決定会合議事要旨や金融経済月報などについて(2024年度上期に書いた分)
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2024/09/30「7月会合議事要旨(その1)9月にあんなに米国経済下振れになった理由が分からん」
2024/09/24「決定会合声明文比較:声明文自体はそんなに変じゃなかったのですが会見での米国経済下振れ連呼が・・・・」
2024/09/04「債券市場サーベイ202408メモ/経済財政諮問会議提出資料で他市場が反応している時点でコミュニケーションに問題があるわ」
2024/08/19「展望レポート基本的見解前回比較と全文のBOXに関して(今更ですが)」
2024/08/16「展望レポートハイライトの絵が前回比較する意味のある絵だ(驚異)&やっぱり内田講演はその場逃れの偽装ハトでは」
2024/08/15「展望レポートの鏡部分を比較」
2024/08/09「7月会合主な意見は利上げしたんだから当たり前だが強い意見が並ぶ」
2024/08/06「6月議事要旨は後付け感強いのだがそんなに円安懸念してたんだったらもっとその話を6月から強調しておけよ・・・」
2024/08/05「輪番減額計画部分は「減額をしたい」のか「市場の安定をしたい」のかがどっちつかずの表現になっていますね」
2024/08/01「政策修正ステージ入りを明確に示す/貸増の変動金利化も正常化狙い/輪番減額は及び腰」
2024/07/22「輪番減額テーマの臨時市場参加者会合の意見要旨だが当日にリリースされたものと同じようなのを今更出すなよ」
2024/07/16「さくらレポート別冊の企業の賃金設定行動関連は「どっちにも使える」どっちつかずの内容」
2024/07/09「さくらレポートは政策修正に向けてのインパクトに欠ける内容」
2024/07/02「6月短観は政策修正を加速させるにはパンチ力が足りませんな」
2024/07/01「サービス価格が基調的な物価判断に重要、という今まで言ってなかったネタでペーパーがいくつか出てきました」
2024/06/28「多角化レビュー第2回WSは吉川洋先生無双さすがです」
2024/06/26「6月会合主な意見(その2)消費を見極めたいという意見が多い割には物価に対しては上振れの話が多い」
2024/06/25「6月会合主な意見(その1):政策に関してはやる気無し無しですなあ」
2024/06/21「4月決定会合議事要旨の政策金利部分を見ると何であのハトハト会見になったのかが意味不明な件」
2024/06/20「4月会合議事要旨の記述が後付けモードでタカアピールに必死で円安が相当懸念のようですな」
2024/06/17「6月会合:利上げ予告はしないわ輪番減額は市場の意見を聞くとかで次回に先送りだわでなんも決められないのかこいつら・・・」
2024/06/12「物価指数の計測誤差の日銀レポートは2%数値に極端に拘ることにあまり意味がないことを示しています」
2024/05/27「多角化レビュー第2回資料の「過去25年間の日本の経済物価」がツッコミどころ満載の酷い出来になっています」
2024/05/24「来週は国際コンファランス/多角化レビュー第2回WSの資料が出ましたよ」
2024/05/22「多角的レビュー第2回WSのスタッフペーパーがツッコミどころだらけですな」
2024/05/21「多角的レビューがらみでさくらレポート別冊で企業行動の話題がでて来ました」
2024/05/17「多角的レビューがらみの予想インフレ指標の計測とかいう珍妙なレポートから(その2)」
2024/05/16「展望レポートダイジェストのポンチ絵が人を馬鹿にしているのかという酷い出来」
2024/05/15「インフレ予想に関する企画局スタッフペーパーが多角的レビューがらみで出ています(その1)」
2024/05/13「3月会合議事要旨見ると輪番減額に前向きなんだが何で4月は「6兆円」継続なのかと」
2024/05/10「4月会合主な意見はなぜか政策調整ノリノリ意見になっていて多分円安にビビってトーンいじりましたねこれ」
2024/05/07「展望レポート基本的見解の「鏡」を見ると「リスク認識」が変われば政策は変われるのですが・・・」
2024/09/30
〇7月決定会合議事要旨(たぶんその1):米国ガーの連発が直近行われている理由が分からん
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2024/g240731.pdf
政策委員会
金融政策決定会合
議事要旨
(2024年7月30、31日開催分)
これは利上げを行った時の議事要旨なのでいくつか確認事項があって多分時間の関係で今朝は間に合わない(おまえ土日にもっとやっとけと言われるとぐうの音も出ない)ので今日はこのネタをば。
・9月決定会合以降物凄い勢いで米国経済下振れリスクガーと言っていますが・・・・・・
まあご案内の通りで、9月決定会合の後の植田さんの記者会見、その後24日に行われた大阪経済4団体会合での総裁挨拶(と会見)に示されていますように、とにかく直近植田さん(か振付師か)は隙あらば「米国経済の下方リスクガー」と連呼してハトハトチキン音頭を盛大に踊っていたわけです。
ではそんなに米国経済が気になるならお前ら7月にどういう情勢判断してたんだよしかも利上げまでしちゃって、ということになるのは当たり前の話になりますので、その辺を確認しようというのが本日の企画であります。
まずはスタッフによる情勢判断も見ておこう、ということで珍しく『T.金融経済情勢に関する執行部からの報告の概要』も見ておこうかと。
『海外経済は、総じてみれば緩やかに成長している。米国経済は、FRBによる既往の利上げの影響を受けつつも、個人消費を中心に緩やかに成長している。欧州経済は、下げ止まりつつある。中国経済は、不動産市場の調整の影響は続いているものの、政策面の下支えもあって緩やかに改善している。中国以外の新興国・資源国経済は、輸出に持ち直しの動きがみられており、総じてみれば緩やかに改善している。』
まあ米国以外の話は折角なのでついでにつけています。では先行き見通しはと言いますと、
『先行きの海外経済は、緩やかな成長が続くと考えられる。先行きの見通しを巡っては、各国中央銀行の既往の利上げの影響のほか、中国経済の動向や地政学的緊張の展開などについて、不確実性が高い。』
中国と地政学はありますが米国の不確実性ってコメント無いですよね。では政策委員の皆さんの討議部分を見てみましょう。『U.金融経済情勢と展望レポートに関する委員会の検討の概要』の『1.経済・物価情勢の現状』です。
『海外経済について、委員は、総じてみれば緩やかに成長しているとの認識を共有した。』
ということでこちら米国の話が仔細にありますが、
『米国経済について、委員は、FRBによる既往の利上げの影響を受けつつも、個人消費を中心に緩やかに成長しているとの認識で一致した。』
ほほう。それが何でまたわずか1か月半で「下振れリスク連呼」になったんでしょうかねえ。
『そのうえで、何人かの委員は、これまで高止まりしてきた物価上昇率が鈍化していることを指摘し、景気の急減速を避けつつ物価安定が実現するソフトランディング・シナリオが実現する蓋然性が高まっているとの見解を示した。』
という見通しを覆すほどの大きな問題ってその後米国に発生していましたっけ????
『このうちの一人の委員は、日次の価格調査をみると、消費者物価指数よりも更に鈍化傾向にあると付け加えた。』
というのはさておきまして次が米国減速を指摘する人の発言でして、
『別の委員は、雇用・所得環境には軟化の兆しが窺われており、先行き景気は緩やかに減速する可能性が高いと指摘した。そのうえで、この委員は、中東情勢の緊迫化や貿易摩擦の拡大などに伴うインフレ再燃リスクには引き続き注意する必要があると付け加えた。』
この委員、米国減速の話もしているけどインフレリスクの話をしていますね。
『ある委員は、既往の財政拡大もあって民間部門の手元流動性は潤沢であり、このことがインフレ下でも支出を支えていると述べた。』
ということで、なんか今回米国経済下押しリスクガーって連呼するほど状況変化しているのかが謎にもほどがあるのですが。
さらに『2.経済・物価情勢の展望』のリスク要因の部分を見ましても、
『次に、委員は、経済・物価の見通しのリスク要因(上振れ・下振れの可能性)について議論を行った。委員は、海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、わが国経済・物価を巡る不確実性は引き続き高いとの認識で一致した。また、そのもとで、金融・為替市場の動向やそのわが国経済・物価への影響を、十分注視する必要があるとの見方を共有した。』
ここは展望レポートに合った通りです。海外経済はいつも出ている項目ですからね。
『そのうえで、経済の主なリスク要因として、委員は、@海外の経済・物価情勢と国際金融資本市場の動向、A資源・穀物価格を中心とした輸入物価の動向、Bわが国を巡る様々な環境変化が企業や家計の中長期的な成長期待や潜在成長率に与える影響、の3点を挙げた。』
でまあこの会合では物価の上振れリスクを一つの材料にして利上げしているのでこの先の物価のリスクのところは明日以降別途ネタにします、今日のお題に即して言えばこの先のリスクバランスの方になりますのでそっちに飛びますけど、
『リスクバランスについて、委員は、経済の見通しについては、2025年度は上振れリスクの方が大きいとの見方を共有した。また、物価の見通しについては、2024
年度と 2025 年度は上振れリスクの方が大きいとの見方で一致した。多くの委員は、輸入物価が再び上昇に転じていることを踏まえると、金融政策運営上、先行き、物価が上振れするリスクに注意する必要があるとの認識を共有した。』
>経済の見通しについては、2025年度は上振れリスクの方が大きいとの見方を共有した
・・・・・・うーんこのwwww
とまあそういうわけでございますので、今回の会合で急に「米国経済の下振れリスク」を盛大に連呼した理由がまるで意味不明、というお話でありまして、「丁寧な説明」とか言ってるけどそもそも植田さんの説明まやは振付師の振付が毎度毎度行き当たりばったりにもほどがあるのがコミュニケーションをぐだぐだにしている主犯であることは言うまでもないのでないでしょうか、というのが今朝のお話でございましたとさw
2024/09/24
〇決定会合レビュー:7月のタカ色を中和しようとして円安に振ってるとか間抜けにもほどがある
・声明文比較の前にそもそも何なんですかあの会見は為替また動かしちゃったじゃないですか
ということでレビューなのですが、7月のタカ色を中和したいのはわからんでもないのだが、そもそも論として7月会合の後に内田副総裁の株式市場に全面降伏ワンワン講演があった訳でして、アレのあとまた内田さんの市場従属とかいう無見識モードの中和をしている中で、今回のメッセージの出し方が「10月利上げ観測の払拭」だったのかもしれないけれども、一々余計なのでして、今回は会見の方が間抜け(途中結構植田さん良い話をしている場面もあったのですが)にも程があって、それは本日会見要旨が出るからそこでまた確認しますけど。
いやね、10月利上げ観測を消しておきたいのはわかるんだが、そもそも論としてそんな幻想的な観測しているの馬鹿メディアとかド素人市場のド素人だけな訳で、一々馬鹿向けにサービスして説明をするもんだから、特に会見で出てくるメッセージの振れ幅が大きくなるわけですよ。
結局ですね、利上げ観測を叩き潰してみたり、今度は利上げやる気満々な強い言い方をしてみたり、の繰り返しをしているのが良くなくて、今回なんて内田ワンワン講演のやりすぎを一旦少し中和したんですから、そのまま「見通し通りに推移すれば緩和度合いの調整を今後も続けます、以上それまで」で良いのにも関わらず、「米国経済のリスクガー」を連呼するもんだから、特に為替市場が盛大に反応してしまって、債券市場も先物が反応してしまって、という余計な動きを発生させている訳でして、まあ植田さんも余計なことを言う悪い癖があるようですけれども、あれだけ米国経済下振れリスクを連呼するということは、こんなの植田さん個人な訳なくて振付師の振付がヘタクソというか学習効果が無いのか市場のことを分かった積りになって生兵法を振り回してるのか知らんけど、無風会合になる筈なのに為替をまたもう動かしてしまったことには猛省を促したいと思います。
ということで声明文比較になります。
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2024/k240920a.pdf(今回)
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2024/k240731a.pdf(前回7月声明文)
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2407a.pdf(7月展望レポート基本的見解)
今回は政策変更が無いので主に直近の展望基本的見解との比較になります。
・現状判断:消費の現状判断を引き上げ
『わが国の景気は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している。』(今回)
『わが国の景気は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している。』(7月展望レポート)
展望レポートの2ページ目(基本的見解本文)との比較になります。総括判断同じ。
『海外経済は、総じてみれば緩やかに成長している。輸出や鉱工業生産は横ばい圏内の動きとなっている。企業収益が改善するもとで、設備投資は緩やかな増加傾向にある。』(今回)
『海外経済は、総じてみれば緩やかに成長している。輸出や鉱工業生産は横ばい圏内の動きとなっている。企業収益は改善しており、業況感は良好な水準を維持している。こうしたもとで、設備投資は緩やかな増加傾向にある。』(7月展望レポート)
業況感云々の部分は短観が直前にあったかなかったかの違いなので特に意味はなく、海外経済、輸出、生産、企業収益、設備投資ともに判断不変になります。
『雇用・所得環境は緩やかに改善している。個人消費は、物価上昇の影響などがみられるものの、緩やかな増加基調にある。住宅投資は弱めの動きとなっている。公共投資は横ばい圏内の動きとなっている。』(今回)
『雇用・所得環境は緩やかに改善している。個人消費は、物価上昇の影響などがみられるものの、底堅く推移している。住宅投資は弱めの動きとなっている。公共投資は横ばい圏内の動きとなっている。』(7月展望レポート)
個人消費が「底堅く推移」→「緩やかな増加基調」と判断を引き上げました。何気にこれは大きい。
『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(今回)
『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(7月展望レポート)
緩和というよりガバガバですが。
『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比をみると、既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響は減衰してきているものの、賃金上昇等を受けたサービス価格の緩やかな上昇が続くもとで、足もとは2%台後半となっている。予想物価上昇率は、緩やかに上昇している。』(今回)
『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比をみると、既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響は減衰してきているものの、賃金上昇等を受けたサービス価格の緩やかな上昇が続くもとで、足もとは2%台半ばとなっている。予想物価上昇率は、緩やかに上昇している。』(7月展望レポート)
物価の判断文言も同じです。
・先行き見通し:こちら見事に全文一致なので「見通し通りに推移」ですね
『先行きのわが国経済を展望すると、海外経済が緩やかな成長を続けるもとで、緩和的な金融環境などを背景に、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まることから、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。』(今回)
『先行きのわが国経済を展望すると、海外経済が緩やかな成長を続けるもとで、緩和的な金融環境などを背景に、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まることから、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。』(7月展望レポート)
7月展望は同じく本文(鏡の方ではない)から引用しています。経済の見通しは全文一致です。
『消費者物価(除く生鮮食品)については、既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響が減衰する一方、来年度にかけては、政府による施策の反動等が前年比を押し上げる方向に作用すると考えられる。』(今回)
『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、2024 年度に2%台半ばとなったあと、2025
年度および 2026 年度は、概ね2%程度で推移すると予想される。既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響が減衰する一方、2025
年度にかけては、政府による施策の反動等が前年比を押し上げる方向に作用すると考えられる。』(7月展望レポート)
展望レポート基本的見解の3ページからの部分を引用しています。こちらは計数があるのは展望レポートの仕様なのでそこを飛ばして読みますと、これもまた基本的に言っていることは同じ(来年度と2025年度、という違いはあるけど)ですね。さらに、
『この間、消費者物価の基調的な上昇率は、マクロ的な需給ギャップの改善に加え、賃金と物価の好循環が引き続き強まり中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想され、「展望レポート」の見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。』(今回)
『この間、消費者物価の基調的な上昇率は、マクロ的な需給ギャップの改善に加え、賃金と物価の好循環が引き続き強まり中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想され、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。』(7月展望レポート)
こちらも基本言ってることは同じ(文言は違う部分があるけどテクニカル要因)ですね。ただまあこれ最近ずっと気にしているのですが、本来声明文の予想期間って半年から1年程度の先の話をするもんだったはずなのですが、いつのまにやらそんなロングの見通しを出しているのかよというのは話いつの間に変わったの、と思います。
まあこれは「オントラックである」というのを強調するために入れている文言、と解釈するのが妥当ではあるのですが、従来の仕切りと違う予測期間の話をされるのはちょっともにょる。
・リスク要因ですがこれは展望レポートの表現を踏襲しているのであまり深い意味はない筈ですよ
リスク要因のところを会見で質問されて最初に説明しているのにその後もああだこうだと質問されていましたな。為替の質問したいのはわかるが同じ質問を何回もするなよということで、総裁記者会見は「かずお君のよつべ生配信、質問は赤スパでお願いします」にした方が良いんじゃないでしょうかねえ(暴論)。
・・・・・・いかんいかん話がそれてしまった。
『リスク要因をみると、海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、わが国経済・物価を巡る不確実性は引き続き高い。そのもとで、金融・為替市場の動向やそのわが国経済・物価への影響を、十分注視する必要がある。とくに、このところ、企業の賃金・価格設定行動が積極化するもとで、過去と比べると、為替の変動が物価に影響を及ぼしやすくなっている面がある。』(今回)
『リスク要因をみると、海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、わが国経済・物価を巡る不確実性は引き続き高い。そのもとで、金融・為替市場の動向やそのわが国経済・物価への影響を、十分注視する必要がある。とくに、このところ、企業の賃金・価格設定行動が積極化するもとで、過去と比べると、為替の変動が物価に影響を及ぼしやすくなっている面がある。』(7月展望レポート)
こちらは展望レポ―ト基本的見解の1ページ(概要、だが鏡とつい言ってしまう)部分になります。
基本的にここの文言は「直近の展望レポートを踏襲」というのが仕様で、そうじゃないときは変更有り、というステータスになりますので、今回のこれは「変更なし」になります。
・政策運営に関する文言の扱いは明確に説明した方が良いと思うの
まあ今回はその文言は声明文から落とされているのですが、
『今後の金融政策運営については、先行きの経済・物価・金融情勢次第であるが、現在の実質金利がきわめて低い水準にあることを踏まえると、今回の「展望レポート」で示した経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えている。日本銀行は、2%の「物価安定の目標」のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営していく。』(7月声明文)
前回会合では政策変更を行ったからこの文言を声明文に入れている、ということなのですけれども、
1月会合声明文(QQEYCC継続中):先行き文言に関する独立項目あり(ガイダンス入り政策なので順当)
3月会合声明文(政策変更有り):先行き政策に関する文言はあるが独立項目ではない
4月会合声明文(展望会合):3行声明文で情勢判断の記載もないし先行き政策の記載もない(展望レポート内に記載)
6月会合声明文(輪番の予告あり、展望なし):先行き政策に関する記載はない
7月会合声明文(政策変更有り):先行き政策に関する独立光項目あり
9月会合声明文(展望なし政策変更なし):先行き政策に関する記載はない
ということで、1月まではQQEやYCCの継続コミットメント文言があったので独立項目で先行きの政策の話を記載していたのですが、その後が毎回のようにこの先行き政策に関する文言の扱い(声明文の体裁もそうですが)が微妙に違うので、今回削除されたことに何か意味があるのか、という質問も会見で飛んでいました(良い質問です)が、今回削除すると、会見でのアメリカ経済ガーも相まって、なんか金融政策修正への姿勢が後退してるんじゃないか、という印象(誤解なのか誤解じゃないのかは分からん)を与えることになりますので、もうちょっとこの文言の扱いを明確にする必要があるし、そもそも論として政策変更したときに何も先の政策の話をする必要はないので、この文言は声明文に入れる必要はない(そもそも「データ次第」政策をするんなら先行きの政策の予告はできないはず)んじゃないですかねえ、と思いますがどうでございますですかしら。
・・・・・とまあそんな感じでした今回は。
・まあ問題になるのは会見での「米国経済下振れガー」の連呼でしょ
というのはさっき書きました通りで、あれはまあ振付がヘタクソなんじゃないかと思いました。それから会見ですが、前回もそうでしたが今回も質問する方がアカンのが多くて辟易しながらシャーナシで聞いていましたが、まず「質問は簡潔に」とか言ってる幹事社の質疑がクソ長い(最初のが1.5問くらいあってなげえと思ったのにさらに質問してて、お前がクソみたいjに長い質問してるから後ろで時間が無くなるんじゃヴォケと思いました)のと、同じ会社で2人くらいは(更問の余地を残すために)質問しても良いとは思いますが、1社で3人とか質問するのはさすがにふざけるなと思いましたし、まあいろいろと愚劣な会見ではありました。
ちなみにアタクシは日銀公式のよつべチャンネルの方で見てたんですが、前回対比で注目度が少ないだけのことはあって、会見開始直後は同接2000人弱(前回が開始時4000人くらいでピークが5000人近くでしたが瞬断やホワイトノイズでその後急減しましたw)から始まったのですが、某ベンダーの中継よりも日銀公式の方が若干早いことに気が付いた人たちが日銀の方にやってきて、同接5000人超えとなってまさかの前回越えをしていたのですが、質疑がつまらんのが影響したのか開始30分を経たずして同接が徐々に減っていった(ゆうて最後の方でも4200人位はいましたが)のはクソ笑いましたwwwwwwww
2024/09/04
〇債券市場サーベイだが何ちゅうタイミングで調査してますねん
https://www.boj.or.jp/paym/bond/bond_list/bond2408.pdf
債券市場サーベイ
<2024年8月調査>
回答期間:2024年8月1日〜8月7日
調査対象先数:72先
いやまあ回答期間って毎度対象月の頭(から10日前後まで)なので仕方ないちゃあ仕方ないのですけれども、7/31に政策金利動かした直後に市場機能がどうしたとかアスクビットスプレッドがどうしたとかいう調査するのって、わざわざ外れ値のところを取りに行ってるようなもんで、展望会合が1月以外ほぼ月末に実施されていることを勘案すると、これせめて第2週目を回答期間にするとかした方が良いんじゃないでしょうか。
まあこれおっぱじめたときには黒田時代で政策が変わらんのが仕様だったのであんまり気にならなかったんですけど、金融政策が動くような時代になると展望会合の時って基本的に政策変更が起きやすいタイミングになるのですから、まあ月の半ばとか月末近くのタイミングの方がよろしいんじゃないでしょうかご検討いただきたいです。
でまあそれは兎も角結果だけ見ますと、
『(1)貴行(庫・社)からみた債券市場の機能度』
機能度判断DI(現状)
前回 -24 ⇒今回 -23
まあ1日とか2日くらいにちゃちゃっと回答しちゃっているとそこまでアレなわけではなくて、先物爆発炎上とかしてたの週明けでしたし、まあ値動き無茶苦茶でしたけどアクティブはアクティブでしたということでしょうか、と思って内訳見たら
1. 高い 前回 7 ⇒今回 3
2. さほど高くない 前回 62⇒今回 71
3. 低い 前回 31 ⇒今回 26
って低いが減ったのかほうほうほう、と思って横の方見たら、
機能度判断DI(3か月前と比べた変化)
機能度判断DI(変化)
前回 7 ⇒今回 -6
って機能度変化でみたらドテン悪化じゃん、ということで
1. 改善した 前回 15 ⇒今回 3
2. さほど改善していない 前回 76 ⇒今回 86
3. 低下した 前回 8 ⇒今回 11
ということですので何のことはない、「機能度は悪化しているけど、低いというほどまでは悪化していませんですわ」というのがお答えだったようですな。
ただまあ何ですな、マイナス金利政策の時とかと違って、金利がまともにあって経済物価状況に応じて政策金利が上がったり下がったりする世界における市場の機能度ってのは何なんですかと考えますと、市場の価格形成において多種多様な参加者が多様なビューで参加してきてその総和が市場での価格になる、というような生物多様性とでも言いますか(ナンジャソラ)そういう体系が結果として安定的になるわけでして、一部のドミナントな少数の参加者がポジション振り回すとか、画一的な管理手法によって参加者のポジションや投資行動が金太郎飴状態になってしまうとか、そういうのは市場として健全じゃないんですよねーとは思うものの、大昔と違って参加者の規模が大きくなっているわ、各種金融規制の強化によってポジションの画一化が起きやすくなっているわ、日本の場合はどっかのアホウがドミナントに買って持ち切りのアホールドをするわで、まあ碌なもんじゃない訳です。
日本の場合は兎に角日銀の輪番もっと減らせやヴォケという話ですけどね。
まあしかし何ですな、その後の質問項目なのですが、
@貴行(庫・社)からみたビッド・アスク・スプレッドについてご回答下さい。
A貴行(庫・社)からみた市場参加者の注文量について、板の厚み(注)等を念頭においてご回答下さい。
ってそれはあのタイミングで聞く質問じゃないだろという感じ(いやまあ定例の質問項目なので聞くのは当たり前ではあるのですが)の話なのですが、先ほども申し上げました通りで、2月5月8月11月の頭に質問期間置いていると、何回かに1回のタイミングで「金融政策変更直後でまだ落としどころが決まっていない状態の市場の状況をわざわざ質問する」ことになるのでどうなんでしょとは思います。
まあ変更直後のを毎度狙って質問することによって、「この時の金融政策変更は市場にサプライズを与える結果になっておりそのせいで直後の債券市場の機能度はこうなっていますね」というような集計を取ってみたい、とかいうような深慮遠謀がありましたらそれはそれで結構なんですけど、だったら政策変更の直後に臨時で同じサーベイヤればエエンチャウノとは思いますけどw
〇経済財政諮問会議での資料でどうのこうのとか言ってましたが
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2024/0903/agenda.html
第12回会議資料:会議結果 令和6年
議事次第
令和6年第12回経済財政諮問会議
開催日時:令和6年9月3日(火曜日)13時30分〜14時00分
開催場所:総理大臣官邸4階大会議室
議事
マクロ経済運営(金融政策、物価等に関する集中審議)
ほうほうそうですかってなもんですが、そちらの資料とやらに日銀謹製の物件があって、
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2024/0903/shiryo_01.pdf
資料1 植田議員提出資料 令和6年9月3日
資料自体別に新しいお話があるわけではないのですが、なぜか知らんがこの中の『202年7月金融政策決定会合での決定内容』の資料を見て(債券市場は別に無視してたと思いますが)為替市場ちゃんが反応したことになっていて、そっちの方がビックらこきました、まあ実際に本当の本当に為替がこれに反応したのかどうかはワシもベンダーの後付け講釈見ているだけなのであれなんですけどね。
『2024年7月金融政策決定会合での決定内容
(1)金融市場調節方針の変更
●経済・物価は、これまで示してきた見通しに概ね沿って推移、賃上げの動きに広がり
● 輸入物価は再び上昇に転じており、先行き、物価が上振れするリスクには注意』
ってなっていまして、「見通しに概ね沿って推移」と「物価が上振れするリスクには注意」というのを赤字でハイライトしていますので、まあその点では決定会合の説明を改めて分かりやすく示した、という格好になっていますわな。
でもってその下に、
『2%の「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現という観点から、金融緩和の度合いを調整』
ってあって、その結果として利上げしましたよ、という話をしているんですけど。
『短期金利(無担保コールO/N物):「0.25%程度」に引き上げ(従来は「0〜0.1%程度」)』
はまあ良いんですけどね、
『●実質金利は大幅なマイナスが続き、緩和的な金融環境は維持 → 経済活動をしっかりとサポート
● 見通しが実現していくとすれば、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整』
ってなっていまして、これ2番目の「金融緩和の度合いを調整」の方が今回ハイライトされているのですけれども、相変わらず日銀クソコミュニケーションしてるな、とアタクシが思うのは1番目の方な訳ですよ。
つまりですね、
(再掲)
『●実質金利は大幅なマイナスが続き、緩和的な金融環境は維持 → 経済活動をしっかりとサポート』
ってあって、「経済活動をしっかりとサポート」というのを赤字でハイライトしているのですけれども、何で今更お前らこれをアピールするんだと小一時間問い詰めたいわけでして、いやまあどっかの党の総裁選の某候補者の経済政策に馬鹿が二匹参画しているように、馬鹿がうるさい(まあ馬鹿だからうるさいというのもあるが)のでこういうのを政治的配慮で入れる、というのはお気持ちとしてはわかるのですが、このしょうもない忖度が市場とのコミュニケーションにノイズを与えているんですよね。
すなわち、上記の話って「実質金利は大幅マイナスが続き」は良いんですけど「緩和的な金融環境は維持」っていうのがおかしくて、お前らこれから「金融環境の度合いを調整」するって言ってるんだから、その口が「維持する」って言葉使うなよという話な訳でして、4月の展望レポートの先行きの金融政策運営の文言に変なものを入れたが為にドル円は160円方面にぶっ飛ぶわ、利上げ観測が大きく後退するわとなって、その結果7月の利上げが半分くらい騙し討ち成分の入るムーブになったわけですよ。
でまあこの「維持」って言葉使うなよなと思う訳で、これ日銀は「維持」というのは状態のことを示しているってことだと思うし、まあそういう意味で使っているんでしょうけれども、「維持」ってのは金融政策決定における文章でも使う言葉なので、こう書くと「日銀は政策を変更しない」っていうニュアンスが出てしまう訳ですよ。実際に4月がそうだったように。
ということでですね、日本語ちょっと考え直した方が良いんじゃないかと思うんですよね。何がいいのかと言われますと共通一次試験(歳がバレる)の現国で国語の勉強が終了して久しいワイとしてはアレでございますが、「実質金利は大幅なマイナスが続いているので金融環境引き続き緩和的」みたいな感じで、「維持」とかいう日銀の政策意図を示すものと誤認されやすそうな言葉を使わない方がエエンチャウノ、というのはまあ個人の感想ですが一応共通一次の現国は得意科目でした(しつこい)ので申し添えますwwwwww
あとですね、先日の氷見野副総裁の金懇会見でもアホほど質問されていましたが、この「実質金利」の説明もあまり前面に出してしまうと、「じゃあ中立金利はいくらですか」というような泥沼にはまってしまってこれまたコミュニケーションのノイズを増すことになるので、もうちょっと何とかならんか、とも思いますのですが、実質金利云々の話は高校現国ではフォローできませんので今日はパスしますw
・・・・・と、注目されていない文言の方にツッコミを入れるというデギンドス副総裁の頭髪並みに不毛な話をしてしまいましたが(ちなみにデギンドスは某カシュカリ大僧正と違って頭髪がサイドにありますので念のため申し添えます^^)、今回の植田さん提出の資料に関して言えば、内田副総裁の金懇講演でちょっと威勢よく言いすぎてしまって利上げ観測がぶっ飛んでしまったことに対する態勢立て直しの一貫という感じだと思います。
すなわち、国会招致での植田総裁の答弁も態勢立て直しですし、氷見野副総裁もやんわりというかほんわかという感じですが、市場が不安定云々に関しては「総合判断の一つの要素」みたいな説明をしていたわけですが、内田副総裁の説明だと思いっきり「株式市場本位主義」みたいな言い方に取られても文句の言えない説明でした(のでその後散々質問されるわけです)すが、すこしはその辺の改善はできている、というか円債市場の方はさすがに伝わっているとは思うのですけれども、為替市場ちゃんが(本当かウソか知らんけど本当ならば)この提出資料の「金利調整」の部分に反応しちゃっている、ということは他市場は内田副総裁発言を上書きする植田さんたちのコミュニケーションがイマイチ伝わっていない、ということを意味するんじゃないかと思いまして、次回の政策金利調整の際も騙し討ちだの何だの言われるリスク高いな、って思いました。
ということで今朝はこの辺で勘弁。
2024/08/19
〇虫干しにも程がありますが展望レポートネタを成敗という夏休み虫干しネタで恐縮
基本的見解本文の逐条比較はさすがに簡略方式にします。
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2407a.pdf(今回)
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2404a.pdf(前回)
まずは現状認識。『1.わが国の経済・物価の現状』から。
『わが国の景気は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している。』(今回7月)
『わが国の景気は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している。』(前回4月)
そもそも論として現状認識が同じ。
『海外経済は、総じてみれば緩やかに成長している。輸出や鉱工業生産は横ばい圏内の動きとなっている。』(今回7月)
『海外経済は、回復ペースが鈍化している。そうした影響を受けつつも、輸出は横ばい圏内の動きとなっている。鉱工業生産は、基調としては横ばい圏内の動きとなっているが、足もとでは、一部自動車メーカーの生産・出荷停止の影響もあって減少している。』(前回4月)
海外経済の判断が上がっているのと生産のうち一時的要因のマイナス剥落を指摘。
『企業収益は改善しており、業況感は良好な水準を維持している。こうしたもとで、設備投資は緩やかな増加傾向にある。』(今回7月)
『企業収益は改善しており、業況感は良好な水準を維持している。こうしたもとで、設備投資は緩やかな増加傾向にある。』(前回4月)
判断不変。
『雇用・所得環境は緩やかに改善している。個人消費は、物価上昇の影響などがみられるものの、底堅く推移している。住宅投資は弱めの動きとなっている。公共投資は横ばい圏内の動きとなっている。』(今回7月)
『雇用・所得環境は緩やかに改善している。個人消費は、物価上昇の影響に加え、一部メーカーの出荷停止による自動車販売の減少などがみられるものの、底堅く推移している。住宅投資は弱めの動きとなっている。公共投資は横ばい圏内の動きとなっている。』(前回4月)
個人消費も底堅い、の評価のままですな。
『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(今回7月)
『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(前回4月)
緩和のし過ぎじゃwww
『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比をみると、既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響は減衰してきているものの、賃金上昇等を受けたサービス価格の緩やかな上昇が続くもとで、足もとは2%台半ばとなっている。予想物価上昇率は、緩やかに上昇している。』(今回7月)
『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比をみると、既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響は減衰してきているものの、賃金上昇等を受けたサービス価格の緩やかな上昇が続くもとで、足もとは2%台半ばとなっている。予想物価上昇率は、緩やかに上昇している。』(前回4月)
物価も判断同じ、ということでオントラックで推移しているというだけにほとんど情報下方修正がない、というのが特徴的ではあります。
見通し部分は基本線は鏡の比較の通りなのですが一応。
経済の見通しについては、
『先行きのわが国経済を展望すると、海外経済が緩やかな成長を続けるもとで、緩和的な金融環境などを背景に、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まることから、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。』(今回7月)
『先行きのわが国経済を展望すると、海外経済が緩やかに成長していくもとで、緩和的な金融環境などを背景に、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まることから、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。』(前回4月)
思いっきり同じです。ただこれなんですけど、前回も確かに「経済物価情勢が2%目標達成に整合的に推移すれば徐々に緩和度合いの調整を行う」となっているのでまあ今回急に変わるわけではないのですが、見通し期間中に物価目標を達成できるというのであれば、達成したと考えられる時点においては金融政策は緩和的な状態であったら今度は上へのオーバーシュートのリスクが高まるわけでして(特にジャパニーズって極端から極端に振れる傾向があるから油断はならないと思うの)、「緩和的な金融環境などを背景に」というのってこれ見通し期間中すべてに置いてそうなんですか???というのが????なのでこの見通しで良いのかよというのは気になってしょうがないんですよね最近。
でまあ本来は個別項目の話も比較するのですがスーパー虫干しネタなのでもはやそこはパスしまして物価の見通しに飛びます。
『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、2024 年度に2%台半ばとなったあと、2025
年度および 2026 年度は、概ね2%程度で推移すると予想される。』(今回7月)
『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、2024 年度に2%台後半となったあと、2025
年度および 2026 年度は、概ね2%程度で推移すると予想される。』(前回4月)
オントラックなだけに同じでして、
『既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響が減衰する一方、2025 年度にかけては、政府による施策の反動等が前年比を押し上げる方向に作用すると考えられる。』(今回7月)
『既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響が減衰する一方、2025 年度にかけては、このところの原油価格上昇の影響や政府による経済対策の反動が前年比を押し上げる方向に作用すると考えられる。』(前回4月)
原油価格云々の記載が削除。
『この間、消費者物価の基調的な上昇率は、マクロ的な需給ギャップの改善に加え、賃金と物価の好循環が引き続き強まり中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想され、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。』(今回7月)
『この間、消費者物価の基調的な上昇率は、マクロ的な需給ギャップの改善に加え、賃金と物価の好循環が引き続き強まり中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想され、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。』(前回4月)
この微妙になんだかよくわからない「基調的な上昇率」ですが、こちらも文言変更なし。
とまあそういう訳で、今回って基本的にオントラックで推移する中で政策金利の調整を行いましたよ、という建付けになっているので、現状認識にしろ先行き見通しにしろほぼ変わっていないというのが特徴な訳です。
でもって問題になるのはリスク認識でして、しかもその中で物価のリスクの2番目が文言変更になっていた訳です、まあ鏡にもありましたけど。
『第2に、今後の為替相場の変動や国際商品市況の動向、およびその輸入物価や国内価格への波及は、上振れ・下振れ双方の要因となる。世界経済の先行き等を巡る不確実性は高く、これが国際商品市況を大きく変動させる可能性がある。』(今回7月)
『第2に、今後の為替相場の変動や国際商品市況の動向、およびその輸入物価や国内価格への波及は、上振れ・下振れ双方の要因となる。世界経済の先行き等を巡る不確実性は高く、これが国際商品市況を大きく変動させる可能性がある。
』(前回4月)
までは同じですが、皆様ご案内のようにその次が、
『また、このところ、企業の賃金・価格設定行動が積極化するもとで、過去と比べると、為替の変動が物価に影響を及ぼしやすくなっている面がある。
』(今回7月)
『世界的なインフレ率の動向や為替相場の変動といった点も含め、それらがわが国物価に及ぼす影響については十分注意してみていく必要がある。』(前回4月)
ということで、円安物価上昇が物価上振れrのリスク、ということになりまして、これは従来「第一の力、第二の力」という謎説明によって円安コストプッシュは第一の力だからネグってよろしい、という強引な説明により円安輸入物価上昇の話をネグり続けていたのをしらっと手のひら返しをしている、というのが結構重要なポイントでして、これはすなわち従来使っておりました物価上昇第一の力、第二の力、というのの説明を(ようやっと)引っ込めたということも意味されるのであります。
そりゃ普通に当たり前でして、金融政策運営において物価動向の分析をする際に重要なのは「この物価上昇(下落)が一時的なものなのか、それとも持続的なものなのか」という点であり、持続的な上昇要因によって物価が目標対比上振れる、という状況を放置するのは良くない、という話になりますので、第一の力第二の力の説明が引っ込められた(と思われる)のは実に結構な話、ということになります。
でまあ問題なのは最後の金融政策運営ですが、いつもの点検はいつもの点検なのでパスしまして、
『金融政策運営については、先行きの経済・物価・金融情勢次第であるが、現在の実質金利がきわめて低い水準にあることを踏まえると、以上のような経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えている。』(今回7月)
『金融政策運営については、先行きの経済・物価・金融情勢次第であり、この点を巡る内外の経済・金融面の不確実性は引き続き高い。以上のような経済・物価の見通しが実現し、基調的な物価上昇率が上昇していくとすれば、金融緩和度合いを調整していくことになるが、当面、緩和的な金融環境が継続すると考えている。』(前回4月)
4月も7月も実は主文は「見通しが実現するなら金融緩和の度合いを調整する」という話なのですが、ご覧の通りで4月はその前と後にゴテゴテとハトハトチキン文言が並んで居まして、3月のマイナス金利解除直後ならともかく、1か月経過している中でこのハトハトチキン文言ぶっこんでしまうもんだから円安にぶっ飛んでしまったのはご案内の通りであります。
ということで、7月はそのゴテゴテにデコっているハトハトチキン文言を外して主文が分かりやすくなるように記載した訳でして、まあこれはマイナス金利政策解除前からでしたけれども、解除に伴う金利上昇を懸念しすぎてしまって、緩和的なメッセージを出しすぎた、ということの反省かと思うのですが、まあその反省をした傍からご案内の通りで内田副総裁がクソのような金懇講演を行ってしまってまたしてもコミュニケーションを混乱させている訳で、もうこいつらつける薬がねえという感を深くするものではあります。
あ、この部分ですが最後の締め文言がありましてこれは変わらないです。
『日本銀行は、2%の「物価安定の目標」のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営していく。』(今回7月)
『日本銀行は、2%の「物価安定の目標」のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営していく。』(前回4月)
コンディショナルにやるんだったらそんなにハトでもタカでも決め打ちしなくて良いのに、とは思うのですけどね・・・・・
あと、展望レポート全文の方のコラムですが、
展望レポート全文
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2407b.pdf
(BOX1)2024 年春季労使交渉の振り返り
(BOX2)サービス価格の動向:「期初の値上げ」の広がり
4月展望全文
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2404b.pdf
(BOX1)個人消費の現状と先行き
(BOX2)2024 年春季労使交渉
(BOX3)賃金・物価の相互連関:人件費上昇を販売価格に転嫁する動きの広がり
(BOX4)「物価の基調」の捉え方
(BOX5)金利面からみた金融緩和度合いの評価
前回対比エライあっさり味になっている上に、前回はああでもないこうでもないといろんな話をしているのに対して、今回は「物価が持続的に上がってきていますなあ」というのの傍証になる話を2本というシンプル設計にしまして、メッセージが明確になっていますね、というのが違うところです。
まあこの辺に関してはやはり金融政策のステージの変化に伴い、いろいろと変なハトハトチキンをしなくて済むようになった、ということが大きいのかと思うのですが、問題はこのあと内田副総裁がハイパー腰砕けになっていることでして、まあ足元暴落分も戻ったことだしむしろ円安の方が気になる今日この頃ですので、23日でしたっけ、国会招致の方では植田さん変にハトハトしないで進んでいただきたい、と思って止みません。
