決定会合議事要旨や金融経済月報などについて(2025年度上期に書いた分)
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2025/08/07「6月会合議事要旨のバランスシート関連の話の続き」
2025/08/06「6月会合議事要旨は長期国債買入に関する政策委員の皆様の認識に疑問符が・・・・」
2025/08/04「展望レポートBOXも「メインは年末年始までの動きを見る」だけど「リスクは物価高止まり」という構成ですな」
2025/08/01「決定会合レビュー:4月のハトハトチキンメインシナリオは維持も物価上振れリスクの指摘も、会見はハトハトで150円乗せ」
2025/07/22「金研国際コンファランスの概要が出ていますね」
2025/07/18「2015年6月19日決定会合におけるジンバブエVS木内はジンバブエの藁人形論法による木内さんへの誹謗中傷が酷い」
2025/07/17「2015年4月30日決定会合における置物VS木内ですが10年経ったらどちらが正しかったのか明らかですね」
2025/07/15「生活意識アンケートはどう見ても物価高止まりの弊害を示しているように見えますが」
2025/07/11「さくらレポートは判断横ばいも企業行動の部分が強気の内容に見えますねえ」
2025/07/02「6月短観はトランプ関税の影響が碌に無いのかというような強い内容ですね」
2025/06/26「6月会合主な意見の長期国債買入の議論が(一部の人を除いて)完全に財政従属になっているという嘆かわしいお話」
2025/06/24「4月会合議事要旨の政策に関する議論もなんかグダグダ感が漂う」
2025/06/23「4月会合議事要旨:経済に関して案の定のスーパー弱気でした」
2025/06/18「決定会合レビュー:現状認識見通しは不変で、国債買入減額は案の定の2026年から減額ペース縮減」
2025/06/12「外貨預金の粘着性に関する考察は将来の日本にも示唆になりそうですね」
2025/05/22「NBFIに関する日銀レビューが出ておられます」
2025/05/21「市場参加者会合:2026年度の国債買入をデザインする必要ってあるのかね」
2025/05/20「展望レポートのポンチ絵:また前回対比不能な絵ですが「基調的物価」と「アクチュアルの物価」の2本立て説明お蔵入りかね」
2025/05/19「オペと市場の政策金利見通しに関する日銀スタッフペーパー(ただし英文)」
2025/05/15「展望レポート全文のBOXから(その2):やっぱり「構造的に賃金と物価が上がりやすい」ネタです」
2025/05/14「4月会合主な意見:出だしの経済パートのクソ弱気VS過度な弱気に対する怒りの抜刀の対比がワロタし雰囲気でドテンし過ぎ」
2025/05/13「展望レポート全文のBOXから(その1):労働市場に関してはやたら強気ですね」
2025/05/09「3月MPM議事要旨:これだけ威勢の良い話をしていたのに何で4月にああなったんでしょうかねえ・・・・・」
2025/05/06「展望レポート基本的見解逐語比較(続き):前回展望からのロジック飛躍(ハトハトジャガーチェンジ)が気になる」
2025/05/05「展望レポート基本的見解逐語比較:関税の影響も見極めないうちに堂々とメインシナリオを明確に引き下げ」
2025/05/03「展望レポート基本的見解冒頭部分:メインシナリオを思いっきり下げて物価見通しも下げたが物価は意見の隔たりが大きそう」
2025/05/02「今回は様子見とか言ってたらまさかの一大ハトハトサプライズな決定会合でこりゃ失礼しました」
2025/08/07
〇6月決定会合議事要旨から長期国債買入とかバランスシートのお話の補足
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2025/g250617.pdf
政策委員会 金融政策決定会合 議事要旨
(2025年6月16、17日開催分)
『W.金融政策運営に関する委員会の検討の概要』の長期国債買入に関する話ですけどね。
長期国債買入に関する議論の部分の最後の段落が時間切れでできなかったのでそこから参ります。
『この間、一人の委員は、今後、国債買入れ額の着地点をどう設定するのかについては、日本銀行のバランスシート縮小の行方と
併せて、長期的な視点で検討する必要があると述べた。』
でまあ昨日(だけじゃなくて拙駄文の方では何回か)申し上げておりますように、QQEとかYCC政策というような大規模金融緩和措置を必要としない状況になった以上は、本来は債券市場の安定化がどうのこうのとかいう話をしていること自体が本末転倒であって、本来はこっちの話をしてから、ではそれに対して変なショックを与えないためにはどう移行すべきか、という話からもっていかないといけないんですよこの話って。
『別の一人の委員は、現状、超過準備はきわめて潤沢な状況にあるため、国債買入れの減額を粛々と進めて日本銀行のバランスシートを正常化させていくことが必要であると指摘した。』
とは言えアホみたいな額があるからどこまで減らすのかというのが皆目見当つかんけどまあ兎に角減らせっていう話になるのも仕方ないのだが、そもそも論としてバランスシートをどうするのかというのは短期金融市場における金利誘導をどのように実施するのか、という手段に影響しますので、市場における金利形成(つまりコールとか短期国債とかレポとかCPとかの金利体系や取引の形)に影響してくる話なので、そういうデザインはちゃんと考えて頂きたいんですよね。
『ある委員は、将来的に超過準備はある程度減少するにせよ、発行銀行券の残高と合わせると、長期国債を含め、それらに見合う相応の規模の資産が必要になるとの見解を示した。』
別に資産って短期の資金供給オペでも良いのですけれども、例えばの話日銀の資産サイドが全部短期の資金供給だとすると、調節技術上やたら高頻度のオペレーションをしないといけなくなるので、発行銀行券とかいう要求性払いだけど実際には長期滞留するコア預金みたいなものの見合いには長期国債でもよかろうという話なんですが、量的緩和長くなってしまってもはやその時の知見の継承がだいぶ怪しくなっているんじゃないかという気はしてまいりました。
『これに対し、別のある委員は、国債の買入れだけではなく、中長期の資金を市場に供給することも検討すべきであると述べた。』
中長期ってどのくらいの期間の話をしているのかが謎というか嫌な予感しかしませんが、そんなのどんなに長くたって3M以内くらいじゃろとしか言いようが無いのだが、もしかして2年とか5年とか考えているんだったらちょっとそれは緩和脳にも程があるとしか言いようが無い。
でまあ最後のところでは、
『そのうえで、この委員を含む何人かの委員は、中央銀行のバランスシートは、資産・負債の両面からわが国の金融経済に影響を及ぼし得るため、最適なバランスシートの規模や構成については、今後、多面的に検討していく必要があるとの認識を示した。』
という話になっておりまして、まあそれはそれで良いんだけど、資産の面から影響を及ぼし得るのであれば、中央銀行としては短期政策金利を必要な水準に誘導する、以外の目的でバランスシートを使うのは市場メカニズムを通じた資源配分の最適化に対して恣意的な介入を実施することに他ならないので、きわめて抑制的に対処しないとアカンじゃろ、という話になると思うんですよね。まあ過激派と言われればそうなんですけどワシ。
でまあ昨日出てたBBGの記事
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-08-05/SYSND8DWLU6800
日銀の金融機関への付利負担が急増、年内利上げ観測で財務悪化に注目
青木勝、氏兼敬子
2025年8月6日 6:00 JST
『日本銀行の金融政策運営で政策金利を操作する役割を担う付利制度。日米関税交渉の合意などを受けて年内利上げ観測が広がる中、金融機関への支払利息の急増で日銀財務が悪化する副作用に注目が集まる可能性がある。』(上記URL先BBG記事より、以下同様)
ってまあこの件ですけれども、単年度で日銀の期間損益が赤字だから云々って話をしているのはまあ比較的しょうもない話(なのであんまり読まなくてもよい)ではありまして、まあ日銀の期間損益が赤字だから日銀の財務が云々というのはそんなに問題じゃないと思うのですが、そうは言いましても物には程度というものがありまして、日銀が期間損益赤字ってことは統合政府で見れば財政を出しているのと同じ話なので、その額がまあ屁のようなもん(どの規模を屁と言うのかという議論はありますけど)なら大した話じゃないですけど、その額がそれこそ何兆円とかの規模になってきたときに、実は金融緩和とかしている場合じゃない状態になっていた、となるとその何兆円ってのの緩和効果が本来行うべき金融政策とコンフリクト起きる可能性ってあるじゃろ、っていうのは結構気になっております今日この頃。
でまあそういうのっていつややこしいことになるかと言えば。それこそ基調的なインフレが目標をオーバーシュートして上振れしてしまって引き締めしないといけませんぜとなった時な訳で、いやまあ欧米はバランスシート抱えながらガンガン利上げしてとりあえずインフレの方は収拾できたっぽく見えますが、日本のバランスシートって欧米の比じゃないので同じことできるのかというのと、まあこれは当然指摘されるのは「日銀財務の問題」がクローズアップされることで必要な政策ができなくなるんじゃないかという信認(つまり財務が問題なのではなくて財務のせいで適切な政策運営を行わない方での信認)問題の方が先にあるんですけど、まあそういうもろもろ考えたら「基調的物価が上振れするリスク」というのを再度ちゃんとリスク要因とは言え明示的に7月展望でパラフレーズしながら出してきた訳ですし、もうちょっと考えて頂きたいものだとは思いますし、その点から言っても「6月の時点で来年4月以降1年間の長期国債買入計画を決めてしまう」ってのはよろしくないとおもうんですよね〜。
でもってその財務の件って日銀は毎度こういう説明をしているんですけど、というのが記事にありまして、
『米連邦準備制度理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)など多くの中央銀行が量的緩和の際に付利制度を導入している。購入する国債の利回りは通常、付利金利を上回るため、保有国債が増えれば中央銀行の収益は拡大する。一方、利上げ局面では金融機関への支払利息が増えて収益を圧迫する。
日銀が昨年12月に公表した試算では、政策金利2%など厳しい仮定を置いた場合、一時的に赤字が発生する可能性はあるが、債務超過にはならない。植田和男総裁は5月の国会答弁で、利上げ過程で赤字が発生する可能性に言及。長期的には保有国債が金利の高いものに入れ替わるため「収益が戻ってくる」と説明した。』(ここまで直上URL先BBG記事より)
毎度「長期的には保有国債が金利の高いものに入れ替わるため「収益が戻ってくる」」でだいたい済ませているんですけれども、逆にこの点を気にしているから長期国債の買入の減額を渋っているのではないか疑惑とか、大体からして基調的なインフレがオーバーシュートするようなときは「政策金利2%など厳しい仮定」とか言ってるけど1ミリも厳しくない過程だろ(だいたいからして本当の本当に物価安定目標が達成されていて経済成長が持続的安定的に続く社会だったら名目の中立金利ってどう見たって2%あるいはそれ以上じゃろ)という話でして、まあこの辺の話って現時点で思いっきり表だって言いにくい、というのも分からんでもないのだが、だからと言ってとりあえず微温的なスタンスで問題先送り、ってのやってると基調的インフレがオーバーシュートした場合に大変な惨状になるじゃろ、という方が机上の空論とも言い難くなっていませんか、と申し上げたい訳ですな、うんうん。
しかし日銀バランスシートに関してはここでまた面倒な論点があって、
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/ko250607a.htm
【講演】
業務からみた日本銀行
日本金融学会2025年度春季大会における講演
日本銀行副総裁 内田 眞一
2025年6月7日
先般の内田さんの講演の中で、まあこれ出たときにナンジャコリャとか言いながらネタにしましたけど、
『当座預金への付利とそのインプリケーション』ってところの第2パラフラフ以降になるんですけど、
『このことは、その後、技術的な金利操作の手段という意味合いを超えて、大きなインプリケーションを持つようになりました。ひとつは、金利操作と切り離して、バランスシートの大きさを決められるようになった結果、資産サイドを使った政策を大規模に行うことが可能になったことです。』(直上URL先の2025/6/7内田副総裁講演より、以下しばらく同様)
って話をしているのですが・・・・・・
『非伝統的金融政策の中心手段のひとつは、いわゆる「量的緩和」すなわち、国債の買入れによって長期金利を押し下げることですが、これを実行するのには、バランスシートの大きさとは無関係に短期金利をコントロールできることが前提になります。この点、量的緩和を実行している間は、割り切ってしまえば、金利をコントロールできなくても、ゼロ金利でもよいと考えることもできなくはありません。』
『しかし、量的緩和からの出口プロセスに時間がかかることはあらかじめわかっているので、その時に、大きなバランスシートを抱えながら、短期金利をコントロールできることが保証されていないと、こうした手段は採用できません。』(ここまで2025/6/7内田副総裁講演より)
という説明をおっぱじめていまして、単純に短期金利のコントロールだけみたらそうかもしれんですけれども、結局のところバランスシート政策を行った中銀は結構な勢いでバランスシートの縮小をしている訳で、「金利操作と切り離して」云々というのは通常のプラスインフレ状態で中立的な金利、すなわちプラスの金利を中心にした金利操作を行う際には他の問題が発生するじゃろ、って話なのですが、その論点をこの講演華麗にスルーしていまして、いやまあその辺は分かっているけどすっとぼけてスルーしているだけだとは思うのですが、巨大なバランスシート抱えながら通常の金利誘導の政策に移行できんじゃろという意識があんまり無いようにも思える所でして、うーん大丈夫なのか(特に基調物価が上振れるような局面において)と思うのでした。
でまあ話を戻して議事要旨に戻りますと政府の方面からの発言ってので引っかかるのがありまして、
財務省からの発言の中で、
『・国債買入れの減額は、債券市場の安定等に十分に配慮し、必要があれば状況に応じた柔軟な対応をすることを含め、適切に行われることを期待する。』
ってあるんですが、債券市場の安定等に十分に配慮っていうのはこれ読みようによっては政府が国債市場への買い支えを要請しているかのようにも読めるわけで、ちょっとどうなのよとは思いました。
ちなみに内閣府の方は、
『・日本銀行には、政府と緊密に連携し、2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現に向けて、適切な金融政策運営を期待する。国債買入れの減額は、市場との適切なコミュニケーションの下、状況に応じて、必要があれば柔軟な対応をお願いする。』
という言い方なのでまあこれは普通に無難にまとめているのですが、逆に考えてみれば財務省がちょっとアレな領域に踏み込んでしまっているような言い方(まあこれ自体は議論というよりも事務方謹製のステートメントの口伝みたいなもんでしょうから)をしている、というのは、4月以降の長期(というか超長期)金利の暴れっぷりに対して懸念しているということだし、まあそれだからこそ国債の市中発行の組み換えという通常ベースではあんまりやらんことを期初3か月しか経ってないのに実施した、ってお話ではあると思うのですが、この上財政出せ出せ音頭になるとどうなるんでしょうかねえとは思う所ですな、南無三。
2025/08/06
お題「6月決定会合議事要旨より少々」
今朝の日本農業新聞Webより
https://www.agrinews.co.jp/news/index/323934
2025年8月6日
[ニッポンの米]随契米キャンセル2・9万トン 農水省
随意契約米もさることながら高温被害に関しての方がアレでして、
https://www.agrinews.co.jp/news/index/323937
2025年8月6日
[農家の特報班]高温・渇水アンケート 8割弱が「生産量減る」
『日本農業新聞「農家の特報班」が高温・渇水の影響についてアンケートしたところ、全回答者の8割に当たる84人が「生産量が減る」と回答した。うち半数は「大幅減」としており今後、米や野菜、果樹、畜産、酪農と幅広い品目の供給量に影響が出る可能性がある。まとまった雨量を求める声が多く寄せられた。』(上記URL先より)
でもってこういうことのようです
https://www.agrinews.co.jp/news/index/323905
2025年8月6日
[農家の特報班]高温・渇水影響アンケート 産地打撃容赦なく 【読者提供写真 多数掲載】
うーん・・・・・・(涙)
とにもかくにも食料品価格云々がホットイシューの昨今ですので見つけたら弊駄文でも引き続きマクラのネタにはしていこうかとは存じます。
〇6月会合議事要旨にはいくつか味わいがある部分があったので少々鑑賞をば
総裁会見の続きとかそもそも展望レポート鏡しか見てねえだろとか色々なツッコミはあるのですが、何はともあれ来たものを捌くジジイなので。
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2025/g250617.pdf
政策委員会 金融政策決定会合 議事要旨
(2025年6月16、17日開催分)
『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』からぼちぼちと味わいのある部分を鑑賞していこうかと思います。
・長期金利動向に関する議論があるのだが本邦問題が本丸じゃないのと思ってしまうのだが
『1.経済・物価情勢』の冒頭部分が国際金融資本市場なのですが、
『国際金融資本市場について、委員は、世界経済の先行きを巡る不確実性が引き続き意識されつつも、通商政策に関する各国間の交渉の進展や米国の堅調な経済指標等を背景に、市場センチメントは改善しているとの見方を共有した。』
6月中旬の話であることに留意しながら読みますけれど、この先の部分がですね、
『一人の委員は、注意を要する最近の動きとして、主要国における超長期金利の大幅な上昇を挙げた。』
ほうほうほう!と思ったのですが、
『こうした動きの背景として、この委員は、コロナ禍後に、多くの国でほぼ完全雇用のもとでの高インフレが続いてきたことから、財政の拡張が民間部門の投資をクラウディングアウトし、金利上昇につながりやすくなっている可能性を指摘した。』
うーんそういう経路での金利上昇ってもちろんあり得ない話ではないのですが、それってもっと大昔の時代のようにマネーがそんなに膨張しない世界での話なんじゃないかと思うのですよね。
『別の一人の委員は、国際会議等でも各国の国債市場の状況が議論の焦点となっており、海外市場における不測の動きが国内市場に波及する可能性にも注意を払わなければならない局面に入っているとの見方を示した。』
うーんなんと申しますか、海外発の云々よりもドメスティックな要因の方を気にしてよって話だし、ご案内の通りこのあと7月には参院選の情勢評価の報道を受けて超長期金利があがるわ3年辺りの物国BEIがピンポイントで急縮小するわというのがあった訳で、海外が―とかいう場合ではない気もするのよね。と思って国内の方でどういう話をしてますねんと思いますと、これがまた国内パートの方では、
『2.金融面の動向
わが国の金融環境について、委員は、緩和した状態にあるとの認識で一致した。ある委員は、わが国の金融システムは引き続き安定性を維持しているほか、市場センチメントも改善していると指摘した。』
ってあっさり味で終わっていて、まあこの会合では輪番減額計画の議論があるからそこで市場の話をしているというのはあるにしましても、過度な財政拡張懸念による国内長期金利の上昇についてイシューにならんのかね、とは思ってしまいました。まあ今回の会合ではどういう話になっていたのかは主な意見・・・では出なさそうな気もしますがどうなっているのやら。
・6月の国内経済の話は「まだ判断保留」ってのが多いのはそらそうよという感じですな
でもって海外経済の方はすっ飛ばして国内経済の話を見ますが、
『わが国の景気について、委員は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復しているとの見方を共有した。多くの委員は、前回会合以降の経済動向は、4月の「展望レポート」の見通しに概ね沿ったものであるとの認識を示した。』
『米国の関税政策の実体経済への影響について、何人かの委員は、マインド指標は弱めの動きとなっているが、関税引き上げ前の駆け込み輸出の影響などもあって、これまでのところハードデータは底堅い動きを示していると指摘した。このうちの一人の委員は、4〜5月のハードデータは比較的しっかりしたものが多かったが、関税政策の影響はこれから顕在化すると考えられると付け加えた。ある委員は、米国の関税政策の直接的な影響はまだ表れていないものの、食料品価格の高止まりや関税政策によるマインド悪化などを背景に、わが国経済は、やや足踏み状態にあるとの認識を示した。』
まあこの辺の現状認識はそんなもんじゃろという話で、
『景気の先行きについて、委員は、各国の通商政策等の影響を受けて、海外経済が減速し、わが国企業の収益なども下押しされるもとで、緩和的な金融環境などが下支え要因として作用するものの、成長ペースは鈍化するとみられるが、その後は海外経済が緩やかな成長経路に復していくもとで、成長率を高めていくとみられるとの認識を共有した。』
6月会合は4月展望の見通しを継承しています、というかまあ7月展望もメインは4月展望の継承ですけどね。
『ある委員は、米国の関税政策の影響について、中小企業を含む幅広い業種へのヒアリング結果をみると、先行きの方向性を見出す材料が乏しい中で、判断を留保する先が散見されると指摘した。そのうえで、この委員は、こうした状況がセンチメントの下押し圧力になることは間違いないが、実体経済への影響の大きさについては、今しばらく時間をかけてみていかざるを得ないとの見解を示した。』
この辺は6月時点の話なのでまさにそうですなとしか言いようが無いですにゃ。
『複数の委員は、不確実性は依然として高いものの、米国の関税政策に伴う経済の減速圧力は、前回会合時点で想定していたほど強くない可能性があるとの見方を示した。』
お、6月時点で既に「複数の委員」が4月展望ほど悪くないのでは説を提唱。
『このうちの一人の委員は、自動車・鉄鋼業界等への影響は注視する必要があるものの、米国向け輸出ウエイトの低下や高付加価値製品への転換の動き等を踏まえると、産業全般への波及度合いは、これまでの想定よりも限定的となる可能性があると指摘した。』
この指摘も何回か出ていますな。ただまあ日銀大本営が急に憑依して考えた場合に、この自動車産業に関しては特に大手自動車メーカーさんの賃金設定ってのが賃金設定行動の中で影響力が結構あるので、そういう意味では直接的な影響だけではない形での企業行動への影響というのがあるんでネーノ、ってまあそんな話をしてくると思います。
『一方で、ある委員は、法人企業統計をみると、企業の稼ぐ力と賃上げ余力は改善しているが、中小企業に限ると賃上げと設備投資の両立が難しい様子が窺われると述べたうえで、日本経済は「賃上げと投資が牽引する成長型経済」へ移行できるか、スタグフレーションに陥るかの分岐点にあるとの見方を示した。』
この会合が最終回だった中村委員の発言の香りがだいぶするのですが、中村委員の「大企業だけではなく中小企業の生産性が向上して収益力上がらんと持続的な物価上昇と賃金上昇が進まん(ので緩和を継続して中小企業の生産性向上を支援する)」って理屈も分からんではないのですが、そもそも論として「2%の招待状」にあるように、2%物価上昇による原材料価格上昇に対して価格転嫁できないような競争力の無い企業とか、2%物価上昇による生活給支給のための賃金引上げができないような生産性の低い企業とかが不景気などの経済全般にかかわるような痛みを伴わずに自然に淘汰されていく(ので労働者の移動が大きな痛みを伴わずに進むことが期待される)、ってのが2%物価上昇の世界じゃろ、っていう話でもあったはずなんで、そこを1から10までケアしていくと過剰に拡張的な金融政策にならんのかね、とは思うんですよね。
いやまあこの件自体は目先の現世利益的にはあまり関係ない話かもしれませんけど、中村委員にこのあたりのバランスをどう考えるのか、というのを一度お伺いしてみたい気がします。
・個別項目:設備投資・個人消費・雇用所得環境
個別項目のポイントはまあこの3点でしょうから6月時点での評価を確認しておきましょう。
『設備投資について、委員は、企業収益が改善傾向にあるもとで、緩やかな増加傾向にあるとの認識で一致した。』
でもって、
『複数の委員は、人手不足を補う投資などは今後も堅調を維持するとみられるが、関税政策を巡る不確実性に伴う投資マインドの悪化は注視していく必要があるとの見解を示した。』
『このうちの一人の委員は、この点に関連し、これまでのところ、とりあえず様子見という先はあるものの、設備投資の取り止めを決定したという話はあまり聞かれていないと述べたうえで、今後、状況が急変することもあり得るので、ミクロ情報を丁寧に捕捉することが重要であるとの認識を示した。』
『別の一人の委員は、企業のヒアリング情報では、米国の関税政策を受けても、@DXや効率化投資など、高水準の設備投資は継続的に実施する、A株主の期待に応えるため、収益増強のためには投資をしっかりと行っていく、とする企業が多いと指摘した。』
今後どうなるかはワカランチ会長、ってのはそらそうよという感じですが、トーンとしては暗くは無いですね。
『個人消費について、委員は、物価上昇の影響などから消費者マインドに弱さがみられるものの、雇用・所得環境の改善を背景に緩やかな増加基調を維持しているとの認識で一致した。』
ということで消費ですが、
『ある委員は、消費者の節約志向がみられる中でも、マクロ統計からみた消費が腰折れしていない理由としては、政府の施策や賃上げへの期待、堅調なインバウンド消費などに支えられている面も大きいとの見解を示した。また、この委員は、今後、関税政策に伴う企業業績の下振れに関する報道が増えてくると思われるので、これが個人のセンチメントにどのような影響を及ぼすのか、みていきたいと述べた。』
まあ関税政策一発で急にマインドが腰折れするというよりは生活品価格の上昇の方が効くじゃろと自分の財布を見ながら思う訳ですが、「マクロ統計からみた消費が腰折れしていない」ってのは確かに謎(じっと財布を見る)でして、7月展望の時にどういう話になっていたのか気になりますな。
『雇用・所得環境について、委員は、緩やかに改善しているとの見方を共有した。』
でもって、
『複数の委員は、米国の関税政策の影響は、今年の春季労使交渉の妥結結果にはみられていないと指摘したうえで、今後影響が表れるとすれば冬季賞与からであろうとの見方を示した。』
ということで、米国の関税の影響が企業行動を下方屈曲させるか否かを見極めるためには冬季賞与と来年の賃金改定の動きを見たい、という理屈になるわけですな、まあここは順当ですが明示的に書かれたという点でほほーと思いました。
『この点に関連して、別の複数の委員は、企業のヒアリング情報では、人手不足に直面する中、米国の関税政策を受けても、引き続き賃上げに取り組むとする先が多いと指摘した。』
『一方、ある委員は、2025 年度の中小企業の賃上げ実施割合が前年から幾分低下したとの調査もあり、中小企業の賃上げ余力の低下が懸念されるとの見解を示した。』
『この間、一人の委員は、一人当たり実質賃金の前年比は足もとマイナスとなっているが、働き方改革が進んで労働時間が減少する中、時間当たりの実質賃金が上昇していることも、併せて評価する必要があると指摘した。そのうえで、この委員は、@労働生産性の改善が実質賃金にどの程度反映されているか、A生産性の高い企業への労働移動がどの程度生じているのか、といった観点から、労働市場の動向を注視していくことが必要との見解を示した。』
時間当たりの実質賃金上昇したとて別に仕事掛け持ちできるわけでもないので意味ないんですが、というのは無粋なツッコミですが(涙)、後半の注目すべき観点の話はまあそうですねと思いました。
・6月半ばの時点で現状様子見地蔵はまあそうじゃろという話ですが・・・・・・・
『W.金融政策運営に関する委員会の検討の概要』に飛びまして、
『以上のような金融経済情勢に関する認識 と長期国債買入れの減額計画に関する執行部説明を踏まえ、委員は、金融政策運営に関する議論を行った。』
『まず、委員は、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針について議論し、「無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0.5%程度で推移するよう促す」という方針を維持することが適当であるとの見解で一致した。多くの委員は、物価がやや上振れているとはいえ、先行きの不確実性は高く、米国の関税政策や中東情勢に伴う景気下振れリスクがあることを踏まえると、経済情勢を見極めることが必要であり、現状の金融政策運営を維持することが適当であるとの見方を示した。』
そりゃまあそうじゃろという話ですが、
『ある委員は、@先行き、中心的な見通しに沿ったとしても、成長ペースが鈍化し、基調的な物価上昇率の改善がいったんは足踏みする姿を想定していること、A通商政策を巡る米国と各国の交渉は始まったばかりであり、大きな不透明性やダウンサイドリスクがあることから、今は、現在の金利水準で緩和的な金融環境を維持し、経済をしっかりと支えるべきであるとの見解を示した。』
この意見、Aの方はさておきまして、@って確かにそういう理屈が成り立つんですよね。メインシナリオでは基調物価が足踏みするって言ってるんだから。
ただし、これ毎度思うのですが、この理屈って実質的な金融緩和度合いが(名目の金融政策を維持する中で)どう変化しているのか、って話を抜きにして考えるのもこれまたおかしい話で、一方で基調的な物価が上昇を続けているという認識なのであれば、名目の政策金利を不変にしているというのは「金融緩和の追加措置」をしているのと同義ってことになるので、本当に現時点で最適金融政策になっているのか(据え置きによって過剰緩和になっていないか)、っていうツッコミをしたくなる訳ですよ。
まあ結局のところ、基調的物価と中立金利を足元の政策運営の説明に使って最適金融政策みたいな説明をおっぱじめると理屈がだんだん苦しくなってくる(大幅に前の時のように物価が精々1%の時ならこの説明はクソ便利だったのだが)訳でして、まあこの辺の説明はいちどリセットして組みなおした方がエエンチャウとしか申し上げようがないですな。
『別のある委員は、現在は、1月に決定した政策金利引き上げの経済・物価に対する影響を見守る局面であるとの認識を示した。』
結局「まあわからんからとりあえず様子見しますわ」というこの理屈で行く方が(頭悪そうに見えるからあんまりやりたくないかもしれないけど)まだ分かりやすいと思うんですけどね。
まあそれはさておき先行き政策。
『先行きの金融政策運営について、委員は、経済・物価の中心的な見通しが実現していくとすれば、経済・物価情勢の改善に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくという考え方を共有した。』
はい。
『そのうえで、こうした見通しが実現していくかについては、各国の通商政策等の今後の展開やその影響を巡る不確実性がきわめて高い状況にあることを踏まえ、内外の経済・物価情勢や金融市場の動向等を丁寧に確認し、予断を持たずに判断していくことが重要であるとの認識で一致した。』
これはまあ6月中旬だからこういう話になるのは順当で、7月会合でどういう話になったのかは注目したいので、「主な意見」で何出ますかねってな所ではあります。
『複数の委員は、堅調な賃金や若干上振れ気味の物価を念頭に置くと、通商問題が穏当なかたちで推移する見通しになってくれば、現在の様子見モードから脱却し、利上げプロセスの再開を考えることになるとの見方を示した。』
若干上振れ気味どころか見通しがこの1か月後に+0.5%も上がっていますがwwwwというのはさておきまして、複数の委員がこう言いました、ってのが6月時点で出てきている時点でまあ7月決定会合における総裁会見程のハトハトチキンではないというのが伝わる部分ですね。
『一人の委員は、不確実性の高さを踏まえると、利上げの動きは当面休止する局面と考えられるが、米国の政策動向によって再び利上げ局面へ回帰する柔軟かつ機動的な対応も求められるとの認識を示した。』
あら休止とか言ってる人もこうなんですね。
『ある委員は、インフレが想定対比、上振れて推移する中、たとえ不確実性が高い状況にあっても、金融緩和度合いの調整を果断に進めるべき局面もあり得ると述べた。』
物価が上がっているんだから緩和度合いが高まっている筈なのでその分の調整をするのが妥当、という理屈で攻めると大本営はどういう顔をするんでしょうか、ってのは見たい気がします笑。
『これに対して別のある委員は、わが国の経済については先行きの不確実性が非常に高く、下方リスクの厚い状況が続いていると指摘したうえで、企業業績や日米通商交渉の方向性がみえてくるのはまだ先であり、政策金利は当面、現状の水準を維持することが適当であるとの認識を示した。』
でまあ企業業績はさておき日米交渉がまあカツアゲトラ公対応としては穏当な線にとどまったのでさてこの方は7月にどういう見解になっているのか、というのも見てみたいですね(中々わからんと思うが)。
・長期国債買入減額は市場云々よりも本来は日銀バランスシートの問題
長期国債買入の件がこの会合ではあったわけですが。
『次に、委員は、長期国債買入れの減額計画について議論した。』
『委員は、長期金利は金融市場において形成されることが基本であり、日本銀行による長期国債の買入れは、国債市場の安定に配慮するための柔軟性を確保しつつ、予見可能なかたちで減額していくことが適切であるとの認識で一致した。そのうえで、委員は、先行きの予見可能性に配慮する観点から、減額方針を示す期間を
2026 年度末まで1年延長することが適当であるとの認識を共有した。』
そんな先まで決めうちする必要があったのか問題というのがあって、それこそ2%目標が前倒しで達成出来て、何なら物価のオーバーシュートが懸念されるようになった時に、長期国債を月額何兆円とか能天気に買っていていいのか問題が生じるようなことだってあり得るのですから、これはフォワードガイダンス政策の時間的不整合と同じ問題を起こす可能性がある、という点をもう少し皆さん考えた方が良いんじゃないの、と思います。
『また、柔軟性を確保する観点から、@来年6月の決定会合において、国債市場の動向や機能度を点検し、新たな減額計画の中間評価を行うこと、A従来同様、長期金利が急激に上昇する場合には、毎月の買入れ予定額にかかわらず、機動的に買入れ額の増額や指値オペ等を実施し得ると
すること、B必要な場合には、決定会合において減額計画を見直すこともあり得ること、を明らかにすることが適切であるとの認識で一致した。』
クソどうでもいいのだが何で金融政策決定会合の来年度の予定が7月会合なのに長期国債買入の来年度の予定が6月会合で決められるんだよと思いました笑。
でまあこうやって市場配慮の話ばっかりしているのですが、途中飛ばして抜刀斎の意見を見ますとなんと実は同調者がいたようで・・・・・・
・実は抜刀斎にちょっとだけだけど同調者がいた件について
『これらの議論に対し、ある委員は、2026 年4月以降も、原則として毎四半期
4,000 億円程度ずつ減額していくことが適切であるとの意見を述べた。』
議案出ていたのでこれは抜刀斎であることは明白。
『その理由として、この委員は、長期金利の形成は市場と市場参加者に委ねるべきであり、可能な限り早く、日本銀行の国債保有残高の水準を正常化することが必要としたうえで、この点は、金融市場のショック吸収力を一刻も早く高める観点からも重要である
との見解を示した。』
ふむふむ。
『また、この委員は、金融機関の金利リスクテイク余力の観点からは、国債の発行年限や変動利付債の発行規模が、将来的にどうなるかという点が大事であると指摘したうえで、日本銀行の国債買入れに対する市場の期待を高めるべきではないと述べた。』
本来長期国債買入は成長通貨見合いの長期資産を持っておくのが通常の短期市場金利の調節技術上便利だから行う物であって、それ以上のものを中央銀行の長期国債買入に求める、というのが財政ファイナンスの第一歩になる、というお話な訳ですよ。まあそれを忘れたアホウ議論が先の方にありますけど。
『これに加え、この委員は、国債保有残高を早めに減らしておくことにより、市場機能に悪影響を与えない範囲で、相応のインパクトがある規模の量的緩和(QE)を実施し得る余地を確保しておくことも重要であると付け加えた。』
これに対してなんと抜刀斎の同調者がいて、
『この委員の意見に関して、一人の委員は、市場の機能度はなお回復途上であるため、買入れ額を可能な限り早めに減らしておくという考えのもと、4,000
億円の減額ペースを維持することにも妥当性はあるとの見解を示したうえで、』
というのは一人いたのですが、まあ結論は
『市場への配慮やタイミングを考えれば、来年3月までは 4,000 億円の減額ペースを維持し、その後に2,000
億円に緩める案を支持したいと述べた。』
なので結局抜刀斎一人旅ではあるのですが、一応いたのねという話。
・だから中央銀行の国債買入を非常時以外の市場安定策に使うなと小一時間問い詰めたい
途中飛ばしてちょっと先に行きますが、
『このほか、委員は、先行きの目指すべき国債買入れ額などについても議論した。』
という話だが、
『何人かの委員は、市場参加者の中には、国債買入れの着地点は月間1〜2兆円とする声が多いと指摘したうえで、最終的な買入れ額を検討するにあたっては、様々な論点があるため、来年6月の中間評価に向けてしっかり考えていきたいと述べた。』
根本的に言ってることが間違っていて、中銀の国債買入を市場安定策に平常時に使うというのがダメダメなんですけれども、
『この点に関連して、一人の委員は、市場の安定性を確保する観点から、ある程度の額の国債買入れは続けていくべきであり、そうした安定性を犠牲にしてまで買入れ額を急いで減らす必要はないとの見方を示した。』
いやもうこれは突発性海原雄山になって「この意見を言ったのは誰だあ!(ガラッ)」ってなる話。単純にそれは財政ファイナンスです何言ってるんですかこの人は。
『これに対して、別の一人の委員は、1年後に改めて議論すべきであるが、国債買入れ額はゼロまで段階的に減額していくことが望ましいとの
考えを示した。』
んだんだ。
『一方、ある委員は、今後、例えば月間の国債買入れ額が1兆円程度にまで減少すれば、日本銀行の国債買入れが市場で話題になることもなくなると思われるため、買入れ額をゼロにすることに強く拘る必要はないのではないか、との見解を示した。』
それ今の国債残高を見てから言って欲しいんだよな〜。
成長通貨見合いとか、短期金融市場調節の観点からバランスシート構成を決めて、そこから考えるとだいたいこの程度の買入を行っていくと適切なバランススート構成になる、という観点からデザインすべき話ってのがもうすっかりどこかに行ってるな(一部のちゃんとした方を除く)って感じです。
『このほか、別のある委員は、この1年間を振り返ると、超長期債市場における需給バランス等、市場構造が変化した面もあり、1年後に改めて中間評価を行い、先行きの買入れについて検討する必要がある
との認識を示した。』
という発想が既に財政ファイナンスなんですよね。別に売れとかそういう話している訳ではないのですが、それこそインフレ期待や基調物価が上振れしてガチの金融引き締めをしないといけないときにこの長期国債残高は大変な重荷になるんだから減らせるもんは減らせよと思うのですよね。従来はそこをいうのは杞憂民にも程があったかもしれませんがさすがにだんだんただの杞憂とは言い難くなっているように思えるのですが・・・・・(個人の感想です)
それに関連して今日はこんなのもしらっと出ていましたね
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-08-05/SYSND8DWLU6800
日銀の金融機関への付利負担が急増、年内利上げ観測で財務悪化に注目
青木勝、氏兼敬子
2025年8月6日 6:00 JST
ということで、バランスシートの話はちょっと明日に続くかもしれません。今朝は時間の都合上この辺で勘弁。
2025/08/04
〇展望レポート基本的見解を一旦すっ飛ばして背景説明のBOXを鑑賞しますと政策金利調整時期は基本来年頭だがリスクは・・・・
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2507b.pdf
経済・物価情勢の展望
2025 年7月
いつものようにとりあえずBOXを見ますが、お題は以下の通り。
(BOX1)各国の通商政策の動きとその影響:アップデート
(BOX2)不確実性と設備投資
(BOX3)最近の食料品価格上昇の背景とその影響
・米国の関税効果に関して:賃金設定への影響をみたいです、といういつもの結論になっております
まずは『(BOX1)各国の通商政策の動きとその影響:アップデート』 から参ります。最初の方の状況の説明部分は飛ばしまして途中から参りますと、
『米国の関税引き上げは、様々なチャネルを通じて、わが国経済に影響を及ぼす。前回4月の展望レポートで整理したとおり、具体的な波及経路としては、主として、@関税コスト負担の直接効果、A世界の貿易活動の縮小を通じた間接効果、B不確実性の高まり、という3つの経路が考えられる(図表
B1-2)。』
でもって、
『以下では、これらのうち、@直接効果とA間接効果について、足もとまでに利用可能となっているデータから、生じている変化を整理する21。』
とのことです。
『まず、直接効果については、輸出企業が関税によるコスト増加をどの程度、米国での販売価格に転嫁するかによって、負担の主体や割合は変わってくる。』
はい。
『すなわち、関税コストの増加分が、販売価格に完全に転嫁されれば、米国国内の消費者や企業が関税分を全て負担することになる(ただし、この場合、米国で競合する財がある場合、輸出企業の価格競争力は低下する)。一方、わが国を含む海外の輸出企業が、現地販売価格を変えず関税負担を輸出価格の引き下げで全て吸収すれば、輸出国に負担が発生することになる。当然のことながら、これら両者の中間的なケースもありうる。』
さいですな。
『この点、既に 25%の関税引き上げに直面している日本から米国向けの自動車輸出の価格動向をみると、(関税分を含まない)輸出単価や契約通貨建ての輸出物価は、4月以降、2割程度も下落した(図表
B1-3)。』
(ノ∀`)アチャー
『こうした動きは、日本の自動車メーカーは、現地の販売価格上昇による数量減を回避する一方で、輸出採算の悪化というかたちで収益を悪化させていることを示唆している。』
まあそうなんですけれども、さくらレポートだと「うちの製品は競争力あるから関税分は基本的に価格転嫁」とか言ってる企業の声みたいなのが上がっていたのに対して自動車メーカー関税モロ負担かよと思ってしまいました。
実際にはこの収益減によって賃金上げないだの部品メーカーに対して納入価格引き下げ圧力が掛かるだのという話になるとまさに日銀が懸念している、ということになっている「企業行動の後戻り」になってしまうのですが、ゆうて単純に販売価格下げっぱなしなのかねという点はどうなんでしょうかね、とは思いました。知らんけど。
『次に、間接効果は、関税引き上げによる世界貿易量の減少や企業の生産活動の停滞を通じて、わが国の輸出にも下押し圧力が及ぶ効果である(前掲図表5、図表
B1-4)。』
これが何で問題になるかというと、
『わが国の輸出は、資本財や自動車関連、情報関連など世界貿易量への感応度の比較的高い財が多いため、世界貿易活動のアップダウンは、わが国実質輸出の変動につながりやすいとみられる(図表
B1-5)。』
だそうで、
『このため、先行き、世界貿易量が、駆け込みの反動減の影響を受けながら減少していくとすれば、日本の輸出への下押し圧力も明確になっていくと予想される。さらに、各国一律の「相互関税」に加えて、今後、半導体等の分野別関税や高関税率となっているアジア各国への「相互関税」の上乗せ分の多くが発動されれば、わが国とサプライチェーンの結びつきが強い東アジア地域の貿易活動やITサイクルへの悪影響を通じて、情報関連を中心にわが国の輸出が一段と下押しされるリスクにも注意する必要がある。』
ということですが、「相互関税」がカッコつきになっているのが味わいあるなと思いました。だって別に日本から米国に関税上乗せしている訳でもないのに何が「相互」関税じゃヴォケと兼ねてよりワシも思っていたのですが、このカッコ付ってそういう意味ですよねwwwwww
でもってその結論ですが、
『以上のような米国の関税引き上げによる直接・間接の影響により、今年度のわが国企業収益は減益となる可能性が高まっている22。実際、2025
年6 月短観で今年度の経常利益計画をみると、非製造業は底堅く推移する一方、製造業は、加工業種を中心に減益計画となっている(図表
B1-6)。』
からの、
『このような見通しが実現する場合には、先行きの賞与やベースアップなど企業による賃金設定行動にも影響を与えうるだけに、今後の動向を注意してみていく必要がある。』
ということで、これ以前からの説明と同じではあるのですが、賃金設定行動の見極めが必要。といういつもの理屈になりますので、そうなると今年度入り後の業績を反映した冬季賞与の設定と、来年度の賃金設定に向けた動きを確認したい、という理屈になるので、そうなりますとまあ最速で12月ですが、まあ普通に考えて1月か3月の政策調整、というお話になるわけですな、うんうん。
・設備投資への影響は短観をあと1回か2回確認するという話になりますなあ
2番目の『(BOX2)不確実性と設備投資 』に参ります。
『本BOXでは、各国の通商政策に伴う不確実性の高まりが、設備投資に与える影響を点検する。』
ちなみにこの点、直近の支店長会議では
https://www.boj.or.jp/research/brp/rer/rera250710.htm
各地域からみた景気の現状(2025年7月支店長会議における報告)
『各国の通商政策の影響に関して(注)、現時点では、設備投資について、不確実性の高まりを背景に投資の先送りや見直しを検討・実施する動きがみられるとの報告があった一方、IT関連需要の拡大期待に基づく能力増強投資や、人手不足対応や生産性向上を目的とした省力化・デジタル化投資などで積極的な投資スタンスが維持されているとの報告もあった。』(この部分のみ直上URL先の2025年7月支店長会議報告より)
となっています。
『まず、不確実性の高さを示す各種指標をみると、米国の関税引き上げの発表直後は、VIX指数(Volatility
Index)が急激に上昇するなど、金融市場で不安定な動きがみられたが、足もとでは落ち着きを取り戻しつつある(図表
B2-1)。一方、わが国の新聞の関連報道等から作成した通商政策不確実性指数をみると、4月のピークから低下しているとはいえ、歴史的には依然として高い水準となっており、企業が支出行動を意思決定するに当たり、不透明感の強い状態が続いてきたことが示唆される。』
『7月 23 日(日本時間)の日米合意を受け、不確実性は一定程度低下するとみられるが、米国との通商交渉がなお妥結していない国も存在しているほか、米国における関税の価格転嫁の動向も含めた関税の経済的影響についても、不確実性は残っている。』
この辺は前提の話ですので次行きますと、
『次に、こうした通商政策を始めとする政策面の不確実性の高まりが企業の設備投資に与える影響をみるため、簡単なVARモデルを推計すると、政策不確実性指数の高まりは、金融変数の影響をコントロールした場合、多少の時間をかけて設備投資の下押し圧力となっていくことが実証的に確認できる(図表
B2-2)。』
ってことで『図表B2-2:不確実性の設備投資への影響(水準への効果、GDP寄与度、%ポイント)』ってのがあるのですが、脚注を見ると、
『(注)政策不確実性指数、VIX指数、実質GDP、実質個人消費、実質設備投資、総実労働時間、GDPデフレーター、無担保コールO/N金利(無担保コールO/N金利以外は対数値)からなるVARモデルを推計し、政策不確実性指数+1σショックに対する実質設備投資のインパルス応答を算出。推計期間は、1994/1Q〜2024/4Q。シャドーは、95%信頼区間。』
ということで分析しているんだが、1994年から期間取っているのは何でじゃ(いわゆる「3つの過剰」が段々大きな問題と認識されてきた時期からスタートしているってのが気になるんですよねワシとしては)とか微妙によくわからんところではありますが、まあよくわからん。
ちなみにネタにしませんでしたが、5月の終わりにこんなのが出ていまして、
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2025/wp25j04.htm
わが国における設備投資の金利感応度
― パネルLP-IVを用いた検証 ―
全文はこちら
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2025/data/wp25j04.pdf
わが国における設備投資の金利感応度
― パネル LP-IV を用いた検証 ―
なお詳しく読んでいないのでこちらに関してはこういうのありますよというご紹介のみです。
でもって話を戻すと、
『この点、短観で今年度の設備投資計画をみると、3月調査から6月調査にかけて概ね例年のパターンに沿って上方修正されており、これまでのところ変調の兆しは窺われていない(前掲図表
19)。』
『この結果は、製造業大企業を中心にはっきりとした減益が予想されるなかでも、中期経営計画等で決定した案件を中心に、人手不足対応のDX投資や成長分野への研究開発投資などを積極的に実施するスタンスを変更していないことを示唆しているとの見方も可能である。』
可能である、という結びになっている時点で次の展開がお察しですけれども、
『もっとも、大企業の設備投資計画について、負のショックで減益等となった年度の修正の足取りを確認すると(図表
B2-3)、その時々のショック発生のタイミングにもよるが、総じてみれば、設備投資計画が6月調査時点で腰折れすることはまれで、年度後半にかけて下方修正されていくケースの方が多いことが分かる。』
キタコレ!!!!!!!!!!!
