金融政策概観(2004年度上期分)
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2004年上期
2004/09/16「国債市場懇談会と細川事務次官の会見」
2004/09/14「景気と長期金利に関するいろいろなコメントに関して」
2004/09/10「ある意味驚愕の金融経済月報」
2004/09/02「15年変動利付国債増発に関する国債市場懇談会の議論」
2004/08/30「物価指標と雇用統計」
2004/08/18「16日記事の補足」
2004/08/16「市場との対話に悩む政策委員会」
2004/08/12「いわゆる『2段階解除論』に関する山口前副総裁と福井総裁のコメント」
2004/08/11「日銀の金融経済月報(8月)とFOMC声明文を読む」
2004/06/21「ついにお怒りの財務省VS武藤副総裁の講演」
2004/06/18「財務省”衝撃の会議録”に見る金利上昇への悩み」
2004/06/17「日銀総裁会見に見る財務省と日銀の温度差」
2004/06/16「財務省の悩みと日銀の楽観」
2004/06/15「金融政策決定会合に絡んで」
2004/06/11「日銀の情報発信の拙劣さの指摘と、金融引締めを簡単に行えるのかという考察」
2004/06/10「またやってしまった叩き売り相場に絡んで」
2004/05/28「中央銀行の情報発信とは?(須田委員の講演)」
2004/05/21「金融政策決定会合レビュー」
2004/05/20「第2次変動国債バブルはリスク管理ブームから」
2004/05/17「時間軸長期化議論の続き」
2004/05/14「気が付けば出口政策論議」
2004/05/10「期待形成の道は険しそうですな」
2004/05/07「期待形成の正しい進め方」
2004/04/28「日銀の政策決定会合と証券化フォーラムに対する軽い悪態」
2004/04/21「昔の表現で出ています」
2004/04/14「時間軸はCPIでいいのかというお話」
2004/04/09「金融政策決定会合補足(イラク情勢を受けて)」
2004/04/08「金融政策決定会合見通し」
2004/04/06「市場の期待の安定化とは何ぞや」
2004/04/01「期初の雑談:為替介入に思う」
2004/09/16
お題「金融庁ネタの次は財務省ネタ」
昨日の債券相場は突如物凄い勢いで超長期国債が買われたのですが、最近気のせいかもしれませんが、超長期国債の入札直前にやたらと買いが入るわけですな。まぁ2.5%とかをやっているときに買いが入るのは判りますが、2.1%割っているのに入札前日にとりつかれたかのように買うってのは一体全体何をお考えなのかと。まぁまともに考えているとも思えませんがね。
そんな悪態は兎も角と致しまして今日は財務省がらみの雑談。
○国債投資家懇談会
http://www.mof.go.jp/singikai/kokusai/gijiyosi/b160913.htm
月曜日に行われた国債投資家懇談会。似たような趣旨で実施される国債市場懇談会よりは参加者が少ないせいなのか議事要旨に関しては市場懇談会よりも見るべきものがあるという傾向にあります。変動利付国債のニーズがこれから大いに増大するという話も11月の投資家懇談会で出ていたりしてましたし。
最近はやたらと変動利付国債と物価連動債の話が多うございまして、火曜日の日経朝刊にも記事が出たくらいでありますが、国債投資家懇談会でも当然のように「変動利付国債のニーズが高い」って話が出てくるわけです。曰く、
『15年変動利付国債は、金利変動局面におけるデュレーション調整に有効であり、今後買い増していきたい。その際には、発行頻度をできるだけ増やし、将来的には毎月発行とすることも検討して欲しい。』
『足元金利はやや低下しているが、中期的な観点からは、金利上昇を意識している投資家が多く、15年変動利付国債に対しては、引き続き投資家のニーズは強い。理論価格よりも1円から2円程度割高に取引されていると言われているが、それも投資家の根強いニーズの表れである。今後増発を希望したい。』
で、まぁそんな感じのお話が連発されているのですが、その中でいつも気になっている意見があります。何かと申しますと、
『15年という年数については、一般的な投資対象と比べると、やはり長く感じられる。より残存年数の短い変動利付国債の発行も考えていただきたい。』
という件。どうも毎回同じ人が同じことを言っている気がするのですが、前回4月20日の投資家懇談会では「例えば利息が10年金利に連動し、満期が7年の変動利付国債を導入する」というよう意見が出ている訳ですな。
ま〜要望する側から見たらメリットが非常に高い商品なのは判るのですが、そんな商品設計で発行側に何のメリットがあるのかという事を考えるとこれがまた1ミリも理解できない意見でありまして、発行サイドのメリットを考えて発言しているのか訳の判らん(考えてないのだと思いますが)ところであります。
まぁ先日の入札で示されたように、相変わらず変動利付国債のニーズは高いものがあるわけなのですが、変動利付国債を選好するってことはその裏で固定利付国債との比較という発想が働いているわけでして、要は固定利付債のリスク=金利変動リスクを取りたくないという人が絶賛増殖中であるという事でもあるわけですな。
そう考えると変動利付国債がやたらと人気化するというのは将来の利払い負担がどうのこうのという以前の問題として、民間というか国債の購入主体が金利変動リスクをこれ以上負いたくないと言っているのに等しいわけですから、発行サイドたる政府部門としてはあまり宜しくないお話でもある訳です。
で、相変わらずアフォじゃの〜と思うのは、この変動利付国債さま空前の大ブーム状態を後押ししているのが例によって例の如く金融庁と日銀である事であります。BIS2次規制問題もそうですが、2次規制がまだまだ始まらないうちから「金利上昇リスクに関してどのような体制をとっているのか」とやたらめったら五月蝿くなりだしておりまして、どうも最近は小規模の地域金融機関の債券投資部門を捕まえて「そのポジションの100BPV(=100べーシス、つまり1%金利が上昇した場合に損益がいくらぶれるというかやられるかという額ね)はいくらになっている」と、まんまBIS2次規制の「標準的金利ショック」と同じ事をチェックしているらしいという話もちらほら聞かれるわけでして、これから益々国債の安定消化と国債費増大の抑制が課題になっているというのに、民間の金利変動リスク許容度をせっせと引き下げるような施策をとっているという素晴らしい所業が絶賛進行中のようであります。まぁ現場を直接見聞している訳ではない話ベースですけどね。
まぁいつもながら一つ一つの政策を見ていると尤もらしい事をしているのにトータルで見るとやっている事が自己矛盾のマッチポンプをやっているという素晴らしい状態がこんなところにも出ているというわけでして、大丈夫かよと思ってしまうわけであります。
○ちょっと緊張感に欠けているのではないかと言う記者会見
例によって上のネタを書いているうちに時間がなくなってきたので簡単に。
今週になって細川財務事務次官、谷垣財務大臣の記者会見があったのですが、それぞれの会見内容が報道された瞬間に「おいおい」という声が上がっておりました。
細川さんの場合は、長期金利に対するコメントで「長期金利の急激な変動は望ましくない」とフラッシュを打たれまして、「おいおい金利低下牽制かよ」という誤解を招きそうな状況が発生。引け後だったので誰も見てませんでしたが。
この一問一答を財務省のWebから拾うとこんな感じになります。
『(問)先週発表されましたいろいろな経済指標がやや先行き減速感を示すものになっておりまして、それを受けて長期金利が低下してきているわけですけれども、長期金利の低下は、財務省にとっては国債費の増加が見込まれる中、決して悪い話ではないと思うんですが、長期金利の動向についてはどうお考えになりますか。』
『(答)長期金利自体については、さまざまな要因があると思います。それによって決まっているんだと思いますので、具体的なそれぞれについてコメントするのは差し控えたいと思いますが、これも繰り返し申し上げておりますが、先々の回復を先取りするような急激な動きということについては、余り好ましくないという考え方は常に持っておりますが、いずれにしても、その動向についてはしっかり注視していかなければいかんというふうに思っております。』
次官殿、その答えは長期金利が上昇しているときに使うものですよ。金利が低下していて本当にその金利低下が都合が悪いと思っているのなら別ですが、後半の「先々の回復」以降の答えは余計です。
谷垣財務大臣は閣議後の記者会見で「大幅な増税を示唆」とフラッシュを打たれてしまいまして、これまた前場引け後だったので問題は無かったのですが、債券市場は何となく反応したのか後場の寄り付き直後は先物が結構上昇していたわけですな。14日の話でしたが。
『(問)昨日、財政制度等審議会が次の建議に向けた議論をスタートさせました。このなかで大臣から、歳出歳入の両面からバランスのとれた財政構造改革が必要だという趣旨の発言がありましたが、財審であえて歳入に触れられた理由とですね、あと歳入歳出両面でバランスのとれた改革とはどんなふうなものだというふうにお考えでいらっしゃいますでしょうか。』
『(答)これは、昨日、おっしゃいましたようにね、一つは、歳入歳出両面からバランスのとれた財政構造改革をつくっていく必要があるということと、まあ財政健全化の取組みを強化して、それが民需主導の経済発展につながるようにもっていかなきゃいかんと、いろいろ申し上げましたけど、整理すれば二つのことを申し上げたわけですが、今の歳入歳出両面のバランスが必要ということはですね、今までも歳出の抑制というのはかなりいろいろやってまいりまして、孫悟空の頭の上にわっかをはめたみたいに、まあきゅうきゅう締めてきたわけでありますし、これは今後とも継続していかなきゃいけないことは言うまでもないわけですけれども、他方、社会保障などは、まあ私も身の丈に合ったものにしなければならないと、昨日もそういうことは申し上げたわけですけれども、他方、やはりこれだけ高齢化が進みますと、そうは言ったって増大がやむを得ない面が、これはあるわけですので、歳出の抑制、歳出を削るというだけでは、だんだんだんだんバランスが悪くなってきちゃうということが現実問題としてあると思います。したがって、そういう問題意識にたって、歳入歳出のバランスということを申し上げたわけです。(長いので以下略)』
実はこの時のフラッシュは時事通信と日本語版ロイターの両社が「大幅増税不可避」と伝えた後で小一時間ほどたってから「社会保障費の大幅増不可避」に訂正記事が打たれておりまして、その場にいたわけではないから良く判りませんが、谷垣大臣が増税らしき話をここに書いているよりも強いトーンで発言して大慌てで訂正したのでは無いかという激しい疑惑が涌いて来る次第であります。
ま〜どちらにしてもそうなのですが、次官にしてみれば国債市場がとりあえず暴落祭りから遠のいたという安心感、大臣にしてみれば選挙も終わって民主党はお得意の内紛状態なので政局大無風という安心感があって、つい発言にも細かい配慮が欠けているのではないかと思う次第でございます。立て続けに同じようなことが起きたのでちょっと気になっているところであります。
ではでは〜(^^)。
#どうでもいいおまけ話ですが、国債投資家懇談会の議事要旨って14日にアップされた筈なのですが、さっき財務省のWeb見てファイルのプロパティ見たら何故か更新された
のが16日、すなわち今日(昨日の深夜ではないかという気もしますが)ですな。関連資料のリンクでもアップしたのではないかと思うのですが、早朝あるいは深夜の作業お疲れ様でございます。>担当官さま
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2004/09/14
お題「徒然なる雑談」
昨日は前場丸々病院なんぞに行っておりまして、後場から登場したのですが、出てきたら先物から10年は前日比値を上げているのに中期債や超長期債ボロボロですよ先生って相場。先週後半に鉱工業生産にGDPと相場をぶち上げてしまったので、いったん様子見モードになったのか知りませんが、相場は(先物の出来高とか見ている限りは)閑散の癖によくもまぁイールドカーブが動いてくださるという感じ。
まぁいずれ中期債あたりに先週末にでも売りが出ていたという事なんでしょうが、それにしては先物は全然下がらないというのも不思議極まりない相場でございます。そんな訳で良く判らない時は思いつくままに材料にでもなりそうな話をつらつらと書き並べるのであります。
○景気の定点観測といいますか
8月以降に出てきた経済指標は景気減速のオンパレードでございます。まぁ既にここまで来た相場ですんで織り込んだという話もありそうですが、どうもあたくし的には先日発表されてあまり話題にならない景気ウォッチャー調査が気にかかる所ではあります。
確か堺屋経済企画庁長官時代にほとんど堺屋さんの趣味で始まった経済調査と聞いたことがあるのですが(又聞きなので間違っていたらゴメンナサイ)、「何じゃそりゃ」などと言われながらも景気の先行指標としては結構当たっていることが多いそうですな。まぁあたくしも時々駄文の中で「景気の定点観測」と称して交通量だとか新聞広告(マイナー紙を購読しているので、新聞広告の量が減るともろに折込チラシが減少するので結構判りやすい。後は大型スーパーなどのチラシに金が掛かっているかどうかとか^^)なんぞについてはチェックを入れておりますが、バイアスをかけて見なければ結構後から思い出すと景気の先行指標に使えないこともありませんな。
ただ、あたくしどものような景気動向をモロに商売にしている人がこの手の定点観測をすると、どこかで自分の相場観やポジションが反映されて見てしまうので、上記した「バイアスを掛けて見る」って事になりやすいので注意が必要なのですが。
○ところが日銀は強気継続なわけでして
先日の金融政策決定会合で発表された金融経済月報に関しては金曜日のドラめもんでご紹介致しましたように、8月に発表されたものとまるっきり同じという内容。今回の金融経済月報には機械受注とGDP2次速報値に関しては反映されていませんが、そこまでの経済指標を反映した結果が「8月とまるっきり同じ」というものですので、日銀としては「景気は回復を続けている」という判断は全く後退させておりませんな。
おまけに日銀総裁は記者会見で最前列に陣取った(らしい)某テレビ局のアナウンサーのおねいさんに機嫌がよろしくなったのかどーか知りませんが、昨日のドラめもんでご紹介したように、プロ野球の質問には懇切丁寧にお答えするわ、いつもよりも妙に多く「心情の吐露」的な「サービスフレーズ」を連発しておりました。で、その内容をよくよく見れば、やれ「量的緩和政策から早く脱却したいという気持ち」だとか、「なるべく早く(量的緩和政策から)卒業したいという気持ちはあるが、それはうんと抑えて我慢する」だとか大変に香ばしい心情の吐露であります。
自分でCPI時間軸を設定しておきながらそういう「心情」を出すのは如何なものかと思うわけです。おかげでちょっと経済指標が良くなると「量的緩和を我慢して行っているということは解除の条件が整った時は結構な引き締めを行うのではないか」という思惑が出てきて、アフォのように相場が大荒れする原因になっているという認識はどうも総裁には無いようですな。
あたくしは量的緩和終了後のイメージは足元金利0.1%くらいなのですが、どうも物価やら株価が上がっていくと直ぐに中短期金利が過激に上昇していく傾向を見ておりますと、もっと高い足元金利を相場は想定しているようでして、これも総裁効果名のではないかと思うわけです。その反動として「量的緩和の終了後にはゼロ金利政策を行う」という政策の論理的整合性を無視した「2段階解除論」なんぞが本職の債券ストラテジストの方々から堂々と論議される(国債市場懇談会でも発言していた人がいたようですが)といった現象も起きている訳ですな。
政策論議も迷走させる総裁のサービス精神には頭が下がる思いでありますが、外傷性頚部症候群というありがたい診断を頂いたあたくしとしましてはあまり頭を下げている姿勢は好ましくないそうなので勘弁していただきたいと思うわけですな(謎)。
○細川財務次官
これもテキストは出ていないので本日あたりにアップされるであろう財務省のWebを待ちたいと思うのですが、昨日の記者会見では長期金利に関する質問があったらしいです。情報ベンダーの中で日本語版ロイターが打ったフラッシュが「長期金利の急激な変動は望ましくない」というものでして、「金利低下牽制をする必要は無い筈なのに何じゃそりゃ???」と思って見ていたのですが、どうも「景気回復を反映した金利上昇局面において急激な長期金利の上昇はよろしくない」ということを言ったのが、お得意の「面白そうな所だけ切り取る攻撃」で報道されたようです。
ロイター通信如何なものかと思うわけですが、そもそも長期金利がどっちかというと下がっている時に長期金利上昇に対してのコメントをするというのは細川さんちょっと不用意ではないかと思う訳でして、まぁ次官になりたてだから仕方なのかもしれませんが、もうちょっと相場水準を考えて発言していただきたいものであります。特に相場に関わるコメントっつーのは前提条件が常に「現在の状況」であるので、同じ話であっても相場の位置によって発言の取られ方が全然変わってくるという事を理解して頂きたい訳ですな。
どこぞの中央銀行総裁のように、突如「一般論」の話をしだして相場に余計な思惑を与える(最近の例では「金利と量を一体化して考える」という発言をして「量的緩和解除後には短期金利が大幅に上昇する」ってな思惑を呼んだわけですが)という大変に香ばしいお方の真似をする必要は無いわけです。ここの所平和な相場なので問題は無かったかもしれませんが、「不用意な一般論」を発言するのは止めた方が吉なのではないかと申し上げたいところではあります。
あたくしがここで申し上げても仕方ないですが(^^)。
というわけで、何をテーマにした話なのかイマイチ良く判らない雑談でございました。やはり外傷性頚部・・・・(-_-メ)。
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2004/09/10
お題「金融経済月報」
昨日のドラめもんも妙にタイポしてましたし、今もお題を「月例経済月報」などと書きまして「何か変だな」と思うというのはこれはもしかして事故の後遺症なのではないかと恐れるあたくしでありました、とすぐ大袈裟な話になる訳ですが、とりあえず生きている(どうも実はあちこちぶつけていたようで、外傷が良くなってきだした昨日の朝あたりから腰だの膝だのがアレな訳ですがそれはさておき)ので一つ宜しくです。
一昨日〜昨日に実施された金融政策決定会合は当たり前のように政策変更無し。最近は「何か動いている」というアピール的なあまり意味の無さそうな施策(全然残高の増えない資産担保証券の買入だとか、あまりにも使い勝手が悪い為に一度も実施されていない国債の補完的貸出取引とか)も打たなくなりまして、誠に慶賀の念に耐えない所でございます。
で、例によって例の如く金融経済月報が出てくる訳でして、この手のものは時系列観測をするのが吉ということで観測をしてみます。何せ怪我人ですので簡単に。
http://www.boj.or.jp/seisaku/04/pb/gp0409.htm
○ある意味において驚愕の内容
時系列観測といえば当然ながらまず8月の月報と比較するのが正しいあり方なのですが、比較しながら読んでいくうちにあたしゃー「あれ、これ本当に8月分??」と思ってしまう訳でございます。ちなみに8月分はこちらですな↓
http://www.boj.or.jp/seisaku/04/pb/gp0408.htm
思いっきり前回と同じという月報(基本的見解)な所が激しく驚愕なわけです。まぁ今まではご紹介したように、毎回の如くどこかの表現が前進するという実に景気の良い(ってゆーか景気が良いから表現が前進する訳だが)状況が続いたのですが、さすがに8月のあいだ中に発表された景気指標がこれでもかこれでもかと景気減速を示唆するものであったので、判断前進をするのは無理があったという事でしょう。
違っているのは僅かに一箇所(^^)です。国内景気の現状認識に関する部分です。
(9月)『輸出、鉱工業生産は、伸びがやや鈍化しつつも増加を続けており、企業収益の改善が続くもとで、設備投資も引き続き増加している。』
(8月)『輸出、設備投資の増加が続いており、鉱工業生産も引き続き増加している。』
さすがに輸出の伸びが鈍化している事と、鉱工業生産の伸びも鈍化しているということは書かない訳には行かなかったということなのでしょうが、転んでも只では起きないとはまさにこの事といいますか、9月にはわざわざ「企業収益の改善」という文言を挿入している所が泣かせてくれます。
ちなみにこれ以外の表現は物の見事に一言一句同じだったりする訳でして、これもまた面白いところであります。
○どう解釈するか
で、この状況をどう解釈するかという事になる訳ですが、どうもその後の記者会見で、総裁に対して先日の挨拶と記者会見(ドラめもんで既に話題にしましたよね)が景気に強気なスタンスだった事に関して質疑応答があったらしく、この時は総裁は「バイアスを掛けた積りは無い」と言ったらしいという事なんぞを踏まえますと、景気に対する方向性としては依然として上向きな見方を崩しておらず、8月に出てきた経済指標は「景気腰折れ」ではなく「速度調整」と考えていると解釈するのが妥当なのかな〜と思ってしまったりするわけです。
一応「伸びが鈍化しつつも」と(現実がそうだから)表記しながらも、全然見方が変わっていないということは、根本的には景気回復の方向に対する見方に変化は無いということなのでしょう。債券市場は何となく8月以降の経済指標に降参(今日のGDP2次速報が注目なのかな?)している雰囲気ですが、日銀いまだ降参せずといった所でしょうな。まぁ1ヶ月くらいの数字で一々反応されても困りますがね(^^)。
○またも記者会見に注目ですか
一応記者会見の一問一答に関しては情報ベンダーなどでも見る事ができるのですが、あたくしとしては公式発表とも言える(微妙な書き方をしますが、実はWebに載せている物が「公式発表」なのかどうか存じませんもので・・・・)日銀Webのアップを待ちたいと思います。
どうも福井総裁様に置かれましては、記者会見の席上では特に、色々な表現を駆使する傾向があるようでして、最近の珠玉の発言と致しましては7月の金融政策決定会合後(13日)に行なわれた記者会見でのこんな質問に対するお答えです。
『(問)先程、何としてでもデフレ克服が必要だとおっしゃっていたが、景気の実態は非常に良いし、短観も非常に良い数字が出ている。デフレと言ってもCPI変化率はマイナス0.1%程度の状況で推移しているのだが、「デフレを克服しなければならない」とそこまで強く言うほどの問題を抱えているとお考えか。』
『(答)その甘いささやきには決して乗らない。やはり、将来のことを深く考えると、物価がマイナスに陥って国民の皆様が苦しい状況を再度経験しなければならないという不幸な状況をもう見たくないという気持ちが非常に強い。(途中省略)将来再びデフレに陥って、せっかく出始めた新しい展望を根こそぎ摘み取ってしまうようなことにならないように、多少の賭けをすることはお許しいただきたいし、我々は甘いささやきにはそれまでは応えない。こういう姿勢で臨みたいということである。』
別に「現在の政策目標はデフレ脱却であり、日銀としては量的緩和のコミットメントに従って淡々と現在の政策を継続していく」とでもあっさり答えれば良いような気もするのですが、この大先生様におかれましては、日銀総裁としての公式発言の中についつい個人的な心情を交えてしまうという傾向があるのではないかと、このような発言を見るにつけ思うのであります。
まぁ人間としてはついつい心情を吐露してしまうって所に大変好感するのでありますが、市場との対話という意味では如何なものかと思う所ではあります。どうも「公式見解」と「個人的心情」の間にギャップがあるように見受けられまして、このギャップが発言に現れると、どこぞの経済新聞あたりが個人的心情の部分を増幅してしまい、ついつい売り推奨的記事を書いてみたり買い推奨記事を書いてみたりして、それを見た偉い人がまた反応するって動きになるのではないかと思う訳ですな。
てな訳で、折角ドラめもんのネタにしようと張り切っていた金融経済月報が物の見事に前月と同じな為に話が妙な方向に展開してしまいました(^^)。
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2004/09/02
○15年変動利付国債に関する議論
31日に行なわれた国債市場懇談会の議事要旨が財務省のWebにアップされております。前回の懇談会の最大のお題は「15年変動利付国債の増発問題」「物価連動国債の増発問題」というものだったようで、議事要旨の7割以上はこの話に関る意見となっていました。
http://www.mof.go.jp/singikai/kokusai/gijiyosi/a160831.htm
延々と並んでいる意見を15年変動利付国債に関して集約すると、「15年変動利付国債の増発はやっても無問題」というお話になりますわな。まぁ市場の片隅にいるあたくしですら「15年変動利付国債増発すれば」と思っている位ですから当然の結論になる訳です。
その中でまぁ興味深いというかそれなりに意味のありそうな意見を引用するとこんなあたりになりそうです。
・足元の状況は、景気が減速する懸念が出てきただけで、リセッションに入るという懸念が出てきた訳ではないため、15年変動利付国債や物価連動国債へのニーズは引き続き高い。超長期債もある程度以上の利回り水準であればニーズがある。今後借換債が増額することを考慮すれば、借換リスクに着目して、15年変動利付国債や物価連動国債のような金利上昇にある程度対応した国債と超長期債とをバランスよく増発していく必要。
・米国と比べ、日本の債券市場は分散投資が難しい状況にあることから、リスク特性の異なる商品を提供することが重要であり、15年変動利付国債や物価連動国債の増発は妥当である。
・15年変動利付国債は、足元発行量が増えマーケットの流動性も高くなってきていると思う。投資家のニーズはかなり高く、発行規模を拡大する余地は大きい。隔月で1兆5,000億円程度でも十分消化できると考えるが、割高な水準で取引されており、増発により価格調整されるおそれがあることにも留意して
、これよりはやや慎重な対応が望まれる。
・15年変動利付国債については、将来の金利上昇の可能性に対するヘッジや、2006年度末からスタートする新BIS基準への対応等の観点から潜在的な投資家ニーズがあり、来年度については隔月発行で1回あたり1.5兆円までは増額することは可能と思われる。今年度下期については、他年限の減額をしてまでも増発をする必要性は高くはないが、来年度の発行増額に備え平準化を図る観点から、隔月発行で1回あたり1.3兆円程度に増額するということであれば、一定の意義はあると考える。
・15年変動利付国債については、足下では1.3兆円でも1.5兆円でも消化は可能と考えるが、(1)償還までの間にイールドカーブがインバートした場合には、金融機関が逆ざやとなった既発債を抱え、流動性が急激に低下することになりかねないこと、(2)金融機関についてみれば、2年債、5年債等の需要が15年変動債に移っている面もあること、(3)今年度下期に大幅増発すれば、来年度の増発額も大幅になるのではないかとの思惑も生じる恐れがあることから、むしろ今年度下期の増発額は1.2兆円程度とし、来年度は隔月1.4兆円ないし毎月0.7兆円程度とすることが妥当ではないか。
