金融政策概観(2024年度下期後半)

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2024年度下期後半の見出し

2025/01/10「さくらレポートは「熱意を感じない」賃金と物価の話/日銀推計需給ギャップマイナスだが人手不足で賃金上がってるんだよなあ」
2025/01/09「12月FOMC議事要旨は「当分利下げしないもんね」ですね」
2025/01/08「日銀財務のペーパー(その3)ストレスシナリオ分析が無くて前提条件がヌルヌルなのしか置けないのが今の日銀財務の深刻さ」
2025/01/07「植田発言は相変わらず慎重スタンス/日銀財務関連だが「普通に金融引き締めが必要な時」の話をしませんな」
2025/01/06「12月議事要旨は1月利上げしないインパクト強すぎですね/日銀財務の企画局ペーパー登場」

2025/01/10


〇さくらレポートの「賃金と物価」のトーンってこれワタクシは「熱量がない」と思いました

https://www.boj.or.jp/research/brp/rer/rer250109.htm
地域経済報告―さくらレポート―(2025年1月)

全文はこちら
https://www.boj.or.jp/research/brp/rer/data/rer250109.pdf
地 域 経 済 報 告 -- さくらレポート -- (2025年1月)

でまあ何地域が上げた下げたは兎も角、今回の現世利益は「賃金と物価の循環」の確認な訳ですよ。よって全文の方ですと本文4ページ(PDFの6枚目)から始まる『(3)企業等の主な声(トピック別)』を見るのがよろしい訳ですが、その点についてはこちらにも説明があるのでまずはそっちをみましょうず。

https://www.boj.or.jp/research/brp/rer/rera250109.htm
各地域からみた景気の現状(2025年1月支店長会議における報告)

『雇用・賃金面では、2025年度の賃金設定について、現時点では競合他社の動向を見極めており、賃上げ率を固めていないとの企業の声や、中小企業を中心に、収益面の厳しさから慎重な姿勢を示す声も引き続き報告された一方、すでに、賃上げ率の具体的な検討を進めているとの企業の声も報告された。』

はい。このまとめ方がもうアレでして、もし今回「2025年度のおちんぎんは絶好調で春闘見るまでもなく死角なし」とかいうのであればもっともっと熱量のある表現になるじゃないですか当然のことながら。

然るに、上記のような書き方ですとこれはまあどこからどう見ても「じゃあ今後の賃金設定がきちんと出てくるかはもうちょっと確認しないとね」という話になります、というか毎度の事ですけれども、大本営様に対して忖度していますなというお話で、賃金上がっとるんじゃおいこら大本営真面目にしやがれコノヤロー的な突き上げっぽいのも無いわけですな、寧ろ去年のこの時期のさくらレポートの方がその傾向があったようにも思えますが、今年はまあこういう状況ですので、それはもうそういう事やぞと。

まあ一応、

『全体としては、構造的な人手不足のもと、最低賃金の引き上げもあって、継続的な賃上げが必要との認識が幅広い業種・規模の企業に浸透してきているとの報告が多かった。』

という結論にしているので、「賃金上昇は見られます」ってのが結論ですが、これはまあ普通に「現時点ではまだ決め打ちできるほど強いわけではないので今後を見ましょう」にしかアタクシには読めないので、1月会合で判断するような熱量は乏しい、と言わざるを得ません。

ただまあ昨年がそうだったように、1月決定会合終わってから急に変なもんでも食ったかのように3月会合に向けて別途「おちんぎんがキテます」っていうような補足レポートみたいなのが出て来る可能性もあるので、別に3月もやる気無いのかというとそうではないと思うのですが、少なくとも再来週に蛮勇振るって利上げじゃオリャーとなるには熱量が足りないという評価にしておきますアタクシは。


ではおちんぎんの対になる企業の価格設定行動ですが。

『企業の価格設定面では、既往の輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の動きは緩やかながらも続いているとの報告が多かった。また、人件費の価格転嫁については、なお難しいとする企業の声はあるものの、賃上げ原資確保のための転嫁を実施・検討する動きが引き続き広がっているとの報告が多かった。』

いやまあ食品価格だからこれとは別の話かもしれんけど体感的には食品価格がエゲツナイ上がり方しててマジで頭クラクラするんだが。

『ただし、消費者の節約志向の影響がみられるもとで、値上げの抑制や一部商品の値下げ、低価格商品の品揃え強化などの動きも引き続きみられているとの報告があった。』

そらそうよというお話で、名目の支出額黙っていても増えてるんだもん帳尻合わせないと・・・・・

というのは兎も角として、企業の価格設定行動の方は「きっちり進んでいる」感の強い表現になっておりますな。価格は上がるけど賃金はイマイチとのことですが、そもそもリフレ政策というのは実質賃金を下げることによって雇用を強くしていきましょうなどというのはかの浜田宏一大先生も仰せになっていたことなので、まあアベノミクス黒田緩和の答え合わせだぞということで。

さて、これ昨年の同時期どういう話をしていたのか、というのを比較するとオモロイかと思いまして、昨年のを引っ張り出してきました。

https://www.boj.or.jp/research/brp/rer/rera240111.htm
各地域からみた景気の現状(2024年1月支店長会議における報告)

『雇用・賃金面では、多くの地域から、労働需給の引き締まりや、企業の人手不足感の強まりが報告された。本年の賃金改定に関しては、一部の大企業において、昨年並みあるいはそれ以上のベースアップを伴う賃上げ方針を既に表明する動きがみられるもとで、地域によって濃淡はあるものの、地方でも昨年よりも幾分早いタイミングで賃上げ機運が醸成されつつある。』(上記URL先昨年1月の支店長会議報告から、以下同様)

ということで、今年のに比べて書いていることに勢いがありますよね。後半は、

『ただし、競合他社の賃上げ動向等を見極めたいとして、現時点では賃上げ率等を固めていない先が多いほか、中小企業を中心に、収益面の制約から慎重さを崩さない先も少なくないなど、賃上げの広がりや程度等については不確実性が高いとの報告が多かった。』

となっているものの、前半の掴みの部分での熱量が違いますなというお話です。

『企業の価格設定面では、既往の原材料コスト上昇分を転嫁する動きが続いているが、そのペースは鈍化しているとの報告が多かった。また、値上げの抑制や一部商品の値下げなど、消費者の節約志向の強まりに対応した価格設定行動がみられるとの報告が複数あった。一方で、人件費の上昇を念頭に置いた値上げを実施ないし検討する動きもサービス業等で徐々に出てきているとの報告があった。』