ということでございますので・・・・・・・・
『こうした過去のパターンを踏まえると、企業が、各国の通商政策や貿易交渉の今後の展開を睨みながら、現時点では設備投資に関する意思決定を先送りしている可能性も否定できない。』
ほうほう。
『こうした可能性も念頭に置いて、企業の投資スタンスの短期的な変化が表れれやすい各種の先行指標をみると、@工作機械受注・内需は、自動車関連メーカーからの発注減を主因に足もとで弱めの動きとなっているほか、A設備投資意欲DIも、このところ輸送用機械を中心に幾分低下している点には留意する必要がある(図表
B2-4)。』
ほう。
『また、本年7月の「地域経済報告(さくらレポート)」でも紹介されているとおり、企業ヒアリングでは、積極的な投資スタンスを維持するとの声が聞かれている一方、通商政策を巡る不確実性の高さから、設備投資計画の見直しを検討しているとの声や、実際に一部の能増投資を先送りしたとの声も聞かれている。』
さっき引用した部分が簡単なまとめですね。
『通商政策を巡る不確実性の高まりが設備投資に与える影響については、時間をかけて顕在化してくる可能性もあるため、今後のデータやヒアリング情報を丹念に点検していく必要がある。』
という結論でして、まあこれ自体はご尤もなお話なんですけれども、総裁会見(今日はそこまでネタにしている時間がないですがどうせ今回は急ぐ話でもないのでボチボチと成敗して参ります)では「通商政策の影響はこれから出てくる」という話を連呼するもんだから「こいつ政策調整やる気ないハトハトだわ」という話になってしまう訳でして、なんちゅうかコマッタモンダよなとは思います。
でもってですね、じゃあ本件に関してはどうですねんという話ですが、『図表B2-3:負のショック時の設備投資計画』という図に、
『(注)1. 短観ベース(全産業大企業)。2003/12月調査以前は、金融機関を含まない。
2. ソフトウェア投資額・研究開発投資額を含み、土地投資額は含まない(2016/12月調査以前は、研究開発投資額を含まない。また、2003/12月調査以前は、ソフトウェア投資額を含まず、土地投資額を含む)。
3. 過去の年度は、1997年度:アジア通貨危機、2000年度:ITバブルの崩壊、2008年度:リーマン・ショック、2019年度:米中貿易摩擦、2020年度:コロナ禍。』
ってのがあります次第でして、このグラフを見ますと9月短観と12月短観を見て判断(9月時点でコケれば9月で判断)って感じですので、これまた12月短観結果が出てくるのが12月決定会合の直前になるので、つまりは12月か1月には関税政策が設備投資行動に与える影響については分かります、ってお話になろうかとは思います。
ということでここまでのBOXは9月10月の政策調整を示唆しない内容なのですが・・・・・・・・・
・物価上振れリスクについて:
最後が『(BOX3)最近の食料品価格上昇の背景とその影響 』です。
『過去1年間の物価動向を振り返ると、消費者物価(除く生鮮食品・エネルギー)の前年比は、昨年7月の+1.9%をボトムに本年6月の+3.4%へと、+1.5%ポイント、プラス幅を拡大してきた(図表
B3-1)。』
ちなみにこの間の日銀様の想定ですが、展望レポート・ハイライトを見ますとご案内の通りで、
2024年7月展望レポート
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/highlight/ten202407.htm
物価は来年度以降2%程度で推移する
2024年10月展望レポート
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/highlight/ten202410.htm
物価は来年度以降2%程度で推移する
2%に向けてダッシュ(2024/07)してみたりパラグライダーで着陸(2024/10)してみたりということで、物価安定目標を標榜しているのに全然お前の見通しに沿ってないじゃん何が物価安定じゃヴォケといったところですが、
『この間、米などの食料品価格の前年比は+2.7%(除く生鮮食品・エネルギーに対する寄与度+0.7%ポイント)から、+8.4%(同+2.2%ポイント)と大幅に上昇しており、ここ1年間の物価上昇率加速の大半は、食料品価格の上昇によって説明できることがわかる23。』
でもって脚注23なのですが、
『23 ここでの食料品価格は、消費者物価(食料除く生鮮食品・酒類)を指す』
ってことなので生鮮を除くベースの話をしているので。
『他方、消費者物価(除く食料・エネルギー)の前年比は、+1%台半ばで安定的に推移している。』
という話になっているのですが、そもそも生鮮の場合は天候要因のワンオフって説明をするのはまあ良いんですけど、食料品価格の上昇って言った場合にはそらワンオフなのかって話になると思うのですが先に進みまして、
『本BOXでは、最近の物価上昇をけん引している食料品価格上昇の背景とその影響について、考察する。』
ということで始まり始まり。
『品目別にみて、この1年間の食料品価格上昇に最も大きく寄与しているのは、米価格である。』
で??
『米価格は、消費者物価総合に対するウエイトでみて0.6%(1万分の 62)に過ぎないが、足もとでは前年比+100%近い上昇率となっており、本年6月の除く生鮮食品・エネルギーの前年比に対する寄与度は+0.7%ポイントと、大きな押し上げ要因となっている。』
だから2025年度見通しを+0.5も上方修正した、と言いたいんでしょうけれども別に4-6で急に前年同月比2倍になった訳ではなくてその前から問題になっていたと思うのですが・・・・・・・・・
『こうした米価格の上昇には、天候要因による供給量の減少と昨年夏の南海トラフ地震臨時情報に伴う需要拡大が重なって発生した超過需要が、直接的な起点となったことが指摘されている24。』
逆に言えばその時点で米価格のある程度の上昇を見通しに何で織り込んでなかったのあんさんら。
『やや長い目でみると、2022 年以降、輸入物価が大幅に上昇するなかでも、@肥料代や燃料費などの農業生産コストの転嫁があまり進んでいなかったことに加えて、Aパンや麺類など他の食料品価格と比較した相対価格が大幅に低下していたことも、最近の米価格上昇の背景にあるとみられる。』
日本農業新聞を読むと吉(日本農業新聞社の回し者ではありません)
『米以外の食料品でも、菓子類や調理食品など幅広い品目の価格が上昇している。』
さいですな。
『その背景を定量的に把握するため、輸入物価(飲食料品)、消費者物価(米類)、消費者物価(食料除く米類)、失業率ギャップ、中長期インフレ予想からなる5変数VARモデルを推計した。』
ナンジャソラと思いますがまあさて先に進みますと、
『ヒストリカル分解の結果をみると、米以外の食料品の価格上昇には、@米価格上昇の波及効果(具体的には、おにぎりや無菌包装米飯、すし弁当等の価格上昇)に加え、A輸入食料品の価格上昇も、チョコレートやコーヒーの価格上昇というかたちで大きく寄与してきたことが確認できる(図表
B3-2)25。』
『図表B3-2:米類を除く食料品価格の動向』ってのを鑑賞してみてください。
『後者の輸入食料品価格上昇の背景を詳しくみるため、主要な食料品の国際商品市況の動向を振り返ると、小麦や大豆の価格は、ロシアのウクライナ侵攻後に大幅に上昇したあと、足もとでは落ち着きを取り戻している。一方、コーヒーやカカオ等の価格は、気候変動による天候不順の影響もあってか、2023
年以降、急激かつ大幅に上昇している。』
『これらの国際商品市況の上昇を受けて、円建ての輸入食料品価格の前年比は、為替要因が下押しに作用するもとでも上昇傾向にあり、輸入物価全体とはやや異なる動きを示している(図表B3-3、前掲図表
43)。』
問題はこれがワンオフなのか不可逆なのかという話になるんですけど・・・・・・
『米価格や輸入食料品価格の上昇の価格転嫁が進んでいる背景には、食料品メーカーが価格設定スタンスを積極化させている点も影響しているとみられる。』
キタコレ!
『実際、短観の物価全般の見通しをみても、食料品製造業のインフレ予想は、2014
年の調査開始以降、全産業と概ね同様の動きを続けてきたが、2022 年以降は、企業が直面するコスト上昇を背景に、全産業をはっきりと上回るペースで上昇している(図表
B3-4)。』
『図表B3-4:物価見通し(短観・5年後)』ってのは面白いです。さらに・・・・・・
『また、食料品は、ガソリン等と並んで、消費者の購入頻度が高く、人々の注目度も高いため、食料品価格の上昇は、この間の短期的なインフレ予想の高まりにも寄与してきた可能性がある。』
思いっきり寄与してるだろ(何なら中長期インフレ期待にだって寄与していると思うが)。
『実際、景気ウォッチャー調査のコメントから機械学習の手法を用いて作成される「物価センチメント指数(PSI)」26には、』
『26 PSIの詳細は、日本銀行ワーキングペーパー「機械学習による景気分析―『景気ウォッチャー調査』のテキストマイニング―」(No.18-J-8)を参照。』
これはだいぶ前のですが
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2018/wp18j08.htm
機械学習による景気分析
―「景気ウォッチャー調査」のテキストマイニング―
(全文)
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2018/data/wp18j08.pdf
になります。これはちゃんと読んだ覚えがあんまりない(汗)。
『ガソリン価格と並んで、食料品価格も有意な影響を及ぼしていることが統計的に確認できる(図表 B3-5)。』
だそうで、
『PSIは、1四半期程度先の消費者物価に対して予測力を有することから27、この間の食料品価格の上昇・高止まりは、短期インフレ予想の上昇を通じて、小売店舗の価格形成にも何らかのインパクトを及ぼしてきた可能性が高いとみられる。』
まあそうじゃろって体感的には思いますが、これって要するに「食品価格の上昇は供給ショックによるワンオフなだけではなくて、短期インフレ期待の上昇を背景にした面がある」という指摘でして、
『こうした食料品価格の上昇が相応の持続性を持って進行してきた重要な要因としては、この間の個人消費の底堅さも指摘できる。』
しらっと「供給要因だけじゃない」という話の続きでド直球の「需要要因」の指摘が来ます!!
『一般に、食料品価格の上昇による実質所得の減少は、個人消費にマイナスの影響を及ぼす。』
『もっとも、2024 年以降の実質可処分所得の動きをみると、春季労使交渉を反映した賃上げと雇用者数の増加により雇用者所得がはっきりと改善してきたことが、食料品価格上昇による下押し効果を相殺している(図表B3-6)。』
キタコレですな。
『雇用者数の増加は、女性を中心とした労働力率の上昇によってもたらされている(前掲図表
22)。この点を詳しくみるため、労働力フローの分析を行ってみると、2020 年代以降は、非労働力だった人々が新規に労働市場に参入したことが労働力率の上昇につながっていることが窺われる(図表B3-7@)。一方、2010
年代の労働力率の上昇は、定年延長や再雇用制度によって、既存の労働力が非労働力化する動きが抑制されてきたことも影響している(図表
B3-7A)。』
からの、
『今回の展望レポートの中心的な見通しでは、食料品価格の上昇は本年度後半にかけて一巡していくと想定しているが、食料品は消費者の購入頻度が高いものであるだけに、それが家計のコンフィデンスやインフレ予想、および個人消費に与える影響には、引き続き注意していく必要がある。』
という結論になっていまして、これすなわちアクチュアルの物価が日銀想定のように下がらない場合に、インフレ期待の上昇を通じるのが多分メインだと思うのですが、物価上振れの可能性があるってのが基本的見解のリスク要因にもありましたし、結構今回ちゃんと考察している訳でして、まあこれが前面に出てくるには物価が上振れくらいしないとって話だとは思いますが、別の要因(物価高放置批判とか円安振れて対応求められるとか)によって政策金利調整を前倒しするときの「美しい言い訳」に使う準備は出来ている、という感じなんじゃないかと思いました。メインシナリオではないと思いますけど・・・・・・・
2025/08/01
お題「決定会合レビュー」
あらあらまあまあ
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-07-31/SVYRELDWX2PT00
円が対ドルで150円台後半に下落、3月来の安値−日米金利差意識
清原真里
2025年7月31日 19:57 JST 更新日時 2025年7月31日 23:47 JST
『円は一時0.8%安の150円63銭まで下落した。日本銀行の植田和男総裁の会見で、期待されたほど利上げに積極的な姿勢が示されず、円売りが優勢となった。米国ではパウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長の発言を受けて利下げ期待が後退し、日米金利差はすぐには縮まらないとの見方が広がっている。』(上記URL先より)
・・・・昨日は展望レポートの数字が出た所で円高債券安になりましたが内容を読んでいるうちに徐々に戻って記者会見がハトハトチキン音頭になった所で円安アイヤーとなった、とまあそんな展開でしてハトハトチキン音頭は近所の盆踊りでやってくれと思いました、まる。
てなわけで。
〇政策は据え置きなのだが抜刀が無かったですなあ
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2025/k250731a.pdf
当 面 の 金 融 政 策 運 営 に つ い て
『日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を、以下のとおりとすることを決定した。』
『無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0.5%程度で推移するよう促す。』
>(全員一致)
>(全員一致)
>(全員一致)
・・・・・・あらま抜刀斎が抜刀するかもとちょっとだけ思ったりもしたのですが、全員一致で抜刀無しですかそうですかという所でして、まあここの「全員一致で据え置き」は何だ関税合意を受けても盛り上がりに欠けるのか、とまずは思う訳ですな。
〇展望レポート基本的見解:メインシナリオ部分はハト転4月から基本は同じなのだが物価周りの記述がドテンしておりまして・・・・・
以下は展望からの引用になります
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2507a.pdf
経済・物価情勢の展望(2025 年7月)
【基本的見解】
・見通し数値を見て初期反応が特に為替に出たのはまあ話としてはわかる希ガス
いつももだと鏡から参りますが今朝は数字の方から。
2025 年度
GDP: +0.5 〜 +0.7 中央値<+0.6>
4月時点の見通し +0.4 〜 +0.6 中央値<+0.5>
コアCPI:+2.7 〜 +2.8 中央値<+2.7>
4月時点の見通し +2.0 〜 +2.3 中央値<+2.2>
コアコアCPI:+2.8 〜 +3.0 中央値<+2.8>
4月時点の見通し +2.2 〜 +2.4 中央値<+2.3>
ということで2025年度のCPIをドチャクソ上げてきまして、そりゃまあこの数字見たら特に海外投資家とか反応する罠、という話でして、展望レポートのこの数字が出たときに為替ちゃんが割とビビッドに反応しました(円債市場はお休み時間だったのもあるけど円債はそこまで後場寄りで盛大に下がったわけでは無いし何なら引けにかけて横綱のがぶり寄りモードで値を戻しておられた)。
・・・・・とは言いましても、アタクシ拙駄文で申し上げていましたが、2025年の数値を上方修正したとて、「これはコストプッシュで一時的」と言ってしまうと結局大本営屁理屈的な政策インプリケーションが無い、ということになってしまうので2026年度2027年度はどないですねんというのを見るわけでして、こちらご案内の通りですが、
2026 年度
GDP:+0.7 〜 +0.9 中央値 <+0.7>
4月時点の見通し: +0.6 〜 +0.8 中央値 <+0.7>
コアCPI:+1.6 〜 +2.0 中央値 <+1.8>
4月時点の見通し:+1.6 〜 +1.8 中央値 <+1.7>
コアコアCPI:+1.7 〜 +2.1 中央値 <+1.9>
4月時点の見通し:+1.7 〜 +2.0 中央値 <+1.8>
うーんこのという感じで、まあ予想通りに+2.0に行かない数字を出してきているのがポイントでして、これは4月に堂々1年延長した目標達成時期が引き戻されることはない、というメッセージになっている、と考えるのが妥当なんですが、ゆうて数字だけ見ると+0.1こちらも中央値ベースで上がっているので、先ほどの+0.5と合わせて海外投資家方面は「おー」と反応するだろうな、と思う訳ですよ。
2027 年度
GDP: +0.9 〜 +1.0 中央値 <+1.0>
4月時点の見通し:+0.8 〜 +1.0 中央値<+1.0>
コアCPI:+1.8 〜 +2.0 中央値 <+2.0>
4月時点の見通し:+1.8 〜 +2.0 中央値 <+1.9>
コアコアCPI:+2.0 〜 +2.1 中央値 <+2.0>
4月時点の見通し:+1.9 〜 +2.1 中央値 <+2.0>
ってここの数字はゆうてみれば物価安定目標達成した時の定常状態の数字みたいなもんが出てくるのが今のところの仕様であえいまして、先の方では達成するから大緩和状態の調整を進めていきます、という建付けになっているのでこれもまあ従来通り、となるのですな。
・・・・・でですね、アタクシ先ほど「2025年度の物価を何ぼ上げたとて、コストプッシュで一時的音頭を踊りながら説明する分には政策インプリケーション無し」と申し上げましたが、実はそうではない、というのが今回の展望レポートにおける割とポイントになり得る部分になっている、というのが味わいがあるという能書きを後の方で行いたいと思います。では鏡に参ります。
今回展望(再掲)
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2507a.pdf
6月声明文
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2025/k250617a.pdf
前回展望
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2504a.pdf
鏡の部分は前回展望と比較します。
・経済メインシナリオは4月のハトハト転換で出てきた「海外経済が減速」をそのまま踏襲して変化なし
『先行きのわが国経済を展望すると、各国の通商政策等の影響を受けて、海外経済が減速し、わが国企業の収益なども下押しされるもとで、緩和的な金融環境などが下支え要因として作用するものの、成長ペースは鈍化すると考えられる。その後については、海外経済が緩やかな成長経路に復していくもとで、成長率を高めていくと見込まれる。』(今回展望)
『先行きのわが国経済を展望すると、各国の通商政策等の影響を受けて、海外経済が減速し、わが国企業の収益なども下押しされるもとで、緩和的な金融環境などが下支え要因として作用するものの、成長ペースは鈍化すると考えられる。その後については、海外経済が緩やかな成長経路に復していくもとで、成長率を高めていくと見込まれる。』(6月声明文)
『先行きのわが国経済を展望すると、各国の通商政策等の影響を受けて、海外経済が減速し、わが国企業の収益なども下押しされるもとで、緩和的な金融環境などが下支え要因として作用するものの、成長ペースは鈍化すると考えられる。その後については、海外経済が緩やかな成長経路に復していくもとで、成長率を高めていくと見込まれる。』(前回展望)
数字をさらっと見た後は当然ながら鏡の比較をするのですが、物価の方がドテンドテンの連発で手前の数字を上方修正させるわリスクアセスメントを改善させるわ、というプレイをしているのですけれども、このようにメインシナリオの方が相変わらず「トラ公のせいで海外経済が減速して本邦企業の収益が下押しされる」というのを前提に置いた説明になっていますので、これすなわち2025年度の物価上方修正の意味ねえじゃん、とまあここを素直に読むとそういう発想になる訳ですな、うんうん。
基本的にはそういうことではあるのですが、一方で今回別の仕掛けがある件については先ほども申し上げましたが後述。
・物価のメインシナリオもこれまた全然変わっていないんですよね
『物価の先行きを展望すると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、2025
年度に2%台後半となったあと、2026 年度は1%台後半、2027 年度は2%程度となると予想される。このところの米などの食料品価格上昇の影響は減衰していくと考えられる。』(今回展望)
『消費者物価(除く生鮮食品)については、これまで物価上昇率を押し上げてきた既往の輸入物価上昇やこのところの米などの食料品価格上昇の影響は減衰していくと考えられる。』(6月声明文)
『物価の先行きを展望すると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、2025
年度に2%台前半となったあと、2026 年度は1%台後半、2027 年度は2%程度となると予想される。これまで物価上昇率を押し上げてきた既往の輸入物価上昇やこのところの米などの食料品価格上昇の影響は減衰していくと考えられる。(前回展望)
まずはアクチュアルの物価に関してですが、数字の方はまあ数字の通りですって話でまあいいんですけど、基本的な見通しは「アクチュアルな物価は主にコメを起点とする物価上昇はコストプッシュで一時的」って説明になっていますわな。前回は輸入物価上昇があったが足元輸入物価上昇は一服しているので記載削除されているのも順当。
・・・でまあその見通しはその見通しでそういう思想ですよね、というお話ではあるのですが、おまいら「食料品価格上昇の影響が減衰する」も含めて4月展望で「物価の先行きリスクは下にティルト」って説明しておいて、その食料品価格の影響の上下を読み間違える(この間に大きな供給ショックでも起きているのなら弁解の余地はあるがそんなものは無かったですわなこの3か月)というすさまじいプレイをした挙句の+0.5%とかいう大きな上方修正している訳で、おまいらのアクチュアル物価見通し今回も大外れやん、と言いつつ例の基調の方に行きますと、
『この間、消費者物価の基調的な上昇率は、成長ペース鈍化などの影響を受けて伸び悩むものの、その後は、成長率が高まるもとで人手不足感が強まり、中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想され、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。』(今回展望)
『この間、消費者物価の基調的な上昇率は、成長ペース鈍化などの影響を受けて伸び悩むものの、その後は、成長率が高まるもとで人手不足感が強まり、中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想され、「展望レポート」の見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。』(6月声明文)
『この間、消費者物価の基調的な上昇率は、成長ペース鈍化などの影響を受けて伸び悩むものの、その後は、成長率が高まるもとで人手不足感が強まり、中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想され、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。』(前回展望)
ということで「基調的な上昇率(基調的な物価、ではない)」の表現も同じです。
ちなみに展望の鏡の方で「消費者物価の基調的な上昇率」という説明を載せるようになったのは2023年10月の展望レポートからです。
でまあこの「基調的な上昇率」ってをパラフレーズしてみれば「トレンドとしての物価上昇の状況」って話になるのですが、これを「基調的物価」って言い方をして説明しているから話がややこしくなる訳で、何らかの定義があって「まさにこれが基調的物価」みたいなのがあり、それが1.5%から2.0%の間、みたいな多少のレンジをもってスペシファイできるもの、みたいな感じで(特に植田総裁は)説明したがる訳ですな。
しかもその「ザ・基調的物価」が政策判断に直結しているかのような説明を植田さんが特にしている傾向に見える、ってのがありまして、だったら展望レポートのコミュニケーションでコアCPIとかコアコアCPIとか出さないで「基調的物価の想定値」ってのを出せやと悪態をつきたくなるわけですよ、アクチュアルの物価の見通しを+0.5%とかいう大幅修正しておいて政策何も動かん、となったら益々そういう疑問って湧きおこるじゃろと。
・・・・とつい謎演説をしてしまいましたが、上記のように物価って手前の見通し数値をドテン倍返しの勢いで上方修正する、という割と凄い事をしている(ので為替が初手で円高に振れた次第)のにも関わらず、見通し全然変えていない訳でナンジャコリャ感が満載になるわけですね。
・しかしたった3か月の食料品価格要因だけで+0.5%も上がるのかよ
『前回の見通しと比べると、成長率については概ね不変である。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比については、2025
年度は、食料品価格上昇の影響を主因に上振れているが、2026 年度と2027 年度は概ね不変である。』(今回展望)
『2026 年度までの見通しを前回の見通しと比べると、成長率については、2024
年度は幾分上振れているが、2025 年度と 2026 年度は、各国の通商政策等の影響を受けて、下振れている。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比については、2025
年度と2026 年度は、原油価格の下落や今後の成長ペース下振れの影響などから、下振れている。』(前回展望)
中央値ベースで一応0.1上がってるじゃん説はあるが「概ね不変」になっていまして、これまた前回同様でっせということなのですなわち4月のハトハトチキン音頭が変わらん、というように見える(必ずしもそうではないのですがそれはしつこいようですが後述)次第。
・リスク要因は引き続き通商問題ですがさすがに「きわめて」は削除
『リスク要因としては様々なものがあるが、とくに、各国の通商政策等の今後の展開やその影響を受けた海外の経済・物価動向を巡る不確実性は高い状況が続いており、その金融・為替市場やわが国経済・物価への影響については、十分注視する必要がある。』(今回展望)
『リスク要因としては様々なものがあるが、とくに、各国の通商政策等の今後の展開やその影響を受けた海外の経済・物価動向を巡る不確実性はきわめて高く、その金融・為替市場やわが国経済・物価への影響については、十分注視する必要がある。』(6月声明文)
『リスク要因としては様々なものがあるが、とくに、各国の通商政策等の今後の展開やその影響を受けた海外の経済・物価動向を巡る不確実性はきわめて高く、その金融・為替市場やわが国経済・物価への影響については、十分注視する必要がある。』(前回展望)
皆様ご案内の通りで、「きわめて高い」が「高い状況」と若干格下げされましたが、そりゃまあ日米とか米欧とかが合意しましたからそうなりますよねって話。
・物価のリスクバランスがドテンドテンですが・・・・・・
『リスクバランスをみると、経済の見通しについては、2025 年度と 2026 年度は下振れリスクの方が大きい。物価の見通しについては、概ね上下にバランスしている。』(今回展望)
『リスクバランスをみると、経済の見通しについては、2025 年度と 2026 年度は下振れリスクの方が大きい。物価の見通しについても、2025
年度と 2026 年度は下振れリスクの方が大きい。』(前回展望)
『リスクバランスをみると、経済の見通しについては概ね上下にバランスしている。物価の見通しについては、2024
年度と2025 年度は上振れリスクの方が大きい。』(前々回1月展望)
この凄まじいまでの物価リスク認識のドテン振りを見よ、って感じでして、「下振れリスクが大きい」と豪語しておきながらその3か月後に+0.5%も上方修正するとか恥ずかしくないのかお前らというお話ですが、問題はこの「物価の見通し上下にバランス」の内訳なんですよ・・・・・・・・・
・ということで一気にワープするんですが「物価のリスク要因」の記述の変化に注目すべき
基本的見解本文中の『(2)物価のリスク要因 』の中に見逃せない記述がありましてですね。
『第1に、企業の賃金・価格設定行動やそれらが予想物価上昇率に与える影響である。』(今回展望)
『第1に、企業の賃金・価格設定行動やそれらが予想物価上昇率に与える影響である。』(前回展望)
の部分なのですが、
『企業の賃金・価格設定行動は、従来よりも積極化しており、中心的な見通しでは、成長ペースが鈍化し、物価に対する下押し圧力として作用するもとでも、賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇していくメカニズムは維持されると想定している。』(今回展望)
『企業の賃金・価格設定行動は、従来よりも積極化しており、中心的な見通しでは、成長ペースが鈍化するもとでも、こうした傾向は維持されると想定している。』(前回展望)
しれっと今回「賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇していくメカニズム」って文言が入ったのですが、これって先般の内外情勢調査会での植田総裁の講演の中で使わていまして、
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/data/ko250603a1.pdf
最近の経済・物価情勢と金融政策運営
―― 内外情勢調査会における講演 ――
日本銀行総裁 植田 和男
(以下2025年6月4日にアタクシが書いた駄文を再掲します)
・好循環は遂にお蔵入り(か????)
先ほどの部分を再掲しますが、
『もっとも、現時点で日本銀行としては、わが国経済は、こうした下押し圧力を受けつつも持ちこたえ、賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇していくというメカニズムも途切れることはないと見込んでいます。』
>賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇していくというメカニズム
>賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇していくというメカニズム
>賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇していくというメカニズム
・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・( ゚д゚;)
なんですかこれはという感じですが、まあさすがに「好循環」って言ってると今は政治ばかりが叩かれているので日銀セーフ(寧ろ利上げするなとか言われていて金融リテラシー無し無しムーブなのが悲しいですが)という図になっていますが、どこかでうっかり犬笛を吹かれたらどうみたって「好循環」って炎上要素ですから、そらまあ好循環はお蔵入りさせろというのはあったのですが、今回しれっとお蔵入りですかね、まあ今後も確認したいですけど。
(ここまで2025年6月4日に書きました拙駄文の再掲です)
ってな訳で「好循環」がお蔵入りしまして、装いも新たに「賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇していくメカニズム」に変わりました。
・・・・でまあ変わったのはいいんですけど、それってメカニズムが加速したら普通に「インフレスパイラル」になるってお話になりますので、加速しないかどうかを見ないといけませんよね、とも思うのですがその辺どうなんでしょ。
では続きですが、
『もっとも、今後の各国の通商政策等を巡り不透明感が高い状況が続くことがあれば、コスト削減に注力する傾向が強まる可能性がある。こうしたもと、物価上昇を賃金に反映する動きが弱まることも考えられる。』(今回展望)
『もっとも、今後の各国の通商政策等を巡り不透明感が高い状況が続くことがあれば、コスト削減に注力する傾向が強まる可能性がある。こうしたもと、物価上昇を賃金に反映する動きが弱まることも考えられる。』(前回展望)
ここは従来通りの企業行動下方屈曲懸念を特に賃金面で指摘の図です。
『一方、販売価格に賃金を反映する動きが想定以上に強まったり、先行き労働需給が引き締まった状況が続くとの見方が強まるもとで、賃金の上昇圧力が強まっていく可能性もある。こうしたもとで、中長期の予想物価上昇率の高まりを伴いつつ、賃金・物価とも上振れていくことも考えられる。』(今回展望)
『一方、販売価格に賃金を反映する動きが想定以上に強まったり、先行き労働需給が引き締まった状況が続くとの見方が強まるもとで、賃金の上昇圧力が強まっていく可能性もある。こうしたもとで、中長期の予想物価上昇率の高まりを伴いつつ、賃金・物価とも上振れていくことも考えられる。』(前回展望)
ここから上振れの話になりまして、最初の部分は同じなのですが次が今回のハイライトの一つとなりますわな。
『この間、このところの米などの食料品価格上昇については、天候要因等の影響が大きく、消費者物価の押し上げ寄与は次第に縮小していくと想定している。もっとも最近の価格上昇には、人件費や物流費を販売価格に転嫁する動きも相応に影響しており、企業の賃金・価格設定行動次第では、価格上昇が想定以上に長引く可能性もある。食料品は消費者の購入頻度が高いものであるだけに、価格上昇が長期化した場合には、家計のコンフィデンスや予想物価上昇率の変化を介して、基調的な物価上昇率に二次的な影響を及ぼしうる点にも留意が必要である。』(今回展望)
『この間、このところの米などの食料品価格上昇については、それ自体は天候要因等を背景とするものだとしても、家計のコンフィデンスや予想物価上昇率の変化を介して、基調的な物価上昇率に二次的な影響を及ぼしうる点にも留意が必要である。』(前回展望)
・・・・・いやーこの説明がクソ長くなりましたね。という話なのですが、特に今回詳しく述べている中で「もっとも最近の価格上昇には、人件費や物流費を販売価格に転嫁する動きも相応に影響しており」という部分が、足元の物価上振れの要因が必ずしもワンタイムのコストプッシュとは言い切れない(人件費や物流費の転嫁だからコストプッシュはコストプッシュだけど天候要因のようなワンタイムではなく持続的な要素が含まれている面が相応にある、というお話)と言っており、しかもその後に「価格上昇が長期化した場合には」二次的な影響を及ぼし得る、と「価格上昇が長期化した場合のリスクがある可能性」をスペシファイして指摘しているのもポイントになります。
つまりですね、従来日銀の説明って「コストプッシュだからいずれ下がるので政策対応せんんでヨロシ」で通していたのですが、「コストプッシュと言えども持続的になる可能性がある(政策対応云々は言ってないけど)」というのを前面に出してきた(もちろん日銀だってアホじゃないから認識は前からしてたでしょうけどこうやって表に出すのは今回を嚆矢とする訳で)、というのと「物価が高止まりした場合にトレンドインフレやインフレ期待に上方圧力を掛ける」すなわち「2%で止まらないリスク」についてより明確に説明した事、というのが地味に重要、ということですな。
特に後者に関して言えば、そもそも論として日銀のメインシナリオは「コストプッシュだからワンタイムが剥落すれば物価が下がる」と言いつつ手前の見通し常に外している訳でして、今回もその流れでやっぱり手前の見通し外すんじゃねえか説は濃厚な訳で(個人の感想です)、そうなりますと従来あまり言ってなかった「物価が上にオーバーシュートのリスク(あくまでもリスクであってメインは変更ないハトハトですけど)」を突っ込んできた、という訳ですので、そうなると「上振れリスクにも目配りして今の大幅な緩和状態の幅を小さくする調整が必要」ってのが早期に打ち込まれる(もちろんその時に物価上昇が鈍化したり通商問題が爆発してたらメインシナリオはハトハトなんだからハトハトのままでしょうけれども)という可能性が無いとは言えない、という事かと思います。
〇記者会見雑感メモ(本当にメモだけ)
時間も無いのと会見要旨出てから、ではあるのですが、会見の植田さんの説明が相変わらずのハトハト音頭でナンジャソラとなって円安になったのはご案内の通りですが、今回おーと思ったのは従来「住宅ローン金利ガー」とか「借入金利上昇で中小企業ガー」とかいう感じで利上げするな見たいな質問が散見されていた会見が、今回は「この物価上昇の中何で利上げしないんですか」の方向に一気に傾いたことだな、と思いました。
まあよく考えたら当たり前というか、アタクシ的には前回の衆院選だって前面には出てなかったけど物価高は与党のダメージになっていたと思っていましたから反応が遅いわとは思いますが、まあ遂にそうなったか、というのは感慨深く会見を眺めておりました、ということで本日はこの辺で勘弁。
2025/07/22
〇金研国際コンファランスの概要が出ましたよ(なお動画の方はしばらく前に出ていますが見てません汗)
https://www.boj.or.jp/about/release_2025/rel250718a.htm
(金研ニュースレター)2025年国際コンファランス
2025年7月18日
日本銀行金融研究所
金研ニュースレター「2025年国際コンファランス」(金融研究所ホームページにリンク)
『日本銀行金融研究所では、5月27日〜28日に2025年国際コンファランスを開催しました。1983年に第1回を開催して以降、今回で30回目を迎えました。各国中央銀行、国際機関、学界等から約90名が参加し、「金融政策の新たな課題」をテーマに、講演、論文報告、特別対談、パネル討論が行われ、政策運営から経済分析まで幅広く議論されました。』
ということでそのリンク先ですが、
https://www.imes.boj.or.jp/jp/newsletter/nl202507j1/nl202507j1.html
2025年国際コンファランス
ハイライト
1. 開会挨拶
2. 前川講演
3. 基調講演
4. 特別対談
5. 論文報告セッション
6. 政策パネル討論
でもって開会挨拶に関してはネタにしましたけれども、金研ではどういうまとめしているのかと思って拝読しましたら、
『1. 開会挨拶』
『植田和男総裁(日本銀行)は、わが国の金融政策が直面している課題について、講演しました。最初に、日本の物価上昇率の現状について、説明しました。2021年以降、日本の物価上昇率は米欧に遅れて高まったのち、足もとでは食料品価格の上昇につれて、再び上昇している、と述べました。
次に、日本の政策金利は日米欧経済のなかで最も低くなっていると述べました。』
はい。
『そうしたもとで、「実際の物価上昇率が 2%を上回って3年以上推移しているにも関わらず、なぜ日本銀行はそのような緩和的なスタンスを維持しているのか」と問題提起したうえで、基調的な物価上昇率がなお2%を下回っているためと答えました。』
という理屈はいつもの話ではありますが、
『続いて、基調的な物価上昇率を捉える完璧なデータは存在しないと述べたうえで、』
そもそも存在しないのになぜ「2%を下回っている」とピンポイントでいえるのか、という話でして、例えばアクチュアルの物価上昇率が数年間にわたってゼロ近傍で推移しているとかならば、計測誤差はあれどもさすがにその状態で基調的物価が2%とはだれも思わないでしょ、というのは分かるんですが、計測誤差が多分にある概念であれば、少なくとも2%に近い範囲にその基調的物価上昇率とやらが存在すれば、もはやピンポイントで2%に達していません1%台半ばです、みたいな言い方って普通出来ないと思うのですよね。でまあこの先も先日の講演の時にネタにしましたが、
『基調的な物価上昇率を評価するために注意深くモニターしている指標のひとつとして、予想物価上昇率を挙げました。』
でもってこれがまた幅のある概念だというのに、
『日本の予想物価上昇率は、1.5%から 2.0%の間にあり、2%の目標水準を下回っていると述べました。』
そもそも1.5%から2%の間にあるとかいうのがピンポイントで分からんじゃろと思いますし、その近辺にいるならインフレ期待は2%って言っても別に何らおかしくない筈なんですよね、まあその計測自体がお手盛りなんですけどwwwwwwww
『それを2%にアンカーするために、緩和的な政策スタンスを維持し続けている、と説明しました。』
この点でウィリアムズ砲が出ているのは後程。
『また、この政策スタンスのコミュニケーションは容易ではないと指摘しました。』
そら屁理屈捏ねてるんだから容易じゃないわなwwwwwwwwwwwwwww
『その理由として、人々が注目する総合ベースでみた物価上昇率と、中央銀行が注目する基調的な物価上昇率との間に大きな乖離があることを挙げました。』
でもってその基調的な物価上昇率って何だよというのをちゃんと屏風の中から出して頂きたいんですが将軍様。
『サプライショックが頻繁に生じるようになるにつれて、こうした乖離は、多くの中央銀行にとって主な焦点であり続けると考えられる、と述べました。』
でまあこの件に関してはECBの政策ストラテジーレビュー(すいませんそういやストラテジーの中身やってませんが夏休み企画用に準備しておきます)でラガルドさんがシントラでお話をしていたように、「サプライショックだから対応しなくて良い」という考え方は妥当性を欠く、ということを喝破していた訳でして、日銀だけですがなその「供給ショック起因だから対応しなくてヨシ!(現場猫画像割愛w)」理論堂々と述べてるのは、と思いました、まる。
『 最後に、本コンファランスの議論が、基調的な物価上昇率と予想物価上昇率の計測、それらに支えられた金融政策についてのコミュニケーションのあり方、頻繁に生じるサプライショックのもとでの金融政策運営などの極めて重要な問題に光を当て、世界の中央銀行コミュニティに貴重な知見がもたらされることを祈念すると述べ、開会挨拶を結びました。』
まあシントラで知見がもたらされているんですけどねwwwwwww
でもってウィリアムズ砲も確認しますけど、
『4. 特別対談』
『特別対談の司会を務める氷見野良三副総裁(日本銀行)が、ジョン・ウィリアムズ総裁(ニューヨーク連邦準備銀行)をゲストとして迎えて、対話のなかでいくつかの問いを投げかけました。』
『それらに対して、最初に、ウィリアムズ総裁は不確実性が高いもとでの金融政策運営について論じ、ある経済モデルにおいて最適な政策が、別のモデルでは非常にパフォーマンスが悪くなることがある、と指摘しました。したがって、高い不確実性に直面するもとでは、最適解を見つけるのではなく、複数のシナリオ下でうまく機能するアプローチを考える方がよい、と述べました。』
この点についてもラガルドさんも似たような話をしていた筈でして、「基調的物価が1.5%から2.0%の間」とかいうのに一点張りするような政策運営が本当にアプローチとして適切なのか、という点についてウィリアムズさん悪意無く砲撃しているのが味わい深い。
『次に、インフレ予想について議論しました。』
キタコレ!
『コロナ禍以前を振り返り、それまでの数十年間、米国のインフレ率が低位で安定していたことが、インフレ予想の形成に大きな影響を与えた、と論じました。』
ふむふむ。
『そのうえで、コロナ禍以降の5年間で、インフレに対する人々の認識が変化し、以前に低インフレを経験した世代のインフレ予想の分布が上方向にシフトした、と指摘しました。』
ふむふむふむ(ちなみにアタクシですが設定上第一次石油ショックの記憶があることにしています、為念)。
『これらを踏まえ、インフレ予想は望ましくない方向に変化する可能性があり、インフレ予想がしっかりとアンカーされていることを当然視すべきではない、と注意を喚起しました。』
ということでですね、インフレ予想ってアンカー外れたら上振れ(あるいは下振れ)するリスクってある上に、弊駄文では再三再四申し上げているように日本の場合は一旦ゼロ近傍にいたインフレ期待を不安定化させてから2%に安定化させる、という器用な事をしないといけないので、さらに「インフレ期待」に関しては不確実性が高い訳で、すなわち前段でウィリアムズが言っている「最適解を見つけるのではなく、複数のシナリオ下でうまく機能するアプローチを考える方がよい」が必要なのに、何でお前らそんなにいつまでも政策金利は上げないわ長期国債買入はガンガン継続するわってやってるの、って話ですよね。
『次に、自然利子率に議論を転じ、グローバルな要因が自然利子率に与え得る影響について論じました。』
ほう。
『AIの普及等は生産性の伸びを押し上げるため、自然利子率を押し上げる可能性がある一方、貿易政策の変化といったその他の要因は自然利子率を押し下げ得ると考えられるものの、どちらの影響が大きいかを予測することは困難だ、と説明しました。』
要するに分からんとw
『最後に、2025年4月に生じた資産価格のボラティリティの急激な高まりを振り返り、通商政策をめぐる発表が米国市場に大きなショックを与えたとしながらも、市場は機能不全には陥らなかったと述べました。そして、「現金への逃避(dash
for cash)」がみられた2020年3月とは大きく状況が異なっていたと述べ、レポ市場でも無担保コール市場でも特に問題は生じなかったと指摘しました。』
ってな話をしております。
でですね、こちら実際の模様は
https://www.imes.boj.or.jp/en/conference/2025confsppa.html
2025 BOJ-IMES Conference
New Challenges for Monetary Policy
May 27-28, 2025
Institute for Monetary and Economic Studies, Bank of Japan
こちらの各お品書きにあるサムネが日銀ユーチューブチャンネルの埋め込み画像になっていますので、こちらを踏みに行くと視聴可能(ただし英語です)になっております。夏休みのおともにどうぞ。
2025/07/18
〇金融政策議事録鑑賞会シリーズ:木内VSジンバブエ
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/record_2015/gjrk150619a.pdf
政策委員会・金融政策決定会合議事録
開催日時:2015年6月18日(14:00〜16:22)
6月19日( 9:00〜11:59)
・木内さんはこのころ「MBや長期国債買入の拡大ペースを緩めるべき」という提案をしていましたが・・・・・・
83ページの議案説明、例によって合いの手はあんまり入れませんけれども10年後に読んでみると色々と味わいがあると思うのですよね。
『木内委員
次回会合までの金融市場調節および資産買入方針、並びに今後の金融政策運営方針については、前回までの自身の提案が引き続き妥当と考えており、同様のものを後に提出したいと思う。』
『既に繰り返し申し上げてきた点だが、金融政策は、効果のみを追求するのではなく、効果と副作用のバランスを最適にすることを目指すことが非常に重要である。昨年前半までを中心にした実質金利の低下に基づく累積的な政策効果は相応に大きく、足もとの雇用・所得環境、国内民間需要などへもプラスの波及効果を十分にもたらしていると考えている。資産買入れの残高を減少させない限り、このように既に経済活動に十分に定着した累積効果は損なわれにくいと考えている。』
『しかし、一方で限界的な効果と副作用に注目すると、資産買入れを着実に進める中でも、追加的な効果は明確に逓減する一方、追加的な副作用は逓減しておらず、両者のバランスは既に悪化していると、私は考えている。』
>追加的な効果は明確に逓減する一方、追加的な副作用は逓減しておらず
>追加的な効果は明確に逓減する一方、追加的な副作用は逓減しておらず
>追加的な効果は明確に逓減する一方、追加的な副作用は逓減しておらず
『政策効果の主な源泉は実質金利の低下にあると考えているが、その余地が限られてきたことが、追加的な効果の逓減に繋がっている。10
年国債利回りは、昨年までの低下基調は年初で一巡し、前回会合以降も上昇傾向にある。こうした名目金利の動きは、欧米など海外での金利の動きに強く影響されているとはいえ、例えば、近年の日本国債のタームプレミアムの著しい低下が既に限界に近いといった、国内要因に根差した側面もあると思う。』
『また、中長期の予想物価上昇率は、各種指標でみて足もとで大きな変化はなく、2%の物価安定と整合的な水準には依然大きな隔たりがあるもとで、比較的安定した状態を続けている。』
・・・・・・・・・・(^^)
『中長期の予想物価上昇率は、原油価格下落による物価上昇率の顕著な低下を受けても目立って下振れする兆しはない一方、今後前年の原油価格下落の反動で消費者物価上昇率が高まっても、それと連動して顕著に高まっていくことも期待しにくいと考えている。』
『原油価格の小幅反転の影響もあり、ユーロ圏ではデフレ懸念が後退しているが、成長が加速感を欠き、また商品市況が総じて低迷を続ける中、ディスインフレ観測はグローバルに依然根強い状況である。こうした環境のもとでは、国内の中長期予想物価上昇率を継続的に高めていくことは難しいとみている。』
ということで、
『こうした点を踏まえ、資産買入額を減額することで、追加的な効果と副作用のバランスを改善させ、先行きのリスク顕現化の可能性を低下させることが、安定した経済・物価情勢を持続させる鍵であると考えている。また、そうした緩やかでも息の長い景気回復の実現を支えることを通じて、実質所得拡大に貢献する生産性向上や潜在成長率上昇に向けた政府や企業の取組みを支援することができると考えている。そして、こうした取組みを金融面から粘り強くサポートしていくことこそが、2%の物価安定達成の近道になるというのが、私自身の提案の底流にある考え方である点は、従来から申し上げてきたとおりである。』
実際問題YCC導入って(最後の方で悲惨なバランスシート急拡大に繋がりましたが)YCCの美名の元にマネタリーベース拡大政策ですと限界が起きるので、MBの紐付けを外して長期戦にする、という政策だったのですから結果的には木内さん先取りしてた訳です。
『金融緩和の効果としては、円安、株高を通じた間接的な経路も考慮する必要があると思うが、昨年来の動きをみると、それらが実体経済に与えた影響は明確ではない。また、やや長い目でみると、為替・株式市場のボラティリティの上昇が経済活動を阻害する可能性があることに加え、為替については、円安傾向が消費者の当面の価格上昇観測を通じて防衛的な消費行動を招く可能性に、従来以上に留意する必要があると考えている。』
『量的・質的金融緩和の導入当初は、政策の影響を受けて実質金利が低下を続ける一方、所得制約要因となる先行きの実質所得見通しには大きな変化が生じなかったため、将来の消費を前借りする金融緩和効果が一時的に生じたと考えている。』
『しかし、現局面では、緩和効果を発揮する実質金利の低下が一巡していること、賃金上昇率が物価上昇率に簡単には追いつかないとの見方が広まっているように見受けられることから、円安の影響などを受けてガソリン価格、電気料金、各種日用品の当面の値上げ観測が広がれば、当面の実質所得見通しが悪化し、消費活動がより抑制的になる可能性がある。』
『今後、値上げ観測が個人消費に悪影響を与えていることが確認された場合には、2%の物価安定目標の達成を短期間で目指すのが果して妥当なのか、それが「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資する」という金融政策の最終目標に適っているのかといった点が、改めて深く問われることになるのではないかと考えている。』
!!!!!!
『最後に、会合制度の見直しについては、執行部案に賛成である。具体的には後でコメントさせて頂く。以上である。』
とまあこういう説明をしているのですが・・・・・・・
・このジジイ人の説明を全然聞かないで勝手に藁人形論法とレッテル貼りで反論してるの酷くないかという話
ジンバブエ原田ってのは人の話を全然聞かないで藁人形論法で木内さんに突っかかっているんですよね。まあ読んで味噌ということで本文90ページ。
『原田委員
木内委員に質問したい。効果と副作用のバランスをみるべきであるということは、一般論としては全く正しいが、具体的に3点考える必要があると思う。』
『1点目は、木内委員は、残高を低下させない限り金融緩和の効果があるとおっしゃったが、残高を増やさないということは、日本銀行の物価安定へのコミットメントを弱めることであるため、当然、将来のデフレ脱却を不確実にする。しかも、そのような政策を行うことによって、直接的には急激な円高や株価の急落を招く可能性がある。このことについてどのようにお考えか、お聞きしたい。』
残高増やさないという提案をしていないんだが(MB45兆円、長期国債45兆円という提案です)いる訳でもないのに何言ってるんだこいつ???
