金融政策概観(2025年度上期後半)

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2024年度上期後半の見出し

2025/07/11「さくらレポートは総括判断横ばいも企業行動は強い内容のオンパレード」
2025/07/08「トラ公関税25%とか実質賃金またもマイナスとか選挙与党苦戦で超長期金利上昇(?)のメモ」
2025/07/07「5月頭に利下げに転じろと言ってた渡辺努が利上げ話をするという無定見だが日銀はいつまでこの馬鹿を重用するのか」
2025/07/02「6月短観はトランプ関税の影響が碌に無いのかというような強い内容ですね」

2025/07/11

〇さくらレポートはまあ普通に強気に見えるんだが(特に企業行動)

概要
https://www.boj.or.jp/research/brp/rer/rer250710.htm

本文
https://www.boj.or.jp/research/brp/rer/data/rer250710.pdf


・全体は「全地域横ばい」ですが関税込みで横ばいなのでまあハトハトチキンではない

まずは概要から引用しますが、

『(1)各地域の景気の総括判断

一部に弱めの動きもみられるが、すべての地域で、景気は「緩やかに回復」、「持ち直し」、「緩やかに持ち直し」としている。』

ということで『▽各地域の景気の総括判断と前回との比較』を見ますと、ってまともに引用しているとめんどいのですが、要するに今回は全部不変、ということでして4月と変わらん、ということなので、関税でアイヤーと言っていた4月の段階とそんなに変わらん、という結果な訳でして、まあこれはトラ公の関税の影響ってそんなに出てないんじゃね、ってお話になるわけですが・・・・・・・


・関税の設備投資への影響は「直接的に来そうな人には来ている」と読める編集ですね

今回どこからどう見ても注目すべきなのはさくらレポート本文の方で『(3)企業等の主な声(トピック別)※』のところでしょということでまあこれを見るわけですよね。

『@各国の通商政策の影響』

まずは『【設備投資】』

『・ 各国の通商政策を巡る不確実性の強まりを受けた取引先の投資計画先送りから、当社も能力増強投資を半年程度延期させる方針(前橋[電気機械])。』

『・ 米国の追加関税の影響で収益環境の悪化が見込まれることから、不要不急の設備投資を見直すなど、コスト削減を進めていく方針(広島[自動車関連])。』

ということで影響出てるわな、というひともあれば、

『・ 足もとにおける不確実性の高まりは気がかりであるものの、半導体関連製品や環境対応等の成長分野は、中長期的な事業ポートフォリオの転換に不可欠であるため、今後も計画通りに設備投資を行う方針(下関[化学])。』

『・ 省人化投資やソフトウェア投資を中心に積極的な投資スタンスを維持しており、設備投資額・研究開発投資額は高水準で推移している(横浜[はん用機械])。』

という方もおいで、となっていて「まちまちです」という印象を与える編集になっています。まあこれに関しては直接的に影響が出る人とそうじゃない人いるからそういう話なんでしょうけれども。


・関税の価格設定の影響は何か強気に見えるのですが実際どうなんでしょ&まあどっちにも結論付けれますからねえ

次が注目の『【価格設定】』

『・ 当社製品は競争優位性が高いため、関税の引き上げに伴う値上げが米国の取引先に受け入れられており、輸出数量への影響は限定的(新潟[生産用機械])。』

冒頭から威勢の良い話。技術立国日本はこうじゃなければいけませんですな!

『・ 現在、米国現地の取引先と関税の負担割合について交渉を進めている。なお、米国への生産拠点の移管についても検討したが、部品調達網の構築負担が大きいことなどから、現実的ではないとの結論に至り、見送った(高松[生産用機械])。』

こちらは交渉中、現地化はそりゃ無理じゃろうよと思いました。

『・ 当社部品の納入先では、関税の引き上げに直面しているものの、今のところ、当社の原材料費等の上昇分に対する価格転嫁要請の受け入れ姿勢に、大きな変化はみられていない(前橋[輸送用機械])。』

ほうほうほう。

『・ 収益を確保する観点から、米国向け製品の関税引き上げに伴うコスト上昇分は原則全て販売価格に転嫁する方針。もっとも、米国における一部の取引先は難色を示しており、価格交渉が難航している(仙台[生産用機械])。』

とのことですが、ゆうてまあ威勢が良いじゃん、と思うのですが、実際問題として輸出価格どうなっているの問題というのもあるわけですので、これはまあ通関統計とかと併用して考えないと、って感じでしょうか。

