-20030328-2.html



工程表の公表云々にはこんな事が書いてあります。

『金融庁と致しましては、本「工程表」に沿って着実に施策を実施することにより、多様な金融商品やサービスを国民が身近に利用できる「金融サービス立国」を「官」の主導ではなく、「民」の力で目指してまいります。』

で、『「官」の主導ではなく、「民」の力で目指してまいります。』って言うくらいですし、ペイオフ全面解禁もしたことですし、これからは金融機関の自主性を重視するのかと思えばあにはからんや。2番目のURL先を見ますと『今後、本プログラムに盛り込まれた措置を着実に実施してまいりたい。』ってなことでアクションプログラムがある訳です。

http://www.fsa.go.jp/news/newsj/14/ginkou/f-20030328-2/01.pdf

このPDFファイルの2ページ目からが措置とやらなんですが、一目瞭然なのは箇条書きで書いてあるのが『金融機関に・・・・要請する。』『業界団体に・・・・・要請する。』ってのばっかりだと言う事(-_-メ)。どこがどう『「官」の主導ではなく、「民」の力で目指してまいります。』なのかもう小一時間問い詰めたい訳ですよ。結局官主導じゃないと安心できないって事とちゃうのかという感じですなぁ。この「金融機関に・・・・・要請する」の数を数えようかと思ったのですが、途中で空しくなってしまったので止めちゃいました。金融期間やら業界団体に要請する話はゲップが出るくらいあるのですが、金融庁がこんなことをやりますよ〜って話はあんまりないのよね。

という訳で、相変わらずの金融庁でありますが、すぐに見る事の出来る場所には「官の主導じゃないですよ」と書きながら、面倒臭がってシロートの人があまり読まないと思われる具体的施策の資料部分では毎度お馴染みの仕切り大魔王爆裂というのも実にアレでございますな。

困ったもんです。


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