価格設定の方は先ほど申し上げました通りで、これ昨年よりも今年の方が普通に表現が強くなっている、というのが見て取れるかと思いまして、まあこれですと「賃金動向を確認したら政策調整」って話をしてくるんじゃないですか、とまあそういうお話になると思います。

とは言いましても、そもそも論として植田日銀の場合は(黒田末期からそうですけど)「政策行動から後付けでその時に都合のよい理屈(または屁理屈)を繰り出してくる」という行動になっておりますので、今回のは「目先で言えば動かない言い訳」になっていますし、「賃金を確認した時点では動く時の言い訳に使える」となっていまして、まあ動かない言い訳がある時は動かないという行動からすると、1月利上げにとっては(円安にこれからかっ飛ばされない限りにおいて)一つハードル置きやがったなということで。




〇需給ギャップちゃん

https://www.boj.or.jp/research/research_data/gap/index.htm
需給ギャップと潜在成長率

https://www.boj.or.jp/research/research_data/gap/gap.pdf
需給ギャップと潜在成長率(図表)


直近の推移だと、(左から需給ギャップ、資本投入ギャップ、労働投入ギャップ)

2023.1Q -0.36 -0.61 0.25
2023.2Q -0.12 -0.46 0.35
2023.3Q -0.34 -0.65 0.30
2023.4Q -0.05 -0.35 0.30
2024.1Q -0.71 -0.99 0.29
2024.2Q -0.58 -0.77 0.18
2024.3Q -0.53 -0.79 0.26

というということですが、需給ギャップマイナスで推移しているのに物価はずーっと2%オーバーで推移しているんですから、寧ろこれは物価安定目標は思いっきり達成しているという状態を意味するんじゃないですかとか言いたくなってしまう(そもそも需給ギャップが本当にマイナスなのかというのもアレですが)のですが。

あと、半期展開の潜在成長率

2022.1 : 2022.2Q-2022.3Q   0.38
2022.2 : 2022.4Q-2023.1Q   0.46
2023.1 : 2023.2Q-2023.3Q   0.53
2023.2 : 2023.4Q-2024.1Q   0.53
2024.1 : 2024.2Q-2024.3Q   0.58

ということで潜在成長率0.6%くらいあることになっているのですが、本当にそうなんですかねえというのはあって、需給ギャップマイナス推移なのに人手不足だわ物価が上がるわってなんか違和感があるんですけどアタクシもアホの子なのでこの辺の理屈がイマイチわかったようでわかっていないのでメモだけ置いてお茶を濁すのでした。




2025/01/09

お題「12月FOMC議事要旨は要するに「しばらく利下げしないもんねー」ですわな」

えらいこっちゃ
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250108/k10014687361000.html
トランプ氏 グリーンランドめぐり“デンマークに高い関税も”
2025年1月8日 19時45分

グリーンランド領有希望⇒冬戦争
パナマ運河領有希望⇒スエズ動乱

・・・・・20世紀に逆戻りですかそうですか、ってかいきなりプーチン越えをしてくるのさすがに耄碌してるんじゃねえのかこのジジイは

〇12月FOMC議事要旨を毎度の速成手抜き読みで鑑賞してみます

https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20241218.htm
Minutes of the Federal Open Market Committee
December 17-18, 2024

A joint meeting of the Federal Open Market Committee and the Board of Governors of the Federal Reserve System was held in the offices of the Board of Governors on Tuesday, December 17, 2024, at 10:30 a.m. and continued on Wednesday, December 18, 2024, at 9:00 a.m.1

いつものように『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』の金融政策運営にかかわる部分(すなわち後ろの方)から読んでまいりますね。こちらの部分は全部で12パラグラフあるのですが、うち10〜12の3パラが金融政策運営にかかわる部分になりますのでそちらから参ります。


・今回の金融政策決定、の中で政策金利据え置き派から「金融環境」への言及があったのは味わいある

まずは10パラ。

『In their consideration of monetary policy at this meeting, participants generally noted that inflation had made progress toward the Committee's objective but remained somewhat elevated. Participants also observed that recent indicators suggested that economic activity had continued to expand at a solid pace, labor market conditions had generally eased since earlier in the year, and the unemployment rate had moved up but remained low.』

今回のFOMCの金融政策決定は、というパラは最初の部分が「全体観としての認識」を示して居まして、これは声明文1パラの表現と基本的に同じことを書いているものなのであまり気にしないでどこまでが声明文の箇所だったっけと流しながら読むのが手抜き読みのコツですw

よってここから気合入れて読むのですが、

『The vast majority of participants viewed it as appropriate to lower the target range for the federal funds rate by 25 basis points to 4-1/4 to 4-1/2 percent.』

このFOMCでは利下げが行われましたが、

『They assessed that such a further lowering of the target range for the policy rate would help maintain the strength in the economy and the labor market while continuing to enable further progress on inflation.』

禅問答みたいな話をしていますが、「利下げによって経済や労働市場の強さを助けながら今後のインフレの動向に対応できる」という話をしています。まあ記事とかでご案内の通り今回はインフレの部分が一番重要になるとは思うのですが、ゆうて政策の話でどういう扱いになっているのかは見ておくということで、いつものパティーンで読んでおります。

『A majority of participants noted that their judgments about this meeting's appropriate policy action had been finely balanced.』

多数の参加者は今回の決定は大変によくバランスしていると。

『Some participants stated that there was merit in keeping the target range for the federal funds rate unchanged.』

これはFOMCの時にも反対ありましたし、SEPのドットチャート見ると利下げした会合なのに本年12月末のドットを「今回据え置き」で置いたのが当時投票権のあるハマックさん含め4人いた、ということで既にご案内のことですが、数名の参加者は「政策金利据え置きのメリット」を主張しましてその背景は、

『These participants suggested that the risk of persistently elevated inflation had increased in recent months, and several of these participants stressed the need for monetary policy to help foster financial conditions that would be consistent with inflation returning sustainably to 2 percent.』

前半は「ここ数か月にインフレが高止まりするリスクが高まっているから」ということでこれはまあそういう罠という話なんですが、この後半部分が結構面白くて、「政策金利据え置きを主張する人のうち数名(これ多分4人中3人だと思います、1名ならワンだし2名ならアカップルオブになるはずだから)はこう言いました」ということで言ってるのが、「the need for monetary policy to help foster financial conditions that would be consistent with inflation returning sustainably to 2 percent.」とファイナンシャルコンディションを持ち出しているのが結構「おおおおお」と思いました。

