金融政策概観(2025年度上期前半)

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2024年度上期前半の見出し

2025/06/26「6月会合主な意見の長期国債買入の議論が(一部の人を除いて)完全に財政従属になっているという嘆かわしいお話」
2025/06/25「日銀の出している基調的物価を見る指標をみたらどう見ても2%なんだけどなあ」
2025/06/24「4月会合議事要旨の政策に関する議論もなんかグダグダ感が漂う」
2025/06/23「国債発行計画修正で超長期→2年と短j国という順当だけど悲しい結果に/4月会合議事要旨は案の定景気に大悲観モード」
2025/06/20「山口元副総裁のお話が大変に素晴らしい件について/総裁定例会見は国債買入や物価に関する発言が如何なものかと」」
2025/06/18「決定会合レビュー:現状認識見通しは不変で、国債買入減額は案の定の2026年から減額ペース縮減」
2025/06/17「決定会合は「長期国債買入の位置づけ」と「物価に関する現状評価」がどうなるかが注目ですね/貸増残高71兆円か・・・・」
2025/06/16「BBGがMPM前に「日銀が物価の上振れを認識」という面白記事を投下」
2025/06/13「内田講演(その5)決済システムとCBDCに関する説明は面白かった」
2025/06/12「外貨預金の粘着性の分析は将来の日本にも示唆になりそう/内田講演(その4)「ストレスシナリオ」を出せないのが日銀BSの問題点」
2025/06/11「植田発言で為替反応はアホなのかと/内田講演(その3)インチキを誤魔化すのはアカン&バランスシートの話はインチキ」
2025/06/10「内田副総裁金融学会講演(その2)オーバーシュート型コミットメントは強力ではないとか後から言い出すのは酷い」
2025/06/09「内田副総裁金融学会講演(その1)言ってることは立派なんだが政策運営に反映されていましたっけw/輪番雑談」
2025/06/06「30年国債クソ弱くて発行減額観測はいいんだかブルフラットは草越えて森wwwwwwww」
2025/06/05「植田総裁内外情勢調査会講演(その2):政策修正の前のめり感は一切出さずに輪番縮小に意欲」
2025/06/04「植田総裁内外情勢調査会講演ですが「利上げへの熱量無し」「輪番削減はやる気満々」かなと」
2025/06/03「債券市場参加者会合の議事要旨で雑談」
2025/05/30「見るに堪えないトランプの政治圧力/超長期ジャイアントスイングが止まらんですな」
2025/05/29「ウィリアムズが国際コンファランスで期せずして日銀を公開処刑/合成予想物価上昇率のツッコミどころ」
2025/05/28「超長期連日の上げ(財務省発行組み換えの思惑)植田総裁金研コンファランスは詭弁フルスロットル」
2025/05/26「野口審議委員金懇会見は金懇挨拶同様に大本営腹話術で「政策動く気なし」を強調」

2025/06/26

〇6月会合主な意見:インフレ期待の議論が無いですね&国債買入の話が財政従属感満載で頭が痛い

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2025/opi250617.pdf
金融政策決定会合における主な意見
(2025 年 6 月 16、17 日開催分)1

・経済のパートでは「企業ヒアリング情報では」をみましょう

『T.金融経済情勢に関する意見』の『(経済情勢)』ですが、企業ヒアリング情報では云々、というのを鑑賞しますと・・・・・

『・米国の関税政策の影響について、中小企業を含む幅広い業種の企業へのヒアリング結果をみると、判断材料に乏しく方向性を見出すことが難しい状況の中で、判断を留保する先が散見される。センチメントの下押し圧力になることは間違いないが、実体経済への影響の大きさについては、今しばらく時間をかけてみていかざるを得ない。』

『・ 企業のヒアリング情報では、米国の関税政策を受けても、@人手不足の中、賃金は引き続き上げていく、ADXや効率化投資など、高水準の設備投資は継続的に実施する、B株主の期待に応えるため、収益増強のためには投資をしっかりと行っていく、とする企業が多い。』

てな訳で、日銀が4月展望でいち早く見通しをクッソ下げたのとは対照的な話になっていまして、そもそもお前らの4月展望レポートは何だったのか、という話に(今後の関税交渉が酷いことにならない限りにおいて)なってもおかしくないんですよねこれ・・・・・・・

まあ、

『・4月や5月のハードデータは比較的しっかりしたものが多いが、関税政策の影響の顕在化はこれからと考えられる。』

ってのはその通りでしょうから、この辺は今後の展開次第という話ではありますな。


・物価のパートだが碌に話が無いし「基調的物価はインフレ期待」なのにインフレ期待の話は碌に無いし

『(物価)』を見ますと「基調的物価」がただの「お気持ち物価」である、というイカサマが良くわかるというものでして、そもそも物価のパートに意見が5個しかない(うち1個は必ず大本営発表が入るので実質4個)訳でして、それだけでもトサカに来るんですけど、この前の金研国際コンファランスで植田総裁って、

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/ko250527a.htm

『基調的な物価上昇率を評価するために注意深くモニターしている指標のひとつは、予想物価上昇率です。』
『図表5が示しているように、総合ベースでみた物価上昇率と基調的な物価上昇率との間に大きな乖離があるためです(ここでは、予想物価上昇率を基調的な物価上昇率の近似として用いています)。』
(以上この部分だけ直上URL先の5/27金研国際コンファランスでの植田総裁スピーチ(の邦訳)より引用)

って言ってるんだから、どっからどう見たって基調的物価はインフレ期待が重要、って話になるはずなんでうしょね。

じゃあ当然ながら基調的物価とやらがどうなっているのか、という議論が行われ、その中でインフレ期待がどうなっているか、というのを詳細に見極めていく、という作業が行われ、それに関する所感が「主な意見」に出てきて然るべきなのですけれども、期待インフレに関する議論が行われているような感じが無いんですよね、つまり・・・・・・

『・ 消費者物価の基調的な上昇率は、成長ペース鈍化などの影響を受けて伸び悩むとみられ、下振れリスクも大きいと考えられる。その後は、成長率が高まるもとで徐々に高まっていくと予想され、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。』

これは大本営なのでスルーしておきまして、

『・ 通商政策を巡る不確実性は引き続ききわめて大きいが、国内面では、賃金情勢は堅調であり、消費者物価は若干上振れ気味で推移している。』

上振れキタコレ、ではありますがアクチュアルの物価の話ですわな。賃金情勢に関してはまあ企業行動って話ではあるので若干期待インフレに関連する話ではありますけど。

『・ 米価格は前年比約2倍に上昇し、消費者物価を相応に押し上げているほか、関連品目の価格にも波及している。主食である米の価格はインフレ実感やインフレ予想に影響を及ぼし得るため、その動向を注視したい。』

こちらはアクチュアルの話ではなくて今後の話としての期待インフレ動向の話ですけど、期待インフレに関する言及がありましたね。

『・ 欧米・中国・新興国が揃って財政金融両面で緩和策に傾く中、予想外の経済押し上げ・インフレ圧力が生じる可能性もある。』

こちらも上振れで、実はこれを見るとインフレ上振れおよび上振れリスク(さっきの期待インフレ上振れの可能性を指摘している人)に言及しているのが3人もいたりするんで、それはそれで重要な話ではあります。

『・ 物価は上振れているが、賃金からサービス価格への波及には頭打ち感がみられる。』

まあこれは若干基調的物価チックな話ではありますが、いずれにしましても「基調的物価の動向について点検している」とはとても思えない意見の数だったりする訳でして、これすなわち日銀大本営の持ち出している「基調的物価」ってのは単純に「利上げを先送りするために使われているお気持ち物価」って奴じゃなかろうか、という香りが濃厚に漂ってくるわけですな。

よく考えてみたら2022年2月3月(要はロシアのウクライナ侵攻)以降アクチュアルの物価がホイホイと上がる中で、当初は「コアコア物価ガー」とか言ってたのが「賃金ガー」に替わり、そのうち「賃金と物価の好循環ガー」とか「サービス価格ガー」とか言い出し、でもって最近になるとこの「基調的物価ガー」と言いながら政策金利の調整をクソ粘りする言い訳にご利用されているというのが黒田末期以降の動きな訳でして(その合間に不透明感だの米国下振れリスクだの金融市場が不安定だのというハトハトチキン音頭も入る)、まあ結局のところお前ら基調的物価とか言ってるけどそれただの目くらましはろ、などと弊駄文如きが煽っても蛙のツラに何とやらではありますが、「お気持ち物価」ってのもなんか最近は人口に膾炙しているっぽいように思える(弊駄文調べによる笑)ので、7月展望辺りでハンギレ王子となって何か尤もらしいものを展望レポート背景説明のコラムあたりにぶっこんでくるに1万パウエルと申し上げておきましょうwwwwwww

まあお気持ちはお気持ちなんでなんかの拍子にジャガーチェンジ、というのは普通にアリエールな訳でございまして、よくよく考えてみたらマイナス金利解除だけは事前(1月)にあれも12月対比で言えば盛大なジャガーチェンジでしたが、一応予告ホームラン打ってきましたけど、25bpへの利上げだってあれ輪番縮小の具体案公表だけだと思ったらいきなり打って来たし、50bpの利上げに至っては直前のMPMから見たらどの面下げて利上げするんだっていうジャガーチェンジで、本当に直前になってから強引な地均しが行われた、という実績があるので、まあ何があるのかは本来はこっちも決め打ちしにくいなあというのは忘れてはいけませんな。とは言いましても・・・・・・・・・


・まあ金融政策の話で政策金利の話が碌すっぽ無い時点でやる気は感じられませんなあ

次の『U.金融政策運営に関する意見』のパートですけれども、前半が金利調整の話になるのですけれども、これがまた大本営含めて5つ(さっきの物価と同じ)しかない、という時点でお前ら利上げする気あるのかと小一時間問い詰めたい訳で、そういう話を「主な意見」に乗せようというような感じになっていないんじゃろうな、というのは把握しました(個人の妄想です)。

『・経済・物価の見通しが実現していくとすれば、経済・物価情勢の改善に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになる。そのうえで、こうした見通しが実現していくかは、不確実性がきわめて高いことを踏まえ、予断を持たずに判断していくことが重要である。』

これは大本営なんですが、次の意見でもあるんですけどね、

『・メインシナリオに沿ったとしても、成長ペースが鈍化し、基調的な物価上昇率の改善がいったんは足踏みする姿を想定していること、通商政策を巡り、大きな不透明性・ダウンサイドリスクがあることから、今は、現在の金利水準で緩和的な金融環境を維持し、経済をしっかりと支えるべきである。』

関税政策の話がまだ始まったばかりに近い状態(つーてまあ2か月半くらいにはなるけど)なので一旦様子見、というのは(物価およびインフレ期待が上振れているからそんなに待ってるのヤバくねえかとはアタクシは思うのですがまあそれはさておきまして経済だけで言えば)まあそういう話にはなるじゃろ、とは思いますけれども、そもそも論として4月展望でメインシナリオを下げた前提がどこにあるのか、ってのがフワフワとした書き方になっているので、関税交渉がどの水準で落ち着くとシナリオ通りなのか上振れ下振れなのかが良くわからんのよね。困ったもんです。

『・物価がやや上振れているとはいえ、米国関税政策や中東情勢に伴う景気の下方リスクを勘案し、金融政策運営は現状維持が適当と考える。』

この後の方でどう見ても抜刀斎の意見があるので、それ以外での物価上振れさんの意見ですね。まあそれで大丈夫かというのはありますが、意見としてはわかります。

『・ 先行きの不確実性が非常に高く、経済情勢等を見極める必要があり、政策金利は当面現状維持が適当である。』

まあ物価を無視すればそういう見解になりますわな。

『・ インフレが想定対比、上振れて推移する中、たとえ不確実性が高い状況にあっても、金融緩和度合いの調整を、果断に進めるべき局面もあり得る。』

これはどう見ても抜刀斎でして(って今日は時間が足りなくて抜刀の鑑賞が中々できないのがいただけない訳ですがorz)物価上振れだから緩和の調整も必要じゃないの、というインフレ目標政策やっているんだからよく考えたら至極ご尤もなお話をしておりますが、まあこれ見ますと一応物価上振れを見ているのが3名いて、うち1名は政策金利調整に積極的、1名はやや親和性があるけどもう1名と思われる人は金利にノーコメントなので特にそこまでは考えていないって感じですかね。でまあ残りは利上げやる気無し無しではあるのですが、前述したようにこいつら突然のジャガーチェンジがあるからそこだけは要注意、って感じですかね。


・長期国債買入に関する議論がハトハトチキンの財政従属市場従属過ぎてひどすぎる件について

後半が国債買入のパートでして、なんと12個もあるという満艦飾状態。

『・ 長期金利がより自由な形で形成されるようにするためには、国債買入れを更に減額していくことが望ましい。一方、国債買入れの減額が進展する中、今後のペースが速すぎると、市場の安定に不測の影響を及ぼす可能性もある。減額計画の策定においては、両者のバランスを勘案する必要がある。』

これは大本営なのでパス。

『・ 決定した国債買入れの減額計画は、金利形成を基本的に市場に委ねつつ、急激な金利変動によって経済・物価に悪影響を及ぼすことを避けるための措置である。財政への配慮ということでは全くない、という点はしっかり説明していく必要がある。』

どう見たって財政従属でしょwwwwwwwwwww

『・ 日本銀行の国債保有比率はできるだけ速やかに引き下げることが望ましいが、2019 年に米国が量的引き締め(QT)を停止せざるを得なくなったように、急ぎすぎても却って調整に時間を要することになりかねない。購入額をいったん大きく減らしてそれをまた増やす形では、途中で市場の混乱を招く可能性を不必要に高めかねない。』

すげえ尤もらしい事を言っているけど、2019年の米国と今の日銀のバランスシートは状況が全然違うじゃろという話で、ただのチキンな訳でして、トランプのTACOならぬUACOって奴ですかwwwwwww

『・ 市場機能は回復途上であるため、国債買入れ減額を継続する必要がある。わが国経済の弱い回復力や先行きの不透明感の高まり、市中の国債保有余力を踏まえると、リスクマネジメントの観点から2026 年4月以降は減額幅を 2,000 億円に引き下げ、同年6月に中間評価することが適当である。』

>市中の国債保有余力を踏まえると
>市中の国債保有余力を踏まえると
>市中の国債保有余力を踏まえると

・・・・・それを踏まえて国債買入を高水準で継続しよう、という発想が財政ファイナンスっていうんですけどw

『・ 国債買入れについては、よりスムーズな政策運営の観点から来年4月以降の減額幅を縮小することが望ましい。しかし、それは金融政策運営スタンスの変化を意味するわけではない。』

「よりスムーズな政策運営の観点から」とかもはや意味不明。お前ら何の議論してたの???

『・これまで多額の国債を買入れてきた日本銀行が、買入れを減額することによって、市中への国債供給が増加する。この点を踏まえれば、今次局面は過去と比べて有数の市中への大量国債供給局面とも考えられる。市場の不安定化回避のため、過去の国債供給量も念頭に減額幅の調整や市場の受容状況の見極めが必要である。』

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・( ゚д゚;)

節子、それは完全に今までの国債買入が財政ファイナンスなのを認めたうえで財政ファイナンスを継続せざるを得ないっていうのマーライオン並みにゲロっておるぞな。

『・フローの国債買入れの減額については、最終的な着地点に向けて、次のフェーズである 2026 年度は、より慎重に進めても良い。加えて、最適なバランスシートの大きさについて、資産・負債の両面から考えていく必要がある。』

そもそもバランスシートの最適化が必要なんだから、フローの国債買入はバランスシートが適正規模になるまではゼロじゃろ(FED方式でバランスシートの縮小ペースの調整での少額の再投資は行うにしてもあれは理念的にはゼロですからね)と思う訳で、最終着地がゼロじゃないってのが話としてそもそもおかしいし正常化ができていないしQQE脳から抜けてない訳ですよ。まあそれはジャンキーになって涎垂らして道端に転がっている風情の債券市場の中の人たちもQQE脳なんで政策委員に悪態ついてる場合でもないけどorzorz

『・長期金利の形成は市場と市場参加者に委ねるべきであり、可能な限り早く、日本銀行の国債保有残高の水準を正常化するべきである。これにより、金融市場のショック吸収力を一刻も早く高めておくことが重要である。』

今日ネタにしている時間が無いのですが(すいませんすいません)抜刀斎の金懇でもこの点の言及がありましたのでどう見ても抜刀斎。

まあ市場云々もあるのですが、そもそも巨額のバランスシートを抱えたままでは物価安定目標を達成した後の「普通の金融政策」の運営上支障をきたすし、支障をきたすと思われたら市場が反乱起こしたり、ひいては一般のインフレ期待のアンカリングができなくなる可能性だってあるんだから、バランスシートの縮小を早期に進める、まで踏み込んだら大抜刀なのですが、もしかしたらこの次の意見が上記意見の続きになりますかしら、

『・ 超過準備はきわめて潤沢な状況にあるとみている。したがって、国債買入れの減額を粛々と進めて日本銀行のバランスシートを正常化させていくことは必要である。』

ということで抜刀斎の抜刀パート2かも知れないなと思いました。この先ちょっとだけバランスシート規模の話になりますが、

『・ 国債買入れの減額については、今後、その着地点をどう設定するのかを、日本銀行のバランスシート縮小の行方とあわせて、長期的な視点で検討する必要がある。』

いや着地点は適正なバランスシート規模に戻るまではゼロ(微調整の買いはあり)じゃろ、としか思えないのですが、

『・ 今後、例えば月間の国債買入れ額が 1 兆円程度にまで減少すれば、日本銀行の動きが市場で話題になることもなくなるのではないか。買入れ額をゼロにすることに強く拘ることは不要と考えている。』

・・・・・・・・・お前は何を言ってるんだ??????

『・超長期ゾーンのボラティリティ上昇がイールドカーブ全体に波及し、意図せざる引き締め効果が市場全体に及ぶ可能性もある。安定した市場のもとで形成されたイールドカーブは重要な金融インフラである。当局間で十分に意見交換し、市場の安定に努めていく必要がある。』

って話なんですが、そもそも超長期金利が上がっているのは「日本の基礎的条件が超長期での国債発行を段々難しくするような状態になりつつある」ってのを示していて、これまではQQEだのYCCだのと言って調子に乗りまくって日銀が馬鹿買入をしていたから、この間の日本の基礎的条件の変化について市場が反応できなかったのが、インフレ目標達成するとかそういう状態になる中で、QQEだのYCCだの出来なくなってみて、これまで蓄積されていた基礎的条件の変化が何年分纏めて出ている、ってだけの話じゃろと思うので、「当局間で十分に意見交換し、市場の安定に努めていく必要がある」っての別に意見交換するなとは思わないけど、これもやり方とか出し方を間違えれば「財政ドミナンス」になる話な訳ですな。

ということで、今回の「2026年以降の長期国債買入ペース減額」は「市場安定」の美名のもとに財政ドミナンスがインフレ状態になってきているのに全然改善されない、という恐ろしい事を示しておられるわけでして、それはインフレのさらなる上振れか為替の大幅な減価(または合わせ技)で後日お勘定が回ってくるという懸念がぬぐえませんな、というお話でした(個人の偏見です)。

#つーことで抜刀斎の金懇は明日で勘弁





2025/06/25

〇日銀謹製基調的な物価ですがどう見ても2%達成にしか見えませんけどねえ相変わらず

https://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/index.htm
基調的なインフレ率を捕捉するための指標

いつものようにエクセルデータをテキストにヘコヘコと貼り付けますが、ちょっと長めに今日は貼ってみます。

刈込平均値 加重中央値 最頻値

Jan-23  3.1  1.1  1.6
Feb-23  2.7  0.8  2.1
Mar-23  2.9  1.0  2.7
Apr-23  3.0  1.2  2.8
May-23  3.1  1.4  2.9
Jun-23  3.0  1.4  2.9
Jul-23  3.3  1.6  3.0
Aug-23  3.3  1.8  3.0
Sep-23  3.4  2.0  2.8
Oct-23  3.0  2.2  2.6
Nov-23  2.7  1.7  2.4
Dec-23  2.6  1.6  2.4

Jan-24  2.6  1.9  2.3
Feb-24  2.3  1.4  2.0
Mar-24  2.2  1.3  1.9
Apr-24  1.8  1.1  1.6
May-24  2.1  1.3  1.5
Jun-24  2.1  1.4  1.6
Jul-24  1.8  1.1  1.5
Aug-24  1.8  0.7  1.3
Sep-24  1.7  0.8  1.4
Oct-24  1.5  0.8  1.3
Nov-24  1.7  0.9  1.1
Dec-24  1.9  1.0  1.1

Jan-25  2.2  1.4  1.3
Feb-25  2.2  1.4  1.2
Mar-25  2.2  1.4  1.4
Apr-25  2.4  1.7  1.8
May-25  2.5  1.7  1.6

4月の年度替わり効果で最頻値までクソ上がったのは一旦下がった、とは言いましても普通に1%台後半ですし、加重中央値も反転上昇していまして、2023年水準を窺う、というよりは2023年って(物価が上がりだしたのが2022年ですわな)まだ加重中央とか最頻とかは出だしでは今ほど高くなかった訳でして(後半刈込平均3%とかまで来たら上がってきましたけど)、そういう物価高水準にまた戻っておるわけですわな。

ということで、こういうのを見ても「基調的物価は2%にまだ距離がある」とか寝言言ってるのマジでなんなのお前らって感じですし、日銀がずっと外し続けている物価見通しの「一旦2%割れになった後また上昇する」という「一旦下がる」が碌に下がらないのも反省しないのか、と思う今日この頃でして、物価面から日銀が十字砲火を浴びる日が来るようですと、そりゃもう利上げ待ったなしになるじゃろ、とは思うのですがはてさてどうなるか。

しかしまあ何ですな、ふと思ったのですが、日銀はそういう訳でニアータームの物価見通しを毎度「下がる下がる詐欺」状態になっているのですが、ゆうてこれ民間の何とかスト連中も同じような予想をして外し続けている(ESPフォーキャストとかがまさにそう)んですけれども、この背景っていうのは、要するに「期待インフレが結構な上がり方を示したから、マクロモデルを回して立てた物価見通しが下に外れ続ける」ということを意味している筈だと浅学菲才なアタクシは思う訳でございまして、だったら今回の物価上昇ってうっかりするとインフレ期待を一段と上げてしまってアカン奴になるんじゃないのか、というのが心配な訳ですけれども、もしかして日銀はインフレが高進して「日銀様何とかして下せえ」となるまで「汝人民飢えてタヒね」スタンスでぶっ走る気なんじゃないかという背筋の冷えることも妄想してしまいたくなったりならなかったりする今日この頃ではあります、ナムナム。






2025/06/24

〇5月決定会合議事要旨(その2)

しゃーせん昨日の続き。
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2025/g250501.pdf
政策委員会 金融政策決定会合 議事要旨
(2025年4月30日、5月1日開催分)

昨日この手前までで終わってしまったので『V.金融政策運営に関する委員会の検討の概要』に参ります。

・別に「今の状況はどういう事になるか分からんのでとりあえず現状維持」でよかった筈なのですが・・・・

『次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針 について、委員は、「無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0.5%程度で推移するよう促す」という方針を維持することが適当であるとの見解で一致した。』

でですね、

『多くの委員は、経済・物価見通しの下振れや不確実性の高まりを踏まえると、現時点では、緩和的な金融環境を維持しつつ、各国の通商政策等の今後の展開やその影響を丁寧に確認していくことが適当であると指摘した。』

今回の判断で「下振れ」を入れたのが妥当だったのか、ってな話でして、4月末の時点ではどうなるか分からんという状態なのに、思い切って下振れハトハトを出した意味は何だったんでしょってなもんですが、昨日ご紹介したように、経済物価認識のパートが一部の委員を除いてとんでもなくハトハトチキンだったので、まあ当然ここでも「経済物価見通しの下振れ」が入っています。

でですね、経済物価情勢の下振れなら下振れでも良いんですが、じゃあ(6月会合声明文と記者会見での説明ではそういうのは無かったですけど)何でこの前のBBGでは「日銀では物価の上振れを意識してる」みたいな話が舌の根も乾かぬうちに出てくるんだという話でして、結局おまいらの経済物価見通しは政策判断の説明の後付けで見通しを立ててないのかと小一時間問い詰めたくなる訳ですよ。まあそういう意味で7月展望もそうですが6月の議事要旨と、その前に明日「主な意見」が出ますからそこも確認したいですけど。

『何人かの委員は、現在の実質金利はきわめて低い水準にあり、これを維持することで、経済をしっかりと支えていくことが重要であるとの見解を示した。このうちの一人の委員は、金利の下限制約から脱却して1年以上経つが、経済と物価はしっかりしており、現在の金融政策スタンスは、とても緩和的な状況にあると付け加えた。ある委員は、1月に決定した政策金利引き上げの影響も、確認していく必要があるとの見解を示した。別のある委員は、米国の関税政策の展開がある程度落ち着くまで、取りあえずは様子見モードを続けざるを得ないと述べた。この間、一人の委員は、最近の関税政策により、企業における行き過ぎたコストカット、賃上げ・投資の抑制や産業の空洞化に陥る可能性も考えられることから、企業マインドや倒産の傾向に変化がないか注視する必要がある との見方を示したうえで、経済への影響を慎重に見極めるため、現在の調節方針を維持することが適当であると述べた。』

ということでして、これよくよく読みますとあくまでも「関税の影響、特に関税政策によって企業の価格設定や賃金設定の行動が下方屈曲しないか、を見極めたい」って話で、それはまあ言いたいことはわかる(ただしアタクシ的には既に基調的物価が2%を超えているんじゃないかと思っているので待っている余裕はそんなに無い、と思っていますがそれはアタクシの感想なのでさておきまして)のですが、「関税政策の経済物価への影響、特に企業や家計の行動が下方屈曲しないかどうかを見極めたいので様子見」だったら別に初手からそういう説明をメインにすれば良いだけのことで、なんも経済(はまだ分からんでもないが)物価(上方修正上振れリスクからのドテンが酷すぎ)見通しをあんなに盛大に修正しなくたってエエジャロとしか思えないんですよね。


・見通しを下げているのに「先行きの方向性は変わらん」というのが如何にも訳わからん事になるわけですよ

でもって次のパラグラフが先行き金融政策ですが、

『先行きの金融政策運営について、委員は、経済・物価の見通しが実現していくとすれば、経済・物価情勢の改善に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことが適当との見方で一致した。』

見通し下げてリスク認識も下げているのに先行きの話が同じってのもよくよく考えてみたら妙ですわな・・・・・

『何人かの委員は、現在の実質金利が大幅なマイナスであり、かつ、先行き2%の「物価安定の目標」を実現する姿になっていることを踏まえると、方向としては、これまで同様、政策金利を引き上げていくのが適当であるとの認識を示した。』

ってな話だが、先行き2%達成云々って作文の世界ですからねえw

『このうちの一人の委員は、健全なバランスシートなど、日本企業の財務体質が過去と比べて大きく改善している点も認識しておく必要があると述べた。』

まあその分のツケが政府に行ってますがqqqq

『ある委員は、「物価安定の目標」の実現に向けて最も重要なのは、企 業の賃金・価格設定行動や企業や家計の予想インフレ率の動向であるが、これらが以前の賃金・物価が上がりにくい頃の状況に戻るリスクは小さく、2%に向けて上昇してきた基調的な物価上昇率が下方に屈折してしまう可能性は小さいとの見方を示した。』

ちなみにアタクシも同感です。というか「基調的物価」がインフレ期待ってこの前植田さんが講演で言ってたんだから、もうちょっとインフレ期待の話をしてないとおかしい訳で、そういう点から見ても日銀のいう「基調的物価」って説明用のお気持ち物価ではあるけど、政策運営の時にその話まともにしているのかというのが疑問で、これすなわち何時もの「説明に困ったら動いたり無くなったりしてしまうゴールポスト」なんだと思います(個人の偏見です)。


・結局関税政策次第ですよという話がその先に続きまして・・・・・

次のパラグラフに参ります。

『そのうえで、多くの委員は、経済・物価の見通しが実現していくかについては、各国の通商政策等の今後の展開やその影響を巡る不確実性がきわめて高い状況にあることを踏まえ、内外の経済・物価情勢や金融市場の動向等を丁寧に確認し、予断を持たずに判断していくことが重要であると指摘した。』

予断を持たずにって言ってますが一回下がってまた上がる、というような器用な予断をもって物価見通し毎度出して毎度外しているのどこの誰でしたっけw

という悪態はさておき、

『ある委員は、前提となる各国の交渉の帰趨を含めて、不確実性がきわめて高い中で、見通し自体が上下に変化しうるため、見通し実現の確度やリスクを見極めていく必要があるとの認識を示した。一人の委員は、今回の経済・物価見通しの確度は従来と比べて高くはないとの見方を示したうえで、先行き、見通しの上振れ・下振れ双方の可能性を点検し、適切に政策を運営していく必要があると述べた。』

物価見通しっていつも外していますので確度が従来より高いも低いも無いと思いますがwwwwwww

『別の一人の委員は、米国経済減速から利上げの一時休止局面となるが、米国の政策転換次第で追加的な利上げを行うなど、過度な悲観に陥ることなく、自由度を高めた柔軟かつ機動的な金融政策運営が求められるとの認識を示した。』

過度な悲観キタコレ

『また、別のある委員は、サプライチェーンの毀損などにより経済が下押しされると同時に物価が上押しされるような状況となれば、米国と比べて予想インフレ率がアンカーされていないわが国では、金融政策での対応がより難しくなる可能性があると指摘した。』

難しいのはそうなんだがじゃあその際にどうしろって話だったのか、というのを何で書いてくれないんでしょうか(まあいわなかったんだったらシャアナイけど)。


・情報発信について(その1)ベースラインシナリオを下げた理由についてのわが妄想

次のパラグラフは、

『委員は、金融政策運営に関する情報発信のあり方についても議論を行った。』

から始まるのですが、

『何人かの委員は、経済・物価の見通しが上下双方向で大幅に変化しうるもとでは、先行きの政策金利のパスは、中心的な見通しのもとで予想されるものから変わり得ることを丁寧に説明していくことが重要であると指摘した。』

だったら何で「従来の見通しは一旦維持しますが、経済の下振れリスクは関税政策次第でメッチャ高いし、物価のリスクは経済コケると物価にもマイナスだと思います」って言って「だから先行きの政策金利パスはこれからの進展次第でどうなるかって話なんですよ」って説明すればいいものを、なぜか知らんが見通しを下げるという技を使う訳ですよ。まあこれに関してはワイ的には一つ仮説はあるんで後程。

『また、ある委員は、様々な不確実性の存在を前提としつつも、今回示した中心的な見通しのもとでは、2%の「物価安定の目標」は、後ずれはするものの達成できるという見通しがあり、その見通しに立つのであれば、これまで同様、政策金利の引き上げにより金融緩和の度合いを調整していくことが適当であるという、現時点での日本銀行の基本的な考え方を説明していくことが大切であるとの意見を述べた。』

これは1名の方の発言ですけれども、まあ建付け的にはこういう建付けが今回の決定でしたよね、ってなもんなのですが、これ結局のところ「先行きの政策金利パスは上向きです」って話をしたいがために見通しを先んじて下げている、というのが多分屁理屈大魔王の屁理屈の中にあると思われまして、すなわちさっき申し上げましたように「見通しは一旦維持しますけど下振れのリスクも高いですね」ってやってしまうと、「じゃあ下振れしたら金融緩和強化ですか」って話になりやすいので、さきにベースラインシナリオを下振れさせておいて、「ベースラインシナリオは下がったけれども利上げ方向は変わりません」と言っておけば、現実に下振れしても「ほらベースライン通りでしょ」と言える、というまあそういうプレイが使える、ってことなんでしょうね、と思いました。


・情報発信について(その2):お漏らしプレイはいい加減にしやがれというご指摘

さらに話は続くがここで話題は一転しまして、

『この点に関連して、一人の委員は、市場は、日本銀行の従来からの基本方針を前提に、内外の新しい情報を自ら咀嚼して、日本銀行からの直接的な示唆を俟つことなく、利上げ時期についての見方を形成し、自ら修正し続けていると指摘した。そのうえで、この委員は、市場が日本銀行の細かな言い振りよりも、経済・物価の動向に着目するようになることが望ましく、日本銀行としても、そうした状況を維持できるような情報発信を続けることが適切であるとの見解を示した。』

こういうことを言うのはまあ高田っちか抜刀斎だろうなあ(他にあるとすればワンチャン氷見野副総裁)と思う訳ですが、まったくもっておっしゃる通りでして、あの謎のお漏らし記事が出てきて方向性を出そうとするスカトロプレイは大概にして頂きたいものです。


・長期国債買入について:うーん2名を除いてビビリンチョっぽいなあ・・・・・・・

でまあこれを受けて展望レポートはこんな感じでよろしゅございますでしょうかと執行部が言って、それに対してああそうですねと政策委員が返す下りはまあ飛ばしましてその次の長期国債買入に関して。

『委員は、最近の国債市場の動向と日本銀行の国債買入れに関する考え方についても、議論した。』

はじまりはじまり。

『何人かの委員は、@長期金利は金融市場において形成されることが基本であること、A日本銀行による長期国債の買入れは、国債市場の安定に配慮するための柔軟性を確保しつつ、予見可能なかたちで減額していくことが適当であること、といった基本的な考え方を改めて示した。』

この「国債市場の安定に配慮」と「予見可能」をどう見てもやりすぎているのが6月に出た買入計画なんですけどねえ・・・・・・・・・・・・

『このうちの一人の委員は、減額計画を定める際には、どの程度の減額であれば国債市場の機能に混乱が生じる可能性を低く抑えられるか、がポイントとなると指摘した。』

そんなものを気にしている時点でお前の言ってるのは財政ファイナンス。

『何人かの委員は、超長期国債の金利が大幅に上昇するなど、年限間の分断が生じているとの見方を示した。このうちの一人の委員は、国債買入れの減額計画の中間評価に向けて、年限別の需給動向や流動性、業態毎に異なる見方を丁寧に確認することが重要であると述べた。』

これだって結局「超長期の買入が少ないのが悪い」のではなくて、「中短期から長期の買入が過大でイールドカーブの手前が押さえつけられているので金利上昇のエネルギーが超長期に行ってしまう」という面も多々ある訳で、そもそも買入の額がおかしい、というのを前提にしないで話をすると今回のように減額1年にしてビビリンチョと化してしまって2026年4月からどうのこうのとか言い出すわけですよ。

『この点に関連して、何人かの委員は、超長期金利の上昇については、そもそも同市場の参加者が限られているもとで、規制対応の一巡により投資家需要が減退していることなどが影響していると の指摘が市場参加者から聞かれていると付け加えた。』

規制対応の一巡も勿論大きいのですが、YCCなかりせば本来20年とかのリスクを取りに来なかった人たちをYCCで超長期に追いやってしまったことの反動が起きている、という面も見逃せないと思うんですけどね。

でもって最後に2名(なので高田っちと抜刀斎だと思いますが)が良い意見を。

『ある委員は、例外的な状況を除き、日本銀行が、一時的な需給バランスの変化に都度対応すると、市場の機能を再び損なうことになってしまうとの認識を示した。』

仰せの通りです。

『一人の委員は、中央銀行が市場を十分に考慮することは当然であるが、一方で、その時々の市場の意見に反応しすぎると、その柔軟性が却って予見可能性を低下させ、市場の不確実性をより高める可能性があると指摘した。』

全くです。

・・・・さすがに最近はこの輪番問題と国債発行計画問題の話題を聞きつけた他市場(主に外債方面)のお友達から「円債市場の連中って当局に甘えすぎじゃねえのか」と悪態をつかれる始末でして、クレクレコジキに成り下がっているのはちょっと残念ですわな。

なお、

『これらの議論を踏まえ、委員は、6月の金融政策決定会合では、市場参加者の意見や見方を十分に確認したうえで、国債市場の動向や機能度についてしっかりと点検し、現在の減額計画の中間評価を行うとともに、来年4月以降の国債買入れ方針を検討する必要があるとの
認識で一致した。』

一致したのかつまらん、「来年4月以降の国債買入方針に関しては大まかな方向を公表するのは良いが、具体的な金額などを10か月も前に公表するのは時期尚早なので行うべきではない」って意見を堂々とぶっこんで議事要旨に乗せて頂きたかったですね。まあ今回の主な意見で何かそういうのあるとは思いますが(主に反対してた抜刀斎方面から)。





2025/06/23

〇国債発行計画修正キタコレ

まあ事前に散々報道されていましたのでアレですが。

https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/meeting_of_jgbsp/proceedings/outline/250620pd114.pdf
国債市場特別参加者会合(第114回)
理財局説明資料

6ページ(PDF6枚目)に『国債管理政策の基本的な考え方』ってのがありまして、

『国債管理政策は、

@ 確実かつ円滑な発行により必要とされる財政資金を確実に調達すること
A 中長期的な調達コストを抑制していくことによって、円滑な財政運営の基盤を確保すること

という基本的な目標に基づき運営。』

ってことで、その次に

『※ 国債を将来にわたって低コストで安定的に発行・管理するためには、財政健全化を推進し、新規財源債の発行額を抑制することが基本。』

という悲しい文言がありますがそれは悲しみを共有するにとどめておいて、

『○ 上記目標を達成するため、国債発行計画の策定・運営に当たり、「市場との対話」を丁寧に実施し、市場のニーズを十分に踏まえた国債発行に努めてきたところ

○ 一方で、一時的・短期的な需要の変化に過度に対応すれば、結果として、市場参加者にとっての透明性・予見可能性が損なわれ、国債投資に対するリスクが高まり、中長期的な調達コストの上昇につながる場合もある』

>一時的・短期的な需要の変化に過度に対応すれば、結果として、市場参加者にとっての透明性・予見可能性が損なわれ
>一時的・短期的な需要の変化に過度に対応すれば、結果として、市場参加者にとっての透明性・予見可能性が損なわれ
>一時的・短期的な需要の変化に過度に対応すれば、結果として、市場参加者にとっての透明性・予見可能性が損なわれ

全く仰る通りなのですが、日銀とか言う人が2026年4月以降の輪番減額をさっそく金利上昇にビビって減らすということをしている(しかもまだまだ先の話なのに今の時点で決め打ち減額)んですが、ちょっと説教してもらえませんかねえw

『⇒ 今後とも大量の国債発行が見込まれる日本においては、中長期的な需要動向を見極め、安定的で透明性の高い国債発行を行っていくことが重要

(注)海外においても、例えば、米国が「定期的かつ予見可能な発行」(regular and predictable issuance)を債務管理の方針として掲げるなど、一部の国では、機会主義的な債務管理運営に陥るリスクを意識した対応がとられている。』

てな話なんですが、日銀の輪番に関するムーブって日銀としては「定期的かつ予見可能な」ムーブだと思っている節があるのです、というか節しかしませんけれども、金利上昇にビビって輪番減額を緩めているだけにしか見えないというのが悲しい所(個人の感想です)。

でまあ次のページが『令和7年度国債発行計画(6月変更)の概要【案】』ですが・・・・・・・

『○ 市場のニーズを踏まえ、7月より直ちに、40年債・30年債を各1,000億円/回、20年債を2,000億円/回減額。流動性供給入札(超長期ゾーン分)についても、1,000億円/回減額。』

ナムナム。

『○ 超長期債の減額分は、2年債、短期国債の増額及び個人向け販売分の上振れ実績を反映すること等により対応。』

5年すら増発できないのかよ(まあ事前報道で5年増発無しみたいな感じになっていたのでサプライズは無いですが、せめて5年は増発できるじゃろと思ったというか、20年以降を減額して2年とT-Billを増発する重債務国家ってそれ普通に「長い期間の債務発行ができなくなりつつありますよこの重債務主体」ってことで、ヤベー奴じゃんというお話ではあるのですが、まあとりあえずユルユルのユルなメディアはそういう視点で報道しないので無事に収まっているだけの話で、本来はまあヤベー奴なお話ではありますぞな。しかもしれっと「個人向け個販売分の上振れ」を使っている辺りもそれだけ見ると(゚∀゚)アヒャって感じですな。

