金融政策概観(2024年度下期後半)
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2024年度下期後半の見出し
2025/01/17「1月利上げに向けて強引な情報発信が続きます/減額措置の発動条件緩和はいいことですね」
2025/01/16「植田総裁まで利上げやる気発言&赤沢経済再生相も援護射撃/氷見野副総裁会見も12月情報発信の上書き訂正」
2025/01/15「氷見野副総裁講演で1月利上げを引き戻すの巻」
2025/01/14「10年1.2%に上昇/BBGから観測記事だが12月に言ってた話と全然違う話になっているんですが何ですかねえ」
2025/01/10「さくらレポートは「熱意を感じない」賃金と物価の話/日銀推計需給ギャップマイナスだが人手不足で賃金上がってるんだよなあ」
2025/01/09「12月FOMC議事要旨は「当分利下げしないもんね」ですね」
2025/01/08「日銀財務のペーパー(その3)ストレスシナリオ分析が無くて前提条件がヌルヌルなのしか置けないのが今の日銀財務の深刻さ」
2025/01/07「植田発言は相変わらず慎重スタンス/日銀財務関連だが「普通に金融引き締めが必要な時」の話をしませんな」
2025/01/06「12月議事要旨は1月利上げしないインパクト強すぎですね/日銀財務の企画局ペーパー登場」
2025/01/17
〇1月利上げって雰囲気になりましたなあ
昨日は朝っぱらから時事通信が
https://www.jiji.com/jc/article?k=2025011500959&g=eco
日銀、1月利上げ検討へ 米新政権発足見極め
時事通信 経済部
2025年01月16日07時04分配信
『日銀は23、24両日開催の金融政策決定会合で、追加利上げを検討する。植田和男総裁は15日、全国地方銀行協会の会合で「来週の決定会合では利上げを行うかどうかについて議論し、判断する」と発言。前日の氷見野良三副総裁と同様に、政策変更を視野に突っ込んだ討議を行う考えを明らかにした。20日のトランプ米政権発足後に世界経済や金融市場が混乱しなければ、日銀は利上げする可能性が高い。』(上記URL先より、以下同様)
ということで観測記事の形になっていますが、その観測が「利上げする可能性が高い」と決め打ちしてきましたが、まあ氷見野さんに続いて一昨日の植田さん、というのがあったので1月利上げをかなり織り込みの巻になってきたという次第でこれが出たから急に債券市場動くとかいうのは無かったけど、アメリカン金利が低下していた方も効いてるのか為替ちゃんが反応していた感じですな。
でもって記事はまあ解説記事状態でして、
『日銀は年末年始の企業経営者の発言や今月9日に開いた冬の支店長会議での報告などで、利上げ判断で重要なカギとなる賃金引き上げに相当の手応えを感じている。植田総裁は冬の支店長会議について「(今年の春闘での賃上げに向け)全国の状況は前向きな話が多かった」と評価する。』
ほうほう。
『もう一つの重要な要素はトランプ次期米大統領の経済政策だ。日銀はトランプ氏の大統領就任演説で、政策の不確実性は一定程度解消できる可能性があると見込んでいる。』
わずか数日で不確実性が一定程度解消できる、というご認識でしたら、なにもわざわざ「米国新政権の経済政策の影響に不確実性が高い」とか説明する必要は無かった訳で、完全に12月の総裁記者会見が食言だったことを示している上に、会見の時にネタにしましたように、昨年12月の定例記者会見においては、植田総裁は(昨年4月の会見での「はい」と違って)ハプニングで米国ガーを連呼したのではなくて、明らかに腹話術人形遣いの作文に乗っかって発言していたのが会見時の態度でも発言の流れでも明白でしたので、これすなわち大本営が年末年始のどこかで突如の君子豹変をしたという話に他ならないのですが、このジャガーチェンジの背景がさっぱり分からんですわな。
『ただ、トランプ氏が就任後に日本を含む海外への関税引き上げなどを打ち出し、世界経済が混乱したり金融市場が動揺したりすれば、利上げは3月に先送りされる可能性がある。日銀は来週の会合ぎりぎりまで状況を見極めた上で、最終判断する。』
まあさっきネタにしたベッセントの話の感じですと、トランプって関税をただ単にブラフに使うだけの話で、それによって世界経済混乱させるとか自分で自分の首を締めにいくわけではない(そもそもトランプは主義主張に殉じる人ではないからそういうことはしないでしょ)と思うのですが、まあこればっかりは来週にならんと分からんですな。
でもって昨日は20年入札があるというのに前場引けの11時02分にフラッシュを打ってくるという割とタチの悪いことをしてたのがBBGではありましたが、
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-01-16/SQ4SDOT0AFB400
日銀が来週会合で利上げの公算大、米新政権の影響限定的なら−関係者
伊藤純夫、藤岡徹
2025年1月16日 11:02 JST 更新日時 2025年1月16日 16:20 JST
→今年の賃上げは昨年に続く良好な内容へ、価格転嫁も想定通り強まる
→経済データや市場動向などを会合直前まで見極めた上で最終決定する
『日本銀行は、来週予定されるトランプ米次期大統領の就任時の発言を受けて金融市場などで大きな混乱が起きなければ、23、24日の金融政策決定会合で追加利上げを決める公算が大きい。複数の関係者への取材で分かった。』(上記URL先より、以下同様)
時事通信の報道に関しては「時事通信が分析を行った結果を踏まえて時事通信としてこう見ます」って体の記事になっていますが、こちらは毎度おなじみの如く「関係者によると」になっている、というのがまあ面白いですわな。
『関係者によると、日銀が政策判断で重視している春闘をはじめとした今年の賃上げは、支店長会議での報告などを踏まえ、33年ぶりの高水準となった昨年に続く良好な内容が期待できるという。持続的な賃上げ機運の高まりから、賃金コストを価格に転嫁する動きも想定通り強まっている。』
しかしまあこれもひどい話でして、そもそも12月の決定会合のあと円安スペクタクルになったのって、
https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2024/kk241220a.pdf
総裁記者会見
――2024年12月19日(木)午後3時30分から約75分
の1ページ目の事実上のオープニングリマークでの説明だったんですよね。あれから円安ショーが拡大したわけですが、あの時植田さんが言った、というか大本営問答作成局が植田さんに言わしめた説明って、
『そのうえで、金融緩和の度合いを調整するタイミングについては、様々なデータや情報を丹念に点検したうえで、判断していく必要があります。この点、賃金と物価の好循環の強まりを確認するという視点から、来年の春季労使交渉に向けたモメンタムなど今後の賃金の動向について、もう少し情報が必要と考えています。また、米国をはじめとする海外経済の先行きは引き続き不透明であり、米国の次期政権の経済政策を巡る不確実性も大きい状況が続いていると判断しています。』(この部分だけ直上URL先の2024年12月19日植田総裁記者会見での冒頭説明より)
とにかく12月会合って会見の冒頭の説明(別に言わされた発言ではない、という点が重要)のこれを聞いた瞬間に(ノ∀`)アチャーと思いましたが、もうその瞬間から一大円安スペクタクルショーが始まった訳でして、
「来年の春季労使交渉に向けたモメンタムなど今後の賃金の動向について、もう少し情報が必要」
「米国の次期政権の経済政策を巡る不確実性も大きい状況が続いていると判断」
が実質2週間(しかも年末年始だから空白期間みたいなもんだし)でいきなりひっくり返るとかお前ら真面目にやる気あるのかという事は、利上げ自体はアタクシ的に大歓迎ではあるけれども、この間の日銀はあまりにもひどいレベルの食言をしている訳で、その点についてはしつこく指摘しておきたいもんです。
と、話がそれましたが、BBGも
『20日に就任するトランプ氏の発言では、関税をはじめ経済政策の具体的内容や為替を含む日本への言及が注目される。関係者によると、金融市場にショックを与える大きな波乱や世界経済見通しを覆すようなことがない限り、0.25%程度の政策金利を0.5%程度に引き上げて金融緩和度合いを調整する環境が整いつつあるという。経済データや市場動向などを会合直前まで見極めた上で最終決定する。』(先ほどのブルームバーグ記事に戻っています)
という締め方をしていますので、トランプ就任演説待ちというか、そこで変なハプニングが無ければまあよろしあるねという事でしょうが、まさかとは思うがトランプ発言受けて円高になったら安心して1月利上げスキップとかやらねえよなというのは心配になりますな、さすがの日銀もそこまでアホでは無いと思いますので、グローバルリスクオフ祭りにならなければ利上げじゃねえのという感じですが。
でもって昨日は公共放送がこんなニュースを打っていまして、
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250116/k10014695041000.html
日銀 植田総裁 利上げに関し連日発言 来週 利上げの見方広がる
2025年1月16日 15時35分
『日銀の植田総裁は16日、第二地方銀行協会が開いた会合であいさつし、「来週の金融政策決定会合で利上げを行うかどうかについて議論し、判断したいと思う」と述べました。15日も同じ発言をしていて、金融市場では日銀が来週利上げに踏み切るのではないかという見方が次第に広がっています。』(上記URL先より、以下同様)
まあこちら第二地銀協の新年何とか会みたいな会合だと思われまして、前日に地銀協の新年何とか会があったのでその第二弾ということですから、そらまあ前日と全然違う話をおっぱじめる方がビビりますので同じ話をするのは仕様ではあるんですけど、わざわざこうやってニュースに取り上げて、しかも公共放送だから一般向けのニュースに思いっきりなるわけでして、全体として利上げ機運を盛り上げる感じになっておりますわな。
発言自体は、
『この中で植田総裁は、追加の利上げを検討する上で重要な判断材料になるとしていた賃上げに向けた動きについて、年初の企業幹部の発言や先週開いた日銀の支店長会議での報告を踏まえ「おおむね前向きな話が多いように思う」と述べました。そして植田総裁は「こうした要因をにらみつつ経済・物価の見通しをとりまとめ、それを基礎に来週の金融政策決定会合で利上げを行うかどうかについて議論し、判断したいと思う」と述べました。植田総裁は15日も同じ発言をしていて、追加の利上げに向けた環境が整いつつあるという認識を重ねて示した形です。』
ということで同じ話をしているので前日の発言の焼き直しではあるのですが、「連日言っている」というのが一つの話題性になるわけでして、この機会を捕まえて総裁に2度言わせている、という時点でまあお察しという話でして、つまりは氷見野副総裁のやたらやる気満々な金懇挨拶は氷見野さんの単騎突撃ではなくて、威力偵察、というよりは普通に前軍が戦線に投下されたムーブでした、というのが答え合わせになるんじゃないでしょうか、と思いました(個人の感想です)。
・・・・しかしまあ何ですな、年末年始のほぼ空白期間の間にコロッと話が変わってしまったって背景ってまあマジのマジでさっぱり分かり兼ねるところではありますが、この間に大きく変わるとすれば政治的に物価高批判が一段と高まっている(第二種兼業主夫のワイから見たら特にこの秋口からの生活物資の値上がりが甚だしくて、現金決済主義なので北里柴三郎先生がホイホイとお出かけになるのを悲しみをもって見守る日々な訳で現金はマジで支出を体感できるのでお勧めしませんw)のがあって、この年末の価格上昇とかシャレになっていなかった訳ですが、この辺りの話が年末帰郷した先生方によって危機意識として伝わった、というのを一つ想像していまして、だからこそ先日の氷見野さんの講演でもアクチュアルの物価が下がらないといけないって趣旨の話があったりしたんじゃないの、と思うとちょっといい傾向ではあるなと思うのですが、実際問題としてこの突如のジャガーチェンジ(植田日銀の何回目のジャガーチェンジでしたっけwwwwwww)の背景がマジで分からんですわな。どうせ日銀に問い詰めてもウソツキ大本営は「従来言っている通りです」としか回答しないのは自明なので聞くだけ無駄なんですけど。
〇減額措置がどうしたこうした
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2025/mpr250116a.pdf
チーペスト銘柄等の国債補完供給にかかる減額措置の取り扱いについて
202 5 年 1 月 1 6 日
日本銀行金融市場局
『日本銀行では昨年 10 月に、本行の保有比率が極めて高い銘柄がチーペスト銘柄になることを踏まえ、「チーペスト銘柄等1にかかる国債補完供給の要件緩和措置」を当面継続する方針を示すとともに、チーペスト銘柄等の国債補完供給にかかる減額措置の願い出について、日本銀行が国債市場の流動性改善に資すると判断した場合には、原則として当該願い出を承諾する方針を明確にしました2。』
冒頭から偉そうなんだが、そもそも指値オペだの大量の国債購入だのして10年国債をキチガイのように買い占めまくって国債現物市場の流通玉を枯渇させたのお前らだろという話で、スイッチングオークションでもして流動性供給に努力するとかいうなら話は分かるが、減額措置を「承諾する」とかよく考えたらてめえ何様のつもりだというか、これは典型的なモラハラDV人間ですわwwwwwwwwwwwwwww
でまあそんな悪態はさておきまして、
『同時に、本措置の利用が進むもとで、日本銀行が、減額措置の願い出に対し、「流動性改善に資する」と判断する際の考え方について、照会も頂くところです。この点、日本銀行としては、本措置が、債券先物の受渡決済における現物の受渡しにかかる懸念を和らげる趣旨で講じられたものであることに鑑み、チーペスト銘柄等の減額措置が国債市場の流動性改善に資するかどうかについては、当該銘柄の市中保有額の水準を判断の基本に据える方針です。』
先物チーペスト銘柄以外については過去の愚行の副作用を改善する気はないとのことです、残念ですねえ。
『具体的には、過去の債券先物の取引最終日時点の先物建玉残高の水準を参考として、1銘柄当たりの市中保有額が
1.2 兆円程度の水準を回復するまでは、減額措置の願い出を原則として承諾することとします。』
