白川方明総裁(2008年度下期)
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白川方明(まさあき)総裁
白川さんの略歴(日銀Webより)
昭和24年9月27日生
昭和47年3月 東京大学経済学部卒業
昭和47年4月 東京大学経済学部入学
信用機構課長、企画課長を経て平成6年5月大分支店長
平成7年12月 ニューヨーク駐在参事
金融研究所参事、国際局参事を経て平成9年12月国際資本市場担当審議役
企画調査担当審議役を経て平成17年7月日本銀行理事に就任
平成18年7月退任、京都大学公共政策大学院教授に就任
(実質的な前職:日本銀行理事)
平成20年3月20日 日本銀行副総裁に就任
平成20年4月11日 日本銀行総裁に就任
詳しくはこちら→http://www.boj.or.jp/about/organization/policyboard/gv_shirakawa.htm/
例によって発言を半期ごとにファイル分けしています。
2008年下期の発言等
2009/03/31「3月17日の総裁記者会見より」
2009/03/23「輪番の質問ばかり飛んでくる総裁会見」
2009/03/02「2月決定会合後の定例記者会見より」
2009/02/05「株式買い入れ決定後の会見より、政府紙幣へのコメントも」
2009/01/26「CP買入および展望レポート中間評価大引き下げをした会合の会見より」
2008/12/30「利下げ直後のイマイチやる気無さそうな講演より」
2008/12/25「記者会見続き、プレゼンの仕方に工夫が必要では」
2008/12/24「12月19日決定会合を受けた記者会見、ちょっとケチケチ感が」
2008/12/08「12月1日の総裁会見と記者会見」
2008/12/04「決定会合後の会見に悪態をついてみる」
2008/12/02「福岡での講演、あまり踏み込んだ話は無いですよね」
2008/11/27「レポ懇談会でもゼロ回答の総裁」
2008/11/26「危機感が感じられない総裁会見」
2008/11/11「31日総裁会見の補足」
2008/11/06「説明が苦しい0.3%への利下げ(きさらぎ会での講演)」
2008/11/05「利下げ直後の総裁会見」
2008/10/22「総裁発言でちょっとしたメモ」
2008/10/17「10月14日、オペ拡充公表後の会見より」
2008/10/10「下振れリスク意識全開の定例記者会見」
2008/10/06「9月29日、ドル供給拡大公表後の会見より」
2009/03/31
○今更ですが3月17日の白川総裁記者会見
劣後ローン供与の施策を出したときの会見でどうもすいません。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0903c.pdf
質疑応答は基本的に「何でまたこのタイミングで」とか「で、この制度って政府の資本注入とどういう使い分けになるの」とかいう話で終始するのでありますが、正直言って白川総裁の答弁も相当歯切れが悪く、何となくまあ本件措置から微妙に(自主規制)な感じが致しますです。
まあ唐突感は拭えない施策でしたけどね。
・どうみてもやっつけです本当にありがとうございました
これは中々性格のよろしい質問で(^^)。
『(問) 今の質問と重なりますが、メガバンクなどの資本状況をみると、TierIの余力から考えて、劣後ローンを欲しているところがあるのか、あまりないのではないかと理解しています。おそらく地銀などが対象に入っているのではないかと思うのですが、総裁は、この程度の必要性があるといった手応えをお持ちになった上で、設計されたのかというのがまず一点です。(以下割愛)』
この質問ですけど、どのくらい性格が良いかと言いますと、先般企業金融特別オペの実施をアナウンスした時(昨年12月の定例会合)には「3兆円くらい」とか思いっきり具体的な数字を出して見てるほうは「おいおい」という感じだったというのが質問者の念頭にあったと思うのですよね。で、それに対して今回のやや唐突&微妙に中途半端感が見える施策に対して「で、この1兆円の積算根拠は」というのを聞いて「施策の事前の練り具合」を見たかったのではないかとか思うのですけど。
#って深読みのしすぎかな(^^)
で、その答え。
『(答) まず前者についてですが、銀行は、金融機能強化法の活用により、TierTにカウントされる資本の調達が可能になります。日本銀行は、TierUにカウントされる劣後債務の調達を可能とする措置を検討することとしたわけですが、今ご質問にあった通り、各行によってTierUの追加調達の余地は異なります。ただ、銀行により程度の差はありますが、TierU算入の余地は残されており、資本基盤の維持を図るうえで、TierUも相応の効果を発揮すると考えています。』
具体的数値が来ません(^^)。
『私どもは、この制度が最優先されるのではなく、再三申し上げている通り、民間金融機関が自力で市場から調達することが大原則であると考えています。ただ、先程申し上げた通り、「合成の誤謬」が働き得るわけですから、全体としてはさほど心配する必要はないと思ったとしても、経済金融情勢、資本の情勢に緊張感があるため、私どもとしてはこうした手段、選択肢を揃えておくことに大きな意味があると考えました。』
いやまあこれはセーフティーネットで入れないで済むのなら入れないというのは勿論理屈ではあるのですけれども、何か微妙に「まあ作っておきました」感のある発言でして、それを何でまたあの時期にねじ込むように入れたのかがワケワカランという所でございます。何か話が報道されたのも変なタイミングだったし・・・・・
・ちなみに一応こういう建て付けなんでしょうけどね
その前の質問でこんな話をしてます。
『(問)(前半割愛)もしこれ(引用者注:政府の枠組みではなく日銀の枠組みを利用するメリット)が無いとすると、銀行保有株の買取りと同様、政府が二十兆円、日本銀行が一兆円をそれぞれ用意したが、これまでに一億円くらいしか利用されていないように、ニーズが無いことをやっているということが起こり得ると思います。今回の一兆円についても、どこまで利用されるという見通しを持っておられるのでしょうか。枠組みを用意したが全く利用されないことも有り得るとなると、どこまで意義があるかという疑問があります。』
説明が長いので適当に割愛しつつ・・・・
『(答) (政府の現行枠組みの説明部分割愛)それから、政府がもしTierUに対して資本注入すれば、という主旨のご質問がありましたが、私ども自身は、先程申し上げた政策目的や日本銀行の財務基盤等を考慮して一兆円という金額を決定しました。この制度は、まだ実際にスタートしているわけではありませんからどの程度利用されるかわかりませんが、仮にこの制度が非常に使われることになった場合、政府が更に法律を改正してTierUも対象にすることを排除しているわけではありません。』
まあ緊急で政府が間に合わないリスクがあるから日銀が作ったよというのであればそれはそれで判るのですが・・・・・
『今回の決定は、現在の法律の下、また、厳しい経済金融情勢に直面している中で、中央銀行としてどのように金融システムの安定あるいは持続的な成長経路の復帰に貢献できるかを真摯に考えた結果だということです。どの程度利用されるかということですが、これは先程申し上げました通り、まだスタートしていませんから、それをお話するには時期尚早だと思います。』
勝手に妄想を逞しくすれば、この時点では今(って2週間しか違いませんが)よりもたぶん政府のヘロヘロ状態は大きかった(支持率とかね)ので、政府が金融機能強化法を再改正するという時間およびそれに係る国会対応とか考えたら日銀がとりあえず作っておけという話だったのではないかと思うのですが、まあそうは言えませんから説明の歯切れが悪くなるのかねえとか思う次第。
だって全般的な説明見てると「いや別に危機でどうしようもない訳では無い」という話をしつつも、「政府の金融機能強化法だけだと足りない」(じゃなかったらこんな施策打たないでしょ)という説明になっているので、話が何か微妙にアレになっているのであります。
『ただし、再開した株式の買取りについて、利用金額が現状少額にとどまっているからこの措置に意味がないという主旨のご発言と受け取りましたが、私どもはそのように考えていません。何度も申し上げているとおり、この措置は安全弁として用意しているものです。』
これはその通りですけど、CP買入が札割れというのとこちらに応募が無いのはちとまた話のレベルが違うと思われますけどね。
『先程、現在日本銀行は最後の貸し手として個別金融機関への貸出を行っていないと申し上げましたが、以前には、最後の貸し手という中央銀行に備わった機能を実行してきました。現状、最後の貸し手として貸出を行っていないからこの制度に意味が無いとはどなたも思わないと思います。むしろ、最後の貸し手の機能を使わない状態というのは、それだけ金融システムも相対的に健全な状態を維持しているわけです。ですから、安全弁という性格上、金額の多寡だけでは判断できないということを是非ご理解頂きたいと思っています。』
まあ上手くまとめましたね(^^)。で、さっき引用した質問に続くの巻でした。
・バブル発生がどうしたこうした
とまあそんな感じで微妙感の漂う会見の中で白川総裁の主張がはっきり出た質疑が会見要旨の最後にございました。本当の質問と答えはやたら長くて、質疑応答1本で1ページ半くらいあるのですが、まあ端折りまして。
『(問) (主要部分思いっきり割愛)さらに、(引用者注:今回の銀行に対する劣後ローン供与の措置によって)銀行が発行している社債などに日銀による暗黙の保証が付いているように連想され、ある種のクレジットバブルのような状況が発生してしまう可能性が考えられるのですが、どのようにお考えでしょうか。』
で、その答え部分。
『(答)(これまた主要部分思いっきり割愛)それからクレジットバブル発生の可能性についてですが、これは金融システム面の施策に限ったことではないと思います。過去十数年の世界経済全体の運営を振り返ってみますと、バブル崩壊後の色々な対応が結果として次のバブルを生んでしまっているのではないか、という反省、問題意識があるわけです。結局は、何事も行き過ぎてはいけないということであり、今回のこの措置については、日本銀行の劣後ローンに過度によりかかることがないように制度設計をしたいと先程申し上げました。こうした点についても十分配慮した設計、運営にしていきたいと思っています。』
「バブル崩壊後の色々な対応が結果として次のバブルを生んでしまっているのではないか」というのはまあ確かにそういう面は否めないんですけど、何か経済成長していくってのは本質的にそういうもんなんじゃないかとも思いますし、まあ難しい論点なんでしょうが、とりあえず白川総裁は「BISビュー」「FRBビュー」で言えばゴリゴリの「BISビュー」のお方ですねというのが伝わってくる発言ではありました。
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2009/03/23
○輪番の話ばっかの総裁記者会見(3月18日の分)
後入先出法で恐縮至極。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0903d.pdf
今回の会見を簡単にまとめますと・・・・
「輪番増額は財政ファイナンスですか」「いえ違います」
「輪番増額は長期金利上昇抑制ですか」「いえ違います」
「いわゆる銀行券ルールは見直しますか」「私の代では見直す予定ないです」
の3行で終了するのですが、それで終了させるのも忍びないのでちょっとだけ引用を。
・財政ファイナンスに非ず
『(問) 長期国債の買入れ増額についてですが、このタイミングで増額を行った理由をお聞かせ下さい。また、景気刺激のために財政支出を拡大させるという方向で議論が進んでいますが、こうした議論と今回の買入れ増額との関係についてご説明頂けますでしょうか。』
『(答) 今回の長期国債買入れの増額は、年度明け後も金融市場の安定を確保するために、引き続き積極的な資金供給を行っていくことが重要との判断の下、長期の資金供給手段を一層活用し、円滑な金融調節を行っていくことを目的としたものです。このように、今回の措置は、これまでの増額と同様、あくまでも金融調節上の必要性に基づいて行うものであり、今後の国債増発への対応といったことを念頭に置いて実施するものではありません。』
まあ立場としてはそう言うしか無いでしょう(ニヤニヤ)。でもまあ短期国債(国庫短期証券)は増発の結果レートは下がらんですし、そんな事言ってるうちに経済対策がどどーんと出たら長期国債も増発必至ですしねえ・・・・・
・長期金利の下支えに関して
『(問) 今回、国債の買入れを月額1.4 兆円から1.8 兆円に増やしましたが、この増額分4千億円という数字はマーケットではかなり大きいと認められているのではないかと思います。この4千億円の意味合いについてまず教えて頂きたいというのが1点目の質問です。また、財政ファイナンス的な話と裏表になってしまうかもしれませんが、長めの金利に働きかけて長期金利を安定化させ、それによって景気を下支えしたいといったような意図はあるのかどうかという点について教えて頂きたいと思います。』
『(答) 4千億円については、これまで何回かお答えしたことの繰り返しであり、そっけない返事になりますが、先ほどの答えに尽きていると思います。』
これは調節技術上の問題という話で4千億円ということになっています。
『2つ目の長期金利の水準に影響を与えていくことを意識しているかということについてですが、そうした意識はありません。例えば、10
年物の金利を考えた場合、先行き10 年間経済がどの程度成長するか、物価がどの程度上がるかということに基本的に依存し、加えて、成長率や物価上昇率の予想についての不確実性が上乗せされるわけです。もちろん市場ですから、日々いろいろな材料で上がったり下がったりするわけですが、結局、均してみると先程申し上げた要因で長期金利の水準は決まってくると思います。』
という説明の後このように言ってまして。
『もし日本銀行が物価の安定を目指した金融政策ではなく、それ以外の目的に焦点を絞った金融政策を運営していくことになりますと、日本銀行がそのような観点でオペを運営しているのではないか、といった目でみられ、先ほど申し上げたような不確実性に伴うプレミアムを上げてしまうことになってしまいます。おそらく、長期金利にとってはむしろマイナス材料となり、長期金利が上がってしまうことになると思います。』
ということで、財政マネタイゼーションだの長期金利ターゲットだのを言い出さないのは有効という話なのですが、その晩にFRBがやんちゃな政策を実施しているのがチャーミング。で、その後は言わずもがなというか何というか。
『考えてみますと、この10 年近く日本の国債発行残高は非常に増えてきたわけですが、それでも日本の長期金利は安定してきたわけです。その安定はどこから来ているかと言えば、自分たちが言うのもどうかと思いますが、日本銀行の政策運営に対する信頼が維持されていることも影響していると思っています。』
あのーそれはただ単に日本が経済成長しなかったから長期金利が低位安定していただけじゃないかと思うのですが・・・・・
・銀行券ルールに関して
『(問) 長期国債の買入れを月に1.8 兆円、年間で21.6 兆円まで増額するということは、長期国債の残高については日本銀行券の発行残高を上限にするという、いわゆる銀行券ルールの限界に近いところまできていると思われますが、この辺りの認識をお聞かせ下さい。また、仮に今後さらに買入れ額の増額を求められるようなことになった場合、この銀行券ルールの見直しについて検討する可能性があるのかどうかについてもお聞かせ下さい。』
この質問、要旨の3ページにありまして、答えがやたらめったら長いので全部引用してると大変なことになりますので、説明部分は割愛(いつもと同じく「長期国債を買いすぎると調節上長期国債の売切オペを打ち込まないといけなくなって、長期国債市場に変な影響を与える」という話です)しますが、答えの最後の方を引用。
『次に、銀行券ルールを見直す可能性はあるかということについてですが、銀行券ルールを見直すことは全く考えておりません。銀行券ルールの意義としては2つ挙げられます。第1は、円滑な金融市場調節を確保することで、これは先程申し上げたことです。第2は、銀行券ルールは、長期国債の買入れが国債価格の買い支えや財政ファイナンスを目的とするものではないという趣旨を明確にするという役割も果たしています。従って、銀行券ルールを見直すという考えはありません。』
で、これは中々嫌な質問。
『(問) (前半割愛)2番目に、仮に白川総裁ご自身かあるいは4年後の他の総裁かわかりませんが、将来この上限ルールを見直すということになると、大きな信認の失墜につながることにはならないのでしょうか。(以下割愛)』
この質問は実は3点とも輪番というか銀行券ルールに関する質問なのですが、技術的な説明を引き続き行った後最後にこのようなコメントが。
『それから銀行券ルールについてですが、どの政策もそうですが、その時の政策委員会のメンバーが決めていくものですので、4年後にどのようになるかは、もちろんその時のメンバーが決めていくということです。私が本日申し上げていることは、本日議論に参加した政策委員会メンバーの意見を踏まえて発言しているということであります。』
本日ですかそうですか(^^)。
あと、長期金利が上昇して評価損が出た時どうするのかという質問があったのですけれども、そこでは長期国債買入に関しては問題ない(信用リスクの管理は必要だが国債の金利リスクを気にする必要は無い)と明言しています。
『先程の他の記者の方の質問に対してもお答えしましたが、こうした意味でも、国債買入れオペに本質的にリスクがあると思っているわけではありません。』
まあそんな所で輪番大会でありました。
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2009/03/02
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0902d.pdf
○現在の政策の宣伝コーナー
2番目の質疑(3ページ目)位からの政策の説明ですが、欧米の中銀と比較して別に日銀がやっていない訳では無いという話をしていて泣けます。欧州は兎も角として、米国に関しては正直よく言えば「見せ方が上手い」のですが、悪く言えば「今までのFRBの名声にタダ乗りしてる」ちゅう感じがするのでありまして(財政とのタイアップは良くやってると思いますが、それに関して「やれやれ」と言うだけで中々実質的に動かない(動けない)日本が米国と比較されるのはちょっと酷でねえかいなと思う)、まあここらで宣伝しないとちゅうのは判らんでもない。
『改めて整理してみますと、政策金利である無担保コールレート・オーバーナイト物については、昨年秋の0.5%から、現在は0.1%まで引き下げられています。この結果、よく「ゼロ金利」と形容されている米国でのオーバーナイト金利の水準は、現状0.2%程度ですが、日本のオーバーナイト金利は0.1%で推移しています。』
さよですな。
『それから、短期金利の中でターム物と呼ばれる少し長い期間の金利ですが、やや高止まりをみせているとはいえ、米欧に比べると十分低い水準です。ちなみに、いわゆるLIBOR
と呼ばれる市場金利の直近の水準をみると、円が0.63%、ドルが1.25%、ユーロが1.90%です。このように、まず短期金利の世界において日本銀行は非常に低い金利を実現しているということです。』
それはその通り。
『それから金融市場の安定と企業金融の円滑化を図るため、様々な措置を講じています。金融市場の安定に関しては、米ドル資金供給オペを各国と協調して実施しているほか、現在、欧州あるいは米国では実施していない長期国債の買入れオペも利用しながら、潤沢な資金供給を行っています。これは意外に認識されていない事実でありますが、FRBもECBも現在、長期国債買入れオペは行っていません。日本銀行は長期国債買入れオペを行っており、先般、この増額も図ったところです。』
ということで長期国債買入を行なっていることも宣伝してますが、まあこれはその通りなのですけれども諸刃の剣でもあります。と申しますのは、FRBの長期国債買入ってマネタリーベースの増大の為に実施するのではなく(ただしそういうロジックで実施すべしとリッチモンド連銀ラッカー総裁は票を入れたのですけど)、長期金利を下げて貸出金利関連のベースになるリスクフリーレートを下げて貸出市場の緩和を図るという(中銀が長期金利を直接操作しようとするというのはちょっと所では無く無理筋の香りがしますが・・・)ロジックになっているので、そーゆー意味では長期国債買入のロジックが違いまして、現象面だけを捉えて宣伝するのもどうかという気がします。
ま、これが(おサボり中の資料を読んでないのでアレですが)白川総裁における良い意味での福井俊彦的ハッタリのカマシの始まりならば良い話なのかもしれませんけど(^^)。
『また、企業金融の円滑化に関しては、企業金融支援特別オペ、さらにはCP買入れの実施など、中央銀行として異例の措置を含めて様々な対応を行ってきています。(中間割愛)、今述べたような日本銀行の対応や政府の施策等の効果もあって、例えばCP・社債のスプレッドは、リーマン・ブラザーズ破綻以前に比べると高いものの、米欧に比べると低くなっています。また米欧で伸び率が急速に低下している銀行貸出も、わが国では足許上昇しています。』