ということで夏休みも終わってるんじゃないかというツッコミの中、夏休み虫干し企画でございました(汗)
2024/08/16
〇前回との継続性がない開示文書とか悪態をついてたら今回は前回との比較に意味があるポンチ絵でしたwwwwwww
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/highlight/ten202407.htm
展望レポート・ハイライト(2024年7月)
経済・物価情勢の展望
過去の開示文書(笑)はこちら
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/highlight/ten202404.htm(4月)
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/highlight/ten202401.htm(1月)
最初のポンチ絵ですが、
『日本経済は成長を続ける』(今回)
『日本経済は成長を続ける』(4月)
『日本経済は緩やかな回復を続ける』(1月)
ご案内かとは存じますが「成長」は潜在成長率(推計)よりも高成長の場合で方向が上向きの時に使いまして、「回復」は潜在成長率以下の場合で上向きの場合に使います。
『日本経済は、海外経済が緩やかな成長を続けるもとで、金融面からの後押しなどもあって、潜在成長率を上回る成長を続けます。』(今回)
『日本経済は、海外経済が緩やかに成長するもとで、金融面からの後押しなどもあって、潜在成長率を上回る成長を続けます。』(4月)
『日本経済は、海外経済の回復の鈍さにより下押しされますが、消費の増加などに支えられて、緩やかな回復を続けていきます。』(1月)
ということで展望の鏡が前回とほぼ同じだったのですからまあ同じだな、とは思うのですが、実はこの「金融面からの後押しなどもあって」というのが中々の謎文言でして、4月展望の時には金融政策運営の部分で例の悪名が高かった文言「当面、緩和的な金融環境が継続すると考えている。」が今後の金融政策運営にかかわる部分に記載されていた訳ですが、今回ってその文言削除しているんですよね。
とはいえ声明文の方には「政策金利の変更後も、実質金利は大幅なマイナスが続き、緩和的な金融環境は維持されるため、引き続き経済活動をしっかりとサポートしていくと考えている。」とありますし、そらまあ現実問題として円安大爆発とか驚異の物価一段高でもしない限りにおいて、向こう1年とかのスパンで政策金利が中立水準に届く気はしないので、そういう意味では「金融面からの後押し」があるのはその通りなんですけど、「物価目標を達成する見通しになっている、あとは確度の問題」という話が後段にある中で、「金融面からの後押し」ってのいつまでするんですか、というのがあって、これが目先の話ならそらまあ今急に政策金利が中立水準になりはしないけど、2026年度までというタイムスパンで考えた場合、ちょっとこの表現も次回以降の展望で考えた方がエエンチャウノという気はします。
でもってこのポンチ絵ですが、前回は2026年度に向けて階段を上がっていくという姿だったのですが、今回は丘をウォーキングでホイホイと上がっていくという姿になっておりますので、これはどう見ても前回対比で自信ニキ、ということになっていると思いますな。
次のポンチ絵は物価です。
『物価は来年度以降2%程度で推移する』(今回)
『物価は来年度以降2%程度で推移する』(4月)
『物価のトレンドは2%目標に向けて徐々に高まる』(1月)
4月とは同じなんで今回から、という訳ではないのですが、物価のトレンドが徐々に上がる、というようなイカサマ臭い説明から、マイナス金利解除によって詭弁を弄する必要が少しだけ減ったので、前回からは「今の物価はこれから2%に向かって下がります」というポンチ絵に進化(?)しまして、前回は単純に「今はちょっと上にいるけど今後2%に下がります」って表示だったのですが、今回はその物価の軌跡が「トラックコースを走っている陸上ランナー」になっているのがクソワロタというお話でして、「物価見通しはオントラックで推移しています」という説明に重ねた絵じゃんということでこれは笑いました。
説明文の方ですが、
『消費者物価の前年比は、今年度に2%台半ばとなったあと、来年度・再来年度は概ね2%程度で推移します。この間、一時的な変動を取り除いた消費者物価の基調的な上昇率は、徐々に高まったあと、2%の「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移します。』(今回)
『消費者物価の前年比は、今年度に2%台後半となったあと、来年度・再来年度は概ね2%程度で推移します。この間、一時的な変動を取り除いた消費者物価の基調的な上昇率は、徐々に高まったあと、2%の「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移します。』(4月)
『消費者物価の基調的な上昇率は、2%の「物価安定の目標」に向けて徐々に高まっていきます。こうしたシナリオが実現する可能性は、引き続き、少しずつ高まっています。』(1月)
これを見ればわかると思うのですが、本来4月の展望レポートって「物価目標は今後達成するでしょう、あとは確信度合いの問題なので、オントラックで推移していると確認したら徐々に(将来一気に調整したくないから)政策金利を調整しますよ」って言っていたし、そういう文書だったはずなのですが、例の「当面緩和的な金融環境が続く」という文言だったり、会見での植田総裁のハトハトチキン発言などで台無しにしていた、という事は言える訳なのですが、展望だして1週間でドテンひっくり返す形になった内田副総裁金懇から今後どういうコミュニケーションをしてくるのかは楽しみですな。
3つ目のポンチ絵ですが、
『日本経済・物価を巡る不確実性は高い』(今回)
『日本経済・物価を巡る不確実性は高い』(4月)
『日本経済・物価を巡る不確実性は高い』(1月)
というお題目は同じ、ポンチ絵は1月から4月の間に「人が不確実性要因を考えて???となっている」から「スライドに投影されている不確実要因についてセミナーかなんかで話を聞いている」ということで、なんとなく身近じゃなくしました、というのがありますが、4月から7月にかけては同じポンチ絵になっております。
『海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、日本経済・物価を巡る不確実性は引き続き高い状況です。また、金融・為替市場の動向と日本経済・物価への影響にも十分注意を払う必要があります。』(今回)
『海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、日本経済・物価を巡る不確実性は引き続き高い状況です。また、金融・為替市場の動向と日本経済・物価への影響にも十分注意を払う必要があります。』(4月)
『海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、日本経済・物価を巡る不確実性はきわめて高い状況です。また、金融・為替市場の動向と日本経済・物価への影響にも十分注意を払う必要があります。』(1月)
この不確実性要因に関しては文言自体は同じです。
でもって4つ目のポンチ絵。
『2%目標のもとで金融政策を運営していく』(今回)
『2%目標のもとで金融政策を運営していく』(4月)
『強力な金融緩和を継続する』(1月)
1月はまだマイナス金利とYCCやっていたので文言が違いますが、1月に謎としか言いようのない変なイラストになったと思ったら、4月は日銀本館のイラストと2%という旗、という益々わけのわからんイラストになりましたが、今回は少しまた説明チックな絵になりましたね。
でまあ絵の話の前に説明文見ますけど、
『金融政策運営については、先行きの経済・物価・金融情勢次第であるが、経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えています。』(今回)
『日本銀行は、2%の「物価安定の目標」のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営していきます。』(4月)
『日本銀行は、粘り強く金融緩和を継続することで、賃金の上昇を伴う形で、2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現することを目指していきます。』(1月)
1月はさておきまして、4月のポンチ絵は何が何だかわけわからない絵に加えて説明文の方もお前は何を言ってるんだという感じでいいかんじで何か言っているようで何も言ってない文章になっている(意味があるとすれば従来と違ってコンディショナルに政策運営しますと書き換えた、ってところですね)のでして、展望レポート基本的見解には書かれていたもののこっちのポンチ絵ではスルーされていた「見通し通りに推移すれば利上げ」というのを今回のポンチ絵では明確に記載した、というのが大いなる変更点になります。
でもってポンチ絵ですけれども、前回のまるで何の意味もないポンチ絵から一転して、なんかいろんなものを見ながら計器のつまみ(というには大きいですけど)を調整しようとしている人たちの巻、という面白イラストになっていまして、しかもその計器の調整でゼロから少し調整しております、ってな絵になっているのはチャーミング。
でですね、計器の調整をするために見ているモニターに映っている一つ目のが、「買い物をしている人とその上にグラフっぽいのがあって2%って数字がある」という図なのですが、この物価推移らしきものが現状では2%を上回っていて、それが徐々に2%に向けて下がる、という図になっているのは芸が細かい。
これはですね、アタクシが勝手に妄想しているだけかもしれませんけれども、先般の内田副総裁の金懇でも「物価が高止まりしていること」に対するマイナス面についての説明があったわけですけれども、従来の「物価上昇第一の力、第二の力」の説明ではなく、そもそも論として物価が長期に高止まりするのイクナイ、という極めて当たり前の話に日銀が回帰してるんジャマイカということを示しています。
さらに芸が細かいのはこの1つ目のモニターで買い物をしている図が見るからにスーパーのカートを押しているお姉さん、って図になっておりまして、これすなわち輸入価格上昇に伴う物価上昇も気にしていますよ、と言わんばかりの絵になっていて、なんか急に変なもんでも食ったのかという位に細かいニュアンスが読み取れますね。
そして2つ目のモニターに映っているのは「飛行機が飛んでてその下に一回落ち込んだ後に上向きトレンドになってきている線」というのが上半分にあるわけでして、これはどう見てもインバウンド需要です本当にありがとうございました、ということですのでインバウンドまで含めれば消費は強いんですよとでも言いたいのかね、と思ってしまいました。下半分のイラストは工場生産の絵みたいになっているので、これは生産を意味しているのかなとも思いました。
・・・・とまあそういうわけで、何でしょう今回はそもそも前回との継続性があるわ、絵にいろんなニュアンスが込められているわと、ハイライト作成担当の中の人が急に覚醒でもしたのか、ついこの前までのもはや何を言っているのかが無茶苦茶だわ前回との絵の継続性が全く無いわという無茶苦茶プレイから変化した訳です。
これをどう解釈するか、と30秒ほど考えたわけですが、そもそも論としてこのポンチ絵で@「2%」が近かったはずが突如急に遠くなる、という怪奇現象が発生したのが2023年4月展望→7月展望のところ、A物価上振れについてマイナス金利YCC解除をした前回から急にポンチ絵に織り込むようになった、という点を勘案しますと、植田さん就任後のハトハトモードの時っていうのは説明に大いなる無理があった、すなわち本来マイナス金利の解除やその後の政策修正などを行って然るべきであった時期に延々と黒田緩和を引っ張ってしまったので、展望レポートハイライトでの絵の説明が無理矢理観満載のものになったのだが、マイナス金利YCCを解除して、今回利上げも行った時点になって、やっと説明で変な無理をしなくて済んで、ということなのではないかと思いますし、そう考えるとウッチーの先般のハト転換はなんかその場しのぎの偽装ハト転なんじゃネーノ、とも思ったりします。
2024/08/15
〇利上げからこの方アホみたいにいろんなことがあって結局全然できていなかった件を徐々に成敗します
ショパンの事情(7割くらいはワイの体力の問題)によってそもそ7月FOMCに関しても碌すっぽフォローしていないのですが、こういうのは1回飛ばすと後で苦労するので今週末こそはちょっと成敗をしないと(なおワイの体力の問題は継続しておるのですサーセン)いけないとさすがに思う今日この頃ですが。
ということでクッソ昔の話になりますし、何ならそろそろ展望レポートハイライトとかいう「継続性のない開示文書」という民間がやるとすかさずどこぞかの方面からお叱りを食らいそうだというのに、日銀が継続性のない開示ポンチ絵を出しても無罪放免という民間人として極めて釈然としない物件が出てきそうなのでせめて展望の鏡だけでも。
ということで今更ジローですが展望の鏡を改めて確認しておきます。
7月基本的見解
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2407a.pdf
4月基本的見解
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2404a.pdf
1ポツ目
『・先行きのわが国経済を展望すると、海外経済が緩やかな成長を続けるもとで、緩和的な金融環境などを背景に、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まることから、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。』(今回7月)
『・先行きのわが国経済を展望すると、海外経済が緩やかに成長していくもとで、緩和的な金融環境などを背景に、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まることから、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。』(前回4月)
この「先行き見通しは今回別に引き上げたわけではない」というのは明らかに意図的にやっておる訳でして、「見通し通りに推移すれば徐々に政策金利の調整を行う」という4月展望で書いていたこと(だというのに会見で台無しにしてしまって円安をぶっ飛ばしてしまったのはご案内の通り)の通りな訳です。
よって、「見通しの引き上げが無くても今後も政策金利の修正ができる」となっているので、今回の場合は展望レポート会合のタイミングで確認をして上振れリスクも高まったということで政策修正をしましたが、7月会合後の会見での説明にもありましたように「ある程度データが揃ってオントラックが確認出来たら」政策金利の修正は可能、という建付けになっているので、別に展望会合ではなくても次回の利上げは可能という話になるんですなこれがまた。
まあウッチーが(後でひっくり返すことのできるような詭弁を駆使はしているけどそうは言っても事実上)この1週間後にベタ降りしてしまったので次の調整に向けてはまた情報発信を1からやり直さないといけなくなっている(しかも岸田さん退陣確定で官邸にゴマをすったつもりが肝心の官邸がなくなってしまうという辺りに日銀の日銀たる間の悪さが出ていて実にほほえましいですね!!!)のはそれはそうなので、まー12月1月とかが良いとこ(為替次第の面はあるけど)かなって感じになるんですかね、知らんけど。
2ポツ目
『・物価の先行きを展望すると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、2024
年度に2%台半ばとなったあと、2025 年度および2026 年度は、概ね2%程度で推移すると予想される。』(今回7月)
『・物価の先行きを展望すると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、2024
年度に2%台後半となったあと、2025 年度および2026 年度は、概ね2%程度で推移すると予想される。』(前回4月)
そもそも論としてこの見通しなら「物価目標は達成」なのですが、見通しが当たるかどうかはワカランチ会長、ということで政策修正をモタモタとやっている、という建付けですね、いまさら言うまでもないのですが念のため。
『既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響が減衰する一方、2025 年度にかけては、政府による施策の反動等が前年比を押し上げる方向に作用すると考えられる。』(今回7月)
『既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響が減衰する一方、2025 年度にかけては、このところの原油価格上昇の影響や政府による経済対策の反動が前年比を押し上げる方向に作用すると考えられる。』(前回4月)
原油価格上昇の影響や、が抜けただけで言ってることは基本同じですぬー。
『この間、消費者物価の基調的な上昇率は、マクロ的な需給ギャップの改善に加え、賃金と物価の好循環が引き続き強まり中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想され、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。』(今回7月)
『この間、消費者物価の基調的な上昇率は、マクロ的な需給ギャップの改善に加え、賃金と物価の好循環が引き続き強まり中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想され、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。』(前回4月)
基調的な物価(って何なのという説があるのですがそれはさておきまして)に関しても言ってることは同じでして、「見通しオントラック」であれば政策金利の調整はできますよというお話な訳です。
3ポツ目
『・前回の見通しと比べると、成長率については、2024 年度は、前年度の統計改定の影響等から、幾分下振れている。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比については、2024
年度は、政府の施策がエネルギー価格を押し下げることを主因に下振れている一方、2025
年度は、こうした施策による押し下げの反動から、幾分上振れている。』(今回7月)
『・2025 年度までの見通しを前回の見通しと比べると、成長率については、2023
年度と2024 年度は、個人消費を中心に下振れているが、2025 年度は概ね不変である。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比については、2024
年度が上振れているが、2025 年度は概ね不変である。』(前回4月)
ゆうてこれまた基本的には変わっていないのでした。
4ポツ目
『・リスク要因をみると、海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、わが国経済・物価を巡る不確実性は引き続き高い。そのもとで、金融・為替市場の動向やそのわが国経済・物価への影響を、十分注視する必要がある。』(今回7月)
『・リスク要因をみると、海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、わが国経済・物価を巡る不確実性は引き続き高い。そのもとで、金融・為替市場の動向やそのわが国経済・物価への影響を、十分注視する必要がある。』(前回4月)
と4ポツ目もここまでは同じですが皆様既にご案内の通りで、
『とくに、このところ、企業の賃金・価格設定行動が積極化するもとで、過去と比べると、為替の変動が物価に影響を及ぼしやすくなっている面がある。』(今回7月)
というのがぶっこまれていて、「企業の賃金・価格設定行動が積極化する」という現状認識と、「為替の変動が物価に影響を及ぼしやすくなっている」を加えているので、今回は「見通しオントラック+円安進行によるリスク認識の変化」によって政策金利の調整をしました、という触れ込みになるわけですな。
そうなりますと、ウッチーがああやってベタ降りした(ような見せ方の講演を行った)のですが、ウッチーベタ降りした結果として円安再燃になると結局リスク認識がまた物価の望ましくない上昇のリスク、となるので政策金利の調整待ったなし、という話になりますが、それをやっておりますといやお前ら利上げしたの何だったのって話にもなるわけで、なんであそこまでベタ降りしたのかというのが訳ワカメですが、面倒になると皆で日銀のせいにするムーブが湧きおこって来たので自衛したら過剰防衛になった、ってところなんでしょうけど、防衛力の行使も節度を持つ必要がありますなwwwww
5ポツ目
『・リスクバランスをみると、経済の見通しについては、2025 年度は上振れリスクの方が大きい。物価の見通しについては、2024
年度と 2025 年度は上振れリスクの方が大きい。』(今回7月)
『・リスクバランスをみると、経済の見通しについては、2024 年度以降、概ね上下にバランスしている。物価の見通しについては、2024
年度は上振れリスクの方が大きいが、その後は概ね上下にバランスしている。』(前回4月)
ということで、リスクバランスが経済も物価も上振れになるとかいうことで政策金利の調整をしましたよ、という形になっていますので、「見通しがオントラックなのを確認する」とかいうこれまた「お気持ち」の世界で政策金利の調整は可能、という建付けを崩していませんし、リスク上振れの認識が続いたらなおのこと政策金利の調整待ったなし、となります。
でもってこの「リスク上振れの認識」が先週の相場変動を受けて変化した、というのが内田副総裁の説明になっているのですから、結局のところ内田副総裁の説明もベタ降りのようには見えますし、本人それを明らかに意識しているでしょとは思いますが、仕掛け上はベタ降りしたように見せて急に息を吹き返すことは可能になっている、というのが諸葛孔明の罠といったところかと思います。
#てな感じでちょいちょい成敗してまいりますすいませんすいません
2024/08/09
〇決定会合主な意見は利上げしたんだから当たり前だが強い見解が並ぶ
そらそうよという感じですが
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2024/opi240731.pdf
金融政策決定会合における主な意見
(2024 年 7 月 30、31 日開催分)1
・経済に関しては「消費」が話題になっていたのですがよくよく見ると「高物価放置プレイの弊害」の話だったりする
『T.金融経済情勢に関する意見』の『(経済情勢)』は消費の話のオンパレードでして、
『● わが国経済は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復しており、先行きも、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まることから、潜在成長率を上回る成長を続けるとみられる。』
『● 春季労使交渉の結果が賃金に反映されてきているなど、経済・物価はオントラックである。』
とまあそういうのはあるのですが、この後が連続して消費の話になっていまして、
『●個人消費は決して強くないが、この先春季労使交渉の結果の賃金への反映がさらに進むこと、夏季賞与が好調であることに加えて、定額減税等もあり、底堅い動きが続くとみられる。』
『● 個人消費はマクロでは力強さに欠けるが、ミクロでみれば強弱があり、必ずしも弱さだけではない。』
『● 名目賃金の伸びを上回る物価上昇により、実質賃金の低下が続くなか、個人消費などに弱さがみられる。名目賃金上昇のモメンタムが維持される限り、時間の経過とともに経済状況は改善すると思われるが、足もとは、賃金上昇の波が幅広く浸透し、その持続可能性が高まることを見守る忍耐が重要な局面にある。』
ということで、消費だけで3つ立て続けにならんでいるのですが、まあベースは別に弱くはないという話になっています。しかしこの3番目の意見とかそうなんですけど、結局のところ個人消費が弱いのって物価が上がりすぎな状態になっているからなのでありまして、昨日ネタにした内田副総裁函館金懇の中でしれっと書かれていた、
『また、図表 14 をご覧ください。左のグラフの通り、2年以上にわたって物価が2%を上回っており、今年度の見通しでも上回ると予想されます。このことは、わが国経済やここにおられる皆様の生活に直接影響を及ぼしており、政策判断において、重要な要素だと考えています。』(8/7内田副総裁函館金懇挨拶より)
の話になっているという事でつながっているんだと思います。まあ今まで散々物価高を放置して基調的インフレが行ってないで突っぱねていたのに、急にここに来て(利上げをしたから、なのかどうかは判然としませんが)このような話がクローズアップされてくるのはナンジャソラ感はありますが、まあ正常な方向といえば正常な方向になっているのでは、と思いますがどうですかね。
『● 実質金利のマイナスの長期化が、家計などの資金の出し手から、実質負担減となる資金の受け手への所得移転をもたらす面があることを意識して、金融経済情勢を確認していく必要がある。』
こっちも物価高止まり放置プレイによって発生している話なのですが、これまた従来そういうのを言ってなかっただろおまいらと考えるとかなり味わいのある記載のように思えました。
『● 新しい環境への適応度に応じ企業間の差が大きくなっており、全体の動きだけでは経済の実態を捉えにくくなっている。』
消費を念頭に置いてるのかどうかは分からんですけれども、マクロ統計だけではよくわからんという話がありまして、このコーナー最後を飾るのは中村審議委員と思われるお方ですが、ちと長いので分割します。
『● 日本経済の構造的問題は、少子高齢化による消費低迷と低収益化した産業構造にある。』
ふむふむふむ。
『今後、新NISAによる金融資産所得の持続的増加が消費を刺激するとともに、』
ちょwwwwww唐突に新NISAしかも金融資産所得が持続的に増加することになっているのがチャーミング。
『国際競争力の高い事業の育成が産業集積と輸出拡大に繋がり、成長志向の中堅・中小企業の能増投資や雇用の拡大に波及すると期待される。』
まあ何ちゅうかそれはそれでまあそうかも知れんねという話なんですが、でもって金融政策でなんかできるんでしたっけ、という話になってしまいますし、低収益化した産業構造を不必要な低金利政策により温存されるのイクナイって話にはならんのですな。
・金融政策変更の会合なのに物価の意見が5個しかないwwwww
『(物価)』なのですが、小見出しで書いた通りで物価の意見が5個しかなくて、おまいらインフレターゲットやってるんじゃなかったのかよという話ですけど、まあこういう辺り、なし崩し的(なのはどうかと思うけど)に「厳格なインフレ目標」から「インフレ目標はあるけど政策運営はフレキシブル」に代わってきているような気がしないでもないな、と思いました。
『●消費者物価の基調的な上昇率は徐々に高まっていくと予想され、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。』
はいはい大本営大本営。
『● 中長期の予想インフレ率の上昇や春季労使交渉の結果が統計に反映され始めたこと等を勘案すると、賃金と物価の好循環が働きだしたと考えられ、基調的な物価上昇率は2%に向けて着実な歩みをみせている。』
好循環働き出しているそうですよ!!!!
『● 物価目標の実現の確度はさらに高まった。ただし、人手不足の結果、供給不足・需要超過の業種が増えており、物価の上振れリスクに注意する必要がある。』
上振れリスク・・・・・・
『● 海外のインフレやこれまでの円安による輸入物価の上昇に加え、タイトな労働需給や、労働時間の上限規制の影響もあり、価格上昇圧力が続くと考えられる。』
もう「足元までの上昇は一時的でそのうち2%割る」という話はすっかり無くなっているんですな。
『● 2%を超える物価上昇が3年目となるなか、「物価安定の目標」の厳密な意味での実現とは別に、家計を中心に「目標」実現が従来よりも意識されてきていることを認識する必要がある。』
ちょwwwwwwwww
ということで、物価の意見が5個しかない(1個大本営枠だから実質4個)のもウケたが、全員上振れだわアクチュアルの物価が高止まりしている件の影響の話まであるわで、そもそも言ってることの理屈がなんか変わっているんですよね。
・金融政策運営パートに参りますがやっぱり基本ロジックには君子豹変感が強いですよね
次が『U.金融政策運営に関する意見』です。利上げ会合だからうじゃうじゃ並んでいるのは仕様としまして鑑賞しましょう。
『●経済・物価は、これまで示してきた見通しに概ね沿って推移しているほか、輸入物価は再び上昇に転じており、物価の上振れリスクには注意する必要もある。「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現という観点から、政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整することが適切である。』
これは大本営。
『● 3月の政策変更以降、経済・物価は概ね想定通りに推移している。足もとの経済の状態は、現在の極めて低い政策金利を幾分引き上げることができる程度には良いと考えている。』
しかし今までこの理屈を前面に出していなかったのに、今回の政策変更にあたってこの説明を堂々と前面に出してくる、というのはコミュニケーションという意味で違和感は拭えないわけで、だったらもっと前の段階から政策委員の金懇でもよいから、「実質金利で考えれば今の金利はマイナス圏にあり、インフレ期待などの上昇が続けば一段とマイナスが拡大する」みたいな説明をもって行ってほしかったわけですよ。
でまあそういうのが何となくなあなあで流しながら、いざ利上げとなるとこの実質金利は低い理論を前面に出してくる、というのは日々日銀見物をしてきゃあきゃあ言ってるマニアのアタクシであってもやっぱり「唐突感」はぬぐえないわけですから、そらまあ普段そこまで日銀シャカリキになってみているわけでもなさそうな他市場の方とか海外さんとかからすると今回青天の霹靂でジャガーチェンジしたと思う罠、と感じますね。
でもって以下がジャガーチェンジの皆様のお話でして、
『● 実質金利は過去 25 年間で最も深いマイナスとなっており、様々な指標でみた金融緩和の度合いは、量的・質的金融緩和期の平均的な水準を大きく上回っている。』
『● 金利を引き上げたとしても、0.25%という名目金利は引き続き極めて緩和的な水準であり、経済をしっかりと支えていく姿勢に変わりはない。』
なんか後者って内田さんの金懇での説明に似ている部分がありますが、「緩和で経済をしっかり支える」という理屈を持ち出すのが話を混乱させるもとでして、緩和の調整をする位に物価目標達成に自信があるんですから、そういう経済に対して「緩和でしっかり支える」というのが本当に必要なのかという話はあるんですよね。
つまり、物価目標達成への自信が高まる中で緩和修正しているんですから、それはもはや本来的に言えば大いなる緩和は不要(大いなる緩和をやりすぎたら欧米みたいなドテン引き締めをしないといけないので)な話で、「日本の場合はゼロインフレ均衡からの脱却を行っている関係上、物価目標達成の確認までの期間は金融政策が緩和的になるのは過去からの経緯からそうなるもんです」という感じになるのが本来の理屈であって、緩和で経済をしっかり支える、というのはゼロインフレ均衡の時から思考が変わっていない、ということを意味するので、ちょっとこの説明には違和感がありますな、うんうん。
『● 金融政策の正常化が自己目的になってはならず、今後の政策運営については、注意深く進めていく必要がある。』
わけわからん。物価目標達成するなら自己目的も糞もなくて正常化しないとダメでしょ。慎重にやりたいという意見はわかるけど。
『● 足もとの物価を取り巻く環境を踏まえると、小幅な利上げを検討してもよい時期だと考える。なお、緩やかなペースの利上げは基調的な物価の上昇に応じて緩和の程度を調整するものであり、引き締め効果を持たない。』
まあそうなんですけど、緩和の時に緩和緩和緩和と盛大に強調していたので、逆で引き締めと言われるのは安易な緩和アピールのつけです。
・少なくとも2名は今後の利上げもとっととやれという主張ですね
『● 2025 年度後半の「物価安定の目標」実現を前提とすると、そこに向けて、政策金利を中立金利まで引き上げていくべきである。中立金利は最低でも1%程度とみているが、急ピッチの利上げを避けるためには、経済・物価の反応を確認しつつ、適時かつ段階的に利上げしていく必要がある。』
1%キタコレという感じですが、0.5%とは言わず0.75%か1%まではさくっと利上げして、その後はゆっくり経済物価情勢見ながら考えていく、という感じになるんでしょうね、とは思います(内田副総裁講演で割とダイナシーになっていますが)。
『● 今回の政策変更後も、物価が見通しに沿って推移するもと、堅調な設備投資や賃上げ、価格転嫁の継続といった前向きな企業行動の持続性が確認されていけば、その都度、金融緩和の一段の調整を進めていくことが必要である。』
まさかの展望の都度上げそうな勢いの見解来ました。
・なお慎重派2名は反対した2名ですね
『●現状は、政策金利の引き上げがまったく不可能とは捉えていないが、経済成長率や消費など下振れ気味のデータが多いため、賃金上昇の浸透による経済状況の改善をデータに基づいてより慎重に見極める必要がある。』
というのが野口さんで、
『● 現時点では経済の持続的成長を裏付けるデータが少ないため、次回会合で重要な経済データを点検して変更を判断すべきで、今次会合での利上げについては反対する。』
というのが中村さん。
・以下輪番の話になりますね
『●長期金利は金融市場において形成されることが基本であり、国債の買入れは、国債市場の安定に配慮するための柔軟性を確保しつつ、予見可能な形で減額していくことが適切である。』
『● 市場に金利形成を委ねるため、基本的には計画に沿って、国債買入れの減額を淡々と進めていくべきである。』
大本営ですね。
『● 国債買入れの減額計画の目的は、あくまでも市場領域の回復であり、金融引き締めにあるのではない。』
とは言え買入増やしながら緩和って言ってたんでね〜。
『● 国債買入れの減額は緩やかなペースで着実に実施していくことが望ましい。債券市場参加者会合の結果から、市場の減額への見方には相応にばらつきがみられるため、予想形成が一方向に偏ることによる市場の混乱のリスクは高くないと考える。』
前半は良いけど後半言ってることがイミフ。
『● 国債買入れ減額については、1年半強かけて四半期毎に月3兆円程度まで等速で減額することとし、機動的対応の余地を残し中間評価を実施するなど、慎重に進めれば、市場にサプライズを起こさず実施可能と思われる。』
まあ言いたいことも分かるし猫かぶっているんだろうなというのもあるんですけど、そもそも今がアホみたいに買いすぎなので、減額が足りない可能性という方が高いのですが、そっちへの配慮が無いのが何ともかんとも。
『● 今後、長期金利がより自由な形で形成されるようになるなかで、国債市場の投資家層が広がっていくことを期待している。』
これはまあ今の短国市場見れば一目瞭然なんですが、金融安定化委員会とかああいうのが金融機関が本来持っているマチュリティートランスフォーメーション機能をつぶそうつぶそうとしやがって親の仇のように規制かけている訳で、日銀マターではないのですが、そっちの「過度な安定化志向による過剰な規制」について何とかしないとアカンのではなかろうか、と思います。
・日銀が国債買入を止めても新規発行が増えるのと同じというのは誤認を誘発しやすいので如何なものかと
『● 仮に国債買入れの減額を市中への国債供給の増加という点で新規発行と同等と捉えると、今回の減額により、歴史的にも有数の大量発行局面を迎えると考えられる。国債の保有構造の在り方を念頭に、市場や投資家動向をモニタリングしていくことが重要である。』
よくこの理屈が飛び出すんですけど、マクロの資金的に言ってしまえば、国債発行されて日銀が買入をするっていうのは、国債が日銀負債の形でマチュリティートランスフォーメーションが起きているだけの話であって、もちろんそれがマネープリンティングで出ればインフレ要因にも程がある話ですが、日銀の場合は利息付日銀当座預金に国債が化けているだけのお話なんですよね。
つまり「国債大量発行と同等」というのは非常に語弊のある言い方であって、「国債発行年限の長期化と同等」というのが資金循環的に考えれば妥当な表現になるのでして、まあそれもあるから発行年限を調整しましょうとかそういう話が発行サイドから出ているんですよね。
この「国債大量発行と同等」という言い方をするのって、突き詰めていってしまうと「国債を中央銀行が買入をすると国債が消える」とかいう例えば某ジンバブエ元審議委員が審議委員就任直前に某新聞のインタビューで堂々と言っていたロバート・ムガベも裸足で逃げ出すジンバブエ理論を別の角度から言ってるのと同じことになりますので、甚だ誤解を招きやすい例えだと思うので、この言い方はすべきではないと思います。
・市場機能論はほどほどに
『● 日本銀行のバランスシート正常化の道のりは長く、国債大量保有に伴う副作用が残り続けてしまう。引き続き、市場機能の状況等を注意深く見ていく必要がある。』
アタクシ的には市場機能論を押し出していく説明あんまり好きじゃなくて、まあ根っこは同じように市場機能ではあるんですけれども、「財政運営に関する市場からの警告が行われない(ので馬鹿官邸を筆頭とする馬鹿の巣窟がコストタダだと思って隙あらばノーズロ失禁脱糞垂れ流し財政運営を行い大惨事を巻き起こすリスクが高い)」という事の方が大事だと思います。
とまあそんな感じで。
2024/08/06
〇6月会合議事要旨はまあ後付け感が漂うのでアレですけど
決定会合レビューが全然終わっていないのですがさきにこっちを簡単に成敗
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2024/g240614.pdf
政策委員会金融政策決定会合議事要旨
(2024年6月13、14日開催分)
『V.金融政策運営に関する委員会の検討の概要』をちょっと確認しておきましょう。
・6月会合後はいろいろと積極的な話の方が多かったとはいえ・・・・・・
『先行きの金融政策運営について、委員は、2%の「物価安定の目標」のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営していく
との考え方 を共有した。そのうえで、委員は、「展望レポート」で示した経済・物価の見通しが実現し、基調的な物価上昇率が上昇していくとすれば、政策金利を引き上げ、金融緩和度合いを調整していくことになるほか、経済・物価見通しが上振れたり、見通しを巡る上振れリスクが高まったりする場合も、利上げの理由となるとの認識を共有した。』
これ自体は6月会合後に強調されていましたが、そもそもは4月の展望レポートの時点で書かれていた話でして、4月の会合って展望レポートの先行き政策の話を見ると7月に利上げをしてもおかしくないロジックで書いていたのに、会見がご案内の通りのハトハトで一段の円安を招いた、という代物だった訳でして、結局こういう話になるんだったら、4月会合の植田総裁の説明が不適切だった(両論併記で余計なこと言いすぎ)という話だし、その後の政策委員における金懇などの情報発信で軌道修正を早めに見せるべきだったという話。まあ要するにコミュニケーションが今回は悪い。
『この点に関連し、一人の委員は、見通しに沿った物価の推移が続く中、最近のコストプッシュ圧力の再度の高まりを背景とした価格転嫁が進み物価が上振れる可能性もあるだけに、リスクマネジメントの観点から金融緩和の度合いを更に調整することの検討も必要であると指摘した。』
キタコレ。
『別の一人の委員は、物価について、来年度後半の2%の「物価安定の目標」の実現に向けて想定通り推移しているが、上振れリスクも出てきているとの見解を示した。そのうえで、この委員は、こうした点が消費者マインドに影響していることも意識しつつ、次回会合に向けてもデータを注視し、目標実現の確度の高まりに応じて、遅きに失することなく、適時に金利を引き上げることが必要であると述べた。』
田村さんだけだと思ったらもう一人いたんですね6月会合。でもってこの人が指摘しているように、「上振れリスクが消費者マインドに影響」なんですから、利上げをちゃっちゃとするのは適切という話をしていますね。まあその通りというか既にこの時点で「遅きに失していた」という感じだし、6月に輪番とか言ってないでちゃっちゃと利上げすべきでしたなあ。
『また、ある委員は、政策金利の変更について、消費者物価が明確に反転上昇する動きや、中長期の予想物価上昇率の上昇などをデータで確認したタイミングで検討することが適切であるとの見解を示した。』
慎重派その1なのですが、ただでなくさえ2%超なのに「明確に反転上昇する動き」が出たらそれは節子望ましくない上振れや、という話なのでこういうのは何なんだよとおもってしまいますな。
『一方、一人の委員は、個人消費が盛り上がりを欠く中、一部自動車メーカーの出荷停止という想定外の事態が続いていることから、これらの影響も確認する必要があると指摘したうえで、当面は現在の金融緩和を継続して企業の前向きの構造改革を後押しすることが適当であるとの見解を示した。』
どうせ企業の前向きの構造改革云々だから中村委員なんですけど、自動車メーカーの云々って話、これ影響を確認したい気持ちはわかるんですが、そんなことを言い出したら何でもかんでも確認をしないといけなくなる話な訳で、単に動かない言い訳にしかなっていないんですよねこれ。
つまりですね、この手の事案に関しては「その事案がワンオフの事案なのか、それとも長期的に影響あるいは二次的な波及効果がある事案なのか」という点からまずは考える話であって、そう考えるとこれはワンオフ事案に寄っていませんかね、というお話になると思うんですよね〜
・為替円安の影響に関してこんなに話をしてたんだったら・・・・・・
『委員は、為替円安と金融政策運営との関係についても議論した。』
ってのが次にありまして、
『まず、委員は、最近の為替円安の動きについて、物価の上振れ要因であり、金融政策運営上、十分に注視する必要があるとの認識を共有した。』
4月決定会合の植田発言は何だったのかと小一時間問い詰めたいwwwwwwwwwwww
『一人の委員は、為替円安は物価見通しの上振れリスクを高める要因であり、国内物価へのパススルーが強まっていることや、現実の物価が2%を超えていることを踏まえると、物価の上振れリスクが顕在化した際に生じ得る損失も高まっていると指摘した。』
さらにこの人が主張しておりまして、って1名の意見なのに取り扱いが長いなおい。
『そのうえで、この委員は、リスクマネジメントアプローチに立って考えれば、リスク中立的な、適切な政策金利の水準は、その分だけ引き上がると考えるべきとの見方を示した。』
はい。
『別の委員は、円安観測の強まりなどが、企業行動や株価に及ぼす影響も重要であると述べた。』
ほう。
『ある委員は、為替相場の変動は経済活動に幅広い影響があるほか、ファンダメンタルズから乖離した水準が続けば国民経済の健全な発展にも影響が及ぶとの認識を示した。そのうえで、この委員は、金融政策は、為替相場だけではなく国民生活や経済活動の幅広い側面に影響するため、経済・物価情勢の全体像をみて運営していく必要があると付け加えた。』
ときてから最後に
『別の一人の委員は、為替は物価に影響を及ぼす要因の一つではあるが、金融政策運営は、物価の基調とその背後にある賃金動向を見極めて行うものであるため、為替の短期的な変動に左右されるべきではないとの見解を示した。』
原則論はそうなんだが為替の短期的な変動で済まされる動きじゃなかったですからねーーー。
ってかですね、こんなに円安懸念してるならもっと事前に言えよとしか言いようが無い・・・・・・・
2024/08/05
〇決定会合レビュー:長期国債買入減額は「予見可能性」は高いちゃあ高いのだが
今更声明文だが
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2024/k240731a.pdf
金融市場調節方針の変更および長期国債買入れの減額計画の決定について
別紙の方。
『長期国債買入れの減額計画について
長期金利は金融市場において形成されることが基本であり、日本銀行による長期国債の買入れは、国債市場の安定に配慮するための柔軟性を確保しつつ、予見可能な形で減額していくことが適切である。こうした観点から、2026
年3月までの長期国債の買入れは、以下のとおり運営する。』
この「安定に配慮」ってのが何なんでしょうねというのは先日も申し上げた通りでして、過去の黒田緩和、特に後半のYCCでは「市場安定」と言いながら飛んでもない介入をしてしまったのはご案内の通りでして、同じ言葉を使ってるんじゃねえよ思う訳ですよ。
つまりこれ「減額をするのが基本」なのか「国債市場の安定を図るのが基本」なのか、主目的がどっちなのか微妙に分かりにくいわけで、本当に減額を基本にするんだったら「減額するのが基本だが、減額の規模は市場に過剰なストレスを与えない」みたいな「市場が暴れないなら減額はバンバンやっていく」というのをもうちょっと見せても良かったんじゃないの、と思うのですが。
『1.月間の長期国債の買入れ予定額を、原則として毎四半期 4,000 億円程度ずつ減額し、2026
年1〜3月に3兆円程度とする(詳細は、別添)。』
『2.来年6月の金融政策決定会合では、長期国債買入れの減額計画の中間評価を行う。中間評価では、今回の減額計画を維持することが基本となるが、国債市場の動向や機能度を点検したうえで、必要と判断すれば、適宜、計画に修正を加える。また、同時に、2026
年4月以降の長期国債の買入れ方針について検討し、その結果を示すこととする。』
仮に「減額が基本」であり「一方で減額が原因で市場に無用の混乱を与えるのは良くない」という考えなのであれば、本来は「維持することが基本」なのではなく、減額を行ってみて市場が特に問題なく減額を消化する、あるいは減額が足りなくて国債需給がタイトなままということであれば、「1年後は維持ではなくて減額を加速するのが基本」じゃないの、って思うのですよね。
『3.長期金利が急激に上昇する場合には、毎月の買入れ予定額にかかわらず、機動的に、買入れ額の増額や指値オペ、共通担保資金供給オペなどを実施する。』
やらんでよろしい。
『4.なお、必要な場合には、金融政策決定会合において、減額計画を見直すこともありうる。』
って話なのですが、まあアレです。今回って政策金利に関しては「実質金利は大幅マイナス」とか物凄く威勢の良い話をしていて、この先さらに利上げをしても全然緩和的ですがな、みたいな自信ニキの話をしているのと、こちらの長期国債買入減額に対する話がだいぶ対照的だな、と思う訳ですよ。
まあね、ここまでアホみたいに国債買入を積み上げてしまって、しかも圧倒的なフローでまだ買入をしている、という状況なのに関してってのは、政策金利よりも話が難しいというのもこれまたお話としては分からんでもないところでして、まるで分らんからとりあえず上記のリリースに関しても及び腰っぽい書き方になっているんだろうなあとは思うのですよ。
でもね、さすがに日銀もアホじゃないので今の日銀の保有国債の残高が過剰オブ過剰なのは分かっていると思うので、本来は「減らしても混乱しないんだったら減らしたい」はずなのは上記の文章からも出てきていると思うのですが、とにかく初手は混乱を回避したい、というチキン(気持ちは分からんでもないが)な方が先行しているからこうなっているんでしょうな、ということだと思うのでありまして、輪番が相変わらず長期金利を抑圧していて碌なことになっていない、という認識が広がって固まってきたら1年後には輪番減額ペース加速したっておかしくないよね、とはさすがに思うのであります。まあ1年後世の中どうなってるのかよく分からんけど。
2024/08/01
お題「金融政策のステージがやっと「緩和の縮小」に明確化した日銀会合でした(FOMCネタは勘弁)」
ということで、いつもですと本日は寝起きでFOMCシリーズなんですが、さすがに昨日の日銀ネタが大ネタすぎまして処理能力が追い付かないので今しばらく日銀ネタで勘弁してつかあさい。
#どうせFED動くの9月以降だし(おい)
しかしまあ何ですな、
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-07-31/SHHNEST0AFB400
円が対ドルで一時149円台、3月19日以来−米ADP統計後に一段高
Masaki Kondo、グラス美亜、Alice Atkins
2024年7月31日 22:26 JST
今まさにこのタイミングで円安是正介入をぶっこんでドル円140円目指す気概で弾幕投下したらバチクソ効きそうな気がするんですがもうぶっこんじゃえぶっこんじゃえ!!!!
