決定会合議事要旨や金融経済月報などについて(2024年度下期に書いた分)

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2024/11/25「展望レポート背景説明のBOXはどう見ても「利上げの状況が整っています」ですな」
2024/11/18「展望レポートハイライトは毎度のように前回との差分を取ると訳わからんポンチ絵になりました」
2024/11/12「10月会合主な意見ですが個別イシューに関する委員の意見がレベル低くて悲しくなる」
2024/11/08「9月会合議事要旨(その2):植田体制になってから「過去を全部正しいことにする」ことによって説明が昭和温泉旅館」
2024/11/07「9月会合議事要旨(その1):なんか今回の議事要旨は文章が下手くそ」
2024/11/01「決定会合レビュー(その1):コミュニケーションは立て直して今後の政策のフリーハンドは確保」
2024/10/31「潜在成長率と賃金物価の関係という割と珍妙なペーパーも出ています」
2024/10/25「FSRによると不動産も株もレッドラインでして何で株式市場にビビったんでしょう政策の方は・・・」
2024/10/23「基調的な物価は底堅く推移しています」
2024/10/22「均衡イールドカーブの説明と「ノルム」の話には違和感しかないですね」
2024/10/21「お蔵入りした筈の均衡イールドカーブがいきなり登場(多角的レビュー)」
2024/10/15「短期市場サーベイは短国CP市場はスルーされていますなあ(しょんぼり)」
2024/10/11「生活意識アンケートもインフレモード定着の内容/企業物価指数(メモ)」
2024/10/08「さくらレポートも企業のインフレモードを示す内容」
2024/10/07「9月短観は普通に強くてこれはオントラックとしか言いようが無い」
2024/10/03「7月議事要旨の先行きの金利政策に関する話が同日の総裁会見と齟齬があるんですけどねえ(その2)」
2024/10/02「9月会合主な意見は7月会合の議論は何だったのかという振れ幅でハトハトチキン」

2024/11/25

〇1か月も経過してバチクソ今更感が強いのですが今更展望レポートのBOXを

https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2410b.pdf
経済・物価情勢の展望
2024 年 10 月

まあ今更にも程があるのですが今のうちに書いておかないと、と思ったので(汗)

展望レポートの背景説明を含む全文ですが、これを真面目に読むとそれなりに面白いのですけれども、読んでいる時間も気力もない、という方のために親切設計として最後にBOXってのがあるのですが、こちらは毒にも薬にもならないものが出てくるとか、忖度爆裂系の物が出てくるとか、意外にファンキーな物が出てくるとかいう感じで、おおむねこの3パターンに分類されますな。

でもってご案内の通りですが、展望レポートって基本的見解は政策決定会合議決事項になりますのでこれは政策委員会でオーソライズされているのですけれども、全文の方になりますと「背景説明」の部分はこれ調査統計局様謹製のスタッフペーパーになるんですが、とは言いましても普段のペーパーみたいに「日本銀行の公式見解ではありません」とは違いますのでそこはちゃんとしているし、だいたいからしてここの背景説明にある内容をベースにして基本的見解を作っている(ということになっている)のですが。

てな訳で、今回のBOXですけれども、本文35ページ、PDFの37枚目以降になるんですけれども、今回はファンキーなものが出ておられまして中々味わいがあります。

最初のは、

『(BOX1)ITサイクルの動向 』

となっていますが、もう出オチにも程がある書きっぷりになっていまして曰く、

『わが国におけるIT関連財(情報関連・半導体製造装置)の生産・輸出は、グローバルなIT関連需要の回復を背景に増加すると見込まれる(図表 B1-1)。以下では、ITサイクルの動向と先行きの持続性について分析する。』

とあって、その結論部分に飛びますと、

『推計結果をみると、世界の半導体出荷額は、今次局面では、@コロナ禍で需要が盛り上がった PC・スマホ等の買い替えサイクルが到来しつつあることに加え、A生成AI等による需要が高まっていることを背景に、中・長期循環成分が上方への転換点に差し掛かっており、こうした需要の強さは 2026 年頃まで続くことが見込まれている(図表 B1-3)。』

『同様にわが国の半導体出荷額について、推計結果をみると、世界の中・長期サイクルと比べれば、立ち上がりの時期が遅く、中・長期循環成分の上昇度合いも相対的に小さいが、先行きは需要の回復が見込まれている。』

とまあ威勢の良い話になっておりますし、

2番目のはさらに威勢が良くて、

『(BOX2)人手不足感の広がり 』

『短観の雇用人員判断DI(全規模)を長期でみると、最近の労働需給のひっ迫度合いは、歴史的にかなり高い水準にある(図表 B2-1)。』

いきなりのこれである。

『こうした労働需給のひっ迫度合いの広がりを、業種・企業規模横断的にみるため、今般、短観の雇用人員判断DIのヒートマップを作成した(図表 B2-2)。』

PDF39枚目の右の方に、『図表B2-2:労働需給ヒートマップ・短観』ってのがあって、これがもう強いのなんのというまっかっかの図になっています。

『同図表の赤は人手不足<−2 標準偏差>、白は人手過剰<+2 標準偏差>、黄色は過去平均的な水準<平均値>を示す。これをみると、@リーマンショック前の景気回復期では労働需給のひっ迫は、大企業のごく一部の業種に限られていた一方、Aコロナ禍直前の期間および直近は、人手不足感が幅広い業種・企業規模で強いことが確認できる。』

しらっと書かれていますが、コロナ無かったとしても労働需給のひっ迫からの物価上昇圧力が掛かっていた可能性があったんですな、と思いますとコストプッシュがクソ余計で、それが無ければもっと健全(というかなんというか)な物価上昇パスの世界線もあったのかもしれませんね。

『次に、正社員とパートに分けて、労働需給の状況を確認する。労働者過不足判断DIが正社員・パート別に取得可能な厚生労働省の「労働経済動向調査」を用いて、同様に、業種別・企業規模別・雇用形態別に労働需給のヒートマップを作成した。』

ほうほう。

『まず、正社員・パートの労働需給の状況を業種別にみると、最近では、パートに比べ、正社員の労働需給がひっ迫していることが分かる(図表 B2-3)。』

この図表(PDF40枚目にある)もかなりエグイですわ。

『団塊ジュニア世代の退職が今後見込まれることも相まって、企業としては正社員の採用意欲が高まっており、正社員の人手不足感が強くなっている22。』

ちょwwww団塊ジュニア世代のちょっと上のワイの扱いwwwwww

『こうした傾向は、企業規模別にみても確認することができ、相応に広がりがある大きな変化とみなすことができる(図表 B2-4)。』

構造変化ですと。

『なお、多角的レビューの一環で実施した企業行動アンケートの結果では、過去 25 年間の変化として、「賃上げをしなくても正規労働者を確保できた」状況でなくなってきていることが示唆された23。』

ほうほう。

『こうした事実を踏まえると、わが国では、正社員の人手不足感の強まりが企業のこれまでの賃金設定スタンスに変化をもたらしている可能性もある。』

人手不足感の強まりが仕事量のいやなんでもありませんが、まあとにかく労働供給不足であるという構造に変化しました、というお話でこれまたどちゃくそ威勢の良い話をしています。


さらに3つ目のBOXですが、

『(BOX3)最近のわが国における賃金と物価の関係について 』

これですけどね、

『本BOXでは、最近のわが国における賃金と物価の関係について確認する。』

という話なんですけど。

『まず、国内のインフレ圧力を示すGDPデフレーターをみると、2023年は価格転嫁が進展したことでユニット・プロフィット(UP)等を中心に高い伸びとなった(図表 B3-1)。一方、2024 年入り後は、ユニット・レーバー・コスト(ULC)を起点とした物価上昇に移行している。』

何処からどう見ても「賃金と物価の循環メカニズムに移行しています」って言ってるのと同じな訳でして、この説明ですとそもそも論として物価2%目標の達成だって普通に見えていますよというお話になっている訳で、この状況で利上げをしない方がおかしい、という話になりますので、これはかなりのファンキーなBOXですな。

『今後、賃金・物価が緩やかに上昇するもとで、UPとULCがバランスよく伸びていくと考えられる。』

マジか、ということで関連説明が入る。まずは賃金に関しては、

『次に、賃金関連の話題として、最低賃金について詳しくみると、近年は、参照されるCPIが上昇するもとで、今年度は、最低賃金の水準が相対的に低い地域での上げ幅が大きかったこともあり、前年比で+5.1%と過去最大の伸びとなった(図表B3-2@)。』

とは言いましてもそもそもCPIの原数値が10月全国の総合で109.5なのですから上がらんと死んでしまいます。

『こうしたもと、地域別の最低賃金上昇率の情報を用いて、最低賃金の引き上げがCPIサービス価格に与える影響をみると、最低賃金の引き上げは、サービス価格を有意に押し上げることが示唆される(図表 B3-2A)。』

これまたPDF41枚目の右にある『図表B3-2:最低賃金引き上げの影響』の図表がわかりやすくて良いですよ。

『今後、最低賃金の引き上げが継続すれば、サービス価格を中心に物価が押し上げられることが見込まれる。』

どう見ても物価目標達成です本当にありがとうございました。ですし、それなら中立金利まで上げないといけないからそもそも1%とかいうのも低すぎとかそういう世界で25上げるかどうかで大騒ぎしている場合じゃないんですけどねえ。

『続いて、コロナ以降の物価上昇がどのような要因で説明されるかを確認するため、CPIをエネルギー価格や食料品価格などの外生的要因とそれ以外に分解した Bernanke and Blanchard モデル26を推計した。』

ちなみにバーナンキとブランシャールはプライスレベルターゲットだのあの手のクソ緩和理屈をいろいろといってた人たちなのでアタクシは基本的にこいつら碌なもんじゃねえ、と思う程度にはドン・コーンとかアラン・ブラインダーとかそっちの信奉者ではあります。

『CPIのヒストリカル分解をみると(図表 B3-3@)、コロナ以降のインフレ率の高まりは、主として、エネルギー価格や食料品などの輸入物価上昇の価格転嫁の影響で説明できる一方、足もとにかけては、そうした外生的な要因や需給環境などでは説明しきれない部分(図表B3-3@における残差)が押し上げ方向に寄与している。』

でもってこのPDF42枚目にある『図表B3-3:物価上昇メカニズム』ってのが中々味わいがあって、この「残差」項目なんですけど、このグラフ見ますと実はこの残差項が2022年の第2四半期からプラテンしていまして、しかもこれ年度じゃなくて歴年なので(年度の場合グラフ横軸に「年度」の文字が入る)、実は4−6月期の物価からこの「残差項」の躍動が始まっているんですよね。

日銀が2022年4月の展望レポートで「コアコア上がらんし」とか言って物価目標達成はまだまだです、と言って政策修正をしない理由にしていましたが、6月7月くらいから妙に賃金推しになっていたのはまだ皆さまの記憶に新しいとは思いますが、これを見ますとああなるほどこの時点でもうコアコアも上がりだすわと思って他の言い訳としてより遅効性の高い賃金を持ち出しやがった、というのが後付けでよくわかるわけで大変に興味深い次第ではあります。

『この残差を子細にみると(図表 B3-3A)、正の賃金ショックがCPIを押し上げていることから、企業の積極的な賃金設定行動が物価を押し上げていることが示唆される。』

22年の第2四半期から正の賃金ショックがプラス寄与しています。

『今後も、過去の低インフレ期における平均的な関係性以上に賃金ショックが物価の上押しに作用していくと考えられる。』

でもってですね、このBOX3のもう一つ良いのは、今回BOXの記述はここで終わりで、結局3番だけは全文ガッツリ引用しましたけど、この中で「賃金と物価の好循環」などというようなポエム文言が無かった、という所に無茶苦茶良い味わいを感じている訳でして、そらまあちゃんとした経済学徒だったらそんなことよ―言わんわというポエム文言をきっちりと使わない、という辺りに何かちょっと日銀の中の人(というか調査統計局の中の人というか)の自我をアタクシは受信してしまいましたが、気のせいでございましょうか(^^)。

しかしまあ何ですな。為替円安に関しても円安が物価に上振れ要因になりえる(ので政策修正の理由になる)という話で7月の政策修正をしていますし、こちらは政策委員会決定事項ではないにしましても、展望レポート本文という重みのあるものできっちりと賃金の正のショックが物価に対する与える影響が大きくなっていることを示している訳でして、こういうのを並べますと、「既に政策修正をする条件は整っている」という話だし、何ならその先だって展望できますよね、というお話を堂々としているのですけれども、なんかそこをストレートに説明しないってのも微妙ではありますな、と思いながら今更ですがこの辺を確認させていただきました。クッソ前のネタで申し訳ございません(忘れていたわけでは・・・・無いことにしておいてください)。







2024/11/18

〇展望レポートハイライト:相変わらず前回との差分がおかしいんですが前回比較できないようなポンチ絵出すの止めたら??

https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/highlight/ten202410.htm
展望レポート・ハイライト(2024年10月)
経済・物価情勢の展望

前回はこちら
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/highlight/ten202407.htm


・成長見通しって横ばいでリスクもバランスだったはずなのに何でイラストが変わるんですか????

最初のポンチ絵をみた瞬間にのけぞったアタクシ。

『日本経済は成長を続ける

日本経済は、海外経済が緩やかな成長を続けるもとで、金融面からの後押しなどもあって、潜在成長率を上回る成長を続けます。』(今回)

『日本経済は成長を続ける

日本経済は、海外経済が緩やかな成長を続けるもとで、金融面からの後押しなどもあって、潜在成長率を上回る成長を続けます。』(前回7月)

ということで文言同じ。そもそも今回の展望の見通しって実質GDPの大勢見通しで2025年度のレンジが上下ともに+0.1%上方シフトして、2026年度のレンジの上限が+0.1%上方シフトしただけなのですから、まるで変わらずのオントラック、というのが今回の展望における評価になるはずなんですよ。

然るに、イラストの方がお前舐めてんのかというイラストになっていまして、7月は2026年の丘に向けてジョギングしているような感じのおねえさんの図だったのに、なぜか今回は2026年のスタンドに向けてホームランかっ飛ばせ筒香だかサトテルだか村上だか知らんけど、左打者がバックスクリーン上段に向けて弾丸ライナーをかっ飛ばしているのはさすがに人を馬鹿にしているのかと思いました。

こんなの前回と同じイラストにして、オントラックってのを強調したいなら走っているコースの「2024」とか「2025」の看板の位置を手前に持っていく(またはランナーをゴールに近くしてみる)風にすればいいだけの話で、なんも弾丸ライナーかっ飛ばすとかいう力強い絵にする必要ないだろふざけるな、というお話。

まあこんなクソくだらない小細工しているのって外野のアタクシが見ても一発で分かるのですが、「威勢の良いイラストにすることによって円安を牽制したいでちゅーーー」という小賢しい下心が発露されたもの、としか申し上げようがないのですが、そういう小賢しい事をしないで正々堂々と説明をしていただきたいのですが、「丁寧な説明」「市場との認識の齟齬が無いようにしたい」とか言いながらやるのって、「余計な文言を使って説明して結果ドツボにハマる」という流れなのは再三再四指摘しております通りですが、今回のこのポンチ絵の一発目にも全く同じ類の「余計な説明」感を受けました。


・さすがにインフレ放置批判があることに関しては意識しているようですな

次が物価だがこっちはある意味マシになっていまして、

『物価は来年度以降2%程度で推移する

消費者物価の前年比は、今年度に2%台半ばとなったあと、来年度・再来年度は概ね2%程度で推移します。この間、一時的な変動を取り除いた消費者物価の基調的な上昇率は、徐々に高まったあと、2%の「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移します。』(今回)

『物価は来年度以降2%程度で推移する

消費者物価の前年比は、今年度に2%台半ばとなったあと、来年度・再来年度は概ね2%程度で推移します。この間、一時的な変動を取り除いた消費者物価の基調的な上昇率は、徐々に高まったあと、2%の「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移します。』(前回7月)

言ってることは同じだしそもそも見通しがほぼ同じなんだから絵を一々変えるなという話ですが、こちらに関しては前回のポンチ絵が2%に向かって疾走している感のある絵柄だったのですが、今回はパラセーリング(でしたっけ)か何かで「上から2%に着陸していく」という図になっていまして、物価高放置批判も選挙結果に影響したじゃろ、という辺りへの意識が出ているのはまあマシになったなとこっちは評価して差し上げる。

まあ問題なのはこの着陸態勢に向けて「過剰な金融緩和」によって下からものすごい勢いで上昇気流を大型扇風機回しているというのが実態になっていることなんですけどねwwwwwwwwww


・以下のイラストはだいたい同じになっているんですよね

『日本経済・物価を巡る不確実性は高い

海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、日本経済・物価を巡る不確実性は引き続き高い状況です。また、金融・為替市場の動向と日本経済・物価への影響にも十分注意を払う必要があります。』(今回)

『日本経済・物価を巡る不確実性は高い

海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、日本経済・物価を巡る不確実性は引き続き高い状況です。また、金融・為替市場の動向と日本経済・物価への影響にも十分注意を払う必要があります。』(前回7月)

これイラストがほぼ同じなのですが、何で絵面を変えたのかが意味わからんw


・政策に関してもイラストは同じ

『2%目標のもとで金融政策を運営していく

金融政策運営については、先行きの経済・物価・金融情勢次第であるが、経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えています。』(今回)


『2%目標のもとで金融政策を運営していく

金融政策運営については、先行きの経済・物価・金融情勢次第であるが、経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えています。』(前回7月)

ということで、声明文に余計に入った「そのうえで、米国をはじめとする海外経済の今後の展開や金融資本市場の動向を十分注視し、わが国の経済・物価の見通しやリスク、見通しが実現する確度に及ぼす影響を見極めていく必要がある」とかいうトンチキ文言は入っていないのは結構ですが、ちなみに4月展望では、

『2%目標のもとで金融政策を運営していく

日本銀行は、2%の「物価安定の目標」のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営していきます。』(前々回4月)

となっているので、そもそもそんなに長い文言は入らない仕様になっている、というのはあるのですが、とりあえず要らんもん入らなかったので、7月の路線は同じですよ、というアピールを入れて締めたという所ですな。


今朝はこの辺で〜





2024/11/12

〇10月会合主な意見は「特になんもないじゃん」というのと「個別イシューのツッコミどころがちょっと」ですかね

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2024/opi241031.pdf
金融政策決定会合における主な意見
(2024 年 10 月 30、31 日開催分

・持続的な「実質」賃金上昇とかいう幻想の話をするのやめてもろて

『T.金融経済情勢に関する意見』のところに、

『・ 今後は、実質賃金上昇基調の定着により、個人消費も拡大基調がより明確になるのではないかと考えている。賃金上昇から消費拡大への需要側の経路、さらには賃金上昇の価格転嫁という供給側の経路が円滑に機能しているかについては、今後もよく注視する必要がある。』

は???

名目賃金上昇基調なら定着してもおかしくはないですが、何で「実質賃金上昇が定着」ってなるんですかという話だし、あんたらがそうやって「賃金と物価の好循環」っていう幻想を振りまくもんだからどこぞの迂闊な方に「実質賃金2%増の定着までは金融緩和」とか無茶苦茶なことを言われるわけでして、お前ら中央銀行はそういう無理なのを分かっているのにバラ色のユートピアな幻想を振りまくんじゃねえよ止め役だと止め役、と思う訳でして、こういう意見が出ている時点でもうお前ら腹を切って地獄の火の中に投げ込まれるべきというお話なんですけど、

その先に賃金の話があって、さすがにまあちゃんと厳しい見方もあるので安心しましたが、

『・人手不足のもと、中小企業も含めて賃上げの必要性が当然視される状況になっており、来年の賃上げ率も高水準が続くと見込まれる。』

まあこれって持続的に賃上げするにはどうするんでしょうね、という話でよりこの意見の解像度を上げた意見がありまして、

『・支店長会議では、中小企業は業績が厳しい中で人材係留目的の防衛的賃上げを行っているとの声も多く聞かれ、賃上げの持続性には懸念がある。相応の時間がかかるが、持続可能な前向きな賃上げを実施できるよう、中小企業自身も生産性を高めるための一回り大きくなる事業構造改革に取り組むことが鍵になる。』

これはまあ仰る通りでして、そう安直に「持続的な実質賃金上昇」みたいな夢みたいなことを中央銀行が安易に言うもんじゃないという話なんですが、なにせこれ黒田末期から「物価と賃金の前向きの循環メカニズム」とか言い出していたわけですよね。

どうせ当初は実際の物価が2%超えとなっている中で、馬鹿緩和政策の修正を本来はすべきところを自分の積みあげた罪がバレるのがヤバイので後任におっかぶせて本人はさっさと逃げて勲章は貰うわ私の履歴書は書くわという薄汚い所業に走る黒田総裁様のために作ったクソ屁理屈だったと推察されるのですが(あくまでも個人の妄想です)これがどんどん独り歩きして言ってしまって今や迂闊おじさんに「2%の持続的実質賃金上昇実現まで金融緩和」とかいうような怪物に成長している訳でして、頼むからこの幻想を振り払ってもらわんと碌なことにならんぞ、というか既にろくなことになっていないのですが、まあそう思うのでした。

なお、さっきの最後は何となく中村審議委員っぽいのですが。中村さんの場合は言ってることはうなずけるのですが、結論が「そのためには緩和政策を継続」になるのがいただけませんなw


・インフレ経済による新陳代謝をリスク呼ばわりするのはどう見てもデフレ脳

でまあ労働市場関係ではこんなのがあったので実質賃金云々と異なりますがちょっとネタに。

『・人手不足による労働供給の制約から、収益性の低い事業分野からの撤退に伴う企業の事業縮小などを通じて、わが国経済の成長を減速させるリスクがある。』

???????