これすなわち何を言ってるかといいますと、この3名は「利下げヒャッハー浮かれポンチ相場を金融市場がやっているとインフレ高止まりリスクを高めるからダメ」という話をしている訳でして、この観点で直球を投げて来る意見がここで出てくるとはあんまり思っていなかった(そもそも金融環境を説明のぽいんとで持ってきているFED高官っていなかったと思うので)ので、ここはひとつのメッセージとして考えるお話かなと。

でまあ議事要旨作っている時間帯には長期金利上昇ってのも起きている訳でして、それを踏まえてもこの意見をどどーんと掲載してきている、というのは、まあFEDが露骨にそう言いたい意思があるのかはもちろんアタクシの想像の世界になるのですが、アタクシ思いまするに直近の米国長期金利上昇に関して別に特段の遺憾の意を持っているわけではなく、少なくとも一部にはそもそも昨年末にかけての利下げヒャッハー金融市場に不快感を持っていた向きがあった、というのをわざわざ見せに来ていると解釈しましたので、ここに一つのメッセージを感じました、個人の感想ですけど。

でもってこのパラの最後は資産買入でしてこれはいつものようにあっさり味。

『Participants judged that it was appropriate to continue the process of reducing the Federal Reserve's securities holdings.』

引き続き同じようにランオフを継続しますよと。


・先行き政策部分は「しばらく利下げはしませんよ〜」と強めに出していますね

第11パラグラフ。

『In discussing the outlook for monetary policy, participants indicated that the Committee was at or near the point at which it would be appropriate to slow the pace of policy easing.』

既にSEPのドットプロットで露骨に示されていましたのでここの書き出し自体は特にサプライズではないですけれども、のっけから露骨に金融政策の引き締め縮小のペースを落とすのが適切とぶっこみまして、

『They also indicated that if the data came in about as expected, with inflation continuing to move down sustainably to 2 percent and the economy remaining near maximum employment, it would be appropriate to continue to move gradually toward a more neutral stance of policy over time.』

とはいえ従来の見通し通りに物価が落ち着きつつ完全雇用に近い状態が継続すれば今後も引き締めの縮小をしていって中立に向かっていきますよと。

『Some participants observed that, with the target range for the federal funds rate having been lowered a total of 100 basis points with this meeting's decision, the policy rate was now significantly closer to its neutral value than when the Committee commenced policy easing in September.』

これは前回の議事要旨でも話題になっていた中立金利との関係の話で、「ピークから今回含めて100bpの利下げをしたんですがそろそろ中立水準に近いんじゃないでしょうか」というのが数名から来てて、じゃあもう利下げせんのかよって突っ込みたくなりますがまあそういうのがあります。

『In addition, many participants suggested that a variety of factors underlined the need for a careful approach to monetary policy decisions over coming quarters.』

しかも多くの参加者が、「the need for a careful approach to monetary policy decisions over coming quarters」ということなので、今後「数四半期」のタイムラインで「ケアフルアプローチが必要」という指摘をしたというのが続いておりまして、なんかもう「しばらく利下げする気ないもんねー」というのを思いっきりメッセージとして出していますわな。

『These factors included recent elevated inflation readings, the continuing strength of spending, reduced downside risks to the outlook for the labor market and economic activity, and increased upside risks to the outlook for inflation.』

その要因は最近のインフレの上振れ、消費の強さの継続、労働市場や経済のダウンサイドリスクが減ったこと、今後のインフレのアップサイドリスクの拡大がありますと。

『A substantial majority of participants observed that, at the current juncture, with its policy stance still meaningfully restrictive, the Committee was well positioned to take time to assess the evolving outlook for economic activity and inflation, including the economy's responses to the Committee's earlier policy actions.』

かなりの多数の参加者(なんのこっちゃ)は現状の政策スタンスは依然として「meaningfully restrictive」であり、今後の展開次第での対応が可能であると考えている、だそうな。

『Participants noted that monetary policy decisions were not on a preset course and were conditional on the evolution of the economy, the economic outlook, and the balance of risks.』

まあ最後の「事前に何か決めているわけではないよ」はいつも通りですが、この先行き説明の部分は「当面利下げはしませんがな」というのを強く出している感じですね。


・先行きリスクのところではこれでもかとばかりに「物価が高止まりする場合のリスク」の話をしていますね

第12パラグラフ。

『In discussing risk-management considerations that could bear on the outlook for monetary policy, the vast majority of participants agreed that risks to achieving the Committee's employment and inflation goals remained roughly in balance.』

先行きリスクは上下おおむねバランス、

『Many participants observed that the current high degree of uncertainty made it appropriate for the Committee to take a gradual approach as it moved toward a neutral policy stance.』

不確実性が高いので中立スタンスに持っていくには緩やかなアプローチが適切、

『Participants noted that although inflation was on course to return sustainably to 2 percent over the next few years and the Committee was determined to restore and maintain price stability, the likelihood that elevated inflation could be more persistent had increased.』

と来てからの「物価が高止まりするリスクが以前よりも強くなっている」キタコレ。

『Most participants remarked that, with the stance of monetary policy now significantly less restrictive, the Committee could take a careful approach in considering adjustments to the stance of monetary policy.』

しつこく「a careful approach」の話が出てくるのですが、その背景に、「(利下げしたんだから)以前よりも引き締め度合いが下がっている」というのも入っていますね。

『Many participants noted that the Committee could hold the policy rate at a restrictive level, or ease policy more slowly, if inflation remained elevated, and several remarked that policy easing could take place more rapidly if labor market conditions deteriorated, economic activity faltered, or inflation returned to 2 percent more quickly than anticipated.』

いや何回繰り返してますねんという感じですが、「今後もインフレが高止まりした場合は今の引き締め的な政策金利のレベルを維持するか、引き下げるにしてももっとゆっくりにするか、というアプローチをするのがよろし」と多くの参加者が言ってます、ってのがあって、これでもかとばかりに「利下げを慎重にやりますし何ならやらないかもしれません」というのをアピりにアピっている、というのが中々メッセージ性のお強い物件になっているなと思いました。


・インフレに関する先行き見通しでも「物価の高止まり」の話になりますわな

ここでさすがに今回は手抜きと言えどもインフレの部分を読まないと、と思うので第2パラと第3パラもチェックしておきます。

2パラ。

『In their discussion of inflation developments, participants noted that although inflation had eased substantially from its peak in 2022, it remained somewhat elevated.』

まあこの辺はおなじみの話ですが、

『Participants commented that the overall pace of disinflation had slowed over 2024 and that some recent monthly price readings had been higher than anticipated. Nevertheless, most remarked that disinflationary progress continued to be apparent across a broad range of core goods and services prices.』