まぁ一つ一つの意見に関しても「あれ?」と思うような突っ込み所もあるのですが、実感としては最後の意見にある(2)のあたりに関して同意ですので、そういう意味では特に2年ゾーン以下の短い年限の国債発行の減額を視野に置きながら15年変動国債を増発するというのが宜しいのではないかと思います。
あまり多く引用しませんでしたが、変動15年と20年をあわせて増発という意見もいくつかあったのですが、現状の相場を見ると変動15年と20年は全然別の世界で動いており(理屈上は10年〜20年のイールドカーブ形状で変動15年国債の理論価格が変化することになっている)まして、足許の相場では全然連動性が認められませんので、将来は兎も角現状ではどうなんでしょうね。
それから、上記最後の意見にある(1)に関してはこの15年国債の罠な訳でして、同じ意見が他にも出ています。要するにこの債券は導入以来本格的な試練(=短期金利が上昇しながらイールドカーブがフラット化するという恐怖の展開)を経た事がありませんので、本当に将来に渡って無事かというとこれがまた「やってみないと判らない」という大変に出たとこ勝負的なものもある訳ですな。
ま、当面は新BIS規制対応商品ってことで売れるでしょうけど。
と言うことで、発行計画がどうのこうのという話の際は変動利付国債と物価連動債の増額と発行年限の長期化という話になりそうですな。相場自体は既に織り込んでいる節があるので特に波乱になりそうもないですね。まぁ市場懇談会が役に立っているということで(^^)。
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2004/08/30
お題「物価指標と雇用統計」
○注目されるべき経済指標
経済指標連発シリーズ第一弾という事で先週末には物価統計に雇用統計、勤労者世帯家計調査と出たわけですが、どれも市場予想を下回る内容でして(まぁ8月都区部CPIの▲0.2%はそんなに大騒ぎするほどの悪い数字でもありませんが)、債券相場は当然の如く上昇した訳です。
金融政策に関してはご存知のように「CPIに一点張り」という状態で政策運営をしていることもありましてCPIの数値は気になるところですが、最近は「いずれCPIはゼロになるでしょう」というのは割と織り込みに行ってる(だから物価指標が相変わらずマイナスだとやや反応するのですが)こともありまして、物価指標と同じ位に注目すべき指標に関して金融政策の動向に影響与えそうなものは「雇用関連の指標」という事になるのではないかと。
以前ご紹介した山口前日銀副総裁のインタビューでその辺を説明しているので再掲するとこんな感じです。
『コンマ以下の(消費者物価の)マイナスがあとどれくらいで解消されるかは不確実性が高い。なぜなら景気回復で需給関係はかなり改善し、需給ギャップも目立って縮小してきたと考えられるが、それにしては物価指数の反応が鈍いからだ。』
『要因の一つは、消費財の国際的な競争環境が非常に厳しいこと。もう一つは、日本でも生産性上昇がかなり見られ始めること。昨年度は3%強の成長が実現したが、雇用はほとんど増えず、生産性上昇が速かった。この場合に賃金が欧米のように上昇すればサービス価格は上昇する。日本では名目賃金は一昨年までかなり下がり、最近やっと下げ止まってきた。生産性上昇と賃金の落ち着きでユニットレーバーコスト(単位労働コスト)はかなり下がっている。』
『従って、「デフレがいつごろ解消するか」を言い換えると、生産性の速い上昇が今後どうなっていくのか、下がり気味だった賃金がどうなるのか―の2点をどう見るかにかかる。成長が持続し、来年度にも潜在成長率を上回る成長が実現し、その間に生産性上昇が鈍化すれば、雇用と賃金の上昇圧力は強まらざるを得ない。そうなると物価の基調が本格的に変わる可能性がある。』
という意味で先週末の経済指標を眺めると、って言ってもあたくしあまりこの手の分析をした事がない(得意技は公式発表文の分析とか業者間気配の板読みとかですので)ので、詳しい事はお得意な方にお願いしたい所では有るのですが、一見したイメージで申し上げますと、雇用関連の数値が悪化(=失業率絶賛上昇)して東京都区部の消費者物価が相変わらずマイナス継続というかマイナスがほんのちょっと拡大ってことですので、まぁそれはそれなりに話の筋が通っているようですな。今週は鉱工業生産なども発表されまして、まぁそれぞれ重要な指標だという感じなのですが、当面は雇用関係の需給と給与所得の推移なんぞを注目しながら物価を見るという感じで行くのが吉かと存じます。
と、考えますと先週末の経済指標は今後の物価動向という面から言うと「消費者物価のプラス転換」への流れが押し戻されるような意味を持つ可能性がある訳でして、やはり重視すべきだという事になろうかと存じます。失業率がいきなり0.3%跳ねるというのも中々ですし。勿論今回の数字が単に瞬間的な反動なのかも知れないので一回だけの指標で断定はできませんが。
金曜にちらっと触れました「コメ大豊作でコアCPI押し下げ効果」ってのも少々気になるところですが、冷静に考えますと、もともと昨年分のコメ凶作という特殊要因が剥落した筈の4月以降のコアCPIも特殊要因剥落による反動減が出たとも思えませんし、まぁこの話も強気相場の時によく出てくる「後付け理屈」の一環かもしれませんな。結果は10月以降のコアCPIに出てくるでしょうが。
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2004/08/18
○読者様からのご指摘で気が付いた「市場との対話」
先日公開された7月12〜13日の日銀金融政策決定会合の議事要旨をご紹介しましたが、その中で何気に通過してしまいましたが、ちょっと面白い記述がありましたので再掲(^^)。
市場との対話に関しての部分で、FRBの市場との対話に関連する議論の部分であります。
『このうちひとりの委員は、経済情勢の変化に応じて市場が変動することは当然であり、今回も利上げ前の段階では、経済統計の公表の際に相応の金利の変動がみられた、と述べたうえで、情報発信の前提には、正確な情勢判断があり、日本銀行としても、今後の金融政策運営に当たっては、物価情勢を含めた経済情勢全般について正確な情勢判断を行うとともに、それに基づく適切な情報発信を心がけていきたい、と付け加えた。』
さらっとスルーしておりまして、ご指摘されて初めて気が付いたのですが、この委員って「日本銀行としても・・・・・・心がけていきたい」って発言している訳なんですね。と言うことはこの意見を言った委員は日銀総裁としか考えられない訳でして(^^)、年がら年中不適切な形容詞あるいは強調文句を連発(不適切というのは誤解を招きやすいという意味ですよ)するわ、どこぞの新聞社には講演で話した事を思いっきり発言の趣旨を取り違えて報道されるわというカリスマ大総裁様のご発言にしては随分と殊勝なお言葉。
と言うことで、最近の記者会見要旨なんかを見てても伝わっては来るのですが、日銀総裁様に置かれましてはご自身のお考えになっている事がメディアやら市場関係者やらなどに誤解されて伝わって、それがまた余計な相場撹乱要因になっているというご認識が大有りなのではないかと。イライラするのは判りますが、それなら余計な形容詞や強調文句を発言に混ぜないというのを励行していただきたいものです。
まぁ報道する方も報道する方でして、殊更特定のどこか叩く訳ではないですが(嘘)金融政策に絡む報道を見ておりますと、特に某経済新聞の報道っぷりが酷い訳でして、勝手に「景気回復で金利上昇キャンペーン」をおっぱじめてみたり、一部の審議委員(とどこぞのストラテジスト)が勝手に盛り上がっていただけの「量的緩和政策の強化」が既定路線であるかのように報道して(先日のドラめもんでご紹介したように、その議論は6月の決定会合で思いっきり否定されてましたが)みたりと、もう暴れ馬状態で困ったものであります。
ご指摘いただきました読者様のお言葉を拝借致しますと、「市場との対話」と言うよりは「(伏字^^)新聞との対話」をちゃんとやった方が良いのではないかと言う事のようですな。困った現状であります(-_-メ)。
ではでは(^^)/~~
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2004/08/16
お題「市場との対話にお悩みですな」
先週末はNY株安に日本のGDPのせいで激しい相場をやっていただきまして、大変に多忙を極める動きでありました。で、あまりにも動きが激しかったので、金融政策決定会合議事要旨が発表されたのも相手にされませんでしたな。まぁ発表された決定会合議事要旨の時期から債券市場が上昇しているのでそもそも注目材料にしにくいって事もありそうですが。
6月25日開催分
http://www.boj.or.jp/seisaku/pb/g040625.htm
7月12〜13日開催分
http://www.boj.or.jp/seisaku/pb/g040713.htm
○当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要
議事要旨の最後の方に毎回あるこのコーナーなのですが、市場が日銀の考えていることを勝手に解釈して暴走する傾向にある事が懸念材料のようでして、債券相場が下落しだすと「市場との対話」ネタがより多くなる訳です。で、6月25日にはこんな話をしておったようです。
『長期金利の上昇に関連して、委員は、経済金融情勢が変化しつつある状況であるだけに、金融政策運営に関する情報発信が特に重要である、との認識を共有した。』
『具体的には、(1)これまで通り、消費者物価指数に基づく現在の「約束」にしたがって量的緩和政策を継続していくことを必要に応じて説明するとともに、(2)経済金融情勢について、市場の見方を十分理解したうえで、日本銀行の判断をできるだけ正確に伝えることにより、市場と認識の共有を図ることが重要である、という点につき、意見の一致をみた。』
日本銀行の判断をできるだけ正確に伝えるってのは大事だと思うのですが、何でそのあと市場と「認識の共有」をするって話になるのかがよ〜分らん所であります。市場なんてぇのははっきり申し上げて何時も間違えているものですて、んな市場相手に「認識の共有」などという妙に妥協的な努力はせんでよろし。「日銀の判断を正確に伝える」だけで良いと思います。
『何人かの委員は、こうした対応は、量的緩和政策の解除に関する無用の憶測を避けるうえで有効である、との見方を示した。』
もしかして6月の相場下落は「無用の憶測」だったのでしょうか(^^)。
で、悩める政策委員会は7月にも似たようなお話をしております。
『この間、何人かの委員は、FRBの利上げに際しての市場との対話について言及した。これらの委員は、FRBの政策運営についての考え方は市場に広く浸透していたため、市場では今回の利上げについて総じて落ち着いた受け止め方をしている、と述べた。また、こうした背景には、FRBが実際の利上げよりも相当前の段階からFOMCのステートメントや講演を通じて丹念に情報発信をしてきたことが挙げられる、と続けた。』
まぁそうですな。あたくし思いまするに、FRBの情報発信が上手く機能している(ように見える)のは、FRBから出てくる情報発信のやり方が、常にFRBのペースで行なわれていると言う事も要因として挙げられるのではないかと。日本の場合は個人的な意見をいきなり表明する審議委員(例えば中原審議委員の2段階解除論とか、岩田副総裁のインフレ参照値とか)があると思えば(政策委員会として一定の意図があって敢えてこれらの審議委員に観測気球を上げさせたのならある意味立派な作戦だが)、国会に年がら年中呼び出されて誤解を招きやすい不規則発言(いちいち挙げるまでもなし)をしてしまう総裁がありと言うわけで、とても「政策委員会ペースでの情報発信」ができているとは思えないわけですな。
『このうちひとりの委員は、経済情勢の変化に応じて市場が変動することは当然であり、今回も利上げ前の段階では、経済統計の公表の際に相応の金利の変動がみられた、と述べたうえで、情報発信の前提には、正確な情勢判断があり、日本銀行としても、今後の金融政策運営に当たっては、物価情勢を含めた経済情勢全般について正確な情勢判断を行うとともに、それに基づく適切な情報発信を心がけていきたい、と付け加えた。』
「市場との対話」が「市場との認識の共有(6月の議事要旨)」とかいう話になって「どうやって情報を発信するか」とかいう技術的な方向に話が向っても仕方が無いという訳でして、要はこの意見にあるように、「情報発信の前提には、正確な情勢判断があり」って事ですな。誠に同感であります。この意見を言っている審議委員がどなたか存じませんが、わざわざこういう風に書かれるって事は、会議中に話が情報発信に関る枝葉末節に話が流れた為に「おまえらそれよりも根源的にやる事があるだろう」という意見表明に至ったのではないかと、勝手に想像を逞しくするあたくしでありました(^^)。
○展望リポート中間評価に関して
7月12〜13日の決定会合では金融経済月報の中にいわゆる「展望リポートの中間評価」が含まれていましたので、その中間評価に関しても意見が出されていたようです。
『何人かの委員は、今回の「中間評価」に関連し、対外的な説明の重要性について指摘した。これらの委員は、「景気は上振れ」、「消費者物価は概ね見通しどおり」という今回の判断はやや分かりにくい面があり、日本銀行が消費者物価を基準に量的緩和の継続を「約束」していることも考え合わせると、そう判断している背景について、日本銀行としての考え方を対外的に丁寧に説明していくことが重要である、と述べた。』
(こんな場所で苦言を呈しても仕方無いですが)日銀に苦言を呈するとなりますと、市場が時に「もうすぐにでも量的緩和解除がある」と言わんばかりの勢いで暴走してみたり、その逆をやってみたりするのは、究極的には、上記の「景気は上振れ」なのに「消費者物価は概ね見通しどおり」という分ったような分らんような日銀のスタンスが無用の混乱の原因の一つではなかろうかと思う訳ですな。2段階解除論がどうのこうのとか、インフレ参照値がどうのこうのとかいう話をする前に、こちらについての明解なる解説をお願いしたいものです。
○量的緩和政策強化(?)に関る議論
6月の会合では量的緩和政策強化に関する話も行なわれたようです。
『この間、ある委員は、市場における期待の安定化を図るためには、昨年10月に示した「約束」の内容のうち、「消費者物価が先行き再び下落しないと見込まれる」との部分につき、「ゼロ%を超える」という基準をさらに具体的に表現するため、より高めの数値を示すことを検討すべきではないかと発言した。』
多分岩田副総裁。もしかしたら中原審議委員。この施策が市場における期待の安定化に資するかという話は散々ドラめもんで罵倒しましたので省略。
『別のひとりの委員も、その趣旨に同調したうえで、現行の「約束」の強化を意図するものではない、と付け加えた。』
ここまでくると屁理屈状態ですが、多分こっちが中原さんでしょうな。で、当然ながら反論食らう訳でして(^^)、
『これに対し、別のある委員は、先行きの経済・物価動向には不確実性が伴うことから、このような対応は政策運営の機動性を損なうリスクが大きい、と述べた。また、別の委員は、「約束」の内容を強化すれば、かえって市場が不安定化するおそれがあるほか、政策に対する信認の低下にもつながりかねない、と主張した。』
この話はここで終了しておりまして、7月にはこのお題に関するネタがどこにも書かれておりませんので、岩田&中原さんは6月の時点で論破されてしまったのか、それとも単に6月会合時点から比較して債券相場が安定したので議論をするのは時期尚早と思って話を引っ込めたのかは良く分らん所ではありますが、とりあえずこの話はひとまず終了という事なのでしょう。
という訳で、議事要旨で一番文章の短いコーナーながら読むと楽しめる箇所をご紹介させて頂きました。
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2004/08/12
お題「山口前副総裁の示唆〜いわゆる2段階解除論に関連して」
「法的拘束力は認めるが、信頼関係が損なわれているので仮処分申請は認めない」ってぇ事はこの国では「法の正義」よりは「やった者勝ち」だという認識で宜しいと言う事な訳ですか。もしくは「力が法」なのかも知れませんな(-_-メ)。
という話はさておきまして、日銀総裁の記者会見も含めまして先日の山口前副総裁の時事通信社インタビューのお話を含めて表題のお話。
○量的緩和政策の出口イメージ
まぁ別に近い話とは思っていないのですが、量的緩和政策の「出口」のイメージとしてあたくしが考えているのは、(1)資金供給オペを絞りながら当座預金残高を減らしていき、(2)所要準備まで当座預金残高が減少した後の無担保コール翌日物金利は(暫定的にゼロ%近傍にするかもしれないが)0.10とか0.15%あたりにして、ロンバード金利で一時的な上昇を抑える。という感じですな。
で、この量的緩和政策の「出口」に関連しては「量的緩和政策の解除」と「無担保コール翌日物金利の誘導目標金利の引き上げ」がセットになるのかならないのかという話があるようです。で、どうも「量的緩和政策の解除の後はゼロ金利政策の期間が入る」という2段階解除論の方が優勢らしい訳です。
先日日経新聞社主催のセミナーで挨拶した福井総裁が時の質疑応答で総裁が「量を減らすということと金利を引き上げていくという2つの側面を合体して考える」という発言をしたのが実は話題になっていたそうで、これを捕まえて「2段階解除論を前面否定したので量的緩和が終了したら短期金利がドカンと上がる」という話になったのも債券相場下落の後付け理由の一つになっていたらしいのですな。
○山口前副総裁の指摘
時事メインの記事によりますと、山口前副総裁のインタビューでこんな質疑があったようです。全文は時事通信社発行の「金融財政」をご覧下さい(と、毎回言っておかないと^^)。
(問)時間軸のコミットメントは「量的緩和の枠組み」に対するもので当座預金残高目標は除外される。物価が下がり気味でも持続的成長によって大きな変化が表れそうな局面では、残高目標の引き下げは行なえるのではないか。
(答)もちろん技術的には可能だ。だが、その政策運営にはほとんど意味はないと思う。当座預金残高を減らし始める、つまり「出口政策」と開始する事は、最終的に金利機能を復活させる事が目標になる。それに至るまでどれくらい時間をかけるのかは重要な判断になるが、結局は30何兆円という当座預金残高を5−6兆円に着実に減らしてゼロ金利という短期市場の状態をプラス金利のゾーンに持っていくことになるのだと思う。
金利機能の復活という事になりますとやはりゼロ金利だと都合が悪いと思う訳ですな。で、2段階解除論に関してもこんな質疑をしています。
(問)解除方法をめぐっては、まず当座預金残高を減らしてゼロ金利状態とし、そして様子を見て金利をプラスにする「二段階解除論」なる説もある。
(答)それは技術的には可能だろう。ただ、基本を言えば、それは「量」の供給自体にどれ位の効果があったかという点の理解にかかっている。私たちが量的緩和を開始した時点では、そこはやってみないと分らない部分で、だからこそ踏み切ったのだが、結果ははっきり出たように思う。日銀は4月の「展望リポート」で量的緩和の効果を強調しているが、良く読みとゼロ金利か低金利の効果だ。つまり現在でも金融緩和の核心は「ゼロ金利プラス時間軸」にあり、そうすると「二段階」は技術的にはともかく論理的には説明が難しい。
(答えの続き)ここで大事なことは、当座預金残高を当初5兆円弱から30数兆円に増やしてきた量的緩和政策そのものの景気押上げ効果、物価押上げ効果というものが本当はどれぐらいあったのか、ということだ。仮にほとんど効果がなかったのだと考えられるならば、比較的短期間に過剰流動性を回収してかまわないことにある。一方、かなりの効果があると認められるならば、徐々にしか吸収オペレーションはできないはずだ。この点、日銀にはぜひ過去3年以上にわたる量的緩和政策のレビューをきちんとやってほしい。
(問)量的緩和の効果はほとんどなく、解除は比較的簡単なのでは
(答)3年余りの経験を見た後では、私の考えもそれに近い。だが、30数兆円は大きな額だし、この吸収をいざ始める時は金融市場の反応を確かめる必要があろう。現実的には、何回かのステップに分けて、足場を踏み固めながら解除せざるを得ないのではないか。実際にどれぐらい時間をかけて、どのような手段で過剰流動性を吸収するのかは、日銀もまだ十分には詰めていないだろう。言わずもがなだか、「出口政策」のあり方は、そのときの経済・物価情勢によって左右去れると考えるのが常識であり、かなりスピードアップしないと間に合わない事もありえるわけで、今の時点では十分に議論しきれない。
長々と引用(記事を転記したので手が疲れた^^送り仮名などの違いは勘弁してちょ)致しましたが、「まず量的緩和の効果」というか「過剰準備になっている過剰部分を上げ下げ(実際には下げてないが)する事に意味があったのか」という点の検証が必要という指摘は仰せの通りであります。
ただ、「量的緩和の強化」と称して実施した「当座預金残高目標の引き上げ」を「政策の変更」としていただけに今更「あれは意味が殆ど無かったので実は茶番でした」とは言いにくいという説は大有りでしてまさに諸刃の剣(^^)。量的緩和政策の本質が「ゼロ金利+時間軸」であるという話は以前須田審議委員もどこぞの講演でお話しておりましたが、量的緩和政策の終了において「量的緩和は終了しますが金利はゼロにします」という話になりますと(時間軸をどうするという問題はありますが)政策としての一貫性はどうなってるの?という話になる訳です。
どうも量的緩和が終了してゼロ金利政策が解除された場合に、前回のゼロ金利解除のイメージから短期金利がいきなり0.25%くらい上昇するというイメージを債券市場関係者は持っているのではないかという風に思うのですが、短期金融市場が見事に破壊されて3年もたっているので「金利機能の復活」をするのも慎重になっていくと思う訳ですよ。その為に、「ゼロ金利解除後の短期金利は0.15%位」ってイメージを最近のあたくしは持っているのですが、実は少数派の意見のようですな。
長期金利のことまで考えますと、本当はいきなり0.25%くらいまで引き上げて「打ち止め感」を出した方がイールドカーブ全体への影響が逆に小さいという話もあるのですが・・・・・・。
量的緩和解除によって財政赤字を反映した長期金利の上昇が起きるという問題についても山口さんコメントしてますが、そちらはまたいずれ。
○福井総裁の「いわゆる合体発言」に関して
前の方で申し上げた「市場の話題になった福井さんの合体発言」でございますが、もともと日銀は「量と金利はコインの裏表の関係」だという認識でおりまして(現象的にもその通りなのですが)、福井さんもその趣旨で「量を減らすということと金利を引き上げていくという2つの側面を合体して考える」といった趣旨の発言をしたのではないかと。要するに2段階解除論がどうのこうのという話ではなく、あくまでも一般論ですな。
その点に関しての記者会見(http://www.boj.or.jp/press/04/kk0408a.htm)での質疑はこうなっております(コピペは楽だ^^)。
(問)(前半部分割愛)もう1点は、いつも出口政策について伺うと、「あまりにも時期尚早だ」と一蹴されるのだが、最近の都内での講演の質疑応答で、総裁は「量を減らすということと金利を引き上げていくという2つの側面を合体して考える」という発言をされて、市場でも非常に話題になった。市場のほうからも、もっと具体的に話を聞きたいという声も上がっているので、もう少しわかり易い言葉で講演の時のご指摘をご説明頂きたい。
(答)(前半部分割愛)2番目のご質問についてだが、この前、私が金融システムについて講演をしたときにお尋ねがあったので、米国との比較で、一言言葉を付け加えさせて頂いたわけである。米国の連銀の場合には、今は低い金利をこれから経済と見合った正常な金利にもっていく、そういうステップを踏み始めたということだが、日本の場合は、エグジット(出口)と言ってもまだその時期はあくまで見えていないという前提だ。しかし、仮にそういう時点に来た場合にも、米国との違いというのは、単に金利水準の調整ということだけではなくて、量的緩和という領域にかなり深入りをしているので、非常に過大に供給している流動性をどう吸収するかという部分と金利の問題とを、頭の中で常にこの両側面を考えながら、連銀に比べるとより難しい工夫をしながらやっていく必要がありそうだ、という極めて当然のことを申し上げたつもりである。「合体して」という言葉に引っかかったという人もおられるが、もともと金利と量とを分離して考えるのがおかしい。今はゼロ金利になっているから量だけを考えていて良いわけだが、将来のことを考えた場合、金利と量を分解して考えるということは論理的におかしいのではないかと思う。
長くなってしまいましたが、要は最後の部分な訳でして、これは「量と金利はコインの裏表の関係にある」というお話。従いまして、いわゆる2段階解除論を肯定したわけでも否定したわけでもないというのが真意ではないかと推測します。だいたい先ほど山口前副総裁が指摘しているように、いざ「出口政策」となった時の経済状況次第でそのあたりは変化しうる物でして、時間軸効果が「ビハインド・ザ・カーブ」を認めている事も考えますと、場合によっては出口直後に結構頑張って引締めしないと行けないかもしれないですし、逆に景気はイマイチで一般物価が上昇するかもしれません
し、まーあまりその辺にナーバスになるのも如何なものかとは思います。
ただ、あたくしは純理論的に「量的緩和後のゼロ金利」は論理が破綻しているので、それをやるなら「低金利」にしておけばよいと思っているだけな訳ですな。
#どうも分ったようなわからんような話で恐縮です。
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2004/08/11
お題「日銀の月報とFRBの声明文」
えー、本日は昨日予告した山口前副総裁のインタビュー記事絡みの続編は時間の都合上明日という事で(汗)。ネタ切れのために取って置く積りではないのですが(あまり放置するとネタが古くなるので)。本日は外れると定評の高い相場見通しはございませんので悪しからず(つーか意味不明の動きが多すぎでサッパリ判らんというのが正直な所です)。
○日銀の金融経済月報
昨日終了した金融政策決定会合は予想通り何もなしで現状維持。まぁついこの前まで当座預金残高をいじったり、当座預金をいじらない場合は「資産担保証券の買入」だの「国債の補完的貸し出し制度の創設」だの作ったは良いが全然機能していない無駄打ち政策を連発していたことを考えますと、ようやくまともになってきたと喜んでいいのでしょう。で、いつものように金融経済月報が発表されております。
http://www.boj.or.jp/seisaku/04/pb/gp0408.htm
8月の金融経済月報の基本的見解を7月と比べると、またも日銀極めてこっそりと判断を細かく前進させております。一々細かく比較すると毎回毎回目立たないように少しずつ判断が前進して数ヶ月に一回ドカンと前進って動きは継続するのでしょうか?