スプレッドの件はまあその通りかもしれませんけど、銀行貸出の上昇は直接金融市場の縮小によるものと売上減による所要運転資金需要の増加じゃねえのとか思うのですけれども、それも宣伝材料に使ってまして、まあ今回の会見要旨を見て最初に思ったのは先ほども申し上げましたような良い感じでのハッタリが効いているところでしょうか。
『このように、日本銀行は、政策金利の低下余地が限られる中で、金融面から実体経済を下支えしていくために、様々な工夫をしながら金融市場の安定確保と企業金融の円滑化に努めています。今後とも、わが国の経済が物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰していくために、中央銀行として最大限の貢献を行っていくという気持ちで政策に臨んでいきたいと思っています。』
やる気が本当にあるのかは兎も角として、やる気ありそうな発言をしてるのは宜しいのではないかと思料。
○社債買入に関して
社債買入導入の背景や狙いについての質問から。
『最近の社債市場をみますと、信用スプレッドの拡大傾向が続いているほか、格付の低い銘柄の発行が困難な状態が続くなど、市場機能が著しく低下した状態にあります。こうした社債市場の機能不全は、企業金融全体の逼迫につながっていくと思っています。日本銀行ではこのような状況を改善するため、1月の金融政策決定会合において、残存期間1年以内の社債の買入れについて検討することにしましたが、本日、こうした検討の結果を踏まえ、来月上旬から買入れを開始することになりました。』
ほうほう。
『この日本銀行による社債の買入れは、証券会社や投資家による社債の売買を促進し、社債市場の機能改善を後押しする効果や、金融機関の貸出余力が拡大する効果を通じて、企業金融の円滑化に寄与すると考えています。』
さて本当にそうなりますかねえというと微妙な気が。まあ証券会社様におかれましては本制度導入の趣旨に鑑みまして、流通市場でのマーケットメーカーとしての役割を認識して動いて頂きたいものでありまして、何でもかんでも「えービットをこれから探して参りますので暫くお待ちください」というのはマーケットメーカーとは言わんでしょとやや悪態を(^^)。
○短国買入に関して
短期国債買入を増やすのかどうかという質問から。
『まず、短期国債の買入れ(国庫短期証券買入)についてですが、本日の発表文の2ページの第5パラグラフに「日本銀行は、昨年秋以降、政策金利の引き下げや積極的な流動性供給に加え」と書いてあるとおり、昨年秋以降、積極的な流動性供給を行っています。その際これまでの流動性供給手段の活用と併せて、金融市場の安定確保と企業金融の円滑化に努めていくという趣旨の文章があります。これは、短期国債の買入れを増額するということを決めたわけではなく、要は、短期国債の市場も含めて様々な短期金融市場の状況をみて、金融市場の安定を確保する上で必要な措置を講じていくということであります。』
・・・・要するに必要があれば増やすという事ですね、わかります(^^)。
というか、まあ先ほど引用した決意表明らしき部分も含めまして、今回の会見では何か従来よりはやる気感があるような物言いになっているなあという感じです。
○当座預金付利に関して
同じ質問で当座預金付利の継続をする理由に関して質問がありました。
『2つ目の当座預金の付利についてですが、(割愛)これは積極的な資金供給を行うための措置であります。仮に当座預金付利制度がないと、無担保コールレート・オーバーナイト物の金利がゼロに張付いてしまい、その結果、短期金融市場の機能が阻害されてしまいます。しかし、当座預金に付利されると、当座預金の金利を誘導目標金利に合わせつつ、積極的に流動性供給を行うことができるというメリットがあります。そういう意味で、現在の状況のもとでは、金融機関、市場参加者に積極的に流動性を供給するために、この制度があった方が望ましいわけです。』
ま、そういうオペをやりだしたのつい最近なんですけどね(爆)。
『売出手形との関係ですが、もちろん売出手形によって資金吸収はできますが、当座預金への付利で達成できることが売出手形ではできないという面もあります。(技術的な説明は以前も引用したので割愛)そのようなことを考えますと、売出手形は、これはこれで非常に便利な手段ですが、売出手形と当座預金付利制度を併せて使った方が良いということであります。ちなみに、欧州の中央銀行は、当座預金付利制度を持ち、併せて日本銀行でいうところの売出手形に近い制度を持っているなど、多くの中央銀行で両者を併用しているということであります。』
売出手形は基本的にまあ現状だとそんなに使わないんでしょ。とおサボリ中のオペ結果も確認しないで書いてしまうの巻。
○この質問は出ると思いました
よい質問ですので質問から引用。
『(問) これまでの数か月をみていると、例えば今回の社債について言えば、前回決定会合の時に社債の買切りについて検討しますよというアナウンスがあり、今回決定しました。このようにアナウンスがあってその後決定というプロセスが採られていたというのはマーケットとの対話という観点もあると思うのですが、今回は宿題めいたものが出ていないように見受けられます。これは緊急的にやらなければならないことは一応やり尽くしたということを意味するのか、それとも打つ手が無くなったということであるのか、その辺のところをお聞かせ下さい。』
『(答) 社債の買入れということは中央銀行として極めて異例の措置でありますので、そもそも社債の買入れを行うということについて色々な意味で実務的に詳しく知る必要があります。総論的に政策論を議論する時には詳しい実務的知識が無くても大丈夫ですが、実際にオペを行うということになると具体的な業務になってくるわけです。そのため、社債市場の細かな実務も含めて知る必要がありますし、市場参加者の意見も収集する必要があります。そうしたことから検討の時間を要したということです。』
ふーん。
『今回、検討の指示という形で出していないから、もう政策手段が尽きてこの後何も出てこないというわけではありません。いつも申し上げていますが、現在の厳しい経済・金融の情勢に照らして、中央銀行として何ができるのか、どのような政策対応が望ましいのか、これを常に考えております。』
ということでして、まあやる気はありそうな発言になっています。で、続いてこういう質疑が。
『(問) 政策の発表のやり方の転換を考えているとか、そういうこととは違うのですか。』
『(答) そういうこととは関係ありません。』
検討指示の後ひっくり返るという例も出しておいた方が今後の為には良いのではないかと思うのですけどね(苦笑)。
○社債買入に関して追加で質問が
社債買入に関する質問で、マーケットの要望の話が出てました。
『(問) 先ほど社債市場の現状についてお話がありましたが、マーケットでは、今回決められたA格よりもっと下のところを買って欲しいとか、残存年限についてもっと長いものも買って欲しいという声があります。(以下割愛)』
最近のマーケットはちょっとポジションが苦しくなると直ぐにあれを買えだのその発行を減らせだの文句垂れ小僧と化しておりまして中々大変ですなあという感じですが(--)。
『(答) 前回、CPの買入れも含めた企業金融にかかる金融商品の買入れについての基本的な考え方を公表致しました。(途中思いっきり割愛)一方、民間部門の個別先の信用リスクを直接負担することによって損失が発生する可能性がありますが、この損失発生の可能性は、格付、信用度を下げるほど、また期間を長くするほど大きくなっていくという関係にあります。中央銀行が損失を被った時に、すなわち損失を計上した時に、第一義的には中央銀行の財務基盤に影響するわけですが、それと同時に中央銀行に対する広い意味での国民の信認にも影響することになります。(以下割愛)』
という話をしているのですが、実際問題というか実務上の問題として、CP市場と社債市場では引受ディーラーあるいは引受業者の市場における位置づけが全然違う(従ってCP買入で現れたような素晴らしい効果が社債買入で出るとは到底思えなないですから、社債買入はコストの割には報われない政策ですよという話ね)という論点に関しての説明が無いのは少々遺憾な所でございます。まあ今般の措置を導入するに当たって色々とお調べになっているのでその点に関しては重々ご承知の上で「期間の論点」だけの話をしているのだとは思いますが、この部分に関しては重要だと思いますけどね。
○TIBORとかLIBORとか
これも良い質問。
『(問) 先ほど白川総裁は、企業金融について、実際に企業が調達する資金の金利低下を促したいとおっしゃいました。2001
年から2006 年の間の量的緩和とゼロ金利の時代は、日銀の金融緩和に対してインターバンクのターム物金利が0.1%であったと思いますが、昨年の10
月と12 月に政策金利を下げたものの、現状3 ヵ月物金利は、LIBOR が0.6%、TIBOR
が0.7%となっています。総裁は、市場機能の維持という点から、ゼロ金利にすることに反対されていますが、現状は、0.1%に維持することによって、反対に、市場における資源配分が歪み、日銀の金融緩和が伝わっていないような気がします。こうしたメカニズムについてどのように思われますか。』
『(答) ただ今、TIBOR やLIBOR について言及がありましたが、TIBOR の水準がどのような要因を反映して決まっているかについて考える必要があると思います。概念的に整理をすると3つあると思います。1つめは、金融機関が認識する流動性リスク、2つめは金融機関が資金を放出する先に対する信用リスク、3つめが金融機関が認識する企業の信用リスクです。これら3つのリスクが背後にあって、TIBOR
あるいはLIBOR の金利水準が決まってくると思います。』
『現在、どのような要因でTIBOR が高止まっているのかということを考えますと、金融機関の間で金融機関の信用リスクについて非常な警戒感があるとは認識していません。金融機関の流動性リスクと金融機関が認識する企業の信用リスクというものが高止まりにつながっているのだろうと思っています。』
というのと企業の資金需要が量的緩和時代よりも旺盛だというのがあると思いますが。
『(途中割愛)日本に限らず、他の国ではよりそうですが、こうした信用リスクにかかる部分は、中央銀行のオペレーションだけで変えられるというものではなく、基本的には、経済の状況を反映したうえでそのような信用リスクの評価につながっていると思います。従って、中央銀行がオーバーナイトの金利を下げることによってたちどころにTIBOR
などの金利が下がってくるわけではないと思います。(以下割愛)』
まあそりゃそうですな。
○色んな措置を延長したことに関して
『(問) 3点お願いします。まず、今回延長された色々な措置については、なぜ半年の延長なのでしょうか。異例の措置といわれていることを半年間延長するというのは、半年くらいこうした異常な経済状態が続くとみているのでしょうか。(以下割愛)』
『(答) 1点目については、現在、企業金融を巡る状況は大変に厳しいと思っています。現在の経済の厳しさ、および足許の金融市場の動向を考えると、残念ながら暫くこの状況が続くと思います。もちろん、後から振り返って、向こう半年のうちに大きく改善するということがあるかもしれませんが、今は企業にとっても金融機関にとっても不確実性が非常に高いわけですので、この不確実性を取り除く、少しでも軽減するということが大事だと思います。その上で、異例の措置ではありますが、さらに半年間延長するという基本的な考え方で臨みました。』
という認識で、月報の概要部分(明日にでも)は実のところ1月と2月でそんなに大きく動かしていないのですが、会見のニュアンスは今回の方がより厳しめになっている感じがします。
○量的緩和政策との比較に絡んで論点整理
引用ばかりで長くなって恐縮ですが最後に量的緩和政策との比較の質問が。
『(問) (最初割愛)市場では、かつてのように当座預金残高の目標があるかどうかは別にして、事実上の量的緩和といえるのではないかという声もあります。この点についてどのようにお考えでしょうか。もし違うというのであればどの点が違うのでしょうか。FRBでは、信用緩和──クレジット・イージング──という政策を採っているということをバーナンキ議長が明らかにしています。これと現在の日銀の政策には似た部分がかなりあると思うのですが、どのような点が違うのかについて教えて下さい。』
『(答) 現在の日本銀行の金融政策を一言でどういう言葉で表現できるのかについてですが、これは一言でなかなか表現しにくいように感じます。今、米国についてはクレジット・イージングという言葉を使われましたが、確かに米国の金融政策のある側面はクレジット・イージングですが、全体がクレジット・イージング一色に染まっているかというと必ずしもそういうわけでもなく、一言で表現するのがやはり難しい、そういった経済の情勢に現在陥っているという感じがします。』
左様でございますな。で、日銀の政策に関して論点整理をしてます。
『日本銀行の政策については色々な概念整理が可能かと思いますが、私自身は3つの柱から成っていると思っています。1つ目は政策金利を引き下げることで、現在0.1%まで引き下げています。2つ目は金融市場の安定を維持することです。これには必ずしも狭義の金融政策だけではなく、最後の貸し手として資金供給することや通常のオペレーションでも潤沢に資金供給していくことが含まれます。3つ目は、CP市場がその典型ですが、金融市場の機能が低下し企業金融が全体として逼迫を来しているときに、その金融市場に対して中央銀行が働きかけていくという政策であり、これについては確かにクレジット・イージング(信用緩和)という言葉がより近い感じがします。』
なるほど、そういう切り分けですね。
『量的緩和との違いですが、その答えは多分、量的緩和をどのような政策と定義するかに依存していると思います。かつて日本銀行が採用した政策、あるいはそれとイコールのものですが、海外の色々な学者の方が提案した量的緩和というのは、当座預金の残高なりマネタリーベースを増やすことによって経済活動が刺激されていくというものです。そのように考える場合には、当座預金残高なりマネタリーベースの残高に目標を設定し、それを実現していくように政策を展開していくのが、純粋な意味での量的緩和であると思います。その意味では現在、FRBも日本銀行も量的緩和は採用していないと思います。』
これもその通りです。先ほども申し上げましたが、FRBが絶賛やるやる詐欺中の長期国債買入ですけれども、そのロジックはマネタリーベースの拡大ではないのですよね。
『一方、先程申し上げた第2、第3の柱を実現していくには、中央銀行はオペレーションで量を供給するわけですから、結果として当座預金の残高が増えるという面はもちろんあります。その点をとれば確かに量は増えているわけですが、その思想は、先程申し上げたような意味で異なっていると思います。』
という事になろうかと思います。
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2009/02/05
○総裁記者会見より
株式買入方針決定後の会見要旨から。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0902a.pdf
まあ大体のところは昨日紹介した説明文書にある内容なのですが、あたくし的に読んでいて何かこう気になったのは「株式保有リスク」の点。
『(問) 今回の措置は、金融機関の株式保有リスクの削減を支援するという、前回の株式買入れと同じような趣旨になるかと思うのですが(途中割愛)。金融仲介機能を担う金融機関が株式を保有するという日本の金融機関経営におけるビジネスモデルについて、総裁としてはどのように考えておられるかご意見をお聞かせ下さい。』
『(答) 非常に難しい問いかけだと思っています。日本銀行として、金融機関が株式を保有することは一切望ましくないと思っているわけではありません。金融機関は、いわゆる政策投資であれ純投資であれ、株式を保有するリスクと採算性を十分に意識し、その上で自らの体力との関係で最適な保有を考えていくというのが基本的な考え方だと思っております。』
ほうほうそれでそれで。
『そのように申し上げたうえで、今の日本の金融機関の現状をみてみますと、やはり株式保有リスクが非常に大きいといえます。少なくとも、信用仲介をする金融機関のリスクの姿、プロファイルをみたときに、株価変動リスクが最も大きいという状態はやはり是正されていくべきだと思っています。』
いやーん。
『なぜ金融機関の株式保有がなかなか減らないかと考えた場合、最終的に一般企業の株式を誰が保有するのかという問題と密接に絡んでいて、それと表裏の関係にあるわけです。この点については、これまで個人の株式投資あるいは機関投資家の役割など色々な議論があったわけで、私共も金融機関の株式保有の問題だけを捉えて、問題が解決すると思っているわけではありません。ですから、私共自身も──中央銀行という意味でも政策当局者という意味でも──、それから一般企業経営者も、現在の状況について時間をかけて是正していかなければならないという意識を持つ必要があると思います。』
難しい言い回しですけれども、要するに金融機関は株持つなと言ってるように読み取れますな。投資銀行涙目と申しますか、欧米では投資銀行が商業銀行に衣替えしつつある昨今ですが、まあ投資銀行は金融機関じゃねえ(ある意味そうかもしれないけど)ということですね、わかります。
『そのためには、色々な枠組みというか、そうした動きを進ませるような環境を制度的にも作っていくことが必要だと思っています。それが何であるかについては、これから関係者が更に知恵を集めて議論していくべき話だと思います。』
という事だそうです。うーむ。
さて、最近話題の政府紙幣に関する質問もありましてその答え。
『(答) ご質問はいわゆる「政府紙幣」についてかと思います。「政府紙幣」の発行は、その仕組みの如何によって、実質的には将来の返済が必要な資金調達である「国債の市中発行」と同じとなるか、あるいは、通貨の信認を損なうなど大きな弊害を伴う「無利息永久国債の日銀引受け」と同じとなるか、そのいずれかになるものと考えられます。』
ということで、その後説明しているのですが、面倒なのでそのまま引用の巻。
『もう少し詳しく説明します。まず、「政府紙幣」が現在の貨幣、コインと同様の仕組みで発行されるというケースを仮定して考えてみますと、次のようなことになります。現在の貨幣、コインは市中から日本銀行に還流してきた段階で、政府においてこれを回収するための財源が必要となるという点で、「政府紙幣」もこれと同じ仕組みになります。従って、「政府紙幣」の発行は、「政府紙幣」が日本銀行に戻ってきた段階で結局は資金調達が必要になるという意味で、これは国債の発行と具体的に変わりはないと思います。』
『他方、「政府紙幣」が市中から日本銀行に還流してきたときにも、仮に政府がこれを回収せず、日本銀行に保有させ続けるという形で「政府紙幣」が発行されるというケースを仮想的に考えてみますと、この場合、確かに政府は回収のための財源を必要としないことになります。しかし、この仕組みは、日本銀行に無利息かつ償還期限のない政府の債務を保有させる点で、「無利息の永久国債を日本銀行に引受けさせる」ことに等しく、大きな弊害が生じます。』
で、その弊害とは。
『この弊害の中身、意味合いについてですが、日本銀行券の裏付けとなる日本銀行の資産として、無利息かつ転売不能な資産を保有することとなり、円滑な金融調節が阻害されたり、日本銀行の財務の健全性が損なわれたりすることへの懸念を通じて、通貨に対する信認が害されるおそれがあります。』
毎度の財務の健全性は兎も角として、金融調節云々に関して言えば、日銀のバランスの資産サイドが全部政府紙幣になったという極端なケースを想定した場合に、インフレ抑制の為に通貨吸収を行わないといけない状態になったら当然ながら売りオペをする事になるのですけれども、無利息の政府紙幣だと売りオペが出来ないという素敵な事態になりますというお話なんでしょうかね。よーわからんが。
『また、政府が、日本銀行による国債の直接引受けと同じ仕組みにより恒久的な資金調達を行うことが、国の債務返済に係る能力や意思に対する市場の疑念を惹起し、長期金利の上昇を招くおそれもあると考えられます。「政府紙幣」の発行については、政府が判断される事項でありますが、以上申し上げた点などを踏まえますと、非常に慎重な考慮を要すると考えられます。』
ということで。
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2009/01/26
お題「総裁記者会見より、引用大増量でどうもすいません」
まずは総裁記者会見。当たり前ですが今回も長いです。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0901a.pdf
今回は切り貼りしまくったので総裁発言の引用に要旨の何ページ目になるかを入れました。
○最初の説明でいきなり3ページもあります
最初に総裁の説明があるのですけれども、今回は決定事項がたくさんあったので説明が長くなっています。で、その部分から少々。
・社債買入と投資法人債に関連して
『今回の検討の結果、社債市場の機能が足許にかけて大きく低下しており、こうした状況が企業金融全体の逼迫につながっていることを踏まえ、残存期間1