2024年の物価鎮静化のペースは予想よりも早かったですね、財とサービスの双方に置いて幅広く、ということで最初の方は「今年はインフレ鎮静化しましたなあ」というお話で、以下ああだこうだと続く。

『Notably, some participants observed that in the core goods and market-based core services categories, excluding housing, prices were increasing at rates close to those seen during earlier periods of price stability. Many participants noted that the slowing in these components of inflation corroborated reports received from their business contacts that firms were more reluctant to increase prices, as consumers appeared to be more price sensitive and were increasingly seeking discounts. With respect to core services prices, a majority of participants remarked that increases in some components had exceeded expectations over recent months; many noted, however, that the increases were concentrated largely in non-market-based price categories and that price movements in such categories typically have not provided reliable signals about resource pressures or the future trajectory of inflation. Most participants also remarked that increases in housing services prices remained somewhat elevated, though they continued to slow gradually, as the pace of rent increases for new tenants continued to moderate and would eventually be reflected further in housing services prices.』

手抜き間溢れる一気引用ですがw、まあこの辺はこういう財とかこういうサービスとかの価格においてどうなったというような話で各コンポーネントの話をしているので、一つ一つ見ていくのは面白いのですが、まあこれ自体で次の政策インプリケーションになるような物価の話かというとそうでもないのでこのパラはこれで流しまして次の「見通し」に行く。


3パラ。

『With regard to the outlook for inflation, participants expected that inflation would continue to move toward 2 percent, although they noted that recent higher-than-expected readings on inflation, and the effects of potential changes in trade and immigration policy, suggested that the process could take longer than previously anticipated.』

ということで先行き見通しのパラグラフですが、まあ案の定さっきの政策のところで散々言われていた「今後物価が高止まりしてしまうリスク」というのが冒頭にぶち込まれていまして、足許での物価が想定よりも強めに推移している上に、今後の関税と移民政策の推移によっては物価が高止まりしてその期間が長くなる可能性がありますよね、と早速来ておりますし、冒頭のところなのでこれは普通に「委員会の総意」でありますわな。

『Several observed that the disinflationary process may have stalled temporarily or noted the risk that it could. A couple of participants judged that positive sentiment in financial markets and momentum in economic activity could continue to put upward pressure on inflation. All participants judged that uncertainty about the scope, timing, and economic effects of potential changes in policies affecting foreign trade and immigration was elevated.』

でもって参加者の意見の中にさっきあったファイナンシャルコンディションの話もありますね(逆順読みしているからこっちが本来先なんですけど)。

『Reflecting that uncertainty, participants took varied approaches in accounting for these effects.』

これらの不確実性に関して・・・・・

『A number of participants indicated that they incorporated placeholder assumptions to one degree or another into their projections. Other participants indicated that they did not incorporate such assumptions, and a few participants did not indicate whether they incorporated such assumptions.』

SEPの方に加味している人もいればいない人もいますよ、という話でこのパラは終っていますが、まあ物価に関しては思いっきり上振れリスクの不確実性を高めているという説明になっていました。

という所で今朝は勘弁。



2025/01/08

〇昨日で完結と思ってましたがご指摘ご議論などを受けて日銀財務のペーパーネタのおまけをば

https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2024/data/rev24j15.pdf
日本銀行の財務と先行きの試算
企画局企画調整課
2024-J-15
2024 年 12 月

・「シミュレーション」にストレスシナリオが無いわ作成過程がブラックボックスだわwwwww

最後に『先行きの収益・自己資本に関する試算』ってのがあるのですが、日銀の場合はこういうときに破局シナリオの話は死んでもしないというのが仕様になっているので(金融機関にはストレステストだの何だのさせるのに)どうせ結論先にありきじゃろ、ということで昨日はまあ時間もなかったし終わりで良いかなと思ったのですが、突っ込み不足にもほどがあるというツッコミも頂いたりしましたので試算に対する愚考をしてみましょうの巻、というのが今朝のネタです(^^)。


『以上のようなメカニズムを踏まえ、以下では、先行き 10 年程度の期間について、日本銀行の収益や自己資本に関する試算4を行う。試算の結果は、既に説明したように、将来の金利パスやバランスシートの規模などの前提をどう置くかによって、大きく異なることになる。』

でもって次が笑いどころなんですが、

『また、仮定であるとしても、日本銀行の今後の金融政策運営を示唆するものと受け止められる可能性もある。』

wwwwwwww

『このため、今回、日本銀行では、市場参加者へのヒアリング5を実施し、試算を行う仮定として妥当と考えられる前提について、以下を設定することとした6。』

でもってこのヒアリングとやらですが脚注を見ますと、

『5 主要な銀行、証券会社などに対してヒアリングを実施し、その結果をもとにした。』

どう見てもブラックボックスです本当にありがとうございましたというか、普通シナリオって標準とストレスとって形で置くもんでしょと思いますが、以下の部分で分かりますように、きわめて生温いシナリオしか設定されていないというのが味わいがあるのですが、これはまあ別の角度から大規模量的金融緩和の副作用を考えるヒントになる、と読み取るのがよろしいんじゃないか、というのはまあネタを割ってしまえば読者様の識者様からのご指摘によるものなんですけど(滝汗)、成程と思ったのでそのあたりを軸に以下紙芝居を鑑賞しましょうず。


・ヌルヌルのヌルとしか言いようが無い生温い前提ですねえ

『(前提)』ってのを見ますとですね、

『@ 短期金利・長期金利の推移

短期金利については OIS 市場7におけるインプライドフォワードレート、長期金利については国債のイールドカーブから算出されるインプライドフォワードレート(市場金利が織り込む金利見通し)のとおり推移すると仮定する。』

まずこの時点で「物価目標達成シナリオになっていない」という恐ろしい前提になっているのがお分かりになろうかと存じます。どの時点でこの計算しているか知らんけど、10年金利が1%行くか行かないか、というような状況の市場金利を是として作成しているんですから。

でまあそれだけだとさすがに素人衆からも「おかしくねえか」とツッコミが来るので、

『また、市場金利が織り込む金利見通しに加え、(a)短期金利は、今後数年程度をかけて 1.0%〜2.0%となり、(b)その際の長短スプレッドは、+0.25%P〜+0.75%P となると仮定した場合の試算値のレンジも合わせて示すこととする8。』

というストレスでも何でもなくて、単に物価目標をヌルヌルと達成していく、というだけのシナリオですが、それをぶっこんでいるわけですね。


でですね、この前提がクッソヌルイ、というツッコミをするのは簡単なのですが、それだけではなく考察(ただの愚考)をするというのがまあ大事なんですがその前に前提その2も見てみましょう。

『A バランスシートの規模やその推移

バランスシートについては、試算の便宜上、本年 7 月に決定された長期国債買入れの減額計画のとおり 2026 年 1-3 月にかけて国債の月間買入れ額を月 3 兆円程度まで減額し、同年 4 月以降は当該買入れ額から不変と仮定する(図表 9、10 参照)9。』

何という事でしょう、金融政策が正常化に向かうというのになぜか長期国債買入は月額3兆円とかいう大金融緩和状態を継続するとか仰せです!!!!