いやインフレ経済になると企業の新陳代謝が活発化して生産性向上からの潜在成長率ひきあげに寄与するって話じゃんなんですの今更、と思いました。


・これはぶぶ漬け話法????

同じく金融経済情勢の中でこんなのが。

『・中小企業の経営者からは、円安の修正を歓迎し、「経営に影響が大きいのは金利よりも為替だ」とする声がかなり聞かれる。また、各種のアンケート調査をみると、家計も円安の修正を歓迎しているのではないか。』

・・・・・・・・・//////

9月会合の主な意見だったらまあ素直に読めますが、この意見10月末の決定会合の意見でして、円安の修正などというものはこの時点でほぼすっ飛んでいる、という状況にあるわけでして、まあ素でいまの為替相場を知らん審議委員がいるとはさすがに思えませんから、これは所謂一つの「ぶぶ漬け話法」って奴で、折角円安修正をしたのに元に戻ってるんだがどういう事や、というのをはんなりとお示しにならはった、ということでしょうかwwwwwwwwwwww

なお、ぶぶ漬け話法と言えば政策委員の中に京都府出身京都大学卒業という属性の方がおいでになったかと存じますが(日銀HPの審議委員プロフィール見て味噌)さてどうなんでしょう。


・政策の話なんだがなんか論点が妙

『U.金融政策運営に関する意見』ですけれども、

『・米国経済のハードランディングのリスクや、ソフトランディングのために大幅な利下げが必要となる可能性は、若干和らぎ、米金利上昇とドル高の動きが出てきている。もっとも、その背景には、米国経済指標の改善だけでなく、大統領選挙・議会選挙への思惑もあり、』

とまあここまでは良いんですが、なぜかこの後

『市場が安定に向かっていると評価してよいかは留保が必要である。』

って話になっているのが意味不明にもほどがるわけでして、この人この続きでは

『もともと緩やかなペースの利上げを想定している中で、大統領選挙後の状況を含め、今後の展開を見ることはできる。』

で締めているんですけれども。市場の安定云々の評価の話が何でメインで来るのかというお話でありまして、重要なのは経済物価情勢と特に物価の今後の見通しであって、市場のプライシングがどうのこうのっていうのは変な事故でも起きていない限りはファンダメンタルズに沿って動くもんだから、市場がどうのこうのの評価に重きを置いたこの意見ってお前は何を言ってるんだ状態で全く意味が分からん意見ですな。


・不確実性の高まり??

『・内外における不確実性の高まりに鑑みると、金融政策運営をより慎重に行っていく必要があることから、今回は、金融政策は現状維持で良いと考える。』

米国経済の不確実性さがってるって認識の筈ですが、政治情勢が不安定だから金融政策運営を慎重に行う、っていうのは聞こえはいいんだがそれは金融政策自体が経済物価情勢から勘案して適切な水準にある時の話であって、日銀の場合は「徐々に正常化していこう」という話をしているという時点において、今の政策が移行期間中のやむを得ない措置として強めの緩和を実施している、んじゃなかったでしたっけという話で、だったら経済情勢に不確実でもあるならともかく、そっちは改善しているんだったら「より慎重に」はおかしくないかと思いますけどね。


・この理屈では一生緩和修正ができないんですが

『・米欧のインフレ率低下や、グローバル市場での価格競争の進展の影響もあって、物価の上振れ懸念は後退している。多くの経済データにより、企業業績、設備投資、個人消費、価格転嫁率、企業による事業構造改革の動向等の実態を評価し、「賃金と物価の好循環」の持続性に対する自信が強まるまで、当面、政策金利は現状維持でよい。』

この理屈言い出したら一生緩和修正ができなくて、まあどこかで弊害が爆裂して泣きながら引き締めをしないと行けなくなってその頃には「物価の番人がインフレ起こして怪しからん」と日銀の金融政策関連は業務召し上げになる、という将来しか見えませんがw


・「徐々に金利を引き上げていく」と「中立金利はわからん」はメッセージとして複雑すぎますね

しかしまあ何ですな。

『中立金利の水準についても金融政策の波及メカニズムについても不確実性が高いので、中期的な金利パスについて自信を持って市場に示していくことは難しい。』

じゃあ最初から「徐々に金利を引き上げていく」の文言に反対しろよ、と思います。


・減額措置を積極的に利用しろってどう見ても本末転倒

『・国債先物取引におけるチーペスト銘柄の需給ひっ迫というイールドカーブ・コントロールの副作用によって、国債市場の流動性の低下や金利の歪みが懸念される。それを軽減するため、国債補完供給の減額措置をためらうことなく利用してもらえるよう、引き続き促していくことが重要である。』

いやいやいや、それ本末転倒にもほどがあるだろという話で、何が本末転倒かというと、そもそもが減額措置なんてフェイルでどうしようもない場合のお助け措置であって、常設ファシリティみたいなもんじゃないのですから、そういう目的外使用を奨励するのは筋違いなんですよね。

だったら正面から日銀保有の国債についてスイッチングオークション(例えば発行額の何%以上日銀が保有している銘柄限定で売却対象にして買入とセットのスイッチングを行うとか)をするとか、ちゃんとそういう筋を通して日銀馬鹿買入の収拾をしてほしいんですよね。

あとこれ何が本末転倒かというと、じゃあ、ということでこの方法で減額措置を皆さんがホイホイと使うようになった場合って、「輪番減額」との整合性はどうなっているのかという話になるわけでございまして、あんなにああでもないこうでもないギャーギャーやって金額を決めてそれを機械的に運用しようと言っている中で、片方の蛇口から減額措置でホイホイと国債の事実上の売却が進んでいくんだったら、何であんなに大騒ぎして輪番の話をしたんだと小一時間問い詰めたい訳でして、まあ減額措置をご自由にお使いください、というのは筋悪議論(減額措置自体の設計にも微妙に微妙なアレがあるんだがその話はさておく)でしょとしか申し上げようがなく、それならスイッチングオークションの実施を真剣に検討するのが筋ってもんだと思います。

ということで、政策の方向性に関する話はマジでどうでもよい(「主な意見で買い安心感」とか昨日ベンダーに前場出てた気がしたが意味わからん)状態で何もメッセージは無かったのですが、なんちゅうかツッコミどころはいろいろとあったなあという主な意見でした。







2024/11/08

〇9月決定会合議事要旨(その2)

昨日の続きでごわす。
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2024/g240920.pdf
政策委員会金融政策決定会合 議事要旨
(2024年9月19、20日開催分)

昨日は『V.金融政策運営に関する委員会の検討の概要』の先行きの政策運営がどうのこうの、の最初のパラグラフで時間切れになりましたのでその続きから参ります。

・「円安修正されたから時間的余裕ができた」のなら為替が元に戻ったら時間的余裕はない筈

時間的余裕云々の話が次のパラグラフになるんですけどね。

『何人かの委員は、最近の為替円安の修正に伴って、輸入物価上昇による物価上振れリスクが減少していることを踏まえると、米国をはじめとした海外経済や金融資本市場の動向が、わが国の経済・物価見通し等に及ぼす影響を見極める時間的な余裕はあると指摘した。』

もともとは円安修正が行われたから時間的余裕ができた、という説明でしたし、この会合の前後でもこういう説明になっているのですが(総裁会見や大阪講演)、直近の10月会合で時間的余裕を撤回しましたが、植田さん「時間的余裕」についてこういう説明をしているんですよね。

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2024/kk241101a.pdf
総裁記者会見
――2024年10月31日(木)午後3時30分から約65分

3ページの最終段落辺りからになりますが、植田さんの説明を再確認してみましょう。

『(答)前半ですけれども、時間的余裕という表現についてですが、やや長くなるかもしれませんが、私どもこの表現を使い始めたのは 8 月に入って以降だと思います。それで、その理由と致しましては申し上げるまでもないかと思いますが、当時の、特に米国の弱い雇用統計、予想以上に弱かった雇用統計、こうしたものに影響されまして、マーケットが非常に荒い動きになったというようなことを、非常に重要な現象だし今後の日本経済をみる際にも重要なリスクと判断しまして、ある意味他のリスク以上にここについて注意深く検討していかないといけないと、この姿勢を注意深く検討していくという意味で、時間的余裕を持ってみていくという表現で表したところでございます。』(この部分だけ直上URL先の10/31決定会合後の植田総裁記者会見より)

・・・・とまあそういうことで、さすがにこの議事要旨の書きっぷりは誤魔化しようがない(なぜなら前述のように9月会合の記者会見やその直後の大阪講演で議事要旨引用部分と同じ説明が入っているから違う書き方をしたらそっちの方との整合性が取れなくなるから)ので、直近の説明との整合性の方が取れなくなっておりまして笑うしかない訳です。

これも昨日ネタにしましたように、8月9月が金融市場動向というか株安にビビって全面降伏ポツダム宣言受諾状態の内田講演を行って以降の株式市場従属モードであった、という過去を誤魔化すために米国経済ガーをぶっこんでくる、という植田日銀になってから謎にその傾向が酷くなった「自分たちのやっていることは無謬」というのを取り繕うために屁理屈の昭和温泉旅館の絶賛大増築を繰り返すという所業が10月会合になってぶっこまれた、というのが分かりやすく示された一節ではなかろうか、と思うところであります。

円安修正があったから点検する時間的余裕ができた、というのを引っ込めたのは言うまでもありませんが、円安修正が元の木阿弥に戻っていると時間的余裕がないということになるし、時間的余裕がないのに10月会合で政策修正しないんですかと問われると回答が不能になってしまいますので、10月会合で円安修正がどうのこうのと言ってない訳ですな、あっはっは。


・何を言っているのか分からない書き方で議事要旨に載せるならもっとマシな書き方にならんのか

なおさっきの続きですけどね。

『。一人の委員は、現在のわが国の経済・物価は、一定のペースで利上げをしないとビハインドザカーブに陥ってしまうような状況にはなく、金融資本市場が不安定な状況で、利上げすることはないと指摘した。』

そもそも「金融資本市場が不安定な状況」とは何ぞやという所から話がおかしいし、「一定のペースで利上げをしないとビハインドになるような状況ではない」ってのもじゃあその「一定のペース」ってどういうペースだよという話で、3か月に1回でも半年に1回でもはたまた1年に1回でも「一定のペース」になるわけで、この馬鹿は曖昧な言葉の定義もしないで何を言ってるんだというお話ですな。


・その後も政策修正に関する時間的余裕がらみの話ですけどなんかここの記述全般的に変なんですよね

でもってその続き。

『別のある委員は、政策金利は、見通しに大きなマイナスの変化がないことが確認できるのであれば、時間をかけすぎず、引き上げていくことが望ましいとの考えは不変であるが、利上げ自体を目的としているわけではないと述べた。この委員は、日本経済の健全な成長に対する期待に見合う水準程度まで徐々に上げていけることが理想であり、センチメントが実体経済に及ぼす影響も考慮し、政策変更には適切なタイミングを選ぶ必要があると付け加えた。』

これ田村さんかと一瞬思いましたが、田村さんらしき意見はこのパラの最後に出てくるので田村さんじゃない誰かっぽいのですが、こちらの方が言う「利上げ自体を目的としているわけではない」ってのも腰が引けてるなあとは思う訳でして、「過剰な金融緩和はプロコンの観点から言って望ましくない」と考えるのであれば、過剰な金融緩和の修正こそが正義なのですから、利上げ自体が目的になるでしょ、という話になるわけですから、まあ9月会合でどんだけハトハトチキンな流れだったのか、という場の雰囲気が垣間見られる腰の引けた感じの意見だわな、とおもいました、まる。

『一人の委員は、米国については、金利上昇・低下の両方向の展開がありうることから、わが国の金融政策についても、状況をしっかりと見極めたうえで、落ち着いて判断していくことが望ましいと指摘した。』

これもよく考えたら意味不明な文言で、「米国経済の上振れ下振れ」という話をするなら意味が分かるのですけれども「金利上昇・低下」ってナンジャソラな話でして、お前ら経済実態見ないで金融市場だけ見てるんじゃないか、という記述になりますけれども、一方で昨日引用したように、この1個前のパラグラフでは「多くの委員は、政策判断にあたっては、内外の金融市場の動きそのものだけではなく、その変動の背後にある米国をはじめとする海外経済の状況などについても、丁寧に確認していくことが重要であるとの見解を示した。」ってあったわけでして、その話を多くの委員がしているにもかかわらず、実体経済の状況の上振れ下振れじゃなくて、米国金利の上昇低下、って話が一人の委員から出てきてしまう、っていうのは何か妙ですよね、と思いました。

まあそんなこんなでこの議事要旨、いろいろと妙なんですよ読んでて引っかかること引っかかること。

ということでもうちょっとあるので引用しますが、

『この間、ある委員は、現時点では市場の動向を確認していくことが適切であるが、先行きの経済・物価情勢次第では、金融資本市場が不安定でも、政策金利の引き上げが適切となることもありうると述べた。そのうえで、この委員は、経済・物価がオントラックで推移していく場合、早ければ 2025 年度後半の1.0%という水準に向けて、段階的に利上げしていくパスを考えていると付け加えた。』

これはどう見ても田村抜刀斎です本当にありがとうございました。でも抜刀斎ですら「現時点では市場の動向を確認していくことが適切であるが」とか言ってしまっているのは、9月会合がどれだけハトハトチキンムードの中で実施されていたか、ということの証左ではないかと存じます次第ですな。


・でもってコミュニケーション

『委員は、金融政策に関するコミュニケーションについても議論した。』

『多くの委員は、7月の決定会合における政策金利の引き上げが--経済・物価が見通しに沿って推移していけば、金融緩和の度合いを調整していくという方針を示してきた中でも--市場からサプライズと受け止められたことを指摘した。』

>経済・物価が見通しに沿って推移していけば、金融緩和の度合いを調整していくという方針を示してきた中でも

くやしいのうくやしいのうwwwwww

(ちなみに本論と関係ないですが、最近このダッシュを二本並べるのを使うのが良く出てくるのですが、このダッシュ二本をやるとコピペしていくとその行の先の部分のフォントの字体が微妙に変わってしまうので引用しにくくて敵わん(のでダッシュのところを避けてコピペしないといけない)のでこのダッシュ二本使いは止めてほしいんですけどね)

『今後のコミュニケーションについて、ある委員は、今回の経験を踏まえると、追加的な利上げを行う局面では、政策スタンスを始め、市場との対話を従来以上に丁寧に行う必要があるとの見解を示した。』

丁寧にやった結果がアレなんですけどwwwwwwwwwwwww

『別の委員は、経済状況の進展などによって日本銀行の経済に対する見方に変化が生じ、市場の見方との間に齟齬が生じる可能性がある場合には、そのギャップを埋めるべく、可能な限り丁寧なコミュニケーションを行う必要があるとの見方を示した。』

丁寧にやった結果がアレなんですけどwwwwwwwwwwwww

とまあ間の抜けた見解の後やっとマシなのが入ってくるのですが、

『一人の委員は、経済・物価の不確実性を踏まえると、先行きの政策については--先行きになればなるほど--信認を得られにくいと指摘した。』

不確実なんだから分からん、と言っておけば良いものを下手に「時間的余裕がある」だの「緩和的な環境が続く」だの決め打ちをするからいけないですし、何なら「見通し通りなら利上げ」というのだって本来は経済物価情勢に応じた適正な政策金利とは何ぞや、という考えがラフでもいいからロジカルに存在していてそれがある程度市場と共有できているならば、あとは市場が状況から考えていくだけの話なんですが、そこで問題になるのはそもそも論として今の政策金利水準がそのような理屈を超越したウルトラ金融緩和レートになっていることでして、それがあるもんだからまともな政策金利談議が出来なくなっている、という面が多々あると思うのですよね。

『また、別の一人の委員は、今回の経験を踏まえて、期待や予測に重きを置いた政策判断をするのではなく、実体経済の変化の予兆や進捗を示して市場参加者・企業の理解を高めたうえで、データの実績に応じて金融政策を運営するスタンスを示し、理解の浸透を図ることが求められると述べた。』

「期待や予測」で政策判断する、というのと「実態敬愛の変化の予兆」を示して政策判断する、というののどこがどう違うのか、哲学的過ぎて言ってることがさっぱり理解できないんですが、議事要旨だから要旨で良いとはいえ、これじゃあこの人が何言ってるのかわけわからないからもうちょっと何とかしてくださいな。

『この間、複数の委員は、情報発信の空白期間を出来るだけ作らないようにすることが望ましいと指摘した。』

と思うんだったらなんであんな週に2回とか連続する週で何人とかいう金懇日程を唯々諾々として受けるんだよいい加減にしろ。


・先行きの金利パスを示す云々がフルボッコになっているのは良識を感じますな

でまあその先ですけど、次のお方が中々微妙に微妙でして、

『このうちのある委員は、長らく利上げを行っていなかったこともあり、言葉に対する日本銀行と市場の共通理解が薄れてしまっている面があり、』

ねえよ。あるとしたらお前らの方がオカシイだけだろ、ワシらは別に日本だけじゃなくて海外の中銀の言葉だって見てるんだよヴォケが。

『市場とのずれが生じない発信、ずれが生じた場合の適時の修正等、コミュニケーションの改善に努めるべきであるとの見解を示した。』

という発想が根本的にまちごうとるわ、と思ったらこの後でフルボッコの巻が来るので乞うご期待。

『また、この委員は、言葉による発信だけでは限界があるので、』

遂に言葉だけではなく会見で植田さんの全身白塗り暗黒舞踏でのジェスチャークイズでも始めるかと思ったらさにあらず(当たり前ですwww)、

『政策委員による政策金利パスの見通しを公表することもありうると付け加えた。』

それってFEDもドットプロットのせいで先行きの市場の期待が極端に振れやすくなる、という問題を発生させている訳で、ああいうガイダンス政策的なものは、短期金利操作による金融緩和に金利制約の限界が生じた場合には手段として考えられますが、そうじゃないときには市場の政策期待を極端に振らすリスクの方が大きい手段なんですけどねえ、と思ったらこの後結構フルボッコになっていて面白いです。

『この間、複数の委員は、市場の金利見通しを日本銀行の情報発信により直接変えようと試みるより、日本銀行の経済・物価の見通しや、その背景にあるデータの解釈、政策運営の考え方などについて繰り返し伝えていく ことが より重要であるとの認識を示した。』

これはぐうの音も出ない正論(ただしその「繰り返し伝えていく」説明の出来が今はポンポコリンだという問題はあるが)。

『このうちの一人の委員は、中立金利の不確実性が大きいほか、日本銀行の経済・物価の中心的な見通しを巡る不確実性も大きいことを踏まえると、先行きの政策金利の見通しを数値で示しても、その幅はかなり広いものにならざるをえず、分かりやすいコミュニケーションにはつながりにくいのではないか、と指摘した。』

これは実に素晴らしいですね、誰なのかなこの発言したのは。全く仰せの通りです。

結局ね、先行きのコミットメントが可能というかコミットメントで政策効果を出すような事ができるときならこの政策金利ドットプロットっての役に立つ面はあるのですが、先行きの政策がわからん状況になりますと、将来の政策金利をプロットしだすと、どうしても足元での経済物価情勢と見通しの変化を先に伸ばす形になってしまうから、変化を増幅した形でドットを打つことになってしまい、中央銀行自らがボラを上げることになってしまう訳ですな。

そこに来てこの委員さんも指摘しているように、日本の場合はさらに言えばロンガーランの政策金利水準ですらイメージができる状態ではない状況(かどうかはここではそういうことといことで措くけれども)であって、DSGEよろしく先の政策金利は均衡水準に導かれる、というプロットを打とうにも多分今の状態ではあり得ないくらいその均衡水準のイメージがバラバラにしか出てこない訳で、つまりはドットプロットとか百害あって一利なし、としかアタクシは言いようが無いので、さっきのドットプロット出せという考えの人の思考回路は甚だ理解に苦しむというものであります。


・だからフワフワした概念の話を丁寧にしたってしょうがないんだって

とまあ良い話が続いたので安心しているとまた変なのが出てくるのがアレでしてこの続き。

『情報発信の内容について、ある委員は、基調的な物価上昇率について、丁寧に情報発信をしていくことが有益であると述べた。』

基調的な物価上昇率とかいうフワフワした概念を丁寧に情報発信、って時点でもう話が終っているとしか言いようが無い論外論外。

『この点に関連し、一人の委員は、基調的な物価上昇率は重要な概念だが、情報発信上は、ヘッドラインの物価上昇率が高い水準を続けていることも説明していくべきであると指摘した。』

こちらは仰せの通りですね。

『別の委員は、不確実性が高いもとでは、中心的な見通しが実現する確度が変化したかが政策運営において重要となるため、この点を丁寧に伝えていく必要があるとの見解を示した。この委員は、こうしたアプローチは米欧の中央銀行の最近の情報発信でも、ある程度共通してみられるものであると付け加えた。』

問題は日銀の場合この点がどこからどう見ても恣意的というか言ってる基準となる物差しをコロコロ入れ替えることです。

『これらの議論を踏まえ、委員は、基調的な物価上昇率や経済・物価の見通しやリスク、見通しが実現する確度について、丁寧な情報発信が必要であるとの認識を共有した。』

だからその「確度」とかいうフワフワしたものを丁寧な情報発信するという発想が以下同文。

ということで9月会合議事要旨でありましたとさ。






2024/11/07

〇9月決定会合議事要旨から(その1)

展望レポートはどこに逝ったといわれそうですが先入先出法を使いますもんで

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2024/g240920.pdf
政策委員会金融政策決定会合議事要旨
(2024年9月19、20日開催分)

・日銀ショックとは頑なに認めないというのが公式記録になっておりますwwwwwww

まあこの前の植田さんの会見でもそうでしたけどね。『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』の頭の部分見て笑いましたw