いやまあ最終未決済建玉を勘案したら1.2兆円くらい市中にあれば、ってのは感覚的には何となくわかるのですけれども、これ数字を明示的にしちゃうと却ってSCでかき集めてスクイーズするとかいうような輩を招くことにならんかねとは思うのですけれども、一応その後に、
『そのうえで、国債市場の流動性の改善度合いは、市中保有額の多寡に加えて、その時々の市場の状況にも影響を受けることから、日本銀行としては、今後とも、チーペスト銘柄等の現物・レポ市場における売買・貸借取引の状況等を丁寧に確認し、所要の措置を講じていくこととします。』
とあるので、変なスクイーズみたいのが掛かった時には1.2兆円以上でも減額措置をバンバンやれることになっているにはなっているのでそっちが登場するんでしょうけれども、何はともあれこういうようなことが後になって本来正常になって然るべき債券市場を歪めている、というのが長期国債馬鹿買入の副作用なのでありまして、多角的レビューでござるとか言ってあの時点で勝手に効果と副作用の総括をしてるんじゃねえよこのバカスケというお話にもつながる次第ですわ。
と考えますと、来る6月会合では国債買入ペースの減額をもっと加速させていかないといつまでたっても債券市場が本来の市場としてのシグナリングだったり、効率的な資源配分に資する、というような重要な機能を果たせないままとなり、ひいては国民厚生に対して望ましくない状態が続きまっせ、ということになるんじゃないかと壮大な締め方をしておきまして今朝はこの辺で勘弁。
2025/01/16
〇植田総裁がまたダマテンご挨拶をぶっこんで1月利上げ検討とか言い出すとかもうね
昨日は午後にこれが出てナンジャソラですわ
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-01-15/SQ3UU7T0G1KW00
植田日銀総裁、来週会合で利上げ判断と明言−市場観測強まり円高進行
横山恵利香、浦中大我
2025年1月15日 13:26 JST 更新日時 2025年1月15日 17:09 JST
→米経済政策と春闘のモメンタムが重要なポイントと改めて指摘
→各界意見や日銀支店長会議では前向きな話が多かった−賃上げ
ちょwwwwwwおまwwwwwwwww
『日本銀行の植田和男総裁は15日、来週の金融政策決定会合で米新政権の政策や春闘の賃金動向などを精査し、追加利上げを行うかどうか判断すると明言した。市場では同会合での利上げ観測が一段と強まり、円高が進行している。』(上記URL先より、以下同様)
いやまあ早期利上げして頂くのは結構なんですけど、昨日公の発言があるなんて日銀から何のアナウンスもなかったじゃんダマテンの闇討ちやめえや、というか昨日まさに氷見野さんが「コミュニケーションの見直しをする」っていい話をしたばっかりなのに昨日の今日でこれは台無しにも程があるわけで、企画と政策広報の猛省を促したい。
『植田総裁は全国地方銀行協会の新年の集いであいさつし、今年も経済・物価情勢の改善が続くなら、政策金利を引き上げて金融緩和度合いを調整すると改めて表明した。利上げの判断では米国の経済政策、春闘に向けたモメンタムが重要なポイントだと指摘。賃上げについては、各界の意見や9日の日銀支店長会議での報告では前向きな話が多かったとの認識を示した。』
地銀協の新年会でのご挨拶だったようで、ご挨拶の内容自体特に公表しないってのは分かるけど、内容を公表しないからと言って日銀サイドがダマテンってのはどうなのかよと思います。
でまあその内容ですけれども、詳しいのが日銀から公表されている訳でもないので、別のソースで公共放送さんから引用しますと、
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250115/k10014694111000.html
日銀総裁「来週 利上げ行うか判断」長期金利 国債利回りは上昇
2025年1月15日 18時36分
『日銀の植田総裁は15日、全国地方銀行協会の会合であいさつし、賃上げに前向きな企業が多くなっているとして「来週の金融政策決定会合で利上げを行うかどうか議論し、判断したいと思う」と述べました。直前に発足するアメリカのトランプ次期政権の政策も見極めながら、追加の利上げに踏み切るかどうか判断するとみられます。』(直上URL先のNHKサイトのニュース記事より、以下同様)
『この中で植田総裁は、経済・物価情勢の改善が続くのであれば、それに応じて追加の利上げを検討するという従来の考え方を示したうえで、重要な判断材料になるとしていた賃上げに向けた動きについて、年初の企業幹部の発言や先週開いた日銀の支店長会議での報告を踏まえ「前向きな話が多かったと思っている」と述べました。』
どう見ても1月会合がライブに完全に昇格です本当にありがとうございました。
『そのうえで植田総裁は、今後の金融政策について「こうした要因をにらみつつ経済・物価の見通しをまとめ、それを基礎に来週の金融政策決定会合で利上げを行うかどうか議論し、判断したいと思う」と述べました。』
「利上げを行うかどうか議論する」ですから1月に仮に様子見にしたって3月やりまっせという勢いですわな。
『日銀は、14日も氷見野副総裁が横浜市で行った講演で追加の利上げに向けた環境が整いつつあるという認識を示しましたが、植田総裁もこれに続いた形です。』
・・・・・ということで、植田総裁なんか急に変なもんでも食ったのか、7月会合のアレみたいに突如覚醒をして「見たかお前らこれが真の植田和男じゃああああ」のスイッチでも入ったのか、内田副総裁の持ってるリモコン装置が故障したのかよくわかりませんが、何ですかこの氷見野さんとの連発コンボはというお話になってまいりましたな。
でまあそもそも0.25だの0.5だのクソ低い(この前だした日銀の潜在実質成長率0.6%が正しいんだったら2%物価目標達成の時の政策金利は2.6%だろ常識的に考えて派のワイ)水準がクソなので今すぐ利上げすべきと思っているので早期利上げするのは歓迎したいのですが、だったら12月会合前後でなんであんなに春闘ガーとか米国新政権の経済政策の影響ガーとか連呼して1月利上げ観測を叩き潰して回っていたのか、というのが全く意味不明な訳でして、なんちゅうか植田日銀はハイな状態とローな状態の差が極端にも程があって、しかも全然首尾一貫していないからこっちは振り回されるばっかり(なのでだんだん斜に構えて日銀の情報発信を受け止める人増えてると思うけど)な訳で、お前らもうちょっと「丁寧な説明」という言葉の意味を考えろという話ではあります。
たぶんですね、7月のクッソタカな会見とか、9月12月のクッソハトな会見とかを見ますに、植田さんって「今回やった政策(現状維持も含め)の背景説明」を必死こいて丁寧に説明しようとしてるんじゃないかという気がしてきたんですよね。でも聞いている方としては(政策変更ならまだしも現状維持の時は特に)今回の背景の話って市場的にはもう「終わった話」なのであって、聞きたいのは「その先の話」になるのですから、終わった話を丁寧に説明されると、「その先の話」もそうなのかという印象を与えやすくなる訳で、その結果7月みたいなクッソタカな会見になったり、12月みたいなクッソハトな会見になったりして、一々混乱のタネを捲いて回っているって事なのかなあということで、つまりは想定問答の作文をもうちょっと考えるのと共に、植田総裁に対しては「終わったことの話を必要以上に丁寧にすることはない」というのを徹底した方がええんじゃないかな、とかふと思いました、まあアタクシの妄想ですけど。
まあそれはそれとして、「来週の金融政策決定会合で利上げを行うかどうか議論」というのを氷見野さんだけではなくて植田さんが言ったのは当然ながら発言としてのステータスがワンランク上になるわけでございまして、12月会合後およびその後の情報発信では1月の利上げ検討なんてあり得ないくらいの勢いだったのに、氷見野さんの金懇に乗っかって思いっきり植田さん直近の情報発信を上書き修正してしまいましたな。でまあこうなると一昨日のこのニュースもなるほどねという話になるわけですが、
https://jp.reuters.com/economy/bank-of-japan/S5KY7TRXX5OC5BIXSOKF57J36E-2025-01-14/
日銀の利上げ検討と我々がデフレ脱却目指すことは矛盾せず=赤沢再生相
By 竹本能文
2025年1月14日午後 12:50 GMT+9
『[東京 14日 ロイター] - 赤沢亮正経済再生相は14日の閣議後会見で、氷見野良三日銀副総裁が来週の金融政策決定会合で利上げ行うか議論をするとの発言に関し、日銀の利上げ検討と政府がデフレ脱却を目指すことに「矛盾することはない」と述べた。』(こちらは直上URL先で一昨日のニュースです)
という事でして、まあ何か知らんけど利上げOKサインでも出たのかもしれませんけれども、結局やる気あるんだったら何で12月にあの情報発信をしたのか、というのが全く意味不明ではございまして何なんでしょというのは相変わらず分からんです。何なんですかねえあの人たちは。
〇氷見野副総裁金懇会見はご案内のように1月会合ライブですよというのと12月の情報発信を上書き訂正する内容
https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2025/kk250115a.pdf
氷見野副総裁記者会見
――2025年1月14日(火)午後2時から約30分
於 横浜市
・「米国新政権の経済政策の影響が不透明だから様子見」という過去の植田発言を上書き訂正
幹事社質問の次の質疑の前半はまあ普通にド直球でして、
『(問)二点あります。一点目は、講演の中で、アメリカの経済について、新大統領の政策の先行きに注目が集まる中、来週のトランプ大統領就任演説で政策の大きな方向が示されるのではないかというご発言ですけれども、これはある程度政策の方向がみえ、またそれによって市場で大きな混乱が起きたりしないのであれば、1
月の利上げも十分可能という趣旨でおっしゃっているのか、少し具体的に説明頂ければと思います。(後半割愛)』
はい直球。
『(答)何かたくさんご質問があったような気がして全部カバーできるかどうか分かりませんけれども、一つは
1 月の利上げの話ですけれども、これはそれまでに得られた情報を精査して、経済・物価の見通しの全体像を考えたうえで、政策委員の間でよく議論して、適切に判断していくということでありますので、何か特定の項目でこれがあったらとかこれがなかったらとかいうチェックリストのようなふうには考えておりませんで、全体像としてどう評価するかということになってくわけですが、』
と原則論から入りまして、
『その中の一つの大事な要素としては、アメリカの話があって、アメリカの経済自体は堅調だというふうにみておりますけれども、[トランプ次期]大統領、もう既にいろいろ発信されているわけですが、就任演説では、一つにはどんなバランスでどんなスケジュールで進めていくのかとか、あるいは、これまでに発信されていないような何か新しいものがあるかとか、そういったところはよくみていこうと思っておりますけれども、』
ほうほう。
『何か一対一でその話と、1 月の結論を結び付けるようなつもりはございません。(後半割愛)』
まあ12月会合の時に植田総裁が何度も「アメリカ新政権の政策の影響が」と言いまくってしまって、だったら1月は当然ながら判断できるわけがない時間帯だから政策変更できないよね、という事になってしまったのを上書きしようという趣旨はのは分かりますし、金懇挨拶の方にもありましたが、米国新政権の政策の影響が不確実、とか言い出したらそんなの無限に不確実。すなわちまあ言ってみれば12月の説明って失言に近い(利上げする気が一切ないなら失言ではないけど)説明だった訳ですので、氷見野さんが今回それを上書き訂正しましたよってことなんでしょうね。
・直近の為替円安が物価に影響を与えているというのをきちんと言明していますね
質問の後半は為替円安の物価上振れリスクに関してですが、
『(問)(前半割愛)あと二点目は、為替の影響なんですけれども、輸入物価の円安による上昇のリスクっていうのは昨年
7 月に利上げした際に一つファクターになったと思うんですけれども、最近の動きは、そうした輸入物価の上昇を通じた物価の上昇圧力として、リスクとしてとらえなければならないのか、そこのリスクはこれまで日銀がみていた通りだいぶ減衰しているのか。加えて、賃上げから物価への上押しの働きっていうのも踏まえた全体で、物価は、氷見野副総裁、今、上振れ下振れどちらの方向がより強く意識しなければならないとみてらっしゃるのか。すいません、要は国内の物価の動向についてのリスクの考え方についてお願いします。』
加えて、以下が余計にもほどがある。もうちょっと整理して(というか為替に絞って)聞いてくれ。
『(答)(前半割愛)二つ目、物価の状況ということで、まず為替、輸入物価の話がありました。今日の懇談会でも、何人かの方からやはり経営上は為替の安定が重要だというお話がありまして、具体的に数字を挙げて金利と為替でこんなにどっちが大変かと言えば、為替だというようなお話をされた方もあったわけですけれども。』
ここは氷見野さん中々チャーミングなのですが、上記の質問だと為替の話をかっ飛ばして物価の話をおっぱじめて誤魔化す、という技も可能だったと思うのですが、いきなり真正面から為替の話をおっぱじめまして、しかも「具体的に数字を挙げて金利と為替でこんなにどっちが大変かと言えば、為替だというようなお話をされた方もあったわけですけれども」というのを、今日のヒアリングによる一つのアネクドートではありますが堂々と紹介していまして、金利が多少上がっても問題ないが為替がぶっ飛ぶと問題、という説明をイタコ方式でしらっとぶち込んでいるのは中々いい味を出しています。
『円安、経済の様々なところに影響があるわけですけれども、今ご質問のあった物価との関係ということになりますと、直近で輸入物価指数をみますと、ドルベースではかすかに下がっているんですが、円ベースでは
10 月、11 月と、前月比でみるとかなり高い伸びになっております。ですので、そういったものが物価にどう影響していくかというのはよくみていかなければならないと思っております。』
10月、11月の数字を出して円安がこれから物価に影響を与えていくんじゃないですかという話をしておりますな。以下賃金云々は余計な質問に対応した説明ですけど。
・金懇挨拶に引き続き会見でも「アクチュアルの物価が高すぎ」というのを明示的に指摘しています