『○ 今後とも、市場の状況や投資家の動向等を注視しつつ、適切な国債管理政策に努めていく。』

まあそもそも論として税収上振れたら全部撒くとか(インフレで税収上振れるということは経常経費だってインフレで上振れるんだから税収上振れたからその分使うというのは頭おかしいとしか言いようが無いんだが)いうような馬鹿が立法府の方にいる(悲しいかなそういう馬鹿立法府に馬鹿言説を吹き込んでいる馬鹿が金融界にいるのが困るわと思いますけど)ので、まあ発行を何とかしましょうと言っても所詮は蛇口の方を何とかしないとどうしようもないし、そう考えると目先必死こいてその場をやりくりしていると蛇口の方が問題になかなか気が付かないので、そんなに「市場に配慮」せんでもええじゃろという暴論の方を思いついてしまうんですよね(やりくりを散々した挙句に爆発するくらいなら早めに爆発させた方が爆発規模が小さくて済む理論)。

などと言っててもしょうがないのですが、これもまあ元をただせばYCCのせいで超長期に無駄な需要が発生してしまっていたので超長期の発行が多すぎたってのがある訳で、色々な面で黒田緩和のやらかしたことの手じまいをする中で問題がちょいちょいと出てきている訳で、そういうのを待たずに「多角的レビュー」とかやって黒田政策の正当化をオーソライズしてしまったのはこれ中長期的に見てかなり禍根を残す話になってくると思います。


〇4月展望会合議事要旨(その1)

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2025/g250501.pdf
政策委員会金融政策決定会合
議事要旨
(2025年4月30日、5月1日開催分)

・米国の物価に関する見方にデフレ脳を感じるんだが・・・・・・・・・

まずは『U.金融経済情勢と展望レポートに関する委員会の検討の概要』から参りますが、

『米国経済について、委員は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに成長しているとの認識で一致した。そのうえで、多くの委員は、今後、関税政策は、米国の実体経済を下押しする方向に作用するほか、少なくとも短期的には物価を上押しするとの見解を示した。』

まあこの会合は海外経済の所がやたら下がったのでこの辺から見ていきますが、

『ある委員は、家計や企業、金融機関のバランスシートが健全であることなどを踏まえると深刻な景気後退は考えにくいが、しばらくは潜在成長率を下回る成長が続く可能性が高いと指摘した。』

『別の一人の委員は、一時凍結されている相互関税の上乗せ部分が撤回されたとしても、関税の物価に及ぼす影響は大きく、個人消費や設備投資には下押し圧力がかかるとの見方を示した。』

あらそうって感じで弱いですけれども、

『複数の委員は、やや長い目でみて、いったん上昇した物価が経済の減速により下押しされるのか、それとも高めの物価上昇率が継続するのかについては不確実性が大きいと指摘した。』

でもってこの米国の物価に関してですが・・・・・・・

『そのうえで、このうちの一人の委員は、今後の物価動向を見定めていくためには、労働市場の状況、とくに賃金の動向を注視していくことが重要であると付け加えた。』

というのはまあ分かるんだが次の意見が???で、

『この点に関連し、ある委員は、経済が減速するもとでは、一時的な物価上昇ショックによってインフレ予想のアンカーが上方に外れるリスクは限られるとの見解を示した。』

????????いやあの第一次石油ショックとか第二次石油ショックとかご存じですよね・・・・・・・

『この間、一人の委員は、新政権発足以降、経済成長にマイナスに働く関税等の政策が先行しているが、今後、減税等が実現していけば、成長率の上振れもあり得ると指摘した。』

とまあこういう感じで、最後にちょっと上振れがありますけど、総じて弱気な上になぜか物価に関してもあんまり強くなさそうな見通し、という印象を与える構成になっておられますな。


・欧州と中国に関しても弱気ですねえ

『欧州経済について、委員は、製造業を中心に弱めの動きがみられているとの認識を共有した。ある委員は、米国の関税引き上げの影響に加え、これまでの投資抑制やコストの高止まりにより、欧州の産業競争力は低下しているとの見方を示した。』

後者の方ですが、こういうの言いそうなのは中村委員かしら。

『中国経済について、委員は、政策面の下支えはあるものの、不動産市場や労働市場の調整による下押しが続くもとで、改善ペースは鈍化傾向にあるとの見方を共有した。一人の委員は、内需低迷や貿易摩擦激化による輸出の減少が懸念されるほか、住宅の販売在庫の大きさを踏まえると不動産市場の回復にはかなりの時間を 要する可能性が高いとの見方を示した。』

とまあそんな感じで弱気なのが並ぶ。


・国内物価の現状ですが東京都区部が上振れていた件は何かあんまり重視されていませんでしたなあ

日本の経済物価の話になるのですが、経済の方はさておきましてこの会合で一気に見通しの下がった物価ちゃん、東京都区部CPIが重視されていたら物価見通しが下方修正してリスクは下振れにならんじゃろという話だが。

物価面について、委員は、賃金上昇の販売価格への転嫁の動きが続くもとで、既往の輸入物価上昇や米などの食料品価格上昇の影響もあって、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、足もとでは3%台前半となっているとの認識で一致した。』

ということですがまあこれは事実なのでさておきまして、

『ある委員は、全国に先行して公表された4月の東京都区部の消費者物価の前年比をみると、家賃を除く一般サービスの伸び率が3%を上回ったほか、東京固有の要因である可能性はあるものの、家賃の伸び率も大きく高まっていると指摘した。』

『この点に関連し、一人の委員は、東京以外の地域では、全体として家賃の上昇率は小幅にとどまっているが、新規家賃については、大都市圏を中心に、このところ上昇の動きが目立ってきていると指摘した。』

って指摘があるのに何であの見通しになったか、といううのは後程。

『この間、予想物価上昇率について、委員は、緩やかに上昇しているとの見方で一致した。』

この部分ってもっとまじめに議論してくれませんかねえ、だって「基調的物価」は「予想物価上昇率」ってこの前植田総裁内外情勢調査会で話をしてたじゃ・・・・・・・・・・・


・なんかもうこの世がオワ終わりみたいな話をしておりますな(見通し部分)

でもって先行き見通し、ということで『2.経済・物価情勢の展望』ってところなのですが・・・・・・・・・

『次に、委員は、これらの前提のもとで、経済情勢の先行きの中心的な見通しについて議論を行った。』

前提のところはご案内の通りなのでパスしてここから参ります。

『委員は、わが国経済について、@各国の通商政策等の影響を受けて、海外経済が減速し、わが国企業の収益なども下押しされるもとで、緩和的な金融環境などが下支え要因として作用するものの、成長ペースは鈍化する、Aその後は、海外経済が緩やかな成長経路に復していくもとで、わが国経済も成長率を高めていくと見込まれるとの認識を共有した。』

という字面になっているのですが、この関税政策の影響に関する部分がですね・・・・・・

『委員は、米国の関税政策やそれに対する各国の通商政策は、わが国の経済を下押しする方向に作用するとの見方を共有した。そのうえで、多くの委員は、関税政策は、主として、貿易面および企業や家計のコンフィデンス面から、わが国経済を下押しすると指摘した。ある委員は、資源価格下落等に伴う正の供給ショックも見込まれるが、様々な経路を介して発現する負の需要ショックよりは小さいと考えられると付け加えた。』

からの、

『貿易を通じた経路について、何人かの委員は、 関税の引き上げは、米国内でのわが国企業の価格競争力の低下に加え、貿易の縮小を介した世界経済全体の下押しを通じて、わが国の輸出を押し下げるとの認識を示した。また、複数の委員は、為替が円高方向で推移すれば、わが国の輸出にマイナスの影響を及ぼすと指摘した。別の一人の委員は、高関税が長期化すれば、直接的影響を受ける輸出企業を中心に、事業再編やサプライチェーン強靱化のための取引先の選別、生産拠点の米国シフト等が進む惧れがあり、これが、経営体力が比較的弱い中小企業に影響を及ぼす懸念があると述べた。この点に関連し、ある委員は、当面影響が懸念されるのは、個別関税が設定されている自動車であるが、米中間の高関税により中国経済が更に落ち込むようなことがあれば、より幅広い製造業に影響が及ぶ可能性があると指摘した。』

な、なんですかこのオワ終わりみたいな話は、というほどのバチクソ弱気な話が大展開されている訳でして、こりゃまたエライ弱気ですねってなもんで、同時期の米国が「まあゆうてよおわからんから様子見じゃ様子見」と言ってたのとエラい温度差がありましたなこりゃ。

でまあさすがにこの「この世の終わりを嘆く会」状態に対してカウンターも入っていまして、

『これに対して、一人の委員は、1990 年代の円高局面と違い、今回の相互関税は世界各国に賦課されるため価格転嫁も可能であり、わが国企業の相対的な競争条件悪化には繋がり難く、収益減少が限られる可能性もあると指摘した。』

『別の一人の委員は、理論的には、米国による関税賦課はドル高・円安方向の圧力をかけることになるため、わが国の輸出に対する影響を緩和する可能性もあるとの見解を示した。そのうえで、この委員は、GDPに占める輸出の割合等でみたわが国経済の貿易依存度はそこまで高くないため、関税政策の動向だけでなく、国内要因にも注目して、冷静に金融経済の状況を判断していく必要があると付け加えた。』

2名がこの世の終わりみたいな議論に対して「いやお前ら悲観しすぎじゃろ」というのを入れてきましたのが救いなわけですが、さらに「冷静に金融経済の状況を判断していく必要がある」って指摘がかなり味わいがあって、つまりはこの会合ってなんかもう悲観でウヒャーウヒャーって茹で上がっていた方々が多かった、ということだったんじゃなかろうかと思われますな、南無大師遍照金剛。


・しかし中心的な見通しを前提にして1年後ずれってよく考えたら何なんでしょうかね

ちょっと先に行って物価の見通しなんですけど、

『続いて、委員は、物価情勢の先行きの中心的な見通しについて議論を行った。』

はい。

『委員は、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比について、2025 年度に2%台前半となったあと、2026 年度は1%台後半、2027年度は2%程度になるとの見方を共有した。』

26年度2%割れってそうなるのかねえとしか言いようが無いのだがまあさておきまして、

『委員は、これまで物価上昇率を押し上げてきた既往の輸入物価上昇やこのところの米などの食料品価格上昇の影響は減衰していくとの認識で一致した。』

普通にいろんなところに価格転嫁が波及しているようにしかみえませんがさておきまして、

『そのうえで、委員は、消費者物価の基調的な上昇率は、成長ペース鈍化などの影響を受けて伸び悩むものの、その後は、成長率が高まるもとで人手不足感が強まり、中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想され、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移するとの見方を共有した。何人かの委員は、今回前提とした各国の通商政策等の影響がみられるもとでも、引き続き賃金の伸びと労働需給の引き締まりに支えられ、基調的な物価上昇率は、2%に向けて徐々に高まっていくという大きな方向感はこれまでと変わらないとの認識を示した。』

って話なのに、

『そのうえで、複数の委員は、中心的な見通しのもとでは、基調的な物価上昇率が「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移するようになる時期は、従来の見通しから1年程度、後ずれするとの見方を示した。』

なんで1年も後ずれするんだよという話で、まあ意味不明ではありますな。

『委員は、各国の通商政策は、物価に対して上下双方向の影響を及ぼしうるが、今回の前提のもとでは、今後の成長ペース鈍化などを通じて、中心的な見通しを押し下げる方向で作用するとの見方を共有した。また、一人の委員は、サプライチェーンが混乱するようなことがあれば、一時的には物価を押し上げる可能性があるが、混乱が長引けば、企業収益や賃金への下押し要因として働き、基調的な物価上昇率を押し下げる要因として作用する可能性があるとの見解を示した。この間、別の一人の委員は、関税の賦課は短期的な価格ショックと考えることもでき、長期的には実質的な効果を持たないとの理論上の結論はありうることから、現時点では、やや長い目でみれば、関税政策とその不確実性が、基調的な物価上昇率や潜在成長率に影響を与えるとはみていないとの認識を示した。』

ってな話で、インフレ期待の上振れ、という指摘が無いんだよなーと思いつつ、先の方になりますが、リスク要因の物価の話を見ますとですね・・・・・・・・


・やっぱり一部の委員を除いて「期待インフレの上振れ」を懸念してないんだよな〜

『物価のリスク要因について、委員は、上記の経済のリスク要因が顕在化した場合には、物価にも影響が及ぶほか、物価固有のリスク要因として、@企業の賃金・価格設定行動やそれらが予想物価上昇率に与える影響、A今後の為替相場の変動や国際商品市況を含む輸入物価の動向、およびその国内価格への波及には注意が必要であるとの見方で一致した。』

というのは展望レポートにあった通りですが、

『各国の通商政策等の動きが物価に及ぼすリスクに関連して、ある委員は、輸出企業を中心とした企業収益の減少が、今後、サプライヤーへの原価低減圧力の強まりや賃金設定行動の変化を介して、基調的な物価上昇率を押し下げうると指摘した。』

でまあこれに関連して、

『この点に関連し、一人の委員は、先行きの賃上げ気運を維持していくためには、本年の冬季賞与や来年の賃上げに向けて、企業経営者がどのようなメッセージを打ち出していくかが重要なポイントになると指摘した。別の一人の委員は、企業や家計の予想物価上昇率がどのように推移するのか、企業の賃金・価格設定行動がデフレ・低インフレ下のものに戻ることがないかといった点を、ヒアリングなども含め、しっかりモニタリングしていく必要があると述べた。』

企業の賃金設定行動について注目、ということになるとそれを判断するのは最初のひとりの委員が言ってるように冬の話になってしまいますねえ。

『また、何人かの委員は、米中間の高関税の影響等を受けて、中国から安値輸入品がわが国に流入し、物価を押し下げるリスクもあるとの認識を示した。』

というのの後に上振れの話がありまして、

『これに対して、複数の委員は、各国間の交渉の帰趨次第では、中心的な見通しよりも物価が上振れる可能性もあると指摘した。』

でもって最後に出てくるこの人だけが期待インフレの上振れをしてきしていまして、

『このうちの一人の委員は、成長率や消費者物価の前年比が今回の見通し通りに推移するとしても、企業や家計の予想物価上昇率や、企業の賃金・価格設定行動の状況次第では、基調的な物価上昇率は見通し期間前半に「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移する可能性も十分あると付け加えた。また、この委員は、物価は 2027 年度まで2%近傍を維持する見通しにある中で、グローバルサプライチェーンの混乱等による物価上振れリスクには留意が必要であるとの見解を示した。』

普通にこの意見が仰せご尤もだと思うのですが、その前の経済の所であったように、なんかこの世の終わりみたいな議論になっていたんだな、というのは議事要旨を見て再確認(展望レポートの時点でまあエライ弱気でしたけど)できた感じですね。

『この間、何人かの委員は、為替相場が大きく変動すれば、物価にも影響が及びうると付け加えた。』

でもってこの後金融政策のパートになるのですが、ちょっと時間が怪しくなってきたのでここで勘弁していただきとう存じます。










2025/06/20

〇山口元副総裁のお話が大変に素晴らしい件について

https://news.mynavi.jp/techplus/article/20250619-3357896/
日興リサーチセンター・山口廣秀理事長に聞く!「トランプショックをどう捉えますか?」
掲載日
2025/06/19 11:00
本記事は「財界オンライン」から提供を受けております。著作権は提供各社に帰属します。

金融政策以外の話(米国の政策に関する色々な考察)の方がメインのテーマでそっちの方も大変に学びがあるのですが、金融財政についても全くその通りです、ってご意見を述べておられまして、『痛みの伴う政策が時には必要』って小見出しから先が一々頷いてしまって首がもげそうになりました。

ということで以下ご紹介ですが。

『─ 1人ひとりの国民の意識も大事になってくると思うのですが。』

『山口 その通りです。特に大きいのは、安易に大幅な財政出動や大規模な金融緩和を求めるような、ある種の「甘え」の雰囲気が国民の側にもあるのではないかということです。改めて、国の政策に頼るのではなく、自助自立の覚悟が求められているのではないでしょうか。』

『様々な意味で政治の役割は大きいと思います。米中対立の中で、日本らしい米国との関係、中国との関係を念頭に置きながら、米中の間に立って両国の調和、ひいては世界・アジアの安定を模索していく役割が日本には求められています。大変困難なことですがやらなければなりません。そのための覚悟を政治にしっかりと持ってもらう必要があります。』(上記URL先マイナビニュース記事より、以下同様)

まったく仰る通りであります。でもってここから金融政策の話になりますが、

『─ こうした状況下で、日本銀行による金融政策はどうあるべきだと考えますか。』

『山口 消費者物価の上昇率が2%を超える状態が3年続いており、デフレからははっきりと脱却したと言えます。政府による電気料金やガス料金などの補助金政策によって物価上昇率が実態よりも低く見えていますが、実勢は前年比3%程度の高い上昇率になっています。国民から物価高への不満の声が出てきているのも、それが原因です。』

ですよね〜〜。何で「基調的物価」とかいう「お気持ち物価」で誤魔化そうとするんでしょうかと思いますし、だいたいからして日銀って今次局面でずーっと「これから物価上昇は鈍化して2%を一旦割り込みます」って言ってる見通しを延々と外しまくっている訳ですもんね。

『日銀が引き締め方向の政策を行っていくことが、すでに適切な状態になっています。しかし、実質金利はまだマイナスです。』

おお!!

『これを一気に引き上げていくわけにはいきませんから、少しでも利上げをして、マイナス金利の幅を縮小する努力をしていくということです。それでも実体としては金融緩和の状況に変わりはありません。』

左様でございますな。さらに質疑応答は続きまして、

『─ 日銀は国債、ETF(上場投資信託)も大量に保有しています。これをどう減らすかも課題です。』

ということで、

『山口 日銀は長期的な方向感を出していますが、それをさらに進めて、より早いペースで減額する方向に持っていけるかは、いずれ問われると思います。』

だというのに今回は減額のペースを落とすとか言う問題の先送りモードに出ているのですが、山口さんきっちりとこの点についても厳しい指摘をしておられまして、

『マーケットに大きなインパクトを与えたくないという気持ちは理解できますが、これだけ大量の国債等を保有している以上、多少マーケットに影響が出ることは覚悟しなければなりません。』

全く仰る通りです。でもってこの部分の最後の言葉が重くて、

『変化の激しい時代に慎重な対応だけを心掛けていたのでは、やらなければならないことを前に進めることはできません。』

>変化の激しい時代に慎重な対応だけを心掛けていたのでは、やらなければならないことを前に進めることはできません
>変化の激しい時代に慎重な対応だけを心掛けていたのでは、やらなければならないことを前に進めることはできません
>変化の激しい時代に慎重な対応だけを心掛けていたのでは、やらなければならないことを前に進めることはできません

いやもう本当の本当におっしゃる通りですわ。

・・・・・ということですが、本編の方は金融政策以外の話もありまして(というかそっちがメイン)、全力で一読推奨なのでMPMとかFOMCの話の前にネタにさせていただきました。



〇MPMレビューで植田総裁会見ですがハトハトチキンよりも気になるフレーズがちらほらあってですね・・・・・

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2025/kk250618a.pdf
総裁記者会見
――2025年6月17日(火)午後3時30分から約65分

・「記者クラブ主催」だから仕方ない面はあるのだがオープニングリマークの位置づけをもっと明確化してほしい

これ仕組み上しょうがないのかもしれないのですが、

『(問)本日の金融政策決定会合の内容について、総裁ご説明をお願い致します。』

『(答)今日の決定会合では、金融市場調節方針を決定したほか、昨年 7 月に決定しました長期国債買入れの減額計画の中間評価を行い、それを踏まえて、2027 年 3 月までの新たな減額計画を決定しました。最初に、これらの決定内容についてご説明します。まず金融市場調節方針ですが、無担保コールレート・オーバーナイト物を 0.5%程度で推移するよう促す、というこれまでの方針を維持することを全員一致で決定しました。(以下延々と続く)』

という形になっているのですが、ECBやFRBの場合はまず説明をしてから「では皆様のご質問をお願いします」っていう形にしていて、「オープニングリマーク」と「Q&A」が別になっているんですよね。

でもってこのオープニングリマークの際って声明文で書かれている話の背景説明も入れていて、経済物価情勢がどうなっているのか、といった辺りについて声明文などよりも詳しい説明をしてくれているのですが、この形だと「決定会合の内容について」の説明になっているので、皆様ご案内の通りで、声明文(展望レポートがある場合は展望レポートの鏡の部分)の棒読み状態になっていて、皆さん聞く時にほぼ意識失って聞いているんじゃないかと思うのです。

でですね、それ時間の無駄でもあるし、勿体ないにも程があるので、最初の部分は「オープニングリマーク」として扱っていただきたい訳で、例えばFOMCだと議事要旨に出てくる議論の中でも「この点についてはオープニングリマークでこう説明すべき」っていう感じで重要なコミュニケーションツールというか、声明文のサプリメンタルツールとして活用していますわな。

ということなので、この実質の冒頭挨拶部分は会見QAの前に独立して行うようにして、今みたいな棒読みじゃなくてもうちょっと背景説明を加えるような形にして頂きたいですね、と前々から何となくは思っていたのですが、今回まあそういうのを最初に申し上げた次第です。


・国債買入に関する質疑なんですが「国債市場の安定に配慮」で結局YCC脳が抜けないんだよな

最初はこれですね。

『(問)幹事社からの質問は二問です。まず一問目は、国債買入れの減額計画についてお伺いします。26 年 4 月以降に四半期毎の減額幅を 2,000 億円にした理由を教えてください。26 年 3 月までと比べて半分のペースに緩めるうえで、どういった観点を重視したのかを具体的に教えて頂ければと思います。(後半割愛)』

オーソドックスに来ましたが、

『(答)まず国債買入れの減額計画ですが、基本的な考え方はこれまでと同じでございます。すなわち、長期金利は金融市場において形成されることが基本であり、日本銀行による国債買入れは、国債市場の安定に配慮するための柔軟性を確保しつつ、予見可能なかたちで減額していくことが適切と考えています。そのうえで、金融市場において長期金利がより自由なかたちで形成されていくようにするためには、国債買入れ額を更に減額していくことが望ましいと考えられます。』

そもそもですね、「金融市場において長期金利がより自由なかたちで形成されていくようにする」って言ってるのに「国債市場の安定に配慮」ってのが話として矛盾している訳で、市場ってのは常に安定しているもんじゃないですし、それこそさっきの山口元副総裁の言葉を拝借すると「変化の時代」なんだったら時に市場が大きく動くことがあったっていいじゃないですかってなもんですわな。

そりゃまあ何とかショックで市場での売買が全くできなくなってしまう、みたいなことがあれば「最後のカウンターパーティー」として中央銀行が介入した方が良い場合もあるでしょうけれども、別にそんなことが起きたわけではないですし、あの程度のことで市場配慮とかビビりだす方が「市場の当局依存」を抜け出せなくするという意味で問題じゃろと思いますがまあそれはワシの個人の見解で、YCCシャブ漬けジャンキー脳の皆様におかれましては当局の介入が必要でちゅーボクたちだけの自由な価格形成なんてこわいでちゅーってお話ではありますので、そこはもう思想の問題になりますな、トホホ。

『一方で、国債買入れの減額が進展する中で、今後の減額ペースが速過ぎますと、市場の安定に不測の影響を及ぼす可能性もあるとみています。』

起きねえよ、とは思いますがいずれにしたってその点を勘案するんだたら、実際に減額が進行していったあととなります年末か年始の会合辺りで判断すればいい話なのに、何で「来年4月以降再来年3月まで」は減額しないと不味いですって判断ができたのかが全く意味わかりませんね。

『本日の会合では、市場参加者の意見も参考にしつつ、この両方の考え方のバランスを勘案し、国債市場の安定に配慮したかたちで市場機能の改善を進めていけるよう、申し上げましたように、来年の 1〜3 月までですね、[毎四半期]4,000 億の減額を続け、26 年 4 月以降は月間買入れ予定額を、[毎四半期]2,000 億円ずつ減額して、27 年 1〜3 月に 2 兆円程度とするということが適当と判断したところでございます。(後半割愛)』

結局「じゃあ何で2000なのか」「じゃあ何で今の時点でそんな先の状況を判断できるのか」という点が全く説明が無いわけです。FEDだってバランスシート縮小を継続する中で特に期限を定めずにオートパイロットで減らしていって、その中で短期金融市場の金融調節上ちょっと微妙になってきたから減額ペースを縮小した、ということをしているというのに、日銀は何でこんな先の事が神のように予測できるんでしょうかってお話で、FED方式で四半期4000を継続するけど、不具合が生じるようならペースはその時に適切に対応する、で何の問題があったのかというお話ですな。



・そんな先の決め打ちをしないといけない背景をさっそくゲロっているのがこの正直者!って感じな訳でして

次の質問の後半で早速追い質問されていて、

『(問)(前半割愛)もう一点が国債買入れの減額について、先ほど減額ペースについては債券市場の安定に配慮したというお話がありました。金利の急騰に対する配慮だと思うんですけども、これは財政に対する配慮という面もあるんだと思いますが、この点を総裁はどのようにお考えでしょうか。』

イイシツモンダナー

『それも踏まえてなんですけれども、減額のペースを緩めなくてはいけないということを考えると、それは異次元緩和の副作用といったものがまだ顕在化してきているという面もあるのかなと思いますが、その点も含めて総裁のお考えをお願いします。』

ですねー。

『(答)(前半割愛)それから買いオペの減額についてですけれども、これは申し上げるまでもなく財政の配慮というよりは、あまり早めに減額を進めて、国債金利が異常なボラティリティを示す、それが経済にマイナスの影響を与える、そういうことが起こらないようにという配慮からの今回の措置でございます。』

>財政の配慮”というよりは”
>財政の配慮”というよりは”
>財政の配慮”というよりは”

これはまた華麗なポロリで(途中からつまらなくなったので実はライブで聴くの止めたのですがこの辺りはさすがに聞いていた)クソ笑いましたが、「というよりは」っていうことはつまり財政にも配慮していますじゃん、というお話でして、財政に配慮して大規模国債買入を継続するし、その規模は中々減らせないんですーって言ってるのはどう見ても財政マネタイズ政策です本当にありがとうございましたという告白をしておりまして植田和男先生それで良いんですかと小一時間問い詰めたいですね。

『従って、大規模緩和の副作用ということとの関連で申し上げれば、副作用が顕現化しないように注意深く進めているということかと思います。』

大規模国債買入、という緩和政策を物価安定目標が達成されそうになる、すなわち金融緩和政策が本来不要になる段階になっても、市場金利への配慮で不要な緩和政策を行わざるを得ないというジレンマがまさに副作用なんですよね。


でまあ財政の配慮という意味ではこんなこともポロリとしておりまして・・・・・・・・・・

後の方の質問ですが、

『(問)二問伺います。まず国債買入れ減額計画についてです。ちょうど 1 年前のこの会見で総裁は減額計画の策定スパンに関して、日銀の向こう 1 年間のオペの大まかな姿を明らかにして、そのうえで政府の国債管理政策などを決めて頂く姿勢、とおっしゃっていました。計画期間を 1 年延長した今回の中間評価においてもこのスタンスは変わっていないのか、改めてなんですけれども財政政策と金融政策の距離感、もう少し言うと政治と中央銀行の距離感について伺えればと思います。(後半割愛)』

ということですが、

『(答)まず、国債買いオペ減額に関連してというご趣旨だったと思いますけれども、政府・財務省との意思疎通はということのご質問だったと思いますが、これは様々なレベルで日頃から密接にとっております。』

別に意思疎通をするのは良いんですけど、

『そうした意思疎通を行ったうえで、今回私どもとしては政策委員会で今回の減額[計画]の案を作成し決定したということであります。』

まずこの時点で説明がデンジャラスゾーンに入ってくる訳でして、中央銀行の長期国債買入は、あくまでも短期金融市場の調節の一環の中で、負債サイド(発行銀行券と当座預金)の見合いで短期資産(短期オペレーション)と長期資産(長期国債)をどのような配分で持つか、ということから決定されるものでして、別に国債発行額がなんぼだからどうのこうのというようなリアクティブなものではない訳です。

さらに、

『それを少し先まで明らかにするということによって、政府にとっても発行計画にとって不確実性が一つ減るというプラスがあるかと思いますが、』

はいアウト―って説明でして、これ日銀の国債買入が政府の国債発行計画に影響します、って堂々と言っている話になるので、これまた財政マネタイズを公言しているようなもんで、会見でのツッコミが甘いから助かっているけど、こんなの全然ダメな説明ですよね。

『引き続き政府とは密接な意思疎通を図っていきたいというふうに考えております。』

実際には今の市場で日銀の馬鹿買入が続いている関係上、そんじょそこらの投資家やPDが足元にも及ばない程の国債投資家状態になっているので、発行当局としては「巨大投資家の日銀」に状況を聞くという意味での意思疎通はそりゃまあせざるを得ないですが、それはGivenになっている今の国債買入規模がおかしいからそうなっているだけの話で、原則論は中銀のオペレーションとしての国債買入は国債発行とは無関係(もちろん国債発行規模によって市中の資金需給への影響は変化するから全くの無関係ではないが)に決まるもの、という則を崩した説明を中銀自らが行うっていうのは、非常に危ない説明なので止めて頂きたいと思います。

市場配慮位なら(それもどうかとは思うけど)まだ財政マネタイズに関する則を外しているわけではないからまだしも、財政との関係のところで原理原則を踏み外した説明をするのに対して無神経すぎる、と思いました。


・足元の物価が想定よりも上振れているというような話は一切なしというのを一発目でぶちかます

景気判断はハトハトチキン、ってのはまあ皆様ご案内のところだとは思いますが、備忘ということで引用しておきましょう。

幹事社質問に戻りますね。

『(問)(前半割愛)二問目は、経済・物価情勢の考え方についてお伺いします。足元のインフレ率は3%を超えています。5 月の展望レポートを出したときと比べて物価上振れリスクは高まっているとお考えになりますでしょうか。また、今後の利上げ判断において経済の不確実性も考慮し、どういう指標を重視するかについて教えてください。』

物価上振れの話は前週金曜日にBBGが報道した訳で、そりゃモチのロンで質問しますよね。でもってこれにどう回答するのかが注目されるわけですが・・・・・・・・・・

『(答)(前半割愛)経済・物価情勢ですが、先ほども申し上げましたように、本日の会合では、前回会合時点からわが国の経済・物価を巡る大きな構図に変化はないと判断致しました。』

まあ「大きな構図」は変化ないと来るでしょう(そうじゃなかったら声明文が事実上の4月展望からの全文一致にならない)が、じゃあ物価はと言いますと・・・・・・

『直近の消費者物価の上昇率は 3%を超えていますが、これにはこれまでの輸入物価上昇や米を含む食料品価格上昇が大きく影響しています。』

BBG報道で言われていた「足元までの消費者物価(生鮮食品を除くコアCPI)は、人件費や原材料価格の上昇を価格転嫁する動きが続き、食料品価格を中心にやや強めの動きとみている。(6/13のブルームバーグ記事より)」ってのは何だったのかという拍子抜けの「はいはいコストプッシュコストプッシュ」ムーブでして・・・・・・・

『こうした物価上昇が国民生活にマイナスの影響を与えていることは、十分に認識しております。』

質問はそっちじゃねえよ。

『先行きについては、これらの影響は減衰していくと基本的には考えています。』

とまあそういうことで、「コストプッシュだから下がります」のままでした。

『ただ、物価を巡って上下双方向のリスクがあるとみています。コストプッシュによる物価上昇が、人々のマインドや予想物価上昇率を介して、基調的な物価上昇率に二次的な影響を及ぼす可能性があることも認識しておく必要があります。そのうえで現時点では、各国の通商政策等の今後の展開や、その影響を巡る不確実性がきわめて高いことを踏まえると、先月の展望レポートで示した通りですが、経済・物価ともに下振れリスクの方が大きいと判断しています。』

下振れリスクの方が大きいんですってorzorz

『日本銀行としては、今後明らかとなるデータや情報を引き続き丁寧に確認し、経済・物価情勢を点検してまいりたいと思っております。不確実性がきわめて高い状況にあることを踏まえますと、各種のデータに加えまして、本支店を通じて得た企業ヒアリング情報を含め、できるだけ幅広い情報に基づいて分析を行うことが従来以上に重要となっていると考えています。』

分析したって最後は「お気持ち物価」じゃんwwwwwww


・「悪くなるの待ち」という謎ムーブキタコレorzorz

2番目の質疑でこんなのがありましてですな。

『(問)二点お伺いします。まず利上げの考え方についてですけども、今後、経済が減速していく見通しの中で、経済の改善に応じて政策金利を引き上げていくというお話でした。その判断においてデータが重要になると思うんですけども、データの改善がなかなか追い付いてこないけれども、見通しとしては上がっていくという見通しがついた段階でもう利上げという判断はあり得るのか、というところを一点目教えてください。(後半割愛)』

という質問があって、この回答が皆様ご案内の通りハトハトチキンでして、まあこの辺りで今回の総裁記者会見は利上げの面では勝負あったって感じでしたな。

『(答)今後の金融緩和度合いの調整を判断するに際してのデータの点ですけれども、難しい局面にありまして、』

もうこの時点でハトハトチキンの香りしかしませんでしたが、

『前回も申し上げたかもしれませんけれども、センチメント関係の指標は今悪いものが割と増えてきています。世界的にですね。一方でハードデータについては、いろんな理由がありますが、まだしっかりとしているという大まかには感じかと思います。』

と来てからのこれですよね・・・・・・

『ですので、おっしゃったように悪いのが良くなってきたところ、そのどこのタイミングで利上げをするのかという話のまだ手前にありまして、悪くなっていない段階で。』

つまりは今は「悪くなるの待ち」という謎ムーブだとおっしゃっているようです。

『ただし、例えばタイミング的にいえば、今年の後半ですね、7 月以降後半に入りますけれども、いくつかのデータに悪い動きがみられるんではないかというふうに予想している人が多いかと思います。』

逆にこの時期にそんなに悪くならなかったらどうするんでしょ、と思うのですが・・・・・・・

『そういう動きがどれくらいになっていくか、われわれの見通しとの関係で、それとの判断、比較において見通しが実現しそうかどうか。その判断次第では、はっきりとそこから先もう 1 回上向きに転じるっていうところが確認できなくてもというご質問の点は、確か 1、2 回前にもそうお答えしたと思いますが、その通りかと思います。見通しの確度次第ということになるかと思います。(後半割愛)』

っていう説明ですが、なんかこれを言い出すとですね、この先まあさすがに幾分かは落ちるとは思うのですが、落ちないとか落ち方が大したことがない、って状態になった時に「いやいやまだ影響が出ていないだけでこれから落ちるにちがいない」と言い出して何時まで経っても利上げを決断せずに引っ張ってしまう、という「物価落ちるだろう」の景気バージョンというのが発生しそうで、ますます過剰緩和の副作用が心配になってきたんですけどアタクシ・・・・・・・


・おそるべき「絶対下がるだろう」ムーブ

別の質疑で物価面にフォーカスしたこんな質問があって中々結構だと思ったのですが、

『(問)先ほど物価の先行きについて少し言及がありましたが、食品価格の上昇と併せて、イランとイスラエルの間の中東情勢の緊張によって、原油価格の上昇も今後懸念されるところですが、既に基調的なインフレが2%に近づいている中でこうしたコストプッシュの上昇圧力と原油価格の今後先行き次第では、物価の上振れリスクが無視できなくなる可能性がどれぐらいあるのか、』

全く仰る通りで、今次物価上昇局面において欧米はこの上振れリスクを当初放置した結果ああいう引き締め政策を打たざるを得なくなり、欧州に至ってはスタグフレーションの様相になってしまった訳でございますということで大変に秀逸な質問だと思いました。

『先ほどはやはり景気・物価ともに下振れリスクが依然大きい、より大きいということでしたが、そのバランスが今後変化して、物価の上昇が家計のインフレや基調インフレに影響を及ぼすリスクがどの程度になりそうなのか、ちょっと原油価格の動向を含めて展望をお聞かせできればと思います。』

しかしこの良問に対してのハトハトチキン先生の回答はと言えば、

『(答)お答えは、基本的に注意深くみていきたいということに尽きてしまうんですが、おっしゃるように、食品関連の価格上昇に加えまして、足元、イラン、イスラエルの問題で原油が上昇している。こうした動きが広がったり続いたりする場合には、期待物価上昇率とか基調的物価上昇率に二次的な影響を与えるリスクはあると思っています。』

とは言ってるのですが、

『現状そこまで至っていないと思いますけれども、そこについては注意深くみていきたいということであります。』

って話なんだが、「ゼロ近傍で安定していた期待インフレ率を2%に引き上げる」という政策を実施して、その期待インフレが上昇しているという認識があるのであれば、インフレ期待が2%でアンカーされている国よりも、アクチュアルの物価上昇が期待インフレの上昇にモロに跳ねやすくなる、と理屈の上ではそうなるので、こんな楽観視してて良いのかというのがある上に、さらに追い打ちを掛けまして返す刀でハトハト先生は、

『ただし一方で、先ほども申し上げましたように、通商政策の影響がだんだんこれから出てきて、製造業、特に製造業ですね、の企業収益が低下に向かう、それが場合によっては、暫く前まで続いていたようなコストカット型の価格、あるいは賃金設定行動を復活させるというリスクも無視できないと思いますので、両方注意深くみていきたいと思っております。』

ということで、まあベースがハトハトなんですよね〜。


・「お気持ち物価」がわからんわという指摘に対して

こんな質疑もありました。中々よろしい質問でして。

『(問)金利操作に関してお伺いしたいんですけども、現状日銀では目標とする 2%の物価と推計された中長期の予想インフレ率で説明されてると思うんですけど、諸外国をみると金融政策運営に関しては実際の物価と目標の物価を使って説明されてるというか、金融政策を運営されてるかと思うんですけど、』

イイシテキダナー

『欧米のように 2%でアンカーされているという点があるかもしれませんけれども、日本でやはりその目標とする2%の物価と中長期の予想インフレ率で説明するのがなかなか分かりにくいと思うんですけども、その辺を現状どういうふうにお考えかということと、』

んだんだ。

『それに絡めて日本でも中長期的に 2%でアンカーされることが必要だということでよろしいんでしょうか。そうすると、結構金融政策の運営スパンが長いような気がするんですけれども、その辺をどういうふうにお考えかよろしくお願い致します。』

でもってこれに対するご回答ですが、

『(答)基本的には 2%の目標インフレ率を短い期間だけではなくて、持続的・安定的に実現するためにどういう政策運営が良いかという観点から政策を行っています。これはある意味では、あるいは少し広くとれば、他の中央銀行も同じかなと思います。』

あっそう(しかしこの前の金融学会の内田さんの説明もそうなんだが「海外もそうです」って言いながらそうじゃないことを言ったりすることがあるので油断大敵)。

『ただ、持続的・安定的に 2%が実現されるためにはということで、われわれは基調的な物価上昇率という概念を使い、様々な指標からそれをみているわけです。』

で、そのお気持ちもとい基調的物価を使う理由は????