『国際金融資本市場について、委員は、8月初に、米国の景気減速懸念の高まりを契機に世界的な株価下落とドル安が進み、市場センチメントが急速に悪化したとの見方を共有した。』

お前らが3月以降延々と「緩和政策を継続する」って情報発信を繰り返した結果として発生したポジションの巻き戻しが、お前らの利上げとその後のタカタカ姿勢で盛大に巻き戻された、という視点はこの先に出てくるのですが、まずこうなっている、という時点でもうねというお話でして、

『また、委員は、その後、米国株価等は反転上昇したものの、米国経済をはじめとする海外経済の先行きは引き続き不透明であり、金融資本市場も引き続き不安定な状況にあるとの認識で一致した。』

これ8月くらいの会合ならともかく、9月20日なのに何で不安定なのかとw

でまあやっとその後にポジションの巻き戻しの話があるんですけれども、

『多くの委員は、こうしたもとで8月入り後のわが国の金融・為替市場の変動が特に大きくなった背景には、これまで蓄積されてきたポジションの巻き戻しが急速に進んだこともあったと指摘した。』

そのポジションの蓄積の要因はお前らだお前ら。という話はなくて何かもう他人事のようにポジションが蓄積されていましたなあみたいな説明になっている訳です。

それでまあここの説明だけ見ていおるとこの「ポジションの巻き戻し」ってあくまでも米国ガーの話になっていて、てめえらが実施した7月の政策コミュニケーションがその前のコミュニケーションとのセット販売で手のひら返しになっていてサプライズ、という分析がここではないことになっている(議事要旨だから無かった話を勝手にあったことにするのは不可だが。あった話を恣意的に割愛するのは可能ですので議論があったか無かったかは10年たたないとわからん)というのもドイヒーな訳ですな。

これ後のほうで出てきますが、「7月の政策が市場からサプライズとして受け止められた」点についての議論がきっちり行われている訳でして、だったらなんでこの部分でその点の言及がないのか、まああったんでしょうけれども大本営としては自分の振付が間抜けだったことを認めようとしたくないし、8月頭に内田副総裁が株式市場に全面降伏したことも株式市場じゃなくて米国経済の下振れリスクのせいにしたいから、こうやって「米国経済」って話を前面に出した文章にとどめているんでしょ、というのが非常に良くわかる作りになっている訳ですよ。

でまあこの米国経済ガーに関しても緊急避難の方便で持ち出したんだったら今回の決定会合後におけるコミュニケーションにおいて、「ちょっと弱い指標見て懸念をしていましたが杞憂に終わったような感じがしますねよかったよかった」という情報発信をすればまだ可愛げがあるんですけれども、そういうのを認めないで自分たちは無謬だということにしたいもんだから、急に会見で「6月7月から米国下振れリスクがあった」とか言い出すわ展望レポート基本的見解の最終パラフラフにまた余計な米国経済ガー文言を付け加えてコミュニケーションの昭和温泉旅館をドンドンと増築しているんですから世話は無いわけです。非常に困った傾向にあると申し上げて起きましょう。

でまあその続きの部分は市場の変動が金融システムに影響があったかどうかの話なので流しますけど引用はしておきます。

『そのうえで、委員は、現時点ではこうした株価や為替の変動は金融システム などに大きな影響を及ぼしていない との認識を共有した。何人かの委員は、その背景として、市場流動性が相応に維持されるもとで、ポジションの調整が比較的短期間に収束したこともあると指摘した。これに関連して、ある委員は、市場動向や資金フローのモニタリング体制 を一層整備 していく必要があると付け加えた。また、別の一人の委員は、開示や規制の少ないファンドなどの存在感が高まっていることから、あらゆる可能性を念頭にモニタリングしていくことが重要との見解を示した。』

正直モニタリングそんな無限にして意味あるのって気はします。なんでもモニタリングモニタリングって言ってるとそれは暗黙の規制になってしまいかねないし、逆に変な制度アービトラージを生んで訳わからんリスクを溜める要因になりかねない、というのは特に科学的な根拠があるわけではなくてアタクシの野性のカンでしたか無いですけど。


・まあ結局金融市場の動きにビビっていた8月9月だったというお話

でまあ先に飛びまして『V.金融政策運営に関する委員会の検討の概要』ですけれども。

『先行きの金融政策運営について、委員は、経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくという基本的な考え方を共有した。そのうえで、米国経済をはじめとする海外経済の先行きは引き続き不透明であり、金融資本市場も引き続き不安定な状況にあることを踏まえると、当面は、これらの動向を高い緊張感をもって注視し、わが国の経済・物価見通しやリスク、見通しが実現する確度に及ぼす影響を、しっかりと見極めていく必要があるとの見方で一致した。また、これまでの政策金利引き上げの経済・物価への影響をみていく必要があるとの認識も共有した。』

とかいうのは置きましてその次なんですけど、

『多くの委員は、政策判断にあたっては、内外の金融市場の動きそのものだけではなく、その変動の背後にある米国をはじめとする海外経済の状況などについても、丁寧に確認していくことが重要であるとの見解を示した。』

wwwwwwwwwwww

いやおまえら金融政策って経済物価情勢の判断と先行き見通しに沿って実施するもんじゃろという話でして、何で主文が「内外の金融上の動きそのもの」になっててその付属部分が「米国をはじめとする海外経済の状況」になるんだよ順序が逆だろwwwwwwwwww

まあこう書かざるを得ないほど8月(9月)は「金融市場の動きそのもの」に反応していた、というお話になるんでしょうけれども、まあこの表現はドイヒーというか事務方のささやかな良心なのかよくわかりませんが、ナンジャソラと思いました。

まあこの部分、好意的??に読みますと以下のようにも読める訳でして、上記文章を全部読みますと「多くの委員は」から始まっていて、「であることが重要」という話をしていますよね。

つまりですね、これは何かといいますと、8月の内田植田のコミュニケーションが明らかに「内外の金融市場の動きそのもの」にビビっていて、「その変動の背後にある米国をはじめとする海外経済の状況など」への「丁寧に確認していくこと」ができていなかったのではないか、という批判をしている、とも読める訳ですな。

ただまその後の文章を読んでいると、緩和続けろの連呼になっているので何が何やらという感じなのが甚だ遺憾ではありますがwwwwwwwwwwwww

『このうちの 一人の委員は、海外経済の不確実性が高まっただけに、市場変動の影響も見極めるため、当面は海外・市場動向を見守り、金融緩和の一段の調整は不確実性が低下した段階にすることが妥当であると述べた。』

ほほう、10月不確実性が低下しているということになっていましたが。

『そのうえで、この委員は、現在は、経済活動のサポートのために、緩和的な金融環境を粘り強く続ける我慢の局面であるとの見方を示した。』

しかしまあ意味わからんのは、前段でお前ら「委員は、経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくという基本的な考え方を共有」しているのに、何で「緩和的な金融環境を粘り強く続ける我慢の局面」みたいなものの言い方が行われるのかということで、お前ら全然共有してねえだろ徐々に政策修正って話、と思わざるを得ません。

『ある委員は、「物価安定の目標」が実現しておらず、金融経済情勢を巡る不確実性が払拭できない中、現時点では本格的な引き締め政策への転換を連想させるような追加的な政策金利の変更は望ましくないとの見解を示した。』

0.25%→0.50%が本格的な引き締め政策への転換を連想させるっていう発想が全く意味不明にもほどがありますので、ちょっとその頭をかち割って中身を拝見したいのですけれどもよろしいでしょうかwwwwwwwwwwwwwwww

『別の一人の委員は、今後の政策運営は、下方リスクに十分配慮し、データを慎重に確認して進める必要があると付け加えた。』

8月くらいの会合で言ってるならともかく、9月20日に急にこれを言うかって話だし、この前の植田さんの会見に寄りますとそもそも米国経済の下振れリスクは6月7月くらいからあった訳でして、だったらお前ら何で7月に利上げしたんだよアホなのか、という所ですな。

でまあこの後コミュニケーションの話になるのですが、ショパンの事情で今朝はここで勘弁させていただきとう存じます(すんません)。FOMCがややこしくなければ明日で無理なら月曜ですかね(汗)






2024/11/01

お題「決定会合レビュー(その1)」

円安に飛ばなかったのは結構ですけれども結局152円とかなのか・・・・・・・

〇展望レポート基本的見解概要部分:リスクバランスを下げてきましたな

今回の声明文は決定事項の話しかないので展望レポート基本的見解の比較と総裁記者会見での説明(例の「時間的余裕」や「米国経済下振れガー」のうち時間的余裕というのは講演とか会見での説明であって声明文や展望にはでてこない)がダイジダイジネーなのですが、会見ちゃんの方は(さすがに今回は最初から最後まできっちりと日銀よつべチャンネルで聞いていましたが)詳細が本日出ますので週末に追加する”時間的な余裕があれば”追加しますwwwww

10月展望レポート基本的見解
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2410a.pdf

9月金融政策決定会合声明文
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2024/k240920a.pdf

7月展望レポート基本的見解
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2407a.pdf

主に展望の比較をしつつ時々9月声明文も入るって感じでまずは参ります。

『<概要>』の部分(ワイは鏡とうっかり言ってしまうのだがそれが一般用語なのかどうかは知らん)を比較してみるある。

・先行き経済見通し総括部分:全文一致が続く

『先行きのわが国経済を展望すると、海外経済が緩やかな成長を続けるもとで、緩和的な金融環境などを背景に、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まることから、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。』(今回)

『先行きのわが国経済を展望すると、海外経済が緩やかな成長を続けるもとで、緩和的な金融環境などを背景に、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まることから、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。』(9月声明文)

『先行きのわが国経済を展望すると、海外経済が緩やかな成長を続けるもとで、緩和的な金融環境などを背景に、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まることから、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。』(7月展望)

毎回ここ同じことしか言ってませんwww見事に全文一致が継続。

・物価の先行き見通し部分

物価の先行き見通しに関しては年度別展開の説明が非展望会合の声明文では基本的に行われませんのでそこの表現が9月声明文で抜けているのはテクニカル要因です、為念。

『物価の先行きを展望すると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、2024 年度に2%台半ばとなったあと、2025 年度および2026 年度は、概ね2%程度で推移すると予想される。』(今回)

『物価の先行きを展望すると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、2024 年度に2%台半ばとなったあと、2025 年度および2026 年度は、概ね2%程度で推移すると予想される。』(7月展望)

9月声明文では比較該当部分無いです。こちらは展望レポートの見通し計数(はっきり言って今回の鉛筆舐め舐め感がものすごく強くて、何でこういう数字出来上がりになったのよというのはあるのですがそこはまあ追々)とその後の説明から見て「おおむね同じようなもん」という話なのと整合的な全文一致。

でもって背景説明がこの先になるのですが、書きぶり的に比較するときには展望同士で比較して9月はおまけの方がよさそうなのでそんな感じで引用しますが。

『既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響が減衰する一方、消費者物価の基調的な上昇率は、マクロ的な需給ギャップの改善に加え、賃金と物価の好循環が引き続き強まり中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想され、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。』(今回)

『既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響が減衰する一方、2025 年度にかけては、政府による施策の反動等が前年比を押し上げる方向に作用すると考えられる。この間、消費者物価の基調的な上昇率は、マクロ的な需給ギャップの改善に加え、賃金と物価の好循環が引き続き強まり中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想され、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。』(7月展望)

途中にある特殊要因でカクカクしている部分って説明が必要ではあるのはわかるのですが、展望レポート基本的見解の「概要」部分で説明すべきことなのか、というのは改めて考えて見ると若干疑問があって、基本的見解の本文の中で記載するような形にした方が良いのではないかと思うのですよね。

と申しますのも、特殊要因でカクカクしている部分って特殊要因だから本来はそこはネグって考える話の類のものであって、経済物価見通しにおける本質的な意味合いが無いものを鏡の部分という比較的重要な部分で説明していると、特殊要因が滅多にない場合は良いんですけれども、今のように馬鹿政治家共が隙あらばなんとか補助金とか出そうとすると、そのたびに特殊要因がカクカクするわけで、それを一々鏡に載せていると特殊要因の説明ばっかり悪目立ちしてしまいかねないと思うし、だいいち余計な文言が増えるので分かりにくくなりますがな、というのがアタクシの考え(個人の感想です)。

モチのロンですが、特殊要因ったって財政がガバガバ出てくるような施策に関しては、テクニカルにCPIを動かすだけではなく、ガバガバ財政によって総需要に影響が出るから経済物価見通しに影響する、というのはあるのですが、それはそれで鏡に書いてあるメインの見通し部分で討ち取ればよい話で、テクニカルの入り繰りを細かく書いていると、その要因がものすごく重要な話っぽく見えてしまうのイクナイんじゃないでしょうかね。

なお9月声明文ですが、

『消費者物価(除く生鮮食品)については、既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響が減衰する一方、来年度にかけては、政府による施策の反動等が前年比を押し上げる方向に作用すると考えられる。この間、消費者物価の基調的な上昇率は、マクロ的な需給ギャップの改善に加え、賃金と物価の好循環が引き続き強まり中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想され、「展望レポート」の見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。』(9月声明文)

年別展開の部分はさておきまして7月から10月まで見通しは同じですね。ちなみにこれ9月声明文の時にも申し上げましたが、本来声明文会合の時は見通しのタイムホライズンはそんなに長くなくて、展望レポートの時に長いタイムホライズンの見通しを出す、という建付けになっていたので、若干この「展望レポートの見通し期間後半には」云々のところは違和感があるなという感じはあります。

あと、最後に

『なお、2025 年度にかけては、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比に対して、政府による施策の反動が押し上げ方向で、このところの原油等の資源価格下落の影響などが押し下げ方向で、それぞれ作用すると見込まれる。』(今回)

ってのが今回入っています。


・前回見通しとの差異

『前回の見通しと比べると、成長率については概ね不変である。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比については、2025 年度が、このところの原油等の資源価格下落の影響などから幾分下振れている。』(今回)

『前回の見通しと比べると、成長率については、2024 年度は、前年度の統計改定の影響等から、幾分下振れている。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比については、2024 年度は、政府の施策がエネルギー価格を押し下げることを主因に下振れている一方、2025 年度は、こうした施策による押し下げの反動から、幾分上振れている。』(7月展望)

まあここは前回と比較する意味あんまりありませんけどww2025年度の見通し下げておいて後のリスクバランスでは2025年度の上振れリスクって話があるのナンジャソラ感はあります。だったら見通し下げるなよと思うんだがwww


・リスクアセスメントの要因の表現に変化はないのよね

『リスク要因をみると、海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、わが国経済・物価を巡る不確実性は引き続き高い。そのもとで、金融・為替市場の動向やそのわが国経済・物価への影響を、十分注視する必要がある。とくに、このところ、企業の賃金・価格設定行動が積極化するもとで、過去と比べると、為替の変動が物価に影響を及ぼしやすくなっている面がある。』(今回)

『リスク要因をみると、海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、わが国経済・物価を巡る不確実性は引き続き高い。そのもとで、金融・為替市場の動向やそのわが国経済・物価への影響を、十分注視する必要がある。とくに、このところ、企業の賃金・価格設定行動が積極化するもとで、過去と比べると、為替の変動が物価に影響を及ぼしやすくなっている面がある。』(9月声明文)

『リスク要因をみると、海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、わが国経済・物価を巡る不確実性は引き続き高い。そのもとで、金融・為替市場の動向やそのわが国経済・物価への影響を、十分注視する必要がある。とくに、このところ、企業の賃金・価格設定行動が積極化するもとで、過去と比べると、為替の変動が物価に影響を及ぼしやすくなっている面がある。』(7月展望)

実はここは面白くて、8月9月、とくに9月会合って「米国経済の下振れリスクガー」を会見で大連呼するわ「主な意見」も7月まではそんな話なかったのに突如「米国経済の下振れリスクガー」の大連呼するわ、ということになっているのですが、声明文の方では別に大連呼していなかったのですよね。でもって比較してみると実は7月展望の「為替の変動ガー」の追加文言で注目されたリスク要因の記述がそのまま継続している、という形になっていまして、一方ではご案内の通りで米国経済下振れリスクガーの大連呼をしていた訳でして、なんのこっちゃという感じですよね。


・リスクバランスは前回対比引き下げ

9月はリスクバランスの評価はありませんでした。

『リスクバランスをみると、経済の見通しについては概ね上下にバランスしている。物価の見通しについては、2025 年度は上振れリスクの方が大きい。』(今回)

『リスクバランスをみると、経済の見通しについては、2025 年度は上振れリスクの方が大きい。物価の見通しについては、2024 年度と 2025 年度は上振れリスクの方が大きい。』(7月展望)

見通し下げておいてリスクバランスは上振れってぱっと見意味くじ分からん世界なんですよね、しかもこれ最後のチャートを見ますと2025年度の委員のリスクバランスって上振れ3、バランス5、下振れ1になっているんだから普通はこういうのは多数決で「おおむねバランス」になるじゃろと思いますが、以前もそんなのがあった記憶があるが、この記述方法なんか変じゃね??とは思います



〇問題になるのは「今後の金融政策運営」だがまた余計なもんを作りやがりまして甚だ怪しからん

でもって本来ですとここから経済物価見通しの逐語比較をしていくんですが、そっちよりも今回は今後の金融政策運営に関するコミュニケーションの方が大問題、という会合でしたので、展望レポート基本的見解の最終部分をネタにしてまいります。

『4.金融政策運営 』の最終パラフラフです。

『金融政策運営については、先行きの経済・物価・金融情勢次第であるが、現在の実質金利がきわめて低い水準にあることを踏まえると、以上のような経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えている。』(今回)

『金融政策運営については、先行きの経済・物価・金融情勢次第であるが、現在の実質金利がきわめて低い水準にあることを踏まえると、以上のような経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えている。』(7月展望)

でまあこの次に「日本銀行は2%達成に向けて適切な政策をしまっせ」というのが入るのですが、ご案内の通り今回クソ意味不明な文言追加がぶっこまれております。

『そのうえで、米国をはじめとする海外経済の今後の展開や金融資本市場の動向を十分注視し、わが国の経済・物価の見通しやリスク、見通しが実現する確度に及ぼす影響を見極めていく必要がある。』(今回)

・・・・・( ゚д゚)

なんですかこれはという話でして、4月展望で余計な文言ぶっこんで利上げがだいぶ先という思惑を招いて円安をぶっ飛ばした挙句に7月利上げがサプライズ扱いになってしまった、という点の反省はどこに逝ったんでしょうか、という話ではありますわな。

いやまあこれが実は11月以降の米国新政権によって米国経済がウホウホと上向き米国物価もウホウホ状態になってくるので日本にも上振れリスクが出てくることも検討しないといけませんね、って意味だったら実は米国上振れ警戒、という話でそれはそれでオシャンティーなんですけれども、ここまでの話の流れからすると「米国経済下振れリスクガー」を「見える化」したという物件に見えてしまいますし、総裁会見でも


https://jp.reuters.com/opinion/forex-forum/56YMURFM5FLALMREVDVSFK2MWY-2024-10-31/
今後「時間的余裕」は使わない、毎回会合で情勢判断=植田日銀総裁
By 和田崇彦, 杉山健太郎
2024年10月31日午後 6:25 GMT+9

『そのうえで植田総裁は、展望リポートの金融政策運営の部分には米国経済などの今後の展開を注視する考えを明記し、リスクを重視しているという姿勢は貫いていると語った。』(この部分のみ直上URL先のロイター記事より、以下同様)

って言ってまして、この説明だと「下振れリスク警戒文言をわざわざ入れた」という説明になっているように思えるわけですし、会見の配信聞いている感じだと「やっぱり下振れ文言なのかな」と思わせる印象があったんですよね(個人の感想です)。

ただまあロイターさんの記事でも上記の部分の直後に、

『11月上旬の米大統領選後の新政権の政策運営が日本に与える影響については、新大統領が打ち出してくる政策次第では新たなリスクになるが、各会合で点検していくと述べた。』

ってなっていて、この「新たなリスク」が上振れなのか下振れなのかは言ってなかった記憶がある(少なくとも上振れって言ってた記憶は無いのだがまあこれは会見録が出て点検しましょう)のですが、会見での説明の文脈だと新たな下振れリスク、って聞こえてしまうのですよね。

ただまあ書いてある文言では下振れとは限定して書いていないので、上振れも下振れもアリエールという話になってしまうのが諸葛孔明の罠にも程がある話で、それこそ先週の植田総裁のワシントンでの会見の「一応」2連発が(アタクシが最初に気が付いたわけではなくて読者様から指摘されて成程と思っただけなのでそこはタネを割っておきますがw)実は今回の「時間的余裕」撤廃の布石だったように、これも後から利上げする段になって「米国経済は下振れリスクよりもむしろ上振れの可能性の方が高まっており金融緩和度合いの調整をサポートしています( ー`дー´)キリッ」とか言い出すための諸葛孔明の罠の可能性もある、という玉虫色文言になっています。


まあしかし何ですな、そういう諸葛孔明の罠なのかもしれませんけれども、こういう文言は基本的にゴテゴテと入れることによって、「条件付き」という印象を強めるものになりますし、しかも本来総合判断で行うべき金融政策判断に関して「米国経済に注目して金融政策を行っている」というような本筋からみたら明らかに変な事をやっている印象を与えるので、まあこういう表現を加えているのは筋悪にも程があるんですが、どういう事情でこの別に入れなくてもよさそうな文言を入れる破目になったのかというのは不思議ちゃんではございます。下振れリスク警戒しないといけないからそのためにこの文言を入れたのならまあ話は分からんでもないのですが、上下のリスクがあるのは何だってそうなんだからわざわざ入れる必要あるのか??って話ですよね。

