金融政策概観(2025年度上期後半)
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2024年度上期後半の見出し
2025/09/05「氷見野副総裁、基調的物価を講演で1.6%と言っておきながら狭いレンジで示すのは無理と言い切る」
2025/09/04「石破植田会談実施/氷見野副総裁会見で「需要ショックか供給ショックか」で区別することの無意味さに言及」
2025/09/03「氷見野さん金懇と自民党両院議員総会で上がって下がる債券市場/氷見野副総裁釧路金懇:「不確実だから動かないというのは正しくない」とイタコ話法でしらっと表明」
2025/09/02「債券市場サーベイですがそろそろYCCモードではない調査が必要ではないかと」
2025/08/28「ジャクソンホールパウエル講演前半部分の物価の部分から:インフレ上振れリスク警戒をかなり強調」
2025/08/27「日銀基調的物価は最頻値が完全にシフトしてると思うのだが/ジャクソンホールパウエル講演前半の労働市場の部分から」
2025/08/26「政策ストラテジーに関する部分の補足整理と最後にボルカーの名前出しているのもお洒落な講演」
2025/08/25「3M短国が0.45%超えに金利上昇したり長期金利が上昇したり」
2025/08/24「ジャクソンホールのパウエル講演は「メイクアップストラテジー」の誤りを素直に反省しているのが素晴らしい」
2025/08/22「高揚感の無いままに10年金利がピーク更新/短国の値付けが「10月会合利上げモード」になる」
2025/08/19「展望レポートハイライトの補足」
2025/08/18「展望レポートハイライトのイラストが経済妙に明るい(見通し変わらずなのに)上に物価は同じ(上方修正なのに)という意味不明」
2025/08/15「ベッセント砲の影響続くがPPIは強い/ベッセント砲が着弾して円債はそこそこダメージ食らっています笑」
2025/08/14「ベッセント財務長官が9月50bp利下げが望ましいと言いながらしらっと日銀の政策がビハインドと砲撃」
2025/08/12「7月会合主な意見は経済がチキン満載、物価が妙に強気ということでどっちを重視するかで見方が異なると思います」
2025/08/08「7月総裁記者会見続きで「基調的物価」の話と「何で利上げしないんですか」質問について」
2025/08/07「6月会合議事要旨のバランスシート関連の話の続き」
2025/08/06「6月会合議事要旨は長期国債買入に関する政策委員の皆様の認識に疑問符が・・・・」
2025/08/05「会見要旨を見ましたがやはりハトハトチキン会見なんだよな」
2025/08/04「展望レポートBOXも「メインは年末年始までの動きを見る」だけど「リスクは物価高止まり」という構成ですな」
2025/08/01「7月会合レビュー:ハトハトチキンメインシナリオは維持だが物価上振れリスクにも言及。ただし会見はハトハトチキンで150円乗せ」
2025/07/31「特に決定会合リーク記事無しで会合に突入。2026年度の物価見通しに注目したい」
2025/07/30「経済同友会新浪さんが「日銀の政策ビハインド」に警鐘/中曽元副総裁も同様の指摘」
2025/07/28「BBG金曜引け前に謎ヘッドラインで先物下げる/都区部CPIと基調物価/内田副総裁金懇の「リスクマネジメントアプローチ」」
2025/07/25「内田副総裁金懇会見は慎重に安全運転だがアクチュアルの物価高について何で記者は質問しないのでしょうか」
2025/07/24「日米合意でベアフラット→ゲル退任報道でスティープバック/内田副総裁高知金懇は全方面にヘッジ掛けた感じ」
2025/07/23「BBGの毎度の「関係者」記事は与党敗北でも利上げ路線という当たり前のお話で市場も反応しませんでした」
2025/07/22「選挙結果は事前の話程は大負けしなかった印象が/コアコア物価が強いんですよね(6月全国CPI)」
2025/07/17「超長期一転して大いなる戻りというナンノコッチャ相場」
2025/07/16「早川元理事インタビューが面白い(基調物価は護送船団)/財政懸念相場円安に飛び火(ただし円債超長期は終盤持ち直す)」
2025/07/15「参院選与党大苦戦情勢で消費税引き下げ財政懸念相場/生活意識アンケートは物価高止まりの弊害を示すと思うが」
2025/07/11「さくらレポートは総括判断横ばいも企業行動は強い内容のオンパレード」
2025/07/08「トラ公関税25%とか実質賃金またもマイナスとか選挙与党苦戦で超長期金利上昇(?)のメモ」
2025/07/07「5月頭に利下げに転じろと言ってた渡辺努が利上げ話をするという無定見だが日銀はいつまでこの馬鹿を重用するのか」
2025/07/02「6月短観はトランプ関税の影響が碌に無いのかというような強い内容ですね」
2025/09/05
〇氷見野副総裁釧路金懇記者会見の続き
https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2025/kk250903a.pdf
氷見野副総裁記者会見
――2025年9月2日(火)午後2時から約35分
於 釧路市
例の「供給要因だから政策対応しないとか言ってるのは間違い」という氷見野さんの説明、すなわち今や主要中央銀行では当たり前の話で需要要因供給要因ではなくて波及効果、持続性を見極めて対応の有無を考えるって話になっているので供給要因なのでーと言い続けているハトハトチキン中央銀行がインチキなだけ、ってのを言外に喝破した質疑応答が今回の白眉でしたが、他にも白眉級のがあってこれは馬氏の五常もニッコリという所です。
・基調的インフレの質疑応答が大変に素敵でした
『(問)基調的なインフレ率についてお伺いします。午前の講演で、関税の影響で足踏みしても、いずれ
2%と概ね整合的な水準で推移するというふうに見方を示されました。この基調がですね、足踏みから再び上昇に向かう確からしさにつきまして、副総裁、現時点でどのように考えておられるのか、そこにですね、確信が持てなければ、再上昇にですね、追加利上げは難しいとお考えなのかをお願い致します。』
というのが前半で、
『その基調的な物価上昇につきまして、講演では 2%にかなり近づきつつあるというふうに発言されまして、ご発言からするとですね、少なくとも、副総裁、1%後半ぐらいをイメージしておっしゃっているのかなという印象を受けたのですが、大まかで結構なのですが水準のイメージについてもうちょっと教えて頂ければと思います。二点よろしくお願いします。』
というのが後半ですね。まあ前半は基調的物価というよりも単純に利上げ判断云々の話になっておりますが。
『(答)一つ目ですが、これも表現が少し違うかもしれませんけれども、7 月の展望レポートで、この間、消費者物価の基調的な上昇率は、成長ペース鈍化などの影響を受け伸び悩むものの、その後は上がっていって、見通し期間後半には物価安定の目標と概ね整合的な水準で推移すると考えられる、というふうに言っているのと特に言っている趣旨は変わりません。』
まあ確かにあの辺りの部分は大本営の説明をするパートになっていましたな。
『それで、ではそうなっていく確からしさはどうか、確信が持てなければ利上げはないのかということですけれども、これは、そうなる見通しの確度および上下双方向のリスクをみていくということだと思います。その確度がある程度高まっていく、更にその確度、メインシナリオ通りにいかないといったときに、これ上振れするリスクと下振れするリスクどっちがどうなのかというのをみて判断していくということになりますので、何か確度だけみてというよりは、メインシナリオの確度と上下双方向のリスクをみながら判断していくということではないかというふうに私は思っております。』
まあしれっと「何か確度だけみてというよりは」とか入れている辺りがこれもお洒落でして、毎度「確度」だけで説明してごまかし続けている(でもって昨年7月のように急に「上振れリスク」とか言い出して利上げする)というのに対して「もっとちゃんと説明しろ」と大本営に対してイヤミを言ってるんでネーノと思いましたが勝手な裏読みをしているだけの個人の感想ではあります(汗)。
でもって後半の回答ですけど・・・・・
『かなり、と言ったかどうかあれですが、近づきつつあると言ったときに水準はどれくらいかということですけれども、これが、結局、推計方法によっていろいろですし、そもそも概念として、予想インフレ率の中長期的なものでみていくのか、あるいは一時的なものを外していくのか、一時的なものを外すといったときに何を一時的とみるかというようなことで、必ずしもピンポイントで特定できるものではありませんので、近づいているという方向は申し上げられますが、何か更にゾーンを狭める表現をあえて申し上げるのは、ちょっと差し控えさせて頂ければと思います。』
>何か更にゾーンを狭める表現をあえて申し上げるのは、ちょっと差し控えさせて頂ければと思います
>何か更にゾーンを狭める表現をあえて申し上げるのは、ちょっと差し控えさせて頂ければと思います
>何か更にゾーンを狭める表現をあえて申し上げるのは、ちょっと差し控えさせて頂ければと思います
ちょwwwwwwおまwwwwwwww
直前の金懇挨拶でご案内の通りですが、
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/data/ko250902a1.pdf
『直近の消費者物価の統計に即して申し上げますと(図表5)、7月の消費者物価上昇率は
3.1%と、2%を大きく上回っています。これは、ガソリン補助金などによる引き下げ効果があった上での数字ですが、そうした効果は、上昇率の面では一時的な変動と考えることができます。他方、この
3.1%という消費者物価上昇率には、食料価格の上昇が 2.1パーセントポイント寄与しています。これについても、米価格の急上昇が起点となって起きた一時的な変動の面がかなりある、とみることができます。こうした上下の要因を除いて基調をみるために、例えば食料とエネルギーを除いた品目の上昇率でみると、
1.6%であり、まだ2%には達していません。』(この部分直上URL先の同日実施された金懇挨拶より、以下同様)
って思いっきり数字を出していたのは何だったのかというお話になるのですが、確かに氷見野さんこの挨拶でも、上記のように説明した直後に返す刀で、
『実際には、何が一時的で何が基調的な変化か、何を除いて何を含めて考えたらよいか、の判断は簡単ではありません。』
と喝破した後に、
『そのため、日本銀行では、変動の大きな品目を除いて考える、というやり方のほかに、経済構造をモデル化して基調を推計する方法や、家計や企業や市場参加者などが中長期的なインフレ率についてどのような予想を持っているかを計測する方法など、さまざまな手法を用いて分析を行っています。』
『そうした分析を総合すると、「基調的なインフレ率は 年代には0%と1%の間あたりにあったと思われるが、最近では2%にかなり近づいてきている。ただ、2%に達しているとまではまだ言えないのではないか」といった結果になっています。』
『そこで、「現実のインフレ率は高いが、一時的な要因の影響が収まるにつれ、いずれ落ち着いていく」というシナリオをメインに置いているわけです。』
という展開になっていた訳ですが、これはあくまでも大本営としてはこう言っているけど実際問題として基調的物価をそんなナローレンジで出してリアタイの政策判断に使えるかヴォケ、というのが氷見野さんのご指摘、とお見受けしましたがどうでしょうか????
というのも昨日のネタにしたかったのですが時間が無くて今日に回してしまいましたが、まあこの基調物価の話と、需要要因供給要因の話、という今の政策説明の根幹部分での質疑応答のこの2本が今回本来は読むべき部分だと思いましたが如何ですかね。
ということで今朝は台風らしいのでこの辺で勘弁(台風関係ないじゃろ説は却下wwwww)
2025/09/04
〇植田さんと石破さんの会談がありましたのでメモ
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-09-03/T1ZSUEGOYMTF00
植田日銀総裁、利上げは予断を持たず判断する−石破首相と会談
照喜納明美、梅川崇
2025年9月3日 13:18 JST 更新日時 2025年9月3日 14:02 JST
→経済・物価見通し実現すれば、利上げしてくスタンスに変わりはない
→為替はファンダメンタルズ沿い安定的推移望ましい、政府とモニター
『会談に関しては、経済・物価や市場の動向などについて意見交換したと説明。その中で為替の話も出たが、具体的内容は差し控えるとした上で、「ファンダメンタルズに沿って安定的に推移することが望ましい」と語った。政府と連絡を取りつつモニターしていくとも述べた。』
『両者の会談は石破首相の就任直後の昨年10月2日と今年2月に続いて、3回目となる。』(以上上記URL先より)
こんな感じで記事になるとイマイチインパクト無いんですけど、リアタイでは「為替の話があった」ってヘッドラインが出てきて為替ちゃんの方が反応したりしてて、「為替」だの「利上げ」だのについての言及がノーコメントじゃなく能動的に出たんじゃないかって印象を与えてくれたので、ご時世柄ほほーと思った訳です。
まあどうせならゲルが植田さんとっ捕まえて「おどれが物価高なんもせんから選挙に負けてエライことになっとるんじゃ」と暴れ散らかしていたら面白いのですが(そんなことは起き得ないのでご安心ください)現状機能しているのかどうかも怪しいゲル政権と会談して何の話をするんだか、とは思うのですが、ここまで不人気のゲルさん、乾坤一擲の勝負で金融政策に活路を見出そうとして呼んだんだったらちょっとオモロイなとは感じました。まあしかしゲルって正直ここまで不人気である必要はないと思うのですがテレビは見ない新聞も碌に読まないワイなのでなんで不人気なのかがイマイチ体感的に理解できていくて政治ネタはワカランチ会長モードでありまする。
一応時期的には金融政策の方向性に絡んだりすることもあったりなかったりという感じなので、ちょっと気にはなりますが、まあいずれにしましても9月会合までは時間なさすぎですし、10月会合の時には世の中どうなっているのか分からんですし、今から決め打ちで何か出来るかというとそんな勇気は無いでしょうからここからの情勢に流されていくしかないんじゃないでしょうかね日銀も。
〇氷見野副総裁釧路金懇講演の続きと会見ですがやはり氷見野節が随所に埋め込まれていますね
金懇挨拶
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/data/ko250902a1.pdf
昨日ネタにしましたように、一番味わいのあったのはウィリアムズを引き合いに出したイタコ話法による「ハトハトチキン見てるイェーイ!!!」の部分な訳ですが、この次のパートの日銀の長期国債買入に関する記載も中々の味わいでしたのでそちらから参ります。
『3.日本銀行の金融政策運営』の『(国債買入れの減額計画)』という本文11ページ、PDF12枚目の後半部分から始まるところですが、最初は現象面の話をしているので割愛しまして途中から参ります。
『中央銀行のバランスシートは、資産・負債の両面から経済の諸側面に影響を及ぼし得るものですので、国債買入れの減額の問題も、様々な視点からみることができます。』
この時点で既に先般の金融学会で内田副総裁が「短期金利操作と無関係に中央銀行はバランスシート政策を行うことができる」というお前それ何ぼ何でもレトリックに問題ねえかという説明に対してのイヤミになっている気がしますが先に行きまして、
『以下では、昨年3月や7月、本年6月の決定に参加するにあたって、私なりに考えたことのうちいくつかを紹介させていただければと思います。それぞれの政策委員ごとに視点がありますので、あくまでも私個人の考え方です。』
ワクワクテカテカ
・マネタリーベース直線一気理論を唱えていた連中は脳が1970年代辺りで止まっていた模様ってことですなこりゃw
『第一に、物価への直接的な影響という視点があります。日本銀行の負債の規模は、日本銀行券の発行残高と金融機関から日本銀行への預け金との合計に概ね一致します。これをマネタリー・ベースと呼びます。』
マネタリーベースキタコレ!
『日本銀行が国債保有を減らしてバランスシートの資産サイドを小さくすると、バランスシートの負債サイドであるマネタリー・ベースも小さくなります。』
『米国がインフレに苦しんだ 年代末に一世を風靡したマネタリストの考え方では、このマネタリー・ベースが増減すれば、民間金融機関が受け入れる総預金額であるマネー・ストックが増減し、それが物価を左右する、とされていました。』
「、とされていました」という時点で以下お察しの通りで、
『しかし、この三者の間に安定的な関係がないらしいことは、FRBがマネタリー・ターゲットを採用して間もなく明らかになる、という展開となりました。』
ボルカーのインフレ絶賛大成敗なマネタリーターゲットって高金利政策をとるのを高金利政策と言わずにぶっこむ方便みたいな面もあったかということで、まあ単純に事実を述べているだけに過ぎないのですが、こう言いながら「日銀当座預金が10%増えると予想インフレ率が
0.44%上昇する」などという寝言をほざいていた人を「とっくの昔に決着がついている話をしていた人ですね」と間接的に指摘しているのが実に美しいですね(まあそこまでの意図があったかは別として、笑)
『ただ、国際決済銀行のボリオらは、 32か国の 70年間にわたるデータを分析し、インフレ率が5%以下の低インフレ・レジームにある間はマネー・ストックとインフレの間に関係は見られないが、高インフレ・レジームになると急に関係が高まる、と論じています6
。』
『6 Claudio Borio, Boris Hofmann, and Egon Zakrajsek, "Does Money
Growth Help Explain the Recent Inflation Surge?," BIS Bulletin, no.
67, 26 January 2023.』
これはまたとんでもないオタクなもんをリファーしてきましたな(絶賛している)という感じで、マジかこれ読まないといけないじゃん(今度の連休辺りに)と思いました。さすが氷見野さんとしか申し上げようがありません。
『ボリオら自身、だからといって単純に因果関係を結論付けるべきではないと述べていますが、物価が安定していた時期の先進国だけの経験をもとに、過大な水準のマネーを不必要に放置しておくことにはリスクもあるのではないかと思います。』
>物価が安定していた時期の先進国だけの経験をもとに、過大な水準のマネーを不必要に放置しておくことにはリスクもあるのではないかと思います
ってこれバランスシートの話をしていますけど、日銀の今の話にも通じるものがあって、過去の長期ディスインフレ期の経験を元に物価が上がらんと言い続けて過剰な金融緩和を不必要に放置しておくリスクも同根な訳でして、しらっとぶっこんでいるように見えるのは気のせいでしょうか・・・・・・
・ストック効果の話については長期金利の実体経済への影響が云々で済ませていますが・・・・
『第二に、経済活動への影響の視点があります。日本銀行の保有国債の規模は、いわゆるストック効果を通じて長期金利の水準に影響を与えます。他方、私どもの分析では、実体経済に与える影響は短期金利が中期・長期に比べてはるかに大きく、超長期の金利の影響はごくわずかである、という結果になっています
7。』
脚注7は『7 日本銀行「『量的・質的金融緩和』導入以降の経済・物価動向と政策効果についての総括的な検証」2016
年 9 月』ですけど、ここでも昨日ネタにしたのと同じくで、日銀大本営発表の物件に対して「という結果になっています」とわざわざつけることによって突き放したような表現になっているのが味わいが深くて、
『したがって、短期の政策金利を上下に操作できる状況においては、緩和や引き締めは政策金利の操作を主な手段とすれば足り、国債の購入額を緩和や引き締めの手段として位置付ける必要はない、と考えます。』
って言ってますが、MBとの関係の問題だってあるかもしれない、って言っている中でここだけこういう風に言ってるのは裏読みのし過ぎかも知れませんが、「お宅のお嬢ちゃん最近ピアノがお上手にならはりましたなあ(はんなり)」というぶぶ漬け話法を想起してしまうのはアタクシがネットミームに漬かり過ぎですかそうですかwwww
・減額スピードをどうするのかという話はまあ結局「急にやってしまうのはアカン」になってしまうわな
『第三に、市場機能の回復の視点があります。私どもが昨年末に公表した「多角的レビュー」の分析では、@日本銀行の銘柄ごとの国債保有比率が5割を超えると、国債市場において売り手が求めるレートと買い手が求めるレートの格差が非線形的に拡大していく、A7割を超えると、日本銀行による買入れ額の増額は、市場の取引高をむしろ減少させる方向に作用する、という結果になっています(図表11
左、中)。現在、日本銀行の国債保有比率はかなりの銘柄でこうした水準を超えています(図表11
右)』
となっていまして、
『ですので、市場機能回復の観点からは保有比率を引き下げることが望ましいですし、日本銀行の新規購入が少ないほど保有比率引き下げのスピードは速くなります。ただ、スピードを優先した結果、長期金利が急激に上昇し、臨時に買入れ額の増額や指値オペ、共通担保資金供給オペなどを実施することになれば、市場機能には却ってマイナスとなります。』
『FRBが 年に市場の混乱を受けてバランスシートの縮小を一旦停止せざるを得なくなった経験にもかんがみれば、「市場機能の回復」と「市場の安定」のバランスをとった減額スピードが適切ではないかと考えます。』
という理屈になってしまうのですが、なまじこんなの指値とかできるようにしておくからこういう理屈になっておっかなびっくりで結局バランスシートの縮小が進まんのじゃという事を言うと過激派扱いされますので用法容量を注意して主張しましょうってな感じですけど、まあこういうのも当局が介入しすぎなんだよなーという思いはやはり20世紀から市場の空気を吸って生きておりましたジジイとしては思ってしまいますが、当局的にはこうなってしまうんでしょうねえとは思います。
・適正なリザーブの水準問題に関してはまあ結局先の話ですので
『第四に、銀行システムの機能と安定性への影響です。日本銀行が市場から国債を購入すると、その代金は金融機関が日本銀行に対して持つ預け金の形で支払われます。こうやって一旦日銀預け金が供給されてしまうと、保有主体は移り変わっても、銀行システム全体としての日銀預け金保有高は金融機関側の意思では変えられません。』
さいざんす。
『現在、日銀預け金が金融機関の資産の部の5分の1程度を占めていますが、全体としてはおそらく金融機関が必要とする水準をかなり上回っているのではないかと思います。』
『他方、金融機関は流動性管理のために一定の日銀預け金を必要としていますので、FRBがしばしば強調するように、日銀預け金の供給を過剰に減らすと金融システム・金融市場の安定にマイナスに働く可能性もあります。ストックはフローよりゆっくり動くので、残高ベースで日本銀行がこの問題に直面するのはまだ先だと思いますが、適切な残高と整合的な月間購入額の定常的な水準がどの程度なのか、という問題は、考えながら進めていく必要があるだろうと思います。』
リザーブ水準をアバンダントかアンプルかスケアスかって話ですが、これ短期市場デザインの問題にもなるのですが、日銀の場合はそんな論議を四の五の言う前に長期国債のストック減らせやという話なのでまあこれは論点説明だけで終わるのはしゃあなしw
・日銀財務の問題は財務そのものが問題になるというよりも政策遂行の障害になると「人々が思う」かですよね
『第五に日本銀行の財務との関係があります。日本銀行の財務についての考慮が政策判断の主要因となるべきではありませんが、バランスシートが大きくなればなるほど財務の変動は激しくなります。現状のバランスシートでも債務超過に陥る可能性が大きいとは思いませんし、また、仮にそうなっても直接政策遂行に問題が生じるわけではありませんが、日本銀行に対する信認の低下につながり得るリスクを抑制する観点からは、バランスシート規模は縮小していくことが望ましいと考えます。』
さらっと流していますがこれだけでもかなり重い話題になりますのでいつかはこの辺りの話もお願いします。
ということでまあその3以降はちょっとオマケチックではあるのですが、ここにもしらっと氷見野節が出てましたな、という感想でした。
〇会見ネタをやる時間がだいぶ無くなってしまったので(無計画ですいません)とりあえず白眉な質疑をご紹介
https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2025/kk250903a.pdf
氷見野副総裁記者会見
――2025年9月2日(火)午後2時から約35分
於 釧路市
今回の質疑応答の白眉ともいえる問答が一番最後にありましたので、ちょっと時間が足りなくなったのですいません今朝はとりあえずこれだけネタにさせてくださいゴメンチャイ。
一番最後の質疑の後半の質疑なんですけどね・・・・・・・・
・「供給要因による物価上昇だから一時的なので対応不要」というハトハトチキン理論を華麗に粉砕の巻
『(問)(前半割愛)二点目なんですけれども、7 月の決定会合の際に、植田総裁が、供給サイドからのインフレ圧力が高まっているときに利上げで対応しようとすることが望ましいのかちょっと考え込んでしまうというご発言をされていたかと思います。需要サイド、供給サイドといったインフレの要因によって金融政策の対応が変わり得るのかどうか、お考えをお伺いできれば幸いです。』
これは良い質問過ぎます。素晴らしいんですけどさて氷見野さんの回答はと言いますと、
『(答)(前半割愛)供給ショックの場合と需要ショックの場合で金融政策の対応にどう違いがあるかという点で、私は植田総裁のようにエコノミストではありませんので、あまり明快に講義できる自信はないのですけれども、』
これは学会発表で大先生が挙手して急に「私この分野良くわからないので教えて欲しいんですけど」と言い出して発表者がションベンちびる展開ですね!!!!!!!!と申しますのも返す刀で・・・・・
『これは需要ショックか供給ショックかということだけで機械的に決まるものではなくて、例えば、その要因が一時的なものか持続的なものか、更に、起きた環境において、例えば中長期のインフレ予想がある程度アンカーされているのかそうでないのか、更には中長期の予想が
2%からどの程度ずれていると考えるのかとか、更にそこを総合して考えたときに、そうしたショックが物価安定にとって一時的なものにとどまるのか、持続的な影響があるのかといったところを評価して、対応するということになると思います。』
ど正論、というかこれが常識であって「供給ショックだから対応しない」と言い張り続ける極東の某島国の某ハトハトチキン中央銀行の言ってることの方がおかしいわけですが、その点をきっちりと喝破して頂く氷見野さん流石です。
『ただ、金融政策が直接効くのは、需要に対してまず効果が表れるわけですので、どちらかというと需要ショックのときの方が金融政策どうしたらいいかというのは判断しやすいというのはおっしゃる通りだというふうに思います。供給ショックのときは、結局は、需要ショックのときより更に悩んで、だから何もしないということにはならんわけですけれども、様々な政策変更の影響も考えて、悩んで判断していくということになるだろうというふうに思います。』
別にハトハトチキンヨイショじゃなくて言ってることは至極ご尤もなフォローは入れているのですが、その中にもしれっと「だから何もしないということにはならんわけですけれども」ときっちりぶっこんでおられまして、この質疑応答が一番良かったな、と思いましたので、今回の釧路金懇を見て「ハト的」とか言ってしまうのは、大本営代弁部分だけを読んだ場合の感想であって、読み込みが足りませんなと思う訳です。いやまあ当初のベンダーヘッドラインで脊髄反射するのはしゃあない面が多々ある(自分もそういう事してた時期あったし笑)のですが・・・・・・・・
ということで時間の都合でこの辺で勘弁していただきとう存じます
2025/09/03
〇氷見野さんの金懇で買われたと思ったらイブニングで森山氏幹事長辞任で下げるとな&短国ェ・・・・・
ということでオモロカッタのでメモメモ
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/XTRAZSTSPBME7COOZ5OB36EKKI-2025-09-02/
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は反発、長期金利1.6% 強い10年債入札や日銀副総裁の慎重姿勢で
By ロイター編集
2025年9月2日午後 3:24 GMT+9
でまあ昨日はアタクシ「これで氷見野さんの金懇が普通にいや別に利上げそんなに前のめりになる必要ないじゃろ不確実性高いんだし、とかいう肩透かしを食らった場合の方がちょっとアヒャヒャ相場になるんですかねえ、知らんけど」と万能ヘッジクローズ(ではありませんので使用にはご注意をw)の知らんけどを入れてみましたが、まあそんな展開になって珍しいワシがフラグを立てないとはこれ如何に、と思って他のですが、引け後にご案内のように自民党幹事長どころか党四役全員辞任とかで、これが昭和の時代だと「進退伺を出す」という形にして党長老が出てきて「まあまあこれは一旦預かりということで」とかいう腹芸あるいは茶番劇というのがあったのですが、何せ時代は平成どころか令和ですのでそうもいかず、ということでイブニングに入ってゲル政権オワ終わり待ったなし→トラスショックも夢ではない→ベアスティープだわ円安だわ、という早速の阿鼻叫喚になっておられましたようで、さっき先物ちゃんをみたら、
https://port.jpx.co.jp/jpxhp/main/index.aspx?F=future&disptype=day_through
長期国債先物
限月:25年9月限
取引日:09/03
始値: 137.50 (09/02) (15:30)
高値: 137.53 (09/02) (15:46)
安値: 137.25 (09/02) (21:34)
現在値: 137.30 (09/03) (05:15)
前日比: -0.22
取引高: 11,364
とかいうオシャンティーな展開になっていて草も生えませんwwwwwww
でまあその氷見野さんの金懇挨拶に関してはこれ本当にハト派と捉えて良いのか問題という重要な論点があるのですがそれは後程にするとしまして昨日の債券市場ちゃん。
(URL再掲)
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/XTRAZSTSPBME7COOZ5OB36EKKI-2025-09-02/
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は反発、長期金利1.6% 強い10年債入札や日銀副総裁の慎重姿勢で
By ロイター編集
2025年9月2日午後 3:24 GMT+9
『[東京 2日 ロイター] - <15:17> 国債先物は反発、長期金利1.6% 強い10年債入札や日銀副総裁の慎重姿勢で』(上記URL先より、以下同様)
ってな訳で、
『日銀の氷見野良三副総裁による金融経済懇談会でのあいさつでは、10月会合に向けて利上げを強く示唆するような発言が出なかったとし「市場想定対比ではそこまでタカ派的ではなかった」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券のシニア債券ストラテジスト、鶴田啓介氏)という。
後場に入り、国債先物は上げ幅を拡大。この日実施された10年債入札は強い結果と受け止められた。「1.6%台の利回り水準への実需のニーズが確認できた」(国内証券債券セールス担当)とし「一部の投資家や業者のショートカバーに支えられた印象だ」(同)との声が出ている。』
だそうでそうなんですかあ。。。とは思いますがそれはさておき、
『現物債市場で新発債利回りはまちまち。2年債は同1.5bp低下の0.865%、5年債は同1.5bp低下の1.150%、20年債は同1.0bp低下の2.620%。一方、30年債は同1.0bp上昇の3.200%、40年債は同2.0bp上昇の3.445%。』
入札強かった10年は兎も角として、中短期がガッツリ堅調になっているのがまあ利上げ思惑ヒャッハーの反転アヒャヒャヒャヒャって感じではあるのかもしれませんな。
『 OFFER BID 前日比
2年 0.858 0.866 -0.014 15:09
5年 1.141 1.148 -0.02 15:07
10年 1.597 1.603 -0.021 15:08
20年 2.619 2.631 0 15:13
30年 3.202 3.21 0.02 15:08
40年 3.438 3.451 0.027 15:13』
ということでツイストしていましたが、その後は自民党両院議員総会で最初は何か皆さん無事にそのままという展開になるのかと思いきや森山幹事長辞意表明ってことで、夕方には
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/D3Y4GQVI7RPODIIHQVTICUD3DI-2025-09-02/
〔マーケットアイ〕外為:ドル148円半ばに上昇、森山自民幹事長が辞意表明と伝わる
By ロイター編集
2025年9月2日午後 4:50 GMT+9
『[東京 2日 ロイター] - <16:40> ドル148円半ばに上昇、森山自民幹事長が辞意表明と伝わる
ドルは現在、148円半ばに上昇している。自民党の森山裕幹事長が辞意を表明したと伝わった。日銀の氷見野良三副総裁の発言などで円売りが進み、森山氏の辞意が伝わる前には148円台までドル高/円安が進んでいた。』
『<15:10> 午後3時のドル147円後半、買い戻し優勢 日銀副総裁発言で円売りも
午後3時のドル/円は147円後半と、前日東京時間午後5時時点と比べドル高/円安の水準で推移している。日銀の氷見野良三副総裁の発言が予想ほどタカ派的ではないとして、円売りが一部で出た。ドルが全般的に買い戻されたとの声もある。』
『<12:08> 午前のドルは147円後半へじり高、日銀副総裁発言で円安
午前のドルは147円前半から後半へじり高となった。日銀の氷見野良三副総裁の発言が期待ほどタカ派的でなかったとの見方から、円売り圧力が強まったという。副総裁は2日午前、各国の通商政策の影響は「いずれ顕在化する」とした上で、当面は影響が「大きくなる可能性の方により注意が必要ではないか」などと述べた。』(以上上記URL先より)
ってな感じで、金懇挨拶見てやや円安→会見終わって欧州タイムでさらに円安→森山幹事長辞任表明報道で一段と円安、というのが昨日の夕方までの流れという感じだと思います。
とまあそういう訳で、はやくもトラスショックinジャパンを見越すようなムーブメントが発生しだしていて大変に味わいのある展開を見せたりしている訳ですが、さて今後はどうなるのかというお話ではありますが、政治の方はまあ良くわからんので何がどうなるとかあんまり考えないようにしますwww
それはそうと昨日の短国ちゃんなのですが
https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html
ちょっとだんだら引値をだすのも何なので3Mカレント近辺だけにしておきますが、
(9/2引値)
国庫短期証券1325 2025/11/17 平均値単利 0.436
国庫短期証券1327 2025/11/25 平均値単利 0.436
国庫短期証券1328 2025/12/01 平均値単利 0.420←カレント3M
国庫短期証券1329 2025/12/08 平均値単利 0.440←今週金曜入札のWI
国庫短期証券1311 2025/12/10 平均値単利 0.455
(9/1引値)
国庫短期証券1325 2025/11/17 平均値単利 0.440
国庫短期証券1327 2025/11/25 平均値単利 0.440
国庫短期証券1328 2025/12/01 平均値単利 0.440←カレント3M
国庫短期証券1329 2025/12/08 平均値単利 0.440←今週金曜入札のWI
国庫短期証券1311 2025/12/10 平均値単利 0.455
ということで先週金曜に入札のあったカレント3Mの1328回の引けがなんと0.42%に低下していまして、まあ新発銘柄だからということで誰かが買いに来てしまってショートカバーが入ったとかそういう世界線なのですかねえ、とは思いますけど金曜日に0.47%〜0.48%で入札をやったとは思えない展開になっておる訳でして、この3日くらいで短国の3M近辺急に強くなっているのもナンノコッチャ感がありまして、まあ何がどうなっているのか分からんですけど、色々な思惑だったりお家の事情だったりが飛び交っているのかなあ、とは思いました。
〇氷見野副総裁釧路金懇挨拶:執行部として大本営の代弁をしている中に氷見野節がチョイチョイ見れるんですよね〜
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/data/ko250902a1.pdf
最近の金融経済情勢と金融政策運営
── 道東地域金融経済懇談会における挨拶 ──
日本銀行副総裁 氷見野 良三
・大本営の代弁コーナーを見るとハトハト講演と思ってしまうのですが読みどころはそこではないと思うの
ということで挨拶がおっぱじまるわけですが、最初の『2.経済と物価の見通し』では、
『さて、まず、わが国の経済と物価の見通しについて申し上げたいと思いますが、それを大きく左右しかねないのが米国の新政権の考え方です。』
と来まして最初のコーナーが『(米国新政権の思想と政策)』でして、この部分が最初の読みどころになる訳でして、単に大本営の話をホーンスピーカーの如く棒読みしているだけの挨拶ではないわけです。ということで最初のこの部分ですけどね。
『これについては、政権発足後8か月を経て、分かるようになったことも増えてきたように思いますが、予想を超えるようなニュースも日々続いており、分からないことも増え続けているような気がします。』
なるほど。
『そのうえで、分からないながらも現時点での個人的な感想を申し上げますと、新政権の考え方の大きな特徴としては、』
ということで、
『第一に、政治と経済と文化、内政と外交を、垣根なく一体的にとらえていること、』
『第二に、状況に応じて方法を変えるとか、一旦退却してから再度前進するといった「戦術」のレベルでは極めて柔軟だが、最終的に何を達成しようとするのか、といった「戦略」のレベルでは頑強であること、』
『第三に、昔からの通説や定石だけで物事を考えずに、力の所在と源泉に関する事実に立ち返って様々な可能性を追求すること、』
『の三つが挙げられるのではないかと思います。』
なるほど確かに!!
・通商政策を例にとりながらより深堀りをしたお話が聞けるのは氷見野さんの金懇ならではなのです
でまあそういう話から以下発展していくのですよ。
『例えば、通商政策について我々が教科書でまず習うのは、自由貿易体制をなぜ守っていかなければならないか、という理由です。』
ふむふむ。
『「比較優位の原則に基づき、各国が最も得意な分野に特化して生産を行い、国際的な分業を進めることで、経済全体の効率性と成長を高めることができ、それは、全ての国にとってメリットをもたらす。だから、世界全体で力を合わせてポジティブ・サム・ゲームを追求していこう」というワシントン・コンセンサス的な考え方で、私もこの考え方には多くの真実が含まれていると思います。』
でまあこういうことしてないんだからこりゃまあ経済全体の効率が下がるわなとかそういう話に進むのではなく、さらにこの話を深堀りするのが氷見野節な訳でして、、
『他方、これで物事のすべての側面を捉えきれているかというと、必ずしもそうとは限りません。』
からの、
『超大国の場合には、自らの対応によって輸入価格を左右できるほどの市場規模があり、しかも、貿易相手国の対抗関税を抑止できるだけの影響力もあるので、いわゆる最適関税理論によれば、関税をゼロにするより一定の関税を課す方が交易条件が改善して有利になる、といわれます
。1』
Oh・・・・・・
でもってここの脚注1なんですが、リファーされているのが、
『1 Nicholas Kaldor, "A Note on Tariffs and the Terms of Trade," Economica 7, no.28,(1940):377-80』
ということで(アタクシ経済学徒じゃないから詳しくないんで恐縮ですが)マクロ経済学の基礎を打ち立てたカルドア卿の1940年の論文を引用していましてまあ唸らされます。
『また、現在の地政学的な状況に鑑みれば、自国の戦略的自律性と戦略的不可欠性の確保を目指す経済安全保障の考え方の重要性は増大していかざるを得ません。』
『さらに、「最も効率的な経済体制が公正や分配の面で必ずしも理想的な結果をもたらすとは限らず、しかも政府の再分配機能には限界がある」という議論も、社会的・経済的な分断が深まるにつれ、重みを増します。』
なるほどこれは重い指摘。
『すなわち、関税だけをとってみても、交易条件という経済的な面、経済安全保障という外交的な面、公正や分配を巡る政治的な面がないまぜになっているような気がします。』
『「知的エスタブリッシュメントは、極端に格差が拡大するような新自由主義的な経済体制を、経済効率を根拠に弁護してきたのではないか」という批判も含まれているとすれば、彼らに対する文化闘争の面すらあるかもしれません。』
おーーーーーーーーーー。
『関税は経済・外交・政治・文化を横断した大きな運動の一つの表れと捉えることができるのではないかと思います。』
!!!!!!!!
『ですので、米国の新政権の政策の影響を関税の問題だけに限って論じるのでは話を矮小化し過ぎであり、わが国の経済や物価の中長期的な展望を語るためにはもっと広い視点の議論が必要だと思います。』
ここまでの説明をお伺いしてここに至りますと首がもげるくらいに頷いてしまう訳ですが。
『ただ、それでは私の能力を超えてしまいますので、以下では関税政策の当面の影響に絞って議論させていただければと思います。』
どう見てもそれは氷見野さんの能力の中で十分に含蓄の深い話をしていただけると存じますが、まあ金懇なので大本営の伝言係をやらないといかんという企画でもあるので、この先が伝言係モードに切り替わるのですが、その中でもちょいちょいと氷見野節は出てくるって感じではありますな。というかこのお題に関しての氷見野副総裁の考察と見解をお聞きする機会があるなら木戸銭払っても聞きたいとマジで思います。
・米国関税の影響が日本経済にどうなるか問題の説明部分に飛びまして
次の小見出しが『(関税政策の影響)』ですが、この説明部分も非常に丁寧に説明されていてまあ読めって感じなのですが引用していると量も時間もオワランチ会長になってしまいますので、会見ネタと共に明日続きをするかもしれませんけれども、途中すっ飛ばして結論部分に参ります。
『想定される4つの主な経路と、それらの経路を通じた影響が思ったより大きくなる可能性と小さくなる可能性とについて申し上げてきました。では、これらの経路を通じた影響は、日本の側にはどのように表れているでしょうか。』
はい。
『日本から米国への自動車の輸出価格は大きく下落しましたし、日本銀行が行っている企業へのアンケート調査「短観」でも、一部の業種では業況や収益見通しの悪化が見られます。企業へのヒアリングを行うと、今後についての不安を口にされる経営者は少なくありません。』
『ただ、経済全体としてみれば、現地通貨建ての輸出価格は横ばい、輸出数量は駆け込みとその反動があるので評価しにくいですが、史上最高に近い水準で概ね横ばい、鉱工業生産も横ばいです。企業の業況感や収益計画・設備投資計画の水準は引き続き高く(図表4)、本年度分の賃上げや夏のボーナスには顕著な影響は見られていません。個人消費も底堅く推移しています。』
なるほど。
『関税政策の影響がこれまでのところ思ったほどには顕在化していないことについては、影響が出るまでに時間がかかっているだけであり、影響はこれから及んでくる、というのが基本的な見方だろうと思います。』
「基本的な見方だろうと思います」って形で言い切っていないのが味わいがあります。つまり、
『ただ、既に述べたような理由で、そもそも関税政策の影響が思ったほどは大きくない可能性も考えられます。他方、思ったより大きい可能性も、米国新政権から我々が想定していないような政策が新たに打ち出される可能性も考えられます。いずれも頭の隅にはおいておいた方がよいのではないかと思います。』
ってのはさらっと流して読んでしまいそうな部分ですが、これ実は対句になる部分が金融政策運営のところに埋設地雷のように入れ込まれている、という事をここで気にしておいてください。
『いろいろ申し上げましたが、今後についてのメイン・シナリオとしては、各国の通商政策の影響はいずれ顕在化し、海外経済が減速、わが国の企業の収益も下押しされるだろうと見ています。その場合、緩和的な金融環境などが下支え要因として作用するものの、日本経済の成長ペースは鈍化するものと考えられます。』
『ただ、影響が思ったより小さくなる可能性も、大きくなる可能性も、両方考えられるところで、当面は大きくなる可能性の方により注意が必要ではないかと考えています。その後については、海外経済が緩やかな成長経路に復していくもとで、日本経済も成長率を高めていくと見込んでいます。』
というのが伝言モードで、この「大きくなる可能性の方により注意が必要」であら早期利上げモードじゃないのね、ってなってアヒャヒャヒャヒャな10年入札になったという感じでしょうね。
・基調的インフレの説明部分www
次のコーナーが『(物価の見通し)』です。
『さて、次は物価についてです。現時点でメイン・シナリオと考えているのは、「現実のインフレ率はお米の値上がりとその波及を主因に物価安定目標の2%を大きく上回っているが、いずれ落ち着いていく。他方、基調的なインフレ率は2%より低いが、賃金と物価の相互参照のメカニズムが働いて2%にかなり近づきつつあり、足踏みはあっても、いずれ2%に達する」といったものです。』
といったものです、ってのが味わいがある。
『こうした「基調的なインフレ率はまだ2%を下回っている」という見方については、現実のインフレ率が既に3年余りの間2%を上回っており、しかも3%を上回る期間が多くなっていることから、分かりにくいといったご意見や、その適切性についてのご疑問をいただくことが少なくありません。』
wwwwwwwwwwwwwwww
『基調的なインフレ率というのは、一時的な変動を除いたインフレ率のことです。一時的なショックの影響がなくなった後の落ち着き先のインフレ率、ということもできます。』
ほうほう、というかそういう理屈だとそもそも論として「基調的なインフレ率」ってのは後付けにならないと分からないということになるので、基調的インフレ率を現在進行形で把握して政策判断のメルクマールにするのって、金融政策の波及効果にラグがあることを勘案したら政策反応関数に使うの無理じゃんという話になりそうですが、そういう話は華麗にスルーして基調的インフレの説明がおっぱじまります、ナンノコッチャ。
『直近の消費者物価の統計に即して申し上げますと(図表5)、7月の消費者物価上昇率は3.1
%と、2%を大きく上回っています。これは、ガソリン補助金などによる引き下げ効果があった上での数字ですが、そうした効果は、上昇率の面では一時的な変動と考えることができます。他方、この
3.1%という消費者物価上昇率には、食料価格の上昇が 2.1パーセントポイント寄与しています。これについても、米価格の急上昇が起点となって起きた一時的な変動の面がかなりある、とみることができます。こうした上下の要因を除いて基調をみるために、例えば食料とエネルギーを除いた品目の上昇率でみると、1.6
%であり、まだ2%には達していません。』
こwwwwれwwwwwわwwwwwww
さては次回の決定会合での総裁会見ではこの屁理屈を新たに繰り出しますよ宣言ですかそうですかと笑ってしまいました。というのはこの先で氷見野さん、
『実際には、何が一時的で何が基調的な変化か、何を除いて何を含めて考えたらよいか、の判断は簡単ではありません。』
って今言ってた1.6%云々ってのもある種のイリュージョンあるいはフィクションです、って言ってるようなもんじゃんと思ったのでw
『そのため、日本銀行では、変動の大きな品目を除いて考える、というやり方のほかに、経済構造をモデル化して基調を推計する方法や、家計や企業や市場参加者などが中長期的なインフレ率についてどのような予想を持っているかを計測する方法など、さまざまな手法を用いて分析を行っています。』
はい。
『そうした分析を総合すると、「基調的なインフレ率は 年代には0%と1%の間あたりにあったと思われるが、最近では2%にかなり近づいてきている。ただ、2%に達しているとまではまだ言えないのではないか」といった結果になっています。』
この辺り、さっきからずっと「といった結果になっています」とか決め打ちを避けた説明になっているのは、知的誠実のある説明ではあるのですが、なんか突き放したっぽくも見えて読んでて滋味深いなと思います(個人の感想です)。
『そこで、「現実のインフレ率は高いが、一時的な要因の影響が収まるにつれ、いずれ落ち着いていく」というシナリオをメインに置いているわけです。』
ってのも面白くて、アクチュアルのインフレが落ち着くという見通しは基調的インフレが2%行ってないから、というのが今の日銀大本営のロジックの背景説明ということになりまして、そうなりますとインフレが落ち着くという見通しそのものの背景がお気持ち物価から来ているという話であって、個別価格の見通しのアグリゲートではありません、という話をしている訳ですなこりゃまた。
いやまあ物価の見通しってのをマクロ的に考えれば仰せの通りという話ではあるのですが、現実にアクチュアルな物価は(以下でも話があるけど)個別価格におけるショックが波及していくのが手を変え品を変え出てきているということがあるわけですから、個別物価の積み上げベースで少なくともニアータームの物価見通しを考えないといかんのじゃないのかねとも思う訳で、その辺今の日銀大本営は何をどう考えているんだろう、と思ってしまいました。
・一時的ショックだから基調に向かって落ち着く・・・・とならん背景について
話は続きまして、
『振り返ってみますと、 2021年からは原油や小麦などの国際商品市況、次いで円安の進行を要因として輸入物価の上昇が起こりました。
2023年以降は、輸入物価指数は下落に転じたものの、今度は国内の生鮮食品、次いで米、と、新たな供給ショックが物価を引き上げてきました。』
『2021年以降を通してみれば、一時的な要因は次々に消えていくものの、次々に新しい要因が登場するというパターンになっているわけです。』
はい。
『しかし、これについては、上向きの一時要因が続いているのはたまたまにすぎず、次は下向きのショックが来るかもしれない、いや、米国関税政策という形ですでに来ている、という風に考えることができます。』
これが大本営ね。
『他方、あえて別の見方を考えてみますと、二つぐらい挙げられるかと思います。』
ほいな。
『第一は、日本の国内事情に関するもので、「デフレ・ノルムの時代には、一時的な物価下押し要因の効き目が大きかったが、最近は、輸入物価の下落などの下押し要因が生じても影響に広がりはみられず、逆に、一時的な物価上押し要因が大きく効くようになってきている。これは、人手不足、価格設定や転嫁に関する企業や消費者の考え方の変化、インフレ予想の上昇などが下地にあるからだ。」という仮説です。』
この点に関しては先般シントラフォーラムの時に公表されたECBのストラテジー見直しと、その時に行われたラガルド総裁の示した認識も(デフレノルム云々の部分は違えども)この手のレジームシフトを前提にした話なので、実は日本だけの話のかというと必ずしもそうではないとおもうのですが、そっちの話はさておかれまして、国内の人手不足云々の話になります。
『今、下地として申し上げた三つのうち、人手不足の影響について見てみたいと思います。』
ということですが、以下の部分は展望レポート1月の基本的見解に一部と、その詳しい背景説明が全文の方にありました話の説明部分となっているので引用をすっ飛ばしまして第二の要因の方に参ります。
『物価を上押しするような一時的な要因の継続に関する第二の解釈としては、グローバルな環境が、
2010年代までのデフレ的なものから、 2020年代にはインフレ的なものに変わってきているためだ、という見方が考えられます。』
うむ。
『これも、「地政学的な理由からグローバル化の巻き戻しが始まっており、国際分業によるコスト最小化が行いにくくなっているから」とか、「人口動態の変化により世界全体が人手不足の時代に入っているから」とか、「気候変動及びその対策のコストが増加しているから」とか、いろいろな議論があります
。』
ただこれはこれでそうじゃろというか大本営も言ってますよね、言うと都合の良い時だけ限定ですがw
『もっとも、これらの議論はかなり長い時間軸での話であり、それをどの程度足もとの情勢判断と結びつけてよいのかの見極めはやはり難しいです。』
まあそりゃそうだ。
・上振れの話は構造的な面が強いのだが下振れの方は・・・・・
『以上のような議論は、いずれも上振れ方向のリスクを示すものですが、他方、下振れ方向のリスクも考えられるところです。』
・・・・でもって下振れの方ですが、
『まず、各国通商政策を起点として、先ほど申し上げたような経路で日本経済の下押しが始まれば、それが日本の物価や賃金にも下押し方向に効きます。』
『輸出企業が「関税分は輸出価格を引き下げたい」と考え、仮にそれをきっかけにコスト削減を優先する傾向が復活するようなことになれば、賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇するメカニズムが停滞する可能性もあります。』
これは4月にやたら大本営が強調していた話。
『また、世界経済が停滞すれば、原油をはじめとした国際商品相場には下押し方向に効きます。更に、既に過剰生産能力を抱えた国もある中で、米国という輸出先を失った国々が、日本を含めた他の輸出先での売り上げ拡大を狙って輸出価格の引き下げを行うならば、これも物価への下押し圧力となります。』
これはコストプッシュの逆なんだから経済にプラスで需要が強まるからそんなにマイナスにならんとチャウのという気が。
『これまでのところ、こうした経路では目立った影響は観察できませんが、いずれ顕在化する可能性も否定できません。』
だそうです。
・金融政策運営の部分でイタコ話法を使って氷見野節が炸裂しているんですよね〜
ということで次が『3.日本銀行の金融政策運営』ですけど、
『日本の経済と物価に関する以上のような「メイン・シナリオ」と「上下双方向のリスク」を踏まえ、当面の金融政策運営についてはどのように考えていけばよいでしょうか。』
となりまして最初が金利政策の運営、次がバランスシート運営の話になるのですが、バランスシートの方で実はかなり面白いなあと思うところがあるのですが、惜しくも時間が足りなくなりそうですのでその手前の部分で寸止めとなるのですけど、まあ今回読んでて一番「おおおおお」と思ったのがアタクシが小見出ししたイタコ論法部分。
小見出し『(当面の金融政策運営)』に参りますが、最初の金融政策運営の話はまあ超あっさりと流していまして、
『経済や物価への影響が大きいのは、名目金利からインフレ率についての見通しを差し引いた実質金利ですが、これは、これまで3回政策金利を引き上げてきたにもかかわらず、インフレ率が上振れしてきたこともあり、依然きわめて低い水準にあります。』
『このため、これまでご説明したような経済・物価のメイン・シナリオが実現していくとすれば、経済・物価情勢の改善に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことが適切だろうと考えています(図表9)。』
『ただ、既に申し上げた通り、経済も物価も様々な要因から上下双方向のリスクが考えられます。メイン・シナリオが本当に実現していくかどうかについては、予断を持たずにみていきたいと思います。』
とまあドチャクソあっさり味で終わっているのですが、実はこの分けた中の3番目の対句でもあり、さっき言ってた対句部分でもあるお話がこの先にありまして本日の白眉になります。
『先日、私どもの金融研究所が主催している国際コンファレンスに、ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁が参加されました。この方は高名な研究者でもあり、「不確実性の下での金融政策」を研究テーマの一つとしてこられました。』
ほう。
『せっかくの機会なので、「こういう不確実性の高い環境では、どういう作戦で金融政策を運営していったらいいと思うか」と尋ねてみました。』
ほうほう。
『ウィリアムズ総裁のお返事は、私の理解したところでは、だいたい以下のようなことだったと思います。』
ほうほうほう。
『すなわち、金融政策はいつだって不確実性に直面してきた。不確実性が高いからゆっくり進めたらいいとか、迅速に進めたらいいとか、小刻みにやった方がいいとか、大きなステップを取った方がいいとか、そんなことはいえない。ただ、特定のシナリオを前提に厳密な最適解を求めようとするのではなく、むしろいろんなシナリオを想定してもちゃんと機能するような作戦を見つけるようにした方がいい。――こんな感じのお返事ではなかったかと思います
。5』
(;∀;)イイハナシダナー
(;∀;)イイハナシダナー
(;∀;)イイハナシダナー
『私たちの前からリスクや不確実性がなくなることはありませんので、上方向のリスクと下方向のリスクのバランスを評価して、メイン・シナリオから離れた時にもあまり困ったことにならないよう、適時適切に対応してまいりたいと思います。』
>私たちの前からリスクや不確実性がなくなることはありませんので
>私たちの前からリスクや不確実性がなくなることはありませんので
>私たちの前からリスクや不確実性がなくなることはありませんので
ハトハトチキン見てるかイェーーーーイ!