『その指標の一つが予想インフレ率、あるいは特に中長期の予想インフレ率ということでございます。もう一度、欧米との微妙あるいはかなりの違いということで申し上げれば、予想インフレ率あるいは基調物価のところが 2%にまだ日本ではアンカーされていないという点は意識しつつ、そうなるように政策を続けているということであります。』

・・・・・全然答えになっていないんですが勘弁していただけますでしょうか。

という所で時間が無くなったので今朝はこの辺で勘弁していただきたく存じます。







2025/06/18

〇声明文の経済物価の現状認識:先行き見通しともに4月展望基本的見解と変更なし

今回声明文
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2025/k250617a.pdf

4月展望レポート基本的見解
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2504a.pdf

輪番の話はさておきまして経済物価情勢に関する評価が「物価上振れ」したかどうかを見たかったのでそっちを先に見るわけですな。

・現状認識:まあやっぱり変えないだろうなあと思ったら変更ありませんでしたwwwwww

声明文では項番3の第一段落、展望レポート基本的見解では本文最初の『1.わが国の経済・物価の現状 』が該当します。

『わが国の景気は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している。』(今回声明文)
『わが国の景気は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している。』(前回展望レポート)

はい。

『海外経済は、各国の通商政策等の影響を受けて一部に弱めの動きもみられるが、総じてみれば緩やかに成長している。輸出や鉱工業生産は、一部に米国の関税引き上げに伴う駆け込みの動きがみられるが、基調としては横ばい圏内の動きを続けている。』(今回声明文)

『海外経済は、各国の通商政策等の影響を受けて一部に弱めの動きもみられるが、総じてみれば緩やかに成長している。輸出や鉱工業生産は、一部に米国の関税引き上げに伴う駆け込みの動きがみられるが、基調としては横ばい圏内の動きを続けている。』(前回展望レポート)

6月半ばにもなって今更「駆け込みの動き」なのかよと素朴には思うのですが、ゆうてワイも通関統計を真面目に見たりしている訳ではないので判断保留。でもってご覧の通り全文一致。

『企業収益が改善傾向にあるもとで、設備投資は緩やかな増加傾向にある。』(今回声明文)
『企業収益は改善傾向にあり、業況感は良好な水準を維持している。こうしたもとで、設備投資は緩やかな増加傾向にある。』(前回展望レポート)

業況感のところは直前に日銀短観があった時のみ入るアセスメント文言ですので、ここは事実上の全文一致となります。

『個人消費は、物価上昇の影響などから消費者マインドに弱さがみられるものの、雇用・所得環境の改善を背景に緩やかな増加基調を維持している。』(今回声明文)
『個人消費は、物価上昇の影響などから消費者マインドに弱さがみられるものの、雇用・所得環境の改善を背景に緩やかな増加基調を維持している。』(前回展望レポート)

個人消費の現状判断も4月展望(5/1)と同じ。

『住宅投資は弱めの動きとなっている。公共投資は横ばい圏内の動きとなっている。』(今回声明文)
『住宅投資は弱めの動きとなっている。公共投資は横ばい圏内の動きとなっている。』(前回展望レポート)

『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(今回声明文)
『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(前回展望レポート)

同じですなあ、ということで金曜日に謎のBBG報道があった物価認識ですけれども・・・・・・

『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比をみると、賃金上昇の販売価格への転嫁の動きが続くもとで、既往の輸入物価上昇や米などの食料品価格上昇の影響もあって、足もとでは3%台半ばとなっている。予想物価上昇率は、緩やかに上昇している。』(今回声明文)

『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比をみると、賃金上昇の販売価格への転嫁の動きが続くもとで、既往の輸入物価上昇や米などの食料品価格上昇の影響もあって、足もとでは3%台前半となっている。予想物価上昇率は、緩やかに上昇している。』(前回展望レポート)

数字が上がっていますが、これはアクチュアルの数字が上がったからこう書いているだけの話で、背景説明を見たら何も変更は無いわけで、物価が上振れて推移している云々のBBG報道は一体全体何だったのかというお話ですが、この後記者会見でどういうかなあというのは有ったのですが、別に何か威勢の良いことは無かったなって感じですがその辺は会見録出てから再度。

・・・・・ということで事実上の全文一致でした。


・先行き見通し判断:これまた事実上の全文一致でしたなあ

先行き判断に関しても前回展望は本文の方を見ます。ここの比較にはちょっとコツというほどのものでもないのですが、まあそんなのがありまして、展望回じゃないときのここの文言って展望レポートの基本的見解の本文を引っ張って来てそこから何か変更を入れる場合は入れている、と思われる節がありまして、鏡の部分と比較すると抜けが発生することがあると思うのです(鏡と比較する方が自然にも思えるのですが、アタクシは実はあんまり鏡と比較したことがない)。

という豆知識はさておきまして、本文に関しては先行きのところに分散して載っています。

『先行きのわが国経済を展望すると、各国の通商政策等の影響を受けて、海外経済が減速し、わが国企業の収益なども下押しされるもとで、緩和的な金融環境などが下支え要因として作用するものの、成長ペースは鈍化すると考えられる。』(今回声明文)

『先行きのわが国経済を展望すると、各国の通商政策等の影響を受けて、海外経済が減速し、わが国企業の収益なども下押しされるもとで、緩和的な金融環境などが下支え要因として作用するものの、成長ペースは鈍化すると考えられる。』(前回展望レポート)

成長はまあ同じじゃろうなとは思いますけど。

『その後については、海外経済が緩やかな成長経路に復していくもとで、成長率を高めていくと見込まれる。』(今回声明文)
『その後については、海外経済が緩やかな成長経路に復していくもとで、わが国経済も成長率を高めていくと見込まれる。』(前回展望レポート)

「その後」も事実上全文一致みたいなもんですね。でもって物価ですけど・・・・・・

『消費者物価(除く生鮮食品)については、これまで物価上昇率を押し上げてきた既往の輸入物価上昇やこのところの米などの食料品価格上昇の影響は減衰していくと考えられる。』(今回声明文)
『これまで物価上昇率を押し上げてきた既往の輸入物価上昇やこのところの米などの食料品価格上昇の影響は減衰していくと考えられる。』(前回展望レポート)

同じですねえ(冒頭部分の違いは文章構成の違いに起因します)。

『この間、消費者物価の基調的な上昇率は、成長ペース鈍化などの影響を受けて伸び悩むものの、その後は、成長率が高まるもとで人手不足感が強まり、中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想され、』(今回声明文)
『この間、消費者物価の基調的な上昇率は、成長ペース鈍化などの影響を受けて伸び悩むものの、その後は、成長率が高まるもとで人手不足感が強まり、中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想され、』(前回展望レポート)

ということで「お気持ち物価」の見通しも変わっていないのでつまりはお気持ちにも変化はないということでございますなwwwwww

『「展望レポート」の見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。』(今回声明文)
『見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。』(前回展望レポート)

結局見事に全文一致でして、先週金曜日のBBGの報道は何だったのかという話になりますし、記者会見でもそんなに威勢の良い話(以下同文)。

ということで、7月ジャガーチェンジに向けた何かが出る、というような面白事案は生じていませんので、ここでいきなり7月ジャガーチェンジをしたらそれこそ「大阪や!(ガン!!)オラ開けんかいゴラァ!!」の世界(よつべがニコ動で「大阪や」で検索すればわかりますw)案件待ったなしということで、とりあえず変な物は出てきませんでしたし、上書きムーブも(声明文では)無かったな、というお話になりました、いやーなんかやったらどうしようと思ってましたけどw


〇輪番減額計画:事前報道通りでしたが何で減らすのかもわからんし次回の中間評価の時期設定おかしいじゃろ

声明文項番2が

『2.長期国債買入れの減額について、月間の長期国債の買入れ予定額を、2026 年1〜3月までは原則として毎四半期 4,000 億円程度ずつ、2026 年4〜6月以降は原則として毎四半期 2,000 億円程度ずつ減額し、2027 年1〜3月に2兆円程度とする計画を決定した1(別紙参照)(賛成8反対1)(注)。』(今回声明文)

とまあそういうことですが、ここで抜刀斎が華麗に抜刀をしていまして、

『(注)賛成:植田委員、氷見野委員、内田委員、中村委員、野口委員、中川委員、高田委員、小枝委員。反対:田村委員。田村委員は、長期金利の形成は市場と市場参加者に委ねるべきであるとして、2027 年1〜3月まで月間の買入れ予定額を原則として毎四半期 4,000 億円程度ずつ減額する議案を提出し、反対多数で否決された。』

ということで現行ペースを維持すべき、という提案をしたものの惜しくも(って8-1だから全然惜しくはないけど)否決されてしまいました。

まあ折角ならここの所では「既往の長期国債残高によるストック効果による影響も勘案すれば、長期国債保有残高の削減を可能な限り進めるべき」という日銀バランスシート側からの理由付けをしていただくともっと論点が明確になるとは思った訳ですがそれは兎も角として。


でまあその別紙参照の方ですが、

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2025/k250617b.pdf
長期国債買入れの減額計画(2025年6月金融政策決定会合)

『@長期金利 :金融市場において形成されることが基本
A国債買入れ:国債市場の安定に配慮するための柔軟性を確保しつつ、予見可能な形での減額が適切

・2026年3月まで :原則、毎四半期4,000億円程度ずつ減額(従来の減額計画を維持)
・2026年4月〜2027年3月まで:原則、毎四半期2,000億円程度ずつ減額

  国債市場の安定に配慮した形で市場機能の改善を進めていけるよう、段階的に減額していく』

って言ってるんですが、そもそも論として日銀の買入が多すぎるしストックの買入が多すぎるから(この点でSLFからの減額措置を若干拡大したのは評価できるけど不十分にも程があるので今後一段の拡大をしていただきたいがその話は別途)市場機能の回復が遅れているのであって、長期国債買入残高を減らしていく方がどう見たって急務じゃろ、とアタクシは思うのですが、そうじゃないという話になっています。


・債券市場に配慮とか言ってるけどこれは「物価安定目標が達成しない」というデフレ脳から抜けてないんじゃないのかと

という訳でですね、じゃあ何でワイが急務かと言えば話は簡単で、そもそも論として現時点で「基調的物価」とやらが2%に到達してて、家計を中心に期待インフレ率は上がっているし、企業の価格設定行動って最近は一部はもはやコスト転嫁の域を超えて欧州でいう「グリードフレーション」化してませんか、という問題意識がワイ的にはある訳ですよ、まあ何とかスト的にはそんな訳ねえだろって話だと思うのであくまでもシロートの話ってことになるかなって所ですが。

でもってですね、先日来何回かネタにしましたが、昨年末に出ていた「将来の財務シミュレーション」を見れば、早期に2%物価目標を達成し、「普通の」金融政策に戻る、すなわち期待インフレが2%で安定している世の中での金融政策運営をする、って事になった場合、コストプッシュだの供給ショックだのの要因によって物価が上振れたときに、「コストプッシュだから/一時的な供給要因だから」政策対応をしなくて良い、という行動をとると後で面倒なことになる、というのが欧米の今次インフレ局面での教訓な訳でして、それは日本だって同じことが今後起こりうる(というかまあワイは既に起きている可能性を思うのですがまあそこは措くとしまして)訳で、「普通の」金融政策をする際に、今ある巨額のバランスシートってのは政策の足かせになるわけですよどっからどう考えても(その辺会見でよい質問がありましたね)。

ですから、日銀保有国債の残高圧縮とか本来はマジで急がないといけないのに、たいして金利が上がった訳でもない状態において早くもビビって国債買入の継続を延命するという措置を取ってしまっている訳でございまして、それ債券市場に対する本当の配慮なのか、というと財政ファイナンス懸念とか、巨額のバランスシートによって将来の時点で本来必要となる引き締め政策ができなくなるのではないかという懸念とか、そっちの方からもっと大きな大問題が起こるリスクを抱えに行ってる、って話な訳ですよ。

・・・・と本来ならそうなると思うのですが、そうはならずに今回2026年4月以降とかいう飛んでも無い先の時点の決め打ちを行っている(FEDのテーパリングだってこんな決め打ちしてないぞ・・・)時点でお前ら本当に物価安定目標達成する気があるのかというか、物価目標達成後に起きる「普通の金融政策」への覚悟がないだろ大丈夫かってなもんでして、まあ黒田がキチガイみたいにバランスシートを拡大したのが悪いんですけど、そうは言ってもそれに対して全然反省しないで丸々黒田継承をしている時点で何やってるんだよとは思いました。


・減額前と比較して16%減少って碌に減ってねえだろ・・・・・

『<予見可能な形での減額>』ってのがあって、結局2027年3月の段階でも月額2.1兆円の長期国債買入を継続する、ということで、国債残高の方はと言えば相変わらず500兆円を大きく上回った状態、ということになっておりまして、いやすまんお前ら展望レポートの見通し期間の後半には物価安定目標達成する、って言ってるんだから2025年4月から2028年3月の後半ってそれはどこからどう見ても2026年10月な訳でして、物価安定目標を達成して「普通の金融政策」をやっている中なのに長期国債買入に関しては超緩和的な状態を続けるって何なんだよという話だし、仮にその巨額の買入を正当化するのであれば、長期国債買入による長期金利押し下げから来る緩和効果を相殺しないといけないんだから、短期政策金利は中立金利の下限とかいうような寝言を言ってる場合じゃないだろ、という話になると思う訳ですけれども、そこの整合性はどうなっているんでしょうかと小一時間(なので4000億円のペース継続でも遅いくらい)な訳ですよ。短期政策金利との整合性はどうなるんでしょうかねえ。

ちなみに、この質問をしますと、金融学会での内田副総裁の説明にあるように「短期政策金利とは全く無関係に保有長期国債の残高を設定できます(キリッ)」という返答が返ってくるのは1000%間違いないのですが、どっからどう見たって巨額の国債買入を継続して残高アホほどもっていたらバランスからして短期政策金利は引き上げていかないとインフレが止まらないか自国通貨安になってまた窮乏化するのか、その合わせ技になるのかという話じゃろとしか思えませんが、まああくまでも個人の感想ですのでそういうことで。


・次回の中間評価が何で来年の「6月」なんだよ真面目にやる気あるのか

べき論云々もさることながら(まあどうせこんな計画だすんじゃろうなあとは諦観してたのでそこはサプライズではなかったんだが)腰が砕けたのは最後の『<柔軟性の確保>』のところでして、

『@来年6月の金融政策決定会合で中間評価を実施
A長期金利が急激に上昇する場合には、機動的に、買入れ額の増額等を実施
B必要な場合には、金融政策決定会合において、減額計画を見直す』

まあ2番と3番はいつも通りの抜かずの宝刀なのでさておきますとしまして、1番の「来年6月に中間評価」ってお前真面目にやる気あるのかという話ですよ。

いやあのですね、前回は減額開始したところだし、減額計画出すのと同時に政策金利の引き上げを実施してやっとマイナス金利だゼロ金利だから(25もゼロみたいなもんとは言え)プラス金利になりました、ってタイミングだったので、そこから1年後に状況を確認しますね、というのは話としてはまあ分からんではない(ただし現時点で来年4月以降1年分、というエライ長距離な計画を決め打ちする必要は無くて、そっちは12月なり1月なりに決めればよかったと思います)ので、今回の「中間評価」というのが前回設置されたのはまあ話としてはわかるんですよ。

然るにですね、今回ってその「中間評価」をした結果、「来年の3月までも今の計画を継続しても問題ないでしょう、まあ何か不測の事態が起きたら対応するにしまして」という結論を出したわけでして、それすなわち「来年3月までの中間評価は一旦完了」している筈なので、そこから3か月(6月会合の日程を考えたら実質2か月半とかですかねえ)の間に何の「中間評価」をするんですか、というお話でして、買入ペースを減額した事に関する影響を評価するのに2か月ちょいで何が分かるんだよと小一時間問い詰めたいし、しかも会見で植田さんは「次回中間評価で2027年4月以降の買入計画を策定します」みたいなことを言ってまして、買入ペース減額の影響もみないで何の買入計画を立てれられるのかということで、真面目にやる気あるのかというお話ですわな。

どう見たって10月会合(買入減額してから半年経過)以降に中間評価じゃろと思うのですが、これどうせ前回が6月だからとか言って機械的に何も考えずに1年先に設定したんじゃろ、という辺りにぞんな雑な運営でこの先このバランスシートを抱えたままで「普通の」金融政策が運営できるのかよ、と非常に不安におもいましたが、まあワイはご案内の通りの杞憂民族なので杞憂に終わっていただきたいものだと願って止みませんorzorz


〇減額措置拡充とか今回のオペ紙とか会見とかは明日(FOMCとぶつかる・・・・)

ということですが、例によって例の如く時間の関係上(昨日夜なべする余裕が無かったのでシャーセン)この辺で勘弁して頂くわけですが、少なくとも今回の声明文もそうですし、このやる気のない国債買入減額ペースの腰砕けを見ますと、物価安定目標は当分行かないですなあ、というメッセージを裏から発しているように読んでしまいましたアタクシは。

まあゆうて実際の物価は高止まりしている訳でして、日銀の目論見通りにここから物価上昇率が鈍化してくるのか、というのが目先では日銀に対する落とし穴の一つ(もう一つは円安の再燃)かとは思う訳でして、この後物価上昇率がコアコアベースで『既往の輸入物価上昇やこのところの米などの食料品価格上昇の影響が徐々に減衰していくことに加え、成長ペース鈍化などの影響から、いったん2%を下回ると見込まれる。』(4月展望レポートより)となっている見通しが外れ、ついでに誰かの犬笛が差さって物価高止まりの戦犯として日銀がやり玉にあがるようなことでもありましたら、まあ今回の説明なんぞは全部ジャガーチェンジしてくると思いますので、今いまはハトハトチキン継続だし、主体的にジャガーチェンジするとも思えませんけど、外部要因の変化には注意をしていきましょうね、ってのが今回の決定会合のいったんのワシのレビューかな、と思ったのですけれども、まあこの後の金懇とか見て行って行きたいと思います。

次回は20日に総裁の全国信用金庫協会でのあいさつがありますが、そこはまあ通り一遍の物になるでしょうから、その次に予定される25日の抜刀斎の金懇でどういう抜刀が行われるのかを楽しみにしたいと思うところです。






2025/06/17

〇貸増経過措置前の最終回ですが総残高71兆円なわけで・・・・

貸増
https://www.boj.or.jp/mopo/measures/mkt_ope/len_b/mope250616a.pdf
貸出増加を支援するための資金供給の実施結果
(2025年6月実施分)

『今回の貸付の概要

貸付予定額    70,188億円
貸付先数      31先』

ということで7兆円実施でして、

『(参考)貸付日時点の貸付残高および貸付先数の見込み

大手行         284,111億円    6先
地域金融機関等   425,919億円   110先
合計           710,030億円   116先』

とまあそういうことで相変わらず71兆円もでているんですが、じゃあこの71兆円も出した結果貸出がどうなったのか、という話になると、なにせこういうのって実験室の実験じゃないからやらなかった場合にも別に何か変わったかよ、っていったら直感的には何も変わらず、単に金融機関のファンディングに使われているだけで、それは要するに量的緩和の一環で続いているのに「期間4年」とかふざけた期間で出した結果、量的緩和を本来縮小しないといけない段階になっても全然残高が減らない(政策修正に入ってからやっと「1年変動」に切り替えましこれから減るけど)ということになっておりまして、しかもこれ長期共担と同じで、一旦突っ込んだものは満期まで落ちない(超引き締めが必要になった時に本当の本当に必要なら買った国債は売却できるが資金供給は途中で回収できない)というのも問題で、どうせ物価2%達成せんじゃろと高を括って調子に乗って行ったこの手のオペについては、まあどうせ今検証するとお手盛りのインチキカウンターファクチュアル検証で貸出増加に効果があったことにされますので、当時のエライ人達が引退してから再検証した方が良いと思うの(多角的レビューもそうですが)。

という悪態は兎も角として、まあこれと2年(は満期来たけど)5年共担はマジでクソとしか言いようが無いというか、「どうせ2%達成しないだろ」と高を括ってないとこういうオペは考えつかないので(ガチで物価安定目標を達成した時に明らかに邪魔になるくらいは余程のアホウじゃなければ分かる)、まあそういうことなんでしょ、というお話ではあります。

とっとと無くなって頂きたいのだが前に突っ込んだ4年オペがまだまだありますからこれも正常化に時間がかかる訳で、長期国債買入をアホみたいに継続している場合じゃ無いと思うのですが・・・・・・・・


〇とまあそういう訳で決定会合ですが

でまあどこかで何か報道しているかと思いましたが案の定報道は無く、しばらく前にロイターさんとブルームバーグさんが出していた「2026年4月以降は減額幅を四半期4000億円→2000億円」って話と、金曜にブルームバーグさんが出していた「物価が想定よりも上振れて推移している」という話くらい、ということになりましたので、まあ今回はその2点ですわなというお話ですね。

・しかし2026年4月以降の買入について何でピンポイントで出す必要あるんだよ

この点に関してはハトハトチキン総裁が時々お見せする、「なんでそう変な方向にばかり思い切りがいいのよ!!」(画像割愛)の一環で何故か全く意味が分からないのですが、2026年4月以降の買入計画も出す、とか言い出したのが原因なのですが、そもそも今回って去年の7月に出した2026年3月末までの長期国債買入縮小計画の中間評価、という位置づけであって、何で中間評価するかと言えば長期国債買入の縮小というのを始めてやるし、元々が飛んでも無い勢いで買っていたのを減らすという作業の一発目だから、途中で中間評価をしましょう、って建付けだった訳ですよ。

つまりですね、なんも来年4月以降の話を今決める義理はどこにも無いわけなのに、普段ハトハトチキンで運営しているくせに、時々なんか変なもんでも食ったのか、はたまた植田和男先生本来の自我が目覚めるのか、その背景は全くわからんのですけれども、突発的に「変な方向に思い切りがいいムーブ」をぶっこんで来たから2026年4月以降とかいうのが話題になる、という日銀がわざわざドツボにハマりにいっている訳ですな。

・・・・などと書いておりましたらこんなのが今しがたw
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250617/k10014836931000.html
日銀 国債買い入れ減額の対応議論 政策金利は据え置きで検討か
2025年6月17日 5時39分

『日銀は17日に2日目となる金融政策決定会合を開き、債券市場から買い入れる国債を徐々に減らしている今の措置について、今後の対応を議論します。』(上記URL先より、以下同様)

ということで公共放送さんが話題にしてくれたようですが・・・・・・・

『日銀内には、長期金利が急上昇するなど市場が不安定にならないようこの先は減らすペースを緩めるべきだといった意見が出ていて、どのように調整するかが焦点となります。』

というのを見て、いやだから長期国債買入に関してはバランスシートのデザインをどうするかが問題なのであって、「市場が不安定にならないように買入の削減を抑える」とか言ってるのがもう本末転倒なんですが、日銀内でそういう意見が出ている、っていう時点でお前ら財政ファイナンスやっているって自白しているようなもんで、通貨の信認に関わる話をしている、って認識は無いのかと小一時間問い詰めたいのですが、まあこの「長期金利が急上昇しないように」って辺りがもうハトハトチキンのチキンっぷりを遺憾なく発揮しておられますなあと思いますし、

『日銀は金融政策の転換に伴って、去年8月以降は債券市場から買い入れる国債を徐々に減らし、来年3月までは原則3か月ごとに4000億円程度減額する計画です。ただ債券市場では、財政悪化の懸念などを背景に期間の長い国債が売られ、長期金利が記録的な水準まで上昇する場面がありました。』

あの水準で記録的な水準って報道しているのも何ちゅうか頭が痛いですけど。

『こうした状況に、日銀内では国債の買い入れは減らし続ける必要があるものの、債券市場が不安定になる中、影響を最小限に抑えるため来年4月以降は減らすペースを緩めるべきだといった意見が出ていて、どのように調整するかが焦点となります。』

だから日銀の大規模介入が続いている(ストック効果分も含めて)から市場が安定せんのじゃという話ですし、そもそも論としてバランスシートの全体のデザインから以下同文という話ではありますな。


・・・・・・ということでですね、まあ買入に関しては「2026年4月以降の数字をわざわざ出すのか」(出す必要なくて「減らす方向ですが具体的にどうするかは今後の状況を確認したうえで今年12月か来年1月の決定会合で改めて決定します」で一切問題ない筈ですけどねえ)というのと、国債買入の位置づけについてどのような説明があるのか、というのを注目したいんですが、問題はそうじゃなくて数字の話ばっかり質疑応答で出てくるだけになりそうな会見が予想されること。

いやマジな話、YCC止めた後の長期国債買入っていうのに何の政策的な意味があるのか、というのはずっと誤魔化し続けてなんらの定義もしないまま馬鹿みたいな額の買入を依然として続け、今後物価安定目標が達成された後に金融政策運営のとんでもない足かせになりそうな巨額なバランスシートを何でのこさにゃ行かんのよという話なので、じゃあそこまでの顕在化すると面倒なことになりそうなコストを何でかけるのか、という話な訳ですよ。

「バランスシートを金利は上げられます」と内田さんは金融学会の講演で説明していますが、当然ながら利上げしたらバランスシート見合いの日銀当座預金から付利金利の支払いという広義の意味での財政垂れ流しが発生する訳で、それが多少の額なら問題にならないでしょうけれども、今の日銀の規模で問題にならない訳がないので、物価安定目標達成後の円滑な金融政策運営に対して今のバランスシートはどっからどう見ても大問題な状態で、お前ら本当に物価安定目標達成する気あるのか、とまで言いたくなってしまう(ちなみに実はもう上抜けしかかっているんジャマイカという話はここでは措く)んですよね。

つまり、物価安定目標を本当に達成すると思っているなら、買入なんぞとっととゼロにしてバランスシートの縮小を急がないと、物価安定目標達成後に今度は金融引き締めが必要になった時に厳しいことになってしまう、とまあそんなお話なんですが、その辺り今の長期国債買入を何でまだ継続しているのか、という話をひたすらスルーしている(会見で誰も聞かないのも悪いんだが・・・・)のをちゃんと説明して頂きたいもんだ、とさすがにそろそろ思うのでありました。

なお、物価目標達成しないでゼロインフレのままなら巨額なバランスシートの問題点は顕在化しないもんだから調子にのって野放図に拡大した、というだいたい前任のケツ拭きなのでそこは同情に値すると言いたいけど、黒田緩和は問題なし、とかいう飛んでも無い多角的レビューを出した時点で以下の問題は全部ハトハトチキンが黒田緩和の後始末をちゃんとやらなかったから悪い、になるんだよなあとおもいました、まる。


・・・でもう一方の注目点は、昨日ネタにしました金曜のBBG報道の「日銀はインフレが想定よりやや強めと認識」という件でして、今回のMPMは展望回ではないので、声明文の方に経済物価情勢の中間評価みたいなのが入ってくる訳でして、さてそこで何か言い出すか、というのが第一の注目点。

もしここで物価に関して「物価がやや強めに推移」とか言い出したらお前は何を言ってるんだ(画像割愛)というのはさて置きましても、4月展望でのフォワードルッキングハトハトチキンを上書き訂正するものになりますので、4月展望を上書きするとなりますと、それは1月3月の説明となるわけですので、これは大きな意味を持つ話になりますので国債買入の話と共に今回は声明文での物価の記述は楽しみに待ちたいと思います。

とは言いましても、日銀とて4月の展望レポート、と言いましても出したの5/1な訳で、しかも5/1には既に上振れしていた4月東京都区部CPIというのが出ていた、という状態だったのに、そこは丸無視して「物価見通しを下振れさせた挙句にリスクも下振れ」というのを出した、という背景があるので、6月会合の声明文、という一番エライ文章の所でそんなの出した日には政策委員か企画か調統か知らんけど丸坊主になって詫びろって話(個人の感想です)なので、声明文では何もその辺は書かない、と予想しております(フラグではありません)。

ただ、7月の展望レポートの時点で4月の(経済は兎も角として物価に関する)ハトハトジャガーチェンジを修正しよう、と思うのでしたら、さすがに今回会見で何かその辺聞かれたら「最近も価格転嫁の動きが続いており、想定以上に堅調に推移している」ってコメントをすることによって、4月の物価ハトハトムーブにオブラートを掛け、でまあ7月展望で物価に関してはやっぱり1月展望から概ねオントラックで推移していますねよかったよかった(ただし物価目標達成時期の表現を前倒しにすると面倒なことになるのでそこはいじらない)、という風にしておいて、9月会合以降に理由(主に貿易問題)さえつけば利上げできるようにする、という形に立て直してくる、というのはまあだいたい予想は付くところではあります(しつこいがフラグではありません)。

え、お前この前政策修正するなら大企業製造業の冬季賞与と来年度の賃金改定に向けた動きが見えてくる12月か1月じゃないか、って言ってなかったか??とツッコミをされそうでございますけれども、まあ物価に関してあのハトハトチキンムーブがあっさり上書きされてしまいますと、5月会合以降の説明も全部上書きされてしまう、という一貫性もへったくれもない、というのが今の日銀なのでそこがどうしようもない訳ですな、ナムナム。






2025/06/16

〇BBGのいつもの関係者ソース記事ですけれどもマジネタだったらこれはwwww

金曜の午後イチでこんなのが出ていましてね
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-06-13/SXPYSPDWX2PS00
日銀はインフレが想定よりやや強めと認識、価格転嫁の継続で−関係者
伊藤純夫、藤岡徹
2025年6月13日 12:45 JST

→来週の会合では政策金利の維持が決まる見通し、関税見極め−関係者
→関税の影響緩和が明確になれば、利上げ適切か検討の可能性−関係者

またいつもの「関係者はこう語った」ネタですけれども・・・・・・・

『日本銀行は、インフレ動向は予想よりやや強めに推移しているとみている。世界的な貿易摩擦が緩和した場合、利上げの議論のきっかけとなる可能性がある。事情に詳しい複数の関係者への取材で分かった。』(上記URL先より、以下同様)

ということでもうこの記事は冒頭から(というかヘッドラインの段階で)抱腹絶倒モンでして、まさに「お前は何を言ってるんだ」状態で椅子から転げ落ちそうになりました。

・・・・・だってさ、4月展望(4月展望と言っても5月頭ですけれども)の段階で、トランプ関税の影響についてアベイラブルかつ信頼感のあるデータが全然出きていなかったのに、何をトチ狂ったのか普段物価に対してビハインド・ザ・カーブにも程がある日銀の政策委員会の皆様が、突如物価見通しを下振れ、リスクも下振れ、とフォワードルッキングにジャガーチェンジしたばっかりでして、あの時点だって(ワシはそう予想して外しましたけど)「とりあえずトランプ関税の影響は超不確実ですが、まあ普通に考えたら経済下振れ要素なんで政策はいったん様子見しますわ、見通しに関してはとりあえず6月7月に状況の変化を受けて改定するわ」でもよかったわけで、「わからんから一旦ベースラインシナリオ維持だけど先行き不透明要素強すぎ」にしても良かった筈なのに、堂々の見通し引き下げに、ハトハトチキンな総裁の説明、と来ていた訳でして、どの面下げて6月にいきなり修正するんだよアホなのかお前らという話で、下方修正下振れとか言ってた連中のうち上記BBG報道みたいなこと言ってる輩がいたら政策委員としての適格性に疑問を呈さざるを得ませんわwwwwwwというお話ではありますわな。

まあしかし何ですな、

『関係者によると、日銀が16、17日に開く金融政策決定会合では、米関税政策を巡る日本をはじめとした各国間の交渉の進展やその内外経済への影響を見極めるため、政策金利を0.5%程度に維持することが決まる見通しだ。』

まあそりゃそうじゃろという話なのでこれはさておきまして、

『一方で、足元までの消費者物価(生鮮食品を除くコアCPI)は、人件費や原材料価格の上昇を価格転嫁する動きが続き、食料品価格を中心にやや強めの動きとみている。急騰している米価格が消費者のインフレ期待を押し上げる可能性を指摘する声もある。』

いやあのさあ、わずか1か月半前にそれまでの物価上振れのリスクあり、というのを思いっきり下げたばっかりだし、食料品価格を中心にCPI強いじゃろ、ってのは当時も指摘されていた話だし、今さら何を言ってるんだよというお話に最早呆れて物も言えませんですな(言ってるけど)。


でまあこいつらの見通しって何なんだよというお話ですけれども、

『米関税によって基調的な物価に大きな下押し圧力がかからないことが明確になれば、毎回の会合で経済・物価見通しの実現確度を精査し、利上げが適切かどうかを検討する可能性があるという。こうした関係者の発言は、世界貿易の情勢がより明確化すれば、日銀が年内に利上げを行う選択肢があることを示唆している。』

というまとめになっていますけど、これは「年内」じゃなくて極端に言ったら7月に手のひら返し(の結果結局半年に1回のペースになるんだが)をする可能性も示唆している、というお話で、まあさすがに7月はジャガーチェンジがあまりにも酷いので相当無理があると思いますけど、ゆうて今回の会合によるメッセージの出し方が強かったらジャガーチェンジが全くないわけではない、ということになりますわな。

ですので、7月はさすがにアレですけれども、普通に9月10月というのは、今回「関税の影響はまだ不透明だがそこまで深刻な物にはならなさそう」→7月「基調的物価が思った以上に堅調に推移している上に関税の影響は以下同文」というぶっこみ方をすればまあ普通に9月あるいは10月で政策修正できまっせ、ということなので年内と言っても12月とかそういう話ではないということになりますな。

・・・・・・いやまあそれはそれで政策修正とっととやれ派のワシとしては結構な展開ではあるのですが、お前ら賃金の好循環(最近「好循環」は言わなくなっています為念)の見極めとトランプ関税の影響による企業行動の変化を確認するために来年に向けた賃金設定の動きを見るとか言ってたのは何だったのか、というお話になるわけでして、政策修正するにしても修正を見送るにしても、その理由付けの説明が「その場限り」なのは勘弁してくれよという感じです。

とは言いましても、先週しつこく特集した内田副総裁の講演、ツッコミどころだらけでしたけれども、特に衝撃(あるいは笑劇)のツッコミどころって、YCC導入時の「オーバーシュート型コミットメント」について、黒田総裁に散々「強力なコミットメント」って言わせておいて、今頃になって堂々と「あのコミットメントはそんなに強力なものではない」って言い放っている部分でしたが、そりゃまあ政策の根幹っぽく説明していた手段でさえ「あの説明はペテンでした」って堂々と言ってしまうのが今の日銀の仕様だとすれば、経済物価見通しが政策アクションからの後付けになって、都合が悪くなると物価に関するアセスメントを1か月半でひっくり返す、という位は平気の平左でしょうなあ、と思いまして、ちょうど講演が出た後にこの「関係者談」記事が出てくるあたりに味わいを感じる先週金曜でありました。





2025/06/13

〇内田副総裁講演は決済システムに関する話がオモロイので現世利益関係ないけど

まあさすがにこのシリーズ最終回にしようかと思いますが。
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/ko250607a.htm
【講演】
業務からみた日本銀行
日本金融学会2025年度春季大会における講演
日本銀行副総裁 内田 眞一
2025年6月7日

まあ決定会合前の雑談という事でお暇な方は以下お付き合いいただければってな感じです(滝汗)。

・ということで決済システムに関してです

今回の講演、『6.デジタル社会の中での決済システムと中央銀行業務』という見出しのコーナーと、『8.中央銀行業務と決済システムの未来像』という見出しのコーナーが結構面白いんですよね。何故か知らんが章立てがワープしているの何なのって感じですがw

『6.デジタル社会の中での決済システムと中央銀行業務』って小見出しから参ります。

・DX化による決済の変化について

『決済のデジタル化』ってのが最初の小見出しです。

『図表9をご覧ください。ここからは後半パートに入り、日本銀行の業務と政策が、デジタル化などの環境変化によって、どう変わるのか、あるいは変わらないのか、考えてみたいと思います。』

てなことではじまりはじまり。

『わが国は、キャッシュレス比率が低いと言われます。この点は、各国で定義も異なり、厳密な比較は難しいのですが、わが国の場合、銀行口座での引き落としのほか、振込の割合が大きいのが特徴です。これは1973年から稼働している全銀システムによって、これらが極めて便利にできていることが背景です。』

第3次オンライン(だいたい昭和の終わりから平成の話だが)への完全移行から先さらに便利になった感はある。

『また、冒頭でご説明したように、わが国の銀行券残高は、低金利になる前で比較しても、他国よりも多くなっています。これには、現金を持ち歩いても安全であることや、そのもとでコンビニエンスストアを含めてATM網が発達しているという背景があります。もともと人々がどのような決済手段を使うかはその人の自由です。』

んだんだ。

『もっとも、日々の買い物を含めて、経済のデジタル化が進展する中で、人々にとって便利で安全な決済手段を選択できるように、それにふさわしい決済手段が提供されることは重要です。そして、決済システムが全体として、デジタル社会の中で高い安定性と効率性を発揮するために、中央銀行がどのような形態の「支払完了性のある決済手段」(中央銀行負債)を提供すべきか、設計していく必要があります。』

ここで中銀デジタル通貨の話が出てきまして、小見出し『中央銀行デジタル通貨』に進みます。

『この点に関連して、中央銀行自身がデジタル通貨(「中央銀行デジタル通貨」<CBDC>)を発行するというプロジェクトが、各国で進められています。欧州では、欧州中央銀行(ECB)が、2023年に「デジタルユーロ」に関する調査フェーズを完了し、準備フェーズに移行しています。また、イングランド銀行は、「デジタルポンド」について、設計フェーズの進捗レポートを公表しています。中国では、国内26都市や香港で「デジタル人民元」のパイロット実験を実施中です。』

『一方、米国では、2022年から23年にかけてCBDCに関する市中協議を行いましたが、銀行協会などから強く懸念する声が寄せられました。また、トランプ大統領は、今年1月、CBDCの発行等に関する政府機関の取り組みを停止・禁止する大統領令に署名し、FRBのパウエル議長も2月の議会証言で、自身の在任中のCBDCの発行を否定しています。』

CBDCについては一時エライい勢いでブームなのかって状態でしたが最近は落ち着いていますよね、寧ろこの「何で落ち着きましたのよ」という背景を知りたいですなアタクシ的には。

『わが国では、2020年に日本銀行が「中央銀行デジタル通貨に関する取り組み方針」を公表し、技術的な検証を進めています。2023年からは、パイロット実験に移行し、「実験用システムの構築と検証」を実施するとともに、民間事業者の技術的な知見を活用するため「CBDCフォーラム」を設置し、幅広い関係者に参加いただいて、様々なテーマで議論しています。政府においても「CBDCに関する関係府省庁・日本銀行連絡会議」が設置され、制度設計の大枠の整理に向けて検討が進められています。』

とは言え数年前とはだいぶ勢いが違う感が否めません。

『CBDCは、デジタル社会のもとでのわが国の決済システムの将来像を決める重要なインフラになりうるものですから、これを発行するかどうかは、こうした内外の情勢を踏まえたうえで、国民的議論の中で決める必要があります。ご説明した通り、各国の対応も分かれています。ただ、CBDCを発行するにせよ、しないにせよ、デジタル社会の中で、現金のような「支払完了性のある決済手段」を誰がどのように提供するのが、決済システム全体の安全性と効率性につながるのか、考えていくことは必須です。』

「現金のような「支払完了性のある決済手段」を誰がどのように提供するのが、決済システム全体の安全性と効率性につながるのか、考えていくことは必須です」という所にまあ論点が有るわけですが、

『具体的な仕組みとしては、まず、必ず必要になる個人との接点(インターフェイス)の部分は、いずれにしても、基本的に民間の事業者が担うべきだと思います。個人の多様なニーズに応えることは公的機関である中央銀行には難しいからです。その中で、利用者にとって便利なインターフェイスや、それを生かしたイノベーションが生まれるのだと思います。』

ってさらっと流していますが、この点って言うのは利便性とかイノベーションの話ってのは実はオマケの話でして、問題は「通貨発行の二重構造」に関わる部分になるわけですけれども、CBDCが預金通貨を駆逐してしまう事になった場合、信用創造とかそういうのが無くなるわけで(預金銀行が今のノンバンクと同じ構造になる)、これは通貨発行構造のデザインの問題になるのですが、議論がおっぱじまった当初は兎も角、最近は「通貨発行の二重構造」は維持し、CBDCはその構造を阻害しない程度のものとする、ってのが一般的な理解になっているかと思われるのですが(例えば昨年の植田総裁のこの講演→https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2024/data/ko240305a.pdf 「中央銀行デジタル通貨について知っておきたいこと── FIN/SUM(フィンサム)2024における挨拶 ──」の最初の方をご参照いただければと)、ただまあそうだとしたらわざわざCBDC作らんでも民間の預金通貨でエエンチャウノという気はだいぶします。

一時のブーム的な動きが下火になったのはこの通貨発行の二重構造への影響を考えた場合にどうなのか(しかもものが通貨なだけに「やってみたら金融システムが大混乱のでやっぱ止めますテヘペロ」とかいうのは基本的に許されるものではないでしょうからね〜)という辺りにあるんじゃないかとワシは思うざます。

まあそれは兎も角としてCBDCの続き。

『そのうえで、考えられるバリエーションには、結構大きな幅があります。決済手段というものは、そのほとんどすべてが、最終的には中央銀行につながっています(「すべて」と言い切らない理由は、最終章で述べます)。問題は、人々が「現金と同じような機能を持つ」と認識する決済手段は、どの程度直接的な「支払完了性」を有する必要があるのか、その「支払完了性」をどう担保するのか、ということです。』

