白川方明総裁(2009年度下期)
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白川方明(まさあき)総裁
白川さんの略歴(日銀Webより)
昭和24年9月27日生
昭和47年3月 東京大学経済学部卒業
昭和47年4月 東京大学経済学部入学
信用機構課長、企画課長を経て平成6年5月大分支店長
平成7年12月 ニューヨーク駐在参事
金融研究所参事、国際局参事を経て平成9年12月国際資本市場担当審議役
企画調査担当審議役を経て平成17年7月日本銀行理事に就任
平成18年7月退任、京都大学公共政策大学院教授に就任
(実質的な前職:日本銀行理事)
平成20年3月20日 日本銀行副総裁に就任
平成20年4月11日 日本銀行総裁に就任
詳しくはこちら→http://www.boj.or.jp/about/organization/policyboard/gv_shirakawa.htm/
例によって発言を半期ごとにファイル分けしています。
2009年上期
2008年下期
2008年上期
2009年下期のお題は以下の通りです。
2010/03/23「総裁定例会見続き」
2010/03/19「ロジック崩壊中の政策で説明ロジックも厳しい総裁定例会見」
2010/02/23「定例会見のその他部分から」
2010/02/22「定例記者会見ではインフレ目標値に関する質問が多いようで」
2010/02/19「定例記者会見・・・なのですがメディアの日銀VS政府っぽい報道バイアスが気になる」
2010/02/04「講演で白川さんは相変わらずの新興国バブル警戒+輪番増額にも消極的」
2010/01/29「定例会見から」
2009/12/25「講演2本から」
2009/12/24「記者会見続き」
2009/12/22「物価安定の理解の明確化公表に伴う記者会見より」
2009/12/09「臨時決定会合前日会見からいまさらながら読み取れる事」
2009/12/07「1日臨時決定会合の会見から」
2009/12/01「白川総裁講演が妙にハト派チックですが」
2009/11/25「会見では相当丁寧に説明しているのですがメディア的にはそう反応しないでしょう」
2009/11/17「バランスシート調整に関する講演、先行きの見方は厳しいです」
2009/11/09「リスクはバランスという話のようで」
2009/11/04「総裁定例会見から」
2009/10/26「東大での講演から少々」
2009/10/21「総裁定例記者会見続き、どう見てもやる気満々ですが・・・・」
2009/10/20「総裁のここもとの発言はすっかり解除やる気満々に」
2009/10/16「総裁定例記者会見、企業金融施策を技術論で何とか突破しようとする白川総裁」
2010/03/23
ではまずは総裁会見から。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk1003b.pdf
○良く見たらさすがに認識してましたな(^^)
金曜に新型オペの乗り換え方式に関して悪態をついた訳ですが、よくよく見たら(汗)最初の所でこんな説明を。「何でこのタイミングで実施したんですか」という質問がありまして、それに対する総裁の答えがありました。3ページより。
『次に、なぜこのタイミングかという点です。(割愛)今回は、企業金融支援特別オペが3月末で完了しますので、4月以降はこの残高が漸次減っていくわけです。既に昨年秋に公表した通り、この特別オペの残高が減っていった後は共通担保の資金供給オペを拡充してこれを活用していくという方針を公表しています。』
当たり前ですがその点は言ってたということで(汗)。
『この共通担保の資金供給オペの中に、固定金利型と金利入札型があり、こうしたオペをどのように使っていくのかということを示していく必要があります。そこで、改めてこのタイミングで日本銀行として粘り強くデフレからの脱却という政策課題に対処していくという方針を明確にしました。』
・・・・しかしこれだと金曜に嫌味ったらしく引用した「期間を伸縮的に選べる共通担保の方が企業特別オペよりも柔軟性が高いので利用者にも便利」という話とは合わないのですけれども、もしかして「固定金利型で実施するのは企業特別オペと同じように金利を低い状態にすること」であり、「3か月の期間で実施するのはより長い金利の低下を促すこと」というヤヤコシイ説明になっているのでしょうか、わけわからんけど。
○為替とか株価に関する言及をよりトーン強めに
まあ要するに今回の措置って政治および日経新聞(しかし決定翌日の自慢たらたらの解説記事は見苦しいったらありゃしませんでしたな、だから日経新聞は嫌いなんですけどね。相変わらず政治屋的な発想と結論先にありきの取材姿勢が反映されてますなあという感じです)との対話であり、為替市場や株式市場(まあ基本的には為替市場だと思われますが)との対話であって、金利市場がどうなっても知らんがな(短期金利だけは上昇されると困るでしょうけれども)という所でしょうからこういう話になるのも宜しいのでありますが。
固定金利オペの効果に関して説明している同じく3ページめからの総裁の説明も殆ど「市場金利」の事はスルーとなっているのが味わいの深いものがあります。
『(答) まず、固定金利オペについて、改めて金融緩和の効果がどのように浸透しているかを点検してみる必要があると思います。昨年12
月に固定金利オペを導入して以降の変化について3点申し上げたいと思います。』
『1つ目は、ターム物金利が低下し、その結果、貸出金利も低下してきているということです。』
ターム物金利はまあ確かに2bpとか3bpとか下がりましたが、いきなり貸出金利の話が出てくるのが味わいのある所です。下がってるんですか本当に?
『2つ目は、昨年11 月末にかけて、企業を中心にマインドがかなり下振れていったということがありましたが、こうしたマインドの下振れに対して、この措置は一定の歯止めをかける効果があったと思います。そのことが株価あるいは為替レートにも反映されていると思います。』
株価と為替への言及キタコレ。
『3つ目は、これは固定金利オペの効果だけではありませんが、大きな金融政策の効果を考えてみた場合に、企業の収益率と資金コストの関係が、確実に金融政策の効果が発揮される方向に変化していると思います。(数字的な説明割愛)』
ということで、要するに企業収益率が上昇して借入金利が低下したので緩和効果がより強くなるという話をしているのですな。もはや市場金利だの社債のスプレッドがどうしたこうしたという話ではない世界になってきているという事でございますが、まあ今後の金融政策というか追加緩和で何がどうなるという話に関しては、正直言って金利市場見てても別に何の示唆も無いということですな、うんうん。
○具体的な数値を決定会合で決めなかった事に関するツッコミ
まあ実際問題的には金曜に申し上げたように、本来は金利がディレクティブであってその中でどういう運用をするのかは決定会合マターでは無いと思いますけれども、その逆サイドの論点からのツッコミ質問が8ページめから。
『(問) 今回、固定金利オペの増額が決まりましたが、金額について20 兆円と決まった背景をお聞かせ下さい。金融政策決定会合で採決されたのは、20
兆円についてではなく、大幅に増額することによって、やや長めの金利の低下を促す措置を拡充することであり、具体的に10
兆円から20 兆円に増やすということは、採決の対象ではなくて執行部の裁量であると理解しています。』
そういう結果でしたな。
『まず、15 兆円あるいは25 兆円ではなく、どうして20 兆円ということを執行部が決めたのかということが、大きな疑問としてあります。また、各メディアが今回措置を追加緩和と受止めた理由は、オペの金額が10
兆円から20 兆円に増えたからで、その金融緩和の度合いが10 兆円から20 兆円に増えたことをもって理解しているわけです。その具体的な20
兆円という数字自体が、ボードメンバーの採決ではなくて執行部の裁量によって決まるということは、大きく言えば、日本銀行の政策決定の枠組み自体が軽視されているような印象を受けるのですがいかがでしょうか。』
そりゃまあそう言われるわな。ということで、中々今回の措置はロジック的には苦しい所が多いのよね。で、その答えですが、大変に苦しいロジック展開をお楽しみください(^^)。
『(答) 先程説明したこととかなり重なると思いますが、かつての量的緩和政策の時には、量それ自体を誘導目標として設定し、これを達成するように調節をしていたわけです。』
で、今回はそうではありませんという話が続く。
『つまり、量それ自体に意味を持たせて運用していたわけです。今回、私どもが採用している金融政策は、量的緩和ではありません。あくまでも、無担保コールレート(オーバーナイト物)を0.1%前後で推移するように促すということです。また、やや長めの金利の低下を促していくということが私どもの考えです。』
だったら決定するのはその点だけであって、その実施の為に新型オペを増額するのか単に通常の共通担保オペを強化していく(期間を長くするとかオファー額を増やしていくとか)のかは決定事項である必要はないと思うのですが、なにゆえ今回はわざわざ「新型オペの強化」を謳ったのかという話になると、「やっぱり量をアピールしてるじゃん」という話になる訳ですな。
いやまあそれを言い出すとFRBだって資産買入や各種流動性オペ実施の際にやたらめったら「量が沢山ですよ」というのをアピールしつつも「我々の実施する政策は日銀が以前実施した量的緩和政策ではない」と言ってた(流動性供給プログラムは市場機能の回復であって、買入は金利の押し下げという話をしてました)ので、まあその辺は日銀も遅ればせながらインチキロジックの世界へようこそという所なのでしょう。
なお、FRBは最近になって資産買入の効果を超過準備による市場金利の押し下げみたいな話をしだしているのがチャーミングなのですが、それを平然と主張するバーナンキ議長はもはや学者ではなく政治家的な風格を漂わせているのが大変に(良い意味でも悪い意味でも)素晴らしい所でございますが、白川総裁はそーゆー大狸の芝居をするのは失礼ながらヘタクソそうに見受けられるのでありまして、今後この辺の説明大丈夫かいなと思うのであります。
とひとしきり悪態をついた後で総裁の説明の続き。
『これを実現する上で、どの程度のオペの金額が適切かということについては、更なる金利の低下を促すという要請と短期金融市場の機能を維持していくということのバランスが大切です。それからターム物金利にも色々なものがあります。』
いやもう市場機能って短期のイールドカーブがフラットになってしまった時点で終わってますし(元々金利があってまともに市場が機能してた時代が短すぎてターム物の資金取引市場が拡大するヒマも無かったというのもありますが)、市場機能維持とか言う前に短期市場関係者がワシントン条約の対象になりそうな絶滅危惧の珍獣状態になってますからねえ。
ターム物金利にも色々なものがあるってえのはTIBORの話だと思うのですが、空気を読まず(懐具合という点で言えば意味空気を読んでいるのだが^^)にTIBORの金利は大して動かないのでありました。なお苦しい説明は続く。
『従って、オペの金額をあらかじめ幾らというかたちで設定すると、結果として、先程申し上げたバランスをうまく達成できません。そこで、具体的なオペレーションは金融市場の調節の現場部署に委ねるということです。ただし、必ず毎回の金融政策決定会合で、執行部が、どのような方針で調節の運営をしたかを報告するわけです。その対応が適切でなければ、そこでまた判断していくことになります。このように、オペの金額それ自体が操作目標ではありませんので、先程のご質問にあったような、日本銀行の政策決定の枠組みに関する法律の立て方に鑑みておかしいのではないかという批判は、まったく当たらないと思っています。』
というかそもそもオペの細かい金額まで政策決定会合で決める方が如何なものかという所ですので、確かにまあおかしいのではないかという批判は当たらないのはそうなのですが、本当はここで記者の方が逆に「そのようにおっしゃるという事は逆に言えば具体的なオペを特定して増額をするという話をわざわざ決定事項に加える必要は無かったのではないですか」という質問をして欲しかった所ではございます(そうすると引用の最初の答えが返って来るのでしょうけれども^^)。
○反対理由を見てみたい
さっき引用した最初の質疑の所ですが。
『まずは2人の委員の反対理由ですが、「当面の金融政策運営について」の公表ペーパーの脚注に書いている通り、「固定金利オペを大幅に増額することにより、やや長めの金利の低下を促す措置を拡充することについて、反対した」ということです。背後にある詳しい考え方については、議事要旨等で公表する扱いにしておりますので、ご容赦下さい。』
理由として勝手に妄想しますと、(1)既に短期国債などの金利は低下しており、リファレンスレートであるLIBORやTIBORを下げるのは今般の措置によっても直接的な効果が無いので実施する意味が無い、(2)景気見通しを引き上げている上に、リスク認識を特に変化無く引き続きバランスしているという状態の中で追加緩和を実施するのは政策ロジックとしておかしい、という所ですが、これはまあ議事要旨を見たいものです。
とまあ総裁会見はそんな感じで。
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2010/03/19
では続きまして総裁会見から色々と論点整理の続き。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk1003b.pdf
○オペの量を増やす決定を緩和としながら量的緩和ではないとな
質疑応答の6ページの下から始まります。
『(問) 今回の措置は、広い意味での量的緩和政策の強化という位置付けでよろしいでしょうか。また、足許、金利は実質ゼロ金利にあるわけですが、今後の政策運営の柱というのは、資金供給の量の操作になっていくという理解でよろしいでしょうか。』
『(答) この席で何度も申し上げている通り、当座預金残高を目標にして金融政策を運営していくといった運営方式は採っていません。その意味で、量的緩和政策を拡充するということではそもそもありません。』
量を増やす決定をしているのですが、声明文に『固定金利オペを大幅に増額することにより、やや長めの金利の低下を促す措置を拡充することとした』(決定会合声明文より)とあるように目的が金利という事ですな。
#本当は3か月TBも6か月TBも0.12%なのに何の金利を下げる積りなのでしょうか??という質問を記者の方にして頂きたかった訳だが
『昨年12 月に申し上げたのは、日本銀行が供給する資金の供給量が制約になって金融機関の行動が制約される、あるいは企業の行動が制約されるという事態は防ぐということです。』
金融システム問題もクレジットクランチ問題も無いのに今更何の話だか。
『これは常々申し上げています。今回の措置は、発表にある通り、やや長めの金利の低下を促すという措置を拡充したということです。』
で、さっきの話に戻るのですが、もし「やや長めの金利の低下を促す」というのを決定するのであれば、そもそも論としては決定すべきはその金利に関する話の部分だけであって、その手段として新型オペを増やすのかそれとも共通担保オペを拡大するのか、はたまたオペ期間を長くするのかとかというってのは本来は調節担当部局が市場動向を見ながら決定するものだとは思うのですけど、政治との対話や日経新聞との対話がややこしい事になるにつれ、その辺の本来手段の話であって、政策決定会合で決めるような話ではない部分にドンドン決定会合が入り込んで来るの図という何だかな〜という所であります。
○そう思うなら物は試しに期待を外してみたらと思うのだが
この会見って中々オモローな質問が多いので本当は延々と引用したいのですけれども、時間と量の都合上(朝書いてるから時間がねえんじゃネーノというツッコミは全力で却下)今日はたぶん少なめになる予定ですが、この質問はまたキツイですなあ。11ページのケツから。
『(問) いくつかのメディアが、今回の決定会合に先立つ事前報道で、日銀の固定金利オペが拡大されるのではないかとのニュースを報じました。これがマーケットに織り込まれて、日銀のアクションがなかった場合には失望のリアクションがあるのではないかとの懸念がありました。また、従来から続いていることですが、今回の決定会合の前に政府の側から、日銀の緩和についての期待が連日のように寄せられました。こうしたメディアの事前報道と政府からの期待表明という2つのファクターは、今回の日銀の決定にどのような影響があったのか、あるいは政策委員の皆さんはどのように受け止めたのかについてお伺いします。』
・・・・これはまた答えられない質問を(^^)。まあこんなの聞く位ですから日経新聞の人では無いでしょう(^^)。
『(答) ご質問は政策委員の皆さんということですが、私自身がどのように感じたかということについて申し上げます。』
で??
『まず、市場との関係ですが、市場というものは、経済の先行きに関する様々な見方が投影されており、それだけに重要な情報を提供する場だと考えています。しかし、近年の金融危機の経験が改めて示すように、金融市場は時として行き過ぎるということも事実です。また、金融政策が、市場の期待に添うかたちで常に運営されると、結果として政策が経済の変動をかえって大きくするということも今回の危機の教訓の1つだったと私自身は受け止めています。』
アラン・ブラインダー元FRB副議長が「自分の尾を追う犬」に例えた件でございます。誠にその通りであると存じます。
『その意味で、私は、市場の動きを注意深くみると同時に、金融政策の運営にあたっては、あくまでも中長期的な経済・物価の姿を点検していく姿勢が重要であると思っています。端的な言葉で申し上げると、金融市場の短期的な動きに過度に引きずられて政策運営をしていくことは、中央銀行としての仕事をしっかり果たすことにはならないと思っています。』
全くその通りでございます。
『また、逆に、金融市場がある反応をしたからといって、その織り込まれたことは実施しないという考え方も適切ではないと思っています。市場の反応について時として自分達と感覚が違うというケースであっても、また、感覚が合っているケースであっても、中央銀行としては中長期な姿をしっかり見据えて運営していくという軸からぶれてはいけないと強く思っています。』
では何故景気の現状判断を引き上げて、先行き判断を据え置いて、リスク認識を上下バランスのまま据え置く中で(=現状判断を上げたとしてもリスク認識を下げれば緩和強化は理屈としてはあり得ると思います)緩和措置の強化をしたのでしょうか??という質問はもうちょっと前の方にありますが(^^)。
『次に、政府との関係ですが、まず、今申し上げた通り、中央銀行が、物価安定のもとでの国民経済の健全な発展ということを意識して中長期的な観点から金融政策を行っていくことは非常に大事なことです。』
はあそうですか。
『中央銀行がそうした目的に照らしてしっかり行動している、あるいは、しっかり行動していると認識されているということは非常に大事なことです。また、そうした中央銀行の姿勢を社会が尊重しているということも非常に大事です。』
この前は「政府が」って言ってましたが、「政府VS日銀」的なフレームアップの絶好のネタにされてしまいましたので、反省して言い換えたものと思料されます(^^)。
『私としては様々な意見を聞いた上で、日本銀行法の精神に従って、政策委員会が責任を持って判断し、決定することを貫いていくことが大事だと思っています。』
だったら今回はパスして4月に物価安定の理解の点検作業と共に時間軸の強化というか、物価目標の見直しを行うのが筋だったんじゃないんですかねえと思うのですけれどもね。
○これまたヤケクソ説明なのですが
まあ今回の質疑応答は中々いい感じでロジックが崩壊してる件についてのツッコミが大量に入っているのが実に(;∀;)イイハナシダナー的な会見なのでございますが、今回の声明文にもあったように、特別オペの残高が減る中で今回のオペ増額をしたという説明をしています。「何故この時期に緩和?」という質問に対する回答の最後の部分でございます。質疑応答の8ページ。
『その上で、そういう時期になぜ追加緩和を行うのかということですが、先程申し上げた通り、まず、企業金融支援特別オペの残高は4月以降確実に減少していきます。そこで、これに対してどういう方針で臨むのかということについては、いずれにしても明らかにする必要があります。また、今このタイミングで私どもが姿勢を明確にすることにより、少なくとも金融緩和の姿勢に関する理解がより広まり、景気に対してプラスの方向に作用するわけです。もちろん、これだけで直ちに景気の雲が晴れるということではありません。』
後半部分の説明はほとんどヤケクソの香りが漂って参りますが(^^)、姿勢を見せてどうにかこうにかとか最早気合というか精神論の世界でございまして、いやまあそれを美しく言えば「アナウンスメント効果」であり「期待形成に働きかける政策」という所なのでしょうけれども、いい感じでヤケクソになっております。
で、更に「またまたご冗談を」というのは実は前半部分。『これ(=特オペの残高落ち)に対してどういう方針で臨むのかということについては、いずれにしても明らかにする必要があります』という話をしているのですけれども、実はこの点って、特オペの終了を決定した10月30日の決定会合でこのような事を声明文に書いているのですな。
『4月以降は、より広範な担保を利用できる共通担保オペ等の金融調節手段を活用して潤沢な資金供給を行う態勢に移行する。』(昨年10月30日決定会合における声明文から)
まあその点を今回明確化したと言えばそれはそれで話の筋は通るかなあとか思ったのですが、そこであたくしは当日の総裁記者会見の発言を見つけてしまう所がチャーミング(^^)。
『来年4月以降は特別オペを完了し、共通担保資金供給オペ等、従来からあるオペで資金を潤沢に供給する態勢に移行することを今の時点で明らかにしておくことによって、市場での様々な不確実性が生まれることを防げると思います。』(10月30日白川総裁記者会見より)
・・・・・「明らかにしておく」とかいるとか言ってるじゃんorz
『共通担保オペと特別オペの違いを考えた場合、特別オペは、金利を0.1%に固定して金額無制限で供給しているほか、期間を3か月と限定しています。このような方式は、リーマン破綻以降のように金融市場が極端に収縮している時には非常に効果的であったと思います。ただし、現在のように金融市場の混乱が解消した後は、中央銀行が資金を潤沢に供給する上で、担保にしても、期間設定にしてもある程度伸縮的に選べる方が一般的には対応力が高いと思います。』
・・・・・期間3か月の固定金利オペよりも通常のオペの方が使いやすいとなorz
いやはや、まああたくしも「特オペの後継として新型オペを実施する」というのが一番日銀の説明で無理にならないとか申し上げていたクチなので、あまりこういう嫌がらせのようなツッコミをするのもブーメラン的な部分があるのですけれども(笑)、これはまた凄いブーメランではございましてオソロシスという所でしょう。
ま、それ言い出したらBOEとかFRBとかも最近の資産買入に関する見解がコロコロ変わる(バーナンキの議会証言とか雪で延期になった回と、本番の回でニュアンスが違っている位なのですから)位ですので、この程度のブーメランをは(・∀・)キニシナイ!という所でしょうね!!!!
#という訳で他の論点は後日やるかもしれませんしやらないかもしれません
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2010/02/23
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk1002b.pdf
どうでも良いのですが、暫く前から【記者会見】というような項目の入れ方をしているのですが、ついどこぞの某巨大掲示板のスレタイを思い出すので、この際頭だけではく後ろにも【】で何か入れるというのはどうでしょう(嘘ですよ嘘)。
○デフレ脱却には所得上昇期待が必要ですよと
最初でデフレの構造的要因がどうのこうのという質問があったのですが、例の体温がどうしたという言いたいことは判るがちと難しいのではないかという比喩の話をしているのでその辺から。
『次に、デフレについてのもう少し大きな文脈でのご質問にお答えします。やや比喩的に答えると、デフレは経済の体温が低下した状態です。より根源的な問題がデフレというかたちで症状として現れているといえます。従って、その克服のためには、基調的に体温を上げていくための体質改善あるいは治療が必要だと考えています。』
とはいえ、体質改善や治療をする時に体温を人工的に上げておいた方が治療に役立ちませんかとか言われそうな気がするのでこの説明も何か微妙な気がするのですけど。
『生産性の向上に地道に取り組むことによって、趨勢的な成長期待を高めていくことが大事だと思っています。』
というのもここの所良く説明してますな。
『将来にわたって所得が増えていくという期待が生まれてきて初めて、本格的に物価が上昇していくと思います。』
これはまあそうですねと思うのでありますし、経済の体温がどうのこうのという話をするよりも、一般向けにはこういう話をもうちょっと強調した方がよろしいのではないか(共感されやすいでしょうし)と思うのですがどうなんでしょ???