『また、今後の取扱い方針を公表している資産はその方針に沿って変動し、その他の資産は不変と仮定する。』

・・・・・ということでですね、まあ結論は申すまでもなく「まあ大丈夫ですわ」になるんですけれども、そもそもの前提が相当に強引なのが分かりますわな、


・この前提しか置けないことが意味するのは「QQE+YCC+マイナス金利の大いなる副作用」なんだよな〜

上記の「前提」ですが、これって総じて言ってしまえば「インフレは上振れしないし、為替市場での自国通貨の大きな減価もおきないし、その間に金融引き締めのようなことは一切不要で時間をかけてゆっくりと世の中が推移していく」というのが前提になっている訳ですよ。

然るに、昨日も申し上げましたが、物価が上振れる(というか現に上振れているんだが)とか、為替市場での自国通貨の減価が進む(現に進んでいるんだが)とかいうようなことが本当に起きないのか、というと全然そんなことは無いし、寧ろ日本の最大の埋設地雷ってこの点ですよね、というお話な訳ですよ。

為替市場で自国通貨の減価が進む中でヌルヌル金融緩和モードの長期国債買入なんぞ継続してられるのか、欧米みたいな物価上昇になった時には金融引き締めで一気に短期政策金利の引き上げをする必要が起きないのか、とかそういう事態に関するシミュレーションが出せるようなバランスシートの状況ではない、というのがこのヌルヌル試算が裏側から示しているところ、と考えますと話が分かりやすいかと存じますが(←この辺り受け売りです汗)、今の日銀のバランスシートってのは「放っておいてもインフレや円安が加速しないような状況に恵まれないと上手くエクジットできない」という状況になっている、ってのがこのシミュレーションで裏側からですけど如実に示されている物、ということで理解すると中々味わいがある上に背筋も凍る、という事かと存じます、というのはあくまでも個人の感想ですが、まあそんな次第でございます。


・ついでにおまけでヤマケンさん貼っておきますね

https://www.kyinitiative.jp/column_opinion/2025/01/04/post2742/
緩和効果は過大評価の可能性
〜日銀「多角的レビュー」を読む(1/2)
2025.01.04

https://www.kyinitiative.jp/column_opinion/2025/01/06/post2759/
金融政策はなぜビハインド・ザ・カーブが続くのか
〜日銀「多角的レビュー」を読む(2/2、完)
2025.01.06






2025/01/07

・植田総裁がなんか仰せだったようですが

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB179100X11C24A2000000/
植田日銀総裁「今年も経済・物価改善続けば利上げ」
金融政策
2025年1月6日 12:31

『日銀の植田和男総裁は6日、全国銀行協会の賀詞交歓会で挨拶し、「2025年も経済物価情勢の改善が続いていくのであれば政策金利を引き上げ、金融緩和度合いを調整していく」と語った。具体的な利上げの時期は「今後の経済・物価や金融情勢次第」としたうえで「様々なリスク要因を注視する必要がある」と説明した。』(上記URL先より、以下同様)

ということでこちらはヘッドラインにもなっていましたのでご案内かとは思いますが。

『20日に米大統領に就任するトランプ氏の経済政策については「不確実性は大きい状況だ」と話し、慎重に見極めていく姿勢を見せた。』

どう見ても1月利上げ否定です本当にありがとうございましたorzorz

『日銀は23日、24日に金融政策決定会合を控えている。米国の経済情勢や国内の春季労使交渉(春闘)の動きなどを踏まえて「データやその他の情報を精緻に分析し、経済・物価見通しを作成する」と述べた。そのうえで「金融政策決定会合での政策判断の基本材料にする」と言及した。』

でまあ記事の方は終り(珍しく全部読める物件)なのですが、基本材料にする(キリッ)とかイキって見ましても、結局のところ「不確実性ガー」で逃げてしまいますので、ここから市場に追い込まれる以外の可能性では1月は無いんでしょうけれども、まあこれ3月だと皆さん思っているから金利が上がっている訳でして、ハトハトチキン音頭が1月会合で炸裂されると話がややこしいことになるので勘弁して欲しいもんです。

まあ何ですな、観客席で見ている方としましては「利上げを先送りする理由がない状況なのに何で先送りするの」と思ってしまうので毎度毎度利上げ観測が出ては事前観測報道が出てわ謎の関係者コメントが出てわ、というので右往左往しますけれども、アタクシつらつら思いまするに、植田日銀って発想が観客席のワシらとは根本的に逆でして、「利上げをせざるを得ない理由があれば利上げをするけれども、そうじゃないなら利上げを先送りするのが得策」というのを行動の基本原理にしている、と思えばこの人たちの言ってる話も理解はできる(納得はしないけど)というもんじゃないのかねとは思いまする。

利上げをせざるを得ない理由は様々あるはずなんですけれども、まあやっぱり今のところは為替円安で物価、ではなくてベンチの方から「おどりゃええかげんにせんかい」と監督やコーチが飛んでやってくる、というイベントが発生とかそっちになってしまうのが悲しいですけれども、まあ円安は最早誰でも思いつく話ですので、今年は「それ以外」に「利上げをせざるを得なくなり理由」が出てくるのか、というのがポイントの一つになるんじゃないかと思います。

だいたいからして「2025年も経済物価情勢の改善が続いていくのであれば政策金利を引き上げ」っていってるんですけれども、経済は知らんが物価情勢のどこがどう「これ以上改善」しようがあるのかという話でして、皆さんも年末に正月食材買いに行って店頭で野菜の価格見て死にそうになったと思いますが、まあ生鮮の季節物特別価格モードはさておいても、諸色値上がりの折、物価情勢の改善とか何寝言を言ってるんだかよくわからんのですが、ギロッポン夜の帝王様のような高貴なお方はスーパーで買い物かご持って値札見て卒倒するような生活はされておられないのでこういうのまるで分からんのだろうなあとは思うし、経済だってこのクソ物価のせいで消費頭打ちじゃろというのは有るわけでして、物価高に関して日銀ってあまりにも無頓着すぎる情報発信をしていて、まあなんだかんだ言って今まではずっとスルーされてきましたけれども、そろそろこっちの方(ある意味本筋)から「利上げせざるを得ない情勢」がやってくるのかもしれないなあ、とは思ったり思わなかったり(個人の妄想です)。