>メイン・シナリオから離れた時にもあまり困ったことにならないよう、適時適切に対応してまいりたいと思います
>メイン・シナリオから離れた時にもあまり困ったことにならないよう、適時適切に対応してまいりたいと思います
>メイン・シナリオから離れた時にもあまり困ったことにならないよう、適時適切に対応してまいりたいと思います
ですよねーーーーーーー。でまあそう考えると今の0.5%という金利が本当に適正水準なのかって話な訳で、これが1%台前半とかにいるなら話は違ってくるかもしれんが、まあそういうことやぞ、ということだし、経済物価の見通しの中でも上下のリスクを強調していることの対句になっている訳でした。
ということで続きは明日にでも。
2025/09/02
〇さすがに5月対比では改善しちょるじゃろというサーベイですが今日は別の話で雑談
https://www.boj.or.jp/paym/bond/bond_list/bond2508.pdf
債券市場サーベイ
<2025年8月調査>
回答期間:2025年8月1日〜8月7日
調査対象先数:75先
(「調査対象先数」は、国債売買オペ対象先のうち調査協力を得られた先、および大手機関投資家<生命保険会社、損害保険会社、投資信託委託会社等>)
ということでさすがに5月よりは数値改善しているのですが、そもそも論としてこれ回答期間が決定会合の直後(しかも展望会合)にぶつかる設定になっているの如何な物なのかと今更ながらに思う(2月だけは直後ではないけど5月8月11月の第一週ってどこからどう見ても展望会合直後なんですよね)のですが、これ調査タイミング2週間くらい後ろに倒した方が良いんじゃないかと思います。
まああと調査項目に関しても、QQE+YCCやっていた時と同じ項目ってのも微妙なところがあって、いやまあQQE+YCC政策からの解脱がどの程度進んでいるか、っていうのを見たいという面から言えば同じ項目でも良いのかもしれませんけれども、もう少し視点を変えますと、アスクビットスプレッドとか板の厚さとかの問題よりも、もっと本源的に「債券市場の価格形成が日銀の長期国債買入によって歪んでいないか」というのを見ていくのが大事なんじゃないかと思うんですよね。
と申しますのは、YCCってのはその政策手段の性格上、長期債市場に対して強力な介入を行う、すなわち意地悪な言い方をすれば価格形成を歪ませることによって、金融緩和政策の所期の目的を達成しよう、という物なのですから、まあ価格形成が歪むのって政策運営上やむを得ないというかそういう物だったんですな。ただその価格形成が歪むのも程度問題というのがあって、アスクビットスプレッドが無茶苦茶開くとか板がスッカスカだ、ということになると国債の安定消化に支障を来すという盛大な副作用に結びつくことになるから、そこまでにならないようにアスクビットスプレッドや板の厚みを気にする、ってのはまあ分かるんですな。
然るに、現状ってYCCやっている訳ではなくて、盛大に買ってしまった長期国債を本来はバランスシートかどうやって落としていくか(って財務省にバイバックさせない限り自然減しかできないんですけど)という中で、これまで馬鹿みたいな額の買入をしていたから経過措置で買入減額をチンタラとやっている、という状況な訳ですから、問題にすべきは今申し上げた通りで、「日銀の長期国債買入が市場の価格形成を歪めているか否か」が問われるべき段階に入っている筈なんですよ。
ということでして、YCCやってる時と同じ調査を継続するのが本当にそれでエエノカという問題提起を突如ぶっこんで見ました。まあやってる方としてはこれだけデータが揃っている調査なので急に項目変えたくないとか無くしたくない、って気持ちは良くわかるのですが、まあご検討頂きたいものだと思う次第でありまする。
2025/08/28
〇ジャクソンホールパウちゃん講演
昨日時間切れですいませんすいませんすいません
https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/powell20250822a.htm
August 22, 2025
Monetary Policy and the Fed’s Framework Review
Chair Jerome H. Powell
At “Labor Markets in Transition: Demographics, Productivity, and Macroeconomic
Policy,” an economic symposium sponsored by the Federal Reserve Bank of
Kansas City, Jackson Hole, Wyoming
物価認識に関しての部分が時間切れになってしまったので続きですさーせん。
・現状認識は「財価格の上昇は抑制的でサービス価格が威勢よく上昇」
『Turning to inflation, higher tariffs have begun to push up prices in some categories of goods. 』
物価のコーナーでは一発目に高率関税が財価格に影響でるじゃろ、としてから物価の現状を説明しているのですが、
『Estimates based on the latest available data indicate that total PCE
prices rose 2.6 percent over the 12 months ending in July. Excluding the
volatile food and energy categories, core PCE prices rose 2.9 percent,
above their level a year ago. Within core, prices of goods increased 1.1
percent over the past 12 months, a notable shift from the modest decline
seen over the course of 2024. In contrast, housing services inflation remains
on a downward trend, and nonhousing services inflation is still running
at a level a bit above what has been historically consistent with 2 percent
inflation (figure 4).4』
PCEはヘッドラインもコアも強いんですけど、財価格の上昇は足元では抑制的で、サービス価格が威勢よくあがっていまっせというお話をしておりますわな。
・関税の影響はclearly visibleだそうだがその規模と期間はwith high uncertaintyだそうで
『The effects of tariffs on consumer prices are now clearly visible.』
で、次のパラグラフの冒頭が「関税の消費者物価への影響は今やclearly visibleと仰せで、じゃあお前不確実性は無いんとチャウかと思ってしまいますが続きを読む。
『We expect those effects to accumulate over coming months, with high uncertainty about timing and amounts.』
clearly visibleなんだけどもこれらの影響は今後数か月の期間拡大していきまして、そのタイミングと規模については極めて不確実、ってエイゴムツカシネーと思いましたけど「影響が出ているのは明らか」って意味でいってるのかって感じですけど、be動詞の現在形でnow
clearly visibleと言っておいて直後にはwith high uncertaintyってのはレトリックとしてナンノコッチャな気はするけど。
でもってこのパラの続きは早速現世利益コーナーになって金融政策へのインプリケーションとなるのですが、
・金融政策のインプリケーションを述べる早い段階で「インフレ再加速のリスクを計測してマネージしないといけない」
『The question that matters for monetary policy is whether these price
increases are likely to materially raise the risk of an ongoing inflation
problem.』
ほうほうそうですかそうですかってな話ですが、じゃあ「materially raise the
risk of an ongoing inflation problem.」たあどういうことですかということで、
『A reasonable base case is that the effects will be relatively short lived-a
one-time shift in the price level. Of course, "one-time" does
not mean "all at once." It will continue to take time for tariff
increases to work their way through supply chains and distribution networks.
Moreover, tariff rates continue to evolve, potentially prolonging the adjustment
process.』
リーズナブルなベースラインシナリオでは「タリフの影響はワンタイムで短期的」だそうな。次のパラに進みますが。
『It is also possible, however, that the upward pressure on prices from
tariffs could spur a more lasting inflation dynamic, and that is a risk
to be assessed and managed.』
ハウエバー、ときたらそこはちゃんと読むのが多分入試の英文読解でもやってる話ですがwハウエバーと来たあとにあるのが物価高がインフレ再加速を招くリスクがありまっせ、ということで「that
is a risk to be assessed and managed.」ってゆうてまして、昨日ネタにしましたように、今回のパウちゃん講演出た所で一発目には労働市場の部分での話を受けてヒャッハーという事になっていた訳ですが、しれっと「that
is a risk to be assessed and managed.」ということでインフレ再加速リスクへのマネージメントが必要って言ってるわけでして、しかもご案内のように講演後半の金融政策ストラテジーのところでは「メイクアップストラテジー」を明確に誤りと否定しているのとセットで考えれば、パウちゃん引き続きインフレ再加速警戒に軸足を置いているという表明は(労働市場の話の部分で)サービスフレーズを入れながらも行っている、というのがチャーミングな訳ですなこれがまた。
『One possibility is that workers, who see their real incomes decline because
of higher prices, demand and get higher wages from employers, setting off
adverse wage-price dynamics. Given that the labor market is not particularly
tight and faces increasing downside risks, that outcome does not seem likely.』
ただここで賃金物価のスパイラルが起きる可能性については労働市場のタイトさがそこまで無いから大丈夫でしょ、という認識をしめしていまして、主にインフレ期待の上振れ、という鉛筆舐めやすい部分での懸念ってことになるので、そういう点で考えるとアクチュアルの物価が明確に反転する、ってことになると物価大重視になるとは思うのですが、そうじゃない場合はどっちでも言い訳はできそうです。
てなわけで次のパラグラフは「インフレ期待の上振れリスク」についてでして、
『Another possibility is that inflation expectations could move up, dragging actual inflation with them.』
キタコレですが、
『Inflation has been above our target for more than four years and remains
a prominent concern for households and businesses. Measures of longer-term
inflation expectations, however, as reflected in market- and survey-based
measures, appear to remain well anchored and consistent with our longer-run
inflation objective of 2 percent.』
アクチュアルのインフレの高さは家計や企業へのprominent concernではありますが、ゆうて長期のインフレ期待はアンカーされています(されてないって認定にするとややこしいことになるのでまあしないですけど)とな。
『Of course, we cannot take the stability of inflation expectations for
granted. Come what may, we will not allow a one-time increase in the price
level to become an ongoing inflation problem.』
ということで、ワンタイムであってもインフレ期待が上振れるようなことになったらあかんぜよ、という説明になっていますね。
・無事に物価が見通し通り落ち着いてくれれば政策は徐々に中立だよというお話
実質このコーナーの最後のパラになります(最終パラは毎度のオマジナイ文言)。
『Putting the pieces together, what are the implications for monetary policy?』
お。
『In the near term, risks to inflation are tilted to the upside, and risks
to employment to the downside-a challenging situation. When our goals are
in tension like this, our framework calls for us to balance both sides
of our dual mandate. Our policy rate is now 100 basis points closer to
neutral than it was a year ago, and the stability of the unemployment rate
and other labor market measures allows us to proceed carefully as we consider
changes to our policy stance. 』
『Nonetheless, with policy in restrictive territory, the baseline outlook
and the shifting balance of risks may warrant adjusting our policy stance.』
これはサービスフレーズでもあるし、まあ当たり前ちゃあ当たり前(ロンガーランの目標に近づけば政策も中立になるんだから)の話でもあります。
でもって最後はオマジナイ文言。
『Monetary policy is not on a preset course. FOMC members will make these
decisions, based solely on their assessment of the data and its implications
for the economic outlook and the balance of risks. We will never deviate
from that approach.』
いつもの「政策はプリセットコースではなく状況に応じてあんじょうようやっときまっせ」という話ですね。
ってな訳で、まあ前半だけ読むと利下げヒャッハーと大喜びしてしまうのは分からんでもないけど、後半の「2020年にぶっこんだ緩和的な方に軸足を置いたストラテジーを猛省したでござるの巻」と合わせて読まないといかんじゃろ、という物件ではあると思いました。
てな訳で今朝はこの辺で勘弁してつかあさい。
2025/08/27
〇基調的物価が少し落ち着いたじゃないですか(と言っても最頻値が完全にシフトした感が)
https://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/index.htm
基調的なインフレ率を捕捉するための指標
足元で見れば今回下がりましたねというのがニュースヘッドラインになるんですけど、ちょっとだんだらを長くとってみますと、
Jul-23 3.3 1.6 3.0
Aug-23 3.3 1.8 3.0
Sep-23 3.4 2.0 2.8
Oct-23 3.0 2.2 2.6
Nov-23 2.7 1.7 2.4
Dec-23 2.6 1.6 2.4
Jan-24 2.6 1.9 2.3
Feb-24 2.3 1.4 2.0
Mar-24 2.2 1.3 1.9
Apr-24 1.8 1.1 1.6
May-24 2.1 1.3 1.5
Jun-24 2.1 1.4 1.6
Jul-24 1.8 1.1 1.5
Aug-24 1.8 0.7 1.3
Sep-24 1.7 0.8 1.4
Oct-24 1.5 0.8 1.3
Nov-24 1.7 0.9 1.1
Dec-24 1.9 1.0 1.1
Jan-25 2.2 1.4 1.3
Feb-25 2.2 1.4 1.2
Mar-25 2.2 1.4 1.4
Apr-25 2.4 1.7 1.8
May-25 2.5 1.7 1.6
Jun-25 2.3 1.4 1.4
Jul-25 2.0 1.1 1.5
左から順に、刈込平均値、加重中央値、最頻値、ですな。
とまあ2年間の数字並べてみて思うんですけど、これって普通に「物価安定目標2%を達成しています」っていうのが表れている(刈込平均で見た場合に何だかんだ言って2%プラマイ0.5%のレンジでずっと推移しているじゃん・・・・)って話でして、そもそも物価安定目標2%ってのは物価指数でみれば総合CPIが2%近辺で多少の上下を伴いながら推移するっていう状態なんですから、刈込でこれなのに物価目標未達とか言ってるのは意味不明ですわな。といってもどうせ「お気持ち物価」のお気持ちを持ち出してくるのですけどね日銀はwww
しかしまあなんですな、一番右の「最頻値」がこれまた1.5%とかになってきまして、この推移をこうやってだらーっと並べられると何がどう物価目標を達成していないのか、というのが意味不明になるのですが、今月頭ですからちょっと前の話になりますが、元日銀理事のヤマケンさんが基調的物価についてこんな
ご指摘をされておられます。
https://www.kyinitiative.jp/column_opinion/2025/08/01/post2928/
混乱招く日銀の「基調的な物価上昇率」
〜「中長期インフレ予想」はどこまで政策判断の材料となるか
2025.08.01
ちなみにヤマケンさんは武士の情けでそこまで触れていないと思うのですが、日銀謹製のこの「合成予想物価上昇率(10年後)」って奴ですけれども、家計の予想物価上昇率の推計に二重のテクニックが仕込んでありまして、(1)生活意識アンケートで集計された家計の予想物価上昇率の定量的な「数値」を使わないで、「かなり上がる」「上がる」というような定性的な選択肢を使っている、(2)定性的な結果を定量化するために定性的な回答を実際の物価推移にバックワードで最適化しているため、かつての長い期間における物価低迷期間に最適化された「家計の予想物価上昇率」が叩き出されているというバイアスがあるし、経済物価の構造に非線形的な変化が生じた場合に変化前の基準で算定された数値しか出してこないので数値が下方または上方(今回のケースでは下方)に過大に出てしまう、というのがあるんで、まあ「統計を使うテクニック(悪い意味)」の最たるもんなんですよね。弊駄文では何回か申し上げておりますが。
〇パウちゃん講演の前半である(と思ったら途中で時間が無くなったのでインフレの話の手前で労働市場のところがメインです)
https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/powell20250822a.htm
August 22, 2025
Monetary Policy and the Fed’s Framework Review
Chair Jerome H. Powell
At “Labor Markets in Transition: Demographics, Productivity, and Macroeconomic
Policy,” an economic symposium sponsored by the Federal Reserve Bank of
Kansas City, Jackson Hole, Wyoming
まあ既にご案内だと思いますしそっちのレポートなら何ぼでもでてるじゃろと思いますので主に俺様備忘録になってしまいますが一気にさらさらと参ります。
『Current Economic Conditions and Near-Term Outlook』って小見出しですね。
・最初の方はここ1年の経済情勢レビュー
『When I appeared at this podium one year ago, the economy was at an inflection point.』
昨年の今頃に米国経済は変曲点にいました、というのから始まりますね。
『Our policy rate had stood at 5-1/4 to 5-1/2 percent for more than a year.
That restrictive policy stance was appropriate to help bring down inflation
and to foster a sustainable balance between aggregate demand and supply.
』
引き締め的な金融政策で物価抑制をした結果、
『Inflation had moved much closer to our objective, and the labor market
had cooled from its formerly overheated state. Upside risks to inflation
had diminished. But the unemployment rate had increased by almost a full
percentage point, a development that historically has not occurred outside
of recessions.1 』
物価は落ち着いてきてこの間失業率は上がったがリセッションというような失業の上昇ではなかった。
『Over the subsequent three Federal Open Market Committee (FOMC) meetings,
we recalibrated our policy stance, setting the stage for the labor market
to remain in balance near maximum employment over the past year (figure
1).』
でもって利下げを3回実施しました。となりまして次のパラが今年の話ですが当然ながら、
『This year, the economy has faced new challenges.』
今年は新しいチャレンジが起きています、とまあ順当な指摘が入り、
『Significantly higher tariffs across our trading partners are remaking
the global trading system. Tighter immigration policy has led to an abrupt
slowdown in labor force growth. Over the longer run, changes in tax, spending,
and regulatory policies may also have important implications for economic
growth and productivity. There is significant uncertainty about where all
of these polices will eventually settle and what their lasting effects
on the economy will be.』
トラ公が色々とやってくれたせいで「There is significant uncertainty 」であると。
『Changes in trade and immigration policies are affecting both demand and
supply. In this environment, distinguishing cyclical developments from
trend, or structural, developments is difficult. This distinction is critical
because monetary policy can work to stabilize cyclical fluctuations but
can do little to alter structural changes.』
でもってここしれっとパウちゃん入れ込んでいるのですが、トラ公の政策が必ずしも一時的ではない可能性ってのをいれているんんですよね。(In
this environment, distinguishing cyclical developments from trend, or structural,
developments is difficult.)
すなわち、関税の物価への影響はワンタイムだからそんなの気にしなくてよい、と言ってるトラ公の下僕共に対してしれっとぶち込んでいる訳でして、この辺りもまた「9月利下げするにしてもホーキッシュ利下げの可能性」を示唆しているじゃろって話で、この先は利下げヒャッハー話が出てくるのですが、こうやってチョイチョイと連続利下げ牽制(後半のストラテジーレビューがまさにそうですが)を埋め込みながらも利下げヒャッハーサービスもする、というパウちゃんも苦労してますなあ、って感じかなと思いましたがどうですかね。
・労働市場の説明をせっせとやっておりましてまあこの辺が利下げヒャッハーという話ですね
『The labor market is a case in point.』
次のパラグラフがこの一文から始まりまして、まあここで先般の雇用統計もあったしヒャッハーってなったんでしょうねと。
『The July employment report released earlier this month showed that payroll
job growth slowed to an average pace of only 35,000 per month over the
past three months, down from 168,000 per month during 2024 (figure 2).2
This slowdown is much larger than assessed just a month ago, as the earlier
figures for May and June were revised down substantially.3』
7月雇用統計がアイヤーだった説明ですがこれに続き
『But it does not appear that the slowdown in job growth has opened up
a large margin of slack in the labor market-an outcome we want to avoid.
The unemployment rate, while edging up in July, stands at a historically
low level of 4.2 percent and has been broadly stable over the past year.
Other indicators of labor market conditions are also little changed or
have softened only modestly, including quits, layoffs, the ratio of vacancies
to unemployment, and nominal wage growth. Labor supply has softened in
line with demand, sharply lowering the "breakeven" rate of job
creation needed to hold the unemployment rate constant. Indeed, labor force
growth has slowed considerably this year with the sharp falloff in immigration,
and the labor force participation rate has edged down in recent months.』
あーでもないこーでもないと説明していますが、要はリセッションとかそういう状況ではないよって現状認識ですね。
『Overall, while the labor market appears to be in balance, it is a curious
kind of balance that results from a marked slowing in both the supply of
and demand for workers. This unusual situation suggests that downside risks
to employment are rising. And if those risks materialize, they can do so
quickly in the form of sharply higher layoffs and rising unemployment.』
とは言え、現状はもしダウンサイドリスクが顕在化した場合、労働市場の急速な悪化が起きる可能性がある、っていう説明をしていますから、まあこの辺も利下げヒャッハーとなりますわな。
・成長率に関しては個人消費の下げで大きく下がったと
『At the same time, GDP growth has slowed notably in the first half of
this year to a pace of 1.2 percent, roughly half the 2.5 percent pace in
2024 (figure 3). The decline in growth has largely reflected a slowdown
in consumer spending. As with the labor market, some of the slowing in
GDP likely reflects slower growth of supply or potential output.』
というのがありまして、以下インフレの話になるのですが、甚だ遺憾なことに時間が中途半端に足りなくなってきましたので、続きは明日にします誠に申し訳ございません。
ただまあ先ほども申し上げましたように、こちら利下げヒャッハーと読める部分もあるのですが、ゆうて全般的に見ますと今から中立金利に向けてどんどん利下げ、というのとは程遠い説明がちょいちょいと埋め込まれている、ということでよろしいんじゃないかと思います、個人の感想ですけど。
2025/08/26
お題「ジャクソンホールのパウちゃん講演ですが昨日は逐条英文読みだったので再度整理しつつ続きを」
また碌なことをしない未来が・・・・
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM25ASB0V20C25A8000000/
トランプ氏が金正恩氏との会談に意欲 「年内にも」、米韓首脳会談
北米
2025年8月26日 4:31
この耄碌自己誇大クソジジイが天の怒りに触れて雷(以下自主規制)
〇植田総裁の講演はほぼ読む価値が無いので引き続きパウちゃん講演で昨日(日曜)の続きをば
https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/powell20250822a.htm
August 22, 2025
Monetary Policy and the Fed’s Framework Review
Chair Jerome H. Powell
At “Labor Markets in Transition: Demographics, Productivity, and Macroeconomic
Policy,” an economic symposium sponsored by the Federal Reserve Bank of
Kansas City, Jackson Hole, Wyoming
でまあワイ将これ最初は小見出しに(主に前半)って入れてたのですが、全然そっちに行かないまま時間が無くなりそうなので書いてる途中で戻って修正しています。昨日(日曜)は講演の後半部分を逐条読みして、一応注目点(と私が思った部分)は大書したつもりですが、週明けて改めてこの講演読み直したり関連のブツと見たりして再整理というただの2番煎じ3番煎じですいませんすいません。
・案の定前半だけで「ハト派講演」ってレポートばっかりで泣いた
てな訳で昨日はパウちゃん講演関連のコメントとかを見て回ったわけですが、まあ見事なまでに前半の話ばっかりでして、この講演って前半と後半をセットでみないと前半を誤読する物件でありますし、何ならどう見たって後半の方が重要な話をしているとしかアタクシには見えない訳で、個人の偏見で恐縮なのですが、あの講演の前半だけ見てハト派サプライズとかいうのって、まあ脊髄反射で1カイ2ヤリやっているとそうなってしまうのはシャーナシな面はある(私もやってた時期があるので気持ちは分かる)のですけれども、何とかスト名乗ってレポートだしてて前半の所だけでああだこうだ言ってるのは恥ずかしいので看板下ろして義務教育からやり直してきた方が宜しいんじゃないかと存じます次第。
・・・また友達を失くすような事を言ってるわけですが(もともと居ないだろというツッコミは却下)、前半では確かに以前よりも「利下げ」に対しての可能性を高める説明しているので、9月の利下げ自体は(ここから飛んでもなく強い雇用指標か物価指標が出てくれば別ですが)やるかも知れんけど、後半の説明を見ますとまあ利下げしても「ホーキッシュ利下げ」という一瞬何のことだという案件になるんじゃないですかね、というのがアタクシの読み筋。
もちのロンですが今後の経済指標次第でどっちに転ぶかは分からんので決め打ち禁物モードではあるのですが、9月に利下げしたとしても、それが「中立金利に向けた金融引き締め解除サイクルの開始」には(現時点での説明では)なり得ない、という事だと思います。
・ストラテジーレビューで示している「物価重視」を一番強く見せている部分を再確認(再掲ですいません)
と申しますのは、再掲になりますけど、後半の最後の方の2パラグラフがこうなっていたじゃないですか。
『In addition to these changes, there is a great deal of continuity with
past statements. The document continues to explain how we interpret the
mandate Congress has given us and describes the policy framework that we
believe will best promote maximum employment and price stability.』
ここはオマジナイ文言。
『We continue to believe that monetary policy must be forward looking and
consider the lags in its effects on the economy. For this reason, our policy
actions depend on the economic outlook and the balance of risks to that
outlook.』
フォワードルッキングかつ先行き見通しのリスクバランスを考慮して政策を行う(この「リスクバランス」の部分については今回メイクアップストラテジーを撤回して謝罪したことから分かるように従来のような緩和バイアスはもはや無い)と言ってまして、
『We continue to believe that setting a numerical goal for employment is
unwise, because the maximum level of employment is not directly measurable
and changes over time for reasons unrelated to monetary policy.』
最大雇用に関しては明確な数値的な定義はできません(構造的なファクターもあるので)ので、と来てから返す刀で次のパラグラフに行きまして、
『We also continue to view a longer-run inflation rate of 2 percent as
most consistent with our dual-mandate goals. We believe that our commitment
to this target is a key factor helping keep longer-term inflation expectations
well anchored.』
ロンガータームのインフレ期待が2%でアンカーされていることがデュアル(物価だけではないことが重要だよ)マンデート達成のキーファクターって思いっきり言ってるわけですよこのパラの冒頭で。
『Experience has shown that 2 percent inflation is low enough to ensure
that inflation is not a concern in household and business decisionmaking
while also providing a central bank with some policy flexibility to provide
accommodation during economic downturns.』
でもって「2%インフレは家計や企業が意思決定をする際にインフレ水準を懸念するに至らない水準として十分に低い」として、加えて金融政策の柔軟性を持つことができる(要するに糊代確保)水準ですよ、って喝破しています。
これが何を意味するかといえば、どっからどう見ても「デュアルマンデート達成には物価重視があってこそ」って説明な訳でして、前半部分ではたしかにリップサービスっぽい面もありますし、何ならホワイトハウスのアホウ(と金融界のアホウにも、かも知れませんけど)に対する目くらましをしているのですが、後半が物凄くちゃんとした中銀界隈の話をしていて、しかも「物価2%達成」を強く重要視している訳ですから、物価がこのまま2%に向けて落ち着いて来ればそりゃまあ中立に向けて徐々に引き締めスタンスを変更するとは思いますが、うっかり物価がサガランチ会長だの再加速の兆しなどでようもんならそら利下げどころの話ではありませんですことよ、ってのを堂々と言ってるわけですなこれ。
・意図的な物価上振れ容認ダメ!ゼッタイ!!というのが「メイクアップストラテジー」廃止ですからね(これまた再掲)
日曜の夜に夜なべした時は逐条読みだったのと途中からヘロヘロって来ていたのでこれまた再掲で恐縮ですが、今回はとにかく2020年の「アベレージインフレーションターゲット」とか「メイクアップストラテジー」とか「デビエーションじゃなくてショートフォールに注目」とか「政策金利の名目下限制約は全力で回避」というような感じの(物価がどうせ上がらんわいと高を括っていた結果作ってしまった)緩和バイアス傾向のあるストラテジーを全部撤回して、しかも2020年当時の間違えを反省した、というのが重要なのであって、中々ここまで反省の弁を述べる中銀総裁って居ないし、どこぞの極東の中央銀行はパウちゃんの御真影を政策委員会を行うお部屋に飾って三拝九拝してから政策議論を行うべきだと思いました。
ってな訳でその辺りの一番のポイントはここですね、この部分は日曜(実質昨日)も強調しましたけど。
『As it turned out, the idea of an intentional, moderate inflation overshoot
had proved irrelevant. There was nothing intentional or moderate about
the inflation that arrived a few months after we announced our 2020 changes
to the consensus statement, as I acknowledged publicly in 2021.11』
でもってですね、ここで思い出されるのは2021年のジャクソンホールシンポジウムの式次第でありまして、
https://www.kansascityfed.org/research/jackson-hole-economic-symposium/macroeconomic-policy-in-an-uneven-economy/
「The Interaction of Fiscal and Monetary Policy」ってお題のパネリストに
Alan Blinder | Remarks
Professor
Princeton University
ってのがあってみたり、『Remarks』ってのに
Speaker:
Donald Kohn | Remarks
Senior Fellow
Brookings Institution
って大物が出ていた時に結構話題になった訳ですが、まあ2021年の夏を迎える時にはさすがにFRBもマズイという認識があった(しかも当時のカンサスシティ連銀総裁のジョージ姐さんはゴリゴリの物価重視タカ派でしたのでなおさらだったかもしれませんね)んだろうなあ、ってまあ思いました。
ということでですね、「意図的かつモデレートな物価上昇を容認する、という考え方は的外れな考えであることが明らかになった(As
it turned out, the idea of an intentional, moderate inflation overshoot
had proved irrelevant.) 」って言ってるわけでして、そんな考えをする中で物価が想定よりも下がらん状態であれば、中立に向けて利下げサイクルを再開する、という発想にはならないのは後半部分のこの箇所を読めば明白(様子を見ながら引き締め度合いの調整を行う、というどっかで聞いたことのあるような手段にはなり得ますわな、為念)になりますので、まあ前半だけ見て脊髄反射でヒャッハー言いたくなるのは1カイ2ヤリおじさんとしては共感するのではありますが、何とかストコメンタリーまでそればっかり、というのがナンジャソラと思いました。
〇うっかり飛ばしてしまいましたがパウちゃん講演の最後のまとめの部分も見事な蜂の一刺し
蜂の一刺しとか言って榎本三惠子さんの名前が出てくるのは完全な昭和脳です、と思ってちょっとググってみたら「昭和56年」という文字列が出てきて思わず気を失いかけましたwwwwwwwwwwwww
でまあパウちゃんの講演の最後ですが、まとめの所を昨日はネタにする体力が尽きていたのですがこれがまたいい味をだしていまして(この部分は指摘している人がいた気がします)・・・・・・・
という訳で『Conclusion』ですが、
『In closing, I want to thank President Schmid and all his staff who work
so diligently to host this outstanding event annually. Counting a couple
of virtual appearances during the pandemic, this is the eighth time I have
had the honor to speak from this podium. Each year, this symposium offers
the opportunity for Federal Reserve leaders to hear ideas from leading
economic thinkers and focus on the challenges we face.』
とまあ謝辞を述べているのと、何気に「今回8回目です」って次回は少なくともFRB議長として出てくることは無いでしょうからお別れの挨拶っぽい言い方もしているのですが、最後の最後に、
『The Kansas City Fed was wise to lure Chair Volcker to this national park
more than 40 years ago, and I am proud to be part of that tradition.』
ジャクソンホールシンポジウムにボルカー議長を呼んで云々、と思いっきりここでインフレファイターのボルカーさんの名前を出すのがもうねって感じです。ちなみにジャクソンホールシンポジウムの歴史、みたいなコーナーには
https://www.kansascityfed.org/research/jackson-hole-economic-symposium/jackson-hole-economic-policy-symposium-through-years/
Jackson Hole Economic Policy Symposium: Through the Years
View a timeline highlighting important moment's in the Jackson Hole Economic Symposium's history.
ってのがあって、そこの1982ってのがまさにそれです。
〇ちなみに「メイクアップストラテジー」は別に日銀が育てたわけではない件について
メイクアップストラテジーってその骨子は「インフレが目標よりも下振れしていた期間が長い場合はその分を埋め合わせして多少のインフレ上振れを容認する」という話で、それって結局は「アベレージインフレーションターゲット」であり、「プライスレベルターゲット」であったりしまして、その概念自体は大昔(それこそ20年前とかそういう世界)からアカデミアでは言われていたし、一時はブランシャールがそれを言い出してIMFが推しにしてたりした時期もあったような無かったような。
でまあその時期に私が大好きドン・コーンがこんな講演をしていましてですね。
https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/kohn20100324a.htm
March 24, 2010
Homework Assignments for Monetary Policymakers
Vice Chairman Donald L. Kohn
At the Cornelson Distinguished Lecture at Davidson College, Davidson, North Carolina
こちらは当時ワシネタにしたので覚えていますが、この中の『Inflation Objectives』に物価目標をもっと引き上げろとかプライスレベルターゲットだとかいくつかの論点についてドンコーンがバッサバッサとぶった斬りをしている部分があるんですね。でまあプライスレベルターゲット(こちらの最後に近い部分です)についてこのように言ってますのでご参考までに。時間が無いのでベタ引用だけですいませんすいません。
『Another approach to this problem is for central banks to target a gradually
rising price level rather than a constant inflation rate. Imagine a plot
of the consumer price index (CPI) from today onward increasing 2 percent
each year. Central banks would commit to adjusting policy to keep the CPI
near that line.』
プライスレベルターゲットはこういうもんですが、と説明しまして、
『The advantage of this approach, in theory at least, is that when a negative
shock drives prices below the target level, people will automatically expect
the central bank to increase inflation for a while to get back to trend.
In principle, that expectation would lower real interest rates without
the central bank changing its inflation commitment, even if nominal interest
rates were pinned at zero. It could also make it easier for people to make
long-term economic decisions because they could anticipate that inflation
misses would be reversed over time, reducing uncertainty about the future
price level.』
と内容の説明と論者の言う利点を説明した後にぶった斬りコーナーがありまして(長いのでパラグラフ途中で分けます)、
『While I appreciate the elegance of this price-level-targeting idea, I
have serious doubts that it would work in practice. Central to the idea
is that the Federal Reserve would be committing to hit a price level that
was growing at a constant rate from a fixed point in the past. The specific
inflation rate that could be expected in the future would change over time,
depending on the inflation that had been realized up to that point. You
could know what inflation rate to expect only if you knew both the current
consumer price index and the Fed's target for the index in the future.
』
『In addition, the inflation rate that you could expect would be different
for different horizons. Moreover, central banks are able to control inflation
only with a considerable lag and even then only imprecisely, so the process
of hitting a target would likely involve frequent overshooting and correction
and consequently frequently shifting inflation objectives.』
でまあ確かに今回思いっきりインフレーションがオーバーシュートしてしまいまして、ドンコーンの指摘(は中銀実務家としては当時も今も当然の指摘なんですが)が正しかったというのがよくわかるわ、という今回の「メイクアップストラテジー完全撤回」だったと思います。
すいません前半部分をやる積りだったのに時間が無くて(滝汗)。
2025/08/25
ふむふむ
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250822/k10014900401000.html
7月の消費者物価指数 3.1%上昇 8か月連続で3%台に
2025年8月22日 14時16分
でもって
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250822/k10014900521000.html
続く物価高 住宅選びや家計見直しの動き広がる
2025年8月22日 19時07分
日銀が過剰な金融緩和政策を継続しているために物価に上昇圧力が掛かりやすいとか、為替市場に円安圧力が掛かりやすいとかそういう指摘がいつからおっぱじまるのかが待ち遠しいのですががががが。
〇ジャクソンホール式次第など(備忘ブックマーク用メモ)
https://www.kansascityfed.org/research/jackson-hole-economic-symposium/2025/
Jackson Hole Economic Policy Symposium: Labor Markets in Transition - Demographics, Productivity and Macroeconomic Policy
Thursday, August 21, 2025 - Saturday, August 23, 2025
The Federal Reserve Bank of Kansas City hosts central bankers, policymakers,
academics and economists at its annual economic policy symposium.
Agenda
ということでお品書きとリンクがでていますが、今回は中銀理事クラスのお話タイムが最後のパネルディスカッションの所しか無かったなあという感じでして、まあゆうて前回もそんな感じでパネルがあったのとベイリーBOE総裁の講演があったのの2本だけだったのですが、(パウちゃんのは別として)そんなこんなで各国集まって政策論議する、という感じでは無かったですかなとは思いましたがどうでしょうか。
2021年のジャクソンホールがやたら豪華メンバー(ブラインダーがいたりドン・コーンがいたり)で、この時はまさに物価が上がりだす中でこのままでエエんかいなという感じの会合だった訳ですが、まあ今回とかはそこから見たらほんわかしてたんじゃないでしょうか。知らんけど。
でもってパウちゃんの講演に関してはこの下に8/24バージョンというのがありまして、そちらにああでもないこうでもないと記載(なお目先の金融政策パートの方はどうせ皆様見てたり誰かのレポートとか見るでしょうから一旦割愛しまして政策枠組みの見直しの方をネタにしております)しておりますので今日のだんだらの下の方をご覧ください。
〇新発3M短国が0.45%を超えて金利上昇という10月利上げを織り込みに行くようなムーブが継続しています
https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20250822.htm
国庫短期証券(第1327回)の入札結果
『本日実施した国庫短期証券(第1327回)の価格競争入札及び国債市場特別参加者・第T非価格競争入札について、下記のように募入の決定を行いました。
記
1.名称及び記号 国庫短期証券(第1327回)
2.発行根拠法律及びその条項
財政法(昭和22年法律第34号)第7条第1項、財政融資資金法(昭和26年法律第100号)第9条第1項並びに特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)第83条第1項、第94条第2項、同条第4項、第95条第1項、第123条の18第1項、第136条第1項及び第137条第1項
3.発行日 令和7年8月25日
4.償還期限 令和7年11月25日
5.価格競争入札について
(1)応募額 9兆2,659億円
(2)募入決定額 3兆3,233億5,000万円
(3)募入最低価格 99円88銭4厘0毛
(募入最高利回り) (0.4607%)
(4)募入最低価格における案分比率 72.3550%
(5)募入平均価格 99円88銭6厘5毛
(募入平均利回り) (0.4508%)』
ありゃまという感じですが、平均が0.4508%と0.45%に堂々乗ってしまった上に足切りは0.4607%ということで明確に0.4%台後半に突っ込んでまいりました。
売買参考統計値を見ますと
https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html
(8/22引値)
国庫短期証券1315 2025/09/29 平均値単利 0.420
国庫短期証券1316 2025/10/06 平均値単利 0.390
国庫短期証券1318 2025/10/14 平均値単利 0.390
国庫短期証券1318 2025/10/14 平均値単利 0.390
国庫短期証券1321 2025/10/27 平均値単利 0.390
国庫短期証券1322 2025/11/04 平均値単利 0.440
国庫短期証券1324 2025/11/10 平均値単利 0.440
国庫短期証券1325 2025/11/17 平均値単利 0.460
国庫短期証券1327 2025/11/25 平均値単利 0.460←3M新発
国庫短期証券1328 2025/12/01 平均値単利 0.460←今週金曜の新発WI
(8/21引値)
国庫短期証券1315 2025/09/29 平均値単利 0.420
国庫短期証券1316 2025/10/06 平均値単利 0.390
国庫短期証券1318 2025/10/14 平均値単利 0.390
国庫短期証券1320 2025/10/20 平均値単利 0.390
国庫短期証券1321 2025/10/27 平均値単利 0.390
国庫短期証券1322 2025/11/04 平均値単利 0.440
国庫短期証券1324 2025/11/10 平均値単利 0.440
国庫短期証券1325 2025/11/17 平均値単利 0.440←先週のカレント3M銘柄
国庫短期証券1327 2025/11/25 平均値単利 0.440←3M新発WI
とまあそういう引値になっておりまして、新発と前週の3Mカレント、というカレント2銘柄が入札結果の足切りの方にサヤ寄せされてレート上昇の図となっておりまして、一方で10月足は相変わらず0.39%と0.40割れになっておるわけですが、これは期末越えプレミアムが乗った形のままで変わらず、という結果でして、10月と11月に段差があるのですから、これはもうどう見ても10月利上げ織り込み値付けです本当にありがとうございましたというお話ではありますな。
ちなみに本当に皆が10月利上げを織り込んでいる結果この値付けになっているのか、というとこれまたその辺は謎でして、なんせ短国は新発出てしばらくすると買うべき人は買ってしまって既発ゾーンになると限界的な部分で動いている相場になるので、値付けがこうだからと言って別に皆が10月利上げ確信ニキではないとは思うのですが、そうは言いましてもこうやって表に出てくる引値がだいぶ露骨に10月末の所で階段できるようになったのは感慨深い。
・・・・というかですね、政策決定会合とか関係ない所で謎の段差があったり、同じ償還なのにレートが全然違ったり、とかいう今までのへなちょこ引値の方が何だったのという感じですが、まあ新発3Mが0.45%の節目(というほどの意味があるのかはさておきまして)を抜けて金利が上昇した、というのは久々に目立つ事案ですがな(なんせ1327回新発って水曜から0.435%→0.44%とWIの気配甘くなった挙句に0.45%を抜けましたので)ということなので、こりゃまあ記念カキコという感じです。
でもって今日以降の注目はこの0.4%台後半という結構な金利(まあ冷静に考えればこれでもまだコールやGCよりも金利低いのですが)になった所で買いが来るや来ざるやという話でして、新発が捌ききれないまま今週末の入札を迎えることになるかどうか、ってのを注意してみていければと思います。
あと、
https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/2508.htm
入札カレンダー:令和7年8月
『(3)借入金』を見ればお分かりのように、今週は火曜木曜に交付税特会借入6Mの入札があって、ここもと利上げ織り込み度合いを上げてきている特会借入についても味わいのある結果が出るのかどうかというのがこれまた楽しみです。
〇長い方はこれまた利回り更新の巻ですが引き続きワッショイ感はイマイチさんですかしら
これまた備忘メモ
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/GZ56GOQUXBMVBEZQJYHC3MJAUY-2025-08-22/
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は小反落、長期金利17年ぶり1.615% 30年債利回りは過去最高水準
By ロイター編集
2025年8月22日午後 3:39 GMT+9
『[東京 22日 ロイター] - <15:17> 国債先物は小反落、長期金利17年ぶり1.615% 30年債利回りは過去最高水準
国債先物中心限月9月限は、前営業日比1銭安の137円55銭と小反落した。国債先物は売りが先行した後に買い戻しの動きが入り、底堅く推移した。新発10年国債利回り(長期金利)は同1.0bp上昇の1.615%と、2008年10月以来、約17年ぶりの高水準を更新。新発30年債利回りは同3.0bp上昇の3.210%と、過去最高水準を付けた。』(上記URL先より、以下同様)
ということで何かチンタラと上昇しているのですが、
『現物市場で超長期ゾーンの金利上昇が目立った。「オフ・ザ・ラン(既発債)の25年ゾーンの金利上昇の動きに引っ張られている状況。市場参加者による投げが加速している」(国内証券債券セールス担当)という。一方、「2年債や10年債など金利上昇局面では押し目買いが入っている。ただ、散発的な状態だ」(同)との声が聞かれた。』
まあアレですよ。株が上がって損出しを実施する余力が出てくると損出しムーブが起きるって奴ですな。
『新発債利回りはまちまち。2年債は前営業日比と変わらずの0.855%、5年債は同0.5bp上昇の1.155%。20年債は一時2.665%と1999年11月以来の高水準を更新した後、同2.0bp上昇の2.660%。40年債は同1.5bp上昇の3.440%。』
まあしかしゆうて10年1.6%ちょいって物価安定目標が2%でアクチュアルの物価が3%台なのに対してその水準はどうなのよ、ってな話でもあるのでして、日銀のアホみたいな規模の輪番がいかんよねーとは毎度思いますが、ゆうて金利の方は結局何をメインのネタにしているのかが良くわからん(利上げなのか財政なのかただの超長期の損出しムーブなのかが良くわからん)のですが上昇しまして、ジャクソンホールありましたがイブニングの先物は10銭高ですかそうですかってな感じで。
『 OFFER BID 前日比
2年 0.858 0.864 0.012 15:04
5年 1.149 1.155 0.005 14:24
10年 1.609 1.615 0.007 15:05
20年 2.654 2.661 0.02 15:11
30年 3.199 3.209 0.028 15:12
40年 3.426 3.436 0.012 15:11』
ということで超長期が弱いという結果ではあったのですが、短期の方は上記のように10月利上げを連想させるような値付けが強化されているのに、こっちはそういうムーブかよ(まあ一応2年の金利が上がっているので無視している訳でもなさそうだが)ということで微妙に????という感じの全般的に整合性がよくわからん値動きでした。
・・・・・てなわけで、昨晩夜なべをしてしまったので他のネタは時間の都合で割愛(というかジャク穴の植田講演ネタとか他の中銀総裁ネタとか日銀の出してきたスタッフペーパーとかになってしまって一々全部重いので成敗しているリソースが足りん)しますですが、以下の部分が8/24とかいう日付になっておりまして、ジャク穴でのパウちゃん講演、ただし目先の政策じゃない方のパート、というのをネタにしておりますのでそちらを読んでつかあさい。
2025/08/24
お題「ジャクソンホールのパウちゃん講演のロンガーランストラテジー部分:メイクアップストラテジーは不適切であったという自己批判が素晴らしい」
まあこっそりと日曜の夜にアップしている物件なので実質月曜の朝と変わらんのですが朝は朝で別途書くのでこっちの日付は24日にしておきます。
〇パウエル講演は目先の政策の話よりもストラテジーレビューの方が本当は重要なのよ
https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/powell20250822a.htm
August 22, 2025
Monetary Policy and the Fed’s Framework Review
Chair Jerome H. Powell
At “Labor Markets in Transition: Demographics, Productivity, and Macroeconomic
Policy,” an economic symposium sponsored by the Federal Reserve Bank of
Kansas City, Jackson Hole, Wyoming
でまあ金融政策の話はどうせあちこちで記事になっていますけれども、ワイ的には結局のところ9月のFOMCまでに出てくるデータ次第なので、今回は若干リップサービス入っているけど、それでワッショイワッショイとかお前らどんだけ利下げ脳なん、と思ってしまいましたので、そっちよりも先にストラテジーレビューの方をネタにする、というヒネクレ者である。
てな訳でどうせおまいら後半読んでねえじゃろと思うのだが今回のパウちゃんの講演(というかまあ要はストラテジーレビューそのものが、なのですが)の読むべきポイントは後半のみであるといっても過言ではあってアタクシの偏見バイアスが掛かりまくって居ますが、まあそんなこんなで後半をちょろっとネタにして日曜の夜のうちに投下(その他諸々は明日以降)ということですぬー。
ということで講演の後半ですが、小見出しが『Evolution of Monetary Policy
Framework』ってのと、『Elements of the Revised Consensus Statement』ってのがありますが、とにかく今回のフレームワークの変更において重要なのは「2020年の見直しはインフレリスクを軽視していた」というのを素直に認めている結果になっていて(2020年ってコロナでいったん下がっているのですが、パンデミックによるサプライチェーンの毀損から食品価格が前半の途中から急上昇開始したりしてて微妙でしたし、ここから半年もしないうちに米国物価は急上昇して2021年5月にはコアCPIで3%乗せてきたという流れでした)、でまあご案内の通り、「一時的だと思っていたインフレがスパイクするわ長期化するわ」だったのですな、うんうん。
ということで『Evolution of Monetary Policy Framework』からはじまります。最初の方はオマジナイ文言になりまして、
『Turning to my second topic, our monetary policy framework is built on
the unchanging foundation of our mandate from Congress to foster maximum
employment and stable prices for the American people. We remain fully committed
to fulfilling our statutory mandate, and the revisions to our framework
will support that mission across a broad range of economic conditions.
Our revised Statement on Longer-Run Goals and Monetary Policy Strategy,
which we refer to as our consensus statement, describes how we pursue our
dual-mandate goals. It is designed to give the public a clear sense of
how we think about monetary policy, and that understanding is important
both for transparency and accountability, and for making monetary policy
more effective.』
最初のパラグラフは「我々はデュアルマンデートの達成のためにロンガーランストラテジーアンドゴールってのを作ってますがなとか、物価安定と雇用最大化ダイジダイジネーとかいう枕詞の世界なのでサラサラと次へ。
『The changes we made in this review are a natural progression, grounded
in our ever-evolving understanding of our economy. We continue to build
upon the initial consensus statement adopted in 2012 under Chair Ben Bernanke's
leadership. Today's revised statement is the outcome of the second public
review of our framework, which we conduct at five-year intervals.- This
year's review included three elements: Fed Listens events at Reserve Banks
around the country, a flagship research conference, and policymaker discussions
and deliberations, supported by staff analysis, at a series of FOMC meetings.5』
このストラテジーに関しては2012年に逆さ絵のオヤジの主導で始まりまして、その後途中から5年おきに見直していく、となりまして今般見直しの巻でんがな、とこの辺も一般的な話。
・幅広い色々な状況に対処できるようなストラテジーが必要とな
『In approaching this year's review, a key objective has been to make sure
that our framework is suitable across a broad range of economic conditions.』
ってのが3番目のパラグラフの書き出しでして、今回のレビューにおいては「我々のおニューフレームワークは幅広く様々な経済状況においてぴったりするものでなくてはならんぞな」という話をしていますが、この点は前々からお話があったので、まあ新しく言ったわけではないが、実際にこのフレーズが何の意味を持つのか、というのは後の方で伏線が回収されます。まあお察しの回収ですけど。
『At the same time, the framework needs to evolve with changes in the structure
of the economy and our understanding of those changes. The Great Depression
presented different challenges from those of the Great Inflation and the
Great Moderation, which in turn are different from the ones we face today.6』
リーマンショック以降の状況や、グレートモデレーションの状況、グレートインフレーションの時の状況など、局面の変化に応じることのできる枠組み構造を今回は考えました、ちゅうことで。
・前回のレビュー時においては政策金利がゼロ制約にあり物価が低くてしかも金融政策に対する反応が弱かったのだが
『At the time of the last review, we were living in a new normal, characterized
by the proximity of interest rates to the effective lower bound (ELB),
along with low growth, low inflation, and a very flat Phillips curve-meaning
that inflation was not very responsive to slack in the economy.7』
次のパラグラフになりますが、前回の見直しの際には「政策金利の名目下限制約、低成長、低インフレ、フィリップスカーブのフラット化(によってインフレが経済のスラックに対してあんまり反応しない状況に過去対比でなっている)を勘案してあのようなものを作りました、ということなのですが、これ2020年の時のパウちゃん講演に関しては一応ネタにしたのでこの辺にその時の駄文が残っております。
https://doramemon7743.sakura.ne.jp/doramemon2008.html#200828
『To me, a statistic that captures that era is that our policy rate was
stuck at the ELB for seven long years following the onset of the Global
Financial Crisis (GFC) in late 2008. Many here will recall the sluggish
growth and painfully slow recovery of that era. It appeared highly likely
that if the economy experienced even a mild downturn, our policy rate would
be back at the ELB very quickly, probably for another extended period.』
リーマンショック以降の経済はスラギッシュな成長で怪しからん程に低調な成長しかしなかったし、ちょっとマイルドな後退がおきたとしても直ぐに政策金利の下限制約に到達する(米国は2016年から利上げ着手してちんたらと2018年末時点で一旦2.5%まで上げたものの、コロナショックで0-0.25%に下げたわけですな)状態でした。
『Inflation and inflation expectations could then decline in a weak economy,
raising real interest rates as nominal rates were pinned near zero. Higher
real rates would further weigh on job growth and reinforce the downward
pressure on inflation and inflation expectations, triggering an adverse
dynamic.』
インフレとインフレ期待は弱い経済成長の中で低調に推移しており、政策金利の名目下限の為に実質金利は上昇し、雇用の成長に対して悪影響与えたり、インフレの伸び悩みやインフレ期待の低下のフィードバックが起きやすくなるという弊害がありました。
ということで次のパラに行きますけど。
『The economic conditions that brought the policy rate to the ELB and drove
the 2020 framework changes were thought to be rooted in slow-moving global
factors that would persist for an extended period-and might well have done
so, if not for the pandemic.8』
2020時点での名目下限制約に到達した政策金利の状況を受けて2020に導入した政策フレームワーク(ちなみにアベレージターゲットインフレーションとメイクアップストラテジーが一番目立つ施策でしたがその辺は後で出てきます)については、パンデミック云々を差し置いてみても上記のような状況が長期化しやすいという考えがベースラインにありまして、
『The 2020 consensus statement included several features that addressed
the ELB-related risks that had become increasingly prominent over the preceding
two decades.』
でもって(特にリーマン以降の)名目政策金利が下限制約にいた時点が長かった、ということを踏まえて「政策金利の下限制約到達に関するリスク」への対甥が多かったということです、と説明しまして、
『We emphasized the importance of anchored longer-term inflation expectations
to support both our price-stability and maximum-employment goals. Drawing
on an extensive literature on strategies to mitigate risks associated with
the ELB, we adopted flexible average inflation targeting-a "makeup"
strategy to ensure that inflation expectations would remain well anchored
even with the ELB constraint.9 』
でもってここにありますように「flexible average inflation targeting」「a "makeup" strategy」が出てきたというお話。
『In particular, we said that, following periods when inflation had been
running persistently below 2 percent, appropriate monetary policy would
likely aim to achieve inflation moderately above 2 percent for some time.』
でもってこの時には「インフレがモデレートリーかつ一時的(for some time)に2%を上回るような政策運営」をするっていう建付けにした訳ですな。
・ところがインフレの持続性を読み間違えましたと
次のパラグラフに行きます。
『In the event, rather than low inflation and the ELB, the post-pandemic
reopening brought the highest inflation in 40 years to economies around
the world. Like most other central banks and private-sector analysts, through
year-end 2021 we thought that inflation would subside fairly quickly without
a sharp tightening in our policy stance (figure 5).10 』
コロナ後の経済リオープンからの動きで物価が盛大にあがりましたが、他国の中央銀行や民間調査機関などと同じように(という辺りが往生際が悪いのですが、「Like
most other central banks and private-sector analysts」です)我々も今般の物価上昇は一時的で比較的早くに鎮静化し、それには金融政策の強力な引き締めを必要にしないで行けるじゃろ、と思っておりました時期が私たちにもありました。からの、
『When it became clear that this was not the case, we responded forcefully,
raising our policy rate by 5.25 percentage points over 16 months.』
物価の動きがどうもそうじゃない、というのが明らかになってから16か月で政策金利を5.25%まで引き上げるというような対応を取らざるを得ませんでしたなあと。
『That action, combined with the unwinding of pandemic supply disruptions,
contributed to inflation moving much closer to our target without the painful
rise in unemployment that has accompanied previous efforts to counter high
inflation.』
でもってその利上げによって物価が沈静化していきましたし、その間に失業の大きな上昇にも伝わることなくそれができましたよ、としらっとそんなのも織り交ぜながら最初の小見出し『Evolution
of Monetary Policy Framework』は終了します。
・大きなショックに対して物価が反応しやすくなっている、というECBも言っている件について
でもって次が『Elements of the Revised Consensus Statement』です、最初のパラから順に参ります。
『This year's review considered how economic conditions have evolved over the past five years.』
過去5年間での経済の構造変化などについて考慮したそうな。
『During this period, we saw that the inflation situation can change rapidly
in the face of large shocks. In addition, interest rates are now substantially
higher than was the case during the era between the GFC and the pandemic.』
でもってこの「ラージショックに対して物価が反応しやすくなった」というのは先般のシントラのECBフォーラムおよびそれに関連するストラテジーレビューにおいてECBラガルド総裁も指摘していた話ですね。未だに「供給要因の物価高は一時的、としか言ってないどこぞの中央銀行はこの辺りのインフレーションダイナミクスをどう見ているのでしょうか、と思ってしまいます。
・パウちゃん今の政策金利は「モデストリーリストリクティブ」だそうです
まだこのコーナーの第一パラグラフの途中ですが小見出しを変えましたw
『With inflation above target, our policy rate is restrictive-modestly so, in my view.』
パウちゃんとしては今の政策金利は「restrictive-modestly so, in my view」とシレっと言っているので、モデレートリーではなくてモデストリーだから、ここからトラ公の言うような2.5%水準まで政策金利を下げつるというようなビューにはなっておらんわ、と思います。
・名目中立金利の水準が以前よりも上昇しているのではないかとも仰せです
さらに続きますが、
『We cannot say for certain where rates will settle out over the longer
run, but their neutral level may now be higher than during the 2010s, reflecting
changes in productivity, demographics, fiscal policy, and other factors
that affect the balance between saving and investment (figure 6).』
ロンガーラン(要は中立金利)の水準がどこかというのは判然とはしないけど、生産性、人口動態、財政政策、貯蓄投資バランスなどを勘案すると、名目中立金利は2010年代よりも上昇しておりますとな。
・てなことから2020年のストラテジーは高インフレに対する備えが足りなかったと
『During the review, we discussed how the 2020 statement's focus on the
ELB may have complicated communications about our response to high inflation.