〇その前に昨日の訂正というか差し替え(時事通信の報道の件)
時事通信さん、昨日ネタにしたネット(=無料版)の記事ですが、確かに一昨日の夜に投下された記事ではあるのですが、よくよく調べてみますとその後朝刊締め切り前の段階(時事さん自体は朝刊出すわけじゃないですけど新聞社に出してますからね)に以下の記事に有料版(というか会員向けというか)は差し替えになっていまして、無料版の方は昨日の朝7時過ぎにこの記事になっていました。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2024073100039&g=eco
0.25%への追加利上げ検討 国債購入減額の計画決定へ―日銀
時事通信 経済部2024年07月31日07時35分配信
『日銀が31日の金融政策決定会合で、追加利上げする検討に入ったことが30日明らかになった。短期金利を現在の「0〜0.1%程度」から「0.25%程度」に引き上げる案を軸に議論する。中小企業を含め、賃上げの動きが地方にも広がり、日銀は先行きの物価上昇率が目標である2%程度で推移する見通しに一段と自信を強めている。このため、会合では、3月のマイナス金利政策の解除に続く追加利上げを検討する。』(上記URL先より、以下同様)
とありまして、記事の中で
『物価高で個人消費はもたついているものの、日銀は賃金上昇や政府による定額減税などの効果で、景気の腰折れは回避できると判断している。また、最近の急速な円安で輸入インフレが再燃する恐れもあり、日銀内では、利上げが妥当との見方が広がっている。ただ、一部に実質賃金がプラスになるまで待つべきだとの意見もあり、会合で最終調整する。』
円安でインフレ云々って今回のいくつかあるキーワードの一つになっていまして、この点もきちんと指摘していますね、というのと、まあこの「検討に入った」は基本的に「多分やるでしょう(ただし自信満々に裏取れているわけではない)」という意味のメディア話法になりますので、かなりやりそうですなという感じの記事になっていましたので、謹んで訂正いたします(過去ログは後で追記しておきます)。
ということで決定会合ですが・・・・・・・・
〇決定会合声明文より(その1)金融政策のステージ変化を声明文にぶちこんできました
今回声明文
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2024/k240731a.pdf
金融市場調節方針の変更および長期国債買入れの減額計画の決定について
前回6月声明文
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2024/k240614a.pdf
4月声明文
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2024/k240426a.pdf
4月展望基本的見解
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2404a.pdf
もちろん利上げ云々ダイジダイジネーなのですが、今回見て「おおおおお」と最初に思ったのが項番5です。すなわち、
『5.今後の金融政策運営については、先行きの経済・物価・金融情勢次第であるが、現在の実質金利がきわめて低い水準にあることを踏まえると、今回の「展望レポート」で示した経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えている。日本銀行は、2%の「物価安定の目標」のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営していく。』(今回)
というのが鎮座しておられるわけですが、この「先行きの金融政策運営」に関する文言って3月のマイナス金利YCC解除の時にはこの項番5に相当する記述(独立項目ではなく、声明文項番1の中で記述されている)が声明文にありましたけれども、4月と6月って「声明文」には項番5に相当する記述がなかったわけなんですよ。
でもって4月の展望レポートでは今回の項番5に相当する文言が基本的見解の最終パラグラフ(『4.金融政策運営
』の最終パラグラフ)に記載されていまして、6月には声明文本紙からは上述のように乗っていなかった(ので展望回じゃないから別に記載なし状態)訳ですな。
そして今回項番5が「声明文」として復活したのってこれは当然ながら「声明文」の「重み」というのを考えますと意味がある話で、今後の金融政策運営に関する姿勢を「わかりやすく示した」と解釈するのが妥当ということになるんですよね知らんけど(おい)。
つまりこの項番5はダイジダイジネーなので過去のと比較するわけですよ。
『5.今後の金融政策運営については、先行きの経済・物価・金融情勢次第であるが、現在の実質金利がきわめて低い水準にあることを踏まえると、今回の「展望レポート」で示した経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えている。日本銀行は、2%の「物価安定の目標」のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営していく。』(再掲、今回の声明文)
『金融政策運営については、先行きの経済・物価・金融情勢次第であり、この点を巡る内外の経済・金融面の不確実性は引き続き高い。以上のような経済・物価の見通しが実現し、基調的な物価上昇率が上昇していくとすれば、金融緩和度合いを調整していくことになるが、当面、緩和的な金融環境が継続すると考えている。日本銀行は、2%の「物価安定の目標」のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営していく。』(4月展望レポート)
『日本銀行は、引き続き2%の「物価安定の目標」のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、短期金利の操作を主たる政策手段として、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営する1。現時点の経済・物価見通しを前提にすれば、当面、緩和的な金融環境が継続すると考えている。』(ご参考までに3月決定会合声明文項番1より抜粋)
・・・・ベタ打ちだと微妙に比較しにくいですな(汗)、3月のはさておき4月展望と今回のを比較しましょう。
『今後の金融政策運営については、先行きの経済・物価・金融情勢次第であるが、』(今回声明文)
『金融政策運営については、先行きの経済・物価・金融情勢次第であり、』(4月展望基本的見解)
これは実質同じこと言っていますが、この先が違いまして
『この点を巡る内外の経済・金融面の不確実性は引き続き高い。』(4月展望基本的見解)
という文言を今回削除しているんですよね。じゃあ先行き見通しが不確実なのか、というとこれは(今日間に合うか知らんけど)展望レポート基本的見解のいわゆる鏡の部分(概要ってところ)の中のリスク認識に関する項番のところで相変わらず「わが国経済・物価を巡る不確実性は引き続き高い。」としているんで、実際には先行きの不確実性が高いというのは変わっていないんですよね。でもこの先行きの金融政策運営に関する部分ではそれに触れていない、というのがポイントになります、と思います。
そのうえ、今回は
『現在の実質金利がきわめて低い水準にあることを踏まえると、』(今回声明文)
って文言が加わっています。これは総裁記者会見で再三再四植田総裁(急に呼称が変わっているような気がするのは気のせいではなく意図がありますwwww)が言及していましたように、「足もと消費が多少弱めとかそういうのは別に景気が大崩れするわけじゃないから良いんだよそもそも実質金利クソ低いじゃろ」と急にマジックマッシュルームでもおキメになられたのかというようなホーキッシュ(まあ当然のことなので普通ともいえるが)発言を繰り返していたこととつながっていると思われますが、「そもそも実質金利がクソ低いんだから多少調整するのは当たり前田のクラッカー」という堂々たる政策修正継続宣言文言になっている訳です。これが4月展望の金融政策運営部分では入っていなかった文言でして、その次は
『今回の「展望レポート」で示した経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えている。』(今回声明文)
『以上のような経済・物価の見通しが実現し、基調的な物価上昇率が上昇していくとすれば、金融緩和度合いを調整していくことになるが、』(4月展望基本的見解)
金融緩和度合いの調整、に関しても前段の文言があるため、より明確に金融政策調整局面というのが分かりますし、今回輪番減額を明確に示して計画も出したので、輪番については今後は計画通りやりまっせということで、金融緩和度合いの調整という部分から分離しまして、今後の金融緩和修正は「利上げ」で行いますってのがより明確化されました。
でですな、4月展望レポートの金融政策運営に関しては、3月声明文にあった悪名高き文言を引っ張って、
『当面、緩和的な金融環境が継続すると考えている。』(4月展望基本的見解)
という腐れうんこ文言があって、先行きの金融政策運営に関して相当にやる気ナッシング感を醸成して円安ヒャッハーの一翼を担った、というゴミカスうんこ文言があったのですがこれもめでたく削除されました。
でも実はですね、この「当面緩和的」云々に関しても実は今回の声明文のこの文言のある項番5の直上にある項番4の最終段落に『政策金利の変更後も、実質金利は大幅なマイナスが続き、緩和的な金融環境は維持されるため、引き続き経済活動をしっかりとサポートしていくと考えている。』(今回声明文項番4より)とあるので、実態認識として当面の金融政策は状況としては極めて緩和的である、という認識のままな訳ですよね(そりゃ0.25で中立だとか言われても困るがw)。
ということで、今回項番5ってoutした2つの文言は、認識としては持ったままなのだが先行きの金融政策運営に関する文言から外した、という形にしていますので、これはもう明らかに意図的に外している訳ですな。すなわち、4月展望における先行き金融政策運営に関する文言というのは、今回外した2つのフレーズによって「金融政策修正に関する消極的なスタンスという連想」を働かせやすくなる内容になっていた、というのはその後の市場の反応などなどを見れば明らかなのであって、今回それを敢えて(認識を持っていても)外した、というのは、「先行きの金融政策運営」に関する文言の部分でさらなる金融緩和修正に対する日銀のスタンスを明確に示すために外した、と考えるべきだと思う訳ですよ。
とまあそういうことですので、今回の決定の中での「今後の政策金利」に関する部分はこの項番5に集約されていて、「金融政策のステージが「とりあえず異次元緩和解除してみた」から「緩和政策の修正ステージに入った」という変化を示す」という解釈になります(個人の解釈ですがw)のでありまして、まあ重要な「政策ステージの変化」を示したんだと思います。
〇決定会合声明文より(その2)ステージが変わったので貸増の意義はなくなった、というのはよくやりました
あたくし昨日の朝「利上げするのは良いんだけど貸増どうするんだよ」という話をしましたし、その前から貸増の扱いにつきましてぶーぶーと悪態ついていたのですが、今回しらっと貸増の扱いを変更してきたのは「おおおおおやるじゃん!」と思いました、褒めて遣わす。
声明文項番3になります。
『3.上記の金融市場調節方針の変更に伴い、以下のとおり、各種制度の適用利率の変更等を決定した3(賛成7反対2)(注)。
(1)補完当座預金制度の適用利率
補完当座預金制度の適用利率(日本銀行当座預金<所要準備額相当部分を除く>への付利金利)については、0.25%とする。
(2)基準貸付利率4
補完貸付制度については、その適用金利である基準貸付利率を0.5%とする。
(3)貸出増加支援資金供給等(新規実行分)に対する適用金利被災地金融機関支援オペ、気候変動対応オペについては、貸付利率を0.25%とする。貸出増加支援資金供給については、変動金利貸付に変更のうえ5、実施する。』(今回声明文)
まあ本当は気候変動もいるのかって気はしますが(残高何気に増えてますし)、まあ被災地金融機関支援と気候変動オペに関しては政策的意図(被災地オペはまあ良いんですけど気候変動に関してはミクロの資源配分に日銀が介入する話なので筋が良いとは思わないけど)があるのでシャーナシなんですが、何度か弊駄文で指摘しておりますように、貸増というのはですね、
https://www.boj.or.jp/mopo/measures/term_cond/yoryo80.htm
貸出支援基金運営基本要領
『1. 趣旨
この基本要領は、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資する観点から、金融緩和効果を一段と浸透させるための臨時措置として、貸出支援基金(わが国経済の成長基盤強化および貸出増加に向けた民間金融機関による取り組みを支援するため、適格担保を担保とする資金供給を行うために本行バランスシート上に創設する基金をいう。以下同じ。)の運営を行うために必要な基本的事項を定めるものとする。』(この部分直上URL先の貸出支援基金運営基本要領より)
>金融緩和効果を一段と浸透させるための臨時措置として
>金融緩和効果を一段と浸透させるための臨時措置として
>金融緩和効果を一段と浸透させるための臨時措置として
とありますので、そもそも論として今回の声明文項番5で示されたように、今回の金融政策決定によって「金融政策のステージが変わった」という事であれば、金融緩和効果を一段と浸透させるための臨時措置というのはその存在意義を失っている、というかあると政策の尻が滅裂ですよという切れ痔金融政策状態になるわけでして、今回貸増について見直しをしたのは、その意味では極めてロジカルなんですけど、ちゃんとやったのエライエライと褒めて遣わすという感じですわ(謎のウエメセ)。
とは言いましても、この前貸増継続ってしちゃってますし、先行きの実施時期とかも出しているので、いきなりなしという訳にはいかないのもその通りではあるのですが、前回6月に実施した貸増(弊駄文でもネタにしましたが)のように「この時点での政策金利1年固定」だと「金融政策の修正ステージに入った」という状況においては飛んでもない勢いでの緩和的なオペになってしまいますので、今回上記の脚注5にありますように、
『5 貸付利率は、貸付期間中の補完当座預金制度の適用利率の平均値とする。』(7月会合声明文からの引用に戻ります)
としまして、単なる「付利金利で貸すという流動性だけつけてやるわ」オペになりまして、金無し芳一の金融機関には応札インセンティブが起きますが、ご案内のように世の中カネアルコ号ばっかりという状況なので、これでまあ貸増の新規取り組みは大きく減るだろうと思いますし、貸出支援基金そのものに関しましても、そもそもが「金融緩和を支援するための臨時措置」なので今後の廃止も含めて検討していくんでしょうなあ(既に実施すると言っている分はやるとしても)ということで、これは「金融政策のステージが変わった」というのが明確化されたというのと実はセットになっている話でして、いやまあ貸増でこれだけああでもないこうでもないと書くのも大概にマニアかとは思いますけれども(自覚は一応ある)地味ながら(総裁会見で当たり前ですが誰も貸増の話をしてませんでしたなwww)これは「おおおおおお」と思ったので思わず熱く語るの巻。
〇決定会合声明文より(その3)指値売現はONRRPになるのかならないのか
さっきの声明文項番3の中に地味に脚注3というのがあって、
『3 補完当座預金制度の適用利率および基準貸付利率は、翌営業日(8月1日)から適用する。また、金融調節の一層の円滑化を図る観点から、固定金利方式の国債売現先オペを新たに導入することとした。』
>金融調節の一層の円滑化を図る観点から、固定金利方式の国債売現先オペを新たに導入することとした。
>金融調節の一層の円滑化を図る観点から、固定金利方式の国債売現先オペを新たに導入することとした。
>金融調節の一層の円滑化を図る観点から、固定金利方式の国債売現先オペを新たに導入することとした。
これは!!!!!
ということで、今日以降の市場金利形成がどうなるかは蓋を開けてみないとワカランチ会長ではあるのですけれども、短いところの国債の利回りがこれまでも補完当座預金金利(超過準備付利金利)よりも低かったり、3M短国がコール翌日物と盛大にインバートしたり、というようなアホアホ状態になっておりまして、この部分で国債の金利がコール目標よりも低い、という状態になりますと、それってイールドカーブの起点のところが政策金利よりも低い状態になるので、えーっとそれって政策金利の意味合いとしてどうなのよ、というのはあると思うのです。まあ日銀は既にYCC撤廃していてイールドカーブは知らんがな、というスタンスだと割り切ってしまえばコールはコール、国債イールドカーブは国債イールドカーブですから知らんがな、という話になる、と言ってしまえばそれまでなんですけどね。
でまあそういう意味も含めて、この指値売現先がFEDのONRRPみたいに、短期の(日本の用語でいえば)オープン市場の金利低下を牽制するものとして機能する、というようになるとまた短期の市場の変化、というものも見込まれる次第でございますが・・・・・・・・
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2024/mpr240731c.pdf
「補完当座預金制度基本要領」の一部改正等について
『日本銀行は、令和6年7月30・31日の政策委員会・金融政策決定会合において、金融市場調節方針の変更に伴い、下記の諸措置を講ずることを決定しましたので、お知らせします。
なお、本件に伴い必要となる関係諸規程の改正に関しては、所要の準備が整い次第、別途、各対象先に通知します。
』
『2.「国債の条件付売買基本要領」(平成14年9月18日決定)を別紙2のとおり一部改正すること。 』
ってあるのですが、別紙2を見たらなんか新機軸のオペを打つような雰囲気はカシュカリ総裁の頭髪ほども無い、というちょっと残念な感じ(単に既存の国債売現先のコンベンショナル方式に指値方式が加わっただけ)なのですが、まあ今回の利上げの後の短いところの国債市場とか、それこそ次の利上げの後とかも考えた場合に、ONRRPちっくなオープン市場の金利低下を牽制する機能ってあった方がよさそうには思える(いやまあ財務省様が短国を今の3倍くらい発行してくれれば問題は解決する説は大有り名古屋は城で持つんだが)のですがどうなることやら。
〇一方で輪番の扱いはなんか微妙に曖昧な面がありまして・・・・・・・
えーっとすいません、あまりに盛りだくさんで全然書ききれなくてすいませんなのですが・・・・・・・・・・
今まで申し上げてきましたように、基本的に今回の決定って「金利操作に関しては政策のステージが変わった事を大々的に明確化した」という内容になっていますので、そうなると次の展望レポート(10月)で追加の利上げをしない説明をする方が面倒というような感じ(まあ「データを確認したい」でスキップしたけりゃスキップすると思いますのでアタクシ的には12月会合かな次の利上げはとか思いますけど、筋から言えば10月に再利上げとなってもおかしくはない)になっています、ということでかなり明確何ですけど・・・・・・・・・
URL再掲
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2024/k240731a.pdf(今回声明文)
こちらの「別紙」が輪番減額計画なんですけど、
『長期国債買入れの減額計画について
長期金利は金融市場において形成されることが基本であり、日本銀行による長期国債の買入れは、国債市場の安定に配慮するための柔軟性を確保しつつ、予見可能な形で減額していくことが適切である。こうした観点から、2026
年3月までの長期国債の買入れは、以下のとおり運営する。』
この「国債市場の安定に配慮」ってのが怪しげな文言でして、いやそもそも国債市場を不安定化していたのお前らのこの世のものとは思えない長期国債大買入だろいい加減にしろという話ではあるんですが、この文言が入ると「まーたこいつら変な不規則オペ打ってくるんじゃネーノ」という懸念がどうしても残ってしまいます。
『1.月間の長期国債の買入れ予定額を、原則として毎四半期 4,000 億円程度ずつ減額し、2026
年1〜3月に3兆円程度とする(詳細は、別添)。』
はさておき、
『2.来年6月の金融政策決定会合では、長期国債買入れの減額計画の中間評価を行う。中間評価では、今回の減額計画を維持することが基本となるが、国債市場の動向や機能度を点検したうえで、必要と判断すれば、適宜、計画に修正を加える。また、同時に、2026
年4月以降の長期国債の買入れ方針について検討し、その結果を示すこととする。』
っていうのが中々チャーミングで、だったら最初から計画1年でだしておけよって気はしますが、これ2年にしたのって「出来上がりの減額幅を大きく見せたい」という為替配慮がありました、ってのを大々的にゲロっているのでなかなか笑いました。
まあ2年間動かさんとか言い出すよりはマシなので良いんですけどね。
『3.長期金利が急激に上昇する場合には、毎月の買入れ予定額にかかわらず、機動的に、買入れ額の増額や指値オペ、共通担保資金供給オペなどを実施する。』
『4.なお、必要な場合には、金融政策決定会合において、減額計画を見直すこともありうる。』
これですけれども、YCCの生きていた時代みたいにちょっと金利が上がるとすぐにビビりんちょして変な指値入れる、みたいなことが無くて事実上の空文なら良いんですけどどうするんでしょうかね。
という感じで扱いが謎なのもさることながら、
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2024/k240731b.pdf
2024年7月金融政策決定会合での決定内容
ポンチ絵2枚目の『2024年7月金融政策決定会合での決定内容A:長期国債買入れの減額計画』ですけれども、相変わらずストック効果の話をしている訳ですが、金利部分の方では「金融政策のステージが金融緩和修正方向になった」ってのを明確に示しているのに対して、長期国債買入に関してはストックがこんなにありますよ見たいなポンチ絵が出ていまして、いやお前ら金融緩和政策は修正するって言ってるのに「こんなにストックがあります」って話をするの矛盾してないか、と思う訳ですよ。
まあ結局この「長期国債買入」に関しては「ところで金融緩和の修正を行っている最中なのに何でこんな大量の国債買入をしているんでしたっけ」に対する明確な回答が総裁会見でも(誰もそれ質問しないから仕方ないとはいえ)なかったですし、輪番に関しては鵺みたいな状態になっている、ということですな。
〇つまり今回は輪番をデコイにして短期政策金利の修正局面入りを行ったとも言えます
とまあそういうことで、輪番の方がエライ曖昧な状態のままですが(減額とか買入額とかは明確ですので定義づけという意味で曖昧という事です、為念)金利に関してはかなり明確に「修正局面入り宣言」をしているので、何のことはない輪番をデコイにして利上げステージ入り作戦大成功、ということなのかもしれませんし、それならまあ「おぬしやるな」ってなもんですが、果たしてどうだったのかというのは今後(展望会合の後だから)総裁または副総裁の然るべき講演なども実施されると思いますし、おいおいみていくことにしましょう。
〇総裁会見も今回は過去に無い(下手したら就任以来の)上出来でした
会見に関してはこれまた後日になると思いますが、さすがに今回は日銀よつべチャンネルで会見放送を見ていました。
今回の植田総裁ですが、なんか変なもんでも食ったのか、という位に真人間に戻っていて、これはノミネートの時に大きな期待をしていた植田和男先生じゃないですか!!!今までどこに幽体離脱してたんですか!!!!と目頭が熱くなる(大げさ)会見でしたな。
ま、今回の植田総裁の会見ですが「今まで猫かぶっていましたがこれから本物の植田和男をお見せしますよ(フフッ)」なのか、実は本質はハトハトチキンなんだけどあちこちから突き上げられて背中にナイフ突き付けられてああなっているのか、というのがイマイチまだ安心できない説はありますけど、まあよかったと思います。
ちなみによつべチャンネル、最初同接4000人くらいからスタートして、途中5000人近くになったのですけれども、会見前半でちょいちょいホワイトノイズや瞬間ブラックアウトが生じていまして、そのせいで他のメディアに逃げた人もいるようで、中盤以降は同接4500人程度になっていました。
しかしまあ何ですな、質疑が途中から同じことをぐるぐるしてて、植田総裁の答弁がシャキッとしているのに対して何だよお前らこの馬鹿記者どもがと思ってしまった人は多いのではないかと愚考するのですが、この際もう記者クラブの会見とか無しにして、よつべチャンネルで「植田和男のよつべ生配信!」とかやって、質疑応答は赤スパのスパチャ読みの形で実施すれば日銀は赤スパでウハウハだし、赤スパぶっこまない程度の質問が排除できませんかねえ、と思いましたがよく考えたら「あー〇〇さん、今回も赤スパありがと〜(はあと)」でごまかされるだけの気がしてきましたorzorz
(なお赤スパ云々は冗談ですので念のためお間違えないようにwwwww)
続きは明日以降ということで勘弁島倉千代子
2024/07/22
〇当日公表の事前アンケート回答と変わらんやないけ(参加者会合議事要旨)
https://www.boj.or.jp/paym/bond/mbond_list/mbond240719.pdf
「債券市場参加者会合」第 20 回議事要旨
というのが出たのは良いんですけど、結局書いていることが事前アンケート回答と変わらんやんけ、というのがあるんですが、そもそも論としてこういう中途半端な公表の方法ってのもどうなのかと思う訳でして、例えば減額幅にしても出た意見を一つづつ並べているんですけれども、本来はこれウェイトがあったはずだし、業態によっても見解が違っている筈なので(業態によって見える景色が違うんだから当たり前)グループごとにどういう意見が多かったとかそういうの書けよと思う訳ですよ。
あと、意見にしても意見をそのまま来た通りに載せないで事務局の方で変に端折っているせいで、これはこの前の事前意見公表の時にもツッコミをいれましたが、なんかポジショントーク丸出しのアホの極みみたいな意見があるように見えてしまうんですが、今回のこれはさすがに参加の皆さん「どうあるべきなのか」とか「現実的にどうなのか」とか多種多様な考えを持って極めて真面目に回答している筈なんで、意見を出すならパブコメみたいに素のままで出した方が良くて(その代わり最初の時点で「意見は出した個社名が分からないような形ですべて公開します」とする)意見の文章を事務局で丸めるのは良くないと思うのよね。
結果的には、「意見集めるだけ集めているけど、結局のところ日銀が自分のやりたいことに都合のいい意見を選んでくるだけの会合なのではないか」という話だし、しかもこれ対外的に言えば輪番減額して長期金利が跳ねたら(跳ねないと思うけど)「市場の言うとおりにやりました市場が悪いんです私たちは悪くないんです」って責任転嫁するための儀式にすぎませんでしたねえ、という悪寒しかしてこないのです(個人の偏見です)。
2024/07/16
〇さくらレポート別冊が早速来たのだがこれまた「どっちでも使える」内容になっていますなあ
金曜に出すくらいなら支店長会議と同時に出せたんじゃないですかねえ。
https://www.boj.or.jp/research/brp/rer/data/rerb240712a.pdf
地域経済報告
── さくらレポート ──
(別冊シリーズ)
地域の中堅・中小企業における賃金動向
―― 最近の企業行動の変化を中心に ―
ということで出たのですが・・・・・・・・・・・
本文1ページ(PDF3枚目)に鏡があってですね、
『地域の中堅・中小企業における賃金動向
―― 最近の企業行動の変化を中心に ――
【要旨】』
ってことで囲みの部分を鑑賞しますと、
『地域の中堅・中小企業へのヒアリングによると、今年の賃金動向については、昨年を上回るあるいは高水準であった昨年並みの賃上げの動きに広がりがみられている。』
はいはい威勢が良い威勢が良い
『こうした賃金動向の背景としては、@物価上昇を受けた従業員の生活への配慮、A競合他社や大企業等との人材獲得競争、B業績の回復・好調、C効率化や生産性向上の取り組みの進捗などが指摘されている。』
イイハナシダナー(じっと住民税課税通知書を見るが目から汗がorz)
『また、年齢層や専門性等による賃上げ率のメリハリ付けや、賃上げとセットでの労働環境の改善や福利厚生面の充実など、経営の基盤となる人的資源を巡っては多様な取り組みがみられている。』
イイ(以下同文)
『ヒアリングでは、中堅・中小企業が直面する環境の厳しさを指摘する声も少なくなかった。すなわち、@原資が十分でない中でも人材の確保・係留を優先した「防衛的な賃上げ」を実施、A賃上げの一方で、給与カーブのフラット化などにより総人件費上昇を抑制、B収益不芳や原資不足で賃上げを見送り、といった企業も相応に存在することが確認された。』
なにかが心に突き刺・・・いやなんでもありません。
『賃上げの動きが広がるもとで、企業間の格差・ばらつきも大きくなっている。』
まあでもゆうてこの「経済成長続いて価格ダイナミクスのある世界」ってのは必然的に基礎的な収益力の無い企業は優勝劣敗の原則がワークするのでこうなるのは当然である、というお話でもあるので、ここを捕まえて全企業が上がらないのは怪しからんとかそういう事をいってるとおかしなことになってしまうんですが、まあこの部分をどういう解釈で「使う」のかってのは大事な話なんですよね。
つまりですね、黒ちゃんが2014年末の経団連講演で言ってた
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2014/ko141225a.htm
【講演】「2%」への招待状
日本経済団体連合会審議員会における講演
日本銀行総裁 黒田 東彦
2014年12月25日
の最後の部分、
『要するに今の過渡期的な状況を利用するかどうかは、早い者勝ちの面があるということです。デフレのもとでの「縮小均衡」の経済と、2%の物価上昇のもとでの「拡大均衡」の経済とでは、企業を取り巻く環境は全く異なります。企業経営のルールブックが変わるということです。進化論を唱えたダーウィンは、「生き残るのは、強い生き物ではなく、変化に対応できる生き物だ」と言ったと伝えられています。いち早く環境変化を先取りし、「拡大均衡」の経済に対応できた企業こそが競争の「勝者」となり、新しい時代における繁栄を享受できることになるのだと思います。』(この部分だけ直上URL先の2014年12月黒田総裁講演より)
ちなみにこのダーウィンの云々は実はダーウィンの言葉じゃないとかなんとかそういうツッコミがあったような気がしますがそれはさておきまして、拡大均衡(拡大してましたっけとか言わないw)の世界ではまあこうなるのはこうなるわけで、ついていけない企業はそもそも社会的意義を果たしていませんのでその資源はきちんと意義を果たしている企業にどうぞってな話になりますわな。
・・・・・・・とは日銀言わないんですよね、円安放置して生活困窮化進める方には全然無神経な癖に。まあ連中がどっち向いて仕事してるのかって話だがその悪態はまた後日としまして先に進みましょう。
『また、人手不足は一過性のものではなく、今後も継続して賃上げを実施することが必要との認識も深まっている。このことは、以下のように、賃上げ原資の確保も見据えた企業行動を促している。』
ということで、なんか構造的に賃金上がって物価が上がるみたいになっている、ってな話はしているのですが、
『第1に、価格設定スタンスの変化である。今年の賃上げに関しては、既往の原材料コスト等の価格転嫁の進捗が賃上げ原資の確保につながったという声が多い。』
『この間、賃金上昇を価格に転嫁する動きについては、人件費の価格転嫁は難しいとする企業はなお少なくないものの、非製造業では、サービス業など、人件費比率が高い業種や人手不足感の強い業種を中心に、転嫁を実施・検討する動きに広がりがみられている。』
『製造業についても、最近の政府の後押しもあって、価格転嫁が進めやすい環境に向かいつつあるとの声が聞かれた。』
と、いきなりいつもの第一の力第二の力の話をおっぱじめてしまう訳でして、いつもの屁理屈の理屈を使うとこれですと第二の力になっているかどうかは今後次第、とかいう話になっていつまでたっても物価目標達成にならないですなあ。
でまあこういう表現をしている、という時点で「物価目標達成が視野に入ってきたのでゼロ金利とかいう明らかに超緩和的な金利水準の修正を実施する」という話にはならない、というのが明らかです。
『第2に、生産性の向上に向けて、設備投資やAIなどのデジタル活用が活発化している。ただし、専門人材やノウハウの不足、財務面の弱さなどが、投資の制約になる事例も増えており、今後注意が必要である。』
生産性が上がると基調的な物価が上がるって話ですな。
『第3に、事業再構築、他社や大学等との連携強化、M&Aなど、経営の持続性や成長力を高めるための抜本的な経営変革の動きも徐々に増えている。』
まあ正直大学と連携して何になるのか知らんけど、事業再構築とか、企業の承継に伴って生産性の高い企業に資源が集約されていく、というのは全体的にみたら悪い話ではないので、この話も基調的な物価が上がるって話。
『今後の賃金動向とともに、こうした企業行動の変化が着実に続いていくか、さらに、それが地域経済にどのような影響を及ぼすかが注目される。』
ということなので、要旨部分で言ってるのは「成長力強化が進んできている動きは見られるのでその点は良いのだが、好循環は道半ばです」っていう話で、これはまあ普通に解釈すれば「政策修正はゆっくりとしかしませんよ」ってなもんでして、この要旨を単体で見ますと7月にゼロ金利状態からの脱出をしそうな雰囲気は感じられませんですな、残念無念。
まあゆうて結局のところ日銀の政策修正は「お気持ち」と「なんかの圧力」によるものであって理屈はどうせ後付け(だから言ってることが首尾一貫していないわけで、それが一番わかりやすく示されているのが展望レポートハイライトでそろそろ出る頃なので今回は何を出すのか楽しみにしていますわ)なので、まああと半月残っているので決め打ちは禁物ではあるんですけどね。
『1.はじめに』ってところだけ見ますとですね、
『わが国の企業では、人口減少・少子高齢化などを受けた追加的な労働供給余地の減少にコロナ禍以降の経済活動の回復の影響も加わり、人手不足感の強い状態が続いている(図表1)。』
結局QQEは何だったのかという話(ただの金融緩和でよかったのではないかという話)になりますけど。
『日本銀行のアンケート調査1によると、働き手の確保に支障が出ることへの懸念などから、業種・企業規模を問わず、多くの企業が賃上げスタンスを積極化させている(図表2)。』
ほうほう。
『こうした中、今年の春季労使交渉では、大企業における高水準の妥結が相次ぎ、賃上げ率は、大きく改善した昨年からさらに加速した。この間、中堅・中小企業については、労働組合の組織率の低さや賃金改定時期のばらつき等から、賃上げの実態をタイムリーかつ包括的に把握することは難しいが、現時点で利用可能なデータを踏まえると、大企業には見劣りするとは言え、高水準の賃上げが実現した昨年程度か、それを上回る賃上げが実現する可能性が高い(図表3、4)。』
はい、ここの表現がまあ事実そうだけど味わいがあるわけで、中小も含めた賃金動向を確認したい、ということになりますと9月決定会合までの間にはさすがにデータがそろいますので、そういう意味では7月会合で9月までのデータを見て最終確認したい、というような予告ホームランを打ってくる方が、賃金動向だけを見た場合には妥当ということになるわけですなこの説明っぷりだと。
しかしまあ氷見野副総裁が以前の講演で言ってたように「そもそも全部青信号ってことは無い」のだから普通はこれだけのデータそろったら7月展望で利上げできるじゃろと思うのですし、まあもっとそれ以前の話でこの人たちやる気がない場合は賃金の話は忘れてしまって別の屁理屈繰り出してくるので、まあこれがあるから7月予告ホームラン来るで、と決め打ちもできないのが残念なところです。
なぜかといえばこの次の段落は、
『ただし、こうした中堅・中小企業の中には、十分な業績改善や原資の裏付けを伴わない「防衛的な賃上げ」に踏み切った企業が相応にみられると指摘されることも少なくない2。』
ほらきた。
『このため、今後、中堅・中小企業が持続的な賃上げ力を具備していくには、収益力や生産性の向上が必要との声は多い。積極的な賃上げが、価格設定のほか、設備投資やデジタル化の積極化などの企業行動の変化を伴いながら定着していくかが注目される。』
ということで、中村審議委員が大好きそうな話になっている上に、この言い方ですと「持続的な賃金上昇の定着には課題が残っている」という説明になるので、見極め地蔵になるための理屈がきっちりと用意されているんですよね。
『日本銀行では、こうした問題意識から、地域の中堅・中小企業(零細企業を含む)における賃金動向、価格設定等の企業行動の変化、賃上げの持続性に向けた課題等を把握するため、本年4月後半から6月にかけて、本支店・事務所で集中的に地場企業や経済団体等へのヒアリングを実施した。本稿はその取り纏めである。』
以下の部分は本日は割愛ということで(面白そうならネタにします)。結論は小見出しに書いた通りで、書いていることのどっちをフレームアップするかによって話はどっちにもできるという代物に仕上がっていました、という事かと思います。
2024/07/09
〇さくらレポート単体だとこれはちょっと決め手に欠けますが
https://www.boj.or.jp/research/brp/rer/rer240708.htm
地域経済報告―さくらレポート―(2024年7月)*
・総括判断は上げ2下げ2で決めて不足
『I.各地域の景気判断の概要』
『(1)各地域の景気の総括判断
北陸を除く8地域では、景気は、一部に弱めの動きもみられるが、「緩やかに回復」、「持ち直し」、「緩やかに持ち直し」としている。北陸では、地震の影響による下押しが一部にみられるものの、「回復に向けた動きがみられている」としている。』
なのですが、
『各地域の景気の総括判断と前回との比較』
北海道:持ち直している→(下方修正)一部に弱めの動きがみられるが、持ち直している
東北: 緩やかに持ち直している→(横ばい)緩やかに持ち直している
北陸 : 能登半島地震の影響により個人消費や生産の一部に下押しがみられており復旧の途上にあるものの、復旧復興需要や生産正常化が進むもとで、持ち直しの動きがみられている
→(上方修正)能登半島地震の影響により一部に下押しがみられており復旧の途上にあるものの、復旧復興需要や生産正常化が進むもとで、回復に向けた動きがみられている
関東甲信越:一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している→(横ばい)一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している
東海: 一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している→(横ばい)一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している
近畿: 一部に弱めの動きがみられるものの、基調としては緩やかに持ち直している→(横ばい)一部に弱めの動きがみられるものの、緩やかに回復している
中国: 緩やかな回復基調にある→(横ばい)緩やかな回復基調にある
四国: 持ち直している→(下方修正)持ち直しのペースが鈍化している
九州・沖縄: 一部に弱めの動きがみられるが、緩やかに回復している→(横ばい)一部に弱めの動きがみられるが、緩やかに回復している
結局下方修正2上方修正2でチャラ。基調判断自体は(需給ギャップがマイナスとか言ってたりするから順当ちゃあ順当ですけど)「回復」「持ち直し」ということで「拡大」ではないので潜在成長率を上回った状態ではない、という定義の言葉使っていますよね、今に始まったことではないですが。
でまあ拡大になっていないということは、2%達成が視野に入るという話にもならん、というのが従来からの説明からだとそうなるんで、まあ政策金利の調整をしまーすって言ってもいやそれはどうなのか、という慎重派を動かすには力足りないですなあ、というのが第一印象。
まあ所詮はアネクの話なんで、なんとでも解釈してこれるわけで、利上げする気が満々だったら別に何とでも屁理屈はつけてくるんでしょうけれども、あんまりそこまでのパッションは感じないなあと何と無しに思いました。
〇さくらレポート本ちゃんの「アネクの集計表」を見ると消費は微妙、賃金は解釈次第、価格設定は構造変化??ってところですね
さくらレポート本ちゃんはこちら
https://www.boj.or.jp/research/brp/rer/data/rer240708.pdf
本文4ページ(PDFの6枚目)
『(3)企業等の主な声(トピック別)※』ってのがまあアネク祭りなのでこれを見るわけですが。
・個人消費はどうみてもただの格差拡大です本当にありがとうございました
『@個人消費(インバウンド需要を含む)』を見ていると中々物悲しい次第でして、
『 ・一部メーカーの生産停止が解除され、受注・登録台数ともに持ち直しているものの、新たな認証不正の問題もあり、影響を懸念(鹿児島[自動車販売])。』
まあこれはともかくとしまして、
『・ 物価上昇の影響が続くもとで旧型モデルなどのセール品や廉価品の引き合いが強く、引き続き販売動向は弱め(福岡[家電販売])。』
そうでしょうねえ・・・・・・
『・ 長引く物価高の中、家計応援キャンペーンと銘打って食料品や日用品の値下げを実施。値下げをした商品の販売は非常に好調であり、顧客の節約志向の高まりを感じている(高松[商業施設])。』
節約できるもんは節約しないとですね。
『・ 物価上昇が続くもとで、購入点数の減少や相対的に安価なプライベートブランド商品へのシフトがみられる一方、高単価商品の販売も引き続き好調であるなど、メリハリの利いた消費行動が広がっている(那覇[小売])。』
これ実際にはどうなんでしょう。メリハリが効いているのか、単に金持ちと庶民で買うものが違っているだけなんじゃないか疑惑もあるんですけどね。
『・ 富裕層を中心に高価格帯の化粧品やブランド品の売れ行きが好調。円安を受けてインバウンド客の購買意欲も旺盛(金沢[百貨店])。』
ふゆうそうとかいんばうんどとかしょみんのわたしにはかんけいのないはなしですね(しろめ)
『・ 値上げを進めてきたもとでも、地元客の宴会需要や観光客の来店回復が続いており、売上は好調に推移している(松本[飲食])。』
なんか読んでるとただの格差拡大にしか見えないのはアタクシの僻みですかそうですか。
『・ 為替円安などで海外旅行が不人気な中、国内旅行へ支出を振り向ける動きもみられ、GWは沖縄方面などの遠方旅行が好調であった(大阪[旅行])。』
まあ旅行は好調なんでしょうね、知らんけど。
『・ 国内レジャー客の需要は、GWを含め宿泊価格を引き上げるもとでも底堅く推移している。インバウンドは、東アジア圏の個人旅行客が大幅に増加しており、旺盛な需要が続いている(大阪[宿泊])。』
だそうですわ。旅行とか何のことでしょう日本語難しいですねという感じなので知らんけど好調なんですよね。
・賃金設定のところは「まだら模様」と言いたいのか「物価高によるノルムの変化」と言いたいのか・・・・
でもって生産のところは足元の局面では正直どうでも良いので飛ばしまして肝心の『B雇用、賃金設定』を見ますと・・・・・・
『・ 2024 年度に大幅な賃上げを実施したところ、同業他社から転職の応募が増加するなど採用競争力が向上した(秋田[小売])。』
『・ 業績が非常に好調に推移する中、昨今の物価上昇も考慮して従業員に報いるべく、今春は昨年を上回る高い賃上げを実施した(名古屋[輸送用機械])。』
と、最初の2つはお宅の会社さん元気でよろしゅおすなあという話なのですが、
『・ 業績低迷で賃上げに踏み切れずにいた中、若手が数名退職したこともあり、2024
年度は原資の確保に先行して平均8%の賃上げを実施(福岡[情報通信])。』
原資もないのに8%も賃上げとな。
『・ 2024 年のベア率については、当初は昨年並みとする予定であったが、同業他社の多くが昨年を上回る賃上げ方針を打ち出す中、多少無理をして昨年以上の水準に引き上げた(福島[生産用機械])。』
多少無理ですかそうですか。
『・ 将来の中核を担う若年層の退職を防止するため、2024 年度は、40 代以上の社員よりも30
代以下の社員の賃上げ幅を大きくし、限られた原資を若年層に重点配分した(仙台[食料品])。』
あーこれなんですけどね、まあ上の待遇も上げてるんだったら大丈夫だと思うのですが、上の待遇切り下げて下の待遇切り上げの原資にするとこの会社長くいたらエライ目に合うって若い人が却って離職するリスク高まるから用法容量は注意しないといけないんですよね。
『・ ドラッグストア等との競合が激しい中、厳しい収益状況が続いており、賞与は夏しか支給できていない。このため、人材流出が激しく、新卒採用についても、2024
年度入社はゼロ名となるなど非常に苦しい経営が続いている(高松[小売])。』
これは落涙を禁じ得ないのだがインフレによる振り落としとはこういう事ですってのは日銀は堂々と言うと政治的にいろいろヤバいのですがそういうことなんですよね。
『・ 建設業界では人材確保を目的とした企業買収の動きが活発化しており、当社も技術者の確保に向けてM&Aを検討している(札幌[建設])。』
ほほう。
『・ 転職後の賃金が転職前を上回るケースが増えているもと、転職市場は引き続き活発な動きとなっている。先行きも、タイトな労働需給と雇用の流動化がドライバーとなり、賃金上昇の傾向が続くと見込まれる(本店[人材サービス])。』
と、威勢の弱い話を威勢の良い話でサンドイッチして作っていまして、この出し方だと本当に持続性のある賃金上昇ってあるのかね、と思ってしまいますが、思いっきり逆方向というか別の方向から考えた場合は、そもそも賃金引き上げのできないような非効率な企業は賃金引き上げのできる効率的な企業に取って代わられた方が資源配分の適正化に繋がって社会全体の生産性が向上する、というシバキ理論にもつながるのですな。
ということなので、あたくしが小見出しにしたように、この部分って単純に「賃上げができる企業もいればできない企業もいますので今後の賃金上昇が本当に持続的なのかが微妙です」といいたいのか、はたまた「そもそも論として物価fが上昇する中で賃上げ原資が出せないような非効率な企業は雇用確保の面からもご退場された方がよろしいんじゃないですか」ってのを暗に示しているのか、どっちの意図なのかがわかりかねる次第で、後者でしたらこれも日銀が使う万能ワード「ノルムの変化」が起きる中で発生する避けがたいフリクションである、という考えもできるわけで、そうなるとノルムの変化が生じてきていて物価安定目標達成に近づいている、ともとれるんですな。
まあノルムの変化、とかいうときには後者の理屈使ってきそうなきがします。、
・価格転嫁のところは総じて威勢がよい
結局ですね、足許で重要なのって「消費が中々威勢良くならない」「賃金が本当に持続的に上昇するのか」「価格設定行動に構造的な変化が起きているか」の3点セットになるので、その意味で次の『C価格設定』もみる。
『・ 原材料価格の上昇一服から、再値上げは当面想定していなかった。ただし、最近の為替円安を受け、既に収益が下振れており、次の値上げを前倒しで行うかどうかを検討している(本店[食料品])。』
あいやー
『・ 物価高の影響で、近隣にディスカウントストアがある店舗の客数が減少しているため、対抗して一部商品を値下げし、顧客の係留を図っている(長崎[スーパー])。』
『・ 定番商品の価格は据え置く一方、付加価値を高めた新規商品や季節限定の商品は値上げを実施することで、客離れを抑制しつつ、コスト上昇分の価格転嫁を進めている(福島[飲食])。』
まあそうなりますわな。
『・ レンタカーの利用料金の値上げ以外にも、従来無料だった乗り捨て料金の有料化など、様々な手段を組み合わせながら価格転嫁を進めている(仙台[物品賃貸])。』
ほほう
『・ ホテルの宿泊価格は昨年来上昇傾向にある。円安が続く中で旺盛なインバウンド需要に陰りがみられないため、値上げの流れはしばらく続く見通し(京都[宿泊])。』
でたなインバウンド様
『・ 優秀な講師確保のためには継続的な賃上げおよび授業料の値上げが必要と認識しており、すでに社内では、来年の上げ幅を議論している(本店[対個人サービス])。』
優秀なベテランいやなんでもありませんorz
『・ 競合他社の価格改定もあり、値上げしやすい環境にあるため、新規出店など先行きの業容拡大を見据えた値上げを実施(本店[対個人サービス])。』
ということで、まあ価格設定は威勢が良いということですな。
つまりですね、これ全体的に言いますと「政策の説明にチェリーピッキングするのにはちょうどよろしい」って物件になっていまして、政策修正渋るなら消費の弱さを強調すればよいし、政策修正やる気あるなら価格設定行動が抜本的に変わりつつあります、ってのを打ち出せばよろしあるねという感じなので、「使い勝手のいい」内容にまとまっております。
まあ何ですな、以下陰謀論になりますが、何らかの明確な方向性が大本営にある場合ってさくらレポートというか支店長報告がこれまた忖度祭りになる、という傾向は残念ながら否めない(特に黒田以降)ところはあるので、今回のこのアネク集計を見ると、おまいらどっちに転んでも困らないように両面で作ったな、というような陰謀論的な感想を強く感じるところであります。ということは大本営の方向性がはっきりしていない、ってのもあるんでしょうなあというインプリケーション(超陰謀論ですが)も得ました、って感じでございますかね、まー知らんけど。
〇アネク報告のまとめってのもあるので
https://www.boj.or.jp/research/brp/rer/rera240708.htm
各地域からみた景気の現状(2024年7月支店長会議における報告)