『2点目は副作用についてである。副作用ということを何度もおっしゃっており、私はこれまで何度もお聞きしているが、副作用についての合理的な根拠は示されていない。これまで、国債市場の機能低下、財政の信認の問題についての潜在的リスクがあるという説明であったが、潜在的リスクとは何か、この潜在的リスクはどのような指標でみることができるのかについて、ご説明頂いていない。前回会合では、「感性で判断していく」というお言葉を頂いたが、感性とは何かについてもご説明を頂いていない。』
10年経過してみればどれだけアホウなことをこのジンバブエが言ってたのかが良くわかりますね。そもそも指標で見れたらそれは副作用が顕在化している訳で、その前の時点で配慮すべき話だわさ。
『3点目は、木内委員の経済に対する見方は、この場の議論の主流の見方に比べて弱いと思うが、経済の見方が弱い中で金融政策を引締め方向に転換することの根拠は何か。以上3点、質問したい。』
別に引き締めろとはさっきの部分を見ても一言も言ってないんですが。
ということで木内さんが回答していますが、まあそちらは見てくださいって思いますし、この藁人形質問に対する木内さんの回答に対して無茶苦茶な回答を出しておられますのでまあ見てくんなまし。
2025/07/17
〇当時の岩菊VS木内の雰囲気が如何に険悪だったのかという話(ただの長文コピペになりますさーせん)
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/record_2015/gjrk.htm
金融政策決定会合議事録等(2015年1月〜6月開催分)
2025年7月16日
日本銀行
本日、以下の資料を公表しました。
金融政策決定会合議事録等(2015年1月〜6月開催分)
ということで、
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/record_2015/index.htm
金融政策決定会合議事録 2015年
議事録一覧
『金融政策決定会合議事録等の公表にあたっては、「金融政策決定会合議事録等公表要領」の規定に基づき、原則として、以下に掲げる非公表とすべき情報が含まれる箇所を除き、全て公表しています。
イ.個人に関する情報
ロ.法人に関する情報*
ハ.外国中央銀行、外国政府及び国際機関等に関する情報であって公表することにより当該外国中央銀行等との信頼関係が損なわれるおそれのある情報
*集計され、個々の法人のデータが特定されないもの(金融機関等から入手したデータを集計したものなど)については、基本的に非公表情報には該当しない扱いとしています。』
ってなもんですが、この時期というのはQQEぶっこんで2年で2%とか言ってみたものの、その2年がやってきましたがさてどうなりましたっけ、という時代であり、ご案内のようにこのあと25年の12月からのドタバタが始まるのでまあ色々と歴史の審判が下される系の案件な訳ですよ。
しかしまあ何ですな、司馬遼太郎史観みたいな言い方であれですけれども、日本ってこの「歴史の審判」に対してまあ無頓着ですよねって思う訳で、歴史が審判しとるじゃろと思うのにまだ堂々と金融政策について言及して平然としているアタクシから見たら人外みたいなのが存在して、そういうのを普通に表にだしてくる日本って何なのよ、とは思う訳ですよ。だってこの「議事録公表」ってのは「10年後にお前ら審判下されるんだからちゃんと物事考えて政策について考えろ」ってことじゃないですか・・・・・・・・
量がクソ多い(不肖このアタクシ一応生業というのものもあるし)からこれまた全然読めてはいないのではありますが、今朝はその中で2015年4月30日の議事録の本文66ページ(PDFも66ページ)先5ページくらいのところを引用します。
なお今回は引用するだけで基本的に合いの手はいれません(文章が長いから適当に改行はいれます)のでただの手抜きコピペを鑑賞していただければと思います。
URLはこちらです
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/record_2015/gjrk150430a.pdf
政策委員会・金融政策決定会合議事録
開催日時:2015年4月30日(9:00〜12:59)
でははじまりはじまり。
『岩田副総裁
これまであまり言わなかったが、いつも気になっていたのは、木内委員は「物価が実力と関係する」という意見だが、物価を決めるのに実力──そもそも、何が実力なのかをお聞きしたいが──は、関係ないと思う。』
『生産性を上げるには民間の実力、すなわち革新力のようなものが関係するとは思うが、物価は実力で決まっているのではないと思う。例えば、供給能力が不足するような経済では物価は非常に高くなるが、それでは物価上昇率が
20%や 30%にもなる経済に実力があるのかといえば、実力はない。そのような問題ではなく、私は、潜在成長力が物価を決めるという考えは基本的におかしいと思っている。』
『それでは「なぜ2%か」については、先進国では 10%近い高い物価上昇率を経験してきたが、そのもとで物価が変動すると投資計画や貯蓄計画を非常に立てにくくなり、経済が非常に変動したので、物価上昇率が高いとそのコストが非常に高くなるので良くないということになった。逆に、日本が経験したようにデフレに陥ってしまうと、簡単な金融政策ではなかなか脱却できなくなってしまう。』
『日本では 2000 年に生産年齢人口が減り始めているので、普通の経済政策のもとでは失業率は低下し、労働市場は売り手市場になり、賃金は上がって良いはずなのに、逆のことが起こった。』
『このように、デフレになってしまうと、生産年齢人口が減っているにもかかわらず失業者が増えたり、有効求人倍率が下がったり、企業収益が上がらないという変な状況になってしまい、企業までもが投資をするよりも現預金を持った方が有利というような状況に陥ってしまう。こうなると、生産する機会、富を生み出す機会がなくなってしまう。このように、一旦デフレに陥ってしまうと大変なことになってしまい、なかなか脱却できなくなる。』
『デフレからの脱却のために、日本銀行は、ゼロ金利、量的緩和、包括緩和と色々とやってきたが脱却できなかった。その意味で、デフレになってしまうと金融政策でも脱却が難しく、デフレ均衡は実体経済にとってろくなことはない。』
『デフレに陥るリスクを小さくしながら、高インフレ率を避けるとすると、どの程度のインフレ率が1番良いかと言うと、インフレ・ターゲットを導入している国の目標は大体2%程度で、20
年程度は非常に上手くいった。リーマン・ショックがあったが、リーマン・ショックを引き起こした張本人の米国は、実はインフレ・ターゲットを導入していない国であった。』
『今までインフレ・ターゲットを導入した国で世界的な危機を引き起こした国はない。要するに、2%程度を目標にしている国は大体上手くいっていた。』そして、上手くいくと、中央銀行に対するクレディビリティができてくるため、中央銀行があまり大したことをしなくても2%を維持できるようになる。つまり、経済が悪化してきた時には中央銀行はきっと2%で安定させるだろうという予想のもとに、物価上昇率は2%で安定する。』
『今の米国の人々は、日本銀行が言っているような「何年で2%を達成する」というようなことは全然考えず、中期的には2%だと思っている。そのような状態を作りたいということである。そうすると、2%であればデフレからは遠くのりしろがあるのでデフレにはなりにくい。』
『もう1つは、世界的に2%を目指している中央銀行が圧倒的に多くなった場合、日本も2%を目指さなければ──1%を目指したりデフレの状態であれば──、物価上昇率の差のために長期的には円高傾向がとまらなくなる。』
『実際に、変動相場制になって以降、1ドル 300 円程度から 100 円を切るまで円高になっているが、これは日米の消費者物価上昇率の差ではっきり説明できてしまう。』
『従って、円とドルの購買力に、両国のインフレ率格差によって大きな差をつけるのは、製造業に対して「長期的に円高に対応しろ」と言っているようなもので、これでは日本の製造業は海外にどんどん出て行ってしまう。実際、空洞化はとまらなくなった。実際、われわれが2%の量的・質的金融緩和を開始し、円安になっても、2013
年も直接投資はむしろ増えている。なぜなら、一旦円高が定着してしまうと、空洞化は簡単にはとまらないからである。』
『従って、世界の多くの中央銀行の目標が2%の中で日本は0%程度で良いとするのは、「日本経済においては、製造業はどんどん空洞化しろ」と言っているようなものである。このようなことから、経験上、2%が1番適当で、利益がありコストは小さい。主要先進国で2%を目指すのは、世界の中央銀行としては常識だと思う。だから、2%を目指しているということである。』
(次が木内委員、と思いきや実は違うのですが敢えてそこは割愛しますので是非上記URL先に飛んでいただいて誰が置物師匠の尻馬に乗ったかを鑑賞してみてください、何なら鑑賞前に誰だかを予想すると楽しいですよ)
ということで1名分の意見を飛ばしまして木内さんの発言に参ります。
『木内委員
私は、物価の基調は、金融政策が決めるものでも、マネーが決めるものでもないと思っている。日本のヒストリカルなデータや、現時点のクロスカントリーで比較した場合、潜在成長率あるいは生産性上昇率と物価の基調にはそれなりに関係があると思っている。国によって状況が違うというのが
2013 年時点での分析であったと記憶しているが、とりわけ日本では、この関係が比較的みられている。理論的に検証した訳ではないが、私は、賃金のフレキシビリティが関係しているのではないかと思っている。理論として証明されている訳ではないが、私自身は、考え方としてはそれがフィットするのでそれに基づいて議論している。』
『さらに、2013 年1月の政府と日銀の共同声明で、われわれは2%の物価安定の目標を目指すと宣言したが、各主体による成長力強化の取組みが進捗することが前提であるという認識であったことは強く記憶しており、私自身はその考えを継承している。』
『物価に関しては、デフレについては様々な考え方があるが、私は、結果という面が大きいと思っており、物価の基調や人々の中長期的な予想物価上昇率を政策的にコントロールするのはなかなか難しいという意味で、実力が関係していると申し上げた。』
『先程の岩田副総裁から、海外が2%で日本が1%であれば云々、という話があったが、比喩的な言い方をすれば、中長期的な予想物価上昇率や物価の基調は、基礎体温のようなものである。』
『物価が体温だとすると中長期の予想物価上昇率は基礎体温で、個人差があるのではないかと思っているので、海外が2%だから日本も2%でなければならないという訳でもないと思う。例えば、海外が2%で日本が1%であれば為替レートへの影響があるとおっしゃったが、差が1%ということであれば購買力平価からすると名目値が1年間で僅か1%動くということであり、それは僅か1円の話である。それ自身が日本に非常に深刻な影響を与えるのだろうかということを考えると、やや疑問であると思っている。』
『岩田副総裁
木内委員は、「物価の基調を決めるのは、金融政策でもマネーでもなく、潜在成長率である」、しかも「潜在成長率は金融政策では動かせない」とおっしゃっている。物価は潜在成長率で決まり、その潜在成長率を金融政策では動かせないとすると、「木内委員は、一体、ここに何をしにいらっしゃったのか」ということになる。』
『金融政策では物価の基調を決めることができず、物価の基調を決めるのは潜在成長率で、潜在成長率を決めるのは政府の成長戦略などということになると、金融政策で物価の安定を達成できないことになる。この会合は政府の成長戦略を決める会合ではないので、「一体何のためにここにいらっしゃっているのか」ということになってくる。』
(ここで黒田議長さすがに話を止める)
『黒田議長
この点は色々議論があろうかと思うが・・・。
岩田副総裁
前々から思っていたので申し上げた。
木内委員
経済政策にはそれぞれ適した役割があり、金融政策は金融政策がやれることをやれば良いと思う。
黒田議長
この点は引き続き議論をしたいとは思うが、時間も迫っているのでこの辺りにして、ここで政府からの出席者の方々にご発言頂く。まず、宮下一郎財務副大臣からお願いする。』
2025/07/15
〇生活意識アンケート:物価高止まりの弊害が顕在化してきているように見えるのは気のせいでしょうか
概要
https://www.boj.or.jp/research/o_survey/ishiki2507.htm
全体版
https://www.boj.or.jp/research/o_survey/data/ishiki2507.pdf
「生活意識に関するアンケート調査」(第102回<2025年6月調査>)の結果
以下全体版から引用しますけど、
『【調査概要】
・ 調査実施期間 :2025年5月1日(木)〜6月3日(火)
・ 調査対象 :全国の満20歳以上の個人
・ 標本数 :4,000人(有効回答者数2,016人<有効回答率50.4%>)
・ 抽出方法 :層化二段無作為抽出法
・ 調査方法 :郵送調査法
(回答方式は、郵送回答又はインターネット回答の選択式)』
ということなので主に5月の回答かな、とは思いますが、
・景況感悪化ですが物価のせいなのかトラ公のせいなのか
『1-1. 景況感等』の『1-1-1. 景況感』ですが、
『景況感のうち、現在(1年前対比)については、「良くなった」との回答が減少し、「悪くなった」との回答が増加したことから、景況感D.I.は悪化した。先行き(1年後)については、「良くなる」との回答が減少し、「悪くなる」との回答が増加したことから、景況感D.I.は悪化した。』
『現在の景気水準は、『良い』(注1)との回答が減少し、『悪い』(注2)との回答が増加した。』
これ『(図表1)景況感〔Q1、4〕』の図表を見るとかなりどよよーんとしてきますし、その下の長期時系列を見ますと、この1年半くらいの間につるべ落としみたいになっていまして、直近はトラ公のせいだとしましても、これって結局「物価高」が問題になっていて、つまりは「物価と賃金の好循環」などというのは幻想皇帝だったというお話(まあさすがに大本営もアホじゃないので最近は好循環を言わなくなっていますがw)なのではなかろうか、とまあ斯様に思うのでありました、知らんけど。
ただまあアレです、
『1-1-2. 景況判断の根拠
景況判断の根拠については、「自分や家族の収入の状況から」との回答が最も多く、次いで「マスコミ報道を通じて」、「勤め先や自分の店の経営状況から」といった回答が多かった。』
なのですが、『(図表3)景況判断の根拠(2つまでの複数回答)〔Q2〕』を見ますと、『自分や家族の収入の状況から』、『勤め先や自分の店の経営状況から』ってのは回答の中では減っていて、『マスコミ報道を通じて』ってのが絶賛増えているので、やっぱりトラ公のせいなのかとも思ってしまいますわな、というかメディアはクソの役にも立たんなあいつら。
・賃金と物価の好循環とは何だったのかという暮らし向きDI
『1-2. 暮らし向き、消費意識』になりますが、
『1-2-1. 現在の暮らし向き
現在の暮らし向き(1年前対比)については、「ゆとりがなくなってきた」との回答が増加したことから、暮らし向きD.I.は悪化した。』
『(図表5)現在の暮らし向き〔Q6〕』の長期時系列の方を見ますとこれまた着実に下がっていますし、何ならロシアのウクライナ侵攻(2022/02)の半年前くらいがピークで、そこからずるずると下がっている訳でして、どう見ても物価高要因です本当にありがとうございました。
『1-2-2. 収入・支出
収入については、実績(1年前対比)は、「増えた」との回答が減少し、「減った」との回答が増加したことから、現在の収入D.I.は悪化した。先行き(1年後)については、「増える」との回答も、「減る」との回答も横ばいだったことから、1年後の収入D.I.は横ばいとなった。』
これ調査期間が概ね5月なんで夏季賞与の前、というのもあると思うのですが、収入DI悪化するなよと思いましたorzorz
ただまあ例によって図表の長期時系列みたら水準は高水準というか好水準というかなので、そこまで気にしなくてもよさそうには思いました。
『支出については、実績(1年前対比)は、「減った」との回答が増加したものの、「増えた」との回答も増加したことから、現在の支出D.I.はプラス幅が小幅に拡大した。先行き(1年後)は、「増やす」との回答が減少し、「減らす」との回答が増加したことから、1年後の支出D.I.はマイナス幅が拡大した。』
意図的に減らさない限り支出は増えるじゃろと思うので「減った」が増加しながら全体は支出増加で、先行きは「減らそう」と思っている人が多いってのは整合的ですよね。まあそうじゃろそうじゃろ。
『今後1年間の支出を考えるにあたって特に重視することは、「今後の物価の動向」との回答が最も多く、次いで「収入の増減」、「余暇・休暇の増減」といった回答が多かった。
商品やサービスを選ぶ際に特に重視することは、「価格が安い」との回答が最も多く、次いで「安全性が高い」、「信頼性が高い」、「長く使える」といった回答が多かった。』
後半の『(図表9)今後1年間、商品やサービスを選ぶ際に特に重視すること(3つまでの複数回答)〔Q11(3)〕』って上位の順位は基本不動なんですけど、「価格が安い」が増えているときは貧乏モードというのが大体の今までの仕様だったと思います。
・収入DIもそうですけど雇用のDIも悪化しているのは引っかかりますね
『1-2-3. 雇用環境
1年後を見た勤労者(注)の勤め先での雇用・処遇の不安については、「あまり感じない」との回答が減少し、「かなり感じる」との回答が増加したことから、雇用環境D.I.は悪化した。』
長期時系列見るとちょっと下がりかけにも見えますし、ただのダマシかもしれないので判断保留ですけれども、気分のいいグラフではありません。
・みんな大好きインフレ期待はひたすら堅調である
みんな大好き『1-3. 物価に対する実感』に参りますが、
『1-3-1. 現在の物価
現在の物価(注1)に対する実感(1年前対比)は、『上がった』(注2)と回答した人の割合が9割台後半となった。』
そらそうよ。
『1年前に比べ、物価は何%程度変化したかについて、具体的な数値による回答を求めたところ、平均値は+19.5%(前回:+19.1%)、中央値は+15.0%(前回:+15.0%)となった。』
はいはいダブルデジットダブルデジット、というか2割ですよ2割。
『(図表11)現在の物価に対する実感〔Q12、13〕』の<1年前に比べ現在の物価は
何%程度変化したと思うか>をみますと泣けますな。
平均値 中央値
24/12月 +17.0 % +12.5 %
25/ 3月 +19.1 % +15.0 %
25/ 6月 +19.5 % +15.0 %
『(注)1. 極端な値を排除するために上下各々0.5%のサンプルを除いて計算した平均値。なお、全サンプルの単純平均値は、+20.2% (前回調査<2025/3月実施>:+19.8%)。』
2割キタコレですわということで、そりゃあ選挙で与党が大苦戦するわという話で、欧米で起きたことがやっとジャパンでも発生と思えばそりゃしゃあないわという所ですが、ジャパンの場合は何故か金融政策で対応という話が出ない上に財政を出す話になるという義務教育の敗北が発生しているのがもうねという所ですがそんな与太話はさておきインフレ期待は・・・・・・
『1-3-2. 1年後の物価
1年後の物価については、『上がる』(注)と回答した人の割合が8割台半ばとなった。
1年後の物価は現在と比べ何%程度変化すると思うかについて、具体的な数値による回答を求めたところ、平均値は+12.8%(前回:+12.2%)、中央値は+10.0%(前回:+10.0%)となった。』
平均値どんどん上がってますやんということで、『なお、全サンプルの単純平均値は、+13.5% (前回調査<2025/3月実施>:+12.7%)。』とも言われておりますナムナム。
『1-3-3. 5年後の物価
5年後の物価については、『上がる』(注)と回答した人の割合が8割台前半となった。
これから5年間で物価は現在と比べ毎年、平均何%程度変化すると思うかについて、具体的な数値による回答を求めたところ、平均値は+9.9%(前回:+9.6%)、中央値は+5.0%(前回:+5.0%)となった。』
<5年後の物価は現在と比べ毎年、平均何%程度変化すると思うか>
平均値 中央値
24/12月 + 9.2 % + 5.0 %
25/ 3月 + 9.6 % + 5.0 %
25/ 6月 + 9.9 % + 5.0 %
ですし、『なお、全サンプルの単純平均値は、+10.5% (前回調査<2025/3月実施>:+10.4%)。』となっておりまして、もちろん絶対値としての数字自体はこれ常に高め高めにでるので絶対値云々ではないのですけれども、普通にインフレ期待大定着状態だと思うのですが、何でこれで「基調的物価は2%行ってない」って話になるのか、7月の展望レポートでもっとまじめに示して頂きたい、と思いました。
とまあそんな所でしょうか、今朝はこの辺で勘弁。
2025/07/11
〇さくらレポートはまあ普通に強気に見えるんだが(特に企業行動)
概要
https://www.boj.or.jp/research/brp/rer/rer250710.htm
本文
https://www.boj.or.jp/research/brp/rer/data/rer250710.pdf
・全体は「全地域横ばい」ですが関税込みで横ばいなのでまあハトハトチキンではない
まずは概要から引用しますが、
『(1)各地域の景気の総括判断
一部に弱めの動きもみられるが、すべての地域で、景気は「緩やかに回復」、「持ち直し」、「緩やかに持ち直し」としている。』
ということで『▽各地域の景気の総括判断と前回との比較』を見ますと、ってまともに引用しているとめんどいのですが、要するに今回は全部不変、ということでして4月と変わらん、ということなので、関税でアイヤーと言っていた4月の段階とそんなに変わらん、という結果な訳でして、まあこれはトラ公の関税の影響ってそんなに出てないんじゃね、ってお話になるわけですが・・・・・・・
・関税の設備投資への影響は「直接的に来そうな人には来ている」と読める編集ですね
今回どこからどう見ても注目すべきなのはさくらレポート本文の方で『(3)企業等の主な声(トピック別)※』のところでしょということでまあこれを見るわけですよね。
『@各国の通商政策の影響』
まずは『【設備投資】』
『・ 各国の通商政策を巡る不確実性の強まりを受けた取引先の投資計画先送りから、当社も能力増強投資を半年程度延期させる方針(前橋[電気機械])。』
『・ 米国の追加関税の影響で収益環境の悪化が見込まれることから、不要不急の設備投資を見直すなど、コスト削減を進めていく方針(広島[自動車関連])。』
ということで影響出てるわな、というひともあれば、
『・ 足もとにおける不確実性の高まりは気がかりであるものの、半導体関連製品や環境対応等の成長分野は、中長期的な事業ポートフォリオの転換に不可欠であるため、今後も計画通りに設備投資を行う方針(下関[化学])。』
『・ 省人化投資やソフトウェア投資を中心に積極的な投資スタンスを維持しており、設備投資額・研究開発投資額は高水準で推移している(横浜[はん用機械])。』
という方もおいで、となっていて「まちまちです」という印象を与える編集になっています。まあこれに関しては直接的に影響が出る人とそうじゃない人いるからそういう話なんでしょうけれども。
・関税の価格設定の影響は何か強気に見えるのですが実際どうなんでしょ&まあどっちにも結論付けれますからねえ
次が注目の『【価格設定】』
『・ 当社製品は競争優位性が高いため、関税の引き上げに伴う値上げが米国の取引先に受け入れられており、輸出数量への影響は限定的(新潟[生産用機械])。』
冒頭から威勢の良い話。技術立国日本はこうじゃなければいけませんですな!
『・ 現在、米国現地の取引先と関税の負担割合について交渉を進めている。なお、米国への生産拠点の移管についても検討したが、部品調達網の構築負担が大きいことなどから、現実的ではないとの結論に至り、見送った(高松[生産用機械])。』
こちらは交渉中、現地化はそりゃ無理じゃろうよと思いました。
『・ 当社部品の納入先では、関税の引き上げに直面しているものの、今のところ、当社の原材料費等の上昇分に対する価格転嫁要請の受け入れ姿勢に、大きな変化はみられていない(前橋[輸送用機械])。』
ほうほうほう。
『・ 収益を確保する観点から、米国向け製品の関税引き上げに伴うコスト上昇分は原則全て販売価格に転嫁する方針。もっとも、米国における一部の取引先は難色を示しており、価格交渉が難航している(仙台[生産用機械])。』
とのことですが、ゆうてまあ威勢が良いじゃん、と思うのですが、実際問題として輸出価格どうなっているの問題というのもあるわけですので、これはまあ通関統計とかと併用して考えないと、って感じでしょうか。
ただまあこのさくらレポートの「見せ方」はどっからどう見ても「トランプ関税による国内企業の販売価格下押し圧力はさほど大きいものではない」という「見せ方」になっています。まあこれを「よって4月に見込んでいた経済物価への先行き下押し圧力はそこまででもありませんねえあっはっは」と楽観の文脈に持ち込むのか、それとも「関税の影響はまだ出ていないのだが今後どうなるかは予断を許さないので警戒を怠れませんですねアイヤー」とハトハトチキンの文脈に持ち込むのかは、正直これはハトハトチキン執行部(ただし氷見野さんはハトハトチキンではない可能性がオオアリクイ)次第であろうかとは存じます。
・輸出・生産の本命部分は「これから影響が出てくるんじゃなかろうか」ネタのオンパレードですね
次が『【輸出・生産】』ですね。
『・ 半導体関連製品への分野別関税発動の可能性を踏まえ、中国や台湾、韓国の取引先から駆け込み需要がみられており、輸出は高水準で推移(広島[電気機械])。』
ということで「まだ駆け込みがある」という話なのでこれはハトハトチキン的には「それみたことか悪影響はこれからじゃ」となりそうなお話キタコレです。
『・ 各国の通商政策を巡る不確実性の高まりを背景に、米国における取引先の投資スタンスが後退し、当社製品への需要が鈍化しており、売上が下押しされている。こうしたもと、通期の生産計画を下方修正した(大阪[生産用機械])。』
下振れキタコレ。
『・ 各国の通商政策を意識した取引先の生産移管などから、一部メーカーの受注が下振れており、生産は7月頃から前年を幾分下回る見通し(本店[輸送用機械])。』
まさに「これから影響が出てきます」モード。
『・ 海外需要は、各国の通商政策の影響を受けて一時的な変動がみられるものの、基調としては堅調に推移しており、輸出は増加傾向にある。なお、海外での販売価格について、関税を受けた値上げは実施しない方針(名古屋[輸送用機械])。』
威勢の良い話だと一瞬思ったが、最後の「海外での販売価格について、関税を受けた値上げは実施しない方針」ってのが悲しいわけでして、さっきの「当社製品は競争優位性が高いため、関税の引き上げに伴う値上げが米国の取引先に受け入れられており、輸出数量への影響は限定的(新潟[生産用機械])」という威勢の良いお方と比較して悲しさが伝わってまいりますわな、南無三。
『・ 関税引き上げの影響から、先行き、当社納入先の米国向け輸出が減少し、当社への発注が減少することを懸念(北九州[鉄鋼])。』
これまた「これから影響」ですね。
『・ 多くの中小企業は、自社製品の用途や最終製品化までの商流が詳細に分からないため、関税の引き上げによる影響の経路や時期を予測できない。現時点で具体的な影響はみられないものの、先行きへの懸念が広がっている(大阪[経済団体])。』
ほうほう。
『・ 各国の通商政策の影響を受けて一部原材料の調達が滞っており、先行き自動車向け部品は減産の可能性がある(新潟[輸送用機械])。』
最後はまさかの供給制約の方の話でした。
・・・・・・というわけで、こちらが経済見通しに関するアネクの本命ともいえそうな部分ですが、並べているのを見ますと「関税の影響が顕在化するのはこれからです」って話のオンパレードになっておりまして、ここだけで言えば「まずは様子見地蔵」という説明を正当化する内容になっているかと思います。ただまあこれってあくまでも関税の影響に焦点絞った話なので、今回の短観で非製造業がバチクソ強かった話とかそういう総合的な話になると別問題とも言えますけど。
・みんな大好きおちんぎんは堅調と(留保は付いているけど)
関税の影響コーナーの最後が『【賃金設定】』ですが、
『・ 競合他社との人材獲得競争が激化する中、2025 年度は、ねん出可能な上限額である9%の賃上げを実施(高松[建設])。』
まあ素敵。
『・ 深刻な人手不足に伴い売上の増加が追求しにくくなったため、データに基づく分析を行って利益率の高い分野へ経営資源を集中させた結果、営業利益率は既往ピークを更新。3年連続となる5%強の賃上げを実現した(金沢[生産用機械])。』
ほう・・・・(選択と集中は用法容量に要注意)
『・ 全体としてみれば、地域の企業でも人手不足が深刻化するもと、賃上げの動きが強まっている。大企業が賃上げを実施する中、中小企業も人手確保のため追随して賃上げしている(大阪[経済団体])。』
ほほう。
『・ 夏季賞与は、昨年度の好調な業績を踏まえ、高水準の支給額とした。先行き、各国の通商政策の影響により海上荷動きが鈍化して業績が下振れた場合は、冬季賞与を減額する可能性がある(大阪[運輸])。』
やはり「今後の変化は冬季賞与から来年の賃金改定」という話になりますね。
『・ 今後、各国の通商政策の影響から、当社部品の納入先が価格交渉スタンスを慎重化させる可能性もあり、来年度も継続的に賃上げできるか懸念している(本店[輸送用機械])。』
ふむふむなるほど。
『・ 各国の通商政策の影響を受けて、当社部品の納入先が価格交渉スタンスを厳格化させた場合でも、人材の確保に向けてベアを実施していく方針(本店[輸送用機械])。』
ということで最初と最後を威勢よくまとめて何となく強い感じにしていますね。
・より全般的な価格設定についての話が小売と飲食と食料品並べているのはナンナンデスカネー
と、これまでが関税の影響の話(なので製造業の話ばっかり)でしたが、次がより全般的な文脈での価格設定のお話、の筈なのですが・・・・・・・
『A価格設定』からですな。
『・ 原材料費は市況の下落や為替円高により抑制できている一方、人件費や輸送費などが継続的に上昇しているため、値上げを行った(本店[食料品])。』
はい。
『・ 米価の高騰から、これまで価格を据え置いてきた弁当やおにぎりなどの商品の価格維持が困難となっており、今後段階的に値上げを行う方針(水戸[小売])。』
アイヤー
『・ 物価の上昇が続くもとで、ここ数年間当社も複数回の値上げを行っており、都市部以外の店舗では、中高年層の顧客の来店頻度が低下している(本店[飲食])。』
そらそうじゃろとは思いますが値上げが続く話ですし、
『・ 高騰が続く米などの仕入コストを転嫁するため、さらなる値上げを予定。その際は、顧客離れを防ぐために、既存商品の値上げを段階的に行うほか、新たに低価格商品の開発も強化する(秋田[飲食])。』
ってな話をしていますが、これよく見ると「コストプッシュ要因の上昇はワンタイム」とか能天気なこと言っている場合じゃなくて、普通にコストプッシュが起点になって物価上がるじゃと、という話ではあるのですが、ただまあこれ「食料品、小売、飲食、飲食」って並べていて、ここでの「見せ方」があまりにも業種偏り過ぎてないですか、とは思いましたので逆に編集に何かの意図でもあるのかと疑ってしまいますわな・・・・
・個人消費のコーナーはこれでもかという位に威勢が良すぎてむしろビビるレベルかと
でもって個人消費とインバウンド様ということで『B個人消費(インバウンド需要を含む)』ですが。
『・ 国内富裕層の消費意欲は堅調。インバウンド客の来店客数は増加しているものの、為替円高の影響等もあって、売れ筋が高額品から化粧品や日本製の生活雑貨にシフトし、客単価は低下している(神戸[百貨店]<京都、大阪>)。』
ほうほうそうですかと思いますが、安い単価のインバウンドとか要らんわなどと言ったらいけませんですかそうですか。
『・ 備蓄米が流通する前は米の買い控えがみられた。米を含む食料品の価格に対する顧客の目線は厳しく、当社のセール実施時にはスーパー等の顧客が流入してくるため、売上が顕著に増加している(札幌[ドラッグストア])。』
ほえーーーーー
『・ 大阪・関西万博の開幕以降、客室単価を引き上げても、国内外から宿泊者が増えており、売上は想定を上回って推移している(大阪[宿泊])。』
イイハナシダナー
『・ 人件費や原材料費などのコスト増加分の6割程度をゴルフ場利用料に転嫁しているが、来客数は県外観光客を中心に堅調(青森[対個人サービス])。』
まあさっきの「国内富裕層の消費意欲は堅調」もそうですけど払える人は払うっちゅうことですかねえ、知らんけど。
『・ 4月に食料品の値上げが相次いだため、節約志向の強まりを懸念したが、買い上げ点数は想定ほど落ち込まず、消費者の支出スタンスは底堅い(松本[スーパー])。』
おおおおおおおおお
『・ 割安なメニューの販売好調が続く一方、入学式などハレの日関連の利用も増加しており、メリハリ消費の強まりを感じる(名古屋[飲食])。』
なるほど、とは思いますがこの手の「ハレ消費」だの「メリハリ消費」だの言ってるのの後ってあんまり良い思い出が無いのですけどね・・・・・・・・・
ということで、この個人消費のところはまあ威勢の良い話がひたすら並んでおりまして、やはり今回のさくらレポートの全体観としては「なんかエライ堅調なんですけど」という印象になるんじゃないかと思ったのですがどうなんでしょうかねえ・・・・・・・・
2025/07/02
〇いつもの短観私家版確認:全然弱くなってこないじゃないですかヤダー(棒読み)
https://www.boj.or.jp/statistics/tk/gaiyo/2021/tka2506.pdf
短 観(概要)―2025年6月―
第205回 全国企業短期経済観測調査
< 回 答 期 間 > 5月28日 〜 6月30日
・一応短観にちょっとは反応してくれましたが・・・・・・・
前回の短観は4/1だったのでまだ例のトラ公のアレが出る前(直前)で、短観がやや強いですなという結果に債券市場が盛大に反応していたのですが、その前の短観が12月の短観でこれが出たのが12/13だったんですね。
でもって昨年の12/13と言えば短観は普通に強い内容だったのですが、その前に日銀の毎度のお漏らし攻撃によって12月利上げ観測火消どころか1月利上げもしないんじゃなかろうかということになって市場がなんも反応しなかった訳です。
これに対して4/1は短観結果に普通に反応して(その前が期末だったのですが謎の債券先物クソ上がりをしたのでその反動もあったのですが)いてよかったよかったなどと言ってたらトラ公のアレが出てぶち壊しになった訳です。
で、今回ですけれども、短観は全然悪い内容ではなくて、関税で国難とは何だったのかというような風情ではあったので、債券先物10銭ちょい反応しておりました(その後10年国債入札が激強の結果となったので全ての話がすっ飛んでしまいましたが)ので、まあちったあ反応するだけ昨年12月よりはマシとは言えるのですが、まあでも結局のところ今回って「思ったほど弱くないじゃん」となっても、日銀大本営におかれましては「これから影響が出る出る詐欺」作戦で行くのがまあ見え見えって感じじゃろうな、とは誰しもが思う訳でして、残念ながらこの短観が弱くなかったのを材料に日銀が4月の展望がクソ弱くし過ぎましたゴメンチャイなどという訳も無く、ってなことで反応してくれないという所なのかな、とは思いました、知らんけど。
・業況判断DIは「前回の先行き下がる見通しよりも全然強い」し何なら前回の短観はトラ公の例のアレの前なんですよ!!!
(3月短観) (6月短観)
現状→6月予測 現状→9月予測
製造業大企業 +12→+12 +13→+12
製造業中堅企業 +11→+4 +10→+6
製造業中小企業 +2→▲1 +1→▲2
非製造業大企業 +35→+28 +34→+27
非製造業中堅企業 +25→+18 +25→+17
非製造業中小企業 +16→+9 +15→+9
こちらですけど、何せ前回の短観は「 < 回 答 期 間 > 2月26日 〜 3月31日」でして、短観の回答ってのが概ね回答期間の前半の早いうちに回答される傾向がある、という風に聞いておりますので、すなわちあの4月に出たトラ公のキチガイ関税は織り込んでいない(トラ公の事だからある程度のブラッシュボールは投げてくるじゃろというのは織り込んでいたと思いますが)訳でして、その状況でトラ公に対するフワッとした懸念段階で出した先行きの下げ(特になぜか非製造業)見通しに対して、今回って軽々と上方修正していますし、殆ど3月短観から現状DI変わっていないという結果になっておりますので、これは堅調堅調。
ただまあどうせ大本営のことですから、「米国関税政策の悪影響はこれから出てくるんです」とか言い出す下がる下がる詐欺によってこの数字は追い風参考記録扱いしてくる、に1万ジンバブエドルといった所です。
・企業の販売価格見通しはこれまた大して落ち込んでもいないのですな
販売価格見通し 全規模合計 全 産 業
1年後 6月:3.0%→9月:2.8%→12月:2.6%→3月:2.7%→6月:2.8%→9月:2.8%→12月:2.8%→3月:2.9%→6月:2.9%
3年後 6月:3.8%→9月:3.8%→12月:3.7%→3月:4.0%→6月:4.1%→9月:4.1%→12月:4.2%→3月:4.4%→6月:4.3%
5年後 6月:4.4%→9月:4.4%→12月:4.4%→3月:4.7%→6月:4.8%→9月:4.9%→12月:5.0%→3月:5.2%→6月:5.1%
大 企 業 製 造 業
1年後 6月:2.5%→9月:2.4%→12月:2.2%→3月:2.2%→6月:2.3%→9月:2.2%→12月:2.2%→3月:2.3%→6月:2.3%
3年後 6月:2.8%→9月:2.9%→12月:2.8%→3月:2.8%→6月:3.2%→9月:3.1%→12月:3.2%→3月:3.4%→6月:3.1%
5年後 6月:3.0%→9月:3.1%→12月:3.0%→3月:3.1%→6月:3.3%→9月:3.4%→12月:3.4%→3月:3.7%→6月:3.8%
大 企 業 非製造業
1年後 6月:2.1%→9月:2.2%→12月:2.0%→3月:2.0%→6月:2.1%→9月:2.1%→12月:2.2%→3月:2.4%→6月:2.3%
3年後 6月:2.8%→9月:2.8%→12月:2.7%→3月:2.8%→6月:3.0%→9月:3.0%→12月:3.1%→3月:3.1%→6月:3.2%
5年後 6月:3.2%→9月:3.4%→12月:3.2%→3月:3.2%→6月:3.4%→9月:3.5%→12月:3.6%→3月:3.5%→6月:3.9%
この推移を見ますと、どこからどう見ても「企業の価格設定行動はこの2年間ほど全然変わらずに堅調」としか言いようが無いと思うのですが、これまた「米国関税政策の悪影響は以下同文」と言い張ってくると思います。まあこれを受けて7月展望が4月にクソ下げしたものを撤回でもすれば日銀も大したもんですけど、そんなタマではない、というのは散々見ておりますのでwwwww
・企業の物価全般見通しも同様でこの2年くらいずっと高値安定しているんですけどね
物価全般見通し 全規模合計 全 産 業
1年後 6月:2.6%→9月:2.5%→12月:2.4%→3月:2.4%→6月:2.4%→9月:2.4%→12月:2.4%→3月:2.5%→6月:2.4%
3年後 6月:2.2%→9月:2.2%→12月:2.2%→3月:2.2%→6月:2.3%→9月:2.3%→12月:2.3%→3月:2.4%→6月:2.4%
5年後 6月:2.1%→9月:2.1%→12月:2.1%→3月:2.1%→6月:2.2%→9月:2.2%→12月:2.2%→3月:2.3%→6月:2.3%
中小企業 製 造 業
1年後 6月:2.9%→9月:2.8%→12月:2.7%→3月:2.6%→6月:2.7%→9月:2.6%→12月:2.6%→3月:2.7%→6月:2.6%
3年後 6月:2.4%→9月:2.4%→12月:2.4%→3月:2.4%→6月:2.5%→9月:2.5%→12月:2.5%→3月:2.6%→6月:2.5%
5年後 6月:2.3%→9月:2.3%→12月:2.3%→3月:2.4%→6月:2.5%→9月:2.4%→12月:2.5%→3月:2.5%→6月:2.5%
中小企業 非製造業
1年後 6月:2.8%→9月:2.8%→12月:2.6%→3月:2.6%→6月:2.6%→9月:2.6%→12月:2.6%→3月:2.7%→6月:2.6%
3年後 6月:2.4%→9月:2.5%→12月:2.4%→3月:2.4%→6月:2.5%→9月:2.4%→12月:2.5%→3月:2.6%→6月:2.5%
5年後 6月:2.3%→9月:2.3%→12月:2.3%→3月:2.3%→6月:2.4%→9月:2.4%→12月:2.4%→3月:2.5%→6月:2.4%
毎回申し上げていますが、こちらで大企業じゃなくて中小企業をだしているのは、かつてこの短観の数字を出しだしたときに日銀大本営は「大企業の価格見通しはエコノミスト見通しや市場見通しに影響されやすいが、より一般の見方に近いのは中小企業の見通しである(
ー`дー´)キリッ」とか言ってたんですが、黒田末期以降は利上げを渋る屁理屈を並べるのに忙しいので、すっかり言わなくなっているので可哀そうなので掲載している次第でありますw
でまあ今回は確かにスライトリーに下がってい入るものの、結局のところこの2年間ほど特に著変は無い、とも先ほどと同様に言える訳でございまして、「そもそも論として何を持ち出せば「インフレ期待がまだ2%に届いていない」とか言えるのか、というのを日銀は真面目に示すべきではないか、と斯様思う訳です、ってのを毎回のように言っているのですが、ひたすら誤魔化し続けているのが変わっていない、というのも皆様ご案内の通りかと存じます。
・販売価格判断と仕入価格判断は3月短観が驚愕の強さでしたがさすがにこちらは落ち着いた感じで
販売価格判断
(3月短観) (6月短観)
現状→6月予測 現状→9月予測
製造業大企業 +28→+30 +25→+27
製造業中小企業 +27→+37 +27→+31
非製造業大企業 +32→+34 +34→+30
非製造業中小企業 +30→+37 +30→+33
仕入価格判断
(3月短観) (6月短観)
現状→6月予測 現状→9月予測
製造業大企業 +41→+43 +39→+39
製造業中小企業 +57→+62 +54→+56
非製造業大企業 +48→+49 +45→+44
非製造業中小企業 +57→+61 +54→+56
ということでこちらの数値は(3月短観がクソ強かったというのもあるのですが)3月短観よりも落ち着いた数値になっていますので、これは大本営が鬼の首を取ったようにチェリーピッキングしてきますねw
・雇用判断DI:前々回、前回はその前並みで見通しほどは一段の引き締まりなし、でしたが今回も同様
(3月短観) (6月短観)
現状→6月予測 現状→9月予測
製造業大企業 ▲17→▲21 ▲18→▲22
製造業中堅企業 ▲26→▲28 ▲24→▲28
製造業中小企業 ▲24→▲30 ▲23→▲28
非製造業大企業 ▲39→▲40 ▲39→▲40
非製造業中堅企業 ▲46→▲48 ▲46→▲48
非製造業中小企業 ▲48→▲52 ▲46→▲50
こちらは毎度そうなのですが「先行き更に雇用人員が逼迫する」という見通し程には引き締まらないという結果なのですが、とはいえだいたい前回の時に示した逼迫度合い程度は維持されている、という数値になっています。
・・・・・ということでして、前回の短観がトラ公のアレの直前、というタイミングであったことを考えると、よくよく考えたらエライ良い数字じゃんトラ公のアレの影響はどうしたの、という結果だった、というのが私家版の短観の感想になろうかと存じますです、はい。
2025/06/26
〇6月会合主な意見:インフレ期待の議論が無いですね&国債買入の話が財政従属感満載で頭が痛い
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2025/opi250617.pdf
金融政策決定会合における主な意見
(2025 年 6 月 16、17 日開催分)1
・経済のパートでは「企業ヒアリング情報では」をみましょう
『T.金融経済情勢に関する意見』の『(経済情勢)』ですが、企業ヒアリング情報では云々、というのを鑑賞しますと・・・・・
『・米国の関税政策の影響について、中小企業を含む幅広い業種の企業へのヒアリング結果をみると、判断材料に乏しく方向性を見出すことが難しい状況の中で、判断を留保する先が散見される。センチメントの下押し圧力になることは間違いないが、実体経済への影響の大きさについては、今しばらく時間をかけてみていかざるを得ない。』
『・ 企業のヒアリング情報では、米国の関税政策を受けても、@人手不足の中、賃金は引き続き上げていく、ADXや効率化投資など、高水準の設備投資は継続的に実施する、B株主の期待に応えるため、収益増強のためには投資をしっかりと行っていく、とする企業が多い。』
てな訳で、日銀が4月展望でいち早く見通しをクッソ下げたのとは対照的な話になっていまして、そもそもお前らの4月展望レポートは何だったのか、という話に(今後の関税交渉が酷いことにならない限りにおいて)なってもおかしくないんですよねこれ・・・・・・・
まあ、
『・4月や5月のハードデータは比較的しっかりしたものが多いが、関税政策の影響の顕在化はこれからと考えられる。』
ってのはその通りでしょうから、この辺は今後の展開次第という話ではありますな。
・物価のパートだが碌に話が無いし「基調的物価はインフレ期待」なのにインフレ期待の話は碌に無いし
『(物価)』を見ますと「基調的物価」がただの「お気持ち物価」である、というイカサマが良くわかるというものでして、そもそも物価のパートに意見が5個しかない(うち1個は必ず大本営発表が入るので実質4個)訳でして、それだけでもトサカに来るんですけど、この前の金研国際コンファランスで植田総裁って、
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/ko250527a.htm
『基調的な物価上昇率を評価するために注意深くモニターしている指標のひとつは、予想物価上昇率です。』
『図表5が示しているように、総合ベースでみた物価上昇率と基調的な物価上昇率との間に大きな乖離があるためです(ここでは、予想物価上昇率を基調的な物価上昇率の近似として用いています)。』
(以上この部分だけ直上URL先の5/27金研国際コンファランスでの植田総裁スピーチ(の邦訳)より引用)
って言ってるんだから、どっからどう見たって基調的物価はインフレ期待が重要、って話になるはずなんでうしょね。
じゃあ当然ながら基調的物価とやらがどうなっているのか、という議論が行われ、その中でインフレ期待がどうなっているか、というのを詳細に見極めていく、という作業が行われ、それに関する所感が「主な意見」に出てきて然るべきなのですけれども、期待インフレに関する議論が行われているような感じが無いんですよね、つまり・・・・・・
『・ 消費者物価の基調的な上昇率は、成長ペース鈍化などの影響を受けて伸び悩むとみられ、下振れリスクも大きいと考えられる。その後は、成長率が高まるもとで徐々に高まっていくと予想され、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。』
これは大本営なのでスルーしておきまして、
『・ 通商政策を巡る不確実性は引き続ききわめて大きいが、国内面では、賃金情勢は堅調であり、消費者物価は若干上振れ気味で推移している。』
上振れキタコレ、ではありますがアクチュアルの物価の話ですわな。賃金情勢に関してはまあ企業行動って話ではあるので若干期待インフレに関連する話ではありますけど。
『・ 米価格は前年比約2倍に上昇し、消費者物価を相応に押し上げているほか、関連品目の価格にも波及している。主食である米の価格はインフレ実感やインフレ予想に影響を及ぼし得るため、その動向を注視したい。』
こちらはアクチュアルの話ではなくて今後の話としての期待インフレ動向の話ですけど、期待インフレに関する言及がありましたね。
『・ 欧米・中国・新興国が揃って財政金融両面で緩和策に傾く中、予想外の経済押し上げ・インフレ圧力が生じる可能性もある。』
こちらも上振れで、実はこれを見るとインフレ上振れおよび上振れリスク(さっきの期待インフレ上振れの可能性を指摘している人)に言及しているのが3人もいたりするんで、それはそれで重要な話ではあります。
『・ 物価は上振れているが、賃金からサービス価格への波及には頭打ち感がみられる。』
まあこれは若干基調的物価チックな話ではありますが、いずれにしましても「基調的物価の動向について点検している」とはとても思えない意見の数だったりする訳でして、これすなわち日銀大本営の持ち出している「基調的物価」ってのは単純に「利上げを先送りするために使われているお気持ち物価」って奴じゃなかろうか、という香りが濃厚に漂ってくるわけですな。
よく考えてみたら2022年2月3月(要はロシアのウクライナ侵攻)以降アクチュアルの物価がホイホイと上がる中で、当初は「コアコア物価ガー」とか言ってたのが「賃金ガー」に替わり、そのうち「賃金と物価の好循環ガー」とか「サービス価格ガー」とか言い出し、でもって最近になるとこの「基調的物価ガー」と言いながら政策金利の調整をクソ粘りする言い訳にご利用されているというのが黒田末期以降の動きな訳でして(その合間に不透明感だの米国下振れリスクだの金融市場が不安定だのというハトハトチキン音頭も入る)、まあ結局のところお前ら基調的物価とか言ってるけどそれただの目くらましはろ、などと弊駄文如きが煽っても蛙のツラに何とやらではありますが、「お気持ち物価」ってのもなんか最近は人口に膾炙しているっぽいように思える(弊駄文調べによる笑)ので、7月展望辺りでハンギレ王子となって何か尤もらしいものを展望レポート背景説明のコラムあたりにぶっこんでくるに1万パウエルと申し上げておきましょうwwwwwww
まあお気持ちはお気持ちなんでなんかの拍子にジャガーチェンジ、というのは普通にアリエールな訳でございまして、よくよく考えてみたらマイナス金利解除だけは事前(1月)にあれも12月対比で言えば盛大なジャガーチェンジでしたが、一応予告ホームラン打ってきましたけど、25bpへの利上げだってあれ輪番縮小の具体案公表だけだと思ったらいきなり打って来たし、50bpの利上げに至っては直前のMPMから見たらどの面下げて利上げするんだっていうジャガーチェンジで、本当に直前になってから強引な地均しが行われた、という実績があるので、まあ何があるのかは本来はこっちも決め打ちしにくいなあというのは忘れてはいけませんな。とは言いましても・・・・・・・・・
・まあ金融政策の話で政策金利の話が碌すっぽ無い時点でやる気は感じられませんなあ
次の『U.金融政策運営に関する意見』のパートですけれども、前半が金利調整の話になるのですけれども、これがまた大本営含めて5つ(さっきの物価と同じ)しかない、という時点でお前ら利上げする気あるのかと小一時間問い詰めたい訳で、そういう話を「主な意見」に乗せようというような感じになっていないんじゃろうな、というのは把握しました(個人の妄想です)。
『・経済・物価の見通しが実現していくとすれば、経済・物価情勢の改善に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになる。そのうえで、こうした見通しが実現していくかは、不確実性がきわめて高いことを踏まえ、予断を持たずに判断していくことが重要である。』
これは大本営なんですが、次の意見でもあるんですけどね、
『・メインシナリオに沿ったとしても、成長ペースが鈍化し、基調的な物価上昇率の改善がいったんは足踏みする姿を想定していること、通商政策を巡り、大きな不透明性・ダウンサイドリスクがあることから、今は、現在の金利水準で緩和的な金融環境を維持し、経済をしっかりと支えるべきである。』
関税政策の話がまだ始まったばかりに近い状態(つーてまあ2か月半くらいにはなるけど)なので一旦様子見、というのは(物価およびインフレ期待が上振れているからそんなに待ってるのヤバくねえかとはアタクシは思うのですがまあそれはさておきまして経済だけで言えば)まあそういう話にはなるじゃろ、とは思いますけれども、そもそも論として4月展望でメインシナリオを下げた前提がどこにあるのか、ってのがフワフワとした書き方になっているので、関税交渉がどの水準で落ち着くとシナリオ通りなのか上振れ下振れなのかが良くわからんのよね。困ったもんです。
『・物価がやや上振れているとはいえ、米国関税政策や中東情勢に伴う景気の下方リスクを勘案し、金融政策運営は現状維持が適当と考える。』
この後の方でどう見ても抜刀斎の意見があるので、それ以外での物価上振れさんの意見ですね。まあそれで大丈夫かというのはありますが、意見としてはわかります。
『・ 先行きの不確実性が非常に高く、経済情勢等を見極める必要があり、政策金利は当面現状維持が適当である。』
まあ物価を無視すればそういう見解になりますわな。
『・ インフレが想定対比、上振れて推移する中、たとえ不確実性が高い状況にあっても、金融緩和度合いの調整を、果断に進めるべき局面もあり得る。』
これはどう見ても抜刀斎でして(って今日は時間が足りなくて抜刀の鑑賞が中々できないのがいただけない訳ですがorz)物価上振れだから緩和の調整も必要じゃないの、というインフレ目標政策やっているんだからよく考えたら至極ご尤もなお話をしておりますが、まあこれ見ますと一応物価上振れを見ているのが3名いて、うち1名は政策金利調整に積極的、1名はやや親和性があるけどもう1名と思われる人は金利にノーコメントなので特にそこまでは考えていないって感じですかね。でまあ残りは利上げやる気無し無しではあるのですが、前述したようにこいつら突然のジャガーチェンジがあるからそこだけは要注意、って感じですかね。
・長期国債買入に関する議論がハトハトチキンの財政従属市場従属過ぎてひどすぎる件について
後半が国債買入のパートでして、なんと12個もあるという満艦飾状態。
『・ 長期金利がより自由な形で形成されるようにするためには、国債買入れを更に減額していくことが望ましい。一方、国債買入れの減額が進展する中、今後のペースが速すぎると、市場の安定に不測の影響を及ぼす可能性もある。減額計画の策定においては、両者のバランスを勘案する必要がある。』
これは大本営なのでパス。
『・ 決定した国債買入れの減額計画は、金利形成を基本的に市場に委ねつつ、急激な金利変動によって経済・物価に悪影響を及ぼすことを避けるための措置である。財政への配慮ということでは全くない、という点はしっかり説明していく必要がある。』
どう見たって財政従属でしょwwwwwwwwwww
『・ 日本銀行の国債保有比率はできるだけ速やかに引き下げることが望ましいが、2019
年に米国が量的引き締め(QT)を停止せざるを得なくなったように、急ぎすぎても却って調整に時間を要することになりかねない。購入額をいったん大きく減らしてそれをまた増やす形では、途中で市場の混乱を招く可能性を不必要に高めかねない。』
すげえ尤もらしい事を言っているけど、2019年の米国と今の日銀のバランスシートは状況が全然違うじゃろという話で、ただのチキンな訳でして、トランプのTACOならぬUACOって奴ですかwwwwwww
『・ 市場機能は回復途上であるため、国債買入れ減額を継続する必要がある。わが国経済の弱い回復力や先行きの不透明感の高まり、市中の国債保有余力を踏まえると、リスクマネジメントの観点から2026
年4月以降は減額幅を 2,000 億円に引き下げ、同年6月に中間評価することが適当である。』
>市中の国債保有余力を踏まえると
>市中の国債保有余力を踏まえると
>市中の国債保有余力を踏まえると
・・・・・それを踏まえて国債買入を高水準で継続しよう、という発想が財政ファイナンスっていうんですけどw
『・ 国債買入れについては、よりスムーズな政策運営の観点から来年4月以降の減額幅を縮小することが望ましい。しかし、それは金融政策運営スタンスの変化を意味するわけではない。』
「よりスムーズな政策運営の観点から」とかもはや意味不明。お前ら何の議論してたの???