年以内の社債の買入れについて、実務的な検討を進めていくことを、議長として執行部に指示しました。』(2p)
理由は市場機能の低下という奴で、これはまあ最近の中銀のトレンドでございますわな。
『第3に、不動産投資法人、いわゆるJ-REIT の発行する投資法人債など、J-REIT
の債務を適格担保とすることを決定しました。これは、J-REIT が、わが国証券化市場の重要な構成要素である不動産証券化市場の主要な担い手であり、J-REIT
が発行する投資法人債などの債務が相当の規模に達していることを踏まえた措置であります。』(2p)
それは重要なな理由ですねえ(棒読み)。
・展望レポートの中間評価
『まず、中心的な見通しを述べると、景気は大幅に悪化しており、当面、悪化を続ける可能性が高いということです。物価面では、生鮮食品を除くベースの消費者物価の前年比は、石油製品価格の下落や食料品価格の落ち着きを反映して足許低下しており、春頃にかけては、需給バランスの悪化も加わってマイナスになっていくとみられます。』(3p)
景気は悪化で物価はマイナスと。
『さらに2010 年度までの中心的な見通しとしては、世界経済の見通しにも大きく依存しますが、中長期的な成長期待やインフレ予想が大きく変化しないもとで、2009
年度後半以降、国際金融資本市場が落ち着きを取り戻し、海外経済が減速局面を脱するにつれ、わが国経済も持ち直し、物価の下落幅も縮小していく姿を想定しています。こうしたもとで、見通し期間の後半には、物価安定のもとでの持続的成長経路へ復していく展望が拓けるとみられるものの、このような見通しを巡る不確実性は高いとみています。』(3p)
「持続的成長経路へ復していく展望が拓ける」とかこれまた残念な表現でありますけれども、まあ下げたメインシナリオもかなり怪しいですねという状況ですな。
で、リスク要因で新たに加えたものは何かと言いますと。
『リスク要因については、景気面では、世界的な金融情勢や海外経済の動向に加え、新たに、中長期的な成長期待の低下に伴う設備や雇用の調整圧力、金融と実体経済の負の相乗作用、の2点を指摘しました。物価面では、景気の下振れや国際商品市況が下落した場合に加え、企業や家計の中長期的なインフレ予想が下振れるリスクを新たに指摘しています。』(3p)
物価のリスクもまあ微妙に本格デフレ入りリスクでして、中々アレですわなあ。
○デフレ入り見通しではないと仰せですが
で、その見通しはデフレ入りという話ではないかという質問が最初に来るのですが、その答えから少々。
『デフレという言葉は、いつも申し上げている通り、物価の下落という意味なのか、あるいは資産価格の下落という意味なのか、あるいは景気が悪いということを言っているのか、その辺りを明らかにしないと議論が混乱すると思います。』(4p)
はあ。
『物価の下落という意味で申し上げると、物価の下落が景気の悪化につながり、それがさらに物価の下落につながるという、いわゆるデフレ・スパイラルが起きるかどうかということが懸念すべき最大のポイントだと思います。』(4p)
まあそりゃそうです。
『その際、最も重要な判断材料は、中長期的にみたインフレ予想、先行きの物価上昇率の予想、あるいは中長期的にみた日本経済の成長率がどのようになっていくのかという点だと思います。現在のところ、そうした中長期的な物価上昇率の予想が大きく変化したという感じは日本経済についてもありませんし、世界経済についてもありません。』(4p)
で、この後にはこの予想が変化するかどうかを見ていく(さっき述べていたリスク要因ですよね)のを注視するとは言ってますが、しかし日銀の向こう2年位における物価の予想が前年比マイナスになっていて、世間の中長期的な物価上昇率の期待が変化しないと見るのも何だかなという感じはしますけどねえ。
それから後の方の質問で、「日銀はデフレスパイラル入りかどうかは別にして、一時的にデフレ入りを見てるんですよね」というのがありまして、そちらでの総裁の答え。
『まず、デフレに入ると日本銀行がみているかどうかということですが、何度も同じ話をして大変心苦しいのですが、デフレという言葉は非常に曖昧に使われる言葉だと思っており、私自身はデフレという言葉をあまり使わないようにしています。物価、生鮮食品を除くベースの消費者物価指数の下落がこのあと続くとみているかという問いですと、先程の政策委員の見通しの数字にも出ていますとおり、マイナスを予想しています。』(10p)
デフレという言葉を使いたくないのですね、判ります。
『ただし、マイナスということだけに着目した場合、日本だけではなく他の先進国でも今年の後半からマイナスになっていくという見通しが少なからずあります。その点からも、それから過去の日本や他の国をみても、物価上昇率がマイナスになる時期は極めて稀というわけではなく、時々起きているわけです。日本の場合でいうと、実はバブルの時ですら消費者物価上昇率はマイナスでした。』(11p)
何か微妙な言い訳キタコレ。
『問題は、物価の下落が原因となって更なる景気の悪化や物価の下落をもたらすかということです。景気が悪くて物価も下落しているということであれば、それは単に景気が悪いということであるので、物価の下落に固有の問題があるかどうかが重要だと思います。先程のデフレ・スパイラルの問題はそういう意味で申し上げたということです。』(11p)
微妙に煙に巻いているような気がしますな、うーむ。
○今後の金利政策について
「オーバーナイト・レートをここから下げても意味がないと考えているのか」という質問から。
『コールレートについては、現在、わが国のコールレートは誘導目標金利が0.1%で、現実のコールレートの平均も大体0.1%で推移しています。米国は誘導目標が0〜0.25%ですが、このところのフェデラルファンドレートの推移は、少し前までは0.1%前後、足許は0.25%くらいです。いずれにしても、日米のオーバーナイト金利は0.1%前後で推移しているということです。』(6p)
これはその通りです。
『前回のこの席でも申し上げましたが、ここまでオーバーナイトの金利が下がってくると、金融政策という観点から意味のある論点というのは、実質的には、企業が実際に資金調達する少し長めの資金の金利をどのようにして下げていくのかとか、量に関する安心感をどのように確保するのか、ということに移っていると思います。私が出席している海外の様々の中央銀行同士の会合でも、徐々に関心がそちらに移っています。』(6p)
それはそうだが、では10月以降の流動性対策出し遅れ攻撃やオープン金利上昇放置プレイは何だったのだと小一時間、というかそのせいでCPだけじゃなくて他のモノまで買えだの何だのという話に踏み込まされたんでしょうけどね。
で、この後に「つまり長期金利を押し下げるオペレーションをするのですね」という質問がありまして、それに対して総裁が追加説明しています。
『それから長期金利の話ですが、私の話が舌足らずで申し訳ありませんでしたが、要は短期金利がここまでゼロに近づいてくると、金融政策という面からマクロ経済への働きかけとして何が重要な論点になってくるかという意味で申し上げました。』(11p)
『CPも社債もそうですが、企業の資金調達に係る金融市場が充分に機能しておらず、その結果、景気が更に下押しされるという事態が大なり小なり起きているときに、中央銀行としてどう対応すべきかという意味で申し上げたわけです。』(11p)
ということで、クレジット面やらターム金利の問題という話ですが、それなら10月以降(以下同文^^)。
『長期金利という場合、それが社債の金利か国債の金利かということですが、社債の金利が国債の金利対比スプレッドが大きく乗っているという状態は、今申し上げた企業金融の問題に包含されるものです。』長期金利の中で、リスクフリーである国債の金利を政策的に下げていくこと──短期金利の誘導とは別にこれ自体を狙って下げていくこと──、この是非については、中央銀行によって色々な考え方があるだろうと思います。』(11p)
つまりFRBが提唱しているような話とは違うがなという所。確かにまあFRBの言うような長期国債買入で長期金利本当に下がるのかと言ったら、需給で低下してもリスクプレミアムの拡大で打ち消される懸念もありますからねえ。
『FOMC では、この問題について検討していくということが議事要旨で公表されましたが、そういう問題について考えている中央銀行は現にあるわけです。日本銀行自身は今、国債金利自体を下げていくことをターゲットにして政策運営を行っていません。あくまでも、短期金利をほぼゼロにし、そのもとで市場参加者は先々の景気や物価の弱さを見越した結果、現実に長期国債金利が低い状態で今推移しているわけです。我々にとってより重要な課題は、企業金融という面で量についての安心感を出していくことだと思っています。』(11p)
まあそれは判るのだが出遅れましたなという感じ。企業金融問題やる前に利下げ圧力が先に来てしまったというのは同情すべき点ではありますけど、それにしてもこういう話をしている割に動きが今まで宜しくなかったですよね。
○社債買入に関連して
金融商品買入に関する考え方を公表した件に反対した須田さんの理由ですが。
『まず、反対された委員は、社債買入れ検討を公表することは社債市場及び企業金融の動向からみて、時期尚早であるという理由で反対されました。』(13p)
つまり社債買入検討の公表に反対と。確かにまあ買入検討というのを公表すると、じゃあ実施決定ですね(東京新聞では思いっきりそういう報道してました)となる訳で、まあ正直申し上げてあたくしもこういう訳判らん「検討を公表」みたいなエエカゲンな事はしない方が良いと思います。
「買入検討を公表」という訳判らん動きになった背景理由は一応こんな感じらしい。
『一方、社債市場の機能は明らかに低下してきており、先々のこの市場の状況や経済の状況をある程度見通した上で、社債市場についても検討したほうが良いと判断したわけです。これは時限措置でありますが、必ずしも年度末対策だけではなく、もう少し長いものとして、検討したほうが良いとの判断であります。』(13p)
というか年度末対策にならんですが。残存1年以内だけ買うとかしても直接的には社債発行のお助けにも何にもならんのですけどね。そりゃまあイカレポジション外せるかも知れないと大歓喜してる人もいますけど。
○CP買入あれこれ
・政策の効果が出てますね
政策効果を定量的に出すとどうなりますかという質問に対して。
『今回のCP買入れの効果を定量的に示すことはなかなか難しいと思います。ただ、リーマン破綻以降日本のCP市場も急速に変調を来たしてきたわけです。振り返ってみますと、大企業が先々の資金繰りに不安を持つということは、98
年の金融危機の後、暫くありませんでした。特に、この4〜5年間は非常に緩和的な環境の中で、流動性や資金繰りについて懸念するという状況では全くありませんでした。それが突然手許流動性が枯渇するのではないかという恐怖にとらわれた状況になったわけです。』(9p)
『この先、経済・景気が大きく変化し、自分の会社の売上も急速に減少するかもしれず、そうなると資金繰りに対して非常に不安が出てくるわけです。統計学の用語で「テール・リスク」と言いますが、確率的には低いけれども、しかし起きた場合には損失が非常に大きいという、そういう事態が自分の身に降りかかるのではないかという恐怖心に駆られるわけです。CPというのは、そういう時にマーケットで資金を調達する手段でもあるわけです。』(9p)
と、しらっと説明してるのですが、たぶん最後の一文が実に怪しげな説明でして、そうじゃなくてCP市場の機能が急速に悪化したからテールリスクというのが絶賛大発生したのではないかと思料されるのですが。で、そのCP市場の機能急低下ってのは、CP金利の上昇そのものもそうですけど、オープン金利の上昇などからも判ったと思うのですけどねえ。いやまあいいです。
『そのCP市場の機能が大きく低下することに対して、日本銀行が買入れることによってCP市場の機能の回復を側面から支援するということになります。この意味は大きいと思います。12
月に日本銀行が買入れ方針を発表した後、日本政策投資銀行の買入れと相俟ってCPの発行環境が上位格付けを中心に改善してきているということも、そうした効果の大きさを潜在的に示していると思います。』(9p)
まあ効果があったのはその通り。
・特定業界救済ではございません
「今回のCP買入はノンバンク業界が強く要望してましたけど」という意地悪質問に対して。
『今回、CPの買入れに先立って企業金融に係る金融商品の買入れに関する基本的な考え方を公表しました。そこで明確に謳っているとおり、私どもが買入れる場合というのは、当該金融市場の機能が著しく低下していること、そのことによって企業金融全体が逼迫していることが、一つの重要な判断ポイントです。個別の企業や個別の業界それ自体のために日本銀行がある商品の買入れを行う、行わないといった考え方は採っていません。』(8p)
まあ考え方にあるよね、ということで。
『日本銀行のCPの買入れをある特定の発行体のために行うということは、財務の健全性あるいは中央銀行の中立性という観点からみても望ましくないので、買入れ対象CPの信用度の要件や買入れ総額の上限を設けていますし、特定の企業の信用リスクを集中的に負担することを避ける為の手当てもいくつか行っています。』(8p)
というか、そうなってしまうとこれは財政政策の範疇であり、民主主義国家で議会を通さないで中央銀行がやってしまうのはどうなのよという話じゃないですかね。
・CPを買うと中小企業にも恩恵という理屈
ま、中小企業の資金繰りは政策金融の世界でしょとは思いますが、そうは言っても「大企業だけ助けるのか」という突っ込みに対しての理屈も必要な訳で。CP買入の話ではないですが、企業の資金繰り問題に関連した話からその理屈が垣間見れます。
『貸出計数の面からみると、実は11 月および12 月は、現行の統計が開始されて以来最高の伸び率を更新しています。その意味では、金融機関は貸出を減らしているわけではなくむしろ増やしています。この伸び率の寄与度を分解してみると、足許増えているのは大企業向け貸出です。大企業向けが増えているということは、別に大企業の中に資金が留まっているわけではなく、自動車メーカーも電機メーカーもそうですが、大企業の傘下にはたくさんの下請け企業がありますので、企業間信用というかたちで中堅・中小企業に資金が行き渡るということだと思います。ただ繰り返しになりますが、企業が全体として今どのように認識しているかというと、厳しくなっているということだと思っています。』(15p)
大企業の資金繰り支援を行うことによって、中小企業へのサポートにもなるという話でございますな。まあ日銀がやるのはCP買入まででしょと思いますけど。
・沢山買えばよいと言うものではないという話
これは全く仰るとおりです。というか本来はこういう施策をやらないで居られる状況である方が望ましいのですから、この論点は白川総裁の発言は全くその通り。
『また、CPの買入れの金額の大小をもって、中央銀行の積極性の度合いを測るような議論がないわけではないと思いますが、これは改めるべきだと思います。』(16p)
一方、日銀OBの与党議員はこういう話をしてましたが。
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=newsarchive&sid=aTgAf8saecTM
「買入の判断がやや遅かった」というのは同感ですけど、「3兆円より増やすべき」というのはもうアホかと。ちなみに、ネット版じゃなくて専門家向けの記事の方ではもうちょっと書き方が違ってて「3兆円では足りない」みたいなニュアンスになっていましたが、全部日銀に買わせてどうするのよと(大体必要なら増やすでしょうし、不必要ならその方が望ましいんですから)。
『米国の場合は、CPの市場が日本よりも非常に大きく、資本市場への依存度が非常に高いわけです。一方日本の場合は、資本市場への依存度は低く、企業の銀行借り入れ4に対して資本市場調達は1という割合です。米国の場合はほぼその逆です。また、最近のスプレッドの状況をみても、10
月初の段階で、米国では極端にスプレッドが拡大していました。例えば、格付けがa-1
プラスのCPのスプレッドは、米国は10 月の上旬で3%台半ば、日本は12 月の段階で0%台半ばであります。そういう意味で金額の大小だけでは判断できないわけです。』(16p)
まあそんな細かい話をするんじゃなくて、「市場状況が正常ならば別にこんなのをやる必要は無い訳で」って話をすれば良いような気もするんですけどね。
あと余談の類ですが、やたらABCPに拘った質問してる人が居ましたが、今の市場環境でABCPってそんなに最重要な問題じゃないと思うのですけれども・・・まあいいですけど。
#案の定金融経済月報が後回し(汗)
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2008/12/30
○22日の総裁講演@経団連
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0812d.htm
景気認識の話とかは全部スルー致します。まあ決定会合や金融経済月報などで出ているようなお話でございますので良しという事で(こら)。
んでもって最後の方の金融政策運営に関する部分から引用してみます。
・ここからの金利引き下げに関して
『日米ともそうですが、金融機関間の取引におけるオーバーナイト金利がここまで低下してくると、金利による景気刺激効果という点では、今後は、企業の資金調達のコストやアベイラビリティ、すなわち、資金調達のし易さをどのようにして高めるかが、政策的に意味のある論点となります。』
政策的にあまり意味が無いと考えるからここからの利下げは否定的だと仰せのようでございますな。いやまあそれならそれで、10月以降の利下げ局面でドル資金の供給オペはとっととやってくれましたが、円資金の供給に関しては散々出し渋ってくれましたねえと思う訳でして、そーゆー所でどうも言行不一致(必ずしも全部が全部日銀のせいではない部分はありますが)な動きが目についたのが今年の展開でしたわな、と年末まで悪態。
・資金供給オペレーションに関して
『その意味では、まず、金融市場の安定性を確保し、金融政策の緩和効果が十分発揮されるような環境を維持するための措置が極めて重要です。この面では、リーマン・ブラザーズ破綻直後に各国中央銀行と協調して米ドル資金供給オペと呼ばれる仕組みを導入し、これにより、潤沢なドル資金の供給を行っています。現在、担保の範囲内であれば金額の上限を定めずに供給を行っていますが、この結果、ドル資金の調達金利は、期間の短い取引を中心に低下しており、金融機関によるドル調達圧力の緩和、ひいては日本の企業のドル調達の不安を取り除くことを通じて、経済活動を下支えしています。』
こちらはまあそうですな。米国の何だか出しまくり状態も効いてると思うが。
『また、円資金についても、積極的な資金供給を一層円滑に行い得るように補完当座預金制度を導入したほか、年末越えの資金を、昨年以上の規模で供給しています。』
補完当座預金導入して「目に見える積極的な資金供給」ってやってましたっけとか、昨年以上の規模の供給ってあーた金融市場のストレスが昨年と今年では天と地くらい違うのですから昨年以上程度で足りてたのか(最後は余りましたが)という論点もございますが。なんちゅうか脱力。
『国際金融資本市場における緊張の高まりの影響は、株価の大幅な変動や社債市場における信用スプレッドの拡大という形でわが国金融市場にも及んでいますが、こうした日本銀行の金融調節面での迅速な対応の効果もあって、米欧に比べればそれでも相対的には安定しています。』
・・・・・・いやあのですな(以下悪態につき割愛)。
・輪番増額は資金供給のテクニカルな見地から
『更に、先週の金融政策決定会合では、長期国債の買入額をこれまでの年14.4兆円ペースから、年16.8兆円ペースまで増額しました。これは、長めの資金供給を通じて、短期の資金供給オペを頻繁に実行せざるを得ないという事態を解消し、円滑に金融調節を実施するための措置です。』
と、ここの所何度かご紹介しましたけれども、輪番増額が調節上のテクニカルな話という事を強調しておりまして、まあこれは将来(今の調子だとかなり先の話で恐らく景気の立ち直りの方が先に来ると思いますが^^)のエグジットを睨んでいますなあという所でしょう。
・企業金融支援に関して
『このような金融市場安定化措置と並んで、金融政策の緩和効果が十分に波及するように、日本銀行は企業金融を支援するための様々な措置を講じています。主要国では、企業に直接与信を行うのは民間の金融機関や投資家であり、中央銀行の役割はそうした民間の与信活動を間接的に支援することです。具体的には、オペレーションを通じた流動性の供給であり、企業債務を中央銀行の与信の適格担保とすることです。』
そりゃそうなんですけどね。
『中央銀行が個別企業の信用リスクを直接負担する政策は、そもそも民間金融機関のビジネスを奪うことを意味します。また、損失発生の可能性が高くなることを考えますと、広い意味での政府との役割分担や中央銀行の財務の健全性確保、通貨の信認確保といった様々な観点から検討する必要があります。』