『そのうえで、更にいろんな賃金はじめとした様々な要素を含めて、物価について全体に上下どちらのリスクの方が大きいと思っているかということでしたけれども、そこがなかなか微妙でありまして、ヘッドラインの上昇率は、今いろんな政策的なものを除くと
3%ぐらいですので、ちゃんと下がっていかないと困るわけですけれども、他方インフレ予想みたいなものをみると、あるいは例えば私どもが出してる基調的な物価の動向をみるための指標とかいうのをみると、これは今度は低いということで、両方をみてやっていくしかないというふうに思っております。』
この部分は昨日ネタにしました金懇挨拶でもありましたけれども、会見でも「ヘッドラインの上昇率は、今いろんな政策的なものを除くと
3%ぐらいですので、ちゃんと下がっていかないと困る」と「アクチュアルの物価は高すぎ」というのを明示的に発言しているのが注目されるところでして、従来植田総裁や内田副総裁の説明ではこの「アクチュアルの物価が上振れしているのは怪しからん」という認識を示さないままに「基調的物価ガー」だけ言っていたんですけれども、ちゃんとこれを示しているというのは昨日も申し上げましたが実に結構なことだと思います。
・思いっきり「1月ライブ」感を出す質疑応答
次の質疑ですが質問が良くまとまっていましたね。
『(問)午前の講演で政策判断の注目点として、国内の賃上げ動向というのを挙げられました。そのうえで昨年度に続いて強い結果が期待できるとの言及もございましたが、そうした中で
3 月の春闘のですね、1 次集計を確認する必要性というのを、副総裁ご自身どのようにお考えなのか。その強い内容がですね、既に予想されている中で、緩和調整が遅れてしまうことのリスク、これについて現時点で副総裁はいまどのようにお考えか、教えてください。』
まあ普通に「1月やれよ」って煽り質問ではありますが(^^)、
『(答)賃上げは賃金と物価の好循環の非常に大きな要素ですので、注目点ではあるわけですけれども、全体を評価したうえで、賃金の話だけではなくて、全体を評価して判断していくということになると思います。』
もうこの時点で12月の植田総裁会見での「賃金と米国政策を見極めないと利上げ判断はできない」という1月利上げ観測を全力で叩き潰しにいった説明(ちなみに12月会合の時にネタにしましたように、前回の植田さんの説明は植田さんの失言とかじゃなくて想定問答がそういう作りになっていたからなので、植田さんというよりも大本営の説明でしたわな)を上書き訂正していますよね。
『そのうえで、ではどこまでみて判断するかということになりますが、これについては来週の決定会合でよく議論して判断していくということになると思いますけれども、』
からの、
『足元の状況、足元で得られた情報でどうかということであれば、12 月の時点で得られた情報に比べれば、あるいは支店長会議であれ、新年の要人の発言であれ、また
12 月末にいろいろ出たアンケート調査の結果であれ、比較的前向きの、去年と比べて前向き度が同じか強いくらいのものが多かったということは言えると思います。』
ということで、賃金の判断を前進させるに足る材料が12月以降に出てきましたよと。
『そのうえで、賃金以外の部分も含めて経済物価の見通しを考えて、トランプさんの演説もみて、2
日目の朝出るCPIも見て、しっかり判断していきたい、というふうに考えております。』
ということですが、CPIなんて東京都区部から考えてどう見たって強いじゃろという話になるので、トランプの演説で余程のお馬鹿発言が出てこない限りは「しっかり判断」することになるんじゃねえの、ってまあ思ってしまいますよね、ということでこの辺りで更に「1月ライブ」感が強まった(既に金懇挨拶の時点で強まっていましたけど)なあとは思いました。
・なお直球の火の玉ストレートの質問に関しては思いっきり見送り三振の回答ですな(^^)
この質疑応答、聞いている時は何となく流してましたが文字になったの見ると氷見野さんにしては珍しく回避行動をとっているのですね。
『(問)副総裁、午前中の講演の中で、利上げを行うかどうか政策委員の間で議論し判断する、という来週の決定会合についてのご発言ありましたけれども、もちろん主な意見はもう
12 月の主な意見は発表されていて、その中でも、利上げをするかどうか議論されている。当たり前といえば当たり前なんですけれども、このタイミング、来週に決定会合控えたタイミングで執行部である副総裁がこういった発言をされるというのは、利上げの可能性をそれなりにみていらっしゃる、というふうに受け止める向きもあると思います。副総裁として、可能性としては利上げを決定することがあるというふうにみてらっしゃるという理解でいいのかどうかお願い致します。』
これはもう思いっきり回避回答ですがw
『(答)これは政策委員の講演が一度に固まったり、ばらばらになったりする、というのが非常に評判が悪いので、均等にしようということのわけで、ところが
1 月というのは非常にやりにくくてですね、1 月最初の週に地元の経済界の方に集まって頂くというのはちょっと迷惑ですし、来週になるともう決定会合の週ですし、その後になると、今更何を言いに来たということにもなりかねませんので、今週にならざるを得なかったと。そうすると、黒船が来ただの何だのというのは私がいくら言いたくてもですね、それだけで話が終わると、ややお集まりの方にもご不満が出るかということで、来週の決定会合についても一言言おうと。でも、そこで議論して決まることなので、政策委員の間で議論し判断したいと思いますというふうに申し上げたという経緯でございます。』
ワロタって感じですが、この前の甲府での金懇でも信玄堤の話を思いっきりしていまして、実はあの部分が白眉だったというのをネタにしたと思いますが、そういう意味では今回まだ黒船来航云々かんぬんの部分をネタにしていないのですが、そっちをネタにすべきだなと思いました^^;
・赤信号青信号を使った質問キタコレ
こんなのもありました。
『(問)今日の講演でもありましたけど、経済・物価情勢はオントラックで推移してますと、春闘の賃上げも期待が持てると、アメリカの大統領も就任後にある程度方向性がみえるんじゃないか、というようなお話ありました。状況を考えると、利上げに赤シグナルが灯っているものって、やや見当たらないと思うのですが、その辺り何か副総裁ご自身が気になっている点とかありましたらお願いします。』
これは以前氷見野さんが「経済に全部青信号とかいうことはないんだからそれでも必要な時は政策調整をしますよ」って話をしたのを踏まえた例えですね。
『(答)これは全体像を見たうえで判断しますので、赤シグナルが 1 個あったらやらないとか、実はその赤シグナルも
1 個あってやめるような場合もあり得ると思うので、なかなかチェックリストみたいにして、これがあったらどう、ということを申し上げるのは非常に難しいですけれども、これまでに出ているデータ、情報についての考え方は、ある程度、今日申し上げたわけですけれども、トランプさんの就任演説でどんなお話があるのか、あるいは、決定会合の
2 日目の朝には全国のCPIの数字も出ますし、それまでに起こること全部みたうえで、よく議論して判断していきたいというふうに思っております。』
まあ不測の事態がなかったらかなり具体的に議論する、というのは把握しました。
・どさくさに紛れて内田副総裁が8月に行った株式市場全面降伏講演をディスっているのはワロタ
この質疑は回答がワロタですけれども。
『(問)二点お伺いしたいんですけれども、足元で世界的にというか長期金利急上昇してまして、日本の
10 年金利も今日 1.245%ということでかなり上昇急ピッチなんですけれども、金融政策運営への影響はどのようにみてらっしゃいますでしょうか、というのが一点目。(後半割愛)』
まあワイだったら「ねえよ馬鹿」とか問題発言して秒で辞任に追い込まれそうですが、氷見野さんここを先途としらっと内田方面に砲撃を加えているのがお洒落でして、
『(答)長期金利も市場で決まるものですので、内外の長期金利の変動の背景みたいなものについては、コメントは差し控えたいと思いますけれども、市場はいろいろ上がったり下がったりするものですので、1
日、2 日、1 週間の動きだけをもって政策の判断のベースにするということにはならないのではないかというふうに思います。(後半割愛)』
>1 日、2 日、1 週間の動きだけをもって政策の判断のベースにするということにはならないのではないかというふうに思います
>1 日、2 日、1 週間の動きだけをもって政策の判断のベースにするということにはならないのではないかというふうに思います
>1 日、2 日、1 週間の動きだけをもって政策の判断のベースにするということにはならないのではないかというふうに思います
(;∀;)イイハナシダナー
どう見ても内田方面への砲撃です本当にありがとうございました(^^;
2025/01/15
〇氷見野副総裁横浜金懇は想定以上にやる気を見せてたし良い話はあったし
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/data/ko250114a1.pdf
最近の金融経済情勢と金融政策運営
── 神奈川県金融経済懇談会における挨拶 ──
日本銀行副総裁 氷見野 良三
ということで参ります。
〇いきなり話がワープしますが「コミュニケーション」の部分は大変に素晴らしかった
順序が思いっきり逆になりますが、『3.日本銀行の金融政策運営』の最後の部分に『(金融政策を巡るコミュニケーションのあり方)』という小見出しがあって、この内容が色々とイイハナシダナーにも程があるし、何なら植田内田への砲撃も混じっていてさすが氷見野さんとしか申し上げようがない、まあもちろん内容的に見るとちゃんと大本営で相談した話も入っているので植田内田が反省したというのもあるかも知れませんけど兎に角ここは良かった。本文11ページ(PDFで12枚目)の下段の方からの部分になります。
『さて、金融政策の運営を巡っては、多くの方々から、丁寧なコミュニケーションに努めるように、とのご意見をいただいています。コミュニケーションに関して3点ほど感想を述べさせていただければと思います。』
からの3点、悉くが大変に結構なお話をしておりましてまあ読めと。
・フォワードガイダンス政策は変化の時代には役に立たないどころかマイナス迄ある
『第一に、日本銀行は 1999 年2月、ゼロ金利制約に直面するとともに、当時審議委員だった植田総裁の発案で、金融政策の今後の姿についてガイダンスを示すことにより、追加的な緩和効果の発揮を目指すようになりました。』
そうですね、でもってここでポイントなのは「ゼロ金利制約の中で追加的な金融緩和効果を出すために作ったのが時間軸政策だ」ということ。
『この戦略は、当時は時間軸政策と呼んでいましたが、その後フォワードガイダンスと呼ばれるようになりました。他の先進国もゼロ金利制約に直面していく中で、世界中の中央銀行に広まり、あらかじめ将来の金融政策決定会合の結論についてまで一定のガイダンスが示されるのが当たり前になりました。』
でもって「ガイダンスではない」といつも言ってるけど、FEDがドットプロット出しているのも一種のガイダンス政策に似た面があるわけですが、この手のガイダンスをやたら持ち上げていたのはウッドワードとバーナンキ。
『しかし、フォワードガイダンスについては、効果もある一方、政策転換が必要な局面になった場合には制約になってしまうのではないか、場合によっては政策変更を遅らせてしまいかねない弊害があるのではないか、という点も意識されるようになりました。』
まあ完全に遅れてしまいましたよね欧米は。米国の場合はその直前にアベレージインフレーションターゲットだのメイクアップストラテジーだの言って物価の上振れを容認してしまったのがさらに良く無かったのですが、「時間的余裕がある」とか言ってるどっかの日銀は他山の石で玉を攻むることはしないんですかねえ。
『このため、多くの中央銀行は、ゼロ金利制約から自由になった 2022 年の段階でフォワードガイダンスを取りやめました。』
FEDは(位置づけはガイダンスではないけれどもデファクトではガイダンスだわさ)ドットチャートを使っていますけどね。
『現在では、多くの中央銀行のコミュニケーションでは、「それぞれの決定会合の時点までに手に入ったデータの全体像をよく見て、会合ごとに判断していく」という姿勢が基本線になっています。』
でもって、
『日銀が公表文から将来を縛る表現を落としたのは、他の諸国に遅れ昨年3月のことでした。したがって新しい時代に入ってまだ間がないわけですが、その前のフォワードガイダンスの時代とは局面が変わっている、という点をまず申し上げておきたいと思います。』
非常に重要な論点でして、つまりは本来事前予告ホームランなどというものはあり得んというお話ですし、まあそれだったら事前のお漏らしなどというものも当然あり得んという事になるわけでして、局面が変わっているのに、というか局面が変わってから寧ろなのですが、事前の予告だのお漏らしだのみたいなのが横行するインチキコミュニケーションを行っている大本営に対してしらっとイヤミを言っているのですが、次の点ではさらにそれにブーストが掛かります。
・事前織り込ませを毎度毎度するという発想がそもそも頭おかしいと断罪しているんですよね
ここからが氷見野抜刀斎モード。
『第二に、金融政策が意図してサプライズを起こすことは、危機時などパーセプションを大きく転換すべき場面を除き、望ましいことではありません。』
まあそれはそうですが、黒田って散々やってくれましたよね。
『また、市場が金融政策に対して抱く予想が我々の考え方と乖離していると、そのギャップが解消される過程で市場が混乱することも考えられますので、ギャップの生じにくいコミュニケーションが望ましいことになります。』
でもって、
『更に、そもそも、金融政策の効果は、中央銀行の意図がどれだけ広く正確に受け止められるかに大きく依存します。』
ですな。
『したがって、世の中の人々が金融政策の今後について考え、予測するうえで役に立つように、基本的な考え方や、経済の現状についての見方について発信することは極めて大切です。』
と、ここまで説明してからの抜き打ち抜刀斎が以下始まる。
『しかし、だからといって、毎回の金融政策決定会合の結論について、事前に市場に完全に織り込んでもらえるようにコミュニケーションをとるべきだ、ということにはなりません。』
キタキタキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!!!