今の時点では一般人(ワシもワシも)は預金通貨による決済をもって「支払完了」としております(現金は現金でありますよ為念)訳ですな。

『この点、CBDCは、中央銀行の負債ですので、現金と同等の「支払完了性」があります。』

はい。

『CBDCを発行しない場合には、民間が提供するその決済手段と中央銀行負債をどう結びつけるのか、また、現金のようにいつでも受け渡し可能であるようにオペレーションの頑健性や広範な利用可能性をどう確保するかなど、技術的な側面を含めて検討する必要があります。』

って話ですが、まあ今の時点でこの預金通貨による通貨発行の二重構造が効率よく大規模に回っていますので、発行しない場合は別に検討もへったくれれも無いので、これは発行する場合の話だとは思いますが、この側面から今テストやっている、というお話です。


・国際的な決済システムの進化に向けたお話

次が『国際的な視点』の話。

『決済の未来像を考えるうえでは、国際的な視点が欠かせません。実を言えば、現在の国際的な決済システムには多くの不満が寄せられており、これをいかに便利で安全なものにしていくかは、未来の問題というより、現在の喫緊の課題です。』

海外送金の際にコルレス銀行がどうのこうのでデポ先がどうのこうのでとか懐かしい話だ(20世紀脳)。

『例えば、各国では、外国からの労働者が母国に送金する際の手数料の高さや時間の遅さが問題になっており、2020年以降、G20のアジェンダには「クロスボーダー送金の改善」が掲げられてきました。』

まあわかる。

『この点は、既存のコルレス銀行を中心とするシステムの運用を改善していく方向性として、決済システムの稼働時間の拡大、国際送金電文フォーマットの標準化などの方策が検討・実施されているほか、新たな可能性として、例えば各国のリテールの即時送金システム(ファスト・ペイメント・システム。日本では全銀システムやことらがこれに当たります)の相互接続といったことも模索されています。』

まあわかるんだがここは効率性と安全性のトレードオフの面があって、リテールの即時送金システムの接続とかうっかりやってしまうと、どこかの国で発生したシステム上の問題が世界中に波及して一国だけの問題に留まらない、みたいなことが起き得る訳でして、そこは大型船には防水区画を区切って浸水即沈没にならないようにするのと同様に、効率性を捨ててもウォール作って安全性を高めておかないといかんのじゃなかろうかとは思います。

『また、金融機関間の資金決済や貿易にかかる決済など、より大口の資金決済の分野では、先進国のグループや新興国を中心としたプロジェクトなど様々な試みが進行し、成果を競い合っています。そのひとつ、BISが主催し、多くの民間金融機関と、日本銀行を含むいくつかの中央銀行が参加している「プロジェクト・アゴラ」では、分散台帳技術(DLT)を使った共通プラットフォーム上に、商業銀行預金と中央銀行預金の両方を載せて、それらを組み合わせて、安全かつ効率的なクロスボーダーの決済を行う、という新しいタイプの決済インフラが構想され、実験プロジェクトがはじまっています。』

この分散台帳技術は何度聞いても今一歩腑に落ちない面があるので一度じっくり理解をしたいです。

『こうした国際的な決済システムを巡る取組みが競うように進展していることは、経済安全保障の観点と切り離せません。』

と、さらに話が大きくなりまして、

『ロシアのウクライナ侵攻を受けて、各国で経済制裁が発動され、その実効性を担保するため、Swiftなど国際的な決済ネットワークからロシアの銀行を排除する動きになったのは記憶に新しいところです。またやや異なる観点ですが、サイバー空間には国境はありませんので、サイバー攻撃が大規模化、組織化されるもとで、一国の決済システムの安全をどう守っていくのか、その際の中央銀行を含めた公的部門の役割は何か、考える必要は年々大きくなっています。』

そうですね。

『例えば「デジタル通貨」が発行された場合、中央銀行が発行するにせよ、民間が提供するにせよ、サイバー攻撃の対象になりやすいと考えられます。』

そらそうよ。

『これに対抗するためには、相応のコストと技術を集める必要があります。』

発行しなければ良いんじゃないでしょうか(←頭が固くて使い物にならない老害ジジイの典型発言)

『米国は基本的に民間のイニシアティブで進めていく方向に見えますし、欧州は、官民でCBDCエコシステムを構築する計画です。ECBが、CBDC発行の理由として、「ユーロエリアの戦略的自律性(strategic autonomy)と通貨主権(monetary sovereignty)を高めること」「ユーロ決済における非欧州系の民間決済事業者(private, non-European payment providers)への依存度を下げること」とはっきり述べていることは、この問題が国内的な事情を超えて、経済安全保障的、国際競争的な側面をもっていることを示唆しているように思います。』

まあユーロ圏は「共通通貨で財政が別だし何なら法制度だって別」という事情があるので・・・・・


・決済デザインに関する将来の話のコーナーもこれはこれで面白いですよ

ということでさっきの見出し6の部分が終わるのですが、次が『8.中央銀行業務と決済システムの未来像』です。

・銀行券に関して

『銀行券の未来』って小見出しの所ですが。

『最後に、中央銀行業務と決済システムの未来像について、思考実験を行ってみたいと思います。デジタル化が大きく進む中で、銀行券はどうなるでしょうか。』

アタクシはたぶんこの業界の人では珍獣の方に入ると思う現金決済おじさんなのですけどwww

『この点まず申し上げたいことは、日本銀行は、現金に対する需要がある限り、現金の供給について責任をもって続けていくとコミットしている、ということです。中央銀行が現金供給に責任を持つ中で、銀行の支店網やコンビニエンスストアを含めたATM網など、現金が流通する経路が維持され、人々にとって現金を使うことが便利であり続けることは重要で、それによって、今後の現金の使われ方は変わってきます。』

ふむふむ。

『スウェーデンでは、現金流通残高の対GDP比率が0.9%まで低下しています6。これはデビットカードや個人間送金システムが便利だということが主因ですが、銀行の店舗網などの関係で、現金の利用が不便になったことも一因と言われています。』

ほほう。

『このため、2021年には、金融機関は、現金の引き出しや受け入れ拠点を整備しなければならない、という趣旨の法律が制定されました。』

ほえー。

『こうした問題意識は、他の欧州諸国でもみられ、例えば英国では2023年の法令に基づき、財務省がATM等の配置に関する距離基準を設定しています。スイスでは、中央銀行と財務省が、金融機関・警備輸送会社・小売業界・消費者団体等を招いたラウンドテーブルを共催し、現金を巡る課題と共に「現金は将来にわたって必要である」という認識を共有しました。』

へーへーへー。

『さらに、欧州諸国はそうではありませんが、偽造などによって、銀行券を使うことの便利さや安全性が低いことが、キャッシュレス化が進む要因になっている国もあります。』

こういうケースだとかつては米ドルが通用する、みたいな世界ですねw

『一方、当然のことながら、現金の供給体制の維持にはコストがかかります。現金供給には、日本銀行だけでなく、金融機関、コンビニエンスストアなどのリテール事業者、現金を運ぶ警備輸送会社など、多くの関係者がかかわっています。この体制を維持していくためには、これらの関係者にとって、銀行券の供給が、それぞれの顧客のニーズに応えて、サービスを維持していくメリットがあるものであり続ける必要があります。』

と来てからの「決済の経路依存症」の話です。

『この「顧客ニーズ」と言う点では、私は、決済には経路依存性があり、現金は対面での決済としてとても便利なので、現金に対する需要は簡単にはなくならないと思っています。』

まさに経路依存症のジャンキージジイがここにおります(汗)。

『日本銀行としては、そうしたニーズがある限り、いかに安全かつ効率的に現金供給の体制を維持していくか、責任をもって考えていきたいと思います。「デジタル化」や「キャッシュレス化」は、社会・経済の効率性を高める効果を持ちうるものだと思いますが、そのプロセスは利用者の自由な選択の中で進むのが望ましいと思っています。』

ということでして、一時期クッソ大流行したようなCBDCに全部置き換わる位の勢いの話ではなくなっておりますな、というのは伝わります。


・「CBDCが発行されるとマイナス金利が簡単にできる」という無邪気な見解を砲撃しているのはワロタ

でまあその次の小見出しとその次のも面白くて、まずは『架空の世界1:現金のない世界』って話。

『銀行券が存在するのであれば(仮に決済に占める比率が低下したとしても)、これまでお話ししたような中央銀行の業務のやり方や政策のメカニズムは、変わりません。「支払完了性」のある決済手段の唯一の提供者として、資金供給などの業務によって、金利操作を行い、日々の決済を完結し、最後の貸し手として機能します。』

ですな。

『このメカニズムが変わる可能性があるのは、以下のような2つの構造変化が起こった場合です。いずれも架空のシナリオです。こうしたことが起こると予想しているわけではありませんが、架空の世界を想像してみることは、現在をより良く理解するうえで有益です。』

ということで、

『ひとつめは、現金が全く存在しなくなる場合です。』

からの、

『よく「CBDCが発行されれば、マイナス金利を付すことができるので、金融政策運営は大きく変わる」と言われますが、正確には少し違います。』

某東京大学の某経済学部長だった大先生もこんなことを言ってましたなあそういえばw

『まず、CBDCが発行されても、現金が残る限り、名目金利のゼロ制約は残ります。マイナス金利を付されない逃げ場がある限り、CBDCにマイナス金利を付すことには限界があります。』

そらそうだ。

『また、逆に現金がなくなるのであれば、CBDCを発行しているかどうかはあまり関係ありません。』

それもそうですよね、つまり・・・・・

『民間が提供するデジタル通貨であっても、何らかの形で金融資産の裏付けがある以上、中央銀行は金融資産の価格(金利)に影響を与えることで、金利のゼロ制約を破ることができます。例えば、民間提供のデジタル通貨が中央銀行の当座預金と完全に紐づいている単純なケースでは、当座預金の付利水準の変化によって、民間デジタル通貨にマイナス金利を付すことができます。そうした意味で、「マイナス金利を可能にするためにCBDCを発行する」という発想は、中央銀行にはありません。』

一時この「CBDCを発行すると金融政策運営は大きく変わる」というトンデモが流行して、いやそんなこと言い出したら逆に誰もCBDCを支持しなくなるじゃろ、とCBDC要らないんじゃネーノ派のワイも思ったことがあります。


・そしてどさくさに紛れてしらっと地雷を埋め込んでいるのが面白いのですが

でもってこの続きがどさくさに紛れて面白すぎるネタを突っ込んでいましてですね・・・・・・・

『この「現金がない世界」では、金利のゼロ制約がないため、マイナス金利の付利に限界がなく、したがって、政策金利の引き下げ余地の「のりしろ」を確保する必要はなくなります。』

しらっと言ってるけど、だったら今の「現金のある世界」では「政策金利の引き下げ余地の糊代を確保する必要がある」ってことになりまして、なんということでしょう決済システムの話をしているどさくさに紛れて政策金利の糊代が必要という話をぶっこでいるじゃあーりませんかw

『物価目標は、バイアスのない物価指標であれば、ゼロ%になるはずです。』

まあ確かに物価目標2%の理由として日銀が言ってるのは「名目ゼロ制約があるから糊代が必要」「ボスキンバイアスなどの統計上のバイアスの問題」「となりのパウちゃんもクリステーヌちゃんもやってるから」なので論理的にこうなりますがパッと見るとちょっと刺激的ですねw

『金融政策の運営は大きく変わります。それでも、中央銀行として「物価の安定」などの使命を果たすことができる、という点は不変です。』

まあ今果たしているかいやなんでもないです。


・最後に中央銀行としての適切な政策運営が大事と豪語しておるwww

最後が『架空の世界2:「円」のない世界』という小見出しで、掴みから、

『もうひとつの可能性は、中央銀行としては起こってほしくないシナリオです。』

ということで、

『「円」で表示されない決済手段が決済の主役になることです。』

つまり、

『取引の決済は双方が合意するのであれば、どんな手段でも可能です。それは「円」で表示される資産に限らず、金でも、コメでも、引越しのお手伝いでも、肩たたき券でも、双方がそれで債権債務関係を消滅させることに納得していればかまいません。デジタル社会においては、暗号資産がその対象となりえます。もともと一部の暗号資産の動機には、主権国家に頼らないリバタリアン的な発想があります。』

はい。

『現在、「円」で表示された銀行券や銀行預金の振込が利用されているのは、それがほとんどすべての人が納得する決済手段として認識されているからです。その前提の下で、日本銀行券には法律的にも「強制通用力」が付与されています。ただし、これはあくまで、「円」で表示された債権債務関係を消滅させる弁済手段となる、というだけであって、取引関係に入ることを強制されるわけではありません。「私は金でしか、あるいは暗号資産でしか、売る気はない」と言うことは契約自由の原則により可能です。』

そうですね。

『こうした未来が訪れることは、少なくともわが国においてはないと思います。「円」に連動しない決済手段について、モノやサービスとの関係で価値を安定させる仕組みを作ることは、中央銀行の「物価の安定」と同じ機能を独自に持つということですから、簡単ではありません。中央銀行が価値を安定させてくれる「円」に乗っかった方がずっと合理的です。その意味で、中央銀行がその使命をきちんと果たしている限り、「円」以外の決済手段が決済の主役になることはないでしょう。「中央銀行がその使命をきちんと果たしている限り」。』

アタクシがツッコミをいれるまでもなく、

>中央銀行がその使命をきちんと果たしている限り

って内田さんが繰り返して言っておられますな。まさにその通りなんですが、ところで今って物価もインフレ期待も上振れているかもしれないのですが、堂々と大丈夫と言い続けて超絶大緩和政策しているのって本当に使命を果たしているんでしたっけ???????という疑問は無くは無い、というかある。


・最後のところでも言ってることは立派なのだがところで行動はどうでしたっけというのがありまして

『9.おわりに』ってところですが、

『本日は、日本銀行の政策について業務面に焦点を当てて、ご説明しました。もう一度図表8をご覧ください。中央銀行の政策の源泉は、「支払完了性のある決済手段」(負債)の提供とその裏側で資産として何を持つかにあります。日本銀行はそれを通じて、金利操作を行い、「最後の貸し手」として機能します。非伝統的政策は、こうした業務やバランスシートをどのように、どこまで使えるのかを追求したものとも言えます。』

>非伝統的政策は、こうした業務やバランスシートをどのように、どこまで使えるのかを追求したものとも言えます

といったその後に、

『「政策」を考えるときに「業務」に関する理解は不可欠です。それは、「業務としてできないことが制約になる」といった意味ではなく、むしろ中央銀行業務の持つ可能性を知ったうえで、政策のイノベーションにつなげる、というほうが、私には実感に合います。ただし、「支払完了性のある決済手段」を独占的に提供できることの重みをしっかりと胸に刻んだうえで、という自覚が必須です。万能薬は、使い方によってはモラルハザードを生むものです。』

ただし、「支払完了性のある決済手段」を独占的に提供できることの重みをしっかりと胸に刻んだうえで、という自覚が必須です。万能薬は、使い方によってはモラルハザードを生むものです。

って実に良い事を言ってるんだが、黒田緩和ってそんな重みを胸に刻んでましたって、なんか野放図に万能薬打ちまくった(まあ万”能”だったのかは謎ですけど)んジャマイカと思いますが・・・・・・・・・

『そして、何より、「支払完了性のある決済手段」を与えられた目的は、「人々が安心してお金を使えるようにする」ためであるということを、忘れてはならないと思っています。後者の「使命」を果たせない場合、前者の「手段」は機能しなくなります。歴史は、物価の安定が損なわれて、あるいは、金融システムが崩壊して、自国通貨が流通しなくなる国をたくさん生んできました。』

めちゃめちゃ立派なことを言っているんだが本邦の物価って・・・・・・

『さらに将来に向けては、デジタル化が大きく進展した社会で、主権国家の中央銀行が発行する通貨が一般受容性のある決済手段として機能し続ける保証はありません。支払決済手段を選ぶのは人々の自由である、このことを胸に置いて、中央銀行の業務を運営していかなければなりません。もちろん多くの関係者の皆様とともに。

こうした様々な自戒の念を込めて今日の原稿を用意しました。ご清聴ありがとうございました。』

ということで立派なお話で締めていまして、論点も面白いのですが、残念なのは今の政策運営がこの立派な話と言行一致してましたっけというツッコミをしたくなってくることですなwwwwwwwwwwwwww

#さあ来週は決定会合ですね!





2025/06/12

〇預金の粘着性に関しては金利がつくようになると日本でも参考になることもあるかもですね

日銀レビューで興味深いネタが取り扱われていましてですね
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2025/rev25j04.htm
高粒度データを用いた大手行の外貨預金の特性や粘着性の考察
2025年6月11日
金融機構局 船田直輝、坂田智哉、小川佳也

上記HTML先の「要旨」を拝読しますが、この「邦銀の外貨調達の安定性」に関する話は近年(なのでここもと数回にわたって)金融システムレポート(FSR)の方でも大きめのトピックとして扱われていた案件ですし、何なら一昨年の米国SVB破綻事例があったので特に昨年は結構取り上げられていましたので、この辺りの一連の調査研究の一旦のまとめを皆様に分かりやすくお出しします、ってなもんだと思います。

では拝読。

『要旨

大手行は、海外貸出を増加させる中、外貨流動性リスクをかねてより経営上のリスクの一つと位置付け、外貨調達基盤の安定性向上に努めてきた。』

ふむふむ。

『こうしたもと、本稿では、SVB破綻等を受けた国際的な議論も踏まえ、外貨調達の過半を占める外貨預金の高粒度データを用いて、外貨預金の獲得状況や粘着性について分析した。』

なるほどなるほど。でもってその結果ですけど、

『分析結果からは、高金利の大口預金抑制に伴う預金の小口分散化が進展している一方、低コストで調達可能な決済性預金残高は概ね横ばいであることが確認された。』

直感的にまあそうじゃろうなあという結果ですね。ただまあゆうて決済性預金ってのを維持するためには決済性の利便性というのを提供しないといけない訳でして、低コストで調達可能なのはまあその通りではあるけど、決済性預金機能を維持するのにはそれなりにコストがかかるようにも思えます。

『また、属性ごとに預金流出率は異なり、金融法人預金等の粘着性が低く、決済性預金獲得に伴う企業との関係強化が預金の粘着性向上に繋がり得る点も示唆された。』

直感的にまあそうですねという所ですが、

『今後も本分析結果等を活用しつつ、大手行の外貨流動性リスク管理の更なる高度化に資するよう、大手行や海外当局と議論を深めることが重要である。』

ってお話ではあるのですが、モチのロンでこの手の話は法域が違って預金や預金類似商品を巡る環境が違っていたら全然話が違う、というのはあるにしましても、背景にある基本的な部分ってのは共通することもありますし、その点日本の場合は30年くらい要求性払いの預金金利が実質ゼロみたいな状態でして、その前は規制金利の時代だった、というよくよく考えたら驚愕の事実があるので、この辺りの考察は今後の日本における預金やらなにやらの動向に対する何らかの示唆があるんじゃなかろうかと思いますがどうでしょうかね。

本文はこちら
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2025/data/rev25j04.pdf

本文の最初と最後だけちょっと見ておきますね。『はじめに 』から。

『本邦の一部大手行1(以下、大手行)は、国内において低金利環境が継続する中で、これまで海外貸出を積極的に増加させてきた。この点、大手行は、米国内に安定的なリテール預金基盤を有していないことから、企業から外貨預金の獲得を進めつつ、不足分を短期・中長期の円投や社債等の市場性調達で賄ってきた。』

ふむ。

『そのため、大手行にとって、外貨流動性リスクはかねてより経営上の重要なリスクの一つと位置付けられており、日本銀行としてもモニタリング上、優先すべき事項の一つとして捉えてきた。』

FSRをご覧いただければこの辺りの問題意識について分かるかと思います。

『この間、大手行は、資金調達コストの適正化に取り組む中で、調達手段の多様化や市場性調達の長期化など、外貨調達基盤の安定性向上にも努めてきた。もっとも、米国では新型コロナウイルス感染症拡大時における金融機関の貸出態度慎重化2や、2022 年 3 月以降の FRBの利上げを受けた高金利環境の継続等から、企業の銀行借入需要に盛り上がりがみられていないことや、大手行が採算性を一段と意識していることもあって、海外貸出の残高は概ね横ばいで推移している。』

なるほどなるほど。

『こうしたもとで、大手行の運用・調達ギャップ(海外での貸出金と、短期円投等と比べて相対的に安定している社債発行など長期調達や預金との差額)をみると、安定的な調達額が、運用を上回る状態が続いている(図表 1)。』

という意味での安定性についてはまあレジリアントに見える、というのがここ数回のFSRでの評価です。

『一方で、2023 年 3 月にみられた銀行部門の混乱(米地銀 Silicon Valley Bank(以下、SVB)の経営破綻や Credit Suisse の救済合併)は、これまでの外貨流動性リスク管理の前提となる預金が安定的な調達手段であるとの想定を改めて検証する契機となった。』

でもって、

『具体的には、一部の預金における流出速度は、SNS 等の影響もあり金融当局が想定していたスピードよりも速い可能性や、大口の非付保預金の取り付けが発生した際の影響度などを、適切に考慮する必要性などが認識された。』

『さらに、SVB の破綻直後には、SVB と同様のリスク・プロファイルを有する米地銀からの預金流出・株価下落が先鋭化し、First Republic Bank が同年 5 月初に JP Morgan に買収された3。』

ってな訳で、

『こうした新型コロナウイルス感染症拡大以降の一連の事象を踏まえ、国内・海外の金融当局は、金融機関の流動性リスク管理体制の更なる高度化の必要性について議論を進めている。』

『日本銀行では、従来から、金融庁と共同で G-SIBs に分類される大手行への「外貨流動性リスク管理に関する共同調査」等を通じて、大手行との継続的な対話を行っている4。加えて、効率的かつ効果的なモニタリングを実行するために、金融機関から報告されているデータの利活用も進めており、大手行の協力を得て、日本銀行・金融庁に報告されている、外貨預金の個別取引明細・高粒度データ(以下、「高粒度データ」)の拡充を図ってきた5。』

『大手行自身も、着実に外貨流動性リスク管理の高度化に取り組んでいるもとで、より一層の安定性向上に資するよう、本稿では、個別明細レベルの高粒度データを用いて、大手行の外貨調達の過半を占める外貨預金の獲得状況や外貨預金に係る粘着性等について分析を試みた。』

以下分析の話になってこれはこれでオモロイのですが、単純に合いの手入れているだけになるので笑その辺は引用かっ飛ばすのでまあ読んでちょというところです。


結論にかっ飛びますけど。

『おわりに

本稿では、外貨預金の個別明細レベルの高粒度データを用いることで、大手行の外貨預金の獲得状況や粘着性等を分析した。本分析からは、大手行が、外貨預金獲得に向け、収益性を意識しながら進めてきた各種取組みやその特性などを確認した。』

具体的には・・・・・

『具体的には、@貸出が足もと横ばいで推移する中で、高金利を提示して大口預金を獲得する必要性が低下しており、同預金の抑制に伴い預金の小口分散化が進展している一方、A低コストで調達可能な決済性預金比率は横ばいの動きが続いており、とりわけ、非日系企業においてその残高は限定的となっていることが確認された。』

『同時に、預金者属性によって、預金の流出率は異なり、大口預金や非日系企業・金融法人といった預金者属性の預金の粘着性は相対的に低く、決済性預金獲得などの企業とのリレーション強化が、預金の粘着性向上に繋がり得る点が示唆された。』

なお決済性預金獲得に関しては単なる営業勧奨で増えるものではなくて、決済性預金を顧客が活用できるインフラ整備が必要です、って話に関しては本文中にありますので読んで味噌。

『これらを踏まえると、自らの預金者ポートフォリオの預金者属性の構成(預金規模や業種、さらには付帯取引の有無)等も考慮して流出率を設定することが、預金獲得戦略や流動性リスク管理の向上に有益であると考えられる。』

これは大手行の外貨調達、という点にフォーカスして分析が行われていますが、そもそも金融のお仕事というか付加価値創造の源泉の一つとして「満期変換機能」ってのが有るわけで、別に銀行セクターに留まるものではなくて、このような分析を行うという考えは、まあその分析をどのように行っているかは千差万別だと思いますし、単純に経験則からおおむねこんな感じじゃろっていうことで意識している場合も多々ありそうですけれども、満期変換機能を提供する人たち、すなわち銀行だけではなくてNBFIも含めて意識するべき話。ではあるのですが、某アメリカンの場合は何とかショックの度にプライムMMFがあばばばば―ってなってFEDに泣きついてお助けオペが炸裂して、その事例を受けて再発防止のためにFSBやIOSCOがNBFIへの規制強化に乗り出す、というのを何度もやっている、というのが中々の頭痛の種ですなあ、って思いました。

『この点、大手行は、預金の流出率想定に預金者属性別のヒストリカルデータを用いて、その妥当性を検証しており、こうした精緻化への取り組みは、本分析結果と整合的である。』

これ円資金でも(パラメータは全然違うとしか思えませんけど)同じ考えを適用できそうに思えます。ただまあ円貨資金繰りはリクイディティーという面からみたファンディングに関しては日銀当座預金残高がアホみたいにあるので、短期金融市場を見てもビビットにわかりにくい(そのためソルベンシーの問題の予兆管理がしにくいんじゃないかとアタクシは懸念しています)ってのもありますけどね。

『また、本稿で用いた高粒度データには、ドル以外の地場通貨も含まれている。地政学的な要因等が意識される場合、ドル以外の地場通貨の流動性リスクのモニタリング高度化に向けて、高粒度データを活用することは有益である。』

ほーーーーー

『今後も、本稿で紹介した分析結果等を活用しつつ、モニタリング体制の整備を進めるとともに、大手行の外貨流動性リスク管理の更なる高度化に資する分析を続けていくことが肝要である。そのうえで、得られたインプリケーションおよび分析結果等も用いて、大手行や海外当局とも引き続き議論を深めていくことが重要と考えている。』

とまあそういうお話で、全然現世利益と関係ないと言われるとまあそうなんですけど、一応債券市場に加えて短期金融市場の方も見ているという設定になっております不肖このアタクシとしては、まあこういうネタには反応しますよというお話でしたので備忘もかねてご紹介させていただきました。

なお、本文の後に『BOX 地場通貨における外貨預金の獲得状況 』ってのがありますが、そちらはまあ本文読んだついでに見てちょんまげというところです。

あと、今回のレポートってちょっと興味深かったのは、本文の最後(概要の最後にもありますが)

『内容に関するご質問等に関しましては、日本銀行金融機構局金融第 3 課までお知らせ下さい。』

ってなっていて、日銀の本店局室研究所体制表(HPにあるやつ)だと機構局には金融1課から3課があるのはわかるけど管掌がどことは書いていないのですが、ワタクシの認識が間違っていなければ大手行に対するプルーデンス担当窓口って金融1課だったような気がしますので(違ってたらゴメンですけれども)、3課マターになっているのも興味深く読みました(^^)。


〇内田副総裁講演をしつこく読む訳ですが日銀バランスシートの日銀財務に対する影響のお話

HTMLバージョンも出てきたのでHTMLバージョンから引用しますね(なぜか半角英数がコピペで認識されない謎PDFだったので)。

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/ko250607a.htm
【講演】
業務からみた日本銀行
日本金融学会2025年度春季大会における講演
日本銀行副総裁 内田 眞一
2025年6月7日

『7.非伝統的な金融政策と中央銀行のバランスシート』の後半、『非伝統的な金融政策と中央銀行の収益』
の部分になります。

『中央銀行は、平常時にはバランスシートの構造上、収益があがるようになっています。』

ってどういう話かというと以下シニョリッジの説明になります。

『もう一度図表7をご覧ください。98年度末、伝統的な金融市場調節を行っていた当時のバランスシートです。負債項目の多くを占める発行銀行券は無利息です。当座預金も無利息でした(この時点では付利制度は導入されていませんでしたし、仮に導入されていたとしても、準備預金ぎりぎりの水準で調節を行うのであればほぼ無利息です)。一方で、資産サイドの国債や金融機関への貸出には利息が付きます。この差額は、通貨発行権を持つことに伴う収益(シニョレッジ)であり、支払完了性のある決済手段を「負債」として独占的に供給できることによるものです。』

ですです。

『この関係は、非伝統的な政策によって、バランスシートが大きく拡大すると変化します。』

はい。

『まず、非伝統的な政策を行っている間は、収益は大きく拡大します。短期金利はゼロ%ないしマイナスですので、負債サイドの利払いは基本的には生じることはありません。』

この辺もうちょっと説明を練ってほしいのですが、「短期金利がゼロ%の時にバランスシートを拡大すれば」というのが表現としては正しくて、非伝統的政策って言ったってバランスシート使わない政策(短期政策金利のフォワードコミットメントみたなやつ)をしてたら別に収益拡大しないし、何なら短期オペだけでバランスシート拡大してたらやっぱり変わらんのですが、まあそういうクソ細かい話はさておきまして、

『資産サイドからは、バランスシートが大きい分だけ、より大きな収益が得られます(日本銀行の場合、当座預金を3層構造とし、マイナス金利部分を最小限に抑える一方、プラス金利部分もあったため、ネットで利払いが発生しましたが、資産サイドの方がずっと大きな効果を持ちました)。図表11をご覧ください。実際、大規模緩和前の日本銀行の経常利益は平均して6千億円程度でしたが、大規模緩和を行っていた時期には、毎年数兆円の収益を計上していました。』

バランスシートが大きくても短期に近い国債買っている分にはまた違うので、結局バランスシート内でどれだけ長短ミスマッチ取っているか(満期変換を行っているか)というお話ではありますわな。

『これが出口になると、当座預金の付利によって利上げを行う一方で、資産サイドは、金利が低い時に買った国債で固定されているため、逆ザヤが発生します。この点、日本銀行のスタッフがシミュレーションを行っています5。』

とありますが本件は昨年末に出ていましてその時にツッコミを軽く入れましたがこの後改めて。

『図表12をご覧ください。その結果は、短期金利・長期金利のパス、バランスシート縮小のペース、さらには冒頭でご説明した銀行券の残高がこの先どうなるかなど、複数の要因に左右されます。』

そらそうですな。

『前提条件として、昨年9月時点で市場が織り込んでいた金利見通しのとおり金利が動くと仮定した場合、青い実線のようになります。この前提では、収益は減少しますが、赤字にはならないという結果でした。ただ、金利がより急激に上昇するなどのストレスをかけると、シャドーのように、一時的に赤字になる場合があります。ただ、どちらのシナリオでも、その後は、負債サイドで当座預金が減少し、資産サイドで国債が高い金利のものに入れ替わっていくにしたがって、収益が回復していきます。』

という話になっていますが、じゃあ例のシミュレーションを見ますと

https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2024/data/rev24j15.pdf
日本銀行の財務と先行きの試算
企画局企画調整課
2024 年 12 月
日銀レビュー 2024-J-15

本文5pに『先行きの収益・自己資本に関する試算 』ってのがありますが、その前提になっているのは、

『(前提)
@ 短期金利・長期金利の推移

短期金利については OIS 市場7におけるインプライドフォワードレート、長期金利については国債のイールドカーブから算出されるインプライドフォワードレート(市場金利が織り込む金利見通し)のとおり推移すると仮定する。』

『また、市場金利が織り込む金利見通しに加え、(a)短期金利は、今後数年程度をかけて 1.0%〜2.0%となり、(b)その際の長短スプレッドは、+0.25%P〜+0.75%P となると仮定した場合の試算値のレンジも合わせて示すこととする8。』

っていうことで、全然ストレスを掛けたシナリオじゃねえだろ、ってのしか示されていない訳で、欧米みたいにインフレが高進してインフレ期待の2%アンカーが上振れするんじゃないかってことで盛大に引き締めを行う、というような前提にはなっておりませんが、何せ日本の場合は欧米のようにもともとインフレ期待が2%でアンカーされている国と違いまして、ゼロ近傍にアンカーされていたインフレ期待を一旦2%に引き上げてアンカーさせる(リアンカリングとか言ってた時期もあったけど最近言いませんなそういや)という器用なことをしないといけなくて、インフレ期待を一旦不安定化させる、というプロセスを踏むだけに、2%で止まらずにインフレ期待が上振れる(というか既に家計のインフレ期待は上抜けてしまってるんじゃないかと個人的には思ってるんですが・・・)というリスクって欧米よりも実は高いんですよね。

そう考えますと、この程度のユルユルで済むのか問題があるわけで、これはこの前もかきましたけど、だいたいからして実質中立金利が0%で均衡物価水準が2%の時に短期政策金利の名目中立金利は2%な訳で、「(a)短期金利は、今後数年程度をかけて 1.0%〜2.0%となり、」ってのがセカンドシナリオになっている時点で節子それはむしろベースラインシナリオレベルやというお話。

でもってこの前提ってしらっと、

『A バランスシートの規模やその推移

バランスシートについては、試算の便宜上、本年 7 月に決定された長期国債買入れの減額計画のとおり 2026 年 1-3 月にかけて国債の月間買入れ額を月 3 兆円程度まで減額し、同年 4 月以降は当該買入れ額から不変と仮定する(図表 9、10 参照)9。また、今後の取扱い方針を公表している資産はその方針に沿って変動し、その他の資産は不変と仮定する。』

となっているので、これ追加の国債買入で金利の高い債券が入って来て収入がアップする、というのを見積もっている計算になっていて、日銀のバランスシートの削減をあんまり進めなくてよくて短期金利もあんまり上がらない、というデフレ均衡とまではいわないけれども、物価安定目標の達成時にそれでエエノンカイナという日銀の損益シミュレーション的には甘甘の設定になっている訳ですな、前も書きましたけど。

でまあ今日はそこを突っ込むのが目的ではないので内田さんの講演に戻りまして。

『このように収益や自己資本の試算は、前提条件次第で変わりますが、いずれにしても、中央銀行のバランスシートの状況によって、「物価の安定」が毀損されることはありません。』

って威勢よく言いきっているのですが、実際問題一番ヤバい筈の「2%に向けてあげて行こうとしている期待インフレが2%で止まらないで上振れてしまった場合」に日銀が行わないといけない施策に対してこんなに巨額のバランスシート抱えたままだとあんまりよろしくないんじゃないでしょうか、っていう話は華麗にスルーしております。

まあ自分から「いやー実はインフレがガチで高進してインフレ期待が2%を超えてどんどん上がったら日銀の財務は大変なんです」とは言いにくいというかまあ言えないってのは分かるんですけれども、だからと言って堂々とここまでいうのもどうなんでしょうかね、ってな風には思う訳でして、この点から考えても「債券市場の金利急騰がどうのこうの」とか言いながらバランスシート縮小を必要以上に慎重に行う事っていうのは、物価上昇レジームになった時に日銀としての適切な政策対応の足かせになるのでもっとバランスシート縮小を頑張らないといけないんじゃないの、ってのがまあワイの思う所ですし、大体からしてこの巨大バランスシートがあって、さっきのシミュレーションで見られたように「モデストな金利上昇シナリオ」じゃないと財務上面倒なことになるって足かせを意識してしまったために今次局面で政策調整がビハインドしているんじゃないかという風にも思ってしまうわけでございます。

でまあ以下続きですが、

『皆様にはご説明するまでもないことですが、管理通貨制度のもとで、通貨の信認は、中央銀行の保有資産によって担保されるものではなく、適切な政策運営によって「物価の安定」を図ることを通じて確保されます。また、そうした使命追求のための「政策遂行能力」に、財務状況が影響を与えることもありません。』

本当に影響が無いのか、というとそれは微妙ですよね。でもFEDの例をもってそこは強弁しておりまして、

『一時的に赤字や(極端な場合)債務超過になったとしても、収益や資本はシニョレッジによる将来の収益で復元されますし、支払完了性のある決済手段を自ら供給できるため、支払いは常に可能です。実際に、FRBやECBを含めて多くの中央銀行が現在赤字を計上しており、その一部は債務超過になっていますが、業務や政策の運営に支障は生じていません。』

それは他の要因も複合しているので、日本のように財政運営はガバガバ、中央銀行の資産は莫大、という状態で全く同じな保証はないでしょ、という話ですが、まあさすがにそこは、

『それでも、多くの中央銀行は、自己資本など一定のバッファーを有しています。日本銀行も自己資本を有しているほか、大規模緩和の過程では、収益の上振れ分の一部を引当金として留保し、出口で損失が発生した場合に備えています。』

『本来、中央銀行の財務構造を理解していれば問題ないことであったとしても、例えば、赤字や債務超過などが発生した時に、市場が「中央銀行が財務リスクを気にして適切な政策の実施を躊躇するのではないか」といった疑念を持つようなことがあれば、政策効果の波及が阻害されます。そうした疑念を惹起させることのないよう、適切な政策運営を行うという大前提のもとで、上記の引当金など可能な手段を通じて、財務の健全性にも配慮していくことは大切です。』

ということで話を締めているのですが、まあ本来は財政運営の中長期的な持続可能性をちゃんと考慮した運営をしろって話がそこに思いっきり加わるんですよね。

という所で今朝はこの辺で勘弁して頂ければと存じます。現世利益とあんまり関係ない雑談ばっかですいませんでした。








2025/06/11

〇こんなので為替が反応するもんなのか(「2%までまだ少し距離がある」)・・・・・(呆)

昨日はこんなのがありましたな
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-06-10/SXF8E7T0G1KW00
植田日銀総裁、基調的物価は「まだ2%に少し距離がある」−円下落
伊藤純夫
2025年6月10日 10:56 JST 更新日時 2025年6月10日 12:01 JST

→基調的物価が2%に近づけば、引き続き利上げで金融緩和度合い調整
→0.5%の政策金利水準、利下げで経済刺激の余地は非常に限られている

『日本銀行の植田和男総裁は10日、金融政策運営で重視している基調的な物価上昇率は物価目標の2%まで少し距離があるとの認識を示した。参院財政金融委員会で答弁した。総裁発言を受けて円は下落した。』(上記URL先より、以下同様)

ということで、

『植田総裁の発言後、円はドルに対し一時1ドル=145円29銭に下落。発言前は144円50銭前後で推移していた。株式市場では日経平均株価が上げ幅を拡大し、上昇率は一時1%を超えた。』

ってことになっているのですが、そもそも論として先日の内外情勢における植田総裁の講演の資料を見ますと、
 
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/data/ko250603a2.pdf
最近の経済・物価情勢と金融政策運営
(図表編です)

図表7『基調的な物価上昇率に関連する指標』を見れば分かりますけど、実はその右下にありますように、マクロ経済モデル回して計算(という一番まともっぽいことを)したらどの指標も「2%に向けて威勢よく接近中」なのでして、植田さんの説明上重視していることになっている(家計のインフレ期待の推計値がどう考えても下方バイアスの掛かる方法を使った)合成予想物価上昇率だって目盛みたら24年で1.5%近辺、25年で1.7%近辺と上がっている訳でして、モメンタムからいったらこんなの2%到達待ったなしだし、元々がこれ計算上下方バイアスが掛かりやすい(予測力を重視しして算出しているんですがそのサンプルがゼロインフレの期間を大きく使っているから)な訳ですよ。

とは言え、足元に関してはトランプ関税とかいう攪乱要因があるから、このモメンタムが止まるかもしれないってんでまあハトハトチキンになっているのはまあ分からんでもないですが(と言ってるけど物価には慣性があって足元の動きは「上に抜ける」方の慣性が掛かっているから逆に止まらんリスクの方が高いと思うのですけど)、これ普通にグラフをみたらこの先基調物価とされるものが2の水準を涼しい顔して上にぶち抜けるリスクの方が高いじゃろ、という図でもあるんですよね。

なのにまあ「少し距離がある」とか言ってるのは、単純に6月7月の時点で利上げをする予定は無い、という「やりたい政策」が先にあって、政策アクション(今回の場合は動かない方のアクションですけど)を正当化するための「お気持ち表明」を「基調的物価は2%までにまだ少し距離がある」と言ってるだけの話なんですよね。というか説明の定義上、基調的物価が2%に到達している、という認識だったら政策調整をゆっくり実施しているどころの騒ぎではなくて、政策を中立ポジションにもっていかないといけないのですから、半年に1回とか悠長なことを言ってる場合じゃなくなるので、6月7月に利上げする気が無いのであれば、上記のような発言が出てくるのは当たり前ですし、逆に為替市場の皆さん6月7月に利上げがあるとでも思っていたのかよお前らの首の上についている物体はカボチャか何かかと小一時間問い詰めたいですな、と思いました。