We concluded that the emphasis on an overly specific set of economic conditions
may have led to some confusion, and, as a result, we made several important
changes to the consensus statement to reflect that insight.』
第1パラグラフを思いっきりここまでぶつ切りにしましたが、2020年のレビューの時のパウちゃん講演の駄文を読み直して思いましたが、2020年のレビューって引用部分で触れているように「一部の状況(=ディスインフレやデフレ)に対して過度に重きを置いている内容だったのでその後の政策運営に混乱(=要は政策がビハインドした)を招いた」と思いっきりいってますし、その当時の説明も前提として「2%超える場合でもどうせそんなに物価は上がらんじゃろ」という認識が思いっきりあった、ってのがあって、それについて反省しておるわけでして・・・・・・・・
・変更点その1:政策金利の名目下限制約自体は論点であることには変わりないが過度な重視は行わない
次のパラグラフから具体的な変更点に関しての説明と背景説明になりますが実にイイハナシダナー(;∀;)という物件でありましてですね。
『First, we removed language indicating that the ELB was a defining feature
of the economic landscape. Instead, we noted that our "monetary policy
strategy is designed to promote maximum employment and stable prices across
a broad range of economic conditions." 』
政策金利の名目下限制約に関する問題に過度にフォーカスするのではなくて、普通に「様々な経済状況に応じながらデュアルマンデートを達成するように運営します」という話にした(戻した)そうな。
『The difficulty of operating near the ELB remains a potential concern,
but it is not our primary focus. The revised statement reiterates that
the Committee is prepared to use its full range of tools to achieve its
maximum-employment and price-stability goals, particularly if the federal
funds rate is constrained by the ELB.』
名目下限金利に到達した時の政策運営の困難性が変わったわけではないが、名目下限金利の到達を回避することが我々のプライマリーなフォーカスではないですよ、だそうです。
・変更点その2:メイクアップストラテジーの取り下げと取り下げに際して強烈な自己批判を行っているのが素晴らしい
これは「メイクアップストラテジーはワシが育てた」とかこのジャクソンホールの後に日銀(というか黒田さんとか雨宮さんあたりでしたわな)が浅ましい事を言い出したんですが、まああんまり大口は叩くもんじゃないってお話ではありますな。
『Second, we returned to a framework of flexible inflation targeting and eliminated the "makeup" strategy.』
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!
でもってこの次の文章が(2021年に既に申し上げておりますが、とパウちゃんは言ってますけど)実にすんばらしい。
『As it turned out, the idea of an intentional, moderate inflation overshoot had proved irrelevant. 』
>As it turned out, the idea of an intentional, moderate inflation overshoot had proved irrelevant.
>As it turned out, the idea of an intentional, moderate inflation overshoot had proved irrelevant.
>As it turned out, the idea of an intentional, moderate inflation overshoot had proved irrelevant.
>As it turned out, the idea of an intentional, moderate inflation overshoot had proved irrelevant.
>As it turned out, the idea of an intentional, moderate inflation overshoot had proved irrelevant.
(;∀;)イイハナシダナー
(;∀;)イイハナシダナー
(;∀;)イイハナシダナー
>「意図的なモデレートなインフレーションのオーバーシュート」という考え方は的外れであったということが明らかになりました。
>「意図的なモデレートなインフレーションのオーバーシュート」という考え方は的外れであったということが明らかになりました。
>「意図的なモデレートなインフレーションのオーバーシュート」という考え方は的外れであったということが明らかになりました。
・・・ということな訳でして、物価が既に上振れとなっている中で、2023年5月に植田総裁が内外情勢調査会における講演で「逆方向の、政策転換が遅れて2%を超える物価上昇率が持続してしまうリスクもありますが、こうした2%の定着を十分に見極めるまで基調的なインフレ率の上昇を「待つことのコスト」は、前者に比べれば大きくないと思われます。(2023年5月19日の内外情勢調査会における植田総裁の講演テキストより)って思いっきり発言しておった訳ですが、当時は期待インフレが(2%にアンカーされている米国とは違って)低い水準だったとかまあ言い訳は色々とできるというのもありますが、物価高が長期化して期待インフレだって2%近辺にあるんじゃないの説(何なら上振れだって)が取られてもおかしくないし、大体からして大本営だって期待インフレ1%前半とかさすがに思ってないだろ、というような状況になっている状況に近いのではないか、となりますと、まさにこのパウちゃんの説明「As
it turned out, the idea of an intentional, moderate inflation overshoot
had proved irrelevant. 」を日銀は真剣に受け止めて頂きたいと思う訳です。
でもってこの部分の続きですが、
『There was nothing intentional or moderate about the inflation that arrived
a few months after we announced our 2020 changes to the consensus statement,
as I acknowledged publicly in 2021.11』
まあホンマにこれ間が悪かったのですが、2020年8月終わりのストラテジーレビューでメイクアップストラテジーだのアベレージインフレーションターゲットだの言い出して数か月後から物価が上がりだしたのですが、これは意図的でもないしモデレートでもなかったわ、というお話。
更にこのメイクアップストラテジー云々は次のパラグラフに続いていまして、
『Well-anchored inflation expectations were critical to our success in
bringing down inflation without a sharp increase in unemployment. Anchored
expectations promote the return of inflation to target when adverse shocks
drive inflation higher, and limit the risk of deflation when the economy
weakens.12』
次のパラグラフは「インフレ期待が十分にアンカーされていることによって(その後の引き締めで)失業の急拡大を招くことなくインフレが抑制できました」とインフレ期待がアンカーされているのが重要というお話になります。
『Further, they allow monetary policy to support maximum employment in
economic downturns without compromising price stability. Our revised statement
emphasizes our commitment to act forcefully to ensure that longer-term
inflation expectations remain well anchored, to the benefit of both sides
of our dual mandate. It also notes that "price stability is essential
for a sound and stable economy and supports the well-being of all Americans."』
てな訳で、インフレ期待のアンカリングがしっかりされていることが重要、ということと、「price
stability is essential for a sound and stable economy and supports the
well-being of all Americans」ということで、物価安定が重要(意図的な物価の上振れ容認とかそういうのはアカンという事やな)というのを強調し、
『This theme came through loud and clear at our Fed Listens events.13 The
past five years have been a painful reminder of the hardship that high
inflation imposes, especially on those least able to meet the higher costs
of necessities.』
この点はフェドリッスンズで何度も話題になったことで、過剰な物価高は特に生活必需品の高騰を通じて経済的弱者に厳しいものになる、というご教訓を得たそうなんですけど、日銀ちゃんも今回の参院選結果を見てちったあ反省したらどうなんでしょうかねえとしか言いようが無い(隙あらば日銀に話のケツを回す)。
・変更点その3:これまたインフレ上振れを無視していた「最大雇用からの「不足」を重視」を撤回しましたな
次が3番目ですが、これはメイクアップストラテジーとまあ根っこは同じ話でして、
『Third, our 2020 statement said that we would mitigate "shortfalls," rather than "deviations," from maximum employment. 』
2020年に最大雇用からの「乖離」を見ながら政策運営する、を「不足」に変えてきましたけどこれを撤回。
『The use of "shortfalls" reflected the insight that our real-time
assessments of the natural rate of unemployment-and hence of "maximum
employment"-are highly uncertain.14 The later years of the post-GFC
recovery featured employment running for an extended period above mainstream
estimates of its sustainable level, along with inflation running persistently
below our 2 percent target. In the absence of inflationary pressures, it
might not be necessary to tighten policy based solely on uncertain real-time
estimates of the natural rate of unemployment.15』
特にリーマンショック以降の割と長めの期間物価が2%行かないわ雇用が中々伸びないわ、というのがあったので、要は物価上がらんことを前提に雇用「不足」に対して重視する、ってので2020年の文言が入ってきたのですが、
『We still have that view, but our use of the term "shortfalls"
was not always interpreted as intended, raising communications challenges.
In particular, the use of "shortfalls" was not intended as a
commitment to permanently forswear preemption or to ignore labor market
tightness. Accordingly, we removed "shortfalls" from our statement.』
まあこの辺はカマトトぶってコノヤローとは思いますが、当時から雇用の過熱にだって目配りしてたとかいうのはお前は何を言ってるんだという感じですが、まああの文言はどう見ても「雇用が多少過熱したってどうせ物価はたいして上がらんじゃろ」と高を括っていたからああなったとしか言いようが無いのですが、この点も反省して今回ショートフォールは削除。
『Instead, the revised document now states more precisely that "the
Committee recognizes that employment may at times run above real-time assessments
of maximum employment without necessarily creating risks to price stability."
Of course, preemptive action would likely be warranted if tightness in
the labor market or other factors pose risks to price stability.』
でまあその文言をもっとフワッと「"the Committee recognizes that employment
may at times run above real-time assessments of maximum employment without
necessarily creating risks to price stability."」ってしましたよと。
次のパラもこの件です。
『The revised statement also notes that maximum employment is "the
highest level of employment that can be achieved on a sustained basis in
a context of price stability." This focus on promoting a strong labor
market underscores the principle that "durably achieving maximum employment
fosters broad-based economic opportunities and benefits for all Americans."』
『The feedback we received at Fed Listens events reinforced the value of
a strong labor market for American households, employers, and communities.』
最大雇用は物価安定の元でこそ達成できる、というのも加えているということですな。この辺りは以前から頭出しはされていましたね。
・変更点その4:雇用と物価のコンフリクトが起きる場合には「総合的に判断」だが数値的には「2%物価」の達成のようですね
『Fourth, consistent with the removal of "shortfalls," we made
changes to clarify our approach in periods when our employment and inflation
objectives are not complementary. 』
ショートフォール関連の続きですが別の論点でデュアルマンデートの間でコンフリクトが起きた場合の話、というまさに今の話になりますけれども。
『In those circumstances, we will follow a balanced approach in promoting them.』
双方のバランスを考えて政策をします、とここは玉虫色。
『The revised statement now more closely aligns with the original 2012
language. We take into account the extent of departures from our goals
and the potentially different time horizons over which each is projected
to return to a level consistent with our dual mandate. These principles
guide our policy decisions today, as they did over the 2022-24 period,
when the departure from our 2 percent inflation target was the overriding
concern.』
2012年当時の文言に先祖返りした文言になりました、とな。
『In addition to these changes, there is a great deal of continuity with past statements.』
でまあ過去との整合性についてですが、
『The document continues to explain how we interpret the mandate Congress
has given us and describes the policy framework that we believe will best
promote maximum employment and price stability.』
マンデートに対してどのような政策枠組みで運営するのが目標達成に対して良いかという観点で考えておりまっせ。
『We continue to believe that monetary policy must be forward looking and consider the lags in its effects on the economy.』
政策はフォワードルッキングであるべきであり政策波及のラグも考慮に入れる必要がある。
『For this reason, our policy actions depend on the economic outlook and
the balance of risks to that outlook. We continue to believe that setting
a numerical goal for employment is unwise, because the maximum level of
employment is not directly measurable and changes over time for reasons
unrelated to monetary policy.』
よって政策は経済物価情勢の先行き見通しとリスク認識に基づいて運営しますが、最大雇用に関しては数値で示すのは無理があるので引き続きだしませんよと。
『We also continue to view a longer-run inflation rate of 2 percent as
most consistent with our dual-mandate goals. We believe that our commitment
to this target is a key factor helping keep longer-term inflation expectations
well anchored. Experience has shown that 2 percent inflation is low enough
to ensure that inflation is not a concern in household and business decisionmaking
while also providing a central bank with some policy flexibility to provide
accommodation during economic downturns.』
でもって次のパラでは先ほど雇用の方は数値で出せませんが、といった後を受けて物価2%目標ダイジダイジネーという話をしておりますので、結局コンフリクトになった場合って余程経済が明確にダメだったら別でしょうが、インフレ上振れを抑制する方になりそうな気もします。
・次回は5年後にまた見直します
最後はそういうお話でこのコーナーが締まります。
『Finally, the revised consensus statement retained our commitment to conduct
a public review roughly every five years. There is nothing magic about
a five-year pace. That frequency allows policymakers to reassess structural
features of the economy and to engage with the public, practitioners, and
academics on the performance of our framework. It is also consistent with
several global peers.』
2025/08/22
〇10年金利ピーク更新とか交付税特会6Mとかのメモ
・なんか特に盛り上がらんのだが10年金利ピーク更新(瞬間芸ですが)
まあメモという感じですが
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/TRRAFPAP7FLSFOTCT4NCNNLI6Y-2025-08-21/
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は9日ぶり小反発、長期金利一時1.61% 17年ぶり高水準
By ロイター編集
2025年8月21日午後 3:23 GMT+9
『[東京 21日 ロイター] - <15:10> 国債先物は9日ぶり小反発、長期金利一時1.61% 17年ぶり高水準
国債先物中心限月9月限は、前営業日比4銭高の137円56銭と9営業日ぶりに小反発して取引を終えた。米金利低下や自律反発が相場を支援したが上値は重かった。現物市場では新発10年国債利回り(長期金利)が同横ばいの1.605%。一時、2008年10月以来、約17年ぶり高水準の1.610%をつける時間帯もあった。』(上記URL先より、以下同様)
昨日は流動性供給入札があって後場寄りでいきなり先物がギャップダウンしてありゃーと思いましたがまあそこから追撃ワッショイとかそういう感じでもなかったようには思えますが、途中でしれっと10年1.61%になっておった訳で。
『現物市場では10年物以外の新発国債利回りは横ばいか小幅上昇。2年債は前営業日比変わらずの0.850%。5年債は同0.5ベーシスポイント(bp)上昇の1.150%。20年債は同0.5bp上昇の2.640%。午前には一時2.655%と、1999年11月以来、約26年ぶりの高水準をつけた。30年債は同0.5bp上昇の3.180%、40年債は同0.5bp上昇の3.425%。』
なんか今回に関しては別に明確なネタ(財政アイヤーとか利上げ待ったなしとか)で売り込んでいるというよりはとりあえず自然に自重でズルズルと行ってるという風情ですし、まあ7月末の所でハトハトチキン情報発信して金利下げたのと、米国雇用統計ネタで金利下げたのが余計だったということかもしれませんね、知らんけど。
『TRADEWEB
OFFER BID 前日比 時間
2年 0.848 0.854 0.004 15:07
5年 1.145 1.153 0.003 15:09
10年 1.602 1.608 -0.002 15:08
20年 2.633 2.64 0.002 15:09
30年 3.175 3.184 0.003 15:05
40年 3.422 3.434 0 15:06』
ここもとの金利上げって先物が50銭とか1円とか下げるような盛り上がり(というか盛り下がりというか)がなくて金利上がるの巻とは言えますが、まあゆうてだいたい「ありゃま金利下がるじゃんネタ(例えばハトハトチキン音頭をハトハトチキンおじさんが踊りだすとか)」が来ると急にカバーが入って大反発となっているので、元々物価水準とか経済状況(景気後退とかどう見てもしてねえじゃろ)に対して長期金利が低い、というか短期金利水準の設定がおかしいので本来あるべき姿に収斂しようとするんだけど、金融政策要素を考えるとこいつらハトハトチキンで利上げせんからのう、というのがあって、でもって利上げしない絶好の理由ができたり、利上げしない音頭が踊られたりするとその収斂の動きの逆パンチが刺さるってことかいな、よくわからん(わからんなら書くなというツッコミはしないように)。
・昨日は交付税特会借入6Mがあったんですけど実質的にはやや上昇って感じですかね
https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/kariire/kari-result250821.htm
交付税及び譲与税配付金特別会計の一時借入金の入札結果(令和7年8月21日入札)
『本日、一時借入金の入札について、下記のように募入の決定を行いました。
記
1.借入根拠法律及びその条項
特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)第15条第1項
2.借入日 令和7年8月29日
3.償還期限 令和8年2月27日
4.償還方法 令和8年2月27日に一括償還
5.借入利率競争入札について
(1)応募額 4兆4,697億円
(2)募入決定額 1兆500億円
(3)募入最高利率 0.655%
(4)募入最高利率における案分比率 0.0317%
(5)募入平均利率 0.635%』
ということでですね、前回8/5入札の交付税特会6Mが0.605%/0.625%だったのですが、前回の交付税6Mは8/14-2/13となっていて半月近く期ズレをしているのでそこを勘案しないといけない訳です。
でもって前回の特会借入のレートを手前0.50%にして分解すると、平均の0.605%って12月利上げは完璧に織り込んでいて(後半0.863%)、10月利上げだと半分ちょい織り込んでいる(後半0.683%)という数値になっておりますわな、というのを何故か入札の1週間くらい後に書いた次第ですな。
でもって今回のを同じように何も考えない単純分解しますと、アベレージの0.635%は12月会合で分けると後半0.867%になりましてこれまた12月利上げ完璧織り込みレート、10月で見た場合ですが、こちらは後半0.706%になっているので、前回8/5の入札時よりも10月利上げ織り込み度合いが高まった、という計算になります。
毎度申し上げておりますように、これが市場の利上げ織り込みかというと市場の特殊性を勘案しないと行けないので、12月利上げ100%以上織り込みレートのこれが短期市場の織り込みとはチャイマスガナではあるのですけれども、ただまあこの2週間で定性的に見て10月辺りに利上げが来ることも考えてレートにプレミアムを要求する、という動きになっている、ということは明らかに言えることでありますので、まあそういうことやぞということでしょうな、知らんけど(なんでも知らんけどと言っておけば良いものではない)。
・月曜に急に9末越えが弱くなっていた短国ちゃん結局その辺戻ってるじゃねえかよ&この引値の階段はまだわからんでもない
いつもの売参
https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html
今日は手抜きで3MTDBで発行された銘柄の引値を並べます
(8/21引値)
国庫短期証券1315 2025/09/29 平均値単利 0.420
国庫短期証券1316 2025/10/06 平均値単利 0.390
国庫短期証券1318 2025/10/14 平均値単利 0.390
国庫短期証券1320 2025/10/20 平均値単利 0.390
国庫短期証券1321 2025/10/27 平均値単利 0.390
国庫短期証券1322 2025/11/04 平均値単利 0.440
国庫短期証券1324 2025/11/10 平均値単利 0.440
国庫短期証券1325 2025/11/17 平均値単利 0.440←カレント3M銘柄
国庫短期証券1327 2025/11/25 平均値単利 0.440←今日入札の3M新発WI
(8/20引値)
国庫短期証券1315 2025/09/29 平均値単利 0.420
国庫短期証券1316 2025/10/06 平均値単利 0.400
国庫短期証券1318 2025/10/14 平均値単利 0.400
国庫短期証券1320 2025/10/20 平均値単利 0.400
国庫短期証券1321 2025/10/27 平均値単利 0.390
国庫短期証券1322 2025/11/04 平均値単利 0.415
国庫短期証券1324 2025/11/10 平均値単利 0.410
国庫短期証券1325 2025/11/17 平均値単利 0.435
国庫短期証券1327 2025/11/25 平均値単利 0.435
1315(9/29)と1316(10/6)の間に段差があるのは半期末越えのプレミアムが乗っかるのがだいたい仕様になっている(もちろん時と場合によりますが金利がついてからのプレミアムは昨年の年末越えが一番きつかったですねえ)のでこれはまあ分かるのですが、前日比で見た場合1321(10/27)までが金利低下、1322(11/4)以降が金利上昇とはなんの判じ物かという引値になっておりますし、大体からして今週火曜にネタにした10月足の短国の引値がカレント3M側にサヤ寄せされたのは一体全体何だったのかと小一時間問い詰めたい所ではありまする。
でもって今日は毎度のように3Mの入札がありまして、今回の足は11/25になる(ので次回の3Mは9月発行12月エンドでして3M短国見ていると季節感が狂いますわw)訳ですが、この銘柄も含めてカレント近辺の方は前日比甘、ってまあカレントは5糸ですけど、これまで10月足と概ね引値が並んでいた11月の前の方の足の銘柄の引値が昨日は調整されまして、10月跨ぐ所で階段という形になりましたわな。
・・・・・まあ短国の引値自体が(短国って持ち切り兄さん姉さんが多いから仕方ないんですけど)既発銘柄についてはセカンダリーの市場がそんなにない(短国なので売りに行って売れないということは無いと思うのですが、この償還の物を買いたい、といってもモチキラーの皆様のところに鎮座したまま償還までおじぞうさんなのが多いので買いの方に自由度が乏しい)ので、この「10月末段差」が活発に取引できるのかというと謎(というかたぶんできない)なのですけど、値付け上こういう形で明確に「10月末」の所で切ってきたのは茲許で言えば昨日の引けが初出だと思うのですよ。
でまあこれが何を意味する値付けかといえば申すまでもなく10月の政策金利調整(10月に利上げした場合当座預金付利金利の適用は決定会合翌営業日の10/31からと見込まれるから)を意識した値付けということになりましたので、これ即ち短国市場でずら10月利上げの可能性を意識した値付けになってきましたという風にこじつけるのは可能(実際どうなのかは市場の中の人に聞いて回るしかないです、悪しからずご了承下さい)なので、まあそういうことやぞ、というお話ですわな。
そうなりますと今日の新発3Mって11/25足でして、10月利上げをそれなりに意識したばあい、3Mのうち1M近くが10月決定会合の向こう側にあるということを意識した弱め推移になるのか、はたまた普通に堅調になるのか(前々回の入札からこのかた、カレント3Mの方には買いが来て盛り上がるような感じは見受けられませんけど(個人の感想です)とは思うのでそんなに強くは無いじゃろという気はします。
ここの所の3M以内の短国ちゃん(除く償還銘柄)って0.40%を割れると急速に需要が無くなって、0.44〜0.45%あたりになると買いが来て金利上げ止まる、というのが仕様になっている感じですので、10月足(期末越えのニーズが来やすい)のこの水準がどこまで値持ちするかというのは注目で、10月足が0.4%割れで値持ちするようですと、それは何らかのお家の事情的な買い(その場合一番ありそうなのは「期末残高は積んでおきたいけれども10月会合跨ぎをもって利上げを食らいたくないおじさんおばさん」の存在ということになる)が入って来ているというお話になりますな、まあ誰も注目しないと思いますが精々注目させていただきますwww
2025/08/19
〇しれっと出てきた展望レポートハイライトの怪しげなポンチ絵もあったので一応整理しておくと
ということでまあ雑談で恐縮なのですが。
・日銀の今までの説明を真に受けると・・・・・・・
日銀の次回利上げはいつになるでしょうか、ってお話になるのですが、そりゃまあこの先なんかとんでもない天変地異でもあれば話は全然別になるのでシランガナになるのでそういうのはさておきまして、今までの日銀の説明を真に受けるとどういうことになりますか、ってのを整理しておきますとこんな感じじゃないですかねえ。
「賃金と物価のいわゆる好循環(最近は日銀自ら「好循環」をしらっと引っ込めているのでいわゆるをつけておく)確認利上げなら来年1月の展望レポート」だし、「物価上振れの可能性が高まってきたので政策金利を調整しますなら10月の展望レポート」って感じでしょ、とまあ誰でも思いつきそうな話ですが、日銀の理屈を真に受けるとそうなるわけですな、知らんけど。
でまあこの好循環の方は分かりやすくて、今年1月の追加利上げがまさに「好循環が進んでいることが確認できたので政策調整を1歩進めました」という形になって、その根拠は大手企業の冬季賞与と来年度の賃金改定に向けた動きが無事に進捗している、という形で、変な事起きて賃上げどころじゃねーよという話になっていなければ、むしろ1月の時点で追加利上げがまだだったら利上げしていない方が理屈に合わない、というお話だと思うので、無事に進捗すればどこからどう見ても1月には利上げじゃろうというのがまあ本線の理屈になるんじゃないですかね、あくまでも個人の感想ですが。
でもって10月利上げする場合は、昨年の7月パターンの理屈で、「物価上振れのリスクが高まった」になるんですが、昨年7月に関してはまあどう見たって円安対策で利上げしたじゃろという利上げではあったのですが、表面上の理屈はあくまでも「物価上振れのリスクが高まったので、金融緩和度合いを微調整することによって、物価上振れのリスクに対応しました」って理屈でして、でまあ今回の展望レポート基本的見解で物価上振れのリスクを詳しく説明しているので、10月展望の時にこの上振れのリスクが高まってきたので金融緩和度合いを微調整」というので行くと思うのですよね。
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2507a.pdf
経済・物価情勢の展望(2025 年7月)
【基本的見解】
こちらの中身の方の前回比較とかうっかりさぼってしまったらもう半月以上たって時効になった感があります(こちらもショパンの事情でまとまった時間が中々取れなくてすいませんまあ週末にこそっと作ってこそっとログの方に入れる感じですかね)けれども、一応当初もネタにしたと思うのですが、どっからどう見ても今回の展望の重要ポイントってここでして、
(物価のリスク要因)
『第1に、企業の賃金・価格設定行動やそれらが予想物価上昇率に与える影響である。企業の賃金・価格設定行動は、従来よりも積極化しており、中心的な見通しでは、成長ペースが鈍化し、物価に対する下押し圧力として作用するもとでも、賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇していくメカニズムは維持されると想定している。もっとも、今後の各国の通商政策等を巡り不透明感が高い状況が続くことがあれば、コスト削減に注力する傾向が強まる可能性がある。こうしたもと、物価上昇を賃金に反映する動きが弱まることも考えられる。一方、販売価格に賃金を反映する動きが想定以上に強まったり、先行き労働需給が引き締まった状況が続くとの見方が強まるもとで、賃金の上昇圧力が強まっていく可能性もある。こうしたもとで、中長期の予想物価上昇率の高まりを伴いつつ、賃金・物価とも上振れていくことも考えられる。』
というのは前回4月も同じ認識でしたが、
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2504a.pdf(前回4月展望)
以下の部分がどう見たって今回の展望のポイントで、
『この間、このところの米などの食料品価格上昇については、天候要因等の影響が大きく、消費者物価の押し上げ寄与は次第に縮小していくと想定している。もっとも、最近の価格上昇には、人件費や物流費を販売価格に転嫁する動きも相応に影響しており、企業の賃金・価格設定行動次第では、価格上昇が想定以上に長引く可能性もある。食料品は消費者の購入頻度が高いものであるだけに、価格上昇が長期化した場合には、家計のコンフィデンスや予想物価上昇率の変化を介して、基調的な物価上昇率に二次的な影響を及ぼしうる点にも留意が必要である。』(こちらが7月展望)
『この間、このところの米などの食料品価格上昇については、それ自体は天候要因等を背景とするものだとしても、家計のコンフィデンスや予想物価上昇率の変化を介して、基調的な物価上昇率に二次的な影響を及ぼしうる点にも留意が必要である。』(こちらが4月展望)
4月展望と7月展望を比較した時に、7月の方が説明が丁寧、というのもそうなんですが、よくよくみますと、「もっとも、最近の価格上昇には、人件費や物流費を販売価格に転嫁する動きも相応に影響しており、」ってのがあって、つまりはコストプッシュが原因ではあるが転嫁が進むことによる持続的な価格上昇継続の可能性がある、っていうのがあるうえに、「企業の賃金・価格設定行動次第では、価格上昇が想定以上に長引く可能性もある。」ってあるのは、ベースラインとして企業の行動が変化していることをここで思いっきり認定している、という形なので、これはリスク要因で説明している文言ではあるのですが、物価のメインシナリオにおける認識を一段進めているんですよね。ただまあメインのところでこれを書いてしまうと刺激的だから書いていないって話。
でまあ家計のコンフィデンス云々の部分は同じですので、追加されたのはコスト転嫁の広がりと企業の価格設定行動の変化についての認識な訳で、実際はかなり強気化している、と読むのが妥当ということになりますわな。
ただ、7月展望では「関税政策の影響がこれから出るはずなので不透明」ということで景気の方の判断を変えない(最悪の可能性は回避されたんじゃなかろうかという認識を示しただけで済ませている)という形にしてた訳ですが、昨日ネタにしましたように、今回出てきた展望レポートハイライトのポンチ絵が、
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/highlight/ten202507.htm
展望レポート・ハイライト(2025年7月)
経済・物価情勢の展望
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/highlight/ten202504.htm(4月ハイライト)
最初の絵、すなわち景気認識の絵がまるっきり異なってエライ勢いで明るい絵柄になっている訳でして、の差分について問い詰めると、大本営はどうせこの絵の差分には意味がないとか何とか言い逃れをしてくるとは思うのですが、「わかりやすく説明する」という趣旨で作成されている展望レポートハイライトのこのお絵かきが滅茶苦茶明るいトーンに変貌している、という時点で絵師さんの方にはそういうインプットをしているじゃろ、としか言いようが無いわけで、たぶんあんまり皆さんネタにしないようには思いますが、こちらのイラストって後から見ればやっぱりそんな意味か(しばらく前にネタにした「好循環のグルグル6回転巻きコイル(2023年10月展望)」が好循環を何度も確認するというのチキン植田を示唆していたのが一例)ってのがあった訳でして、今回何のお断りもなく、物価ではなくて景気の方のイラストをジャガーチェンジさせたのは、もしかしたら10月展望の時点でもっと威勢の良い言い方で政策調整をする(つまり物価上振れ対応だけではない説明)ことができるような布石を打ったんじゃないか、と見るのがまあ妥当でしょと思う訳です。
てな訳でして、実は10月展望で経済物価情勢が2%達成に向けて進んでいることが確認できたから政策調整の実施、という事もできる訳でして、しかもこの方式のメリットは「賃金と物価の循環」という今になってみると却って日銀の首を締めている可能性もある(だって物価が高止まりして実質賃金がマイナスで推移してたら日銀何のために政策してるんだって突っ込まれる隙を作るわけだし、7月展望の記者会見ってだんだんそのトーンが強くなってきているし新浪さんにも言われてるしエトセトラ)ものを一々エビデンス付きで確認しなくても利上げができるようになって、一々賃金言わなくて済むようになることですな。もちろん賃金がこけたら家計の消費能力が減るからこけたら何もできないのは変わらんのだが、一々賃金に紐付けて利上げ判断をしなくて良くなるので日銀の自由度が高まる、という意味でもそう思ってしまいます。
まあゆうて植田さんがしょうもないハトハトチキンおじさんでケツが重すぎ、ってのがあるので、このメソッドを採用するのか、と言われますとハトハトチキンのケツを政策委員の皆様が叩きに行くか、内田氷見野の両氏が寝首を掻きに行くのかのどっちかが必要とされますので、そういう意味ではこの後中川さん(大本営九官鳥組)と氷見野さんの金懇が来週再来週と控えていますので、ここでどういうトーンの話がでてくるのやらって感じではありますが、すくなくとも7月会合直後のハトハトチキン総裁会見のハトハトチキン成分の打ち消し(火消し?)が結構な勢いでおこなわれている、という点は無視しえないと思います、あくまでも個人の感想ですが。
2025/08/18
〇展望レポートのポンチ絵だが経済の見通しはおおむね前回と同様だったはずなんですけど何すかこのイラストwwwww
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/highlight/ten202507.htm
展望レポート・ハイライト(2025年7月)
経済・物価情勢の展望
4月はこちら
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/highlight/ten202504.htm
1月はこちら
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/highlight/ten202501.htm
・お前ら経済の見通しはおおむね横ばいじゃなかったのかよ絵が全然違うゾ
最初が経済見通しですが、経済の見通しに関しては一応4月のところでトラ公の関税大会が始まりましたので、1月と4月の間には断絶あり、ってな訳で4月と比較しますけど・・・・・・
『日本経済は成長ペースが鈍化する』(7月)
『日本経済は成長ペースが鈍化する』(4月)
って書いていることは同じでして、
『日本経済は、各国の通商政策等の影響を受けた海外経済の減速により下押しされ、成長ペースが鈍化します。その後は、海外経済とともに、成長率を高めていきます。』(7月)
『日本経済は、各国の通商政策等の影響を受けた海外経済の減速により下押しされ、成長ペースが鈍化します。その後は、海外経済とともに、成長率を高めていきます。』(4月)
っていうことで書いているお題と説明文は全く同じなのですが、描いてある絵が全然違うという斬新な手法を今回導入されておられて感服するしかありません。
でまあアタクシこちらに絵を磔刑にするスキルは持ち合わせておりません(という設定でいかせてもろてます)ので説明しますと、4月のイラストってまさに上記説明文のように、地球儀(世界経済を示しているんでしょうね)と大型貨物船(関税による世界貿易の悪化を示しているんでしょうな)を引いて重いコンダラ試練の道をって感じの背広着たおじさんがヒーコラ言ってて背景の色もダークな色になっていますわな。
ところがですね、今回のイラストって空は明るい中で車がスイスイと前に向かって進んでいて、ただまあその道に若干のアップダウンがある(一旦下押しの判じ物でしょうね)のと、晴れている筈なのになぜか車がヘッドライトをつけている(関税問題で霧がかかっているという判じ物なんでしょうね)という状態ですが、伊豆スカイラインハイウェイみたいな舗装道路の向こうはお日様が輝いて居たりしていまして、イラストのイメージが全然違うんですが何ですかこれはwwwwww
まあ何ですな、一応「4月展望レポ―トの時よりは不確実性が晴れてきた」ってのを言いたいんだと思うのは分かるのですが、それにしても絵柄が極端に違いすぎでして、4月の見通しとして出していたポンチ絵が過剰に悲観的だったのか、それとも今回実は経済の見通しが定性的に見たら本当はクソ強気転換しているのかのどちらかでした、と言われないと絵柄の大変化の理由が付かない訳ですな。
ちなみに1月の時のこの経済のポンチ絵ですけれども、見通しの良い雪の疎林がぽつぽつとある光景の中、2026(見通し期間)に向かって平坦な道がまっすぐあって、そこに向けてクロスカントリースキー(ラングラウフ)で進んでいくスキーヤー、って感じでして、まあ季節柄クロカンにしたのかねって感じですが順調感満載の絵でしたが、今回はそれよりも風景自体は明るいものになっていて、霧が掛かっているような演出効果が無ければ威勢の良さは(利上げをした)1月並みかそれ以上って絵になっているのはナンデスカコレというお話になろうかと思います。
今って前述のように「経済」の方が利上げを渋る理由になっている訳ですが、展望レポートハイライトのこのポンチ絵見ますと、説明文は同じなのに全然絵が違って威勢がよくなっている訳で、こんな辺りからも日銀大本営が「やるかどうかは兎も角として利上げをした時にそれを正当化できるような仕掛けを埋め込んでいる」というプレイに打って出ている、というのが示されているのではないか、とまあアタクシは斯様に読み取るわけですが、この点はあくまでもアタクシ個人の感想ですの世界なのでそのように読み取るかどうかはお任せいたします(^^)。
・物価見通しのイラストは逆に見通し引き上げでリスクバランスも引き上げなのに同じというプレイ
ということで今回の主な点は最初のイラストなのですが次の物価の話も何じゃそれでして、
『物価は減速したあと2%程度に向かう』(7月)
『物価は減速したあと2%程度に向かう』(4月)
『物価は2%程度に向かう』(1月)
こちらは前回と同じイラストになっていますが、4月のポンチ絵の時にご紹介したように1月は基調的な物価が上がってアクチュアルの物価が下がる、というようなイラストだったのが、4月と今回はアクチュアルの物価が2%割れた後に2%に戻る、の絵のままです。
つまり説明文の方は、
『消費者物価の前年比は、食料品価格上昇などの影響が弱まり、経済の成長ペースも鈍化するため、来年度に1%台後半まで減速しますが、再来年度は2%程度となります。』(7月)
『消費者物価の前年比は、食料品価格上昇などの影響が弱まり、経済の成長ペースも鈍化するため、来年度に1%台後半まで減速しますが、再来年度は2%程度となります。』(4月)
と同じ説明文になっていまして、いやいやお前ら7月展望で物価の見通し上方修正した上にリスクバランスも変更しただろ何でこっちのイラストは変わらない(7月は2024年度終わっているのでその分の表記が無くなっている点は違うけどそこは関係ないので)んだよどうなっているのというお話。
・不透明がやや後退した、という絵はまあ言いたいことは分かる
『通商政策等の影響を巡る不確実性は高い状況が続いている』(7月)
『通商政策等の展開や影響を巡る不確実性はきわめて高い』(4月)
というのは今回変更しているからその通りに変更になっていますが、
『日米間の交渉が合意に至るなど、前向きな動きもみられていますが、各国の通商政策等の展開やその影響を受けた海外の経済・物価動向を巡る不確実性は、高い状況が続いています。金融・為替市場や日本経済・物価への影響にも、十分注意を払う必要があります。』(7月)
『各国の通商政策等の展開やその影響を受けた海外の経済・物価動向を巡る不確実性は、きわめて高い状況です。金融・為替市場や日本経済・物価への影響にも、十分注意を払う必要があります。』(4月)
不確実性を意味すると思われるものを見ている人の図、というのがあって、そのブツが4月対比で今回は少し遠くなりました、という判じ物になっていまして、まあこれは(微妙な絵を描きやがるとは思いますが)言いたいことは分かる。
・最後の政策運営の絵は本文ともども同じ
『2%目標のもとで金融政策を運営していく』(7月)
『2%目標のもとで金融政策を運営していく』(4月)
『金融政策運営については、経済・物価の見通しが実現していくとすれば、経済・物価情勢の改善に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えています。そのうえで、こうした見通しが実現していくか、丁寧に確認し、予断を持たずに判断していくことが重要です。』(7月)
『金融政策運営については、経済・物価の見通しが実現していくとすれば、経済・物価情勢の改善に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えています。そのうえで、こうした見通しが実現していくか、丁寧に確認し、予断を持たずに判断していくことが重要です。』(4月)
そして謎の3本の温度計イラストも同じで、何を見ているのかはさっぱり分からないのですが(1月の方が意味のある絵になっていた)まあ色々と見て判断してますよ、って言いたいんだろうなあ(でも何が政策反応関数なのかはさっぱり分からん)という絵のままでした。
ということで最初の2つの絵が何ですかこれは、という謎のハイライトではありましたとさ、ということで今朝はこの辺で勘弁していただきとう存じます。
2025/08/15
〇ベッセント火消しているのかと思うと火消している訳でもないですな&PPIとかのメモ
・BBGに続いてFOXでやや長めのインタビューがあったようで
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-08-14/T0ZHJFGP493A00
ベッセント財務長官、「FRBに指図していない」−利下げ要求を否定
Daniel Flatley
2025年8月14日 21:45 JST 更新日時 2025年8月14日 23:25 JST
→中立水準は現行金利より150bp低いと指摘しただけ−ベッセント氏
→9月の50bp利下げ「恐らく適切だろう」とあらためて発言
とは言っても結局言ってること同じなんですが、ベッセントもトランプの手下として言わざるを得ないってことなのかもしれませんが、9月利下げしてインフレが再燃したらこれ普通にトランプ政権のせい、っていう話になる訳でして、ついでにこれを言ったベッセントも地獄の業火に焼かれることになると思うのですけれどもはてさて大丈夫なんでしょうか、という感じです。
ベッセントさんって非常に常識人であるというお話はよく聞くわけですが、それをもってもこの有様なんで、まあ馬鹿をトップに選んじゃダメというのと、権力機構というものには抑制機能をどこかにつけておかないと、うっかり馬鹿に権力を与えると飛んでも無いことが起きる、というのが分かるわけで、反面教師として学ぶべきところだろとは思いましたので内閣人事局(内務省検閲により削除されました)。
『前日のブルームバーグテレビジョンでの発言について、ベッセント長官は「FRBに指図したわけではない」とFOXビジネスとのインタビューで説明した。』(上記URL先より、以下同様)
という事ですが結局
『「私が言ったのは、金利を中立水準にするには推定150ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の引き下げになるということだ」とベッセント氏。 「その水準にするよう要求はしていない」と話した。』
まあ当然ながらツッコミは入っている訳で、
『元FRBエコノミストで、マクロポリシー・パースペクティブズを創業したジュリア・コロナド氏は、中立金利水準について「意見を述べるのは本来、財務長官の役割ではない」と指摘。「政権内で最高位の経済閣僚がこうした発言を公にした事実は、FRBに要望を直接的かつ公然に圧力をかけたことになる」と述べた。』
そらそうよ。
『ベッセント長官は14日、弱い雇用統計と何カ月も利下げを見送っている事実を踏まえ、「9月の50bp引き下げは恐らく適切だろう」とあらためて述べた。マクロポリシーのコロナド氏は「経済的な論点を述べているだけだという主張は不誠実だ」として、「そのような主張をすること自体、本来の立場ではふさわしくない」と述べた。』
まあ結局のところ、同じ話をしただけって感じではありますわな。
でまあちょっとFOXみたんですけど、FEDがらみのベッセントのQAは
https://www.foxbusiness.com/video/6376910492112
Mornings With Maria
August 14, 2025 25:05
Bessent outlines Trump administration plans for tariffs, housing crisis and Fed chairman selection
『U.S. Treasury Secretary Scott Bessent, in a wide-ranging interview on
'Mornings with Maria,' weighs in on President Donald Trump's meeting with
Vladimir Putin, updates U.S.-China trade talks and housing affordability
crisis solutions.』
こちらの16分40秒くらいにあって、最初がFed chairman selectionの話がちょっとあるのですが、その後が政策金利がどうのこうのの話で、「利下げしろといったわけではない」、というのは17分くらいのところにあるのですけれども、同時点のニュース画面のヘッドラインを見ますと、結局「BESSENT CALLS FOR STEEP RATE CUTS」ってされていて、まあ本人がどう取り繕っても「利下げ要求」というのは変わっていないように見えますわな。
なおニュースの方は掛け流しで聞いているだけなのですが、直接的な金融政策の話は16分40秒くらいから19分00秒くらいの辺りになると思いますので見れる方はご参考までに。
ああそれからこれ16分40秒ちょっと回ったあたりでFEDの次期議長候補の下馬評としてFOXが並べているのが写真入りで画面に出ているのでそれもまた便利かもしれません(各局で出しているの微妙に差異があるので色々と拾っておいた方が良いかと思いますので)。
まあ一方でPPIの方が
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/6UAFIZVDDVLVFI2ZW2T2J3Z7VM-2025-08-14/
米7月卸売物価指数、前月比0.9%上昇と約3年ぶりの大幅な伸び インフレ加速示唆
By ロイター編集
2025年8月15日午前 3:16 GMT+9
『[ワシントン 14日 ロイター] - 米労働省労働統計局(BLS)が14日発表した7月の卸売物価指数(PPI、最終需要向け財・サービス)は前月比0.9%上昇した。サービスと財(モノ)の価格が共に急上昇し、2022年6月以来、約3年ぶりの大幅な伸びとなった。今後数カ月間でインフレが広範に加速する可能性が示唆され、連邦準備理事会(FRB)は金融政策運営で難しい舵取りを迫られる。ロイターがまとめたエコノミスト予想は0.2%上昇。6月は横ばいだった。』(上記URL先より、以下同様)
>2022年6月以来、約3年ぶりの大幅な伸びとなった。
>2022年6月以来、約3年ぶりの大幅な伸びとなった。
>2022年6月以来、約3年ぶりの大幅な伸びとなった。
ということでこれは盛り上がってまいりましたとしか申し上げようがないですが、
『エコノミストの間では、トランプ政権の関税措置でモノの価格が上昇する中、サービス価格の上昇は緩やかになり、全体のインフレへの影響は緩和されるとの見方が出ていた。ハイ・フリークエンシー・エコノミクスのチーフエコノミスト、カール・ワインバーグ氏は「関税措置で国内価格は影響を受けないと考えていた人にとって大きな打撃だった」とし、「FRBの様子見姿勢が強く裏付けられた」と述べた。』
とのことでございまして、まあ普通に考えたらどこからどう見てもこの結果は9月は様子見地蔵になるべきというのを強く支持する内容になって来たと思うのですが、なんせ9月FOMCまではまだ1か月あるのでこの先何が出てくるのか次第としか申し上げようがないですな。
ムサレム総裁(ブラードの後釜の人)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-08-14/T0ZNIWGP493500
セントルイス連銀総裁、9月利下げの是非巡る判断下すのは時期尚早
Catarina Saraiva
2025年8月15日 0:28 JST
『米セントルイス連銀のムサレム総裁は、9月の連邦公開市場委員会(FOMC)会合で利下げを実施するかどうか判断するのは時期尚早だとの見解を示した。ムサレム氏は14日、米経済専門局CNBCのインタビューで、9月の会合で「私自身としてどういった政策を支持できるかを正確に述べるのは時期尚早だ」と語った。9月会合で0.5ポイントの利下げが正当化され得るかとの質問には、「経済の現状や見通しを踏まえれば支持されない」と語った。』(上記URL先より)
ということで、まあ結局はここから9月FOMCまでに出てくるデータ(直前にCPIが出るんですね)次第、ってことになるしかなさそうな流れですな、うんうん。でまあワシは米国エコノミストでも何でもないのでその辺はノーアイデアにもほどがあって出たとこ勝負(勝負するわけではないがw)ですな。
〇ベッセント砲がちゃっかりダメージを与えた円債ちゃんというニュースクリップメモをば
皆様先刻ご承知の介な話で恐縮ですが後日備忘用記念クリップ
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/HAQIWMAOEZI5JE2LQJKPIW7MUM-2025-08-14/
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は続落、米財務長官発言や弱いオペ結果で 長期金利1.55%
By ロイター編集
2025年8月14日午後 3:18 GMT+9
『[東京 14日 ロイター] - <15:10> 国債先物は続落、米財務長官発言や弱いオペ結果で 長期金利1.55%
国債先物中心限月9月限は、前営業日比39銭安の137円97銭と4営業日続落して取引を終えた。新発10年国債利回り(長期金利)は同3.5ベーシスポイント(bp)上昇の1.550%。米財務長官の発言や日銀の買いオペの弱い結果が中長期ゾーンの金利を押し上げた。』(上記URL先より、以下同様)
昨日申し上げましたように、ベッセント砲来たと思ったらイブニングの先物(なので東京の朝6時がクローズ)が碌すっぽ反応していなくて、前日日中引値対比でプラスで推移してたのでナンジャソラと思ったのですが、こういう「日銀に圧が掛かる」系の記事には日本人の方が盛大に反応するんだな、という知見が今回は得られた気がします。気のせいかもしれませんけどwww
『きょうの国債先物は、海外取引時間の債券高地合いを引き継ぎ、買い先行でスタート。買い一巡後は、ベセント米財務長官がブルームバーグとのインタビューで日銀の金融政策について「私の意見では、ビハインド・ザ・カーブに陥っている」と述べたことが材料視され、先物相場はマイナス圏に沈んだ。』
でまあ結構下がったうえに、
『日銀が実施した中長期・超長期ゾーン対象の国債買いオペが概ね弱い結果と受け止められたことも後場の取引で追加的な売り手掛かりとなり、国債先物は終盤にかけて下げ幅を拡大した。』
長期輪番で必殺応札(業界用語では輪番封鎖)が入って安い所で決まってしまったとかそういうことで。
『TRADEWEB
OFFER BID 前日比 時間
2年 0.808 0.814 0.03 15:02
5年 1.1 1.108 0.042 15:06
10年 1.545 1.553 0.033 15:06
20年 2.548 2.555 0.029 15:07