まあどうなるのやらという感じですが、「追い詰められないのであれば今の政策を継続していても別に問題ないじゃろ」というスタンスはここもとの会見やら講演やら主な意見やらに結構色濃く出ているようにアタクシには読めてしまう一方で、観客席の方は「利上げを先送りする理由が無くなったら当然利上げするじゃろ」と思っている節があるので、まあアタクシが植田日銀の基本スタンスを読み間違えているのであればそれはそれで結果としては良い事になるのですが、そうじゃないとなると面倒な気もしますな、うんうん。



〇日銀バランスシートのペーパーから少々の続き

https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2024/data/rev24j15.pdf
日本銀行の財務と先行きの試算
企画局企画調整課
2024-J-15
2024 年 12 月

・政策金利引き上げに伴いポートフォリオに逆ザヤが発生するとは書かない辺りが大本営クオリティ

バランスシートによる収益とか損失とかの説明部分は今回は面倒なのでとばして考察部分をツッコむ感じで参りますが、『大規模金融緩和の実施・終了に伴う収益の振幅メカニズム 』ってところの小見出しが、

(中央銀行のバランスシート・収益の特徴等)→まあこれは一般的な説明
(バランスシート拡大局面における収益増加)→これは緩和時の話なのでまあそうですね、って話

と来るのですが、その次が

(バランスシート縮小局面における収益減少)

となっていますな。

『日本銀行では、本年 3 月に金融政策の枠組みの見直しを行い、7 月には政策金利の引き上げと長期国債買入れの減額計画を決定した。このように、バランスシートを縮小し、政策金利を引き上げる局面では、付利金利の引き上げによる支払利息の増加により、収益が下押しされることとなる(図表 4)。』

>収益が下押しされることとなる
>収益が下押しされることとなる
>収益が下押しされることとなる

逆ザヤと書かないのが泣ける。

『こうした特徴を踏まえ、日本銀行では、大規模な金融緩和の実施と終了に伴う収益の振幅を平準化し、財務の健全性を確保する観点から、2015 年に債券取引損失引当金を拡充2するなど、自己資本の充実に努めてきている(図表 5、6)。』

よくよく考えてみたら「別に赤字になるから問題が起こるのではない」という主張をするなら自己資本の充実につとめなくても良い訳で、この辺の歯切れの悪さが、「実は財務の健全性は大事」ということを意味していると思いますよねw

『なお、市場金利が上昇すれば保有国債の時価は下落する。しかし、日本銀行は、保有国債について、一部の例外を除いて売却を行っていないという保有実態も踏まえ、米国連邦準備制度(FRB)や欧州中央銀行(ECB)と同様に、償却原価法を採用している。』

ということで時価でやられる件について言い訳をしているのですが、保有国債の時価下落ってのは要するに市場金利対比クッソ低い金利の国債をもってフィックスしている訳で、その国債が発行銀行券などの無コスト負債と見合っている分には問題は無くても、付利している日銀当座預金見合いでもっている場合は期間損益が赤になる形で出てきますよね、という件に関しては、

『このため、国債の時価下落によって評価損が生じたとしても、満期到来を待たずに保有国債を売却することがなければ、期間損益に直接影響を与えることはない。売却をしない限り実現することのない評価損益と期間損益は異なるものである(図表 7)。』

という話をして期間損益の赤字の話に関して文章の方では書いていない、というのがどうせそんなこと書くとメディアが大々的にネタにするからやべえので寸止めにしている、という大本営しぐさを感じさせて大変に詫び錆び(意図的誤字ww)のある世界でございます。


・そもそも「償還再投資を続けられる」という前提が「平時」の前提なんですよね〜

でもってこの次の小見出しが、

(その後の回復)

ってなっていますが、

『前述のとおり、バランスシートの縮小局面に入ってしばらくの間は、付利金利の引き上げによる支払利息の増加により、収益が下押しされることとなる。』

なお、この後に「一時的な赤字」というのがあるけどその前にこのような説明がありまして、

『もっとも、その後は、当座預金(超過準備)が減少するにつれて支払利息は減少する。さらに、保有国債が利回りの高い国債に順次入れ替わっていくため、受取利息が増加することが見込まれる。』

ということなのですが、そもそも論として何で償還再投資を続ける前提になっているのかという話でして、バランスシートの縮小を急速に行わなければいけないような状況に陥った場合に償還再投資どころか保有国債の売却だってあり得る話だし、だいたいからして償還再投資の際に何で長期債を買う必要があるのかという話だし(中央銀行の財務改善のためにより利回りの高い長期債を購入するのは本末転倒にもほどがある話)、まずこの前提部分がペテンなのですが、これはこういうペテンを言っておかないと出口に置いて真っ当な政策金利水準になった際、あるいはもっとインフレが問題になるような状況になった際の日銀財務のシミュレーションが飛んでもないものになってしまうから、こういうペテンを言わざるを得ない、というのがまあ実際のところではなかろうか、と弊駄文では愚考するわけでございますwwwwwwww

『こうした過程で、一時的に赤字が発生する可能性はあるが、その場合でも、通常、いずれは収益が回復していく。』

ということで話を強引にまとめて、あとはケースシナリオの話になっていますが、「通貨防衛のために大幅引き締めの実施」とか「インフレ目標達成後にさらにインフレになって金融引き締めが必要になった時」とかそういう話は一切しない(今のバランスシートでそれシミュレーションしたらただの地獄の一丁目になるからできない)という図になっております。

と考えますと、マジのマジで物価目標達成する気があるんだったら、その後って経済物価情勢によっては「金融引き締め」が必要になる局面だって出てくるわけで、その際の引き締め政策の発動の邪魔になるクソデカバランスシートはとっととどうにかしろ、という結論に本来はなるはずなんですよね。いやマジで・・・・





2025/01/06

〇年初なので何となく金融政策妄想雑談から

・結局ドル円は飛ぶことなく年始休みを抜けやがりましたか

https://jp.reuters.com/markets/quote/USDJPY=X/
US Dollar / Japanese Yen FX Spot Rate
USDJPY=X
直近の取引 157.17 JPY
変化 -0.11
変化% -0.07%
2025年1月6日の時点。値は少なくとも15分遅れで表示しています

