金融政策概観(2024年度上期前半)
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2024年度上期前半の見出し
2024/06/28「ドル円160円台後半で7月会合まで大丈夫か/多角的レビュー第2回WSは吉川先生無双でしたな」
2024/06/27「円安加速で160円80銭/7月利上げで輪番そんなに減額しないというのが多いのか・・・/その他プレビュー」
2024/06/26「6月会合主な意見(その2)は「個人消費を見極めたい」が目立つが物価には強気/基調的物価イマイチ/その他プレビュー」
2024/06/25「6月会合主な意見(その1)政策に関しては何かやる気無し無しですねえ」
2024/06/21「4月会合議事要旨を見ますと何であんなにハトハトチキン会見になったのかが意味不明な件」
2024/06/20「4月会合議事要旨とか清水前理事のインタビューとか円安対策のタカアピールに必死な日銀」
2024/06/19「参院で大塚耕平先生が「相応の規模」という言葉遣いに物言い/確かに総裁の発言は市場へのハレーションへの思慮不足」
2024/06/17「6月決定会合:7月利上げ予告もしないわ輪番は市場に聞くとか言って7月に先送りするわでなんも決められないのかこいつらは」
2024/06/14「本日は決定会合:事前報道無しは評価するけど円安対策に輪番カード切るの自業自得過ぎますわな」
2024/06/06「ボウマン理事がFEDの国債買入が実はやりすぎだったのではないかという指摘を金研コンファランスでしています」
2024/06/05「ブルームバーグが6月にも輪番減額と出したが反応は瞬間/国際コンファランスでのバランスシートの話がありましたな」
2024/06/04「債券市場サーベイはさすがに改善/内田副総裁の金研国際コンファランスの説明は異次元緩和はすべて正解から入る訳ですね」
2024/06/03「オペ紙は結局同額でしたので決定会合の説明が重要/吉川洋先生と山口廣秀元副総裁が連名で今の日銀と渡辺努をぶった斬り」
2024/05/31「10年1.1%までつけて結局金利低下ワロタ/来月の輪番どうするんでしょ/これは長期金利ペッグの出口に起きる問題」
2024/05/30「金利上昇加速して10年1.075%だがさすがに調子に乗ってないかしら」
2024/05/29「FSBがCPCD市場に提言をしていますな(メモ)/10年GX2回債早くも流動性ディスカウント入札/基調的な物価3指数とも2%割れ」
2024/05/28「日銀金研国際コンファランスのスピーチで植田総裁がハトハトで内田副総裁があとから植田さん公開処刑のタカで市場はタカに反応」
2024/05/27「CPIは今回原数値と季節調整の乖離が大きめですね/多角的レビューでの過去の説明が色々と酷すぎる出来」
2024/05/24「輪番普通に同額で為替円安ワロタ/植田総裁「「海外の不確実性」を今度は登場させる/多角化レビューにツッコミ」
2024/05/23「10年1%記念メモ&5/13の輪番減額がこんなに効くとはねえ」
2024/05/21「金利上昇すれども円安は進む/あちこちから円安批判が/企業行動に関する多角化レビューがらみさくらレポート別冊」
2024/05/20「輪番減額しなかったら円安に飛ぶとか日銀苦しい/短国入札強含み/経済財政諮問会議からも日銀に注文」
2024/05/17「今日の輪番思い切って減額したらよいのですが(やらないけど)」
2024/05/16「展望レポートダイジェストのポンチ絵が真面目にやっているとは到底思えない作品に仕上がっているんですが」
2024/05/14「5月2回目の輪番で突如5-10輪番を減額してきて市場の予想外にも程があり大騒ぎ/日銀理事人事がありました」
2024/05/13「円安進行で輪番減額説ねえ(初回利上げまで引っ張りそうな)/経済財政諮問会議/3月会合で輪番の話して何でその後減額しないの」
2024/05/10「4月会合主な意見はなぜか政策調整ノリノリトーンだがさては円安見てトーンいじって来やがったなwww」
2024/05/09「植田さんの読売国際講演と国会答弁は政策調整に消極的と見られてドル円の円安は一段と進む(155円レベルへ)」
2024/05/08「官邸でのぶらさがりで為替の物価への影響に言及というトーンブレブレの植田総裁発言」
2024/05/07「展望レポート基本的見解の「鏡」は政策運営方針の「緩和が続く」とはトーンが少々異なるんですよね」
2024/05/04「総裁会見は例の「足もとの円安は基調物価に影響ない」を始めとしてハトハトチキンな内容だらけでしたね」
2024/05/02「FOMC:早期利下げは否定、ランオフのペース縮小もMBSの償還再投資は停止」
2024/05/01「4/29の介入は5兆円/オペ紙では輪番もCP社債も減額なし/展望レポートコラムで円安の話なし/会見での失言は自らまいた種」
2024/04/30「2026年度は「物価目標達成」なんですけど・・・/空き巣狙いみたいな介入/長期国債買入減額のハードルを上げているのは如何なものか/結局緩和バイアスなのか正常化バイアスなのか判然としない」
2024/04/27「ドル円158円台へ/決定会合は先行き政策文言に「今後調整」を明記しながら「緩和バイアス」もあるというのが分かりにく過ぎる」
2024/04/26「前日報道では時事が「国債買入縮小の方向性を発表へ」で日経は落ち着いた記事だが時事に反応して先物下げ」」
2024/04/25「ドル円155円に突入/基調的物価の定量で勝負するのは説明的に微妙/企業物価指数強い」
2024/04/24「国会で総裁は「基調的な物価が2%に向かえば利上げ」発言」
2024/04/22「植田総裁海外でまた物価2%に上がれば利上げ発言をしているようだがロイターとBBGの温度差が激しい」
2024/06/28
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB261VO0W4A420C2000000/
円37年半ぶり安値、沈む日本の購買力 牛肉も「買い負け」
グローバルマーケット
2024年6月28日 5:00 [会員限定記事]
なんちゅうか日経も円安大絶賛してたんだから自己批判してその辺の過去をちゃんと総括してからこういうの書けよなとは思いますけどねえ。
〇この調子で7月会合までどうやって間を持たせるんでしょ・・・・・・・(円安で金利上昇)
あーあーあーあー
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/HAMRIVXPRJNU7LPRVWYL2TEJNM-2024-06-27/
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は大幅続落、円安が相場圧迫 長期金利は1カ月ぶり1.08%
By ロイター編集
2024年6月27日午後 3:28 GMT+9
ということでご案内の通りの相場ちゃんになってしまった訳ですが、
『[東京 27日 ロイター] - <15:11> 国債先物は大幅続落、円安が相場圧迫 長期金利は1カ月ぶり1.08%
国債先物中心限月9月限は、前営業日比56銭安の142円68銭と6営業日続落して取引を終えた。外為市場で38年ぶりのドル高円安となったことが相場を圧迫した。新発10年国債利回り(長期金利)は同5.0ベーシスポイント(bp)上昇の1.070%。一時、5月30日以来1カ月ぶり高水準の1.080%をつける場面もあった。きょうの国債先物は、海外取引時間の外為市場でドル円が106円後半(原文ママ:「後日160円台後半」に訂正)と38年ぶりの円安に進行したことが逆風となり、朝から売り優勢の軟調な展開が続いた。』(上記URL先より、以下同様)
となってしまいまして、だいたい円安のせいだとは思うのですが、輪番減額に関して6月にバシッと決めておいて、何なら7月は利上げですよってやっておけば債券の方はいったん様子見をする意味もだいぶなくなってくるので、金利があがりゃあ買いも入ったんでしょうけれども、輪番減額規模が幾らになるか分からん上に、利上げもどうせやるにしたっていつやるのか分からん、となると、金利上昇していたから買いましたとか言っても、その後に「なんで輪番減額規模公表前に買ったんだこのヘタクソ」と偉い人から言われると目も当てられないという毎度おなじみのアレがあるわけでして、そら買いが中々入りませんわということになりますな、ナンマイダナンマイダ。
でまあ円安になってくると「円安阻止のためには頑張った輪番減額が入らないと」という期待だけはアホみたいに高まってしまうので、7月会合で相当のことをしないといけなくなってしまいまして、結果また失望となって、債券の方はそれで戻るんですけど円安にかっ飛んで、いったん戻った債券も円安見て売られなおし(ただ7月会合は次まで1か月半あるから急に来るのかどうかは知らん)とかになるわけですな、ダメじゃん。
ということですが、どうもマイナス金利解除(前の「緩和的な政策が続く」アピールからコミュニケーションがボロボロになってきた)からここもとまでのコミュニケーションを見ていますと日銀なんかやると碌なことにならないので、まあ情報発信しないままで済むならその方がまだマシな気がしますが、為替からシバかれてしまうので厳しいですよね。
記念に。
『TRADEWEB
OFFER BID 前日比 時間
2年 0.339 0.351 0.042 15:15
5年 0.592 0.601 0.047 15:15
10年 1.068 1.074 0.051 15:10
20年 1.9 1.909 0.034 15:12
30年 2.267 2.277 0.042 15:15
40年 2.414 2.425 0.05 15:15』
見事に全体的に売り込まれてしまっていて、しかも昨日って2年入札は普通に堅調な結果になっていたのにこれですよというお話でこれはなかなか厳しいことになっていますな日銀ちゃん。
〇今日は3M新発とオペ紙が出てくるのですな
今日の新発3M
https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_auct/auct20240621.htm
国庫短期証券(第1240回)の発行予定額等
『1. 入札予定日 令和6年6月28日
2. 発行予定日 令和6年7月1日
3. 償還予定日 令和6年9月30日
4. 発行予定額 額面金額で5兆5,000億円程度』
一昔前の普通ですとこの銘柄って期末エンドになるので使いにくいからと言って弱めになることが多かったのですが、マイナス金利政策の間に世の中は変わってしまっていて短国市場の新秩序がどうなっているのかよく分からんところではありますが。
売買参考統計値を見ると1240回WIって
国庫短期証券1240 2024/09/30 :平均値単利 0.030
とはなっているのですが、昨日の売参では1239回が
国庫短期証券1239 2024/09/24:平均値単利 0.025
になっていて、これ一昨日の引けのところで0.030%から0.025%にしらっと金利が低下になっていまして、なんかWIの3bpホンマカイナという感じがだいぶするわけですが、何せずーっと茲許ニーズを集めて7月利上げどころか9月利上げも何ぼのもんじゃいという価格になりそうな勢いのこの新発、実際にどのくらいの水準で決まるのかが注目の材料(ただし一部のマニアのみ)になりそうですな。
まあ何となくなんですけど、昨日の円債の下げっぷりとか見ていると、この下げって別に投機筋の売りチャレンジとかじゃなくて、様子見地蔵の中で誰かが金利リスクを落としにいくと無抵抗主義相場で下がってしまう、という感じになっているように見えるので、そうやって投資家のリスク回避ベースで金利上昇相場になっているのであれば、退避資金の避難小屋としての機能は新発3Mなんて打ってつけになってしまいますので、この入札が馬鹿強だったら長期債方面におけるリスク回避の動きが依然として強い事のバロメーターになるかなと思います、知らんけど。
・さて今日はオペ紙しかも四半期予定ですね
ってことですが、どうせ7月の会合で輪番減額計画を出すんですから、今日出すのは「7月の買入予定」で良いんじゃないですかね。そもそも四半期ベースで出すか単月ベースで出すかは金融市場局の一存で決めれるんだし。
これうっかり四半期ベースで出すとまた「7月末に減額計画をだしてもすぐに減額しないかもしれない、つまり日銀に正常化やる気無し」という認定をされてしまう(と円債の方はもしかしたら戻るかもしれないけど)円安ニキもニッコリの展開にならんかな、というのは変な考えすぎですかそうですか。
しかしまあ何ですな、ついこの前までは「7月輪番減額の先駆けとして6月末のオペ紙では輪番減額あるのかも」とは言われていましたが、足元金利が上昇してしまっているので、ここでオペ紙減額はやらないでしょう。いやまあ減額して為替が円高に振れるなら減額するかもしれませんが、今日の場合はオペ紙で減額しても金利上昇だけして出しただけ損ってことになるかと思いますがどうでしょうかね。
#ま、あとは「講演予定とか増えないのかねえ」ですよね、あとは国債市場参加者会合でなんかが出てくるのかどうか・・・・・・・・
〇多角的レビュー第2回ワークショップですが
https://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2024/ron240627a.htm
金融政策の多角的レビュー」に関するワークショップ
第2回「過去25年間の経済・物価情勢と金融政策」の模様
まずは全体の話を上記URL先から
『要旨
2024年5月21日、「金融政策の多角的レビュー」に関する第2回ワークショップ「過去25年間の経済・物価情勢と金融政策」が日本銀行本店にて開催され、経済学者や金融・経済分野の専門家らを交えて、活発な議論が行われた。』
ということで、
『第1セッションでは、1990年代後半以降のわが国経済・物価情勢を振り返るとともに、最近の環境変化についても報告された。そのうえで、「量的・質的金融緩和」の経済・物価への影響や、なぜ賃金・物価が上がりにくいことを前提とした慣行や考え方がノルムとして社会に定着したのか、また、こうしたノルムは変化していると評価すべきか、といった点が議論となった。』
『第2セッションでは、金利が実効下限制約に直面するもとでの非伝統的金融政策の「期待に働きかける経路」の有効性や、緩やかな物価上昇がもたらす経済的な意味について報告された。そのうえで、インフレ予想の形成メカニズムや、金融政策の期待に働きかける効果の評価、緩やかな物価上昇のメリットに関する理論的整理が現実に適合するのか、といった点が議論となった。』
てことですがこれは後のパネルの部分で面白話がいくつかあるのでご紹介。
『第3セッションのパネルディスカッションでは、まず、上述のノルムが形成された背景や、その最近の変化について議論された。ノルムの形成の背景としては、1990年代後半以降、雇用維持が優先され賃金が抑制されたことや、厳しい価格競争が継続したことなどが指摘された。』
ここの話なんですけど、例えばアタクシの手元にある「平成バブルの研究(村松岐夫奥野正寛2002)」を見ますと、1980年前後には既に「賃下げや利潤カットを行っても、可能な限り雇用保証をすべきだ」といった価値規範が国民レベルで受け入れられているとの指摘がありまして、別にこの雇用維持優先ってのは1990年代になって急に持ち上がった話ではないんですよね。(「平成バブルの研究(上)(村松・奥野)」東洋経済新報社2002/03(手元にあるのは同年5月の2刷です))
であるからして、なんか長期低迷でノルムがこうなってさらに強化された、みたいな話にするのはおかしくねえかと思う訳で、こういうときに労働経済に詳しそうなのがメンツにいないのが何だかねと思う訳です。
『そのうえで、このところ人手不足の強まりなどを背景にノルムは変化しつつあるとの見方が示された一方、労働市場の構造等に大きな変化はなく、最近の賃金・物価の上昇は、外的なショックによる一時期なものであるとの指摘もあった。』
てな感じで、これ本編の方をよく見ますと「労働市場のノルム」で多くのところを押し通しているのですけれども、だったらこの辺の議論に労働経済の専門家呼べよと思いましたし、だいたいからして労働市場の構造が強固でノルムが変わらなかったとか言い訳するんだったら、QQE導入そのものが現実の分析をなんもしないで打った壮大な無駄玉だったという話にならないとおかしいんだが、なぜかそこを振れる人は1名しかいないというのがこのワークショップの茶番ぶりを発揮していて植田(ハトハトチキンの方)ちょっと出てこいって感じですな。
『また、過去25年間の金融政策から得られる教訓についてもパネリストによる総括が行われた。非伝統的な金融政策運営については、金利の実効下限制約のもとでも需給ギャップの押し上げなどの効果があったと評価する見方があった一方、期待への働きかけの難しさや長期にわたる緩和の生産性等への副作用を指摘する声もあった。』
「期待への働きかけの難しさ」っておいこらエライオブラートに包んで書いてるな、ということで本編に参りましょう。
https://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2024/data/ron240627a.pdf
「金融政策の多角的レビュー」に関するワークショップ
第2回「過去 25 年間の経済・物価情勢と金融政策」の模様
なおパネル以外は動画付きで見れまして、
https://www.boj.or.jp/mopo/outline/bpreview/bpr240405a.htm
「金融政策の多角的レビュー」に関するワークショップ
第2回「過去25年間の経済・物価情勢と金融政策」
2024年4月5日
(2024年6月27日更新)
日本銀行
となっております。昨日更新となっているのは今回アップされた議事要旨へのリンクを張ったからですね。
でもってですな、議事要旨見ますとパネルの方がどう見てもおもしろそうだというのに何でパネルはよつべリンクが無いのやらと思いますが、
『5.第3セッション:パネルディスカッション
モデレーター:渡辺 努 (東京大学)
パネリスト :伊藤 隆敏(コロンビア大学)
鶴 光太郎(慶應義塾大学)
福田 慎一(東京大学)
内田 眞一(日本銀行)』
ということですが、最初に渡辺先生が
『5−1.パネリストによるプレゼンテーション
冒頭、モデレーターの渡辺は、賃金や物価が変わらないことを前提とした慣行や考え方(ノルム)について、@そうしたノルムがなぜ生まれ、企業や消費者、労働者にどのような影響を及ぼしたのか、Aそうしたノルムは経済厚生上、どのような影響を及ぼしたのか、Bそうしたノルムは最近、変化しつつあるのか、といった論点を提示した。これらの論点について、各パネリストからそれぞれ見解が示された。』
とあってノルムをお題にしているのですが、後の方のディスカッションでですね(本文19ページ、PDF20枚目)
『(ノルムの位置づけ)』ってのがあって、ここが面白いw
『柳川は、ノルムという概念を使って金融政策を議論すると、本質的に重要な要素を捉え損ねるおそれはないのか――仮に均衡が複数あるとしても、それをどう動かすかを考える際に、ノルムという言葉を使うことでみえなくなる部分もあるのではないか――と指摘した。』
柳川先生良いですね〜
『そのうえで、ノルムを政策議論の文脈においてどのように位置付けているのか、パネリストに見解を問うた。』
『これに対して、パネリストの内田は、今後、インフレ予想を2%にアンカーさせていく過程において、中央銀行の信認という問題に加えて、賃金・物価を巡る社会の慣行やルール、つまりはノルムが変化するかは重要な要素になるとの見方を示した。』
さすが回答になっているようで全然回答になっていない返しをするのは得意ですな日銀は。
『モデレーターの渡辺は、経済学において賃金・物価の決定に際してノルムが重要であるということは過去から指摘されてきたことであり、それを予想という概念で置き換えてきたのがここ
30 年のマクロ経済学の潮流だったと述べた。』
謎の助け舟wwwwww
『もっとも、過去のオークン等の議論をみても、ノルムは制度や政策など、様々な環境に対応して自律的に変化するものであり、人為的に操作できるものではないという点が強調されていると述べ、ノルムを変えれば全て解決というような議論は不適切と指摘した。』
とは言えそもそも内田さんの回答自体が怪しいので渡辺先生もこういう話になったわけですが、
『吉川は、QQE は、わが国経済の低迷の原因はデフレであり、デフレは貨幣的な現象であるから、マネーを増やせば問題は解決する、という主張に基づくものであったと振り返った。』
はい。
『今回の多角的レビューにおいて、この点の是非について議論せずに、物価上昇率が2%まで上がらなかった原因として、金融政策以外の要因であるノルムについて議論している点に、議論の内容自体に違和感はないものの、日本銀行の対外的なコミュニケーションとして大きな違和感があると述べた。』
吉川先生これはwwwwwwさすがとしか言いようが無いwwwwwwwww
『これに対し、内田は、コミュニケーションの問題についてのご指摘はしっかり受け止めると述べたうえで、』
でたな無回答w
『2%の「物価安定の目標」の実現に想定以上の時間を要しているのは事実であり、その背景としては、政策効果の不確実性や労働市場のスラックの大きさに加え、ノルムの存在も考えられ、』
今回の事務方の出してきた資料ってしばらく前にネタにしましたが、「労働市場のスラックがでかかったから政策が効かなかった」とかいう言い訳をふんだんにちりばめているんですけど、だったらQQEじゃない普通の緩和政策で緩和してたって良かったんじゃないのという話だし、今まさに散々ぶっこんだQQEが見事に出口において円安コストプッシュという副作用を発揮している訳ですから、QQEである必要はなかった、ってこと、すなわち上記の部分で吉川先生の指摘した議論をしないのはどっからどう見てもうんこワークショップとしか申し上げようがないわけですな。
『今後、2%目標の持続的・安定的な実現に向けては、ノルムについて理解を深めることが重要と考えていると述べた。』
完全に「ノルム」で押し通すという内田さん。
『また、わが国特有の現象であるデフレ的なノルムについてしっかりと分析し整理しておくことは、仮に将来――わが国に限らず――似たような状況に陥った際に、どのような政策運営が適切か、どのような政策手段を採用すべきかを考えるうえでも必要であるとの認識を示した。』
ちょwwwwwだったら吉川先生の論点を考えろよという話で、そもそもこの多角的レビューって2013年のQQEが正しいというのがアプリオリに決まっているところからスタートしている(前回の第1回ワークショップで思いっきり渡辺先生が「やらなかったことの分析も重要」とか黒田以前は何も政策やってませんでしたとかいう事をこの前提の尻馬に乗って言ってたのが印象的でしたよね)のは「どのような政策運営が適切か」もへったくれもないんですよね。さすが日銀の方は屁理屈が上手だわと思うのでした。
それはそれとして14ページに戻りますと、
『5−1.パネリストによるプレゼンテーション』のタカトシ先生の説明の最初の辺り。
『(1)伊藤 隆敏(コロンビア大学)』
『パネリストの伊藤(隆)は、わが国の物価上昇率とインフレ予想、賃金上昇率について、2012
年までは「0・0・0%」の均衡にあった一方、足もとでは、輸入物価の上昇を契機に企業のコストが上昇したことを受けて、「2・2・2%」の均衡へ変化しつつあると指摘した。加えて、今後、企業の生産性向上によって、賃金上昇率が物価上昇率を上回る「2・2・3%」の均衡へ向かっていくかがポイントであるとの見方を示した。』
というのはクソどうでも良いのですが次の段落はワロタ。
『そのうえで、わが国がデフレ均衡に陥った最大の原因は、バブル経済の崩壊で物価が下落し、インフレ予想も低下したことにあると述べた。』
でもって、
『2013 年以降、日本銀行は期待に働きかける政策を行ったものの、過去に伊藤(隆)自身が主張していたほどの効果は発揮されなかったと指摘したうえで、』
というのを素直に認めているのはタカトシ先生ちゃんとできててよろしい、と思いました。
『この背景にはわが国のインフレ予想の形成において適合的な要素の影響が強いことがあると論じた。また、賃金上昇率がゼロになった背景については、1990
年代後半の金融危機時に、大企業の破綻や人員削減を目の当たりにした労働者や労働組合の行動が一変し、賃上げよりも雇用維持を優先するようになったことがあると指摘した。』
となっているのですが、先ほどアタクシがご紹介しましたように、「雇用維持」の規範はもっと前から日本に存在していまして、先ほどご紹介した本には第一次石油ショックにおける「賃金と物価のスパイラル的上昇」を鎮静化させるために1975年ごろに行われた「三方一両損」の解決策の一つが労使協調による過度な賃上げの抑止、解雇規制の強化による雇用の確保、などになっていたとあるわけですし、まあだいたいその辺は違和感ない話であって、タカトシ先生のような認識にいつの間にかなっているのは如何なものか、と思っております。
・・・・って考えるとそもそも「賃金と物価の好循環」とか言ってるけど、1975年体制(先ほどの「平成バブルの研究」の命名による)の構造が崩れているとなると、それって本当に好循環なのかよ、とかいろいろと考えてしまうのですが、また同書を読みながらいずれかの機会に、とは思います。
今朝はこの辺で勘弁
2024/06/27
お題「円安キタコレを見ながら7月会合に向けたプレビュー雑談を気が早くもするのでした」
あらま夕方から夜のうちに・・・・・・・・・・・・
〇円安キタコレ160円台後半ですかそうですか
160円行っちゃいましたとか言ってたら途中から加速するする。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-06-26/SCQVX5T0G1KW00
円は対ドルで一時160円80銭台、神田財務官の発言後−対ユーロ最安値
酒井大輔、鈴木克依、Naomi Tajitsu、Masaki Kondo、宮井伸明
2024年6月26日 18:36 JST 更新日時 2024年6月27日 1:37 JST
→対ドル1990年安値も下回る、介入後の上げを約2カ月で解消
→当局は165円まで介入待つ可能性−ウェルズ・ファーゴ
『ニューヨーク時間26日の外国為替市場で円相場は対ドルで一時1ドル=160円80銭台まで下落。1986年以来の安値に沈んだ。円安・ドル高の進行を受けて、神田真人財務官が市場をけん制したが、発言後も円売りに歯止めがかからなかった。通貨当局による円買い介入再開への警戒感が高まっている。円は対ユーロでも下げ幅を広げ、過去最安値を更新した。』(上記URL先より、以下同様)
ということでなんか人様がぐうすか寝ている(老いぼれジジイなので夜が早いですサーセン)間にエライことになっているじゃないですかやだー(棒読み)
『神田氏の発言を受けて円相場は一時160円台前半まで下げ幅を縮める場面もあったが、すぐに再び円売りが優勢になった。』
ってのが中々ヤベー奴でして、今週の頭だったかに大明神が介入24時間スタンバイとかいうブラック職場にも程がある発言をした時には敬意を表してその後160円寸止めのところで押し戻すの連続だったのですが、大明神パワー2日くらいしかもたんかったんかいと。
『ウェルズ・ファーゴのマクロストラテジスト、エリック・ネルソン氏(ロンドン在勤)は「ここ数日の日本の財務省当局者から発せられる言葉遣いは、懸念が増していることを示唆している」と指摘。ただし、介入には165円かそれを下回る水準まで円が下落するのを当局は待つ可能性があると述べた。』
『ブラウン・ブラザーズ・ハリマン(BBH)の市場戦略担当グローバル責任者、ウィン・シン氏は「160円を超える円安・ドル高水準で無秩序な動きが出てくれば、変動をならすために日本の通貨当局が介入するかもしれない」とした上で、日銀が一段とタカ派に傾くまで円は売られやすい地合いが続くとの見方を示した。』
ほうほうなるほど、というところですが、まあ何のかんの言いまして日銀が金融政策の修正に関して、3月の時点ではよーやったというところだったのですが、その後現場の裁量と需給動向で減らせるはずだった輪番は減らさんわ、挙句に「緩和的な環境が継続」の方が強調されるわとなって、さらに4月会合での植田総裁不規則発言と来ている訳ですし、6月会合主な意見だって全然緩和修正に対する前のめり姿勢が見られない、という有様だし、輪番減額だってそんなもん日銀がバシッと決めればいいものを「市場参加者の意見を聞く」とか言い出して市場に責任転嫁しようとしている時点で「日銀の意思で勇気を奮って緩和修正を進める」気がサラサラ無いのが見え見え。
とまあそんな日銀ちゃんを控えておりますとそら円売り仕掛けしたくなりますわという話ですが、これ1日2円とか動くと介入入れやすいけど、じりじり進行→ブレイクした時だけちょっと勢いつくけどすぐに落ち着くの繰り返しだと介入する大義名分も難しいですし、そもそもイエレンから介入するなら利上げしろと言わんばかりの扱いをうけておりますので、結局日銀が緩和修正にもっと積極的なところを見せないとどこまでも行こう〜♪の円安ってなるんですかねえ知らんけど。
しかしまあこれですもんね。今朝お早い時間ですと、
https://jp.reuters.com/markets/bonds/
米国債10年 利回り
US10YT=XX +4.310 +0.072
米ドル/日本円 160.7800 +0.71%
アメリカン金利まだ4.3%だというのにこの惨状でして、これで米国の経済統計が強いと物凄く面白いことになるんですが・・・・・・・・・・・・・・
〇さて7月会合に向けて日銀はどうなるのやらですが
これはけっこうびっくりした
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-06-25/SFMHDZT0G1KW00
日銀の国債購入減額計画と利上げの同時決定、3割超が予想−サーベイ
伊藤純夫、Cynthia Li
2024年6月26日 6:00 JST
→利上げ時期は10月の42%が最多、金利上昇や景気の弱さへの懸念も
→国債減額ペースは緩やか、当初の月5兆円から2年で3兆円に縮小
まあメインは10月だけど7月3割ってマジかよと思ったのと、一方で国債買入減額ペースがなんでそんなクソみたいに遅い予想になってるの、ということで、駄文書き散らしているワイの感覚的にはなんかモヤってしまう調査結果に見えます。
実はBBGにしてもロイターにしてもこの手の何とかストサーベイを行っていてちょいちょい記事になるのですが、まあ別にネタにするほどの意味もねえやと思って放置しているんですが今朝は珍しく話のネタに。
『日銀が14日の会合で国債買い入れの減額方針を決定したことを受け、ブルームバーグは25日に特別調査を行った。回答した43人のエコノミストのうち33%が、日銀が7月30、31日の会合で追加利上げするとみる。最多は10月の42%で、年内に行われるとの見方は95%に達した。6月会合前の調査では7月と10月が最多の33%だった。』
火曜日に調べたんでしたら会見後の4月議事要旨、6月主な意見も反映されていますね。
『日銀は6月会合で金融政策の現状維持と長期国債買い入れの減額方針を決定し、7月会合で今後1−2年程度の具体的な減額計画をまとめることも決めた。植田和男総裁は会合後の記者会見で、減額計画について「相応の規模となる」と言明。円安傾向が続く中、7月会合での利上げも「当然あり得る」とタカ派的なトーンを強めた。』
さいですな。
『今回調査では、44%のエコノミストが減額計画の決定によって7月利上げの可能性が低下したと思うと回答した。国債減額計画と追加利上げの同時決定は難しいとの見方から、10月の利上げ予想が増えた可能性がある。ただ、7月利上げの見方の比率自体に変化はなく、植田総裁の発言などが7月予想をつなぎとめたと言えそうだ。』
ってのがほほーと思ったのでネタにした次第なのですが、いやもうそれって植田さんが要らん事(今回だったら「輪番減額による長期金利上昇については短期政策金利の判断において考慮する点の一つ」みたいな話をおっぱじめて植田さんが見事に7月利上げ観測を叩き潰した件)いうもんだからそれを火消しするために「7月同時利上げあるで」と言い続ける羽目になったわけですが、一方であの例の「主な意見」をみたらこれまた利上げ前傾なのってあくまでも一部の委員に過ぎないのも見え見えなんですよね。
なのでおまいら国会とかでの植田発言にウェイト置きすぎじゃろと思う訳ですよ。
ちょっと整理すると、アタクシの読み筋としては6月会合で一番エライのは声明文ですが、その声明文は長期国債買入を中長期的に減額するというのを「決定」しまして、ただ具体策はこれから考えて7月に出すよ、といってるのですけれども、その肝心の声明文における経済物価情勢の認識と先行き見通しをしめした部分では、「オントラックだから今後政策は修正されていく」系の予告ホームランとは言わんけど予告タイムリーヒットくらいの判断入ってくるかなと期待したのに全然そっちはやる気ナッシングだったのがあって、さらに植田さんがいつものハトハト音頭で会見をやってたこと、でまあこりゃ7月は利上げするのは「円安で日銀がまた大明神とか官邸とかからシバキ上げ食らわないと厳しいな」となったわけですな。
でもってですね、まあその後国会とかで上記記事にありますように、植田さん会見での発言が余計だったというのを認識したんだか火消をして、挙句に4月会合議事要旨がやたらタカタカ編集されてたじゃないですか。明らかにあの日の総裁会見のトーンと全然違う話になっていてこれは不自然なのですが・・・・・・
まああちらを見ると「あれやっぱりやる気あるのかな」と瞬間思うのですが、その答え合わせで6月主な意見を見たら、何のことはない現状で政策委員のタカハトは拮抗しているし、どっちが優勢と言われたらハトの方が優勢なので、そうなると一連の「7月同時利上げを排除しない」っていうのはただの時間稼ぎのブラフだというのが見えてきましたな、というの読み筋になるんですなこりゃまた。
つまりですな、なんか急に読み筋のコツを自分語りしていますけど、一番偉いのは「声明文」であって、議事要旨と主な意見は基本同じで、本来的には議事要旨は次の決定会合でオーソライズされているから重要は重要のはずなんですが、議事要旨って嘘書いてない限りにおいて編集テクニックで意見のフレームアップを意図的にバイアス書けることが不可能ではない(まあそんなにバイアス掛かってるなら決定会合で反対して差し上げればと思いますが笑)という大本営の編集が入る余地があり、一方で主な意見は基本的に政策委員が自分で書くので、そこには編集の入る余地が小さい(大本営が政策委員にお手柔らかにとお願いして回る余地はあると思うけど笑)となるので、声明文と主な意見を総合するとそーなる、ってのと、4月議事要旨の編集バイアスがちょっと露骨で、そっちはただの円安阻止のための新手の情報発信だな〜と思ってしまったからですな、うんうん。
なお、以上申し上げたシナリオですが、ドルは飛ぶ飛ぶドームの風で、となってしまって日銀がシバかれる事態になった場合はその限りではありませんので、要は何を言いたいかというと円安ヒャッホーということですwwwwww
しかしまあ何ですな。さっきの記事の後半ですけど
『国債買い入れの減額計画に関しては、現時点での市場のイメージは緩やかなものと言えそうだ。日銀は現在、月間6兆円程度の買い入れを続けているが、調査の中心的な回答を基準にした場合、減額計画の決定直後に5兆円程度とし、半年ごとに段階的に縮小して、2年後の買い入れ額は3兆円程度となる。』(だいぶ飛んでるけど上の方のURLのBBG日銀サーベイ記事です)
ええええええええええええ!!!!
何でそんなにペース遅いのよという話でして、月額の買入フローベースで言ったら開始から1年で半減以下、2年後にはリーマンショック前が月額1.2兆円だったのでそれと同等できればそれ以下、というかそもそもゼロで良いんだけど、まあそのくらいには下げているの最低限だろと思っているんですが、なんかこうどっちもワイのイメージと合わん(ゆうて市場は数が力なのでワイの方がおかしいんだとはおもうけどさ)。
国債買入って直近の拡大の前に誰が拡大したっけというと速水総裁時代でして、速水総裁時代に月額1.2兆円とかいう買入になって、福井の俊ちゃんは緩和をしてますアピールはしてたけど輪番はびた一文増やさなかったという実績をお持ちであらされる訳ですな。
でまあそんなんを考えると月額1.2兆円ってのも緩和政策残滓っぽいですけど、こんなの2年後の着地月1兆円買入にしてこそ「相応の額の減額」というのに相応しいのであって、こんな2年かけてやっと半減とかやる気あんのかの世界だと思うんですけど、そっちの「相応の減額」は重視しないというのも変な人たちだと思ってしまいました、ちゃんちゃん。
〇というか輪番って事務方の裁量で相当程度上下できたはずなのにこの間に何があったかの説明がない
というのがまあ雑談の一環としてある疑問点でして、
3月19日の決定会合後の総裁会見の冒頭部分
https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2024/kk240321a.pdf
『長期国債の買入れについては、これまでと概ね同程度の金額で継続することとしました。足元の長期国債の月間買入れ額は
6 兆円程度となっていますが、実際の買入れは、従来同様、ある程度の幅を持って予定額を示すこととし、市場の動向や国債需給などを踏まえて実施していきます。なお、長期金利が急激に上昇する場合には、毎月の買入れ予定額にかかわらず、機動的に、買入れ額の増額や指値オペ、共通担保資金供給オペなどを実施することとします。』(3/19総裁会見冒頭説明部分、上記URLの1ページ目)
3月会合主な意見
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2024/opi240319.pdf
『国債買入れは、現在と概ね同程度の金額で継続するが、その際、実際の買入れは、これまで同様、調節の現場において、市場の状況に応じて
柔軟に決めていく必要があり 、 上下に多少のアローワンス(例えば1〜2兆円程度)をもって対応していくことが適当である。』(3月会合主な意見、上記URLの3ページ目)
ってことで、そもそも論として今出しているオペ紙レンジの中で月額5兆円への減額だって可能な建付けになっていたのに、なんでそれこそ6兆を5兆にするのに一々MPMを通さないといけなくなっているか、というのが有耶無耶のうちに変化している訳で、この感の事情というのものもちゃんと説明していただきたいですね。
まあ今後変な柔軟性はなくして、基本的に淡々と減額する、って方式にやっぱり変えるのが適切だと思いましたてへぺろ、ってやるような気がしますが、3月会合当初に言ってた「柔軟性」を引っ張りながら買入計画を作ろうとするとたぶん碌なことにならないと思われます。
〇ところで7月会合に向けて情報発信というのは無いのかね日銀ちゃん
https://www.boj.or.jp/about/calendar/index.htm
公表予定
8日に支店長会議があるのはわかったのだが(この時には重要4支店の支店長による会見が行われる)、それ以外の政策委員方面からの講演予定はどうなったんでしょうか。
まあこの公表予定は週末アップデートなので、こっちも見てみましょう
https://www.boj.or.jp/about/press/index.htm
講演・記者会見・談話
今後の講演・挨拶等の予定
日程 講演者等 講演内容等
ってあって下が空欄キタコレということで、おんどれらこの重要なタイミングでなんの情報発信もせんのか、というかこれだと副総裁辺りがどっかのメディアのインタビューに登場して、という昨年のパティーンを思い出してしまうので、いつ球が飛んでくるかと気が気じゃなくなるんですけど精神の平和のためにも副総裁(どっちでもいい、ちなみに順番としてなら次は氷見野さん)の講演とかとっととぶっこんでくれませんかねえ・・・・・・・・・・・・・・
ま、やったところで情報発信がブレブレになられても迷惑極まりないので、もうどどーんと構えて「経済物価金融情勢と先行きの見通しを踏まえて適時適切に政策対応を行う」と一つ覚えのように言い続けて政策決定会合で決めます、でいいとは思うのですが(むしろそれで無問題)、このまま7月まで大したもん出さないで迎えるという事になるでしょうかね、知らんけど。
という雑談大会になってしまいましたサーセン、まあ次回決定会合まで丸々1か月ありますからね!
2024/06/26
お題「6月主な意見は個人消費動向を「注視したい」が目立ちますね/基調的な物価/時事とロイターが7月利上げ可能性あるで記事を同日に出すとは」
内田副総裁満面の笑みキタコレ
https://www.boj.or.jp/about/koho_nichigin/news/kn240625a.pdf
【対談】津田塾大学学長 高橋裕子氏vs内田眞一副総裁(広報誌「にちぎん」No.78 2024年夏号)[PDF 1,091KB]
〇6月会合主な意見関連(その2):物価に対しては上振れの話が多いのに何で政策やる気なしの助に
昨日は政策運営のところと政府からの意見で終わってしまったので前半参りますすいません。
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2024/opi240614.pdf
金融政策決定会合における主な意見
(2024 年 6 月 13、14 日開催分)1
・経済情勢に関する意見は微妙なのが連発
『T.金融経済情勢に関する意見』の『(経済情勢)』である。
『・ わが国経済は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復しており、先行きも、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まることから、潜在成長率を上回る成長を続けるとみられる。』
これは大本営なので中立。
『・ 今回は弱めのデータや懸念される情報もあったが、きわめて高水準の企業収益と約
30 年ぶりの水準となった春季労使交渉の結果が所得面から好循環メカニズムを支える、とのメインシナリオは不変である。物価面の指標もオントラックであった。』
であれば本来は「徐々に利上げ」だから7月展望の時点で確認出来たら利上げで問題ないんですけどね、まあタカ。
『・ 日常の買い物やセンチメントには物価高の影響がみられ、個人消費は強さに欠ける。賃上げや政府の施策が今後どの程度個人消費を押し上げるか注視していく必要がある。』
そもそも論として「物価高の影響で個人消費が弱い」ってんだったら物価目標2%達成どころか「望ましくない物価上昇」になっているんだからこんなノンビリした話してる場合じゃないだろと思うのですが、なんかまあこの言い方だとタカではないですよね。びみょー
『・ 当面、中小企業の正規雇用や年金受給者については、賃金や受給額の増加が物価上昇に追いつかない可能性がある一方、非正規雇用や大企業の正規雇用については物価上昇以上の賃金上昇が期待できる。こうした賃金動向が個人消費の先行きに及ぼす影響を注意してみていく必要がある。』
でまあこちらの方も一部では威勢の良いことを言ってるんですが、さっきの人と同じで結論が「状況を注視」ということになってしまっています。6月のこの時点で状況を注視している方々が7月末(次回会合)の時点で見極めが終わりました利上げオッケーって話になるのには話の飛躍が必要だし、さらには長期国債買入減額によって長期金利に影響があるって触れ込みですから、そうなるとこの辺の方々は「個人消費の見極めが必要」とか言いながら利上げを渋るだろうなあと思われますな。
しかしまあ何ですな、長期金利上がると固定型住宅ローンの新規借入金利に影響が出る一方で、短期金利上がると預金金利上昇するんだから、個人消費がそんなに気になるんだったら短期金利の引き上げを先行しろよ(変動型住宅ローンの金利が上がるけど個人は圧倒的預金超過なんだから預金金利上昇の方がでかいだろ)と思いますがwww
『・ 消費者マインドが低下してきているが、それは、物価の上振れリスクの高まりによるものである。』
まあこれはタカ派なんでしょうね。
『・ 中小企業の収益力はコロナ前より大幅改善した大・中堅企業に比べ弱く、投資も低調で賃上げ率も低い。少子高齢化等の構造的問題を抱え国際競争力が低下している日本で、賃金と物価の好循環を実現するには、成長志向の中小・中堅企業が投資・事業構造強化を進め、スタートアップが躍進し、資金・人材を集め成長スパイラルを創出する必要がある。』
これはいつもの中村委員ですね。まあこれはこれで言いたいことは一つの意見だが金融政策運営と関係ないやんという話ではある。
・・・・・ということで、金融政策のところが両論併記どっちかといえばハト寄り、なんですが、経済のところ見ると明らかにこれハトになっている次第でして、まあこれと政策運営の合わせ技で考えると、このひとたち短期政策金利上げる気がない方が優勢だな、と思わざるを得なくて頭がくらくらしてまいります。
・物価に関しては上振れ指摘が多いんですけどねえ・・・・・・・・
『(物価)』の部分。
『・ 消費者物価の基調的な上昇率は徐々に高まっていくと予想され、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。』
一本目は必ず大本営。
『・ 賃金と物価の好循環が実現しつつあるが、名目賃金上昇率、予想インフレ率、サービス価格上昇率などを踏まえると、基調的な物価上昇率はまだ2%に届いていない。』
ハトですねハイ次。
『・ 本年の春季労使交渉の結果が賃金統計に十分に反映されているとは未だ言い難いが、企業物価指数や企業向けサービス価格指数の上昇を見る限り、「物価安定の目標」に向けて着実に進んでいる。』
同じもん見てなんでこんなにニュアンスの違う意見になるんですかとは思うがタカ寄りですね。
『・ 物価は4月の展望レポート時の見通しに沿って推移している。先行きも、輸入物価上昇に加え、タイトな労働需給や所謂
2024年問題による運送費高が影響し、価格上昇が続くと考えられる。』
そもそも物価は上振れどころかオントラックだったら政策調整を行っていくという話だったので、オントラックだし先行きもOKOKなんだったら利上げ提案せえやと思いました、普通にタカ。
『・ 為替円安に伴う物価上昇のもとでも賃金と物価の好循環が着実に強まっていくためには、中小企業の価格転嫁が進展するとともに、名目賃金上昇率が一段と高まっていくことが重要である。』
中村委員っぽいですけど、これただの悪循環スパイラルにならんかと思いました、ハトですね。
『・ 輸入物価上昇は、現時点で、2022 年以降のような価格転嫁をもたらすとは考え難いが、価格を据え置くとするノルムの転換もあり、従前より価格転嫁が進みやすく、2024
年後半に向けて価格引き上げの波が再び生じる可能性もある。』
うーん持って回ったような言い方ですが、結論としてはタカ気味って感じですね。
とまあそういう訳で、経済のところは明らかにハトっぽくて、物価はオントラックからタカ寄りなんだから、本来の建付けであれば政策金利の調整にそろそろ着手すべきという話なんですが、例によって「個人消費の先行きを確認したい」とか言い出しているので、これはまあ利上げ先送りの怪しい理屈ということで、7月どころか9月も引っ張るリスクあるでって話ではあります。
と申しますのは、この人たち黒田末期でウクライナ侵攻が始まった以降の円安進行と物価上昇開始局面から「基調的物価(コアコア)」が上がらん→「賃金が上がらん」→「サービス価格などの動いていない品目が多い」→「賃金上昇の持続性を見たい」→「賃金と物価の好循環を確認したい」、と来て最近は「基調的物価が」というのを使っていますが、ここで「個人消費がー」と言い出す、ということで、手を変え品を変え緩和政策修正の先送りをする小理屈ばっかり出して来るというマーベラスなことをしておりますので、だいたいこういう新手の言い訳とともに「状況を注視したい」とか言われるとその時点でアタシャがっくりと来てしまうんですよね。まあそんなことで読んでるアタクシ的に期待外れでガッカリしているというのはあるのですが、それにしてもこれマジで4月の金融政策決定会合議事要旨となんでこんなにトーンが違うんだよおまえら4-6でなんか変なこと起きたかよと思うのでありまして、アタシャ日銀の言ってることのどこを信用して読めば良いんでしょと思ってしまう次第です。
なんせアタクシの日銀ヲチって公表文書をひたすら読むこむところから始まっていますし、今でもその基本スタンスは同じなのですが、ハトハトチキン総裁の発言がブレブレになるどころか、こういう公表文書までブレてくるとマジで勘弁していただきたいんですよね、ということで足元における「公式文書ベースでの情報発信のブレっぷり」に関しては結構深刻に受け止めておりますんですよ、とお伝えしておきます。
〇基調的物価が順調に下がり・・・・ませんなw
https://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/index.htm
基調的なインフレ率を捕捉するための指標
まあこれも都合の悪い水準が続いているうちはだんまりを決め込んでおきながら、最近は「基調的なインフレガー」とか言い出す始末で、いやとにかく君たちはロジックの軸というものが無いのか(ないんでしょうけど)という話ではありますが、まあゆうてみておく必要もあるので見るqqq
んじゃまあ直近2年分
May-22 1.5 0.4 0.5
Jun-22 1.6 0.5 0.5
Jul-22 1.8 0.3 0.7
Aug-22 1.9 0.5 0.8
Sep-22 2.0 0.5 0.9
Oct-22 2.7 1.1 1.3
Nov-22 2.9 1.2 1.5
Dec-22 3.1 1.4 1.6
Jan-23 3.1 1.1 1.6
Feb-23 2.7 0.8 2.1
Mar-23 2.9 1.0 2.7
Apr-23 3.0 1.2 2.8
May-23 3.1 1.4 2.9
Jun-23 3.0 1.4 2.9
Jul-23 3.3 1.6 3.0
Aug-23 3.3 1.8 3.0
Sep-23 3.4 2.0 2.8
Oct-23 3.0 2.2 2.6
Nov-23 2.7 1.7 2.4
Dec-23 2.6 1.6 2.4
Jan-24 2.6 1.9 2.3
Feb-24 2.3 1.4 2.0
Mar-24 2.2 1.3 1.9
Apr-24 1.8 1.1 1.6
May-24 2.1 1.3 1.5
おやおやまあまあ、刈込平均が2%に戻って加重中央値も反転しましたねということでして、これから円安の影響が出てきたらまた上がるんとチャイマスカという気もする(なお電力料金とかエネルギー補助金のクソバラマキが発生するのがまためんどい)次第でして、「待つことのリスク」って小さくないようにしか思えないんですけど(円安放置したら昨年の二の舞にならんか問題)どういう分析になっているのでしょうか日銀ちゃんでは・・・・・・・・・・・・
〇これはまたどういう風の吹き回しで(経団連会長急に日銀に「理解のある」スタンス)
これはなんの判じ物ですかしら
https://www.jiji.com/jc/article?k=2024062501003&g=eco
円安「今がピーク」 為替介入は一定の効果―十倉経団連会長
時事通信 経済部2024年06月25日18時28分配信
『経団連の十倉雅和会長は25日の記者会見で、円相場が1ドル=160円台目前まで下落していることについて「今が(円安の)ピークのような気がする」との見解を示した。日銀が金融緩和政策の修正を模索する一方、米国は物価高が落ち着けば利下げを行う方向で、円安の一因となっている日米金利差が「中長期的に見れば埋まる」ことが理由という。』(上記URL先より)
ってアメリカン金利がここから上がったらどないしますねんという気がするのでフラグにしか見えないのと、なんか知らんがこの記事だと割愛されているのですが、最初見たときは「金融政策を為替対応で使うのはよくない」とか言い出していたのがありまして、えええええええええなんで急にそっちになったのよと思いましたが、これはハトハトチキン総裁もニッコリという展開で、いやーこれは7月輪番減額だけで行きそうですなあというのが一つ。
あと気になるのは、こうやって「ご理解」が得られてしまっている訳ですが、一方で金融市場の方は株は知らんけど債券と為替ってたぶん結構頑張って輪番減額するのと、7月展望で利上げをしないにしても利上げに向けた前向きなスタンスと、近いうちに利上げがあるんじゃないか的な予告ホームランとまでは言わないけどそれなりに強い機軸を打ち出してくるのを期待していると思う(個人の印象です)ので、「ご理解得られたからヘーキヘーキ」とばかりにショボいのを打ち出してきた場合、その反動が来るんじゃまいかという話で、そうなると4月6月に続いて7月でも「会合前に期待値が高まるけど会合結果が期待外れで円債市場では債券先物踏み踏み祭り」というのを繰り返す可能性がますます高まってきてねえかと気が早いけど思ったりします。
〇気が早いといえば気が早いのにちょこちょこ出てくるんですよね
まあこの時期だし書きっぷりが別にお漏らし風でもないから反応しなかったんですけど、昨日って時事通信とロイター(しかも英語版の方で)なんかまあ7月利上げの可能性、みたいな記事が出てたんですよね。
時事通信
https://www.jiji.com/jc/article?k=2024062400888&g=eco
日銀の7月利上げが焦点 円安で物価上振れリスク
時事通信 経済部2024年06月25日07時03分配信
『日銀が3月のマイナス金利解除に続く政策変更のタイミングを慎重に模索している。円安や原材料高を受けて、企業による値上げが相次ぎ、物価の上振れリスクが強まっていることが背景。ただ、拙速な金利引き上げは景気にブレーキをかける恐れもあり、7月末の金融政策決定会合で追加利上げに踏み切るかが焦点となっている。』(上記URL先より、以下同様)
ってことですが、いや少なくとも円債市場は「7月利上げは為替で追い込まれでもしないとやらないんでネーノ」って感じかなと思うのよね。
なお、ここでワンチャンあるとすれば、前回会合では「輪番減額計画を作ってとっとと開始します」という話だったのですが、しれっとこの順序を変えて、7月会合で政策金利の引き上げを実施して、その代わりに「中長期的に輪番は減額しますよはいこの通り、ああそれから輪番減額のスタートは今年度下半期からでよろしくオナシャス」みたいなアクロバットをかましてくる可能性ってのはあるのですよね、というか本来的には4月頭の減額チャンスで輪番減額しなかった時点で、ああこれは0.25%への利上げを先行させてから輪番を減らすんだろうな、ってアタクシなんぞは思っていた次第で、こんなの5.13事件で輪番が悪目立ちしてしまったから輪番が先に来るわ政策イシューになるわ、という日銀のチョンボだと今でも思っています。
『「(企業の)価格転嫁によって物価が上振れる可能性もあり、金融緩和のさらなる調整の検討も必要だ」。日銀が24日公表した6月会合の「主な意見」によると、政策委員の一人が、追加利上げを検討すべきだと主張。また、「次回会合に向けてデータを注視し、遅きに失することなく、適時に金利を引き上げることが必要だ」との意見も出された。』
って記事ではなっているのですが、昨日今日とネタにしましたように、今回の「主な意見」はどっからどう見てもアグリゲートすれば中立ややハト風味に仕上がっていまして、片面だけとらえてこういうのを書くってのは時事通信さんらしからぬプレイ、と思ったのですが・・・・・・・・・・・・・
午後にロイターさんただし英語版だけの記事だと思うのだが
https://www.reuters.com/markets/rates-bonds/bank-japan-opens-door-hawkish-double-surprise-2024-06-25/
Bank of Japan opens door for a hawkish double surprise
By Leika Kihara
June 25, 20243:05 PM GMT+9
いつもの木原記者の署名記事。
『TOKYO, June 25 (Reuters) - The Bank of Japan is dropping signals its
quantitative tightening (QT) plan in July could be bigger than markets
think, and may even be accompanied by an interest rate hike, as it steps
up a steady retreat from its still-huge monetary stimulus.
Hawkish hints delivered over the past week highlight the pressure the central
bank faces in the wake of renewed yen falls, which could push inflation
well above its 2% target by raising import costs.』(上記URL先より、以下同様)
ということで、こちらでも円安キタコレによって輪番減額だけではなくて利上げも7月ぶっこみあるでという話ですが、なんせ記事のお題が割と刺激的。
『Notwithstanding a market shock or severe economic downturn, a rate hike
would be on the table at each policy meeting, including July's, said three
sources familiar with its thinking.
"Given what's happening with inflation, interest rates are clearly
too low," said one of the sources. "Much depends on upcoming
data, but a July rate hike is a possibility," another source said,
a view echoed by a third source.』
3人のお詳しいソースから聞きました、ってことで輪番減額と利上げは同時にあるでと来て、うち1番目の人は「そもそも金利が物価に対して低すぎるのは明確」と言ってて、2番目の人は「データ次第だけど7月利上げの可能性あるで」と言ってて3番目の人も2番目の人に同意してるんですと。
ただこちらの記事でも、
『However, the board debated the need for a timely hike with one member
signaling the chance of doing so to prevent cost pressures from pushing
up inflation too much, a summary of the meeting showed on Monday.
That was largely read as a sign the bank is gearing up for near-term action.』
ということで、6月会合主な意見でのタカ派コメントを拾ってきてこういうストーリーを展開しているっぽく見えますが、ロイターさんにしろ時事さんにしろ、そんじょそこらのポンポコリンじゃないので、6月主な意見の全体を読むと前のめり感が出ていないことくらいは先刻ご承知の助だと思うののですが、同じタイミングでこういう観測記事が出てくるのは何かアレなものを感じて甚だアレ、とアタクシの碌に当たらないカンピューターには響くのですが、はてさてどうなんでしょうかね。
いずれにしましても、本件はなんせ7月末までという長丁場がこの先待っていますし、昨年の6月7月を思い出して見ますと、6月時点ではこりゃ全然動かんのかこいつら、と思わせておきながら急に局面が変わったという事案もあったわけでして、まだまだ分からんわなとは思いますけどね。
ちなみにこちらは円安で家計があばばばばーになる懸念がという見解を紹介した同じ日のロイター記事です
https://www.reuters.com/markets/currencies/veteran-boj-watcher-warns-japanese-households-facing-more-pain-weak-yen-2024-06-25/
Veteran BOJ watcher warns Japanese households facing more pain from weak yen
By Leika Kihara
June 25, 20244:45 PM GMT+9
2024/06/25
〇6月会合主な意見が輪番減額も利上げも全然前のめりじゃない件について
メディア的にはこういう見出しの方がヒットするんでヘッドラインを見るとどこのベンダーでもこんな感じだったのですが・・・・・・・・・
https://jp.reuters.com/economy/bank-of-japan/ZPKVUGHBPJNPJEJCMUDGKZFPWA-2024-06-24/
物価に上振れリスク、「遅きに失することなく」適時に利上げ必要=日銀主な意見
By 和田崇彦、 内田慎一
2024年6月24日午前 11:22 GMT+9
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2024/opi240614.pdf
金融政策決定会合における主な意見
(2024 年 6 月 13、14 日開催分)1
・先に政策運営の方から見るけど見事に両論併記だしまあ普通にこれハト優勢ですよね
『U.金融政策運営に関する意見』ですが、掲載順に引用します。
『・ 展望レポートで示した経済・物価の見通しが実現し、基調的な物価上昇率が上昇していくとすれば、政策金利を引き上げ、金融緩和度合いを調整していくこと
になる。』
これはもともと4月展望で書いてあることなので別にどうということはない。ハトではないがタカとも言い難い。
『・ 見通しに沿った物価の推移が続く中、コストプッシュを背景とする第2ラウンドの価格転嫁によって物価が上振れる可能性もあるだけに、リスクマネジメントの観点から金融緩和のさらなる調整の検討も必要である。』
これはタカ。
『・来年度後半の2%の「物価安定の目標」の実現に向けて、オントラックで進んでいるが、上振れリスクも出てきている。こうした点が消費者マインドに影響していることも意識しつつ、次回会合に向けてもデータを注視し、目標実現の確度の高まりに応じて、遅きに失することなく、適時に金利を引き上げることが必要である。』
まあベンダーヘッドラインインなるくらいだし、「遅きに失することなく」ってのが植田ハトハトによる「遅れることのリスクは小さい」へのアンチテーゼになっているのでこれは文句なしのタカ。
・・・・・と、最初にタカを並べるのですが、ここでハトが来て中和されるんですよね。
『・政策金利の変更を考えるタイミングは、消費者物価が明確に反転上昇する動きや、中長期の予想インフレ率の上振れなどを経済指標で確認してからで良いと考えられる。』
いや予想インフレ率上振れしたらアンカー外れてますやんその時は引き締めまでいかないとダメなんですがおっちゃん(かおばちゃんか知らんけどたぶんおっちゃん)何考えてますの????
