金融政策概観(2015年度下期後半(2016年01月〜03月))
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2015年度下期後半の見出し
2016/01/29「追加緩和やるったって限界的な効果あるのかね(編集時追記:この日マイナス金利が投下されるとは予想だにしていない)」
2016/01/27「渡辺務宣氏は「賃金目標」とかできない話/浜田宏一先生は「2%早期達成の話を徹底誤魔化し作戦」に」
2016/01/26「木曜のECBドラギ追加緩和示唆で株高円安になっているので債券市場は追加緩和見通しの勢い弱まる」
2016/01/25「黒田総裁ダボス会議出席して必要なら追加緩和発言」
2016/01/22「日経がやや遠慮気味に「日銀に追加緩和論」を」
2016/01/21「為替や株が追加緩和追い込みに来ていますね」
2016/01/20「春闘が期待外れになることが濃厚で黒田総裁は「躊躇なく」を連発」
2016/01/19「さくらレポートは前回と総裁挨拶も判断も横ばいとな/バーゼルのトレーディングリスク規制に関してのリリース」
2016/01/18「浜田内閣参与2%達成にこだわるなとか追加緩和不要とか梯子外しまくり」
2016/01/15「日銀レビューで謀反ペーパーかと思ったら著者は外部でした(笑)/政策の限界論に関して益々黒田総裁が意固地発言」
2016/01/14「消費増税の軽減税率分を外為特会利用だと??/伊藤隆敏先生中国ショックの円高大丈夫とか日銀のテーパーとか能天気発言」
2016/01/13「日銀が春闘を強調してたら春闘がどうも怪しい/バーゼルのマーケットリスク規制に関して公表があったようで」
2016/01/12「生活意識調査の物価の部分が残念無念/決定会合「主な意見」初の見参:議事要旨よりは少数意見が読みやすいかな」
2016/01/08「年初来株安円高が続き1月会合何もしないと思うが追い込まれつつある感じはある」
2016/01/07「このタイミングで需給ギャップと潜在成長率の公表に踏み切るとな」
2016/01/06「補完措置で登場した新指数ETFの意見募集とな/黒田総裁の連合会合での会見が意地張っているように見える
2016/01/05「年初早々上海株などから株下げとなり2%には政府が梯子を外し展望レポート見通し引き下げ記事なども」
2016/01/04「今年の政策は2%未達の言い訳とオペの限界のどちらが先か、ですかね」
2016/01/29
○さてMPMですが(編集時追記:ご案内の通りこの日はまさかの「マイナス金利政策」が撃ち込まれたのですが、まさかそれはないと思っていましたので「追加緩和するのはいいけど効果あるのか?」という話をしておりました、笑)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDF28H0U_Y6A120C1EA2000/?dg=1
日銀、追加緩和を議論へ 「脱デフレ」遅れに危機感
金融政策決定会合
2016/1/29 2:00日本経済新聞 電子版
『日銀は29日の金融政策決定会合で追加的な金融緩和の是非を議論する。原油価格の急落や中国経済の減速で先行きの不透明感が強まっているため、景気や物価に及ぼすリスクを見極める。日銀内には目標とする物価2%上昇の達成が難しくなるなら、より大胆な緩和策を決めるべきだとの意見がある。副作用も考慮し、確かな効果が得られるのか慎重に検討する。』(上記URL先より)
今回に関してはガチでどうなるのか読みにくい会合でして、日経新聞のこちらの記事でも思いっきり両建て状態の書き方ですな(全文読んでないけど)。たぶん「まあ今回はやらないと思うけどやる可能性が無い訳ではない」というのが大体コンセンサス(そのコンセンサスは何じゃといわれそうですが)なのではないかと愚考。
インフレ期待とか足元のインフレ動向とかを考えれば今までのロジックだと追加緩和実施、という話になるのですが、日銀の最近の説明は日銀コアもそうなんですけれども、上昇品目が多いという点や、物価指数の最頻値などのド安定して動かなかった部分が若干改善の傾向を見せている点など、物価の基調の改善という形での物価判断を行っているので、その説明の延長だと今の政策を継続して行けば良いという話になりそうな感じ。
追加緩和をするのは良いのですが、今のペースの買入をさらに増やすと日銀買入の額が市中発行を大きく上回ることになるので、元々今のバランスでも大概にしんどい中でもう一段需給をおかしくする訳ですから、長期国債買入拡大するのはいいけれども、拡大すると国債買入の限界が早く来るからやり難い、というのもこれまた問題。
今の政策の技術的な限界点を露呈させる前に「勝ち逃げ」が出来れば全く問題は無いのですけれども、今回物価見通しを下げることになるという位ですから「勝ち逃げ」の出来るタイミングが技術的な限界を露呈する(今でも大概言われていますが限界というのは10年国債マイナス位派手なことにってからでしょ)前に来るとは中々思えません。
その代わりに「物価目標達成時期(2%はそのまま)の柔軟化(中長期でもローリングターゲットでも良いが)」をすることによってQQEのバージョンアップと称して長期間維持可能な金融緩和体制への組み換えを行う、というのが爆発しない「転進」の図なのですが、これも一種の「勝ち逃げ」形式にしないとQQE政策の敗北とか失敗とか言われて政権の経済政策そのものへの評価にもつながってしまいますから、柔軟化するにしても「勝ち逃げ」が出来る時じゃないと厳しくて、今のように市場が追い込みに行くような状態での「転進」はまあ無理でしょ(やったら凄いけど)と思います。
本来そのタイミングって昨年「新三本の矢」が出てきた所で株価も好調だし景気もまあ悪くはなさそうだし、という中で「中長期的に成長戦略に取り組んで金融政策はこの間緩和的な金融政策でサポートを行う」という中長期的な視点を持ち出すというのが出し所だったと思うのですが、何かそういう話にならないで目先の対応に追われているうちに年初からのアレという流れになってしまったのは残念無念。
まー次に見直し出来るのは参院選後(本来ならとっととやるべきだと思うが)とかなのでしょうが、肝心の黒田総裁がそういう枠組み変更に乗って来るのかもこれまた微妙でして、「2%早期達成と言われたのだから2%早期達成やるんじゃゴルァ」という風情でドンドン突き進むし、年末年初のあの威勢のよい発言から見ますと「常識的に政策を爆発させる前に収拾しないと」というよりも「政策が爆発しても突き進む」という誰得おじさんとなっていると推測する方が順当っぽいのがオソロシスですな。
しかしまあ何ですな、追加緩和するとそらまあファーストアクションは金利低下でしょうし、国債の需給がひっ迫するからそちらからも金利低下要因なんでしょうけれども、皆様ご案内の通りで国債買入ペースをここから引き上げると政策の限界を手前に引き寄せる効果が思いっきりありますので、その点からして政策が続けられなくなるという見方を呼んで板スカスカ(需給が日銀で更に締められるから)の中でボラだけ凶悪に高まるというような展開なのかもしれませんね。
それからIOER下げの話って(毎回ネタには浮上しますが今回は割と多めに)言及されるのですけれども、IOER下げるとなると国債買入の量をこなすのに必要な金利低下が一段と大きくなる(国債売ってIOER受取となるインセンティブが下がるのだからより高いお値段じゃないと国債を日銀に売らない)ので、これまたMB拡大政策の限界を手前に持って行く効果があって、別に計算している訳ではないですけれども、10兆円の買入拡大よりもIOER下げる方が政策の限界を速めることになるでしょうねと思います(MB目標を放棄してしらっと短国買入を止めれば政策の持ちが長くなりそうだが)。
もちろんMB政策から金利政策に変更するという形でIOER下げに掛かる手はありますけれども、それは「転進」シナリオとなりますので「勝ち逃げ」が出来ない状況の中では無理でしょうな。
とまあそんな感じで整理になっていない整理をしておりますが、今回は「普通に考えると追加緩和して得られるメリットがあまりないのに追加緩和しますかねえ」というイメージではおります。なお株と為替があばばばばーとなった時は追い込まれ追加緩和でしょうけど。
2016/01/27
○その前にちょっと雑談(編集時追記:かなり後日になってから編集しているので恐縮ですが、この時期から「賃金が上がっていない」という指摘があり、浜田先生は2%の早期達成をあきらめている発言をしている)
・日銀役員給与の上げが足りませんな
うむ。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/rel160126a.htm/
日本銀行の役員給与の改訂について
2016年1月26日 日本銀行
『日本銀行は、「日本銀行における役員の給与等の支給の基準」(別紙参照)に基づき、各役員の役員手当の引上げ(役員俸給は据え置き)により、平成27年度の年収を26年度対比0.4%引き上げることとしました。この結果、役員の給与は、以下のとおりとなります。』
ベースアップで経済の好循環を!という話をしているのに0.4%では足りないじゃないですかと思ったのですが、一般職員じゃなくて役員ですし、そもそも2年で達成するというものを2年で達成していないのだから増えないということですねわかります。
・渡辺先生ェ・・・・・・・・・・・・
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O1I4826JTSED01.html
黒田日銀は賃金目標にくら替えを、「天と地ほど違う」−渡辺東大院教授
2016/01/26 15:42 JST
「賃金上げを目指します!」というのはそらまあ世間受けは良いと思うのですが、中央銀行がどうやって賃金を上げるのかという具体的手段が無い(物価との相関性があるからという話だがそもそも現在の置物リフレ政策という極端な政策でも原油安一発で撃沈しているという状況(個人的にはどこかで突如爆発して誰得物価上昇になるのではないかとは思うのですけど)なのに、そこから賃金にどう波及させられるのかと言う事で、ちと話に無理が無いですかねえと。
まあ出すならフォワードガイダンスとして出すとか、物価安定目標達成時の経済の姿として賃金もこのくらい上がっているというような話を出すとかいう事であって、賃金「目標」というのはお話としては面白い(正直これは飲み会での与太話では良く出る)のですが、大真面目に出すとなると統制経済キターという話になりませんかね。
物価目標達成の目安に賃金上昇みたいな所得の上昇も確認、というのなら良いですが、それって結局「総合判断」の範疇に入るので最早何が何だか。
・浜田先生ェ・・・・・・・・・・・
http://toyokeizai.net/articles/-/101990
浜田宏一氏「金融緩和を止めてはならない」
止めてしまえば元の木阿弥になってしまう
2016年01月26日
えーっとですな、金融緩和をいきなり止めろとは多分誰も言ってなくて、今の爆発的な勢いの国債買入MB拡大やっていても追加の買入で得られる効果よりも副作用の方が大きいし、物理的にも長期間に渡って継続できる政策じゃないから、もうちょっと見直して中長期的に継続できる穏当なレベルの緩和政策に切り替えて、物価目標の達成のタイムホライズンももう少し長くして、その間にトレンドグロースを上げる政策を実施していけばという話をしていると思うのですが・・・・・・・・・・・・・・
と思ったら、