ただまあこのさくらレポートの「見せ方」はどっからどう見ても「トランプ関税による国内企業の販売価格下押し圧力はさほど大きいものではない」という「見せ方」になっています。まあこれを「よって4月に見込んでいた経済物価への先行き下押し圧力はそこまででもありませんねえあっはっは」と楽観の文脈に持ち込むのか、それとも「関税の影響はまだ出ていないのだが今後どうなるかは予断を許さないので警戒を怠れませんですねアイヤー」とハトハトチキンの文脈に持ち込むのかは、正直これはハトハトチキン執行部(ただし氷見野さんはハトハトチキンではない可能性がオオアリクイ)次第であろうかとは存じます。


・輸出・生産の本命部分は「これから影響が出てくるんじゃなかろうか」ネタのオンパレードですね

次が『【輸出・生産】』ですね。

『・ 半導体関連製品への分野別関税発動の可能性を踏まえ、中国や台湾、韓国の取引先から駆け込み需要がみられており、輸出は高水準で推移(広島[電気機械])。』

ということで「まだ駆け込みがある」という話なのでこれはハトハトチキン的には「それみたことか悪影響はこれからじゃ」となりそうなお話キタコレです。

『・ 各国の通商政策を巡る不確実性の高まりを背景に、米国における取引先の投資スタンスが後退し、当社製品への需要が鈍化しており、売上が下押しされている。こうしたもと、通期の生産計画を下方修正した(大阪[生産用機械])。』

下振れキタコレ。

『・ 各国の通商政策を意識した取引先の生産移管などから、一部メーカーの受注が下振れており、生産は7月頃から前年を幾分下回る見通し(本店[輸送用機械])。』

まさに「これから影響が出てきます」モード。

『・ 海外需要は、各国の通商政策の影響を受けて一時的な変動がみられるものの、基調としては堅調に推移しており、輸出は増加傾向にある。なお、海外での販売価格について、関税を受けた値上げは実施しない方針(名古屋[輸送用機械])。』

威勢の良い話だと一瞬思ったが、最後の「海外での販売価格について、関税を受けた値上げは実施しない方針」ってのが悲しいわけでして、さっきの「当社製品は競争優位性が高いため、関税の引き上げに伴う値上げが米国の取引先に受け入れられており、輸出数量への影響は限定的(新潟[生産用機械])」という威勢の良いお方と比較して悲しさが伝わってまいりますわな、南無三。

『・ 関税引き上げの影響から、先行き、当社納入先の米国向け輸出が減少し、当社への発注が減少することを懸念(北九州[鉄鋼])。』

これまた「これから影響」ですね。

『・ 多くの中小企業は、自社製品の用途や最終製品化までの商流が詳細に分からないため、関税の引き上げによる影響の経路や時期を予測できない。現時点で具体的な影響はみられないものの、先行きへの懸念が広がっている(大阪[経済団体])。』

ほうほう。

『・ 各国の通商政策の影響を受けて一部原材料の調達が滞っており、先行き自動車向け部品は減産の可能性がある(新潟[輸送用機械])。』

最後はまさかの供給制約の方の話でした。

・・・・・・というわけで、こちらが経済見通しに関するアネクの本命ともいえそうな部分ですが、並べているのを見ますと「関税の影響が顕在化するのはこれからです」って話のオンパレードになっておりまして、ここだけで言えば「まずは様子見地蔵」という説明を正当化する内容になっているかと思います。ただまあこれってあくまでも関税の影響に焦点絞った話なので、今回の短観で非製造業がバチクソ強かった話とかそういう総合的な話になると別問題とも言えますけど。


・みんな大好きおちんぎんは堅調と(留保は付いているけど)

関税の影響コーナーの最後が『【賃金設定】』ですが、

『・ 競合他社との人材獲得競争が激化する中、2025 年度は、ねん出可能な上限額である9%の賃上げを実施(高松[建設])。』

まあ素敵。

『・ 深刻な人手不足に伴い売上の増加が追求しにくくなったため、データに基づく分析を行って利益率の高い分野へ経営資源を集中させた結果、営業利益率は既往ピークを更新。3年連続となる5%強の賃上げを実現した(金沢[生産用機械])。』

ほう・・・・(選択と集中は用法容量に要注意)