7月分から前進した箇所は極めて少ないのですが、ポイントとなる部分で微妙に表現をいじっているのが着目すべき所かと。
・基本判断
『わが国の景気は、回復を続けている。』(8月)
『わが国の景気は、生産活動や企業収益から雇用面への好影響を伴いつつ、回復を続けている。』(7月)
何か余計な説明が消えて、「景気は回復」と直球を投げております(^^)。
・現状認識部分
『こうしたもとで、雇用面でも改善傾向が続いており、』(8月)
『こうしたもとで、雇用面にも改善の動きがみられており、』(7月)
動きが見られるというのが改善傾向という事で何気に判断が前進。で、実を申しますとこの他に表現が変化しているのが、この先ご紹介致しますが、あと僅か2箇所ということでちょっと見ただけだと殆ど気がつかないような微妙な表現の変化となっています。
ただし、先日ご紹介した山口前副総裁の指摘を待つまでも無く、今後のデフレ脱却に関してポイントになりそうな「雇用情勢」についての表現が非常に微妙ながら前進している訳ですな。要注目かと。
・原油価格に関して一文追加
『なお、原油価格の動向と、その内外経済への影響については、留意する必要がある。』(8月)
読んで字の如し。悪影響なのか好影響なのか実は書いていないのが賢いのですが。さすがに最近言わなくなりましたが、一時は「原油価格上昇などの一次産品価格上昇は単純に景気に悪影響とは言えない(需要の増加を反映しているとも取れるから)」という趣旨のコメントがあった事もありましたしね。
・金融面
あんまり金融面には注目していないのですが、今回は表現が変わった箇所が余りにも少なかったので。
『企業からみた金融機関の貸出態度も引き続き明確に改善している。』(8月)
『企業からみた金融機関の貸出態度も改善の動きが一段と明確になっている。』(7月)
この部分だけですが、ここも企業金融に関る部分だけに一応チェック。
総裁記者会見も余り注目されませんでした(相場が戻り歩調なのである意味注目されないのがあたり前ではありますが)が、こちらに関しては日銀から本日リリースされると思います。
○FOMC声明文
Fedウォッチは本職ではないのですが一応ご参考までに。といいつつ実は自分のための手控えにしようとしているという説もありますが。
・キメ文句(とあたくしが勝手に命名している)の部分
The Committee perceives the upside and downside risks to the attainment
of both sustainable growth and price stability for the next few quarters
are roughly equal. With underlying inflation still expected to be relatively
low, the Committee believes that policy accommodation can be removed at
a pace that is likely to be measured. Nonetheless, the Committee will respond
to changes in economic prospects as needed to fulfill its obligation to
maintain price stability.
前回と一言一句同じです(^^)。
・エネルギー価格上昇と雇用情勢改善の鈍化傾向に触れているようです。
順番は逆になるのですが、声明文前半の最初の一発目の部分は6月と同じ。雇用情勢に関して6月は『labor
market conditions have improved』と言ってたのが今回『the pace of improvement
in labor market conditions has slowed』と雇用情勢改善の鈍化に言及しております。そりゃ雇用統計がアレじゃあ仕方ないですわな。
で、その雇用情勢鈍化に関しては『This softness likely owes importantly to
the substantial rise in energy prices.』ということで、エネルギー価格というか原油価格の上昇が影響しているっつーことですか。
・ただし、基本的に景気には強気なように読めるのですが
あたくしのいい加減な英語力によりますと、これは結局景気に強気だと読めるのですが如何なもんでしょう。
The economy nevertheless appears poised to resume a stronger pace of expansion
going forward. Inflation has been somewhat elevated this year, though a
portion of the rise in prices seems to reflect transitory factors.
この文言がさっきの「rise in energy prices」の次に来る文言な訳ですので、やっぱり強気判断は継続中ということにしているのでしょう。ただ、雇用情勢に触れる事で(米国の金融政策には完全雇用っつーのが目標の一つになっていたと記憶していますが)ハイペースの利上げ懸念を払拭しつつも政策のフリーハンドはもち続けるということですな。大変に結構なお話で。
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2004/06/21
「ついにお怒りの財務省VS武藤副総裁の講演」
○財務省様のお怒り
金曜日の債券市場は寄りから窓を開けて反発。木曜の引け後の叩きまくり攻撃は何だったんだってところです。金曜には提灯の誉れ高いどこぞの経済新聞さまの3面に「金利上昇で企業の資金調達にも影響」だとか(本当に困るのは絶賛最大の借金主体である政府部門ですが)5面には「金利が1%上昇すると国債費の増加が税収増の3倍になるだとか(よくよく読んでみると、そもそも想定金利が2%なのが1%上昇したらどうなるのって話なので全然かすりもしない前提だったりする)いう記事が出た訳でありますな。しかも1面に書かないという芸の細かさ。
これを財務省の(以下自主規制)。と言う事で10年2%直前にてお見事に相場は反転していただきました。ま〜今回に限って言えば、10年金利2%抜けちゃったら相場の勢いとしてかなり洒落になっていなかったので、よくぞ相場を止めたと申し上げたいところではあります。
結局最後に頑張ったのが財務省。国庫を預かる当事者として金利上昇で表面化する財政問題(金曜の引用ばかりだが力作のドラめもんをご参照のこと^^)に対する備えもへったくれも無いという状況を良く理解しておりまして、金利上昇のもたらすもの(災厄)を最も理解しているって事なのでしょう。日銀ではなく財務省さまご登場というのが何ともアレな訳でございます。
財務省以外は本音ベースではあまり気にしていなかったのかな〜と思ってしまう節がありまして、先々のことを考えると「政府と日銀のアコードなんてできるのか?」と不安になってしまう次第。そういえば木曜に生保協会の会長様が「急速な金利上昇に関しては日銀におかれましては何らかの対策を希望」とか当事者意識のない香しい発言をされておりましたな。もはやその見識の高さに何も言う事はありません。君らは何でもお上頼みかね、そんなんだから捏造された武藤ショックに合わせた仕掛けにずっぽりと嵌るわけですな。
○武藤副総裁講演
さて、俄かに注目の的となってしまった石川県金融経済懇談会における武藤副総裁の挨拶と記者会見。何故か挨拶要旨の方しか日銀のWebにアップされておりませんで、記者会見については今日アップされるようなので本来はそっちも読んだ方が良いのですが、とりあえず挨拶要旨を読んでみましょう。
http://www.boj.or.jp/press/04/ko0406d.htm
まぁ先に結論を申し上げると極めてオーソドックス。だいぶ大昔に武藤副総裁の講演を紹介した時にも「財務省出身という看板を持っているのに日銀の企画ラインの発想(=正統的な日銀の発想)に則したお話をするんだな〜。優秀な官僚というのはこういうもんなんでしょうな〜。」などという感想を書いたと思うのですが、今回の講演もまさに模範解答のような講演でありますね。
ポイントがやや多いのですが。
・経済の現状は強気、所謂ダム論が展開されています
『わが国の景気は、昨年後半以降、回復を続けており、最近では、雇用面でも改善の動きがみられます。今回の景気回復は、海外経済の好転に伴う輸出増を起点に始まり、それが生産活動の活発化、企業収益の増加に繋がり、さらに設備投資の拡大を促すという「前向きの循環」が働いています。』
で、その前向きの循環が雇用面への改善の動きになっているということですから、景気に遅行する雇用が改善傾向と言うことで、景気回復熱烈進行中というお話。
『こうした順調なわが国の景気回復は、私どもの想定を上回るものでした。そのひとつの背景は、米国、中国を中心とした世界経済の予想以上の回復です。』
『もうひとつの背景は、雇用・所得環境が必ずしも明確な回復をみていない中にあっても、個人消費が予想以上に健闘していることです。』
と、ここまでは普通のお話なのですが、もうひとつの要因として結構驚愕の要因を挙げている訳でして(^^)、長いけど引用。
『さらに、今回の景気回復局面の中で見逃してはならないのは、構造調整の進展が景気回復の動きをサポートしているという点です。バブル経済崩壊以降、わが国の企業は、過剰な債務、雇用、設備についての調整に懸命に取り組んできたわけですが、ようやくその努力が実を結びつつあります。とくに製造業大企業では、リストラや企業再編等を通じて、収益を上げやすい企業体質に変化しつつあり、日本銀行の短観によると、売上高経常利益率がバブル経済崩壊後のピークを更新している状況です。また、金融機関の不良債権処理についても、全般に相当進捗してきています。金融システムが全体として健全性、安定性を徐々に取り戻しつつあることは、企業金融面での安心感に繋がっていると思います。』
金曜にご紹介した財務省というか池尾先生の御認識とは随分こりゃまた温度差を感じるお話。「構造調整の進展」というのが日銀的(というか世間的にもそうですが)な認識なのかただの大本営発表なのかは知りませんが、どうも日銀から景気良く出てくる進軍ラッパを聞いているともしかしてリアルで「構造調整の進展」と言っているのかも知れないとつい思ってしまいますな。金曜日にご紹介したように「構造調整の進展」は単に「政府部門へのツケ回し」に他ならず、政府部門の構造問題(=財政絶賛大赤字と訳のわからん特別会計なんかの肥大化)は調整どころかせっせと拡大中ですが。
・物価情勢
「経済の先行き」に関しては省略。そんなに変わった話はしていなくて、基本的に今後は景気回復の効果が個人部門に及んでくる(要するに雇用)かどうかがポイントになるでしょうって話。海外経済とあわせまして。
『その中身(国内企業物価が0.5%前後の伸びを示していること)をもう少し詳しくみると、昨年後半頃より、米国、中国を中心とした世界経済の回復を背景に原材料価格の上昇が目立ち始めたのに続き、今年に入ってその中間財価格への波及が明確化してきています。』
『しかし、その一方で、最終財価格や、消費者物価、例えば家電製品価格などへの波及はなお限定的です。これは、企業の生産性向上に向けた努力や賃金抑制姿勢を反映して、商品を生産するのに必要な人件費コストが低下していることが基本的背景にあります。つまり原材料にかかるコスト上昇が企業段階で吸収されていると言えます。』
『また、物価の基調的な動きに影響する経済全体の需要と供給のバランスは、景気の回復を反映して着実な改善をみていますが、なお緩和した状態が続いており、引き続き物価を押し下げる方向に作用していると考えられます。』
相変わらずこの理屈で消費者物価だけ上がらないという話なんですが、景気回復のダム論が正しいのならば労働分配率が上がってやっぱり上昇って話にならんのかな〜とおもったりもします。だから「雇用情勢に関しては今後のポイント」という事ですから話としての整合性は取れているとも言えますが(^^)。
『これらの事情を踏まえ、私どもでは、物価下落圧力は徐々に減じているものの、今年度の消費者物価は基調的には依然として小幅な下落が続くものと予想しています。』
で、原油価格上昇についてもお話をしているのですが、非常にオーソドックスなお話。先日福井総裁は記者会見で「原油価格上昇は需要の増加という面もある」などと景気の良い話をしていましたが、武藤副総裁は福井総裁のような楽観的な面ではなく、『わが国のように、原油をほとんど輸入に頼っている経済にとっては、原油高は交易条件の悪化を通じてマクロの実質的な購買力を圧迫するなど、景気にマイナスの影響を与える惧れがあります。』と慎重な見方を示しています。
・金融政策運営
金利水準については市場の一部で勝手に期待していたような牽制あるいは介入的な発言はございませんでした。というかあると思っている方が日頃日銀見てね〜だろって感じですが。
『長期金利は概して安定的に推移してきましたが、ここにきてやや強含んでいます。これは、世界経済が高めの成長を続けており、ディスインフレーションの傾向にも変化が窺われつつあることや、わが国の景気も回復しているといった状況の中での動きと理解できると思います。長期金利は、やや長い目でみると経済や物価情勢を反映して変動するものです。ただ、同時に短期的には様々な思惑によって動く一面も有していますので、今後の長期金利の動きについて、注意深くみてまいりたいと考えています。』
まるで模範解答ですな。
CPIターゲットの引き上げに関しては思いっきり否定。どこぞのストラテジストやら日経新聞やらが「ひとつの案」などと言っていて、それに乗ってしまった(自分でお考えになったのかも知れませんけどね)中原審議委員さま十字砲火で撃沈の巻と言った所で実に香しい。しかも時事メインの「金融観測」で指摘された「カタパルト効果」にも言及しておりますな(^^)。
『このように申し上げると、「約束」の水準を引き上げて、例えば、基準となる消費者物価の前年比についてゼロ%より高い水準に改めた方が、もっと景気刺激効果を引き出せるのではないかという疑問を持たれるかもしれません。しかし、物事には必ず表と裏があります。』
『仮に日本銀行が消費者物価の前年比が高い水準に達することを確認するまで現在の政策を続けると宣言し、経済にどのような変化が生じても、そうした段階に至るまでゼロ金利状態を続けるとなると、経済は過熱し、物価上昇率は急速に高まるかもしれません。少なくとも、市場は常に経済の先行きを予想しながら動く性格を有していますから、ゼロ金利状態が長くなる分だけ、将来の短期金利の上昇幅は大きくなるという予想が広がり、結果として長期金利が大きく上昇する可能性もあります。』
非常に明解な説明、というかこんなの金利市場に絡む仕事してたら当たり前の常識であってそんな理屈も判らんで「期待形成の安定化の為にCPIターゲットを引き上げる」と言っていた人は本当にイールドカーブとか判っているのかと小一時間(略)。
なお、念のため申し上げますと、当然武藤副総裁は「出口論議は時期尚早」であって「いまの量的緩和を続ける」と言っております。
『現在は、景気が回復を続けているとはいえ、消費者物価の前年比がなお小幅のマイナスで推移している状況です。そうしたもとでは、量的緩和政策からの「出口」を具体的に論じる段階ではないと考えています。』
『現時点で私がもっとも重要と認識している点を一言述べれば、政策の転換のプロセスを通じて人々の予想形成を不安定にさせないということです。このためには、日本銀行として、経済・物価情勢の判断を的確に行ったうえで、金融政策運営についてどのように分かりやすく説明していくか、言い換えれば金融政策の透明性を高める方法についてどのように考えていくかが何にも増して大切になってくると思います。』
『いずれにせよ、日本銀行としては、デフレ脱却を最優先として、今後とも、消費者物価に基づく「約束」にしたがって、適切な金融政策運営に努めてまいりたいと思います。』
では今週もよろしくです。
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2004/06/18
「財務省”衝撃の会議録”に見る金利上昇への悩み」
○日本将来の経済ビジョンは?
本日のドラめもんは15日の時事通信社「時事メイン」のコラム「金融観測」の記事『衝撃の財務省「議事要旨」=『出口』の先は極東の最貧国』と思いっきり被っておりますので、時事メインで記事をご覧になった方は以下読み飛ばしということで。
http://www.mof.go.jp/singikai/vision/gijiyosi/a160601.htm
「日本経済の将来ビジョンを語る懇談会」というのを財務省が行っているのですが、第10回となりました6月1日に実施された会では、慶應義塾大学の池尾和人教授が議論のたたき台のレクチャーを行い、財務省の審議官クラスの幹部や有識者が議論をしたようであります。まぁとりあえず上のリンク先を読んでくださいな。ちと長いけど。
・・・・・・まぁ結論から申し上げると「身も蓋も無い本当の話」でありまして、財務省幹部の財政問題や経済問題に関する危機感が伝わって来る極めて悲しい内容であったりする訳です。上記リンクを読んでいただければ特に解説も不要な話なのですが、んなもの読んでられるかというお方の為に金利と財政のお話の部分をかいつまんでご紹介致します。ちなみに、あたくしが引用したのは6月14日に財務省の上記Webから取得している議事要旨です。もしかしたらその後若干の変更があったかもしれません。
・池尾先生の出した問題提起:日本経済の当面のハードルは?