まあそうなんですが、何せ状況がそんな場合じゃなかったというのもまた現実。確かにCP買入に関する一連の措置の後、年末越えに抱え込んでいた資金を何だか良く判らんけど放出した人がいたこともあって、CPへの買いがわんさかやってきてレートがアホほど低下したので、そーゆー意味では運用側涙目になってますが(^^)、直前まではリスク回避の傾向なのか買いが無しの助だったのですから、政策投資銀行の買入開始と日銀の措置は心理的効果も大だったという事なのではないでしょうか。一回壊れたものを正常化する時にはやはり思い切った策が必要であるという事例なのかなあと思うのですけれども。
『因みに、FRBはCPを買入れる制度を設けましたが、買入対象は最上位格付けのものに限定しているなど、様々な工夫をしています。』
この話、白川さん相当何度も強調してますな(^^)。で、従来より実施した適格担保の緩和やらCP買現先オペ拡充の話をスルーしましてCP買入の説明を引用します。
『こうした措置に加えて、今後、年度末に向けて企業金融が一段と厳しさを増すおそれがあることを踏まえ、時限的に、CPの買い切りを実施するとともに、企業金融に係るその他の金融商品についても中央銀行としてどのような対応がありうるかを検討することを、先週末に決定しました。』
やっとですかという気もしますが、まあこれは結構でございました。
『CPの買い切り措置は、結果的に個別企業の信用リスクを負担することになるものであり、中央銀行のオペレーションの主たる領域は流動性供給であるという考え方に照らせば、中央銀行として異例の対応です。実際、先進国の中央銀行の歴史をみても、企業債務ないし企業の資金調達手段を買い切るという措置は、日本銀行が2000年代前半に行ったABCPとABS、株式の買入れ、あるいは先程申し述べたFRBによるCPの買入れ以外に例をみません。』
そりゃそうです。
『もっとも、流動性供給と信用リスクをとる政策との間に明確な線引きをすることは、危機的な状況の下では難しくなります。中央銀行としては、金融経済情勢を踏まえ、物価の安定と金融システムの安定という中央銀行に課せられた責任の重みを十分に認識し、その役割を適切に果たしていくということの具体的、実践的内容を判断していくことが求められます。』
まー悪用すると震災手形濫用みたいになっちゃいますからね。でもまあこの部分に関してはあえてこの状況下で強調する必要があるのかどうか。中銀として言いたくなるというのは非常に良く判るのですが、こういう話をすると「日銀はまた自分の庭だけ綺麗にしようとしている」と言われちゃうと思うんだけどなあ。
『中央銀行として企業金融の支援を進める上で、どこまでが必要かつ適当な範囲か、また、中央銀行の財務の健全性と通貨に対する信認を確保するために、政府との関係も含めどのような対応が必要か、といった点について、改めて検討を深めていく方針です。』
だいたいからして最近は通貨の信認が高すぎて困ってるんだし(苦笑)。
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2008/12/25
○総裁会見の続
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0812c.pdf
金利の出来上がりが何故0.1%だったのか、追加利下げの可能性、長期国債買入増額の理由と今後の増額可能性、CP以外の買入に対して、と盛りだくさんの質問があったのでそちらの答えをまず引用。
・0.1%にした理由
一般的な「総合的に勘案」と言う部分を割愛して引用するとこうなります。
『金利を0.1%まで引き下げた場合、さすがに市場機能の一部が低下するという現象が起こるかもしれません。しかし、プラスの金利を維持することにより、金融取引に伴う諸コストや手数料をカバーし得るかという点で、金融活動の基盤や取引のインセンティブはギリギリ残ると考えています。』
ま、そりゃそうなのですが、そもそも短期市場での市場機能ってえのが日銀の資金供給オペ頼りという状況はとっくの昔から始まっておりますので、ちゃんとオペレーションをやらないと市場が回らないという状態なんすけどねえ。
・追加利下げの可能性
『次に、一段の引下げの可能性についてですが、将来の金融政策について絶対ないとか絶対あるといったことは勿論言えません。』
と、ここで止めときゃいいのにその後に余計な話を。
『ただ、今回金利引下げを決定するに当たり、短期金融市場の機能を維持するということについて随分議論を行い、その結果当座預金付利の金利を0.1%にしたわけであります。0%に近い世界はあまり例がありませんから、比較は難しいと思いますが、FRBは当座預金金利を0.25%とし、しばらくこの水準を続けると判断したわけであります。市場機能の維持という観点から0.1%が良いのか0.25%が良いのかは、なかなか説明が難しいですが、様々な要素を考慮した上で今回の判断に至ったわけであります。』
機能維持もクソもとっくの昔に(以下同文)。だいたいからして経済が崩壊したら短期金融市場の機能もへったくれもないと思うのですが、そう短期市場短期市場言われてもありがた迷惑にも程があります。
・長期国債買入
『従来より2,000 億円刻みで引き上げてきましたから、2,000 億円刻みというのは一つの自然な刻み方だと思っています。』
まあこりゃその通り。
『また、銀行券と長期国債の残高の差がポイントになってくると思いますが、その前提として、国債の買入れオペはこのところ残存期間の短い買入れが非常に増えていることや、政府の国債買入れ消却に応じたことで保有する長期国債が減ってきているという事実があります。今回、期間の長い国債も買入れ対象とし、且つ期間別に買入れを行うことにより、これまでと同じ買入れ金額であっても期間が長い国債を買う分だけ日本銀行のバランスシートに長く残る国債は増えていくことが考えられます。』
これってもっと物は言いようでして、長期国債買入でより長い期間のものを買いやすくしてますってのをもっとクローズアップされるような話をすりゃ見せ方としてよいと思うのですけれどもねえとしか言いようが無いです。
『こうした少し長い先の姿を想定しながら、銀行券の範囲に収まる買入れ額はどの程度か、バランスシートの資産サイドの期間の構成という面でバランスがとれているか、などを勘案し、2,000
億円の増額を決定しました。』
さよですか。
『当面、この2,000 億円を増額することは考えていません。』
どう見ても余計です。本当にありがとうございました。
・・・・こうやって折角出してる政策に関する効果を減殺するような話をしていくのが白川総裁クオリティなのですが、もう豆腐の角に華麗に頭をぶつけるべきではないかと思いますですよ。とほほのほ。
・CP以外の買入
『最後に、CP以外についてどのような対応を考えているかについてですが、今回基本的な検討のポイントを執行部に指示し、それを踏まえて執行部がこれから検討する段階ですから、現時点ではそれ以上の答えはありません。』
どう見ても押し付けられましたと仰せです。本当にありがとうございました。
まあそんな感じでよく言えばハッタリの無い正直なお話、悪態つけばやる気のないお話が続くのですが、代表的なもんとして以下の質疑を引用しておきますね。
・やはりこういう非常時にはインチキハッタリパワーが必要なのではないかと
『(問) 「量的緩和政策」という言葉は、かつて日銀が行った政策を表すものとして定着していると思うのですが、今回日銀が行おうとしている政策、つまり、市場金利の下限を設定して資産購入などを活用して市場への資金供給を増やしていくという手法をどう呼んだらいいのか、総裁のお考えがあればお聞かせ願えますでしょうか。』
しかし実は市場金利の下限を設定したのにそれをつけさせないようなオペレーションを行っているという恐るべき事実が翌日以降に発生しているのはチャーミング。
『(答) その名前についてのご質問に答える前に、今回の措置についてご説明しますが、目標金利を0.1%に設定した上で色々な資産を買うことにより、バランスシートを拡張させていくことを必ずしも狙っているわけではありません。』
あらそうですか。
『もちろん、金融市場の安定は図っていきますし企業金融の支援も行います。CPの買入れについてもそうした目的に沿って実行していくものです。バランスシートの規模を拡張していくこと自体に何か目標を置いているわけではありません。結果的に拡張していくことがあるかもしれませんが、積極的に大幅に拡張することに政策上の理念があるわけではありません。』
そうじゃなくてもインチキハッタリパワーがあれば「結果的に拡張していくことになるかもしれない」というのをもっと前面に打ち出すものです。こういうトーンで会見をやるから折角色々と実施してるのに「踏み込み不足」と言われてしまうのよね、アホラシカ。
『それからネーミングについてですが、日本銀行は、そういうネーミングは非常に不得意な組織ですし、何かキャッチ―な言葉があるわけではありません。』
まあこれはご愛嬌。
と言う感じでして、何か会見要旨読んでると総裁が「実はやりたくないのにやりました」って言いたがってるようにしか思えませんわなという感じが伝わってくる訳でして、腹で何考えているかは兎も角として、その当時は景気良く当座預金残高目標を拡大していた福井総裁のプレゼンを見習うべきであるとしつこく思うのでありました。
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2008/12/24
ではまず決定会合後の総裁記者会見から。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0812c.pdf
○米国の決定に関連して
冒頭に中々よい質問が。
『(問) FRBが、先日のFOMCで利下げを行い、かつ大量の資金供給およびリスク資産の買入れを行うと決定しました。今回、日銀も大幅な利下げおよびCP買入れ・国債買入れの増額など、かなりリスクを取る姿勢を示されましたが、その意味では、米国同様、事実上のゼロ金利、事実上の量的緩和に日銀も踏み込んだと判断してよろしいのでしょうか。』
で、これに対する総裁の答え。
『(答) FRBの措置についてですが、これは他国の中央銀行の政策ですので、それ自体について私の立場から論評することは差し控えたいと思います。お尋ねの点については、最初に日本の経験に照らした印象から申し上げた方がよいと思います。』
といいつつその先にFRBの政策に対する解説が始まります(^^)。
『まず、誘導目標金利についてですが、今般のFRBの措置では、かつて日本銀行が採用したゼロ金利政策とは異なり、金融調節によって市場金利をできるだけ0%に近づけるという決定は行われていません。FRBの措置についての新聞記事では、「ゼロ金利政策導入」あるいは「事実上のゼロ金利導入」といった見出しが多くあったように思いますが、必ずしもそのような決定は行われていないと思います。』
左様でございます。で、現状追認の部分が多いのよって解説が続きます。
『既にフェデラル・ファンド金利は、準備預金の付利対象外の機関である、いわゆるGSE──ファニーメイとかフレディマックですが──、この影響により、0〜0.25%程度のかなり低い水準で推移しており、これに沿って誘導目標が設定されたといえます。市場金利については、極めて低い水準ながら、プラスの金利水準を維持しつつ誘導を図る方針にあることは、今回FRBが準備預金の付利金利を0.25%に設定したことに表われていると思います。私自身は、ゼロ金利政策との比較から言えば、今回FRBが準備預金の付利金利を0.25%に設定したことを非常に興味深く思いました。』
付利金利が0.25%を維持したままのFFレート誘導レンジ設定です
『金融機関からすれば、FRBというリスクのない金融機関に0.25%の金利で運用することができるわけですから、逆に言えば、マーケットでは0.25%以下で運用するインセンティブがないわけです。付利金利をもっと下げることもありえた中で、0.25%としたことについて非常に興味深く思いました。』
ということで、これはゼロ金利ではありませんという説明ですが、量の方に関しても解説しています。
『それから、FRBのバランスシートは、仲介機能が大幅に毀損した様々な金融商品の買入れを行う中で、約2兆ドルまで膨らんできています。今回は、こうした政策の継続が改めて示されたものですが、かつて日本銀行が行ったように、中央銀行当座預金量にターゲットを設けて流動性を拡大していき、そのことを通じてマクロ的な景気刺激効果を狙うという手法はとられていないと思います。以上が今回FRBがとった措置についてです。』
かつての量的緩和ではないと。
・・・・・でですね、まあそりゃそうでして白川総裁の言う事もご尤もなのですけれども、金融政策って時間軸効果にあるように「期待に働きかける」というファクターが効果を発揮するわけでして、そーゆー論点からしますと、実際は大して実害のなさそうな事をしながらも見せ方を工夫して民間の期待形成を大きく変える事ができたらそりゃ丸儲けな話でしょと思うのですが。特に今般の金融ゲロゲロ状態ってデレバレッジのスパイラルみたいな面が強くって、萎縮した民間の信用ルートの回復にはマインドの転換も必要(物理的には資本の増強と損失の確定だが)になると思うのですよね。
と言うわけで、この後もそうなのですが、どうせやることに変わりはないのですから、もっと見せ方を工夫すべきであると思うのですよ、白川さんは。何かこの先の質疑応答でもそうなのですけれども、もうちょっと威勢の良い話をすりゃ良いと思うのですけどね。
もちろん、一から十までハッタリ政策だった場合に化けの皮が剥がれてきたら今度は政策そのものが効かなくなってきますという問題はありますけれどもね・・・・・
一応その続きの発言。
『今回、日本銀行は、無担保コールレートの誘導目標を0.1%に、それから当座預金の付利金利を0.1%にしたわけです。これは、大きく捉えればゼロに非常に近い数字になりますが、かつての量的緩和政策のもとで行ったゼロ金利というのは、徹底的に量を出し、その結果金利が徹底的にゼロに近づくことを追求したものであり、その意味での量的緩和なりゼロ金利政策というものは、今回は採用していません。』
そらまそうなんですけど・・・・・
○ということで微妙に威勢のよくない説明は続く
その次の質疑も誘い水だったと思うのですが・・・・・
『(問) 先行きに対する懸念が高まる中で、市場へ大量に資金を供給するわけですが、新たに当座預金目標を設定しないまでも、事実上の量的緩和政策ということではないのでしょうか。』
『(答) 自分の好みによって色々な定義ができますが、先程申し上げたように、従来日本で言われていた量的緩和政策というのは、当座預金の量にターゲットを定めこれを大幅に拡張することによって、この流動性がマクロ的な景気の刺激効果を生んでいくことを期待する政策です。当時、海外の学者が提案したのは、そのような意味での量的緩和政策でした。』
さよですな。
『今回、米国は、そのような量的緩和政策を採用していませんし、日本銀行も今回採用していません。ただ、これまで何度も申し上げているとおり、金融市場の安定を維持するとともに、企業金融の円滑化を図るために、流動性を積極的に供給していくことはもちろん続けています。しかし、これは金融市場の安定や個々の企業金融の安定を図っていく結果として当座預金残高が増えていくというものですから、少し意味合いが異なっていると思います。』
いやね、確かにそうなんですけれども、もうちょっと物には言い様というものがあると思うのですよ。もっと威勢の良い話をぶち上げても良いんじゃないかなあって思うのはあたくしだけでしょうか。質問だって威勢のよい答えが出てくるのを期待して行ったような感じを受けるのですが、なんちゅうかKY総裁だなあと。
○また市場機能・・・・(−−)
だからその話は止めなさいと思うのですが、何で0.1%にしたのかという質問に対して。
『(答) まず、どのメンバーも経済・金融の情勢について非常に厳しいという判断で一致しており、これは先程も申し上げたとおりです。そうした状況の下で金利面から景気の刺激効果を狙っていくことについては、その出発点の金利水準が0.3%ですから、おのずと低下余地は限られているわけです。その中で私どもが意識したことは、短期金融市場の市場機能を維持しておきたい、日本銀行の政策的な手段によって短期金融市場の機能が更に低下していくことは避けたい、ということです。その両者のギリギリのバランスの中で、0.1%という水準が適切であると判断しました。』
えーっとですね、景気が悪化したままで結果として経済活動は低迷するわ低金利は継続するわって事になったほうが短期(だけじゃないけど)金融市場の人たち涙目になるのでありまして、別にそんな所に気を使って頂かなくても結構なのですが。それよりとっとと景気が回復して政策金利を上げられるような状態になった方が助かりますけどねえ。
というか、この「市場機能」って変な言葉のせいでオペが妙に自然体になったりする弊害も出ている(直接的に関係があるかどうかは知らんけど、そう見えて仕方ない)ように思えまして、もういい加減このワード使わないで下さいと。
○CP買入あれこれ
CP買取に関しては幾つかの論点がありましたが、その点に関しての質疑があったので、その答えの方から引用します。
・政策としては重いよという話
『主要国で個別の信用リスクを取った政策というのは、私が記憶している限りでは日本銀行によるABS(資産担保債券)・ABCP(資産担保コマーシャル・ペーパー)の買入れ、あるいは金融政策ではありませんが、銀行保有株式の買入れと、今般のFRBの措置に限られると思います。欧米の金融資本市場の状況は日本に比べてより厳しいと思いますが、欧州の中央銀行はそこにはまだ踏み切っていないという状況です。そういう意味で、これは日本銀行にとって非常に重い決定でありますが、中央銀行としての主体的な判断として行った方が良いと考えたものであります。』
そもそも10月末の会合で決定していれば年末越えでああ大騒ぎにならずに済んだのではないかと思いますけどねえ。いやまあいいです。
・損失が出た場合の措置
『次に、政府との関係についてですが、CPを買入れるということは個別企業の信用リスクを負担するわけですから、結果として損失が生じる可能性は有り得るわけです。その場合には、最終的に国庫納付金が減少することになります。従って、こうした措置から生じ得る損失については、最終的に日本銀行としての会計処理や決算上の取扱いの面で、政府との関係も含めた検討が必要であるということで申し上げたものです。』
政府保証を付ける話をしないのは「どうせ統合政府だからそういう事は意味無い」と思っているのかなあと勝手に想像しました。
・中銀の財務の健全性とか通貨の信認とか
正直、このフレーズをあえて入れるのは消極的な印象を与えるのでどうかと思う。だいたいからして最近は通貨の信認が他通貨比ありすぎて困る(というのも変な話だが)という状態なんですし。
『中央銀行の財務の健全性という言葉を使うと、時として中央銀行が庭先を綺麗にしておきたいのではないかという意味合いで語られることがありますが、決してそういうことではありません。』
と言ってもそう取られやすいので使い方には注意が必要ではないかと思います。で次。
『どの国においてもそうですが、一国の中でお金を無制限に発行できる権能を与えられているのは中央銀行だけであります。そういう権能が中央銀行に付託されているわけです。その見合いにどのような資産を買うか、あるいは取得するかということは、いわば国民から預かっているお金をどのように運用するかという側面があると思います。運用という言葉は必ずしも適切ではありませんが、中央銀行は国民からの信認を受けてそうしたことをやっているわけです。もし財務の健全性に疑念が生じた場合は通貨への信認が失われます。もしロスが発生し、例えば中央銀行が財務的に政府に依存せざるを得ないと人々が思うと、金融政策の運営それ自体に対する信認が揺らぐ可能性や信認が低下する可能性があります。』
わかりやすく説明しようとして却って訳判らなくなってますし、中央銀行が財務的に政府に依存とか統合政府という意味で言えば依存もへったくれもないと思いますけれども。多分言いたいのは次の部分だと思います。
・FRBのCP買入に関して
『FRBも今般色々な措置を講じていますが、ほとんどいずれも色々な信用補完措置が取られています。新聞報道等では「FRBがCPを買入れた」ということだけが報道されていますが、同時にFRBは十分な信用補完措置を取っているということは比較的知られていない事実だと思います。それは財務の健全性ということが決して抽象的なものではなくて、非常に重要な考えであるということです。』
ということで、上段の部分は要するにこれを言いたかったと思うのですけれども、まあその辺りですけれども、これもまた見せ方の問題に帰着するわけでして、威勢の良い施策をやっているように見せてるけれども実は色々と安全弁入れていますよというのは別に言わずもがなであるという事ではないでしょうか。
・・・・・そのほかもあるのですが、長いのでちょっと今日はこの辺で。
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2008/12/08
以下虫干しネタで12月1日の白川総裁講演と会見から少々。
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0812a.htm(講演)
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0812a.pdf(会見)
講演って当初PDFで出てたと思うのですが、いつのまにかHTMLになっているのは何かの仕様ですか?