『・これまで多額の国債を買入れてきた日本銀行が、買入れを減額することによって、市中への国債供給が増加する。この点を踏まえれば、今次局面は過去と比べて有数の市中への大量国債供給局面とも考えられる。市場の不安定化回避のため、過去の国債供給量も念頭に減額幅の調整や市場の受容状況の見極めが必要である。』
・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・( ゚д゚;)
節子、それは完全に今までの国債買入が財政ファイナンスなのを認めたうえで財政ファイナンスを継続せざるを得ないっていうのマーライオン並みにゲロっておるぞな。
『・フローの国債買入れの減額については、最終的な着地点に向けて、次のフェーズである
2026 年度は、より慎重に進めても良い。加えて、最適なバランスシートの大きさについて、資産・負債の両面から考えていく必要がある。』
そもそもバランスシートの最適化が必要なんだから、フローの国債買入はバランスシートが適正規模になるまではゼロじゃろ(FED方式でバランスシートの縮小ペースの調整での少額の再投資は行うにしてもあれは理念的にはゼロですからね)と思う訳で、最終着地がゼロじゃないってのが話としてそもそもおかしいし正常化ができていないしQQE脳から抜けてない訳ですよ。まあそれはジャンキーになって涎垂らして道端に転がっている風情の債券市場の中の人たちもQQE脳なんで政策委員に悪態ついてる場合でもないけどorzorz
『・長期金利の形成は市場と市場参加者に委ねるべきであり、可能な限り早く、日本銀行の国債保有残高の水準を正常化するべきである。これにより、金融市場のショック吸収力を一刻も早く高めておくことが重要である。』
今日ネタにしている時間が無いのですが(すいませんすいません)抜刀斎の金懇でもこの点の言及がありましたのでどう見ても抜刀斎。
まあ市場云々もあるのですが、そもそも巨額のバランスシートを抱えたままでは物価安定目標を達成した後の「普通の金融政策」の運営上支障をきたすし、支障をきたすと思われたら市場が反乱起こしたり、ひいては一般のインフレ期待のアンカリングができなくなる可能性だってあるんだから、バランスシートの縮小を早期に進める、まで踏み込んだら大抜刀なのですが、もしかしたらこの次の意見が上記意見の続きになりますかしら、
『・ 超過準備はきわめて潤沢な状況にあるとみている。したがって、国債買入れの減額を粛々と進めて日本銀行のバランスシートを正常化させていくことは必要である。』
ということで抜刀斎の抜刀パート2かも知れないなと思いました。この先ちょっとだけバランスシート規模の話になりますが、
『・ 国債買入れの減額については、今後、その着地点をどう設定するのかを、日本銀行のバランスシート縮小の行方とあわせて、長期的な視点で検討する必要がある。』
いや着地点は適正なバランスシート規模に戻るまではゼロ(微調整の買いはあり)じゃろ、としか思えないのですが、
『・ 今後、例えば月間の国債買入れ額が 1 兆円程度にまで減少すれば、日本銀行の動きが市場で話題になることもなくなるのではないか。買入れ額をゼロにすることに強く拘ることは不要と考えている。』
・・・・・・・・・お前は何を言ってるんだ??????
『・超長期ゾーンのボラティリティ上昇がイールドカーブ全体に波及し、意図せざる引き締め効果が市場全体に及ぶ可能性もある。安定した市場のもとで形成されたイールドカーブは重要な金融インフラである。当局間で十分に意見交換し、市場の安定に努めていく必要がある。』
って話なんですが、そもそも超長期金利が上がっているのは「日本の基礎的条件が超長期での国債発行を段々難しくするような状態になりつつある」ってのを示していて、これまではQQEだのYCCだのと言って調子に乗りまくって日銀が馬鹿買入をしていたから、この間の日本の基礎的条件の変化について市場が反応できなかったのが、インフレ目標達成するとかそういう状態になる中で、QQEだのYCCだの出来なくなってみて、これまで蓄積されていた基礎的条件の変化が何年分纏めて出ている、ってだけの話じゃろと思うので、「当局間で十分に意見交換し、市場の安定に努めていく必要がある」っての別に意見交換するなとは思わないけど、これもやり方とか出し方を間違えれば「財政ドミナンス」になる話な訳ですな。
ということで、今回の「2026年以降の長期国債買入ペース減額」は「市場安定」の美名のもとに財政ドミナンスがインフレ状態になってきているのに全然改善されない、という恐ろしい事を示しておられるわけでして、それはインフレのさらなる上振れか為替の大幅な減価(または合わせ技)で後日お勘定が回ってくるという懸念がぬぐえませんな、というお話でした(個人の偏見です)。
#つーことで抜刀斎の金懇は明日で勘弁
2025/06/24
〇5月決定会合議事要旨(その2)
しゃーせん昨日の続き。
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2025/g250501.pdf
政策委員会 金融政策決定会合 議事要旨
(2025年4月30日、5月1日開催分)
昨日この手前までで終わってしまったので『V.金融政策運営に関する委員会の検討の概要』に参ります。
・別に「今の状況はどういう事になるか分からんのでとりあえず現状維持」でよかった筈なのですが・・・・
『次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針 について、委員は、「無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0.5%程度で推移するよう促す」という方針を維持することが適当であるとの見解で一致した。』
でですね、
『多くの委員は、経済・物価見通しの下振れや不確実性の高まりを踏まえると、現時点では、緩和的な金融環境を維持しつつ、各国の通商政策等の今後の展開やその影響を丁寧に確認していくことが適当であると指摘した。』
今回の判断で「下振れ」を入れたのが妥当だったのか、ってな話でして、4月末の時点ではどうなるか分からんという状態なのに、思い切って下振れハトハトを出した意味は何だったんでしょってなもんですが、昨日ご紹介したように、経済物価認識のパートが一部の委員を除いてとんでもなくハトハトチキンだったので、まあ当然ここでも「経済物価見通しの下振れ」が入っています。
でですね、経済物価情勢の下振れなら下振れでも良いんですが、じゃあ(6月会合声明文と記者会見での説明ではそういうのは無かったですけど)何でこの前のBBGでは「日銀では物価の上振れを意識してる」みたいな話が舌の根も乾かぬうちに出てくるんだという話でして、結局おまいらの経済物価見通しは政策判断の説明の後付けで見通しを立ててないのかと小一時間問い詰めたくなる訳ですよ。まあそういう意味で7月展望もそうですが6月の議事要旨と、その前に明日「主な意見」が出ますからそこも確認したいですけど。
『何人かの委員は、現在の実質金利はきわめて低い水準にあり、これを維持することで、経済をしっかりと支えていくことが重要であるとの見解を示した。このうちの一人の委員は、金利の下限制約から脱却して1年以上経つが、経済と物価はしっかりしており、現在の金融政策スタンスは、とても緩和的な状況にあると付け加えた。ある委員は、1月に決定した政策金利引き上げの影響も、確認していく必要があるとの見解を示した。別のある委員は、米国の関税政策の展開がある程度落ち着くまで、取りあえずは様子見モードを続けざるを得ないと述べた。この間、一人の委員は、最近の関税政策により、企業における行き過ぎたコストカット、賃上げ・投資の抑制や産業の空洞化に陥る可能性も考えられることから、企業マインドや倒産の傾向に変化がないか注視する必要がある
との見方を示したうえで、経済への影響を慎重に見極めるため、現在の調節方針を維持することが適当であると述べた。』
ということでして、これよくよく読みますとあくまでも「関税の影響、特に関税政策によって企業の価格設定や賃金設定の行動が下方屈曲しないか、を見極めたい」って話で、それはまあ言いたいことはわかる(ただしアタクシ的には既に基調的物価が2%を超えているんじゃないかと思っているので待っている余裕はそんなに無い、と思っていますがそれはアタクシの感想なのでさておきまして)のですが、「関税政策の経済物価への影響、特に企業や家計の行動が下方屈曲しないかどうかを見極めたいので様子見」だったら別に初手からそういう説明をメインにすれば良いだけのことで、なんも経済(はまだ分からんでもないが)物価(上方修正上振れリスクからのドテンが酷すぎ)見通しをあんなに盛大に修正しなくたってエエジャロとしか思えないんですよね。
・見通しを下げているのに「先行きの方向性は変わらん」というのが如何にも訳わからん事になるわけですよ
でもって次のパラグラフが先行き金融政策ですが、
『先行きの金融政策運営について、委員は、経済・物価の見通しが実現していくとすれば、経済・物価情勢の改善に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことが適当との見方で一致した。』
見通し下げてリスク認識も下げているのに先行きの話が同じってのもよくよく考えてみたら妙ですわな・・・・・
『何人かの委員は、現在の実質金利が大幅なマイナスであり、かつ、先行き2%の「物価安定の目標」を実現する姿になっていることを踏まえると、方向としては、これまで同様、政策金利を引き上げていくのが適当であるとの認識を示した。』
ってな話だが、先行き2%達成云々って作文の世界ですからねえw
『このうちの一人の委員は、健全なバランスシートなど、日本企業の財務体質が過去と比べて大きく改善している点も認識しておく必要があると述べた。』
まあその分のツケが政府に行ってますがqqqq
『ある委員は、「物価安定の目標」の実現に向けて最も重要なのは、企 業の賃金・価格設定行動や企業や家計の予想インフレ率の動向であるが、これらが以前の賃金・物価が上がりにくい頃の状況に戻るリスクは小さく、2%に向けて上昇してきた基調的な物価上昇率が下方に屈折してしまう可能性は小さいとの見方を示した。』
ちなみにアタクシも同感です。というか「基調的物価」がインフレ期待ってこの前植田さんが講演で言ってたんだから、もうちょっとインフレ期待の話をしてないとおかしい訳で、そういう点から見ても日銀のいう「基調的物価」って説明用のお気持ち物価ではあるけど、政策運営の時にその話まともにしているのかというのが疑問で、これすなわち何時もの「説明に困ったら動いたり無くなったりしてしまうゴールポスト」なんだと思います(個人の偏見です)。
・結局関税政策次第ですよという話がその先に続きまして・・・・・
次のパラグラフに参ります。
『そのうえで、多くの委員は、経済・物価の見通しが実現していくかについては、各国の通商政策等の今後の展開やその影響を巡る不確実性がきわめて高い状況にあることを踏まえ、内外の経済・物価情勢や金融市場の動向等を丁寧に確認し、予断を持たずに判断していくことが重要であると指摘した。』
予断を持たずにって言ってますが一回下がってまた上がる、というような器用な予断をもって物価見通し毎度出して毎度外しているのどこの誰でしたっけw
という悪態はさておき、
『ある委員は、前提となる各国の交渉の帰趨を含めて、不確実性がきわめて高い中で、見通し自体が上下に変化しうるため、見通し実現の確度やリスクを見極めていく必要があるとの認識を示した。一人の委員は、今回の経済・物価見通しの確度は従来と比べて高くはないとの見方を示したうえで、先行き、見通しの上振れ・下振れ双方の可能性を点検し、適切に政策を運営していく必要があると述べた。』
物価見通しっていつも外していますので確度が従来より高いも低いも無いと思いますがwwwwwww
『別の一人の委員は、米国経済減速から利上げの一時休止局面となるが、米国の政策転換次第で追加的な利上げを行うなど、過度な悲観に陥ることなく、自由度を高めた柔軟かつ機動的な金融政策運営が求められるとの認識を示した。』
過度な悲観キタコレ
『また、別のある委員は、サプライチェーンの毀損などにより経済が下押しされると同時に物価が上押しされるような状況となれば、米国と比べて予想インフレ率がアンカーされていないわが国では、金融政策での対応がより難しくなる可能性があると指摘した。』
難しいのはそうなんだがじゃあその際にどうしろって話だったのか、というのを何で書いてくれないんでしょうか(まあいわなかったんだったらシャアナイけど)。
・情報発信について(その1)ベースラインシナリオを下げた理由についてのわが妄想
次のパラグラフは、
『委員は、金融政策運営に関する情報発信のあり方についても議論を行った。』
から始まるのですが、
『何人かの委員は、経済・物価の見通しが上下双方向で大幅に変化しうるもとでは、先行きの政策金利のパスは、中心的な見通しのもとで予想されるものから変わり得ることを丁寧に説明していくことが重要であると指摘した。』
だったら何で「従来の見通しは一旦維持しますが、経済の下振れリスクは関税政策次第でメッチャ高いし、物価のリスクは経済コケると物価にもマイナスだと思います」って言って「だから先行きの政策金利パスはこれからの進展次第でどうなるかって話なんですよ」って説明すればいいものを、なぜか知らんが見通しを下げるという技を使う訳ですよ。まあこれに関してはワイ的には一つ仮説はあるんで後程。
『また、ある委員は、様々な不確実性の存在を前提としつつも、今回示した中心的な見通しのもとでは、2%の「物価安定の目標」は、後ずれはするものの達成できるという見通しがあり、その見通しに立つのであれば、これまで同様、政策金利の引き上げにより金融緩和の度合いを調整していくことが適当であるという、現時点での日本銀行の基本的な考え方を説明していくことが大切であるとの意見を述べた。』
これは1名の方の発言ですけれども、まあ建付け的にはこういう建付けが今回の決定でしたよね、ってなもんなのですが、これ結局のところ「先行きの政策金利パスは上向きです」って話をしたいがために見通しを先んじて下げている、というのが多分屁理屈大魔王の屁理屈の中にあると思われまして、すなわちさっき申し上げましたように「見通しは一旦維持しますけど下振れのリスクも高いですね」ってやってしまうと、「じゃあ下振れしたら金融緩和強化ですか」って話になりやすいので、さきにベースラインシナリオを下振れさせておいて、「ベースラインシナリオは下がったけれども利上げ方向は変わりません」と言っておけば、現実に下振れしても「ほらベースライン通りでしょ」と言える、というまあそういうプレイが使える、ってことなんでしょうね、と思いました。
・情報発信について(その2):お漏らしプレイはいい加減にしやがれというご指摘
さらに話は続くがここで話題は一転しまして、
『この点に関連して、一人の委員は、市場は、日本銀行の従来からの基本方針を前提に、内外の新しい情報を自ら咀嚼して、日本銀行からの直接的な示唆を俟つことなく、利上げ時期についての見方を形成し、自ら修正し続けていると指摘した。そのうえで、この委員は、市場が日本銀行の細かな言い振りよりも、経済・物価の動向に着目するようになることが望ましく、日本銀行としても、そうした状況を維持できるような情報発信を続けることが適切であるとの見解を示した。』
こういうことを言うのはまあ高田っちか抜刀斎だろうなあ(他にあるとすればワンチャン氷見野副総裁)と思う訳ですが、まったくもっておっしゃる通りでして、あの謎のお漏らし記事が出てきて方向性を出そうとするスカトロプレイは大概にして頂きたいものです。
・長期国債買入について:うーん2名を除いてビビリンチョっぽいなあ・・・・・・・
でまあこれを受けて展望レポートはこんな感じでよろしゅございますでしょうかと執行部が言って、それに対してああそうですねと政策委員が返す下りはまあ飛ばしましてその次の長期国債買入に関して。
『委員は、最近の国債市場の動向と日本銀行の国債買入れに関する考え方についても、議論した。』
はじまりはじまり。
『何人かの委員は、@長期金利は金融市場において形成されることが基本であること、A日本銀行による長期国債の買入れは、国債市場の安定に配慮するための柔軟性を確保しつつ、予見可能なかたちで減額していくことが適当であること、といった基本的な考え方を改めて示した。』
この「国債市場の安定に配慮」と「予見可能」をどう見てもやりすぎているのが6月に出た買入計画なんですけどねえ・・・・・・・・・・・・
『このうちの一人の委員は、減額計画を定める際には、どの程度の減額であれば国債市場の機能に混乱が生じる可能性を低く抑えられるか、がポイントとなると指摘した。』
そんなものを気にしている時点でお前の言ってるのは財政ファイナンス。
『何人かの委員は、超長期国債の金利が大幅に上昇するなど、年限間の分断が生じているとの見方を示した。このうちの一人の委員は、国債買入れの減額計画の中間評価に向けて、年限別の需給動向や流動性、業態毎に異なる見方を丁寧に確認することが重要であると述べた。』
これだって結局「超長期の買入が少ないのが悪い」のではなくて、「中短期から長期の買入が過大でイールドカーブの手前が押さえつけられているので金利上昇のエネルギーが超長期に行ってしまう」という面も多々ある訳で、そもそも買入の額がおかしい、というのを前提にしないで話をすると今回のように減額1年にしてビビリンチョと化してしまって2026年4月からどうのこうのとか言い出すわけですよ。
『この点に関連して、何人かの委員は、超長期金利の上昇については、そもそも同市場の参加者が限られているもとで、規制対応の一巡により投資家需要が減退していることなどが影響していると
の指摘が市場参加者から聞かれていると付け加えた。』
規制対応の一巡も勿論大きいのですが、YCCなかりせば本来20年とかのリスクを取りに来なかった人たちをYCCで超長期に追いやってしまったことの反動が起きている、という面も見逃せないと思うんですけどね。
でもって最後に2名(なので高田っちと抜刀斎だと思いますが)が良い意見を。
『ある委員は、例外的な状況を除き、日本銀行が、一時的な需給バランスの変化に都度対応すると、市場の機能を再び損なうことになってしまうとの認識を示した。』
仰せの通りです。
『一人の委員は、中央銀行が市場を十分に考慮することは当然であるが、一方で、その時々の市場の意見に反応しすぎると、その柔軟性が却って予見可能性を低下させ、市場の不確実性をより高める可能性があると指摘した。』
全くです。
・・・・さすがに最近はこの輪番問題と国債発行計画問題の話題を聞きつけた他市場(主に外債方面)のお友達から「円債市場の連中って当局に甘えすぎじゃねえのか」と悪態をつかれる始末でして、クレクレコジキに成り下がっているのはちょっと残念ですわな。
なお、
『これらの議論を踏まえ、委員は、6月の金融政策決定会合では、市場参加者の意見や見方を十分に確認したうえで、国債市場の動向や機能度についてしっかりと点検し、現在の減額計画の中間評価を行うとともに、来年4月以降の国債買入れ方針を検討する必要があるとの
認識で一致した。』
一致したのかつまらん、「来年4月以降の国債買入方針に関しては大まかな方向を公表するのは良いが、具体的な金額などを10か月も前に公表するのは時期尚早なので行うべきではない」って意見を堂々とぶっこんで議事要旨に乗せて頂きたかったですね。まあ今回の主な意見で何かそういうのあるとは思いますが(主に反対してた抜刀斎方面から)。
2025/06/23
〇4月展望会合議事要旨(その1)
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2025/g250501.pdf
政策委員会金融政策決定会合
議事要旨
(2025年4月30日、5月1日開催分)
・米国の物価に関する見方にデフレ脳を感じるんだが・・・・・・・・・
まずは『U.金融経済情勢と展望レポートに関する委員会の検討の概要』から参りますが、
『米国経済について、委員は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに成長しているとの認識で一致した。そのうえで、多くの委員は、今後、関税政策は、米国の実体経済を下押しする方向に作用するほか、少なくとも短期的には物価を上押しするとの見解を示した。』
まあこの会合は海外経済の所がやたら下がったのでこの辺から見ていきますが、
『ある委員は、家計や企業、金融機関のバランスシートが健全であることなどを踏まえると深刻な景気後退は考えにくいが、しばらくは潜在成長率を下回る成長が続く可能性が高いと指摘した。』
『別の一人の委員は、一時凍結されている相互関税の上乗せ部分が撤回されたとしても、関税の物価に及ぼす影響は大きく、個人消費や設備投資には下押し圧力がかかるとの見方を示した。』
あらそうって感じで弱いですけれども、
『複数の委員は、やや長い目でみて、いったん上昇した物価が経済の減速により下押しされるのか、それとも高めの物価上昇率が継続するのかについては不確実性が大きいと指摘した。』
でもってこの米国の物価に関してですが・・・・・・・
『そのうえで、このうちの一人の委員は、今後の物価動向を見定めていくためには、労働市場の状況、とくに賃金の動向を注視していくことが重要であると付け加えた。』
というのはまあ分かるんだが次の意見が???で、
『この点に関連し、ある委員は、経済が減速するもとでは、一時的な物価上昇ショックによってインフレ予想のアンカーが上方に外れるリスクは限られるとの見解を示した。』
????????いやあの第一次石油ショックとか第二次石油ショックとかご存じですよね・・・・・・・
『この間、一人の委員は、新政権発足以降、経済成長にマイナスに働く関税等の政策が先行しているが、今後、減税等が実現していけば、成長率の上振れもあり得ると指摘した。』
とまあこういう感じで、最後にちょっと上振れがありますけど、総じて弱気な上になぜか物価に関してもあんまり強くなさそうな見通し、という印象を与える構成になっておられますな。
・欧州と中国に関しても弱気ですねえ
『欧州経済について、委員は、製造業を中心に弱めの動きがみられているとの認識を共有した。ある委員は、米国の関税引き上げの影響に加え、これまでの投資抑制やコストの高止まりにより、欧州の産業競争力は低下しているとの見方を示した。』
後者の方ですが、こういうの言いそうなのは中村委員かしら。
『中国経済について、委員は、政策面の下支えはあるものの、不動産市場や労働市場の調整による下押しが続くもとで、改善ペースは鈍化傾向にあるとの見方を共有した。一人の委員は、内需低迷や貿易摩擦激化による輸出の減少が懸念されるほか、住宅の販売在庫の大きさを踏まえると不動産市場の回復にはかなりの時間を
要する可能性が高いとの見方を示した。』
とまあそんな感じで弱気なのが並ぶ。
・国内物価の現状ですが東京都区部が上振れていた件は何かあんまり重視されていませんでしたなあ
日本の経済物価の話になるのですが、経済の方はさておきましてこの会合で一気に見通しの下がった物価ちゃん、東京都区部CPIが重視されていたら物価見通しが下方修正してリスクは下振れにならんじゃろという話だが。
物価面について、委員は、賃金上昇の販売価格への転嫁の動きが続くもとで、既往の輸入物価上昇や米などの食料品価格上昇の影響もあって、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、足もとでは3%台前半となっているとの認識で一致した。』
ということですがまあこれは事実なのでさておきまして、
『ある委員は、全国に先行して公表された4月の東京都区部の消費者物価の前年比をみると、家賃を除く一般サービスの伸び率が3%を上回ったほか、東京固有の要因である可能性はあるものの、家賃の伸び率も大きく高まっていると指摘した。』
『この点に関連し、一人の委員は、東京以外の地域では、全体として家賃の上昇率は小幅にとどまっているが、新規家賃については、大都市圏を中心に、このところ上昇の動きが目立ってきていると指摘した。』
って指摘があるのに何であの見通しになったか、といううのは後程。
『この間、予想物価上昇率について、委員は、緩やかに上昇しているとの見方で一致した。』
この部分ってもっとまじめに議論してくれませんかねえ、だって「基調的物価」は「予想物価上昇率」ってこの前植田総裁内外情勢調査会で話をしてたじゃ・・・・・・・・・・・
・なんかもうこの世がオワ終わりみたいな話をしておりますな(見通し部分)
でもって先行き見通し、ということで『2.経済・物価情勢の展望』ってところなのですが・・・・・・・・・
『次に、委員は、これらの前提のもとで、経済情勢の先行きの中心的な見通しについて議論を行った。』
前提のところはご案内の通りなのでパスしてここから参ります。
『委員は、わが国経済について、@各国の通商政策等の影響を受けて、海外経済が減速し、わが国企業の収益なども下押しされるもとで、緩和的な金融環境などが下支え要因として作用するものの、成長ペースは鈍化する、Aその後は、海外経済が緩やかな成長経路に復していくもとで、わが国経済も成長率を高めていくと見込まれるとの認識を共有した。』
という字面になっているのですが、この関税政策の影響に関する部分がですね・・・・・・
『委員は、米国の関税政策やそれに対する各国の通商政策は、わが国の経済を下押しする方向に作用するとの見方を共有した。そのうえで、多くの委員は、関税政策は、主として、貿易面および企業や家計のコンフィデンス面から、わが国経済を下押しすると指摘した。ある委員は、資源価格下落等に伴う正の供給ショックも見込まれるが、様々な経路を介して発現する負の需要ショックよりは小さいと考えられると付け加えた。』
からの、
『貿易を通じた経路について、何人かの委員は、 関税の引き上げは、米国内でのわが国企業の価格競争力の低下に加え、貿易の縮小を介した世界経済全体の下押しを通じて、わが国の輸出を押し下げるとの認識を示した。また、複数の委員は、為替が円高方向で推移すれば、わが国の輸出にマイナスの影響を及ぼすと指摘した。別の一人の委員は、高関税が長期化すれば、直接的影響を受ける輸出企業を中心に、事業再編やサプライチェーン強靱化のための取引先の選別、生産拠点の米国シフト等が進む惧れがあり、これが、経営体力が比較的弱い中小企業に影響を及ぼす懸念があると述べた。この点に関連し、ある委員は、当面影響が懸念されるのは、個別関税が設定されている自動車であるが、米中間の高関税により中国経済が更に落ち込むようなことがあれば、より幅広い製造業に影響が及ぶ可能性があると指摘した。』
な、なんですかこのオワ終わりみたいな話は、というほどのバチクソ弱気な話が大展開されている訳でして、こりゃまたエライ弱気ですねってなもんで、同時期の米国が「まあゆうてよおわからんから様子見じゃ様子見」と言ってたのとエラい温度差がありましたなこりゃ。
でまあさすがにこの「この世の終わりを嘆く会」状態に対してカウンターも入っていまして、
『これに対して、一人の委員は、1990 年代の円高局面と違い、今回の相互関税は世界各国に賦課されるため価格転嫁も可能であり、わが国企業の相対的な競争条件悪化には繋がり難く、収益減少が限られる可能性もあると指摘した。』
『別の一人の委員は、理論的には、米国による関税賦課はドル高・円安方向の圧力をかけることになるため、わが国の輸出に対する影響を緩和する可能性もあるとの見解を示した。そのうえで、この委員は、GDPに占める輸出の割合等でみたわが国経済の貿易依存度はそこまで高くないため、関税政策の動向だけでなく、国内要因にも注目して、冷静に金融経済の状況を判断していく必要があると付け加えた。』
2名がこの世の終わりみたいな議論に対して「いやお前ら悲観しすぎじゃろ」というのを入れてきましたのが救いなわけですが、さらに「冷静に金融経済の状況を判断していく必要がある」って指摘がかなり味わいがあって、つまりはこの会合ってなんかもう悲観でウヒャーウヒャーって茹で上がっていた方々が多かった、ということだったんじゃなかろうかと思われますな、南無大師遍照金剛。
・しかし中心的な見通しを前提にして1年後ずれってよく考えたら何なんでしょうかね
ちょっと先に行って物価の見通しなんですけど、
『続いて、委員は、物価情勢の先行きの中心的な見通しについて議論を行った。』
はい。
『委員は、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比について、2025 年度に2%台前半となったあと、2026
年度は1%台後半、2027年度は2%程度になるとの見方を共有した。』
26年度2%割れってそうなるのかねえとしか言いようが無いのだがまあさておきまして、
『委員は、これまで物価上昇率を押し上げてきた既往の輸入物価上昇やこのところの米などの食料品価格上昇の影響は減衰していくとの認識で一致した。』
普通にいろんなところに価格転嫁が波及しているようにしかみえませんがさておきまして、
『そのうえで、委員は、消費者物価の基調的な上昇率は、成長ペース鈍化などの影響を受けて伸び悩むものの、その後は、成長率が高まるもとで人手不足感が強まり、中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想され、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移するとの見方を共有した。何人かの委員は、今回前提とした各国の通商政策等の影響がみられるもとでも、引き続き賃金の伸びと労働需給の引き締まりに支えられ、基調的な物価上昇率は、2%に向けて徐々に高まっていくという大きな方向感はこれまでと変わらないとの認識を示した。』
って話なのに、
『そのうえで、複数の委員は、中心的な見通しのもとでは、基調的な物価上昇率が「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移するようになる時期は、従来の見通しから1年程度、後ずれするとの見方を示した。』
なんで1年も後ずれするんだよという話で、まあ意味不明ではありますな。
『委員は、各国の通商政策は、物価に対して上下双方向の影響を及ぼしうるが、今回の前提のもとでは、今後の成長ペース鈍化などを通じて、中心的な見通しを押し下げる方向で作用するとの見方を共有した。また、一人の委員は、サプライチェーンが混乱するようなことがあれば、一時的には物価を押し上げる可能性があるが、混乱が長引けば、企業収益や賃金への下押し要因として働き、基調的な物価上昇率を押し下げる要因として作用する可能性があるとの見解を示した。この間、別の一人の委員は、関税の賦課は短期的な価格ショックと考えることもでき、長期的には実質的な効果を持たないとの理論上の結論はありうることから、現時点では、やや長い目でみれば、関税政策とその不確実性が、基調的な物価上昇率や潜在成長率に影響を与えるとはみていないとの認識を示した。』
ってな話で、インフレ期待の上振れ、という指摘が無いんだよなーと思いつつ、先の方になりますが、リスク要因の物価の話を見ますとですね・・・・・・・・
・やっぱり一部の委員を除いて「期待インフレの上振れ」を懸念してないんだよな〜
『物価のリスク要因について、委員は、上記の経済のリスク要因が顕在化した場合には、物価にも影響が及ぶほか、物価固有のリスク要因として、@企業の賃金・価格設定行動やそれらが予想物価上昇率に与える影響、A今後の為替相場の変動や国際商品市況を含む輸入物価の動向、およびその国内価格への波及には注意が必要であるとの見方で一致した。』
というのは展望レポートにあった通りですが、
『各国の通商政策等の動きが物価に及ぼすリスクに関連して、ある委員は、輸出企業を中心とした企業収益の減少が、今後、サプライヤーへの原価低減圧力の強まりや賃金設定行動の変化を介して、基調的な物価上昇率を押し下げうると指摘した。』
でまあこれに関連して、
『この点に関連し、一人の委員は、先行きの賃上げ気運を維持していくためには、本年の冬季賞与や来年の賃上げに向けて、企業経営者がどのようなメッセージを打ち出していくかが重要なポイントになると指摘した。別の一人の委員は、企業や家計の予想物価上昇率がどのように推移するのか、企業の賃金・価格設定行動がデフレ・低インフレ下のものに戻ることがないかといった点を、ヒアリングなども含め、しっかりモニタリングしていく必要があると述べた。』
企業の賃金設定行動について注目、ということになるとそれを判断するのは最初のひとりの委員が言ってるように冬の話になってしまいますねえ。
『また、何人かの委員は、米中間の高関税の影響等を受けて、中国から安値輸入品がわが国に流入し、物価を押し下げるリスクもあるとの認識を示した。』
というのの後に上振れの話がありまして、
『これに対して、複数の委員は、各国間の交渉の帰趨次第では、中心的な見通しよりも物価が上振れる可能性もあると指摘した。』
でもって最後に出てくるこの人だけが期待インフレの上振れをしてきしていまして、
『このうちの一人の委員は、成長率や消費者物価の前年比が今回の見通し通りに推移するとしても、企業や家計の予想物価上昇率や、企業の賃金・価格設定行動の状況次第では、基調的な物価上昇率は見通し期間前半に「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移する可能性も十分あると付け加えた。また、この委員は、物価は
2027 年度まで2%近傍を維持する見通しにある中で、グローバルサプライチェーンの混乱等による物価上振れリスクには留意が必要であるとの見解を示した。』
普通にこの意見が仰せご尤もだと思うのですが、その前の経済の所であったように、なんかこの世の終わりみたいな議論になっていたんだな、というのは議事要旨を見て再確認(展望レポートの時点でまあエライ弱気でしたけど)できた感じですね。
『この間、何人かの委員は、為替相場が大きく変動すれば、物価にも影響が及びうると付け加えた。』
でもってこの後金融政策のパートになるのですが、ちょっと時間が怪しくなってきたのでここで勘弁していただきとう存じます。
2025/06/18
〇声明文の経済物価の現状認識:先行き見通しともに4月展望基本的見解と変更なし
今回声明文
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2025/k250617a.pdf
4月展望レポート基本的見解
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2504a.pdf
輪番の話はさておきまして経済物価情勢に関する評価が「物価上振れ」したかどうかを見たかったのでそっちを先に見るわけですな。
・現状認識:まあやっぱり変えないだろうなあと思ったら変更ありませんでしたwwwwww
声明文では項番3の第一段落、展望レポート基本的見解では本文最初の『1.わが国の経済・物価の現状
』が該当します。
『わが国の景気は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している。』(今回声明文)
『わが国の景気は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している。』(前回展望レポート)
はい。
『海外経済は、各国の通商政策等の影響を受けて一部に弱めの動きもみられるが、総じてみれば緩やかに成長している。輸出や鉱工業生産は、一部に米国の関税引き上げに伴う駆け込みの動きがみられるが、基調としては横ばい圏内の動きを続けている。』(今回声明文)
『海外経済は、各国の通商政策等の影響を受けて一部に弱めの動きもみられるが、総じてみれば緩やかに成長している。輸出や鉱工業生産は、一部に米国の関税引き上げに伴う駆け込みの動きがみられるが、基調としては横ばい圏内の動きを続けている。』(前回展望レポート)
6月半ばにもなって今更「駆け込みの動き」なのかよと素朴には思うのですが、ゆうてワイも通関統計を真面目に見たりしている訳ではないので判断保留。でもってご覧の通り全文一致。
『企業収益が改善傾向にあるもとで、設備投資は緩やかな増加傾向にある。』(今回声明文)
『企業収益は改善傾向にあり、業況感は良好な水準を維持している。こうしたもとで、設備投資は緩やかな増加傾向にある。』(前回展望レポート)
業況感のところは直前に日銀短観があった時のみ入るアセスメント文言ですので、ここは事実上の全文一致となります。
『個人消費は、物価上昇の影響などから消費者マインドに弱さがみられるものの、雇用・所得環境の改善を背景に緩やかな増加基調を維持している。』(今回声明文)
『個人消費は、物価上昇の影響などから消費者マインドに弱さがみられるものの、雇用・所得環境の改善を背景に緩やかな増加基調を維持している。』(前回展望レポート)
個人消費の現状判断も4月展望(5/1)と同じ。
『住宅投資は弱めの動きとなっている。公共投資は横ばい圏内の動きとなっている。』(今回声明文)
『住宅投資は弱めの動きとなっている。公共投資は横ばい圏内の動きとなっている。』(前回展望レポート)
『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(今回声明文)
『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(前回展望レポート)
同じですなあ、ということで金曜日に謎のBBG報道があった物価認識ですけれども・・・・・・
『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比をみると、賃金上昇の販売価格への転嫁の動きが続くもとで、既往の輸入物価上昇や米などの食料品価格上昇の影響もあって、足もとでは3%台半ばとなっている。予想物価上昇率は、緩やかに上昇している。』(今回声明文)
『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比をみると、賃金上昇の販売価格への転嫁の動きが続くもとで、既往の輸入物価上昇や米などの食料品価格上昇の影響もあって、足もとでは3%台前半となっている。予想物価上昇率は、緩やかに上昇している。』(前回展望レポート)
数字が上がっていますが、これはアクチュアルの数字が上がったからこう書いているだけの話で、背景説明を見たら何も変更は無いわけで、物価が上振れて推移している云々のBBG報道は一体全体何だったのかというお話ですが、この後記者会見でどういうかなあというのは有ったのですが、別に何か威勢の良いことは無かったなって感じですがその辺は会見録出てから再度。
・・・・・ということで事実上の全文一致でした。
・先行き見通し判断:これまた事実上の全文一致でしたなあ
先行き判断に関しても前回展望は本文の方を見ます。ここの比較にはちょっとコツというほどのものでもないのですが、まあそんなのがありまして、展望回じゃないときのここの文言って展望レポートの基本的見解の本文を引っ張って来てそこから何か変更を入れる場合は入れている、と思われる節がありまして、鏡の部分と比較すると抜けが発生することがあると思うのです(鏡と比較する方が自然にも思えるのですが、アタクシは実はあんまり鏡と比較したことがない)。
という豆知識はさておきまして、本文に関しては先行きのところに分散して載っています。
『先行きのわが国経済を展望すると、各国の通商政策等の影響を受けて、海外経済が減速し、わが国企業の収益なども下押しされるもとで、緩和的な金融環境などが下支え要因として作用するものの、成長ペースは鈍化すると考えられる。』(今回声明文)
『先行きのわが国経済を展望すると、各国の通商政策等の影響を受けて、海外経済が減速し、わが国企業の収益なども下押しされるもとで、緩和的な金融環境などが下支え要因として作用するものの、成長ペースは鈍化すると考えられる。』(前回展望レポート)
成長はまあ同じじゃろうなとは思いますけど。
『その後については、海外経済が緩やかな成長経路に復していくもとで、成長率を高めていくと見込まれる。』(今回声明文)
『その後については、海外経済が緩やかな成長経路に復していくもとで、わが国経済も成長率を高めていくと見込まれる。』(前回展望レポート)
「その後」も事実上全文一致みたいなもんですね。でもって物価ですけど・・・・・・
『消費者物価(除く生鮮食品)については、これまで物価上昇率を押し上げてきた既往の輸入物価上昇やこのところの米などの食料品価格上昇の影響は減衰していくと考えられる。』(今回声明文)
『これまで物価上昇率を押し上げてきた既往の輸入物価上昇やこのところの米などの食料品価格上昇の影響は減衰していくと考えられる。』(前回展望レポート)
同じですねえ(冒頭部分の違いは文章構成の違いに起因します)。
『この間、消費者物価の基調的な上昇率は、成長ペース鈍化などの影響を受けて伸び悩むものの、その後は、成長率が高まるもとで人手不足感が強まり、中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想され、』(今回声明文)
『この間、消費者物価の基調的な上昇率は、成長ペース鈍化などの影響を受けて伸び悩むものの、その後は、成長率が高まるもとで人手不足感が強まり、中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想され、』(前回展望レポート)
ということで「お気持ち物価」の見通しも変わっていないのでつまりはお気持ちにも変化はないということでございますなwwwwww
『「展望レポート」の見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。』(今回声明文)
『見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。』(前回展望レポート)
結局見事に全文一致でして、先週金曜日のBBGの報道は何だったのかという話になりますし、記者会見でもそんなに威勢の良い話(以下同文)。
ということで、7月ジャガーチェンジに向けた何かが出る、というような面白事案は生じていませんので、ここでいきなり7月ジャガーチェンジをしたらそれこそ「大阪や!(ガン!!)オラ開けんかいゴラァ!!」の世界(よつべがニコ動で「大阪や」で検索すればわかりますw)案件待ったなしということで、とりあえず変な物は出てきませんでしたし、上書きムーブも(声明文では)無かったな、というお話になりました、いやーなんかやったらどうしようと思ってましたけどw
〇輪番減額計画:事前報道通りでしたが何で減らすのかもわからんし次回の中間評価の時期設定おかしいじゃろ
声明文項番2が
『2.長期国債買入れの減額について、月間の長期国債の買入れ予定額を、2026
年1〜3月までは原則として毎四半期 4,000 億円程度ずつ、2026 年4〜6月以降は原則として毎四半期
2,000 億円程度ずつ減額し、2027 年1〜3月に2兆円程度とする計画を決定した1(別紙参照)(賛成8反対1)(注)。』(今回声明文)
とまあそういうことですが、ここで抜刀斎が華麗に抜刀をしていまして、
『(注)賛成:植田委員、氷見野委員、内田委員、中村委員、野口委員、中川委員、高田委員、小枝委員。反対:田村委員。田村委員は、長期金利の形成は市場と市場参加者に委ねるべきであるとして、2027
年1〜3月まで月間の買入れ予定額を原則として毎四半期 4,000 億円程度ずつ減額する議案を提出し、反対多数で否決された。』
ということで現行ペースを維持すべき、という提案をしたものの惜しくも(って8-1だから全然惜しくはないけど)否決されてしまいました。
まあ折角ならここの所では「既往の長期国債残高によるストック効果による影響も勘案すれば、長期国債保有残高の削減を可能な限り進めるべき」という日銀バランスシート側からの理由付けをしていただくともっと論点が明確になるとは思った訳ですがそれは兎も角として。
でまあその別紙参照の方ですが、
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2025/k250617b.pdf
長期国債買入れの減額計画(2025年6月金融政策決定会合)
『@長期金利 :金融市場において形成されることが基本
A国債買入れ:国債市場の安定に配慮するための柔軟性を確保しつつ、予見可能な形での減額が適切
・2026年3月まで :原則、毎四半期4,000億円程度ずつ減額(従来の減額計画を維持)
・2026年4月〜2027年3月まで:原則、毎四半期2,000億円程度ずつ減額
国債市場の安定に配慮した形で市場機能の改善を進めていけるよう、段階的に減額していく』
って言ってるんですが、そもそも論として日銀の買入が多すぎるしストックの買入が多すぎるから(この点でSLFからの減額措置を若干拡大したのは評価できるけど不十分にも程があるので今後一段の拡大をしていただきたいがその話は別途)市場機能の回復が遅れているのであって、長期国債買入残高を減らしていく方がどう見たって急務じゃろ、とアタクシは思うのですが、そうじゃないという話になっています。
・債券市場に配慮とか言ってるけどこれは「物価安定目標が達成しない」というデフレ脳から抜けてないんじゃないのかと
という訳でですね、じゃあ何でワイが急務かと言えば話は簡単で、そもそも論として現時点で「基調的物価」とやらが2%に到達してて、家計を中心に期待インフレ率は上がっているし、企業の価格設定行動って最近は一部はもはやコスト転嫁の域を超えて欧州でいう「グリードフレーション」化してませんか、という問題意識がワイ的にはある訳ですよ、まあ何とかスト的にはそんな訳ねえだろって話だと思うのであくまでもシロートの話ってことになるかなって所ですが。
でもってですね、先日来何回かネタにしましたが、昨年末に出ていた「将来の財務シミュレーション」を見れば、早期に2%物価目標を達成し、「普通の」金融政策に戻る、すなわち期待インフレが2%で安定している世の中での金融政策運営をする、って事になった場合、コストプッシュだの供給ショックだのの要因によって物価が上振れたときに、「コストプッシュだから/一時的な供給要因だから」政策対応をしなくて良い、という行動をとると後で面倒なことになる、というのが欧米の今次インフレ局面での教訓な訳でして、それは日本だって同じことが今後起こりうる(というかまあワイは既に起きている可能性を思うのですがまあそこは措くとしまして)訳で、「普通の」金融政策をする際に、今ある巨額のバランスシートってのは政策の足かせになるわけですよどっからどう考えても(その辺会見でよい質問がありましたね)。
ですから、日銀保有国債の残高圧縮とか本来はマジで急がないといけないのに、たいして金利が上がった訳でもない状態において早くもビビって国債買入の継続を延命するという措置を取ってしまっている訳でございまして、それ債券市場に対する本当の配慮なのか、というと財政ファイナンス懸念とか、巨額のバランスシートによって将来の時点で本来必要となる引き締め政策ができなくなるのではないかという懸念とか、そっちの方からもっと大きな大問題が起こるリスクを抱えに行ってる、って話な訳ですよ。