池尾さんは日本経済の当面のハードルとして「金利の正常化」というものを上げております。要は量的緩和解除が行われた後に日本経済のハードルが発生するってお題な訳ですな。
『バブル経済の際、民間企業のバランスシートが膨らむ一方、家計の金融資産は1,400兆円まで増えた。しかしながら、家計の金融資産は、その見合いとしての企業の債務に裏付けられており、バブル崩壊でその多くが過剰債務となった現在では、家計の金融資産も実態としてはかなり価値が毀損していると考えられる。』
まさに仰せのとおりなのですが、そんな認識は世の中に共有されていないところが実に悲しい訳です。「世界一の個人金融資産保有国」だと皆さん思っているでしょう。未だに。で、ここからがなかなか。一般ピープル的には衝撃の指摘。あえてコメント付け加えませんが。
『バブル崩壊によって生じた問題からの脱却の第1局面、すなわち、民間部門の債務を公的部門に付け替え、民間部門の健全化を進める局面は終わりを迎えつつあり、そろそろ公的部門に付け替えられた債務の償却を考えなければならない第2局面に入ってきていると思われる。第2局面を打開するには、家計の過剰な金融資産を増税等により実質的に圧縮し、公的部門の債務の償却にあてる必要があるのではないか。』
で、次は財政状況のお話と金利の話なんかが出てきます。まずは財政の現状について厳しい指摘が。
『現在、プライマリー・バランス(基礎的財政収支)の黒字化の目途は立っておらず、足元の回復も構造的な要因ではなく、循環的な要因であると考えられる。過去の経験から名目利子率が名目成長率を上回るという可能性を考慮すると、プライマリー・バランスがゼロになっただけでは、対GDP比債務残高の発散は止まらない。公的債務残高をGDPの2倍程度で安定化させるなら、対GDP比4%程度の黒字化が必要である(名目利子率が名目成長率を2%上回る場合)。』
そもそも小泉内閣の構造改革工程表によりますと(確か)2010年頃にやっとプライマリーバランスが黒字化するというお話ですが、ご存知のようにいつまで経っても国債新規発行額が減る気配も無し。そんな中でこの「プライマリー・バランスがゼロになっただけでは、対GDP比債務残高の発散は止まらない」というのは「駄目じゃん」ってお話ですな。
では何で危機感がないかというとそこには量的緩和政策がリンクされてしまっているわけであります。
『なお、巨額の公的債務残高の存在にもかかわらず、世間的に危機感がさほど抱かれていないのは、低金利状況の下で、債務維持負担(debt
service burden)が非常に軽いものに済んでいるからである。日本銀行のゼロ金利政策とそれに続く量的緩和政策が、こうした債務維持負担が軽い状況を作り出している。』
『換言すると、日銀が量的緩和政策を続けざるを得ない経済情勢が続くことが、財政の安定が維持できる条件になってしまっているともいえる。そうした経済情勢とはデフレの持続にほかならず、デフレの脱却による日銀の政策スタンスの変更が財政危機の顕在化につながりかねない状況と言える。』
財政の安定が維持できる条件がデフレの持続にほかならないとは何たる皮肉なお話なのでしょうか・・・・・・・・・(寒)
『このような財政状況は、これまでの後先を考えない「何でもあり」のマクロ経済政策のつけが回ってきた結果であるというしかなく、国債価格支持政策としての量的緩和に、当面、出口戦略は見出しがたいというのが率直なところである。もし比較的高い名目成長率が実現でき、国債価格支持政策によって名目金利の上昇が抑制できれば、ソフトランディングもあり得ないことではない(この場合も早期に基礎的財政収支の黒字化が図られることは不可欠)が、かなり激発的な調整が起こる可能性も否定できない。』
『いずれにせよ必要なのは、国債保有者と納税義務者の間での債権債務関係の再構築であり、このプロセスについては、想像力を豊かにしシナリオをいくつか準備しておく必要があるだろう。なお、インフレも、債務者利得の発生を通じて債権債務関係の再構築につながるという意味では、一つの可能性であることは確かであるが、ハイパーインフレという形の債権債務関係の再構築が唯一の可能性であるというのは、アナクロニズムではないか。』
はい、「このプロセスについては、想像力を豊かにしシナリオをいくつか準備しておく必要があるだろう。」ということですので、想像力を豊かにひとつ皆様よろしくです(^^)。この問題提起の続きは社会経済システムの再構築、主に金融システムのお話をしているのですが、こちらは割愛させていただます。
・池尾先生の問題提起に関する出席者の議論
という訳で上記の如く池尾先生が問題提起のたたき台を出したところで出席者の間で議論が行われております。実に「本当のお話」であって大変に有意義かつ寒い内容であります。
『財政再建については整合性のあるようなシナリオを書くのは難しいのではないか。将来的には悪性インフレシナリオが考えられる。』
ドラめもん長期ご愛読(または強制送付とも言うが)の皆様におかれましては、あたくしがこの見解をキープしている事はご存知かと(^^)。
『悪性インフレは現在のような「もの余り」の状況では発生せず、名目金利が低く抑えられる。その結果、財政赤字には歯止めがかからない一方、財政赤字の結果潤った民間資金が国債を消化するため、低い金利水準を保ったまま、公的債務残高が増加してしまう。このような状況は20年程度継続するのではないか。』
『危機が表面化するのは、「もの余り」が解消したときではないか。米国のように、日本も対外資産を原資に輸入を行えば、「もの余り」の状況を10年くらい継続させることができる。輸入に頼った「もの余り」が継続する結果、生産技術が失われ、競争力が低下してしまう。こうした問題は20年後に表面化するだろう。』
本当に20年持つのかはよーわからん。直感的にはそんなに持たない気がするのですがまぁともかく。結局このままでは過去の蓄積の食い潰しモードに入っているという指摘をしている訳で、この人の結論はこういう事。
『今述べた問題に関しては、今から対処を始めないと、20年後では打つ手がなくなる。』
全くそのとおりですね。それに関連してこの衝撃の指摘。
『このままの状況を20年間継続することは可能だが、それでは極東の貧しい国になるというシナリオになってしまう。10年間で構造改革を終え、公的債務を減らすためのシナリオを、構想力豊かに考えていかなければならない。』
もはやコメントする事はありません・・・・・・・
足下の景気回復に関してはこんな指摘。
『日本経済は2年間回復局面にあるが、今回の特徴は財政出動がなかったことだ。民間は財政出動に頼ることなく、自らが合理化することで景気を回復させた。このような民間の姿勢こそが「柔軟性」である。政府が手厚く保護すれば保護するほど、民間は政府に頼ってしまう。政府のやるべきことは、再び政府が手を引くことである。』
毎度あたくしが指摘しておりますように、財政出動という形での出動はないんですけど、各種の財政をバックとしたセーフティーネットの存在がドンドン強化されています。例えばペイオフの抜け穴である決済性預金の全額保護だとか政府系金融機関による中小企業への無担保無保証融資の拡充とか、今まででは破綻している筈の金融機関への公的資金絶賛大投入やら産業再生機構。挙げればキリが無いとも言えますな。
もしかして「再び政府が手を引くことである」というのはこれらセーフティーネットを外していくということなのかな?とも思います。それなら意味は良く判るというもの。
長期金利のお話ではこんな指摘が。
『長期債の金利は1990年代以降、国際的に決定されている。金利は一度上昇を始めると、何らかのクライシスが起きないと低下しない。今後米国の長期債の金利は上昇することが予想されているが、米国の歴史を振り返ると、87年のブラックマンデー、91年のS&L破綻、94年のメキシコ危機、97年のアジア通貨危機、99年のITバブル崩壊など、金利が低下したのはクライシスと名が付くものばかりだ。』
ほうほう。
『一方、日本の90年代の長期金利の動向をみると、アメリカの長期金利を反映した動きとなっている。日銀がイグジットポリシーを模索する段階にあっては、財政支出や政府保証に関して長期的なコミットメントを早いうちに出すべきだ。一度上がり始めた長期金利に対処するのは困難であり、相当の覚悟がいる。』
確かにご指摘の通りで、既に長期金利がこの懇談会時点から見ると随分威勢良く上昇しております。で、もうちょっと日米の長期金利の連動性に絡むお話があるのですが、そこは端折りまして長期金利の上昇が財政に与える影響に関する衝撃の議論を引用しましょう。
『最近、金利上昇が発生しても、税収も同様にあがるのだから、利払費だけを取り上げて議論するのはナンセンスという議論がみられるが、もし税収の弾性値が低下していれば、こうした議論は成立しないのではないか。』
『「利子収入に対して20%の課税がなされていることを考えると、国債以外のあらゆる債券からの利子課税の増収分で利払費の増加分はキャンセルアウトできる」という話ではないか。しかしながら、キャンセルアウトするには、課税が20%であることから、社債などの国債以外の債券を合わせた総額が国債の5倍なくてはならないこととなる。そんなにあるのだろうか。』
この議論を踏まえてのことなんでしょうが、早速今朝の経済ニュース番組では「長期金利上昇で利払費の増加分が税収の増加分の3倍になる」というアナウンスがされていましたな。以降段々話が寒くなります。
『金利の上昇が財政再建のキックオフとなりうるという面はある。』
『公的債務残高、金利、税収の関係を考えると、自然の姿では手当てできない状況ではないか。現状では、金利が上昇する際には、税収よりも利払費の増加分のほうが大きくなってしまう。』
で、議事要旨の順序ではこっちが先なのですが、財政改革に関してはこんな指摘がされていたようです。コメントの必要も無い本当のお話。
『政府としては、プライマリー・バランスの黒字化を強調しているが、プライマリー・バランスの黒字化は最終目標ではなく、あくまで一里塚である。政府がプライマリー・バランスの黒字化で財政再建が済むというようなイメージを与えることのないよう気をつけなくてはいけない。今後、財政再建の絵を書くには、歳出のカットとももに、歳入の増加も必要である。』
『財政の悪化によるクラウンディングアウトはしばらく起きないと考えているが、このまま公的債務残高が増加し、税収が増加したとしてもまかないきれなくなれば、クラウンディングアウトは起きてしまう。プライマリー・バランスの目標だけでなく、最終的な目標を明示しないといけない。』
『高橋是清蔵相は515事件の後ケインズ政策を行ったが、それは当初の3年間で終了しており、その後は公債漸減主義を掲げ、財政の健全化を行った。「高橋財政」とよくいわれるが、高橋是清蔵相の政策は財政の健全化と、低金利による経済の活性化であった。これから私たちが取り組むべき政策ではないか。』
財政問題に危機感を持つ財務省の立場から書いてある議事録ですので、危機感に関して強調するバイアスが掛かっている内容でもあるのですが、昨今の金利上昇に関して財務省は恐らくとてつもなく危機感を抱いているのでしょう。循環的に回復基調になっている現在、「引締め政策」をすべきなのは金融政策ではなくて実は財政政策だという事なのでしょうが、財政って結局政治が決めるわけですから・・・・・・・・寒いお話で。
延々と長い引用にお付き合いいただきましてありがとうございました。
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2004/06/17
「日銀総裁会見に見る財務省と日銀の温度差」
金融政策決定会合後に行われた6月15日の総裁会見です。
http://www.boj.or.jp/press/04/kk0406b.htm
○金融市場に関する発言
まず最初の質疑では直球で長期金利の質問が出ております。
『(問)長期金利がじわじわ上がってきており、昨日は1.85%台とほぼ4年振りくらいの水準までつけている。こうした動向について、ポジティブ・サインという見方がある反面、最近は政府筋からは行き過ぎた上昇への警戒感や牽制する発言も出ているが、長期金利の動向と現在の水準について、総裁の認識を伺いたい。』
長くて読みにくいと思うので途中できりますね。
『(答)長期金利に限らず、金融為替市場の市況の動きについては、丹念にフォローしているつもりである。また、市場の声にも冷静に耳を傾けているつもりである。市場の声として我々の耳に静かに聞こえてくるのは、今お尋ねの長期金利について言えば、世界経済がよりバランスのとれたかたちでより高めの成長を続けている、また、世界的にディスインフレーションの傾向にも少し変化が窺われつつある。その中で、日本の景気も回復してきている、そういうことが大きな背景だろうという声が聞こえてきている。』
『長期金利というのは、何回もお話ししているが、長い目でみると将来の経済や物価に対する人々の見方を反映して変動していくものであり、市場の静かなる声もそれと同じ見方をしているということだろうと思う。もちろん、同時に市場の中では、いろいろ思惑めいた話、そうした雰囲気もあるようだが、これはかねてから申し上げているとおり、市場は短期的には様々な思惑によって動く一面も有しているということだろうと思う。』
確かにこう言われると「長期金利の現状について大きな懸念はない」というフラッシュを打ちたくなるわなという感じです。で、その続き。
『私どもは、現在の市場の動きについては、先程申し上げた内外の経済の動きを反映して、為替市場、株式市場、債券市場、それぞれの市場が相互に牽制機能を働かせながら、均衡点を模索している段階と思っている。もちろん、市場は思惑によって大きく振れるリスクを常に抱えているので、日本銀行としては、金融政策の効果を円滑に浸透していく立場から、そうした動きを含め、注意深く見ていかなければいけないと思っている段階である。』
でもこの会見時点での問題というのは「量的緩和政策の早期終了を織り込む金融市場」なのでありまして、そういう観点からより突っ込んだ質疑もある訳ですな。
『(問)先程、「市場は短期的には振れることがある」とおっしゃったが、端的に伺うが、今の水準はやや振れている水準なのか。金利先物市場で昨日──今日は多少買い戻されたようだが──、来年3月限の先物金利の水準が0.3%近くまで上昇し、単純に考えると、来年3月での量的緩和政策解除という思惑を市場が持っているような市況になっていた。これも「やや振れている」とお考えか、長期金利と併せて、ご意見を伺いたい。』
うーん直球ストレートの投げ込みが厳しい質問です。で、お答え。これがまた数段落に分かれていて長いのよ。
『(答)市場全体を眺めていると、私どもが特徴的に捉えているのは、繰り返しになるが、為替市場、株式市場、そして債券市場が相互に牽制機能を働かせながら、均衡点を懸命に模索している動きだ。そういう意味では、非常に正常な市場の動きと捉えられると思う。』
ということで、不安定ながらも正常な動きで市場は次の均衡点に動くと言っているようですが。
『また、債券市場だけをみても、皆様方のご記憶に一番新しいのは、昨年の夏から秋の動きだと思うが、その時点と比べてみると、例えば、スワップ・スプレッドの開きがそれほど大きくないし、ボラティリティーが非常に高まっているという状況ではないと思う。先程私は「市場の静かな声」と言ったが、その「静かな声」が私どもの耳に聞き取れないほど掻き乱されているわけではないというのが市場の雰囲気であり、昨年の夏から秋にかけてよりはずっと落ち着いている。この2つのことが申し上げられると思う。』
うーむ、どこぞのレポートで作られた「偽りの武藤ショック」なんてのもありましたが、何と言うか「落ち着いている」のかね〜??
『しかし、昨日までのここ数日の動き──今日(引用者注:15日ね)は債券が買い戻されているが──については、足取りが少し速くないかというと、少し速いかなという印象は受ける。もっとも、それは市場の日々の動きで、1日、2日の動きを捉えてコメントすべき性格のものではなかろうと思う。』
2年やらスワップやらの動きは「1日、2日の動き」というよりは「安定していたものがいきなり動き出した」もの。そういう意味ではもうちょっと気を使った言い方をして欲しかった訳ですが、まぁそれは兎も角。
『いずれにしても、これからデフレ脱却の目的を果たしていくために、金融政策の効果を浸透させていく非常に重要な過程にある。私どもの量的緩和政策は、景気が上向き過程に入り、かつ上向きの動きを続ければ続けるほど、この量的緩和の景気刺激効果が強まっていく。この強まっていく効果をしっかり発現させて行かねばならない重要な過程に入っている。』
『従って、市場の動きがこれに対して攪乱的な影響を持つかどうか、あるいは、思惑がこれを乱すか、ということについては、非常に注意深くみていかなくてはならない。』
『繰り返し申し上げるが、今の緩和スタンスを続けるという我々の姿勢はいささかも揺るぎがない。この点について、思惑の入る余地はないと断言申し上げたい。』
最後に量的緩和継続に関してだけはきちんと言及しましたが、よくよく読んでみると長期金利の方についてはあまり下げようとする発言は出ておりませんな。「金利に蓋をする」などという迷言もあったお方とは思えませんな(^^)。
長期金利水準に対して政府(というか財務省)が「有効な施策を打ってくれ」という話が散々出ているのですが、その点に関する質問に対しては(時間とスペースの都合上今日は引用しませんが)基本的にゼロ回答ですな。表現についてはやたらと気を使ってはいるものの。
○物価動向に関して
金融経済月報にありますように、国内企業物価は相変わらず「現在は上昇傾向で今後も強含み」という見通しになっており、一方で消費者物価はCPIターゲットの縛りの問題があるので「小幅のマイナス継続」という見通しです。しかし、昨日ドラめもんでご紹介したように「ダム論」は絶賛発展中なわけでして、その辺の問題についてこれまた秋山登のカミソリシュート(古いね)って感じで質問が。
『(問)原油高と円高の修正ということで、企業物価については日銀が展望レポートで想定した見通しをかなり大きく上回ってきている。仮に今後、川下段階にも原油高などの影響が出た場合、一部では、これはコスト・プッシュ要因であり、企業収益、あるいは消費者にとってもメリットはないとの見方から、CPIが安定的にゼロを上回るという判断においても原油高による物価上昇というのは勘案するべきでない──つまりそうした物価上昇は量的緩和を解除するには十分条件にはならないのではないか──との見方もある。こうした見方についてのお考えを伺いたい。』
『(答)企業物価指数は、これから今年度が終わってみて、最終的にどうなるかわからないが、今の足許の動きは確かに少し上振れ気味に動いている。世界的な景気の回復、商品市況の上昇、それに原油高の影響が上乗せされているということだろうと理解している。しかし、その企業物価自身も中身をブレイク・ダウンしてみると、川上の動きが川中にかなり波及しているということであるが、川下段階への波及は生産性の上昇によってかなり吸収されて限定的に止まっている、という構図に分解することができる。』
ダムからの水はまだ川中にあると言うことですか。展望レポートよりも上ブレしていることに関して認めている事にはご注意ください。
『消費者物価指数は、景気回復に伴う需給要因の改善ということが一番基本的な要素だとみている。逆にコスト・プッシュ要因という意味では企業物価の段階でみられる変化が消費者物価段階にどのように及ぶかということであるが、これは目下のところ限定的な影響に止まっているし、止まり続けるだろう。ただ、原油については、一般の商品市況の浸透よりはストレートに川下段階、あるいは消費者物価段階にも及んでくる公算が強いと思っている。従って、もうしばらくすると、日本の消費者物価指数にも原油高の影響は及んでくるであろうとみている。』
だそうですので、原油高の影響ってことはCPIも暫くすると強含み。で、ここからが最注目点。重要なので段落を途中で切ります。
『原油高の影響が及んできて消費者物価指数の数字が少し変わった場合、これをどう読むかということはなかなか難しい問題を孕んでいると思う。米の値段が上がったから来年下がるだろうとか、医療費が上がったのは一過性のものだといった、特殊要因としての扱いは原油高については適当でないと思う。』
最後の部分に注目くださいね。特殊要因とするのは適当ではないのですよ。
『原油高の場合は、特に1970年代の石油ショックの時と比べて、今回は世界景気の拡大──つまり世界的な需要の増加──ということが大きな背景になったものであるという側面が強い。もちろん地政学的リスクに絡んで、いつ何時供給ショックが起こるかわからないという要素もある──そこは不確定要因である──が、経済的にみていくと、今回は世界需要の回復を大きな背景とする原油高という要素も非常に強い。』
まぁ確かにコストプッシュかディマンドプルかって話もアレなのでして、モノ不足が背景にあればコストプッシュって言えるのかも知れませんね。やたらと「原油高での物価上昇は量的金融緩和の解除に結びつけるべきではない」という話が横行(あたしもややしてますが最近宗旨変更中)しているのに対して中々挑戦的なコメントです。
『この面からみていくと、原油高というのは景気が良いことの反映であり、従ってそれは素直に物価高であると理解しなければならない面と、逆に原油高はコスト・アップを通じて企業収益を押し下げる、あるいは所得の海外移転を伴うということがあって景気にとってはマイナスの面があり、両刃の刃というところがある。』
『そこのところをじっくり分析しないと、単に表面的な消費者物価の変化率が原油高が浸透してきて変わったといって、単純な理解でこれを処理するわけにいけない。我々は経済全体に与える影響というものを少し深掘りしながら、それを分析していきたいと思っている。』
つーことで、何気に原油高に関して「原油高のCPI上昇は緩和終了に繋がらない」という議論に対して反駁しております。もちろん「我々は経済全体に与える影響というものを少し深掘りしながら、それを分析していきたいと思っている。」って言っているわけですから、原油高を全て景気回復需要増大だと捉えてはいませんが、フリーハンドはしっかり確保している訳です。
○日銀事務方の隠れた意思表明なのか?
ということで、本日はあえていくつかの質疑について質問と回答を丸々全文引用というのをやってみました。分量が多くなってすいません。
当然この会見要旨ってのは日銀の事務方(企画部門?)が作る(筈)でしょうから、昨日のドラめもんでご紹介した「金利上昇への危機感現れる国債市場懇談会議事要旨」と同じ理屈で会見要旨を作っている部署の意思というのを(公開の質疑応答ですから文面は日経金融新聞あたりの記事とほぼ同じになるんでしょうが)文書としては出せないでしょうが、何と言うか行間からにじみ出てくるニュアンスってのに感じたりする訳ですな。だんだん話がオカルトじみてきますが(^^)。
で、この要旨を読んで見ると、何となく財務省の感じる危機感とはやや温度差があるように思えるのですよ。この会見要旨。
気のせいなのかもしれませんがね〜♪
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2004/06/16
お題「財務省の悩みと日銀の楽観」
思わず文学的(どこがじゃ)なるお題が登場の巻(^^)。
○火消しに躍起な財務省
昨日のドラめもんでちょっと触れた国債市場懇談会。議事要旨が早速財務省Webにアップされておりました。http://www.mof.go.jp/singikai/kokusai/gijiyosi/a160614.htm(もしかしたらディープリンクだと直接行けないかも知れません)
昨日の寄り付き前には既にアップされているという訳で、通常にもまして素早く要旨の公開が行われ、寄り付き前から早速議事要旨を読んだ市場参加者も多かったのであります。で、読んだ人々の第一感はと申しますと「金利動向に関する懇談会の見解が何か報道されているものとニュアンス違う」であります(^^)。
一昨日の国債市場懇談会終了後に出た吉野座長のコメントの段階では(昨日のドラめもんでご紹介したように)「最近の金利上昇は景気回復期待を背景にしたものという意見が大勢」というお話になっており、日経新聞あたりでの報道も同じような内容であったと言われています。
ところがこの議事要旨における「最近の国債市場の動向について」という部分を見ると、足許の金利上昇に関してのコメントにはオーバーシュートしているというコメントが多く見られておりまして、前日の吉野座長からでていた暢気なコメントとはだいぶ違った危機感の滲む内容になっております。特に良く状況を纏めていたコメントはこちらですか。
・最近の相場の動きについては、「都銀の国債の運用が、去年の夏以降、中短期ゾーンにかなり偏ってきており、量的金融緩和政策、ゼロ金利解除といったテーマに非常に脆弱だ」といった見方に基づき、海外の投機筋等による「中短期ゾーンのスワップのロスカット」を引き出すような動きが一部に出ていたと思う。しかし、都銀は、早期の量的金融緩和政策の解除を考えて動いているわけでもなく、また昨年議論となった「VAR枠」との関係では、まだ十分に余裕がある。ただ、足下、量的金融緩和政策の解除が早まるという警戒心が過度にマーケットで高まっており、日銀に断固として抑えていただくことをお願いしたい。そうすれば、10年金利が2%に行く前に相場は落ち着くのではないか。
なんか都銀のコメントなのかも知れませんな。その割にはこの懇談会の日にはど〜考えても「会議室発偉い人の売り指令」らしき売り物が中期債に炸裂して相場がエライコッチャになっていましたが。まぁそれは兎も角として、かくのごとく議事要旨は危機感のにじみ出るトーンになっている訳です。
まぁ激しく憶測の域に入りますが、この議事要旨の発表がやたら早かったのは、やはり吉野座長の長期金利に対する暢気なる発言による「金利上昇容認イメージの瀰漫」を何としても止めたいという財務省事務方(要旨を作るのは理財局国債課)の意思の現れ。火消しの為に一刻でも早く「金利上昇危機感ありあり議事要旨」を出したかったのでしょうな。ご苦労様であります。
一昨日の林財務事務次官の金利上昇猛烈牽制発言リターンズ(先週木曜にも事務次官と大臣が牽制発言してました)があり、昨日は谷垣財務大臣が同様に金利上昇猛烈牽制というか思いっきり不快感の表明って感じの発言こちらもリターンズがありと、財務省からは「金利上昇は極めてケシカラン」という意思表明のオンパレードとなった次第。そりゃこれだけ言われたらさすがにショート筋は買い戻しますわな。どこまで戻れるかは知らんが。
○日銀はやはり循環論者のようですが
昨日の金融政策決定会合、何と11時半には終了という実にあっさりとした会合でありまして、予想通り政策変更なし。で、3時に発表された金融経済月報(基本的見解)は正直言って「またも景況感前進か!」って感じであります。という訳で金融経済月報のポイントを少々。
・経済の現状認識
『わが国の景気は回復を続けており、生産活動や企業収益からの好影響が雇用面にも及んできている。』となっております。5月は『わが国の景気は緩やかな回復を続けており、国内需要も底固さを増している。』でしたが、とうとう外れた「緩やかな」というお話でして、これは明確に判断前進であります。