『・ 全体としてみれば、地域の企業でも人手不足が深刻化するもと、賃上げの動きが強まっている。大企業が賃上げを実施する中、中小企業も人手確保のため追随して賃上げしている(大阪[経済団体])。』

ほほう。

『・ 夏季賞与は、昨年度の好調な業績を踏まえ、高水準の支給額とした。先行き、各国の通商政策の影響により海上荷動きが鈍化して業績が下振れた場合は、冬季賞与を減額する可能性がある(大阪[運輸])。』

やはり「今後の変化は冬季賞与から来年の賃金改定」という話になりますね。

『・ 今後、各国の通商政策の影響から、当社部品の納入先が価格交渉スタンスを慎重化させる可能性もあり、来年度も継続的に賃上げできるか懸念している(本店[輸送用機械])。』

ふむふむなるほど。

『・ 各国の通商政策の影響を受けて、当社部品の納入先が価格交渉スタンスを厳格化させた場合でも、人材の確保に向けてベアを実施していく方針(本店[輸送用機械])。』

ということで最初と最後を威勢よくまとめて何となく強い感じにしていますね。


・より全般的な価格設定についての話が小売と飲食と食料品並べているのはナンナンデスカネー

と、これまでが関税の影響の話(なので製造業の話ばっかり)でしたが、次がより全般的な文脈での価格設定のお話、の筈なのですが・・・・・・・

『A価格設定』からですな。

『・ 原材料費は市況の下落や為替円高により抑制できている一方、人件費や輸送費などが継続的に上昇しているため、値上げを行った(本店[食料品])。』

はい。

『・ 米価の高騰から、これまで価格を据え置いてきた弁当やおにぎりなどの商品の価格維持が困難となっており、今後段階的に値上げを行う方針(水戸[小売])。』

アイヤー

『・ 物価の上昇が続くもとで、ここ数年間当社も複数回の値上げを行っており、都市部以外の店舗では、中高年層の顧客の来店頻度が低下している(本店[飲食])。』

そらそうじゃろとは思いますが値上げが続く話ですし、

『・ 高騰が続く米などの仕入コストを転嫁するため、さらなる値上げを予定。その際は、顧客離れを防ぐために、既存商品の値上げを段階的に行うほか、新たに低価格商品の開発も強化する(秋田[飲食])。』

ってな話をしていますが、これよく見ると「コストプッシュ要因の上昇はワンタイム」とか能天気なこと言っている場合じゃなくて、普通にコストプッシュが起点になって物価上がるじゃと、という話ではあるのですが、ただまあこれ「食料品、小売、飲食、飲食」って並べていて、ここでの「見せ方」があまりにも業種偏り過ぎてないですか、とは思いましたので逆に編集に何かの意図でもあるのかと疑ってしまいますわな・・・・


・個人消費のコーナーはこれでもかという位に威勢が良すぎてむしろビビるレベルかと

でもって個人消費とインバウンド様ということで『B個人消費(インバウンド需要を含む)』ですが。

『・ 国内富裕層の消費意欲は堅調。インバウンド客の来店客数は増加しているものの、為替円高の影響等もあって、売れ筋が高額品から化粧品や日本製の生活雑貨にシフトし、客単価は低下している(神戸[百貨店]<京都、大阪>)。』

ほうほうそうですかと思いますが、安い単価のインバウンドとか要らんわなどと言ったらいけませんですかそうですか。

『・ 備蓄米が流通する前は米の買い控えがみられた。米を含む食料品の価格に対する顧客の目線は厳しく、当社のセール実施時にはスーパー等の顧客が流入してくるため、売上が顕著に増加している(札幌[ドラッグストア])。』

ほえーーーーー

『・ 大阪・関西万博の開幕以降、客室単価を引き上げても、国内外から宿泊者が増えており、売上は想定を上回って推移している(大阪[宿泊])。』

イイハナシダナー

『・ 人件費や原材料費などのコスト増加分の6割程度をゴルフ場利用料に転嫁しているが、来客数は県外観光客を中心に堅調(青森[対個人サービス])。』

まあさっきの「国内富裕層の消費意欲は堅調」もそうですけど払える人は払うっちゅうことですかねえ、知らんけど。

『・ 4月に食料品の値上げが相次いだため、節約志向の強まりを懸念したが、買い上げ点数は想定ほど落ち込まず、消費者の支出スタンスは底堅い(松本[スーパー])。』

おおおおおおおおお

『・ 割安なメニューの販売好調が続く一方、入学式などハレの日関連の利用も増加しており、メリハリ消費の強まりを感じる(名古屋[飲食])。』

なるほど、とは思いますがこの手の「ハレ消費」だの「メリハリ消費」だの言ってるのの後ってあんまり良い思い出が無いのですけどね・・・・・・・・・

ということで、この個人消費のところはまあ威勢の良い話がひたすら並んでおりまして、やはり今回のさくらレポートの全体観としては「なんかエライ堅調なんですけど」という印象になるんじゃないかと思ったのですがどうなんでしょうかねえ・・・・・・・・