『政策は毎回政策委員の議論で決めるものですので、そのようなことは不可能です。』
まるで事前に大本営が決めているかのようなお漏らしが出ていることに対して氷見野副総裁がお怒りのようです。
『また、「会合ごとに織り込みを目指した事前のコミュニケーションがなされるはずだ」という期待が生じると、経済の動向よりも日銀の言いぶりの変化ばかりに市場の注目が集まることになりかねず、それも決して望ましいこととは思いません。』
昨年末について言えば、珍しくも経済指標に反応して動いていた債券市場が、11月末の植田総裁日経インタビューを境にいつものように日銀の顔色および関連する各種報道をうかがって動くという最悪の展開になってしまいましたのは記憶に新しいですが、この期待を生じさせているのはどう見ても大本営ですので、これまた氷見野さん抜刀斎モードになっておられますな。
・あのアホにも程がある金懇日程が改善されるのは実に結構な話です
でもって3番目もちょっとうれしかったのですが、まあこれは氷見野さんの独断じゃなくてちゃんと大本営ともども決定(内決?)したんでしょうなと思いまするに、やっとコミュニケーションを改善する気になったかという話でして、
『第三に、コミュニケーションについては経験に学びながら継続的な改善に努めていきたいと考えております。』
からの、
『コミュニケーションは、もちろん中身が大切ですが、場面の設定についてもいろいろ工夫できるところがあると考えております。』
ときまして、
『例えば、政策委員による今日のような金融経済懇談会についても、従来は半月に4人やったり、1か月間なかったり、ということがありましたが、時期を平準化していきたいと考えております。また、日程についても、これをぎりぎりに発表すると何か緊急にメッセージを出そうとしているのかとか誤解されかねませんので、できるだけ早くに公表することにしたいと考えております。』
(;∀;)イイハナシダナー
(;∀;)イイハナシダナー
(;∀;)イイハナシダナー
いやこれアタクシのような三下も含めましてそこら中から文句出てた話だし、なんか「総裁副総裁は平審議委員とは違うんじゃ」とでも言いたいのか特に総裁副総裁の講演などが直前まで日程が公表されないとかいう勿体付けた偉そうムーブをしていたのは毎度トサカに来ていましたし、審議委員の金懇を一気に4人やるとかお前ら真面目にコミュニケ―ションする気あるのかっていう舐め腐った日程の決め方してたり(まあ確かに某とか某とか某の金懇って他のとセットにして注目度を下げておかないと無能すぎて見てられない物件が出てくるから単独にしたくないって大本営の気持ちも分からんでもないですけどwww)でしたので、これについて率直にこういう説明をして改善していただくというのは氷見野さんというよりもさすがにこれは大本営だと思うのですが、そうかやっと改善してくれますか、とこれは評価したいですね。
『そのほか、ご意見を頂戴しながら、試行錯誤になるかもしれませんが、いろいろ工夫してまいりたいと考えております。』
ということですが、植田さんみたいになんでもかんでもその時の材料を強調しすぎるとかいうのはコミュニケーションのブレ以外の何物でもないので内容の改善もよろしくオナシャス。
・・・・・あとですね、今回の金懇の会見って14時開始でどこぞのベンダーがやる気満々でカメラ入れて実況放送していましたけれども、この会見14時開始ってのも高く評価したいところでして、これまでって金懇会見の内容がヘッドラインで流れてくる時間が14時半過ぎ(だいたい40分近く)からの債券先物の引け近くという時間帯にあたっていたので、時間が少ない分消化できないうちにヘッドラインの文字列に過剰に反応する、という弊害があって毎度悪態をついていた訳ですが、14時開始ですと受け止める方もヘッドラインの内容を落ち着いて消化しようという時間的な余裕もあるし、(まあ今回は某社のカメラ入っていたからヘッドラインへの反応がそこまで過敏じゃない(発言内容を確認しようとなる)というのもあったとは思います、為念)引け際に無駄な乱高下をしなくて済んだので、今後も金懇会見は14時スタート同時エンバーゴでお願いできればと思います。よろしゅうに。
〇金融政策運営のパートではちょいちょいと素敵な論点があって一部は巧まざる植田内田への砲撃にw
ということで引きつづき金融政策運営のパートですが、今度は同パートの頭から参ります。
・そもそも今の実質金利ドマイナスという状況は状況が改善されたら普通の姿ではないとな
『(物価を巡る状況と今後の金融政策)』って小見出しから。
『さて、先ほど、「デフレに陥った後、実質金利が高くなってしまった」というお話をいたしました。しかし、その後、2013
年に量的・質的金融緩和を開始したあと、日本は物価が下がり続けるという意味でのデフレではない状態になり、実質金利はマイナスになりました(図表8)。』
っていう説明をしていますが、図表8を見ますと実は2014年あたりからずっと実質金利がマイナスです、という図になっているのがチャーミング。
『名目金利がマイナス、という状態、すなわち、「日銀にお金を預けると、タンス預金よりも損になる」という状態は去年の3月に解消しましたが、「お金を貸したり預けたりしても、物価の上昇分を考えると目減りしてしまう」という実質金利マイナスの状態は続いています。』
はい。
『実質金利がマイナス、ということは、事業の実質での価値が今後少しずつ毀損していくプロジェクトに、借金をして投資しても見合う、ということを意味します。』
とはいえ借入金利も名目プラスなのでどうなんでしょうかね。まあそれは兎も角として、
『実質金利がずっとマイナスであり続けることがありうるかどうか、という点については、経済学者の間でも意見が一致していません。ノーベル賞を取った元
FRB 議長のバーナンキ氏の論文には、そんなことはありえない、という議論が出てきます3。他方、財務長官やハーバード大学の学長も務めたサマーズ氏の論文では、マイナスの実質金利はそんな珍しいことではない、という議論が出てきます4。』
でまあこの辺までが前振りでして、
『ですので、ここでなにか結論を申し上げようというつもりはありません。ただ、経済をマイナスのショックが襲っているような状態や、デフレ的な様々な諸要因が強固に残っている状態では、実質金利がマイナスになるということは必要でもあり、決して不正常でもないが、ショックやデフレ的な諸要因が解消された状態であれば、実質金利がはっきりとマイナスの状態がずっと続く、というのは、普通の姿とはいえないのではないかと思います。』
キタコレ!
『日本についていえば、ショックやデフレ的な諸要因のうち、多くは解消されていて、少子高齢化・人口減少とグローバル化という二大構造要因は続いているものの、それらがいわれているように宿命的なデフレ要因であるわけではないのではないか、という見方を申し上げました。』
今日そこまで間に合わないのですが前段の部分にこの辺の話があります。
『本当にそうかどうか。もちろん道は平坦ではないでしょうが、生産性を高めて賃金を引き上げ続けられる企業へと労働力が移動する傾向は強まっています。』
『企業も政府も国際経済の新しい構図を見越して戦略を推し進めています。』
『仮に今後も人口減少やグローバル化に伴う様々な課題を工夫して乗り越えていけるとすれば、実質金利が深いマイナスではなくなっていく姿を将来像として展望することも可能になるのではないか、と思います。』
本来植田さんがこういう中長期的なパーセプションで「政策金利が今の水準のままで留まるのはおかしい」という話をすべきところだと思うのですが、なにせ植田内田(特に内田)はクソ目先の話しかしないというのは何なんでしょうねと思いますし、こういう説明をする氷見野さん非常に真っ当に見えますわ。
・物価2%安定目標達成は「物価が下がって期待インフレが上がる」必要があると説明しているのもイイハナシ
次の段落ですけど、
『もちろん、当面の金融政策運営に当たっては、より短期的な経済・物価・金融情勢に十分な注意を払っていく必要があります。』
というのが頭に入るもののこの先は、
『ここで、物価の現在地を確認してみますと、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比は、輸入物価急上昇の影響から
2022 年 12 月と 2023 年1月には4%にまで至りましたが、その後は徐々に落ち着いてきております。わたしどもでは、来年度・再来年度については2%程度に着地するというのをメインシナリオと考えています(図表9)。』
『他方、人々が将来の物価上昇率について抱いている予想についてみますと、1%を下回っていたのが、徐々に上昇し、1%台半ばにまで至っています。』
実はもっと上なんじゃなかろうか説はあるのですがそれはさておきまして、
『日本銀行は、2%の物価安定の目標を持続的・安定的に実現することを目指しているわけですが、現実の物価上昇率がちゃんと下がっていかないとこの目標はもちろん実現できません。』
この「現実の物価上昇率がちゃんと下がっていかないとこの目標はもちろん実現できません」ってのは実に良いことを言っていまして、日頃弊駄文では日銀大本営やら植田内田やらが「基調的な物価は2%行ってないから緩和継続」というのを毎度のように能天気に言っていて、いつの日か日銀は物価高放置をしていると批判の十字砲火がやってくるゾという事を申し上げているのは皆様もご案内の事かと存じますが、氷見野さんの挨拶のこの部分、すなわち「現実の物価上昇率がちゃんと下がる必要がある」というのを言っているのは大事な話でして、日銀が物価高放置をしているんじゃないか、という疑念を払拭することでもありますし、日銀のお貴族様は庶民が物価高で苦しんでいるのを分かっていないとかいうような話に発展するのを防ぐこともできまして、実に良い事を言ってると思いました。
『他方、人々が将来の物価上昇率について抱いている予想が2%に向かって上がっていかないと、実際の物価上昇率もいずれはまた2%を下回るようになってしまい、目標を持続的・安定的に実現することはできません。』
氷見野さんの説明って無茶苦茶分かりやすいんですよね、文章で見てもそうですし、会見での説明なんかでもそうなんですよ。
『そこで、現実のインフレ率は下がっていって、予想インフレ率は上がっていって、それが両方2%前後で着地する、という、難度の高い道筋を描いて、そうなっていくという見通しを持っているわけですが、これまでのところ、その背後にある経済のメカニズムも含めて、概ねその見通しに沿って進んでいると思っております。』
難度の高い道筋、って認めているのもいいですよね。
・「今後も政策金利の調整を行う」というのを淡々と言明しつつ・・・・・
でもって次の段落に行きますと、
『わたしどもとしては、そうした見通しが今後も実現していくとすれば、昨年3月、7月に続いて、今後も政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えております。方向はそういうことだとしても、もちろん、内外には上下双方向のさまざまなリスク要因がありますので、注意深く判断していく必要があります。』
となっていますが、この次を見ますと・・・・・・・・
・賃金に関しての説明を見ると別に3月まで待たずとも判断できますよという文脈ですがな
『国内での注目点の一つは、2025 年度の賃上げの見通しです。』
でまあこれが従来の植田さんの説明だと1月には判断付くわけないじゃんみたいな感じの説明になっていた訳ですが、
『それぞれの企業ごとにさまざまな課題に直面しておられますので、賃上げはもちろん容易なことではないと思いますが、強い業況判断、高い水準が続いている企業収益、歴史的には低い水準にある労働分配率、人手不足、転職の活発化、最低賃金の引き上げなどからすれば、2024
年度に続いて強い結果を期待できるのでは、と願っております。』
願っている、であって思っている訳ではない(というか「思っている」だと1月利上げ色が強くなりすぎますからまあさすがにそこまではよー書かんわな)のですが、少なくともここに出されている内容は既に確認済みの話であって、それらから見たら本年度並みの賃上げが来年度も期待できる、という話になっておりますので、何なら1月会合の時点で「賃金動向は想定通りに強いので政策金利の調整に支障はありません」という話にできますわな。
さらに、
『年初の各界の方々の発言も前向きなお話が多かったように思います。先週開きました私どもの支店長会議でも、全体的に強めの報告が多く、特に、今後の継続的な賃上げを中期経営計画に盛り込むこととした企業についての報告が複数の支店長からあったのが印象に残りました。各種アンケート調査でも、賃上げ予定先比率や賃上げ率は、前年並みないし前年を上回る結果が多いようです。』
となっていまして、年初からの材料を見ても継続的な賃金引き上げ傾向を後押しする話をしていまして、12月会合の時には判然としなかったけれども1月会合の時点では賃上げ継続を確信できる、という話にすることは可能な話の作りになっています。
・問題の「米国新政権ガー」に関しても「トランプが冒頭から無茶しなければエエンチャウノ」ムーブをかましていまして
その次が米国新政権の政策ガーという無限に不透明なものを理由に出してしまった植田総裁のトンチキコミュニケーションの尻ぬぐいモードに完全になっている、という部分でしてですね、
『海外での注目点の一つは、米国の新政権の政策と、それが米国経済・世界経済・日本経済に与える影響です。』
まあこれは言及せざるを得ませんけど、
『これは継続的に見続けるしかありませんが、』
でもってこの点って結局無限に「影響を見極める必要がある」と言い続けられるというマジックワードというかチキンオブチキンのワードなのですけど、それに対して氷見野さんはこのように割り切っておられまして、
『来週の就任演説で政策の大きな方向は示されるのではないかと思います。』
はい、つまり1月でも3月でも同じということですな!!!!!!
『これまでに示された内容をもとに、中長期的には様々な影響が論じられていますが、少なくとも米国経済は当面強いパフォーマンスが続くとの見方が多く、下方リスクに焦点が当たっていた昨年8月ごろとはだいぶ様子が変わってきたように思います。』
これ中々芸が細かいのは「下方リスクに焦点が当たっていた昨年8月ごろとはだいぶ様子が変わってきたように思います。」という部分でして、昨年8月ごろ、と言えばまさにあの利上げをした後に米国要因も相まって株安円高になって内田副総裁がションベンちびって全面降伏宣言をしたあの時になるわけですな。
つまりですね、今回の氷見野さんの「米国懸念は昨年8月ごろとはだいぶ違いますがな」というのは、当時の内田副総裁の全面降伏宣言を上書きする機能も果たしている、ということになっておりまして、まあゆうてその後も植田総裁が米国経済ガーを連発して円債市場の失望を誘っていただいた訳ですが、それらをしれっと上書きするムーブになっているのが大変にお洒落なところです。
でまあ最後は一般的な話をして先ほどネタにした後半部分の小見出しに繋がるのですが、
『いずれにせよ、これらの点を含め、足元までに発表されたデータ・情報を分析し、本年以降の経済や物価の見通しを作成する作業を現在鋭意続けております。その結果は来週「展望レポート」にまとめて公表する予定です。』
『政策運営にあたってはタイミングの判断が難しくかつ重要です。来週の金融政策決定会合では、「展望レポート」にまとめる経済・物価の見通しを基礎に、利上げを行うかどうか政策委員の間で議論し、判断したいと思います。』
ということで、最後にもちゃんと「利上げを行うかどうかを議論し」とありまして、12月会合主な意見だと何かお前ら本当に議論したのかって感じの消極的な感じでしたから、そこから見たら1月会合利上げ全然出来ますじゃないですか、という話を思いっきり上書きしてきた、というのが今回の氷見野さんの金懇挨拶になるかと思います。個人の感想ですが。
・でもって1月利上げやっぱりありになったのかどうかですが正直よくわからんけど1月無しで決め打ちはできないわな
ま、だからと言って利上げするかどうかは良くわからんのですが、利上げ見送って円安にブチ飛ばれるのがマズイとか、そもそも3月に利上げ(前回のは利上げと言ってもマイナス金利解除でしたから利上げというほどの利上げではなかった)するのってどうなのよ(期末的に)というのも勘案すると、4月展望まで引っ張るよりは1月ってのだってまあアリエールかもね、という話になるかもしれませんな。
あとはこの氷見野さんの「上書きムーブ」がガチの全体的な方向性となっていて、12月に早期利上げ観測を叩き潰しすぎたのでこのまま1月迎えて利上げすると闇討ちの2乗くらいの話になってヤバかろうというご配慮で氷見野さんが威力偵察をしてきているのか、単に氷見野さんが単騎突撃してきているのか、というのはまあさすがに判断しかねますので、どっちなんですかねえという見立てによって読み筋は変わってくるかと思います。
とまあそんなところでござる。
2025/01/14
〇10年1.2%ですかそうですか(金利上がってきたのでメモ)&謎のBBG砲撃
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/XJQN2MWQ6BOODG6A6DGRCUM6GU-2025-01-10/
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は反落、長期金利1.195% 日銀利上げ観測や米金利高で
By ロイター編集
2025年1月10日午後 3:27 GMT+9
『[東京 10日 ロイター] - <15:09> 国債先物は反落、長期金利1.195% 日銀利上げ観測や米金利高で
国債先物中心限月3月限は、前営業日比25銭安の141円06銭と大幅反落して取引を終えた。日銀の追加利上げを巡る警戒感や米金利高が相場の重しだった。新発10年国債利回り(長期金利)は2.5ベーシスポイント(bp)上昇の1.195%と、2011年5月以来13年8カ月ぶりの高水準をつけた。
きょうの国債先物は、夜間取引で下落した流れを引き継ぎ、売り先行でスタート。日中は入札やオペといった国債の需給イベントがなく新規の売買手掛かりが乏しい中、きのうの日銀支店長会議を巡ってタカ派的な受け止めが市場の一部にあることが相場の重しとなった。』(上記URL先より、以下同様)
ということで日銀支店長会議云々はホンマカイナという感じではあるのですが、金曜日もなんかずるずると金利上昇の巻になっていまして、12月会合後の上げは何だったのかという話ではあるのですが、1月にハト派据え置きでもしない限りは1月会合スキップでもそんなに金利は下がらんのじゃネーノという風情になっていまして、単純にアメリカン金利のせいなのかも知れませんけれども、何ですのこの流れはとは思いますけど、よく考えてみたらマイナス金利やってるときも10年1%になったりしたのですから、そこからベースレート幾ら上がりましたねんと考えたらそんなもんなのかも知れませんけれどね。
『TRADEWEB
OFFER BID 前日比 時間
2年 0.643 0.65 0.004 15:01
5年 0.818 0.826 0.021 15:03
10年 1.19 1.195 0.02 15:02
20年 1.959 1.965 0.021 14:59
30年 2.293 2.3 0.01 15:03
40年 2.719 2.725 0.019 15:06』