ただまあこれを強調し過ぎると「最低賃金時給1000円にすべし」とか言い出す人が連立与党内にいるので、いきなり連立与党方面が斜め上の方向に施策を打って来そうな悪寒もするのがテラオソロシスな所なのではございますが。
『生産性の向上は、現在日本経済が直面している最も大きな問題だと思っています。生産性の向上自体がわが国経済にとって不可欠であるとともに、デフレの克服のために大事な課題であると考えています。』
んでまたいつもの話をしているのですが、一応引用しておきますです。
『では、その生産性の向上をどのように図るかというと、民間企業と政策当局双方の努力が必要であるということです。やや抽象的な言い方になりますが、民間企業については、高い成長が見込める新興国の需要を積極的に取り込むとともに、国内では消費者の財・サービス需要を掘り起こし、これに対応した供給体制へと資源配分を見直していくことが必要だと思います。こうした需要の掘り起こしと資源の再配分によって、経済全体の新陳代謝が高まるとともに、企業の生産性も向上すると思います。』
『政策当局については、このような企業の経営努力を後押しするために、企業が熾烈なグローバルの競争環境に置かれていることも踏まえて、様々な制度や仕組みを見直すことが重要だと思います。また、このような経済の大きな変化・調整が生じる過程では、雇用をはじめ様々な面で資源の移動が避けがたいわけです。この間に生じる摩擦を最小限に抑え、資源の移動を円滑にするため、社会的なセーフティーネットを用意することも、政策当局の重要な役割であると思います。』
ちょっと思うのですが、段々この部分の説明が長くなっているような気がする(今度ちゃんと確認してみますが)のですが(^^)。
以下日銀が金融緩和をして云々の部分は割愛します。
○インフレ目標がどうしたこうしたの話はなお続く
これはまた巧みな釣り質問。
『(問) 先程、インフレーション・ターゲティングを採用している中央銀行とそうでないところの相違はそれほど大きくないとのご説明がありました。しかし、総裁ご自身あるいは日本銀行としては、インフレーション・ターゲティングを採用すると大きな弊害があるとお考えだと思うのですが、どうして目標の数値を固定してしまうと危ないのかという点について、もう一度詳しくご説明下さい。』
これは「金融政策を単一の経済指標の数値に固定的な目標を置くと弊害が大きいですよね」と白川さん的には聞こえる質問ですが、そこにインフレターゲットという言葉を入れる所がチャーミング。
『(答) 先般、G7に参加しましたが、G7の国の中でインフレーション・ターゲティングを採用している中央銀行は、英国とカナダです。残り5つの国は採用していないわけです。なぜ日本銀行がインフレーション・ターゲティングを採用していないかという問題設定もありますが、逆に言えば、英国とカナダはなぜ採用しているのかという問いの立て方もあるかと思います。』
残り5つったってECBはみんなまとめて金融政策一緒なのですから、日米欧はターゲットとしては実施してないという方が良いのではないかと思うのですが、そこはちょっとだけ工夫してますね(^^)。
『インフレーション・ターゲティングについては、「ターゲティング」という言葉に皆の関心が集まりがちですが、私自身は、実際には金融政策を運営していくときの説明の1つの枠組みだと思っています。』
で、BOEの話。
『例えば、BOEの先日の金融政策決定会合発表文、あるいはインフレーション・レポートをみると、物価上昇率を、通常言う意味での「ターゲット」すなわち「目的」にした政策運営をしているわけではありません。現在、英国の足許の物価上昇率は、3%を超える上昇率に上がってきています。そうなると、通常は、そこで金利を引上げていくということが自然に想定されます。これが、通常言うところの「ターゲット」という言葉に最も馴染む感じです。しかし実際には、そういう政策運営はしておらず、むしろ今、英国はきわめて緩和的な金融環境を維持しています。』
さいですな。次がECBの話。
『ECBはインフレーション・ターゲティングを採用していませんし、自分たちは採用しないということを繰り返し言っています。これは、通常言う「ターゲット」の意味で短期的に足許の物価上昇率と目標値との間を埋めていくような政策運営をしていくという見方が生まれると、結局、金融政策が最終的に目標とする持続的な成長にむしろマイナスになる側面もあると判断しているからです。必ずこうなるというわけではありませんが、そういう側面もあるのです。』
『インフレーション・ターゲティングが成功するための大事な条件は、インフレーション・ターゲティングとは中長期的な経済・金融の安定を実現していくための説明の枠組みである、ということについて十分に理解があることです。逆に言えば、インフレーション・ターゲティングが、通常言う「ターゲット」の意味で議論されているような政策運営であると理解されると、おそらく上手くいかないと思います。』
結局のところですな、メディア的に言えば「インフレ目標の採用で政府と日銀が対立!!!!!!」という話をするとネタとしてはオモロイので煽るのですけれども、「目標を設定してどうしたこうした」という話になると上記のような話になって、話が無限に平行線あるいはループするだけの話だと思うのですよ。それよりも論点とすべきなのは、「0%〜2%で中心1%」という「中長期的な物価安定の理解」で示された数値の設定がどうなのかという所だと思うのですが、どうも「インフレ目標」という言葉そのものがキャッチーなせいで、報道ベースを見てるとそちらの話ばかりで話が空転しているような気がする。
でも、これがまた惜しい事に、菅直人大先生におかれましては、何故か「目標1%」という話をしているので、「中長期的な物価安定の理解」で示される数値と数値面で言えば同じであって、政府VS日銀という絵が描けないという問題点があるのですな。まあどうせ菅直人大先生の場合はこの前出していたそれを実施して何がどう成長するのか全く意味が判らない「成長戦略」とか言う名前の便所の落書きで「名目3%成長、実質2%成長」と銘打ったから「物価上昇目標1%」って言ってるんだと思うのですけどね!!!
○ブランシャールペーパーの話キタコレ
ここのやり取りはウケタ。
『(問) 先週、IMFが論文を出し、目標とすべき物価上昇率は現在各国が示している2%といった水準ではなく、もっと高い、例えば4%程度が望ましいのではないかと問題提起をしています。それについてどのように受け止められたかお聞かせ下さい。』
もう待ってました!!と言わんばかりの(かどうか知らんが)切り返し。
『(答) ご指摘の論文は、IMFのブランシャール調査局長らによる個人名論文であり、IMFの提言が示されたものではないと思います。IMFのホームページを見てみますと、大変な量のペーパーが公表されておりまして、たくさんあるペーパーの1つだと認識しています。』
何と言う返し。しかし日銀だってペーパーとかレビューの類を「これは個人の見解」とか言って出してますけどいやまあいいです。
『この論文は、今回の世界的な金融危機を踏まえて、金融政策のほか、財政政策や金融規制を含む経済政策全般について改めてどのような教訓を引き出すべきかを検討したものです。論文では、物価下落のリスクに備え、予めある程度の物価上昇を容認し、金利の引下げ余地を確保するという、いわゆる「のりしろ」の議論を取り上げています。』
『このペーパーでは、今回の危機を踏まえてもう少し高めの目標インフレ率を設定した場合のコストやベネフィットを再検討してはどうかと提案しているわけです。ただ、ご質問にあった4%という数値は、あくまでも例として挙げている数字であり、しかも、これが望ましいと結論が出されているわけではない、ということも書かれています。よって、このような議論をどう考えるのかという問題提起だと受け止めています。』
と、あっさりと砲撃。
『日本銀行の物価安定の理解は、論文で指摘されているインフレ率の「のりしろ」も考慮に入れて設計しています。これは議事要旨等でも公表されていますのでご覧下さい。また、高めのインフレ率がもたらすコストやベネフィットのほか、過去のインフレ率の実績や国民の物価観など、様々な要素を考慮しています。こうした要素を考慮した結果、物価安定の理解について、「消費者物価指数の前年比で、2%以下のプラスの領域にあり、委員の大勢は1%程度を中心と考えている」ということを示しています。』
しかしのりしろを考慮したら下限はゼロにならん気がするのだが、まあ色々と説明している件は確かに読むには読んだ。
『あえて、ご質問の4%ということについて申し上げると、インフレーション・ターゲティングを採用している国の目標物価上昇率が2%だとし、そこに2%オンするということは、要するに2%の金利の引下げ余地があるということを意味するわけです。しかし、今回の世界的な金融危機を振り返ってみた場合に、あともう2%の金利引下げ余地があったら、この事態は防ぐことができたかという問いを立てた場合に、私にはとてもそのようには思えません。』
『これだけのショック、あるいはそのショックを引き起こす原因となった大規模な信用バブル、この発生をどう抑えていくかということの方が遥かに重要な問題意識だと思います。この点、IMFの論文では、金融の規制監督のあり方、それからこのペーパーでは必ずしも論じられていませんが、物価上昇率が低い状況のもとで長期間にわたって金融緩和政策を続けると結果としてバブルが起きてしまうということも深刻な反省となっているわけです。個人的に4%をどう考えるかということについては、今申し上げた感想になります。』
ほうほうそうですか。
○金融緩和継続と市場機能
強力な緩和効果と市場機能がどうのこうのという質問に対して。
『まず、金融緩和の効果についてです。日本に限らず他の先進国もそうですが、この1
年間を考えるとオーバーナイト金利は横這いとなっており、日本でいえば0.1%の状態が続いているわけです。このように、オーバーナイト金利自体は変わっていませんが、この1年間、あるいはこの半年、この3か月と区切ってみても、様々なかたちで金融緩和の効果は強まっていると思います。その意味で、金融緩和の効果は強まり、その効果が浸透しつつあり、それが現在進行形であると思っています。』
ということで固定金利オペの効果もあってターム物金利の低下や信用スプレッドが低下しているという話をしていますがそこは割愛して市場機能の部分。
『次に、市場機能についてです。ご質問の趣旨は、短期金融市場における市場機能の維持は図られているのかということだと思います。確かに、これだけ潤沢に資金を供給していますし、現在の低金利が続くということを明確にしていますから、どうしても市場取引が不活発になり市場機能が低下しやすいという面があることは、ご質問の背後にある問題意識の通りです。』
つーか低下してますが。
『しかし一方で、市場機能をしっかりと維持するということも非常に大事です。私どもの金融市場局で行っているオペでは、できるだけ市場機能の維持を図るための様々な工夫をしています。従って、以前と全く同じように市場機能が働いていると言うのは多分言い過ぎだと思いますが、私どもなりに努力しています。』
ただまあ短期の市場機能って言いましても、無担保コール市場はそもそも銀行のオーバーローンが解消された時点から機能が微妙に変わっている上に最近は益々取引低調なのは変わらないですし、レポ市場に関して言えば取引の規模としての額はでかいにはでかいですけれども、参加者のネームって資金の取り手も出し手もまあ固定メンバーみたいなもんで、そのミクロ中のミクロの中で動いてるという状況でして、しかも国債発行がこれだけ増えた関係でそもそも金融調節に頼らないといかん部分が大きいという状況なので、まーそこの部分で市場機能と言われましてもねえと。
それよりも、市場ちゃんとしては、動かないのも困りますが、イールドカーブが寝てしまうと最早やることが無し子ちゃんになるのでありまして、そういう意味で申し上げると「ターム物金利の引き下げ」というのはその時点で市場が干上がるのでありまして(涙)、あまり市場機能市場機能言わんでもよろしいがなという気はします。それよりも、手前で死ぬのは良いから、早い所金利が動かせるような経済情勢にしていただきとう存じますとは思いますが(涙)。
という悪態は兎も角(^^)、まあこの辺りの発言を見てますと、「ターム物金利は抑えるけれども、何となく足元のGCレートだけはベタベタ状態は避けますよ」という事なんでしょうな。なんつーか微妙にアレなオペレーションはこれからも続くと言う事ですので、来月23日の財政払い超の資金需給のコブ対策は今回も毎度お馴染みの四半期状態になるような悪寒。とフラグを立ててみる(笑)。
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2010/02/22
では総裁会見。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk1002b.pdf
○ブルームバーグは何ぼ何でも煽り過ぎだと思う
こんなニュースがありましたが・・・・・
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=ai8OR4yQatgc
日銀総裁が政府に異例の注文−市場安定のため「中銀の姿勢尊重」を
・・・・該当する部分を見るとこういう話をしているのですけど。
欧州ソブリンリスク問題に関する質問に対して。
『もっとも、今のご質問にもある通り、最近では欧州周辺国におけるソブリン問題を契機に、欧米先進国や日本を含め、財政の持続可能性に対する市場の関心が世界的に高まっていると思います。金融市場がグローバル化していることを踏まえれば、国際金融市場の安定を維持するために、私自身は2つのことが重要だと考えています。第1は、財政再建の道筋を示し、この点について市場の信認を確保することです。第2は、中央銀行の金融政策運営が、財政ファイナンスを目的としていないこと、言い換えれば、物価安定のもとでの持続的な経済成長を目的として政策運営が行われていることです。また、そうした中央銀行の政策姿勢を政府が尊重し、市場も信認しているということだと思います。国際金融市場の動きをみると、現在市場はソブリンリスクをそうした観点からみていると思います。』
日本の財政再建に関する質問に対して。
『日本銀行の使命は、適切な金融政策運営を通じて、日本経済が、物価安定のもとでの持続的な成長経路に復帰するように努めることです。そうした経済の姿を実現していくことは、財政再建を進める上でも、重要な条件の1つを整えることになると考えています。先程、中央銀行の金融政策運営は、財政ファイナンスを目的としたものではなく、物価安定を通じて持続的成長に貢献していくものであるということを申し上げましたが、そうした姿勢で臨むこと、そうした中央銀行の政策姿勢が十分信認を受けている、尊重されているということが大事だと思っています。』
・・・・・えーっと、これのどこがどう「政府に異例の注文」なのか全く理解に苦しむのでありまして、これはもう誤報のレベルに達してませんかと思うのですが、まあ一応ブルームバーグさんを擁護してみようとすれば、白川総裁が普段から民主党の財政運営姿勢に対して苦々しく思っているのを忖度したというかそういうのが思いっきり判ってしまうような表情だの言い方だのという事から、そういうヘッドラインになったともいえるかもね、と無理矢理ブルームバーグに代わって言い訳してみます。ただまあニュアンスが日銀公表の要旨通りだとすればちょっとあのヘッドラインはねえわと思うところであります。
そうやってメディアが「政府vs日銀」みたいなのを煽るのはデフレ脱却に向けた政策効果を心理面から減殺する作用もある訳でありまして、どうなのかよとは思いますが、まあ菅さんはあの調子で直ぐに「日銀に俺様が圧力を掛ければ動くんだ」というアピールというか力の誇示に余念がないですし、白川さんはまあ多分その辺を適当に韜晦するのがヘタクソそうですし、まあコマッタモンダという感じであります。
○物価安定の理解は目標数値ではありませんという話
火付け質問はこれでした(^^)。
『(問) 物価安定の理解は、CPIが0〜2%、中心値は1%です。先日の国会答弁でも、インフレターゲットというキーワードを使って色々ご説明がありました。これは、日銀としてインフレ上昇率1%を目標に定めていると受け止めてよろしいのでしょうか。』
まあ火付けを狙って質問しているのならお上手ですし、狙わないで質問しているのなら(物価安定の理解に関する根本的な部分を誤解しているという点において)記者クラブに出てくんなという質問ではございますが、きっちりと火付けになったようで、総裁はゼミ生に対する説明の如き説明を。これがまた超長いのよ。
『(答) 12 月18 日の金融政策決定会合後の説明の繰返しになりますが、私どもが発表しているのは、中長期的な物価安定の理解、物価安定とはどういうものかという一種の定義です。それについて各政策委員の理解を集めて、その結果は2%以下のプラスの領域であり、大勢として1%程度を中心と考えているということです。これは、あくまでも中長期的にみた物価安定とはどういうものかを明確に示したものです。』
目標ではないという話ですが、まあこういう言い方したら判り難いわな。
『その上で、ご質問では目標あるいは、インフレーション・ターゲティングという言葉が使われましたので、その言葉に則してお答えします。国会の席でも申し上げた事ですが、インフレーション・ターゲティングは、金融政策を運営する時の枠組みの1つであり、英国やカナダ等では定着しています。しかし、今回の金融危機を通じて、インフレーション・ターゲティングという枠組みについても、反省の気運が生まれてきているように思います。』
はて何ぞや。
『足許の物価上昇率が目標物価上昇率を下回る状況が長く続くもとで、物価の動向だけに過度の関心が集まった結果、物価以外の面では静かに蓄積されつつあった金融・経済の不均衡を見過ごし、結果として、金融危機発生の一因になったのではないかとの問題意識が、以前に比べて高まってきているように思います。』
つまり、足元の物価が安定しているので「バブルは崩壊してから対処すれば間に合うのでおっけーおっけー」と言ってたグリーンスパンのやらかしが直近にありましたし、まあその前の日本の資産バブルもそうですということなのでござんしょうな。つまり厳密に物価指数だけ見ての金融政策で良いものなのかという論点。
『インフレーション・ターゲティングが不適当だと言っているのではありませんが、インフレーション・ターゲティングを採用してきて、これまで比較的上手くいったと思われてきた国において、実は今、インフレーション・ターゲティングの問題をどう克服するかというのが、彼らの問題意識になってきているように思います。』
まだ全部読めていないのと、何を言ってるのかがイマイチ訳判らん事もあって、前回の量的緩和政策延長せずのBOE議事要旨のご紹介をしていませんが、どう見てもBOEの政策ロジックは足元矛盾だらけというか強く言えば論理的破綻状態になってねえか?という状況に(論旨が論理破綻してるから読んでて何を言ってるのか判らんというのもあります^^)なっておりまして、いやまあ苦労してるなあとは思います。
『私自身は、インフレーション・ターゲティングということや、どういうラベルを金融政策の枠組みに貼るかということを議論することにあまり多くのエネルギーを割いても生産的ではない、という感じがしています。インフレーション・ターゲティングを採用している国も採用していない国も、結果として金融政策の枠組みが、近年非常に似通ってきているという感じがしています。』
というのは重要な論点なのですが、惜しい事に報道ではこの部分の前半だけを切り取られてヘッドラインにされるので、「政府vs日銀」の話ばかりが煽られるという事になるのであります。
『似通っている点を3点だけ申し上げます。1つ目は、物価安定に関する何らかの数値的な定義あるいは目標を有しているということです。日本銀行に則して言えば、「中長期的な物価安定の理解」になります。2つ目は、先行き数年間というかなり長い期間の見通しを公表しているということです。日本銀行に則して言えば、展望レポートです。3つ目は、その上で、金融政策運営に際して、足許の物価動向だけではなく、中長期的に見た物価や経済、金融の安定をより重視する必要性への認識が高まっているということです。日本銀行に則して言えば、2つの柱による点検ということになります。』
インタゲ採用国の英国でもファンチャートや先行きの見通しなどを出していますし、米国ではその手のターゲットは無くて、「PCEコアデフレーターで1%から2%」が「何となくの目安」のようなファジーな設定になっていますが、こちらでも先行きの見通しを出すようになっていて、足元の数値に対してリジットな目標を設定してそれこそエアコンの自動運転みたいな事をするような政策運営はしていませんよというお話でございますわな。
『インフレーション・ターゲティングを採用しているかどうかということは、現在の金融政策の枠組みを議論する上で、意味のある論点あるいは切り口ではなくなってきているという印象があります。日本銀行自身は、各国の色々な経験を見ながら、インフレーション・ターゲティングを採用している中央銀行の良い部分、採用していない中央銀行の良い部分、それをすべて私どもなりに咀嚼して、それを組み込んだ日本銀行独自の枠組みを採用しています。』
ということなのですが、これがまたメディアに掛かると最初の部分だけをきっちり切り取って報道するのが報道バイアスというもの。いやまあ白川さんも会見で「説明すれば理解してくれる」というスタンスで説明していると思う(まあそれが当然の態度ではありますが)のですが、何せ相手の中には総裁の説明を理解しようとするよりもキャッチーなヘッドラインが取れれば良いというのもいるうようよといる訳でありまして(そういや福井総裁の時に阪神の快進撃に対して質問した某テレビ局のアナウンサーが今や国会議員orz)、まー正直会見に出てくる連中相手にお勉強会でもみっちりやった方が良いのではないかと思われますが(本当は資格試験でもした方が良いと思いますが、それはまあ報道の何とやらに引っ掛かるでしょうからね^^)どうでしょ。
と悪態を書きましたが、まあこれだけ説明するのだったら、「インフレ目標とは違いますが、それに似た形を取っています」くらいの言い方したらどうでしょとも思うのですが、白川さんはその辺のファジーな物言いが苦手なんでしょうなあ。
『ただ、いずれにせよ、この枠組みがいついかなる時もベストだと言うつもりはありません。各国とも常に自らの金融政策の枠組みをどうするのが良いのかを議論しており、そういう観点から私どもも考えていきたいと思っています。その上で、私どもとしては現在はこの枠組みが最適だと考えています。』
さいざますな。
・・・・・えーっと、まだ他の話およびインフレ目標に関する話がある(つーか質疑応答の1問分しか引用していないorz)のですが、例によって時間と量の関係上本日はここで勘弁ということでどうもすいませんすいませんm(__)m