ちなみに記憶の備忘のために、となりますが悪名高かった4月展望ですが、

『金融政策運営については、先行きの経済・物価・金融情勢次第であり、この点を巡る内外の経済・金融面の不確実性は引き続き高い。以上のような経済・物価の見通しが実現し、基調的な物価上昇率が上昇していくとすれば、金融緩和度合いを調整していくことになるが、当面、緩和的な金融環境が継続すると考えている。』(4月展望)

ってなっていて、この「当面、緩和的な金融環境が継続すると考えている」が政策金利引き上げへの市場の、というか特に為替市場方面の金融政策に関する見方に大きく影響を与えていた訳ですな。

なお、最終パラの最後は、

『日本銀行は、2%の「物価安定の目標」のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営していく。』(今回)

『日本銀行は、2%の「物価安定の目標」のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営していく。』(7月展望)

でして、ちなみに4月展望をおまけでつけると、

『日本銀行は、2%の「物価安定の目標」のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営していく。』(4月展望)

となっています。


〇総裁記者会見:詳しくは会見録出てからですが「時間的余裕」を完全封印したのは結構結構

ロイターさん(再掲)
https://jp.reuters.com/opinion/forex-forum/56YMURFM5FLALMREVDVSFK2MWY-2024-10-31/
今後「時間的余裕」は使わない、毎回会合で情勢判断=植田日銀総裁
By 和田崇彦, 杉山健太郎
2024年10月31日午後 6:25 GMT+9

ほぼ出オチですけど、

『[東京 31日 ロイター] - 日銀の植田和男総裁は31日、金融政策決定会合後の記者会見で、米国経済の下振れリスクが後退しているとして、今後、経済・物価情勢の見極めなどで「時間的な余裕はある」という表現は使わないと説明した。日銀の経済・物価見通しが実現していけば「引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになる」と強調する一方で、追加利上げの是非は毎回の決定会合までに入ってきたデータや情報に基づいて判断していくと述べるにとどめた。』(上記URL先より、以下同様)

いやマジであの表現害悪以外の何物でもなかったので削除したのは結構なことでした。

『植田総裁は9月の決定会合後の記者会見以降、円安修正で輸入物価上昇に伴う物価上振れリスクが後退しており、政策判断に当たって「時間的な余裕がある」と繰り返し述べてきた。しかし、「時間的な余裕」との文言が市場で次回の利上げ時期を示すキーワード化しつつあるとの警戒感が日銀では出ていた 。』

次回どころかその先までのキーワードになっていましたけどwww

『植田総裁はこの日の会見で「時間的な余裕がある」との文言を封印。米国経済の現状について「良好な経済指標がみられる」とし、完全に安心できるまではいかないがリスクの度合いは下がっていると指摘。米経済や市場の波乱が日本経済に与えるリスクに強く光を当てる意味で使ってきた「時間的余裕」という表現は不要になったと説明した。米国経済のリスクに特に注目するのはやめ、「普通の金融政策決定のやり方に戻る」とも述べた。』

まあこの辺もツッコミどころがあるのですが、そのあたりは会見録出てから改めて参ります。







2024/10/31

〇唐突ですがこの前出てた多角的レビューシリーズスタッフペーパー3部作からちょっとだけ

日銀の新着の過去分を見ますと、

10/18(金) 調査・研究 (論文)わが国企業の価格設定行動とゼロインフレ・ノルム
10/18(金) 調査・研究 (論文)わが国の潜在成長率と物価・賃金の関係を巡る論点
10/18(金) 調査・研究 (論文)わが国における均衡イールドカーブの推計:時系列手法によるアプローチ

というのがあって、先週これを多少ネタにしたんですけど、その時にスルーした真ん中の物件に関して。

https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2024/wp24j17.htm
わが国の潜在成長率と物価・賃金の関係を巡る論点
2024年10月18日
福永一郎*1
法眼吉彦*2
伊藤洋二郎*3
金井健司*4
土田悟司*5

本文の前に要旨となる上記URL先を読みますと、

『要旨

本稿では、1990年代以降の日本の潜在成長率や労働生産性の低迷の背景を振り返るとともに、これらの計測上・概念上の論点や、物価・賃金との関係を巡る論点を提示する。』

ほうほう。

『具体的には、(1)潜在成長率の推計にはアプローチの違いなどによる不確実性が大きいこと、』

そりゃそうだ、という話だがこの先が何とも微妙な論点でして、

『(2)潜在成長率の低下とともに総需要がそれ以上に落ち込んで需給ギャップが悪化する場合もあること、』

ちょっと待てナンジャソラという話なんですが、潜在成長率が低下する局面では需給ギャップの悪化が大きくなる場合もあるって言う話をしだすと、つまりは潜在成長率が低下していったので2%物価目標達成に時間がかかったんですぅという言い訳をしているのかよという気がするんだがどういうことやというお話で、例の「物価が上がらないノルムがあったから物価目標達成に時間がかかった」と同じ話になって、構造要因のせいにして肝心のQQE政策が本当に妥当であったのか(=他の緩和手段でよかったのではないか)という政策検証を行わない格好の言い訳になるだけのように思えるのですよね。

それに潜在成長率が低下する局面ではこうなる、って話をしだすと、そもそも論として2%の物価安定目標の妥当性ってのも気になってくる(日銀の本来の理屈だと2%は潜在成長率に関係なく目標として妥当という話をしているので)し、金融政策単体で物価目標達成できるといってマネタリーベース直線一気理論をぶっこんでいたのは何だったんだというお話になろうかと。

ではその次。

『(3)労働生産性の伸びの鈍化は労働分配率の低下や交易条件の悪化とも相まって実質賃金を下押ししてきたこと、』

『(4)労働生産性の伸びの鈍化はユニット・レーバー・コストの上昇を通じて物価上昇圧力の高まりにもつながっていること、』

まあこれは2面ありますよね、ってお話ですよね。

『(5)デフレや低インフレが続いたこと自体が、設備投資需要の抑制などを通じて生産性にマイナスの影響を及ぼした可能性があることなどを指摘する。』

結局「ノルム」論になっていまして、ノルムがあったから黒田緩和はなかなか効果が出なかった、で全部済ませる大本営ムーブやめえとしか申し上げようがないのですけどねえ。

でもって

『潜在成長率や労働生産性の低迷はそれ自体が重要な問題であるが、物価の安定を目的に金融政策を運営するうえでも、これらの動向を常に把握しておく必要がある。また、これらに推計誤差がつきものである点に留意しつつ、物価や賃金との関係についても多面的に検討することが重要である。』

これ「物価の安定を目的に金融政策を運営するうえでも」ってのが引っかかる話でして、そもそも論として中立金利の概念自体が概念としては妥当な考え方であっても、実際の政策運営において使い物にならない、というのは実際に政策運営を行っている中央銀行家のコンセンサスなんじゃなかろうかと思うのですけれども、何でこう日銀ってわざわざ「ザ・中立金利」みたいな話を持ち出してきて自分でコミュニケーションをグチャグチャにしてしまうのかと思うのですが、この「金融政策を運営するうえでも」ってわざわざ言っちゃうのがとっても残念なんですよね。

でまあ本文ですが、これはかなりの大部になっておりまして、項目別にいろいろと書かれているのですが、なんせこちとら数字に関してはハクション大魔王(ジジババしか知らんか)レベルなので中の分析についてどうこうは申し上げる頭もないので割愛します。

でもって結論項でも見てやろうと思ったのですが、結論項の部分が先ほど引用したHTML版の「要旨」とまるで同じになっておりますので、そこを引用する余地もなかったですトホホ。

全文はこちら
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2024/data/wp24j17.pdf
わが国の潜在成長率と物価・賃金の関係を巡る論点*

これ割と不思議なつくりになっているのは、最初のエグゼクティブサマリーにあたり要旨の部分(HTML版の要旨と同じ)と、イントロダクションに書かれている話と、最後のまとめにあたる結論項で結局同じ話をしているところでして、まあ要するに見せたいのは途中の分析ということなんでしょうけれども、序論本論結論みたいな構成になっているようでなっていないのがなんか妙な感じがしました。



2024/10/25

〇金融システムレポートが出ていましたな

紹介ページ
https://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/fsr241024.htm

全文
https://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr241024a.pdf

紙芝居
https://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr241024b.pdf

FSRってなぜか他から出ている物件と文字コードが違うので、ワシの作業環境だと文字化け修正が必要になって甚だ困るんで、紹介ページの方から多少ネタにする程度であとは気が向いて文字化け修正をする暇があった場合に。

紹介ページ
https://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/fsr241024.htm
金融システムレポート(2024年10月号)

『2024年10月号の問題意識

内外の金融市場では、今夏以降不安定な動きもみられ、地政学的リスクに起因して実体経済・金融市場が大きく変動する可能性も引き続き意識されている。国内では、不動産関連向け融資が引き続き増加するもとで、一部の不動産指標には注意すべき点がある。』

ほうほう不動産。

『また、わが国経済が緩やかに回復しているなかでも、収益の改善ペースが鈍い企業を中心に、デフォルトの増加がみられる。今回レポートでは、感染症拡大前からの脆弱性、および原材料価格高や人件費上昇の影響という観点から、足もとのデフォルト率上昇の背景の評価を試みる。』

これは後で読んでみますわ。

『日本銀行は、本年3月に金融政策枠組みの見直しを行ったあと、7月には政策金利を引き上げた。このもとで、金融機関は、市場金利の変化も踏まえつつ貸出金利や預金金利を設定している。今回レポートでは、一定の想定を置きつつ、金利環境の変化が金融機関や家計・企業に与える影響について、アップデートする。』

『以上の観点を踏まえつつ、わが国金融システムの頑健性と潜在的な脆弱性を評価する。』

まあこれ現状認識の話だから致し方ない面があるのですが、ここで「脆弱性がある」っていう結果になった場合(なっていないし、ガチに脆弱だった場合にはオブラートに包むと思うけどw)、本来は「このような現状になった原因は何ですか」ってのを考察しないと政策のPDCAにならんので、
そういうのはちゃんとやっていただきたいものです。


・ヒートマップ的には株価下がってビビっている場合ではなかったですねえwwwww

『わが国金融システムの安定性評価(要旨)*』に参ります。

『わが国の金融システムは、全体として安定性を維持している。』

まあそりゃこの回答になりますけど。

『金融仲介活動は円滑に行われている。貸出市場では、貸出金利が上昇するもとでも、企業の資金需要は増加しており、金融機関の融資姿勢も引き続き積極的である。こうした金融仲介活動に、大きな不均衡は認められない(図表I-1)。』

ってヒートマップ見ると株価が赤いんですがwwwwwというのは後で別項目があります。

『わが国の金融機関は、内外の金融市場や実体経済に大幅な調整が生じるリーマンショック型のストレスや、グローバルな金利上昇と実体経済の減速が同時に生じるストレスに対して耐え得る、充実した資本基盤と安定的な資金調達基盤を有している。』

ほうほう。

『もっとも、先行きの国際金融市場や地政学的リスクの動向など、テールリスクへの警戒は引き続き重要である。』

あっそう。

『より長期的な視点からみると、人口減少などを背景に企業の借入需要が構造的に減少する状況が続いた場合、貸出市場の需給バランスによっては、金融機関の収益力や損失吸収力が低下し、金融仲介活動の停滞や、過度な利回り追求など金融仲介活動の過熱につながる可能性がある。』

『以下では、これらの観点も踏まえつつ、わが国金融システムを巡るリスクや脆弱性について点検する。』

ということで赤い「株価」「不動産関連」について『資産価格の動向』という小見出しがありまして、

『株式市場について、ヒートマップを構成する「株価」と「株式信用買残の対信用売残比率」、「機関投資家の株式投資の対証券投資比率」をみると、トレンドからの上方乖離を示す「赤」が点灯している(前掲図表I-1)。』

イイシテキダナー

『8月初には、米国の景気減速懸念を契機とする投資ポジションの巻き戻しの影響などから、グローバルに資産価格が変動した。この間、PERは過去平均的な水準での推移を続けており、バリュエーション上、大きな過熱感はみられない。もっとも、わが国の金融機関が相応の株式リスク量を有していることを踏まえると、資産価格の動向については留意する必要がある。』

つまり8月に株価が下がったのはどう見ても「健全な調整」であって、その前の株価上昇がバブルであって、そのバブルを作ったのはマネタリーポリシーウィングの金融政策スタンス(として世間に認知されたもの)であったという訳ですので、8月の株価下がったのにビビっていきなり情報発信を大幅に変更したマネタリーポリシーウィングは、プルーデンスウィングから見たらアカンタレの二乗みたいな事をしている、というお話でございまして中々の良い指摘である。


『また、わが国の不動産市場では、不動産貸出の趨勢的な増加が続くもとで、一部に価格の割高感が窺われる。「商業用不動産価格・賃料比率」は、ミニバブル期の水準を上回っているほか、都心の商業地区において、局所的な高額帯の取引がみられている(図表I-2)。』

『また、不動産取引業の一部では販売在庫水準も高まっている(図表I-3)。都心のオフィス空室率が最近では低下に転じているほか、不動産業の財務状況は景気回復とともに改善が続いており、デフォルト率も低位で推移しているものの、他業種と比べてレバレッジ比率の水準が高く金利感応度も高い点には留意が必要である。』

ということで不動産市況に関しても厳しい表現をしていまして、

『海外ファンドによるポートフォリオ・リバランスの一環として、日本の投資物件を売却する動きが引き続きみられていることも踏まえると、不動産市場の先行きには一段と注意していく必要がある。』

ということで締めていまして、この辺りの指摘のトーンがかなり強くなっているのは大変に結構だと思います。

すなわち、
https://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/fsr240418.htm
金融システムレポート(2024年4月号)

この時も実は株価が赤くなりだしているんですけど、4月号の説明ページである上記URL先を見ますと(一々引用しないので見てちょんまげ)、今回のような指摘になっていないのが一目瞭然でして、寧ろマイナス金利解除以降の「緩和政策長期化期待」によって資産市場に不安定が積みあがっているのではないか的なところまで考えているかどうかはともかくとして、結果的にはそういう体裁になっているのがこの「資産価格」の部分なのが興味深いと思いました。

なお詳しくは全然読み切れていませんので紹介ページの後半も含め面白いのがあったら追々。





2024/10/23

〇基調的なインフレちゃんですが結局底堅いとしか言いようが無いのではないかと

いつもの
https://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/index.htm
基調的なインフレ率を捕捉するための指標

左から「刈込平均値、 加重中央値、最頻値」ですな。

Jan-23  3.1  1.1  1.6
Feb-23  2.7  0.8  2.1
Mar-23  2.9  1.0  2.7
Apr-23  3.0  1.2  2.8
May-23  3.1  1.4  2.9
Jun-23  3.0  1.4  2.9
Jul-23  3.3  1.6  3.0
Aug-23  3.3  1.8  3.0
Sep-23  3.4  2.0  2.8
Oct-23  3.0  2.2  2.6
Nov-23  2.7  1.7  2.4
Dec-23  2.6  1.6  2.4
Jan-24  2.6  1.9  2.3
Feb-24  2.3  1.4  2.0
Mar-24  2.2  1.3  1.9
Apr-24  1.8  1.1  1.6
May-24  2.1  1.3  1.5
Jun-24  2.1  1.4  1.6
Jul-24  1.8  1.1  1.5
Aug-24  1.8  0.7  1.3
Sep-24  1.7  0.8  1.4

8月に落ちたと思わせてくれた加重中央とか最頻値ですが、9月は戻って来ておりまして、何だ結局底堅いじゃんというお話になっておるのでして、日銀の政策変更を渋る言い訳には使いにくいですねヤダーという所です。

本来であれば、日銀が散々連呼している「基調的物価」を把握するための一つの指標なんだから重要な意味があるはずなので、この数字が底堅いとかいうのは金融政策の正常化に向けた追い風ということになるのですが、何せ今の日銀は、というか黒田末期からずっとそうなのですが、金融政策を中立スタンスに向けて徐々に調整するっていう当たり前の事すらやりたがらないで、やらない言い訳を次から次へと繰り出して前の説明と整合性のない話ばっかりするもんだから、どうせチェリーピッキングされるだけのことなんでそれはつまらんと思いますが、これ見たってもうどう見ても過去から全然違うトレンドじゃろというお話な訳ですな。何でこれで物価が行ってないとか平気で言えるのかちょっとこいつらのカボチャ頭をかち割って中身を見てみたいですよね。


上昇下落品目、左から「上昇品目比率、下落品目比率、差分」ですな

Jan-23  80.3  12.6  67.6
Feb-23  81.0  11.7  69.3
Mar-23  82.6  10.0  72.6
Apr-23  84.3  9.2  75.1
May-23  84.9  8.8   76.1
Jun-23  84.9  9.2  75.7
Jul-23  85.6  8.4  77.2
Aug-23  86.0  8.2  77.8
Sep-23  87.0  7.3  79.7
Oct-23  84.7  9.6  75.1
Nov-23  83.0  11.3  71.6
Dec-23  82.0  12.1  69.9
Jan-24  83.9  10.7  73.2
Feb-24  81.8  12.8  69.0
Mar-24  79.5  15.1  64.4
Apr-24  80.8  14.0  66.9
May-24  79.3  15.5  63.8
Jun-24  78.7  16.1  62.6
Jul-24  75.7  18.8   56.9
Aug-24  74.7  19.9  54.8
Sep-24  76.1  18.2  57.9

もう普通に7割超の品目が値上がりしている訳でして、これでデフレが何とかとか何をどうするとそういう話になるのかと小一時間問い詰めたい。

・・・・のではあるのですが、何せ日銀の人たち、この「基調的な物価を捕捉するための指標」が上にぶれているときに全然この件に触れていない訳でして、折角出しているのに勿体ない事ではあります。





2024/10/22

〇昨日ネタにした多角的レビューネタですが追記のおまけ

昨日ネタにした多角的レビューのペーパーですが、読者の皆様からいろいろと「こんなツッコミもあるのではないか」とのご指摘をいただきまして多謝多謝。

ということなので折角ですから追記メモだしそもそも受け売りで大変恐縮なのですが、(とネタばらしをしておきまして)多少のツッコミ追記を。

まずは均衡イールドカーブに関して。

要旨
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2024/wp24j16.htm

本編
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2024/data/wp24j16.pdf

・政策評価をするのはどう見ても時期尚早なのに今すかさずやるのはアカンヤロ

しかしまあ何ですな、しばらく封印してたのに均衡イールドカーブの話を「多角的レビュー」の一環で出すというのってこれどこからどう見ても「YCCは長期金利を押し下げることによって政策効果を発揮したので黒田緩和は正しいぜヒャッハー」という話をしよう、という下心満載なのはわかるのですが、そもそも長期金利ペッグ政策なんぞは「出口」まで含めて評価しないといけない訳で、米国FRBが第二次大戦およびその後も続けた長期金利ペッグ政策って、市場が今と全然違って統制がそれなりに効くような時代であってもその出口に置いてFRB議長の首を二つだか三つだか飛ばしてやっと出れた、という政策だったというように、この黒田緩和の真価ってこれからの出口においてこそ問われる話だし、早速出口にビビってハトハトチキン状態になっている、という現状が今まさにそこにある中で、YCC政策を評価する「多角的レビュー」をやろうというのが前提からしてちゃんちゃらおかしいわけです。

ということで、過去のレビューするのと政策評価に関しては分けて頂きまして、今からでも遅くないから政策評価のパートを全部ぶった切ってなかったことにした方が良いですけど、まあどうせやらんのじゃろうなあと思います。

まあ何ですな、明の太祖朱元璋ムーブとでも申しますか、本来評価を定めるのはもっと後であるべき出口政策中、というか碌すっぽ始まってもいない状態でQQE政策の評価をするとかどこの洪武帝だよというお話でして、Wikipediaで「元史」を検索して味噌というお話ではありますな。

あと日銀のたちの悪いのは、今回このように評価してしまうと、これがそのまま後々まで生きてしまって、この時の多角的レビューはポンコツで使い物にならないので新レビューをするというような科学的態度(幾多の試みを経て「新元史」が20世紀になってできた訳ですよ中国では)ムーブを日銀の中の人にしても曲学阿世の提灯学者どもにしてもやりゃあしないもんだからこれが「正史」になってしまうんですよね。甚だ困ったもんですし、将来の政策対応でまた碌でもないことをすることになるわけですよ。


・実質自然利子率の推移を見ますと黒田緩和は・・・・・・・

でまあ昨日ネタにした本編の13ページ(PDF14枚目)のグラフですが、あたくし昨日は『図 3: 均衡イールドカーブ』の『(d) 年限別・名目』の2023年の数値がマイナスになっていることを見て心が曇っているので提灯忖度パラメーター操作じゃねえのとか申し上げておりましたが、よくよく見ますと、というか読者様からツッコミをいただいたのですが、これしらっと『(c) 年限別・実質』の方がおもろいですね。

ともうしますのは、この(c) 年限別・実質の実質中立金利の推計値を見ますと、グラフの起点である1993〜1996って実質中立金利が1%あたりから0%辺りへと急速に低下していまして、まあこれはバブル崩壊、というかその前のバブル生成がクッソ悪いのですが、まあその後のバブル崩壊期における後処理もよろしくなかった訳でしたな、という話だと思うのでこれはまあそうなのかな、と思うのです。

でですね、その後なんですけど、よくよく見ますと2013年あたりから2016年辺りも実質自然利子率が−0.3%くらいから−1%くらいまで低下していまして、えーっとこれは何ですか黒田異次元緩和ってのは問題の解決になっていなくて、事態をさらに悪化させました、っていう話なんですよね、と思ってしまいましたが、この点に関してはどういう解釈をすればよいのか、ちょっと教えていただけると甚だ幸いでございますのですが、一体全体どういうことなのでしょうかと思いました。