『輸出、設備投資の増加が続いており、鉱工業生産も引き続き増加している。こうしたもとで、雇用面も改善の方向にあり、雇用者所得は下げ止まってきている。個人消費もやや強めの動きを続けている。(以下割愛)』という各部門の現状に関しては雇用に関する部分の判断が若干前進になっております。まぁ元々強めのお話なんですけど。5月は『雇用者所得は徐々に下げ止まってきており』という事でこちらは「徐々に」という部分が消えています。
・経済の先行き見通し
『先行きも、景気は回復の動きを続け、前向きの循環も明確化していくとみられる。』5月は『先行きについては、景気は当面緩やかな回復を続ける中で、前向きの循環が次第に強まっていくとみられる。』ですので現状認識の判断絶賛大前進と平仄があっております。
で、全体ではなく個別について例によって長々と書いている部分があるのですが、『企業の過剰債務など構造的な要因が企業活動に及ぼす影響も和らいできている。(6月)』が『企業の過剰債務など構造的な制約要因はなお根強いが、徐々に和らぎつつある。(5月)』から見て前進しており、構造要因が緩和されているという認識を示しているところが一番注目かと思うわけです。また、お得意のダム論的な発想で『生産活動や企業収益から雇用者所得への好影響の波及は次第に明確化していくと考えられる。(6月)』となっておりまして、『生産活動や企業収益からの好影響が、雇用・所得面へ徐々に及んでいくと考えられる。(5月)』の「徐々に及んでいく」から「次第に明確化」と企業収益の好影響が雇用者に回り、(ここではかいてませんが)個人消費に波及するって絵が明確に描けるようになったというお話なのでしょうか。その割にはあたくしの(以下自主規制^^)。
・物価の現状
国内企業物価については5月と同じなのですが、消費者物価に関してはとうとう「一時的要因」という言葉を外してしまいました。まぁ当然ですがね。
『物価の現状をみると、国内企業物価は、内外の商品市況高や需給環境の改善を反映して、上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、小幅のマイナスとなっている。』
先月まではこの消費者物価の中で必ず言い訳のように『一時的な要因も押し上げに働く中』という文言が入っておりました。
・物価の先行き
こちらも同様で、消費者物価で今まで色々(米価格だの診療報酬の自己負担増加だの)と一時的要因を入れていた部分を削って非常にあっさりとした見通しになっています。
『物価の先行きについて、国内企業物価は、原油高の影響もあって、当面、上昇を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、需給環境が改善方向にあるとは言え、当面なお緩和した状況が続くもとで、基調的には小幅のマイナスで推移すると予想される。』
と、さらっと流しそうなのですが、実を言いますと消費者物価に関る部分は、前月までは『需給バランスが徐々に改善しつつもなお緩和した状況』という表現をしておりまして、『徐々に改善しつつ』が明確な『改善方向』になっているのもちと注意しておく必要があるかと。
例によって金融面は割愛しますが、総じて見ると結構判断を前進させているという感じです。
さて、本当はここで注目材料の総裁記者会見もネタにするのですが、正式なテキストが出てくるのが本日の午後くらいになりそうですので、情報ベンダーから入手したテキスト(日経金融新聞にはあると思いますが)を参考に印象だけ。
印象としては「長期金利に関しては非常に気を使っていますな」という所。気を使ってはいるのですが、実を言うと金利上昇に関して無理矢理押さえ込もうというような意思は見られません。ただ、余計な事を言って金利上昇の火に油を注ぐことは避けたいという雰囲気が伝わってきますな。
で、量的緩和継続に関しては「そんなに早期利上げの思惑が爆発するんじゃねぇ」というニュアンスは判るのですが、その割には『量的緩和政策は景気が上向き過程に入り、上向きの動きを続ければ続けるほど、量的緩和の景気刺激効果は強まっていく。(日本語版ロイター記事より)』などと気になる発言もありますな。やはり量的緩和の景気刺激効果が強くなってきているという認識があると言うことは、裏返せば緩和政策の行き過ぎた長期化に関しても釘をさしているとも見える訳で、中々微妙な発言ではないかと思います。
結局「金利の急激な上昇はマズイけど、マイルドな形で自然にじりじりと上昇して行くのは別にお止め致しませんな〜♪」という感じに見えます。ただ、言葉を慎重に選んで、余計な相場のブレを起こさせないようにしようとしているのも良く判ります。これだけ気を使っているのはもしかして初めてではないかと思えるのですが、まぁ日銀Webへのアップを待ちたいと思います。
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2004/06/15
お題「金融政策決定会合」
いやはや、またもやってしまいましたロスカットのヒットパレード大会あるいは集団自殺相場。まぁ陰謀説を持ち出すのも何ですが、5年入札にあわせてでっち上げられた「武藤ショック」から始まった「早期金融引締めの幻影」がどんどん自己実現的に拡大するという、国内債券市場の特徴というか構造的欠陥がまた爆発したというものでしょう。
そ〜ゆ〜意味においては、「ここの所新発債の売れ行きが悪くてど〜も雰囲気がよろしくない」だとか「2年ゾーンが重いのはあまり気分がよくない」などと言うような事をあたくしですらブツブツとドラめもんで申し上げたように、でっち上げの「ショック」とは言え、爆弾をぶち込むタイミングとしては絶好だったのかも知れませんな。それにずっぽり嵌る日本の債券市場ってどうなのよっていう議論はありますが。
さて、昨日から金融政策決定会合が実施されております。
○財務省孤軍奮闘の巻
昨日も金利上昇に関して各所から発言が出ておりますが、物の見事に揃いも揃って楽観的な発言であります。村田経済産業次官というのも金利上昇の意味が判って話をしているのかと小一時間問い詰めたくなるお方だと思いますが、自分の所が資金絶賛大余剰のせいか全然金利上昇を意に介さない経団連会長という人も毎度お馴染みの自社の立場での視野狭窄的発想で大変に香しいものを感じる訳であります。税金散々突っ込んで道路網を整備し、為替市場まで散々介入して随分国から恩恵受けてる筈なんですがこの視野狭窄っぷりには豪快ですな。
という話は兎も角、昨日の債券市場では、引け後に先物が一気に買い戻しモードになり133円台まで売り込まれた債券先物が134円20銭近辺まで復活。この復活は昨今の金利上昇に対して懸念を深めるも孤軍奮闘モードとなっている財務省の林事務次官の発言がきっかけとなっているようです。情報ベンダーによりますと、「金利の上昇はいかがなものか」「金融政策決定会合で日銀に実質的な金融緩和になるような政策を財務省としてお願いしたい」というような趣旨の発言が出たことになっております。
財務省激怒激怒大激怒の巻といったところ。近日中にご紹介しようと思って読んでいる財務省発の資料なんかを見ますと、財務省は金利上昇による本質的な問題点、すなわち「この時点での金利上昇が起きると財政が持たない」という点に関してかなり深刻に受け止めているようですな。で、困った事に他の皆さまはこの問題点に関しては何故かスルー状態。
量的緩和政策の長期化と財政による各種セーフティーネットの拡充によって、金融政策と財政政策が既に一体不可分状態になっており、不用意に金融引締めを行うと財政危機が表面化するというのは正に笑えないけどお笑い状態としか申し上げようがありませんな。
○財務省の要望は通るのかという愚考
さて、そんな訳で財務省のお怒りが伝わって「こりゃまた実質的な金融緩和になるような施策でもでるのか」という思惑(というよりはショート筋の買い戻しの言い訳だと思いますが)なのか上昇した債券市場なのですが、昨日の今日で何か役に立つ施策が出てくれるのかと言えばそれは期待薄な訳であります。
先日ご紹介した須田審議委員の講演録で、金融政策決定会合がどんな感じで会合やっているのかという話がありましたように、『金融政策決定会合の資料は、会合の2営業日前に手元に届きます』なんて感じですので、今回は皆さま『月報や展望レポートの基本的見解の文章表現についても、自分の見方と違うところはないかチェック』するのに中々お忙しいのではないかと思います(^^)。で、いみじくも同じ講演録にありますように、『準備なしに特定の問題について突然議論を始めても、全ての話題について質の高い議論をする自信はありません。また、他の委員の意見を聞いてその場で判断を大幅に変えるということもまずあり得ません。』何てところですので、まぁ本日いきなりちゃんとした政策として何かが出てくると期待するのは期待薄かと。『他の委員の発言に対してその場で意見を述べることはあるものの、本格的にその意見に対応したい場合には、次回の金融政策決定会合で対応しよう、ということを考えます。』という事ですからね〜。
で、そういう意味では前回議論に出てきた(と思われる)インフレ参照値云々というお話が出てくるのかも知れませんが、まぁ時期尚早もいいところのお話(時間軸強化に使うという話では無い筈)でしょうな。
ちなみにドラめもんでご紹介しなかったのですが、春審議委員は6月3日の記者会見で『インフレ参照値という形で中央銀行が望ましいインフレ率を示すということは、確かに金融政策の透明性を増すという意味では効果があると思うが、米国や英国における例などを考えると、本当に市場の安定性を増す効果が同時に期待できるのか疑問もある。』と発言しております。まぁ岩田副総裁と精々中原審議委員あたりだけしか今のところインフレ参照値に対して積極的な向きはないと見られますので、時期尚早も時期尚早ってところではないかと存じます。念のため。
○ここで突然告解のコーナー
最近過去の駄文を絶賛整理中(これがまた七面倒くさいので遅々として進まん。自分の駄文を読み返していたら、あたくしもまた「CPIの呪縛」にずっぽりと嵌っていたことに気がつき激しく赤面する訳であります。
自らの不明をさらけ出す引用を赤恥大爆裂ですが引用して反省しましょう。あたくしはこのドラめもん本職な訳ではない(だいたい1銭にもならない)のですが、一応本人としては(文体は不真面目ですが)大真面目にやっている積り。で、どこぞの債券ストラテジストあるいはアナリストみたいに前と全然違うことを強弁するのも如何な物かと思いますので。
ちなみに、1月30日の衆議院財務金融委員会質疑における民主党津田委員に対する福井総裁の答弁をネタに3月10日に書いた駄文です。最初の部分は「出口政策」に関する福井総裁の答弁です。
(ここから)
『CPI、消費者物価指数の前年比変化率が安定的にゼロ%以上になるまでというものは、私ども、当面の非常に重要なゴール、目標といたしておりますけれども、消費者物価指数の前年比上昇率がゼロ%以上になれば、すぐ、均衡ある、将来望ましい日本経済の姿になるかどうかということとはまた別問題。その先、本当に均衡ある日本経済の姿、いわゆる最終的なゴールに行くまでさらに距離があるかもしれないというふうに思っていかなきゃいけないと思います。したがいまして、そういう意味では、消費者物価指数の前年比上昇率が安定的にゼロ%以上に達するというのは、一つの通過点であるかもしれないということでございます。』
この発言が「あらら?」と思わせる内容でした、この部分を読みますと「CPIがゼロ以上になっても量的緩和を続けるのか?」というお話になります。まぁ量的緩和のコミットメントが出た頃から「CPIゼロ以上は必要条件であって、CPIだけで量的緩和を自動的に終了させる訳では有りません」という事は言われていましたが・・・・・
またお得意の「サービス発言」が出てしまったという所なんでしょうが(以前も同じ事を言いましたが)自分たちで「CPI時間軸」を改めて明文化したのに、せっかく明文化した時間軸の条件に余計な「均衡ある日本経済の姿」という具体的に何を意味するのか判断に苦しむような条件を加えてしまってどうするんでしょうか。
(終了)
ああ自分で読み直して実に恥ずかしい文章。こういうのを「穴があったら入りたい」と申す訳でして(超大汗)、あたくしもまた「CPIの呪縛」に嵌っていた事が良く判ろうかと思います。
しかし良く良く見るとこの総裁答弁にも問題がある訳でして、『消費者物価指数の前年比上昇率が安定的にゼロ%以上に達するというのは、一つの通過点であるかもしれないということでございます。』などと言ってますが、実は「かもしれない」ではなくて「一つの条件に過ぎない」のでありまして、『将来望ましい日本経済の姿』とかいう抽象的な表現ではなく「最終的な判断は必要な条件が満たされた後に総合的に判断する」とコミットメントにも書いてある通りの事を繰り返していれば良かったのではないかと今更ながらに思う訳であります。
ラストワンマイルがどうのこうのとか格好良いフレーズで耳障りの良い話をするのがお好きなようですが、市場の不安定化を抑える為には「ぶれない」「愚直」な姿勢を見せるのも必要ではないかと、もはや事ここに至ってはどうしようもないですが思う訳であります。
しかもこの「将来望ましい日本経済の姿」発言がでたのが1月30日というまさに債券市場の金利低下祭り華やかなりし頃だったというのが、タイミングの悪さを彷彿させていただきまして大変に血圧の上がる思いであります。言うなら金利がじりじり上昇している5月の終わりごろでしょうに・・・・・
と、告解しつつも結局総裁に矛先を向けるというせこい事をしているあたくしでありました。
○何だかな〜
もしかしたらもう議事要旨が出ているのかも知れませんが、昨日実施された国債市場懇談会では「最近の金利上昇は景気回復期待を背景にしたものという意見が大勢」だとか「物価連動債の年限多様化や変動利付国債の年限多様化の意見が出た」というお話になっているようですな。情報ベンダーで吉野座長のコメントとして出たものを見ますと。
あたしゃ国債市場懇談会に出席できるような身分ではないので、なんとかの遠吠えもいいところですが、過度の金融引締めを織り込みに行っている債券市場という現状認識だとか、じゃあ何故このような過度の引締め織り込み相場になるのかというような意見開陳っつーのは無いんでしょうか?
それとも市場懇談会参加の有力業者様は皆さまこの金利上昇(長期ではなく中短期)は全然オーバーシュートでも何でもなくあるべき姿だと思っているのでしょうか????ど〜も訳がわからんところであります。つ〜か何の為にやっているんだこの懇談会??と思ってしまう所です。
まぁ遅くとも本日中には議事要旨が出ると思いますんで、そっちを読んでみる事にしますが、なんとも釈然としないところでありました。そういえば「国債購入者層の多様化」という話はどうなったのでしょうか。こちらも楽しみ。
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2004/06/11
「本当に金融引締めが出来るのか、といったお話というか頭の整理」
ここへ来て一気に「金利上昇は当然の帰結」という論調が増えてきた感のする債券市場。「世界的金融引締め」と言ったお話やら「景気回復での当然の金利上昇」という話なんかが出てきました。
将来の期待インフレ率とリスクプレミアムを織り込む形で長期金利が何となく上昇するのはある程度自然な流れなのですが、またまた長期金利の上昇を見た短期金融市場が「金融引締め織り込み相場」を演じてしまうというのは昨年やった相場とまるで同じパターン。
で、CPIターゲット達成でいきなり金融引締めになるのでしょうか?
量的緩和政策の実施にあたって「期待に働きかける政策」ってことで「量的緩和政策は消費者物価指数が前年同月比ゼロ以上になるまで継続」というのと「緩和政策の終了にあたっては総合判断」というのは量的緩和政策実施時に当時の速水総裁が記者会見の質疑でこのように言っている訳ですな。
CPIがゼロ以上になるまで緩和政策を続けるという「時間軸の定量的目標(あたくしが今勝手に作った造語)」はこちらの質疑がそのものズバリです。
『(問)仮に何年か後にインフレが生じた場合に、インフレの局面でも同じように金利よりも量的なコントロールで金融政策を動かしていくのか。』
『(答)それは今申し上げたように、インフレ率、CPIが前年比ゼロを上回って、安定的になっていった場合にはこの政策は止める。アメリカの場合も確か3年ぐらい続いたと思う。逆の政策であるが。』
で、その判断は最終的に総合判断ですよっていう「時間軸の定性的目標(これも造語)はこちらですな。
『(問)つまり、どのくらいの期間で判断するのか。(この前の質問で「消費者物価指数の前年比上昇率が安定的にゼロ%以上となるまで」というが、そうなるにはどれくらいの期間を要するのか、というのがありまして、その繰り返しの質問です)
』
『(答)それはわからない。これからどのようになって行くか。「安定的に」という判断は、機械的にどういうもので決めるという基準を設けているわけではない。総合的な判断で、「これなら大丈夫だ」となった時には、このデフレ対策はやめることになると思う。』
これは速水総裁(当時)の質疑応答ですが、政策の枠組みに関しての変更はこの時から変更があった訳ではないので、時間軸の定量的目標にも定性的目標にも変化無く、この双方の目標が達成(というか、定量的な目標が達成されてから定性的な目標が達成されているかどうかを総合判断するのですが)されないと量的緩和政策は終了しないって話は変化がないはずなのですな。
然るに、昨年の株価底打ち反転で政策委員会大はしゃぎ(かど〜かは知らんですが、部外者から見るとねぇ)の巻で、時間軸の定量的目標の達成まで遠い状態なのに「将来の金融政策はどうのこうの」という出口論が飛び出してきて「CPIが安定的にゼロ以上になるまで量的緩和する」という肝心の部分の信頼をなくさせる話で債券市場大炎上。早期利上げを何故か思いっきり織り込みに行って相場大崩壊となりました。
で、その大崩壊への反省ってことで「コミットメントの明文化」という屋上屋を架すようなことをしたのですが、この時には行きがかり上「総合判断」の話よりも「CPIがゼロ以上にならないと量的緩和を解除しないんだからまぁお前ら落ち着け」という話を前面に打ち出さざるを得なくなって仕舞った訳ですな。
その後、株価は上昇して景気判断も前進させているのに何故か当座預金ターゲットを拡大するという論理的整合性が無い政策を打っているうちに、やっとCPIがゼロ近傍にやって参りました。すると今度は以前に「CPIゼロ以上になるまで量的緩和継続」というのを悪魔払いの呪文のようにやたらと強調して市場参加者の皆様を呪縛にかけた効果が逆に作用して「すわ緩和解除で引締めじゃ」という話になるというのは、まぁ皮肉であります。
本来は時間軸効果には「総合判断」という定性的目標もある筈なのですが、過去にあたくしが散々悪態をついたように「論理的整合性の取れない当座預金残高引き上げ」を連発してくれた前科がここで絶大なる効果を発揮する訳でして、「日銀はああ言っても結局何をやるか判らない」というそこはかとない不安が市場参加者の間にある(と思いますがどうでしょうかね)ので、目先話題の「量的緩和後の政策の枠組みがどうのこうの」とか「インフレ参照値がどうのこうの」とか「CPIターゲットの引き上げ」だとかいうような議論に巻き込まれていく間に「ああ、量的緩和はそろそろ終わりですな〜」って雰囲気が日銀の意図しない所でどんどん一人歩きする訳ですな。
まさに日銀またまたマッチポンプの巻って所であります。
資金循環上では政府部門からの公共投資は減少していますが、まぁいろいろな形で財政のステルス出動やら見せ金形式でのステルス出動(=財政の張ったセーフティーネットですな)が行われて下支えしている経済状況。プライマリーバランスの達成どころか新規国債発行額の増加傾向も変わらずという中で本格的な金利上昇が起きれば、財政の発散を抑えるために増税をするか財政を超緊縮にするのかを選択する必要がある(しなけりゃ財政インフレで破綻)わけで、その状況に耐えられる状況に日本経済があるのかという「総合判断」が求められるのではないかと思いますが、どうも「循環的回復」と「一次産品の価格上昇」のほうばかりに目が行っているのではないかと思ってしまう次第であります。
毎日同じような話で恐縮ですな。ちゃんとまとめないといけないんですが。
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2004/06/10
お題「またやってしまった叩き売り相場」
昨日の債券市場、普通のリズムで言えば反発する筈なのですが、朝からユーロ円金利先物市場がアフォのように下落、どっちが先なのか良く判りませんがスワップ市場で2年〜4年ゾーンが崩壊して、そのあたりの現物国債も叩き売りモードとなりました。まさか5年よりも3〜4年の方が利回り上昇幅がでかい状態になるとは思いませんでした。まさに利上げモードというもうアホかと馬鹿かという動き。
まぁ色々なことがあった昨日の市場。順不同で色々な感想ならびに見解をつらつらと。多分一本一本の内容を極めて良心的かつ真面目に書き出すとそれだけでまともなレポートになりそうなのですが、とりあえず本日は言いたい放題モードで参ります。
○また銀行か!
昨年の絶賛大暴落相場で、2年債の0.15%あたりから「量的緩和政策が早期に終わる訳ねーだろ」と後から考えればどう見ても正解な発想で証券会社のディーラーはこのあたりのゾーンを買い向ったものですが、信じがたい事に瞬間0.27%まで下落するという相場で皆「何じゃこりゃ」と投げされられて驚くべきやられになってしまったという経験があります。そのせいか、証券会社のディーラー、要するに店頭でまともにマーケットメークをしている業者は昨日の相場大下落で買い向っている雰囲気は見られず、ま〜冷笑しながらポジションのリスクを確認していた(ここ数日の動きから言って、5年新発債で無駄な落札をしていない限り中期債でパンパンのロングになっている業者はいないと思われます。つーか5年落としすぎていてもヘッジかかって入ると思われます)って感じなのでしょう。
どうもこの年限を派手に売るとなると、自己資金豊富かつスワップ市場などでのヘッジが円滑にやりやすい銀行さまの姿が浮かんでくる訳ですな。証券会社ってのは何だかんだといっても手元流動性の問題がありますので、あまり「自己資金運用で中期国債を買う」という発想にはならないのですが、銀行業態ですとディーリング勘定であってもそういう発想が出やすいので、中期債の持ちがそこそこあったのではないかと思います。で、また大遠投合戦で見事に炎上されたのではないかと思い、痛惜の念を禁じえないものでございます。
で、昨日朝っぱらから絶賛大暴落祭りで炎上合戦を演じていたユーロ円金利先物市場ってのは物の見事にスペキュレーターしかいないというまるでどこぞの国の商品先物市場のような市場であります。で、本来「将来のTIBOR3ヶ月物」を取引している筈なんですが、昨日の中心限月の終値(だと思いますが久々に見たのでもしかしたら単に夜7時の価格かもしれませんが)が99.80でございますが、この意味する所は「来年3月中旬(最終清算日いつだかわすれました)のTIBOR3ヶ月もの(国内円だかユーロ円だかも忘却していますが、この議論では大きな問題ではない)金利が0.20%」という事であります。
ということは、この値段を真面目に売買しているスペキュレーター、ちなみに殆どバンクディーラーの皆さんですが、この方々は「来年春には量的緩和解除、しかも解除後の足許金利は0.25%」というまぁ激しく想像を絶する水準を真面目に売買しているという事になるわけであります。昨日馬鹿馬鹿しく叩き売られた債券市場で2年国債が0.20%をマークして市場参加者が全員あぜんとしていたのですが、それですら0.20%な訳ですから、もはやこの「来年3月の3ヶ月もの金利0.2%」というのは何と言うかもうアホかと馬鹿かと。
実需筋の入らないマーケットというのは斯くの如しという事かもしれませんが、短期金融市場は銀行の市場業務の根幹なんですからもうちょっと物を考えて売買して欲しいものです。他の限月なんてもっと滅茶苦茶な値段で売買されていますが最早論評する気も起きませんな。
で、一番困るのは、こういうユーロ円金利先物市場の価格を捕まえてどこぞの経済新聞社あたりが「金融市場、来年の量的緩和解除を織り込む」などとアフォな見出しを出す事でしょう(ちなみにあたくしは全然読んでませんので、本当に今日の見出しがそうなっているかは存じません)な。で、その新聞記事を見た「偉い人」が現場に向って「量的緩和の解除が近いようだがちゃんとヘッジはしているのか」とか言いだして東京大空襲状態になる事ですな。
それだけは勘弁いただきたいものです。
○いかがな物かと思うレポート
最近出来た豪華ビル(事故で有名ではないほう)にご入居のどこぞの外資系証券会社様の有名なお方が、6月7日に武藤副総裁がロンドンで行った講演の内容を見事に換骨奪胎した素晴らしいレポートをお出しになられたそうで、昨日はそれもまた市場の話題になっておりました。そのお方によれば、一昨日の相場下落(5年国債入札の日)も武藤副総裁のスピーチのせいだという事になっているという大変な作品。
何でも、そのレポートによれば、武藤副総裁は「コアCPIが数ヶ月続けてプラスとなれば、我々の金融政策スタンスは変わるだろう」と述べて金融市場に「武藤ショック」を与えたという事になっております。
で、その講演ってのは英語で行われていまして、内容も別に特筆すべき事ではなかったので、日銀も訳文をWebに上げていなかったのは不覚といえば不覚だったのかもしれません。何せ日本語ページからでは判らない所にこの英文原稿がありましたので、あたくしも人から教わるまでこの講演の原稿の居場所がわかりませんでした。
http://www.boj.or.jp/en/press/04/ko0406a.htm
問題の部分はこうです。インチキ和訳の文責はあたくし。
Of the three features of the current monetary policy, let me elaborate
on the second one: the Bank's policy commitment.
この前の部分で、現在の日銀がやっている金融政策を3本柱で説明しています。量的緩和政策、緩和のコミットメントによる時間軸効果、緩和政策の波及効果を確実にするために行っている証券化市場の育成、の3本でして、ここではそのコミットメントに関しての説明をすると言っているようですな。
In this commitment, the Bank will maintain quantitative easing until the
core CPI registers stably zero percent or an increase year-on-year.
このコミットメントではCPIが安定的に前年比ゼロ以上になるまで日銀は量的緩和を続ける、と言っているようです。
More specifically, before the Bank considers terminating quantitative
easing, certain conditions must be met: the core CPI inflation has been
positive over a few months and it is forecast to remain positive in the
future.