『だが金融緩和によってこれ以上需要だけを増やそうとしても、日本経済をさらによくするのは難しい。また欧州危機や「チャイナショック」などもあり、金融緩和をしてもアベノミクスの初期のように劇的な成果を上げるのは難しくなっている。今は日本経済の構造改革を進め、供給力を増やすように持っていくことが大事だ。』(上記URL先より)
ということで何だ中長期的に取り組もうという話だから木内さんみたいな話じゃんと思うのですが・・・・・・・
上記インタビュー記事の2ページ目
http://toyokeizai.net/articles/-/101990?page=2
『私がこうして構造改革の話をすると、かねてから金融緩和を重視した経済政策に異論を唱えている人々は「浜田教授はだいぶ大人になってきたようだ」と喜び、一方で金融緩和論者は「弱気になったのか」と怒り出す人もいるようだ。』(上記URL先より、以下同様)
元々は物価目標達成したらこういう構造問題も解決する的なご説明だったような気がするのですが。
『だが、私が言いたいのは、「金融緩和はこれからも必要」ということだ。もし、今金融緩和をやめてしまったら、日本経済は再び需要不足に陥り、失業が増えてしまう。これでは日銀がせっかく緩和をしたにもかかわらず、途中でやめてしまった時代に逆戻り。元の木阿弥になってしまう。』
えーっとですから別に金融緩和を「止めろ」とか言ってる人は余程極端な話をする人以外ではいないと思う訳で、今の政策を継続するよりも枠組みを考え直したらという話をしているのですけれども・・・・・・・・・・
『現在は残念だが、まだ労働者の賃金が上昇しているとは言えない状態だ。これは本当に労働力がひっ迫していないか、あるいは正規労働者と非正規労働者の二重構造問題などが考えられる。だから積極的に賃金を上げ、生産性の低い企業に退出を促すのが官邸の考え方。私は、賃金を先にあげてしまうと企業のコスト増となりかねないため、一時的に実質賃金が下がっても先に物価を上げて企業の有利にしておくほうが雇用が継続し、需要も増えると考えるが、そこはいろいろな意見がある。』
円安コストプッシュで物価を上げて実質賃金下がると労賃のところでは実質費用下がるかもしれないけど、コスト要因での物価上昇がトータルで企業に本当に有利なのかは微妙な気がしますがそれはさておき。
『日銀が買う国債が不足する「札割れ」の状況などは技術的な問題で、日銀が打つ手がないわけではなく、いろいろな手段がある。たとえば外債を買ってもいい。』
ここからの金融緩和で日本経済をさらに良くするのは難しいのでしたら緩和の手段云々をそんなに気にする必要は無いような気がするのですが・・・・・・・・・・・・・
http://toyokeizai.net/articles/-/101990?page=3
『もちろん、「外債購入は為替操作などにあたる」といった指摘もあり、国際金融畑でならした黒田総裁がそうした政策に踏み切るかどうかはわからない。また、各市場の厚みの問題などもあり、どんな市場で働きかけても、副作用が増えることは覚悟しなければならないのも事実だ。』(上記URL先より)
・・・・・・・・・・・打つ手がない訳ではないとのことですが具体策が結局提示されていないのに打つ手がないと言われましてもいやあのそれは困るのですけれども。
とまあさらっと拝読しましたが、2%物価目標の早期達成は容易で、物価目標を達成したらいろいろな問題も一気に解決に向かうという話はすっかりフェードアウトしておられまして、「2年を念頭にできるだけ早期に2%達成」とやっているのが日銀ばかりなりという状況になってすっかり梯子を外された状態になっているというのは把握しましたが、その梯子外された日銀によってすっかり焼け野原になっている債券市場の片隅で棲息している不肖このアタクシとしては落涙せざるを得ませんな。
とまあ雑談でした。
2016/01/26
○昨日の時点では「追加緩和無いんじゃないの」の方が多かったと思われますが(編集時追記:木曜夜のECBでのドラギ追加緩和示唆発言で株高になったので急に円債市場では追加緩和観測が後退中)
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O1I46K6JIJUS01.html
日銀:直前まで市場見極めぎりぎりの判断、今週の決定会合−関係者
2016/01/26 00:01 JST
謎の関係者キターと思ったら今回は金融政策にコメントする人たちを集めた記事で、別に中でどういう話をしている的な取材ネタというよりも、日銀の行動様式に詳しい人たちのコメントによって日銀の行動を読むという内容ですな。
『(ブルームバーグ):日本銀行が28、29両日に開く金融政策決定会合は、2%物価目標の早期達成のために追加緩和が必要かどうか、直前まで市場動向等を見極めつつ、ぎりぎりの判断となる見込みだ。複数の関係者への取材で分かった。
複数の関係者によると、日銀内には、原油価格の下落もあり物価見通しの下方修正が不可避となる中、春闘の賃上げも2%物価目標の早期達成には不十分という悲観的な見方も出ている。一方で、春闘は始まったばかりなのに加え、市場の混乱が実体経済に影響を及ぼしているわけではないため、情勢を見極めるには時間的余裕があるとの見方もあり、意見が交錯している。』(上記URL先より)
木曜の時点ではこらもう追加緩和待ったなしだろうというイメージの方が強かったと思うのですが、その夜からのドラギ上げによって円高株安がちょっとこれはマズーという状況から大いに戻り、月曜も相場が落ち着いていた事もあって、月曜になりますと追加緩和に絡むレポートは思いのほか追加緩和無しという感じで、債券方面では現在追加緩和で盛り上がるような感じではないように見受けられます。他市場ではまだ期待が高いように思えるのですが。
まあしかし株が上がると急速に1月の追加緩和期待(予想)が後退して来るというのも何だかなあと思いますが、FOMC結果以降によってまたまたリスクオフとかになると日銀もさてどうしましょ的な話になるんでしょう。先週木曜位のあばばばばー状態になってしまった場合って「追加緩和をやらなければ失望で株安円高進行」、「追加緩和をやってもそもそも直に効くかどうか怪しくて、結局数日しか持たなくてやっぱり株安円高進行」という感じに追い詰めれられている訳で、そんな中でどうするのか、と言えば冷静に考えたら持ち球が少ないのだからカードは切らずに温存するものだと思われますが、「やらなくてダメよりやってダメの方がエクスキューズが出来る」という「言い訳の為に行う小規模戦闘で兵を無駄にする」みたいな動きを選んでしまう流れになってしまう、というのが末期症状を示していますなあとは思います。
いずれにせよ直前の金融市場動向次第な所がありそう(それも何だよという感じではありますが)ですので、ギリギリまで良く分からん(メインは現状維持)ですから、まあそんな状況下で2%物価目標を中長期で達成とかMB目標の放棄みたいなロジック再構築的な事はできないでしょうね。
2016/01/25
○ということで引き続き緩和関連与太メモ(編集時追記:ダボス会議で「必要ならば追加緩和」発言、後でお分かりの通りダボス会議行って帰ってきたらまさかのマイナス金利政策投下になったわけです)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160124/k10010383061000.html
日銀総裁 必要であれば追加緩和も
1月24日 6時32分
『スイスで開かれていた世界経済フォーラムの年次総会、「ダボス会議」に出席した日銀の黒田総裁は23日、現地で記者団の取材に応じ、ことしに入ってからの市場の動きは注視している、としたうえで、目標としている物価目標の達成に向けて「必要であればちゅうちょなく追加緩和だろうと何だろうと金融政策を調整する用意がある」と述べました。』(上記URL先より)
会見テキストとか講演テキストとかで出てくるときって「必要であれば躊躇なく金融政策を調整」とは言ってますが、「追加緩和」という言い方はあまりしていなかったように記憶しているのですが、追加緩和という文言キタコレですな。
・・・・・・・・とは言いましても、「金融市場の動揺がインフレ期待の低下や実体経済への悪影響を与える蓋然性が極めて高い」という理屈を繰り出せるのでなければ、ここで追加緩和するのってロジック的にはかなり無理がある(春闘に向けてマインド鼓舞するから追加緩和というネタはあるかも知れんがそれをやるならどんなに遅くとも昨年末にやらないと意味がなくて今更理由に使えないし、さくらレポートだって別に悪くは無いし名古屋なんぞは判断引き上げをしていますし・・・・・・・・)とは思えます。
#これで適当に逐次投入してガス抜きができるのなら逐次投入なのでしょうが
でもってまあ思ったのは、結局の所米国様の所が利上げ正常化一時凍結みたいな話になってくれれば日銀別になにもしなくても行けるんじゃネーノという話で(もはやロジカルでもなんでもないが)、今回のFOMC声明文で金融市場の動向についての懸念みたいなのを昨年9月のように打ちこんで頂ければ3月利上げ無し→金融市場ニッコリ→株高ドル安資源価格下落一服という図になるんですかねえとは思うのですが、問題のFOMCちゃんが今回日和声明文を出してしまうと3月利上げが絶対的に困難になってしまうという問題を抱えていて(1月やったら3月までFOMCが無いから)ここでいきなり旗を降ろすような動きに出るのかと言うとそこも微妙っつーか旗下ろしたくないんじゃネーノと思われる所です。
とまあ直前まで色々な要素があるのですが、全て金融市場マターの要素で、本来は金融政策は足元の金融市場動向云々ではなくて、経済物価動向をフォワードルッキングで運営するものなので、どうもこうドラギ先生が相変わらずドラギマジック扱いされていますが、あのおっちゃんが毎度足元の金融市場に振り回されるっちゅうか、金融市場の動きを何とか自分でコントロールさせよう(単に時間を稼いでいるだけのようにも思えますが)としているのが話をややこしくしているんじゃないかなあなどとも思うのでありました。
2016/01/22
○日経朝刊キタコレ(編集時追記:追加緩和観測の微妙なトーンの記事)
と言っても紙ではなくてモーサテと日経ネットで知るのですが。
http://www.nikkei.com/article/DGKKASDF21H0M_R20C16A1EA2000/
日銀に追加緩和論
原油安、物価目標に黄信号 市場動向見極め 28日から決定会合
2016/1/22付日本経済新聞 朝刊
『日銀内で追加緩和論が浮上してきた。原油価格の下落で2%の物価上昇目標の達成が難しくなっているうえ、円高・株安の加速で景気が下押しされるリスクがあるためだ。ただ、日銀だけが動いても世界的な市場の動揺は鎮まらないとの意見もある。市場動向をにらみながら、28日から2日間の日程で開く金融政策決定会合で慎重に議論する。』(上記URL先より)
さ あ 盛 り 上 が っ て ま い り ま し た ! ! ! !
黒田さんが自分で威勢の良い事言いまくって掛け金上げ過ぎた挙句に引っ込みがつかなくなるわ、特に株式市場に追い込まれてQQE2が無かったことになりそうな水準に接近(今日はシカゴ見るとまずは戻るんでそうはならんのでしょうけど)するわという事で、昨日も申しあげたように追加緩和をしなければ年末年始来の大口は何だったのかという話になりますし、追加緩和をしたらしたで今の枠組みだと打ち止め感が強まってしまうので、やってもやらなくてもマズーな未来が目に浮かんできますが、記事にある「日銀だけが動いても」という部分はドラギのおっちゃんがジャンキー予告ホームランをしてくれたので「日銀だけ」にならないですね!!!!!!!!!!!