・・・・と本来ならそうなると思うのですが、そうはならずに今回2026年4月以降とかいう飛んでも無い先の時点の決め打ちを行っている(FEDのテーパリングだってこんな決め打ちしてないぞ・・・)時点でお前ら本当に物価安定目標達成する気があるのかというか、物価目標達成後に起きる「普通の金融政策」への覚悟がないだろ大丈夫かってなもんでして、まあ黒田がキチガイみたいにバランスシートを拡大したのが悪いんですけど、そうは言ってもそれに対して全然反省しないで丸々黒田継承をしている時点で何やってるんだよとは思いました。
・減額前と比較して16%減少って碌に減ってねえだろ・・・・・
『<予見可能な形での減額>』ってのがあって、結局2027年3月の段階でも月額2.1兆円の長期国債買入を継続する、ということで、国債残高の方はと言えば相変わらず500兆円を大きく上回った状態、ということになっておりまして、いやすまんお前ら展望レポートの見通し期間の後半には物価安定目標達成する、って言ってるんだから2025年4月から2028年3月の後半ってそれはどこからどう見ても2026年10月な訳でして、物価安定目標を達成して「普通の金融政策」をやっている中なのに長期国債買入に関しては超緩和的な状態を続けるって何なんだよという話だし、仮にその巨額の買入を正当化するのであれば、長期国債買入による長期金利押し下げから来る緩和効果を相殺しないといけないんだから、短期政策金利は中立金利の下限とかいうような寝言を言ってる場合じゃないだろ、という話になると思う訳ですけれども、そこの整合性はどうなっているんでしょうかと小一時間(なので4000億円のペース継続でも遅いくらい)な訳ですよ。短期政策金利との整合性はどうなるんでしょうかねえ。
ちなみに、この質問をしますと、金融学会での内田副総裁の説明にあるように「短期政策金利とは全く無関係に保有長期国債の残高を設定できます(キリッ)」という返答が返ってくるのは1000%間違いないのですが、どっからどう見たって巨額の国債買入を継続して残高アホほどもっていたらバランスからして短期政策金利は引き上げていかないとインフレが止まらないか自国通貨安になってまた窮乏化するのか、その合わせ技になるのかという話じゃろとしか思えませんが、まああくまでも個人の感想ですのでそういうことで。
・次回の中間評価が何で来年の「6月」なんだよ真面目にやる気あるのか
べき論云々もさることながら(まあどうせこんな計画だすんじゃろうなあとは諦観してたのでそこはサプライズではなかったんだが)腰が砕けたのは最後の『<柔軟性の確保>』のところでして、
『@来年6月の金融政策決定会合で中間評価を実施
A長期金利が急激に上昇する場合には、機動的に、買入れ額の増額等を実施
B必要な場合には、金融政策決定会合において、減額計画を見直す』
まあ2番と3番はいつも通りの抜かずの宝刀なのでさておきますとしまして、1番の「来年6月に中間評価」ってお前真面目にやる気あるのかという話ですよ。
いやあのですね、前回は減額開始したところだし、減額計画出すのと同時に政策金利の引き上げを実施してやっとマイナス金利だゼロ金利だから(25もゼロみたいなもんとは言え)プラス金利になりました、ってタイミングだったので、そこから1年後に状況を確認しますね、というのは話としてはまあ分からんではない(ただし現時点で来年4月以降1年分、というエライ長距離な計画を決め打ちする必要は無くて、そっちは12月なり1月なりに決めればよかったと思います)ので、今回の「中間評価」というのが前回設置されたのはまあ話としてはわかるんですよ。
然るにですね、今回ってその「中間評価」をした結果、「来年の3月までも今の計画を継続しても問題ないでしょう、まあ何か不測の事態が起きたら対応するにしまして」という結論を出したわけでして、それすなわち「来年3月までの中間評価は一旦完了」している筈なので、そこから3か月(6月会合の日程を考えたら実質2か月半とかですかねえ)の間に何の「中間評価」をするんですか、というお話でして、買入ペースを減額した事に関する影響を評価するのに2か月ちょいで何が分かるんだよと小一時間問い詰めたいし、しかも会見で植田さんは「次回中間評価で2027年4月以降の買入計画を策定します」みたいなことを言ってまして、買入ペース減額の影響もみないで何の買入計画を立てれられるのかということで、真面目にやる気あるのかというお話ですわな。
どう見たって10月会合(買入減額してから半年経過)以降に中間評価じゃろと思うのですが、これどうせ前回が6月だからとか言って機械的に何も考えずに1年先に設定したんじゃろ、という辺りにぞんな雑な運営でこの先このバランスシートを抱えたままで「普通の」金融政策が運営できるのかよ、と非常に不安におもいましたが、まあワイはご案内の通りの杞憂民族なので杞憂に終わっていただきたいものだと願って止みませんorzorz
〇減額措置拡充とか今回のオペ紙とか会見とかは明日(FOMCとぶつかる・・・・)
ということですが、例によって例の如く時間の関係上(昨日夜なべする余裕が無かったのでシャーセン)この辺で勘弁して頂くわけですが、少なくとも今回の声明文もそうですし、このやる気のない国債買入減額ペースの腰砕けを見ますと、物価安定目標は当分行かないですなあ、というメッセージを裏から発しているように読んでしまいましたアタクシは。
まあゆうて実際の物価は高止まりしている訳でして、日銀の目論見通りにここから物価上昇率が鈍化してくるのか、というのが目先では日銀に対する落とし穴の一つ(もう一つは円安の再燃)かとは思う訳でして、この後物価上昇率がコアコアベースで『既往の輸入物価上昇やこのところの米などの食料品価格上昇の影響が徐々に減衰していくことに加え、成長ペース鈍化などの影響から、いったん2%を下回ると見込まれる。』(4月展望レポートより)となっている見通しが外れ、ついでに誰かの犬笛が差さって物価高止まりの戦犯として日銀がやり玉にあがるようなことでもありましたら、まあ今回の説明なんぞは全部ジャガーチェンジしてくると思いますので、今いまはハトハトチキン継続だし、主体的にジャガーチェンジするとも思えませんけど、外部要因の変化には注意をしていきましょうね、ってのが今回の決定会合のいったんのワシのレビューかな、と思ったのですけれども、まあこの後の金懇とか見て行って行きたいと思います。
次回は20日に総裁の全国信用金庫協会でのあいさつがありますが、そこはまあ通り一遍の物になるでしょうから、その次に予定される25日の抜刀斎の金懇でどういう抜刀が行われるのかを楽しみにしたいと思うところです。
2025/06/12
〇預金の粘着性に関しては金利がつくようになると日本でも参考になることもあるかもですね
日銀レビューで興味深いネタが取り扱われていましてですね
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2025/rev25j04.htm
高粒度データを用いた大手行の外貨預金の特性や粘着性の考察
2025年6月11日
金融機構局 船田直輝、坂田智哉、小川佳也
上記HTML先の「要旨」を拝読しますが、この「邦銀の外貨調達の安定性」に関する話は近年(なのでここもと数回にわたって)金融システムレポート(FSR)の方でも大きめのトピックとして扱われていた案件ですし、何なら一昨年の米国SVB破綻事例があったので特に昨年は結構取り上げられていましたので、この辺りの一連の調査研究の一旦のまとめを皆様に分かりやすくお出しします、ってなもんだと思います。
では拝読。
『要旨
大手行は、海外貸出を増加させる中、外貨流動性リスクをかねてより経営上のリスクの一つと位置付け、外貨調達基盤の安定性向上に努めてきた。』
ふむふむ。
『こうしたもと、本稿では、SVB破綻等を受けた国際的な議論も踏まえ、外貨調達の過半を占める外貨預金の高粒度データを用いて、外貨預金の獲得状況や粘着性について分析した。』
なるほどなるほど。でもってその結果ですけど、
『分析結果からは、高金利の大口預金抑制に伴う預金の小口分散化が進展している一方、低コストで調達可能な決済性預金残高は概ね横ばいであることが確認された。』
直感的にまあそうじゃろうなあという結果ですね。ただまあゆうて決済性預金ってのを維持するためには決済性の利便性というのを提供しないといけない訳でして、低コストで調達可能なのはまあその通りではあるけど、決済性預金機能を維持するのにはそれなりにコストがかかるようにも思えます。
『また、属性ごとに預金流出率は異なり、金融法人預金等の粘着性が低く、決済性預金獲得に伴う企業との関係強化が預金の粘着性向上に繋がり得る点も示唆された。』
直感的にまあそうですねという所ですが、
『今後も本分析結果等を活用しつつ、大手行の外貨流動性リスク管理の更なる高度化に資するよう、大手行や海外当局と議論を深めることが重要である。』
ってお話ではあるのですが、モチのロンでこの手の話は法域が違って預金や預金類似商品を巡る環境が違っていたら全然話が違う、というのはあるにしましても、背景にある基本的な部分ってのは共通することもありますし、その点日本の場合は30年くらい要求性払いの預金金利が実質ゼロみたいな状態でして、その前は規制金利の時代だった、というよくよく考えたら驚愕の事実があるので、この辺りの考察は今後の日本における預金やらなにやらの動向に対する何らかの示唆があるんじゃなかろうかと思いますがどうでしょうかね。
本文はこちら
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2025/data/rev25j04.pdf
本文の最初と最後だけちょっと見ておきますね。『はじめに 』から。
『本邦の一部大手行1(以下、大手行)は、国内において低金利環境が継続する中で、これまで海外貸出を積極的に増加させてきた。この点、大手行は、米国内に安定的なリテール預金基盤を有していないことから、企業から外貨預金の獲得を進めつつ、不足分を短期・中長期の円投や社債等の市場性調達で賄ってきた。』
ふむ。
『そのため、大手行にとって、外貨流動性リスクはかねてより経営上の重要なリスクの一つと位置付けられており、日本銀行としてもモニタリング上、優先すべき事項の一つとして捉えてきた。』
FSRをご覧いただければこの辺りの問題意識について分かるかと思います。
『この間、大手行は、資金調達コストの適正化に取り組む中で、調達手段の多様化や市場性調達の長期化など、外貨調達基盤の安定性向上にも努めてきた。もっとも、米国では新型コロナウイルス感染症拡大時における金融機関の貸出態度慎重化2や、2022
年 3 月以降の FRBの利上げを受けた高金利環境の継続等から、企業の銀行借入需要に盛り上がりがみられていないことや、大手行が採算性を一段と意識していることもあって、海外貸出の残高は概ね横ばいで推移している。』
なるほどなるほど。
『こうしたもとで、大手行の運用・調達ギャップ(海外での貸出金と、短期円投等と比べて相対的に安定している社債発行など長期調達や預金との差額)をみると、安定的な調達額が、運用を上回る状態が続いている(図表
1)。』
という意味での安定性についてはまあレジリアントに見える、というのがここ数回のFSRでの評価です。
『一方で、2023 年 3 月にみられた銀行部門の混乱(米地銀 Silicon Valley Bank(以下、SVB)の経営破綻や
Credit Suisse の救済合併)は、これまでの外貨流動性リスク管理の前提となる預金が安定的な調達手段であるとの想定を改めて検証する契機となった。』
でもって、
『具体的には、一部の預金における流出速度は、SNS 等の影響もあり金融当局が想定していたスピードよりも速い可能性や、大口の非付保預金の取り付けが発生した際の影響度などを、適切に考慮する必要性などが認識された。』
『さらに、SVB の破綻直後には、SVB と同様のリスク・プロファイルを有する米地銀からの預金流出・株価下落が先鋭化し、First
Republic Bank が同年 5 月初に JP Morgan に買収された3。』
ってな訳で、
『こうした新型コロナウイルス感染症拡大以降の一連の事象を踏まえ、国内・海外の金融当局は、金融機関の流動性リスク管理体制の更なる高度化の必要性について議論を進めている。』
『日本銀行では、従来から、金融庁と共同で G-SIBs に分類される大手行への「外貨流動性リスク管理に関する共同調査」等を通じて、大手行との継続的な対話を行っている4。加えて、効率的かつ効果的なモニタリングを実行するために、金融機関から報告されているデータの利活用も進めており、大手行の協力を得て、日本銀行・金融庁に報告されている、外貨預金の個別取引明細・高粒度データ(以下、「高粒度データ」)の拡充を図ってきた5。』
『大手行自身も、着実に外貨流動性リスク管理の高度化に取り組んでいるもとで、より一層の安定性向上に資するよう、本稿では、個別明細レベルの高粒度データを用いて、大手行の外貨調達の過半を占める外貨預金の獲得状況や外貨預金に係る粘着性等について分析を試みた。』
以下分析の話になってこれはこれでオモロイのですが、単純に合いの手入れているだけになるので笑その辺は引用かっ飛ばすのでまあ読んでちょというところです。
結論にかっ飛びますけど。
『おわりに
本稿では、外貨預金の個別明細レベルの高粒度データを用いることで、大手行の外貨預金の獲得状況や粘着性等を分析した。本分析からは、大手行が、外貨預金獲得に向け、収益性を意識しながら進めてきた各種取組みやその特性などを確認した。』
具体的には・・・・・
『具体的には、@貸出が足もと横ばいで推移する中で、高金利を提示して大口預金を獲得する必要性が低下しており、同預金の抑制に伴い預金の小口分散化が進展している一方、A低コストで調達可能な決済性預金比率は横ばいの動きが続いており、とりわけ、非日系企業においてその残高は限定的となっていることが確認された。』
『同時に、預金者属性によって、預金の流出率は異なり、大口預金や非日系企業・金融法人といった預金者属性の預金の粘着性は相対的に低く、決済性預金獲得などの企業とのリレーション強化が、預金の粘着性向上に繋がり得る点が示唆された。』
なお決済性預金獲得に関しては単なる営業勧奨で増えるものではなくて、決済性預金を顧客が活用できるインフラ整備が必要です、って話に関しては本文中にありますので読んで味噌。
『これらを踏まえると、自らの預金者ポートフォリオの預金者属性の構成(預金規模や業種、さらには付帯取引の有無)等も考慮して流出率を設定することが、預金獲得戦略や流動性リスク管理の向上に有益であると考えられる。』
これは大手行の外貨調達、という点にフォーカスして分析が行われていますが、そもそも金融のお仕事というか付加価値創造の源泉の一つとして「満期変換機能」ってのが有るわけで、別に銀行セクターに留まるものではなくて、このような分析を行うという考えは、まあその分析をどのように行っているかは千差万別だと思いますし、単純に経験則からおおむねこんな感じじゃろっていうことで意識している場合も多々ありそうですけれども、満期変換機能を提供する人たち、すなわち銀行だけではなくてNBFIも含めて意識するべき話。ではあるのですが、某アメリカンの場合は何とかショックの度にプライムMMFがあばばばば―ってなってFEDに泣きついてお助けオペが炸裂して、その事例を受けて再発防止のためにFSBやIOSCOがNBFIへの規制強化に乗り出す、というのを何度もやっている、というのが中々の頭痛の種ですなあ、って思いました。
『この点、大手行は、預金の流出率想定に預金者属性別のヒストリカルデータを用いて、その妥当性を検証しており、こうした精緻化への取り組みは、本分析結果と整合的である。』
これ円資金でも(パラメータは全然違うとしか思えませんけど)同じ考えを適用できそうに思えます。ただまあ円貨資金繰りはリクイディティーという面からみたファンディングに関しては日銀当座預金残高がアホみたいにあるので、短期金融市場を見てもビビットにわかりにくい(そのためソルベンシーの問題の予兆管理がしにくいんじゃないかとアタクシは懸念しています)ってのもありますけどね。
『また、本稿で用いた高粒度データには、ドル以外の地場通貨も含まれている。地政学的な要因等が意識される場合、ドル以外の地場通貨の流動性リスクのモニタリング高度化に向けて、高粒度データを活用することは有益である。』
ほーーーーー
『今後も、本稿で紹介した分析結果等を活用しつつ、モニタリング体制の整備を進めるとともに、大手行の外貨流動性リスク管理の更なる高度化に資する分析を続けていくことが肝要である。そのうえで、得られたインプリケーションおよび分析結果等も用いて、大手行や海外当局とも引き続き議論を深めていくことが重要と考えている。』
とまあそういうお話で、全然現世利益と関係ないと言われるとまあそうなんですけど、一応債券市場に加えて短期金融市場の方も見ているという設定になっております不肖このアタクシとしては、まあこういうネタには反応しますよというお話でしたので備忘もかねてご紹介させていただきました。
なお、本文の後に『BOX 地場通貨における外貨預金の獲得状況 』ってのがありますが、そちらはまあ本文読んだついでに見てちょんまげというところです。
あと、今回のレポートってちょっと興味深かったのは、本文の最後(概要の最後にもありますが)
『内容に関するご質問等に関しましては、日本銀行金融機構局金融第 3 課までお知らせ下さい。』
ってなっていて、日銀の本店局室研究所体制表(HPにあるやつ)だと機構局には金融1課から3課があるのはわかるけど管掌がどことは書いていないのですが、ワタクシの認識が間違っていなければ大手行に対するプルーデンス担当窓口って金融1課だったような気がしますので(違ってたらゴメンですけれども)、3課マターになっているのも興味深く読みました(^^)。
2025/05/22
〇NBFIに関する日銀レビューがあるのでまあ読んで味噌というお話です
こちらですがどさくさに紛れてすっとばしていたのですが、要確認の日銀レビューなのでさらっとご紹介しますが皆様もご確認つかあさいとは思いますので。
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2025/rev25j03.htm
ノンバンク金融仲介機関の近年の動向と強靭性向上への取組み
025年5月15日
金融機構局 大石洋、小林永典*、杉原慶彦
*現・静岡支店
こちら、金融機構局のスタッフによるレビューですのでお察しの通りですが、今回の金融システムレポート(FSRが使用しているエディタの文字コードが何故かこれだけ日銀の通常のと違うせいで、テキストに落とすときの関係上ネタにするのがめんどいのでネタにしていないですすいません)の中で、
https://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr250423a.pdf
金融システムレポート
2025 年 4 月
主に本文53ページ(PDFだと58枚目)以降に、『2.内外ノンバンク部門を巡るリスクと金融安定上の含意
』ってお題のコーナーがあって、今回のレビューに関してはこれに関連するお話になるので、FSRの当該部分もご覧になるとよろしいかと思うのです。
でまあ要旨の方はさっきのご紹介HTMLから引用しますが、
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2025/rev25j03.htm(再掲)
ノンバンク金融仲介機関の近年の動向と強靭性向上への取組み
『要旨
ノンバンク金融仲介機関(NBFI)は、グローバルな金融資産のおよそ半分を保有しており、金融仲介活動において重要な役割を担っている。内訳をみると、近年は、伝統的なNBFIである保険会社・年金基金ではなく、投資ファンドのプレゼンスが世界的に高まっているほか、主としてクロスボーダー取引拡大を介して、銀行部門とNBFIの相互依存性も高まっているとみられる。』
ってな訳で、
『このもとで、投資ファンドを中心としたNBFIの経済行動がストレスを増幅するなどして、金融市場の価格変動が高まったとされるケースも増えている。』
ほうほうそうですかそうですか。
『こうしたストレスは、銀行部門を含むグローバルな金融システム全体にも容易に波及しうるため、金融安定理事会(FSB)を中心に、脆弱性の抑制に向けた様々な政策勧告が出されている。本稿では、FSBが定期的に公表している「グローバル・ノンバンク金融仲介モニタリング報告書」や政策勧告などをレビューし、NBFIによる金融仲介の特徴やその強靭化に向けた取組みを紹介するほか、先行きの課題を展望する。』
ということで壮大な話ではあるのですが、一番わかりやすいのであればこの前のコロナショックの時にまたまた米国ではMMFの保有するCPがどうたらこうたらでお助けオペをFEDが時限的に実施していましたが、あれ前回のショックの時も似たようなのをやっていて、その度ごとにFSB-IOSCOがMMF規制強化しているんですが、アメリカン短期市場って馬鹿なのか悪知恵が卓越しているのか知らんですけど、毎回何とかショックでやらかしているの米国で、そのケツが世界的な規制強化に繋がるというなんだかなあって事象が発生していたりもしますわな。
ということで本文ですが今朝はショパンの事情で簡単に。
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2025/data/rev25j03.pdf
日銀レビュー 2025-J-3
ノンバンク金融仲介機関の近年の動向と強靭性向上への取組み
(以下こちらの本編より引用)
『はじめに 』ってところをさらっと見ますと、最初のところに『【図表 1】主な
NBFI 』ってのがあって、この中でまあだいたい今回というか近年の規制監督的な話題と言えば図表1にある一番下の、『投資ファンド』になりますが、その分類を見ますと、『本稿の定義』ってのでは、
『証券の発行により資金を集め、運用益を投資家へ還元する基金の運用主体。発行体が証券の常時買戻しを保証している投資ファンドをオープンエンド型ファンドと呼ぶ。』
ってございまして、この中の類例として3つに分けていまして、それが
『MMF・MRF
ヘッジファンド
OIFs』
ってなってて、脚注に『(注)OIFs は MMF・MRF、ヘッジファンドを除く投資ファンド。』ってなっておりまして、さきほどワイが「一番わかりやすい例」って言ってMMFを挙げましたが、まあ米国のMMFが危機の度に流動性ガーCPのファイヤーセールガーって言ってお助け措置をFEDに泣きつくというポンポコムーブをやらかすもんだから独立項目になっているのが味わいがあるというものです(味わいは無いが)。
でまあこの項の最初のところ読んだら「ん??」ってのがあったから引用するわけですが、上記本編の1ページ右側の上の方の第2段落からになりますが、
『グローバルにみた NBFI の保有資産残高は増加傾向にあり、銀行部門とともに金融仲介を支えている。流動性変換や満期変換、レバレッジをかけた投資を積極的に手掛ける主体も存在するなか、特定の
NBFI の経済行動が金融市場におけるストレスの増幅要因ないし起点となるかたちで、金融市場のストレスが高まる事例や、銀行部門を含む他の金融機関の巨額の損失につながるような事例もみられている1。』
ってあるので脚注1を見に行きますと、
『1 2007〜09 年のグローバル金融危機では、リーマンブラザーズやベアスターンズなどのブローカー・ディーラーの破綻、AIG
やモノラインなど保険会社の破綻、およびブローカー・ディーラーが運営する投資ファンドの凍結や破綻、CDO
などの証券化商品の価格下落がみられたが、これらについてはいずれも NBFI の経済行動がストレスの増幅要因ないしは起点となった可能性が指摘されている(グローバル金融危機に関する指摘や分析は数多くあるが、例えば、Darrell
Duffie (2010), “The Failure Mechanics of Dealer Banks,” Journal of Economic
Perspectives 24(1), pp.51-72 を参照)。』
まあ起点は起点かも知れないですけど、いわゆるリーマンショックの時にその後の市場ストレスを増幅させたのは「カウンターパーティーリスクへの意識が非線形的に高まった」というのがあって、まあその後いくつかの対策は行われましたが、例えば日本で言えばオープン市場の金利がクソ高止まりしてしまって、レポレートや現先レートが貸出ファシリティ(公定歩合)金利近辺に張り付いてしまって、金融引き締め効果が発生した(というのに日銀が有効な政策手段を入れたのが12月の金融政策決定会合で、それまでコールレートの方は安定していたこともあったし、まあそれどころじゃなかったのも分かるのだがあれはどうかと思いましたわ)とか、そういうのもあるので、NBFIの行動がきっかけになりましたとかいうのはまあ事実そうじゃろとは思うけど、危機が拡大する過程においてはNBFIとは関係ない要因も多々あったと思うので(そもそもそうじゃなかったら危機が拡大しないでしょうよ)、こうやって割り切られてしまうとちょっと釈然としない面はある。
なお脚注が大変に細かくてさらに続くのですが、
『近年でも、感染症拡大期におきた 2020 年 3 月の市場急変では、プライム MMF
から資金が急速に流出し、一部ファンドの解約停止措置や CP 発行レートの上昇など短期金融市場の混乱を招いたとされる(FSB
(2020), “Holistic Review of the March Market Turmoil”を参照)。』
でまあこれを受けて世界的にMMFの規制強化がしばらく前におかわりされているし、FSBが本件に関してレポートを出したりしているんですが何せ英文だしめっちゃこまかくて、法域ごとに現状どうなっているとかそういう事まで書いてあるのでネタにするにはちょっと細かすぎるし読むのも骨だしそもそも英文だし(しつこい)のでまあ興味のある方がいるとは思えませんがそんなのありまっせということで。
『2021 年 3 月のファミリーオフィスの破綻では、同ファンドに与信を提供していたわが国金融機関を含む大手金融機関が巨額の損失を被った。』
ってのもネタになっているのだがそれは信用供与先が飛ぶという通常の与信行為で発生しうる通常の話じゃろって感じで、わざわざこれを例に出すのはちょっとNBFIに対して無駄に目の敵にしてませんか、とは思いますが。
『2022 年 9 月に起きた英国債市場の混乱時には、デリバティブを活用して債務主導投資(Liability
Driven Investment、LDI)を行う英国の年金基金が証拠金不足に陥り、金利の上昇が増幅された(伊藤ほか(2023)「企業年金の運用戦略からみた金融安定への含意−英国債市場の混乱からの教訓−」日銀レビュー2023-J-2
参照)。』
まあ年金基金もNBFIだからこういう例になるんだがそれ単純に過大なポジションの失敗によるもので、NBFIが悪いという話じゃないじゃろとは思うが。
『2024 年 8 月初には、海外投資家のハイレバレッジなポジションの巻き戻しが、わが国を含め先進国の株価などの価格変動を増幅させたことが指摘されている(金融システムレポート
2024 年 10 月号の BOX 1 参照)。』
ということで、いやそれはNBFIだからどうのこうのじゃなかろうってのも並んでいるのですが、まあこういう風に並べられる、という時点でプルーデンス方面(主にFSBという金融安定化委員会マターになります国際的な風潮ということですが)におけるNBFIへの風当たりは強いんだろうな、という話になるのですが、本文に戻りますと、さっきの続きが、
『また、こうしたストレスは、NBFI と銀行との間の資金貸借、有価証券投資、リスク移転取引などを通じてグローバルな金融システム全体へ波及しうる。』
からの、
『金融システムの安定を確保するうえでは、NBFI の脆弱性や銀行部門との相互連関性などを把握しつつ、強靭性の向上に取組むことが重要である。』
ってな話でこの先本編に繋がっていくのですが時間の関係でこの先は後日ネタにできればしますし、まあとにかく読んで味噌という話になるのですが、ただまあ金融の本質って満期変換であったり、信用リスクの引き受けであったり、というのが有るわけでして、(レバレッジに関してはちょっと判断保留するけどまあレバレッジもあるように思えますが)それを何でもかんでも「脆弱性」で片づけて「強靭性の向上」に寄せて考えてしまうと、金融仲介行為そのものが成り立たなくなるし、NBFIガーって言ってる部分の一部(全部とは言わない)には銀行への規制強化によってその手の機能がNBFIに流れ込んできた面だってあるじゃろ、と思うので、FSBのお立場は分かるのですけれども、過度な規制にならんように、とは毎度思うのでありました、というアタクシの個人の愚感想だけ申し上げて続きは後日やるかもしれませんしやらないかもしれません。
まあこちらの日銀レビューとFSRは読んで味噌ということで(しつこい)
2025/05/21
〇植田さんが会見で言ってる「来年春以降のデザイン」とかいうの引っ込めた方が良いんじゃないでしょうか・・・・・(市場参加者会合)
「債券市場参加者会合」(第22回)金融市場局説明資料[PDF 2,041KB]
https://www.boj.or.jp/paym/bond/mbond_list/mbond250520.pdf
前段の資料ページはまあどうでもよいので、『4.意見照会へのご回答』以降を確認しましょう。
ということで資料の25ページ目(PDFも同じく25枚目)になりますが、(以下黒丸ポツとかチェックマークにつきましてはアタクシの編集の都合上全部・に置き換えて引用しております、為念)
・超長期は別にアタックとかではなくて過大なポジションがあったのがトラ公ショックで顕在化したって感じなのかな
『意見照会へのご回答(国債市場の動向)
・ 市場動向について、年度末にかけては「政策金利の引き上げや買入れ減額を背景に金利が上昇した」、本年度入り後は「10
年以下の金利は、米国の関税政策発表を受けて低下した」、「超長期ゾーンの金利は、投資家需要の弱さやポジションの巻き戻しにより、大きく上昇した」といったご意見を頂きました。
・ 国債需給について、年度末にかけて「投資家の様子見姿勢から悪化する場面もみられた」、足もとでは「中長期ゾーンの需給はタイト」、「超長期ゾーンの需給は顕著に悪化」といったご意見を頂きました。』
まあそうじゃろうなという感じですが、超長期に関しては「需要の弱さ」「ポジションの巻き戻し」でして、いわゆる指値オペ攻撃みたいなのとは全然話が違うというのが見て取れる、というか日銀の事務方でもその辺はちゃんと把握しているというのが見て取れますな。
『(具体的なご意見の例)』っての見ますと、
『・ 年度末にかけては、日本銀行による政策金利の引き上げや買入れ減額を背景に金利が上昇した。その際、政策金利の終着点を巡る不透明感や期末要因から投資家の買いが手控えられ、需給環境が悪化する場面もみられた。』
買入減額は予定通りに行われているので何でas is expctedの買入減額を背景に金利が上昇せにゃならんのよだし、政策金利の終着点を巡る不透明感ってあーた物価安定目標が達成出来たらその時の政策金利は中長期的な物価上昇率に潜在成長率乗せてあとは適当な幅をもったレンジの中のどこかじゃろ、という話で、何が不透明感じゃ、と思いました。
『・ 4月入り後は、米国の関税政策発表をきっかけに、景気減速懸念から本邦追加利上げ観測が後退し、10
年以下の金利は大きく低下した。』
うむ。
『・ 中長期ゾーンは、本年度入り後、国内銀行等による買いがみられており、需給はタイトである。
ほうほうほう。
『・ 超長期ゾーンは、米国の関税政策発表をきっかけに、アセット・スワップやフラットナーのアンワインドが発生し、生保需要の減退という構造変化も相俟って、需給が顕著に悪化し、金利も大きく上昇した。』
ということでまあこの手のポジションがあって、でもってトラ公切っ掛けの相場変動でボラ上がり過ぎで持っていかれるとか、まあ市場が動く中で何ぼ何でもおまえここまでスティープせんでもええじゃろと思ってカーブポジション参戦したら何のことはないとんでもない水準までさらに持っていかれて投げ回転、みたいなお話なんでしょうかね、知らんけど。
なおアタクシは基本的に大昔の人なのでいまだにあのアセスワってのなじみがなくて、まあ市場がクソ混乱した時ってああいう合成ポジションは明後日の方向にまた裂き食らったりしちゃいますよねと思うのだが、今回は何がどうなったのやら。
・日銀の国債買入が過大で金利抑圧が続いているのが機能度向上の阻害要因って話が並ぶのは順当だがいい話
次が『意見照会へのご回答(国債市場の機能度)』である
でまあこれはネタにし忘れていますが5月調査の債券市場サーベイがもう笑ってしまうしかない状態でしたが、今回の市場参加者会合は国債買入の正常化に向けたパスの話が絡んでいるので買入を絡めたお話になるわけですが。
『・ 「国債の買入れ減額により国債市場の機能度は改善傾向にある」、「国債補完供給の減額措置によりチーペスト銘柄の流動性は改善した」、「4月入り後は、ボラティリティが高まり、超長期ゾーンの流動性が特に低下するもとで、長期までのゾーンとの市場の分断が生じている」、「ストック効果が大きいもとで機能度の改善は道半ば」といったご意見を頂きました。』
とまあそういう訳で、総じて「日銀の市場介入を減らすのが機能度向上に資する」という話になっているようには見えましたが、『(具体的なご意見の例)』を見ますと、
『・ 段階的に買入れが減額されていることで、債券市場の流動性や金利のより自由な形成といった市場機能度は改善傾向にある。』
『・ 国債補完供給にかかる減額措置により、チーペスト銘柄の流動性は、ひと頃と比べて改善した。』
まあそうですよね。そもそも論としてYCCの為に大量に買った国債なのですから、市場機能改善したければ売ったって本来はそこまで筋違いじゃないと言いたいのですが、まあ単純にアウトライトの売却って言い出すとそれはそれでインパクトというかハレーション大きいと思うのでして、つまりはYCCとかいう出口の事をなんも考えないで勢いとノリとマイナス金利政策の失敗を糊塗するためにぶっこんだ施策の罪深さというのが良くわかるわけです。あとは日銀の現場力が高いのが不幸な方に効いてしまって、無駄にYCCを延命させてしまったのも出口のコストを結果として高めてしまった(早くに方向転換して「普通の緩和政策」に戻せておけば何年も経過してもこんな話せんで済んでいたと思うの)感はありますな。
『・ 4月入り後は、ボラティリティが上昇するもと、市場のリスク許容度が低下し、需給悪化が顕著となった超長期ゾーンを中心に流動性が低下した。足もとにかけて、流動性は回復しつつあるが、超長期ゾーンの流動性は改善していない。』
『・ 特に超長期ゾーンの流動性の著しい低下が懸念されており、長期ゾーンまでと超長期ゾーンで市場分断のような状況が発生している。』
まあそうですね。
『・ 10 年以下と 10 年超で日銀保有比率に大きな差があることが、4月入り後のイールドカーブのスティープ化や市場分断の遠因となった。』
だから中短期の買入をもっと減らせという話なのか超長期をもっと買えという話なのか、結論がどっちなのかによって全然評価が異なる話ですがこの先は記載されていませんので分からんですなw
『・ ストック効果が残存するもと、利上げ見通しや経済ファンダメンタルズ対比では金利上昇が抑制され、投資家の国債需要が十分に喚起されず、機能度の改善は道半ば。』
然り。
・しかし肝心の6月以降の減額計画に関しては意見がバラバラクソワロタ(ワロエナイけど)
『意見照会へのご回答(現行の長期国債買入れ減額計画)』に参ります。
『・ 現行の減額計画については、「買入れ減額のペースを早めるべき」、「現行計画どおり進めるべき」、「買入れ減額をより緩やかなペースに変更すべき」、「一度に大幅な減額をすべき」といったご意見を頂きました。』
意見がバラバラですし、こんなの偶々このタイミングでやったらからこういう回答になったけど、もし3月にこの意見聴取してたら別の回答になっていたでしょうし、4月にやっても別の回答になっていたでしょうな、と思う次第なので、まあ日銀だって端からそんな気はないでしょうけれども、多数決方式で決めるようなもんじゃない、ってお話ではありますわな、と思いました(個人の感想です)。
『(具体的なご意見の例)』ですが、。
『・ 10 年以下のゾーンについては、日銀保有比率は高いままであり、投資家需要対比で市中流通玉が不足しているほか、イールドカーブに歪みが生じていることを踏まえ、同ゾーンを中心に買入れ減額を加速するべき。』
まあこれストックで見るのかフロー(新発と流動性供給入札による追加発行対比)で見るのかというのもあるかな、とは思いました。
『・ ボラティリティの上昇により市場全体のリスク許容度が低下している状況で減額ペースを加速させると、かえって市場の機能度を低下させる恐れがあるため、現行計画を変更することは望ましくない。』
うーんそれ言いたい気持ちは分かるんだが、そういう発想っていきつくところは「中銀プットアリガタヤ」になってしまいまして、それによって発生する過大なリスクテイクが将来における金融リスクの拡大に繋がると思いますし、大体からして「ここまでの減額ペースが遅すぎたから市場機能の回復が遅れて、その結果トランプ関税ショックへの耐性が市場に育っていなかった」という見方だって出来る(というかアタクシはそう思っているがそこは別の見解もあると思います)訳でして、ちょっと断面にとらわれているなあという気はします。
『・ 足もとの超長期債のように、特定の年限の流動性が著しく低下する場合には、内訳としての残存期間別の減額の割り振りを慎重に検討する必要があるものの、国債買入れの減額幅やペースの予見性を保つことは重要であり、現行の減額計画自体は変えるべきではない。』
まあ予見性のキープは重要ですが、前段の機能度のところでは日銀の国債買入が依然として(ストックかフローかとかそういう論点はありそうですが)過大であることが市場機能の向上を妨げている、って意見が大勢を占めているっぽいので、別に予見可能性云々を盾にして変えるべきではないってのもどうなんでしょ、6月に見直しをしますって大昔から言ってる話なので、そらまあその見直し時期を待たずに変えるのは筋悪だと思うけど。
『・ 現行計画のもとで、過度なボラティリティが生じることなく、着実に減額が進んでいる。計画を変える必要はない。』
『・ 足もと流動性が低下しているが、米国の関税政策という買入れ減額とは別要因によるものであり、計画どおりに減額を進めるべき。』
『・ 足もとの国債市場の動向を踏まえると、国債買入れの減額が、流動性を悪化させる方向に作用している可能性もあるため、買入れ減額をより緩やかなペースに変更すべき。』
『・ 段階的な減額により、市場機能の改善は不十分なものにとどまっているため、段階的な減額をやめて、一度に大幅な減額を行う形に見直すべき。』
最後に原理主義者が登場していますな笑。まあ機能度の事考えたらもっと減額加速した方が良いと思いますが、最低でも今のペースでは減らさんとって思いました。
・2026年4月以降の話とか何でしようってことになっているのかがマジで意味わからん
でもってこの後のコーナーが『意見照会へのご回答(26/4 月以降の長期国債の買入れ<ペース>)』、『意見照会へのご回答(26/4
月以降の長期国債の買入れ<買入れ金額等>)』なのですが、こんなん来年4月というかその前の段階でまた中間評価やりゃ良いじゃんというだけの話だと思うのですが、植田総裁が何を思ったのか会見とかでこの話をしたもんだからアンケート項目に入っているんですよね、マジで意味わからん。
こんなの理念的には「望ましい当座預金残高(あるいはバランスシート)規模になるまでは新規買入をゼロにする。、ただし四半期ベースで幾ら以上のバランスシート減少規模になる場合はスムージングの為に長期国債買入を超過分だけ実施する、保有国債の償還スケジュール見れば事前に計画できますのでお前らも日銀保有国債の明細よくみておけや」で終わりだと思うのですが・・・・・・・・・・
ということであんまりこちらは引用しませんけど、
『意見照会へのご回答(26/4 月以降の長期国債の買入れ<買入れ金額等>)』を見ますと、個別の意見はめんどうなので割愛しますが、まとめのとことでは
『・計画期間末時点における買入れ金額(月額)についても、「ゼロ」、「1〜2兆円程度」、「3兆円程度」といったご意見を頂きました。また、「今後も、中間評価を行うべき」、「目指すべき超過準備の姿を示すべき」、「状況を見極めるべき」とのご意見も頂きました。』
昔みたいに銀行券の趨勢的な伸びに対応して長期国債買入をする、ってんならともかく、そうじゃないのであれば本来的には長期国債買入はゼロじゃろって話で、月額3兆とかの輪番がビルトインされた状態での債券市場の価格形成ってその時点で市場の金利形成機能をおかしくするじゃろ、としか言いようが無いのでまあ本来はさっき書いたようにゼロじゃろゼロと思いますがね。
でまあこの「目指すべき超過準備の姿を示すべき」ってのも大事な論点で、ただまああまりにも今の超過準備が多すぎるので、目指すべき水準がどの程度になるのかというのもさっぱり分からん、ということかとは思いますが、今は明らかに超過大なんだからとりあえず減らしていきながら様子見ます、で良いんだと思うのですけれども、植田さんなんか妙なこだわりでもあるんですかねえ、とこの2026/04以降の話という部分については思うのでありました。
2025/05/20
〇またポンチ絵の体裁を前回と比較不能なものにしてきたんだが(展望レポートハイライト)
毎度おなじみの「ECBの真似っこしてみたものの訳わからんものになってしまったが今更引っ込みもつかないので継続性とかそういうのを丸無視して作って金融市場から注目されないように編集する攻撃」(大いなる個人的な偏見です)のハイライトですが、さて今回はと言いますと・・・・・・
今回4月
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/highlight/ten202504.htm
前回1月
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/highlight/ten202501.htm
前々回10月
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/highlight/ten202410.htm
・経済の見通しが関税要因で云々は分かるのだがイラストの振れ幅が大きすぎて笑うしかない
最初のイラストが、
『日本経済は成長ペースが鈍化する』(今回4月)
でして、まあこれ自体は関税政策あるから引き下げました、って話(ベースラインシナリオそのままで不確実性に全部ぶち込んで7月展望まで様子見地蔵です勿論本当に何かしなといけないなら動くけどまあ地蔵でお待ちください、という選択肢もあったとは思うがそこはさておきまして)になっているので結論が過去のと比較すると、
『日本経済は成長を続ける』(前回1月)
『日本経済は成長を続ける』(前々回10月)
から下がっているのはまあ良いんですけど、イラストの振れ幅大きすぎにも程があって、昨年10月は左打ちの強打者(大谷選手のイメージですかねえ)がバックスクリーンにホームランかっ飛ばしている、という凄まじく威勢の良いイラスト、前回はクロスカントリースキーで前進しているの巻というまあ普通ちゃあ普通のイラスト、からのいきなり重いコンダラ試練の道を状態なイラストに転換しております。
でまあ必死こいて引き摺っているのが下向き矢印付きでずぶずぶ沈む地球儀(世界経済でしょうねえ)と大型貨物船(一瞬タンカーかと思ったけど世界貿易の積りなんでしょうね)という何かもう昭和のスポ根みたいなのが出てくるわけですよ。
・・・・・・いやあのですね、ちょっとあなたたち絵柄のイメージの振れが大きすぎやしませんか、って話でして、説明の文書を読みますと
『日本経済は、各国の通商政策等の影響を受けた海外経済の減速により下押しされ、成長ペースが鈍化します。その後は、海外経済とともに、成長率を高めていきます。』(今回4月)
ってことで一旦鈍化したあとには成長戻ってきますよって話になっているのに、絵柄がもう苦行の世界みたいな絵柄(図と言い憂鬱そうな色と言い)になっている訳ですよ。
なお、ここで昨年10月(前々回10月)の展望レポートの説明文を見ますと、
『日本経済は、海外経済が緩やかな成長を続けるもとで、金融面からの後押しなどもあって、潜在成長率を上回る成長を続けます。』(前々回10月)
って文章でして、「潜在成長率を上回る」とは言ってるけど高成長とかそういうことまでは言っていないし、海外だって「緩やかな成長」って程度の話をしているのに、大谷選手のバックスクリーンへのホームランがかっ飛ばされるっていうイラストも文章対比で威勢が良すぎますし、なんですかこのイラストの振れ幅はということで、絵師自体はプロがやってるのか日銀の中に絵師がいるのか存じませんが、絵師に対してのインプットをもう少しこう手加減というか何というか、ってした方がエエンチャウノというお話です。
余談ちゃあ余談ですけれども、これ植田日銀の悪いところではあるのですが、会見での質疑応答における説明でも、利上げしている時はやたらめったら威勢の良いことを言ってしまうから「やっぱり次回の利上げが前倒し」みたいになるし、現状維持の時はやたらめったら慎重な事を言ってしまうから「利上げって実は当分できない/打ち止めなんじゃないか」みたいになってしまう、というのがあって、今回で言えば総裁記者会見が(質問されたことに対して丁寧に回答しているのは分かるし植田さんも別に期待を余計に振り切ろうと思って言ってるんじゃないとは思うのですが結果的に)植田さんが政策修正なしなしみたいな説明をしてしまって、最近の主な意見などが出てやっと「従来路線は変わっていない(ただし不確実なのでその点で言えばでたとこ勝負)」って認識が広まりつつある(のでそれこそ1年短国のレートも4月半ばよりは上昇している)訳ですな。
でまあライブ配信の方は致し方ない面はあるのですが、事前に編集ができるこのようなポンチ絵で何も振れ幅を大きくする必要はない訳でして、これもまあ植田日銀的には「絵柄としてわかりやすくしたい」って事なんでしょうけれども、金融市場の中の人(というほど偉くはなくてただの門前小僧がジジイになっただけのオッサンだが)からしてみますと、こういう物件は当然ながら前回からの継続性を見て、前回対比での変化を見てどこにポイントがあるのか、というのを見ますので、振れ幅をあまり極端にするのは如何な物かと思いますし、一般向けだから分かりやすく、って言ったってここまで振れ幅を大きくするのは、(どの位いるかは知らんけど)このイラスト見た一般の皆さんの期待を無用に振り切らせることになってしまい兼ねないので、如何なものかと思うのですよね。
ま、そういうと「前回との整合性とか見るな」って言われそうですが「そんなもんを中央銀行の名前で出すな」と思うのよね。
・「基調的な物価」と「アクチュアルの物価」の2本立て説明さん、あっさりお蔵入り(か?)