で、ここが問題の部分なのですが、あたくしの英語力によりますと、『日本銀行が量的緩和政策の終了について検討をするためには、「数ヶ月間に渡ってCPIのプラス基調が続き、将来に渡ってプラスであるという見通しが立つ」ことが必要である』としか読めないのですがどうでしょうか。
だいたい量的緩和のコミットメントには「量的緩和はCPIにペッグする」とは一言も書いてないのでありますし、今まで毒にも薬にもならないというか自分の個性を全然打ち出さない発言や講演しかしていない武藤副総裁が、わざわざ海外で金利が急上昇するような爆弾発言をする訳は無いというのは、ある程度真面目かつ不真面目に日銀ウォッチをしているあたくしであっても理解できる訳でして、「武藤ショック」などと書いた著名外国人ストラテジスト(なのか?)様はなに考えてこんなレポートを出したんでしょう。
無知で書いたとすれば只の馬鹿ですし、知っていて書いたなら為にする悪意のレポートと言われても仕方が無いかと思われます。だいたい上記の英文をみると「武藤ショック」と言われるようなお話はありませんし、全文読んでいるわけではないですが、とりあえずその手の爆弾発言は特にない講演原稿でありました。まぁ英文なのですぐに気が付かれないのを良い事に換骨奪胎したという解釈なんですがね。
と、散々書きましたが、実はあたくしはレポートのダイジェスト見たいな部分しか見ていませんので、もしかして「レポートなるもの」が勝手に一人歩きしているのかもしれません。もしそうなら(とは思っていないが)上記の罵倒部分は慎んで撤回し陳謝する積りです。
○そもそもCPIを強調しすぎ
時間と分量の都合かつ考えがまだ発散中なので続きは明日、なのですが、とりあえずこの騒動で言えることは、
「みんなCPIの数字ばかりを意識しすぎ」
ということでしょう。本来金融政策は単一の経済指標にペッグして運営するようなものではなく、物価や雇用、日本の場合は資産の中で大きなウェイトをしめている不動産の動向やら貿易収支など、まぁ兎に角いろいろな経済情勢を総合的に判断して運営されるべきものであります。
それを昨年10月に追い込まれるようにして「量的緩和のコミットメントの明文化」をした際に「CPIターゲット」を悪魔払いの呪文のように強調してしまったのがまた問題。CPIがマイナス基調絶賛継続中のときは問題なかったのですが、ターゲットが近づいてきたら「コミットメントのゼロを変更するのも手段」だとか「インフレ参照値(と称する物)の導入」だとかもうCPIゼロに対する恐怖感に立脚するアフォな議論が横行する破目になってしまいました。
本来政策は総合判断。「わかりやすい政策プロセス」が不要とは言いませんが、「わかりやすい」=「単純化」ではないでしょう。その辺の迷走が現在の金融市場の大疑心暗鬼状態の一因を担っている訳でして、まぁ日銀(というか政策委員会)の自業自得でもあるのですが、自業自得を笑ってはいられませんな。
この調子で、また変なことをやりだすのが一番のリスクですな。全くもう。
(この項はもう少し考えと論点の整理をしたいと思います。相場が暇なら^^)
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「須田委員の講演」(2004/05/28)
去る5月15日に須田審議委員が日本金融学会春季大会で講演を行いまして、その内容を加筆修正した講演記録「中央銀行の情報発信と金融政策」というのが日銀のWebにアップされました。紙に打ち出すと18ページ(実質16ページ)の大作となっておりまして、これからご紹介するように「須田委員の個人的な意見」として日銀の情報発信をどうしていくかと言ったお話をしております。中々興味深い内容でして、とりあえず本日はざっと目を通した段階でのご紹介で恐縮であります。
http://www.boj.or.jp/press/04/ko0405c.htm
○金融政策の透明性とは何ぞやという話
講演の最初の方はこの講演の根本であります「金融政策の透明性とは?」って事の説明です。
『中央銀行はオーバーナイト金利や準備預金(または当座預金)などを操作目標として、金融政策を運営していますが、操作目標の水準自体が実体経済に直接働きかけるというより、むしろ金融政策の見通し、例えば、オーバーナイト金利の先行き予想が、長めの金利や資産価格に影響を与え、それらを通じて実体経済に影響が及ぶということです。』
『すなわち、中央銀行がどのような政策目的をもち、足許や先行きの経済をどのようにみていて、かつ政策目的と経済情勢判断とを対応させて先行きどのような金融政策を採ると思われるか(政策運営方法)、についての市場の予想が、政策の波及効果にとって非常に重要となります。』
ということで、「金融政策の透明性」とは何ぞやと言いますと、
『金融政策の透明性は(略)(1)政策目的、(2)経済情勢判断、(3)政策運営方法、という三つの視点から議論されています。』
となるわけですが、なぜ透明性を強調するかと言いますと、
『これらにかかわる情報についての透明性が全体的に高まれば、市場参加者は経済情勢に応じて中央銀行がどのような政策を採るのかをより的確に予想できますので、中央銀行の政策運営に関する不確実性が小さくなります。この結果、長めの金利形成についても、中央銀行の政策意図がより正確に反映されることになります。延いては、期待が安定化し、リスクプレミアムも縮小し、経済主体も中央銀行が望んだ方向に反応すると想定できます。』
と言う事なわけです。
○情報発信は高品質でいきましょう
『透明性を向上させるべく情報発信を行うためには、どのような情報を出すかということに加えて、情報発信のフレームワークの構築が重要です。これを構成するものとしては、日本銀行についていえば、金融経済月報、経済・物価情勢の展望(いわゆる「展望レポート」)、金融政策決定会合議事要旨、総裁の定例記者会見などがあげられます。』
これらの情報発信の枠組みにあるものは「定期的」に行われて、内容が「包括的」であって「事前のコミュニケーション」と言われてるそうです。で、この枠組みで出てくる情報発信の意義はと言いますと、
『このような情報発信は、市場にとって金融政策決定会合での対外公表文に含まれる中央銀行の意図や目的を理解し易くします。政策の意図や目的を明示すれば、中央銀行としては、自らのレピュテーションを守るために明示した意図や目的に沿った行動を採る必要があり、それは結果的に中央銀行への信認を高めることにつながります。また、情報を手にした人が、自分だけでなく、他の全ての人もそれと同じ情報を手にしていると確信できる、つまり「共有知識」につながることが意味を持ちます。』
と言う事になるのですが、当然ここに落とし穴がある事を須田委員は指摘している訳で、何気に現状批判になっているのではないかとも。
『また、有効な情報発信を行うためには、情報発信のフレームワークの構築とともに、そこで発信される情報の質を高める必要があります。裏返せば情報発信のメリットは、質の高い情報、つまりノイズのない情報の存在が前提であって、情報の質が悪ければ情報発信は益よりも害をもたらす可能性が高いといえます。例えば、景気や物価についての判断にかかる情報発信を行ったとしても、その内容が正確でなければ、かえって市場の混乱を招いてしまうといったことです。』
中央銀行といえども無謬ではありえないので「ノイズの無い情報」ってのはちょっと逆の意味で問題ではないかとおもうのですが、まぁそれは兎も角として、「情報の質が悪ければ情報発信は益よりも害をもたらす可能性が高い」ってもしかして他の審議委員を暗に批判してません??
○金融政策決定会合の運営話
金融政策決定会合の議事録は10年後に公表され、そのときには誰が何を言ったかというところまで公開される訳でして、その辺も意識しながら須田委員はこんな感じで決定会合に出席するそうです。
『議事録がいつかは公開されると思うと、自分の発言に責任を持つという意識がより強まります。例えば、過去の発言との整合性もなければならないと考えますので、過去の発言などもチェックしながら、時間をかけて発言原稿をしっかりと準備します。』
FOMCでも発言原稿を準備しているそうですね。
『金融政策決定会合のディスカッションは、まず各委員が順番に金融経済情勢と金融政策について、意見を開陳しますが、この意見開陳については時間制限(各々5分程度)があるため、いかにポイントを絞って意見を述べるか、いつも苦労しています。また、各ラウンドの後に自由討議の時間があります。自由討議は、各委員の発言内容に沿った部分で盛り上がることはありますが、発言を超えて自由闊達にドンドン議論を広げていくことには難しさがあります。』
中々興味深いご指摘でありますな。
『言いたいことを前もって準備しておくこのような意見開陳の仕方は、少なくとも私にとって、その場の判断でアドリブで話すよりもわかりやすくかつ内容は濃いものになりますし、時間の節約にもなります。他方、準備なしに特定の問題について突然議論を始めても、全ての話題について質の高い議論をする自信はありません。また、他の委員の意見を聞いてその場で判断を大幅に変えるということもまずあり得ません。他の委員の発言に対してその場で意見を述べることはあるものの、本格的にその意見に対応したい場合には、次回の金融政策決定会合で対応しよう、ということを考えます。』
と言う事は、次回の会合ではインフレ参照値の話題が俎上にのってくるのかもしれませんね。そう言われて議事要旨を見ると尚面白いかな。
『このように情報公開を前提にすると、その場の突然の議論には慎重になりますが、今の方法でもよく考えて意見を述べることができるうえ、時間の経過とともに議論が蓄積されることになります。したがって、時間の経過も加味して、行われた議論を全体で捉えると、私自身は自分の意見を十分に言っているといえます。』
ドラめもんも審議委員の発言等について鋭意アーカイブ整理中です(^^)。
『一方、限られた時間のなかで結論を導かなければならないとき、情報公開が前提の会合の問題点は、会合の前に委員会のメンバーが集まって非公式に議論することができないことにあります。委員会には様々な考え方のメンバーがいますので、他のメンバーの考え方を事前に聞いて、自分の考えをまとめていくという作業ができれば、自分の考えもまとまりやすく、また自分の意見がどのような位置付けにあるのかもわかります。ただ、情報公開が前提の会合において、取り扱うテーマによってはこのようなことができませんので、各メンバーは、別々に勉強・検討してから会議に臨むしかありません。』
『重要事項を1回の会合ですぐに決定するのではなく、何回かの会合に分けて議論を行うことができればよいのですが、次の会合までの間に情報が漏れてしまうリスクやその間に公表される議事要旨に議論途上の話題を掲載するのかしないのかといった問題もあります。このことは、取り扱う議題によっては議論を複数回の会合に分けて行うことを難しくしている面があります。』
なるほどなるほど。ところで、別の所ではこんな話もしております。ほうほう。
『金融政策決定会合の資料は、会合の2営業日前に手元に届きますので、会合までの2日間に、月報や展望レポートの基本的見解の文章表現についても、自分の見方と違うところはないかチェックしています。』
○議事要旨形式で発表する場合の問題点
須田委員はこのように指摘しております。あたくしも同感。
『情報発信のツールとしては、議事録よりも議事要旨の方が、その要約の仕方やそれが公表されるタイミング等の面で難しい問題があると思っています。』
『一つは会合ごとに、先に述べた事情から、議論が各回で完結しない場合がありますので、ある意見について他のメンバーから反応がなかった場合について、それが必ずしも「同意」を意味するわけではないため、誤解を呼ぶ惧れがあることです。もう一つの問題は、日本銀行では金融政策決定会合の議事要旨において、少数意見も含めて記述していることです。』
というのが、どういうことかと言いますと、
『私が日本銀行の審議委員に就任する前に議事要旨を読んだときの感想は、様々な意見が並列して記載されている結果、大勢意見や議論の大きな流れがわかりにくいということでした。議事要旨は、「一人の委員は」とか「複数の委員は」というような形で書かれていますが、メンバー全員が発言時にそれを意識し、例えば、他のメンバーと同じ意見であっても敢えて繰り返したりすれば、そうした表現は意味を持つことになります。もっとも、現実的には発言には時間的な制約もあるため、執行部の説明や他のメンバーの意見が自らと同じであれば、自分はそれに言及しないということもあります。』
なるほどなるほど。この次がまた奥の深いお話で。
『つまり、その話題に言及した人数の多少が必ずしもメンバーの関心の強さに比例しているわけではありませんので、その数に敏感に反応されてしまうと、議論の内容や方向が誤って伝わる可能性があります。議事要旨が薄いからとか、行数が少ないから議論がなかったということでもありません。』
『そういう意味でも、議事要旨で各委員の持つ意見の全体像を示すのはなかなか難しい作業です。今後も改善の努力は必要でしょうが、これについてもメンバーそれぞれの考え方がありますので、いまのところ妙案は見出せていません。』
昨日のドラめもんでも議事要旨の分量の話をちょっとしましたが、時々議事要旨の分量が妙に少ない気がするのは「議論持ち越しで結論が出ていない」というような場合もあるのでしょうなと思えば、後から考えると「なるほど」と思える節もありそうですね。
で、この議事要旨の発表タイミングに関しては須田委員の割と的確な指摘かつ反省が述べられています。
『議事要旨がいつ公表されるかということも重要です。昨年の夏、金利の上昇が納まったときに開かれた7月の金融政策決定会合の議事要旨が、債券市場が再び荒れ始めた8月に公表されたため、非常に反感を買うことになりました。「日本銀行は量的緩和政策を解除するのではないか」という意見まで出ました。仮に会合時点に時間的に近い市場環境で公表されていたなら、議事要旨が市場の材料になることもなく、このような混乱が起きなかったかもしれません。』
全くご指摘の通りであります。しかしこの「非常に反感を買う」って表現は笑っちゃいけないんですけど思わず笑ってしまいますね〜(^^)。
どのタイミングで発表するかと言う点については、やはり一長一短があるわけで、FRBでも色々なメリットデメリットを考えながら慎重に継続検討中という状況になっているそうです。
で、この講演はまだまだ続くのであります。昨年の秋口からつい先日に至るまでFRBがFOMCの声明文やグリーンスパン議長の議会証言を活用して行った「市場との対話」の経緯を実例にあげて検証したあとに、講演のまとめになっていくのですが、これまた内容充実かつ量が多いので、後半は後日ということでよろしくお願い致します。
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「金融経済月報その他」(2004/05/21)
昨日の金融政策決定会合はさすがに何もなしという事で、いい加減動いてばかり(つーか1つのネタで2回動くような振りをして「機動的な日銀」の演出に余念がなかったのですが)の日銀もややおとなしくなっているようですな。
○金融経済月報
先月は判断を大幅前進させた金融経済月報。今回はGDPを受けてどうするのかと思いましたが、あまり目立った変化はありませんでした。とはいえ、また一言重要かもしれないフレーズを入れているのですが。
http://www.boj.or.jp/seisaku/04/pb/gp0405.htm
景気判断や物価の判断に関しての主要な変更点は2箇所。
冒頭の景気基調判断部分で、住宅投資につきまして今回は『住宅投資は横ばい圏内で推移しており』と今までの「低調に推移」から変更。住宅投資の低調状況が底打ちしたということらしいです。何か個人的実感と違うんですがまぁいっか。
国内企業物価の現状について「需給の改善」という文言が入っているのはちょっと注目すべきことかな〜と思います。今回は『物価の現状をみると、国内企業物価は、内外の商品市況高や需給の改善を反映して、上昇している。』となっているのですが、この「需給の改善」というのは、まぁ需給ギャップの改善というお話にも繋がるところですんで、何気に重要ではないかと思う次第。
金融面について、直接金融による借り入れに関してちょっとだけ状況が改善したと言ってます。今回『CP・社債の発行環境は総じて良好な状況にある』という事なのですが、前回まで入っていた「高格付け企業を中心に」という文言が外れております。
その他物価判断に関する部分については、『原油高の影響』という文言が入ってきて、『米価格の上昇』という文言が抜けたくらいでしょうか。総裁の記者会見でも原油高問題の影響についてコメントがあったようですが。
まぁ割と良い数字だったGDPが新たに出てきた割には判断をまるっきり変わらないってのも何か微笑ましいものを感じてしまうのであります。最近の「出口政策がどうのこうの」というお話なんぞを気にして判断に手心を加えたとか、GDPは内閣府の出した統計であるから自分たちで発表する短観や物価指数を重要視しているなどといった不謹慎な想像は全く致しませんが(^^)。
とりあえず金融経済月報はそんな感じでさらりと流せる内容でした。
○情報発信蟻地獄状態の日銀総裁
昨日の日銀総裁記者会見の要旨は本日日銀Webにアップされると思いますが、本日はロイター日本語版ニュースで報道された「福井日銀総裁記者会見の一問一答」という記事を参考にちょっと見ておきたいかと思います。
昨日の会見で質問が集中した(ように見える)のはやはり「時間軸強化、インフレ参照値問題」でありまして、手を変え品を変え質問がされておりました。そしてその質問に対して日銀総裁は「まだ時期尚早です」というのに大童な状態であったように見えるわけですな。
記事の中で最後にでてきた質疑応答がちょっと笑えたわけでして、
『問:インフレ参照値が議論になるということは、日銀が量的緩和のハードルの実質的な引き上げを模索しているのではないか、そういう議論を始めているとする市場参加者もいる。そう考える市場参加者は誤解しているのか。』
『答:今のところ、約束しているコミットメントを修正しようという意図は全くないし、そういう議論は一切していない。審議委員の発言がそう理解されると、発言した人の真意にも反するのではないかと推察する。』
大体「量的緩和のハードルの実質的な引き上げ」話を盛り上げているのはどこぞの超有力経済新聞および一部の有力かつ著名なエコノミストあるいは債券ストラテジストの方々なわけですが、これで質問者がそのどこぞの経済新聞だったりすると自爆質問というかかなり恥ずかしい質問のような気もしますな。他社の質問だとするとこれは痛烈な嫌味質問でそれはそれで笑えるのですが。
という話は兎も角(^^)、中原審議委員の講演に関してはあたくしも先週のドラめもんで連日ネタにした通りでまして、その後の記者会見で中原委員は「量的緩和政策を解除したあとに金利ターゲットにしてゼロ金利政策を実施。その際に望ましいCPIターゲットを明示してある種の時間軸効果をもたらす」という発言をしている訳で、これを量的緩和のハードルの実質的な引き上げと言わずして何というのでしょうと指摘致しましたな。
まぁ例によって例の如く、またまた余計な情報発信をして撤回をするという間の抜けた状態が続いているのですが、恐らくこうやって否定を一生懸命しだすと「出口論の封印」などと言われて、またまたそれを否定に回らないといけなくなるというまさに「情報発信蟻地獄」状態。結果として、本人の意図しないところで「究極のマッチポンプ」を演じる破目になってしまっている日銀総裁におかれましては、エエカッコシイでウケ狙いのリップサービスを行ってきたツケがどんどん回ってきたという事でありますので、まぁご本人の自業自得であって、ざまぁ見ろと心の底から申し奉りたい所でございます。
しかしですな、本来は景気(というか株価)回復の初動段階でまだまだ物価上昇の気配も見られず、需給ギャップもでかいという頃には「CPI時間軸が存在するのでご安心」と言って時間軸効果を強調すればよかったのに、景気回復ムードに浮かれて「景気回復に伴う金利上昇は自然なこと」みたいな話やら「出口論」を連想させるような話をしだして市場の不安を煽ってしまい債券暴落祭りの火にガソリンをぶち込み市場大爆発。で、今回はと言うと、時間軸が近い将来ヒットしそうな雰囲気を醸し出してきている最近こそ「量的緩和からの脱却は最終的には総合判断で行う」と強調すればいいのに、妙にCPIターゲットのヒットの方にに拘って「実質的な時間軸の延長をするのではないか」という「市場の期待形成の安定化工作」について語りだして(総裁が語ったのではないが)またも市場の心理を不安定化させる(まだ爆発していないから良いようなものの)情報発信をおっぱじめて慌てて否定ってあまりにもセンスが無さ過ぎであります。
まぁこれだから「通常の金融政策に戻る時に何をしでかすか判らない」というそこはかとない不安をもたれる訳でして、いい加減にしやがれって感じでありまする。困ったものです。
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「第2次変動利付国債バブルはリスク管理ブームから?」(2004/05/20)
本日は15年変動利付国債の入札が行われる訳ですが、昨日の日経クイックなんぞでは「第2次変動国債ブーム到来」などというお話になっており、何か盛り上がりそうな入札であります。
きちんとした理論的検討はあちこちの真面目なレポートが出ているのでそちらを読みながらお勉強すると致しまして、あたくしはあたくしらしく非理論的な愚考をば。
○長期金利上昇へのリスク管理体制監督というお話
そもそもこの変動利付国債と言うのは商品性としてイールドカーブのフラット化に弱いという性質がございます。で、短期調達の人にとっては短期金利上昇に伴うイールドカーブのフラット化、即ち「本格的な金融引締め局面」に弱いという性質があるわけです。全くの自己資金で運用するのなら短期運用と比較した機会損失にしかなりませんが、この人の場合は長期金利の低下に伴うイールドカーブのフラット化でいきなりクーポン減少って話になりますわな。
とまぁそんな商品ではあるのですが、だいぶ前(昨年12月5日)のドラめもんで「澎湃として湧き起こる変動利付国債のニーズ」などという偉そうなお題で変動国債のニーズが増えるらしいですな〜というお話をしております通りでして、どうも金融機関のリスク管理がどうのこうのと最近五月蝿くなってきているせいか、第2次BIS規制による「ならず者規制(アウトライヤー規制)」の導入を待たずして変動利付国債のニーズが高まるようです。
ちょっと記事を見ていないのでアレなのですが、「金融庁が長期金利上昇に対する銀行のリスク管理体制の検査を強化する」という記事がでてみたり(したらしいですな)、日銀からも「リスク管理体制の検査がどうのこうの」と言われておりますので、どうもまた例によって例の如く「思考停止の賜物としてのリスク管理ブーム」が発生して変動利付国債に余計なニーズの発生が起きてしまってしまうのではないかと危惧する次第であります。
○バーゼル委員会の示した「監督原則」再掲
念の為同じ話を致しますと、バーゼル関連ペーパーって事でこの辺→(http://www.boj.or.jp/intl/03/data/bis0309b.pdf)に「金利リスクの管理と監督のための諸原則」というお題の文書がございまして、その中でどういう管理手法でリスク管理をするのかって話が延々と書いてございます。
で、この辺を読めというお話なのですが、死にそうになるほど膨大な文章ですので、当該部分をご紹介した所を再掲致します。
(再掲スタート)
『7.当委員会は、金利リスクを特定の対象として自己資本の手当を義務付けることは現時点において提案していない。しかし、全ての銀行は、金利リスクを含め、引受けたリスクを支えるに十分な自己資本を保有しているべきである。監督当局は、銀行が自らの負っている金利リスクを支えるに足る資本を有していないと判断した場合、金利リスクの削減、同リスクを支える資本の増強、ないしその両者の組み合わせを要請しなければならない。』
要するに、過大な金利リスクを取っている銀行に関しては、追加的な自己資本の増強を求めるか、金利リスクの削減を強要するかということを行うというのがバーゼル委員会のお考えだと言うことです。で、過大な金利リスクとは何ぞやというお話がこの続きに出てまいります。
『監督当局は、“outlier”銀行の自己資本充実度に対して特に注意を払わなければならない。標準化された金利ショック(200ベーシス・ポイント)ないしこれと同等のショックに伴って発生する銀行勘定の金利リスクについて、Tier1とTier2の合計額に対して20%を超える経済価値の低下が生じる場合は、“outlier”銀行と定義する。また、個々の監督当局は、国内銀行システム全般に対して追加的な自己資本の賦課を決定することもできる。』
この“outlier”っつー言葉なのですが、手元にあるポケット版の辞書には載って無かったのですが、「アウトライヤー規制」というのは「ならず者規制」「突破者規制」などとも称されているそうです。まぁそんな感じですよね。
で、要するに(要するにも糞も無いが)過大な金利リスクとして上記のように「200ベーシス(要は2%)の金利変動というショックがおきた」場合に、「Tier1とTier2の合計額に対して20%超」のやられが発生するような状況が定義されているわけであります。
で、ペーパーの後ろの方に計算の方法について丁寧に書いてあるのですが、ざっと申し上げますと、要するに現在のイールドカーブがそのまま上方に2%平行移動した場合に金利ポジションでどれだけの損失が発生するかというお話になる訳でございます。この時のやられ額が「Tier1とTier2の合計額に対して20%超」となると、当該銀行は「ならず者」扱いとなり、より多くの資本を求められちゃったりすることになるというのが、所謂「アウトライヤー規制」という事になります。(以上です)
まぁどうせ監督官庁の行う検査っつーのは概ねBISの出しているこの手の文書に準拠する訳でして、長期金利上昇へのリスク管理がどうのこうのという動きにはこのあたりの指針が参考になるのでしょう。
ちなみに、これも再掲ですが、金利ショックに対するリスク量とやらの算定方法の一例として、このペーパーの最後の方にある「付属文書4」の「標準化された枠組みの一例」というところで、指摘しているのは『固定金利商品は満期までの残存期間により、変動金利商品は次回金利改定日までの残存期間により』銀行のバランスシート上の金利リスク測定のためのマチュリティーラダーに振り分けると記載されております。
とまぁこういう点を総括すると、どうも監督官庁の言っている「長期金利上昇へのリスク管理」というお話によりますと、6ヵ月ごとに金利改定が行われる変動利付国債は長期金利上昇へのリスク管理が出来ているというお話になる訳ですな。
本当にそれで良いのでしょうか?