2025/07/08

〇関税25%ですかそうですか・・・・・

ゴロツキキタコレ
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-07-07/SZ1JYFT0G1KW00
トランプ氏が日韓に25%関税通知、交渉期限を延期−回避手段にも言及
Josh Wingrove、Catherine Lucey
2025年7月8日 4:52 JST

→セクター別関税は別と説明、報復ならその分25%関税に上乗せと警告
→市場開放や米国での生産拡大を通じて発動を回避する手段も明記

『トランプ氏の発表を受けて、米国株式市場は下落。S&P500種株価指数は約1%下落、
ナスダック100指数は0.8%下落した。シカゴ・オプション取引所のVIX指数は18.10前後で推移。テクノロジー株の予想変動率を示す指標は2週間ぶりの高水準となった。

円は対ドルで146円台に下落。一時は1.2%安の146円23銭付近と、日中としては6月23日以来の安値をつけた。』(上記URL先より)

つまらん妥協はせんでもろていただいて、とは個人の感想です的には思いますし、米国の物価が上がってトランプざまあという展開からのTACOちゃんじゃろとは思うのですけれどもさてどうなるのやらという感じですな。

ただまあどうなんでしょうかね、これ結局自動車とかは別に上乗せとか言い出すんでしょうからこれで終わりって感じでもないんでしょうから、「関税交渉の先行き不透明ガー」という話になる、と考えますと、日銀大本営の現在の屁理屈からしますと、関税問題の先行きが不透明でありますので政策は地蔵です(キリッ)って事になるわけで、もちろん7月利上げとかありえないのですけれども、7月展望レポートの段階で先行きの政策に関して9月10月に向けた前向き示唆ってのも出しにくくなったかなあ、とは思うのでありますがどうでしょうかね。

まあその前に参院選というネタもあるので7月会合でどのようなトーンになるのかを今から考えても時間の無駄っぽい気もしますけれども、


〇また超長期の金利が上がっている訳だが(財政懸念ネタで)という備忘メモ

月曜の債券市場ちゃん
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/QU7IYDOBQZJR3HFPTWADHU43AQ-2025-07-07/
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は横ばい、長期金利1.455% 財政懸念で超長期債は金利上昇
ロイター編集
2025年7月7日午後 3:30 GMT+9

『[東京 7日 ロイター] - <15:22> 国債先物は横ばい、長期金利1.455% 財政懸念で超長期債は金利上昇

国債先物中心限月9月限は、前営業日と横ばいの139円12銭で取引を終えた。手掛かり材料に乏しい中、全体的に動意薄だった。新発10年国債利回り(長期金利)は同2.0bp上昇の1.455%。現物市場では財政拡張懸念から超長期ゾーンに金利上昇圧力がかかった。』(上記URL先より、以下同様)

まあ超長期は盛大に動意があったという話でもありますがorz

『現物市場では、新発債利回りはまちまち。2年債は同0.5ベーシスポイント(bp)低下の0.730%、5年債は同横ばいの0.970%。一方、20年債は同5.5bp上昇の2.425%と6月4日以来の高水準。30年債は同10.5bp上昇の2.970%と、5月30日以来の水準まで上昇した。40年債は出合いなし。』