・・・・というレベルのスーパーハトという智頭急行に走ってそうな人発生。
『・個人消費が盛り上がりを欠く中、一部自動車メーカーの出荷停止という想定外の事態が続き、これらの影響も確認する必要がある。このため、当面は現在の金融緩和継続が適当である。』
個人消費が盛り上がらないのはてめえらの緩和継続が招いているコストプッシュによる物価上昇なんですけどなんで緩和継続するんですか馬鹿なんですか、と思いますが、まあそういうことなのでこれもスーパーハト。
この次が「為替円安と金融政策」コーナーになります。特にそんな見出しはついていないけど。
『・円安は物価見通しの上振れの可能性を高める要因であり、リスクマネジメントアプローチに立って考えれば、リスク中立的な、適切な政策金利の水準は、その分だけ上がると考えるべきである。』
コーナーが変わりましたのでまたタカからスタートなんですが、こちら中立金利上がるというタカの話ですが利上げを急ぐべきとかいう話になっていないのでタカはタカだがスーパーはつけられませんな。
『・ 為替相場の変動は経済活動に幅広い影響があるほか、ファンダメンタルズから乖離した水準が続けば国民経済の健全な発展にも影響が及ぶ。他方、金融政策も為替相場だけではなく国民生活や経済活動の幅広い側面に影響するので、経済・物価情勢の全体像をみて運営しなければならない。』
結局この人は何を言いたいのという話なんですが、まあだいたい円安怪しからんといいながら後半のようなことを言う人は普通の場合はハト理屈なんですよねー残念無念また来年。
『・金融政策運営は、物価の基調とその背後にある賃金動向を見極めて行うものであり、為替の短期的な変動には左右されない。』
これはまあハトになりますが、
>為替の短期的な変動には左右されない
>為替の短期的な変動には左右されない
>為替の短期的な変動には左右されない
っていやマジで貴殿の首の上に乗っかっているのはカボチャかなんかですかと小一時間問い詰めたくなるんですが、「為替の短期的な変動」ってお前2023年植田総裁就任以来のドル円チャート見てからものを言えやという話だし、まあ本来で言えば2022年からのドル円チャートを見てからものを言えということで、そのカボチャ脳でちょっとドル円の3年チャートでも見てからこの意見を読み直せと思うのですが、まあカボチャだからそれ見ても分からんかね。
と、カボチャ政策委員にひとしきり憤慨したところで次のコーナーが「長期国債買入をどうするのコーナー」になります。まあ「長期的に減額」というのは決定したんですが、じゃあ具体策どうなのよという話だが。
『・金融市場において長期金利がより自由な形で形成されるよう、国債買入れを減額していくべきである。その際、国債市場の安定に配慮するための柔軟性を確保しつつ、予見可能な形で相応の規模の減額をしていくことが適切である。』
まあこれは仰せの通りではあるのですが、「国債市場の安定に配慮するための柔軟性を確保」するという発想がイマイチ行けてなくて、ここを重視するあまりに今の植田日銀ってものすごく不透明なオペレーション運営をしていて、その結果としてマーケットメーカーにしろ投資家にしろ、先行きの政策運営をロジカルに考えたポジションテイクができない状態になっている、というのがちゃんと伝わっていないんじゃないのと毎度思ってしまいます。
『・イールドカーブ・コントロールからの出口を円滑に行うことができた経験も踏まえて、国債買入れの削減についても、削減額やペースのほか、枠組みの作り方などを工夫することで、市場の混乱を起こすことなく削減を行うことができると考えている。今回具体案を決めるより、市場参加者の見方を確認するプロセスを踏んだ方が、よりしっかりとした規模の削減ができる。』
基本的にタカなんだが、「イールドカーブ・コントロールからの出口を円滑に行うことができた経験」って黒田末期以降にYCC維持のためにどんだけ無茶苦茶オペの乱発したんだということで、なにが「出口を円滑に行うことができた経験」じゃ勝手に歴史改竄するなやボケというお話でございまして、なんかこの国債買入減額のタカのお二人とも余計な枕言葉が入っているのが気になりますね。
つまちこれは「余計な枕言葉を入れないと意見が全然通じない」という事に繋がっている訳で、長期国債買入減額に関してはうっかり市場のイシューになった(してしまったのは4月に素直に減額しなかったのと5.13事件のせいなので自業自得なんだが)ので今回「長期的に減額」というのをわざわざ決定するという羽目になったのですが、そうは言っても別に気合入れて減額する必要ってありましたっけというのが実際の政策委員会の空気なんじゃないか、と邪推したんですがどうですかね(個人の感想です)。
『・3月の政策枠組み見直しの趣旨を踏まえ、国債買入れの減額を行うことで、市場における日本銀行のプレゼンスを小さくしていくことが必要である。』
いやこういうシンプルな意見が欲しいですよね。問題はその規模なんで立ち位置は不明ですけど。
『・@国債市場で日本銀行が圧倒的に大きなプレーヤーである、A市中での代替が簡単ではないほど、日本銀行が大量の国債を保有している、といった大規模緩和の副作用が課題として残っている。このため、市場と対話しながら、適時適切に、日本銀行バランスシートの正常化を進めていく必要がある。』
市場と対話しなくたって、望ましいバランスシートを考えたときのゴールがあって、まあいきなりゴールまでの道は示さなくても、中間目標を途中に置いて、その中間目標までは淡々と減らす、ってやった方がどう見ても現実的には望ましくて、この「市場と対話しながら」の大義名分を入れると却って不確実要因になりますがな、と思うのよね、そら適時適切に減額できればそれに越したことはないけど、市場の中の人だって立場によって利害は違うんだからそんなの一々全部聞いてられないでしょ。
『・ 国債の買入れ額の減額については、債券市場の需給や機能度の改善状況を踏まえつつ、中期的な計画を策定して、これに沿って淡々と減額を行うことが望ましいが、減額の最適なペースなどを設定する必要があるため、市場との対話も含め、ある程度の時間をかけて慎重に検討すべきである。』
前半は良いんだがなんで結論が「時間をかけて慎重に検討」になっちゃうのよ・・・・・・・・・・・
『・ 国債買入れの減額については、開始時期や規模次第で経済を下押しし得るため、市場と対話を図りつつ、経済情勢を点検してから徐々に進めることが必要である。』
はいきましたハト理論。
『・ バランスシートの縮小は、拡大した日本銀行の市場への関与を市場への攪乱的影響を避けつつ減らしていくことが目的であり、金融政策とは切り離して行うものである。』
「市場への攪乱的影響を避けつつ減らしていく」と言ってる時点でダメなロジックで、これを言い出すと結局チキン丸出しになるんですよね。
『・国債買入れの減額に際し、今後の国債保有構造の在り方を念頭に、中長期的観点から新たな市場構造を議論していく必要がある。その際には、市場参加者を取り巻く前提となる環境を含め、幅広く議論していくことが重要である。』
そんなもんはお前らが考えなくてよろしい。なんか言ってるようでなんも言ってない意見ですね。
最後はETFです。いつも1名これ言ってますね。
『・ 保有するETFの取扱いを議論していくために、それが個別株式でなく投資信託であることなど、市場に影響を与える諸特性について理解を深めることが必要である。』
ということで、輪番減額につきましても「中長期的な方向として減額する」までは決まったものの、その中身に関して言えば積極減額しようという前のめり感を全然感じないという内容になっておりまして、今回輪番減額決定というのがあってベンダーのヘッドラインがタカ派バイアス掛かっていましたし、昨日は朝っぱらから神田大明神が円安牽制発言をがっつりと行っていたのもあって、とりあえず反応的には無事でしたけれども、まあこれ普通に「タカハト拮抗、むしろハト優勢」でしょと思いました。
・しかし4月議事要旨があの調子だったのに何で今回の主な意見はこんなにハトっぽいんだか
という疑問が当然沸き起こってくるのですが、こうなってくると10年後に出てくる議事録でも見たくなりますが、10年後とかワイも棺桶に片足突っ込んでいるとか何ならどっかの焼き場で燃えた後かもしれないと考えると、この近辺の議事録を見るまではボケずに生き抜こうという励みになるというものですw
・・・・てなギャグはさておきまして
まあでもそういうことでして、これ4月議事要旨の方が「タカ的な意見を殊更にフレームアップして作成された」んじゃネーノ疑惑の方が涌き起ってくるわけですよ。まあ主な意見って各委員が出したものを使うからそうそう内容いじれないでしょうけれども、議事要旨は言ってもいないことを書くのはアウトですけど、どの意見をフレームアップするのかは恣意的にやろうと思えばできる(本来はやるべきではないのだがFEDでもその可能性が垣間見れますよね)ので、まあそういう疑惑になってしまう訳ですよ。
でまああんまりそういう事やってると、日銀公式が出すものが信用ならんとなりかねない重大なリスクを起こす可能性があるので、何なんですか今回の一連の流れは、と思ってしまうんですよ益々のこと。いやほんと何なんですかね。
・政府から公開処刑されててクソワロタ
でまあ今回の主な意見最大の面白ポイントは『V.政府の意見』になります。
『(財務省)』から。
『・ 足もとでは賃上げ、設備投資等に前向きな動きが見られる一方、個人消費は力強さを欠いており、海外経済のリスクも認識している。』
『・ 政府は、経済再生と財政健全化を両立させる歩みを更に前進させていく。』
まあここは(2番目とか寝言は寝て言えと思いますが)さておきまして、
『・ 日本銀行には、政府との密接な連携のもと、2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現に向けた適切な金融政策運営を期待する。その上で、情報発信を含め、しっかりと金融資本市場とコミュニケーションを図っていただきたい。』
>情報発信を含め、しっかりと金融資本市場とコミュニケーションを図っていただきたい
>情報発信を含め、しっかりと金融資本市場とコミュニケーションを図っていただきたい
>情報発信を含め、しっかりと金融資本市場とコミュニケーションを図っていただきたい
wwwwwwwwwwwww
『(内閣府)』から。
『・ 足もとの経済運営に万全を期しつつ、コストカット型から成長型経済への移行に向け、強い決意で改革に取り組む。「経済・財政新生計画」を策定し、政府を挙げて実行する。』
はさておきまして次。
『・ 日本銀行には、金融政策の具体的なオペレーションについて適切な判断を期待する。引き続き、政府と緊密に連携し、十分な意思疎通を図りながら、2%の物価安定目標の持続的・安定的実現に向け、適切な金融政策運営を行うことを期待する。』
>金融政策の具体的なオペレーションについて適切な判断を期待する
>金融政策の具体的なオペレーションについて適切な判断を期待する
>金融政策の具体的なオペレーションについて適切な判断を期待する
wwwwwwwwwwwww
情報発信が無茶苦茶、オペレーションが下手くそ、とか財務省と内閣府の共同砲撃を食らっていてもうこれは公開処刑レベルの苦言の呈され方。
と申しますのは、
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2024/index.htm
金融政策決定会合における主な意見 2024年
こちらに過去の「主な意見」がありまして、3月のマイナス金利YCC解除含めて今回が3回目の決定会合になりますけれども、3月、4月ともこんな言われようはしていないわけでして、4月決定会合総裁会見のやらかし事件(情報発信を指摘した財務省)や、無駄な混乱だけ招いたサプライズ輪番減額の5.13事件(オペレーションを指摘した内閣府)について思いっきり言われとるやんという事だし、こんなにぶっこむのは割と異例ですよね、という話。
でまあ急に話が戻りますが輪番減額に関しての話で「市場との対話」というのが何度も出てきているのですが、なにせ5.13事件ぶっこんでいるという直近実績がある人たちに「市場との対話」とか言われましてもヘソが茶を沸かすとしか申し上げようがないんですよね、と改めて思いました。
なんか経済物価の話をかっ飛ばしている気がするが別ネタがあるので本日はパス(書くものがあったら明日書く)。
2024/06/21
〇円安堂々進行なので4月決定会合議事要旨ネタの続きで政策金利に関して
堂々の2回シリーズになってしまいましたが(汗)
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2024/g240426.pdf
なぜかというと、
https://jp.reuters.com/markets/bonds/
米国債10年 利回り
US10YT=XX +4.250 +0.033
米ドル/日本円 158.9200 +0.53%
とかいうとても素敵なことになっているのですが、
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-06-20/SFE19WDWLU6800
円安進行、対ドル160円が再び視野に−市場で高まる介入警戒感
Carter Johnson、George Lei、Anya Andrianova
2024年6月21日 3:04 JST
→ニューヨーク外為市場では一時、1ドル=158銭90銭台に下落
→4月29日に付けた34年ぶり安値の160円17銭も意識されている
ってなことで、
『円の下落は、米国など主要国・地域と日本の金利差が続いていることに起因する。日本銀行が先の会合で国債買い入れの削減計画について詳細を明らかにしなかったことも響いている。
門田真一郎氏らバークレイズ証券のストラテジストは「日米金利差が一定の水準を超えている限り、金利差がある程度縮小してもキャリートレードによる円売りは減らない可能性がある」と20日のリポートで指摘。ドル・円相場は年内1ドル=160円近辺で推移するとみている。
円の下落阻止には4−4.5%の日米金利差が必要−バークレイズ』(直上URL先ブルームバーグ記事より)
まあ要するにジャパン要因で言えば「今後継続的に短期政策金利がそれなりのペースで引き上げられる見通し」ってのがないと話にならんし、何度もチャンスがあるのに短期政策金利を上げ渋って(本来ならば今頃0.50%なんて普通になっていておかしくなかったんですがハトハトチキンがさっさと決断したら)いて、しかも今般の金融政策決定会合後の会見でもうっかり「輪番減額によっておこる長期金利上昇の度合いも短期政策金利の引き上げの判断材料」とか本音を駄々洩れさせるもんだから7月利上げ観測が大幅後退(少なくとも7月メインから9月メイン下手したら10月に後退しましたわな)の巻となっておるわけです。
でもってこんな状況では介入何ぞやっても効かない(ので外準全部売りでもしたければ相場を崩さず売れますがwwwww)でしょうから、そら通貨当局のトーンもさがるわな、というお話ではありますな。ちーん。
てな訳ですので議事要旨に戻って(再掲)
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2024/g240426.pdf
政策委員会 金融政策決定会合
議事要旨
(2024年4月25、26日開催分)
政策に関する部分はタカタカアピールになっていますが特に金利の部分とか再確認して、このトーンが月曜に出てくる「6月会合主な意見」でどのようになっているのかの差分を見ておくのが宜しいかと思います。
まあしかし何ですな、これで月曜出てくる主な意見で4月よりもさらに政策金利の調整に積極的なトーンになっていたとしますと、やっぱり植田総裁の一連の説明のトーンと話が全然違ってくるので、それはそれでどうなっているのか、って話になるんですよね。
では参りますが、『W.金融政策運営に関する委員会の検討の概要』を成敗して参ります、本文12ページ以降になりますな。
・先行きの政策予見可能性wwwwwwwwwwwwww
最初のところはまあオマケです。
『何人かの委員は、前回会合で決定した金融政策の枠組みの見直しは、市場に混乱なく受け入れられているとの見方を示した。このうちの一人の委員は、最近の消費者物価等をみても、前回会合時点で金融政策の枠組みの見直しの条件が既に満たされていたことを裏付ける内容となっていると指摘した。』
一人の委員は中村さんですかね。
『別の一人の委員は、昨年後半以降の日本銀行の情報発信によって先行きの金融政策運営に関する
予見可能性が高まり、市場の安定に寄与したとの見解を示した。』
wwwwwwwwwwww
いやーこの後の円安ぶっ飛びからの5.13事件というイベント発生を見ますと、何ちゅうフラグ建築士と笑ってしまうしかありませんが、そもそも日銀って先行きについて「不確実性が極めて高いから先行き利上げとか輪番減額とかのパスを軽々に示せません(今回輪番は方向性だけ明確化したけど)」ってスタンスであって、ただ「緩和的な環境が続くでしょう」とだけ言っているのですから、そもそも論として「何もしない」という以外に予見可能性も糞も予見する未来がなかったはずなんですよね。
ですから、まあ一委員の見解だからそんなに深刻に捉えなくてもいいんですけど、こういうのが出てくるということは、この時点では「先行きやる気ないもんねー」って思う方もおいでになられたという意味でこの部分はチャーミングですね、と思いました。
というのはおまけでして先に進みます。
・先行きの政策運営の話は最初のところから結構強いトーンなんですけどねえ
『委員は、先行きの金融政策運営について議論を行った。まず、委員は、先行きの金融政策運営は、今後の経済・物価・金融情勢次第であるとの見解で一致した。』
予見可能性って面においては、別に政策自体が予見可能じゃなくてもいいんですよ、上記のように「状況に応じて適時適切に政策を決定する」で良いんですから。
ただ、その決定するための判断ロジックというのを完全決め打ちしなくてもいいけど、筋道が通った説明してくれないと困るわけで、今の日銀というか黒田末期以降の日銀って結局やりたい政策が先にあって、その言い訳を小手先でコロコロ変化させて来るもんだから、それによって政策の予見可能性がなくなるわけで、別にガイダンス出すのが予見可能性じゃないし、何なら今の米国みたいにもはやドットチャートとか完全に害悪になっている訳なんですよね。
というのはさておきまして次。
『具体的には、何人かの委員は、2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現するという観点からは、基調的な物価上昇率の動向が重要であるとの認識を示した。』
具体的には、って言ってるんですがこれじゃあただのトートロジーと変わらん。
『別の一人の委員は、夏場にかけて前向きな企業行動が設備投資等から確認できるか、賃上げを受けて個人消費が改善していくかがポイントとなると指摘した。』
こういうのはわかりやすい、まあこれがポイントと言ってる人だと7月利上げするには相当強いアネクか、相当に強い短観が必要になりそうですが。
『一人の委員は、賃金・物価スパイラルの想定以上の進展、円安の進行、積極的な財政政策、人手不足を主因とする供給力不足、資源価格の上昇など、様々な物価の上振れリスクがあるとの見解を示した。』
これはタカ派。
『また、何人かの委員は、金融政策は為替相場を直接コントロールの対象としていないが、為替は経済・物価に影響を及ぼす重要な要因の一つであり、経済・物価見通しやそれを巡るリスクが変化すれば、金融政策上の対応が必要になると指摘した。』
というのがあってですよ、昨日ご紹介したように、前段の章で「委員は、このところの為替円安等が物価に及ぼすリスクについても議論した。」ってところでは少なくとも4人の委員が為替円安が基調的な物価に及ぼす可能性について強いトーンで指摘している訳ですので、この言い方見たら普通に6月に利上げあったっておかしくなかった、という話になるんですが、なんでこういう指摘出ているのに6月実質ゼロ回答になったんですかねえ、と不思議おぶ不思議。
挙句にこんな指摘までされてて、
『このうちの一人の委員は、国際金融のトリレンマなどを踏まえると金融政策を為替の安定に割り当てるべきではないが、為替の変動が、企業の中長期の予想インフレ率や企業行動に影響を及ぼす場合には、物価に影響を及ぼすリスクが高まるので、金融政策での対応が必要となると述べた。』
円安対応をする理屈まで登場しているんですよね。
・プリエンティブな政策金利の調整について4月会合時点で少なくとも3人の委員が指摘している件について
次に行きまして
『そのうえで、委員は、@先行き、見通しに沿って基調的な物価上昇率が高まっていけば、金融緩和度合いを調整していくことになるほか、A経済・物価見通しやそれを巡るリスクが変化すれば、金利を動かす理由となるとの認識を共有した。』
となっていますが、
『この点に関連し、多くの委員は、基調的な物価上昇率の高まりに応じて緩和
度合いは調整していくことになるが、経済・物価の見通しを踏まえると、当面、緩和的な金融環境は継続することになると指摘した。』
っていう部分が7月の展望レポートの文言で消えるのかどうかが実はひそかな注目材料で、この議事要旨の4月会合ではこの「当面緩和的な環境」文言を声明文から落として、展望レポートの「金融政策運営」の部分の記述に降格させてて、6月会合では先般ネタにしましたように、金融政策運営のガイダンス的文言を全部削除しているんですが、7月展望の「金融政策」のコーナーでどうなるのかは注目したいと思います。
しかしまあ何ですな、この「当面、緩和的な金融環境は継続することになる」がどこまで行っても玉虫色表現で、本来的にはこれ別に日銀が積極的に金融緩和環境を必死こいて作る、という金融緩和政策の推進をしているのではなくて、もともとの大規模金融緩和の影響が残っているから残置物の影響で金融環境は緩和が続くから一足飛びに引き締めに飛ぶわけではない、程度の文言のはずなんですが、ハトハトチキンおじの植田さんに掛かってしまいますとなんか未だに緩和必要ですからみたいな話になっちゃうの何なの?とは思います。
でまあここからが政策金利に関する話になりますが、
『ある委員は、政策金利の引き上げについて、そのタイミングや幅に関する議論を深めることが必要であるとの認識を示した。』
その後深まったんでしょうかねえ、主な意見で垣間見れるのを期待。
『一人の委員は、緩和度合いの調整ペースは経済・物価見通しの確度に応じて変化するが、先行きの急激な政策変更を避けるために、確度が十分に高くなる前から、経済・物価・金融情勢に応じて、緩やかな利上げにより緩和度合いを調整することも考えられると述べた。』
『別の一人の委員は、経済にストレスを与えないように緩和度合いを調整するには、今後、見通しの確度の高まりに合わせて、適時適切に、政策金利を引き上げていくことが必要であると指摘した。』
全く仰せの通りでして、プリエンティブに対応すべき、という意見が2人から出ている上に、
『ある委員は、現在の経済・物価見通しが実現するのであれば、約2年後に「物価安定の目標」が持続的・安定的に実現し、需給ギャップもプラスとなるので、金利のパスは、市場で織り込まれているよりも高いものになる可能性があるとの見解を示した。』
主な意見でもあって、出たとき田村抜刀斎キタコレと話題になったのですが、よくよく考えて見ますとこの並びで出ているということは、田村さん以外にあと2名がプリエンティブに政策金利の調整をしましょうよ、と言っている訳でして、これまた6月会見での植田総裁の本音駄々洩れ発言との差異は何なんですかということになるんですよね。
・「当面、緩和的な金融環境は継続することになる」のダブルミーニング
以下ハトの2名なので野口さんと中村さんで、たぶん前者が野口さんで後者が中村さん。
『一人の委員は、基調的な物価上昇率が2%を下回る現状では、緩和的な金融環境を今後も相応に長く維持する必要があると考えているが、円安を背景に基調的な物価上昇率の上振れが続く場合には、正常化のペースが速まる可能性は十分にあると指摘した。』
『この間、ある委員は、家計の購買力はまだ弱く、当面は緩和的な金融環境の継続が妥当との見方を示した。』
この見解自体はまあハトならこう来るわという話なのでそりゃそう言うでしょうねってなもんなのですけれども、ここでやっぱりアレなのは「当面、緩和的な金融環境は継続することになる」の文言の意味合いになってくるわけでして、明らかにこの文言をハト派のお二方は「積極的」な意味で使っている訳です。まあもちろんそういう使い方もできてしまうし、4月の植田総裁の会見を受けて市場だってこのフレーズをハト派解釈せざるを得なかったという訳です。
という訳でまあこれって3月の時からそうなので最初は声明文に載っていたのですが、声明文にこういうダブルミーニングしかも正反対に読める文言を載せている、というのがコミュニケーション上アカン訳でして、どうせ妥協してタカでもハトでもどっちでも取れる文言にして声明文(なり展望レポート基本的見解なり)をまとめたつもりなんでしょうけれども、そういう反対の意味に取れるような言葉を安易に使ってしまうのって、日銀大本営の皆様がクッソ頭がいいからついやってしまうんでしょうけれども、マイナス金利解除以降のここまでのグダグダぶりを見ますとやっぱりそういうことはやってはいけないんだと思います。
とまあそんな感じですかね。ここに書かれているのだけを見れば何なら6月に利上げでもうっかりしたらアリエールだし、まあ普通に考えて短観次第では7月だって十分できる、という書き方になっているのですけれども、一方であの植田総裁の記者会見ではそういうトーンじゃなかったんで、どこまで行ってもこのギャップがわけわからんままであります。
2024/06/20
ほうほうそうですかそうですか
https://jp.reuters.com/economy/bank-of-japan/FKJGVPOXU5NKHCFMJBUKLGH72Q-2024-06-19/
国債安定消化へ金利リスク抑制、変動債導入も選択肢 債務管理で近く提言
By 山口貴也
2024年6月19日午後 12:05 GMT+9
昨日はこのニュースでイールドカーブが反転フラットニングしていましたが、いやおまえこれ有識者提言段階だろ気が早いわとは思いましたが、発行年限短期化するんだったらちょっと3か月TDBを100万兆円くらい増発してくれませんかねえwww
〇4月会合議事要旨が出てきたわけだがこれ見るとマイナス金利解除辺りからのアレっぷりが鮮明になりますな
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2024/g240426.pdf
政策委員会 金融政策決定会合
議事要旨
(2024年4月25、26日開催分)
ということで出ているのですが・・・・・・・・・
・なんかタカタカ議論があったアピールがされているのですがはっきり言って債券市場にも為替市場にも不発でしたな
いやまあ議論の部分とか見てもそうだしヘッドライン見てもそうなんですが、一応この会合でもタカタカ議論があったような書きっぷりになっているんですよ。でまあまさか話をしていないことは議事要旨として書けないからそれ自体はそうなんでしょうけど、マイナス金利YCC解除のちょっと前からの日銀のコミュニケーションって、
マイナス金利YCC解除前:長期金利が急騰するのが怖いから「緩和的な状況が続く」をアピール
→まあこれは心情としてはわからんでもないから、あそこまでアピる必要あったのかはともかく話としては分からんでもない
マイナス金利解除後:継続する緩和アピールと輪番減額せずのせいで円安がバンバン進行してしまって急に威勢の良いことを言い出す
→でも言ってるそばから植田さんはハトハト発言をするし、挙句に4月の展望でやる気見せない会見をして円安加速
4月会合で円安進行の後:突如サプライズ輪番減額(5.13事件)をぶっぱなすなどの所業にでる
→なお植田さんは相変わらずハトハトなのですが一方で内田さんがぶっこむとかいう面白金研国際コンファランスは笑った
挙句に今回の会合:結局事実上なんもしなかったのと同じな上に輪番減額をするので短期金利の引き上げを先送るスタンス
でまあその結果債券市場では明らかに7月利上げ観測後退というかなくなったくらいの勢いになってしまっていまして、火曜日の国会半期報、昨日のこの議事要旨と政策金利の早期引き上げもありえますよアピールが飛んできても思いっきり無視される(昨日はさっきの国債管理政策がらみのニュースでカーブはフラットしてくれましたがそれまではスティープどころかツイストスティープする有様だし、後述するように1年短国の入札ツエツエバエでレートがなんかもうエライことになっておられる)の巻となっているようにしか見えないわけですな。
まあアレです、結局のところマイナス金利政策とYCCは解除してみたものの、その後の政策金利引き上げについても輪番減額についても実はこいつらやる気無し無しで、ただ円安進行はマズいので、円安進行を止めたいからちょいちょい威勢の良いことは言うのですが、その結果無駄に期待が高まり、今回の会合のように事前に妙に期待をさせておきながら期待外れの回答しかしない(って総裁会見での大江さんや国会半期報での大塚先生にもがっつり言われている訳でございますが)という流れになっておられまして、ああこれは日銀の伝統芸能復活、と思う訳です。
ともうしますのは、これって方向性が正反対ですけど麿がなんだかんだ追い込まれて、今に禍根を残すETF買入みたいな包括緩和をぶっこんだ(という意味で麿もそんなに偉そうなことを言える立場ではないという話はある)のに、全然緩和が足りないといわれ続けた小出し対応の日銀、というのと同じことを今度は正常化方向でやっている、というのがマイナス金利とYCCの解除を行ってからの植田日銀の所業とコミュニケーションになっているのですが、誰得円安がバンバン進行しているという意味で今回の方が罪が重くねえかって気もしないでもないですな、アイヤー。
つまりですな、これどうせ来週月曜の「6月会合主な意見」ってそれなりに威勢の良いのが出てくるんじゃないかな、とは邪推できるわけですよなんせ米債4.2%なのにドル円158円近辺になっているんですから、米債がなんかの拍子で4.5%だ4.6%になったら160円なんぞ笑い飛ばす勢いになってもおかしくないですわな、と考えると足元で円が全然戻らんの普通に日本要因だし、その中には日銀が小賢しい小手先のコミュニケーションで目先の対応をする結果その反動が大きくなって円安要因になっているのが多分に含まれるんじゃないかなって思う訳です。
ということでして、まあこうなってくると来週月曜の主な意見でどういう反応をする(する、というかしない、ということになりますがw)のかというのが楽しみで、6月会合の会見で7月は輪番減額だけしますよ政策金利は長期金利の動向を見てからですよってアピールしちゃったのが猛烈に効いて直前ではほぼコンセンサスだった7月利上げを消したのを打ち返すのはできるのでしょうかねえ(・∀・)ニヤニヤって感じです。
これが単発ならともかく、威勢の良いことを言っているのが実はただの時間稼ぎでした、ってのがすでにマイナス金利YCC解除以降連発しているし、植田総裁は毎度毎度のハトハト音頭を踊るし、そりゃ市場だって何度も時間稼ぎにお付き合いするほどお人よしじゃないですからねえ。
・・・・まあアレです、日銀どうせ威勢の良いこと言ってもやる気なくてあれはただの円安の足止めをしたい時間稼ぎ、ってのがどんどん広まってしまうと、多少のことをしてももはや反応してくれなくなるし、だいたいからして輪番減額について市場にご相談して7月に決定、といった手前ここから7月末まで輪番は動かせなくなったし、その結果主に円安方面から日銀が追い込まれて7月会合の時点でションベンちびりながら植田総裁が野々村号泣会見をして利上げに追い込まれる、というのはシナリオとしてはアリエールはアリエールかな、とは思わんでもないwwww
とゆーことで議事要旨の話なのに前置きがクソ長くなりましたが、まあそういう視点で読みますとこの議事要旨と総裁会見での発言が全然整合性が取れていない部分があるんですよね、ということでクソ長い前置き悪態を述べさせていただきましたですバイ。
・4月会合議事要旨最大の謎ポイント:なんでこの指摘があったのに総裁会見であの発言があったのか
本文12ページ、PDFで14枚目になりますが、『V.金融経済情勢と展望レポートに関する委員会の検討の概要』の『2.経済・物価情勢の展望』のほぼ最後の部分です。この円安の影響云々に関しては当然注目ポイントなのでヘッドラインなども出ていましたが改めてこの段落を全部読んでおきましょう。
『委員は、このところの為替円安等が物価に及ぼすリスクについても議論した。』
からの話ですが、
『ある委員は、円安と原油価格上昇は、コストプッシュ要因の減衰という前提を弱めていると指摘した。そのうえで、この委員は、企業の賃金・価格設定行動の変化も踏まえると、円安・原油高が物価、さらには賃金に波及する
タイムラグが短くなっている可能性があると述べた。』
というのが一人目の指摘。まあ仰せご尤もですな。
『この点に関連し、一人の委員は、企業の行動変化を受けて円安のパススルーの度合いは高まっているとみられ、その物価や賃金への影響が一時的なものにとどまらない可能性もあると指摘した。』
二人目の指摘です。でもって「この点に関連し」だから最初の指摘と同意見な上に上乗せして、ということになりますよね(最初の人と同一だったら「一人の委員」じゃなくて「この委員は」になるはずだから)。でもってこちらの方は円安が一時的ではない、となると基調的な物価にも影響するって話に繋がるのかな。
『別の一人の委員は、円安と原油価格上昇は、輸入物価を通じて企業物価へ波及しつつあり、賃上げに伴うサービス価格の高まりに加えて、現在伸び率が低下している財価格が底打ちして反転する可能性にも注意を払う必要があるとの見方を示した。』
これが三人目の指摘。これまたご尤も。でもって次の人はちょっと別の論点なので多分次の方は中村審議委員じゃないかな、円安は別に問題なし、と言っているので。
『さらに別の一人の委員は、円安は、短期的にはコストプッシュ型の物価上昇を招くことで経済を下押しするが、インバウンド需要の増加や製造業における生産拠点の国内回帰などを通じ、中長期的には生産や所得への拡張効果もあるため、基調的な物価上昇率の上振れにつながり得ると指摘した。』
まあこれはちょっと別視点なのでパスしますが次を見ますと、
『一人の委員は、輸入物価上昇や予想物価上昇率の上昇に伴う物価上昇率上振れのリスクもあるため、今後、2022
年以降に続く第2ラウンドの価格転嫁が生じることがないか、予断なく見極める必要があるとの見解を示した。』
ということで少なくとも4名の方が円安の基調的物価の影響について強いことを言ってるわけですよ。
『これらの議論を踏まえ、委員は、最近の円安の動きが、基調的な物価上昇率にどのような影響を及ぼすのか、注視していく必要があるとの認識を共有した。』
ってなってるじゃないですか、それなのに皆様ご案内の通り、この会合後の記者会見で植田総裁ってどういう説明してましたっけ、となるとかの有名な発言になるわけですよね。
https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2024/kk240617a.pdf
総裁記者会見
――2024年4月26日(金)午後3時30分から約65分
本文4ページ、PDFも4ページですね。
『(問)
植田総裁はですね、先日の会見で、円安の進行によって基調的な物価上昇率に無視できない大きさの影響が発生した場合は金融政策の変更もあり得ると、先ほどお話しした通りだと思うんですけども、今回金融政策の変更がなかったということは、これはつまり円安の進行が、これ無視できる影響だという、そういう範疇になるというご認識でしょうか。総裁のご認識、お尋ねしたいです。
(答)
それは今までの回答とちょっと重なりますけれども、取りあえず基調的な物価上昇率への大きな影響はないと、皆さん判断したということになるかと思います。ただ、申し上げましたように、そこに影響は今後発生するリスクはゼロではないので、注意してみていきたいということでございます。
(問)
つまり今回は、これは基調的な物価上昇率への影響は、まあ無視できる範囲だったという認識でよろしいでしょうか。
(答)
はい。』(この部分だけ直上URL先の4月決定会合後の植田総裁会見録より)
・・・・・・いやあのですね、議事要旨にあるような議論をしていたんだったら、少なくとも「今回金融政策を変更する必要があるような影響ではないという判断だった」位で説明が止まるはずで、「今後発生するリスクはゼロではない」とか、いかにも大きな影響が発生しそうもないかのような言い方をして説明するのって、4月決定会合議事要旨に書かれている議論内容を受けたらこういう言い方しちゃダメでしょという事でして、決定会合で行われた議論の内容について細かく説明する必要は確かにないのですが、明らかにこの会見での説明と議事要旨の内容に飛躍があって、議事要旨が針小棒大に書いているのか、植田総裁が本来の職務を理解しないで自分勝手に自分のハトハト見解を勝手に並べ立てているのか、どちらにしたって大問題な話ですよこれは。
まあちょっと植田出てきて説明してみろやオイコラという話ではある(と書いているくらいだからアタクシは植田の野郎が好き勝手に自分のハトハト音頭を開陳しているんじゃなかろうか疑惑の方を持っているんですがwww)のですが、今回の議事要旨の最大の見どころは何といってもここではないか、と思う次第でございます。
・この議論内容を踏まえると6月決定会合後の総裁会見でのこの説明もおかしいんですけど
さっきのを再掲すると、
『一人の委員は、輸入物価上昇や予想物価上昇率の上昇に伴う物価上昇率上振れのリスクもあるため、今後、2022
年以降に続く第2ラウンドの価格転嫁が生じることがないか、予断なく見極める必要があるとの見解を示した。』
ってのがあって、これはまあ一人の意見ではありますが、それ以外の円安の基調的物価への影響を指摘した他3名の方々も円安のパススルーの影響について指摘していた訳ですな4月会合の時点で。
でもってその4月会合時点から円安について状況はそんなに変わらず、円安定着の香りも漂う中で今回の決定会合を迎えていたわけですよね。でもってその決定会合を受けたこの前の記者会見ですが、これもこの前ネタにした質疑応答の再掲になりますけど、
https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2024/kk240617a.pdf
総裁記者会見
――2024年6月14日(金)午後3時30分から約65分
本文7ページ後半の質疑になります。
『(問)(前半割愛)あと二点目は、最近、企業物価指数等みてますと、円安の影響等でまたコストプッシュ型のインフレ圧力が再加速してるようにみえます。また、企業レベルでのサービス価格の動向をみても、「第二の力」の方の広がりが出ているようにもみえます。これを総合すると、基調インフレ、少し上振れ気味になっているのではないかとも思えるんですが、4
月の決定会合以降のこうした物価の動きについて、総裁のご見解をお願いします。』
『(答)(前半割愛)それから二番目の物価の動きに関するご質問ですけれども、これまで暫く、だいぶ前に始まった輸入価格上昇の国内物価への転嫁に伴うインフレ圧力、「第一の力」については、だんだん減衰してきている。一方で、賃金上昇がサービス価格等に波及するという「第二の力」の部分については、少しずつ上昇してきているという説明をしてきたところで、その点に大きな変更はございません。ただし、これもおっしゃいましたように、ここのところの円安も含めて、輸入物価等に若干の再上昇の気配がみえる。ある種、「第一の力」の第二ラウンド目が少し始まっているかもしれないというようなところについては、今後、基調的物価上昇の判断をする際に注視してみていきたいと思います。』(この部分のみ直上URL先6月決定会合後の総裁記者会見より)
いやあのさあ、4月会合の議論の温度感から言ったらそこから実質1か月半経過した6月会合の議論だって当然この問題ってもっと深刻に議論している筈なのに、この説明のトーンだと、全然切迫感もなんもなくてのほほーんと「ああまあそういわれてみればそういうこともありますかねえ」くらいの説明になっている(口調も大体そんな感じでしたよちなみに)訳でして、いやあのどういうことになっているのよというところなんですよね。
とまあそんなわけで、どうなっているんだこの植田日銀の情報発信は、というお話なんですが、まあ諸悪の根源が好き勝手に少数意見なのに自分の意見を総裁会見の発言にしてしまうハトハトチキン総裁の所業なんでしたらとっとと座敷牢に押し込めて会見はつば九郎でもマー君でもハリーホークでもドアラでも何でもいいから代打に喋らせろというお話なんですが、この混乱っぷりと、結局6月会合は期待を下回るしょうもない予告しか出なかったという所業を見ますとなんかハトハトチキン総裁だけの問題なのかどうかもアレというお話でもありますし、まあそんなこんなで、こいつら結局「やるやる詐欺集団」と認定されつつある、というのが今のステージなんだと思いますので7月頑張って態勢を立て直すのがベストですが、ボロボロになって8月9月に円安爆裂して日銀が地獄の業火に焼かれる(ワシらの生活にも貰い火がくるから飛んだ大迷惑ではありますが)方が焦土から登場する黒ちゃんの逆バージョンという面白展開も期待できるかもしれませんな(暴論)。
〇これは日銀必死だなと思いました(BBGでの清水季子前理事インタビュー記事)w
昨日のこれはクソワロタ
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-06-19/SFBI1ST1UM0W00
植田総裁はインフレ見通しに確信を深めている−清水前日銀理事
Tania Chen、藤岡徹
2024年6月19日 18:08 JST
『前日本銀行理事の清水季子氏は、最近の植田和男総裁の発言からはインフレ見通しに対して明らかに確信を深めている様子がうかがえるとの認識を示した。』(上記URL先より、以下同様)
じゃあなんであんなに利上げやる気ナッシング発言を会見の最初の方の質疑でするんでしょうかねえ。
『清水氏は19日、「総裁が選んだ、あるいは使った言葉にはややサプライズがあった」と指摘した。その上で、「金融政策決定会合では次の行動について有意義な議論がなされたのだろう」とも述べ、そうした自信が会見での発言につながったのではないかと語った。5月10日に4年の任期を終えて以降、メディアのインタビューを受けるのは初めて。インタビューは英語で行われた。』
>インタビューは英語で行われた
>インタビューは英語で行われた
>インタビューは英語で行われた
どう見ても為替対策です本当にありがとうございましたwwwwwwwwww
『植田総裁は先週開催された決定会合後の記者会見で、量的引き締めの開始となる国債買い入れ減額の具体策を決める7月会合での利上げの可能性を問われると、データ次第では「当然」あり得るとの見解を示していた。清水氏によれば、植田総裁がこのような確実性を示す表現を使うのはやや異例だという。』
そんなんその前に「輪番減額による長期金利の動きも短期金利操作に際して影響する」って感じの本音駄々洩れ発言をしたもんだから慌てて言い直したんでしょ。
とまあそういうことで以下割愛なんですけど、いやーもう日銀為替円安対策必死だな、とクソ笑ってしまう茶番劇なんですが、こういう小賢しい小手先の事ばっかりやってるから底を見透かされるのであって、もっと腹を括って「状況に応じて適宜適切な政策判断を行う(キリリッ」っとドッシリと構えられないんですかねえチキン総裁だから無理かなあ、と思いました。
2024/06/19
〇国会半期報だが参院の質疑で良い質疑(質問)があったのでご紹介
毎度の国会半期報で昨日は参院財政金融委員会での質疑だったのですが、
https://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/index.php
参議院インターネット中継
こちらで日付を昨日で選択していただいて、財政金融委員会をクリックしていただきますと、昨日の質疑内容の動画が見れるのですが、この中で動画の1時間6分くらいから大塚耕平委員(国民民主党・新緑風会)による質疑があるんですよ。
でもってこれが中々良い指摘を行っていまして、頭からでもよいですし、一番良かったところを聞きたい場合は1時間8分の辺り(最初一瞬何の話かと??になるんですけどそれは本題の伏線ですので我慢して聞いてください)から始まるんですが実にいい指摘をしています。
まあ確認して味噌ってお話ではあるのですが、ものすごくざっくりとご紹介すると、今回の輪番減額予告公表に関して、会見で植田総裁が「相応の規模」という説明をしていることに関して、
「相応」という言葉を別のところ(金融システムの頑健性評価)でも使っているけれども、言葉の意味するニュアンスが文脈によって異なるようにしか見えないがそういう言葉の使い方をするのは如何なものか
この「相応」からは「かなりの規模」というニュアンスが読み取れるし、市場でもそういう解釈になっていると考えるが、実際に減額の公表があった際に、その規模が「相応」から期待される規模に対して失望的だった場合に市場が日銀の期待を裏切る反応をするリスクがあるのではないか
そもそも「相応」のような言葉を使うのがおかしい、私(大塚さんは元日銀です)なら「今後の金融政策運営に適合する規模」というような言葉を選んで想定問答を作成する
ってな感じで質問してて、植田総裁回答はしているけど大塚委員のツッコミには回答できませんでしたわ、というところでして、質疑後半においても今の日銀が情報発信で使っている言葉の使い方がこの相応と同様に「粗雑」である、という指摘をしておられました。
・・・・・・いや全く仰せの通りですわとゆーお話ではあるのですが、このパティーンって結局のところ円安コワイコワイネーなもんだから、円安に配慮してなんか威勢の良いことを言ったり、この前のサプライズ輪番減額5.13事件みたいなことを急にぶっこんだりするのですが、じゃあ実際にどうかというと、今回の決定会合がまさにそうですが、輪番減額を実施しますが規模は市場と相談してから決めますよ、って7月に問題の先送りを行った挙句、市場が期待というか予想してた7月利上げに関しては、なんも言わないならまだしも、「輪番減額による長期金利の動向も短期金利操作を決定する判断材料」とか言い出して、7月は輪番減額だけで利上げはしませんよって言ってしまうという期待を大きく下回る所業に出る、というハトハトチキンムーブをする訳ですな、うんうん。
でまあ金曜月曜は欧州リスクオフのせいでごまかされましたが、結局昨日からドル円また158円台だし、米金利下がっても碌に円戻らないで、これで米国の利下げ期待が後退したらドル円どこまで飛んでいくのという事になりますが、そのたびごとに威勢の良いことは言うんだが行動が伴わない、という世が世なら支店の営業会議で激詰めされてしまうダメダメ営業のようなことを(などと書いててなぜか目から汗が出るアタクシorz)してる次第で、まあシバキ倒されても文句の言えないダメダメムーブなんですよね。
〇総裁記者会見を見ても総裁(というか日銀全体というか)に市場に対するセンスが感じませんよね
ご紹介のおまけのつもりだったのにうっかり脱線して長くなったので小見出しつけるが、実はさっきの続きから話が始まりますわ。
まあそんなわけですから、昨日ネタにした総裁記者会見の
https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2024/kk240617a.pdf
総裁記者会見
――2024年6月14日(金)午後3時30分から約65分
『(問)かなり丁寧に進めていきたいということはよく分かったんですけれども、今回動かなかったことによって今日になって円安が進み、158
円台になっているということもあります。この 7 月まで動かないことのリスクについては、総裁どうお考えなのかというのをお伺いしたいのが一つです。
あとは市場の金利形成の自由度を高めるために政策の予見可能性を高めていくというのは、非常に重要なことだと思うんですけれども、それによって市場に事前に政策が織り込まれ過ぎて、それで円安が進む展開のようにもみえるんですが、この市場との対話の難しさについては、今どう感じていらっしゃるでしょうか。』
って質疑に関して、日銀のよつべチャンネルの会見動画を見ますと(これはよつべに行って「日本銀行」で検索してちょんまげ)会見の26分11秒からこの質問が始まるのですが、よくよくこの動画を見ますと回答の際に総裁たぶんこれ想定問答を見ていなくて(少なくとも問答集を繰って探している気配はない)まして、いやこんなの普通に市場の中の人たちが全員思ってるだろうというツッコミ(だからこそ白眉の一つと申し上げた次第)であるのでして、その回答が全然回答になっていないというの想定問答用意してないのかよ何やってるんだと改めて思った次第です。
しかしまあ何ですな、この回答に関しても
『(答)具体案の発表は 1 か月先になるわけですけれども、その間の不確実性を極力避ける意味で、今日は不十分かもしれないですけれども、私どもの減額に当たっての基本的な考え方をご説明しているところです。』
からの、
『もうちょっと長いタームで考えますと、先ほど来出ていますように、どこが最適点か分からないですけれども、望ましい国債保有残高とか超過準備の水準に到達するまでにはかなりの時間がかかることですので、』
と相変わらず「かなりの時間」の話をしている訳ですけれども、この説明もクソ説明にも程がある話で、今問題なのは「輪番減額の規模感」なのに「バランスシートの大きさ」の話に回答をすり替えて説明していることなんですよね。他の質疑でもこういうパターンで回答しているんですけど。
まあ実は今朝は直近の数字でアップデートしたもの作ってないのであれなんですけれども、今の日銀保有国債の構成から計算すると、明日から輪番をゼロにしたとしましても、発行銀行券残高見合いに保有長期国債残高が減少するのに9年とかの規模での時間がかかるのは保有銘柄の銘柄属性を拾って(売買参考統計値で十分拾えるので特殊な装備は不要)エクセルが使えば猫でも計算すれば判る話だし、そんなことは少なくとも円金利やってる中の人で知らん人いないと思いますので、輪番の買入規模が減る話をイシューにする中で「バランスシートが本来望ましい姿(と思われる)水準になる時点までの話」をするのって完全に議論のすり替えになっているんですよね、しかもこのすり替えをすると「かなりの時間がかかる」というハトハトチキン総裁の大好きなやる気なし無しフレーズが使えるというおまけつき。
ですから月6兆円程度の輪番フローをどう減らすかという話と時間軸が全然違う話を持ち出しているのに、上記の説明のに続き、
『ちょっと極端な言い方になりますけれども、短期的に 1 か月、2 か月先になるということ自体のコストはそれほどないというふうに思っております。』
という話をしちゃっていて、これもよく考えたらひどい話で、1か月2か月とか言いながらダラダラ引っ張ることによって誰得円安が進行しているのであって、コストがそれほどない、とか言っているのがもうセンスとして絶望的なのですが・・・・・・・・
なんか話がバンバン逸れてしまいましたが昨日ネタにした会見でやっぱりこれもナンジャソラなのでネタにしますと、本文7ページになりますが、
『(問)(前半割愛、というかそれは昨日ネタにしました)あと二点目は、最近、企業物価指数等みてますと、円安の影響等でまたコストプッシュ型のインフレ圧力が再加速してるようにみえます。また、企業レベルでのサービス価格の動向をみても、「第二の力」の方の広がりが出ているようにもみえます。これを総合すると、基調インフレ、少し上振れ気味になっているのではないかとも思えるんですが、4
月の決定会合以降のこうした物価の動きについて、総裁のご見解をお願いします。』
という質問に対しての総裁の回答では、
『(答)(前半割愛)それから二番目の物価の動きに関するご質問ですけれども、これまで暫く、だいぶ前に始まった輸入価格上昇の国内物価への転嫁に伴うインフレ圧力、「第一の力」については、だんだん減衰してきている。一方で、賃金上昇がサービス価格等に波及するという「第二の力」の部分については、少しずつ上昇してきているという説明をしてきたところで、その点に大きな変更はございません。』
いや円安加速したらまた「第一の力」が出るだろと聞いているのだが変更はないのかよ、って言いたくなりますが、
『ただし、これもおっしゃいましたように、ここのところの円安も含めて、輸入物価等に若干の再上昇の気配がみえる。ある種、「第一の力」の第二ラウンド目が少し始まっているかもしれないというようなところについては、今後、基調的物価上昇の判断をする際に注視してみていきたいと思います。』
ってこの言い方なんですが、「第一の力」って言ってるけどこれ単なるコストプッシュの話で、この力ってディスインフレの均衡を打破するための力としては必要な力かも知れなかったけど、単なるコストプッシュなんだからそれは日銀法の定める日銀の本来の存在意義である国民厚生の向上から言ったらマイナス要因なんだし、だいたいからしてお前らの情勢判断だって「物価高が個人消費を下押ししている」って判断しているんだから、そもそも「第一の力」が再加速したらダメだろという話な訳ですが、このハトハトチキンは「ある種、「第一の力」の第二ラウンド目が少し始まっているかもしれないというようなところについては、」とかのんびりした事をのたまっている訳でして、実はこいつ円安になって下級国民どもが死ぬのとか知らんわくらいの認識で生きてるんじゃないかと邪推したくなるくらいに円安に関して危機意識無いですよねって話なんですよね。
まあそういう危機意識の無さだから「待つことのコストは小さい」って未だに堂々と言える、ということなんでしょうけれども、根本的にこの点がダメだと何やらせてもダメで、とりあえずその場しのぎの舌先三寸だけは言えても本質的にやばいと思っていないという事ですから、そらなんもしませんわ、と頭がくらくら来る次第なのでありました。
なお、そのヤバさに対して日銀お取り潰し危機意識がバネになって宮廷クーデターでも起きて頂いて、このハトハトチキンのウスラトンカチが幽閉されれば話はだいぶ変わって来ますので、主君押し込めムーブを期待したいものでありますが、そういう蛮勇は・・・・
2024/06/17
お題「決定会合レビュー:しかしこの人たちなんも決められないんですかねえ」
まあアレです、決定会合だというのに土日に更新しない時点で(ノ∀`)アチャーって話な訳ですが。(単に先週バチクソ疲れて死んでただけという説はある)
〇決定会合レビュー:7月利上げ予告もしないで減額内容も先送りってナンジャソラ
・輪番減額を政策イシューにした挙句に今回なんも決定できないとかアホなのかお前ら
今回の声明文
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2024/k240614a.pdf
当面の金融政策運営について
『1.日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を、以下のとおりとすることを決定した(全員一致)。
無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0〜0.1%程度で推移するよう促す。
次回金融政策決定会合までの長期国債およびCP等・社債等の買入れについては、2024
年3月の金融政策決定会合において決定された方針に沿って実施する。その後については、金融市場において長期金利がより自由な形で形成されるよう、長期国債買入れを減額していく方針を決定した(賛成8反対1)(注)。市場参加者の意見も確認し、次回金融政策決定会合において、今後1〜2年程度の具体的な減額計画を決定する。』
もうね、お前らなんも決断できないチキンやなという話なんですが、
3月のマイナス金利YCC解除の時に植田総裁こんなこと言ってましたよね。
https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2024/kk240321a.pdf
総裁記者会見
――2024年3月19日(火)午後3時30分から約65分
本文4ページ。
『(答)
一点目ですけれども、今日からといいますか、明後日から始まる金融調節、金融政策枠組みについて、名前を付けるかというご質問だと思いますが、特に名前は考えておりません。先ほど申し上げましたように、短期金利を主たる政策手段とする普通の金融調節になるということだと思います。』(直上URL先3月の植田総裁定例記者会見より、以下しばらく同様)
>短期金利を主たる政策手段とする普通の金融調節になる
>短期金利を主たる政策手段とする普通の金融調節になる
>短期金利を主たる政策手段とする普通の金融調節になる
『それから、長期金利ですけれども、国債買入れは当面これまでと同程度の額で継続致しますが、そのうえで金利水準は市場が決めるものというふうに考えております。ただし、ご質問にもありましたように、市場金利が急激に上昇する場合は機動的なオペを打つということは、バックストップとして担保しておきたいということでございます。』
>そのうえで金利水準は市場が決めるものというふうに考えております
>そのうえで金利水準は市場が決めるものというふうに考えております
>そのうえで金利水準は市場が決めるものというふうに考えております
本文5ページ
『それから、国債を私ども大量に保有していることのストック効果をどう考えるかということが後半のご質問だったと思いますが、これはもちろん、われわれも申し上げてきましたように、ストック効果というものが定量的に何%かというのは難しいですけれども、無視できない影響を長期金利に及ぼしていて、たくさん持ってるということですので、緩和方向の力が働いているということだと思います。これは認識しつつ、しかし、買いオペや残高の調整を能動的な金融政策、金融調節手段としては用いず、主たる調節手段としては短期金利の調節をもって行うというのが今後の考え方でございます。』(ここまでの引用は直上URL先3月の植田総裁定例記者会見より)
とまあ思いっきり輪番をフレームアップしている上に、利上げじゃなくて輪番減額の予告ホームランになるわけですし、さらにトサカに来るのは・・・・・・・・・・・
・な〜にが「市場の意見を確認する」だよ茶番にも程があるわ
(再掲します、今回の声明文から)
『市場参加者の意見も確認し、次回金融政策決定会合において、今後1〜2年程度の具体的な減額計画を決定する。』
とか抜かしているのがボードの責任放棄にもほどがあって、しかも茶番のように
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2024/mpr240614a.pdf
「債券市場参加者会合」の開催について
2024 年 6 月 14 日
日本銀行金融市場局
『日本銀行金融市場局は、本日の政策委員会・金融政策決定会合における決定内容を踏まえ、「債券市場参加者会合」を以下の要領で開催します。』
という話なんですが、
https://www.boj.or.jp/paym/bond/mbond_list/mbond2405.pdf
「債券市場参加者会合」(第 19 回)の開催について
202 4 年 5 月 1 日
日本銀行金融市場局
『日本銀行金融市場局は、「債券市場参加者会合」(第 19 回)を以下の要領で開催します。
1.日 時
銀行等グループ 6 月 4 日 (火) 15 時 45 分から
証券等グループ 6 月 4 日 (火) 17 時 30 分から
バイサイドグループ 6 月 5 日 (水) 16 時 00 分から』
ってつい2週間前にやったばっかりだし、だいたいからして金融市場局の方ではマーケット動向のヒアリングとか普段からちゃんとやっている訳で、これ記者会見でニュースソクラ(ネットメディア)の方が口調は悪いけど実に当然の質問をしていて、「普段から金融市場局が市場の意見を聞いていない、という事では無い筈だからこれは責任転嫁だろ」みたいな趣旨(違ってたらゴメンよ、今日会見録出るけど)の質問をしていて、いや仰る通りですわというお話だし、6月の時点で輪番減額の話が1ミリも出ていないから改めて仕切り直しというのならともかく、3月会合の時点で長期的な減額って話は出ていたのですから、その後長期的な減額についてヒアリングをできなかったという話でも何でもないんですよね。
まあそういうことでして、ついこの前やったばっかりなのにまた会合実施とか金融市場局さんにおいてはご苦労なこったと思いますし、それ以前の問題としてまるで普段金融市場局が市場の意見を聞いていないかのようなこの会合実施っての金融市場局がカワイソスにも程があって同情の念に堪えませんし、マジのマジでこんなのボードの責任放棄というか、なんも決められないのかこのアホウどもは、と思いました。
いやまあこれが声明文で7月利上げ予告ホームランでもしていれば別なんですが、後述のようにそうでもないですし、総裁会見ではむしろ輪番減額による長期金利の影響ガーとか言い出して、輪番減額してその後利下げは様子を見ますと言わんばかり(言っちまったと思ったのかその後の質疑では7月も可能性ありますとは言ってたけど完全にあれはハトハトチキンの本音駄々洩れでしたわな)ですし、金曜は偶々おフランス様などなどの影響でリスクオフになってドイツ様とかの金利が急低下してドルも下がっておられましたので事なきを得ましたが、その後ドルは下がるがドル円は下がらんとかいうチャーミングなことになっているのは後でメモっておきます。
まあもっとそもそも論を言いますと、そもそも「市場の意見を聞く」などという姿勢があるならマイナス金利の解除を昨年の4月か遅くとも7月にやって桶という話でして、散々っぱらマイナス金利解除を引っ張りに引っ張りまくって円安誘導していたハトハトチキンが何を今更「市場の意見を聞く」だよふざけるなお前馬鹿にしてるのかという話でして、どうせ市場の意見通りにやるわけでじゃなくて、どっかの太鼓持ち何とかストが太鼓持ち意見を言ったのをチェリーピッキングするんだろとしか申し上げようがない次第で、なんちゅうかこういう糞茶番に付き合わされるの金融市場局も迷惑だし、そんなに市場の意見を聞きたいんだったら植田お前だお前、お前が出てきて参加者会合メンバー個別に30分づつ膝付め談判してみろやこのチキンが、というところではありますな。
・そんな茶番はさておきまして情勢判断なんですけど現状認識はむしろ下がっていますなあ
まあ輪番減額が利上げとセットなら話はまだ分かるのですが声明文項番2に進みますと、
今回声明文(URL再掲)
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2024/k240614a.pdf
前回展望レポート基本的見解
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2404a.pdf
項番2が経済物価情勢の現状認識と先行き見通しで、言ってみれば展望レポートの中間評価になりますが、
『わが国の景気は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している。』(6月声明文)
『わが国の景気は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している。』(4月展望レポート)
現状判断の総括判断は同じ。
『海外経済は、総じてみれば緩やかに成長している。輸出は横ばい圏内の動きとなっている。』(6月声明文)
『海外経済は、回復ペースが鈍化している。そうした影響を受けつつも、輸出は横ばい圏内の動きとなっている。』(4月展望レポート)
回復ペースが鈍化、というのと総じてみれば緩やかに成長、というのがどcっちがどっちですねんというお話ではあるのですが、総じてみればっていうヘッジクローズが入っているので威勢が悪いのは今回かな。
『鉱工業生産は、基調としては横ばい圏内の動きとなっているが、足もとでは、一部自動車メーカーの生産・出荷停止による下押しが続いている。』(6月声明文)
『鉱工業生産は、基調としては横ばい圏内の動きとなっているが、足もとでは、一部自動車メーカーの生産・出荷停止の影響もあって減少している。』(4月展望レポート)
減少している、と下押しが続いている、のどっちがというのもこれまたわかりにくいんですけど、直近で自動車メーカーさん追加の悪材料あったんだからまあそれも加味したら、一時的と思ってた減少状況が続いていますねアイヤーって感じでしょこれ。
『企業収益が改善するもとで、設備投資は緩やかな増加傾向にある。』(6月声明文)
『企業収益は改善しており、業況感は良好な水準を維持している。こうしたもとで、設備投資は緩やかな増加傾向にある。』(4月展望レポート)
業況感の記載がないのは前回以降に短観がアップデートされていないからです。ここは前回対比同じ。
『雇用・所得環境は緩やかに改善している。』(6月声明文)
『雇用・所得環境は緩やかに改善している。』(4月展望レポート)
『個人消費は、物価上昇の影響に加え、一部メーカーの出荷停止による自動車販売の下押しが続いているものの、底堅く推移している。』(6月声明文)
『個人消費は、物価上昇の影響に加え、一部メーカーの出荷停止による自動車販売の減少などがみられるものの、底堅く推移している。』(4月展望レポート)
『住宅投資は弱めの動きとなっている。公共投資は横ばい圏内の動きとなっている。』(6月声明文)
『住宅投資は弱めの動きとなっている。公共投資は横ばい圏内の動きとなっている。』(4月展望レポート)
この辺みな同じで、
『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(6月声明文)
『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(4月展望レポート)
と来まして物価は、
『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比をみると、既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響は減衰してきているものの、賃金上昇等を受けたサービス価格の緩やかな上昇が続くもとで、足もとは2%台前半となっている。予想物価上昇率は、緩やかに上昇している。』(6月声明文)
『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比をみると、既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響は減衰してきているものの、賃金上昇等を受けたサービス価格の緩やかな上昇が続くもとで、足もとは2%台半ばとなっている。予想物価上昇率は、緩やかに上昇している。』(4月展望レポート)
現実の数値以外皆同じか・・・・・・・・
・先行き見通しなんだが物価の見通しが明示的に展望レポートの期間までの見通しを明確に言及ですな
でもって先行き見通しですが、
『先行きのわが国経済を展望すると、海外経済が緩やかな成長を続けるもとで、緩和的な金融環境などを背景に、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まることから、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。』(6月声明文)
『先行きのわが国経済を展望すると、海外経済が緩やかに成長していくもとで、緩和的な金融環境などを背景に、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まることから、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。』(4月展望レポート)
はいはい同じ同じ。ちなみに展望は本文2ページ部分相当です。
『消費者物価(除く生鮮食品)については、既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響が減衰する一方、来年度にかけては、政府による経済対策の反動等が前年比を押し上げる方向に作用すると考えられる。』(6月声明文)
『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、2024 年度に2%台後半となったあと、2025
年度および 2026 年度は、概ね2%程度で推移すると予想される。既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響が減衰する一方、2025
年度にかけては、このところの原油価格上昇の影響や政府による経済対策の反動が前年比を押し上げる方向に作用すると考えられる。』(4月展望レポート)
こちらの展望は本文3ページの下の方から4ページにかけてになります。数字が入っているのはさておき言ってることは同じですな。でもって気になったのはこの次でして、
『この間、消費者物価の基調的な上昇率は、マクロ的な需給ギャップの改善に加え、賃金と物価の好循環が引き続き強まり中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想され、』(6月声明文)
『この間、消費者物価の基調的な上昇率は、マクロ的な需給ギャップの改善に加え、賃金と物価の好循環が引き続き強まり中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想され、』(4月展望レポート)
とまあ基調的な上昇率とやらのも表現も同じですが、
『「展望レポート」の見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。』(6月声明文)
『見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。』(4月展望レポート)
ここはナンジャソラと思った場所で、まあ従来は確かに「物価安定と整合的な水準に上がる」という予想がされていなくて、3月の声明文で「先行き、見通し期間終盤にかけて、「物価安定の目標」が持続的・安定的に実現していくことが見通せる状況に至ったと判断した。」という話をしていたので、その継続である、と言ってしまえばそれまで何ですけど、よく考えてみると従来の建付けでは展望レポートが先行き3年程度の長期見通し、通常の会合は1年程度の見通しの話をしていたので、いつの間にやらその区別がなくなってやがる(まあ書きながら気が付いたがそもそも3月も展望会合ではない)と思いました。
でですね、今回引き続き「見通し期間後半に物価目標達成と考えられる」が続くのであれば、当然ながら次回の展望レポートの時点で、先般の4月の展望レポートで示された政策金利の修正の話が起こる筈ですよね、という話があるんだがその前にこの項番2にはリスク要因の話があるのでそっちを先に。
・リスク要因はいつも通り
『リスク要因をみると、海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、わが国経済・物価を巡る不確実性は引き続き高い。そのもとで、金融・為替市場の動向やそのわが国経済・物価への影響を、十分注視する必要がある。』(6月声明文)
『リスク要因をみると、海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、わが国経済・物価を巡る不確実性は引き続き高い。そのもとで、金融・為替市場の動向やそのわが国経済・物価への影響を、十分注視する必要がある。』(4月展望レポート)
こちらの記述は展望の1ページの鏡(概要)部分になります。同じですね。
・幻の声明文項番3となったのはどういう意味があるのでしょうかというのがいくつか考えられます
でまあこの声明文は終わっているのですが、これまでって「先行きの金融政策運営」に関する記載が声明文にありましたよね。でもって今回この項番3がすっぽりと抜け落ちているのですが、先行きの金融政策運営に関してはご案内の通りで前回声明文でも実はなくて、その代わりに展望レポートの最後の部分(「4.金融政策運営」の最後)にあたります本文8ページの最後に
『金融政策運営については、先行きの経済・物価・金融情勢次第であり、この点を巡る内外の経済・金融面の不確実性は引き続き高い。以上のような経済・物価の見通しが実現し、基調的な物価上昇率が上昇していくとすれば、金融緩和度合いを調整していくことになるが、当面、緩和的な金融環境が継続すると考えている。日本銀行は、2%の「物価安定の目標」のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営していく。』(4月展望レポート8ページより、6月声明文には該当する記載なし)
この記載に相当する部分、前回は「声明文には記載していませんが展望レポートの方で記載しております」という説明ができたのですが、今回はバッサリ削除になっていまして、これはまあ何らかの意味をもって削除している訳ですな。
ちなみにアタクシ基本的にはFEDのドットプロットですら要らねえと言ってるくらいなので、先行きの政策に関するガイダンス的な文言自体、フォワードガイダンスで緩和効果を出すような必要がない上に構造変化などの可能性もあるこのご時世において、ガイダンスもどきの文言自体要らないというスタンスなので、このばっさり削除自体結構なことで、何なら次回展望でも上記文言のうち前半はいらない(「日本銀行は〜経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営していく。だけで十分)と思っているので、このばっさり削除自体はほほうと思いました。
ただまあ何ですな、この文言って金融政策に関して「以上のような経済・物価の見通しが実現し、基調的な物価上昇率が上昇していくとすれば、金融緩和度合いを調整していくことになるが、当面、緩和的な金融環境が継続すると考えている。」というハイパー意味不明というか、この緩和的な金融環境云々とかいう糞文言によって円安助長していたのでこれが外れるのは非常に結構なのですが、同時に見通し通りなら金融緩和度合いを調整、というのも外れるので、わざわざ項番2の物価のところで「見通し通りに推移している」って評価したことが7月の利上げ予告ホームランにならないという残念な面もあります。
まあ削除したこと自体は良いんですけど、じゃあ今ボードは「当面緩和的な金融環境」なのか、「見通し通りに推移しているから金融緩和度合いの調整(なお3月当初の建付けで言えばこれは利上げを意味するのであって輪番減額は意味しない)」なのかが分からん、ということになっておりますのがまあムツカシねというところですが、ただまあ今日出てくるので明日ネタにしますが、ハトハトチキンおじさんの会見だと前者の「当面緩和的な金融環境」の方に傾いている感じもしますし、一方でこの前の内田副総裁の講演とかだと公社なんですが、まあ不明にも程があるという感じです。
・中村審議委員が正論をぶち込んでいる件について
まあオマケですけど声明文脚注。
『注)賛成:植田委員、氷見野委員、内田委員、安達委員、野口委員、中川委員、高田委員、田村委員。反対:中村委員。中村委員は、長期国債買入れを減額していく方向性については賛成だが、7月の「展望レポート」で経済・物価情勢を改めて点検してから決定すべきとして反対した。』
・・・・・どう見ても正論です本当にありがとうございました。
2024/06/14
〇そういえば今回はお漏らしがほとんど無いということでなーーんだやればできるじゃん
決定会合2日の朝といえば恒例行事になりつつあった某新聞社のWebページ
https://www.nikkei.com/
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB126370S4A610C2000000/
日銀きょう総裁会見、国債減額・円安への言及焦点
金融政策
2024年6月14日 5:00 [会員限定記事]
例によって日経無課金勢(よい子は真似してはいけません)のアタクシは会員記事の部分は読めませんが、特に毒にも薬にもならない記事になっておりまして、お漏らしの気配はない、ということでございまして、なんだやればできるじゃんという大変に素敵な展開になりました。というかこれが本来の姿でしょ。
まあお漏らしがなくなるのはよいことなのですが、そうなりますと別に米国みたいにフリーダムにしろとは言わないのですが、金懇の回数を増やしていただいて、まあできれば四半期ごとに各政策委員の皆さんが「大本営発表」だけではなく「私のビュー」をもうちょっと示すようにしていけば、各政策委員のスタンスとか考えるポイントとかが見えやすくなり、その結果として日銀の政策反応関数が分かりやすくなり、いまみたいなへなちょこリーク(もどき)記事が刀剣乱舞状態にならなくて済む、という事になると思うのよね。
まあ金懇ってその地域の偉い人集めて実施するというロジが無茶苦茶大変な物件になるので、年4回中2回は日本記者クラブとかでの講演会(もちろん読売とか日経とか時事共同とかでもいいんですがあんまり営利団体が主催するのをポンポンと正式行事にするのも中央銀行としては微妙な気がするので)みたいな形式にするなどの工夫は必要だと思いますけど、お漏らし無しのムーニーマンになるのでしたら、各政策委員の意見表明、それもある程度我を出していただく形での意見表明の回数を増やすってのはアリだとおもうので、面倒かもしれないけど検討していただきたいものであります。
〇でまあ今日の決定会合ですけれども本来は無風でよかった会合なんですよねよく考えれば・・・・・・・・
5.13事件以来の流れで「一段の円安阻止」に輪番カードを使う、というもともとお前ら3月の時点で「短期金利操作を使った普通の金融政策をする」って言ってたのと話が全然違うじゃんという流れになってしまい、まあさっきの日経さんにもあるように輪番減額の話が一つのホットイシューになっている訳です。
でまあアタクシもそもそも輪番過大にもほどがあって今の半減でも多いわと思う過激派なので輪番バンバン減らせやとは思いますが、ただまあ3月会合の時点で輪番の政策としての建付けを変更した以上、本来は初回利上げと同時かその後かに輪番を減額する方が筋だと思うのですよね。
つまり、7月に利上げと輪番の中期的減額方向および目先の減額をアナウンスするのであれば、「金融緩和度合いの調整を行います」で済む話ですし、7月に利上げして9月に輪番だけ減額の話をするのであっても、「利上げの影響を確認しましたので今後は輪番を中期的に減らしていきます」って感じであくまでも補助ツールとして扱う、って感じになるんですよ。
然るに、今回輪番を正面切って減らす決定をする、ってことになりますと、明らかに「利上げの露払い」になってしまって一度奥に引っ込めたはずの輪番が堂々と政策のメインツールの一つとして前面に復活してしまう、ということになりまして、これは何ぼ何でもお前ら話が違くねえか、ということになりますし、今回輪番減額の最終形態まで見せて長期的な減額を示す(ちなみにアタクシの推奨は四半期ごとに1兆減額して1年ちょっとかけて月額1兆円まで減らしていく」です)ならともかく、単に「6兆円→5兆円」みたいな形にすると、輪番減額が一々短期金利政策決定と連動する形になってしまって、通常の輪番の上げ下げが全部政策意図と結び付けられて考えられてしまうというはなはだ面倒なことになるんじゃなかろうか、と思う訳なのですよ。
ということで、どうせ当たらないというか死亡フラグな大予想(べき論込み)をすると、今回の決定会合って展望回じゃないから声明文のところで経済物価情勢に対するアセスメントを書くことになると思うんで、声明文のところで「2%物価目標達成に向けた進展は想定通りに進捗しており、達成への確度は一段と高まっており、今後も見通し通りに推移すれば政策金利の調整を検討する」というような感じで、7月会合での利上げの予告ホームランを打つ代わりに輪番に関しては「中長期的な減額を行う場合の具体的な方法やコミュニケーションについて執行部に検討を指示する」という形にして、その代わり今回は何もしない、という風にすれば何とか7月会合で輪番の政策的な立ち位置を再構築できるとおもうのですよね。
何度も申し上げているように、とにかく今の日銀って黒田の途中(具体的にはQQE2からYCC導入までが酷かった)から、そして黒田末期からが完全にそうなっているのですが、とにかくその場を何とかしてやり過ごしたり凌いだりすることばかりやってて、前の話との整合性を丸無視しながら運営していった癖が抜けなくて、足許では輪番オペの扱いがこんなにクローズアップされるとかいう3月に決定した時と全然違う状態にわずか3か月でなってしまっているというすさまじいばかりのロジック崩壊が発生しているんですよ。なので今回次回の決定会合ってその建付けを本来のモノに戻す(あるいは重要ツール2本立てとする、と開き直るのもかなり間抜けですけど一応手としてはあるかも)最初で最後の機会になりますんで、まあどういうのたうち回り方をするのかをニヤニヤしながら眺めていきたいと存じます。
さてどうなるのやら・・・・・・・・・・・・
なお、最初の方で申し上げたと思いますが、コミュニケーションで伝統芸能のチョンボをやらかしてドル円は飛ぶ飛ぶ炎と燃えて、となると日銀が地獄の業火に焼かれながら7月に利上げすることになりますのでまあそれはそれで面白そう(超不謹慎)ですけどね。
2024/06/06
〇輪番減額がすっかりホットイシューになってしまっているのでバランスシートの話をしているボウマン理事の講演でも
日銀の金研国際コンファランスでの講演ですが
https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bowman20240528a.htm
May 28, 2024
The Federal Reserve's Balance Sheet as a Monetary Policy Tool: Past Lessons and Future Considerations
Governor Michelle W. Bowman
At the 2024 BOJ-IMES Conference, hosted by the Institute for Monetary and Economic Studies, Bank of Japan, Tokyo, Japan
『Lessons Learned from Past Uses of the Federal Reserve's Balance Sheet
as a Monetary Policy Tool』って小見出しですけど、こちらが『Post-2008 financial
crisis balance sheet policy』と『COVID-19 pandemic balance sheet policy』って話をしてて、まあものすごくざっくり言ってしまうとGFCの時のバランスシートポリシーはQEではあるけれども市場安定化策でもありましたね見たいな話をしててて、コロナショックの時はGFCの経験から「勢いが大事」という教訓を得たのでGFCの時よりも盛大に資産買入などの施策をしました、という話をしております。
でまあバランスシート政策の話をしているのですが、最初の方は飛ばしまして途中から参ります。
『The pace of asset purchases during the pandemic period was much greater
than in the previous QE episodes. Conditions in the economy and financial
system were also different than those that prevailed following the 2008
financial crisis in significant ways. The stabilizing actions taken by
the Federal Reserve to restore market functioning and to support financial
stability in the first half of 2020, in addition to the much higher capital
levels in the banking system relative to 2008, enabled the financial system
to remain resilient. Credit continued to be available to households, businesses,
and local governments following the pandemic's onset.』
この部分がさっき申し上げた「過去の経験があったのでコロナショックでは勢いよく政策をしました」の部分です。
『The U.S. Congress and the Administration also provided extraordinary
fiscal support in response to the pandemic-which included stimulus checks
sent to households, expanded unemployment insurance, and the Paycheck Protection
Program-that bolstered household and business balance sheets.11 』
これは財政措置の方でやったという形になっているお助けプログラム実施の件ですが、
『The housing market-recently recovered from the buildup of poorly underwritten
mortgage debt in the lead-up to the 2008 financial crisis and a subsequent
steep decline in house prices-remained in sound condition. And as households
and families sought larger living spaces and amenities as they worked from
home during the pandemic, house prices increased sharply.』
なぜか知らんが住宅価格を政策効果のメルクマールにして説明しておりますがこの伏線は間もなく回収されます。
『In hindsight, the sharp contrast between the economic and financial system
conditions during the pandemic period and those following the 2008 financial
crisis raise questions about the similarities in the response of the Federal
Reserve and FOMC to these events. 』
でもって以下、後から考えて政府とFEDの対応がどうだったか、といのを考えないといかんよね、と言っていくつかの論点を提示していまして、
『Was such a strong balance sheet policy response during the pandemic appropriate,
and to what extent did such a strong balance sheet policy response contribute
to the buildup of inflationary pressures and the post-pandemic inflation
surge? 』
やりすぎて余計なインフレ圧力を高めたんじゃないか?