中期から後ろ全体的に売られている格好ですし、イブニングでも雇用統計と下にネタにしますがBBG砲??の効果から一段安になっている(月曜の市場は踏まえていないけど)の巻ですからぬー。
https://port.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/future_day_through
先物価格情報
長期国債先物 日通し
限月 25年3月限
取引日 01/14
始値 141.07 (01/10)(15:30)
高値 141.11 (01/10)(17:03)
安値 140.55 (01/11)(05:41)
現在値 140.56 (01/11)(05:54)
前日比 -0.50
取引高 15,276
ちょwwwwwwなんですかこの先物の下げはという感じですが、まあこうなったら一旦消えた1月利上げもこれはさすがに何ぼかは織り込んでいるでしょうというか、1月利上げしてもここまで来れば円債的にはサプライズにならんのではなかろうかという風情になっているので、正常化志向があるならば乗るしかないこのビックウェーブに、ということでしらっと1月利上げしちまえば良いんですけれども、今の日銀って正常化志向はあるにはあるんでしょうけれども、「ボク失敗したって言われたくないの」状態という一種のデフレ脳に一番浸っているのが今の日銀な訳でので、まあアレだけ言っておいて1月やっぱりやりますってのはじゃあ12月のあの話は何だったのかという事になるのでよーせんとは思いますけどね。
しかしまあ何ですな、話を蒸し返すのが大好きなアタクシとしては一昨年12月の氷見野副総裁のこの言葉が実に重い訳ですなと思いますが、
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2023/ko231206a.htm
最近の金融経済情勢と金融政策運営
大分県金融経済懇談会における挨拶
日本銀行副総裁 氷見野 良三
2023年12月6日
『しかし、世の中全体で賃金と物価の循環が回りだすと、何かをすることのハードルが下がり、何もしないことのリスクが高くなり、どこかで両者の関係が逆転すると、これまでに起きなかったような変化が起きる、という見方もできるのではないか、という気がします。』(この部分だけ直上URL先2023年12月6日氷見野副総裁大分金懇講演より)
今まさに「これまでに起きなかったような変化」が起きていると思うのですが(というか物価上げすぎ問題がががが)、肝心の植田内田がとんでもないチキンあるいは保身体質で中央銀行としての本来の職分を全うしようとしてないんだから世話は無いわけですな。
でまあそれは兎も角として、お漏らしタイムにはちょっと早い気がするのですが、3連休前の金曜日の引け後にこういうのを出すなこういうのを、と思うのですがBBGがまた微妙な記事をだしておりまして、これ出たあと債券先物のイブニングセッションが141円割れに下がっていましたのでまあクリップクリップ
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-01-10/SPUUBDT1UM0W00
日銀が物価見通しを上方修正の公算大、コメ価格上昇と円安−関係者
伊藤純夫、藤岡徹
2025年1月10日 17:30 JST 更新日時 2025年1月10日 17:49 JST
→24・25年度のコアコアCPI、23・24日に金融政策決定会合
→政策は米新政権の政策の影響など注視、直前まで慎重に見極め
17時半に出すなや17時半に、という所ですが、ヘッドライン打つタイミング的には大変にお上手なタイミングでしたので債券先物がホイホイと下がるわ(この時点では140.90近辺に下がっただけでして、その後の140.50水準への下げは米国雇用統計要因だと思います)10年は1.2%マークするわということでアイヤーとなった訳ですが。
『日本銀行が今月開く金融政策決定会合では、変動が大きい生鮮食品とエネルギーを除いた消費者物価(コアコアCPI)について、2024年度と25年度の見通しが上方修正となる公算が大きい。利上げの是非は直前まで見極める方針だ。事情に詳しい複数の関係者への取材で分かった。』(上記URL先より、以下同様)
あらそうですかという感じですが、コメ価格に関してはこれコメって生鮮食品じゃない(保存が効くから)ので、コア指数にもコアコア指数にも跳ねてくるので米価が上がると結構効くのよね、ということですし、まあ端境期に引き上げるわけにもいかないから新米がごく普通に流通していて端境期に入る前に上げておかないと、ということですかねえ、知らんけど。
で、報道を拝読しますと、
『23、24日に開く会合では、経済・物価情勢の展望(展望リポート)について議論し、最新の見通しを示す。関係者によると、コアコアCPI見通しの引き上げは、コメを中心とした食料品価格の上振れが主因。円安の進行や原油価格の上昇も押し上げ要因になる。賃金コストを価格に転嫁する動きも想定通り強まっているという。』
ということですが、米価は兎も角としてしらっと「円安の進行」を入れているのがチャーミングでして、ついこの前の金融政策決定会合では円安の影響に関して、利上げ云々を言われたくないもんだから「この程度の円安はシランガナ」というスタンスになって、7月に利上げした時にリスク要因に昇格した筈の為替円安をスルー気味にする、という政策反応関数をまたも変えるしょうもないプレイに出ていたんですけれども、なんだよ1月展望で為替円安を物価上振れ材料にするのかよ、というお話でして、為替円安で物価上振れ、という話をするのでありましたら、それは7月の時点に話が戻るんですよね、すなわちこの為替円安で物価上振れの可能性が高まったので利上げ、って普通にできる話になるんですよね。12月言ってたことと全然違うじゃねえかという話をさておきますとwww
『植田和男総裁は、経済・物価情勢の改善が続けば、利上げによって金融緩和度合いを調整すると繰り返している。物価見通しの上振れや経済・物価が見通しに沿って推移することは、追加利上げの根拠になり得る。
市場では日銀が今月会合で追加利上げの是非を議論すると広く予想されている。』
議論をする(利上げをするとは言ってない)という話ではあるのですが、じゃあ本当に議論しているのかと言いますと、12月決定会合後の主な意見を見ると何か全然そういう感じじゃなかったし、それ以前に決定会合後の植田総裁の記者会見がやる気無し無しだったので、そこから1月急に利上げとか言われましても(為替で追い込まれるのでなければ)話がワープしすぎてなんのこっちゃ感が否めません。
『報道後、外国為替市場では円を買う動きが優勢となり、ドルに対し一時1ドル=157円76銭まで上昇した。報道前は158円30銭台で推移していた。』
はいはい手前味噌手前味噌という感じですが、今朝のドル円も157円台半ばくらいで帰ってきているから一応効いてるのかねというところで。
なお、BBGも慎重でして、
『もっとも、総裁は利上げを見送った昨年12月会合後の会見で、今年の春闘など賃上げの動向と20日に始動するトランプ米政権の経済政策の影響などを注視していく考えを表明している。今月の会合では市場動向などを直前まで見極めた上で、利上げが必要な情勢かを慎重に判断する見通しだ。』
とか言ってて、決め打ち記事にはしないというスタンスになっていますけれども、まあ激強物価見通しを出しておけば3月利上げへの思惑で円安進行もそんなに行かないし、市場が織り込んでしまえばそれに乗ってしまえばよいということで1月会合で事実上の予告ホームランをしてくる可能性は出て来ましたかねえ、とは思うのですが、直上記事にもありますようにそもそも植田さんは「トランプ新政権の政策ガー」とか「春闘ガー」とか言ってるので、1月会合時点で事実上の予告ホームランを打つのっていうのもやりにくい(春闘は先行するアネクが強いとか言えるにしてもトランプは何も分からん段階だから)のですが、1月会合どういう情報発信してくるのでしょうかねえ。マジで分からん。
2025/01/10
〇さくらレポートの「賃金と物価」のトーンってこれワタクシは「熱量がない」と思いました
https://www.boj.or.jp/research/brp/rer/rer250109.htm
地域経済報告―さくらレポート―(2025年1月)
全文はこちら
https://www.boj.or.jp/research/brp/rer/data/rer250109.pdf
地 域 経 済 報 告 -- さくらレポート -- (2025年1月)
でまあ何地域が上げた下げたは兎も角、今回の現世利益は「賃金と物価の循環」の確認な訳ですよ。よって全文の方ですと本文4ページ(PDFの6枚目)から始まる『(3)企業等の主な声(トピック別)』を見るのがよろしい訳ですが、その点についてはこちらにも説明があるのでまずはそっちをみましょうず。
https://www.boj.or.jp/research/brp/rer/rera250109.htm
各地域からみた景気の現状(2025年1月支店長会議における報告)
『雇用・賃金面では、2025年度の賃金設定について、現時点では競合他社の動向を見極めており、賃上げ率を固めていないとの企業の声や、中小企業を中心に、収益面の厳しさから慎重な姿勢を示す声も引き続き報告された一方、すでに、賃上げ率の具体的な検討を進めているとの企業の声も報告された。』
はい。このまとめ方がもうアレでして、もし今回「2025年度のおちんぎんは絶好調で春闘見るまでもなく死角なし」とかいうのであればもっともっと熱量のある表現になるじゃないですか当然のことながら。
然るに、上記のような書き方ですとこれはまあどこからどう見ても「じゃあ今後の賃金設定がきちんと出てくるかはもうちょっと確認しないとね」という話になります、というか毎度の事ですけれども、大本営様に対して忖度していますなというお話で、賃金上がっとるんじゃおいこら大本営真面目にしやがれコノヤロー的な突き上げっぽいのも無いわけですな、寧ろ去年のこの時期のさくらレポートの方がその傾向があったようにも思えますが、今年はまあこういう状況ですので、それはもうそういう事やぞと。
まあ一応、
『全体としては、構造的な人手不足のもと、最低賃金の引き上げもあって、継続的な賃上げが必要との認識が幅広い業種・規模の企業に浸透してきているとの報告が多かった。』
という結論にしているので、「賃金上昇は見られます」ってのが結論ですが、これはまあ普通に「現時点ではまだ決め打ちできるほど強いわけではないので今後を見ましょう」にしかアタクシには読めないので、1月会合で判断するような熱量は乏しい、と言わざるを得ません。
ただまあ昨年がそうだったように、1月決定会合終わってから急に変なもんでも食ったかのように3月会合に向けて別途「おちんぎんがキテます」っていうような補足レポートみたいなのが出て来る可能性もあるので、別に3月もやる気無いのかというとそうではないと思うのですが、少なくとも再来週に蛮勇振るって利上げじゃオリャーとなるには熱量が足りないという評価にしておきますアタクシは。
ではおちんぎんの対になる企業の価格設定行動ですが。
『企業の価格設定面では、既往の輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の動きは緩やかながらも続いているとの報告が多かった。また、人件費の価格転嫁については、なお難しいとする企業の声はあるものの、賃上げ原資確保のための転嫁を実施・検討する動きが引き続き広がっているとの報告が多かった。』
いやまあ食品価格だからこれとは別の話かもしれんけど体感的には食品価格がエゲツナイ上がり方しててマジで頭クラクラするんだが。
『ただし、消費者の節約志向の影響がみられるもとで、値上げの抑制や一部商品の値下げ、低価格商品の品揃え強化などの動きも引き続きみられているとの報告があった。』
そらそうよというお話で、名目の支出額黙っていても増えてるんだもん帳尻合わせないと・・・・・
というのは兎も角として、企業の価格設定行動の方は「きっちり進んでいる」感の強い表現になっておりますな。価格は上がるけど賃金はイマイチとのことですが、そもそもリフレ政策というのは実質賃金を下げることによって雇用を強くしていきましょうなどというのはかの浜田宏一大先生も仰せになっていたことなので、まあアベノミクス黒田緩和の答え合わせだぞということで。
さて、これ昨年の同時期どういう話をしていたのか、というのを比較するとオモロイかと思いまして、昨年のを引っ張り出してきました。
https://www.boj.or.jp/research/brp/rer/rera240111.htm
各地域からみた景気の現状(2024年1月支店長会議における報告)
『雇用・賃金面では、多くの地域から、労働需給の引き締まりや、企業の人手不足感の強まりが報告された。本年の賃金改定に関しては、一部の大企業において、昨年並みあるいはそれ以上のベースアップを伴う賃上げ方針を既に表明する動きがみられるもとで、地域によって濃淡はあるものの、地方でも昨年よりも幾分早いタイミングで賃上げ機運が醸成されつつある。』(上記URL先昨年1月の支店長会議報告から、以下同様)
ということで、今年のに比べて書いていることに勢いがありますよね。後半は、
『ただし、競合他社の賃上げ動向等を見極めたいとして、現時点では賃上げ率等を固めていない先が多いほか、中小企業を中心に、収益面の制約から慎重さを崩さない先も少なくないなど、賃上げの広がりや程度等については不確実性が高いとの報告が多かった。』
となっているものの、前半の掴みの部分での熱量が違いますなというお話です。
『企業の価格設定面では、既往の原材料コスト上昇分を転嫁する動きが続いているが、そのペースは鈍化しているとの報告が多かった。また、値上げの抑制や一部商品の値下げなど、消費者の節約志向の強まりに対応した価格設定行動がみられるとの報告が複数あった。一方で、人件費の上昇を念頭に置いた値上げを実施ないし検討する動きもサービス業等で徐々に出てきているとの報告があった。』
価格設定の方は先ほど申し上げました通りで、これ昨年よりも今年の方が普通に表現が強くなっている、というのが見て取れるかと思いまして、まあこれですと「賃金動向を確認したら政策調整」って話をしてくるんじゃないですか、とまあそういうお話になると思います。
とは言いましても、そもそも論として植田日銀の場合は(黒田末期からそうですけど)「政策行動から後付けでその時に都合のよい理屈(または屁理屈)を繰り出してくる」という行動になっておりますので、今回のは「目先で言えば動かない言い訳」になっていますし、「賃金を確認した時点では動く時の言い訳に使える」となっていまして、まあ動かない言い訳がある時は動かないという行動からすると、1月利上げにとっては(円安にこれからかっ飛ばされない限りにおいて)一つハードル置きやがったなということで。
〇需給ギャップちゃん
https://www.boj.or.jp/research/research_data/gap/index.htm
需給ギャップと潜在成長率
https://www.boj.or.jp/research/research_data/gap/gap.pdf
需給ギャップと潜在成長率(図表)
直近の推移だと、(左から需給ギャップ、資本投入ギャップ、労働投入ギャップ)
2023.1Q -0.36 -0.61 0.25
2023.2Q -0.12 -0.46 0.35
2023.3Q -0.34 -0.65 0.30
2023.4Q -0.05 -0.35 0.30
2024.1Q -0.71 -0.99 0.29
2024.2Q -0.58 -0.77 0.18
2024.3Q -0.53 -0.79 0.26
というということですが、需給ギャップマイナスで推移しているのに物価はずーっと2%オーバーで推移しているんですから、寧ろこれは物価安定目標は思いっきり達成しているという状態を意味するんじゃないですかとか言いたくなってしまう(そもそも需給ギャップが本当にマイナスなのかというのもアレですが)のですが。
あと、半期展開の潜在成長率
2022.1 : 2022.2Q-2022.3Q 0.38
2022.2 : 2022.4Q-2023.1Q 0.46
2023.1 : 2023.2Q-2023.3Q 0.53
2023.2 : 2023.4Q-2024.1Q 0.53
2024.1 : 2024.2Q-2024.3Q 0.58
ということで潜在成長率0.6%くらいあることになっているのですが、本当にそうなんですかねえというのはあって、需給ギャップマイナス推移なのに人手不足だわ物価が上がるわってなんか違和感があるんですけどアタクシもアホの子なのでこの辺の理屈がイマイチわかったようでわかっていないのでメモだけ置いてお茶を濁すのでした。
2025/01/09
お題「12月FOMC議事要旨は要するに「しばらく利下げしないもんねー」ですわな」
えらいこっちゃ
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250108/k10014687361000.html
トランプ氏 グリーンランドめぐり“デンマークに高い関税も”
2025年1月8日 19時45分
グリーンランド領有希望⇒冬戦争
パナマ運河領有希望⇒スエズ動乱
・・・・・20世紀に逆戻りですかそうですか、ってかいきなりプーチン越えをしてくるのさすがに耄碌してるんじゃねえのかこのジジイは
〇12月FOMC議事要旨を毎度の速成手抜き読みで鑑賞してみます
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20241218.htm
Minutes of the Federal Open Market Committee
December 17-18, 2024
A joint meeting of the Federal Open Market Committee and the Board of Governors
of the Federal Reserve System was held in the offices of the Board of Governors
on Tuesday, December 17, 2024, at 10:30 a.m. and continued on Wednesday,
December 18, 2024, at 9:00 a.m.1
いつものように『Participants' Views on Current Conditions and the Economic
Outlook』の金融政策運営にかかわる部分(すなわち後ろの方)から読んでまいりますね。こちらの部分は全部で12パラグラフあるのですが、うち10〜12の3パラが金融政策運営にかかわる部分になりますのでそちらから参ります。
・今回の金融政策決定、の中で政策金利据え置き派から「金融環境」への言及があったのは味わいある
まずは10パラ。
『In their consideration of monetary policy at this meeting, participants
generally noted that inflation had made progress toward the Committee's
objective but remained somewhat elevated. Participants also observed that