挙句にイブニングで30年一段安やってた気はしますわな。

・・・・・ということでとりあえず参院選序盤情勢ということで連立与党で50議席確保が微妙な線とかいう話になっていたというのがネタになって売られている、というのはまあそうなんですけれども、よくよく考えて見ますと物価が2%水準で推移するっての考えたら別に30年金利3%ってクソ高い水準でも何でもなくねえか???って話は有るわけでして、そもそも論として物価の長期均衡水準が何ぼですかと考えた場合に、そこにタームプレミアム乗っけた水準に対して日銀の長期国債買入とかいうクソイベントが継続していて、しかもお気持ち物価を持ち出して政策金利水準を無駄に低い水準に置いているから国債を買おうって人が何時まで経っても増えてくれないってだけの話ではなかろうか、などと3%という水準を見ながら思う訳で(個人の暴言ですwwww)ジャパンの場合は債券自警団復活みたいなカッコいい話ではなかろう(だいたいからして自警団なら当局にクレクレ大合唱してるんじゃねえよって話な訳で自警団を名乗るのが烏滸がましいにも程があるwwwwwwww)という所ですが、まあ超長期の金利が上昇してくれれば馬鹿政治家へのシグナルくらいにはなるでしょうから、この調子で警鐘を鳴らして頂きたいものだと思います。

ただまあアレですよね、こんなタイミングからベアスティープニング(というか2年対比ではツイストだがw)していますと、肝心の参院選の結果が出る前にスティープニング疲れするんじゃないかという感じ(2週間はさすがに長いじゃろ)ですし、まあそれ以前に関税の話が狂犬から放たれましたので、今日はそっちの話になるんですかね、知らんけど。

でまあロイターさん記事のTRADEWEBの気配ですけれども、

    OFFER  BID   前日比 
2年  0.725  0.734     0   15:20
5年  0.966  0.973   -0.002  15:19
10年 1.448  1.455    0.02  15:20
20年 2.418  2.431   0.062  15:20
30年 2.963  2.977   0.113  15:20
40年 3.218  3.251   0.116  15:20

とのことで超長期ドイヒーという結果になっておりますが、なんかまあ折角発行減額の決定をしてもダメなもんはダメという結果なのは残念ですが、ニーズが無いのもあるにせよ金利水準が足りないからというお話なので、やはり国債買入の額が多すぎだし、いまとなっては長期国債の買入をしている意味って「昔威勢よく買っていたのを急にゼロにできないので徐々に調整」という意味しかない筈なのに、買入縮小ペースを上げるどころか下げる決定しているのは何とかならんのかと思う訳で、結局当局プットみたいな信仰が円債市場にあるもんだから健全な調整が進まないでちょっとプットが入って反発→冷静に考えたら水準がダメだろとなってやっぱり売られる、みたいな無駄なボラを生み出しているというのが個人の極論です。


〇また実質賃金が下がっている訳だが(じっと財布を見る)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-07-06/SYSQ9NT1UM0W00
5月の実質賃金は2.9%減、20カ月ぶりの減少率−基本給は堅調維持
氏兼敬子
2025年7月7日 8:30 JST 更新日時 2025年7月7日 10:05 JST

→実質賃金5カ月連続マイナス−名目1.0%増、賞与減で伸び鈍化
→基本給は2.1%増とモメンタム持続、高水準の春闘結果を反映

『物価変動を反映させた実質賃金は5月に20カ月ぶりの大幅な減少率となった。物価の上昇が続く中、名目賃金の伸びの鈍化が響いた。所得の改善を実感しにくい状況が続く中、参院選に向けて物価高への対応を求める声が一層強まりそうだ。』(上記URL先より、以下同様)

ということで物価上昇対策ってのが今回は参院選の争点にとうとうなってしまった訳ですけれども(前回の衆院選は政治と金とかそっちで物価はその次位って感じでしたからね)。

『厚生労働省が7日発表した毎月勤労統計調査(速報)によると、「持ち家の帰属家賃を除く」消費者物価指数で算出した実質賃金は前年同月比2.9%減と、2023年9月以来の低水準となった。市場予想は1.7%減だった。名目賃金に相当する1人当たりの現金給与総額は1.0%増と、市場予想(2.4%増)を大きく下回った。賞与など特別に支払われた給与が18.7%減少したことが影響した。』

ふむふむ。

『実質賃金のマイナスは5カ月連続。コメなど食料品をはじめとする物価の上昇に賃金の伸びが追いついていない状況が続いている。20日投開票の参院選では、物価高対策として給付や減税が争点となる中で、石破茂首相は「何よりも賃上げ」と強調した。今回の結果は石破政権にとって逆風となる可能性がある。』

