金融政策概観(2025年度下期前半)

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2024年度下期前半の見出し

2025/10/07「高市総裁の初期反応債券方面混乱中/本田悦朗氏日銀の利上げ容認とな/植田総裁大阪会見は「優柔不断」ですね」
2025/10/06「高市さんはトラスになるかメローニになるか/3日の植田総裁の大阪講演は案の定のハトハトチキンでした」
2025/10/03「内田さんと植田さんの講演は無難にスルーでしょうね/国内MMF復活へという日経の記事はミスリード」
2025/10/02「9月短観は10月利上げの後押し材料になる強い内容ですよね」
2025/10/01「9月会合主な意見は総裁会見の説明とだいぶ温度差があって利上げの議論が相当行われていました」

2025/10/07

お題「高市総裁の初期反応ですが・・・・・/おや本田悦朗先生の発言が・・・・/総裁大阪会見もまあチキンちゃん」

?????????????
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB063YV0W5A001C2000000/
市場、財政規律派の起用に期待感 10年債利回りの上昇幅小さく
為替・金利
2025年10月6日 19:32 [会員限定記事]

『6日の金融市場で相対的に落ち着いた動きをみせたのが10年債の利回りで、小幅な上昇にとどまった。市場では自民党の高市早苗新総裁が要職に財政規律派を起用し、拡張的な財政政策への一定の歯止めになるとの期待がある。』(上記URL先より)

例によって無課金おじさんだから記事の中身は分からんですけど、高圧経済って連呼している訳だし、連立の枠組み拡大したらやっぱり財政拡張なんですからそんな訳は無いでしょとしか思えないし、何なら財務大臣にT木さんとかもっというならN田さんとかぶっこんでくるジャマイカとしか思えませんけどねえ。知らんけど。


〇超長期が売られる挙句に今日は30年国債入札だが5年とかホイホイ買われる意味はアレかと

例によってロイターさん
https://jp.reuters.com/markets/japan/7TKMKAZLOVNF3PPJCZ3P4M7BI4-2025-10-06/
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は小反落、長期金利一時1.675% 高市トレードでスティープ化
By ロイター編集
2025年10月6日午後 3:44 GMT+9

まあスティープするのはわかるんですが、

『[東京 6日 ロイター] - <15:20> 国債先物は小反落、長期金利一時1.675% 高市トレードでスティープ化

国債先物中心限月12月限は、前営業日比1銭安の135円90銭と小反落して取引を終えた。新発10年国債利回り(長期金利)は同1.0ベーシスポイント(bp)上昇の1.670%。一時1.675%と17年ぶりの高水準をつける場面もあった。自民党総裁選で高市早苗前経済安保相が勝利したことを受け、短期債が買われた一方で超長期債が売られ、イールドカーブはツイストスティープ化した。』(上記URL先より、以下同様)

ってなもんで、細かい話はかっとばして結論は

『TRADEWEB
     OFFER  BID    前日比 時間
2年   0.886  0.902    -0.04  15:35
5年   1.181  1.195    -0.03  15:35
10年  1.666  1.675    0.011  15:35
20年  2.677  2.695    0.083  15:35
30年  3.27   3.286    0.133  15:35
40年  3.501  3.525    0.144  15:35』

ということで今日30年入札が待っていることも影響しているんでしょうけれども、超長期はまあ甘くなるというのは良いんですけど、2年は兎も角(2年も正直意味不明)5年がそんなに買われて良かったんでしたっけというのはアタクシ的には思うのよ。あ、ちなみに短国3Mは2毛強くらいだったと思いますが、まあ元が0.50%水準なのでそんなもんかもしれませんね(3Mなので当然ながら1月の頭の足)。

だって皆様ご案内の通りで為替ちゃんは円は飛ぶ飛ぶでドル円もアレだが対ユーロとかもエライコッチャ(夕方にフランス新内閣が飛んだので少し戻しましたが)になっていまして、そのうえ高圧経済やりまっせ、と言ってるんですからそらもう物価がそう簡単に落ち着いてくれる訳は無くて、円安圧力はかかりやすいし財政出して結局物価を押し上げるという話になるのですから、そうなった場合に0.5%とかいう今の政策金利がこの世のものとは思えない低さなのは必定だし、ターミナル1%とか寝言言ってる場合じゃない局面がしばらくしたら訪れるリスクはビンビンに高まっている、という事だと思うんですよね。

ですから、まあ10月利上げか12月利上げか、で盛大に影響のある3M(ただし元々3Mは10月利上げ即死レートだったので2毛強にしかなっていない)短国は分かりますけれども、2年とか5年のスパンで考えた場合、短期政策金利のパスって普通に考えたら上方シフトしませんかねえと思うのですが、まあ昨日の初期反応はフラットニングポジションの巻き戻しって奴でしょうからそういう動きもするわとは思うけど、2年ならまだしも5年がつよつよというのはさすがに何じゃそらと思いました、あくまでも個人の感想ですけれども。


〇コストプッシュだから対処しなくて良いというのは最早世界の中銀からは言われないんですが・・・・・

そういやこんなのがありましたが。

https://news.yahoo.co.jp/articles/140a73289204adacc3a6c1c3a0d7417232f57cb4
日銀の早期利上げ観測後退 高市総裁誕生で正常化進めにくく? 円安で物価高助長の懸念も
10/6(月) 21:24配信

『日銀の利上げに慎重とされる自民党の高市早苗新総裁の首相就任が濃厚となる中、金融市場では日銀の早期利上げ観測が急速に後退つつある。円安が進行する一方で「責任ある積極財政」を掲げる高市氏がばらまきへと突き進めば、物価高を助長することになりかねない。金融政策の正常化を進める日銀との政策の方向性の違いが、国民生活に混乱を招くという懸念も出ている。』(上記URL先より、以下同様)

ということで何気に産経とか読売とかの高市先生大歓迎モードと思われる皆様ですらさすがに昨日のドル円150円に多少ビビっているのか、「高圧経済アプローチが円安物価高を招く懸念」について言及しているのが味わいがあったのが昨日のアタクシの印象です。

でまあこの記事にありますが、

『「コストプッシュ型のインフレを放置して、もうデフレではなくなったと安心するのは早い」

高市氏が4日の記者会見で日銀の利上げを牽制(けんせい)するような発言をしたことから、29〜30日の金融政策決定会合での利上げ再開を見込んでいた市場では巻き戻しが起こり、運用面の魅力が高まりそうにない円を売ってドルを買う動きが強まった。』

などと言っている訳ですが、弊駄文では何度もご紹介していますように、今年は主要中銀でストラテジーレビューが行われて金融政策運営のストラテジー(ゴールではない)の見直しが行われた訳ですが、その説明の中でECBにしてもFRBにしても、コストプッシュに関しても(特にECBのラガルドは)「過去のグレートモデレーションの時代と異なり、価格ショックが持続的なインフレにつながるリスクが強まっている」という説明をしていまして、コストプッシュだから放置して良いとかいう話ではなく、あくまでも価格上昇の持続性とか、セカンドラウンドエフェクトとか、インフレーションエクスペクテーションへの影響とか、そういう点を重視して必要であれば供給要因起因の価格ショックであっても対応しないといけない、というのが今や世界の中銀業界のコモンセンスとなっている訳ですな。

然るに、日銀の場合はとにかく利上げをゆっくりやりたい、というために黒田末期以降数々の屁理屈を繰り出してきた訳でして、この「コストプッシュだから対処しなくて良い」というのもその一つでして、そういう小細工で変な屁理屈を出すもんだからこうやって政治家に理屈が悪用されてしまう訳で、とにかく変な屁理屈を出してごまかしながら正当化する、という悪い癖を日銀は止めるべきだし、過去の変な屁理屈に関しては「経済構造がデフレ的では無くなったから」とかいう美名をつけていいから、有耶無耶のうちに無かったことにするんじゃなくて、ちゃんと説明して「あれはデフレ時の理屈でインフレ―ショナリーに経済構想が転換した現時点ではこの理屈は有効ではない」ってちゃんと言わないと、インフレ―ショナリーになっているのに「コストプッシュ型のインフレはインフレに非ず」みたいなことを言い出すアホウが出てくる(じゃあ第一次石油ショックは何でしたっけという話ですわな)ことになるので、その場しのぎの屁理屈を繰り出すという日銀のスタンスは罪が深いわ、と思う訳ですよ。

ちなみに「賃金と物価の”好”循環」もまるで同じでして、好循環とかいうもんだからいつまでたっても賃金上げるのを何とかするためにとか言って、今回だって(やるかやらんかわからんけど)赤字企業に財政支出しかねないような勢いの話が出てきたり出てこなかったりする訳で、いやそうじゃねえだろとなってしまうのですが、そもそもこれも利上げ先送りのその場しのぎで屁理屈シリーズ、「賃金と物価の好循環はアリマース」を唱えたもんだから好循環とか言う幻想を追いかけて財政出す出すとかいう話になってしまっている訳で、この手の「日銀が目先の利上げを先送りするために繰り出したトンデモ屁理屈」が色々と弊害を発生させているなあとしか思えませんので、まったくもって罪万死に値すると思いました(個人の偏見です)。

しかしまあ何ですな、高市さん大好き産経新聞ですら上記の部分の続きに、

『だが、過度な円安が進めば、輸入コストが上昇し、国内物価の上昇を助長することになる。高市氏が積極財政を打ち出していることも需要の刺激を通じて、物価をさらに押し上げる
ことになる。』

って有るわけで、さすがに物価高が問題になっている中で高圧経済やるのはどうなのか、という話自体はあるのかな、と思っていましたら・・・・・・・・


〇本田悦朗大先生がまさかの12月利上げ論と思ったらさすがに円安はマズイという話なのね

昨晩こんなのが出ました
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-10-06/T3PBFPGOYMTG00
高市ブレーンの本田元内閣参与、日銀は10月利上げ困難−12月の可能性
藤岡徹、伊藤純夫
2025年10月6日 21:00 JST 更新日時 2025年10月6日 21:26 JST

え?????12月の可能性???????と思ったらですねえ

→経済状況が大きく悪化しない限り、0.75%へ利上げしても問題はない
→1ドル=150円超は「行き過ぎ」、過度な円安で物価高止まりの懸念

えええええええええええええ!!!!!お前らって「円安の何が悪いんだ」じゃなかったのかよ、という話ですがそれこそ置物残滓だったはずの野口審議委員が先般の札幌講演で急に真人間になられた(ちなみにあの講演リードのところだけしかネタにしていませんが本文も味わいがある部分が有るのでネタが渋滞しているので遅れていますがそのうちネタにします)という事案につきまして弊駄文でご紹介しましたが、もしかして本田先生まで急にまともな話をおっぱじめたのかよ。というお話なんですがまあ記事を拝読拝読。

『高市早苗自民党総裁の経済ブレーンの1人である本田悦朗元内閣官房参与は、日銀の利上げ時期に関して、今月の金融政策決定会合は難しいとする一方、12月会合の可能性はあるとの見解を示した。』(上記URL先より、以下同様)

えええええええええええええええええ!!!!!12月アリなのかよおおおおおおおおおお!!!!!