recent indicators suggested that economic activity had continued to expand
at a solid pace, labor market conditions had generally eased since earlier
in the year, and the unemployment rate had moved up but remained low.』
今回のFOMCの金融政策決定は、というパラは最初の部分が「全体観としての認識」を示して居まして、これは声明文1パラの表現と基本的に同じことを書いているものなのであまり気にしないでどこまでが声明文の箇所だったっけと流しながら読むのが手抜き読みのコツですw
よってここから気合入れて読むのですが、
『The vast majority of participants viewed it as appropriate to lower the
target range for the federal funds rate by 25 basis points to 4-1/4 to
4-1/2 percent.』
このFOMCでは利下げが行われましたが、
『They assessed that such a further lowering of the target range for the
policy rate would help maintain the strength in the economy and the labor
market while continuing to enable further progress on inflation.』
禅問答みたいな話をしていますが、「利下げによって経済や労働市場の強さを助けながら今後のインフレの動向に対応できる」という話をしています。まあ記事とかでご案内の通り今回はインフレの部分が一番重要になるとは思うのですが、ゆうて政策の話でどういう扱いになっているのかは見ておくということで、いつものパティーンで読んでおります。
『A majority of participants noted that their judgments about this meeting's
appropriate policy action had been finely balanced.』
多数の参加者は今回の決定は大変によくバランスしていると。
『Some participants stated that there was merit in keeping the target range
for the federal funds rate unchanged.』
これはFOMCの時にも反対ありましたし、SEPのドットチャート見ると利下げした会合なのに本年12月末のドットを「今回据え置き」で置いたのが当時投票権のあるハマックさん含め4人いた、ということで既にご案内のことですが、数名の参加者は「政策金利据え置きのメリット」を主張しましてその背景は、
『These participants suggested that the risk of persistently elevated inflation
had increased in recent months, and several of these participants stressed
the need for monetary policy to help foster financial conditions that would
be consistent with inflation returning sustainably to 2 percent.』
前半は「ここ数か月にインフレが高止まりするリスクが高まっているから」ということでこれはまあそういう罠という話なんですが、この後半部分が結構面白くて、「政策金利据え置きを主張する人のうち数名(これ多分4人中3人だと思います、1名ならワンだし2名ならアカップルオブになるはずだから)はこう言いました」ということで言ってるのが、「the
need for monetary policy to help foster financial conditions that would
be consistent with inflation returning sustainably to 2 percent.」とファイナンシャルコンディションを持ち出しているのが結構「おおおおお」と思いました。
これすなわち何を言ってるかといいますと、この3名は「利下げヒャッハー浮かれポンチ相場を金融市場がやっているとインフレ高止まりリスクを高めるからダメ」という話をしている訳でして、この観点で直球を投げて来る意見がここで出てくるとはあんまり思っていなかった(そもそも金融環境を説明のぽいんとで持ってきているFED高官っていなかったと思うので)ので、ここはひとつのメッセージとして考えるお話かなと。
でまあ議事要旨作っている時間帯には長期金利上昇ってのも起きている訳でして、それを踏まえてもこの意見をどどーんと掲載してきている、というのは、まあFEDが露骨にそう言いたい意思があるのかはもちろんアタクシの想像の世界になるのですが、アタクシ思いまするに直近の米国長期金利上昇に関して別に特段の遺憾の意を持っているわけではなく、少なくとも一部にはそもそも昨年末にかけての利下げヒャッハー金融市場に不快感を持っていた向きがあった、というのをわざわざ見せに来ていると解釈しましたので、ここに一つのメッセージを感じました、個人の感想ですけど。
でもってこのパラの最後は資産買入でしてこれはいつものようにあっさり味。
『Participants judged that it was appropriate to continue the process of
reducing the Federal Reserve's securities holdings.』
引き続き同じようにランオフを継続しますよと。
・先行き政策部分は「しばらく利下げはしませんよ〜」と強めに出していますね
第11パラグラフ。
『In discussing the outlook for monetary policy, participants indicated
that the Committee was at or near the point at which it would be appropriate
to slow the pace of policy easing.』
既にSEPのドットプロットで露骨に示されていましたのでここの書き出し自体は特にサプライズではないですけれども、のっけから露骨に金融政策の引き締め縮小のペースを落とすのが適切とぶっこみまして、
『They also indicated that if the data came in about as expected, with
inflation continuing to move down sustainably to 2 percent and the economy
remaining near maximum employment, it would be appropriate to continue
to move gradually toward a more neutral stance of policy over time.』
とはいえ従来の見通し通りに物価が落ち着きつつ完全雇用に近い状態が継続すれば今後も引き締めの縮小をしていって中立に向かっていきますよと。
『Some participants observed that, with the target range for the federal
funds rate having been lowered a total of 100 basis points with this meeting's
decision, the policy rate was now significantly closer to its neutral value
than when the Committee commenced policy easing in September.』
これは前回の議事要旨でも話題になっていた中立金利との関係の話で、「ピークから今回含めて100bpの利下げをしたんですがそろそろ中立水準に近いんじゃないでしょうか」というのが数名から来てて、じゃあもう利下げせんのかよって突っ込みたくなりますがまあそういうのがあります。
『In addition, many participants suggested that a variety of factors underlined
the need for a careful approach to monetary policy decisions over coming
quarters.』
しかも多くの参加者が、「the need for a careful approach to monetary policy
decisions over coming quarters」ということなので、今後「数四半期」のタイムラインで「ケアフルアプローチが必要」という指摘をしたというのが続いておりまして、なんかもう「しばらく利下げする気ないもんねー」というのを思いっきりメッセージとして出していますわな。
『These factors included recent elevated inflation readings, the continuing
strength of spending, reduced downside risks to the outlook for the labor
market and economic activity, and increased upside risks to the outlook
for inflation.』
その要因は最近のインフレの上振れ、消費の強さの継続、労働市場や経済のダウンサイドリスクが減ったこと、今後のインフレのアップサイドリスクの拡大がありますと。
『A substantial majority of participants observed that, at the current
juncture, with its policy stance still meaningfully restrictive, the Committee
was well positioned to take time to assess the evolving outlook for economic
activity and inflation, including the economy's responses to the Committee's
earlier policy actions.』
かなりの多数の参加者(なんのこっちゃ)は現状の政策スタンスは依然として「meaningfully
restrictive」であり、今後の展開次第での対応が可能であると考えている、だそうな。
『Participants noted that monetary policy decisions were not on a preset
course and were conditional on the evolution of the economy, the economic
outlook, and the balance of risks.』
まあ最後の「事前に何か決めているわけではないよ」はいつも通りですが、この先行き説明の部分は「当面利下げはしませんがな」というのを強く出している感じですね。
・先行きリスクのところではこれでもかとばかりに「物価が高止まりする場合のリスク」の話をしていますね
第12パラグラフ。
『In discussing risk-management considerations that could bear on the outlook
for monetary policy, the vast majority of participants agreed that risks
to achieving the Committee's employment and inflation goals remained roughly
in balance.』
先行きリスクは上下おおむねバランス、
『Many participants observed that the current high degree of uncertainty
made it appropriate for the Committee to take a gradual approach as it
moved toward a neutral policy stance.』
不確実性が高いので中立スタンスに持っていくには緩やかなアプローチが適切、
『Participants noted that although inflation was on course to return sustainably
to 2 percent over the next few years and the Committee was determined to
restore and maintain price stability, the likelihood that elevated inflation
could be more persistent had increased.』
と来てからの「物価が高止まりするリスクが以前よりも強くなっている」キタコレ。
『Most participants remarked that, with the stance of monetary policy now
significantly less restrictive, the Committee could take a careful approach
in considering adjustments to the stance of monetary policy.』
しつこく「a careful approach」の話が出てくるのですが、その背景に、「(利下げしたんだから)以前よりも引き締め度合いが下がっている」というのも入っていますね。
『Many participants noted that the Committee could hold the policy rate
at a restrictive level, or ease policy more slowly, if inflation remained
elevated, and several remarked that policy easing could take place more
rapidly if labor market conditions deteriorated, economic activity faltered,
or inflation returned to 2 percent more quickly than anticipated.』
いや何回繰り返してますねんという感じですが、「今後もインフレが高止まりした場合は今の引き締め的な政策金利のレベルを維持するか、引き下げるにしてももっとゆっくりにするか、というアプローチをするのがよろし」と多くの参加者が言ってます、ってのがあって、これでもかとばかりに「利下げを慎重にやりますし何ならやらないかもしれません」というのをアピりにアピっている、というのが中々メッセージ性のお強い物件になっているなと思いました。
・インフレに関する先行き見通しでも「物価の高止まり」の話になりますわな
ここでさすがに今回は手抜きと言えどもインフレの部分を読まないと、と思うので第2パラと第3パラもチェックしておきます。
2パラ。
『In their discussion of inflation developments, participants noted that
although inflation had eased substantially from its peak in 2022, it remained
somewhat elevated.』
まあこの辺はおなじみの話ですが、
『Participants commented that the overall pace of disinflation had slowed
over 2024 and that some recent monthly price readings had been higher than
anticipated. Nevertheless, most remarked that disinflationary progress
continued to be apparent across a broad range of core goods and services
prices.』
2024年の物価鎮静化のペースは予想よりも早かったですね、財とサービスの双方に置いて幅広く、ということで最初の方は「今年はインフレ鎮静化しましたなあ」というお話で、以下ああだこうだと続く。
『Notably, some participants observed that in the core goods and market-based
core services categories, excluding housing, prices were increasing at
rates close to those seen during earlier periods of price stability. Many
participants noted that the slowing in these components of inflation corroborated
reports received from their business contacts that firms were more reluctant
to increase prices, as consumers appeared to be more price sensitive and
were increasingly seeking discounts. With respect to core services prices,
a majority of participants remarked that increases in some components had
exceeded expectations over recent months; many noted, however, that the
increases were concentrated largely in non-market-based price categories
and that price movements in such categories typically have not provided
reliable signals about resource pressures or the future trajectory of inflation.