でまあ追加緩和のメニューがどうのこうのという話は昨日妄想して結局ネタがねえなあと思います。もちろん枠組みを全部変えるのなら幾らでもネタがあるのですが、そういう「転進」はイカサマでも「勝った勝った」と宣伝ができる時でないとただの敗戦と理解されるのが仕様であって、金融市場がここまで追い込みにかかっている中で「デフレ脱却したからQQEは大勝利で次の戦線は金利ターゲットで時間軸ですよ皆さん!」と言っても負け犬の遠吠えあるいは曳かれ者の小唄にしか聞こえないので、よーできんでしょと思われ、結果としては「これにて残弾無し」と思われてしまう追加緩和しかできないので、まあやらずに済ませられるのならやりたくは無いのでしょうけれどもね。
なお、追加緩和期待で先に株や為替が戻ってしまうと大手を振って現状維持にされると思いますので、今日や月曜の動き次第な面は結構あるんじゃないですかねえ。足元の金融市場のどうこうで追加緩和するしないの思惑が振り回される金融政策というのも如何な物かとは思いますけど。
2016/01/21
○市場メモメモ
・株安債券高の中短い所に売りとな
うむ。
http://jp.reuters.com/article/idJPL3N154280
News | 2016年 01月 20日 15:11 JST
〔マーケットアイ〕金利:国債先物が小反発で引け、長期金利0.215%に小幅上昇
『[東京 20日 ロイター] -
<15:08> 国債先物が小反発で引け、長期金利0.215%に小幅上昇
国債先物中心限月3月限は前日比3銭高の149円59銭と小反発して引けた。前日の米債安を受けて、朝方は売りが先行。21日の20年債入札を前にした調整圧力も上値を重くした。一方で日銀買い入れなどを背景にした好需給が相場を下支え。日経平均が下げ幅を拡大した午後は、海外勢の買いを巻き込んで強含んだ。現物市場は株安を受けて超長期ゾーンを中心に底堅く推移し、イールドカーブフラット化。市場では、リスクオフの強まりで安全資産とされる国債を選好する流れが続いており、20年債入札は、業者のショートカバー需要も加わって、無難に通過するとの見方も出ている。10年最長期国債利回り(長期金利)は同0.5bp高い0.215%。』(上記URL先より)
ということで最後は若干強いという結果でしたので記になるとサラサラ流されているのですが、昨日は2年とかの短い国債のゾーンや超長期に一旦売りが出たような風情がありまして、超長期ちゃんの方は持ち直したのですが、短い所の方はコケたままの巻となって終了。
まー元々マーケットメーカーの所に玉が全然ない中でちょろっと買いが来るとマイナス金利が拡大、という感じで2年債の新発以外ってマイナス5bpだのマイナス6bpだのという引値を付けていたのですが、玉が出たと思しき途端に3毛とか甘くなってしまうという日銀による国債吸い上げが行き着いて市場がカラカラになった後にどういう事になるのでしょうかという質問に対する一つのヒントのような展開になっておりましたな。
とは申しましてもマイナス金利はマイナス金利なので別に市場の価格形成がまともに戻ったというような話でも何でもないのですけれども、リスク資産がドカドカ下がる中で短期ゾーンに玉が出るというのは益出しとかキャッシュ化みたいな連想になるのでほほーという感じですが、実際に何で売ったのよというのは売った本人じゃないと分からないから何とも言えませんな。
というような状況の中で本日は3M入札を迎える訳ですが、日銀短国買入は今月のフローは多めで推移という見込みだと思われまして、金曜の買入がどうせ2.5兆円とかになると思われますが、最近は3M短国が日銀買入では入らないような価格形成になっていて(書けませんでしたが月曜の1年短国もマイナス水準で入札して更にドマイナスで引けるという展開)、これらの6Mと1Yの短国買入専用機の在庫水準が日銀買入予定額対比で減っていないと3Mの番にならんという形ですので、まあその辺の在庫水準次第かなと。来週はMPMが金曜にあるので短国買入は2月1日に実施と思われるので今週の短国買入に打ち込める自信があれば別ですがそうじゃないとこの3Mを入札後オリャオリャとやる訳にも行かんでしょうなと存じます。
でもってリスクオフで短い所にニーズだぜヒャッハーの逆の展開になったのが昨日という事ですので、そんな中の3M短国だと今日はちょっと重いのかも知れませんし、やっぱりリスクオフで避難先の短期国債にニーズだぜと来るのかもしれませんし、その辺どっちに転ぶのかは昨日玉を出したと思しき方々が益出しなのかキャッシュ化なのかによってイメージ違ってきますよねという当たり前のメモだけ置いておきます。
・業態別当座預金残高
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/cabs/cabs.htm/
12月積み期間(12/16-1/15)ですが、平残ベースで大きく増えているのは都市銀行とその他準備預金制度適用先というのはまあそうでしょうなあと思いましたが、信託銀行が若干減っているのがちょっと興味があったのと、末残と平残の乖離を見るとへーと思ったのは、都市銀行については11月は平残対比で末残が上に振れているのですが12月は末残が11月末残よりも抑えられている一方で平残の方は11月、12月と順調に拡大しているという形になっていまして、ちと面白かったです。
○ヤケクソ追加緩和に追い込まれそうな市場の追い込みですが・・・・・・・・・・
あちゃー
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O18UDO6TTDVG01.html
ダウ平均400ドル安、原油急落で金融市場が混乱−ドルは一時115円台
2016/01/21 02:38 JS
まあ結局250ドルほど下がっておられる訳ですが(何故か敬語)、来週金曜がMPM2日目でございまして、展望レポートもありますよというタイミングでございますので、そこから逆算しますと今日明日と月曜辺りの市場動向というのがアチャーとなっていると日銀としても中々苦しい展開となってまいりましたという所です。まあ勝手に妄想しますと為替は概ね115円というのが企業が想定するラインの下限という所でしょうし、日経ベースで16000円割ってくるとQQE2を実施する直前の水準ということになり、QQE2やったけど株は結局上がりませんでしたよねという話になって見苦しい、という辺りになった場合に、日銀は追加緩和をしないのなら何でしないのかという説明をしろとゴリゴリ詰められる展開でございますわな。
しかしまあ12月補完措置実施→緩和政策の限界論が俄かに人口に膾炙する→否定する為に総裁が年末年始にトーンアップして2%達成のために必要な措置を何でもするとか強調する→円高株安の中で何もしないと「さっきの何でもするというのはウソだったのか」となってしまうので説明が苦しくなる、という見事な負の流れになっている訳ですので、これはもう黒田さん意地になってヤケクソの追加緩和というリスク(さすがにメインにする気は起きんが^^)で、しかもこの市場動向のタイミングというのが何とも味わいがありますな。
・・・・・・・・・・とは申しましてもヤケクソ追加緩和するにしても実は何をするのかというのが難しくて、今のMB直線一気理論&実質金利低下で投資や消費が出ますよ理論を使いますと、結局の所MB拡大ペースを最低10兆円規模で拡大しないといけない&長期国債の買入ペースを拡大しないといけない、となるのですが、先般の補完措置で今の政策枠組みにおけるタマの残弾が尽きつつある、というのが世間に知れ渡ってしまった以上、10兆なり20兆なり長期国債買入を拡大してもこれでタマがほぼなくなったという認識になって、株とか為替とかの反応も一旦好感してもそんなに持続しないのではないかという悪寒が。でもって債券だけは実弾が増えるのだから更に焼け野原になるんですけどね!!!!!!
でまあどうせ株が下がっているのだからETF購入拡大というのは話としてはありそうなのですが、株が下がって国民負担というような批判にどこまで耐えられるのかという話って株が下がる中だと実は結構ナーバスになる問題の筈で、まあこうなったらヤケクソで拡大するのかも知れませんが、あまりにも露骨で品が無いのをどの程度出来るのかというのはうーむという感じがします。
まー緩和政策の出尽くし感を無くすためには本当は政策パッケージを入れ替えて、何ぼでも追加が打てるような枠組みにしないといけなくて、今のように短期決戦前提で作ったのにずるずる長期化しつつあるとかいうどこかの戦争のような状態になっている中で追加やっても残弾ナシ状態を見透かされるだけですし、現実問題として国債買入ペース20兆拡大とかしたら政策爆発のタイミングを大幅に手前に寄せるだけなので、作戦的には今回ヤケクソ追加緩和を実施するというのは(政策パッケージの入れ替えを伴わない限り)ただの無駄タマなのですが、どうせダメなら最後の無駄タマまで全部打ち尽くして全部燃えてしまえというヤケクソ状態になれば後先考えずに今の枠組みのままで追加緩和して天佑神助を待つという可能性ががががが。
なお、枠組み変えて何かする、というのは何ぼ何でも理論武装するのに時間が無いでしょうし(以前から実は考えていた、というのなら別ですけど)、大体からしてただの敗北宣言と取られる可能性を考えるとこの時期で枠組み変える訳にも行かんでしょうな。やるなら7月以降でしょ。
まー今の枠組みだと国債10兆か20兆拡大でしょうな(ETFは謎)。でまあ拡大する間に年限も長期化されるとかそんな感じで。ちなみに政策持たせたければ短期の金利を上げておいた方が良いので、本当は国債20兆円増やしてMBは10兆しか増やさないでツイストやった方がオペレーショナル的にはベター(国債のカーブが寝てあばばばばーですが)な気がしますけどたぶんアピール的に訳分からんから買入拡大した分はMB増える形にするでしょうけれどもね。
2016/01/20
○春闘期待薄でBBGお得意の関係者ネタ登場
既に散々報道されていますが
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO96311520Q6A120C1EA2000/?dg=1
賃上げ、市場動揺が逆風 春季交渉が事実上スタート
2016/1/20 1:11日本経済新聞 電子版
『2016年の春季労使交渉が19日、事実上スタートした。経団連は同日発表した交渉の指針で15年を上回る「年収ベースでの賃上げ」を検討するよう企業に求めたが、昨年とは異なり、基本給を一律に底上げするベースアップ(ベア)には慎重姿勢をにじませた。年明けから円高・株安が進み企業業績の先行きに不透明感が増したことも賃上げの逆風になっている。』(上記URL先より)
ということで正式に経団連の指針が出ておりますが、まーどこからどう見ても2%物価目標に向けて力強く賃金が上昇するような状態ではなくて、この前まで春闘春闘言いまくっていた日銀涙目ということでブルームバーグの毎度おなじみの「関係者」ソースでの日銀政策記事登場となりますな。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O16GMC6TTDS101.html
日銀:春闘に失望感強める、物価見通し再度の下方修正を検討−関係者
2016/01/19 19:03 JST
『(ブルームバーグ):2016年の春闘に対する失望感が日本銀行の中で強まっていることが複数の関係者への取材で明らかになった。黒田東彦総裁が強い関心を寄せている春闘が期待外れの結果に終わる公算が大きい中、来週にも追加緩和が行われる可能性が出てきている。』(上記URL先より、以下同様)
ということで関係者と言ってもどういう関係者だか分からない記事キタコレではありますけれども、まー賃金と春闘の所を強調しすぎたらいきなりこうなってしまいましたぞなという事で日銀残念無念。
『「高水準の企業収益と労働需給のひっ迫からすると、賃金上昇はやや鈍い」と黒田総裁は国会で15日答弁した。関係者によると、こうした懸念は日銀内で共有されつつある。賃金交渉が不発に終われば2%物価目標の実現に不可欠な期待インフレ率の上昇にも黄信号がともる。日銀は29日に公表する新たな展望リポートで、物価見通しをさらに下方修正し、2%の達成時期を再度先延ばしすることを検討している。』
ということでさらっと書かれていますが、これ問題なのは「何のせいで見通しを下げるのか」という部分なんですよね。すなわち、単にエネルギー価格要因でヘッドラインや日本版コアの物価がアガランチ会長なのが元々の置きよりも長くなったので下方修正、というのであれば、それ単体では政策変更にかかわるものではない(ヘッドラインの物価低迷がインフレ期待の低下をもたらすリスクがある、という話はここでは措く)のですが、春闘がイマイチさんで期待インフレの上昇が遅れそうだから見通しの下げ、というのであればそれは由々しき問題でありまして、日銀の標榜する「2年程度を念頭に出来るだけ早期に」に背馳しますし、「期待に働きかける金融政策」的にも働きかけが足りないというお話になりますから、これどういう理屈で話が展開されるかによっても全然話が違ってくると思いますけどね。
でまあ国会では引き続き黒田さんが躊躇なく対応と吠えている訳ですが。
http://jp.reuters.com/article/kuroda-idJPKCN0UX0CJ
Business | 2016年 01月 19日 14:35 JST
物価2%実現に必要なら何でもやる、手段も十分ある=日銀総裁
『[東京 19日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は19日午後の参院予算委員会で、日銀が掲げる2%の物価安定目標の実現に必要ならば何でもやるとし、政策手段も十分にあると強調した。大久保勉委員(民主)の質問に答えた。日銀は2013年4月に導入した現行の量的・質的金融緩和政策(QQE)の下で、大規模な国債買い入れを進めており、QQEの限界を指摘する声も出ている。これに対して黒田総裁は「2%の物価安定目標を実現するために必要であればできることは何でもやる」と目標達成にあらためて決意を示すとともに、「そのために必要な政策手段は十分に有している」と限界論を否定した。』(上記URL先より)
ということですが、問題は追加緩和するとしても「メカニズム」的にその追加緩和の何がどうなって2%物価達成時期を早める効果があるのか、という説明が全くできない状態になっている事と、現在の金融緩和の枠組みが「緩和継続を現状維持」と言っても実は緩和をバンバン拡大しているので物理的な限界(バーナンキの背理法よろしく財政インフレになる出口または限界発生という意味な)がそう遠くなく起きるということですが、もうここまで来たら変に今の国債馬鹿買入を続けて全員が息出来なくなる前に追加緩和を特攻して盛大に焼け野原になって頂けると、今なら燃やされる前に家財持って一時防空壕に逃げる位の体力が円債市場の皆さんあると思うのですが、今の状況を1年も継続して「やっぱり燃やします」とか来られるとその時は足腰も立たなくなっていてそのまま日銀空襲で焼かれてしまうのでは無いかと懸念されるので、どうせ焼け野原にするなら早い方が良いのですけど、と最早ヤケクソの暴論を申し上げておきましょう。