・・・・・まあ何ですな、高圧経済音頭でタコ踊りしている間にドル円が160円を軽く突破して170円180円とかになって来てどうしようもなくなって12月に利上げに追い込まれる、というパスでの利上げはアリエール(なんならそれ10月末に来たらもっと香ばしい)というパスでの「追い込まれ利上げ」のルートは考えていたのですが、まさかの本田悦朗大先生から10月はさすがに早いが12月はアリ、という見解が出るとは、という感じではあります。

『本田氏は6日のインタビューで、日銀の利上げついて高市氏が慎重に進めてほしいと考えており「いつならいいとか、今はだめだとか言うことはない」と指摘。その上で、10月中旬ごろとみられている首相就任から間もない29、30日の会合で利上げに踏み切るのは、「さすがに難しい」と語った。』

からの、

『一方で、今後経済状況が大きく悪化しない限り、現在の0.5%程度の政策金利を0.75%程度に引き上げても問題は生じないとみている。「マクロ経済環境によるが、今のような環境であれば0.25%上げても問題ない。仮に12月にやるとしても、米国は心配だが、そんなに混乱しなければ大丈夫だろう」と述べた。』

ということで、まあリードのところにありますように、高圧経済やって円安ぶっ飛んだら圧力釜が壊れて大爆発して台所が大惨事になりまっせ、というのはさすがに認識しておられる、というのが背景にあるのかな、とおもいましたし、これが「現実路線メローニ化」への過程の兆候ならばそれはそれで結構なお話ではあるのですが。

『昨年に出版された高市氏の著書「国力研究」で経済分野の執筆を担当した本田氏の発言は、積極的な財政政策と金融政策で経済成長を目指す高市氏の下でも、将来的な利上げは排除されないことを示唆している。それでも、市場が従来想定していた早期利上げは後ずれを余儀なくされそうだ。』

あーすいませんBBGさん、12月利上げOKならむしろ「昨日の時点での」市場の利上げ見通しが前倒しになると思いますよwwwwwwwwwwwww

でまあ為替ちゃんの方ですが、

『本田氏によると、円安進行が日銀の利上げの判断を複雑化させる可能性がある。円安は一般論として日本経済のサポート要因になるとしつつも、過度な進行は物価を高止まりさせてしまうとし、円安が「150円を超えたら、やや行き過ぎだろう」との認識を示した。本田氏の発言を受けて、円は下落幅を縮小し、対ドルで一時149円80銭台まで戻した。記事配信前には150円台前半で推移していた。』

ということで、じゃあお前ら160円の時に何で利上げしろって言わなかったんだよという気もしますが、まああの時対比で今の方が物価高の長期化によって弊害が高まっている、という状況でもありまして、だから石破政権吹っ飛んでしまった訳なので。円安のプロコン比較をした場合に、過去よりも問題が大きくなっている状況に変化したのでこれ以上の円安は容認しにくい、という話でまあ理屈自体は通らんでもないな、とか何とかヘリクツ日銀につきあっているとヘリクツ製造スキルは上がりますなあ(何の役にも立たないし何なら後で自分の首を締めるだけのスキルだがwww)と思うのでした。

まあ高圧経済とか言いながらも円安はアカンというのは虫の良すぎる話なので、この折り合いをどうさばいていくのかを生温く見守っていくわけですが、その点で財務大臣人事にあんな人やそんな人をぶっこんでくると大変に香ばしい事に成り兼ねません、ということで首班指名が来週とのことなのでまあドキドキの展開は続くかなという所で。


〇大阪講演での総裁記者会見だが講演よりはましだがやっぱりハトハトチキンというか優柔不断というか

昨日は支店長会議もあったわけですが、10月利上げが(この後為替は飛ぶ飛ぶドームの風でとなって追い込まれる場合を除き)かなり消えましたとなってしまったので、次は12月短観直後になるはずの12月会合、すなわち12月短観見ますか、って話になると思うのでややウェイト低下、ということで明日に回します(時間の関係で)。

ということで大阪での会見ですが、講演テキストはハトハトというかチキンエキス満載でもう鶏ガラスープの素かよという世界ではありましたが・・・・・・・・・

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2025/kk251006a.pdf
総裁記者会見
――2025年10月3日(金)午後2時から約30分
於 大阪市


・不確実性の度合いの変化と「点検はいつまでやるの」に関して

冒頭の(たぶん)幹事社質問はオープニングリマークみたいなもんなので割愛しまして(本当はこのオープニングリマークをもうちょっと工夫する余地は無いのか(他中銀みたいに)とは思うのですよ、今の方式だとイマイチ(金懇や地方講演だとご当地経済の話があるのでそっちは良いんですけど)だなと・・・)、その次の質疑から参ります。

『(問)二点お願いします。一点目が不確実性のことで、4 月には不確実性はきわめて高い、7 月の関税日米合意後も不確実性は引き続き高いと発言されていましたが、今日はそういった発言がなかったようにも思いましたが、今も不確実性は高い状況なのでしょうか、というのが一点目です。』

仰せの通り。

『二点目がですね、チェックポイントの一つの米国経済の動向ですが、その雇用情勢や遅れている関税の転嫁、金融政策の行方など、この 1 か月で見通せるとも思えないのですが、この引き続き注視や当面は点検というのは、どこまで時間をかけるのでしょうか。少なくとも数か月はかかる認識なのでしょうか。考え方も含めて教えてください。』

そりゃツッコみますよね。植田さんの回答ですが、

『(答)不確実性、特に通商政策周りの不確実性の推移のようなものですけれども、4 月の時点ですと、関税の水準で言うと、どこまで行ってしまうか分からないというような種類の不確実性まであったように思います。それが 7 月あるいは 8 月、9 月の動きの中で、日本周りであれば、例えば、概ね 15%ということで、おそらく当面は決着したということですので、そこは不確実性は低下したということだと思います。』

とは言ったものの、

『ただし、例えば 15%の関税率、他の国には、大体似たような水準あるいは少し違った水準で、関税率が大体決まっているわけですが、これがアメリカ経済、そして世界経済にどういう影響を及ぼしていくのか、その中で日本経済がどういう影響を受けるのか、この点に関する不確実性は依然としてかなり大きなものが残っているというふうに判断しています。』

どう見てもハトハトチキン音頭です本当にありがとうございました。

『そのうえで、こうした不確実性のもとでどれくらい情報を見極めることが、例えば、ご質問はおそらく次の政策判断に必要なのか、ということだと思うのですけれども、それは申し上げるまでもなく、全てのハードデータがどういうふうに出るかということを全て把握してからということですと、すごい先になるということは明らかですので、』

でまあそのハトハトチキン音頭をここで中和しているのですが、そう思うんだったら初手でその前段で引用したような説明をするんじゃなくて、「もちろん色々な不確実性はあると思いますが、先行きの経済への悪影響の程度については色々なデータで確認しながらフォワードルッキングに判断していく」というような感じでフォワードルッキングな判断をする、って言えばいいのにとおもうのですよね。一々この引用の前段部分のようにバックワードルッキングして石橋を叩いても渡らないみたいな言い方をするからハトハトチキンな訳ですが、まあそのハトハトチキンというか優柔不断なのは植田さんの仕様なんでしょうかねえ、コマッタモンダ。

『私どもの政策判断に必要な程度の見極めができるところまでということになるかと思います。その判断材料としては、ハードデータもありますし、ヒアリング情報もありますし、様々な人のマクロ経済に対する見方のヒアリングもあります、ということになるかと思います。』

だそうなのですが、結局途中に物凄いハトハトチキンの表現をしているのがまあ植田さんの本音ですかそうですか、ってな話になってしまうんですよね。モチのロンですがこの総裁発言も「全てのハードデータがどういうふうに出るかということを全て把握してからということですと、すごい先になるということは明らかですので」云々を採り上げればそんなに判断遅く成らんよね、とは言えるのですけれども、まあここを読むと全然こうやる気を感じさせてはくれませんなというお話。


・おちんぎんについての見極めは案の定「情報が足りません」ですしおすし

次の質問が賃金。

『(問)賃金動向についての質問です。賃金動向についても、このチェックポイントに挙げられているところですけれども、今日の講演内容をみますと、先行き、海外経済や通商政策等を巡る不透明感が高い状況が続くような場合には、物価上昇を賃金に反映させる動きは弱まる可能性があるというようなことを指摘されています。』

まあそもそも論として「賃金動向」を判断材料のファクターに加えた時点でそれは来年まで待てという話になるので、講演で賃金動向ダイジダイジネーを前面に出すと10月利上げする理由が無くなってしまうんですよね。

『今日の話し合いも踏まえまして、現時点で今後の賃金動向どうなっていくとご覧になっているか、あるいは、この差し当たり 10 月会合までにそうした判断が、来春闘含めですね、なかなか難しいのかなというふうにも思うんですけれども、どのような判断ができるのか、そういったことについて教えてください。』

質問する方も「なかなか難しいのかなというふうにも思うんですけれども」って言ってますけど案の定の回答です。

『(答)今年の賃金動向について、ここのところ、ここ数週間とか 1、2 か月で強いネガティブな情報が入ってきたということではありません。そのうえで来年の賃金動向についてどうかということになりますと、講演でも申し上げたように、例えばアメリカ経済が今後どういう経路を辿るか、それが日本経済、日本企業の収益にどういう影響を与えるかということにも大きく依存しますので、そこについての情報はまだ少し不足しているというふうにみております。』

ちなみにベンダーのニュースヘッドラインで見ただけですが、昨日の支店長会議に関連して大阪支店長の会見があったようで、大阪支店長も早速「情報は不足してますな」という話をしてたように見えました。


・政策ビハインドのリスクは・・・・・・うーむこの温度の低さ

次の質問は政策ビハインドのリスク。

『(問)今年の秋も食料品などの値上げの動きが広がっています。物価が上振れするリスクについて総裁はどのようにお考えでしょうか。それと併せて、ビハインド・ザ・カーブに陥るリスクについて、以前はそれほど大きくないとおっしゃっていましたが、その考えに今も変わりはないのか、その辺りについてお願いします。』

そらそうよ。

『(答)食料品価格については、私どもの中心的な見通しとしましては、そもそもここまでの上昇が、一時的な供給要因によるものであるというふうにみていますので、既に少し下がり始めた動きが、今後も基本的には継続するというふうにみております。』

下がり始めた、って表現ですが、そんなに水準が下がっているのか問題というのが有るわけで、あんまり下がる下がるって連呼しない方が良いんじゃないですかとは思うのですけど。下がるのは上昇率であってべつに食料品価格がここから5%下がるとかそういう威勢の良い話が有るわけないんですから。

『ただし、インフレ率が下がっていくペースについては、ある程度不確実性があるということでございます。そのうえで、こうした食料品価格のインフレが減速していくペースが、まず基調的な見通しとしては減速していって、ちょっと表現があれですが、基調的なインフレには大きな影響を与えないという見通しでございます。』

と、この辺から「インフレ率が下がっていく」と軌道修正していて、

『ただし、リスクとして減速のペースが想定よりも緩やかになるときに、何らかのメカニズムを通じて基調的インフレ率を少し押し上げるという方向に働くケースも排除できないですし、逆に、いったんは長続きするということは前提になりますが、それが消費マインドに下押し圧力を加えて、需要サイドから消費が弱含み、それが基調を少し弱めてしまうというリスクもあるかもしれません。』