○監督基準の落とし穴
最初に申し上げた通りですが、日本で発行されている変動利付国債は「短期金利フロート」なのではなく「長期金利フロート」でありまして、商品特性として「イールドカーブの形状変化によって損益が発生する」というものになっております。
しかし、再掲コピペで絶賛増量した上記の「監督原則」に基づきますと、「金利ショックへの対応」として具体的に述べられているのが「現在のイールドカーブがそのまま上方に2%平行移動した場合に金利ポジションでどれだけの損失が発生するかというお話」な訳でして、この「長期金利フロート商品」が対監督当局上ではノーリスク商品という扱いになってしまう訳ですな。おまけにポートフォリオ上のマチュリティーラダーでは「6ヶ月もの債券(半年毎に金利改定があるから)」として扱われるというとっても低リスク商品だという話になってしまう訳です。
で、昨年の「画一的なVAR管理で国債の連鎖的投げ売り相場」という実に馬鹿馬鹿しい相場があった訳ですが、この時も「量的緩和の時間軸が存在し」「景気回復が本格的であるという確信が持てるような状況とはとても言えない」タイミングで1年半後(つまり来年早々)に短期金利が0.5%位引上げになるところまで織り込む水準まで2年国債が売り込まれ、瞬間的には1年後(今年の夏)に同様の引上げがあることを織り込むような水準まで跳ね上がるという激しく間の抜けた相場が展開されておりました。
要するにVARの閾値をヒットしたから保有国債を売却するという「監督当局に対する言い訳を優先した行動」が先にありきで、本来おこなうべき「経済のファンダメンタルズを総合的に分析して将来の金利動向を判断する」という行動がどこかに逝ってしまっていたわけで、相場としてはダイナミックではありましたが、日本経済の将来展望を考えると誠に血圧の上昇するような日々であった事は記憶に新しいかと存じ
ます。
ということで話を戻すと、この「監督基準」をまともに適用してリスク管理をやるというお話になりますと、「想定する金利ショックはイールドカーブの平行移動」「ポートのマチュリティーラダー管理上は6ヶ月もの債券」ということになるので、対監督当局上の言い訳的にはこの商品の肝心のリスク特性が見事にスルーできるという素晴らしい結論になるという想像ができてしまう訳です。
何せ昨年の前科がありますので、「対監督当局への言い訳>>>>経済的合理的判断」という行動がまた発生しないとは言い切れないわけですし、最近の銀行VS金融庁のぶつかり合いをみていると、どうも銀行としても「監督当局への言い訳」を優先しておかないと首筋が寒いという雰囲気も漂ってくる訳でして、まぁそんなこんなを考えますと「長期金利上昇への備えをしていますよ」という言い訳の為に無駄なニーズが発生していくのでしょうな。この変動利付国債ってヤツは。
目先は「時間軸の長期化がどうのこうの」とかいうお話で足元金利が押えられるという観測が強いので、「買っても安心」感が強いですが、余計な金融緩和の長期化というのは将来の金融引締め局面で強烈な引締めを必要とするという結果を招く訳ですから、本当に問題となる金融引締め局面が近くなったという認識が強まった時の反動が激しく恐ろしいというか、恐らく「VARショック」のようなアフォな事がまた起きるんでしょうな。
ま、監督官庁がきちんとフローターの商品特性を把握して金利上昇への管理体制の検査とやらを実行していただければ何の問題もないのですけれどもね〜♪
本当は金融政策決定会合に絡んで別のお話もしようかと思ったのですが、例によって時間と分量の関係で以下省略。まぁここの所散々書いた事の延長というか結局同じことを書くだけの事になりそうですので、問題無しという事で一つよろしくです。
ちなみに、昨日の時事メインのコラム「金融観測」の「政策委とALM委の相似=時間軸の”VAR化”懸念」は絶品コラムでありますので、時事メインが入っているお方は是非ご一読をお勧めします。なお、あたくしは時事通信社の回し者ではありませんので念の為(^^)。
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「気が付けば出口政策議論」(2004/05/14)
中原審議委員の講演に引き続き、昨日は福井総裁の講演がありまして、中原さんと同様に金融政策運営に関する言及がされ、時間軸が延びるというか強化されるという思惑が台頭しているようでもあります。そんなあたりを中原さんの記者会見と福井総裁の講演要旨を見ながら検証してみましょう。って多分さらっと流すだけになりそうでして、詳細検討は宿題になりそうですけど。
総裁講演→http://www.boj.or.jp/press/04/ko0405b.htm
中原氏記者会見→http://www.boj.or.jp/press/04/ko0405a.htm
○量的緩和終了後の話がでてくるという重み
中原審議委員の講演に引き続き福井総裁も「量的緩和政策が終了した後にどういう金融政策の枠組みが構築されるのか」という点についてお話をしている訳ですが、さすがに福井総裁はその「新しいゲームのルール」についての具体的言及は避けております。
『確かに、CPIの前年比変化率0%は一つの通過点に過ぎず、日本銀行としては、その先の政策運営についても透明性の高い方式を模索して行きたいと考えています。ただ、現状において具体的な運営方式を示すことは時期尚早であり、当面は既に掲げた目標達成のため脇目も振らず全力を尽くしたいと考えています。』
まぁ新しい金融政策の枠組みに関して当然ながら検討はしているのでしょうが、その内容に関して具体的な話をする訳はなく、まぁその必要も無いということです。
『もっとも、将来どういう政策運営を行うにしても、現在のような異例な金融の姿から脱して行く過程においては、長期金利をはじめ市場の動向について人々の予想が不安定になるリスクがあることは十分念頭に置いておかなければなりません。日本銀行としては、通過点の前後で市場の状況が急屈折するとか、著しく不連続になることのないよう、細心の注意をもって臨む必要があると考えております。』
まぁこの辺の話も実は微妙なところでして、そもそも現在のCPIターゲットが「足元のCPIをターゲットにする」というものですから、結果として「ターゲットが近づいてくると足元の経済指標に反応しやすい」という特徴というか問題点がある訳です。ターゲットから遠い位置にいるときには期待の安定化に寄与したかもしれないのですが、いざ接近してくるとこれが逆に不安定化を懸念される悩みの種となるという諸刃の剣であることが見えてきたということでしょう。
金融政策のターゲットを単一の指標、しかも足元の数値を参照にするというのはあまり行われない手法でありまして、日本銀行は壮大な実験をしているとも言えたのですが、案の定「ターゲットが近づくと期待が不安定化するリスクが生じる(可能性が指摘される)」というお話になってきたということでしょう。
勿論、現在の量的緩和のコミットメントに関しては、上記の総裁講演にあるように「最終的には総合的な判断で量的緩和の解除を決定する」ということになっているのですが、最初に「コミットメントの明文化」を行った時に期待の安定化を急ぐためだったのか「CPIゼロ以上」の方をやたらと強調した為に「CPIの足元の数字」の方ばかりが意識される展開になりそうになっているのは皮肉なことなんでしょうな。
○よく考えてみると・・・・・・
さて、ここまで話をして良く良く考えてみますと、中原審議委員の講演と福井総裁の講演を経まして「さて、量的緩和終了後の政策枠組みはどうなるんでしょう」などという話を何の抵抗も無く行っていることに気が付く訳であります。
何て偉そうに言ってますが、実はあたくしも言われて初めて気がついているのでありまして、実は一昨日の中原審議委員の講演について、みずほ証券の落合氏がデイリーレポートで「出口政策が公然と語られたことは注目すべき」と指摘しておられてまして、「おお、目から鱗!」と思った次第でございます(^^)。
実は時間軸の延長がどうのこうのと言って喜ぶのは早計ではないかと思うのはこの辺りにあるわけでして、勝手読みなのかも知れませんが「量的緩和終了を展望した場合に早いうちから出口政策を意識させておかないと、本当にCPIがゼロになってから大騒ぎになる危険がある」という認識を日銀が持っているために、そろそろ地ならしの準備でも初めてみようかという動きに着手したということなのでは?とも思えるわけです。
で、もっと勝手に読みを続けますと、中原審議委員の一昨日の講演で「新しい時間軸の設定」というような「時間軸の延長」を意識させるような話をしているのは、実は原材料価格の上昇に起因する消費者物価上昇が想定よりも早くやってくる(先日発表されていた4月東京都区部コアCPIは▲0.1%でしたが、「特殊要因で持ち上げられていた分の剥落」が特に見られなかったというお話もあるわけですし)ことを懸念し、事前に「CPIゼロ」のショックを緩和するために行っているという見方もできるわけで(って結構勝手に深読みしているんですけどね^^)、まぁ慌てて債券(特に短期ゾーン)を売り叩く必要は無いでしょうが、そんなに喜び勇んで債券を買い上げるほどのお話ではないと思うんですけどどうでしょうかね〜。
○ペイオフの全面解禁の次に懸念される事は
わずか3行(日銀Web上)のコメントですが、重要なお話と思えるのがここ。
『なお、市場条件の中でも、とくに長期金利については、政府の財政規律が確固たるものであること、投資家のニーズにマッチして適切な国債発行が行われることが、何よりも重要であることは改めて申すまでもありません。』
国債大量発行のケツを全部日銀にもっていくんじゃねぇコノヤローという風に読解したのは例によって読みにあたくしの主観的判断が入りすぎではありますが(^^)、徐々に「財政規律」だとか「国債管理政策」などといった点について日銀から反転攻勢(笑)が行われてくる気配が見られるのは誠に結構なことであります。散々「政治ウケばかり気にしているのではないか」と辛口批評(あるいは悪口雑言)をしていたあたくしも今回のこのコメントには瞠目。
デフレ脱却はかなり明確に見えてきたという自信の表れなのか「今度は政府の番ですよ」と言っているように見えるのは、ちょっとあたくしが希望的に見すぎなのかもしれませんが、今後の金融政策運営というお話と絡めて財政規律の問題を強調している(今までも財政規律について触れていた事はありますが、割とさらりと流していた)のは「ペイオフ全面解禁(何か抜け穴があるので本当に全面解禁するとは全く思えないのですが、それは兎も角)の後は財政規律問題」という姿勢を打ち出したものとして理解しております。
という訳で、結構盛りだくさんかつ内容的にまとめるのにお時間がかかっておりまして、今朝は記者会見の方やら、講演での経済見通しの話やらは宿題という感じになってしまいましたが、続きは後日ということでお願いしますm(__)m。
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「中原委員の記者会見要旨を見てつらつらと」(2004/05/17)
金曜の続き。
どうも日銀は早すぎたゼロ金利政策解除(そもそもゼロ金利政策自体が必要な政策だったのかという問題はあるのですが)という「早すぎた政策判断」に加えまして、昨年の「中短期金利が引っ張ってパニック的に発生した金利上昇」が相当のトラウマになっているようです。まぁトラウマになるのはどうでも良いのですが、その結果今度は政策判断が遅れると言うか政策判断をしないような方向に進んでいるのは如何な物かと思う訳であります。
○金融引締めの先送り
金曜日にご紹介しそこなった中原審議委員の記者会見要旨では「一つの考え方」と断った上でこんなコメントをしています。
『量的緩和の状態からいずれ出れば金利の世界に戻る訳であるが、ポジティブな金利水準の世界に戻る前に、ゼロ金利の状況を一旦挟むことがソフトランディングとして適当ではないかと思っている。その過程で望ましいインフレ率を明示することによって、ある種の時間軸効果をもたらすことができる。』
『具体的に言えば、日銀は最低でも1%のインフレ率が望ましいと思っているということが市場に認知されれば、当然ながら中長期的にはそれに向けて政策運営がなされ、政策発動が行われるということであるので、その間、例えばCPIが0.5%、あるいは0.7%の時に、急に日銀が引き締めに走って金利を引き上げることはしないであろうという市場の期待を生むことになる訳であり、──これがある種の時間軸といっても良いと思うが――そういう効果を与えるために下限1%から上限2%程度を望ましいインフレ率として示し、併せて量的緩和の出口でゼロ金利政策を一旦採ることが、経済あるいは市場に不安定感を与えずに、量的緩和からソフトランディングしつつ脱出することができるのではないかということを申し上げているのである。』
量的緩和をゼロ金利にするのは「ソフトランディング」ではなくて「ただの先送り」ではないかという気が思いっきりする所ではあるのですが、とにかく発想としては「現行の短期金利体系をできるだけ長期間引っ張ることによって市場金利を安定化させよう」という意識があるようです。押さえつける必要も無い状況において、足元の金利を押えつけると逆に長期金利が不安定化するという理屈は金曜日に申し上げました通りなのですが、何だか「まぁ足元金利を押さえつけて、金融政策変更は先送りしておきましょ」という意識が見えてくるのはあたくし的には激しく「漠然とした不安」を感じる所であります。
だいたいやるべき事を先送りすると不良債権処理の先送りみたいなもんで、碌でもない結果をお招きすることになるのですが、金融引締めが遅れた場合にどういう結果が起きるかというとこれがまた考えたく無いお話であったりする訳です。
○やはり論理崩壊
さて、この中原委員の「量的緩和の後にゼロ金利+時間軸」という提案なのですが、やはり理屈として激しく変なお話であるかと思います。
別の質問に対する答えとして中原さんはこんなコメントもしています。
『昨年10月に現在のようなコミットメントの明確化が最終的に決定されて、現在の状況を考えると、一部に量的緩和解除のコミットメントの「ゼロ%」を「1%」まで引き上げるべきではないかという議論もあるが、あの段階で「ゼロ%」以上安定的にという明確化を行い、かつ当時に比べてもよりデフレ解消への道筋がはっきりし始めている現在、今の「ゼロ%」以上安定的にというコミットメントを「1%」に設定し直すことが、実効性のあるものだという積極的な議論は出来ないと思う。』
と言っているその答えの続きでこんな事も言っているのですが・・・・・
『私は一つの量的緩和の出口の考え方として「ゼロ金利を挟む」ということを申し上げている訳で、これが絶対であると申し上げるつもりはないが、「ゼロ金利を挟み1%という下限目標を示すことによって時間軸効果を与える」ということは、1%程度に達するまではゼロ金利政策を基本的には続けるというのが前提になる。ただ、現在のコミットメントもそうだが、総合的な判断が最後には必要になってくる。それは、CPIが1%になった時の構成要因、特殊要因、あるいはその他の要因等も勘案したうえで判断していくという話である。繰り返しになるが、ゼロ金利を挟むというのは一つの考え方であるということである。』
その「ゼロ金利+時間軸」というのが実効性があり、「量的緩和の時間軸を延長」というのが実効性がないという理屈は一体全体何を根拠にしているのか全く理解に苦しむ所であります。というかこれって思いっきり屁理屈としか思えないのですが・・・・・・・
○誤解する市場も市場ですが・・・・・・・
まぁ福井総裁の講演でもやたら強調されていた「市場との対話」なのですが、中原審議委員の記者会見でもこんな一幕がありました。
『(問)4点お伺いしたい。(略)3つ目は「2004年度末にかけてわが国の景気がピークアウトし、成長に若干の減速感が出てくる可能性は否定できない」と述べられており、その理由として雇用、外需、素材高、年金・税制等を挙げているが、このうち年金・税制は公的年金課税と所得控除の縮小・廃止、厚生年金の保険料率の引き上げを指しているのかということ。(略)』
この部分に関して中原委員はこのようなお答えを。
『3点目の2004年度末にかけてわが国の景気がピークアウトし、成長に若干の減速感が出てくる可能性は否定できないと申し上げた点であるが、私は景気の後退というところまで考えている訳ではないので、ピークアウトという言葉の使い方は適当でなかったかもしれない。』
その場のアドリブで出てくる談話ならある程度仕方がない面もあるのですが、一応講演ってのは事前に原稿がある(なかったらあんなに早く講演要旨が日銀Webにアップされないでしょうし)筈でして、そういう事前準備が可能な場において出てきた言葉が「適当でなかったかもしれない」というのはちょっと如何な物かと思う訳であります。この手のコメントというのは出てしまった段階で市場に影響を与える可能性がある訳ですから、後から撤回すればよいという問題ではないと思いますが。
福井総裁の「金利に蓋をする」というのが何せ圧巻だったのですが、市場との対話を重視するのであれば、無闇矢鱈と色々なところから色々な情報発信をするのではなくて、ピンポイントで誤解を与えないような情報発信が必要なのではないかと思う次第。大体からして(先日も申し上げましたが)債券市場自体がやたらと目先の一つ一つのコメントに過剰反応する傾向にあるのは今に始まった事ではない(お蔭で年中あたくしは悩むのですが)ので、情報発信もまた誤解のないようにやっていく事が重要なのではないかと思います。
昨年の中短期金利大上昇相場において、市場が問題にしていたのは「早期利上げを結果として織り込んでしまった位の破壊的な中短期金利の上昇」であったのに、長期金利が1.5〜1.6%程度と落ち着いていた事もありまして5年債1%だの2年債0.25%だのという事態になるまで市場の不安を放置して牽制らしき動きが出なかったのと比較すると、最近の動きは「口先介入のやり過ぎ」で市場の過剰な安心感を発生させようとしているように思えますな。
何だかな〜って感じです。
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「期待形成の道は険しそうですな」(2004/05/10)
先週末の債券市場は株価指数が下落したのが効いたようで5年が0.6%を割るわ、10年の1.5%どころか1.465%(日本相互証券債券終値ベース)になるわと、海外での株安がそもそも金利上昇(と原油価格の上昇)によって起きているという話をまるで気にしない勢いでございました。債券市場恐るべし。
で、金曜日のドラめもんで「期待形成の正しい進め方」と称して軽くお話を致しましたが、その中で某著名債券ストラテジスト様が指摘している「いざCPIがゼロになってきたら今度はCPIターゲットを今のゼロからプラス(プラス1%とか)に変更するという事も想定できる」という事について、あたくしが思いっきり「香しい誤解」と断言したのはご記憶かと思います。
ところが日経新聞あたりではあたくしが「誤解」と断定したこの論点が話題になっていたよう(日経新聞を読んでいないというあたくしもアレなのですが^^)でして、「再び時間軸が延びるのではないか」という観測もまた債券先物の買い戻しに心理的な影響を与えたようでありますな。どうも驚きの話ではありますが、あちこちでそういう指摘があるらしいのでそうなのでしょう。
何でこんな議論が出てきたのかと申しますと、先日の金融政策決定会合の後に実施された日銀総裁記者会見でのお話であります。再掲致します。
『私どもとしては、この3つの条件(引用者注:量的緩和のコミットメントの3条件)はかなり明確な条件ではないかと思っている。市場がその解釈を巡って混乱する可能性があるとは必ずしも思っていない。』
『しかし、おっしゃる通り、局面によっては理解の混乱が起こる心配というものをまったく打ち消しているわけではない。今後の状況をみながら、私どもとしては必要なメッセージは当然差し上げなければならない、その都度、工夫を凝らして新しいメッセージが必要であれば、差し上げていきたいと考えている。』
どこをどう解釈するとこの「新しいメッセージ」が「量的緩和のコミットメントの基本中の基本の消費者物価指数ターゲット数値の変更」になるのかよくわからんのですが、どうもこのあたりがまたも誤解を招く原因だったようでして。
そもそも量的緩和のコミットメントの3条件の3番目は「前の二つの条件は量的緩和解除の必要条件であって、最終的には量的緩和政策の解除が妥当かという点について総合的な判断を行う」という趣旨の内容であります。すなわち、需要の増加を伴わない物価の上昇という日銀の望まない形でのデフレ脱却がおきた場合に自動的に量的緩和政策の解除を行う破目になるような間の抜けた事態にならないように「総合的判断」という保険を掛けている訳でして、とりあえずはこの「総合的判断」で何とかすると考えるのが妥当ではないかと思います。
と申しますか、「量的緩和のコミットメント」として明文化して掲げた一番最初の「CPIが安定して0%以上になるまで量的緩和を継続」っていう部分の「0%」がいざターゲット到達したらいきなり「1%」にする何て言い出したらもはやそれは金融政策として成り立たない(じゃあ今までの0%は何だったんだって話ですな)お話ではないかと思う訳です。そういう金融政策の態をなさなくなるような論理崩壊的行動を日銀が取るという解釈をするという解説が堂々と罷り通る債券市場って一体全体どうなっているのかと先週末は軽いショックを受けていた次第でありますな、あたしゃ。
まぁ元々債券市場というのは債券投資のベースになっている短期金融市場に疎いお方が多うございまして(偉そうな言い方で恐縮ですが)、昨年の債券相場絶賛大暴落というか大手銀行様ALMの集団売り恐慌相場の時にも「そもそも量的緩和政策はCPIが安定的に0%を上回らないと解除できないんですが」というあたくしの指摘も空しく2年金利が0.25%だの5年金利が1%だの当時の1年後(つまり今年の秋口)にも量的緩和が解除されるのではないかという勢いで金利が上昇して、多くの年寄り中短期債ディーラーを呆然とさせた実績がございます。で、今回は何故か「時間軸がまた強化される」という解釈が発生する訳でして、何と言うかちゃんとおまいら物を考えてやっているのかと小一時間問い詰めたくなるような動きが発生している訳です。ちなみに「おまいら」には読者の皆様は含まれておりません。失礼仕りました(謎)。
まぁこういう訳の判らん解釈が横行するのは訳の判らん解釈をする債券市場だけに問題があるわけではなく、そもそも「何をしだすか判らない」という政策運営を行い続けてきた日銀(というか日銀総裁)の手法にも問題があった訳でして、「取って付けたような理屈(イラン戦争だのSARSだのりそな問題だの)で量的緩和の拡大を実施して、指摘していた問題が解消されても何故かそのまま」という事やら、「景気判断が前進しているのに量的緩和の拡大」というように政策としての理屈付けを放棄したような政策をバンバン実施してしまった為に日銀に対して「何をしでかすかわからない」という評価(?)が定着してしまったのにも問題があったかと。
「何をしでかすか判らない」ので「金融政策として論理的に有り得ないような政策オプションを行使してくるのではないか」という解釈をされてしまうようになっているというのが現在の日銀、というか福井総裁のお姿なのではないかと思います。今後経済が正常な方向に向う(とはあたくしは思ってませんが)にあたって、日銀の考えていることを外部に発信するのは非常に困難を伴うお話になりそうですな。今の時点で「論理崩壊的解釈」が堂々と行われているような状態ですから・・・・
金曜のドラめもんで問題の総裁会見での発言に対してこんなコメントをさせて頂きましたが、早速実現するとは恐れ入ったといった所です。
まぁ精々工夫を凝らしていただきたいのですが、既に「金利をできるだけ低い所で安定させる」とか「金利に蓋をする」とか総裁が発信した「工夫を凝らしたメッセージ」を債券市場が見事に誤解して長期金利低下祭りが発生して余計な怪我人を増やしていただけに、将来CPI前年同月比がゼロになってきた時には「正しい工夫」をして頂きたいものであります。
合理的期待形成への道は険しそうですな>日銀
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「期待形成の正しい進め方」(2004/05/07)
「
連休中にFOMCが行われまして、その声明文ではある意味予想通りに「利上げが近いですよ〜」サインが出てまいりましたが、それも「policy
accommodation can be removed at a pace that is likely to be measured.」という事で「市場に衝撃を与えるような金融引締め攻撃はしませんよ」ってコメントになっている所が大変に結構な所であります。
雇用環境の改善やら金利上昇って言っても景気状況の好転によって発生しているお話なのに株が下落するというお馴染みの米国金融市場のロジックも何のことやら良く判りませんが、まぁそれは兎も角としまして、FOMCの声明文(紙に印刷すれば1枚で楽勝で収まる短いもの)の表現やら偶に行う議会証言で市場に金融政策の方向性を示して、いざ金融政策を変更する段階では「材料出尽くし」状態にもっていくFRBの政策運営は大変結構なお話であります。
まぁ日本の場合は金融政策をこれ以上緩和方向で動かしようが無い(緩和している振りをする事はできますが)上に、不良債権問題やら不動産バブル崩壊やらという問題があるので中々難しい運営を強いられているという点で同情すべき所はあるのですが、それにしても中央銀行自らが市場の誤解を招くような余計なシグナルを出して、挙句自分たちが「量的緩和のコミットメントの明確化」といったマッチポンプ的行為を行っているのは如何なものかと思うわけですな。
まぁ比較するのは酷なんでしょうけど、もう少し何とかしていただきたい訳でして、何を基準においてどういう論理で金融政策の運営をしているのかさっぱり判らない(というか論理的に破綻している)状況をどうにかしないと日銀の政策への信頼性ってのがどんどんと無くなって来るような気がする訳です。