まあ2023年の名目自然利子率のところを見て忖度爆裂と思ってしまいましたが、よくよく見ると中々お茶目なグラフなので、毒もちゃんと入れているんだなと思いますと、ちょっと昨日はボロカス言いすぎたかなと反省はしておりますwwwwwww


でもってもう一つは昨日の「ノルム」のペーパーですけれどもこちらは補足メモです

・「ノルムのせい」で片づけることの最大の問題点は「適切な政策は何だったか」の議論をしていないこと

概要
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2024/wp24j18.htm

本文
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2024/data/wp24j18.pdf

昨日引用しました物の再掲で恐縮ですが、第2回WSにおける柳川先生と吉川先生のツッコミを再掲しますね。

https://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2024/data/ron240627a.pdf

こちらの本文19ページ、PDF20枚目のところに『(ノルムの位置づけ)』というのがありまして、引用しますが、

『柳川は、ノルムという概念を使って金融政策を議論すると、本質的に重要な要素を捉え損ねるおそれはないのか――仮に均衡が複数あるとしても、それをどう動かすかを考える際に、ノルムという言葉を使うことでみえなくなる部分もあるのではないか――と指摘した。そのうえで、ノルムを政策議論の文脈においてどのように位置付けているのか、パネリストに見解を問うた。』

『吉川は、QQE は、わが国経済の低迷の原因はデフレであり、デフレは貨幣的な現象であるから、マネーを増やせば問題は解決する、という主張に基づくものであったと振り返った。今回の多角的レビューにおいて、この点の是非について議論せずに、物価上昇率が2%まで上がらなかった原因として、金融政策以外の要因であるノルムについて議論している点に、議論の内容自体に違和感はないものの、日本銀行の対外的なコミュニケーションとして大きな違和感があると述べた。』

とまあこの点なんですけど、柳川先生にしましても吉川先生にしましても、このツッコミのキーメッセージって本当は「そもそも効くか効かないかわからない(というか効かないといわれまくっていた)マネタリーベース直線一気理論について検証をしないで「ノルムのせい」で済ませるのは政策レビューとして不適切極まりない」ということなんですよねきっと(これは日銀の事務方が要旨として丸めちゃうからこうなる)。

長期間にわたる緩和政策を実施したことによって、「ノルム」の転換が起こるような神風(人口動態の推移と世界的な供給制約ショックの発生と世界的な財政出動かな)が発生した時に緩和効果が発現した、というのはまあホンマカイナという気はするけどそれを言うのはまだ許容範囲内の話ではあるんだが、じゃあその「長期間にわたる緩和政策」が本当にこの極端な政策である必要があったのか、という話をなんもしないでスルーしますと、次回に物価や経済が下がった時にまた同じQQEをやる破目になるんじゃないですか、ってなもんでして、別に「長期間にわたる緩和政策」がこんなに極端な政策じゃなくても、単なる実質ゼロ金利政策の長期化だけでよかったんじゃないのというレビューが起きないのはどう見てもおかしい。まあこれもさっきと同じですが、出口政策のコストまで含めてレビューしないと、次に同じようなことが起きたときに間違いの上塗りになってしまう訳ですよ。

あ、そういや黒田も日銀総裁退任した直後に逃げるように「私の履歴書」掲載してましたなwwww


とまあそういう補足でした。




2024/10/21

〇また多角的レビュー絡みの物件が出てきたのだが「均衡イールドカーブ」ってお蔵入りしたんじゃなかったの??

紹介ページ
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2024/wp24j16.htm
わが国における均衡イールドカーブの推計:時系列手法によるアプローチ

は????ということで紹介ページに要旨ってのがあるので読んでみますと、

『要旨

本稿では、わが国の名目・実質の均衡イールドカーブを同時推計する手法を提示する。』

お前らYCC末期に物価が上がっていく中で「均衡イールドカーブの考え方からしたら今の政策はやり過ぎなんじゃないか」と何度言われても均衡イールドカーブは出そうとしないし、政策の修正もクソ粘りしてたくせにYCC解除してから出すんじゃねえよこのバカチンがというお話なのですが、

『具体的には、名目・実質のイールドカーブに加えて、マクロ経済変数(需給ギャップ、インフレ率)を観測変数として用いつつ、代表的なイールドカーブ・モデルであるネルソン=シーゲル・モデル (Nelson and Siegel, 1987) と、VAR with common trends(Del Negro et al., 2017) を組み合わせた推計を行った。』

均衡イールドカーブというのは考え方の概念としては存在するけど、実際には計測誤差が大きいし、結局のところ後付けじゃないとわからない話だしということで、考え方として存在するけどそれを使って政策運営をするもんじゃないです、ああそれからYCC入れたときに説明したのはあくまでもその場しのぎのマジックですよ、って話はどこに逝ったのと思います。

というかですね、今このタイミングで「均衡イールドカーブが計算できます!!!」って出すんだったら、もっと簡単な話である「短期政策金利の均衡金利」とか出すのなんて朝飯前じゃないですかヤダーというお話に発展するわけでして、何でお前らそういう間の悪いタイミングでこういうのを出してくるのかねと思ってしまいました。

『本稿の推計結果からは、1990 年代以降、名目・実質の均衡イールドカーブは、自然利子率の低下を主因に趨勢的に低下しているほか、両者ともタームプレミアムの趨勢的な低下によりフラット化していることが示唆された。また、これらの度合いは、名目と実質の均衡イールドカーブで異なることも示唆された。ただし、均衡イールドカーブの推計はなお発展途上であり、本稿の結果についても十分に幅を持ってみる必要がある。』

ということなんですが本編はこちらになります。

https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2024/data/wp24j16.pdf
多角的レビューシリーズ
わが国における均衡イールドカーブの推計:時系列手法によるアプローチ

まあご案内の通り(というか金曜に出てきたの3本ともこのシリーズですが)の「このロゴが付いている物件は黒田緩和政策は正しかったという結論先にありきの忖度炸裂ペーパーです」という親切なラベルがついている物件でありますな、ナムナム。

でまあ計算式を読んでもアタクシの知能では謎の暗号にしか見えませんのでその辺は割愛しますが、目を泳がせていてクソワロタのは上記PDFの本文13ページ(PDFの14枚目)になりまして、

『図 3: 均衡イールドカーブ』ってのがあるんですが、一番わかりやすいのがその中にある右下の『(d) 年限別・名目』って奴です。

これ見ますと、グラフの赤い線、すなわち「名目自然利子率」の推移が出ているのですが、直近2023年の名目自然利子率の数値がマイナス圏にありまして、これはすなわち昨年植田総裁になってからハトハトチキンでマイナス金利解除を1年引っ張った、というのが実は妥当なのですよ!!という忖度が炸裂していまして、ああ忖度のためにパラメーター調整しやがったなと邪推するくらいには「多角的レビュー」の流れに関して汚れた心でみておりますもんで、ついそういう邪推をしたくなるのですが、あまりにもお見事な推計結果にクソ笑ってしまうしかありません。

しかしまあ何ですな、この自然利子率の話のところって本稿の最後の部分になるのですが、本文14ページ(PDFの15枚目)で思いっきり記述がありまして、

『図 4 では、自然利子率および長期年限の実質均衡金利について先行研究との比較を行っている。』

っていうのをぶっこんでおりまして、いや真面目な話足元で「中立金利はいくらですか数字出せないですか」の件でコミュニケーションがぐだぐだになっている時に出すなよこんなのと思うのですが、

『まず、自然利子率については、概ね様々な先行研究の推計値の範囲内に収まっていることが分かる。潜在成長率との関係を明示的に考慮した準構造型のモデル対比では、やや低めに出ているが、これは潜在成長率が実質金利のトレンド対比で高めに推移していることの影響が一因だと考えられる。Davis et al. (2019) では、幾つかの先進国において、イールドカーブに基づく自然利子率の推計値は、準構造型モデルによる推計値対比で低めに出ることが指摘されており、彼らは、こうした現象を “natural rate puzzle”と呼んでいるが、わが国においても “natural rate puzzle”が存在する可能性がある。長期年限の実質均衡金利についても、他の研究と概ね整合的な値が得られている。』

ということで『図 4: 先行研究との比較』ってのがあって、これはまた中立金利はいくらなんですかという話で記者会見とかが不毛な話になるなあと思うのでした。


〇多角的レビューシリーズのこの話題まだやるのかよ・・・・・(ノルムとかメニューコストとか)

3丁あるうちの2丁を本日はネタメモということで。

https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2024/wp24j18.htm
わが国企業の価格設定行動とゼロインフレ・ノルム

これがまたうへーというやつでして、

『要旨

過去四半世紀、わが国では企業の価格据え置き行動が拡がった。これは、わが国で「物価・賃金が上がりにくいこと」を前提とした人々の考え方や規範(ゼロインフレ・ノルム)が定着した傍証とされ、この間、わが国でインフレ率が上がりづらかった要因の一つとして解釈されてきた。』

そもそも論として多角的レビューにおいてこの話をしているのが問題おおありでして、この「ノルム」ってのを持ち出すことによって金融政策が中々きかなかった、という言い訳に使っているのですが、そもそも効く訳もない政策をぶっこんでおいて後からノルムのせいで効きませんでした、ということにしているだけに過ぎないわけでして、この点については多角的レビュー第2回ワークショップで柳川先生と吉川先生が指摘しているんですよね、ということでそこを引用しますね。

https://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2024/data/ron240627a.pdf

こちらの本文19ページ、PDF20枚目のところに『(ノルムの位置づけ)』というのがありまして、引用しますが、

『柳川は、ノルムという概念を使って金融政策を議論すると、本質的に重要な要素を捉え損ねるおそれはないのか――仮に均衡が複数あるとしても、それをどう動かすかを考える際に、ノルムという言葉を使うことでみえなくなる部分もあるのではないか――と指摘した。そのうえで、ノルムを政策議論の文脈においてどのように位置付けているのか、パネリストに見解を問うた。』

『吉川は、QQE は、わが国経済の低迷の原因はデフレであり、デフレは貨幣的な現象であるから、マネーを増やせば問題は解決する、という主張に基づくものであったと振り返った。今回の多角的レビューにおいて、この点の是非について議論せずに、物価上昇率が2%まで上がらなかった原因として、金融政策以外の要因であるノルムについて議論している点に、議論の内容自体に違和感はないものの、日本銀行の対外的なコミュニケーションとして大きな違和感があると述べた。』

・・・・・とまあそういう訳で、まあこの「ノルム」ってのはかなり胡散臭い話ではありますし、要旨の方に戻りますけれども、

『本稿では、Furukawa et al.(2024)などの先行研究で指摘されている過去四半世紀のわが国ミクロ価格データにおける観測事実を整理したうえで、価格設定モデルを用いて、こうした価格据え置き行動が拡がった背景について分析した。分析の結果、1990年代後半からみられた価格据え置き割合の上昇には、既存研究が指摘するような、インフレ率の趨勢的な低下だけではなく、低インフレ下での需要曲線の屈折度合いの強まりや価格改定コストの上昇といった要因も相応に作用してきた可能性が示唆された。また、これらの要因に起因する価格改定閾値の上昇は、この四半世紀、インフレ率上昇の抑制にも作用したとみられ、とりわけ、量的・質的金融緩和(QQE)の導入以降、物価安定目標の達成を難しくしてきた要因の一つであった可能性も示された。ただし、近年、これらの要因はインフレ率が上昇するにつれて、徐々に解消してきているとみられる。』

とあって、この引用部分の真ん中の辺りにあるんだが、またこの「メニューコスト」の話をしていまして、これが以前もこのネタでアタクシも話題にしましたが、標準的な経済学で言う「メニューコスト」と別の話をしている、というお話(引用すると長くなるから割愛しますが本編の方では思いっきり「メニューコスト」の術語を使っている)でして、まあこの件に関しては「キャッチーな言葉を使って本質的な問題から目くらましをする」という香りが非常に強い物件に仕上がっていますので、読む必要があるのかというと、ツッコミの練習に読むということでしょうなあと思います。コマッタモンダ。

本編はこちらです。
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2024/data/wp24j18.pdf







2024/10/15

〇このタイミングで短期市場サーベイというのが巧まざるネタ投下になっておりますが

とまあそのような短国の中で短期市場サーベイが投下された次第で。

https://www.boj.or.jp/paym/market/market2410.htm
わが国短期金融市場の動向
--東京短期金融市場サーベイ(24/8月)の結果--

ちょwwww前書きwwwwwww

『はじめに』ってのがありましてね。

『日本銀行金融市場局は2008年以降、わが国短期金融市場の取引動向などを把握するため、「東京短期金融市場サーベイ」を実施している。このサーベイは当初は隔年で実施していたが、市場動向をより的確にフォローする観点から、2013年より毎年実施することとしており、本年8月、第15回目となる調査を実施した(調査基準時点は本年7月末)。』

へいへいそうだっか。

『今回のサーベイは、従来同様、日本銀行のオペレーション対象先および短期金融市場の主要な参加者を対象として実施している。今回のサーベイの調査対象先は386先となっている(回答率100%)。』

ほうほうそれでそれで?

『日本銀行金融市場局は、今回のサーベイ結果を短期金融市場の動向把握のために有効に活用していくとともに、「債券市場サーベイ」なども併せ用いながら、金融市場の状況や構造変化の包括的かつ多面的な把握に努めていく考えである。』

で、短国市場の惨状については如何お考えでしょうか??

『また、「市場調節に関する意見交換会」や、「債券市場参加者会合」などの機会も活用しつつ、市場参加者の方々と対話を重ねながら、短期金融市場も含めたわが国金融市場の活性化に向けた関係者の取り組みを積極的に支援するとともに、自らも中央銀行の立場から、可能な限りの貢献を果たしてまいりたいと考えている。』

ロングの共通担保オペを後先何も考えずにアホみたいに打った結果「金利のある世界」に戻ったら案の定担保繰り問題が短国需給をおかしくする一因になっている(当然ですが弊駄文もそうですけどこの「2年5年オペで担保ニーズを増やしてしまうと後で面倒なことになるのに安易にオペ打ちすぎ」って指摘はその当時結構あったはずなので知らないとは言わせない)し、貸増とか気候変動とかの事実上の補助金政策もオペ形式で実施してこれまた担保需要を無駄に高めている元凶が「中央銀行の立場から、可能な限りの貢献を果たしてまいりたい」ってDVモラハラ男みたいなこと言ってるんじゃねえよこのボケナスがという所ですな。

でまあそのようなDVご挨拶はさておきまして『概要』ですが、

『短期金融市場の取引残高は、資金調達残高・資金運用残高とも、前年から増加した。』

そらマイナス金利で死んだふりしてた分が出てきましたからね。

『内訳をみると、資金調達残高・資金運用残高とも、マイナス金利政策解除に伴ってコール取引が減少したものの、非居住者の債券取引需要の高まりなどを背景にレポ取引が増加したため、全体としては増加した。また、資金調達サイドについては、一部外銀が、外貨余資活用の観点から円転を積極化させたことも残高増加に寄与した。』

『短期金融市場の機能度(7月末時点)について、「現状」の評価は、「低い」との回答の割合を、「高い」との回答の割合が上回った。また、「変化」については、小幅の「低下」超となった。』

うーんこの、ということで本文ちょっと拝見しますが、

https://www.boj.or.jp/paym/market/data/market2410.pdf
わが国短期金融市場の動向
―― 東京短期金融市場サーベイ(24/8 月)の結果 ――

・GC市場

3ページ目(本文もPDFの枚数も同じ)にGCの話がありますが、

『1.GC レポ取引』の資金運用側に関してこのような記述が。

『資金運用(債券調達)サイドでは、短資や信託、外証の債券調達が増加した。短資や信託からは、SC レポでの債券運用と GC レポでの資金運用を組み合わせた取引が活発化した等の声が聞かれたほか、一部の外証からは、国庫短期証券の需給が引き締まるなか、担保に用いる債券の調達をターム物の GC レポにシフトしたとの声も聞かれた。』

とまあそういう訳で、まあゆうてGC市場自体がオープン市場ではあるけれども取引そのものがそれなりにシステム対応が必要になるという参入障壁が割と高めで、業務上必要とか、可能なレポ取引の残高がかなり大きい人とかじゃない場合、マイナス金利だのゼロ金利だのという状況でGCレポ市場に本格参入するのは中々厳しいところがあって、この市場はとのかく金利がもっと高くなって参入者の幅に広がりが出てこないと、取引残自体はマーケットマーカーの在庫ファイナンスとかのニーズがあるからデカいんだけど、市場の厚みが足りないなと思う次第。

・無担保コール市場

でまあコールのところなんですが(SCはパス)、『3.無担保コール取引』を見ますと、

『無担保コール市場の取引残高は、前年から減少したが、やや長い目で見ると高めの水準で推移している。』

中々苦しい書き方をしていますなって感じですが、「やや長い目で見ると」ってあーたその前ずっとマイナス金利なんだから比較対象とするのどうなのよという感じもしますが。

『資金運用サイドでは、マイナス金利政策解除に伴い、政策金利残高の圧縮を企図した都銀等による資金運用ニーズがなくなったため、残高が減少した。これを受けて、資金調達サイドでは、こうした資金運用ニーズの受け皿としてマイナス金利下では主要な資金調達主体となっていた地銀・地銀Uの資金調達が減少した(無担保コール市場の動向については、BOX1 および BOX2 参照)。』

まあ要するにコール取って当座預金付利を貰ってその差で(゚д゚)ウマーって話なんですが、これを市場と言えるのか問題というのは常にあるわけでして、それこぞトン調節の時代で政策金利が変更しうる時代には「準備預金の積みの進捗調整」という形で翌日物市場ですら「金利観に基づく市場の動き」があったんですよね(その時代に辛うじておりましたよ小僧でしたけど)。

ということで10ページの『【BOX1】マイナス金利政策解除に伴う無担保コール市場の変化6』にワープしますけど、短期市場サーベイの場合は普段おなじみじゃない人が多いので説明部分がそこそこ長いので、初心者でもあとはちょっとそこらの短期担当を捕まえればわかるような書き方になっておりますな。

とはいえ、何ちゅうかこの説明って面白くて(11ページの部分です)途中からになりますが引用しますと、

『付利先が、信託等から資金調達を行う取引動機は、調達レートと付利金利との差にある。』

というところから始まりますが、

『付利金利が、調達レートを上回っていれば、付利先には、裁定取引の動機が生じ得る。実際、O/N 物の取引レートである TONA(Tokyo OverNight Averagerate)は、付利金利を幾分下回る水準となっている(図表2)。』

味わいのある表現です。

『なお、マイナス金利政策解除後は、短資会社経由取引がダイレクト取引(DD 取引)へのシフトもあって減少するもとで、短資会社を介さないダイレクト取引の比率が高まっている(図表3)。』

これまた味わいのある表現。

『今回調査では、この点も踏まえ、ダイレクト取引も含むオーバーナイト取引全体の約定レート(加重平均値)を調査したが、短資会社経由取引をもとに作成・公表されている TONA と大きな差異はみられなかった。』

そらそうだ。

『この点、調査先からは、ダイレクト取引のレート形成においても、TONA が参考にされているとの声が聞かれている。』

無担保コール翌日物加重平均金利が参考???いや確かにそれはそうですけれども無担保コール翌日物金利自体が実質固定みたいになっているのに「TONAが参考になっている」とか如何にも市場機能があるような書き方になっているのがクソ笑う訳で、提灯コメントにも程があるわと思いましたwwwwwwww

でまあ翌日物はさておきましてこのコーナーは期日物の方が興味深い内容になっていまして、『(2)ターム物』ってところですが、

『ターム物については、1か月以内と1か月超で、参加者の顔ぶれや取引動機に違いがみられ、マイナス金利政策解除の影響も異なっている。』

ほー。

『まず、1か月以内のタームについては、マイナス金利政策下で取引残高が増加し、マイナス金利政策解除後は取引が減少するという、O/N 物と同様の動きがみられた。』

ふむ。

『マイナス金利政策下では、O/N 物のロールオーバー負担を避ける事務面のニーズから、ターム取引による付利先同士での三層構造間の裁定取引がみられていたが、マイナス金利政策解除後は、当該取引は無くなり、証券やその他のファンディングニーズに起因する取引が中心となっている(図表4)。』

でもって、

『1か月超のタームについては、証券等が、流動性カバレッジ比率(LCR:Liquidity Coverage Ratio)を意識した資金調達を行っており、マイナス金利政策解除後においても大きな変化はみられない(図表5)。』

だそうです。


・有担保コール市場

6ページの『4.有担保コール取引』になります。

『有担保コール市場の取引残高は、前年から幾分増加した。』

『過去マイナス金利政策解除に伴い、信託の資金運用が幾分増加したものの、担保に用いる債券の需給引き締まりのほか、この間、都銀等では有担保の資金調達取引がGCレポにシフトしたことなどを背景に、低水準の取引が継続しているとの見方が聞かれた。』

って書いてあるのだが、そもそも都銀が有担保の資金調達を行う意味ってあるのけ??というのが謎なんだが(あるにしたってそれマージナルな話じゃなかろうか、3pのGCレポ市場の取引残高見てもそんな気がしますけど)。

というあっさり味の記述ですけどもっとあっさりなのが短期国債とCPでして、


・短国とCP市場

7ページの『5.国庫短期証券、CP による資金運用』ですが、

『国庫短期証券による資金運用残高は前年から増加、CP による資金運用残高は前年から減少した。』

資金運用残高は増えているというのに発行額が減っている訳でして、いやまあ別のロジックで政府短期証券が増えたり減ったりしているのはそういう建付けだからということなんでしょうけれども、やはり金利のある世界に戻るのであればT-Billの市場整備は急務だと思うの(しつこい)。