ここでやっと「減速」と言い換えているので、もしかしたらこれ(ライブ見てないから知らんけど)質疑応答の途中でこっそりメモでも入ったのかと思ってしまう位に最初の表現と違っているのが味わいがありますが、まあとにかく物価水準が別にここから下がるわけではないのだから「下がる」って表現を日銀は使わない方が良いと思うんですよね。

でまあそんな話はさておきまして、続きですが、

『その中で、ビハインド・ザ・カーブになる可能性は、ということですが、これは今申し上げたケースの中では、食料品価格のディスインフレのペースが遅くて、それが何らかの理由で基調、あるいはインフレ期待、中長期のインフレ期待を押し上げるという効果を持つというケースですけれども、今のところはその可能性は高いとはみていませんが、』

(ノ∀`)アチャー

『もしそういうふうになれば注意を要する現象ですので、引き続きよくデータを見ていきたい、あるいは分析をしていきたい、というふうに思っております。』

「もしそういうふうになれば」というこの温度の低さよ・・・・・・・


関連してちょっと先に9月会合の利上げ提案がらみの質問があって、

『(問)これまでのところ、9 月の決定会合で 2 人の審議委員が利上げを提案して、その後、野口委員(注)も利上げのタイミングについてかつてなく近づいているのではと発言されました。主な意見でも、物価の上振れリスクについての指摘が多かったんですが、今日の総裁の講演を拝読すると、やはり米経済のリスクおよび関税が日本経済にもたらすリスクと、全体的に経済の下振れリスクをより重点を置いて説明されているように感じました。』

なのでハトハトチキン音頭ということでしたわな。全く仰せの通り。

『ここから経済の下振れリスクと、物価が上振れるリスク、どちらが政策判断上、今大きいとご覧になってるのか、やはり経済を慎重に見極めてから利上げしないと、早過ぎる利上げのコストが大きいと、そちらをより重視されているのか、そのバランスについて教えてください。』

さてこの回答ですが、

『(答)バランスと申しますか、重要そうなリスクを様々にみたうえで、最終的には物価の見通しにそれらが影響するかどうか、そしてその見通しの周りのリスクがどういうものであるか、という判断につなげるということだと思います。経済のリスクについて、余計なことかもしれませんけれども、アメリカ経済をみますと、ここまでのデータを見る限り、労働市場以外は割と堅調に推移しているということかと思います。従って、いろんな機関の標準的な見通しをアメリカ経済が上振れて着地する、期間は難しいですけれども、というリスクもゼロではないかと思います。そういうことも含めて様々なリスクを点検していきたいと思います。』

物価のリスクの話をしないのがもうその時点でやる気ないですしおすし。


・これは笑ったんですけど

『(問)米国の経済状況についてお尋ねしますけれども、現在米国ではですね、一部の政府機関が閉鎖されておりまして、今日予定されております、9 月の雇用統計の発表も延期されるということが確実な状況になっています。こうした現在の米国の情勢がですね、日銀の利上げ時期の判断を遅らせてしまうというようなリスクについてはどのようにお考えでしょうか。』

に対する開口一番がもうハトハトチキン音頭全開でして、

『(答)特に米国経済のデータが公表される時期が遅れてしまうということについては、なかなか深刻な問題だなというふうに思っています。』

は??????別に未来永劫でない訳じゃないし、データ以外にも色々と調べられるでしょうし、そのためにNYの支店とワシントンの駐在員事務所があるんじゃないの?????と思うのですが、初手でいきなり「深刻」とか言っちゃう辺りがもうチキン全開なんだよな〜。

まあその後一応、

『私どもの対応としては、なるべく早く再開されるということを願うとともに、周辺のデータ、例えば雇用統計ですと、雇用統計そのものでなくても同種のデータがいくつかございますので、そこからある程度類推するという作業とか、あるいは今月後半にワシントンで[世銀・]IMF[年次]総会が開かれますが、そういう場所で、現地の政策担当者あるいは金融機関の方々とお会いして、生の情報を手に入れ、それも追加的な材料として判断していくというような作業を続けていきたいというふうに思っております。』

とはフォローしているのですが、だったら初手で「深刻な問題」とか言うなよという話で、出てこないという不便さはあるけれども、以下云々のように別の方法でも状況は把握できます、って説明すりゃいいだけの話な訳で、殊更に「深刻な問題」とか言ってしまうあたりが「利上げ先送りをする言い訳が有ればバンバンフレームアップして優柔不断モードになりましょう」という植田さんのハトハトチキンの心象風景を活写しているなあと思いました、まる。







2025/10/06

お題「高市さんはメローニになるかトラスになるかお楽しみ/植田総裁大阪講演はハトハトチキン音頭全開でしたな」

ありゃま高市総裁。

〇とりあえずはお手並みを拝見したいですがメローニになるかトラスになるかお楽しみということで

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA0371W0T01C25A0000000/
高市氏「積極財政」鮮明 赤字企業の賃上げ支援、金融政策「政府に責任」
高市早苗・自民党新総裁
2025年10月5日 2:00 [会員限定記事]

『自民党の高市早苗新総裁は4日の記者会見で「積極財政」を鮮明にした。早期のガソリン減税にくわえ、赤字企業の賃上げを支援すると打ち出した。日銀の金融政策を巡り「責任を持つのは政府だ」と語り、緊密な対話を迫った。』

『党総裁選で「責任ある積極財政」を公約した。4日の記者会見でもガソリン税の旧暫定税率の早期廃止を訴えた。1リットルあたり25円ほどを上乗せしている。地方自治体が物価高対策に使う交付金の積み増し...』(上記URL先より、以下会員記事)

ということで相変わらず「金融政策は政府が行う」という話を堂々としているし、赤字企業の賃上げ支援っていやそうじゃなくて「物価が上がる普通の経済」で賃金引き上げの出来ないような企業はご退場頂くことによって資源の適正配分が進むんじゃろ、というツッコミになってしまいますので、まあ特に経済政策に関して(他の政策もそうだけど)高市大先生の取り巻きのゴミを積極登用しだすかどうか、というのが岐路になろうかという所でございますな。

しかしインフレで困っているという状況で高圧経済マジでぶっこんでいただきますと、まあとてもチャーミングなことになりそうな気しかしませんので、いったんこれは日銀が利上げできないということにはなるでしょうけれども、どうせ円安になって何とかしなければいけなくなるので本当の意味での引き締め(いまみたいな利上げは引き締めでも何でもありません)が見れるかと思うと胸がドキドキしますね(心房細動ではない)。

まあなんですな、急に高市大先生がメローニ状態になって現実路線になれば、という期待はカシュカリ大僧正の頭髪程度の期待はしておりますが、ジャパニーズトラスショックとか起きて高圧経済もろとも爆発していただきまして、例のゴミみたいな取り巻きの経済ブレーン連中ともども二度と取り上げられなくなることになれば、そりゃまあそれはそれで長期的には災い転じて福となす(なお福となすためのコストは知らん)ということにもなって頂きますと幸いですが、あくまでもメローニになって頂く方を期待していますので念のため申し添えます(^^)。

ああそれから進次郎、おまえは10年雑巾がけをやって出直してこいというか、大臣やってやったことが大体碌なもんじゃないというのは多分お前根本から物事の考えがまちごうとるとしか言いようが無いので(特に今回の農相としての施策で日本農業新聞にボロクソ言われているとかもうねという感じで)、10年じっくりと実務をやってから出直したってまだまだ先はあるんだから総裁選とか当分出てこなくて良いわということでwwwwwwww



〇ということなので10月利上げが微妙になる所ですがここで植田総裁の大阪講演を確認しましょう

なお大阪講演ではご案内のように円安モードになっておったのでお分かりのようにハトハトチキンでしたが・・・・・・

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/data/ko251003a1.pdf
最近の金融経済情勢と金融政策運営
── 大阪経済4団体共催懇談会における挨拶 ──
日本銀行総裁 植田 和男

・珍しく今回のテキストは半角英数が認識されます

というクソどうでもいい事を指摘しておきたいのですが、最近の金懇挨拶とか講演のPDF版って半角英数をテキスト認識してくれない、という謎の仕様になっていて、引用するときにしゃあなしで補記しているという困ったちゃんなのですが、今回のは何故か補記不要となっていまして(そもそも半角英数成分が少ないというのもあるけど)大変助かりました。

でまあそれはそれで良いのですが、この「半角英数テキスト認識」の有無ってどうせこれ講演テキストを作っているエディターの問題だと思うのですが、茲許の野口さんや田村さんの講演や金懇では半角英数認識しないバージョンだったのですが、総裁のこれは認識するバージョン(ちなみに総裁記者会見のPDFは認識「する」バージョンです)になっている、という辺りは何か考察(妄想)ができそうな気がします笑。

・まあハトハトチキンというかチキンというかですわな

いやまあ結果的にはうっかり10月利上げ決め打ち予告ホームランしなくてセーフだったね(ニッコリ)というお話ではあるのですが、しっかしまあ今回の講演もハトハトチキンともうしますか、要するに単なるチキンさんであるなあ植田さんったらということで、よく言えば慎重なんですけどまあ優柔不断という方がふさわしいんとチャイマスカとは思います次第で、全編普通にハトハトチキンでしたな、でだいたい話は終ってしまうのでありました。

まあアレです、木曜に出ていた「主な意見」を見るとそれなりに高田さん田村さんの利上げ提案に対して議論があり、「利上げの必要は認めるが今じゃない」というようなそれなりに賛同に近い意見も散見された、というような9月決定会合だったのにも関わらず、総裁会見での植田総裁の説明が単に「反対多数で否決されました、以上」だった、という辺りが植田さんの「お気持ち」なんだと思いました。

ということで本編につきまして少々。


・経済の現状の説明文の棒読み感にワロタ

『2.経済・物価情勢』の『(経済の現状と先行き)』ですけれども、まずは経済の現状部分の説明何ですけど・・・・・

『はじめに、経済の現状と先行きについてお話しします。わが国の景気は、一部に弱めの動きもみられますが、緩やかに回復していると判断しています。』

という展望レポートおよび9月会合声明文の認識を踏襲するのはまあ良いんですけど、

『まず、企業部門について、図表1をご覧ください。一昨日公表しました、私どもの短観の結果をみますと、企業の業況感は、日米関税交渉の合意により、先行きの不透明感が後退したとの見方から、製造業の一部で改善し、全体としても良好な水準となっています。』

『図表2をご覧ください。企業収益は、関税政策による輸出採算悪化の影響などが製造業でみられていますが、全体としては既往ピーク並みの高水準が維持されています。右の表で今年度の収益計画をみますと、製造業では、前回調査の6月時点と同程度の 8.6%の減益が予想されています。もっとも、関税政策の影響が相対的に小さい非製造業では、前年並みの収益予想となっており、全体としてみれば、高めの水準が維持される見通しです。』

『図表3をご覧ください。左のグラフの輸出については、本年春先以降、自動車を中心に関税の引き上げに伴う駆け込み輸出とその反動の動きがみられますが、基調としては横ばい圏内の動きが続いています。右のグラフの設備投資は、緩やかな増加傾向が続いており、今年度の設備投資計画をみても、増勢が維持されています。企業の皆様へのヒアリングによれば、デジタル関連投資や人手不足に対応するための省力化・効率化投資など、中長期的な視点で必要な投資は、しっかりと行っていくとの声が多く聞かれています。』