2番目のイラストが「物価」についてになりますが・・・・・・
『物価は減速したあと2%程度に向かう』(今回4月)
『物価は2%程度に向かう』(前回1月)
『物価は来年度以降2%程度で推移する』(前々回10月)
こちら、先般の東京都区部4月CPI出たときに前々回10月のイラストについて言及しながらヘソが茶を沸かしましたなあという駄文をこちらで開陳申し上げた覚えがございますが(・∀・)こちらにも特徴がありまして、
『消費者物価の前年比は、食料品価格上昇などの影響が弱まり、経済の成長ペースも鈍化するため、来年度に1%台後半まで減速しますが、再来年度は2%程度となります。』(今回4月)
『消費者物価の前年比は、来年度に2%台半ばとなったあと、再来年度は概ね2%程度となります。この間、一時的な変動を取り除いた消費者物価の基調的な上昇率は、徐々に高まったあと、2%の「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移します。』(前回1月)
『消費者物価の前年比は、今年度に2%台半ばとなったあと、来年度・再来年度は概ね2%程度で推移します。この間、一時的な変動を取り除いた消費者物価の基調的な上昇率は、徐々に高まったあと、2%の「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移します。』(前々回10月)
前々回10月は秋の紅葉の丘をバックにパラグライダーが2025(年度)2026(年度)の2%に向かって順調に効果着陸するの図、となっていました。まあ2025年度一発目が早速上振れしている時点で「来年度(=2025年度)・再来年度は概ね2%程度」を大外ししているんですけれども、まあそれは兎も角として。
1月って2%というフロアーに向けて下から上がってくる階段と上から下がってくる階段があって、上から下がるのが「アクチュアルの物価」で下から上がってくるのが「基調的な物価」って話だった訳ですな。
でまあ今回ですが、前回あった「基調的物価とアクチュアルな物価」のイラストから、単純に物価の折れ線グラフ(折れ矢印グラフと言うべきか)に切り替わっておりまして、しかも2026年度のところまで下がり続けた後に2027年度に2%になる(すなわち文章にもありますけど2026年度は2%割れ)というイラストになっています。
まあこれ4月東京が上振れはさておきましても、今後食料品価格の伸び率が鈍化するのと経済の減速が相まって物価が下がるっていうのが日銀大本営の見通しになっているからそういう図になっているのは分かるのですが、何せ日銀はこの2年以上に渡ってアクチュアルの物価見通しを盛大に外しまくっている訳で、物価見通しを2年も外し続けて何が物価安定目標じゃとしか言いようが無い(というか何で定例記者会見で大して問題視されないのよと思うけど)ですが、それは兎も角としまして。
今回ってイラストが「アクチュアルの物価一本に戻った」のもあるのですが、説明文の方でも「基調的物価がどうのこうの」という言及を止めているのが何げにポイントでして、これはまあさすがに「基調的な物価が2%行っていないから(基調的物価を押し上げるために)緩和的な政策が必要です」って説明をしていると、実際の物価(特に世の中的には食料品、就中コメ)がクソ上振れしている現状がある中、うっかり着火したら日銀が業火に焼かれるリスクというのがある訳で(現に黒田時代の「家計の物価上昇許容度」が一時盛大に焼かれた上に最初に言い出した渡辺某は逃げ出すという見苦しい姿を示したという事案がありましたわな)、ってのを感じているので、こういう一般向け(という建付けの)プレゼンでは「基調的物価ガー」をあまり出さないようにしたんじゃなかろうか、とアタクシは思いましたけどまあアタクシが思っているだけの話で実際にどうなのかは知らんけどな、という所ではあります。
・リスク要因は順当
3番目はリスク要因ですがこれはまあ順当な説明と絵柄ですね。
『通商政策等の展開や影響を巡る不確実性はきわめて高い』(今回4月)
『日本経済・物価を巡る不確実性は高い』(前回1月)
『日本経済・物価を巡る不確実性は高い』(前々回10月)
前回と前々回は同じイラストですが、今回はまあ関税問題が大きすぎで全部を覆ってしまいましたので、イラストはそれっぽいものになっています。まあこれは順当ですな。
『各国の通商政策等の展開やその影響を受けた海外の経済・物価動向を巡る不確実性は、きわめて高い状況です。金融・為替市場や日本経済・物価への影響にも、十分注意を払う必要があります。』(今回4月)
『海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、日本経済・物価を巡る不確実性は引き続き高い状況です。また、金融・為替市場の動向と日本経済・物価への影響にも十分注意を払う必要があります。』(前回1月)
『海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、日本経済・物価を巡る不確実性は引き続き高い状況です。また、金融・為替市場の動向と日本経済・物価への影響にも十分注意を払う必要があります。』(前々回10月)
・金融政策云々だが謎の温度計3本の意味は何ぞや????
『2%目標のもとで金融政策を運営していく』(今回4月)
『2%目標のもとで金融政策を運営していく』(前回1月)
『2%目標のもとで金融政策を運営していく』(前々回10月)
と書いてある小見出しは同じで
『金融政策運営については、経済・物価の見通しが実現していくとすれば、経済・物価情勢の改善に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えています。そのうえで、こうした見通しが実現していくか、丁寧に確認し、予断を持たずに判断していくことが重要です。』(今回4月)
『金融政策運営については、先行きの経済・物価・金融情勢次第であるが、経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えています。』(前回1月)
『金融政策運営については、先行きの経済・物価・金融情勢次第であるが、経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えています。』(前々回10月)
先行き次第ではあるが、が先行きどうなるかをよく見て確認して行きましょう、になったのはそりゃまあ今回関税問題という大ネタが投下されたので仕方ないのですが、前々回前回と違うこの「3本の温度計」イラストの意味がまるで分からずワイ大いに悩む。
ECBも以前似たような温度計並べてたりして、過去のがパッと出てこないのですが、一応財とかエネルギーとか何かそんな感じで温度(物価)が違いますよってのがあったのですが、今回のイラスト、3本温度計があって温度が違うのは分かるんだが、じゃあ何の温度見てるんだよ、というのがさっぱり分からないという謎の「3本の温度計」でして、そういや「コロナ対策3本の鉛筆」ってのがあったわなと思いますと、もしかして日銀大本営は「3本のナントカ」が好きなのかどこの毛利元就だよと思ってしまいました。
と言ったところで今朝はこの辺で勘弁。
2025/05/19
〇短期と言えばこんな力作が出ているのは良いんですけど・・・・・・・
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2025/wp25e07.htm
金利見通しの分布における歪度の高さと中央銀行の金融市場調節の効果:高粒度な取引データを用いた実証分析
2025年5月16日
前橋昂平*1
宮川大介*2
佐々木貴俊*3
曽根泰平*4
なお、本チャンに関しては
『全文掲載は、英語のみとなっております。
全文 [PDF 1,971KB]』
とありましてまあこの時点でそもそもドメドメザパニーズかつ数学がクッソ苦手なワイはお手上げではあるのですが、
https://www.boj.or.jp/en/research/wps_rev/wps_2025/data/wp25e07.pdf
Skewed Interest Rate Expectations
and Effects of Central Banks’ Market
Operations:
Empirical Findings Using Granular
Transaction Data
しゃーなしでお情けでHTMLページの方に掲載されている『要旨』を拝読するんですが、
『要旨』
『本研究では、日本円OIS取引に関する取引情報蓄積機関の高粒度データを用いて、各市場参加者の先行きの金利見通しを推計し、時間を通じて変化する金利見通しの分布とそのモーメント(平均・分散・歪度・尖度)を算出した。そのうえで、この新しいデータを活用して、日本銀行の国債買入れが国債利回りに及ぼす効果が、金利見通しの分布のモーメントに応じて変化するか、を定量的に検証した。検証の結果、日本銀行の指値オペが国債利回りを押し下げる効果は、金利見通しの分布の右裾が長いほど高まる傾向にあることが分かった。この実証結果は、推計された金利見通しの分布が、中央銀行の効果的な金融市場調節にとって有用であることを示唆している。』
とのことでして、さっきの英文PDFの最初の『Abstract』の和訳になるのですが、本文の構成は
1. Introduction
2. Related Literature
3. Empirical Strategy
3.1 Monthly Distribution of Market Participants’ Expectations on Future Interest Rates
3.2 Verifying the State-Dependent Effects of the BoJ’s JGB Purchases Conditional on the Expectation Distribution
3.2.1 Two-Week Distribution of Market Participants’ Expectations on Future Interest Rates
3.2.2 Estimating the Effects of the BoJ’s JGB Purchase Conditional on the Expectation Distribution
4. Data
5. Empirical Results
5.1 Monthly Distribution of Market Participants’ Expectations on Future Interest Rates
5.2 Market Participants’ Expectations and the Effects of Market Operations
6. Who Drives the Skewness?
7. Robustness Checks
8. Conclusion
ちなみにこの8のところの英文が何となくさっきの要旨のケツの部分に対応した話がありまして、まあかなりの力作なのは認めるのですが、OIS市場が示している「織り込まれた将来の政策金利」ってのが本当の意味で債券(長期債)市場プレーヤーが考えている将来の政策金利を示しているのか、というとOIS市場自体が参加者限定市場だし、それこそ長期債券運用の人が皆さんOISをヘッジツールに使っているのならばともかく、残念ながらそんな市場じゃないので、何ちゅうかまあ分析手法として頑張っておられるのは分かるのですが、OIS市場のデータを使って市場の金利見通しの変化を見る、ってのが体感的に長期金利の価格形成と整合しているのかというとちょっとズレている気がしますし、そのズレっていうのは平常時はもしかしたら大きくないけど、本稿で材料にしているような「指値オペ」のような一種異常な事をしているような状況において、OIS市場から得られる先行きの金利見通しはOIS市場参加者にとってはその通りですが、それが債券市場の金利見通しをイコールで示しているのか、ということになるとちょっと違いませんかねえという話になるんですが、本編なにせ英文なので何となく読んでみましたがよくわからんかったからいずれ日銀レビューシリーズで纏めていただけると甚だアリガタヤという感じです。
でまあ別にこのコーナーは上記の分析にケチをつけるためにネタにしたのではなくてですね、そもそも論として日銀のウルトラハイパーな国債買入(額もそうだし指値オペみたいなトンチキオペも含めて)やら何やらによって、円金利市場全体において「えーっとそもそも市場参加者が純粋期待仮説(でもなんでもいいけど)で織り込んでいる価格ってどこにあるのよ」ってのが今の債券市場でも短国市場でも「それ以外の謎の需給要因」によって変な値段になっとるじゃろ、というのが多々あるようにワシには思える次第(あくまでも個人の感想ですので異論は有ろうかと存じます)でして、まあそういう意味での「市場機能」の復活までは相当遠い道のりが掛かりそうな気がしますわな、などといつもの悪態になるのでありました。
ああ一応補足しておきますと、長期債の市場に関しても「この参加者は基本的にこの年限の辺りに投資する」というのがあるのでイールドカーブ全体の中で参加しているメンバーが異なっている(市場分断仮説でしたっけ)ってのはありますし、何なら金融規制強化が進む中でその傾向は強くなった気がしないでもない(マイナス金利とYCCで本来来るべき人じゃない人が超長期にやってきた問題というのも別にありましたけど)。
2025/05/15
〇それはそうと展望レポート全文の方のBOX鑑賞の続き(その2):やっぱり「構造的に賃金と物価が上がりやすい」ネタです
展望レポート背景説明を含む全文
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2504b.pdf
45ページ(PDFだと47枚目)にある『(BOX4)最近の賃上げと価格転嫁を巡る動向
』を拝見しましょうの巻です。
『本BOXでは、最近の正社員の賃金上昇について様々な指標で確認したあと、賃金設定と価格設定の関係性を企業レベルのデータから考察する。』
ほうほう。
・ベースアップ動向に「構造的な変化」の可能性があるそうでイイハナシダナー
『2025 年度のベースアップ率について、連合の集計値をみると、4 月 17 日公表の第4回集計時点で+3.79%と、前年の同時期(+3.57%)を幾分上回っている(2024
年度の最終集計:+3.56%)。』
さいですな。
『マクロでみたベースアップ率を被説明変数、物価上昇率・労働生産性・中長期インフレ予想を説明変数とする簡単な関数を
1992 年度から 2022 年度までのデータを用いて推計し、』
さらっと書いてあるんだがこの「中長期インフレ予想」ってなんの数字を使っているのかがこのボックスの図表にある説明(脚注など)をみても分からんというが諸葛孔明の罠のような気がしますがとりあえず気が付かなかったことにして読み進めますと、
『2023年度以降のベースアップ率の同関数の予測値を求めると、ここ3年間のベースアップ率の実績値は、関数予測値をはっきりと上回っている(図表
B4-1@)。』
ほうほうほう。
『このことは、近年のベースアップ率の決定メカニズムが、デフレ期から構造的に変化している可能性を示唆している。』
キタコレ!!!
『構造変化を示すひとつの可能性としては、BOX3で指摘したとおり、正社員を中心に人手不足感が強まり、転職市場も拡大するもとで、これまで労働需給の影響を比較的受けにくかった正社員の所定内給与にも、上昇圧力がかかるようになってきたことを指摘できる(図表
B4-1A)。』
てな訳でアタクシが一昨日最初にこれって言ったのがBOX3だったりしたのの伏線を回収しておりますが、前回の展望レポートではもっと目立つ格好で構造的におちんぎんが上がるようになってきましたですお、という話をしておったのですが、今回はこのBOX4とさっきのBOX3がここに該当しますわな、というお話。
まあ正社員の所定内給与の上昇圧力と言っても、「正社員(年寄りは除く)」とかそういう世界だったりしたりしなかったりとか書いていると悲しくなるので先に行きましょうwwwww
・でまあ全般の賃金カーブも底上げに向かうそうな
『正社員で強まっている賃金上昇圧力は、新卒市場においてもっとも顕著に表れている。』
裏山鹿〜
『実際、各種企業情報に基づくと、2025 年度の初任給は、昨年度に続いて水準を大きく切り上げているとみられる。初任給の企業別分布をみると、2021
年度頃は 21 万円あたりの最頻値に集中する比較的裾野の狭い分布となっていたが、ここ数年は、上昇方向に裾野の拡大を伴いつつ、分布がはっきりと右方シフトしている(図表
B4-2)。』
ほうほうほうほう。
『初任給の引き上げは、年功賃金カーブ上で新卒に近い若年層の賃上げにも波及すると考えられる。』
ねえねえジジイのおちんぎんはジジイのおちんぎんは(見苦しいにも程がある人)
『こうした動きを起点に、年功賃金カーブが一段と上方改定されていけば、平均的な賃金水準も切り上がっていく可能性がある。』
まあカーブはツイストフラット(書いてて情けなくなってきたwwwwww)
・中小企業への賃上げの広がりに関して
てなギャグはさておきまして、
『正社員の賃上げの動きは、労働組合のある大企業から、ややラグを伴うかたちで、中小企業にも波及している。』
この話は決定会合議事要旨とか主な意見とか(まあタイミング違うだけで同じもんだが)でも言及されていますな。
『2024 年度の賃上げ実績を振り返ると、@労働組合がある企業の賃上げ率は、組合のない企業よりも高かったほか、A労働組合のある企業の中で比較しても、規模が大きいほど賃上げ率が高くなる傾向がみられる(図表
B4-3)。』
マジかそんなに労働組合って力あるんかい、って感じですが、単にそれは「労働組合が組成できるほどの規模の企業ほど賃上げの余力がある」、というAの話なだけで@はただの相関なだけではないかという気がせんでもないのですがまあいいです。
『2025 年度のベースアップ率(連合第4回集計)をみると、中小企業(300 人未満)におけるベースアップ率の上昇率は、大企業より大きくなっており、正社員の賃上げの動きは中小企業にも着実に広がっている姿が窺われる。』
しかしまあ何ですな、そういう賃上げの広がりを定着するのを見たい、ってのはまあ言いたいことは分かるのですが、その間延々と物価の上振れが続いて実質所得が伸びませんって状態が続いてしまうと、そもそも何のために2%物価安定目標をやっているんですか、という話になりゃあせんですかねえとも思う訳で、まあそれこそ「2%への招待状」からこの方(というか黒田緩和直前のハマコーのダイヤモンドオンラインインタビューがまさにそうですが)ちらちらと出ていますように、2%物価上昇の世界ってより優勝劣敗がワークしやすくなる(からこそマクロ的に見た資源の適正配分が進みやすくなり、その結果マクロ的に生産性の向上だったり経済の成長が促進されやすいんだが)訳で、その辺をオブラートに包むだけならまだしも、置物一派を始めとして「物価2%目標達成したら世の中皆が幸せに」みたいな虚構を振り撒いてしまって、その共同幻想が全然解消しない状態だからこそ、いざ物価が上がってみたら「物価高対策で財政を」とか頭おかしい事をおっぱじめている訳ですが、虚構を振り撒いた連中は財政出せ財政出せ減税しろ減税しろなのですからあいつら本当に碌でもないですわな。
・・・・すいません思わず話が逸れてしまいました
でまあそうやって中小にもおちんぎん引き上げの動きが、という話の続きが価格転嫁の話になっていましてですね、
・価格設定行動に関してですが「価格を上げてもたいして問題にならん」の定着が進んでいますという話
『以下では、こうした企業の賃上げ姿勢の積極化と、最近の価格設定行動がどのような関係にあるかを、企業レベルのデータを用いた実証分析によって確認しておく。』
ほー。
『具体的には、POSデータから、個別企業が販売する商品の平均価格を作成したうえで、これを法人季報の企業別の個票データとマッチングしたデータセットを構築した33。』
でまあ『図表B4-4:販売価格引き上げの影響』になるんですけど、これでどの程度のカバーができているのかとかいうのは気になりますけどまあ先に行きましょう。
『これを用いて販売価格引き上げ時の企業行動をみると、近年は値上げした際の販売数量の落ち込み幅が、コロナ禍前よりも小さくなっている(図表
B4-4@)34。』
脚注にありますが、『34 通常の個別需要曲線を念頭に、マクロのインフレ環境等を時間固定効果でコントロールしながら、自社製品の相対価格の変化がどれほど販売数量を変動させたかを推計した。』とのお告げで、『図表B4-4:販売価格引き上げの影響』の『@販売数量』に相当します。
『これは、ここ数年、自社が値上げした場合の顧客の価格弾性値(自社製品の相対価格が1%上昇した際、販売数量が何%減少するかを表す値)が低下している可能性を示唆している。』
値上げしてもそんなにダメージは食らわん、と来てからの、
『また、今次の物価上昇局面では、販売価格を引き上げた企業の価格マークアップは拡大する傾向にあり35、こうした企業では販売数量1単位当たりの利潤(ユニット・プロフィット)も増加している可能性が示唆される(図表
B4-4A)。』
ダメージ食らわんどころか収益が増えて(゚д゚)ウマーである、という可能性もありまっせ、というイイハナシダナー(消費者的にはタマランチ会長という説は大有りだが)。
『また、販売価格を引き上げた企業の一人当たり人件費をみると、足もとでは、販売価格を引き上げた企業ほど、賃上げ率も高い様子が窺われる(図表
B4-4B)。』
あら素敵。ということで、
『今次局面では、価格マークアップの引き上げに成功した企業は、ややラグを伴って賃金支払も増加させる傾向が、中小企業も含めて広がっている可能性が示唆される。』
つまり・・・・・・
賃金と物価の好循環(ただしマークアップ引き上げができる企業とその従業員のみ)という話ではあるのですが、この()の部分に一昨日ネタにしたBOX3で示されるような労働力の移動が起きることによって、マークアップできない企業はマークアップできるように頑張っていただくなり、それが無理なら粛々とご退場いただくなり、ってのがまあ「賃金と物価の好循環」ですわな、という話ならそりゃまあそうですよね、という話ではありますけれども、まあ問題なのはこの「賃金と物価の好循環」ってのがあまねく皆さんに行き渡るかのような幻想を与えているんじゃないの、ってところなんだろうなあ、とか思ったり思わなかったり、ってところかと思います。
まあゆうてこういう形で賃金と物価の好循環(ただしマークアップ引き上げができる企業のみ)が確認されてきたら、それこそそれは物価安定目標達成じゃろ、と考えますと見通し期間の後半とかいうここから1年半も待つ必要あるんかいな、とは思ってしまうこちらのBOX3とBOX4なのでありました、というのがこのシリーズのアタクシの私家版結論ということにしておきます。
2025/05/14
〇4月決定会合主な意見は中々の面白さでしたな
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2025/opi250501.pdf
金融政策決定会合における主な意見
(2025 年 4 月 30 日、5 月 1 日開催分)1
・ものすごい勢いでハトハトチキンになったことに対するランボー怒りの意見が非常に面白いというか素晴らしい
今回の主な意見、一番面白かったというか素晴らしかったのはこの二つの意見でしょ。ということでまずは順序をさておいて引用しますけど、
『T.金融経済情勢に関する意見』の『(経済情勢)』の8個目の意見ですけどね。
『・ GDPに占める輸出の割合等をみると日本の貿易依存度はそこまで高くないことから、米国の関税政策の動向だけでなく、国内要因にも注目して、冷静に金融経済の状況判断をしていきたい。』
>冷静に金融経済の状況判断をしていきたい
>冷静に金融経済の状況判断をしていきたい
>冷静に金融経済の状況判断をしていきたい
>冷静に金融経済の状況判断をしていきたい
>冷静に金融経済の状況判断をしていきたい
・・・・・・・・(;∀;)イイシテキダナー
でですね、ご案内のように今回はなんせフォワードルッキング(笑)にベースラインシナリオを引き下げるわ前回まで上振れと言ってた物価を下振れと言うわ、という大胆なプレイが出ていた訳ですが、この後でネタにしますが、この「経済情勢」のところとか「この世の終わり」みたいな感じの意見が並びまくっておりまして、なるほどここまで「この世の終わり」みたいな雰囲気だったのか、と思いながら読んでいる所の最後の方(最後から2番目)にこの意見が出てきたので思いっきり吹いてしまいました。
つまりですね、この意見を提出した方から見たら、経済情勢に関する意見の最初の部分、つまりいつもの編集順序からしたら正副総裁辺りの意見と思われるものが冷静さを欠いたハトハト総悲観状態で、「お前らアホかいいから落ち着け」とたしなめたい、というのが非常に良く伝わる意見でして、この「冷静に」ってのがもう素敵としか言いようが無いのですが・・・・・・・
たぶんさっきのと同じお方だと思うのですが、『U.金融政策運営に関する意見』の6番目にも素敵な意見があるんですよ。
『・米国経済減速から利上げの一時休止局面となるが、米国の政策転換次第で追加的な利上げを行うなど、過度な悲観に陥ることなく、自由度を高めた柔軟かつ機動的な金融政策運営が求められる。』
>過度な悲観に陥ることなく、
>過度な悲観に陥ることなく、
>過度な悲観に陥ることなく、
>過度な悲観に陥ることなく、
>過度な悲観に陥ることなく、
(;∀;)イイシテキダナー
(;∀;)イイシテキダナー
(;∀;)イイシテキダナー
ということでですね、まあ同じお方がランボー怒りの抜刀斎となっておられるのではないかと存じます次第なのですが、要するに「過度な悲観に陥って冷静さを欠いた議論が行われている」という事態が先般の金融政策決定会合では行われていた、という所だったんでしょうなあ、というのが活写されているという事で、言葉の力、というのをここまで感じたことはない、という「主な意見」でありました。
・でもって冷静さを欠いた悲観のハトハトチキンは誰だったのでしょうかねえ(・∀・)ニヤニヤ
てな話になるわけですが、この「主な意見」。後半の方になると総悲観みたいだったのから少しマシになってくるので、決定会合後の記者会見がどう見てもハトハトチキンだったのを踏まえれば、こんなの要するに総裁と副総裁(のうち誰かさん)がハトハトチキンで冷静さを欠いて過度な悲観に陥って議論をリードしたのか強引に押し通したのか、過度な悲観のハトハトチキンに腰抜け政策委員(なお中村審議委員は信念のハト派なので腰抜け呼ばわりからは除外されます)が迎合オブ迎合したのか、その合わせ技なのかは分りかねますが、まあその流れに対してランボー怒りの抜刀斎が抜刀されたということで割と画期的だったかもしれないな、と思うのでありました(あくまでも個人の妄想ですのでその点はよろしゅうに)。
まあ半分くらい妄想ですけどねwww
では通常ベースに戻って順に確認してみましょう。
・経済のパートの冒頭にこの世の終わりみたいな意見が並んでいるというのがもうね
『T.金融経済情勢に関する意見』の『(経済情勢)』の冒頭がとにかくこの世の終わりみたいな意見が並んでいるのには呆れました。
『・ わが国経済は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している。先行きは、各国の通商政策等の影響を受けて成長ペースは鈍化するものの、その後は海外経済が緩やかな成長経路に復していくもとで、成長率を高めていくとみられる。』
これは公式見解だからまあどうでも良いのですが、
『・ 不確実性の増大が設備投資や家計消費に与える影響、米国への輸出量の減少や採算の悪化、世界的な景気悪化や円高が対世界輸出に与える影響、株価下落の逆資産効果などの負の需要ショックが見込まれる。資源価格下落等に伴う正の供給ショックも見込まれるが、需要ショックよりは小さい。全体としては、米国の関税政策は、わが国の経済・物価のいずれにも下押し方向に働く。』
思いっきり経済も物価も下押しなんですって。
『・ これまでの見通しは、米国の関税政策によって、大きく揺るがされている。米国の関税引き上げは、わが国の経済と物価を下押しする。それは、わが国の輸出を下押しするだけでなく、貿易の縮小を媒介として、世界経済全体を下押しするためである。』
世界経済下押しまで決め打ちしている、というこの世の終わりシリーズが2本続いていて、これって前の方の順序に出ているというのを勘案しますと総裁副総裁なんじゃないのって思ってしまうわけですな。
でもってこの後。
『・@米国の関税政策の着地とAそれへの企業の対応は二重の意味で流動的であり、現時点での見通しは仮置きに止まる。今後の推移次第で、見通しには大きな修正があり得る。』
という冷静なのがあるんですけど、だったらそもそも何で今回ベースラインシナリオを下げたのかと小一時間問い詰めたい。
『・米国では、新政権発足以降、経済成長にマイナスに働く関税等の政策が先行しているが、今後、減税等の政策に転じた場合、成長率上振れもあり得る。』
『・相互関税は世界各国に賦課されるため、日本企業の相対的な競争条件悪化には繋がり難く、収益減少が限られる可能性もある。』
という意見もあるわけで、こんなに意見があって、かつさっきの抜刀もあるんだから(最大で4名ですが、何となくこのうちの一つがさっきの抜刀の人のような気もしますのでもしかしたら3人)、衆寡敵せずでベースラインシナリオを下げるような展望レポートになったって感じでしょうかねえ。
でまあこれは文章からしてたぶん中村審議委員。
『・米国の関税引き上げによる影響について不確実性が高い状況だが、高関税が長期化すれば、直接的影響を受ける輸出企業を中心に、事業再編やバリューチェーン強靱化のための取引先の選別、多層化した下請構造の圧縮、生産拠点の米国シフト等が進む惧れがあり、これが、雇用の7割を占め経営体力が比較的弱い中小企業に影響を及ぼす懸念がある。』
まあこれはさっきの過度な悲観おじさん(またはおばさん)とは違いますので一つの意見。
でもってこの次がさっきの抜刀斎な訳ですが、
『・GDPに占める輸出の割合等をみると日本の貿易依存度はそこまで高くないことから、米国の関税政策の動向だけでなく、国内要因にも注目して、冷静に金融経済の状況判断をしていきたい。』
「冷静に」ってのが強烈な砲撃になっているのは先ほど申し上げた通り。
『・今のところ、国際金融資本市場で顕著な dash for cash の動きは見られないが、引き続きノンバンク金融仲介機関(NBFI)の動向などを注視する必要がある。』
まあここにしか入れる場所が無いのでここに入っていますが、NBFIに関しては今回のFSRでも話になっていましたし、BIS-FSBだったと思いますけど、今回はこの話が出ていましたわな。
・物価のパートを見ますと何でこれで物価見通し下振れとリスク分布も下振れに一気にジャガーチェンジできるんでしょ
まあ経済に関してはそりゃ関税が上振れにはならんから下振れという話で、問題はその程度ということなんですけど、物価に関しても今回思いっきり下振れしたので、さてこれはなんの判じ物、というのを確認してみましょう。『(物価)』のパートですね。
『・ 消費者物価の基調的な上昇率は、成長ペース鈍化などの影響を受けて伸び悩むものの、その後は、成長率が高まるもとで徐々に高まっていくと予想され、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。』
『・ 物価見通しについては、展望レポートに前提として記載された関税政策等の影響のもとでも、現時点では、引き続き賃金の伸び
と 労働需給の引き締まりに支えられ、振れを伴いつつも、見通し期間の後半にかけて、「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると想定している。』
この辺は公式見解。
『・ 米国の関税政策は、わが国経済を貿易面・コンフィデンス面から下押すと考えられる。物価面では、経済の減速とサプライチェーンの混乱という上下双方向の要因があるが、いずれも賃金面ではマイナス要因となりうるため、基調的な物価には下押し要因となる可能性が高い。』
賃金にマイナスだから、っていうのも割と斬新な切り口な希ガス。
『・ 物価は 2027 年度まで2%近傍を維持する見通しであり、更に、グローバルサプライチェーンの混乱等の物価上振れリスクがある点に留意が必要である。』
・・・・筈なのですが展望レポート見ると下振れリスクって話が強調されていましたわな。さらに
『・関税ショックは短期的な価格ショックと考えることもできるので、長期的には実質的な効果を持たないという理論上の結論はありうる。したがって、現時点では、やや長い目でみれば、米国の関税政策とその不確実性が、基調的な物価上昇率や潜在成長率に影響を与えるとはみていない。』
まあそういう話もあるわな。
ということで物価ってこの4つしか意見が無いんだが、何でこれしかないのにあの展望レポートの結論になっているのかがさっぱり分からんのですが、アタクシの大妄想によりますとハトハトチキン音頭の踊り過ぎで冷静さを欠いた過度な悲観に陥ったハトハトチキンのトップ連中が以下同文。
・金融政策に関する意見になるとハトハト音頭の演奏が止まる件についてwwwwwww
『U.金融政策運営に関する意見』ですけれども、この金融政策運営に関する意見で何であの総裁記者会見になるのかが益々意味不明になるわけです、ということで鑑賞しますと、最初の方は公式見解になるんですけどね、
『・ 経済・物価の見通しが実現していくとすれば、経済・物価情勢の改善に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになる。そのうえで、こうした見通しが実現していくかは、不確実性がきわめて高いことを踏まえ、予断を持たずに判断していくことが重要である。』
まあ予断持ってるから何のデータもでてこないのに堂々とベースラインシナリオを引き下げたんですけどね!!!!!
『・ 見通しは2%の「物価安定の目標」を実現する姿となっており、実質金利は大幅なマイナスであるので、利上げしていく方針は不変である。その際、前提となる関税交渉の帰趨を含めて、不確実性がきわめて高い中で、見通し自体が上下に変化しうるため、見通し実現の確度、リスクを見極めていく必要がある。』
まあそりゃそうだって感じですが、実質金利大幅マイナスなんだから利上げするじゃろ、というのは結構なご意見ですが、以下こんな感じで真人間っぽい意見が続きましてですね、
『・ 経済・物価の見通しを巡る不確実性は高く、その確度は従来に比べて高くはない。先行き、見通しの上振れ・下振れ双方の可能性を点検したうえで、適切に政策を運営していく必要がある。』
『・ 米国の関税政策の展開がある程度落ち着くまでは様子見モードを続けざるを得ない。』
様子見モード、とか何ですかそのネット民みたいな言葉はと思いましたが、まあこの辺の意見はそりゃそうだという話ではあるんだが、だったら何で今回決め打ちでベースラインシナリオの引き下げを拙速に行ったのかがまるでよくわからない(しつこくいう人)。
次はこれ多分中村審議委員だと思います。
『・米国の関税政策により、日本企業は行き過ぎたコストカット、賃上げ・投資の抑制といった縮み志向や産業の空洞化に陥る可能性も考えられ、積極化していた企業マインドや倒産の傾向に変化がないか注視する必要がある。日本経済への影響を慎重に見極める必要があるため、現状の金融政策を維持することが適当である。』
過度な緩和は資源配分の非効率を招くリスクがあると思うので、言いたいことは分かるんだが、それが今の金融政策を維持することを正当化しないと思うんですけどね。まあこれは見解の相違の世界だけど。
でもって次がさっきご紹介した抜刀で、
『・米国経済減速から利上げの一時休止局面となるが、米国の政策転換次第で追加的な利上げを行うなど、過度な悲観に陥ることなく、自由度を高めた柔軟かつ機動的な金融政策運営が求められる。』
ランボー怒りの抜刀という話は先ほど申し上げた通りです。
でもって次。
『・「物価安定の目標」の実現に向けて最も重要なのは、@企業の賃金・価格設定行動、A企業や家計の予想インフレ率がどうなるかであるが、以前の賃金・物価が上がりにくい状況に戻っていくリスクは小さい。このため、2%の「物価安定の目標」に向けて上昇してきた基調的な物価上昇率が下方に屈折してしまう可能性は小さい。』
まあそうじゃろうな、とは思うが根拠が書いてないので何んともかんとも。
『・わが国では金利の下限制約から脱却して1年以上経つが、足もとにおける経済と物価はしっかりとしており、こうした中、現在の金融政策スタンスは、とても緩和的な状況にある。』
まあ結論は良いんだけど「政策金利0.5%」ってのは金利の下限制約ひ引っかかって言う状態と変わらんじゃろと思う訳で、そういう言い方は短期金利が1%になってから言って欲しいですねw
・情報発信に関して意見が2つありましたので
『・どのような見通しを立てたにせよ、米国の関税政策の展開によって、良い方にも悪い方にもすぐに覆る可能性がある。それは、日本銀行の政策経路が今後いつでも変わり得ることを意味する。その点、当面、市場とのコミュニケーションにおいて十分に率直であるべきである。』
言ってることはご尤も。
だったら何も今回ベースラインシナリオ変えなくても良かったんじゃないかね、という気が思いっきりしますけれども、「上にも下にも変わりうる」っていう当たり前の指摘がちゃんとできていてエライというか、ハトハトチキン総裁がハトハト決め打ち過ぎるんだがwww
その点で言えばこの意見の「その点、当面、市場とのコミュニケーションにおいて十分に率直であるべきである。」ってのも市場とのコミュニケーションが誤魔化しやってねえか、って批判なのかも知れないなと思うとそれはそれで面白い。
『・市場は、日本銀行の従来からの基本方針を内外の情報にあてはめて、日本銀行からの直接的な示唆を俟つことなく、利上げ時期についての見方を形成し、自ら修正し続けている。こうした状況を維持できるような情報発信の仕方を続けることが望ましい。』
これもご尤もなんですが、とにかく今の日銀って隙あらばしょうもない「直接的な示唆」を受けた記事をメディアに書かせる、というのを得意技にしている訳でして、その点では今回の情報発信においてなんですが、「アベイラブルなデータがなんも無いのにトランプ関税を受けてベースラインシナリオを引き下げた」というのであれば「置き」についてもっと詳しく(関税がどのくらいになるとか、世界経済がどのくらい下押しするか)を示してくれないと、「こうした状況を維持できる」かどうかは怪しくなりますわな、というお話でもあります。
まあ世界経済に関してはIMFのWEO使った、といいたいんでしょうけれども、そもそも論として先般のIMFのWEOってあれどっからどう見ても「アメリカよ、お前らの政策そのままやると世界経済が大変な事になるんだ分かってるのか」って牽制をぶち込むという意図によってマイナス要素モリモリモリタウンにして鉛筆舐めまくってるじゃろ、としか言いようが無い物件で、あれをそのまま真に受けた対応は他の中銀してねえだろってなもんですけどね。
・国債買入に関しては変な動きはしなさそうには見ているんですが・・・・・・
最後に輪番に関しての話があるのですが、
『・4月の市場急変時に、超長期金利の大幅上昇など国債市場で年限別の分断が生じた。国債買入れの減額計画の中間評価に向け、年限別の需給動向や流動性、業態毎に異なる見方を丁寧に確認することが重要である。』
って話なんだが、その次の人はこんなことを言ってまして、
『・超長期債について、金利の先高観が強く市場が神経質な状況では、投資家は投資に慎重にならざるを得ない。中央銀行が市場を十分に考慮することは当然であるが、一方で、その時々の市場の意見に反応しすぎると、その柔軟性が却って予見性を低下させ、市場の不確実性をより高める可能性がある。日本銀行が市場に不確実性を招くことは極力避けるべきである。』
これは誰が言ってるのかわかりませんけど非常に良い意見過ぎて弟子入りしたくなるレベルでして、特にこの「その時々の市場の意見に反応しすぎると、その柔軟性が却って予見性を低下させ、市場の不確実性をより高める可能性がある。」ってのがまさにその通りって感じですわな。
特に今はもうYCCやっている訳ではないのですから、日銀が下手に意図的な市場介入をすると、市場はその意図的な介入を所与として行動しだすので、それこそ市場による価格発見機能とか市場機能を通じた効率的な資源配分とか、そういうものを阻害するだけでなんら良い話は無い、という事を認識して頂いて、YCC脳から脱却すべきだと思うのですが、まあこれに関しては日銀よりも市場の方がYCC脳のクレクレコジキムーブになっているのを自覚してるのかしてないのか知らんけど、見ていてお前それ市場の人間として言ってて恥ずかしくないのってツッコミをしたくなるようなコジキムーブなご意見が聞かれたりするのは非常に見苦しいと申しますか市場の恥だから市場から退場して頂きたいもんですわ、とあらぬ方面に砲撃するアタクシwww
まあそれは兎も角、輪番に関する意見の最初のについては、なんか若干微妙な気もしますけれども、別に意見として市場の短期的な意見にリアクティブに行動しろと言っている訳ではなさそうに見えますので、その意味ではこの「主な意見」を見る限りにおいて、日銀サイドのほうで今回の輪番の中間評価で変なYCCチックなムーブをしなさそうに見える(個人の願望入りです)のは結構なことだと思いました。
まあ超長期の需給がどうのこうのという問題ですが、それは日銀にケツ持ちをさせるという発想がQQEデフレ脳だし、大体からしてそれは財政ファイナンス脳なのでありまして、市場が消化できないレベルで国債発行しているんだったら、お値段が安くなる(金利が上昇する)ことによってしか解決できない訳で、それで発行コストが上がるのが嫌なら発行を減額して短期化するしかなくて、そんなの全部発行当局が何とかしろ案件ですわな。って最近の論調をチラ見すると輪番をどうしろというのではなくて市場の方でも発行サイドが何とかする話じゃろ、ってのが主流になっているようには見えますけど(個人の感想です)。
・しかし「冷静さを欠いて過度な悲観のハトハト音頭を直ぐに踊りだす」というのは・・・・・・・
とまあそんなところで「主な意見」の鑑賞なのですが、これ4月展望レートおよびその後のハトハトチキン音頭満艦飾の植田総裁会見と比較しますと冷静、というかハトハトチキン音頭を「過度な悲観に陥って冷静さを欠いて」踊っていた連中がいて、あまりにもそのハトハトチキン音頭がやかましいのでそれに引っ張られてあんなもんが出てきた、ということではあろうかと存じます。
とはいえ、展望レポート基本的見解(全文でもいいけど)の物価見通しは25年度下振れ6名、26年度下振れ5名(しかも下振れの5名が弱い数字を出している)ということなので、単にハトハトチキン音頭を上の方が踊っていただけではなくて、「過度な悲観に陥って冷静さを欠いて」一緒になって踊ったアホウがいるという事でもありますので、まあこの内容が思ったほどのハトハトチキンじゃなかったからといって安心できるもんでもないな、という感じですわ。
つまりですね、二つの相反する懸念があって、その1としては「こいつら結局隙あらばハトハトチキンじゃん」というのがまあ懸念される訳で、紙に書くと冷静な意見言ってるのに何であの展望レポートのリスクバランスチャートになるんだよ、ってなもんでして、まあ結局根はハトハトチキンなんだろうな、っていう懸念があるのですが、さらに問題だと思われる懸念その2は、「こいつら雰囲気でいきなり極端にドテンしやがるんじゃねえか」って話でして、いやまあこれまでもマイナス金利解除からこの方、毎度毎度ドテンドテンを繰り返すジャガーチェンジおじさんおばさんの集団だった、というのが植田日銀の得意技だったのですけれども、今回なんてもう「雰囲気で一気に弱気化した」としか見えないようなできあがりの展望レポート基本的見解を出してきている訳でして、逆に言えば雰囲気で一気にまたドテンしてくるかもしれない、という事でありますので、兎に角植田日銀は安定性に欠くとしか言いようが無いな、というのはまあ今更言われんでも分かっとるわというのはありますが、それにしてもまあひでえなと思うのでした。
と言ったところで今朝は時間の関係でこの辺で勘弁していただきとう存じます。
2025/05/13
〇展望レポート全文のBOXを鑑賞する企画(たぶん時間が足りないのでその1)
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2504b.pdf
経済・物価情勢の展望
2025 年 4 月
背景説明を含む全文、ってのの最後に毎度のようにBOXってのがあるのですが、今回のお題は・・・・
(BOX1)各国の通商政策の動きとその影響
(BOX2)わが国における生産性の動向
(BOX3)労働需給と労働者の企業間移動
(BOX4)最近の賃上げと価格転嫁を巡る動向
となっていまして、通商政策に関してのお話は1本で残りが労働市場に関連する話になっている、という構成になっておりまして、でまあ1月展望のBOXを思い出していただければわかりますが、今回についても労働市場について言及している部分についてはエライ勢いでポジティブな話が並んでいるのよこれが。
ということでざっと読んで今回視点として一番味わいがあったような気がするのが『(BOX3)労働需給と労働者の企業間移動
』なので今朝は(時間の関係上)こちらの鑑賞でも。
『(BOX3)労働需給と労働者の企業間移動 』から参ります。
・まずは人手不足ですよと言う話から入りますが
『本BOXでは、労働需給が引き締まり傾向を強めるもとでの労働者の企業間移動の動向を点検する。』
ということで、
『まず、短観の雇用人員判断DIの「ヒートマップ」をみると28、人手不足感の強い状態が、大企業、中小企業ともに、幅広い業種で継続していることが確認できる(図表
B3-1)。』
さよですな。
『正社員とパートに分けて人手不足感をみると(図表 B3-2、B3-3)、最近は、パートに比べ、長期雇用を前提とする正社員の労働需給の方が、引き締まり度合いが強くなっており、人手不足の長期化を予想した企業による労働需要の強さが窺われる29。』
(労働者的に)イイハナシダナー
・でもって人手不足の規模は何と平成バブル期並みとな
『前回の展望レポートでは、労働経済動向調査の欠員率(=未充足求人数/常用労働者数)を用いたUV分析を行い、失業率の動きを、構造的な変動と循環的な変動に識別することを試みた(図表B3-4@)30。』
次のページに『図表B3-4:失業率ギャップ』ってのがあって、『@構造失業率』ってのがありましてその数値があるんですが、これもっと昔からの時系列も見たいです(2002〜なので)。
『これと同じ手法で推計した失業率ギャップ(実際の失業率と構造失業率の乖離)をみると、労働需給の引き締まりは、足もとで一段と強まっており、その程度は
1980 年代後半のバブル期をも上回っている(図表B3-4A)。』
でもって『図表B3-4:失業率ギャップ』の『A失業率ギャップ』だと1983年からの数字があるので@も長期時系列出せるじゃろと思いましたが、失業率ギャップはそこそこ結構なマイナスになっています。
『これには、@労働需要の増加を受けた実際の失業率の低下傾向に加えて、A近年の転職市場の拡大に伴う自発的離職の増加が、構造失業率を押し上げる方向に作用していることも影響している。』
ということですが、ただこの分析若干ツッコミどころがあって、足元確かに80年代最後のバブルよりも労働需給が引き締まっているのですが、実は図表B3-4Aを見ますと(グラフのメモリが細かくないから目の子でざっくり見た感じだと)2015年あたり位から既に労働需給が顕著に引き締まった状態で平成バブル並みに引き締まっている訳で、じゃあ何で今とその時代が違うんじゃというのは説明が欲しいなとは思います。
で、まあこの先に一応説明らしきものがあって・・・・・・
・転職市場の活発化による効果があるとのお話でして
『実際、転職市場をみると、中途採用の比率が上昇傾向にあるなど、労働者の企業間移動は近年、活発化してきているとみられる。さらに、転職によって賃金が上昇した人の割合も、足もとでは既往最高水準まで上昇しており、企業が人材確保のため、中途採用者に対する賃上げを積極化している姿が窺われる。』
マジかワシいや何でもありません(自爆)
『こうしたもとで、賃金上昇を伴う転職割合は、2010 年代初頭には 25%であったが、2024
年には 35%まで高まっている31。』
賃金上昇を伴わない転職が65%なのか、と思っちゃいましたがそれはさておき、この先が本稿のメインイベントになります、すなわち・・・・・
・賃金の上昇トレンドが起きることによって企業間の優勝劣敗が起きてマクロ的に効率化が進むというお話
『こうした転職市場を通じた労働者の企業間移動について、企業側からみると、近年は、生産性の高い企業が雇用者数を増加させている一方、生産性の低い企業は雇用者数を減少させている(図表B3-5)。』
キタコレ!
『このことは、企業間の生産性水準の違いが、賃金水準の差につながり、ひいては新規に雇用できる労働者数の差をもたらしている可能性を示唆している。』
ほう!