30年 3.074 3.084 0.002 15:00
40年 3.279 3.29 0.003 15:07』
ということで、取引終盤まで今日はツイストかと思わせていたりもしたのですが、一応ベアフラットという形になった訳ですが、先物中期が弱くて2年も地味に弱くて、まあ普通の普通に日銀の外堀が埋まってきた認識、という相場ちゃんになった次第ですが、実際に市場がどう思っているのかという話は長期債の入札が無いとイマイチ分りかねる所でもあるので来週以降に注目することになろうかとは存じますが、一応今日は10年物国と3か月短国の入札というのもあるので以下雑メモ。
2025/08/14
〇中立金利まで利下げしろっていうことなんですが物価は大丈夫なんですかねえ(ベッセント発言)
こんなん出てました
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-08-13/T0XLLMGPWCKG00
米財務長官、150bp以上の利下げ求める−日本はインフレ抑制を
Daniel Flatley、Jonathan Ferro、Annmarie Hordern
2025年8月13日 22:11 JST 更新日時 2025年8月14日 2:34 JST
→米政策金利、150−175bp低い水準にあるべき−9月から利下げを
→「日銀は後手に回っており、利上げするだろう」、植田総裁と話す
これわwwwwww
『ベッセント米財務長官は13日、政策金利は少なくとも今より1.5ポイント低くあるべきだとの考えを示し、これまでで最も明確に米金融政策当局に利下げサイクルに踏み切るよう訴えかけた。日本については、インフレ抑制に取り組む必要があるとの認識を示した。』
『ベッセント氏はブルームバーグのテレビインタビューで、「9月の0.5ポイント利下げを皮切りに、そこから一連の利下げを実施できるだろうと考えている」と述べ、「どのモデルで見ても」金利は「おそらく150、175ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低い水準にあるべきだろう」とも語った。』(上記URL先より、以下同様)
ということですのでBBGTV見れば多分どっかにインタビューが転がっていると思うので見れたら見たいとは思いますけれども、とりあええずは記事から参りますと、
『ベッセント氏は、米連邦準備制度理事会(FRB)当局者らがFOMC会合の2日後に公表された米雇用統計での改定値を事前に把握していれば、「6月と7月に利下げが可能だったのではないか」と述べた。労働統計局は1日発表の雇用統計で、5月と6月分合わせて雇用者数の伸びを25万8000人下方修正した。』
結局のところ関税自爆攻撃で経済が落ち込んで需要落ちた結果物価が上がりにくくなってくれれば引き締め的な政策って不要になるから中立になるべき、ってのはまあ話の上では分からんのではないのですけれども、一方でアメリカン株式って利下げ期待で連日ウヒョーと上昇している訳でして、そっちを見ると何で利下げして資産価格を刺激しないとアカンのですかそれ後になってバブル崩壊しまっせ、と思ってしまいます次第なのですが、まあ当然後者は丸無視する訳で。
『財務長官は通常、米政策金利について具体的な発言は避けている。ベッセント氏もしばらくは、過去の政策決定についてのみコメントするとしてきた。トランプ米大統領は、利下げを見送るパウエルFRB議長を繰り返し批判するが、パウエル議長や多くの当局者は、トランプ氏の関税引き上げがインフレに及ぼす影響について、さらなる兆候を見極めたいと述べている。』
まあ結局のところ出てくるデータ次第で経済が落ち込んできて物価が沈静化してたら引き締めを減らすのはあるでしょうし、物価が上振れしようもんなら地蔵にならざるを得ませんって話だと思うのですけれどもさてどうなるやら。
『ベッセント氏は、来年5月で任期を満了するパウエルFRB議長の後任探しについても言及。候補として10、11人を検討していることを明らかにした。トランプ氏はその後、候補を3−4人に絞り込んだと語った。米CNBCが報じたところによれば、トランプ氏は次期FRB理事候補として、ジェフリーズのチーフ・マーケット・ストラテジスト、デービッド・ザーボス氏、元FRB理事のラリー・リンゼー氏、ブラックロックのグローバル債券担当最高投資責任者(CIO)、リック・リーダー氏も検討している。』
別口の候補が増えましたな。でまあこの記事の味わいのあるところはジャパン的にはこちらになりましてですね・・・・・・・・
『ベッセント氏はまた、米国債利回りは日本やドイツといった外国の金利動向の影響を受けていると指摘した。』
からの
『「日本はインフレ問題を抱えており、確実に日本からの波及がある」と発言。日本銀行の植田和男総裁と話したと明らかにしたうえで、「これは総裁の見解ではなく、私見だが、日銀は後手に回っており、利上げするだろう」と語った。』
wwwwwwwwwwwwwwwww
まあアレです、ベッセントさんと言えば財務長官就任直後にも
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN063IT0W5A200C2000000/
ベッセント米財務長官、日銀の植田和男総裁と電話協議
2025年2月6日 13:15 (2025年2月6日 17:50更新)
ってのがありまして、今年の2月の頭と言えば時期的には日銀様が前年12月決定会合で利上げはまだですよ何なら3月利上げも怪しいですなあ、というハトハトチキンな情報発信をしていた所から年始になっていきなりのジャガーチェンジをして強引な地均しをしたあと1月会合で利上げを実施、というタイミングだった訳ですな。
でまあ今回このような話が出てきた訳ですが、いやまあ他国の財務長官に言われて利上げしてたらもうお前総裁も学者も辞めちまえって話ではあるのですが、しかしながら今の日銀って主体的に利上げするようなタマでもなさそうなのが見え見えなのが残念なところなので、外圧キタコレというお話になるのかねとはちょっと思いましたけれども、債券先物ちゃんのイブニングを見る分には全然なっていない模様ではありますwwwwwwww
ただまあしれっと日銀利上げの話をぶっこんで来ているのは(ドル高是正したいってのもあるでしょうし)あんまり無視しない方がエエンチャイマスカとは思いましたので備忘でネタにしておきましたです、はい。
2025/08/12
お題「7月会合主な意見である」
なんか最近は土用越えると梅雨末期みたいなことになりますな・・・・・
〇7月会合主な意見を見ると経済がチキンで物価が強気なのでどっちを注目するかって話ですかねえ
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2025/opi250731.pdf
金融政策決定会合における主な意見
(2025 年 7 月 30、31 日開催分)1
まずは『T.金融経済情勢に関する意見』から(というか今回は基本的に全部読む予定)
『・ わが国経済は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している。先行きは、各国の通商政策等の影響を受けて成長ペースは鈍化するものの、その後は海外経済が緩やかな成長経路に復していくもとで、成長率を高めていくとみられる。』
という最初のははいはい大本営なので次に行きますが、
・おいこらちょっと待てお前ら前回物価目標達成時期を1年後ろ倒ししてるじゃろが
『・ 日米間の関税交渉の合意は、大変大きな前進であり、日本経済にとって、不確実性の低下につながる。前回の展望レポートのメインシナリオを書き換えるものではないが、これが実現する確度は高まった。』
という話なんだが、そもそも前回ってメインシナリオを引き下げていたという認識の筈なので、「実現する確度は高まった」ってのもおかしな話でして、いやお前ら前回4月の展望で物価目標の達成見通し時期を思いっきり1年後ろ倒しにして下方修正しているじゃろという話で、寧ろこの度の合意は「物価目標達成時期を1年後ろ倒しにしたが引き戻るかもしれない」という話になるはずなので、「実現する確度は高まった」じゃねえだろと思う訳です。
まあだいたい経験則的に最初の2つとか3つとかって大本営のコメントが多いという傾向にあるようですが、大本営におかれましてはどさくさに紛れて4月展望で思いっきり引き下げた見通しが「米国関税の不透明要因剥落」でもメインシナリオ引き下げっぱなしでOKという説明になるのかよ、と思いました。
つまりまあ大本営がハトハトチキンな気配があるのですな。
・関税の影響はこれから出る「はずだ」という謎の決め打ちをするというハトハトチキン風潮
次に行きますと、
『・ 日本からの対米輸出が多い業種は輸送用機器や大型機械などであるが、短観等において関税の影響が大きく広がっていない理由としては、非製造業など関税の直接的な影響が少ない業種が調査対象として広くカバーされていることが影響している可能性がある。』
ってこれは何ぞという話ですが、短観は1社1票だから非製造業なども入るので短観見ても関税の影響が大きく広がっていない、ように見えると言いたいんでしょうけど、そもそも論として本当に大きく広がっていない可能性もある訳で、この前の植田総裁の会見でもそうでしたが、「これから関税の影響が出るはずなのでハトハトチキン」という説明に終始しているのは心配性というよりもハトハトチキンの言い訳になっているだけのような気がします。この意見も3番目になるので大本営の可能性が高そうだし。
『・ 通商政策については、これまで発生してきた駆け込み輸出の影響が今後剥落し、さらに関税の負の影響が出てくる局面に入りつつあることに注意が必要である。』
4番目も「これから影響が出るはずだ」になっています。
『・ 米国の関税政策の基本的な内容は固まったが、今後は、米国経済において、関税によるインフレがどの程度進んでいくのか、米国の消費者がそのインフレに直面して消費をどの程度減らしていくのか、様々な角度からの分析・調査が必要である。』
『・世界経済が米国の関税政策の影響を吸収している力には、目をみはるものがある。ただ、世の中の捉え方がやや楽観的に過ぎないか、もう少し経過をみる必要がある。』
まあ確かに関税云々は米国における巨大な自爆なので今後大丈夫か問題はあるのですが、それにしても最初から6個まで全部この調子で「これから悪くなるはずだ」という決め打ちをしている訳で、経済認識のパートを見ると弱気というかチキンに見えますね。
・最後に来てやっと強気が出てくるんですね
『・ 関税を中心として経済成長にマイナスに働く政策が先行したが、日米関税交渉の合意や米国減税法案の可決など、局面が変化した。』
7個目にしてやっとこれが来たわけですが。
『・ 感染症拡大期と同様、今次局面でも世界的な危機意識から欧米・中国・新興国が揃って財政金融両面で緩和策に傾く中、経済押し上げ・インフレ圧力が生じ、世界経済が予想以上に上振れる可能性がある。』
イイシテキダナーということで、2名が関税交渉を巡る問題に関しては強気化しているのが読み取れますね。
・賃金設定行動に関しては来年を待つ必要なく判断できるという指摘があるのは何気に大きい話
経済の最後の意見ですが(今回丁度9個ですね)、
『・賃上げは、春季労使交渉における賃金改定を重視しているが、それ以外の多面的な動きにも注目したい。最低賃金の引き上げ幅や、企業収益を踏まえた冬の賞与、また転職を通じた賃金改善の状況等もみていく必要がある。』
これは地味ですし、まあゆうて1名の意見なので全員の意見ではないですけれども、この説明って4月展望の時に示されていた「企業の賃金設定行動の下方屈曲が無いかどうかの確認」に必ずしも来年の賃金改定まで待たなくても判断できますよって話なので地味に大きな話ではあります。もちろんこれがコンセンサスなのかというとそういう訳でもないとは思いますが。
しかしまあ何ですな、9個の意見中6個がハトハトチキンだった訳で、そりゃまあ今回物価見通しを引き上げたのにメインシナリオ上方修正しないという割とへんちくりんな事をしているのもむべなるかなという感じではありまする。
では物価に参りますが、物価の意見は7個ありました。例によって1個目ははいはい大本営なので(正直この意見って無駄だから大本営(というか総裁かな)も別の事書いて欲しいんだが)引用だけしますけど。
『・消費者物価の基調的な上昇率は、成長ペース鈍化などの影響を受けて伸び悩むものの、その後は、成長率が高まるもとで徐々に高まっていくと予想され、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。』
で、はいはい大本営の後ですね問題は。
・基調的な物価とは??って感じですが
『・基調的な物価上昇率の評価にあたっては、様々な情報を丁寧にみたうえで総合的に判断していく必要がある。足もとまでの動きを踏まえると、基調的な物価上昇率は、2%に向けて緩やかに上昇しているものの、なお2%には至っていないと考えられる。』
2番目がこれでしてまあこれも大本営なんでしょうけれども(今回の決定会合では「基調的物価が2%行ってないので政策調整不要」という理屈になっているから)。
でまあこちらなんですけど、「基調的物価は総合判断」というのが第一文にあるのですが、第二文になると基調的な物価がピンポイントで評価できるような言い方になっているのは何なんでしょうかねという感じではあります。
先般来拙駄文で申し上げたいますが、基調的物価うんぬんっていうのはそういう物があるわけではない概念の世界ってのをもうちょっとはっきりと説明すべきだと思うんですが、まあそれをやってしまうと従来の説明が三百代言ムーブだったことがバレてしまうのでさてどうするのやら。
・米価の影響と異常気象の影響について
『・米価格は引き続き高めで推移するとみているほか、その他の食料品についても、価格転嫁の広がりによって上昇圧力が続くとみている。足もとの猛暑や水不足の影響については、食料品の供給制約となる一方、財・サービス需要の低下や、生産性への影響なども考え得るため、物価に対して上下双方向に作用するリスクがある。』
うーん。後半の異常気象関連ですが、物価高を通じた需要減によって基調的な物価に悪影響とかいう説明なら話は分かるのですけれどもそうなるか??という感じではあります。
・基調的な物価が2%にいるならば0.5%の政策金利はガンガン調整しないといけないような気がするんですが・・・・
『・物価水準がインフレ予想に影響し得るとの研究もあり、今後、米価格の前年比上昇率が鈍化しても、インフレ実感が低下しない可能性もある。基調的な物価上昇率は、推計誤差等も踏まえると足もと2%ぐらいとみているが、物価の下振れリスクもある中、今後この水準で定着するかみていく必要がある。』
なんかしらっと「基調物価が2%位」という話をしているのだが、それでしたら政策金利0.5%ってどう見てもおかしくないかという話で、むしろ低すぎる政策金利水準によって基調物価が上振れするしかあり得んのだが、なぜそこで「物価の下振れリスクもある中、今後この水準で定着するかみていく必要がある」という結論になるのかが謎ではありますけど、基調的物価2%ってのが思いっきり出ているのはちょっとビビりますね。
しかしそもそも論として基調的物価が定着するもクソも一種の前提が基調的物価の定義だと思うので、なんかこの説明も微妙な気はする(本来物価安定目標が達成されている世界では基調物価は物価安定目標の数値に等しいので)訳で、マジックワードで便利使いしていた「基調物価」も実際に物価が上振れして物価高批判まで起きるようなご時世になった時には説明が混乱しているわなと思うのでありました。
・ディスインフレ状態からマイルドインフレ状態に明確に転換したという見方も表明されています
次の意見ですけど、
『・デフレノルムの時代には、一時的な物価下落要因の効き目が大きかったが、最近では輸入物価の下落などの下押し方向の要因の影響はあまり広がりがみられず、逆に、一時的な物価上昇要因が大きく効くようになっている。こうした変化の背景には、人手不足の高まり、価格・賃金の設定や価格転嫁に関する企業や消費者の考え方の変化、インフレ予想の上昇などがある可能性がある。』
これはそうですよねって思いますし、こういう状況になっているのであれば超緩和を引っ張るのはリスクがあるよねって話になる訳で、「待つことのリスクは大きくない」とか2023年5月に植田総裁が内外情勢調査会で言ってたハトハト大宣言は今や過去の話ってことになるんですが、はてさて植田さんはこの「待つことのリスク」をどう考えているのでしょうかね。
この点は2023年に言ってたのをひっくり返すのはまあ可能な話なんで、逆にちゃんとひっくり返して頂きたい所ではあるのですがそういう勇気がありやなしや。
・やっと来ました「物価上振れリスク」
どう見ても抜刀斎です本当にありがとうございました。
『・@日米交渉合意、A企業の前向きな賃金・価格設定行動の維持、B物価上振れを踏まえれば、見通し期間前半に物価目標実現と判断できる可能性は、4月時点対比、高まった。2%を大きく上回るインフレが3年以上続く中、予想物価上昇率は2%程度に達しており、これが更に上昇しないか懸念される。』
でまあこれがどう見ても抜刀斎ですは良いんですけど、何気にここで重要なのはこの前に2つの意見があったことでして、これすなわち物価に関しては強気な人が3人はいる(誰かが2個書いていない限り)ということで、大本営は大本営なのでそう考えますと6打数3安打で物価に関して強い見方が入っている、ということになるのですな。
・ついでに財政からの押上げの指摘も
最後はこれです。
『・今後の財政政策が、物価押し上げに繋がらないかには、十分注意する必要がある。』
消費税率引き下げの場合は統計上のCPIは下げますけどこれまた強烈に物価の基調を引き上げますな。
次が『U.金融政策運営に関する意見』になります。
・最初の方は大本営なのでノーコメントで
『・経済・物価の見通しが実現していくとすれば、経済・物価情勢の改善に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになる。そのうえで、こうした見通しが実現していくかは、不確実性が高い状況が続いていることを踏まえ、予断を持たずに判断していくことが重要である。』
「これから関税の影響が出てくるはずだ」ってのも一種の予断ではないか説がありますが。
『・日米の関税合意によっても、「成長ペースが鈍化し、基調的な物価上昇率の改善がいったんは足踏みする」というメインシナリオは不変であり、通商政策やその影響を巡る不透明性は引き続き大きい。今は、現在の金利水準で緩和的な金融環境を維持し、経済をしっかりと支えるべきである。』
って言ってるんだが緩和的な金融環境を維持→円安に進みやすい→輸入中心のコストプッシュ→経済にマイナス、という説があるんじゃネーノと。
『・通商政策の影響が具体的にどう出てくるのか、各国のデータでなお確認できていないほか、米国の消費者物価と労働市場の動向によって、米国の金融政策や為替相場の方向性が大きく変化する可能性があり、もう少しデータを得たうえで政策判断すべきである。』
データを見たい、という話は分かるんだが「影響が出るはず」と言っていつまでも様子見して良いのは政策く金利が最低でも1%以上ある時に言えと思います(まあ普通に言って1.5%以上なら)。
・早ければ年内にもということはメインは来年なんだよな〜
4つ目の意見がヘッドラインになっていましたが。
『・米国関税政策の影響の見極めには、少なくとも今後2〜3か月は必要である。仮に、米国経済が想像以上に持ちこたえるようであれば、日本経済への下押しの影響も軽微なものにとどまると思われる。その場合、早ければ年内にも現状の様子見モードが解除できるかもしれない。』
影響の見極めが7月末起算で2〜3か月だったら別に「早ければ」ではなくても年内だと思うので、これ実はハトハトかはさておいてもチキンな意見ですよね。まあヘッドライン的には年内云々の方でネタにされていた気がします。
・そもそも今の日本の金利水準はクソ低いという極めて真っ当な指摘キタコレ
5つ目は実にいい指摘でして、
『・米欧と異なってわが国の政策金利は中立金利を下回っているとみられるため、今後も可能なタイミングで利上げを進めていくべきである。日米関税交渉の妥結に対して株式市場がポジティブな受け止め方をしている中、過度に慎重になって、利上げのタイミングを逸することにならないよう、留意する必要もある。』
これは仰せの通りで、今の政策金利が1%とか1.5%とかなら様子見引っ張るのも分かるんだが、国債買入も含めて強烈な緩和している、という点から考えないといけない、という大変に真っ当な指摘ですね。
次の意見は字数不足で何言ってるのか判然としませんが、
『・急速な利上げは日本経済に大きなダメージを与えるため、適時に利上げを進めることが、リスク・マネジメント上、重要である。』
後になって急速な利上げを強いられるリスクがある、って直球を書いた方が良いと思います、言いたいことはそういうことですよね。
・予想物価上昇率上振れリスクの指摘
『・金融政策運営を考えるうえでは、予想物価上昇率の今後が重要である。過去と異なり、今回の局面では企業業績と賃金の上昇を伴う形で物価と予想物価上昇率の上昇が続いている。米をはじめとする食料品やガソリンなどは、個人が価格水準を意識しやすく、値上がりを実感しやすいことから、予想物価上昇率を押し上げやすいと考えている。』
これまたその通りですわな。
・基調物価の説明をフェードアウトする布石キタコレ
これで8つ目に9つ目になりますね。
『・基調的なインフレ率が2%を大きく下回っている間は、政策判断にあたって実際のインフレ率よりも基調を重視することになるが、基調が2%に近付くにつれ、実際のインフレ率も重視する度合いが徐々に高まっていく。』
『・物価動向に関する対外コミュニケーションの中心を、「基調的な物価上昇率」から、「物価の実績と見通し、需給ギャップや予想物価上昇率」に変えていくべき局面である。』
つまりは基調物価はお気持ちだったということでワロスワロス。
『・基調的な物価上昇率は、特定の数値として示すことは難しいが、中央銀行が金融政策を運営するうえで、大事な概念である。』
ってのが10個目ということで頭数を上回ってしまいました(なおこの後も続く)のですが、基調物価に関する論議も行われていたのねという感じですが、このトーンは「基調的物価という説明が苦しくなった」というのを如実に示していて味わいがある。
・さらに踏み込んで物価目標達成来てねえかという指摘
抜刀斎だと思いますが抜刀斎じゃなかったらこれはエライコッチャ。
『・既に物価が上がらないノルムが転換し、中長期のインフレ期待も引き上がる中、物価上昇の二次的影響が生じやすく、基調的な物価の上昇が生じている。インフレに伴い家計の生活実感が下押しされ、物価の上振れリスクを重視せざるを得ない局面にある中、今や、物価目標の実現を見据えたコミュニケーションも念頭に置く段階に入ったと考える。』
まあここまで強気だと抜刀斎だとは思いますけどこれは威勢が良い。
・最後の方は債券市場に関してですが
『・10 年物国債利回りは足もと1%台半ばとなっている。経済・物価動向などを踏まえると、金融環境は依然緩和的であるとみている。』
『・日本銀行のバランスシートに関しては、短期金利のコントロールに支障をきたさないという観点から、その最適な規模とそこへの経路などを考える必要がある。』
後者って重要な話で、長期金利のコントロールの為に長期国債買っている訳ではないのだからこういう話になるはずなのですが、6月会合の感じは思いっきり市場配慮の話ばっかりだったのでなんかまあ政策委員会の方でも認識が混乱しているな、と思いました。
政府の方の意見はパスします。
2025/08/08
〇色々と渋滞していて恐縮ですが総裁記者会見の中では「何で利上げしないのか」が増えましたわな
まあアレです。
https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2025/kk250801a.pdf
総裁記者会見
――2025年7月31日(木)午後3時30分から約70分
・「物価の基調」が政策反応関数ならばそもそも物価そのものの見通し数値出すことに意味があるんでしょうか
弊駄文でも「どうせ2025年度の物価が上方修正されても26年度27年度が上がらんと意味ない」とか申し上げていた気がしますが、当然会見の割と早い段階でこれは質問されますわな。まあこの記者さんは回答がそうなるのを分かっていてわざと質問しているんだろうな、とは思いましたが。
『(問)(前半割愛)あともう一点、今回の展望レポートについてなんですけれども、25
年度の物価は上方修正されまして、26、27 年度は概ね同じとはいえ小幅に引き上がっているという状況であると思います。こうした物価の状況を踏まえまして、総裁としましては利上げの環境というのは整いつつあるというふうにお考えでしょうか。』
日銀大本営の屁理屈合戦をいつも見ていますと、まあどうせこういう見通し出してこういう屁理屈(=基調物価はまだ2じゃないから云々)を捏ねてくるというのはある意味自明なのですが、ソウジャイカンよというのがこの質問でありまして、現にこの日って展望の数字出た瞬間(はジャパン債券市場お昼休みだったので)為替市場が盛大に反応した訳で、日銀のコミュニケーションの中で一種の「日銀がお出しするヘッドライン」の物価見通し中央値というのを素直に受け止めればこうなりますわな。
でもって、当然ながら基調物価ガーという回答をする、というのが様式美ではあるのですが、まあ冷静に考えて見れば、「物価見通し」として出している物以外に「ザ・基調的物価」というのがあって、その数字を見ながら政策反応しています、ってんだったら、各委員が考える「ザ・基調的物価」を出してもらわんとダメじゃんだし、CPIの見通しを出すのはコミュニケーションを訳わからん状態にするだけだから止めたら、って話になるわけですな。
まあ当然ながら今のは極論というか大本営の屁理屈への上げ足取りでして、本来はこの「ザ・基調的物価」みたいな本来は「総合的判断」であり「経済主体の行動なども含めた状況を概念として言語化したもの」をあたかも計測可能な「ザ・基調的物価」があるかのようにして政策行動(要は利上げを渋る)を正当化するような屁理屈(しかも実際の物価が上昇してくると綻びが出てくるという詰めの甘い屁理屈)をこねている方がダメダメなので、コアやコアコアCPI予想出すのがダメって言う訳ではないんですけどねwwwwwwww
でまあこの質問に対するハトハト大先生の回答ですが、
『(答)どちらも今後出てくるデータを、予断を持たずに丁寧にみていきたいというお答えになりますけれども、(質問前半への回答部分割愛)それから、26
年度と 27 年度のインフレ、私どものインフレ率見通しが、少し 26 年、25 から
27(注 1: 会見では「25 と 26」と発言しましたが、正しくは「25 から 27」です。)ですね、上方修正になっている点に関するご質問だったと思いますけれども、25
年度分はかなり大きく上方修正になっていますが、これはほとんど、米を含みます食料品価格のここまでの上昇を反映したものでございます。これが若干の時間がかかるかもしれませんが、今後インフレ率としては低下に向かうというふうに予想していますので、このインフレ率の上方修正だけをもって、金融政策がどっち側に左右されるというような種類のものではないというふうに考えています。』
という説明になっているのだが、そもそも日銀ってこの3年ほどの間、アクチュアルの物価上昇に関して「供給要因だから/コストプッシュ要因だから」「今後は伸び率が低下する」と説明するも、次から次へとその供給要因あるいはコストプッシュ要因が手を変え品を変え続いて物価の伸び率が高止まっている訳でして、現実の物価見通し外しまくっていて、しかもインフレーションターゲットをやっている筈なのに、政策対応は不要です、って屁理屈こくのはやっぱりおかしいんじゃないですか、というお話で、インフレ率の上昇修正をしているのに政策に影響ないってのはさすがに酷いかと。
いやまあこれがせめて「おおむね横ばいとは言え前回引き下げた見通しが若干引き上げられており、従来よりも下振れリスクが低下(本当は今回は「上振れリスクが上昇した結果バランスになった」というのが正しい)しています。ただし現状ではまだ政策調整をするのが適切という判断に至らなかったということです」位にしておけばいいのに、「金融政策がどっち側に左右されるというような種類のものではないというふうに考えています」ってのはハトハトチキン音頭の大盆踊り大会にしか聞こえない訳で、特に今回の総裁会見はハトハトチキン音頭が過ぎるわ、とリアタイで聞いてて思いましたわな。
・ビハインドに関する懸念はそりゃまあ今回据え置きだから「今のところないです」になるのはしゃあないのだが
政策ビハインドに関する質疑です。最初のは先日(火曜日)にもネタにしたのを出すのでそこは再掲になります、出た順に引用しますが。
『(問)二点お伺いします。物価の見通しのところで 25 年を大きく上方修正されたと。ただ、食品価格の上昇については、徐々に減衰していくという見通しを示されています。これまでと同様に一時的要因が大きいということですけども、一時的ではない可能性については、従来よりも高まっているというふうにお考えでしょうか。その場合、日銀の対応が後手に回る可能性があると思うんですけども、その辺はどのようにお考えかというところも併せてお願いします。(後半割愛)』
食料品価格上昇の二次的波及効果、の面でこの質疑ネタにしていますので再掲ですが、回答はこうなっていまして、
『(答)まず、食料品価格の上昇について、一時的と判断してよいかどうかというご質問だったと思いますが、申し上げましたように、インフレ率という意味では、今後低下していくというふうに考えています。そういう意味では一時的である。ただし、ここまでかなりの上昇がみられ、消費者心理にも、これはどっちに影響するか難しいところでございますが、消費者心理を悪化させる方向に働くというケースもあるでしょうし、インフレという面ではインフレが長く続いてしまうという方向に働く可能性もありますが、消費者心理あるいは予想物価上昇率に影響して、そこから例えば基調的なところにも影響するというリスクについては、常に意識しながらデータをみていきたいと思っております。(後半割愛)』
ということで、二次的波及の話は回答しているのですが、政策ビハインドに関する回答はしていない(「意識しながらデータを見ていく」しか言ってない)訳ですな。でもってちょっと先の方になりますけど、
『(問)(前半割愛)二点目はビハインド・ザ・カーブについてです。先日、経済同友会の新浪代表から、トゥーマッチビハインドになることは良くないという声が上がりました。長らくデフレに浸かってきた国がそれなりの率のインフレを経験すると、米国や欧州など諸外国より、その上昇率の幅が小さくても、そうなったときに経済に与える打撃が大きくなるという可能性は考えられないでしょうか。現状のご認識と、ビハインド状態になることを防ぐために、不確実性が完全に晴れない中でも利上げするという判断があり得るのかどうかもお伺いできればと思います。』
これに対して、今はビハインドと考えていない(そりゃビハインドだと考えてたら中立金利まで必死こいて利上げしないと時すでにお寿司になってしまうから「ビハインドです」とは言わないけど)のは当然なのですが、じゃあどう回答したかという話でして、
『(答)(前半割愛)それから、二番目は、ビハインド・ザ・カーブになるリスク等に関するご質問ですが、まず、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、賃金が物価に影響し、物価が賃金に影響するというメカニズムは続いていますけれども、その中で、例えば、賃金がサービス価格に影響するという基調的物価をどんどん押し上げていくときにコアになるような部分が続いていますけれども、すごい加速しているというふうにはみていません。そういうことはビハインド・ザ・カーブに必ずしも陥ってないということの一つの大きなポイントかなというふうに思います。』
ということで物価上昇が加速するとは見ていないからセーフ、って言っておりまして、それ自体は理屈としてはわかるのですが、一方で欧米とはそもそも発射台が違うんだから欧米のようなインフレにならなくても、問題が生じてしまうのではないか、というのが質問の「長らくデフレに浸かってきた国がそれなりの率のインフレを経験すると、米国や欧州など諸外国より、その上昇率の幅が小さくても、そうなったときに経済に与える打撃が大きくなるという可能性は考えられないでしょうか」という話なんですが、じゃあその件に回答しているか、と言えば1ミリも回答していない訳ですな。
でもってこの回答はさらに続くのですが、日本の場合は物価上昇耐性が低いんじゃないの問題は華麗にスルーして次の論点の回答をしているんですけど、
『ただ、基調的物価が以前よりも 2%に近づいてきている中で、あるいは同時に予想物価上昇率もある程度高まっている中で、ヘッドラインといいますか、消費者物価総合の動きが、先ほどもちょっと申し上げたかもしれませんが、基調的物価に、あるいは予想物価上昇率に影響を及ぼしてしまうという可能性は、以前よりも注意してみていかないといけないのかなというふうに思っています。そういうことにも配慮しつつ、政策を決めていければなと思います。』
この点って今回の展望レポートをよく読むと(前述したように)物価のリスクは「中立に戻った」というよりも「上振れリスクの要素も強まったのでアグリゲートすると差し引きバランス」って事なのは明らかなのですが、なんか知らんけど総裁会見の説明ってこの「アクチュアルの物価が高止まりすることによる基調的インフレの上振れリスク」っていうのを明示的に説明しないんですよね。だからハトハトチキン音頭に聞こえてしまう訳ですけど。
とまあそういう訳でこの新浪さんの指摘ネタですがその後にも質問ありまして、
『(問)経済界からの声と利上げについてお伺いします。経済同友会の新浪代表幹事が一昨日、物価が非常に高い状況にあり、利上げしない理由が分からないと発言するなど、経済界からも利上げを求める声が上がっています。こうした声も踏まえて早期の利上げ、年内の利上げがあるのかどうかお伺いしたいと思います。』
質問の後半が残念感あるがそれはさておきまして、
『(答)これは先ほど来、いろいろご質問があってお答えしている点と重なりますけれども、現状は私どもが重視しています基調的な物価の動きは強くなってきてるけど、まだ2%には届いていないというふうにみています。従って、緩和的な金融環境を維持しているということであります。』
とあるように、ビハインドというのが露骨に出ている訳でもないが、「日銀の利上げ判断が遅れて物価が上振れするリスクはどう考える:的なテーマを練りこんだ質問は結構ありまして、でまあその結果として上記のように「これは先ほど来、いろいろご質問があって」になっております。
なので、今回の記者会見って全体の質問のトーンが「ところで何で利上げしないの」という感じになっていたのは結構違っていて、従来だと「利上げで住宅ローン金利ガー」とか「利上げで中小企業ガー」みたいな感じの質問って結構あったのですが、今回はその方向でのトーンが見受けれず、流石に参院選のインパクトがあった罠というのも印象にありました。
では続き。
『それに対する懸念としては、そんなことをしていると、どこか近い将来でビハインド・ザ・カーブになるんではないかという懸念だと思いますけれども、それもいくつかご質問があってお答えしたように、今のところそのリスクはそれほど高くないというふうにみているということでございます。』
ではそのリスクが高くない理由と、どういう状況になったらビハインドのリスクが高まるから、その点を注意したいという例示、というのが出てこないのが日銀大本営のいつものパティーンですが、この回答だともう「大丈夫なんだから大丈夫です」にしか見えませんな。
とは言いましても、先般来悪態ついておりますように、今の日銀の政策説明って「基調的物価」という何だかよくわからないものを政策反応関数にしている、という時点でまあクリアカットに説明する気は無いわけでして、いやまあ別に全部クリアカットに説明できるか、っていうと世の中そんな単純な話でも無いのは分かるんですけれども、「ザ・基調物価」が政策反応関数という闇鍋政策反応関数状態というのはさすがに如何なものかという感じがしますな。
・物価高がイシューになっているのに能天気に「基調物価」を振りかざしている場合なのか問題
という話に対して、物価高がイシューになっていますが云々という質疑も結構ありましたが、特に最後の方では「物価高がイシューになる中で「基調物価は2%に行ってない」って説明で世の中通ると思ってるのか」という火の玉ストレートが飛んできておりました。
『(問)先の参院選でもですね、物価高対策っていうのが最大の焦点だったわけですね。与野党からは給付金や消費税減税・廃止という話も出てると。しかしそういう政策っていうのは、むしろ景気刺激的であって、物価を上げるような、むしろ矛盾した政策なわけですけれども、本来であれば、一番物価高対策になる日銀の利上げというのが、あまり焦点にならないのはどうしてなのかということをお伺いしたんですけど。』
ですよねーーーーーーー
『まず先ほど同友会の新浪さんが利上げをとおっしゃったことに対して、総裁が先ほどご回答がありましたけれども、賃金と物価の好循環論とか、あるいは基調的インフレ率がまだ
2%を下回ってるっていうそういう説明と、今、世間で言われている物価高に対する何らかの対策をということの話に、非常に矛盾というか噛み合っていないご説明のように聞こえるんですけれども、そこはどういうふうにうまく整合性を持って説明されるんでしょうか。』
火の玉ストレートキタコレ。でもって回答ですが、
『(答)物価高対策として金融引き締めがストレートにきれいに当てはまるケースというのはちょっと図式的に申し上げますが、需要サイドからの強い圧力で物価が上がっているという場合だと思います。そうしますと、金利を上げることによって、過熱する景気を冷やしつつ物価を下げるということになるということだと思います。』
はい藁人形論法。
別に利上げしろというのは「引き締めをしろ」と言ってるのではなくて、「過剰な緩和による物価押上げ力をもう少し是正しろ」であるし、「過剰な緩和による通貨安からのコストプッシュ圧力を是正しろ」って話なのであって、利上げで需要を減らせと言うのは政策調整急げと言ってる人の中だってほぼ居ないじゃろというお話ですよね。ちなみにこの説明に触発されたというかその前の段階でもあったのですが、当然ながら円安に関する質疑あったし、何ならこの会見中に円安に飛んでいた訳で、もうこの藁人形論法な回答を初手に持って来ている時点でまともな答えにならないのですが以下読み進めますと、
『これに対して、現在の物価高のかなりの部分が供給サイドの要因によっている。このときに利上げで対応しようとしますと、どういうことになるかというと、必ずしも景気がものすごい過熱しているわけではないのに、景気を利上げで冷やして所得が減るから、例えば食料品に対する支出が減って食料品価格も下がるというルートになります。これは本当に望ましいかどうかということについて、皆さん、考え込んでしまうというところがあるのかなというふうに思っています。』
しねーよ、そんな利上げ今求めてないわこの藁人形論法野郎、ということですが、逆に言えば藁人形論法でしか回答ができない、という状態に陥っている(上記の質問に「基調的物価ガー」と回答しても回答にならんわなそりゃ)のは自覚しているから藁人形論法で逃げるしか無かったんでしょうな。
でまあ関連してもっと鬼質問で火の玉ストレートに石直球をミックスしたような質問が最後の方にありましてですね・・・・・・
『(問)ちょっと感覚的なお話で恐縮なんですが、日本銀行は国民の目にどのように映っていると思われますか。』
とは何ぞ、と思ったら・・・・・・
『というのも、参院選に象徴されるように、国民は物価がだんだん上がることを困ったことだと受け止めていますが、日本銀行は
2%インフレを目指していて、未だそこに届いてはいないと言っている。』
ときましたが質問のこの次の部分でリアタイで聞いてたので不覚にも大爆笑の発作が起きてしまいましたが。
『幸か不幸か、日銀のスタンスというのは国民にあまり認識されてないようにも思うんですけれども、』
wwwwwwwwwwwwwwwwwwwこれはまさに鬼畜の指摘(絶賛していますので念のため申し添えます^^)
『どう映っているのか、どう映りたいのかというところに、思いを伺えればなと思います。』
もうこれは質問だけで立派な物件で回答の方は最早おまけなのですが引用だけしておきますね。
『(答)どう映ってるかという点、必ずしも的確に把握できてるかどうか分かりませんが、大まかにゼロインフレくらいのときから現在の状態になる中で、インフレ率と賃金上昇率、両方上がってるということは、必ずしも大きなマイナスであるというふうには考えられてないと思うんですが、しかし、両者を比較してみると、物価の方が大きめに上がっている。その要因としては、サプライショックの影響が大きかったということだと思いますが、そうした中でデフレの克服あるいは
2%インフレへの動きが続いているということが、国民への説明あるいはコミュニケーション、非常に難しくしてるということは、常に意識しております。』
とまあそういう訳で、アタクシがチェリーピッキングしていません、とまではさすがに自信は無いのですが、ゆうてまあ今回の質疑応答って全体的に見ますと「何で利上げしないんですか」のトーンが従来以上に強くて、やはり物価高批判の流れは強まっているなあという印象ですし、なんだかんだ言ってそこらを意識しだすとまたもジャガーチェンジする可能性もありますし、何ならそのジャガーチェンジする言い訳は今回基調物価の上振れリスクを丁寧に説明している展望レポート基本的見解の本文内に埋め込んでありますので、その辺りが今後どう作用して埋設地雷が火を吹くや吹かざるや、というのが注目される所ではありますな。
てなわけで今朝はこの辺で勘弁してもろていただいて。
2025/08/07
〇6月決定会合議事要旨から長期国債買入とかバランスシートのお話の補足
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2025/g250617.pdf
政策委員会 金融政策決定会合 議事要旨
(2025年6月16、17日開催分)
『W.金融政策運営に関する委員会の検討の概要』の長期国債買入に関する話ですけどね。
長期国債買入に関する議論の部分の最後の段落が時間切れでできなかったのでそこから参ります。
『この間、一人の委員は、今後、国債買入れ額の着地点をどう設定するのかについては、日本銀行のバランスシート縮小の行方と
併せて、長期的な視点で検討する必要があると述べた。』
でまあ昨日(だけじゃなくて拙駄文の方では何回か)申し上げておりますように、QQEとかYCC政策というような大規模金融緩和措置を必要としない状況になった以上は、本来は債券市場の安定化がどうのこうのとかいう話をしていること自体が本末転倒であって、本来はこっちの話をしてから、ではそれに対して変なショックを与えないためにはどう移行すべきか、という話からもっていかないといけないんですよこの話って。
『別の一人の委員は、現状、超過準備はきわめて潤沢な状況にあるため、国債買入れの減額を粛々と進めて日本銀行のバランスシートを正常化させていくことが必要であると指摘した。』
とは言えアホみたいな額があるからどこまで減らすのかというのが皆目見当つかんけどまあ兎に角減らせっていう話になるのも仕方ないのだが、そもそも論としてバランスシートをどうするのかというのは短期金融市場における金利誘導をどのように実施するのか、という手段に影響しますので、市場における金利形成(つまりコールとか短期国債とかレポとかCPとかの金利体系や取引の形)に影響してくる話なので、そういうデザインはちゃんと考えて頂きたいんですよね。
『ある委員は、将来的に超過準備はある程度減少するにせよ、発行銀行券の残高と合わせると、長期国債を含め、それらに見合う相応の規模の資産が必要になるとの見解を示した。』
別に資産って短期の資金供給オペでも良いのですけれども、例えばの話日銀の資産サイドが全部短期の資金供給だとすると、調節技術上やたら高頻度のオペレーションをしないといけなくなるので、発行銀行券とかいう要求性払いだけど実際には長期滞留するコア預金みたいなものの見合いには長期国債でもよかろうという話なんですが、量的緩和長くなってしまってもはやその時の知見の継承がだいぶ怪しくなっているんじゃないかという気はしてまいりました。
『これに対し、別のある委員は、国債の買入れだけではなく、中長期の資金を市場に供給することも検討すべきであると述べた。』
中長期ってどのくらいの期間の話をしているのかが謎というか嫌な予感しかしませんが、そんなのどんなに長くたって3M以内くらいじゃろとしか言いようが無いのだが、もしかして2年とか5年とか考えているんだったらちょっとそれは緩和脳にも程があるとしか言いようが無い。
でまあ最後のところでは、
『そのうえで、この委員を含む何人かの委員は、中央銀行のバランスシートは、資産・負債の両面からわが国の金融経済に影響を及ぼし得るため、最適なバランスシートの規模や構成については、今後、多面的に検討していく必要があるとの認識を示した。』
という話になっておりまして、まあそれはそれで良いんだけど、資産の面から影響を及ぼし得るのであれば、中央銀行としては短期政策金利を必要な水準に誘導する、以外の目的でバランスシートを使うのは市場メカニズムを通じた資源配分の最適化に対して恣意的な介入を実施することに他ならないので、きわめて抑制的に対処しないとアカンじゃろ、という話になると思うんですよね。まあ過激派と言われればそうなんですけどワシ。
でまあ昨日出てたBBGの記事
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-08-05/SYSND8DWLU6800
日銀の金融機関への付利負担が急増、年内利上げ観測で財務悪化に注目
青木勝、氏兼敬子
2025年8月6日 6:00 JST
『日本銀行の金融政策運営で政策金利を操作する役割を担う付利制度。日米関税交渉の合意などを受けて年内利上げ観測が広がる中、金融機関への支払利息の急増で日銀財務が悪化する副作用に注目が集まる可能性がある。』(上記URL先BBG記事より、以下同様)
ってまあこの件ですけれども、単年度で日銀の期間損益が赤字だから云々って話をしているのはまあ比較的しょうもない話(なのであんまり読まなくてもよい)ではありまして、まあ日銀の期間損益が赤字だから日銀の財務が云々というのはそんなに問題じゃないと思うのですが、そうは言いましても物には程度というものがありまして、日銀が期間損益赤字ってことは統合政府で見れば財政を出しているのと同じ話なので、その額がまあ屁のようなもん(どの規模を屁と言うのかという議論はありますけど)なら大した話じゃないですけど、その額がそれこそ何兆円とかの規模になってきたときに、実は金融緩和とかしている場合じゃない状態になっていた、となるとその何兆円ってのの緩和効果が本来行うべき金融政策とコンフリクト起きる可能性ってあるじゃろ、っていうのは結構気になっております今日この頃。
でまあそういうのっていつややこしいことになるかと言えば。それこそ基調的なインフレが目標をオーバーシュートして上振れしてしまって引き締めしないといけませんぜとなった時な訳で、いやまあ欧米はバランスシート抱えながらガンガン利上げしてとりあえずインフレの方は収拾できたっぽく見えますが、日本のバランスシートって欧米の比じゃないので同じことできるのかというのと、まあこれは当然指摘されるのは「日銀財務の問題」がクローズアップされることで必要な政策ができなくなるんじゃないかという信認(つまり財務が問題なのではなくて財務のせいで適切な政策運営を行わない方での信認)問題の方が先にあるんですけど、まあそういうもろもろ考えたら「基調的物価が上振れするリスク」というのを再度ちゃんとリスク要因とは言え明示的に7月展望でパラフレーズしながら出してきた訳ですし、もうちょっと考えて頂きたいものだとは思いますし、その点から言っても「6月の時点で来年4月以降1年間の長期国債買入計画を決めてしまう」ってのはよろしくないとおもうんですよね〜。
でもってその財務の件って日銀は毎度こういう説明をしているんですけど、というのが記事にありまして、
『米連邦準備制度理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)など多くの中央銀行が量的緩和の際に付利制度を導入している。購入する国債の利回りは通常、付利金利を上回るため、保有国債が増えれば中央銀行の収益は拡大する。一方、利上げ局面では金融機関への支払利息が増えて収益を圧迫する。
日銀が昨年12月に公表した試算では、政策金利2%など厳しい仮定を置いた場合、一時的に赤字が発生する可能性はあるが、債務超過にはならない。植田和男総裁は5月の国会答弁で、利上げ過程で赤字が発生する可能性に言及。長期的には保有国債が金利の高いものに入れ替わるため「収益が戻ってくる」と説明した。』(ここまで直上URL先BBG記事より)
毎度「長期的には保有国債が金利の高いものに入れ替わるため「収益が戻ってくる」」でだいたい済ませているんですけれども、逆にこの点を気にしているから長期国債の買入の減額を渋っているのではないか疑惑とか、大体からして基調的なインフレがオーバーシュートするようなときは「政策金利2%など厳しい仮定」とか言ってるけど1ミリも厳しくない過程だろ(だいたいからして本当の本当に物価安定目標が達成されていて経済成長が持続的安定的に続く社会だったら名目の中立金利ってどう見たって2%あるいはそれ以上じゃろ)という話でして、まあこの辺の話って現時点で思いっきり表だって言いにくい、というのも分からんでもないのだが、だからと言ってとりあえず微温的なスタンスで問題先送り、ってのやってると基調的インフレがオーバーシュートした場合に大変な惨状になるじゃろ、という方が机上の空論とも言い難くなっていませんか、と申し上げたい訳ですな、うんうん。
しかし日銀バランスシートに関してはここでまた面倒な論点があって、
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/ko250607a.htm
【講演】
業務からみた日本銀行
日本金融学会2025年度春季大会における講演
日本銀行副総裁 内田 眞一
2025年6月7日
先般の内田さんの講演の中で、まあこれ出たときにナンジャコリャとか言いながらネタにしましたけど、
『当座預金への付利とそのインプリケーション』ってところの第2パラフラフ以降になるんですけど、
『このことは、その後、技術的な金利操作の手段という意味合いを超えて、大きなインプリケーションを持つようになりました。ひとつは、金利操作と切り離して、バランスシートの大きさを決められるようになった結果、資産サイドを使った政策を大規模に行うことが可能になったことです。』(直上URL先の2025/6/7内田副総裁講演より、以下しばらく同様)
って話をしているのですが・・・・・・
『非伝統的金融政策の中心手段のひとつは、いわゆる「量的緩和」すなわち、国債の買入れによって長期金利を押し下げることですが、これを実行するのには、バランスシートの大きさとは無関係に短期金利をコントロールできることが前提になります。この点、量的緩和を実行している間は、割り切ってしまえば、金利をコントロールできなくても、ゼロ金利でもよいと考えることもできなくはありません。』
『しかし、量的緩和からの出口プロセスに時間がかかることはあらかじめわかっているので、その時に、大きなバランスシートを抱えながら、短期金利をコントロールできることが保証されていないと、こうした手段は採用できません。』(ここまで2025/6/7内田副総裁講演より)
という説明をおっぱじめていまして、単純に短期金利のコントロールだけみたらそうかもしれんですけれども、結局のところバランスシート政策を行った中銀は結構な勢いでバランスシートの縮小をしている訳で、「金利操作と切り離して」云々というのは通常のプラスインフレ状態で中立的な金利、すなわちプラスの金利を中心にした金利操作を行う際には他の問題が発生するじゃろ、って話なのですが、その論点をこの講演華麗にスルーしていまして、いやまあその辺は分かっているけどすっとぼけてスルーしているだけだとは思うのですが、巨大なバランスシート抱えながら通常の金利誘導の政策に移行できんじゃろという意識があんまり無いようにも思える所でして、うーん大丈夫なのか(特に基調物価が上振れるような局面において)と思うのでした。
でまあ話を戻して議事要旨に戻りますと政府の方面からの発言ってので引っかかるのがありまして、
財務省からの発言の中で、
『・国債買入れの減額は、債券市場の安定等に十分に配慮し、必要があれば状況に応じた柔軟な対応をすることを含め、適切に行われることを期待する。』
ってあるんですが、債券市場の安定等に十分に配慮っていうのはこれ読みようによっては政府が国債市場への買い支えを要請しているかのようにも読めるわけで、ちょっとどうなのよとは思いました。
ちなみに内閣府の方は、
『・日本銀行には、政府と緊密に連携し、2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現に向けて、適切な金融政策運営を期待する。国債買入れの減額は、市場との適切なコミュニケーションの下、状況に応じて、必要があれば柔軟な対応をお願いする。』
という言い方なのでまあこれは普通に無難にまとめているのですが、逆に考えてみれば財務省がちょっとアレな領域に踏み込んでしまっているような言い方(まあこれ自体は議論というよりも事務方謹製のステートメントの口伝みたいなもんでしょうから)をしている、というのは、4月以降の長期(というか超長期)金利の暴れっぷりに対して懸念しているということだし、まあそれだからこそ国債の市中発行の組み換えという通常ベースではあんまりやらんことを期初3か月しか経ってないのに実施した、ってお話ではあると思うのですが、この上財政出せ出せ音頭になるとどうなるんでしょうかねえとは思う所ですな、南無三。
2025/08/06
お題「6月決定会合議事要旨より少々」
今朝の日本農業新聞Webより
https://www.agrinews.co.jp/news/index/323934
2025年8月6日
[ニッポンの米]随契米キャンセル2・9万トン 農水省
随意契約米もさることながら高温被害に関しての方がアレでして、
https://www.agrinews.co.jp/news/index/323937
2025年8月6日
[農家の特報班]高温・渇水アンケート 8割弱が「生産量減る」
『日本農業新聞「農家の特報班」が高温・渇水の影響についてアンケートしたところ、全回答者の8割に当たる84人が「生産量が減る」と回答した。うち半数は「大幅減」としており今後、米や野菜、果樹、畜産、酪農と幅広い品目の供給量に影響が出る可能性がある。まとまった雨量を求める声が多く寄せられた。』(上記URL先より)
でもってこういうことのようです
https://www.agrinews.co.jp/news/index/323905
2025年8月6日
[農家の特報班]高温・渇水影響アンケート 産地打撃容赦なく 【読者提供写真 多数掲載】
うーん・・・・・・(涙)
とにもかくにも食料品価格云々がホットイシューの昨今ですので見つけたら弊駄文でも引き続きマクラのネタにはしていこうかとは存じます。
〇6月会合議事要旨にはいくつか味わいがある部分があったので少々鑑賞をば
総裁会見の続きとかそもそも展望レポート鏡しか見てねえだろとか色々なツッコミはあるのですが、何はともあれ来たものを捌くジジイなので。
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2025/g250617.pdf
政策委員会 金融政策決定会合 議事要旨
(2025年6月16、17日開催分)
『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』からぼちぼちと味わいのある部分を鑑賞していこうかと思います。
・長期金利動向に関する議論があるのだが本邦問題が本丸じゃないのと思ってしまうのだが
『1.経済・物価情勢』の冒頭部分が国際金融資本市場なのですが、
『国際金融資本市場について、委員は、世界経済の先行きを巡る不確実性が引き続き意識されつつも、通商政策に関する各国間の交渉の進展や米国の堅調な経済指標等を背景に、市場センチメントは改善しているとの見方を共有した。』
6月中旬の話であることに留意しながら読みますけれど、この先の部分がですね、
『一人の委員は、注意を要する最近の動きとして、主要国における超長期金利の大幅な上昇を挙げた。』
ほうほうほう!と思ったのですが、
『こうした動きの背景として、この委員は、コロナ禍後に、多くの国でほぼ完全雇用のもとでの高インフレが続いてきたことから、財政の拡張が民間部門の投資をクラウディングアウトし、金利上昇につながりやすくなっている可能性を指摘した。』
うーんそういう経路での金利上昇ってもちろんあり得ない話ではないのですが、それってもっと大昔の時代のようにマネーがそんなに膨張しない世界での話なんじゃないかと思うのですよね。
『別の一人の委員は、国際会議等でも各国の国債市場の状況が議論の焦点となっており、海外市場における不測の動きが国内市場に波及する可能性にも注意を払わなければならない局面に入っているとの見方を示した。』
うーんなんと申しますか、海外発の云々よりもドメスティックな要因の方を気にしてよって話だし、ご案内の通りこのあと7月には参院選の情勢評価の報道を受けて超長期金利があがるわ3年辺りの物国BEIがピンポイントで急縮小するわというのがあった訳で、海外が―とかいう場合ではない気もするのよね。と思って国内の方でどういう話をしてますねんと思いますと、これがまた国内パートの方では、
『2.金融面の動向
わが国の金融環境について、委員は、緩和した状態にあるとの認識で一致した。ある委員は、わが国の金融システムは引き続き安定性を維持しているほか、市場センチメントも改善していると指摘した。』
ってあっさり味で終わっていて、まあこの会合では輪番減額計画の議論があるからそこで市場の話をしているというのはあるにしましても、過度な財政拡張懸念による国内長期金利の上昇についてイシューにならんのかね、とは思ってしまいました。まあ今回の会合ではどういう話になっていたのかは主な意見・・・では出なさそうな気もしますがどうなっているのやら。
・6月の国内経済の話は「まだ判断保留」ってのが多いのはそらそうよという感じですな
でもって海外経済の方はすっ飛ばして国内経済の話を見ますが、
『わが国の景気について、委員は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復しているとの見方を共有した。多くの委員は、前回会合以降の経済動向は、4月の「展望レポート」の見通しに概ね沿ったものであるとの認識を示した。』
『米国の関税政策の実体経済への影響について、何人かの委員は、マインド指標は弱めの動きとなっているが、関税引き上げ前の駆け込み輸出の影響などもあって、これまでのところハードデータは底堅い動きを示していると指摘した。このうちの一人の委員は、4〜5月のハードデータは比較的しっかりしたものが多かったが、関税政策の影響はこれから顕在化すると考えられると付け加えた。ある委員は、米国の関税政策の直接的な影響はまだ表れていないものの、食料品価格の高止まりや関税政策によるマインド悪化などを背景に、わが国経済は、やや足踏み状態にあるとの認識を示した。』
まあこの辺の現状認識はそんなもんじゃろという話で、
『景気の先行きについて、委員は、各国の通商政策等の影響を受けて、海外経済が減速し、わが国企業の収益なども下押しされるもとで、緩和的な金融環境などが下支え要因として作用するものの、成長ペースは鈍化するとみられるが、その後は海外経済が緩やかな成長経路に復していくもとで、成長率を高めていくとみられるとの認識を共有した。』
6月会合は4月展望の見通しを継承しています、というかまあ7月展望もメインは4月展望の継承ですけどね。
『ある委員は、米国の関税政策の影響について、中小企業を含む幅広い業種へのヒアリング結果をみると、先行きの方向性を見出す材料が乏しい中で、判断を留保する先が散見されると指摘した。そのうえで、この委員は、こうした状況がセンチメントの下押し圧力になることは間違いないが、実体経済への影響の大きさについては、今しばらく時間をかけてみていかざるを得ないとの見解を示した。』
この辺は6月時点の話なのでまさにそうですなとしか言いようが無いですにゃ。
『複数の委員は、不確実性は依然として高いものの、米国の関税政策に伴う経済の減速圧力は、前回会合時点で想定していたほど強くない可能性があるとの見方を示した。』
お、6月時点で既に「複数の委員」が4月展望ほど悪くないのでは説を提唱。
『このうちの一人の委員は、自動車・鉄鋼業界等への影響は注視する必要があるものの、米国向け輸出ウエイトの低下や高付加価値製品への転換の動き等を踏まえると、産業全般への波及度合いは、これまでの想定よりも限定的となる可能性があると指摘した。』
この指摘も何回か出ていますな。ただまあ日銀大本営が急に憑依して考えた場合に、この自動車産業に関しては特に大手自動車メーカーさんの賃金設定ってのが賃金設定行動の中で影響力が結構あるので、そういう意味では直接的な影響だけではない形での企業行動への影響というのがあるんでネーノ、ってまあそんな話をしてくると思います。
『一方で、ある委員は、法人企業統計をみると、企業の稼ぐ力と賃上げ余力は改善しているが、中小企業に限ると賃上げと設備投資の両立が難しい様子が窺われると述べたうえで、日本経済は「賃上げと投資が牽引する成長型経済」へ移行できるか、スタグフレーションに陥るかの分岐点にあるとの見方を示した。』
この会合が最終回だった中村委員の発言の香りがだいぶするのですが、中村委員の「大企業だけではなく中小企業の生産性が向上して収益力上がらんと持続的な物価上昇と賃金上昇が進まん(ので緩和を継続して中小企業の生産性向上を支援する)」って理屈も分からんではないのですが、そもそも論として「2%の招待状」にあるように、2%物価上昇による原材料価格上昇に対して価格転嫁できないような競争力の無い企業とか、2%物価上昇による生活給支給のための賃金引上げができないような生産性の低い企業とかが不景気などの経済全般にかかわるような痛みを伴わずに自然に淘汰されていく(ので労働者の移動が大きな痛みを伴わずに進むことが期待される)、ってのが2%物価上昇の世界じゃろ、っていう話でもあったはずなんで、そこを1から10までケアしていくと過剰に拡張的な金融政策にならんのかね、とは思うんですよね。
いやまあこの件自体は目先の現世利益的にはあまり関係ない話かもしれませんけど、中村委員にこのあたりのバランスをどう考えるのか、というのを一度お伺いしてみたい気がします。
・個別項目:設備投資・個人消費・雇用所得環境
個別項目のポイントはまあこの3点でしょうから6月時点での評価を確認しておきましょう。
『設備投資について、委員は、企業収益が改善傾向にあるもとで、緩やかな増加傾向にあるとの認識で一致した。』
でもって、