以下続くのですが、もうこの棒読み感(ライブは聞いてないのでこれをどういう感じで説明しているのかは知らんですけど)満載の説明は何なのよというお話ではあります。

でまあその結論ですが、

『このように、米国の関税政策は、わが国の輸出関連企業の収益面にマイナスの影響を及ぼしていますが、これまでのところ、設備投資や雇用・賃金動向を含め、わが国経済全体に波及している様子は窺われません。』

なので何なのかとかそういう判断の説明は一切なしで、

『先行きを展望すると、個人消費は雇用者所得の改善に支えられて底堅く推移するものの、関税政策の影響を受けて海外経済が減速し、輸出や設備投資の下押しに作用することから、わが国経済の成長ペースはいったん鈍化すると考えています。もっとも、その後は、海外経済が緩やかな成長経路に復していくもとで、成長率は高まっていくとみています。』

ということでそりゃまあ9月決定会合やったからその公式見解棒読みで何か文句あるかと言われると困りますけれども、結局のところ7月展望の説明と一緒で直近の数値の説明はしているものの、直近の数字が見通しに対してインラインなのか上振れなのか下振れなのかの評価も無し、というやる気のない説明になっておりまして、まあハトハトかどうかは兎も角としてチキンなのはわかりました。


・しかも物価が世の中的に問題になっているのにこっちは直近のアップデートすらないというやる気のなさ

『(物価の現状と先行き)』を見ますとこれがまたアレでして、

『続いて、物価情勢についてお話しします。』

『図表6をご覧ください。生鮮食品を除いた消費者物価の前年比は、足もとで+2%台後半となっています。こうした物価上昇の主因は、米を含む食料品の動きです。水色の棒グラフが物価全体の伸び率に占める食料品価格の寄与度を示していますが、これをみますと、消費者物価上昇の半分以上が食料品価格の上昇に起因しています。食料品価格、とりわけ米価格の上昇は、人々の消費量が突然増えたというよりも、供給サイドの一時的な要因によって生じている面が強いため、これが収まっていけば、消費者物価の押し上げ寄与は次第に低下していくとみています。このため、日本銀行では、7月の展望レポートにおける中心的な見通しとして、生鮮食品を除いた消費者物価の上昇率は、来年度にかけて2%を下回ってくると予想しています。』

7月展望レポート以降の推移についての評価はありませんなあ。

『そのうえで先行きを展望すれば、関税政策などの影響を受けつつも、成長率が高まるもとで人手不足感が強まり、中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、基調的な物価上昇率、すなわち食料品などの一時的な変動要因を除いた物価上昇率と現実の物価上昇率はともに高まっていき、展望レポートの見通し期間の後半には、2%の「物価安定の目標」と概ね整合的な水準に達すると考えています。』

全く7月からアップデートされていない(というか4月展望からアップデートされていない)という話だし、それこそ9月決定会合で高田さん田村さんが「物価」にフォーカスして利上げ提案をしたというのにこの物価の扱いの短さ、という辺りに兎に角植田さんは「経済の下振れリスクガー」状態である、というのが見て取れると思います。


・9月会合の議論を踏まえれば「物価」が重要ポイントになるはずですがそうはならないのがハトハトチキンクオリティ

金曜は真っ先にそこに目が行きました(^^)。『(当面の点検ポイント)』って奴ですが。

『今申し上げた経済・物価の中心的な見通しを巡っては、様々な不確実性が存在します。以下では、当面、わが国の経済・物価情勢を点検するうえで重要と考えられる3つのポイントについて、お話しします。』

そしてその一発目は高田さんや田村さんが指摘する物価情勢ではなくて・・・・・・・

『第1に、海外経済の動向です。海外経済については、各国の通商政策等の影響を受けていったん減速するものの、その後は緩やかな成長経路に復していくと日本銀行はみています。しかし、こうした見通しは、主要国の経済や政策の動向、とりわけ米国経済の今後の展開によって大きく変わる可能性があります。』

はいはい米国経済ガー米国経済ガーということですが、もはやめんどくさいのでその中身はパスします。途中を割愛しまして、

『第2のポイントは、関税政策が、わが国企業の収益や賃金・価格設定行動にどのような影響を及ぼすか、という点です。15%という関税率が決まったことは、関税政策を巡る不確実性の低下に繋がります。そうした関税率を前提とした各企業の新たな経営戦略は、今後、明らかになってくると考えています。』

これを言い出すとまあ年末までは様子見をしますよ、って話になるのですがまあこの中身の方も一応拝読しますとですね、

『今回の短観の結果をみる限り、関税の影響が相対的に小さい非製造業については、全体として、高水準の収益が維持される可能性が高いと思われます。一方、輸出ウエイトの大きい自動車などでは、冒頭申し上げたように、今年度の収益計画は、相応の減益見通しとなっています。』

ゆうて自動車って短観の現状DIって前回から見たらどちゃくそ確りしているんですけどね。

『こうした業種を含め、これまでに蓄積された高水準の企業収益がある程度バッファーになると見込まれるため、賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇していくメカニズムは、基本的に、今後も維持されると考えられます。』

と言ってますが、

『しかしながら、先行き、海外経済や各国の通商政策等を巡る不透明感が高い状況が続くような場合には、企業におけるコスト削減の動きが強まったり、物価上昇を賃金に反映させる動きが弱まる可能性があります。日本銀行としては、今後、こうしたリスクが顕現化してくることがないか、本支店を通じて、企業の皆様の声をきめ細かく確認していきたいと考えています。本日もこの後、皆様の見方をお伺いできれば幸いです。』

どう見てもハトハトチキンです本当にありがとうございました。


でもってやっと3番目に物価の話が来るのですが、この物価の話もですねえ・・・・・

『第3の点検ポイントは、食料品価格の動向です。』

物価の上振れリスクとか、コストプッシュの二次的波及とか、インフレ期待の変化とか、そういう話ではなくて「食料品価格動向」というミクロの話をしている時点で物価上振れリスクの話を小さなスケールに閉じ込めているのがもうねという感じです。

『現在の価格上昇は、基本的に一時的な要因による部分が大きいとみていますが、最近では、人件費や物流費を食料品の販売価格に転嫁する動きも相応に影響しているという指摘もあり、企業の賃金・価格設定行動次第では、価格上昇が想定以上に長引く可能性もあります。反対に、食料品価格上昇の長期化が、家計のコンフィデンス悪化に繋がれば、その分、個人消費が下押しされ、物価上昇率を押し下げる方向に作用する可能性にも、今後、注意していく必要があります。』

とまあそういう話で二次的波及効果の話っぽい表現が無いわけでもないのですが、ただまあ明示的にそういう上振れリスクを想起させるような書き方はしていない、という所がもうねという感じでして、再三再四申し上げているように、高田さんと田村さんは「物価」にフォーカスして利上げを提案していたというのに何ですかこの扱いはということでやっぱりハトハトチキン音頭でありました、というお話。


・金融政策に関してはハトハト音頭にも程が有るわけで

『3.日本銀行の金融政策運営』ってのがありますがこれまたやる気無し無しモードでして、

『続いて、日本銀行の金融政策運営についてお話しします。』

『米国の関税政策導入が公表された4月を境に、内外経済を取り巻く環境は大きく変わりました。』

のっけからこのハトハト音頭。

『関税政策は、米国自身の労働市場や物価情勢を含めて世界経済に不確実性をもたらし、15%というこれまでにない高い関税は、わが国経済の下押し要因として作用することになります。』

は〜〜あハトハト♪

『こうした点を踏まえると、まずは、緩和的な金融環境を維持し、経済活動をしっかりと支えていくことが大切です。』

そもそも緩和のし過ぎの金融環境が本当に経済に(中長期的な意味で)プラスなのかということを考えてほしいもんですが。

『このため、日本銀行は先月の金融政策決定会合において、0.5%の政策金利を据え置きました。』

ということで、利上げ提案があって、しかもそれに対して「利上げに対して理解を示す」議論も行われた筈なのですが、すっかりそういうのはスルーして説明しているのがハトハト音頭。

『先行きの金融政策運営については、図表8でお示ししている通り、現在の実質金利がきわめて低い水準にあることを踏まえると、これまでご説明したような経済・物価の中心的な見通しが実現していくとすれば、経済・物価情勢の改善に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えています。』

7−9の実績がインラインだったのかどうかの説明一切スルーして言われましても空しく響くだけですなあ。

『経済・物価情勢が改善しているかどうかについては、当面は、先ほどお話ししたいくつかのポイント、すなわち、米国を始めとする世界経済の動向、関税政策がわが国企業の収益や賃金・価格設定行動に与える影響、食料品価格を含めた物価動向などを点検していくことになります。』

ということだそうですが、じゃあこれらのポイントの今の時点での走りは何のよというのも無いわけで、要するに利上げを先送りするために理屈捏ねているだけということですわ(溜息)。

『日本銀行としては、経済・物価の中心的な見通しが実現する確度や、上振れ・下振れ双方向のリスクを丹念に点検し、予断を持たずに、適切に政策を判断していく方針です。』

最後にバランスシートの話があるのだが話にならんので割愛。


・・・・・・ということでまあ想定通りですがハトハトチキンでしたけど、自民党総裁が高市さんになったんでこりゃまたチキンの上塗りになりそうな悪寒しかしないのですが、まあゆうて高圧経済タコ踊りをしているうちに円は飛ぶ飛ぶ炎と燃えて、となって結局利上げに追い込まれることになると思いますし、そうなると利上げの時も今までのハトハト音頭じゃなくて威勢よくいかないと行けなくなると思うんですけどね(個人の感想です)。でもって高市さんが急にメローニとなってしまえばやっぱり利上げ待ったなし(物価上振れですから)となるし、ってなところじゃないのかねえとは勝手に思うのですが(モチのロンだがパスによって長期金利は大きく話が違ってくるので政策金利の話ですよ為念)。







2025/10/03

〇内田副総裁の証券大会挨拶はいつもどおり何の材料にもなりませんでした(メモ)

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/data/ko251002a.pdf
令和7年全国証券大会における挨拶
日本銀行副総裁 内田 眞一

こちらは投資の日とかいう牛のキャラクターの日の当日あるいは近所に実施している奴なので毎年下半期の期初に実施されて、通り一遍の挨拶しかしないのが仕様なので本来これは材料にするものではないんですよね。

しかしながら、今年の1月の15日と16日に植田総裁が地方銀行協会と第二地方銀行協会の新年の賀詞交歓会みたいな会合で連日にわたって利上げの地均し発言みたいなの(「来週の金融政策決定会合で利上げを行うかどうかについて議論し、判断したいと思う」という発言をしたと当時の報道にありますわな)をした、という余計な事案がありまして(しかもこの賀詞交歓会みたいな新年あいさつは特に日銀HPに出すような原稿ものではなかった)、そういうイレギュラーな事やられると、今回のウッチーのだって何か言い出すんじゃなかろうか、とまあ思っちゃうじゃないですか。

(ちなみにこの時はその前の1/14に氷見野副総裁の横浜金懇での突撃講演があって12月にハトハトチキン会見で一気に遠ざかった利上げ観測を一気に引き寄せるというジャガーチェンジコミュニケーションが炸裂していた訳でございますので紙に出たものの方が先行していて植田さんはそれをリコンファームした、という感じです)