『国庫短期証券による資金運用は、マイナス金利解除後、利回りがプラス圏に上昇したもとで、信託等の運用額が増加した。』

『CP による資金運用は、原材料価格高騰を背景とした企業の運転資金調達ニーズが一服し、発行残高が前年比低位で推移するもと、減少した。』

ちょwwwwこれだけかいwwwwww


・機能度って取引がありゃいいってもんでもないんですけどね&オープン市場は基本知らんがなですかそうですか

9ページが『6.短期金融市場の機能度に関する市場参加者の見方』ですけど。

『機能度の水準は、いずれの市場も「高い」超となった。そのなかで、T+0 でのGC レポ取引については相対的に低めとなった。』

参加者の様々な金利観が価格形成に反映する、という意味での市場機能ってあったっけ??と思いながら見ますと、

『機能度の変化については、無担保コール取引では、資金運用機会の増加を背景に「改善した」と回答した先がみられたものの、取引残高が前年比減少するなか「低下」超となった。国債レポ取引では、「低下」超となり、一部先からはその背景として、証券会社の在庫ファンディング量次第でレートが振れやすい点が指摘された。』

おいwwwwwww

でまあその下にある『▽短期金融市場取引の機能度に係る市場参加者の評価5」』ってのを見ますと、そもそも論として項目が、「短期金融市場全体」、「無担保コール」、「有担保コール」、「国債レポ GCレポ(T+0)」の4つしか無くて、短国市場とかそういうのは機能度調査対象外になっている、という時点で市場機能とは何ぞやという話ではありまして、短国市場の価格発見機能が完全に崩壊しているとかいうような苦情をこっちに持ってくるなという気概が充実している次第で落涙を禁じ得ないと言ったところです。

という訳で短国とかCPとか知らんがな、ということのようでして、いやまあファンディングの部分ちゃんと動いているのはそれはそれで大変に大事なことなので上記項目での資金調達がちゃんとできているのかというのは確認すべきお話なのはご尤もではあるのですが、でもオープン市場はやっぱり三遊間案件になってしまうんですよねえというお話ではございました。

イールドカーブの起点になるところだから短期のオープン市場(というか国債市場)のことも思い出して頂きたいものであります。



2024/10/11

〇生活意識アンケート:インフレ期待定着にしか見えませんが・・・・・

https://www.boj.or.jp/research/o_survey/ishiki2410.htm(概要)
https://www.boj.or.jp/research/o_survey/data/ishiki2410.pdf(全文)
「生活意識に関するアンケート調査」(第99回<2024年9月調査>)の結果

ということで全文の方から引用しますが、

・景況感とかそのあたりの内容は基本的に悪くないですね

例えば『1-1. 景況感等』の『1-1-1. 景況感』ですが、

『1-1-1. 景況感

景況感のうち、現在(1年前対比)については、「良くなった」との回答が減少したものの、「悪くなった」との回答も減少したことから、景況感D.I.は改善した。先行き(1年後)については、「良くなる」との回答が減少したものの、「悪くなる」との回答も減少したことから、景況感D.I.は改善した。』

とか、

『現在の景気水準は、『良い』(注1)との回答が横ばいとなり、『悪い』(注2)との回答が減少した。』

となっていて、

『-1-2. 景況判断の根拠

景況判断の根拠については、「自分や家族の収入の状況から」との回答が最も多く、次いで「マスコミ報道を通じて」、「勤め先や自分の店の経営状況から」といった回答が多かった。』

あらあら皆さん収入が増えてらっしゃるの(というか増えてなかったらこの物価でエライコッチャ)ということで、実質賃金下がっていても名目上がっていると何となく名目の数字に幻惑される、という名目マジックが効いているようですな、結構なことと言えば結構なこと。

そんなこんなで『1-2. 暮らし向き、消費意識』に飛びますと、

『1-2-1. 現在の暮らし向き

現在の暮らし向き(1年前対比)については、「ゆとりが出てきた」との回答が増加し、「ゆとりがなくなってきた」との回答が減少したことから、暮らし向きD.I.は改善した。』

マジかワイの(以下略)というとことですが、こちらもまあ名目マジックで、

『1-2-2. 収入・支出

収入については、実績(1年前対比)は、「増えた」との回答が増加し、「減った」との回答が減少したことから、現在の収入D.I.は改善した。先行き(1年後)については、「増える」との回答が減少したものの、「減る」との回答も減少したことから、1年後の収入D.I.は改善した。』

そらこの物価で先行き減るのはちょっと。

『支出については、実績(1年前対比)は、「増えた」との回答が減少したことから、現在の支出D.I.はプラス幅が縮小した。先行き(1年後)は、「増やす」との回答が減少したものの、「減らす」との回答も減少したことから、1年後の支出D.I.はマイナス幅が縮小した。』

単に減らしようがないだけ説もありますがまあ選択的消費をすれば何とかって感じですかね。

『1年前と比べて、支出を増やしたものについては、「食料品」との回答が最も多く、次いで「日用品(洗剤、雑貨等)」、「自動車(ガソリン等、維持費用は含まない)」が多かった。』

わかるわかる。

『1年前と比べて、支出を減らしたものについては、「外食」との回答が最も多く、次いで「衣服、履物類」、「旅行」が多かった。』

そらそうよ(じっと手を見る)。

『今後1年間の支出を考えるにあたって特に重視することは、「今後の物価の動向」との回答が最も多く、次いで「収入の増減」、「余暇・休暇の増減」といった回答が多かった。

商品やサービスを選ぶ際に特に重視することは、「価格が安い」との回答が最も多く、次いで「安全性が高い」、「長く使える」といった回答が多かった。』

これ明るい話としては、ここの「安全性が高い」という回答とか、「信頼性が高い」って回答が増えてくるときって割と消費が明るいときにそういう傾向があるように思える次第でして、もちろんこのワイがちゃんと分析している訳ではないですが(威張るなやw)「価格が安い」ってのが増加傾向にある時はだいたい消費が暗めの時って感じでこの数字見ていますので、実際にはもちろんきちんと分析すれば傾向はつかめるんでしょうけれども、イメージとしてはまあそんな感じという所であります。

なもんで、

『1-2-3. 雇用環境

1年後を見た勤労者(注)の勤め先での雇用・処遇の不安については、「あまり感じない」との回答が増加し、「かなり感じる」との回答が減少したことから、雇用環境D.I.は改善した。』

ということで、基本的にこの辺全部明るい結果になっている訳でして、金融政策の調整を躊躇するようなネタは見当たらないという結果にしか見えんわけですよ。


・物価に関してはインフレ期待の定着っぽいようにしか見えませんが

ということでみんな大好き『1-3. 物価に対する実感』ですな。

『1-3-1. 現在の物価

現在の物価(注1)に対する実感(1年前対比)は、『上がった』(注2)と回答した人の割合が9割台半ばとなった。

1年前に比べ、物価は何%程度変化したかについて、具体的な数値による回答を求めたところ、平均値は+14.5%(前回:+15.7%)、中央値は+10.0%(前回:+10.0%)となった。』

まあこの数字はCPIなどの数値よりもクソ高く出てくるのは仕様なので数値自体はさておきましても、

<1年前に比べ現在の物価は何%程度変化したと思うか>

24/ 3月 平均値 +14.2 %  中央値 +10.0 %
24/ 6月 平均値 +15.7 %  中央値 +10.0 %
24/ 9月 平均値 +14.5 %  中央値 +10.0 %

って推移していますし、先行き見通しでも

『1-3-2. 1年後の物価

1年後の物価については、『上がる』(注)と回答した人の割合が8割台半ばとなった。

1年後の物価は現在と比べ何%程度変化すると思うかについて、具体的な数値による回答を求めたところ、平均値は+10.0%(前回:+11.5%)、中央値は+8.0%(前回:+10.0%)となった。』

下がったように見えますけど

<1年後の物価は現在と比べ何%程度変化すると思うか>

24/ 3月 平均値 + 9.4 %  中央値 + 5.0 %
24/ 6月 平均値 +11.5 %  中央値 +10.0 %
24/ 9月 平均値 +10.0 %  中央値 + 8.0 %

ということで、そもそも6月調査の数字がクソ高すぎで、6月調査って5/9〜6/4に実施しておりますので、まさに円安がホットイシューになっていた時、ということですから円安阻止はいいことでしたわってな話でもありますわな、今回生活実感に関わる数値改善しているんだし。

でもって1年よりも重要扱いになっている5年に行きますけど、

『1-3-3. 5年後の物価

5年後の物価については、『上がる』(注)と回答した人の割合が8割台前半となった。これから5年間で物価は現在と比べ毎年、平均何%程度変化すると思うかについて、具体的な数値による回答を求めたところ、平均値は+7.9%(前回+8.7%)、中央値は+5.0%(前回:+5.0%)となった。』

ほうほう。

<5年後の物価は現在と比べ毎年平均何%程度変化すると思うか>

24/ 3月 平均値 + 7.5 % 中央値 + 5.0 %
24/ 6月 平均値 + 8.7 % 中央値 + 5.0 %
24/ 9月 平均値 + 7.9 % 中央値 + 5.0 %

いやー安定していますなあ、ということでこれまた何で金融政策の調整を躊躇するのかさっぱり分からん、という良い内容になっておりましたなというお話でしたが、どうせ日銀大本営は政策調整しようとした時だけこのアンケート結果をチェリーピッキングしてくるのが仕様なので、これが出たからどうなのかと言われると中々何ともという所ではあるんですけどね。


〇企業物価指数ェ・・・・・・(メモ)

https://www.boj.or.jp/statistics/pi/cgpi_release/cgpi2409.pdf
企 業 物 価 指 数(2024年9月速報)

『国内企業物価指数は、前月比0.0%(前年比+2.8%)。
輸出物価指数は、契約通貨ベースで前月比▲0.4%、円ベースで同▲1.7%(前年比▲1.0%)。
輸入物価指数は、契約通貨ベースで前月比▲1.3%、円ベースで同▲2.9%(前年比▲2.6%)。』

どう見てもホームメードインフレです、というのはさすがに短絡的ですが、

『(前月比で上昇・下落した主な類別・品目)

農林水産物 0.32 % 精米、玄米、鶏卵』

・・・・これは泣きますが、泣いている場合でもなくて、なんだかんだ言ってコメ価格があんまりここまで上がってこなかったのでそうは言ってもしんどくなかったという面が多々あると思うのですが、コメ価格上がって来て(自然要因もそうですけどそれまで上がっていなかった分もあるので仕方ないとは思いますが)生活実感的に響くじゃろ、と思う訳ですが、まあたまたま石破政権も「デフレ脱却」とか寝言言って矢面に勝手に立ってくれそうだから助かっているものの、「物価の安定は日銀の役割なのできちんとやっていただくことを期待」とか言って日銀に丸投げくらっていた日には日銀が矢面に立つ時間帯になるわけですし、コメ価格上昇って結構ここからインフレ批判の文脈では効いてくると思うので、日銀大本営もあんまり能天気に「基調的物価が2%行ってないので金融緩和」とか言ってる場合じゃないと思うのですけどね(主食がコメの個人の感想です)。




2024/10/08

〇短観に続いてさくらレポートでも企業行動のインフレモードが示されているように見えますが・・・・

さくらレポート全文
https://www.boj.or.jp/research/brp/rer/data/rer241007.pdf

各地域からみた景気の現状
https://www.boj.or.jp/research/brp/rer/data/rera241007.pdf

この形式になってからずーーーーっと疑問何ですが、わざわざ「各地域から見た景気の現状」って分冊にする意味がよくわからなくて、本文にそのまま入れておけばいいだけじゃん、と思うのですが結局わざわざ分けた意味が良くワカランチ会長。

まあそれはともかくとして、各地域から見た景気の現状、のほうでは、

(URL再掲)
https://www.boj.or.jp/research/brp/rer/data/rera241007.pdf

『雇用・賃金面では、来年度の賃金設定について、構造的な人手不足のもと、最低賃金の引き上げもあって、賃上げを続けていく必要があるとの認識が企業の間で広がっているとの報告が多かった。』

ほうほう。

『また、その後も継続的な賃上げが必要になるとの考えから、その原資の確保に向けて、価格転嫁の実施・検討のほか、生産性向上のための投資強化や事業見直し、M&Aの動き等が喚起されてきていることが紹介された。』

ほうほうほうほう。

『ただし、中小企業を中心に、収益面の厳しさを指摘する企業の声は引き続き聞かれており、今後も注意してみていく必要があるとの指摘があった。』

まあでもこれって「価格が上昇する世界」によって発生するダイナミクスとしては甘受しないといけない話なんで、当事者としてはたまったもんじゃないのは重々承知する(ワイだってもう棺桶に片足突っ込んでいるようなもんだからウカウカしているとダイナミクスの波で沈んでしまう方の人ですからぬー)のですが、それは「マイルドインフレレジームの社会」のためにはコストとして割り切る話ですよね。まあ同じ理屈で利上げの時に住宅ローンガーとかゼロゼロ融資の債務負担で苦労している人ガーとか総裁会見で突っ込んでいるメディアはお前は何を言ってるんだという感想しか起きませんが。

すいません話が脱線しました。次行きます。

『企業の価格設定面では、既往の輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の動きは一段と緩やかになっているほか、消費者の節約志向の影響が引き続きみられるもとで、値上げの抑制や一部商品の値下げ、低価格の品揃え強化などの動きも増えてきているとの報告があった。』

普通に強いでやんすねえ。

『賃上げ原資の確保に向けた人件費の価格転嫁については、なお難しいとする企業の声はあるものの、サービス業などで、価格設定面での工夫などを図りながら転嫁を実施・検討する動きが引き続き広がっているほか、製造業についても、政府による後押しなどもあって、価格転嫁が進めやすい環境になってきているとの報告が多かった。』

しかしこの報告のダイジェスト版、ちょいちょい政府施策へのヨイショが入っていて、まあ日銀が何見て政策運営しているのか、ってのが支店長レベルにもちゃんと共有されて行ってヨイショコメントが入るんだなあ。と感心してしまいますわオホホホホホ。

というイヤミはともかくとして、こんなんどう見ても企業部門はインフレモード、って話にしかならんじゃないですかあああああというお話。全文の方でも、

(URL再掲)
https://www.boj.or.jp/research/brp/rer/data/rer241007.pdf

『(3)企業等の主な声(トピック別)※』を見ますと、さっきのダイジェストの引用の時にかっ飛ばした個人消費からちゃんと見てみますとですね、

『@個人消費(インバウンド需要を含む)』

『・ 8月の宿泊者数は、日向灘における地震発生前の予約段階では前年を上回っていたが、実績は、同地震や台風 10 号によるキャンセルにより前年を下回って着地。もっとも、9月以降の予約は順調に埋まっており、需要は堅調(鹿児島[宿泊])。』

日向灘地震の栄養は一巡したとのことでそれは何よりでした。

『・ 高価格帯店舗ではインバウンド客を含む観光客の需要が旺盛であり、低価格帯店舗では地元客の普段使いの利用が好調(松本[飲食])。』

なるほど。

『・ 学生やファミリー層を中心に過去最高の客数を記録。特に若者の「推し活」需要は旺盛で、グッズなどの販売が好調なもと、客単価も上昇しており、レジャー施設での支出は惜しまない傾向がうかがわれる(本店[対個人サービス])。』

やべえ何でワイの体感と全然違う消費の話ばっかり出てくるんだ(=ワイが特殊事例だからwww)

『・ インバウンドの客数・単価ともにコロナ禍前を大きく上回っており、為替が幾分円高に進む中でも免税売上は好調が続く。国内客も富裕層を中心に堅調であり、株価が大きく変動する場面もあったが消費スタンスに変化はない(札幌[百貨店])。』

威勢が宜しいですな。

『・ ディスカウントストアやドラッグストアなどへの顧客の流出により来店客数が減少しており、消費者の節約志向の強まりを感じる(甲府[スーパー])。』

お、やっとワイの体感に合ったお話が(ソウジャナイ)。

『・ 南海トラフ地震への警戒感が高まり、お盆の帰省需要が減少した一方、水や保存食を中心に防災用品の需要が急増し、今夏の売上は前年を上回った(静岡[小売])。』

なるほど静岡ですもんね・・・・・・

『・ 一部車種の生産・出荷停止が解除されたことで、新車販売は回復傾向をたどっている(高松[自動車販売]<松山>)。』

『・ 消費者の節約志向は根強いものの、例年以上の猛暑によってエアコンの売上が増加。電気代の節約を意識した省エネモデルの売れ行きが好調(福岡[家電販売])。』

何ちゅうかこの威勢の良い話のオンパレード並べるのは何なのということで。

『・ ベア等での所得増加による消費の押し上げ効果をじわじわと感じている。ただし、高齢者比率の高い地域は、それ以外の地域と比べて売上が伸び悩んでいるなど、地域間でばらつきがみられている(北九州[スーパー])。』

「 ベア等での所得増加による消費の押し上げ効果」、「高齢者比率の高い地域は、それ以外の地域と比べて売上が伸び悩んでいる」・・・・・・うう頭が痛いorzorz


『・ 賃上げや夏季賞与の増加を受けて、若年層でも比較的高価格帯の車を購入するケースが増えている(秋田[自動車販売])。』

まじか!という話ですが、まあ将来の所得上昇期待というのがあればそういう昔みたいなことになるのかもですな。威勢の良い話ではあります。

・・・・・・とまあそんな話で消費強いですねのオンパレードなのですが、ここでちょっと時計を巻き戻して6月会合の主な意見を見直しますと

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2024/opi240614.pdf
6月会合主な意見

『T.金融経済情勢に関する意見』の『(経済情勢)』を見ますと、このころってやたらと個人消費の事を気にしていた(割には7月に堂々の利上げをした、というのが甚だ意味不明ですがそれはともかく)んですよね。まあ引用するとややこしくなるからワイの6/26の駄文(実は心を入れ替えて過去にさかのぼりながら過去ログを項目別整理を徐々にたっているのでその過程で読み直しをしているんでこれも思い出しましたが)にその辺のことをちょっと書いてあります。

でまあそうやって個人消費をやたら気にしていたはずの日銀ですが(最近は米国経済の下振れガーにゴールポストを動かしていますが)、これだけクソ強い消費の報告を見たら9月会合におけるドテン手のひら返しのハトハト転換は何だったのかという話になるんじゃないですかねえ、と思いました。


でもって日銀が一々言い出す「賃金と価格の好循環(そんなものは本来ないのだが)」ということで、『B雇用、賃金設定』を見ますと、

『・ 給与は同業他社と遜色ない水準にあるが、ネームバリューや執務環境の優れた他社への転職が相次いでおり、人手不足感がますます強まっている(金沢[化学])。』

Oh・・・・・・・

『・ コロナ禍明け以降の観光需要の回復により人手不足が深刻化したことから、採用を強化するため、給与を大幅に引き上げた結果、人材確保が進み、定着率も改善した。今後も積極的な賃上げによる人手の確保・係留を進める方針(函館[宿泊])。』

イイハナシダナー

『・ 新型車向け製品の売上が好調であることに加え、賃上げ原資の確保に向けた価格転嫁も少しずつ進んできたため、2024 年度は約4%の賃上げを行うとともに、夏季賞与も前年より増額した(仙台[非鉄金属])。』

しかし賃上げ原資の確保に向けた価格転嫁ってそれ普通に賃金価格スパイラルじゃんと思うのですが、今の日銀の理屈ではそれを是としているし何なら推奨しているのでシャーナイ。

『・ 人材係留の観点から来年度も持続的な賃上げが必要と考えており、価格転嫁や省人化投資等による生産性向上により原資をねん出する方針(松本[輸送用機械])。』

生産性向上の投資にも表れるとな。

『・ 最低賃金の引き上げを受け、今後も賃上げの継続が必要。利益率の高いプライベートブランド商品の比率を高めるほか 効率化により原資を確保する ( 本 店 [ス ーパー])。』

しかしまあ何ですな、こうやって「最低賃金が上がってしまったので賃上げ原資のために、ってことで価格転嫁ってことになると、政府は何のために物価高対策と言いながら最低賃金の引き上げをやるんだか全く意味が分からんという話にもなりますな。

『・ 収益環境は芳しくない状況にあるが、慢性的な人手不足の解消のため、ベア・賞与を含めて大きめの賃上げを行った 2024 年度に続き、2025 年度も同様の賃上げを実施せざるを得ないと考えている(北九州[小売])。』

こういうの見ると物価って下がらんだろうなあと思うわ。

『・ 継続的な賃上げの原資確保のためには、生産性の向上が必要不可欠と認識。こうしたもとで、シナジー効果によるグループ全体の生産性向上等を目的に、仕入先企業などの買収を行っている(鹿児島[卸売])。』

設備投資じゃなくて買収と来るか・・・・・

ってな訳で、賃金のところハチャメチャ強い話ばっかりですし、価格設定の方は・・・・・・

『C価格設定』

『・ 一部商材では仕入コストが引き続き上昇しているが、全体として上昇幅は縮小しており、それを受けて販売価格の上昇も緩やかになっている(本店[スーパー])。』

でも上昇はしているんですね。

『・ 為替円安は一服したものの、輸入原材料価格の上昇を幾分抑制する程度。現時点では、既往のコスト上昇分の3割程度しか価格転嫁できておらず、引き続き、他社の動向もみながら価格転嫁していく方針は変わらない(本店[食料品])。』

まだまだ価格転嫁しきれていないんですってよorzorz

『・ 毎週、特定の曜日に 65 歳以上の顧客を対象にした割引セールを行い、物価上昇のもとで節約志向が強まる年金受給者の需要を取り込んでいる(金沢[スーパー])。』