うーん火力が足りん火力がという感じでして、とにかく今月は再来週の末に金融政策決定会合がありますので、日銀のケツに火が点くためには年初早々ドル円160円を伺う勢い、とかになってほしかったのですが、これですと日銀のケツに火が点かないので1月利上げはどこに、というお話になってしまいまして極めて遺憾にもほどがある展開ではあります。

まあ年末にネタにしました12月会合主な意見、「慎重に考えるのが常識的」という割と飛んでもない意見を2発目に持ってきているという時点で1月利上げ観測を叩き潰しに行っていますので、とにかく手っ取り早く日銀のケツに火を点ける方法が円安しかない(というか他に考えられない)ので、円安行かないとうだうだして4月くらいまで引っ張りに掛かる可能性も大有り(というか4月パスすると今度は選挙の時間帯になってしまう)とかいう展開になるんですけれども、たぶん日銀は円安に飛ばない限りシランガナのスタンスを続けるんじゃないかな、というのが今年の初手での予想(妄想)になります。


・ところで12月主な意見の「2番目」は誰なんでしょという新春雑談

先週月曜日(要するに納会の日)に12月主な意見の話をしましたが、とにかくあの主な意見は「金融政策運営」の2番目に置かれた意見がアタクシ的には衝撃的だったんですよね。

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2024/opi241219.pdf

『・利上げ判断の焦点は、国内面では、賃金・サービス価格・個人消費の動き、海外では米国の経済と政策運営、そのもとでの金融資本市場の動向である。これらについては、賃金という面では春季労使交渉に向けた動きを、米国という面では新政権発足を確認していくのが常識的である。』

この「常識的である」という締め文言に関して、先週アタクシはこの部分に関して(この意見自体がアホじゃろとかそういう悪態も言いましたが)こんな事を申し上げた訳ですよ。

(先週月曜に書いた駄文から)これを2発目に持ってくる時点で今回の主な意見の構成って「1月利上げするわけねえだろこの馬鹿どもが」と市場に向かって宣告しているのと同じですのであって、確かに後の方には利上げを検討みたい話が田村さん以外にもあるにはあったのですが、それは単なる「私言いましたよね」スキーム(ここまで引用)

てなことを書きましたが、これ書きましたところその後「そもそもこの「1月利上げとかいう輩は非常識」と言わんばかりの強硬見解って誰ですねん」というのでちょっと盛り上がったりしたんですね。でもってこれが誰でしょうと考察するのもこれまた今回の主な意見の読みの中で面白ポイントになるかと思いましたので、遠い記憶(おいおい)を辿って書いておきますと、こんな読み筋になります。

基本的には主な意見の構成って1発目は声明文に出てきそうな表現、すなわち大本営というか総裁辺りが自我を出さないで書いた文章になるんですが、2発目あたりもそんな感じになることが多いんですよね。従って「主な意見」の各項目って最初の1つは確実にそうですけれども、まあ2つ目とか3つ目くらいまで大本営、すなわち正副総裁の意見が並ぶことが多い訳ですよ。

と考えますとさっきの「1月利上げとか言ってる輩は非常識」と田村委員にマッコウクジラで喧嘩を吹っ掛けているのは内田さんか、という話になるのですが、内田さんが書いたにしては文章の格調というか品性というか、なんかこう品がないんですよね、特に最後の「常識的である」とかいう決めつけ文言。

でまあこの手の決めつけとかレッテル貼りとかが得意で、ついでに格調が低くて品位がアレ、ということになりますと、ほらほら皆さん想像できるじゃありませんか、「(カタカナ3文字伏字)派」とかいう一派がいますことを。

とまあそういう訳で、納会とかいってもただの月末四半期末だし何なら末初オーバーナイトが1週間とかいう状況の中、ああだこうだと推論をしておった訳ですが、これはまあ一番当てはまるの野口審議委員じゃねえのというのが推計大会の結果になった次第。まあ当たるも八卦当たらぬも八卦ですが、如何にも野口先生が言い出しそうな感じの調子だなと思う訳ですな。


・・・・・・となりますと、それはそれでインパクトというのがあって、普通「主な意見」の最初の方って前述のように大本営ちっくな意見を並べて、その後に左右というかタカハトというか強弱というかの意見を並べていく、という感じの構成に作っていることが多い(経済情勢の部分だとテーマごとに意見が羅列されるので強弱入り乱れますが)訳でして、その中で野口委員というリフレ派残党の意見をいきなりの2番目に持ってくる、というのも編集としては結構思い切った感じになっていまして、これ書いたのが野口さんだとしますと(というか野口さんだと思ってますがアタクシ)、「政策バイアスの強い(政策調整に反対というバイアスの強い)人の意見を敢えてぶちこんだ」ということになりますので、月曜日に書いた「「1月利上げするわけねえだろこの馬鹿どもが」と市場に向かって宣告しているのと同じ、というアタクシの愚見を裏付けするんじゃないのかね、とまあ思った次第なので新春雑談がてらこちらに記載させていただいた次第でありまする。

やはり円安しか(日銀に)勝たんということですか(正月早々ため息)。


〇世の中(金融市場じゃないところ)的にやや話題になっていたので日銀財務云々の件

年末前にこんなのが出ておりましたが
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2024/rev24j15.htm
日本銀行の財務と先行きの試算
2024年12月26日
企画局企画調整課

・こちらのペーパーは「部局で出しているレポート」になります

アタクシは性格が悪いのでまずこれを見たときに「書いているスタッフ名が無くて「企画局企画調整課」名義で出ている」というのに注目するわけですね。

で、注目した後何を見ますかと言いますと、上記HTMLのご紹介ページの最後の文言を見るのですよ。

『日本銀行から

日銀レビュー・シリーズは、最近の金融経済の話題を、金融経済に関心を有する幅広い読者層を対象として、平易かつ簡潔に解説するために、日本銀行が編集・発行しているものです。

内容に関するご質問等に関しましては、日本銀行企画局企画調整課(代表03-3279-1111)までお知らせ下さい。』

でまあこの最後の部分を見て「いつもと違う」と秒で気が付く人は野良日銀ヲチャーのお仲間入りということでめでたい訳ですな。じゃあちなみに普段はどうかと言いますと例えば、

https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2024/rev24j14.htm
大規模言語モデルを用いた新たなテキスト分析の取組み
― 最近の賃金・物価動向に関する分析への応用 ―
2024年12月25日
調査統計局 井澤公彦*、亀井郁夫、柴田菜緒、高橋悠輔、米山俊一
*現・大阪支店