てな訳ですので、まあガチのガチで10月利上げ決め打ちでエイヤーとしたいのであればここで何か言う可能性も無くは無い、という発想になってしまう訳ですが、ご安心ください今回も特になにもありませんでした。

ということで金融政策に関する説明部分ですが、

『続いて、金融政策運営についてお話しします。日本銀行としては、現在の実質金利がきわめて低い水準にあることを踏まえると、先ほど申し上げた経済・物価の見通しが実現していくとすれば、経済・物価情勢の改善に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えています。そのうえで、こうした見通しが実現していくかについては、内外の経済・物価情勢や金融市場の動向等を丁寧に確認し、予断を持たずに判断していく方針です。』

ということで、まあ予定通りの公式見解棒読みモードになっておりまして、ここでなにか新しいのは出てこない、という結果でした。一応メモだけという感じですが。


〇本日の植田総裁の講演は注目したいところですがこれまたなんも出せないし何ならチキンかと

https://www.boj.or.jp/about/calendar/index.htm
公表予定

3日(金)
8:50    ○  ●  日銀当座預金増減要因(10月見込み)
10:05   ○  ●  【挨拶】植田総裁(大阪)
14:00   ○  ●  需給ギャップと潜在成長率

ということで、総裁講演は朝の10時5分に講演原稿が解禁されるようですのでその時間に注目、といいたいのですが、さすがに明日自民党総裁選挙があるので今回仮に不測の事態が無ければ10月利上げ、と腹を括っていたとしても、自民党総裁選挙が不測の事態になるかもしれませんので、とりあえず昨日のウッチーのトーンで逃げてくるとは思います。

ただ困るのはその後記者会見も予定されていて、昨年ですと会見をブルームバーグさんとかが実況放送していたと思いますが、こちらで植田さんが要らんことを言ったり必要なことを言わなかったりするというリスクがありまして、まあどっちにしましてもハトハトチキン方向で発言が出てくるんじゃネーノとしか思えないのが何んともかんとも。

・・・・・と申しますのはですね、この前のMPM後の記者会見ってあったじゃないですか

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2025/kk250922a.pdf
総裁記者会見
――2025年9月19日(金)午後3時30分から約65分

『(問)私からも二問お伺いします。一つはですね、今日二人の政策委員から利上げの提案があったことについてです。0.75%程度に上げるよう議案が提出されたということですが、この議案を巡る議論について、もう少しご説明を頂ければと思います。次回会合での取り扱い等についても、どういう議論があったかとか、そういったところについてもお伺いできればと思います。(後半割愛)』

に対する回答って、

『(答)前段ですけれども、詳しいことは議事要旨をご覧頂くしかないと思いますけれども、先ほど申し上げましたように、高田委員は、物価が上がらないノルムは転換して、物価安定目標の実現が概ね達成されたという理由で提案されましたし、田村委員は、提案はやはり 0.75%ですが、理由としては、物価の上振れリスクが膨らんでいるということに着目され、中立金利にもう少し近づけるためということで提案されました。これらの提案に対して他の委員は反対されましたので、必ずしもそれぞれが提案された理由に、完全には同意されなかったということになるかと思います。(後半割愛)』

って回答でして、なんか物凄いあっさりと否決されたような説明をしていたんですけれども、ご案内のように、後日出てきた「主な意見」ではこの利上げの是非についてはちゃんと議論しているし、「利上げの必要性は認めるけど今のタイミングではない」というような意見も主な意見の中に出ていた、ということを勘案しますと、本来ここの回答ってもっと「利上げ提案に関しての議論を経た結果として今回は反対多数で否決されました」というような言い方をして「ちゃんと議論はしていたんですよ一蹴されたわけではないですよ」って言い方をして然るべきだったんですよね。

然るに、植田さんの会見の説明は上記にあるようにあっさり味(会見一応途中まではリアタイ視聴していました(途中から質疑がクソつまらなくなって作業に戻ったw)けれども、この部分はやはりあっさり味の「反対多数で否決されました」でした)けれども、あの「主な意見」との温度差は何なのよ、という所ですよね。

まあ以下はワシの妄想の産物なので話半分に聞いて頂きたいんですけど、9月会合で結構具体的に利上げの検討が行われ、「タイミングの問題」という感じの話が多数派かどうかは微妙ですけれども、少なくとも少数意見と切ってしまえる量ではない、という状態になっていた、というのが主な意見で見えてきていたんでしたら、当然ながら決定会合でもそういう話をしていた筈なので、本来植田さんはそこのニュアンスくらいは分かるように説明してもおかしくはないのですが、あえてあっさり味の説明をしたのは、まあ植田さんご本人がハトハトチキンの本領を発揮して「地蔵の言い訳ができるうちは地蔵継続」というスタンスの最右翼である、ということを示唆するものではないか、とまあ左様に思う訳ですな。

何故ならばその直後の質疑で、

『(問)今ほどの質問とちょっと似てるんですけれども、まず今日の金利の決定について、高田委員がですね、ノルムが転換して物価安定目標の実現を概ね達成されたと、田村委員が上振れリスクについても言及されてます。総裁ご自身のですね、このお二人のご意見に対する違い、距離感というものがどの程度なのか、というところを教えて頂けますでしょうか。(後半割愛)』

についても、

『(答)前半は先ほどのご質問と同じで、ただ私の意見はというご質問だったと思いますけれども、基本的には、基調的な物価上昇率という表現で申し上げれば、高田委員は、概ねそれが 2%前後のところに達しているという評価をされたと思いますけれども、私の評価としては、まだ少し下回っていて、しかし 2%に向けて近づきつつある過程にあるという評価でございます。それから、田村委員は、見通し対比物価の上振れリスクが膨らんでいるということで、利上げ提案をされたわけですけれども、私の認識では、それももちろんリスクとして一つあると思いますけれども、米国の関税政策の影響等がこれから一段と出てくる可能性がある中で、景気に対する下振れリスク、それを通じて物価に対する下振れリスク、これも意識しないといけないというふうに考えています。(後半割愛)』

っていうやる気無し無し回答をしていました次第で、植田さんにやる気があるならこんなやる気無し無し回答する必要無いじゃろというお話ですよね、と思うのよね。


・・・・・・と考えますと、今日の講演にしてもハトハトチキンの申し子である植田さんがそんなやるきのある講演や会見をぶっこんでくる訳が無い、という事になろうかと思うのですが、現世利益的に言いますと今の時点でのポジションがどっちに傾いていて、傾いた方は総裁講演と会見でタカが出るのを期待しているのかハトが出るのを期待しているのかどっちでしたっけというお話でして、これがまたイマイチ分からんです、事前の市場が期待するのがどっち方向七日によって反応も違ってきますからなー。

ただまあ何ですな、一昨日の短観出たときって瞬間下で反応しましたが、その後どちらかと言えば先物上昇気味で推移していたし、昨日は昨日で10年入札が(前場に米国のせいで相場が持ち上がった所で入札になったせいもあって)ズッコケ三銃士な入札になってしまったのを見ますと、それなりに地均しぶっこんでくる期待は入っているのかね、とは思ってしまいますので、大したこと言わなかった場合の反動ってどうなのかなとかそういうのを楽しみにしています(フラグ建築をしている訳ではないのでよろしく)

ああそれから20日くらいになって急に某社とか某社とか某社とかにポロリが出てくるとかいうコミュニケーションが出てくるのはとっても悲しいので今回は政策金利上げるにしても上げないにしても事前のポロリ報道が出ないことを全力で祈念しております。



〇これは貯蓄性のリテールMMFとは全然別の話だと思うのですが・・・・・・・(これまたメモ)

昨日の日経1面にドドーンと出ていた記事、まあ一応本紙確認しましたりもしましたが、題名及びリードの部分と中身の部分の話がなんかちぐはぐでしたよね。

ちなみに日経朝刊に出る前に前日(1日)の夜にこんな形で電子版に出ていたのですが、

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB2812I0Y5A920C2000000/
国内MMF、9年ぶり復活 「金利ある世界」で増える投資の選択肢
【イブニングスクープ】
為替・金利
2025年10月1日 18:00 [有料会員限定記事]

『日本国債を軸に運用し、預金に近い商品として知られるマネー・マーケット・ファンド(MMF)が約9年ぶりに復活する。超低金利下で姿を消していたが、日銀の利上げに伴う金利上昇を背景に、主要金融機関が早ければ2026年前半に販売を再開する。「金利ある世界」への回帰で個人マネーの選択肢が増えてきた。』(上記URL先より、以下会員記事)

そもそも日本国内でマイナス金利前に販売されていた公社債投資信託(日々決算型)のMMFは「マネー・マネージメント・ファンド」なのでその時点でチャイマスガナではある(日本で販売される外国籍投資信託の「外貨MMF」は「マネー・マーケット・ファンド」と言いますよ為念)というのがもうねというお話ですが。

でまあ、記事全文はそんな訳で有料会員限定記事、ということなので本紙とかをみたりしましたが、リードの部分と中身の部分の話がイマイチかみ合わんじゃんとおもったら、本件の開発に携わっている会社さんからのリリースでていましたな(直リンはしません)

https://progmat.co.jp/news/2025-10-02-press/
フ゜レスリリース「ステーブルコインと連携した“オンチェーン完結型デジタル証券“の共同検討結果について」

あとこっちらのシャッチョさんのブログ(note)でも説明があって(クソ長いです)これまた直リンはしませんけど
https://note.com/tatsu_s123/n/na345deba4ac2
【速攻解説】「トークン化MMF」と「トークン化法」で、ステーブルコイン×デジタル証券の”理想形”へ!日本と海外のギャップと解決に向けた道筋とは

ってのがありまして、ざっくりとアタクシが理解したのかしてないのかはともかくとして、おおむね外していないだろうと思われるのは、こちらメインはブロックチェーンを用いた決済プラットフォームの話であって、その決済プラットフォーム上で動く電子トークンの裏付けになるのがMMF型の投資信託になる(ので別法域の話ですけど米国ですとこのデジタル証券専用にMMFを立てる話になるようですな)というお話なので、「国内MMF復活」という文字列でイメージされるマイナス金利によって商品が終了する前の個人向けの貯蓄性資金ニーズへの対応商品としてのMMFとはだいぶ別物のお話、とまあそういう事のように見受けられました。と言っても同社に直接質問したりしたわけではないのでアタクシの誤解があったらゴメンナサイ(ってのもあるので直リンはしてなかったりするのだ)。

まあここから更に日銀が利上げをしていけば(あるいはその利上げを見込んで)マイナス金利時代に瀕死の状態になっていた国内金利商品の復活というのはそれはそれでアリエールという話ではあるのですけれども(現に定期預金金利とかだって期間限定高率キャンペーンとか色々と威勢の良い話が散見される訳でございますしおすし)、この話自体はそれらの貯蓄性資金取り込みの話とは多分話の次元が異なる物なので、この辺りをネタにして「個人マネー取り込みの金利競争が始まった」とか言い出すとだいぶ恥ずかしい事になるので偉い人からご下問があった時には注意しないといけませんですぞ、と思いましたのでメモっておきます。