じゃあ9月10月に利上げがあるか、ってことになると、これはまあ7月展望で何を言い出すか次第ではあるのですが、トランプ関税政策を受けた企業や家計の行動変化(下方屈曲)が起きるかどうかってのを茲許はずっと気にしているような説明になっていますので、そうなると企業の賃金設定行動、すなわち冬季賞与動向と来年の賃金改定に向けたスタンスのアネクドータルなデータが出てくる年末年始、って考えるのが一番妥当なような気がしますが、何せこの人たち「やりたい政策」先にありきで情勢判断を後付けで説明する、というのを全然隠そうとしない(普通は隠そうとして過去との説明の整合性を取ろうとするのですが、黒田時代の末期あたりになってからはもはや過去との整合性を全然気にしなくなっているのは展望レポ^−トハイライトというポンチ絵の推移を見れば一番わかりやすいと思います)ので、つまりは「やりたい政策」が「やっぱり政策金利引き上げないと」って事になるトリガーが先に出てきたら年末年始の限りではない、ってことになるんじゃないですかね、個人の感想ですではありますけど。

てな読み筋って別にアタクシがドヤ顔(の積りではないですが)で言うまでも無くごく普通の読み筋だと思うので、「まだ距離がある」云々は「6月7月(まあ少なくとも6月)に利上げする予定は今のところありません」以外の意味合いは無いので、それすなわちなんら新しい情報でもなくて市場は先刻織り込み済みなんですけど、何でそんなのに為替市場が反応しているんだこれだからAI相場は困るわ、と思いました(個人の偏見です)。


〇引き続き内田副総裁の講演をネチネチと鑑賞するの巻

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/data/ko250607a1.pdf
業務からみた日本銀行
── 日本金融学会2005年度春季大会における講演 ──
日本銀行副総裁 内田 眞一

・「業務」を言い訳にするのはちょっと卑怯じゃないですかねえ

昨日ネタにした「オーバーシュート型コミットメント」の説明部分ですが、昨日はこのコミットメントが「このコミットメントは強いものではありません」とかコミットメントを導入した時に黒田総裁が「強力なコミットメント」と説明しまくって居たものを当時の企画担当理事の内田さんが積極的に否定してくる、という飛んでも無い部分をご紹介しましたが、この説明って小見出しの通りでもう一つ飛んでも無いツッコミ部分があるんですよ。

ということで重複になりますがオーバーシュート型コミットメントの説明の頭のところからもう一度見てみましょう。

『バランスシートの大きさを明示的に使ったコミュニケーションとしては、日本銀行は、 2016年9月にイールドカーブ・コントロールを導入した際に、「消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで」マネタリーベースの拡大方針を続ける、というコミットメント(オーバーシュート型コミットメント)を行いました。』

でもって昨日は、

『先ほど述べた通り、短期金利の操作とバランスシートの大きさは切り離し可能なものなので、このコミットメントは強いものではありません。』

という導入時の説明を思いっきり「あれは嘘です」って言ってしまっているという飛んでも無い部分があったわけですが、

『より直接的なコミットメントとして、例えば、「消費者物価が2%を安定的に超えるまで」長短の金利目標の水準(短期は−0.1 %、 年金利はゼロ%程度)を続ける、と約束することも論理的にはありえました。ただ、これではフォワードガイダンスとして強すぎ、将来の柔軟性を犠牲にする恐れがありましたので、バランスシートの大きさに紐づけたということです。』

しかしながら「金利と分離して運営が可能」だったらバランスシートの大きさに意味は無い、という話になるのでして、だったらそもそもこのオーバーシュート型コミットメントが虚偽説明だったという話になるわけですが、バランスシート拡大した後遺症で今面倒なことになっている(そもそもバランスシートこんなに拡大しなかったら長期金利の急騰(財政配慮を含めて)にビビることなくもっと早くに利上げ出来てたんじゃないのとかまあ色々とツッコミは有るわけですよ)ので、足元の内田さんの説明もかなりインチキ臭いんですけどね。

『一般的に「バランスシートの拡大を続けながら、利上げをする」というのはイメージしにくいので、「緩和を続ける」というスタンスは伝わる一方で、オペレーション的には(業務面から考えれば)、バランスシート縮小(QT )の前に利上げを始めることは可能で、その余地を残したものです。』

というこの部分、ここまでは昨日も引用しましたな。ちなみに海外中銀は「バランスシートの縮小を続けながら利下げを実施」しているのですから、まあこの説明は明らかに「ワシらはお前らの誤解を利用してペテンを打ちましたもんね」って言ってるのに等しいんですけど、まあそれは兎も角としてこの続きがあって以下引用しますと・・・・・

『この辺りの事情は、フォワードガイダンスという「自分を縛って効果を得る政策」の微妙なバランスを示しています。』

とまあドヤ顔(かどうか知らんが)の説明が始まるのですが

『効果と自由度のバランスを取るために、明示的に例外条項(escape clause )を入れておくという例もありますが、「業務」の要素を絡めて対応余地を残すという方法もあるということです。』

いやいやいや、それを「業務の要素」っていうのインチキじゃろという話だし、大体からして業務的にバランスシートは金利と分離できるんだたら、QQEとか言ってバランスシートを拡大したこと自体が初手からインチキでしたって言ってるのと同じになってしまう訳で、この説明は何ぼ何でも無理筋じゃろ、と言わざるを得ません。さらにですね、


・オーバーシュート型コミットメントは初手からイカサマ目くらましでしたとネタバラシとはこれは酷いwwwww

『日本銀行を含めて各国の中央銀行は、当然こうしたことを分かったうえで、』

>当然こうしたことを分かったうえで、
>当然こうしたことを分かったうえで、
>当然こうしたことを分かったうえで、

これは額装して決定会合のお部屋の総裁の席の後ろ辺りにでも飾っておきたい言葉ですなあという感じでして、他の国の中銀からしたらイカサマペテン説明の片棒担ぎみたいに言われるのは心外にも程があるでしょうし、そういうインチキ説明を最も嫌っていたであろうと思われる白川さんやダブル山口さん(過去の2名の「山口副総裁」です為念)などがこの額装を見たら飛びあがって額縁を叩き壊すレベルかとは存じますが、何とですね、

「オーバーシュート型コミットメントが強力なコミットメントだと言ってたのはぜーんぶ嘘ですテヘペロ」

ってオーバーシュート型コミットメントが用済みになった時点で言いだす、というお話でして、まあ何となく今の日銀が屁理屈(「コアコア物価」から始まり2%達成に向けた政策反応関数をホイホイと使い分けて涼しい顔をしている件ね)を捏ね回すバックグラウンドがこういうことなんでしょうな、というのが垣間見れるんじゃないかと思うのよね。でまあしかもそのイカサマに関して(話が分かりにくくなるといかんと思うので重複引用しますが)

『日本銀行を含めて各国の中央銀行は、当然こうしたことを分かったうえで、バランスシートと政策金利の運営、そしてそのシークエンスを考え、コミットメントを実施してきました。こうした意味でも、中央銀行にとって「政策」と「業務」は不可分のものです。』

って業務の話にして誤魔化していますけど、当時のオーバーシュート型コミットメントはその場しのぎの目くらましで、強力なコミットメントとか言ってたのは全部その場しのぎの説明でした、ってのを思いっきり表明してしまう、っていうのは将来コミットメント政策がまた必要になった場合にお前どうするんだよ、と思ってしまいますね。

・・・・・とは言いましても、まあ市場というのもアタクシのような粘着質の変な奴というのは基本的に珍獣の方に多分寄っているのでありまして(そのくらいの自覚はアタクシだってありますわよおほほほほ)、普通は(というか最近は、というべきか)昔の理屈との整合性がどうのこうのとか、展望レポートハイライトを半年以上遡って前回の絵との整合性とか言う人もあんまりいませんので、まあこのような割と衝撃的な「昔のあのコミットメント、当時は強力なコミットメントと言ってたけどアレはその場しのぎの方便で実は強力じゃありませんでした」って説明だって全然金融メディアの話題にならない(ので珍獣がネタにするわけですがw)まあこう言い切ってもセーフ、と高を括っているんじゃないかなあ、とは思いました。てか「金融学会」なんだからこの部分に対してツッコミを誰か入れたのかという方が気になるけど、どうせ金融学会とか言ったって使えねえ馬鹿学者(学者馬鹿ではありません為念)の集まりでしょうから(個人の偏見です)誰もツッコミ入れないんでしょうけどね(入れられるような骨のある学会だったらこんなツッコミどころ満載の説明はせんじゃろうよwwwwwwwwww)。

ということで、この辺の説明は随分と舐め腐った説明しやがって、てなお話ですが、この次に日銀のバランスシートというか今後の収益の問題、というのが出てくるので、本当は今朝はそっちをメインにする積りだったのですが、ついつい昨日の続きのオマケ部分の予定だったところで興奮してw手が踊ってしまいましてこの先を成敗する時間が中途半端になってしまいましたのでまあ先の話はまたいずれ。


・バランスシートの今後に関する問題点は「収益シミュレーションの前提にガチのリスクシナリオが描けないこと」

というのだけ書いておきますが、これは昨年末に企画局が出したバランスシートがどうしたこうしたのペーパーの時に突っ込みましたが、日銀の巨大なバランスシートが問題になり得るのは何のことはないですけど「インフレがオーバーシュートした時に、巨大なバランスシートのストック効果による緩和効果が邪魔をしてインフレのオーバーシュートを止めるのが困難になるケース」でして、その場合ってストック効果を相殺するために強力な利上げを実施しないと行けなくなるので、バランスシートの損益的には期間損益が真っ赤っ赤になるのですが、それが容認できるのか(いくら「時間を掛ければシニョリッジで回収できる」と言っても程度問題があるし、そもそも引き締めた傍から超過準備付利の形で盛大に利払いをするのも財政支出の一種のような気がするんだがその効果ってどうなのよというお話だって超過準備の規模が巨大だと何か悪さをしそうな気がしますし・・・)という話が有るわけですがなというお話。

でもってさらに強力な引き締めをするためにはこのストック効果が邪魔、となった場合に国債売却をすれば良いのですが、その場合は当然ながら過去に買った国債は損失が出る訳で、まあその損失は時間を掛ければシニョリッジで回収できるとは言いましても以下同文な訳でして、まあバランスシートを巨大なままたいして減らせない、という状況はインフレが落ち着いて低位にいるなら問題はたいしたことは(たぶん)無いのですけれども、上振れするような時には甚だよろしくないのでして、その辺の話は確かに正面切って書きにくいというのは分かるのですが、だからと言って大丈夫ですヘヘーンと強弁するのも「全電源喪失はあり得ません(キリッ)」を思い出してしまうのでどうなのよ、とおもいます、ってな話をしようと思っておりました次第です(他にもネタはあるけど)ので一応書いておきます。

ということで今朝はここで勘弁してちょということで。






2025/06/10

〇色々と面白い論点が転がっているので昨日の続きで内田さんの講演をば

まだHTMLバージョンが出ていないので時々数字が認識できない問題がありますがPDFから引用して参ります。

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/data/ko250607a1.pdf
業務からみた日本銀行
── 日本金融学会 2025年度春季大会における講演 ──
日本銀行副総裁 内田 眞一

(ちなみにこの2025も文字列認識しませんw)

本文15ページ(PDFの16枚目)の『7.非伝統的な金融政策と中央銀行のバランスシート』ってコーナーから参ります。

・非伝統的な政策の話をするときにいきなりマネープリンティングしないで頂きたいんだが

最初の小見出しが『(非伝統的な金融政策の効果:資産サイドと負債サイド)』というお話。でもってその冒頭が、

『後半パートの2つめのテーマは、非伝統的な金融政策とバランスシートです。「非伝統的な金融政策」はその名の通り、伝統的な業務運営を超えて、中央銀行業務を拡張することで、金融政策の効果を追求するものです。これはしばしば「バランスシート政策」と呼ばれます。』

ほうほう。

『中央銀行が、「支払完了性のある決済手段」を負債として供給することは、その裏側で、資産を持つことを意味しています。理論的には支払完了性がある負債はいくらでも提供できるので、「どんな資産を、どれだけ持つか」が政策のパラメターになりうるのです。』

支払い完了性(ファイナリティ)のある決済手段云々はこのコーナーの前の方で決済に関する話をしておりまして、でまあ決済の中で中央銀行の負債(銀行券または中央銀行当座預金)は決済の最後の尻が完了できるものなのでファイナリティがどうのこうのという説明でして、その辺興味のある方は読んで味噌という話ではあるのですが、どさくさに紛れて内田さんそれはちょっと読まれ方によっては大変な暴言なんですけど、というのがこれ。

>理論的には支払完了性がある負債はいくらでも提供できるので
>理論的には支払完了性がある負債はいくらでも提供できるので
>理論的には支払完了性がある負債はいくらでも提供できるので

おいこらちょっと待て、それは「マネープリンディング」っていうんじゃないかってな話で、支払完了性がある負債をいくらでも発行して、それで政府の債務をいくらでも引き受ければ紛うことなき財政ファイナンスな訳ですよ。

でもってですよ、昨日ネタにしましたけれども、本文8ページにあった中央銀行当座預金付利に関する説明の中で、

『このことは、その後、技術的な金利操作の手段という意味合いを超えて大きなインプリケーションを持つようになりました。ひとつは、金利操作と切り離して、バランスシートの大きさを決められるようになった結果、資産サイドを使った政策を大規模に行うことが可能になったことです。』(本文8pより)

って言ってるんだから、この「負債はいくらでも提供できる」と合わせて考えたら、中央銀行は財政ファイナンスを何ぼでもできまっせ、という説明しているのと変わらんじゃろ何ちゅう危険な説明をしてるんじゃと小一時間問い詰めたいわけですけど、この次の部分も論点になりうる話でして、


・バランスシート政策があるのであれば「短期金利とは別」という説明はどうなのかよと思いますけどね

>「どんな資産を、どれだけ持つか」が政策のパラメター
>「どんな資産を、どれだけ持つか」が政策のパラメター
>「どんな資産を、どれだけ持つか」が政策のパラメター

さっきの8pの説明の通りで「金利政策と切り離してバランスシート政策を行うことが可能になりました」って言って、この部分で「「どんな資産を、どれだけ持つか」が政策のパラメター」と言ってるんだったら、日銀の保有する長期国債残高に関しては立派(?)な「政策」でありますので、「金融政策運営は短期金利コントロールで行うので長期国債買入に関しては政策意図云々ということではない」という説明とお前話が違うじゃろ、という話でもあります。

短期市場に対しては当預付利を使って超過準備を不胎化することができるからバランスシートは別物、と言ってもバランスシートの資産サイドで持っているものが政策中立なのか、というとそうではない、って自分で言ってしまっているので、つまりは「付利をして短期金利をコントロールしているので無問題」という理屈は短期市場だけ見て説明しているイカサマ説明じゃろってなもんで、いやだからそういう所の説明が「部分部分では筋の通ったことを言ってるけど全体で見た整合性と、過去の説明との整合性がないじゃろお前ら」ってツッコミを入れてしまう要因なんだよな、と思いました。


・どさくさに紛れてマネタリーベース直線一気理論が完全に無視されているのはワロタ

『図表10 をご覧ください。現在の日本銀行のバランスシートです。非伝統的金融政策として長期国債を買った場合、資産サイドで長期国債が増加し、負債サイドでは、相手方の金融機関の当座預金が増えます。その政策効果は、資産サイドで国債を買入れることによって、市中から金利リスクを吸収し、タームプレミアムを押し下げる効果(いわゆる「ストック効果」)が中心であると分析されています。』

からの、

『一方、負債サイドの当座預金残高やマネタリーベース、あるいはバランスシートの大きさには、資産サイドのような直接的な効果があるわけではありませんが、一定のアナウンスメント効果は持つ可能性があります。』

wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

しつこいので久々にこれでも
https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2015/kk1502a.pdf
岩田副総裁記者会見要 旨
―― 2015年2月4日(水)
午後2時から約35分
於 仙台市

『(問) 副総裁は就任前の 2013 年 3 月 4 日の講演で、「日銀当座預金が10%増えると予想インフレ率が 0.44%上昇する」ということをおっしゃったという報道がありますが、これが事実かどうかをお伺いします。また、実際に日銀当座預金残高の推移をみますと、講演をされた 2 年前の水準が44 兆円で、足許の水準が 185 兆円、これは 10%どころか 4 倍以上に達しています。それにもかかわらず、予想インフレ率を表す一つの指標であるBEIは足許で1%を切っている水準です。これは、もともとのご発言自体が誤っていたのかどうか、それとも今でも同じようにお考えなのでしょうか。』(この部分だけ直上URL先2015年2月岩田規久男副総裁(当時)の会見要旨4pより)

・・・・いやはやなんともw

・バランスシートの効果の説明が粒粒では言ってることそうかもしれんが全体の整合性がおかしい

では講演本編に戻りまして、

『大きなバランスシートを急激には縮小できないことは、市場もわかっているので、「しばらく緩和を続ける」というメッセージになりえるということです。』

ということではあるのですが、インフレが急速に進むような場合はバランスシートによる緩和効果が逆に足かせになるわけで、ストック効果の緩和効果がどうのこうのと主張すればするほど、バランスシートが大きいならば、そのストック効果の緩和効果を加味して政策金利水準の設定が必要になるはずなんですが、そういう説明を一切しないで今の政策運営をしているのは如何なものかって話になるんですよね。

『2000年代のはじめ頃、為替市場などで、中央銀行のバランスシートの大きさの比較が材料になったことがありました。この点、リニアな関係を導くことは無理ですが、「緩和スタンスのproxy 」として、緩い関係を見出すことは不可能ではなく、あとはケインズの美人投票的に機能したということでしょう。』

「この点、リニアな関係を導くことは無理ですが、「緩和スタンスのproxy 」として、緩い関係を見出すことは不可能ではなく、あとはケインズの美人投票的に機能したということでしょう」って言っているのですが、さっきうっちーさん「「どんな資産を、どれだけ持つか」が政策のパラメター」って言ってたんだから、バランスシートの大きさ(とその構成)の比較は政策のパラメターなんだからリニアかどうかは兎も角としてその理屈なら意味あるじゃろという話なのですが、なぜかここの説明ではバランスシート規模はあくまでも「緩和スタンスの代理変数」程度であり、「スタンスの表明」にすぎないような説明をしている訳でして、いやだからそこさっきとの話の整合性どうなっているのよ、というお話。

まあ非伝統的緩和政策自体が結局何だったのかというのはまだ評価が固まっている訳でもないのでクリアカットな説明ができない、というのはその通りなんですが、だからといって「粒粒での説明はいいんだが全体として結局なんだったのかという説明が無いどころか話の整合性が無いんじゃが」というのも如何なものかと思います。

・オーバーシュート型コミットメントが強いものではなかったとはこれはまた酷い

でもってこの次ですが、これがまたドイヒーでして、

『バランスシートの大きさを明示的に使ったコミュニケーションとしては、日本銀行は、 2016年9月にイールドカーブ・コントロールを導入した際に、「消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで」マネタリーベースの拡大方針を続ける、というコミットメント(オーバーシュート型コミットメント)を行いました。先ほど述べた通り、短期金利の操作とバランスシートの大きさは切り離し可能なものなので、このコミットメントは強いものではありません。』

>このコミットメントは強いものではありません
>このコミットメントは強いものではありません
>このコミットメントは強いものではありません
>このコミットメントは強いものではありません
>このコミットメントは強いものではありません

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)

さてここで2016年9月の総裁定例記者会見の冒頭発言、オープニングリマークに相当する政策説明の部分を途中から見てみましょう。

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2016/kk1609b.pdf
総 裁 記 者 会 見 要 旨
―― 2016年9月21日(水)
午後3時半から約70分

本文2ページの後半以降になります。

『次に、「オーバーシュート型コミットメント」について説明します。』

『日本銀行は、生鮮食品を除く消費者物価指数の前年比上昇率の実績値が安定的に 2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続するという新しいコミットメントを導入しました。』

『2%の「物価安定の目標」を実現するためには、人々のデフレマインドを抜本的に転換し、予想物価上昇率を引き上げる必要があります。この点、「総括的な検証」でも示したように、わが国における予想物価上昇率の形成は依然としてかなりの程度「適合的」であり、足許の物価上昇率に強く引きずられる傾向があります。』

『こうしたことを踏まえ、予想物価上昇率をさらに引き上げていくためには、金融緩和の継続に関する極めて強力なコミットメントを導入することによって、「物価安定の目標」の実現に向けた日本銀行の揺るぎない姿勢を改めて示すことが必要であると判断しました。』

『もともと 2%の目標を実現するということは、景気変動などを均して平均的に 2%を実現するということですから、2%をオーバーシュートする局面は想定されています。しかし、金融政策には効果が現れるまでにラグがあることを踏まえると、実際に 2%を超えるまで金融緩和を続ける、というのは極めて強いコミットメントです。』(以上この部分2016年9月21日黒田総裁(当時)の定例記者会見要旨より)

・・・・・・・・・・・(゚д゚)

ちなみに「実はもっと強力なコミットメントがありましたてへぺろ」という説明が以下続きまして、

『より直接的なコミットメントとして、例えば、「消費者物価が2%を安定的に超えるまで」長短の金利目標の水準(短期は−0.1 %、10 年金利はゼロ%程度)を続ける、と約束することも論理的にはありえました。』

『ただ、これではフォワードガイダンスとして強すぎ、将来の柔軟性を犠牲にする恐れがありましたので、バランスシートの大きさに紐づけたということです。』

だそうですが、

『一般的に「バランスシートの拡大を続けながら、利上げをする」というのはイメージしにくいので、「緩和を続ける」というスタンスは伝わる一方で、オペレーション的には(業務面から考えれば)、バランスシート縮小( QT)の前に利上げを始めることは可能で、その余地を残したものです。』

って説明をしているんですが、最初の方で話をしている通り「バランスシートは金利と別」って言ってるわけでして、「一般的に「バランスシートの拡大を続けながら、利上げをする」というのはイメージしにくいので」ってのがそもそもペテンじゃろという話だし、じゃあお前2016年のオーバーシュート型コミットメントの説明はペテンだったのかという話になって、まあ色々とダメな説明になっていませんかねえ、という所で誠に遺憾ながら時間が無くなってしまったので今朝はここで勘弁していただきとう存じます。




2025/06/09

〇内田副総裁の金融学会での講演がなんかいろんな論点の展覧会みたいになって面白い件

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/data/ko250607a1.pdf
業務からみた日本銀行
── 日本金融学会2025年度春季大会における講演 ──
日本銀行副総裁 内田 眞一

この講演、いろんな論点の展覧会みたいになっていまして、この前の金研コンファランスで本来学術的なお話をする場所なのに政策運営のために屁理屈捏ね捏ね講演をしていた植田さんの講演とはだいぶ格調が違っている、という感じでして、いや植田さんがこの話をしろよとは思いましたけれども・・・・・・・・・・・

マクラの部分ですが『1.はじめに』から引用しますね。

『図表1をご覧ください。普段、メディアで目にする「日本銀行」は、金融政策の担い手としてのものが中心です。昨年度の報道件数のうち、3分の2は「金融政策関連」でした。それ以外では、例えば昨年7月に 年振りの改刷があり、その前後では「銀行券関連」の記事で盛り上がりました。』

『実際、多くの方々にとって、人生で最初に「日本銀行」に接したのは「日本銀行券」であったのではないかと思います。そして、中学の社会科では、日本銀行は、「発券銀行」「銀行の銀行」「政府の銀行」である、と教えられ、高校にかけて、「金融政策」や「物価の安定」、あるいは「最後の貸し手」や「金融システムの安定」について学んでいきます。』

金融システムの安定とか高校の政経でやったっけとは思いますがまあ気にせず先に進めまして、

『私自身、支店長をしていた頃は、中学校の体育館で、「お金とは何か」の出前授業をしたりしました 。』

(^^)。

『ただ、これらのキーワードを有機的に結ぶこと、例えば、「なぜ、中央銀行はお札を発行して、金利を上げたり下げたりし、インフレやデフレに責任を持つのか」まとめて整合的に説明することは、大人にとっても意外に難しいことです。』

はい。

『中央銀行の政策と業務は一体不可分のものです。通常それは「政策を実現するための手段としての業務」という順番に語られます。今日の私の試みは、逆の順番、つまり「業務」を出発点にして、「政策」につなげていこうというものです。』

ふむふむ。

『私は、昔からこうした視点を大切なものだと思ってきました。実は、私自身が関わったものを含めて、同じような試みは、過去にもいくつかあるのです(ここの数字がコピペ不能)が、時折こうしたことを繰り返していかないと忘れられがちなテーマですので、今日のこの場をお借りしたいと思った次第です。』

ここ(コピぺ不能部分には本当は2という数字がある)に実は脚注2というのがあるのですが、今回のこの講演テキストのPDFバージョン、割と致命的に残念なことがありまして、一部の数字(見出しとか脚注は良いんですが本文の数字だったり表題の数字だったり)がテキストデータになっていない、という謎の状態になっていまして、コピペしようとすると数字の部分だけ認識しないのですが、脚注2は、

『2 例えば、速水優『私の中央銀行論』(2001 年 4 月一橋大学創立 125 周年記念講演会における講演)、日本銀行金融研究所編『新しい日本銀行 その機能と業務』(有斐閣)、白川方明『「法と経済」からみた中央銀行』(2009 年 10 月東京大学法学部における講義)。』(ちなみにここの数字はちゃんと認識される)

となっていますように、実は重要なお話だと思いますし、それこそ短期のオペレーション関連に関する実務の現場から叩き上げております所のアタクシからしても、基本的に金融実務から見ていくってのは大事じゃろ、ということで以下のテーマが多岐にわたって、結構面白いのが幾つかあるので1回で終わらないネタではあるのですが、まあ一応今の政策的にポイントになる日銀のバランスシート政策に絡む部分を今日は拝見しようかと存じます。


・金融政策目的の国債買入は財政ファイナンスではないし財政ファイナンスでないと言い張れば良いだけではない

という訳で『3.政府の銀行』の後半の『(中央銀行と政府の取引)』に話は飛びます。

『日本銀行は、国庫金の管理に付随して、政府の資金繰りの実務も担っています。収入と支出のタイミングのずれによって、政府預金の残高は上下しますが、短期的な資金の不足は、国庫短期証券の発行によって賄います。これは公募入札で金融機関等に売却されますが、例外的に、募集残額が生じたり、国庫に予期せざる資金需要が生じた場合には、日本銀行が引き受けることができます。その場合には、次回以降の公募入札の代金で償還を受けることになっています。』

おーーーーーー。これは久々に聞く説明です。

『また、日本銀行が金融市場調節など自らの必要のために買った国債の償還期限が到来した場合、国庫短期証券で借り換えることができるようになっています。これは、「乗換引受」と呼ばれ、日本銀行側では政策委員会が金融市場調節上支障がないことを確認して議決する必要があるほか、政府側では財政法第5条の例外として国会の議決が必要になります。』

かつて償還乗換は10年国債で行われていましたが1年短国になった話とかそらもう老害なので色々とw

『以上細かい説明になりましたが、これらの業務は、政府に対する信用供与にあたり、政府と中央銀行の関係を考えるうえで重要な論点を含んでいます。このため、日本銀行では、「対政府取引に関する基本要領」を定め、基準や手続きを明確にしています。』

当然ですな、財政マネタイズするのは要するにマネープリンティングなんですから。

『また、こうした「政府の銀行」としての業務とは別に、金融政策目的での国債の買入れがあります。』

はい。

『現在の日本銀行のバランスシートの資産サイドで最大の項目は、「国債」です。これは、2013 年からの大規模な金融緩和において、2%の物価安定の目標を実現するため、金融政策の必要性から買い入れ、保有しているものです。政府による財政資金の調達を支援するためのものではありません。』

ちなみに本文中2013のところが認識されなかった(半角数字が認識されないのかな?)のですがそれはさておきまして、この「政府による財政資金の調達を支援するためのものではありません」につきましてこの直後に内田さんは、

『ただし、この問題は、中央銀行が「金融政策目的であって財政ファイナンスではない」と言うだけで完結するとは思っていません。』

とまあ実に当然ではあるのですが大変に素晴らしい事を仰せな訳でして、ともすればこの論点を逸脱した議論が特に今般では日銀の長期国債買入運営に関する議論の中で堂々と展開する馬鹿民間がいる訳でして、まあその悪態は次のコーナーで行いますけれども。

でもってじゃあどうしたらいいのか、ですけれども・・・・・・・

『出口を含めた緩和政策の全プロセスにおいて、経済・物価との関係で適切な金融政策を行い、これを財政状況への配慮によって曲げることはない、という「結果」が必要です。その意味で、今後の日本銀行の政策運営をもって、示していくべきことと考えています。』

おおおおおおおお!!!!!!!!!何と立派な決意表明でしょう!!!!と思う訳でして、これはすんばらしい、とは思う訳です。

・・・・ええまあ思うんですけどね、その割にはアクチュアルの物価が2%を延々と上回っているのに、今の物価高はコストプッシュなのでいずれ下がると言い続けて「基調的物価」とかいうお気持ち物価を持ち出して大緩和政策を延々と継続している、という実態があるんですがそっちとの整合性はどうなっているんですかってなもんですし、今行っている長期国債買入の縮減だって金利急上昇したらいかんとか言ってるけど、それって財政状況への配慮が入っていませんでしたっけというツッコミをしたくなるわけで、まあ内田副総裁のこの講演自体言ってることは大変に立派なのですが実際の行動がこの格調高いお話に見合っているのか、というのは謎ですわな、と思いましたが如何でございましょうか。


・これは極めて微妙な論点を踏みに行っていてどうなのかと思う

この先に『4.銀行の銀行』ってのがあって、その後半のところに『(当座預金への付利とそのインプリケーション)』という話をしているのですが、ここでの説明は結構際どい地雷を踏んでいると思ったのでネタにしますと、

『しかし、現在では多くの中央銀行が、バランスシートの大きさと短期金利の操作を切り離しています。当座預金に金利を付すという金利操作の方法が導入されたためです。』

とのことですが、

『日本銀行も、 年に「補完当座預金制度」を導入し、超過準備(当座預金のうち準備預金制度に基づく所要準備を超える部分)に対する付利ができるようにしました(当初は臨時措置として導入されましたが、その後恒久化されました)。』

『金融機関は余った資金を日本銀行の当座預金に置くか、市場に放出するかの選択がありますので、裁定行動により市場の金利は日本銀行が付利している水準に近い水準に誘導されます。現在でいえば付利金利は0.5%、市場における短期金利は、0.48 %程度です。』

でまあそりゃそれで良いんですけど、この次の説明が結構な地雷でして、

『このことは、その後、技術的な金利操作の手段という意味合いを超えて、大きなインプリケーションを持つようになりました。』

でもってですね、

『ひとつは、金利操作と切り離して、バランスシートの大きさを決められるようになった結果、資産サイドを使った政策を大規模に行うことが可能になったことです。』

って言ってるんですが、それはそもそも「可能になった」というのは如何なものかという話でもありまして、すなわち日本銀行がバランスシートに資産を能動的に積み上げること、というのは見合いの日銀当座預金を積み上げることでありますので、積み上げる資産が民間資産であれば、日本銀行が民間に信用供与ができることになり、それは中央銀行による財政政策に他ならないし、積み上げる資産が国債であれば、それは財政ファイナンスになりませんか、ってお話になるわけですよ。

中央銀行による財政政策類似政策、というのが民主主義国家における財政運営においてやって良い物なのかどうか、という議論もそうですし、財政ファイナンスに関しては講演のその前の部分で内田副総裁自らケシカランと言っている訳なのですから、ここでいきなり「金利操作と切り離して、バランスシートの大きさを決められるようになった結果、資産サイドを使った政策を大規模に行うことが可能になったことです。」って言ってるのは中央銀行の原理原則から言ってヤバイ話ですよね、としか言いようが無いですよね。

続きを拝読しましょう。

『非伝統的金融政策の中心手段のひとつは、いわゆる「量的緩和」すなわち、国債の買入れによって長期金利を押し下げることですが、これを実行するのには、バランスシートの大きさとは無関係に短期金利をコントロールできることが前提になります。この点、量的緩和を実行している間は、割り切ってしまえば、金利をコントロールできなくても、ゼロ金利でもよいと考えることもできなくはありません。』

という事で実はこの講演最後のところに非伝統的金融政策の話があるのですが、今日はそこまでいく時間が無いのでこのコーナーまでで続きは明日以降って感じなのですが、こういう説明からの、

『しかし、量的緩和からの出口プロセスに時間がかかることはあらかじめわかっているので、その時に、大きなバランスシートを抱えながら、短期金利をコントロールできることが保証されていないと、こうした手段は採用できません。』

って言ってるんだが、出口プロセスの間に時間がかかる、だけではなくて、現状では長期国債の買入がどこからどう見ても財政ファイナンスという規模での買入を継続していて、それを中々減らせない、という状態になっている時点で、「インフレにならない」ことが前提じゃないとあの政策ができなかった、というアホウなことになっている訳ですし、まさにこの量的緩和というかYCC政策というかの副作用が徐々に顕在化してきているプロセスな訳で、そう考えますと「資産サイドを使った政策を大規模に行うことが可能になったことです。」といって大規模に行う、というのはそりゃまあ物理的には行えましたけど、物理的にできるというのとやることが適切なのかというのは別問題な訳で、当座預金付利で何ぼでもバランスシートを拡大できる、というこの説明は物理的な可能性と中央銀行としての適切な政策運営姿勢というのを意図的に混同して説明してるじゃろ、と申し上げざるを得ません。


・いわゆるアンプルリザーブシステムに関する説明はちょっと微妙

『バランスシートの大きさと短期金利の操作が切り離されたことのもうひとつの帰結は、短期金融市場の参加者と中央銀行の取引先の範囲が必ずしも一致しないことで起こる流動性の偏在への対応が可能になったことです。』

とな何ぞやという話だが、

『取引先と非取引先が混在する状況で、伝統的な短期金利操作によって、所要準備預金残高ぎりぎりの水準しか供給しないと、金融市場の多様な参加者に必要な流動性の量に足りない、ということが起こってしまいます。』

大昔の米国の場合はそもそもFF取引の金利(政策金利ではない)ってのは乱高下するもんだったし、大昔の欧州圏の場合はこの対策として資金繰り事故が起きにくいようにするために所要準備預金の水準を高めに置いて(その代わりに所要準備に付利をしたりしていた)運営したりしているので、別にこれはバランスシートでわざわざ対応しなくても制度設計や短期金融市場の設計で割と何とでもなる問題ではないか、と大昔から実務見ているワシは思うので、ここの部分はちょっと????ではあります。

『この問題は、米国FRB のように法律で当座預金取引先の範囲が基本的に預金取扱金融機関に限られている国では以前からあったのですが、近年は各国でノンバンク金融仲介機関(NFBI。保険会社、年金基金、各種ファンドなど)の存在感が拡大し、その影響が短期金融市場に及んでいます。』

って言ってるんですが、それは翌日物ファンディング市場における話とは違くねってことだし、大体からして日本の場合は中銀当座預金へのアクセスが広範に及んでいるので、民間金融機関の短期資金繰りにおいてNFBIがどうのこうのってのそんなに重要か(安定した資金供給主体、としての市場の安定性への寄与自体は大きいと言えるんじゃないか、ってのは思うけど)ってのはよくわからん。

『この状況に対応するには、中央銀行が付利を使って短期金利を操作しながら、市場に必要な量の流動性を供給できることが重要です。』

別に付利使わんでも常設預金ファシリティと常設貸出ファシリティでコリドア作りながら必要な場合には積上調節すれば問題ないと思うんですけどね。

『現在、各国の中央銀行は、バランスシートの縮小を進めていますが、その多くは、伝統的な金融調節方法に戻ることはないでしょう。市場の求める流動性に見合ったバランスシートを維持しながら、当座預金への付利によって短期金利操作を行うことになるだろうと思います。』

まあこれは多分超過準備のデザインがいわゆるアンプルリザーブになっていくだろうという流れにはなっているので仰せの通りの面はあるのですが、じゃあアンプルリザーブが常に良いのかというとそこも良くわからない面もありまして、アンプルリザーブシステムにおいては金融機関のファンディングに一種の中銀プットが入っているような状態になっている、ともいえる訳でして、ソルベンシーが本当の本当におかしくなるまで金融機関のファンディングが回ってしまうファンディング市場がある、ってのも市場参加者の規律を失わせることになるんじゃなかろうか(なので次にプルーデンス的な問題が起きるならこの市場デザインによって兆候が分からない状態で突如問題が顕在化する、みたいなルートがあり得ると思うの)とは思うのでありました。

ということで内田さん講演ネタはこの辺で、あとは関連悪態。


〇長期国債買入なんじゃが来年4月以降の計画って今から決め打ちする必要あるの???