いやマジのマジでこの情勢で未だに「基調的物価は2%行ってないから金融緩和が必要」って言ってるの何なのという話で、まあさすがに「基調的物価を引き上げる」みたいな「物価を上げる」という表現を使うと日銀に十字砲火の矛先が一気に向く、という事くらいは分かっているようでその言い方だけはしていない(「経済を支える」としか言わない)のですけれども、選挙終わったらどういう方向になるにせよ財政拡張の話になるわけで、またまたインフレ押上げ要因がやって来て、「これから実際の物価は下がる」という日銀の大本営願望予想が外れる方向になるはずですが、政治的に大丈夫ですかねえとは思います。とは言え高圧経済とか未だに妄言吐いている人たちも政治方面にはいるので、もう日銀もシランガナとなって政策調整を知らんぷりする可能性もあり、これまた今後はどうなるんでしょうねって感じで、選挙の後どうなるかは(自分の生活防衛的にも)色々と考えないといけませんなと思うのであります。

まあ実質賃金がまたマイナス、では日銀は(内心どう思うかはさておき)それ自体には全然反応しないでしょうし、なんなら「企業の賃金設定行動を支えるためにも金融緩和政策の継続が必要」と言い出しそうなので、残念ながらこれで政策調整が早まるとは思えません、というかこれで早まるようなタマだったらとっくの昔に短期政策金利は1%台になっていますwwwwwwwww





2025/07/07

〇日銀はいつまでこのオッサンを有難がって何とかコンファランスとかで喋らせる気なのかと

これはひど過ぎる・・・・・・
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-07-04/SYTI2XDWLU6800
日銀の物価見通し上方修正は確実、関税次第で年末に利上げも−渡辺氏
伊藤純夫、藤岡徹
2025年7月4日 17:10 JST
→物価はそれなりの危険水域、日銀見通しに比べてすでにかなり上振れ
→政策対応が遅れるリスクが高まっている、基調物価は「魔法の言葉」

えーっとですね、オッサンついこの前何言ってましたかって話で、
https://diamond.jp/articles/-/364394
日本銀行は利下げへ転換せよ、トランプ関税下の利上げ路線が招く「デフレ逆戻り」のリスク
渡辺 努: ナウキャスト創業者・取締役、東京大学名誉教授
政策・マーケット渡辺努 物価の教室
2025年5月8日 8:30 会員限定

いやマジでこのオッサンの言うように金融政策運営したら4月会合は利下げで7月会合は倍返しで利上げですかって無茶苦茶な話になるわけでして、まーこの人の金融政策の話ってど素人レベルの話を堂々とする訳で、日銀と東大と日本の経済学という学問のレピュテーションを纏めて投げ捨てるというのは凄まじいとしか言いようが無いですわな(あくまでも個人の感想です)。

ってまあ朝のひとことのつもりで書いたのだが小見出しつけてみましたwww





2025/07/02

〇いつもの短観私家版確認:全然弱くなってこないじゃないですかヤダー(棒読み)

https://www.boj.or.jp/statistics/tk/gaiyo/2021/tka2506.pdf
短 観(概要)―2025年6月― 
 第205回  全国企業短期経済観測調査  
< 回 答 期 間 > 5月28日 〜 6月30日

・一応短観にちょっとは反応してくれましたが・・・・・・・

前回の短観は4/1だったのでまだ例のトラ公のアレが出る前(直前)で、短観がやや強いですなという結果に債券市場が盛大に反応していたのですが、その前の短観が12月の短観でこれが出たのが12/13だったんですね。

でもって昨年の12/13と言えば短観は普通に強い内容だったのですが、その前に日銀の毎度のお漏らし攻撃によって12月利上げ観測火消どころか1月利上げもしないんじゃなかろうかということになって市場がなんも反応しなかった訳です。

これに対して4/1は短観結果に普通に反応して(その前が期末だったのですが謎の債券先物クソ上がりをしたのでその反動もあったのですが)いてよかったよかったなどと言ってたらトラ公のアレが出てぶち壊しになった訳です。

で、今回ですけれども、短観は全然悪い内容ではなくて、関税で国難とは何だったのかというような風情ではあったので、債券先物10銭ちょい反応しておりました(その後10年国債入札が激強の結果となったので全ての話がすっ飛んでしまいましたが)ので、まあちったあ反応するだけ昨年12月よりはマシとは言えるのですが、まあでも結局のところ今回って「思ったほど弱くないじゃん」となっても、日銀大本営におかれましては「これから影響が出る出る詐欺」作戦で行くのがまあ見え見えって感じじゃろうな、とは誰しもが思う訳でして、残念ながらこの短観が弱くなかったのを材料に日銀が4月の展望がクソ弱くし過ぎましたゴメンチャイなどという訳も無く、ってなことで反応してくれないという所なのかな、とは思いました、知らんけど。


・業況判断DIは「前回の先行き下がる見通しよりも全然強い」し何なら前回の短観はトラ公の例のアレの前なんですよ!!!