本来ならばアベノミクス第2弾によって中長期的な成長力強化の政策が実施されて、それに合わせて金融緩和も中長期的に粘り強く実施して政府の成長力強化のサポートを行うというように政策フレームを中長期でも持つ金融政策にするのが筋だったと思うのですが、政府サイドは選挙モードの目先ネタばかりですし、一方で日銀は12月の補完措置によって「今の枠組みはだいぶ限界がありそうだけどもとりあえず延命装置つけとくわ」と公表した挙句に追加緩和に対するトーンアップをして、「中長期的に金融緩和を行う」という政策転換をよりやり難くなるような話の持って行き方をしていまして、中長期的な取り組みで成長力強化でトレンドグロースが上がるような政策なので構造改革的なシバキも入るから緩和的な金融環境で中長期的にサポートするという姿に急速に持って行き難くしてしまいましたな。これ12月の補完措置をこんなに大々的にプレゼンしないでしらっと技術的な話として出せば「今の枠組みをさらに継続しようとして時間稼ぎに来た」という印象を与える事もなかったのですけどねえ・・・・・・・・・・・・
まー黒田総裁のこのやる気満々ぶりは戦況が悪化してヤケクソになって本土決戦とか言い出している状態以外の何者でもないですが、政策が爆発した時の後始末が大変なことになるので爆発する前に回避、となるよりも後は野となれ山となれとなって黒田日銀のメンツの為だけに大爆発して一面の焼け野原にするという政策担当者として無責任にも程があるプレイに出ても何らおかしくないという風情ですので、後はどこからか「止め」が入るかどうかだけの問題じゃないですかねえ。
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2016/01/19
○さくらレポート関連
・総裁挨拶が3か月前と一言一句変わらんですな
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2016/siten1601.htm/(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/siten1510.htm/(前回)
『(1)わが国の景気は、輸出・生産面に新興国経済の減速の影響がみられるものの、緩やかな回復を続けている。先行きについても、緩やかな回復を続けていくとみられる。
(2)物価面をみると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%程度となっている。先行きについても、エネルギー価格下落の影響から、当面0%程度で推移するとみられる。
(3)わが国の金融システムは、安定性を維持している。そうしたもとで、金融環境は、緩和した状態にある。
(4)「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う。』(今回)
『(1)わが国の景気は、輸出・生産面に新興国経済の減速の影響がみられるものの、緩やかな回復を続けている。先行きについても、緩やかな回復を続けていくとみられる。
(2)物価面をみると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%程度となっている。先行きについても、エネルギー価格下落の影響から、当面0%程度で推移するとみられる。
(3)わが国の金融システムは、安定性を維持している。そうしたもとで、金融環境は、緩和した状態にある。
(4)「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う。』(前回)
・・・・・・・・とわざわざ並べるまでもなく一言一句変化なしとなっておりますが、所期の効果を発揮しているという割には全然2%に到達する気配がない物価認識が続いている訳でして、2016年度後半に2%に物価が到達するという認識を示している筈なのに対して何がどう所期の効果なのかと小一時間問い詰めたい所であります。
とはいえまあ特に今回何かを変えようにも変えられない、という状況でもあるので余計な発言変化を示すようなのをリリースできないというのもありますけどね。
・地域経済報告は今回もあまり色は出ていませんな
さくらレポートと言えば2014年の追加緩和の時には物凄い強い内容が出てきたのに直後の10月末に追加緩和を実施ということで、何じゃそらというのがありまして、今回は下手をしたらヤケのヤンパチで特攻追加緩和をしても不思議ではないような年末年始来の総裁講演等があった中でのさくらレポートですので、さてどうなるかと見た訳ですが・・・・・・・
http://www.boj.or.jp/research/brp/rer/rer160118.htm/(概要)
http://www.boj.or.jp/research/brp/rer/data/rer160118.pdf(本文)
前回はこちら
http://www.boj.or.jp/research/brp/rer/rer151019.htm/(概要)
http://www.boj.or.jp/research/brp/rer/data/rer151019.pdf(本文)
概要の『I. 地域からみた景気情勢』から少々。
『各地の景気情勢を前回(15年10月)と比較すると、近畿から、回復テンポが緩やかになっているとして判断を引き下げる報告があった一方で、東海からは、生産の緩やかな増加などを踏まえて判断を引き上げる報告があった。また、残り7地域では、景気の改善度合いに関する判断に変化はないとしている。』
『各地域からの報告をみると、8地域で、「緩やかに回復している」、「回復を続けている」等、東海で、「緩やかに拡大している」としている。この背景としては、輸出や生産面に新興国経済の減速に伴う影響などがみられるものの、国内需要は、設備投資が緩やかな増加基調にあり、個人消費も雇用・所得環境の着実な改善を背景に底堅く推移していることなどが挙げられている。』
ということになっていまして、設備投資と消費と生産の部分だけ比較してみましょう。
『設備投資は、3地域(北海道、北陸、東海)から、「一段と増加している」、「大幅に増加している」等、5地域(関東甲信越、近畿、中国、四国、九州・沖縄)から、「緩やかに増加している」、「増加している」との報告があったほか、東北から、「堅調に推移している」との報告があった。この間、企業の業況感については、北海道、東海から、「改善している」等、7地域(東北、北陸、関東甲信越、近畿、中国、四国、九州・沖縄)から、「一部にやや慎重な動きもみられるが、総じて良好な水準を維持している」等の報告があった。』(今回)
『設備投資は、3地域(北海道、北陸、東海)から、「一段と増加している」、「大幅に増加している」等、5地域(関東甲信越、近畿、中国、四国、九州・沖縄)から、「緩やかに増加している」、「増加している」との報告があったほか、東北から、「堅調に推移している」との報告があった。この間、企業の業況感については、「幾分悪化している」との報告があった一方、「改善している」、「総じて良好な水準で推移している」等の報告があった。』(前回)
設備投資に関しての判断は横ばい、業況感は(短観がそうですから当然ですが)横ばいやや弱めとなっていますな。でもってこれ仔細に見ようとしますと、概要の先の方にコンポーネントごとの各地域コメントがあって、良く良くそこを見ましてもコメントは前回対比横ばいとなっています。
『個人消費は、雇用・所得環境が着実な改善を続けていること等を背景に、北海道から、「回復している」、4地域(北陸、東海、四国、九州・沖縄)から、「緩やかに持ち直している」、「持ち直している」等の報告があったほか、4地域(東北、関東甲信越、近畿、中国)から、「底堅く推移している」、「全体としては堅調に推移している」との報告があった。』(今回)
『個人消費は、雇用・所得環境が着実な改善を続けていること等を背景に、北海道から、「回復している」、4地域(北陸、東海、四国、九州・沖縄)から、「緩やかに持ち直している」、「持ち直している」等の報告があったほか、4地域(東北、関東甲信越、近畿、中国)から、「底堅く推移している」、「全体としては堅調に推移している」との報告があった。』(前回)
こちらもまた前回と全文一致なので、実は前回も前々回と全文一致しておりますけど、こちらの各地域ごとのコメントを見ますと東海で前回の『雇用・所得環境が着実に改善する中で、持ち直している』から前半部分がカットされていて(ただこれは実質上げなのか下げなのかが微妙)となっていたり、四国で『気温が高めに推移したことから一時的に弱めの動きがみられているが、基調的には緩やかに持ち直している』と前半にヘッジクロースが入るなどの差はあります。
続いて生産。
『生産(鉱工業生産)は、新興国経済の減速に伴う影響などから、5地域(東北、関東甲信越、近畿、中国、九州・沖縄)から、「弱含んでいる」、「横ばい圏内の動きが続いている」等の報告があった。この間、4地域(北海道、北陸、東海、四国)から、「緩やかに持ち直している」、「高水準で推移している」、「緩やかに増加している」等の報告があった。』(今回)
『生産(鉱工業生産)は、新興国経済の減速に伴う影響などから、5地域(東北、関東甲信越、東海、中国、九州・沖縄)から、「このところ横ばい圏内の動きとなっている」等の報告があった。この間、4地域(北海道、北陸、近畿、四国)から、「緩やかに持ち直している」、「高水準で推移している」、「増加している」との報告があった。』(前回)
しらっとこれ弱含みとか入ってるし、増加の所も緩やかにとか入っていまして、これまた地域別のを見ますと、
北海道:堅調な海外需要を背景に、増加している→増勢が緩やかになっている
東北:横ばい圏内の動きとなっている→弱含んでいる
北陸:高水準で推移している→高水準で推移している
関東甲信越:新興国経済の減速に伴う影響に加え、在庫調整の動きもあって、このところ横ばい圏内の動きとなっている→新興国経済の減速に伴う影響に加え、在庫調整の動きもあって、横ばい圏内の動きが続いている
東海:新興国経済の減速の影響などから、このところ横ばい圏内の動きとなっている→緩やかに増加している
近畿:増加傾向が続いているが、伸びはやや鈍化している。この間、在庫は横ばい圏内の動きとなっている→このところ横ばい圏内の動きとなっている。この間、在庫はやや高めの水準となっている
中国:全体として横ばい圏内の動きとなっている→全体として横ばい圏内の動きとなっている四国:緩やかに持ち直している→緩やかに持ち直している
九州・沖縄:海外向けは新興国経済の減速の影響などからやや弱含んでいる一方、国内向けの減産が緩和しつつあり、全体として横ばい圏内の動きとなっている→海外向けは新興国経済の減速の影響などから半導体関連を中心にやや弱い動きが続いている一方、国内向けは持ち直してきており、全体として横ばい圏内の動きとなっている
となっていまして、北海道、東北、近畿が下がっていて東海が上がっているという結果になっています。
・・・・・・つーことで今回ほぼ横ばいで出てきていて、2016年度後半に向けて鋭角ターンで回復して物価もホイホイ上がるという見通しに対してもうちょっと威勢の良いのが出てくるかもしれないとは思ったのですが、別に威勢の良いものでもなく悪いものでもなく(生産は微妙だが)という結果でしたな。
○展望レポートさくらレポート地域の視点で賃金キター!!!(ただの凡ミス、まとめている時に気が付きました)
引き続き展望レポートさくらレポートネタですが今回の『II.地域の視点』のお題は『各地域における企業の雇用・賃金設定スタンス』であります。
『1.企業の雇用・賃金設定スタンスの総括評価』
『各地域における企業の雇用面の状況をみると、人手不足感が一段と高まる中で、企業規模や業種を問わず、多くの先で積極的な採用活動を展開しているが、依然として必要な人材の確保が難しいとの声が数多く聞かれている。』
賃金を上げれば必要な人材が確保できると思うのですが。
『こうした状況のもとで、賃金設定面では、正規社員に対して、人材確保の観点に加え、最近の収益の改善や同業他社の動向等を踏まえ、近年、都市部の企業を中心に、定昇や賞与増額を実施する先が増加している。さらに、ベースアップ等により給与水準を引き上げる動きも着実に広がっており、来年度に向けて、昨春の伸び率を上回る引き上げの方針を示す先がみられる。』
>来年度に向けて、昨春の伸び率を上回る引き上げの方針を示す先がみられる
>来年度に向けて、昨春の伸び率を上回る引き上げの方針を示す先がみられる
>来年度に向けて、昨春の伸び率を上回る引き上げの方針を示す先がみられる
お、おぅ・・・・・・・・・・・・
『また、派遣・パート等の非正規社員に対しても、人材の確保や最低賃金への対応を図るべく、時給を引き上げる先が広範に見受けられる。そうした一方で、地方の中小企業を中心に、給与の増額に慎重な先も依然として相応にみられており、その中にはベースアップによる給与水準の引き上げは難しいとする先が少なくない。』
そらそうよ。
続いて『2.企業の雇用スタンスと人材確保の現状』である。
『雇用面では、製造業で、新興国経済の減速に伴う影響を受け、非正規社員を削減する動きなどがごく一部に生じているが、多くの先では、業容の拡大や人手不足の解消等を図る目的で、積極的な採用スタンスを継続している。しかしながら、必要とする人材は、一部の企業を除けば確保が難しい状況が続いており、特に労働力人口の減少が著しい地方圏では人手不足が深刻化している。』
賃金を上げれば(略)
『足もとの状況を雇用形態別にみると、正規社員については、多くの先で今春入社予定の新卒者の採用数を増やす方針を打ち出す中で、内定者の確保が計画未達となっている先が少なくないうえ、即戦力と位置付ける中途採用も、企業が求める人材の獲得は困難との声が聞かれている。さらに、非正規社員についても、多くの企業で採用に注力しているが、必要な人員の手当てが進んでいない状況が続いている。』
ふーん。
『また、業種別には、小売、飲食・宿泊、医療・介護、運輸等で不足感の更なる強まりを指摘する声が多く、一部には新規出店の抑制や営業時間の短縮など事業運営面で支障が生じている先がみられる。』
不足しているなら賃金を上げれば良いと思うのですが(しつこい)、賃金をあまり上げずに何とか確保しましょうとか、業務負担に対して賃金設定が低いから人が集まらないとかそういう話ではないでせうか。
『こうした状況に対応すべく、多くの先では、人材の確保や所要人員の削減に向けて、様々な施策に引き続き粘り強く取り組んでいる。』
とまあここまでが前振りというかバックグラウンド。
『3.企業の賃金設定スタンス』というのが次にありまして・・・・・・・・・・・・・
『(1)企業の賃金設定スタンスの現状と背景