『Given the underlying strength in the housing market, should the FOMC
have conducted such large purchases of agency MBS into late 2021? 』
住宅市場が強い中で2021年の遅くまでMBSの大量購入する必要があったのか?
『Given the strong fiscal response to support spending by households and
businesses and large issuance of Treasury debt, should the FOMC have conducted
such large purchases of Treasury securities into late 2021? 』
財政がバカスカ出ている中でFEDは国債買入を2021年の遅くまで続ける必要があったのか?
『I look forward to our conversation today and to future studies on these
questions, such as those conducted regarding the effectiveness of balance
sheet policies following the 2008 financial crisis.』
でですな、
『My own view is that the FOMC would likely have benefited from an earlier
discussion and decision to begin tapering and subsequently end asset purchases
in 2021 given the signs of emerging inflationary pressures.12 Doing so
would have allowed the FOMC the option to have begun to tighten monetary
policy earlier by raising the target range for the federal funds rate.
』
『While a robust and rapid response by the FOMC was appropriate in 2020,
I think it is worth asking whether such a robust response for so long was
appropriate. The economic and financial system conditions were very different
during the pandemic and included a strongly accommodative fiscal backdrop.』
やったこと自体はよかったんだが、そもそもGFCの時は金融システムのバックストップが脆弱だったから安定化が必要だったけれども、そうじゃない状況下で強力な安定化策を長く続ける必要があったのか、ということは考え直す必要がありますよね、と。
『Could the FOMC have reduced its pace of asset purchases earlier once
it was clear that market turmoil had subsided, just as the 13(3) emergency
lending facilities established in 2020 were allowed to expire and exit
plans developed for those programs? 』
エマージェンシーレンディングファシリティの終了の頃にはすでに経済システム不安的なものは終わっていた(から延長しなかったわけだし)のだからそのタイミングでFEDの買入も縮小できたんじゃないのか?という論点もあるわけで、
『A thorough discussion of these questions will be a useful reference for
the FOMC and other central banks as they consider future use of QE as a
monetary policy tool.』
これですよこれ。いや当たり前の話なんですけど、ちゃんこういうレビューをすることによって、QE政策を将来使わないといけないときに政策ツールとして有効に活用できますよね、って話を思いっきりしている訳で、どこかの中央銀行の多角的レビューみたいにフォワードガイダンスもゼロ金利も国債買入もマイナス金利も長期金利ペッグもリスク性資産買入もなんでもかんでも一緒にして「非伝統的金融緩和は効果があった」とか言ってると将来においてなんの役にも立たないし、挙句にまた将来マイナス金利だの長期金利ペッグだのという狂気の政策をやりだしかねないのですよ、まあ多角的レビューでキャッキャウフフしているハトハトチキンはちょっとボウマン理事の爪の垢を煎じて飲んでいただきたいものです。
『This perspective would be helpful for historical reference when formulating
appropriate balance sheet policy as a monetary policy response to future
episodes when the conventional interest rate tool is near zero.』
ということですな。次にやらざるを得なくなった時のためにレビューをするのであって、ボクのゼロ金利解除は正しかったしクロダくんのQQEは大変正しかったとかいうためのレビューなら百害あって一利もないわけです。
『Another important difference between the FOMC's balance sheet policy
following the pandemic and its balance sheet policy following the 2008
financial crisis was the speed and timing of the subsequent reduction in
the size of the Federal Reserve's securities holdings during the period
of QT.13』
でもってもう一つの話としてはQE巻き戻しのやり方が前回と今回で違いますって話ですが。
『This difference reflects the larger amount of securities purchases compared
to the earlier periods of QE as well as the quite different economic conditions
facing the FOMC at the start of QT post-pandemic. These conditions included
too-high inflation and a desire by the FOMC to tighten monetary policy
through both the federal funds rate and the balance sheet tools』
まあ当然ですが背景となるインフレ状況が違いますねんということをゆうとりますな。
『So far, the rapid and sustained pace of the Federal Reserve's securities
runoff has proceeded relatively smoothly. A useful question for further
inquiry is to what extent during the post-pandemic period has QT served
to further tighten financial conditions.』
なおここからはお前インフレ抑制かなりチョンボしてるのに何ゆうてますねんという感じの話になっているのと時間も押してきましたので、このコーナーの最後まで引用だけしておきます(適当に段落をぶつきりしておきます)
『With the understanding that QT is a tool employed beyond conventional
monetary policy restriction, how does one measure the incremental increase
above the FOMC's concurrent increases in the target range for the federal
funds rate and related forward guidance regarding its policy rate?』
『Evidence to date suggests that QT exerts an independent effect on tightening
financial conditions, though in some cases it may be asymmetric to the
effects of QE.14 Quantifying the effects of QT as well as QE will be helpful
to policymakers in their future deliberations regarding use of the balance
sheet in setting monetary policy.』
うーん謎の理屈。
2024/06/05
〇ブルームバーグがなんか打ってきましたが反応は瞬間芸に終わったようで
昨日の夕方こんなのが
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-06-04/SEJJB3DWRGG000
日銀、早ければ今月会合で国債購入減額を具体的に検討も−関係者
伊藤純夫、藤岡徹
2024年6月4日 18:20 JST 更新日時 2024年6月4日 19:18 JST
→緩やか・段階的な減額方針の公算大、金利形成を一段と市場に委ねる
→市場動向などを直前まで見極めて判断、大きな変動の回避にも配慮
でまあこれ出たときに債券先物下がってそれまで153円60銭台後半だったかな、まあその辺にいたのが153円40銭レベルに下がっておーとか思ってたらしばらくしたら東京引けの51銭の辺りに戻っててまあそうだよねと思いましたが。
毎度おなじみの謎の「関係者」談ですし、まあヘッドラインの時点で「早ければ」「減額を具体的に検討も」ってんですから、これよくよく考えたら市場での「6月会合でなんか出さないとグダグダが一段と悪化する」という見方が基本的にコンセンサスの意見に違いと思う訳で、6月会合で長期国債買入減額方針を明確化して買入の段階的な減額を行う模様、くらいじゃないと円債市場ちゃんのご所望するレベルにならんのよね。
ということで記事になりますが、
『日本銀行は早ければ来週に開く金融政策決定会合で、長期国債の買い入れの減額についてより具体的な方針を示すことの是非を含めて議論する可能性が大きい。複数の関係者への取材で分かった。』
早ければ是非を含めて議論する、じゃあ遅きに失しているし、まあこの時点で「関係者」とやらがこんな話しかしていないようでしたら、市場のグダグダに対して全然危機感を持っていないというのがよくわかるわ、と思う訳で大丈夫かねと心配になります。
『関係者によると、13、14日の会合では月間6兆円程度の買い入れを継続するとしている現在の長期国債の買い入れについて、減額が適切な市場環境かどうかを慎重に見極める。新たな方針の下で購入を縮小する場合でも、市場の大きな変動を回避する観点から、緩やかで段階的な減額の方向性が示される公算が大きい。』(上記URL先より、以下同様)
もともと「現状程度の買入」であって月間6兆円は脚注だったし、何なら4月会合では声明文の脚注から6兆円文言を落としているのですが、結局この「月間6兆円」がデフォになってしまっているのがそもそも論としてアカン奴だった訳ですが、まあ5/13のわけわからん輪番減額攻撃を見ますと現場に勝手にやらせても碌なことにならないのが(過去のYCC時代の市場介入からも)見え見えなので政策委員会でガシガシに決めてやるしかないと思いますが。
何ちゅうかですね、
『関係者によると、日銀は減額によって金利形成を一段と市場に委ねていきたい意向だ。ただ、減額ペースは米連邦準備制度理事会(FRB)のような厳格なものにはならないとみられ、長期金利が急激に上昇する場合には機動的なオペ運営で抑制する方針は維持される可能性が大きいという。』
まあこの関係者とやらがどこのだれかは知らんのでただの関係者という名前の観客席でヤジ飛ばしてるおっさんなのかもしれませんけど、「FRBのような厳格なものにはならない」の次に出てくるのが「長期金利が急激に上昇する場合には機動的なオペ運営で抑制」と来ているのが、ああ日銀って問題の根っこが分かってないなあという話でして、今問題になっているのは「市場局の裁量」って部分でその裁量の発動基準が全く意味不明な発動のされ方をしているから市場が疑心暗鬼になっている、ということなんですよね。
つまりですね、金利が急騰したら介入が入るくらいは皆さん先刻ご承知の話で、減額ペースを明示化したら介入できないとはだれも思っていないのですから、上記コメントのように言ってる時点で問題分かってないわこいつら、となるわけです。
まあこの「金利急騰時の介入」も1回目を入れるタイミングや入れ方(臨時輪番なのか通常の輪番を増額なのか指値オペが飛んでくるのか)によっては5/13事件と同様な「何だこの発動基準は」という事になってしまうリスクは多分にあるんですけどまだやっていないから一応平和を保っているだけのことだったりしまして、とにかくマーケットドミナントプレーヤーが入れる輪番が突如予見可能性がない形で金額変更になる、というのを回避しろという話なんですけれども、まあ上記ブルームバーグ記事を見ますと、どこの馬の骨だかよくわからん「関係者」が日銀の中の人だとしたら、まあこりゃ大丈夫かよ、ってなってしまいますな。
一時輪番をバカスカ減らしていた時代がありましたが、あの時って基本的にYCCがあったのと、それに加えて「隙あらば減額」というのが明示はされていなかったですけれどもオペレーションとして確立されていて、オペ紙で示されていた訳だし、オペ紙自体も毎月でてたのですよね。
ということはですな、まあそうやりたくないのかもしれませんが、これだけ輪番の曖昧さが問題になっていて、しかもYCCの時と違って金利水準の目安だってないのですから、せめてオペ紙の四半期方式でクソ広いレンジというのを改めて、オペ紙は月次で翌月の数値を出す、レンジ出すにしてももっと狭いレンジにして、金利急騰時は臨時オペ入れますよ、というような感じで(ってこれがベストかどうかは分からんけど)で、「平常時の予見可能性を高めろ」ということでありますな、とアタクシが勝手に思っているのですがどうでしょうか。
まあそういうことで書きながら頭の整理をしているというロクデナシのアタクシですが、どうも「関係者談」を見ますと、市場の「輪番の予見可能性」に関する理解と日銀の中の人なのか知らんけどまあ日銀の中の人と強引に仮定しておきますが日銀の中の人の理解にものすごい勢いで齟齬があって、市場の中の人たちって「平常時に突如訳の分からん輪番の上げ下げが飛んでくるようではまともにマーケットメイクや投資判断ができない」とゆうとるわけでして(と思うんだが)、関係者様の方はどうも金利急騰時の対処の予見可能性の方を気にしていて、それがこういう微妙な話に反映されているんじゃないかなあ、という風に思った次第です、まあBBGの「関係者」とかいうわけわからんソースから話を膨らませているので、そもそものソースがアレだった場合はただの的外れ雑談になってしまいますがその時はアタクシを笑ってやってくださいませwww
〇調節年報が出たよ(なお読んでない)
https://www.boj.or.jp/research/brp/mor/mor240604.htm
2023年度の金融市場調節
2024年6月4日
日本銀行金融市場局
これなんで一々頭に(論文)ってつくのかが未だに意味わからんのですがそれはさておき。
全文
https://www.boj.or.jp/research/brp/mor/data/mor240604a.pdf
紙芝居方式の「概要」
https://www.boj.or.jp/research/brp/mor/data/mor240604b.pdf
があるんですけど、まあ月初なんぞに出されますと読んでる暇はないので(貧乏暇なし)斜めよみすらしていないのですが、調節年報の仕様として紙芝居の方を眺めただけだと自分に関連するもの(長期債の人なら輪番、みたいな)以外の話ってやっぱり全文と併用して読んだ方が分かりやすいですし、まあ何ならそっちの市場の人に話聞きながら読んだ方が良いと思います。
と読んでない人が言うのもなんですが、まあ年報の読み方のコツってそんな感じだと思うので一応ご参考になれば幸いです。
〇金研国際コンファランスって日銀の3大やらかし政策ツールの話をしてたのかしてないのか分からん件について
ということでアタクシしつこいので金研コンファランスネタですけどね。
https://www.imes.boj.or.jp/en/conference/2024confsppa.html
2024 BOJ-IMES Conference
Price Dynamics and Monetary Policy Challenges
-- Lessons Learned and Going Forward --
これなんですけど、2日目のお題が
Theme B: Effects of Conventional and Unconventional Policy Instruments
ってなっている訳でして、つまりは非伝統的金融政策の個別政策ツールについての効果もそうだがプロコン比較も含めてお話をする、という事だと思うんですよね。
でまあ相変わらずまだハンドアウトが出てこないから(後日出てくると思う)あれなんですが、最後のパネルの部分に関してはこっちにハンドアウト出てきてないけど、どういう話をしたのかはパネリストの方のページに行くとありまして、ってのこの前もご紹介しましたので重複恐縮ですが、
13:55
Policy Panel Discussion II
Moderator:
Markus Brunnermeier, Princeton University
Panelists:
Michelle W. Bowman, Board of Governors of the Federal Reserve System
Thomas J. Jordan, Swiss National Bank
Loretta J. Mester, Federal Reserve Bank of Cleveland
Isabel Schnabel, European Central Bank
Ryozo Himino, Bank of Japan
ジョルダン総裁に関しては
https://www.snb.ch/en/news-publications/news
を見てもそのあと5月30日に韓国中銀の国際コンファランスで行ったスピーチのテキスト(ちなみにその時のお題は『The
natural rate of interest (r*) as a reference point for monetary policy
- a practitioner's view』しかHPに出てこないので残念無念なのですが、
メスター総裁
https://www.clevelandfed.org/collections/speeches/2024/sp-20240528-forward-guidance-and-monetary-policy-communications
Forward Guidance and Monetary Policy Communications: Use Your Words and Connect the Dots
ということで、非伝統的政策のツールキットに関する話として。フォワードガイダンスとガイダンスもどき物件のSEPでのドットチャートについての話をしております。中身までやってる時間がないのですが小見出しだけ並べますと、
Forward Guidance as a Policy Tool
Challenges to Using Forward Guidance as a Policy Tool
Enhancements to Monetary Policy Communications in Normal Times
とガイダンス政策の話をしていまして、
ボウマン理事
https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/files/bowman20240528a.pdf
The Federal Reserve’s Balance Sheet as a Monetary Policy Tool:
Past Lessons and Future Considerations
ということでバランスシートの話をしているのですが、
Lessons Learned from Past Uses of the Federal Reserve’s Balance Sheet as a Monetary Policy Tool
(ちなみにこの小見出し部分でPDF8ページ分以上あります)
Future Considerations regarding the Federal Reserve’s Balance Sheet Policy
という小見出しですな。
シュナーベル理事
https://www.ecb.europa.eu/press/key/date/2024/html/ecb.sp240528~a4f151497d.en.html
The benefits and costs of asset purchases
こちらは資産買入の話をしておりまして、これがまあ一つミソでもあるんですけどまずは小見出し
Why central banks use asset purchases
How do asset purchases work?
Asset purchases are powerful in periods of stress
Effects of asset purchases are weaker outside crises
The impact of QE on the economy is state dependent
Taking stock of the costs of QE
QE increases the risks of central bank losses
Long periods of QE may adversely affect market functioning
QE poses financial stability risks and may exacerbate inequality
Reversing the effects of QE may take a long time
Conclusion
ということで小見出しが親切設計にもほどがあって何となく何を言ってるのかが分からんでもないくらいの細かさなので思わず読みたくなってしまう(ということで読んで味噌)のですが、シュナーベル理事のこの「非伝統的政策のツールキット」の話でおもろいのは、明示的にプロコンの話をしている(まあそんなに精緻なプロコン分析してるわけではないですけど)のに加え、「最初から最後までマイナス金利の効果と副作用の話はスルー」というのが味わいが深いなと思いました。
でまあ昨日も申し上げましたが、日銀の場合はマイナス金利、長期金利ペッグ、満期のないリスク性資産の大量購入、という品の無い3大悪徳政策を実施した訳ですが、マイナス金利に関してはECBの方がむしろ先駆者なんだからなんか言えよと思うのですが、まあプロコンで見たら碌なもんじゃ無かった、ってことで日銀もマイナス金利やったから今回は触れなかったのかね、とか思いながらこのシュナーベルさんの小見出しを見ると味わいを感じるわけです。
然るに、日銀ちゃんこの前の多角化レビューにおいても弊駄文では30回くらいは申し上げましたように、3大下品悪徳政策も、一般的で他国もやってた非伝統的政策も全部まとめて「非伝統的政策は効果がありました」で済ませているのって何なの、というお話なんですが、逆に植田さんがこの3大下品悪徳政策をぶっこんだわけじゃないんだから、なんでこの悪徳政策のプロコンについての分析をしないのか、ってのが不思議で不思議でしょうがないんですよね(雨宮さんだと「お前がやった政策だろ」と特大ブーメランが眉間をたたき割ってしまうのでよーできんというのはまあ話としてはわからんでもないのですけど・・・・・)。
とまあそういう話で、多角的レビューにしても今回の金研コンファランスにしてもなんでそう過去の政策ツール分析から逃げを打っているのかというのが疑問だな、という昨日の話をさらに焼き直したような話になって恐縮ですが、まあそんなこんなでちょっともにょってしまう今の日銀のスタンスなのでありまする。
2024/06/04
〇債券市場機能度上昇ってマイナス金利解除してるので当然ですが・・・・・
https://www.boj.or.jp/paym/bond/bond_list/bond2405.pdf
債券市場サーベイ
<2024年5月調査>
回答期間:2024年5月1日〜5月9日
調査対象先数:71先
(「調査対象先数」は、国債売買オペ対象先のうち調査協力を得られた先、および大手機関投資家<生命保険会社、損害保険会社、投資信託委託会社等>)
ということで前回が2月で、1月の決定会合を受けて3月か4月にはマイナス金利解除あるでという話になっていた時期なのですが、それにしてもマイナス金利だった訳で、さてどうなったかと言いますと、
機能度判断DI(現状) 前回 -29 ⇒今回 -24
(3か月前と比べた変化) 前回 -5 ⇒今回 +7
ということで改善してますよ良かったですねというところですが、マイナス金利解除しても全然変わらなかったら涙出てしまいますので改善してくれないと困ります。
・・・・とは言いましても3枚目の時系列グラフ、『参考図表:機能度判断DI』を見ますと、黒田末期の物価上昇局面&金融政策修正(当初はYCC修正)期待の盛り上がりからおっぱじまった日銀の市場介入開始からバンバン下がって、YCCの最初のレンジ拡大とその後の超越大介入で市場機能度サーベイ値ってボトムを迎えまして、その後足元に向けて戻ってはいるのですが、よくよく見ますとマイナス金利時代の長期国債市場への大介入大会開始前の水準をまだ回復していない、というのが悲しさ満点であります。
これしかも回答期間を見ますと見事に5/13のサプライズ輪番減額の前という計ったようなタイミングになっておりまして、別に示し合わせたわけでも何でもないのは重々承知しておりますが、結果的にあまりの面白タイミングになっている辺り、日銀の伝統芸能が脈々と生きているなあと感心してしまいました(ニヤニヤ)。
個別の方(『(2)債券市場の機能度・流動性に関する各論』)を見ますと、
@貴行(庫・社)からみたビッド・アスク・スプレッドについてご回答下さい。
A貴行(庫・社)からみた市場参加者の注文量について、板の厚み(注)等を念頭においてご回答下さい。
B貴行(庫・社)の取引頻度についてご回答下さい。
C貴行(庫・社)の実際に取引した相手の数についてご回答下さい。
E貴行(庫・社)の概ね意図した価格で取引ができているかご回答下さい。
の各項目が改善しているのですが、
D貴行(庫・社)の取引ロット(1回あたりの取引金額)についてご回答下さい。
が改善していないというのはちょっとだけ気になりました。まあこの時点だとマイナス金利解除したものの輪番も減らないし発行は減るし植田さんは相変わらずのハトハトだし、ということでそもそも論として相場がまだ落ち着いていた時だったので、売買自体をそんなにガッツリとする必要がない時間帯だったということを反映しているだけかもしれませんけど。
まあこれをもし先週にやってたらどうなのかって思いますけど、たぶんスプレッドが拡大して売買のアベイラビリティが下がって、という感じになるんじゃないですかねえ。
〇内田副総裁の金研国際コンファランスの基調講演の中身の方をちょっと読んでみますとですな・・・・
あ、HTML版の本文がアップされていますね、ということで基本的にHTMLから引用します
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2024/ko240527b.htm
【講演】
わが国における過去25年間の物価変動
日本銀行金融研究所主催2024年国際コンファランスにおける基調講演の邦訳
日本銀行副総裁 内田 眞一
2024年5月27日
なおモノホンはこちらですがめんどいので基本日本語から、英文引用した場合(結局しませんでした笑)はこちらからです
https://www.boj.or.jp/en/about/press/koen_2024/ko240527b.htm
[Speech]
Price Dynamics in Japan over the Past 25 Years
Keynote Speech at the 2024 BOJ-IMES Conference Hosted by the Institute for Monetary and Economic Studies, Bank of Japan
UCHIDA Shinichi
Deputy Governor of the Bank of Japan
May 27, 2024
とりあえずこの前は冒頭と最後の例の「This time is different」のところだけ読んで「これは植田総裁の冒頭挨拶を思いっきり粉砕に掛かっている鬼講演」という感想を述べさせていただきましたが、あの日の債券市場の反応に関しても植田さんのあいさつでは碌すっぽ反応しなかったくせに内田さんのこの講演出た(のは昼休み)後の後場寄りから債券市場華麗に下落した、という植田さんにとっては無慈悲な反応を示していたのはご案内の通り。
でもって目先の市場というか目先の金融政策修正おかわりに関してはあの講演って最初と最後だけ見てりゃ無問題なのですが、もうちょっと金融政策のロジックについて考える場合は中身も読んでおかないと、ということで時間たってしまいましたが中身の方を鑑賞の巻です。
・原因の原因に言及しないとか途中の政策で「ほかにやりようがあったのか」を言及しないのですね
『2.日本のデフレの原因』って見出しの部分ですけどね。
『資産バブルの崩壊と慢性的な需要不足』ってのが最初の小見出しでして、
『そのためには、まず、1990年代にまでさかのぼって、日本のデフレの原因を探ってみる必要があります。デフレが生じた背景として、実体経済面では、日本経済が、「成長トレンドの低下」と「慢性的な需要不足」という2つの事象を経験した点が挙げられます(図表2)。』
からの、
『そうなった原因は複合的なものですが、最も重要な要因は、1990年代初頭の資産バブルの崩壊だと考えられます。』
というのには全く異論はないのですが、この先って
『バブル崩壊後、金融システムの混乱や、企業部門における痛みを伴うバランス・シート調整のプロセスが生じました。企業は、過剰設備、過剰雇用、過剰債務への対応を余儀なくされました。こうしたもとで、企業は、次第にリスクテイクに慎重になり、新興国の台頭に伴うグローバル化の潮流に対応して、自らの事業展開を迅速に変化させることができませんでした。貯蓄投資バランスをみると、企業部門はこの頃から貯蓄超過に転じました(図表3左パネル)。また、企業は限られた資金の大半を海外投資に振り向けました(図表3中央パネル)。この結果、国内資本ストックの蓄積および労働生産性の上昇率が低下し、潜在成長率が下がりました(図表3右パネル)。』
ってサラサラと説明しているのですが、そもそもバブル崩壊がなぜ起きたかといえばバブルをじゃんじゃん発生拡大させたその前のマクロ政策の行きすぎが問題なのですから、それって資産価格は上がるわおまけに物価まで上がっているのに短期政策金利をゼロ近辺に維持して、財政は垂れ流しという政策を依然として続けている今にだって話が通じる可能性大ありなのに、そこは完全にスルーするのがお茶目ですね。
でまあこの中にISバランスの話がありますが、これとて「企業が貯蓄超過に転じました」なのですけれども、その反対側で財政をバカスカ打っていた訳でして、それが企業の貯蓄超過にマクロ的にはつながっている話でありまして、そう考えると当時財政をバカスカと打ちまくって居たのが本当に適切だったのか(=と書くと財政出すなと言ってるのかとツッコミをされそうなので言っておくと「出すにしてもやりようがあったのでは」という意味ね)というお話になるわけですよ。
この講演もそうなんですけど、多角化レビューのこの前のワークショップでのスタッフ報告の紙芝居でもそうなんですけど、今回って金研国際コンファランスではありますが、内田さんの基調講演のお題が「過去25年」ってなっているから多角化レビューの一環のとりまとめみたいな感じのするお話になっているんですけど、読んでて非常に気になるのは、(1)現象面の説明はしているのですがその間の政策対応に関しての詳細な評価がない、(2)そもそも原因についての考察を敢えてしていないし、人口動態などのいうなれば対処不能な話をメインに持ってきている、(3)1番と同じちゃあ同じですけど、金融政策運営に関しての説明が雑で、本来はツールキットごとに、そのプロコン評価をすべきところを多角化レビューWSでの紙芝居では「非伝統的金融政策」、今回の内田さんの基調講演では「高圧経済アプローチ」で一緒くたにしているというかなり雑なくくり方をしている、というのが気になるわけですよ。
つまりですね、非伝統的政策ったってフォワードガイダンスあり大規模資産買入あり、資産買入の中にも長期国債の他の物の買入あり、加えてマイナス金利があって、長期金利ペッグ政策もあったわけで、この中のツールキットの中でプロコン考えたら結果的に見たら本来やる必要がなかったんじゃないのか、という政策があるはず(まあマイナス金利と長期金利ペッグと満期のないリスク性金融商品の買入ですけどね)なのですが、そういう検討を一切したくありません、という気概が多角化レビューでも満艦飾だったのですが、内田さんのこの講演も物価の話がメインとはいえ、政策に関して「高圧経済アプローチ」(後で出てきます)で一緒くたにして政策ツールの評価をしない、ってのが日銀大丈夫かというか、これ将来に禍根を残す(効いたことにされてまたマイナス金利だの長期金利ペッグだのやられたらたまらんわ、ということですな)んじゃなかろうか、と心配するところではあります。
『こうした中、自然利子率(r*)は、他国対比で、より早くかつより大きく低下しました。よく知られているとおり、r*を計測することは容易ではなく、足元の推計値も、モデルによって、-1.0%から+0.5%の範囲でばらついています(図表4)。ただ、いずれにしても、わが国のr*は低く、かつ、趨勢的に低下してきたことは確かです。そうでなければ、この20〜30年間に起きた事象を説明することはできません。』
まあ自然利子率の話は話として面白いのと、政策先にありきの後付け屁理屈に強力な効果を発揮するという便利な道具でありまして、国際コンファランスで学者相手だからまあこの自然利子率の話はしてくるかなと思えばやはりしておりました。
・労働市場の構造で説明するのはなんかそれ妖刀っぽい理屈ですよね
次の小見出しが『人口減少・高齢化と自然利子率の低下』でして、
『バブル崩壊に加え、人口減少・高齢化もr*の低下に影響した可能性があります。人口動態がr*に及ぼす影響は理論的にも単純ではありません。r*は、一人当たりGDP成長率に関連付けられることが多いですが、労働投入の変化と経済規模の変化が同じペースであれば、人口減少がr*を低下させるわけでは必ずしもないはずです。もっとも、従属人口比率が上昇すれば、一人当たりGDP成長率は低下することになります(図表5)。』
ということで少子高齢化が自然利子率の押し下げに寄与した、という話をして構造問題に持って行っているのですけれども、だったらお前ら2013年に「物価はいついかなる時も貨幣的現象だから金融政策で2%の物価安定目標を達成するのは世界標準の金融政策」とか言ってたのは何だったのかと小一時間問い詰めたい訳です。
『この従属人口比率の問題に対する解決策は明らかで、長く働けるようにすることです。この点、シニア層は昔よりもはるかに健康であるわけですが、2010年代に入るまで、このことは一般的にならず、シニア層の労働参加率は、2012年頃になって、ようやく上昇し始めました(図表6)。その時期、QQEやその他の政策による積極的な経済刺激のもとで、わが国は、バブル崩壊後初めて、人手不足を経験するに至りました。つまり、それ以前は、企業がシニア層の労働力に頼る必要が必ずしもなかったということです。』
って説明しているんですけど、単純に「働かないと生活厳しい高齢者が増えただけ」とかそういう可能性はないのかと思う訳でして、高齢者の労働参加率が趨勢的に増えているのを「金融緩和などの政策による経済刺激によるもの」って単純化して良いんですかねえ、と申し上げたいわけで、この説明も全然ロバストには見えない。(図表6というのは最初のHTMLのところにある図表のPDFへのリンク踏んで見に行ってください)
『ご存じのとおり、日本は高齢化が最も進んだ国の1つです。2019年に日本がG20の議長国を務めた際にも、「高齢化」は優先的な検討事項の1つでした。出席者たちが様々な角度から議論してたどり着いたのは、当然とも言える結論ですが、高齢化の影響は複雑だ、ということでした。シニア層がライフサイクルに応じて貯蓄を取り崩すのであれば、r*は上昇するはずですが、一方で、人々がいわゆる長生きのリスクを強く意識する場合には、若いうちからより貯蓄し、老後も取崩しペースを抑えることになります。私は、人口減少・高齢化自体が問題であると言いたいわけではありません。むしろ、人口減少・高齢化に起因する問題に対して、社会がうまく対応できなかった、あるいは、対応が緩慢であったようにうかがえる、ということです。』
とこのように滔々と説明しているのですが、これって「物価は常に貨幣的現象だから以下同文」と言って「期待に直接働きかけるためにその裏付けとなる異次元の金融緩和を行う」と称してQQEをおっぱじめたことと全然違う話をしている訳でして、いや今更何をゆうてますねんという感じなのですが、
『わが国では、人口問題はネガティブな意味合いで議論されることが多いように思います。企業は、需要サイドに注目して、国内市場の縮小を心配する傾向が強かったですが、一方で、人口減少は労働力の減少も意味します。もっとも、こうした労働供給サイドの含意は、デフレ期には、あまり意識されてきませんでした。これは、企業にとっては、ある意味当然のことで、自社の雇用を過剰だと考えていたからです(図表7青地部分)。この点については、後ほど触れたいと思いますが、ここでは、労働市場が鍵であるとだけ、申し上げておきます。』
ということで「労働市場が鍵」ということで「ワシらのせいじゃないもんね」という話をしている訳で、いまさら何を言い出しておりますのやら、という話ではありますな。
・高圧経済アプローチにマイナス金利だの長期金利ペッグが必要だったのかという点は丸無視ですかそうですか
でまあこの先いろいろとあるのですが時間が無くなってきましたのでかっ飛ばしまして、いきなり『4.デフレ的な状況からの脱出』にワープしますね。
『こうした状況から抜け出すためには、2つのことが必要でした。第1に、デフレのそもそもの原因、すなわち、需要不足とその結果として生じた過剰な労働供給という問題を解決しなければなりません。第2に、メニュー・コストの閾値を超えること、より根本的には、デフレ的なノルムを克服しなければなりません。』
相変わらず「メニューコスト」を一般的な経済学での使い方と違う使い方しているの何なんでしょと思うのですがその辺はかっ飛ばした部分にありますので興味のある方はご覧あれ。
『前者に関しては、QQEやその他の緩和的な金融政策手段が、政府による様々な施策と相まって、経済に強力な刺激効果をもたらし、女性やシニア層を中心に500万人以上の新規雇用を創出しました(図表20)。これらは、基本的には、高圧経済の戦略です。』
でた高圧経済。
『図表21が示す通り、QQEの時期の労働市場では、雇用者報酬の前年比が概ね2〜3%で安定的に推移していました。その内訳をみると、感染症拡大前までは、雇用者数の伸び(青棒グラフ)がけん引するかたちでしたが、その後は、女性やシニア層による追加的な労働供給の余地が限られるもとで、賃金の上昇(白棒グラフ)がけん引するかたちに変わりました。このように、感染症拡大以降、労働市場の構造は変化したと考えられ、この先も賃金は上昇していくとみています。』
というのは良いんですが、この説明って結構雑な話でして、じゃあ裏を返せば少子高齢化が継続していないとデフレに戻ってしまうんでしょうか、ってなもんでして、労働市場の構造が変化したからデフレ脱却という説明は、少子高齢化人口減少を是認しているって言われかねない妖刀の理屈なんですよね。
でもってこの次がまたアレでして、
『また、このことは、裏を返せば、2013年にQQEを始めたときには、日本経済にはまだ大きなスラックが残っていたことを意味します。』
は??
『その当時は、女性やシニア層からこれほどの規模の追加的な労働力が供給されることは、予想されていませんでした。』
おいこらちょっと待て何今更後出しじゃんけんで「僕悪くないもん」になるんだよ。
『もちろん、この事実は、わが国の人口動態についての課題に対処するうえでは、好ましいことです。また、別のタイプのスラック、いわば隠れたスラックとして、顧客に対する過剰なサービスを、企業が無償で提供していたということも挙げられます。これは、個々の企業に雇用面の余剰があってこそ可能になったことです。日本銀行は、10年間にわたって経済に高圧をかけ、ようやくこうしたスラックはなくなっていきました。』
何ちゅう屁理屈という感じですし、そもそも「高圧経済アプローチ」が正しかったとしても、それはQQEやらマイナス金利やら長期金利ペッグやらを行ったことに対して費用対効果を考えたときに正しかったかという設問の回答にはなっていない訳で、通常の低金利政策の長期化(と何なら長期国債の多めの買入)でよかったんじゃないか、という話を丸無視しているんですよねこれ。
それってこの前の多角レビューのWSでの日銀スタッフ紙芝居でもそういうのがあって、「非伝統的緩和」ですべての政策を一緒くたにして効果があった、って説明になっていて、何のための多角化レビューやってるんだよと小一時間問い詰めたいしょうもない紙芝居出しやがってコノヤローと思ったわけですが、この内田さんの説明も政策ツールのプロコン分析を全然しないで「高圧経済アプローチを10年(ふつうそんなに掛からんので高圧経済じゃなくて単に人口減少と一段の少子高齢化による構造変化が効いただけではないでしょうかねえ)かけてスラック解消」とかいう屁理屈も根っこは同じでして、この雑なレビュー何とかしてくださいってなもんです。
まあそんなわけで、これ結局のところ黒田緩和の問題点を指摘する気がない、って話につながる(それこそ今の円安は長期金利ペッグが出口になって起こす弊害なのにそれを絶対言おうとしないのが今の日銀)のですからして、そこがベースにあるとお前ら正常化プロセス大丈夫かってのと、どこかで通貨安爆発しないかってのが不安になって来ますな、というのがこの内田講演のもう一つの含意だと思いましたがどうでしょうかしら。
ということで本日はここで勘弁。
2024/06/03
〇金曜日の債券とか短国とかそのへんの備忘メモと雑感
・うーむ金利上がっちゃうのか(海外で戻ってくれましたが)
あ、ちゃんと[マーケットアイ]を入れてくれましたね(なぜなら毎度マーケットアイで検索しているから)
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/GST3DTBCY5OCLCJEW4KPUYZLOE-2024-05-31/
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は反落、長期金利1.07% 超長期債金利に上昇圧力
By 坂口茉莉子
2024年5月31日午後 3:21 GMT+9
『[東京 31日 ロイター] - <15:13> 国債先物は反落、長期金利1.07% 超長期債金利に上昇圧力
国債先物中心限月6月限は、前営業日比21銭安の142円99銭と反落して取引を終えた。新発10年国債利回り(長期金利)は同1.5bp上昇の1.070%。現物市場で超長期ゾーンを中心に金利上昇圧力がかかった流れが波及し、国債先物は弱含んだ。』(上記URL先より、以下同様)
木曜は2年国入札の前に前場から10年1.1%とかやってたらさすがに反動が来まして、ついでにアメリカン金利が下がって戻ってきたから金曜は輪番あるしエクステンションあるし、とか思っていたのにこれである。
『前日の米長期金利が4.55%付近まで低下した流れを引き継ぎ、国債先物は小幅高で始まった。その後、現物市場で超長期ゾーンを中心に金利が上昇。これを受けて、長期ゾーンも金利上昇圧力がかかったほか、国債先物もマイナス圏に沈んだ。後場に入り、超長期ゾーンは一段と金利が上昇。「業者のポジション調整が入ったようだ」(国内証券債券セールス担当)という。ただ、同時に「月末の年金勢による年限長期化の買いが入ってきているとみられ、相場は下げ渋っている」(同)との声が聞かれた。』
輪番の長い方がいまいちで後場になってからホイホイと売られましてなんのこっちゃという相場になっておられた訳ですが、日銀の政策先行きが不透明だの輪番が不透明だの、とかいうのが後講釈的にはネタになっているのですが、さすがにどこまでも売り(というか買い控え」をこのネタで引っ張るのはどうなんでしょうかねえとは思うのですが、日銀の政策がどうしたこうした、というのが買い控えの言い訳に使われているなあと金曜は短国の結果とかも見てても思ったりする次第なのですが、先週末にネタにした安達審議委員の記者会見での発言などから類推にするに、日銀大本営ちゃんってオペの機動性とか自由度に固執しておられるなあ、というのが見て取れまして、うーんだからそれが買い控えを招いているんだよな、ってのに対する認識が足りんのとチャウのかとは思ってしまいます。
・一方で3M短国は今回もまた先週より強いという恐ろしい結果
https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20240531.htm
国庫短期証券(第1234回)の入札結果
『本日実施した国庫短期証券(第1234回)の価格競争入札及び国債市場特別参加者・第T非価格競争入札について、下記のように募入の決定を行いました。
記
1.名称及び記号 国庫短期証券(第1234回)
2.発行根拠法律及びその条項
財政法(昭和22年法律第34号)第7条第1項、財政融資資金法(昭和26年法律第100号)第9条第1項並びに特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)第83条第1項、第94条第2項、同条第4項、第95条第1項、第136条第1項及び第137条第1項
3.発行日 令和6年6月3日
4.償還期限 令和6年9月2日
5.価格競争入札について
(1)応募額 15兆6,754億8,000万円
(2)募入決定額 4兆4,040億4,000万円
(3)募入最低価格 99円99銭0厘5毛
(募入最高利回り) (0.0381%)
(4)募入最低価格における案分比率 15.7949%
(5)募入平均価格 99円99銭2厘1毛
(募入平均利回り) (0.0316%)』
ということでですね、金曜の3Mなんですが3.16bp/3.81bpという結果になったわけですが、
31日の3M(1234) 3.16bp/3.81bp(9/2足)
24日の3M(1233) 4.01bp/4.21bp(8/27足)
17日の3M(1232) 4.13bp/4.81bp(8/19足)
10日の3M(1230) 4.76bp/5.35bp(8/13足)
ってな訳で、3M(13週間物)なので後に行けば行くほど7月会合跨ぎ以降の時間帯の方が長い、という債券になっているのに、7月利上げ観測が何ぼのもんじゃいという金利低下を毎回示していまして、特に24日に関してはショートカバー祭りになったのか入札当初は2bp割れの引値とかになったりしまして(後述しますが先週金曜のはそこまで引けでは行ってないです)、担保ニーズの玉とかも含めて皆さん金利リスク取りたくないでござるの巻で2年すら要らんわ短国じゃ短国、ということで短国に来るもんだから(という理解なんだが違ってたらゴメンチャイ)短国の金利だけは利上げ織り込みが剥落してきているようなお値段になっているのですが、これはまあ短期金利と勝負しているわけではないニーズによって強いんだからシャーナイというものです。
なので売参ちゃん見ますと、
https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html
国庫短期証券1211 2024/08/13:平均値単利 0.030
国庫短期証券1230 2024/08/13:平均値単利 0.030
国庫短期証券1232 2024/08/19:平均値単利 0.030
国庫短期証券1176 2024/08/20:平均値単利 0.037
国庫短期証券1233 2024/08/26:平均値単利 0.030
国庫短期証券1234 2024/09/02:平均値単利 0.030
国庫短期証券1236 2024/09/09:平均値単利 0.030(今週金曜に入札される3Mの新発WI)
国庫短期証券1217 2024/09/10:平均値単利 0.055
国庫短期証券1183 2024/09/20:平均値単利 0.055
1年短国の成れの果て(1176と1183)と6か月短国の成れの果て(1217)の単利が3M短国から引いたカーブから見てナンジャソラで一応売買参考統計値と名乗ってるんだからもうちょっと何とかならんのかとは思うには思うのですがそれはまあさておきまして、今の短国ちゃん、基本的に足元から3Mカレントまで売参ベースでは3bpで並んでいて、7月決定会合とか全く無関係という面白カーブになっている訳ですが、短国で毎週どばーっと発行されているの3Mなので、この利上げ何ぼのもんじゃい状態を引き起こすのは短国への物としてのニーズが強い即ち資金がドンドン疎開してきているというわけですので、日銀がちゃんとした予見可能性およびロジカルな政策金利パスの考え方や輪番に関する考え方を示して、いま疎開ブーム状態になっているのの反動来ないですかねという話になるんですが。
ああそれからどうでもよいのですが売参の利付の方
中期国債 438(2) 2024/07/01:平均値単利 0.064
中期国債 439(2) 2024/08/01:平均値単利 0.073
中期国債 141(5) 2024/09/20:平均値単利 0.088
・・・・・・まあこの辺の銘柄は短国対比流動性全然ないのは存じ上げておりますし、2年や5年の金利が上昇しているからということでカーブ引くと引っ張られてしまうのも分かるのですが、いやあの売買参考統計値を名乗っている以上はもうちょっと短国との整合性というものを考えて頂いたほうがよろしいんじゃなかろうかと思うのですが(ここもと中期がよわよわなのでカーブ上引っ張られてしまっておられるんですよねえ)。
まあ何はともあれ、短国引き続き(長いところから見た場合の)金利リスク回避の人気を集めておられる、と思われるムーブを示しているのが(そりゃ10年20年とかから見たら金利リスク無いようなもんですから足元金利との勝負の短期の人から見たら太刀打ちできませんわこのムーブ)かなり露骨に見えてきておるわけでして、これこの後雑感っぽく書きますけど、6月の金融政策決定会合での情報発信って非常に大事になっている(正直アクションの方はどうでも良くて情報発信が大事だと思うの)んじゃないのかね、って思います(あくまでも個人の感想です)。
なお東京レポレートちゃんですけど。
https://www.jsda.or.jp/shiryoshitsu/toukei/trr/index.html
2024/5/29 0.047 0.051 0.057 0.058 0.058 0.058 0.083
2024/5/30 0.039 0.033 0.055 0.058 0.058 0.057 0.083
2024/5/31 0.018 0.071 0.056 0.058 0.057 0.057 0.085
月末月初が先月は3日あったので、ただでなくさえ月末要因下がりやすいに輪をかけて末初のGCレートが下がったのですが、一応東京レポレートベースでは月末明けのレート上がったことになっておられますな。まあ3Mあれだけ堅調だとマーケットメーカーの持ちにあんまりなっていない気もせんでもないのですが、まあ今週は6Mもありますのでどうなんでしょうね、とか言っているうちに地味に3Mは8.5bpですかそうですか。
〇オペ紙は順当に前月と同じになりましたのですが決定会合でのコミュニケーションだいじだいじネー
みんな大好きオペ紙
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2024/mpr240531c.pdf
長期国債買入れ(利回り・価格入札方式)の四半期予定
(2024年4〜6月)[一部変更]
1年以下: 1500×1 (前月1500×1で変わらず)
1-3年: 3000-4500×4 (前月3000-4500×4で変わらず)
3-5年: 3500-5000×4 (前月3500-5000×4で変わらず)
5-10年 4000-5500×4 (前月4000-5500×4で変わらず)
10-25年: 1000-2000×3 (前月1000-2000×3で変わらず)
25年超: 500-1000×2 (前月500-1000×2で変わらず)
物価連動: 600×1 (前月600×1で変わらず)
ということで今回はレンジ変更なし。5-10年の買入は4250なのでレンジの中央よりも低い数字になっていたのですが、追認でレンジを変更することもなく、という結果になりましたが、まあここで5-10を中心4250になるようにレンジいじってきたら流石にそれはインパクト大杉栄になりますので、そらいじらんわというのがコンセンサスだったと思うのでコンセンサス通りだったと思います、知らんけど。
・・・・・・・でもってオペ日程的には6月会合まで2回、会合後に3回ってな日程になっていてこの前札割れしてた1-3年の買入は7日と12日に入っていますが、これ7日の輪番で1-3どうするんでしょうかねえ。
需給状況を勘案したら、という意味ではこの前の1-3が札割れなんですから減額しても全然おかしくないというか、減額しないと逆に10年なんでこの前減額したのって話になるのですが、まあ謎ですわな(たなたま札割れした程度で一々減額することはあろうかいやありません、という考えにも百理くらいあるので)。
まあそれはそうとしてさっきの雑感の続きなのですが、とにかく足元で「日銀が何しでかすかがまるで読めない」というのを大義名分にして、というか何しでかすのか分からん状態の日銀がいるのにそんなときに金利リスク取って逆行ったら末代までの語り草になってしまいかねませんからねえ、という事で金利リスク回避の面々が多いと思われる状況なのですから、とにかく輪番にしろ政策金利にしろ、もうちょっとこう筋道立ったロジックで動いて頂く、輪番の減額に関してもできるだけオートパイロットに近いような考え方、というのを出していただかないといつまでたっても「金利リスク回避ムーブ」が収まらないと思うのですよ。特に木曜にさすがにコツンと行ったかなと思ったら(抜けはしなかったけど)結局また金利上がったりするのを見ていますと(つまり根拠はワシの感覚でしかありませんけどねwwwwww)。
なので、今月の決定会合ではその辺のコミュニケーションの立て直し必要なんですが、輪番に関しては結構微妙なところがあって、例えばの話今月の会合で今後の輪番を基本オートパイロットの減額で行けるんだったらよいのですが、そうじゃないとなって7月は7月で利上げ、みたいな話になりますと、輪番に関するアナウンスが金利政策とリンクする、ということになってしまって、もともとの話(輪番は金利の上げ下げという金融政策のメインとは別で考える)と違ってくるので、実は今月の会合って輪番の話をしにくい面もあって、中々困るんですな。
まあそう考えますと、輪番オートパイロット減額のアナウンスができればベストですけど、それは無理っぽいとなれば、輪番についてなんか触るよりも、7月会合の利上げ予告ホームランを比較的露骨に入れた方がまだ無難なのかもしれませんね。
いずれにしましてもある程度予見可能性を高める、データディペンデントで出たとこ勝負になるにしたって、そもそもその出たとこ勝負の判断基準が黒田末期以降コロコロと変わっている(最初はコアコア物価でしたが、その後賃金とか言い出して、そのうち持続的な賃金上昇とか言ってるとおもったら、好循環とか言い出すわ第一の力第二の力とか言い出すし、しかも目標達成の確度とかお気持ち満開の判断基準になる、というようにご都合主義でコロコロと判断基準を変えていた訳ですな)ので、まあ政策調整を行う判断基準に関してのコミュニケーションは既に破綻しててどうしようもない説は結構ありますけどね。
〇吉川先生と山口(廣秀)元副総裁がしれっと強烈なものをぶち込んでおられる件について
https://www.nikko-research.co.jp/release/13803/
理事長室研究レポート「物価とインフレーションのメカニズム」を公表
『当社理事長室では、研究顧問の吉川 洋 東京大学名誉教授、理事長の山口 廣秀、前室長代理の阿部
將の3名の共著として、研究レポート「物価とインフレーションのメカニズム」をまとめた。本レポートでは、2020年以降の日米欧の物価動向を整理し、物価の決定とインフレーション発生のメカニズムについて、経済理論を基に跡付けている。』(上記URL先日興リサーチセンターさんのHPリリースより引用、以下同じです)
とありまして、サマリーですけれども、
『サマリー
世界経済は、2020年以降低インフレから本格的なインフレの時代に突入した。こうした物価上昇の背景を探るため、2020年以降の日米欧の物価動向を整理すると、いずれも国際的な資源・穀物価格といった国際商品市況の上昇が、川上、川下といった連関を通じて、消費者物価に波及している。また、賃金の変動も、生産コストの変動を通じて物価形成に影響を与えている。こうしたことを踏まえると、最近の物価の研究でみられるような、「人々のインフレ予想」が物価を決定するということではなく、物価はあくまでも一次産品の価格や賃金といった生産コストと、企業の利潤であるマークアップ率によって決まると考えられる。』
てな訳で、「最近の物価の研究でみられるような、「人々のインフレ予想」が物価を決定するということではなく、物価はあくまでも一次産品の価格や賃金といった生産コストと、企業の利潤であるマークアップ率によって決まると考えられる。」ということでこれはまた強烈なのをぶっこんでこられました。
ということで、本文の方は
https://www.nikko-research.co.jp/wp-content/uploads/2024/05/2024_article_01.pdf
にございまして、前半が根治物価上昇局面におけるファクトの整理、後半が「物価の決定に関する経済理論」という見出しで始まっていますが、実に仰せご尤もな上に、インフレ期待がどうのこうのという理論を一刀両断しておりまして、その流れで某どこぞの誰かさんがものすごい勢いでフルボッコにされていて実に心が温まるのではないか、と存じます。御用とお急ぎでない方は是非ご一読を(別に回し者ではありません)。