○景気の先行きについて
11月の金融経済月報で表現の変化が起きているという話をしましたけれども、講演でもこのあたりは同様でして、先行きの回復経路への復活と言う話はすっぱりと抜けております。まずは米国経済。
『海外経済の回復の時期については幾つかの条件に依存しますが、米国について言うと、住宅市場の調整がどのように進み、金融システムが安定をいつ取り戻すかが重要なポイントとなります。海外経済全体の成長率の回復時期を見通すことについては不確実性が高いと言わざるを得ませんが、現在の厳しい情勢を踏まえると、回復が明確化してくるのは、2009年半ば以降になるとみておいた方が良いと考えています。』
と慎重な見方を披露しまして、日本経済に関しては、
『このように海外経済が厳しい状況を辿ると見込まれる中で、わが国の景気の先行き見通しですが、本年第2四半期、第3四半期と連続してマイナス成長となった後も、当面、停滞色が強い状態が続くとみられます。そのように判断する最も基本的な理由は、前述した海外経済の動向や国際金融資本市場の混乱の影響が日本経済にも確実に及んできていることです。これらの点については、後ほど、やや詳しく説明します。』
ということで、先行きの回復がどうのこうのという話はすっかり無くなっている状態です。11月の月報内容下方修正と同じです。なおめんどいので詳しい説明部分は割愛します。
○金融環境について
白川さん米国の金融環境についてこのように言及してるんですよね。
『CPや社債の発行が難しくなり、発行金利も極端に上昇するなど、金融市場からの資金調達環境も悪化しました。そして、これらが実体経済に悪影響をもたらすという金融と実体経済の負の相乗作用が発生しました。この間、米国の中央銀行であるFRBは昨年9月以降、短期金利の誘導目標金利を5.25%から1.0%にまで引き下げましたが、社債の金利は昨年夏時点と比較するとむしろ上昇するなど、金融緩和の効果が発揮されにくい状況になっています。』
ということで日本についてですけれども。
『先程触れた銀行間の資金調達金利と国債金利の格差という尺度でみると、現在でも日本の短期金融市場の状況は相対的に恵まれていますが、わが国においても、金融面から実体経済への下押し圧力が高まる可能性について、十分な点検が必要な情勢になってきていると思います。』
ではそれを点検するとどうなりますかと言いますと。
『まず、第1に資金調達の金利水準ですが、銀行の貸出金利は低水準で推移しています。一方、CPや社債といった市場からの調達金利は、国際金融資本市場の動揺の影響から投信や生保などの投資家のリスク回避姿勢が強まっていることから上昇しています。社債の発行金利が低格付のものを中心に上昇していることに加え、今年の夏頃よりじりじりと上昇していたCPの発行金利は、9月以降急速に上昇しています。1998年から99年に企業金融が大きく逼迫し、クレジット・クランチと呼ばれた時期と比べると、まだ水準は多少低いものの、金利上昇のスピードなどは、当時と概ね同じ動きを示しています。』
となっているのですが、
『また、調達金利の水準を評価する際には、企業の収益率との比較が重要となります。わが国では、企業の資金調達において、市場からの調達と銀行からの借り入れとの比率は約1対4であり、ウエイトとしては銀行借り入れが圧倒的に大きなものとなっています。このため、現在CP金利は大きく上昇しても、全体としての調達金利は概ね横ばい圏内で推移しており、企業の収益率と比べるとかなり低い水準となっています。(98年との比較部分割愛)こうした点を踏まえると、足もとの調達金利の水準自体は、依然として緩和的と評価できます。しかし、これまでのエネルギー・原材料価格の上昇や足もとの景気の停滞色の強まりなどから、企業収益は大きく圧迫されており、企業の収益率は低下しています。このため、調達金利と収益率の関係からみた緩和度合いは低下傾向にあるとみています。』
ということで、まだ緩和的ということですけど、企業収益の悪化がデータとして掴めた頃になってCP金利や銀行借入金利が高止まりしてて大変ですよというような話になったときには問題は既に大きくなっているのではないかと思うのでちょっと悠長な気がするのですが・・・・・
『第2に、量的な側面、アベイラビリティの動向についてみると、このところ急速な変化が生じています。まず、金融市場からの資金調達の面では、CPの発行残高は、2007年以降、リーマン・ブラザーズの破綻前までは前年比約1割増のペースで増加していましたが、その後は投資家のリスク回避姿勢の強まりから、急速に伸び率が鈍化し、最近では前年割れとなっています。社債についても、低格付け先に加え、これまで順調に起債できていた高格付け先でも、起債を先送りする動きがみられています。』
『このような状況下、企業は世界的な景気減速、金融市場の混乱、先行き不透明感の高まりを背景に、防衛的な意識を高めており、手許資金を厚めに持つという動きが拡がっているように窺われます。この間、金融機関の貸出をみますと、大企業向けを中心に貸出残高の伸びは全体としては高まっています。しかし、建設・不動産業など一部の業種や中小・零細企業を中心に、銀行の貸出態度が厳しいとする先が増えています。』
『以上を総合しますと、わが国の金融環境は、特に資金のアベイラビリティの面を中心に、国際金融資本市場の動揺の影響などから、緩和度合いがこのところ急速に低下しているように窺われます。』
ところがそれが金利の方にも行ってませんかというのが問題意識ではあるのですが・・・・・まあそれは兎も角として、この部分の最後の方にこんな話が。
『さらに、国際金融資本市場が更に動揺した場合には、投資家のリスク回避姿勢が一段と強まり、市場からの資金調達が一段と困難になるリスクがあります。CPや社債の発行減少は、計数の判明している10月までの動きを見る限り、マクロ的には銀行貸出の増加でカバーされていますが、日本銀行としては今後の動きを十分注視していきたいと思います。』
いやまあ勿論日銀は計数だけ見てる訳じゃなくて、実際の市場動向を極めて熱心に観測しているのですれども、12月の頭に「計数の判明している10月までの動きを見る限り」とかいう話をするのは、世の中に安心感を与えたいんだろうなあとは思うのですが、事は資金繰りに関わる話ですので、聞いてるほうが「後から計数で厳しいことが判っても遅い」とか思わなかったかがお節介ながら気になりました。
○会見から少々
当面の金融政策運営に関する部分はこの前悪態と共に引用したと思いますので割愛いたしまして、会見からちょっとだけ「ゼロ金利にはしません」発言を。
『政策金利を引き下げた時に、引き下げ幅を0.2%にしたこと、それから、当座預金の超過準備分に付利した金利とのスプレッドを0.2%に保つようにしたこと、この2つの判断の背景には、短期金融市場の資金の流れが悪くならないようにするという考えがある訳です。短期金融市場の資金の流れというのは、もちろん金利の水準、スプレッドだけで決まる訳ではなくて、それ以外の金融機関を巡る様々な要因も影響する訳です。しかし、金利という面から、または日本銀行のアクションから、短期金融市場の機能が低下し、それが促進されるということは避けたいと思っています。』
どう見てもやってるオペレーションがそうは成ってません(ある意味究極の放置プレーだから市場機能なのは市場機能ですが)というのはまあお笑いと致しまして、こういう文脈ですと「利下げしません」ですわな。他の質疑から。
『前回の決定会合後の記者会見と全く同じ答えになりますが、先行き金融経済情勢が一段と悪化した場合、中央銀行としてどのような対応を採り得るかについては、常に幅広く検討を行ってきています。今、追加利下げという点についてご質問がありましたので考え方を申し述べますと、極めて低い金利水準の下では、短期金融市場の円滑な機能の確保という観点から、様々な問題が生じる可能性があることには留意が必要だと、これまでも度々申し上げています。』
「これまでも度々申し上げています」ってこりゃまた強調してますなあ。さすがに強調しすぎと思ったのかその次があるのですが、普通に報道するとここで切りますわな(笑)。
『その上で、これもいつも申し上げていることですが、先行き具体的にどのような政策対応を行っていくかは、その時々の経済・物価情勢や金融市場動向を十分に点検した上で、判断していくという方針であります。』
利下げを絶対にしないわけでは無いですよという事なのでしょうが、まあ前半を切り取れば当然ですけど、前半後半をつなげても利下げへの抵抗が強そうに見えますな。ただし、この「市場機能」という根拠は一押しすると崩れるような弱いロジックなんでダメでしょと思います。
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2008/12/04
まずは臨時決定会合を受けての総裁会見から参ります。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0812b.pdf
○だから問題はバランスシート制約ですが・・・・
会見の冒頭に今回の施策の説明があるのですけれども。
『第2に、民間企業債務を担保とする資金供給面の工夫として、民間企業債務の担保価格の範囲内で、無担保コールレートの誘導目標と同水準の金利により、供給金額に制限を設けず、年度末越えターム物資金を供給するオペレーションを導入することとしました。この措置は、企業債務を担保として相対的に有利な金利で長めの資金を供給することにより、資金調達面およびコスト面から金融機関の融資活動や社債・CP市場での取引を後押しする効果を狙ったものです。』
・・・・・えーっとですから問題はバランスシート制約であって、ファンディングのコストとかファンディングがつくかという問題はそれに対して副次的な問題なのでありますが。従って余談になりますが、この件に関しては別に利下げしても量的緩和しても問題の解決にはあまり効かない(全く効かないとは思いませんが)のでありまして、利下げすると下手したら短期的には逆効果くらいの話になるのですよね。
まあこういう風に説明するのは正直でよろしいですが、自らピントがずれてることをばらしてどうする(苦笑)。
○効果の数字わざわざ自分で言ったのね・・・・・
『(問) 今回の新たな2つの措置の導入について、資金調達環境が悪化している中でこれを緩和する狙いがあるという説明を受けましたが、具体的にはどの程度の効果が期待できると総裁はお考えになっていますか。』
『(答) まず、今回の措置について具体的にどのような効果があるのかというメカニズムを少し説明します。今回の2つの措置のうち、最初の適格担保範囲の拡大についてですが、第1に、適格担保の対象範囲が拡大するということです。数量的に申し上げると、格付要件の緩和により社債で4,500
億円程度、企業向け証書貸付債権で1.6 兆円程度の拡大が見込まれます。(以下割愛)』
・・・・・何だかね、わざわざ自分で言ってどうするって感じですが、その後こんな質問が飛んできまして、その時に答えた「3兆円」の方が一人歩きしていますのである意味不幸中の幸いだったのかも。
『(問) 今回の2つの措置の効果という点にまた戻ってしまうのですが、先程若干数字を交えたご回答を頂きましたが、結局今回の措置によって最終的に企業に回る資金はどの程度増えるのか、規模感が今一つよくわからない点があります。この点についてもう少し詳しく解説をして頂けないでしょうか。』
『(答) 明確に幾ら増えるか量的に数字を示すのはなかなか難しいと思います。仮に、日本銀行が民間企業に直接資金を貸し出すという立場であれば、その量を数字で示すことはできると思いますが・・・。しかし、日本銀行は金融機関に対して貸し出す立場ですので、それに関してはある程度数字のイメージは持ち得るわけであります。先程、第1番目の適格担保の範囲拡大について数字を申し上げました。2番目の民間企業債務を担保とする資金供給のオペレーションについては、数字を積み上げますと、3兆円程度の資金供給を見込めると思っています。(以下割愛)』
このオペの実施額が3兆円に行かなかったらCP現先オペを減額してでも3兆円達成させに行くに1000万ジンバブエドル(^^)。
○で、CP買入はやりたくないと
正直言って別に社債買えとは今のところは金融市場の中の人で普通(何を持って普通というのかという話はあるけど^^)の人は言ってないと思うのですけれども、この調子で何もやらないとか言って事態が悪化したら「CPだけじゃ足りないから社債も買い取れ」って話になってくる悪寒が物凄くするのですけれどもねえ。
もうあちこちの発言からそういう雰囲気が漂っておりますのでてきとーに抜粋。
・米国のCPや社債買入について
『例えば米国のCP買入れについて申し上げますと、確かに、ご指摘のとおり米国ではニューヨーク連銀がCP買い切りを行う特別目的事業体(SPV)に資金を供給するというファシリティーが導入されています。この制度の細かいところは必ずしも詳しくは報道されておりませんが、SPVは、ニューヨーク連銀が十分と考える信用補完がなされていることを条件に、CPを買うというものです。例えば、信用補完として100
ベーシスポイントの前払い手数料を取るとか、第三者保証を求めるなど、ニューヨーク連銀が十分と認める信用補完を受けることを条件にSPVはCPを買入れるわけです。モーゲージ証券や色々な金融資産の買入れについても細かい説明は省略しますが、中央銀行として様々なことを考え、最も適切な方策を模索していると思います。』
ま、米国のCP買取ってどっちかというと過去の日銀のABCP買入に近いので、金融機関向け与信の色彩が強い(内容の細かいところが相変わらず良く判らんので評価しにくいですが)んですけどね。
・さっき引用した新オペレーションの規模に関する説明から
『中央銀行の貢献というのは、金融機関を通じて行うものですから、どうしても間接的なものとなります。』
・日銀は追加で何かしますかという質問に関して
『先程のご質問に対する回答と重複しない範囲でお答えします。日本銀行としては、物価の安定と金融システムの安定という日本銀行法で規定された目的、および日本銀行に与えられた手段、日本銀行法の全体の精神というものを踏まえて、中央銀行として何が適切かという姿勢で──これまでもそうですが今後ともそうした姿勢で──臨んでいくということです。』
つまり踏み出さないということですね、わかります。
○でもって利下げも例によって否定的と
もうね、この「市場機能」っての発言するたびに特に短期市場現場労務者の憤激を買っている(まあ類は友を呼ぶ訳だから、あたくしが思ってるほど全員が憤激してるかどうかは知らんですけれども・・・)ので言わない方が良いと思うのですけれどもね。
『先行きの金融政策については、前回この場でも申し上げましたが、金融経済情勢が一段と悪化した場合に中央銀行としてどのような対応をとり得るかについて、常に幅広く検討を行っております。追加利下げに関して言えば、極めて低い金利水準のもとでは、短期金融市場の円滑な機能確保という観点から、様々な問題が生じる可能性があることには留意が必要であると申し上げてきました。その上で、これもいつも申し上げていることですが、先行き具体的にどのような政策対応を行っていくかについては、その時々の経済・物価情勢や金融市場動向を踏まえて、適切に判断していくという方針に変わりはありません。』
はいはい市場機能市場機能。「短期市場関係者の権益保護の為に日銀は利下げを渋っている」とか言われて短期市場関係者までグルにされるのは大迷惑なんですけどねえ。
とまあそんな感じで悪態成分が相変わらず高い引用でございました(^^)。
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2008/12/02
○ところで総裁講演
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0812a.pdf
記者会見でまたまた追加利下げを否定したり、企業金融支援は間接的(=CP買入はしませんよ)と発言してたりしたみたいで、そっちの方が見たかったりするのですが一応。
まあ景気認識に関しては厳しい見方になっているのは良いと致しまして、今後の金融政策に関する部分から。
『金融政策の緩和効果を十分発揮させるには、金融市場が安定的かつ円滑に機能することが不可欠の大前提となります。このことは米国で政策金利が大幅に引き下げられているにもかかわらず、実際の調達金利が上昇していることからもご理解頂けると思います。』
全くその通りであります。
『こうした観点から、日本銀行は様々な対応を行っています。』
はて?
『第1は、流動性供給を通じた短期金融市場の安定確保です。』
どう見ても不安定です本当にありがとうございました。
『円資金の積極的な供給はもとより、ドル資金についても国際協調の枠組みの下で、担保の範囲内であれば金額の上限を定めずに供給を行なっています。』
>円資金の積極的な供給
>円資金の積極的な供給
>円資金の積極的な供給
『第2は、企業金融の円滑化に向けた対応です。先ほど申し上げたように、金融環境は、資金のアベイラビリティを中心に、このところ急速に緩和度合いが後退しており、現在の低金利の効果が実体経済に浸透しなくなるリスクが高まっています。日本銀行は、従来より、企業が発行するCPを対象とする現先オペ、すなわち、売り戻し条件付きの買入れを行なっていましたが、企業金融の円滑化に資する観点から、10
月以降、このCP現先オペの積極活用を図っており、11 月からは一層積極的に実施しています。』
「10 月以降、このCP現先オペの積極活用」ってその手が緩かったから効果が全然なくて11月に毎週実施にしたけど時既に遅し(今のところ効果は超優良銘柄に留まるの巻という残念な状態)だったと思いますが。
『さらに現在、年末、年度末に向けた企業金融円滑化のため、中央銀行としてどのような貢献ができるか、対応策の実務的な検討を行っています。検討を終え次第、できるだけ早いタイミングで導入を決定し、実行に移したいと考えています。』
で、CP買取でもやるのかという期待はあまりしてませんがね。ここまでは期待させて裏切るの繰り返しでしたからねえ。いやまあポジティブサプライズやってくれるなら大変結構ですけれども。
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2008/11/27
○どう見てもゼロ回答です本当にありがとうございました(はオーバーですが)
25日に金融調節に関する懇談会っちゅうのがあって、そこで白川総裁が講演ちゅうか挨拶をしたそうな。
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0811e.htm
・ゼロ金利政策はやりたくないということですね、わかります
(量的緩和政策解除と市場機能の回復)という素敵な小見出しに続く部分。
『量的緩和政策を採用していた時期に、その市場インフラは大きく縮小しました。長年にわたるゼロ金利からの脱却は、一旦縮小した市場インフラを再構築するプロセスでもありました。短期金融市場における取引は徐々に活発化し、資金の出し手から取り手へ市場を通じて効率的に資金が融通されるようになっていきました。当初はやや振れが大きかったコール市場やレポ市場の金利も、徐々に円滑に形成されるようになり、市場間の裁定取引なども次第に活発に行われるようになりました。ただし、そうした状態になるには、かなりの時間とコストがかかったことも事実です。』
もうちょっと手前にも説明があって、ゼロ金利長期化で市場のインフラがどういう具合に喪失したかって話をしてるのですが、まあいつもの話なので割愛しておきましたです。で、これは最近やたら白川総裁が「市場機能」と連呼する根底にあるのは「ゼロ金利政策はやりたくありません」というご意思があると理解すれば宜しいという事ですね、わかります。
ちなみにもうちょっと先に『3.金融市場における市場機能の重要性』というもっと素敵な小見出しのコーナーがありまして、そちらではこのようなお話を。
『短期金融市場あるいはより広く金融市場の機能は一旦損なわれると、これを回復するためには多大な時間とコストを要します。ゼロ金利から脱却する際にも、与信枠、資金繰りセクションの人員やノウハウなど、一旦大きく縮小された市場インフラを再構築するために、長い時間と市場参加者の皆様の多大な労力を要したことは、ご記憶に新しいところだと思います。このような市場インフラを維持していくためには、たとえ市場機能が低下している中にあっても、できるだけ市場を通じた取引を促進し、市場機能の復元力を温存していく努力が大切だと考えています。』
その結果レポ金利が貸出ファシリティに張り付き、CPや社債市場では二極化拡大状態になっておりますが、それは市場機能が働いているから良いということですね!