2025/10/02

お題「9月短観は今月の利上げを排除しないというか普通に後押し材料じゃろ」

????
https://www.afpbb.com/articles/-/3601072
トランプ氏、自身をノーベル平和賞に選ばないのは「米国への侮辱」
2025年10月1日 7:47 発信地:クアンティコ/米国 [ 米国 北米 ]

『【10月1日 AFP】ドナルド・トランプ大統領は9月30日、複数の戦争解決に貢献したと主張し、自身をノーベル平和賞に選ばないのは米国への「侮辱」になると述べた。』(上記URL先より)


〇日銀短観は10月利上げの障害にならないというか後押しになりますなあ(いつもの私家版チェック)

ほいな
https://www.boj.or.jp/statistics/tk/gaiyo/2021/tka2509.pdf
短 観(概要)―2025年9月― 
 第206回  全国企業短期経済観測調査 
< 回 答 期 間 > 8月27日 〜 9月30日

だいたい前半2週間くらいに回答されるものが多いらしいようなことを聞いた覚えがあるので、9月とは言ってますけど概ね9月前半の状況なんですかねという所で・・・・・・

・今回の短観は堅調な内容だったと思いますがまあこれからの材料待ちですしおすし

前回6月短観は悪くなると思いきや全然悪くない内容で、関税で国難とは何だったのかというような風情ではあったので、債券先物10銭ちょい反応しておりました(その後10年国債入札が激強の結果となったので全ての話がすっ飛んでしまいましたが)って感じでしたが、今回は今回で同じく全然悪くない内容だと思うのですが、これまた債券先物ちょっと反応してたように見えますけれども、その後期初の買いだか何だかしらんけど先物ホイホイと上昇した、と思ったら引けに掛けてはヘロヘロとしてて、結局まあ達観すればあんまり反応してなかったたって事になるのかなとは思いますが、そりゃまあここから先植田さんの講演会はあるし(と言っても自民党総裁選の前日になってしまったのでただで無くさえチキンさんの総裁が10月の話とかできんじゃろとしか言いようがない)自民党総裁選あるし、というところですかね、知らんけど。

とは言いましても7−9って成長率弱いと見込まれる筈のところでの短観なのに全然弱くないじゃんという物件だし、後述しますが企業の価格設定や物価観に得な変化もなく引き続きインフレ期待は確りとしている、という結果ですので、10月利上げをしない理由というものも特にない、ってお話ですな。

ただまあ別に10月に利上げしないと大変な事になるという訳でもない(10月利上げしなかった場合にいつものハトハトチキン踊りが出てしまって円安爆誕となると大変なことになるのですが・・・)という説もあるのですが、ゆうてこれもう1月(=年末の米国の消費と国内企業の冬季賞与設定と来年の春闘の出足の雰囲気が分かる段階)までの間に余程の下方屈曲が起きない限り利上げって話になりますよね、とは思うんですけどね、個人の感想ですけど。


・業況判断DIは「前回の先行き下がる見通しよりも全然強い」し何なら前回の短観はトラ公前なんですよ!!!

          (6月短観)        (9月短観)
          現状→9月予測     現状→12月予測
製造業大企業   +13→+12     +14→+12 
製造業中堅企業 +10→+6       +12→+8        
製造業中小企業  +1→▲2       +1→▲1

非製造業大企業  +34→+27     +34→+28
非製造業中堅企業 +25→+17     +24→+18
非製造業中小企業 +15→+9      +14→+10

ということで、いつものように「前回出ていた先行きの慎重な見方に対して結果は上振れ」で「そうは言っても先行きは現状よりも慎重」って結果になっていますが、こちらは基本的に短観DIが強いときに景気のモメンタムが盛大に良くない限りは先行きDIって足元対比で堅めに出てくる傾向が強い(と15年以上見てて思う)ので、まあこれは普通に堅調な結果でっしゃろと思います(たしかBBGの集計してた予想は大企業製造業+14だったので見事にインラインだったかと)。


ちなみに前回6月短観の時に書いた駄文を再掲しますと、

+
こちらですけど、何せ前回の短観は「 < 回 答 期 間 > 2月26日 〜 3月31日」でして、短観の回答ってのが概ね回答期間の前半の早いうちに回答される傾向がある、という風に聞いておりますので、すなわちあの4月に出たトラ公のキチガイ関税は織り込んでいない(トラ公の事だからある程度のブラッシュボールは投げてくるじゃろというのは織り込んでいたと思いますが)訳でして、その状況でトラ公に対するフワッとした懸念段階で出した先行きの下げ(特になぜか非製造業)見通しに対して、今回って軽々と上方修正していますし、殆ど3月短観から現状DI変わっていないという結果になっておりますので、これは堅調堅調。

ただまあどうせ大本営のことですから、「米国関税政策の悪影響はこれから出てくるんです」とか言い出す下がる下がる詐欺によってこの数字は追い風参考記録扱いしてくる、に1万ジンバブエドルといった所です。(ここまで前回6月短観の時に書いた駄文より)


まあ何ですな、この「米国政策の悪影響はこれから出てくる」攻撃は結構便利で下がらなければ何度でも使えるし、そりゃまあトラ公のやってるのって正気の沙汰とは思えないような事をやっているし、なんだかんだいって外国に対するカツアゲに成功しているのでその分米国内での悪影響が緩和されている面もあって(当然こっちが煽り食うんだが)イマイチはっきりと分からんまま推移するって事なのかもしれませんけれども、どこまで「米国政策の悪影響が懸念なので今の大規模緩和を物価高にも関わらず継続しますコケコッコー」というのが通じるのかというのは良くわからんですなwww

いずれにしましても企業セクターは全般的に見れば堅調です、ってのが1ページ目に堂々と出ているというお話。

しかしまあ何ですな、「自動車」セクター見ますと、

                 (6月短観)        (9月短観)
                現状→9月予測     現状→12月予測
「自動車」大企業      +8→+7       +10→+8 
「自動車」中堅企業   +13→+0        +16→+2 
「自動車」中小企業    +0→▲8        +5→▲3 

まあ「先行きは警戒ですぅ」というのは特に中堅中小で今回も示されてはいますけれども、自動車の追加関税が無事に引き下がったことで何のことは無い業況感改善している訳でして、「関税政策の影響がこれから出てくるから云々」の話は、ここから米国のキチガイ政策によって米国経済が悪化するというルートが残っているとは言え、直接的な関税云々の話はもう一段落なんじゃネーノとしか思えないんですけど、それでも「米国の影響ガー」で利上げを引っ張るんですかねえ・・・・・・・

いやあのですね、これが今の政策金利水準自体がより中立金利っぽいところに近いような水準(知らんけど少なくとも1.5%とかそういう今よりも全然高い水準じゃろ)にいるなら「米国の影響ガー」で様子見地蔵をするのは分かるんですけど、政策金利水準が0.5%で思いっきり金融政策でアクセルベタ踏み状態で物価は3%だ何だと言ってて物価高で国民の不満が爆発して人心が荒廃しつつある今日この頃な訳ですから、そらお前らこの馬鹿緩和の調整をしろよとしか思えんのだが・・・・・・・


・企業の販売価格見通しはトラ公関税大会を経た6月9月短観でも安定推移していますよね

販売価格見通し 全規模合計 全 産 業
1年後 9月:2.8%→12月:2.6%→3月:2.7%→6月:2.8%→9月:2.8%→12月:2.8%→3月:2.9%→6月:2.9%→9月:2.8%
3年後 9月:3.8%→12月:3.7%→3月:4.0%→6月:4.1%→9月:4.1%→12月:4.2%→3月:4.4%→6月:4.3%→9月:4.3%
5年後 9月:4.4%→12月:4.4%→3月:4.7%→6月:4.8%→9月:4.9%→12月:5.0%→3月:5.2%→6月:5.1%→9月:5.2%

大 企 業 製 造 業
1年後 9月:2.4%→12月:2.2%→3月:2.2%→6月:2.3%→9月:2.2%→12月:2.2%→3月:2.3%→6月:2.3%→9月:2.2%
3年後 9月:2.9%→12月:2.8%→3月:2.8%→6月:3.2%→9月:3.1%→12月:3.2%→3月:3.4%→6月:3.1%→9月:3.2%
5年後 9月:3.1%→12月:3.0%→3月:3.1%→6月:3.3%→9月:3.4%→12月:3.4%→3月:3.7%→6月:3.8%→9月:3.9%

大 企 業 非製造業
1年後 9月:2.2%→12月:2.0%→3月:2.0%→6月:2.1%→9月:2.1%→12月:2.2%→3月:2.4%→6月:2.3%→9月:2.3%
3年後 9月:2.8%→12月:2.7%→3月:2.8%→6月:3.0%→9月:3.0%→12月:3.1%→3月:3.1%→6月:3.2%→9月:3.4%
5年後 9月:3.4%→12月:3.2%→3月:3.2%→6月:3.4%→9月:3.5%→12月:3.6%→3月:3.5%→6月:3.9%→9月:4.1%

とまあここ2年の推移を出すと普通に堅調なまま安定していますし、何なら(人件費などの影響が大きいという話になっている)非製造業の5年のところとかホイホイと上昇しているのでして、ハトハトチキン先生は相変わらず企業行動の下方屈曲が懸念されますって言いそうですけど、どう見たって企業の価格設定に関するノルムがゼロノルムからプラスのノルムに変化した、ということでここは高田っちの9月会合での意見そのものじゃん、と思います。


でですね、うっかりしておりましたがこれ前回駄文書いたのに対して日銀に土下座しないといけないのがありましてですね・・・・

(ここから前回6月短観を見て7/2に書いた駄文より)
この推移を見ますと、どこからどう見ても「企業の価格設定行動はこの2年間ほど全然変わらずに堅調」としか言いようが無いと思うのですが、これまた「米国関税政策の悪影響は以下同文」と言い張ってくると思います。まあこれを受けて7月展望が4月にクソ下げしたものを撤回でもすれば日銀も大したもんですけど、そんなタマではない、というのは散々見ておりますのでwwwww
(ここまで前回6月短観の時に書いた駄文より)

よくよく考えたら7月展望レポートで物価見通しの足元だけですけれどもバチクソ引き上げておりました。結局足元だけしか上げてないので政策に直結しないという残念な上方修正ですけれども、珍しくあっさり味で見通し違いを認めて上方修正していたのですが、短観の時にこんな悪態ついてたの忘れていましたのでジャンピング土下座をさせていただきます(^^)。


・企業の物価全般見通しも同様でこの2年くらいずっと高値安定しているんですけどね

物価全般見通し 全規模合計 全 産 業
1年後 9月:2.5%→12月:2.4%→3月:2.4%→6月:2.4%→9月:2.4%→12月:2.4%→3月:2.5%→6月:2.4%→9月:2.4%
3年後 9月:2.2%→12月:2.2%→3月:2.2%→6月:2.3%→9月:2.3%→12月:2.3%→3月:2.4%→6月:2.4%→9月:2.4%
5年後 9月:2.1%→12月:2.1%→3月:2.1%→6月:2.2%→9月:2.2%→12月:2.2%→3月:2.3%→6月:2.3%→9月:2.4%