でですね、インフレ目標がどうのこうのに関する話ですが、インタゲ実施をしているのか否かに関らず、各国の政策の枠組みが収斂しているという話に関しては、2008年10月にこのようなペーパーが出ている(こちらでもネタにした筈)のでまずはそこを熟知すべしと思うのですけどね。
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/data/rev08j11.pdf
こちらは日銀レビュー版なので4ページとさらさら読めます
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/wps/data/wp08j15.pdf
こちらはワーキングペーパーシリーズ(同じ人が同じお題で書いている)のでちと長いですが、細かい流れとかまでフォローしている。枚数の割にはそんなにしんどくない(ただし数式はあたくしスルーして読んだのですけどね、あっはっは)です。
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2010/02/19
○白川総裁の説明が素人向きじゃないのか報道バイアスに問題があるのか
総裁会見のテキストは今日出るのでそっちを読んでからなのですが。
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPnTK036419520100218
UPDATE3: インフレターゲット採用・不採用は意味のある切り口でなくなっている=日銀総裁
白川さんとしては「短期的にCPI数値を厳密に目標にして金融政策(というか金利の上げ下げ)をやるのは如何な物か」という話をしようとしているのだと思うのですが、メディアバイアスに掛かるとこうなる訳で。
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20100218-OYT1T01331.htm
日銀総裁、インフレ目標導入に否定的
『日本銀行の白川方明総裁は18日、金融政策決定会合後の記者会見で、一定の物価上昇率を金融政策の目標に設定するインフレ・ターゲット政策について「金融政策の手法として意味のある論点ではない」と述べ、導入には否定的な考えを示した。菅財務相が16日の衆院予算委員会で、1%程度の物価上昇を政策目標にすべきだとの考えを表明、インフレ目標の導入を事実上促していた。』
そもそも菅さんが短期的な目標を導入すべしという話をしているのかもファジーな話なのですが、まあ報道する方としては「政府と日銀が対立している」という書き方をした方が絵になる訳ですから、そうなる方向にフレームアップして報道するバイアスが掛かるのでありまして、どうしてもこういう話になるんだろうなあと。
大体からして今まで政府が「何とかを目指す」みたいな経済政策目標のようなものを掲げてその通りに行かなくて誰か辞職したか(竹中先生の「ITで雇用650万人(でしたっけ?)」とかね^^)のかと小一時間な訳でありまして、その辺は「目標」が「ノルマ」なのか「目指して頑張ります」というものなのかという論点を良く考えないといかんと思いますし、最近はさすがに「CPIだけ見て金融政策実施しろ」とか言う人はあんまりいないと思う(BOEなんかCPIにまともに連動してたら大変な事になりますが)ので、この辺りの話って定義をちゃんと詰めないでああでもないこうでもないと言うと、議論が無限ループするだけで生産的な話にならんと思うのですけどねえ。
#西日本新聞(なので共同なのか??)はもうちょっとマシかな。
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/153334
『短期的なインフレ目標の設定について』ってのを入れているので
ブルームバーグのこれはなお凄い。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=ai8OR4yQatgc
日銀総裁が政府に異例の注文−市場安定のため「中銀の姿勢尊重」を
・・・・いやあのそこまで対立構造を煽らなくても良いと思うのですけれども。これって要するに「長期国債買入拡大を財政ファイナンスとして捉えられたら長期金利が上昇しちゃって緩和しようとしている逆の事が起きちゃうから財政発散みたいな話は勘弁してね」という話をしているのだと思うのですけれども・・・・・
ま、今日出る会見要旨を見ないと何とも言えませんがね。
でですな、白川さんもまあ丁寧かつ厳密に説明しようとしているのだと思うのですけれども、報道する方の理解力(いやまあちゃんと分かっている人も沢山いるのですけれども)および報道バイアスと言うものにももう少し配慮をした方が良いのではないかと正直思う所でございまして、そもそも日銀は何だか知らんが妙に叩かれやすい存在のようでございますので(叩いても反撃しないしね)、その辺をよーく考えまして発言を工夫した方がよろしいのではないかと思うのでありまする。
あと、まあブルームバーグあたりが上記のような報道をする位なのですから(ちょっと最近の煽りヘッドラインは目に余る場面が多いのですが、ブルームバーグ自体はそこまでアホウじゃないと思ってますので)、白川さんもどうせ心の中では「政府はしょーもない事ばかり言って結局全部日銀にお願いじゃねえかよ」などと苦々しく思っておられるのではないかと勝手に忖度する次第ではございますが(^^)、金融政策は技術的な問題もさることながら、経済とか景気という人間がカオスとなってやっている物に対して働きかけるものでもありますので、やはり本音を適当にはぐらかす猫を被るとか狸状態になるとかいう技を身につけるべきではないかと思われる次第でございます。
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2010/02/04
お題「今更ですが先週の総裁講演」
今更ネタで恐縮ですが昨日の予告通りに。
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/data/ko1001a.pdf
最近の金融経済情勢と金融政策運営
── 内外情勢調査会における講演 ──
○またエマージングバブル警戒ですかそうですか
どうも白川総裁の仕様のようでして、景気の現状認識と先行き見通しに関する部分で、新興国バブルの崩壊を警戒するフレーズが引き続き出ているのでありまして。
『これに対し、新興国・資源国経済は、予想を超えて急速に回復しています。新興国・資源国の急速な景気回復については、主として3つの理由が考えられます。』
で、第1(そもそも潜在的に内需が伸びやすい)と第2(積極的な景気対策の実施)は引用割愛して第3の理由ですが。
『第三に、先進国内では十分な投資機会を見出せないリスク・テイクの資金が新興国・資源国に大量に流入していることが挙げられます。このため、新興国・資源国では、国内の銀行貸出の増加や不動産価格の上昇などを通じて、経済の回復が後押されています。こうした動きは、多くの新興国・資源国で、ドルに連動した固定的な為替政策が採用されていることによっても加速されています。』
で、その次が最近白川総裁からよく出てくる話。
『しかし、緩和的な金融環境が長く続き過ぎると、新興国・資源国経済の過熱や金融の混乱をもたらしたり、将来、資本流入の動きが逆方向に向かうことによって、その後の景気の落ち込みを招く可能性があります。このため、これらの国では、既に政策金利の引き上げなど金融政策の面で対応をとる動きも出始めています。』
で、先行きの所で金融緩和政策に関する話でまたこんな説明を。
『金融緩和政策に関してもうひとつ申し上げたいことは、先進国の金融緩和政策は、以前と比較すると、自国内というより、域外、なかでも新興国でその効果を発揮する面が大きかったということです。』
この前ご紹介した日銀レビュー(http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/rev10j01.htm)でも思いっきりそういう話をしているのでありまして(というように余りにも出てくるタイミングがドンピシャなモノが時折みられるので、「日本銀行の意見ではありません」と言われてもはいはいそうすかそうすか(棒読み)となってしまうのよね)、まあ所謂BISビュー的な発想だとこのバブルちっくな動きをオーダリーに着地させる為にはもう少し抑制的な金融政策をってイメージになるのではにかと勝手に想像する次第ですが、まあ米国的には(少しは反省しているっぽい部分もありますが本質的な動きって)バブル崩壊の傷を次のバブルで何とかしましょうという感じで動いているっぽい節が多々あるのでござんして、FRB次第じゃないっすかと思われる次第。よー知らんがの。
○財政政策で一旦肩代わりした後は
その次にさらっと話している部分ですが、白川総裁は長期国債買入に関する釘をさす為に話を出したみたいですが、あたくし的には時折引用しますが、5年半前の中々味わい深い財務省の『日本経済の将来ビジョンを語る懇談会(第十回)』議事要旨を思い出すのであります(^^)。
『マクロ経済政策という点では、財政政策の役割も重要でした。リーマンブラザーズの破綻以降、経済・金融の急激な収縮に対応して、各国政府は金融機関に対し公的資本を注入すると同時に、財政面から大規模な景気刺激策を講じました。』
『政府によるこのような大規模な政策介入は、金融システムの安定を維持し、経済活動の大幅な落ち込みを防ぐために必要不可欠の措置でした。実際、これらの措置は、所期の目的を達成しつつありますが、同時に、財政赤字は拡大し、政府債務残高は著しく増大しました。比喩的に言えば、今回の危機において、政府は民間のリスクや債務を肩代わりした訳ですが、経済や金融市場が安定を取り戻すにつれ、国際金融市場の参加者は、政府の取ったリスクやそれに伴う問題、すなわち財政赤字や財政規律の問題にも大きな関心を払うようになってきています。』
時々引用するのでご存じの読者様も多いかと存じますが、またこの味わい深い話を引用しましょう(^^)。
http://www.mof.go.jp/singikai/vision/gijiyosi/a160601.htm
日本経済の将来ビジョンを語る懇談会(第十回)
冒頭の池尾先生の指摘ですが、改めて今読みますと「さてこの5年間日本は何をやっとったんじゃいな」という残念感が湧きあがって来るのであります。
『バブル崩壊によって生じた問題からの脱却の第1局面、すなわち、民間部門の債務を公的部門に付け替え、民間部門の健全化を進める局面は終わりを迎えつつあり、そろそろ公的部門に付け替えられた債務の償却を考えなければならない第2局面に入ってきていると思われる。第2局面を打開するには、家計の過剰な金融資産を増税等により実質的に圧縮し、公的部門の債務の償却にあてる必要があるのではないか。』
『現在、プライマリー・バランス(基礎的財政収支)の黒字化の目途は立っておらず、足元の回復も構造的な要因ではなく、循環的な要因であると考えられる。過去の経験から名目利子率が名目成長率を上回るという可能性を考慮すると、プライマリー・バランスがゼロになっただけでは、対GDP比債務残高の発散は止まらない。公的債務残高をGDPの2倍程度で安定化させるなら、対GDP比4%程度の黒字化が必要である(名目利子率が名目成長率を2%上回る場合)。』
『なお、巨額の公的債務残高の存在にもかかわらず、世間的に危機感がさほど抱かれていないのは、低金利状況の下で、債務維持負担(debt
service burden)が非常に軽いものに済んでいるからである。日本銀行のゼロ金利政策とそれに続く量的緩和政策が、こうした債務維持負担が軽い状況を作り出している。』
『換言すると、日銀が量的緩和政策を続けざるを得ない経済情勢が続くことが、財政の安定が維持できる条件になってしまっているともいえる。そうした経済情勢とはデフレの持続にほかならず、デフレの脱却による日銀の政策スタンスの変更が財政危機の顕在化につながりかねない状況と言える。』
(以上、平成16年6月1日に実施された財務省「日本経済の将来ビジョンを語る懇談会(第十回)」議事要旨冒頭の慶應義塾大学経済学部池尾和人教授の発言要旨から)
などなどまあ読んで味噌という感じですが、この話を5年先の今に持って来ると、より状況は寒くなっているのでありますけど、他の主要国ではちょうど今こんな話をしている(当時の日本よりはもうちょっと症状が軽いと思いますが)のですなあとか思ったのでありました。
○で輪番について
実際はさっきの部分ってその次の輪番話の枕みたいなもんだと思われますので、そっちの方を引用するのだ。
『この点で興味深いのは、FRB が昨年3 月から10 月まで行った国債の買入れです。FRB
は、実施に当っては、この買入れが中央銀行による財政ファイナンスや長期金利の特定水準への誘導を目的としたものでないことを繰り返し強調していました。FRB
による買入れ規模は日銀の国債買入れと比較すると、経済規模との対比では日本よりもはるかに少ないものであったにもかかわらず、中央銀行として通貨コントロールへの信認確保をそれだけ重視していたように思われます。』
要するに財政ファイナンスとか長期金利上昇抑制とかの目的で輪番を増やせという意見に対する反論ですね、わかります(^^)。
ただ、FRBの長期国債買入の時は『Moreover, to help improve conditions in private credit markets, the Committee decided to purchase up to $300 billion of longer-term Treasury securities over the next six months.』(2009年3月18日のFOMC声明文から)と言っているので、普通に考えると当初の目的にはモーゲージ金利の引き下げ(モーゲージ金利のベースレートとなる国債金利を引き下げる)を企図していたと思われますので「長期金利の特定水準への誘導を目的としていない」というのは確かに特定水準へのイメージがあって実施した訳ではないからその通りですが、若干我田引水成分の入った説明ではないかと。
#まあそれよりも買入を実施してから長期金利が結局上昇したのがセクシーなんですが
このあとの質疑応答で長期国債の買入額が適当であるという話をしていましたようで、ここの13時46分の所にございます。
http://jp.reuters.com/article/forexMarketOutlook/idJPnTK037388220100129
『日銀の白川総裁は講演で、為替自体に金融政策をリンクさせることは望ましくないと発言した。長期国債買い入れについても、今の買入金額が最適だと述べた。』(上記URLより)
で、まあそんな事一々言わんでヨロシと思うという話は昨日申し上げた通りです。
○更に日銀バランスシートについての説明も
もうちょっと先に行くと『4.金融政策運営の考え方』というのがありまして、各国中銀がどういう事をしましたかという話に続いて「バランスシートの拡大が足りないからケシカラン」論に対する説明を。
『まず、急性症状については、多くの中央銀行では、金融危機の悪化を防ぎ、民間経済活動に必要な金融の流れを確保するため、市場機能が壊れた金融市場に的を絞って特定の金融資産を買入れるなどの措置を実施し、市場機能の回復に努めました。日本銀行も、CP
や社債の買入れなど中央銀行としては異例の措置を講じました。』
『なお、この点に関連して、日銀に比べて米国FRB のバランスシートの増加率が大きいことを理由に、日銀は積極姿勢が足りないという批判が時々聞かれます。しかし、これは全くの誤解です。』
『FRB のバランスシートの大幅な拡大は、資金調達の約7割を占める資本市場の機能が極端に低下し、中央銀行が全面的に市場を肩代わりするしかないという不幸な状況に立ち至ったことを端的に表しています。これに対し、日本の場合は、社債やCP
市場の機能が低下したとはいえ、それでも欧米に比べると、金融システムは相対的に安定性を維持することが出来ました。これは1990
年代後半以降の苦い経験を経て様々な努力を積み重ねたことの成果でもあります。このため、日本銀行のバランスシートはFRB
ほどには拡大することはありませんでした。日本銀行のバランスシートの規模は、今回というより、むしろもっと早くから、大きく拡大していました。』
という説明を既に何回見たことやらと思うのですが、多分この論点で突っ込んで来る人のポイントがFRB的な言い方をすれば「信用緩和」と「量的緩和」をごっちゃにして突っ込んでいるという点からすると、そもそも論として話が永遠に平行線と思われるので、百万回説明しても同じような気はしますけどね。
量的緩和で資産買入がどうのこうのというのを前面に出しているのはBOEだけだと思われます。でもBOEも別にリザーブを目標にしている訳でもなさそうなのですけれどもね。
http://www.bankofengland.co.uk/
の真ん中の左のほうに『Quantitative Easing Asset Purchases 』ってのがございますわな。
○デフレ問題に関してはまあそもそも論の世界を展開です
最後の章は『5.「デフレ問題」と持続的成長の実現』ということで、
『最後に、いわゆる「デフレ問題」についてお話します。最近は様々な経済現象がデフレと結び付けて議論されることが増えています。それだけにデフレの原因を正確に理解することが極めて重要です。』
という話をしていまして、これまた結構なスペースで説明していますが、要するに
『いずれにせよ、デフレの根本原因は需要不足です。』
という話に。で、需要不足を解消するためには一時的なことよりはそもそも論として成長戦略が必要ですという根源的な話をしつつ、しらっと日銀批判への説明もしていますな。
『デフレ対策に関しては、かつては「中央銀行がバランスシートを拡張しさえすればデフレは止まる」という主張がなされることもありました。しかし、量的緩和政策を採用していた2000
年代前半の日銀も、また、2007 年以降の米国FRB もバランスシートは随分と拡張しましたが、それに見合って物価が上がることはありませんでした。このような経験から、欧米では、「中央銀行がバランスシートを拡張しさえすればデフレは止まる」という議論は、最近ではあまり聞かれなくなりました。』
ほうほうそうですかそうですか(棒読み)。
『はっきりしていることは、金融システムが不安定化の危険に晒されている時は、中央銀行のバランスシートの拡大、流動性の供給は、金融システムの安定を確保することを通じて物価のスパイラル的下落を防ぐ上で極めて効果的であるということです。現に日本銀行はそのように行動しました。』
まあそれはそうですな。
『しかし、一旦、金融システム不安の状況を脱した後は、流動性の増加だけでデフレが解消される訳ではありません。我々はデフレの根本的な原因を直視する必要があります。』
で、こんなたとえ話を。
『物価は、しばしば経済の体温に例えられます。体温だけを人為的に長期間にわたって引き上げることは可能ではありません。基調的に体温が上がるためには、それ相応の体質改善や、場合によっては、適切な治療も必要です。』
どう見ても低体温症が継続しています本当に(涙)。
『同じことは、デフレ問題への対応についても言えます。重要なことは、緩やかではあるが趨勢的な物価の下落傾向に歯止めをかけるために、趨勢的な成長期待を高めること、言い換えると、生産性の向上に地道に取り組むことが不可欠であるという基本認識を持ち、その上で、この課題にしっかり取り組むことだと思います。』
つーことで、その方向性としては『第一に、グローバル需要、とりわけ高い成長が見込める新興国・途上国の需要を積極的に取り込んでいくことの重要性です。』、『第二には、潜在的な需要に対応する供給体制を作り上げ、生産性の上昇を図っていくことです』とありますが、まあそこは引用割愛します。
○チアリーダーに転向するのか??
更に最後の部分でほほーと思う部分が。
『以上、日本経済の潜在成長率を引き上げるために重要と考えられる2つの方向性について申し上げました。過去のわが国の経済を振り返ると、困難な時期においても、人々の知恵と努力によって難題を克服し、繁栄を築き上げてきた実績があります。日本経済を真に持続的成長経路に復帰させるためには、ただ今申し上げたような主体的な取り組みが不可欠です。これを実際に実行に移す過程では痛みも伴いますが、世界的な規模で経済が大きく変化している以上、避けて通れない道です。』
というのが前振り部分でして、その次をみたら「ほほー」と思った訳で。
『その際、最近やや気懸かりなことは日本経済の強みを強みとして認識しない「気分としての悲観主義」とも言うべき傾向がみられることです。』
この前の会見でもそんな趣旨の話を言ってましたが、白川総裁は米国金融財政当局のあの危機においての妙な明るさから何かを感じ取ったのでしょうか??と思う今日この頃でございます。
#以上虫干しネタにも程があるネタでした
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2010/01/29
○総裁会見ですが
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk1001a.pdf
今回はあんまり派手な話は無かったですが・・・・
・原油価格上昇に関する話
原油価格上昇の影響での物価見通し上方修正というのはコストプッシュなのではないかという趣旨の質問が少々出まして、それに関する総裁の回答から。
『(答)ご指摘の通り、物価の見通しが前回の見通しに比べ上方改訂されました。その主因は原油価格高の影響です。これは、新興国経済の成長が予想よりも強いことと非常に関係している話です。世界の各地域の経済が同じテンポで成長することは、経済のダイナミズムを考えると現実にはなかなか起きにくいので、ある時期はこの商品が上昇し、また別の時期は他の商品が上昇するということが、経済が生き物である以上必ず起こります。』
『ご質問を経済の言葉に置き換えて言うと、物価は上がるけれども、一方で交易条件が悪化し、景気に対して悪影響を与える面があるということは事実です。しかし、そもそも原油が上がるという現象の背後には、新興国経済を含めて世界経済が拡大するというプラス要因があるわけですから、最終的には全体として判断するしかない、そういう性格のものだと思います。』
ということで、その後はこんなツッコミが。暫く後の質問です。
『(問)新興国の需要による原油高や資源高によって物価のマイナス幅が縮小していくのは、交易条件の悪化になるということでした。2008
年4月にも新興国や海外経済が強いために所得が日本から流出し、交易条件が悪化して若干需給ギャップが広がっているという話もありました。原油高からくる物価上昇率のマイナス幅の縮小は分かりますが、交易条件の悪化からくる需給ギャップの悪化に関しては現状でどのようにみているのでしょうか。』
『(答)今後、原油価格が急激に上昇していくという姿を想定しているわけではありません。原油価格の上昇それ自体をとってみると、これは交易条件の悪化にはなりますが、そもそもそれがなぜ生じているかという背景まで考える必要があると思います。』
ほうほうそれでそれで?