・量的緩和政策は金利ターゲットが困難になるとな
で、さっきの続きに戻ります。
『現在の金融市場の機能低下は世界的な現象ですが、米欧では、この問題がより顕著に現れています。(欧米の中銀の対応を説明した部分割愛)。このような(引用者追記:欧米中銀の)対応は、目の前の「火事」を消すために不可欠なことではありますが、いくつかの困難な問題に直面しています。例えば、大量の資金供給の結果、米欧のオーバーナイト物の金利には下押し圧力がかかり、誘導目標金利から下方に乖離しています。金利誘導力を回復するため、FRBでは10月から準備預金に対する付利を開始しました。さらに、市場機能をある程度犠牲にしてでも金利誘導力を高めるため、付利金利を誘導目標金利と同水準にまで引上げましたが、FF金利は依然誘導目標を大きく下回った状況が続いています。このように、米欧では、市場機能が大きく低下した下で、金融調節は技術的な困難に直面しています。』
えーっと悪態割愛(^^)。
・まだそれを仰せですか
その続きが(わが国の状況)というコーナーなのですが、まずは現状認識部分を特にコメント入れずに引用しておきますね。
『短期金融市場では、コール市場でカウンターパーティ・リスク意識の強まりを背景に取引が減少しているほか、レポ市場でもコール市場との裁定が働かず、レートが高止まりやすくなっています。債券市場では、市場流動性の低下からイールドカーブの歪みが目立っています。為替スワップ市場でも、長めのターム物取引を中心に流動性が著しく低下しています。さらに最近では、投資家のリスク回避姿勢の強まりからCPや社債の発行見送りの動きが広がるなど市場での資金調達環境が悪化しています。』
リスク回避ちゅうよりはリスクマネーの減少による部分が大きいと思うのですが。まあそれはそれとしてその次。
『こうした状況を踏まえ、日本銀行は、各種のオペ手段を動員して市場への資金供給を行っています。同時に、オーバーナイトの無担保コールレートを誘導目標金利水準の近傍に誘導するために資金吸収オペレーションを並行して行っています。』
同時に〜以下が無かったらぶち切れる所ですが(笑)。
『11月積み期からは、これを補強し、金融市場の逼迫する年末、年度末に向けて積極的に資金供給を行うために、時限措置として補完当座預金制度を導入したところです。』
・・・・その説明はいい加減止めた方が良いのではないでしょうか。現実問題として補完当座預金制度の金利まで無担保コール市場の金利が低下するような動きって全然無いですよね、この積み期間に入って。
・どう見てもオープン市場放置です本当に(ry
『中央銀行としてはこうした仕組みを活用してコールレートの目標水準への誘導を図ることは重要ですが、同時に、短期金融市場においてその時々の市場における需給の状況や取引当事者の信用度を反映した金利形成が自由に行われるという意味での市場機能を極力温存する努力も必要だと考えています。こうした観点から、短期金融市場で多様な取引主体が資金取引を行い、その結果として成立する加重平均金利が誘導目標近傍となるよう、金融調節を行っています。』
極力温存した結果がオープン市場の惨状ですけれどもそれは是だと。
『それと同時に、リーマン・ブラザーズの破綻以降も、日本銀行が必要以上に市場を代替することをできるだけ避け、市場で成立し得る取引はできるだけ市場で成立するようにするという基本的な考え方に立って、金融調節を運営しています。』
つまりCP買取やら株式購入などはやりたくありませんというのが基本的な考え方と。
『補完当座預金制度における付利金利と誘導目標金利のスプレッドを0.2%としたのは、コールレートが誘導目標から過度に乖離して低下することを抑制するとともに、この範囲で自由な金利形成が行われる余地を残したいと考えたことによるものです。』
だからその説明はいい加減(以下同文)。
・市場機能の重要性でこういう話をしてるのに・・・・
『3.金融市場における市場機能の重要性』の中から。
『第3は、金融政策の波及メカニズムの確保という点です。オーバーナイト金利を起点とする金融政策の効果は、様々なタームの取引や市場間の裁定といった市場取引を通じて、金融市場全体、さらには実体経済へと波及していきます。自由な金利形成が行われる市場からは、金融政策の運営上有益な情報も発信されます。したがって、市場機能が維持されていることは、金融政策が効果を発揮する上で重要な前提条件です。』
えーっと、現状ではその経路が変調を来たしているのですけれども・・・・・何か現状に対する危機感があるのかないのか良く判らんですなあ。コマッタモンデ。
・最後に何となくやる気らしきものはあるのですが
『4.中央銀行に求められるバランス』って所なんですけれどもね。
『以上のように、中央銀行は金融市場の機能が十分に発揮されることを重視し、そうした観点から、金融市場への直接的な介入は極力避けるとともに、取引に当っては中立性の維持に努めています。しかし、一方で、現実に金融市場の機能が低下している場合、あるいは経済状態が厳しくなる場合には、中立性を多少犠牲にしても中央銀行自身が市場にかなり強い形で介入するという複雑な二面性を有しています。』
現在の状況を鑑みますと、こっちを先に発言したほうが良いと思うのですけれども、順序として後になっている時点でまあそういう事なんでしょうねと思ってしまいます。まずは現状では原理原則が先にありますよと。まあ途中を割愛して最後の部分。
『いずれのケースでも、中央銀行が過度に民間の市場取引に関与すれば、市場のもつ本来の機能が阻害され、結果として市場機能をさらに低下させてしまうという悪循環に陥る惧れがあります。しかし、現実に市場機能が低下した場合には、市場がさらに不安定化し経済状態が悪化することを防ぐ必要があります。その意味で、中央銀行には経済や金融市場の動向を丹念に点検した上で、注意深いバランスが求められますが、その責任を適切に果たしていきたいと思っています。』
で、現状はのんびりと原則論を唱えている場合じゃないように思えますけれどもねえ・・・・
・・・・うーむ、今日も毒出し毒出し♪
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2008/11/26
ところで、前回0.25%を主張した審議委員3名様は今回0.05%の利下げを提案しなかったのかな(^^)。なんちて。
まずは総裁会見から。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0811c.pdf
○総じてやる気無し無し感が伝わって参りますが
以下引用するのですけれども、今回の総裁会見のトーンは全般的にやる気無し感が。正直申し上げて10月14日の決定会合のステートメントは何だったんですかと小一時間問い詰めたいのですが。
で、会見の最初に「日本はデフレ入りに差し掛かっているのではないか」というのがあったのですが、それに対してこういう話をして、蒟蒻問答状態になっております。
『デフレという言葉を用いたご質問ですが、デフレについて議論する場合、最初にどのような定義で議論するかを明らかにしたほうがいいと思います。デフレという言葉は、少なくとも3通りの意味で使われてきたと理解しています。』
で、以下蒟蒻問答状態なので全面的に割愛(-_-メ)。
○追加利下げは様々な問題ですかそうですか
ブルームバーグが総裁会見記事の見出しにここのフレーズを使ってまして(笑)、結果としてどうなるかというと、記事内容が徐々に追加されることもあって「追加的な利下げは様々な問題が生じる可能性=白川総裁(2)」という感じでヘッドラインが(3)以降何度も出るという状態になって、誠に気分が宜しくありませんな(−−)。
ま、これは別にブルームバーグがどうのこうのというよりは、今回見事なゼロ回答をしやがってどーゆーことやという市場の雰囲気が記者さんにも伝わっている結果、このフレーズが印象に残ったということで宜しいのではないでしょうか(^^)。「景気が更に下押ししたら日銀の政策余地はあるのか」という質問に対して。
『(前半割愛、というか後ほど引用)ご質問は、金利水準がこれだけ低い中でどのような施策があり得るのか、という趣旨と理解した上でお答えします。短期金融市場の円滑な機能の確保という観点から考えますと、極めて低い金利水準のもとでは、追加的に金利を引き下げることで様々な問題が生じる可能性があります。』
・・・・・・(゜д゜)
『特に、現在のように金融市場の機能低下が問題となっている状況では、この点に関する配慮は一段と重要になってくると思います。先行き具体的にどのような政策対応を採っていくかは、今申し上げた留意点も踏まえつつ、その時々の経済・物価情勢や金融市場動向を踏まえて適切に判断していくという方針であります。(以下割愛)』
金融市場の機能低下が問題とかいうなら何で超過準備付利というフロア金利を設定したのか意味が全く判らんのですけれども。付利しないで誘導目標0.25%ロンバート0.50%でええんちゃいますか。
そもそもですな、金融市場の機能低下がどうのこうのと言いますけれども、その機能低下要因は金利制約問題なのではなく、資本制約問題、と書くと話が壮大ですが、要するに「リスクアセットが持てないよ」という状態になっていることなので、金利水準がどうのこうのという話ではないでしょと思うのであります。従いまして、「金利を下げると市場機能が低下して」というような理屈は現下の情勢では屁理屈に過ぎないのではないでしょうかねえ。
ちなみに、リスクアセット持てなくなっているのは国内の株価下落などの要因による銀行の体力低下もそうですけれども、金融市場に裁定取引などで参加していた業者や海外投資家(投機家?)のリスク許容度低下というかガイジンさんの撤退状態というのもありますので、マーケット全体としてのリスクマネーの減少は顕著ですよねと思う所でござる。
まあこういう屁理屈を持ち出した時点でやる気がねえというのは良く判りまして、そーゆー姿勢を嫌気してTIBORは昨日も上昇するわ金先は下落するわという所でしょう。
○のんびりやってたら年末間に合わないんですけれども
今引用した質疑応答の最初の部分ですけどね。
『私どもは、先行きの金融経済情勢が一段と悪化した場合に中央銀行としてどのような対応が採りうるのかということについて、常に幅広く検討を行っております。本日の会合において、年末、年度末に向けた企業金融の円滑化に資する措置を検討するよう指示したというのもその表れであります。』
えーっと、次回の通常会合で措置公表しても年末に間に合わないのですけれども、その状態のどこがどう「その表れであります」なのか小一時間問い詰めたいのでありますが。いやまあさすがにインターミーティングやるとは思うのですけれどもね、今日は既に債券売買のレギュラー受渡が12月1日ですし、スポットが月末ですけれどもねえ。
で、まあ別の質疑で当座預金付利の点検状況について質問があったのですけれどもね。
『ご質問の通り当座預金付利はまだ始まったばかりですので、評価をするにはまだ時間が足りないという感じがします。現在、金融市場局では、金融機関の当座預金積み上げの動きについて非常に丹念に分析をしています。若干の変化があるかなという気がしていますが、現時点で評価するにはデータと申しますか時間が足りないので時間を頂けますでしょうか。次回の会合でご質問頂ければお答えしたいと思います。』
ということは、こちらの点検が終わらないので次の施策はまだしませんとでも言いたいのでしょうかねえと嫌味の一つでも言いたくなります。何というのんびり状態なんでしょうかねえ。
○量的緩和と市場機能という話
量的緩和政策や時間軸に絡めた質問に対しての答えで、量的緩和と市場機能に関する部分の総裁のお話。
『(冒頭割愛)その上で、まず、量的緩和政策と市場機能の関係についてお答えします。量的緩和政策の効果についての一般的な分析評価については、これまで日本銀行も色々なかたちで申し上げてきましたので本日ここで詳しくは申し上げませんが、金融システム不安が非常に高いときに金融機関の流動性需要に応えるかたちで潤沢な資金供給を行ったことで、金融システムの安定に貢献したと思っています。逆に言うと、金融システム不安が後退した後もなお流動性を潤沢に供給しようとすると、逆に金融市場の機能が低下し、金融機関が本当に必要な時に市場から資金調達をできなくなる事態が生じます。(以下割愛)』
・・・・・だから現状の短期金融市場とか債券市場の問題は資本制約でありますので、確かに金融システム不安と言われる状態では無いかもしれませんけれども、じゃあ各金融機関の資本が潤沢でリスクマネーがふんだんにある状況かと言われると全然そんな事無いでしょと申し上げたく存じますが。
金融システム不安が無いから追加施策は必要ないんですね、わかります(-_-メ)。
○これは良い質問
『(問) 10月末に利下げをしまして、その後翌日物金利は0.3%に下がったのですが、所謂短期市場のターム物金利、例えばTIBOR
の3か月物をみると利下げ以降ずっと金利が上昇しておりまして、利下げ効果というか金融緩和効果が十分出ていないと思えるのですが、その理由についてどのようにお考えでしょうか。それから、今後の金融調節方針においてターム物金利にどのように配慮するのかお聞かせ下さい。』
記者様あたくしの駄文の読者様ですかというのは自意識過剰ですかそうですか(^^)。
『(答) 今ご質問のあった、オーバーナイトの金利は下がったにも関わらず、ターム物金利が十分に下がらない、場合によっては逆に上がってしまうという現象は、欧米の中央銀行が昨年来、特に今年になってから正に直面している難しい問題であります。』
さあ話を逸らしてきましたよ!!
『TIBOR あるいはLIBOR、それからオーバーナイトの金利と政策目標金利との乖離度合いは、他国に比べて日本では非常に小さいと思います。』
それは他国(というか欧米主要国)の乖離が金融システム不安で異常になっているからなのであって、それと「金融システム不安が無い」という日本を比較するして小さいというのはインチキ説明ではないでしょうか。(金融システム不安云々に関しては後で言及してますけどね)それにベースレートの水準が違うので差分比較したら小さいのも当たり前ですが。
『大まかに申しあげますと、その乖離は小さいながらも十分な引き下げ効果が出てこないという面が若干あると思います。これは、中央銀行の間でいつも議論しているテーマですが、欧米では、金融機関の資本制約、あるいは流動性に対する懸念が原因であるという仮説が言われています。日本の場合については、十分な答えを持ち合わせておりませんが、いずれにせよ、中央銀行ができることは、オーバーナイトの政策金利の誘導についての考え方を丁寧に説明していくことであり、流動性の不安を解消するように資金を供給していくことだと思います。』
はあはあそうですか。問題は無担保コールじゃないんですけどねえ。
『日本銀行は、この面で色々な手段を講じております。』
・・・・・・(゜д゜)
『ターム物のレートと政策金利の乖離が小さいのは、おそらく日本銀行が潤沢に資金供給を行っている、あるいは非常にきめ細かな資金調節の枠組みを持ち、そのもとで調節を行っているからだと思いますが、それでも若干の変化が出ているのだろうと思います。』
・・・・・・(゜д゜)あのまあ単に屁理屈並べてるだけだと思うのですが、リアルにこの認識だとちと困るんですけど・・・・・
とまあそんな感じで、本日は悪態を連発させていただきましたが、その他の話題としてはリスク管理の問題とか金融機関保有株式の買取問題とか、金融システム問題の質問とか毒出しをしなくて良い話題(^^)もあったのですが長くなるので全部スルーの方向で(こらこら)。
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2008/11/11
○31日の総裁会見ですけど・・・・・(利下げの決定関連)
31日の総裁会見なんでもっと昔の話ですが(汗)。
『(問) 2点教えて下さい。1点目は、10 月7 日の決定会合後の会見で、金利を下げた方がよいとの提案はなかったとおっしゃっていましたが、金利引下げや金融緩和などの議論があったのはいつ頃の会合の中でしょうか。2点目は、毎回の会合で色々と考えながら判断しているとおっしゃっていましたが、総裁の頭の中で金利引下げが選択肢として浮かんできたのはいつ頃でしょうか。』
『(答) 10 月7 日の決定会合の議事要旨は数日後に公表されますので、詳しくはそれを見て頂きたいと思います。もちろん、それぞれの委員の頭の中では色々な可能性を考えているのでしょうが、具体的な政策の提案として金利引下げと言われた方はいませんでした。』
確かに全然そんな雰囲気無しですわな。しかも現在の金利は低い水準にあるという話がちょこちょこ出てますし、金融環境は緩和的という話はちょこちょこ出てますし・・・・・流動性供給対策を検討云々という話が一部の委員からちょっとでている位で、この流動性供給対策ってどっちかというとオペ手段の拡充とかの話でしょうからね。
『金利の引下げというか金利の変更というのは、1か0かの世界ではなく、ある程度連続して考え方が変化していきながら、ある段階で引下げや引上げというかたちであらわれる性格のものですから、いつと特定するのはなかなか難しいと思います。』
提案する前に「利下げも検討課題に入るのでは」というような意見って出ないのでしょうかとちと疑問が。まあその「検討課題に入るのでは」ってのが議事要旨に出ちゃうとその時の市場状況によってはセンセーショナルになるから載せないって事もあるのかもしれませんが、今回の公表時点では既に白黒ついてる利下げ話ですので掲載配慮する事も無しという事で、まあ10月7日の時点では利下げの話まで行ってなかったということでございましょ。株や為替がぶっ飛んだのはその後ですからね。
『私自身の中でいつか、ということについてももちろん特定できませんが、私はいつも直前まで色々な情報を集めた上で判断を固めつつ決めていますので、そういう意味では直前ということになります。』
どう見ても政治的プレッシャーです。本当にありがとうございました。
更にその後厳しいツッコミが(^^)。
『(問) もう一度、ここ数日を振り返りたいのですが、27 日に山口副総裁が就任し、この会見の場で日本の金利水準は十分低く緩和的であるという話をされ、翌日に与謝野大臣から、「利下げは国際協調の証しを立てるという意味では大事である」旨の発言がありました。与謝野大臣の発言の前までは、審議委員の方も含めて利下げには慎重というか、否定的な意見が多かったと思うのですが、急にそこを境に何か変わったような印象を持っています。総裁ご自身、その後色々と与党や政府から期待感というか、経済対策との整合性も含めて色々な声が出る中で、政治的なプレッシャーというか圧力を感じることはなかったのでしょうか。それと、それは何がしか各委員の判断に影響を与えたとは言えないでしょうか。』
中々厳しいツッコミでして、この質問および利下げ翌朝の日経新聞記事で書いてあった経緯っぽい話を総合して勝手に勘案しますと、与謝野大臣が「国際協調」という名目で「協調」を打ち出すことによって「政府も大型経済対策出すので政府と日銀の政策パッケージでいきましょうねえ」という(以下激しく自主規制)。
『(答) 結論から申しますと、政治的なプレッシャーを感じたということは全くありません。(途中延々と説明が続く)他の委員の頭の中や感情の動きというのは私が云々する話ではありませんが、自分の経験に照らして、政治的なプレッシャーがあって、それでこの際金利を引き下げようと判断した人は一人もいないと断言できます。』
最初と最後でこう発言し、その間の説明がやたらめったら長くなって言い訳っぽさ爆発です(長いので割愛したけど読むと何だかねえ感満載です^^)わなという所です。どう見ても政治的プレッシャーです。本当にありがとうございました。
#ま、経済対策とパッケージの体裁になったのは良かったと思いますけどね
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2008/11/06
で、まずはきさらぎ会での白川総裁講演から。
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0811a.pdf
○リーマンの法的整理が問題ですね、わかります
最初が金融危機問題の話でして、(国際金融資本市場の動向と各国当局の対応)ってところから。
『ここで現在の金融危機の問題についてお話します。この問題は、証券化商品の価格下落とこの市場の機能不全から、証券化商品を組成していた経済主体等の資金調達の困難化という形でまず表面化しました。その後、市場では悲観論の高まりとその後退という波を繰り返しながら、事態は徐々に悪化していきましたが、9月半ばにリーマン・ブラザーズが破綻して以降、米欧を中心に国際金融資本市場全体の緊張は一挙に高まりました。』
全く左様でございます。
『わが国の1997年以降の金融危機では、三洋証券の破綻に伴うインターバンク市場でのデフォルト発生が引き金となって、取引相手にかかるリスク、すなわちカウンターパーティ・リスクへの警戒感が一挙に高まり、取引先の選別や市場収縮の動きが本格化しました。今回の金融危機では、不幸なことに、リーマン・ブラザーズの破綻を引き金に、全く同じことがグローバルな規模で発生し、特に米欧市場を中心に、カウンターパーティ・リスクが強く意識される状況となりました。』
ポールソンとバーナンキの対応に問題があったということですね、わかります(^^)。
『信頼関係が崩れた市場の姿は悲惨です。金融機関が資金を無担保で貸し借りする短期金融市場では取引が極端に細り、資金を貸す場合でもオーバーナイト物に限定するような事態、言い換えると、市場流動性がほぼ枯渇するような事態に陥りました。この結果、金融機関や投資家の間では資本不足に加え、流動性調達への不安が全面的に拡がり、融資基準、投資基準が厳格化しました。こうした事態を放置すると、事態はさらに悪化します。』
全くその通りでございます。で、途中を端折りまして、じゃあ政策当局はどういう対応をしているかのポイントを3点にまとめています。
『第1は、金融市場の安定を確保するために、積極的な流動性供給を行うことです。各国中央銀行とも大量の流動性を供給していますが、ドル資金については、日本銀行を含む各国中央銀行が、国際協調のもとで資金供給を行う枠組みを導入し、各国市場でドルを大量に供給しています。』
ドル資金は判ったが円資金・・・いやいいです。
『ただし、中央銀行による流動性供給は、システミック・リスクの発生を防ぎ、金融市場の安定を確保するためには必要不可欠ですが、金融システム問題を根本的に解決する手段ではありません。あくまでも、抜本策が採られるまでの間、時間を買う措置であることは十分認識しておく必要があります。』
もしかして、日本の金融市場は安定していて、システミックリスクというような問題は無いから別に資金供給をそこまでやらんでもとかいう事なのでしょうかとか穿ってしまいたくなる今日この頃。
『第2は、金融機関の債務に対する包括的な保証の実施です。金融システム不安は、一定の臨界点を超えると、預金者や投資家の不安が一気に高まる傾向があり、これを放置すると、預金者等の間の不安が増幅し、収拾不可能な混乱に陥る惧れがあります。このため、欧米をはじめとする各国政府が相次いで預金保険の保護対象の大幅な拡充や金融機関債務への保証の付与といった措置を打ち出しました。』
『第3は、公的資金を用いて金融機関が抱える不良資産の買取りや資本注入を行うための枠組みの整備です。金融システム問題は本質的に資本の不足の問題である以上、不足する自己資本額を確定し、不足分を補填する必要があります。しかし、日本の経験が示すように、金融と実体経済の負の相乗作用が働くもとでは、不良資産額や不足する自己資本の大きさをリアルタイムで正確に把握することは極めて困難です。その意味で、金融システムの安定を確保するためには誰かがマクロ的な意味で資本不足の状況について判断を下さなければなりませんが、その主体としては公的当局しかありません。公的当局は、先行きの負の相乗作用の可能性を十分に織り込んだ上で、必要と判断すれば、思い切った金額で公的資本を注入することを決定しなければなりません。』
と、まあ丁度良く纏まっていたので長くなっちゃいましたが引用しましたです。
○「上振れ・下振れ要因」と「リスク要因」の違いは??