以上の労働需給環境のもとでの企業の賃金設定スタンスをうかがうと、業種や企業規模、職種を問わず、都市部の企業を中心に、何らかの方法で給与の増額を図る動きに広がりがみられている。そうした一方で、地方の中小企業を中心に、給与の増額に慎重な姿勢を堅持している先も依然として相応にみられており、その中には、ベースアップなど定例給与の改定による給与水準の引き上げは難しいとする先が少なくない。』
うむ。
『このようなスタンスについて、まず、正規社員への対応をみると、定例給与の水準を規定するベースアップに関しては、今春の方針は、労使交渉が本格化していない現時点では、未だ固まっていない先が大半ではあるが、そうした中で、収益の改善を見込む企業を中心に、昨春の伸び率を上回る引き上げを示唆する先もみられる。』
「収益の改善を見込む企業を中心に、昨春の伸び率を上回る引き上げを示唆する先もみられる」って何か一部の例を出して威勢の良い話をしようとしてないかと思うのですが。
『こうした姿勢を示す理由としては、収益の改善に加え、(イ)人材の獲得・繋留、(ロ)政府等からの要請、(ハ)同業他社の賃上げ実施への対応等も指摘されており、企業が必要に迫られる形で実施している面も見受けられる。また、賞与に関しては、夏季は支給率を前年よりも引き上げる先が多くみられたほか、冬季も支給額を前年実績に上乗せするとした先が大企業を中心に少なくない。』
その割には毎勤がアレなのだが毎勤はサンプルが良くないという事でしたっけ。
『さらに、新興企業や中小企業では、ベースアップの考え方を採り入れていない先が多く、近年の収益改善を受け、賞与等の一時金で従業員に利益を還元する動きも相応にみられている。』
ものは言い様ですな。それだと恒常所得の増加期待にならないから前向きな循環にちゃんと乗るのかが怪しいですけど。
『この間、非正規社員に対しても、小売や飲食・宿泊など多くの業種で時給を引き上げる動きが続いている。これは、(イ)非正規社員も、正規社員同様に人手不足が深刻化する中で、人材の確保に向けて処遇改善の必要性が高まっていること、(ロ)最低賃金の引き上げへの対応が求められていること、が主たる要因となっている。また、こうした賃金面での対応に加え、福利厚生の充実や非正規社員の正規社員化等により人材の確保を図る動きもみられる。』
ほっほー。
とはいえ相変わらずですが、
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160119/k10010376851000.html
春闘を前に経営側 ベアにこだわらない賃上げを
1月19日 4時08分
こんな話になっている訳で、では何でそうですねんという話が以下続く。
『(2)定例給与の引き上げに慎重な姿勢となる理由』(上記URLとは関係なくさくらレポート概要の続きです)
キタコレ。
『このように給与増額の動きは広がっているが、地方の中小企業を中心に、賞与の増額や非正規社員の時給引き上げにはある程度前向きに対応するとしても、定例給与の改定による正規社員の給与水準の引き上げに対して、慎重なスタンスを取る先が依然として少なくない。その要因としては、先行きに対する漠然とした不安を挙げる先が多く、同業他社の動きを見極めたいとする先も相応に見受けられる。さらに、こうした要因に加え、定例給与の引き上げに慎重な姿勢を崩さない根本的な要因として、主に以下の点も指摘されている。』
うむ。
『イ.低い期待成長率
中長期的な国内市場の縮小が想定される中で、事業の安定的な成長が展望し難い環境のもとでは、固定費の増加に繋がる形での給与水準の引き上げには慎重にならざるを得ないとの声が多く聞かれている。』
正直これが一番大きいんじゃないですかねえ。となると政府の役割という話になりますし、大体からして日銀は散々超絶緩和政策を実施している訳で、この超絶緩和がもっと効くためには期待成長率が上がるような政策を政府がきちんとしないと、超絶緩和の効果が金融市場の中だけでグルグル回るということになり、結果として国債市場がナパーム弾で焼かれているだけという何の意味があるのか分からん状態になっている訳でして、威勢の良い大本営チックな賃金上昇はありまぁす!じゃなくてこちらをもっと前面に出して頂きたいものです。
『ロ.現状の収益動向に対する厳しい認識
近年の収益改善は、為替差益等の一時的な要因や海外部門の寄与が大きく、国内事業自体は楽観視できない状況が続いているため、現状の利益水準を前提に国内の従業員の給与水準を引き上げることは難しいとの指摘が聞かれる。このほか、中小企業を中心に、収益は改善傾向ながら、利益水準が依然として低い状況では賃上げは困難との声も聞かれている。』
前段とも繋がりますし、結局それは消費マインドとかにもつながる訳ですが、恒常所得の増加期待というのが無ければ企業だって投資もしないし個人消費だってよーし入社したから36回ローンで新車買うぞーとはならんわなと思います。
『ハ.事業強化に向けた対応を優先
収益の改善を踏まえ、競争力の強化に向け、従業員の賃上げよりも、これまで抑制してきた設備の更新投資や新規投資、新規事業の立ち上げ、M&A等を優先しているとの声が聞かれている。』
それはもしや省力化の設備投資とかではないかというのと、新規事業立ち上げするなら人は要らんのかという????なサムシングを感じる説明ではある。
ということで、どうせなら順番を変えてこの部分をもっと前面に出して欲しかった気がする。政府に喧嘩売るっぽいから厳しいのかも知らんが。
最後に『4.先行きの展望と課題』
『多くの企業では、先行きも現状の積極的な雇用スタンスを継続する方針にあるため、当面、労働需給が逼迫した状況は解消されない可能性が高い。それにも拘らず、来年度の給与増額に向けた企業の動きは、現時点では勢いを増す状況とはなっていない。』
最初の所では威勢の良さそうな話になっていたのに結局最後の方ではこのようにちゃんとした認識になっているのがチャーミングというか大人の事情というかで味わいが深い。
『こうした中で、持続的に賃上げが実施されていくためには、(イ)生産性の向上や新技術・商品の開発等により、企業が自らの成長力を高めていくこと、(ロ)企業間の取引価格の適正化や消費者のデフレマインドの払拭等を通じ、企業が人件費等コスト増加分の製商品・サービス価格への転嫁を進め、収益体質の強化を図ること、(ハ)給与水準の引き上げと各種制度が整合的となるよう手当てされていくこと、などが必要との指摘が聞かれる。』
何か微妙な結論になっていますが、お前らがんばれという話をするよりは成長力の強化じゃないですかねえとは思いますけど、まー成長力強化の必要性を説明しているのは良かったと思います。なお全文の方だと色々と興味深い記述があると思うのですが、そこまで詳しく読んでる時間がミーのショパンの事情により無かったのでパス致します。
○バーゼルのトレーディングリスク規制キタコレ
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/rel160118b.htm/
バーゼル銀行監督委員会による最終規則文書「マーケット・リスクの最低所要自己資本」の公表について
『バーゼル銀行監督委員会は、1月14日、「マーケット・リスクの最低所要自己資本」(原題:Minimum
capital requirements for market risk)と題する最終規則文書を公表しました。詳細につきましては、以下をご覧ください。』
ということでプレスリリースの仮訳はこちら。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/data/rel160118b.pdf
『バーゼル銀行監督委員会(以下、バーゼル委)は、本日、上位機関である中央銀行総裁・銀行監督当局長官グループ(GHOS)が合意したとおりマーケット・リスクの最低所要自己資本の改定を公表しました。マーケット・リスクの枠組みの改定は、国際金融危機を受けたバーゼル委の国際規制基準を改革する取り組みの主要な要素です。』
『2007 年から 2008 年にかけての深刻な市場ストレス環境は、トレーディング業務から生じるリスクに対する資本賦課の枠組みの脆弱性を露呈させました。バーゼル委は、2009
年に、最も急を要する課題に対応するべく、バーゼルUのマーケット・リスクの枠組みに対する一連の改定を発表しました。トレーディング勘定の抜本的な見直しもまた、それらの改定が対応していなかった複数の枠組み上の課題に取り組むべく開始されました。』
ということで、説明部分はパスしまして結論部分ですが。
『バーゼル委は、銀行から提供されたデータを使用し、本改定が 2015 年 6 月末に完全実施されたと仮定した影響度分析を実施しました。現行の枠組みでは、マーケット・リスク・アセットがリスク・アセット全体に占める割合は約
6%であるのに対して、改定後の枠組みではその割合は10%未満となります。改定後のマーケット・リスクの総所要自己資本は、現行の枠組みと比較して、中央値では
22%(加重平均では 40%)増加すると見込まれます。』
マーケットリスクに対する所要自己資本がそれだけ増加ですかそうですかorz
『なお、これらの推計値は、バーゼル委が 2015 年 12 月に承認したカリブレーションの見直しを考慮しています。本改定は、2019
年 1 月 1 日に発効します。バーゼル委は、実施期間を通じて、自己資本比率規制の枠組みにおける全般的なカリブレーションの一貫性を確保するべく、本改定の自己資本への影響のモニタリングを継続する予定です。』
だそうな。なお詳しい英文資料もあるがこれまた全然読めていないので誰か本職の方が解説してくれると思いますのでそれを見つつ勉強しておかないと(謎の使命感)。
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2016/01/18
○浜田先生がまたも梯子を外しているようで
何ちゅうかもうインタビューするのもねえと思いながらもこうやってネタにして注目記事扱いにすると結局注目記事欲しさのベンダーがインタビューを敢行するという誰得連鎖が回るのでしたorzorz
http://jp.reuters.com/article/hamada-interview-idJPKCN0UT0Z2?sp=true
Business | 2016年 01月 15日 19:26 JST
インタビュー:雇用は良好、1月の日銀追加緩和は不要=浜田参与
『[東京 15日 ロイター] - 安倍晋三首相の経済ブレーンで内閣官房参与を務める浜田宏一・米イエール大名誉教授は15日、ロイターとのインタビューに応じ、中国経済の先行き懸念などを背景に金融市場が不安定化しているが、今月28、29日に日銀が開く金融政策決定会合での追加緩和は必要ないとの認識を示した。雇用環境が引き続き良好なことなどを理由に挙げた。』(上記URL先より、以下同様)
ということで追加緩和は不要らしいですなあ(棒読み)。
『原油価格の下落が続く中、消費者物価(生鮮食品除く、コアCPI)見通しの下方修正や、2016年度後半と見込んでいる物価2%の到達がさらに後ずれする可能性が高まっている。浜田氏は、原油輸入国である日本にとって、原油安は「グッドニュース」と指摘。日銀が物価目標を設定した当時は「大幅な原油安はまったく予想できなかった。原油の影響を含んだ2%のインフレ目標を達成することは、理にかなっていないのではないか」と述べ、日銀が試算している生鮮食品とエネルギーを除いた消費者物価(日銀版コアコアCPI)が2%に向かっている限り「(コアCPIによる)2%の達成にこだわる必要はない」と強調した。』
ということですが、そもそも除く生鮮エネルギーがここから先2%に向けて上がっていくのかという話の方が怪しい気がするのですが、いずれにせよ黒田日銀の方では「早期に達成」という話をしている訳でして、一方で政治サイドの方が物価目標2%の達成時期とかに対して随分と曖昧になってきたという感じ(ちなみにこの記事小見出しの方では『<原油安はグッドニュース、2%達成時期こだわる必要ない>』とあって、記事内を見ると達成「時期」というよりはコアCPIでなくても何らかの形で2%に向かっていれば良い的な話になっているので、どっちが正確なのか良く分からん)でございますな。
まー冷静に考えればインフレターゲットの枠組みの中で中長期の物価見通しが2%近辺でアンカーされている(ということになっている)他の主要国では暫くデフレという環境にはなっていないですが、その一方で物価が上がっていても経済循環の中で経済が下向きになる(まあ最近の場合は経済循環だけではなくてバブル崩壊の後始末もありますが)のは普通に存在する訳で、日本の場合リフレ派の諸先生方が「デフレ脱却してインフレにすれば全て問題解決」的な宣伝を盛大に行ったことのツケがそろそろ回って来ましたよねという所なので、そういう文脈からしますとあまり物価目標の所をギチギチ詰めていかない方が利口というのはその通りなのですが、しかしリフレ政策導入させる前に散々宣伝していた話はどこに逝ったのかと小一時間問い詰めたい所ではあります。
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2016/01/15
○これはまたお洒落なペーパーが
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2016/wp16e01.htm/
インフレ予想と金融政策
2016年1月14日
中園善行*
*横浜市立大学国際マネジメント研究科
本文はこちらですが英文である
http://www.boj.or.jp/en/research/wps_rev/wps_2016/data/wp16e01.pdf
でもって英文の本文の方は勘弁ということでHTMLの方にある「要旨」を拝読すると中々お洒落。
『要旨
本稿は、日本のインフレ予想に関するサーベイデータを用いて、インフレ予想が経済主体間でばらつく現象とその背景について分析した上で、インフレ予想のばらつきが金融政策に与える含意を考察し、以下の三点を明らかにした。』
ほほう。
『第一に、インフレ予想の横断面(クロス・セクション)のばらつきは、情報の硬直性によって説明可能であった。第二に、長期のインフレ予想は中央銀行と民間経済主体の間で不一致が生じていた。2013年1月に2%の物価安定の目標が設定されて以降、家計による短中期のインフレ予想は2%に向けて徐々に近づく一方、長期のインフレ予想は2%に収れんしておらず、むしろ予想のばらつきの程度は拡大していた。』
>長期のインフレ予想は2%に収れんしておらず、むしろ予想のばらつきの程度は拡大していた
>長期のインフレ予想は2%に収れんしておらず、むしろ予想のばらつきの程度は拡大していた
>長期のインフレ予想は2%に収れんしておらず、むしろ予想のばらつきの程度は拡大していた
ほほー。
『第三に、経済主体の金融政策に対する見方は、2013年4月に導入された質的・量的金融緩和の前後で劇的には変化していなかった。』
ほっほー。
『この結果は、政策レジームの変化の度合いが、日本経済を慢性的なデフレーションから脱却させるほどには大きくなかった可能性を示唆している。』
!!!!