金曜の午後はBBGですがもともとは木曜日の夕方にロイターが(先に英文で)打っててその後日本語も出ていたと思うのですが、ネット版だと日本語のニュースが拾えなかったのでしゃーなしでBBGニュースの方から参りますけど。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-06-06/SX9VE4T0AFB400
日銀が国債買い入れ減額幅の圧縮を検討へ、来年4月以降−関係者
伊藤純夫、藤岡徹
2025年6月6日 18:43 JST 更新日時 2025年6月6日 19:54 JST

→毎四半期2000億円に半減か現状維持かが議論の中心−今月会合
→来年4月以降の国債買い入れ計画、期間は先行き1年程度に

ということなんですが、前回は初手だったのと、そもそも先行きにそんな変な不透明要素は少なかった(少なくともキチガイ大統領のキチガイムーブは無かったんですから)訳ですが、足元では不透明要素だらけで来年の3月の時点で世の中がどうなっているか分からん訳で、まあ計画継続(四半期4000減を維持)だったらまだ話は分からんでもないんですが、買入減額ペースの上げ下げをこの時点で決めるのってそりゃ何かの政策意図があるんですかって話になるじゃろという話なんだが、何でこの「2026年4月以降の買入」がこんなにネタになるのか意味が分からんし、日銀も来週の会合で2026年4月以降の買入を決め打ちで出そうとしてるならちょっと落ち着けと思う訳ですよ。

んなもん今回はどうせ中間評価なんだから、中間評価として特に問題なし、2026年3月まではこのペースを継続して、その後のことは年末か来年1月のMPMでまた話をしますが、方向性は一段の縮小ですよ、ってだけアナウンスすりゃエエヤンと思う訳ですよ。

でもなんか木曜のロイターと言い、金曜のブルームバーグと言い、何でそんな先の計画についての決め打ちが話題になるのですかねえ、とは思いますが、まあ来週の決定会合で2026年4月以降の買入縮小ペースの決め打ちが出たらお前馬鹿じゃねえのって罵倒する予定なのでよろしゅうお願いするます(原則同じペースだけど近くなってからまた考える、だったらまあ罵倒しないかもしれないけど)。

まあ記事の方は前日のロイターさんも大体同じ線で報道していて、BBGの方が後追いなのですが、兎に角ロイターさんって過去記事の検索がしにくいのよ(検索しても上手く引っかからないことが多々ある)ということですいませんが以下BBG記事から。

『日本銀行は今月の金融政策決定会合で議論する2026年4月以降の国債買い入れ計画について、現行計画で進めている減額幅の圧縮を検討する見通しだ。複数の関係者への取材で分かった。』(上記URL先より、以下同様)

圧縮を何で今から検討しなければいけないのか、ということに関しては、

『来年4月以降の1年間に毎四半期2000億−4000億円の減額を行った場合、27年1−3月の月間買い入れ額は1.3兆−2.1兆円になる計算だ。減額ペースの減速が必要との主張の背景には、日銀が買い入れ減額を続ける中、短期的な国債需給の悪化などで市場に無用な混乱が生じないよう、より慎重な対応が必要との意見がある。』

とのことなんですが、そもそも論として現在はもうYCCやっている訳ではないんですから、「短期的な国債需給の悪化などで市場に無用な混乱が生じないよう、より慎重な対応が必要」って発想が根本的に間違っている訳で、日銀の保有国債をどうしていくのか、というのは(他の中銀と同じく)、短期金融市場における超過準備をどのような規模で置くのか、というのがあって、日銀の保有国債規模がこの程度というのがそこから決まって、でもってその保有規模に合うような買入が決まる、という話であって、(しつこいけど)YCCやってるんじゃないんだから、本来的には債券市場への配慮がどうのこうのとかそういうのは気にすべき話じゃないんですよね(原理主義者ですすいません)。

てなわけで、テーパリングというほどテーパリングも進んでいないこの段階で既に債券市場への配慮がどうのこうのとか言っている時点で今の日銀の長期国債買入は財政ファイナンスに他ならないし、日銀の買入が減ったら金利が上がって財政が困るとか言うのは、その前の黒田緩和の買入が過大であって、黒田は否定してたけど黒田日銀が財政ファイナンスをしていた、というロバート・ムガベ先生も大喜びな事をしていただけ、という話だし、財政ファイナンスとかいう不適切な状況を是正するの当然だし国債金利の上昇がどうのこうのとか言うなら国債発行減らせやという話だし、減らせないとか泣き言言ってないで「日本の財政は飛んでも無い状態です」って馬鹿政治共に知らしめるしかないじゃろ、などと過激派な事しか言わないアタクシなのでした。

てかさ、先週の「30年入札こけたら超長期国債発行減額の思惑でブルフラット」とかいうふざけた事が起きている時点で債券市場への配慮とかする必要ねえだろ寧ろ変な配慮したら当局プットバンザーイってコジキ共が喜ぶだけじゃとしか申し上げようがありませんな。

などと偉そうに申し上げておりますが、まあ問題の先送りを図って結果的に問題が後の方でさらに深刻になってもその時はワシ担当じゃないもんとかいう無責任理論で問題の先送りを延々とやっているのが失われた何十年におけるジャパンの仕様だと考えれば、今回もまた忍法「どうせ問題が発生した時はワシは担当してないもん理論」が炸裂して問題の先送りみたいなしょうもない弥縫策に日銀買入も巻き込まれる、には100万ジンバブエドル位は張った方が良いのかもしれませんな。ナムナム。










2025/06/06

〇30年国債入札がクソ弱かったので減額観測までは分かるがその先の市場後講釈は草生える

市況なのでロイターさんを引用するけどBBGも同様の市況記事を書いておりましたので別にロイターさんを晒上げる意図はないことを先にお断りしますwww

https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/5K3AGTCBORNIROR4RGIFC3UN5A-2025-06-05/
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は反発、超長期債発行減額の思惑で買い 入札は許容範囲
ロイター編集
2025年6月5日午後 3:39 GMT+9

『[東京 5日 ロイター] - <15:25> 国債先物は反発、超長期債発行減額の思惑で買い 入札は許容範囲

国債先物中心限月6月限は、前営業日比40銭高の139円35銭と反発して取引を終えた。米金利低下に加えて、低調となった30年債入札が許容範囲内と受け止められたことや超長期債の発行減額を巡る思惑がサポート要因となった。新発10年国債利回り(長期金利)は同4.0ベーシスポイント(bp)低下の1.460%。現物市場では超長期ゾーンを中心に金利低下圧力が強まった。』(上記URL先より、以下同様)

って話なんですけど、

『この日実施された30年債入札では、2.92倍と23年12月以来の低水準となり、テール幅も前回より拡大するなど、低調な結果と受け止められた。』

まあ応札倍率に関しては少ない方ってのはそれなりに意味があるんですけど多い方ってのは足切りがどこからどう見てもこの水準、って時には足切りでの案分考えて札が多く入るみたいなこともあるのでそんなにあてにはならんのだが、

『市場関係者によると、前場で大きく買われ入札に警戒感があった中だったものの「十分こなしたという評価だ」(国内銀の運用担当)とし、入札結果をみて市場参加者が買い始めた動きが入ってきたとみる。ただ、「今入札は国内投資家ではなく、海外勢の買いに支えられた面があり、こういった需要は永続的ではない」(同)とし、超長期債の発行減額はしっかりと実施されるべきだとの声が聞かれた。』

だそうなのですが、まあ直近ではマーケットメーカーのリスク許容度が落ちていて、昔だったら入っていた「止め札」みたいなのが入らないので、明確な投資家のニーズをバックにした札がないと流れてしまうってことなんでしょうけれども、入札流れたら結局その流れたのを見て買いが入りましたでござるの巻、なのはいいんですけど、

『 現物市場では超長期ゾーンを中心に金利が大きく低下。30年債入札結果を受けて「20日の国債市場特別参加者会合(PD懇)での超長期債の発行減額幅をめぐる思惑が先行し、徐々にポジティブに受け止められたようだ」(国内証券債券セールス担当)という。』

これはさすがに草どころか森な話で、弱い入札になってもその後急反発するんだったら、それは単純に「もうちょっと金利が上がればニーズが出てくる」という事を意味するんだから寧ろ減額不要まであるじゃろ、って話で、入札コケたあとに一段安とか、全然戻らんとかなら減額への期待っていうのも分かるけど「減額の期待で相場急反発」するくらいなら何で減額する必要があるんじゃヴォケとしか言いようが無いので、まあアホな話になっとるわ、とは思いました。

いやまあさすがに今回はカレンダーベース市中消化の一部振替の形で超長期は幾分か減額になると思いますけど、このムーブ見たらそんなに必死こいて減額せんでも結局のところある程度の金利上昇を甘受すれば普通に消化できるじゃん、というのを示した格好、というのが発行する側から見たときの通常の解釈になるんじゃないですかねえ、とアタクシは思うのですけれどもどうなんでしょうかね。てかだいたいからして超長期減額したら中短期か長期かしらんけど、そっちが増発されるんだたら中短期弱くなれよ(まあ超長期の減額分のカバーを中短期でやると誤差の世界になる説はあるけど)ってなもんですけどwww

あとまあそもそも論を言い出したら、発行があまりにも少なくなると市場の流動性って回復するどころか落ちるんですから、悪い入札なんだから発行が結構減額されるぜヒャッハーとか言って買ってるの頭の悪さが結構な水準に達していると思うんですけどねwwwwwwwww

まあなんちゅうかアホアホ相場だったので備忘メモということで。







2025/06/05

〇植田総裁内外情勢調査会講演(その2):政策修正の前のめり感は一切出さずに輪番縮小に意欲ですねこりゃ

てな訳で昨日の続き。
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/data/ko250603a1.pdf

・通商政策動向の経済への下押しの説明はやたら丁寧だったが「リスク」の方は割とアバウトで温度差があります

昨日は『2.通商政策の影響と経済・物価情勢』の『(わが国経済・物価の見通し)』の後半部分の物価の見通しに関するところまでやったら時間切れになってしまいましたが(すいません)、その先が『3.通商政策を巡るリスク』ってのがあるんですよ。

まあそもそもが「通商政策の影響」ってところで詳しく下振れ要因をこれでもかと並べて説明していましたので、わざわざ通商政策を巡るリスクってのを書くのも重複感が漂うわけで、そのせいかリスクの方は微妙なつくりになっています。

『ここまで、米国の関税政策による影響を踏まえつつ、わが国の経済・物価の中心的な見通しについてみてきました。こうした見通しに対しては、常に上振れないし下振れの可能性、リスクが存在します。特に、現在のように不確実性がきわめて高い状況にあっては、従来以上にこの点を念頭に置いておく必要があります。』

ここで下振れだけではなくちゃんと「上振れ」も言っているのは(関税交渉が思いのほか順調に進展したり、突然トランプが改心してめだか師匠ムーブになるというような可能性があるんだから当たり前だけど)当然ながら結構なお話。

というのはですね、4月の展望レポートって何がクソインパクトあったかって、経済見通し引き下げでリスクバランスは下、物価見通しも引き下げでリスクバランスはそれまで上だったのが下、でもって会見での植田さんの説明もハトハトチキン、って出し方をしたから「なんじゃこの全面降伏モードは」ということになったわけですよ。単に「今回は1回パス」だけで良かったのに過剰なまでに下方バイアスを強調した情報発信になっていたからあの相場になった、という面は多々ある訳でして、でまあさすがに大本営もやべえと思ったのか主な意見では展望レポート基本的見解や会合後の会見で示されたハトハトチキンバイアスをある程度中和(中立化ではない)させてるな、と思いましたし、その後の国会などでの説明も「見通し達成への確度が高まれば利上げ」ということでコミュニケーションを立て直している感があったわけです。

でまあ今回ですが、ワタクシはやはり遺憾ながらハトハトチキンだなあ(理由は関税政策の影響の説明部分がやたら丁寧なこと)だし、緩和の調整つまり利上げの前のめり感が一切出さない(理由はお気持ち物価の説明に力点置いている、すなわち利上げしない理由の方の背景説明ばかり一生懸命やっててアクチュアルの物価は「コストプッシュです」で方吹けているから)、というコンボなのでハトハトチキン認定しましたが、ここに「通商政策のリスクは上振れ下振れあり」とちゃんと書いている、というのはジャガーチェンジができる(やるかどうかは兎も角)布石はここでも着実に打っていることが分かるわけです。

ということなので、このあたりのジャガーチェンジができるようにしている仕掛け部分を重視すれば、むしろ衣はハトだけど下の鎧はタカじゃん、とも読めますので、タカ解釈がおかしいとは今回は思わないですアタクシ。

えっと、何の話をしていたんでしたっけ(笑)リスクに関するマクラの続きです。

『例えば、本日ご説明した日本銀行の中心的な見通しについては、「各国の通商政策等に関し、今後、各国間の交渉がある程度進展すること」、また、「グローバルサプライチェーンが大きく毀損されるような破壊的な状況は回避されること」などを前提としています。』

何かこの前提がわかりにくいんですよね、関税何%とかをレンジで良いから想定出してほしいわ。

『逆に言えば、こうした前提が崩れれば、先行きの見通しは上下双方向に大きく変化する可能性があります。また、通商政策の展開そのものに加えて、それらを受けて、内外の経済主体がどのように対応するのか、という点を巡っても大きな不確実性があり、十分な留意が必要です。

こうした点を踏まえつつ、以下では、この先、特に留意すべき3つのリスクについて指摘したいと思います。』

ということなので、ちゃんと上振れすなわち利上げ路線復活の話もしている訳ですよ、でもってこれ昨日も書いた気がしますし何ならこの後にも書きますが、まあ結局6月の国債買入減額の継続決定というのが今の最重要課題で、この課題を無事にクリア(=長期金利が無駄に暴れない)するためにはそれ以外の話は「1回パス」しておく、という感じだし、ちょうど関税問題もあるし、こりゃちょうどええとばかりに関税の経済への影響ガーを丁寧に説明した、ということなんだろうなあって思います。

と申しますのは、以下の「関税のリスク」なんですけど、ここで挙げられている話って経済下押しリスクちゃあ経済下押しリスクですが、特に3点目に長々とあるように「グローバル化の巻き戻し」という話に行数を割いていまして、じゃあグローバル化の巻き戻しってそれ経済下押しなのかというと必ずしもそうとは言えず、一方で物価に関しては明らかに構造的な物価押し下げ圧力の減衰を意味しますから、ここで言ってるリスクってリスクの話をしているからまあ見え方はハトなんですけれども、だから緩和政策が必要なのかという論点で見たばあいに必ずしもそうじゃないのではなかろうか、ってお話なのかなって思いました。

『(サプライチェーンの複雑性)

第1は、近年のグローバルサプライチェーンの高度化に伴い、その複雑さも増してきたことが、関税政策の影響に関する不確実性を高めているという点です。』

と、小難しい事を言っているようですが、

『IT関連を中心に、アジアにおける生産ネットワークが複雑に絡み合っている中で、思わぬ形でボトルネックが生じ、それがサプライチェーン全体に波及すれば、わが国の輸出入や企業活動に大きな影響を及ぼすことも考えられます。こうした観点からは、日米間の交渉だけではなく、各国と米国の交渉の帰趨についても丁寧にみていく必要があります。』

要するに日米交渉だけではなくて米中とか米とアセアン諸国の動向も見ないといけませんね、ってお話でした。

でもって次ですが、

『(企業の賃金・価格設定行動)

第2は、各国の通商政策の影響を受けて、わが国企業の賃金・価格設定行動が大きく変化してしまうリスクです。』

まあこれはリスクです、ってことなんでしょうけれども、前段で「マインドへの影響から需要が下押しする影響」について説明をしていて、なんか重複感半端ないですね。

『先ほど、労働需給の引き締まった状態が続く中、企業の積極的な賃金・価格設定行動は維持されるとの見通しを申し上げました。とはいえ、実際の物価の変動が企業や家計の予想や行動様式を変化させ、これを介して、先行きの物価への影響が増幅され得る可能性があることにも注意が必要です。』

賃金設定で言えば冬季賞与と来年の賃金設定、って事になると思うのですが、そこまで見るのか見ないでもどう見ても問題ないじゃろとなるのかの判断のポイントがどこにあるのかが良くわからんので、これまた通商交渉の進展度合いによって「ああ大丈夫大丈夫」となるかもしれませんね。


・インフレ期待は本当に2%に上がる過程なのでしょうかねえ

でもってこの部分で「インフレ期待のアンカー」という話が続くのですが、

『人々の物価観が2%にアンカーされている米欧と異なり、わが国では、いまなお、緩やかな物価上昇を前提とした賃金・価格設定行動が、企業や社会に十分に定着したとは言えない状況にあります。』

という認識になっているのですが、家計に関してはホンマカイナという感じで、緩やかどころではない物価上昇に対してどうしましょって感じになっていないのかねと思いますし、最近の値上げって寧ろお間ら調子乗ってないかムーブも感じないわけでもないし、本当にインフレ期待がまだまだ低い、というのが正しいのかってもうちょっと検討した方が良いんじゃないかって思うのですよね。

もしここを読み間違えていたら割と重大なダメージになるわけでして、この部分ってそりゃまあ日銀だって必死こいて実態について考えているとは思うのですが、緩和政策継続の方に思考が引っ張られていたりしたら後年戦犯扱いになりますよ本当に大事ですからあんまり過去に引っ張られないで、とは申し上げたいところです。


・結局は主要製造業大手企業の冬から春に向けての賃金設定で判断しそうですね

『そうした中にあって、関税政策の影響により、輸出企業やグローバル企業の収益に下押し圧力がかかる場合、それが自社の賃金抑制圧力や、サプライチェーンを通じたコスト削減圧力につながることがないか、については丁寧にみていく必要があります。』

何かオブラートに包んでいますけど結局は主要製造業大企業のこの先の賃金設定がデフレ脳な設定に戻ってしまうか、それともデフレ脳にはならないで、賃上げが多少マイルドになるにせよ、物価上昇にある程度追随できる賃上げになるのか、というのが注目です、って思いっきりゆうとりますなこりゃまた。

『逆に、グローバルに物流が混乱し、輸入物価に上昇圧力がかかるような状況が生じた場合、コストプッシュ圧力が物価、更には賃金に影響を及ぼす可能性がある点にも注意が必要です。』

後半は注意するのは良いんですが今回の講演の理屈、コストプッシュは中央銀行は対応しない、ですと注意が必要ったって注意した結果なんのアクションに繋がるのかが意味不明ですね〜。


・グローバル化の巻き戻しの可能性についての話が一番長いのよ

でもってこの次が『(グローバル化の先行き)』って小見出しですがこれがかなりの大作。

『第3は、より長い目でみて、米国の関税政策やそれを契機に構築される新たな国際的な関係が、グローバル化という世界経済の成長を支えてきた大きな流れにどのような影響を及ぼし得るかという点です。』

という話でして、これもはや目先の金融政策関係ないじゃろという話ですけれども、以下壮大な話になっているので鑑賞するには興味深いお話になっています、引用しますね。

『図表8をご覧ください。左グラフにありますように、世界の貿易や直接投資は、東西冷戦が終結した 1990 年代以降、2000 年代後半にグローバル金融危機が起こるまで、急速に増加しました。その後も、世界貿易は、世界経済の成長とおおむね同じペースで増加を続けています。また、右グラフにありますように、わが国の企業は、生産コストを抑制するサプライチェーンの構築や現地需要の取り込みなどを企図して、海外諸国と比べても、より積極的に対外直接投資に取り組んできました。』

はい。

『こうしたグローバル化への対応は、わが国企業の収益力強化に貢献してきたと考えられますが、一方で、様々なリスクを抱え込むことにもつながっています。』

ほう。

『例えば、製品の生産工程を細分化し、それらを複数の国にまたがって配置することは、コスト抑制に資する一方、生産・在庫管理を難しくしている面があります。こうした脆弱性は、コロナ禍以降に相次いだサプライチェーン障害によって、より明確になりました。』

まあそうですよねってのはありまして、こちとら昭和脳なので、それこそどっかの国でクーデターが起きましてどうのこうのとか、内戦が現在こんな感じで進行していますとか、そういうニュースを普段のニュースでホイホイと聞いていたわけなので、その時代から比較したらそら海外展開も進むし、急に昭和に戻ったらエライコッチャだわという話でもありますわな。

『また、ロシアのウクライナ侵攻などは、各国の経済安全保障に対する意識を高めることになり、これが世界の貿易や企業の生産活動に影響を与えるケースもでてきています。このような流れが続く中、今回の関税政策が、サプライチェーンの在り方に関する更なる検討を促すきっかけとなり、企業行動、とくに生産拠点の立地戦略に大きな変化をもたらす可能性があります。』

今回は戦争と超大国の横紙破りの合わせ技ですもんね。

『もちろん、生産拠点をどこに配置するかは、コストとベネフィット、様々なリスク要因を考慮して企業自身が判断すべき問題です。世界経済を巡る大きな環境変化は、企業が乗り越えなければならない新たな課題ですが、過去にも、わが国経済は、企業の前向きな取り組みを原動力として様々な課題を乗り越え、成長力を高めてきました。』


・グローバル化の話の後半はリスク云々の話ではなくて米ロに向けた素晴らしいメッセージになっていて評価されるべきです

でもってこの後の部分は大変に良いメッセージだと思います、引き続き引用しますが、

『こうした前向きな努力を後押しするためにも、企業が過度に国際情勢等に対するリスクを警戒しなくて済むよう、開かれた、公正かつルールに基づく国際経済秩序を支えていくことが大切です。』

これはまあロシアもそうですがトラ公に向かっても抗議表明しているような話ですが、大変に良いメッセージだと思いました。連中が聞く耳持つとは思えないけど、意思表示をするのはとても大事。

『この点は、私が出席した4月のIMFC会合(国際通貨金融委員会)でも改めて確認されました。』

ほほう。

『過去 30 年にわたる急速なグローバル化が、その成果の分配を巡って様々な難しい問題を引き起こしているのは事実ですが、その一方で、世界経済の分断化(fragmentation)やデカップリングの進展による勝者がいないこともまた、事実です。』

おーーー!

『各国は、今後、より良い国際経済秩序を構築する努力を重ねていく必要があります。その過程では、国際金融資本市場や国際金融システムの安定を確保していくことも重要です。日本銀行としても、各国の中央銀行や内外の関係者と情報交換をしながら、自らの持ち場において、こうした課題にしっかりと対応していきたいと考えています。』

なんかここだけ滅茶苦茶異質なんですが、植田総裁が思い入れを籠めて差し込みでもしていたのだったらば植田総裁素晴らしいじゃんと思いますし、まあ日銀としてもこういうメッセージを出したい、というのがあったのでしたらそれもまた素晴らしいことでして、この部分って目先の金融政策と関係ないからニュースネタにはならないのですが、もっと評価されるべきところ(というかまあ今回の講演での評価ポイントはほとんどここしかないわ)だと思いました。


・金融政策運営では金利の運営について今はパスだけど状況好転したらジャガーチェンジの余地を示す

『4.日本銀行の金融政策運営』は『(先行きの金融政策運営)』から始まりますが、ここはもう「当面は分からんのでパス」という説明で一貫しています。

『それでは、日本銀行の金融政策運営に話を移したいと思います。』

『ここまで申し上げてきたように、現時点で日本銀行としては、わが国経済は関税政策による下押し圧力を受けつつも持ちこたえ、賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇していくメカニズムも途切れることはないと考えています。』

「賃金と物価の好循環」やっぱり本格的にお蔵入りなんでしょうね、もうこの表現に統一されてますもん。

『基調的な物価上昇率についても、いったん伸び悩む局面はあるものの、2%に向けて徐々に高まっていくという大きな方向感は、これまでの見通しと変わりありません。その一方で、こうした中心的な見通しに対するリスクとして、各国の通商政策の今後の展開を巡る不確実性はきわめて高く、その金融・為替市場やわが国経済・物価への影響については、十分注視していく必要があります。』

でもってこの次に直近の米中合意(一時停戦合意みたいなもんですが)を受けての見通し変化は起きたのか問題にご丁寧に触れていまして、

『最近の各国間の交渉の進展、とくに米国と中国が、相互の関税率を大幅に引き下げることで合意したことは市場においてポジティブに受け止められていますが、それでもなお、不透明感が強い状況は続いています。金融政策運営にあたっては、これらの動向を丁寧に確認したうえで、適切に判断していく必要があります。』

まあこの書き方をみますと(ただの一時停戦合意だから当たり前ではありますが)先行きはまだ全然わからんから動かんもんねーというのは旺盛にみられるわけで、まだまだ動くような雰囲気は出しませんなというお話。

とは言え返す刀でジャガーチェンジの余地は残していまして、

『その前提として、現状、わが国の金融環境が緩和的な状態にあることは、重要なポイントです。図表9をご覧ください。これまで、予想物価上昇率が緩やかに上昇する中でも慎重に緩和度合いを調整してきたこともあり、現在の実質金利は、大規模緩和の時期をも下回る大幅なマイナスとなっています。また、金融機関の貸出スタンスは引き続き積極的で、社債等の発行環境も総じて良好な状態を維持しています。こうした緩和的な金融環境は、各国の通商政策の影響がみられるもとでも、わが国の経済活動をしっかりとサポートしていると判断しています。』

ちなみにこの「実質金利」(脚注にあるように「実質金利は、国債利回り(1年物)から予想物価上昇率(日本銀行スタッフによる推計値)を差し引くことにより算出」というだいぶ怪しげなものを使っていますけど、これは例によって展望レポート背景説明を見ますと、4月号だと本文32ページの図表47に同じものがあります。

でまあその実質金利の水準の見せ方の怪しさはさておきますけれども、まあこのように実質金利はドマイナスアピールをしているのですから、通商交渉好転の暁にはしらっとジャガーチェンジする布石は盛大に打っているわけですな。

『以上の点を踏まえますと、今後、私どもの中心的な見通しに沿って、わが国の基調的な物価上昇率が2%に向けて高まっていくという姿が実現していくとすれば、経済・物価情勢の改善に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えています。そのうえで、各国の通商政策の今後の展開やその影響を巡る不確実性がきわめて高い状況にあることを踏まえ、そうした見通しが実現していくかについては、内外の経済・物価情勢や金融市場の動向等を丁寧に確認し、予断を持たずに判断していく方針です。』

と最後は従来示している通りの話をして締めています。


・長期国債買入減額に関してはイタコ話法を使って日銀の減額に関するやる気を見せたものと解釈します

一方で異色だったのは次(実質最後)のコーナーの『(国債買入れの減額計画の中間評価)』です。

『最後に、長期国債の買入れについてお話しします。日本銀行は、かつて実施していた大規模緩和からの出口を進めていく中で、昨年6月、我々が市場から買入れている長期国債の金額を減らしていく方針を決定しました。翌7月には、図表 10 にあるような、2026 年3月までの減額計画を策定し、現在は、この計画に沿って実際に減額を進めています。』

から始まりますが、ここも含めて以下はただの現状のご紹介ですので引用はしますが流します。

『そこでは、「長期金利は金融市場において形成されることが基本」であるとしたうえで、日本銀行による国債買入れは、「国債市場の安定に配慮するための柔軟性を確保しつつ、予見可能な形で減額していく」としています。予見可能性という意味では、現在の計画において、来年1〜3月にかけて、国債買入れ額を毎四半期 4,000億円程度ずつ減額していくことをあらかじめ明確に示しています。一方、柔軟性を確保する観点からは、計画の中で、「長期金利が急激に上昇する場合には、機動的に、買入れ額の増額等を実施する」こととしているほか、国債の残存期間別の買入れ額といった具体的な事項は、その時々の市場環境を踏まえて実務的に決定する扱いとしています。』

『さらに、今月開催される金融政策決定会合において、現在の計画の「中間評価」を行うとともに、2026 年4月以降の買入れ方針について検討し、その結果をお示しすることとしています。』

でもって段落が変わって、

『そうしたもとで、現在、日本銀行では、この中間評価に向けて、国債市場の動向や機能度の点検を進めています。その一環として、先月半ばには、債券市場の参加者との意見交換を行うための会合を開催しました。昨日、同会合の議事要旨が公表されていますが、そこでの議論も踏まえたうえで、現時点で私どもが考えているポイントは、次の3点になります。』

ということでマクラが長いのは内外情勢調査会が相手なので背景説明しないで本編から入るのはちょっと不親切だから、ってことでしょう。では3点ですが、

『第1は、これまでのところ国債買入れの減額は、国債市場の機能度回復という所期の効果を発揮しているということです。』

まあやらないよりはましだけどもっと減額すればもっと機能度回復してたんじゃないでしょうかとしか申し上げようがない。

『市場参加者からは、関税政策の影響を受けて、春先以降、市場の流動性が低下する局面がみられたが、全体としてみれば、国債市場の機能度は改善傾向にあるとの指摘が多く聞かれました。こうしたもとで、来年3月までの現在の減額計画の修正を求める声は限られているようです。そのうえで、日本銀行の国債保有残高がなお多額に上るもとで、市場の機能度を一段と高める努力を続けていくことが重要との認識も、多くの市場参加者に共有されていたように思います。』

>来年3月までの現在の減額計画の修正を求める声は限られているようです
>来年3月までの現在の減額計画の修正を求める声は限られているようです
>来年3月までの現在の減額計画の修正を求める声は限られているようです

イタコ話法キタコレ!


『第2は、2026 年4月以降の計画を検討する際には、引き続き、予見可能性と柔軟性のバランスが重要であるという点です。』

なのは良いんですけど、来年4月以降のペースについて今から決め打ちする必要ってあるのかね、というのは疑問で、何ならFEDとかだって(規模が違うから参考にしにくいのはあるけど)とりあえずバランスシートの縮小幅(の限度)を決めてオートパイロットで減らしていって、途中で「今後はこれで行きます」って言ってペースを変更している訳でして、2026年4月以降を決め打ちするんじゃなくて、そろそろオートパイロット方式にしても良いんじゃないか(まあべき論としては加速しろなのでオートパイロット方式を今入れられるとペース遅いわと言い出しそうですけどワタクシ)。

でもって、

『予見可能性を確保する観点からは、あらかじめ、ある程度の期間の計画を示すことが適切と考えられます。一方で、国債市場の機能度の回復がなお道半ばにあることや、春先以降の価格変動の経験も踏まえますと、引き続き、柔軟性を確保する仕組みが必要とのご意見が多かったように思います。』

ここでもイタコ論法なのですが、市場の大きな変動に対する柔軟性、の他に「実はもっと加速しても良かったんじゃないか」なのが見えてきた時の柔軟性ってのもあると思うので、なにも今の時点で1年半とか2年も先の話を決め打ちせんでもよかろうって思うのですが(前回は初回だったから2年というか1年9か月にしてたけど・・・・・)。

まあそれは兎も角3点目。

『第3は、市場参加者からは、2026 年4月以降も、国債の買入れ額を減らしていくことが適切との声が多く聞かれたという点です。』

はいはいイタコ話法イタコ話法。

『もっとも、具体的な減額ペースについては様々な意見がありました。日本銀行としては、これまでの減額の経験を踏まえつつ、こうしたご意見も参考にしながら、次回の金融政策決定会合において、来年4月以降の買入れ額をどのようにしていくのか議論していきたいと考えています。』

いやマジで「方向性としては減額するのは変わらんのだが今後の減額の進捗を踏まえて12月会合か1月会合辺りを目途に26年4月以降の具体的な計画を策定したい」で何が困るのかとは思うんですけどねえ・・・・・・さもなくば普通にオートパイロットにして、何か不具合有りそうだったら修正しますわ方式にするか。





2025/06/04

〇植田総裁内外情勢調査会講演ですが「利上げへの熱量無し」「輪番削減はやる気満々」かなと

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/data/ko250603a1.pdf
最近の経済・物価情勢と金融政策運営
―― 内外情勢調査会における講演 ――
日本銀行総裁 植田 和男


・基本的には「慎重スタンス」の表明とアタクシは読みましたがハトハトと読まない人もいるでしょうな

今回の内外情勢講演はやや解釈に幅が出てくると思うのですよね。と申しますのは「見通し通りに推移すれば緩和政策の調整を行う」というのを強調しているというのがあって、しかも経済に関して言えば関税の影響の話をああでもないこうでもないとしているけれども、実際の経済の認識についてはここまでのところ大コケしている訳ではない、ということになっているうえに、最後の長期国債買入ペース削減問題に関しては割とやる気満々になっているんですよね。

とは言いましても、まあアタクシ思いまするに、政策スタンスの部分、米国関税政策の影響の説明の部分、「基調的物価」の説明部分を見ますと、まあ早期利上げなんてとてもとても、って感じの説明で、利上げをやっていって正常化しましょう感が全然出ていないな、という風に読んだので、どちらかというとハトハトというかや〜るき無し♪無し♪って読みました。

ってな訳でその辺を中心に読んでみるでござるの巻です。


・冒頭の「初心を忘れず」ってのはつまり2023年5月のハトハトチキン講演に立ち戻るということですよね

最初は『1.はじめに』ですが、

『日本銀行の植田でございます。本日は、内外情勢調査会でお話しする機会をいただき、ありがとうございます。今からちょうど2年前、私が日本銀行総裁に就任して初めて講演をさせていただいたのが本席でした。そこでは、総裁の職務を果たしていく際の心掛けとして、「論理的に判断したうえで、できるだけ分かりやすく説明していきたい」と申し上げました。また、物価の安定の達成というミッションの実現に向けて、当時ようやく見え始めていた「2%達成の『芽』を大事に育てていくこと」の重要性を指摘いたしました。』

でまあその「芽」を大事に育てていく、というのが何だったのか、2023年の内外情勢での金融政策運営の最後の部分を改めて確認しましょう。

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2023/ko230519a.htm
金融政策の基本的な考え方と経済・物価情勢の今後の展望
内外情勢調査会における講演
日本銀行総裁 植田 和男
2023年5月19日

『これをわが国の現状に引き直しますと、拙速な政策転換を行うことで、ようやくみえてきた2%達成の「芽」を摘んでしまうことになった場合のコストはきわめて大きいと考えられます。逆方向の、政策転換が遅れて2%を超える物価上昇率が持続してしまうリスクもありますが、こうした2%の定着を十分に見極めるまで基調的なインフレ率の上昇を「待つことのコスト」は、前者に比べれば大きくないと思われます。そうした意味で、先行きの出口に向けた金融緩和の修正は、時間をかけて判断していくことが適当だと考えています。この「芽」を大事に育て、賃金の上昇を伴う形で、2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現することを目指します。』(この部分のみ直上URL先2023年5月の植田総裁講演より)

ということで、「芽を大事に育てていく」とか言ってますがまあ既にセイタカアワダチソウ状態になってるじゃろヴォケと言いたいところですが、では2年前からどうなったのでしょうという話で講演に戻りますと、

『その後、幸いにして、わが国の経済・物価情勢は改善を続け、賃金の上昇を伴う形で2%達成の「芽」は順調に育ってきました。昨年3月には、2%の「物価安定の目標」が持続的・安定的に実現していくことが見通せる状況に至ったと判断し、10 年以上に及んだ大規模な金融緩和の枠組みを見直しました。その後、昨年7月、本年1月と政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整してきたところです。』

芽が育ちすぎてませんかねえ。

『もっとも、本年春先以降、米国が打ち出した一連の関税政策は、多くの人々の事前の予想を大きく上回る規模であり、内外の経済・物価を取り巻く環境は大きく変化しています。わが国の経済・物価を巡る環境も複雑さを増していますが、本日は、初心を忘れず、改めて、私どもの経済・物価に対する見方や金融政策運営の考え方について、出来るだけ分かりやすく説明したいと思います。』

>初心を忘れず

初心を忘れず、というのはまあ現国の試験問題的には「わかりやすく説明したい」だということになるのですが、2年前の講演が衝撃のハトハトチキン講演で為替市場における円安を促進した、ということがありますので、どうもこの「初心」とは「ハトハトチキン」を思い出しますし、ハトハトチキンが言いすぎならば「慎重なアプローチ」であり、「待つことのリスクは相対的に低いという認識」というお気持ちが溢れているようにアタクシには読み取れましたが勝手読みのし過ぎかも知れませんので念のため申し添えます。


・関税政策の影響はひたすら「経済に下」の話ばっかりなのと主役が展望レポート時の見立てから交代している感があります

『2.通商政策の影響と経済・物価情勢』ってのがまあ本編ですが、最初の小見出しが『(通商政策のわが国経済への影響)』ですな。最初の方の能書きは飛ばしまして関税政策の影響について。

『こうした各国の通商政策の動向は、いくつかの経路を介して、わが国の経済を下押しする要因となります。』

はい。

『第1の経路は、米国市場におけるわが国の輸出財の価格競争力の低下を起点としたものです。』

つまり従来の米国向け輸出に関連する数量あるいは収益への悪影響ですな。一応以下の能書きを引用します。

『これは、米国の関税政策の直接的な影響として、メディアなどで取り上げられることも多いかと思います。図表2をご覧ください。輸出関連のデータをみますと、これまでのところ、左グラフの実質輸出の実績はしっかりとしています。これには、今後の関税引き上げを見越した駆け込みの動きが一部影響していると考えられますが、この先、わが国企業が米国での販売価格に関税の影響を転嫁する場合には、米国製品にシェアを奪われるなどして、わが国からの輸出を抑制する方向に作用すると考えられます。』

でもって、

『実際、右グラフにあるように、輸出受注に対する企業の見方は、増加と減少の節目である 50 を下回っています。』

なので、マインドには出ているけれども実際には駆け込み効果などもあって今のところ数値としてはでていませんという評価ですね。

『他方、わが国の企業の中には、米国内の販売価格を変えずに、関税引き上げの影響を輸出採算の悪化という形で吸収する戦略をとる先もあると思います。この場合、現地での売れ行きや輸出数量に対する影響は限定的です。しかしながら、企業収益には下押し圧力がかかることになるため、これが先行きの賃上げや設備投資にマイナスの影響を及ぼす可能性があります。』

こっちは収益なので経済指標みたいな形で出るのにはもう少し時間がかかりますわな。

でもって次。

『第2の経路は、不確実性の高まりによる需要の減少を起点としたものです。』

でですね、この点ですけれどもこの先にしれっとこんな記述がありまして、

『第1の経路に比べて話題になることは少ないですが、むしろこちらのルートの方が、より早い段階でわが国経済の下押しに働く可能性があると考えています。』

あらま、って感じでして、従来(というか4月展望レポート)では関税政策の影響で世界経済に影響が来て(IMFのWEOもちょうど下方修正された時期でした)、それが国内経済に跳ねてくる、というルートで主に説明していたのですが、「むしろこちらのルートの方が、より早い段階でわが国経済の下押しに働く可能性があると考えています。」としているのは注目ですね。

以下能書き。

『関税政策を巡る不確実性がこれだけ高ければ、その影響を受ける可能性がある企業は、当然のことながら、各種の投資案件に対して慎重にならざるを得ません。』

『家計部門でも、将来の景気悪化リスクなどに備え、自動車・家電といった耐久消費財や住宅の購入など、当面、大きな買い物を見合わせるインセンティブが生じます。』

ついこの前(と言っても関税前)は耐久消費財の前倒しの可能性に言及していたのでこの辺エラク弱気化したなと思ったので、まあこの辺りからもワシ的にはいつものハトハト音頭、と思ってしまいました。

『実際、図表3の企業や家計のコンフィデンスのデータをみますと、わが国の企業の景況感や消費者マインドは、ここにきて悪化しており、不確実性の高まりが企業や家計の支出行動に影響を及ぼす可能性があります。』

と来まして、

『実際にどの程度の影響が及び得るのかという点については、日本銀行としても、次回短観において、今年度の設備投資計画の修正状況などをしっかりと確認していきたいと考えています。』

ということで短観の設備投資計画がにわかに大注目となってきましたね。

では3番目行きます

『第3の経路は、世界経済が広く減速し、グローバルな貿易活動が縮小することに伴う影響です。』

4月の展望レポートの時点ではむしろこれがメインになっていて、他の主要国の中央銀行があの時点ではFEDは「まだ様子分からんから1回パス」でしたし、もともと景気減速気味だったECBは「段階的な利下げの追加で政策金利を中立化」はしたものの影響はこれから見て行きます、という中でなぜかフォワードルッキングに世界経済の下押しが強まるからベースラインシナリオを変更しました、とぶっこんで来たわけですが、今回はメインが「米国向け輸出の直接の影響」「マインド悪化による需要減」で、特にマインド悪化の方がこれから直ぐに来ます、ってことで話が変わっていますわな。

以下は能書き。

『いま述べた不確実性の高まりに伴う支出先送りの動きは、日本だけでなく、世界中で生じます。』

『また、関税を課される国だけでなく、米国など関税を課す側の国でも、輸入物価の上昇などを通じて国内需要が下押しされる可能性があります。』

『とりわけ、多くの生産工程を必要とする耐久消費財や資本財などに対する世界的な需要の減少は、グローバルサプライチェーンを通じて増幅される形で、わが国を含む各国の輸出や生産を下押しする可能性があります。』

とまあエライしょんぼりしてしまう話ですが、

『この点、4月に公表されたIMFの世界経済見通しでは、図表4の右グラフにあるように、先行き、グローバルな貿易量の停滞に引き摺られる形で、世界全体の実質GDPが下振れる姿が予測されています。こうした貿易活動を通じた影響に加え、世界経済の減速が、海外現地法人からの配当金減少という形で、わが国企業の収益を下押しする可能性にも留意が必要です。』

とまあ威勢の悪い話。

最後は金融市場からの話です、まあこれは普通の事しか書いてませんが。

『第4の経路は、金融・為替市場を介したものです。』

はい。

『4月の半ばにかけては、米国による関税政策の発表をきっかけに、世界的に株価が大きめに下落し、ドル安が進みました。その後、こうした動きはある程度巻き戻され、世界的に株価や為替のボラティリティも低下してきていますが、引き続き、金融・為替市場の動向やそれがわが国経済に及ぼす影響を十分注視していきたいと考えています』

てな訳ですが、これ一つ留意点があって、「米国向けの直接的な輸出」と「マインド」ってのは関税交渉次第で一気に晴れる可能性がある代物なので、例によって例の如くこれが晴れたらまたも突如のジャガーチェンジが発生する、という可能性は無くは無い、というか多分そうなる、という点は留意すべき所でして、まあこれ読んでいると見極めに時間がかかりそうな説明にはなっていますが、所詮は関税交渉次第なので、トラ公の方が先に音を上げてしまえばこっちのもの、というのはおおありだと思いますからぜんぜん利上げないでっせと決め打ちするのもちょっとやりすぎ、というのはあると思います。


・現状の経済の走りについては逆に妙に強気ですがこれはジャガーチェンジをするための伏線ですね

次が『(わが国経済・物価の見通し)』ですが、ここの記述は威勢が良いのですよ。

『以上、米国の関税政策の影響について、やや詳しくご説明してきました。続いて、これを前提とした、わが国の経済・物価の見通しについてお話しします。』

という事ですが何とですね、

『いま申し上げたように、最近の関税政策は、いくつかのルートを通じて、わが国経済の下押し要因として作用します。もっとも、現時点で日本銀行としては、わが国経済は、こうした下押し圧力を受けつつも持ちこたえ、賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇していくというメカニズムも途切れることはないと見込んでいます。これは、高水準の企業収益がバッファーとなるほか、これまでの景気回復で家計の所得環境も底堅さを増しているためです。』

実質賃金のマイナスが続いているのに「これまでの景気回復で家計の所得環境も底堅さを増している」ってこれ下手に着火されたらアカン火種じゃろと思うのですが、まあ大本営発表ではこういう話にしているのは要は「足もとは強いよ」と言いたいという事。

『図表5をご覧ください。ここ数年、わが国の企業収益は、全体として歴史的な高水準を続けており、多少の下押し圧力を受けたとしても、資金面から企業行動が大きく制約される状況ではありません。』

『また、先ほど申し上げた関税政策の影響は、まずは製造業・輸出企業を中心に表れると見込まれますが、雇用全体の約8割を占める非製造業が堅調であることから、これが、わが国の経済活動を下支えすると考えられます。』

なんですかこの楽観(のように見える説明)はw

『この点、2019 年に米中貿易摩擦が拡大した局面でも、わが国の輸出や製造業の生産活動が弱めの動きを余儀なくされた一方、非製造業の業績は堅調に推移し、人手不足感が強い状況は維持されました。』

で、ここからが家計の話なんですが、実質賃金の話を丸無視して雇用が強い、という話をしていて、だから「家計の所得環境も底堅さを増している」ということにする、という割と強引感のある説明。

『人口動態の変化を受けて労働供給の限界が強く意識されている中、このところ、非製造業の人手不足感は一段と強まっています。こうしたことから、関税政策の影響を受けるもとでも、わが国の労働需給は引き締まった状況が続き、企業の積極的な賃金設定行動は、全体として維持されていくのではないかと判断しています。』

という根拠になっていますので、つまり現状が強いってのを強調しているのは、関税交渉が進展した場合にジャガーチェンジをするための布石を打っていることに他ならないので、この部分を重視して読めば「割とタカっぽいじゃん」となると思います。


・好循環は遂にお蔵入り(か????)