これ本当は展望レポートと定例会見を読んだ所で気が付かないといけない話なので申し訳ないのですけれども・・・・m(__)m
日本経済の現状やら見通しに関する所ですが、その中で読んでてへーと思ったのは『(2)経済・物価見通しの不確実性』って部分です。
『以上をまとめると、日本経済は、当面停滞色の強い状態を続けた後、やや長い目でみれば、物価安定のもとでの持続的な成長経路に復するというのが、相対的に蓋然性が高いと判断する見通しです。しかし、この見通しを巡る不確実性は極めて高い状況にあります。』
で、その先にリスク要因の説明があるのですが。
『第1の、そして最大のリスク要因は、米欧の金融危機の行方です。米欧における金融と実体経済の負の相乗作用がさらに強まれば、米欧の実体経済が下振れたり、回復がさらに遅れる可能性も考えられます。その影響が新興国経済にも影響し、世界経済が全体として下振れた場合には、わが国にとっては、輸出が減少するばかりでなく、企業のグローバルな需要増加への期待に変化が生じることを通じて、設備投資が下振れる可能性もあります。』
『第2に、エネルギー・原材料価格は、中期的には新興国を中心とする需要の拡大によって緩やかに上昇する、と想定していますが、この点にも不確実性があります。現在の反落傾向は、わが国としては交易条件の改善を意味しますが、これが主に世界経済の下振れを反映した動きだとすれば、同時に輸出の減少を示唆することになる、という点も念頭に置かなくてはなりません。他方、国際商品市況が再び急上昇するようなことがあれば、世界的には、インフレ圧力が高まり、その後で経済が下振れる可能性があり、日本にとっては、現在の景気停滞を招いている構図が一段と鮮明化する可能性があります。』
『第3に、今後、国際金融資本市場の緊張や米欧の金融危機が日本の金融市場や金融機関に与える影響が拡大すれば、日本でも金融環境の緩和度合いが後退し、実体経済への下押し圧力が強まる可能性も考えられます。』
『物価面でも、上下両方向の不確実性があります。結論的に言うと、今回、物価上昇率は低下するという見通しを示しましたが、物価上昇率がこの見通し対比で上振れるリスクは、従来に比べると、小さくなっていると考えられます。』
ということで、リスク要因の話が全部下振れという華麗な話になっていますが、これはこれで展望レポートの第2の柱でもこういう話になっていましたので違っていないといえば違っていないのですけれども、上記の第1、第2の部分って実は展望レポートの中で言えば『(上振れ・下振れ要因)』という部分の説明にも重なる部分があるのですよね。
で、その展望レポートの『(上振れ・下振れ要因)』の中にはこんな記述がしらっとあるのですよね。従来は第2の柱に入ってた奴ですが。
『一方、やや長い目でみた場合には、成長率が徐々に高まっていく中で、緩和的な金融環境が続く場合、金融・経済活動や物価の振幅が大きくなるリスクには、引き続き留意する必要がある。』(10月展望レポートより)
・・・・・えーっと、今回の講演ではこの点言及無しですかそうですか(^^)。
何だかこのあたりって展望レポートの書きっぷりも微妙に前と違いますし、(上振れ・下振れ要因)と第2の柱の点検ってどこがどう違ってくるのかなんだか良く判らないですなあと思ってみたりするのれす。
○当座預金付利の話
0.3%への利下げと当座預金(超過準備)付利の話についても色々と説明しているのですが・・・・・
『具体的には、臨時の措置として、日本銀行当座預金に付利を行う「補完当座預金制度」と呼ばれる制度の導入を決定し、その上で、今回、当座預金への付利水準を0.1%としました。この制度のもとで、日本銀行は金融機関が日本銀行に保有する当座預金――厳密に言いますと、超過準備――に対して金利を支払うことになりますが、金融機関はこの金利以下ではコール市場で資金運用を行うインセンティブがなくなるため、適用金利は、市場金利の下限を画す機能を果たします。今回の制度の導入によって、日本銀行は、コールレートが大きく振れることを回避しつつ、積極的な資金供給を円滑に行うことが出来るようになりました。』
またそういうペテンな説明を。じゃあ日銀の普段の運営って実際のコールレートがディレクティブから派手にぶれても放置してるのか(FRBはあんまり気にしていないですよね)と小一時間。売手を打って(昨日は売現先即日なんぞも打ってましたが^^)じゃんじゃん吸収してるじゃん。
通常ベースでディレクティブを逸脱して良しという運営してるのなら上記の説明もなるほどという話になりますが、そこを華麗にスルーしてこういう話されても調節担当がどっち(大量供給するのかディレクティブ守るのか)にしたら良いか判らなくて涙目になるだけ(明示されているのがディレクティブである以上ディレクティブを守る方向になるのが担当部署としての正しい行動になる筈ですけどね^^)だと思いますが・・・・・
『今回、政策金利引き下げ幅と当座預金への付利水準をいくらとすべきかについては、随分議論が行われました。この点をご説明するためには、金融緩和政策の効果は、金融市場を通じて波及していく、という基本を確認しておく必要があります。』
という御認識でしたら、オープン市場の金利がリーマン破綻以降ですが、特に10月以降華麗に上昇した点に関しての解釈如何。
ちと途中割愛しまして・・・・
『短期金融市場の機能が維持されること、言い換えると、市場参加者同士の資金の流れを確保することは、金融政策が効果を発揮する上で極めて重要な前提条件となります。この点、特に、わが国のように、既に政策金利が0.5%と極めて低くなっていた状態で、さらに金利水準を大幅に引き下げた場合、金利収入が様々な取引費用をカバーできなくなる結果、金融市場での取引が細り、市場流動性が低下する可能性があります。言い換えますと、金利水準の低下が持つ金融緩和効果だけでなく、金利の引き下げが金融市場の機能を阻害し、かえって資金の流れを悪くする可能性についても十分配慮する必要があります。』
えーっと、そうしますとコリドー設定したのは何でですかという話になるんですけれども。先般の会見でもやたらと「市場機能」に関して言及しているのですが、それはたぶんブーメランになるのではないかと誠に残念に思います。
で、その後の方で0.3%と0.1%の理由について説明してまして、その先では日銀の採った施策に関しての説明がありますが、CPオペの積極活用とかまたまたご冗談を(-_-メ)。んで、ロンバートが下がってコリドーが狭くなったのですが、その点に関しましては・・・・
『今回の基準貸付利率引き下げにより、オーバーナイト金利の上昇がこれまでよりも限定され、市場の安定化が図られることになります。』
はあそうですか・・・・・
○BISビューですね、わかります
最後のまとめが『金融危機の教訓』なのですけれども、もう小見出しに『(2)金融危機の発生とその拡大の未然の防止』ってある時点でどう見てもBISビューです本当にありがとうございましたというところですな。
『こうした経験を踏まえると、金融政策の適切な運営は、極めて重要です。物価の安定は中央銀行の金融政策の目標であり非常に重要ですが、物価の安定が消費者物価指数の前年比を常に一定の狭い範囲に収めることと理解されると、近年の様々な経験が示すように、経済の大きな変動をもたらし、結果として、中長期的には物価安定自体を損なう惧れがあります。』
『金融危機の発生・拡大を防止する上で大事なポイントの第2は、マクロ・プルーデンスという言葉で呼ばれる視点の重要性です。』
で、その視点とはこういうことです。
『金融システムの安定を確保するためには、金融機関自身が適切なリスク管理を行う必要がありますが、その際、個別のリスクだけでなく、金融システムの中にいかなるリスクが内在しているのかというマクロの視点も求められます。』
ということで、まあ未然防止がビューですねという所かと読みました。
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2008/11/05
まずは総裁会見から。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0811a.pdf
○最初から案の定のツッコミが
総裁の説明の後に最初に飛んできた質問が案の定ですわな。
『(問)これまで日本銀行は、今の金融環境は十分緩和的であると一貫して主張してきましたし、効果は限定的ではないかという意見も多かったと思います。ところが本日0.3%への引下げということで驚いています。今日の措置がもたらす具体的な金融緩和効果のイメージについてご説明下さい。併せて、なぜ0.25%でなく0.3%となったのか、どのような議論だったのか、お聞かせ下さい。』
例によって答えが長いのですが、質問後半部分に関するところを引用致します。
『金融緩和効果を上げていくことだけに焦点を合わせれば、金利引下げ幅を大きくするという考え方も出てくると思いますが、一方で、金利引下げ幅を大きくしますと、短期金融市場を中心に金融市場の機能に悪影響が及ぶ可能性があるため、両者はトレードオフの関係にあると言えます。この2つの関係を意識した上で、最適な組合せはどのようなものかを考えた結果、調節目標の金利を0.3%とし、その上下に0.2%ずつのスプレッドを設定して、金利の事実上の上限・下限を画するという体系が最も望ましいと判断したわけであります。』
だったら0.25%にして上限0.5%下限0%で宜しいかと存じますけれども、当座預金付利先にありきですかそうですか。いやあの利下げするんだったら別にやらんでもよかろうと思ったのですけどねえ・・・・・
○んでまあ金利水準が低いという話も出るのでして
別の角度から0.25%か0.30%かの質問が。
『(問) 詳しくお話いただけないかもしれませんが、0.25%の引下げが必要と判断した方々の理由を教えて頂きたいのが1点と、糊しろという言い方が正しいのかどうかわかりませんが、さらに2回ほどゼロ金利になるまで利下げを実施できる余地を残しておこうという考え方が総裁の中にあったのかどうかを教えて下さい。』
『(答) 引下げ幅が0.25%であるべきか0.2%であるべきかということですが、その差は0.05%です。スプレッドもそれに見合って設定しますので、いずれにせよ小さな差の中での違いです。先程、金利引下げ幅と金融市場機能の2つの要素があると申し上げましたが、どちらの要素をより重視するか、あるいは市場機能への影響度合いはどの程度かを定量的には把握できませんので、これまでのマーケットの観察に基づいて、どの程度のスプレッドであれば市場機能に影響が出るかという点でわずかな認識の差です。』
だったら0.25%(以下同文^^)。市場機能に配慮するという話を出して0.30%の理由を説明してるのですけれども、だったらコリドアが狭くならない「0.25%利下げで当預付利無し」の方がどう見ても妥当だと思うので、この説明はまあ苦しいですわなあ。
んで、その後半部分ですけれども。
『それから質問の後段の方ですが、金利水準は引下げ後0.3%という非常に低い水準となります。まず申し上げなければならないことは、金融政策については、経済・物価情勢を点検して、その上で日本銀行の持っている政策手段に照らして何が一番望ましいかということをその都度判断していくということが大原則であるということです。現在、極めて低い金利水準ですが、そのもとでは短期金融市場の円滑な機能の確保という観点から様々な問題が生じる可能性が高いと思います。特に、現在のように金融市場の機能低下が問題となっている状況のもとでは、この点に対する配慮は一層重要になっていると思います。これは金融市場についての私の判断であり、経済状況についての判断ももちろんあります。こうしたことを全て考えた上で、中央銀行としてどのような対応が望ましいかということをその都度判断していくということだと思います。』
金利水準が低いという話が何度も出ている所がにゃんともですのう。
○市場に追い込まれましたねってツッコミ
今回は質疑応答が全体的に長く、強力に端折っておりますので、まあおヒマな時に会見要旨はお読みになると吉かと存じますが、こんな厳しいツッコミも。
『(問) (前半割愛)それから、先程のマーケットとの対話にも関係するのですが、総裁の著書を拝読したところ、アラン・ブラインダー氏の意見を引用し、中央銀行がマーケットのご機嫌取りになると自分の尻尾を追う犬になってしまうということを引合いに出して、ご自身も、市場参加者の判断に沿って行動すると中央銀行の主体的な判断を放棄することになるとおっしゃっています。私は、今回はこのケースになってしまったのではないかという気がするのですが、その点についても教えて下さい。』
この答えですが割愛した質問前半の方が長いのですがそれも割愛して(汗)。
『それから、ブラインダーの本から引用した市場に対する見方ですが、私も含め多くの中央銀行の人は市場に対して非常に複雑な感情を抱いているわけです。私自身は市場を非常に大事にしたいと思っている人間の1人です。先程市場の機能についてややしつこく申し上げたのも、市場の機能を大事にしたい、市場の価格発見機能を大事にしたいという思いが非常に強いということです。』
それは大変恐れ入ります(棒読み)。
『しかしながら、市場は時として──いつもではなく時として──行き過ぎが生じてしまうのも過去の経験が示す通りです。その典型はバブルであったり、バブル崩壊後に極端に心理が萎縮するということであったりします。そのような時に、中央銀行が市場の動きに100%追随すると、これは中央銀行が本来果たすべき仕事、つまり中長期的な経済の安定という観点から金融政策を行ったり最後の貸し手という機能を果たしたりすることを放棄してしまうことになります。その意味で、100%市場に追随するわけではないということも考えておく必要があると思います。この両者の微妙なさじ加減ともいうものが、金融政策に限らず中央銀行の仕事として非常に大事であると個人的に思っています。』
まあでも今回は市場にも追い込まれてしまいましたよね。今度も追い込みに行きますよたぶん。その時の運営は本石町日記さんが指摘しているように余程腹を括って向かわないと。
○やはりそうでしたか
昨日展望レポートご紹介している時にあたくしが指摘したことは既に会見で指摘されていましたね(^^)。
『(問) 今回の決定会合でステートメントと展望レポートが出たかたちとなっていますが、ステートメントでは景気回復が姿を消したように思えます。一方で、展望レポートでは、景気が回復する姿について書いてあります。両極端というか、非常に色彩の違う形となっていますが、両者に役割分担のようなものがあるのか、どうしてこのようになったのか教えて下さい。』
『(答) 展望レポートは、もともと先行き少し長い期間の経済の見通しを示していくことに目的があります。2008
年度、2009 年度、および2010 年度の見通しを出していくということです。金融政策を運営していく時には、もちろん金融政策のラグを考えて、先を考えているわけですが、金融政策変更後のステートメントとしてはもう少しコンパクトな文章を出していく必要があるということで、あのようなステートメントになったわけです。両者の間で齟齬があるわけではなく、全く同じ思想のもと、今回の政策変更に焦点を当てて、あのようなステートメントになりました。』
あまりにも予想通りの答えにワロタ。
○低金利とバブルについて
この質問はまあオモロイ。
『(問) 今回の金融危機についてですが、全体にあるのは、やはりカネ余りの状態ではないかと思います。各国の投資家は、基本的には低金利の円で調達して、高金利で運用するという投資行動がかなり目立ったわけですが、日本の低金利の状態が今回の信用バブルに果たした役割について、総裁はどのように分析されているかお聞かせ下さい。』
んでまあ答えが例によって長いので、途中を割愛しながら引用しますね。
『(答)(前段部分割愛) 信用バブルは低金利だけで起こったとは思いませんが、こうした低金利が長期間続くという予想、感覚なしには、ここまで大きくならなかったと思います。そういう意味では一つの要因であったと思います。日本の低金利というわけではなくて、世界全体の低金利環境の持続というものが世界的ないわゆる信用バブルを生む一つの要因になったという話です。』
で、日本と海外の比較に話が行きまして・・・・
『日本の場合、確かに名目金利水準は低いのですが、同時に物価上昇率も低かったわけですから、実質金利自体は表面金利ほど低いわけではありませんでした。海外は、名目金利は高いが物価上昇率も高く、実質金利はやはり低いということで、世界的に実質金利水準が低いという状況が長期に亘って続いたということだと思います。』
日本は別に実質金利低くなかったでしょというのは禿げ同ですな。
『そういう意味で、日本の金利政策が世界の信用バブルの原因だったという見方には賛成しませんが、しかし日本も含めて、世界的な低金利の持続ということがそうしたことに繋がっていくということを、今回の金融危機は示していると思います。』
と、「名目金利が低いので世界にバブルを撒いた」的なプロパガンダには否定的な見解でして、それはまあもっと宣伝していただきとう存じます。
#他にも幾つかあるのですが、時間と量の関係上こんなところで。
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2008/10/22
○これも日経かなんかに出てた話ですが備忘メモ
確か日経かなんかで話題になっていたので今更ですが一応自分の備忘録に。
17日の総裁挨拶@全国信用金庫大会
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0810a.htm
20日の総裁挨拶@日銀支店長会議
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc/siten0810.htm
日本経済の見通しについて。
『その先については、やや長い目でみれば、エネルギー・原材料価格高の影響が薄れ、海外経済も減速局面を脱するに連れて、次第に緩やかな成長経路に復していくという姿が想定されますが、こうした見通しを巡る不確実性は増大しています。』(17日)
『先行きは、当面、海外経済の減速が明確化するもとで、景気は停滞を続ける可能性が高いとみられる。』(20日)
ということで、20日は「目先停滞」の「先の話」が無いのですけれども、これは敢えてその部分をカットしているのでしょうかねえというのが。正直、さくらレポートの「全地域下方修正」の方に目が行ってうっかりしてましたすいません。
ま、展望レポートがもうすぐ出ますが、どの位下方修正してくるか注目ということで。
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2008/10/17
○14日の総裁会見より
後入先出法に基づきまして、前のネタがドンドン後回しになっており誠に痛惜の極みでございます。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0810c.pdf
14日の会見というのは微妙な(何が微妙かは昨日申し上げたとおり^^)措置を色々と出して下さった日の決定会合後の会見でございまして、読んでて「あらそうですか」と思ったところを適当にピックアップ。