ということで、さきほど引用した時に著者名も引用しました(普段はそこまで引用してませんが)のですが、これを書いた方の名前が中の人だと更に腰を抜かすのですが、横浜国大の先生が著者でして、『本稿は、2015年11月26日に開かれた、東京大学金融教育研究センター・日本銀行調査統計局第6回共催コンファレンス「物価変動とその中での経済主体の行動変化」で報告された論文を改訂したものである。』という事ですので、日銀が絡んでいない訳でもないのですが、外部論文のご紹介というお話ではありますな。
とは言いましてもいきなり「長期のインフレ予想は2%に収れんしておらず、むしろ予想のばらつきの程度は拡大していた」とか要旨に出てしまうというのが何とも味わいがありまして、しかも結論が「この結果は、政策レジームの変化の度合いが、日本経済を慢性的なデフレーションから脱却させるほどには大きくなかった可能性を示唆している。」というのがどひゃーという内容(なお英文の本文はまだ読んでません・・・・)のようですな。
中の人が書いていたらこれは何という謀反とか思ってしまうのですが、いずれにせよ結論部分が中々刺激的で、これは「今の政策はレジーム変化がまだ足りないからもっと拡大しろ」という意味なのか「今の政策のやり方ではレジーム変化する手段としてあまりワークしないのだからやり方を再考しろ」という意味なのか、見ようによって正反対の政策インプリケーションを出せるというもろ刃の剣にも程があります(って書いた人がその辺どう考えているorいないのかは要旨だけみても分からん)し、このタイミングでこのペーパーが飛び出してくるというのも何というか色々と深読みしようとすると何ぼでも深読みできるという人心を惑わすお話ではあります。
ちなみに日銀の中の人によるものですと例えばこんなのがあります。
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/lab/lab15j05.htm/
家計のインフレ予想:期間構造と金融政策のアンカー効果
『家計のインフレ予想の安定化は、中央銀行が物価の安定を達成するための政策の一つであり、それ故に、中央銀行には、インフレ予想の動態に関する深い理解が必要とされる。鎌田他(2015)
[PDF 902KB]は、家計を対象としたアンケート調査を分析し、インフレ予想は予想期間の長短によって振る舞いが異なることを示した。短期のインフレ予想が現実のインフレ率の影響を受けやすいのに対し、長期のインフレ予想は安定的で、現実の物価動向に左右されにくい。こうした結果は、わが国のインフレ予想が長い目で見て何らかの水準にアンカーされていることを示している。ただし、長期予想は動かないわけではなく、金融政策によって変化し得る。2013年に日本銀行が導入した物価安定目標と量的・質的金融緩和は、両者が相まって、インフレ予想の水準を引き上げ、その安定に寄与した可能性が高い。』(上記URL先より)
ということですし、日銀の説明的にもインフレ期待は全体として徐々に上昇しているということになっている訳でして、先程の中園先生のペーパーだと思いっきり日銀見解に真っ向勝負となっているのという事ですな、うんうん。
○黒田総裁の発言が引き続きヒートアップしているのだが
昨日もこんなの出てましたな。
http://jp.reuters.com/article/boj-kuroda-2percent-idJPKCN0US09F20160114
Business | 2016年 01月 14日 12:50 JST
金融市場、やや騒がしい=黒田日銀総裁
題名の方はどうでも良いのですが。
『[東京 14日 ロイター] - 日本銀行の黒田東彦総裁は14日、都内で開かれた第二地銀協会賀詞交歓会であいさつし、年初来「金融市場がやや騒がしくなっているが注視する」と述べた。その上で、金融政策運営をめぐり「2%の物価目標達成のためには何でもやる」と従来見解を繰り返した。』(上記URL先より)
ということで、こちらですと従来見解を繰り返したとサラッと流していますが、ベンダーに出ていたヘッドラインの印象とか、ここもと黒田総裁が賀詞交歓会的なイベントに出席して話をしているのが流れてくるのを見ると、12月の補完措置が結果的に微妙な結果を招いた以降、特に今月になって黒田総裁の発言がヒートアップというかエキサイトという感じを強めておりますな。
「期待に働きかける政策」という今となっては最早謎政策の世界になりつつあるモノを実施しているだけに、「現在の緩和政策の限界」と言われるのが政策効果を減殺するというお気持ちは分かるのですが、ヒートアップすればするほど市場が追加緩和を催促して追い込んで行くという流れになって、これ益々自分で自分の首を締めに行っているように見える訳でございまして、どうもリズムが悪くなって来ているようにしか見えないので正直心配になって来ましたですよ。
相場でも負けリズムになると一々動くたびに全部逆に行くというのがあると存じますが(存じますもへったくれもなくてお前もそうだろと言われると仰せの通りですがそこは華麗にスルーして下さいお願いします^^)、どうもここに来てドテンしてテンコシャンコになるの巻という風情を醸し出しているのが実にアレなのですが、何せ今の枠組みで追加緩和をすると出尽くし感が出る上に、そもそもMB拡大ペースを上げて長期国債買入ペースを拡大したとしても金利が無くなっても別にそれで設備投資が出たり消費が出たりする訳でもなく、増してや物価が上昇する訳でもなさそうという状態なのに神州不滅とか言って追加緩和特攻してどうするんでしょうねとは思いますが、このヒートアップ振りを見ているとヤケクソになって何をしでかすか分からんですな、ナムナム。
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2016/01/14
○外為特会埋蔵金とはこれまた無理筋な話を
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS13H39_T10C16A1PP8000/?dg=1
軽減税率の財源、外為特会の活用案が浮上
政府、益税解消までつなぎ
2016/1/14 1:00日本経済新聞 電子版
『政府内で2017年4月の消費増税時に導入する軽減税率の財源に、外国為替資金特別会計の積立金を活用する案が浮上している。円安・ドル高でドル建て資産の採算が好転し、20兆円程度の積立金ができたため。インボイス(税額票)の導入で事業者の手元に残る「益税」が解消するまでのつなぎ措置と位置づけるが、ドル建て資産の売却が円高・ドル安につながる可能性もある。』(上記URL先より)
・・・・・(゚д゚)
・・・・・(゚д゚)
・・・・・(゚д゚)
例によって記事の全文が読めない(有料会員か本紙なら読めます)のでどうやってこの「積立金」を財源化するのかさっぱり分からないのですが、外為特会の「含み益」を会計上付け替えるだけだと将来円高になった時に死ぬだけの「未来から力を前借りする」という毎度おなじみのやり方なので国債発行と変わらんですし、実現させようとすると円高方向への為替介入を実施することになるんですけど大丈夫ですかねえ。
いやですね、これ円安にしても賃上げに繋がらないようだったら円安に振っても意味が無いし賃上げしないなら円高に振るぞオンドリャーとばかりにランボー怒りの特会売却というのでしたら(利食いにもなるし)それはそれで素敵な構想かもしれませんけど、それにしても特別会計のドルを売却して含み益確定するとか本格的に言い出すだけで円高に振れるんじゃないかと思いますので、これはまた日銀の足を盛大に引っ張る、というか「2年を念頭に(3年になってますが)できるだけ早期に2%達成」というのが絶望的に無理になるので、日銀は2%は兎も角政策の期間について見直しを行って、それに沿った政策運営(=今のように長期的継続が不可能な政策からの転換)をしないといけないという話になると思うのですけどねえ。
でもって単にこれが会計上の付け替えの外為特会埋蔵金とかいうしょうも無い話だとしますと、一事が万事でそのうち国会議事堂売却してリースバックして目先に出た益を財源にするとか言い出すんじゃないかとヒヤヒヤしてしまいますが記事のリードを見ますとマジ売りする方向なんでしょうねえさすがに。
○その他雑談
・無責任かつ暢気で結構なご身分なことで
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O0UDKF6S973N01.html
伊藤教授:中国ショック発の円高「まだ大丈夫」、テーパリングは次期総裁
2016/01/13 14:07 JST
『過去に日銀副総裁候補に浮上したことのある伊藤教授は、原油安による物価上昇の遅れや17年4月の消費増税を考慮すると、黒田総裁は「たぶん任期中にテーパリングをやらないのではないか」と指摘。「18年3月まではテーパリングの議論すら必要ないという感じで行けるかもしれない」と言い、「次の総裁は大変だ」と述べた。』(上記URL先より)
中身を一々突っ込む気力も湧かないのですが、年金運用にご執心だと思ったらすっかり転進して金融政策の話をああだこうだと無責任かつ暢気に展開のようですが、次期総裁でテーパリングとかあと2年この政策が持つという計算がもはや意味不明にも程がある。
大体からして「18年3月まではテーパリングの議論すら必要ないという感じで行けるかもしれない」ってそれは「出来るだけ早期に達成する」というコミットメントに対して違反しているにも程がある訳で、「行けるかもしれない」とか何ポジティブな言い方をするんだと小一時間問い詰めたいですな。
・ブルームバーグ記事のチャートでワロタ
と思ってネット版のBloombergで探したのだが上手くヒット出来なかったのですが、昨日の18時34分に配信されていた「New
BOJ Transparency May Expose Board Dissent」って記事(記者の解説記事っぽい)に政策委員の立ち位置のチャートがあって、横軸が「DOVISH」と「HAWKISH」なのはいいとして、縦軸の方の下が「FINANCIAL
STABILITY」とあってほうほうと思ったら上の方が「2% OR BUST」とあってちょっとウケてしまったのでメモしておきますね!!