先日はどこぞの著名債券ストラテジストがレポートで総裁記者会見でのコメント「早期金融引締め観測が観測して市場が混乱した場合には市場に新たなシグナルを送る必要があるかもしれない」という点について「いざCPIがゼロになってきたら今度はCPIターゲットを今のゼロから僅かなプラスに変更するという事も想定できる」と言った香しい解説を施しておられましたが(今ターゲットを引上げて「インフレターゲットに転換」というならまだしも、設定したCPIターゲットに到達しそうになった所でターゲットを変更したら詐欺みたいな話でしょうに)、斯様に誤解を受けるほどに日銀から送られる「市場へのメッセージ」の発信が下手なんでしょうな。まぁ元々政策運営の根拠としている論理展開がその時々で首尾一貫していないので仕方ありませんが。
だいたい「りそな問題の金融市場への影響を抑える」だの「イラク戦争やSARS問題の(以下同文)」と言って当座預金残高目標を引上げた筈なんですけど・・・・・って話去年の6月頃してましたな。すっかり忘れかけている思い出話状態ですが(^^)。
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「日銀の政策決定会合と証券化フォーラムに対する軽い悪態」(2004/04/28)
○金融政策決定会合
本日は金融政策決定会合。何故か本日は一日開催なんですが、「展望レポート」の内容承認が行われる訳でして、んな重い話をするのに一日かよ!って言いたい所ですが、ま〜本日の議題は展望レポートだけだというお話なんでしょうな。
と言うことで本日は追加緩和はある訳ないという結論にしておけば宜しく、展望レポートでの物価に関する先行き見通しはまさかゼロにする訳にも行かないので、▲0.1%か▲0.2%のどっちかになるでしょうし、経済に関する見通しの記述は最近の金融経済月報の表現や福井総裁の言動から推測するにどう考えても超強気な表現が散りばめられる事になるでしょう。
何かやたらと注目が集まっているという報道が目に付くというか鼻に付く訳ですが、今まで日銀から出てきている各種のコメントや発表を見ていれば自ずと内容は読めてしまうと思うんですが。新しい経済指標が出てくるわけでもないのに何でそう注目扱いされるのか訳わからん。
と言っても何か反応するんだろうな〜。
○証券化ですか〜
やたらと新しもの好きの日本銀行では「証券化市場フォーラム」というのを肝いりで実施していたんですが、その証券化市場フォーラムの報告書ってのが先日日銀Webにアップされていました。
http://www.boj.or.jp/seisaku/04/mpo0404b.htm (報告書要旨)
でまぁあたくしそれほど証券化に詳しくない門前の小僧以下の存在ですんで、「ほうほうそうざますか」とマターリと読んでいる訳なのですが、何かよくわからんのですがシロート目に見て「結局この報告書は何を言いたいのかなぁ??」という感じでした。もしかしたら全文にはちゃんと書いてあるのかも知れませんが、問題点の論点整理がどうも突っ込み不足かと。
で、ややこしい話は兎も角として、「???」と思ってしまう記述が冒頭にあるわけで、これで本当に大丈夫かいなと思ってしまうわけであります。
『証券化商品は、裏付資産の分散効果を通じてリスクを削減し、リスク許容度に応じて多様な投資家を呼び込むことが可能になるという特性を有している。』
別にリスクの総量は減らんと思うのですが。リスクを広く分散させたり逆にリスクを抽出して濃縮する(とは表現せんが、まぁそういうイメージと言うことで)ことが出来るのが証券化商品だと思うんですけど。意地の悪いツッコミですけど、金融に思いっきり疎いパンピーが一読すると夢のような商品に見えてしまうので如何な物かと。お得意の政治ウケ狙いなのかも知れませんが。
『証券化市場の活性化は、貸出を含む金融取引について「リスクに見合ったリターン」の実現に寄与し、新しいビジネスや金融先端分野の発展と相俟って、わが国の金融機関を活性化させることにも貢献しよう。』
この「リスクに見合ったリターン」という観念の幻想に関しては何度かドラめもんで申し上げているのでしつこく申し上げませんが、んなものが実現したらとてつもない金融引締めになってしまうと思うんですけど。
『さらに、金融機関の貸出を補完するかたちで信用仲介チャネルが複線化していけば、金融システムのリスク耐性を高めることも展望される。』
どうも相変わらず市場万能への幻想があるのではないかと思うのですが、市場っつーのは均衡点で安定するものではなく年がら年中オーバーシュートするものですし、日本のように大手機関投資家の横並び意識が強く、おまけにメガ化している状態であればそのオーバーシュートも尚更の物であります。
全ての矛盾を銀行セクターに押し付ける体制にも無理があったとは思いますが、何でも市場で時価評価しちゃうのがそんなに絶賛されるべきものなのかは激しく疑問があるわけですよ。ディーラーやっててそういう事を言うのもとても変なお話ですけど。
しかも昨今の景気回復って究極はりそな問題の対応やら産業再生機構に見られるように「リスクを政府に押し付けてとりあえず封印しておく」という対応が効果を発揮しているものでして、何でもかんでも表面化させて世の中全て上手く行くとは思えませんけどね。まぁ封印するのもどうかとはおもうが、現実に景気が上向きになっている(ように見えるだけだと思うが)訳ですのであまり厳しくは断罪できませんな。
・・・・・・・リスクを政府に押し付ければ最終的には納税者にツケが回ってくるのだからこれこそ究極の「証券化によるリスクの幅広い分散」なわけですか。即ち日本は新たなやりかたによる証券化でリスク分散に成功しているということでありますな。相変わらず金融最先端を走る国だということで(^^)。
#政府のやる事はあたくしのような凡下の遠く及ぶところではありませんな。
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「昔の表現で出ています」(2004/04/21)
○日銀総裁の国会答弁
昨日は国会に福井総裁が出席して例によって金融政策に関して答弁をさせられたのですが、そこに懐かしいフレーズがでて来たようです。報道によりますと金利に関してこんな感じの発言をしたようです。曰く、
「金利をあめ細工のように操作することはできない」
あめ細工ってのは懐かしい例えでして、「昔聞いたフレーズに似てますな〜」と有識者とお話をしましたらこの表現はなんと三重野総裁時代の総裁発言にあったものだそうで、この時は為替市場に関して「為替市場をあめ細工・・・・・」というコメントが飛び出してドル円市場で1ドル=100円を割り込むドル安というか恐怖の円高相場が始まったという曰く付きのものでありました。
この頃は福井さんは理事だか副総裁だかをやっていると思うのですが、三重野発言を覚えていて同じ例えを使ったのか、それとも日銀マンが使いたがる例えなのか、どうでもいいことですが興味のある所であります。
あたくしとしてはもはや福井総裁のこの手の発言ぶれぶれ状態に関して一々論評をするのも馬鹿馬鹿しいとしか申し上げ様がありません。さすがに真面目に一々反応しているようなディーラー仲間もいい加減この馬鹿馬鹿しさに呆れておりますな。まぁ一応お約束なので悪態をつきますが(^^)、あめ細工云々発言をするお前のその口はついこの前「金利に蓋をする」といった同じ口かと小一時間問い詰めたい所でありますな(-_-メ)。
まぁ効果のない金融追加緩和を効果のあるような論理展開を繰り広げて正当化しているという苦しい状況ですんで、色々と余計なじゃなかった気の効いたサービス発言をして日銀の存在意義を出そうと言うお話なんでしょうな。
折りしも米国ではグリーンスパン議長が市場引け際に議会証言で「デフレ懸念無し」証言をして米債米株が大幅下落していますが、ここぞという時に慎重な言い回しをしながらもきっちりと自分の見方を市場に伝えて、きっちりと市場がそれに反応するという美しい動きを見ますと、発言の度に市場が余計あるいは無茶な反応をする東京市場はまだまだ「市場との対話」などというものからは程遠いということなんでしょうな。
無理矢理こじつけると、この懐かしいフレーズが出てきているというのは、福井総裁も「長期金利の自然な上昇を容認」しているのではないかと思わせる所もあるのですが、そういう発言の側から「量的緩和の出口論議はとても時期尚早」的な発言をする訳ですから、真意がどこにあるのかさっぱり訳がわからない所ではあります。総じて言えば景気に強気だけど量的緩和解除は別の理由でできないので長期金利の上昇を容認しつつ量的緩和継続って感じんでしょうかね。
○金融経済月報
先日もご紹介した金融経済月報ですが、時事通信社の時事メインコラム「金融観測」で指摘されていましたのが「ダム論復活」でございます。
あたくしはこのゼロ金利解除の時には金融市場におりませんで、アイテー関連のお仕事をしていたのでどういう論理展開ならびに金融市場の動きがあったのかは詳しく体感していないのですが、(体感していたのはアイテー業界のバブル崩壊ぶりです)このときに「ダム論」と名づけられた「景気回復の効果が徐々に広がっていく」という論法が見られるのが先日発表された金融経済月報(4月)の目に付く所であります。曰く、
『企業収益は増加を続けており、企業の業況感は広がりを伴いつつ改善している。』
『また、企業の人件費抑制姿勢は引き続き強いが、生産活動や企業収益からの好影響が、雇用・所得面へ徐々に及んでいくと考えられる。』
似たような論法はちょっと前の金融政策決定会合議事要旨(3月14〜15日分)にも目立っておりまして、一々引用はしませんが、まぁこの手の「製造業の大企業の業況回復の効果が次第に広がって来る」という論理展開で景気回復ムードを盛り上げている訳ですな。
という訳で、こちらも懐かしい「ダム論」(時事メインコラム「金融観測」によりますとダム論というと過去の悪夢が甦るそうで、日銀さまのPTSDらしいです^^)復活の巻というお話になるわけでありまして、まぁ日銀執行部的には「景気は回復しているんだぞ」とキャンペーンを張りたい気分なんでしょうな。
どう考えても不良債権やら年金などの問題部分を政府部門に押し付けるスキームやら、実質非不胎化介入による米国債買い支えによってもたらされている「小泉型大盤振る舞い財政支出政策」で支えている経済に過ぎないと思う(んですけどあたくし株価には強気です)のですが・・・・・・・ま、いっか。
まぁあまり目立たない部分のお話ですし、穿った見方過ぎるかもしれませんが、最近の日銀執行部(あくまでも執行部であって現場の認識はもっと景気に厳しいのではないかと思われますが、いえ何となく)の言動に「本卦帰り」の傾向が見られるという事はブックマークしていただくと吉かと存じます。
ではでは〜(^^)/~~
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「時間軸はCPIでいいのかね」(2004/04/14)
激しく根源的な話で、このネタを研究しだすと大変長い話になるのですが、とりあえずあたくし的愚意見を何となく書いてみます。そのうち真面目に論理展開をしてみたいネタなのですが。
現在の景気回復に関しては時々書いているように「政府+日銀によって下支えしている景気」と認識しております。まぁ財政というか量的緩和によってサポートされる円売り介入とか、りそな救済スキームやら産業再生機構やらといった公共事業ではない財政支出あるいは財政の債務保証(見せ金)という隠れ財政による訳でして。
そういう状況の中でCPIが(死ぬほど上昇すれば別ですが)ゼロ程度になったからといって金融緩和状況を大幅に解除するのは如何なものかと思う訳ですな。先日も申し上げましたが恐らくゼロ金利解除の二の舞になるかと。
そもそも、ある程度の金利上昇に耐えられる試算にはなっていると思いますが、財政が上記の状況で相変わらず絶賛発散中なのに、金利上昇に耐えられるのかという問題がございます。だいたい今でも借金をしてチワワを買うような財政運営状態なのに、財政赤字が縮小しないのに金利が調子よく上昇しだした時に財政が借金の利払いに耐えられるのでしょうか。税収が上がって赤字縮小になってくれれば良いのですが。
ということで、まぁ正常な金融状態に持っていくためにはCPIよりもプライマリーバランスの達成(しなくてもする方向になるということ)が大事なのではないかと思いますが、如何でしょうか?
先日の日銀総裁記者会見でも「財政再建問題」と金融政策を絡めた質問がありまして、それに対して日銀総裁はこんなコメントをしています。ちと長くなりますが財政に関する部分を引用します。段落が切れていないので長い引用ですいません。
『それから、財政再建という言葉をお使いになられたが、長期的に見て日本の財政規律というものをより強めていくことが当然重要な課題である。この時間的距離はもっと長い。金融政策が今の緩和のフレームワークの段階を過ぎる時期からさらにその先において、非常にロングランな、しかし非常に重要な課題として意識していかなければならない。おそらく、金融政策が今お尋ねになったようなかたちで「エグジット」という時期を過ぎた以降の状況になると、人々が経済政策全体を見た場合に、財政規律を将来にわたってどう確立していくかという点について、デフレの状況が続いている今の状況よりもより厳しく、より厳格な判断を持ってウォッチしていくであろうと思っている。また、そのような人々の視線に我々は強く期待しており、長期的に見て財政規律というものがしっかりと担保される前提のもとでなければ、より均衡のとれた日本経済の姿にたどりつくための望ましい金融政策を組み立てていく作業そのものに困難さが加わるということにもなってくる。従って、日本銀行も時の経過とともに財政規律に対する見方を厳しい方向にしていかなければならないと思っているが、これは非常にロングランな課題である。政府は既に、10年くらい先を展望して、プライマリー・バランスの回復――ないしはプライマリー・サープラスの実現――というターゲットをしっかり持ってこれから前進していこうとしておられる訳だが、おそらく時の経過とともにそれがどのような具体的な裏付けをもって実現されていくのかについて、より詳しく人々の検証作業が始まるだろうと私は見ている。』
まる引用で長くなりましたな。恐縮至極。
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「金融政策決定会合なのですが」(2004/04/09)
昨日コメントした通りなのですが、日銀的には一応当座預金残高目標を引上げる口実が出来る訳でして、「イラク情勢が不透明になっていることが市場に不測の影響を与えないように」とでも言えば話は無事通るというものであります。
昨日は「さすがに今回は当座預金残高目標引上げはやらないでしょう」というお話をしましたが、もしかしたら引上げをやるかも知れませんね。可能性20%くらいのお話ですけど。
ではそうなった場合に何かあるかと言いますと、昨日申し上げた通りでして直接的には何の意味もない動き。ただし、今回の場合は「マネーサプライの伸びが鈍化した事に対応して当座預金残高目標を引上げた」などとマネーサプライ真理教のエコノミストならびに大臣が評価する可能性が高い点が注目材料であります。
即ち、「今後マネーサプライの伸びが思わしくない場合には当座預金残高目標の引上げに加えて長期国債買入額の引き上げを行うのではないか」という思惑が将来的に発生する可能性があると言うことでありまして、その思惑が出た場合は短期的には債券買い材料になるとも思われますが、さすがに「日銀の国債直接引受」という連想が働くと思われまして、必ずしも債券相場には買い材料にならないかもしれません。
一応念のため。
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「金融政策決定会合ですが・・・・・・」(2004/04/08)
本日から金融政策決定会合が実施されます。まぁ「何かやる」のがお好きな日本銀行様の実施するネタとしては、先日発表した「国債品貸しスキーム」の実施要綱をリリースするってのがあるので、とりあえず「何かやる」のノルマ(笑)は達成できるという事で宜しいかと。
今回の金融政策決定会合では、普段あまり金融政策にコメントしない人たちが「マネーサプライの伸びが鈍化しているので、当座預金残高目標額の引上げがある」とコメントしているのが目に付きます。
まぁ為替介入サポートと明言せずに為替介入の実質的な非不胎化を実施しているのですから何でもありでしょうと思われても仕方がない所ではありますが、一応日銀の正統的理論に即して言えば、マネーサプライは長期トレンドはともかく短期的には不安定性があり、金融政策によって細かくコントロールすると却って金融政策が目先のマネーサプライの動きに振らされて不安定になるということであります。
従いまして、目先のマネーサプライの伸びが少々鈍化しても金融政策は動かないというのがノーマルな発想であります。大体からして「目先のマネーサプライの伸び鈍化に対応して当座預金残高目標の引上げを行った」と解釈されるような動きをすると、「次は長期国債買入額の拡大」という思惑を当然の如く産むわけでありまして、就任以来「長期国債買入額の増加だけは避ける」というスタンス(避けている理由は、日銀の国債直接引き受けに繋がるからではないかと思うのですが)を継続している福井総裁としては、幾ら「何でもあり」とは言えさすがにそれは避けると思います。
ま、所詮当座預金残高目標を幾ら増やしても意味が無い茶番政策だという事は既に明白なお話ですんで、どうせ茶番なら外部ウケを狙って引上げを実施するという可能性は勿論ありますけど。
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「市場の期待の安定化とは何ぞや」(2004/04/06)
総裁発言にあります「市場の期待の安定化」に関して恐らく総裁は自分および日銀の政策運営が発する情報を「市場の期待の安定化」を図るように日々よーーーく考えて行動しておられると思う訳ですよ。金融市場を撹乱させる為に行動する中央銀行なんてありえません(為替市場で暴れるのは別問題^^)から、客観的には一々火に油を注ぐ言動をしている日銀総裁および一部審議委員も大真面目に「市場の期待の安定化」をしようとしていると思います。
でも、結果として出てくる動きがどうも悉く後手後手に回っているというのがあたくしの受ける印象。まぁ片言隻句が後手後手に回るくらいなら別に実害はないのですが、この調子では政策決定でも後手を踏む事になるのではないかと危惧する次第でありまして、「ゼロ金利解除の悲劇リターンズ」を想像するあたくしであります。
基本的にあたくしは、現在の景気回復万歳モードは所詮財政で支えているものであると認識しております。直接の一般会計からの財政支出は抑制していますが、金融機関への税金投入を「見せ金」に使ったり、産業再生機構も何だか大盤振る舞いモードになりつつあり、止めは巨額介入で米国様の財政赤字ファイナンスを実施。それを支えているのがどんどん増えつづける日銀当座預金残高の拡大というように、「統合政府による新手の公共事業」はせっせと実施しております。
これらの「支え装置」が外れたときに本当にこの景気回復が持続するのかと考えますとどうも「?」が飛び交う訳でありますな。まぁその前の日経平均8000円とかが下にやりすぎだったという面もありますけれども。
そんな訳でして、現在の「本格的景気回復」などというものは所詮大本営発表の世界でして、循環的な回復局面に過ぎないと思ってはおります。とは言え、懐かしいアイテーバブルの頃を思い出しますと、大体「ありゃま随分上昇しだしましたな」などと思いだした頃から絶賛大上昇が始まり、最高値をつけるまでの日柄が約半年ございまして、この「景気回復モード」状態の相場もまぁ半年は続くでしょ。
今の内に勝手な大予想しておきますと、一番早くても参議院選挙。多分秋口まではこの状況が続き、もしかしたら年末あたりにピークを迎えるのかな〜なんて思っておりますんで一つよろしく(何を??)です。
で、ずれまくった話を戻して、あたくしが勝手に考える今後の展開を申しますと、そんな感じで美しい景気回復モードになって実は年末あたりに景気が循環的にピークアウト。その後にペイオフ解禁になるのですが、何となく余韻が残って無事通過。何となく景気も回復してるしペイオフ解禁も無事に実施できてさあ量的緩和解除だとなる時には実は景気は循環的に下降局面へ向っており財政も締めだしているので相乗効果でお陀仏さん。という感じでしょうか。
前回のゼロ金利解除の時にはまさしくアイテー系の怪しいベンチャー会社でお仕事にいそしんでいたのですが、アイテーバブル崩壊によって本業がいかれる前に投資損失やら資金繰りが回らないやらで騒ぎが起き出しておりまして、2000年7月(でしたっけ?)当時「何でこんなタイミングで金融引締めをやるんだろう?」と激しく理解に苦しんだ覚えがあります。
まぁ今回も似非本格回復景気(いや、本当の本当に本格的に日本の経済構造が改革されていて本格的な回復になっているのなら素晴らしい話なんですがね)ムードに何となく流されつつ、漫然と時間が経過してしまい、「さて量的緩和解除」とやっている時には循環的景気回復はピークアウトした後で、既に「宴の後」状態になっているのではないかと思う訳であります。
ま、小渕政権の「景気回復」とやらも大盤振る舞い財政によってもたらされたものでありまして、実は今回も同じ道を歩んでいるのではないかと思い出す今日この頃であります。今度景気が失速したら財政打つ手なしで、究極の手段「財政インフレによる事実上の徳政令攻撃」が出るのではないかと気にかけるあたくしです。是非杞憂であって欲しいものですが。
という訳で、昨日の続きと称しつつも全然別の話になりましたな(^^)。
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「為替介入に関する雑感」(2004/04/01)
期末期初ですからまぁ長期的な展望のお話でもする所なんですけれども、あまりの大荒れ相場に考えを纏める元気が湧かず(-_-メ)、最近気が付いたことなどをつらつら。
○中途半端な介入は止めましょう
先月初頭の米国雇用統計で押上げ介入をやって112円台まで円安ドル高に持っていった素晴らしい動きを行っていた同じ人が、昨日は月末の仲値が確定した時点で「どうでもよい状態」の円高ドル安放置プレイ。104円割れって3週間で8円ドル安ですよ先生。
市場っつーのは放置しておくと大体碌でもない暴走をするので、ある程度のスムージングオペが必要でしょうというのがあたくしの基本的な発想(ディーラーにあるまじき意見というお話もありますが)なのですが、この「何かに取り憑かれたかのような無限介入」の後に「いきなりやる気なし」状態になるという介入は相場を荒らして、政策当局への信用を無くすだけの効果しかないでしょうな。
長期金利の方でもどこぞの中央銀行総裁様が「金利に蓋をする」などと訳の判らん余計なお話をして、方向感に悩んでいた債券市場に長期金利低下爆弾をぶち込み、金利低下祭り状態が発生。株価が何気に底堅いのに10年金利が1.2%だの5年金利が0.5%割れだのという素晴らしい状態になってしまって、こちらでも余計な上昇と下落が発生。
相変わらず総裁発言に反応する人がいるから債券相場の乱高下祭りが展開されて炎上す人が出てくるわけなのですが、こんな状況が繰り返されると日銀総裁というか、日銀の出す政策の信用が低下していく懸念がありますな。まぁあたくし的には最早「勝手にすれば」状態なのですけどね。
○昔のPKOを彷彿させました
昨日の為替市場。「仲値が出たら後は知らん振り」という素晴らしく腐った根性の展開には感動すら覚える所ではありました。
そういえば昔々、「期末の株価PKO」というのが年中行事になっていた頃のある時(中間期末だったと思うが)、日経平均指数先物で引け際に猛然と大口の買いが連発して15時の指数先物を頑張って持ち上げた挙句に、「現物が大引けになったら後は用なし」なのでしょうか、いきなり先物の引け際に急落(株価指数先物は15時10分までやっている)という大笑いする動きがありました。
昨日の為替市場の「仲値だけ無理矢理キープ」というのはまさに当時の無駄としか申し上げ様の無かったPKOを彷彿とさせるものでして、まぁ何時までたっても進歩のない困った方々ですな〜というのが感想であります。
○気になったニュース
ほんのちょっとの扱いのニュースでしたが気になったお話が一つ。
昨日の時事メインのニュースに証券取引等監視委員会の野田晃子委員の講演というのがありまして、所謂「仕組み商品」に関して歯止めが必要という見解を示したそうです。
「商品性が怪しい商品、販売員が理解していない商品が、高齢の投資家などにどんどん販売されている」「これを野放しでいいのか疑問だ。いい方法を考えなければならない」と述べたそうです。(ソースは昨日19:43に出た時事メイン提供ニュースです)
まぁ一般ピープルにとっては相変わらず証券会社との取引をするのは敷居が激しく高いのですが、最近では銀行様までもが色々な仕組み商品を売り出すわ、銀行と証券会社の共同店舗や一体店舗のような形で銀行経由で証券会社の敷居が低くなるわということで、あたくしもいい加減そういう話がでるだろうな〜とは思っておりました。
まぁ仕方無いんじゃないかと思いますが、証券会社ばかり規制しても無意味(というか逆に銀行優遇の尻抜け規制になってしまいますが)ですので、歯止めを考える際にはその辺もちゃんと考えて欲しいものであります。
その一方で一昨日は日銀総裁様が金融広報なんちゃらという所で「ペイオフ全面解禁で預金者には自己責任の意識を持って欲しい」などと相変わらず現場における実態を知ってか知らずかの脳天気なご発言をされており、大変に頭の下がる思いであります。
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