物価上昇のもとで節約志向が強まる高齢者・・・・うううう頭が痛い。

『・ 価格設定に関して、店舗ごとに需要動向を踏まえた値付けを実施しているほか、独自メニューも提供しており、地域の実情に応じた商品提供と価格設定を行うことで消費者からの支持獲得につながっている(岡山[飲食])。』

後学のためにぜひ具体的にどうなっているのか拝見したいですいやマジで。

『・ 人件費などのコスト増を転嫁する形で入場料を引き上げた。今後もコストの上昇傾向が続くため、コンテンツを拡充し、追加的な値上げを検討(新潟[観光施設])。』

まあこの手の施設は値上げ傾向強いですよね。

『・ 宿泊料金の引き上げがインバウンド需要に与える影響は軽微であることから、今後も値上げを継続していく方針(京都[宿泊])。』

インバウンドつええええええええええ

『・ 食材価格の上昇などから3年連続で値上げを行ったが、客足は落ち込んでいない。値上げの余地はまだあると感じており、競合他社の動向をうかがいつつ、慎重に進める計画(大阪[飲食])。』

マジかーーーーーー。

『・ 最低賃金の引き上げを踏まえ年末にかけて値上げを検討している。今後数年を見据えても、人手不足解消の見込みはなく、価格転嫁を継続する考え(本店[飲食])。』

飲食と観光関連がこれでは外食も国内旅行もできませんわって感じですが、それはワイだけの話で需要が落ちていないそうなので威勢が良いんですね。

『・ 競合メーカーとの価格競争が激しく、原材料や輸送費の価格転嫁はできても人件費の価格転嫁は難しい状況が続いている(鹿児島[電気機械])。』

『・ コスト上昇のしわ寄せが下請け企業に向けられないよう政府が旗振りをしているため、労務費も含めたコスト上昇分を、すべてではないものの、価格転嫁できている(水戸[窯業・土石])。』

最後のようにちょいと微妙なのが並んでいますが、こっちも威勢が良いにもほどがあるわけでして、まあ皆様景気のよろしいことでという話だし、これでむしろ10月政策調整しない方がオカシイわ、という話ではありますな本来的に言えば・・・・・・・・





2024/10/07

〇おそくなりましたが短観私家版チェック:まあ普通に「企業部門は強くてオントラック」ですよね

https://www.boj.or.jp/statistics/tk/gaiyo/2021/tka2409.pdf
短 観(概要)―2024年9月― 
 第202回  全国企業短期経済観測調査
< 回 答 期 間 > 8月27日 〜 9月30日

・業況判断DI:今回も強くて前回が見通し対比強くて今回も見通し対比強いんですよね(しかも今回は上昇)

          (6月短観)       (9月短観)
          現状→9月予測    現状→9月予測
製造業大企業   +13→+14     +13→+14 
製造業中堅企業  +8→+7       +8→+9        
製造業中小企業  ▲1→+0       +0→+0

非製造業大企業  +33→+27     +34→+28
非製造業中堅企業 +22→+16     +23→+16
非製造業中小企業 +12→+8      +14→+11

(前回7/2に書いた駄文から)
でまあそういう意味で「数字は前回から下がったけど内容的には強いんじゃね」という前回の見通しを達成(中小製造業除く)した上に水準も前回より強いってんですからこれはまあ文句なしに強いのですな。

ただまあここで突発性中村審議委員になってみた場合、製造業の中堅以下がそこまで強いわけでもない、というのが思いっきり気になってしまいまして、これを見て中村審議委員が「中小企業も含めて企業部門に死角なし(だから政策修正バンバンOKOK)」とはならないんじゃないかなーって思うので、その点ではうーんと唸ってしまいます。

まあ全体的に見ればクソ強いのはクソ強いというか、そもそも企業部門はここもとずーっとクソ強くて、一方で物価上がって家計部門が弱いってんですからそれを確認したという話ではありますが。
(ここまで7/2に書いた駄文)

今回ですけど、製造業大企業以外は「前回の見通し対比で現状DIが上振れ」だし、何なら非製造業がめちゃめちゃ強いですね、という感じですし、これ前々回も前回も見通し対比強い(前々回はそうは言ってもその前対比では下がっていたけど前回は上昇で今回も上昇)という流れでして、毎度毎度強いということで企業部門は強いし「オントラック」にも程がある世界。


・企業の販売価格見通しはツエツエ蠅としか申し上げようがない、と前回書いたがさらに堅調

販売価格見通し 全規模合計 全 産 業
1年後 9月:3.1%→12月:3.2%→3月:3.3%→6月:3.0%→9月:2.8%→12月:2.6%→3月:2.7%→6月:2.8%→9月:2.8%
3年後 9月:3.8%→12月:3.8%→3月:4.0%→6月:3.8%→9月:3.8%→12月:3.7%→3月:4.0%→6月:4.1%→9月:4.1%
5年後 9月:4.2%→12月:4.3%→3月:4.6%→6月:4.4%→9月:4.4%→12月:4.4%→3月:4.7%→6月:4.8%→9月:4.9%

大 企 業 製 造 業
1年後 9月:3.2%→12月:3.0%→3月:2.9%→6月:2.5%→9月:2.4%→12月:2.2%→3月:2.2%→6月:2.3%→9月:2.2%
3年後 9月:3.1%→12月:3.0%→3月:3.2%→6月:2.8%→9月:2.9%→12月:2.8%→3月:2.8%→6月:3.2%→9月:3.1%
5年後 9月:3.2%→12月:3.1%→3月:3.5%→6月:3.0%→9月:3.1%→12月:3.0%→3月:3.1%→6月:3.3%→9月:3.4%

大 企 業 非製造業
1年後 9月:1.9%→12月:2.1%→3月:2.4%→6月:2.1%→9月:2.2%→12月:2.0%→3月:2.0%→6月:2.1%→9月:2.1%
3年後 9月:2.4%→12月:2.6%→3月:3.0%→6月:2.8%→9月:2.8%→12月:2.7%→3月:2.8%→6月:3.0%→9月:3.0%(前回分3.1→3.0)
5年後 9月:2.8%→12月:2.9%→3月:3.4%→6月:3.2%→9月:3.4%→12月:3.2%→3月:3.2%→6月:3.4%→9月:3.5%

(前回7/2に書いた駄文から)
ちょwwwwwwwおまえらwwwwwwまた上昇しとるやないかwwwwwwwww

って3月短観で書いたのですが、なんか上昇加速してるじゃんということで、しょみーんの財布には1ミリも優しくない訳ですが、それはおどれがてーして給料も上がらん程度の無能だから仕方ないんですねわかります。

てかさ、そういう実質ベースの調整がしやすくなるのがインフレレジームのメリットだということを勘案しますと、そもそも論として実質賃金のプラスとか好循環とかいうのがインフレ目標政策で掲げられていることが頭おかしいとしか言いようが無いわけで、これ言い出した黒田は罪万死に値するし、それを否定するどころかさらに拡大再生産している植田は地獄の火の中に投げ込まれるべきという話になりますわな。
(前回7/2に書いた駄文から)

いやーもう前回7/2だから円安が160円に乗っかって来てたのでエライ怒り狂っておりますがwwwwwww

前々回も強くて、前回強いじゃんってなっている訳ですが、これ円安修正になった今回の時間帯(8/27〜9/30)になるのですが、円安修正されても販売価格見通し碌すっぽ下がっとらんやんけ、何なら非製造業維持&プラスじゃんということで、企業部門の価格設定は強いでございますことよ、という感じですな。


・企業の物価全般見通しですがこういうのは「インフレ期待が2%にアンカーされている」と言わんのか???(って毎回書いてる)

物価全般見通し 全規模合計 全 産 業
1年後 9月:2.6%→12月:2.7%→3月:2.8%→6月:2.6%→9月:2.5%→12月:2.4%→3月:2.4%→6月:2.4%→9月:2.4%
3年後 9月:2.1%→12月:2.2%→3月:2.3%→6月:2.2%→9月:2.2%→12月:2.2%→3月:2.2%→6月:2.3%→9月:2.3%
5年後 9月:2.0%→12月:2.0%→3月:2.1%→6月:2.1%→9月:2.1%→12月:2.1%→3月:2.1%→6月:2.2%→9月:2.2%

中小企業 製 造 業
1年後 9月:3.0%→12月:3.1%→3月:3.2%→6月:2.9%→9月:2.8%→12月:2.7%→3月:2.6%→6月:2.7%→9月:2.6%
3年後 9月:2.5%→12月:2.5%→3月:2.5%→6月:2.4%→9月:2.4%→12月:2.4%→3月:2.4%→6月:2.5%→9月:2.5%
5年後 9月:2.3%→12月:2.4%→3月:2.3%→6月:2.3%→9月:2.3%→12月:2.3%→3月:2.4%→6月:2.5%→9月:2.4%

中小企業 非製造業
1年後 9月:2.7%→12月:2.8%→3月:3.0%→6月:2.8%→9月:2.8%→12月:2.6%→3月:2.6%→6月:2.6%→9月:2.6%
3年後 9月:2.3%→12月:2.4%→3月:2.5%→6月:2.4%→9月:2.5%→12月:2.4%→3月:2.4%→6月:2.5%→9月:2.4%
5年後 9月:2.2%→12月:2.2%→3月:2.3%→6月:2.3%→9月:2.3%→12月:2.3%→3月:2.3%→6月:2.4%→9月:2.4%

(3月短観時のコメントはこちら)
これさあ、もう完全に「安定期」に入ってるじゃんという話でして、これでなんで期待インフレがまだ2%に行ってない!とか言い切るわけあのハトハトチキンジジイは、というお話な訳ですけど・・・・・・・(ちなみにハトハトチキンちゃん頼みの物価連動国債のBEIが足元ツエツエ蠅なのは先ほど申し上げた通りですw)。
(ここまで3月短観時のコメント)

(でもって6月短観時のコメントはこちらでしてですね)
って3月短観の時にも書いた(というか上記小見出しがそもそも前回と同じw)のですが、これでなんでインフレ期待が2%じゃないって言い張っているのかが全く意味がわからなくて、この物価上昇局面で完璧なまでに外しまくってもうお前ら全員退場しろとしか言いようが無いESPフォーキャストとかいうポンコツサーベイ持ち出して説明するのいい加減止めてくれませんかねえ。

ちなみに物価連動国債のBEIはなんだか知らんけど月末月初の2日で突如下がってしまったのですが、それでも10年カレントで150とかなんで、たしかにまあ200じゃないけどこれが200行ってないから市場の織り込むインフレ期待が2%にアンカーされていないというのは話に無理があるんじゃねえのとは思いますけどね。
(6月短観時のコメントはここまで)

ということで今回ですが、もうこれどこからどう見ても「企業のインフレ期待は2%でアンカーされている」としか言いようが無い筈なんですけれども、なんでいつまでたっても物価行ってないって話になるのやら、という感じであります。なお物価連動国債ちゃんのBEIは株式市場がウニョウニョしているせいなのか、はたまた海外のインフレ鎮静化モードのせいなのか知らんですけれども、10年カレントBEIで直近120近辺になっているんですよね〜。


・販売価格判断:販売価格判断下がっていますが仕入価格判断はそれ以上に低下と

            (6月短観)         (9月短観)
           現状→9月予測      現状→12月予測
製造業大企業   +29→+27       +26→+26
製造業中小企業 +30→+37       +29→+32

非製造業大企業  +29→+30      +29→+30
非製造業中小企業 +28→+33      +28→+33


・仕入価格判断
          (6月短観)          (9月短観)
          現状→6月予測      現状→12月予測
製造業大企業   +47→+44      +41→+39
製造業中小企業 +61→+62      +57→+56

非製造業大企業  +47→+46     +46→+44
非製造業中小企業 +55→+58     +53→+55

(6月短観の時のコメント)
これね、前回はノルム変化とか申し上げていましたが、仕入判断が前回対比上がって販売判断が前回対比上がっている訳でして、ノルムとかそんなぬるいものではなくて、ただの輸入価格コストプッシュの前向き(全然前向きじゃないけど)循環メカニズムがワークしているようにしか見えませんし、足許では財務省や内閣府からも苦情の出る驚異の馬鹿コミュニケーションによって一段と円安になっている訳でして、いやマジでこれどうするの。(ここまで6月短観の時のコメント)

今回って販売価格判断が前回比下がっているのですが、仕入価格判断はそれ以上に下がっているので、結局のところ強いじゃんというお話に見えます。つまり結局強いということで。


・雇用判断DI:前回は中堅中小が悪化していましたが今回は前回並みから若干強い

            (6月短観)        (9月短観)
           現状→9月予測     現状→12月予測
製造業大企業   ▲18→▲18     ▲19→▲22
製造業中堅企業  ▲23→▲28     ▲23→▲28
製造業中小企業  ▲23→▲31     ▲23→▲30

非製造業大企業   ▲39→▲38    ▲39→▲39
非製造業中堅企業  ▲46→▲49    ▲45→▲48
非製造業中小企業  ▲45→▲51    ▲47→▲52

(6月短観時のコメント)
ということでして、まあ水準自体強いのはいつもの通りなのですが、これ気になるのは「現状判断DIを前回対比で見た場合」ですけど、大企業はマイナス幅拡大=雇用不足感の拡大になっているのですが、それこそ中村審議委員(たぶん他にもハト系の人でいると思うんだが)が注目する中小企業に関しては、中堅以下が地味に前回対比でマイナス幅が縮小=雇用不足感の縮小になっているのが地味に痛くて、これはチキン総裁がチキンの理由にしたくなるのに絶好の展開。
(6月短観時のコメントここまで)

などと6月短観の時に書きましたが、今回は普通に前回対比強い(マイナスが大きい)ということで、雇用判断DIは強いってえことでよろしいかと思います。


・その他

想定為替レート
(参考)事業計画の前提となっている想定為替レート(全規模・全産業)

2024年度 米ドル円 
2024年3月調査:通期 141.42 上期 141.60 下期 141.25
2024年6月調査:通期 144.77 上期 144.96 下期 144.59
2024年9月調査:通期 145.15 上期 146.00 下期 144.31

9月短観でもまあ普通に円安が前回対比で進んでしますね。

設備投資計画
・・・・・はグラフの方を見る話になるのでこっちには貼れない(スキルがない)のですが、こちらもまあ堅調なんすかね。

でですね、これが7月2日に書いた駄文で、7月末は結局利上げしているのですが・・・・・・・・

(6月短観時のコメントから)
アタクシこのへんただ門前の小僧としてみているだけなのであれなんですけど、この数字だと強いには強いのでしょうけれども、政策修正慎重派の腰をあげさせるほど強いのかというと、「企業部門が強い」ってのはそもそも論としてメインシナリオのど真ん中に鎮座している話だと思われますので、そういう意味ではただの「見通し通りに推移しておりますなあ」だけで短観一発で7月利上げまでセットで打ち込んでくださるのはちょっと力不足かなとは思ったのですがどうでしょうか。

まあその前に円安がちまちまと進行しておられる次第なのでそっちのせいで云々というのは大有りだし、何なら神田大明神最後のご奉公でちょっとハトハトチキンをシバキ上げて輪番大減額と0.25%への利上げを飲ませてから退任していただけると誠にありがたいのですがwww
(6月短観時のコメントここまで)

って自分で書いているのが中々恥ずかしい(金融政策の読み筋が外れているから)のですが、まあこの時は正直7月利上げまで行くとは思っていなくて精々7月予告ホームラン9月利上げで見ていたのですが、折から円安がバンバン進行して(6月終わりに160円突破した)このまま決定会合まで持つんでしょうか、って感じになってきていた時ですよね。

でまあ今回ですけれども、短観が全体的にクソ強いわけでして、少なくとも企業部門に関して言えばオントラックもオントラックで、こんなに順調に推移しているんだったら金融緩和の度合いを調整しない方がおかしいわ、という世界になるわけですな。

今月の決定会合は総選挙の結果が出た直後に近いタイミングだし米国大統領選挙もありますから動けん、というのはまあ理解するんですけど(本来はそんなの関係ないんですけどね)、この流れですと10月会合でまたまた12月1月に向けて威勢の良いこと言い出しそうだし、円安も進んでいるから決定会合の時の位置次第では円安牽制もかねてかなり威勢の良いことを言っても不思議ではない、ということになってしまいました。じゃあそうなるかと言いますと、7月会合で威勢の良い発言→8月頭に火消というよりも逆方向に思いっきり舵を切る株式市場従属宣言→8月後半は直前の株式降参を中和気味に推移→9月決定会合で思いっきりハトハトに舵を切る→10月会合では・・・・、ということで、10月会合で今度は普通に12月1月とかに政策調整をするのを排除しないみたいな話をおっぱじめると、また日銀はブレた、と見なされてしまって市場との対話が成立しなくなる(今でもかなり成立していないけど)のですが、まあ「丁寧な説明」とやらを見せて貰おうじゃないの、といったところで楽しみにしております。

12月短観は12月の半ばに出てくるのですが、12月短観も強かったらまさに12月1月なんもしない言い訳どうするのという話だし、オントラックなら政策調整って言ってるんだからそもそも論として10月だって政策修正しない理由は何なんですかってな話になるんですよね、さて12月短観の時にこの駄コメントを見てどういう思いになるのでしょうかアタクシはw




2024/10/03

〇7月決定会合議事要旨での話だが先行きの金利政策の部分が9月に合わせにいって会見と齟齬がある気がしますけど

すいません月曜にネタにした7月会合議事要旨の続きです
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2024/g240731.pdf
政策委員会
金融政策決定会合
議事要旨
(2024年7月30、31日開催分)

月曜は米国経済に関する部分を主に見て、何でこのトーンの議論をしていたのに9月会合後の植田総裁の会見では「米国経済下振れリスクガー」の連呼になっていたのか、という話をした訳ですが、何のことはない9月会合主な意見を拝読しました結果、昨日ネタにしましたように、そもそも政策委員会が全般的に「米国経済下振れガー」の連呼になっていた、というのが確認できた訳ですが、利上げの決定と先行きの金融政策に関する部分でではじゃあどういう話になっていましたか、ってな訳で確認をしておきましょうという企画です。

『W.金融政策運営に関する委員会の検討の概要』

その前に国債買入減額の話にツッコミを

・日銀の国債買入減額を「事実上の歴史的な国債大量発行」という言説に対するツッコミがあった件

『まず、委員は、長期国債買入れの減額計画について議論した。』

から始まるところですが、なんか間の抜けた意見がありまして、

『また、別の委員は、債券市場参加者会合では減額に対する見方には相応にばらつきがみられており、予想形成が一方向に偏ることによる市場の混乱のリスクは高くないと指摘したうえで、こうした状況では、国債買入れの減額は緩やかなペースで着実に実施していくことが望ましいと述べた。』

えーっとすいません、予想がばらけていて市場の混乱のリスクが高くないんだったら本来望ましいのは国債買入をより大きく減額することなんですから、大きなペースで減額すればいいんじゃないですかねえ何言ってるんだこの人は、と思いましたがこれは前座でこの直後にメインイベントがあります。

『具体的な減額幅について、一人の委員は、仮に国債買入れの減額を市中への国債供給の増加という点で新規発行と同等と捉えると、今回の減額により、歴史的にも有数の大量発行局面を迎えるとも捉えられると指摘した。』

まあ誰なのかは皆様もご案内と思うのですが、これに対してこの指摘がありまして。

『この点に関連し、ある委員は、新規国債の発行と異なり、国債買入れの減額は金融機関の保有する日本銀行当座預金の減少を伴うものであり、金融機関は負債を一定とすればその分、何かの資産を購入することになる ---その意味で、資金面ではニュートラル ---と指摘した。』

この書き方、まとめ方が微妙に悪いので微妙になっていますけど、まあそもそも論として超過準備が死ぬほどある状態で、その超過準備を日銀当座預金付利によって実質不胎化しているのですから、この付利付き当座預金が減少したからと言って、超過準備が死ぬほどある状態は変わっていないので、実質的にはニュートラルになるんですよね。もちろんこの不胎化した超過準備がマネタリーベース直線一気理論でインフレ期待に効くとかいうような幻想的な思考をお持ちの方にとっては違う話になりますがwww

なお、この委員は、

『そのうえで、この委員は、金融機関のリスクテイク余力という観点からは、国債買入れの減額を進めると、当面は問題ないとみられるが、先行き国債の買い手不足が意識される可能性もありうると述べた。』

ということは補足しています。


・「消化能力を超えた国債発行を日銀がファイナンスする」というのを前提にした話をしているのは中銀として如何なものか

それからですね、この直後に別の方々が、

『一人の委員は、金融規制などを前提とすると、執行部案を大幅に上回るペースで減額を行うと、市場のリスクテイク余力の低下から金利上昇圧力が強まり、減額計画が強い金融引き締め効果をもたらすリスクがあると指摘した。』

『別の委員は、国債買入れの減額計画の目的は、あくまでも市場領域の回復であり、金融引き締めにあるのではないとの見解を示した。』

と言ってて、これ一見もっともらしいのですが、そもそも論として消化能力を超えて国債を発行しているのであれば、そのこと自体が凶悪な害悪なのであって、それを日銀の買入で補うという発想そのものが財政ファイナンスということで、まさに悪性インフレを招く話になるわけでして、中央銀行がこういうことを顧慮している、というだけでも本来は格下げもんだと思うのですが、まあ緩和ジャンキーで頭おかしくなっているのが世の中の風潮なので、幸いにも(幸いじゃないけど)スルーされているのですが、中銀は中銀らしく筋を通したうえで「でも現実問題として」というのならわかるのですが、この人たちその筋論言ってるのか言ってないのか謎、というか多分分かってないんじゃないかという感じがするので甚だ頭が痛いわけですな。


・しかし先行きの金融政策運営でこの話をしていたら何で会見の時にあんなに威勢がよかったんでしょうか

ちょっと先に行って金利の方の先行きの話から。

『先行きの金融政策運営について、委員は、経済・物価・金融情勢次第であるが、現在の実質金利がきわめて低い水準にあることを踏まえると、経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことが適当との見方で一致した。そのうえで、2%の「物価安定の目標」のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営 していくとの考え方を共有した。』

ねえねえ何でベタ降りになっちゃったの??