『複数の委員は、人手不足を補う投資などは今後も堅調を維持するとみられるが、関税政策を巡る不確実性に伴う投資マインドの悪化は注視していく必要があるとの見解を示した。』
『このうちの一人の委員は、この点に関連し、これまでのところ、とりあえず様子見という先はあるものの、設備投資の取り止めを決定したという話はあまり聞かれていないと述べたうえで、今後、状況が急変することもあり得るので、ミクロ情報を丁寧に捕捉することが重要であるとの認識を示した。』
『別の一人の委員は、企業のヒアリング情報では、米国の関税政策を受けても、@DXや効率化投資など、高水準の設備投資は継続的に実施する、A株主の期待に応えるため、収益増強のためには投資をしっかりと行っていく、とする企業が多いと指摘した。』
今後どうなるかはワカランチ会長、ってのはそらそうよという感じですが、トーンとしては暗くは無いですね。
『個人消費について、委員は、物価上昇の影響などから消費者マインドに弱さがみられるものの、雇用・所得環境の改善を背景に緩やかな増加基調を維持しているとの認識で一致した。』
ということで消費ですが、
『ある委員は、消費者の節約志向がみられる中でも、マクロ統計からみた消費が腰折れしていない理由としては、政府の施策や賃上げへの期待、堅調なインバウンド消費などに支えられている面も大きいとの見解を示した。また、この委員は、今後、関税政策に伴う企業業績の下振れに関する報道が増えてくると思われるので、これが個人のセンチメントにどのような影響を及ぼすのか、みていきたいと述べた。』
まあ関税政策一発で急にマインドが腰折れするというよりは生活品価格の上昇の方が効くじゃろと自分の財布を見ながら思う訳ですが、「マクロ統計からみた消費が腰折れしていない」ってのは確かに謎(じっと財布を見る)でして、7月展望の時にどういう話になっていたのか気になりますな。
『雇用・所得環境について、委員は、緩やかに改善しているとの見方を共有した。』
でもって、
『複数の委員は、米国の関税政策の影響は、今年の春季労使交渉の妥結結果にはみられていないと指摘したうえで、今後影響が表れるとすれば冬季賞与からであろうとの見方を示した。』
ということで、米国の関税の影響が企業行動を下方屈曲させるか否かを見極めるためには冬季賞与と来年の賃金改定の動きを見たい、という理屈になるわけですな、まあここは順当ですが明示的に書かれたという点でほほーと思いました。
『この点に関連して、別の複数の委員は、企業のヒアリング情報では、人手不足に直面する中、米国の関税政策を受けても、引き続き賃上げに取り組むとする先が多いと指摘した。』
『一方、ある委員は、2025 年度の中小企業の賃上げ実施割合が前年から幾分低下したとの調査もあり、中小企業の賃上げ余力の低下が懸念されるとの見解を示した。』
『この間、一人の委員は、一人当たり実質賃金の前年比は足もとマイナスとなっているが、働き方改革が進んで労働時間が減少する中、時間当たりの実質賃金が上昇していることも、併せて評価する必要があると指摘した。そのうえで、この委員は、@労働生産性の改善が実質賃金にどの程度反映されているか、A生産性の高い企業への労働移動がどの程度生じているのか、といった観点から、労働市場の動向を注視していくことが必要との見解を示した。』
時間当たりの実質賃金上昇したとて別に仕事掛け持ちできるわけでもないので意味ないんですが、というのは無粋なツッコミですが(涙)、後半の注目すべき観点の話はまあそうですねと思いました。
・6月半ばの時点で現状様子見地蔵はまあそうじゃろという話ですが・・・・・・・
『W.金融政策運営に関する委員会の検討の概要』に飛びまして、
『以上のような金融経済情勢に関する認識 と長期国債買入れの減額計画に関する執行部説明を踏まえ、委員は、金融政策運営に関する議論を行った。』
『まず、委員は、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針について議論し、「無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0.5%程度で推移するよう促す」という方針を維持することが適当であるとの見解で一致した。多くの委員は、物価がやや上振れているとはいえ、先行きの不確実性は高く、米国の関税政策や中東情勢に伴う景気下振れリスクがあることを踏まえると、経済情勢を見極めることが必要であり、現状の金融政策運営を維持することが適当であるとの見方を示した。』
そりゃまあそうじゃろという話ですが、
『ある委員は、@先行き、中心的な見通しに沿ったとしても、成長ペースが鈍化し、基調的な物価上昇率の改善がいったんは足踏みする姿を想定していること、A通商政策を巡る米国と各国の交渉は始まったばかりであり、大きな不透明性やダウンサイドリスクがあることから、今は、現在の金利水準で緩和的な金融環境を維持し、経済をしっかりと支えるべきであるとの見解を示した。』
この意見、Aの方はさておきまして、@って確かにそういう理屈が成り立つんですよね。メインシナリオでは基調物価が足踏みするって言ってるんだから。
ただし、これ毎度思うのですが、この理屈って実質的な金融緩和度合いが(名目の金融政策を維持する中で)どう変化しているのか、って話を抜きにして考えるのもこれまたおかしい話で、一方で基調的な物価が上昇を続けているという認識なのであれば、名目の政策金利を不変にしているというのは「金融緩和の追加措置」をしているのと同義ってことになるので、本当に現時点で最適金融政策になっているのか(据え置きによって過剰緩和になっていないか)、っていうツッコミをしたくなる訳ですよ。
まあ結局のところ、基調的物価と中立金利を足元の政策運営の説明に使って最適金融政策みたいな説明をおっぱじめると理屈がだんだん苦しくなってくる(大幅に前の時のように物価が精々1%の時ならこの説明はクソ便利だったのだが)訳でして、まあこの辺の説明はいちどリセットして組みなおした方がエエンチャウとしか申し上げようがないですな。
『別のある委員は、現在は、1月に決定した政策金利引き上げの経済・物価に対する影響を見守る局面であるとの認識を示した。』
結局「まあわからんからとりあえず様子見しますわ」というこの理屈で行く方が(頭悪そうに見えるからあんまりやりたくないかもしれないけど)まだ分かりやすいと思うんですけどね。
まあそれはさておき先行き政策。
『先行きの金融政策運営について、委員は、経済・物価の中心的な見通しが実現していくとすれば、経済・物価情勢の改善に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくという考え方を共有した。』
はい。
『そのうえで、こうした見通しが実現していくかについては、各国の通商政策等の今後の展開やその影響を巡る不確実性がきわめて高い状況にあることを踏まえ、内外の経済・物価情勢や金融市場の動向等を丁寧に確認し、予断を持たずに判断していくことが重要であるとの認識で一致した。』
これはまあ6月中旬だからこういう話になるのは順当で、7月会合でどういう話になったのかは注目したいので、「主な意見」で何出ますかねってな所ではあります。
『複数の委員は、堅調な賃金や若干上振れ気味の物価を念頭に置くと、通商問題が穏当なかたちで推移する見通しになってくれば、現在の様子見モードから脱却し、利上げプロセスの再開を考えることになるとの見方を示した。』
若干上振れ気味どころか見通しがこの1か月後に+0.5%も上がっていますがwwwwというのはさておきまして、複数の委員がこう言いました、ってのが6月時点で出てきている時点でまあ7月決定会合における総裁会見程のハトハトチキンではないというのが伝わる部分ですね。
『一人の委員は、不確実性の高さを踏まえると、利上げの動きは当面休止する局面と考えられるが、米国の政策動向によって再び利上げ局面へ回帰する柔軟かつ機動的な対応も求められるとの認識を示した。』
あら休止とか言ってる人もこうなんですね。
『ある委員は、インフレが想定対比、上振れて推移する中、たとえ不確実性が高い状況にあっても、金融緩和度合いの調整を果断に進めるべき局面もあり得ると述べた。』
物価が上がっているんだから緩和度合いが高まっている筈なのでその分の調整をするのが妥当、という理屈で攻めると大本営はどういう顔をするんでしょうか、ってのは見たい気がします笑。
『これに対して別のある委員は、わが国の経済については先行きの不確実性が非常に高く、下方リスクの厚い状況が続いていると指摘したうえで、企業業績や日米通商交渉の方向性がみえてくるのはまだ先であり、政策金利は当面、現状の水準を維持することが適当であるとの認識を示した。』
でまあ企業業績はさておき日米交渉がまあカツアゲトラ公対応としては穏当な線にとどまったのでさてこの方は7月にどういう見解になっているのか、というのも見てみたいですね(中々わからんと思うが)。
・長期国債買入減額は市場云々よりも本来は日銀バランスシートの問題
長期国債買入の件がこの会合ではあったわけですが。
『次に、委員は、長期国債買入れの減額計画について議論した。』
『委員は、長期金利は金融市場において形成されることが基本であり、日本銀行による長期国債の買入れは、国債市場の安定に配慮するための柔軟性を確保しつつ、予見可能なかたちで減額していくことが適切であるとの認識で一致した。そのうえで、委員は、先行きの予見可能性に配慮する観点から、減額方針を示す期間を
2026 年度末まで1年延長することが適当であるとの認識を共有した。』
そんな先まで決めうちする必要があったのか問題というのがあって、それこそ2%目標が前倒しで達成出来て、何なら物価のオーバーシュートが懸念されるようになった時に、長期国債を月額何兆円とか能天気に買っていていいのか問題が生じるようなことだってあり得るのですから、これはフォワードガイダンス政策の時間的不整合と同じ問題を起こす可能性がある、という点をもう少し皆さん考えた方が良いんじゃないの、と思います。
『また、柔軟性を確保する観点から、@来年6月の決定会合において、国債市場の動向や機能度を点検し、新たな減額計画の中間評価を行うこと、A従来同様、長期金利が急激に上昇する場合には、毎月の買入れ予定額にかかわらず、機動的に買入れ額の増額や指値オペ等を実施し得ると
すること、B必要な場合には、決定会合において減額計画を見直すこともあり得ること、を明らかにすることが適切であるとの認識で一致した。』
クソどうでもいいのだが何で金融政策決定会合の来年度の予定が7月会合なのに長期国債買入の来年度の予定が6月会合で決められるんだよと思いました笑。
でまあこうやって市場配慮の話ばっかりしているのですが、途中飛ばして抜刀斎の意見を見ますとなんと実は同調者がいたようで・・・・・・
・実は抜刀斎にちょっとだけだけど同調者がいた件について
『これらの議論に対し、ある委員は、2026 年4月以降も、原則として毎四半期
4,000 億円程度ずつ減額していくことが適切であるとの意見を述べた。』
議案出ていたのでこれは抜刀斎であることは明白。
『その理由として、この委員は、長期金利の形成は市場と市場参加者に委ねるべきであり、可能な限り早く、日本銀行の国債保有残高の水準を正常化することが必要としたうえで、この点は、金融市場のショック吸収力を一刻も早く高める観点からも重要である
との見解を示した。』
ふむふむ。
『また、この委員は、金融機関の金利リスクテイク余力の観点からは、国債の発行年限や変動利付債の発行規模が、将来的にどうなるかという点が大事であると指摘したうえで、日本銀行の国債買入れに対する市場の期待を高めるべきではないと述べた。』
本来長期国債買入は成長通貨見合いの長期資産を持っておくのが通常の短期市場金利の調節技術上便利だから行う物であって、それ以上のものを中央銀行の長期国債買入に求める、というのが財政ファイナンスの第一歩になる、というお話な訳ですよ。まあそれを忘れたアホウ議論が先の方にありますけど。
『これに加え、この委員は、国債保有残高を早めに減らしておくことにより、市場機能に悪影響を与えない範囲で、相応のインパクトがある規模の量的緩和(QE)を実施し得る余地を確保しておくことも重要であると付け加えた。』
これに対してなんと抜刀斎の同調者がいて、
『この委員の意見に関して、一人の委員は、市場の機能度はなお回復途上であるため、買入れ額を可能な限り早めに減らしておくという考えのもと、4,000
億円の減額ペースを維持することにも妥当性はあるとの見解を示したうえで、』
というのは一人いたのですが、まあ結論は
『市場への配慮やタイミングを考えれば、来年3月までは 4,000 億円の減額ペースを維持し、その後に2,000
億円に緩める案を支持したいと述べた。』
なので結局抜刀斎一人旅ではあるのですが、一応いたのねという話。
・だから中央銀行の国債買入を非常時以外の市場安定策に使うなと小一時間問い詰めたい
途中飛ばしてちょっと先に行きますが、
『このほか、委員は、先行きの目指すべき国債買入れ額などについても議論した。』
という話だが、
『何人かの委員は、市場参加者の中には、国債買入れの着地点は月間1〜2兆円とする声が多いと指摘したうえで、最終的な買入れ額を検討するにあたっては、様々な論点があるため、来年6月の中間評価に向けてしっかり考えていきたいと述べた。』
根本的に言ってることが間違っていて、中銀の国債買入を市場安定策に平常時に使うというのがダメダメなんですけれども、
『この点に関連して、一人の委員は、市場の安定性を確保する観点から、ある程度の額の国債買入れは続けていくべきであり、そうした安定性を犠牲にしてまで買入れ額を急いで減らす必要はないとの見方を示した。』
いやもうこれは突発性海原雄山になって「この意見を言ったのは誰だあ!(ガラッ)」ってなる話。単純にそれは財政ファイナンスです何言ってるんですかこの人は。
『これに対して、別の一人の委員は、1年後に改めて議論すべきであるが、国債買入れ額はゼロまで段階的に減額していくことが望ましいとの
考えを示した。』
んだんだ。
『一方、ある委員は、今後、例えば月間の国債買入れ額が1兆円程度にまで減少すれば、日本銀行の国債買入れが市場で話題になることもなくなると思われるため、買入れ額をゼロにすることに強く拘る必要はないのではないか、との見解を示した。』
それ今の国債残高を見てから言って欲しいんだよな〜。
成長通貨見合いとか、短期金融市場調節の観点からバランスシート構成を決めて、そこから考えるとだいたいこの程度の買入を行っていくと適切なバランススート構成になる、という観点からデザインすべき話ってのがもうすっかりどこかに行ってるな(一部のちゃんとした方を除く)って感じです。
『このほか、別のある委員は、この1年間を振り返ると、超長期債市場における需給バランス等、市場構造が変化した面もあり、1年後に改めて中間評価を行い、先行きの買入れについて検討する必要がある
との認識を示した。』
という発想が既に財政ファイナンスなんですよね。別に売れとかそういう話している訳ではないのですが、それこそインフレ期待や基調物価が上振れしてガチの金融引き締めをしないといけないときにこの長期国債残高は大変な重荷になるんだから減らせるもんは減らせよと思うのですよね。従来はそこをいうのは杞憂民にも程があったかもしれませんがさすがにだんだんただの杞憂とは言い難くなっているように思えるのですが・・・・・(個人の感想です)
それに関連して今日はこんなのもしらっと出ていましたね
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-08-05/SYSND8DWLU6800
日銀の金融機関への付利負担が急増、年内利上げ観測で財務悪化に注目
青木勝、氏兼敬子
2025年8月6日 6:00 JST
ということで、バランスシートの話はちょっと明日に続くかもしれません。今朝は時間の都合上この辺で勘弁。
2025/08/05
お題「のんびりと総裁記者会見ですがベースはハトハトチキンな説明なんですけど・・・・・・」
まあこれがインフレ目標達成の世界じゃろという話で
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250804/k10014884421000.html
最低賃金 過去最大63円引き上げへ 全都道府県で1000円超に
2025年8月5日 0時58分
実際のCPIが前年比2%どころか3%超で推移していますし、食料品とかもっと盛大に上昇している訳でして、最賃の上げはちょっと威勢良すぎのような気もだいぶする(と言っても元々が低すぎたのを是正しているという事なんでしょうけれども・・・・)けど、まあ何はともあれ生活給の観点でのベースアップをきょうびできないような企業はまあ(ピー音)ってのが「2%への招待状」の内容なのですよ、ってな話なんじゃないかね、とは思う訳ですが・・・・・・・・・
〇総裁記者会見:これがまあハトハトチキン会見という受け止めになりましたけど・・・・
今回は政策変更も無かったのでぼちぼちとやっていきますが(汗)
https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2025/kk250801a.pdf
総裁記者会見
――2025年7月31日(木)午後3時30分から約70分
ご案内の通りでハトハトチキンという評価からこの日は円安ドル高が進行して海外時間になったら150円まで乗せやがりましてアイヤーって感じでしたが、先週末の雇用統計とトランプの発狂(トランプとしては通常運転)のせいで円安反転して良かったですねの世界になっておるわけですが。
・見極めたいとされる関税の影響に関して「わからないけどこれから出てくるはず」ではハトハトチキン解釈だわさ
今回の会見って金利に関して変更は無いですし国債買入は前回やった後なので話題無し、ということになりますと関税の影響と基調的物価の話になるのはまあ順当ではあったのですが、その関税の影響に関する質疑が前半多かった感じでして、最初の幹事社からの質問のうち一つは関税の影響云々なのでそこから始まります。
『(問)幹事社から二点質問させて頂きます。一つ目は、日米の関税交渉がまとまり、日本経済にとって不確実性が低下したと、総裁も大きな前進という発言ありましたが、関税措置が不確実性が低下した一方で、関税措置が日本経済に与える影響がなかなかみえない状況です。次の利上げに向けて重視して確認したい点はどういった点でしょうか。(後半割愛)』
この回答ですけれども、
『(答)まず関税措置の影響のところのご質問ですが、ご指摘頂いた通り、先日の日米間の関税交渉の合意は、わが国経済を巡る不確実性の低下につながると考えています。それでも、いったん成長ペースが今後鈍化し、基調的な物価上昇率が伸び悩むという私どもの中心的な見通しに大きな変化はありません。』
メインシナリオは4月に下げたものをそのまま踏襲していますからね。
『また、これまでより低下したとはいえ、各国の通商政策等の影響に関する不確実性はなお高い状況が続いています。』
では何を重視して確認するのかと言えば、
『こうした中、私どもとしましては、これまで同様、経済・物価情勢が改善し、基調的な物価上昇率が高まっていくという見通しの確度やリスクを確認しながら、先行きの利上げの是非やタイミングを、毎回の決定会合において適切に判断していく方針です。』
言われんでもわかっとるわという話なんですが、利上げ云々ってのを入れておかないとハトハト音頭感が強まるから、ということで入れてるんだろうなあとは思うのでして、この続きが、
『その際、通商政策等の影響が各国の経済や国際金融資本市場にどのように表れてくるか、また、そのもとでわが国企業の賃金・価格設定行動における積極的な動きが途切れることがないかどうかといった点をはじめ、内外の経済・物価・金融情勢を幅広く丁寧に確認してまいりたいと考えています。(後半割愛)』
なんか碌すっぽ回答になっていないのですが、結局のところ「わが国企業の賃金・価格設定行動における積極的な動きが途切れることがないかどうかといった点」というのを見極める、という話になりますと、それは賃金について言えば冬季賞与と来年度の賃金設定、というエライ先の話なりますな。
でもって「じゃあ時期はいつなんだ」と次の方が質問するわけでして、
『(問)アメリカの関税政策の日本経済への影響について伺いたいんですけれども、こちら今後見極めていく場合にですね、大体どのくらいの期間を要するというふうに総裁はお考えでいらっしゃいますでしょうか。大体これ
3 か月くらいで分かるものなのか、それとも半年、1 年くらい要するものなのか。あとですね、影響を見極めている間につきましては、こちら利上げだと金融政策変更の決断というのは難しいということになるのかどうかということでご認識を伺います。(後半割愛)』
その回答。
『(答)どちらも今後出てくるデータを、予断を持たずに丁寧にみていきたいというお答えになりますけれども、アメリカの関税政策の影響につきましては、もう少し詳しく申し上げれば、これまでのところ特に駆け込みとその反動の動きが何回にもわたって続くということが起こって、非常にデータがみにくくなっているかと思います。』
これを言い出すと結局やろうと思えば無限に引っ張れるし、逆にその気になれば無事なのが直ぐにも確認できる、という話になってしまう世界なんですけど・・・・・・・
『ようやく、少なくとも関税率のある程度の部分が落ち着きどころがみえてきたという点もありますので、今後ははっきりした影響が少しずつ出てくるという局面に入るかと思います。』
影響がたいして出なかった場合は「これから影響が出るはず」と言って引っ張れてしまう訳で、文字に起こすとまあ若干中和されますけれども、会見聞いていた印象ではこの調子で「これから影響が出るはず」となんかもう影響が出るのを待ち望んでいるかのような説明っぷりに聞こえましたし、まあそういう感じを会見場の皆様も受けたんだろうなという感じで、ハトハトっぽいヘッドラインが割と流れていた感じがしましたがどうでしたですかしら。
『それがどれくらいの期間、どの指標をみないと分からないのかという点については、現時点ではなかなか確定的なことを申し上げにくいなと思います。早めに大きな影響が出て、それでなかなか大変だというふうに判断がつく場合もあるでしょうし、なかなか影響は出ない、しかし本当に出ないかどうか時間をかけてみるっていう場合もあるでしょうし、そこは予断を持たずに丁寧にみていきたいと思っております。(後半割愛)』
でもってこの「なかなか影響は出ない、しかし本当に出ないかどうか時間をかけてみるっていう場合もある」ってのがまさにハトハトチキン音頭キタコレという感じで、これが会見質疑の実質2発目に出てきたのでそりゃハトハトチキン音頭キタコレとなってしまう訳でして、折角展望レポート基本的見解で全体のメインシナリオ自体は変えてないけど、従来「足もとの物価上昇はコストプッシュでワンオフだから対応しない」の一点張りだった足元の物価上昇へのスタンスを「二次的効果による上振れリスク、メインじゃないけどリスクだよ」という形で一歩としては小さな一歩ですが、アクチュアルの物価上昇をネグっている訳ではない、というスタンスを見せた(「コストプッシュは一時的」で切り捨てていたのだからそこそこ重大な転換である)というのを全部台無しにする勢いでハトハトチキン音頭を踊りだしてしまいました、って話な訳ですわよ。
いやさあ、せめて企業の賃金設定行動について言えば「来年度に向けた賃金設定が今年度同様に続くのか」でもいいですし、もうちょっと積極的に言うなら「来年度だけではなく、中途採用市場やパートタイム従業員への賃金設定状況なども含め幅広く確認する」みたいな感じで説明できんのかと思うわけですな。
まあアレです、「なかなか影響は出ない、しかし本当に出ないかどうか時間をかけてみるっていう場合もある」ってのは賭博黙示録カイジ(でしたっけ)の利根川幸雄の名言(迷言)「つまり我々がその気になれば金の受渡は10年後、20年後ということも可能だろう・・・・」をアスキーアートと共に思い出してしまうという程度にはワシの頭はネットミームに毒されているもんで、益々そう思ってしまうのかも知れませんけどねwwwwwwww
とまあそういう訳で冒頭の2発でハトハトチキン音頭キタコレだった訳ですが。
・基調的物価に関しては色々と聞かれているのですが、そもそも「基調的物価」とは何ぞやという整理が必要ですわな
幹事社のもう一つの質問は基調的物価、ということでまあ今回のテーマを網羅している訳ですな。
『(問)(前半割愛)二点目は、基調的な物価について伺います。足元のインフレ率は
3%を超え、この展望レポートでも、物価見通しを引き上げたかたちです。参議院選挙でも物価高対策が焦点となる中、前回と比べて基調的な物価は高まっていると考えているでしょうか。』
この回答がクソ長いんですよ。
『(答)(前半割愛)次に、基調的な物価についてですが、これの評価に当たっては、いつも申し上げていることですが、各種の物価指標や人々の物価観を示す中長期的な予想物価上昇率、更には物価変動の背後にあるマクロ的な需給ギャップや労働需給、賃金上昇率など、経済・物価に関する様々な情報をみたうえで総合的に判断していく必要があります。』
という事なのであれば、それっていうのは何らかの計測可能な数値なのではなくて、「経済物価情勢を全般としてみた場合に今世の中が考えている物価上昇率の定常状態がどの程度の水準にあるのか」すなわち中長期の期待インフレ率とほぼ同義に近い、という話になる(実際問題として内外情勢調査会での総裁の説明では後半で中長期合成期待インフレ率を基調インフレとした説明をしていました)ので、まさに「総合判断」の話であって、なんかの数値をアグリゲートして加工してどうのこうの、という物ではない筈なんですよ。然るに植田総裁の説明ってここからがイミフでして、
『より具体的に少し申し上げますと、一時的な変動の影響を受けにくい物価指標、例えば加重中央値やサービス価格のトレンドあるいは家計や企業、エコノミスト等の予想物価上昇率に関する指標等をみますと、なお
2%を下回っています。しかし、緩やかな上昇傾向を辿っています。』
という風に具体的な経済指標やらサーベイ指標やら、というようなものを挙げていて、この説明だとまさしく計測可能な「ザ・基調物価」みたいなのがあるかのような説明になってしまう訳ですよ。
でまあそういう説明を従来からしているから(それこそ黒田末期に登場したコアコアCPI見通しを出したのも「ザ・基調物価」の一環みたいなもんでした)、今回はまあそこまででもないですけど、毎度毎度「基調物価はどの水準にあるんですか」というような話をする訳ですし、そもそも論として植田さんも基調物価を精緻に計測しようみたいなニュアンスの話をしたがるので、どうしてもその「ザ・基調物価」の方に話がいきやすくなるわけですよ。
でも、「日本経済のアクターの皆さんの経済活動のベースになっている物価観がどの程度か、というのが実際の物価やら企業行動やらサーベイやらを見て行って2%辺りで安定しているんじゃないかなあと判断できる経済物価状況」が基調物価2%だというのであれば、話がだいぶ違ってくる訳で、結局お前らどっちなんですねん(普通に考えたら総合判断だが)というお話なんすな。まあこの辺をもうちょっと整理して頂きたいもんです、とはおもいました。
というアタクシの能書きはさておきまして続きに行きますと、
『また、労働需給は引き締まった状態が続いており、こうしたもとで、賃金上昇を販売価格に転嫁する動きも継続しています。こうした点を踏まえまして、基調的な物価上昇率は引き続き
2%に向けて緩やかに上昇しているというふうに判断しています。』
という説明をしている訳で、基調物価って総合判断だと思うのですよね。まあその総合判断に緩和政策の調整が紐づいているのが現状な訳ですが、そうなりますと今度は展望レポートでコアCPIとコアコアCPIの見通しを出していること自体に何の意味がありますねんという話にもなろうかと思いますが、その件に関してはまたなんかの機会に考えたいなとは思います。
でもって先行きですが、
『先行きについては、経済の成長ペース鈍化などの影響を受けて、基調的な物価上昇率はいったん伸び悩むことが見込まれます。』
ほーん。
『しかし、賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇していくというメカニズムは維持され、その後は、成長率が高まるもとで、人手不足感が強まり、中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、基調的な物価上昇率は、2%に向けて徐々に高まり、見通し期間後半には物価安定目標と概ね整合的な水準で推移すると考えています。』
ということで、まあ質問に対する答えがクッソ長い次第なのでした。
・とは言え基調物価が総合判断だと腹を括っていないのでこういう説明になるのよね
ちょっと先の質疑になりますが基調的物価に関しては質問が多い訳で。
『(問)一点目はですね、基調的物価についてお伺いします。伸び悩んだ後にまた回復する見通しということですけれども、今現状、総裁の認識としては既に伸び悩んでるような状況なのか。次のですね、利上げの判断をするときは伸び悩んでる状況であっても回復に向かうと確信ができれば利上げをするのか、それとも
2%にですね、持続的・安定的にアンカーすると確信を持てたら次の利上げに踏み切るのか、その考えについて教えてください。(後半割愛)』
まあ質問の方にも微妙に突っ込みたくなりますがそこは割愛して回答を見てみますとですね、
『(答)まず前段ですけれども、基調的物価の現状ですけれども、まだ関税の影響を受けて足踏みするという局面には入ってなくて、ごくゆっくりですけれども上昇が続いているというふうに思っております。』
ここの説明もまあ謎説明でして、もし「総合判断」なのであれば、そもそも4月の展望の時点で経済の見通しを引き下げてリスクを下方にティルトしているんですから、その時点で基調的な物価には下方圧力が掛かるという話になるんですが、一方で基調的物価は上昇が続いている、という判断になっているのはじゃあ何でですかってのを要因分解して頂きたいわけですわ。
まあその回答を出すとなると多分日銀的理屈を捻れば「インフレ期待が徐々に上がっているから経済の不透明要素を打ち消している」というのと「実際にはまだ経済が落ちていないので(ただし消費の判断は今回の展望で引き下げになっている)問題ない」という話になるのか、その合わせ技なのか、って話になると思うのですけどね。
『それから、基調的物価と今後の政策との関係ということでは、本当にそれが
2[%]に定着するまで待って動くというのではなくて、2[%]に到達していくという道筋、今でもそういう見通しを持っているわけですけれども、それの確度が上がるとか、見通しに自信が持てるということになるかどうかという、それもいろんな段階がありますが、ことの方がポイントになるかと思います。』
って話をしているのだが、これも結局のところ「基調的物価が2%に達している」という状況の定義がフワフワしている(ように見える)からこういう話になるのであって、「基調的物価が2%で安定している」という状態は「物価安定目標が達成できている」というのを同義であって、物価安定目標が達成出来ている段階では短期政策金利は中立金利(モチのロンだがこの数値にも幅があるけど普通に考えたらトレンドインフレが2%なら政策金利も2%じゃろというお話)に達していないと過剰緩和による好ましくないインフレ上振れを招くことになるんだから、「2%に定着するまで待ってから利上げ」はどこからどう見たってあり得ない話で、そういう質問が飛んでくること自体がナンジャソラになるんですよね。
でもこういう質問が飛んでくる、というのは結局のところ「基調的物価」という一種の計測可能な物価指数のようなものがあって、その数値と2%物価目標達成は必ずしもイコールではない、というような認識になっている、というかそういう説明を日銀がしているからこういう質問が飛んでくる訳でして、もうちょっとこの「基調的物価」の概念をきちんと整理しないといけないと思うのでした。
まあ2%なんてとてもとても、という状態ならばその辺フワッとしたままでもよかったのでしょうけれども、実際問題として物価目標2%だってもう達成してるんじゃないか(ワシはそっちの説を取りたいがまあそれは少数派オブ少数派だという自認はしてます笑)という考えだってできないことはないというような状態で、少なくとも物価目標達成は近いという状態になる中、この「ザ・基調的物価」はコミュニケーションをややこしくするだけのことにしかなっていないような気がします(個人の感想です)。
ただまあ一方で最後の方の質疑では、
『(問)今の質問と重複するのですが、基調的な物価上昇率につきましては、今後関税の影響でいったん伸び悩んだ後に徐々に高まっていくというふうに言っておられまして、外からみえない基調というものがですね、今後複雑な動きをしていくという局面に入るということだと思うんですけれども、総裁はこの基調的な物価上昇について、そういった局面ではより丁寧にですね、より具体的にもっと分かりやすく説明しなきゃいけないというふうにお考えなのか、その必要性をどのように感じておられるかお願いします。』
「外からみえない基調というものがですね」という辺りがいい感じのイヤミになっていますな^^。
『(答)基調的物価上昇率という概念、大事なんですけれども、なかなか分かりにくいし、データでなかなかきちんとみることができない中で、説明を工夫しないといけないなということはずっと思っておりまして、従って今日の冒頭のご説明でも、やや具体的に基調的物価上昇率の、そのものではないですが、それに近いインフレ率と思われる変数いくつかの動きについてご説明したりしました。こういうことは一段の工夫を重ねつつ続けていきたいと思っております。』
って説明になっていて、まあ経済学者というかエコノミストというか、そっちの系統だとどうしても「総合判断です」って話にならないで計測を精緻化しようというような方向に話を持っていきがちなんだよなーって思うのでした。
・食料品価格上昇の今後と二次的影響について
この点も質疑が幾つかありまして、
『(問)二点お伺いします。物価の見通しのところで 25 年を大きく上方修正されたと。ただ、食品価格の上昇については、徐々に減衰していくという見通しを示されています。これまでと同様に一時的要因が大きいということですけども、一時的ではない可能性については、従来よりも高まっているというふうにお考えでしょうか。その場合、日銀の対応が後手に回る可能性があると思うんですけども、その辺はどのようにお考えかというところも併せてお願いします。(後半割愛)』
しれっと「政策がビハインド」の質問をちりばめているのが芸が細かい(^^)。
『(答)まず、食料品価格の上昇について、一時的と判断してよいかどうかというご質問だったと思いますが、申し上げましたように、インフレ率という意味では、今後低下していくというふうに考えています。そういう意味では一時的である。』
ほう、というかまあそれがメインシナリオですね(なお「コストプッシュだから一時的」という阿保陀羅経を唱え続けて外しているんですけど)。
『ただし、ここまでかなりの上昇がみられ、消費者心理にも、これはどっちに影響するか難しいところでございますが、消費者心理を悪化させる方向に働くというケースもあるでしょうし、インフレという面ではインフレが長く続いてしまうという方向に働く可能性もありますが、消費者心理あるいは予想物価上昇率に影響して、そこから例えば基調的なところにも影響するというリスクについては、常に意識しながらデータをみていきたいと思っております。(後半割愛)』
とありましたが、後半でこのような良い質疑がありまして、
『(問)基調的物価の部分で先ほどですね、ヘッドラインの部分が基調的物価にこれからどういう影響を及ぼしていくかっていうところを、より一層注意してご覧になっていくというお話がありましたが、現状はですね、今の段階ではヘッドライン、消費者物価という部分がですね、いわゆる二次的な影響というかたちで、基調的な物価に影響を与えるっていう状況にはないというふうにお考えでしょうか。今の現状のとらえ方を教えてください。』
これは良い質問。
『(答)例えばここ 3 年くらいを振り返ってみますと、一つのメカニズムを申し上げれば、ヘッドラインのインフレ率が高いことがある年に、その次の年の賃金上昇率に影響を与えて、そうするとまたサービス価格に跳ねるというかたちで、だんだん基調的物価にも影響する、そういうメカニズムはあったと思います。』
というのを素直に認定している訳ですが、これだと「コストプッシュだから一時的」って話を連呼していたし、今でもメインシナリオでは連呼しているんだが、その説明との整合性は何ですかってなもんでして、大体からして「適合的期待形成」について以前は散々言っていたのですから、コストプッシュによる物価上昇が適合的期待形成を通じて二次的効果をもたらす、って話をすっかりネグって延々と「この物価上昇はコストプッシュだからネグって良い」という話にしていたのは何だったんですかと小一時間問い詰めたくなるわけです。
まあ日銀とてアホウじゃないので初手からそういうことは承知のうえで「コストプッシュはワンオフだから」の屁理屈を捏ねていたんだとは思いますが、その屁理屈だけではマズイ(つまり物価上昇が実は定着していて何ならインフレ期待の上振れリスクもあるんじゃねえかというのを真剣に考えないといけない、という可能性について無視できない、ということね)というのはさすがに認識しているからこういう説明のトーンに変化したんじゃないか、とまあそう考えることも可能(あくまでも可能、ということであって実際に大本営が何考えているのかは大本営じゃないと分からんし、関税の影響の話がひたすら利根川幸雄状態だったのでハトハト音頭にしか聞こえなかったし、というのもあるのですよね。まあムツカシイです判断は)というお話になったりする訳です。
よって、この続きですが、
『従って、ヘッドラインのインフレが高いという状態が長く続くという場合にはある程度注意しないといけないと、基調的物価への影響について注意しないといけないということだと思います。』
となっていまして、まあ2%台前半とかなら2%でんがなみたいな話だとは思うのですが、なにせ全国CPI総合ベースで言えば前年同月比3%台(しかも殆ど3%台後半)のインフレが昨年12月から本年6月まで延々と継続している(1月は4%)訳でして、さすがにこれはネグれないって話になっているのかね、って感じで更問があったのですが、
『(問)そうすると今、足元の食料品価格を起因とするものっていうのも、大なり小なり、基調的物価の影響というところを与えているんでしょうか。』
『(答)それはですから、今後見通し通りに食料品価格が落ち着いてくるかどうかというところに大きく左右されるように思います。』
これ微妙に答えが噛み合っていないのだが、本来であれば「今後見通し通りに食料品価格が落ち着いて来たとしても全体の物価がさほど下がらない場合は基調的物価の高まりを意味するのか」って話になるのかな、とは思いました。
・ハトハト音頭なのですゴリゴリ問い詰められるとハトが飛んで逃げていくという面白い質疑
質疑のどちらかというと前半だったのですがこんなのがありました。
『(問)一点目は、ちょっとややこれまでの質問の繰り返しになってしまうかもしれないんですが、関税を巡る不確実性についてやや後退して、きわめて不確実性が高いというところからは、不確実性が高い状態が続いているという表現に変わっています。また、物価についても、25
年度、大幅に上方修正して、物価のリスクバランスも下振れリスクが強いというところから中立的にしていると。全体でみると、基調インフレが持続的・安定的
2%を達成する蓋然性は、前回展望レポート時よりは高まったと言えるのかどうか、そこをまず確認したいと思います。』
『二点目については、物価のリスクの部分で、食品価格の上昇が長引いて、予想インフレや基調インフレに二次的波及の影響を及ぼす可能性について、やや詳細に展望レポートでは記述がありますけれども、これはやはり物価の上振れリスクに、以前よりは意識が高まっているということでいいのか。その場合、経済の下振れリスクとそうした物価の上振れリスクの両方をみるということだと思うんですけれども、そのバランスというのは、前回の展望レポート対比で変化しているのか、その辺りをお願い致します。』
中々明快な質問である。非常にいいですね。では回答ですが、
『(答)一番目のご質問について申し上げれば、特に、関税を巡る不確実性が、最初に申し上げた日米交渉が合意に至ったこと、あるいはアメリカとその他の国との交渉がいくつか合意に至りつつある、至ったということ等を通じて、そこの部分の不確実性がある程度低下し、端的に申し上げれば、私ども、4
月と今回 7 月、展望レポートの見通しをそんなに変えていない、今年度のインフレ率のところ除きますと、あまり変えてないんですが、その見通し実現の確度のようなものは少し高まったというふうに考えています。』
見通しは変えてないが見通し達成(2%物価安定目標達成)の確度は少し高まったと。
『それから二番目のご質問は、物価と経済のリスクのバランスというお話だったと思いますけれども、経済の方は下振れリスクが続いてる、つまり、関税の行き着く先はある程度みえてきた部分があるけれども、その影響についてはまだこれから確認しないといけないということで下振れリスクに配慮しているということですが、物価についてですが、いったん
25 年度の物価見通し、中心的な見通しをかなり大きく引き上げましたので、そこからは物価の上下見通しはバランスしているという姿になっているということだと思います。ちょっと答えになってるかどうか。』
とまあこういう言われ方すれば更問はこうなりますよね。
『(問)そうなるとやはり、経済の下振れリスクの方が政策運営上は重視すべきという理解でよろしいでしょうか。』
ってこれは誰でもそういう質問をするわ。
『(答)いえ。金融政策上どっちのリスクをということですけれども、当然、物価の上振れリスクは、先ほど来申し上げてますように、見通しで基調的物価上昇率がだんだん2[%]に収束していくというところから更に上振れるリスクのことを意味してるわけですから、それは重視して考えたいと思いますし、』
あら〜重視して考えちゃうんだwww
『経済の下振れリスクの方は、物価にも影響しますけれども、ここから経済あるいは物価が多少下振れた場合に、やはり私どもの立ち位置としましては、政策金利が
0.5[%]の低い水準であるということは意識していないといけないかなということだと思います。』
しかも経済下振れを意識するのは当然だが「政策金利が 0.5[%]の低い水準であるということは意識していないといけないかなということだと思います」っていうのは金融政策が飛んでもなく緩和的であるという事を意識するって話だからやっぱり政策調整ジャン、という話になるわけでして、植田総裁の中でハトハトチキンが降臨したり隠れたりしてますなあ、とは思いました。
あとは物価高批判の話とかビハインドリスクとかの方面の質疑もあってそれはそれでおもろいのですが今朝は時間の関係でこの辺で勘弁してつかあさい。
2025/08/04
〇展望レポート基本的見解を一旦すっ飛ばして背景説明のBOXを鑑賞しますと政策金利調整時期は基本来年頭だがリスクは・・・・
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2507b.pdf
経済・物価情勢の展望
2025 年7月
いつものようにとりあえずBOXを見ますが、お題は以下の通り。
(BOX1)各国の通商政策の動きとその影響:アップデート
(BOX2)不確実性と設備投資
(BOX3)最近の食料品価格上昇の背景とその影響
・米国の関税効果に関して:賃金設定への影響をみたいです、といういつもの結論になっております
まずは『(BOX1)各国の通商政策の動きとその影響:アップデート』 から参ります。最初の方の状況の説明部分は飛ばしまして途中から参りますと、
『米国の関税引き上げは、様々なチャネルを通じて、わが国経済に影響を及ぼす。前回4月の展望レポートで整理したとおり、具体的な波及経路としては、主として、@関税コスト負担の直接効果、A世界の貿易活動の縮小を通じた間接効果、B不確実性の高まり、という3つの経路が考えられる(図表
B1-2)。』
でもって、
『以下では、これらのうち、@直接効果とA間接効果について、足もとまでに利用可能となっているデータから、生じている変化を整理する21。』
とのことです。
『まず、直接効果については、輸出企業が関税によるコスト増加をどの程度、米国での販売価格に転嫁するかによって、負担の主体や割合は変わってくる。』
はい。
『すなわち、関税コストの増加分が、販売価格に完全に転嫁されれば、米国国内の消費者や企業が関税分を全て負担することになる(ただし、この場合、米国で競合する財がある場合、輸出企業の価格競争力は低下する)。一方、わが国を含む海外の輸出企業が、現地販売価格を変えず関税負担を輸出価格の引き下げで全て吸収すれば、輸出国に負担が発生することになる。当然のことながら、これら両者の中間的なケースもありうる。』
さいですな。
『この点、既に 25%の関税引き上げに直面している日本から米国向けの自動車輸出の価格動向をみると、(関税分を含まない)輸出単価や契約通貨建ての輸出物価は、4月以降、2割程度も下落した(図表
B1-3)。』
(ノ∀`)アチャー
『こうした動きは、日本の自動車メーカーは、現地の販売価格上昇による数量減を回避する一方で、輸出採算の悪化というかたちで収益を悪化させていることを示唆している。』
まあそうなんですけれども、さくらレポートだと「うちの製品は競争力あるから関税分は基本的に価格転嫁」とか言ってる企業の声みたいなのが上がっていたのに対して自動車メーカー関税モロ負担かよと思ってしまいました。
実際にはこの収益減によって賃金上げないだの部品メーカーに対して納入価格引き下げ圧力が掛かるだのという話になるとまさに日銀が懸念している、ということになっている「企業行動の後戻り」になってしまうのですが、ゆうて単純に販売価格下げっぱなしなのかねという点はどうなんでしょうかね、とは思いました。知らんけど。
『次に、間接効果は、関税引き上げによる世界貿易量の減少や企業の生産活動の停滞を通じて、わが国の輸出にも下押し圧力が及ぶ効果である(前掲図表5、図表
B1-4)。』
これが何で問題になるかというと、
『わが国の輸出は、資本財や自動車関連、情報関連など世界貿易量への感応度の比較的高い財が多いため、世界貿易活動のアップダウンは、わが国実質輸出の変動につながりやすいとみられる(図表
B1-5)。』
だそうで、
『このため、先行き、世界貿易量が、駆け込みの反動減の影響を受けながら減少していくとすれば、日本の輸出への下押し圧力も明確になっていくと予想される。さらに、各国一律の「相互関税」に加えて、今後、半導体等の分野別関税や高関税率となっているアジア各国への「相互関税」の上乗せ分の多くが発動されれば、わが国とサプライチェーンの結びつきが強い東アジア地域の貿易活動やITサイクルへの悪影響を通じて、情報関連を中心にわが国の輸出が一段と下押しされるリスクにも注意する必要がある。』
ということですが、「相互関税」がカッコつきになっているのが味わいあるなと思いました。だって別に日本から米国に関税上乗せしている訳でもないのに何が「相互」関税じゃヴォケと兼ねてよりワシも思っていたのですが、このカッコ付ってそういう意味ですよねwwwwww
でもってその結論ですが、
『以上のような米国の関税引き上げによる直接・間接の影響により、今年度のわが国企業収益は減益となる可能性が高まっている22。実際、2025
年6 月短観で今年度の経常利益計画をみると、非製造業は底堅く推移する一方、製造業は、加工業種を中心に減益計画となっている(図表
B1-6)。』
からの、
『このような見通しが実現する場合には、先行きの賞与やベースアップなど企業による賃金設定行動にも影響を与えうるだけに、今後の動向を注意してみていく必要がある。』
ということで、これ以前からの説明と同じではあるのですが、賃金設定行動の見極めが必要。といういつもの理屈になりますので、そうなると今年度入り後の業績を反映した冬季賞与の設定と、来年度の賃金設定に向けた動きを確認したい、という理屈になるので、そうなりますとまあ最速で12月ですが、まあ普通に考えて1月か3月の政策調整、というお話になるわけですな、うんうん。
・設備投資への影響は短観をあと1回か2回確認するという話になりますなあ
2番目の『(BOX2)不確実性と設備投資 』に参ります。
『本BOXでは、各国の通商政策に伴う不確実性の高まりが、設備投資に与える影響を点検する。』
ちなみにこの点、直近の支店長会議では
https://www.boj.or.jp/research/brp/rer/rera250710.htm
各地域からみた景気の現状(2025年7月支店長会議における報告)
『各国の通商政策の影響に関して(注)、現時点では、設備投資について、不確実性の高まりを背景に投資の先送りや見直しを検討・実施する動きがみられるとの報告があった一方、IT関連需要の拡大期待に基づく能力増強投資や、人手不足対応や生産性向上を目的とした省力化・デジタル化投資などで積極的な投資スタンスが維持されているとの報告もあった。』(この部分のみ直上URL先の2025年7月支店長会議報告より)
となっています。
『まず、不確実性の高さを示す各種指標をみると、米国の関税引き上げの発表直後は、VIX指数(Volatility
Index)が急激に上昇するなど、金融市場で不安定な動きがみられたが、足もとでは落ち着きを取り戻しつつある(図表
B2-1)。一方、わが国の新聞の関連報道等から作成した通商政策不確実性指数をみると、4月のピークから低下しているとはいえ、歴史的には依然として高い水準となっており、企業が支出行動を意思決定するに当たり、不透明感の強い状態が続いてきたことが示唆される。』
『7月 23 日(日本時間)の日米合意を受け、不確実性は一定程度低下するとみられるが、米国との通商交渉がなお妥結していない国も存在しているほか、米国における関税の価格転嫁の動向も含めた関税の経済的影響についても、不確実性は残っている。』
この辺は前提の話ですので次行きますと、
『次に、こうした通商政策を始めとする政策面の不確実性の高まりが企業の設備投資に与える影響をみるため、簡単なVARモデルを推計すると、政策不確実性指数の高まりは、金融変数の影響をコントロールした場合、多少の時間をかけて設備投資の下押し圧力となっていくことが実証的に確認できる(図表
B2-2)。』
ってことで『図表B2-2:不確実性の設備投資への影響(水準への効果、GDP寄与度、%ポイント)』ってのがあるのですが、脚注を見ると、
『(注)政策不確実性指数、VIX指数、実質GDP、実質個人消費、実質設備投資、総実労働時間、GDPデフレーター、無担保コールO/N金利(無担保コールO/N金利以外は対数値)からなるVARモデルを推計し、政策不確実性指数+1σショックに対する実質設備投資のインパルス応答を算出。推計期間は、1994/1Q〜2024/4Q。シャドーは、95%信頼区間。』
ということで分析しているんだが、1994年から期間取っているのは何でじゃ(いわゆる「3つの過剰」が段々大きな問題と認識されてきた時期からスタートしているってのが気になるんですよねワシとしては)とか微妙によくわからんところではありますが、まあよくわからん。
ちなみにネタにしませんでしたが、5月の終わりにこんなのが出ていまして、
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2025/wp25j04.htm
わが国における設備投資の金利感応度
― パネルLP-IVを用いた検証 ―
全文はこちら
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2025/data/wp25j04.pdf
わが国における設備投資の金利感応度
― パネル LP-IV を用いた検証 ―
なお詳しく読んでいないのでこちらに関してはこういうのありますよというご紹介のみです。
でもって話を戻すと、
『この点、短観で今年度の設備投資計画をみると、3月調査から6月調査にかけて概ね例年のパターンに沿って上方修正されており、これまでのところ変調の兆しは窺われていない(前掲図表
19)。』
『この結果は、製造業大企業を中心にはっきりとした減益が予想されるなかでも、中期経営計画等で決定した案件を中心に、人手不足対応のDX投資や成長分野への研究開発投資などを積極的に実施するスタンスを変更していないことを示唆しているとの見方も可能である。』
可能である、という結びになっている時点で次の展開がお察しですけれども、
『もっとも、大企業の設備投資計画について、負のショックで減益等となった年度の修正の足取りを確認すると(図表
B2-3)、その時々のショック発生のタイミングにもよるが、総じてみれば、設備投資計画が6月調査時点で腰折れすることはまれで、年度後半にかけて下方修正されていくケースの方が多いことが分かる。』
キタコレ!!!!!!!!!!!
ということでございますので・・・・・・・・
『こうした過去のパターンを踏まえると、企業が、各国の通商政策や貿易交渉の今後の展開を睨みながら、現時点では設備投資に関する意思決定を先送りしている可能性も否定できない。』
ほうほう。
『こうした可能性も念頭に置いて、企業の投資スタンスの短期的な変化が表れれやすい各種の先行指標をみると、@工作機械受注・内需は、自動車関連メーカーからの発注減を主因に足もとで弱めの動きとなっているほか、A設備投資意欲DIも、このところ輸送用機械を中心に幾分低下している点には留意する必要がある(図表
B2-4)。』
ほう。
『また、本年7月の「地域経済報告(さくらレポート)」でも紹介されているとおり、企業ヒアリングでは、積極的な投資スタンスを維持するとの声が聞かれている一方、通商政策を巡る不確実性の高さから、設備投資計画の見直しを検討しているとの声や、実際に一部の能増投資を先送りしたとの声も聞かれている。』
さっき引用した部分が簡単なまとめですね。
『通商政策を巡る不確実性の高まりが設備投資に与える影響については、時間をかけて顕在化してくる可能性もあるため、今後のデータやヒアリング情報を丹念に点検していく必要がある。』
という結論でして、まあこれ自体はご尤もなお話なんですけれども、総裁会見(今日はそこまでネタにしている時間がないですがどうせ今回は急ぐ話でもないのでボチボチと成敗して参ります)では「通商政策の影響はこれから出てくる」という話を連呼するもんだから「こいつ政策調整やる気ないハトハトだわ」という話になってしまう訳でして、なんちゅうかコマッタモンダよなとは思います。
でもってですね、じゃあ本件に関してはどうですねんという話ですが、『図表B2-3:負のショック時の設備投資計画』という図に、
『(注)1. 短観ベース(全産業大企業)。2003/12月調査以前は、金融機関を含まない。
2. ソフトウェア投資額・研究開発投資額を含み、土地投資額は含まない(2016/12月調査以前は、研究開発投資額を含まない。また、2003/12月調査以前は、ソフトウェア投資額を含まず、土地投資額を含む)。
3. 過去の年度は、1997年度:アジア通貨危機、2000年度:ITバブルの崩壊、2008年度:リーマン・ショック、2019年度:米中貿易摩擦、2020年度:コロナ禍。』
ってのがあります次第でして、このグラフを見ますと9月短観と12月短観を見て判断(9月時点でコケれば9月で判断)って感じですので、これまた12月短観結果が出てくるのが12月決定会合の直前になるので、つまりは12月か1月には関税政策が設備投資行動に与える影響については分かります、ってお話になろうかとは思います。
ということでここまでのBOXは9月10月の政策調整を示唆しない内容なのですが・・・・・・・・・
・物価上振れリスクについて:
最後が『(BOX3)最近の食料品価格上昇の背景とその影響 』です。
『過去1年間の物価動向を振り返ると、消費者物価(除く生鮮食品・エネルギー)の前年比は、昨年7月の+1.9%をボトムに本年6月の+3.4%へと、+1.5%ポイント、プラス幅を拡大してきた(図表
B3-1)。』
ちなみにこの間の日銀様の想定ですが、展望レポート・ハイライトを見ますとご案内の通りで、
2024年7月展望レポート
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/highlight/ten202407.htm
物価は来年度以降2%程度で推移する
2024年10月展望レポート
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/highlight/ten202410.htm
物価は来年度以降2%程度で推移する
2%に向けてダッシュ(2024/07)してみたりパラグライダーで着陸(2024/10)してみたりということで、物価安定目標を標榜しているのに全然お前の見通しに沿ってないじゃん何が物価安定じゃヴォケといったところですが、
『この間、米などの食料品価格の前年比は+2.7%(除く生鮮食品・エネルギーに対する寄与度+0.7%ポイント)から、+8.4%(同+2.2%ポイント)と大幅に上昇しており、ここ1年間の物価上昇率加速の大半は、食料品価格の上昇によって説明できることがわかる23。』
でもって脚注23なのですが、
『23 ここでの食料品価格は、消費者物価(食料除く生鮮食品・酒類)を指す』
ってことなので生鮮を除くベースの話をしているので。
『他方、消費者物価(除く食料・エネルギー)の前年比は、+1%台半ばで安定的に推移している。』
という話になっているのですが、そもそも生鮮の場合は天候要因のワンオフって説明をするのはまあ良いんですけど、食料品価格の上昇って言った場合にはそらワンオフなのかって話になると思うのですが先に進みまして、
『本BOXでは、最近の物価上昇をけん引している食料品価格上昇の背景とその影響について、考察する。』
ということで始まり始まり。
『品目別にみて、この1年間の食料品価格上昇に最も大きく寄与しているのは、米価格である。』
で??
『米価格は、消費者物価総合に対するウエイトでみて0.6%(1万分の 62)に過ぎないが、足もとでは前年比+100%近い上昇率となっており、本年6月の除く生鮮食品・エネルギーの前年比に対する寄与度は+0.7%ポイントと、大きな押し上げ要因となっている。』
だから2025年度見通しを+0.5も上方修正した、と言いたいんでしょうけれども別に4-6で急に前年同月比2倍になった訳ではなくてその前から問題になっていたと思うのですが・・・・・・・・・
『こうした米価格の上昇には、天候要因による供給量の減少と昨年夏の南海トラフ地震臨時情報に伴う需要拡大が重なって発生した超過需要が、直接的な起点となったことが指摘されている24。』
逆に言えばその時点で米価格のある程度の上昇を見通しに何で織り込んでなかったのあんさんら。
『やや長い目でみると、2022 年以降、輸入物価が大幅に上昇するなかでも、@肥料代や燃料費などの農業生産コストの転嫁があまり進んでいなかったことに加えて、Aパンや麺類など他の食料品価格と比較した相対価格が大幅に低下していたことも、最近の米価格上昇の背景にあるとみられる。』
日本農業新聞を読むと吉(日本農業新聞社の回し者ではありません)
『米以外の食料品でも、菓子類や調理食品など幅広い品目の価格が上昇している。』
さいですな。
『その背景を定量的に把握するため、輸入物価(飲食料品)、消費者物価(米類)、消費者物価(食料除く米類)、失業率ギャップ、中長期インフレ予想からなる5変数VARモデルを推計した。』
ナンジャソラと思いますがまあさて先に進みますと、
『ヒストリカル分解の結果をみると、米以外の食料品の価格上昇には、@米価格上昇の波及効果(具体的には、おにぎりや無菌包装米飯、すし弁当等の価格上昇)に加え、A輸入食料品の価格上昇も、チョコレートやコーヒーの価格上昇というかたちで大きく寄与してきたことが確認できる(図表
B3-2)25。』
『図表B3-2:米類を除く食料品価格の動向』ってのを鑑賞してみてください。
『後者の輸入食料品価格上昇の背景を詳しくみるため、主要な食料品の国際商品市況の動向を振り返ると、小麦や大豆の価格は、ロシアのウクライナ侵攻後に大幅に上昇したあと、足もとでは落ち着きを取り戻している。一方、コーヒーやカカオ等の価格は、気候変動による天候不順の影響もあってか、2023
年以降、急激かつ大幅に上昇している。』
『これらの国際商品市況の上昇を受けて、円建ての輸入食料品価格の前年比は、為替要因が下押しに作用するもとでも上昇傾向にあり、輸入物価全体とはやや異なる動きを示している(図表B3-3、前掲図表
43)。』
問題はこれがワンオフなのか不可逆なのかという話になるんですけど・・・・・・
『米価格や輸入食料品価格の上昇の価格転嫁が進んでいる背景には、食料品メーカーが価格設定スタンスを積極化させている点も影響しているとみられる。』
キタコレ!
『実際、短観の物価全般の見通しをみても、食料品製造業のインフレ予想は、2014
年の調査開始以降、全産業と概ね同様の動きを続けてきたが、2022 年以降は、企業が直面するコスト上昇を背景に、全産業をはっきりと上回るペースで上昇している(図表
B3-4)。』
『図表B3-4:物価見通し(短観・5年後)』ってのは面白いです。さらに・・・・・・
『また、食料品は、ガソリン等と並んで、消費者の購入頻度が高く、人々の注目度も高いため、食料品価格の上昇は、この間の短期的なインフレ予想の高まりにも寄与してきた可能性がある。』
思いっきり寄与してるだろ(何なら中長期インフレ期待にだって寄与していると思うが)。
『実際、景気ウォッチャー調査のコメントから機械学習の手法を用いて作成される「物価センチメント指数(PSI)」26には、』
『26 PSIの詳細は、日本銀行ワーキングペーパー「機械学習による景気分析―『景気ウォッチャー調査』のテキストマイニング―」(No.18-J-8)を参照。』
これはだいぶ前のですが
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2018/wp18j08.htm
機械学習による景気分析
―「景気ウォッチャー調査」のテキストマイニング―
(全文)
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2018/data/wp18j08.pdf
になります。これはちゃんと読んだ覚えがあんまりない(汗)。
『ガソリン価格と並んで、食料品価格も有意な影響を及ぼしていることが統計的に確認できる(図表 B3-5)。』
だそうで、
『PSIは、1四半期程度先の消費者物価に対して予測力を有することから27、この間の食料品価格の上昇・高止まりは、短期インフレ予想の上昇を通じて、小売店舗の価格形成にも何らかのインパクトを及ぼしてきた可能性が高いとみられる。』
まあそうじゃろって体感的には思いますが、これって要するに「食品価格の上昇は供給ショックによるワンオフなだけではなくて、短期インフレ期待の上昇を背景にした面がある」という指摘でして、
『こうした食料品価格の上昇が相応の持続性を持って進行してきた重要な要因としては、この間の個人消費の底堅さも指摘できる。』
しらっと「供給要因だけじゃない」という話の続きでド直球の「需要要因」の指摘が来ます!!