『こうした動きを、労働者側からみると、現在勤めている企業の年収や実質賃金期待が低い場合、当該労働者は転職を選択する可能性が高くなることも分析を通じて確認されている32』
ほっほーーーーー
ちなみにこの脚注32は
『32 リクルートワークス研究所が集計している「全国就業実態パネル調査」の個票データを用いて、転職意向の決定要因を推計したところ、現在の年収が業種平均対比で低いと転職意向が高くなるほか、インフレ期待が高いと実質賃金期待が低いこともあり、転職意向の確率を有意に押し上げることが
確認された。』
>インフレ期待が高いと実質賃金期待が低いこともあり、転職意向の確率を有意に押し上げる
>インフレ期待が高いと実質賃金期待が低いこともあり、転職意向の確率を有意に押し上げる
>インフレ期待が高いと実質賃金期待が低いこともあり、転職意向の確率を有意に押し上げる
・・・・・なんか話が(日銀的に)うますぎる気がしますので、ここら辺はちょっとお手盛りモリモリモリタウンと化しているような気がしますが、なんか美しいまとめ方をしていまして、
『このように、マクロ的に労働需給が一段と引き締まるもとで、賃金水準のばらつきの拡大は、転職市場を通じた労働者の企業間移動を促しているように窺われる。』
という結論になっていますけど、これ途中のところでさらっと書いているからオブラートにやや包まれていますけど、さっきの「このことは、企業間の生産性水準の違いが、賃金水準の差につながり、ひいては新規に雇用できる労働者数の差をもたらしている可能性を示唆している。」ってのが重要ポイントで、つまりは労働者の移動がインフレ期待の高まりにより促進されることによって、労働力が生産性の低い企業に固定されることなく、マクロ的に見た場合の生産性向上に資する、ってエライまた美しいストーリーを描いている訳でして、お気持ち物価の話とかベースラインシナリオあっさり引き下げとかの話とはだいぶ違った威勢の良いコラムになっている、というのが見て取れると思います。
他のBOXについては追々ということで今朝はこの辺で勘弁してつかあさい。
2025/05/09
お題「3月MPM議事要旨:これだけ威勢の良い話をしていたのに何で4月にああなったんでしょうかねえ・・・・・」
https://jp.reuters.com/business/P6VGX2OLAFN3VI4O2C7JRHBBNU-2025-05-08/
米、対中関税を最低50%に引き下げる計画検討 来週実施も=報道
ロイター編集
2025年5月9日午前 5:04 GMT+9
『[8日 ロイター] - トランプ米政権は、計145%の対中関税を最低50%まで引き下げることを検討しており、早ければ来週にも実施される可能性がある。米紙ニューヨーク・ポストが8日、関係筋の情報として報じた。』(上記URL先より)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-05-08/SVY6YWDWX2PS00
トランプ氏、英国との貿易協定合意を発表−詳細は交渉継続
Josh Wingrove、Hadriana Lowenkron、Alex Morales、Jennifer A Dlouhy
2025年5月9日 0:13 JST 更新日時 2025年5月9日 1:49 JST
『トランプ氏は、今週末に開始する中国との貿易交渉についても、「中身のあるものになると思う」と述べ、目に見える進展が得られるとの見通しを示した。中国側に譲歩する意向があると予測し、大きく前進すれば、同国への関税引き下げを検討する可能性もあるという。
関税引き下げの可能性について問われると、トランプ氏は「あり得る」と答えた。「様子を見るつもりだ。現在は145%で、これ以上は上がりようがない。従って、下がるのは確かだ。われわれは非常に良好な関係を築けると思う」と語った。』(上記URL先より)
って言う事ですが英国との合意だって結局やってること因縁つけてタカリをしているチンピラゴロツキのお作法以外の何物でもない訳で米国が無法者国家になってしまうのは残念な話です。
〇3月会合議事要旨:4月展望で振り切る「前」の話を普通に載せているので次回がちょっと楽しみだったり
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2025/g250319.pdf
政策委員会 金融政策決定会合 議事要旨
(2025年3月18、19日開催分)
ご案内の通りでトラ公のせいで先行き訳わからん(マクラにある話のようにそもそも先行き何が出てくるのかも分からんわな)ところなので、じゃあその前段階の3月はどうでしたか、って話になるのですが、4月にベースラインシナリオを下げる、という他の中銀がまだ様子見とか言ってる中で画期的なフォワードルッキング(笑)をカマしてきた日銀ちゃん、さぞかし3月も警戒を怠っていなかったのかと思いますと、そこにはナンジャソラな光景が待っておりました、ってのが今回の3月議事要旨のキモかなと思いました。
ということで『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』からちょいちょいと拝読して参ります。
・雇用所得環境に関してこれでもかとばかりに強い話を延々と並べているのが不思議ちゃんではある
途中からになりますが、雇用所得環境。
『雇用・所得環境について、委員は、緩やかに改善しているとの見方を共有した。また、委員は、連合による春季労使交渉の第1回回答集計結果は、本年もしっかりとした賃上げが実施されるという1月会合時点の見方に沿ったものとの認識を共有した。』
からいきなりの出オチで、
『そのうえで、何人かの委員は、現時点で明らかとなっている賃上げ率は、事前に想定していた範囲の中では、高めの水準となっていると述べた。また、何人かの委員は、大企業だけではなく、相対的に規模の小さい企業でも賃上げ率が高めとなっており、賃上げの裾野が広がっていることが窺われると指摘した。』
とまあエライ威勢の良い話(まー実際問題として(除くワイの財布orz)威勢が良かった訳ですが)で始まりまして、
『このうちのある委員は、今回の賃上げ率の前年からの上振れ幅が大企業よりも中小企業の方が大きいことを指摘したうえで、2022
年以降の価格転嫁の進捗と同様に、賃上げについても、大企業が先行し、それを中小企業が追いかける展開となっていると付け加えた。』
でですね、
『こうした中、多くの委員は、賃金上昇の持続性が次第に高まっているとの認識を示した。』
という認識と共にさらに、
『複数の委員は、今後の毎月勤労統計等を確認していく必要はあるが、2%の「物価安定の目標」と整合的な賃金上昇が定着しつつあるとの認識を示した。』
でもって、
『この点に関し、一人の委員は、人手不足という構造的な変化が進むもと、労使双方で、物価上昇を賃金に反映する必要があるとの認識が広がってきていると付け加えた。』
とまあ3月会合でこれだけイキリ散らかしていた訳ですよ、全員の意見じゃないとは言え、議事要旨でここまでスペース取ってああでもないこうでもないと景気のいい話を並べ立てるんですから、これは少なくとも議事要旨を作っている編集(すなわち大本営の事務方)としても、こういう意見が強かった、ということをお示ししましょう、ってことになっている筈なんですよね。
でまあここまで威勢の良いイキリ散らかしモードだったのに、今回の展望レポートでは「所得から支出への前向きの循環メカニズム」を削除してしまっている、というのは飛んでもない勢いでのジャガーチェンジ、って話になるわけでして、逆に言えば4月(5月)に突如の腰砕けになった背景は何ぞね、ってのが非常に気になるわけですよ。その背景が何なのかがある程度わかれば、背景に変化が生じたらまた再度のジャガーチェンジもありうるで、となるわけですから。
でもってその続きですが、
『複数の委員は、人手不足感が強いことに加え、企業収益が好調なことも、賃上げの背景にあると指摘した。』
まあ一つあるのは「企業収益」のところでして、4月展望の基本的見解では、既に確認した通りですが、関税政策の影響について海外経済の減速と企業収益の下押し、というのを強調していましたので、企業収益が下押しされるから賃金が上がりにくくなる、というストーリーだと思うんですよね。
でまあそれはそれで理屈はその場では完結するのですが、だったら1月展望で言ってた「この間、女性や高齢者による労働参加の増加ペースの鈍化もあって、労働需給はマクロ的な需給ギャップ以上に引き締まっている。こうしたもと、多くの業種で企業が労働の供給制約に直面しつつある状況を踏まえると、マクロ的な需給ギャップが示唆する以上に、賃金や物価には上昇圧力がかかるとみられる。」(というのは1月展望の基本的見解の4pにあります)って認識はどこに逝ったんだよ、というのは先日来申し上げている通りであります。
まあ何ですな、日銀って特に最近の黒田末期からこの方そうなのですが、政策運営に対しての理屈を良く言えば丁寧に作り過ぎでして、その結果政策が変わると過去説明していた丁寧なつくりの理屈との整合性が取れなくなるのでシレっと新しい理屈をこれまた堅牢に構築してしまう、という傾向が強くて、結果的にはどこからモウロクジジイの関税政策みたいに「お前さっきまで言ってたことと違うじゃねえか」という話になる訳で、なんも考えていない(知らんけどそうとしか見えない)モウロクジジイの耄碌理論と結果的に同じことになってませんかねえ、って残念に思ってしまいます次第ではありますな、うんうん。
・・・・・しまった話が逸れたので元に戻してさっきの続き。
『この間、別のある委員は、人材のスキルや地域のミスマッチが拡大しており、企業間での賃金格差も広がっているとみられる点は丁寧にみていく必要があると述べた。』
『また、一人の委員は、法人企業統計をみると、雇用の7割を占める中小企業では、賃金が増加する一方、設備投資は2年連続で減少していると指摘した。そのうえで、この委員は、中小企業では、労働分配率が高い中、防衛的賃上げと設備投資の両立は難しい状況が窺われるとの見方を示し、賃上げモメンタムの定着には、中小企業の生産性を向上させる設備投資ともう一回り大きくなる構造改革が鍵となる
と指摘した。』
最後のは多分中村審議委員だと思いますが、まあこの辺りの話ってのはそれはまあ個別で見るとそういう話になるというのはその通りなのですが、2024年12月の黒田総裁(当時)の経団連での「2%への招待状」講演の結びの部分に、
「要するに今の過渡期的な状況を利用するかどうかは、早い者勝ちの面があるということです。デフレのもとでの「縮小均衡」の経済と、2%の物価上昇のもとでの「拡大均衡」の経済とでは、企業を取り巻く環境は全く異なります。企業経営のルールブックが変わるということです。進化論を唱えたダーウィンは、「生き残るのは、強い生き物ではなく、変化に対応できる生き物だ」と言ったと伝えられています。いち早く環境変化を先取りし、「拡大均衡」の経済に対応できた企業こそが競争の「勝者」となり、新しい時代における繁栄を享受できることになるのだと思います。」(2014年12月25日黒田総裁講演より)
ってなっていた訳で、そもそも論として2%物価安定目標が達成されている世界というのは、自分の被雇用スキルを時代に即して変化させることができない個人や、生産性を引き上げることができない企業は「拡大均衡」の経済の中で取り残されていくのは必然ですよ、っていう世界を含意している筈で、そういうのを目標にして政策やるって息巻いて黒田緩和以降の政策をぶっこんでいるのに、それが実現する段になって「変化できないで取り残される者」に対してどうのこうのだから、みたいな話をするのはおめーそりゃ話が違うじゃろ、としか申し上げようがないんだが、また余談になってしまいましたなすいませんすいません。
・物価の話ですがこちらも何だろねってのがちょいちょい見受けられますが
『物価面について、委員は、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響は減衰してきているものの、賃金上昇等を受けたサービス価格の緩やかな上昇が続くもとで、足もとは3%台前半となっているとの認識で一致した。また、予想物価上昇率について、委員は、緩やかに上昇しているとの評価で一致した。』
まあこれは良いとしまして、
『そのうえで、何人かの委員は、足もとの物価上昇率は見通しの範囲内にあるものの、米を含む食料品価格の上昇から、幾分上振れて推移しているとの認識を示した。』
という認識だったのですよね。でもって
『多くの委員は、こうした食料品価格の上昇は、天候など一時的な要因による部分が大きいが、供給力の持続的な低下や人件費・輸送費の上昇などが影響している面もあるほか、食料品価格の上昇が予想物価上昇率を押し上げ、基調的な物価上昇率に影響する可能性もあるとの見解を示した。』
えーっと、3月会合では「多くの委員」がこういう認識をしめしていたのに、何で4月になって物価見通しが下方修正された上にリスクも下振れリスクが大きい、っていう認識にひっくり返ったんですか、というお話でありまして、お前らどんだけ情緒不安定なんだよと小一時間問い詰めたいし、今回の展望レポートの物価のリスク要因のところでは、
「この間、このところの米などの食料品価格上昇については、それ自体は天候要因等を背景とするものだとしても」(4月展望レポート基本的見解6ページ)
っていうあっさり味で天候要因(なのでこの後下がる、って含意)というのだけにしていて、いやお前らどっちなんだよというお話ではありまして、この辺の認識がどうワープしたのか、というのも非常にイミフなところではありまして、4月議事要旨でどんな話に変化しているのかを見るのが楽しみで6月会合が待ち遠しいという所ではあります。
てなイヤミはさておきまして続きですが、
『このうちの一人の委員は、1月の総合ベースの消費者物価指数の上昇率の過半はエネルギー、生鮮食品、穀類によるものと指摘したうえで、生鮮食品、穀類の上昇は主に供給ショックと位置付けられるが、持続性がありうるため、予想物価上昇率などへの波及を注視すべきとの見方を示した。』
『また、別の一人の委員は、企業の価格設定行動が変化するもと、これまで動きの鈍かったサプライチェーンの川下でも、コスト転嫁がされやすくなっていると指摘した。』
『一方、ある委員は、賃金上昇の価格への転嫁は、企業向けサービスには明確に表れている
一方、消費者向けサービスにおいては明確ではなく、個人消費が力強さを欠く中で企業が価格転嫁に慎重になっている可能性があると指摘した。』
まあこの辺は個別の意見ですので流しまして「先行き」のパートに入ります。
・物価の先行き見通しは4月にどのように変わったのかをイヤミたらたらしながら確認するのが吉(意地悪)
『物価の先行きについて、委員は、既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響が減衰する一方、消費者物価の基調的な上昇率は、人手不足感が高まるもと、マクロ的な需給ギャップの改善に加え、賃金と物価の好循環が引き続き強まり中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくとの認識で一致した。』
ほうほうそうでしたかそうでしたか、4月にどうジャガーチェンジしたのか、その背景に何があるのか、というのを
見たいもんですなあ(棒読み)
『そのうえで、「展望レポート」の見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移するとの見方を共有した。』
トラ公の関税が出たとはいえ、まだどうなるかが見当つかないのにいきなり見通しを1年後ろ倒しにした皆さんどういう言い訳を次回出してくるのかが楽しみですな(一部は「主な意見」でも見れるかもですが)。
『ある委員は、春季労使交渉の集計結果などを踏まえると、物価は着実な上昇が見込まれる状況となっており、基調的な物価上昇率も2%に向けて順調に上昇している可能性が高いとの見方を示した。』
『一人の委員は、企業の価格転嫁に伴う価格上昇圧力はしばらく継続するとの見解を示したうえで、民間調査によれば、2025
年の食料品の価格改定の動きも再び勢いを増していると指摘した。』
まあ今回は26年度の物価見通しで上のプロットの人たちが上振れ、下のプロットの人たちが下振れをリスクとして認識しているので、この人たちは上プロット組かもしれませんので個別見解に対してはあまり悪態をつく必要ないかもしれませんw
『この点に関連し、別のある委員は、4月の期初の値上げが、とくにサービスにおいてどの程度となるか見極めていく必要があると述べた。』
あら〜〜、見極める前に物価のベースラインシナリオが下がっちゃったの〜〜〜かなちいね〜〜〜、と言ってもこの方が上振れ組なのか下振れ組なのかが分からんからまあ煽らんでおくw
・関税の影響は物価については上下双方ある、だったのに何で4月には見通し下振れになったんでちゅかねえ
でまあその続きですがリスク要因、
『経済・物価の見通しのリスク要因として、委員は、各国の通商政策等の動きやその影響を受けた海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、わが国経済・物価を巡る不確実性は引き続き高いとの認識で一致した。』
というのはまあヨロシとしまして、
『そのうえで、何人かの委員は、春季労使交渉での賃上げ率が高めとなっていることや、食料品価格が上昇していることが物価に及ぼす影響について注意する必要が
あると述べた。』
ほほう。
『他方、何人かの委員は、このところ、関税政策を含めた米国新政権の政策運営を巡る不透明感が高まっているとしたうえで、今後発表される米国の政策やそれに対する各国の対応次第では、わが国の経済・物価にも影響が及びうることに十分注意する必要があるとの見方を示した。』
まあそりゃそうですわな、ではありますがこの後が中々味わいありまして、
『これに関連して、複数の委員は、関税の導入は、経済活動を下押す要因になると考えられる一方、物価に及ぼす影響については一概には判断しにくいと指摘した。』
って認識だったのに、何で4月展望レポートで思いっきり下方向になってしまっているんですかというお話でして、結局のところ4月展望でいきなり下方修正しないでリスク認識の下方修正だけにとどめておいた方が3月からのジャガーチェンジ感が出なかった話だし、そもそもこの関税政策ってリーマンショックとかコロナショックみたいなのとはまた別の種類のショック(かどうかも現時点では分からんが)なのに、フォワードルッキングに反応するから過去との整合性がおかしくなる、ということになっている訳ですな、ナムナム。
・先行きの政策運営に関して3月は勇ましい意見が結構並んでいたんですけど・・・・・・・・
『V.金融政策運営に関する委員会の検討の概要』ですが、まあ前半の方はさらさら流して読むとしまして最後の辺りが何ともなのでそっちがアタクシ的にはメインイベントになります。
『先行きの金融政策運営について、委員は、現在の実質金利がきわめて低い水準にあることを踏まえると、経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくという基本的な考え方を共有した。そのうえで、具体的な金融政策運営については、予断をもたず、経済・物価見通しやリスク、見通しが実現する確度をアップデートしながら、適切に判断していく必要があるとの認識で一致した。』
ってのから始まる話ですが、
『何人かの委員は、前回1月の会合で政策金利を引き上げた直後であることも踏まえると、現在は、政策効果に加え、各国の通商政策等の動きやその影響を丁寧にみていくことが可能な局面にあるとの認識を示した。』
なのはまあ良いんですけどなんかこの辺りのタイミングって威勢の良い感じの情報発信があったような無かったようなw
『ある委員は、1月までの政策金利変更の影響や、このところの長期金利の変動の影響を評価するためのデータは現時点では
十分に揃っていないとしたうえで、経済活動への本格的波及とその影響の確認には時間が必要であると述べた。』
『別のある委員は、当面、米国新政権の政策とその世界経済・国際金融資本市場への影響を注視しながら、国内的には0.5%という新しい金利水準の下での経済・物価の反応を見極めていくことが適当であると指摘した。そのうえで、この委員は、これらを踏まえて、次の政策金利の引き上げを判断すべきであるとの見解を示した。』
『別の一人の委員は、米国の政策運営に起因する下方リスクは急速に高まっており、関税政策の今後の展開次第では、わが国の実体経済にまで大きな悪影響を及ぼす可能性が十分あると指摘した。そのうえで、この委員は、そうした可能性が高まった場合には、政策金利を引き上げるタイミングをより慎重に見極めることが必要となるとの見方を示した。』
『この間、別のある委員は、変革速度の非常に速い中国企業との競争激化に加えて、米国の関税政策や供給網の分断などの不確実性の高まりから、わが国経済への下押しリスクが高まっていると評価したうえで、今後、中小企業の業績・投資、賃金・物価動向などへの影響を入念に確認する必要があることから、当面は現状の政策を維持することが適当であると述べた。』
最後のは中村審議委員だと思うのですが、実質金利を低位に維持することによって中小企業の変革を遅らせてしまう、ってご認識が無いのかしら、ってのはずーっと昔から気になるところではございますわな。
でもって続きですが、ここからがイキリ散らかしパートになりましてですね、
『他方、ある委員は、不確実性が高まっているからといって常に慎重な政策対応が正当化されるわけではなく、今後の状況によっては、果断に対応することもありうるとの見解を述べた。』
抜刀斎キタコレ!
『別の一人の委員は、各国の通商政策等の影響から物価に上下双方向の不確実性がある時に、不確実だから現状維持、金融緩和を継続するということにはならないと指摘したうえで、次回会合では、@企業や家計のインフレ予想、A物価上振れリスクの顕在化、B賃上げの進展をしっかりと確認し、金融政策を判断していく必要があると述べた。』
おおおおおおお抜刀斎以外にも!
『この点に関連して、別の一人の委員は、米国経済は、減速を示す指標もあるが、雇用関連指標などは底堅いと指摘し、政策変更を急がないとのFRBの情報発信も踏まえると、日本銀行の政策の自由度は引き続き増した状況であるとの見方を示した。また、この委員は、資産価格上昇に伴う期待収益率向上から、市場参加者は、実質金利を消費者物価で捉える以上に低位に感じ、緩和効果がより強まっている可能性があると指摘したうえで、今後、来年度を視野に、過度な緩和継続期待の醸成による金融の過熱を避けることが必要になった場合には、金融緩和度合いの調整を機動的に行う必要があると述べた。』
あらこれはさらに威勢が良い、ということでもしかしたらこっちが抜刀斎かもしれませんね。
・・・・何はともあれこのパートがそこそこ字数を取りつつ結構な勢いで威勢がいい話をしておる次第でして、一方で4月展望であそこまで盛大に腰砕けになった訳ですからその間は何だったのか、というツッコミを受けるのは当たり前田のクラッカーだと思うのですが、そこを堂々と出してきた日銀大本営のスタンスってのが中々味わいがあるなと思いました。
と申しますのは、まあワイの完全なる妄想の世界線ではありますが、こういうのを思い切り強調しておくことによって、「いやー米国関税政策の影響ってビビるほどの事も無かったね〜よかったよかった」という話に一件落着、となった時に再度ジャガーチェンジできるように「私言いましたよね」ムーブとしてこの威勢の良い話のご紹介パートが浮上してくるんですよね〜。まあワイの妄想だけど。
そして次の段落もさらに威勢が良くて、この状況認識で何で4月展望があそこまで弱くなるのか、というのが甚だ疑問としか言いようが無いのですが、
・中立金利に関連した情報発信についてとかいうこれまた勇ましい議論
『委員は、今後、基調的な物価上昇率が高まっていった場合の政策運営について、どのような情報発信が適切かについて議論した。』
っていうこれまた勇ましい議論をしていたのに、4月展望であそこまで一気に青菜に塩モードになってしまうのが全く意味不明ですけれども、わざわざこのコーナーを作っているのはまあ何らかのナニがあるかもしれませんなあという所で。
『ある委員は、高水準の賃上げが実現し、「物価安定の目標」の実現が目前に迫りつつある段階にあることを踏まえると、今後は、こうした前提で情報発信する新たな局面に入るとの見方を示した。』
こりゃ強い。
『別のある委員は、次の利上げを行う局面では、基調的な物価上昇率が2%にかなり近づいていることも想定されることから、その際には、金融政策スタンスについての説明を、従来の緩和から中立へ転換させることを含めて検討していく必要があると述べた。』
とは言え0.75%じゃあクッソ緩和には変わらんじゃろと思いますけど。
『この点に関連し、何人かの委員は、中立金利を巡る不確実性を踏まえると、政策金利を引き上げていく過程において、金融政策が緩和的かどうかの評価は次第に難しくなると指摘した。』
となりまして、
『このうちの一人の委員は、中立金利の推計誤差を大きく減らす特効薬は存在しないが、引き続き推計の精度の引き上げ等に向けて努力していく必要があると述べた。』
これは総裁かな〜
『何人かの委員は、中立金利や基調的な物価上昇率はいずれも厳密に観察することができないものであることを前提としたうえで、どのような情報発信が適切か考えていく必要があるとの見解を示した。』
いやだから「基調的物価上昇率」とかいう「お気持ち物価」を便利使いするの止めれば良いだけだと思うんですけどね、とは思いました。
なお、以下の長期国債買入云々の話はまあどうでもいい話しかしていないので割愛します。
2025/05/06
お題「展望レポート基本的見解ですが見ているとやっぱり前回からの整合性が気になりますねえ」
うーん結局連休最終日の夜になってしまうま。
〇展望レポート基本的見解逐語確認(その3かつファイナル)
引き続き展望レポート基本的見解の続きで物価の見通しから参ります。
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2504a.pdf(今回4月)
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2501a.pdf(前回1月)
・CPIの見通しを下げている訳ですがその理屈は・・・・・
『(2)物価の中心的な見通し 』から参ります。
『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、2025 年度に2%台前半となったあと、2026
年度は1%台後半、2027 年度は2%程度となると予想される。』(今回4月)
『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、2024 年度に2%台後半、2025 年度に2%台半ばとなったあと、2026年度は概ね2%程度となると予想される。』(前回1月)
ということで何と引き下げですが、経済の見通しが弱くなったから下げ、ってのはまあそれはそれで理屈としては完結しているのですが、上の方でも申し上げましたように、そもそも論として1月展望の時に「物価が経済の需給ギャップにかつてよりも反応しにくくなっていて、構造的な労働供給ギャップの要因で堅調に推移する」って話をしたばっかりなのにいきなりのジャガーチェンジをしているのはお前ら前の説明との整合性をもうちょっと考えて説明してくれや、というお話ではあります。
なので以下の部分は「お前ら何で1月に言ってたことと違う理屈で勝負するのよあんたら認知に問題ありませんですかねえ」って言いたくなってしまうのですが、まあこの理屈を以下鑑賞するわけですな。
『これまで物価上昇率を押し上げてきた既往の輸入物価上昇やこのところの米などの食料品価格上昇の影響は減衰していくと考えられる。』(今回4月)
『既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響が減衰する一方、』(前回1月)
文章の都合上前回のをここでぶつ切りしますが、輸入価格云々は円安が一服したから、と言いたいんでしょうけれども今回の決定会合受けて140円くらいまで戻ってくれてたドル円ちゃん早速145円近くになっていますし、だいたいからしてコメ価格の転嫁問題だってまだまだだし、各種価格転嫁いよいよこれからも続く、としか思えないのですが、なぜか減衰することになっている、というのが不思議なんですが、たぶんこれ何とかストを捕まえても同じような話をする向きが多そうなので、過去データから語る人たちはこういう局面変化に弱くて、お前らまだデフレ脳やってるのかという感じですが、まあそこは個人の感想ですの世界なので何んともかんとも。
『この間、消費者物価の基調的な上昇率は、成長ペース鈍化などの影響を受けて伸び悩むものの、その後は、成長率が高まるもとで人手不足感が強まり、中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想され、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。』(今回4月)
『消費者物価の基調的な上昇率は、人手不足感が高まるもと、マクロ的な需給ギャップの改善に加え、賃金と物価の好循環が引き続き強まり中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想され、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。なお、2025年度にかけては、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比に対して、米価格が高水準で推移すると見込まれることや政府による施策の反動が生じることが押し上げ方向で作用すると考えられる。』(前回1月)
前回言ってた1月の押し上げって米価の高止まりは現実に続いているんだし、何でそれを引っ込めたのかが訳わからんとしか言いようが無いですよね。でまあ見通し期間が2027年3月末までから2028年3月末までに伸びているので、見通し期間の後半の開始時期が1年先送りになっているのは言うまでもありません。
・1月に言ってた上振れ要因を全部打ち返してしまうのは「経済の下振れ」
『2026年度までの見通しを前回の展望レポートにおける見通しと比較すると、2025
年度と 2026 年度は、原油価格の下落や今後の成長ペース下振れの影響などから、下振れている。』(今回4月)
『こうした見通しを前回の展望レポートにおける見通しと比較すると、2024年度と
2025 年度が、米価格の上昇に加え、このところの為替円安等に伴う輸入物価の上振れもあって、上振れている』(前回1月)
明確な輸入物価の転嫁やら米価の転嫁やらというのを押し返してドテンさせるほど経済の下押しによる物価の下げ圧力が強い、という謎結論になっています。何でお前らそこまで悲観的なの????
って話でして、潜在成長率並程度の成長が見込まれるのに、なんで1月に言ってた上振れ要因を押し返してお釣りがくる下振れ要因になるんだよ(すくなくとも潜在成長率並の成長ならば、理屈の上では基調的な物価上昇にマイナス要因にはならんじゃろ(押し上げ要因にもならんけど)というお話だと思うんだがどういう理屈でこうなるの???)と小一時間問い詰めたい。
・そもそも論として「物価安定目標達成と整合的な基調的物価」という状態には「金融政策が中立的」を自動的に含意してないとおかしいんだが
『消費者物価(除く生鮮食品)の見通しは、原油価格や政府による施策に関する前提にも依存する。』(今回4月)
『消費者物価(除く生鮮食品)の見通しは、原油価格や政府による施策に関する前提にも依存する。』(前回1月)
というのはいつものことですが、
『原油価格については、先物市場の動向などを参考に、見通し期間終盤にかけて、概ね横ばいで推移していく前提としている。』(今回4月)
『原油価格については、先物市場の動向などを参考に、見通し期間終盤にかけて緩やかに低下していく前提としている。政府によるガソリン・電気・ガス代の負担緩和策は、昨年度までの消費者物価(除く生鮮食品)の前年比を押し下げる方向に作用してきた。2024
年度と 2025 年度については、負担緩和策の段階的な縮小・終了が、前年比を押し上げる方向に作用するとみられる。』(前回1月)
この辺は特殊要因の話、ちなみに原油価格って毎回これ先物市場の価格を見て云々っていう説明になっているのですが、そもそも論として先物価格の期先限月と期近限月の間の差ってのは受渡適格品目が変わらない限りにおいては、単純に保管コストの差になるんですから(農産物の場合は供用適格銘柄の生産年が変化するので必ずしもこの限りではないが原油は基本変わらん筈)、もともと先物市場の価格を使って云々って前提を置くのも訳わからんのだが何とかならんのかこの設定は。
『エネルギー価格の変動の直接的な影響を受けない消費者物価(除く生鮮食品・エネルギー)の前年比は、既往の輸入物価上昇やこのところの米などの食料品価格上昇の影響が徐々に減衰していくことに加え、成長ペース鈍化などの影響から、いったん2%を下回ると見込まれる。その後は、成長率が高まるもとで、2%程度で推移すると考えている。』(今回4月)
『エネルギー価格の変動の直接的な影響を受けない消費者物価(除く生鮮食品・エネルギー)の前年比は、既往の輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響は徐々に減衰するものの、賃金上昇等を受けたサービス価格等の緩やかな上昇が続くほか、米価格の上昇などもあって、2%程度で推移するとみられる。』(前回1月)
ということで今回は「成長が下押しされるから物価見通しが下押し」になっているのですが、そもそも論として物価安定目標2%が達成されているのでしたら、理屈の上では経済が潜在成長率並で推移していたら物価の前年比はおおむね2%になっていないと話としておかしいのですが、今回の見通しだと経済が潜在成長率程度で推移すると物価(基調物価)が2%割り込むって説明になっていますので、まあ物価目標達成していないから、ということなんでしょうけれども、潜在成長以上の成長が続いて物価目標と整合的な水準に達する、ってのも説明としては謎オブ謎なんですよね。
つまりですね、緩和的な政策を続けていて、物価見通しが2%行くか行かないか、って状況が続いているんだったら、そもそも論としてそれはバイデフェニションで物価目標未達成(=本来なら中立的な金融政策を実施している中で2%で推移していないとおかしいから)ということになるので、見通し期間の後半に物価安定目標達成と整合的な水準、っていうのがそもそも何を言っているのかを詰めると話が結構矛盾してくるんですよ。
おまけにアクチュアルの物価の方は2%から上振れ推移で延々とやっておられるわけで、結局この人たちの言ってる「物価目標達成」というのは具体的にどういう状態なのか、というのが曖昧なまま、その曖昧な「基調的物価」で話を通しているからアタクシのような頭の悪い者にはいつまで経っても腑に落ちないんですよねえ(物価目標達成と整合的な水準に基調的な物価がいますよ(見通し期間後半のどこかでそうなる、という説明ですよね)、というときには金融政策が中立的な水準にある、というのがセットじゃないとそもそもその状態は「物価目標達成と整合的」とは言わないんじゃないか、ってことね)。
とまあメタ哲学みたいな話をこねくり回しましたが続き行きますね。
・需給ギャップの部分に対する感応度合いが弱くなっていったという話は生きているのよね
『物価の基調を規定する主たる要因について点検すると、労働や設備の稼働状況を表すマクロ的な需給ギャップは、振れを伴いつつも、改善傾向をたどっている。先行きの需給ギャップは、上記の経済の見通しのもとで、現状程度で推移したあと、見通し期間終盤にかけて、再び改善していくと予想される。この間、女性や高齢者による労働参加の増加ペースの鈍化もあって、労働需給はマクロ的な需給ギャップ以上に引き締まっている。こうしたもと、多くの業種で企業が労働の供給制約に直面しつつある状況を踏まえると、マクロ的な需給ギャップが示唆する以上に、賃金や物価には上昇圧力がかかるとみられる。』(今回4月)
『物価の基調を規定する主たる要因について点検すると、労働や設備の稼働状況を表すマクロ的な需給ギャップは、振れを伴いつつも、改善傾向をたどっている。先行きの需給ギャップは、上記の経済の見通しのもとで、見通し期間終盤にかけては、プラス幅を緩やかに拡大していくと予想される。この間、女性や高齢者による労働参加の増加ペースの鈍化もあって、労働需給はマクロ的な需給ギャップ以上に引き締まっている。こうしたもと、多くの業種で企業が労働の供給制約に直面しつつある状況を踏まえると、マクロ的な需給ギャップが示唆する以上に、賃金や物価には上昇圧力がかかるとみられる。』(前回1月)
今回は経済見通しをバチクソ下げた結果、ここの文言の中での需給ギャップの見通しに、「現状程度で推移したあと」というのが入った格好になっています。
でまあそれはそれでいいんですけど、「マクロ的な需給ギャップが示唆する以上に、賃金や物価には上昇圧力がかかるとみられる」っていうのを今回引っ込めていないんだったら、何で物価の見通しが下振れる上にリスクバランスも下になるのよという話で、話の整合性に関して違和感しかないですね。まあ最初の方から言ってますけど、今回は「先行き見通しリスクが多くてまあ普通に考えると経済に下振れリスクになるんだが、ゆうて状況が皆目見当つかないので一旦は従来シナリオを維持して警戒度を高めます」で良かったと思うのですが、ハトハトチキン音頭を踊ったが為に話の整合性が取れなくなっている感は非常に強いし、結局大したことが無かったらまたお前らベースラインシナリオを動かすのかと小一時間という所ではあります。
・適合的期待形成云々をどさくさに紛れて削除しているんだがアクチュアルの物価は上振れしとるじゃろ
『次に、中長期的な予想物価上昇率をみると、緩やかに上昇している。』(今回4月)
『次に、中長期的な予想物価上昇率をみると、緩やかに上昇している。』(前回1月)
何四半期「緩やかに上昇」って言い続けてるんでしょうかいい加減にしてください。
『先行きについては、従来より積極化している企業の賃金・価格設定行動は維持され、人件費や物流費を含むコスト上昇を販売価格に反映する動きは継続すると見込まれるものの、成長ペースの鈍化などの影響を受けて伸び悩むとみられる。』(今回4月)
という説明でその後復活するって話ですけれども、これ前回1月の見通しと比較しますとね・・・・
『短観における企業の物価全般の見通しは、緩やかに上昇している。適合的予想形成の強いわが国において、これまでの物価上昇率の高まりは、家計や企業の中長期的な予想物価上昇率の上昇をもたらしてきている。』(前回1月)
アクチュアルの物価は高止まりしているので当然「適合的予想形成の強いわが国において、これまでの物価上昇率の高まりは、家計や企業の中長期的な予想物価上昇率の上昇をもたらしてきている」という記載がありまして、何なら10月の展望でも同じ記載があったのですが、今回どさくさに紛れて削除しているんですが、「適合的期待形成でインフレ期待が上がる」っていうのは今次局面におけるキモみたいな話をしていたし、大体からして過去の大規模黒田緩和がインフレ期待に効かなかった理由も適合的期待形成にしていたんだから、この期に及んで急に適合的期待形成を引っ込めるのはインチキにも程があるじゃろ、と思いました。
適合的期待形成を引っ込めるのは今回物価見通しを下げるわ下振れリスクにするわとしたのと無縁ではないはずで、適合的期待形成の面からいったら足元物価が延々と上振れ状態になっていることは、インフレ期待を押し上げる強い要因になり得るので、あるかまだわからん景気下押し要因を打ち返してお釣りが来たっておかしくないじゃろ、という話になるので、適合的期待形成の話をすると見通しの数値との整合性がおかしくなる、という事によりましてこのような仕儀になったんじゃろうな、というのは何となく想像は付きます(個人の妄想です)。
・1月は随分と威勢よく構造的な感じの話をして期待インフレの強まりの話をしていたんですけどねえ
しかも1月の説明は上記に引き続きまして、
『企業の賃金・価格設定行動には、従来よりも積極的な動きがみられており、名目賃金ははっきりと増加している。また、賃金の上昇が続くもとで、人件費や物流費等の上昇を販売価格に反映する動きも広がってきている。』(前回1月)
と勇ましい話に加えて、
『先行きについては、労働需給が引き締まった状況が維持されるもと、企業の賃金・価格設定行動の変化が続き、予想物価上昇率は緩やかに上昇していくと考えられる。こうしたもと、物価上昇を反映した賃上げが実現するとともに、賃金上昇が販売価格に反映されていくことを通じて、賃金と物価の好循環は引き続き強まっていくとみられる。本年の春季労使交渉についても、昨年に続きしっかりとした賃上げを実施するといった声が多く聞かれている。』(前回1月)
となっていて、エライ勢いでイキリ散らかしていた訳でして、何なんですかこのジャガーチェンジは、というお話でしてどんだけお前らハトハトチキン音頭になっとるんじゃ、というお話ではあります。
でまあ今回はさっきの後に、
『その後については、成長率が高まり、労働需給の引き締まりがより明確となるもとで、積極的な企業の賃金・価格設定行動は更に広がっていき、再度、予想物価上昇率は緩やかに上昇していくと考えられる。』(今回4月)
となっていますが、前回は段落分けた状態で、
『これらの点検を踏まえると、消費者物価の基調的な上昇率は、人手不足感が高まるもと、マクロ的な需給ギャップの改善や中長期的な予想物価上昇率の高まりなどを受けて徐々に高まり、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。もっとも、こうした見通しには引き続き不確実性があり、企業の賃金・価格設定行動などを丁寧に確認していく必要がある。』(前回1月)
ということでエライ威勢が良かったのに対して、ってお話ではございました。
・リスク要因その1は通商政策
『3.経済・物価のリスク要因』の『(1)経済のリスク要因 』
『上記の中心的な経済の見通しに対する上振れないし下振れの可能性(リスク要因)としては、主に以下の点に注意が必要である。』(今回4月)
『上記の中心的な経済の見通しに対する上振れないし下振れの可能性(リスク要因)としては、主に以下の点に注意が必要である。』(前回1月)
ということで最初が通商政策。
『第1に、各国の通商政策等の動きやその影響を受けた海外の経済・物価動向である。』(今回4月)
『第1に、海外の経済・物価情勢と国際金融資本市場の動向である。』(前回1月)
『最近打ち出された各国の通商政策は、様々な経路を介して内外経済を下押しする方向に作用すると考えられる。広範な関税の導入はグローバルな貿易活動に影響を及ぼすとみられるほか、関税を含む政策の不確実性の高まりが、各国の企業や家計のコンフィデンスや国際金融資本市場に大きな影響を及ぼすと考えられる。これらの政策が内外経済に及ぼす影響やその程度については、今後の政策の帰趨にも大きく依存するため、その動向を十分に注視していく必要がある。』(今回4月)
『米国経済は堅調に推移しており、同国の政策運営を巡る不確実性は意識されているものの、国際金融資本市場は全体として落ち着いている。もっとも、こうした政策運営を巡る不確実性が、同国の経済・物価動向のみならず、世界経済や国際金融資本市場に影響を及ぼしうることについては、引き続き留意していく必要がある。また、米欧では、中央銀行による既往の利上げの影響についても、引き続き不確実性がある。』(前回1月)
まあここは前提の話が変わっていますが、過去の利上げの影響が云々がしらっと抜けていますな。
『この間、ウクライナや中東情勢等の帰趨次第では、海外経済への下押し圧力が高まる可能性がある。中国経済についても、不動産市場や労働市場における調整圧力が続くなか、政策効果も含めて、先行きの成長ペースを巡る不確実性は引き続き高いほか、通商政策の影響も相俟って、一部の財における供給能力の過剰が世界経済・物価に及ぼす影響についても注意を払う必要がある。』(今回4月)
『この間、ウクライナや中東情勢等の帰趨次第では、海外経済への下押し圧力が高まる可能性がある。中国経済についても、不動産市場や労働市場における調整圧力が続くなか、先行きの成長ペースを巡る不確実性が高いほか、一部の財における供給能力の過剰が世界経済・物価に及ぼす影響についても注意を払う必要がある。』(前回1月)
関税政策の中国経済の影響を付け加えています。まあこの辺はそうですよねという話ですけど、既に見通しを下げてしまっているので、さらに上乗せで下振れかよどんだけハトハトフォワードルッキングなんだよ、とは思ってしまいます。
・輸入物価の動向なんだが明確に「輸入物価上昇が経済に悪影響」というのを連呼しているんですが・・・・・
『第2に、輸入物価の動向である。』(今回4月)
『第2に、資源・穀物価格を中心とした輸入物価の動向である。』(前回1月)
今回「輸入価格の動向である」とぶっこんで来ましたが、この中身が結構前回と違っていまして、
『上記の各国の通商政策等の影響を受けて、グローバルに物流の混乱が生じたり、サプライチェーンの再構築などが進み、そのコストが嵩んだりするようなことがあれば、輸入物価が上昇し、国内需要を下押しする可能性がある。』(今回4月)
輸入物価上昇が国内需要の下押し圧力、って思いっきり言ってまして、それは仰せの通りなんですが、だったらお前ら円安に振るなよアホがとしか言いようが無いわけで、今回ハトハト情報発信をしてドル円が5円近く円安ドル高に振れたんだが輸入物価上昇を悪だと明確に言い切るんだったらなんでハトハトチキン満艦飾の話をする訳なのお前ら、って思いました。
でもって
『また、資源・穀物価格については、先行き、ウクライナや中東等を巡る地政学的な要因により、大幅に変動するリスクに引き続き注意が必要である。』(今回4月)
『資源・穀物価格については、先行き、ウクライナや中東等を巡る地政学的な要因により、大幅に変動するリスクに引き続き注意が必要である。』(前回1月)
というのは前回と同じで、
『中長期的には、気候変動問題への各国の対応等を巡る不確実性もきわめて高い。』(今回4月)
『中長期的には、気候変動問題への各国の対応等を巡る不確実性もきわめて高い。』(前回1月)
これも同じ。輸入物価に関してはこの後にもあって、
『また、輸入物価が大幅に上昇することがあれば、家計の生活防衛的な動きが一段と強まり、経済を下押しすることも考えられる。一方、輸入物価が下落すれば、経済が上振れる可能性もある。』(今回4月)
となっていますが、前回までは
『エネルギーや小麦など資源・穀物の輸入国であるわが国にとって、供給要因による資源・穀物価格の上昇は、海外需要の拡大や輸出の増加を伴わないため、輸入コストの増加を通じた経済への下押しの影響が大きくなる。仮に交易条件が再び悪化する場合には、企業収益や家計の実質所得を圧迫し、企業や家計の支出行動の慎重化を通じて、設備投資や個人消費が下振れるリスクがある。また、輸入物価上昇の消費者物価への転嫁が進むもとで、家計の生活防衛的な動きが一段と強まり、経済を下押しすることも考えられる。一方、資源・穀物価格が下落すれば、経済が上振れる可能性もある。』(前回1月)
ということで、前回までも輸入物価上昇自体は交易条件の悪化が経済下押し、とはなっていましたが、引用部分の頭に「供給要因による資源・穀物価格の上昇は、海外需要の拡大や輸出の増加を伴わないため、輸入コストの増加を通じた経済への下押しの影響が大きくなる」って説明があったのに対して、今回はもうその手の前提の話を取っ払ってシンプルに「輸入物価上昇はアカン」という説明になっているのはほほうと思いました。だったら円安に飛ぶような情報発信するなやとは思いますが(しつこい)。
・リスク要因その3はおおむね同じ
『第3に、やや長い目でみたリスク要因として、わが国を巡る様々な環境変化が企業や家計の中長期的な成長期待や潜在成長率に与える影響がある。』(今回4月)
『第3に、やや長い目でみたリスク要因として、わが国を巡る様々な環境変化が企業や家計の中長期的な成長期待や潜在成長率に与える影響がある。』(前回1月)
『感染症の経験や人手不足の強まり、脱炭素化に向けた取り組みや労働市場改革の進展などは、わが国の経済構造や人々の働き方を変化させるとみられる。人口動態の変化等に伴う人手不足感の強まりは、デジタル化などによる省力化投資の動きを加速させる可能性がある。一方、そうした資本と労働の代替が十分に進展しない場合には、一部の業種における供給制約によって成長率が下押しされるリスクがある。』(今回4月)
『感染症の経験や人手不足の強まり、脱炭素化に向けた取り組みや労働市場改革の進展などは、わが国の経済構造や人々の働き方を変化させるとみられる。人口動態の変化等に伴う人手不足感の強まりは、デジタル化などによる省力化投資の動きを加速させる可能性がある。一方、そうした資本と労働の代替が十分に進展しない場合には、一部の業種における供給制約によって成長率が下押しされるリスクがある。』(前回1月)
ここまで前回と同じ、資本と労働の代替が十分に進展しない場合は云々というのは具体的には「顧客ニーズはあるけど従業員足りないから設備が稼働できない」という話ですね。
『さらに、最近打ち出された各国の通商政策はグローバル化の潮流に変化を及ぼしていく可能性があり、今後の各国の政策の展開次第では、そうした変化が急速に進むことも考えられる。』(今回4月)
『さらに、地政学的リスクの高まりや貿易摩擦の強まりなどを背景に、グローバル化の潮流に変化が生じる可能性もある。』(前回1月)
これは今回のトランプを受けた文言変更。
次が『(2)物価のリスク要因 』ですね。
『以上の経済のリスク要因が顕在化した場合には、物価にも影響が及ぶと考えられる。このほか、物価固有のリスク要因としては、以下の2つに注意が必要である。』(今回4月)
『以上の経済のリスク要因が顕在化した場合には、物価にも影響が及ぶと考えられる。このほか、物価固有のリスク要因としては、以下の2つに注意が必要である。』(前回1月)
・企業の価格設定行動が成長下押しを受けて弱まるので予想物価上昇率が弱まるというのがリスクとは違和感大有りだが
『第1に、企業の賃金・価格設定行動やそれらが予想物価上昇率に与える影響である。』(今回4月)
『第1に、企業の賃金・価格設定行動である。』(前回1月)
ということなんですけど、これ期待インフレが上がるという話かと思えばさに非ず。
『企業の賃金・価格設定行動は、従来よりも積極化しており、中心的な見通しでは、成長ペースが鈍化するもとでも、こうした傾向は維持されると想定している。もっとも、今後の各国の通商政策等を巡り不透明感が高い状況が続くことがあれば、コスト削減に注力する傾向が強まる可能性がある。こうしたもと、物価上昇を賃金に反映する動きが弱まることも考えられる。』(今回4月)
『企業の賃金・価格設定行動は、従来よりも積極化しており、中心的な見通しでは、賃金と物価の好循環が引き続き強まっていくことを想定している。もっとも、中小企業を中心に賃金上昇の価格転嫁は容易ではないとの声も引き続き聞かれており、今後、輸入物価からの価格転嫁の影響が減衰していくもとで、賃金上昇分を含め、コストの販売価格への転嫁の動きが弱まることがないか注視していく必要がある。』(前回1月)
前回は「価格転嫁も賃金上昇も進んでいるけど中小企業がちと心配」「価格転嫁は本当に続くのかがちと心配」って感じのニュアンスだったのですが、どうも通商政策を受けて企業部門が収益をスクイーズさせて対応して(というのがそもそもデフレ脳であって、全部かは知らんけど普通にホイホイコスト転嫁される動きが続くじゃろ、とアタクシは思うのですけれども、まあそれは見解の相違なので何とも)対応する結果、価格があまり転嫁されずに賃上げの原資も足りなくなる、ということでメカニズム崩壊じゃんという話をしているのはちとビビった。
『一方、販売価格に賃金を反映する動きが想定以上に強まったり、先行き労働需給が引き締まった状況が続くとの見方が強まるもとで、賃金の上昇圧力が強まっていく可能性もある。こうしたもとで、中長期の予想物価上昇率の高まりを伴いつつ、賃金・物価とも上振れていくことも考えられる。』(今回4月)
『一方、販売価格に賃金を反映する動きが想定以上に強まったり、先行き労働需給が引き締まった状況が続くとの見方が強まるもとで、賃金の上昇圧力が強まっていく可能性がある。こうしたもとで、中長期の予想物価上昇率の高まりを伴いつつ、賃金・物価とも上振れていくことも考えられる。』(前回1月)
ということでこっちは同じなのですが、今回4月はおまけ文言があって、
『この間、このところの米などの食料品価格上昇については、それ自体は天候要因等を背景とするものだとしても、家計のコンフィデンスや予想物価上昇率の変化を介して、基調的な物価上昇率に二次的な影響を及ぼしうる点にも留意が必要である。』(今回4月)
って言ってるけど、お前2024年産米の作況指数101だぞ何が天候要因じゃ、ってのはさておきまして米の価格上昇などによる価格上昇に関して「家計のコンフィデンス」って入れていて、価格上昇による適合的期待形成の話の中にコンフィデンス悪化に伴う影響ってのを入れていて、どうしても物価のリスクも下振れ方向にしたいらしいというのが伝わります。
・為替の影響云々はまだ残しているのね
『第2に、今後の為替相場の変動や国際商品市況を含む輸入物価の動向、およびその国内価格への波及は、上振れ・下振れ双方の要因となる。』(今回4月)
『第2に、今後の為替相場の変動や国際商品市況の動向、およびその輸入物価や国内価格への波及は、上振れ・下振れ双方の要因となる。』(前回1月)
2番目のこちらですが、
『各国の通商政策等の展開をはじめ世界経済の先行きを巡る不確実性は高く、これが供給サイドから輸入物価を上昇させたり、為替相場や国際商品市況を大きく変動させる可能性がある。この点、企業の賃金・価格設定行動が積極化するもとで、過去と比べると、為替の変動が物価に影響を及ぼしやすくなっている面がある。』(今回4月)
『世界経済の先行き等を巡る不確実性は高く、これが国際商品市況を大きく変動させる可能性がある。また、このところ、企業の賃金・価格設定行動が積極化するもとで、過去と比べると、為替の変動が物価に影響を及ぼしやすくなっている面がある。』(前回1月)
でもって為替の影響が以前よりも大きい、かつ輸入物価上昇が経済の下振れリスクだったら、別に円高誘導しろとは言わないけど、円安を促進するような政策の「見せ方」をすること自体が経済にマイナスになるんじゃないかねえ、と思いました。