先ほどの部分を再掲しますが、

『もっとも、現時点で日本銀行としては、わが国経済は、こうした下押し圧力を受けつつも持ちこたえ、賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇していくというメカニズムも途切れることはないと見込んでいます。』

>賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇していくというメカニズム
>賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇していくというメカニズム
>賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇していくというメカニズム

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・( ゚д゚;)

なんですかこれはという感じですが、まあさすがに「好循環」って言ってると今は政治ばかりが叩かれているので日銀セーフ(寧ろ利上げするなとか言われていて金融リテラシー無し無しムーブなのが悲しいですが)という図になっていますが、どこかでうっかり犬笛を吹かれたらどうみたって「好循環」って炎上要素ですから、そらまあ好循環はお蔵入りさせろというのはあったのですが、今回しれっとお蔵入りですかね、まあ今後も確認したいですけど。


・物価に関しては「基調的物価」の説明でいろいろな図表登場

『次に、物価についてご説明します。足もと、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は3%台半ばとなっています。これについては、図表6でお示ししているように、昨年秋以降、米などの食料品価格が大きく上昇していることが寄与しています。こうした価格の上昇については、輸入した肥料や原材料、天候要因などのコストプッシュの影響が大きいとみており、少なくとも前年比でみた上昇率は、今後低下していくと見込まれます。』

コストプッシュだから対応しない、という屁理屈がおかしい点については今次のインフレ局面で主要国の中央銀行だって対応を間違えていて、その反省の元に米国の定例のロンガーランゴールあんどストラテジーの見直しが行われている、という状況になっているのに、これ黒田末期からの物価上昇をずっと一時的と言い張って政策の見直しが遅れていることの正当化先にありきで「コストプッシュだから対応しない」を続けた結果物価が高止まりしているんですけど、こんなん「初期段階でコストプッシュは一時的と思っていましたがどうもそうではなかったようです」って言えば済むことを何で日銀って「謝ったら死ぬ」ムーブをぶちかますんでしょうかねえと思います、まあいつもの悪態ですが。

『そのうえで、中央銀行の金融政策は、特定の財・サービスの価格を動かすものではなく、需要全体に影響を及ぼすことを通じて物価の安定を実現しようとするものであり、また、その政策効果は時間をかけて経済に波及していくものです。そのため、2%の物価安定を実現していくにあたっては、コストプッシュの直接的な影響を除いた基調的な物価上昇率の動きをみていくことが重要となります。』

はいきました基調的物価とかいうお気持ち物価。

『残念ながら、これさえみれば基調的な物価の動きがわかるという便利な指標は存在しません。物価変動の背後にある労働需給や賃金上昇率など、経済・物価に関する様々な情報とともに、各種の物価指標を丁寧にみていく必要があります。そう申し上げたうえで、図表7にお示しした代表的な指標を見る限り、』

ということで図表7を見ますと、巻末の方に「図表7 基調的な物価上昇率に関連する指標」ってのがあるので見るわけですが・・・・・・・・・・(PDF17枚目になります)

『@価格変動の大きい品目を控除した物価指標』

凡例を見ますと、

『@CPI(除く生鮮食品)
ACPI(除く生鮮食品・エネルギー)
BCPI(刈込平均値)
CCPI(加重中央値)
DCPI(最頻値)』

となっていますけど、毎月出している刈込平均の図表対比で扱いが随分寂しいですな、と思うと次に

『A賃金変動を反映しやすい指標』

というのが出てきまして

『@CPI(低変動品目)
ACPI(サービス)のトレンド』

ってのがあるんですが、これは展望レポート背景説明の方でも同じものがありまして、4月展望レポート全文(https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2504b.pdf)本文28ページ(PDFで30枚目)に3つあるグラフの一番下に「図表38:賃金要因によるCPIの変動」ってのがありまして、まあこれと同じものですわな。

『B中長期の予想物価上昇率』

がこの前もネタにしましたように、そもそもこの数値自体が推計値だし、家計のインフレ期待に関しては定性的な回答(大きく上がるとか上がるとか下がるとか大きく下がるとか)を数値処理しているので、過去の低インフレ局面を割と長い期間含めた処理をしたら局面変化の際にちゃんとその変化を読み取れているのかが怪しい(というのはスタッフペーパーの段階ではちゃんと記載されています為念)のに、あたかも「ザ・10年予想物価上昇率」があるようなグラフになっているのが毎度申し上げている通りの怪しさですし、

『C経済モデルから推計された指標』

『モデル@:フィリップス曲線の切片
モデルA:時変VARモデル
モデルB:準構造モデル』

こりゃ何ですねん(フィリップス曲線は4月号展望全文の本文31ページに出ています)というのがありまして、なんかいろいろと説明しようとしているのは分かるのですが、どうせお前らまたチェリーピッキングしとるじゃろと言いたくなるのですな。

とは言いましても今回新手に出てきたCの数字はなんか急速に2に接近してて、何ならお前らこれ物価目標達成じゃなねえのとも思ってしまいますので何なんでしょうという感じではありますが、本編に戻りますと。

『わが国の基調的な物価上昇率は、これまでのところ緩やかに上昇していこれまでのところ緩やかに上昇しています。』

となっているだけでお気持ち物価の方は威勢良くない説明になっていますわな。ただまあさすがに実際の物価に関しては、

『4月の消費者物価指数をみても、様々な品目において、いわゆる「期初の値上げ」という形で、企業が人件費や物流費を含むコスト上昇を販売価格に反映する動きが続いていることが確認されました。』

としていますが、最後に関税政策を出してきて

『もちろん、関税政策の影響を受けてわが国の経済成長のペースが鈍化することは、物価に対する下押し圧力として作用します。』

つまりは利上げを前倒しする気は皆無というのはよくわかります。

『しかしながら、そうしたもとでも、先ほど申し上げたように、賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇していくメカニズムは維持されると考えています。また、先行き、各国間の交渉が進展し、通商政策を巡る不確実性が低下していけば、海外経済は緩やかな成長経路に復していき、わが国経済の成長率も高まっていくことが予想されます。』

ということなので、まあ一応関税交渉次第ではジャガーチェンジの可能性は大有り、というのは把握できたなというところではあります。

・・・・・ここで時間切れになりましたので続き(主に輪番ネタ)は明日で勘弁してつかあさい。






2025/06/03

お題「債券市場参加者会合の議事要旨が出てたので雑談を少々」

これはさすがの公共放送です
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250530/k10014819991000.html
市場も気になる!消費税減税議論の行方は【経済コラム】
2025年6月1日 11時23分

日銀の輪番がどうのこうので投資家がストライキとかいうゴミにも劣る題名の記事書いていた某ベンダーには猛省を促したいですな。いやまあ公共放送のHP読者に輪番オペがどうのこうのと言われても分からんから書かんってのは有ると思うけどw

この調子で次は「基調的物価って何?」ってお題でお気持ち物価について寸鉄をぶっこんでいただけることを期待しますし、そういうのを理性的に書いてくれるのはやっぱり公共放送さんしか居ないなあと思うのでした。


〇債券市場参加者会合議事要旨出ましたがまあ特にまとまりはないけど感想雑談を

https://www.boj.or.jp/paym/bond/mbond_list/mbond250602.pdf
「債券市場参加者会合」第 22 回議事要旨

1.開催要領
(日時)
銀行等グループ 5月 20 日(火)15 時 45 分から
証券等グループ 5月 20 日(火)17 時 30 分から
バイサイドグループ 5月 21 日(水)16 時 00 分から

(場所)日本銀行本店

(参加者)「債券市場サーベイ」等に参加する金融機関の実務担当者

(日本銀行出席者)金融市場局長、金融市場局総務課長、同市場調節課長、同市場企画課長

とまあそういうことで行われたようですが、こういうのってどういう話をするのか、という点で難しいものがあって、まあ今回の場合はテーマが輪番減額の話だから基本その話になるんですけど、より中長期的な話をしたいのか、目先の話をしたいのか、という辺りって(これはまあそういう設定にしたの市場局じゃなくて総裁方面だから仕方ないのですけれども)今回は先行きの話についてと目先の話について一緒くたにやってるうえに、先行きに関してももっと長い期間の話のべき論、という話なのかそうじゃないのか、というのも議事要旨を見ると判然としないなあという所でして、結果として読んでみるとなんというカオスのごった煮、ということになっておりますわな(個人の感想です)。

まあ長期的なべき論に関しては財務省の何とか委員会じゃないですけど、その手の諮問会議方式の方がよいのかも知れないなとは思いますし、特に本件のような日銀のバランスシートに関する話では、債券市場の話だけで考えても話が完結しないので、逆にこういう会議で中長期的な話をすること自体が無理筋じゃねえの、とは思います。

と申しますのも、債券市場の人たち普段は通常の短期金融市場における金融調節とかもともと興味がないところに来て黒田緩和以降の大幅な日銀当座預金の拡大で日々の資金需要の変化がどうしたこうしたとか分からんですけど、日銀保有国債残高に関してはひとえに短期金融市場における資金需給調整をどういうツール(今なら超過準備付利というツール)で実施していくか、という思いっきり短期市場プロパーの話になるので、まあそもそも論として中長期の姿を短期市場プロパーじゃない債券市場参加者会合で論じるというのには無理があるのでそんなの聞く必要ねえだろ、とは思いました。

・・・・ただまあこの点は総裁がいつぞやの会見で「2026年3月以降の中長期的な姿も云々」とか変な事言い出すからこうなっているのです、というのは繰り返しましてさて内容をちょっとだけ拝読しますが。

『2.日本銀行からの説明等

・ 日本銀行より、@最近の市場動向と市場調節、A国債市場の流動性、B債券市場サーベイの結果について説明し、C事前照会で寄せられた意見を紹介した。

3.参加者の意見
・ 上記説明の後、@これまでの買入れ減額を踏まえた国債市場の動向や機能度、A現行の長期国債買入れ減額計画、B2026 年4月以降の長期国債の買入れ、Cその他について意見を尋ねた。事前照会を含め、会合参加者から聞かれた主な意見は以下のとおり。』

ということで、事前照会の方(すなわち先に公表された資料)とだいたい同じ話になっているのですが、その時に無かった意見を少々鑑賞しておきますね。なお@とAはまあどうでもよいのでB以降の部分を見ますが、

『現行の長期国債買入れ減額計画』ってところから。

『・ボラティリティの上昇により市場全体のリスク許容度が低下し、需給環境も良好ではない状況で減額ペースを加速させると、かえって市場の機能度を低下させる恐れがあるため、現行計画を変更することは望ましくない。また、減額は金融政策の正常化の一環と理解しており、計画の途中で減額ペースを緩めると、誤ったメッセージを送ることになるため、これも適切ではない。』

まあ結局動かすなって話で、実務的にはまあそうじゃろうなとは思うのですが、ただまあそもそも当初の減額計画が(それまでの国債買入規模が馬鹿でかかったうえにマイナス金利政策解除して数か月の時点だったこともあって)及び腰気味の減額計画だった(と私は思っていますが異論は認める)ために市場機能の回復が遅れている、という可能性もあるのではないかと思うので、本当はその点をもっと深堀りした方が良い話ではあるんですよね。

まあそんな感じで、もともとに立ち返った時にこのペースで本当に良かったんだっけ問題は大いにあると思うのですが、実務的にシャーナシということで、

『・市場にショックが生じ、かえって減額の流れが途切れてしまうような事態は避けるべきであり、予見性を維持するという観点でも、減額の加速や一度の大幅な減額といった見直しはせず、現行計画を維持するべき。』

ってな話もあったようで。あと、事前資料の方では1行コメントになっていましたが、

『・現行計画のもとで、過度なボラティリティが生じることなく、着実に減額が進んだことや、国債補完供給に関する措置も相俟って、市場機能度が緩やかに改善してきた点を評価している。現行計画については、当初予定どおり実施することが適切だと考えている。』

という評価もまあそうですねとは思いました。ただ債券市場のスムージングはそれでいいのかもしれないけど、物価が高止まりしている中で日銀のバランスシートの縮小って本当は急がないといけなくなってきていると思うのです。

と申しますのは、これは年末に日銀のバランスシートに関して企画局ペーパーが出ていた時にちょっとネタにしましたけど、財務シミュレーションの前提にストレステストは無いわ、前提はユルユルのユルな時間かけていく前提だわというの「しか」出せないというのが今の日銀のバランスシートの抱える潜在的なリスクな訳で、正常化を加速させないといけない事態や金融引き締めまで行かなければいけない事態になった時に長期国債買入をこんなユルユルでやってたら対応余地が狭くなるのと、日銀財務がクソ悪化した時のリスクがある(一時的悪化は問題ないとは言え、信認はそういう理屈だけでは決まらないのでリスクはある)のですが、債券市場参加者会合でそっちのテーマでの話をする人もいない(そういうお題は課されていないし)ので、まあその辺はどうなのですかね、とは思います。


『26/4 月以降の長期国債の買入れ<ペース>』

最初の『(月間買入れ金額の減額ペース)』は意見がバラバラ過ぎてクソワロタという感じなのですが、そもそも論として日銀の長期国債買入はYCC政策をやっていた時期は長期金利の抑制という観点で実施していたものですが、今はあくまでも「資金供給オペの一環」なのでありまして、ただまあ過去YCCで馬鹿みたいな買入をしてしまっているので一度にゼロにできないから段階的に減らしている、というだけの話なんですよね。

然るに、意見を見ますとどう見てもお前ら日銀の長期国債買入を「あてにして」ポジション運営をしようとしているだろ、と思われる意見が散見されていまして、こういう状態、すなわち中央銀行による長期国債の買入が市場にビルトインされているような状態、というのがそもそも論としてまちごうとるのですから、まずそのYCC脳を何とかしろと申し上げたいのですが、まあゆうてマイナス金利にYCCってのも10年くらいやってた訳でして、債券市場関連で息していた時間帯の中でその10年が殆どって方もそりゃ多いじゃろと思う老害ジジイのワイとしては、輪番が無いとマーケットメークできないとかただの甘え、と言いたくはなるのですが、言うと老害ジジイと言われるのが確定的なので大人しく黙っておくことにしておきます(黙ってないですかそうですかwwww)。

でまあそちらは事前資料と同じもの(文章が長いだけ)しか無かったので次に行きますと、


『26/4 月以降の長期国債の買入れ<買入れ金額等>』

こちらも事前資料通りだったのですが、事前資料の中では割愛されていた部分が紹介されていたのがあったので拝読拝読。

『・3兆円程度であれば、需給バランスが崩れ、金融システムの不安定化を招く恐れが低く、かつ日銀保有額も徐々に減少していくため、一旦この水準を維持することが望ましい。』

というのは事前資料の方にもあったのですが、さらに追加がありまして、

『更なる減額を行う場合、IRRBB 上の制約を踏まえた銀行の保有余力や、銀行以外の投資家の保有余力の確認が必要。』

・・・・・節子、それは財政ファイナンスって言うんやorzorz

「市場が支えられないから中央銀行が買うべき」ってのは何とかショックみたいな金融ショックの時にいう話としては危機対応で仕方ない面があるので、一から十まで中銀の介入を否定する気はアタクシとてさらさらないのですが、今の状況のどこがショックで危機対応なのか、ということを考えた場合、危機対応の時みたいな発想で考えるのはどう見たって良くないというか、このケースで言えば中銀による財政マネタイズを積極容認しているのに他ならない話になりますわな。

まあ発行に関しては要は発行を減らせ、すなわち中長期的な財政健全化という2013年2月の政府と日銀の共同文書に立ち返って話をすべき問題なので、そういう意味では2026年4月以降の買入が何兆円になるべき、みたいな話も何でいまする必要がありますねんとは思うので、日銀のこのお題のセッティングにも問題がある(のだがしつこいようだがこれをやらせているのは植田総裁の会見での説明によるので市場局よりも上の方が問題なのですけど)とは思いますけどね。

あと、これまた事前資料の方にもありましたが、

『・長期の計画を示す場合、目指すべき超過準備の姿も含めたバランスシートの考え方を示すと、予見性の向上につながると思われる。』

ということですが、まあだいたい今の中銀業界では「アバンダントリザーブ」を「アンプルリザーブ」に縮小して、ただそこから「スケアスリザーブ」に下げるのはよーせん、という形になっている向きが多いとは思うのですが、じゃあ日銀がアンプルリザーブにする、って言ったって所要準備が13兆円しかないわけで、アバンダントにも程がある今の状態で「適正なアンプルリザーブがどこか」とかわかる訳ないだろ、と思うのですよね。

つまりですね、植田さん「中長期的なものも示したい」みたいなこと言ってたとおもうのですが、どこからどうみてもそれは寝言オブ寝言じゃろ、と思うのです。

ちなみに話は脱線しますが、アタクシ的にはこの「アンプルリザーブ」ってのもあまり好きじゃなくて、と申しますのは、この方法ですと「中央銀行当座預金」が「市場運用よりも有利な運用先」になってしまうので、中銀当座預金へのアクセスの有無によって市場参加者間の競争のスタート時点の下駄が違ってくることになって、市場の価格発見機能が働く前に、この参加者間の不公平アービトラージの方が先に取引として出てしまう傾向が(特に超過準備が多くなればなるほど)発生してしまうので、市場デザインとしてあまりよろしいものではないと思うのです。

でまあそれよりはましだと思うのは旧ECB方式で、金融機関への所要準備をやや厚めに積ませる代わりに所要準備には付利を行い(ちなみにこの時代日銀もFEDも当預付利はしてない)、超過準備に関しては市場金利の下限を画すための常設ファシリティ金利(デポジットファシリティ)での付利を行い、市場金利の上限を画すための常設ファシリティ金利(マージナルレンディングファシリティ)で付利すりゃエエンチャウノとは思うのですが、一旦アバンダントリザーブの付利金利(゚д゚)ウマーとなってしまうとそれを引っぺがすのは(ひっぺがされる方からしたら収入剥奪だから)なかなか大変じゃろうなとは思うのですけどね。


あと、『その他のご意見』ってところですが、こちらは事前資料にもありましたが、ちょうど対句になっているようなのがあったので改めて並べておきます。

『・残存期間別の国債買入れ金額の決定に当たっては、フローだけでなく、ストックである発行残高対比の国債保有比率も勘案すべき。』

『・日銀保有比率の高い残存5〜7年の銘柄が恒常的に割高な状態となっており、イールドカーブの歪みを改善する観点からも、国債補完供給の減額措置の上限緩和、要件緩和の対象銘柄の拡大などの柔軟な措置を検討しても良いのではないか。』

ということで、結局これってYCCの最後に無駄な延命のために連続指値オペだのなんだのを乱発した弊害がここに来て表れてるって話でして、多角的レビューってこういう後から出てくる問題点をネグって纏めちゃっているのが罪深くて、数年後にもういちど多角的レビューのやりなおしをしてほしいと思うのでした。まあやらんじゃろうけど。


あと、この意見は良かったですね、事前資料にもあったけど・

『・超長期ゾーンの需給悪化は、発行に比して投資家需要が少ないという構造的な要因によるものであり、日本銀行が根本的に対応できる余地は小さい。』

そうなんですよ、そこを日銀に何とかさせようとするのは、ただの財政ファイナンスになるんですよね。

ということで今朝はこの辺で勘弁






2025/05/30

〇トランプ露骨な圧力キタコレ

いやーどこの未開国だよアメリカさん
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/LGCT5WLW4NLS7CPXC6O4TQHVMY-2025-05-29/
「利下げしないのは間違い」、トランプ氏がパウエルFRB議長に直接伝える
ロイター編集
2025年5月30日午前 4:39 GMT+9

『[ワシントン 29日 ロイター] - トランプ米大統領は29日、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長と面会し、主要政策金利を引き下げないことは「間違いだ」と伝えた。ホワイトハウスのレビット報道官が明らかにした。』(上記URL先より、以下同様)

これはロバート・ムガベ大統領も天国でニッコリorzorz

『トランプ大統領がパウエル議長と面会するのは2019年11月以来。トランプ氏はFRBが利下げを行っていないとして、これまでも繰り返し公の場でパウエル議長を非難してきたが、今回議長に直接会って伝えた格好となる。』

傍から見ているとこんな無茶苦茶やっててよく軍部が大人しくしているわと思ってしまうレベルなんだが、FRBちゃんからはこんなリリースが。

https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/other20250529a.htm
May 29, 2025
Statement on Chair Powell's meeting with the President

『At the President's invitation, Chair Powell met with the President today at the White House to discuss economic developments including for growth, employment, and inflation.』

discussという雰囲気ではなさそうだが・・・・・・とおもったら、

『Chair Powell did not discuss his expectations for monetary policy, except to stress that the path of policy will depend entirely on incoming economic information and what that means for the outlook.』

discussじゃなくて議論する代わりに主張した(except to stress)って思いっきり書いてあるのはさすがにFRBもナメトンノカとトサカに来ているということでよろしいでしょうか。

『Finally, Chair Powell said that he and his colleagues on the FOMC will set monetary policy, as required by law, to support maximum employment and stable prices and will make those decisions based solely on careful, objective, and non-political analysis.』

「as required by law」とか「non-political analysis」とかもうバチバチに火花飛ばした表現でこれはFRB当然とはいえ良く頑張っておられる、ということでございますな。

・・・・・・・いやこうなるともはやプーチンよりもタチが悪いまであるわトラ公(個人の感想です)


〇超長期ジャイアントスイング止まらねえ(今日も備忘メモ)

https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/YLUBDJAKIZLOLMEL33BMBW46EA-2025-05-29/
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は反発、売り先行後買われる 長期金利は1.52%に小幅上昇
ロイター編集
2025年5月29日午後 3:36 GMT+9

『[東京 29日 ロイター] - <15:14> 国債先物は反発、売り先行後買われる 長期金利は1.52%に小幅上昇

国債先物中心限月6月限は、前営業日比10銭高の138円95銭と反発して取引を終えた。売り先行後は前日の反動や水準に着目した買いが入った。新発10年国債利回り(長期金利)は同0.5ベーシスポイント(bp)上昇の1.520%。』(上記URL先より、以下同様)

とまあ横綱と10年カレント見ますと、うーんちょっとツイストスティープしましたねえ、くらいの話で収まるのですが、問題は毎度の超長期でして、

『現物市場では10年物以外の新発国債利回りも概ね上昇。2年債は前営業日比0.5bp上昇の0.750%、5年債は同1.0bp低下の1.030%、20年債は同5.0bp上昇の2.445%、30年債は同8.0bp上昇の2.980%、40年債は同2.5bp上昇の3.125%』

えーっと、7年が10銭高(1毛ちょいくらい強)に対して20年が5甘で30年が8甘ですかそうですか、ってなもんでして、昨日は10−25年の輪番があって輪番イマイチでこけましたっていうか引け近くに更にこけた感があったので何なんですかねえって感じですが、結局相変わらずの板の薄さでちょっと大人の売買があると値段がすっ飛ぶとかそういう話ですかしら知らんけど。

『TRADEWEB
    OFFER  BID   前日比 時間
2年  0.74   0.755   0.002 15:13
5年  1.027  1.035   -0.005 15:13
10年  1.516  1.524    0.011 15:19
20年  2.442  2.45   0.051  15:14
30年  2.97   2.987  0.083  15:19
40年 3.115   3.137   0.04  15:19』

とまあそんな訳でカレンダーベースの市中消化の組み換えがあるかも云々がらみのネタがメインだとは思うのですが、盛大にフラットニングしたと思ったら今度は盛大にスティープニングしている訳でして、これ捌きが悪いと盛大に往復ビンタ食らいそうですし、往復ビンタにならずともこういう流れですと上での踏みと下での投げが発生していて、なんかまあ期初早々(って言ってももう2か月経過してますけど)エライコッチャでございますがなという所ですわな。

まあだから日銀が超長期の買入増やせというのは話の筋がだいぶ違うじゃろ、というのは超長期アイヤーの当初はそんなことを言ってるポンポコリン何とかストも散見されたような気がしますが、さすがにそれは筋違いじゃろ、というのが人口に膾炙しているようで、まあ発行サイドの方で調整(要はそもそもが発行のし過ぎ)じゃろという話になってきているのは結構なお話ではあるかなと思います、個人の感想ですが。




2025/05/29

〇ウィリアムズに期せずして公開処刑されてしまう日銀テラワロス、からの「合成予想物価上昇率」へのツッコミ

これはクソワロタ
https://jp.reuters.com/economy/federal-reserve-board/HDWEBDEV3JKC5AMEPR4U3V6I6E-2025-05-28/
インフレが目標から乖離し始めれば強力な対応必要=NY連銀総裁
木原麗花
2025年5月28日午後 1:31 GMT+9

『[東京 28日 ロイター] - 米ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は28日、インフレが目標から乖離し始めた際に中央銀行は「比較的強力に対応」しなければならないと述べた。』(上記URL先より、以下同様)

こwwwれwwwわwwww

『米国の関税や通商政策が経済に与える影響の不確実性が高いことを考えると、中銀は問題に対する完璧な解決策を目指すのではなく、「間違った場合のコストが利益をはるかに上回る」ような措置を避けることに集中すべきだとした。』

まあまあ大本営屁理屈局減屁理屈企画課としては「日本は米国と違ってインフレ期待が2%以下の水準にあって2%にアンカーされていない状態を引き上げようとしているのでウィリアムズ氏の説明は当てはまらない部分がある」とか「米国の場合はインフレ期待が2%から上方乖離してしまうことが大きなリスクなので、間違った場合のコストが大きいのは過早の緩和措置だが日本の場合は再度デフレ状態に陥る方が大きなリスクなので間違った場合のコストが大きいのは過早の緩和政策の修正である」って屁理屈を捏ねるでしょう、というのはもう言われる前に気が付く位には屁理屈局の屁理屈は見飽きているので秒速で回答できるんですけど、まあそれはさておきましてwww

『東京で開催された日銀の氷見野良三副総裁との対談で、中銀が避けなければならないコストのかかるリスクの一つはインフレ期待が目標から乖離することだと指摘。「インフレが極めて持続的になることは避けたい。なぜなら恒久化する可能性があるためだ」と語り、そのためにはインフレ率が中銀目標から乖離し始めたら「比較的強力に対応することだ」と付け加えた。』

wwwwwwwwwwwwwwwwww

まあウィリアムズにその意図があったかどうかは分からんけど、実際の物価が3年も上振れて続けているのに、謎の「基調的物価」を持ち出して頑なにアクチュアルの物価上昇の長期化をネグっているし、物凄い勢いの緩和を未だに続けているのに平然としている、という講演を前日にぶっ放した植田総裁に対してとんでもない勢いでの砲撃になっているのはクソ笑いました。

『「われわれはインフレ期待が有害になるような形で変化する可能性があることを強く認識しなければならない」とも話した。』

『ウィリアムズ氏は、こうした不確実性を踏まえ、中銀は長期的なインフレ期待を安定させるだけでなく、短期的な期待も「秩序立って」いることを確認し、国民の将来の物価動向に対する認識が「数年以内に」中銀目標に向けて戻るよう努力しなければならないと述べた。』

でまあ大本営屁理屈局に言わせればインフレ期待が2%行ってないから寧ろ政策の中立化は時期尚早ってことになっているのですが、昨日植田さんの講演をネタにした時にご紹介した「合成予想物価上昇率」なんですけど、これってそもそも論として「合成予想物価上昇率」そのものが下方バイアスあるじゃろ、というツッコミをしたくなる面がありまして、改めてこれを見ますと、

https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2024/data/rev24j05.pdf
期間構造や予測力からみたインフレ予想指標の有用性

(まあだいたい「多角的レビューシリーズ」ってのは黒田緩和の正当化という結論先にありきで作った妙なペーパーが多くて将来にも禍根を残すんじゃないかと危惧しているんだがその話はまあさておき)

『インフレ予想指標の予測力 』って小見出しのあたりから見ますと、ってまあこの部分はおまけなのでご興味のある方はURL先の本編をちゃんと読んでいただければと思いますが(以下の引用は直上URL先2024年5月の日銀レビュー本編より)、

『【図表 6】インフレ予想指標の上方バイアス 』
『【図表 7】インフレ予想指標の予測力 』

ってのがあって、色々な指標の「過去の」情報バイアスや「過去の」予測力をみているのですが、この図表6にしても図表7にしても、その計測期間がどうなっているのか、というのは脚注に書いてあるのですが、

図表6→『全サンプルは、2007/1Q〜2023/4Q の値。』
図表7→『@は 2007/1Q〜2022/4Q、Aは 2007/1Q〜2020/4Q の値。』

となっていまして、要するにこれ過去の低インフレ局面におけるバイアスや予測力を見ていまして、そこは何ぼ屁理屈日銀でもさすがにちゃんと説明しているのですが、小見出しの『(年限別にみた各インフレ予想指標の予測力)』ってところで、

『図表7は、@1年先までの物価上昇率、A3年先までの物価上昇率それぞれについて、各指標の予測誤差(ベンチマーク対比)をまとめたものである12。』

図表7は本編を見て味噌。

『まず、1年先までの物価上昇率に対する予測力をみると、多くのインフレ予想指標で、ベンチマーク対比、統計的に有意な予測誤差の低下(改善)がみられる。家計の量的質問に基づく指標は、水準バイアスを調整しない場合には予測力がみられないものの、バイアスを調整すると大きく改善し、コンセンサス・フォーキャストによるエコノミスト予想より高い予測力(低い予測誤差)を示すようになる。その他の指標では、バイアスの調整前後で概ね同程度の予測力となっている。』

なので展望レポート背景説明の中に出てくる「家計の予想物価上昇率(質的質問)」って部分にはバイアス調整が入っているんですけれどもこれが曲者なのは察することができる訳ですな、ナムナム。

『次に、3年先までの物価上昇率に対する予測力をみると、インフレスワップを除くすべての指標で、バイアス調整前では予測力がみられないものの、バイアスを調整すれば予測力は有意に改善する。』

でまあ過去のゼロ近辺インフレ局面にフィットするバイアス調整を掛ければ、そりゃ過去の局面での予測力は高まるじゃろうが、局面変化した場合にどうなるのってなもんでして、クオンツで過去の相場を分析して最適化したパラメータを使って売買したら儲かりますとか言ったら既にそのパラメータはフィットしない局面でしたっていう落ちが世の中にはよくあるのですが、まあそれに似た話で、実はもう今の時点で予測力的には問題があって、ってなことだってアリエールだし、なんならすでにインフレ期待が2%に行ってるどころか下手したら2%を上回っているかもって状態だったらしたらどうしましょ、とは思う訳ですな。

まあさすがにヘリクツ日銀と言えどもスタッフペーパーだと良心は残っているので、以下にはこのような記載があるのですが、

『このように、予測力という観点からはバイアスを勘案することが有用と言えるが、バイアスは時間の経過とともに変化する可能性がある点に留意が必要である。』

良心キタコレ

『例えば、中長期的に物価上昇率が2%程度で推移するとの見方が経済主体間で強まれば、中長期のインフレ予想指標は2%程度に収束する可能性があり、その場合にはバイアスが縮小していくと考えられる。』

『また、各指標の予測パフォーマンスも、局面によって変化する可能性がある。』

はいはい良心良心。

『インフレ予想や物価の形成メカニズムは複雑であり、明らかではない点も多いだけに、予測力の観点のみをもって特定の指標に過度に依存することは避けるべきと考えられる13。』

いやーまったくおっしゃるとおりですなーーーーーーー(棒読み)

・・・・・昨日の植田さんの講演(スピーチ)の図表、どこからどう見ても「特定の指標に過度に依存しながら」「合成予想物価上昇率とかいう最適化している期間が明らかに過去の低インフレ局面の方が長い合成指標」を使って「基調的な物価」の説明をおっぱじめておられる、という大変に素敵なスピーチだった訳でして、植田さんにあんなスピーチさせる位ならもっと毒にも薬にもならない話をさせておけよ植田さんだってあんなクソみたいな屁理屈捏ね散らかしスピーチしてたら学者として恥ずかしいだろと思いますし、何なら白川総裁山口副総裁時代にあんなスピーチ原稿出したら落雷落雷また落雷じゃろと思うのですけどね〜

ということでいつの間にかウィリアムズはどっかに行ってしまいしましたがまあそういうことで。




〇ウィリアムズに期せずして公開処刑されてしまう日銀テラワロス、からの「合成予想物価上昇率」へのツッコミ

これはクソワロタ
https://jp.reuters.com/economy/federal-reserve-board/HDWEBDEV3JKC5AMEPR4U3V6I6E-2025-05-28/
インフレが目標から乖離し始めれば強力な対応必要=NY連銀総裁
木原麗花
2025年5月28日午後 1:31 GMT+9

『[東京 28日 ロイター] - 米ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は28日、インフレが目標から乖離し始めた際に中央銀行は「比較的強力に対応」しなければならないと述べた。』(上記URL先より、以下同様)

こwwwれwwwわwwww

『米国の関税や通商政策が経済に与える影響の不確実性が高いことを考えると、中銀は問題に対する完璧な解決策を目指すのではなく、「間違った場合のコストが利益をはるかに上回る」ような措置を避けることに集中すべきだとした。』

まあまあ大本営屁理屈局減屁理屈企画課としては「日本は米国と違ってインフレ期待が2%以下の水準にあって2%にアンカーされていない状態を引き上げようとしているのでウィリアムズ氏の説明は当てはまらない部分がある」とか「米国の場合はインフレ期待が2%から上方乖離してしまうことが大きなリスクなので、間違った場合のコストが大きいのは過早の緩和措置だが日本の場合は再度デフレ状態に陥る方が大きなリスクなので間違った場合のコストが大きいのは過早の緩和政策の修正である」って屁理屈を捏ねるでしょう、というのはもう言われる前に気が付く位には屁理屈局の屁理屈は見飽きているので秒速で回答できるんですけど、まあそれはさておきましてwww

『東京で開催された日銀の氷見野良三副総裁との対談で、中銀が避けなければならないコストのかかるリスクの一つはインフレ期待が目標から乖離することだと指摘。「インフレが極めて持続的になることは避けたい。なぜなら恒久化する可能性があるためだ」と語り、そのためにはインフレ率が中銀目標から乖離し始めたら「比較的強力に対応することだ」と付け加えた。』

wwwwwwwwwwwwwwwwww

まあウィリアムズにその意図があったかどうかは分からんけど、実際の物価が3年も上振れて続けているのに、謎の「基調的物価」を持ち出して頑なにアクチュアルの物価上昇の長期化をネグっているし、物凄い勢いの緩和を未だに続けているのに平然としている、という講演を前日にぶっ放した植田総裁に対してとんでもない勢いでの砲撃になっているのはクソ笑いました。

『「われわれはインフレ期待が有害になるような形で変化する可能性があることを強く認識しなければならない」とも話した。』

『ウィリアムズ氏は、こうした不確実性を踏まえ、中銀は長期的なインフレ期待を安定させるだけでなく、短期的な期待も「秩序立って」いることを確認し、国民の将来の物価動向に対する認識が「数年以内に」中銀目標に向けて戻るよう努力しなければならないと述べた。』

でまあ大本営屁理屈局に言わせればインフレ期待が2%行ってないから寧ろ政策の中立化は時期尚早ってことになっているのですが、昨日植田さんの講演をネタにした時にご紹介した「合成予想物価上昇率」なんですけど、これってそもそも論として「合成予想物価上昇率」そのものが下方バイアスあるじゃろ、というツッコミをしたくなる面がありまして、改めてこれを見ますと、

https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2024/data/rev24j05.pdf
期間構造や予測力からみたインフレ予想指標の有用性

(まあだいたい「多角的レビューシリーズ」ってのは黒田緩和の正当化という結論先にありきで作った妙なペーパーが多くて将来にも禍根を残すんじゃないかと危惧しているんだがその話はまあさておき)

『インフレ予想指標の予測力 』って小見出しのあたりから見ますと、ってまあこの部分はおまけなのでご興味のある方はURL先の本編をちゃんと読んでいただければと思いますが(以下の引用は直上URL先2024年5月の日銀レビュー本編より)、

『【図表 6】インフレ予想指標の上方バイアス 』
『【図表 7】インフレ予想指標の予測力 』

ってのがあって、色々な指標の「過去の」情報バイアスや「過去の」予測力をみているのですが、この図表6にしても図表7にしても、その計測期間がどうなっているのか、というのは脚注に書いてあるのですが、

図表6→『全サンプルは、2007/1Q〜2023/4Q の値。』
図表7→『@は 2007/1Q〜2022/4Q、Aは 2007/1Q〜2020/4Q の値。』

となっていまして、要するにこれ過去の低インフレ局面におけるバイアスや予測力を見ていまして、そこは何ぼ屁理屈日銀でもさすがにちゃんと説明しているのですが、小見出しの『(年限別にみた各インフレ予想指標の予測力)』ってところで、

『図表7は、@1年先までの物価上昇率、A3年先までの物価上昇率それぞれについて、各指標の予測誤差(ベンチマーク対比)をまとめたものである12。』

図表7は本編を見て味噌。

『まず、1年先までの物価上昇率に対する予測力をみると、多くのインフレ予想指標で、ベンチマーク対比、統計的に有意な予測誤差の低下(改善)がみられる。家計の量的質問に基づく指標は、水準バイアスを調整しない場合には予測力がみられないものの、バイアスを調整すると大きく改善し、コンセンサス・フォーキャストによるエコノミスト予想より高い予測力(低い予測誤差)を示すようになる。その他の指標では、バイアスの調整前後で概ね同程度の予測力となっている。』

なので展望レポート背景説明の中に出てくる「家計の予想物価上昇率(質的質問)」って部分にはバイアス調整が入っているんですけれどもこれが曲者なのは察することができる訳ですな、ナムナム。

『次に、3年先までの物価上昇率に対する予測力をみると、インフレスワップを除くすべての指標で、バイアス調整前では予測力がみられないものの、バイアスを調整すれば予測力は有意に改善する。』

でまあ過去のゼロ近辺インフレ局面にフィットするバイアス調整を掛ければ、そりゃ過去の局面での予測力は高まるじゃろうが、局面変化した場合にどうなるのってなもんでして、クオンツで過去の相場を分析して最適化したパラメータを使って売買したら儲かりますとか言ったら既にそのパラメータはフィットしない局面でしたっていう落ちが世の中にはよくあるのですが、まあそれに似た話で、実はもう今の時点で予測力的には問題があって、ってなことだってアリエールだし、なんならすでにインフレ期待が2%に行ってるどころか下手したら2%を上回っているかもって状態だったらしたらどうしましょ、とは思う訳ですな。

まあさすがにヘリクツ日銀と言えどもスタッフペーパーだと良心は残っているので、以下にはこのような記載があるのですが、

『このように、予測力という観点からはバイアスを勘案することが有用と言えるが、バイアスは時間の経過とともに変化する可能性がある点に留意が必要である。』

良心キタコレ

『例えば、中長期的に物価上昇率が2%程度で推移するとの見方が経済主体間で強まれば、中長期のインフレ予想指標は2%程度に収束する可能性があり、その場合にはバイアスが縮小していくと考えられる。』