Most participants also remarked that increases in housing services prices
remained somewhat elevated, though they continued to slow gradually, as
the pace of rent increases for new tenants continued to moderate and would
eventually be reflected further in housing services prices.』
手抜き間溢れる一気引用ですがw、まあこの辺はこういう財とかこういうサービスとかの価格においてどうなったというような話で各コンポーネントの話をしているので、一つ一つ見ていくのは面白いのですが、まあこれ自体で次の政策インプリケーションになるような物価の話かというとそうでもないのでこのパラはこれで流しまして次の「見通し」に行く。
3パラ。
『With regard to the outlook for inflation, participants expected that
inflation would continue to move toward 2 percent, although they noted
that recent higher-than-expected readings on inflation, and the effects
of potential changes in trade and immigration policy, suggested that the
process could take longer than previously anticipated.』
ということで先行き見通しのパラグラフですが、まあ案の定さっきの政策のところで散々言われていた「今後物価が高止まりしてしまうリスク」というのが冒頭にぶち込まれていまして、足許での物価が想定よりも強めに推移している上に、今後の関税と移民政策の推移によっては物価が高止まりしてその期間が長くなる可能性がありますよね、と早速来ておりますし、冒頭のところなのでこれは普通に「委員会の総意」でありますわな。
『Several observed that the disinflationary process may have stalled temporarily
or noted the risk that it could. A couple of participants judged that positive
sentiment in financial markets and momentum in economic activity could
continue to put upward pressure on inflation. All participants judged that
uncertainty about the scope, timing, and economic effects of potential
changes in policies affecting foreign trade and immigration was elevated.』
でもって参加者の意見の中にさっきあったファイナンシャルコンディションの話もありますね(逆順読みしているからこっちが本来先なんですけど)。
『Reflecting that uncertainty, participants took varied approaches in accounting for these effects.』
これらの不確実性に関して・・・・・
『A number of participants indicated that they incorporated placeholder
assumptions to one degree or another into their projections. Other participants
indicated that they did not incorporate such assumptions, and a few participants
did not indicate whether they incorporated such assumptions.』
SEPの方に加味している人もいればいない人もいますよ、という話でこのパラは終っていますが、まあ物価に関しては思いっきり上振れリスクの不確実性を高めているという説明になっていました。
という所で今朝は勘弁。
2025/01/08
〇昨日で完結と思ってましたがご指摘ご議論などを受けて日銀財務のペーパーネタのおまけをば
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2024/data/rev24j15.pdf
日本銀行の財務と先行きの試算
企画局企画調整課
2024-J-15
2024 年 12 月
・「シミュレーション」にストレスシナリオが無いわ作成過程がブラックボックスだわwwwww
最後に『先行きの収益・自己資本に関する試算』ってのがあるのですが、日銀の場合はこういうときに破局シナリオの話は死んでもしないというのが仕様になっているので(金融機関にはストレステストだの何だのさせるのに)どうせ結論先にありきじゃろ、ということで昨日はまあ時間もなかったし終わりで良いかなと思ったのですが、突っ込み不足にもほどがあるというツッコミも頂いたりしましたので試算に対する愚考をしてみましょうの巻、というのが今朝のネタです(^^)。
『以上のようなメカニズムを踏まえ、以下では、先行き 10 年程度の期間について、日本銀行の収益や自己資本に関する試算4を行う。試算の結果は、既に説明したように、将来の金利パスやバランスシートの規模などの前提をどう置くかによって、大きく異なることになる。』
でもって次が笑いどころなんですが、
『また、仮定であるとしても、日本銀行の今後の金融政策運営を示唆するものと受け止められる可能性もある。』
wwwwwwww
『このため、今回、日本銀行では、市場参加者へのヒアリング5を実施し、試算を行う仮定として妥当と考えられる前提について、以下を設定することとした6。』
でもってこのヒアリングとやらですが脚注を見ますと、
『5 主要な銀行、証券会社などに対してヒアリングを実施し、その結果をもとにした。』
どう見てもブラックボックスです本当にありがとうございましたというか、普通シナリオって標準とストレスとって形で置くもんでしょと思いますが、以下の部分で分かりますように、きわめて生温いシナリオしか設定されていないというのが味わいがあるのですが、これはまあ別の角度から大規模量的金融緩和の副作用を考えるヒントになる、と読み取るのがよろしいんじゃないか、というのはまあネタを割ってしまえば読者様の識者様からのご指摘によるものなんですけど(滝汗)、成程と思ったのでそのあたりを軸に以下紙芝居を鑑賞しましょうず。
・ヌルヌルのヌルとしか言いようが無い生温い前提ですねえ
『(前提)』ってのを見ますとですね、
『@ 短期金利・長期金利の推移
短期金利については OIS 市場7におけるインプライドフォワードレート、長期金利については国債のイールドカーブから算出されるインプライドフォワードレート(市場金利が織り込む金利見通し)のとおり推移すると仮定する。』
まずこの時点で「物価目標達成シナリオになっていない」という恐ろしい前提になっているのがお分かりになろうかと存じます。どの時点でこの計算しているか知らんけど、10年金利が1%行くか行かないか、というような状況の市場金利を是として作成しているんですから。
でまあそれだけだとさすがに素人衆からも「おかしくねえか」とツッコミが来るので、
『また、市場金利が織り込む金利見通しに加え、(a)短期金利は、今後数年程度をかけて
1.0%〜2.0%となり、(b)その際の長短スプレッドは、+0.25%P〜+0.75%P
となると仮定した場合の試算値のレンジも合わせて示すこととする8。』
というストレスでも何でもなくて、単に物価目標をヌルヌルと達成していく、というだけのシナリオですが、それをぶっこんでいるわけですね。
でですね、この前提がクッソヌルイ、というツッコミをするのは簡単なのですが、それだけではなく考察(ただの愚考)をするというのがまあ大事なんですがその前に前提その2も見てみましょう。
『A バランスシートの規模やその推移
バランスシートについては、試算の便宜上、本年 7 月に決定された長期国債買入れの減額計画のとおり
2026 年 1-3 月にかけて国債の月間買入れ額を月 3 兆円程度まで減額し、同年
4 月以降は当該買入れ額から不変と仮定する(図表 9、10 参照)9。』
何という事でしょう、金融政策が正常化に向かうというのになぜか長期国債買入は月額3兆円とかいう大金融緩和状態を継続するとか仰せです!!!!
『また、今後の取扱い方針を公表している資産はその方針に沿って変動し、その他の資産は不変と仮定する。』
・・・・・ということでですね、まあ結論は申すまでもなく「まあ大丈夫ですわ」になるんですけれども、そもそもの前提が相当に強引なのが分かりますわな、
・この前提しか置けないことが意味するのは「QQE+YCC+マイナス金利の大いなる副作用」なんだよな〜
上記の「前提」ですが、これって総じて言ってしまえば「インフレは上振れしないし、為替市場での自国通貨の大きな減価もおきないし、その間に金融引き締めのようなことは一切不要で時間をかけてゆっくりと世の中が推移していく」というのが前提になっている訳ですよ。
然るに、昨日も申し上げましたが、物価が上振れる(というか現に上振れているんだが)とか、為替市場での自国通貨の減価が進む(現に進んでいるんだが)とかいうようなことが本当に起きないのか、というと全然そんなことは無いし、寧ろ日本の最大の埋設地雷ってこの点ですよね、というお話な訳ですよ。
為替市場で自国通貨の減価が進む中でヌルヌル金融緩和モードの長期国債買入なんぞ継続してられるのか、欧米みたいな物価上昇になった時には金融引き締めで一気に短期政策金利の引き上げをする必要が起きないのか、とかそういう事態に関するシミュレーションが出せるようなバランスシートの状況ではない、というのがこのヌルヌル試算が裏側から示しているところ、と考えますと話が分かりやすいかと存じますが(←この辺り受け売りです汗)、今の日銀のバランスシートってのは「放っておいてもインフレや円安が加速しないような状況に恵まれないと上手くエクジットできない」という状況になっている、ってのがこのシミュレーションで裏側からですけど如実に示されている物、ということで理解すると中々味わいがある上に背筋も凍る、という事かと存じます、というのはあくまでも個人の感想ですが、まあそんな次第でございます。
・ついでにおまけでヤマケンさん貼っておきますね
https://www.kyinitiative.jp/column_opinion/2025/01/04/post2742/
緩和効果は過大評価の可能性
〜日銀「多角的レビュー」を読む(1/2)
2025.01.04
https://www.kyinitiative.jp/column_opinion/2025/01/06/post2759/
金融政策はなぜビハインド・ザ・カーブが続くのか
〜日銀「多角的レビュー」を読む(2/2、完)
2025.01.06
2025/01/07
・植田総裁がなんか仰せだったようですが
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB179100X11C24A2000000/
植田日銀総裁「今年も経済・物価改善続けば利上げ」
金融政策
2025年1月6日 12:31
『日銀の植田和男総裁は6日、全国銀行協会の賀詞交歓会で挨拶し、「2025年も経済物価情勢の改善が続いていくのであれば政策金利を引き上げ、金融緩和度合いを調整していく」と語った。具体的な利上げの時期は「今後の経済・物価や金融情勢次第」としたうえで「様々なリスク要因を注視する必要がある」と説明した。』(上記URL先より、以下同様)
ということでこちらはヘッドラインにもなっていましたのでご案内かとは思いますが。
『20日に米大統領に就任するトランプ氏の経済政策については「不確実性は大きい状況だ」と話し、慎重に見極めていく姿勢を見せた。』
どう見ても1月利上げ否定です本当にありがとうございましたorzorz
『日銀は23日、24日に金融政策決定会合を控えている。米国の経済情勢や国内の春季労使交渉(春闘)の動きなどを踏まえて「データやその他の情報を精緻に分析し、経済・物価見通しを作成する」と述べた。そのうえで「金融政策決定会合での政策判断の基本材料にする」と言及した。』
でまあ記事の方は終り(珍しく全部読める物件)なのですが、基本材料にする(キリッ)とかイキって見ましても、結局のところ「不確実性ガー」で逃げてしまいますので、ここから市場に追い込まれる以外の可能性では1月は無いんでしょうけれども、まあこれ3月だと皆さん思っているから金利が上がっている訳でして、ハトハトチキン音頭が1月会合で炸裂されると話がややこしいことになるので勘弁して欲しいもんです。
まあ何ですな、観客席で見ている方としましては「利上げを先送りする理由がない状況なのに何で先送りするの」と思ってしまうので毎度毎度利上げ観測が出ては事前観測報道が出てわ謎の関係者コメントが出てわ、というので右往左往しますけれども、アタクシつらつら思いまするに、植田日銀って発想が観客席のワシらとは根本的に逆でして、「利上げをせざるを得ない理由があれば利上げをするけれども、そうじゃないなら利上げを先送りするのが得策」というのを行動の基本原理にしている、と思えばこの人たちの言ってる話も理解はできる(納得はしないけど)というもんじゃないのかねとは思いまする。
利上げをせざるを得ない理由は様々あるはずなんですけれども、まあやっぱり今のところは為替円安で物価、ではなくてベンチの方から「おどりゃええかげんにせんかい」と監督やコーチが飛んでやってくる、というイベントが発生とかそっちになってしまうのが悲しいですけれども、まあ円安は最早誰でも思いつく話ですので、今年は「それ以外」に「利上げをせざるを得なくなり理由」が出てくるのか、というのがポイントの一つになるんじゃないかと思います。
だいたいからして「2025年も経済物価情勢の改善が続いていくのであれば政策金利を引き上げ」っていってるんですけれども、経済は知らんが物価情勢のどこがどう「これ以上改善」しようがあるのかという話でして、皆さんも年末に正月食材買いに行って店頭で野菜の価格見て死にそうになったと思いますが、まあ生鮮の季節物特別価格モードはさておいても、諸色値上がりの折、物価情勢の改善とか何寝言を言ってるんだかよくわからんのですが、ギロッポン夜の帝王様のような高貴なお方はスーパーで買い物かご持って値札見て卒倒するような生活はされておられないのでこういうのまるで分からんのだろうなあとは思うし、経済だってこのクソ物価のせいで消費頭打ちじゃろというのは有るわけでして、物価高に関して日銀ってあまりにも無頓着すぎる情報発信をしていて、まあなんだかんだ言って今まではずっとスルーされてきましたけれども、そろそろこっちの方(ある意味本筋)から「利上げせざるを得ない情勢」がやってくるのかもしれないなあ、とは思ったり思わなかったり(個人の妄想です)。
まあどうなるのやらという感じですが、「追い詰められないのであれば今の政策を継続していても別に問題ないじゃろ」というスタンスはここもとの会見やら講演やら主な意見やらに結構色濃く出ているようにアタクシには読めてしまう一方で、観客席の方は「利上げを先送りする理由が無くなったら当然利上げするじゃろ」と思っている節があるので、まあアタクシが植田日銀の基本スタンスを読み間違えているのであればそれはそれで結果としては良い事になるのですが、そうじゃないとなると面倒な気もしますな、うんうん。
〇日銀バランスシートのペーパーから少々の続き
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2024/data/rev24j15.pdf
日本銀行の財務と先行きの試算
企画局企画調整課
2024-J-15
2024 年 12 月
・政策金利引き上げに伴いポートフォリオに逆ザヤが発生するとは書かない辺りが大本営クオリティ
バランスシートによる収益とか損失とかの説明部分は今回は面倒なのでとばして考察部分をツッコむ感じで参りますが、『大規模金融緩和の実施・終了に伴う収益の振幅メカニズム
』ってところの小見出しが、
(中央銀行のバランスシート・収益の特徴等)→まあこれは一般的な説明
(バランスシート拡大局面における収益増加)→これは緩和時の話なのでまあそうですね、って話
と来るのですが、その次が
(バランスシート縮小局面における収益減少)
となっていますな。
『日本銀行では、本年 3 月に金融政策の枠組みの見直しを行い、7 月には政策金利の引き上げと長期国債買入れの減額計画を決定した。このように、バランスシートを縮小し、政策金利を引き上げる局面では、付利金利の引き上げによる支払利息の増加により、収益が下押しされることとなる(図表
4)。』
>収益が下押しされることとなる
>収益が下押しされることとなる
>収益が下押しされることとなる
逆ザヤと書かないのが泣ける。
『こうした特徴を踏まえ、日本銀行では、大規模な金融緩和の実施と終了に伴う収益の振幅を平準化し、財務の健全性を確保する観点から、2015
年に債券取引損失引当金を拡充2するなど、自己資本の充実に努めてきている(図表
5、6)。』