『一般に、食料品価格の上昇による実質所得の減少は、個人消費にマイナスの影響を及ぼす。』
『もっとも、2024 年以降の実質可処分所得の動きをみると、春季労使交渉を反映した賃上げと雇用者数の増加により雇用者所得がはっきりと改善してきたことが、食料品価格上昇による下押し効果を相殺している(図表B3-6)。』
キタコレですな。
『雇用者数の増加は、女性を中心とした労働力率の上昇によってもたらされている(前掲図表
22)。この点を詳しくみるため、労働力フローの分析を行ってみると、2020 年代以降は、非労働力だった人々が新規に労働市場に参入したことが労働力率の上昇につながっていることが窺われる(図表B3-7@)。一方、2010
年代の労働力率の上昇は、定年延長や再雇用制度によって、既存の労働力が非労働力化する動きが抑制されてきたことも影響している(図表
B3-7A)。』
からの、
『今回の展望レポートの中心的な見通しでは、食料品価格の上昇は本年度後半にかけて一巡していくと想定しているが、食料品は消費者の購入頻度が高いものであるだけに、それが家計のコンフィデンスやインフレ予想、および個人消費に与える影響には、引き続き注意していく必要がある。』
という結論になっていまして、これすなわちアクチュアルの物価が日銀想定のように下がらない場合に、インフレ期待の上昇を通じるのが多分メインだと思うのですが、物価上振れの可能性があるってのが基本的見解のリスク要因にもありましたし、結構今回ちゃんと考察している訳でして、まあこれが前面に出てくるには物価が上振れくらいしないとって話だとは思いますが、別の要因(物価高放置批判とか円安振れて対応求められるとか)によって政策金利調整を前倒しするときの「美しい言い訳」に使う準備は出来ている、という感じなんじゃないかと思いました。メインシナリオではないと思いますけど・・・・・・・
2025/08/01
お題「決定会合レビュー」
あらあらまあまあ
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-07-31/SVYRELDWX2PT00
円が対ドルで150円台後半に下落、3月来の安値−日米金利差意識
清原真里
2025年7月31日 19:57 JST 更新日時 2025年7月31日 23:47 JST
『円は一時0.8%安の150円63銭まで下落した。日本銀行の植田和男総裁の会見で、期待されたほど利上げに積極的な姿勢が示されず、円売りが優勢となった。米国ではパウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長の発言を受けて利下げ期待が後退し、日米金利差はすぐには縮まらないとの見方が広がっている。』(上記URL先より)
・・・・昨日は展望レポートの数字が出た所で円高債券安になりましたが内容を読んでいるうちに徐々に戻って記者会見がハトハトチキン音頭になった所で円安アイヤーとなった、とまあそんな展開でしてハトハトチキン音頭は近所の盆踊りでやってくれと思いました、まる。
てなわけで。
〇政策は据え置きなのだが抜刀が無かったですなあ
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2025/k250731a.pdf
当 面 の 金 融 政 策 運 営 に つ い て
『日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を、以下のとおりとすることを決定した。』
『無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0.5%程度で推移するよう促す。』
>(全員一致)
>(全員一致)
>(全員一致)
・・・・・・あらま抜刀斎が抜刀するかもとちょっとだけ思ったりもしたのですが、全員一致で抜刀無しですかそうですかという所でして、まあここの「全員一致で据え置き」は何だ関税合意を受けても盛り上がりに欠けるのか、とまずは思う訳ですな。
〇展望レポート基本的見解:メインシナリオ部分はハト転4月から基本は同じなのだが物価周りの記述がドテンしておりまして・・・・・
以下は展望からの引用になります
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2507a.pdf
経済・物価情勢の展望(2025 年7月)
【基本的見解】
・見通し数値を見て初期反応が特に為替に出たのはまあ話としてはわかる希ガス
いつももだと鏡から参りますが今朝は数字の方から。
2025 年度
GDP: +0.5 〜 +0.7 中央値<+0.6>
4月時点の見通し +0.4 〜 +0.6 中央値<+0.5>
コアCPI:+2.7 〜 +2.8 中央値<+2.7>
4月時点の見通し +2.0 〜 +2.3 中央値<+2.2>
コアコアCPI:+2.8 〜 +3.0 中央値<+2.8>
4月時点の見通し +2.2 〜 +2.4 中央値<+2.3>
ということで2025年度のCPIをドチャクソ上げてきまして、そりゃまあこの数字見たら特に海外投資家とか反応する罠、という話でして、展望レポートのこの数字が出たときに為替ちゃんが割とビビッドに反応しました(円債市場はお休み時間だったのもあるけど円債はそこまで後場寄りで盛大に下がったわけでは無いし何なら引けにかけて横綱のがぶり寄りモードで値を戻しておられた)。
・・・・・とは言いましても、アタクシ拙駄文で申し上げていましたが、2025年の数値を上方修正したとて、「これはコストプッシュで一時的」と言ってしまうと結局大本営屁理屈的な政策インプリケーションが無い、ということになってしまうので2026年度2027年度はどないですねんというのを見るわけでして、こちらご案内の通りですが、
2026 年度
GDP:+0.7 〜 +0.9 中央値 <+0.7>
4月時点の見通し: +0.6 〜 +0.8 中央値 <+0.7>
コアCPI:+1.6 〜 +2.0 中央値 <+1.8>
4月時点の見通し:+1.6 〜 +1.8 中央値 <+1.7>
コアコアCPI:+1.7 〜 +2.1 中央値 <+1.9>
4月時点の見通し:+1.7 〜 +2.0 中央値 <+1.8>
うーんこのという感じで、まあ予想通りに+2.0に行かない数字を出してきているのがポイントでして、これは4月に堂々1年延長した目標達成時期が引き戻されることはない、というメッセージになっている、と考えるのが妥当なんですが、ゆうて数字だけ見ると+0.1こちらも中央値ベースで上がっているので、先ほどの+0.5と合わせて海外投資家方面は「おー」と反応するだろうな、と思う訳ですよ。
2027 年度
GDP: +0.9 〜 +1.0 中央値 <+1.0>
4月時点の見通し:+0.8 〜 +1.0 中央値<+1.0>
コアCPI:+1.8 〜 +2.0 中央値 <+2.0>
4月時点の見通し:+1.8 〜 +2.0 中央値 <+1.9>
コアコアCPI:+2.0 〜 +2.1 中央値 <+2.0>
4月時点の見通し:+1.9 〜 +2.1 中央値 <+2.0>
ってここの数字はゆうてみれば物価安定目標達成した時の定常状態の数字みたいなもんが出てくるのが今のところの仕様であえいまして、先の方では達成するから大緩和状態の調整を進めていきます、という建付けになっているのでこれもまあ従来通り、となるのですな。
・・・・・でですね、アタクシ先ほど「2025年度の物価を何ぼ上げたとて、コストプッシュで一時的音頭を踊りながら説明する分には政策インプリケーション無し」と申し上げましたが、実はそうではない、というのが今回の展望レポートにおける割とポイントになり得る部分になっている、というのが味わいがあるという能書きを後の方で行いたいと思います。では鏡に参ります。
今回展望(再掲)
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2507a.pdf
6月声明文
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2025/k250617a.pdf
前回展望
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2504a.pdf
鏡の部分は前回展望と比較します。
・経済メインシナリオは4月のハトハト転換で出てきた「海外経済が減速」をそのまま踏襲して変化なし
『先行きのわが国経済を展望すると、各国の通商政策等の影響を受けて、海外経済が減速し、わが国企業の収益なども下押しされるもとで、緩和的な金融環境などが下支え要因として作用するものの、成長ペースは鈍化すると考えられる。その後については、海外経済が緩やかな成長経路に復していくもとで、成長率を高めていくと見込まれる。』(今回展望)
『先行きのわが国経済を展望すると、各国の通商政策等の影響を受けて、海外経済が減速し、わが国企業の収益なども下押しされるもとで、緩和的な金融環境などが下支え要因として作用するものの、成長ペースは鈍化すると考えられる。その後については、海外経済が緩やかな成長経路に復していくもとで、成長率を高めていくと見込まれる。』(6月声明文)
『先行きのわが国経済を展望すると、各国の通商政策等の影響を受けて、海外経済が減速し、わが国企業の収益なども下押しされるもとで、緩和的な金融環境などが下支え要因として作用するものの、成長ペースは鈍化すると考えられる。その後については、海外経済が緩やかな成長経路に復していくもとで、成長率を高めていくと見込まれる。』(前回展望)
数字をさらっと見た後は当然ながら鏡の比較をするのですが、物価の方がドテンドテンの連発で手前の数字を上方修正させるわリスクアセスメントを改善させるわ、というプレイをしているのですけれども、このようにメインシナリオの方が相変わらず「トラ公のせいで海外経済が減速して本邦企業の収益が下押しされる」というのを前提に置いた説明になっていますので、これすなわち2025年度の物価上方修正の意味ねえじゃん、とまあここを素直に読むとそういう発想になる訳ですな、うんうん。
基本的にはそういうことではあるのですが、一方で今回別の仕掛けがある件については先ほども申し上げましたが後述。
・物価のメインシナリオもこれまた全然変わっていないんですよね
『物価の先行きを展望すると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、2025
年度に2%台後半となったあと、2026 年度は1%台後半、2027 年度は2%程度となると予想される。このところの米などの食料品価格上昇の影響は減衰していくと考えられる。』(今回展望)
『消費者物価(除く生鮮食品)については、これまで物価上昇率を押し上げてきた既往の輸入物価上昇やこのところの米などの食料品価格上昇の影響は減衰していくと考えられる。』(6月声明文)
『物価の先行きを展望すると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、2025
年度に2%台前半となったあと、2026 年度は1%台後半、2027 年度は2%程度となると予想される。これまで物価上昇率を押し上げてきた既往の輸入物価上昇やこのところの米などの食料品価格上昇の影響は減衰していくと考えられる。(前回展望)
まずはアクチュアルの物価に関してですが、数字の方はまあ数字の通りですって話でまあいいんですけど、基本的な見通しは「アクチュアルな物価は主にコメを起点とする物価上昇はコストプッシュで一時的」って説明になっていますわな。前回は輸入物価上昇があったが足元輸入物価上昇は一服しているので記載削除されているのも順当。
・・・でまあその見通しはその見通しでそういう思想ですよね、というお話ではあるのですが、おまいら「食料品価格上昇の影響が減衰する」も含めて4月展望で「物価の先行きリスクは下にティルト」って説明しておいて、その食料品価格の影響の上下を読み間違える(この間に大きな供給ショックでも起きているのなら弁解の余地はあるがそんなものは無かったですわなこの3か月)というすさまじいプレイをした挙句の+0.5%とかいう大きな上方修正している訳で、おまいらのアクチュアル物価見通し今回も大外れやん、と言いつつ例の基調の方に行きますと、
『この間、消費者物価の基調的な上昇率は、成長ペース鈍化などの影響を受けて伸び悩むものの、その後は、成長率が高まるもとで人手不足感が強まり、中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想され、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。』(今回展望)
『この間、消費者物価の基調的な上昇率は、成長ペース鈍化などの影響を受けて伸び悩むものの、その後は、成長率が高まるもとで人手不足感が強まり、中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想され、「展望レポート」の見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。』(6月声明文)
『この間、消費者物価の基調的な上昇率は、成長ペース鈍化などの影響を受けて伸び悩むものの、その後は、成長率が高まるもとで人手不足感が強まり、中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想され、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。』(前回展望)
ということで「基調的な上昇率(基調的な物価、ではない)」の表現も同じです。
ちなみに展望の鏡の方で「消費者物価の基調的な上昇率」という説明を載せるようになったのは2023年10月の展望レポートからです。
でまあこの「基調的な上昇率」ってをパラフレーズしてみれば「トレンドとしての物価上昇の状況」って話になるのですが、これを「基調的物価」って言い方をして説明しているから話がややこしくなる訳で、何らかの定義があって「まさにこれが基調的物価」みたいなのがあり、それが1.5%から2.0%の間、みたいな多少のレンジをもってスペシファイできるもの、みたいな感じで(特に植田総裁は)説明したがる訳ですな。
しかもその「ザ・基調的物価」が政策判断に直結しているかのような説明を植田さんが特にしている傾向に見える、ってのがありまして、だったら展望レポートのコミュニケーションでコアCPIとかコアコアCPIとか出さないで「基調的物価の想定値」ってのを出せやと悪態をつきたくなるわけですよ、アクチュアルの物価の見通しを+0.5%とかいう大幅修正しておいて政策何も動かん、となったら益々そういう疑問って湧きおこるじゃろと。
・・・・とつい謎演説をしてしまいましたが、上記のように物価って手前の見通し数値をドテン倍返しの勢いで上方修正する、という割と凄い事をしている(ので為替が初手で円高に振れた次第)のにも関わらず、見通し全然変えていない訳でナンジャコリャ感が満載になるわけですね。
・しかしたった3か月の食料品価格要因だけで+0.5%も上がるのかよ
『前回の見通しと比べると、成長率については概ね不変である。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比については、2025
年度は、食料品価格上昇の影響を主因に上振れているが、2026 年度と2027 年度は概ね不変である。』(今回展望)
『2026 年度までの見通しを前回の見通しと比べると、成長率については、2024
年度は幾分上振れているが、2025 年度と 2026 年度は、各国の通商政策等の影響を受けて、下振れている。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比については、2025
年度と2026 年度は、原油価格の下落や今後の成長ペース下振れの影響などから、下振れている。』(前回展望)
中央値ベースで一応0.1上がってるじゃん説はあるが「概ね不変」になっていまして、これまた前回同様でっせということなのですなわち4月のハトハトチキン音頭が変わらん、というように見える(必ずしもそうではないのですがそれはしつこいようですが後述)次第。
・リスク要因は引き続き通商問題ですがさすがに「きわめて」は削除
『リスク要因としては様々なものがあるが、とくに、各国の通商政策等の今後の展開やその影響を受けた海外の経済・物価動向を巡る不確実性は高い状況が続いており、その金融・為替市場やわが国経済・物価への影響については、十分注視する必要がある。』(今回展望)
『リスク要因としては様々なものがあるが、とくに、各国の通商政策等の今後の展開やその影響を受けた海外の経済・物価動向を巡る不確実性はきわめて高く、その金融・為替市場やわが国経済・物価への影響については、十分注視する必要がある。』(6月声明文)
『リスク要因としては様々なものがあるが、とくに、各国の通商政策等の今後の展開やその影響を受けた海外の経済・物価動向を巡る不確実性はきわめて高く、その金融・為替市場やわが国経済・物価への影響については、十分注視する必要がある。』(前回展望)
皆様ご案内の通りで、「きわめて高い」が「高い状況」と若干格下げされましたが、そりゃまあ日米とか米欧とかが合意しましたからそうなりますよねって話。
・物価のリスクバランスがドテンドテンですが・・・・・・
『リスクバランスをみると、経済の見通しについては、2025 年度と 2026 年度は下振れリスクの方が大きい。物価の見通しについては、概ね上下にバランスしている。』(今回展望)
『リスクバランスをみると、経済の見通しについては、2025 年度と 2026 年度は下振れリスクの方が大きい。物価の見通しについても、2025
年度と 2026 年度は下振れリスクの方が大きい。』(前回展望)
『リスクバランスをみると、経済の見通しについては概ね上下にバランスしている。物価の見通しについては、2024
年度と2025 年度は上振れリスクの方が大きい。』(前々回1月展望)
この凄まじいまでの物価リスク認識のドテン振りを見よ、って感じでして、「下振れリスクが大きい」と豪語しておきながらその3か月後に+0.5%も上方修正するとか恥ずかしくないのかお前らというお話ですが、問題はこの「物価の見通し上下にバランス」の内訳なんですよ・・・・・・・・・
・ということで一気にワープするんですが「物価のリスク要因」の記述の変化に注目すべき
基本的見解本文中の『(2)物価のリスク要因 』の中に見逃せない記述がありましてですね。
『第1に、企業の賃金・価格設定行動やそれらが予想物価上昇率に与える影響である。』(今回展望)
『第1に、企業の賃金・価格設定行動やそれらが予想物価上昇率に与える影響である。』(前回展望)
の部分なのですが、
『企業の賃金・価格設定行動は、従来よりも積極化しており、中心的な見通しでは、成長ペースが鈍化し、物価に対する下押し圧力として作用するもとでも、賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇していくメカニズムは維持されると想定している。』(今回展望)
『企業の賃金・価格設定行動は、従来よりも積極化しており、中心的な見通しでは、成長ペースが鈍化するもとでも、こうした傾向は維持されると想定している。』(前回展望)
しれっと今回「賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇していくメカニズム」って文言が入ったのですが、これって先般の内外情勢調査会での植田総裁の講演の中で使わていまして、
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/data/ko250603a1.pdf
最近の経済・物価情勢と金融政策運営
―― 内外情勢調査会における講演 ――
日本銀行総裁 植田 和男
(以下2025年6月4日にアタクシが書いた駄文を再掲します)
・好循環は遂にお蔵入り(か????)
先ほどの部分を再掲しますが、
『もっとも、現時点で日本銀行としては、わが国経済は、こうした下押し圧力を受けつつも持ちこたえ、賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇していくというメカニズムも途切れることはないと見込んでいます。』
>賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇していくというメカニズム
>賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇していくというメカニズム
>賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇していくというメカニズム
・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・( ゚д゚;)
なんですかこれはという感じですが、まあさすがに「好循環」って言ってると今は政治ばかりが叩かれているので日銀セーフ(寧ろ利上げするなとか言われていて金融リテラシー無し無しムーブなのが悲しいですが)という図になっていますが、どこかでうっかり犬笛を吹かれたらどうみたって「好循環」って炎上要素ですから、そらまあ好循環はお蔵入りさせろというのはあったのですが、今回しれっとお蔵入りですかね、まあ今後も確認したいですけど。
(ここまで2025年6月4日に書きました拙駄文の再掲です)
ってな訳で「好循環」がお蔵入りしまして、装いも新たに「賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇していくメカニズム」に変わりました。
・・・・でまあ変わったのはいいんですけど、それってメカニズムが加速したら普通に「インフレスパイラル」になるってお話になりますので、加速しないかどうかを見ないといけませんよね、とも思うのですがその辺どうなんでしょ。
では続きですが、
『もっとも、今後の各国の通商政策等を巡り不透明感が高い状況が続くことがあれば、コスト削減に注力する傾向が強まる可能性がある。こうしたもと、物価上昇を賃金に反映する動きが弱まることも考えられる。』(今回展望)
『もっとも、今後の各国の通商政策等を巡り不透明感が高い状況が続くことがあれば、コスト削減に注力する傾向が強まる可能性がある。こうしたもと、物価上昇を賃金に反映する動きが弱まることも考えられる。』(前回展望)
ここは従来通りの企業行動下方屈曲懸念を特に賃金面で指摘の図です。
『一方、販売価格に賃金を反映する動きが想定以上に強まったり、先行き労働需給が引き締まった状況が続くとの見方が強まるもとで、賃金の上昇圧力が強まっていく可能性もある。こうしたもとで、中長期の予想物価上昇率の高まりを伴いつつ、賃金・物価とも上振れていくことも考えられる。』(今回展望)
『一方、販売価格に賃金を反映する動きが想定以上に強まったり、先行き労働需給が引き締まった状況が続くとの見方が強まるもとで、賃金の上昇圧力が強まっていく可能性もある。こうしたもとで、中長期の予想物価上昇率の高まりを伴いつつ、賃金・物価とも上振れていくことも考えられる。』(前回展望)
ここから上振れの話になりまして、最初の部分は同じなのですが次が今回のハイライトの一つとなりますわな。
『この間、このところの米などの食料品価格上昇については、天候要因等の影響が大きく、消費者物価の押し上げ寄与は次第に縮小していくと想定している。もっとも最近の価格上昇には、人件費や物流費を販売価格に転嫁する動きも相応に影響しており、企業の賃金・価格設定行動次第では、価格上昇が想定以上に長引く可能性もある。食料品は消費者の購入頻度が高いものであるだけに、価格上昇が長期化した場合には、家計のコンフィデンスや予想物価上昇率の変化を介して、基調的な物価上昇率に二次的な影響を及ぼしうる点にも留意が必要である。』(今回展望)
『この間、このところの米などの食料品価格上昇については、それ自体は天候要因等を背景とするものだとしても、家計のコンフィデンスや予想物価上昇率の変化を介して、基調的な物価上昇率に二次的な影響を及ぼしうる点にも留意が必要である。』(前回展望)
・・・・・いやーこの説明がクソ長くなりましたね。という話なのですが、特に今回詳しく述べている中で「もっとも最近の価格上昇には、人件費や物流費を販売価格に転嫁する動きも相応に影響しており」という部分が、足元の物価上振れの要因が必ずしもワンタイムのコストプッシュとは言い切れない(人件費や物流費の転嫁だからコストプッシュはコストプッシュだけど天候要因のようなワンタイムではなく持続的な要素が含まれている面が相応にある、というお話)と言っており、しかもその後に「価格上昇が長期化した場合には」二次的な影響を及ぼし得る、と「価格上昇が長期化した場合のリスクがある可能性」をスペシファイして指摘しているのもポイントになります。
つまりですね、従来日銀の説明って「コストプッシュだからいずれ下がるので政策対応せんんでヨロシ」で通していたのですが、「コストプッシュと言えども持続的になる可能性がある(政策対応云々は言ってないけど)」というのを前面に出してきた(もちろん日銀だってアホじゃないから認識は前からしてたでしょうけどこうやって表に出すのは今回を嚆矢とする訳で)、というのと「物価が高止まりした場合にトレンドインフレやインフレ期待に上方圧力を掛ける」すなわち「2%で止まらないリスク」についてより明確に説明した事、というのが地味に重要、ということですな。
特に後者に関して言えば、そもそも論として日銀のメインシナリオは「コストプッシュだからワンタイムが剥落すれば物価が下がる」と言いつつ手前の見通し常に外している訳でして、今回もその流れでやっぱり手前の見通し外すんじゃねえか説は濃厚な訳で(個人の感想です)、そうなりますと従来あまり言ってなかった「物価が上にオーバーシュートのリスク(あくまでもリスクであってメインは変更ないハトハトですけど)」を突っ込んできた、という訳ですので、そうなると「上振れリスクにも目配りして今の大幅な緩和状態の幅を小さくする調整が必要」ってのが早期に打ち込まれる(もちろんその時に物価上昇が鈍化したり通商問題が爆発してたらメインシナリオはハトハトなんだからハトハトのままでしょうけれども)という可能性が無いとは言えない、という事かと思います。
〇記者会見雑感メモ(本当にメモだけ)
時間も無いのと会見要旨出てから、ではあるのですが、会見の植田さんの説明が相変わらずのハトハト音頭でナンジャソラとなって円安になったのはご案内の通りですが、今回おーと思ったのは従来「住宅ローン金利ガー」とか「借入金利上昇で中小企業ガー」とかいう感じで利上げするな見たいな質問が散見されていた会見が、今回は「この物価上昇の中何で利上げしないんですか」の方向に一気に傾いたことだな、と思いました。
まあよく考えたら当たり前というか、アタクシ的には前回の衆院選だって前面には出てなかったけど物価高は与党のダメージになっていたと思っていましたから反応が遅いわとは思いますが、まあ遂にそうなったか、というのは感慨深く会見を眺めておりました、ということで本日はこの辺で勘弁。
2025/07/31
〇日銀は2026年度の物価をどう置いてくるのでしょうかね
でまあ答え合わせはいつもだと書き物終わってからにするのですが、一応日銀ネタで変なもんが出ていないかということでちょっと見たわけですが、日経ちゃんの方を見るとFOMCのお話(会見は利下げ慎重って話だったのですねなるほどなるほど)しかありませんで、公共放送さんではニュースありましたけど、
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250731/k10014879911000.html
日銀 金融政策決定会合 政策金利を据え置く方向で議論の見通し
2025年7月31日 6時05分
『日銀は31日、2日目の金融政策決定会合を開きます。日銀内では、トランプ政権の関税措置をめぐる日米交渉の合意で不確実性は低くなったという受け止めがある一方、企業収益などに与える影響を見極めたいという意見も多く、会合では政策金利を据え置く方向で議論が行われる見通しです。』
途中を飛ばして、
『一方、日銀は今回の会合にあわせて2027年度までの経済と物価の見通しを公表します。
コメをはじめとした物価の高止まりや関税措置をめぐる日米合意などの最新情勢を経済成長率や物価上昇率の見通しに反映しますが、この先の金融政策運営に大きくかかわるだけに、どのような予測を示すかが焦点となります。』(以上上記URL先より)
ということでですね、2025年度よりもアタクシ楽しみにしているのが2026年度でして、前回が2026年度CPIが中央値で+1.7%、コアコアで+1.8%ということで、まあこれをもって物価目標達成時期を1年も後ろ倒しにした訳ですが、普通に考えて2026年度のCPIって2%割れねえんじゃネーノという気はだいぶするんですけれども、そうなると物価目標達成時期がまた引き戻される、という面白現象が発生する(前々回1月展望は2026年度コア中央値+2.0コアコア中央値+2.1で、ここからバサッと下げたので達成時期が1年延びた)ので、政策金利パスの話がドチャクソ変わってしまう、という話にもなりかねない訳ですな。
でまあそうなるのは大本営も先刻ご承知の介でしょうから、2026年度の物価見通しを2%に意地でも乗せないんじゃないかと勝手に妄想しておるわけですけれども、まあここの所をどうするのか、というのが注目されますな。
あとはまあ「お気持ち物価」の内容が未だに分からんし政策委員の金懇とか見ても人によって言及するものが微妙に違うわとか、アクチュアルの物価を外し続けて物価高が遂に政治イシューになって「給付か減税か」とかいう頭が悪いというかコジキ根性丸出しというか、そういうクソ選挙が国政において行われている現状について物価安定の責務を持っている筈の日銀は何か責任を感じないのかとか、そういう辺りに関してはどうなんでしょ、という辺りだと思いますがその辺のアタクシの落語は散々やっているのでまあ今日は出てくるものを拝見して楽しみたいと思います。どうせ金利は据え置きなんだし。
2025/07/30
〇新浪さんに加えて中曽さんも「日銀の政策ビハインド」を指摘していますしツッコミがド直球なのよねこれがまた
ということで金融政策に関して2つの記事がありましたのでクリップクリップ。
・新浪さんは平常運転とは言え「物価高の対応が遅れている」と明確に指摘しているのはポイント
新浪さん
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-07-29/T05IZUGQ1YV900
日銀はすぐ利上げすべき、経済悪化なら「総裁の責任」−同友会新浪氏
吉田昂
2025年7月29日 18:53 JST
『経済同友会の新浪剛史代表幹事(サントリーホールディングス会長)は29 日の定例会見で、日本銀行はすぐにでも利上げすべきだと主張した。現状は金融政策による経済情勢への対応が遅れているとの見方を示し、さらに後手に回り状況が悪化した場合には「総裁の責任だ」と述べた。』(上記URL先より、以下同様)
「参院選の連立与党敗北は総裁の責任」って言わないだけ抑制していますけど、「金融政策による経済情勢への対応が遅れている」ってのは思いっきりそう言ってるのと大差ないじゃろと思う訳でございますよ。まあボンクラ政治家の皆様とボンクラメディアが全然気が付いていないみたいだから助かっているんですけれども。
『新浪氏は、金利が上がらないことで円安が長引き、日本に輸入される食品などの高騰につながっていると指摘。物価の番人である日銀が、過度にビハインド・ザ・カーブ(後手に回ること)は許されないとの見解も示した。』
イイシテキダナー
『新浪氏は利上げ観測による長期金利の上昇にも言及し、「これだけ一気に上がっていることを考えると、ここで適正な判断が必要だ」と述べた。』
ここの文脈が良くわからんのですが、長期金利上昇が困るみたいな言い方をすると、日銀は「じゃあ利上げしません」になるので、長期金利上昇の話と利上げの話を絡めるのは混ぜるな危険の話になるんですよね。
まあアレです、そういう話をするのであれば「日銀が短期金利を物価情勢に対して不適切な低水準に維持していることから長期金利に上昇圧力が余計に掛かっており、短期政策金利を適正水準に引き上げるようにすれば長期金利の上昇圧力が分散されますので却って市場は落ち着きやすくなる」みたいな理論で説明することになるんでしょうけれども、経済同友会の会見でその話をして伝わるのかというと疑問符が100個くらいつくのでムツカシヤなんじゃないかと思いました。
まあそれは兎も角として、新浪さんは平常運転が日銀の緩和政策正常化論者なので利上げしろ、ということそれ自体ははいはい新浪さん新浪さん、になるのですが、「日銀は物価高の対応が遅れている(まあ物価高放置でもあるのですが)ので怪しからん」というのがこのような立場の方が前面に出して発言する、ということでニュースバリューもある方ですので、このド直球の観点からの正常化要求圧力(別に圧力じゃなくてべき論から言ったらただのド正論なのですけれどもね)が強まってくると、ハトハトチキンと言えどもケツに火が点いてくる訳でして、まあ連中ハトハトチキンだけに焼鳥にはなりたくないので慌てて正常化の方に舵を切りだす、という流れが着々と進んで頂きたいものだと思う次第であります。
だから月曜も弊駄文では「利上げに足りないのは環境ではなく勇気」と申し上げた次第でして、そもそも基調的物価が何なのかを明確に定義できない上に黒田末期にコアコア物価と言い出してから「基調的物価」で示しているものが利上げしないことに都合の良い内容(=2%行ってないものをチェリーピックして「基調的物価」と称するというムーブですね)にコロコロと変化している訳で、何か確固たる基準が示されてその数字が2%行ってないんだからどうのこうのというのではない、ってことでしたらそれはもう「お気持ち物価」なわけですが、お気持ち物価だけにそのお気持ちが変わるような事態、すなわちハトハトチキンの丸焦げ待ったなしという危機感が日銀の緩和政策正常化に向けた強力なドライバーになり得るというもんだ、という事ですな、何か情けない話ですし、お前それ分析でも何でもねえだろと言われると何も言えませんけどwww
・中曽元副総裁のロイターインタビュー
ほうほうこれはこれは
https://jp.reuters.com/opinion/forex-forum/RAHGQJMA7JOCVOXOME5QB2SGYI-2025-07-29/
インタビュー:関税巡る不確実性十分に晴れれば利上げ模索か、物価上振れに要警戒=中曽元日銀副総裁
木原麗花
2025年7月29日午後 12:32 GMT+9
28日のインタビューだったようです(記事巻末にあります)
『[東京 29日 ロイター] - 中曽宏・元日銀副総裁(大和総研理事長)は、ロイターのインタビューに応じ、米国の高関税政策を巡る経済・物価の不確実性が十分に晴れ、経済・物価見通しに確信が得られれば、日銀は再利上げを模索するとの見方を示した。』(上記URL先より、以下同様)
まあこれ自体はどうということではなくて、「不確実性が十分に晴れた」というのはこれまた「お気持ち」の世界になりまして、まあこの「不確実性」で一番酷かった説明は昨年の7月にサプライズ気味に利上げした後に米国要因も相まって市場がアイヤーとなった後になって植田総裁が9月の決定会合の会見で「米国の不確実性ガー」と言い出したのは良いんだが、その不確実性は6月辺りから始まっていた、とかじゃあお前何で7月に利上げしたんだよアホなのか、という説明でございました訳でして、この「不確実性」云々も結局のところ取って付けた小理屈になるわけですな。
でまあこのラインで話が展開されるなら無難なおもんないインタビューになりますがその先がさに非ずで、
『その上で、高水準で推移する賃金や、値上げに前向きな企業行動、食品価格の高騰がインフレ予想に影響を与える形での物価の上振れリスクに警戒感を示し、ビハインドザカーブに陥る(後手に回る)ことがないよう政策を運営する必要があると話した。』
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!
ということでして、この「ビハインド警戒」って現在の政策委員会だと明らかに指摘しているのが田村さん、他には高田さんも警戒しているような節がありそうですが、野口さんがビハインド警戒とかいう可能性はゼロですし、中川さんはどうせ大本営腹話術人形ムーブでしょうから(個人の偏見です)あとは直近の新任委員の小枝さん(この前の多角的レビューにおける指定討論やら就任会見を見た感じでは誠に遺憾ながら腹話術人形になりそうな素質を感じます(個人の偏見です))、増さん(現時点では浴わからんですが、以前の三菱商事出身の亀崎委員は中々の抜刀斎だったので、同様に期待をしております)が、この「政策ビハインドのリスク」をどう捉えるのかは注目していきたいと思いますので、どうせ今回は政策据え置きなのは見え見えですから、「主な意見」で「ビハインド警戒」の人が増えるか否か、というのをアタクシ的には注目したいなと思っています(もちろん今回の会合で急にまたタカ的ジャガーチェンジしたら見るまでも無いかもですけどw)
でもって記事の続き。
『中曽氏は、日米関税交渉が合意に達し、自動車を含む米輸入関税が引き下げられたことはポジティブな展開としつつも、日本経済は「米関税による輸出減少だけでなく、世界経済の減速の悪影響を受けるだろう」と述べ、不確実性の高さを勘案すると「日銀がしばらく様子見姿勢を維持する必要性を感じるのも理解できる」と語った。』
暫く、というのがどのくらいの時間軸なのかは、この先にあるように「わからん」との仰せでして、まあそういう意味では「ビハインド警戒」のところはポイントとしては大きいのですが、ゆうてまあ微温的でもあって、山口(廣秀)元副総裁のように危機感持って日銀のチキン状態を叱咤激励しようというほどの勢いではないのはまあ(良くも悪くも)中曽さんだなと。
『一方、そうした不確実性が十分晴れ、「経済・物価が見通し通り推移する」との確信が得られれば、日銀は再利上げを模索すると予想した。再利上げのタイミングなどは「経済・物価の今後の推移に大きく依存する」として明言を避けた。』
だそうなので日銀のケツを叩くには至っていません、為念。
・・・・とはいえ中曽さんのこのインタビューでのポイントは「物価に対して政策がビハインドしないか問題」であって、さすがにロイターさんもこの点に関して字数を割いて記事にしています。
『日銀は5月1日に公表した展望リポートで、2025年度・26年度の消費者物価指数(除く生鮮食品)の予想を下方修正した上で、物価のリスクバランスについて「下振れリスクの方が大きい」とした。』
はい。
『だが中曽氏は、物価について「上振れリスクもある」とみている。』
そうだそうだ!
『深刻化する人手不足もあって賃金は高水準で推移しており、賃上げは来年も続く見込みであるほか、企業の価格設定行動も変化し、賃金上昇やサプライチェーン(供給網)の寸断、円安などによるコスト上昇を「よりスムーズに転嫁するようになった」と分析した。』
最近の値上げって「乗るしかないこのビックウェーブに」って感じで何か言い訳つけて値上げしてねえかと思わないでもない今日この頃ですが、それもまたインフレ期待のシフトアップと考えられますわな。
『また、物価を見る上で特に注意が必要な点として、予想物価上昇率が各種サーベイや市場指標から見て上昇トレンドにあることを挙げた。』
仰せの通り。
『日本のインフレ予想は足元の物価情勢に影響されやすい性質があるが、「人々が頻繁に購入する食品の価格はヘッドラインのインフレ率よりかなり速いペースで上昇しているため、体感物価は高く、予想物価上昇率がオーバーシュートするリスクがある」と指摘した。』
『日銀は金融政策運営に当たって、これによる物価の上振れリスクにも注意を払いながら「ビハインドザカーブにならないよう運営する必要がある」と述べた。』
というかもうオーバーシュートしてねえかって気がせんでもないのですがまあそこはさておきますが、日銀って黒田緩和を何ぼ継続しても「2年で2%行かなかったら職を辞す覚悟」とか言ってた岩田規久男とかいうクソボケジジイの話を無かったことにするために、その後物価が上がらんことに関して「適合的期待形成の要素が強い我が国においては云々」という説明をしていたわけです、まあ物価には慣性があるという考えもありますのでその考え自体は屁理屈ではなくてちゃんとした理屈とも言える訳ですな。
然るに、物価が上がらんで金融緩和政策を継続していた時に、金融緩和の効果が乏しい(のに何でこんな極端な政策を継続するのか)とか言われている際に「いやいや適合的期待形成というのがありましてなかなか大変なんですよ」と説明していた訳ですので、同じ理屈でアクチュアルの物価が2%を(ずっとディスインフレだった日本としてみたら)大きく上回った状態が3年も継続しているんだったら、適合的期待形成によるインフレ期待の引き上げがむしろ行き過ぎるのではないか、というのは中曽さんの仰る通り、ということになりますわな。
ただまあご案内の通り、「自分たちの政策(今であれば物価情勢対比で飛んでもない規模の金融緩和を維持すること)に都合の悪くなったことの説明はフェードアウトする」という事を大本営が行っておられる訳でございまして、中曽さんのこの「適合的期待形成の観点から期待インフレが上方にオーバーシュートするリスク」という指摘は、過去の日銀の理屈を逆手に取っている点で大変にお洒落、というかまあ中曽さんとしては純粋に指摘しているだけでイヤミで言ってるわけではないんでしょうけれども、結果的には黒田末期以降に顕著になった日銀の「都合が悪くなると過去言ってた理屈を引っ込めて別の理屈を繰り出す」ムーブに対するお灸になっているのが大変に美しい話ですね。
でもって財政の健全運営に関しても発言がありまして、ちょっと飛ばして記事の最後の方になりますが、
『日銀が国債買い入れの減額を進める中、新たな買い手の存在が必要となるが、中曽氏は規制対応上の理由もあり、国内銀行勢は買い入れを大きく増やすことは難しく、海外投資家のプレゼンスが今後も高まっていくだろうと予想した。』
ふむふむ。
『海外投資家は国債保有に高めのプレミアムを求める傾向があり、そうした投資家の信認を確保・維持するためにも、持続可能な財政政策の確立は不可欠との見方を示した。』
なるほどこの説明はアリですね。さらに、
『仮に再度金利が急騰した際の対応については「イールドカーブの特定のゾーンが一時的に急騰するような場合、日銀が持っているツールを使って介入することはあり得る」とする一方で、財政運営に対する信認といった財政構造要因による市場の変動に「日銀ができることはほとんどない」と語った。』
その通りというか、財政構造要因による市場の変動に対して日銀が長期国債買入をおこなったら、それは財政ファイナンスって言われて一段と状況があっかするだけ、という悲惨な結果を招きかねませんので、中曽さんのおっしゃる通りかと存じます。
ということででですね、新浪さんは「物価高に対する対処が遅れているのではないか」という直球だし、中曽さんは「適合的期待形成の観点から期待インフレが上方にオーバーシュートするリスクがある」という日銀がこっそりとお蔵入りさせたロジックをぶっこんで来る、ということで、この2本は割と痛いところをついているんじゃないかと思いましたが、大本営が痛いと思ってるか蛙の面にションベンですわあっはっはと馬耳東風モードなのかは大本営じゃないと分からないので判然とはしませんなw
2025/07/28
〇政治がゴニャゴニャしているのでまあ1回パスなんでしょうが金曜の引け近くにはBBGがいつもの謎関係者記事を
・そらまあ日米合意で内閣支持率上がらん方がおかしいのだがさてどうなるのやら
読売新聞くやしいのうくやしいのう
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-07-27/T012QKGQ7KZU00
石破首相は続投方針を維持、自民内で退陣論拡大でも−あす議員懇
広川高史、古川有希
2025年7月27日 12:08 JST 更新日時 2025年7月27日 17:41 JST
『毎日新聞が26、27両日に実施した全国世論調査によると、石破内閣の支持率は29%で前回の6月調査から5ポイント上昇した。次の首相にふさわしい人のトップは石破首相で20%を占めた。支持政党別の内閣支持率は、自民党支持層が70%、公明党支持層が4割超だった。』(上記URL先より)
まあ毎日新聞がそもそも石破退任の意向ってのを初手に書いているのですが、そっちの落とし前はどうなるのやらという感じですが、さすがに読売の先日の社説の題名は酷かったわ。
https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20250724-OYT1T50293/
石破首相退陣へ 早期の表明で新体制構築急げ
2025/07/25 05:00
なんで社説の題名が「退陣へ」なんだよというお話ですなwwwww
まあそれはそれとしまして、何がどうなるのかさっぱりワカランチ会長ではあるものの、そんなにあてになるとも思えないけどヤフコメとか見ていると「そもそも負けたのって石破だけのせいじゃないし辞任しろって言ってる連中が裏金だの沖縄で暴言だの党の青年局何とか会でダンサー呼んでどうたらこうたらとかやって足引っ張ってただろ方面のツッコミの方が多くなってきている感もあり、なんか知らんけどこうどなじょうほうせんが展開されていて素人にはさっぱりよくわからんし、政治がこれだと日銀もひたすらどっちつかずの話をして今回は1回パスにしてくるんじゃないかと思いますけどどうなんでしょうかね。
・金曜の引け前10分くらいで出ていたのだが利上げに足りないのは「環境」ではなくて「勇気」なんだよな〜(BBG記事関連)
金曜は何となく前日比プラスでウニョウニョと推移していた債券市場ちゃんですが、引け際一閃BBG記事で先物ストンと下げて終了でござるの巻。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-07-25/SZVT2HGPL3YM00
日銀が年内に利上げできる環境整う可能性、日米関税合意で−関係者
伊藤純夫、藤岡徹
2025年7月25日 14:55 JST 更新日時 2025年7月25日 15:12 JST
→来週の決定会合では政策維持へ、不確実性低下で企業行動が焦点に
→関税率15%は見通しの前提の範囲内、シナリオの構図にも変化なし
とまあそういうことですが、もう引け際狙いすましたタイミングでヘッドラインを打ってくる行為に関しましては(ピー音)ではないのですかと言いたくなる訳ですが、とは言ってもこれまあ題名で反応するのもアホウな話じゃろとは思いました。
まあ先に記事を拝読しますけど、
『日本銀行は、日米関税協議の合意を受けて、企業行動次第では年内に利上げできる環境が整う可能性があるとみている。複数の関係者への取材で分かった。』
『関係者によると、日米合意は日本企業にとって不確実性の低下につながり、2%物価目標の実現確度を高めると日銀はみている。焦点は具体的な企業行動とその影響という次の段階に移る。交渉が長引き、関税政策の行方が不透明だった従来に比べ、ヒアリングやデータに基づき日銀が早めに政策判断できる可能性が高まるという。』(上記URL先より)
って話なんだが、そもそも論としてアクチュアルの物価が2%を思いっきり超えた状態が継続していて、とうとう国政選挙の最大イッシューが「物価高対策」になる(前回の衆院選ではちょっとは言われていたし、正直前回の衆院選だって物価高は効いてたと思うけど)という状況の中、「物価安定に責任がある」はずの日銀は本来もっと早急に金融緩和政策の度合いの修正を実施して然るべき状況にあるわけでして、別に「環境」だったらとっくの昔から利上げできる「環境」にあるものを延々と引っ張っているのが現状な訳ですよ今の日銀って。
じゃあ日銀に何が足りないのかと言えばハトハトチキンと言われますように(誰が言ってるのかwwww)足りないのは日銀執行部の「勇気」だったり「胆力」だったりするわけでして、何なら物価高対策がこれだけ社会問題になっているんだから、それだったら今回の決定会合で金融緩和の度合いを調整して然るべき(引き締め水準まで利上げしろとは言っていないので念のため申し添えます、いやもしかしたら引き締めしないといけない位にビハインドしている可能性も否定できないとは思うけど)位の話であって、「年内に利上げできる環境が整う」とか言ってるのが寝言は寝て言えというお話でしょ、とまあ言いたくなるわけですよ、アーコリャコリャ。
とは言いましても、ハトハトチキンが直ぐに治るわけもないというか多分不治の病なので、つまりは「日銀のケツに火が点く状態」になるかならないか、というのが次回利上げがいつになりますか問題のポイントになるんですが、それ以外にはまあさすがにここまで繰り返している「企業の価格や賃金設定行動が下方屈曲しないかどうか」というのを確認できる時期、すなわち年末から来年頭に掛けて(12月会合から1月会合の間に短観、冬季賞与、来年度の賃金設定に関する動きが見えてくるわけですな)のところではさすがに何か判断せざるを得んじゃろ、というお話になるので、あとは9月10月の決定会合に利上げをする胆力がありまっせ的な情報発信が今回あるかどうか、というようなお話で、それが出るならまたなんか急に変なものを食ったのかというようなジャガーチェンジ利上げが、昨年7月や今年1月のように見られるかもしれません、って所でしょうか、知らんけど。
ただまあ何ですな、ちょっと政権がどうなるかとか分からん状況では、この7月会合のタイミングで9月10月に向けた頭出しをするのっていうのはリスクがある、とハトハト先生たちは思うんじゃネーノってなもんでして、そう考えますと今回の決定会合はどっちつかずの鵺みたいな情報発信でお茶を濁してくるようにも思いましたが、そうじゃなかった場合はさすがにちょっとビビるというか変な物食ったモードになるという所ですか、ちなみに決定会合2日目は土用の二の丑の日だそうですので鰻食って急に勇気と胆力が出て頂いても宜しいんですけどねwwwwwww
〇東京都区部CPIとか日銀基調物価とか
https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/pdf/kubu.pdf
2020年基準 消 費 者 物 価 指 数
東京都区部 2025年(令和7年)7月分(中旬速報値)
『◎ 概 況
(1) 総合指数は2020年を100として111.0
前年同月比は2.9%の上昇 前月と同水準(季節調整値)
(2) 生鮮食品を除く総合指数は110.5
前年同月比は2.9%の上昇 前月と同水準(季節調整値)
(3) 生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は109.7
前年同月比は3.1%の上昇 前月と同水準(季節調整値)』
てな訳ですが、まあ最近は「前月比」の方が気になるのですが、3指数とも2か月連続で前月比横ばいとなっておりますな、と言っても前年同月比は相変わらず3%近辺なんで給料上がらんと困るがな状態なのは変わらんのですけど。
でまあ日銀謹製の方ですけれどもこの前の6月全国を受けて先日出ていまして、
https://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/index.htm
例によって刈込平均、加重中央、最頻、の順ですが、
Jan-24 2.6 1.9 2.3
Feb-24 2.3 1.4 2.0
Mar-24 2.2 1.3 1.9
Apr-24 1.8 1.1 1.6
May-24 2.1 1.3 1.5
Jun-24 2.1 1.4 1.6
Jul-24 1.8 1.1 1.5
Aug-24 1.8 0.7 1.3
Sep-24 1.7 0.8 1.4
Oct-24 1.5 0.8 1.3
Nov-24 1.7 0.9 1.1
Dec-24 1.9 1.0 1.1
Jan-25 2.2 1.4 1.3
Feb-25 2.2 1.4 1.2
Mar-25 2.2 1.4 1.4
Apr-25 2.4 1.7 1.8
May-25 2.5 1.7 1.6
Jun-25 2.3 1.4 1.4
まあこれで加重中央とか最頻がまだ1%台前半だからとか言い出しそうではあるのですが、そもそもこの辺の数字が2%にまともに乗っているとCPIの実数自体ってもっと上なんじゃネーノって感じもする次第で、もう普通に物価上昇が定着してるし、やっぱりインフレ期待の上振れの方がまずくないか(しつこいが今回の参議院選挙の結果はまさに消費者のインフレ期待の上振れによる現政権への不満が(それだけじゃないでしょうけど)反映されていると思いますしおすし)とは思うのですが、今回の展望レポートではその辺についての日銀の現状認識を知りたいなあとは思います。ゆうて政治方面からケツ叩かれているとは思えないので何も変わらずノホホンと「基調的物価は2%に達していません」になりそうな悪寒しかしませんけど。
ちなみに上昇品目下落品目は
Jan-24 83.9 10.7 73.2
Feb-24 81.8 12.8 69.0
Mar-24 79.5 15.1 64.4
Apr-24 80.8 14.0 66.9
May-24 79.3 15.5 63.8
Jun-24 78.7 16.1 62.6
Jul-24 75.7 18.8 56.9
Aug-24 74.7 19.9 54.8
Sep-24 76.1 18.2 57.9
Oct-24 75.1 19.5 55.6
Nov-24 75.5 19.3 56.1
Dec-24 75.7 19.0 56.7
Jan-25 77.0 17.2 59.8
Feb-25 78.7 15.7 63.0
Mar-25 80.5 14.2 66.3
Apr-25 80.3 14.2 66.1
May-25 81.6 13.2 68.4
Jun-25 80.5 13.6 66.9
もう「8割の品目が値上げ」っての完全定着じゃろ、と思う訳でこの辺からもインフレ期待はもう結構上昇だろという話になると思うんですよね。
〇内田副総裁高知金懇講演:金融政策パートから
HTML版が出ていますので引用はHTML版から参ります
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/ko250723a.htm
【挨拶】
最近の金融経済情勢と金融政策運営
高知県金融経済懇談会における挨拶
日本銀行副総裁 内田 眞一
2025年7月23日
・実は今回の講演のキモは経済物価の話の方だった(のもあって後回しにしました)訳でして・・・・・
『3.日本銀行の金融政策運営』ですが、いきなり『先行きの金融政策運営』からおっぱじまります。まあ余計な前振りないのはシンプルでよろしい。
『続いて、日本銀行の金融政策運営についてお話しします。』
へい。
『ここまでご説明してきましたとおり、先行きのわが国経済は、海外経済が減速するもとで、成長ペースが鈍化し、基調的な物価上昇率はいったん伸び悩む姿が想定されます。』
ホンマカイナとは思いますが何せ基調的物価はお気持ちなのでつまりは「お気持ちが盛り上がりません」ってな話ですがそれは環境の改善ではなくて勇気が起きるかどうかの話、というのは先ほど悪態をついた通りですwww
『また、各国の通商政策やその内外経済への影響を巡る不確実性は、極めて高い状況が続いており、経済・物価ともに下振れリスクが大きいと考えられます。こうした点を踏まえますと、まずは、緩和的な金融環境を維持し、経済活動をしっかりと支えていくことが大切です。』
まあこれは日米通商交渉合意を踏まえていないのですが、
『日本銀行は、先月の金融政策決定会合において、0.5%の政策金利を据え置きました。図表12をご覧ください。左グラフのとおり、名目の金利から予想物価上昇率を差し引いた実質金利は、足もと大幅なマイナスとなっています。また、右グラフの金融機関の貸出スタンスは、短観の結果をみても引き続き積極的であり、社債等の発行環境も総じて良好な状態が維持されています。わが国の金融環境は緩和した状態にあります。』
大幅な緩和というのは物価押上げ策なんですが、と言いたいのですが、日銀の理屈によるとアクチュアルの物価はこの後下がるので無問題、ということになっています。
『先行きの金融政策運営については、現在の実質金利がきわめて低い水準にあることを踏まえますと、これまでご説明したような経済・物価のメインシナリオが実現していくとすれば、経済・物価情勢の改善に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えています。』
ということで4月展望と同じ説明ですし、
『そのうえで、そうした見通しが実現していくかどうかについて、予断を持たずに判断していく方針です。まず何よりも、ご説明してきたとおり、通商政策に関する各国の交渉の帰趨に加え、そのもとで内外の経済・物価や国際金融資本市場がどういう方向に向かうのか、現在までの各国の経済データからはっきりとはわかりません。不確実性は極めて高く、内外経済は大きな岐路にあるように思えますので、注視していきたいと思います。』
日米通商合意があったのがまさにこの日の朝なのですが、「内外経済は大きな岐路」っていう原稿がそのまま採用されている、という時点でお察しというか「今回は下手な決め打ちはしないで4月の判断のままで行く」ってのが見え見えな訳です。
金曜日にネタにしましたように、会見では当然ながら何度も「日米合意を受けてこの不確実性が晴れたんじゃないでしょうか」という質問が飛んでいましたけれども、それに対して内田さんは基本的にすんげえ慎重な物言いに終始していましたし、大体からして原稿にしたってその気になれば朝一の日米合意を受けた文言を挿入することだって不可能ではない(可能かというと色々面倒かもしれないけど)訳ですが、そーゆーのを一切入れずに日米通商合意前の話を押し出してきている、という時点でお察しなんですよね。
つまり、
『これらの要因はわが国の物価に対しても、押し下げリスクとして働くと考えられます。』
ってことで通商問題が物価押し下げリスク、って認識を示していますが、
『一方で、食料品価格を中心にコストプッシュ面からの押上げ圧力が働いています。』
と言って、
『これら両面の動きが、企業の賃金・価格設定行動などを通じて、先行きの物価見通しにどのような影響を及ぼすか、注目していきます。』
・リスクマネジメントアプローチは植田総裁の好きなお言葉ですね
次の段落ですが、
『経済・物価の先行きには常に不確実性がありますので、金融政策においては、そのことを前提としたうえで、経済・物価の安定の観点から、上振れ・下振れ双方向のリスクに対して最も中立的な立ち位置に調整していく必要があります。この考え方は「リスク・マネージメント・アプローチ」と呼ばれていますが、不確実性が極めて大きい現在であるからこそ、こうしたオーソドックスで、頑健な政策運営を心掛けていきたいと思います。』
って言ってるんですが、まあ日銀大本営としてはそういう理屈なんですけど、そもそも「きわめて緩和的な政策」を継続することのリスクとしてインフレ期待が上放れしてしまうというリスクについては相変わらずのどスルー振りなのは把握しましたけど、インフレ期待が2%で都合よく止まらないで上振れするのって「リスクマネジメントアプローチ」の中でも重要な点じゃないのか、というのが最近の欧米での金融政策ストラテジーの話の中での主流だと思うのですけど何でそう堂々と無視できるんだかとは思います。まあ無視しているというよりはそれを言い出すと利上げしないと行けなくなるのですがそういう胆力が無いから屁理屈捏ねて問題の先送りしているだけだと思いますけど(個人の偏見です)。
・長期国債買入の減額では日銀の適正なバランスシートの規模の問題を切り口にするのは毎度のように回避ですねえ
次が『長期国債買入れの減額計画』ですがこれは途中から引用します。
『先ほど申し上げたとおり、日本銀行では、長期金利は金融市場において形成されることが基本であり、これをさらに進めるためには、国債買入れの減額を継続していくことが望ましいと考えています。一方で、今後の減額ペースが速すぎると、市場の安定に不測の影響を及ぼす可能性もあります。』
ということでそもそも論としての日銀の適正なバランスシートという話はしませんな。まあ内田副総裁は先般の金融学会での講演で堂々と「ひとつは、金利操作と切り離して、バランスシートの大きさを決められるようになった結果、資産サイドを使った政策を大規模に行うことが可能になったことです。」(2025年6月7日の日本金融学会での内田副総裁講演より)という説明をしていますので、その理屈からすると「日銀の適正なバランスシート規模」という発想にならんのですよ。
勿論ですがその内田さんの説明って盛大なインチキでして、「金利操作と切り離して、バランスシートの大きさを決められる」のであれば、初手から国債を全部日銀が購入しても何の問題も無い、というバーナンキの背理法も裸足で逃げ出す無税国家が発生することになりますが、そうなる訳ないのですから(その時にインフレが上振れた場合には中央銀行は当座預金付利によって飛んでも無い額の統合政府による財政支出を余儀なくされるし、その財政支出が経済を刺激したらインフレが止められなくなりますがな)バランスシートの規模の切り口で説明していない時点でインチキにも程が有るわけですし、
・どう見ても財政ファイナンスです本当にありがとうございました
『特に減額が進むにしたがって、フローやストックの面で市場参加者が購入・保有する国債の額は大きくなりますので、市場参加者の見方も伺ったうえで、減額ペースの縮小が適当と判断しました。』
市場配慮と称していますが、この説明は「これまで日銀が財政ファイナンスを行っていましたので本来市場が許容できない規模の国債発行が可能でした」と言っているのと同義なんですよね。でまあその先はクソどうでもいいですが、
『このほか、今回決定した計画は、これまで同様、国債市場の安定に配慮するために必要な柔軟性を備えたものとなっています。すなわち、今後、長期金利が急激に上昇するといった例外的な状況が生じた場合には、機動的に、国債買入れの増額等を実施し得るとしているほか、来年6月の決定会合では、国債市場の動向や機能度を点検しつつ、新たな減額計画の中間評価を行い、必要があれば、適宜、計画に修正を加えることとしています。』
まあ結局この辺りの話も「スムージング」の名目になっていますが、日銀が財政ファイナンスをして国債発行を支えているのがビルトインされているから簡単に戻せない、という話ですし・・・・・
・デフレ脱却に国債買入が効果があったんだったらインフレ抑制のためには新規の国債買入を最低でもゼロにしないといけないのでは??