『世界経済全体、特に新興国を中心として経済が拡大するということのプラスの影響は、日本経済に確実に及んでくるわけです。どんどん先回りして心配するというのが日本人の美徳でもあるのですが、ご指摘のあったマイナスもある一方で、その前に大きなプラスがあります。プラスとマイナスの両方を評価せずにマイナスだけ心配するのはややバランスがよくない議論という感じがします。』
この辺りの回答を見ていますと、2通りの解釈(またの名を妄想とも言うけど)が可能であります。
つまりですな、まあとりあえずこちらにあるように「あまり暗い話ばっかりしないで行きましょうよ」ということを発言している訳でありますが、これって「無策付きデフレ宣言」によってデフレマインドを一気に広めるというお洒落なプレイを実施している政府が居る中で、日銀も暗い話をすると更にマインド面に与える影響が大きくなり、マインド面からの負のスパイラルが発生してしまうのを懸念しているという事ではないかという気はややするのであります。
当局というのはある意味チアリーダーみたいなもんで、そりゃまあエライ人が辛気臭い話ばかりするよりは先行きは明るいですよという話をした方がマインドが良くなりますし、景気は「気」の部分もある訳ですから、政府が無策のまま碌でもない話をする中で日銀まで暗い話をするのもとなったんじゃねえの(米国当局なんてもうチアリーダー全開っすからねえ)という風に捉えてみたりするのでもあります。ということはこっそり政権に嫌味プレイという話にもなりますが(^^)。
とまあ一応好意的解釈をすると上記のようになりますが、これがまた白川総裁が個人的には景気認識を月報やら展望レポートなどに示されているコンセンサスよりも素で強めに持っているという見方も当然ながらアリエールな訳でありまして(−−;)、その場合は将来的には総裁様のKYプレイ発生→バックラッシュという9月ごろやらかしていた香ばしい展開が発生するリスクはオオアリクイの悪寒も致します。
#正直どっちだかは判らん。
・新興国経済拡大で本当に国内最終需要が伸びるのかというネタから成長戦略へ
でまあ新興国経済が伸びても企業の生産活動が海外シフトしてたら国内最終需要の拡大に繋がらないのではないのではないかという質問もありまして、その説明をしているのですが、これがまた回答が長いので(^^)、ポイントの部分を引用します。
『ご質問の趣旨は、もちろんこうした中心的なシナリオ(引用者注:要するに月報や展望レポートで示される外需が内需に繋がる循環の話です)は一応分かるが、それだけなのかということかと思います。私どもでもこうした見通しには不確実性があり、特に企業の中長期的な成長期待は大事な要素であると考えています。これは展望レポートでも指摘している点です。』
『申し上げた通り、企業は常にグローバルな視野をもって活動しています。このため、例えば新興国の持続的な成長が展望される一方、わが国の成長期待が回復しない場合には、新興国への投融資が増加する一方で国内投資が抑制された状況が続く可能性もあります。こうした傾向が進み、国内の生産・雇用の減少を招かないためにも、わが国の成長期待を高めるとともに、企業の経営努力が最大限発揮されるように、グローバルな競争条件を規定する制度を不断に見直していく努力が並行して必要だと感じています。』
ということで、成長戦略の必要性という話になる訳でありまして、まあさいですなという所ですが、じゃあ金融政策ではどうするのと言われると、その答えは無さそう、というか金融政策でどうこうという話でもなさそうではございますな。
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2009/12/25
何か他のネタもあるのですが、後から来た方を先に出していくという宿題積み残しパターンになっているような気がするのは気のせいでございます。
んでまずは22日の総裁会見から少々。
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/data/ko0912c.pdf
お題は『マクロ・プルーデンスと中央銀行』ということですので、白川総裁のお得意のネタで目先の金融緩和だの時間軸だのというお話ではありません。んでもってミクロプルーデンスとマクロプルーデンスの話がメインなのでその辺から少々。
○金融システムの安定化の為のマクロプルーデンス
本文5p(PDFファイルの6p、以下同様)の『ミクロ・プルーデンスだけで問題は解決するか?』って辺りから。
『今回のグローバル金融危機は、以下で述べる理由から、こうしたミクロ・プルーデンスに基づく規制・監督だけでは、金融システムの安定を実現し、さらには、金融システム安定の究極の目的である経済の持続的成長に貢献することは難しいことを示しているように思います。』
ということで論点が2つ。
『第1の理由は、マクロの経済・金融との関係を抜きには、最適な自己資本や流動性の水準は決まらないということです。』
『金融システムの安定だけを絶対視すると、必要な自己資本や流動性の量を著しく高めざるを得ませんが、レバレッジにせよ、資産・負債の満期構成のミスマッチにせよ、それ自体は金融機関に期待される本来的な役割です。金融機関は、一定の資本を元手に、短期の負債で資金を調達し、長期の資産で運用することによって、金融仲介機能を発揮するとともに、流動性や決済サービスを提供するという付加価値を生み出しています。そうした金融機能が適切に発揮されなくなると、経済の成長は図れません。』
ということで、これまた話としては難しい所なのですが、金融としての決済インフラ機能の部分と、いわゆるリテール商業銀行部門と、投資銀行部門とトレーディング部門ってのが混然一体化しちゃっていると、どこからどこまでを保護されるべきものであるのかというのが難しくなる(だから英国の金融機関賞与重課税みたいな話にも繋がると思う)と思う次第でありまして、本当に狭義な話をすれば決済インフラだけ保護すりゃ良い気もしますし、でも多分金融仲介機能という点で言えば決済インフラのみの保護では不十分な気もします(全部保護すると「負けたら公的救済」と言ってレバレッジ掛けて突っ込むアホウが出てくる)し、まーどうすべきかというのは永遠の課題なのかもしれませんね。
#預貸業務だって「1000万円までの預金を受け付けていますので全額預金保険でカバーされているのがミソです」という売り文句をいう人がいる位ですので、単純に商業銀行部門に保護の網を掛ければ済むという問題でもなさそうな気がする
『勿論、実際には、100%の自己資本比率を求めることはない訳ですが、このことが示すように、実は、従来からの規制・監督も、金融システムと実体経済の関係、あるいは金融システム相互の関係について、何らかのマクロ的な判断を行っていると言えます。ただ、そうしたマクロの視点をより体系的に行う努力は、十分ではなかったように思います。』
なるほど。
『第2の理由は、金融機関のインセンティブは、マクロの要因によっても大きく影響されるということです。この点で思い出されるのは、「音楽が鳴っているときは、誰もがダンスを踊る」という、サブプライム・ローン問題が表面化する前に、米国の大手金融機関経営者が発した有名な言葉です。』
『もし将来、あの当時と同じような良好な経済環境、すなわち、高成長、低インフレ、低金利、市場の低ボラティリティーという状態が長く続いた場合、金融機関経営者や投資家は、今度は違った経営戦略や投資戦略を選択するでしょうか。また、もし自分自身は違った戦略を選択するとしても、競争相手は、どのような戦略を選択すると予想されるでしょうか。』
断言できますが、必ず踊るアホウが出て来て、そのアホウが儲かるのを見て次々とアホウが集まりハーメルンの笛吹き男状態になるのは間違いないです。
『そのように考えると、誰かがリスクをとることになります。』
と、白川総裁も予想ですが(^^)。
『結局、金融システムを全体として捉えた場合のリスクは、ミクロ・レベルのインセンティブだけでなく、マクロの金融・経済環境というインセンティブにも大きな影響を受けることになります。このように考えると、金融システムの安定を確保するためには、個々の金融機関の健全性を確保していくというミクロ・プルーデンスと金融システム全体のリスクに注意するというマクロ・プルーデンスの両方のアプローチが必要です。』
で、そのマクロプルーデンスがどうなのよという話ですが、まあこのネタは折に触れて総裁講演などで示されているので、引用すると多分以前の重複(つーかさっきのも前に見た事あるのだが、汗)になりますので、マクロプルーデンスの視点という所からは最初の『横断的なリスクの視点』部分を引用するでござるの巻。
『第1の「横断的なリスクの視点」とは、ある時点における金融システム全体のリスクの評価軸ですが、そこで強く意識されているのは、各金融機関のポートフォリオや各商品のリスクの相互連関です。』
どういうことかと言いますと、
『金融機関が特定の業種へ与信や投資を集中すると、その金融機関は大きなリスクを抱えることになります。不動産に対する与信集中はその古典的な例ですが、同じことは金融システム全体についても言えます。しかし、仮に個々の金融機関単位でみた場合、特定業種へのエクスポージャーの集中がなくても、多くの金融機関が同じようなポジションをとっている場合、金融システム全体としては、大きなリスクを抱えていることになります。』
さいですな。
『特定のエクスポージャー、例えば、不動産の価値に影響するショックが発生すると、各金融機関が一斉にそのエクスポージャーを圧縮しようとしますが、皆が同じような行動をとろうとすると、エクスポージャーを圧縮すること自体が難しくなります。その過程では、資産の市場流動性や資金流動性が著しく低下し、そのことが損失をさらに拡大させます。こうした一種の群衆行動現象は、“crowded
trade”という言葉で呼ばれており、様々な原因によって発生します。』
と、ここまではふむふむという感じですが、その後がちょっと微妙に味わいがある。
『典型的には、経済の先行きに対する見方が同一化することによって生じますが、リスク管理手法の同一化傾向によっても促進されます。金融技術が高度化すると、リスク管理も複雑化していきます。そうなると、リスク管理手法を自ら開発する資源を持たない金融機関では、他の金融機関で開発されたリスク管理手法を採用するインセンティブが高まります。こうした状態が一般化すると、銀行間で資産エクスポージャーの内容が似てくるのみならず、取引のタイミングが同期化することによって、市場の振幅が激しくなります。』
・・・・それは全くその通りで、それこそ大昔のプログラムトレード批判から言われている事なのでありますが、一方で監督当局が「標準的なリスク管理手法」のようなものを推奨するという流れもこれまたある訳でして、その点に関して白川総裁がどのような見解をお持ちになっているのかを小一時間お伺いしたいものであります。
その後の『時系列的なリスクの視点』というのは「目先の安定と将来の安定のトレードオフ」といういつもの話になるので以下割愛。
続きまして昨日の経団連での講演。
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/data/ko0912d.pdf
○景気認識は厳しい
まあ相手が経団連ということもあって、あまり威勢のよい話にはならないのが空気を読んでる所です。この前どっかの経済団体で話をしていた時にも「下振れリスク警戒」満載だったと思いますし(^^)。
最初の部分で世界経済の話を。
『世界的な信用バブルの崩壊の影響が残存する下で、先行きを巡る不確実性はなお高い状況にあり、世界経済が持続可能な新たな成長経路、いわゆる「ニューノーマル」(New
Normal)へ移行するためには多くの課題が残っています。』
と思いっきり言ってますが、現状認識に関してはこんな感じのようで。
『世界経済が本年春先から持ち直し始めた主因は、このうち、第2の要因であるパニック的な金融・経済活動の収縮が沈静化に向かったことです。実際、各国中央銀行による流動性供給や政府による金融システム対策により、国際金融資本市場は、昨年の今頃とは様変わりとなり、かなり落ち着きを取り戻しています。』
『しかし、同時に、第1 の要因として挙げたバランスシート調整圧力が米欧経済に重く残存していることも、明らかになってきました。このため、先進国の回復の鈍さと新興国・資源国の上振れというコントラストが顕著になってきています。』
ということで、最近はすっかり米国の金融市場が雇用回復傾向ヒャッハー状態になっている(ように傍からは見える)という感じですが、バランスシート調整が終わったわけではない(でもまたバブルを発生させちゃうと薬物依存症の禁断症状回復の如くあっさりヒャッハーとなってしまうという論点はあるのですがそれは兎も角)ので警戒レベルは高いまま、というのが白川総裁がイメージとして持っているのかと思います。従って今後についても・・・・
『世界経済の先行きについては、新興国経済の高成長に加え、先進国経済の持ち直しもあって、全体として回復基調を維持するとみられますが、こうした見通しを巡る不確実性はなお高いと判断しています。リスク要因は上下両方向に存在しています。』
『米欧におけるバランスシート調整の帰趨や、政策効果が徐々に薄れていくことの影響などが、主要な下振れ要因として挙げられます。一方、新興国経済の強さは上振れ要因のひとつですが、先進国からの資本流入が継続した場合、流入先経済の過熱とその後の落ち込みを招くことになりかねない点には留意が必要です。』
これって結局新興国の上振れって言っても過熱して落ち込むのだから結局は下振れリスクじゃあーりませんか。
『また、先般のいわゆるドバイ・ショックは、幸い沈静化に向かっているとはいえ、国際金融面でのリスク要因にはなお注意が怠れないことを改めて印象付けました。』
さいですな。
んでもって日本経済ですけれども、先行き見通しに関してはやはり先行き厳しいと。
『もっとも、経済活動の水準はなお低く、改善の動きも政策効果に支えられた部分が大きく、自律的回復力はなお弱いと判断しています。』
『景気の先行きについては、設備・雇用面の調整圧力が残存する2010 年度半ば頃までは、持ち直しのペースは緩やかなものに止まる見通しです。とりわけ、内外における各種政策効果が減衰するとみられる来年春先前後には、景気の勢いが一時的に鈍る可能性もあります。そうした傾向は、経済が公共投資に依存している側面が大きい地方経済において、より強く現れると考えられます。』
ということで、財政政策効果を剥落させてる中なので中々厳しいということっすな。
『もっとも、そこで回復の動きが途切れてしまうといった可能性は大きくないと考えられます。』
ほほう。
『これは、わが国を含む先進国が、経済の回復がしっかりとしたものとなるまで、景気刺激策を継続する方針にあるほか、新興国の内需に自律的な強さが存在するためです。しかし、いずれにせよ、今後の回復の道のりは決して平坦ではないと認識しており、予断を持つことなく経済の姿を点検していく方針です。』
つまり、それらの話がコケルとコケルという話ですね、分かります。
んでもって物価に関してですけれども、これまた物価下落圧力が続くという話なのはいつも通りであります、一応引用しておきます。
『今後は、前年の石油価格高騰の影響が薄れてくるため、来年初にかけて、下落幅は−1%程度まで縮小するとみられます。問題は、その先です。先ほど申し述べたような景気見通しを前提とすると、マクロ的な需給バランスの改善に伴い、物価の下落幅は徐々に縮小していく方向にあります。しかし、経済の持ち直しテンポが緩やかなものに止まるとすれば、物価下落圧力もある程度長期間に亘って残存するとみざるを得ません。』
ということで、現在の金融緩和モードはある程度長期間に亘って継続されるとみざるを得ませんということですな(^^)。
○残りは宿題で勘弁ですが為替の話
で、この講演なのですが、実は本文8p(PDFファイル9p)以降の話が興味持って読めた話で、ここまでは実は前振りみたいなもんだったのですが、諸般の事情(嘘です、単なる寝坊)により本日はそこまで間に合わなかったので宿題で勘弁して下さいませ。
最初の所だけ引用(明日以降また紹介しますが)しますね。
『それでは、金融システムが相対的に頑健性を維持したにもかかわらず、わが国の経済活動の落ち込みが大きかったことの背景をどのように考えるべきでしょうか。ここに、今後の日本経済の姿を考える上での重要なポイントがあると思います。』
『経済活動の大きな落ち込みは、需要項目では輸出において顕著に現れました。これをもって「外需依存による脆弱性」と解釈し、「外需依存から内需主導への抜本的な転換が必要」とする見方も聞かれますが、私はそうした見方には与していません。』
ほうほう。
『なぜなら、そもそも日本の輸出依存度は10%台半ばと、米国と比べやや高いものの、約40%のドイツ、20%台後半のイギリスやフランスをはじめとする欧州の先進国と比べるとはっきりと低く、事実として先進国の中で外需依存傾向が強いとは言えないからです。わが国の経済活動の落ち込みが大きかったことの背景としては、むしろ、世界的金融危機前後におけるわが国の製造業を取り巻く急激な環境変化に着目すべきです。具体的には、以下の3点が重要と考えられます。』
で、その先は後日改めて引用しますが、その中で『大幅な円安の反動が出たこと』という指摘は傾注って感じでして、まあ何だかんだと言ってもここもとの金融政策のトリガーやら目線が為替市場に向かっているという事を反映した話なのではないかと思う次第でございます。
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2009/12/24
○総裁会見の続きから少々
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0912d.pdf
火曜日にご紹介しなかったのですが、最後の方で中々良い質疑応答がございますので引用大会。正直言って判り切った同じ質問する質問者は排除してこういうツッコミの応酬を見せて欲しいもんだと思います。BOEみたいに質問者名と所属を出せば良いんジャマイカとも思うのですけれどもね。
要旨11ページ目から13ページ目の辺りの質疑応答が今回は中々秀逸でございましたので熟知すべし。
『(問) 先程、「物価安定の理解」の表現を一段と明確化したことにより、金利形成にも相応な影響があると話されましたが、「物価安定の理解」の実質を変えたわけではないとも話されました。つまり、日銀が実質的に何も変えていないにも拘わらず、金利形成に影響があると期待しているということは、市場や国民、政府は日銀の考えに対して誤解があり、誤解が解けることによって金利形成に影響があるという論理だと思います。』
こりゃ仰る通りですな。で、質問はなお続く。
『エコノミストを対象とした私どもの調査によれば、早くても11 年度後半にならなければ政策金利の利上げはないとの予想ですが、総裁は、政策金利の引上げ予想時期が後ずれすることを期待しているのでしょうか。市場が誤解しているとするならば、そういうことになるかと思いますが、そういうことを期待されているのか伺います。』
私どもってえことはブルームバーグさんか日経さんか通信社さんっすか(^^)。
『(答) 将来の政策の変更時期については、今後の経済・物価・金融の情勢によって決まるので、中央銀行の総裁として、このタイミングでなければいけないという考えを予め持つのは非常に危険なことだと思います。その意味では、これは原理原則の問題として、常に予断を持つことなく考えていくことであると思っています。』
そりゃまあそうですが。
『また、「誤解」という言葉はやや強い言葉かもしれませんが、必ずしも正確に伝わっていない面があるとすれば、正確に伝える努力を常にしていく必要があると思います。』
つまりどういう事かと言いますと・・・・
『それから、市場関係者には実に色々な方々がおり、必ずしもすべてを代表する包括的な「ザ・市場関係者」がいるわけではないと、私自身は常に感じています。』
「ザ・市場関係者」というのはツボってしまいました(^^)。
『例えば、中央銀行の政策を最もウォッチしているのは、短期金融市場の関係者です。金融調節に関する色々な議論は、短期金融市場を見ている人にとっては周知の情報であっても、外縁部の市場、つまり債券市場、株式市場あるいは外為市場と拡がっていくほど、日本銀行の金融政策について十分に理解されていないと感じることがあります。』
確かにその通りでございます。つまりここまでの所で分かりますように、今回の明確化というのは「大事なことなので繰り返しました」という以上の積極的な意味は政策インプリケーション的にはございませんという事になろうかと思います。まあはっきり言っちゃえば為替市場向けの説明と、政府やメディア向けの説明ですよってえ事でしょ。
『これは日本銀行に限らず、FRBをみてもそうです。今、FRBが議会あるいはマーケットやエコノミストとの関係で苦労している1つは、中央銀行のバランスシートが拡張していることが直ちにインフレにつながるわけではないことを説明することです。私どもからすれば、その説明は非常によく分かるものですが、短期市場の関係者にはある程度理解されても、それ以外のマーケットの関係者にはなかなか理解されていません。』
マーケット以外モナー。
『私は、マーケットの良さは、多様な見解がある、多様な人がいるということであり、包括的な「ザ・マーケット」があるという市場観があると考えること自体が必ずしも適切ではないと思っています。』
まあ最後はおまけですけれども、「ザ・マーケット」もツボに入っちゃいました(^^)。
で、その次の質問。多分同じ人でしょ。
『(問) 少なくとも債券市場は、日銀の政策をかなり理解しているプロの集まりだと思います。今回の「物価安定の理解」の明確化が金利形成にも影響があることを期待されているということは、彼らがやはり日銀の政策を誤解しており、その誤解が解かれることによって金利がより下がるということを期待しているのではないかと思います。つまり債券市場のプロたちも、日銀の政策について、より早い時期での超金融緩和からの脱却を期待している、というように誤解していたとお考えなのでしょうか。』
いやまあそう仰いますが、債券市場で短期全然理解してない人とか結構多いですし、何とかストの皆様でも結構無茶な説明を見かける事は多いっすけどね。なお質問は続く。
『今。今回の措置について、白川総裁が実質的に何も変わっていないとおっしゃっている一方で、金利形成に相応の影響があると期待されているということは、やはり彼らプロも誤解していたということになるのではないでしょうか。』
つまり実際はコミットメントの強化のようなものではないかという質問ですね。これは中々。
『(答) 債券市場の専門家の方も含めて、私自身は色々な人の意見にできるだけ目を通すようにしています。』
・・・・さすがは趣味がセントラルバンキングのお方だけの事はございます。
『その上で、政策金利について色々な見方があるということはもちろん認識しています。政策金利というのは最終的に経済がどのように展開するかということで決まってくるわけです。それは中央銀行自身の政策によっても変わりますし、それから中央銀行が直接コントロールできない様々な外的ショックによっても影響を受けるわけです。そうしたものの結果として、政策金利の経路が最終的に決まってくるわけですから、今私が、市場参加者の特定の見通しについて正しいとか正しくないと申し上げることは、そもそも適切ではないと思っています。』
ということで、まあ話としては微妙に避けたような印象ですが、まあここのニュアンスからすれば「日銀はそう簡単に利上げモードにはなりませんのでもうちょっと金利下がってちょ」という話になると思いますが、その金利がどのゾーン位まで下げられるのかと言えば、展望レポートで示されている見通しの範囲での政策金利見通しが強く影響するゾーンまでという事になるんじゃないでしょうかねえ。よー知らんが。
あと、特オペの効果に関する質問もありましたので、その答えを引用します。
『(答) 固定金利方式の共通担保資金供給オペは、毎週1回オファーすることとしており、これまでに2回実施しましたが、それぞれ8,000
億円のオファー額を大幅に上回る積極的な応札がありました。このオペは、実質ゼロ金利といえるきわめて低い金利水準で、期間3か月の資金を潤沢かつ安定的に供給することを通じて、短期金融市場における長めの金利の低下を促すことを狙いとして導入した措置です。』
実質ゼロ金利とはまた「超低金利」みたいなアレでございますな(^^)。
『オペの導入を決定した後、短期国債レートや銀行間取引金利などの長めの金利が一段と低下しています。また市場の心理も一頃に比べ若干落ち着きを取り戻していると思います。従って、新しいオペは、既にそれなりの効果を発揮しているとみられます。』
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2009/12/22
WBSなんぞ見る訳は無いあたくしですが、モーサテによりますと「デフレが更に進んだ場合には積極的に追加緩和を行う」とかなんとかいう趣旨の事を白川総裁が仰せになったそうですが、そんなの別に「デフレと闘う姿勢」とかじゃなくて中央銀行として至極当たり前のことなんですけどねえ。
ま、為替市場が反応してるから日銀的には願ったり叶ったりなので、「お前ら追加緩和期待でドル買ってるけど、ドル高円安になったらそもそも追加緩和が無くなるんだぞ為替市場プギャー」などと無粋な事を言ってはいけないのがお約束というものです。
#まあ日経がやっと「景気は気なんだから威勢の良い話をした方が良い」と気がついたのであれば大慶でございますけどね
それは兎も角総裁会見。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0912d.pdf
○新たなコミットメントはございませんが
冒頭の説明部分を引用すると長くなるので割愛しますが、最初の説明は景気認識にかかわる部分ざますので、本当は声明文比較を昨日やっておけばよかったのですが、そこは休み明けにやるということで勘弁。で、景気認識もリスク認識も特に変化無いですよという話をしてたりしますが、その次の質疑から。
『(問) 物価のマイナスの値は許容しないという本日の発表を受け、金融市場では事実上の時間軸政策ではないかといった受け止め方も浮上しています。こうした受け止め方に対する総裁の認識を教えて下さい。』
なんつーか事実上の時間軸政策は既に債券市場でも短期金融市場でも認識してたと思うのですけど(価格形成見たらどう見てもそうでしょ)まあいっか。
『(答) 今回の「物価安定の理解」の明確化は、日本銀行としては、ゼロ%以下のマイナスの値は許容していないこと、委員の大勢は1%程度を中心と考えているということを、より明確な言葉で表現することにより、物価の安定に関する日本銀行の考え方の一層の浸透を図る措置です。』
・・・・つまり、「ここは大事なことなので繰り返して言います」ということですね(^^)。
『従って、先行きの金融政策運営について何らかのコミットメントを行うという意味での時間軸政策とは異なります。』
足元のCPIにはコミットせずという事ですわな。
『ただし、展望レポートで示している経済・物価の先行きの見通しや、毎回の決定会合後に公表している金融政策運営方針とともに、物価安定に関する日本銀行の考え方が一層浸透することは、いわばこれら全体として金融市場における金利形成にも相応の影響があると考えられます。』
これね、後の方でも同じ話をしているのですけれども、これまた昨日申し上げたように、「わたくしたちの言う事を皆さんがきちんと理解すれば金利は低位安定するんですよ」という話をしているというこってすな。
『今のご質問については、これを広い意味で時間軸的な効果と呼ぶのであれば、そうした効果はあると思います。ただし、そうしたことを積極的に狙っているのではなく、先程申し上げた枠組み全体として効果があるということを申し上げたいと思います。』
殆ど禅問答の世界ですが(^^)、ここを蒟蒻問答状態となっているあたくしが勝手に解釈しますと・・・
「今の金融政策の枠組みは、足元の特定の指標にコミットするとか、市場の期待をオーバーライドするような形での金融政策枠組みではありません。では、現在はどのような枠組みかと申しますと、展望レポートと中間レビューで先行きの日銀の景気物価見通しを示す事によって先行きの金融政策に対するある程度の予見性を高めるという形になっております。従いまして、現在本行が出している景気物価見通しを勘案すれば、当面緩和的な政策を継続することは明言しなくてもご理解頂ける筈ですので、結果として市場金利は低位安定するでしょう」(以上、総裁発言じゃなくてあたくしの脳内解釈です、為念)
というような感じだと思いますが、蒟蒻問答の可能性もありますので内容のご判断は自己責任でお願いします・・・・って書いたらその後の質疑で実は「もう少し丁寧に説明して下さい」というのがあるのはここだけの話です(最初読んだ時に読み飛ばしてたよorz)。
つーことで、その先の質疑を読めば(会見5ページ目あたり)禅問答の続きが書いてあるのですけれども、まあそれをもうちょっとあたくし的に書き換えたのがさっきの脳内解釈ですが、そちらの丁寧な説明シリーズから最後の部分だけ引用しておくだよ。
『今ご質問にあったかつての時間軸政策は、消費者物価指数の前年比が安定的にゼロ%以上となるまで量的緩和政策を続ける、というかたちで公表しました。今回は、もちろんそれとは異なります。量的緩和政策を採用した時と現在とでは、日本銀行の政策運営を巡る環境、手段、枠組みが随分違っているにもかかわらず、従来と同じ議論がなされていると感じます。』
さすがに金利市場の参加者の多くは従来と同じ議論はしてねえと思いますが、確かにまあ能天気に昔の時間軸と同じような話をしている人はいるかもね。まあ金利市場以外の人達は思いっきりそう(昨日たまたまネタにしたどこぞの銀行の為替レポートとかありましたが、金融政策の具体的な枠組みとかを碌に勉強しないで堂々金融政策に関して論じてる何とかストのレポートって結構多いのよね)だったりしますし、ということでしょう。
○元々デフレ容認はしてませんけど
『(問) 従来の「0〜2%程度」という表現では何が問題だったのでしょうか。』
『(答) 従来は「0〜2%程度の範囲内にあり、委員毎の中心値は、大勢として、1%程度となっている」と表現していました。こうした「物価安定の理解」の表現の仕方について、私ども自身の理解とは別に、時として、日本銀行がマイナス領域を容認している、あるいはデフレを容認しているとの声が一部にあったことは事実です。私ども自身の理解とは異なる、こうした誤解があるのであれば、その誤解は解いた方がよいということです。何か実質を変えたということではありません。ただ、私どもが考えていることを正確に伝えるために、改めてこの表現を点検したということです。』
ということで、マイナスは容認していない云々というのは、こちらにありますように『何か実質を変えたということではありません』なのでありまして、中長期的なマイナスインフレは容認してませんがなという話ですわなという事で、やはり「大事なことなので繰り返します」という事でしょうな。
ま、元々この「理解」は量的緩和解除の時に出した枠組みの一環なので、そういう点で言えば導入当初に別にマイナスがどうのこうのという点はあまり話題にならなかったような気がする(下限ゼロは低いだろというような話はありましたけどね、あたくしの過去の駄文読んでるとそんな事書いてたなあ(遠い目))。
○足元にはコミットしてないです+中長期的とは+リスク点検の重要性とは
それでもこういう質問がしつこく出てくるのがメディアクオリティ。
『(問) 発表文の添付資料で、「物価安定の理解」の明確化のポイントとして、「ゼロ%以下のマイナスの値は許容していない」という表現をとっています。許容しないとすれば、デフレ、つまり物価がマイナスの時は緩和政策を続けるというアクションがその結果として出てくると思います。許容していないという認識や決意と、実際の政策行動とはどういう関係にあるのかをご説明下さい。』
んーとね、それこそ極端な話ですけれども、目先マイナスでも何らかの要因で将来的に物凄い勢いで物価が上昇しそうだという事が明白だったら緩和政策を続けない可能性もあるって事が「中長期的な」物価安定の理解ですよって事ですし、何らかの特殊要因で物価指数が下がっていても将来的に(以下同文)ってことじゃないですか、という事になるのではないかと。では総裁はどう説明しているかと言いますと・・・・・
『(答) 「中長期的な物価安定の理解」というのは、まさに書いてある通り、「中長期的な」ものです。物価安定が日本銀行の金融政策の目的である以上、物価安定を数値的に定義し、イメージを示していくということです。そして、実際の金融政策運営は、そうした物価安定の状態に関する理解を前提としつつ、将来の見通しに基づいて運営していくわけです。』
『金融政策を運営する時には、先程2つの柱ということを申し上げました。物価を通じて点検する面、これはもちろん大事なことです。一方で、2000年代半ば以降、今回の危機に至るプロセスを振り返ってみると、各国とも物価は安定していた、むしろ物価上昇率が低下していくディスインフレという局面が続いていたわけです。物価は大事ですが、物価だけを見ているともっと大きな経済全体の不均衡を見失ってしまうことがあり得ます。従って、足許の物価からストレートに金融政策の運営が決まってくるというものではないことが、今回の危機を通じて一段と明らかになったと感じます。』
というのは例のポンチ絵の最後の方にある「リスク点検の重要性」ってえ奴でございますわな。これまた昔と同じ話をしらっと行っているのですな。
『そして、いわゆるインフレーション・ターゲティングを採用している国、あるいは採用していない国も含めて、物価安定の状態を考える際に対応する時期として、各国の中央銀行がどういう表現をしているのかを改めて確認してみますと、どの中央銀行も「中長期」ということを非常に強調しています。』
中長期の定義キタコレ。
『例えば、欧州中央銀行は、中期(medium-term)という言葉を使っています。米国は、中長期の最終的に望ましい状態に対応する見通しを発表していますが、その期間は、大体5〜6年というかたちで出しています。英国は、妥当な期間(within
reasonable time period)と書いています。いずれにせよ、多くの中央銀行に共通していることは、物価安定はもちろん大事なのですが、しかし物価安定だけ、足許の物価だけをみて、短期的に政策運営することは適切ではないということです。』
ということで、足元にコミットしている訳ではないという話をしているのですけれども、これだけ説明している傍から次にこんな質問が飛んでくるのがメディアクオリティ。
『(問) 先程、国民にも分かりやすいメッセージを発するべきだとおっしゃっていたことに関連してお聞きします。今回、「物価安定の理解」の表現を変えましたが、逆に、国民にとっては、CPI(消費者物価指数)に目標を設けて時間軸を導入した方がより分かりやすいのではとも考えられます。総裁は、今回の明確化について、時間軸的な効果もあるとおっしゃっていますが、あえて政策として時間軸を導入しない理由について、もう少し分かりやすく教えて下さい。つまり、先程、日銀の政策のやり方が色々変わってきているので、以前導入したようなCPI前年比の目標を設けることはなくていいのではとおっしゃっていましたが、なぜ今は導入しなくても日銀は正確な情報発信ができるのでしょうか。』
・・・・・まずはメディアの皆様におかれましては、とりあえず変な思い込みに凝り固まる前に日銀の公表文書を百万回読んでから質問とかしやがれと思うのでありますが。あっしが白川総裁の席にいたら「お前ら何回同じ質問するんだよ頭の中に入っているのは糠味噌かよ」とか言いたくなりそうですな(−−)。
回答は引用するとただの重複なので割愛。政策インプリケーションにならない質問の重複は程々にしていただきたいですな。
○量の拡大と金利の引き下げと
こういう質問は良いですな。
『(問) 「ゼロ%以下のマイナスの値は許容していない」ということを踏まえ、今後は、12
月1日に導入を決定した新しいオペ等を打っていくことになると思いますが、これが物価に働きかける効果についてお聞きします。金融システムが不安定な時には物価の下落を食い止める効果はあるが、金融システムが安定している時には効果が限られるという説明をこれまでしてきたと思うのですが、これまでの説明と今回の措置がもたらす物価に働きかける効果について説明して下さい。』
『(答) 量を潤沢に出していくということは、ご質問にもあったように金融システムが不安定な状況にある時には金融システムの安定を確保する上で有効な方策であると思います。過去のデフレの歴史を振り返ってみますと、金融システムが不安定化し金融が収縮するという状況になった時にデフレが深刻化するわけですから、金融が収縮しないように量を出していくことには意味があると思います。』
『ただし、そのように量を出して金融システムが安定したもとで、量を出すことで経済が刺激できるかというと、その効果は非常に限定的であると思っています。これは、前回のわが国の量的緩和の時の経験でもそうですし、今回、わが国の経験を踏まえて各国が色々な政策を採っている中で、各国の中央銀行関係者の評価を聞くと、もちろん全員が一致しているわけではありませんが、量それ自体で景気を刺激する効果は限定的であるとしています。』
で、それだけだとメディアがうるさいので錦の御旗にバーナンキを(^^)。
『FRB議長は「これは信用緩和をやっていく上での結果に過ぎない」という言い方をしています。』
『ただし、いずれにしても、私どもとしては量について制約がないようにしておきたいと思っています。』
と、ここまでを読みますと、まあ金融市場にストレスが掛かるという場合とか(あと個人的に可能性があるとすればバランスシート拡大によって短期のオペでの繰り回しがあまりにも忙しくなった場合かなあ、普通に無さそうですけど)の場合には輪番拡大の線もあるという話でしょうね、と思います。
『一方、新しい固定金利型のオペについてですが、これを通じてやや長めの金利に働きかけていくことになります。もちろん、既に金利水準は非常に低いし、どの指標までみるかで若干違いはありますが、わが国の短期金利全体の水準は世界で最も低い状況ですから、さらなる金利低下の効果が非常に大きいのかといった疑問もあるかと思います。しかし、中央銀行としてどのような貢献ができるかを考えた場合には、1つのルートとして考えていくべきだと思っています。』
ということですので、まあ次の緩和は金利ルートになるのが本線でしょうという話(昨日も書いたけど)になるかと存じますです。
#もうちょっと後ろの方に面白い表現があったりするんだが、時間と量の都合上後日に回すということで勘弁。べ、別にネタ切れを展望して温存した訳じゃないんだからね!