『また、各指標の予測パフォーマンスも、局面によって変化する可能性がある。』

はいはい良心良心。

『インフレ予想や物価の形成メカニズムは複雑であり、明らかではない点も多いだけに、予測力の観点のみをもって特定の指標に過度に依存することは避けるべきと考えられる13。』

いやーまったくおっしゃるとおりですなーーーーーーー(棒読み)

・・・・・昨日の植田さんの講演(スピーチ)の図表、どこからどう見ても「特定の指標に過度に依存しながら」「合成予想物価上昇率とかいう最適化している期間が明らかに過去の低インフレ局面の方が長い合成指標」を使って「基調的な物価」の説明をおっぱじめておられる、という大変に素敵なスピーチだった訳でして、植田さんにあんなスピーチさせる位ならもっと毒にも薬にもならない話をさせておけよ植田さんだってあんなクソみたいな屁理屈捏ね散らかしスピーチしてたら学者として恥ずかしいだろと思いますし、何なら白川総裁山口副総裁時代にあんなスピーチ原稿出したら落雷落雷また落雷じゃろと思うのですけどね〜

ということでいつの間にかウィリアムズはどっかに行ってしまいしましたがまあそういうことで。




2025/05/28

〇超長期連日の爆上げだがこれはどこのエマージング国債ですかと小一時間

ご案内のこととは存じますが
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/Y545PIPBVRLI7IDOP7HP44RYO4-2025-05-27/
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は続伸、長期金利1.465% 国債発行見直し報道で安心感
ロイター編集
2025年5月27日午後 3:31 GMT+9

『[東京 27日 ロイター] - <15:27> 国債先物は続伸、長期金利1.465% 国債発行見直し報道で安心感

国債先物中心限月6月限は、前営業日比35銭高の139円45銭と続伸して取引を終えた。財務省による国債発行計画の再検討が報じられたこと受けて、市場の安心感が広がり、円債は堅調に推移した。現物市場では新発10年国債利回り(長期金利)は同4.0bp低下の1.465%。超長期債金利は大幅に低下した。』(上記URL先より、以下同様)

ということで連日の超長期デーですが、

『後場に入り、国債先物は上げ幅を拡大。財務省が2025年度国債発行計画の年限構成を近く再検討すると伝えられたことや6月20日に国債市場特別参加者会合が開催されると報じられたことを受けて「国債発行計画の変更についてはもう少し時間がかかるとの見方が多かったこともあり、市場では好感されている」(前出の国内銀の運用担当)との声が聞かれた。現物市場では超長期ゾーンを中心に金利が低下、その流れが長期ゾーンや国債先物にも波及した。』

となりまして、

『5年債は同1.0bp低下の1.00%。20年債は同16.5ベーシスポイント(bp)低下の2.340%、30年債は同18.5bp低下の2.850%、40年債は同24.0bp低下の3.295%といずれも5月上旬以来の水準まで低下した。一方、2年債は同1.0bp上昇の0.730%。』

24毛強wwwwwwww

『    OFFER  BID   前日比
2年   0.719  0.734   0.01   15:20
5年   0.993  1.002   -0.01  15:20
10年  1.459  1.467   -0.043  15:20
20年  2.329  2.353   -0.156  15:20
30年  2.825  2.853   -0.182  15:20
40年  3.276  3.287   -0.246  15:20』

ってな訳ですが、ご案内のように今般は期中で、かつ予算案の追加などが起きない状況ではあるものの、国債発行に関連すると思われるPD懇が行われる云々で如何にも発行年限の見直しみたいなのが行われそうな雰囲気、というのが報道されたのですが、

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB272140X20C25A5000000/
財務省、6月20日に国債特別参加者会合 超長期金利の上昇議論へ
経済
2025年5月27日 13:01 (2025年5月27日 18:35更新) [会員限定記事]

『財務省が6月20日に債券市場参加者を集めた国債市場特別参加者(プライマリー・ディーラー、PD)会合を開くことが分かった。足元の債券市場で超長期国債の金利が上昇していることなどを議論するとみられる。需給の悪化を踏まえ、超長期債の発行計画を修正するとの観測も浮上する。

PD会合は証券会社や大手銀行など19社の金融機関が参加し、債券市場の状況などを議論する。

財務省は会合に先立ち、2025年度の国債発.』(上記URL先より、以下有料会員記事)

などなどのニュースが出て一段高、ってお話なんですけど、詳報はBBGさんのほうで、

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-05-27/SWWEN4T0AFB400
財務省が国債発行額でアンケート聴取、40年入札は警戒一転し楽観論
日高正裕
2025年5月27日 13:34 JST 更新日時 2025年5月27日 16:50 JST

→PD懇や国債投資家懇メンバー、それ以外の機関投資家に送付
→どの程度が適当な発行額か、現在の市場状況などについて尋ねる

『財務省が投資家を含む幅広い国債市場参加者を対象に、国債の発行額についてアンケートを送付していることが分かった。超長期債は連日で大幅上昇(金利は低下)し、警戒感があった28日の40年国債入札には一転して楽観論が浮上している。』(上記URL先より、以下同様)

楽観論が浮上するのかよw

『アンケートは財務省から26日にメールで送付された。例年6月に開く国債市場特別参加者(プライマリーディーラー、PD)会合のメンバーだけでなく、通常この時期には開催しない国債投資家懇談会のメンバーや、それ以外の機関投資家も対象に含まれた。国債の年限ごとにどの程度の発行額が適当かを質問しているほか、現在の市場状況についてコメントを求めている。複数の関係者が匿名を条件に明らかにした。』

ほうほうそうですかそうですか、ということでカレンダーベースの発行額の年限割り振りの組み換え、という思惑で超長期戻っている次第ですが、いやまあ拙駄文でも「需給何とかしたいんだったら日銀の買入拡大とかアホな事言ってないで発行側が対応するのが筋」と申し上げましたので、このムーブ自体はまあやるならやるでどうぞってなもんではあるのですが、ここもと超長期の金利が上昇してやっと「減税の財源は赤字国債を出すのが当然」とか言ってた輩がちょっと大人しくなったと思って喜んでいた面もあるアタクシと致しましてはちょとt複雑な心境ではあったりします。

まあ財政懸念で本来出そうと思っていた国債が出せなくなった、というお話にすれば減税馬鹿へのご教訓ストーリーにはなるのかもしれないけど、金利が下がってしまうとちょっとね、という感じで。

・・・・というかですね、超長期発行減額ったっていきなり7月発行(くらいでしょ早くて)から発行半減とかそんなドラスティックなことにはならんじゃろ(なったらおもしろいけど)と思いまするに、一連の動きで超長期が数日で20毛も30毛(というかそれ以上)も飛ぶって方が頭痛くて、日本国債市場はいつからエマージング国債市場になったんだっけという値動きの勢いの方にビビっております。

まあこれはしつこく申し上げておりますが、中短期の金利が日銀買入で無駄に抑圧されているので、金利変動の材料に対するエネルギーの放出場所が超長期に逝ってしまっているので価格変動が増幅されやすいってのと、そもそも財政問題だすまでもなく、2%物価安定目標を達成した社会における金利水準としておかしいじゃろ、というエネルギーがあるのと、そこに加えて財政の話、ってところではないかとは思いますので(個人の偏見です)、つまりは日銀の長期・中期ゾーン以下の国債買入をバンバン減額しろといういつもの話になるのでした、しつこいですかそうですか。


〇植田総裁金研国際コンファランスの挨拶がとんでもない屁理屈大王になっていて見苦しいわ恥ずかしいわ

来週内外情勢があるって話をしましたが、よく考えたら5月末は金研国際コンファランスがあるんでした大変に失礼いたしました。

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/data/ko250527a1.pdf
日本銀行金融研究所主催2025年国際コンファランスにおける開会挨拶の邦訳
日本銀行総裁 植田 和男

・基調的な物価(講演原文では「underlying inflation」)の説明が苦しいという自覚はあるようですね

『2.わが国の金融政策が直面している課題』の二つ目の小見出し『(政策金利)』の途中から日銀の屁理屈音頭がおっぱじまりますわよハーヨイヨイ♪

『難しい質問は、実際の物価上昇率が 2%を上回って3年以上推移しているにも関わらず、なぜ日本銀行はそのような緩和的なスタンスを維持しているのか、ということです。』

そりゃお前らが黒田を否定しないでハトハトチキンやってるからじゃろ、と思うのですが当然ながら当事者がそんなことを認める訳も無いので屁理屈が展開されます、以下ご覧ください。

『この問いに対して、日本銀行は、基調的な物価上昇率が 2%を下回っているため、と答えてきました。これは自然と次の質問につながります。基調的な物価上昇率は、何によって構成されているのでしょうか。』

政策から後付けされたお前らのお気持ち表明じゃろ、と言っても当事者がそんなこと以下同文。

『基本的には、基調的な物価上昇率とは、一時的な変動要因を除いた物価上昇率を指します。しかし、実際には、この概念を捉える完璧なデータは存在しません。そのため、データの全体感と経済を巡る情報を勘案して総合的に判断しなければなりません。』

だったら最初から総合判断で恣意的にやっていますって言えば良いのに、そこで何かちゃんとしたベンチマークがあるかのような話をするから苦しい屁理屈になるのですが、というかまあ今回のこのスピーチ、「基調的な物価」での説明が何ぼ何でも限界に来ているってことを大本営でも自覚しているんでしょうね、この段落の最後になるんですけどこの最後の部分はワロタ。

『そして、この点は、人々とのコミュニケーションを難しくさせます。』

そらお前らのお気持ちだしお気持ちの変わる原動力が首尾一貫してないからこっちだって分からんわとしか申し上げようがないですけど、

『私どもは、基調的な物価上昇率を巡る説明が不明瞭であるとの厳しい指摘をしばしば受けてきました。』

wwwwwwwwwwそらお気持ち物価なんだから仕方ないじゃろと思うのですが、厳しい指摘って自覚してるならお気持ち物価止めええやと思う訳ですが、以下更に充実の屁理屈が展開されますので鑑賞しましょう。


・構成要素に明らかに下方バイアスを持っていそうなのを満載にした合成予想物価上昇率を持ち出しまして・・・・

でもって次の小見出しが『(予想物価上昇率)』です。

『基調的な物価上昇率を評価するために注意深くモニターしている指標のひとつは、予想物価上昇率です。』

とまあそういうことで、物価の指標を引っ張り出してもだんだん説明が苦しくなる(後述)なので、とうとう予想物価上昇率を持ち出しているんですけれども、

『基調的な物価上昇率という概念よりは明瞭ですが、予想物価上昇率もまた、誰の予想が最も重要なのか、どの予想年限が適当なのか、などの問題を伴います。』

と言ってるそばから、

『図表 4 は、各指標が有する情報を集約した日本の合成予想物価上昇率に加えて、ドイツと米国の中長期の予想物価上昇率を示しています。』

って言ってるんですが、図表4の『日米欧の中長期インフレ予想』を見ますと、その脚注は

『(注)中長期インフレ予想は、日本は合成予想物価上昇率(10年後)、米国・ドイツはコンセンサス・フォーキャスト(6〜10年後)。(出所)Bloomberg、Consensus Economics「コンセンサス・フォーキャスト」、QUICK「QUICK月次調査<債券>」、日本銀行』

この「合成予想物価上昇率10年後」ってのは展望レポートの背景説明の方にもあって。最近だと内田副総裁の講演でもリファーされていましたが、なんかいろんなもんをこねくり回していて、例えば短観の物価見通しとか生活意識アンケートの物価見通しとかもコネコネされていて何だかよくわからん数字になっているものな上、米国ドイツのコンセンサスフォーキャストってのは上記の脚注見たら出所がBBGになっているから、それって単に何とかストアンケートの集計結果みたいなもんで、一般市民のインフレ予想との乖離はどうなっているのか、ってなもんだし、同じベースで集計しているのかどうかも怪しいものを並べてどうするんだ、というお話な訳ですけれども、そういうのを比較した上で、

『ドイツと米国では、予想物価上昇率は、おおむね 2%から 3%の間で、驚くほど安定していました。2022 年から 2023 年の間に、物価上昇率が 10%近くに達したときも、それは目標水準近くにアンカーされていました3。この安定は、中央銀行が物価を安定させる能力に対する人々の信頼を表しているのではないかと思われます。』

からの、

『対照的に、日本の中長期の予想物価上昇率は、1990 年代後半から、大規模金融緩和が導入された 2013 年まで、概ね 0%から 1%の間にとどまっていました。予想物価上昇率は、2014 年に1%以上に高まりましたが、2016 年までに低下して、以前の範囲に戻り、2021 年までそこにとどまりました。より短い年限の予想物価上昇率は、よりゼロに近い水準にとどまっていました。ゼロインフレという均衡の強固さを物語ります。』

という話にしていまして、その結果として、

『予想物価上昇率は、グローバルなインフレ高騰と日本の継続的な金融緩和に反応して、2022 年に再び上昇し始めました。予想物価上昇率は、足もと、1.5%から 2.0%の間にあり、まだ 2%の目標水準を下回っているものの、この30 年間で最も高い水準にあります。すなわち、私どもは、予想物価上昇率をゼロから引き上げることには成功しましたが、2%にアンカーされているという状況には、まだ至っていません。このため、私どもは、今なお緩和的な政策スタンスを維持し続けています4。』

という政策の正当化に使っているのですが、そもそも日銀の合成予想物価上昇率については先般弊駄文で申し上げましたのの再掲ですが、

https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2024/data/rev24j05.pdf
期間構造や予測力からみたインフレ予想指標の有用性
2024 年 5 月

こちらの5ページ(PDFの5枚目)あたりに『【図表 8】共通成分ベースの集計指標(年限別の合成予想物価上昇率)』ってのがありますが、よく見ますと、

『(注)年限別の合成予想物価上昇率は、家計(生活意識に関するアンケート調査<量的質問・質的質問>)、企業(短観)、専門家(コンセンサス・フォーキャスト、QUICK 調査、インフレスワップ)による各年限のインフレ予想について、主成分分析を用いて共通成分を抽出したもの。2006 年以前の計数は参考値。

(出所)日本銀行、Bloomberg、QUICK 月次調査<債券>、Consensus Economics「コンセンサス・フォーキャスト」』

ってやつなんですが、コンセンサスフォーキャストって過去の実績に引っ張られて今次局面で物価見通しを全然当ててなくて下方に外しっぱなしだし、まあクイック調査とかも然りですけど、これ現時点において下方バイアスを持ってそうなものを使っている時点でお察し指標(ちなみにこの日銀レビューを書いているのが調査統計局じゃなくて企画局というのも味わいが深い訳ですがwww)なんですけどねえ、ってなお話でもあったりします。


・基調的な物価上昇率は予想物価上昇率だという新しい言い訳が構築されてきたようです

でもってその続きですが、『(中央銀行コミュニケーション)』って小見出しになります。

『この政策スタンスのコミュニケーションは容易ではありません。』

そりゃそうじゃろお気持ち物価を尤もらしく屁理屈でデコレーションしているだけなんだからwwwwwwwwwww

『それは、基調的な物価上昇率の概念に伴う曖昧さもさることながら、図表 5 が示しているように、総合ベースでみた物価上昇率と基調的な物価上昇率との間に大きな乖離があるためです(ここでは、予想物価上昇率を基調的な物価上昇率の近似として用いています)』

>ここでは、予想物価上昇率を基調的な物価上昇率の近似として用いています
>ここでは、予想物価上昇率を基調的な物価上昇率の近似として用いています
>ここでは、予想物価上昇率を基調的な物価上昇率の近似として用いています

と、どさくさに紛れて勝手に基調的な物価上昇率を予想物価上昇率(しかも日銀計測のお手盛りVer)にすり替えてしまいましたwwwww

『その乖離は、サプライショックの直接的な影響と、総合ベースでみた物価上昇率に影響するその他の一時的な要因に対応しています。』

とのことですが、サプライショックが一過性なのか持続性があるのか、というのを丸無視してサプライショックだからネグリジアブルだ、って屁理屈捏ねてるからそうなるんじゃろという話で、


・推計データと直接計測されたデータが常に大きく乖離するのであればそれは推計がおかしいじゃろとwwwww

『中央銀行は、基調的な物価上昇率に主に反応しますが、人々は総合ベースでみた物価上昇率に反応する傾向があります。この反応の乖離は、常にある程度は存在するものですが、最近の乖離の大きさとそれが長い期間にわたって継続していることは、日本において特に問題となっています。』

>乖離の大きさとそれが長い期間にわたって継続していること
>乖離の大きさとそれが長い期間にわたって継続していること
>乖離の大きさとそれが長い期間にわたって継続していること

そもそも論として「計測可能なザ・基調的物価上昇率」が存在しないのですから、「乖離の大きさとそれが長い期間にわたって継続している」っていうのは、常識的な視点からしたら「お前らがお手盛りで計算している基調的な物価上昇率がそもそも間違えているんだろ」という話になるじゃろ、としか申し上げようがないのですけれども、何をいってるんでしょうかこの人はwwwww


・勝手に「中央銀行」を主語にするなと

さらに続きですが、

『一般的に、中央銀行は、サプライショックに対して、それが基調的な物価上昇率に影響するとみられない限り、その状況を見守るアプローチを採用しています。』

そうじゃなくて「一時的なショックに留まるのか、それとも中長期的な影響をもたらすのか」によって対応をするかしないかが決まる、ってのが中央銀行の物価安定という施策を進める際のポイントじゃろ勝手に「中央銀行は」とか言ってるんじゃないよお前らだけじゃろお前ら。

『私どももまた1度目のサプライショック、すなわち 2022 年から2023 年にかけての輸入財の価格上昇の状況を見守ってきました。しかしながら、日本の近年の経験は固有のものです。総合ベースでみた物価上昇率が高まった一方、基調的な物価上昇率も高まりました。基調的な物価上昇率を高めた要因として、コロナ禍からの景気回復や労働需給の引き締まりに加え、国内物価・賃金に影響を及ぼしたサプライショックを指摘することができます。』

『足もと、私どもは、食料品価格の上昇というかたちで、もう1つのサプライショックに直面しています。私どもの中心的な見通しでは、食料品価格上昇の影響は減衰していくとみています。しかしながら、基調的な物価上昇率が以前よりも 2%に近いことを踏まえると、食料品価格の上昇が基調的な物価上昇率に与え得る影響に注意する必要があります。』

と言ってる本当の物価上昇率が既に2%超えてるんじゃないですかねえ、と思うのですが最後に図々しく、

『サプライショックが世界的により頻繁に生じるようになるにつれて、総合ベースでみた物価上昇率と基調的な物価上昇率の関係が、多くの中央銀行にとって主な焦点であり続けると考えられます。』

とか偉そうに言っているのですが、他の中銀が基調的な物価上昇率と総合ベースで見た物価上昇率の関係でどうのこうのっていう政策対応の説明していましたっけ、ってな問題が有るわけですし、大体からしてコア物価指数を過度に重視することに対しても昔から常に指摘があったんですよね。


・ここで懐かしの変態仮面ジム・ブラード前セントルイス連銀総裁の2011年の指摘を見てみましょう

変態仮面だの何だの聞こえないことを良いことに極東の島国の片隅で勝手な二つ名つけていますが、まあ賛否はありますけどブラード前総裁の論点提起ってのは面白いので良くチェックしていました。

(URL長すぎで画面が乱れるかもなのでハイパーリンクは文字列の途中までに貼っております)
https://www.stlouisfed.org/news-releases/2011/05/23/st-louis-feds-bullard-discusses-commodity-prices-inflation-measures-and-inflation-targeting
St. Louis Fed's Bullard Discusses Commodity Prices, Inflation Measures, and Inflation Targeting
May 23, 2011

『Core vs. Headline Inflation』って小見出しの2パラ目ですが、基調的な物価ガーとか抜かしている屁理屈大本営はちょっとこれでも読めやという感じでして、

『“Headline inflation is the ultimate objective of monetary policy with respect to prices,” Bullard said, noting that these are the prices that households actually pay. “Core is not an objective in itself,” he added. He said that while the only reason to look at core is as an intermediate target for headline, “its use as an intermediate target is questionable.”』(直上URL先2011年5月のセントルイス連銀ブラード総裁講演紹介文より)

さらに、上記URL先でリファーされているのが『Measuring Inflation: The Core Is Rotten』ってまた
喧嘩を売るような題名の講演テキストになりますが、

https://www.stlouisfed.org/-/media/project/frbstl/stlouisfed/files/pdfs/bullard/remarks/measuring_inflation_may_18_2011_final.pdf
Measuring Inflation: The Core Is Rotten
Money Marketeers of New York University
New York, N.Y.
May 18, 2011

最初の『Introduction』の4パラグラフ目のところにありますけれども、

『One immediate benefit of dropping the emphasis on core inflation would be to reconnect the Fed with households and businesses who know price changes when they see them. With trips to the gas station and the grocery store being some of the most frequent shopping experiences for many Americans, it is hardly helpful for Fed credibility to appear to exclude all those prices from consideration in the formation of monetary policy.』

コア指数ガーばっかり言いすぎていると本来の目的である国民が本来負担している「総合物価」との乖離が長期的に生じた場合(ちなみに前の方の先の引用部分の直後にブラードの説明引用として、「For example, from 2003-2006, while core inflation averaged about 2 percent, it was consistently below headline inflation. 」ということで、総合物価が長期的にコア物価を上振れていた時期を例に出しています)に、金融政策本来の目的が果たせているのか、というような論点を提示しているわけですよ。

とまあそんあ次第でコア指数ですらコア指数に固執してはいかんのでは、というような指摘が大昔から有る中で、「基調的な物価上昇率と実際の物価上昇率の長期間の大きな乖離がどうのこうの」とか能天気に言ってる場合じゃない訳で、黒田緩和からの修正が遅れまくっているのを正当化するためのしょうもない言葉遊びしてる場合じゃないだろと思います。


・この講演原稿作ったのは誰だあ!(ガラッ)

てなわけでまあ突発性海原雄山状態になってしまうわけですが、この手の屁理屈、〇〇さんや〇〇さん(伏字に関しましては皆様勝手に好きなのを入れてください)が捏ね散らかすならまた大本営の屁理屈かよ、って笑えないけど苦笑しながら見るって感じですが、斯界の第一人者であらされる学者の植田和男先生ともあろうお方がこのような屁理屈満載の説明を、しかも海外からのお客様もお招きしたアカデミック寄りの金研国際コンファランスで行う、ってのさすがに如何なものかって話でして、植田先生だってこの牽強付会ぶりを読んだら分かると思うのですが、いや先生学者として言ってて恥ずかしくないのかね、と思ってしまいますし、そんな講演原稿作ったのは誰だかは存じませんけど、いやちょっと何なんだよ、と思いましたとさ、というのが本日の結論でした。






2025/05/26

〇野口審議委員会見も大本営の腹話術人形でして・・・・・・・

ということで木曜の引け後に野口審議委員の会見で反応した、という感じなのかホンマに、って感じではありましたが、野口儀審議委員の会見を確認してみましょう。

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2025/kk250523a.pdf
2025年5月23日
日本銀行
野口審議委員記者会見
――2025年5月22日(木)午後2時30分から約30分
於 宮崎市

質疑応答はだいたい国債買入の話と今後の利上げに関する話に終始していたんですけど、この質疑応答見てて思ったのは「何でお前ら国債買入ペースを減らす方向の質問」しかしてないのって話で、この前の市場参加者会合の資料見たら「減額ペース減らせ」一色でも何でもないし、何なら加速すべきというのもあるし、ワイもそう思っているけど、そもそも論として減額が甘いからいつまで経っても市場の流動性がちゃんと回復しないでストレス耐性が弱いんじゃ、という主張も普通に市場参加者会合の資料にあるのですが、まるで市場が買入減額ペースをスローダウンさせろ一択かのような質問しかしないの何なんお前らマジで要らんわ、と思いました。

といきなり悪態をついておいて質疑応答ですが、まずは国債買入の減額に関しての一連の質疑を順に参ろうかと。


・長期国債買入ペースの減速に関しての一連の質疑だが野口さんの回答がまんま大本営でその点にビックリ

『(問)私から国債買入れでいくつかお伺いします。午前の講演で来年 4 月以降の国債買入れの方針につきまして、より長期的な視点から検討する必要があると発言されました。このより長期的な視点の意味するところについて、もう少しちょっと具体的に説明をお願いしたいということと、』

それはそうですね、そもそも長期的な部分は分からんと思うのですが。

『来年 4 月以降の国債買入れにつきまして現行計画のですね、毎四半期 4,000 億円ずつ減額していくと、そういうペースになっているのですけども、それを維持するべきなのか、または加速すべきか減速すべきか、来年度の国債買入れに関する野口委員の現時点のお考えをお聞かせください。』

これは変わらずって回答するのがほぼ見え見え(実際そうでしたが)

『もう一点、関連で足元超長期金利が急ピッチで上昇しておりまして、市場には日銀による超長期ゾーンの国債買入れの増額や買入れ区分の統合などを求める声が出ております。野口委員は超長期金利の安定に向けて、オペや減額計画などで配慮する必要性についてどのようにお考えか、大まかに二点よろしくお願いします。』

>市場には日銀による超長期ゾーンの国債買入れの増額や

いやあのそういう事言ってるトンチキはもちろん市場だからいるんだけど、お前この前の市場参加者会合の資料読んでるのかよって話で、そりゃまあ超長期買ってつかまっているから目先日銀にお助け下さいとかいうのはいるだろうけど、市場にはそんな声がでております、じゃねえよお前の認識どうなったるんだとしか申し上げようがない。

でまあ回答ですがこれがまた見事な大本営でして、

『(答)まず国債買入れ減額計画についてでありますけれども、これは私午前中のお話の中でも説明させて頂きました通り、基本的には予見可能性、もちろん柔軟性を伴った予見可能性ということでありますけれども、それが一番非常に重要であると。』

で、以下の回答が完全に大本営でしてマネタリーベース直線一気理論とか高圧経済とかとは全然違うお話が展開されています、すなわち、

『つまり、それは長期国債、昔のようにYCCのように長期国債の金利というものを日銀がある意味一つの政策目標にしていた状況とは全く違っておりまして、現在はあくまでも短期金利の操作によって金融政策を遂行している。』

ほう。

『そういう意味で言えば、国債買入れの金額から長期金利というような経路を通じた、その経路というものは、少なくとも政策としては考えていないということであります。』

そもそもYCCじゃなくてお前らの言ってたのマネタリーベース直線一気理論じゃなかったのかよという話で、完全に大本営の教育が行き届いて大本営のまんまの説明をしている訳ですな。

・・・・・となりますと、6月末で中村審議委員がご退任になられる訳でして、リフレとか言って自我を持ってハトハト金融緩和高圧経済を言いそうな野口さんが大本営にすっかり洗脳されてしまったという現状であれば、まあ大本営好き放題の図、ということになりますな。ゆうてトップが足元すっかりハトハトチキン音頭を爆音で踊り散らかしているので、だからと言って急に利上げが早まるというもんでもないですが、なんせ植田とかいうハトハトチキン先生、急に何かのスイッチが入ると突然威勢の良いことを言い出すジャガーチェンジムーブをぶちかますので、まあ別に利上げが全然ないですわ〜と言ってる場合でもないとは思いますけど。

でもって続き。

『ただ、これまで日銀がYCCを行っていく過程の中で、国債買入れ額というのは相当の規模になっておりますので、これをある種縮小していくということは当然のことであると考えております。』

まあ冷静に考えると何で縮小するのが当然なのか、って話があるのですが、ここをゴリゴリと突き詰めてしまいますと「中央銀行による財政マネタイズ」という管理通貨制度における最大の禁じ手の話になってしまうので、この点については既にバランスシートのランオフをしている中銀も含めて歯切れが悪くなるんですよね。

『それは市場にとってもある程度のボリュームをもって、その売買が行われる状態というものが重要だと考えておりますので、そこに向けて基本的にはマーケットをできるだけ荒らさないようにということは、つまり日銀が政策的な意図を持って何かその国債買入れの増減を行うということはないということが一番基本であるというふうに考えております。』

輪番の上げ下げに政策的を持たない、だそうですので、これは後半の「介入して下せえおねげえします」とかいう日銀依存ジャンキーで市場参加者の矜持を欠片も持たない輩への回答にもなっています。


でもって「長期的な視点」云々に関して回答の続き。

『ただ、より長期的に考えていきますと、最終的に日銀がどういうところで着地をするのかというのは、要するに中央銀行のバランスシートが最終的にどの規模に落ち着いていくのが最適かという問題になってくるわけであります。』

さいですな。でもってこの次の回答がズコーなのですが、

『これは実はまだどこの中央銀行も同じだと思いますけれども、量的緩和というものを行った中で、国債の買入れが膨れ上がったものを正常化してどこまで縮小していくのかというところですね、ここはまだ明確にはなっていないという状況の中で、手探りでそれを探っていくということになるわけでございます。』

だったら何で今回の見直しにおいて「長期的な視点」での話をするって事になっているのかが意味不明で、そんなの来年になって再度状況を見て、日銀のバランスシート規模と短期金融市場(長期金利ではない)との兼ね合いを見ながら規模の縮小をどの程度実施するのか、を考えるって話をすればいいのに、何で長期的な視点の話が今回出たのかが謎で、植田総裁の趣味で言ってたのか大本営が言わせたのか知らんけど、全く意味ねえじゃんと思いました。

まあそれは兎も角としまして次。

『その中で日本銀行としては、当面の計画というものは決めておいた、それを今後は実行していくと、少なくとも来年[3月]の時点まではそれをやっていくというようなことにおそらくなっていくわけであります。』

だったら別に長期的な検討は今後に回せばいいだけの話なんですがなぜか・・・・・・

『その後のことを考えますと、その最終的な姿に向けて、どういうふうにスムーズにそこに持っていくのかということを考えて行く必要もあるという、そういう意味で長期的な観点ということをお話したわけであります。』

そもそも姿が決まっていないのにスムーズに持っていくも蜂の頭もないんだが。

『ただし、具体的にそれがどういう金額になるのかというような具体的な数字ということに関しては、ようやく市場関係者からのヒアリングというのも終わってですね、それをわれわれとしても踏まえた上で、なるべくマーケットに予見可能性というものを乱さないようなかたちでこれまでの計画を大きく変えることはおそらくはないと思いますけれども、それで最終的なところにうまく着地していくような、そういうような新たな計画というものが必要になるというふうに考えております。』

???????????????

最終の着地がどうなるか今時点で皆目見当がついていないのに何で「最終的なところにうまく着地していくような、そういうような新たな計画というものが必要になるというふうに考えております。」という話になるのかが良くわからんのだが、大本営の屁理屈を教わったのは良いけど、大本営の屁理屈って屁理屈として練りに練っているだけに、ちゃんと構成を理解して捏ねないと上記のようにお前は何を言ってるんだということになりますので使用上の注意を良くお読みになってお使いくださいw

『これが最初のご質問に対するお答えであります。それから、4,000[億円]というような金額を維持すべきかどうかというようなことに関しては、これは今後の検討次第、検討を経た上で決めるということになると思います。』

だそうな。


・マーケットに対してリアクティブに何か介入するわけじゃないよ

でもって今の質疑応答の応答の方はまだ続くのですが、さっきの「介入クレクレ」へのご回答編。

『超長期の金利水準がこれまでの水準を考えると非常に金利が引き上がっていくペースが速いというようなことが最近生じているわけでありますけども、これと今度のこの 6 月に行われるような新たな計画というものが、私自身は少なくとも直接リンクするというふうには考えておりません。』

はい来た〜〜!!

ということでリフレリフレ言ってた人とは思えない発言ですが、まあ大本営もさすがにこの程度で一々日銀が市場に手を突っ込むほうがアカンじゃろ、という認識は持っているようでして、誠に結構なお話ではあります。だいたいからしてこの程度で一々介入やりだしたらそれこそキリがなくてYCCに戻るようなもんだし、なんかの拍子に財政ファイナンスって言われだし兼ねないし、そういわれた場合のリスクは今の財政運営を巡る政治状況から言ったら過去にないくらいに地雷踏むリスクがあるわけですからね。

『これはある意味で、長期金利はマーケットに委ねるというようなことを決めたわけでありますから、その中にはマーケットというのは様々な情報を消化していく中で、金利というものが形成されていくということだと思います。』

極めて大本営なのですが、これをリフレ野口さんが言う、というのが感慨深い。

『最近の長期金利の動きというのも、おそらく背後にいろいろな要因があって、その中には米国の政策の不安定性あるいは米国の長期的な財政状況というもの、こういうものは特に超長期金利、長い方の金利にいけばいくほどですね、長くなればなるほどそういう世界的な連動性というのがどうしても高まってきますので、そういうものの影響というのも日本の超長期金利も受けざるを得ないという中で起きている現象であると。』

日本の財政、と言わないのが日銀大本営の腰の弱い所でして、んなもん総裁副総裁に言わせると多少アレですけれども、ヒラの政策委員が言う分にはOKじゃろとは思いますけど。

まあ日本の場合はそれもあるけれども、「本来もっと前に上がっていて然るべきだった長期金利が日銀の買入によって不必要に抑えられていて、その本来起こるべき金利上昇が日銀の買入関与が相対的に低い超長期金利にまとめて出た」って話じゃないですかねえという所ですな、知らんけど。

『それ自身ですね、急激ではありますけれども、それが非常に何か異常な動きであるかどうかというのは、私は一概にそういうふうに決め付けることはできない。そこにはやはりマーケットなりの判断がその背後にあるわけでありますから、それをむやみに介入をして何か操作するというようなことは私は適切ではないというふうに考えています。』

おおおおおおおおおお!!!!!!!

ということでリフレ野口がこれを言う、ってのは中々インパクトがある(と言ってもまあ金懇挨拶のテキストみた時点でこういう回答になるんじゃろうなというのは想定できるんですが)ということではあったかと思います。


・長期金利市場に対するコメントが真人間にも程があってビックリした件

でまあ他にも輪番に関する質疑あったのですが基本的にさっきの説明と同じことを言わせるだけの愚問だったので割愛しますが、最後の奴だけ引用しますね。

『(問)度々繰り返しとなって、恐縮なんですけれども、足元の長期金利、超長期金利の国内の上昇について、今上昇ペースが広がってますけれども、これは国債買入れ減額の見直しにあたって金額の増減を判断する、機動的に対応するような例外的な状況ではないっていうご認識でよろしいでしょうか。』

この回答がリフレ野口とは思えない回答で面白かった。

『(答)私の個人的な今の見方では、これまで日本の金利というのは動かない世界にあった、長期金利もマイナスの時期もあったぐらいなわけでありますから、そういう意味で言えばイメージとしてですね、これだけ上がりますと非常に急激だというようなイメージがあるわけでありますけれども、もともと金利というのはいろいろな将来の予想や思惑というものを反映してかなりボラタイルに動くというのが金利というものであります。』

うひょーーーーーーーーーー

『そういうふうに考えますと、それが一概に、何か異常なものと決め付けるというのも難しいわけであります。』

何という真人間発言w

『もちろん状況によっては、中央銀行として金融市場を安定化させるために積極的に何かをやらざるを得ない状況というのは、当然あると思いますけれども、現状では少なくともそういうような状況にはないというふうに私は考えております。』

そらそうよという所ですな。


・トラ公関税政策に関連して

『(問)午前の講演の方でも少し触れられていたようなんですけれども、今後の不確実性という意味で、アメリカのトランプ政権による関税措置についての影響について、懸念というか危惧するというふうな話も出てたんですけども、警戒感というか、先行きの不透明感が漂う今の状況について、改めてご見解を伺いたいのと、それが今後の日本銀行の追加の利上げ措置に与える影響について、今、現時点でのお考えを教えてください。』

でもってこちらの回答ですが、

『(答)これは、正直申しまして、4 月 2 日以前の状況と、それ以降の状況というのは、世界的なマクロ経済状況が大きく変わってしまったということは認めざるを得ないというふうに考えております。』

「前提」は変わったと思うが「状況」はこれから変わると思うんですよね、まあいいけどさ。

『その 4 月 2 日の結果として金融市場というのが大きく変動をしたわけであります。しかし、その後の状況をみていきますと、さすがに最初のトランプ関税ショックの状況がいろいろな情報が新たに付け加わることによって、少しずつ解消されてきているというのも事実であります。』

このあたり、ちょいちょいと大本営ってハトハト一辺倒じゃない説明を挟むんですよね。

『しかし、そうは言ってもこれからどうなるかというのは、まだはっきりとしていないということです。』

そらそうよ。

『日本にとってみれば、一番大きいのが自動車関税だというふうに思いますけれども、それがどういうふうに落ち着くのか、それからやはり中国と米国との関税の協定というのも、日本においても非常に中国経済と日本経済との結びつきはそれなりに大きいわけでありますから、中国あるいはアメリカ、米中関係というものが大きく毀損されるということになると、その影響を日本も受けるということでありますけれども、これも一時の非常にほとんど貿易が途絶するような状況が予想されるような状況からは、かなり解消されてきているということを考えますと、少しずつ霧が晴れてきているというような状況だというふうに考えております。』

この「一時の非常にほとんど貿易が途絶するような状況が予想されるような状況からは、かなり解消されてきている」って説明は重要で、つまりは「コロナショックのようなことにはならない」というお話なんですけど、どうせなら説明で「コロナショックのような世界貿易が止まる勢いのショックまでは至らないかもしれませんね」位言えば良いと思うのですが、そこは何か説明しないんですよね、何でじゃろ。

『その中で金融市場の方も少しずつ落ち着きを取り戻していると。』

へい。

『ただし、そうは言っても、また何か新しい状況が出てきて、それがかなりネガティブなものだったりすると、またそこに反応するということは起きておりますので、まだ完全にその 4 月 2 日以前に戻ったとは全く言えないと。暫くはこの不確実な状況は続くだろうということだと思います。』

そらそうじゃろね。

『そのうえで、日銀の金融政策についてでありますが、これはやはり 4 月 2 日当時の状況は、これはいったんとにかく状況を、関税がどういうところに落ち着いていくのかを見極めるしかないというような時期が一定程度続いたわけでありますが、少しずつその帰趨というのが明らかになっていく中で、とはいってもかなりの下押し効果というのは、最善の、例えば各国別の追加関税っていうのがかなりなくなったというようなかたちでも、アメリカの 10%の基本的な関税は残るわけですから、その分に関してはかなり下押しが生じるということを考えますと、ある程度の見通しのずれというのはやむを得ないというふうに思っております。』

まあその通りなんですが、今回展望レポートでそれを織り込ませて見通しを下げた、ということでして、じゃあその織り込ませってどのくらいなのか、というのがまあ何となくフワッとは書かれているのですが、実はどの辺まで織り込んでいるのかが公表文書だとよくわからんという作りになっているのが今回の展望レポートの不親切設計部分で、今後の展開における関税政策動向の推移が、4月展望レポートでの想定対比で上振れしているのか下振れしているのか、というのが分からない状態だと、展望レポートで示された経済物価パスおよび政策パス(政策パスは明示的には示していませんけれども察するパスね)から上振れるのか下振れるのかが分からん、という状態に今はあるので、6月会合と言いたいけど少なくとも次回の展望ではもうちょっと明確な前提を見せて欲しいです。

『けれども、これが場合によっては思っていたよりも元の軌道に戻っていく時期が早くなる可能性もあるかもしれないというのが今の状況だと思います。ただ、そうは言っても、やはりまだ不確実性は非常に大きいので、見通しというのがはっきりしないとなかなかわれわれとしては次のステップというのを踏むというのはリスクが非常に大きな状況であり、あえてリスクを取るという選択肢はあり得ません。』

だそうなのですが、そもそも正常化が遅れるのがリスクになりうる、という発想が野口さん、というよりは大本営なんでしょうけれども、その辺りには無い(主な意見や議事要旨を見ていると多分抜刀斎辺りを筆頭に正常化を遅らせるリスクについて指摘する向きもあるので、政策委員会全員がそうなのでは無いとみられますが)なあというのは分かるかと思います。

『そういうふうに考えますと、私は午前中にほふく前進的なアプローチというふうにお話しましたけれども、そういうような考え方で暫くは弾丸が飛び交うような状況でむやみに動かないで、状況をまず注視していくというのが現状では基本になるというふうに考えております。』

まあとりあえず大本営は動きたがらないというのは把握したので今朝はこの辺で勘弁。