2024/05/31
〇10年1.1%までやらかして戻ったので記念備忘メモや雑談など
・10年1.1%はさすがに調子に乗りすぎだったようで(市場メモ)
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/75AO6KQDEZLV3FEOJ5YLMR6WGY-2024-05-30/
国債先物は反発で引け、終盤切り返す 長期金利一時13年ぶり1.1%
By ロイター編集
2024年5月30日午後 3:52 GMT+9
『[東京 30日 ロイター] - 東京円債市場で、国債先物中心限月6月限は前営業日比8銭高の143円20銭と反発して取引を終えた。米金利上昇や日銀の政策修正に対する警戒感が相場を圧迫したが、2年債入札を無難に通過し、午後に切り返した。新発10年国債利回り(長期金利)は午前に一時2011年7月以来の高水準となる1.100%を付けたが、午後は1.055%に低下した。』(上記URL先より、以下同様)
ということで昨日は朝からホイホイと先物が叩かれて10年は前場に1.1%とかさすがにずいぶん見てなかった金利をマークしてビビってしまいました。
ただまあそこからは少しコツンという音でもしたのか、2年入札をきっかけに、ということになっていますが、入札結果出た直後から戻ったわけでもなくて10分くらいラグを置いてたので、なんか買いでも入ったんチャイマスカ的に戻ったんだとはおもうのですが、
『午後に入ると、財務省が実施した2年利付国債入札が「事前に不安視されていたが、無難な結果だった」と受け止められたことから、先物相場は徐々に下げ幅を縮小。取引終了間際にプラス圏に浮上した。』
ということになりまして、火曜日までは牛がモーモー言いながら涎垂れ流しみたいな感じではあったものの、水曜と昨日の前場はオリャーという感じも漂っておったので、勢いよくやってはみたものの1.1%とかいうかなりの前の時の水準までやったので何ぼ何でもコツンと行きました的なアレですかね、知らんけど。
・さて今日の輪番はどうするんでしょうかねえ
でまあ今日は中期後半以降の主要年限全部(と物価連動国債)の輪番が予定されています。
昨日前場1.1%マークしてた時分には「いやこれマジで明日輪番増額したら腹抱えて笑うしかないんだがあの日銀ならやりかねない」とマジのマジで思ってこりゃどうなるかと思いましたが、まあさすがに今日はんかの間違いで前場また暴落でもしない限り輪番は同額でぶっこんでくるんでネーノって感じになるかとは思いますがどうでしょうかね。
まあいずれにしましても、輪番はこの前札割れになった1-3以外はいじろうにもいじれないと思うんですよね。うっかりサプライズ減額やった結果とんでもないことが起こってしまったのにさらに減額とかそんな大胆不敵なことできないでしょうし、一方でうっかり増額でもしようもんなら話がさらにややこしくなりますから。
〇結果的には輪番減額が日銀の伝統芸能を披露する様式美の世界になったわけで
しかしまあ何ですな、昨日の10年1.1%はもはや乾いた笑いしか出なかった訳ですが、輪番減額だけが今回の相場の要因というのはさすがに言いすぎで、他の要因(アメリカン金融政策の見通し要因)とかもあったりするのですけれども、まあそう言いましても今回は日銀が5/13に実施した5-10輪番のサプライズ減額が相場をこけさせる切っ掛けになったのは間違いないわけで、1.1%まで金利が上がったのはご愛嬌ですけれども、それにしても債券市場のいろんな流れを変えてしまった訳でして、これがまあ確信犯で金利を上げようと思ってやってたんだったら「してやったり」にも程があるのでそれはそれで日銀大勝利という事なのですけれども、そうじゃなくてなんかこう無邪気に減額したら大変なことになってしまいました、という流れになっているようにしか思えないわけでして、そうだとしますと毎度毎度のことなんですけど、日銀ってこの手のマーケットに対するアクションを行うのが何でそう間が悪いのか、という伝統芸能という感じなんですよ。
まあ近い過去で一番ひどかったのは「誰がどう見ても何らかの緩和措置を伴うと思われる臨時金融政策決定会合開催のアナウンスを、10年国債入札の前場引け後になって実施」という究極のマーケットメーカー殺戮プレイが行わた時でして、入札前だから応札するマーケットメーカーは落札した後にある程度残るであろう在庫のヘッジで前場引けまでにショートを幾分かは作って前場を引けたところに、「きょう臨時で決定会合やりますよ」というアナウンスが来まして、入札を踏み入札で迎えなければいけなかった、という結果になったわけですな。
なんちゅうかこの一事が万事で、時々とんでもないことを平然と行ってしまうという日銀なのですが、これが伝統芸能として確立されているの、頼むからもうちょっと改善できないのかと思うのですが・・・・・・・・・
ま、昨日も申し上げたようにサプライズ中期輪番スキップからの阿鼻叫喚相場で最後にインマネ指値オペをぶっこんで収拾、という懐かしいものを思い出していましたが、今回は状況的に輪番増額して収拾は収拾になっていない(コミュニケーションが一段とカオスになる)ので自然鎮火(?)を待つしかないですわな。
〇まあ結局これは長期金利ペッグ政策の出口で発生する究極の選択問題なんですよ
長期金利ペッグ政策って「行きはよいよい帰りはこわい」の究極系に近い政策で、アメリカだって昔は長期金利ペッグの出口のさいに議長の首が二つ(でしたっけ)くらい飛ぶというような流れになった(のでその反省もあって長期金利ペッグはダメゼッタイという運営でした訳ですな先の緩和時代も)のですが、これ要するに今の環境に引き直すと、出口において「長期金利の上昇を容認」するか「為替安を容認するか」の二択を迫られているのですが、それこそが長期金利ペッグ政策の本当の意味での副作用な訳ですよ。
でまあ今のところそれをなんかどっちもうまくやろうとして直近一旦コツンとは行ったと思いますが、この間ってうまくやろうと思ったけど長期金利は上昇するわ通貨安は止まらんわということで、中途半端に小手先の凌ぎ策をぶっこんだらダメでした、ってなもんや三度笠な訳ですな、ナムナム。
まあそんなわけですので、6月7月の会合ではこの究極の選択に対して(日銀は表向き通貨政策に関しては財務省に丸投げということになっているので明示的に通貨の話をしにくいのが困るんですけど)何らかの明快な整理をつけておかないと、いつまでたってもこんな相場やってることになり、まあ不幸なことが続くと思うのですけれども、以下一昨日の安達審議委員金懇会見を読むのですが、ちょっとそこには漠然とした不安が・・・・・・・・・・・・
2024/05/30
ほうほうそうですかそうですか
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-05-29/SE96CBT0G1KW00
円が対ドルで下げ拡大、157円台後半−急騰前の水準に戻る
森 茂生
2024年5月30日 0:21 JST 更新日時 2024年5月30日 3:23 JST
散々イエレンから介入するんじゃねえぞと五寸釘を差されておりますがどうするのやら。
〇なんかちょっと加速してきた感じなのでそろそろどうでしょうかねえ(債券市場備忘メモ)
・中期とか長期の方はご案内の通りでなんか勢いついてねえかこれ
いやはやなんとも
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/3OKWNHTLYJN3BO4P2YAWRUPMWM-2024-05-29/
国債先物は続落、長期金利約12年半ぶり高水準1.075%
By 坂口茉莉子
2024年5月29日午後 4:00 GMT+9
『[東京 29日 ロイター] - 29日の東京円債市場で、国債先物中心限月6月限は前営業日比38銭安の143円12銭と続落して取引を終えた。新発10年国債利回り(長期金利)は同4.0bp上昇の1.075%と、2011年12月以来、約12年半ぶりの高水準。前日の米金利上昇や日銀による国債買い入れ減額への警戒感を背景に、債券の売り圧力が強まった。』(上記URL先より、以下同様)
でまあ明日は今月最後の輪番デーになるのですが、ここで増額とかした日にはお前ら今まで何やってたんだというお笑い話になってしまいますし、だいたいからしてそんなことしたらドル円がぶっ飛んでしまうリスクがあるという日銀八方塞り。
以前も申し上げましたように、日銀が最初に10年の指値に追い込まれたときも、その前に「サプライズの中期輪番スキップ」という意味不明プレイがあって、そこから市場が崩れてしまったりしてた訳でして、今回だって4月の早い時期に減額するか、4月末のオペ紙の時に買入レンジの下限を下げておいて減額あるかもと思わせておけばよかったのに、決定会合でも6兆円をコンファームして減額は急がなそうな情報発信してからいきなり不意打ちした訳ですが、まあ正直ここまで相場コケるとはワタクシもびっくりなのですが、サプライズ減額のパワーってやっぱりすごいですね。
『国債先物は朝方から売りが先行。前日の米長期金利が4.54%付近と5月3日以来の水準まで上昇した流れを引き継ぎ、弱含んで始まった。その後、現物市場で長期・超長期ゾーンを中心に金利上昇圧力が強まったことが波及し、国債先物は下げ幅を拡大した。』
てな訳で、
『後場に入っても、先物は軟調に推移。時間外取引で米長期金利が小幅に上昇したことも重しとなり、現物市場では新発債利回りがじりじりと上昇した。』
てな感じですがさすがに昨日みたいに入札も輪番もないのに先物ベースで値幅40銭とか取ってるのを見ますとちょっと従来の牛の涎のような下げとは違くね??とは思ってしまうのですが思っているだけなのでよくわかりません(おい)。
この次にネタにする安達審議委員の熊本金懇に関連する記載もありまして、
『安達日銀審議委員は同日午後の記者会見で「国債買い入れの1回減額、政策意図持って行ったものではない」、「
国債買い入れの減額が先にありきで長期金利が高騰すれば本末転倒」、「国債買い入れは予見性を持って減額していくのはまだ早いのではないか」などと述べた。』
会見に関しては今日会見録が出るのでそっちが出てから鑑賞しますけど、「国債買い入れは予見性を持って減額していくのはまだ早いのではないか」ってので別に市場は反応してなかったと思うのですが、まあこれ見まして日銀現状認識できてねえわ、ということでガッカリしてしまう訳でして、当駄文では25万回くらい申し上げているので皆様耳タコかと思いますが、現状の問題点は「日銀の輪番の上げ下げのロジックが全く分からないし、しかもその輪番が市場におけるドミナントプレーヤー状態にもほどがあるからして、子の上げ下げで短期的な相場が決まってしまうのだから、すなわちマーケットメークのリスクが通常よりも高くなるし、投資家としては市場参加のコストは上がるしで、市場にリスクプレミアムが求められるようになっている」ということな訳ですわよ。
今まで(マイナス金利まで)だってサプライズ輪番やってたじゃねえかというツッコミに関しては、まあゆうてあの時はYCCだったので、債券がブタ売られするとなんかが飛び出す、というのがあった訳でして、「金利」というのが目安としては一応あったので、予見可能性が全くのゼロだった訳ではなかったんですよね。つまり6兆円とか書いてるのがそもそも悪い説もあるけどね。
ま、そんな次第なので、そもそもが「予見性をもって動かすのは無理」とかぬかしている時点でオワットルわけなのですが、まあ次にネタにしますように、安達審議委員の金懇って基本的にどっかのだれかさんの書いたプロットを棒読みしてるでしょこれは、という感じで別になんか明快なご主張があるとは思えない(あくまでも個人の感想ですので誤解のないように申し添えますwww)ので、まあその安達さんが上記のようにご発言、という事はつまりは日銀の認識がそういう事やぞ、ってなもんでダメダコリャ。
『現物市場で新発国債利回りは総じて上昇。2年債は同3.0bp上昇の0.375%、5年債は同4.0bp上昇の0.630%といずれも09年以来の高水準。20年債は同3.0bp上昇の1.885%、30年債は同3.5bp上昇の2.220%と11年以来の高水準。40年債は同3.5bp上昇の2.365%。』
5年60越えですかあ。
『TRADEWEB
OFFER BID 前日比 時間
2年 0.369 0.379 0.029 15:36
5年 0.626 0.634 0.039 15:31
10年 1.066 1.081 0.008 15:37
20年 1.881 1.89 0.031 15:37
30年 2.214 2.225 0.039 15:36
40年 2.359 2.372 0.038 15:36』
ま、牛の涎のようにダラダラ下げるよりは阿鼻叫喚の地獄絵図になって下げた方が下げ止まりのきっかけも近くなると思うので(完全な主観)阿鼻叫喚やるならやってくれとは思いますが。
・短国3Mのカレント近辺相変わらず堅調ですがTKRRちゃんは・・・・・・・・
売参ちゃん
https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html
基本的に昨日も引けはほとんどの銘柄で変わらずでして、カレント近辺ですと
国庫短期証券1232 2024/08/19:平均値単利 0.030
国庫短期証券1176 2024/08/20:平均値単利 0.042
国庫短期証券1233 2024/08/26:平均値単利 0.015
国庫短期証券1234 2024/09/02:平均値単利 0.038(明日入札予定の3M新発WI)
って感じで銘柄で謎の凸凹が相変わらずあるのはさておきましてまあこんな感じですが、じゃあ7月会合前の短国ってどうなのかというと例えば
国庫短期証券1225 2024/07/22:平均値単利 0.030
国庫短期証券1227 2024/07/29:平均値単利 0.030
ということで同じじゃんどういうことですねんとは思う訳ですが、もし「国債残高は落としたくないけど金利リスクはどどーんと落として利上げにでもなってから再度エントリーしたい」って考えたら寧ろ7月会合後の足にしておいて7月に思った通りに利上げがあってから様子見ながら長期債に再エントリーできる訳でして、そんなムーブでもあるんけなとか謎ですわなと思いながら明日の3Mどうなるのか注目していきたい(上記にあるように次の新発3Mは9月の頭に足が来る)訳ですが、その一方でTKRRちゃんは
https://www.jsda.or.jp/shiryoshitsu/toukei/trr/index.html
2024/5/22 0.071 0.062 0.061 0.062 0.060 0.059 0.075
2024/5/23 0.082 0.073 0.064 0.061 0.061 0.060 0.076
2024/5/24 0.030 0.079 0.065 0.062 0.061 0.060 0.077
2024/5/27 0.060 0.048 0.060 0.060 0.060 0.059 0.079
2024/5/28 0.045 0.041 0.055 0.057 0.058 0.057 0.082
2024/5/29 0.047 0.051 0.057 0.058 0.058 0.058 0.083
先週水曜から並べてみましたが、足許トモネとかは金曜に向けて上がったものが月曜に下がって、といういつもの短国発行すると重くなってだんだんポジション捌けてくると軽くなるムーブっぽく見えますが、しらっと3Mがじりじりと上がってきておりましてこれは味わい深いわ、と思いました。
まあ味わい深いと思っただけで別にインプリケーションを出そうとは思っていませんがメモメモメモということで。
2024/05/29
〇FSBがCPCD市場についてなんか提言みたいなのをしているようだが
うーむこれは
https://www.boj.or.jp/intl_finance/meeting/group/gro240528a.htm
金融安定理事会による「コマーシャル・ペーパーと譲渡性預金市場の機能と強靭性の向上」の公表について
2024年5月28日
日本銀行
『金融安定理事会(FSB)は、5月22日に「コマーシャル・ペーパーと譲渡性預金市場の機能と強靭性の向上」(原題:Enhancing
the Functioning and Resilience of Commercial Paper and Negotiable Certificates
of Deposit Markets)を公表しました。
詳細につきましては、以下をご覧ください。』
ということなのですが、日本のCP市場ってABCPみたいなものよりも体感的には圧倒的に企業さんの出している短期資金調達としてのCPが多くて、その意味では個別企業の信用リスクというのはもちろんあるけど、ファンディングビークルがレバレッジ掛けに来るための市場とは全然違うんで、こういうのを世界的に一緒くたに話をするのって乱暴な議論になりがちなのは懸念されますな。
チラ見しかしてないけど一応法域によってこの市場は全然違うって解説はあるみたいなんですが、現状まあ何のかんの言って健全(という表現が適切かどうかはさておきまして)に機能している日本のCP市場が参加者にとってどういう影響があるのか、というのは気になるところではございます。
今後どうなるか分からんから判断は保留でただのメモですが。
〇10年GX国債ェ・・・・・・・・・・
https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/nyusatsu/resul20240528.htm
10年クライメート・トランジション利付国債(第2回)の入札結果
『本日、10年クライメート・トランジション利付国債(第2回)の入札について、下記のように募入の決定を行いました。
記
1.名称及び記号 クライメート・トランジション利付国庫債券(10年)(第2回)
2.発行根拠法律及びその条項
脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律(令和5年法律第32号)第7条第1項
3.表面利率 年1.0パーセント
4.発行日 令和6年5月29日
5.償還期限 令和16年3月20日
6.応募額 1兆1,007億円
7.募入決定額 3,496億円
8.応募者利回り(募入最高利回り) 1.040%
9.発行価格 額面金額100円につき99円63銭
10.募入最高利回りにおける案分比率 22.8873%』
まあすでに前場引けの段階で表の10年国債対比気配が甘い状態で入札を迎えたのですが、ベンダーさん集計などによる事前の予想よりも0.5毛弱いところで決着するの巻。
売買参考統計値
https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html
昨日の引けベースは
長期国債 374 2034/03/20(クーポン 0.8):平均値複利=1.025 平均値単利=1.035
GX長期国債2 2034/03/20(クーポン 1.0):平均値複利=1.034 平均値単利=1.035
ということで単利並びですがクーポン違いますので複利ベースでは0.9毛のディスカウントになっておりまして、初回債入札前のWIでグリーンプレミアムノリノリ状態だったあの勢いは何処に行ってしまったのでしょうかという「流動性不足によるディスカウント>グリーンプレミアム」という珍妙な結果になってしまいましたが、流動性不足というか、まあ要は日銀が普通国債をアホみたいに買うから市場の価格形成が日銀の輪番をあてにした値付けになっていて、その結果こういうことになってしまう、ともいえるわけでして、まあ要するに日銀が悪い日銀が、という隙あらば輪番への悪態になるアタクシでした。
でまあGX国債入札がパッとしなかったのもあって昨日も10年ちゃん安値更新ですし、マーライオン行為が発生しているわけでもないのに誰も買いに来ないからじりじり下がるってのもなんか妙な相場ではありまして、
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/UXRVJ3D4SRIGZOKKGXXQKZHIFM-2024-05-28/
国債先物は続落、長期金利12年ぶり高水準1.035% 軟調地合い続く
By 坂口茉莉子
2024年5月28日午後 3:36 GMT+9
『[東京 28日 ロイター] - 国債先物中心限月6月限は前営業日比2銭安の143円50銭と続落して取引を終えた。新発10年国債利回り(長期金利)は同1.5bp上昇の1.035%と、2012年4月以来12年ぶりの高水準。日銀による早期の金融正常化観測を背景に国債先物は軟調地合いが続いた。弱めの10年クライメート・トランジション国債入札も相場の重しとなった。』
『国債先物は買いが先行して始まった後は小動きで推移。その後、現物市場で長期や超長期ゾーンを中心に金利上昇圧力がかかり、先物にもその流れが波及しマイナス圏に転じた。10年クライメート・トランジション国債入札は弱めと受け止められた。市場関係者によると「投資家の札は入っていた」(国内証券債券セールス担当)ものの、最高落札利回りは1.040%と、新発10年債利回りの前引け水準(1.035%)を上回るなど「リスクプレミアムが求められた格好となった」(同)という。』(上記URL先より)
ということでまあ引けにかけては持ち直したものの、パッとしない相場ちゃんが続いていますが、今週末にオペ紙があって、6月は2週目の金曜に決定会合がありますので、まあその辺までにはもうちょっと日銀ちゃんの不透明感がクリアになれば、と思う訳でして、別に現状って少なくとも現物は売りたたいてヒャッハーとかそういう感じではなくて、日銀の動きが謎すぎて読めないのでリスクを取らない、という消極的な債券金利の上昇じゃないのと思いますので、まあ6月会合で態勢を立て直してほしいものです、と思います。というかよく見たらロイターさんの記事も同じマーケットコメントがあるので、まあコンセンサスですねコンセンサス。
〇日銀謹製の基調的な物価が3指数とも2%を割ってこれはハトハトチキンおじさんもニッコリですね
https://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/index.htm
基調的なインフレ率を捕捉するための指標
刈込平均値、加重中央値、最頻値
な訳ですが、
Jan-23 3.1 1.1 1.6
Feb-23 2.7 0.8 2.1
Mar-23 2.9 1.0 2.7
Apr-23 3.0 1.2 2.8
May-23 3.1 1.4 2.9
Jun-23 3.0 1.4 2.9
Jul-23 3.3 1.6 3.0
Aug-23 3.3 1.8 3.0
Sep-23 3.4 2.0 2.8
Oct-23 3.0 2.2 2.6
Nov-23 2.7 1.7 2.4
Dec-23 2.6 1.6 2.4
Jan-24 2.6 1.9 2.3
Feb-24 2.3 1.4 2.0
Mar-24 2.2 1.3 1.9
Apr-24 1.8 1.1 1.6
いやーついに刈込平均が2%割り込んでこれで堂々と「基調的なインフレが2%になっていない」って言えてよかったですねえ(棒読み)という風情ですが、
https://www.boj.or.jp/statistics/pi/cspi_release/sppi2404.pdf
企業向けサービス価格指数(2024年4月速報)
こういうの見ると軽く再加速しそうですわな・・・・・・・・
上昇下落品目比率は
Jan-23 80.3 12.6 67.6
Feb-23 81.0 11.7 69.3
Mar-23 82.6 10.0 72.6
Apr-23 84.3 9.2 75.1
May-23 84.9 8.8 76.1
Jun-23 84.9 9.2 75.7
Jul-23 85.6 8.4 77.2
Aug-23 86.0 8.2 77.8
Sep-23 87.0 7.3 79.7
Oct-23 84.7 9.6 75.1
Nov-23 83.0 11.3 71.6
Dec-23 82.0 12.1 69.9
Jan-24 83.9 10.7 73.2
Feb-24 81.8 12.8 69.0
Mar-24 79.5 15.1 64.4
Apr-24 80.8 14.0 66.9
てな感じであります。
2024/05/28
お題「金研コンファランスでまさかの公開処刑プレイ炸裂とはオソロシス」
しかし
https://www.boj.or.jp/research/conf/index.htm
コンファレンス
なぜか知らんのですが、金研がやるのは「コンファランス」で日銀本体がやってるのは「コンファレンス」なんですけどちょっとその理由を教えろくださいお願いします。
https://www.imes.boj.or.jp/conference.html
金研の方は全部「コンファランス」なんですよね・・・・・・
でもって今回のお品書きはこちら(後日いろいろとアップされると思います)
https://www.imes.boj.or.jp/en/conference/2024confsppa.html
2024 BOJ-IMES Conference
Price Dynamics and Monetary Policy Challenges
-- Lessons Learned and Going Forward --
May 27 - 28, 2024
Institute for Monetary and Economic Studies, Bank of Japan
- Preliminary Program (subject to change) -
〇植田総裁のオープニングリマークは相変わらずハトハト音頭が聞こえてきたんですが・・・・・・
モノホンはこちらの先にリンクがありまして、本当は英語でのご挨拶です。
https://www.boj.or.jp/en/about/press/koen_2024/ko240527a.htm
Opening Remarks at the 2024 BOJ-IMES Conference Hosted by the Institute
for Monetary and Economic Studies, Bank of Japan
本文
https://www.boj.or.jp/en/about/press/koen_2024/data/ko240527a1.pdf
でもまあ手抜きなので邦訳の方で参りますが(汗)
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2024/data/ko240527a1.pdf
日本銀行金融研究所主催2024年国際コンファランスにおける開会挨拶の邦訳
日本銀行総裁 植田 和男
・まず最初にかつての速水さんの時のゼロ金利解除が適切じゃなかったと言い出している時点で・・・・
『2.わが国におけるゼロ・インフレの罠と大規模金融緩和』ってところですが、その途中から参りますけど、
『(日本銀行による大規模緩和) 』って小見出しの第2段落、本文3ページ(PDF4枚目、以下本文とPDFの関係は同様です)の中段から。
『また、日本銀行が採用した政策枠組みの展開について、いくつかの点でその時点で最適ではなかったと指摘する方もいるかもしれません。例えば、ゼロ・インフレの罠に陥った最初の数年間は、明示的なインフレ目標がありませんでした。』
って言ってるけどね、じゃああの時代に2%インフレっていきなり言えたのって話はかっ飛ばしまして、
『日本銀行は、2000 年に、ゼロや小さなプラスの値など、特定のインフレ率の水準を用いて物価安定を定義すべきか否かを検討しましたが、その当時は、コンセンサスには至りませんでした。2006
年3月には、1%を中心値とする0〜2%程度の範囲であれば、各政策委員の物価安定の理解と整合的であるとし、2009
年 12 月には、0%以下のマイナスの値を許容しないことなど、それをさらに明確化しました。日本銀行は、最終的には
2013 年1月に、2%の物価安定の目標を導入しました。』
でもってこの次ですよもういきなりキタコレなんですけどね、
『後知恵になってしまいますが、仮に明確なインフレ目標値が導入されていれば、例えば、2000
年8月のゼロ金利政策解除に至るまでの議論の様相は、実際とは異なったものになったかもしれません。』
ああこの人は未だに2000年8月の反対を金字塔だと思っているんだなって話でして、こんなのいわずもがなの話にも程があるのに、さらに追い打ちをかけるように、
『999 年4月の導入時における短期金利に関するフォワード・ガイダンスの内容をみると、日本銀行は、デフレ懸念が払拭されるまでゼロ金利を継続するとしていましたが、解除時点では、コア・インフレ率は、まだマイナス
0.5%にすぎませんでした。その後のデフレをそのわずかな利上げだけのせいにするのは難しいと思いますが、このゼロ金利政策解除の経験は、その後に行われたフォワード・ガイダンスの有効性を弱めた可能性もあります。』
>このゼロ金利政策解除の経験は、その後に行われたフォワード・ガイダンスの有効性を弱めた可能性もあります。
>このゼロ金利政策解除の経験は、その後に行われたフォワード・ガイダンスの有効性を弱めた可能性もあります。
>このゼロ金利政策解除の経験は、その後に行われたフォワード・ガイダンスの有効性を弱めた可能性もあります。
こらまたエライ粘着質というか、俺が正しかったという主張度合いが凄すぎて笑ってしまうしかありませんし、この言い方をしているのは裏を返せば黒田緩和の正当化ですよね、とも思う訳ですが案の定その直後にそんな話がありましてですね・・・・・・・
・速水時代の俺様は正しかったの次に返す刀で福井白川時代も全部まとめて葬り去るという見事なハトハトプレイ
という風に「2000年のワシは正しかった」アピールが来たと思ったらその直後にさらにとんでもないのが出てくるのでして、
『もう1つ考えるべき点は、資産買入れを開始したタイミングです。』
はい、これです。
『日本銀行による積極的な長期国債の買入れは、図表 1 でお示ししたインフレ動向を踏まえると、比較的遅いものでした。』
は???ていうかそもそもQQEがインフレ期待への直接の働きかけ失敗してるし、足元のインフレ循環の開始だってただの外生要因とこれまでの構造変化によるものだろいい加減にしろと思うのですが、
『日本銀行は、2001 年3月の量的緩和政策の開始に伴い、以前よりも多くの額の長期国債を購入し始めたものの、図表
3 が示すように、その保有残高は、2013 年に入るまでは、顕著に増えてはいませんでした。これとは対照的に、Fed
の米国債保有残高は、世界金融危機への対応として、2009 年初に急激に上昇し始めています。』
そら日銀はその前から買ってたからだろうが置物一派みたいな言いがかりつけてんじゃねえよこのウスラトンカチという話だし、「その保有残高は、2013
年に入るまでは、顕著に増えてはいませんでした。」ってだいたいからして国債大量に買ってなんか効果あったのかよこのハゲというところですが、しかもこの表現だと2013年以前は何もしていませんでした福井白川は不作為の罪です、って言ってるようなもんな訳でして、いやーこの人審議委員の時はまともだと思ったので就任の話が出たときに滅茶苦茶期待したんですけど、ここまでのアレだとは存じ上げませんでアタクシも我が身の不明に恥じ入るしかありません。
というかこれはさすがに麿は怒るべきではないでしょうかねえ。
・なんかその後にフォローを入れてはいるのですが結局これだと黒田以前はディスっている訳なので・・・・・
でまあその直後に、
『こで、注目すべき点としては、図表 4 でお示ししたとおり、米国の 10 年物国債金利は、Fed
が大規模な資産買入れを開始した時点では4%近くもありましたが、日本の 10
年物国債金利は、1990 年代後半にはすでに2%を下回っていたという点です。この事実は、もし
2000 年代初頭に日本銀行の国債買入れの増額が行われたとしても、果たして十分な効果があったのか、との疑念を生じさせます。』
って言ってるんだが、そう思ってるならなんでその前に2013年以前は不作為みたいな言い方する必要はない話でして、わざわざ国債買入について言及して2013年以前を不作為といってる時点でまあこの人の本音がお察しですわな。
でまあこういう流れで話をしますと、そりゃどういうことになるかといいますと、「黒田緩和の否定から話が入れない」という事になるわけでして、黒田緩和を否定しない、という流れで金融政策運営の話をする、ということになるとこれは常にあたおか緩和バイアスが掛かり続ける、ということになるわけでして、そら政策修正をやる気がないっていう解釈になるわけですよ。
・したがってこの先の政策修正に関してもエライ消極的な発言になるわけでして
でまあちょっと飛ばして『3.今後の課題』って章に進みますと、
『それでは、今後の課題を簡単に述べたいと思います。日本銀行の目標は、2%のインフレを持続的かつ安定的に実現することです。』
むしろ何年オーバーしていると思ってるんだよこのトンカチ。
『これまでのところ、インフレ予想をゼロ%から押し上げることには成功したように思いますが、』
お前の政策で押し上げたわけじゃなくてただの外生要因だろ何が「押し上げることに成功した」だよ勝手に手柄面するんじゃねえよ。
『それを今回は2%の目標値にアンカーしなければなりません。』
インフレ予想なんて正確に計測できるものじゃないのに何でこれが「2%の目標値にアンカーしなければ」みたいな言い方になるのか、というのが相変わらずのアレでして、インフレ予想なんて結局事後的にしかわからないものをあたかもリアルタイムで計測できるかのような言い方をして、結局のところは自分たちの政策に都合の良いようなデータをチェリーピッキングして出してきた「お気持ち」でしょというところなんですけど、まあその「お気持ち」が植田さんとしては「政策修正をするのが怖いから2%でアンカーされていないことにする」って話になっている訳でして、それが何より証拠には、
『日本銀行は、インフレ目標の枠組みを有する他の中央銀行と同様に、その実現に向けて注意深く進んでいくつもりです。』
「同様に注意深く進んで」その挙句にインフレが高進(日本の場合はインフレ高進というより通貨大幅安に伴うもろもろの問題噴出のような気がしますがそれはさておき)して真っ青になるんですねわかります。
まあしかしここで「注意深く進んでいく」となっているのはさっきの本文を見ますと、
『We will proceed cautiously, as do other central banks with inflation-targeting
frameworks.』
ってなっていまして、いや他の主要国の中銀が結果的にインフレ圧力を見誤って緩和修正がビハインドして、特に欧州なんぞはスタグフ状態になってしまったのですが、そんな先行事例があるのに「as
do other central banks 」ってお前は何を言ってるんだという感じですが、まあそれだけ植田さんは政策修正をやりたくないでござる、ということなんでしょうね、というのが非常に良くわかるわけですな。
『日本銀行が直面する課題の多くは他の中央銀行が直面したものと似た側面を有していますが、いくつかの課題には日本に特有の難しさもあります。』
ということですので、例えばの話日本の場合は他国と違ってそれまでのゼロインフレノルムからの変化が生じているとみられるので、構造変化が起きている場合に適切な金融政策運営も過去とは違う、みたいな(黒田をディスらない形での)黒田時代からのチェンジの話でもするかと思えば、
『そうした課題のうち主要な一つが、自然利子率(r*)をできるだけ正確に把握することです。』
っていやなんなんだよRスターかよってな話ですが、
『その正確な計測は、どの中央銀行にとっても容易なことではありませんが、過去
30 年間の長きにわたって短期金利がほぼゼロに張り付いてきた日本では、特に難しいことです。実質金利は多少なりとも変動してきたとはいえ、金利変動が乏しいもとでは、金利変動に対する経済の反応度合いを計測することには相応の難しさがあります。』
いや何ちゅうかそういう話ではないんじゃないのと思うんですけどねえ・・・・・・・・・・・・
・おまけ:今回の「不作為に関する考察」ってまんま前回(第1回)多角的レビューWSでツトムが言ってたことやんwwww
おまけですけど、この2000年の速水時代のゼロ金利解除と2013年まで国債の買入に対して不作為だった(ということに植田さんの中では成っている)問題に関してが今回のオープニングリマークの白眉なのですが、これを見て思い出したのがこれでしてですね、
https://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2024/data/ron240129a.pdf
「金融政策の多角的レビュー」に関するワークショップ
第1回「非伝統的金融政策の効果と副作用」の模様
こちらの本文26ページ、PDF27枚目になるんですけど、『7.第5セッション:パネルディスカッション』の『7−2.ディスカッション』の中に『(金融政策の効果・副作用の分析手法)』ってコーナーがあるんだが、
『渡辺は、日銀が過去に犯した政策の失敗を振り返ると、何かをやってそれが失敗したというよりも、やるべきことをやらなかったという、不作為の過失の方が問題だったのではないかと指摘した。そのうえで、過去の金融政策運営を評価するためには、実際に講じてきた金融政策の効果・副作用の検証だけでなく、「やらなかったこと」が経済・物価に及ぼしたであろう影響――例えば、仮にインフレ目標がもっと早期に導入されていればその後の困難がどれほど緩和されていたか――を検証することが有用であるとの見解を示した。』(この部分だけ直上URL先の第1回多角化レビューワークショップ議事要旨より引用しています)
ってツトムちゃんの福井白川(多分速水も含めて)ディスり発言というのがあったのですが、ああなるほどツトムちゃんたらいきなり大胆不敵なことを言いますねと思ったんですが、なるほどこういう事だったのかと納得してしまいましたですわおほほほほ。
・ということなのでハトハト音頭だったんですが意外に市場は反応しませんで
昨日の前場引け時点
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/DI3LIWT6NJNPVMYSSCBMOOCETA-2024-05-27/
〔マーケットアイ〕金利:前場の国債先物は横ばい、日銀イベントでの内田副総裁発言に関心
By ロイター編集
2024年5月27日午前 11:19 GMT+9
『[東京 27日 ロイター] - <11:07> 前場の国債先物は横ばい、日銀イベントでの内田副総裁発言に関心
国債先物中心限月6月限は、前営業日比横ばいの143円59銭で午前の取引を終えた。現物市場では長期金利の指標となる新発10年国債の取引がまだ成立していない。市場では、日銀が開催するイベントでの内田真一副総裁の発言を見極めたいとの様子見ムードが強い。』
『本日は入札やオペといった国債需給イベントの予定はないが、日銀の金融研究所が今日明日の2日間の日程で2024年国際コンファランスを開催。午前9時ごろからは植田和男総裁が開会のあいさつを行ったが、相場の反応は限られた。』(上記URL先より)
ということでして、いや植田さんこれ結構なハトハト音頭というかいつもの「金融政策の早期修正をやりたくないでござる円安なんて知らんもん」というハトハト音頭だったんですが、月曜の午前だしアメリカンは月曜も祝日だし、ということで為替ちゃんもあんまり反応しない(むしろ神田大明神の25日の発言で介入警戒モードだったんですかね)ということでなんかまあそういう感じだった訳ですが・・・・・・・・・・・
〇内田副総裁のキーノートスピーチが思いっきり植田さんの逆のトーンで見事な公開処刑を実施しているというおそロシア
本ちゃんはこちら
https://www.boj.or.jp/en/about/press/koen_2024/data/ko240527b1.pdf
Price Dynamics in Japan over the Past 25 Years
Keynote Speech at the 2024 BOJ-IMES Conference
Hosted by the Institute for Monetary and Economic Studies, Bank of Japan
UCHIDA Shinichi
Deputy Governor of the Bank of Japan
だが引き続き手抜きで邦訳で参りますサーセン(一応先に英文読んだんですよアタクシも!!!と見栄を張る)
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2024/data/ko240527b1.pdf
わが国における過去25年間の物価変動
「日本銀行金融研究所主催2024年国際コンファランス」における基調講演の邦訳
日本銀行副総裁 内田 眞一
・「今回の変化は構造変化」と言ってるわけでもうその時点でやる気満々
今回の内田さんの講演、邦訳見てもちゃんと最初に出した問題提起を最後に回収する、という綺麗な構成になっておりまして、相当練って作ってるなというのが分かるのですけどね。つまり最初の章『1.はじめに』の最後が、
『大きな論点は、現在の物価を巡る動向の変化が、不可逆的なデフレからの構造変化を意味するのか、あるいは、単に世界的なインフレによってもたらされた一時的な現象にすぎないのか、ということです。本講演では、この重要な問いに対し、私なりにお答えしてみようと思います。このことは、日本銀行の金融政策運営の先行きのみならず、日本経済の将来にとっても示唆を与えるものであると考えます。』
ということで講演をおっぱじめまして、最後の最後が『5.まとめと今後の展望』になるんですけど、その後半部分が結論な訳ですよ。本文10ページ、PDFの11枚目になります。
『それでは、今日の基調講演の冒頭で、私自身が提起した問い、すなわち、わが国で現在みられている傾向は不可逆的なものなのか、にお答えしたいと思います。』
『すでに述べたとおり、これまでの状況を変えるためには、2つのことが必要です。デフレのそもそもの原因を解消することと、デフレ的なノルムを克服すること、です。』
でもって、
『1点目については、自信を持って「イエス」と答えられます。労働市場の環境が構造的かつ不可逆的に変わったためです。』
ほほう。しかしこれって労働市場ガーってのを言い訳にしますと過去の日銀が頑張っても構造的に無理があったので無理でした、という過去ダメだった件に関する巧妙な言い訳にもなっているというのが流石としか言いようのない日銀屁理屈クオリティでして、いやそれわかってたんだったらなんで金融緩和一本足打法をしようとしてたんだよアホなのかと言いたくなりますわな。
『この先、女性やシニア層から多くの追加的な労働投入を期待することには無理があります。』
ちょwwwwワイ何歳まで働かなけりゃなりませんのん。
『日本の女性の労働参加率は、米国の労働参加率を超えています。もっとも、正確に言えば、女性がフルタイムでより長い時間働けるようにすることや、企業が人手維持のため定年延長することなど、まだ労働供給の余地は残されています。これらの取組みは、適切かつ必要なものですが、今回お示しした大きな姿を変えるほどの規模で行うことは難しいと思います。』
難しいんでしたら会社に入ったころに夢見てた55だか60歳になったら夢の年金ジジイ生活を見せていただきたいのですが、蜃気楼のように遠ざかるわ年金は(書いてて泣きそうになったので以下略)
と、思わず愚痴になってしまいましたがw要するに労働需給の構造は不可逆的に「労働供給不足構造」に転換した、ということでして、労働需給面から賃金が上がらんという世界には戻らんというお話のようです。
『2点目の、デフレ的なノルムの克服については、答えはそこまで明白ではありません。』
ほうほうほう。
『世界的なインフレがもたらしたコスト・プッシュ圧力が減衰しても、企業は現在の価格設定行動を続けるでしょうか?その鍵は、やはり労働市場です。』
ちょwwwwwwwwwwwwwwwwwなんでも労働市場なのかよ
『労働市場の構造変化が持続する限り、企業は、働く従業員を保持し、惹きつけるために、充分な利益と賃金を生み出すビジネス・モデルを構築しなければなりません。』
『価格設定戦略においても、企業は、労働コストに変化があれば、需要への影響も考えながら、メニュー表を速やかに書き直す必要が生じます。』
何ちゅうか巧妙な話のもって行き方に騙されている気がせんでもないが字面をパッと見すると説得力があるのが諸葛孔明の罠。
『「社会的なノルム」は解消に向かっています。この動き、そして長らく待ちわびた構造変化をもたらしている主な推進力は、人手不足です。』
全部それかよ!!!っていうかじゃあ人手不足社会じゃない他国でなんでインフレ2%だったのかと考えるとなんかこの説明も怪しさを感じますが、確かに現実的な意味では言ってることがご尤もに聞こえてしまうのがさすが内田さんとしか言いようが無い(良くも悪くもw)。
『人手不足は、個々の企業の変革と経済全体のダイナミズムをもたらすでしょう。そして、人手不足による変革のプロセスは、失業の増加につながる可能性が相対的には低いことから、他のプロセスと比較して、より低いコストで移行が進むと考えられます。』
ということで、まあ微妙に妖刀の香りが漂いますがまあそういう説明になっていまして、これが回答な訳ですよね。つまり・・・・・・・
・「ゼロ金利制約との戦い」も終焉が見ているということは利上げする気満々だし何なら50まではホイホイ上げるでしょこりゃ
でもってこの次。
『この 10 年間、QQE や YCC およびマイナス金利政策のもとでの経験を経て、日本銀行は、今年3月に、これらの一連の非伝統的な政策手段がその役割を果たしたと判断して、短期政策金利の操作を通じて2%の物価安定の目標を目指す伝統的な金融政策の枠組みに戻りました。』
『このことは、ゼロ金利制約を克服したことを意味します。引き続き、インフレ予想を2%にアンカーしていくという大きな課題は残っていますが、デフレとゼロ金利制約との闘いの終焉は視野に入りました。』
マイナスをゼロにしただけなのに「ゼロ金利制約を克服」ってこりゃまたエライ大きく出ていますが、これはすなわちゼロから利上げも視野に入っているから「デフレとゼロ金利制約との闘いの終焉は視野に入りました」と言ってるわけでして、結局はさらに金利をあげないと、というか一般的に50までは上げないと(本来なら100だけど)ゼロ金利制約は残るわけで、まあこれは普通に正常化やる気満々と。
・敢えて死亡フラグとして名高い「This time is different」を使う理由とは????
『最後に、この言葉で締め括りたいと思います。「今回こそはこれまでと違う(This time is different)」。』
で終わるわけで、これ本ちゃんですと、
『So, I would like to conclude my speech with this phrase: “This time is different.”』
な訳ですけど、当然内田さんのことですからこの「This time is different」って死亡フラグの典型ワードで、普通はこれを大真面目に使うのではなく、一種の皮肉だったり、茶化し系のギャグだったりで使うもんだとアタクシなんぞは思う訳ですが、それ以外の使い方としては「死亡フラグをわざわざいう位自信満々だぞ」とマジなんだか空元気なんだかはさておきアピールするにも有効な言葉ではありますわなこの「This
time is different」は。
でですね、まあ内田さんのことですから当然先刻そのようなことは全部合点承知の助でこの「This
time is different」というキャッチー面白ワードをぶっこんでいる訳でして、まあ今回は「それほどまでに自信満々ということにしておりますので政策の修正は近いぜよ」というメッセージであるだろうな、と解釈するわけですなアタクシとしては。
そしてさらにこっちの方がやばいのですが、これって朝一の植田さんのハトハトオープニングリマークから見たら水と油くらいに親和性のないトーンな訳でして、あえてこれをぶっこんでくるというのはどういうことかと考えますと、朝一の植田さんの講演でうっかりハトハトからの円安にでもなられたら困るから内田さんがこういうある意味末代までの語り草にされてしまうリスクを背負ってでも「This
time is different」をぶっこんで、植田さんのハトハトを中和、といえば綺麗ですが、こんなんどう見ても植田さん公開処刑だろということでして・・・・・・・・・・・・
・すくなくとも円債市場は冷酷に「内田>植田」で反応
昨日の大引け(なぜかいつもの「マーケットアイ」がないから探すのに苦労したわ)
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/PD3VRYQLPZKKRNJA7Y7IYTRAPM-2024-05-27/
国債先物は続落で引け、長期金利1.025% 12年ぶり高水準
By ロイター編集
2024年5月27日午後 3:35 GMT+9
『[東京 27日 ロイター] - 国債先物中心限月6月限は、前営業日比7銭安の143円52銭と続落して取引を終えた。日銀の政策正常化観測が相場の重しとなった。新発10年国債利回り(長期金利)は同2.0ベーシスポイント(bp)上昇の1.025%と、2012年4月以来12年ぶりの高水準をつけた。』(上記URL先より、以下同様)
ということで、後場の寄りから債券先物ちゃん出来高伴って下がってしまいまして(前場3000枚ちょいだったのに終わってみたら昨日の日中売買高って1万5000枚弱だったんですよね)、何ちゅう残酷な市場の反応と思いましたし、植田さんの講演で反応しないのに内田さんの講演でこんなに反応するのかよ、と思ってしまいました(まあ植田さんのメッセージが分かりにくいのに対して内田さんの方がキャッチーな言い方で分かりやすかったのもあると思うけど)。
『きょうの国債先物は、週末の米国市場で長期金利が低下した流れから、小口の買い先行でスタート。ただ買い一巡後は日銀当局者の発言で金融政策の正常化が改めて意識され、午後はマイナス圏に沈んで推移した。
材料視されたのは、日銀の金融研究所が開催した「2024年国際コンファランス」で内田真一副総裁が行った基調講演。』
とまあそういうことで、市場の反応が「内田>植田」だったのはなんってこったいという感じですが、まあ確かに植田さんの発言が傍目にブレブレ過ぎて、というのもあるとは思うんですが、植田さんの発言を2時間後に公開処刑するというプレイが炸裂して市場も公開処刑の方に反応するとかこれは植田さん面白くないだろうなあとは思いますが、まあどっからどう見ても植田さんの円安気にせずゆっくり調整というのがあたおかなので身から出た錆ということで同情の余地はカシュカリ総裁の頭髪程もありませんということで。
ということで今朝はこの辺で勘弁
2024/05/27
〇全国CPIですが今回って原数値と季節調整後の乖離が大きいですね
そう言や全国CPI
https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/index-z.html
2020年基準 消費者物価指数 全国 2024年(令和6年)4月分(2024年5月24日公表)
『≪ポイント≫
(1) 総合指数は2020年を100として107.7
前年同月比は2.5%の上昇
(2) 生鮮食品を除く総合指数は107.1
前年同月比は2.2%の上昇
(3) 生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は106.5
前年同月比は2.4%の上昇』
ということで前年比の伸びが下がった(と言っても事前予想通りだと思うけどトップラインは)のがニュースヘッドラインになっていましたが、
https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/pdf/zenkoku.pdf
2020年基準 消費者物価指数
全国 2024年(令和6年)4月分
『◎ 概 況
(1) 総合指数は2020年を100として107.7
前年同月比は2.5%の上昇 前月比(季節調整値)は0.2%の上昇
(2) 生鮮食品を除く総合指数は107.1
前年同月比は2.2%の上昇 前月と同水準(季節調整値)
(3) 生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は106.5
前年同月比は2.4%の上昇 前月と同水準(季節調整値)』
こちらなんですけど、
『表1 総合、生鮮食品を除く総合、生鮮食品及びエネルギーを除く総合の指数及び前年同月比』
ってのを見ますと
総合:107.2→107.7
コア:106.8→107.1
コアコア:106.2→106.5
って原数値は4月だけに上昇しているんですけど、季節調整後で見ると、
『表2 総合、生鮮食品を除く総合、生鮮食品及びエネルギーを除く総合の前月比(季節調整値)』
だと
総合:前月比季節調整後ベースで +0.2
コア:前月比季節調整後ベースで 0.0(±は書いてないから分からん)
コアコア:前月比季節調整後ベースで 0.0(±は以下同文)
ということでして、上がっとらんというお話になってどっちですねんとか思ってしまうのですが、まあゆうて私らが実際に消費するときにお支払いしているのは原数値ベースのお値段なわけで、2020年平均が100という中で、この4年というかほぼ3年で7%も上がっているわけでして、翻ってこの3年で7%もアタクシの俸給が上がったのかと言いますと書いていると悲しくなってくるので以下割愛。
でですね、原数値ベースの上昇をいくらに置くかという事次第なのは言うまでもないのですが、ゆうて今年って原数値たいして上がらなくても前年同月比って例の補助金のせいで昨年が逆下駄はいているのもあって今年って高いまま推移する(まあ展望レポートでも1月は+2.4で見ていたのが+2.8になりました)訳でして、そんな状況が続いているのに「この物価上昇は第一の柱だから知らんがな」という理屈がいつまで続くのか、しかも第一の力の中に円安とかいう日銀が招いているものがあるのに知らんがなってのいつまで大丈夫なのか、これ岸田さんが糞不人気で何でも悪いことは岸田が悪いよ岸田がムーブになっているから助かっているんだが、世が世なら(以下いつもの悪態なので割愛)、
〇折角日銀様が面白ペーパーをだしているのだから鑑賞しない手はありませんな
ということで続きですけど今回は調査統計局様のお出しになられたスライドショーに軽くツッコミを入れて見たい。
https://www.boj.or.jp/mopo/outline/bpreview/data/bpr240405a1.pdf
過去25年間のわが国経済・物価情勢
「金融政策の多角的レビュー」に関するワークショップ(第2回)
―― 第1セッション 経済・物価情勢 ――
2024年5月21日
日本銀行 調査統計局
・そもそも論として「なんでこうなったのか」の深掘りが無いのはダメだろ(再掲)
3枚目のスライドが『発表の構成:各時期のポイント』って奴ですが、こちらで過去の期間を
デフレ期(1990年代から2010年代初めまで)
低インフレ期(2013年から20年まで)
高インフレ期(2021年から)
に分けているのですが、1990年代って初頭の時期はまだデフレじゃなかった訳でして、体感的にはアジア通貨危機から日本の金融危機パート1の時期だし、以下のスライドに出て来る各種マクロ指標もそうなんですけど、1990年代後半に日本経済に「何か」が起こってデフレ低インフレの流れになった訳でして、その時の原因が何だったのか(やっぱ「その前」のマクロ政策における緩和のやり過ぎによる過剰レバレッジの蓄積の結果として生じたバブル崩壊となるんじゃないかと思いますけど)というのをきちんと整理しないと、結局また同じことを繰り返しかねない訳で、そっちの深掘りをした方がよっぽど為になると思います。
というのは先日申し上げた通りですがさらにこのスライドにはツッコミどころが満載。
・QQEが物価を押し上げたんだったら何でその政策を10年以上続けてたんでちゅかねえ
スライド3枚目の2ポツ。
『・低インフレ期(2013年から20年まで)
QQEの導入が景気回復や物価押上げにつながったが、長期低迷からの完全な脱却には至らず、物価・賃金が上がりにくいことを前提とした慣行や考え方が根強く残るもとで、2%の「物価安定の目標」は実現せず。』
>QQEの導入が景気回復や物価押上げにつながったが
>QQEの導入が景気回復や物価押上げにつながったが
>QQEの導入が景気回復や物価押上げにつながったが
もうね、アホかと馬鹿かと。
9枚目のスライドに飛びますと、そこには『2010年代の低インフレを巡る議論』ってのがあるんですが、そこでも何の断りもなく、
『・ QQEは物価押上げに成功、しかし2%には届かず
適合的なインフレ予想の形成メカニズム
─ QQE導入後の原油価格下落などを受けてインフレ予想も弱含み』
とか寝言を書いているのですが、決め打ちにも程がある訳で、QQE導入の時って消費増税が後に控えていましてそれに伴う財政支出がその前からあったこと、それから円安が進行(まあQQEのお蔭で円安が進行した、と言えばそういうことですけど)したことなど他の背景もあるのに何ちゅう決め打ちをするのかと小一時間問い詰めたいのと、こういうのって時代が進んでいくとこういう恣意的お手盛り分析であっても過去の記憶が皆さんドンドン飛んでってしまうので、日銀調査統計局様が作成したものなので、という権威付けによって勝手に事実になってしまって、将来同じような事が起きた時にまた牛の涎のように垂れ流し金融緩和一本足打法とか始めるという失敗をぶちかますことになりかねないのでマジでこういうイカサマ決め打ちするの勘弁してほしいんですよね。これが企画局だとああまた例のお手盛りですねとなるんですけど調査統計局たるものがこんな決め打ち出していいんですかねえちょっとOBの皆さんのご意見を聴きたくなりますわwwwwwww
同じお話になりますが、スライド10枚目には『2010年代の低成長を巡る議論』ってのがあるのですが、最初のポチで、
『・QQEは景気拡大に貢献、しかし潜在成長率は低迷
高圧経済による供給面への履歴効果は不十分?
資源配分の歪みを通じた副作用?』
>QQEは景気拡大に貢献
>QQEは景気拡大に貢献
>QQEは景気拡大に貢献
こちらもまたさっきと同じ決め打ちですよね、まあ以下同文なので以下は割愛しますが。
・輸入物価上昇が「好循環」ですかそうですかそうですか
スライド3に戻りまして3ポツ目
『・高インフレ期(2021年から)
コロナ後の輸入物価上昇を契機に、賃金と物価の好循環が強まり、「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現が見通せる状況に。この間、@国際経済環境、A労働市場、B企業の価格設定行動などに変化の兆し。』
>コロナ後の輸入物価上昇を契機に、賃金と物価の好循環が強まり
>コロナ後の輸入物価上昇を契機に、賃金と物価の好循環が強まり
>コロナ後の輸入物価上昇を契機に、賃金と物価の好循環が強まり
えーっとすいません、何で輸入物価上昇が「好循環」になるんですか幾らなんでも書き方というのがあるんじゃないでしょうか・・・・・・・・・・
スライド8に変態仮面ブラード先生の複数機構論の話(なんかQQEで自然利子率の引き上げだのインスレ予想の引き上げだのという辺りがインチキ臭くて、ブラードの複数均衡論ってのは低インフレを放置しているとゼロインフレ均衡に嵌ってしまうからQQE2が必要だって話をするための物件なので何か微妙に微妙な説明なんですがその辺はパスします)をしているんですが、外生的ショックによってとりあえず物価が上がったので一旦均衡からズレた、みたいな話をするならまだしも(なおその場合はなぜ2013-2014年との違いは何なのかというのを深掘りする必要があるんでネーノ)、いきなり何の断りもなく「輸入物価上昇で好循環」は説明が乱暴にも程があると思うんですがどうでしょう。
・相関関係をそのまま因果関係にしてしまうのは置物症候群に罹患している可能性があります
あと腰砕けるのは最後の方のスライド24なんですよね。
『インフレ予想と成長期待・設備投資』ってお題なんですけど。
『・ 日本では90年代以降、中長期のインフレ予想と成長期待が連動していたが(他の先進国では同様の関係はみられていない)、QQE導入後はインフレ予想がやや上方に乖離。今後も乖離は続くか?