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2009/12/09
○11月30日の総裁会見から小ネタとご教訓
名古屋での講演の後の会見ですが、翌日に例の臨時決定会合が招集されたという後付けの結果からみるとこれはこれで趣きがある内容です(^^)。
例えばこの辺。
『(問) 政府の中からは、日本銀行に一段の金融面での対策を求める声が強まってきていますが、それに対しては、日本銀行としてどのように対応していこうと思っているのでしょうか。』
『(答) 日本銀行としては、経済・物価情勢あるいは金融情勢を丹念に点検し、常に予断を持つことなく、中央銀行として、もっとも適切な金融政策を運営することに尽きます。我々としては、常にそうした姿勢で臨んでいくということが大事だと思っています。』
ほっほー。
『(問) 金融経済懇談会における質疑の中で、円高について、金融緩和を粘り強く進めることが為替の面でも影響をもたらすといったご説明があったと思いますが、金融緩和を粘り強く進めることが為替に影響を及ぼすメカニズムについて、もう少し詳しく教えて下さい。』
『(答) 為替市場について、中央銀行の総裁として事細かにコメントすることは、様々な市場の憶測を呼びますので差し控えたいと思います。その上で金融経済懇談会で申し上げた点について説明すると、日本銀行は、現在の極めて低い金利を維持することを既に発表しています。そうした政策方針が正確に理解されれば、それは為替市場にも相応の影響が及ぶであろうとの趣旨で申し上げたものです。』
月曜日に虫干しと称して1日の総裁会見をご紹介した時にも同じような発言があったと思いますが、いつもだと最初の部分だけで終了する所を、この時には「低金利を継続するのだから為替の円高攻撃すんじゃねえヴォケ」という(?)部分が加わっているのでありまして、まあいつもと違う話をいきなり始めた時には何かありますなという法則が炸裂したでござるの巻、と後講釈では言えるのでありますが、後講釈で言っても相場様に勝たない後付け講釈に1ミリも価値無しというのが市場的な仕様でございますので、こーゆー事を今更うだうだ講釈してもしょーがないのですけどね(自爆)。
ま、それ以前の問題で、この会見要旨がリリースされた頃には既に臨時会合のアナウンスがされていたので精読してもアフターフェスティバルにも程がある(まあここの「低金利維持」というくだりを見れば、時間軸強化またはターム物誘導が本線ではないかという想像が出来るというのはあるけどね)というものですけれども、次回に向けて良く覚えておきましょう。たぶん忘却するけど(^^)。
しかしまあ政府の発言に対しては何か苦々しいものは感じているんでしょうなというのはこの辺の質疑を見ると思うのでした。
『(問) 本日、平野官房長官が、日本銀行が量的緩和の判断をしようとしているかを含めて意見交換するといった趣旨の発言をされていますが、年末、年度末の資金供給を考えた場合に首相との意見交換の場ではそうしたことも話題になるのでしょうか。(以下割愛)』
『(答) まず前者の点ですが、現在、日本銀行は潤沢に資金を供給し、金融市場の安定に努めています。もちろん、金融市場は生き物でありますから、金融市場の安定を確保するためにどういうやり方が一番いいのかということは常に考えていきたいと思っています。いずれにせよ、日本銀行は今潤沢に資金を供給する姿勢にあるということです。(以下割愛)』
ということで、量的緩和量的緩和とやかましいので翌日の決定後の会見で「広い意味での量的緩和」という話をしていた訳ですな。バーナンキ議長は(最近その辺の定義論争をすっかり行わなくなりましたが)各種の緩和策を実施する段階で「FRBの行っているのは日本の実施した量的緩和とは違う信用緩和政策である」という話をかなーり熱心にしておられまして、どこでどういう知恵をつけたのか知りませんけど政府のエライ人が量的緩和量的緩和というのに対しては何だかなあという感じだったんじゃないでしょうかね。
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2009/12/07
○1日の総裁記者会見から
追加緩和策を決定した臨時政策決定会合後の会見から。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0912b.pdf
まあいつものパターンですが、それまでああでもないこうでもないとうじうじしてた白川さんが急に大盤振る舞いモードという感じです。この落差が何とも味わい深いのでありますが(^^)。
○いつもより威勢の良い話
最初の説明の所で。
『以上のような情勢判断を踏まえ、日本銀行としては、新しい資金供給手段を導入し、実質ゼロ金利といえるきわめて低い一律固定の金利で、3か月というやや長めの資金を十分潤沢かつ安定的に供給することとしました。資金供給の規模は、当面10
兆円程度を目途にしています。こうした措置により、現在のきわめて低い金利を維持するという姿勢を明確に示し、現在の強力な金融緩和を一段と浸透させることを通じて、短期金融市場における長めの金利のさらなる低下を促すことが、現在、金融面から景気回復を支援する最も効果的な手段であると判断しました。』
「実質ゼロ金利」「長めの(短期)金利のさらなる低下を促す」とは今までの白川さんにしては威勢の良いお話でございまして、まあここまで言うなら新型オペ(でも何でもなく只の指値方式共通担保なのですけれどもまあ兎も角)分の10兆円(ただし3か月間の累積)分は引かないという理解でよろしゅうございますでしょうか、ニヤニヤ。
まー余談になりますが、こうやって供給して行き、当座預金残高が拡大して行きますと、どこかのタイミングで市場の中にファンディングが必要な人がいなくなると思われます。今回は前回の量的緩和政策と違って当座預金付利があるので、都銀がブタ積み上等とか言い出して0.105を切る(というか事務コストを勘案すると出しの0.11じゃないと怪しい気がするが)GCを出さないとか言っても取りがいなくなると、当座預金付利制度の外側にいる人達(投信とか年金とか生損保とか)の短期資金の出しだけになるという暫く前の米国におけるGSE状態になるんでしょうな。
まあ前回の量的緩和政策と違って短期国債を買い捲くらないと当座預金残高が積み上げられないという状況でも無く、おまけに短期国債の発行量が半端無く増えていますので、どこのタイミングで上記の現象になるのかは微妙な気がしますけど、まーその前に短期国債のイールドカーブが潰れていくという感じになるでしょうな。しかも当座預金残高が積み上げられるとその分だけ短期国債の市中消化能力が高まるという財務省もウハウハの展開になるので、超地味なのですが、これって国債増発に対する凶悪なフォロー材料でもあるのですよね〜♪
ま、都銀さんがブタ積み上等モードになるまでは少々時間が掛かる(たぶん部門間での調整が必要になるから)のでその間は普通に105とかでもGCを出してくると思うのですが、冷静に事務コストを考えると10のブタ積みと105のGCを毎日ロールするのとではブタ積みの方がお得(ただしブタ積みは積み期間の途中で付利金利が下げられると涙目の展開になるリスクがある)という動きになってくるとどうなるんでしょうかね。まああまり見たくは無いのですが、どう見ても近未来のシナリオ。
という余談は兎も角として、会見の続きで量的緩和の話とか為替の話とか。
『このように、量が制約となって金融機関行動が制約されることがない状況をしっかり作り出すと言う意味では、広い意味での量的緩和だと考えています。先ほど質問者は「量的な緩和効果」と述べられましたが、繰り返して言えば、量が制約とならない状況を作る、量が制約となって金融機関行動が制約されるという状況を作らせないと言う意味でいえば、これは広い意味での量的緩和と言ってよいと考えています。』
大事なことなので2回言いました。「量的緩和」♪
『為替相場それ自体についてコメントは申し上げないということはいつも申し上げているとおりです。それから、金融政策は様々な経済・物価・金融情勢をみて、最終的に物価安定のもとでの持続的な成長を目的として行うものですから、為替相場それ自体をターゲットにして運営していくというわけではありません。』
っていうのは為替に関する質問に対する答えなのですが、いつもだとここで終了する所がこの時はその続きがあるのが中々。
『そのうえでご質問についてお答えすると、日本銀行はかねてよりきわめて低い金利を維持するということを景気情勢判断とともに示しています。私どもからすればその意思は十分に伝えているつもりですが、もし、なお十分に伝わっていないとすれば、改めてこうした方針が理解されることにより、少し長い時間をかけて市場にも相応の影響を及ぼしていくと考えています。』
低金利を維持するから為替の円高傾向は止まるべきであると仰せです♪
○急に態度が変わりましたねというツッコミ
しかしまあこれはいい感じで嫌らしい質問ですな。
『(問)2点伺います。まず、10 月30 日に、社債・CPの買入れによる資金供給を、12
月をもって止めることを決定したにもかかわらず、今回、それを復活するようなことを決めているように感じます。これは迷走のようにみえるのですが、10
月30 日の引締め方向での決定が誤りであったと認めるのか伺います。次に、11
月30 日の名古屋での講演で、総裁は「緩やかなデフレにある」と述べていますが、その10
日前の11 月20 日には「デフレには様々な定義がある」と述べています。日本銀行は、この10
日間にデフレの定義についてどのように考えたのか、デフレを今どのように定義しているのか、定義を決めていないのかお聞きします。』
指値の共通担保オペ導入って要するに特オペの共通担保バージョン(の変形)でありまして、こんなことなら10月に終了決めなくても良かったのではないかというツッコミが前半の部分ですな。いやまあどうせ何かしないと行けなくなるので、この際民間債務買入関連のような措置を共通担保オペのような通常ベースの措置にリプレースした方が日銀的に美しいという話だったのかもしれませんけど、もうちょっとこっそりとフェードアウトできたという気はしますし、そうやってたらドタバタ感は出なかったと思いますがね。
『(答) まず、最初の質問ですが、「迷走」であるとはまったく考えていません。金融緩和効果を上げていくうえで、最も適切な方法を追求しているということです。少し具体的に申し上げると、各種時限措置の取扱いについては、金融市場の安定を確保し、それを通じて企業金融の円滑化を支援していくという点では、金融市場の状況変化に即応した、最も効果的な金融調節方法を採用することが、いつも必要であると思っています。』
で、臨時措置に関する意義の説明と市場の歪みについて延々と説明があるのですがそこは華麗にスルーしまして(^^)。
『今回の決定はマクロの金融緩和政策の効果を強化するために、共通担保資金供給オペを一層活用していくものであり、時限措置の取扱いを決定した際の基本的な考え方に沿った、一貫して整合的なものであると思っています。』
まあ物は言いようですな。
『デフレについての質問ですが、10 月末に公表した経済・物価情勢の展望レポートおよびその後11
月に実施した金融政策決定会合でも、日本銀行の物価に関する判断は全然変わっていません。下落幅は縮小するが物価の下落が暫く続くという判断を、一貫して示しています。名古屋の講演では「緩やかな物価下落が続く」というデフレの定義に従って、現在がデフレの状態にあるということを申し上げたわけです。そこに違いがあるというわけではなく、日本銀行の考えている判断を、より誤解のない正確な形で伝える努力を、常に行っているということです。』
まあ物は言(ry
○つまり展望レポートの見通しは「デフレが続く」ですな
んでデフレの話が出たのでその後もデフレの定義がどうのこうのという質問が続くのでした。いやまあメディア的にはそういう話ってオイシイのでしょうけれども、正直言ってそこの定義論争はこれ以上突っ込んでも政策的なインプリケーションに繋がらない話なので、金融市場的にはどうでも良い話になるんですけどね。
『(問) デフレの定義はどのように考えているのでしょうか。』
『(答) デフレの定義について、人々が様々な定義を使っていますから、私自身が、こういう定義を使ってはいけないと言う立場にあるわけではありません。ただ、コミュニケーション上、「緩やかな物価下落」という形でデフレを議論することが多いということですと、その定義に従ってコミュニケーションすることが金融政策上も望ましいと思っています。』
○政治の圧力がどうしたこうした
『(問) この2週間くらい、政府の官房長官や大臣から、量的緩和という言葉を何度も使っての催促が雄弁に語られていました。本日のこのタイミングですと、政治的な圧力、風圧を感じての結果ではないかと思いますが、いかがでしょうか。(以下割愛)』
『(答) 日本銀行の金融政策は、経済全体に対して少し長い目で見ると大変大きな影響を与えていく、それだけ責任の大きい仕事であると思っています。従って、金融政策に対して、政府も含めて色々な方が様々な考え、思いを持つことは当然だと思います。日本銀行法の下でも、政府と日本銀行が円滑な意思疎通を図っていくうえで様々な枠組みが用意されています。日本銀行としては、政府や様々な方々の意見も十分に理解した上で、しかし法律の規定に従って、物価安定の下での経済の持続的成長の実現という目的をしっかり達成していきたいと考えています。従って、それを「風圧」と捉えるのではなく、日本銀行の責任がそれだけ重いと捉え、その上で最終的に日本銀行がしっかり判断していくことであると思っています。』
いやまあ何と言いますかという感じの答えであります。
これまた余談というかあたくしの悪態になりますけど、自民党政権時代も確かに金融政策がどうのこうのという発言をしたり、「俺様の言う事を聞かないなら日銀法改正すべきだ」という趣旨としか取れない無茶な発言をする人はいたのですけれども、それはあくまでも党の人間という立場にある時の発言であって、政府の要職に就いている人達はそんな発言はしておりませんでしたわな。然るに民主党政権においては党の人(つまり小沢さん)はそういう話を全然しないのに、政府の要職についている人間が競うように金融政策に注文をつける発言を行い、日銀の決定が行われた後はもう勝ち誇ったような発言が連発という下品にも程がある状態。お前ら「金融政策に政治が干渉するのはケシカラン」とか言ってたのは何だったのかと小一時間問い詰めたいので、後日忘れないようにこの間誰が何を言ってたのかを備忘メモ残しておく所存。
○今回は量的緩和だけど本当は金利誘導だよという話
で、金利の方が実際問題としては市場の価格形成に対する効果はでかいと思うのですけれども、まあその辺に関する話。さっきの質問の続きからですが。
『(問)(前半割愛)また、量的緩和という言葉で、我々はかつての当座預金をどう積んでいくかという政策を考えますが、あえて今回の措置としたことについて説明して下さい。』
『(答)量的緩和について、全ての経済用語がそうですが、事実として様々な定義があります。FRBのバランスシートは随分拡張していますが、バーナンキ議長やFRBは、これを量的緩和ではないと言っています。それに対し、いやこれは量的緩和であると言っているエコノミストもいます。そのように、様々な定義が使われています。ただ、現在FRBが否定している「量的緩和」、つまり当座預金にターゲットを設けて量を拡大していくという意味での政策である量的緩和について、FRBは当座預金の量は経済を刺激していくうえでの結果に過ぎないという立場を明らかにしています。』
それはそうです。
『私自身、今、量的緩和についての理論的論争をしたいのではなく、いずれにせよ量というものを日本銀行は十分に出す用意はあり、もし、金融機関が日銀のオペに応じてさらに量を調達したいということであれば、どんどん調達をして下さい、そのための枠組みはしっかり用意しています、ということです。』
でもってこれだけだと判じ物のような話でして、その後も質疑応答が続くのですけれども、一々引用してるとクソ長くなるので、金融市場的に見た場合にはよーするにこういう話だよという部分を引用。
『今回、0.1%という金利で3か月物の資金を供給する姿勢をしっかり示すことは、2つの意味で効果があると思っています。第1に、日本銀行が現在の低金利を続けていくことを通じて景気を支えていくという姿勢は、繰り返し申し上げてはいますが、なお十分には浸透していない面があるという指摘もあります。十分に理解されていないケースがあるとすれば、今回、固定金利、3か月のオペを出すことは、その姿勢を明確に伝えることを通じて金利に対して影響があると思います。第2に、3か月の資金を出すことにより、需給的な効果で長めの金利を下げていくということです。これはこれだけで大きな効果があるというわけではありませんが、2つの効果が相俟って金利を下げていく効果を期待しています。』
ということで、金利ターゲットだという話が1つでして、もう一つの「姿勢を浸透させる」というのは時間軸とかと勘違いしそうですが必ずしもそういう話ではなくって、最初の方で引用した為替市場を意識した話だというのが、露骨にはそういう言い方になっていませんが、さっきの部分と総合すると理解できるかと思います。
#結構端折ったつもりですがかなり長くなってしまいました。ECBの会見はパス
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2009/12/01
お題「今回の講演は結構ハト的な感じですけど・・・」
つーことで議事要旨とか月報とかスルーして総裁講演から。
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0911g.htm
○景気見通しも今回は弱めのトーンに
『日本経済の現状と先行き』から。
『ただし、民間需要の増加は、各種対策の効果によって支えられている面が大きいと判断しています。このため、日本銀行では、わが国経済は持ち直しているものの、民間需要の自律的回復力はなお弱いと判断しています。』
と現状について言及した上で、先行きに関してはこれまた慎重。
『先行きについても、2010年度半ば頃までは、雇用・賃金面での調整圧力の残存などから、持ち直しのペースは緩やかなものに止まる可能性が高いとみられます。』
で、この後が今回微妙に弱めの話になります。
『景気の現状や先行きを一言で表現しようとする場合、どのような言葉が最も相応しいかは、コミュニケーション上、常に頭を悩ます問題です。只今申し上げた「緩やかな持ち直し」という表現は、景気が悪化する局面ではなくなったものの、経済活動の水準はなお低く、先行きの回復テンポも平坦とはならないだろうという慎重な判断も込めて使っています。実際、来年春先前後には、内外の景気刺激策の効果の減衰に伴い、景気の勢いが一時的に鈍る可能性も否定できません。』
つまり良くないと。
『しかし、日本を含め先進国の当局が景気をサポートする姿勢を堅持していること、新興国の成長力が強いことなどを踏まえると、内外の景気回復の動きが途切れてしまう可能性は大きくないとみています。その後、来年度後半以降には、輸出を起点とする企業部門の好転が家計部門に波及し、わが国の成長率が徐々に高まっていくという姿を想定しています。このような見方の背後にある世界経済の見通し自体は他の先進国の中央銀行と基本的に同様のものであり、日本銀行独自のものではありませんが、こうした見通しは不確実性が大きいことも認識しています。』
つまり外需頼みな上にうっかりどこかの中銀(ってFRBが第一候補ですが)が超低金利政策の是正とかおっぱじめ出すと終了という事でございますな(^^)。
『この点では、このところの急速な円高が回復途上の企業マインドに与えている影響、さらには先週末以降の国際金融面での動きが金融市場に影響を及ぼす可能性にも十分注意を払っています。中央銀行としては、何よりも予断を持つことなく経済の姿を点検していく姿勢が大事だと思っています。』
円高への言及キタコレ。
○デフレの話
その続きで物価の見通しに関して。
『先週発表された10月の消費者物価前年比は−2.2%と幾分縮小し、今後も前年の石油価格高騰の影響が薄れるため、来年初にかけて−1%程度まで縮小する可能性が高いと予想されます。問題はその先です。マクロ的な需給バランスの改善に伴い、下落幅は徐々に縮小していくと見込まれますが、経済の持ち直しテンポが緩やかなものに止まるとすれば、物価の下落圧力もある程度長期間にわたって残る可能性が大きいとみられます。』
ってまあ展望レポートに書いてあるのですけどね。
『このため、日本銀行は、10月末に公表した展望レポートの中で、物価について、下落幅を徐々に縮小させつつも、下落が2011年度まで続く可能性が高いという厳しい見通しを公表しました。政府は、先日、「持続的な物価下落という意味において緩やかなデフレ状況にある」との見解を示しましたが、10月末に示した日本銀行の物価に関する判断は、こうした政府の見解と同じ認識に立つものです。』
まあさよですな。で、その先に『5.デフレ問題への対応』というコーナーを用意してるのは、まあいつもの白川節だと「デフレというのは言葉の定義の問題がありましてうにゃうにゃ」という話になるのですけれども、今回はその余計な話をしないですんなりデフレ問題への対応という話になっているのはコミュニケーション的というかやかましい外野というか他市場というか、まあそういう人向けには結構なお話じゃないっすかねえ。
『ここで、政策運営との関連で、デフレ問題に対処する上での基本的な考え方について申し述べたいと思います。日本銀行は、日本経済が持続的な物価の下落状態、つまりデフレと呼ばれる状態から脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰するという課題達成のために、先ほど申し述べたように、中央銀行として最大限の努力を行ってきましたし、今後もその方針を堅持することを明らかにしています。』
まあいつも余計なヘッジクローズを入れて話を台無しにする白川さんにしてはよろしゅうございますな。とは言いましても、その後はいつものそもそも論になってしまうのですけれども。
『まず、持続的な物価下落の根本には、経済全体の供給能力に比べて需要が弱いという基本的な要因が存在しています。今回の物価下落でも、その出発点は昨年秋以降の金融・経済活動の急速な収縮であり、その結果、需給バランスは大きく悪化しました。こうした状況を是正するには、設備投資や個人消費といった最終需要が持続的に拡大するような環境を整えることが必要です。』
『言い換えれば、政策運営面では、家計が将来の生活への安心感を持ち、企業も将来の成長に対する期待を持てるようにすることが重要です。同時に、企業サイドでも、米欧における行き過ぎたブームの再来はない以上、新しい時代の消費者ニーズに即した供給体制に転換していく経営努力が不可欠です。』
ということでまたそもそも論になるんですけど、そうは言いましてもじゃあ何をすんのかと言われましてもねえという所なんでしょうな。
『このように、デフレ問題に対応するためには、政策当局、民間経済主体それぞれによる粘り強い取り組みが必要であり、どうしてもある程度時間を要することになります。その間、物価の下落が原因となって経済活動に悪影響を及ぼし、これが更に物価の下落を引き起こすような事態、つまり、景気と物価の悪循環を引き起こさないようにすることも大事です。』
ということで、デフレスパイラル阻止という話で、その為には金融システムの安定化という話をしていますので、そーゆー意味で言えば次の緩和は金融システムの安定性確保の為にどうのこうのとか言う話を(理屈の上では)するんですかね。
『歴史を振り返りますと、物価の下落が経済活動の収縮を招き、景気と物価の悪循環をもたらした事例のほとんどは、銀行倒産などにより金融システムが著しく不安定化した時期、まさに金融が収縮していた時期に生じています。』
つーことですな。
○会見はヘッドライン見た時には微妙だったのですが
で、総裁会見の方なんですけど、ニュースベンダーのヘッドラインを見た時には何かまたいつもの「それは白川さんとして筋が通った話だが庭先論に見えてしまうので言い方を考えた方が良いのでは」的な感じだったのですが、後になって会見記事を見るとそうでもないという不思議ちゃんな会見ですね。
一問一答@ロイター日本語版
http://jp.reuters.com/article/economicIndicatorsAndComments/idJPnTK035341820091130
会見記事@ブルームバーグ