・第一の柱第二の柱は思いっきり形骸化しているから見直すべき
という訳で金融政策に参ります。『4.金融政策運営 』
『以上の経済・物価情勢について、「物価安定の目標」のもとで、2つの「柱」による点検を行い、先行きの金融政策運営の考え方を整理する5。』(今回4月)
『以上の経済・物価情勢について、「物価安定の目標」のもとで、2つの「柱」による点検を行い、先行きの金融政策運営の考え方を整理する4。』(前回1月)
ってやっていますが、そもそも論として第二の柱による点検、という意味では累積している緩和政策が出口の段階で物価高と円安を招いていること、なんてえのは思いっきり「第二の柱」に引っかかっている話の筈なんですが(よって緩和縮小はできるものはどんどんやらないといけない)、まあそういう話にはなっておりませんわなあと思うので、この点検も形式的になっているにも程があるので見直した方が良いと思います。
『まず、第1の柱、すなわち中心的な見通しについて点検すると、消費者物価の前年比は、2025
年度に2%台前半となったあと、2026 年度は1%台後半、2027 年度は2%程度となると予想される。この間、消費者物価の基調的な上昇率は、成長ペース鈍化などの影響を受けて伸び悩むものの、その後は、成長率が高まるもとで人手不足感が強まり、中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想され、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。』(今回4月)
『まず、第1の柱、すなわち中心的な見通しについて点検すると、消費者物価の前年比は、2024
年度に2%台後半、2025 年度に2%台半ばとなったあと、2026 年度は概ね2%程度となると予想される。この間、消費者物価の基調的な上昇率は、人手不足感が高まるもと、マクロ的な需給ギャップの改善に加え、賃金と物価の好循環が引き続き強まり中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想され、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。』(前回1月)
でもってこの『「物価安定の目標」と概ね整合的な水準』ってのがそもそもこの時点で政策金利が緩和的だったら整合的な水準じゃねえだろ、というのは先ほどから申し上げている通り。
『次に、第2の柱、すなわち金融政策運営の観点から重視すべきリスクについて点検する。』(今回4月)
『次に、第2の柱、すなわち金融政策運営の観点から重視すべきリスクについて点検する。』(前回1月)
でもって本来の意味でのリスクってまさに今QQEYCC政策の出口において色々と問題が発生しているじゃろ、と思うのだがそういう話は全然なくていつもの能天気な話だけである。一応引用します。
『わが国経済・物価を巡るリスクとしては様々なものがあるが、とくに各国の通商政策等の今後の展開やその影響を受けた海外の経済・物価動向を巡る不確実性はきわめて高く、その金融・為替市場やわが国経済・物価への影響については、十分注視する必要がある。リスクバランスは、経済の見通しについては、2025
年度と 2026 年度は下振れリスクの方が大きい。物価の見通しについても、2025
年度と 2026 年度は下振れリスクの方が大きい。』(今回4月)
『わが国経済・物価を巡る不確実性は上下双方向で引き続き高く、金融・為替市場の動向やそのわが国経済・物価への影響にも、十分注視する必要がある。リスクバランスは、経済の見通しについては概ね上下にバランスしている。物価の見通しについては、2024
年度と 2025 年度は上振れリスクの方が大きい。』(前回1月)
でもって、
『金融面のリスクについてみると、不動産価格の上昇ペースには引き続き留意が必要であるものの、全体としてみれば、資産市場や金融機関の与信活動には過熱感はみられていない。わが国の金融システムは、全体として安定性を維持している。また、内外の実体経済や国際金融市場が調整する状況を想定しても、わが国の金融機関が充実した資本基盤を備えていることなどを踏まえると、全体として相応の頑健性を有している。そのうえで、各国の通商政策等を巡る不確実性がきわめて高いことを踏まえると、それが様々な経路を通じて金融システムに及ぼす影響については丁寧にみていく必要がある6』(今回4月)
『金融面のリスクについてみると、株価や不動産価格の上昇ペースには引き続き留意が必要であるものの、全体としてみれば、資産市場や金融機関の与信活動には過熱感はみられていない。わが国の金融システムは、全体として安定性を維持している。また、内外の実体経済や国際金融市場が調整する状況を想定しても、わが国の金融機関が充実した資本基盤を備えていることなどを踏まえると、全体として相応の頑健性を有している。有価証券投資におけるリバランス行動などを反映して、円金利の上昇に対する金融機関の耐性も改善方向にある。より長期的な視点から金融面の不均衡について点検すると、低金利や人口減少、企業部門の貯蓄超過などによる金融機関収益への下押しが長期化した場合、金融仲介が停滞方向に向かうリスクがある。一方、こうした環境のもとでは、利回り追求行動などに起因して、金融システム面の脆弱性が高まる可能性もある。現時点では、これらのリスクは大きくないと判断しているが、先行きの動向を注視していく必要がある。』(前回1月)
金融面のリスクのうち過熱リスクに関するものをバシバシと削ってやがってこんなところでもハトハト音頭ですね・・・・
・金融政策運営に関してはハトハトオマケ文言が加わりましたとさ
『金融政策運営については、現在の実質金利がきわめて低い水準にあることを踏まえると、以上のような経済・物価の見通しが実現していくとすれば、経済・物価情勢の改善に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えている。』(今回4月)
『金融政策運営については、先行きの経済・物価・金融情勢次第であるが、現在の実質金利がきわめて低い水準にあることを踏まえると、以上のような経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えている。』(前回1月)
あれだけハトハト音頭言っておいて緩和度合い調整する気概があるようには見えませんけどねえ。
でもって今回は昨年10月とかにあったハトハトオマケ文言が追加。
『そのうえで、こうした見通しが実現していくかについては、各国の通商政策等の今後の展開やその影響を巡る不確実性がきわめて高い状況にあることを踏まえ、内外の経済・物価情勢や金融市場の動向等を丁寧に確認し、予断を持たずに判断していくことが重要と考えている。』(今回4月)
ちなみに昨年10月展望でのハトハトオマケ文言はこちら。
『そのうえで、米国をはじめとする海外経済の今後の展開や金融資本市場の動向を十分注視し、わが国の経済・物価の見通しやリスク、見通しが実現する確度に及ぼす影響を見極めていく必要がある。』(昨年10月)
何で今回は「予断を持たずに判断していくことが重要」って言ってるのかよくわからん話で、予断を持たずに判断するのが本当に大事なんだったら今回慌ててベースラインシナリオを下方修正しないで、ベースラインシナリオは今のところ維持するけれども、先行きは思いっきり不透明ですから予断を持たずに判断して行って、シナリオの下方修正も機を逃さずに行います。って言えばいいわけで、今回ベースラインシナリオを下げている時点で予断をもって見通し修正してるじゃろと思いましたwwwwwwwww
『日本銀行は、2%の「物価安定の目標」のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営していく。』(今回4月)
『日本銀行は、2%の「物価安定の目標」のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営していく。』(前回1月)
適切に運営しているとも思えませんがwwwwwww
というところで今回は全文逐語比較してしまいました、クソ長くてごめんやで。
2025/05/05
お題「というわけで展望レポート基本的見解本編に参ります(現状判断と経済の先行き見通し編)」
連休も残り1日半となりましたがいかがお過ごしでしょうか。
ということで展望レポート確認の儀の続きです。
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2504a.pdf(今回4月)
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2501a.pdf(前回1月)
〇展望レポート基本的見解:ロジック的にはベースライン下げているとしか言いようが無い
・現状認識:海外経済ってそんなに弱いデータもう出てましたっけという説はあるのだが
経済の現状認識『1.わが国の経済・物価の現状』から参ります。
『わが国の景気は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している。』(今回4月)
『わが国の景気は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している。』(前回1月)
ということで現状認識は変わっていません。
『海外経済は、各国の通商政策等の影響を受けて一部に弱めの動きもみられるが、総じてみれば緩やかに成長している。輸出や鉱工業生産は、一部に米国の関税引き上げに伴う駆け込みの動きがみられるが、基調としては横ばい圏内の動きを続けている。企業収益は改善傾向にあり、業況感は良好な水準を維持している。こうしたもとで、設備投資は緩やかな増加傾向にある。』(今回4月)
『海外経済は、総じてみれば緩やかに成長している。輸出や鉱工業生産は横ばい圏内の動きとなっている。企業収益は改善傾向にあり、業況感は良好な水準を維持している。こうしたもとで、設備投資は緩やかな増加傾向にある。』(前回1月)
海外経済のところで「一部に弱めの動きもみられるが」が入って輸出や生産には「関税の駆け込みがある」という話、企業収益と業況感は短観直後なので入っている感じですね。
・後でも出てくるんですがアクチュアルの物価上昇が宜しくない状態というのを明言してるんだよな〜
『個人消費は、物価上昇の影響などから消費者マインドに弱さがみられるものの、雇用・所得環境の改善を背景に緩やかな増加基調を維持している。住宅投資は弱めの動きとなっている。公共投資は横ばい圏内の動きとなっている。』(今回4月)
『雇用・所得環境は緩やかに改善している。個人消費は、物価上昇の影響などがみられるものの、緩やかな増加基調にある。住宅投資は弱めの動きとなっている。公共投資は横ばい圏内の動きとなっている。』(前回1月)
今回語順が謎に変わっていますが、個人消費のところで「物価上昇の影響などから消費者マインドに弱さがみられる」ってのを入れていますね。いやだからそんなにアクチュアルの物価上昇がまずいんだったら何でガバガバ緩和金融政策を継続するのかが良くわからん次第だし、円安いかせるようなハトハト情報発信をなぜ行うって思いますけどね。個人消費以外の部分も含めて基本的に言っていることは同じです。
・既往の価格転嫁の影響が減衰という文言をしらっと削除
『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比をみると、賃金上昇の販売価格への転嫁の動きが続くもとで、既往の輸入物価上昇や米などの食料品価格上昇の影響もあって、足もとでは3%台前半となっている。予想物価上昇率は、緩やかに上昇している。』(今回4月)
『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比をみると、既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響は減衰してきているものの、賃金上昇等を受けたサービス価格の緩やかな上昇が続くもとで、政府によるエネルギー負担緩和策の縮小もあって、足もとは3%程度となっている。予想物価上昇率は、緩やかに上昇している。』(前回1月)
金融環境と物価のところですが、金融環境はいつも通りですけど、物価に関しては今回「既往の輸入物価の転嫁が減衰」を外していまして、足元の物価は強い話をしているんですよね。でもなぜか今回は物価見通しが下がるという謎展開。
ということで先行き見通しですがまずは経済の見通し。
・経済見通しは「通商政策のせいで海外が下がる」が前提
『2.わが国の経済・物価の中心的な見通し2, 3 』
脚注2は金曜日に申し上げた通りですし・・・・・・・
『先行きのわが国経済を展望すると、各国の通商政策等の影響を受けて、海外経済が減速し、わが国企業の収益なども下押しされるもとで、緩和的な金融環境などが下支え要因として作用するものの、成長ペースは鈍化すると考えられる。』(今回4月)
『先行きのわが国経済を展望すると、海外経済が緩やかな成長を続けるもとで、緩和的な金融環境などを背景に、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まることから、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。こうした見通しは、前回の展望レポートにおける見通しから概ね不変である。』(前回1月)
金曜日にネタにした通りで、そもそも論として脚注2にあるように、「今後、各国間の交渉がある程度進展するほか、グローバルサプライチェーンが大きく毀損されるような状況は回避されることなどを前提に作成している。」という前提なのにもう海外が下がって企業収益も下がる、と決め打ちしていまして、ナンジャソラという感じですけれども、さらにこの部分は見どころがありますわな。
・「所得から支出への前向きの循環メカニズム」がなくなるってよく考えたら飛んでもない下方修正なんだが・・・・
ご案内の通りで、今回会見でも散々ツッコミを受けていたと思われる(と思われるというのは実はアタクシ先週木曜って月末月初だったせいもあって会見をゆっくり聞いている場合じゃなかったので、つまりは決定会合を月末月初にやるのは大迷惑ということですなw)のですが、今回皆様ご案内の通り「所得から支出への前向きの循環メカニズム」が削除されました。
循環メカニズムが壊れたんだったら政策の前提壊れたじゃろ、と言いたくなるのですが、どうも会見での説明もそうですし、今回の展望ってベースラインシナリオは下げているものの、25年度の成長率見通しを辛うじて潜在成長率並に置くとか、2027年度の経済物価見通しが何となく長期均衡っぽい数値を出しているとかいうことで、どうも「循環メカニズム」とやらが壊れたという認識ではないっぽいですな(壊れているのなら先行き政策調整どころの騒ぎではないし)。
だったら普通に考えて「所得から支出への前向きの循環メカニズム」は生きているという認識なんだから、この文言生かせておけよ、と思う訳ですが、これを外したってのは結構な下方修正を意味するんですな。
でまあこの「前向きの循環メカニズム」で思い出すのは昨年1月の展望レポートハイライトのポンチ絵をだったりする訳で。
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/highlight/ten202401.htm
展望レポート・ハイライト(2024年1月)
2番目のポンチ絵の『物価のトレンドは2%目標に向けて徐々に高まる』って奴ですが、これ出たときにアタクシ「お前ら賃金と物価の好循環を6回も確認しないと2%行かないって言うのか」と悪態をついたと思います。
でですね、日銀大本営としては、前々から言っている「賃金と物価の好循環」という痴人の夢キャッチコピーがあるんですけれども、現実の物価が上振れしていてどっからどう見ても起きているのは悪循環だし、物価高が大きな政治イシューになっているのですが、物価高対策と称して再分配やるならまだ話は分かるが、財政出動をしようという物価高促進政策をとる馬鹿どもが馬鹿踊りをして大変なことになっている今日この頃というご時世の中、呑気に「賃金と物価の好循環」とか言ってるとそのうち火炙りにされかねないから、そもそも「好循環」という言葉自体を使うのを止めよう、としているんじゃないかねえ、とアタクシは思ってしまったのですよ。
まあこの「前向きの循環メカニズム」がまた復活するかもしれませんし、何ともその辺は良くわからんけど、少なくとも「賃金と物価の好循環」とかいう寝言を言わないで済むようにするために、「循環メカニズム」みたいな文言はしばらく(何なら未来永劫)お蔵入りにしておいた方が日銀の身を守るためにもお勧めなんだけどなあ、とアタクシが勝手に思っているだけですが、もしかして大本営も「循環メカニズム」系の言葉をこのどさくさに紛れてお蔵入りにしようとしているならオモロイなと感じました(あくまでもワシの妄想)。
・前回見通しとの比較がエライ先の方にありまして、
さっき引用した部分、実は1月展望では段落分けがあって、最後の一文の
『こうした見通しは、前回の展望レポートにおける見通しから概ね不変である。』(前回1月)
は毎回の展望で「前回との比較」ということで横ばいだったり上げてたり下げてたり、というのを書いているのですけれども、今回はこの前回からの比較がエライ先の方にありまして、ここだけ順不同になりますが引用しますと、
『2026年度までの見通しを前回の展望レポートにおける見通しと比較すると、2024
年度は、個人消費を中心に幾分上振れているが、2025 年度と 2026 年度は、各国の通商政策等の影響を受けて、下振れている。』(今回4月)
24年度とか終わった話はどうでもよくて、ご案内の通りで25年度26年度の成長見通しを引きさげというベースラインシナリオ書き換えの巻となっています。
・「設備投資は構造的な投資需要で支えられる」だったのがいきなり足元の景気要因で腰砕け見通しになると
今回はご案内のように先行き見通しのところ「目先は通商問題で下押し(ただし景気後退にまではならない)けどその後元に戻ってくる」という見通しになっています。
『すなわち、輸出や生産は、海外経済の減速を背景に、弱めの動きになると見込まれる。こうした動きを受けて、企業収益も、高水準ながらも減少するとみられる。』(今回4月)
ってのが最初に来まして、
『こうしたもと、設備投資は、緩和的な金融環境が下支え要因として作用するなか、人手不足対応やデジタル関連の投資、成長分野・脱炭素化関連の研究開発投資、サプライチェーンの強靱化に向けた投資は継続されると見込まれるが、海外経済減速の影響を受けて伸び率は鈍化すると見込まれる。』(今回4月)
となっています。前回のとはだいぶ文章構成が違うので引用箇所が結構ズレてしまいますが、設備投資に関しては、
『そうしたもとで、設備投資は、緩和的な金融環境が下支えとなるなか、人手不足対応やデジタル関連の投資、成長分野・脱炭素化関連の研究開発投資、サプライチェーンの強靱化に向けた投資を含め、増加傾向を続けると考えられる。』(前回1月)
ということで、基本的な話は前回と同じだけど、海外が減速するので伸び率が鈍化する、という話になっていて、それはまあ理屈としては分かるのですが、これまでの説明って設備投資は上記の説明にあるような「構造的な投資需要に支えられる」って話だったので、循環的(かつ一時的)な要因で設備投資が鈍化する、っての何か従来の話と違くねって感じでして、従来が強すぎなのか今回が弱すぎなのか、どっちなのかねとは思いますけれども、これは植田日銀になってからの仕様だと思うのですが、とにかく政策アクションを正当化するために理屈を無駄に強気/弱気に極端に振り切ってしまう傾向があって、今回は特に前回利上げした後の展望だからその振れ方が極端に見える、というのがありますわな、と思いました(個人の感想です)。
・労働需給は逆に前回「今後の回復過程で一段と引き締まる」だったのが構造的に引き締まる話になっています
次が雇用所得ですが、
『雇用・所得環境をみると、経済の成長テンポは鈍化する中にあっても、女性や高齢者などの追加的な労働供給が見込みにくくなってくるもとで、労働需給は引き締まった状態が続くと考えられる。こうしたもと、名目賃金は、当面は本年の春季労使交渉の結果等を踏まえて高い伸び率が続くと見込まれるほか、その後も、企業収益減少の影響を受けて伸び率を幾分鈍化させつつも、増加を続ける可能性が高い。』(今回4月)
というのが今回で、前回1月は、
『家計部門をみると、雇用は増加を続けるが、これまで女性や高齢者の労働参加が相応に進んできたなかで、追加的な労働供給が見込みにくくなってくるため、その増加ペースは徐々に緩やかになっていくと考えられる。もっとも、このことは、景気回復の過程で、労働需給の引き締まりを強める方向に作用する。そのもとで、名目賃金は、物価上昇も反映する形ではっきりとした増加が続くとみられ、雇用者所得も増加を続けると予想される。』(前回1月)
となっていて、労働需給の説明って前回は「供給制約が出てきているので今後の景気回復の過程で労働需給が引き締まる」だったのですが、今回って景気に関して目先下押しって言ってるくせに、なぜか景気回復の過程云々が関係なくなってもう構造的に労働需給が引き締まります、って話になっていまして、これはこれで設備投資の先行き見通しとアプローチが違っていて整合性はどうなっているの、と思いました。これ設備投資と労働需給の説明が前回と今回で逆転しているんですよね。なんですかねえという感じですが。
まあそうしておかないと賃金の増加って絵が描きにくくなって、賃金と価格の好循環とかいう痴人の夢が実現しなくなってしまって、これまたメカニズム自体が壊れるという話になるから、って事なんでしょうけれども、ご都合主義っぽさは否めない。
・個人消費の部分でも「賃金と物価の好循環」を引っ込めるムーブ的なものを感じるんですけどね
『個人消費は、当面は物価上昇の影響を受けつつも、雇用者所得の増加が続くことなどから、緩やかな増加基調を維持するとみられる。政府によるガソリン代の負担緩和策や
2025 年度から実施される税制改正なども、個人消費を下支えすると考えられる。この間、公共投資は横ばい圏内で推移し、政府消費は、医療・介護費の趨勢的な増加を反映し、緩やかに増加していくと想定している。』(今回4月)
こちらも前回と構成が違うので前回の方がぶつ切り引用になります。
『こうしたもとで、個人消費は、当面は物価上昇の影響を受けつつも、賃金上昇率の高まりなどを背景に、緩やかな増加を続けるとみられる。政府によるガソリン代等の負担緩和策が縮小しつつも継続されることなども、当面の個人消費を下支えすると考えられる。』(前回1月)
『この間、公共投資は、横ばい圏内で推移すると想定している。政府消費については、医療・介護費の趨勢的な増加を反映し、緩やかに増加していくと想定している。』(前回1月)
さて、こちらなんですけど、前回と比較して違うのって個人消費のドライバーが前回は「賃金上昇率の高まりなどを背景に」だったのが「雇用者所得の増加が続くことなどから」になっていまして、こちら前回は個別の賃金という話だったのが、今回マクロ的に「雇用者所得」としてきましたことについては「賃金上昇と物価上昇の好循環」という痴人の夢を引っ込めるために「賃金上昇」アピールを減らしてきたんじゃないか、って邪推してみたいのですがどうでしょうかね。
・今回は「その後」バージョンがあって
今回4月は「その後」ってのがあります。
『その後については、海外経済が緩やかな成長経路に復していくもとで、わが国経済も成長率を高めていくと見込まれる。』(今回4月)
こちらは再掲になりますが前回1月の最初の部分、
『先行きのわが国経済を展望すると、海外経済が緩やかな成長を続けるもとで、緩和的な金融環境などを背景に、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まることから、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。』(前回1月)
に重なる部分です。でもってその先ですが、
『輸出や生産は、増加基調に復していくと考えられる。企業収益は内外需要の増加から改善していくとみられ、設備投資は、需要増に対応した能増投資もあって、増加傾向を続けると考えられる。雇用・所得環境をみると、人手不足感が強まるもとで名目賃金は再度伸び率を高め、個人消費は緩やかに増加していくと考えられる。』(今回4月)
『企業部門をみると、輸出や生産は、海外経済が緩やかな成長を続けるもとで、グローバルなIT関連財の回復などから、増加基調に復していくと考えられる。この間、サービス輸出であるインバウンド需要は、増加を続けると予想される。企業収益は、内外需要が緩やかに増加していくもとで、改善傾向をたどるとみられる。』(前回1月)
ちなみにインバウンドに関しては今回記載がないです、何でなのかは知らん。でもって先ほど先出しをした見通し対比があって、
・潜在成長率の話は同じですか
『この間、潜在成長率は、政府による各種の施策の後押しなどもあって、デジタル化や人的資本投資の進展による生産性の上昇、設備投資の増加による資本ストックの伸びの高まりなどを背景に、緩やかに上昇していくとみられる4。』(今回4月)
『潜在成長率は、デジタル化や人的資本投資の進展による生産性の上昇、設備投資の増加による資本ストックの伸びの高まりなどを背景に、緩やかに上昇していくとみられる3。政府による各種の施策や緩和的な金融環境は、こうした動きを後押しすると考えられる。』(前回1月)
でもってこの次が物価の話になるのですが、とりあえず本日はこの辺で、残りどどーんと明日成敗しまくろうかと思います、天気も明日は悪いみたいだしw
2025/05/03
お題「決定会合レビュー:引き続き展望レポートを拝読の巻」
ということで南関東地方は天気もよろしく絶好の行楽日和となっておりまして、これは消費が捗るわと大変に結構なことではありますが、ワイ将成敗ネタをボチボチ成敗して参りたいと思います。
話は違いますが昨日の日経さんの解説記事、例によって無課金おじさんなので中身はシランガナなのですけれども、
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODK01CSQ0R00C25A5000000/
植田日銀は「動かぬ鳥」か 米関税で「消えた」賃金と物価の好循環
編集委員 大塚節雄
日銀政策決定会合
2025年5月2日 5:00
こちらの記事ですが、題名を「動かぬ鶏」にすればよかったのに、と思いました、なおガチで中身は見ていないので読む意味があるかどうかは知らんのでよろしゅうに。
〇展望レポート基本的見解の鏡部分:昨日も申し上げましたが「何でデータもないのにここまで弱気化したのか」が・・・・
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2504a.pdf(今回4月)
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2501a.pdf(前回1月)
昨日は鏡の経済見通しのところでおもいっきりああだこうだ申し上げましたが、まあ今回の展望レポートに関してはキモはこの鏡の部分かな、ってところだと思うのでうだうだ書いたわけですが、再掲しますと、「アベイラブルなデータがなんも無いのにいきなりフォワードルッキング(と言えば聞こえがいいが)に見通し下げるとかお前ら本当にチキンというかなんというかではあるのですが、それこそ昨年12月の決定会合主な意見で「米国という面では新政権発足を確認していくのが常識的である。」とか言ってた人とか関税政策の動向がこれから確定していく訳で、何の確認もしないでベースラインシナリオを引き下げる、という行動をとることに対してどういう所感があったのか、ぜひ聞いてみたいものでありますな、あっはっは。
とまあそういう話ですが物価のところを若干時間が無いので端折り気味に書いてたな、とちょっと反省しているので再掲しながら物価のメカニズムの部分でのポイントと勝手に思っている部分を再掲しますね。
・物価見通し:基調的物価に対して1月に言ってた話はどうなってるんだよという一貫性の無さに泣いた
鏡の2ポツ目、基調的物価というピンポイントでは数値が出てこない謎の概念についてですけれども、
『この間、消費者物価の基調的な上昇率は、成長ペース鈍化などの影響を受けて伸び悩むものの、その後は、成長率が高まるもとで人手不足感が強まり、中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想され、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。』(今回4月)
『消費者物価の基調的な上昇率は、人手不足感が高まるもと、マクロ的な需給ギャップの改善に加え、賃金と物価の好循環が引き続き強まり中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想され、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。』(前回1月)
元々日銀の説明として「基調的な物価の主な決定要因は「需給ギャップ」と「期待インフレ率」です」って話をしていたのですが、1月の展望レポートでは展望レポート全文の方で詳しく背景説明がありましたが(12月の25年レビューの結果も踏まえて)、労働市場の構造的な変化が進んだ結果として、労働需給の構造的な供給不足要因が寄与するようになって、景気循環による需給ギャップに対する感応度が下がってきている、という話をしていたのですが、今回って成長見通しが確かに下方修正されたとはいえ、2025年度の成長見通しが中央値で+0.5%、すなわち「潜在成長率程度の経済成長は続ける」という見通しになっている(だから経済の見通しでの表現が「成長ペースは鈍化する」となっていて後退になっていない)のでして、いやそれで何でこんなに基調物価を下方修正する必要があるのよ、って感じな訳ですな。ちょっと昨日は時間がなくて端折ってしまったので改めて。
でまあ1月の説明との整合性が無くて今回は成長見通しに普通に反応する基調的物価の図、というのを出しているのですが、だったら何で1月にあんな認識しめしたんでしょうねえ、って感じで、兎に角黒田日銀の最終盤からこの方ずっとそうなのですが、政策アクションに対してそれを正当化する立派な理屈(もしくは屁理屈)を繰り出してくる(例えば1月展望の「需給ギャップ離れ」は追加利上げの際に「需給ギャップがマイナスなのに何で利上げするんだ」と言われる時のカウンターとしての理屈な訳ですよ)から、継続して日銀のロジック展開を見ている方としては「ロジックが全然一貫していないからまたこいつジャガーチェンジしやがった」としか見えない訳でして、それが極北とまでは言わないけれどもドイヒーな状態になると、MPMの前に出てくる日銀のお気持ち表明報道みたいなのに一々右往左往する、という事になるわけでして、折角ここもと経済指標に対して真面目に反応しようとしていた、すなわち本来の意味での市場の価格発見機能がワークしてきそうになっている中で、頼むからロジックをホイホイと翻さないで欲しいと思うのです(そうなるとまた「日銀のお気持ちリーク報道しか勝たん」になってしまうので)。
・まあ経済物価見通しを下振れさせてリスク認識を下振れリスクが大きいとなるとそりゃ円安よ
ということで展望レポート鏡の3ポツ目に進みます。
『・2026 年度までの見通しを前回の見通しと比べると、成長率については、2024
年度は幾分上振れているが、2025 年度と 2026 年度は、各国の通商政策等の影響を受けて、下振れている。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比については、2025
年度と2026 年度は、原油価格の下落や今後の成長ペース下振れの影響などから、下振れている。』(今回4月)
『・前回の見通しと比べると、成長率については概ね不変である。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比については、2024
年度と2025 年度が、米価格の上昇に加え、このところの為替円安等に伴う輸入物価の上振れもあって、上振れている。』(前回1月)
成長率下振れはまあ関税わからんから積極的な企業活動をしにくくなる、という事になるから、まあ下振れになるのはしゃあないのですが、まあ今回は物価見通しも下げてるわけで、ナンジャソラとなりますわな。
でまあ何で下がったのかは前述の通りで、経済見通しが下がったから全自動で物価見通しも下がる、という計算になっていて下がっている、って事なんでしょうが、お前ら多角的レビューと1月展望の話はどこ行ったんだ、というのはさっき申し上げた通りです。
4ポツ目はリスク要因
『・リスク要因としては様々なものがあるが、とくに、各国の通商政策等の今後の展開やその影響を受けた海外の経済・物価動向を巡る不確実性はきわめて高く、その金融・為替市場やわが国経済・物価への影響については、十分注視する必要がある。』(今回4月)
『・リスク要因をみると、海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、わが国経済・物価を巡る不確実性は引き続き高い。そのもとで、金融・為替市場の動向やそのわが国経済・物価への影響を、十分注視する必要がある。とくに、このところ、企業の賃金・価格設定行動が積極化するもとで、過去と比べると、為替の変動が物価に影響を及ぼしやすくなっている面がある。』(前回1月)
不確実性が高いのに堂々とベースラインシナリオ変更するとは何ぞこれという話はさておきまして、今回鏡の部分では「為替の変動が」云々が抜けておりまして、ありゃりゃとは思ったものの、本文には残っているのでまあそこは大きく気にしなくても良いのかなとは思いました。
5ポツ目はリスクバランスですが
『・リスクバランスをみると、経済の見通しについては、2025 年度と 2026 年度は下振れリスクの方が大きい。物価の見通しについても、2025
年度と 2026 年度は下振れリスクの方が大きい。』(今回4月)
『・リスクバランスをみると、経済の見通しについては概ね上下にバランスしている。物価の見通しについては、2024
年度と2025 年度は上振れリスクの方が大きい。』(前回1月)
ということで、経済のリスクバランス下なのはまあ良いとして、物価のリスクバランスがドテンして「下」になったのはさすがにそれは衝撃(または笑劇)でして、FRBの場合はてめえが関税掛けるんだから物価に上振れリスクなのは当然ですけど、関税に関して例えば直近のECBのステートメントでは、物価のリスクに対して「Increasing
global trade disruptions are adding more uncertainty to the outlook for
euro area inflation.」(4/17会合後のマネタリーポリシーステートメント)としていて、「分からん」というだけにとどめている(経済の下振れは物価の下振れ要因になるけど、供給制約が発生すると物価の上振れになる、ってのが関税関連の要因として説明されています、他には財政支出とか天候不順とかが上振れ要因)訳でして、そういう中で日銀が果敢に「物価は下振れリスク」とぶっこむのはそりゃ目立つじゃろ、としか言いようが無いわけですな。
・ただこの物価のリスク評価を見ますと「そもそも政策委員のスタンスが極端な割れ方をしている」と見るべきでして
でもってですね、これは基本的見解最終ページ(10p)の『政策委員の経済・物価見通しとリスク評価
』を見ますとどうなっていますかというと、特に2026年度のところが分かりやすいのですが、
2026年度の物価見通しとリスク要因
コアCPI
1.9%:1名でリスクは上振れ
1.8%:3名でリスク上振れ2名、リスク中立1名
1.7%:2名でリスク下振れ2名(ここが中央値)
1.6%:2名でリスク下振れ2名
1.4%:1名でリスクは下振れ
というのが全員の分布になっていて、お前ら全般的に何でそんなに弱いんじゃと思うのですが、まあそれはさて置きますとしましても、これ上の方の見通しを出している人がリスクは上振れ、下の方の見通しを出している人がリスクは下振れ、となっているんですよね。
ということはですね、これ恐らく何ですけど、物価の数値を上目の方で見ている人と下目の方で見ている人って、根本的に物価のシナリオが違っていて、上と下とに割と極端な割れ方をしているんじゃないかという感じがするのですよね。なんかまあ「置きシナリオ」を置かれているから大人の配慮で数字が収斂しているけれども、実際はもっとこの人たちの見通しって「上下にスプリット」なんじゃないかなと思うのですよ。
でまあこのリスク評価の表現って建付けとして上と下の数が多い方を取る、みたいな仕切りがあるらしいのですが、その結果っ今回は5対3で下振れが勝っているので、出来上がりが「物価の見通しを引き下げ、リスクバランスもドテン下振れ」というインパクトの強いものになっているんですけれども、これ上振れの面々は逆にそこそこの上振れを本来は見ていた可能性があるので、なんか編集の仕切り上仕方ないのですけれども、必要以上にハトハトメッセージの出来上がりになってしまっているようには見えますね。
ということで鏡の読み込みが終わったところで一旦アップします。続きは今日か明日か明後日かは知らんですけれどもボチボチやっていきます。
2025/05/02
お題「ハトハトサプライズキタコレでしたなこりゃまたすんつれいしました(日銀MPMレビュー)」
今回は何も方向性出さんじゃろ、と自信満々に死亡フラグを立てたらきっちりと回収してしまいましたという一級フラグ建築士クオリティに全米が泣いたwwwwwww
でまあ今日も今日とてフラグ回収のせいで時間もアレにつきまあ展望レポート詳細に関しては連休中に(気力があれば明日に)続きをしますが今日は簡単に全般的なワシの愚感想をば。
〇展望レポート全般:3か月様子見するかと思ったのだがここでベースラインシナリオを下げるとは・・・・・
政策変更も無かった(それは順当)ので展望レポートなのですが・・・・・・・・
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2504a.pdf(今回4月)
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2501a.pdf(前回1月)
今回の決定会合、5/1ではありますが展望レポートは『経済・物価情勢の展望(2025
年4月)』なので4月という表記で参りますね。
ということでまずは<概要>(いわゆる「鏡」)を見ます。1ポツから順に鑑賞。
・ベースラインシナリオをバチクソ引き下げてきまして・・・・・・・
『先行きのわが国経済を展望すると、各国の通商政策等の影響を受けて、海外経済が減速し、わが国企業の収益なども下押しされるもとで、緩和的な金融環境などが下支え要因として作用するものの、成長ペースは鈍化すると考えられる。その後については、海外経済が緩やかな成長経路に復していくもとで、成長率を高めていくと見込まれる。』(今回4月)
『先行きのわが国経済を展望すると、海外経済が緩やかな成長を続けるもとで、緩和的な金融環境などを背景に、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まることから、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。』(前回1月)
もう最初の時点でシナリオがどちゃくそ下方修正されていまして、「海外経済が緩やかな成長を続けるもとで」→「各国の通商政策等の影響を受けて、海外経済が減速し」ってありまして、さらには「わが国企業の収益なども下押しされるもとで」ってのが入っています。
でもって今回は前回と違って二段階方式の見通しになっていて、「目先」バージョンは「成長ペースは鈍化」になっていますな。ちなみに「成長ペースは鈍化」とあるのは出来上がりの成長率見通しの数字の中央値が2025年度で+1.1%→+0.5%なんですけど、潜在成長率がそのくらいということになっているから「成長ペースは鈍化」にしていると思います。
でもって「その後」ですけれども、従来のシナリオにあった「所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まることから」というのをしらっと引っ込めているんですよね。「その後」は「海外経済が緩やかな成長経路に復していくもとで」戻る、というシナリオになっています。
でまあこの文章が今回どう見ても重要ポイントになるのでさらに確認したいのですが・・・・・・・
・「関税問題はある程度穏当に収まる」という置きにも拘わらず「様子見」ではなく「ベースライン下方修正」とはこれ如何に
2pにある脚注2ですな。
『2 各国の通商政策等の今後の展開やその内外経済・物価に及ぼす影響については、不確実性がきわめて高い状態にある。』
さいですな。
『今回の展望レポートの中心的な見通しは、今後、各国間の交渉がある程度進展するほか、グローバルサプライチェーンが大きく毀損されるような状況は回避されることなどを前提に作成している。』
でまあここが今回バチクソユニークなところでして、普段のこの脚注2は
『2 各政策委員は、既に決定した政策を前提として、また、先行きの政策運営については、先行き政策金利が緩やかに上昇していくという市場の織り込みを参考にして、見通しを作成している。』(前回1月)
という風になっていまして、今回も脚注3に「各政策委員は、既に決定した政策を前提として」文言はあるので上記の部分(とこの先の部分)は今回特別記載な訳ですよ。
・・・・でですね、この前提って要するに「関税政策はまあゆうて破壊的な結果を招くようなことにはなりませんなあ」という前提を置いている、という事だと思うのですが、それだったら普通はFEDみたいに「今の我々は状況を確認する余裕のある政策ポジションにある」と言いながら「この先何が起きるかはまださっぱり分からないので現時点では予断を持たずに状況の把握に努めていく」と言いながらシナリオの変更をしないでステイ、という選択肢を取るのがまあ普通の対応で、6月なり7月なりの時点で状況をアップデートして必要ならばベースラインシナリオの引き下げをすれば良いじゃん、とまあそのようにアタクシは思っていたので、今回はこれみた瞬間にハトハトサプライズキタコレ!!!!となった訳でございますわよ。
でですね、さっきの脚注の続きですが、
『なお、今後の各国の政策の帰趨や、それを受けた各国の企業・家計の対応次第で、経済・物価の見通しが大きく変化しうる点には注意が必要である。』
ということなのですから、なおさら今回って別にベースラインシナリオ下げる必要が無かったとは思うのですが、わざわざ今回ベースラインシナリオを下げてきた、となりますとそりゃまあハトハトサプライズじゃろ、ということになりますので、為替市場ちゃんの方がさっき見たらドル円145円台まで来ておりまして、折角円安是正したというのに何やってるんだか、という感じであります。
・ここでベースラインシナリオを下げるメリットis何???
ということで今回は経済のベースラインシナリオを(出来上がりの数字はさほどではないけど)定性的にはドチャクソ下げているのですが、不確実なんだからリスク認識だけしておいて様子見しないで下げる理由ってのが結局よくわからなくて、まあ素直に考えれば通商問題を受けて一気にハトハトチキン音頭が復活してハトハトチキン音頭を踊りだすの巻、という話になるので素直に為替とか反応して毎度の円安になっている訳ですが、債券市場ちゃんの方はツイストスティープとかいうこれまた面白ムーブになっていて(ブルスティープならまあ素直なんですが)ナンジャソラという感じではあるのですが、勝手に解釈してみますと・・・・・・
まあアレですよ。この人たち昨年12月には米国の政策ガー来年度の賃金動向ガーって言ってハトハト情報発信としか思えない説明をして、その前の時点では1月遅くても3月には利上げじゃろとかいう感じだった市場の利上げ見通しをいきなり3月も怪しいんじゃないかという風に持って行ったのに、年末年始に突如のジャガーチェンジをぶっこんで1月に利上げしてしかもその後の情報発信も割と利上げ路線が順風満帆っぽい説明が続いていたわけですよ(直近を除くと)。
でもって今回だって直前まではさすがに順風満帆とは言ってないけど、米国政策を受けて一瞬でハトハトチキンになるかと思ったら意外にも(笑)粘っているから、ああこれは今回の展望は「1回パス」で行って6月か7月展望のところで必要ならば修正していくんでしょうなあ(ちょうど90日云々もあるし)とまあ思われたのですがまたまたここでハトハトジャガーチェンジをする、という傍から見たら情緒不安定と言いたくなるプレイをしておるわけですな。
でまあそういうのに何度も振り回されている(だいたいからして昨年7月の利上げだって突如マジックマッシュルームでもキメたのかというタカ転ジャガーチェンジでナンジャソラだった訳ですし)国内債券市場ちゃんとしては、「このジャガーチェンジって要するに6月7月は利上げしない、っていいたいだけなんチャウの」という疑念がぬぐいきれない、というのはあって今までのジャガーチェンジの時よりも初期反応が小さめだったんじゃないのかね、とアタクシ勝手に皆様の心中を想像したんですけどそんな感じですかしらどうっすかねえ・・・・・・・・・・
でまあそれが何より証拠には、さっき引用した脚注2にありますのを再掲しますと
『なお、今後の各国の政策の帰趨や、それを受けた各国の企業・家計の対応次第で、経済・物価の見通しが大きく変化しうる点には注意が必要である。』(再掲)
となっている訳でして、これ何かあっさり味で片付いたらどうなのよとか、そもそも関税でもろ被りする人はもちろんいるのだけど全員が直撃弾くらう話じゃねえだろとか、まあ色々とツッコミどころはある話なので、急に「やっぱり大したことないのが分かったので従来のシナリオに戻しまーす(はあと)」とか言い出して10月展望の辺りでジャガーチェンジするとか普通にやり兼ねない(何なら7月だってやり兼ねないけどさすがにそれやったら総裁記者会見の前に政策委員全員のリアルハラキリショーを横にドクター控えさせて差し上げるのでやっていただかないと落とし前というのが付かないじゃないでしょうかと存じます次第ではございますがwwwwwwww)というのも別に普通にアリエールな訳だし、これまで散々こいつらのジャガーチェンジ芸で煮え湯を飲まされているので、まあそういう意味では債券市場が普通に先物踏み踏みになりつつもどこか微妙なテイストなのもむべなるかな、という感じですな。
・これ関税の影響が思いっきり海外経済の下押しになるという前提になっているのですよね
でですね、さっきの経済見通し再掲しますと、
『先行きのわが国経済を展望すると、各国の通商政策等の影響を受けて、海外経済が減速し、わが国企業の収益なども下押しされるもとで、緩和的な金融環境などが下支え要因として作用するものの、成長ペースは鈍化すると考えられる。その後については、海外経済が緩やかな成長経路に復していくもとで、成長率を高めていくと見込まれる。』(今回4月)
良く見ますと、「海外経済が減速するから成長ペースは鈍化」するけど「その後は海外経済が成長に戻るから成長率が上がってくる」という説明になっていまして、これ関税の影響が徹頭徹尾海外発ということになっている訳ですな。
この間先般のECBは関税の影響について経済に下押しって言ってるけど大物のFEDちゃんはまだ「経済のリスクは下ですけどそこはまあ分からん」になっていて、まあFEDの場合は物価がどう見ても上振れになるので、というのはあるにしましても、そこまで決め打ちでアカンタレとしている訳でもなくて、じゃあどこが下振れ出しているかというとIMFの見通し(WEO)ですかねえという感じですよね。
でもってあまり詳細に見ていない(すいません、というか忙しくて中々ね〜)のでIMFの見通し云々の話は通り一遍の話しか分かっていないですがIMFの見通しってこれやや下方にバイアス掛けてねえか(トラ公に反省させる意味もあるし)という気がするんですが、まあとにかく日銀は今回の関税政策の影響について「海外の経済が関税政策の影響でクソ減速します」という前提を置いている点は注意が必要で、そこまで減速しないという話になったらこれまたジャガーチェンジが可能になっておりまして、ベースラインシナリオがどちゃくそ下がっているとは言え、あくまでも「海外が下がるからアカンじゃろ」になっているのが一種のエスケープクローズでして、国内の話に直接的になっていない点もジャガーチェンジができる伏線を張っている、というお話な訳ですわ。
・つまり今回の決定会合「書いてあることを素直に読めばハトハトチキン音頭満艦飾だが・・・・」
はい、ハトハトチキン音頭満艦飾になっているけど、色々とジャガーチェンジするための抜け道は用意してあるので、ジャガーチェンジには要注意、ってのがアタクシの私家版結論となっております今のところ。
・・・・しかし結局のところ、だったら従来シナリオを維持しながら「不確実性が非常に高いので今後の進展を慎重に見極めて判断します」で良かったんじゃないの、と思う訳で、こんなのまた利上げしますって話になる時に強引な説明をしてジャガーチェンジをしないと行けなくなるんだから、日銀に何のメリットありますねんという風に思うのですが、まあ辛うじてこれ交渉も始まる前から交渉の失敗を前提にしたような国難国難財政財政減税減税とか喚いている永田町方面の馬鹿集団へのアピールでもしたかったのかね、くらいしか咄嗟に思いつくメリットが無いのですが、まあその結果としてハトハト満艦飾を受けてドル円がまた145円になっててこれ連休中に円安一段と進行したらどう落とし前つけてくるのか物凄く楽しみになってきたので円安ワッショイでオナシャスとは思ってしまう今日この頃ではありますな。
・・・・という訳で何か最初の一文4行分だけで散々マイポエムを書いてしまって申し訳ない、あと鏡の部分で物価ですけれども。
・なんと物価は「経済見通しが下がるから基調的物価も伸び悩む」になっておられますな
そもそもお前ら基調的物価を持ち出して説明しているけど実際の物価上昇率の見通しを展望レポートで下方に外し続けているのは毎度毎度「ワンタイムの特殊要因」で済ませているの何ですねんという感じな訳ですがそれはさておきまして、
『物価の先行きを展望すると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、2025
年度に2%台前半となったあと、2026 年度は1%台後半、2027 年度は2%程度となると予想される。これまで物価上昇率を押し上げてきた既往の輸入物価上昇やこのところの米などの食料品価格上昇の影響は減衰していくと考えられる。』(今回4月)
『物価の先行きを展望すると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、2024
年度に2%台後半、2025 年度に2%台半ばとなったあと、2026 年度は概ね2%程度となると予想される。既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響が減衰する一方、(中間部分割愛)なお、2025
年度にかけては、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比に対して、米価格が高水準で推移すると見込まれることや政府による施策の反動が生じることが押し上げ方向で作用すると考えられる。』(前回1月)
比較のために読点のところで切って後ろの部分にワープしまいましたが、既往の輸入物価上昇とか米の上昇の影響は減衰する、とのお告げで、1月に見ていた話はしらっと抜けるという素早い対応ですけれども、米価って普通に端境期に向けて上がっているし、早場米の作付が順調ではないというニュースも一部の現象かもしれませんが流れていた気がするんですが、そういうのはリスク要因には入っているようですが(明日以降に本編のネタをやります)さっきの通商と違ってメインシナリオには入れないんですねえ(棒読み)という所ですが、
『この間、消費者物価の基調的な上昇率は、成長ペース鈍化などの影響を受けて伸び悩むものの、その後は、成長率が高まるもとで人手不足感が強まり、中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想され、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。』(今回4月)
『消費者物価の基調的な上昇率は、人手不足感が高まるもと、マクロ的な需給ギャップの改善に加え、賃金と物価の好循環が引き続き強まり中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想され、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。』(前回1月)
となっていまして、えーっと確か前回の展望レポートの時は思いっきり「労働需給ギャップ」をキーにした形で物価への影響を説明していくながれになっていて、単純に経済の成長がちょっと弱まったくらいでは物価がいきなりコケるわけではないって説明をしていた筈なのですが、今回は思いっきり「経済の見通し変化による一時的な成長鈍化(しかもマイナス成長とかじゃなくて潜在成長率並程度に落ちるだけ)が基調的な物価に影響を与えます」って説明になっていまして、お前ら前回の説明はどこに行ったんだという話なのですが、こうやって説明の理屈をホイホイと変えるから困るんですよね。しかも前回との整合性を無視すればこの説明はこの説明で完結した理屈になっているのがだいぶタチが悪いwwwww
まあそんな悪態は兎も角として、すくなくとも「目先」に関して経済の見通し下げて基調物価の見通しも下げているんですからそらまあハトハトになるじゃろということですわな。
でもって「見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。」の文言を維持するのは皆様ご案内の通りで、物価目標達成時期の見通しが後ずれしていることに他ならない(見通し期間が1年延びているから)訳で、そりゃまあ素直に読めばハトハト満艦飾になりますわな、というお話ではあります。
とまあそんなところで鏡の1ポツと2ポツだけでアタクシめの時間が無くなってしまいましたので今朝はここで勘弁してもろていただいて、気力体力残っていたら明日(すくなくとも連休前半)には記者会見とか展望全文とか含めて成敗の儀を行いたいと存じます(そうしないと連休明けはFOMCからスタートになりますからね)。なにとぞご勘弁(平伏)