の最後は、

『日本銀行から

日銀レビュー・シリーズは、最近の金融経済の話題を、金融経済に関心を有する幅広い読者層を対象として、平易かつ簡潔に解説するために、日本銀行が編集・発行しているものです。ただし、レポートで示された意見は執筆者に属し、必ずしも日本銀行の見解を示すものではありません。

内容に関するご質問等に関しましては、日本銀行調査統計局経済調査課マクロモデルグループ(代表 03-3279-1111)までお知らせ下さい。』(この部分だけ直上URL先の12/25日銀レビュー紹介文より引用)

ということで、いつもの「これは個人の見解です」がなくて、つまりは企画局企画調整課が課として出しました、って建付けなので、決定会合の議決は経ていないにしましても、日銀としての見解を示したものである、というのはまあそういう事やぞというお話ですので、その分だけ通常のペーパーよりも重いものになっている、ということに成ろうかと存じます。

・・・・・というのを踏まえて少々見物するのですが、さっきのHTMLのところの紹介文を引用しますと、

『要旨

日本銀行では、中央銀行の財務と金融政策運営に関する考え方について、人々の幅広い理解を得ていくことが重要との考えから、金融政策運営が中央銀行の財務に影響するメカニズムについて、様々な情報発信を行ってきた。』

黒ちゃん時代は「それは別に問題ないですが」で全部切り捨てていたような気がしますがw

『本稿では、こうしたメカニズムについて改めて整理したうえで、この間の金融政策の枠組みの見直しや政策金利の引き上げ等の金融政策運営面の変更を踏まえ、市場参加者へのヒアリングに基づき、一定の仮定のもと、先行きの日本銀行の収益・自己資本に関する試算を行った。』

市場参加者に何のヒアリングするんだ・・・・・

『その結果、市場金利が織り込む金利見通しを前提とした場合には、財務面での負の影響は限定的となる一方、より厳しい仮定を置いた場合には、一定の財務リスクがあることが確認された。日本銀行としては、今回の試算結果も踏まえつつ、引き続き財務の健全性確保に努めていく方針である。』

という結論ですな。


・このネタの元は「多角的レビュー第1回WS」ですね

一昨年の話になるのか・・・・・・・・・

https://www.boj.or.jp/mopo/outline/bpreview/bpr231206a.htm
金融政策の多角的レビュー」に関するワークショップ
第1回「非伝統的金融政策の効果と副作用」
2023年12月6日
日本銀行

この中の『第3セッション:日本銀行のバランスシート』で公表された資料

https://www.boj.or.jp/mopo/outline/bpreview/data/bpr231206c.pdf
中央銀行の財務と金融政策運営
「金融政策の多角的レビュー」に関するワークショップ(第1回)
―― 第3セッション 日本銀行のバランスシート ――
2023年12月4日
日本銀行 企画局
ここで示された見解は、必ずしも日本銀行の公式見解を示すものではありません。

の焼き直しというかアップデート版なのですが、この時の資料は引用した紙芝居の表紙に「ここで示された見解は、必ずしも日本銀行の公式見解を示すものではありません。」ってヘッジ文言があったのですが、今回は紹介文、本編共にその文言が無いということになっているので、その点では今回の方が強化バージョンであることが示されているかと思います。

とは言いましても元ネタが多角的レビュー第1回WSなので、その時と同じ突っ込みになるんですけれども・・・・・


・図表のインチキ成分が少し緩和されていますなwwwwwwww

以下本編の方から引用していきますが、
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2024/data/rev24j15.pdf
日本銀行の財務と先行きの試算
企画局企画調整課
2024-J-15
2024 年 12 月

『大規模金融緩和の実施・終了に伴う収益の振幅メカニズム』って小見出しの辺りから。

【図表 1】日本銀行のバランスシート。ってのがあるんですけれども、これを見ますと、淡々とバランスシートの規模が書いてあるんですよね。でまあこの図表何ですけど、WSの資料を見ますと、スライド7枚目『(2)中央銀行のバランスシートと収益の基本的構造』に(図表3)中央銀行のバランスシートと収益構造、ってのがありまして、これと比較しますと味わいがあります。

と申しますのは、WSの図表の方では資産サイド(=長期国債と短期オペ)に「利息収入あり」、負債サイド(=銀行券と日銀当座預金と法定準備預金)「利息支払なし」というのがあって、それ自体は付利が無い時代のシニョリッジの説明なのでインチキではないのですが、2023年12月時点で「いやそれマイナス金利解除して利上げ始めたら話が違うだろ」という図になっていて、もちろんその後で説明はあるのですけれども、なんかこう「日銀の財務はマイナス金利を解除しても安全です」というのを強調したいという下心満載の図になっていたんですよね(ちなみにその次のスライドで今回の本編の図表1と同じのが出てくる)。

さらにちょっと笑ったのは、その先の【図表 4】逆ざやのメカニズム。

今回ってこの部分もWS資料よりはちゃんとした図になっていまして、WSのですとスライド10枚目の『(4)バランスシート縮小局面の財務構造の変化』ってところなんですけど、ここに(図表6)利上げ時の逆ざやのイメージ、ってのがあって、まあ今回の図表4と同じような説明になっているんですよね。

でもってこの図表、前回のWSの時はバランスシートの図の書き方が恣意的で、「所要準備(法定準備預金)+銀行券+(日銀の)自己資本」の部分がなぜか「日銀当座預金」よりも大きいような図になっていまして、結果として負債・資本の部の「無利子」の方が「有利子」よりも大きい面積を占める、という2023年の時点での現実から見たらインチキにも程がある図になっていたんですよね。

でもって今回ですけれども、確かアタクシこのWSの資料が出たときにこの点で思いっきり悪態ついたのが聞こえたのかもしれませんが、今回の図表4では「有利子」の面積の方が「無利子」の面積よりも有意に大きくなっているので、少しはマシになった感はあります。明らかにWSのは「日銀の財務はマイナス金利を解除しても安全です」というのを強調したい下心があふれ出すぎてキモイ状態になっていましたのですが、ちょっとはマシに。

・・・・とは言いましても実際の額から見たら面積比全然おかしいんですけれどもwwwwwwwwwwwwwww

などと書いているうちに時間の方が残り少なくなってまいりましたので続きは明日以降に参りたいとは思います。新年とか言ってるけど連休明けの月初で四半期頭ですから生業の方が忙しい訳でして(滝汗)。