というまとめ文書がありますのですが、これもともとさくらレポートの本文にあったのをちょっと分量増やして移設した感じでなんで移設したんだか今となってはよくわからん物件(出した当初は鉦や太鼓で宣伝してたのに出てみたら従来と変わらんやんとがっかりした覚えがある)ではありますが読んでみましょう。
『今回の支店長会議における報告を総括すると、各地の景気は、8地域で「緩やかに回復」、「持ち直し」、「緩やかに持ち直し」としている。1地域では「回復に向けた動きがみられている」としている。前回の支店長会議開催時点(2024年4月)と比較すると、全9地域中2地域で総括判断を引き上げ、2地域で引き下げている(参考参照)。』
これは最初のやつね。
『主な需要項目等別にみると(注)、』
ということで始まりますが、
・設備投資は短観でも示されたように強いですよね
『設備投資については、建設コスト高による先送り・縮小、発注先の人手不足による工事・納入の遅れ等が一部でみられるものの、IT関連需要の中長期的な拡大期待に基づく能力増強投資、人手不足対応や生産性向上を目的とした省力化・デジタル化投資、環境対応投資、都市再開発など、幅広い分野で積極的な投資姿勢が維持されているとの報告が多かった。』
はい強い。
・個人消費はただの格差拡大にしか見えないがそういう表現はしていませんね
『個人消費(インバウンド需要を含む)については、スーパー等を中心に、物価高を受け消費者の節約志向の影響が強まっているとの報告が複数あった。ただし、多くの地域から、観光・宿泊や外食などのサービス消費が堅調に推移し、都市部の百貨店等における高額品販売の好調も続く中、個人消費は全体として底堅く推移しており、旺盛なインバウンド需要がこれを押し上げているとの報告があった。』
「全体として底堅く推移しており」って節子それただの二極化や、と思いますが全体として底堅く推移、というポジティブ表現にしているのがそこはかとなく意思を感じますねえ。
・生産は自動車関連が引き続き懸念材料
『生産については、IT関連財に関し、グローバルな調整進捗や需要回復を受けた増産の動き等が複数報告された。自動車に関しては、一部メーカーの生産停止の影響が和らいでいるものの、下押しがなお続いている中、先行きの不確実性を指摘する企業の声も報告された。』
まあこれは今回に関してはそんなに気にしなくてエエンチャウノ
・雇用と賃金は強い話はしているけれども留保付きになっていて全面的な威勢のよさというほどではない
でもって次が雇用とおちんぎんである。
『雇用・賃金面では、地域の中小企業における賃金改定について、多くの地域から、春季労使交渉における大企業を中心とした高水準の賃上げ妥結の動きが波及するとともに、人材の係留・確保の必要性や、物価上昇を受けた従業員の生活への配慮等から、昨年を上回るあるいは高水準であった昨年並みの賃上げの動きに広がりがみられるとの報告があった。』
『また、賃上げ原資の安定確保に向けて生産性向上のための投資強化や事業見直し、M&Aの動き等も喚起されてきていることも紹介された。』
『一方で、収益面の厳しさから賃上げを見送る企業や、十分な原資を確保していない中でも人手の係留・確保を優先し賃上げに踏み切る企業等も相応にみられるとの報告もあった。賃上げが広がるもとでの企業の行動変化や地域経済への影響等について、今後も丁寧にみていく必要性が指摘された。』
前半がやたら強気に書かれているのですが、さすがに締めは「賃上げが広がるもとでの企業の行動変化や地域経済への影響等について、今後も丁寧にみていく必要性が指摘された。」となっていて、能天気に賃金上昇が持続するぞーとはなっていないですね。
なおベンダーの報道バイアスってのが毎度のアレでして、ベンダーのヘッドラインを見るとこの説明の前半部分がハイライトされていて結構強いことを言っているように見受けられますが、実際には留保が思いっきり入っていまして、賃金絶好調!7月でも利上げOKOK!というような威勢のよさは感じられない書きっぷりになっているかと思うのですがどうでしょうかねえ。
・価格設定はこちらでも強気強気
『企業の価格設定面では、既往の輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の動きは一段と緩やかになっているほか、消費者の節約志向が強まるもとで、値上げの抑制や一部商品の値下げ、低価格の品揃え強化などの動きも増えてきているとの報告が複数あった。一方で、最近の為替円安に伴うコスト増の影響を指摘する企業の声も報告された。人件費の価格転嫁は難しいとする企業はなお少なくないものの、サービス業など、人件費比率の高い業種や人手不足感が強い業種を中心に、転嫁を実施・検討する動きに広がりがみられているとの報告が多かった。製造業についても、最近の政府の後押しもあって、価格転嫁が進めやすい環境に向かいつつあるとの企業の声が複数報告された。』
価格は上がる話がほとんどで途中にちょっと消費者の節約志向の話があるけど、それ以外は結局のところ威勢の良い話ばっかりということで、賃金上昇の持続性に関しては留保はついているのに価格設定は勢いよしよしというまた財布が軽くなるような流れで甚だアレですが、まあ価格のところは全然強いって感じだと思います。
ただまああくまでもざっと見印象ですけれども、こっちのまとめ文章の方がややさっきのさくらレポート本文の「代表的なアネク集」よりも強めのトーンで纏めている感じはして、そこはまあ利上げの口実に使いやすく作っているな、という風には思いました。
って感じですね。
2024/07/02
〇短観私家版分析:うーん決め手に欠けるなあ(政策修正加速的に)
https://www.boj.or.jp/statistics/tk/gaiyo/2021/tka2406.pdf
短 観(概要)―2024年6月―
第201回 全国企業短期経済観測調査
・業況判断DI:前回が見通し対比強くて今回も見通し対比強いんですよね(しかも今回は上昇)
(3月短観) (6月短観)
現状→6月予測 現状→9月予測
製造業大企業 +11→+10 +13→+14
製造業中堅企業 +6→+5 +8→+7
製造業中小企業 ▲1→+0 ▲1→0
非製造業大企業 +34→+27 +33→+27
非製造業中堅企業 +20→+15 +22→+16
非製造業中小企業 +13→+8 +12→+6
(前回クソ出遅れて4/5にネタにしましたがその時の駄文)
でですね、確かにこれ前回対比悪化なんですけど、前回時点の「3月予測」と比べると結構な上方乖離をしておりまして、でもって前回の短観がとにかくバチクソ強かった、という事を踏まえると企業部門強いじゃん、という話になると思うんですよね。
(ここまで3月短観時のコメント)
でまあそういう意味で「数字は前回から下がったけど内容的には強いんじゃね」という前回の見通しを達成(中小製造業除く)した上に水準も前回より強いってんですからこれはまあ文句なしに強いのですな。
ただまあここで突発性中村審議委員になってみた場合、製造業の中堅以下がそこまで強いわけでもない、というのが思いっきり気になってしまいまして、これを見て中村審議委員が「中小企業も含めて企業部門に死角なし(だから政策修正バンバンOKOK)」とはならないんじゃないかなーって思うので、その点ではうーんと唸ってしまいます。
まあ全体的に見ればクソ強いのはクソ強いというか、そもそも企業部門はここもとずーっとクソ強くて、一方で物価上がって家計部門が弱いってんですからそれを確認したという話ではありますが。
・企業の販売価格見通しはツエツエ蠅としか申し上げようがない、と前回書いたがさらに堅調
販売価格見通し 全規模合計 全 産 業
1年後 6月:2.9%→9月:3.1%→12月:3.2%→3月:3.3%→6月:3.0%→9月:2.8%→12月:2.6%→3月:2.7%→6月:2.8%
3年後 6月:3.5%→9月:3.8%→12月:3.8%→3月:4.0%→6月:3.8%→9月:3.8%→12月:3.7%→3月:4.0%→6月:4.1%
5年後 6月:4.0%→9月:4.2%→12月:4.3%→3月:4.6%→6月:4.4%→9月:4.4%→12月:4.4%→3月:4.7%→6月:4.8%
大 企 業 製 造 業
1年後 6月:2.7%→9月:3.2%→12月:3.0%→3月:2.9%→6月:2.5%→9月:2.4%→12月:2.2%→3月:2.2%→6月:2.3%
3年後 6月:2.5%→9月:3.1%→12月:3.0%→3月:3.2%→6月:2.8%→9月:2.9%→12月:2.8%→3月:2.8%→6月:3.2%
5年後 6月:2.5%→9月:3.2%→12月:3.1%→3月:3.5%→6月:3.0%→9月:3.1%→12月:3.0%→3月:3.1%→6月:3.3%
大 企 業 非製造業
1年後 6月:1.5%→9月:1.9%→12月:2.1%→3月:2.4%→6月:2.1%→9月:2.2%→12月:2.0%→3月:2.0%→6月:2.1%
3年後 6月:2.2%→9月:2.4%→12月:2.6%→3月:3.0%→6月:2.8%→9月:2.8%→12月:2.7%→3月:2.8%→6月:3.1%
5年後 6月:2.6%→9月:2.8%→12月:2.9%→3月:3.4%→6月:3.2%→9月:3.4%→12月:3.2%→3月:3.2%→6月:3.4%
(3月短観時の1行コメントはこちら)
ちょwwwwwwwおまえらwwwwwwまた上昇しとるやないかwwwwwwwww
って3月短観で書いたのですが、なんか上昇加速してるじゃんということで、しょみーんの財布には1ミリも優しくない訳ですが、それはおどれがてーして給料も上がらん程度の無能だから仕方ないんですねわかります。
てかさ、そういう実質ベースの調整がしやすくなるのがインフレレジームのメリットだということを勘案しますと、そもそも論として実質賃金のプラスとか好循環とかいうのがインフレ目標政策で掲げられていることが頭おかしいとしか言いようが無いわけで、これ言い出した黒田は罪万死に値するし、それを否定するどころかさらに拡大再生産している植田は地獄の火の中に投げ込まれるべきという話になりますわな。
・企業の物価全般見通しですがこういうのは「インフレ期待が2%にアンカーされている」と言わんのか???(こちらは中小企業を)
物価全般見通し 全規模合計 全 産 業
1年後 6月:2.4%→9月:2.6%→12月:2.7%→3月:2.8%→6月:2.6%→9月:2.5%→12月:2.4%→3月:2.4%→6月:2.4%
3年後 6月:2.0%→9月:2.1%→12月:2.2%→3月:2.3%→6月:2.2%→9月:2.2%→12月:2.2%→3月:2.2%→6月:2.3%
5年後 6月:1.9%→9月:2.0%→12月:2.0%→3月:2.1%→6月:2.1%→9月:2.1%→12月:2.1%→3月:2.1%→6月:2.2%
中小企業 製 造 業
1年後 6月:2.8%→9月:3.0%→12月:3.1%→3月:3.2%→6月:2.9%→9月:2.8%→12月:2.7%→3月:2.6%→6月:2.7%
3年後 6月:2.3%→9月:2.5%→12月:2.5%→3月:2.5%→6月:2.4%→9月:2.4%→12月:2.4%→3月:2.4%→6月:2.5%
5年後 6月:2.2%→9月:2.3%→12月:2.4%→3月:2.3%→6月:2.3%→9月:2.3%→12月:2.3%→3月:2.4%→6月:2.5%
中小企業 非製造業
1年後 6月:2.5%→9月:2.7%→12月:2.8%→3月:3.0%→6月:2.8%→9月:2.8%→12月:2.6%→3月:2.6%→6月:2.6%
3年後 6月:2.2%→9月:2.3%→12月:2.4%→3月:2.5%→6月:2.4%→9月:2.5%→12月:2.4%→3月:2.4%→6月:2.5%
5年後 6月:2.0%→9月:2.2%→12月:2.2%→3月:2.3%→6月:2.3%→9月:2.3%→12月:2.3%→3月:2.3%→6月:2.4%
(3月短観時のコメントはこちら)
これさあ、もう完全に「安定期」に入ってるじゃんという話でして、これでなんで期待インフレがまだ2%に行ってない!とか言い切るわけあのハトハトチキンジジイは、というお話な訳ですけど・・・・・・・(ちなみにハトハトチキンちゃん頼みの物価連動国債のBEIが足元ツエツエ蠅なのは先ほど申し上げた通りですw)。
(ここまで3月短観時のコメント)
って3月短観の時にも書いた(というか上記小見出しがそもそも前回と同じw)のですが、これでなんでインフレ期待が2%じゃないって言い張っているのかが全く意味がわからなくて、この物価上昇局面で完璧なまでに外しまくってもうお前ら全員退場しろとしか言いようが無いESPフォーキャストとかいうポンコツサーベイ持ち出して説明するのいい加減止めてくれませんかねえ。
ちなみに物価連動国債のBEIはなんだか知らんけど月末月初の2日で突如下がってしまったのですが、それでも10年カレントで150とかなんで、たしかにまあ200じゃないけどこれが200行ってないから市場の織り込むインフレ期待が2%にアンカーされていないというのは話に無理があるんじゃねえのとは思いますけどね。
・販売価格判断:コストプッシュの循環メカニズムがワークしておられるようにしか見えませんが・・・・・・・・・
(3月短観) (6月短観)
現状→6月予測 現状→9月予測
製造業大企業 +25→+24 +29→+27
製造業中小企業 +26→+33 +30→+37
非製造業大企業 +27→+28 +29→+30
非製造業中小企業 +26→+32 +28→+33
・仕入価格判断
(3月短観) (6月短観)
現状→6月予測 現状→9月予測
製造業大企業 +42→+41 +47→+44
製造業中小企業 +56→+59 +61→+62
非製造業大企業 +43→+42 +47→+46
非製造業中小企業 +53→+56 +55→+58
(3月短観時のコメントはこちら)
こちらなんですけど、製造業中心に「先行きの販売価格判断が上がっている」のが目に着くわけでして、こんなんどっからどう見てもノルム変化しとるわけで、むしろインフレ期待が上に振れる方を心配しないといけない時間帯に入っているんじゃないのか、としか思えないのに、なんでああ皆さんのほほんとしておられるのでしょうかとくにハトハトチキンジジイお前だよお前。
(ここまで3月短観時のコメント)
これね、前回はノルム変化とか申し上げていましたが、仕入判断が前回対比上がって販売判断が前回対比上がっている訳でして、ノルムとかそんなぬるいものではなくて、ただの輸入価格コストプッシュの前向き(全然前向きじゃないけど)循環メカニズムがワークしているようにしか見えませんし、足許では財務省や内閣府からも苦情の出る驚異の馬鹿コミュニケーションによって一段と円安になっている訳でして、いやマジでこれどうするの。
・雇用判断DI:強いんだが中堅中小が前回対比悪化しているのでこれは中村審議委員の出番orz
(3月短観) (6月短観)
現状→6月予測 現状→9月予測
製造業大企業 ▲17→▲18 ▲18→▲18
製造業中堅企業 ▲24→▲27 ▲23→▲28
製造業中小企業 ▲24→▲31 ▲21→▲27
非製造業大企業 ▲37→▲37 ▲39→▲38
非製造業中堅企業 ▲46→▲49 ▲46→▲49
非製造業中小企業 ▲47→▲50 ▲45→▲51
(3月短観時のコメントはこちら)
雇用に関しては前回の短観では「前回強いと書いた以上に強い!」と書きましたがそれは変わらずでございまして、これまた強いわけですよ。
(ここまで3月短観時のコメント)
ということでして、まあ水準自体強いのはいつもの通りなのですが、これ気になるのは「現状判断DIを前回対比で見た場合」ですけど、大企業はマイナス幅拡大=雇用不足感の拡大になっているのですが、それこそ中村審議委員(たぶん他にもハト系の人でいると思うんだが)が注目する中小企業に関しては、中堅以下が地味に前回対比でマイナス幅が縮小=雇用不足感の縮小になっているのが地味に痛くて、これはチキン総裁がチキンの理由にしたくなるのに絶好の展開。
・その他
想定為替レート
(参考)事業計画の前提となっている想定為替レート(全規模・全産業)
2024年度 米ドル円
2024年3月調査:通期 141.42 上期 141.60 下期 141.25
2024年6月調査:通期 144.77 上期 144.96 下期 144.59
これ調査のタイミング的には6月上旬の回答だったと思うのですが、うーん上期145円かよってなところでして、まあねえって感じです。
設備投資計画
・・・・・はグラフの方を見る話になるのでこっちには貼れない(スキルがない)のですが、これは別にビビるような強さとか弱さとかは無いって感じなのかな、知らんけど。
アタクシこのへんただ門前の小僧としてみているだけなのであれなんですけど、この数字だと強いには強いのでしょうけれども、政策修正慎重派の腰をあげさせるほど強いのかというと、「企業部門が強い」ってのはそもそも論としてメインシナリオのど真ん中に鎮座している話だと思われますので、そういう意味ではただの「見通し通りに推移しておりますなあ」だけで短観一発で7月利上げまでセットで打ち込んでくださるのはちょっと力不足かなとは思ったのですがどうでしょうか。
まあその前に円安がちまちまと進行しておられる次第なのでそっちのせいで云々というのは大有りだし、何なら神田大明神最後のご奉公でちょっとハトハトチキンをシバキ上げて輪番大減額と0.25%への利上げを飲ませてから退任していただけると誠にありがたいのですがwww
2024/07/01
〇サービス価格が基調物価判断に重要ですという後付けペーパーキタコレ
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/lab/lab24j02.htm
わが国における賃金・物価上昇率の連関
上野陽一(日本銀行)
Research LAB No. 24-J-2, 2024年6月28日
リサーチラボシリーズは基本的にがっつりペーパーのお子様向けバージョンという物件なので、では元のペーパーどこにありますねん、という間もなく日銀新着にリンクがありますが、
https://www.boj.or.jp/en/research/wps_rev/wps_2024/data/wp24e07.pdf
Bank of Japan Working Paper Series
Broad-Perspective Review Series
Linkage between Wage and Price Inflation in Japan
Yoichi Ueno
ということでこれまた英文キタコレなのですけれども、悲しいかなペーパーの頭に例の「多角的レビューシリーズ」のロゴが付着している時点でお察しなんですが、ではまあ日本語のお子様向け解説の方を拝読してみましょう。
URL再掲
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/lab/lab24j02.htm
わが国における賃金・物価上昇率の連関
上野陽一(日本銀行)
Research LAB No. 24-J-2, 2024年6月28日
『要旨
今次局面では、(1)コストプッシュによる物価上昇と、(2)賃金と物価の好循環の強まり、という2つの変化が生じており、(2)の動きを抽出することが物価の基調を捉えるうえで重要である。本稿では、こうした考えに基づいて、賃金と物価の基調的な動きを抽出するとともに、両者の連関について定量的に分析したUeno(2024)
[PDF 1,562KB] の概要を紹介する。』
とのお告げなのですが、コストプッシュだから対応しなくて良い、というのはそもそも論としておかしくて、現実に起きている物価上昇が持続的なものなのか一時的なものなのか、という点を考えて政策対応をするのが「通貨の番人」のお仕事ですよねという話なので、まあだいたいからして最初のアジェンダセッティングが問題含みにしか見えません。
コストプッシュだからと言ったってそれが構造要因に起因するもので(それこそグローバルな分断の発生とかまさにそうじゃん)あれば、それは一時的なものにとどまらない可能性がある訳で、それを一時的だからいずれ下がるといい続けている間に適合的期待形成が上振れてインフレ期待がアンカーされなくなってもお前は対応しないと言ってるのかと小一時間。、
『主な分析結果は次の3点である。第一に、物価の基調を捕捉するには、賃金・物価のきめ細かい情報を用いるモデルによって、サービス価格のトレンドを抽出・活用することが有益である。』
サービス価格キタコレ!!!!!
『第二に、賃金と物価の連関は、1998年頃に失われたが、コロナ禍以降はサービス価格と非製造業の賃金を中心に相応に回復している。』
はいはいサービス価格サービス価格。
『第三に、賃金と物価の連関が強まった契機としては、賃金交渉時に物価を参照する動きの拡がりや、労働需給の顕著な引き締まり、海外ショックの波及の変化、企業の価格マークアップの安定化などが挙げられる。』
だそうなのですが、さてここれ日銀謹製の「基調的なインフレ率を捕捉するための指標」の能書きを再確認しましょう。
https://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/index.htm
基調的なインフレ率を捕捉するための指標
『物価動向の分析にあたっては、現実に観測される消費者物価の動きから、様々な一時的要因の影響を取り除いた、基調的なインフレ率(いわゆる「コア指標」)がよく利用されています。その際には、特定のコア指標に依存するのではなく、様々なコア指標を総合的にみていくことによって、基調的な物価変動をより的確に把握することができると考えられます。』
だそうなのですが、関連ペーパーとして示されているペーパーを見ますと、
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2015/rev15j11.htm
消費者物価コア指標とその特性
景気変動との関係を中心に
2015年11月20日
調査統計局 川本卓司、中浜萌、法眼吉彦
ペーパーはこちら
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2015/data/rev15j11.pdf
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2015/rev15j12.htm
消費者物価コア指標のパフォーマンスについて
2015年11月20日
企画局 白塚重典
ペーパーはこちら
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2015/data/rev15j12.pdf
ってのがあるんですが、「物価の基調を捕捉するには、賃金・物価のきめ細かい情報を用いるモデルによって、サービス価格のトレンドを抽出・活用することが有益である」って話が欠片も無いんですよねーーーーーー、なんですかこれって感じですな。
ついでに言うとYCC導入時に行った総括的検証をしたときは
2016年9月
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2016/k160921b.pdf
「量的・質的金融緩和」導入以降の経済・物価動向と政策効果についての総括的な検証
【背景説明】(注)
・・・・・思いっきり「予想物価上昇率がQQEとその後のマイナス金利政策で思うように上がらなかったのがアカンでした」という話で基調的物価がどうのこうのなどという話はなく、その後2018年にフォワードガイダンスを導入して金融緩和を強化した、ということになっている時には展望レポートのBOXが特集になっていまして、
2018年7月
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2018/rel180731f.pdf
経済・物価情勢の展望(2018 年 7 月)
─ 賃金・物価に関する分析資料* ─
ちなみにこの時のBOX祭りの見出しですが、
(資料1)最近の労働供給の増加と賃金動向
(資料2)家計の値上げに対する許容度
(資料3)企業の慎重な価格設定スタンス
(資料4)企業による生産性向上に向けた最近の取り組み
(資料5)競争激化と部門ショック
(資料6)公共料金と家賃の動向
(資料7)予想物価上昇率の「適合的な期待形成」メカニズム
ってなっていまして、まあこういう話を散々しておいて、いざ物価が上がって政策修正を渋る段になったら今度は急に「サービス価格ガー」とか言い出している訳ですな。
でもってちょっとこのペーパーからは話がずれるんですけど、多角化レビューのWSの資料とかにもありましたが、ここに来て急に「労働市場の構造変化が云々」ってのを言い出しているのも目立つんですけど、こちらは上記のように2018年7月の展望レポートでも示されているんですけど、
『足もと人手不足が強まるもとで、女性や高齢者を中心に労働力率の上昇ペースが加速している。仔細にみると、「女性(15〜64
歳)」は、人口が減少しているにも関わらず、政府による就労環境の整備もあって、労働力人口が増加している2(図表
B1-1@)。また、「高齢者(65 歳以上)」は、高齢化に伴って人口が増加するなか、最近は労働力人口がそれ以上のペースで増加している(図表B1-1A)。』
『ここで、女性や高齢者のパートにおける労働供給の賃金弾力性(賃金が1%増加した場合の労働供給の増加率)を計測してみると、労働参加が近年顕著な女性(15〜64
歳)および高齢者(65 歳以上)で、男性(15〜64 歳)よりも高いことが確認できる3(図表
B1-2)。』
『すなわち、こうした層では、同じ賃金上昇率に対して、より多くの労働供給がなされることになる(図表
B1-3)。この結果、労働需要が高まると(図中の労働需要曲線の右方シフト)、より多くの労働供給がなされる一方で、結果として、賃金上昇を抑制することになる。』
『仮に、女性や高齢者の労働供給が弾力的になされていなければ、賃金上昇はより大きくなっていたと考えられる。』
(以上の部分は直上URL先、2018年7月決定会合付属資料の「資料1」から引用)
ってことで、別に今に始まった話じゃないのですが、労働市場の構造変化は高圧経済アプローチのおかげとか言ってたりするんですけど、どう見てもただの人口動態要因です本当にありがとうございましたというのが2018年から現在にかけて何年かかっていましたっけとか考えると妥当にしか見えないわけで、どうもこの多角的レビューって結局黒田緩和の正当化に使っているだけで、先般吉川先生が指摘したような「そもそも巻き戻すのにこんなに苦労しないといけない政策を導入する必要があったのか」という観点からのレビューになっていない時点でポンコツレビューだし、このロゴがついてるペーパーが最近やたらめったら量産されているのですが、結局QQE政策が本当に実施すべきものだったのか、という点に対してクソの役にもたたないもんばっかり出てきてて、何ちゅう才能の無駄遣いと思っておじいちゃんは悲しくなってしまいます。
ついでに言えば
https://www.boj.or.jp/mopo/r_menu_ron/index.htm
金融政策に関連する論文等の一覧
を見ても賃金とサービス価格がどうのこうのとか今まで全然言ってなかったものがQQEおっぱじめて11年もしてから出てくるってどういう事よとは思う訳ですな、あっはっは。
・・・・・・いやまあ宮仕えはつらいのはわかるんで、書いてる当人たちよりではなく、この多角的レビューを嬉々としてやっているスットコドッコイのハトハトチキンが悪態をつかれるべき、というのを最後に付け加えさせていただきます。
2024/06/28
〇多角的レビュー第2回ワークショップですが
https://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2024/ron240627a.htm
金融政策の多角的レビュー」に関するワークショップ
第2回「過去25年間の経済・物価情勢と金融政策」の模様
まずは全体の話を上記URL先から
『要旨
2024年5月21日、「金融政策の多角的レビュー」に関する第2回ワークショップ「過去25年間の経済・物価情勢と金融政策」が日本銀行本店にて開催され、経済学者や金融・経済分野の専門家らを交えて、活発な議論が行われた。』
ということで、
『第1セッションでは、1990年代後半以降のわが国経済・物価情勢を振り返るとともに、最近の環境変化についても報告された。そのうえで、「量的・質的金融緩和」の経済・物価への影響や、なぜ賃金・物価が上がりにくいことを前提とした慣行や考え方がノルムとして社会に定着したのか、また、こうしたノルムは変化していると評価すべきか、といった点が議論となった。』
『第2セッションでは、金利が実効下限制約に直面するもとでの非伝統的金融政策の「期待に働きかける経路」の有効性や、緩やかな物価上昇がもたらす経済的な意味について報告された。そのうえで、インフレ予想の形成メカニズムや、金融政策の期待に働きかける効果の評価、緩やかな物価上昇のメリットに関する理論的整理が現実に適合するのか、といった点が議論となった。』
てことですがこれは後のパネルの部分で面白話がいくつかあるのでご紹介。
『第3セッションのパネルディスカッションでは、まず、上述のノルムが形成された背景や、その最近の変化について議論された。ノルムの形成の背景としては、1990年代後半以降、雇用維持が優先され賃金が抑制されたことや、厳しい価格競争が継続したことなどが指摘された。』
ここの話なんですけど、例えばアタクシの手元にある「平成バブルの研究(村松岐夫奥野正寛2002)」を見ますと、1980年前後には既に「賃下げや利潤カットを行っても、可能な限り雇用保証をすべきだ」といった価値規範が国民レベルで受け入れられているとの指摘がありまして、別にこの雇用維持優先ってのは1990年代になって急に持ち上がった話ではないんですよね。(「平成バブルの研究(上)(村松・奥野)」東洋経済新報社2002/03(手元にあるのは同年5月の2刷です))
であるからして、なんか長期低迷でノルムがこうなってさらに強化された、みたいな話にするのはおかしくねえかと思う訳で、こういうときに労働経済に詳しそうなのがメンツにいないのが何だかねと思う訳です。
『そのうえで、このところ人手不足の強まりなどを背景にノルムは変化しつつあるとの見方が示された一方、労働市場の構造等に大きな変化はなく、最近の賃金・物価の上昇は、外的なショックによる一時期なものであるとの指摘もあった。』
てな感じで、これ本編の方をよく見ますと「労働市場のノルム」で多くのところを押し通しているのですけれども、だったらこの辺の議論に労働経済の専門家呼べよと思いましたし、だいたいからして労働市場の構造が強固でノルムが変わらなかったとか言い訳するんだったら、QQE導入そのものが現実の分析をなんもしないで打った壮大な無駄玉だったという話にならないとおかしいんだが、なぜかそこを振れる人は1名しかいないというのがこのワークショップの茶番ぶりを発揮していて植田(ハトハトチキンの方)ちょっと出てこいって感じですな。
『また、過去25年間の金融政策から得られる教訓についてもパネリストによる総括が行われた。非伝統的な金融政策運営については、金利の実効下限制約のもとでも需給ギャップの押し上げなどの効果があったと評価する見方があった一方、期待への働きかけの難しさや長期にわたる緩和の生産性等への副作用を指摘する声もあった。』
「期待への働きかけの難しさ」っておいこらエライオブラートに包んで書いてるな、ということで本編に参りましょう。
https://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2024/data/ron240627a.pdf
「金融政策の多角的レビュー」に関するワークショップ
第2回「過去 25 年間の経済・物価情勢と金融政策」の模様
なおパネル以外は動画付きで見れまして、
https://www.boj.or.jp/mopo/outline/bpreview/bpr240405a.htm
「金融政策の多角的レビュー」に関するワークショップ
第2回「過去25年間の経済・物価情勢と金融政策」
2024年4月5日
(2024年6月27日更新)
日本銀行
となっております。昨日更新となっているのは今回アップされた議事要旨へのリンクを張ったからですね。
でもってですな、議事要旨見ますとパネルの方がどう見てもおもしろそうだというのに何でパネルはよつべリンクが無いのやらと思いますが、
『5.第3セッション:パネルディスカッション
モデレーター:渡辺 努 (東京大学)
パネリスト :伊藤 隆敏(コロンビア大学)
鶴 光太郎(慶應義塾大学)
福田 慎一(東京大学)
内田 眞一(日本銀行)』
ということですが、最初に渡辺先生が
『5−1.パネリストによるプレゼンテーション
冒頭、モデレーターの渡辺は、賃金や物価が変わらないことを前提とした慣行や考え方(ノルム)について、@そうしたノルムがなぜ生まれ、企業や消費者、労働者にどのような影響を及ぼしたのか、Aそうしたノルムは経済厚生上、どのような影響を及ぼしたのか、Bそうしたノルムは最近、変化しつつあるのか、といった論点を提示した。これらの論点について、各パネリストからそれぞれ見解が示された。』
とあってノルムをお題にしているのですが、後の方のディスカッションでですね(本文19ページ、PDF20枚目)
『(ノルムの位置づけ)』ってのがあって、ここが面白いw
『柳川は、ノルムという概念を使って金融政策を議論すると、本質的に重要な要素を捉え損ねるおそれはないのか――仮に均衡が複数あるとしても、それをどう動かすかを考える際に、ノルムという言葉を使うことでみえなくなる部分もあるのではないか――と指摘した。』
柳川先生良いですね〜
『そのうえで、ノルムを政策議論の文脈においてどのように位置付けているのか、パネリストに見解を問うた。』
『これに対して、パネリストの内田は、今後、インフレ予想を2%にアンカーさせていく過程において、中央銀行の信認という問題に加えて、賃金・物価を巡る社会の慣行やルール、つまりはノルムが変化するかは重要な要素になるとの見方を示した。』
さすが回答になっているようで全然回答になっていない返しをするのは得意ですな日銀は。
『モデレーターの渡辺は、経済学において賃金・物価の決定に際してノルムが重要であるということは過去から指摘されてきたことであり、それを予想という概念で置き換えてきたのがここ
30 年のマクロ経済学の潮流だったと述べた。』
謎の助け舟wwwwww
『もっとも、過去のオークン等の議論をみても、ノルムは制度や政策など、様々な環境に対応して自律的に変化するものであり、人為的に操作できるものではないという点が強調されていると述べ、ノルムを変えれば全て解決というような議論は不適切と指摘した。』
とは言えそもそも内田さんの回答自体が怪しいので渡辺先生もこういう話になったわけですが、
『吉川は、QQE は、わが国経済の低迷の原因はデフレであり、デフレは貨幣的な現象であるから、マネーを増やせば問題は解決する、という主張に基づくものであったと振り返った。』
はい。
『今回の多角的レビューにおいて、この点の是非について議論せずに、物価上昇率が2%まで上がらなかった原因として、金融政策以外の要因であるノルムについて議論している点に、議論の内容自体に違和感はないものの、日本銀行の対外的なコミュニケーションとして大きな違和感があると述べた。』
吉川先生これはwwwwwwさすがとしか言いようが無いwwwwwwwww
『これに対し、内田は、コミュニケーションの問題についてのご指摘はしっかり受け止めると述べたうえで、』
でたな無回答w
『2%の「物価安定の目標」の実現に想定以上の時間を要しているのは事実であり、その背景としては、政策効果の不確実性や労働市場のスラックの大きさに加え、ノルムの存在も考えられ、』
今回の事務方の出してきた資料ってしばらく前にネタにしましたが、「労働市場のスラックがでかかったから政策が効かなかった」とかいう言い訳をふんだんにちりばめているんですけど、だったらQQEじゃない普通の緩和政策で緩和してたって良かったんじゃないのという話だし、今まさに散々ぶっこんだQQEが見事に出口において円安コストプッシュという副作用を発揮している訳ですから、QQEである必要はなかった、ってこと、すなわち上記の部分で吉川先生の指摘した議論をしないのはどっからどう見てもうんこワークショップとしか申し上げようがないわけですな。
『今後、2%目標の持続的・安定的な実現に向けては、ノルムについて理解を深めることが重要と考えていると述べた。』
完全に「ノルム」で押し通すという内田さん。
『また、わが国特有の現象であるデフレ的なノルムについてしっかりと分析し整理しておくことは、仮に将来――わが国に限らず――似たような状況に陥った際に、どのような政策運営が適切か、どのような政策手段を採用すべきかを考えるうえでも必要であるとの認識を示した。』
ちょwwwwwだったら吉川先生の論点を考えろよという話で、そもそもこの多角的レビューって2013年のQQEが正しいというのがアプリオリに決まっているところからスタートしている(前回の第1回ワークショップで思いっきり渡辺先生が「やらなかったことの分析も重要」とか黒田以前は何も政策やってませんでしたとかいう事をこの前提の尻馬に乗って言ってたのが印象的でしたよね)のは「どのような政策運営が適切か」もへったくれもないんですよね。さすが日銀の方は屁理屈が上手だわと思うのでした。
それはそれとして14ページに戻りますと、
『5−1.パネリストによるプレゼンテーション』のタカトシ先生の説明の最初の辺り。
『(1)伊藤 隆敏(コロンビア大学)』
『パネリストの伊藤(隆)は、わが国の物価上昇率とインフレ予想、賃金上昇率について、2012
年までは「0・0・0%」の均衡にあった一方、足もとでは、輸入物価の上昇を契機に企業のコストが上昇したことを受けて、「2・2・2%」の均衡へ変化しつつあると指摘した。加えて、今後、企業の生産性向上によって、賃金上昇率が物価上昇率を上回る「2・2・3%」の均衡へ向かっていくかがポイントであるとの見方を示した。』
というのはクソどうでも良いのですが次の段落はワロタ。
『そのうえで、わが国がデフレ均衡に陥った最大の原因は、バブル経済の崩壊で物価が下落し、インフレ予想も低下したことにあると述べた。』
でもって、
『2013 年以降、日本銀行は期待に働きかける政策を行ったものの、過去に伊藤(隆)自身が主張していたほどの効果は発揮されなかったと指摘したうえで、』
というのを素直に認めているのはタカトシ先生ちゃんとできててよろしい、と思いました。
『この背景にはわが国のインフレ予想の形成において適合的な要素の影響が強いことがあると論じた。また、賃金上昇率がゼロになった背景については、1990
年代後半の金融危機時に、大企業の破綻や人員削減を目の当たりにした労働者や労働組合の行動が一変し、賃上げよりも雇用維持を優先するようになったことがあると指摘した。』
となっているのですが、先ほどアタクシがご紹介しましたように、「雇用維持」の規範はもっと前から日本に存在していまして、先ほどご紹介した本には第一次石油ショックにおける「賃金と物価のスパイラル的上昇」を鎮静化させるために1975年ごろに行われた「三方一両損」の解決策の一つが労使協調による過度な賃上げの抑止、解雇規制の強化による雇用の確保、などになっていたとあるわけですし、まあだいたいその辺は違和感ない話であって、タカトシ先生のような認識にいつの間にかなっているのは如何なものか、と思っております。
・・・・って考えるとそもそも「賃金と物価の好循環」とか言ってるけど、1975年体制(先ほどの「平成バブルの研究」の命名による)の構造が崩れているとなると、それって本当に好循環なのかよ、とかいろいろと考えてしまうのですが、また同書を読みながらいずれかの機会に、とは思います。
今朝はこの辺で勘弁
2024/06/26
〇6月会合主な意見関連(その2):物価に対しては上振れの話が多いのに何で政策やる気なしの助に
昨日は政策運営のところと政府からの意見で終わってしまったので前半参りますすいません。
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2024/opi240614.pdf
金融政策決定会合における主な意見
(2024 年 6 月 13、14 日開催分)1
・経済情勢に関する意見は微妙なのが連発
『T.金融経済情勢に関する意見』の『(経済情勢)』である。
『・ わが国経済は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復しており、先行きも、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まることから、潜在成長率を上回る成長を続けるとみられる。』
これは大本営なので中立。
『・ 今回は弱めのデータや懸念される情報もあったが、きわめて高水準の企業収益と約
30 年ぶりの水準となった春季労使交渉の結果が所得面から好循環メカニズムを支える、とのメインシナリオは不変である。物価面の指標もオントラックであった。』
であれば本来は「徐々に利上げ」だから7月展望の時点で確認出来たら利上げで問題ないんですけどね、まあタカ。
『・ 日常の買い物やセンチメントには物価高の影響がみられ、個人消費は強さに欠ける。賃上げや政府の施策が今後どの程度個人消費を押し上げるか注視していく必要がある。』
そもそも論として「物価高の影響で個人消費が弱い」ってんだったら物価目標2%達成どころか「望ましくない物価上昇」になっているんだからこんなノンビリした話してる場合じゃないだろと思うのですが、なんかまあこの言い方だとタカではないですよね。びみょー
『・ 当面、中小企業の正規雇用や年金受給者については、賃金や受給額の増加が物価上昇に追いつかない可能性がある一方、非正規雇用や大企業の正規雇用については物価上昇以上の賃金上昇が期待できる。こうした賃金動向が個人消費の先行きに及ぼす影響を注意してみていく必要がある。』
でまあこちらの方も一部では威勢の良いことを言ってるんですが、さっきの人と同じで結論が「状況を注視」ということになってしまっています。6月のこの時点で状況を注視している方々が7月末(次回会合)の時点で見極めが終わりました利上げオッケーって話になるのには話の飛躍が必要だし、さらには長期国債買入減額によって長期金利に影響があるって触れ込みですから、そうなるとこの辺の方々は「個人消費の見極めが必要」とか言いながら利上げを渋るだろうなあと思われますな。
しかしまあ何ですな、長期金利上がると固定型住宅ローンの新規借入金利に影響が出る一方で、短期金利上がると預金金利上昇するんだから、個人消費がそんなに気になるんだったら短期金利の引き上げを先行しろよ(変動型住宅ローンの金利が上がるけど個人は圧倒的預金超過なんだから預金金利上昇の方がでかいだろ)と思いますがwww
『・ 消費者マインドが低下してきているが、それは、物価の上振れリスクの高まりによるものである。』
まあこれはタカ派なんでしょうね。
『・ 中小企業の収益力はコロナ前より大幅改善した大・中堅企業に比べ弱く、投資も低調で賃上げ率も低い。少子高齢化等の構造的問題を抱え国際競争力が低下している日本で、賃金と物価の好循環を実現するには、成長志向の中小・中堅企業が投資・事業構造強化を進め、スタートアップが躍進し、資金・人材を集め成長スパイラルを創出する必要がある。』
これはいつもの中村委員ですね。まあこれはこれで言いたいことは一つの意見だが金融政策運営と関係ないやんという話ではある。
・・・・・ということで、金融政策のところが両論併記どっちかといえばハト寄り、なんですが、経済のところ見ると明らかにこれハトになっている次第でして、まあこれと政策運営の合わせ技で考えると、このひとたち短期政策金利上げる気がない方が優勢だな、と思わざるを得なくて頭がくらくらしてまいります。
・物価に関しては上振れ指摘が多いんですけどねえ・・・・・・・・
『(物価)』の部分。
『・ 消費者物価の基調的な上昇率は徐々に高まっていくと予想され、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。』
一本目は必ず大本営。
『・ 賃金と物価の好循環が実現しつつあるが、名目賃金上昇率、予想インフレ率、サービス価格上昇率などを踏まえると、基調的な物価上昇率はまだ2%に届いていない。』
ハトですねハイ次。
『・ 本年の春季労使交渉の結果が賃金統計に十分に反映されているとは未だ言い難いが、企業物価指数や企業向けサービス価格指数の上昇を見る限り、「物価安定の目標」に向けて着実に進んでいる。』
同じもん見てなんでこんなにニュアンスの違う意見になるんですかとは思うがタカ寄りですね。
『・ 物価は4月の展望レポート時の見通しに沿って推移している。先行きも、輸入物価上昇に加え、タイトな労働需給や所謂
2024年問題による運送費高が影響し、価格上昇が続くと考えられる。』
そもそも物価は上振れどころかオントラックだったら政策調整を行っていくという話だったので、オントラックだし先行きもOKOKなんだったら利上げ提案せえやと思いました、普通にタカ。
『・ 為替円安に伴う物価上昇のもとでも賃金と物価の好循環が着実に強まっていくためには、中小企業の価格転嫁が進展するとともに、名目賃金上昇率が一段と高まっていくことが重要である。』
中村委員っぽいですけど、これただの悪循環スパイラルにならんかと思いました、ハトですね。
『・ 輸入物価上昇は、現時点で、2022 年以降のような価格転嫁をもたらすとは考え難いが、価格を据え置くとするノルムの転換もあり、従前より価格転嫁が進みやすく、2024
年後半に向けて価格引き上げの波が再び生じる可能性もある。』
うーん持って回ったような言い方ですが、結論としてはタカ気味って感じですね。
とまあそういう訳で、経済のところは明らかにハトっぽくて、物価はオントラックからタカ寄りなんだから、本来の建付けであれば政策金利の調整にそろそろ着手すべきという話なんですが、例によって「個人消費の先行きを確認したい」とか言い出しているので、これはまあ利上げ先送りの怪しい理屈ということで、7月どころか9月も引っ張るリスクあるでって話ではあります。
と申しますのは、この人たち黒田末期でウクライナ侵攻が始まった以降の円安進行と物価上昇開始局面から「基調的物価(コアコア)」が上がらん→「賃金が上がらん」→「サービス価格などの動いていない品目が多い」→「賃金上昇の持続性を見たい」→「賃金と物価の好循環を確認したい」、と来て最近は「基調的物価が」というのを使っていますが、ここで「個人消費がー」と言い出す、ということで、手を変え品を変え緩和政策修正の先送りをする小理屈ばっかり出して来るというマーベラスなことをしておりますので、だいたいこういう新手の言い訳とともに「状況を注視したい」とか言われるとその時点でアタシャがっくりと来てしまうんですよね。まあそんなことで読んでるアタクシ的に期待外れでガッカリしているというのはあるのですが、それにしてもこれマジで4月の金融政策決定会合議事要旨となんでこんなにトーンが違うんだよおまえら4-6でなんか変なこと起きたかよと思うのでありまして、アタシャ日銀の言ってることのどこを信用して読めば良いんでしょと思ってしまう次第です。
なんせアタクシの日銀ヲチって公表文書をひたすら読むこむところから始まっていますし、今でもその基本スタンスは同じなのですが、ハトハトチキン総裁の発言がブレブレになるどころか、こういう公表文書までブレてくるとマジで勘弁していただきたいんですよね、ということで足元における「公式文書ベースでの情報発信のブレっぷり」に関しては結構深刻に受け止めておりますんですよ、とお伝えしておきます。
2024/06/25
〇6月会合主な意見が輪番減額も利上げも全然前のめりじゃない件について
メディア的にはこういう見出しの方がヒットするんでヘッドラインを見るとどこのベンダーでもこんな感じだったのですが・・・・・・・・・
https://jp.reuters.com/economy/bank-of-japan/ZPKVUGHBPJNPJEJCMUDGKZFPWA-2024-06-24/
物価に上振れリスク、「遅きに失することなく」適時に利上げ必要=日銀主な意見
By 和田崇彦、 内田慎一
2024年6月24日午前 11:22 GMT+9
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2024/opi240614.pdf
金融政策決定会合における主な意見
(2024 年 6 月 13、14 日開催分)1
・先に政策運営の方から見るけど見事に両論併記だしまあ普通にこれハト優勢ですよね
『U.金融政策運営に関する意見』ですが、掲載順に引用します。
『・ 展望レポートで示した経済・物価の見通しが実現し、基調的な物価上昇率が上昇していくとすれば、政策金利を引き上げ、金融緩和度合いを調整していくこと
になる。』
これはもともと4月展望で書いてあることなので別にどうということはない。ハトではないがタカとも言い難い。
『・ 見通しに沿った物価の推移が続く中、コストプッシュを背景とする第2ラウンドの価格転嫁によって物価が上振れる可能性もあるだけに、リスクマネジメントの観点から金融緩和のさらなる調整の検討も必要である。』
これはタカ。
『・来年度後半の2%の「物価安定の目標」の実現に向けて、オントラックで進んでいるが、上振れリスクも出てきている。こうした点が消費者マインドに影響していることも意識しつつ、次回会合に向けてもデータを注視し、目標実現の確度の高まりに応じて、遅きに失することなく、適時に金利を引き上げることが必要である。』
まあベンダーヘッドラインインなるくらいだし、「遅きに失することなく」ってのが植田ハトハトによる「遅れることのリスクは小さい」へのアンチテーゼになっているのでこれは文句なしのタカ。
・・・・・と、最初にタカを並べるのですが、ここでハトが来て中和されるんですよね。
『・政策金利の変更を考えるタイミングは、消費者物価が明確に反転上昇する動きや、中長期の予想インフレ率の上振れなどを経済指標で確認してからで良いと考えられる。』
いや予想インフレ率上振れしたらアンカー外れてますやんその時は引き締めまでいかないとダメなんですがおっちゃん(かおばちゃんか知らんけどたぶんおっちゃん)何考えてますの????