          (3月短観)        (6月短観)
          現状→6月予測     現状→9月予測
製造業大企業   +12→+12     +13→+12 
製造業中堅企業 +11→+4       +10→+6        
製造業中小企業  +2→▲1       +1→▲2

非製造業大企業  +35→+28     +34→+27
非製造業中堅企業 +25→+18     +25→+17
非製造業中小企業 +16→+9      +15→+9

こちらですけど、何せ前回の短観は「 < 回 答 期 間 > 2月26日 〜 3月31日」でして、短観の回答ってのが概ね回答期間の前半の早いうちに回答される傾向がある、という風に聞いておりますので、すなわちあの4月に出たトラ公のキチガイ関税は織り込んでいない(トラ公の事だからある程度のブラッシュボールは投げてくるじゃろというのは織り込んでいたと思いますが)訳でして、その状況でトラ公に対するフワッとした懸念段階で出した先行きの下げ(特になぜか非製造業)見通しに対して、今回って軽々と上方修正していますし、殆ど3月短観から現状DI変わっていないという結果になっておりますので、これは堅調堅調。

ただまあどうせ大本営のことですから、「米国関税政策の悪影響はこれから出てくるんです」とか言い出す下がる下がる詐欺によってこの数字は追い風参考記録扱いしてくる、に1万ジンバブエドルといった所です。


・企業の販売価格見通しはこれまた大して落ち込んでもいないのですな

販売価格見通し 全規模合計 全 産 業
1年後 6月:3.0%→9月:2.8%→12月:2.6%→3月:2.7%→6月:2.8%→9月:2.8%→12月:2.8%→3月:2.9%→6月:2.9%
3年後 6月:3.8%→9月:3.8%→12月:3.7%→3月:4.0%→6月:4.1%→9月:4.1%→12月:4.2%→3月:4.4%→6月:4.3%
5年後 6月:4.4%→9月:4.4%→12月:4.4%→3月:4.7%→6月:4.8%→9月:4.9%→12月:5.0%→3月:5.2%→6月:5.1%

大 企 業 製 造 業
1年後 6月:2.5%→9月:2.4%→12月:2.2%→3月:2.2%→6月:2.3%→9月:2.2%→12月:2.2%→3月:2.3%→6月:2.3%
3年後 6月:2.8%→9月:2.9%→12月:2.8%→3月:2.8%→6月:3.2%→9月:3.1%→12月:3.2%→3月:3.4%→6月:3.1%
5年後 6月:3.0%→9月:3.1%→12月:3.0%→3月:3.1%→6月:3.3%→9月:3.4%→12月:3.4%→3月:3.7%→6月:3.8%

大 企 業 非製造業
1年後 6月:2.1%→9月:2.2%→12月:2.0%→3月:2.0%→6月:2.1%→9月:2.1%→12月:2.2%→3月:2.4%→6月:2.3%
3年後 6月:2.8%→9月:2.8%→12月:2.7%→3月:2.8%→6月:3.0%→9月:3.0%→12月:3.1%→3月:3.1%→6月:3.2%
5年後 6月:3.2%→9月:3.4%→12月:3.2%→3月:3.2%→6月:3.4%→9月:3.5%→12月:3.6%→3月:3.5%→6月:3.9%

この推移を見ますと、どこからどう見ても「企業の価格設定行動はこの2年間ほど全然変わらずに堅調」としか言いようが無いと思うのですが、これまた「米国関税政策の悪影響は以下同文」と言い張ってくると思います。まあこれを受けて7月展望が4月にクソ下げしたものを撤回でもすれば日銀も大したもんですけど、そんなタマではない、というのは散々見ておりますのでwwwww


・企業の物価全般見通しも同様でこの2年くらいずっと高値安定しているんですけどね

物価全般見通し 全規模合計 全 産 業
1年後 6月:2.6%→9月:2.5%→12月:2.4%→3月:2.4%→6月:2.4%→9月:2.4%→12月:2.4%→3月:2.5%→6月:2.4%
3年後 6月:2.2%→9月:2.2%→12月:2.2%→3月:2.2%→6月:2.3%→9月:2.3%→12月:2.3%→3月:2.4%→6月:2.4%
5年後 6月:2.1%→9月:2.1%→12月:2.1%→3月:2.1%→6月:2.2%→9月:2.2%→12月:2.2%→3月:2.3%→6月:2.3%