中小企業 製 造 業
1年後 9月:2.8%→12月:2.7%→3月:2.6%→6月:2.7%→9月:2.6%→12月:2.6%→3月:2.7%→6月:2.6%→9月:2.6%
3年後 9月:2.4%→12月:2.4%→3月:2.4%→6月:2.5%→9月:2.5%→12月:2.5%→3月:2.6%→6月:2.5%→9月:2.6%
5年後 9月:2.3%→12月:2.3%→3月:2.4%→6月:2.5%→9月:2.4%→12月:2.5%→3月:2.5%→6月:2.5%→9月:2.6%

中小企業 非製造業
1年後 9月:2.8%→12月:2.6%→3月:2.6%→6月:2.6%→9月:2.6%→12月:2.6%→3月:2.7%→6月:2.6%→9月:2.6%
3年後 9月:2.5%→12月:2.4%→3月:2.4%→6月:2.5%→9月:2.4%→12月:2.5%→3月:2.6%→6月:2.5%→9月:2.6%
5年後 9月:2.3%→12月:2.3%→3月:2.3%→6月:2.4%→9月:2.4%→12月:2.4%→3月:2.5%→6月:2.4%→9月:2.5%

これに対する感想ですが、前回7月短観の時に書いた駄文からまったく変わりませんので再掲しますwwwwwww

毎回申し上げていますが、こちらで大企業じゃなくて中小企業をだしているのは、かつてこの短観の数字を出しだしたときに日銀大本営は「大企業の価格見通しはエコノミスト見通しや市場見通しに影響されやすいが、より一般の見方に近いのは中小企業の見通しである( ー`дー´)キリッ」とか言ってたんですが、黒田末期以降は利上げを渋る屁理屈を並べるのに忙しいので、すっかり言わなくなっているので可哀そうなので掲載している次第でありますw

でまあ今回は確かにスライトリーに下がってい入るものの、結局のところこの2年間ほど特に著変は無い、とも先ほどと同様に言える訳でございまして、「そもそも論として何を持ち出せば「インフレ期待がまだ2%に届いていない」とか言えるのか、というのを日銀は真面目に示すべきではないか、と斯様思う訳です、ってのを毎回のように言っているのですが、ひたすら誤魔化し続けているのが変わっていない、というのも皆様ご案内の通りかと存じます。


・販売価格判断と仕入価格判断は前回見通しよりはやや弱め(絶対水準は強いけど)

販売価格判断

            (6月短観)         (9月短観)
           現状→9月予測      現状→12月予測
製造業大企業   +25→+27       +24→+25
製造業中小企業 +27→+31       +25→+31

非製造業大企業  +34→+30      +28→+32
非製造業中小企業 +30→+33      +28→+33


仕入価格判断
          (6月短観)          (9月短観)
          現状→9月予測      現状→12月予測
製造業大企業   +39→+39      +38→+39
製造業中小企業 +54→+56      +52→+56

非製造業大企業  +45→+44     +41→+46
非製造業中小企業 +54→+56     +52→+57

ということでこちらの数値ですが仕入、販売共に「見込みほどは上がらなかった」という数字なので、まあ一応物価がこの後一旦上昇率は鈍化する、という見通しに整合的ではありますが、ゆうてこれ数字自体は強いのでまあ水準が下がるとかそういう夢のようなお話にはなりませんですね。


・雇用判断DI:ここのところずっと「見通しほどは一段の引き締まりなし」ですが今回は全般少しずつ逼迫傾向ですかね

            (6月短観)        (9月短観)
           現状→9月予測     現状→12月予測
製造業大企業   ▲18→▲22     ▲19→▲22
製造業中堅企業  ▲24→▲28     ▲25→▲28
製造業中小企業  ▲23→▲28     ▲25→▲31

非製造業大企業   ▲39→▲40    ▲39→▲40
非製造業中堅企業  ▲46→▲48    ▲46→▲50
非製造業中小企業  ▲46→▲50    ▲46→▲50

これも傾向は同じで、毎度「先行き更に雇用人員が逼迫するという見通し程には引き締まらない」という結果ですが、今回は全般的にちょっとの数字ではあるのですが、雇用人員の逼迫度合いが全体的に強まっているように見えるなあとは思いました。


・設備投資計画:別にコケる気配が無いんだが・・・・・・・

▽設備投資額(含む土地投資額)の足取り

ってコーナーが短観の13ページ以降にありまして、例によって図表を貼り付けるスキルも無ければそもそも貼ってよいのか問題もあるので貼るのは割愛しますが、ここの数字を過去の足取りと比較すると、別に今回米国関税政策の影響が出て設備投資が下方屈曲、という図にはなっていないように見えますよね・・・・・・・


とまあそういう訳で私家版チェックをしてみましたが、この短観だと10月利上げを排除する理由にはならんじゃろ、としか思えませんが、ゆうてそこで利上げ観測が高まったかと言われると昨日の市場ちゃんだとよくわからんとしか言いようが無い結果だったと思うの。



・念のため昨日の相場についてロイターさん謹製解説を貼っておくの巻

まいど恐縮です
https://jp.reuters.com/markets/japan/Q7IWGH4HS5LNDOXXIHSOKIWUKE-2025-10-01/
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は小幅続落、長期金利1.645%で横ばい 方向感乏しい
By ロイター編集
2025年10月1日午後 3:35 GMT+9

『[東京 1日 ロイター] - <15:15> 国債先物は小幅続落、長期金利1.645%で横ばい 方向感乏しい

国債先物中心限月12月限は、前営業日比1銭安の135円78銭とわずかながら続落して取引を終えた。前日比プラス圏で推移した時間も長く、相場の方向感は乏しかった。新発10年国債利回り(長期金利)は同横ばいの1.645%。

きょうの国債先物は、小幅な買い先行でスタート。その後9月調査分の日銀短観が売り材料となりマイナス圏に沈んだが続かず、取引序盤以降はプラス圏で推移。しかし相場に強い方向感は出ず、先物相場は取引終盤に再び小幅マイナスに転じて取引を終えた。』(上記URL先より、以下同様)

ということで同記事のその後を見ると何とかストの方に喧嘩を売られているような記載があるようにも見えますがwwwそれは兎も角として、

『TRADEWEB  
     OFFER  BID    前日比  時間
2年   0.945   0.955    -0.001  15:25
5年   1.225   1.233    0.001  15:25
10年  1.642   1.649    -0.003  15:25
20年  2.602   2.616    0.004  15:26
30年  3.144   3.163    0.015  15:26
40年  3.371   3.393    0.022  15:25』

ということですが、短い方がイマイチ反応していないっぽいのでまあ今回は反応薄って評価だとはおもうのですけれども、ただまあ野口さんの札幌講演、9月会合主な意見、というのを見れば次の利上げって10月にあるかどうかは兎も角としても時間の問題でしょって感じではあるかと思いますので、今後に関してはそもそも論として今次利上げ局面で1%で政策金利調整が終わるのか問題のリプライシングがどうなるか、ってお話になるんじゃないかと思うのですよね。だってガチに2%物価安定目標達成しているんだったら名目政策金利1%が中立金利って経済は何ぼ何でもねえだろということで・・・・・

期末期初で中々手が回らなくて手を付けられていないネタが積みあがる上に、駄文のネタって時間が経つと証文の出し遅れで読み物として成立しないものもあるので甚だ恐縮ですが期末期初進行を成敗しないといけませんわ(滝汗)









2025/10/01

お題「9月会合主な意見は10月の利上げを全然排除しない(むしろやるんじゃねえか位の勢い)内容でしたな」

下期入りということでこれからもよろしくお願いします(^^)

〇9月決定会合主な意見は利上げ提案に対して一蹴ではなく議論があったことを示すかと

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2025/opi250919.pdf
金融政策決定会合における主な意見
(2025 年 9 月 18、19 日開催分)

・経済に関しては企業行動と消費と米国経済というお話ですな

まあそりゃそうよという話ではありますが、『T.金融経済情勢に関する意見』の『(経済情勢)』の部分の意見自体は少なかったのですが、

『・ わが国経済は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している。先行きは、各国の通商政策等の影響を受けて成長ペースは鈍化するものの、その後は海外経済が緩やかな成長経路に復していくもとで、成長率を高めていくとみられる。』

というのは公表文の公式見解なのでさておきまして、次からの意見が・・・・・

『・ わが国経済の現状は、まずまず堅調である。米を含む食料品の価格上昇の加速が天井を打ち、これまで回復軌道に乗らなかった個人消費が漸く上向きつつある。』

ほうほうそうなのか、という感じですが実際問題として食料品価格に関しては上昇せずとも水準が下がるわけでもないし、何なら10月からも値上げ自体は続くんで大丈夫かね、とは思いますけど。

『・ 企業の積極的な経営姿勢が維持されていることを、短観や企業ヒアリング情報で確認したい。』

ということで今日の短観と今月の支店長会議での報告は注目される所です。

『・ 設備投資を材料に経済情勢を判断する際には、企業内での計画策定と実行のタイミングに大きなズレが生じ、状況が変わり得ることに、留意する必要がある。』

そりゃそうなんだが端折りすぎていて「だから何なのか」がイマイチ分からん。

『・ 米国の関税政策の米国経済や世界経済への影響は、インフレや雇用の急激な悪化という形ではなく、じわじわと時間をかけて出てくる見通しになってきている。』

この点については「だから永遠に様子見をします」という風には読めそうな意見なのですが、ゆうて永遠に様子見してて良いのかという問題があるがそれは物価とか金融政策のパートの部分での考え方によりけりで、「だから永遠に様子見」なのか「そうは言ってもどこかでエイヤーと判断(綺麗な言い方をすればフォワードルッキングに判断、となるw)するべき」という話になっているのか、これだけだとどっちだか分からんですね。

『・ 最大のリスク要因は、米国経済の先行きである。米国の関税政策それ自体による不確実性は低下していくと思われるが、仮に今後、関税によるインフレが米国経済を大きく下押しするようであれば、わが国経済も影響を免れない。』

米国のインフレが米国の消費をコケさせて輸出が落ちるルートが懸念ってのはまあ話は分からんでもないのですが、これも言い出すと無限に様子見ができる(「これから悪影響が出てくるはず」となるから)ので、その点では除く大本営で5本の意見中様子見地蔵が後半3件、手前の2件が積極派ですな。


・物価については高田さん田村さん以外にも物価上振れの二次的波及に言及している人がいるような気がします

次が問題になりそうな物価のお話。『(物価)』ですな。

『・ 消費者物価の基調的な上昇率は、成長ペース鈍化などの影響を受けて伸び悩むものの、その後は、成長率が高まるもとで徐々に高まっていくと予想され、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。』

最初は常に公表文書通りの大本営なので次に行きます。

『・ 加工食品の大幅な値上げが続いているが、輸入物価の上昇が落ち着いている中でも、一部の企業は積極的な値上げに踏み切っている印象もある。消費者の購買状況次第では、値上げの流れに変化が生じることもあり得る。』

この人の意見は前半は輸入価格上昇の二次的効果が出ているような話になっているのですが、後半は物価高が消費を下押しして企業の価格設定の積極性が落ちる可能性がある、ということで謎の両論併記ですな。

『・ 物価の先行きについては、輸入物価や米などの原材料価格のトレンド、食料品価格への価格転嫁の継続度合い、食料品以外への価格転嫁の広がりの3点に注目している。銘柄米の価格水準は見通し対比でやや強めに持続する可能性があるとみているほか、データやヒアリング情報を踏まえると、食料品価格への価格転嫁の継続性が高まっているように思う。』