・ 企業の物価見通しと設備投資計画の関係をみると、緩やかな物価上昇を見込む企業は設備投資計画を増加させる傾向(大幅な物価上昇や物価下落を見込む企業は設備投資計画を減少させる傾向)。』
なんじゃこりゃという話でして、これはインフレ予想が上がったから設備投資を増加させているのではなくて、単純に景気拡大あるいは自社製品の売り上げ拡大を見込んでいるから設備投資を増加させているだけの話で、つまりインフレ予想が上がるから設備投資が増える、みたいな話でもなんでもないだろいい加減にしろと思う訳ですが、このスライドの表題、『インフレ予想と成長期待・設備投資』ってなっていて、いかにも「インフレ予想が2%でアンカーされると成長期待や設備投資が盛り上がります」という置物リフレ理論であらされるところの「インフレ予想さえ上げれば世の中バラ色」というハッピー置物ムーブが伝染していると思われますし、どこかの三百代言部局なら兎も角、調査統計局様とあろうものがこんな置物理論ばりの説明スライド作るなよと思いました(あくまでも個人の感想です)。
・・・・・・ということで、まあ何ちゅうかこのツッコミどころという感じなのですが、まあこの調子で多角化レビューやってるのを今日からの国際コンファランスで堂々と公表するのかよ大丈夫かと思いますし、しかも公表する親玉が日本のマクロ経済・金融論においては第一人者であらされるところの植田和男大先生、というのがもうねという所ではございますがどうなることやら。
2024/05/24
ほうほうそうですかそうですか
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-05-23/SDXZ5OT1UM0W00
ドル一時157円台、米国債利回り上昇−米PMIが予想以上に堅調
Rita Nazareth、Liz Capo McCormick
2024年5月23日 23:21 JST 更新日時 2024年5月24日 0:17 JST
〇輪番がこんなに悪目立ちしているのも13日の騙し討ち減額が悪いんですけどね
・輪番減額は当然なかったのだがその瞬間為替が反応してたのはワロタ
クソワロタ
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-05-23/SDX41UT0G1KW00
【日本市況】株反発、エヌビディア決算で半導体高−円堅調、債券上昇
Winnie Hsu、船曳三郎、山中英典
2024年5月23日 14:31 JST 更新日時 2024年5月23日 15:57 JST
『為替
東京外国為替市場の円相場は1ドル=156円台後半で取引された。日銀が国債買い入れオペを据え置いたことを受け、約3週間ぶりの安値を付ける場面があった。タカ派的な米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨を受けたドル高や、実需のドル買いも円の重しになった。』(上記URL先より)
ということで、輪番はまあ普通に同額で実施されたのですけれども、出たあといったん円安に為替ちゃんが吹いたのはクソワロタというかアホなのかと思ってみておりました、まあ瞬間芸みたいな動きではありましたけど、こうやって相場振り返り記事になっちゃうのがもう残念としか申し上げようがありませんですな、ナムナム。
4月減らす最初のチャンスの時に減らさないで、その後も減らさずで来まして5月分のオペ紙も淡々と変更しない、でもって連休明けの買入も同額でぶっこんで来ておいていきなり5-10で減額というのはやっぱりアホの極みで、どうせなら連休明けに中期を減額しておけばよかったわけで、「4月いきなり減額すると刺激的かと思って1か月待ちましたてへぺろ」って言っておけばまだ話は分かったのですが時すでにお寿司なのでもうシャーナイですな。
でまあ変なサプライズするもんだから輪番が急に悪目立ちするようになって、据え置き(いやまあ普通にれ据え置きしてくるじゃろと思うんだが)のたびに瞬間芸でも反応されてニュースネタになってしまうとバンドワゴン効果じゃないけど悪目立ちの前向きの循環メカニズムが働いてしまうんでどうするんですかねえ日銀ちゃん。
ということで、好むと好まざるにかかわらず、6月会合の時点で長期国債買入に関してもっときっちりと定義づけを示して、まあできることなら調節部署の裁量を極力排除してオペの予見可能性を高めてしまって一々材料にされないようにするしかないんじゃないかなあとは思いますけどね、飛び道具に関しては「投機的な動きなどで金利が急騰したら使うかもよ」と言っておけばいいんだし。
ま、それからアレですよね。月末のオペ紙変えないんだったら少なくとも6月決定会合までは輪番いじらないで兎に角ほとぼりが冷めるの待つしかないっすよねこれ。オペ紙変えるんなら話は別ですけど。
などと思っていたら、
・1-3札割れだから1-3は減額する明確な大義名分が発生してこれは日銀もニッコリ(知らんけど)
落札結果 (5月23日<木>)
https://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba240523.htm
国債買入(残存期間1年超3年以下) 3,564 3,564 -0.010 -0.003
国債買入(残存期間3年超5年以下) 9,844 4,255 -0.005 -0.004 78.1
国債買入(残存期間5年超10年以下) 10,031 4,255 -0.004 -0.002 78.4
1-3輪番札割れキタコレということで、昨日はカーブの後ろはヘロヘロでしたが、1-3輪番札割れを受けてかどうかはさておきまして、2年とかの辺り前日比引け強になってしまいまして、なんという事でしょう本来は短期政策金利の引き上げが意識されるのですから教科書的にはベアフラットなのにまさかのツイストスティープにもはや笑ってしまうしかありませんな。
まあ輪番をめぐる不確実性、ってのはあるんですが、ゆうてそもそも超長期って日銀たいして買っていないので、輪番がわけわからんからどうのこうのって話は10年までならともかく超長期がゲロゲロになる理由では無い気もするのですが、とは言え10年コケると後ろに影響するんでとかなんとか言いながら、押し目買いを渋る理由にはなっていると思うのでやっぱり日銀の政策コミュニケーションがグダグダになっているのが悪いよ、と思ってしまいますが、まあ何はともあれ1-3札割れしたから次回減額、と思ったら今月は1-3輪番もう無いのか・・・・・
〇今度は海外の不確実性ですかそうですか(植田総裁記者向けコメント)
こんなんでてました
https://jp.reuters.com/economy/bank-of-japan/FMOLGBVHYJIUVJKFFFBGR2XKG4-2024-05-23/
日本経済「持ち直しの見方、変わらず」=植田日銀総裁
By ロイター編集
2024年5月23日午後 9:49 GMT+9
『[ストレーザ(イタリア) 23日 ロイター] - 日銀の植田和男総裁は23日、日本経済の先行きに関し、持ち直すとの見方に変わりないと述べた。主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議に先立ち、現地で記者団に語った。』(上記URL先より、以下同様)
会見は会議後に行われるのでこれは記者団向け囲みだかぶらさがりだかのお話ですねきっと。
『1―3月期実質GDPがマイナス成長だったことについては自動車の生産・出荷停止の影響が出たと指摘。一方、事前に予想されていた動きとし、「4月会合後のデータだが、基本的な日本経済についての認識はそのデータを経たあとでも、4月の会合時点から大きく変わっていない」と語った。』
『植田総裁は「残存するインフレ圧力の消費への下押しの影響も予想されていたこと」とし、「第2・四半期以降、自動車まわりのところは改善に向かうと思うし、第1の力からくるインフレのところは減衰していく。予想される名目賃金の上昇で実質所得に上向きの力が働くことから持ち直すという全体的な姿には、今のところ変化はない」と述べた。』
『世界経済に関しても「(4月会合時から)大きく動いていないと思う」とした。』
であれば、4月展望レポート基本的見解で高らかにお示しした通り、「以上のような経済・物価の見通しが実現し、基調的な物価上昇率が上昇していくとすれば、金融緩和度合いを調整していくことになる」という話になるはずなんですが・・・・・・・・
『最大の焦点は「米国経済がソフトランディングの最後のワンマイルをどういう風に完走するのか、あるいはうまくいかないのかというところ」と言及。今回のG7で「色々、皆さんと議論してみたい」と語った。』
『欧州経済を巡り「少し弱めだったヨーロッパ経済が底打ちに向かうという話もあるが、その辺についてもどう考えているかということを議論したい」とも語った。』
ってこれどっからどう見ても「海外が不確実だから金融政策の修正をしたくないでござる」って言ってるようなもんじゃねえかというところでして、またこのハトハトチキンは海外に行くと本音駄々洩れしやがるわという感じで落涙を禁じ得ないのであります。
〇そういや来週は金研国際コンファランスですね
https://www.imes.boj.or.jp/conference.html
『本年の国際コンファランスは「物価変動と金融政策の課題 -- 教訓と展望 --」と題して、5月27日、28日に開催いたします。詳細はプログラムをご覧ください。』
お品書きはこちら
https://www.imes.boj.or.jp/en/conference/2024confsppa.html
2024 BOJ-IMES Conference
Price Dynamics and Monetary Policy Challenges
-- Lessons Learned and Going Forward --
May 27 - 28, 2024
Institute for Monetary and Economic Studies, Bank of Japan
- Preliminary Program (subject to change) -
月曜に
9:00 Opening Remarks
Speaker:
Kazuo Ueda, Bank of Japan
11:00
Keynote Speech I: Price Dynamics in Japan over the Past 25 Years
Chairperson: Shin-ichi Fukuda, The University of Tokyo
Speaker: Shinichi Uchida, Bank of Japan
ってあるので、植田総裁と内田副総裁の講演が予定されているのですが、まあ内田さんのこの物件ってまさに火曜日の多角的レビューでやってるネタなので、なんですかその使いまわしみたいなのが出てくるんじゃネーノと予想してしまうのですが、それはそうとこの金研コンファランスの日本サイドのメンバー見たらまさに火曜日の多角的レビューのワークショップの人たちじゃんという感じでして、なんちゅうかこの多角的レビューがすっかり政策に結びつかない植田総裁の趣味の場になってきましたなという感じ(なんか直近でもホイホイとスタッフペーパーでてるんですよね)ですな。
まあ何か面白いことでも言っていただけるとよいのですが、あんまり期待しませんし、それよりも多角的レビューのポンチ絵がいろいろとアレではないかという中であれに沿って出すの大丈夫かよと思ってしまいますが・・・・・・
〇多角的レビューのスタッフ謹製スライドを見ながらいろいろと突っ込んでみる企画
https://www.boj.or.jp/mopo/outline/bpreview/bpr240405a.htm
「金融政策の多角的レビュー」に関するワークショップ
第2回「過去25年間の経済・物価情勢と金融政策」
どうでもいいんですがこれ更新したのですからページの日付がバックデートってのも微妙に微妙ですよね。
第1セッションも第2セッションもなかなかのツッコミどころ満載なのですが、まあ政策絡みの第2セッションは実にツッコミどころが多いのでそっちのスライドから参りましょう。
https://www.boj.or.jp/mopo/outline/bpreview/data/bpr240405a2.pdf
非伝統的金融政策とインフレ予想
「金融政策の多角的レビュー」に関するワークショップ(第2回)
―― 第2セッション 金融政策 ――
2024年5月21日
日本銀行 企画局
まあだいたい企画局謹製という時点で結論先にありき自己正当化先にありきの香りがプンプンする、という物件ですが、
・のっけから雑なまとめキタコレ
テーマが2個あるのですが、前半がスライド3にあるように『1.非伝統的金融政策とインフレ予想』なのですけど、このスライド、4ページののっけからこれなんですよね
『非伝統的金融政策の効果の波及経路』ってのがスライド4なのですが、ここでいきなり「非伝統的金融政策」を一つにまとめて説明していまして、いやお前非伝統的政策ってフォワードガイダンスによる下限政策金利への長期的コミットメントからはじまってLSAPあり(しかも国債買入以外のリスク性資産の買入もあり)マイナス金利ありYCCあり、その間にマネタリーベースにフォーカスした政策あり、といろんなのがあるのに全部まとめて一つにするの乱暴だろ、ということでもう最初の時点でイカサマ感が満載な訳ですなこれがまた。
でまあその政策の効果に関しては第1セッションの調査統計局が出しているスライドの方にああでもないこうでもないと書いているのですが、こっちは今日は時間が多分足りなくなると思うので割愛しますが、他のファクターの話をかなり無視しして堂々と「QQEが物価を押し上げて景気拡大に貢献」と決め打ちしていまして、いやお前物価に関しては為替ファクターがあったし消費増税に伴う便乗値上げもあったし、景気の方にもつながるけど財政出しただろ、ってなもんで、その辺を全部っかっ飛ばしてQQEで物価と景気が押し上げられた、という置物一派みたいな糞分析をしているんですよねこれがまたwwwww
まあしかしこのスライドショーの面白ポイントは後半の『2.緩やかなインフレの経済的意味』でして、これがとにかく笑えるんですよね。
・植田さんの昨年末経団連講演での怪しさ満点の説明が祟っておられるようで何よりですなwwwwwwwwwww
一昨日も申し上げましたが、昨年末の経団連の講演で、一般的な経済学の考え方からしたらおかしくないですかねえというような説明をしておったのを、これまたおあつらえ向きのようにかつて宮尾先生(その後審議委員)とスタッフ(その後企画局長や金融機構局長を歴任中)と書いたペーパーを日銀が出しているのでそれを引っ張って確認したわけですけれども。
でまあ植田さんの講演で言ってたのが「インフレの方が価格改定がしやすい」「インフレの方が資源配分が効率的になる」という話でしたが、それを一生懸命正当化しようとしていまして、スライド30の「まとめ」の3ポツで
『・正の一般物価インフレ率のもとで、賃金・物価が緩やかに上昇する世界では、金利の実効下限制約に直面するリスクが低下し、金融政策の対応余地が拡大すると考えられる。』
ってのはまあそうですねという話です
・・・・とは言いましてもこの点に関してだって「金融政策の対応余地のため」という観点がどれだけ重要なのか、という問題が大ありであって、社会厚生上望ましいインフレ率に対して「金融政策のため」という理由でそれよりも高いインフレ率を望ましいとするのは金融政策の目的(社会厚生の最適化)から見たら本末転倒にならんのか、という重大な論点が残るし、実は今回のスライドを見ると2%が正しいいうような結論にならないだろってのが散見されます。
『また、近年の研究では、正の一般物価インフレ率を実現することが、賃金・価格のシグナリング機能を高め、資源配分の効率化に繋がる可能性があること、ひいては、生産性に対して好影響をもたらしうることも指摘されている。』
ということですが、もともと言われていた理屈の方が普通にロバストなのに対して近年の研究で、ってぶっこんでいるのもいやお前それロバストなのかよという話なのでして、これを堂々と言うのは流石に図々しくないかと思うのですが、まあ昨年末の面白講演の尻ぬぐいなのですよね。
・インフレの方が新陳代謝が進んで資源配分の効率化につながるんだったらマイナス金利とか超愚策という話になりますがwwwww
今回のこの紙芝居で一番アタクシが腰を抜かした、というかアタクシ程度の門前小僧というか門前にも立てない小僧ですら腰を抜かしたのがスライド27です。
『物価変動と資源配分の効率性に関する研究』って見出しなんですけどね。
『● このほか、緩やかな正の一般物価インフレ率のもとで、企業の新陳代謝や効率的な研究開発投資が促進される可能性を指摘した研究もみられる。』
・・・・・・・・(゚д゚)
でまあその先行研究の論旨をご紹介しているのが『先行研究での指摘』という箱ですが、
『Santro and Viviano [2022]
■生産性が高くマークアップ率(マージン率)の大きな企業は、コスト吸収余力が大きいため、コスト増をあまり価格転嫁せず、価格競争力を維持しやすい。
■一般物価の緩やかな上昇は、価格転嫁の違いを通じて、生産性の高い企業への需要シフトを促進するため、経済全体の資源配分の効率化に繋がる。
Miyakawa et al. [2022]
■一般物価が上昇し価格改定コストの相対的な負担が高まると、そうした価格改定コストを十分に吸収できる高付加価値商品を開発できる企業が、そうでない企業に比べて大きな研究開発投資を行うようになり、市場シェアを拡大する。■こうした資源再配分効果が十分強く働くと、実質成長と経済厚生が改善する。
Bilbiie et al. [2014]
■参入企業が過剰となっている市場においては、一般物価が上昇してコストが増加すると、マークアップの圧縮を通じて企業の新陳代謝が促され、資源配分の歪みが是正される可能性がある。』
・・・・・いやあのすいません、これって要するに「物価上昇に耐えられなくなった企業が脱落することによって新陳代謝が進む」っていうゴリゴリのシバキ理論ですよね。
いやまあゴリゴリのシバキ理論をベースにして物価の上昇はよいこと、という説明するのでしたら、あんたらなんで散々っぱら金利を下げまくることをしてたんだよという話で、これが正しいスタンスであるならば、「金利がある程度ある状態の方が新陳代謝が促進されて資源配分の効率化につながる」っていう話もまた正しいってことになるんですけど、望ましいインフレ率の話をするときはゴリゴリのシバキ論を言っておいて、実際にやっている金融政策が世界にも例をみないガバガバ緩和政策をやってる、っていうのはどういうことなのかと小一時間問い詰めたいい訳でして、これは二枚舌とかダブルスタンダードとかご都合主義と言われても文句の言えないご説明になっていると思うんですが大丈夫ですかねえこの調子で金研国際コンファランスに突っ込んでいってwwwwwww
・実質賃金は下がる方が良いという説明もぶっこまれております
スライド28に『賃金の硬直化と労働市場の効率性』ってのがあるんですがこれまたお洒落でしてですね。
『● わが国では、インフレ率が低下するもとで、賃金が硬直的となる傾向がみられた。』
『● 賃金の硬直化は、生産性に応じた賃金設定を困難にする。高い一般物価インフレ率のもとで、賃金設定の柔軟性を確保することが、賃金のシグナリング機能を高め、資源配分を効率化し、生産性の上昇に繋がるとの指摘もみられる。』
これ要するに「一般物価が上がると賃金の調整がしやすい」って話ですから、つまりは実質賃金が下がった方が良いって説明になっているわけですな。
まあそれ自体はそれこそ黒田緩和始まる頃にハマコー大先生も「賃金は上がらない方が良い」とかダイヤモンドで発言(やばいと思ったのか最近は有料会員でしか読めないアーカイブになってしまいましたがw)していたように、まあその主張は必ずしも間違いという話ではないのですが、日銀が言ってる「賃金と物価の好循環」とか政府というか官邸の言ってる「物価上昇に負けない賃金上昇」とか言ってるのとずいぶんと話が違いますけど大丈夫なんですか、ってなお話でしてこれもまた笑ってしまいました。
・・・・・・ほかにもツッコミどころがあるのですが気が付いたら時間がなくなったので本日はこの辺で勘弁してちょ。
2024/05/23
〇その前に10年1%なので記念備忘メモ
皆様ご案内の通りですが
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/3KKX4K3JJBNNFBLF4G2QDXRM2A-2024-05-22/
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は続落、長期金利1%と11年ぶり高水準 弱めの入札で
By 坂口茉莉子
2024年5月22日午後 3:54 GMT+9
『[東京 22日 ロイター] - <15:43> 国債先物は続落、長期金利1%と11年ぶり高水準 弱めの入札で
国債先物中心限月6月限は前営業日比7銭安の143円65銭と続落して取引を終えた。新発10年国債利回り(長期金利)は同2.0bp上昇の1%と2013年5月以来11年ぶりの高水準。40年債入札結果が弱めとなったことを受けて、現物市場では超長期ゾーンを中心に金利が上昇。この流れが波及し、国債先物はマイナス圏に転じた。』(上記URL先より、以下同様)
とまあそういうことですが、なんせですね、
『前日の米債市場で長期金利が4.41%付近に低下した流れを引き継ぎ、国債先物は買いが先行。その後、超長期債ゾーンを中心とした金利上昇が波及し、先物は上げ幅を縮小した。40年債入札結果は弱めと受け止められた。「生保勢中心に札は入っていたものの、最高落札利回りは前引けの水準よりも甘かった」(国内証券債券セールス担当)という。これを受けて、新発国債利回りは超長期ゾーンを中心に上昇。その流れが中長期ゾーンにも波及した。「押し目買いの動きが乏しいことを踏まえると、市場は長期金利1%を一旦試しにきているようだ」(同)との声が出ていた。』
昨日の40年国債入札って入札自体は直前予想(としてベンダーが言ってたの)からみるとそこまで度肝を抜くような入札でもなかったと思うのですが、そもそも論として事前に結構調整したのにそれよりも弱かったということで(ノ∀`)アチャー感溢れる入札でした、ってことなんでしょうね、知らんけど。
『TRADEWEB
OFFER BID 前日比 時間
2年 0.337 0.347 0.002 15:15
5年 0.579 0.588 0.014 15:25
10年 0.989 0.998 0.018 15:25
20年 1.821 1.831 0.041 15:25
30年 2.132 2.145 0.055 15:25
40年 2.524 2.536 0.05 15:27』
日銀の早期政策修正ネタで売ってるんだったら後ろの方そんなにバカスカ売らんでもとは思うのですけれども、「日銀がどう出てくるかが皆目見当がつかないから様子見するしかないじゃん」と主要投資家の皆様が思ってしまい、マーケットメーカーはマーケットメーカーで「日銀の輪番の上げ下げの基準が全く意味不明で予見可能性が全然ないからポジションを大きく持って輪番上げ下げにあたったら死ぬもんね」となっているわけでして、そりゃまあ金利リスク量の大きい方が売られるわ、ということで、「短期政策金利の引き上げ思惑がある中なのにベアフラットではなくベアスティープ続く」という面白相場になってしまっておられる次第で、まあ要するに日銀が悪いよ日銀が、という事になるわけですな。
6月7月のMPMでこの予見可能性皆無しかも基準がただのお気持ちというクソコミュニケーション状態を立て直していただきませんと、「日銀の出方がロジカルに読めないので誰もリスクを取りに行けない」という状態が延々と続くことになってしまいますので、整合性が全然取れないその場しのぎのインチキ説明を反省してもらわんと行けませんわ、と思うのであります。
まあしかし何ですな、先週月曜のサプライズ輪番減額がこんなに効くとは、ってなもんですが、これは輪番減らした額が問題なのではなく、「今までの説明&今までの日銀の輪番スタンスから論理的に考えたら市場がだれも予想できないタイミングで輪番を減額してきた」という「サプライズ」を打ち込んで、日銀の今後の動き(輪番にしろ短期政策金利の調整にしろ)をロジカルに読みにくくなった(もともとロジカルじゃないから読みようがなかったのですが今回のはそれに輪をかけた)というのが効いている、すなわち定量的な問題じゃなくて定性的な問題なんですよねきっと、とアタクシは思うのですがどうでしょう。
でまあ金利の方は上がっているのですがなんかこうダラダラと上がる感じで昔のように「YCC解除間近だぜヒャッハー」みたいに調子に乗って売られているのではなくて、(個人の感想としては)上記のように「日銀が何やらかすか皆目読めないのでリスクを取りに行く気が起きない」ということから相場がじりじりと売られるという格好な訳でして(と思うのですが)、投機っぽくなく弱いのが何んともかんともでありますし、この間に円金利上昇しているというのにドル円様ったら結局円安気味というか、米長期金利様の方が折角4.7%水準から4.5%割れ水運になっているというのにドル円ちゃん157円接近とかやっておられる訳でして、まあ日銀は絶対そうだとは言わないけど、円安で差し込まれてアリバイ減額した結果としてドル円には全然効かない上に円金利は上昇するとか、ここまで見事な無駄打ちどころか華麗な逆効果というのはなかなか見れるもんではないので、ちょっと感動している今日この頃であります。
という備忘メモおよび悪態でした。
2024/05/21
〇結局為替の円安はダラダラ続くわ金利は上がるわとなっておられるようですがw
・アメリカン金利が下がった場合以外は隙あらば円債だらだら売られますな
昨日の債券市場ちゃん
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/I5IRU5WSXFP4DCRNEP7YNXO3PI-2024-05-20/
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は大幅続落で引け、長期金利は0.975%に上昇 11年ぶり
By ロイター編集
2024年5月20日午後 3:26 GMT+9
『[東京 20日 ロイター] - <15:08> 国債先物は大幅続落で引け、長期金利は0.975%に上昇 11年ぶり
国債先物中心限月6月限は、前営業日比34銭安の143円73銭と大幅続落して取引を終えた。米金利上昇が相場を圧迫した。新発10年国債利回り(長期金利)は同3.0ベーシスポイント(bp)上昇の0.975%と、2013年5月以来11年ぶりの高水準をつけた。』(上記URL先より、以下同様)
そういや黒田緩和の最初って堂々の株高進行もあってこりゃマジで2%かどうかは兎も角いい感じで物価が上がるんじゃネーノという気もしましたので、そうなったら2年で2%なんだからそら長期金利上がるっしょ、ということで金利上がったんですよね。まあちょうどその時にGUさんがきゃりーぱみゅぱみゅさんをモデルにして宣伝を行っていて、それがきゃりーさんがマーライオンの物真似してたんでまさにキャリー(円債投資)がマーライオンとか言っておった訳です(期間限定CMだったのですが期間が終わったら金利も戻ったwww)けれども、あれ瞬間芸気配は片足1%とかその辺でしたっけ位ですな。うんうん。
『現物市場では、10年物以外の新発国債利回りも総じて上昇。2年債は前営業日比1.0bp上昇の0.340%、5年債は同3.0bp上昇の0.575%、20年債は同2.5bp上昇の1.780%、30年債は同3.0bp上昇の2.080%、40年債は同3.5bp上昇の2.490%。』
とまあそういうわけで、円安が全然止まらん上にイエレンさんに「そんなに円安がいやなら利上げしろ」と五寸釘差されてしまった挙句に謎の輪番減額、と来まして結局円安止めるほどの気合の入った姿勢は出てこないながらも円債ちゃんの方ではもはや6月MPM無回答ありえず、という感じになっている(たぶん為替でも)訳で、6月7月に利上げあるいは相当の国債買入減額をぶち込みにいかないと為替市場が許さないという風潮になっておりまして、金利は上がるわ為替はゆうてちゃんとしたものを出してくるまで信用しないと反応しないわとか、先週月曜のアレ以来日銀益々詰みモードになっているのは実に香ばしい。
なお、記事中に昨日の物価連動国債新発(年1でしか新発が出ない(残りはリオープン発行)ので、5月に新回号が出る、10年後の3月10日償還)の話があるわけですが、こちらはなんかカレントのBEIが前日引けベースから8bpほど強い方にぶっ飛ぶという謎展開と相成っておりまして、カレントでとうとう150を明確に超えてくるという数値になっているのですが、新発新回号入札イベント一発で飛ばれるとナンジャソラ感はあるのでとりあえず判断保留しておきます。
・短いところ強いんだか弱いんだかよくわからんですが
いつもの
https://www.jsda.or.jp/shiryoshitsu/toukei/trr/index.html
今日は先週月曜からのを並べてみましょう
2024/5/13 0.079 0.079 0.068 0.062 0.059 0.058 0.063
2024/5/14 0.076 0.080 0.068 0.061 0.059 0.058 0.063
2024/5/15 0.080 0.076 0.070 0.062 0.061 0.059 0.066
2024/5/16 0.044 0.043 0.058 0.059 0.057 0.052 0.065
2024/5/17 0.075 0.081 0.063 0.060 0.059 0.057 0.072
2024/5/20 0.083 0.080 0.066 0.062 0.060 0.058 0.074
つーことで月曜の東京レポレートって足元下がらんという数字になっていまして、それが影響しているのか短国の売参ベースだけでは6月償還の単利が若干上がったりしているのだが実際にどうなのかというとこれがまたそもそも常にこのゾーンの流通玉があるわけでもなくてアドホックに玉が出てきたり買われたりするようなものですからしてよーわからんですが、まあそういう評価をされておりますな。
あとこれ並べている一番右はGC3Mなのですが、昨日も申し上げましたがこちらが何となく上げ気味に見えるのが味わいありますな。
まあでもゆうて3Mの短国の引けとか売参見ても動いてないのでして、何ちゅうかこの強いのか弱いのか正直よくわからんですバイって感じなのはまるで変化なしですな。
なお売参
https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html
昨日の引け(5/21発表分)の3Mどころを見ますと
国庫短期証券1230 2024/08/13:平均値単利 0.035
国庫短期証券1232 2024/08/19:平均値単利 0.035
国庫短期証券1176 2024/08/20:平均値単利 0.050
国庫短期証券1233 2024/08/26:平均値単利 0.050
1176というのは1年短国の成れの果てでして、1232が金曜に入札のあったカレント3M、1233は今週入札予定のWIの気配になりますが、おまえ償還1日違いで1.5bpも違ったら19日→20日のインプライド翌日物金利幾らになりますねん、というアレっぷりはアレとしまして、一応今週予定の3Mも5bpの気配にはしておりますし、まあ現実問題として入札で3bpだ4bpだという水準に札がどんくらい集まるのか問題もあるし8/26償還だとほぼ1か月が7月会合跨ぎになってしまいますし、まあ地道に3Mの入札動向を眺めていくのは続けてまいりたい所存ではありまする。なんの意味があるのかはよくわからんけど兎に角大昔といろいろと違う(ベースにあるのはアホのように積みあがった超過準備の存在)ので、新時代に適応できるようにしないといけませんですわ、とほほ。
2024/05/21
〇結局為替の円安はダラダラ続くわ金利は上がるわとなっておられるようですがw
・アメリカン金利が下がった場合以外は隙あらば円債だらだら売られますな
昨日の債券市場ちゃん
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/I5IRU5WSXFP4DCRNEP7YNXO3PI-2024-05-20/
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は大幅続落で引け、長期金利は0.975%に上昇 11年ぶり
By ロイター編集
2024年5月20日午後 3:26 GMT+9
『[東京 20日 ロイター] - <15:08> 国債先物は大幅続落で引け、長期金利は0.975%に上昇 11年ぶり
国債先物中心限月6月限は、前営業日比34銭安の143円73銭と大幅続落して取引を終えた。米金利上昇が相場を圧迫した。新発10年国債利回り(長期金利)は同3.0ベーシスポイント(bp)上昇の0.975%と、2013年5月以来11年ぶりの高水準をつけた。』(上記URL先より、以下同様)
そういや黒田緩和の最初って堂々の株高進行もあってこりゃマジで2%かどうかは兎も角いい感じで物価が上がるんじゃネーノという気もしましたので、そうなったら2年で2%なんだからそら長期金利上がるっしょ、ということで金利上がったんですよね。まあちょうどその時にGUさんがきゃりーぱみゅぱみゅさんをモデルにして宣伝を行っていて、それがきゃりーさんがマーライオンの物真似してたんでまさにキャリー(円債投資)がマーライオンとか言っておった訳です(期間限定CMだったのですが期間が終わったら金利も戻ったwww)けれども、あれ瞬間芸気配は片足1%とかその辺でしたっけ位ですな。うんうん。
『現物市場では、10年物以外の新発国債利回りも総じて上昇。2年債は前営業日比1.0bp上昇の0.340%、5年債は同3.0bp上昇の0.575%、20年債は同2.5bp上昇の1.780%、30年債は同3.0bp上昇の2.080%、40年債は同3.5bp上昇の2.490%。』
とまあそういうわけで、円安が全然止まらん上にイエレンさんに「そんなに円安がいやなら利上げしろ」と五寸釘差されてしまった挙句に謎の輪番減額、と来まして結局円安止めるほどの気合の入った姿勢は出てこないながらも円債ちゃんの方ではもはや6月MPM無回答ありえず、という感じになっている(たぶん為替でも)訳で、6月7月に利上げあるいは相当の国債買入減額をぶち込みにいかないと為替市場が許さないという風潮になっておりまして、金利は上がるわ為替はゆうてちゃんとしたものを出してくるまで信用しないと反応しないわとか、先週月曜のアレ以来日銀益々詰みモードになっているのは実に香ばしい。
なお、記事中に昨日の物価連動国債新発(年1でしか新発が出ない(残りはリオープン発行)ので、5月に新回号が出る、10年後の3月10日償還)の話があるわけですが、こちらはなんかカレントのBEIが前日引けベースから8bpほど強い方にぶっ飛ぶという謎展開と相成っておりまして、カレントでとうとう150を明確に超えてくるという数値になっているのですが、新発新回号入札イベント一発で飛ばれるとナンジャソラ感はあるのでとりあえず判断保留しておきます。
・短いところ強いんだか弱いんだかよくわからんですが
いつもの
https://www.jsda.or.jp/shiryoshitsu/toukei/trr/index.html
今日は先週月曜からのを並べてみましょう
2024/5/13 0.079 0.079 0.068 0.062 0.059 0.058 0.063
2024/5/14 0.076 0.080 0.068 0.061 0.059 0.058 0.063
2024/5/15 0.080 0.076 0.070 0.062 0.061 0.059 0.066
2024/5/16 0.044 0.043 0.058 0.059 0.057 0.052 0.065
2024/5/17 0.075 0.081 0.063 0.060 0.059 0.057 0.072
2024/5/20 0.083 0.080 0.066 0.062 0.060 0.058 0.074
つーことで月曜の東京レポレートって足元下がらんという数字になっていまして、それが影響しているのか短国の売参ベースだけでは6月償還の単利が若干上がったりしているのだが実際にどうなのかというとこれがまたそもそも常にこのゾーンの流通玉があるわけでもなくてアドホックに玉が出てきたり買われたりするようなものですからしてよーわからんですが、まあそういう評価をされておりますな。
あとこれ並べている一番右はGC3Mなのですが、昨日も申し上げましたがこちらが何となく上げ気味に見えるのが味わいありますな。
まあでもゆうて3Mの短国の引けとか売参見ても動いてないのでして、何ちゅうかこの強いのか弱いのか正直よくわからんですバイって感じなのはまるで変化なしですな。
なお売参
https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html
昨日の引け(5/21発表分)の3Mどころを見ますと
国庫短期証券1230 2024/08/13:平均値単利 0.035
国庫短期証券1232 2024/08/19:平均値単利 0.035
国庫短期証券1176 2024/08/20:平均値単利 0.050
国庫短期証券1233 2024/08/26:平均値単利 0.050
1176というのは1年短国の成れの果てでして、1232が金曜に入札のあったカレント3M、1233は今週入札予定のWIの気配になりますが、おまえ償還1日違いで1.5bpも違ったら19日→20日のインプライド翌日物金利幾らになりますねん、というアレっぷりはアレとしまして、一応今週予定の3Mも5bpの気配にはしておりますし、まあ現実問題として入札で3bpだ4bpだという水準に札がどんくらい集まるのか問題もあるし8/26償還だとほぼ1か月が7月会合跨ぎになってしまいますし、まあ地道に3Mの入札動向を眺めていくのは続けてまいりたい所存ではありまする。なんの意味があるのかはよくわからんけど兎に角大昔といろいろと違う(ベースにあるのはアホのように積みあがった超過準備の存在)ので、新時代に適応できるようにしないといけませんですわ、とほほ。
〇経済財政諮問会議でもぶっこまれていましたがあちこちで円安怪しからんネタが・・・・・
・こんなのもあったんですね(毎日新聞世論調査)
https://mainichi.jp/articles/20240519/k00/00m/020/141000c
歴史的円安 「マイナス面大きい」80% 毎日新聞世論調査
経済 速報
毎日新聞
2024/5/19 18:32(最終更新 5/19 18:39)
384文字
・・・・・・(;∀;)イイシテキダナー
『18、19日実施の毎日新聞世論調査で、歴史的な円安への受け止めを聞いた。円安は自身の暮らし向きにとって「マイナス面が大きい」が80%で、「プラス面が大きい」の6%を大幅に上回った。「わからない」は14%。』(上記URL先より、以下同様)
ほうほうそうですかそうですか。
『「マイナス面が大きい」との回答は全ての年代で80%前後だった。「プラス面が大きい」は全年代で1割以下で、特に70歳以上では4%にとどまった。男女による大きな回答差はなかった。』
高齢世代だと外貨預金とか外貨建て保険とか買ってたのがウハウハとかそういうのではないのね、と思いましたけれどもそれはさておきまして、最近はだんだん円安が値上げの言い訳になったりしています(まあコスト高なんだからそうなんですが)し、円安=家計への負担増、となっておりますようで何よりのことです。
まあ植田が悪いよ植田が、という話ではあるのですが、そもそも論としてこれは「アベノミクスと黒田緩和の答え合わせ」というのをメディアもちゃんと報道すべきであって、その例として一番わかりやすいのは再三再四申し上げておりますが置物大師匠によるこの「風が吹けば桶屋が儲かる波及経路の図」であることは言うまでもありませんのでおまいらちょっとこの図表をもっと晒上げるべき。
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2013/data/ko130828a2.pdf
「量的・質的金融緩和」のトランスミッション・メカニズム
ー 「第一の矢」の考え方 ー
京都商工会議所における講演
日本銀行 副総裁 岩田規久男
こちらの6Pにありますように、そもそもマネタリーベースバンバン出して金利押さえつけることによって円安と資産価格上昇を推進しようってのの結果がこれなんですから、まあ出口に失敗している植田も大概にハリツケ獄門相当ではあります(なお挽回は可能なので磔刑は執行猶予中)けれども、置物とか黒田とかの推進した政策の成果です、って次第なのはマイ駄文の読者様におかれましては合点承知の助なのは存じておりますが、ちゃんとこういうのは「元をたどれば当時拍手喝采だった政策に問題があった」というのをきちんと確認しておかないと同じ馬鹿を何度も繰り返す学習能力のない馬鹿国家となりますので注意してほしいものです。
・多角的レビューシリーズとか言って今日出すのかと思ったら昨日でてきましたな
おやおやまあまあ
https://www.boj.or.jp/research/brp/rer/rerb240520.htm
地域経済報告―さくらレポート―(別冊シリーズ)
「1990年代半ば以降の企業行動等に関するアンケート調査」の集計結果について
2024年5月20日
日本銀行
本日は多角的レビューの第2回ワークショップとかいうのがあるのですが、まあ第1回がすでにお手盛り分析みたいなのが並んでいてナンジャソラというのは先般ネタにしたような気がしますが、そんなもんなのですし、ちょうど先日出てきていた「インフレ期待の測定」とかいう企画局スタッフ様謹製ペーパーでも家計のインフレ期待を集計するのに勝手に+5%超の数字を「極端な数字」と決めて+5%に丸めるなどといったお洒落なことをしておられる時点でまあどんなのが出てくるのかお察しというところではあります。
でもってそこで出すのかと思ったら昨日出してきたわけですが、まずはHTMLの紹介ページから。
『【要旨】
日本銀行では、「金融政策の多角的レビュー」の一環として、1990年代半ば以降の企業行動の特徴や、それがわが国の経済動向および賃金・物価形成に及ぼした影響について理解を深めることを目的に、幅広い業種・規模の国内の非金融法人企業(約2,500社)を対象としたアンケート調査を実施した。』
ほうほうそれでそれで?
『調査の結果から、わが国の設備投資や物価・賃金の停滞が長きにわたって続いた要因は、以下の4点にまとめられる。』
『第1に、バブル崩壊・金融危機後の長い調整や以降も続いた度重なる大規模なショック(リーマンショック等)の経験を経て、企業は、設備投資等による積極的なリスクテイクを抑制し、財務改善や将来に備えた現預金の確保を優先するようになった。』
『第2に、バブル崩壊・金融危機を受けて、消費者の低価格志向や取引先企業のコストカット姿勢が急速に強まる中で、競合他社との厳しい価格競争に直面した多くの企業でコストの価格転嫁が困難となった。』
『第3に、長らく賃金を抑制しても労働者を確保できたため、多くの企業が低価格を維持するために賃金を抑制するようになり、これが消費者の低価格志向を定着させる悪循環を招いた。』
『第4に、並行して進んだ少子高齢化も、成長期待の低下や社会保障負担の拡大などを通じて、設備投資や賃金を抑制する方向に働いた。』
ほうほうそうですかそうですか。
『現在においても、少子高齢化の悪影響やベア実施による固定費増加などを懸念する企業は多い。もっとも、多くの企業が、もはや賃金を抑制していると労働者を確保できない状況になっていると回答している。』
イイハナシダナー
『また、輸入物価上昇分の価格転嫁が成功したことなどを契機に、人件費の増加を販売価格に転嫁する動きも広がりつつある。』
イイハナシダナー
『物価と事業環境に関する設問では、業種・規模を問わず多くの企業が、物価と賃金がともに緩やかに上昇する状態のほうが、ほとんど変動しない状態よりも事業活動上好ましいと考えていることが明らかとなった。』
バランスの取れない上昇では困るんですがねえ。
『この間の日本銀行による金融緩和については、幅広い企業において、借入金利の低下やアベイラビリティの改善などを通じて、経営や前向きな投資の支えとなったことが確認された。』
とのことですが企業部門ってマクロ的にはキャッシュ余剰なんですよね。なんかこれ前向きな投資の支えになったとかいう都合の良い話は記載しているけどおかげでひたすら延命しています、みたいな話はまあどうせこのアンケート回答企業群は対象になるんかいな、てかそもそもこれ25年アンケートとかすると結局生存者バイアスが回答に入るんじゃなかろうかとふと思いました。
『一方、企業からは、自社が実感する金融緩和の副作用として、新陳代謝の停滞による人材確保難や価格競争激化などが指摘された。』
とあるのですが、昨日出ていた関連記事からお分かりのように・・・・・・・・
https://www.boj.or.jp/research/brp/rer/data/rerb240520a.pdf
地 域 経 済 報 告
── さくらレポート ──
(別冊シリーズ)
「1990 年代半ば以降の企業行動等に関するアンケート調査」
の集計結果について
―― 企業からみた過去 25 年間の経済・物価情勢と金融政策 ――
ちょっと読んでみますが、
『5.物価と事業環境 』という本文19ページ、PDFで21枚目のところをみますと、
『(2)物価と賃金の上昇が好ましいと考える理由』ってさっき紹介された回答の理由があるのですが、
『物価と賃金の緩やかな上昇が好ましいと答えた企業にその理由を伺うと(図表25)、「賃金の増加は家計の消費にプラスだから」、「価格転嫁が容易になるから」といった理由が特に多く選択されている。』
賃金が上がっても物価がそれ以上に上がってるんですが足元ではw
『このほかにも、「価格や賃金を調整しやすいから」、「コストカットが不要になるため前向きな投資などを行いやすいから」、(特に製造業では)「為替が安定するから」といった理由も比較的多くの企業が選択している。』
いやコストカットは不要にならんじゃろと思いますし、それよりも「為替が安定するから」って言われているのはさらにワロタとしか言いようが無いwww
『6.過去25年間の金融緩和に関する実感』ですけど、
『(1)金融緩和の自社への効果に関する実感』では
『過去25年間の金融緩和について、自社への効果の実感を企業に尋ねると(図表28)、1割程度の先が効果を実感していない、すなわち9割程度の先は金融緩和の効果を実感していると回答した。』
『具体的に実感された効果としては、業種・規模を問わず、「借入金利の低下」との回答が最も多く、次いで「融資姿勢の積極化」となっており、主に貸出チャネルを通じた効果が挙げられた。また、子細にみると、相対的に規模が小さい企業では「融資姿勢の積極化」がより実感されたことが確認された。この間、製造業大企業では、「為替相場の動向」を効果として挙げる先も多かった。』
まあそうでしょうね
『関連する企業の声をみると、借入金利の低下に代表される資金調達コストの低下について(図表29)、幅広い業種・規模から、企業経営を支えたとか、前向きな投資を後押しした、といった声が多く聞かれた。また、金融機関の融資姿勢の積極化といったアベイラビリティの改善についても(図表30)、同様の声が多く聞かれた。この点、相対的に規模が小さい企業からは、金融機関の伴走支援の拡大を効果として指摘する声が聞かれた。』
からの
『なお、大企業や製造業を中心に、2010年代前半の大幅な為替円高からの反転を念頭に、輸出競争力の改善や円ベースの海外収益の増加を評価する声が聞かれた(図表31)。中小企業や非製造業からも、為替円安によるインバウンド需要の増加を評価する声が聞かれた。』
円高是正の効果、は良いんですけどね・・・・・・
次が『(2)金融緩和の自社への副作用に関する実感 』ですけど、
『過去25年間の金融緩和について、次に、自社への副作用の実感を企業に尋ねると(図表32)、2割超の先が副作用を実感していないと回答し、7割強の先から、様々な金融緩和の副作用が指摘された。』
www
『具体的に実感された副作用としては、回答のばらつきは大きいものの、「企業の新陳代謝の停滞」や「金融機関の収益力の低下」が業種・規模を問わず多かった。また、「為替相場の動向」との回答が、業種別には製造業、規模別には大企業ほど多い結果となった。』
為替wwwwwww
『関連する企業の声をみると、金融緩和によって企業の新陳代謝が停滞したことで実感した悪影響として(図表33)、人材確保の難化や価格競争の激化を指摘する声が聞かれた。』
人材確保は知らんがなという感じですが
『なお、こうした新陳代謝停滞の背景については、金融緩和による低金利のほか、政府による金融支援等の影響を指摘する声が聞かれた。』
『この間、低金利によって収益拡大プレッシャーが減退したことが、自社の成長意欲の停滞に繋がったと振り返る声も聞かれた。』
ねー。
『また、金利低下による金融機関の収益力低下を介した悪影響としては(図表34)、金融機関が収益源の多様化を企図して手数料ビジネスを拡大させる中で、金融機関との関係の希薄化や手数料の上昇といった点が指摘された。』
ほうほうなるほど。
『このほか、為替市場を通じた副作用に関して(図表35)、近年の円安進行や変動の大きさを念頭に、原材料等のコスト上昇のほか、事業計画の策定や外国人労働者の採用への悪影響などを指摘する声が聞かれた。』
はい円安来ました。
でもって何気に素敵なのがこの次でして、
『(3)自由記入欄で寄せられたその他の意見
自由記入欄においては、前述の点以外にも、過去25年間の金融政策運営に関連して、自社への影響に限らない、様々な観点から企業の声が寄せられた(図表36)。』
ということで図表36があるのですが、なかなか面白い意見が両サイドあるので、一々引用しませんがまあ読んで味噌という感じではあります。
2024/05/20
お題「輪番据え置きですかと思ったら為替が盛大に反応しててこれは日銀詰んでますなあ/その他」
ダウ様が終値で4万ドルですかそうですか・・・・・・・
〇輪番減額見送りの為替市場の反応クソワロタ(ワロエナイ)
一応デギンドス副総裁の頭髪程度は減額の可能性を、と思ってたのですが、金曜日朝になってベンダーに出ているコメントを見てたら意外に減額の可能性が取りざたされていたのでホンマカイナと思うと同時に、北門前で全身白塗りの暗黒舞踏ご披露とか言わなくて良かった(おいおい)と思っていた訳ですがw
オファー (5月17日<金>)
https://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of240517.htm
国債買入(残存期間1年超3年以下) 3,750 2024年5月20日
国債買入(残存期間3年超5年以下) 4,250 2024年5月20日
国債買入(残存期間5年超10年以下) 4,250 2024年5月20日
国債買入(残存期間25年超) 750 2024年5月20日
(例によって他のオペは割愛)
とまあそういうことでまあ減額しなかったわけですなこれがまた。
・・・・・・で一番クソワロタのは為替市場でして、このオペのオファーで為替ちゃんちゃっかり値が飛んでしまいまして、
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/7WZVTHQ7MROKVOQ7QUXP5LOIBE-2024-05-17/
〔マーケットアイ〕外為:午前のドルは上昇し155円後半、日銀オペ買入額据え置きで円売り
By 坂口茉莉子
2024年5月17日午後 12:01 GMT+9
『[東京 17日 ロイター] - <11:50> 午前のドルは上昇し155円後半、日銀オペ買入額据え置きで円売り
午前のドルは、前日のニューヨーク市場終盤(155.38/40円)から上昇し155円後半で推移している。米金利の上昇や日銀国債買い入れオペのオファー額据え置きを受けて、ドル買い/円売りが優勢となっている。
ドルは、仲値にかけては155円前半から半ばを中心に小動きで推移。実需による売りや買いに目立った動きはなく、方向感に乏しかった。
その後、日銀が午前に通告した中長期・超長期債対象の国債買い入れオペのオファー額が据え置かれ、ドルはじり高となった。』(上記URL先より)
ということで、まあ見事に為替ちゃんの方が反応しました上に、ドル円だけはちゃっかりこのまま円安ドル高で推移してしまいましたので、引けの時点でのマーケット情報でもそれこそ一般の方も見そうなネットニュースなんかでもそうですが、ヘッドラインが思いっきり「日銀の国債買入減額見送りで円安ドル高」って風潮になっていまして、これはワロタというかワロエナイ展開になってまいりました。
でまあこれ結局のところなんですが、月曜に実施したオペ減額が何だったのかという話にもなってしまう訳でして、為替で差し込まれたからオペ減らしましたって宣言しているようなもんになっちゃいましたねというのもあるのですが、そもそも論として長期国債買入は既に政策の主要手段ではなくなって今やってるのはスムージングという筈なのですが、これだけオペの動向が目立ってしまう事になってしまうのが「長期国債買入は政策と必ずしもリンクしない」という建付けに完全に反する格好になっているので、コミュニケーションの複雑骨折にも程があるのですが、為替で官邸方面から差し込まれて「とりあえず対応」とかいうような場当たり行動をするからこうなるのでありました。ナムナム。
今月はあと2発、というか何で月末なんだよというタイミングで中期前半以外の全ゾーン買入とかいう豪華な輪番が月末に控えている訳ですが、まあこうなったら暫くは減額しないで、月末のオペ紙か6月決定会合で何かを示すってことで兎に角輪番が無駄に注目されないように大人しくしてた方が良さそうには思えますな、いやべき論で言えばとっくの昔に輪番減額してろよとは思うのですけどそうはいってもこの複雑骨折コミュニーションを収拾するにはまずは動かない方が無難な気がするんですけどあくまでも個人の感想なので市場のコンセンサスとは別の可能性もありますのでよろしくです。
〇3M短国入札は前回対比で金利低下しましたなあ&その他
金曜の短国ちゃん
https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20240517.htm
国庫短期証券(第1232回)の入札結果
『本日実施した国庫短期証券(第1232回)の価格競争入札及び国債市場特別参加者・第T非価格競争入札について、下記のように募入の決定を行いました。
記
1.名称及び記号 国庫短期証券(第1232回)
2.発行根拠法律及びその条項
財政法(昭和22年法律第34号)第7条第1項、財政融資資金法(昭和26年法律第100号)第9条第1項並びに特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)第83条第1項、第94条第2項、同条第4項、第95条第1項、第136条第1項及び第137条第1項
3.発行日 令和6年5月20日
4.償還期限 令和6年8月19日
5.価格競争入札について
(1)応募額 15兆9,622億9,000万円
(2)募入決定額 4兆4,081億2,000万円
(3)募入最低価格 99円98銭8厘0毛
(募入最高利回り) (0.0481%)
(4)募入最低価格における案分比率 22.3800%
(5)募入平均価格 99円98銭9厘7毛
(募入平均利回り) (0.0413%)』
ということで、先々週の3Mが4.76bp平均で足切りが5.35bpまで上昇(その後買われて強くなりましたが)と相成った訳ですが、金曜日の3Mはそもそも5bp台にかすることもなく4bp台での決着になりまして、いやあのですねえ償還期限って毎週毎週7日づつ(今回は祝日の関係で6日でしたが)後ろに倒れているんですけど7月利上げ思惑はどこに逝きましたねんという相変わらず需要の強さで決まってしまう債券ですなあというムーブに相成りました。
その後の売参ちゃんをみましても、金曜日の引けベースでは前日の1232回WIの引けが平均値単利ベースで4bpだったのに対して3.5bpに金利低下しておりまして、前週の3Mと同様で4bpでの需要の強さを見せつけて(償還が1週間違うというのに)終わる結果になりました。
まあ何ですな、3M短国って何度も申し上げているように、純粋に保有期間の短期金利の定積分みたいな感じに全然なっていないし、なんなら金利先高感がモロに出た時にデュレーション短期化のために入れ替えの買いが入りそうな債券なのでムツカシヤではありますけど、ただまあ別にそういうムーブとかでもなさそうには思えますがどうでしょうかね。
東京レポーレートちゃんに関しては3Mの落札結果とかその後の動きとかの前に集計時間が来てしまいますので、金曜に関しては純粋に3Mの新規発行要因を反映したのか、
2024/5/15 0.080 0.076 0.070 0.062 0.061 0.059 0.066
2024/5/16 0.044 0.043 0.058 0.059 0.057 0.052 0.065
2024/5/17 0.075 0.081 0.063 0.060 0.059 0.057 0.072
木曜日公表ベースの時に下がったトモネ(オーバーナイトもそうですけど)がしっかりと8bp水準に上昇していますが、これは新発の販売状況を反映していないので、今日はどうなるのよというのもまた見ておこうかなと。
でもって何気にGC3Mの気配がしらっと7.2bp(なので短国との温度差よという感じですけど)に上昇しているのもこれは何ぞという感じですが、まあそれこそ輪番の減額見送りだったけど、でもまあ6月の輪番減額方針決定からの7月利上げ、みたいな話が消えた訳でも何でもない(寧ろあまり早くから悪盛り上がりされない方が良いとの判断をしている可能性だってある訳です)のですからね・・・・・・・・・
〇でもって6月7月どうするんでしょうかね
まあアレです。7月に利上げしたければ6月になんか輪番をいじるか、決定会合で将来の減額方向、というのを出してくるという事になるんじゃネーノって意見が(何とかストはさておきまして)ポジション抱えている人たちのコンセンサスに近いんじゃないのかね、と思うのですよね(違ってたらゴメンチャイ)。
先ほど来申し上げておりますように、本来は輪番に関しては(FEDみたいに)政策とは無関係にスムージングかつテクニカルな調整、としたいというか、そういう触れ込みになっていた筈なんですけど、まあ為替で差し込まれてしょうがないから場当たり的に対策をした振りをしましたというアリバイ減額をぶっこんでしまったせいで、輪番が未だに政策シグナリングの意図をもって動かしていますって宣言しちまったようなもんなので、もうこうなったら「初回利上げ」は輪番とリンクさせるというか露払いさせた方がマシという結論なのですな。
いやまあ先週月曜の減額食らうまでは「輪番は政策とは切り離して別途考えるもの」という当初の説明を真に受けておったので、4月、5月と減額しなかったのを見て「ああこりゃ初回利上げまで輪番減額しないわ」と思っていたので見事に外してしまいまして、どうしてこう日銀は言ってることとやってることの整合性が無いのかと小一時間問い詰めたいのですけれども、まあさすがに事ここに至ると1回目の利上げは輪番減額を露払いにして事前織り込みをさせに行く、ということになるんじゃなかろうかとまた変なフラグを建築してみます。
でですな、その輪番減額ですけど、初手に「6兆円」とか書いてしまったのが後になって効いてくるわけでして、6月にまた次の数字を明確に書いてしまうと、数字を動かすたびに一々MPM決定事項になってしまって、それはモロに政策直結となりますので、一々輪番が目立ってしまうというのが続くけど多分それは面倒なコミュニケーションになると思います。
とは言いましても、「中長期的に減額していきます、詳しくはオペ紙で」方式にしてしまいますと、まあ本来はそれをやるのが一番スマートであったとしても、これまでの輪番の上げ下げがまるで理屈も何もあったもんじゃないタイミングでの動きなので、市場としては今の運営のままで市場局丸投げで輪番減額は中長期的にやりますとか言われましても、それはナントカに刃物状態で国債のマーケットメイクやら投資をせえって言われてるようなもんでして、それはそれで甚だ困る訳ですよ。いつ飛んでくるかわからん輪番の減額によって価格が飛んでしまうって市場で誰が腰据えて参加できますねん(日本の国債市場だから仕方ないから参加はするけど)というお話。
とゆーことで、まあ減額に関して何か出すならちゃんと中期的な減額ペースを明記して(毎月か四半期で何ぼ減らして行って経済に下方ショックでもない限りはとりあえず月額1兆円なのか2兆円なのか知らんけど一旦そこのゴールまでは減額するとかですかねえ)対応してくれないと、国債市場が市場としてワークしない状態が延々と続くのでちゃんと出せやと思います。
7月決定会合、と言っても7月末だし、7月に利上げできないと次の決定会合が9月までないので、そこまでの間に為替が持つのかとか時間稼ぎできるのかという話ですが、なにせ輪番減額したものの単発だったら3日くらいしか時間稼ぎが出来なかったわけで、その調子で9月まで持つとは思えませんがどうするんでしょうかね。
〇そういえば経済財政諮問会議
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2024/index.html
令和6年会議情報一覧
先週水曜にしれっと議事要旨が出ていたのですが、最初の金融政策の所が良い感じで砲撃を食らっていまして、ああなるほどそれで月曜日にアリバイ(経済財政諮問会議はその前の金曜日に実施)ですかそうですか、かどうかは知らんけどぶっこまれておりますね。
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2024/0510/gijiyoushi.pdf
最初に植田さんの説明があってから指摘が飛んでいるのですが、3ページ目のしたのほうから新浪さんが指摘していて、
『(新浪議員) 今年の春闘では、昨年以上の賃上げが実現した。しかし、目下の中東情勢や円安を考えると、今後とも油断ができない状況。今年の夏以降もしっかりと値上げができ、賃金から物価への好循環を作っていくことができるかは、実質賃金、そして、可処分所得の向上にかかっている。』
ということですが、この後に出て来るものって基本的に金融政策とは関係ない話の個別対応に関する説明でして、新浪さんが指摘する必要な対応ってのはまあそうですねってる通りではあるのですが、そう考えてみますと日銀が「賃金から物価への好循環」って言ってマクロ金融政策やってるのは何なんのよと思う訳ですな。
でもってその次に十倉さんが指摘しているのが4ページからなんですけど、
『(十倉議員) 日本経済は、30年来のデフレからの完全脱却を目指す上で今が正念場だと考える。我が国の経済社会が新しいステージへと転換するべく、成長と分配の好循環に資する取組を多面的に展開することが肝要。』
ときてからの、
『二点目は、物価上昇に負けない賃金の引上げの実現である。経団連は、構造的な賃金引上げに向けて、今年の春季労使交渉に昨年以上の熱量で取り組んできた。大手企業のみならず、中小企業にもこのモメンタムは波及しつつある。この流れをあらゆる産業に波及させ、来年も継続させることこそが今後の重要な課題となる。』
ときまして、
『また、そのためには、これまでも申し上げているが、物価がモデレートである必要がある。円安による過度な物価上昇も懸念される中、政府・日本銀行におかれては、これまでの共同声明に基づき、2%程度の適度な物価上昇の実現を図っていただきたい。』
とぶっこまれていますし、その次が中空さんで、
『(中空議員) 足下、円安が進んでいることから触れたい。植田総裁がおられるので、私が言うべきことでもないが、植田総裁は、過去の局面より円安が物価に与える影響が大きいことに注意が必要であるということをおっしゃっている。また、神田財務官は、中期的には円の信認を維持する努力が必要であり、市場が健全に機能していれば、政府が介在する必要もないとおっしゃっている。こうした内容は、金融当局の共通見解なのかと思っている。』
『金融市場にいる立場から申し上げるが、米国の景況感がこれまで思っていたより強く、米国の金利低下が想定より遅れる可能性がある。日米金利差の縮小タイミングが遅れると、円安との戦いは少し長期化する可能性があるのではないか。長期化するのであれば、円安環境を活かして、しっかり利益を確保できるように戦略を練る必要がある。インバウンドなどはその一つであろう。』
『資料4にも書いたが、日本銀行におかれては、物価見通しに基づく金融政策を行う方針を出して、円安圧力を緩和してもらう必要もあるかと思う。しかしながら、円安に対する抜本的な対応としては、日本経済が強みを発揮すること、そして日本の財政健全化の道筋をしっかりと示すことが、殊のほか大事であると思う。』
ということで、アタクシうっかりしていましたが、当日の資料でこんなのがあったんですね。
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2024/0510/shiryo_04.pdf
「新たな経済ステージ」に向けた3つの課題克服
でまあその後柳川さんの指摘とかあったのですが、新藤さんが
『(新藤議員) 続いて、私から皆様に質問させていただきたい。まず、植田総裁に、為替は円安傾向で推移しているが、円安による物価・経済への影響、それを踏まえた金融政策運営の在り方について、お考えをお示しいただきたい。』
と改めてツッコミを入れていまして、まあ何ちゅうかこれは月曜日に輪番減額したのがどこからどう見ても差し込みの影響ですと思ってしまうんですが、だからこそ何で4月に「国債需給のテクニカルな変化に対応しました」で済ます(一発目が無理でも4月中の早い時期だったら行けたでしょ、最初はちょっと様子見をしていました、と言えば済むんですし)ことが出来たのに、頑張りに頑張りぬいて、それを頑張り切れればいいものを変なところでポッキリ折れてしまうのって日銀らしいちゃあ日銀らしいですが、うーんこのという感じではありますな、と思いました。
まあそんなところで。パウちゃんの講演が19日に行われているのですがサーセンそこまで手が回りませんでした。(ろくすっぽ見てない)
2024/05/17
〇今日こそ輪番減額のおかわりをすべきなんですけどねえ(どうせやらないけど)
https://port.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/future_night
先物価格情報
そんなに材料あったかしら状態ですがなんかイブニングで20銭くらい下げているような気がするのがあれなんですけど・・・・・・
今日って輪番が中期前半後半、長期、超長期後半(超長期前半は昨日20年入札がありましたんでなしですな)と盛大に実施される日なんですけど、まあ実は今日こそ輪番を減額すべきですよね、という雑談を一席。
えーっとですね、べき論として輪番減額すべし、と円債の皆さん思っている中でなぜかそのタイミングが全く意味不明に月曜に輪番減額したおかげで今週はなんか盛大にわちゃわちゃした債券市場だった(って今週は終わってないけど)のですが、月曜の輪番減額が「円安を受けて官邸(あるいは神田大明神)に差し込まれて泣きながら急に減額を打ち込んだ」と言われてもまったくもって仕方のないタイミングの減額だった訳ですけれども、今日の場合は米国CPI様の御蔭でドル高円安も一服していますので、今日輪番減額のおかわりをしますと、以下のようなメリットがありますわな。
まずね、月曜の意味不明というかどっからどう見ても円安で差し込まれたという印象を強くする減額に関して「いやいやそうじゃありません輪番減額しても金利が急騰しないようですので減額しただけです市場機能の回復の一環ですわオホホホホホ」とするためにはこの円安進行と関係ないタイミングで輪番減額のおかわりをぶっこむことによって、円安差し込まれではなかったと言い張りやすくなる、というのが一点目。
そして、まあそうは言ったってお前ら円安牽制をしたいんでしょ、という観点から見ても、円安(だかドル高だか)の勢いがある時に輪番減額してもかなり派手なことをしないと焼け石に水(現実に月曜がそうでしたからねー)になってしまうのですが、むしろ円安一服でちょっと修正の動きが入っている(知らんけど)時だし、おまけに今日って金曜という週末だし、こういうときに「月曜に続いての輪番減額」ってのを入れればワンチャン円高に振れてめでたしめでたしだし、そんなに減額しなくても今日なら効くと思うのよね。
ほらアレですよ、合戦の時に一番戦果が拡大するのって「敗走する敵の追撃戦」な訳でして、今こそ追撃を打ち込んで戦果を拡大すべき時、と考えますとまあ今日は絶好の輪番減額チャンスなんですよね。
・・・・・とは思うけどまあ今までのパターンからしてそんなのは期待できないんですけど、もし今日輪番減額したら手のひらクルーってして手首がもげるんじゃないかと思う次第で、最初これ書きながら「全身白塗りで日銀北門前の通りで暗黒舞踏をご披露」って書こうと思ったがマジでやられたらワイ末代までの恥なので(その前に通報事案w)手のひらクルクルする程度になってしまうアタクシ、ということでデギンドス副総裁の頭髪程度には期待をするアタクシなのでしたwww
まあ何ですな、昨日はベンダーでの何とかストコメントみたいなのとか記者の講釈みたいなのを見ておりましたが、そろいもそろって「米国CPIで日銀には時間の余裕ができた」とかぬかしているんですが、そうじゃなくて米国CPIでドル高一服の今こそ日銀は緩和政策の調整に前向きな姿勢を出す絶好のタイミングなのですけど、そういうコメントは何とかストとかから出てこない、ってのも残念だなあ(なおそういうベンダーに出てこない現場の人たちの間だと今しがた申し上げたようなことは普通に言われる話でもあるので、別にアタクシが独自にこう申し上げている、とか威張る気も全然ないですというのを念のため申し添えます)。
2024/05/16
〇ところで何ですかこのポンチ絵は客(??)をナメトンノカ
このポンチ絵を描いたのは誰だあ!!(ガラッ)と海原雄山が厨房に怒鳴り込むレベルの物件が案の定投下される辺り、日銀さんったらギャグのセンスがハイブローすぎて涙がちょちょ切れてしまいますわ。
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/highlight/ten202404.htm(今回4月分)
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/highlight/ten202401.htm(前回1月分)
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/highlight/ten202310.htm(昨年10月分)
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/highlight/ten202307.htm(昨年7月分)
まあアレです、別にアタクシが悪態つかなくったってこの4本を並べて見るだけで木戸銭返せと言いたくなる物件な訳でして、何と申しますかこう家族で楽しみに見に行ったプロ野球で贔屓チームがエラーと四死球で自滅しながら滅多打ち食らい、こっちの打つ方は手も足も出ずお目当ての看板選手はみな途中交代、みたいな悲しさを感じさせる(どういう例えだw)程度には客に失礼(誰が客やねんw)なものを出してきているんですがもう出すなよ恥ずかしいから。
なお過去分はこちらからリンクをたどれば見れますわ
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/highlight/index.htm
・相変わらず「金融面の後押し」とか緩和モード推しをしているのはナンナンデスカねえ
最初のポンチ絵は経済見通しなんですけどね。
『日本経済は成長を続ける
日本経済は、海外経済が緩やかに成長するもとで、金融面からの後押しなどもあって、潜在成長率を上回る成長を続けます。』(今回4月)
『日本経済は緩やかな回復を続ける
日本経済は、海外経済の回復の鈍さにより下押しされますが、消費の増加などに支えられて、緩やかな回復を続けていきます。』(前回1月)
展望レポートの鏡の部分(しか当駄文では比較してませんねすいません)で何故か今回入れられた「金融面からの後押し」という文言。これって鏡にあるように「緩和的な金融環境が経済を後押しする」という金融緩和アピールをしている文言でして、いやだからお前らどっちやねんというお話でして、金融緩和アピールならアピールでそれはそれで一つの考え方だから別にそうしたいならそうして頂いてもよろしくってよ、とは思うのですが、だったら円安になって泡吹いて輪番減額することはないですし、急に円安に対する警戒を総裁がケツに鞭でも打たれたのか急に喋りだすとかいうのも訳分らん。
ということでですね、この緩和アピール文言ってのマジで意味不明でして、政策のガイダンスもどきの方では「見通し通りに推移すれば政策金利の引き上げ」と言ってるのとと整合性が一読してわかりにくい(日銀の小理屈を勝手に代弁しますと「経済物価情勢が改善する中で緩和度合いが強くなった分はその分緩和度合いを調整するんです」ってなもんでしょうけどそんなの政策オタクにしか通じんわ)のはどうにかならんもんですかねえ全く。
でまあこの絵自体は前回と大差ないのですが、ご案内の通り1月以前のポンチ絵における「経済見通し」は段々絵柄が微妙になりながらも、ちゃんと今後の経済見通しの中における需要項目に相当する絵(旅行している人が居たり買い物している人が居たり)があったのですが、今のイラストって何の意味があるんだイラストになっておりますわな。
・物価のポンチ絵が酷すぎる
今回のポンチ絵、最大のナメトンノカイラストはこれですよねーーーーーーーー
『物価は来年度以降2%程度で推移する
消費者物価の前年比は、今年度に2%台後半となったあと、来年度・再来年度は概ね2%程度で推移します。この間、一時的な変動を取り除いた消費者物価の基調的な上昇率は、徐々に高まったあと、2%の「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移します。』(今回4月)
『物価のトレンドは2%目標に向けて徐々に高まる
消費者物価の基調的な上昇率は、2%の「物価安定の目標」に向けて徐々に高まっていきます。こうしたシナリオが実現する可能性は、引き続き、少しずつ高まっています。』(前回1月)
でですね、物価のイラストが突如のジャガーチェンジとなっていて、前回1月とその前の10月って謎のコイルみたいな絵になっていて、まあ要するにこれは賃金と物価の好循環が回ることによって基調的な物価が2%に向かって上がっていきますって図だったんですよね。なぜかその循環が6回も回らないと2%にいかないという恐ろしいまでに時間の掛かりそうな絵でした。
また、ご案内のとおり昨年7月、10月の小見出し『強力な金融緩和を継続する』ではそれぞれ2%が「遠くの山の頂上に双眼鏡じゃないと見えない存在(昨年7月)」「果樹農家の若夫婦が苗木を植えていて2%の豊かな果実が将来実る夢をみている(昨年10月)」と更にその前から見たらドンドン2%が現実から遠くなる、というイラストを載せていた訳ですが、1月になったらその2%が突如広場の巨大オブジェとして登場する、という謎の図にも程がある状態になった次第ですわな。
でもって今回、何の断りもなく突如「これから2%に向けて下がりだす」とかいうイラストをぶっこんできていまして、今までのイラストは何だったのかと突発性海原雄山症候群を発症して厨房に怒鳴り込むレベルの作品が登場している訳ですな。
まあどうせ日銀に言わせれば「今までのは基調的物価の話で今回は現実のCPIの話」っていうことなんでしょうけれども、説明されないと前回と全然整合性が取れないイラストを出してくる、というのは流石にお前らこのダイジェストを見る人達をなめとんのかという話で、一般の方々向けに出している、という触れ込みだから単純化するにしたって前回との整合性が一見して分からんものを堂々出してくるとかもうねという感じです。
まあ何ですな、世の中には一事が万事という言葉がありますように、全くもって前回との整合性が無い、というこのイラストの前回対比が今の植田日銀のコミュニケーションスタンスを良く表している訳でして、説明の整合性が全然なくて、前と違った理屈を急に持ち出してみたり、前に言ってた事からしたらそれ話違くね??ってのが平然とぶっこまれてくるという今の日銀のムーブというのは、月曜日に行われた輪番減額がまさにその象徴で、つい直前に植田総裁が説明していた調節部署による輪番減額の判断材料から見たら全く持って整合性の無いタイミングでの輪番減額が行われる、ってのも、今回のこの「物価のイラストの全面差し替え状態」に相通じるものがあるのですな。
という訳でですね、いやお前らちゃんとコミュニケーションする気あるのかよという話になる訳でして、植田さんの発言はしょっちゅうブレるわ、過去の説明と整合性が無い形でのサプライズ輪番減額をするわ、挙句に今までの説明の流れをぶった切ったポンチ絵を急に出してくるわでして、いやだからそういう前回との流れとか全然無視する絵を出してくるくらいだったら説明の流れとかを見ながらどういう情勢判断や先行き判断の変化があったかというのを分析しようとしている市場の皆さんからしたら混乱するだけの要因に他ならない訳で、だったらこんなの金輪際出すなよと申し上げたいですな(前回も言ってた気がしたが今回は突発性海原雄山症候群を完全に発症しておるワイ)
・不確実性が高いのは良いんだが何で急に他人事みたいなイラストになってるの???
次のイラストが
『日本経済・物価を巡る不確実性は高い
海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、日本経済・物価を巡る不確実性は引き続き高い状況です。また、金融・為替市場の動向と日本経済・物価への影響にも十分注意を払う必要があります。』(今回4月)
『日本経済・物価を巡る不確実性は高い
海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、日本経済・物価を巡る不確実性はきわめて高い状況です。また、金融・為替市場の動向と日本経済・物価への影響にも十分注意を払う必要があります。』(前回1月)
この不確実性のイラストって今まで概ね同じように「不確実性の要因を並べて考えている人」の図だったのですが、今回はなんか知らんけど「スライドショーを見ながら講義を受けている人達」みたいなイラスト(要因が並んでるのは同じだけど)になっていて、何か急に「日銀は不確実性を意識している」という主体的な雰囲気が無くなったのはナンナンデスカ??????
・最後のはもう馬鹿にしてるのかと思いました
『2%目標のもとで金融政策を運営していく
日本銀行は、2%の「物価安定の目標」のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営していきます。』(今回4月)
『強力な金融緩和を継続する
日本銀行は、粘り強く金融緩和を継続することで、賃金の上昇を伴う形で、2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現することを目指していきます。』(前回1月)
まあ3月に枠組み変更したからこの文言が変わるのは順当なんですけど、イラストに関してはもはや見る人を馬鹿にしているのかと思いました。まあ見ればわかりますわ。
などと血圧をあげていたら時間が無くなったので今朝はこの辺で勘弁。
2024/05/14
〇ハイセンスすぎて意味がわからんタイミングで長期輪番の減額で益々訳ワカメ
まあ皆さまご案内の通りで、昨日はまさかのプレイが登場したわけですな。
・まさかの5−10輪番減額攻撃登場の巻
オファー (5月13日<月>)(輪番のみ)
https://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of240513.htm
国債買入(残存期間1年超3年以下) 3,750 2024年5月14日
国債買入(残存期間5年超10年以下) 4,250 2024年5月14日
国債買入(残存期間10年超25年以下) 1,500 2024年5月14日
ということで、5-10の輪番を前回の4750→4250に減額しましたので、月額ベースでいうと2000億円の減額ということになりました。
・・・・・いやあのですね、減らせ減らせとはアタクシを含めて債券市場の100人中200人くらいが言ってたと思うのですが、全員が予想しないタイミングで減額をしてくるというのはまたどういうギャグなのかと小一時間問い詰めたい訳ですよ。
だってさ、ついこの前の決定会合の会見では植田さん
https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2024/kk240430a.pdf
『それから後半ですけれども、日々の[金融]市場局の調節で、ある程度の幅を持って決定し得るというふうにしていますが、そこはこれまでと同様に、内外の市場の動向とか、国債の需給、例えばオペの応札の状況等をみて、若干の幅の中で[金融]市場局に決めてもらうという程度のことを考えています。長期的にオペの金額を減らしていくという際には、政策委員会で決定して、きちんとアナウンスをして進めていくということになります。』(直上URL先4pの4/26植田総裁定例記者会見での総裁発言より)
と言ってたわけでして、「内外の市場の動向とか、国債の需給、例えばオペの応札の状況等をみて」減額したって触れ込みなのですが、別にオペの応札の状況が変化したわけではない(国債の需給はそもそも買いすぎにも程があるのですけどそれはさておきwww)ですし、国債市場で金利が意味もなくダダ下がりでもしているならともかく金利上がってましたし、こんなの「内外の市場」って為替レートしかねえじゃんというお話。
先週の読売国際でも
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2024/data/ko240508a1.pdf
『国債買入れについては、政策枠組みの見直しの前後で不連続が生じることを避ける観点から、現時点では、これまでと概ね同程度の金額で継続することとし、実際の日々の買入れ額については、市場動向などを踏まえて調節していくこととしています。』
『そのもとで、長期金利は、金融市場において形成されることが基本となるため、今後は、長期金利が、海外金利の動向や経済・物価見通しの変化などを反映して変動することは自然であると言えます。』
『また、現在は、3月に見直した国債買入れの枠組みのもとでの金融市場の状況を確認しているところですが、今後、大規模な金融緩和からの出口を進めていくなかで、国債の買入れ額を減額していくことが適当であると考えています。』(以上直上URL先の5/8総裁講演テキスト本文8pより)
って言ってて、5/8の時点ではまるで減らす話になっていないじゃんって感じだったのに、なんでまた翌週月曜に輪番減額してるんだよという話ですな。
ま、今回は5月最初の5-10輪番だったので、もしかしたら4月いっぱいは様子見をしていて、5月になったところでまあそんなに金利急騰せんじゃろ、ということで減額した、のだとすると、その場合は今度は「市場動向に対応した減額じゃないです」って話になるからそれもまた変(計画的に減額しているんだったら「長期的にオペの金額を減らしていくという際には、政策委員会で決定して、きちんとアナウンスをして進めていくということになります」って話と整合しない)という事になる訳で、まあ全く持って意味不明なタイミングでして、こんなの為替市場動向を受けて官邸に差し込まれたので仕方ないからとりあえず長期国債の買入をへらしてみました、以外の理由があるのかというお話で、いままで何のために輪番減額してなかったのかが全部崩壊しているのが笑ってしまうしかありません。
でまあ本駄文だけではなく円債方面のそこそこの数の人が言ってたと思いますが、そもそも国債需給に応じて輪番を調整するなら4月からのカレンダーベース国債市中消化額の減額タイミングで輪番減額してればこのような「為替で追い込まれて最後は官邸に差し込まれて涙目になって輪番を減額したでござるの巻」としか客観的に見えない状況に追い込まれていない訳でして、まあ3月解除の前にハトハト宣伝をし過ぎた(まあこれ自体はマイナス金利解除の時に金利が急騰するかもしれないとビビる気持ちは実際に市場に漬かっていない人だと思ってしまうでしょうから致し方ない面があるけど市場局は何を説明してるな感はあった)のがあって、その後の市場の動きを見て適当に軌道修正すりゃいいものを、その後もハトハト音頭を踊り続けていた、というのも(というかそっちの方が)追い込まれの原因だったりするのですけど、減額のタイミングを慎重に見ていたのでしょうけれども、散々引っ張った挙句にかなり碌でもないタイミングで減額をしてきたのは今の植田日銀クオリティを象徴するような素晴らしいタイミングでしておじちゃん涙が止まりませんわ。
しかしまあ何ですな、もし今回の減額を「本来は長期国債の市中発行額減額(月1000億)による需給の変化を踏まえた減額を4月にやっても良かったのだが、マイナス金利解除直後だから様子を見ていたので5月から減額しました」というのなら単体では話は通じるんですけど、その場合は既に先週の輪番で中期前半と中期後半の輪番を減らさなかった(昨日も中期前半減額してないし)というのと整合性が取れない訳でして、いやマジでこれ「為替市場に追い込まれました」以外の言い訳があるのかよと思うのですが、ちょっと理由を説明してほしいですね(する訳ないけど)。
・なお肝心のかどうか知らんが為替市場様は瞬間しか反応しないで債券だけはちゃんと反応した模様
円債ちゃん
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/43QTOJL44NJVPALPARATLXP3XE-2024-05-13/
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は続落、長期金利0.94%と半年ぶり高水準 日銀オペ減額で
By 坂口茉莉子
2024年5月13日午後 3:35 GMT+9
『国債先物中心限月6月限は前営業日比30銭安の143円96銭と続落して取引を終えた。新発10年国債利回り(長期金利)は同3.5bp上昇の0.940%と、2023年11月1日以来の高水準を付けた。「残存5年超10年以下」対象の日銀の国債買い入れオペのオファー額が前回から減額されたことを受けて、国債先物は売り圧力が強まった。』
『前週末の米債市場で長期金利が4.50%付近に上昇した流れを引き継ぎ、国債先物は売りが先行。その後日銀の国債買い入れオペの減額を受けて、先物は下げ幅を拡大した。』
『現物市場で新発国債利回りは上昇。「予期せぬ国債買い入れの減額で、全体的に売り圧力が強まった」(国内証券債券セールス担当)と指摘。ただ、利回り上昇局面では「中長期ゾーンを中心に一定の押し目買いが入るなど、じわじわと金利上昇圧力がかかる印象だ」との声が聞かれた。』
『現物市場で新発国債利回りは総じて上昇。2年債は同1.0bp上昇の0.325%と09年以来の高水準、5年債は同2.0bp上昇の0.540%と11年以来の高水準。20年債は同4.5bp上昇の1.740%と23年11月1日以来の高水準、30年債は一時0.203%と、11年以来の高水準を付けた後、同3.0bp上昇の2.025%。40年債は同1.0bp上昇の2.365%。』(以上上記URL先より)
ということで中短期も売られていますし長い方も売られていますしおすしという事ですが肝心(かどうか知らんが)のドル円様に関しては確かに輪番出た時に155.90近辺から155.60割れとかになりましたものの・・・・・
円相場ちゃん
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/KVJDD6VK3JMUXNZYEBJYUFV7X4-2024-05-13/
〔マーケットアイ〕外為:ドル155円後半へ切り返す、介入後の半値戻しが節目
By ロイター編集
2024年5月13日午前 11:36 GMT+9
ちょっとお時間が早いので恐縮ですが、
『東京 13日 ロイター] - <11:24> ドル155円後半へ切り返す、介入後の半値戻しが節目
ドルは午前10時過ぎ、日銀の国債買い入れオペ減額を受けて155.50円まで一時急落したが、現在は155.85円付近と急落前の水準へほぼ値を戻した。
LSGEデータによると、金利先物市場が織り込む6月の日銀利上げ確率は49%で、据え置きの51%ときっ抗している。「首相との直接会談を経て、日銀総裁の発言トーンがやや変わったように感じる」(邦銀アナリスト)との声も広がっており、日銀が近く、円安緩和に向けて何らかの措置を講ずるのではないか、との思惑も聞かれる。
しかし、小幅利上げを実施しても大きく開いた日米金利差に抗することは難しく、円高圧力は限られたものになるとの見方も依然多い。』(上記URL先より)
wwwwww
ということで、見事に為替の方は空振りになった(挙句に今朝は156円台に乗って帰って来ましたけど)というのがオシャンティーですけれども、何はともあれ今回「為替で追い込まれると日銀は最後泣きながらなんか申し訳ムーブは入れて来る」というのが明白になってしまいました。としか申しあげようがないムーブをしていますが、結局のところこれは「待つことのリスクは大きくない」とか昨年の5月の内外情勢で植田総裁が言ってた認識が引きずられていて、「ゆっくり対応する時間はある」と余裕をぶっかましていたら円相場に追い込まれるのが想定外だった、ということなんでしょうけれども、まあ想定外のムーブで追い込まれることに関して、結構前から市場の中の人達は指摘してたと思うのですけれども、「金融政策を為替に割り当てるのは適切ではない(キリッ)」という(それ自体は正論だけど)原則論に拘っていたのか知らんけど、まあ見事に読み間違えましたなナムナムナムと言ったところですな。
〇さてこれで6月会合どうするんでしょ中期輪番どうするんでしょ
とまあそういう訳でこうなってくると最近多くの何とかストの皆様もご指摘のように「6月会合で輪番の減額方向性を示して7月利上げ」みたいな連想が起きるわけですけれども・・・・・・・・
まあ実に難しい所なのですが、今回のサプライズ減額でそういう風な連想は高まってしまうんですけれども、日銀って今まで「短期政策金利の上げ下げで金融政策を運営するので輪番はそういう意味での政策手段じゃなくなったよ」って説明していたので、そのムーブをやってしまうと、輪番の上げ下げが先行きの短期政策金利操作の予告ホームランになってしまう、という事になってしまいまして、それはそれで今まで説明していたことは何だったんだという話になる訳ですよ。
つまり、「輪番の減額方向性を示す」ってのは本来短期政策金利の判断と結び付けられるべきではないので、6月に輪番の減額を入れてしまって7月に短期政策金利を上げてしまうとこれ明らかに輪番減額が政策金利引き上げの露払いになってしまうんですよね。
でまあそうなってしまいますと、例えばの話輪番減額で今の時点では3月に書いてあるのが生きているから「6兆円程度」という脚注にある数字になっているのですが、これを刻んで減らしていく、というようなことになりますと、刻んで減らすたびに「次回会合で利上げですかそうですか」って話になってしまいまして、それはそれで宜しくないんじゃなかろうかと思う訳です。
まあそれを回避したかったら最初の時点で「中長期的に輪番は適切と見られる額まで徐々にフローベースの買入を減額していきます詳細は毎月のアナウンスでどうぞ」という形にするしかないのですが、この時にだれでも予想できるルールベースにしないで市場局の裁量でタイミングや減額スピードを調整するとなりますと、やっぱりこのオペ減額の変化が将来の金融政策運営の予告ホームランと捉えられてしまうので更に宜しくない、ということになりまして、そもそも論として輪番の扱い方が不明確(恐らく3月議事要旨や4月主な意見を見るにコンセンサスが得られるような状態になっていない)な中で、6月会合までにその辺の扱いがまとまるのかよ、というのは非常に???ではあります。
まあこんなの予想してもどうせ当たらない(そもそもアタクシが「輪番は次の利上げまで減らないのではないか説」を唱えたら1級フラグ建築士の面目躍如でこうなった説が濃厚なので先にヘッジを入れるという姑息プレイに走るアタクシなのでしたwwwwww)のですが、どうせなら6月の頭くらいに中期の輪番減額しておいて、6月会合では特に輪番には触れず、でも情勢判断は「見通し通りに推移している」と強調して如何にも7月に上げそうな雰囲気は出すけれども輪番はその時に絡めないということですが、まあそんな感じで次回展望で見通し不変なら利上げあるで攻撃にしておいて7月に利上げした時に同時か、同時だと長期金利のショックデカメロン伝説になるのが怖いならその後に輪番減額打ち出しってのどうでしょとは思うのですけど、7月会合までに中期的な減額の方向性を出さないと次が9月まで飛んでしまうのもやりにくい所ですね。
まあこの輪番減額やってしまったので減額のおかわりをするか、6月会合で何か手土産を持たせてくれないと中々厳しいものがあるんじゃないか(円相場的に)という気がしますけど、なんかこう植田日銀になってこの辺のヘボさが目立って仕方ないのですけど、これ調節がどうのこうのの問題じゃなくて、ボードが輪番の扱いをちゃんと(公表文書で出すかどうかはともかくとして)明確にしないから現場の執行部隊である調節部隊がどうも出来ない、という状況に陥っているんだと思うので、そういう意味ではこんなのボードの責任ですよボードの。
ということですが、まあ今日も円安になっているので実に楽しくなって参りましたな!!!!