『ある委員は、今回の政策変更後も、物価が見通しに沿って推移するもと、堅調な設備投資や賃上げ、価格転嫁の継続といった前向きな企業行動の持続性が確認されていけば、その都度、金融緩和の一段の調整を進めていくことが必要である との意見を述べた。』

この人がベタ降りしているのかは存じませんが、何でこれが急に米国経済下振れリスクガーになるんでしょうかね。

『別の委員は、2025 年度後半の「物価安定の目標」実現を前提とすると、そこに向けて、政策金利を中立金利まで引き上げていくべきであると 指摘した。そのうえで、この委員は、中立金利は最低でも1%程度とみており、急ピッチの利上げを避けるためには、今後も、経済・物価の反応を確認しつつ、適時かつ段階的に利上げしていく必要があるとの見方を示した。』

田村抜刀斎オッスオッス。

『これに対し、一人の委員は、金融政策の正常化が自己目的になってはならず、今後の政策運営については、今回の政策変更も含め、正常化を進めていくことに伴う様々なリスクに目配りして、注意深く進めていく必要があると述べた。』

自己目的云々って今回の主な意見にもあるのだが、田村さんと思しき方の言ってるのは「お前らの見通しが正しいなら論理的にいってこういう政策をしないとおかしいだろ」ということな訳で、まあこの意見の人が物価目標金輪際行かないと思っているならこの意見でも話の筋は通っていますけれども、だったら展望レポート基本的見解の記載に反対しろよとしか申し上げようがありません。

『また、別の委員は、中長期の予想物価上昇率が2%にアンカーされていないもとで、引き続き物価は下方リスクに脆弱であり、市場で、先行きの利上げ観測が強まりすぎることは避けるべきであると述べた。』

じゃあ声明文の記載(先行き緩和度合いの調整をしていく云々の記述)に反対しろよということで、なんかもう滅茶苦茶なんですけどこの人たち。

『この間、ある委員は、長らく短期金利を引き上げた経験がないわが国では、中立金利の水準を巡る不確実性が大きいと指摘した。そのうえで、この委員は、中立金利の試算値から到達金利を定め、そこに向けて機械的に政策金利を動かしていくという政策運営は難しく、実際には、今回の利上げの影響を含め、短期金利の変化に対して経済・物価がどのように反応するのか点検しながら、政策金利の道筋を探っていくほかないとの見解を示した。』

なんか抜刀斎がボコボコにされているように見えてしまいますが、そもそも中立金利水準が1%って実質均衡金利マイナス1%なんだからクソのように低い推計値であって、これが抜刀斎が中立金利3%って言って話をしているならこの反論も成立するのですが、1%ってアホみたいに低い金利に向けてあげるのもダメですみたいなのってお前ら脳味噌ついてるのかという世界の議論ですわな。

でまあそんだけハトハトなら(議事要旨が出てくるタイミングがなんせ9月末ですから、ここの部分って後付けで抜刀斎をボコボコにしているような部分を殊更にフレームアップして今回のハトハトベタ降りムーブを正当化しようとしているんじゃないか疑惑が濃厚にあるんですけれども)なんで7月会合後の記者会見のときに4月から一気呵成にジャガーチェンジしたような発言してたんだよ、と考えますと、何かこの辺りの記述はちょっと怪しげなものも感じますな。なんせ今の植田日銀、妙なところでしょうもない小細工をするという無駄に器用なところがあるので。

というところで出遅れましたが7月会合議事要旨の続きでした。




2024/10/02

〇9月会合主な意見:7月の議論は何だったのかという振れ幅だがこれで10月また振ったら絶許

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2024/opi240920.pdf
金融政策決定会合における主な意見
(2024 年 9 月 19、20 日開催分)1

9月会合後の会見における植田総裁の「米国経済の下振れリスクガー」の連呼やら、24日の大阪経済団体懇談会での講演でのハトハトチキンぶりは、植田さんが勝手に口を滑らかにして言っていたわけではなく、政策委委員会としての大勢意見だった、ということを確認できましたし、このようなアホウにもほどがある振れ幅で動いている政策委員会は即時解散しろと思いました、というのが感想ですわな。

とにかくね、なんかもう軸もなくあっちにフラフラこっちにフラフラされますと、金融市場もそれに応じて振れざるを得なくなるわけで(だんだん無視する傾向に円債の方はなりつつあるけど流石に丸無視するわけにもいかないですからやっぱり動く)、市場に無駄な不安定性をもたらしているのは日銀政策委員会なので、委員会の皆様におかれましては、ドラム缶で行く隅田川川下りと東京湾海底探索ツアーただし片道切符、というようなツアーにご参加されることを切に願って止みません。

あ、軸がしっかりしている田村委員と中村委員(中村委員の政策に関する意見には賛同しかねる部分があるが仰っていることには筋が通っていますのでその点は評価していますわアタクシ)はドラム缶川下り&海底探検ツアーに参加されなくても結構ですし、たぶん氷見野さんも参加しなくてよろしくってよ、ってのは付け加えておきますwwww

ということでまあそういう話やぞ、というのが主な意見ですが、おまけにこの主な意見の出来の悪さがかなり目立つというのも悲しいです。ということで以下サラサラと。


・政策修正後の動きに関する意見の中に「隠れハトハト」がいますな

『T.金融経済情勢に関する意見』の『(経済情勢)』から参ります。最初から何も考えずに全部並べてみますね。

『・わが国経済は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復しており、先行きも、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まることから、潜在成長率を上回る成長を続けるとみられる。』

大本営大本営。

『・ わが国経済は、足もと緩やかな回復を続けているほか、物価も着実に上昇しており、概ね想定通りの動きとなっている。この現状から、これまで実施してきた一連の政策変更が金融経済情勢に負の影響を及ぼす兆候はみられていない。』

オントラックオントラック、ということですが、この意見後半の書きっぷりが気になったのですよね。

と申しますのは、そもそも7月の政策修正って言うのは「緩和度合いを適正にするための修正」であって金融引き締めでも何でもない施策だし、緩和度合いを適正にするってえことは、そもそも論として「このままの緩和度合いを継続するのは適切ではない」という判断で政策修正を実施したのですから、本質的に「こまで実施してきた一連の政策変更が金融経済情勢に負の影響を及ぼす」ということ自体があり得ない話であるのでして、こういう言い方をするってえのはこの意見描いている人が内心で「3月のマイナス解除や7月の利上げは適正じゃないかも」って思っているという話で、つまりは現状維持バイアスがある人、って事になるんですよね。

なのでまあこの意見には引っかかるものがあって、誰だか知らんけどオントラックと言いながらもなんかの拍子でハトハトになるタイプだな、と思ってしまいました。

次の意見と比較対比すればより分かりやすいかと思うのですが、

『・ 国内の賃金・消費・設備投資・企業収益・物価などの最近の指標は、いずれも7月の
利上げの適切さを示す内容となっている。』

ということでですね、さっきの意見は本来こういう書き方をされて然るべきなのですけれども、さっきのような書き方になるのは「隠れハトハト」ということがお分かりになるかと存じます。


・米国経済下振れ三銃士登場なのですが円高を気にしているのが2人いるのはセンスがワケワカメ

じゃあ次に行きますがここからが「米国経済下振れガー」三銃士登場。

『・ 米国経済やFRBの利下げペースに関する不確実性が増しており、わが国の為替や企業業績に負の影響を及ぼす可能性に注意が必要である。』

三銃士1号のおもろいのは「我が国の為替」って言ってることで、文脈から言ってこれ為替円高の方を懸念しているようにしか読めなくて、いや160円の円高は是正したけどまだ140円半ばあたりの水準なんですけど、ここからの円高を懸念ってどういうセンスをしているんだよとしか申し上げようがないし、そもそもそんな円高行かねえだろうよ昔と構造違うんだぞと思うのですけどねえ。

『・ 米国経済は、家計や企業のバランスシートが健全で金融環境も安定しており、ソフトランディングを想定しているが、雇用を中心に底入れが確認できるまで注意深く見極める必要がある。』

『・ 米国経済はソフトランディングする可能性が高いが、そのための利下げの幅によっては、ドル安・円高、株安となるリスクがある。この点の見極めには、なお時間を要する。』

でもって三銃士2号はさておいて、三銃士3号までも円高懸念を表明していまして、いやいやいや何ゆうてますのん、と思ってしまうのですが、そもそもなんもなかったら円安じゃろ(米国利下げって言ってるけど日米金利差いくらありますねん、金利差だけの話じゃないけどさ)と思いますし、多少の円高になった方が国民厚生上マシとしか思えないのですが、そんなに140円割れる円高にナーバスになる必要があると思えないのですけど、まあこういう懸念が出てくるのが(ノ∀`)アチャーって感じです。


・残りの意見も全体的にハトチックなものが多いがそこまでのストロングハトかというとそうでもなさそう

続きまして米国ガーですけれどもこれはまた別の切り口。

『・米国の新政権の下で財政の拡大、移民の制限、保護貿易の強化などの政策がとられる場合、インフレが再燃し、米国の中長期の金利が上昇する展開も考えられる。』

ほうほう。

『・ 8月来の金融市場の変動が経済・物価に与える影響は大きくなく、経済・物価は見通し通り、オントラックで進んでいる。次回利上げに向けて、当面、@消費者物価、A来年の春闘に向けたモメンタム、B米国経済の推移に注目している。』

これはまあ利上げと言っているので米国経済ガーではないけど、来年の春闘に向けたモメンタムとか言ってると来年3月4月まで利上げできないんですけど大丈夫かよという気がするのでハト味がありますわな。

『・ 従業者の7割が働く中小企業は、防衛的賃上げが多く、稼ぐ力は力強さに欠け、消費者の節約志向を生む。将来不安の払拭に必要な実質賃金増加の定着に向けて、成長志向の中小・中堅企業の設備投資が積極化するか確認する必要がある。』

これは貫録の中村委員ですね。まあ言ってることはわかるのだが、それと政策金利の話って別もんじゃないのという話ではあるのだが。

『・ 円安修正が急速に進むもとで、原材料価格低下に伴う価格転嫁の巻き戻しや輸出数量の減少が続き、企業業績、賃上げ意欲や個人消費に影響することを懸念している。』

円安進むと消費マインド悪化するんで消費に影響云々は目先はプラスなのではないかと思うし、価格転嫁の捲き戻しの前にコスト低減効果の方が先に来ないかと思うのですが、まあハトハトなのはわかった。

『・ 身近なものの価格が大幅に上昇してきた中で、需要が維持されるかが重要である。賃金の動向を重視しているが、コロナ禍以降、消費者の行動様式が変容していると考えており、引き続き分析を充実させていくことも重要である。』

微妙に玉虫色。


・物価がオントラックで推移しているかを点検する時間帯なのに物価の意見が3本しかないんですが

『(物価)』を見ますと意見が3個しかない、しかも1個はただの大本営なので実質2個しかない、という事実には呆れて物も言えないのでお前らそこにあるドラム缶クルーズ船にちょっと乗ってくれませんですかねえというお話であるが気を取り直して引用引用。

『 ・消費者物価の基調的な上昇率は徐々に高まっていくと予想され、「展望レポート」の見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。』

これはただの大本営ですね。

『・ 円高進行や原油価格下落から、物価上振れリスクは後退しているが、再びデフレに戻る状況ではない。』

お、強気(というほどの話でもないが)。

『・ これまで長く続いてきた実質賃金低下による実質消費の押し下げが、足もとようやく和らぎつつある可能性がある。他方で、消費者の側にはまだ価格は上がらないのが当然という意識が根強く残っているようにもみえる。そうした意識が確かに薄らぎつつあるのか否かについては、今後もよく注視する必要がある。』

まあこれはよくわからんとしか言いようが無いですよね。ワシはかなり薄らいでいるようにも見えるけど。


・金融政策運営に関する意見がこれでもかというハトハトチキンのオンパレード

全部植田さんが書いたのかと思ってしまう勢いで笑ってしまうしかありませんでした。では『U.金融政策運営に関する意見』の意見も折角だから全部引用しましょう。なぜか意見が13本もありますなw

『・ 経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて、金融緩和の度合いを調整していくという基本的な考え方に変わりはない。もっとも、金融市場は引き続き不安定な状況にある。政策判断に当たっては、内外の金融市場の動きそのものだけではなく、その変動の背後にある米国をはじめとする海外経済の状況などについても、丁寧に確認していくことが重要である。』

まるで普段丁寧に確認していないみたいですねwwwwww

というまぜっかえしはさておき、「金融市場は不安定」だわ「米国経済」だわ「海外経済」だわともう一発目からチキン音頭が華麗に流れておりまして、以下ハトハトチキン音頭でポンコツの皆さんが盆踊りをしているのを鑑賞するコーナーになります。

『・ 当面は、米国はじめ海外経済や金融資本市場の動向と、それらが見通し・リスク・確度に及ぼす影響を見極めるべき局面である。最近の円安修正に伴って、輸入物価上昇による物価上振れリスクも減少しているので、見極めるための時間的余裕はある。』

「見極めるための余裕がある」ってのハトハトチキン総裁が言いそうな意見ですが、4月から6月の為替の動きを忘れているんじゃないですかねえ余裕なんてのはあっという間になくなるかもしれないのにそういって円安を誘発するリスクを高めているの間抜け以外の何物でも無いんですけどねえ。

『・ 一定のペースで利上げをしないとビハインドザカーブに陥ってしまうような状況にはないので、金融資本市場が不安定な状況で、利上げすることはない。』

「ない」って言い切っているんですがビハインドにならないという判断根拠は何なんですかしらそんなにロバストでレジリアントな確信でもあるんですか????

『・ 「物価安定の目標」が実現しておらず、金融経済情勢を巡る不確実性が払拭できない中、現時点では本格的な引き締め政策への転換を連想させるような追加的な政策金利の変更は望ましくない。』

これは野口委員っぽいですが、どこの世界に本格的な引き締め政策をしろと言ってる人がいるのか、って話でして、こういう藁人形論法をするのがリフレ派残党っぽい意見ですなと思いました、まる。

『・ 海外経済の不確実性が高まっただけに、市場変動の影響も見極めるため、当面は海外・市場動向を見守り、金融緩和の一段の調整は不確実性が低下した段階にすることが妥当である。現在の緩和的な金融環境を粘り強く続ける我慢の局面と言える。』

我慢じゃなくてチキンでしょ、ってなもんでして、我慢した結果円安に飛んでまた泣きながら利上げする破目に追い込まれるに100万ジンバブエドル。

『・ 政策金利は、見通しに大きなマイナスの変化がないことが確認できるのであれば、時間をかけすぎず、引き上げていくことが望ましいとの考えは不変である。ただし、利上げ自体を目的とはしていない。日本経済の健全な成長に対する期待に見合う水準程度まで徐々に上げていけることが理想である。センチメントが実体経済に及ぼす影響も考慮し、政策変更には適切なタイミングを選ぶ必要がある。』

玉虫色ですなあ。という感じですが、この後に田村さんと思しき意見があるのでこれは田村さんじゃない可能性があるなと思いますし、この意見の書きっぷりを見ていると、「そもそも現状の金融緩和が経済物価情勢に対して馬鹿みたいな超緩和をしている」という認識を実は持っていないからこういう書き方になるんじゃないのかな、って思う次第です。

『・ 経済・物価がオントラックで推移していく場合、早ければ 2025年度後半の 1.0%という水準に向けて、段階的に利上げしていくパスを考えている。したがって、今回、政策金利は現状維持でよい。』

これが田村さんですね、前半の文と後半の文の接続詞は「したがって」ってのが一瞬読んでて???になるわけでして、これ接続詞を頭にしないで「連続利上げの必要はなく、政策金利は現状維持でよい」の方が趣旨が初見で伝わると思うのですがどうでしょうかね、と共通一次の現国を得意としていたワイ的には思うのですがまあ他の意見も併せて字数の関係ですかしら。


『・ 今後の政策運営は、下方リスクに十分配慮し、データを慎重に確認して進める必要がある。』

はいハトハトのおかわり来ました〜っと。

『・ 世界経済の下振れリスクとともに不確実性も高まった。市場にサプライズを起こさぬよう、日本銀行として、実体経済の変化の予兆や進捗を示して市場・企業の理解を高めたうえで、データの変化を点検し、改善に応じて金融政策を修正する、データディペンデントな姿勢について、浸透を図ることが重要である。』

何が「サプライズを起こさぬよう」じゃお前らのブレブレが毎回サプライズなんじゃ、とは思いますが、後半でデータディペンデントってちゃんと言っているので田村さんがぶぶ漬け話法を使っているのかも
しれません。

『・ 追加的な利上げを行う局面では、政策スタンスを始め、市場との対話を従来以上に丁寧に行う必要がある。』

お前らの「丁寧な説明」は破綻のゲロゲロマーライオン状態でノイズをまき散らしているだけで、全く持って「無能な働き者」にも程がある、ということを分かっていない無能な働き者の意見なので、日銀様に置かれましては今後とも益々ノイズをまき散らして大変なことになる、に1兆ジンバブエドル。

『・ 長らく利上げを行っていなかったこともあり、言葉に対する日本銀行と市場の共通理解が薄れてしまっている面がある。市場とのずれが生じない発信、ずれが生じた場合の適時の修正等、コミュニケーションの改善に努めるべきである。』

何かコミュニケーションの話が最後の方に並んでくるのですが、そもそもお前らが無能な働き者以下同文。

『・ 経済状況の進展などによって日本銀行の経済に対する見方に変化が生じ、市場の見方との間に齟齬が生じる可能性がある場合には、そのギャップを埋めるべく、可能な限り丁寧なコミュニケーションを行う必要がある。』

そもそもお前らが無能な以下同文。

『・ 基調的な物価上昇率や経済・物価の見通しやリスク、見通しが実現する確度に関するコミュニケーションについて、丁寧な情報発信が必要である。』

そもそも以下同文。

ということで、なんか4本も「丁寧な情報発信」があるのですが、田村委員が先般の金懇で言及していました「情報発信そもそもアカンかったのではないかと反省すべき」というようなレビューではなく、「よーしパパ張り切ってもっと懇切丁寧に説明しちゃうぞー」となっているのがもう救いようがないのですが、皆様におかれましてはドラム缶以下省略。


・これだけハトハトチキンを並べているんでしたら・・・・・・・・・

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241001/k10014597551000.html
日銀 9月会合の主な意見公表 “利上げ 慎重に検討すべき”
2024年10月1日 14時57分

『日銀は政策金利の据え置きを決めた9月の金融政策決定会合の主な意見を公表しました。委員からは海外経済や金融市場などのリスクに関する指摘が相次ぎ、この先の利上げについては慎重に検討すべきだという意見が相次いでいたことがわかりました。』(上記URL先より)

とまあこういう受け止めになるのは当たり前田のクラッカーな訳ですわな。

・・・・・まあ今までの日銀のブレブレっぷりを見ていると「またブレブレか!」と思って話半分にこの主な意見を読む向きもあるでしょうし(円債方面はそういう人がだんだん増えているようには思えます、知らんけど)、一方で就任以降のハトハトチキンぶりを思い出して「やっぱり日銀の本質はハトハトチキン」と見る人もいると思うのですが。

でもまあ書いてあることを額面通りに読んで、その行間から出てくるハトハトチキンの強い香りを感じますと、素直に読めばこれだと次の利上げってどう見たって3月4月辺り、下手したら来年の6月7月じゃろ、と読んでも全然おかしくない訳ですよ。

でですね、別に政策委員会の皆さん(のうち田村さんと中村さんはとりあえず除外です為念)がそういう強い見通しを持ってこの情報発信をしているんだったらまあそれはそれで良いんですけれども、この人たち(田村さんと中村さんは別です、しつこいですけどw)は円安に為替が飛べばブレるし、株が下がればブレるし、何なら今回だと「高市リスク」を意識しててブレた可能性も否定できない訳でして、本来は経済物価状況に応じて進めていく金融緩和の修正に対してもホイホイと他の要因でぶれてしまう訳ですよ。

と考えますと、こいつらのハトハトチキンって「10月会合の利上げはありません」という予告はしているけれども、12月会合に向けてまた豹変するかもしれないし、何なら10月展望レポートでまた「経済物価情勢はオントラック」を強調しだしても何ら不思議ではないという困った方々なのでして、説明していることの時間軸が近視眼にも程があるので、そりゃ一々市場の期待が大きく動いてそのたびに市場が大きくぶれる罠、と思うのですが、どんどんその近視眼がつよくなっているようにしか見えないわけです。

それにだいたいからして今の時点でそんな先の政策を決め打ち可能な状況ではない筈なのに、まるで先行き経済への確信がものすごい勢いであるかのようにハトハトチキンに思いっきり振った情報発信を(この主な意見だけではなく9月会合会見や24日の講演などでも)出してしまうというのがもうダメダメなんで、これは委員会の問題なのか振付師の問題なのか知らんけど、ちょっと酷すぎやしませんか、というのがまあ本日の結論ですし、これが出たからといってわかるのは、そもそも市場の誰もあると思っていない10月の政策変更がありません、って予告三振だけだと思うんですよね、個人の感想ですけど。

ということで短観その他諸々のネタ全然できませんでした。そっちの続きは明日以降(すいませんすいません)