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=newsarchive&sid=am3B0.YRf54I
以下ロイターのニュースから引用します。
『──先ほど、金融市場が再び混乱すれば、果敢に行動すると言っていたが、国債買い入れ増額も選択肢に入るのか。その際に障害になるかもしれない銀行券ルールがあるが、それに抵触する可能性をどう考えるか。為替介入は行われていないが、日銀として、市場介入ではないが、外債購入が選択肢になるのか。』
『「一問目だが、先ほど言ったことに尽きている。日銀としては、その時々の金融経済情勢を踏まえて、最適の政策を常に考えていく。ふたつめだが、障害との発言があったが、我々自身は資金を潤沢に供給していく、そのためにどういうふうな調節の枠組みが最も適切かを常に考えている。それを将来にわたって考えている。その障害は、日銀が定めている障害ではなく、中央銀行に課せられた使命である円滑な金融調節を行っていくうえで最適なやり方を追及していくということ。何か、それ以外に障害があるということではない。中央銀行の使命遂行ということに照らして判断をしていくということ。3つめの為替介入だが、介入は政府の責任でなされるもので、日銀がコメントすることは適切でない。為替市場介入の代わりとして外債購入を考えたらどうかとの質問であるなら、それは日銀法で、為替レートの誘導ということでの外貨の買い入れは、政府が行うと法律に書いてあるので、日銀としては法律にしたがって行動する」』
ということで特に変な話をしてる訳ではないのですが、「介入は政府の責任」みたいなヘッドラインが打たれていたので、ヘッドライン打つ側としては「政府と日銀の不協和音」という図式がオイシイというのは相変わらずの展開になっているのかなあと思われます。まあ政府(というか対策も無しにデフレ宣言だけするどっかのカイワレお遍路)がマジメにやっとんのかゴルァという状態なのがよろしく無い訳ですが。
調節上の技術的な話に限定してしまえば、いわゆる銀行券ルールに関してはまあ数年のスパンで何となくそうなってりゃ良いって話で、必要な時にホイホイ売却しても無問題(とFOMCの一部様では仰せですが)というのであればもっと柔軟に増やしたり減らしたりできるのでしょうが、まあ普通に債券市場でそれをやると金利が素敵に乱高下するリスクがでかいのはたぶんちゃんとした債券市場のある国では共通の事象かと思われます(実際にやってみないと判らんけど)ので、何かタガを嵌めておかないとという程度の話っぽいのですけどね。そもそもまだ余裕ありますし。
『──鳩山総理との会談について、官房長官が量的緩和含めて意見交換すると言っているが。これも話題になるのか。ドバイショックが与える日本の金融システムへの影響どうみるか。』
『「前者だが、日銀は現在、潤沢に資金供給しており、金融市場の安定に努めている。金融市場は生き物なので、市場の安定確保のためにどういうやり方がよいかは、常に考えていきたいと思う。今、日銀は量的に潤沢に資金を供給する姿勢にある。(ドバイの件は引用割愛)』
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2009/11/25
ということで総裁会見をメインに。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0911c.pdf
○今回は随分と丁寧に説明しているのですが・・・・
最初の部分は総裁からの説明になるので基本的に声明文の説明になるのですけど、その次からの質疑応答では総裁かなーり丁寧に説明しています。で、丁寧に説明しているのですが報道の具合は毎度おなじみの状況だわ、閣僚から出てくる発言は全然白川さんの説明を聞いてないわ(いやまあさすがに財務省の中の人とかは状況を理解していると思うのですが)という状況に泣くしか無いという所です。
ま、俊ちゃんと毎度比較して話をしていますけど、本来的に言えば、白川さん的な説明がきちんと伝わる方があるべき姿だとは思うのですけれども、残念ながらメディアにも政治家様などにも全然伝わらない(あるいは伝わっても政治的にお得なので真意を微妙に歪めて解釈するとかね)ので当然ながら一般的にはもっと伝わらないという有様になるので、俊ちゃん的なハッタリ緩和でハッタリ説明をしないといけないという負のスパイラル状態。
ニュースで報道されているベースと総裁会見を比較しますと、報道が説明の趣旨をミスリードするような端折り方をしているのが判ると思うのですけれどもどうなんでしょうかね。
・・・・と言うと発言全部引用しないとマズーな気がするが、そんな事をしていると無限引用になるのでそこは適当に(汗)。
○低金利政策を比較的長期間継続しますと
冒頭の質問は声明文にあった文言が後ろに行った件についてで、それに対しては粘り強く現在の政策を続けると仰せです。
『まず、結論から申し上げると、政策運営のスタンスに変更は全くありません。少し技術的な質問ですので、多少技術的なお答えになると思いますが、前回の会合では、CP・社債買入れなど各種時限措置の取り扱いの見直しを決定・公表しました。その際、時限措置の見直しが、直ちにマクロの金融緩和措置の変更につながるものではないことを明確にする趣旨から、「当面、現在の低金利水準を維持するとともに、金融市場における需要を十分満たす潤沢な資金供給を通じて、きわめて緩和的な金融環境を維持していく」方針を示しました。こうした考え方については、今も全く変わりありません。』
つまり、前回文言を置いたのは特別措置解除が金利の出口政策のスタートと捉えられないようにする為に敢えて加えたという理由だという話ですな。
んでまあ悪態を軽く申し上げますと、説明上そーゆー文言を加えたというのは判るのですが、本来的に言えば展望レポートの見通しが出ている時点で例の文言は言わずもがなであって、金融市場的には「わざわざ言わずもがなの文言が入るとは何か他の意味(=より明示的な時間軸政策の導入への布石とか)があるんじゃないか」と思ってしまいますので、何つーかその辺りに関してはもうちょっと前回説明して欲しかった(露骨に説明するなら「これは金融市場向けの文言ではなくてメディアや一般向けの念押しですよ」って所ですが)なあと思います。
『これまでも、毎回の公表文では、経済・物価情勢の評価を2つの柱に基づいて整理するとともに、先行きの金融政策運営の考え方を示しています。今回は、時限措置の取り扱いといった案件がない中で、本日の公表文では、従来同様の発表方式を踏襲し、先行きの金融政策運営方針として、「きわめて緩和的な金融環境を維持していく」とともに、「わが国経済が物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰していくことを粘り強く支援していく」ことを示しました。こうした考えも、展望レポート公表時から変わっていません。』
ということで、以降も「粘り強く緩和を続ける」という話が続く次第でありまして、決定会合やってる中で「まだ出口戦略をとるのは少し早い」とか不勉強の極みのような寝言をおっしゃるどこぞのお遍路に対してはあたくし的には(自粛)じゃなかろかルンバ♪としか申し上げようがございませんですな。つーかスタッフ(がいるのかどうか知らんが)は何をやってるんだよ。
○継続的な物価下落状況は認めていますがな
次の質問が政府デフレ宣言に関するお話。で、これもまた全部引用するでござるの巻。
『わが国の物価動向をみると、出発点となる本年度前半までの需要の落ち込みがきわめて大きかっただけに、物価下落圧力がかなり長い期間残存する可能性が大きいと判断しています。このことは、前回の展望レポートでも申し上げた通りです。デフレには様々な定義があるので、こうした物価の状況をどのような言葉で表現するかについては、当然論者によって異なり得る性格のものだと思います。いずれにせよ、「緩やかなデフレ状況にある」との今回の政府の見解は、「持続的な物価下落」という定義に基づいたものであり、そうした物価動向の評価という点では、以前から日本銀行が展望レポートで示している考え方と異なっていないと思います。』
ということで、継続的な物価下落状況および今後の下落圧力に関しては日銀が既に示していると説明。まあその通りとしか申し上げようが無いのですけれども、報道される時には「政府の見解と違いは無い」という所よりも「デフレの定義がどうのこうの」という方がメインになってしまうのでありまして(そりゃまー報道する方としてはそっちの方が読者の目を引きつけますからねえ)、まあシャーナイなあとは思いますけど。
で、その続き。
『物価の変動の原因をどう考えるかということですが、物価は短期的には様々な要因で変動しますが、持続的に物価が下落するということは、マクロ的な需給バランスが緩和していること、言い換えれば需要の弱さの結果として生じる現象だと思います。したがって、そうした状況を改善するためには、結果ではなく根本的な原因に働きかける、つまり設備投資や個人消費といった最終需要が自律的に拡大する環境を整えることが不可欠であり、家計の将来の安心感や企業の成長期待を確保することが最も大事な課題であると認識しています。こうしたことを意識しながら、政府、中央銀行といった政策当局と民間経済主体がともに努力していくことが必要であると考えています。』
いやもう仰る通りだと思うのですが、こういう発言はろくすっぽ報道されない所が泣けるのですけど。
『この点、日本銀行としては、企業や家計の経済活動を金融面から支えるために、きわめて緩和的な金融環境を維持し、わが国経済が物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰していくことを今後とも粘り強く支援していく方針です。』
ここでも金融緩和継続の話を「粘り強く」実施という発言をしてまして、最初と2番目の質疑で連続して同じことを強調していますので、会見場から帰ってきた人が最初に出したベースと思われる報道(共同とか時事とかブルームバーグとかの第一報)では政府との差異よりも、「粘り強く緩和政策を続ける」という報道っぷりだったんですよね。
それがまあ通信社から新聞社に回ったり、新聞社の中でもデスクだのを経過する間に「政府との差異」の方がメインに近くなってくるのは報道機関の仕様なんでしょうかね。ということで、東京新聞が「日銀、金融緩和に慎重」とかいう見出しを大々的に出しているのはナンジャソリャという感じ(追加緩和に慎重なら話は判るが)ですが、まあ政府との対立って話にした方がメディア的にオイシイなんですかねえ。
○流動性を出しても金融システムから金が流れなければという話(だと思う)
その後もデフレの定義がどうのこうのという話が延々と続くのですけれども、基本的な部分は先ほど引用した事で尽きているので、途中を全部飛ばして(まあ説明が丁寧なので読んだ方が吉かと思いますけど)量的緩和政策や時間軸効果の評価および今後の導入可能性に対する質問に対する答えを引用。これがまた長いのですけど・・・・
『デフレ一般についての考え方は先程申し上げたので、政策に関する質問としてお答えします。この文脈でよく行われている議論は、中央銀行がもっと流動性を供給したり、もっとバランスシートを拡大したりすればデフレは収まるのではないか、という点だと思います。そうした議論についてどのように考えているかを説明することが、ご質問に対するお答えになると思います。』
『まず、日本銀行は金融機関に対して潤沢に流動性を供給していますし、そうした姿勢で臨んでいます。そうした日本銀行の政策の効果あるいは成果というものは、直接的には金融市場の安定度で計られると思います。この点、この1年間で各国中央銀行のバランスシートが拡大しましたが、欧米と日本を比較してみると、確かに日本の金融市場は不安定化したものの、欧米に比べれば遥かに安定していたと思います。この面で、日本銀行が金融市場・金融機関に対して潤沢に流動性を供給するということが効果をあげていると判断しています。』
どうせ説明するなら各国中央銀行のバランスシート拡大は結果としてはマネー供給にもなったけれども、そもそもの趣旨は金融仲介機能の回復の為に実施したものなので、金融仲介機能の毀損度合いが比較的少なかった日本のバランスシート拡大は少なかったという話をした方が宜しいのではないかと思いますがそれは兎も角その続き。
『それから、流動性あるいはマネーという点では、金融機関の持っている流動性だけではなく、最終的に企業あるいは個人がどの程度流動性を持っているか、あるいはどの程度借入れができるかが重要だと思います。この点でまず、後者の貸出──企業・個人からみれば借入になりますが──の数字をみると、欧米では、リーマン破綻以降、銀行貸出、特に銀行による企業向け貸出の伸び率が急激に低下し、足許ではマイナスになっているわけで、この1年間の伸び率低下は大変なものであったと思います。それと比べた場合、わが国における銀行貸出あるいは銀行による企業向け貸出をみると、昨年のリーマン破綻以降、伸び率はむしろ高まっています。今年初めをピークに伸び率は徐々に下がっていますし、この後も伸び率は下がると思いますが、この1年の変化をみると、貸出(借入)という面では、欧米に比べて日本の方が遥かに状況はよかったと思います。これは日本銀行による流動性供給によるものだけではありませんが、流動性供給の出発点における不安を断ち切ったことがやはり1つの要因であったと思います。』
うーむ、何か説明が微妙な気がする、言いたい事は判るけど。
『それから、企業あるいは個人が保有する預金、つまりマネーサプライですが、マネーサプライが名目GDPに対してどの程度の比率にあるかをみると、元々日本は欧米対比高いわけですが、この1
年間の変化という面でみても、この比率の上昇は欧米に比べて決して小さくなく、むしろ若干大きいと感じています。もちろん、日本銀行自身がこれで完全であるとか十分であると言っているつもりはありませんが、流動性を潤沢に供給するという姿勢を現実に示して供給することにより、経済が落ち込むことを防ぐのだと思います。』
と、マネーサプライも出しているという話をしています。で、その次が今回の会見で一番目立った発言ね。
『今申し上げたことは、経済全体が大きな流動性制約に直面している場合、流動性を供給することが物価の下落を防ぐ上で大きな効果があるということです。ただし、流動性制約が原因となって投資が行われないといった経済状況ではない場合、つまり需要自体が不足しているという時には、流動性を供給するだけでは物価は上昇しないと思います。』
流動性制約での物価下落を防ぐ効果はあるけれども、そもそも需要が無いような景気が悪い中で物価を上げようと思っても流動性を出すだけでは上昇させる効果は乏しいという話をしているようで。
『この点については、今回の米国の経験をみても分かると思います。中央銀行が供給した超過準備額の対GDP比率をみると、日本の量的緩和政策の時には5.8%であったのに対し、現在のFRBでは6%台だと思います。』
『要するに、日本の量的緩和政策時でも現在のFRBでも超過準備という形で同じように流動性を供給していますが、それ自体によって物価を更に押し上げていく効果は乏しく、流動性制約が経済活動を縛る状況ではない局面では、流動性供給には物価を上昇させる力はないということです。』
『これは流動性供給が物価に対して影響が無いということではなく、流動性制約がネックになっている時には物価の下落を防ぐ上で意味があっても、そうでない時にその効果は限られているということを示しているように思います。』
マネーの需要が無い所にマネーを出してもそれは金融機関の中をぐるぐると回るだけなので実体経済に働きかける力に乏しいという説明でございますな。
ただ、これを突き詰めていくとゼロ金利制約に引っ掛かると金融政策無効って話になってしまいそうでそれで良いのかという気もするんですけど・・・・
『今、量の話を申し上げましたが、いずれにしても、日本銀行は現在の低い金利水準を維持していくということを既に発表しており、これを通じて経済活動を支援していくという姿勢には変わりありません。』
最後にここでも低金利政策継続の話をしてますな。しつこく繰り変えすの巻。
ということで、一つの答えを途中割愛しないで引用する攻撃をしたらアホのように長くなったので今日はこの辺で。
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2009/11/17
まずは総裁講演。お題は「バランスシート調整と世界経済」。
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/data/ko0911e.pdf
○バランスシート調整に関しては厳しい見方を
バランスシート調整は当面続いて厳しいですよという話はいつものように行っておりまして、まーその辺りは割愛しますけれども、日米のバブル崩壊比較に関しては(微妙にピンポイントで引用しにくいので勝手にまとめると)こんな感じのようで。
・日米の過剰レバレッジの規模はGDP対比でみた場合ほぼ同程度
・バランスシート調整を行う部門は日本では企業部門だったが、米国では家計部門となっている点が違う
・政策対応に関しては、利下げ開始は日米とも同じような時期(不動産価格のピークから1年後)だったが、金利の下げ速度は米国の方が速い。
・ただし、不良債権問題が証券市場価格として出る米国と貸出債権の劣化として出る日本では不良債権問題の顕在化速度が違う
・金融機関への公的資金注入規模は日本の方が大きかったが、速度では米国の方が速い
・ただし、米国の場合は依然として不動産価格下落やローン債権の劣化が続いている点は注意が必要
つー感じですな。結局のところ結構厳しい見方をしているという感じでございますけど。
○日銀は別に「利上げで個人消費活性化」とか主張してませんがな
という話の続きで政策対応に関して。
『政策対応に関する第2のポイントは、金融政策の有効性の評価です。日本の経験が示すように、バランスシート調整下の経済では、金利引き下げという金融緩和の効果は大きく低下します。もちろん、このことは、金融緩和政策が効果を発揮しないという意味ではありません。金融緩和は、過剰債務を抱えていない主体の支出やリスクテイクを促し、マクロの支出・所得を下支えします。また、利払いの減少を通じて、債務削減を進める効果があるほか、資産価格を下支えし、バランスシートの修復を速める効果も期待できます。』
というのはまあ普通の話ですけど。
『バランスシート調整下での金融政策運営の観点から、日米間での特徴的な違いのひとつは、経済主体間の所得移転効果です。』
ほほう。
『経済全体では、当然のことながら、過剰債務を抱えた主体に対応して、過剰貯蓄を抱えた主体が存在します。』
さよですな。
『日本では、利下げにより、膨大な資産を保有する家計部門から、過剰債務を抱えた企業部門へ大規模な所得移転が発生しました。所得分配という点だけからみると、家計の利子所得の減少を通じて消費が何がしか抑制されるという面はありましたが、バランスシート調整の主体が企業部門であっただけに、利下げは、調整の進捗を円滑にし、経済活動全体を下支えすることで、最終的には家計部門の雇用者所得を、ひいては日本経済をしっかりと守る効果があったと判断しています。』
まあ日銀総裁が普通にこう言うのは当たり前なんですけど、国会に呼び出されて「利下げによって家計の利子所得が幾ら減ったか計算しろ」とか言う馬鹿議員の相手をしただけで「日銀は利上げで家計所得サポートというトンデモ主張をしている」とか批判する向きが結構見受けられるのは残念としか申し上げようが無いので、まあ引用させて頂きました次第。
○バランスシート調整も経済構造の違いで違ってきますというお話
んじゃ米国はどうかと申しますと。
『一方、米国は、日本と異なり対外純債務国ですから、利下げにより、海外の債権者に対する利払いが減少する結果、海外部門から米国内への所得移転が発生します。つまり、米国の場合は、利下げによって自国に有利な所得移転が発生し、この面ではバランスシート調整の進捗には有利な立場にあると言えます。もっとも、低金利の継続には、潜在的リスクもあります。低金利の継続で先行きの予想物価上昇率が高まったり、ドル安予想が生まれたりして、長期金利が大きく上昇するようなことがあると、財政負担が増加し、政府のバランスシート調整という別の問題が生じる可能性があります。』
ここの所が微妙に良く判らんのですけど、イメージしているのは景気回復を伴わない長期金利上昇という話なのでしょうか?米国に関しても現下のリスクはインフレよりもデフレであって、別に予想物価上昇率が高まったりドル安予想が生まれる分にはバランスシート調整の進捗が進みやすくなるような気がするんですが、まああんまり低金利万歳の話ばかりするのはDNAが騒いで落ち着かないのでどっかに過熱警戒という文言を入れたくなるのではないかというのは邪推ですかそうですか(^^)。
で、その続き。
『バランスシート調整の主体の違いは、所得移転効果以外にも、調整過程に重要な差異を生みます。日本の場合、企業部門がバランスシート調整の主体でしたから、世界経済の高成長を背景とした輸出の増加によって、経済全体のバランスシート調整が進捗しました。』
ただし今回は違いますよと。
『今回は、先進国が程度の差こそあれバランスシート調整の影響を受けていることから、前回日本が享受したような輸出の大幅な増加という追い風には期待しにくい面があります。加えて、今回、米国では、過去に比べ、雇用者所得が大きく減少しています。このことは、企業収益の回復にはプラスですが、家計のバランスシート調整を遅らせることも同時に意味します。』
まあ新興国が何とか引っ張ってますけど、主要国の金融政策当局が出してくる景気先行き見通しを見ると、回復のドライブがどこもかしこも「輸出が伸びると良いですね」状態になっているのが泣ける次第。
『そう申し上げた上で、急いで付け加える必要があるのは、米国の経済構造には、バランスシート調整を早期に進捗させる要素もあるという点です。必要とされるバランスシート調整の規模は、長期的な均衡成長率──潜在成長率と言っても良いですが──、と比べて、経済の抱える供給能力が過剰かどうかによっても左右されます。成長期待が高ければ、バランスシート調整の圧力は小さくなります。』
じゃあ日本はダメじゃんという悲しい話になりますが、その先は予想通りの話の展開になっております。
『この点、米国は、何よりも経済構造が柔軟であるのは大きな強みです。労働や資本が生産性の低いセクターから高いセクターに素早く移動すれば、経済全体の生産性の伸びが維持されやすくなります。一方、日本では、少子高齢化から生産年齢人口の伸びが低下する中で、労働や資本の移動が相対的に少なく、そのことも一因となって経済全体の生産性の伸びが徐々に低下しました。その結果、バブル崩壊後の潜在成長率が低下し、バランスシート調整はその分長引くことになりました。』
それは残念なのですが、何か構造改革をしましょう的な香りが漂ってくる流れなのが微妙な感じもするのであります。つーか政策対応の話よりも構造問題の話の方が後半多くなっていますな。
ということで、散々引用しておいて目先の金融政策に対するインプリケーションは特にございませんなという結論になりましたが(おいおい)、とりあえず主要国の今般のバランスシート調整に関しては先行きの見方を相当厳しいものとしているというのは間違いなさそうだというのは把握しました。
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2009/11/09
まずは先週水曜の白川総裁講演から。
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/data/ko0911c.pdf
○新興国経済に関して
世界経済に関する話ですが、不良資産の償却問題がどうのこうのという話は毎度おなじみでございますが、今回は新興国経済の好調さに関する考察にスペースを割いている所がいつもと違う話。そういや先日ご紹介したBOEのMPC声明文でも新興国経済の成長が景気への好材料として指摘されていましたわな。
本文3ページ(PDFでは4ページ)目の『先進国と新興国の関係』って小見出し部分から。
『これまでご説明してきたバランスシート調整は、主として米欧先進国の問題です。新興国や資源国の経済は、今回は基本的にこうした問題を抱えていなかったと言って良いと思います。そこで、次に世界経済を理解する上での2つ目のポイントとして、先進国と新興国の景気回復ペースの違いと両者の関係について、お話します。』
つーことで現状に関しての話がありますが、新興国は要するに、