〇日銀理事人事と担当の変更
ほうほうそうですかそうですか
https://www.boj.or.jp/about/release_2024/rel240513a.htm
理事の発令について
『次のとおり発令がありました。
神山 一成
日本銀行理事に任命する
令和6年5月11日
財務大臣 鈴木 俊一
なお、清水 季子 理事は、5月10日任期満了により退任しました。』
ということで清水(季)理事のご退任に伴いまして神山国際局長が理事にご就任(大阪支店長)と相成りましたが、神山理事と言えば黒田緩和一発目の時のQQE導入時の政策企画課長でいらっしゃるわけでして、白から黒への大変化の中で当時は大変だったんじゃないですかねえとか外野で見てて思う訳ですな。
でまあ理事の担当割も変わりまして
https://www.boj.or.jp/about/organization/tanto.htm
総裁・副総裁・理事の担当
清水(季)さんの国際担当の後任が清水(誠)さんになって、清水(誠)さんの企画局とか市場局の方が加藤さんになってますな。加藤さんの担当割が妙に多い気がしますが、元々の担当は大阪から戻って来られる中島さんが引き継ぎ終わったら正式に担当するんでしょさすがに。
えーっとまあ本件のインプリケーションは本石町日記先生がお詳しいかと存じますので我不知。
2024/05/13
ほうほう
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB247WF0U4A420C2000000/
日銀、利上げより先に国債減額? 円安対応で市場に観測
日銀ウオッチ
2024年5月12日 5:00 [会員限定記事]
『日銀が国債買い入れの減額を議論している。4月の金融政策決定会合の「主な意見」には、減額を支持する政策委員の見解が複数紹介された。日銀は月間の国債買い入れ額を3月までの6兆円程度で維持している。市場は日銀が足元の円安に歯止めをかけるため、利上げよりも先に国債買い入れの減額方針を示す可能性を意識し始めている。』(上記URL先より)
ということで主な意見とか出てから何とかストの皆さんの利上げ予想時期がやや早まった(やや、というのはメインは変えてないけど前倒しを意識、って感じね)という感じのようでございますが、いやまあ国債買入減額何なら今すぐやれという感じなのですが、実は最初の利上げまでは国債買入減額の方向性を示しに行かないのではというくらーい気持ちなのはあんまり変わっていませんアタクシ(6月に国債買入減額方向を決定会合で決めると7月利上げの予告ホームランになるから初回利上げと同時じゃねえの説ね)。
さてどうなるのやら・・・・・・・
〇経済財政諮問会議でなんか討議をしたようなのだが資料を見てもなんだかさっぱり分からん
金曜の夕方とかいうクソ迷惑な時間帯なのでもはや知らんがな精神で後から見たんですけどねw
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2024/0510/agenda.html
第5回会議資料:会議結果 令和6年
議事次第
令和6年第5回経済財政諮問会議
開催日時:令和6年5月10日(金曜日)17時35分〜18時30分
開催場所:総理大臣官邸4階大会議室
議事
(1)マクロ経済運営(金融政策、物価等に関する集中審議)
(2)中長期の重点課題B(先端技術実装と競争力強化)
となっているのですが、資料の方を見ると(2)の先端技術の話ばっかじゃねえかって感じですし、
資料1 植田議員提出資料(PDF形式:144KB)
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2024/0510/shiryo_01.pdf
・・・・・・何だこのやる気のない資料は(見ればわかるがクソどうでもよいポンチ絵)
資料2 賃金と物価の好循環に向けた懇談(新藤議員提出資料)(PDF形式:600KB)
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2024/0510/shiryo_02.pdf
こちらは、
『賃金と物価の好循環に向けた懇談(概要)
日 時 2024年4月24日(水)・25日(木) 非公開で開催
参加者
中小企業合計13社(製造業、情報サービス業、警備業、建設業及び物流業)新藤経済財政政策担当大臣、井林内閣府副大臣、神田内閣府大臣政務官、上月経済産業副大臣、こやり国土交通大臣政務官
ほか
概 要
中小企業から、価格交渉・転嫁、賃上げ、人手不足対策・設備投資の現状と課題、政府に対する要望等について聴取。今後の政策対応の在り方について、意見交換。』
ということで、『主な意見及び政策対応への示唆@』、『主な意見及び政策対応への示唆A』というのを見ましても別にマクロ経済政策の話じゃない話ばっかり並んでいまして、いやまあこれはこれで大事な話にではあるのですが、式次第の方が「(1)マクロ経済運営(金融政策、物価等に関する集中審議)」ってなっているのに全然マクロ経済運営じゃねえじゃんということで、おまいらマクロ経済運営の金融政策の話とか言いながら全然その話してねえんでネーノ疑惑しかわかないという糞面白くもない資料が並んでおったとさ、という落ちでした、
まあ何ですな、経済団体などからも円安批判がずいぶん出ていると思うのですが、何ですかこの経済財政諮問会議のノホホン振りはとはアタクシなんぞは思いますが、まあゆうて官邸方面的に円安怪しからんモードになっていないとなるとハトハトチキン総裁が蛮勇振るう訳がないし、何なら「利上げをしてそのあと経済が下向きになったら責任取らされるけど何もしなければ責任取らなくてよいから屁理屈こねてでも動かないもんねー」というハトハトチキンンにまた火が点いてしまったのではないかと心配ですな。
なお、唯一望みがあるとすれば「本当にやべえ時にはその時点で公表資料にすぐに出てこないの法則」によって実は円安放置怪しからん大会だったけど資料ベースではそういう話が読めないようにしておく(市場が利上げで突っ走られるのも怖いから)という可能性はデギンドス副総裁の頭髪程度は可能性があるかも知れませんがはてさてどうなんだか。
2024/05/10
〇4月会合主な意見では謎なまでにノリノリの政策調整議論が爆誕しているんだが
そういえば3月会合議事要旨ネタをかっ飛ばしている事を今思い出したので後日成敗しておきますね。
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2024/opi240426.pdf
金融政策決定会合における主な意見
(2024 年 4 月 25、26 日開催分)
・物価の上振れ指摘のオンパレードになっているのですが・・・・・・・・・・
『T.金融経済情勢に関する意見』の部分の最初の方はまあどうでもよいので、次の(物価)を見ますとこれがまた物凄い勢いで「上振れリスク」のオンパレードになっております。折角なのでチェリーピッキングしないでこの項目の全部の意見を並べてみますね。
『・ 消費者物価の基調的な上昇率は、賃金と物価の好循環が引き続き強まり中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想され、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。』
『・ 物価見通しは、海外インフレの継続による輸入物価上昇に加え、国内のタイトな労働需給、企業の価格設定行動の変化が継続することなどから、概ね2%の水準を維持すると考えられる。』
最初の2つは大本営か大本営の提灯なのでまあそれは良いとしましてその次からがこの有様である。
『・ 円安と原油高は、コストプッシュ要因の減衰という前提を弱めており、物価の上振れ方向のリスクにも注意が必要である。』
『・ 足もとの円安と原油価格等の上昇が、輸入物価を通じて企業物価へ波及しつつある状況を鑑みると、賃上げに伴うサービス価格の高まりに加えて、現在伸び率が低下している財価格が底打ちして反転する可能性にも注意を払う必要がある。』
第一の力とか言ってる奴の継続で上振れリスクですね。
『・ 円安は、短期的にはコストプッシュ型の物価上昇を招くことで経済を下押しするが、インバウンド需要の増加や製造業における生産拠点の国内回帰などを通じ、中長期的には生産や所得への拡張効果もあるため、基調的な物価上昇率の上振れにつながり得る。』
こういう理屈で言うのか、と感心してしまいますがまあこれも上振れの話ですわな。
『・ 輸入物価上昇を起点としたコストプッシュや予想物価上昇率の上昇に伴うインフレ率上振れのリスクもあるため、今後、2022年以降に続く第2ラウンドの価格転嫁が生じるか、予断なく見極める必要がある。』
これ「第2ラウンド」っていうのは物価スパイラルを招く二次的効果(セカンドラウンドエフェクト)とは別の意味ではあるのですが、言葉の使い方として二次的効果というヤバイ上振れを意識してるでしょ(^^)。
『・ 賃金・物価スパイラルの想定以上の進展、円安の進行、積極的な財政政策、人手不足を主因とする供給力不足、資源価格の上昇など、様々な物価上振れのリスク要因があり、注意が必要である。』
はいはい上振れ上振れ。
ときましてこのコーナーの最後は多分中村審議委員じゃないかと思いますが、
『・収益力や給与水準等で大企業と中小企業間で二極化が進み、中小企業では人材係留目的の賃上げが多く、大企業の構造改革成果の波及はまだ弱いとみられる。』
ということでいつもの中小企業への波及の話をしていますが、別に明確に下振れという話をしている訳ではありません。
・委員の指摘が物価の上振ればっかりなのに何で読売国際の講演では「上下双方向」なんでちゅかねえ
さてここれちょっと話を戻して一昨日の植田さんの講演、昨日ネタにしましたが再掲しますと、
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2024/data/ko240508a1.pdf
賃金と物価の好循環と今後の金融政策運営
―― 読売国際経済懇話会における講演 ――
講演7ページ(PDFの8枚目)なんですけどね、
『(物価を巡るリスク)
ここまで、物価の先行きについて、中心的なシナリオを念頭にお話ししてきましたが、こうした見通しを巡るリスクは、上下双方向に大きいと考えています。』(この部分だけ直上URL先5/8植田総裁講演より)
>上下双方向に大きいと考えています
>上下双方向に大きいと考えています
>上下双方向に大きいと考えています
・・・・・( ゚д゚)
えーっとすいません、何で委員の大勢意見が上振ればっかりなのに総裁は講演で「上下双方向に大きい」って言ってしまうんでしょうか、というお話でありまして、まだ「上下のリスクがあります」位で話をするなら一般論になるけど、「上下ともに大きい」っていうのは「物価の下振れリスクも意識しています」って説明をしている訳ですけど、この「主な意見」では下振れの指摘って中村さんと思われるのが1個あるだけ(しかも明瞭に下振れを指摘した訳ではない)で、一方の上振れに関しては結構強いトーンで指摘している意見が並んでいる、という状況な訳ですよ。
つまりこれ植田さんどう見ても政策委員会の大勢意見と違う説明を堂々としている訳でして、そういうのはヒラ審議委員が「委員会としての意見はともかくとして私個人はこの下振れを強く意識しています」って断りを入れて話をするならそれはそれで一つの見解ですけど、総裁として講演しているのに政策委員会の見解を丸無視して、しかも丸無視したって断りも入れないで説明するってお前何様だよというかこれはどう見ても「殿のお身持ち宜しからず」という奴にしかあたくしには見えないんですけどどういうことですかちょっと改めて説明をしてくれませんかねえ。
ということで「主な意見」の方に戻りまして、
・金融政策運営に関しても「調整を実施すべし」のノリノリ見解が続く(とは言え今なのかというと微妙だが)
次が皆さん大好きな『U.金融政策運営に関する意見』でして、まあこれも全意見並べてみますわ。意見は色々とあって大杉栄な訳ですが特にアレンジもしないで順に引用します。
『・ 経済・物価の見通しが実現し、基調的な物価上昇率が上昇していくとすれば、金融緩和度合いを調整していくことになるが、当面、緩和的な金融環境が継続すると考えている。』
これは展望に書いてある通りなので人畜無害。
『・ 展望レポートの見通しには引き続き不確実性が高いが、これが実現するのであれば、約2年後に、2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現し、需給ギャップもプラスということになるので、金利のパスは、市場で織り込まれているよりも高いものになる可能性がある。』
そらその通りなんですがわざわざ「市場の織り込みよりも金利(政策金利という意味だと思いますが)パスが高くなる」と入れているのがノリノリ感を出しています。
『・ 「物価安定の目標」の達成時における不連続かつ急激な政策変更によるショックを抑えるために、経済・物価・金融情勢に応じて、緩やかな利上げを行うことで金融緩和度合いを調整することも選択肢として考えられる。』
『・ 経済にストレスを与えないように金融緩和の度合いを調整するには、今後、見通しの確度の高まりに合わせて、適時適切に、政策金利を引き上げていくことが必要である。』
さっきのも含めてこの3本の見解ってノリノリではあるがよく考えたら当たり前の話で、2%物価目標が安定的に達成、っていうような時の短期政策金利はどう低く見積もったって1%を超える(普通に考えて1.5-2.5の辺りのどこかじゃないですかねえ)訳でして、その時まで0金利政策を引っ張っていたらエライ事になるし、そもそも前段の所で皆さん物価上振れリスクを意識している、ということは0金利政策を引っ張り過ぎちゃうと物価が2%で止まらんリスクだってあり得るって事になる訳ですから、そりゃ徐々に調整するの当たり前なんですよね。それをしなかったからFEDはあのような物凄い勢いで利上げすることになったんだし。
『・ 政策金利の引き上げについて、そのタイミングや幅に関する議論を深めることが必要である。』
漠然としているコメントなので何かよくわからん。
『・ 金融緩和の更なる調整を検討するうえで、夏場にかけて、前向きな企業行動の確認、具体的には堅調な設備投資の継続や賃上げを契機とする年後半に向けた個人消費の改善傾向、がポイントである。』
夏場にかけて、ってもしや6月会合の調整を意識してるんじゃないかと思ってしまいますが、まあ7月会合は7月末なのでまさに「夏場」です(その次は9月ですから夏場じゃないわな)からして、7月会合の見通しアップデートの時の経済物価情勢の確認を受けて政策調整、ってのを思いっきり意識している書き方ですよね。
『・ 基調的な物価上昇率が2%を下回る現状では、緩和的な金融環境を今後も相応に長く維持する必要がある。ただし、円安を背景に基調的な物価上昇率の上振れが続く場合には、正常化のペースが速まる可能性は十分にある。』
基調的な物価とか言ってるのが何か総裁なのかと思ってしまいますが、まあハト系の誰かではないかと思いますけどそういう方でも円安での物価上振れでの政策修正に関しては排除しないという考えを示しています。
『・ 2023 年は可処分所得が伸びず、消費は0%への貯蓄率低下による増加であった。家計の購買力はまだ弱く、当面は緩和的な金融環境継続が妥当と思われる。』
これもハト系の方ですが、そもそも論として緩和的な環境で物価が第一の力とやらで上振れしてるから実質所得が伸びないという現実に関してはどういう考察をしてくれるのかしらこのお方は。
『・ 前回会合後に公表された消費者物価のデータ等をみると、前回会合時点で金融政策の枠組みの見直しの条件は既に満たしていたと考えられ、政策変更後においても市場に急激な変動は生じていない。』
何でしょうこれは前回反対した人が「やっぱり良く見たら条件満たしていましたねテヘペロ」って言ってるんですかねえよくわからんですけど。
でもってこの先が長期国債買入の話が続いていて、長期国債買入は政策手段として使う訳ではないよ短期政策金利の上げ下げで調整する普通の金融政策だよと植田さんアピってましたが、どこからどう見ても長期国債買入の話は重要ジャンというのが中々チャーミングではありますが。
『・ 長期国債の買入れについては、イールドカーブ・コントロール解除後の市場の状況を見ているところであるが、どこかで削減の方向性を示すのが良い。これとは別に、国債需給などに応じた日々の調整は、金融市場局において、丁寧に行うべきである。』
>国債需給などに応じた日々の調整は、金融市場局において、丁寧に行うべきである
>国債需給などに応じた日々の調整は、金融市場局において、丁寧に行うべきである
>国債需給などに応じた日々の調整は、金融市場局において、丁寧に行うべきである
これはつまり4月に実施された新規国債市中発行減額に対応しなかった金融市場局は何をやってるんだこのスットコドッコイがと公開処刑をしている、という事ですねわかります。
『・ 国債保有量の正常化、過剰な水準にある準備預金の適正化という観点から、日銀のバランスシートの圧縮を進めていく必要がある。段階的にイールドカーブ・コントロールを柔軟化したことが円滑な出口につながったことも踏まえれば、国債買入れの減額も、市場動向や国債需給をみながら、機を捉えて進めていくことが大切である。』
国債保有量の正常化も仰せの通りですが、さらに良い指摘なのは「準備預金の適正化」でありまして、足元って無担保コールが翌日物がごく短い期間では市場で一番金利が高いみたいな状態(もっと高いのが日銀超過準備付利ですけど)になっていて、コール翌日物が完全に付利狙い調達無限大モードの影響でびったり張り付いて動かない状態になっているのってどこからどう見ても市場としては歪んでいるとしか申し上げようがないのですが、聳え立つ超過準備の山を不胎化しないと翌日物の市場金利がゼロだのマイナスだのになってしまうんですからこうならざるを得ない、という訳で聳え立つ超過準備問題は何とかしないと行けないんですよね。
ということで「隙あらば長期国債買入減額」は良いお話ですな。
『・ 国債の需給バランスを踏まえ、市場機能回復を志向し、現状6兆円程度の毎月の長期国債買入れを減額することは選択肢である。市場の予見可能性を高める観点で、減額の方向性を示していくことも重要である。』
これまた良い意見でして、とにかく長期国債買入の運営に関してはメルクマールは無いわそもそも何のためにこんなに長期国債買入を実施しているのかの意義づけもわからん(だって短期政策金利で金融政策を行うんだったら長期国債買入って何も関係ないんでしょ、というのはまあ原理主義モードですけど建付け上から言ったらそうなりますよね)わということで、その予見可能性が全然ない中で市場を圧倒する長期国債の買入をアホみたいに継続している訳で、そりゃこんなのされたら国債市場の金利も適正化されないし、適正じゃない価格が形成される市場に投資家がまともに戻ってくるわけないじゃんというお話なので、この方向性を出せという話は大変に結構な論点です、何だお前らちゃんと考える能力あるじゃんと
思いました。
『・ 市場動向を踏まえると、保有するETFやJ−REITの取扱いについても具体的議論ができる環境になりつつあると考えられる。』
おおおこれは中々の過激派w
ということで、長期国債買入に関しても良い指摘がぼんぼん出ている訳でして、こういう議論があったのを踏まえている筈なのに何で4月26日の記者会見はハトハトチキン音頭だったんでしょうかということですし、今回の読売国際の講演でも及び腰なんですかね、ってお話。
・昨日の国会はそこまで大きなヘッドライン打たれてはいなかったけど
でまあこれを受けて債券先物が下がってドル円も途中で気が付いたのか円高方向に動いたのですけれども、しばらく(1時間もしないで)しか効果は続かず、国会での植田さんは相変わらずで金融政策の調整に関しても円安牽制に関しても特に踏み込まず、となると最早植田が口を開けば円安ドル高、というイジメモードに入っているんじゃないか疑惑まで提唱したくなる為替市場様におかれましては東京の夕方以降には155円後半から156円近くまで伺うような円安ドル高になっていて、一方で円債の金利はちゃっかり上昇(そりゃまあ上記ノリノリ主な意見見たら上昇するわな)するという事態になっておられました。
もうね、こうなって来ると植田さんを表にだして喋らせると、ただでなくさえ発言がブレブレな所にきて、政策委員会の議論内容を踏まえないで植田和男作詞作曲のハトハトチキン音頭を勝手に歌って踊る夜の帝王と化しているわけですからして、これはジャパンの伝統芸能「主君押込」を発動して、6月会合までの間喋らせない、国会に呼ばれたら「植田は只今修禅寺に籠っております何なら風呂に入っています」ということで両副総裁に代打で出てもらうしかないんじゃねえの、とまで思ってしまう訳で、昨日の朝も確かアタクシ座敷牢とか言ってましたが、この「主な意見」を見て益々これは主君押込待ったなし(ちなみに修禅寺云々の源頼家のケースは一般的には主君押込カテゴリーにはならんみたいです為念)という所ですな南無阿弥陀仏。
2024/05/09
お題「植田さんの昨日の国会答弁と読売国際講演である」
あーあーあーあー
https://www.bloomberg.co.jp/quote/JPY:CUR
米ドル/円JPY:CUR
↑155.63JPY
+0.94
+0.61%
更新日時 5:20 JST 2024/05/09
アメリカン金利がちょろっと上昇したというのはあるにせよ、円安がまたも進んでしまっておりまして割と早い時期に打ち込んだ植田さんの講演は円安牽制に全然効いてないどころかこれ講演中のプライスアクションを見ると寧ろ円安を煽ってしまったまであるということですので何のために講演をしたのかよく分からんですな、いや円安をぶっ放して世の中の皆さんから利上げ待望論が出てから利上げする格好にしたい、という深慮遠謀でもあるなら別ですが・・・・・・・・・・・
ということで植田さんの昨日の講演と国会答弁と読売国際の講演(国会会期中だし連休明け直後なので国会答弁の可能性も高いから読売国際の時間を17時半にしたのかな、と後からよくよく考えたら思いましたが、まあ昼にやって欲しいですよねこういう講演は)からという感じですわな。
〇国会答弁でも何気に円安招いちゃってるんですよねー
一般向けテレビニュースでこんな言われ方になっているのはワロタ
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/1158367
1ドル=155円まで円安の中、日銀・植田総裁の発言に変化? 無視から“注視”へ
TBSテレビ
2024年5月8日(水) 19:19
経済
『きょうもじりじりと円安が進んでいます。こうした中、先月、市場に“円安容認”と受け取られた日銀総裁は、発言のトーンに変化が生じています。』(上記URL先記事より)
ということで何かトーンの変化とか思いっきりTBSニュースでネタにされたようで誠にアレという感じですが、公共放送ちゃんの方では、
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240508/k10014443021000.html
日銀 植田総裁 円安が物価に与える影響“リスク意識する必要”
2024年5月8日 14時29分
『日銀の植田総裁は、国会で、記録的な円安ドル高の水準が物価に与える影響について「リスクがあることは意識しておく必要がある」と述べ、円安が物価を想定以上に押し上げるなどの大きな影響を与える場合には、金融政策での対応が必要になるとの認識を示しました。』(上記URL先より)
という認識を示した、とはあるんですが、昨日の国会のお時間もしらっと円安が進行していたんですよね。今朝見たらBBGが読売国際講演の記事と一緒に説明してまして丁度いいのでご紹介しますと、
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-05-08/SD5CDRDWRGG000
物価見通しの上振れリスク大きくなれば「金利早めに調整」−日銀総裁
伊藤純夫
2024年5月8日 17:44 JST 更新日時 2024年5月8日 20:11 JST
→経済・物価見通し巡るリスクが変化すれば、当然金利を動かす理由に
→急速・一方的な円安、不確実性高め日本経済にマイナスで望ましくない
ということで記事があるんですけど、途中はかっ飛ばして先に後の方の小見出しの『一段と円安進行』以下を見ますと、
『講演に続く質疑応答では足元の円安について問われ、「急速かつ一方的な円安は、例えば企業の事業計画策定を困難にするなど不確実性を高め、日本経済にとってマイナスであり、望ましくない」と懸念を表明。基調的な物価上昇率に為替の動きが影響してくる、あるいはそのリスクが顕著に高まってくれば「政策対応することになる」と語った。』
『外国為替市場では、総裁講演の最中に、円相場が1ドル=155円51銭まで下落した。総裁が午前の国会答弁で円安によるこれまでの物価への影響について控えめな見解を示したことをきっかけに、円が一段と下落。介入に慎重なイエレン米財務長官の発言を受け、日本の介入が困難になるとの見方も引き続き円の重しとなった。』(上記URL先より)
>総裁が午前の国会答弁で円安によるこれまでの物価への影響について控えめな見解を示したことをきっかけに、円が一段と下落。
っていうように、日中の国会答弁の時って割と最初の方に出てたヘッドラインがこの前と同じくで「円安が足元で基調的物価を大きく変えていない」みたいなのが出てて、アチャーと思ったら円安に動いてて、こらまあ切り取られてしまっていて植田さんにもカシュカリ総裁の頭髪ほどの同情の念は起きるのですが、まあヘタクソ情報発信と恐らくご本人の本音であるハトハトチキンが招いたドツボって感じで、この人もう口を開くと円安材料にしかされないので、次のMPMまで座敷牢にでも放り込んで氷見野さんと内田さんがスポークスパーソンになった方がいいですっていやマジで、と思いました。
しかしまあ何ですな、この次にネタにする読売国際の講演、もうちょっと円安牽制のトーンでも入れるのかと思えば、どうも為替動向に対して金融政策を割り当てない、というそれはそれで見識としてというか原則論としては仰せの通り(為替政策は財務省の通貨当局が行うべきものですから)な話がベースになっているとしか思えない説明になっておりまして、いやまあその原則論を言う植田さんの見識は分かるんですけど、今それを言ってるのってこれ円高の時の白川さんとコインの裏表みたいな感じになってしまいますし、現実問題として植田さんが何か言う度に円安に振れてしまっているのって、完全にマーケットの状況が植田さんを「詰み」に追い込んでいる(昨日なんて折角すこしトーン上げて発言したけど反応したのは円債と日本株でどっちも下げで反応して肝心のドル円は円安なんだから最早チェックメイト掛っているとしか思えん)し、市場って本質的にとんでもないいじめっ子だし何ならサディストなんで、こういうループに入りだすと植田さん益々ヤバイとアタクシの経験則は申しているのですが大丈夫でしょうか。
てかですね、上記のブルームバーグ記事見ても、「急速・一方的な円安、不確実性高め日本経済にマイナスで望ましくない」といってるんですが、同じ記事中に植田さんの発言として(というかこれは講演の方にもあるけど)、
『一方、見通しが下振れたり、下振れリスクが高まった場合には、「現在の緩和的な環境をより長く維持していくことが求められる」との見方も示した。また、経済・物価に対する大きな下方ショックが生じるような場合には、「必要があれば、これまで用いてきたさまざまな非伝統的な手段も含め、あらゆる手段をあらかじめ排除することなく、対応を考えていく」と述べた。』(先ほどのブルームバーグ記事より)
ってあって、円安が経済にとってマイナスだとそのマイナスに対応して金融緩和を更に続けたりマイナス金利政策含めた対応をするって話になるんだが最早何を言っているのかという話になるんですよね。
でまあ国会答弁の方に話を戻すと、さっきの国会答弁の一連の記事では「為替に対応することもある」とは言ってるんですが、肝心の講演では「円安は第一の力で第一の力には別に金融政策対応しないもんね(意訳)」という話をしているのがこれまた円安牽制になってねえええええええとしか申し上げようがないので、そろそろ植田さんの講演に参ります。
〇植田総裁読売国際講演:政策のやる気は一応見せたが市場には響かんでしょこれじゃ
しかし読売国際と略すとゴルフ場みたいですね。よー知らんけどw
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2024/data/ko240508a1.pdf
賃金と物価の好循環と今後の金融政策運営
―― 読売国際経済懇話会における講演 ――
日本銀行総裁 植田 和男
・まずこの題名でクソワロタ
ということで講演の題名が『賃金と物価の好循環と今後の金融政策運営』ってなっているのがもう笑うしか無くて、ついこの前の展望レポート時の会見での説明って先日ネタにしましたように、「賃金と物価の好循環」の話を引っ込め気味にして、「基調的物価」を前面に押し出した説明で今後の金融政策運営の説明をしていたじゃないですか。
でまあ今回の講演の題名が「賃金と物価の好循環と今後の金融政策運営」ってお前は何を言ってるんだという話で、まあこれも4月会合後の会見での総裁の説明が「基調的物価」を前面に出すことによって早期利上げっぽいトーンをあんまり出さない(なぜなら賃金と物価の好循環を前面に出した場合既にその好循環が今次春闘で具現化しているから次の政策調整の時期の話が直ぐに来るのに対して、基調的物価と言って置けば暫く言い逃れが可能なので)ようにしてその結果円安をぶち招いてしまったという事を受けて、より政策調整トーンの強い「賃金と物価の好循環」の方をタイトルに持って行った、というのが見え見えな訳ですよこんなのwwww
まあそんな次第ですので、とりあえず円安進行が植田のせいで進んでいる、という日銀総スカン状態になって四面楚歌になるのを避けたい、という気持ちはわかりましたので内容に参ります。
・「第一の力」「第二の力」っていう説明を更にトーンアップしているんだが筋悪にも程がある
冒頭挨拶とか経済情勢とかどうでもいいので全部すっ飛ばして『3.物価情勢』に参りまして、最初の小見出しが『(物価の現状と見通し)』ですね。
『続いて、物価です。直近3月の消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、2%台半ばの伸びとなりました(図表3)。2年にわたり、2%を超える物価上昇率が続いていますが、その中身は変化しています。』
という時点ですさまじく嫌な予感しかしませんがまあその通りに話は進みます。
『私は、これまで何度かの講演で、2021 年以降の物価の動きを、「第1の力」と「第2の力」に分けて説明してきました(図表4)。』
でまあこの図表4ってのがPDFだと本文のケツにあって、PDFの15枚目に『物価上昇に作用する2つの力』ってのがありますが、そのグラフというかポンチ絵というかを見れば一目瞭然ですが、こちらはまあ講演テキストなのでちゃんと文章で説明があります。まあここ読まなくても図表4のビジュアルを見た瞬間に(ノ∀`)アチャーとなるんですけどね。
『ここで、「第1の力」とは、輸入物価上昇を起点としたコストプッシュ圧力が物価を押し上げる力のことです。これに対して、「第2の力」とは、景気が改善するもとで、労働需給の引き締まり等を背景に、賃金と物価が相互に連関しながら伸び率を高めていく力、つまり賃金と物価の好循環を指します。』
ちょっと待て今後は第二の力が賃金と物価の好循環とか言ってるのですがこれがもう説明として無茶苦茶筋が悪いんですよね。
だってさ、「中長期の期待インフレ率が2%にアンカーされた状態で経済を構成する皆さんが行動するから物価が中長期的に2%程度で推移する」ってのが2%物価安定が実現している姿、って話をしてた筈で、これだと期待インフレの話が無いじゃんという話(まあ流石にこの先に期待インフレの話もありますけどね)と誤読しかねない説明だし、大体からして輸入物価上昇などの価格転嫁がセカンドラウンドエフェクトを起こすというのも物価形成の話の中で重要で、現実問題として(それが本当にそうだったかは別にして)黒田総裁の時のバズーカ2だのハロウィン緩和だの言われたのって「原油価格下落が足元のやや軟調な経済と相まって物価およびインフレ期待の二次的効果を発揮して押し下げになるのを阻止する」ってお題目で追加緩和を実施したように、輸入物価上昇なり何なりの価格ショックが二次的効果を引き起こすかどうかってのは金融政策運営上重要な論点になる筈なのに、この「第一の力」「第二の力」ってそれを見事に無視した説明になっていますよね。
ということで、そもそも論としてこの第一の力第二の力って説明自体が筋悪としか思えないのに、植田総裁何でこの説明を嬉々として(かどうか知らんが)するんでしょうと疑問で疑問でしょうがないんですよアタクシには。
でまあ植田さんの説明は続くわけで、
『言うまでもなく、「第1の力」は、起点となる輸入物価の上昇圧力が止まれば次第に和らいでいく、一時的な性質のものです。それに対して、「第2の力」は、企業の賃金・価格設定行動の変化を伴いつつ、より持続的に物価上昇率を高めていくことが想定されます。』
でもってこれで整理するというのが筋悪なんですがこの筋悪音頭を聴いてみましょう。
『こうした整理を念頭に、改めて最近の物価の動きを確認します(前掲図表3)。食料品を中心とした財価格の上昇率は、このところ明確に縮小しており、「第1の力」が和らいでいることが確認されます。一方、コストに占める人件費の比率が高いサービスでは、価格の緩やかな上昇が続いています。これは、「第2の力」が強まってきていることを示唆しています。』
『先行きについても、「第1の力」が和らいでいく一方で、「第2の力」が引き続き強まっていくことを展望しています。4月の「展望レポート」では、生鮮食品とエネルギー価格の影響を除いた消費者物価の上昇率は、2023
年度の+3.9%から 24 年度に+1.9%へと低下したあと、25 年度は+1.9%、26
年度は+2.1%と伸び率を高めていくと想定しています。生鮮食品を除く消費者物価の上昇率は、政府のエネルギー補助金が縮小・撤廃される影響からやや振れが大きくなりますが、2024
年度が2%台後半となったあと、25 年度以降は、概ね2%程度で推移する姿です。』
コアコア+1.9も+2.1も同じだろと言いたくなるのだがそういう説明になっていますなwww
・でもって結局「基調的な物価」に話が行くのですが総合判断じゃないのかよ
でもってこの続きですが、
『このように、「展望レポート」の見通し計数からは、「第1の力」から「第2の力」へのバトンタッチが進む姿を想定していることが概ね分かるわけですが、物価情勢の評価に当たっては、「第2の力」がもたらす物価のトレンド、すなわち、「基調的な物価上昇率」を捉えることが重要となります。そこで、基調的な物価上昇率についてもう少し詳しくみていきたいと思います。』
『基調的な物価上昇率は、単一の指標の動きに基づいて評価できるものではありません。各種の物価指標に加え、物価変動の背後にあるマクロ的な需給ギャップや予想物価上昇率、賃金上昇率など、経済・物価に関する様々な情報を丁寧にみたうえで判断していくものです。そのため、その捕捉は、必ずしも容易ではなく、特に「第1の力」による価格変動が大きい今次局面では、困難な課題です。』
って言ってるんですが、以下の説明を見ますとひたすら定量的な分析をしていって「ザ・基調的な物価」を出そうという話をしていまして、もっと物価の背景にある経済の状況や物価形成のメカニズムといった部分で判断するのかと思ってたんですが(なお上記切り取って引用した言い方自体はこの前の総裁会見と同じ)、こうやって以下説明されると、なんか必死こいてその「ザ・基調的な物価」を出すという話をしているんだがそういうもんじゃないだろと思うんですよね。
つまりですね、インフレーションターゲット政策ってそもそも何のためにやっているかというと、それは「国民厚生を向上させるため」に実施しているのであって、インタゲ自体はその目的達成のために最も適切なメルクマールになるから使っている手段であって、国民厚生を無視して物価だか基調的物価だか知らんけど、その数字を2%に持って行くこと自体を目的にしたら中央銀行が本来やるべきことをやってない、って話になる訳ですからして、その「ザ・基調的な物価」を出すこと自体に何の意味があるんだよという疑問しかアタクシにはわかないのですが、以下延々とその「ザ・基調的な物価」の出し方の話をしているのがもうこの学者しょうもねーとしか言いようが無い訳ですな、南無阿弥陀仏。
『日本銀行では、従来から物価の基調的な動きをみるために有用と考えられる指標を多く試算していますが、それらは、今次局面のような大幅な輸入物価上昇を想定したものではありませんでした。例えば、「刈込平均値」は価格変動が大きい品目を上下
10%分控除した指数です。そのため、広範な品目で一時的に価格が上昇してしまうと、物価の基調を捉えきれなくなってしまいます。今次局面で基調的な物価上昇率を捉えるためには、従来とは異なるアプローチに取り組む必要があります。』
でもってその「ザ・基調的な物価」を出すのに今まで使っていて日銀が毎月公表していた数値は基調的な物価を捉えていない、とか言い出しているんだがだったら何で今まで出してるんだよ馬鹿としか申し上げようがないし、これ要するに例の日銀謹製基調的物価が高く出てて言い逃れが出来ないからこの数値自体がポンコツとか後出しじゃんけんのゴールポスト移動を恥知らずに行っているんですから世話はない訳です。
『4月の「展望レポート」では、今次局面で、基調的な物価上昇率を捉えるための取り組みとして、@物価統計から、従来とは異なる方法で基調的な要素を抽出するアプローチ、Aインフレ予想の指標に注目するアプローチ、B経済モデルからトレンドインフレ率を推計するアプローチ、の3つを紹介しています(図表5)1。これらの指標の動きは様々でその水準にも差はありますが、全体として眺めてみますと、幾つかのことは言えると思います。』
詳しくは展望レポート全文の方のBOXと直近出てた企画局謹製スタッフレポートの日銀レビューシリーズになるのですけれども、今日はそこまで追っかけている時間がどう見ても無いのでその辺はいったんかっ飛ばしますが、これって「家計の期待インフレが+1.5%程度」とかどういう処理をするとそういう結果になるのかよく分からんですが、なんか高度な分析を行った結果として政策運営に都合の良い数字が出て来るとか言う黒魔術が行われて大変に都合の良い数字が並んでいるんですよね。
でまあ以下その能書きが展開されます。
『第1に、これらの指標の水準は区々ですが、何れも「物価安定の目標」の2%は下回っています。しかし、第2に、何れの指標も緩やかに上昇しており、基調的な物価上昇率が高まってきていることは、かなり確からしいと窺われます。つまり、基調的な物価上昇率が、現時点では、2%に向けて高まっていく途上にあるとみられます。』
結果に都合の良いようにパラメーター弄ってけいさんしてるんでしょ疑惑が払拭できませんなwwww
『もちろん、これらの指標は、何れも一定の前提や仮定に基づく試算値であり、かなりの幅を持って解釈する必要はあります。』
なんで「かなりの幅を持って解釈する必要がある」のにピンポイントで都合の良い数字が出て来るんでちゅかねえ〜
『例えば、経済モデルから試算したトレンドインフレ率は、モデルの定式化の影響を受けます。また、繰り返しになりますが、基調的な物価上昇率の動向は、これらの分析だけに基づき判断すべきものではありません。企業からのヒアリング情報なども用いて物価変動の背後にあるメカニズムを見極めつつ、多様な観点から総合的に捉えていくことが重要です。』
総合的と書いて「やりたい政策から逆算」って読むんですねよくわかります。
・・・・・でまあ時間が足りなくなりそうなのでこの先をいったんかっ飛ばして政策運営まで飛びます。
・一応長期国債買入減額に言及したものの
『4.金融政策運営』ですけど最初の『(金融政策の枠組みの見直し)』ではこのように言っておりまして、
『さて、ここからは、金融政策運営についてお話しします。ここまでお話ししてきましたように、賃金と物価の好循環の強まりは確認されてきており、先行き、2%の「物価安定の目標」が持続的・安定的に実現していくことが見通せる状況となっています。こうしたもとで、冒頭で申し上げたとおり、3月の金融政策決定会合では、過去
11 年にわたり続けてきた大規模な金融緩和を見直すこととしました(図表9)。』
まあこの辺はどうでもよいのだが一応引用だけはしておく。
『具体的には、第1に、短期金利については、無担保コールレート(オーバーナイト物)を0〜0.1%程度で推移するよう促すこととしました。マイナス金利政策のもとでは、コールレートは▲0.1〜0%で推移してきましたので、0.1%程度の利上げとなります。第2に、イールドカーブ・コントロールの枠組みを撤廃し、長期金利の誘導目標や上限の目途は無くしました。第3に、ETFおよびJ−REITの新規買入れは終了し、CP・社債についても、買入れ額を段階的に減額のうえ、終了することとしました。』
『このように見直した新たな枠組みを一言で表現しますと、2%の「物価安定の目標」のもとで短期金利の操作を主たる政策手段とする、「通常の金融政策の枠組み」と言えます。』
これだけアホみたいに長期国債買ってしかも減らそうともしないのに何が「通常の金融政策の枠組み」じゃヴォケとしか言いようがありませんな寝言は寝て言えとはよくいったものです。
『国債買入れについては、政策枠組みの見直しの前後で不連続が生じることを避ける観点から、現時点では、これまでと概ね同程度の金額で継続することとし、実際の日々の買入れ額については、市場動向などを踏まえて調節していくこととしています。』
調節してねえじゃん。
『そのもとで、長期金利は、金融市場において形成されることが基本となるため、今後は、長期金利が、海外金利の動向や経済・物価見通しの変化などを反映して変動することは自然であると言えます。』
これだけ買っておいて何言ってるんでしょうかこのトンカチは。
『また、現在は、3月に見直した国債買入れの枠組みのもとでの金融市場の状況を確認しているところですが、今後、大規模な金融緩和からの出口を進めていくなかで、国債の買入れ額を減額していくことが適当であると考えています。』
と、やっと言っているのですけど、まあこの程度では円債市場は反応しても為替市場はどうせ言うだけ番長ということで反応しないのですな、残念無念wwwwww
・Rスターってあれ中銀が政策説明をするときに都合の良い詭弁の道具としかワシは思わんのだが(偏見)
でもってさらに(ノ∀`)アチャーと思ったのはこの次の小見出しでして、
(金融緩和度合いの評価:実質金利と r*)
って来やがったのですが、これ学問的には確かにこういう話になるんですけど、そもそも中立金利とかそういうのってピンポイントで評価するのって事後的にならないと分からん話だし、もしかしたら事後的にもわからんものでありますし、レンジで示すにしたって金融政策運営に使えるようなレンジで出せるようなもんでもない物件なんですよねどっからどう見たって。
そりゃまあ今みたいに誰がどう見たって緩和的な金融環境、というような状況になっている時だと実質金利が低いですねえみたいな話は出来ますけど、例えばFEDみたいな状態ですと本当に今の金利がどの程度引き締め的なのか、はたまた実は引き締め的ではないのか、とかそういう話を実質金利だのRスターだのとか持ち出して議論するのって、概念としての話しならまあいいんですけど、実質金利水準を頑張って計測してその結果としてルールベースで政策運営をしましょう、みたいな実用性はどう見たってないんですよ。
つまりですね、だいたいこの実質金利だのRスターだのって話は金融政策運営の話をするときの「使い勝手の良い道具」に過ぎなくて、変な使い方をすれば詭弁の道具になってしまうようなお話になるですけど、まあこれを堂々とぶっこんできているという時点でちょっともう何だかね、と思うのですが、この辺のツッコミに関しても時間が無いのでパスして次に行きますねwwww
・先行きの金融政策運営の部分で「下振れの場合」を思いっきり言ってしまっているのが植田さんの心象風景でしょうね
Rスターの話をかっ飛ばして金融政策運営最後の小見出しに行きますが、
『(先行きの金融政策運営)
先行きの金融政策については、毎回の金融政策決定会合で経済・物価の見通しやリスクを点検したうえで、2%の「物価安定の目標」のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、適切に運営していく方針です。』
『そのうえで申し上げますと、先行き、見通しに沿って基調的な物価上昇率が高まっていけば、「物価安定の目標」実現の観点から適切となる金融緩和の程度も変化しますので、緩和度合いを調整していくことになると考えられます。また、経済・物価見通しやそれを巡るリスクが変化すれば、当然、金利を動かす理由となります。』
でもってこの後がアレ。
『この点、先ほども申し上げたとおり、物価を巡るリスクが上下双方向に引き続き大きいことは認識しておく必要があります。』
上振れだけじゃないんですよ下振れも大きいんですよもうこの時点でやる気無いのがバレますよね。
『仮に、物価見通しが上振れたり、あるいは上振れリスクが大きくなった場合には、金利をより早めに調整していくことが適当になると考えられます。』
は良いんだが、
『一方、見通しが下振れたり、下振れリスクが高まった場合には、現在の緩和的な環境をより長く維持していくことが求められます。また、経済・物価に対する大きな下方ショックが生じるような場合には、必要があれば、これまで用いてきた様々な非伝統的な手段も含め、あらゆる手段を予め排除することなく、対応を考えていくことになります。』
あーあーあーあーって感じですが、まあハトハトチキン総裁の心象風景はどう見ても後者なんでしょうね、というのが良く分かる締め方でした、最後に『5.おわりに』ってのありますが割愛します。
2024/05/08
〇植田総裁またも発言をぶらすのマジで勘弁してほしい上に今日は講演なんですね
・官邸での総理との会談後のぶらさがりか何かでエライ勢いでトーンを修正する植田さん
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-05-07/SD3VQQT0G1KW00
植田日銀総裁が首相と為替を議論、基調物価への影響を注視−連携確認
占部絵美、萩原ゆき
2024年5月7日 17:45 JST 更新日時 2024年5月7日 19:12 JST
→物価・賃金が大きなポイント−円安は経済物価に潜在的に大きな影響
→最近の円安について日銀の政策運営上、十分注視していくことを確認
『日本銀行の植田和男総裁は7日夕、首相官邸で岸田文雄首相と会談し、為替が経済物価に与える影響などについて議論した。会談後、植田総裁は記者団に対し、基調物価への影響を注視する考えを示した。』(上記URL先より、以下同様)
・・・・・・じゃあ最初からそう言えよこのスットコドッコイという所なのですが、こんなの26日の定例会見がやらかし会見になってしまったので泡を食って発言の上書きをしていますよ、って鉦や太鼓で宣伝しているようなもんでして、お前は気の利いたオリジナル発言をしようとしないで、普通に展望レポートに書いてあることを棒読みしてれば良いんだよ余計なこと言うなこの(内務省検閲)としか言いようがない訳ですよ。
なんで最初の会見の時点で「最近の為替円安はまだ現時点では基調的物価に大きな影響が出ているとはみていないので政策修正をするには至らなかったが、基調的物価の押し上げ効果が出て来るかどうかについて今後の様々な指標をみながら判断していきたい」と言って置けば何の問題も無かった(それでも切り取られリスクはあるが)わけで、結局あれが尾を引いてるから介入2回やって運よくアメリカン金利の上昇が止まってちょっと下がったけど結局ドル円154円台で推移してる訳なので反省して二度とお前の頭で考えた発言をするなと言いたいですなマッタクモウ。
『植田総裁は、会談では物価・賃金情勢が大きなポイントの一つであるとともに、為替も議論したと述べた。その上で、円安は「経済物価に潜在的に大きな影響を与え得るものであり、最近の円安について日銀の政策運営上、十分注視していくことを確認した」と言明。今後「基調的物価上昇率にどういう影響が出てくるかについて注意深く見ていく」とも語った。』
しかしこのBBG記事も中々容赦がなくて、この先の方で
『植田総裁は4月の金融政策決定会合後の会見で、円安進行による政策運営への影響について現時点で大きな影響を与えてはいないと説明。一方、企業の前向きな価格設定行動などを踏まえれば基調的物価に「跳ねるリスクもゼロではない」とし、無視し得ない影響が出るなら政策の変更理由になり得るとの見解を示していた。今回の発言を受け、植田総裁は円安への懸念を強める姿勢を示したとの見方が出ている。』
と思いっきりトーンを変更しているのを強調しておられますので、アタクシがわざわざ総裁会見の発言を引用するまでもないという大変に親切な(ソウジャナイ)仕様となっておりますが、まあ明確に発言のトーンを変えて来ましたよね。
ただ、再三再四申し上げておりますように、そもそも展望レポート基本的見解の最終段落で示された今後の金融政策運営に関する文言を見れば、「今の見通しは見通し期間の後半のどこかで2%物価目標を達成しているという見通しで、今後は経済物価情勢が今の見通し通りに推移していくかを確認していくステージであり、見通し通りに推移するなら徐々に緩和度合いを縮小していきます」って宣言している訳で、そっちが正しいのであれば(というかこれは政策委員会の議決事項だから正しいんですけど)会見での植田総裁の発言の方が暴走発言だった訳で、修正するのは当たり前田のクラッカーではあるのですけど、暴走するには暴走するベースというのがあるのですから、これは即ち植田さんが政策修正したがらないというベースがありますがな、というだけの話ではありますわな。
・そんな中で今日は午後5時半とかいうはた迷惑な時間帯に講演があるらしいですね
(直リンしませんが)
https://finance.yahoo.co.jp/news/detail/1fdff2f7f27e2b1cd5af6c407c646c9a612fde78
植田日銀総裁が読売国際経済懇話会で講演、8日午後5時半から
5/7 19:10 配信
『植田日銀総裁が読売国際経済懇話会で講演、8日午後5時半から
みんかぶ(FX)』(上記URL先より)
アタクシの気が付いた限りでは時事メインが最初にこの速報を出していたと思うのですが、メインのフラッシュと1行記事だとネットの時事ドットコムの方では拾えないのでこんな感じのを拾って参りました。
でまあこれは展望レポートが出たとき(と大きな政策変更を行ったとき)の後に行われる総裁または副総裁の講演(金懇挨拶かどこかの講演)になりますので、モチのロンで重要な講演になりますわな(昨年は5月19日に内外経済調査会(時事通信系)で植田総裁のハトハト講演があって円債市場の皆様に政策修正のやる気の無さを見せてくれた衝撃の講演が行われました)。
この講演、まあ講演ですからちゃんとテキストがある訳で、しかもそもそもが「展望レポートの説明」になりますので、展望レポート基本的見解で示しているお話をすることになりますし、そうなると基本的見解で示している「今後の金融政策運営」についても言及する筈ですから、あの「その気になれば毎回の展望(どころか実は情勢判断は毎回のMPMで実施しているんだから何なら毎会合ですがまあそれは笑)で目標達成に向けた順調な進捗を確認すれば政策修正が可能」という建付けになっている文章についてちゃんと説明して下さるんじゃないの、とまあ思う訳ですよ願望成分が65%くらい入っていますがw
なお、せっかく講演でイイハナシダナーをしても質疑応答というのがあるかどうか知らんけど、たぶん会場でのご質問(ああいうちゃんとした講演会だと基本的に質問は代表質問みたいな感じだと思うので、記者会見のようにはならんと思うんだがどうでしょうかね知らんけど)もある筈ですので、そこで台無し発言をぶっこむという可能性もアリエールなのが恐ろしいのですけれども、まあ何にせよ変な植田オリジナルをその場で繰り出さない限りは展望レポートの線に沿った話、すなわち今後は物価目標の達成を視野に入れた漸進的だけど着実な緩和度合いの縮小、というお絵描きの話をしてくれるんジャマイカ、と期待するところが大であります。
・・・・・などとアタクシが言うと飛んでもない死亡フラグになるんじゃないかとかツッコミを入れているそこのあなたはそういうツッコミをしてはいけません(正直こんなに盛大にフラグ建築して大丈夫かと一番不安になっているのは不肖このアタクシ)。
2024/05/07
お題「展望レポートの鏡をクソ真面目に読んでみるという企画(全然成敗が進まんあるね)」
ネタが山のように積まれているというのに結局連休は総裁会見しか成敗しておりませんでしたすいませんすいません。
ところでドル円ちゃんはまた154円近くに戻っていますなあ。これはもう今日の輪番で蛮勇を振るうしか無かバイとはおもいますがどうせそんな蛮勇が起きる訳が無いに1万ジンバブエドル。
〇展望レポート基本的見解(の大体概要部分):鏡の部分が既に政策運営方針と微妙に合わない
基本的見解
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2404a.pdf(今回4月)
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2401a.pdf(前回1月)
情勢判断に関しては3月声明文も比較対象ですな
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2024/k240319a.pdf(3月声明文)
・結局どっちですねんという話でして
所謂「鏡」の部分ですけど<概要>を見るとどうなんだというのがあります。ちなみにアタクシ今回はどうせ政策修正のトリガーが「お気持ち」なので見通し数値よりも文章構成の方が大事だと思ってそっちから見たから読んだのが頭からで政策ガイダンスもどきの文言は後から読んだんですよね。
概要1ポツ目
『先行きのわが国経済を展望すると、海外経済が緩やかに成長していくもとで、緩和的な金融環境などを背景に、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まることから、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。』(今回4月)
『先行きのわが国経済を展望すると、当面は、海外経済の回復ペース鈍化による下押し圧力を受けるものの、ペントアップ需要の顕在化などに支えられて、緩やかな回復を続けるとみられる。その後は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まるもとで、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。』(3月声明文)
『日本経済の先行きを展望すると、当面は、海外経済の回復ペース鈍化による下押し圧力を受けるものの、ペントアップ需要の顕在化などに支えられて、緩やかな回復を続けるとみられる。その後は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まるもとで、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。』(前回1月)
こちら一読すると分かると思いますが、なんと今回って新たに「緩和的な金融環境を背景に」ってのが新しく入っているんですよ。これが例の今回出た政策ガイダンスとの整合性がどうなっているのか、という話でして、
『金融政策運営については、先行きの経済・物価・金融情勢次第であり、この点を巡る内外の経済・金融面の不確実性は引き続き高い。以上のような経済・物価の見通しが実現し、基調的な物価上昇率が上昇していくとすれば、金融緩和度合いを調整していくことになるが、当面、緩和的な金融環境が継続すると考えている。日本銀行は、2%の「物価安定の目標」のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営していく。』(今回4月)
『日本銀行は、引き続き2%の「物価安定の目標」のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、短期金利の操作を主たる政策手段として、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営する1。現時点の経済・物価見通しを前提にすれば、当面、緩和的な金融環境が継続すると考えている。』(3月声明文)
ということで、「当面、緩和的な金融環境が継続」というのはご案内の通り3月声明文に入っていましたが、「経済の先行き」部分で3月の時点では「緩和的な金融環境が」という文言が見通しの説明の中に入っていないんですよ。
これまあ1月時点ではそもそもQQE+YCC+マイナス金利政策を継続しているから、金融環境が緩和的、ってのは所与みたいなもんだから「緩和的な金融環境を背景に」というのをわざわざ入れなくても良い(実際にちゃちゃっと見てみましたが、一昨年10月まで辿っても今回のように「緩和的な金融環境などを背景に」という文言は鏡の部分には入っていないんですよね)ということだったと思うのですよ。
然るに、今回の展望レポートで今までそういうのが無かった「緩和的な金融環境などを背景に」というのを入れる、ということは、これは今後の経済見通しの前提に「緩和的な金融環境」がある、という事を思いっきり示したことに他ならない、と読めてしまうんですよね。
・・・・・そうなりますと、例の政策ガイダンスもどきの「以上のような経済・物価の見通しが実現し、基調的な物価上昇率が上昇していくとすれば、金融緩和度合いを調整していくことになる」というのは何なのかという話になる訳でして、見通しが実現するために緩和が必要なんだったら、別に政策調整なんかしないでおけば、基調的な物価が高まる中で実質ゼロ金利政策を継続すれば緩和が拡大になるのですから、もともと日銀が言ってた「早期の物価目標達成」がより近くなる筈なんですが、何でわざわざ緩和度合いの調整を行うのよ????というお話。
ちなみに1月展望本文中で記載されているメカニズムに関する部分では、緩和的な金融環境が民間需要の増加を後押ししたり、企業の資金繰りを改善させたり、潜在成長率の上昇を後押ししたり、という記載はあるので、緩和的な金融環境に関する記載は本文にあるのですが、今回の展望レポートで殊更に「緩和的な金融環境」を鏡に出してくるのが、例の政策ガイドラインとの整合性が微妙になっているんですよね。
一応日銀の言い訳を考えれば、「見通し通りに進展して基調的な物価が上昇すれば政策を修正していくけれども、その間は緩和的な状態が続いている(物価目標達成までの間に中立にする訳ではない)ので、その状況が経済の下支えになる、という意味です」ってな事になると思いますけれども、やっぱりわかりにくくて、今回わざわざ「緩和的な金融環境」の文言を鏡の一発目に入れてきたということは、やはり日銀には引き続き緩和バイアスがあり、政策調整には及び腰なんじゃなかろうか、という読みになってしまう訳です。
一方で例の政策ガイダンスもどきを読めば少なくとも毎回の展望レポートのタイミングで経済物価見通しが「変化なし」で、「リスク認識も変わらないor上振れ」だったら政策の調整は可能、というか7月の展望で下方修正が入らない限り調整しない方が理屈としておかしいだろ、という建付けになっている訳でして、いやお前らどっちですねんというお話になる訳でございますな。
でまあ何ですな、植田さんが会見でハトハトチキン音頭を盛大に踊ったのもそうなんですけど、一番大事な政策反応関数に勝手に昇格(挙句に賃金と物価の好循環は「御用済み」になるというご都合主義極まりない屁理屈モード)しておった「基調的物価」の説明が一つの会見の間で頭(=物価のメカニズムなども含めた総合判断)とケツ(=物価指標から一時的なものをトリミングしたもの)で説明が違う、というハチャメチャ説明を展開していたのをみますに、ここから先はアタクシの勝手な妄想になりまして、まあ先日より申し上げておりますが、今後の政策運営の方向性に関しては「緩和継続バイアス」の方と「中立化に向けた調整を行うバイアス」の方の間の意見の隔たりが大きく、まあ容易にまとまらんという状態のなかで妥協の産物として、この展望レポート基本的見解が出てきた、ちゅうことなんでしょうねえという話になる訳です。
でまあこれが雑魚キャラが反対しているならまあいいんですけど、これどう考えたってハトハトチキンの総裁と大本営事務方の間で路線対立あるじゃろ(大本営が緩和継続バイアスなら別にこんな政策ガイダンス文言を入れないですし、植田さんが調整バイアスあったらあんなハトハト音頭を踊らないですからね)という妄想が更に広がる訳でして(あくまでも個人の妄想ですので話は10分の1くらいで聞いて下さいね)これは益々面白くなってまいりました(何が面白いのかは書いてる本人も良く分かっていないがw)という感じだと思いましたがさてどうでしょうかね。
鏡の1ポツ目で何か長広舌を振るってしまいましたが先に参ります。
・物価見通し達成の「確認」を取るという説明も今後変な屁理屈が入るんでしょうね
『物価の先行きを展望すると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、2024
年度に2%台後半となったあと、2025 年度および2026 年度は、概ね2%程度で推移すると予想される。既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響が減衰する一方、2025
年度にかけては、このところの原油価格上昇の影響や政府による経済対策の反動が前年比を押し上げる方向に作用すると考えられる。この間、消費者物価の基調的な上昇率は、マクロ的な需給ギャップの改善に加え、賃金と物価の好循環が引き続き強まり中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想され、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。』(今回4月)
『物価の先行きを展望すると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、来年度にかけて、既往の輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響が減衰するもとで、政府による経済対策の反動がみられることなどから、2%を上回る水準で推移するとみられる。2025
年度については、これらの影響の剥落から、前年比のプラス幅は縮小すると予想される。この間、消費者物価の基調的な上昇率は、マクロ的な需給ギャップがプラスに転じ、中長期的な予想物価上昇率や賃金上昇率も高まるもとで、見通し期間終盤にかけて「物価安定の目標」に向けて徐々に高まっていくと考えられる。先行きの不確実性はなお高いものの、こうした見通しが実現する確度は、引き続き、少しずつ高まっている。』(前回1月)
今回の特徴は「見通し期間を通じて2%乗せ」というのを明確に示した(1月は2025年度がプラス縮小を言って2%かどうかについてはスルーしている)のですけど、実は3月声明文において、
『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、来年度にかけて、既往の輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響が減衰するもとで、政府による経済対策の反動がみられることなどから、2%を上回る水準で推移するとみられる。その後は、これらの影響の剥落から、前年比のプラス幅は縮小すると予想される。この間、消費者物価の基調的な上昇率は、マクロ的な需給ギャップがプラスに転じ、中長期的な予想物価上昇率や賃金上昇率も高まるもとで、「物価安定の目標」に向けて徐々に高まっていくと考えられる。』(3月声明文)
情勢判断を示した声明文別紙にはこう記載していますが、そもそもの政策決定を行った部分では
『1.日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、賃金と物価の好循環を確認し、先行き、「展望レポート」の見通し期間終盤にかけて、2%の「物価安定の目標」が持続的・安定的に実現していくことが見通せる状況に至ったと判断した。』(3月声明文)
となっていまして、まあ結局の所3月の時点で「先行き見通しは物価目標達成です」と言っている訳ですので、本来なら4月に政策調整しても良い位なのですが、まあ3月にやったばかりで4月に利上げというのも何なんので、というのはまあ分からんでもない。
でですね、話が総裁記者会見に戻るのですが、
https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2024/kk240430a.pdf
12ページのケツからの質疑応答なんですけど(さっき(土曜日)の更新では割愛した物件です)
『(問)さっき物価の見通し、何度か先ほどから上振れリスクという話、上振れの要素があるってお話が出てましたけど、3
月にマイナス金利解除した際、この場ではどちらかというと緩和的な金融環境続くと、緩和的なスタンスってのがすごい強調されてたように感じたんですけど、その
3 月に考えていたときよりは確度も高まって、追加の利上げの時期が近づいているというふうに進展してきてるっていうふうなことなんでしょうか。』(ここと次の部分は直上URL先4月30日総裁会見より)
という質問に対して、
『(答)3 月時点と比べて、現在にかけて入ってきた情報を基準に判断するとどうかということだと思うんですが、ここ
1 か月強に入ってきたいろいろなデータ、情報等は、かなりの程度、3 月時点でこうなるだろうというふうに予想していた姿に近いものだったというふうに判断しています。』
『ただ、その中で原油価格や円安の動きというのは、ややそこから少し上方にずれた動きであって、今のところ、先ほど来申し上げているように、「第一の力」のところに影響を及ぼす動きであるけれども、「第二の力」への影響の度合いを今後注意深くみていくということかなと思っております。』
って回答ったのですが、この前段部分が違和感ありありで、いやだってあのクッソ強い短観だってあの時点で本当に予想できたのかよ、というのがある訳でして、4月って結構上振れしてただろと思うのですが、これは4月に上振れしたというのを認めてしまいますと、「以上のような経済・物価の見通しが実現し、基調的な物価上昇率が上昇していくとすれば、金融緩和度合いを調整していくことになるが」の方との兼ね合いが出てきてしまうので、ああいう回答をしているんだな、というのがまあ読み取れるわけですよ。
まあそういう意味では植田さんって正直者ちゃあ正直者でして、こういう時は「ここ1か月ほどの間で入ったデータ自体は特に大きな見方を変えるものではありませんでした」とでも言って置けばよいのに、わざわざ「予想通り」とか言ってしまって価値判断を入れてしまう訳ですが、これはデータの価値判断を示すことによって政策調整に繋がってしまうので、予想通りということにしておかないと、ってのを示している訳ですな、まあそういう意味では「わかりやすい」人なんですよね植田さんってきっと。
でまあ会見ネタの方でも申し上げましたが、今後はこの「基調的物価」とかいう謎の概念と、「見通し通りに推移している事を確認」という2点が政策調整をする際の屁理屈(実際には円安批判や物価高放置批判によって日銀批判が高まるとションベンチビって泣きながら利上げに追い込まれるんですけどそれはさておき)となりますし、その屁理屈で言い逃れができなくなった時に素直に利上げするのか、はたまた別の屁理屈を繰り出してくるのか、というのは見世物としては面白いがそれに振り回されるワシら的にはエエカゲンニセエという感じではありますな。
・上振れ下振れに関しては今回はどうでも良くて問題は次回です
3ポツ目以降はサラサラ流しますね。
『・2025 年度までの見通しを前回の見通しと比べると、成長率については、2023
年度と2024 年度は、個人消費を中心に下振れているが、2025 年度は概ね不変である。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比については、2024
年度が上振れているが、2025 年度は概ね不変である。』(今回4月)
『・前回の見通しと比べると、成長率については、2023 年度が幾分下振れ、2024
年度が幾分上振れとなっている。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比については、2024
年度は、このところの原油価格下落の影響を主因に、下振れとなっている。』(前回1月)
これは展望レポートの見通しの前回対比文言なので3月声明文別紙には記載はありません。でもって今後ですがここの上振れ、下振れが重要になる、という謎のプレイになるわけですな。
・リスク認識のリスクバランスも次回からは重要とお気持ち成分が更に強まる政策運営ですなw
4ポツ目はリスク認識ですがまあここはそう極端に変わることは(何とかショックでもない限り)変わらん。
『・リスク要因をみると、海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、わが国経済・物価を巡る不確実性は引き続き高い。そのもとで、金融・為替市場の動向やそのわが国経済・物価への影響を、十分注視する必要がある。』(今回4月)
『・リスク要因をみると、海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、わが国経済・物価を巡る不確実性はきわめて高い。そのもとで、金融・為替市場の動向やそのわが国経済・物価への影響を、十分注視する必要がある。』(前回1月)
1月展望と全文一致ですし、
『・リスク要因をみると、海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、わが国経済・物価を巡る不確実性はきわめて高い。そのもとで、金融・為替市場の動向やそのわが国経済・物価への影響を、十分注視する必要がある。』(3月声明文)
3月声明文別紙とも全文一致ですのでここはさておきまして5ポツ目に参りますと、
『・リスクバランスをみると、経済の見通しについては、2024 年度以降、概ね上下にバランスしている。物価の見通しについては、2024
年度は上振れリスクの方が大きいが、その後は概ね上下にバランスしている。』(今回4月)
『・リスクバランスをみると、経済・物価のいずれの見通しについても、概ね上下にバランスしている。もっとも、物価については、長期にわたる低成長やデフレの経験などから賃金・物価が上がりにくいことを前提とした慣行や考え方が社会に定着してきたことを踏まえると、賃金と物価の好循環が強まっていくか注視していくことが重要である。』(前回1月)
前回はまだ緩和政策継続中でしたから物価目標達成に向けたパスに関して色々と注文がついていましたが、3月の時点で「見通し通りにいけば達成」という事になりましたから、その注文文言が外れてスッキリとなりました。でもって今回って基本「バランス」でして、2024年の上振れって別にその先の見通しが上振れになっていない限り「テンポラリー」で済ませるものなので政策判断の屁理屈的にはどうでもよい、という結論になりますので、まあ要するにこれは4月時点では「リスクはバランス」になっていますので、7月展望の時にリスクバランスが上にぶれた場合も政策修正の理由になる、ということですから、リスクバランスに関する発言を今後誰かがしてくれるのかどうかは知らんけど、まあ金懇とかがあったら是非そこは質問して頂けるとありがたく存じます。
#市場ネタとかその辺もあるのですが今朝はこの辺で勘弁していただきたく
2024/05/04
お題「決定会合レビューネタで総裁会見の基調的な物価と為替円安と輪番に関してネチネチとツッコミである」
どもども、金曜更新するとか大口たたいてましたが結局土曜になってしまいました。
しかしアメリカン市場も情緒不安定ですな
https://jp.reuters.com/markets/us/KT72EZEHJFNSHL3YO7MYFFU7CE-2024-05-03/
NY市場サマリー(3日) ドル/円3週間ぶり安値、株価急伸 利回り低下
By ロイター編集
2024年5月4日午前 6:38 GMT+9
『<為替> ドル/円が3週間ぶりの安値を付けた。4月の米雇用統計で雇用者数の増加が予想を下回り平均賃金の伸びも鈍化したことを受け、米連邦準備理事会(FRB)が年内に2回の利下げを実施するとの見方が強まった。』
『<債券> 国債利回りが低下した。4月米雇用統計を受け、連邦準備理事会(FRB)が年内に利下げに踏み切るとの見方が強まった。指標となる10年債利回りは一時、2週間ぶりの低水準となる4.453%まで低下した。終盤は6.9ベーシスポイント(bp)低下の4.501%となった。週間では16.7bp低下した。2年債利回りは一時4.716%と3週間ぶりの低水準を付けた。終盤は6.7bp低下の4.809%だった。週間の低下幅は19bpとなった。』(以上上記URL先より)
まあとりあえず日銀の追い込まれがちょっと延命したのは残念無念wwwwwww
・・・・というかですね、円安が止まってちょっと円高(水準的にはクソおぶクソの円安だが160円よりはマシ)に振れている今こそ大チャンスなのですから、連休明けの輪番はバサッと減額したら円安トレンドに歯止めかかるかもしれませんので金融市場局の蛮勇を期待したい(円安の暴動を止めようとするよりも円高になりかけているところで背中押す方が効きが良いと思うの)のですが、まあそんな蛮勇があったら4月の頭に輪番減額しているとしか申し上げようがないので、カシュカリ総裁の頭髪程度しか期待をしておりませんけれども輪番減額(7日は中期前半後半と超長期前半ですな)を
したら褒めてつかわす(謎のウエメセ)。
ま、でもこれからネタにする会見の植田発言を踏まえてバッサリ減額ができない状況になっているのでどうしようもないんですけどねw
〇植田総裁定例会見(決定会合のいつもの奴):どう見てもハトハトチキンです本当にありがとうございました
今回の決定内容って、展望のケツに書いてあった政策ガイダンスちっくなもの(ガイダンスなのかというとガイダンスではないんですけどね)だけを取り出すと「見通し通りに推移すれば徐々に政策の調整」なのですから、それって「毎回の展望レポートで見通し通りに推移しているのが確認出来たら政策の調整」になるんですから、何のことはないそのロジックであれば7月10月1月って利上げできるんですよね。
まあそこまで言わなくたって、別に「今後の政策はデータ次第ですから」とだけ言えばよいものを植田さんは今回の会見の冒頭でやらかした、というのは水曜にもネタにしましたが、ご案内の通りのやらかしな訳ですよ。
ということで
https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2024/kk240430a.pdf
総裁記者会見
――2024年4月26日(金)午後3時30分から約65分
・徐々に「確度」の話を誤魔化しにかかっている件について
今回の幹事社は共同通信だったはず。
『(問)幹事社から質問を二問させてください。3 月にマイナス金利政策の解除を決められ、今後は追加利上げの時期が焦点となっております。利上げ判断に影響を与える物価2%目標達成の確度の高まりについては、今後どのような材料などを重視されて点検されるお考えでしょうか。(後半割愛というかのちほど)』
確度が高まったからマイナス金利解除した、といってたんですから、今後確度の高まりで追加の利上げをする、とまあ普通は思いますよね。というかそういう説明してましたよね。
まずは前半。
『(答)まず先ほど申し上げた点ですけれども、これからの金融政策運営は、その時々の経済・物価・金融情勢次第という考え方が基本となります。』
ん???というところですが先に行きますね。
『短期金利の水準については、毎回の決定会合で経済・物価の見通しやリスクを丁寧に点検したうえで、2%の物価安定の目標の持続的・安定的な実現という観点から、適切に設定してまいります。』
でもってここでは展望レポート通りに説明してるんですけどこの次に、
『これも大体申し上げましたが、先行き、基調的な物価上昇率が見通しに沿って2%に向けて上昇していけば、政策金利を引き上げ、金融緩和度合いを調整していくことになると考えています。更に、経済・物価見通し、リスクが上振れする場合も、政策変更の理由となると考えています。』
それは良いんだが「目標達成の確度」はどうなった??