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2016/01/13
○春闘春闘言い過ぎた結果が早くも出ている一方で総裁は益々意地になっているように見えますが
・既に春闘が暗雲で「物価の基調」攻撃にどう見ても無理が起きているのですが
昨日ご紹介しましたように今週の頭には
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160111/k10010368031000.html
トヨタ労組 ベア要求月額3000円 去年の半分に
1月11日 20時44分
というのがありましたが、昨日はこんなのも。
http://jp.reuters.com/article/sakakibara-idJPKBN0UJ0TP20160105
Business | 2016年 01月 5日 19:01 JST
会員企業に年収ベースで昨年を上回る賃上げ求める=経団連会長
『榊原会長は、春の労使交渉に向けて「今年1月中旬に出す経営労働政策委員会報告の中で、各社の収益に見合った積極的な対応を求める」と説明。「収益が拡大した企業には、設備投資、研究開発投資、雇用の拡大と併せて、2015年を上回る年収ベースの賃金引き上げについて前向きに踏み込んだ検討を求めたい」と語った。』(上記URL先より、以下同様)
「収益が拡大した企業には」という時点でもうねという所ですが、「年収ベース」とはそれはつまり・・・・・・・・・・
『ただ、ベアについては「今年は特に言及せず、各社の判断に委ねたい」(榊原会長)とし、「ベア、定期昇給、手当、賞与を含めた年収ベースで底上げをしていただきたい」(同)と強調した。』
ということでどう見ても臨給で対応です本当にありがとうございました。
てな感じで早速2%達成に見合うような定例賃金の上昇が見込めそうもない展開となっておりますが、そらまあ(生活物価はさておき)物価がそんなに上がっていないのに賃金ホイホイ上げてどうするんだよという理屈を言われますとグウの音も出ませんので、結局のところは「バックワードルッキングで期待形成」とかすっかりその点を黙ってしまっている以前出した理屈が見事にワークしだしているという素敵な展開。
日銀にとって(皮肉な意味で)都合が良いのは原油価格が展望レポートの前提から下に大きく逸脱していることでして、展望レポートでの前提価格ってだいたい1〜2週間前程度の市場価格とフォワードを見ながら作っている(ような数字が出ている)ので、この調子で推移すれば原油価格が下がったから物価2%到達時期を後ろにずらすけれども他の条件は変わらないですよという事で問題の先送りをする攻撃が可能ではありますな。
とは言いましても原油ガーは所詮ワンオフの話であって、肝心の「物価の基調」の方で言えば先般来黒田総裁が中心に日銀主流派は春闘春闘言い過ぎている訳で、春闘が今のこの状況から見て満足いく結果になるようには到底思えない中で、どう申し開きをするのかがさっぱり分からん次第。まあ春闘は1月会合では知らんがなで通すとしても4月の展望レポートではどう言い逃れをするのか今から楽しみですな。
2年で2%を原油のせいにして物価の基調にすり替えたものの、基調を構成する要素として強調した賃金上昇に力強さが見られない、となりますとまさに漫画のドラえもん(ドラめもんではない)に登場する「あやうし!ライオン仮面」状態という風情ですが、何故かライオン仮面のwikipedeiaが無駄に詳しいので知らない方の為にURL置いておきますね(^^)。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%82%AA%E3%83%B3%E4%BB%AE%E9%9D%A2
2年間で達成の方は光線銃で攻撃食らったものの原油価格を使って「物価の基調攻撃」と場面を変えて誤魔化しましたが、3年経過するときには肝心の物価の基調攻撃が春闘で火あぶりを食らっているというような風情でして「わははは、オシシ仮面!もはや、のがれることはできんぞ」状態になっているように見えますが、泉の尽きぬ如く屁理屈が湧いて出てくる優秀なる日銀様でございますので次はどんなオカメ仮面を出してくるのかが楽しみです(棒読み)。
昨日ご紹介した生活意識アンケートでは物価低下が結構な事という人が急増していますし、本日入札の物国BEI(そういえば師匠BEIの話を全然しなくなりましたねえ)ですがカレントの昨日のBB引値ベースで60切ってるし、どこまで引っ張るのかという話ではあるのですが、そもそも短期勝負で始めた政策でデザインされていますし、これだけ極端な買入をやってこの程度の効果しか出ていないというのは政策のプロコンの計算を間違っていませんですかねえという辺りも真剣に検討して頂きたいものだと思います。まあ今回の決定会合は特に見解の割れる議決ものは無い(木内さんの提案を除く)とは思う(ヤケのヤンパチで追加緩和を実施する場合は別ですし可能性は無いとも思わんので念のため)ので、政策のプロコンに関する議論と「主な意見」を拝読したいものだと存じます。
○バーゼル関係でこんなの出てました。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/rel160112a.htm/
中央銀行総裁・銀行監督当局長官グループによるプレス・リリース
「マーケット・リスク規制の枠組の改定及びバーゼル委員会の作業計画を承認」の公表について
金融庁・日銀による仮訳はこちら
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/data/rel160112a.pdf
中央銀行総裁・銀行監督当局長官グループが、マーケット・リスク規制の枠組の改定及びバーゼル委員会の作業計画を承認
『バーゼル銀行監督委員会(以下「バーゼル委」)の上位機関である中央銀行総裁・銀行監督当局長官グループ(以下「GHOS」)は、1月
10 日にバーゼルで開催された会合において、マーケット・リスクに係る新たな規制枠組を承認した。マーケット・リスクに関する基準の抜本的な見直しは、バーゼルVの改革パッケージにおける主要な要素の一つである。』
『2019 年に適用が開始される新たな規制枠組における主な改善点は、以下のものを含む。
・ 銀行勘定とトレーディング勘定の境界の見直しにより、規制裁定の余地を縮小。
・ 内部モデル方式の見直しにより、より整合的かつ包括的にリスクを捕捉。
・ 内部モデルの承認プロセスを改善したほか、ヘッジ及びポートフォリオ分散効果をより保守的な形で認識。
・ 標準的方式の見直しにより、内部モデル方式の信頼できるフォールバック及びフロアとして機能させ、かつ銀行及び地域間でのマーケット・リスクの報告の整合性及び比較可能性の向上を促進。』
という話の他に、
『また、GHOSは、バーゼル委が、リスク・アセットの計測における過度なばらつきの問題を解消するための作業を
2016 年末までに完了させることについて合意した。この作業計画は、以下の主要な要素を含む。
・ 特定のリスクに係る内部モデル手法の廃止(オペレーショナル・リスクにおける先進的計測手法の廃止等)についての市中協議
・ 信用リスクに係る内部モデルの利用について、特にフロアの使用を通じた追加的な制約についての市中協議 』
まあ何と申しますか、結局は一律的な規制(しかも各国市場の事情を斟酌しない)方向になるんじゃねえのかという悪寒がだいぶするお話ではありますが詳しく研究している時間が中々ないので(大汗)あまり余計な事は申し上げない。
『さらに、GHOSは、レバレッジ比率の最終的なデザインと水準調整について議論した。GHOSメンバーは、レバレッジ比率について、Tier1資本による自己資本の定義に基づき、最低水準を3%とすべきことについて合意するとともに、グローバルなシステム上重要な銀行に対する追加的な要件についても議論を行った。GHOSは、2018
年1月1日までにレバレッジ比率を第1の柱として実施するために十分な時間を確保すべく、2016
年中に水準調整を最終化する予定である。』
ティア1に対してレバレッジ比率のフロアが3%ですかそうですか。
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2016/01/12
○俺の物価上昇目標がこんなに支持されな筈がない・・・・・・・・ですかねえ
小見出しが最近ラノベみたいになっているわと思って意識してみたもののいざ考えて書くとイマイチですなあ(汗)。
http://www.boj.or.jp/research/o_survey/ishiki1601.pdf
「生活意識に関するアンケート調査」(第64回)の結果
―― 2015年12月調査 ――
『1.要旨』の方からヒョコヒョコ引用しますが、グラフに関しては上記URL先を見てちょ。
・景況感とかは概ね横ばいですが「良い」系の答えが減っています
『1-1. 景況感等 』の所ですけどね。
『景況感のうち、現在(1年前対比)については、「悪くなった」との回答が減少したものの、「良くなった」との回答も減少したことから、景況感D.I.は悪化した。先行き(1年後)については、「良くなる」との回答が減少したことから、景況感D.I.は悪化した。なお、現在の景気水準については、「良い」、「どちらかと言えば、良い」との回答の合計が減少した。』
ということで、全体見るとそんなに極端に動いている訳ではないのですが、「良い」系の回答がジリジリ減っている感がします。
・雇用関連の回答は強いです
ただ『1-2. 暮らし向き、消費意識 』を見ますと、
『現在の暮らし向き(1年前対比)については、「ゆとりがなくなってきた」との回答が減少したことから、暮らし向きD.I.は改善した。』
とあったりして、次の質問では
『収入の増減については、実績(1年前対比)は、「増えた」との回答の減少幅よりも、「減った」との回答の減少幅の方が大きかったことから、現在の収入D.I.はマイナス幅を縮小した。先行き(1年後)は、「増える」との回答が増加し、「減る」との回答が減少したことから、1年後の収入D.I.はマイナス幅を縮小した。』
とありますので、家計という意味では賃金の上昇が効いているようでして・・・・・・・・・・
『収入の増減については、実績(1年前対比)は、「増えた」との回答の減少幅よりも、「減った」との回答の減少幅の方が大きかったことから、現在の収入D.I.はマイナス幅を縮小した。先行き(1年後)は、「増える」との回答が増加し、「減る」との回答が減少したことから、1年後の収入D.I.はマイナス幅を縮小した。』
とか、
『1年後を見た勤労者(注)の勤め先での雇用・処遇の不安については、「あまり感じない」との回答が増加し、「かなり感じる」との回答が減少したことから、雇用環境D.I.は改善した。』
というのがありまして、雇用関連の結果が総じて良いので消費関連の結果も良い、という日銀歓喜の結果になっているのですよね。
・物価の見方に関しては残念なのが沢山あったりする訳ですが
本日のメインイベント『1-3. 物価に対する実感 』である。
『現在の物価(注1)に対する実感(1年前対比)は、『上がった』(注2)との回答が減少した。また、1年前に比べ、物価は何%程度変化したかについて、具体的な数値による回答を求めたところ、平均値は+5.5%(前回:+5.8%)、中央値は+4.3%(前回:+5.0%)となった。』
『1年後の物価については、『上がる』(注)との回答が減少した。また、1年後の物価は現在と比べ何%程度変化すると思うかについて、具体的な数値による回答を求めたところ、平均値は+4.3%(前回:+4.7%)、中央値は+3.0%(前回:+3.0%)となった。
』
短い期間での物価についての数値が実績、先行き期待ともに若干低下ですが見通し中央値は変わらないので大丈夫、ということにしておくのでしょう。
『5年後の物価(注1)については、『上がる』(注2)との回答が減少した。また、これから5年間で物価は現在と比べ毎年、平均何%程度変化すると思うかについて、具体的な数値による回答を求めたところ、平均値は+3.6%(前回:+3.9%)、中央値は+2.0%(前回:+2.0%)となった。』
5年後の物価期待もこれまた若干低下ですが、見通し中央値が+2.0%で変わらないので、「インフレ期待はアンカーされている(キリッ)」と言えばヨロシという感じですな。
でもって本日のメインイベントはこの次。『1-3-4. 物価上昇・下落についての感想』である。
『1年前と比べて物価が『上がった』(注1)と答えた人(8割弱)に、その感想を聞くと、8割台前半の人が「どちらかと言えば、困ったことだ」と回答した。』
まあこれはさておきまして・・・・・・・・
『また、1年前に比べて物価が『下がった』(注2)と答えた人(2.0%)に、その感想を聞くと、「どちらかと言えば好ましいことだ」との回答が5割台前半、「どちらかと言えば、困ったことだ」との回答が3割台半ばとなった。』
・・・・・・・・・・・(−_−)
こちらはURL先の図表12(PDFの12枚目になります)を見ていただくと中々驚異の内容になっておりまして、2015年6月調査の時にはこの「物価が下がったけどそれは望ましいのか困ったのか」という質問に対しては「どちらかと言えば好ましいことだ」が16.7%、「どちらとも言えない」が26.7%、「どちらかと言えば困ったことだ」が53.3%だったのですが、今回は「どちらかと言えば困ったことだ」が前回に引き続き上昇をして52.4%となり、半年前の「物価下落は困ったこと」という認識が過半数という状態はどこに行ったのかと小一時間であります。
でまあこの部分を日銀がどう評価するのか、というのは非常に興味深い所でして、表向きはその前にある物価期待の中央値が変わらないという状態を見て「物価予想は維持されている」という話をして知らんぷりをするんでしょうが、実際問題として直近引用部分は日銀としてはショックな内容になっていると思うのですよね。
つまり、そもそも2%物価上昇目標を設定してそれを早期に達成しようという政策を実施しているのですけれども、物価が下落したと考えている人たち限定とはいえ、物価下落の方が望ましいという答えが出て来るようになる、というのは「期待に働きかける政策」がそもそもワークしてませんがなという話になる訳ですし、「所得から支出への前向き循環メカニズム」もワークしていないという話になりますので、これは日銀何かしろという外部環境からの攻勢が益々激しくなりそうですな。
なお、日銀の方は恐らく上記のアンケート結果に対しては「賃金上昇が確り確認されるようになったら物価上昇を許容するようになるので今は過渡期」とか何とか言うのでしょうが、まーそれにしても日銀マズーにも程があるわという結果でした。
○主な意見キタコレ!!!