『こうした急性症状の解消とともに、新興国・資源国の経済は、本年春先頃の予想を超えて急速に回復しています。本年第2四半期の実質GDPは、韓国、台湾、ブラジルなど多くの国で高い成長率を記録しました。中国やインドについては、今さら言うまでもないことですが、再び高い成長を取り戻しています。先行きについても、高めの成長を維持するとみられます。』
ということですが、その理由に関して。
『新興国の景気回復には、いくつかの理由があります。第1に、生活水準向上に伴う消費活動の活発化や社会インフラ整備の必要性など、もともと内需の基調が強いことが挙げられます。中国が典型例ですが、こうした国々は、潜在的に、高めの成長を実現していく力を持っていると考えられます。』
『第2に、新興国においても、今回の危機に対応するため、積極的な景気対策を実施したことが挙げられます。新興国の場合、先進国と異なり、バランスシート調整の問題を抱えていないうえ、もともと潜在的な需要が旺盛であるため、その分、財政刺激の乗数効果も大きなものとなったと考えられます。』
新興国は経済が成熟していないので潜在成長率が高く(だから変な証券化商品に金を突っ込む事もなく信用バブル崩壊のいかれも軽微だったということなんですかね)財政などでのテコ入れをすると思いっきり効くとな。
『第3に、先進国における金融緩和策の効果が新興国経済にも及んでいることが挙げられます。最近、市場参加者の間では、「ドル・キャリー」という言葉がよく使われています。かつて「円・キャリー」が話題となった時期がありましたが、今回は、どの先進国でも低金利政策を採用している中、最も厚みのあるドル市場で調達された資金が新興国に再び流入し、リスクをとり始めています。』
なるほどと思いつつ、あたくしふと思ったのですが、国際資本移動が益々活発になって来ると、金融緩和をしたは良いけどそのマネーがより高成長の国を求めて資金移動しちゃって自分の所じゃなくて別の所に金融緩和を輸出するでござるの巻とかなるって話ですかの。日本だとホームバイアス強いと思いますけど、まー確かに日本円と全然関係ない人達が「円建てローンで借入をしたら為替で破綻したでござるの巻」とか海外でやってましたわなと思う(ちなみに日本の金利がまだ高かった時代に「豪ドル建てローン」なんぞを突っ込んだら後で大変な事になったでござるの巻というのもありましたけどね)のでありまして。いやまあ本件とは別の話ですけど。
『さらに、多くの新興国では、ドルとペッグした固定的な為替政策を採用していますので、この面からも、金融緩和効果が働いていると思われます。こうした動きは、信用供与の増加や資産価格の上昇などを通じて、新興国の金融環境を大きく改善させ、経済の回復を後押ししています。』
固定みたいな為替政策をしていると外貨で金が突っ込まれると結果として国内で金融緩和要因になりますというお話ですわな。
『このように、現在、世界には、バランスシート調整の影響を強く受けている先進国と、世界経済の成長エンジンとなりつつある新興国・資源国という2つのグループが存在します。先ほどご説明したとおり、両者の景気回復ペースの差は、先進国から新興国への資金流入を促し、これが、当面、新興国の景気押し上げに寄与すると思われます。しかし、こうした状況が長く続き過ぎると、新興国経済の過熱や金融の混乱をもたらし、その後の景気の落ち込みを招く可能性があります。』
まあいつまでも続きはしませんわなという事で。と考えるとブラジルがトービン税を導入するのしないのという話も過熱防止の観点からすると良いブレーキなのかもしれず、一気逆流になるならやっぱりダメじゃんなのかもしれず、まー微妙なんでしょうな。
○先行きリスクはバランス
どさくさに紛れて途中までしかやっていない展望レポートのまとめネタをする前にこっちのご紹介をするのも何ですが、展望レポートでも指摘されていました「先行きリスクはバランス」という話に関して。
国内景気動向に関してですが、
『次に景気の先行きについてお話します。日本銀行では、先週末に「展望レポート」を公表し、2011
年度までの見通しを示しました。』
んでまあ中心的な見通しに関しては既にご案内の話なのでスルーしまして、
『ただし、こうした見通しについては様々な不確実性があります。最も気になるのは、米欧におけるバランスシート調整の帰趨と、新興国・資源国経済の動向です。この他にも、わが国企業の中長期的な成長期待の動向といった下振れリスクもあります。』
という事ですが、展望レポートではその辺微妙な書き方をしていると言うか、「下振れリスクを意識して」という文言を削除して対応(敢えてバランスとか書かないで)しているのですが、こちらの講演ではリスクはバランス方向と思いっきり発言していますな。
『ただ、新興国・資源国が引き続き高めの成長を維持する可能性が高いことを踏まえると、専ら下振れリスクを意識していた春先までの状況と比べれば、リスクはバランスする方向に向かっているように思います。』
ほほー。
○物価下落に関して
物価動向に関する話がその後にございます。物価上昇率が弱い状態が続くという見通しとなっていますが・・・・という所からさてどうしますかというお話になるのですが、要するに「デフレスパイラルじゃないから警戒しながらもとりあえずはよかろう」という話。で、持ち出されるのは2000年台前半の話になります。
『ここで参考になるのは、2000 年代前半におけるわが国の経験です。当時もデフレの議論が盛んでしたが、結果的には、物価の緩やかな下落が続く下で、景気は回復に向かいました。すなわち、消費者物価の前年比は、1998
年度から2004 年度までの7年間、若干のマイナスとなり、累積ベースでは3%弱の下落を記録しました。一方、景気は、物価下落にもかかわらず、2002
年度から2007 年度にかけて回復を続けました。』
さいでございます。
『このことは、デフレの影響を懸念する立場からはパズルでしたが、なぜこうした状況が生じたのか、ということについては、海外の政策当局者やエコノミストの間でも関心が持たれています。』
ということで1930年代との比較のお話。
『この点では、デフレが大きな問題となった1930 年代の世界経済との違いがヒントを与えてくれるかも知れません。1930
年代の世界経済では、2000年代初頭の日本と異なり、累積で20%以上、国によっては、30%以上の激しい物価下落が生じました。また、1930
年代には、相次ぐ銀行破綻に対して有効な対策が打てず、金融システムが極めて不安定化し、このため、資金の手当てがつかなくなった企業が自社の製品を投げ売りするといった事態が発生ました。』
『一方、わが国の場合には、困難な問題に直面しましたが、日本銀行の潤沢な流動性供給などにより、金融システムの不安定化は何とか回避することに成功しました。』
『そのようなことを念頭に置きながら今回の局面についてみると、わが国の金融システムは総じて安定していますし、累積的な物価下落という面では、9月の消費者物価の水準は、ちょうど石油製品価格の高騰が始まる前の2007年8月の水準に戻っている状況です。企業や家計の中長期的な予想物価上昇率も、これまでのところは、各種アンケート調査や長期金利の動向などからみて安定していると考えられます。こうしたことから、日本銀行では、現在のところ、物価下落が起点となって景気を下押しする可能性は小さいと考えています。』
しらっと「9月の消費者物価の水準は、ちょうど石油製品価格の高騰が始まる前の2007年8月の水準に戻っている状況です」と「ここまでは石油価格製品高騰部分の剥落ですよ」とアピールするのがチャーミングですが(^^)、まあ大体今後もこんな感じでの説明をしつつ景気が2番底だの腰折れだのとならないのを祈るという所なのでしょうかにゃ。
勿論その後には「先行きをちゃんと警戒しながら見ていきますよ」という話もしていますけど。
『もちろん、景気と同様、物価の見通しについても不確実性があります。先ほど申し上げたように、わが国の物価は、石油製品価格の高騰を主因に、昨年夏にプラス2%台半ばまで上昇し、今年は、その反動で2%を超える下落となっています。日本銀行だけでなく、国際機関やエコノミストを含め、数年前に、こうした物価の変動を予想した人はほとんどいませんでした。このように、経済の転換局面における物価の予測精度は決して高くないのが現実です。それだけに、私どもとしては、先行きの見通しについて予断を持つことなく、常に、入手可能なあらゆるデータを丹念に点検していく姿勢が大事だと思っています。』
しらっと「経済の転換局面における物価の予測精度は決して高くない」というまあ結果としてはそうでしたねという話を入れて「物価指標ターゲット一点張り政策は難しいですよ」と言外にアピールするのがこれまたチャーミング。
で、その後には金融政策の話がありまして、「非伝統的政策の縮小に伴う中央銀行のバランスシート縮小は必ずしも金融引き締めではない」とか「金融政策だけではなく日本経済の基本的な成長力を高める政策が必要」などという話もあるのですが、その辺は華麗にスルー。
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2009/11/04
本当は総裁会見と展望レポートの続きをネタにする予定だったのですが、何か知らんが豪快に寝坊したので総裁会見引用大会で勘弁。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0911a.pdf
○特オペを延長して解除の件に関して
まあ当然ながら今回の会見は「特オペの扱いについて」と展望レポートにおける2011年度の部分に対する質問が集中している訳ですが、まあその辺りから。
時限措置解除と出口政策の関係についての質問から。
『一方、金融政策については、今回の展望レポートでも繰り返し強調していますが、先行きの経済の姿について、本格的に成長軌道に復帰していくまでにはもうしばらく時間がかかるということを踏まえ、現在のきわめて緩和的な金融環境を維持する、そのことを通じてしっかりと日本経済を粘り強く支えていくことです。従って、「出口政策」という言葉を、金融政策の出口ということでお使いになっているのであれば、今は、現在の金融緩和を粘り強く続けていくということです。』
ということで出口政策ではありませんと言う事を強調してます。まーそれだから声明文の冒頭になんちゃって時間軸みたいな文言を入れてみましたという事なのでしょうけれども。
で、月曜に書きそこなったですけど、「3か月延長して半年後の解除を明言」というような相場張る位だったら延長しないで解除しちゃった方がスッキリしてるじゃんと思ったら同じツッコミをしている人がいました。
『(問) 特別支援オペについて「延長した上で完了する」という点についてですが、現時点で来年3月末をもって完了するという判断がある上で、なお延長した理由を教えて下さい。』
(;∀;)イイシツモンダナー
『(答) 先程申し上げた通り、金融環境については、厳しさを残しつつも改善の動きは拡がっていますが、年度末を意識した場合、なお万全の態勢を組んだ方が良いということで今回延長しました。同時に、来年4月以降は特別オペを完了し、共通担保資金供給オペ等、従来からあるオペで資金を潤沢に供給する態勢に移行することを今の時点で明らかにしておくことによって、市場での様々な不確実性が生まれることを防げると思います。その意味で、万全を期すこと、それから円滑な移行を考えると、今回の決定が最適であると考えています。』
延長する理屈は判るのですが、何で半年も先の事をコミットするのが市場の不確実性を防ぐのかが判らん。経済情勢(というか本件だと金融環境だけど)次第でもしかしたら延長だけど、そんなに危機的な状況じゃないんだったら解除っていうのなら別にコミットする必要無いじゃんと思いますが。
というか、それこそ金融政策だとインフレターゲットみたいな明示的なコミットメント出すの好まない癖にこーゆー事ではコミットメントとは如何なものかと小一時間問い詰めようと思ったらその先で質疑が(^^)。
『(問) 3月に完了することを今決める理由を、「円滑に」と総裁はおっしゃいましたが、半年先のことをなぜ今決める必要があるかについて、もう少し分かりやすくご説明願います』
『(答) 金融市場の参加者は常に、様々な経済が将来どのように動いていくのか、あるいは政策当局者がどのように行動するのかということを予測しながら行動しているわけです。前者の経済自体の不確実性は、直接中央銀行がコントロールできるわけではありませんが、後者は中央銀行自身によって決まってくるものです。ある日突然発表を行うと、市場参加者に混乱が生じます。従って、ある程度の期間をおいて移行した方が、市場が混乱しないということです。』
経済自体のコントロールは全部出来る訳じゃないけどもこの手の措置に関しては日銀の完全コントロールだからという話。まあこう来るとは思いましたが、そんなこと言い出したら政策金利の変更とかも同じ話になるじゃネーノという意味で、正直インチキの香りが漂ってくる説明ではありますわな。そして益々怪しげな説明が続く。
『実は、海外の中央銀行は、昨年秋以降導入した様々な異例の措置を少しずつ元に戻しているわけですが、私どももそれと同じように行っています。』
ほうほうそれでそれで?
『例えば、FRBは長期国債の買入れを3月に発表し、この施策を10 月末に終了するということを数か月前に発表しました。それから来年の3月にMBSなどの買入れについて終了するということを先月発表しました。いずれもある程度の助走期間をおいた方が円滑に移行するという判断であり、どの中央銀行も同じように判断し行動しているということです。』
というと日銀と同じ事をしているように見えますが、FRBの場合は停止する云々を公表するに際して「必要なら復活」という形にしていますし、しかも停止そのものはスッパリ停止しているのですが、特別オペの場合は「オペは停止します」「共通担保に移行します」という不思議な説明をしている(後で申し上げる事象から勘案すると、実際問題として共通担保に移行するのではなく、単に通常のオペの中に有耶無耶のうちに巻き込まれるだけと見ます)ので、この辺りもちょっと違うような気がします。大体からしましてFRBの場合は景気見通しを結構上げているという背景もある中であって日銀の景気見通しとは違いはせんかねとも思いますし・・・・
で、その後の質疑では共通担保の方が特オペよりもフレキシブルという話(まあそういう不思議質問をする人がいるのでそう答えたのでしょうが)をしています。
『共通担保オペと特別オペの違いを考えた場合、特別オペは、金利を0.1%に固定して金額無制限で供給しているほか、期間を3か月と限定しています。このような方式は、リーマン破綻以降のように金融市場が極端に収縮している時には非常に効果的であったと思います。ただし、現在のように金融市場の混乱が解消した後は、中央銀行が資金を潤沢に供給する上で、担保にしても、期間設定にしてもある程度伸縮的に選べる方が一般的には対応力が高いと思います。』
それはオペ的にはフレキシブルという話であって、資金を取るサイドから見たらどう見ても低金利指値の無制限オペの方がアリガタヤなのですが・・・
『そのように申し上げた上で、これまで行ってきた特別オペの残高もあるほか、2つのオペ(引用者追記:共通担保と特別オペね)にほとんど差はないとはいえ、円滑な移行、特に年度末を意識して万全を期すということは、中央銀行として期待される安全運転だと思います。』
特オペと共通担保にほとんど差は無いとは恐れ入りますが、まあそれは兎も角として安全運転するなら何で買入は外したのかと小一時間。
で、最後の方にもう一度こんな質問が。
『(問) 特別オペについてですが、先程円滑な移行という話がありましたが、来年1月または2月辺りまで結論を待つことをお考えになったのでしょうか。また、なぜ待つことができないのでしょうか。それから、来年になって金融情勢などに変調があった場合、終了することを取り止めることはあり得るのでしょうか。』
で、この答えが何故かやたら長い(のですが、話している事は上記で引用した話と基本的に同じ)ので、後半の質問に対応する部分だけ引用。
『それから2つ目の質問についてです。今回の特別オペ等の時限措置に限りませんが、中央銀行の目的、使命は何かというと、金融市場、金融システムの安定を実現して、経済の持続的な成長を図っていくということであり、そのために、例えば「最後の貸し手」という機能もあるわけです。その時々の金融市場をみて、もし仮に金融市場が再び大きく動揺することが将来起きるという場合に、今回私どもが導入したような措置を再び実施しないということを言っているわけではありません。それは中央銀行として当然のことで、危機が起きた時に中央銀行が適切に対応するというのは、いつの時代でも中央銀行にとって最も大事なことです。その意味で、今申し上げた私どもの基本的な構えと先程申し上げた今回の措置に到る考え方は非常に整合的なものと考えています。』
前半もやたら長いのですけど、この部分だけでもこの長さ。えーっと金融環境が改善しているというのは月報などでも示されているのでありまして、情勢が改善しているのであれば臨時措置解除というのは自明なのですから、そーゆー意味で言えば今すっぱり解除するならするで、そうじゃないならシンプルに延長してその後の情勢を見れば良いという話だと思うのですけどね。それに何かあったら復活するのは当然というなら何でそっちは説明に載って無いのかにゃあ。
ま、説明がやたら長いというのは(自分の書き物の時もそうですけれども^^)死ぬほど難しいとかややこしい話をする場合じゃなければ、概ね「説明が苦しい」からであるというのが背景にあるのかと存じますが(^^)。
○展望レポートに関連して:物価に関して
まずは物価の見通しに関する当然のツッコミとして、3年物価下落なら追加緩和はしないのでしょうかという当たり前な質問から。
『(答) 今回の展望レポートでは、2011 年度まで物価下落圧力が続く見通しになっています。こうした物価情勢を「デフレ」という言葉で呼ぶかどうかは、論ずる人の定義如何によりますから、その問題にここでは入るつもりはありませんが、大切なことは、わが国の経済が中長期的にみて物価安定のもとでの持続的成長経路に向かっているのかどうかという判断です。この点では、わが国経済は持ち直しを続け、消費者物価上昇率は下落幅が徐々に縮小していく姿を想定しています。こうした動きが持続していくことにより、日本経済は、やや長い目でみれば、物価安定のもとでの持続的成長経路に復していく展望が拓けると考えています。』
という話は展望レポートの中でもわざわざ説明をしているでござるの巻となっておりまして、物価下落が景気悪化につながらなければ、まあそこはという話になっていまして、次の質問で更にツッコミを受けた時にこういう回答をしています。
『なお、もう一点、物価と景気の関係について付言すると、ご質問のあったこと(引用者追記:2011年度見通しでCPI▲0.4%なのに実質GDPが+2.1%という大きめの数字になっている事)と同じ現象が、実は2002、2003
年以降の景気回復でも起きたわけです。つまり、消費者物価上昇率がマイナスの中で、2002、2003
年から景気は回復方向に向かったということです。その意味でも、物価と景気の関係については、様々な可能性を念頭に置きながら点検していきたいと考えています。』
ちなみに、先に引用した回答の続きでは、「回復していく中で低金利を継続すると緩和効果が強まりますよ」というどっかで聞いた事のある理屈が出ております。
『それから、金融政策については、先程粘り強く続けると申し上げました。例えば、昨年の秋、今年の春、それから今回という3つの時点を比較してみると、同じ金利水準であっても、この間に成長率は少しずつ上がってきています。つまり同じ金利であっても、それが持つ刺激効果が少しずつ高まっていますし、社債・CP等の信用スプレッドをみても、確実に小さくなってきています。それから、いわゆる資金のアベイラビリティ(調達可能性)も格段に高まっているので、同じ金利水準のもとでも実は金融緩和の力が強まっているわけです。いずれにせよ、粘り強く取り組んでいきたいと考えています。』
社債などの信用スプレッドがどうしたこうしたという話はまあ良いとしましても、「同じ金利水準であっても、この間に成長率は少しずつ上がってきています」って言いましてもこの間に物価が少しずつ下がってきていると思うのですがあのその・・・・
○展望レポートに関連して:潜在成長率のお話
潜在成長率が随分低いですね云々という質問(他にも色々とありましたが)に関する答えなんですけどね。
『「潜在成長率」という語感からして、これが半年間で下がるというのは何となく不自然だと感じるかもしれません。これは、先程申し上げたように、潜在成長率を数値として表そうとすると、ある一定の前提を置かなければならないためです。1か月ほど前に日銀レビューで、潜在成長率の計算手法についていくつか公表しました。その冒頭に書いていますが、例えばマラソン選手がマラソンをする時、その人の本来の実力と、その時の調子を分解することはなかなか難しいわけです。』
すいません日銀レビュー斜め読みしかしてませんでした。後で読みます。
『経済についても本来の実力とその日、あるいはその年の調子をどう分解するかということには色々な方法があります。現在のように経済が大きく変動している時は──これは日本経済だけでなく世界経済全体がそうですが──、潜在成長率の推計値については、相当幅をもってみる必要があると思います。』
ということで説明が続くのですが、どうもあたくしは頭が悪いせいか、結局潜在成長率で需給ギャップがどうのこうのという話をする時っていうのは需給ギャップの推計も難しいし、潜在成長率の推計も難しいから、世の中では重視しているけど、決め打ち的に使うのはあまり宜しくないのではないでしょうか、という話をしているように読めました。詳しくは会見要旨を
ごらんください(って超手抜き)。
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2009/10/26
○ちょっと前の総裁講演(というか特別講義)からほんのちょっとだけ
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/data/ko0910c.pdf
「法と経済」からみた中央銀行
東大法学部での講義だそうで、中央銀行の業務は経済だけじゃなくてリーガルマインドも大切ですという話をしてまして、まーそっちの方がメインだと思うのですが、微妙にそこから小ネタ的な部分を引っ張って来るでござるの巻。
・リーマン破綻処理は遺憾ですかそうですか
今般の金融危機が拡大する過程の説明でこんなまとめをしています。
『こうした現象の本質を一言で言うとすれば、「信頼の崩壊」です。金融取引は、信頼で成り立っています。単純な売買契約を考えても、様々なリスクが存在します。』
んでまあそのリスクは信用リスク、流動性リスク、決済リスクという話をしてまして、
『こうしたリスクが大きいと感じると、危なくて取引関係を結べません。特に、金融取引は、金額が大きく、内容も複雑なことが多いので、金融機関が、こうしたリスクを強く意識するようになると、通常のようには取引をできなくなってしまいます。金融取引が滞ると、企業や個人の経済活動にとって必要な資金が、行き渡らなくなり、経済活動はさらに停滞することになります。』
『このように、今回のグローバルな金融・経済危機では、「行き過ぎ」の巻き戻しの過程で、金融に一番大切な信頼が崩壊しました。その結果、お金の流れが止まったため、経済がさらに悪化し、危機は大変厳しいものとなりました。』
・・・・つまりリーマンをこかしたのはイクナイということですね。
#という話って表立って中銀の中の人は言わないけど、その辺って実際問題としてはどういう認識になっているんでしょうかね
・どう見ても地均しです本当に(ry
もっと後の方に出てきますが。
『今回の危機にあたって、日本銀行を含めて、各国の中央銀行は、通常であれば行わないような異例の措置を矢継ぎ早に実行するなど、極めて積極的に行動しました。一連の措置は危機を鎮静化させる上で大きな効果を発揮しましたが、金融市場の状況の変化に応じこうした措置を素早くとれたのも、各国の中央銀行が独自の判断ですばやく政策を決定し、また不要になったらそうした措置を元に戻すことが可能だからこそ、実行できたことでした。』
ほほう。
『中央銀行の独立性は、中央銀行が、通常の手段・業務を使って政策を行っている場合には、あまり疑問の余地は生じません。ただ、今回のように、異例の措置を行う場合、中央銀行が、どのような考え方に立って、何をどこまで行うのか、難しい決定でした。』
んでもってCP買入の話をしてる部分は割愛しまして。