『この点ですが、基調的な物価上昇率は、何か単一の指標の動きに基づいて判断・評価するものではなくて、各種の物価指標あるいは物価変動の背後にあるマクロ的な経済の姿、需給ギャップや予想物価上昇率、賃金上昇率など、経済・物価に関する様々な情報を丁寧にみたうえで判断していくというふうに、これまでも考えてきましたし、これからも考えてまいります。(後半割愛)』
この「基調的な物価」がメインになっている説明なんですが、これがまたなかなかドイヒーなことに、上記の説明ですと「基調的な物価」ってのは総合判断ですっていう事でして、インフレターゲットやってるんじゃ無かったのかよというお話だし、そもそも総合判断なのになんで「2%行ってない」だけは堂々と言えるのかがよく分からんですよね。
でもってさらにアレなのはこの「確度」の話に関して後の方で質問があったんですよ。
『(問)総裁、先ほどから物価見通しがこのまま実現していけば、というお話されていますけれども、今回もそれがされてきたということだと思うんですが、その確度が高まっているということですよね。とすると、総裁が以前からおっしゃってる閾値っていうのはどの程度高まってきているのか、高まっていると考えていいのか、利上げまでの距離ですね。(後半割愛)』
そりゃ質問しますよね。これに対する回答が中々のゴールポスト変更でしてですね、
『(答)見通し実現の確度という点から申し上げますと、このところ継続的に上がってきているということだと思います。そのうえで、3
月の決定会合では、それまでの枠組みを停止するというために必要な閾値を超えたという判断で政策変更したということでございます。閾値自体はそういうもので、ある種、御用済みになったということかと思います。(後半割愛)』
>ある種、御用済みになったということかと思います。
>ある種、御用済みになったということかと思います。
>ある種、御用済みになったということかと思います。
閾値が御用済みってことはつまり次の利上げの際には「確度」は関係ないってことなんでしょうか、ってな話になるわけでして、いやお前行き当たりばったりにもほどがあるだろその説明、ってなもんな訳ですよ。
「見通し通りに推移すれば利上げ」だから確度の閾値は関係ない、ということなのかもしれませんけれども、その割には実はこの前の質疑(さっき引用した質疑の後段)では確度の話をしていて、植田さんの説明って説明の仕方が首尾一貫しているように読めないというか読みにくくて、これがまたコミュニケーションをグチャグチャにしているんですよね。
というか要は植田さんコミュ障ちゃんにも程があるわけですが、それを言い出すと黒ちゃんも別の方向性でコミュ障でしたし、アタクシ個人も結構なコミュ障です(からネット弁慶はすれけど生業の方は市場の片隅で小さくなって生きておる次第な訳でしてwww)のでまあ植田さんの「なんか上手いこと言いたい」ってのも気持ちはわかるんですけど、コミュ障が上手いこと言おうとすると自爆しかしないので注意しましょう。自戒を込めましてorzorz
ということで新たにクローズアップ気味の政策反応関数「基調的な物価」に関してがこれまたわけわからん説明をしよるのよ植田さんったら。
・基調的な物価とは???
でまあ今回の会見ですが、F5で検索すると「基調的」が29個、「確度」は7個しか出てなくて、確かに「確度」は御用済みというのがよくわかるのですが、マイナス金利解除は「確度」でその次の利上げは「基調的物価」かよなんだその使い分けは(そもそも内田副総裁が理事時代に国会で「マイナス金利解除は利上げ」と言ってたのは何だったんだという話でもある)という話ですがその基調的な物価のお話をちょっと確認してみましょう。
さっき引用したように、
(植田総裁の発言を再掲)『基調的な物価上昇率は、何か単一の指標の動きに基づいて判断・評価するのではなくて、各種の物価指標あるいは物価変動の背後にあるマクロ的な経済の姿、需給ギャップや予想物価上昇率、賃金上昇率など、経済・物価に関する様々な情報を丁寧にみたうえで判断していくというふうに、これまでも考えてきましたし、これからも考えてまいります。(後半割愛)』
としているんですよね。つまりは総合判断のお気持ちが入った鉛筆舐め舐めということなんですが、幹事社質問のところでこういう説明をしているんですけど、この説明についてパラフレーズしてくれという質問が後の方(ちなみに6ページになります)に来るわけですね。
『(問)二点お伺いします。一点目は、為替の円安の基調的物価への影響についてですけれども、総裁、先ほど来年の春闘まで必ずしも待つかというとそうではなくて、予想できる状況になれば、もっと手前で判断することもあるとおっしゃいましたけれども、併せて単一の指標で判断することではないということも併せておっしゃってますが、これもう少し具体的にどういう状況であれば、もっと手前で判断するという可能性があるのか、少し具体的に伺えればと思います。(後半割愛)』
具体的にはどういうことか、という質問に対して、為替の影響の話はかっ飛ばして「基調的な物価をどう判断するのか」という話を始めます、まあそれ自体はいんですけど・・・・・・
『(答)前半ですが、為替が基調的物価上昇率にどう影響するかという点のご質問だったと思うんですけれども、それを確かめるのにどういう指標をみていくのかというご質問だったと思いますが、』
と来て話を一般論に置き換えるのはまあこれ自体はアタクシ別にインチキとは思わないしむしろ丁寧な説明(ご案内の通りに会見劈頭に近いところで伝説の「(蚊の鳴くような声で)はい」といってしまって円安ぶっ飛びが炸裂したので少し反省していたのかもしれないですけど、
『基本的には一般的に基調的物価上昇率の今後、あるいはそれがわれわれの見通しの姿と整合的な動きをしていくかどうかという際のチェックポイントという意味で話しますと、』
ほうほうそれでそれで?
『やはり春闘で強かった賃金が現実に経済全体の賃金にきちんと跳ねていくかどうかという点。それから、上昇していく賃金がサービス価格にどういうふうに跳ねていくかという点、更にそこに円安や原油高に伴う輸入価格の上昇がサービス価格だけでなくて、広い価格水準にどういう影響をしていくかという観点。更には最初の方で申し上げましたが、企業サイドの賃金・価格設定行動が持続的に前向きになりつつありますけれども、これが今後どういうふうに展開していくか、この辺りをみつつ、今後の基調的な物価上昇率の動きを判断していくということになるかと思います。(後半割愛)』
だそうなのですが、もっと後の質疑に来ると、例の「基調的な物価は2%行ってない」という説明がおっぱじまるのですよ、ここまでの説明だともっと定性的な話にしか見えないわけで、定性判断としてまだ物価が安定的に推移しているわけではない、ということなので達成していない、という説明ならわかるのですが、
12ページの質疑に移りますと、
『(問)ちょっと逆説的な質問になってしまうかもしれないんですけども、今回の展望レポートで
26 年度まで1.9%と予測されましたけども、ある意味でより物価目標の達成確度が高まったようにもみえて、そういう意味ではそれこそすぐ利上げしてもいいんじゃないかというような判断もなきにしもあらずと言えたのかもしれないんですけども。改めてですね、今、中東情勢、円安の物価高、海外経済減速リスクもある中で、今回の利上げの判断を見送ったというのはどういった理由なのかっていうのは、ちょっと改めてお伺いできればと思います。』
先行きのリスクがあって不透明だから、という回答を期待したと思うのですが、植田さん謎回答をぶっこんできておりまして、
『(答)この見通しの数字をみますと、概ね 2%か、あるいは除く生鮮の 24 年度は
2%をかなり超えているわけですけれども。こうした 2%前後、あるいはそれを超える見通しの中には、弱まりつつあるとはいえ、過去の「第一の力」の波及効果が含まれているというふうに考えています。』
??????
『ですから、そこを取っちゃうとここより少し下の数字になる。取っちゃったものが基調的な物価上昇率というイメージです。』
な、なんだってー!!!
いやあのですね、そもそも第一の力第二の力とかいう説明が金融政策運営における物価判断の説明の中でインチキ成分が入っているんですよ。何度か弊駄文で申し上げていますけど、第一第二とかいうのじゃなくて、「物価上昇(または下落)が一時的なショックなどのワンオフなものであればそれに金融政策で対応するのは基本的に不適切」「物価上昇(または下落)が恒常化する見通しならば金融政策で必要な対応を行う」って話であって、問題はワンオフなのかそうじゃないのか、という話だし、これだけ散々っぱら日銀は物価見通しを外していて、しかも外し方が同じ方向で恒常的に外しているんですから、その場合は日銀が今物価見通しの前提として考えているもの(経済モデルとか)が構造変化によってズレているんじゃないの、って話だと思うの。
然るに植田先生、第一の力をとったものが第二の力で、それが基調的物価上昇率ってそれいくら何でも説明がインチキ過ぎないですかという話で、日本の金融政策論の第一人者にしてこれかよというのが日本の経済学ってどうなってるんだよ状態の情けななさ。
まあそれはともかくとして、
『その基調的物価上昇率はまだ 2[%]を下回っているというふうに考えていますので、緩和的な金融環境、現実的には今のところは
0〜0.1%という短期金利の水準が適当であるというふうに考えているということです。(後半割愛)』
という説明になっていまして、これまたなんのこっちゃという感じでして、つまりはどういうことかというと、展望レポートの最後の部分に書いてあったガイダンスもどき文言とその説明では、
(植田総裁会見発言の再掲)『先行き、基調的な物価上昇率が見通しに沿って2%に向けて上昇していけば、政策金利を引き上げ、金融緩和度合いを調整していくことになると考えています。』
となっていて、金融緩和に関しては「見通し通りに推移すれば修正」になっているのですが、直上の説明っぷりですと、むしろ「金融緩和政策を推進していくことによって2%が達成される」という言い方に読める訳でして、いやだからお前らはどっちなのか(2%目標達成の移行期間における遷移過程として緩和が続いているのか、目標達成のためには緩和政策が必要だから頑張って緩和していきますよといってるのか)がまあ不明な訳ですよ。というか説明がその時々で都合の良い方を使う、みたいな使い分けをしているのがわけを分からなくさせているんだと思うのよね。
まあアレです、「2%達成の見通し」というのもこれまたわけわからん状態になっていて、展望の見通しだけで言えばどう見ても「今後は見通し達成の見込み」だし、一方で植田さんの説明は一貫してその「今後は達成見通し」というのを言いたがらないように見えるわけでして、いや一体全体どっちですねんと思うのですが、さてこの「基調的物価」ですが、なんか「総合判断」だったのがさっきの質疑で「物価から第一の力を差し引いた部分」ということにされていますよね。でもってとどめにこの先の質疑を載せるわけですが、
14ページになります。
『(問)基調的な物価の上昇率についてお伺い致します。これ一概に示すのは難しいということだと思うんですけれども、総合的に判断するということになれば、その根拠が曖昧で、政策修正の分かりにくさであったり、あるいは恣意的な判断につながりかねないというふうに考えています。客観性を高めたり恣意性を排除したりするためには、どういう考えでしょうか。』
インフレターゲットをやってる、って豪語してるんだからそれはこういう質問になりますよね。でもって回答なんですけど(回答は15ページの頭からになります)、
『(答)難しいのは、基調的な物価上昇率というのは、申し上げるまでもないとは思いますけれども、全体の物価上昇率から一時的な動きを取り除いた部分ということになるかと思います。』
第一の力と一時的な動きはイコールじゃないですし、そもそも質問の方が仰っていたし、あんさんも最初の方で基調的な物価の話をしたときに、
(これまた先ほどの植田総裁の質疑応答での回答の再掲になりますが)『基調的な物価上昇率は、何か単一の指標の動きに基づいて判断・評価するものではなくて、各種の物価指標あるいは物価変動の背後にあるマクロ的な経済の姿、需給ギャップや予想物価上昇率、賃金上昇率など、経済・物価に関する様々な情報を丁寧にみたうえで判断していくというふうに、これまでも考えてきましたし、これからも考えてまいります。』
って言ってるのに、明らかに会見の後半に来て「基調的な物価」の定義が変わっているんですよ。いや黒田日銀というか置物一派が得意としていたのが「説明が全然首尾一貫していないで適当に都合の良い屁理屈をチェリーピッキングする」というのがあるのですが、植田さんの場合は一つの会見の中で「基調的な物価」の説明が会見の頭とケツで違っている、というのは結構これ深刻な話でして、いやまあお前それでも学者かm9(^Д^)プギャーとか茶化している場合でもありませんでして、この調子で同じ会見中でも使ってる言葉の定義が変わってしまうような状況の人たちが金融政策運営していまして、しかも長期国債市場にとんでもないレベルの市場介入を実施している、ということになりますと、長期国債市場の中の人の端くれとしましては、この人たちのとんでもないレベルの介入が今後どうなるかが全くロジカルに読めない、ということになりますので、そりゃ国債市場の流動性が戻らんし、投資家だって回帰しにくいわ、ということになるんですよ、という意味で困ったもんなんですよこの植田日銀ってのは。
『ところが何が一時的かっていうことは、時代、その時点によってどんどん変わっていくということで、あるやり方で、あるいはある項目を外すと、一時的な変動を取った残りの分が出てくるという固定的なやり方がないということが、難しさだと思います。従って、総合的な判断という、ちょっと分かりにくい表現になるわけですが、対応方法としては、いろいろな手法で一時的な変動を除いてみる。そして、作り出したある種の加工された物価指数、これは複数のやり方があると思いますが、それをお示しして、それをわれわれもみるし、皆さんにもみて頂く。あるいは、もうちょっと技術的には難しいモデル分析を使って、基調的な物価がどうかというところを推計してみてその動きをみるような、複数のやり方を重ねて、何とかどの辺にあるかということを見極めていきたいというふうには考えております。』
って説明、明らかに最初の説明(さっき再掲しましたが)と全然違う話を言ってて、経済物価情勢の背景を含めたメカニズムで考えるのではなくて、「基調的な物価」というのが物価の出来上がりから上手いことトリミングをしていくと出てくる、っていう世界での説明をしている訳ですよ、いやもう何なのこの「基調的な物価」という話なのですよね。
・為替円安と基調的な物価
でまあここで冒頭の幹事社質問の後半に戻りますが、
『(問)(前半割愛)二点目が為替です。円安基調が続いています。円安が物価上昇に大きな影響を生じる場合は、金融政策の変更もあり得るとご説明されていますが、現状の円安についての影響をどのようにお考えでしょうか。』
これも水曜にネタにしたようにG20の時の会見で思いっきり言ったんでそれは聞かれますわ。ということで、幹事社の2つの質問(確度と円安の影響ね)、どっちも「ところでついこの前こういう説明してたんで政策反応関数になると思うのですが、その政策反応関数の現状評価を聞きたい」という至極まっとうな質問。
でもって円安に関する方の回答でさっきから引用している「基調的な物価」も出てくるのですが、
『(答)(前半割愛)それから、為替との関係ですけれども、金融政策の主な手段は短期金利になったということで、その水準をどういうふうに決定していくかということですが、その考え方については今申し上げた通りです。』
ということで、
『為替との関係で申し上げますと、まず、金融政策は、為替レートを直接コントロールの対象とするものではありません。しかし、いつも申し上げていますように、為替レートの変動は、経済・物価に場合によっては影響を及ぼす重要な要因の一つになります。仮に、おっしゃられてきましたような基調的な物価上昇率に、無視し得ない影響が発生するということであれば、金融政策上の考慮あるいは判断材料となるというふうに考えます。引き続き、為替市場の動向やその経済・物価への影響を、十分注視していきたいと思っています。』
ということでですね、そもそもこれ植田さん自ら墓穴を盛大に掘っているわけでセルフ坑儒とは秦の始皇帝もビックリというお話な訳です。当然次の人が畳みかけてきまして、
『(問)為替についてお伺いします。今回の展望レポートを踏まえてですね、現状の基調的な物価上昇率に円安が与えている影響について、どのようにお考えかというところをお願いします。仮に円安に対してですね、金融政策で対応する場合っていうのは、急激な日米の金利差から考えると、急激な利上げが必要になる場合もあると思うんですけども、その場合の利上げのペースみたいなものはどのようなお考えかというところをお伺いできればと思います。(後半割愛)』
と来ましたところ植田さんこう回答するの巻(ちなこれは質問が2ページのケツ、回答が3ページの頭です)。
『(答)まず、為替と物価見通しの関係ですけれども、先ほど発表しました政策委員の大勢見通しというところをみて頂きますと、除く生鮮で、24
年度のインフレ率予想がやや大幅に上方修正となっています。この主な理由は原油高ですけれども、一部円安の影響も、各政策委員がそれぞれ見通しを作りますので、その人次第でどれくらい上昇したかというところは違いますけれども、若干は含まれているというふうに思います。』
ほうほう。
『ただ、その他のところには、見通しの変更、大きなものが今のところ出ていないということで、それだけでということではないですが、基調的な物価上昇率にここまでの円安が、今のところ大きな影響を与えているということではないという判断がここに表れてるかなと思います。』
でもって、
『ただ、全般的に物価情勢が上振れてきているといいますか、われわれの言葉で言えば、見通し達成の確度が上がっているという状況でありますし、』
上振れしているのが「確度が上がっている」だったらそれにもし円安が影響しているなら基調的な物価に円安が影響している、という事になるんだが、なんかこう植田さん一生懸命説明しようとしていろいろな角度から説明しようとしている、というのはまあわからんでもないのですが、それが結果として「一つの会見の中なのに言ってることが違う」とか「これまでの説明と違う」ってことに結果的にはなっているし、ヘッドラインリスクは上げてるしで全く良いことないというか逆効果にも程があるので余計な説明するなやと申し上げたい。
『更にここのところ原油高とグローバルなインフレもインフレ率でみて下がってきたのが、若干下げ止まりから、場合によっては反転という話、あるいは見通し達成の確度が少しずつ上がっているということとも関連しますが、企業の賃金・価格設定行動も前向きの動きが継続しているというようなことから、基調的な物価上昇率にここまでのコストプッシュ、第二段階のコストプッシュ的な動きと呼べるかもしれませんが、それが跳ねるリスクもゼロではないと考えていますので、注視してみていきたいというふうに思っています。(後半割愛)』
なんちゅうかですね、こんなの「足元までの円安で大きく先行き見通しを変えるに至っていないけれども、今後の影響は今後出てくる指標をきちんと精査しながら判断していきたい」とだけ言っておけばいいのに余計な事を言いすぎでして、こういうのは(さっきも申し上げたようにワイもコミュ障(そのうえネット弁慶と来ているからさらにたちが悪いですかそうですかwwwww)だからわかるけど)コミュ障が頑張って話をしてやらかす典型的なパティーンではあるwww
でまあこんな回答をしたら次の人がさらに質問をしてきまして、
『(問)今日、決定会合の結果が出てからですね、為替は 1 ドル 156 円台となっています。3月の時点では総裁、利上げは急がないということをおっしゃっていましたが、為替を含めた環境変化を受けまして、利上げ時期に対する姿勢というのは変わったのかどうかですね。早期の利上げが必要な段階に来ているというふうにみているかどうかというのを教えて頂けますでしょうか。
それからもう一点なんですが、物価にどれぐらい為替が影響を与えるかというところでいいますと、円安ですとか原油高といった「第一の力」、外的要因によるコストプッシュインフレであった場合でも利上げで対応する必要があると考えていらっしゃるのかどうか、この点をお願い致します。』
ということで植田さんですけどね。
『(答)どちらも究極的にはこれまで、今日、お話ししてきたこととの関連で申し上げれば、基調的な物価上昇率についての見方に影響があるかどうかというところに沿って、特に金利引き上げ、短期金利ですね、これをいつやるかっていうところは決まってくるということになるかなと思います。』
で?
『為替変動はインフレ率に影響しますけれども、為替が何円から何円に、若干円安になるということのインフレ率への影響は、通常一時的にとどまるということだと思います。』
まあちなみにこの説明も「昨年対比」という意味ではそうなんですけど、ベースの為替が動くのっていうのはそれ自体は「水準を変える」ものなので、前年比で恒常的に影響するものではないのから関係ない、というのもなんか変な理屈のような気がしますがどうなんでしょうかね。
それはともかくとして先に行きます。
『しかし、これが長期化するという場合も、繰り返しですがゼロではなくて、それはいったんインフレ率に影響が出て、それが例えば、今年であれば
24 年のインフレ率に影響が出て、来年の 25 年の春闘の賃金上昇率に跳ねるようなことになれば、それは影響が長期化する、あるいは「第二の力」に影響する基調的物価の動きに影響するということになるということだと思います。』
ベースの為替レートが動いた後戻らない、というのであればこういう事なんじゃないの??って思いますけどね。
『ちょっと長くなっちゃいますが、仮にそういうルートを考えるとして、来年の春闘まで待たないと判断できないのかと問われますと、そうではなくて、そういう動きが予想できるような状況になれば、それはもっと手前で判断できるということではあるかなとは思います。』
まあこれ聞いたときに「えー来年まで判断しないのかよ」とそっちの方を先に思ったわ。
でまあこれらの質疑が来た後に例の質疑が来るわけですね。
『(問)植田総裁はですね、先日の会見で、円安の進行によって基調的な物価上昇率に無視できない大きさの影響が発生した場合は金融政策の変更もあり得ると、先ほどお話しした通りだと思うんですけども、今回金融政策の変更がなかったということは、これはつまり円安の進行が、これ無視できる影響だという、そういう範疇になるというご認識でしょうか。総裁のご認識、お尋ねしたいです。』
これは見事な日銀詰将棋。
『(答)それは今までの回答とちょっと重なりますけれども、取りあえず基調的な物価上昇率への大きな影響はないと、皆さん判断したということになるかと思います。ただ、申し上げましたように、そこに影響は今後発生するリスクはゼロではないので、注意してみていきたいということでございます。』
「皆さん判断したということになるかと思います。」というのが逃げ口上にみえてしまうのが悲しいですなwwwwww
『(問)つまり今回は、これは基調的な物価上昇率への影響は、まあ無視できる範囲だったという認識でよろしいでしょうか。』
『(答)はい。』
まあこれ「はい」の前に「一呼吸置いてから蚊の鳴くような声で」というのを()書きで入れれば完璧でしたねwwwwwwww
・会見の説明だと輪番減額は6月会合で減額の議決が出るまでノーチャンスにしか見えません&能動的な手段云々
輪番についてですけど、本文2ページの最後(幹事社の次の人の質問の後半ね)で最初に聞かれましてね、
『(問)(前半割愛)もう一点は国債の買い入れについてお伺いします。どこかのタイミングで減額されるということをおっしゃっていますけども、それはどのような考え方で進めて、いつ頃を考えてらっしゃるのか。その場合に、要は経済・物価への影響というものをどの程度考慮されるのか、その点も併せてお願いします。』
『(答)(前半割愛)それから国債の買いオペについて、国会等でもあるいは前回の記者会見でも、将来どこかの時点で減額ということを視野に入れているということを申し上げてきました。その点は今でも同じ考えでありますし、残念ながら今、具体的にいつの時点でということを申し上げられる段階ではありません。』
ここまで総裁が言い切ってしまうと5月(つまり連休明けの火曜日)に減額するという蛮勇モードは普通出てこないと思われますよね、残念無念。
『表現を変えてみますと、3 月に金融政策の枠組みを変更して、それが金融市場等でどういうふうに消化されるかというところを今まだみている段階ということかなと思います。』
輪番については消化どころか腹下し状態だわw
『もしも将来減額をする場合に、そういうことになった場合にということですけれども、それは一つの考え方としては、金融政策の能動的な手段としては使いたくないな、ということでございます。』
これまた困るのは、輪番減額はある程度の段階に来たら何らかのオートパイロットで行う、というのであれば「能動的な手段ではない」という話はまあ分かりやすいのですが、
『ただし、もちろん将来的に買いオペの金額が減っていけば、保有している国債も徐々に減っていく、残高ですね、ということにつながりますので、日銀がたくさん国債を持っているということから発生しています長期金利を下げるという方向でのストック効果がやや弱まるという効果は発生するということになるかと思います。そういうことも考慮に入れたうえで、短期金利の方の調整を適切にやっていくということになるかと思います。』
となると、ストック効果が金融政策の手段として使われている、ということになりますので、「能動的な手段としえては使いたくない」というのと話が思いっきり矛盾するんですよね。頼むからこの位置づけもうちょっとわかりやすくしてくれってお話になりますわ。
でもって4ページのケツからの質疑になりますが長期国債買入に関して、
『(問)今回の対外公表文で、長国の買入れの方針は 3 月の金融政策決定会合において決定された方針に沿って実施するということですけども、3
月の、前の対外公表文では、概ね同額の長国を買入れする、更に脚注にはですね、足元では同額ってのは
6 兆円ですというふうになってましたが、今後もですね、3 月に沿って、決定に沿ってっていうことですので、6
兆円程度の国債[買入れ]を当面継続するという、そういう理解でよろしいでしょうか。(後半割愛というか次に)』
とまあこう念を押されるわけですが、
『(答)前半についてはご指摘の通りでございます。3 月の時点でお示ししたものから変更ありません。(後半は次に)』
となっていまして、ここまで言われた日にはまあ普通に考えて輪番を急に減らさんわな、と思うのが妥当というのが結論になりますよね。
でもって今飛ばした後半ですけど、じゃあオペ紙のレンジに関してということで裁量はあるのけ問題についてでして、
『(問)(前半割愛)もう一つ、長国の買入れですけども、仮に同額の買入れを継続するということでは、バランスシート政策上で減らすという意味ではなくて、金融調節で[金融]市場局がやっているようなオペレーションで減らしていくっていう、そういった可能性についてはどうお考えなのかというのですけども。4〜6[月]のオペ紙では、大体
5 兆[円]弱から 7 兆[円]という数字が示されてますけども、例えば市場動向によっては
5兆円弱ぐらいまで減らしていくということが考えられるのか、もしくはその 5
兆[円]から 7 兆[円]っていうレンジってのは、もっと幅を持たせて考えていってもいいのか、その辺を伺えないでしょうか。』
と来ているのですが、
『(答)(前半割愛)それから後半ですけれども、日々の[金融]市場局の調節で、ある程度の幅を持って決定し得るというふうにしていますが、そこはこれまでと同様に、内外の市場の動向とか、国債の需給、例えばオペの応札の状況等をみて、若干の幅の中で[金融]市場局に決めてもらうという程度のことを考えています。』
という説明になっているから、まあ普通に考えて5月に減らさんわなという話だし、この後翌週頭に出たオペ紙もレンジ変更なしだったのはご案内の通り。
『長期的にオペの金額を減らしていくという際には、政策委員会で決定して、きちんとアナウンスをして進めていくということになります。』
はい6月会合までノーチャン。
『(問)確認ですけど、同額というのは 6 兆円ですけど、[金融]市場局に認めている幅ってのはどのぐらいということなのでしょうか。』
『(答)具体的には特に決めておりません。常識的な範囲でという程度でございます。』
wwwwwwwwwwただの丸投げ責任回避ワロリンチョ
ということで、まあ他の論点もあるにはありますが、一応現世利益的にはこの辺をカバーしておけばいいかなと思ったのを詳しく見てみました。要は基調的な物価と為替円安と輪番ですなw
連休明けにネタの山で死ぬのが見えているのでもう少し成敗に関しては検討の余地はあるがまあ一応大型連休ともなるとやることもありますのでとりあえず本日はこれで勘弁ということで。
2024/05/02
お題「FOMCである」
ということでFOMCですがいつものように市場の反応(つまりお値段)を全然見ていないで書くというプレイをしております。
〇声明文:早期の利下げに否定的な現状認識とランオフについての変化ですかそうですか
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20240501a.htm(今回)
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20240320a.htm(3月)
・第1パラグラフ:「物価の更なる改善が欠如してきておる」キタコレ
『Recent indicators suggest that economic activity at a solid pace.』(今回)
『Recent indicators suggest that economic activity has been expanding at a solid pace.』(3月)
「has been expanding」が「has continued to expand」に変化。えーっとこれは横ばいなのか若干弱くなったのかどっちじゃろ(英語力無し無しおじさん)。基本そこまでの変化ではないと思うが。
『Job gains have remained strong, and the unemployment rate has remained
low. Inflation has eased over the past year but remains elevated.』(今回)
『Job gains have remained strong, and the unemployment rate has remained
low. Inflation has eased over the past year but remains elevated.』(3月)
と労働市場と物価に関する文言はここまでは前回と一致しているのですが、この次に今回早期利下げを否定するような文言が入るのであります。
『In recent months, there has been a lack of further progress toward the
Committee's 2 percent inflation objective.』(今回)
「there has been a lack of further progress」キタコレという所でして、ファーザープログレスが失われているということは、これはどこからどう見ても早期利下げはしませんがな、という話になるので、目を見張るような物価情勢の改善でもあれば別だとは思いますが、6月はどう見ても利下げ無理で7月も中々きついんじゃないかねえという話になるんじゃねえかと思います。まあ市場ちゃんってその位は織り込んでいると思うんだがどういう反応をしたのかは見てないので知らん(生業に取り掛かってから見ますけどw)
・第2パラグラフ:物価と雇用のリスクがベターバランスになっていくという認識が回想シーン化ワロタ
『The Committee seeks to achieve maximum employment and inflation at the
rate of 2 percent over the longer run.』(今回)
『The Committee seeks to achieve maximum employment and inflation at the
rate of 2 percent over the longer run.』(3月)
これはいつものお題目ですナムナムナム。
『The Committee judges that the risks to achieving its employment and inflation
goals have moved toward better balance over the past year.』(今回)
『The Committee judges that the risks to achieving its employment and inflation
goals are moving into better balance.』(3月)
デュアルマンデートのゴールに向かう道のりのリスクに関しては徐々に良いバランスに向かっている。という表現をしていたのですが、1パラで「a
lack of further progress」とぶっこんだことに呼応しているんですけど、こちらの文章が現在進行形から現在完了形に変化しまして、「over
the past year」というのが入りましたので、「昨年を通じてベターバランスに進んでいきましたなあ」という回想シーン状態になっておりまして、こちらは1パラの対句みたいなもんでしょうけど、ここの認識の表現も変化させているの巻ですね。
『The economic outlook is uncertain, and the Committee remains highly attentive to inflation risks.』(今回)
『The economic outlook is uncertain, and the Committee remains highly attentive to inflation risks.』(3月)
こちらは前回と同じです。
・第3パラグラフ:国債のランオフペース縮小、MBSの償還再投資停止(超過償還分は国債購入)とな
最初の金利の部分は全文一致ですのでサラサラ流しますね。
『In support of its goals, the Committee decided to maintain the target
range for the federal funds rate at 5-1/4 to 5-1/2 percent.』(今回)
『In support of its goals, the Committee decided to maintain the target
range for the federal funds rate at 5-1/4 to 5-1/2 percent.』(3月)
今回も政策金利据え置きなのでここの文言も同じです。
『In considering any adjustments to the target range for the federal funds
rate, the Committee will carefully assess incoming data, the evolving outlook,
and the balance of risks.』(今回)
『In considering any adjustments to the target range for the federal funds
rate, the Committee will carefully assess incoming data, the evolving outlook,
and the balance of risks.』(3月)
というのも同じでして、
『The Committee does not expect it will be appropriate to reduce the target
range until it has gained greater confidence that inflation is moving sustainably
toward 2 percent.』(今回)
『The Committee does not expect it will be appropriate to reduce the target
range until it has gained greater confidence that inflation is moving sustainably
toward 2 percent.』(3月)
グレーターコンフィデンスが得られるまで利下げ着手はしませんよ、という所の表現も同じです。
でもって今回の変化は資産買入に関して。
『In addition, the Committee will continue reducing its holdings of Treasury
securities and agency debt and agency mortgage-backed securities. Beginning
in June, the Committee will slow the pace of decline of its securities
holdings by reducing the monthly redemption cap on Treasury securities
from $60 billion to $25 billion. The Committee will maintain the monthly
redemption cap on agency debt and agency mortgage-backed securities at
$35 billion and will reinvest any principal payments in excess of this
cap into Treasury securities.』(今回)
『In addition, the Committee will continue reducing its holdings of Treasury
securities and agency debt and agency mortgage-backed securities, as described
in its previously announced plans.』(3月)
今まではアズイズディスクライブドのプラン通りということでしたが、今回は米国債の削減ペースを落としまして、月額600億ドル上限までは残高縮小だったのを月額250億ドルに縮小ペースを落としてきましたのでこっちはいわゆるQT(別に売却している訳ではないのだからタイトニングというのはおかしいだろと昔から思うのだがまあ皆が使うからシャーナイ)の緩和になるのですが、一方でMBS等に関しては月額のSOMAポートの残高縮小ペースは月額350億ドルのままで変わらず、しかも従来はこのペース以上の償還があった場合に関してはMBS等に再投資していたのですが、MBS等への再投資を停止して、その代わりに米国債への投資を実施する、ということになりまして、これはMBS等の市場がどのくらいショボーンとするのか需給とか全然見てないから専門家に聞いてちょという感じですが、FEDとしては以前からポートはトレジャリーオンリーにする、って言ってたんですから順当は順当なんですけど、割と露骨にぶっこんできたなとは思いました、市場の反応は見てないから知らん。
『The Committee is strongly committed to returning inflation to its 2 percent objective.』(今回)
『The Committee is strongly committed to returning inflation to its 2 percent objective.』(3月)
まあこれはいつもの偈みたいなもんです。前回と同じ。
・第4パラグラフ:もはやこのぱら要らないんじゃないかという位に全文一致
『In assessing the appropriate stance of monetary policy, the Committee
will continue to monitor the implications of incoming information for the
economic outlook. The Committee would be prepared to adjust the stance
of monetary policy as appropriate if risks emerge that could impede the
attainment of the Committee's goals. The Committee's assessments will take
into account a wide range of information, including readings on labor market
conditions, inflation pressures and inflation expectations, and financial
and international developments.』(今回)
『In assessing the appropriate stance of monetary policy, the Committee
will continue to monitor the implications of incoming information for the
economic outlook. The Committee would be prepared to adjust the stance
of monetary policy as appropriate if risks emerge that could impede the
attainment of the Committee's goals. The Committee's assessments will take
into account a wide range of information, including readings on labor market
conditions, inflation pressures and inflation expectations, and financial
and international developments.』(3月)
今後の政策は全体的な状況をよく見てあんじょうようやっときますわ、というだけのパラでして、政策の決め打ちみたいなのをしている時だとここが使われることもありますが暫くは開店休業のパラグラフとして続きそうですな。
・第5パラグラフ:今回も全員一致での議決ですね
『Voting for the monetary policy action were Jerome H. Powell, Chair; John
C. Williams, Vice Chair; Thomas I. Barkin; Michael S. Barr; Raphael W.
Bostic; Michelle W. Bowman; Lisa D. Cook; Mary C. Daly; Philip N. Jefferson;
Adriana D. Kugler; Loretta J. Mester; and Christopher J. Waller.』(今回)
『Voting for the monetary policy action were Jerome H. Powell, Chair; John
C. Williams, Vice Chair; Thomas I. Barkin; Michael S. Barr; Raphael W.
Bostic; Michelle W. Bowman; Lisa D. Cook; Mary C. Daly; Philip N. Jefferson;
Adriana D. Kugler; Loretta J. Mester; and Christopher J. Waller.』(3月)
・ディレクティブで念のため確認です
HTML版の場合最後の所に「Implementation Note issued May 1, 2024」というのがあってそこを踏むとディレクティブが出てきます。PDFだと本文の後のページに出てきます。
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20240501a1.htm(今回)
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20240320a1.htm(3月)
『・As part of its policy decision, the Federal Open Market Committee voted
to direct the Open Market Desk at the Federal Reserve Bank of New York,
until instructed otherwise, to execute transactions in the System Open
Market Account in accordance with the following domestic policy directive:
"Effective May 2, 2024, the Federal Open Market Committee directs the Desk to:』
以下の箇条書き部分ですが、そのうち金利関係のオペは据え置きで各種条件も据え置きですので、その後の資産買入に関して
『Roll over at auction the amount of principal payments from the Federal
Reserve's holdings of Treasury securities maturing in May that exceeds
a cap of $60 billion per month. Beginning on June 1, roll over at auction
the amount of principal payments from the Federal Reserve's holdings of
Treasury securities maturing in each calendar month that exceeds a cap
of $25 billion per month. Redeem Treasury coupon securities up to these
monthly caps and Treasury bills to the extent that coupon principal payments
are less than the monthly caps.』(今回)
『Roll over at auction the amount of principal payments from the Federal
Reserve's holdings of Treasury securities maturing in each calendar month
that exceeds a cap of $60 billion per month. Redeem Treasury coupon securities
up to this monthly cap and Treasury bills to the extent that coupon principal
payments are less than the monthly cap.』(3月)
ということで「Beginning on June 1, roll over at auction the amount of principal
payments from the Federal Reserve's holdings of Treasury securities maturing
in each calendar month that exceeds a cap of $25 billion per month.」が挿入されました。声明文の記載どおりですね(当たり前だが)
『Reinvest into agency mortgage-backed securities (MBS) the amount of principal
payments from the Federal Reserve's holdings of agency debt and agency
MBS received in May that exceeds a cap of $35 billion per month. Beginning
on June 1, reinvest the amount of principal payments from the Federal Reserve's
holdings of agency debt and agency MBS received in each calendar month
that exceeds a cap of $35 billion per month into Treasury securities to
roughly match the maturity composition of Treasury securities outstanding.』(今回)
『Reinvest into agency mortgage-backed securities (MBS) the amount of principal
payments from the Federal Reserve's holdings of agency debt and agency
MBS received in each calendar month that exceeds a cap of $35 billion per
month.』(3月)
「Beginning on June 1,」からが追加です。ランオフのマンスリーキャプは変わらず、従来の償還再投資は長期国債への再投資に切り替わりまして、その長期国債への再投資ですが、「年限構成が概ね今の米国債の満期構成とマッチするように買う事」という指示になっています。まあこれ自体は従来の国債分の償還再投資も基本そうなっていますな。
でもってですね、より詳しいのはさっきの今回のインプリメンテーションノートのページに『Related
Information Statement Regarding Reinvestment of Principal Payments from
Treasury Securities, Agency Debt, and Agency Mortgage-Backed Securities』というリンクがありまして、それを踏みに行きますとNY連銀の
https://www.newyorkfed.org/markets/opolicy/operating_policy_240501
OPERATING POLICY
Statement Regarding Reinvestment of Principal Payments from Treasury Securities, Agency Debt, and Agency Mortgage-Backed Securities
May 1, 2024
というのに飛ぶのですがここまで来るとMBS関係者の世界になってくるのでアタクシは割愛しますけれども興味のある方は確認するよろし。
〇会見のオープニングコメントがありジャパンでは本日は3M入札があったりしますがその辺は明日にでも
だいたい月末月初に祝日をバカスカ入れる、というのが怪しからん訳でして、しかも月末直前の連休前の所で金融政策決定会合があるとか、月末月初が爆発的に忙しくなるじゃろいい加減にしろという事で、今朝はキリの良い所で勘弁して頂きとうございます。
ということで続きは明日にでも、と言っても別に朝一に更新するとは言ってないのでそれはそれということですし、まあ休み明けにお読みいただければとは存じますです、はい。
2024/05/01
お題「介入とかオペ紙とかのメモ/G20での記者会見が猛烈に今回の決定会合に祟っているんですが・・・・・・・」
聞け万国の労働者〜♪
〇介入額とかレポレートとかオペ紙そっちのメモを
・ほうほう介入は5兆円ですかそうですか
まあこれは自分でも計算できるというか計算した方が良いのだが月末月初で忙しいので(ナンジャソラ)めんどいから安直バージョンでBBGからですが、良い子のみんなは自分で電卓叩いて計算しましょうね。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-04-30/SCQQP4T0G1KW00
29日の為替介入は5.5兆円規模の可能性、日銀当座預金見通しが示唆
関根裕之、船曳三郎
2024年4月30日 19:04 JST 更新日時 2024年4月30日 20:11 JST
→当座預金増減の財政要因マイナス7.5兆円、予想はマイナス約2兆円
→「5兆円程度というのはおおむね予想通り」と三菱UFJ銀の井野氏
ほうほうそうですかそうですか。
『円相場が乱高下した29日の外国為替市場で日本の通貨当局が円買い介入を実施した可能性が高い。日本銀行が30日公表した5月1日の当座預金増減要因の予想値と市場の推計値との差が大きかったためだ。』(上記URL先より、以下同様)
どこのページを見るとどうのこうのというのは本石町日記師匠が時々解説しておられると存じ上げますが、まあこの記事でも分かるよね。
『為替取引の実際の決済は2営業日後に行われるため、介入が行われた場合、結果は1日の日銀当座預金残高の見通しに表れる。それによると、為替介入などが反映される財政等要因はマイナス7兆5600億円。東短リサーチによる先週の予想では、国債発行や税金の国庫納付でマイナス2兆1000億円程度、セントラル短資ではマイナス2兆500億円だった。差額の約5.5兆円が円買い介入の規模と推定される。』
だそうです。
『円相場は29日、34年ぶりとなる1ドル=160円台に急落した後、一時154円台まで急反発した。介入観測が高まる中、日銀の日銀当座預金の予想値が市場の推計値と大きく乖離(かいり)していれば、介入実施の証左となり得るため同データに注目が集まっていた。政府は2022年9月と10月に3回にわたり総額9.2兆円の円買い介入を実施。うち過去最大の5.6兆円を投入した10月21日の介入と同規模とみられる。』
ということですが、まあドル円ちゃんは結局東京に戻ってきたら昨日は157円台前半どころか後半になってウダウダとしていた訳で、ハトハト音後が踊られていた時間帯と大して変わらんがなという水準になっておられましたな、ショボーン。
まあ何ですな、イエレンさんのこの前の発言の真意はよー分からんところではありますが、とりあえずは変に勢い付いた時には止めに掛かるのは止めに掛かる、というのは今回の介入で伝わったものの、本格的に円高に持って行こうというような気合の入った介入というのはそもそもあのイエレンさんの発言からしたらアメリカ様から怒られが発生するんですかねえという感じですし、まあゆうてアメリカン金利が上がってしまうとかなり厳しいものがあるでしょうから、FEDが引き締め解除モードになってくれて、その間に日銀が緩和政策の修正をしてくれる、という反転モードになるまでの時間稼ぎというか遅滞戦術というか、まあそういう感じなんでしょうかね知らんけど。
ちなみに3月末の外貨準備の状況はこちら
https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/reference/official_reserve_assets/data/0603.html
外貨準備等の状況(令和6年3月末現在)
・レポレート一段と下がるとなorzorz
https://www.jsda.or.jp/shiryoshitsu/toukei/trr/index.html
2024/4/24 0.057 0.031 0.035 0.036 0.035 0.033
2024/4/25 0.004 0.013 0.029 0.031 0.033 0.034
2024/4/26 0.021 0.012 0.027 0.031 0.033 0.033
2024/4/30 0.001 0.008 0.025 0.031 0.031 0.033
GCのT+0オーバーナイトとトモネのレートが更に下がっておられるということで、玉無し芳一なのかGC資金調達側がイラネ状態なのかは存じませんけれども、まあ足元下がる下がる。
とは言いましても、短国ちゃんの方の気配を見ると基本変わっていなくて、これは単に表に出て来る業者間市場での売買が無いから気配が変わらないのか、ガチで売買が活発ななかで気配が変わらないのか、という辺りは売参とかを見ただけでは判断付きかねる、というのがアカンタレではありますが、まあでも東京レポレートにしても1Mどころの気配はそんなに変わっていないということなので、そこまで変わらんということでしょうか、よくわかりませんな。
まあ明日の3Mを見たいとは思いますが、何せ3MTDBってマイナス金利解除しても延々と新発が1bp台での決着、とかいうかなり悲しい事態が続いていまして、これがもうちょいコールレートに近い水準にあがってくるようですと、多少は3M短国市場ちゃんも将来の政策金利見通しを織り込みに行く余地ができるのでしょうけれども、足元はとにかく金利水準が入札のたびに1bp台でしか決着していないのですから、これは需給の強さの方が思いっきり勝ってしまっている状態で、先行きの政策金利見通しとかそんな事言ってられない水準となっているのは甚だ遺憾です。まあ短国買入止めただけマシなんですけど、短期における「国債不足」は相変わらずという所ではあります。
・CP社債買入2か月連続で減額は無いのか
うーんこの
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2024/mpr240430a.pdf
CP・社債等買入のオファー日程(2024年5月〜6月)
6月の買入予定額は5月と変更なしですね。いや別に1年じゃなくたってサクサクと減額してもよくってよ、とは思うのですが、変に声明文なお書きで書かれてしまったので、今の日銀のオペの運営からしてどっからどう見てもこうなると前倒しとかしなくなるだろうなあと思ったら分かりやすく同額でぶっこんでくるのが日銀クオリティ。
・当然の如く輪番のレンジ変更も無し
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2024/mpr240430c.pdf
長期国債買入れ(利回り・価格入札方式)の四半期予定
(2024年4〜6月)[一部変更]
一々引用するのもめんどいからパスしますが、今回も案の定でレンジの変更はなく、当然月の買入回数も変化なし、とまあそういうことになりまして、こうなりますと次は6月会合で決定が入らなければ減額は無くて、そうなると次は7月会合なのですが、7月会合って末に実施されるからこりゃ当分輪番減らんわと頭を抱える次第。
てかさ、何でおまいらこのハチャメチャな量の買入を継続する必要があると思ってるの???って話で、多少減らしたって長期金利上がらんじゃろうし、大体からして「見通し通りに経済物価が推移したら緩和度合いを調整する」って言ってるのに長期国債買入だけは黒田緩和と同じことを漫然と継続してるって何なのよと小一時間問い詰めたい。
〇決定会合レビューですが今回は小ネタがあちこちに散らばっているので小ネタの粒粒を拾いながらシリーズで
日銀公表文書の前回比較、とかいうのはまあ今度の金曜土曜くらいにやりますわ、と今回は断言して自分の首を積極的に締めに行くスタイルですが、何か急に予定が変わらない限りにおいてはまあ追いつきをする所存です。FOMCも明日ありますし。
・展望レポート全文と言えばコラムシリーズなのだが円安の影響分析がねええええええええええええ
展望レポート背景説明を含む全文キタコレな訳でして、
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2404b.pdf
経済・物価情勢の展望
2024 年 4 月
(BOX1)個人消費の現状と先行き
(BOX2)2024 年春季労使交渉
(BOX3)賃金・物価の相互連関:人件費上昇を販売価格に転嫁する動きの広がり
(BOX4)「物価の基調」の捉え方
(BOX5)金利面からみた金融緩和度合いの評価
(BOX6)国債買入れがイールドカーブに及ぼす影響
なんということでしょう。BOXが6つもありまして(前回は3つ)気合の入り方を示しているのは大変結構な上に、個別のBOXも読みどころ(あるいはツッコミどころ)があったりしまして、大変に結構じゃあーーーーーーりませんか。
・・・・・・と思ったのですが、為替の影響に関する考察は何処に????
ここで4月18日に行われた植田総裁の記者会見を確認してみましょう
https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2024/kk240422a.pdf
植田総裁記者会見(4月18日)
――G20終了後の鈴木財務大臣兼内閣府特命担当大臣、植田総裁 共同記者会見における総裁発言
―― 於・ワシントンDC
2024年4月18日(木)
午後2時31分から約21分間(現地時間)
(以下引用部分は直上URL先の4月18日植田総裁記者会見の質疑応答より)
『【問】
植田総裁には、最近の為替の円安なんですが、輸入コストの上昇を通じて物価に上昇圧力を加えた場合に、既に高まりつつある「第二の力」、いわば賃金と物価の好循環、これと合わさると物価の上振れのリスクが高まる可能性があると思うんですが、この足元の円安の動きがそうした輸入コストの上昇を通じて物価にどう影響を及ぼし得るのか、またそうした動きが次の金利の調整のタイミングにどう影響するのかについて教えてください。』
『【答】
私からは、為替の円安方向の動きが輸入財の国内価格の上昇を通じて、おっしゃったように場合によっては「第二の力」とわれわれが呼ぶインフレーションの部分、あるいは基調的物価上昇率に影響を与えるという可能性は、それはあり得ると思います。
そこについて無視できない大きさの影響が発生した場合は、場合によっては金融政策の変更もあり得るということだと思いますが、現状その辺りをどのように評価しているか、例えば
1 月以降の円安の動きについて、来週になりますか、決定会合があって展望レポート、新しいものを発表しますので、その中で取り上げて数値的にもお示しするということになるかと思います。』
>展望レポート、新しいものを発表しますので、その中で取り上げて数値的にもお示しするということになるかと思います。
>展望レポート、新しいものを発表しますので、その中で取り上げて数値的にもお示しするということになるかと思います。
>展望レポート、新しいものを発表しますので、その中で取り上げて数値的にもお示しするということになるかと思います。
えーっと、どちらに取り上げて数値的にもお示しになられたのか教えていただけると大変にありがたいのですけど何がどうなっておられるのでしょうか?????????
しかしまあ何ですな、この発言ってその後決定会合で利上げはしないにしても長期国債買入に関する何らかの手直しでも入るのか、って思惑を呼んでしまったりもしてましたが、結局今回って長期国債買入に関しては6兆円維持っていうのがより明確になってしまったという事になってしまったし、為替の影響に関してはどこからどう見たって植田さん食言しているとしか思えない展望レポート全文が出てしまっているし、どうなってるんですか植田総裁の発言は、とまあそういう話になる訳ですな。
でまあ幣駄文でも再三再四申し上げておりますが、植田さんはこの4/18会見みたいに変に威勢のいいサービス発言をするかと思えば、腰が砕けたのか単にその前の発言がその場しのぎのエエカッコシイで調子のいいこと言ってるだけなのか知らんけど、その後平気で引っくり返すような事をしてしまう、というコミュニケーションとして非常に稚拙というか最早害悪と申しあげて差し支えないと思われるレベルの発言の振れ幅の大きさがあるんですよね。
まあエエカッコシイなのか実はお調子者なのか知らんけど、あんさんもうヒラ審議委員じゃないんだからそうそう発言をぶらすなよと言いたい訳でして、昨日も申し上げたように、3月や4月に声明文や展望レポート基本的見解で示されている政策スタンスってのは「見通し通りに推移すれば徐々に緩和政策の度合いを弱くしていく」「ただし色々と「やってみないとわからない」という面があるので事前にパスの決め打ちをするようなことはなく、あくまでもデータを見ながらやっていく」というものなのですから、その通りにど真ん中の事を淡々と説明すりゃ済むわけですよ。
然るにこのハトハトチキン爺さん、いざ政策をしようとするとハトハトチキンなのに発言だけは急に威勢が良くなったりするので、威勢の良すぎる発言をする→やり過ぎたので反対側に威勢の良い発言をして打ち消す→やり過ぎたので以下無限ループ、というのをやって金融市場に無駄なボラを出しているだけ、という甚だ困ったお方でして、兎に角余計なノイズを振りまくんじゃねえよとしか申し上げようがありませんな。
・お蔭で会見でもやらかしてしまう訳でして
会見をまとめて成敗するのはまた別途行いますけど、
https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2024/kk240430a.pdf
総裁記者会見
――2024年4月26日(金)午後3時30分から約65分
会見録4ページ目(PDFも4枚目)のかの著名な質疑ですけれども。
『(問)植田総裁はですね、先日の会見で、円安の進行によって基調的な物価上昇率に無視できない大きさの影響が発生した場合は金融政策の変更もあり得ると、先ほどお話しした通りだと思うんですけども、今回金融政策の変更がなかったということは、これはつまり円安の進行が、これ無視できる影響だという、そういう範疇になるというご認識でしょうか。総裁のご認識、お尋ねしたいです。』
そら聞かれますわな。これも何で聞かれたかと言えば4月18日の会見で円安の牽制でもしたかっかのか知らんけど上記引用の通りしなくても良いサービス発言をした報いなわけで、サービス発言して国債買入の手直しでも入ったのなら別ですが、完全ゼロ回答になっている、という状況だった訳でして、だったらG20であんなサービス発言するなよとしか言いようがない訳ですな。
『(答)それは今までの回答とちょっと重なりますけれども、取りあえず基調的な物価上昇率への大きな影響はないと、皆さん判断したということになるかと思います。ただ、申し上げましたように、そこに影響は今後発生するリスクはゼロではないので、注意してみていきたいということでございます。』
まあこの辺の質疑日銀ようつべで見てましたけど、アワアワした感じで説明してましたよね。しかしこの「皆さん判断したということになるかと思います。」ってのも、委員会制における議決だから確かに「皆さんが判断したから政策が変わらなかった」というのはその通りかもしれないけど、なんかもうこの時点で逃げを打っているように見えて(聞こえて)しまうのがヤバイ訳ですが、当然ながらこんな回答では許してくれませんので、
『(問)つまり今回は、これは基調的な物価上昇率への影響は、まあ無視できる範囲だったという認識でよろしいでしょうか。』
『(答)はい。』
これ中継見てた方ご案内の通り、というかようつべの日銀チャンネルにアーカイブあるからそれ見て頂ければよろしいのですが、17分30秒くらいから上記質疑が始まりまして、最後の「はい」は18分45秒くらいなのですが、一瞬止まってから小さい声で「はい」といったんですなあっはっは。
・・・・・・・・・そらまあロジカルに行くとこうやって日銀詰将棋って感じになってしまう訳ですが、これだってそもそもあんなことを言わなければ詰将棋にならずにすんでした訳ですし、当然ながら(その前から関連質疑ありましたのでかなりその時点で詰んでいましたけど)この見事な詰めあがりによって為替の円安が飛んだ次第な訳で、おまいはもうちょっとものの言い方を改善しろというか1年経過して寧ろ悪化してないかという世界な訳ですな。
これだって「今回の時点では基調的な物価上昇率への影響がまだ明確に出ているとはいいがたいが、今申し上げましたように基調的な物価への影響が起こる可能性もありますので、今後の物価情勢を丁寧に分析して参ります」とか回答すれば良い(というか最初から最後までそれで通せば終わり)だけの話で、なんかこう「俺様は頭が良いんだゾ」とばかりに上手い事言おうとしてドツボに嵌る、というパターンなのは悲しいとしか申し上げようがありませんな。
てな訳で、今回の会合、やっぱりコミュニケーションに関して重大な課題があるし、それが一部出てしまってこのテイタラク、って思う訳ですよ。
でまあ会見と展望レポートと声明文の比較とかそういうのは(明日はFOMCだからそっちを優先課題としますので)金曜土曜辺りをスコープにして成敗出来れば、と存じますので何卒よろしくお願いします。
2024/04/30
いらすとやwwwww(直リンしてません)
https://www.irasutoya.com/2024/04/blog-post_29.html
すごい勢いの円安のイラスト
すごい勢いで円安ドル高が進んでいるイラストです。
公開日:2024/04/29
https://www.irasutoya.com/2024/04/blog-post_836.html
口先介入のイラスト
通貨当局が為替相場に介入するかもしれないような発言をしているイラストです。
公開日:2024/04/29
そういえばこの円安ぶっ飛びの中でこのニュースはタイミングが見事すぎてクソウケタ
https://www.tokyo-np.co.jp/article/324175
黒田前日銀総裁ら春の叙勲 桐花大綬章に大谷直人氏
2024年4月29日 05時00分 (共同通信)
なるほど円安推進の黒ちゃんが勲章を受けるんですね!!!!!!!!!!!!!