現在の物価高を引っ張っている食料品価格の上昇に対して、今の日銀大本営の見解では「これはあくまでも食料品価格というセクターでの上昇であって二次的な波及による一段の物価高の広がりは起きない」という読み筋になっていて(だから食品価格の上昇率が落ち着いて来れば(=価格水準が下がるとは言ってない)物価上昇率は2%を下回る、という見通しなのです)、その大本営見解に対して「それは違くね」というお話をしていますね。つまりは物価上振れリスクの指摘かと。

『・ 食料品価格の上昇の相当部分は米価を起点とするものだが、米価以外の要因に基づく部分もかなりの比重を有する。』

まあそうですね。ただ問題はそれがセカンドランドエフェクトを起こすかどうかなのでその見解も聞きたいところでした。

『・ 基調的な物価上昇率は、2%に向けて緩やかに上昇しているものの、なお2%に至っていないと考えている。そのうえで、食料品価格の上昇が想定以上に長期化した場合には、予想物価上昇率を通じて基調物価を押し上げる可能性がある一方で、家計のコンフィデンスの悪化が個人消費に影響すれば、基調物価を押し下げる方向に作用する可能性もある。』

言ってることは大本営で、こちらは「基調的な物価」の大本営パターンですけど、これ字数制限が元々あるので(たぶん300位)大本営で手分けして入れ込んだ感じなのか、それとも大本営以外の委員が書いているのか、よくわからんですな。

『・ 基調的な物価上昇率には推計の幅や計測誤差もあるため、2%に達したか、伸び悩んでいるかの識別は容易ではない。一方、2%近傍で定着したかを丁寧に確認する必要はあり、モデルからの示唆も含めてみていきたい。』

何かを言っているようでイマイチ良くわからん意見ではある。まあ基調的物価というのがそもそも論としてお気持ちなのでイリュージョンの世界、というのが大いにあるのでしゃーないないのですけど。

でもって物価の意見の最後は高田っちと田村抜刀斎ですね。

『・ 賃上げ定着を受けた国内要因によるインフレ圧力に加え、予想物価上昇率も高まるなど、「物価安定の目標」が概ね実現したと捉えている。既に物価が上がらないノルムが転換し、インフレ期待も引き上がる中、物価上昇の二次的影響が生じやすく、物価の上振れリスクが存在する。』

「「物価安定の目標」が概ね実現した」なので高田さん。

『・ 物価の基調は2%定着に向けて、着実に歩みを続ける公算が大きく、今後の財政政策の影響を含め、上振れリスクも大きい。』

まあこのお二方の見解は順当なのですが、上記のように物価のパートの中では大本営の基本シナリオとは異なった「セカンドラウンドエフェクト」への言及を行った人がいまして、この人が(字数の関係からすると抜刀斎の可能性もありますが)高田さん田村さんへの援護射撃になっているのはほほうと思いました。


・金利引き上げに関する部分は利上げ提案を結構真剣に議論していたような節が読み取れると思いましたが・・・・

『U.金融政策運営に関する意見』ですが、今回はETF等の話もあったので意見の数が多いのですが、金利に関しては何と10個の意見があったのですな。

『・ 経済・物価の見通しが実現していくとすれば、経済・物価情勢の改善に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになる。そのうえで、こうした見通しが実現していくかは、不確実性が高い状況が続いていることを踏まえ、予断を持たずに判断していくことが重要である。』

というのは大本営ですが、

『・ 米国の関税率が 15%になっても日本経済に影響はあり、成長率がいったんは鈍化するという見通しは不変である。物価面では、食料品のコストプッシュが収まることで、来年度に2%を下回ると予想される。こうした状況下、今は、現在の金利水準で緩和的な金融環境を維持し、経済をしっかりと支えるべきである。』

ってのが次にあるのですが、そもそも論として「しっかりと支える」じゃなくて「かなり低い実質金利で経済を吹かしている」の間違いじゃろとツッコみたくなるこの「しっかりと支える」ですけど、野口委員辺りが言いそうだと思っていましたが月曜の札幌講演を見るとそうではないようなので、これは執行部のどなたかという感じのようですが・・・・・・


『・ わが国の経済状況という観点だけから判断すれば、前回の利上げから半年以上が経過していることもあり、そろそろ再度の利上げを考えてもいい時期かもしれない。もっとも、米国経済の落ち込みの程度の目途がついていないため、当面の金融政策運営は、現状維持が適当と考える。』

月曜の講演からするとむしろこちらの方が野口さんっぽいですよね、って感じで、「米国がリスクなのでとりあえず様子は見るけど利上げしないと言っている訳ではない」なので既にこの意見の辺りで利上げを排除している訳ではない、のトーンになってきておりまして・・・・・・

『・ 市場にサプライズとなる現時点での利上げは避けるべきである。』

って意見が出ているのがヒエーと思った訳でして、こういう意見が出ているということは、今回の2名の利上げ提案っていうのが別に一蹴されたとかそういう世界なのではなくて、現実に利上げ可能か否か、ってのが結構突っ込んで討議されたことを意味するんですよね、と思いましたがどうでしょうかね(こればかりは決定会合の中での話だから知る由もないですが)。

まあ「市場にサプライズになるからやらない」という考え方に関してはちょっと如何な物かという面もあって、そうなりますと毎度決め打ちして事前織り込みさせないと政策が決まりません、という話になるので、それって結局大本営の思うがままに政策が運営されてしまうことになって、政策委員会の意味が無くなってしまいかねませんので、別に市場にサプライズになるからどうのこうのっていうのは本来は筋違いだと思います、というのは付け加えておきますです、はい。

『・ わが国経済の特徴として、内需が外的な負のショックに対し脆弱な傾向がある。金利の正常化を進める上では、ハードデータをもう少し確認してから判断しても遅くないだろう。』

この意見も別に利上げをするなと言っている訳ではなくて、タイミングとしてまだ早いという話をしているだけですので、最初の方にあった大本営第2号??の「経済をしっかりと支えるべきである」とはニュアンス違うんですよね。


『・ 今後の政策運営に当たっては、各国通商政策の世界経済への影響、米国の金融政策と為替相場の方向性、国内の物価と賃金の見通しの3点を注視していく必要がある。』

まあこれははあそうですなという話ですが、この流れでこう言っているのは「まだ利上げする時期ではない」ってことを言いたいんでしょうかね。

『・ 米国経済の帰趨が見えることを待つことで得られる知見もあるが、国内の物価との関係では待つことのコストも徐々に大きくなっていくので、待つことのコスト・ベネフィットやそれに伴うリスクの比較考量が必要になっていく。』

こちら抜刀斎っぽいのではあるのですが、この先にも抜刀斎チックなのがあるのでもしかしたら抜刀斎と同様に考えている人が1名他にいて、ただしまあ今回は利上げのタイミングじゃないので10月利上げは排除しない人なのかもしれません。

『・ 経済・物価が本行の見通しに対してオントラックであり、大きく軌道を外れなければ、ある程度定期的な間隔で政策金利の水準を調整していくべきであると考えている。この先、米国の関税の影響を含め、3月決算企業の上期決算と通期見通しや短観など、幅広い情報が揃うだろう。』

これですと10月か12月には利上げできますな。

『・ 米国の相互関税賦課以来の不安が後退し、物価見通し実現に向けて海外要因の制約が解消に向かう中、再び利上げスタンスに回帰し、海外対比で低水準の実質金利の調整を行い得る状況と考える。』

こちらは抜刀斎の提案理由と同じなので、もちろんさっきのと合わせて同一人物の可能性はある(もともとこの部分で意見が10本ありますので)のですが、さっきのが抜刀斎と別人28号だとオモロイなと。

『・ 0 .5%までの利上げの経済 全 体 への影響は 極めて 限定的である。上下双方向のリスクがある現時点で、政策金利を一気に引き締める領域まで引き上げるべきではないが、物価の上振れリスクがある中、将来の急激な利上げによるショックを避けるため、中立金利にもう少し近づけておくべきである。』

でもまあこれが利上げ提案と考えれば抜刀斎だったりするので、結局この主な意見を見ると利上げに対して別に排除しないし結構具体的に検討されたというのが読み取れるんじゃなかろうかと思う訳ですが、高田さんなのかも知れないのでそこは分からんですけど、田村さん高田さん以外に2名くらいは利上げをかなり現実的なものとして受け止めている向きがあったし、それ以外でも「今じゃない」という意見はありましたし、という所で、結構威勢の良い内容だったと思います。


・ETFに関してはまあこんなもんですか

ワシ的にはツッコミたいところは多々あるのだが。

『・ 金融機関から買入れた株式の処分を無事終了することができたので、その際のやり方で、あまり間を置かずにETFやJ−REITの売却を開始することが適当である。』

そりゃええんじゃが、だったらとっくの昔の時点で「あんな買入をしていたら処分するときに遼東半島租借もビックリのミレニアム計画になる」っての分かって悪ノリしたとしか思えない買入拡大を実施したって話になると思うのだがそっちの反省の弁は無いのかと小一時間問い詰めたい。

『・ 正常化を量と金利の両面からバランス良く進める上で、今回はバランスシート正常化を優先してもよい。マイナス金利政策の終了や、国債買入れの減額開始から時間が経ち、ETF等の処分にも踏み出すタイミングが来ているようにも思われる。』

今回は、っていうことは次回は利上げするのか(じゃあ何で去年の7月は利上げと輪番減額を同時にぶっこんだのかと小一時間。ってのもあるけどw)

『・ 少なからぬ規模の株式がマーケットに放出され得る状態で存在し続けることは、望ましい状況とはいえない。株式市場に大きな影響を与えない規模でETF等の処分を開始することが適当である。』

後処理としてそういう発想をするのは分かるが、だったらそんな買入が本当に必要だったのか、株価が盛大に上がっていく中での買入継続が本当に必要だったのか、ということをもうちょっと真剣にレビューして頂きたい。

『・ 市場のリスク・プレミアムに影響を与えるために購入したETF等を、市場に影響を与えないように処分していく以上、
処分完了まで長期間かかるのはやむを得ない。』

これも同じですし、そもそもリスクプレミアムはとっくの昔に解消されているのに「一体として効果を発揮する」とかいうフリードマンルール丸無視の屁理屈で漫然とETFの買入を継続していたのではないかという問題について以下同文。

『・ ETF等の処分に際しては、市場の状況に応じ、売却額の一時的な調整や停止を行うことができるとするなど、市場の安定に配慮するための柔軟性も確保すべきである。』

殊更に市場を押し下げようとして売る必要はないと思うがもっとバンバン売れないもんですかねえ。

『・ 株式市場のリスク・プレミアムは正常化している一方、J−REIT市場はリスク・プレミアムが依然として大きいことを踏まえると、売却ペースは相当緩やかにすることが望ましい。』

もちろんリートとマンション価格高騰は直接つながっている話ではないのは承知の上で言いますけど、お前は何を言ってるんだとしか言いようが無い。これ以上緩やかに売ってどうするんだよというか物件の耐用年数を大幅にオーバーした期間で売るってのも何だよそれってイメージなんですけど。