次の段落ではこういう説明しているんですけど、
『2013年からの大規模な金融緩和は、政府の施策などと相まって、デフレ経済の根底にあった雇用の余剰を解消し、現在、人手不足は企業行動や経済構造を変える原動力(ドライビングフォース)となっています。私は、これは日本経済にとって必要な政策であったと思っています。』
だったら国債買入は強力に物価押上げ効果があるという話になりますので、
『一方で、何事もフリーランチはなく、この政策の最終的な得失は、出口を完了するまで確定しません。出口を成功させてはじめて、この政策が日本経済にプラスの効果をもたらしたといえると思っています。』
って言ってるんですが、期待インフレが上振れしたりすることを回避するためには「強力な緩和」は要らない訳で、現状の金利水準が「強力な緩和」ってさっき言ってたじゃんと思いまするに、なんか色々と矛盾しているんだよなと思う訳です、これが政策金利が1.5%位に乗っているならまだ様子見の大義名分あると思うのですが・・・・・・
ということで、長期国債買入のところは一部の引用とさせていただきました(時間の関係というのもありますがw)
2025/07/25
〇内田副総裁高知金懇ですが金懇挨拶の続きの前に先に記者会見ですが通商合意を受けたコメントはかなり慎重ですね
https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2025/kk250724a.pdf
内田副総裁記者会見
――2025年7月23日(水)午後2時から約35分
於 高知市
まあ今回注目されるのはこの日の朝に出てきた通商合意に対する評価、となるわけですが・・・・・・・・
・さすがに「不確実性の低下」だが「不確実性は依然として高い」だそうでまあ手堅いというか慎重というか
『(問)日米交渉が今朝合意しましたけれども、その受け止めとですね、午前の講演の中で関税措置を巡って不確実はきわめて高いと指摘されていましたけれども、今回の合意でその不確実性というのは一定程度緩和されたことになるのか、お考えをお願いしたいのが一点目です。』
一発目の質問が当然これである。でもって内田さん2番目も含めて一気に回答しているので後半も引用しますが、
『二点目は、講演の中で関税措置を受けた企業の対応はこれからだと指摘されてましたが、この企業の影響がある程度データだったりヒアリングで出てこないと、次の利上げの判断はできないということなのか、この二点お願いします。』
てな質問ですが、会見録見れば一目瞭然なのですが回答が長くて、まあこの時点で「ああでもないこうでもないと説明をして煙に巻く攻撃モード」に入っているのが読み取れますな。本来だったら1点目なんて「一定程度緩和されましたが、今後の情勢を見たい」で終わりだと思うのですが、まあその部分の回答だけでこの長さなんですよね、ということで引用しますが、
『(答)午前中でしょうか、石破総理が、日米間の関税交渉が合意に至ったと発表されたことは承知しております。この間、関税交渉にあたられた政府関係者の皆さまには、心より敬意を表したいというふうに思います。今回の合意、大変大きな前進であるというふうに思います。日本経済にとって関税政策を巡る不確実性の低下につながるというふうに考えております。』
『経済・物価への影響ということに関しましては、合意の内容を精査したうえでしっかりと分析していきたいというふうに思いますし、来週決定会合で展望レポートを公表することにしておりますので、その中にも反映していきたいというふうに思っております。』
「一定程度緩和されましたね」の部分だけでこんなに長く説明している辺りが、「下手に決め打ち文言を入れないようにしながら全方位にヘッジ」という今回の内田さんの金懇挨拶を踏襲しているな、と思いました。
『もちろん、今回、特に日米間、それから日本の企業にとっての不確実性が低下するということで、大きな前進と申し上げましたが、当然のことですが、各国の交渉、米中とか米欧とか、こういったものは残っているわけですし、それから関税の影響というものが、これは内外というべきでしょうが、国内あるいは海外、世界経済に対してどういう影響があるのかということは、他の国の例をみましてもなかなかハードデータで確認しづらいとか、ちょっとどのぐらいの期間かかるのかがあまりはっきりしないということが、今日の講演でも申し上げましたけれども、出ています。』
『そういう意味で当然ながら不確実性は残っているということだろうと思います。』
結論までが長いwwww
『まとめますが、非常に大きな前進であり日本企業にとっては不確実性が低下したということではありますが、世界経済全体、日本経済全体にとっての不確実性は引き続き高いというふうに思います。』
はい「不確実性は高い」頂きました。
『そういう意味ではですね、その点を含めて今日の金融政策のパートで申し上げましたけれども、常に先行きというのの不確実性はあるわけでありまして、その不確実性がある中で一番良いところにポジショニングするというのが基本的な金融政策の考え方、リスク・マネジメント・アプローチということですので、そういった考え方に沿って、政策は運営していきたいというふうに思います。』
ちなみにこの「リスク・マネジメント・アプローチ」ってのは就任直後の内外情勢調査会(2023/5/19)で植田総裁が思いっきり言ってた理屈でして、これを前面に出していく説明に切り替えてきているな、というのは(ちょっと飛ばしていますが内田さんの金懇挨拶の金融政策パートでもこの話がありましたのでそれは後日)思いました。
でまあそのリスクマネジメントアプローチですけれども、次の質問で、
『(問)先ほどの発言の中でもリスク・マネジメント・アプローチという言い方をされましたけど、今回のその合意を受けて、上振れ方向のリスクをより意識していくことになるのか、まだまだ上下双方向意識していくのか、その辺りについてお願いします。』
いやちょっと待て4月展望は物価も経済も下振れリスクなんだから「まだまだ上下双方向意識していくのか」じゃねえだろちゃんと質問してくれと思いましたがその回答。
『(答)当然これは上下双方向をみていく必要があるということだと思います。まず一般的に、当然、上方向・下方向のリスクというのは常にあるわけで、前回の展望レポートにおいては、経済・物価ともにダウンサイドリスクが大きいという判断をしたわけです。』
内田さんに補足されているのはクソワロタwwwwww
『これはやはり、関税を巡る、これは日米だけではなくて、各国の交渉というのがあるわけであり、かつ、そのことがどういう経済・物価への影響が出てくるのかというところに不確実性が高い、その結果として物価にも影響するであろうということで、4
月の時点では判断したわけであり、少なくとも大きな構図においては、それが続いているというふうに思います。』
>大きな構図においては、それが続いているというふうに思います
>大きな構図においては、それが続いているというふうに思います
>大きな構図においては、それが続いているというふうに思います
エライ慎重な物言いになっていまして、
『もちろん今回の合意ということは、大きな前進だと一番最初に申し上げました通り、特に日本企業にとってですね、不確実性の低下にはつながるというふうに思いますけれども、引き続きこのダウンサイドリスクもみないといけないということだろうと思います。』
という回答になっておりまして、今回の通商合意を受けて別に威勢の良い事を言っても罰は当たらんとは思うのですけれども、変に威勢の良い事を言った結果市場が変な着火でもしたら面倒、というのもあるし、ゲルの進退問題→高圧経済とかいう馬鹿理論を唱える馬鹿が後継になる、というリスクも考えた場合、あんまり威勢の良い事言って利上げ路線を強く出すようなことをすると後で引っ込みがつかなくなる、というのを懸念したってのもあるんじゃなかろうかとは思ったのですが、まあそんなこんなで今回の会見って通商合意を受けた威勢の良い発言がそんなに威勢が良くない、という事になっているのが特徴だと思います。
でまあ以下延々と通商合意の話で、そのほかに参院選受けた財政拡張ネタがあったのですが・・・・・・
・うーんなんで「物価高対策」が最大の政治イシューになっていることは質問しないんだろう
これがとにかく不可解なんですけど、例えばこの質問。
『(問)(前半割愛)すみません、ちょっと話が変わるんですが、先般の参院選で与党が敗北してですね、野党が選挙期間中に消費税の減税などを訴えたこともあって、今後の財政について拡張的なですね、思惑というのが広がってる部分があると思います。今後そうしたですね、物価高対策を巡って、財政が拡張的な動きになった場合、いわゆる物価が上振れてしまう、インフレ期待が上がってしまう、財政拡張によるそういう物価の上振れリスク、インフレ期待が上昇してしまうリスクについて、副総裁、今どのようにお考えか。この二点お願いします。』
この質問が「物価高対策」問題に言及はしていたので一番マシな質問だと思ったのですが、でもまあゆうてこの質問も「財政拡大に対して」の質問で、そっちは日銀直接的にどうこうできる話じゃないし、下手なこと言ってゲル政権飛んだあとにエライ目にあうのも嫌でしょうから余計なことは言わんじゃろと思う訳で、それよりも弊駄文で再三再四申し上げておりますように、物価の安定を責務とする中央銀行が「これから物価は下がる」と言い続けながらアクチュアルの物価見通しを外して、結果的に物価高が政治の大きなイシューになってしまっている、という事に関してどういう所感なんですか、ってのを質問しないのって何なん???と思う訳ですが、弊駄文ではたぶんこのことを1万回くらいは申し上げておりますので耳タコですねすいませんすいません。
とまあそんな訳で金懇挨拶の続きはまた後日参りますね(会見はまあさっきの「慎重ですね」で終わりかなと思います)。
2025/07/24
〇関税15%とかゲルが退任なのか退任じゃないのかとか(ニュースクリップ)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250723/k10014871861000.html
日米で合意 相互関税15% 自動車関税も15%【詳しく】
2025年7月23日 23時13分
『アメリカのトランプ大統領は22日、関税措置をめぐる交渉で日本と大規模な合意を締結したと明らかにしました。日本がアメリカに巨額の投資をする一方、アメリカは8月1日から発動するとしていた日本への25%の関税を15%に引き下げるとしています。また、自動車関税についても既存の関税率とあわせて15%とすることで合意したということです。』(上記URL先より)
選挙期間中に出してやれよとは思いましたし、そもそも向こうがゴロツキみたいにゆすりたかりをしているのに対してびた一文負けないべきとかいうべき論はさておきましても、現実解としては誠に結構な落としどころだし、それが証拠に
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/UAB5QJGYE5JZBFDWSAZYRO2YZI-2025-07-23/
米自動車業界団体、日本との貿易合意に懸念表明 「悪いディール」
David Shepardson
2025年7月23日午後 1:32 GMT+9
米国自動車業界ざまあwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
ということでですな、まあこれは良い花道という格好がつくのでむしろ退任しやすくなるんじゃねえのとかいう話をしてたら毎日が、
https://mainichi.jp/articles/20250723/k00/00m/010/057000c
石破首相、退陣へ 8月末までに表明 参院選総括踏まえ
スクープ
政治 速報 政局 国政選挙
毎日新聞
2025/7/23 11:16(最終更新 7/24 00:59)
ってのをぶっこんできて、読売(と産経はずっとゲル憎しモードなので)が大喜びで新聞号外まで
配って回っておりましたが、夕方近くになって、
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250723/k10014872251000.html
石破首相 続投の意向 重ねて示す 3人の首相経験者と会談
2025年7月23日 19時37分
ということで結局どっちですねんという話ですが、まあ花道引退して後任が高市大先生にでもなろうもんなら高圧経済で物価も円安も高圧ってなお話になるし、なんなら高市と玉木と神谷の悪魔合体とかいうのも出ようもんならそらもうトラスショックも裸足で逃げ出す破壊力、てなもんで円債は日米合意のグッドディールとゲル退任報道のダブルパンチで結局アカンタレとなっておりましたわな。
債券市場ちゃん
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/ECGDF7IRL5OHHKWOMZMKVU77DE-2025-07-23/
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は急反落、長期金利一時約17年ぶり1.6% 日米関税交渉合意で
ロイター編集
2025年7月23日午後 3:20 GMT+9
『[東京 23日 ロイター] - <15:09> 国債先物は急反落、長期金利一時約17年ぶり1.6% 日米関税交渉合意で
国債先物中心限月9月限は、前営業日比98銭安の137円62銭と急反落して取引を終えた。日米関税交渉合意を背景としたリスクオンの流れや日銀の利上げ観測を背景に円債は売り圧力が強まった。財政拡張懸念も引き続き相場の重しとなった。新発10年国債利回り(長期金利)は一時1.600%と2008年10月以来の水準まで上昇した後、同9.0bp上昇の1.590%。』(上記URL先より、以下同様)
ということでまあ売られたわけですが、前場は超長期よりも中期や先物や長期の方が弱かったと思いますし、前場引け後で入札入れる前、という絶妙なタイミングでゲルの退任報道が出て40年国債入札自体は弱めちゃあ弱めの結果なんですが、そもそも論としてヘッジをした後に売り材料の方でのネタが出ている分って当然ながらヘッジがワークしやすくなるので、多少弱くてもまあそんなもんじゃろ、だと思った(のだがどうですかしら)のですが、後場中盤以降に結局超長期弱くなってきて(ノ∀`)アチャーって感じになりました、ってなもんですな。
結局のところ、
『現物市場では新発債利回りは総じて上昇。2年債は前営業日比8.0bp上昇の0.830%と4月初旬以来の水準まで上昇。5年債は同10.0bp上昇の1.120%と3月末以来の高水準。20年債は同7.0bp上昇の2.600%、30年債は同5.0bp上昇の3.130%、40年債は同8.0bp上昇の3.455%。』
ということで、
『 OFFER BID 前日比
2年 0.822 0.829 0.076 15:07
5年 1.111 1.119 0.1 15:06
10年 1.589 1.595 0.092 15:01
20年 2.592 2.6 0.067 15:06
30年 3.132 3.141 0.058 15:06
40年 3.452 3.466 0.086 15:04』
ということで結局並みに全般売られたでござる(なぜか30年が確りなのですが)の巻って感じではございますけれども、この後ゲルが退任をひっくり返し(と言ってもまあ単に時間調整なのかも知れませんが)てきたりしているので何がどうなるやらわかりませんな。
まあしかし花道退陣だったら政権の中で汗かいた人の方が後釜になるってのが従来的なイメージになるので林芳正さんなんか良いんじゃないのと思うのですが、そういう穏健路線になれるのか、高市とかの自爆路線になるのか、まあさっぱりわからんですので素人があまり考えるのも止めておきますw
〇内田副総裁高知金懇挨拶は「全方面にヘッジを掛けた」ってのがワシの第一印象ですな
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/data/ko250723a1.pdf
最近の金融経済情勢と金融政策運営
── 高知県金融経済懇談会における挨拶 ──
日本銀行副総裁 内田 眞一
ちなみに今回のこの金懇挨拶テキストのPDFですが、ここ数回発生していた「半角英数がテキストデータとして認識されない(のでコピペすると該当部分が消えてします)という怪奇現象が解消されていまして、エディターを変えていただいた(元に戻したのかもですが)ようなので誠に結構なことだと思いましたので先に申し上げます。
でまあそれは兎も角としまして、
・見通しの前提はさすがに朝一では差し替え出来なかったか
『2.経済・物価の現状と先行き』ですけれども、
『はじめに、経済・物価情勢です。図表1をご覧ください。わが国経済は、一部に弱めの動きもみられますが、緩やかに回復しています。先行きは、各国の通商政策等の影響を受けて成長ペースは鈍化すると考えられますが、その後は、海外経済が緩やかな成長経路に復していくもとで、成長率を高めていくと見込まれます。』
『もっとも、各国の通商政策等の今後の展開やその内外経済・物価に及ぼす影響に関する不確実性は極めて高い状況にあります。』
『こうした見通しは、各国間の交渉がある程度進展することや、グローバルなサプライチェーンが大きく毀損するような状況は回避されることなどを前提にしたものです。』
ということですので、さすがに朝一の日米合意は踏まえていない内容になっていますが、まあ逆に日米合意がもうちょっと前に出ていたら話の前提を変えないと行けなかったからこの方が「手札」を出さずにすんでいて内田さん的にはラッキーって感じではありますな(いやまあ会見の方で質問は出ていますけど)。
『そこで、今後の経済を展望するうえで、大きなポイントとなる、@各国の通商政策とその世界経済への影響、Aわが国経済への影響、そして、B食料品など消費者物価の上昇と個人消費の動向の3点について、順にご説明したいと思います。』
ということで、3点のポイントが出ていますが、主にその見通しについて(物価についてはもうちょっと詳しく)確認して行ければと思います。
・通商政策の各国への影響:米国の話が殆どですが結論は「決め打ちできない」でして4月展望の前提は・・・・
『図表2をご覧ください。本年春先以降、米国が打ち出した一連の関税政策により、内外の金融経済を取り巻く環境は大きく変化しています。国際機関の経済見通しは、大きく下方修正されました。もっとも、今のところは、各国の経済指標の悪化は、マインド面などのソフトデータが中心で、成長率や雇用などのハードデータは、米国の関税引き上げに伴う駆け込みなどもあって、それほど悪化していません。』
とあってその後個別の説明があるのですが、ここで味わいが深いのは「国際機関の経済見通しは、大きく下方修正されました」という一節を入れていることでして、4月展望で日銀が突出してメインシナリオの下方修正というのを行って大変に目立つ結果になった訳ですが、「僕だけじゃないもん隣の家のIMF君のところだってやってるもん」という説明に余念がないのがさすが日銀大本営(褒めてない)という所ではありますwww
でまあ個別の話はかっ飛ばして先行きに関してですが、
米国について
『先行きは、メインシナリオとしては、労働需要の緩やかな減速と労働供給の減速がおおむね見合うようなかたちで、タイト感がゆっくりと緩和していく方向にあるとみられます。そうであれば、賃金の上昇を介した二次的なインフレ率の高まりには繋がりにくいということになります。一方で、関税の影響で消費者物価が大きく上昇し、かつ、労働市場のタイト感が強い状況が続く場合には、インフレ方向のリスクを意識せざるを得なくなります。逆に、労働市場が大きく悪化する場合には、経済の減速を意識した政策対応になると予想されます。このように、今後数か月の消費者物価と労働市場の動向は、米国経済やFRBの政策運営をみるうえで重要であり、それは為替市場をはじめとした国際金融資本市場にも影響を与えると考えられます。』
まあ景気悪化が先に来るのかインフレ再燃が先に来るのか、というのはよくわからんし対応も変わって来るだろうから決め打ちできません、というのはその通りだと思いますし、つまりこれは米国は利下げで来る、という決め打ちもしていない、ということでして、それはそれで日銀の緩和調整方向への可能性を高めている、ということになりますわな。
中国について
『この間、中国経済は、耐久消費財の買替え補助などの政策効果や駆け込み輸出などの影響で、高めの成長を維持しています。もっとも、今後はこれらの反動が予想されるほか、不動産市場の低迷や高い若年失業率などの問題も根強く残っています。また、もともと構造的な生産過剰を抱えている中で、わが国企業からは、中国からの輸出によって、素材を中心にアジア市場などの市況が悪化することを懸念する声があります。』
欧州について
『欧州の景気は、消費者マインドが悪化している中で、駆け込み輸出の反動もみられ、弱めに推移しています。この間、強めの動きとしては、AI関連を中心にグローバルなIT需要は回復しています。非AI部門は、駆け込みとみられる動きが一服しており、関税の帰趨にもよりますが、やや慎重な見方が増えているように窺えます。』
中国と欧州の話はまああっさりと流されていまして結論は、
『このように、足元までの世界経済は、関税の影響がマインド面でははっきり出ている一方で、駆け込みのタイミングや反動などによって、ハードデータの評価が難しくなっています。先行きについては、貿易を通じた直接的な影響に加えて、マインドの悪化が設備投資や個人消費にどんな影響を与えるか、注視していく必要があると思います。』
という結論になっているのですが、ここで4月展望レポートを思い出していただければと存じますけれども、4月展望では鏡(概要)の一発目の説明が、
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2504a.pdf
『●先行きのわが国経済を展望すると、各国の通商政策等の影響を受けて、海外経済が減速し、わが国企業の収益なども下押しされるもとで、緩和的な金融環境などが下支え要因として作用するものの、成長ペースは鈍化すると考えられる。その後については、海外経済が緩やかな成長経路に復していくもとで、成長率を高めていくと見込まれる。』(この部分だけ直上URL先の4月展望レポート基本的見解概要より)
となっていまして、4月展望レポートでは見通し前提の初手として「海外経済が減速する」というのが決め打ちされていて(だからこそ経済のみならず物価のメインシナリオも下方修正になった訳ですが)おった訳で、内田副総裁のこの説明だと海外経済が減速しそうという認識は変わらん(そりゃそうだ)にしても、4月展望の鏡に書かれている表現対比でみたら上方修正っぽい(少なくとも4月展望を下方修正するものではない)ものになっている訳ですな。
しかもですね、これって今回の日米合意の結果を踏まえていない訳で、まあ日米合意自体は日米の話ですけれども、今後の欧州や足元仮置き合意みたいな中国との交渉が進展するかもしれないですし、そうなるとさらに上方修正への道ができてくるんですわな、と思いましたが、ただまあ別に下方修正はしていないけど先行きは全然決め打ちしておらず、結局どっちに転んでも良いような説明で方向感を出していない、というのは確かなんじゃないかなと思いましたがどうでしょうか。
・通商問題の日本経済への影響について:これまた日米合意は前提になっていないが企業行動の下方屈折懸念は同じく
『次に、日本経済への影響についてお話しします。図表4をご覧ください。今月1日に公表しました、私どもの短観の結果をみますと、企業の業況感は、米国の関税政策の影響などから製造業の一部で悪化していますが、全体としては良好な水準を維持しています。』
以下延々と現状の説明が続くのですがこれまたかっ飛ばしまして、
『もっとも、問題は先行きです。』
そらそうよ。
『各国の関税交渉の帰趨はなお不確実であり、企業の対応はこれからです。日本経済全体としても、@メインシナリオとしては、冒頭で申し上げたとおり、海外経済が減速し、わが国企業の収益なども下押しされるもとで、成長ペースはいったん鈍化する、Aそのうえで、不確実性は大きく、リスクはダウンサイドにある、と考えています。』
はい。
『まず、企業にとって、米国の関税引き上げの直接的な影響は、関税によるコスト増加分を現地の販売価格に転嫁するかどうかによって、輸出採算あるいは輸出数量に表れると考えられます。』
この点は先般の支店長会議における報告で色々とアネクが出ていましたね。
『図表8をご覧ください。例えば、輸出物価、特に北米向け乗用車の輸出物価は、4月以降はっきりと下落しています。ただ、この段階では、国内の親会社と米国の販売子会社との取引が中心とみられますので、子会社が実際どういった価格で販売するかは、今後の米国市場の競争環境にもよるでしょう。』
『こうした点を含め、企業がどういった輸出・販売戦略を採るか、その結果収益にどの程度影響するかは、関税率の具体的な水準や、それを受けた各国企業の対応などによって、変わってくると思われます』
でまあ日米合意に関してはこの金懇では織り込んでいない(当たり前だが)訳です。
『そのうえで、各国間の関税交渉がある程度進展するという前提に立つのであれば、仮に輸出企業の収益が相応に下押しされたとしても、企業部門全体としては、高水準の収益が維持される、というのが先ほど述べた短観の見通しです。』
ふむふむ。
『賃金設定についても、今後も人手不足感が強い状況が続くと見込まれるため、近年の積極的な賃金・価格設定行動の流れは途切れないというのがメインシナリオです。』
これに日米合意が乗っかるのですから・・・・・・・・^^
『もっとも、関税政策の負のインパクトが予想以上に大きくなったり、長引いたりした場合には、例えば、輸出産業の国内サプライチェーンの中で、原価低減圧力が強まったり、個人消費を通じて非製造業の業況に影響するなどの形で、ここ数年の賃上げの流れが弱まることが懸念されます。』
『世界経済や国際金融資本市場の動きを巡る不確実性が極めて大きいことを踏まえますと、わが国経済・物価に対するこうしたダウンサイドリスクを注視していく必要があります。』
賃金設定に関しては生活給の概念がここ数年のインフレで広がっている(と思われる)ことや、構造的な人材不足問題などもあるので、そう簡単にデフレ脳に戻るとはあんまりアタクシ的には思わない所ではあるのですが、ゆうて企業経営層はデフレ脳から脱却していない可能性もあって(高級スーパーや高級デリバリーなどで生活される経営クラスの高給を取っておられるような皆さんは生活物価が上昇とか言っても実はピンとこないじゃろというのは最近感じないわけではないwww)、やたら企業の賃金設定行動気にするのはまあそういうのもあるのかね、とは思いますがこちとらよくワカランチ会長でござるorzorz
まあいずれにしましても、今後の賃金設定や価格設定スタンスが下方屈曲しないかどうか、というのを懸念しています、という説明に関しては4月展望以降一貫しておりまして、その点から言ったら今回の日米合意しかも思ったほど悪い結果にはならなかった、というのは企業スタンスの下方屈曲懸念を大きく緩和するものになったって話になると思いますけどね、普通に考えれば。
でまあその企業行動に関しては、
『さらに、これらの点は、業種や企業、地域によっても事情は異なり、マクロのデータだけでは十分な情報は入手できません。特に不確実性が企業の投資などの判断にどう影響するかは、企業経営者の皆様方との対話を通じて、タイムリーかつ丁寧に把握していきたいと思っております。私どもの支店を通じたヒアリングなどにご協力いただきますよう、引き続きよろしくお願い申し上げます。』
とアネクドータルなデータを重視していく、というのも従来通りの説明になっていまして、まあこれは次回の支店長会議(さくらレポート)で企業行動スタンスの下方屈曲が無いことを確認できた、となれば何なら10月にだって利上げできるじゃろ(なお政局)という話になっても別に理屈としては全然おかしくない、ということにもなります。
とは言いましても、そもそも論としてそんな勇気があるんだったらもっと早期から正常化路線は組めて居たわけで、それをモタモタしているからアクチュアルの物価が上昇して人心が荒廃してこのクソ参院選になった次第な訳ですから、ハトハトチキンの皆さんにその勇気があるのか無いのか次第(ってか冷静に考えたら今回利上げしたっていいじゃないかという話だし政局が変になるまえに駆け込んだ方がエエエンチャウノという説まであるわwww)ですぞなという話になりますわな。
ということで、従来は「待ちの姿勢一辺倒」でしたが、ここいらの説明を見ますに、今回は全方位にヘッジを掛けた説明になっていて、まあ自由度を高めた、と言えば聞こえが良いですが、単に4月展望でアホみたいに下方修正して超地蔵モードになってしまった決め打ちのケツ拭きをして元に戻しにかかっている、というのがまあ正しいんですけど、いずれにしましても政策修正の余地をだいぶ広げたには広げた(政策修正するとは言っていない)ってことかと存じますがどうでしょうか。
・物価に関して:「基調的物価」が前面から後退しているのは味わいが深い
次が物価の話でして、
『続いて、3つ目の論点、物価情勢と個人消費の動向についてお話しします。』
『図表9をご覧ください。米などの食料品価格の上昇や関税政策を巡る不確実性などを背景に、左グラフの消費者マインドは、このところ悪化した状態にあります。右グラフは、実質ベースの個人消費の動向です。食料品価格の上昇などに伴い、消費者の節約志向が強まるもとで、緑の点線の食料品を含む非耐久財の消費は減少傾向が続いていますが、赤い線の消費全体としてみれば、雇用・所得環境の改善に支えられて、緩やかな増加基調を維持しています。先行きについては、先ほどご説明したとおり、賃金の上昇は続くと見込まれますので、物価上昇との相対的な関係が重要になります。』
この辺は「賃金と物価の好循環」の話ですが、最近はこの「好循環」を表にださなくなって来ているのはご案内の通りかと存じます。
『図表 10 をご覧ください。赤い線の生鮮食品を除いた消費者物価の前年比は、直近の6月は3%台前半となっています。近年の物価上昇の主因は、水色の棒で示した「食料品」の動きです。一度目は、22
年から 23 年にかけて、輸入物価の上昇によるものでした。これが昨年前半に一服したのち、昨年後半からは、米価格の上昇を主因に再び食料品価格が上昇しています。』
なお、ここに見られますように、「コストプッシュによる物価の上昇はいずれ下がる」とのスタンスは相変わらず崩しておりません、まあそこを変えてしまうと正常化を急がないといけなくなるので旗は下げられないのですけれどもw
『この間、ピンクの「サービス」の伸び率は 23 年にかけて上昇したのち、横ばい圏内で推移しています。賃金上昇がサービス価格を緩やかに押し上げる動きは、加速はしていませんが、底流として続いています』
好循環とは言わなくなりましたねえ。でもって先行きですが、先ほど申し上げましたように、
『先行きについては、米価格の上昇などコストプッシュ的な要因の影響は、政府による各種対応もあって、いずれ減衰していくとみています。』
政府による各種対応って備蓄米放出以外は基本的に財政支出なんで物価は押し上げられるんですが、とか突っ込みたくなりますが、まあ相変わらず「コストプッシュは一時的」のスタンスは変えて居ない訳で、昨日ネタにしたECBのストラテジーレビュー読めと言いたくなりますな。
『一方、コストプッシュ要因を除いてみた場合の物価の基調的な動きは、経済全体としての労働や設備の稼働状況を表す「需給ギャップ」と、少し長い目で見た企業や家計の物価の見方である「中長期的な予想物価上昇率」に規定されます。』
という説明は昔から展望レポートでも行われていて、需給ギャップと期待インフレがどうのこうの、というお話なのですが、
『図表 11 をご覧ください。』
とありますけど、物価に関しては図表10(PDFファイルの19枚目の下半分)が『図表10 物価 CPI』ってもので、図表11(PDFファイルの20枚目の上半分)が『図表11 需給ギャップと予想物価上昇率』となっている訳です。
でまあこれは何の変哲もないように見えるのですが、実は6月に行われた植田総裁の内外情勢調査会における講演では物価についてどういう話をしていたかと言いますと、
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/data/ko250603a1.pdf
6月3日の植田総裁の「内外情勢調査会」(時事通信社主催)講演
講演本文5ページ(PDFの6枚目)の前後は物価の説明をしているのですが、この時の植田総裁は。
『そのため、2%の物価安定を実現していくにあたっては、コストプッシュの直接的な影響を除いた基調的な物価上昇率の動きをみていくことが重要となります。』(この部分だけ直上URL先の2025年6月3日内外情勢調査会での植田総裁講演テキストより引用)
ってなっていまして、その説明についても、図表編のPDF16枚目の下半分に『図表6 物価上昇率』というのがあって、17枚目の上半分には『基調的な物価上昇率に関連する指標』となっていまして、「基調的な物価」に対して数字を見せようっていうことも含めて前面に出して説明していたんですな。
然るに、今回の内田さんの金懇挨拶では、物価の説明において「基調的物価」を前面にださないで、物価のトレンドを作る、という文脈で「基調」を使っている、というのが中々味わいが深い訳です。
でまあこれナンデジャロと愚考しますに(以下個人の妄想なのであくまでもアタクシの与太だと思ってくんなまし)、やはり「基調的物価はまだ低いので引き上げ」みたいな話をするのに無理があるし、大体からして物価高が最大の政治イッシューになっているというのが今回の参院選で思いっきり明確になっている中で、日銀が訳の分からん「基調的物価」を振りかざして物価はまだ低いので金融緩和の調整は時期尚早みたいなことを言っていると十字砲火が日銀に向かって火達磨になるリスクをさすがに感じて、徐々にこの「基調的物価が2%行ってない」を前面から撤退させていこうとしてるんじゃネーノ、とまあ妄想したのと、あとはそもそも数値を出しに行っても基調的物価が強くなっていて、2%近くなってきたから説明上都合が悪い、という方なのかも知れませんが、いずれにしましても「基調的物価」を最前線から半歩位(なぜ半歩かはこの後)下げたな、という風に思いました、合ってるかどうかは知らんけど。
でまあその先の説明ですが、ここにも味わいがありまして、
『図表 11 をご覧ください。この点、まず左グラフの赤い線の需給ギャップは、現在ゼロ%近傍ですが、当面は、概ね潜在成長率並みの成長が予想されていますので、現状程度の水準で推移すると考えられます。その後は、成長率が高まるにしたがって、再び改善すると予想しています。』
『また、これまで労働供給を支えてきた女性や高齢者の労働参加の増加ペースが鈍化していることもあって、人手不足の状況は、厳しさを増しています。当地でも見られていることかと思いますが、宿泊・飲食など非製造業を中心に、設備が余っていても人手不足で稼働率を上げられないケースも目立っています。』
『その意味では、マクロ的な需給ギャップが示唆する以上に、賃金や物価に上昇圧力がかかる可能性があります。』
図表11云々は再掲で恐縮ですが、まず需給ギャップの説明をしているのですが、後半では1月展望レポートの時(つまりやる気満々モードに見えたとき)にしめされた「クロ的な需給ギャップが示唆する以上に、賃金や物価に上昇圧力がかかる可能性があります」が思いっきり戻って来ているんですよね。
でもって期待インフレ率ですが、
『また、右上グラフのとおり、中長期的な予想物価上昇率は、ここ数年、企業の賃金・価格設定行動が積極化している中で、緩やかに上昇しています。今後もこの動きは続くと思われますが、そのペースは、成長率の鈍化によって伸び悩んだのち、再度上昇するという経過をたどると思われます。』
まあ以前からこういう説明をしている訳なんですが、この点昨日ネタにしたECBのストラテジックレビューにあるように、インフレ期待ってノンリニアに上下にブレる(かつて大きく人口に膾炙したセントルイス連銀ブラード総裁(当時)の複数均衡論も同じような考えに基づく筈です)可能性がある(特に上)ので、本当にこういうような都合のいい話になるのか、というのは問い続けて行きたいと思うのですよね。だいたいからして日銀だって元々「インフレ期待のシフトアップ」って言ってQQE開始したんだし、そんなにリニアでスムーズな動きをするものとはチャウんじゃないのインフレ期待って。
それは兎も角として、
『もっとも、今年度入り後の値上げの動きは、米以外の食料品にも広がっており、消費者物価は、私どもや市場の予想よりも強めで推移しています。』
さっきの「国際機関」云々もそうですが、ここでも「市場の」とか入れて「僕だけが見通しを外しているわけじゃないもんお隣の市場何とかストちゃんだって外しているもん」と言い訳をするのは大本営の往生際の悪さが幼児並みにしか見えない見苦しい行為なので止めて頂きたいものですwwwww
『このことは、少なくとも食料品価格に関しては、企業の価格設定行動が、従来の考え方から有意に変化していることを意味しているように思います。同様の動きは、外食など周辺分野でも見られますので、その広がりを確認していきたいと思います。』
というか日銀がまだデフレ脳から抜けてないんじゃなかろうかという気がするんだがまあいいです。
『実際、食料品は、日々の生活に直結し、購入の頻度が高いため、人々の物価に関する見方に影響する度合いは大きいと考えられます。中長期的な予想物価上昇率は直接観察することが難しい指標ですが、ここ数年は大きな変革期にありますので、こうした点を含めたミクロの企業行動の変化などを、丁寧に把握していきたいと思っています。』
その割には堂々の決め打ちをしているように見えますがまあいいです先に行きまして、
『右下の表をご覧ください。以上を踏まえ、先行きの物価情勢を展望しますと、食料品価格の上昇の影響は減衰していくほか、基調的な物価上昇率も、各国の通商政策の影響により経済の成長ペースが鈍化することなどから、いったんは伸び悩むと考えられます。』
ということで、ここでやっと「基調的な物価上昇率」が出てきたんですが、じゃあそれについては、図表11の右下の表になるんですけど、そこの表の見出しは『政策委員見通しの中央値』でして、そこにあるのは(展望レポートの数字だから当たり前なのですが)『消費者物価(除く生鮮食品)』と『(参考)除く生鮮食品・エネルギー』になっていまして、コアコア物価が基調的な物価であるかのような説明に本家帰り(2022年4月の展望レポートからコアコアの話を思いっきり出すようになった)していまして、色々と頑張って「基調的物価」を計測するという感じだった6月の植田さんの講演テキストとはだいぶ扱いが違っているのが分かるかと思います。
今日は時間が足りないので明日に回しますが、金融政策の説明の所では相変わらず「基調的物価が2%行ってない」を出して説明しているので、「基調的物価」自体を全部抹消している訳ではないのですが、ただまあ物価の説明の中での扱いが明らかに前線から後退させられている、というのが見えたのが非常に味わいが深いな、と思いました、というお話なのですな、うんうん。
『来年度にかけては、消費者物価(除く生鮮食品)の上昇率が2%を下回る局面もあるとみています。その後は、成長率の上昇につれて、労働需給の引き締まりが明確になり、積極的な企業の賃金・価格設定行動が広がる中で、現実の物価上昇率と基調的な物価上昇率はともに、徐々に高まっていくと考えています。そして、私どもが公表している「展望レポート」の見通しの期間の後半(来年度後半から
27 年度にかけての期間)のどこかの時点で、2%の「物価安定の目標」を実現する姿を展望しています。』
ここは4月展望レポートの説明を踏襲しておりまして、ここまでが経済物価情勢の話になりますが、時間の関係で以下の金融政策ネタは明日続きということで勘弁していただきとう存じます。
2025/07/23
〇BBGの毎度おなじみ「関係者」記事(今日は内田副総裁の高知金懇ですね)
ああそういえばクソどうでもいいんですけど、選挙結果の講釈記事を色々と見て回りましたけれども、ロイターとブルームバーグの記事が一番無茶苦茶で、お前ら日本に居ないで勝手に妄想でこたつ記事書いてるんじゃねえのと言いたくなるレベルなのですけれども、それが海外に発信されると思うと頭が痛いなあと思いました(あくまでも個人の勝手な感想です)。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-07-22/SZKSNBGQ1YXQ00
日銀は与党敗北でも利上げ路線堅持、目標実現シナリオも維持−関係者
伊藤純夫、藤岡徹
2025年7月22日 15:43 JST
→経済・物価が見通し沿った動きなら、利上げで緩和度合い調整の方針
→財政の大幅な拡大が一段の物価上昇につながる可能性を警戒する声も
『日本銀行は、参院選での与党敗北を受けても、現在の物価目標実現シナリオと利上げ継続路線を変更する必要性は大きくないとみている。今後の財政政策による経済・物価への影響を注視する。事情に詳しい複数の関係者への取材で分かった。』(上記URL先より、以下同様)
ということで毎度おなじみの謎の「関係者」記事が出てきている訳ですが、
『日銀は30、31日の金融政策決定会合で、新たな経済・物価情勢の展望(展望リポート)について議論する。関係者によると、2027年度までの見通し期間の後半に、基調的な物価上昇率が2%程度で推移するとのシナリオは維持できると日銀はみている。経済・物価が日銀の見通しに沿った動きとなれば、その改善に応じて利上げを続け、金融緩和の度合いを調整していく方針も変わらない公算が大きい。』
「物価高対策」が大きなテーマとなった(この前の衆院選でも実はその問題が大きかったと思うのだがメディアは政治とカネの話ばっかりしていましたのでそこまで目立ちませんでしたが)という国政選挙があって、現状に対する大いなる不満が結果として突き付けられるという状況を踏まえても、物価安定が責務の中央銀行としては知らんふりですかそうですかそうですか、という感じのこのノホホンとした認識で大丈夫なのかよと思いますが、まあそんなことよりも見通しどうなるか、という話なんですけれども・・・・・・
『会合後に公表する最新の経済・物価見通しは、コメを中心とした食料品価格の上昇を反映し、25年度の消費者物価(生鮮食品を除くコアCPI)見通しの上方修正を検討する見込みだ。5月1日に公表した前回の展望リポートでは、同年度のコアCPI見通しを前年比2.2%上昇とした。』
ということで、この感じですと2025年度の物価見通しを引き上げて、2026年度については無修正コースで、「2025年度を引き上げたのでテクニカルにこうなります」の修正だとむしろ反動減という数字を出すことになって、さすがにそれはやべえ見通しになるじゃろ、と考えると単純に2025年度を引き上げて「供給要因だから一時的」で済ませるんだろうなあって感じですかね。
でまあそういう見通しを出すとなりますと、甚だ遺憾ではありますが、次回利上げが前倒しになる、ということにはならんと思うのですが・・・・・・・・
『関係者によると、経済見通しは、日米関税交渉の長期化などで関税による下押し圧力の顕在化が後ずれする形となっているが、前回の展望リポートから大きな変化はない見込みだ。仮に日本に25%の関税が適用されても、潜在成長率を明確に下回るような大きなマイナスの影響にはならないと日銀はみているという。』
おいこらちょっと待て「仮に日本に25%の関税が適用されても、潜在成長率を明確に下回るような大きなマイナスの影響にはならないと日銀はみている」ってなんだそりゃという話で、4月展望レポートの時には関税政策導入されてもそこまでの規模じゃないのを前提にした上でドチャクソ下方修正をしてきたのに一律25%関税でも一段下方修正は無いのかよというお話でして、結局これ4月の展望レポートでドチャクソ下方修正をした時に「前提となる米国の通商政策」ってのを置いて作ったことになっているのですが、その置きがどうなっているのかが非公表のままでここまで来ている(フワッとした言い方しかしていない)のの本領が早速発揮されてきた、という所だと思うのですよね。
つまりですね、これって「米国の通商政策の影響は想定の範囲内」と何が出てきても堂々と言いだして利上げを継続なんなら前倒しする、という日銀のいつもの屁理屈を繰り出すことができるように、その屁理屈の地均しというか頭出しをしている、と読み取れる訳でして、物価高批判の矛先が来そうになったらすかさず対処できるような出口を用意している、ということですがな。
とまあそんな訳ですので、結局は今日の内田副総裁の高知金懇で何を言い出すのかというのが注目される訳ですが、なんか色々な方向にヘッジを打ちまくっておいて、なんとでもなるような説明をするので、ベンダー的に「おいしい」のが利上げ前倒し方向の話でしょうから、そっちだけがやたらヘッドラインになるリスクはあるかな、とは見ております、まあどうなるかはさっぱり分からんけど。
2025/07/22
はて?