・・・・・で土曜の午前に一発更新しましたが、その後はいつもの突発性ぐうたら病が発生してしまってぐうたらと過ごしていたら3連休が終わってしまったという典型的な悪事例によりまして以下ボチボチと成敗して参りますが・・・・・・・・
〇次回以降の26年度の見通しについては今回で既に勝負ありにしている
土曜日の駄文をご確認のうえで(って上の方に記載してるからここに来るまでに見ますわな)、という話になるのですが・・・・・・・・・・
今回26年度の見通しが出ましたが、これが「達成の図」になっている、というのが重要なポイントではありまして、これは前段で申し上げた政策スタンスの部分に関わって来るのですが、現時点で「見通しベースでは物価安定目標達成」というステータスになっているのも今回のポイントっちゃあポイントかなと思います。
前段で書いたように、今回って基本的に「政策スタンスの記述部分」が新しい(本質的に言えば3月声明文でも同じことを書いていたのだがその後の情報発信がハトハトチキンに振れてしまったので台無しになった)のでして、その中で「見通し通りなら徐々に緩和度合いを調整(やや意訳)」となっている訳ですから、実を言えば最早26年度の見通し(特に物価)ってここから先は上方修正されなくても良くて、物価見通しが下方修正されない限りはどこかのタイミングで利上げ、なのですから7月の展望レポートで何もなければ利上げしてもおかしくない、というか利上げしないと「見通し通りなら徐々に緩和度合いを修正」に矛盾する、という割とオシャンティーな作り込みになっているんですよね。
なので、本来であれば政策修正タイミングの前倒しみたいな話が出てもおかしくはないのですが、何せ会見があの調子でして(会見は今日会見録出てからということで)、政策修正しませんから皆さんどうぞ円を売ってください、と言わんばかりの情報発信になってしまっていまして、しかも植田さんもうちょっとこう政策修正に関する話の時に威勢よく言えば良いものを、政策修正するんですか的な質問の時ってなんか歯切れが悪いから、結果的にスーパーハトハトチキンモードに見えてしまうんですよね(従ってなのですが、たぶん文章を見直すと必ずしもそうではないかもです)。でままあ会見時間中に闘魂こめて大空に円は飛ぶ飛ぶ炎と燃えてしまったのはご案内の通り。
てな訳ですので、まあ今日以降の市場の反応次第ではあるとは思うのですが、展望会合なので総裁副総裁の講演があるかどうか、って辺り謎ではある(3月政策修正の後にやったばかりだし)のですが、今後出て来る特に大本営周りからの情報発信では、事と次第によっては「見通し通りに推移すれば政策の調整を行う」をもうちょっと強調してくるかもしれないな、とは思います。なお強調しない場合は円は飛ぶ飛ぶ炎と燃えて、が続くのであります、ドームの風で飛ぶんじゃなくて炎と燃えて飛びますんでソコントコヨロシク。
〇でまあ為替介入もあったりしたのでメモメモ(介入とか東京レポレートとか)
・相変わらず空き巣狙いみたいな介入のようだが東京時間で堂々介入して水準変えて頂きたいw
まあ記念ですから
https://jp.reuters.com/markets/us/4SQRBQQ7HZIZPE6WYIG72VWKJY-2024-04-29/
NY外為市場=円急騰、日本当局が介入との見方
By ロイター編集
2024年4月30日午前 4:58 GMT+9
もとは29日の記事なのですが内容更新されていますね。
『[ニューヨーク 29日 ロイター] - ニューヨーク外為市場では、日本円が対ドルで序盤に付けた34年ぶりの安値から一時約5円高と急騰した。市場では日本当局が1年半ぶりに円買い介入を実施したとの見方が広がった。』(上記URL先より、以下同様)
いやっほう!
『ドル/円は取引時間中に一時160.245円と1990年以来の高値を付けた後、一時154.4円に急落。介入観測が広がった。終盤は1.47%安の156.01円。日本はゴールデンウィーク期間中でアジア時間の商いは通常よりも乏しかった。ドル/円は正午過ぎに再び急落し、6分間で156.495円から155.05円に下落した。』
何か日本語が下手くそなのか何日の何時ごろその値段が付いたのか分からんがなw
ということでBBG
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-04-29/SB1EOPT1UM0W00
円急反発、一時154円台−神田財務官は介入有無に言及せず
テソ由美、伊藤純夫
2024年4月29日 10:55 JST 更新日時 2024年4月30日 0:48 JST
→為替介入を問われた財務官は記者団に「今はノーコメント」と発言
→為替は午前に一時160円台を付けた後、午後から断続的な円買い
『29日の外国為替市場で円相場が急反発している。対ドルで160円台を付けて34年ぶりの安値圏を更新した後、一時154円台まで上昇。市場では日本の通貨当局による円買い介入への警戒感が高まっている。』(上記URL先より、以下同様)
『神田真人財務官は29日午後6時過ぎ、為替の急変動に関してのコメントは控えるとした上で、投機による激しい変動については「看過できない」として「24時間対応できる準備をしている」と記者団に語った。午後2時過ぎにも同氏は、「今はノーコメント」と発言していた。』
でもって、
『円は同日午前に対ドルで一時約1%以上下落し160円17銭をつけた後、2%以上上昇して一時154円台まで反発した。日本銀行が先週末の金融政策決定会合で金融政策の現状維持を決定し、日米金利差に着目した円売り・ドル買いが続く中、日本が休場で流動性が低く値動きの幅が大きくなりやすい環境で、政府・日銀の円買い介入への警戒が市場で根強く、覆面介入との見方も一部で出た。』
だそうなのですが、さっきロイターとかBBGとかの為替市況見たら結局156円前半になっているので、節子それ単純に総裁会見の辺りまで戻っただけやという話で、どうせ介入するなら東京時間に堂々と150円割れに持って行く位の根性を見せて欲しいのですが、東京が空いてない時間に空き巣のように介入してもシャーナイんじゃないのと思うのですが、なんで最近はこの空き巣みたいな介入しかやらんのよって感じです。
まあいずれにしましても介入は入ったけど結局の所金融政策決定会合の後の植田総裁のハトハト音頭で飛んだ分だけ戻しただけの話なので、うーんどうなんでしょとは思いました。
・話は違うが東京レポレートやっぱり3M新発発行の有無ですかそうですか
ただの需給ではないか、とかそういう無粋な事は言わずに動かないコールを横目に日々盛大に動く東京レポレートを今日も鑑賞しましょうwww
https://www.jsda.or.jp/shiryoshitsu/toukei/trr/index.html
先週水曜〜金曜の数字を見ますと、
2024/4/24 0.057 0.031 0.035 0.036 0.035 0.033
2024/4/25 0.004 0.013 0.029 0.031 0.033 0.034
2024/4/26 0.021 0.012 0.027 0.031 0.033 0.033
・・・・・・・orz
まあ順当ではあった、と言われますとそういうことなのですが、金曜日はいつもの3Mの入札が無くて(次の入札は2日木曜日)入札が無いというのは発行が無いということです、という事でマーケットメーカーが新発3MTDBを在庫持ちしていないのでレポレートも上昇しない、という流れになりました。要は新発短国の在庫状況(およびその見通し)でレート付きますよ、という需給問題に帰着する話ですが、まあコールだって本来は資金需給と調節で動くので同じっちゃあ同じですが、コールはご案内の通り凶悪なレベルの超過準備があるので需給もへったくれもない状態なのはご案内の通り。
うーんしかしまあ何ですな、発行は償還日に合わせて実施するからもはやこの時点ではどうしようも無かったのですが、年末年始の場合確かに参加者の少なさ問題があるのですけれどもGWの場合は連休の合間に償還ぶっこんでも良いんじゃないのかなという気がせんでもないなあと思いました。どうなんでしょうかね〜。
〇決定会合レビュー雑談をいくつか(展望レポート前回比較は後程というか後日)
・長期国債買入減額をするハードルを上げてどうするんじゃヴォケが
声明文
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2024/k240426a.pdf
当面の金融政策運営について
『日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を、以下のとおりとすることを決定した(全員一致)。
無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0〜0.1%程度で推移するよう促す。』
しかしこの形式の声明文は懐かしすぎて円債老人会のおじいちゃん涙がちょちょ切れてしまいますが、やはりこの「なお書き」はいただけませんな。
『なお、長期国債およびCP等・社債等の買入れについては、2024 年3月の金融政策決定会合において決定された方針に沿って実施する。』
ということで、前回の声明文では資産買入がディレクティブなのかそうじゃないのかが一見するとわかりにくい表記になっていましたが、今回は声明文で示しているディレクティブに対して「なお書き」で書いているので、資産買入に関してはこの時点で(植田総裁も今回の会見でも前回の会見でも説明しているように)金融政策の手段として上げ下げするもんじゃない、というのを明確にしました。
ただまあこれ困るのは、明確化したのはいいんですけど「なお書き」なので決定会合議決事項になってしまっていることで、例えばCP社債に関しては前回の声明文で「CP等および社債等について、買入れ額を段階的に減額し、1年後をめどに買入れを終了する。」となっていたのですが、買入を前倒しで終了させるのが難しくなってしまったんじゃないの、と思いますし、なんせ長期国債に関しては「3月の決定通り」となりますと例の、
(3月声明文より)
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2024/k240319a.pdf
『これまでと概ね同程度の金額3で長期国債の買入れを継続する。長期金利が急激に上昇する場合には、毎月の買入れ予定額にかかわらず、機動的に、買入れ額の増額や指値オペ、共通担保資金供給オペなどを実施する。』
『3 足もとの長期国債の月間買入れ額は、6兆円程度となっている。実際の買入れは、従来同様、ある程度の幅をもって予定額を示すこととし、市場の動向や国債需給などを踏まえて実施していく。』(この部分だけ直上URL先の3月会合声明文より)
となっているので、長期国債買入に関しては相変わらず「金利が急激に上昇したら抑え込む」というスタンスが外れていない、即ちYCCの残滓が残っている状態、即ち緩和バイアスが残っている状態、ということになっていまして、展望レポートの方で示してた今後の政策運営スタンス「見通し通りに推移すれば政策を調整する」というのと微妙に齟齬があるんですよね。
でもってしかも「これまでと概ね同程度の金額」というのも残っていまして、これ以前の黒ちゃんのYCC入れた時みたいに「国債残高増加80兆円」と言いながら10兆円しか買わない、みたいな根性を出して来ればもちろん話は別なのですが、4月の頭に減額をしなかった今の日銀が減額をする訳がないとしか言いようがないので、これ6月会合で何らかの軌道修正を議決しない場合は漫然と馬鹿買入が続くのかよと思われるわけでして、見通し通りに推移するなら緩和度合いの調整をするってんだったら政策金利よりも細かい単位でスムージング出来る長期国債買入の減額をしろよ今回だって「見通し通りに推移」しているんだから、と思うのですがまーやりませんわな。
・展望レポートの政策スタンス文言は確かに緩和バイアスではないのですがそもそも鏡の時点で・・・・・
土曜日にああでもないこうでもないと書きました例の政策スタンスの話。
展望レポート基本的見解
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2404a.pdf
再度引用しますと8ページ最終パラが、
『金融政策運営については、先行きの経済・物価・金融情勢次第であり、この点を巡る内外の経済・金融面の不確実性は引き続き高い。以上のような経済・物価の見通しが実現し、基調的な物価上昇率が上昇していくとすれば、金融緩和度合いを調整していくことになるが、当面、緩和的な金融環境が継続すると考えている。日本銀行は、2%の「物価安定の目標」のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営していく。』
この文章、「見通し通りで推移するなら金融緩和度合いを調整していく」に力点を置けば(というかこれ主文はこっちなんですから力点置くのは本来こっちですわな)今後淡々と政策の修正が行われるので、その移行過程においてはそうは言いましてもスタートラインが盛大に緩和状態なのですから移行過程では緩和的な状態だよ、って話をしているように読み取れるんですよね。
でもまあ3月声明文の時がそうでしたが、「当面、緩和的な金融環境が継続すると考えている。」が注目されるし、植田総裁の説明でもこの「緩和が続く」というのが目立ってしまったからハトハト音頭と言われる(ハトハト音頭とか言ってるの私だけですねすいませんすいません)訳ですよ。
・・・・・・ただですね、そもそも展望レポートの鏡の部分って今回もこうなっているんですよね。
1ページ目の『<概要>』って所のことですが、
1ポツ目が経済の先行き見通しなんですけど、
『・先行きのわが国経済を展望すると、海外経済が緩やかに成長していくもとで、緩和的な金融環境などを背景に、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まることから、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。』(今回の展望基本的見解)
でもってですね、前回1月なんですけど
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2401a.pdf
『・日本経済の先行きを展望すると、当面は、海外経済の回復ペース鈍化による下押し圧力を受けるものの、ペントアップ需要の顕在化などに支えられて、緩やかな回復を続けるとみられる。その後は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まるもとで、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。』(前回1月の展望基本的見解)
となっていまして、大規模金融緩和政策の枠組み修正を行う前には記載されていなかったのですが、鏡の部分にこの「緩和的な金融環境」というのがしゃしゃり出て来る、という図になったんですよ。
でもって今日はちょっとそこまで間に合わないので基本的見解の本文比較に関しては後日送りなのですが、まあこの「緩和的な金融環境」は先行き経済動向のメカニズム、という点においては緩和的な金融環境が設備通しを後押ししたり、潜在成長率の引き上げを後押ししたり、という役割を果たします、という説明自体は1月展望と4月展望って変わっていないのですよね。
つまりですね、政策スタンスの記述部分では緩和度合いの調整を行いますよ順調に推移すれば、と言ってるんですけど、このように展望レポートの経済見通しの前提の所で「緩和的な金融環境」が設備投資や成長力強化を後押しする、といっているのが政策修正前と変わっていない、ということですので、ここを見るとどこからどう見ても政策スタンスは黒田緩和の延長戦をまだやっている、という風に読み取れる訳でして、結局どっちなんですか、というのが非常に分かりにくくなっているんですよね。
でまあ今回の展望レポートの本文3ページ目あたりにあります経済先行き見通しの今申し上げた設備投資と成長力の部分を比較引用しますと、
『そうしたもとで、設備投資は、緩和的な金融環境が下支えとなるなか、人手不足対応やデジタル関連の投資、成長分野・脱炭素化関連の研究開発投資、サプライチェーンの強靱化に向けた投資を含め、増加傾向を続けると考えられる。』(今回の展望基本的見解)
『潜在成長率は、デジタル化や人的資本投資の進展による生産性の上昇、設備投資の増加による資本ストックの伸びの高まりなどを背景に、緩やかに上昇していくとみられる3。政府による各種の施策や緩和的な金融環境は、こうした動きを後押しすると考えられる。』(今回の展望基本的見解)
となっていて、これが前回どうだったかと言えば、(同じく本文3ページになります)
『そうしたもとで、設備投資は、緩和的な金融環境が下支えとなるなか、人手不足対応やデジタル関連の投資、成長分野・脱炭素化関連の研究開発投資、サプライチェーンの強靱化に向けた投資を含め、増加傾向を続けると考えられる。』(前回1月の展望基本的見解)
『潜在成長率は、デジタル化や人的資本投資の進展による生産性の上昇、設備投資の増加による資本ストックの伸びの高まりなどを背景に、緩やかに上昇していくとみられる3。政府による各種の施策や緩和的な金融環境は、こうした動きを後押しすると考えられる。』(前回1月の展望基本的見解)
ということで、ここ一言半句も変更なしになっていまして、そうであれば「緩和的な金融環境を能動的に続けていくことによって経済物価情勢が見通しの通りに向かって進んでいく」という認識が変わっていないんじゃないのかね、という話になる訳ですな。
・・・・・・・てな訳でして、この「緩和的な金融環境が続く」の文言が結局何を意味しているのか、というのがどこまで行っても謎というのがコミュニケーションをややこしくしている訳でして、まあ実際の所はこの「金融緩和の今後」についての位置づけってまだコンセンサスが取れていない、というのが一番正しい解釈になるのかな、と思いましたがどうでしょうかね。
ということで今朝はこの辺で勘弁してつかあさい。
2024/04/27
お題「決定会合があって為替も飛んだので簡単に(続きは連休中に)」
はいどうもどうも、本当は早起きしたかったんだけどヘロヘロで無理でしたわ。
でもって為替様
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-04-26/SCHLQRT0G1KW00
円が158円台、指標発表後に下げ加速−介入警戒ライン割る
船曳三郎、楽山麻理子、鈴木克依、森 茂生、大塚美佳
2024年4月26日 23:37 JST 更新日時 2024年4月27日 5:45 JST
→ニューヨーク時間帯の終盤に円安がさらに加速
→日銀はハト派すら驚くサプライズ、サクソ・キャピタルのチャナナ氏
『26日の外国為替市場で円相場は対ドルで約34年ぶりの1ドル=158円台に下落した。日本銀行が金融政策の現状維持を決定したことを受けて円安が進行。植田和男総裁の定例会見にも目新しい内容はなかった上、米経済指標の発表を受けて円売りが一段と強まっている。市場では政府・日銀による円買い介入への警戒感が高まっている。
ニューヨーク時間終盤に、円は対ドルで一時1.8%安の158円44銭まで下落。神田真人財務官の過去の発言から介入が意識される水準も割り込んだ。植田総裁の会見後に円は急速に買い戻され、154円99銭を付ける場面もあったが、一時的な反発で終わった。』(上記URL先より)
〇展望レポートの全体感自体は結構強気になっているのですが・・・・・・・・
本日はショパンの事情でそんなに時間がないのでまずは政策ポイントじゃねえかと思われる部分を。
・「先行きの金融政策」に今後の政策調整を明記しているんだが相変わらず例の文言は残るの巻
今回の声明文
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2024/k240426a.pdf
当 面 の 金 融 政 策 運 営 に つ い て
2024年4月26日
日 本 銀 行
『日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を、以下のとおりとすることを決定した(全員一致)。』
『無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0〜0.1%程度で推移するよう促す。
なお、長期国債およびCP等・社債等の買入れについては、2024 年3月の金融政策決定会合において決定された方針に沿って実施する。』
なお書き付きのシンプルバージョン。、これを見て昔を思い出すのは円債老人会会員となりますw
例えばこんな感じですね
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2011/k110428a.pdf(2011年4月声明文)
もっと昔だとこんなのとか
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2007/k071113.pdf(2007年11月声明文)
2011年4月って展望レポート会合で、展望レポートがある時は情勢判断について展望レポートで記載しているから声明文自体は「次回会合までのディレクティブ(金融市場調節方針)」になります。では2007年11月ってなんですねんと言いますと、このころは「金融経済月報」が公表されていて、情勢判断に関しては金融経済月報で出すから声明文には別に書かんでええじゃろという話だった訳ですな。
ということですので、次回会合の声明文の場合はディレクティブ+情勢判断の文言、が掲載されることにはなるのですが、さてここで微妙なのが「金融政策運営に関して」の部分です。
1月決定会合(まだQQE+YCC+マイナス金利やってた時)
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2024/k240123a.pdf
3月決定会合(YCCとマイナス金利が解除、QQE自体はどっちなんだかよくわからんモード)
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2024/k240319a.pdf
でもって今回(URL再掲)と来たわけですが
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2024/k240426a.pdf
声明文には今後の金融政策運営の話がないわ、と思ったらよくよく見たら展望レポートの方に記載があって、最後のところに記載がありますよね。
・・・・・ということで今朝は取り急ぎその比較でもアップしようかと思いまして。
・先行き金融政策運営に関する文言の変化を見てみましょう
まずは前の枠組みだった1月を比較しやすくなるので出してみる。
『日本銀行は、内外の経済や金融市場を巡る不確実性がきわめて高い中、経済・物価・金融情勢に応じて機動的に対応しつつ、粘り強く金融緩和を継続していくことで、賃金の上昇を伴う形で、2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現することを目指していく。
「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。引き続き企業等の資金繰りと金融市場の安定維持に努めるとともに、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる。』(1月声明文)
後半がいわゆるフォーワードガイダンスと緩和バイアス文言(躊躇なく云々ね)。前半は「粘り強く金融緩和を継続していく」という説明をしていますよね。そらまあQQE+YCC+マイナス金利政策の枠組みだったからこうなるんですけど。
でもって3月の枠組み変更でこれがどうなったかというと、声明文項番1の後半になります。
『日本銀行は、引き続き2%の「物価安定の目標」のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、短期金利の操作を主たる政策手段として、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営する1。現時点の経済・物価見通しを前提にすれば、当面、緩和的な金融環境が継続すると考えている。』(3月声明文)
脚注1はオーバーシュートががコミットメントの廃止についてです。
金融政策の先行き運営に関しては「経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営する1。」となっているのですが、そこに「現時点の経済・物価見通しを前提にすれば、当面、緩和的な金融環境が継続すると考えている。」とあります。
何回かアタクシこの駄文で書いたこの「当面、緩和的な金融環境が継続すると考えている。」というそもそも主語が何だかわかりにくい(英文だと「日銀は予想する」になっている)のがあって、じゃあこの文言は枠組み変更前のように「2%物価目標達成のために積極的に金融緩和を推進する」という意味になるのか、というとここだけ取り、かつ「日銀は予想する」の英文見るとそうじゃないよね、となるのですが・・・・・・・
ここで話をさらに曖昧にするのはこの前段のところに「日本銀行は、引き続き2%の「物価安定の目標」のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営する1」というのがあることでして、ここの文章をどう読むか、というのが面倒でして、字面通りに解釈すれば「情勢に応じて適切に」なのでコンディショナルな文言でデータディペンデントっぽくも見えるのですよ。
ですから実際の情報発信において、この「データディペンデント」を中心に説明すれば、3月以前の「緩和バイアスの掛かった政策運営ではない」ということになるのですが、その後の植田さんの説明を聞いていますと、「2%達成のために緩和政策を継続する」という説明になっていました。
例えば3/19記者会見ですと最初は声明文文言通りの説明だったのですが、途中で
https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2024/kk240321a.pdf
3ページ中段の質疑応答でこのような説明を植田総裁は行いました。
『従って、物価・経済見通しに従って適切な政策金利水準を選んでいくということになると思います。ただし、その際に、現状、2%の物価の持続的・安定的な実現が見通せる状況に至ったと申し上げましたけれども、例えば予想物価上昇率というような観点からみてみますと、まだ
2%には多少距離があるということですので、そのギャップに着目しますと、先ほどの普通の金融政策を行ううえでも、緩和的な環境を維持するということが大事だという点は留意しつつ、普通の金融政策を行っていくということになるかと思います。』(この部分のみ直上URL先2024/03/19植田総裁会見より)
ここにあるように「緩和的な環境を維持することが大事」という話になりますと、これは3月声明文の表現からは緩和バイアスに踏み込んだ説明になるわけです。
そうなりますと受け止める方としては、ああつまり枠組みは変わったし、植田さん「普通の金融政策」とか言ってたけどまだまだ異次元金融緩和の延長戦なのね、という解釈になりやすそうな話だし、挙句に4月に輪番も減らない(むしろ市中発行減額に対応しなかったので事実上の増額措置を行った)という状況ですから、日銀のアクションそのものも緩和バイアスがあるんだな、とまあ思う訳ですよ、実際に日銀はその部分を明確化していないで曖昧にしたまま4月会合に突入したんですけど。
(野口さんもそうだけど野口さんはもともと緩和積極派なのでそこは個人の見解で整理可能)
でもって今回は金融政策運営に関しては展望レポート基本的見解の最後の部分に記載があります。『4.金融政策運営
』の最終パラグラフ、本文8ページ目(PDFも8枚目)
『金融政策運営については、先行きの経済・物価・金融情勢次第であり、この点を巡る内外の経済・金融面の不確実性は引き続き高い。
以上のような経済・物価の見通しが実現し、基調的な物価上昇率が上昇していくとすれば、金融緩和度合いを調整していくことになるが、当面、緩和的な金融環境が継続すると考えている。
日本銀行は、2%の「物価安定の目標」のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営していく。』(4月展望)
3月声明文と同じなのは「当面、緩和的な金融環境が継続すると考えている。」というのと、その次の「2%の「物価安定の目標」のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営していく。」という部分ですね。
コンディショナル文言、と字面通りに読めば読める3番目の文(日本銀行は〜以下)の前に来ているのが、今回は前回と違って「見通し通りに推移すれば金融緩和の強度を下げていきます」っていうのがありまして、ここを明確化しまず方向性としてそっちだ、というのをより明確化したわけですな、前回声明文はそこがどっちなのか微妙でしたけれどもここを明確化。
しかしここで相変わらず中途半端なのが「当面、緩和的な金融環境が継続すると考えている。」でして、見通し通りに推移していったらいずれ物価安定目標は達成されるし、その時は当然ながら政策も中立的に近いものになっている筈(そもそも緩和がないと物価安定していない、というのは物価安定の達成ではないのだから)だけど、今はその遷移過程にあるのですよ、という話なのかが分かりにくいままなんですよね。
まあ野口審議委員の言い方を借りれば「緩和継続が必要条件」ということなのか、単純に政策の調整過程においてしばらくは緩和的ですわ、という話なのかがまあ今回も微妙ですけど、ただまあ前回の場合はその後の情報発信によってどちらかというと前者寄りっぽいものに見えてしまった訳ですが、じゃあ今回はどうなのかというと謎ですよね。
そこでこの文章の最初の部分が新しく入っていますが、「先行きの経済・物価・金融情勢次第であり」とデータディペンデントというのをこっちでも入れているんですよね。
すなわち、最初の部分と最後の部分で「データディペンデントでコンディショナルですよ」というのを入れているのですから、字面通りに解釈すれば「前回会合よりも緩和バイアスが下がっている」ということになる。というのが本来の解釈になるはずなんですよね。
・・・・・とはいえ、この後の情報発信と、長期国債買入は別に減らしませんという情報発信を見てしまうと、やっぱり緩和バイアスじゃねえか、というのもありまして、結局おまいらどっちですねんという話だし、まあ野口審議委員の「緩和は必要条件」みたいな話も飛び出すのを見ていると、この辺りって実は政策委員会のコンセンサスがちゃんと取れてないからこういう鵺みたいな文章を出して、その文言をちまちまいじりながら正常化バイアスを強めていこうとしてるんじゃないのかな、って思ったりもしました。
という個人の邪推をしたところで本日はショパンの事情でこの点だけで勘弁してつかあさい。
2024/04/26
〇時事通信砲というほどでもないし円債だけ反応しても何かねえ
・時事が報道しているのだが今回は何か記事のディテール部分の造りが雑なんだよな
昨日の夜遅くにこんなのが出ましてですね(タイムスタンプよりもヘッドライン早かった筈)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2024042501265&g
日銀、国債購入縮小の方法検討 事実上の量的引き締めへ移行
時事通信 経済部2024年04月25日23時20分配信
はいはい時事通信時事通信という所ですが。
『日銀が26日に開く金融政策決定会合の2日目の議論で、国債買い入れ縮小の方法を検討することが25日、明らかになった。3月にマイナス金利政策の解除など大規模緩和の正常化に踏みだしたが、国債買い入れについては減額を見送っていた。縮小すれば、日銀が保有する国債の償還ペースは、新規買い入れを上回ることになりそうで、国債保有残高を減らしていく事実上の量的引き締め局面へ移行することになる。』(上記URL先より、以下同様)
まあFED位の規模なら量的「引き締め」とかいうのかもしれないけど、日銀の場合はそもそも論としてこの世の物とは思えないバランスシートを抱えているんだから、保有国債の売却くらいやって初めて「量的引き締め」という言葉が似あうのであって、長期国債の買入量がちょっと減る位で引き締めとかいうのは引き締めに失礼ですwww
『日銀は3月に17年ぶりに利上げに踏み切った。しかし、国債の大量購入を続けて潤沢にマネーを供給する金融緩和環境を維持しているため、外国為替市場で円安が進む一因となっている。』
一般向けだからこうなるんでしょうけど問題なのは3月会合後の情報発信でして、
声明文で(敢えて英文の方を使ってみるが)
https://www.boj.or.jp/en/mopo/mpmdeci/mpr_2024/k240319a.pdf
「Changes in the Monetary Policy Framework」とフレームワークを変えたと言ってるのにハトハト踊りで長期国債の馬鹿買入を継続し、声明文では「Given
the current outlook for economic activity and prices, the Bank anticipates
that accommodative financial conditions will be maintained for the time
being.」としか言っていないのに、金融緩和をまだまだ継続しますよというニュアンスの強いメッセージを出し続けて来たのが、日銀は金利上昇を恐れているから利上げなんかできない、という発想になって円売りしやすくなっているって事でしょうよとは思いますがそれは兎も角として、
『3月に政策変更を決めた際の声明文で、日銀は国債について「これまでとおおむね同程度の金額(月間6兆円程度)で買い入れを継続する」と明記。実際の買い入れは、市場の動向や国債の需給を踏まえて実施していく方針を示していた。』
月額6兆円は声明文本文ではなく脚注ですし、脚注に書いてあるのは「足もとの長期国債の月間買入れ額は、6兆円程度となっている。実際の買入れは、従来同様、ある程度の幅をもって予定額を示すこととし、市場の動向や国債需給などを踏まえて実施していく。」であって、6兆円程度買うとは書かれていません、正確に書いて下さい。
『25日に始まった今回の会合では、3月に決めた国債買い入れ方針の下で、実際に購入額を縮小していく方策を議論。日銀が公表している月間の国債購入予定額(約5兆〜7兆円)についても、引き下げを含め見直す可能性がある。』
この先引用すると全文引用になるので以下引用割愛しますけど、「25日に始まった今回の会合では、3月に決めた国債買い入れ方針の下で、実際に購入額を縮小していく方策を議論。」ってのも良く考えたら不思議な話で、だったらそもそも何で長期国債の買入(フローでもストックでも良いけど)についてディレクティブに記載していないのか、という話になる訳でして、ディレクティブで記載するなら「次回決定会合までの長期国債買入額は月額換算で何億円(または日銀保有国債残高が四半期平均でこれだけ減るような)ペースで行う」と示すべきであって、何でこの前「政策金利は次回会合までなのに国債買入は6月末までの買入を勝手に市場局が示したのか」という事になるんだが。
ということでだな、まあ前回は長期国債買入を殿軍にして他の施策をバサッと削るために長期国債買入の建付けを曖昧にして、買入をへらさんことによって長期金利急騰を回避したかった、というのはまあ気持ちはわからんでもない(市場動向読めていないというのがダメなのだがそれはさておき)のですが、今回の会合では長期国債買入の位置づけをもっとキチンとして頂きたいですし、そこでちゃんと建付けをしっかりして頂けるんならまあエエンとチャイマスカねとは思いますがさてどうなるやら。
・なお債券先物はさがっているものの肝心の為替ちゃんは
ほいな
https://port.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/future_night
先物価格情報
長期国債先物
限月:24年6月限
取引日:04/26
夜間取引
始値:144.15(04/25)(15:30)
高値:144.15(04/25)(15:30)
安値:143.61(04/25)(23:10)
現在値:143.80(04/26)(04:30)
取引高:19,671
ってこれ引け前に取っているので夜間取引終了時は別の値段かもしれませんが、まあこんなもんでっしゃろということで勘弁してもらうとして、安値2310ということで、先ほど申し上げたように時事の記事自体は詳報付きでアップデートされたのがちょっと後の時間になっているのですが、実際には時事のヘッドライン受けて先物が下がった筈なのでまあそういうことです。
昨日の日中の引けからは35銭下がっておりますがな、ということで円債ちゃんは流石に反応したのですけれども、為替ちゃんの方はというと、アメリカン長期金利が上昇したせいなのかこっちの発言のせいなのか知らんけど普通に155円半ばとかいうチャーミングなお値段で推移されておられるようで、まああのハトハトチキンがハトハトチキン音頭を踊りだすと全部台無し、という流れを完全に断ち切らないと円金利だけ上がって為替は全然反転しない、とかいう空砲事案になる(まあこちとらマイナス金利解除しているのに金利が上がらんじゃあ商売の方はあがったり(ダジャレではない)にも程があるのでドンドン正常化して欲しいので大歓迎ですけど)という実にオシャンティーな事になりそうで今から楽しみです。
ということでイエレン
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/JC42KLOZJVMIFHFCOARFCEU534-2024-04-25/
〔ロイターネクスト〕為替介入はまれな状況でのみ容認=イエレン氏
By ロイター編集
2024年4月26日午前 4:29 GMT+9
『[ワシントン 25日 ロイター] - イエレン米財務長官は25日、ドル高は米経済の力強さと高金利を反映しているとし、各国政府による為替市場への介入はまれな状況でのみ容認されると述べた。』(上記URL先より、以下同様)
これは神田大明神も涙目と言った所でしょうかしら、知らんけど。
『ロイターとのインタビューで、ドル高は「米経済の力強さと金利水準」を反映していると指摘。ただ、日本円の現在の水準に関する見解は述べず、日本当局による介入の可能性についてもコメントを控えた。』
だそうなんですけど、これもうちょっとうがった見方をしますと、イエレンさんとしては日銀がハトハトチキン音頭を相変わらず踊り続けて金利上昇を抑制しているのに通貨当局が介入するとか言うのは許さん、と仰せになっているという風にも読めます(個人の勝手読みにも程がありますので念のため申し添えます)訳で、利上げとか利上げ予告ホームランくらいに明確な動きをしてからお前ら介入云々考えろやヴォケが、と言われていると(勝手に)読みますとこれは大明神も泣き崩れる展開ですねわかります。
『一方で「全ての主要国に期待するのは、為替レートが市場で決定されるということであり、これは主要7カ国(G7)のコミットメントでもある」とし、市場の混乱や過度の変動に対処するための市場介入がまれにしか行われず、かつ事前に協議されることを確実にすべきとした。』
とある訳で、これどこからどう見ても介入できないじゃんって読めてしまうのですが、介入するなら今日利上げするか6月利上げ予告ホームランでも打たないとアメリカ様がお許しにならないんでしょうかということで謹んでお悔やみを申し上げますナムナムナム。
〇なお日経は冷静な記事が出ているだけのようですな
日経さん
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB24BHE0U4A420C2000000/
日銀、26年度物価上昇2%程度を提示へ きょう決定会合
金融政策
2024年4月26日 5:00 [会員限定記事]
5時のタイムスタンプでこれという事は今朝の記事はこれ以上のものはない筈ですね。
『日銀は26日に金融政策決定会合を開く。会合後に初めて示す2026年度の消費者物価指数(CPI、生鮮食品除く)の前年度比上昇率は2%程度となる見通しだ。低金利が円安進行の一因になっているとの指摘もあるが、日銀は3月会合でマイナス金利政策を解除したばかりで、市場関係者の多くも金融政策の「現状維持」を見込む。
植田和男総裁が26日午後に記者会見し決定内容を説明する。』(上記URL先より、以下は有料会員記事)
いや別にべき論で言えば今日利上げしろと思う訳ですが、どうせあのハトハトチキンがそんな蛮勇振るえないだろというだけの話なんですけどね。
というのは兎も角として、まあ日経もこう言ってますし、別に金利の方に手をつけたり、利上げやる気満々みたいなメッセージは出なくて、これうっかりすると長期国債買入の減額云々をしても「緩和的な状況は続けます」「利上げは極めてゆっくりとしか行いません」のメッセージの方が強くなるんじゃなかろうか、という気はするんですよね、知らんけど。
でもってまあとにかく最近の説明はこの前のマイナス金利解除が「2%物価目標達成の確度がより高まった」という「確度が高まる高まらないというお気持ち」の世界で実施されている上に、直近では「基調的な物価が2%行ってない」「インフレ期待が2%行ってない」の説明もだいぶ加わるようになっていまして、もはや物価見通しベースは政策反応関数に非ずくらいの勢いになっています、「賃金と物価の好循環」の連呼が控えめになっているということはこれ即ち今後出て来る今年度春闘の詳細な結果に関しても徐々に知らんぷりしますよ、という事を意味しているのでして、つまりは展望レポート見てもほぼ政策インプリケーションは得られない、というかなりトンデモナイ流れを作りつつあるんですよ今の日銀って(個人の偏見ですので念のため申し添えます)。
なので26年度の見通しが2%だろうと何だろうとシランガナというのが今回の展望レポートのミソともいえる訳でして、何ですかその政策運営はとは思いますが、まあそういうことやぞという認識で今回の会合を迎えるのが吉なのではないかと思います。
いやまあこれで今日利上げとか6月利上げ予告ホームランとかしたら感動しますけどね。
・・・・・ということで今回は何か長期国債買入についての微修正に留まる、ということになりますと、それは円債方面では需給に影響してくる話なので影響するのですが、他市場的にはシランガナという感じになるんじゃねえのと思うのですがどういう反応になりますかね〜。
2024/04/25
お題「基調的物価や期待インフレで定量勝負をしない方が良いと思うんだが(決定会合プレビュー世間話)などなど」
さあもりあがってまいりました!!!!!!!!!!
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB15BOK0V10C24A4000000/
円、34年ぶり155円台に下落 高まる介入警戒感
グローバルマーケット
2024年4月24日 21:17 (2024年4月24日 21:23更新) [会員限定記事]
介入する→結局介入効果長持ちしない→日銀に遂に着火する→「待つことのリスクは大きくない」という昨年の名言が蒸し返される→植田総裁(日銀とは書かずに植田総裁と書くのがミソ)地獄の業火に焼き尽くされる
までのセットでオナシャス!!!!
〇という訳で決定会合ですがそういえば最近急に基調的な物価を連呼するんだが
昨日もちょっと雑談書いた続きの雑談ですいませんですけどね。
https://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/index.htm
基調的なインフレ率を捕捉するための指標
全国CPI出たんで出てきた訳ですが、例によって左から刈込平均値、加重中央値、最頻値の前年比%ですな。
Jan-23 3.1 1.1 1.6
Feb-23 2.7 0.8 2.1
Mar-23 2.9 1.0 2.7
Apr-23 3.0 1.2 2.8
May-23 3.1 1.4 2.9
Jun-23 3.0 1.4 2.9
Jul-23 3.3 1.6 3.0
Aug-23 3.3 1.8 3.0
Sep-23 3.4 2.0 2.8
Oct-23 3.0 2.2 2.6
Nov-23 2.7 1.7 2.4
Dec-23 2.6 1.6 2.4
Jan-24 2.6 1.9 2.3
Feb-24 2.3 1.4 2.0
Mar-24 2.2 1.3 1.9
とまあそういう訳ですので、一頃のピークからは落ち着きましたなっていう風情になっているのですが、ゆうて2%じゃんとか思いますし、そもそもその前って
Jan-22 0.8 0.2 0.3
Feb-22 1.0 0.1 0.3
Mar-22 1.1 0.2 0.3
Apr-22 1.4 0.3 0.4
May-22 1.5 0.4 0.5
Jun-22 1.6 0.5 0.5
Jul-22 1.8 0.3 0.7
Aug-22 1.9 0.5 0.8
Sep-22 2.0 0.5 0.9
Oct-22 2.7 1.1 1.3
Nov-22 2.9 1.2 1.5
Dec-22 3.1 1.4 1.6
だった訳で、黒田末期の1年間のまあ初期段階では「まだまだ基調の物価は強くない」って言い張れたと思いますが、どっからどう見たってこんなの基調が変化して定着してきているだろう以外の何物にも見えませんよね。
でもって基調的な物価と言えば展望レポートでもちゃんと図表付で解説があってですね。
展望レポート全文の方
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2401b.pdf
本文29ページ、PDFだと31枚目(以下本文とPDFページの関係は同じなのでPDF何枚目と書きますね)からが『2.物価の現状と見通し
』なんですけど、
32枚目からこんなのがありまして、
『消費者物価の基調的な動きを捕捉するための指標をみると(図表 38)15, 16、刈込平均値は、前年の値上げの影響が一巡するもとで、2%台半ばのプラスとなっている。一部品目の動きに左右されにくい最頻値や加重中央値については、それぞれ、2%台半ば、1%台半ばとなっている。除く生鮮食品を構成する各品目の前年比について、上昇品目の割合から下落品目の割合を差し引いた指標をみると、「上昇」超幅は小幅に縮小している(図表39)。』
ということで右側に図表38と39がありますが、これは毎度おなじみのさっきの基調的な物価を把握するための指標の図表として出ているものと同じものになりますわな。
『この間、内需デフレーターの前年比は、2%台半ばとなっている(図表 35)。内訳をみると、個人消費デフレーターは、前年比で3%程度となっている。設備投資等のデフレーターは、幾分鈍化しつつも、高水準の伸びを続けている。GDPデフレーターの前年比は、内需デフレーターが幾分鈍化しつつも高めの伸びを続けるもとで、既往の原油価格高の影響の減衰などを反映して輸入デフレーターが前年比マイナスとなっていることから、足もとでは5%台前半となっている。』
ということで、図表35ってのはPDFの31枚目の右の一番上に『図表35:物価関連指標』としてあるものなんですよね。
・・・・・・・・・いや真面目な話、こういうのだけ並べてて「基調的な物価は2%に達していない」と言われましても定量的な説得力というのものが無い訳です。ただまあこれまでの日銀の説明ではあまりこの「基調的な物価」を前面に出していた訳でも無くて、「賃金の持続的上昇」から「賃金と物価の好循環」というメカニズムを前面に出して政策判断の根拠を説明してたから、まあそれはそれで(好循環とか賃金ターゲットとかアホなのかという議論はさておきますと)話としての筋だけは通っているんですよ詭弁かもしれないですけど。
然るに、最近の植田さんの国会答弁をみているとやたらとこの「基調的な物価が2%行ってないからまだ政策修正のおかわりは時期尚早」的な話をしているように見えるんですが、どっからどう見てもそれは説明がドツボに嵌るコース確定な訳で、そういう話をしていると「じゃあ基調的な物価が幾らであるという定量的な説明をお願いします。あと我々も日銀の政策判断の根拠を理解しておきたいからその基調的な物価の計算方法を教えてください」って言われたらどう返す積りなのでしょうか。
まあですね、急に出てきた「基調的物価」なんですけど、賃金が想定以上に上振れてしまって「賃金と物価の好循環」で政策再修正を先送りすることが出来なくなった、という理由に加えて、前述のように「やっと実際のCPIの数値が落ち着いてきたからこの数字を政策再修正先送りの説明に使える」というしょうもない何時ものその場凌ぎ説明のために前面に出して来た、といういつものゴールポスト変更でしょ、としか黒田日銀末期以降の芸風を見ていると思えない訳ですし(個人の感想です)、そうやってゴールポストの変更を画策している(個人の見解です)ような植田総裁からそんなホーキッシュな発言出る訳ないじゃんとか思いっきりタカを括っているし、なんならそれで円安ぶっ飛んで植田さんが丸焦げになる方がどう見ても面白展開になるのでそっちでオナシャスな所ではありますが、この「基調的物価が2%行ってない」の言い訳は突っ込まれ所が大杉なので使わない方が良いと思うだけどなあ。
いやね、メカニズムに話を持って行って定量的な話にしなければ基調的な物価がどうのこうのというのはそのメカニズムの事です、っていう形で説明できるんですけど、2%という定量的な数値という誤魔化しの効かないものを言ってしまうのは植田さん何言ってるのと思いますし、振付師がそういう振り付けをしているんだったら下手くそにも程があるのですけど、まあこの基調的な物価って何ですかってなもんですよ。
でまあ同じ理屈で「期待インフレ」なんですけどさっきの1月展望レポート全文のPDF33枚目に『(物価を取り巻く環境)
』から始まる部分があるのよね。
『先行きの物価情勢を展望するにあたり、物価上昇率を規定する主な要因について点検する。(以下「第一」の「マクロ的な需給ギャップ」の話があるけど引用割愛します)』
『第2に、中長期的な予想物価上昇率は、緩やかに上昇している(図表 41)。短観の販売価格判断DIは、ひと頃と比べると低下しているが、引き続き高水準となっている(図表
42)。短観における企業の物価全般の見通しも、短期は幾分低下しているが、中長期については、引き続き高水準となっている。(以下割愛)』
でまあこれなんですけど、
『図表41:予想物価上昇率』ってのがあって最初が『@各種調査』なんですけど、
『・市場参加者(QUICK、2年先〜10年後までの8年間)
・エコノミスト@(6〜10暦年先)
・エコノミストA(7〜11年度先)
・家計(生活意識アンケート調査、今後5年間)
・企業(短観、5年後)』
ってのがあるんですけど、ずっと下に外しまくっているESPフォーキャストとかコンセンサスフォーキャストとかのポンコツ予想を並べ捲っているのがもうその時点でアレですし、『家計(生活意識アンケート調査、今後5年間)』でプロットされている数字が妙に低くて、脚注を見ると『2.
家計は、5択選択肢情報を用いた修正カールソン・パーキン法による。』ってなっているんですが、その結果の数字のプロット見ると1%台前半の数字とか言う直感的に信じがたい数字になっているんですよね、これどうやって計算してるのかしら????
いやまあ生活意識アンケートのインフレ見通しの数字に情報バイアスがあるのは分かるんですけど、長期時系列でみて2005年辺りと2013年辺りと今とが全部同じくらいってのは流石にどうなのかという結果になっていて、結果としてこの「予想インフレのサーベイ調査」では何と「企業(短観、5年後)」だけが2%に乗っていて後は全部2%行ってないという大変に面白い結果になっておられます。ついでに『ABEI』とありましてさっきのと並列してるのが物国BEIというのも誠にアレではございますな。
ということで、植田さん予想物価上昇率に関しても2%行ってないみたいな説明を良くしているのですが、そもそもお前その計測本当にそれでいいのか問題が生じる訳で、これがまだメカニズムで説明じゃないですけど、予想物価上昇率は上がってきているが2%でアンカーされているかどうかという点についてはこれまでの長期間のゼロノルムの影響が強かったこともあるので今しばらく見極めたい、みたいな説明にすりゃいいのに、「2%行ってない」とか数字をだしてしまうと、こちらもまた「では日銀は今の時点で予想物価上昇率をいかほどで見ておられるのでしょうか」って聞かれるとどうするのって話なわけよ。
これが例えば中立金利に対して足元の金融政策はどの程度緩和的か、みたいな話なら定量的な話を全部誤魔化しても「現在の状況が緩和的であることは誰も疑いないと思います」で済みますけれども、予想物価上昇率とか基調的な物価の話しって、そもそもCPIが2%を上振れて何か月経過しているんだという状況にあるんだから、そこを定量で勝負しに行ったらツッコミどころ満載でボロがボロボロ出るだけじゃん。と思うのに何で植田さんはあんなに自信満々に基調的な物価も期待インフレも2%行ってませんとか定量勝負しちゃうのかが良く分からんです。アタクシが振付師だったら定量で勝負はさせないけどな〜〜って思います。
・・・・・・ということで、まあ明日のプレビュー雑談的には「どういう屁理屈を繰り出してくるか」というのが興味あるのと、植田さんはどうせホーキッシュな事を言えないし、言った側から両論併記のつもりでハトハト小唄を歌いだして台無しにするから楽しみだなあ(棒読み)という所でございますか。
いや為替受けて急に利上げとか断固たる国債買入大減額とか言い出したらビビるけどw
〇そういえば企業向けサービス価格指数って長期的に上がっているんですね
https://www.boj.or.jp/statistics/pi/cspi_release/sppi2403.pdf
企業向けサービス価格指数(2024年3月速報)
今回はなんと
『付. 2023年度中の企業向けサービス価格指数の動向
(特別掲載)年度指数(総平均)の長期時系列』
ということで付録付きなのですが、この「(特別掲載)年度指数(総平均)の長期時系列」というのが大変にお洒落でございます。図表を貼るスキルが無いのでまあ上記PDFをみてちょ、という話ですけど。
1ページ目の下に『(指数推移)』ってのがありますが、その凡例「企業向けサービス価格指数・総平均」を見ますとなんかいい感じで実は長期的に着実に上がってはいるんですよね(途中消費増税の影響でグニャっと上方シフトしている場面を除けば割とコンスタントに)。
でまあここで先日の野口審議委員の佐賀金懇を思い出すわけですが、
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2024/ko240418a.htm
わが国の経済・物価情勢と金融政策
佐賀県金融経済懇談会における挨拶要旨
日本銀行政策委員会審議委員 野口 旭
2024年4月18日
『(3)「賃金と物価の好循環」確認のための二つの注目点』の頭にこんな記述があります。
『現時点の日本経済で最も重要なのは、いうまでもなく、物価・賃金のゼロノルムを払拭し、「賃金と物価の好循環」を可能な限り早く実現することです。そのためには、少なくとも以下の二点の確認が必要です。第一は、サービス価格が着実に上昇し続ける状態が復活することです。第二は、製造業でもとりわけ中小企業において、賃上げの販売価格への転嫁がスムーズに進展していくことです。』(この部分直上URL先2024年4月18日野口審議委員佐賀金懇挨拶より)
企業向けサービスは着実に上がっているという長期時系列を見てこれを思い出してしまいました。いやまあ企業向けサービスと消費者向けサービスは違うんで別に揚げ足取りに行ってるわけではなくて、こういう状況でしかもグラフの数値見たら上げ幅は以前よりも強くなっている訳ですから、これは早晩消費者向けのいろんなもんに影響する話ですよねとか思ってしまいました(企業の原価にも関わる話ですもんね)、まあ消費者向けサービス価格に影響するのかはまた別の話だと思うのですけど。
2024/04/24
〇でまあ金曜の会見が悪目立ちしそうなんだが
そういや昨日は国会で植田さんの委員会質疑があったようですが。
https://jp.reuters.com/economy/bank-of-japan/TOI7ST6FYRP2JANBDQ2AO3WZDU-2024-04-23/
基調的な物価、2%に向けて上昇なら金利引き上げていく=日銀総裁
By 和田崇彦、 竹本能文
2024年4月23日午前 11:54 GMT+9
『[東京 23日 ロイター] - 植田和男日銀総裁は23日の参院財政金融委員会で、先行き、基調的な物価上昇率が日銀の見通しに沿って2%に向けて上昇していけば、金融緩和の度合いを調整し、短期金利を引き上げていくと述べた。物価・経済見通しやリスクが変化すれば、政策変更の理由になるとも話した。ただ、金利変更の時期や幅については、予断を持っているわけではないとした。』(上記URL先より、以下同様)
ということでまあ穏当な書き方になっているのですが、実はこれロイターさんこの記事って当初のヘッドラインは上記記事で紹介されている答弁の中の「物価・経済見通しやリスクが変化すれば、政策変更の理由になるとも話した。」の方がヘッドラインになっていたんですよね。
まあ結局はヘッドラインバイアスだったのですが、当初そのヘッドラインでの記事だからってヘッドライン引用した形で別のベンダーさんとかでも記事紹介されてたりしてて、「ちょっとまって植田さん植田さん、そもそも見通し通りに推移したら短期金利は引き上げになるんじゃないの(見通しは「今後2%物価目標に向かって進む」としているのだから)」とツッコミを入れておった次第なんですねアタクシ。
ということでまあ国会中継ちゃんと見てろというお話ではあるのですが、これ植田さんの説明もどういう文脈なのかわからないけど不親切というか余計というか切り取られリスクを意識してないというかな訳で、そもそも論として「この先経済物価情勢が我々が示した見通し通りに推移すれば徐々に金融緩和の度合いを弱くしていきますそれは短期政策金利の引き上げによって実施します、ただしその速度や幅については現時点でお示しできる状況ではありません」という話なのであって、「見通しが〜」ってのは明らかに余計な発言なわけで、こういうのを言ってしまうのが植田さんの悪い所で、こういう余計な発言が切り取られてフレームアップしてしまうから市場がそれ見て反応しちゃうし、そういう市場の反応を火消ししようとして逆の発言をするもんだから言ってることが凄まじくブレブレになっているようにしか見えないし、「不規則発言と市場の悪循環」が高速大回転しておられるようにしか見えない訳です。
・・・・・ていうかですね、わざわざ言わずもがなの「物価・経済見通しやリスクが変化すれば、政策変更の理由になる」って言ってるのって実はこれが植田さんのハトハトチキンな本音がダダ漏れしたものであって、実際には見通し通り推移しているから短期政策金利上げますっていうのにビビっているんじゃなかろうか、とまあそんな邪推もしたくなるわけで、とにかくまあどうでも良いからお前は公式見解以外喋るなという事で金曜に向けて植田さんの余計な発言に不安しかありませんですわよ。
しかしまあ何ですな、こちらの記事によりますと
『植田総裁は先週19日、訪問先の米ワシントンで行った講演で、基調的に物価が上昇し続ければ金利を引き上げる「可能性が非常に高い」との考えを示した
もっと見る 。米国での記者会見や講演での一連の発言について植田総裁は「特に新しいことを話したというより、先々週までの記者会見や国会で話してきた内容をもう一度丁寧に説明した」と述べた。』
確かにそんなに新しいことを言った訳でもなさそう、というのはまあそうなんでしょうけれども、どっからどう見ても当初言ってた事からトーンを軌道修正してるようにしか見えない訳でして、これ植田さん頭が無茶苦茶良いもんだから多分ワシのようなアホアホさんの挙動が読めないのだろうなとは思うのですが、丁寧に説明しようとしてドツボに嵌っている、というのがあるのと、さっきの「見通しが変化すれば云々」にありますように、たぶん根が正直者だから言葉の端々から本音がダダ漏れしてしまう、というのに問題がある訳ですわ。
・・・・・・という訳で金曜を迎えるということになる訳ですが、アタクシもさっぱりコンセンサスが分からんのですが、たぶん円債の人って会見での発言トーンがハトハト音頭の緩和節一辺倒ではなくなって、ちゃんと今後は利上げだって国債買入減額だってするんだよ見通し通りに推移すれば、位の発言が出てくればそれでまあ順当って評価だと思うのです。
ただ、為替市場のベンダーニュースで出て来るコメントとかを見てると、なんか他市場、特に為替市場様の方ではもっと威勢の良い発言を期待しているんジャマイカという気がするのですけれども(個人の印象です)どうなんでしょうかね、と思う訳ですよ。もしアタクシの妄想があっているとなると、いつものように植田さんが丁寧な説明の積りで微妙に本音ダダ漏れ系の発言を交えて両論併記をしちゃうと、それだけれ「やっぱり日銀はダビッシュだぜ円売りヒャッハー」となりそうな悪寒がだいぶするんですよね、たぶん足元の円安ってドル高のせいでもありますけど、やっぱり「日銀は財政従属状態で利上げが出来ないから通貨の信認は上がることはないし下がってウヒョーの可能性もあるで」という円の売り方に見えて仕方ない(だから昨今のドル円見てると気持ち悪いことこの上ない)ので、まあ植田さんがちゃんとそのハトハトチキンの本音(かどうか知らんけどアタクシにはそう見えてしまう)を封印して、きっちりと本来すべき話を行って頂きたいですが、まあ無理だろうなあと思って戦々恐々とするのでありました。
いやまあ円安ぶっ飛んでしまえば日銀の「通貨防衛利上げ」が近くなって来るからそれはそれで見たい気持ちはあるが、そんな時にはこちとら舶来品を買えない世界になりかねないので勘弁して頂きたいものであります。
しかしこの植田さんの円安放置の不手際、本来はアベノミクスの答え合わせが今まさに行われている訳なのですが、このままだと「待つことのリスクは大きくない」とか言いながら円安を助長した植田さんの不手際という事でアベノミクスのせいにならなくなってきそうなのがさらにムカツク所ではありますし、黒ちゃんったら為替のこのテイタラクが起きるリスクを勘案して私の履歴書を物凄い勢いで出したんだったら流石だわと思うのでありました。
あ、そうそう。それから最近植田さん「基調的な物価」っていうのをやたら連呼するようになったんですけど、基調的な物価ってなんですかそれ数字と計算方法出してくれませんかねえ・・・・・・・・・・
2024/04/22
〇植田総裁が米国でご発言されておられるようですがスタンスを振り過ぎですいい加減にしてください
日銀のサイトにはさすがにまだのようですが(というか出るのかしらよくわからんですね)ベンダーバイアスがかかっているんじゃなかろうか、という事を念頭に置いてニュースをみてみようではあーりませんか。
まずはロイターさん
https://jp.reuters.com/opinion/forex-forum/SGNHL6KWKZI25I6KT4MP5ESUVY-2024-04-20/
利上げの可能性、物価上昇継続なら「非常に高い」=日銀総裁
By 木原麗花
2024年4月20日午前 10:44 GMT+9
ほうほうそうですかそうですか、ってかついこの前ロイターさんって「日銀は展望レポートの物価見通しが2%だからと言ってそれは利上げの理由になる訳ではない」とかいうハトハトバイアスの観測報道してたじゃんどうしたの急に、という話ですが。
『[ワシントン 19日 ロイター] - 日銀の植田和男総裁は19日、米ワシントンで講演し、基調的に物価が上昇し続ければ、金利を引き上げる「可能性が非常に高い」との考えを示した。』(上記URL先より、以下同様)
そりゃまあ確かに基調的な物価が上昇し続ければ利上げするわ、って話なので、
『植田総裁はピーターソン国際経済研究所のイベントで講演し、基調的なインフレ率は日銀が目標とする2%を下回っており、長期的なインフレ期待も1.5%近辺にとどまっているため、当面は緩和的金融政策を維持する必要があると述べた。』
という話なのですが、そもそも「基調的なインフレ率が2%を下回っており」というのは何をもって基調的なインフレというのか、というのが良く分からんですし、長期的なインフレ期待の1.5%ってなんですかというお話ですよね。
いやまあ確かに今の日本の物国BEIって10年カレント、と言いつつ発行の関係で足元では残存9年から1か月短いのですが、確かにカレント銘柄で150bp位なのですけど、まさかとは思いますが物国BEI使って長期インフレ期待を判断しているんですかというお話で、4半期の発行2500億円に対して4半期で1800億円購入されておられる日銀ちゃん(財務省バイバックが四半期で600な)が買入上げ下げしたら長期インフレ期待いじり放題じゃないですかヤダーと思いますし、あとはまあ物価見通しを無残なまでに外し続けているポンコツ何とかストの皆様から集計したESPフォーキャストとかいう集計が確かにずーっと弱いのですが、生活意識アンケートとか短観とかは丸無視なんですかそうですかいやーそういうのチェリーピッキングって言うんじゃなかったでしたっけとかまあそういういつものツッコミをする訳ですが。
でまあここで気になるのは、地の文章を読んでいないから実際にこう言ったのかどうかがわからないのですけれども、
「当面は緩和的金融政策を維持する必要がある」
って部分の意味なんですよね。
つまりですね、3月会合の声明文では「現時点での経済・物価見通しを前提にすれば、当面、緩和的な金融環境が継続すると考えている」となっているし、(基本的に邪道なんだが)声明文英語訳バージョンを見ると、「Given
the current outlook for economic activity and prices, the Bank anticipates
that accommodative financial conditions will be maintained for the time
being.」となっていまして、「継続すると考えている」「the Bank anticipates〜will
be maintained」であって、この書き方だと「緩和政策を徐々に縮小していく過程において当面(or
the time being)は緩和的な状況が急に無くなる訳ではないですよ」って説明文章に読めてしまうんですよね。
一方で報道の「維持する必要がある」ですとこれは日銀が物価目標達成のために能動的に大規模緩和を継続します、って言っている訳でして、3月声明文のニュアンスと違くないですか?????というお話でありまして、まあ要するにここの定義ちゃんとしやがれコノヤローって話な訳ですよ。
とまあこっちはアレですけどその後が、
『3月の金融政策決定会合で非伝統的な金融緩和策を打ち切ったことから日銀の政策は柔軟化しており、今後のデータ次第では短期金利目標を変更する可能性があるとした。』
となっているのも謎で、さっきは「維持する必要がある」っていってるのに何で「柔軟化していて短期目標を変更する可能性がある」になるのかが訳分らんのですよ。
いやまあどうせ利上げしたって「短期金利水準は経済物価情勢に対して十分緩和的(それはそうだわ)」と言い張るんでしょうけれども、だったらそもそも緩和的金融政策を”維持する必要”がある、というのが誤解を招くだろということで、どっちですねん植田さんというお話な訳です。
でもって記事全部引用になって申し訳ないのですが、
『「われわれは慎重に政策を進め、最近の政策変更が経済と物価に及ぼす影響を評価し、適切と判断すればさらなる調整を検討する必要がある」と述べた。国債買い入れの減額にも言及したが、時期と規模はまだ決定していないと述べた。』
だそうなんですけど、ベンダーバイアス掛かっているとは言え、ここに来てまた急に政策修正の可能性あるで、の方に話振るのは何なんですのという所ですね。
という事で確認のためにブルームバーグさんも。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-04-20/SC7O5NT0AFB400
緩和的な金融環境は当面継続、国債買い入れはいずれ減額へ−日銀総裁
野原良明
2024年4月20日 9:03 JST
→国債市場への介入を完全にやめるのは「危険」と3月会合で判断
→将来のどこかの時点で国債買い入れ額を減らす−ワシントンで講演
・・・・こちらは「緩和的な金融環境は当面継続」をメインにしていますね。
『日本銀行の植田和男総裁は19日、日銀による国債買い入れは継続されると指摘し、緩和的な金融環境が当面続くとの見通しをあらためて示した。』(上記URL先より、以下同様)
これ「緩和的な環境が続く」なのか「緩和政策が必要」なのかだと話の意味合いがだいぶ変わって来るんですが、まあ積極的にあいまいにしているんじゃないかなあとは思うのですが、あいまいにしないでほしいとアタクシは
思うのでありました。
『植田総裁はワシントンのピーターソン国際経済研究所で講演。日銀は将来のどこかの時点で国債買い入れ額を減らすと述べながらも、3月の金融政策決定会合では国債市場への介入を完全にやめるのは「危険」と判断したと説明した。』
完全に止める、ってまた何を言ってるんだこの人はという感じでして、そりゃいきなり輪番ゼロにしたらこっちは楽しいけど(ただの自己都合)そんなの現実的に無理だろお前は急に何を言い出すんだ。
でまあちょっと飛ばして先に行きますと、
『植田総裁は、日銀が慎重に政策を進めるとしながらも、基調的な物価トレンドが改善すれば、さらに金利を引き上げる公算が大きいと指摘した。』
なるほどブルームバーグもこのように説明と。
『植田総裁は、3月会合で政策修正を決めた背景について、30年ぶりの力強い賃上げが日銀政策の修正に十分となる物価目標達成の確率を高めることに寄与したと説明した。』
『同総裁は今月初めの一部メディアとのインタビューで、物価トレンドが改善する公算が大きいことを挙げ、今年後半の追加利上げの可能性を示唆した。最近の円安加速が利上げの時期を早める可能性もあると、複数のエコノミストが指摘している。』
ということで、まあそこまで大した話をしているようでもないのですが、そうは言いましても3月会合前の辺りと3月会合結果を受けた会見におけるハトハト音頭からはだいぶ普通というか本来はそうだろ、というトーンになっている訳でして、そもそも論としてマイナス金利とYCC解除したのって情勢が好転したから(副作用対応ではない、というのも重要な隠れたポイントね)なのであるからして、それは情勢の好転が続けば当然緩和の縮小に向かう、というのをちゃんと説明するというスタンスに戻した、というのが朝日新聞インタビュー辺りからの動き、ということになろうかと思います。
まあそうは言いましても円安に隙あらば振れてしまうのは「日銀は財政を気にして本来行うべき緩和修正が出来ない」と思われだしている、即ち悪性の通貨安連想が段々定着しているんじゃないですかねえ(しかも月初の輪番減額せずが拍車掛けましたわな)となっていて、どうせ植田総裁が今言ってるのは為替牽制の為で実際には何も出来ないでしょ、と見透かされているんだとするヤバいっすねえ。
・・・・・・でまあそれはそれとして、いずれにしても植田総裁の発言というかスタンスが振れ過ぎですよね、というここもと隙あらば悪態ついていますが、まあそこに帰着するのですな。
恐らくマイナス金利解除にセットでYCCとかリスク性資産買入停止とか変な貸出支援基金の是正とかをするために、背景の理屈について曖昧にいうか妥協の産物みたいにしてて、その結果「緩和的な金融環境」の部分もそうですし、長期国債買入の位置づけや建付けについてもそうですし、どういう風にしたら良いのか問題を有耶無耶にして特攻したんだと思うので、4月会合でもう少しこの辺を明確化して欲しい、というのが最近何度も書いておりますがそこに帰着するのでありました。いやこの調子で発言フラフラしてるのヤバいですって。