・・・・というレベルのスーパーハトという智頭急行に走ってそうな人発生。
『・個人消費が盛り上がりを欠く中、一部自動車メーカーの出荷停止という想定外の事態が続き、これらの影響も確認する必要がある。このため、当面は現在の金融緩和継続が適当である。』
個人消費が盛り上がらないのはてめえらの緩和継続が招いているコストプッシュによる物価上昇なんですけどなんで緩和継続するんですか馬鹿なんですか、と思いますが、まあそういうことなのでこれもスーパーハト。
この次が「為替円安と金融政策」コーナーになります。特にそんな見出しはついていないけど。
『・円安は物価見通しの上振れの可能性を高める要因であり、リスクマネジメントアプローチに立って考えれば、リスク中立的な、適切な政策金利の水準は、その分だけ上がると考えるべきである。』
コーナーが変わりましたのでまたタカからスタートなんですが、こちら中立金利上がるというタカの話ですが利上げを急ぐべきとかいう話になっていないのでタカはタカだがスーパーはつけられませんな。
『・ 為替相場の変動は経済活動に幅広い影響があるほか、ファンダメンタルズから乖離した水準が続けば国民経済の健全な発展にも影響が及ぶ。他方、金融政策も為替相場だけではなく国民生活や経済活動の幅広い側面に影響するので、経済・物価情勢の全体像をみて運営しなければならない。』
結局この人は何を言いたいのという話なんですが、まあだいたい円安怪しからんといいながら後半のようなことを言う人は普通の場合はハト理屈なんですよねー残念無念また来年。
『・金融政策運営は、物価の基調とその背後にある賃金動向を見極めて行うものであり、為替の短期的な変動には左右されない。』
これはまあハトになりますが、
>為替の短期的な変動には左右されない
>為替の短期的な変動には左右されない
>為替の短期的な変動には左右されない
っていやマジで貴殿の首の上に乗っかっているのはカボチャかなんかですかと小一時間問い詰めたくなるんですが、「為替の短期的な変動」ってお前2023年植田総裁就任以来のドル円チャート見てからものを言えやという話だし、まあ本来で言えば2022年からのドル円チャートを見てからものを言えということで、そのカボチャ脳でちょっとドル円の3年チャートでも見てからこの意見を読み直せと思うのですが、まあカボチャだからそれ見ても分からんかね。
と、カボチャ政策委員にひとしきり憤慨したところで次のコーナーが「長期国債買入をどうするのコーナー」になります。まあ「長期的に減額」というのは決定したんですが、じゃあ具体策どうなのよという話だが。
『・金融市場において長期金利がより自由な形で形成されるよう、国債買入れを減額していくべきである。その際、国債市場の安定に配慮するための柔軟性を確保しつつ、予見可能な形で相応の規模の減額をしていくことが適切である。』
まあこれは仰せの通りではあるのですが、「国債市場の安定に配慮するための柔軟性を確保」するという発想がイマイチ行けてなくて、ここを重視するあまりに今の植田日銀ってものすごく不透明なオペレーション運営をしていて、その結果としてマーケットメーカーにしろ投資家にしろ、先行きの政策運営をロジカルに考えたポジションテイクができない状態になっている、というのがちゃんと伝わっていないんじゃないのと毎度思ってしまいます。
『・イールドカーブ・コントロールからの出口を円滑に行うことができた経験も踏まえて、国債買入れの削減についても、削減額やペースのほか、枠組みの作り方などを工夫することで、市場の混乱を起こすことなく削減を行うことができると考えている。今回具体案を決めるより、市場参加者の見方を確認するプロセスを踏んだ方が、よりしっかりとした規模の削減ができる。』
基本的にタカなんだが、「イールドカーブ・コントロールからの出口を円滑に行うことができた経験」って黒田末期以降にYCC維持のためにどんだけ無茶苦茶オペの乱発したんだということで、なにが「出口を円滑に行うことができた経験」じゃ勝手に歴史改竄するなやボケというお話でございまして、なんかこの国債買入減額のタカのお二人とも余計な枕言葉が入っているのが気になりますね。
つまちこれは「余計な枕言葉を入れないと意見が全然通じない」という事に繋がっている訳で、長期国債買入減額に関してはうっかり市場のイシューになった(してしまったのは4月に素直に減額しなかったのと5.13事件のせいなので自業自得なんだが)ので今回「長期的に減額」というのをわざわざ決定するという羽目になったのですが、そうは言っても別に気合入れて減額する必要ってありましたっけというのが実際の政策委員会の空気なんじゃないか、と邪推したんですがどうですかね(個人の感想です)。
『・3月の政策枠組み見直しの趣旨を踏まえ、国債買入れの減額を行うことで、市場における日本銀行のプレゼンスを小さくしていくことが必要である。』
いやこういうシンプルな意見が欲しいですよね。問題はその規模なんで立ち位置は不明ですけど。
『・@国債市場で日本銀行が圧倒的に大きなプレーヤーである、A市中での代替が簡単ではないほど、日本銀行が大量の国債を保有している、といった大規模緩和の副作用が課題として残っている。このため、市場と対話しながら、適時適切に、日本銀行バランスシートの正常化を進めていく必要がある。』
市場と対話しなくたって、望ましいバランスシートを考えたときのゴールがあって、まあいきなりゴールまでの道は示さなくても、中間目標を途中に置いて、その中間目標までは淡々と減らす、ってやった方がどう見ても現実的には望ましくて、この「市場と対話しながら」の大義名分を入れると却って不確実要因になりますがな、と思うのよね、そら適時適切に減額できればそれに越したことはないけど、市場の中の人だって立場によって利害は違うんだからそんなの一々全部聞いてられないでしょ。
『・ 国債の買入れ額の減額については、債券市場の需給や機能度の改善状況を踏まえつつ、中期的な計画を策定して、これに沿って淡々と減額を行うことが望ましいが、減額の最適なペースなどを設定する必要があるため、市場との対話も含め、ある程度の時間をかけて慎重に検討すべきである。』
前半は良いんだがなんで結論が「時間をかけて慎重に検討」になっちゃうのよ・・・・・・・・・・・
『・ 国債買入れの減額については、開始時期や規模次第で経済を下押しし得るため、市場と対話を図りつつ、経済情勢を点検してから徐々に進めることが必要である。』
はいきましたハト理論。
『・ バランスシートの縮小は、拡大した日本銀行の市場への関与を市場への攪乱的影響を避けつつ減らしていくことが目的であり、金融政策とは切り離して行うものである。』
「市場への攪乱的影響を避けつつ減らしていく」と言ってる時点でダメなロジックで、これを言い出すと結局チキン丸出しになるんですよね。
『・国債買入れの減額に際し、今後の国債保有構造の在り方を念頭に、中長期的観点から新たな市場構造を議論していく必要がある。その際には、市場参加者を取り巻く前提となる環境を含め、幅広く議論していくことが重要である。』
そんなもんはお前らが考えなくてよろしい。なんか言ってるようでなんも言ってない意見ですね。
最後はETFです。いつも1名これ言ってますね。
『・ 保有するETFの取扱いを議論していくために、それが個別株式でなく投資信託であることなど、市場に影響を与える諸特性について理解を深めることが必要である。』
ということで、輪番減額につきましても「中長期的な方向として減額する」までは決まったものの、その中身に関して言えば積極減額しようという前のめり感を全然感じないという内容になっておりまして、今回輪番減額決定というのがあってベンダーのヘッドラインがタカ派バイアス掛かっていましたし、昨日は朝っぱらから神田大明神が円安牽制発言をがっつりと行っていたのもあって、とりあえず反応的には無事でしたけれども、まあこれ普通に「タカハト拮抗、むしろハト優勢」でしょと思いました。
・しかし4月議事要旨があの調子だったのに何で今回の主な意見はこんなにハトっぽいんだか
という疑問が当然沸き起こってくるのですが、こうなってくると10年後に出てくる議事録でも見たくなりますが、10年後とかワイも棺桶に片足突っ込んでいるとか何ならどっかの焼き場で燃えた後かもしれないと考えると、この近辺の議事録を見るまではボケずに生き抜こうという励みになるというものですw
・・・・てなギャグはさておきまして
まあでもそういうことでして、これ4月議事要旨の方が「タカ的な意見を殊更にフレームアップして作成された」んじゃネーノ疑惑の方が涌き起ってくるわけですよ。まあ主な意見って各委員が出したものを使うからそうそう内容いじれないでしょうけれども、議事要旨は言ってもいないことを書くのはアウトですけど、どの意見をフレームアップするのかは恣意的にやろうと思えばできる(本来はやるべきではないのだがFEDでもその可能性が垣間見れますよね)ので、まあそういう疑惑になってしまう訳ですよ。
でまああんまりそういう事やってると、日銀公式が出すものが信用ならんとなりかねない重大なリスクを起こす可能性があるので、何なんですか今回の一連の流れは、と思ってしまうんですよ益々のこと。いやほんと何なんですかね。
・政府から公開処刑されててクソワロタ
でまあ今回の主な意見最大の面白ポイントは『V.政府の意見』になります。
『(財務省)』から。
『・ 足もとでは賃上げ、設備投資等に前向きな動きが見られる一方、個人消費は力強さを欠いており、海外経済のリスクも認識している。』
『・ 政府は、経済再生と財政健全化を両立させる歩みを更に前進させていく。』
まあここは(2番目とか寝言は寝て言えと思いますが)さておきまして、
『・ 日本銀行には、政府との密接な連携のもと、2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現に向けた適切な金融政策運営を期待する。その上で、情報発信を含め、しっかりと金融資本市場とコミュニケーションを図っていただきたい。』
>情報発信を含め、しっかりと金融資本市場とコミュニケーションを図っていただきたい
>情報発信を含め、しっかりと金融資本市場とコミュニケーションを図っていただきたい
>情報発信を含め、しっかりと金融資本市場とコミュニケーションを図っていただきたい
wwwwwwwwwwwww
『(内閣府)』から。
『・ 足もとの経済運営に万全を期しつつ、コストカット型から成長型経済への移行に向け、強い決意で改革に取り組む。「経済・財政新生計画」を策定し、政府を挙げて実行する。』
はさておきまして次。
『・ 日本銀行には、金融政策の具体的なオペレーションについて適切な判断を期待する。引き続き、政府と緊密に連携し、十分な意思疎通を図りながら、2%の物価安定目標の持続的・安定的実現に向け、適切な金融政策運営を行うことを期待する。』
>金融政策の具体的なオペレーションについて適切な判断を期待する
>金融政策の具体的なオペレーションについて適切な判断を期待する
>金融政策の具体的なオペレーションについて適切な判断を期待する
wwwwwwwwwwwww
情報発信が無茶苦茶、オペレーションが下手くそ、とか財務省と内閣府の共同砲撃を食らっていてもうこれは公開処刑レベルの苦言の呈され方。
と申しますのは、
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2024/index.htm
金融政策決定会合における主な意見 2024年
こちらに過去の「主な意見」がありまして、3月のマイナス金利YCC解除含めて今回が3回目の決定会合になりますけれども、3月、4月ともこんな言われようはしていないわけでして、4月決定会合総裁会見のやらかし事件(情報発信を指摘した財務省)や、無駄な混乱だけ招いたサプライズ輪番減額の5.13事件(オペレーションを指摘した内閣府)について思いっきり言われとるやんという事だし、こんなにぶっこむのは割と異例ですよね、という話。
でまあ急に話が戻りますが輪番減額に関しての話で「市場との対話」というのが何度も出てきているのですが、なにせ5.13事件ぶっこんでいるという直近実績がある人たちに「市場との対話」とか言われましてもヘソが茶を沸かすとしか申し上げようがないんですよね、と改めて思いました。
なんか経済物価の話をかっ飛ばしている気がするが別ネタがあるので本日はパス(書くものがあったら明日書く)。
2024/06/21
〇円安堂々進行なので4月決定会合議事要旨ネタの続きで政策金利に関して
堂々の2回シリーズになってしまいましたが(汗)
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2024/g240426.pdf
なぜかというと、
https://jp.reuters.com/markets/bonds/
米国債10年 利回り
US10YT=XX +4.250 +0.033
米ドル/日本円 158.9200 +0.53%
とかいうとても素敵なことになっているのですが、
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-06-20/SFE19WDWLU6800
円安進行、対ドル160円が再び視野に−市場で高まる介入警戒感
Carter Johnson、George Lei、Anya Andrianova
2024年6月21日 3:04 JST
→ニューヨーク外為市場では一時、1ドル=158銭90銭台に下落
→4月29日に付けた34年ぶり安値の160円17銭も意識されている
ってなことで、
『円の下落は、米国など主要国・地域と日本の金利差が続いていることに起因する。日本銀行が先の会合で国債買い入れの削減計画について詳細を明らかにしなかったことも響いている。
門田真一郎氏らバークレイズ証券のストラテジストは「日米金利差が一定の水準を超えている限り、金利差がある程度縮小してもキャリートレードによる円売りは減らない可能性がある」と20日のリポートで指摘。ドル・円相場は年内1ドル=160円近辺で推移するとみている。
円の下落阻止には4−4.5%の日米金利差が必要−バークレイズ』(直上URL先ブルームバーグ記事より)
まあ要するにジャパン要因で言えば「今後継続的に短期政策金利がそれなりのペースで引き上げられる見通し」ってのがないと話にならんし、何度もチャンスがあるのに短期政策金利を上げ渋って(本来ならば今頃0.50%なんて普通になっていておかしくなかったんですがハトハトチキンがさっさと決断したら)いて、しかも今般の金融政策決定会合後の会見でもうっかり「輪番減額によっておこる長期金利上昇の度合いも短期政策金利の引き上げの判断材料」とか本音を駄々洩れさせるもんだから7月利上げ観測が大幅後退(少なくとも7月メインから9月メイン下手したら10月に後退しましたわな)の巻となっておるわけです。
でもってこんな状況では介入何ぞやっても効かない(ので外準全部売りでもしたければ相場を崩さず売れますがwwwww)でしょうから、そら通貨当局のトーンもさがるわな、というお話ではありますな。ちーん。
てな訳ですので議事要旨に戻って(再掲)
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2024/g240426.pdf
政策委員会 金融政策決定会合
議事要旨
(2024年4月25、26日開催分)
政策に関する部分はタカタカアピールになっていますが特に金利の部分とか再確認して、このトーンが月曜に出てくる「6月会合主な意見」でどのようになっているのかの差分を見ておくのが宜しいかと思います。
まあしかし何ですな、これで月曜出てくる主な意見で4月よりもさらに政策金利の調整に積極的なトーンになっていたとしますと、やっぱり植田総裁の一連の説明のトーンと話が全然違ってくるので、それはそれでどうなっているのか、って話になるんですよね。
では参りますが、『W.金融政策運営に関する委員会の検討の概要』を成敗して参ります、本文12ページ以降になりますな。
・先行きの政策予見可能性wwwwwwwwwwwwww
最初のところはまあオマケです。
『何人かの委員は、前回会合で決定した金融政策の枠組みの見直しは、市場に混乱なく受け入れられているとの見方を示した。このうちの一人の委員は、最近の消費者物価等をみても、前回会合時点で金融政策の枠組みの見直しの条件が既に満たされていたことを裏付ける内容となっていると指摘した。』
一人の委員は中村さんですかね。
『別の一人の委員は、昨年後半以降の日本銀行の情報発信によって先行きの金融政策運営に関する
予見可能性が高まり、市場の安定に寄与したとの見解を示した。』
wwwwwwwwwwww
いやーこの後の円安ぶっ飛びからの5.13事件というイベント発生を見ますと、何ちゅうフラグ建築士と笑ってしまうしかありませんが、そもそも日銀って先行きについて「不確実性が極めて高いから先行き利上げとか輪番減額とかのパスを軽々に示せません(今回輪番は方向性だけ明確化したけど)」ってスタンスであって、ただ「緩和的な環境が続くでしょう」とだけ言っているのですから、そもそも論として「何もしない」という以外に予見可能性も糞も予見する未来がなかったはずなんですよね。
ですから、まあ一委員の見解だからそんなに深刻に捉えなくてもいいんですけど、こういうのが出てくるということは、この時点では「先行きやる気ないもんねー」って思う方もおいでになられたという意味でこの部分はチャーミングですね、と思いました。
というのはおまけでして先に進みます。
・先行きの政策運営の話は最初のところから結構強いトーンなんですけどねえ
『委員は、先行きの金融政策運営について議論を行った。まず、委員は、先行きの金融政策運営は、今後の経済・物価・金融情勢次第であるとの見解で一致した。』
予見可能性って面においては、別に政策自体が予見可能じゃなくてもいいんですよ、上記のように「状況に応じて適時適切に政策を決定する」で良いんですから。
ただ、その決定するための判断ロジックというのを完全決め打ちしなくてもいいけど、筋道が通った説明してくれないと困るわけで、今の日銀というか黒田末期以降の日銀って結局やりたい政策が先にあって、その言い訳を小手先でコロコロ変化させて来るもんだから、それによって政策の予見可能性がなくなるわけで、別にガイダンス出すのが予見可能性じゃないし、何なら今の米国みたいにもはやドットチャートとか完全に害悪になっている訳なんですよね。
というのはさておきまして次。
『具体的には、何人かの委員は、2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現するという観点からは、基調的な物価上昇率の動向が重要であるとの認識を示した。』
具体的には、って言ってるんですがこれじゃあただのトートロジーと変わらん。
『別の一人の委員は、夏場にかけて前向きな企業行動が設備投資等から確認できるか、賃上げを受けて個人消費が改善していくかがポイントとなると指摘した。』
こういうのはわかりやすい、まあこれがポイントと言ってる人だと7月利上げするには相当強いアネクか、相当に強い短観が必要になりそうですが。
『一人の委員は、賃金・物価スパイラルの想定以上の進展、円安の進行、積極的な財政政策、人手不足を主因とする供給力不足、資源価格の上昇など、様々な物価の上振れリスクがあるとの見解を示した。』
これはタカ派。
『また、何人かの委員は、金融政策は為替相場を直接コントロールの対象としていないが、為替は経済・物価に影響を及ぼす重要な要因の一つであり、経済・物価見通しやそれを巡るリスクが変化すれば、金融政策上の対応が必要になると指摘した。』
というのがあってですよ、昨日ご紹介したように、前段の章で「委員は、このところの為替円安等が物価に及ぼすリスクについても議論した。」ってところでは少なくとも4人の委員が為替円安が基調的な物価に及ぼす可能性について強いトーンで指摘している訳ですので、この言い方見たら普通に6月に利上げあったっておかしくなかった、という話になるんですが、なんでこういう指摘出ているのに6月実質ゼロ回答になったんですかねえ、と不思議おぶ不思議。
挙句にこんな指摘までされてて、
『このうちの一人の委員は、国際金融のトリレンマなどを踏まえると金融政策を為替の安定に割り当てるべきではないが、為替の変動が、企業の中長期の予想インフレ率や企業行動に影響を及ぼす場合には、物価に影響を及ぼすリスクが高まるので、金融政策での対応が必要となると述べた。』
円安対応をする理屈まで登場しているんですよね。
・プリエンティブな政策金利の調整について4月会合時点で少なくとも3人の委員が指摘している件について
次に行きまして
『そのうえで、委員は、@先行き、見通しに沿って基調的な物価上昇率が高まっていけば、金融緩和度合いを調整していくことになるほか、A経済・物価見通しやそれを巡るリスクが変化すれば、金利を動かす理由となるとの認識を共有した。』
となっていますが、
『この点に関連し、多くの委員は、基調的な物価上昇率の高まりに応じて緩和
度合いは調整していくことになるが、経済・物価の見通しを踏まえると、当面、緩和的な金融環境は継続することになると指摘した。』
っていう部分が7月の展望レポートの文言で消えるのかどうかが実はひそかな注目材料で、この議事要旨の4月会合ではこの「当面緩和的な環境」文言を声明文から落として、展望レポートの「金融政策運営」の部分の記述に降格させてて、6月会合では先般ネタにしましたように、金融政策運営のガイダンス的文言を全部削除しているんですが、7月展望の「金融政策」のコーナーでどうなるのかは注目したいと思います。
しかしまあ何ですな、この「当面、緩和的な金融環境は継続することになる」がどこまで行っても玉虫色表現で、本来的にはこれ別に日銀が積極的に金融緩和環境を必死こいて作る、という金融緩和政策の推進をしているのではなくて、もともとの大規模金融緩和の影響が残っているから残置物の影響で金融環境は緩和が続くから一足飛びに引き締めに飛ぶわけではない、程度の文言のはずなんですが、ハトハトチキンおじの植田さんに掛かってしまいますとなんか未だに緩和必要ですからみたいな話になっちゃうの何なの?とは思います。
でまあここからが政策金利に関する話になりますが、
『ある委員は、政策金利の引き上げについて、そのタイミングや幅に関する議論を深めることが必要であるとの認識を示した。』
その後深まったんでしょうかねえ、主な意見で垣間見れるのを期待。
『一人の委員は、緩和度合いの調整ペースは経済・物価見通しの確度に応じて変化するが、先行きの急激な政策変更を避けるために、確度が十分に高くなる前から、経済・物価・金融情勢に応じて、緩やかな利上げにより緩和度合いを調整することも考えられると述べた。』
『別の一人の委員は、経済にストレスを与えないように緩和度合いを調整するには、今後、見通しの確度の高まりに合わせて、適時適切に、政策金利を引き上げていくことが必要であると指摘した。』
全く仰せの通りでして、プリエンティブに対応すべき、という意見が2人から出ている上に、
『ある委員は、現在の経済・物価見通しが実現するのであれば、約2年後に「物価安定の目標」が持続的・安定的に実現し、需給ギャップもプラスとなるので、金利のパスは、市場で織り込まれているよりも高いものになる可能性があるとの見解を示した。』
主な意見でもあって、出たとき田村抜刀斎キタコレと話題になったのですが、よくよく考えて見ますとこの並びで出ているということは、田村さん以外にあと2名がプリエンティブに政策金利の調整をしましょうよ、と言っている訳でして、これまた6月会見での植田総裁の本音駄々洩れ発言との差異は何なんですかということになるんですよね。
・「当面、緩和的な金融環境は継続することになる」のダブルミーニング
以下ハトの2名なので野口さんと中村さんで、たぶん前者が野口さんで後者が中村さん。
『一人の委員は、基調的な物価上昇率が2%を下回る現状では、緩和的な金融環境を今後も相応に長く維持する必要があると考えているが、円安を背景に基調的な物価上昇率の上振れが続く場合には、正常化のペースが速まる可能性は十分にあると指摘した。』
『この間、ある委員は、家計の購買力はまだ弱く、当面は緩和的な金融環境の継続が妥当との見方を示した。』
この見解自体はまあハトならこう来るわという話なのでそりゃそう言うでしょうねってなもんなのですけれども、ここでやっぱりアレなのは「当面、緩和的な金融環境は継続することになる」の文言の意味合いになってくるわけでして、明らかにこの文言をハト派のお二方は「積極的」な意味で使っている訳です。まあもちろんそういう使い方もできてしまうし、4月の植田総裁の会見を受けて市場だってこのフレーズをハト派解釈せざるを得なかったという訳です。
という訳でまあこれって3月の時からそうなので最初は声明文に載っていたのですが、声明文にこういうダブルミーニングしかも正反対に読める文言を載せている、というのがコミュニケーション上アカン訳でして、どうせ妥協してタカでもハトでもどっちでも取れる文言にして声明文(なり展望レポート基本的見解なり)をまとめたつもりなんでしょうけれども、そういう反対の意味に取れるような言葉を安易に使ってしまうのって、日銀大本営の皆様がクッソ頭がいいからついやってしまうんでしょうけれども、マイナス金利解除以降のここまでのグダグダぶりを見ますとやっぱりそういうことはやってはいけないんだと思います。
とまあそんな感じですかね。ここに書かれているのだけを見れば何なら6月に利上げでもうっかりしたらアリエールだし、まあ普通に考えて短観次第では7月だって十分できる、という書き方になっているのですけれども、一方であの植田総裁の記者会見ではそういうトーンじゃなかったんで、どこまで行ってもこのギャップがわけわからんままであります。
2024/06/20
ほうほうそうですかそうですか
https://jp.reuters.com/economy/bank-of-japan/FKJGVPOXU5NKHCFMJBUKLGH72Q-2024-06-19/
国債安定消化へ金利リスク抑制、変動債導入も選択肢 債務管理で近く提言
By 山口貴也
2024年6月19日午後 12:05 GMT+9
昨日はこのニュースでイールドカーブが反転フラットニングしていましたが、いやおまえこれ有識者提言段階だろ気が早いわとは思いましたが、発行年限短期化するんだったらちょっと3か月TDBを100万兆円くらい増発してくれませんかねえwww
〇4月会合議事要旨が出てきたわけだがこれ見るとマイナス金利解除辺りからのアレっぷりが鮮明になりますな
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2024/g240426.pdf
政策委員会 金融政策決定会合
議事要旨
(2024年4月25、26日開催分)
ということで出ているのですが・・・・・・・・・
・なんかタカタカ議論があったアピールがされているのですがはっきり言って債券市場にも為替市場にも不発でしたな
いやまあ議論の部分とか見てもそうだしヘッドライン見てもそうなんですが、一応この会合でもタカタカ議論があったような書きっぷりになっているんですよ。でまあまさか話をしていないことは議事要旨として書けないからそれ自体はそうなんでしょうけど、マイナス金利YCC解除のちょっと前からの日銀のコミュニケーションって、
マイナス金利YCC解除前:長期金利が急騰するのが怖いから「緩和的な状況が続く」をアピール
→まあこれは心情としてはわからんでもないから、あそこまでアピる必要あったのかはともかく話としては分からんでもない
マイナス金利解除後:継続する緩和アピールと輪番減額せずのせいで円安がバンバン進行してしまって急に威勢の良いことを言い出す
→でも言ってるそばから植田さんはハトハト発言をするし、挙句に4月の展望でやる気見せない会見をして円安加速
4月会合で円安進行の後:突如サプライズ輪番減額(5.13事件)をぶっぱなすなどの所業にでる
→なお植田さんは相変わらずハトハトなのですが一方で内田さんがぶっこむとかいう面白金研国際コンファランスは笑った
挙句に今回の会合:結局事実上なんもしなかったのと同じな上に輪番減額をするので短期金利の引き上げを先送るスタンス
でまあその結果債券市場では明らかに7月利上げ観測後退というかなくなったくらいの勢いになってしまっていまして、火曜日の国会半期報、昨日のこの議事要旨と政策金利の早期引き上げもありえますよアピールが飛んできても思いっきり無視される(昨日はさっきの国債管理政策がらみのニュースでカーブはフラットしてくれましたがそれまではスティープどころかツイストスティープする有様だし、後述するように1年短国の入札ツエツエバエでレートがなんかもうエライことになっておられる)の巻となっているようにしか見えないわけですな。
まあアレです、結局のところマイナス金利政策とYCCは解除してみたものの、その後の政策金利引き上げについても輪番減額についても実はこいつらやる気無し無しで、ただ円安進行はマズいので、円安進行を止めたいからちょいちょい威勢の良いことは言うのですが、その結果無駄に期待が高まり、今回の会合のように事前に妙に期待をさせておきながら期待外れの回答しかしない(って総裁会見での大江さんや国会半期報での大塚先生にもがっつり言われている訳でございますが)という流れになっておられまして、ああこれは日銀の伝統芸能復活、と思う訳です。
ともうしますのは、これって方向性が正反対ですけど麿がなんだかんだ追い込まれて、今に禍根を残すETF買入みたいな包括緩和をぶっこんだ(という意味で麿もそんなに偉そうなことを言える立場ではないという話はある)のに、全然緩和が足りないといわれ続けた小出し対応の日銀、というのと同じことを今度は正常化方向でやっている、というのがマイナス金利とYCCの解除を行ってからの植田日銀の所業とコミュニケーションになっているのですが、誰得円安がバンバン進行しているという意味で今回の方が罪が重くねえかって気もしないでもないですな、アイヤー。
つまりですな、これどうせ来週月曜の「6月会合主な意見」ってそれなりに威勢の良いのが出てくるんじゃないかな、とは邪推できるわけですよなんせ米債4.2%なのにドル円158円近辺になっているんですから、米債がなんかの拍子で4.5%だ4.6%になったら160円なんぞ笑い飛ばす勢いになってもおかしくないですわな、と考えると足元で円が全然戻らんの普通に日本要因だし、その中には日銀が小賢しい小手先のコミュニケーションで目先の対応をする結果その反動が大きくなって円安要因になっているのが多分に含まれるんじゃないかなって思う訳です。
ということでして、まあこうなってくると来週月曜の主な意見でどういう反応をする(する、というかしない、ということになりますがw)のかというのが楽しみで、6月会合の会見で7月は輪番減額だけしますよ政策金利は長期金利の動向を見てからですよってアピールしちゃったのが猛烈に効いて直前ではほぼコンセンサスだった7月利上げを消したのを打ち返すのはできるのでしょうかねえ(・∀・)ニヤニヤって感じです。
これが単発ならともかく、威勢の良いことを言っているのが実はただの時間稼ぎでした、ってのがすでにマイナス金利YCC解除以降連発しているし、植田総裁は毎度毎度のハトハト音頭を踊るし、そりゃ市場だって何度も時間稼ぎにお付き合いするほどお人よしじゃないですからねえ。
・・・・まあアレです、日銀どうせ威勢の良いこと言ってもやる気なくてあれはただの円安の足止めをしたい時間稼ぎ、ってのがどんどん広まってしまうと、多少のことをしてももはや反応してくれなくなるし、だいたいからして輪番減額について市場にご相談して7月に決定、といった手前ここから7月末まで輪番は動かせなくなったし、その結果主に円安方面から日銀が追い込まれて7月会合の時点でションベンちびりながら植田総裁が野々村号泣会見をして利上げに追い込まれる、というのはシナリオとしてはアリエールはアリエールかな、とは思わんでもないwwww
とゆーことで議事要旨の話なのに前置きがクソ長くなりましたが、まあそういう視点で読みますとこの議事要旨と総裁会見での発言が全然整合性が取れていない部分があるんですよね、ということでクソ長い前置き悪態を述べさせていただきましたですバイ。
・4月会合議事要旨最大の謎ポイント:なんでこの指摘があったのに総裁会見であの発言があったのか
本文12ページ、PDFで14枚目になりますが、『V.金融経済情勢と展望レポートに関する委員会の検討の概要』の『2.経済・物価情勢の展望』のほぼ最後の部分です。この円安の影響云々に関しては当然注目ポイントなのでヘッドラインなども出ていましたが改めてこの段落を全部読んでおきましょう。
『委員は、このところの為替円安等が物価に及ぼすリスクについても議論した。』
からの話ですが、
『ある委員は、円安と原油価格上昇は、コストプッシュ要因の減衰という前提を弱めていると指摘した。そのうえで、この委員は、企業の賃金・価格設定行動の変化も踏まえると、円安・原油高が物価、さらには賃金に波及する
タイムラグが短くなっている可能性があると述べた。』
というのが一人目の指摘。まあ仰せご尤もですな。
『この点に関連し、一人の委員は、企業の行動変化を受けて円安のパススルーの度合いは高まっているとみられ、その物価や賃金への影響が一時的なものにとどまらない可能性もあると指摘した。』
二人目の指摘です。でもって「この点に関連し」だから最初の指摘と同意見な上に上乗せして、ということになりますよね(最初の人と同一だったら「一人の委員」じゃなくて「この委員は」になるはずだから)。でもってこちらの方は円安が一時的ではない、となると基調的な物価にも影響するって話に繋がるのかな。
『別の一人の委員は、円安と原油価格上昇は、輸入物価を通じて企業物価へ波及しつつあり、賃上げに伴うサービス価格の高まりに加えて、現在伸び率が低下している財価格が底打ちして反転する可能性にも注意を払う必要があるとの見方を示した。』
これが三人目の指摘。これまたご尤も。でもって次の人はちょっと別の論点なので多分次の方は中村審議委員じゃないかな、円安は別に問題なし、と言っているので。
『さらに別の一人の委員は、円安は、短期的にはコストプッシュ型の物価上昇を招くことで経済を下押しするが、インバウンド需要の増加や製造業における生産拠点の国内回帰などを通じ、中長期的には生産や所得への拡張効果もあるため、基調的な物価上昇率の上振れにつながり得ると指摘した。』
まあこれはちょっと別視点なのでパスしますが次を見ますと、
『一人の委員は、輸入物価上昇や予想物価上昇率の上昇に伴う物価上昇率上振れのリスクもあるため、今後、2022
年以降に続く第2ラウンドの価格転嫁が生じることがないか、予断なく見極める必要があるとの見解を示した。』
ということで少なくとも4名の方が円安の基調的物価の影響について強いことを言ってるわけですよ。
『これらの議論を踏まえ、委員は、最近の円安の動きが、基調的な物価上昇率にどのような影響を及ぼすのか、注視していく必要があるとの認識を共有した。』
ってなってるじゃないですか、それなのに皆様ご案内の通り、この会合後の記者会見で植田総裁ってどういう説明してましたっけ、となるとかの有名な発言になるわけですよね。
https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2024/kk240617a.pdf
総裁記者会見
――2024年4月26日(金)午後3時30分から約65分
本文4ページ、PDFも4ページですね。
『(問)
植田総裁はですね、先日の会見で、円安の進行によって基調的な物価上昇率に無視できない大きさの影響が発生した場合は金融政策の変更もあり得ると、先ほどお話しした通りだと思うんですけども、今回金融政策の変更がなかったということは、これはつまり円安の進行が、これ無視できる影響だという、そういう範疇になるというご認識でしょうか。総裁のご認識、お尋ねしたいです。
(答)
それは今までの回答とちょっと重なりますけれども、取りあえず基調的な物価上昇率への大きな影響はないと、皆さん判断したということになるかと思います。ただ、申し上げましたように、そこに影響は今後発生するリスクはゼロではないので、注意してみていきたいということでございます。
(問)
つまり今回は、これは基調的な物価上昇率への影響は、まあ無視できる範囲だったという認識でよろしいでしょうか。
(答)
はい。』(この部分だけ直上URL先の4月決定会合後の植田総裁会見録より)
・・・・・・いやあのですね、議事要旨にあるような議論をしていたんだったら、少なくとも「今回金融政策を変更する必要があるような影響ではないという判断だった」位で説明が止まるはずで、「今後発生するリスクはゼロではない」とか、いかにも大きな影響が発生しそうもないかのような言い方をして説明するのって、4月決定会合議事要旨に書かれている議論内容を受けたらこういう言い方しちゃダメでしょという事でして、決定会合で行われた議論の内容について細かく説明する必要は確かにないのですが、明らかにこの会見での説明と議事要旨の内容に飛躍があって、議事要旨が針小棒大に書いているのか、植田総裁が本来の職務を理解しないで自分勝手に自分のハトハト見解を勝手に並べ立てているのか、どちらにしたって大問題な話ですよこれは。
まあちょっと植田出てきて説明してみろやオイコラという話ではある(と書いているくらいだからアタクシは植田の野郎が好き勝手に自分のハトハト音頭を開陳しているんじゃなかろうか疑惑の方を持っているんですがwww)のですが、今回の議事要旨の最大の見どころは何といってもここではないか、と思う次第でございます。
・この議論内容を踏まえると6月決定会合後の総裁会見でのこの説明もおかしいんですけど
さっきのを再掲すると、
『一人の委員は、輸入物価上昇や予想物価上昇率の上昇に伴う物価上昇率上振れのリスクもあるため、今後、2022
年以降に続く第2ラウンドの価格転嫁が生じることがないか、予断なく見極める必要があるとの見解を示した。』
ってのがあって、これはまあ一人の意見ではありますが、それ以外の円安の基調的物価への影響を指摘した他3名の方々も円安のパススルーの影響について指摘していた訳ですな4月会合の時点で。
でもってその4月会合時点から円安について状況はそんなに変わらず、円安定着の香りも漂う中で今回の決定会合を迎えていたわけですよね。でもってその決定会合を受けたこの前の記者会見ですが、これもこの前ネタにした質疑応答の再掲になりますけど、
https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2024/kk240617a.pdf
総裁記者会見
――2024年6月14日(金)午後3時30分から約65分
本文7ページ後半の質疑になります。
『(問)(前半割愛)あと二点目は、最近、企業物価指数等みてますと、円安の影響等でまたコストプッシュ型のインフレ圧力が再加速してるようにみえます。また、企業レベルでのサービス価格の動向をみても、「第二の力」の方の広がりが出ているようにもみえます。これを総合すると、基調インフレ、少し上振れ気味になっているのではないかとも思えるんですが、4
月の決定会合以降のこうした物価の動きについて、総裁のご見解をお願いします。』
『(答)(前半割愛)それから二番目の物価の動きに関するご質問ですけれども、これまで暫く、だいぶ前に始まった輸入価格上昇の国内物価への転嫁に伴うインフレ圧力、「第一の力」については、だんだん減衰してきている。一方で、賃金上昇がサービス価格等に波及するという「第二の力」の部分については、少しずつ上昇してきているという説明をしてきたところで、その点に大きな変更はございません。ただし、これもおっしゃいましたように、ここのところの円安も含めて、輸入物価等に若干の再上昇の気配がみえる。ある種、「第一の力」の第二ラウンド目が少し始まっているかもしれないというようなところについては、今後、基調的物価上昇の判断をする際に注視してみていきたいと思います。』(この部分のみ直上URL先6月決定会合後の総裁記者会見より)
いやあのさあ、4月会合の議論の温度感から言ったらそこから実質1か月半経過した6月会合の議論だって当然この問題ってもっと深刻に議論している筈なのに、この説明のトーンだと、全然切迫感もなんもなくてのほほーんと「ああまあそういわれてみればそういうこともありますかねえ」くらいの説明になっている(口調も大体そんな感じでしたよちなみに)訳でして、いやあのどういうことになっているのよというところなんですよね。
とまあそんなわけで、どうなっているんだこの植田日銀の情報発信は、というお話なんですが、まあ諸悪の根源が好き勝手に少数意見なのに自分の意見を総裁会見の発言にしてしまうハトハトチキン総裁の所業なんでしたらとっとと座敷牢に押し込めて会見はつば九郎でもマー君でもハリーホークでもドアラでも何でもいいから代打に喋らせろというお話なんですが、この混乱っぷりと、結局6月会合は期待を下回るしょうもない予告しか出なかったという所業を見ますとなんかハトハトチキン総裁だけの問題なのかどうかもアレというお話でもありますし、まあそんなこんなで、こいつら結局「やるやる詐欺集団」と認定されつつある、というのが今のステージなんだと思いますので7月頑張って態勢を立て直すのがベストですが、ボロボロになって8月9月に円安爆裂して日銀が地獄の業火に焼かれる(ワシらの生活にも貰い火がくるから飛んだ大迷惑ではありますが)方が焦土から登場する黒ちゃんの逆バージョンという面白展開も期待できるかもしれませんな(暴論)。
〇これは日銀必死だなと思いました(BBGでの清水季子前理事インタビュー記事)w
昨日のこれはクソワロタ
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-06-19/SFBI1ST1UM0W00
植田総裁はインフレ見通しに確信を深めている−清水前日銀理事
Tania Chen、藤岡徹
2024年6月19日 18:08 JST
『前日本銀行理事の清水季子氏は、最近の植田和男総裁の発言からはインフレ見通しに対して明らかに確信を深めている様子がうかがえるとの認識を示した。』(上記URL先より、以下同様)
じゃあなんであんなに利上げやる気ナッシング発言を会見の最初の方の質疑でするんでしょうかねえ。
『清水氏は19日、「総裁が選んだ、あるいは使った言葉にはややサプライズがあった」と指摘した。その上で、「金融政策決定会合では次の行動について有意義な議論がなされたのだろう」とも述べ、そうした自信が会見での発言につながったのではないかと語った。5月10日に4年の任期を終えて以降、メディアのインタビューを受けるのは初めて。インタビューは英語で行われた。』
>インタビューは英語で行われた
>インタビューは英語で行われた
>インタビューは英語で行われた
どう見ても為替対策です本当にありがとうございましたwwwwwwwwww
『植田総裁は先週開催された決定会合後の記者会見で、量的引き締めの開始となる国債買い入れ減額の具体策を決める7月会合での利上げの可能性を問われると、データ次第では「当然」あり得るとの見解を示していた。清水氏によれば、植田総裁がこのような確実性を示す表現を使うのはやや異例だという。』
そんなんその前に「輪番減額による長期金利の動きも短期金利操作に際して影響する」って感じの本音駄々洩れ発言をしたもんだから慌てて言い直したんでしょ。
とまあそういうことで以下割愛なんですけど、いやーもう日銀為替円安対策必死だな、とクソ笑ってしまう茶番劇なんですが、こういう小賢しい小手先の事ばっかりやってるから底を見透かされるのであって、もっと腹を括って「状況に応じて適宜適切な政策判断を行う(キリリッ」っとドッシリと構えられないんですかねえチキン総裁だから無理かなあ、と思いました。
2024/06/17
お題「決定会合レビュー:しかしこの人たちなんも決められないんですかねえ」
まあアレです、決定会合だというのに土日に更新しない時点で(ノ∀`)アチャーって話な訳ですが。(単に先週バチクソ疲れて死んでただけという説はある)
〇決定会合レビュー:7月利上げ予告もしないで減額内容も先送りってナンジャソラ
・輪番減額を政策イシューにした挙句に今回なんも決定できないとかアホなのかお前ら
今回の声明文
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2024/k240614a.pdf
当面の金融政策運営について
『1.日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を、以下のとおりとすることを決定した(全員一致)。
無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0〜0.1%程度で推移するよう促す。
次回金融政策決定会合までの長期国債およびCP等・社債等の買入れについては、2024
年3月の金融政策決定会合において決定された方針に沿って実施する。その後については、金融市場において長期金利がより自由な形で形成されるよう、長期国債買入れを減額していく方針を決定した(賛成8反対1)(注)。市場参加者の意見も確認し、次回金融政策決定会合において、今後1〜2年程度の具体的な減額計画を決定する。』
もうね、お前らなんも決断できないチキンやなという話なんですが、
3月のマイナス金利YCC解除の時に植田総裁こんなこと言ってましたよね。
https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2024/kk240321a.pdf
総裁記者会見
――2024年3月19日(火)午後3時30分から約65分
本文4ページ。
『(答)
一点目ですけれども、今日からといいますか、明後日から始まる金融調節、金融政策枠組みについて、名前を付けるかというご質問だと思いますが、特に名前は考えておりません。先ほど申し上げましたように、短期金利を主たる政策手段とする普通の金融調節になるということだと思います。』(直上URL先3月の植田総裁定例記者会見より、以下しばらく同様)
>短期金利を主たる政策手段とする普通の金融調節になる
>短期金利を主たる政策手段とする普通の金融調節になる
>短期金利を主たる政策手段とする普通の金融調節になる
『それから、長期金利ですけれども、国債買入れは当面これまでと同程度の額で継続致しますが、そのうえで金利水準は市場が決めるものというふうに考えております。ただし、ご質問にもありましたように、市場金利が急激に上昇する場合は機動的なオペを打つということは、バックストップとして担保しておきたいということでございます。』
>そのうえで金利水準は市場が決めるものというふうに考えております
>そのうえで金利水準は市場が決めるものというふうに考えております
>そのうえで金利水準は市場が決めるものというふうに考えております
本文5ページ
『それから、国債を私ども大量に保有していることのストック効果をどう考えるかということが後半のご質問だったと思いますが、これはもちろん、われわれも申し上げてきましたように、ストック効果というものが定量的に何%かというのは難しいですけれども、無視できない影響を長期金利に及ぼしていて、たくさん持ってるということですので、緩和方向の力が働いているということだと思います。これは認識しつつ、しかし、買いオペや残高の調整を能動的な金融政策、金融調節手段としては用いず、主たる調節手段としては短期金利の調節をもって行うというのが今後の考え方でございます。』(ここまでの引用は直上URL先3月の植田総裁定例記者会見より)
とまあ思いっきり輪番をフレームアップしている上に、利上げじゃなくて輪番減額の予告ホームランになるわけですし、さらにトサカに来るのは・・・・・・・・・・・
・な〜にが「市場の意見を確認する」だよ茶番にも程があるわ
(再掲します、今回の声明文から)
『市場参加者の意見も確認し、次回金融政策決定会合において、今後1〜2年程度の具体的な減額計画を決定する。』
とか抜かしているのがボードの責任放棄にもほどがあって、しかも茶番のように
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2024/mpr240614a.pdf
「債券市場参加者会合」の開催について
2024 年 6 月 14 日
日本銀行金融市場局
『日本銀行金融市場局は、本日の政策委員会・金融政策決定会合における決定内容を踏まえ、「債券市場参加者会合」を以下の要領で開催します。』
という話なんですが、
https://www.boj.or.jp/paym/bond/mbond_list/mbond2405.pdf
「債券市場参加者会合」(第 19 回)の開催について
202 4 年 5 月 1 日
日本銀行金融市場局
『日本銀行金融市場局は、「債券市場参加者会合」(第 19 回)を以下の要領で開催します。
1.日 時
銀行等グループ 6 月 4 日 (火) 15 時 45 分から
証券等グループ 6 月 4 日 (火) 17 時 30 分から
バイサイドグループ 6 月 5 日 (水) 16 時 00 分から』
ってつい2週間前にやったばっかりだし、だいたいからして金融市場局の方ではマーケット動向のヒアリングとか普段からちゃんとやっている訳で、これ記者会見でニュースソクラ(ネットメディア)の方が口調は悪いけど実に当然の質問をしていて、「普段から金融市場局が市場の意見を聞いていない、という事では無い筈だからこれは責任転嫁だろ」みたいな趣旨(違ってたらゴメンよ、今日会見録出るけど)の質問をしていて、いや仰る通りですわというお話だし、6月の時点で輪番減額の話が1ミリも出ていないから改めて仕切り直しというのならともかく、3月会合の時点で長期的な減額って話は出ていたのですから、その後長期的な減額についてヒアリングをできなかったという話でも何でもないんですよね。
まあそういうことでして、ついこの前やったばっかりなのにまた会合実施とか金融市場局さんにおいてはご苦労なこったと思いますし、それ以前の問題としてまるで普段金融市場局が市場の意見を聞いていないかのようなこの会合実施っての金融市場局がカワイソスにも程があって同情の念に堪えませんし、マジのマジでこんなのボードの責任放棄というか、なんも決められないのかこのアホウどもは、と思いました。
いやまあこれが声明文で7月利上げ予告ホームランでもしていれば別なんですが、後述のようにそうでもないですし、総裁会見ではむしろ輪番減額による長期金利の影響ガーとか言い出して、輪番減額してその後利下げは様子を見ますと言わんばかり(言っちまったと思ったのかその後の質疑では7月も可能性ありますとは言ってたけど完全にあれはハトハトチキンの本音駄々洩れでしたわな)ですし、金曜は偶々おフランス様などなどの影響でリスクオフになってドイツ様とかの金利が急低下してドルも下がっておられましたので事なきを得ましたが、その後ドルは下がるがドル円は下がらんとかいうチャーミングなことになっているのは後でメモっておきます。
まあもっとそもそも論を言いますと、そもそも「市場の意見を聞く」などという姿勢があるならマイナス金利の解除を昨年の4月か遅くとも7月にやって桶という話でして、散々っぱらマイナス金利解除を引っ張りに引っ張りまくって円安誘導していたハトハトチキンが何を今更「市場の意見を聞く」だよふざけるなお前馬鹿にしてるのかという話でして、どうせ市場の意見通りにやるわけでじゃなくて、どっかの太鼓持ち何とかストが太鼓持ち意見を言ったのをチェリーピッキングするんだろとしか申し上げようがない次第で、なんちゅうかこういう糞茶番に付き合わされるの金融市場局も迷惑だし、そんなに市場の意見を聞きたいんだったら植田お前だお前、お前が出てきて参加者会合メンバー個別に30分づつ膝付め談判してみろやこのチキンが、というところではありますな。
・そんな茶番はさておきまして情勢判断なんですけど現状認識はむしろ下がっていますなあ
まあ輪番減額が利上げとセットなら話はまだ分かるのですが声明文項番2に進みますと、
今回声明文(URL再掲)
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2024/k240614a.pdf
前回展望レポート基本的見解
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2404a.pdf
項番2が経済物価情勢の現状認識と先行き見通しで、言ってみれば展望レポートの中間評価になりますが、
『わが国の景気は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している。』(6月声明文)
『わが国の景気は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している。』(4月展望レポート)