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODK167L70W5A710C2000000/
物価高対策、与野党で解を 財政規律維持は政治の責務
検証・日本の針路(1)
参議院選挙2025
2025年7月22日 2:00 [会員限定記事]
・・・・・・「財政規律維持は政治の責務」ってのはよくわかるのですが、「物価高対策、与野党で解を」ってのが何を祐天寺という感じでして、日銀が相変わらずアホのように続けている大金融緩和の縮小をもっとちゃっちゃと行えって言えば良いだけなんだと思うのですが、何でメディアってそっちの話をしないのかが良くわからんです。
〇参院選の評価はよーわからんがもっとクソ大敗の可能性まで懸念してた割には・・・・・
まあゆうて民主党にぼろ負けした時とは違って比例代表得票は1位ですわな
https://www.nhk.or.jp/senkyo/database/sangiin/00/hsm12.html
比例代表 党派別得票・獲得議席
ということで思ったほどボロ負けしないで結構でしたがまあ有象無象に票が入っておりますなあと呆れる次第ですが、某再生の道みたいに次はまた別のおもちゃが出てくることになるかどうかは今後をお楽しみにということで。
でまあそういう訳で、
https://www.yomiuri.co.jp/election/sangiin/20250721-OYT1T50089/
石丸伸二氏率いる地域政党「再生の道」、議席獲得ならず…立花孝志党首の「NHK党」当選なし
2025/07/21 09:23
比例で取ってる票数が東京都知事選挙の石丸票のほぼ3分の1でN国にも負けているというのがもう凄まじいとしか言いようが無くて、今の情勢にしたって次回の国政選挙で何がどうなるかなんてまあ分からんもんよのう、と思いました(石丸よりも神谷玉木の方がタマが断然マシだと思うのでここまでの事にはならんと思うんだがさすがに)。
でまあそういう訳ですので、まあ次の国政選挙までの間に何が起こるのかも訳わからん世界でありまして、野党がバラバラになったので少数与党とは言え何か色々と工夫のしようはあるんじゃないかなあとは思いました。
てかさ、物価高対策ってこれ結局のところアベノミクスの後始末な訳でして、そこで散々足引っ張られているのに対して安倍ちゃんの残党辺りがギャースカ文句言うのってふざけた話だわとは思うのでありました。
https://jp.reuters.com/markets/quote/USDJPY=X/
US Dollar / Japanese Yen FX Spot Rate
直近の取引
147.38 JPY
変化 -1.38
変化% -0.93%
2025年7月22日の時点。値は少なくとも15分遅れで表示しています
ということですので、トリプル安だの財政懸念でヒャッハーだのというお話は目先は無い(と言っても少数与党なので財政出せ出せ攻撃が来るのは見え見えではあるが)ということになったようで、こちとら参院選の結果次第では祝日どころじゃねえとかいう説も無くも無かった(まあどうせ東京市場やってないんだから泣こうが喚こうが何もできませんけどw)のですが、そこまででもなくて誠に結構でございました、と思うけど実際今日以降どうなるかは分からんですからね。
〇全国CPIはコアコアが威勢よく上昇していまして財布の紐を締めようとしてもシマランチ会長
うむ
https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/pdf/zenkoku.pdf
2020年基準 消費者物価指数
全 国 2025年(令和7年)6月分
『◎ 概 況
(1) 総合指数は2020年を100として111.7
前年同月比は3.3%の上昇 前月比(季節調整値)は0.1%の上昇
(2) 生鮮食品を除く総合指数は111.4
前年同月比は3.3%の上昇 前月比(季節調整値)は0.1%の上昇
(3) 生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は110.3
前年同月比は3.4%の上昇 前月比(季節調整値)は0.4%の上昇』
でまあ指数の数字自体で言えばコアの111.4って前月と同じなのですけれども、何気にコアコアが最近ははえげつなくて、
『表2 総合、生鮮食品を除く総合、生鮮食品及びエネルギーを除く総合の前月比(季節調整値)
を見ますと、コアコアの季節調整済み前月比って今年に入ってから、
+0.3→ + 0.2→ + 0.3→ + 0.2→ + 0.3→ + 0.4
となっていて、原数値で言えば昨年12月が「 108.4 」なのですが、6月の全国コアコアCPIって「
110.3」で、2%物価目標をほぼ半年でやっているようなもんな訳でして、いやそりゃ物価高で人心が荒廃してあんな選挙結果に成る罠とは思いっきり納得してしまう状態。
・・・・・・とまあそんな訳でありまして、来週が展望レポートなのですが、「基調的物価」とか言ってそれこそウクライナ侵攻初期にはコアコア物価が基調的物価であるような説明をしていた話はどこに逝ったという話で、ちょっと屁理屈じゃない説明を植田先生にはしていただきたいし、会見の皆様も利上げ時期がどうのこうのとか言う話は正直どうでもよいので、基調的物価に関する説明を納得がいくまで行っていただきたいものだ、と斯様に思うのでありました。
2025/07/17
〇超長期クソ戻りワロリンチョというメモ
連日のこのクソボラティリティは何なんですかねえ。
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/WVBBJMFGDVKXXAX2NVEIVLZRJE-2025-07-16/
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は小反発、長期金利1.57% 超長期債の金利低下が波及
ロイター編集
2025年7月16日午後 3:27 GMT+9
『[東京 16日 ロイター] - <15:15> 国債先物は小反発、長期金利1.57% 超長期債の金利低下が波及
国債先物中心限月9月限は、前営業日比4銭高の137円96銭と小反発して取引を終えた。新発10年国債利回り(長期金利)は同1.5bp低下の1.570%。ポジションの巻き戻しの動きから、現物市場で超長期ゾーンは金利低下し、その流れが国債先物にも波及し、プラス圏に転じた。』(上記URL先より、以下同様)
というかですね、朝から40年とかの気配が強かったし、しかも前場の途中からは値がすっ飛んで強くなるという流れで、ポジションの巻き戻しにしても何やってるんですかという値の飛び方をしておられました次第。
『現物市場では新発債利回りは金利低下。中期ゾーンは金利上昇局面では押し目買いがみられたという指摘があった一方、国債増発への根強い警戒感から上値の重さが意識された。
2年債は同0.5bp低下の0.780%、5年債は同横ばいの1.080%。30年債は同10.0bp低下の3.060%、40年債は同10.0bp低下の3.380%。20年債は出合いなし。』
引けでは30年と40年って割と揃っているけど途中までは40年が目立ってぶっ飛んでいたようには見うけられましたがどうなんでしょうかね。まあとりあえず、
『 OFFER BID 前日比
2年 0.779 0.785 0 14:59
5年 1.074 1.08 -0.001 15:11
10年 1.564 1.57 -0.02 15:03
20年 2.565 2.575 -0.056 15:09
30年 3.06 3.069 -0.109 15:11
40年 3.366 3.384 -0.119 15:11』
ってことで大フラットニングしていまして、底打ちなのかただの騙しなのかさっぱりワカランチ会長だし、大体からして今週末の参院選結果見ないと何ともかんともなので評価不能なのですが、まあ凄かったですねえというのを後日備忘の為にメモメモ。
いやまあ金利の上昇一服なら一服で良いのですが、一服するにしたってこんな威勢よく動かれてしまいますとそれはそれで手を出せんわ(だってこの値動きだとある程度以上のポジション作ったり閉じたりしようとしたら自分で値を相当ぶっ飛ばす覚悟無いとできんじゃろ)という話になりますので、まあ落ち着けという所ですが落ち着かんじゃろうのー。何というか「定例的にコツコツ買ってラダーポート作る」的な人がいないと相場って安定してくれんのよね、とは個人の感想ですけれども。
2025/07/16
〇早川元理事のBBGインタビューが端的に目先の論点について説明(とぶった斬り)をしていましたので
昨日はこんなん出てました、まあ別に市場が反応したわけではないけど。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-07-14/SZD5TODWX2PS00
日銀は最速で10月にも利上げ、今月会合で物価見通し上げ−早川元理事
伊藤純夫、藤岡徹
2025年7月15日 8:30 JST
→物価フォーカスなら早期利上げも、米関税で景気の先行きに不確実性
→「基調的な物価上昇率」は根拠不明、上昇鈍い品目重視の護送船団か
『元日本銀行理事の早川英男氏は、トランプ関税を巡る日米交渉が決着して経済・物価を巡る不確実性が後退すれば、日銀は最速で10月にも追加利上げを行う可能性があるとの見解を示した。』(上記URL先より、以下同様)
ということで早川さんですが、
『早川氏は14日のインタビューで、先行きも物価が2%程度で推移することが見込まれる中、「物価にフォーカスするなら、日銀は早めに利上げした方がいい」と指摘。米関税は市場の想定ほど日本経済に「影響しない可能性がある」とした上で、追加利上げは「霧が晴れれば年内にあってもおかしくない。10月でもいい」と語った。』
ってことですが、まあ要するに関税交渉が今は政策に紐付けてしまっている説明で4月展望レポートを作りこんでしまったので、7月展望レポートでここをどう扱うか、次第なんじゃないかなと思います、元々が「基調的物価」という「お気持ち物価」をベースにお話をしているので、あとは「お気持ち」の問題ですわな。
ただ、以下で早川さんが指摘しているように、
『しかし、足元までの物価は強めで推移しているものの、米関税政策を受けて「景気の先行きが不確実な中で、物価だけで今利上げするのは厳しい状況だ」ともみている。追加利上げ後に景気が失速すれば、日銀のせいで景気が悪くなったとの批判が必ず出るとし、「植田和男総裁は何度も経験しているだけに、それは避けたいだろう」と述べた。』
>>追加利上げ後に景気が失速すれば、日銀のせいで景気が悪くなったとの批判が必ず出るとし、「植田和男総裁は何度も経験しているだけに、それは避けたいだろう」
ってのは端的に分かりやすい解説ですし、まあそういうことでしょというお話なのでありまして、日銀のお立場からしたら、インフレ下なのに高圧経済とかいう頭狂った政策を継続せざるを得ないのは、メディアにしろ政治にしろ馬鹿共が金融緩和を求めて金利上昇に直ぐに文句つける風潮になっていて、その一方で物価高放置批判の矛先が日銀に向かないからであって、これが一転して物価高対策に大規模金融緩和を調整して欲しいって声の方が大きく成ったら大手を振って日銀は利上げするのはまあ間違いないという言い切る自信はワイにはあるわけで、市場の片隅でクダ巻いててもこればっかりはどうしようもないですよね、悲しい。
いやまあ日銀が率先して「我々は物価高を継続した方がインフレ期待が上がると思って過度な金融緩和をしていますサーセン」って言えばいいんですけどそんなこと言う訳無いじゃないですかヤダー。
でまあそれはそうとしまして、展望レポートなんですけれども、
『早川氏は、コアCPIの見通しについて、25年度が控えめに見て前年比2.5%−2.6%、26年度が1.8%−1.9%に上方修正されると予想。26年度は市場の早期利上げ観測を高めないためにも、2%に達しない水準になると見込む。前回の5月1日に公表した展望リポートでは、それぞれ2.2%上昇、1.7%上昇だった。』
7月展望の物価見通し上方修正に関してですが、今回注目すべきは「2026年度の物価見通しをどの程度いじる/いじらないか」ですよね、とアタクシは考えております。
もちろん27年度の見通しが引きあがったらそれはそれでビビりますが、どうせそこはいじって来ない筈(27年度を上げ下げしたら政策インプリケーションがモロに出るので)ですし、25年度の見通しは引き上げる、という観測のオンパレードなのでこれは引きあがるという前提で(お恥ずかしいにも程があるから上げない可能性はデギンドス副総裁の頭髪程度は有ると思います)考えた場合、どうせ25年度に関しては「コストプッシュ要因ガー」になるのですが、26年度を引き上げる場合、まあ事実上4月展望レポートでの物価見通しの大きな(幅がそこまで大きいわけではないけれども1月から比べて質的に大きく下げている)下方修正を「無かったことにする」効果になる、すなわち1月展望の時点に戻る、ということになりますので、まあ今回の展望は物価見通しをどういう数字で出して、シナリオをどういじってくる/いじってこないのかが大いに重要になろうかと思います。
しかしまあ何ですな、こちらの記事最後にイイハナシダナーな指摘がありましたわ。
『3年以上も日銀目標の2%を上回る消費者物価の上昇が続く中で、植田総裁が基調的な物価は2%に達していないと繰り返していることは「根拠が不明」と早川氏は指摘。』
>基調的な物価は2%に達していないと繰り返していることは「根拠が不明」
wwwwwww
『その上で、帰属家賃や公共料金など動きの鈍いグループを重視しているのではないかとし、「それは基調ではなく、護送船団方式だ」と語った。』
>「それは基調ではなく、護送船団方式だ」
これはまた一刀両断でさすがですが、「基調的物価はお気持ち物価」というお話もだいぶ人口に膾炙しているようですし、今回の展望レポートは「物価」に関する説明をもっときちんと行って整理していただく、という回になることを希望しますが、まあいつもの詭弁学園で済ませるのかもしれませんしおすし。
〇しかしまあ今更になって市場大反応モードですなあ・・・・・・・という備忘メモ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB15D9X0V10C25A7000000/
円、3カ月ぶり1ドル149円台に下落 参院選に警戒感
グローバルマーケット
2025年7月16日 0:42 [会員限定記事]
『15日のニューヨーク外国為替市場で円が対ドルで下落し、一時1ドル=149円台を付けた。149円台は4月3日以来およそ3カ月ぶり。20日投開票の日本の参院選で与党が過半数を確保できるかが微妙な情勢となり、財政拡張を訴える野党との協調が必要になるとの見方から幅広い通貨に対して円売りが膨らんでいる。』(上記URL先より)
だそうで円全面安ワッショイという所ですが、昨日の円債ちゃんもなんかしらんけど
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-07-15/SZF9MBDWLU6800
日本国債に「トラスショック」懸念、参院選後の財政リスクに市場動揺
近藤雅岐
2025年7月15日 15:07 JST
てな感じでの煽り記事まで登場する有様ですが昨日の市場も例によってロイターさんから記念備忘メモを
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/5W7QRUAWPVJQPOJWQGBADNXQPA-2025-07-15/
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は続落、長期金利17年ぶり・30年金利は過去最高水準に上昇
ロイター編集
2025年7月15日午後 3:41 GMT+9
『[東京 15日 ロイター] - <15:19> 国債先物は続落、長期金利17年ぶり・30年金利は過去最高水準に上昇
国債先物中心限月9月限は、前営業日比14銭安の137円92銭と3営業日続落して取引を終えた。新発10年国債利回り(長期金利)は同1.5ベーシスポイント(bp)上昇の1.585%。一時は2008年10月以来約17年ぶり高水準の1.595%に上昇したほか、30年金利は過去最高水準をつけた。』(上記URL先より、以下同様)
まあ17年ぶりって言いますけどそもそもCPIの水準がとっくの昔に17年ぶりどころの騒ぎじゃないのですから、長期金利がそこまで上がって何がおかしい、と言ってしまえばそれまでという説は大いにあるのですがまあそれは兎も角。
『きょうの国債先物は、前日に続き財政悪化懸念や海外金利上昇が相場を圧迫し、軟調な展開となった。参院選の投開票を20日に控え、与党が苦戦しているとの情勢が伝わる中、消費税減税に関連した財政拡張への懸念が長期・超長期債売りにつながった。』
って話にはなっておりますけれども、問題なのは選挙後に出るうんたらかんたらというだけではなくて、物価高対策に金融緩和と財政拡張のセットをすることが頭狂っているにも程があるという認識がジャパンの皆様に全然共有されていない(そもそも認識されていない)という義務教育の敗北レベルの馬鹿集団にジャパンが成り下がっている、ということが最近の風潮で一層アカラサマになったということだと思うので、つまりは馬鹿は(自主規制)という諺がありますように、根の深い問題なのではないかと杞憂民としては杞憂している訳ですな。
『現物市場では10年物以外の新発国債利回りも総じて上昇。2年債は前営業日比1.0bp上昇の0.785%、5年債は同1.0bp上昇の1.080%。』
『20年債は同1.5bp上昇の2.620%。1999年11月以来約25年ぶりの高水準となる2.650%をつけた時間帯もあった。30年債は同3.0bp上昇の3.185%、過去最高水準の3.200%をつける場面もあった。40年債は同2.0bp上昇の3.510%。』
てなわけで、
『TRADEWEB
OFFER BID 前日比 時間
2年 0.779 0.785 0.005 14:44
5年 1.074 1.081 0.011 15:11
10年 1.584 1.59 0.02 15:06
20年 2.624 2.63 0.034 15:14
30年 3.158 3.171 0.019 15:16
40年 3.483 3.51 0.049 15:13』
さすがに中長期も金利上昇、ってところですが、まあこれ選挙終わって色々と動き出すまでは手を出しにくいでしょうからちょっと売買来るとバカスカ値段が飛びそうな悪寒しかしませんな。
ところで昨日消費減税ムーブ????をしていた物国ちゃんですが、
売買参考統計値
https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html
(7/15引値)
物価連動国債 21 2026/03/10 平均値単価 101.75 前日比 +10
物価連動国債 22 2027/03/10 平均値単価 103.50 前日比 +40
物価連動国債 23 2028/03/10 平均値単価 102.70 前日比 +45
物価連動国債 24 2029/03/10 平均値単価 103.35 前日比 +65
物価連動国債 25 2030/03/10 平均値単価 108.40 前日比 0
物価連動国債 26 2031/03/10 平均値単価 106.80 前日比 -55
物価連動国債 27 2032/03/10 平均値単価 104.90 前日比 0
物価連動国債 28 2033/03/10 平均値単価 103.40 前日比 -5
物価連動国債 29 2034/03/10 平均値単価 101.90 前日比 -5
物価連動国債 30 2035/03/10 平均値単価 100.65 前日比 -5
ってなっていて、月曜に手前の銘柄がアホみたいに値段が下がった分を半分くらいお返しになられていて月曜の引値は何だったのかと小一時間な訳ですが、長い方が月曜の引けと同様に表の10年利付の利回り上昇ほどの価格低下していない(つまりBEI拡大)しているので、まあ一応財政拡大で物価に長い目で見ればプラスですがなモードだとは思うのですが、何だったんですかねえあの値付けは、まるでよくわからんですけど・・・・・
なおどさくさに紛れて何故か26回だけ消費減税ムーブが1日遅れで出ているようですが、需給がエライ勢いでタイトな25回はこの間引け変わらずって相変わらずのナンノコッチャではありました、まあ謎ですわ。
でもってですね、何気にこの間に短国ちゃんが・・・・・・
(7/15引値)
国庫短期証券1314 2025/09/22 平均値単利 0.410
国庫短期証券1315 2025/09/29 平均値単利 0.410
国庫短期証券1316 2025/10/06 平均値単利 0.400
国庫短期証券1318 2025/10/14 平均値単利 0.380
国庫短期証券1263 2025/10/20 平均値単利 0.410
国庫短期証券1320 2025/10/20 平均値単利 0.410
1318が先週金曜に入札をやったカレント3Mで1320は今週金曜入札の新発WIになりますけれども、3M(1263だけ1Yの成れの果て)の銘柄を並べてみますとお分かりのように、9月末越えの2銘柄がちょろとお金利下がっておりまして、1318は入札時は0.40割れてなくて、その日の引けも別に強くなったわけではない(入札結果を追認するような引けであってショートカバーでいきなり強くなった1316のような動きではなかった)のですが、月曜火曜としれっと引値が強くなっていて火曜の引けは明確に0.40%割れということになっています。
でまあ長いところが金利上昇モードで手を出しにくいので様子見モード、とかになってくると長期ゾーンからの避難民がとりあえず短国にやってくるムーブメント、というのが時折散見されるのですが、もしかしてここに来てのカレント3Mの引値の強さはそういう流れでの強さなのかなあと思わんでもないのですが、実際のところどうなんでしょうかねえ・・・・・・・
今週は1年と3Mの入札が明日明後日に行われる訳ですが、1年は短国と言えどもそこそこ足が長いし、金利水準(1年カレント銘柄の昨日の引けが0.57%)がちょっとどうなんですか問題とかもあるし、どういうニーズ集めるのかは謎な銘柄ですけれども、新発3Mにいつもと違うニーズが来るのか来ないのかというのが少しでも分かるとエエデスノウと思うのでした。
という辺りで今朝は時間が無くなってしまいましたので雑談で勘弁ということですいませんすいません。
2025/07/15
〇財政懸念で反応というお話ですが10年も甘いし消費減税懸念っぽい謎ムーブもあったし
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/DLWP3SKIZVOBDKN4CJRRBWBXN4-2025-07-14/
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は大幅続落、長期金利7週ぶり高水準の1.57% 財政懸念で
ロイター編集
2025年7月14日午後 3:33 GMT+9
『[東京 14日 ロイター] - <15:12> 国債先物は大幅続落、長期金利7週ぶり高水準の1.57% 財政懸念で
国債先物中心限月9月限は、前営業日比51銭安の138円06銭と大幅続落して取引を終えた。財政悪化懸念や海外金利上昇が相場を圧迫した。新発10年国債利回り(長期金利)は同7.0ベーシスポイント(bp)上昇の1.570%。5月23日以来7週ぶり高水準をつけた。』(上記URL先より、以下同様)
ということで米国金利が上昇したせいもあるんですけど(既に金曜の夜間の時点で先物は35銭とか下がっていたので)、週末の参院選情勢報道で与党大苦戦というのが出てきて一段のアカンタレになったという感じなので、
『きょうの国債先物は、前週末の海外市場で欧米国債が売られた(金利は上昇)流れが逆風となり、売り先行でスタート。また参院選の投開票を週末20日に控え、与党が想定以上に苦戦している情勢が伝えられたことが消費税減税に関連した財政悪化懸念につながり、長期・超長期債相場を一段と圧迫した。』
このように説明のある通り、って感じですが、
『現物市場では10年物以外の新発国債利回りも総じて上昇。2年債は前営業日比1.5bp上昇の0.775%、5年債は同4.0bp上昇の1.070%。20年債は同12.0bp上昇の2.620%と2000年10月以来約25年ぶりの高水準をつけたほか、30年債は同12.5bp上昇の3.165%、40年債は同17.0bp上昇の3.495%と、超長期金利の上昇が顕著だった。』
『TRADEWEB
OFFER BID 前日比 時間
2年 0.773 0.78 0.015 15:03
5年 1.063 1.07 0.042 15:10
10年 1.568 1.574 0.075 15:04
20年 2.607 2.623 0.123 15:13
30年 3.159 3.172 0.126 15:13
40年 3.485 3.498 0.162 15:13』
先週月曜も参院選序盤情勢を受けて連立与党過半数微妙ですよねってなもんで超長期売り、ってなっていまして、その時も財政懸念って言ってたのですが、ゆうて先週月曜(7/7)の場合は超長期は確かに爆発炎上してたのですけれども、先物は前日比変わらずとかで、10年も引け変わらずの引けでして、20年が5.5甘の30年10甘、という感じで、財政懸念とか言ってるけど中期堅調だし木曜に20年国債入札あるからその前にホイホイ売ってるってのもあるんじゃネーノ、ってまあそんな感じだったと思うのですよね。
然るに、昨日の場合は10年7甘とかそっちまで金利が上昇している訳で、超長期の金利上昇もかなり碌なもんじゃないのですが(特に40年の既発とか単価見ると泣ける)10年まで金利が上がってきたというのは中々威勢の良い(悪い)流れになっておりますなあと思ったんですがどうですかねえとは思います(個人の感想です)。
とは言いましても、本来2%の物価安定目標が達成されている世の中だったら金利の居場所ってこんなんで良かったんでしたっけって考えますと、もとはと言えばお気持ち物価を盾にして短期金利を上げないわ市場配慮とか言って長期国債買入の減額を渋るわとやっていることによってイールドカーブの長期以下に無駄な金利低下効果を出している日銀とか言うのが市場の金利上昇エネルギーを無駄にため込ませてこういうときに動く、ってのを演出しているとも言えまして、まあ黒田緩和の後始末をビビって渋るからこうなるんだよ、とも思うのでした。
しかしまあ何ですな、
売参ちゃん
https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html
(7/14引値)
物価連動国債 21 2026/03/10 平均値単価 101.65 前日比 -30
物価連動国債 22 2027/03/10 平均値単価 103.10 前日比 -80
物価連動国債 23 2028/03/10 平均値単価 102.25 前日比 -125
物価連動国債 24 2029/03/10 平均値単価 102.70 前日比 -150
物価連動国債 25 2030/03/10 平均値単価 108.40 前日比 0
物価連動国債 26 2031/03/10 平均値単価 107.35 前日比 -5
物価連動国債 27 2032/03/10 平均値単価 104.90 前日比 -15
物価連動国債 28 2033/03/10 平均値単価 103.45 前日比 -20
物価連動国債 29 2034/03/10 平均値単価 101.95 前日比 -25
物価連動国債 30 2035/03/10 平均値単価 100.70 前日比 -30
突如柄にもなく物国ちゃんを出してきました(前回ネタにしたのは多分去年の8月の利上げ後の世界的なアイヤー相場の時だった気が)訳ですが、売参見ても複利が分からん(利回りが非表示(償還と利払いが不定だからシャーナイですよね、一般的には固定利付の100円償還で換算利回り計算はしますがあれは実際の投資利回りではないですしおすし)のでBEIもこれだけだと分からんのでアレですが、まあ前日比単価比較をみると残存1年半と2年半と3年半が盛大に食らっている(25回は極端に需給がタイトな銘柄なので極端な差が出るようですな、知らんけど)という結果だし、何なら30回の30銭安って表の10年よりも値下がりが少ないのでつまりはBEI的にはプラス、という結果になっておりまする。
まあこれは参院選後に消費減税がマジで決まって、でまあ来年あたりのどこかで始まるのでその瞬間にCPIの水準訂正が起きますよって話なのと、やるなら1年とか2年の時限措置じゃネーノってのと、まあそうは言っても盛大な減税政策なんだから需要は喚起されるから中長期的に見たら物価にはプラスじゃろ(何なら財政懸念で円安になれば更に物価には上振れ圧力になりますしおすし)ということから後ろの方の価格は表の金利上昇対比でそんなに売られないということな、と無理やり解釈するとそうなるのですけれども、物国ちゃんの場合残存4年半になる25回債(と26回もそれっぽいですけど)が極端に需給がタイトなので、その関係で極端な値付けになるという面もあるみたいですので、そのストーリーはこじつけのような気もします。
まあ昨年の8月とか今年の4月とかみたいに流動性無し無し相場が起こると物国が言われも無く売り込まれるでござるの巻(特に昨年8月はとんでもない逆行安しましたな、その後猛然と戻りましたけど)という事象はたまに起きるのですが、ゆうて今回の場合は全部が叩き売られるわけではなくて選択制で叩き売られている、というような引値になっていて、消費減税懸念というストーリー(物国の場合はそもそも市場の流動性が碌に無いとのことなので活発な売買を伴って気配が形成されているかどうかはかなり怪しいのだが・・・・・・)にはなっているな、という所ではあります。知らんけど。
〇生活意識アンケート:物価高止まりの弊害が顕在化してきているように見えるのは気のせいでしょうか
概要
https://www.boj.or.jp/research/o_survey/ishiki2507.htm
全体版
https://www.boj.or.jp/research/o_survey/data/ishiki2507.pdf
「生活意識に関するアンケート調査」(第102回<2025年6月調査>)の結果
以下全体版から引用しますけど、
『【調査概要】
・ 調査実施期間 :2025年5月1日(木)〜6月3日(火)
・ 調査対象 :全国の満20歳以上の個人
・ 標本数 :4,000人(有効回答者数2,016人<有効回答率50.4%>)
・ 抽出方法 :層化二段無作為抽出法
・ 調査方法 :郵送調査法
(回答方式は、郵送回答又はインターネット回答の選択式)』
ということなので主に5月の回答かな、とは思いますが、
・景況感悪化ですが物価のせいなのかトラ公のせいなのか
『1-1. 景況感等』の『1-1-1. 景況感』ですが、
『景況感のうち、現在(1年前対比)については、「良くなった」との回答が減少し、「悪くなった」との回答が増加したことから、景況感D.I.は悪化した。先行き(1年後)については、「良くなる」との回答が減少し、「悪くなる」との回答が増加したことから、景況感D.I.は悪化した。』
『現在の景気水準は、『良い』(注1)との回答が減少し、『悪い』(注2)との回答が増加した。』
これ『(図表1)景況感〔Q1、4〕』の図表を見るとかなりどよよーんとしてきますし、その下の長期時系列を見ますと、この1年半くらいの間につるべ落としみたいになっていまして、直近はトラ公のせいだとしましても、これって結局「物価高」が問題になっていて、つまりは「物価と賃金の好循環」などというのは幻想皇帝だったというお話(まあさすがに大本営もアホじゃないので最近は好循環を言わなくなっていますがw)なのではなかろうか、とまあ斯様に思うのでありました、知らんけど。
ただまあアレです、
『1-1-2. 景況判断の根拠
景況判断の根拠については、「自分や家族の収入の状況から」との回答が最も多く、次いで「マスコミ報道を通じて」、「勤め先や自分の店の経営状況から」といった回答が多かった。』
なのですが、『(図表3)景況判断の根拠(2つまでの複数回答)〔Q2〕』を見ますと、『自分や家族の収入の状況から』、『勤め先や自分の店の経営状況から』ってのは回答の中では減っていて、『マスコミ報道を通じて』ってのが絶賛増えているので、やっぱりトラ公のせいなのかとも思ってしまいますわな、というかメディアはクソの役にも立たんなあいつら。
・賃金と物価の好循環とは何だったのかという暮らし向きDI
『1-2. 暮らし向き、消費意識』になりますが、
『1-2-1. 現在の暮らし向き
現在の暮らし向き(1年前対比)については、「ゆとりがなくなってきた」との回答が増加したことから、暮らし向きD.I.は悪化した。』
『(図表5)現在の暮らし向き〔Q6〕』の長期時系列の方を見ますとこれまた着実に下がっていますし、何ならロシアのウクライナ侵攻(2022/02)の半年前くらいがピークで、そこからずるずると下がっている訳でして、どう見ても物価高要因です本当にありがとうございました。
『1-2-2. 収入・支出
収入については、実績(1年前対比)は、「増えた」との回答が減少し、「減った」との回答が増加したことから、現在の収入D.I.は悪化した。先行き(1年後)については、「増える」との回答も、「減る」との回答も横ばいだったことから、1年後の収入D.I.は横ばいとなった。』
これ調査期間が概ね5月なんで夏季賞与の前、というのもあると思うのですが、収入DI悪化するなよと思いましたorzorz
ただまあ例によって図表の長期時系列みたら水準は高水準というか好水準というかなので、そこまで気にしなくてもよさそうには思いました。
『支出については、実績(1年前対比)は、「減った」との回答が増加したものの、「増えた」との回答も増加したことから、現在の支出D.I.はプラス幅が小幅に拡大した。先行き(1年後)は、「増やす」との回答が減少し、「減らす」との回答が増加したことから、1年後の支出D.I.はマイナス幅が拡大した。』
意図的に減らさない限り支出は増えるじゃろと思うので「減った」が増加しながら全体は支出増加で、先行きは「減らそう」と思っている人が多いってのは整合的ですよね。まあそうじゃろそうじゃろ。
『今後1年間の支出を考えるにあたって特に重視することは、「今後の物価の動向」との回答が最も多く、次いで「収入の増減」、「余暇・休暇の増減」といった回答が多かった。
商品やサービスを選ぶ際に特に重視することは、「価格が安い」との回答が最も多く、次いで「安全性が高い」、「信頼性が高い」、「長く使える」といった回答が多かった。』
後半の『(図表9)今後1年間、商品やサービスを選ぶ際に特に重視すること(3つまでの複数回答)〔Q11(3)〕』って上位の順位は基本不動なんですけど、「価格が安い」が増えているときは貧乏モードというのが大体の今までの仕様だったと思います。
・収入DIもそうですけど雇用のDIも悪化しているのは引っかかりますね
『1-2-3. 雇用環境
1年後を見た勤労者(注)の勤め先での雇用・処遇の不安については、「あまり感じない」との回答が減少し、「かなり感じる」との回答が増加したことから、雇用環境D.I.は悪化した。』
長期時系列見るとちょっと下がりかけにも見えますし、ただのダマシかもしれないので判断保留ですけれども、気分のいいグラフではありません。
・みんな大好きインフレ期待はひたすら堅調である
みんな大好き『1-3. 物価に対する実感』に参りますが、
『1-3-1. 現在の物価
現在の物価(注1)に対する実感(1年前対比)は、『上がった』(注2)と回答した人の割合が9割台後半となった。』
そらそうよ。
『1年前に比べ、物価は何%程度変化したかについて、具体的な数値による回答を求めたところ、平均値は+19.5%(前回:+19.1%)、中央値は+15.0%(前回:+15.0%)となった。』
はいはいダブルデジットダブルデジット、というか2割ですよ2割。
『(図表11)現在の物価に対する実感〔Q12、13〕』の<1年前に比べ現在の物価は
何%程度変化したと思うか>をみますと泣けますな。
平均値 中央値
24/12月 +17.0 % +12.5 %
25/ 3月 +19.1 % +15.0 %
25/ 6月 +19.5 % +15.0 %
『(注)1. 極端な値を排除するために上下各々0.5%のサンプルを除いて計算した平均値。なお、全サンプルの単純平均値は、+20.2% (前回調査<2025/3月実施>:+19.8%)。』
2割キタコレですわということで、そりゃあ選挙で与党が大苦戦するわという話で、欧米で起きたことがやっとジャパンでも発生と思えばそりゃしゃあないわという所ですが、ジャパンの場合は何故か金融政策で対応という話が出ない上に財政を出す話になるという義務教育の敗北が発生しているのがもうねという所ですがそんな与太話はさておきインフレ期待は・・・・・・
『1-3-2. 1年後の物価
1年後の物価については、『上がる』(注)と回答した人の割合が8割台半ばとなった。
1年後の物価は現在と比べ何%程度変化すると思うかについて、具体的な数値による回答を求めたところ、平均値は+12.8%(前回:+12.2%)、中央値は+10.0%(前回:+10.0%)となった。』
平均値どんどん上がってますやんということで、『なお、全サンプルの単純平均値は、+13.5% (前回調査<2025/3月実施>:+12.7%)。』とも言われておりますナムナム。
『1-3-3. 5年後の物価
5年後の物価については、『上がる』(注)と回答した人の割合が8割台前半となった。
これから5年間で物価は現在と比べ毎年、平均何%程度変化すると思うかについて、具体的な数値による回答を求めたところ、平均値は+9.9%(前回:+9.6%)、中央値は+5.0%(前回:+5.0%)となった。』
<5年後の物価は現在と比べ毎年、平均何%程度変化すると思うか>
平均値 中央値
24/12月 + 9.2 % + 5.0 %
25/ 3月 + 9.6 % + 5.0 %
25/ 6月 + 9.9 % + 5.0 %
ですし、『なお、全サンプルの単純平均値は、+10.5% (前回調査<2025/3月実施>:+10.4%)。』となっておりまして、もちろん絶対値としての数字自体はこれ常に高め高めにでるので絶対値云々ではないのですけれども、普通にインフレ期待大定着状態だと思うのですが、何でこれで「基調的物価は2%行ってない」って話になるのか、7月の展望レポートでもっとまじめに示して頂きたい、と思いました。
とまあそんな所でしょうか、今朝はこの辺で勘弁。
2025/07/11
〇さくらレポートはまあ普通に強気に見えるんだが(特に企業行動)
概要
https://www.boj.or.jp/research/brp/rer/rer250710.htm
本文
https://www.boj.or.jp/research/brp/rer/data/rer250710.pdf
・全体は「全地域横ばい」ですが関税込みで横ばいなのでまあハトハトチキンではない
まずは概要から引用しますが、
『(1)各地域の景気の総括判断
一部に弱めの動きもみられるが、すべての地域で、景気は「緩やかに回復」、「持ち直し」、「緩やかに持ち直し」としている。』
ということで『▽各地域の景気の総括判断と前回との比較』を見ますと、ってまともに引用しているとめんどいのですが、要するに今回は全部不変、ということでして4月と変わらん、ということなので、関税でアイヤーと言っていた4月の段階とそんなに変わらん、という結果な訳でして、まあこれはトラ公の関税の影響ってそんなに出てないんじゃね、ってお話になるわけですが・・・・・・・
・関税の設備投資への影響は「直接的に来そうな人には来ている」と読める編集ですね
今回どこからどう見ても注目すべきなのはさくらレポート本文の方で『(3)企業等の主な声(トピック別)※』のところでしょということでまあこれを見るわけですよね。
『@各国の通商政策の影響』
まずは『【設備投資】』
『・ 各国の通商政策を巡る不確実性の強まりを受けた取引先の投資計画先送りから、当社も能力増強投資を半年程度延期させる方針(前橋[電気機械])。』
『・ 米国の追加関税の影響で収益環境の悪化が見込まれることから、不要不急の設備投資を見直すなど、コスト削減を進めていく方針(広島[自動車関連])。』
ということで影響出てるわな、というひともあれば、
『・ 足もとにおける不確実性の高まりは気がかりであるものの、半導体関連製品や環境対応等の成長分野は、中長期的な事業ポートフォリオの転換に不可欠であるため、今後も計画通りに設備投資を行う方針(下関[化学])。』
『・ 省人化投資やソフトウェア投資を中心に積極的な投資スタンスを維持しており、設備投資額・研究開発投資額は高水準で推移している(横浜[はん用機械])。』
という方もおいで、となっていて「まちまちです」という印象を与える編集になっています。まあこれに関しては直接的に影響が出る人とそうじゃない人いるからそういう話なんでしょうけれども。
・関税の価格設定の影響は何か強気に見えるのですが実際どうなんでしょ&まあどっちにも結論付けれますからねえ
次が注目の『【価格設定】』
『・ 当社製品は競争優位性が高いため、関税の引き上げに伴う値上げが米国の取引先に受け入れられており、輸出数量への影響は限定的(新潟[生産用機械])。』
冒頭から威勢の良い話。技術立国日本はこうじゃなければいけませんですな!
『・ 現在、米国現地の取引先と関税の負担割合について交渉を進めている。なお、米国への生産拠点の移管についても検討したが、部品調達網の構築負担が大きいことなどから、現実的ではないとの結論に至り、見送った(高松[生産用機械])。』
こちらは交渉中、現地化はそりゃ無理じゃろうよと思いました。
『・ 当社部品の納入先では、関税の引き上げに直面しているものの、今のところ、当社の原材料費等の上昇分に対する価格転嫁要請の受け入れ姿勢に、大きな変化はみられていない(前橋[輸送用機械])。』
ほうほうほう。
『・ 収益を確保する観点から、米国向け製品の関税引き上げに伴うコスト上昇分は原則全て販売価格に転嫁する方針。もっとも、米国における一部の取引先は難色を示しており、価格交渉が難航している(仙台[生産用機械])。』
とのことですが、ゆうてまあ威勢が良いじゃん、と思うのですが、実際問題として輸出価格どうなっているの問題というのもあるわけですので、これはまあ通関統計とかと併用して考えないと、って感じでしょうか。
ただまあこのさくらレポートの「見せ方」はどっからどう見ても「トランプ関税による国内企業の販売価格下押し圧力はさほど大きいものではない」という「見せ方」になっています。まあこれを「よって4月に見込んでいた経済物価への先行き下押し圧力はそこまででもありませんねえあっはっは」と楽観の文脈に持ち込むのか、それとも「関税の影響はまだ出ていないのだが今後どうなるかは予断を許さないので警戒を怠れませんですねアイヤー」とハトハトチキンの文脈に持ち込むのかは、正直これはハトハトチキン執行部(ただし氷見野さんはハトハトチキンではない可能性がオオアリクイ)次第であろうかとは存じます。
・輸出・生産の本命部分は「これから影響が出てくるんじゃなかろうか」ネタのオンパレードですね
次が『【輸出・生産】』ですね。
『・ 半導体関連製品への分野別関税発動の可能性を踏まえ、中国や台湾、韓国の取引先から駆け込み需要がみられており、輸出は高水準で推移(広島[電気機械])。』
ということで「まだ駆け込みがある」という話なのでこれはハトハトチキン的には「それみたことか悪影響はこれからじゃ」となりそうなお話キタコレです。
『・ 各国の通商政策を巡る不確実性の高まりを背景に、米国における取引先の投資スタンスが後退し、当社製品への需要が鈍化しており、売上が下押しされている。こうしたもと、通期の生産計画を下方修正した(大阪[生産用機械])。』
下振れキタコレ。
『・ 各国の通商政策を意識した取引先の生産移管などから、一部メーカーの受注が下振れており、生産は7月頃から前年を幾分下回る見通し(本店[輸送用機械])。』
まさに「これから影響が出てきます」モード。
『・ 海外需要は、各国の通商政策の影響を受けて一時的な変動がみられるものの、基調としては堅調に推移しており、輸出は増加傾向にある。なお、海外での販売価格について、関税を受けた値上げは実施しない方針(名古屋[輸送用機械])。』
威勢の良い話だと一瞬思ったが、最後の「海外での販売価格について、関税を受けた値上げは実施しない方針」ってのが悲しいわけでして、さっきの「当社製品は競争優位性が高いため、関税の引き上げに伴う値上げが米国の取引先に受け入れられており、輸出数量への影響は限定的(新潟[生産用機械])」という威勢の良いお方と比較して悲しさが伝わってまいりますわな、南無三。
『・ 関税引き上げの影響から、先行き、当社納入先の米国向け輸出が減少し、当社への発注が減少することを懸念(北九州[鉄鋼])。』
これまた「これから影響」ですね。
『・ 多くの中小企業は、自社製品の用途や最終製品化までの商流が詳細に分からないため、関税の引き上げによる影響の経路や時期を予測できない。現時点で具体的な影響はみられないものの、先行きへの懸念が広がっている(大阪[経済団体])。』
ほうほう。
『・ 各国の通商政策の影響を受けて一部原材料の調達が滞っており、先行き自動車向け部品は減産の可能性がある(新潟[輸送用機械])。』
最後はまさかの供給制約の方の話でした。
・・・・・・というわけで、こちらが経済見通しに関するアネクの本命ともいえそうな部分ですが、並べているのを見ますと「関税の影響が顕在化するのはこれからです」って話のオンパレードになっておりまして、ここだけで言えば「まずは様子見地蔵」という説明を正当化する内容になっているかと思います。ただまあこれってあくまでも関税の影響に焦点絞った話なので、今回の短観で非製造業がバチクソ強かった話とかそういう総合的な話になると別問題とも言えますけど。
・みんな大好きおちんぎんは堅調と(留保は付いているけど)
関税の影響コーナーの最後が『【賃金設定】』ですが、
『・ 競合他社との人材獲得競争が激化する中、2025 年度は、ねん出可能な上限額である9%の賃上げを実施(高松[建設])。』
まあ素敵。
『・ 深刻な人手不足に伴い売上の増加が追求しにくくなったため、データに基づく分析を行って利益率の高い分野へ経営資源を集中させた結果、営業利益率は既往ピークを更新。3年連続となる5%強の賃上げを実現した(金沢[生産用機械])。』
ほう・・・・(選択と集中は用法容量に要注意)
『・ 全体としてみれば、地域の企業でも人手不足が深刻化するもと、賃上げの動きが強まっている。大企業が賃上げを実施する中、中小企業も人手確保のため追随して賃上げしている(大阪[経済団体])。』
ほほう。
『・ 夏季賞与は、昨年度の好調な業績を踏まえ、高水準の支給額とした。先行き、各国の通商政策の影響により海上荷動きが鈍化して業績が下振れた場合は、冬季賞与を減額する可能性がある(大阪[運輸])。』
やはり「今後の変化は冬季賞与から来年の賃金改定」という話になりますね。
『・ 今後、各国の通商政策の影響から、当社部品の納入先が価格交渉スタンスを慎重化させる可能性もあり、来年度も継続的に賃上げできるか懸念している(本店[輸送用機械])。』
ふむふむなるほど。
『・ 各国の通商政策の影響を受けて、当社部品の納入先が価格交渉スタンスを厳格化させた場合でも、人材の確保に向けてベアを実施していく方針(本店[輸送用機械])。』
ということで最初と最後を威勢よくまとめて何となく強い感じにしていますね。
・より全般的な価格設定についての話が小売と飲食と食料品並べているのはナンナンデスカネー
と、これまでが関税の影響の話(なので製造業の話ばっかり)でしたが、次がより全般的な文脈での価格設定のお話、の筈なのですが・・・・・・・
『A価格設定』からですな。
『・ 原材料費は市況の下落や為替円高により抑制できている一方、人件費や輸送費などが継続的に上昇しているため、値上げを行った(本店[食料品])。』
はい。
『・ 米価の高騰から、これまで価格を据え置いてきた弁当やおにぎりなどの商品の価格維持が困難となっており、今後段階的に値上げを行う方針(水戸[小売])。』
アイヤー
『・ 物価の上昇が続くもとで、ここ数年間当社も複数回の値上げを行っており、都市部以外の店舗では、中高年層の顧客の来店頻度が低下している(本店[飲食])。』
そらそうじゃろとは思いますが値上げが続く話ですし、
『・ 高騰が続く米などの仕入コストを転嫁するため、さらなる値上げを予定。その際は、顧客離れを防ぐために、既存商品の値上げを段階的に行うほか、新たに低価格商品の開発も強化する(秋田[飲食])。』
ってな話をしていますが、これよく見ると「コストプッシュ要因の上昇はワンタイム」とか能天気なこと言っている場合じゃなくて、普通にコストプッシュが起点になって物価上がるじゃと、という話ではあるのですが、ただまあこれ「食料品、小売、飲食、飲食」って並べていて、ここでの「見せ方」があまりにも業種偏り過ぎてないですか、とは思いましたので逆に編集に何かの意図でもあるのかと疑ってしまいますわな・・・・
・個人消費のコーナーはこれでもかという位に威勢が良すぎてむしろビビるレベルかと
でもって個人消費とインバウンド様ということで『B個人消費(インバウンド需要を含む)』ですが。
『・ 国内富裕層の消費意欲は堅調。インバウンド客の来店客数は増加しているものの、為替円高の影響等もあって、売れ筋が高額品から化粧品や日本製の生活雑貨にシフトし、客単価は低下している(神戸[百貨店]<京都、大阪>)。』
ほうほうそうですかと思いますが、安い単価のインバウンドとか要らんわなどと言ったらいけませんですかそうですか。
『・ 備蓄米が流通する前は米の買い控えがみられた。米を含む食料品の価格に対する顧客の目線は厳しく、当社のセール実施時にはスーパー等の顧客が流入してくるため、売上が顕著に増加している(札幌[ドラッグストア])。』
ほえーーーーー
『・ 大阪・関西万博の開幕以降、客室単価を引き上げても、国内外から宿泊者が増えており、売上は想定を上回って推移している(大阪[宿泊])。』
イイハナシダナー
『・ 人件費や原材料費などのコスト増加分の6割程度をゴルフ場利用料に転嫁しているが、来客数は県外観光客を中心に堅調(青森[対個人サービス])。』
まあさっきの「国内富裕層の消費意欲は堅調」もそうですけど払える人は払うっちゅうことですかねえ、知らんけど。
『・ 4月に食料品の値上げが相次いだため、節約志向の強まりを懸念したが、買い上げ点数は想定ほど落ち込まず、消費者の支出スタンスは底堅い(松本[スーパー])。』
おおおおおおおおお
『・ 割安なメニューの販売好調が続く一方、入学式などハレの日関連の利用も増加しており、メリハリ消費の強まりを感じる(名古屋[飲食])。』
なるほど、とは思いますがこの手の「ハレ消費」だの「メリハリ消費」だの言ってるのの後ってあんまり良い思い出が無いのですけどね・・・・・・・・・
ということで、この個人消費のところはまあ威勢の良い話がひたすら並んでおりまして、やはり今回のさくらレポートの全体観としては「なんかエライ堅調なんですけど」という印象になるんじゃないかと思ったのですがどうなんでしょうかねえ・・・・・・・・
2025/07/08
〇関税25%ですかそうですか・・・・・
ゴロツキキタコレ
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-07-07/SZ1JYFT0G1KW00
トランプ氏が日韓に25%関税通知、交渉期限を延期−回避手段にも言及
Josh Wingrove、Catherine Lucey
2025年7月8日 4:52 JST
→セクター別関税は別と説明、報復ならその分25%関税に上乗せと警告
→市場開放や米国での生産拡大を通じて発動を回避する手段も明記
『トランプ氏の発表を受けて、米国株式市場は下落。S&P500種株価指数は約1%下落、
ナスダック100指数は0.8%下落した。シカゴ・オプション取引所のVIX指数は18.10前後で推移。テクノロジー株の予想変動率を示す指標は2週間ぶりの高水準となった。
円は対ドルで146円台に下落。一時は1.2%安の146円23銭付近と、日中としては6月23日以来の安値をつけた。』(上記URL先より)
つまらん妥協はせんでもろていただいて、とは個人の感想です的には思いますし、米国の物価が上がってトランプざまあという展開からのTACOちゃんじゃろとは思うのですけれどもさてどうなるのやらという感じですな。
ただまあどうなんでしょうかね、これ結局自動車とかは別に上乗せとか言い出すんでしょうからこれで終わりって感じでもないんでしょうから、「関税交渉の先行き不透明ガー」という話になる、と考えますと、日銀大本営の現在の屁理屈からしますと、関税問題の先行きが不透明でありますので政策は地蔵です(キリッ)って事になるわけで、もちろん7月利上げとかありえないのですけれども、7月展望レポートの段階で先行きの政策に関して9月10月に向けた前向き示唆ってのも出しにくくなったかなあ、とは思うのでありますがどうでしょうかね。
まあその前に参院選というネタもあるので7月会合でどのようなトーンになるのかを今から考えても時間の無駄っぽい気もしますけれども、
〇また超長期の金利が上がっている訳だが(財政懸念ネタで)という備忘メモ
月曜の債券市場ちゃん
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/QU7IYDOBQZJR3HFPTWADHU43AQ-2025-07-07/
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は横ばい、長期金利1.455% 財政懸念で超長期債は金利上昇
ロイター編集
2025年7月7日午後 3:30 GMT+9
『[東京 7日 ロイター] - <15:22> 国債先物は横ばい、長期金利1.455% 財政懸念で超長期債は金利上昇
国債先物中心限月9月限は、前営業日と横ばいの139円12銭で取引を終えた。手掛かり材料に乏しい中、全体的に動意薄だった。新発10年国債利回り(長期金利)は同2.0bp上昇の1.455%。現物市場では財政拡張懸念から超長期ゾーンに金利上昇圧力がかかった。』(上記URL先より、以下同様)
まあ超長期は盛大に動意があったという話でもありますがorz
『現物市場では、新発債利回りはまちまち。2年債は同0.5ベーシスポイント(bp)低下の0.730%、5年債は同横ばいの0.970%。一方、20年債は同5.5bp上昇の2.425%と6月4日以来の高水準。30年債は同10.5bp上昇の2.970%と、5月30日以来の水準まで上昇した。40年債は出合いなし。』
挙句にイブニングで30年一段安やってた気はしますわな。
・・・・・ということでとりあえず参院選序盤情勢ということで連立与党で50議席確保が微妙な線とかいう話になっていたというのがネタになって売られている、というのはまあそうなんですけれども、よくよく考えて見ますと物価が2%水準で推移するっての考えたら別に30年金利3%ってクソ高い水準でも何でもなくねえか???って話は有るわけでして、そもそも論として物価の長期均衡水準が何ぼですかと考えた場合に、そこにタームプレミアム乗っけた水準に対して日銀の長期国債買入とかいうクソイベントが継続していて、しかもお気持ち物価を持ち出して政策金利水準を無駄に低い水準に置いているから国債を買おうって人が何時まで経っても増えてくれないってだけの話ではなかろうか、などと3%という水準を見ながら思う訳で(個人の暴言ですwwww)ジャパンの場合は債券自警団復活みたいなカッコいい話ではなかろう(だいたいからして自警団なら当局にクレクレ大合唱してるんじゃねえよって話な訳で自警団を名乗るのが烏滸がましいにも程があるwwwwwwww)という所ですが、まあ超長期の金利が上昇してくれれば馬鹿政治家へのシグナルくらいにはなるでしょうから、この調子で警鐘を鳴らして頂きたいものだと思います。
ただまあアレですよね、こんなタイミングからベアスティープニング(というか2年対比ではツイストだがw)していますと、肝心の参院選の結果が出る前にスティープニング疲れするんじゃないかという感じ(2週間はさすがに長いじゃろ)ですし、まあそれ以前に関税の話が狂犬から放たれましたので、今日はそっちの話になるんですかね、知らんけど。
でまあロイターさん記事のTRADEWEBの気配ですけれども、
OFFER BID 前日比
2年 0.725 0.734 0 15:20
5年 0.966 0.973 -0.002 15:19
10年 1.448 1.455 0.02 15:20
20年 2.418 2.431 0.062 15:20
30年 2.963 2.977 0.113 15:20
40年 3.218 3.251 0.116 15:20
とのことで超長期ドイヒーという結果になっておりますが、なんかまあ折角発行減額の決定をしてもダメなもんはダメという結果なのは残念ですが、ニーズが無いのもあるにせよ金利水準が足りないからというお話なので、やはり国債買入の額が多すぎだし、いまとなっては長期国債の買入をしている意味って「昔威勢よく買っていたのを急にゼロにできないので徐々に調整」という意味しかない筈なのに、買入縮小ペースを上げるどころか下げる決定しているのは何とかならんのかと思う訳で、結局当局プットみたいな信仰が円債市場にあるもんだから健全な調整が進まないでちょっとプットが入って反発→冷静に考えたら水準がダメだろとなってやっぱり売られる、みたいな無駄なボラを生み出しているというのが個人の極論です。
〇また実質賃金が下がっている訳だが(じっと財布を見る)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-07-06/SYSQ9NT1UM0W00
5月の実質賃金は2.9%減、20カ月ぶりの減少率−基本給は堅調維持
氏兼敬子
2025年7月7日 8:30 JST 更新日時 2025年7月7日 10:05 JST
→実質賃金5カ月連続マイナス−名目1.0%増、賞与減で伸び鈍化
→基本給は2.1%増とモメンタム持続、高水準の春闘結果を反映
『物価変動を反映させた実質賃金は5月に20カ月ぶりの大幅な減少率となった。物価の上昇が続く中、名目賃金の伸びの鈍化が響いた。所得の改善を実感しにくい状況が続く中、参院選に向けて物価高への対応を求める声が一層強まりそうだ。』(上記URL先より、以下同様)
ということで物価上昇対策ってのが今回は参院選の争点にとうとうなってしまった訳ですけれども(前回の衆院選は政治と金とかそっちで物価はその次位って感じでしたからね)。
『厚生労働省が7日発表した毎月勤労統計調査(速報)によると、「持ち家の帰属家賃を除く」消費者物価指数で算出した実質賃金は前年同月比2.9%減と、2023年9月以来の低水準となった。市場予想は1.7%減だった。名目賃金に相当する1人当たりの現金給与総額は1.0%増と、市場予想(2.4%増)を大きく下回った。賞与など特別に支払われた給与が18.7%減少したことが影響した。』
ふむふむ。
『実質賃金のマイナスは5カ月連続。コメなど食料品をはじめとする物価の上昇に賃金の伸びが追いついていない状況が続いている。20日投開票の参院選では、物価高対策として給付や減税が争点となる中で、石破茂首相は「何よりも賃上げ」と強調した。今回の結果は石破政権にとって逆風となる可能性がある。』
いやマジのマジでこの情勢で未だに「基調的物価は2%行ってないから金融緩和が必要」って言ってるの何なのという話で、まあさすがに「基調的物価を引き上げる」みたいな「物価を上げる」という表現を使うと日銀に十字砲火の矛先が一気に向く、という事くらいは分かっているようでその言い方だけはしていない(「経済を支える」としか言わない)のですけれども、選挙終わったらどういう方向になるにせよ財政拡張の話になるわけで、またまたインフレ押上げ要因がやって来て、「これから実際の物価は下がる」という日銀の大本営願望予想が外れる方向になるはずですが、政治的に大丈夫ですかねえとは思います。とは言え高圧経済とか未だに妄言吐いている人たちも政治方面にはいるので、もう日銀もシランガナとなって政策調整を知らんぷりする可能性もあり、これまた今後はどうなるんでしょうねって感じで、選挙の後どうなるかは(自分の生活防衛的にも)色々と考えないといけませんなと思うのであります。
まあ実質賃金がまたマイナス、では日銀は(内心どう思うかはさておき)それ自体には全然反応しないでしょうし、なんなら「企業の賃金設定行動を支えるためにも金融緩和政策の継続が必要」と言い出しそうなので、残念ながらこれで政策調整が早まるとは思えません、というかこれで早まるようなタマだったらとっくの昔に短期政策金利は1%台になっていますwwwwwwwww
2025/07/07
〇日銀はいつまでこのオッサンを有難がって何とかコンファランスとかで喋らせる気なのかと
これはひど過ぎる・・・・・・
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-07-04/SYTI2XDWLU6800
日銀の物価見通し上方修正は確実、関税次第で年末に利上げも−渡辺氏
伊藤純夫、藤岡徹
2025年7月4日 17:10 JST
→物価はそれなりの危険水域、日銀見通しに比べてすでにかなり上振れ
→政策対応が遅れるリスクが高まっている、基調物価は「魔法の言葉」
えーっとですね、オッサンついこの前何言ってましたかって話で、
https://diamond.jp/articles/-/364394
日本銀行は利下げへ転換せよ、トランプ関税下の利上げ路線が招く「デフレ逆戻り」のリスク
渡辺 努: ナウキャスト創業者・取締役、東京大学名誉教授
政策・マーケット渡辺努 物価の教室
2025年5月8日 8:30 会員限定
いやマジでこのオッサンの言うように金融政策運営したら4月会合は利下げで7月会合は倍返しで利上げですかって無茶苦茶な話になるわけでして、まーこの人の金融政策の話ってど素人レベルの話を堂々とする訳で、日銀と東大と日本の経済学という学問のレピュテーションを纏めて投げ捨てるというのは凄まじいとしか言いようが無いですわな(あくまでも個人の感想です)。
ってまあ朝のひとことのつもりで書いたのだが小見出しつけてみましたwww
2025/07/02
〇いつもの短観私家版確認:全然弱くなってこないじゃないですかヤダー(棒読み)
https://www.boj.or.jp/statistics/tk/gaiyo/2021/tka2506.pdf
短 観(概要)―2025年6月―
第205回 全国企業短期経済観測調査
< 回 答 期 間 > 5月28日 〜 6月30日
・一応短観にちょっとは反応してくれましたが・・・・・・・
前回の短観は4/1だったのでまだ例のトラ公のアレが出る前(直前)で、短観がやや強いですなという結果に債券市場が盛大に反応していたのですが、その前の短観が12月の短観でこれが出たのが12/13だったんですね。
でもって昨年の12/13と言えば短観は普通に強い内容だったのですが、その前に日銀の毎度のお漏らし攻撃によって12月利上げ観測火消どころか1月利上げもしないんじゃなかろうかということになって市場がなんも反応しなかった訳です。
これに対して4/1は短観結果に普通に反応して(その前が期末だったのですが謎の債券先物クソ上がりをしたのでその反動もあったのですが)いてよかったよかったなどと言ってたらトラ公のアレが出てぶち壊しになった訳です。
で、今回ですけれども、短観は全然悪い内容ではなくて、関税で国難とは何だったのかというような風情ではあったので、債券先物10銭ちょい反応しておりました(その後10年国債入札が激強の結果となったので全ての話がすっ飛んでしまいましたが)ので、まあちったあ反応するだけ昨年12月よりはマシとは言えるのですが、まあでも結局のところ今回って「思ったほど弱くないじゃん」となっても、日銀大本営におかれましては「これから影響が出る出る詐欺」作戦で行くのがまあ見え見えって感じじゃろうな、とは誰しもが思う訳でして、残念ながらこの短観が弱くなかったのを材料に日銀が4月の展望がクソ弱くし過ぎましたゴメンチャイなどという訳も無く、ってなことで反応してくれないという所なのかな、とは思いました、知らんけど。
・業況判断DIは「前回の先行き下がる見通しよりも全然強い」し何なら前回の短観はトラ公の例のアレの前なんですよ!!!
(3月短観) (6月短観)
現状→6月予測 現状→9月予測
製造業大企業 +12→+12 +13→+12
製造業中堅企業 +11→+4 +10→+6
製造業中小企業 +2→▲1 +1→▲2
非製造業大企業 +35→+28 +34→+27
非製造業中堅企業 +25→+18 +25→+17
非製造業中小企業 +16→+9 +15→+9
こちらですけど、何せ前回の短観は「 < 回 答 期 間 > 2月26日 〜 3月31日」でして、短観の回答ってのが概ね回答期間の前半の早いうちに回答される傾向がある、という風に聞いておりますので、すなわちあの4月に出たトラ公のキチガイ関税は織り込んでいない(トラ公の事だからある程度のブラッシュボールは投げてくるじゃろというのは織り込んでいたと思いますが)訳でして、その状況でトラ公に対するフワッとした懸念段階で出した先行きの下げ(特になぜか非製造業)見通しに対して、今回って軽々と上方修正していますし、殆ど3月短観から現状DI変わっていないという結果になっておりますので、これは堅調堅調。
ただまあどうせ大本営のことですから、「米国関税政策の悪影響はこれから出てくるんです」とか言い出す下がる下がる詐欺によってこの数字は追い風参考記録扱いしてくる、に1万ジンバブエドルといった所です。
・企業の販売価格見通しはこれまた大して落ち込んでもいないのですな
販売価格見通し 全規模合計 全 産 業
1年後 6月:3.0%→9月:2.8%→12月:2.6%→3月:2.7%→6月:2.8%→9月:2.8%→12月:2.8%→3月:2.9%→6月:2.9%
3年後 6月:3.8%→9月:3.8%→12月:3.7%→3月:4.0%→6月:4.1%→9月:4.1%→12月:4.2%→3月:4.4%→6月:4.3%
5年後 6月:4.4%→9月:4.4%→12月:4.4%→3月:4.7%→6月:4.8%→9月:4.9%→12月:5.0%→3月:5.2%→6月:5.1%
大 企 業 製 造 業
1年後 6月:2.5%→9月:2.4%→12月:2.2%→3月:2.2%→6月:2.3%→9月:2.2%→12月:2.2%→3月:2.3%→6月:2.3%
3年後 6月:2.8%→9月:2.9%→12月:2.8%→3月:2.8%→6月:3.2%→9月:3.1%→12月:3.2%→3月:3.4%→6月:3.1%
5年後 6月:3.0%→9月:3.1%→12月:3.0%→3月:3.1%→6月:3.3%→9月:3.4%→12月:3.4%→3月:3.7%→6月:3.8%
大 企 業 非製造業
1年後 6月:2.1%→9月:2.2%→12月:2.0%→3月:2.0%→6月:2.1%→9月:2.1%→12月:2.2%→3月:2.4%→6月:2.3%
3年後 6月:2.8%→9月:2.8%→12月:2.7%→3月:2.8%→6月:3.0%→9月:3.0%→12月:3.1%→3月:3.1%→6月:3.2%
5年後 6月:3.2%→9月:3.4%→12月:3.2%→3月:3.2%→6月:3.4%→9月:3.5%→12月:3.6%→3月:3.5%→6月:3.9%
この推移を見ますと、どこからどう見ても「企業の価格設定行動はこの2年間ほど全然変わらずに堅調」としか言いようが無いと思うのですが、これまた「米国関税政策の悪影響は以下同文」と言い張ってくると思います。まあこれを受けて7月展望が4月にクソ下げしたものを撤回でもすれば日銀も大したもんですけど、そんなタマではない、というのは散々見ておりますのでwwwww
・企業の物価全般見通しも同様でこの2年くらいずっと高値安定しているんですけどね
物価全般見通し 全規模合計 全 産 業
1年後 6月:2.6%→9月:2.5%→12月:2.4%→3月:2.4%→6月:2.4%→9月:2.4%→12月:2.4%→3月:2.5%→6月:2.4%
3年後 6月:2.2%→9月:2.2%→12月:2.2%→3月:2.2%→6月:2.3%→9月:2.3%→12月:2.3%→3月:2.4%→6月:2.4%
5年後 6月:2.1%→9月:2.1%→12月:2.1%→3月:2.1%→6月:2.2%→9月:2.2%→12月:2.2%→3月:2.3%→6月:2.3%
中小企業 製 造 業
1年後 6月:2.9%→9月:2.8%→12月:2.7%→3月:2.6%→6月:2.7%→9月:2.6%→12月:2.6%→3月:2.7%→6月:2.6%
3年後 6月:2.4%→9月:2.4%→12月:2.4%→3月:2.4%→6月:2.5%→9月:2.5%→12月:2.5%→3月:2.6%→6月:2.5%
5年後 6月:2.3%→9月:2.3%→12月:2.3%→3月:2.4%→6月:2.5%→9月:2.4%→12月:2.5%→3月:2.5%→6月:2.5%
中小企業 非製造業
1年後 6月:2.8%→9月:2.8%→12月:2.6%→3月:2.6%→6月:2.6%→9月:2.6%→12月:2.6%→3月:2.7%→6月:2.6%
3年後 6月:2.4%→9月:2.5%→12月:2.4%→3月:2.4%→6月:2.5%→9月:2.4%→12月:2.5%→3月:2.6%→6月:2.5%
5年後 6月:2.3%→9月:2.3%→12月:2.3%→3月:2.3%→6月:2.4%→9月:2.4%→12月:2.4%→3月:2.5%→6月:2.4%
毎回申し上げていますが、こちらで大企業じゃなくて中小企業をだしているのは、かつてこの短観の数字を出しだしたときに日銀大本営は「大企業の価格見通しはエコノミスト見通しや市場見通しに影響されやすいが、より一般の見方に近いのは中小企業の見通しである(
ー`дー´)キリッ」とか言ってたんですが、黒田末期以降は利上げを渋る屁理屈を並べるのに忙しいので、すっかり言わなくなっているので可哀そうなので掲載している次第でありますw
でまあ今回は確かにスライトリーに下がってい入るものの、結局のところこの2年間ほど特に著変は無い、とも先ほどと同様に言える訳でございまして、「そもそも論として何を持ち出せば「インフレ期待がまだ2%に届いていない」とか言えるのか、というのを日銀は真面目に示すべきではないか、と斯様思う訳です、ってのを毎回のように言っているのですが、ひたすら誤魔化し続けているのが変わっていない、というのも皆様ご案内の通りかと存じます。
・販売価格判断と仕入価格判断は3月短観が驚愕の強さでしたがさすがにこちらは落ち着いた感じで
販売価格判断
(3月短観) (6月短観)
現状→6月予測 現状→9月予測
製造業大企業 +28→+30 +25→+27
製造業中小企業 +27→+37 +27→+31
非製造業大企業 +32→+34 +34→+30
非製造業中小企業 +30→+37 +30→+33
仕入価格判断
(3月短観) (6月短観)
現状→6月予測 現状→9月予測
製造業大企業 +41→+43 +39→+39
製造業中小企業 +57→+62 +54→+56
非製造業大企業 +48→+49 +45→+44
非製造業中小企業 +57→+61 +54→+56
ということでこちらの数値は(3月短観がクソ強かったというのもあるのですが)3月短観よりも落ち着いた数値になっていますので、これは大本営が鬼の首を取ったようにチェリーピッキングしてきますねw
・雇用判断DI:前々回、前回はその前並みで見通しほどは一段の引き締まりなし、でしたが今回も同様
(3月短観) (6月短観)
現状→6月予測 現状→9月予測
製造業大企業 ▲17→▲21 ▲18→▲22
製造業中堅企業 ▲26→▲28 ▲24→▲28
製造業中小企業 ▲24→▲30 ▲23→▲28
非製造業大企業 ▲39→▲40 ▲39→▲40
非製造業中堅企業 ▲46→▲48 ▲46→▲48
非製造業中小企業 ▲48→▲52 ▲46→▲50
こちらは毎度そうなのですが「先行き更に雇用人員が逼迫する」という見通し程には引き締まらないという結果なのですが、とはいえだいたい前回の時に示した逼迫度合い程度は維持されている、という数値になっています。
・・・・・ということでして、前回の短観がトラ公のアレの直前、というタイミングであったことを考えると、よくよく考えたらエライ良い数字じゃんトラ公のアレの影響はどうしたの、という結果だった、というのが私家版の短観の感想になろうかと存じますです、はい。