よくよく考えてみたら「別に赤字になるから問題が起こるのではない」という主張をするなら自己資本の充実につとめなくても良い訳で、この辺の歯切れの悪さが、「実は財務の健全性は大事」ということを意味していると思いますよねw
『なお、市場金利が上昇すれば保有国債の時価は下落する。しかし、日本銀行は、保有国債について、一部の例外を除いて売却を行っていないという保有実態も踏まえ、米国連邦準備制度(FRB)や欧州中央銀行(ECB)と同様に、償却原価法を採用している。』
ということで時価でやられる件について言い訳をしているのですが、保有国債の時価下落ってのは要するに市場金利対比クッソ低い金利の国債をもってフィックスしている訳で、その国債が発行銀行券などの無コスト負債と見合っている分には問題は無くても、付利している日銀当座預金見合いでもっている場合は期間損益が赤になる形で出てきますよね、という件に関しては、
『このため、国債の時価下落によって評価損が生じたとしても、満期到来を待たずに保有国債を売却することがなければ、期間損益に直接影響を与えることはない。売却をしない限り実現することのない評価損益と期間損益は異なるものである(図表
7)。』
という話をして期間損益の赤字の話に関して文章の方では書いていない、というのがどうせそんなこと書くとメディアが大々的にネタにするからやべえので寸止めにしている、という大本営しぐさを感じさせて大変に詫び錆び(意図的誤字ww)のある世界でございます。
・そもそも「償還再投資を続けられる」という前提が「平時」の前提なんですよね〜
でもってこの次の小見出しが、
(その後の回復)
ってなっていますが、
『前述のとおり、バランスシートの縮小局面に入ってしばらくの間は、付利金利の引き上げによる支払利息の増加により、収益が下押しされることとなる。』
なお、この後に「一時的な赤字」というのがあるけどその前にこのような説明がありまして、
『もっとも、その後は、当座預金(超過準備)が減少するにつれて支払利息は減少する。さらに、保有国債が利回りの高い国債に順次入れ替わっていくため、受取利息が増加することが見込まれる。』
ということなのですが、そもそも論として何で償還再投資を続ける前提になっているのかという話でして、バランスシートの縮小を急速に行わなければいけないような状況に陥った場合に償還再投資どころか保有国債の売却だってあり得る話だし、だいたいからして償還再投資の際に何で長期債を買う必要があるのかという話だし(中央銀行の財務改善のためにより利回りの高い長期債を購入するのは本末転倒にもほどがある話)、まずこの前提部分がペテンなのですが、これはこういうペテンを言っておかないと出口に置いて真っ当な政策金利水準になった際、あるいはもっとインフレが問題になるような状況になった際の日銀財務のシミュレーションが飛んでもないものになってしまうから、こういうペテンを言わざるを得ない、というのがまあ実際のところではなかろうか、と弊駄文では愚考するわけでございますwwwwwwww
『こうした過程で、一時的に赤字が発生する可能性はあるが、その場合でも、通常、いずれは収益が回復していく。』
ということで話を強引にまとめて、あとはケースシナリオの話になっていますが、「通貨防衛のために大幅引き締めの実施」とか「インフレ目標達成後にさらにインフレになって金融引き締めが必要になった時」とかそういう話は一切しない(今のバランスシートでそれシミュレーションしたらただの地獄の一丁目になるからできない)という図になっております。
と考えますと、マジのマジで物価目標達成する気があるんだったら、その後って経済物価情勢によっては「金融引き締め」が必要になる局面だって出てくるわけで、その際の引き締め政策の発動の邪魔になるクソデカバランスシートはとっととどうにかしろ、という結論に本来はなるはずなんですよね。いやマジで・・・・
2025/01/06
〇年初なので何となく金融政策妄想雑談から
・結局ドル円は飛ぶことなく年始休みを抜けやがりましたか
https://jp.reuters.com/markets/quote/USDJPY=X/
US Dollar / Japanese Yen FX Spot Rate
USDJPY=X
直近の取引 157.17 JPY
変化 -0.11
変化% -0.07%
2025年1月6日の時点。値は少なくとも15分遅れで表示しています
うーん火力が足りん火力がという感じでして、とにかく今月は再来週の末に金融政策決定会合がありますので、日銀のケツに火が点くためには年初早々ドル円160円を伺う勢い、とかになってほしかったのですが、これですと日銀のケツに火が点かないので1月利上げはどこに、というお話になってしまいまして極めて遺憾にもほどがある展開ではあります。
まあ年末にネタにしました12月会合主な意見、「慎重に考えるのが常識的」という割と飛んでもない意見を2発目に持ってきているという時点で1月利上げ観測を叩き潰しに行っていますので、とにかく手っ取り早く日銀のケツに火を点ける方法が円安しかない(というか他に考えられない)ので、円安行かないとうだうだして4月くらいまで引っ張りに掛かる可能性も大有り(というか4月パスすると今度は選挙の時間帯になってしまう)とかいう展開になるんですけれども、たぶん日銀は円安に飛ばない限りシランガナのスタンスを続けるんじゃないかな、というのが今年の初手での予想(妄想)になります。
・ところで12月主な意見の「2番目」は誰なんでしょという新春雑談
先週月曜日(要するに納会の日)に12月主な意見の話をしましたが、とにかくあの主な意見は「金融政策運営」の2番目に置かれた意見がアタクシ的には衝撃的だったんですよね。
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2024/opi241219.pdf
『・利上げ判断の焦点は、国内面では、賃金・サービス価格・個人消費の動き、海外では米国の経済と政策運営、そのもとでの金融資本市場の動向である。これらについては、賃金という面では春季労使交渉に向けた動きを、米国という面では新政権発足を確認していくのが常識的である。』
この「常識的である」という締め文言に関して、先週アタクシはこの部分に関して(この意見自体がアホじゃろとかそういう悪態も言いましたが)こんな事を申し上げた訳ですよ。
(先週月曜に書いた駄文から)これを2発目に持ってくる時点で今回の主な意見の構成って「1月利上げするわけねえだろこの馬鹿どもが」と市場に向かって宣告しているのと同じですのであって、確かに後の方には利上げを検討みたい話が田村さん以外にもあるにはあったのですが、それは単なる「私言いましたよね」スキーム(ここまで引用)
てなことを書きましたが、これ書きましたところその後「そもそもこの「1月利上げとかいう輩は非常識」と言わんばかりの強硬見解って誰ですねん」というのでちょっと盛り上がったりしたんですね。でもってこれが誰でしょうと考察するのもこれまた今回の主な意見の読みの中で面白ポイントになるかと思いましたので、遠い記憶(おいおい)を辿って書いておきますと、こんな読み筋になります。
基本的には主な意見の構成って1発目は声明文に出てきそうな表現、すなわち大本営というか総裁辺りが自我を出さないで書いた文章になるんですが、2発目あたりもそんな感じになることが多いんですよね。従って「主な意見」の各項目って最初の1つは確実にそうですけれども、まあ2つ目とか3つ目くらいまで大本営、すなわち正副総裁の意見が並ぶことが多い訳ですよ。
と考えますとさっきの「1月利上げとか言ってる輩は非常識」と田村委員にマッコウクジラで喧嘩を吹っ掛けているのは内田さんか、という話になるのですが、内田さんが書いたにしては文章の格調というか品性というか、なんかこう品がないんですよね、特に最後の「常識的である」とかいう決めつけ文言。
でまあこの手の決めつけとかレッテル貼りとかが得意で、ついでに格調が低くて品位がアレ、ということになりますと、ほらほら皆さん想像できるじゃありませんか、「(カタカナ3文字伏字)派」とかいう一派がいますことを。
とまあそういう訳で、納会とかいってもただの月末四半期末だし何なら末初オーバーナイトが1週間とかいう状況の中、ああだこうだと推論をしておった訳ですが、これはまあ一番当てはまるの野口審議委員じゃねえのというのが推計大会の結果になった次第。まあ当たるも八卦当たらぬも八卦ですが、如何にも野口先生が言い出しそうな感じの調子だなと思う訳ですな。
・・・・・・となりますと、それはそれでインパクトというのがあって、普通「主な意見」の最初の方って前述のように大本営ちっくな意見を並べて、その後に左右というかタカハトというか強弱というかの意見を並べていく、という感じの構成に作っていることが多い(経済情勢の部分だとテーマごとに意見が羅列されるので強弱入り乱れますが)訳でして、その中で野口委員というリフレ派残党の意見をいきなりの2番目に持ってくる、というのも編集としては結構思い切った感じになっていまして、これ書いたのが野口さんだとしますと(というか野口さんだと思ってますがアタクシ)、「政策バイアスの強い(政策調整に反対というバイアスの強い)人の意見を敢えてぶちこんだ」ということになりますので、月曜日に書いた「「1月利上げするわけねえだろこの馬鹿どもが」と市場に向かって宣告しているのと同じ、というアタクシの愚見を裏付けするんじゃないのかね、とまあ思った次第なので新春雑談がてらこちらに記載させていただいた次第でありまする。
やはり円安しか(日銀に)勝たんということですか(正月早々ため息)。
〇世の中(金融市場じゃないところ)的にやや話題になっていたので日銀財務云々の件
年末前にこんなのが出ておりましたが
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2024/rev24j15.htm
日本銀行の財務と先行きの試算
2024年12月26日
企画局企画調整課
・こちらのペーパーは「部局で出しているレポート」になります
アタクシは性格が悪いのでまずこれを見たときに「書いているスタッフ名が無くて「企画局企画調整課」名義で出ている」というのに注目するわけですね。
で、注目した後何を見ますかと言いますと、上記HTMLのご紹介ページの最後の文言を見るのですよ。
『日本銀行から
日銀レビュー・シリーズは、最近の金融経済の話題を、金融経済に関心を有する幅広い読者層を対象として、平易かつ簡潔に解説するために、日本銀行が編集・発行しているものです。
内容に関するご質問等に関しましては、日本銀行企画局企画調整課(代表03-3279-1111)までお知らせ下さい。』
でまあこの最後の部分を見て「いつもと違う」と秒で気が付く人は野良日銀ヲチャーのお仲間入りということでめでたい訳ですな。じゃあちなみに普段はどうかと言いますと例えば、
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2024/rev24j14.htm
大規模言語モデルを用いた新たなテキスト分析の取組み
― 最近の賃金・物価動向に関する分析への応用 ―
2024年12月25日
調査統計局 井澤公彦*、亀井郁夫、柴田菜緒、高橋悠輔、米山俊一
*現・大阪支店
の最後は、
『日本銀行から
日銀レビュー・シリーズは、最近の金融経済の話題を、金融経済に関心を有する幅広い読者層を対象として、平易かつ簡潔に解説するために、日本銀行が編集・発行しているものです。ただし、レポートで示された意見は執筆者に属し、必ずしも日本銀行の見解を示すものではありません。
内容に関するご質問等に関しましては、日本銀行調査統計局経済調査課マクロモデルグループ(代表
03-3279-1111)までお知らせ下さい。』(この部分だけ直上URL先の12/25日銀レビュー紹介文より引用)
ということで、いつもの「これは個人の見解です」がなくて、つまりは企画局企画調整課が課として出しました、って建付けなので、決定会合の議決は経ていないにしましても、日銀としての見解を示したものである、というのはまあそういう事やぞというお話ですので、その分だけ通常のペーパーよりも重いものになっている、ということに成ろうかと存じます。
・・・・・というのを踏まえて少々見物するのですが、さっきのHTMLのところの紹介文を引用しますと、
『要旨
日本銀行では、中央銀行の財務と金融政策運営に関する考え方について、人々の幅広い理解を得ていくことが重要との考えから、金融政策運営が中央銀行の財務に影響するメカニズムについて、様々な情報発信を行ってきた。』
黒ちゃん時代は「それは別に問題ないですが」で全部切り捨てていたような気がしますがw
『本稿では、こうしたメカニズムについて改めて整理したうえで、この間の金融政策の枠組みの見直しや政策金利の引き上げ等の金融政策運営面の変更を踏まえ、市場参加者へのヒアリングに基づき、一定の仮定のもと、先行きの日本銀行の収益・自己資本に関する試算を行った。』
市場参加者に何のヒアリングするんだ・・・・・
『その結果、市場金利が織り込む金利見通しを前提とした場合には、財務面での負の影響は限定的となる一方、より厳しい仮定を置いた場合には、一定の財務リスクがあることが確認された。日本銀行としては、今回の試算結果も踏まえつつ、引き続き財務の健全性確保に努めていく方針である。』
という結論ですな。
・このネタの元は「多角的レビュー第1回WS」ですね
一昨年の話になるのか・・・・・・・・・
https://www.boj.or.jp/mopo/outline/bpreview/bpr231206a.htm
金融政策の多角的レビュー」に関するワークショップ
第1回「非伝統的金融政策の効果と副作用」
2023年12月6日
日本銀行
この中の『第3セッション:日本銀行のバランスシート』で公表された資料
https://www.boj.or.jp/mopo/outline/bpreview/data/bpr231206c.pdf
中央銀行の財務と金融政策運営
「金融政策の多角的レビュー」に関するワークショップ(第1回)
―― 第3セッション 日本銀行のバランスシート ――
2023年12月4日
日本銀行 企画局
ここで示された見解は、必ずしも日本銀行の公式見解を示すものではありません。
の焼き直しというかアップデート版なのですが、この時の資料は引用した紙芝居の表紙に「ここで示された見解は、必ずしも日本銀行の公式見解を示すものではありません。」ってヘッジ文言があったのですが、今回は紹介文、本編共にその文言が無いということになっているので、その点では今回の方が強化バージョンであることが示されているかと思います。
とは言いましても元ネタが多角的レビュー第1回WSなので、その時と同じ突っ込みになるんですけれども・・・・・
・図表のインチキ成分が少し緩和されていますなwwwwwwww
以下本編の方から引用していきますが、
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2024/data/rev24j15.pdf
日本銀行の財務と先行きの試算
企画局企画調整課
2024-J-15
2024 年 12 月
『大規模金融緩和の実施・終了に伴う収益の振幅メカニズム』って小見出しの辺りから。
【図表 1】日本銀行のバランスシート。ってのがあるんですけれども、これを見ますと、淡々とバランスシートの規模が書いてあるんですよね。でまあこの図表何ですけど、WSの資料を見ますと、スライド7枚目『(2)中央銀行のバランスシートと収益の基本的構造』に(図表3)中央銀行のバランスシートと収益構造、ってのがありまして、これと比較しますと味わいがあります。
と申しますのは、WSの図表の方では資産サイド(=長期国債と短期オペ)に「利息収入あり」、負債サイド(=銀行券と日銀当座預金と法定準備預金)「利息支払なし」というのがあって、それ自体は付利が無い時代のシニョリッジの説明なのでインチキではないのですが、2023年12月時点で「いやそれマイナス金利解除して利上げ始めたら話が違うだろ」という図になっていて、もちろんその後で説明はあるのですけれども、なんかこう「日銀の財務はマイナス金利を解除しても安全です」というのを強調したいという下心満載の図になっていたんですよね(ちなみにその次のスライドで今回の本編の図表1と同じのが出てくる)。
さらにちょっと笑ったのは、その先の【図表 4】逆ざやのメカニズム。
今回ってこの部分もWS資料よりはちゃんとした図になっていまして、WSのですとスライド10枚目の『(4)バランスシート縮小局面の財務構造の変化』ってところなんですけど、ここに(図表6)利上げ時の逆ざやのイメージ、ってのがあって、まあ今回の図表4と同じような説明になっているんですよね。
でもってこの図表、前回のWSの時はバランスシートの図の書き方が恣意的で、「所要準備(法定準備預金)+銀行券+(日銀の)自己資本」の部分がなぜか「日銀当座預金」よりも大きいような図になっていまして、結果として負債・資本の部の「無利子」の方が「有利子」よりも大きい面積を占める、という2023年の時点での現実から見たらインチキにも程がある図になっていたんですよね。
でもって今回ですけれども、確かアタクシこのWSの資料が出たときにこの点で思いっきり悪態ついたのが聞こえたのかもしれませんが、今回の図表4では「有利子」の面積の方が「無利子」の面積よりも有意に大きくなっているので、少しはマシになった感はあります。明らかにWSのは「日銀の財務はマイナス金利を解除しても安全です」というのを強調したい下心があふれ出すぎてキモイ状態になっていましたのですが、ちょっとはマシに。
・・・・とは言いましても実際の額から見たら面積比全然おかしいんですけれどもwwwwwwwwwwwwwww
などと書いているうちに時間の方が残り少なくなってまいりましたので続きは明日以降に参りたいとは思います。新年とか言ってるけど連休明けの月初で四半期頭ですから生業の方が忙しい訳でして(滝汗)。