現状判断の総括判断は同じ。
『海外経済は、総じてみれば緩やかに成長している。輸出は横ばい圏内の動きとなっている。』(6月声明文)
『海外経済は、回復ペースが鈍化している。そうした影響を受けつつも、輸出は横ばい圏内の動きとなっている。』(4月展望レポート)
回復ペースが鈍化、というのと総じてみれば緩やかに成長、というのがどcっちがどっちですねんというお話ではあるのですが、総じてみればっていうヘッジクローズが入っているので威勢が悪いのは今回かな。
『鉱工業生産は、基調としては横ばい圏内の動きとなっているが、足もとでは、一部自動車メーカーの生産・出荷停止による下押しが続いている。』(6月声明文)
『鉱工業生産は、基調としては横ばい圏内の動きとなっているが、足もとでは、一部自動車メーカーの生産・出荷停止の影響もあって減少している。』(4月展望レポート)
減少している、と下押しが続いている、のどっちがというのもこれまたわかりにくいんですけど、直近で自動車メーカーさん追加の悪材料あったんだからまあそれも加味したら、一時的と思ってた減少状況が続いていますねアイヤーって感じでしょこれ。
『企業収益が改善するもとで、設備投資は緩やかな増加傾向にある。』(6月声明文)
『企業収益は改善しており、業況感は良好な水準を維持している。こうしたもとで、設備投資は緩やかな増加傾向にある。』(4月展望レポート)
業況感の記載がないのは前回以降に短観がアップデートされていないからです。ここは前回対比同じ。
『雇用・所得環境は緩やかに改善している。』(6月声明文)
『雇用・所得環境は緩やかに改善している。』(4月展望レポート)
『個人消費は、物価上昇の影響に加え、一部メーカーの出荷停止による自動車販売の下押しが続いているものの、底堅く推移している。』(6月声明文)
『個人消費は、物価上昇の影響に加え、一部メーカーの出荷停止による自動車販売の減少などがみられるものの、底堅く推移している。』(4月展望レポート)
『住宅投資は弱めの動きとなっている。公共投資は横ばい圏内の動きとなっている。』(6月声明文)
『住宅投資は弱めの動きとなっている。公共投資は横ばい圏内の動きとなっている。』(4月展望レポート)
この辺みな同じで、
『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(6月声明文)
『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(4月展望レポート)
と来まして物価は、
『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比をみると、既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響は減衰してきているものの、賃金上昇等を受けたサービス価格の緩やかな上昇が続くもとで、足もとは2%台前半となっている。予想物価上昇率は、緩やかに上昇している。』(6月声明文)
『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比をみると、既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響は減衰してきているものの、賃金上昇等を受けたサービス価格の緩やかな上昇が続くもとで、足もとは2%台半ばとなっている。予想物価上昇率は、緩やかに上昇している。』(4月展望レポート)
現実の数値以外皆同じか・・・・・・・・
・先行き見通しなんだが物価の見通しが明示的に展望レポートの期間までの見通しを明確に言及ですな
でもって先行き見通しですが、
『先行きのわが国経済を展望すると、海外経済が緩やかな成長を続けるもとで、緩和的な金融環境などを背景に、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まることから、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。』(6月声明文)
『先行きのわが国経済を展望すると、海外経済が緩やかに成長していくもとで、緩和的な金融環境などを背景に、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まることから、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。』(4月展望レポート)
はいはい同じ同じ。ちなみに展望は本文2ページ部分相当です。
『消費者物価(除く生鮮食品)については、既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響が減衰する一方、来年度にかけては、政府による経済対策の反動等が前年比を押し上げる方向に作用すると考えられる。』(6月声明文)
『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、2024 年度に2%台後半となったあと、2025
年度および 2026 年度は、概ね2%程度で推移すると予想される。既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響が減衰する一方、2025
年度にかけては、このところの原油価格上昇の影響や政府による経済対策の反動が前年比を押し上げる方向に作用すると考えられる。』(4月展望レポート)
こちらの展望は本文3ページの下の方から4ページにかけてになります。数字が入っているのはさておき言ってることは同じですな。でもって気になったのはこの次でして、
『この間、消費者物価の基調的な上昇率は、マクロ的な需給ギャップの改善に加え、賃金と物価の好循環が引き続き強まり中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想され、』(6月声明文)
『この間、消費者物価の基調的な上昇率は、マクロ的な需給ギャップの改善に加え、賃金と物価の好循環が引き続き強まり中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想され、』(4月展望レポート)
とまあ基調的な上昇率とやらのも表現も同じですが、
『「展望レポート」の見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。』(6月声明文)
『見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。』(4月展望レポート)
ここはナンジャソラと思った場所で、まあ従来は確かに「物価安定と整合的な水準に上がる」という予想がされていなくて、3月の声明文で「先行き、見通し期間終盤にかけて、「物価安定の目標」が持続的・安定的に実現していくことが見通せる状況に至ったと判断した。」という話をしていたので、その継続である、と言ってしまえばそれまで何ですけど、よく考えてみると従来の建付けでは展望レポートが先行き3年程度の長期見通し、通常の会合は1年程度の見通しの話をしていたので、いつの間にやらその区別がなくなってやがる(まあ書きながら気が付いたがそもそも3月も展望会合ではない)と思いました。
でですね、今回引き続き「見通し期間後半に物価目標達成と考えられる」が続くのであれば、当然ながら次回の展望レポートの時点で、先般の4月の展望レポートで示された政策金利の修正の話が起こる筈ですよね、という話があるんだがその前にこの項番2にはリスク要因の話があるのでそっちを先に。
・リスク要因はいつも通り
『リスク要因をみると、海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、わが国経済・物価を巡る不確実性は引き続き高い。そのもとで、金融・為替市場の動向やそのわが国経済・物価への影響を、十分注視する必要がある。』(6月声明文)
『リスク要因をみると、海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、わが国経済・物価を巡る不確実性は引き続き高い。そのもとで、金融・為替市場の動向やそのわが国経済・物価への影響を、十分注視する必要がある。』(4月展望レポート)
こちらの記述は展望の1ページの鏡(概要)部分になります。同じですね。
・幻の声明文項番3となったのはどういう意味があるのでしょうかというのがいくつか考えられます
でまあこの声明文は終わっているのですが、これまでって「先行きの金融政策運営」に関する記載が声明文にありましたよね。でもって今回この項番3がすっぽりと抜け落ちているのですが、先行きの金融政策運営に関してはご案内の通りで前回声明文でも実はなくて、その代わりに展望レポートの最後の部分(「4.金融政策運営」の最後)にあたります本文8ページの最後に
『金融政策運営については、先行きの経済・物価・金融情勢次第であり、この点を巡る内外の経済・金融面の不確実性は引き続き高い。以上のような経済・物価の見通しが実現し、基調的な物価上昇率が上昇していくとすれば、金融緩和度合いを調整していくことになるが、当面、緩和的な金融環境が継続すると考えている。日本銀行は、2%の「物価安定の目標」のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営していく。』(4月展望レポート8ページより、6月声明文には該当する記載なし)
この記載に相当する部分、前回は「声明文には記載していませんが展望レポートの方で記載しております」という説明ができたのですが、今回はバッサリ削除になっていまして、これはまあ何らかの意味をもって削除している訳ですな。
ちなみにアタクシ基本的にはFEDのドットプロットですら要らねえと言ってるくらいなので、先行きの政策に関するガイダンス的な文言自体、フォワードガイダンスで緩和効果を出すような必要がない上に構造変化などの可能性もあるこのご時世において、ガイダンスもどきの文言自体要らないというスタンスなので、このばっさり削除自体結構なことで、何なら次回展望でも上記文言のうち前半はいらない(「日本銀行は〜経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営していく。だけで十分)と思っているので、このばっさり削除自体はほほうと思いました。
ただまあ何ですな、この文言って金融政策に関して「以上のような経済・物価の見通しが実現し、基調的な物価上昇率が上昇していくとすれば、金融緩和度合いを調整していくことになるが、当面、緩和的な金融環境が継続すると考えている。」というハイパー意味不明というか、この緩和的な金融環境云々とかいう糞文言によって円安助長していたのでこれが外れるのは非常に結構なのですが、同時に見通し通りなら金融緩和度合いを調整、というのも外れるので、わざわざ項番2の物価のところで「見通し通りに推移している」って評価したことが7月の利上げ予告ホームランにならないという残念な面もあります。
まあ削除したこと自体は良いんですけど、じゃあ今ボードは「当面緩和的な金融環境」なのか、「見通し通りに推移しているから金融緩和度合いの調整(なお3月当初の建付けで言えばこれは利上げを意味するのであって輪番減額は意味しない)」なのかが分からん、ということになっておりますのがまあムツカシねというところですが、ただまあ今日出てくるので明日ネタにしますが、ハトハトチキンおじさんの会見だと前者の「当面緩和的な金融環境」の方に傾いている感じもしますし、一方でこの前の内田副総裁の講演とかだと公社なんですが、まあ不明にも程があるという感じです。
・中村審議委員が正論をぶち込んでいる件について
まあオマケですけど声明文脚注。
『注)賛成:植田委員、氷見野委員、内田委員、安達委員、野口委員、中川委員、高田委員、田村委員。反対:中村委員。中村委員は、長期国債買入れを減額していく方向性については賛成だが、7月の「展望レポート」で経済・物価情勢を改めて点検してから決定すべきとして反対した。』
・・・・・どう見ても正論です本当にありがとうございました。
2024/06/12
〇物価指数の計測誤差に関する豪華レポートは個別項目の話を見ているだけでも楽しめると思います
昨日紹介だけしたこれ
https://www.imes.boj.or.jp/research/abstracts/japanese/24-J-10.html
消費者物価指数の計測誤差の改善状況と今後の課題―主要国における物価目標の根拠としての視点から―
小林悟、篠原武史、白塚重典、須藤直、竹内維斗文
本文はこちら
https://www.imes.boj.or.jp/research/papers/japanese/24-J-10.pdf
でもってですね、最近出てくる日銀のスタッフ(または共著)ペーパーって本文表紙にあります『多角的レビューシリーズ』ってのがあるのが結構出ているんですけど、いやあたくしとてこれ全部熟読しているほどの暇も読みこなす知能も存在しないので全部精読できているわけではないのですが、この「多角的レビューシリーズ」って銘打って出てきてるのって、結論がなぜかそろいもそろって「異次元緩和は効果があった」という話をサポートするような書きっぷりになっているので、表紙にあのロゴがあるだけでもうペーパー出てくると血圧が上がるんですよね。
でまあこのペーパーですが、昨日申し上げたように超豪華執筆陣でありますので、各論段階のところは物凄く興味深いので折角ですからご紹介したいのですが、最後の結論のところが謎のオブラートにw
・最後のまとめ部分から最初に読むけど斜め読みすると2%物価目標の数値は正しいと読めるのがニャンとも
『6.まとめ』って見出しで、本文41ページPDFの44枚目ですけど、
『主要国の中央銀行が物価の安定を数値目標で示す際、消費者物価指数が用いられることが多い。また、その目標物価上昇率を正の値に設定する根拠の
1 つとして、CPI の計測誤差(上方バイアス)が挙げられることが少なくない。そのため、本稿では、わが国に加えて、海外の事例も参照しつつ、CPI
の計測誤差の種類や大きさについて、最近の研究動向を概観している。』
というのが内容なのですが、全体論よりも各論の方がアタクシにはおもろかった。
『「米国 CPI には+1.1%ポイントの上方バイアスがある」とした 1996 年のボスキン・レポートの公表から
25 年以上が経過し、同レポートで指摘された要因に由来するバイアスについては、米国だけでなく、わが国や欧州においても、各国間やバイアス間での違いはあるものの、全体としては縮小しているとみられる。』
であればそもそも物価目標2%って妥当なのか問題があるし、だいたいからしてCPI(でもHICPでもPCEでも)の計測だって違いがあるんだから2%が正しい理由の一つに挙げているボスキンバイアスが普遍的な定量数値として出るのかよという話になるような気がするのですが、惜しくもそういう話にはなっておりません、というかその話回避してるでしょw
『その背景としては、まず、品目指数を上位指数に集計する際に用いる支出ウエイトの更新頻度の引き上げ、指数を作成する際の算式の変更、品質調整手法の広範な品目への拡充等、各国の統計機関が、計測誤差の存在を意識しつつ、継続的に、指数精度の向上に取り組んできたことが挙げられる。』
『加えて、ボスキン・レポート公表当時に顕著であった ICT機器の価格下落がここ数年一服していることや、個人商店から
GMS への店舗間代替の一巡等の経済構造の変化も寄与していると考えられる。』
話はそっちに行きまして、というかまあその話の内容はなかなかおもろい。
『もっとも、このことは、現時点において計測誤差が解消され、先行き再び拡大しないことを必ずしも意味しない。』
あら。
『例えば、幾つかの財やサービスの価格においては、観察される価格変動のうち、品質変動が十分に把握できていないこと等により、CPI
に計測誤差が残存している可能性がある。』
『その理由としては、品質変動部分を抽出し、バイアスを除去する手法が、そもそも学術的に確立されていないか、あるいは定量評価を行う際のデータや人員等、実務上の制約があること等が挙げられる。』
『また、近年の E コマースの拡大等、ボスキン・レポート公表時には注目されていなかった商流の変化が、バイアスに影響を与えている可能性も指摘されている。この点についての研究・分析は、緒に就いたばかりである。』
なるほど、というかそういう話であれば、そもそも2%の物価目標を設定するに際して、本来は2%をマジックナンバーのように扱うのではなく、上記のような価格計測誤差があることを考えれば、2%という数値を絶対視するのではなく、あくまでも概念上の数字として「安定成長経済の結果として2%程度に物価が上昇しているようになっているんじゃなかろうか」というような概念で、幅を持った概念として考えていくべきという話になるんじゃないですかねえ、と思う訳です。
その意味では米国だって欧州だって足元2%を本当にマジックナンバーとするんだったら利下げとかもってのほか(欧州なんて経済見通し引き上げてるのに利下げしてるんですから)という状況でも金融引き締めの程度をどうしましょという話をしているのって、2%は看板としては残しているけど、事実上の「幅を持った概念としての2%」に運営を寄せようとしている訳ですわな。
『加えて、今後、経済のサービス化やデジタル化、人口の高齢化等、経済構造が一段と変化すると、既存の価格評価方法の適用が難しくなる等、計測誤差の大きさも影響を受ける可能性がある。このように計測誤差が解消し得ないことを踏まえると、CPI
の計測誤差は、CPI についての数値的な目標を設定する際の根拠の 1つとしての妥当性を引き続き有していると考えられる。』
ということでして、これ結論の書き方が結局のところ計測誤差を厳密に計測していきましょう、の方向だからこういう風になる、と言ってしまえばそれまでなのですが、「そもそも物価統計それ自体に計測誤差が色々な意味であるのだから、物価目標を設定する際には、その目標値を絶対視することは好ましい結果を生まない可能性がある」って話になるんじゃないでしょうか、と思うのですな。
ただまあアレです、表面上は「ボスキンバイアスは依然として存在しますからバイアスの存在を一つの根拠にして物価目標設定しているのは正しい」と読めてしまうのがこの結論項の諸葛孔明の罠な訳でして、これ実施にこの豪華執筆陣の皆様としてはそもそも「ザ・物価」というのがあるのか問題と、物価目標の扱い方に関してどういうご所見なのかってのはお伺いしたいものであります。
もちのロンなのですが、物価の実態を正しくとらえよう、という研究をするなっちゅうような話をアタクシがしているわけではなくて、それはそれで大事な話なんですが、超豪華執筆陣の皆様におかれましてもいろいろと計測誤差があるんじゃなかろうかしかもなかなか分かりにくい、という物価指数について、特定数値を絶対視する思想ってのはアカンヤロというお話な訳ですな。
・個別コンポーネントに関する考察は一つ一つ興味深いと思うので読んで味噌(ここでは帰属家賃をご紹介)
まあちなみに見出しで言えば『3.計測誤差を巡る歴史的経緯と最近の流れ 』、『4.計測誤差に対する処方と最近の状況
』あたりから当たっていって読んでいくと興味がわきやすいんじゃないかと思いますが、この辺が財価格の話になりますので、個別財に関する話があって読んでて読みやすい(計算式とかを読みだすとアタクシの脳みそが溶解するのでその辺はかっ飛ばす)です。
でもって次の『5.残された課題と新たな新たな課題』のところをネタにするのですが、
『ボスキン・レポート公表後に行われた研究蓄積、各国での指数改善の試みや経済環境の変化等を踏まえると、同レポートで提起された論点についてみる限り、各国間やバイアスの種類ごとに違いはあるものの、計測誤差は、全体的に縮小しているとみられる。』
『もっとも、そのことは、現時点において CPI と COLI が一致していることを意味しない。本節では、「残された課題」として、まず、幾つかのサービス価格における計測誤差の議論を紹介する。次に、「新たな課題」として、ボスキン・レポート公表時点では存在しなかった電子商取引(E
コマース)等、新たな商流の含意に関する議論を紹介する。』
ということでサービス価格ですが、『(1)サービス価格の価格調査や品質調整』という小見出しがありまして、
『サービスの価格調査における論点として、調査のカバレッジや、品質調整の問題というサービスの特性に由来する難しさと、デジタル化の流れがサービスにシフトしているという論点が存在すると考えられる。』
ほう。
『前者について、より具体的には、顧客の多様な選好を反映して様々な内容・条件で提供されること
38、サービス提供者の技量等、可視化できない要因によって品質が変わることが挙げられる。こうした特性は、調査すべきサービスの種類・内容の特定やヘドニック法等の品質調整法の適用を難しくすると考えられる。』
『また、後者について、財のサービス化というような経済構造の変化は、既存の手法を用いた品質調整や価格調査が困難化する契機となると考えられる。』
からの、
『本項では、まず、サービスのうち、ウエイトや寄与度の大きさを軸に、「家賃等」、「情報通信サービス」、「医療関連サービス」について、最近の議論を紹介する。次に、デジタル分野におけるサービス価格の計測の試みを紹介する。』
ということで家賃キタコレを本日はネタに、というか単にご紹介するだけですが、
『(持家コスト 39)
図表12はCPIのバスケットを示している。持家コスト(Owner Occupied Housing
Cost)を含む家賃等は、家計の支出に占める割合が日本では 2 割、米国では 3
割であり(持ち家部分では、それぞれ 16%と 25%)、持家から得られる効用は、家計が消費から得る種々の効用の大きな部分を構成すると考えられる。このため、一般物価統計の集計対象において、持家が含まれるべきとの考え方は多いものの、現時点においては、ECB
の物価目標である HICP 等、持家コストが本指数から除外されているケースもある。』
『計測方法についても、実際に取引されておらず価格が直接観察できないこともあり、国際的なコンセンサスがない、』
ということで、
『持家コストの算出方法について、IMF et al. [2020] にもとづいて整理すると、@「使用アプローチ(use
approach)」、A「支払いアプローチ(payments approach)」、B「取得アプローチ(acquisitions
approach)」、に大別される(図表 13)。3 つのアプローチは、異なる計測思想に立脚しており、それぞれ、家計が持家と同等のサービスを享受する際に必要なコストの変化、持家に係る負債の返済額の変化、住宅の取得時や保守に係るコストの変化、を捉える。』
で、日本の帰属家賃に関しては
『日米英等が採用する「近傍家賃法(帰属家賃)」は、使用アプローチに分類され、家計が持家から享受するサービスの価格を、類似の住宅の市場価格(貸家の家賃)で推計する計測方法である。家賃データを使用する必要があるため、十分な厚みや透明性を持つ貸家市場の存在等、採用のための必要条件はあるものの、比較的多くの国で採用されている
40』
だそうです。でまあその途中の話は割愛しまして、帰属家賃法を使った場合にどうなっているのか、という話ですけど、本文32ページの途中からこの話があります。
『近傍家賃法を採用する場合、家賃の品質決定要因が数多く存在し、それらの組み合わせも複雑であるため、品質調整が容易ではない。』
ほうほう。
『もっとも、日本では、家賃の品質調整に関する研究の蓄積が進んでおり、例えば、総務省・統計委員会における問題提起に対して、尾中
[2022] ・総務省 [2021a] は、「住宅・土地統計調査」の借家世帯の調査票のデータを用いた分析を行っている。その結果、賃貸住宅の品質変化率は、木造住宅が年率−0.8〜0.9%、非木造住宅が−0.7%と推定され、いずれも、経年劣化方向だと識別されている。』
『これらの値を CPI の標本分布にあてはめると、品質調整後の民営家賃指数の前年比は品質調整前と比べて、木造が+0.8%ポイント、非木造が+0.7%ポイント、上振れることに相当する(総合指数への寄与度でみると、+0.1%ポイント程度)。』
ほっほー。
『限界家賃との乖離に由来する下方バイアスを指摘する研究もある(吉田,2023)。』
ということで、
『日本の CPI では、現在、民間家賃の「平均値」をもとに推計されているが、持家の帰属家賃は、概念上は、持家の機会費用、すなわち「現在、住んでいる持家を、新規に賃貸市場に貸し出した場合の賃料」であり、継続家賃ではなく、新たに賃貸借される物件にかかる家賃である「限界家賃」に連動させる方が適当と考えられる。』
そらそうだ。
『吉田 [2023] は、不動産・住宅情報サイトに掲載された賃貸・売買物件の月次データ(賃料・価格、面積、立地、築年数等を含む)に対して、傾向スコア・マッチング法とヘドニック法を用いることで、経年減価等を調整した品質調整済・限界家賃指数を推計し、限界家賃指数よりも
CPI の帰属家賃指数の方が年率でみて約 1.3%ポイント低めに推計されていること、そのうち約
1%ポイントが経年減価により説明されることを報告している。』
へーへーへーという事ですが、しかし結構でかい家賃に関してこういう話があるのに2%絶対視というのも違くねって感じになりますわな、なお本文の続きは米国の話もあって、
『米国においては、ボスキン・レポート時に、リフォーム等と経年劣化に伴う品質調整は既に行われていたが、近年、異なる課題が提起されている。具体的には、米国の家賃調査法では、同一の賃借人に対して半年に一度家賃調査を行い、各月の賃料を加重平均し、2
時点間(半年間)の伸び率を月次換算している。この手法の利点として、同一の賃借人への調査であるため、貸家の特性が変化しないという点がある一方で、2
時点で継続調査できないサンプルが調査対象から外れるという選択バイアス(selection
bias)が生じるという指摘である(吉田, 2023)。すなわち、継続的に協力的な賃借人にサンプルが偏るため、新規家賃よりも継続家賃の構成比が増加する傾向があるとされる
46。 』
なんかこう奥が深いので、「ザ・物価」の方はいろいろと研究を重ねていただきたいのですが、やっぱりこういうのを見ますと物価目標の数値はあくまでも概念としての話であって、1.7%だから未達だとか、そういう話ではないんじゃなかろうか、と思っていしまいますよねえというのが結論ですが、各コンポーネントの話、一つ一つ興味深い(まあアタクシの知能でちゃんと理解できているかというとかなり怪しいのだが)のでお勧めはお勧めですわよ。
2024/05/27
〇折角日銀様が面白ペーパーをだしているのだから鑑賞しない手はありませんな
ということで続きですけど今回は調査統計局様のお出しになられたスライドショーに軽くツッコミを入れて見たい。
https://www.boj.or.jp/mopo/outline/bpreview/data/bpr240405a1.pdf
過去25年間のわが国経済・物価情勢
「金融政策の多角的レビュー」に関するワークショップ(第2回)
―― 第1セッション 経済・物価情勢 ――
2024年5月21日
日本銀行 調査統計局
・そもそも論として「なんでこうなったのか」の深掘りが無いのはダメだろ(再掲)
3枚目のスライドが『発表の構成:各時期のポイント』って奴ですが、こちらで過去の期間を
デフレ期(1990年代から2010年代初めまで)
低インフレ期(2013年から20年まで)
高インフレ期(2021年から)
に分けているのですが、1990年代って初頭の時期はまだデフレじゃなかった訳でして、体感的にはアジア通貨危機から日本の金融危機パート1の時期だし、以下のスライドに出て来る各種マクロ指標もそうなんですけど、1990年代後半に日本経済に「何か」が起こってデフレ低インフレの流れになった訳でして、その時の原因が何だったのか(やっぱ「その前」のマクロ政策における緩和のやり過ぎによる過剰レバレッジの蓄積の結果として生じたバブル崩壊となるんじゃないかと思いますけど)というのをきちんと整理しないと、結局また同じことを繰り返しかねない訳で、そっちの深掘りをした方がよっぽど為になると思います。
というのは先日申し上げた通りですがさらにこのスライドにはツッコミどころが満載。
・QQEが物価を押し上げたんだったら何でその政策を10年以上続けてたんでちゅかねえ
スライド3枚目の2ポツ。
『・低インフレ期(2013年から20年まで)
QQEの導入が景気回復や物価押上げにつながったが、長期低迷からの完全な脱却には至らず、物価・賃金が上がりにくいことを前提とした慣行や考え方が根強く残るもとで、2%の「物価安定の目標」は実現せず。』
>QQEの導入が景気回復や物価押上げにつながったが
>QQEの導入が景気回復や物価押上げにつながったが
>QQEの導入が景気回復や物価押上げにつながったが
もうね、アホかと馬鹿かと。
9枚目のスライドに飛びますと、そこには『2010年代の低インフレを巡る議論』ってのがあるんですが、そこでも何の断りもなく、
『・ QQEは物価押上げに成功、しかし2%には届かず
適合的なインフレ予想の形成メカニズム
─ QQE導入後の原油価格下落などを受けてインフレ予想も弱含み』
とか寝言を書いているのですが、決め打ちにも程がある訳で、QQE導入の時って消費増税が後に控えていましてそれに伴う財政支出がその前からあったこと、それから円安が進行(まあQQEのお蔭で円安が進行した、と言えばそういうことですけど)したことなど他の背景もあるのに何ちゅう決め打ちをするのかと小一時間問い詰めたいのと、こういうのって時代が進んでいくとこういう恣意的お手盛り分析であっても過去の記憶が皆さんドンドン飛んでってしまうので、日銀調査統計局様が作成したものなので、という権威付けによって勝手に事実になってしまって、将来同じような事が起きた時にまた牛の涎のように垂れ流し金融緩和一本足打法とか始めるという失敗をぶちかますことになりかねないのでマジでこういうイカサマ決め打ちするの勘弁してほしいんですよね。これが企画局だとああまた例のお手盛りですねとなるんですけど調査統計局たるものがこんな決め打ち出していいんですかねえちょっとOBの皆さんのご意見を聴きたくなりますわwwwwwww
同じお話になりますが、スライド10枚目には『2010年代の低成長を巡る議論』ってのがあるのですが、最初のポチで、
『・QQEは景気拡大に貢献、しかし潜在成長率は低迷
高圧経済による供給面への履歴効果は不十分?
資源配分の歪みを通じた副作用?』
>QQEは景気拡大に貢献
>QQEは景気拡大に貢献
>QQEは景気拡大に貢献
こちらもまたさっきと同じ決め打ちですよね、まあ以下同文なので以下は割愛しますが。
・輸入物価上昇が「好循環」ですかそうですかそうですか
スライド3に戻りまして3ポツ目
『・高インフレ期(2021年から)
コロナ後の輸入物価上昇を契機に、賃金と物価の好循環が強まり、「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現が見通せる状況に。この間、@国際経済環境、A労働市場、B企業の価格設定行動などに変化の兆し。』
>コロナ後の輸入物価上昇を契機に、賃金と物価の好循環が強まり
>コロナ後の輸入物価上昇を契機に、賃金と物価の好循環が強まり
>コロナ後の輸入物価上昇を契機に、賃金と物価の好循環が強まり
えーっとすいません、何で輸入物価上昇が「好循環」になるんですか幾らなんでも書き方というのがあるんじゃないでしょうか・・・・・・・・・・
スライド8に変態仮面ブラード先生の複数機構論の話(なんかQQEで自然利子率の引き上げだのインスレ予想の引き上げだのという辺りがインチキ臭くて、ブラードの複数均衡論ってのは低インフレを放置しているとゼロインフレ均衡に嵌ってしまうからQQE2が必要だって話をするための物件なので何か微妙に微妙な説明なんですがその辺はパスします)をしているんですが、外生的ショックによってとりあえず物価が上がったので一旦均衡からズレた、みたいな話をするならまだしも(なおその場合はなぜ2013-2014年との違いは何なのかというのを深掘りする必要があるんでネーノ)、いきなり何の断りもなく「輸入物価上昇で好循環」は説明が乱暴にも程があると思うんですがどうでしょう。
・相関関係をそのまま因果関係にしてしまうのは置物症候群に罹患している可能性があります
あと腰砕けるのは最後の方のスライド24なんですよね。
『インフレ予想と成長期待・設備投資』ってお題なんですけど。
『・ 日本では90年代以降、中長期のインフレ予想と成長期待が連動していたが(他の先進国では同様の関係はみられていない)、QQE導入後はインフレ予想がやや上方に乖離。今後も乖離は続くか?
・ 企業の物価見通しと設備投資計画の関係をみると、緩やかな物価上昇を見込む企業は設備投資計画を増加させる傾向(大幅な物価上昇や物価下落を見込む企業は設備投資計画を減少させる傾向)。』
なんじゃこりゃという話でして、これはインフレ予想が上がったから設備投資を増加させているのではなくて、単純に景気拡大あるいは自社製品の売り上げ拡大を見込んでいるから設備投資を増加させているだけの話で、つまりインフレ予想が上がるから設備投資が増える、みたいな話でもなんでもないだろいい加減にしろと思う訳ですが、このスライドの表題、『インフレ予想と成長期待・設備投資』ってなっていて、いかにも「インフレ予想が2%でアンカーされると成長期待や設備投資が盛り上がります」という置物リフレ理論であらされるところの「インフレ予想さえ上げれば世の中バラ色」というハッピー置物ムーブが伝染していると思われますし、どこかの三百代言部局なら兎も角、調査統計局様とあろうものがこんな置物理論ばりの説明スライド作るなよと思いました(あくまでも個人の感想です)。
・・・・・・ということで、まあ何ちゅうかこのツッコミどころという感じなのですが、まあこの調子で多角化レビューやってるのを今日からの国際コンファランスで堂々と公表するのかよ大丈夫かと思いますし、しかも公表する親玉が日本のマクロ経済・金融論においては第一人者であらされるところの植田和男大先生、というのがもうねという所ではございますがどうなることやら。
2024/05/24
〇そういや来週は金研国際コンファランスですね
https://www.imes.boj.or.jp/conference.html
『本年の国際コンファランスは「物価変動と金融政策の課題 -- 教訓と展望 --」と題して、5月27日、28日に開催いたします。詳細はプログラムをご覧ください。』
お品書きはこちら
https://www.imes.boj.or.jp/en/conference/2024confsppa.html
2024 BOJ-IMES Conference
Price Dynamics and Monetary Policy Challenges
-- Lessons Learned and Going Forward --
May 27 - 28, 2024
Institute for Monetary and Economic Studies, Bank of Japan
- Preliminary Program (subject to change) -
月曜に
9:00 Opening Remarks
Speaker:
Kazuo Ueda, Bank of Japan
11:00
Keynote Speech I: Price Dynamics in Japan over the Past 25 Years
Chairperson: Shin-ichi Fukuda, The University of Tokyo
Speaker: Shinichi Uchida, Bank of Japan
ってあるので、植田総裁と内田副総裁の講演が予定されているのですが、まあ内田さんのこの物件ってまさに火曜日の多角的レビューでやってるネタなので、なんですかその使いまわしみたいなのが出てくるんじゃネーノと予想してしまうのですが、それはそうとこの金研コンファランスの日本サイドのメンバー見たらまさに火曜日の多角的レビューのワークショップの人たちじゃんという感じでして、なんちゅうかこの多角的レビューがすっかり政策に結びつかない植田総裁の趣味の場になってきましたなという感じ(なんか直近でもホイホイとスタッフペーパーでてるんですよね)ですな。
まあ何か面白いことでも言っていただけるとよいのですが、あんまり期待しませんし、それよりも多角的レビューのポンチ絵がいろいろとアレではないかという中であれに沿って出すの大丈夫かよと思ってしまいますが・・・・・・
〇多角的レビューのスタッフ謹製スライドを見ながらいろいろと突っ込んでみる企画
https://www.boj.or.jp/mopo/outline/bpreview/bpr240405a.htm
「金融政策の多角的レビュー」に関するワークショップ
第2回「過去25年間の経済・物価情勢と金融政策」
どうでもいいんですがこれ更新したのですからページの日付がバックデートってのも微妙に微妙ですよね。
第1セッションも第2セッションもなかなかのツッコミどころ満載なのですが、まあ政策絡みの第2セッションは実にツッコミどころが多いのでそっちのスライドから参りましょう。
https://www.boj.or.jp/mopo/outline/bpreview/data/bpr240405a2.pdf
非伝統的金融政策とインフレ予想
「金融政策の多角的レビュー」に関するワークショップ(第2回)
―― 第2セッション 金融政策 ――
2024年5月21日
日本銀行 企画局
まあだいたい企画局謹製という時点で結論先にありき自己正当化先にありきの香りがプンプンする、という物件ですが、
・のっけから雑なまとめキタコレ
テーマが2個あるのですが、前半がスライド3にあるように『1.非伝統的金融政策とインフレ予想』なのですけど、このスライド、4ページののっけからこれなんですよね
『非伝統的金融政策の効果の波及経路』ってのがスライド4なのですが、ここでいきなり「非伝統的金融政策」を一つにまとめて説明していまして、いやお前非伝統的政策ってフォワードガイダンスによる下限政策金利への長期的コミットメントからはじまってLSAPあり(しかも国債買入以外のリスク性資産の買入もあり)マイナス金利ありYCCあり、その間にマネタリーベースにフォーカスした政策あり、といろんなのがあるのに全部まとめて一つにするの乱暴だろ、ということでもう最初の時点でイカサマ感が満載な訳ですなこれがまた。
でまあその政策の効果に関しては第1セッションの調査統計局が出しているスライドの方にああでもないこうでもないと書いているのですが、こっちは今日は時間が多分足りなくなると思うので割愛しますが、他のファクターの話をかなり無視しして堂々と「QQEが物価を押し上げて景気拡大に貢献」と決め打ちしていまして、いやお前物価に関しては為替ファクターがあったし消費増税に伴う便乗値上げもあったし、景気の方にもつながるけど財政出しただろ、ってなもんで、その辺を全部っかっ飛ばしてQQEで物価と景気が押し上げられた、という置物一派みたいな糞分析をしているんですよねこれがまたwwwww
まあしかしこのスライドショーの面白ポイントは後半の『2.緩やかなインフレの経済的意味』でして、これがとにかく笑えるんですよね。
・植田さんの昨年末経団連講演での怪しさ満点の説明が祟っておられるようで何よりですなwwwwwwwwwww
一昨日も申し上げましたが、昨年末の経団連の講演で、一般的な経済学の考え方からしたらおかしくないですかねえというような説明をしておったのを、これまたおあつらえ向きのようにかつて宮尾先生(その後審議委員)とスタッフ(その後企画局長や金融機構局長を歴任中)と書いたペーパーを日銀が出しているのでそれを引っ張って確認したわけですけれども。
でまあ植田さんの講演で言ってたのが「インフレの方が価格改定がしやすい」「インフレの方が資源配分が効率的になる」という話でしたが、それを一生懸命正当化しようとしていまして、スライド30の「まとめ」の3ポツで
『・正の一般物価インフレ率のもとで、賃金・物価が緩やかに上昇する世界では、金利の実効下限制約に直面するリスクが低下し、金融政策の対応余地が拡大すると考えられる。』
ってのはまあそうですねという話です
・・・・とは言いましてもこの点に関してだって「金融政策の対応余地のため」という観点がどれだけ重要なのか、という問題が大ありであって、社会厚生上望ましいインフレ率に対して「金融政策のため」という理由でそれよりも高いインフレ率を望ましいとするのは金融政策の目的(社会厚生の最適化)から見たら本末転倒にならんのか、という重大な論点が残るし、実は今回のスライドを見ると2%が正しいいうような結論にならないだろってのが散見されます。
『また、近年の研究では、正の一般物価インフレ率を実現することが、賃金・価格のシグナリング機能を高め、資源配分の効率化に繋がる可能性があること、ひいては、生産性に対して好影響をもたらしうることも指摘されている。』
ということですが、もともと言われていた理屈の方が普通にロバストなのに対して近年の研究で、ってぶっこんでいるのもいやお前それロバストなのかよという話なのでして、これを堂々と言うのは流石に図々しくないかと思うのですが、まあ昨年末の面白講演の尻ぬぐいなのですよね。
・インフレの方が新陳代謝が進んで資源配分の効率化につながるんだったらマイナス金利とか超愚策という話になりますがwwwww
今回のこの紙芝居で一番アタクシが腰を抜かした、というかアタクシ程度の門前小僧というか門前にも立てない小僧ですら腰を抜かしたのがスライド27です。
『物価変動と資源配分の効率性に関する研究』って見出しなんですけどね。
『● このほか、緩やかな正の一般物価インフレ率のもとで、企業の新陳代謝や効率的な研究開発投資が促進される可能性を指摘した研究もみられる。』
・・・・・・・・(゚д゚)
でまあその先行研究の論旨をご紹介しているのが『先行研究での指摘』という箱ですが、
『Santro and Viviano [2022]
■生産性が高くマークアップ率(マージン率)の大きな企業は、コスト吸収余力が大きいため、コスト増をあまり価格転嫁せず、価格競争力を維持しやすい。
■一般物価の緩やかな上昇は、価格転嫁の違いを通じて、生産性の高い企業への需要シフトを促進するため、経済全体の資源配分の効率化に繋がる。
Miyakawa et al. [2022]
■一般物価が上昇し価格改定コストの相対的な負担が高まると、そうした価格改定コストを十分に吸収できる高付加価値商品を開発できる企業が、そうでない企業に比べて大きな研究開発投資を行うようになり、市場シェアを拡大する。■こうした資源再配分効果が十分強く働くと、実質成長と経済厚生が改善する。
Bilbiie et al. [2014]
■参入企業が過剰となっている市場においては、一般物価が上昇してコストが増加すると、マークアップの圧縮を通じて企業の新陳代謝が促され、資源配分の歪みが是正される可能性がある。』
・・・・・いやあのすいません、これって要するに「物価上昇に耐えられなくなった企業が脱落することによって新陳代謝が進む」っていうゴリゴリのシバキ理論ですよね。
いやまあゴリゴリのシバキ理論をベースにして物価の上昇はよいこと、という説明するのでしたら、あんたらなんで散々っぱら金利を下げまくることをしてたんだよという話で、これが正しいスタンスであるならば、「金利がある程度ある状態の方が新陳代謝が促進されて資源配分の効率化につながる」っていう話もまた正しいってことになるんですけど、望ましいインフレ率の話をするときはゴリゴリのシバキ論を言っておいて、実際にやっている金融政策が世界にも例をみないガバガバ緩和政策をやってる、っていうのはどういうことなのかと小一時間問い詰めたいい訳でして、これは二枚舌とかダブルスタンダードとかご都合主義と言われても文句の言えないご説明になっていると思うんですが大丈夫ですかねえこの調子で金研国際コンファランスに突っ込んでいってwwwwwww
・実質賃金は下がる方が良いという説明もぶっこまれております
スライド28に『賃金の硬直化と労働市場の効率性』ってのがあるんですがこれまたお洒落でしてですね。
『● わが国では、インフレ率が低下するもとで、賃金が硬直的となる傾向がみられた。』
『● 賃金の硬直化は、生産性に応じた賃金設定を困難にする。高い一般物価インフレ率のもとで、賃金設定の柔軟性を確保することが、賃金のシグナリング機能を高め、資源配分を効率化し、生産性の上昇に繋がるとの指摘もみられる。』
これ要するに「一般物価が上がると賃金の調整がしやすい」って話ですから、つまりは実質賃金が下がった方が良いって説明になっているわけですな。
まあそれ自体はそれこそ黒田緩和始まる頃にハマコー大先生も「賃金は上がらない方が良い」とかダイヤモンドで発言(やばいと思ったのか最近は有料会員でしか読めないアーカイブになってしまいましたがw)していたように、まあその主張は必ずしも間違いという話ではないのですが、日銀が言ってる「賃金と物価の好循環」とか政府というか官邸の言ってる「物価上昇に負けない賃金上昇」とか言ってるのとずいぶんと話が違いますけど大丈夫なんですか、ってなお話でしてこれもまた笑ってしまいました。
・・・・・・ほかにもツッコミどころがあるのですが気が付いたら時間がなくなったので本日はこの辺で勘弁してちょ。
2024/05/22
〇多角的レビューのスタッフ謹製プレゼンが登場の巻なので適当に突っ込んでみる
昨日のお品書きですが、昨日のどの時間かに資料へのリンクがしらっと貼られていますね。
https://www.boj.or.jp/mopo/outline/bpreview/bpr240405a.htm
「金融政策の多角的レビュー」に関するワークショップ
第2回「過去25年間の経済・物価情勢と金融政策」
2024年4月5日
日本銀行
日時
2024年5月21日(火)
場所
日本銀行本店9階大会議室A
ということですが、最初の挨拶というのが氷見野副総裁からあったようですがそういうのは出てくれない(ちなみに前回内田副総裁が最初の挨拶してましたがその時の資料もありませんです悪しからず)のですが、資料の方が出ておられます。
ついでに申し上げますと、第1回のワークショップ資料だと後日になって「発表の模様」というのが動画で(日銀のよつべチャンネルで)アップされると思います。
でまあ第1セッションですが。
https://www.boj.or.jp/mopo/outline/bpreview/data/bpr240405a1.pdf
過去25年間のわが国経済・物価情勢
「金融政策の多角的レビュー」に関するワークショップ(第2回)
―― 第1セッション 経済・物価情勢 ――
2024年5月21日
日本銀行 調査統計局
・25年レビューと銘打っているのですが冷静に考えますと・・・・・・・・・・・
今回の物件、25年レビューとなっていますけれども、基本的に元々のコンセプトとして「金融政策が実質ゼロ金利制約に突入した時期」ということですので、95年に公定歩合が0.5%になって(1995/09/08から適用)98年にコール誘導目標が0.25%(ちなみにこの時は公定歩合は据え置き、1998/09/09から適用)になった時期を念頭に置いていると思うのですよね。
でもってつらつらこの解説を見ますとですね、
2枚目の『経済成長率とインフレ率』ってのでライン引いてて、3枚目に『発表の構成:各時期のポイント』ってのがあるんですけど、そこを見ますと・・・・・・・
『・ デフレ期(1990年代から2010年代初めまで)
1990年代に需要・供給両面の様々な要因から経済低迷と緩やかなデフレに陥り、金融政策は名目金利の下限制約に直面。この間、デフレスパイラルは回避されたが、物価・賃金が上がりにくいことを前提とした慣行や考え方が定着し、その後も世界金融危機を経て、長期低迷が続いた。』
『・ 低インフレ期(2013年から20年まで)
QQEの導入が景気回復や物価押上げにつながったが、長期低迷からの完全な脱却には至らず、物価・賃金が上がりにくいことを前提とした慣行や考え方が根強く残るもとで、2%の「物価安定の目標」は実現せず。』
『・ 高インフレ期(2021年から)
コロナ後の輸入物価上昇を契機に、賃金と物価の好循環が強まり、「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現が見通せる状況に。この間、@国際経済環境、A労働市場、B企業の価格設定行動などに変化の兆し。』
ってな分け方をしているんですよね。でもってその先に、
4枚目『経済情勢に関する各種指標』
5枚目『物価情勢に関する各種指標』
というのがあって、ちょっと先の方に行きますと
14枚目『国際経済環境:日本経済の国際競争力』
16枚目『労働市場:高齢化と労働供給面の変化』
17枚目『労働市場:二重構造・正社員雇用の流動化』
18枚目『労働市場:生産性・実質賃金』
というのが1980年辺りだったり1990年辺りだったり微妙にまちまちですが、まあ長期時系列で出ている訳ですけれども、これ見ますとシロートのワイでも思う(というかまあ同時代生きてましたから思うのですが)んですけど、1990年台後半の前後で日本経済って大きく変わっている(そういう言い方が適切じゃないと思うので「構造変化」とは書かないですよー)のでありますよ。
つまりですね、上記プレゼンで定義されている「低インフレ期」「高インフレ期」というお話もそりゃまあレビューとしてするのは結構なんですが、より本質的な問題は90年台に日本経済に起きたことをもっと深耕して研究することだし、その際に本来何をすべきだったのか、というのをレビューする、というのが重要でして、今次局面においてマイルドインフレの経済レジームに移行できたとしても、将来においてまた同じような事をやらかさないためには何をどうすべきか、ってのを考えたら「そもそもの原因」における時期のレビューをした方が有益なんじゃないかと思いますし、大体からして90年台初頭とかだとワイ位のジジイが小僧だった時代ということですからして、それ即ち当時の経験者(と言ってもあたしの当時はどぶ板踏んで営業してる小僧ではありますので経験というのも烏滸がましいですけどね)がもう直ぐジジババという事になると、なんか変に数字だけひねくり回してしょうもない分析しかできなくなる前にレビューした方がエエンデネエノ、と思ってしまったのですが年寄りのノスタルジーですかそうですか。
・メニューコストがどうのこうののコーナーワロタ
20枚目に『価格設定:メニューコストと屈折需要曲線』ってのがありますな。
曰く、
『・消費者物価のミクロデータを用いて、企業の利潤最大化モデルを前提に、価格変更を妨げうる「メニューコスト」と「需要曲線の屈折度合い」を推計すると、近年はこれらが弱まっていることが示唆された。
・ メニューコストが90年代後半から増大しなかったと仮定した場合の反実仮想シミュレーションによると、インフレ率は最大で+0.8%ポイント程度(QQE後)押し上げられていた可能性。』
これ昨年12月に植田総裁が年末の経団連講演で行った講演の中で「メニューコスト」と「価格のシグナリング機能」に関する説明で、伝統的な考え方からすると結構な珍説の部類に該当する説明をしてますよね、ってツッコミを門前小僧のワシが図々しくも行った(https://doramemon7743.sakura.ne.jp/doramemon2312.html#231226)訳ですが、やっぱりあの説明って伝統的な考え方らしたらおかしくねえかというツッコミがちゃんとした方面から飛んできたんでしょうかね、まあそれに対するカウンターアーギュメントみたいな話をしておりまして笑いました。
ついでに申し上げますと、次の企画局スタッフ謹製のプレゼンの方で「価格のシグナリング機能」に関するカウンターアーギュメントをしていまして、それはプレゼンの24枚目『価格硬直性下の望ましい物価変動―従来の議論―』以下にあって、結論が『物価変動と資源配分の効率性に関する研究』という所にあるのですが、いやそれつい直近の研究並べてるのまあカウンターとしては言いたいことは分かるんだけど、本当にロバストな議論なのかとツッコミを入れたくなるお話がありましたが、その話はまた後程(って今日時間が足りないかも説はある)。
・インフレ期待の記載は言いたい意味は分かるがチェリーピッキングと言われませんかねえ
24枚目に『インフレ予想と成長期待・設備投資』ってのがあるんですけどね、
『。日本では90年代以降、中長期のインフレ予想と成長期待が連動していたが(他の先進国では同様の関係はみられていない)、QQE導入後はインフレ予想がやや上方に乖離。今後も乖離は続くか?