・当面は「やるやる詐欺」ではなく「仄めかしのチラリズム」程度かな
米国の実体経済が懸念されていますが・・・という質問に対して。
『米国経済の先行き、それから日本経済への影響については、今月末の金融政策決定会合において展望レポートを決定する中で精力的に点検作業を行っていきたいと思っています。それを申し上げた上で、米国経済についての現時点での見方を若干お話したいと思います。』
『今回のリーマン・ブラザーズの問題が起こる以前から、米国の経済は停滞傾向を強めていましたが、今回の一連の金融の動きが企業あるいは家計の資金調達の条件を厳しくするということだと思います。そのことが実体経済にどのように影響していくかということを米国の当局者は注意してみていますが、私もそこを注意してみていく必要があると思っています。そのことを含めて日本経済にどの程度の影響が及ぶことになるのか、これは定性的にはマイナス方向ですが、定量的にはどの程度とみるのかということについては、次回の決定会合でさらに点検作業を行いたいと思っています。』
マイナス方向であってリスクは下振れという所は既に強調していて、今回もその部分は強調しているのですな。ということでこの辺りだけ見ていると利下げの本格的検討が始まってもおかしくはないのですが、いまのところは「点検作業」で華麗にスルー。次回の展望レポートでシナリオをどの位変えて来るのか(または変えないのか)という所なんでしょうが・・・・・
強調利下げに関する質問に対して。
『前回の記者会見で申し上げたことは、各国の金融政策は各国の状況に照らして運営すべきであるということです。金利を変更することが自国の経済の状況に照らして適切であれば勿論変更すべきです。自国の状況に照らし望ましい行動でないにもかかわらず、協調すること自体が自己目的化してしまい、それが協調利下げあるいは協調利上げというのであれば、そうした考え方はとらないということを申し上げたわけです。』
『今回の金融市場の混乱は、欧州、米国の金融市場に特に大きな影響を及ぼし、それらの国は金利を引き下げることが適当と判断したわけです。この問題はグローバルに広がっているものですから、同じタイミングで共同して発表したということであり、これは自国の金融経済の状況を犠牲にして協調利下げに参加したということではないと思っています。』
まあそれはその通りでございますとしか申し上げようが無いです。
『そういう意味で、私自身は、あくまでも自国の経済の状況に照らして引下げ・引上げを判断していくという、中央銀行としての原理原則を今後ともしっかりと持っていきたいと思っています。』
「引下げ」が先に来ているのがチャーミングな訳でして、次のアクションがどっちかといえばやはり念頭にあるのは下げなんでしょ。まあ海外と協調する気があるんですかという質問が来てるから「引下げ」と言ってしまって、それだけだと利下げ思惑が高まるといけないからすかさず「引上げ」と言ったのではないかという勝手な妄想もしてますが。
まあこの期に及んで金利の正常化がどうのこうのって意識があるとは到底思えないのでその辺は無問題なのですが、利下げに関しては、やるやる詐欺の段階に入る前のまだまだ精々チラリズム程度なのかもしれませんね。とか言って月末の会合で展望レポート大幅に書き換えて利下げしたら面白いですけれども。
・当座預金付利について
『(問) 本日の発表文の中に当座預金制度の運用などの改善策についてもできるだけ速やかに結論を得ると書かれており、先の説明で準備預金の付利について触れられたと思うのですが、改めてその検討状況をご説明頂けますでしょうか。それから、市場では、準備預金の付利は逆に資金を吸収してしまうことになり、市場の資金の巡りが悪くなるのではないかという声が聞かれていますが、その点も含めてお願い致します。』
で、前半部分は兎も角として後半部分の答えはといいますと。
『一般論として、米国や欧州の中央銀行も導入している準備預金への付利は、現在のような特に金融市場の緊張が高まっている状況では、資金を吸収するというよりも資金の運用先を提供するものと考えたほうが良いのだと思います。』
ツッコミは後で。
『インターバンク市場でお互いに疑心暗鬼の状況になると、相手に資金を放出したくない、あるいは放出するとしても非常に高い金利で放出するという状況になってきます。そうしますと、相対的に信用度の低い先は資金調達が難しくなるわけですが、そうした先に対して中央銀行が積極的な資金供給オペで対応するということになるわけです。一方、相対的に健全な金融機関は、市場でわずかな金利を得られるとしてもデフォルトの危険性を考え、あえて市場で運用せず、運用先が無くなってしまいます。その時に安全確実な取引主体である中央銀行が運用手段を提供する、という側面のほうが強いと思います。』
ただ日本の金融システム自体は健全であるというお話なのですから、わざわざ短期市場金利のフロアを設定するような当座預金付利をしなくても供給を行うことによって一時的な金利の低下を容認し、必要ならば売出手形を打てばそれで済むとは思うのですけれども。大体からして必要以上に資金を抱え込んでいる「健全な」金融機関に運用手段提供する必要があるのかねえ。
何か今回の当座預金付利に関しては、このどさくさに紛れて預金ファシリティを設定しちゃえ!っていう香りが漂うのですけれども・・・・・
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2008/10/10
○7日の総裁会見から
今更で恐縮ですが。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0810a.pdf
・最初の質疑を見ればどう見ても下振れ意識しまくりなんですけど
ということで実質最初の質問に対する総裁の説明。
『先ほども申し上げましたが、現在、景気の下振れリスクは高まっていると考えています。もっとも、日本経済は、設備、雇用、負債面での調整圧力は小さく、かつてに比べショックに対する頑健性は高い状態にあるほか、総じて緩和的な金融環境は民間需要を後押しすると考えられます。また、国際商品市況が反落してきており、これに伴う交易条件の改善の効果も働くと考えられます。』
つまりバランスシート調整は終了しているので、以前のようなメタメタな展開にはなりませんけど下振れリスクという事ですね。で、ここでほほうと思ったのは白川総裁が良く使う言葉の「金融環境」です。現在の金融環境に関して「緩和的」の上に「総じて」というのがつくようになってまして(月報ベースではちょっと前から総じてになってたと思います、為念)、最近の社債市場における低位格付けやら一部業種のスプレッド拡大(が足元更に状況悪化してるのですが)に加えて足元の短期金融市場の緊張を意識してるのかなあと。
『以上を踏まえますと、景気は、「やや長い目でみれば」と申し上げましたけれども、不確実性は高いものの、エネルギー・原材料価格高の影響が薄れ、海外経済も減速局面を脱するにつれて、次第に緩やかな成長経路に復していく可能性が相対的に高いとみています。』
「相対的に」高いとこちらもヘッジクローズ付ですかそうですか。ということで、まあ下振れ意識はだいぶ高まってますな。
『もっとも、先ほど申しあげたとおり、国際金融資本市場の緊張は高まっており、世界経済が下振れるリスクがあるなど、景気の面では下振れリスクを意識して点検していくべき局面にあると考えています。』
ということですね。
『先ほど景気の回復時期が遠のいていくというご質問がありましたが、今回のこの発表文からもわかるとおり、その時期は従来想定していたよりも少し先に伸びているということです。もちろんその時期がいつかは不確実性があるわけですが、そのように判断した次第です。』
しかも回復時期の想定が先送り。
・リスク目配りの数字を言わなくなりました(^^)
この質疑をどう読むのかというのは正直会見場に行ってる筈の本石町日記さんにお聞きしたいところなんですが。
『(問) 7月中旬くらいの講演だったと思いますが、物価の上振れと景気の下振れの目配りのウエイトについて発言されたことがあり、当時はフィフティー・フィフティーとおっしゃったと思います。今般、経済情勢も非常に大きく変わり、そのフィフティー・フィフティーが動いたのか、動いたのであればその数字はどの様になったのかという点をお答え頂きたいと思います。』
『(答) 何回か前の記者会見でも申し上げましたが、ご指摘の講演の時は質問者が数字を挙げてご質問されましたので、数字でお答えしたということです。ただ「50
対50」という場合、「51」あるいは「49」ではなく正確に「50」だということを申し上げたわけではなく、要するに双方のリスクに目配りが必要だということを申し上げたわけで、そういう意味では、現在も景気の下振れリスクと物価の上振れリスクの双方について目配りが必要だと思っています。もちろん、時間が経てばウエイトが微妙に変化するのはその通りだと思いますし、その点は今度の展望レポートで更に入念に点検して判断を示したいと思っています。』
「フィフティー・フィフティー」などの表現をしないでこういう言い方をしてるのは、前に引用した答えと総合しますと、どう見てもウェイトが下振れリスク意識に傾いている(しかも思いっきり)と読んでしまうのですけれども、こうやって文章にされちゃうと微妙(しかも前に引用した所を入れないでこれだけ引用すると受ける印象がまた違う^^)なので、ニュアンスはどうなんでしょうかね。
あたくしはこれって「月末の展望レポートで下振れリスク警戒高めるからまあまあちょっと待って下さいな」と読んだのですけど読み甘いかな?
・金融機関の資本注入に関して(欧米の話ですが)
米国の金融安定化法案関連の質問に対する答えの一部を。
『米国金融機関に対する公的資本の注入を行うべきかどうかというご質問ですが、米国金融機関による資本調達策について、私の立場から具体的にコメントすることは差し控えたいと思います。ただし、これは日本の経験と重なりますが、金融機関が不良資産の処理の過程で自己資本を毀損した場合には、これを速やかに回復し、十分な自己資本基盤を維持していくということが極めて重要であります。この点、金融システムと実体経済の負の相乗作用が働いている経済では、金融機関が必要とする資本の額をリアルタイムに把握することは難しい作業でありますが、それでも金融システムの安定性維持に向けた強い意思のもとで、関係者がそれぞれの立場で実効性のある施策を進めていくことが不可欠であると思っています。』
・・・・思いっきり具体的にコメントしてますが(^^)、ロス確定して毀損した資本の回復を急ぎましょうという話は日本と同じでございますわなそりゃ。で、最後の方で中々良い質問がありまして、質問から引用。
『(問) 金融機関の資本の問題についてもう一度お伺いします。今のように世界経済がどんどん後退し、不良債権も雪だるま式に増えている時に、公的な対応として不良資産の買取りをするだけで、果たして民間ベースで資本調達ができるかということについて総裁はどうお考えでしょうか。また、そもそも今回の米国の金融安定化法の枠組みの中で公的な資本注入ができるのかできないのか、両説あるらしいのですが総裁ご自身はどのように米国の当局から伺っているのでしょうか。』
答えは超長いのですが、段落分けしながら引用します。
『(答) 2つの質問はお互いに関連しています。ポイントは、現在の法律の下で、米国では公的な資本注入ができるのかどうかということです。法文は相当に長いものですが、私自身も気になりましたので関係する部分だけ目を通しました。また、日本銀行の中の専門家の意見も聞いてみましたし、一般的な専門家の意見も聞いてみました。法律について私が解釈を示すのは変であり、もちろん米国の立法者が示すことなのでしょうが、私自身、法律をみて感じるのは、重要な部分について詳細がまだ必ずしも明らかになっていないということです。そういう意味では、評価を決めつけることは適切ではないと思います。』
なるほどそうなんですね。
『ただ、ポイントが資本にあるというのはそのとおりだと思います。従って、私自身は米国の法律についてコメントしたり、米国の法律に基づく米国の状況についてコメントするというよりも、一般的に資産の買取がどのように機能するかということについて感想を述べたいと思います。』
『日本も大変深刻な不良債権問題を経験しましたが、ここからどういう教訓を導き出すかということで最近色々な議論がなされています。もちろん色々な議論が可能ですが、今のこの文脈でいきますと私は3つの点が大事だと思っています。』
で、以下のポイントが簡潔に纏まっています。
『第1は日本の金融システム問題の最大の原因は資本不足であったということです。この資本不足の問題が解決すれば直ちに全てが解決するというわけではありませんが、資本不足の問題の解決なしには経済の本格的な回復は難しかったと思います。』
『第2はこの資本不足の額というのは実体経済と金融システムの相乗作用によって変化していくもので、従って不良債権の金額あるいは不足する自己資本の額がある時点で正確に測れるというものではなく、これ自体が時間と共に変化していく性格のものだと思います。』
『第3は、必要な資本の額をその時点で正確に認識することは難しいのですが、政策という次元でみますと──これは日本のケースですが──、ある段階で当局として判断を下さなければならない問題であったと思います。』
『繰返しになりますが、これは日本の経験についての私の個人的な感想です。』
・ロンバートに関して
ロンバート金利を政策金利と別に動かすことがあるのかという質問に対して。
『2点目のご質問ですが、補完貸付の金利とコール誘導目標の金利を分離することは有り得るということです。現在、日本銀行の金融政策決定会合では、誘導目標の決定の仕方と補完貸付の金利の決定の仕方は別々ですから、論理的にオプションとして有り得るのかその可能性を聞かれれば、別々に意思決定を行っているわけですから、論理的にはその可能性は有り得るということです。それ以上の政策的な意味合いを込めて言っているわけではなく、論理的な質問に対して論理的にお答えしたということです。』
そうなんですけど、何故か福井総裁がそのオプションを否定してしまったので、ここで正常な状態に戻すということですな。
その他論点あったのですが、また気になったら後日引用します。長い引用があって増量すいません。
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2008/10/06
○先週月曜の白川総裁会見より
先週月曜というのは欧州でドルの短期金利が上昇して、急遽スワップ枠の拡大、ドル資金供給オペの拡大をした(のですがその数時間後に金融安定化法案が否決されていきなりちゃぶ台がひっくり返されたの巻でした)時の会見から。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0809e.pdf
冒頭の説明から。
『最初に本日の協調策の趣旨について簡単にご説明します。最近の国際金融市場の動きをみますと、各国で短期金融市場における資金調達圧力の持続的な高まりがみられています。すなわち、わが国を含めドルの短期金融市場では、期日(ターム)物を中心に調達金利が高止まっているほか、市場での取引が極端に薄い状況が続いています。米欧金融市場で金融機関の破綻が続いていることなどを踏まえますと、こうしたドル市場における緊張は、なお暫く続くことが予想され、各国通貨建ての市場にも当面影響を及ぼし続けるとみられます。』
途中を飛ばしまして。
『こうした判断を踏まえまして、流動性需要が高まるとみられる12 月末に向けて、予め十分なドル供給の枠を確保した上で、市場の状況に応じてドル資金を円滑に供給していくことが適当と考えた次第です。具体的にはスワップの取極の引出限度を従来の600
億ドルから1,200 億ドルへ増額するとともに、ドル資金供給オペレーションの期限を延長し、来年4月末までとすることを決定しました。なお、今回の一連の措置により、米ドル資金の供給額が拡大することなどに伴い、より幅広い市場参加者を通じ、本邦市場における米ドル資金の供給を一層円滑に行うことを狙いまして、オペの貸出対象先を拡充することとしました。』
ということで、先日ご紹介した時に「オペ対象先が拡大された」という点をうっかりしておりまして申し訳ございませんでしたm(__)m
#先週オペ先拡大に伴う追加募集のアナウンスメントがあったのでご存知とは思いますが念の為
で、この時点での短期金融市場の状況ですけれども。
『まず金融市場の状況、なかんずく短期金融市場の状況をご説明します。リーマン・ブラザーズの破綻等を契機にしまして、米欧の金融機関の株価が急落しましたし、信用リスクにかかる評価であるCDS(Credit
Default Swap)のプレミアムが急拡大しました。こうした中で米ドルの調達金利をみますと、オーバーナイト金利は急上昇しており、足許は低下しているものの日中の振れが大きい状況にあります。期日(ターム)物の方は、金融機関相互の間での信用リスク不安が高まる中、長めの資金放出姿勢が極度に慎重化したことからレートが上昇しています。』
という状況でして・・・・
『米ドル資金市場の流動性はほぼ枯渇したという状況だと判断しています。』
という認識ですね。
『今回の中央銀行による流動性の面での措置は、こうした短期金融市場における強い緊張に対応して採られたものです。今回、金額を大幅に増やしていますが、これはそうした流動性の面から短期金融市場の不安定性をできるだけ除去していこうという措置です。我々としてはこうした措置が金融市場の安定につながることを期待しています。』
緊張感の伝わる総裁発言でございます。で、この一連の総裁発言にありますように、欧米の金融機関の信用不安がCDSスプレッド拡大からインターバンクの取引の枯渇に繋がるという一連の流れによって、短期金融市場の取引が対中央銀行取引しか回らないという状況になってきましたという事なのですな。
初回の資金供給オペで札割れになった件についても質問がありましたが、その点に関してはこのような説明を。
『結論から言いますと、そういうことです。最近の米ドル市場における流動性の状況および円市場の状況を踏まえると、ドルにかかる流動性の逼迫が円資金市場の流動性や安定性に対して影響を及ぼす可能性は足許一段と高まっていると判断しています。こうした中で、流動性需要が高まるとみられる12
月末に向けて予め十分なドル供給の枠を確保した上で、市場の状況に応じてドル資金を円滑に供給していくことが適当と判断しました。ご質問にあった先般9月24
日に実施した1か月物のドル供給オペについては、わずかながら札割れとなりました。ただ、これはオペ対象先にとって実施までの準備期間が短かったことや、既に9月末越えのドル資金調達に目処をつけていた先もあったことなどがその背景にあると考えています。日本銀行のドル供給オペ自体に対する需要は強いと判断しています。』
こちらに関しては今後3か月もののオペも実施されますので、そちらを注目ということになるかと思います。
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