中小企業 製 造 業
1年後 6月:2.9%→9月:2.8%→12月:2.7%→3月:2.6%→6月:2.7%→9月:2.6%→12月:2.6%→3月:2.7%→6月:2.6%
3年後 6月:2.4%→9月:2.4%→12月:2.4%→3月:2.4%→6月:2.5%→9月:2.5%→12月:2.5%→3月:2.6%→6月:2.5%
5年後 6月:2.3%→9月:2.3%→12月:2.3%→3月:2.4%→6月:2.5%→9月:2.4%→12月:2.5%→3月:2.5%→6月:2.5%

中小企業 非製造業
1年後 6月:2.8%→9月:2.8%→12月:2.6%→3月:2.6%→6月:2.6%→9月:2.6%→12月:2.6%→3月:2.7%→6月:2.6%
3年後 6月:2.4%→9月:2.5%→12月:2.4%→3月:2.4%→6月:2.5%→9月:2.4%→12月:2.5%→3月:2.6%→6月:2.5%
5年後 6月:2.3%→9月:2.3%→12月:2.3%→3月:2.3%→6月:2.4%→9月:2.4%→12月:2.4%→3月:2.5%→6月:2.4%

毎回申し上げていますが、こちらで大企業じゃなくて中小企業をだしているのは、かつてこの短観の数字を出しだしたときに日銀大本営は「大企業の価格見通しはエコノミスト見通しや市場見通しに影響されやすいが、より一般の見方に近いのは中小企業の見通しである( ー`дー´)キリッ」とか言ってたんですが、黒田末期以降は利上げを渋る屁理屈を並べるのに忙しいので、すっかり言わなくなっているので可哀そうなので掲載している次第でありますw

でまあ今回は確かにスライトリーに下がってい入るものの、結局のところこの2年間ほど特に著変は無い、とも先ほどと同様に言える訳でございまして、「そもそも論として何を持ち出せば「インフレ期待がまだ2%に届いていない」とか言えるのか、というのを日銀は真面目に示すべきではないか、と斯様思う訳です、ってのを毎回のように言っているのですが、ひたすら誤魔化し続けているのが変わっていない、というのも皆様ご案内の通りかと存じます。


・販売価格判断と仕入価格判断は3月短観が驚愕の強さでしたがさすがにこちらは落ち着いた感じで

販売価格判断

            (3月短観)         (6月短観)
           現状→6月予測      現状→9月予測
製造業大企業   +28→+30       +25→+27
製造業中小企業 +27→+37       +27→+31

非製造業大企業  +32→+34      +34→+30
非製造業中小企業 +30→+37      +30→+33


仕入価格判断
          (3月短観)          (6月短観)
          現状→6月予測      現状→9月予測
製造業大企業   +41→+43      +39→+39
製造業中小企業 +57→+62      +54→+56

非製造業大企業  +48→+49     +45→+44
非製造業中小企業 +57→+61     +54→+56

ということでこちらの数値は(3月短観がクソ強かったというのもあるのですが)3月短観よりも落ち着いた数値になっていますので、これは大本営が鬼の首を取ったようにチェリーピッキングしてきますねw


・雇用判断DI:前々回、前回はその前並みで見通しほどは一段の引き締まりなし、でしたが今回も同様

            (3月短観)        (6月短観)
           現状→6月予測     現状→9月予測
製造業大企業   ▲17→▲21     ▲18→▲22
製造業中堅企業  ▲26→▲28     ▲24→▲28
製造業中小企業  ▲24→▲30     ▲23→▲28

非製造業大企業   ▲39→▲40    ▲39→▲40
非製造業中堅企業  ▲46→▲48    ▲46→▲48
非製造業中小企業  ▲48→▲52    ▲46→▲50

こちらは毎度そうなのですが「先行き更に雇用人員が逼迫する」という見通し程には引き締まらないという結果なのですが、とはいえだいたい前回の時に示した逼迫度合い程度は維持されている、という数値になっています。

・・・・・ということでして、前回の短観がトラ公のアレの直前、というタイミングであったことを考えると、よくよく考えたらエライ良い数字じゃんトラ公のアレの影響はどうしたの、という結果だった、というのが私家版の短観の感想になろうかと存じますです、はい。