・ 企業の物価見通しと設備投資計画の関係をみると、緩やかな物価上昇を見込む企業は設備投資計画を増加させる傾向(大幅な物価上昇や物価下落を見込む企業は設備投資計画を減少させる傾向)。』
ってのがあって、左下に『インフレ予想と成長期待』ってグラフがあって、企業のインフレ期待と成長期待、ということで短観データ使って推移を出していまして、企業行動だから企業のインフレ期待と成長期待を使ってる、と言いたいのは分かるのですが、それを言い出すとつい先日帰化局局スタッフ様が出していた「インフレ期待の精緻化」の話と整合性取れなくね、と思うのよね。
しかもこれ、企業のインフレ期待が2%行ってる状態なので、お前ら政策運営の時にはインフレ期待が2%行ってないって話を堂々とするのに、何でこういう時だけ企業の予想インフレが2%に載ってる絵を出してきちゃうのっておもっちゃうわけで、まあ元々その辺を峻別して説明してくれているのならば良いのですが、何せ今の植田日銀、というか黒田末期からの日銀って説明が前後で全然整合性が無い(その象徴が展望レポートハイライトのポンチ絵推移であることは言うまでもありません)ので、こういうのを見てもこちとら脊髄反射で「今の政策評価みたいな時には2%達成みたいなのを出してきて、実際の緩和政策調整においては2%行ってないとか使い分けするのインチキだろ」と思ってしまう訳でございまして、まあ何かこれ作ってる調査統計局に八つ当たりしてるみたいになってきましたが(笑)、なんちゅうかこういうの二枚舌っぽく見えてしまうのは植田日銀が徳を修めていない説明ばっかりするのが悪いという事でwwwwwwww
でまあ後半の紙芝居ですけど・・・・・・・・・・・・・
https://www.boj.or.jp/mopo/outline/bpreview/data/bpr240405a2.pdf
非伝統的金融政策とインフレ予想
「金融政策の多角的レビュー」に関するワークショップ(第2回)
―― 第2セッション 金融政策 ――
2024年5月21日
日本銀行 企画局
・書いてある分析は仰せ御尤もなのだが「そんなことは先に言え」「今の政策やってる意味あるのか」のオンパレードである
まあ何ですな、ちょっと時間が無くなって来たので明日続きをするんですけど、こちらのペーパーは書いてあることは仰せ御尤もな事が書いてあるんですけど、どっからどう見ても「俺のせいじゃないもんねー」って説明を延々としておりますのよこれがまた
2枚目のスライドが『問題意識』ってなっていまして、
『・金融政策の効果を検証する際には、インフレ予想の形成メカニズムに加えて、これまでの企業行動の特徴や、それがわが国の経済動向や賃金・物価形成に与えた影響について、分析を深めていくことが重要である。』
とあって、
『論点@ インフレ予想の変化など期待形成を通じた影響
・物価動向や金融政策の波及経路を考えるうえで、期待形成の議論は重要である。期待形成は、経済主体間で同調することで大きな効果が生まれる。
・ 非伝統的金融政策がインフレ予想の形成に与える影響について、さらなる分析が必要。』
『論点A 物価変動が企業行動を通じて経済動向に及ぼす影響
・賃金・物価が緩やかに上がる状況では、企業の価格設定に柔軟性が生まれることなどを背景に、企業行動に前向きな変化が生じる可能性がある。
・ デフレ下では、企業はコストカットへの誘因を強め、イノベーションを阻害していた可能性がある。賃金・価格の設定に柔軟性が生まれれば、資源配分の改善につながり得る。』
とか何とか書いてあるわけですよ。
でもってその第1パートの『1.非伝統的金融政策とインフレ予想』の結論が19枚目に『本節のまとめ』というスライドであるんですけど、
『・一方、金融緩和が続くもとで、足もとでは人手不足感が強まり、高めの賃上げが実現するなど、労働供給面に変化の兆しが窺われる。また、海外ショックを契機とした輸入価格の高騰などが「ビッグ・プッシュ」となり、様々な規範・慣習にも変化の兆しが生じている。』
・・・・・あのーすいません、つまり今次局面転換(と思しき現象)はただの外生ショックによるものと、労働市場構造(詳しくは明日また突っ込みますが)変化によるもので、金融緩和って別に直接要因じゃないじゃん、という話なんですけど、だったら2013年以降の馬鹿緩和を馬鹿みたいに拡大していかなくても良かったのではないか、寧ろ2年で2%行かなかった時点で「普通の金融緩和」に移行して粘り強く緩和を続けて状況変化を待った方が良かったのではないか、とツッコミを入れたくなる訳ですね、YCCとか馬鹿みたいなLSAP(ETF3倍とか明らかにやり過ぎ)とかマイナス金利政策とか、そんなことを延々と凶悪化させながら継続する必要があったのか、という事についてお前らなんか反省は無いのかと小一時間問い詰めたいと思う訳ですが、まあ続きは明日にでも。
2024/05/21
・多角的レビューシリーズとか言って今日出すのかと思ったら昨日でてきましたな
おやおやまあまあ
https://www.boj.or.jp/research/brp/rer/rerb240520.htm
地域経済報告―さくらレポート―(別冊シリーズ)
「1990年代半ば以降の企業行動等に関するアンケート調査」の集計結果について
2024年5月20日
日本銀行
本日は多角的レビューの第2回ワークショップとかいうのがあるのですが、まあ第1回がすでにお手盛り分析みたいなのが並んでいてナンジャソラというのは先般ネタにしたような気がしますが、そんなもんなのですし、ちょうど先日出てきていた「インフレ期待の測定」とかいう企画局スタッフ様謹製ペーパーでも家計のインフレ期待を集計するのに勝手に+5%超の数字を「極端な数字」と決めて+5%に丸めるなどといったお洒落なことをしておられる時点でまあどんなのが出てくるのかお察しというところではあります。
でもってそこで出すのかと思ったら昨日出してきたわけですが、まずはHTMLの紹介ページから。
『【要旨】
日本銀行では、「金融政策の多角的レビュー」の一環として、1990年代半ば以降の企業行動の特徴や、それがわが国の経済動向および賃金・物価形成に及ぼした影響について理解を深めることを目的に、幅広い業種・規模の国内の非金融法人企業(約2,500社)を対象としたアンケート調査を実施した。』
ほうほうそれでそれで?
『調査の結果から、わが国の設備投資や物価・賃金の停滞が長きにわたって続いた要因は、以下の4点にまとめられる。』
『第1に、バブル崩壊・金融危機後の長い調整や以降も続いた度重なる大規模なショック(リーマンショック等)の経験を経て、企業は、設備投資等による積極的なリスクテイクを抑制し、財務改善や将来に備えた現預金の確保を優先するようになった。』
『第2に、バブル崩壊・金融危機を受けて、消費者の低価格志向や取引先企業のコストカット姿勢が急速に強まる中で、競合他社との厳しい価格競争に直面した多くの企業でコストの価格転嫁が困難となった。』
『第3に、長らく賃金を抑制しても労働者を確保できたため、多くの企業が低価格を維持するために賃金を抑制するようになり、これが消費者の低価格志向を定着させる悪循環を招いた。』
『第4に、並行して進んだ少子高齢化も、成長期待の低下や社会保障負担の拡大などを通じて、設備投資や賃金を抑制する方向に働いた。』
ほうほうそうですかそうですか。
『現在においても、少子高齢化の悪影響やベア実施による固定費増加などを懸念する企業は多い。もっとも、多くの企業が、もはや賃金を抑制していると労働者を確保できない状況になっていると回答している。』
イイハナシダナー
『また、輸入物価上昇分の価格転嫁が成功したことなどを契機に、人件費の増加を販売価格に転嫁する動きも広がりつつある。』
イイハナシダナー
『物価と事業環境に関する設問では、業種・規模を問わず多くの企業が、物価と賃金がともに緩やかに上昇する状態のほうが、ほとんど変動しない状態よりも事業活動上好ましいと考えていることが明らかとなった。』
バランスの取れない上昇では困るんですがねえ。
『この間の日本銀行による金融緩和については、幅広い企業において、借入金利の低下やアベイラビリティの改善などを通じて、経営や前向きな投資の支えとなったことが確認された。』
とのことですが企業部門ってマクロ的にはキャッシュ余剰なんですよね。なんかこれ前向きな投資の支えになったとかいう都合の良い話は記載しているけどおかげでひたすら延命しています、みたいな話はまあどうせこのアンケート回答企業群は対象になるんかいな、てかそもそもこれ25年アンケートとかすると結局生存者バイアスが回答に入るんじゃなかろうかとふと思いました。
『一方、企業からは、自社が実感する金融緩和の副作用として、新陳代謝の停滞による人材確保難や価格競争激化などが指摘された。』
とあるのですが、昨日出ていた関連記事からお分かりのように・・・・・・・・
https://www.boj.or.jp/research/brp/rer/data/rerb240520a.pdf
地 域 経 済 報 告
── さくらレポート ──
(別冊シリーズ)
「1990 年代半ば以降の企業行動等に関するアンケート調査」
の集計結果について
―― 企業からみた過去 25 年間の経済・物価情勢と金融政策 ――
ちょっと読んでみますが、
『5.物価と事業環境 』という本文19ページ、PDFで21枚目のところをみますと、
『(2)物価と賃金の上昇が好ましいと考える理由』ってさっき紹介された回答の理由があるのですが、
『物価と賃金の緩やかな上昇が好ましいと答えた企業にその理由を伺うと(図表25)、「賃金の増加は家計の消費にプラスだから」、「価格転嫁が容易になるから」といった理由が特に多く選択されている。』
賃金が上がっても物価がそれ以上に上がってるんですが足元ではw
『このほかにも、「価格や賃金を調整しやすいから」、「コストカットが不要になるため前向きな投資などを行いやすいから」、(特に製造業では)「為替が安定するから」といった理由も比較的多くの企業が選択している。』
いやコストカットは不要にならんじゃろと思いますし、それよりも「為替が安定するから」って言われているのはさらにワロタとしか言いようが無いwww
『6.過去25年間の金融緩和に関する実感』ですけど、
『(1)金融緩和の自社への効果に関する実感』では
『過去25年間の金融緩和について、自社への効果の実感を企業に尋ねると(図表28)、1割程度の先が効果を実感していない、すなわち9割程度の先は金融緩和の効果を実感していると回答した。』
『具体的に実感された効果としては、業種・規模を問わず、「借入金利の低下」との回答が最も多く、次いで「融資姿勢の積極化」となっており、主に貸出チャネルを通じた効果が挙げられた。また、子細にみると、相対的に規模が小さい企業では「融資姿勢の積極化」がより実感されたことが確認された。この間、製造業大企業では、「為替相場の動向」を効果として挙げる先も多かった。』
まあそうでしょうね
『関連する企業の声をみると、借入金利の低下に代表される資金調達コストの低下について(図表29)、幅広い業種・規模から、企業経営を支えたとか、前向きな投資を後押しした、といった声が多く聞かれた。また、金融機関の融資姿勢の積極化といったアベイラビリティの改善についても(図表30)、同様の声が多く聞かれた。この点、相対的に規模が小さい企業からは、金融機関の伴走支援の拡大を効果として指摘する声が聞かれた。』
からの
『なお、大企業や製造業を中心に、2010年代前半の大幅な為替円高からの反転を念頭に、輸出競争力の改善や円ベースの海外収益の増加を評価する声が聞かれた(図表31)。中小企業や非製造業からも、為替円安によるインバウンド需要の増加を評価する声が聞かれた。』
円高是正の効果、は良いんですけどね・・・・・・
次が『(2)金融緩和の自社への副作用に関する実感 』ですけど、
『過去25年間の金融緩和について、次に、自社への副作用の実感を企業に尋ねると(図表32)、2割超の先が副作用を実感していないと回答し、7割強の先から、様々な金融緩和の副作用が指摘された。』
www
『具体的に実感された副作用としては、回答のばらつきは大きいものの、「企業の新陳代謝の停滞」や「金融機関の収益力の低下」が業種・規模を問わず多かった。また、「為替相場の動向」との回答が、業種別には製造業、規模別には大企業ほど多い結果となった。』
為替wwwwwww
『関連する企業の声をみると、金融緩和によって企業の新陳代謝が停滞したことで実感した悪影響として(図表33)、人材確保の難化や価格競争の激化を指摘する声が聞かれた。』
人材確保は知らんがなという感じですが
『なお、こうした新陳代謝停滞の背景については、金融緩和による低金利のほか、政府による金融支援等の影響を指摘する声が聞かれた。』
『この間、低金利によって収益拡大プレッシャーが減退したことが、自社の成長意欲の停滞に繋がったと振り返る声も聞かれた。』
ねー。
『また、金利低下による金融機関の収益力低下を介した悪影響としては(図表34)、金融機関が収益源の多様化を企図して手数料ビジネスを拡大させる中で、金融機関との関係の希薄化や手数料の上昇といった点が指摘された。』
ほうほうなるほど。
『このほか、為替市場を通じた副作用に関して(図表35)、近年の円安進行や変動の大きさを念頭に、原材料等のコスト上昇のほか、事業計画の策定や外国人労働者の採用への悪影響などを指摘する声が聞かれた。』
はい円安来ました。
でもって何気に素敵なのがこの次でして、
『(3)自由記入欄で寄せられたその他の意見
自由記入欄においては、前述の点以外にも、過去25年間の金融政策運営に関連して、自社への影響に限らない、様々な観点から企業の声が寄せられた(図表36)。』
ということで図表36があるのですが、なかなか面白い意見が両サイドあるので、一々引用しませんがまあ読んで味噌という感じではあります。
2024/05/17
〇予想インフレ(期待インフレ)を定量的かつ緻密に計測するというのが無理のある話なのだが
ということで先日のネタの続き。
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2024/data/rev24j05.pdf
多角的レビューシリーズ
期間構造や予測力からみたインフレ予想指標の有用性
企画局 長田充弘、中澤崇
・10年インフレ予想とかどうやって出しているのかと思えば
『インフレ予想指標の期間構造』というコーナーのマクラの部分にある家計のインフレ予想の出し方について水曜日はツッコミを入れた(インフレ予想で勝手にプラマイ5%オーバーを全部プラマイ5%に丸めてしまうなどの謎操作や、5択サーベイを数値化している計算のバックグラウンドが謎な点)訳ですが、その先の(インフレ予想の期間構造)という小見出しも何か微妙なものが見受けられます。
『図表5は、短期から長期にかけてのインフレ予想の期間構造をみたものである。』
『ただし、いずれの指標でも、特定の予測年限のみの値しか入手できず、その年限も指標間で揃っているわけではない。例えば、生活意識に関するアンケート調査では、「(1年前対比でみた)物価変化率の実感」、「今後1年間の物価変化率の予想」、「今後5年間の物価変化率の予想」についてのみしか質問項目はない。』
さいですな。
『そこで、本稿では、インフレ予想の期間構造が時間の経過につれて変化していくことを許容した時系列モデルを構築し、推計によって、入手できない予測年限の値を補間している7。』
ちょwwwwなんですかそのお手盛り感満載の推計は、と思ったらそういうツッコミが来るのを想定しているようで脚注がアホのように長いのは良い味を出しているw
『7 本稿では、米国についてインフレ予想の期間構造を推計している Aruoba [2016]に倣い、動学的ネルソン・シーゲルモデル(Dynamic
Nelson-Siegel model)を構築している。モデルの推計に用いる観測データとしては、家計の生活意識に関するアンケート調査(@量的質問・A質的質問)については、「実感、今後1年間、今後5年間」の値、企業のB短観(物価全般の見通し)については、「1年後、3年後、5年後」の値、専門家のCコンセンサス・フォーキャストについては、「2年先までの四半期予測および5年先までの暦年見通しと6〜10
年先平均値」、DQUICK 調査については、「今後1年間、1〜2年先、2〜10
年先」の値、Eインフレスワップについては「1年先、1年先4年、5年先5年」の値を、それぞれ用いている。』
『なお、専門家の短期予想にみられる消費税率の引き上げの影響については、一時的な特殊要因と考えられることから、推計結果に影響を与えないよう、その影響を除去した系列を作成したうえで、期間構造の推計に用いている。』
『Aruoba, S. B. [2016]: "Term Structures of Inflation Expectations
and Real Interest Rates," Federal Reserve Bank of Philadelphia Working
Paper 16-09/R.』
『わが国についてインフレ予想の期間構造を分析した研究としては以下がある。
Maruyama, T. and K. Suganuma [2020]: "Inflation Expectation Curve
in Japan," Japanese Journal of Monetary and Financial Economics, vol.
8,1-28.』
だそうですわよアタシャ無学なんでさっぱり分からんのですが、そもそも論としてインフレ期待ってのは(この前も書いたけど)経済主体の行動に現れるから重要なのであって、だったら一生懸命数値をこねくり回すよりも、経済主体の行動をアネクドートも含めた観察を行っていくことによって経済主体の行動の前提に変化があり(インフレ期待に何らかの変化あり)やなし(変化なし)やというのを見ることに労力を費やすべきなんじゃないですかねえとは思いますが。
『物価上昇率が直近ピークを付けた 2022/4Q 時点の期間構造をみると、いずれの経済主体のインフレ予想も、概ね物価上昇率の実績値を起点とし、先行きにかけて物価上昇率が低下していく姿となっている。』
って事なんですけど、それってそもそものモデルが「長期的には均衡水準になる」って前提を置いてるからそうなってるんじゃないの疑惑はどうも拭えん程度には性格が悪いアタクシ。
『各指標間で水準にばらつきはあるものの、物価上昇率の変化の方向については、多くの指標で同様の傾向を辿っており、家計や企業、専門家が、達観してみれば、先行きの物価の推移について似たような見方を共有していることが確認できる。』
達観ワロタ。
・インフレ予想指標を精緻化しようとしているのだがそれは政策運営において意味があるのかしら
でまあ以下『インフレ予想指標の予測力』ってのがあったあとに『インフレ予想の集計指標』というどう見ても如何にもな物が出て来るんですけどね、
『以上でみてきたように、インフレ予想に関する指標には、経済主体別・年限別に特徴があるが、いずれも一定の説明力があり、先行きの各主体の物価観を捉えるうえでは、様々な指標をみていくことが有用と考えられる。他方で、経済モデルなどを用いてインフレ予想の役割を分析していくうえでは、それらの情報を単一の指標に集約することも有用と考えられる。そこで、最後に、インフレ予想の期間構造や予測力に関する特徴を勘案した2つの方法を用いて、インフレ予想の集計指標を作成する。』
って言ってるんですがいやまあ確かにモデル回すために単一の指標が云々ってのはそりゃそうなのですけれども、それって実際の政策運営において何の意味があるのってツッコミを入れたい訳でございまして、なんかこれって学者大先生っぽいお話ではあるのですが、いやおまいらがインフレ予想を算出しようとするのは何のために算出しようとしているのか、と小一時間問い詰めたい訳で、モデルを美しく回すために出すんじゃなくて政策運営のために出すんだろってなもんで、これまさしくなんですけど、ペーパーの頭に「多角的レビューシリーズ」ってあることから、なんかハトハトチキンおじさんの趣味の世界に付き合わされてるんじゃネーノこのスタッフの皆さん、とか思うと同情の念に堪えない所でもありますな、というのは極めて偏った個人の妄想及び感想なので念のため申し添えます。
なおその後の計算に関してはシランガナにも程があるのでかっ飛ばして最後に。
・結局は総合判断になるんですけどまあ「多角化レビューシリーズ」ですからねえ
最後の込み合出しが『おわりに』である。
『本稿では、様々な経済主体の持つインフレ予想に関する指標について、期間構造や予測力の観点からみた特徴を整理した。』
おつかれちゃんでした。
『分析の結果を踏まえると、長い年限のインフレ予想指標を中心に、水準には大きめの上方バイアスがみられるものの、そのバイアスを調整すると、多くの指標が、先行きの物価上昇率に対して有意な予測力を持つことが確認された。』
と結論を入れながら、
『インフレ予想の形成メカニズムやその物価への影響は複雑であるため、モニタリング上は、様々な指標を併せてみていくことが重要である。そのうえで、各インフレ予想指標が有する情報を、統計的手法を用いて集約した合成指標を作成すると、このところインフレ予想は緩やかに上昇しており、基調的な物価上昇率が2%に向けて上昇していく確度も高まってきたことが示唆される。』
合成指標www
と来た後に結局最後にはですね、
『もとより、物価の基調的な動きを的確に把握していくうえでは、各種のインフレ予想指標に加えて、多様な観点から情報を吟味していく必要がある21。』
結局こうなのですよね、まあ何ちゅうかこれスタッフの皆様の「友蔵心の俳句」だという理解で宜しいのかしらw
『これらの点を念頭におきつつ、今後も、インフレ予想への理解を深めていくことが重要である。』
でもって脚注21ですが、
『21 今次局面における「物価の基調」の捉え方については、日本銀行・展望レポート(2024/4
月)の BOX4 を参照。本稿で紹介した人々のインフレ予想に着目する考え方のほか、物価統計を用いて算出される各種の基調的物価上昇率指標や、様々なモデルに基づいたトレンドインフレ率の推計といったアプローチを組み合わせながら、総合的に評価していくことが有用である。』
>総合的に評価していくことが有用である
>総合的に評価していくことが有用である
>総合的に評価していくことが有用である
・・・・・・・・・・・・・・(^^)
2024/05/16
〇ところで何ですかこのポンチ絵は客(??)をナメトンノカ
このポンチ絵を描いたのは誰だあ!!(ガラッ)と海原雄山が厨房に怒鳴り込むレベルの物件が案の定投下される辺り、日銀さんったらギャグのセンスがハイブローすぎて涙がちょちょ切れてしまいますわ。
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/highlight/ten202404.htm(今回4月分)
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/highlight/ten202401.htm(前回1月分)
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/highlight/ten202310.htm(昨年10月分)
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/highlight/ten202307.htm(昨年7月分)
まあアレです、別にアタクシが悪態つかなくったってこの4本を並べて見るだけで木戸銭返せと言いたくなる物件な訳でして、何と申しますかこう家族で楽しみに見に行ったプロ野球で贔屓チームがエラーと四死球で自滅しながら滅多打ち食らい、こっちの打つ方は手も足も出ずお目当ての看板選手はみな途中交代、みたいな悲しさを感じさせる(どういう例えだw)程度には客に失礼(誰が客やねんw)なものを出してきているんですがもう出すなよ恥ずかしいから。
なお過去分はこちらからリンクをたどれば見れますわ
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/highlight/index.htm
・相変わらず「金融面の後押し」とか緩和モード推しをしているのはナンナンデスカねえ
最初のポンチ絵は経済見通しなんですけどね。
『日本経済は成長を続ける
日本経済は、海外経済が緩やかに成長するもとで、金融面からの後押しなどもあって、潜在成長率を上回る成長を続けます。』(今回4月)
『日本経済は緩やかな回復を続ける
日本経済は、海外経済の回復の鈍さにより下押しされますが、消費の増加などに支えられて、緩やかな回復を続けていきます。』(前回1月)
展望レポートの鏡の部分(しか当駄文では比較してませんねすいません)で何故か今回入れられた「金融面からの後押し」という文言。これって鏡にあるように「緩和的な金融環境が経済を後押しする」という金融緩和アピールをしている文言でして、いやだからお前らどっちやねんというお話でして、金融緩和アピールならアピールでそれはそれで一つの考え方だから別にそうしたいならそうして頂いてもよろしくってよ、とは思うのですが、だったら円安になって泡吹いて輪番減額することはないですし、急に円安に対する警戒を総裁がケツに鞭でも打たれたのか急に喋りだすとかいうのも訳分らん。
ということでですね、この緩和アピール文言ってのマジで意味不明でして、政策のガイダンスもどきの方では「見通し通りに推移すれば政策金利の引き上げ」と言ってるのとと整合性が一読してわかりにくい(日銀の小理屈を勝手に代弁しますと「経済物価情勢が改善する中で緩和度合いが強くなった分はその分緩和度合いを調整するんです」ってなもんでしょうけどそんなの政策オタクにしか通じんわ)のはどうにかならんもんですかねえ全く。
でまあこの絵自体は前回と大差ないのですが、ご案内の通り1月以前のポンチ絵における「経済見通し」は段々絵柄が微妙になりながらも、ちゃんと今後の経済見通しの中における需要項目に相当する絵(旅行している人が居たり買い物している人が居たり)があったのですが、今のイラストって何の意味があるんだイラストになっておりますわな。
・物価のポンチ絵が酷すぎる
今回のポンチ絵、最大のナメトンノカイラストはこれですよねーーーーーーーー
『物価は来年度以降2%程度で推移する
消費者物価の前年比は、今年度に2%台後半となったあと、来年度・再来年度は概ね2%程度で推移します。この間、一時的な変動を取り除いた消費者物価の基調的な上昇率は、徐々に高まったあと、2%の「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移します。』(今回4月)
『物価のトレンドは2%目標に向けて徐々に高まる
消費者物価の基調的な上昇率は、2%の「物価安定の目標」に向けて徐々に高まっていきます。こうしたシナリオが実現する可能性は、引き続き、少しずつ高まっています。』(前回1月)
でですね、物価のイラストが突如のジャガーチェンジとなっていて、前回1月とその前の10月って謎のコイルみたいな絵になっていて、まあ要するにこれは賃金と物価の好循環が回ることによって基調的な物価が2%に向かって上がっていきますって図だったんですよね。なぜかその循環が6回も回らないと2%にいかないという恐ろしいまでに時間の掛かりそうな絵でした。
また、ご案内のとおり昨年7月、10月の小見出し『強力な金融緩和を継続する』ではそれぞれ2%が「遠くの山の頂上に双眼鏡じゃないと見えない存在(昨年7月)」「果樹農家の若夫婦が苗木を植えていて2%の豊かな果実が将来実る夢をみている(昨年10月)」と更にその前から見たらドンドン2%が現実から遠くなる、というイラストを載せていた訳ですが、1月になったらその2%が突如広場の巨大オブジェとして登場する、という謎の図にも程がある状態になった次第ですわな。
でもって今回、何の断りもなく突如「これから2%に向けて下がりだす」とかいうイラストをぶっこんできていまして、今までのイラストは何だったのかと突発性海原雄山症候群を発症して厨房に怒鳴り込むレベルの作品が登場している訳ですな。
まあどうせ日銀に言わせれば「今までのは基調的物価の話で今回は現実のCPIの話」っていうことなんでしょうけれども、説明されないと前回と全然整合性が取れないイラストを出してくる、というのは流石にお前らこのダイジェストを見る人達をなめとんのかという話で、一般の方々向けに出している、という触れ込みだから単純化するにしたって前回との整合性が一見して分からんものを堂々出してくるとかもうねという感じです。
まあ何ですな、世の中には一事が万事という言葉がありますように、全くもって前回との整合性が無い、というこのイラストの前回対比が今の植田日銀のコミュニケーションスタンスを良く表している訳でして、説明の整合性が全然なくて、前と違った理屈を急に持ち出してみたり、前に言ってた事からしたらそれ話違くね??ってのが平然とぶっこまれてくるという今の日銀のムーブというのは、月曜日に行われた輪番減額がまさにその象徴で、つい直前に植田総裁が説明していた調節部署による輪番減額の判断材料から見たら全く持って整合性の無いタイミングでの輪番減額が行われる、ってのも、今回のこの「物価のイラストの全面差し替え状態」に相通じるものがあるのですな。
という訳でですね、いやお前らちゃんとコミュニケーションする気あるのかよという話になる訳でして、植田さんの発言はしょっちゅうブレるわ、過去の説明と整合性が無い形でのサプライズ輪番減額をするわ、挙句に今までの説明の流れをぶった切ったポンチ絵を急に出してくるわでして、いやだからそういう前回との流れとか全然無視する絵を出してくるくらいだったら説明の流れとかを見ながらどういう情勢判断や先行き判断の変化があったかというのを分析しようとしている市場の皆さんからしたら混乱するだけの要因に他ならない訳で、だったらこんなの金輪際出すなよと申し上げたいですな(前回も言ってた気がしたが今回は突発性海原雄山症候群を完全に発症しておるワイ)
・不確実性が高いのは良いんだが何で急に他人事みたいなイラストになってるの???
次のイラストが
『日本経済・物価を巡る不確実性は高い
海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、日本経済・物価を巡る不確実性は引き続き高い状況です。また、金融・為替市場の動向と日本経済・物価への影響にも十分注意を払う必要があります。』(今回4月)
『日本経済・物価を巡る不確実性は高い
海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、日本経済・物価を巡る不確実性はきわめて高い状況です。また、金融・為替市場の動向と日本経済・物価への影響にも十分注意を払う必要があります。』(前回1月)
この不確実性のイラストって今まで概ね同じように「不確実性の要因を並べて考えている人」の図だったのですが、今回はなんか知らんけど「スライドショーを見ながら講義を受けている人達」みたいなイラスト(要因が並んでるのは同じだけど)になっていて、何か急に「日銀は不確実性を意識している」という主体的な雰囲気が無くなったのはナンナンデスカ??????