『中央銀行が、法律に定められた目的に照らし、経済や金融の状況に応じた柔軟な対応を行うことは重要ですが、中央銀行の場合、通貨を無制限に発行できる能力を認められているだけに、「やるべきこと」と「やるべきでないこと」の線引きは特に難しい問題となります。』
ほほう。
『これは民主主義社会における意思決定の問題として重要です。中央銀行の使命や民主主義の中での中央銀行の位置付けを意識しながら、「信認」という資源をできるだけ有効に使って使命を達成するというのが、私たちの仕事であり、そこに判断の難しさがあります。』
つまり臨時措置の解除は理念の問題だからとっとと解除するという事ですかそうですか。
・とゆーよーな部分を引用しちゃいましたが
てな所を引用しちゃいましたが、こちらの講義は法律的な側面から中央銀行業務に関する話をしてて、これは中々な講義だと思いますので、まあお暇な時にお読みになるのは吉かと存じます。最後の方にあった話のうち、「破綻法制の国際的な整合性を取ることが重要」とか「政策論における実務の理解が重要」っていう話は中々でありました。
#長くなるから引用は割愛しますけど
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2009/10/21
○証文の超越出し遅れですが先週水曜の総裁定例会見
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0910b.pdf
技術論云々の話しか引用しなかったので、同じく質問が集中した企業金融措置のどうのこうのという話に関連して。
・特別オペの歪みがどうのこうの
包括的に考えたいってどういう事なのよという質問に対して。
『先ほど、昨年秋以降に導入した様々な時限措置があると申し上げました。先ほど説明したのはCP・社債の買入れですが、もう1つよく議論の俎上に上るのは、企業金融支援特別オペ、いわゆる特別オペです。特別オペについてどう考えるかということは後で申し上げますが、CP・社債買入れの部分だけ発表すると、全体として日本銀行が考えていることが正確に伝わらない惧れがあります。その意味で、経済・金融環境を包括的に点検し、またその中で金融政策さらには様々な時限措置を包括的に点検し、出来るだけ誤解のないかたちで発表したいという気持ちがあります。』
イスタンブールでの総裁会見ではCP社債買入の話だったのに、この場(定例記者会見)では完全に企業特オペまで視野に入れた話になっているという事ですな。この時点で市場的には「まー買入解除するけど、買入解除と特オペの継続はセットみたいなもんでしょ」というイメージだったので、特オペ解除の話がいきなり出てきたのは「ありゃりゃ」という感じでしたわな。
で、まーこの発言を読みますと、あの時点で多くの人のイメージにあった「買入解除だけはとりあえず実施、特オペはとりあえず年度末越えまではやってその後は状況次第だけど中々外しにくい」っていうのを総裁自らが「もっと積極的に解除ですよ!」とぶち上げましたという所ですわな。
『特別オペについて申し上げると、皆さんご存知の通り、固定金利、担保の範囲内で金額無制限という点で、金融機関の資金調達を支援し、金融市場の安定を確保する上で大きな効果を発揮してきたと思います。ただ、最近では金融市場が安定を取り戻すとともに、特別オペと従来からある共通担保資金供給オペとの差は小さくなってきていると判断しています。』
んでまあ後の方でより「技術的」な説明をしているのですが、そこでは「レート差は2〜3bp」という話になってます。いやまあ現象面では今の所そうなのですが、実際に特オペ外したらやはりファンディングの部分でボラが上昇するだろうという事も勘案すると、普通に3MTBで5bp位は楽勝で金利上昇すると思うのですが。
・・・まあ5つ上昇しても0.20そこそこですから低金利っちゃあ低金利なのですが、0.15水準(というか15割れ)に延々と目が慣れてしまっているだけに上昇しましたなあという感じにはなるでしょうね。
『一方、この特別オペについては、担保をCP、社債あるいは証貸債権といった企業債務に限定しているという点で企業金融支援の効果を持つわけですが、同時に企業発行のCP金利と国の債務である国庫短期証券金利との逆転現象にもみられる通り、担保として利用されている特定資産の市場取引に歪みをもたらすという問題も持っています。』
従来はこの辺りの話をスルーして「企業金融問題はトータルで考えましょう」とか「特定市場の部分だけ取り出してしまうのイクナイ」とか言ってたので、まーこれは態度急変でして、急変する背景には要するに特オペ解除やる気満々という姿勢に豹変したちゅう事なのは明白ですなという感じっすが。
#しかし何で急にこういう動きになったのかがよー判らんっすな
『特別オペという異例の臨時措置の取扱いを検討していくにあたっては、今後とも金融機関の資金調達の安心感を維持し、金融市場の安定を確保するためにどのような手段が最も有効かということが判断の基準になります。』
んでこの後が技術論ね。
『多少技術的になりますが、固定金利、それから金額無制限という特別オペの特殊な機能が依然として必要とされるのか、あるいは特別オペの担保を含む広い範囲の担保を利用し、市場に与える歪みの小さいかたちで資金供給を行う共通担保オペ等を積極的に活用した方が有効かつ望ましい局面になっているのか、といったことが判断基準になると考えられます。これは、基本的には金融調節をどのようなかたちで行うことが適切かという、優れて技術的な問題です。そうした技術的な問題と先々の金融政策をどのように考えるかは全く別の問題ですが、そうしたことも含めて包括的に点検するということです。』
技術論を言い出す時に碌な事なしというのは先週木曜日に申し上げた通りでございまする。ちなみに、指値オペを実施するというのは全然技術的な話ではなく、これは低い金利固定誘導であれば「市場金利をそこまで持っていきますよ」という意味で極めて政策的な意図があると思うのですが。昨年10月に各国協調で実施した「ドル資金供給」がまさに指値無制限でして、あれが「技術的」とは言えませんでしょ。
#市場が落ち着いた時点で金利が実勢より高くなったのでドルオペ自体はそこで「低金利へ誘導」じゃなくなりましたけど、企業特オペの場合は何せ0.10%でございますからねえ
『繰り返しになりますが、私どもが景気をしっかり支えていく、そのために現在の超低金利を続けていく、あるいは潤沢な流動性を供給していくという姿勢には変わりありません。』
とはおっしゃいますが、本来もうちょっと静かにフェードアウトする事が出来る筈の臨時措置の縮小あるいは解除という案件に関して、やや唐突感および強引感のあるやり方で解除を打ち出してくるという時点で、白川総裁の「前のめり感」が伝わって来る訳でして、特オペ解除による金利上昇ど〜のこ〜のという話以前の問題が発生すると思うのですな。つまり、従来は「主要国の中で最もデフレ環境である日本において、出口政策が出てくるのは最後の方になるし、日銀も出口政策を急ぐ気配が無い」という認識が共有されていて、それがまあ暗黙の時間軸形成を後押ししていた部分があったと思うのですが、今般の解除騒動によって「日銀の前のめり感」が伝わってしまうというのは期待形成の部分に影響を与えるんじゃネーノという話になるんですな。
まあ一応解除の話をしながら低金利継続の話はトーンを強くしている感じではあるのですが、解除の話を思いっきり強調(まあ質疑応答の関係で強調している面もあるでしょうけど)してる方が普通に先に印象として出るわなという事で、その上先般のさくらレポートでの全地域上方修正(単に「最悪期を脱した」という表現が並んでいるだけの気もしますが)と来た日には月末の展望レポートでのストーリー次第では「やっぱり日銀クオリティか」という観測が強化されてもおかしくはないんじゃないっすかねえ。まあよー知らんが。
・ということで技術的な説明に微妙な煙巻き成分が
『例えば、実際の金利をみると、特別オペは0.1%に固定されていますが、2か月あるいは3か月の期間で実行している共通担保オペは、このところ落札レートが0.12%あるいは0.13%であり、差は0.02
ないし0.03 と小さいわけです。また、この2つのオペには担保の違いがあり、例えば、特別オペでは企業の証貸債権等を比較的多く担保に取るために様々な事務コストがかかってきます。そうした事務コストも考えると、実質的な差はより小さくなります。このように、レートひとつをとってみても差は小さくなっていると思います。』
という話をしているのですが、まあ先般来申し上げておりますように、この2〜3bpというのは特オペに行けば使える担保分は10bpでジャンジャン出てくるというお助け措置が控えているからという面もある訳で、特オペ分以上にコンスタントかつ予見可能なスケールで3Mでも2Mでも良いですけど、きっちりとタームの共通担保オペを打ってくれるというのなら差はあんまり生じないかもしれませんが、現状では3Mの共通担保がそもそもそんなにコンスタントに実施している物ではないですから、その状態と比較して2bpだ3bpだという話をされても何だかなあ感はございます。
まー共通担保オペの残高を(ある程度調整しないといけないのは判るけど)財政払いの大型超過日に向けてドカンと落としてしまう現在の運営をやっていると、ど〜してもモノ日跨ぎの調達の所でレートが上昇しやすくなると思うんですが、その辺はどういう工夫になるんでしょうかね。
・(;∀;)イイシツモンダナー
この質問はワロタ。
『(問) 「誤解」という話と関連してCP・社債の買取りを打ち切るかどうかということが議論になっているという話に対して、亀井金融大臣が「日銀が時々寝言を言う」といったような発言をされていたと思います。それも「誤解」の1つなのか、それともそもそもの見解が亀井大臣とは違うのか、どのように思われますか。』
最早答えようが無いのは判りますが、この回答は何も言ってないのと同じっすな。
『(答) 今の金融環境について全体としては改善が拡がっていますが、中小企業については厳しい状態が続いていると認識しています。私どもが金融政策についてしっかりと景気を支えていきたいと繰り返し申し上げているのも、そうした全体としての景気情勢、金融情勢も含めて判断しているということです。』
政府との整合性という質問が幾つか出ていましたが、回答は大体こんな感じのものが並んでおりまして、まーそこを聞かれると技術論で逃げるという話になるんだなあと。
んでまあ最後の最後の質問で本当に(;∀;)イイシツモンダナーなツッコミが。
『(問) デフレの傾向というのは、まだ強い状態が続いていると思います。総裁は先ほどから、景気を下支えしていくための「超低金利かつ緩和的な金融環境」ということを相当明確に、以前にも増して繰り返して述べていると感じました。今の政策を続けるというスタンスは分かるのですが、デフレのこの傾向を弱める、もしくは景気の回復をより下支え、もしくは押し上げていくために、日銀が新たにできることは何かあるのでしょうか。』
『(答) 今、日本経済が直面している経済の厳しさというのは、世界経済全体に降りかかったショックに端を発しています。これは、日本に限らずどの国も大きなショックに直面し、経済が完全に回復するにはかなり長い時間がかかるという姿を予測しています。そういう意味で、どの国も政策運営という点では、既に積極的に行っていますが、調整が完了するにはかなり時間がかかる、そういうものとして粘り強く取り組んでいく必要があるということだと思います。日本銀行もそうしたスタンスで現在取り組んでいるということです。』
ということで低金利継続の話で支えようって流れだと思うのですが、それなら前のめり感を出すようなここもとの動きは何か整合性が取れませんわなという風に思うのですよね。まー臨時措置解除するにしても、「急いで実施した」という印象を与えないように(って既に与えているので「急いで」感を軽減するという話になりますけど)対処しないとマズーなんじゃないっすかね。
#という虫干しネタを延々引っ張ってどうもすいません
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2009/10/20
・総裁発言動向
議事要旨引用でむやみやたらと増量されたのでそのほかのネタはまた後日(どんどん溜まっていねえかというツッコミはしないように)ですが、まずはここもとの総裁発言。
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/siten0910.htm
支店長会議での総裁挨拶
『わが国の金融環境をみると、厳しさを残しつつも、改善の動きが拡がっている。CP・社債市場では、低格付社債を除き、良好な発行環境となっている。企業の資金繰りや金融機関の貸出態度については、中小企業を中心に、なお厳しいとする先が多いものの、改善の動きが続いている。』
ええまあ金融経済月報通りですけどね。
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0910a.htm
全国信用組合大会における挨拶
『この間、企業金融の動向をみると、大企業の資金調達手段であるCP・社債の発行環境は、低格付社債を除き、良好なものとなっています。一方、中小企業については、資金繰りの改善度合いが大企業に比べて小さいものにとどまるなど、なお厳しい状況が続いていると認識しています。』
ということで、まあ大企業向けの部分に関して技術的な対応をするだけですよってえロジック(というか技術的説明)で行きますという感じでしょうか。
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2009/10/16
お題「技術論ですかそうですか(-_-)メ」
1年入札が落札後ぱっとしなかったり、5年入札がコケたのは国債増発の話というよりは特オペ見直し本格化への思惑のような気が思いっきりするのは気のせいですかそうですか。
時に今日は総裁記者会見の一部で一発芸という勘弁してちょ。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0910b.pdf
○最初の総裁の説明の時点でまあ何と申しますか
冒頭の説明(幹事社の質問に対する応答という形ですが)の部分から。
『こうした決定の背景となる経済・物価情勢についてご説明致します。まず、わが国の景気について、先月は「持ち直しに転じつつある」と評価しましたが、今月は「持ち直しつつある」と判断を一歩進めました。』
まずね、ここ見た時点で「今までと違うわ」となるのでありまして、ほんの4か月前の決定会合後の会見ではこう言ってたんですな。
『なお、ご質問の中で、大幅な見直し、あるいは上方修正という言葉を使われていましたが、先月の会見でも申し上げました通り、日本銀行では、4月末に公表した展望レポートにおいて、既に、「わが国経済は、悪化のテンポが徐々に和らぎ、次第に下げ止まりに向かう」との見通しを示しています。繰り返しになりますが、本日の判断は、こうした見通しに沿った動きが続いていることを確認したものであり、従来の見通しを修正したのではないことを、改めて付け加えておきます。』(6月16日の決定会合後の総裁記者会見における冒頭説明部分より)
・・・・どう見ても態度の変化です本当にありがとうございました。
で、金融環境に関しては・・・・
『この間、わが国の金融環境は、厳しさを残しつつも、改善の動きが拡がっています。企業金融面をみると、CP・社債市場では、低格付社債を除き、良好な発行環境となっています。また、企業の資金繰りについては、中小企業を中心に、なお厳しいとする先が多いものの、全体としては改善の動きが続いています。』
短観でも見られましたように、改善の動きってのは「広がっている」のではなくて「局地的な部分だけ著しい改善をしている」というイメージなんでございますけど。広がるというより局地的な所だけ深くなってるというような感じっすかね。
で、ここの理屈も謎なんですが・・・・
『CP・社債市場につきましては、先般のG7でも説明しました通り、低格付社債を除き、良好な発行環境となっておりまして、政策に支えられている点は後退している、という判断には変わりありません。』
政策が支えているのじゃなかったら別に外さなくても弊害無いじゃんとか思うのですが、まあ後の方で「市場に歪みがどうのこうの」って言ってますから、これは「政策効果よりも副作用の方が大きい」と言いたいのでしょうけれども。
『ただ、日本銀行が講じている時限措置には、このCP・社債買入れだけでなく、企業金融支援特別オペや補完当座預金制度、適格担保の要件緩和措置など、様々なものがあります。これら各種の時限措置の取り扱いについては、それぞれの効果や必要性を出来るだけ包括的に点検した上で、次回以降の適切なタイミングで取りまとめて判断することが適当という結論になりました。』
「出来るだけ包括的に点検」「取りまとめて判断」というのは、一般ピープル言語に翻訳すると「できるだけまとめて解除したいです」というお話になるんですよね、と思いますけどどうでしょ?で、「次回以降の適切なタイミング」というのは「次回の決定会合で」という話でございまして、展望レポートでそんなに明るい未来が出せるとは到底思えないのに何がどういう理屈で解除という話になるのか政策の整合性はどうなってるんでしょうかねえと小一時間問い詰めたいのですが・・・・
○そこで技術論ですよ
ということで、まあそう上手いこと話が進むか判らん(大体からしてあと2週間で意見まとめて手直しなんかの案とか作る時間ねえだろと思いますけどね、展望レポートだって重要なのに・・・・)としか申し上げようが無いのですけれども、冒頭の白川総裁による説明(や今日ご紹介間に合うかどうか判らんっすけど特別オペに関する総裁の説明とかを)見ますと、物凄い勢いで企業特別オペまで手直ししそうな勢い。
展望レポートで物価見通しとか景気見通しとかが明るくなる気が全然しない(結局低空飛行のまんまでしょ)最中で臨時措置解除とは言え、そもそも臨時措置というのが緩和措置でもある訳ですから、それを外すのは緩和を減らすという話ですが、はてさてどう説明するんだかという時に出てくるのが「技術論」なのでありました(-_-)メ。
『(問) 時限措置の関係で、先ほど「包括的に考えたい」とおっしゃいましたが、これをもう少し詳しく解説して下さい。』
で、この説明色々と長いのですけれども、駄文の話を展開する関係で総裁の説明の後半部分を先に引用しますね。
『特別オペという異例の臨時措置の取扱いを検討していくにあたっては、今後とも金融機関の資金調達の安心感を維持し、金融市場の安定を確保するためにどのような手段が最も有効かということが判断の基準になります。多少技術的になりますが、固定金利、それから金額無制限という特別オペの特殊な機能が依然として必要とされるのか、あるいは特別オペの担保を含む広い範囲の担保を利用し、市場に与える歪みの小さいかたちで資金供給を行う共通担保オペ等を積極的に活用した方が有効かつ望ましい局面になっているのか、といったことが判断基準になると考えられます。』
『これは、基本的には金融調節をどのようなかたちで行うことが適切かという、優れて技術的な問題です。そうした技術的な問題と先々の金融政策をどのように考えるかは全く別の問題ですが、そうしたことも含めて包括的に点検するということです。』
で、その先でも技術論炸裂。もうちょっと先(5ページ目です)でもこんな説明を。
『また、先ほど「誤解のないように」と申し上げたのは、金融市場あるいは広く国民の皆様に、日本銀行の考えていることが伝わっていくようしっかり説明をしていくということです。日頃より金融政策をウォッチしている方々は、技術的なことも含めてご理解されているかと思いますが、なかなか一般の方には理解されにくい内容です。景気をしっかり支えていくことと、金融調節の技術的な修正との違いを正確に理解して頂かないと、市場に対して影響が出てくる、そういうことを避けたいという意味です。』
でもって技術的という話はもうちょっと先でもまた強調してまして、10ページ目でも技術論をアピールアピール。
『今回、時限措置の取扱いについて多少丁寧に説明したのは、技術的な側面が強いにもかかわらず、技術的な話ではなく受け止められる可能性があると考えたからです。ただし、次回以降の決定会合でどのような決定を下すかについて、今回の決定会合で決めたとか、判断を固めたということではありません。あくまでもこれまでのマーケットの状況をみた上で解説し、技術的な説明を行ったということです。』
○そして技術論と言えば・・・・
受け売り成分が入っております事を先にお断りさせて頂きとう存じますが、技術的対応といえばこんなものがあったりするのですが、さてこれはいつどこでの話でしょうか??
第1問(^^)
『(問)(前半割愛)さらに市場の一部には、今回の措置が技術的なものではなく、金融引締めの第一歩であるという解釈もあるが、この点について総裁の見解を伺いたい。』
『(答)(冒頭割愛)私どもの今回の措置は、基本はあくまでも「30〜35兆円程度」という従来のターゲットを維持しており、極力、オペレーション上の工夫を通じてこれを達成していくという根幹はいささかも変わっていない。(途中割愛)金融引締め方向への大きな転換ではないかという意見についてであるが、私どもは、量的緩和の骨格はそのまま維持し、消費者物価指数の前年比変化率が安定的にゼロ%以上になるまで堅持すると繰り返し約束している。今回のような措置をとることとしても、その点についてはいささかの揺るぎもない。従って、方向転換という解釈は当てはまらないのではないかと思う。』
第2問(^^)
『ポイントとしては3つあり、1つは、ゼロ金利政策の解除をするけれども、経済の改善に応じて金融緩和の程度を微調整するという措置であって、引締めというよりも、──金利は0.25%になるけれども──今まで「超超緩和策」で危機対策であったものを0.25%まで上げて、微調整、緩和を若干弱めると、──弱めるという言い方はおかしいのかもしれないが──そういう「超超緩和」を「超緩和」にするという措置である。それが一つ。』
第3問(^^)
『ゼロ金利を解除するといっても、これは引き締めを始めるということではなく、昨年の2月に、あのような異常な事態の中で決めた非常対策というものを元へ戻す微調整──ファイン・チューニングと英米などでは良く使うが──であって、金利を上げて引き締めたり、インフレの対策にしたりということではない。危機対策として採った措置を微調整して、普通の元へ戻していく過程というふうに考えて頂きたい。だから解除しても、今の情勢なら潤沢な資金供給を続けていくということが前提になっているから、その辺はそんなに大きくやったというようなことにはならないはずである。そういうことであるので、今後なるべく早い時期を見て、今の微調整をやっていく、その事が決して政府の政策と反するものではないと思っている。』
・・・・・・・・(-_-)メ
えーっと、まあ正解は申し上げるまでもございませんけど(^^)。
第1問の答え:2005年5月20日に当座預金残高目標30兆円割れのなお書き修正を決定した時の福井総裁(当時)記者会見から
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken/kk0505b.htm
第2問の答え:2000年8月11日に無担保コール翌日物誘導目標を0.25%に引き上げの決定(いわゆるゼロ金利解除っすな)をした時の速水総裁(当時)記者会見から
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken/kk0008a.htm
第3問の答え:2000年7月17日にゼロ金利解除をしないで(そごう問題のせいで)ゼロ金利政策を継続決定した件に関する1速水総裁(当時)記者会見から(ちなみに会見の実施は7月19日です)
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken/kk0007a.htm
30兆円の時は結局その後も隙あらば量的緩和解除やる気満々モードになって、あんな感じになりましたし、それよりもゼロ金利解除がファインチューニングって何というか今にして思えば豪快にも程がある技術論でありまして、まあ技術論と言い出す時はだいたい技術論じゃ済まないって感じがするんでございます。
唯一の救い(???)は「技術論」の豪快さに関して前々回よりも前回の方が豪快成分が減っている事でして、その流れを継承して今回の豪快成分が減る・・・・ようにもあまり見えない所がアレなのですが。
ということで、特別オペがどうしたこうしたとかいう話などに関しては後日続きということでご勘弁頂きたく候。
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