・最後のはもう馬鹿にしてるのかと思いました
『2%目標のもとで金融政策を運営していく
日本銀行は、2%の「物価安定の目標」のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営していきます。』(今回4月)
『強力な金融緩和を継続する
日本銀行は、粘り強く金融緩和を継続することで、賃金の上昇を伴う形で、2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現することを目指していきます。』(前回1月)
まあ3月に枠組み変更したからこの文言が変わるのは順当なんですけど、イラストに関してはもはや見る人を馬鹿にしているのかと思いました。まあ見ればわかりますわ。
などと血圧をあげていたら時間が無くなったので今朝はこの辺で勘弁。
2024/05/15
〇そういや企画局スタッフ謹製のインフレ予想に関するペーパーがありましたが
展望レポート全文の方にも本件ありましたし、先般の読売国際での植田総裁講演でもこのペーパーを含む関連物件に対してリファーがありましたので今さらですが。
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2024/rev24j05.htm
期間構造や予測力からみたインフレ予想指標の有用性
2024年5月2日
企画局 長田充弘、中澤崇
はい企画局様のスタッフペーパーですよ、といいましても一応
『日本銀行から
日銀レビュー・シリーズは、最近の金融経済の話題を、金融経済に関心を有する幅広い読者層を対象として、平易かつ簡潔に解説するために、日本銀行が編集・発行しているものです。ただし、レポートで示された意見は執筆者に属し、必ずしも日本銀行の見解を示すものではありません。』
ってなっていますが何せその次が「内容については政策企画課にお問い合わせください」と来ていますのでこれはもうお問い合わせもしないで読まないといけませんな。でもってHTMLにはエグゼクティブサマリーが記載されていますが、
『要旨
本稿では、様々なインフレ予想の指標について、期間構造や予測力の観点からみた特徴を整理する。第一に、インフレ予想指標を年限別にみると、短期のインフレ予想については、経済主体別で比較的似た動きをしている一方、中長期のインフレ予想はその見方の異質性が大きい。第二に、先行きの物価上昇率に対する予測力という観点では、長い年限のインフレ予想指標ほど大きな水準バイアスがみられるものの、そのバイアスを取り除けば多くの指標が予測力を有する。また、期間構造や予測力を踏まえた集計指標を作成すると、中長期的な予想物価上昇率が、このところ緩やかに上昇していることが確認された。』
とありましてほうほうそうですかそうですかと思いながら本チャンの方を見る訳ですが、
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2024/data/rev24j05.pdf
多角的レビューシリーズ
期間構造や予測力からみたインフレ予想指標の有用性
ということで「多角的レビューシリーズ」になっている所にいやーーーな予感がする訳ですが、これがまた見事な出オチで大変に味わいが深いんですよねー。
・最初に出すのがそもそも結果的に外しまくっているエコノミスト予想ってのがもうね
『はじめに』から参りますが、
『世界各国の物価上昇率は、2020 年の新型コロナウイルス感染症の拡大以降、経済活動の再開に伴う需要の増加や供給制約の強まり、その後の地政学的な緊張の高まりを受けた資源価格の上昇などの影響を受けて、大きく上昇してきた。』
さよですな。
『この間の内外のエコノミストによる中長期的なインフレ予想をみると(図表1)、』
ちょwwwwwおまwwwwwwww
ということでですね、いきなりの出オチ状態で大変にチャーミングなのですが、「インフレ予想指標の有用性」って話をしているのに、今般のインフレを一番盛大に外していて、何なら中央銀行のインフレ上がらん楽観見通しよりも酷く外していたし、何なら今でも盛大に低い方低い方に外しまくっているエコノミスト予想を見ると、からおっぱじまるのはなんのギャグなのかと盛大にズッコケてしまいました。
『米欧では、コロナ禍からの景気回復につれて上昇する動きがみられたものの、物価目標である2%程度に概ねアンカーされる状態が続いてきた。子細にみると、高い物価上昇率が続くもとで、インフレ予想が幾分上振れて推移する局面もみられたが、金融引き締めの効果もあって、足もとでは2%程度に回帰してきている。』
いやあのですね、見通し外している人のインフレ予想がアンカーされているからそれが一体全体何なのよと思う訳ですが、まあ我慢して先を読んでみましょう。
『他方で、わが国のインフレ予想は、足もとにかけては上昇しているものの、その水準は米欧に比べれば低く、2%の「物価安定の目標」も下回っている。』
だからこの局面で物価見通しを一番盛大に外しているのってESPフォーキャストとかのエコノミストサーベイ(そういう意味ではサーベイだしてる連中はとっとと引退してその席を若い衆に空けろと思いますけどね!!!!)を出している時点でもうこの「(日本の中長期のインフレ予想は)2%の「物価安定の目標」も下回っている。」という日銀の金融緩和継続バイアス(これを書いていた時点ではハトハトチキン総裁を筆頭にそっちのバイアスでしたからね、超足元の円安ビビリンチョはさておき)に整合的な結論を出すために一番都合の良いのを出してきましたと言わんばかりのこの展開に落涙するしかない訳ですな、
『こうした状況の背景には、わが国において、長期にわたる低成長やデフレの経験などから賃金・物価が上がりにくいことを前提とした慣行や考え方が社会に定着してきたことが影響していると考えられる。』
はあそうですか。
『日本銀行の中心的な見通しでは、先行き、企業の賃金・価格設定行動が更に積極化する――賃金と物価の好循環が強まる――もとで、インフレ予想も2%に向けて、一段と高まり、次第にその水準にアンカーされていくことが想定されている。』
中々味わいがありますが更にその次の段落(その間に【図表 1】中長期インフレ予想の国際比較ってのがあるけど、系列を見ると『(注)専門家(エコノミスト)による予想。日本はコンセンサス・フォーキャスト(6〜10
年先)、米国は Survey of Professional Forecasters(10 年後)、欧州は Survey
of Professional Forecasters(長期)による値。(出所)Consensus Economics「コンセンサス・フォーキャスト」、フィラデルフィア連銀、ECB』だそうです。
ちなみに上記のようなツッコミをするとどうせ帰って来る回答は「10年のような長期のインフレ予想に関して長期時系列のあるデータとして唯一あるのがこれですから」と言われるに1万アルゼンチンペソということでお含みおきくださいw
でまあその先
『このように、人々の物価観を示すと考えられるインフレ予想を把握することは、物価安定が持続的に実現していくか判断していくうえで、きわめて重要である1。ただし、インフレ予想には、様々な経済主体に対するサーベイ調査や市場価格に基づく指標が数多く存在する。また、同じ主体の予想でも、どの程度先の将来についての予想かによって、それぞれが有する意味や統計的な特徴が異なる。』
『このため、その解釈にあたっては留意が必要となる。そこで、本稿では、わが国におけるインフレ予想に関する様々な指標について、インフレ予想のもつ「近い将来から遠い将来にかけての期間構造」と「先行きの物価に対しての予測力」という2つの切り口から特徴を整理する。加えて、期間構造や予測力を踏まえてインフレ予想に関する様々な情報を集約した新たな合成指標を作成し、最近のインフレ予想の動向を確認する。』
・・・・・・・なんで冒頭にESPフォーキャストとかいう外しまくりのポンコツサーベイの国際比較を入れたのかと小一時間問い詰めたい訳で、最初からこれで話を進めればいいのに、何であんなもんを最初にぶっこんだのかが意味不明なんですけど、まあ先ほど悪態を申し上げたような大人の事情って奴ですかねえ宮仕えは辛いですなあナムナム。
・結局良くわからないのだが生活意識アンケートをベースにした結果なんでこんなに低い数字になるのよ
次の小見出しが『インフレ予想指標の期間構造』でアタクシはまあここをみたかったわけですよ実は。
(年限別・経済主体別のインフレ予想指標)ってコーナーから始まるのですが、
『図表2は、様々な経済主体のもつ短期(先行き1年程度)のインフレ予想を示している。』
でもってこの図表2ってのが【図表 2】短期インフレ予想指標 でして、この先の方には【図表
3】中長期インフレ予想指標 ってのがあるんですね。
でもってこのデータ系列だか凡例を見ると
【図表 2】短期インフレ予想指標
@生活意識・量的質問(今後1年間)
A生活意識・質的質問(今後1年間)
【図表 3】中長期インフレ予想指標
@生活意識・量的質問(今後5年間)
A生活意識・質的質問(今後5年間)
って系列があるんですが、展望レポートとか植田さんの読売国際の講演とかの図表を見るとわかると思うのですが、このうちまあ重要とおもわれるのが【図表
3】中長期インフレ予想指標 になりますから講演とかの図表は基本的に【図表
3】中長期インフレ予想指標 が出て来るのですけれども、何故か植田さんの講演とかを見ると(植田さんの講演の場合「10年」の方なのでこれとは直接リンクしないですけど)「質的質問」という数値が低く出ているのしか出てないんじゃねえのと言いたくなるような数字になっているのが謎なんですよね。
でもってその家計のインフレ予想についてのペーパーで示されているデータ(目の子で見ますと直近の家計の「量的質問」の短期インフレ予想が4%弱、中長期インフレ予想が3%強となっていますが、まあこれはそもそも論としてサーベイの数字が恒常的に高めに出ているからそれを処理しているんだろうなあというのは想像できるのですけど、
『家計のインフレ予想指標としては、日本銀行による「生活意識に関するアンケート調査」の結果を用いている。同調査では、2つの異なる質問によりインフレ予想を調査している。』
『まず、@「物価の変化率」について数値で尋ねている量的質問の結果については、±5%を超える極端な回答値を±5%に置き換えつつ平均した値を利用している2。』
>±5%を超える極端な回答値を±5%に置き換えつつ平均した値
>±5%を超える極端な回答値を±5%に置き換えつつ平均した値
>±5%を超える極端な回答値を±5%に置き換えつつ平均した値
いや食料品価格とか一頃CPIのコンポーネントベースで見たって10%軽く超えてたんだからその5%を超える回答値が本当の本当に極端な数字なのかというのはどうなのよと思いますが。
『A「物価が上がるか・下がるか」について5択の選択肢で尋ねている質的質問の結果については、修正カールソン・パーキン法という統計的手法を用いて数値化している3。』
>修正カールソン・パーキン法という統計的手法を用いて数値化している3。
うーんこのという感じでして、展望レポートの全文での解説でも結局この統計的手法を使っています、で片づけられちゃっているのですが、各回答をどういう数値に置き換えているのかが謎な上に、もしその置き換えが過去の物価の平均対比とかで見てるんだったらその方法使ったら今次局面のようなレジームチェンジをとらえることが明らかにビハインドになってしまいますがな、と思うんですがどうなんでしょうかねえと思いましたです。
でまあその先の期間構造とかの分析もあるのですが時間が無くなって来たのでそこはかっ飛ばして(別途展望のコラムを読むときにでもまたネタにできればと)
・あとこんなのありますが時間が無いので以下は後日できればやります
先の方に『インフレ予想指標の予測力 』というのがありましてですね、そのマクラ部分に、
『以上の特徴からも示されるように、インフレ予想には、先行きの物価上昇率に関する各主体の見方の情報が含まれていると考えられる。』
さいですな。
『先行研究では、@将来についてより豊富な情報をもつ経済主体(専門家)ほど、そのインフレ予想の予測力は高くなる、A家計や企業が、自らのインフレ予想を参照しながら消費や投資行動、賃金や価格交渉といった意思決定を行うために、そうした実体経済への影響力の高い経済主体のインフレ予想ほど、実際の物価動向に影響を与え、その結果として予測力も高くなるといった、相反する指摘がなされている。』
『その意味で、どの指標が有用なのかコンセンサスはないが、以下では、先行研究に倣いつつ、比較的シンプルなアプローチを用いて、各インフレ予想指標の予測力を比較・検証する8。』
まあ端的に言って今次局面を見れば「専門家」ほど過去の数字に引っ張られて構造変化を読み間違えやすい、って事だと思うんですよね。まあこれはつまり人様の受け売りなんですけど、「予測が同じ方向に毎回外れ続けている時は、構造変化が起きているかもしれないと考えるべき」って話に繋がるとおもうんですよねーーーーーー。
と単にここはその人様の受け売りを書きたかっただけですwまあ続きは明日できれば明日にでも。
2024/05/13
〇今更ネタが積んどくですが3月議事要旨を見ながら雑感も
3月議事要旨
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2024/g240319.pdf
・なんか多角化レビューの報告があるんだが「取引があればいい」ってもんじゃないんですけどねえ
前半の方に『U.金融政策の多角的レビューに関する執行部からの報告および委員会の検討の概要』という割とナンジャソラなコーナーがありましてですな。
『1.非伝統的金融政策が金融市場に与えた影響』ってのがあって『(1)執行部からの報告』ってのがあるんですけど。
『過去 25 年間の短期金融市場の機能度を確認するため、量的緩和が実施された第一局面(2001〜2006
年)、補完当座預金制度が導入された第二局面(2008〜2016 年)、マイナス金利導入以降の第三局面(2016
年〜)の3つの局面に分け、各局面の動向を振り返った。』
ということで短期金融市場の「機能度」の話をしているんですけど、
『第一局面では、金融機関間の取引インセンティブが低下したが、第二局面では、補完当座預金制度の導入に伴い付利先と非付利先との間での取引インセンティブが生じた。第三局面では、補完当座預金制度の三層構造のもとで裁定取引が活発化しており、短期金融市場は、足もと十分な機能度を維持していると評価できる。』
って評価を相変わらずしているんですけど、市場の機能度ってのは各参加者が自分たちの資金繰りに加えて先行きの政策動向を考えて参加者ごとにいろいろな見方をもとにポジションを形成するから市場になるのであって、結局のところ短期金融市場における「市場機能」って日銀当座預金へのアクセスがある先とない先、あるいは制度上それまで超過準備を積み上げていなかった先(は基礎残高やマクロ加算残高が相対的に少なかったので)に対して制度によって負荷をかけることによってその負荷のかかった先が損失回避のために行う取引を捕まえて「機能度」と言ってるだけの話で、こんなの市場でも何でもないわけです。
むしろこの人たちが「機能していなかった」と評する第一局面の方が最後の方はちゃんと利上げ前から新発3Mの金利が上がったりしていたわけですし、参加者の自由な金利観に基づく価格形成が起きないような構造になっている超過準備余りまくりレジームが市場機能とかいうのちゃんちゃらおかしいとしか言いようが無い、といつもの悪態を言っておく。
・相対価格って銘柄ごとの需給よりも問題なのは「国債市場の価格形成そのもの」なんですけどねえ
『量的・質的金融緩和やイールドカーブ・コントロールによる国債市場の機能面での副作用は、@市場流動性の低下、A相対価格面の歪み、B円債の取引基盤の脆弱化の3つに整理できる。これらのうち、相対価格面の歪みは改善方向に向かっている。』
「相対価格面の歪みは改善方向に向かっている」って言ってるんだがそれ国債の個別銘柄の話であって、そもそも「国債の金利」というのが本来の意味でのリスクフリーレート金利になっているのか、という問題に関してもっと真剣に考えて頂きたいわけです。まあ例として短国挙げるのはちょっとアレですけど、さっき入札をネタにしたから書きやすいけど、無担コールレートがほとんど7.7bpでびっちり張り付いていて、超過準備付利が10bpあるのに3M短国がやっと金利が上がって3bpだ4bpだなわけでして、それって「国債というコモディティの価格」ではあるけれども「金利のベースになるリスクフリーレート」なのかよ、という話で、銘柄間のゆがみがどうのこうのという話だけで改善したとか言ってるのはこれまたちゃんちゃらおかしいわけですよ。
いやまそりゃ中のスタッフとして「非伝統的政策は市場を破壊しちゃいましたひどいもんです」とかいうのを役員会にぶっこみに行くとかいうのはとんでもない勢いで蛮勇が必要であって、まあ普通は提灯報告したいってインセンティブがあるでしょってのはアタクシもサラリーマンの端くれですから分かるんですけど、それでいいのかこの提灯報告って感じだし、しかもこれが後世になると正しい歴史にされてしまいかねないのが恐ろしいところです。
・なんでここどさくさに紛れて為替市場の話があるんだよワロタ
でもってその続き。
『一方、市場流動性の低下は引き続き残っていくとみられる。また、脆弱化した円債の取引基盤については、市場参加者からは、再構築は可能との声も聞かれているが、完全な回復まで時間は相応にかかり得る、との指摘も聞かれる。』
お前らがめちゃくちゃに買入を行って相対価格歪ませてる(個別銘柄じゃない方の相対価格な)から取引基盤が回復しねえんだよわかってるのか。
『これらが、中長期的にわが国の金融市場に与える影響について、引き続き丁寧な把握に努めていく必要がある。』
把握した結果が4月の買入減額無しですからぬーw
でもってその次にこんなのがあるのがチャーミング。
『過去 25 年間の為替レートの推移を振り返ると、その時々の市場で注目されていた各種要因の影響を受けて、大きく変動してきた。この間に実施されてきた非伝統的金融政策は、将来の為替レートに関する予想経由で為替レートに一定程度影響を与えてきた可能性があるが、そうした予想形成は、その時々の世界経済や国際金融市場の動向次第で大きく変化してきたように窺われる。このように、非伝統的金融政策が為替レートに及ぼす影響には、きわめて大きな不確実性が存在する。』
どさくさに紛れてなんで為替市場の話があるんでしょうか????いやおまいら金融政策を直接為替に割り当てないって昔から言ってる(なお実際には為替でケツをたたかれて金融政策が動くのは日常茶飯事)じゃねえかよとwww
でまあそういうことで
『本調査プロジェクトの個別の分析については、ワーキングペーパー等で公表することを展望している。』
ということでして、これ25年レビューのワークショップが来週かなんかにあるので、そのときかその直後には公表されるんでしょうなあと思います。
ああちなみに『(2)委員会の検討』は愚にもつかない話が垂れ流されているだけなので割愛しますが、最初のところで思いっきり
『短期金融市場に関して、ある委員は、量的緩和のもとでは市場機能が大きく低下した一方、その後の局面では、補完当座預金制度が金融緩和
と 短期金融市場の機能の維持を両立するうえで大きな効果があったと評価した。』
ってことにされているんですけど、まあ木を見て森を見ないってか、そもそも補完当座預金制度って先に量的緩和をしまくった挙句にマイナス金利入れるというだまし討ちを行ったために量的緩和政策によって超過準備山ほど積み上げた金融機関からマイナスチャージをいきなり取ったらエライことになるってんで積み上げていなかった(あるいは制度上積み上げられなかった)金融機関および非当預先に一方的に負担させてマイナス金利を作りながら、金融機関全体からのとんでもない実質課税を回避しようという話であって市場機能とか言ってるの副次的な話にも程があるんですけど、なんかそういう話は無かったことにされて「市場機能を維持する施策」で言いくるめられてしまっているのが残念無念ですな。
・しかしまあ輪番の扱いについての意見が全然まとまっていませんなあ
話は飛びまして『W.金融政策運営に関する委員会の検討の概要』のうち今話題の(かどうか知らんが)輪番どうする問題(なんか急に皆さん「6月に買入に関する文言を変更して減額の方向性を出す」ってビュー増えましたよね)から。本文16ページPDFの18枚目になります。
『長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)について、多くの委員は、その枠組みを見直すことが適当であるとの見解を示した。これらの委員は、長期金利は金融市場において形成されることが基本となるとの見方を共有した。そのうえで、多くの委員は、長期国債の買入れについて、不連続な変化が生じないよう、当面、これまでと同程度の金額で買入れを継続するとともに、長期金利が急激に上昇する場合には、機動的に対応することが適当との認識を共有した。』
とまあこれは決定事項ですけど、
『何人かの委員は、こうしたもとで、本行国債保有残高が高水準で推移するため、その緩和効果は引き続き作用するが、今後は、国債買入れは、能動的な金融政策手段としては用いないことが考えられると述べた。』
これ別に全員が言ってるのじゃなくて何人かが言ってるのですよねよく考えてみたら。
『このうちの一人の委員は、国債の買入れは、長期金利の急変動を避けるという観点から行うこととし、その中で、市場の流動性を回復しつつ、できるだけ市場に金利形成を委ねていくことが大切であるとの見方を示した。』
金利急上昇しないのならば減らせって言ってますよね。
『別の委員は、これまでの市場機能に副作用を及ぼしてきた政策対応を見直し、市場が自律的に機能する局面への転換が必要であると述べた。』
金利急上昇云々の話すらしていないのでこっちの方が過激派w
『ある委員は、長期国債の買入れの調整は、急激な市場変動を避ける観点から時間をかけて対応することが適当であり、その間に債券市場の参加者が拡大することを期待するとの見解を示した。』
一方でこんなのんびりとしたことを言う人もいるわけでして、結局これ長期国債買入の方向性について全然まとまっていなくて、とりあえずガワだけは外したという状態になってるわけですなこれがまた。
『実際の国債の買入れ額については、何人かの委員は、上下に多少の変動幅をもつ形で、調節部署が市場の状況に応じて柔軟に決めていくべきであると指摘した。』
という事になっていたのですが、ただまあ一方で総裁記者会見で植田さんは3月の時も今回の展望の時も6兆円を連呼していたわけでして・・・・・・
『このうちの一人の委員は、例えば上下に1〜2兆円程度の幅をもって対応していくことが適当であるとの見解を示した。』
とか言われたってああ6兆円を連呼されちゃったら余程のぶっ飛ばし体質の人じゃないと輪番減らせないというのもこれまたわかる話でして、そう考えると金曜ネタにした5月会合の主な意見での「国債需給などに応じた日々の調整は、金融市場局において、丁寧に行うべきである」とかいう公開処刑意見にしたって、そうして欲しいならお前がちゃんとボードの意見をそっちで纏めろというか、植田さんに膝詰め談判して国債買入動かすのOKOKというのを言わせろという世界でもありまして、まあ市場局も丸投げされていい迷惑という話でもありますな、うんうん。
『この間、何人かの委員は、将来的には、いずれかのタイミングで国債の買入れ額を減額し、国債保有残高も償還に伴い縮小させていくことが望ましいとの見解を示した。』
結局このように「いずれかのタイミングで」であるし、しかも4月会合でマイナス解除後の動きを確認したんだから政策と関係なくテクニカル減額OKOKみたいなのを出すのもできたとは思う(というか時事とか報道してましたですよね思いっきり誤報になりましたが)のに、結局4月もまとまらずに「6兆円」が継続なんですから、まあそう考えますとこれ意見の隔たりが相当あるんじゃないのか、って思いました。
ということで今朝はこの辺で勘弁
2024/05/10
〇4月会合主な意見では謎なまでにノリノリの政策調整議論が爆誕しているんだが
そういえば3月会合議事要旨ネタをかっ飛ばしている事を今思い出したので後日成敗しておきますね。
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2024/opi240426.pdf
金融政策決定会合における主な意見
(2024 年 4 月 25、26 日開催分)
・物価の上振れ指摘のオンパレードになっているのですが・・・・・・・・・・
『T.金融経済情勢に関する意見』の部分の最初の方はまあどうでもよいので、次の(物価)を見ますとこれがまた物凄い勢いで「上振れリスク」のオンパレードになっております。折角なのでチェリーピッキングしないでこの項目の全部の意見を並べてみますね。
『・ 消費者物価の基調的な上昇率は、賃金と物価の好循環が引き続き強まり中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想され、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。』
『・ 物価見通しは、海外インフレの継続による輸入物価上昇に加え、国内のタイトな労働需給、企業の価格設定行動の変化が継続することなどから、概ね2%の水準を維持すると考えられる。』
最初の2つは大本営か大本営の提灯なのでまあそれは良いとしましてその次からがこの有様である。
『・ 円安と原油高は、コストプッシュ要因の減衰という前提を弱めており、物価の上振れ方向のリスクにも注意が必要である。』
『・ 足もとの円安と原油価格等の上昇が、輸入物価を通じて企業物価へ波及しつつある状況を鑑みると、賃上げに伴うサービス価格の高まりに加えて、現在伸び率が低下している財価格が底打ちして反転する可能性にも注意を払う必要がある。』
第一の力とか言ってる奴の継続で上振れリスクですね。
『・ 円安は、短期的にはコストプッシュ型の物価上昇を招くことで経済を下押しするが、インバウンド需要の増加や製造業における生産拠点の国内回帰などを通じ、中長期的には生産や所得への拡張効果もあるため、基調的な物価上昇率の上振れにつながり得る。』
こういう理屈で言うのか、と感心してしまいますがまあこれも上振れの話ですわな。
『・ 輸入物価上昇を起点としたコストプッシュや予想物価上昇率の上昇に伴うインフレ率上振れのリスクもあるため、今後、2022年以降に続く第2ラウンドの価格転嫁が生じるか、予断なく見極める必要がある。』
これ「第2ラウンド」っていうのは物価スパイラルを招く二次的効果(セカンドラウンドエフェクト)とは別の意味ではあるのですが、言葉の使い方として二次的効果というヤバイ上振れを意識してるでしょ(^^)。
『・ 賃金・物価スパイラルの想定以上の進展、円安の進行、積極的な財政政策、人手不足を主因とする供給力不足、資源価格の上昇など、様々な物価上振れのリスク要因があり、注意が必要である。』
はいはい上振れ上振れ。
ときましてこのコーナーの最後は多分中村審議委員じゃないかと思いますが、
『・収益力や給与水準等で大企業と中小企業間で二極化が進み、中小企業では人材係留目的の賃上げが多く、大企業の構造改革成果の波及はまだ弱いとみられる。』
ということでいつもの中小企業への波及の話をしていますが、別に明確に下振れという話をしている訳ではありません。
・委員の指摘が物価の上振ればっかりなのに何で読売国際の講演では「上下双方向」なんでちゅかねえ
さてここれちょっと話を戻して一昨日の植田さんの講演、昨日ネタにしましたが再掲しますと、
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2024/data/ko240508a1.pdf
賃金と物価の好循環と今後の金融政策運営
―― 読売国際経済懇話会における講演 ――
講演7ページ(PDFの8枚目)なんですけどね、
『(物価を巡るリスク)
ここまで、物価の先行きについて、中心的なシナリオを念頭にお話ししてきましたが、こうした見通しを巡るリスクは、上下双方向に大きいと考えています。』(この部分だけ直上URL先5/8植田総裁講演より)
>上下双方向に大きいと考えています
>上下双方向に大きいと考えています
>上下双方向に大きいと考えています
・・・・・( ゚д゚)
えーっとすいません、何で委員の大勢意見が上振ればっかりなのに総裁は講演で「上下双方向に大きい」って言ってしまうんでしょうか、というお話でありまして、まだ「上下のリスクがあります」位で話をするなら一般論になるけど、「上下ともに大きい」っていうのは「物価の下振れリスクも意識しています」って説明をしている訳ですけど、この「主な意見」では下振れの指摘って中村さんと思われるのが1個あるだけ(しかも明瞭に下振れを指摘した訳ではない)で、一方の上振れに関しては結構強いトーンで指摘している意見が並んでいる、という状況な訳ですよ。
つまりこれ植田さんどう見ても政策委員会の大勢意見と違う説明を堂々としている訳でして、そういうのはヒラ審議委員が「委員会としての意見はともかくとして私個人はこの下振れを強く意識しています」って断りを入れて話をするならそれはそれで一つの見解ですけど、総裁として講演しているのに政策委員会の見解を丸無視して、しかも丸無視したって断りも入れないで説明するってお前何様だよというかこれはどう見ても「殿のお身持ち宜しからず」という奴にしかあたくしには見えないんですけどどういうことですかちょっと改めて説明をしてくれませんかねえ。
ということで「主な意見」の方に戻りまして、
・金融政策運営に関しても「調整を実施すべし」のノリノリ見解が続く(とは言え今なのかというと微妙だが)
次が皆さん大好きな『U.金融政策運営に関する意見』でして、まあこれも全意見並べてみますわ。意見は色々とあって大杉栄な訳ですが特にアレンジもしないで順に引用します。
『・ 経済・物価の見通しが実現し、基調的な物価上昇率が上昇していくとすれば、金融緩和度合いを調整していくことになるが、当面、緩和的な金融環境が継続すると考えている。』
これは展望に書いてある通りなので人畜無害。
『・ 展望レポートの見通しには引き続き不確実性が高いが、これが実現するのであれば、約2年後に、2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現し、需給ギャップもプラスということになるので、金利のパスは、市場で織り込まれているよりも高いものになる可能性がある。』
そらその通りなんですがわざわざ「市場の織り込みよりも金利(政策金利という意味だと思いますが)パスが高くなる」と入れているのがノリノリ感を出しています。
『・ 「物価安定の目標」の達成時における不連続かつ急激な政策変更によるショックを抑えるために、経済・物価・金融情勢に応じて、緩やかな利上げを行うことで金融緩和度合いを調整することも選択肢として考えられる。』
『・ 経済にストレスを与えないように金融緩和の度合いを調整するには、今後、見通しの確度の高まりに合わせて、適時適切に、政策金利を引き上げていくことが必要である。』
さっきのも含めてこの3本の見解ってノリノリではあるがよく考えたら当たり前の話で、2%物価目標が安定的に達成、っていうような時の短期政策金利はどう低く見積もったって1%を超える(普通に考えて1.5-2.5の辺りのどこかじゃないですかねえ)訳でして、その時まで0金利政策を引っ張っていたらエライ事になるし、そもそも前段の所で皆さん物価上振れリスクを意識している、ということは0金利政策を引っ張り過ぎちゃうと物価が2%で止まらんリスクだってあり得るって事になる訳ですから、そりゃ徐々に調整するの当たり前なんですよね。それをしなかったからFEDはあのような物凄い勢いで利上げすることになったんだし。
『・ 政策金利の引き上げについて、そのタイミングや幅に関する議論を深めることが必要である。』
漠然としているコメントなので何かよくわからん。
『・ 金融緩和の更なる調整を検討するうえで、夏場にかけて、前向きな企業行動の確認、具体的には堅調な設備投資の継続や賃上げを契機とする年後半に向けた個人消費の改善傾向、がポイントである。』
夏場にかけて、ってもしや6月会合の調整を意識してるんじゃないかと思ってしまいますが、まあ7月会合は7月末なのでまさに「夏場」です(その次は9月ですから夏場じゃないわな)からして、7月会合の見通しアップデートの時の経済物価情勢の確認を受けて政策調整、ってのを思いっきり意識している書き方ですよね。
『・ 基調的な物価上昇率が2%を下回る現状では、緩和的な金融環境を今後も相応に長く維持する必要がある。ただし、円安を背景に基調的な物価上昇率の上振れが続く場合には、正常化のペースが速まる可能性は十分にある。』
基調的な物価とか言ってるのが何か総裁なのかと思ってしまいますが、まあハト系の誰かではないかと思いますけどそういう方でも円安での物価上振れでの政策修正に関しては排除しないという考えを示しています。
『・ 2023 年は可処分所得が伸びず、消費は0%への貯蓄率低下による増加であった。家計の購買力はまだ弱く、当面は緩和的な金融環境継続が妥当と思われる。』
これもハト系の方ですが、そもそも論として緩和的な環境で物価が第一の力とやらで上振れしてるから実質所得が伸びないという現実に関してはどういう考察をしてくれるのかしらこのお方は。
『・ 前回会合後に公表された消費者物価のデータ等をみると、前回会合時点で金融政策の枠組みの見直しの条件は既に満たしていたと考えられ、政策変更後においても市場に急激な変動は生じていない。』
何でしょうこれは前回反対した人が「やっぱり良く見たら条件満たしていましたねテヘペロ」って言ってるんですかねえよくわからんですけど。
でもってこの先が長期国債買入の話が続いていて、長期国債買入は政策手段として使う訳ではないよ短期政策金利の上げ下げで調整する普通の金融政策だよと植田さんアピってましたが、どこからどう見ても長期国債買入の話は重要ジャンというのが中々チャーミングではありますが。
『・ 長期国債の買入れについては、イールドカーブ・コントロール解除後の市場の状況を見ているところであるが、どこかで削減の方向性を示すのが良い。これとは別に、国債需給などに応じた日々の調整は、金融市場局において、丁寧に行うべきである。』
>国債需給などに応じた日々の調整は、金融市場局において、丁寧に行うべきである
>国債需給などに応じた日々の調整は、金融市場局において、丁寧に行うべきである
>国債需給などに応じた日々の調整は、金融市場局において、丁寧に行うべきである
これはつまり4月に実施された新規国債市中発行減額に対応しなかった金融市場局は何をやってるんだこのスットコドッコイがと公開処刑をしている、という事ですねわかります。
『・ 国債保有量の正常化、過剰な水準にある準備預金の適正化という観点から、日銀のバランスシートの圧縮を進めていく必要がある。段階的にイールドカーブ・コントロールを柔軟化したことが円滑な出口につながったことも踏まえれば、国債買入れの減額も、市場動向や国債需給をみながら、機を捉えて進めていくことが大切である。』
国債保有量の正常化も仰せの通りですが、さらに良い指摘なのは「準備預金の適正化」でありまして、足元って無担保コールが翌日物がごく短い期間では市場で一番金利が高いみたいな状態(もっと高いのが日銀超過準備付利ですけど)になっていて、コール翌日物が完全に付利狙い調達無限大モードの影響でびったり張り付いて動かない状態になっているのってどこからどう見ても市場としては歪んでいるとしか申し上げようがないのですが、聳え立つ超過準備の山を不胎化しないと翌日物の市場金利がゼロだのマイナスだのになってしまうんですからこうならざるを得ない、という訳で聳え立つ超過準備問題は何とかしないと行けないんですよね。
ということで「隙あらば長期国債買入減額」は良いお話ですな。
『・ 国債の需給バランスを踏まえ、市場機能回復を志向し、現状6兆円程度の毎月の長期国債買入れを減額することは選択肢である。市場の予見可能性を高める観点で、減額の方向性を示していくことも重要である。』
これまた良い意見でして、とにかく長期国債買入の運営に関してはメルクマールは無いわそもそも何のためにこんなに長期国債買入を実施しているのかの意義づけもわからん(だって短期政策金利で金融政策を行うんだったら長期国債買入って何も関係ないんでしょ、というのはまあ原理主義モードですけど建付け上から言ったらそうなりますよね)わということで、その予見可能性が全然ない中で市場を圧倒する長期国債の買入をアホみたいに継続している訳で、そりゃこんなのされたら国債市場の金利も適正化されないし、適正じゃない価格が形成される市場に投資家がまともに戻ってくるわけないじゃんというお話なので、この方向性を出せという話は大変に結構な論点です、何だお前らちゃんと考える能力あるじゃんと
思いました。
『・ 市場動向を踏まえると、保有するETFやJ−REITの取扱いについても具体的議論ができる環境になりつつあると考えられる。』
おおおこれは中々の過激派w
ということで、長期国債買入に関しても良い指摘がぼんぼん出ている訳でして、こういう議論があったのを踏まえている筈なのに何で4月26日の記者会見はハトハトチキン音頭だったんでしょうかということですし、今回の読売国際の講演でも及び腰なんですかね、ってお話。
・昨日の国会はそこまで大きなヘッドライン打たれてはいなかったけど
でまあこれを受けて債券先物が下がってドル円も途中で気が付いたのか円高方向に動いたのですけれども、しばらく(1時間もしないで)しか効果は続かず、国会での植田さんは相変わらずで金融政策の調整に関しても円安牽制に関しても特に踏み込まず、となると最早植田が口を開けば円安ドル高、というイジメモードに入っているんじゃないか疑惑まで提唱したくなる為替市場様におかれましては東京の夕方以降には155円後半から156円近くまで伺うような円安ドル高になっていて、一方で円債の金利はちゃっかり上昇(そりゃまあ上記ノリノリ主な意見見たら上昇するわな)するという事態になっておられました。
もうね、こうなって来ると植田さんを表にだして喋らせると、ただでなくさえ発言がブレブレな所にきて、政策委員会の議論内容を踏まえないで植田和男作詞作曲のハトハトチキン音頭を勝手に歌って踊る夜の帝王と化しているわけですからして、これはジャパンの伝統芸能「主君押込」を発動して、6月会合までの間喋らせない、国会に呼ばれたら「植田は只今修禅寺に籠っております何なら風呂に入っています」ということで両副総裁に代打で出てもらうしかないんじゃねえの、とまで思ってしまう訳で、昨日の朝も確かアタクシ座敷牢とか言ってましたが、この「主な意見」を見て益々これは主君押込待ったなし(ちなみに修禅寺云々の源頼家のケースは一般的には主君押込カテゴリーにはならんみたいです為念)という所ですな南無阿弥陀仏。
2024/05/07
お題「展望レポートの鏡をクソ真面目に読んでみるという企画(全然成敗が進まんあるね)」
ネタが山のように積まれているというのに結局連休は総裁会見しか成敗しておりませんでしたすいませんすいません。
ところでドル円ちゃんはまた154円近くに戻っていますなあ。これはもう今日の輪番で蛮勇を振るうしか無かバイとはおもいますがどうせそんな蛮勇が起きる訳が無いに1万ジンバブエドル。
〇展望レポート基本的見解(の大体概要部分):鏡の部分が既に政策運営方針と微妙に合わない
基本的見解
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2404a.pdf(今回4月)
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2401a.pdf(前回1月)
情勢判断に関しては3月声明文も比較対象ですな
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2024/k240319a.pdf(3月声明文)
・結局どっちですねんという話でして
所謂「鏡」の部分ですけど<概要>を見るとどうなんだというのがあります。ちなみにアタクシ今回はどうせ政策修正のトリガーが「お気持ち」なので見通し数値よりも文章構成の方が大事だと思ってそっちから見たから読んだのが頭からで政策ガイダンスもどきの文言は後から読んだんですよね。
概要1ポツ目
『先行きのわが国経済を展望すると、海外経済が緩やかに成長していくもとで、緩和的な金融環境などを背景に、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まることから、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。』(今回4月)
『先行きのわが国経済を展望すると、当面は、海外経済の回復ペース鈍化による下押し圧力を受けるものの、ペントアップ需要の顕在化などに支えられて、緩やかな回復を続けるとみられる。その後は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まるもとで、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。』(3月声明文)
『日本経済の先行きを展望すると、当面は、海外経済の回復ペース鈍化による下押し圧力を受けるものの、ペントアップ需要の顕在化などに支えられて、緩やかな回復を続けるとみられる。その後は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まるもとで、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。』(前回1月)
こちら一読すると分かると思いますが、なんと今回って新たに「緩和的な金融環境を背景に」ってのが新しく入っているんですよ。これが例の今回出た政策ガイダンスとの整合性がどうなっているのか、という話でして、
『金融政策運営については、先行きの経済・物価・金融情勢次第であり、この点を巡る内外の経済・金融面の不確実性は引き続き高い。以上のような経済・物価の見通しが実現し、基調的な物価上昇率が上昇していくとすれば、金融緩和度合いを調整していくことになるが、当面、緩和的な金融環境が継続すると考えている。日本銀行は、2%の「物価安定の目標」のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営していく。』(今回4月)
『日本銀行は、引き続き2%の「物価安定の目標」のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、短期金利の操作を主たる政策手段として、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営する1。現時点の経済・物価見通しを前提にすれば、当面、緩和的な金融環境が継続すると考えている。』(3月声明文)
ということで、「当面、緩和的な金融環境が継続」というのはご案内の通り3月声明文に入っていましたが、「経済の先行き」部分で3月の時点では「緩和的な金融環境が」という文言が見通しの説明の中に入っていないんですよ。
これまあ1月時点ではそもそもQQE+YCC+マイナス金利政策を継続しているから、金融環境が緩和的、ってのは所与みたいなもんだから「緩和的な金融環境を背景に」というのをわざわざ入れなくても良い(実際にちゃちゃっと見てみましたが、一昨年10月まで辿っても今回のように「緩和的な金融環境などを背景に」という文言は鏡の部分には入っていないんですよね)ということだったと思うのですよ。
然るに、今回の展望レポートで今までそういうのが無かった「緩和的な金融環境などを背景に」というのを入れる、ということは、これは今後の経済見通しの前提に「緩和的な金融環境」がある、という事を思いっきり示したことに他ならない、と読めてしまうんですよね。
・・・・・そうなりますと、例の政策ガイダンスもどきの「以上のような経済・物価の見通しが実現し、基調的な物価上昇率が上昇していくとすれば、金融緩和度合いを調整していくことになる」というのは何なのかという話になる訳でして、見通しが実現するために緩和が必要なんだったら、別に政策調整なんかしないでおけば、基調的な物価が高まる中で実質ゼロ金利政策を継続すれば緩和が拡大になるのですから、もともと日銀が言ってた「早期の物価目標達成」がより近くなる筈なんですが、何でわざわざ緩和度合いの調整を行うのよ????というお話。
ちなみに1月展望本文中で記載されているメカニズムに関する部分では、緩和的な金融環境が民間需要の増加を後押ししたり、企業の資金繰りを改善させたり、潜在成長率の上昇を後押ししたり、という記載はあるので、緩和的な金融環境に関する記載は本文にあるのですが、今回の展望レポートで殊更に「緩和的な金融環境」を鏡に出してくるのが、例の政策ガイドラインとの整合性が微妙になっているんですよね。
一応日銀の言い訳を考えれば、「見通し通りに進展して基調的な物価が上昇すれば政策を修正していくけれども、その間は緩和的な状態が続いている(物価目標達成までの間に中立にする訳ではない)ので、その状況が経済の下支えになる、という意味です」ってな事になると思いますけれども、やっぱりわかりにくくて、今回わざわざ「緩和的な金融環境」の文言を鏡の一発目に入れてきたということは、やはり日銀には引き続き緩和バイアスがあり、政策調整には及び腰なんじゃなかろうか、という読みになってしまう訳です。
一方で例の政策ガイダンスもどきを読めば少なくとも毎回の展望レポートのタイミングで経済物価見通しが「変化なし」で、「リスク認識も変わらないor上振れ」だったら政策の調整は可能、というか7月の展望で下方修正が入らない限り調整しない方が理屈としておかしいだろ、という建付けになっている訳でして、いやお前らどっちですねんというお話になる訳でございますな。
でまあ何ですな、植田さんが会見でハトハトチキン音頭を盛大に踊ったのもそうなんですけど、一番大事な政策反応関数に勝手に昇格(挙句に賃金と物価の好循環は「御用済み」になるというご都合主義極まりない屁理屈モード)しておった「基調的物価」の説明が一つの会見の間で頭(=物価のメカニズムなども含めた総合判断)とケツ(=物価指標から一時的なものをトリミングしたもの)で説明が違う、というハチャメチャ説明を展開していたのをみますに、ここから先はアタクシの勝手な妄想になりまして、まあ先日より申し上げておりますが、今後の政策運営の方向性に関しては「緩和継続バイアス」の方と「中立化に向けた調整を行うバイアス」の方の間の意見の隔たりが大きく、まあ容易にまとまらんという状態のなかで妥協の産物として、この展望レポート基本的見解が出てきた、ちゅうことなんでしょうねえという話になる訳です。
でまあこれが雑魚キャラが反対しているならまあいいんですけど、これどう考えたってハトハトチキンの総裁と大本営事務方の間で路線対立あるじゃろ(大本営が緩和継続バイアスなら別にこんな政策ガイダンス文言を入れないですし、植田さんが調整バイアスあったらあんなハトハト音頭を踊らないですからね)という妄想が更に広がる訳でして(あくまでも個人の妄想ですので話は10分の1くらいで聞いて下さいね)これは益々面白くなってまいりました(何が面白いのかは書いてる本人も良く分かっていないがw)という感じだと思いましたがさてどうでしょうかね。
鏡の1ポツ目で何か長広舌を振るってしまいましたが先に参ります。
・物価見通し達成の「確認」を取るという説明も今後変な屁理屈が入るんでしょうね
『物価の先行きを展望すると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、2024
年度に2%台後半となったあと、2025 年度および2026 年度は、概ね2%程度で推移すると予想される。既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響が減衰する一方、2025
年度にかけては、このところの原油価格上昇の影響や政府による経済対策の反動が前年比を押し上げる方向に作用すると考えられる。この間、消費者物価の基調的な上昇率は、マクロ的な需給ギャップの改善に加え、賃金と物価の好循環が引き続き強まり中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想され、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。』(今回4月)
『物価の先行きを展望すると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、来年度にかけて、既往の輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響が減衰するもとで、政府による経済対策の反動がみられることなどから、2%を上回る水準で推移するとみられる。2025
年度については、これらの影響の剥落から、前年比のプラス幅は縮小すると予想される。この間、消費者物価の基調的な上昇率は、マクロ的な需給ギャップがプラスに転じ、中長期的な予想物価上昇率や賃金上昇率も高まるもとで、見通し期間終盤にかけて「物価安定の目標」に向けて徐々に高まっていくと考えられる。先行きの不確実性はなお高いものの、こうした見通しが実現する確度は、引き続き、少しずつ高まっている。』(前回1月)
今回の特徴は「見通し期間を通じて2%乗せ」というのを明確に示した(1月は2025年度がプラス縮小を言って2%かどうかについてはスルーしている)のですけど、実は3月声明文において、
『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、来年度にかけて、既往の輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響が減衰するもとで、政府による経済対策の反動がみられることなどから、2%を上回る水準で推移するとみられる。その後は、これらの影響の剥落から、前年比のプラス幅は縮小すると予想される。この間、消費者物価の基調的な上昇率は、マクロ的な需給ギャップがプラスに転じ、中長期的な予想物価上昇率や賃金上昇率も高まるもとで、「物価安定の目標」に向けて徐々に高まっていくと考えられる。』(3月声明文)
情勢判断を示した声明文別紙にはこう記載していますが、そもそもの政策決定を行った部分では
『1.日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、賃金と物価の好循環を確認し、先行き、「展望レポート」の見通し期間終盤にかけて、2%の「物価安定の目標」が持続的・安定的に実現していくことが見通せる状況に至ったと判断した。』(3月声明文)
となっていまして、まあ結局の所3月の時点で「先行き見通しは物価目標達成です」と言っている訳ですので、本来なら4月に政策調整しても良い位なのですが、まあ3月にやったばかりで4月に利上げというのも何なんので、というのはまあ分からんでもない。
でですね、話が総裁記者会見に戻るのですが、
https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2024/kk240430a.pdf
12ページのケツからの質疑応答なんですけど(さっき(土曜日)の更新では割愛した物件です)
『(問)さっき物価の見通し、何度か先ほどから上振れリスクという話、上振れの要素があるってお話が出てましたけど、3
月にマイナス金利解除した際、この場ではどちらかというと緩和的な金融環境続くと、緩和的なスタンスってのがすごい強調されてたように感じたんですけど、その
3 月に考えていたときよりは確度も高まって、追加の利上げの時期が近づいているというふうに進展してきてるっていうふうなことなんでしょうか。』(ここと次の部分は直上URL先4月30日総裁会見より)
という質問に対して、
『(答)3 月時点と比べて、現在にかけて入ってきた情報を基準に判断するとどうかということだと思うんですが、ここ
1 か月強に入ってきたいろいろなデータ、情報等は、かなりの程度、3 月時点でこうなるだろうというふうに予想していた姿に近いものだったというふうに判断しています。』
『ただ、その中で原油価格や円安の動きというのは、ややそこから少し上方にずれた動きであって、今のところ、先ほど来申し上げているように、「第一の力」のところに影響を及ぼす動きであるけれども、「第二の力」への影響の度合いを今後注意深くみていくということかなと思っております。』
って回答ったのですが、この前段部分が違和感ありありで、いやだってあのクッソ強い短観だってあの時点で本当に予想できたのかよ、というのがある訳でして、4月って結構上振れしてただろと思うのですが、これは4月に上振れしたというのを認めてしまいますと、「以上のような経済・物価の見通しが実現し、基調的な物価上昇率が上昇していくとすれば、金融緩和度合いを調整していくことになるが」の方との兼ね合いが出てきてしまうので、ああいう回答をしているんだな、というのがまあ読み取れるわけですよ。
まあそういう意味では植田さんって正直者ちゃあ正直者でして、こういう時は「ここ1か月ほどの間で入ったデータ自体は特に大きな見方を変えるものではありませんでした」とでも言って置けばよいのに、わざわざ「予想通り」とか言ってしまって価値判断を入れてしまう訳ですが、これはデータの価値判断を示すことによって政策調整に繋がってしまうので、予想通りということにしておかないと、ってのを示している訳ですな、まあそういう意味では「わかりやすい」人なんですよね植田さんってきっと。
でまあ会見ネタの方でも申し上げましたが、今後はこの「基調的物価」とかいう謎の概念と、「見通し通りに推移している事を確認」という2点が政策調整をする際の屁理屈(実際には円安批判や物価高放置批判によって日銀批判が高まるとションベンチビって泣きながら利上げに追い込まれるんですけどそれはさておき)となりますし、その屁理屈で言い逃れができなくなった時に素直に利上げするのか、はたまた別の屁理屈を繰り出してくるのか、というのは見世物としては面白いがそれに振り回されるワシら的にはエエカゲンニセエという感じではありますな。
・上振れ下振れに関しては今回はどうでも良くて問題は次回です
3ポツ目以降はサラサラ流しますね。
『・2025 年度までの見通しを前回の見通しと比べると、成長率については、2023
年度と2024 年度は、個人消費を中心に下振れているが、2025 年度は概ね不変である。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比については、2024
年度が上振れているが、2025 年度は概ね不変である。』(今回4月)
『・前回の見通しと比べると、成長率については、2023 年度が幾分下振れ、2024
年度が幾分上振れとなっている。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比については、2024
年度は、このところの原油価格下落の影響を主因に、下振れとなっている。』(前回1月)
これは展望レポートの見通しの前回対比文言なので3月声明文別紙には記載はありません。でもって今後ですがここの上振れ、下振れが重要になる、という謎のプレイになるわけですな。
・リスク認識のリスクバランスも次回からは重要とお気持ち成分が更に強まる政策運営ですなw
4ポツ目はリスク認識ですがまあここはそう極端に変わることは(何とかショックでもない限り)変わらん。
『・リスク要因をみると、海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、わが国経済・物価を巡る不確実性は引き続き高い。そのもとで、金融・為替市場の動向やそのわが国経済・物価への影響を、十分注視する必要がある。』(今回4月)
『・リスク要因をみると、海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、わが国経済・物価を巡る不確実性はきわめて高い。そのもとで、金融・為替市場の動向やそのわが国経済・物価への影響を、十分注視する必要がある。』(前回1月)
1月展望と全文一致ですし、
『・リスク要因をみると、海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、わが国経済・物価を巡る不確実性はきわめて高い。そのもとで、金融・為替市場の動向やそのわが国経済・物価への影響を、十分注視する必要がある。』(3月声明文)
3月声明文別紙とも全文一致ですのでここはさておきまして5ポツ目に参りますと、
『・リスクバランスをみると、経済の見通しについては、2024 年度以降、概ね上下にバランスしている。物価の見通しについては、2024
年度は上振れリスクの方が大きいが、その後は概ね上下にバランスしている。』(今回4月)
『・リスクバランスをみると、経済・物価のいずれの見通しについても、概ね上下にバランスしている。もっとも、物価については、長期にわたる低成長やデフレの経験などから賃金・物価が上がりにくいことを前提とした慣行や考え方が社会に定着してきたことを踏まえると、賃金と物価の好循環が強まっていくか注視していくことが重要である。』(前回1月)
前回はまだ緩和政策継続中でしたから物価目標達成に向けたパスに関して色々と注文がついていましたが、3月の時点で「見通し通りにいけば達成」という事になりましたから、その注文文言が外れてスッキリとなりました。でもって今回って基本「バランス」でして、2024年の上振れって別にその先の見通しが上振れになっていない限り「テンポラリー」で済ませるものなので政策判断の屁理屈的にはどうでもよい、という結論になりますので、まあ要するにこれは4月時点では「リスクはバランス」になっていますので、7月展望の時にリスクバランスが上にぶれた場合も政策修正の理由になる、ということですから、リスクバランスに関する発言を今後誰かがしてくれるのかどうかは知らんけど、まあ金懇とかがあったら是非そこは質問して頂けるとありがたく存じます。
#市場ネタとかその辺もあるのですが今朝はこの辺で勘弁していただきたく