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2016/opi151218.pdf
金融政策決定会合における主な意見
(2015 年 12 月 17、18 日開催分)
ということで・・・・・・・・・・・・
『1 「金融政策決定会合における主な意見」は、@各政策委員および政府出席者が、金融政策決定会合で表明した意見について、発言者自身で一定の文字数以内に要約し、議長である総裁に提出する、A議長はこれを自身の責任において項目ごとに編集する、というプロセスで作成したものである。』
とありますが、300文字以内という話が前回の決定会合後の会見でも説明がありましたが、出来上がりの文字数からしたら特段誰かの意見を削除しているというような事もなく、文体を見ますと何となくバラバラっぽいので、そういう意味でもこれは日銀執行部によって大幅な添削が行われているようなこともないかと思います。まあてにをはとか文章の止め方とかは同じなのでそこは直している感じがしますけど。
となりますと、今回の「主な意見」ですけれども、基本的に全員の見解が載っているということになりまして、しかも金懇での講演と同様に各審議委員が素で出している文章を概ね使っているという事でございますの、従来読んでいた「議事要旨」と比べると違いますなあという所です。
つまりどういう事かと申しますと、議事要旨って決定会合に出席している事務方が地の文章を作っていて、それに対する意見を各委員が了解したうえで承認を決定会合(次回の)で行うという段取りになっていますので、どうしても書き方が執行部ベースになってしまう訳ですよな。でまあそれはそれで書いている執行部の屁理屈を理解するのには非常に分かりやすくて結構なのですが、少数反対意見が何を言っているのかとか、執行部よりの人が実際にどういうロジックを持ち出しているのか、というのがあまり伝わっていなかったので、そういう意味では今回の主な意見は面白いですなという所です。
ということで軽く鑑賞。
・経済情勢
まずは(経済情勢)のパートですが、まあ公式見解が並ぶ中でしらっと。
『・所得から支出への循環に力強さはみられない。』
とあるのがワロタです。次が『(金融)』ですが、
『・ドル調達コストの上昇が、日本の金融機関の海外投融資での過度のリスクテイク傾向を助長する可能性に留意したい。』
というのはふーんという所ですが、今回は政策決定があったので皆さんそっちの方が重要(展望レポートでやっているというのもあるでしょうが)とばかりにここの部分はサラサラと流れています。
・物価に関して
次は(物価)のパート。
『・物価の基調は改善を続けており、今後も改善を続けると見込まれる。』
というのはさておきまして、
『・雇用環境が改善する中でも、日本企業は労働コスト全体を抑える姿勢を堅持しており、これが先行きの物価にも相応の抑制効果を与えると考える。』
というのはまあそうですねという所ですが、
『・賃金が上がらないのは、企業が、積極的に賃金を上げて正規労働者を集めようとしていないからである。しかし、非正規は賃金を上げて集めようとしており、実際に上がっている。物価は、正規よりも非正規の賃金との相関が高く、需給の引き締まりで非正規の賃金が上がれば、正規の賃金の伸びが鈍くても、物価は上がっていく。』
・・・・・・・・・・・この意見が訳分からないんですけど何ですかこれ???
・ということでメインイベントは金融政策決定に関して
『U.金融政策運営に関する意見』
『・ 経済・物価見通しの下振れリスクが増大しているわけではないため、金融市場調節方針については、現状維持が適当である。』
ほうほう。
『・現状、外需の不確実性が残るもとで着実に作用しつつある経済の好循環を推進する正念場にあり、現在の金融政策は継続すべきである。』
正念場と言えば黒田総裁??
『・今回の諸措置は追加緩和ではないが、資産買入れを一層円滑に進めることを可能とすることで、先行き、「量的・質的金融緩和」をしっかりと継続し、また必要と判断した場合には迅速に調整を行えるようにするものである。』
とまあここまでは執行部っぽい見解ですが。
『・今般の補完措置の導入については、経済の好循環を後押しする効果が期待できるほか、円滑な政策遂行に資することから賛成である。』
経済の好循環を後押しする効果とは?????
『・「量的・質的金融緩和」を推進するために、より円滑な金利低下を促す措置や設備・人材投資に積極的な企業をサポートする措置などをこのタイミングで導入することが適当である。』
より円滑な金利低下もクソも金利低下しまくっているのですが、それから今回のETFですけれども言いたい事は分からんでもないがやはり中央銀行の矩を越えていると思う。
『・国債市場の動向や金融機関の保有資産の状況などを踏まえ、より円滑にイールドカーブ全体の金利低下を促していくことが適当である。』
そもそもこれだけ下がっている金利を更に下げる意味があるの???
『・「量的・質的金融緩和」のもとで企業や家計のデフレマインドは転換してきており、設備・人材投資に積極的に取り組んでいる企業も多いが、そうした動きがさらに広がっていくことが期待される。』
ヤケクソの理屈ですな。
『・J−REIT買入れの 「5% 」の基準を維持すると、事実上、J−REITのテーパリングが始まることになり、「量的・質的金融緩和」の政策効果を損なうことになる。』
『・現在は、テーパリング等、金融緩和の後退との印象を与える決定は適切ではなく、日本銀行が目標達成のための手段を有し、かつそれを実施する意思があることを示すことを最優先すべきである。』
と言ってますが、そもそもそんな事が起こり得るのは買入実施および追加緩和を実施した時に分かりきっている話であって、「政策効果を損なう(キリッ)」じゃなくて、そもそもの制度設計が「2年で達成」のつもりだったのにそれが失敗した、つまり短期決戦のつもりが長期戦になっているのに、戦術自体は短期決戦のままでやっていて、それを変えないことの正当化をしているだけではないか、という反省をしないのかよと小一時間問い詰めたい。
んでもって後半の方に反対意見が。
『・国債買入れは新たな発行計画のもとでも現行の7〜10 年程度という柔軟な指示のもとで運営可能で平均残存期間の長期化をプレイアップするのは有害である。』
プレイアップってまさにそうですね。今回は妙なプレイアップで墓穴を掘ったとしか思えない。
『
・「量的・質的金融緩和」導入当初よりイールドカーブ全体に働きかける上で超長期ゾーンも同様に扱うことに違和感がある。』
ほほう。ここは個別委員の方がどこかの金懇で説明して頂きたいですな。
『・国債買入れ平均残存期間の長期化は、買入れの安定性をむしろ低下させる、日本銀行の国債管理政策への事実上の関与を強める、金融政策の正常化に要する時間を長期化させる、等の問題を生むため望ましくない。』
イイシテキダナー
『・「量的・質的金融緩和」をより長い期間継続することになる可能性が出てきている。』
で切れているので何ですが、要は長い期間持つ政策にしろということですかね。
『・市場流動性などの問題は、事前に屈曲点がどこにあるか分からない。中央銀行は保守的、慎重な対応が必要である。』
仰る通り!
『・ETF買入れは金融政策として既に大規模に行っており銀行保有株式の売却というプルーデンス政策補完のための増額は必要ない。』
『・J−REIT買入れは銘柄別上限枠5%の下で導入した臨時異例の措置で所期の呼び水効果は十分発揮されている。個別の証券への資金配分への関与もより強まるので増枠に反対する。』
『・民間企業活動に対する中立性、健全な価格形成、日本銀行の財務の健全性への影響などの観点から、ETFおよびJ−REITの保有残高の増加ペースを現行方針と比べて減額するのが望ましい。』
まあここは見解が割れそうな所ですけれども、中央銀行としての矩を踏み越えている状態である、という認識の元でこれらの政策について考えるべきであり、一度矩を越えたら引き返すこと自体がマイナスみたいな主張をしている前半の方での見解というのも雑に過ぎると思いますのでこういう指摘が3名ほどから出ているというのは中々。たぶん上から順に佐藤さん石田さん木内さんとみたがどうでしょうかね(^^)。
『・今回の補完措置によりかえって「量的・質的金融緩和」の限界が意識され、市場との対話が難しくなることを懸念する。
』
(;∀;)イイシテキダナー
というかその通りになっていますけれどもね!!!!!!!
つーことで初回なのでこんなもんでしょう。今後はこの見解と議事要旨の間の差分を読むのも面白いと思いますが、どうせ議事要旨書く方もその部分は意識してくるでしょうなあと。
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2016/01/08
○1月会合で何もしないと思うのだが追い込まれて参りました!!!!
ということで今朝もダウがダウーンして戻って来ておりまして、株安円高がこの調子でやっておりますと、これはどこからどう見ても催促相場になってまいります。というか既に催促相場状態みたいですけどね。
まあ貰い事故的な面もありますけれども、ここまで催促相場に持って行かれる一端にはやはり12月の補完措置での悪目立ちアピールが却って政策の限界を意識させる効果(副作用)を生み出したことに加え、その副作用を除去する意味もあったと思うのですが、年末来黒田総裁が「必要なら断固たる措置を取る(キリッ)」っと政策打ち止め観測を否定する為(と賃上げ設備投資に向けて景気づけをするため)に威勢の良い発言を連発しているのも結果として自分の首を絞める方向に効いていますわなと思うのだ。
いやまあ年初からの動きが今週辺りで止まってくれれば別にという所かも知れませんが、それが終わっても日本で株安債券高円高で追加緩和の催促相場をやってくるという流れになりますと益々日銀が苦しくなってくる訳でして、さてどうなることやら。
でまあ追加緩和に関しては「1月追加緩和(キリッ)」という予想をするのは簡単なのですが、ここから先の追加緩和って緩和するしないよりも「どういう政策をするのか」という点をまともに考察しないと意味がないのですが、とにかく現在のMB拡大に意味があって、かつ長期も含めた実質金利の引き下げに意味がある、という建付けになっていると、やれる事ってかなり限界がありますし、やったが最後金利市場が大爆発する時期を劇的に早めるリスクが高まるので現実問題として何ができるのかという話ですし、政策の枠組みを変えて対応というのであっても今までの話との整合性とか、実際に何をするのかとか考えるとそう簡単な話にはならないと思います。
とは思います物の、もう一発株安円高とかやりだすと緩和催促状態は一段と強くなるリスクはだいぶあるんじゃネーノとてきとうな事を言ってみる(本当にそうなるかは知らん)。
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2016/01/07
○需給ギャップ公表キタコレ
http://www.boj.or.jp/research/research_data/gap.htm/
需給ギャップと潜在成長率
『経済・物価情勢を的確に判断していくうえでは、経済の活動水準を表し物価変動圧力の目安となる「需給ギャップ」や、長い目でみた日本経済の成長力を映し出す「潜在成長率」をみていくことが有益です。もっとも、これらは、客観的なデータとして観察できるものではないため、何らかの方法で推計する必要があります。』
『日本銀行調査統計局は、定期的にこうした推計を行い、経済・物価情勢の判断に活用するとともに、本ホームページにおいて、四半期に一度、これらの推計結果を公表しています。公表日は、原則として1、4、7、10月の第3営業日としています。』
ということで図表と数値が出ていますが、一応改善してるちゃあしてるけどこの調子で2016年度後半に2%物価になるのかと小一時間問い詰めたい状態ですな。
まあこれがピュアな統計の公表という美しい姿になるのか、政策の言い訳の小道具となって見苦しくなるかは今後の使い方次第ですね!!!!!!!!!!!!!
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2016/01/06
・その他雑談
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/rel160105a.htm/
金融政策決定会合議事録等の公表日時について
いつもだと月末に出てくるのですが、今回はMPMとぶつかった事でも影響したのかどうか知らんのですが、15日金曜に公表となっておりますな。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/rel160105b.pdf
日本銀行が新たに買入対象とする指数連動型上場投資信託に関する意見募集について
意見募集キター!!!!と思って良く良く見ますと・・・・・・・・・
『対象の検討に当たり、以下のとおり、市場関係者の皆様(以下の@〜Cに挙げる方とします)からご意見を募集します。
@ 日本銀行の取引先金融機関等およびこれらの先が加盟する各業態の協会
A 投資信託協会およびその会員会社
B 国内の金融商品取引所
C 現に上場されている国内株式対象の ETF が連動する指数の算出会社』
とございますので、こんなややこしい事するくらいなら金融機関買入株式の売却開始を先送りした方が良かったのではないでしょうかというような見解を市井の個人が提出するというようなプレイは出来ませんので念のため注意しましょう(^^)。
○黒田総裁が意地になっているような気がする件について
お、おぅ・・・・・・・・
http://jp.reuters.com/article/kuroda-idJPKBN0UJ0JT20160105
Business | 2016年 01月 5日 17:55 JST
必要ならばさらに大胆な措置=連合で黒田日銀総裁
また市場は反応していないのですけれどもね。
『[東京 5日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は5日、昨年に続き日本労働組合総連合会(連合)の新年交歓会に出席し、日銀が進める大胆な金融緩和の必要性に対して理解を求めるとともに、必要ならば「さらに大胆な措置を取る用意がある」と強調した。』(上記URL先より、以下同様)
今度は連合にお出かけしてお話し。
『黒田総裁は「(物価)2%目標の早期実現を目指し大胆な金融緩和を進めている」が、それは「日本経済がデフレ均衡から抜け出し持続的に成長し、子供や孫の世代まで生活水準を落とさず暮らすために必要だから」と説明した。』
何か大きく出たな。
『日銀は「物価だけ上がればいいと考えているわけでなく、2%の物価上昇は見合った賃金の上昇がなければ持続可能でない」と強調。「歴史的にも物価と賃金は連動しており、賃金上昇は日本経済の持続的な成長のため不可欠」と呼びかけた。』
という事ですが、別のベンダーだとまた「2%は必ず達成」とか言っていまして、どうも周囲から梯子外される中で意地になっているんじゃないかと心配になる次第。12月の補完措置以降これまではオペレーションの限界とか政策の限界とか言っても債券市場の変なマニアが何か下らんことを言ってる位の扱いしか受けていなかったのがだいぶ変わったという状況を受けて単にブラフで言ってるだけなら良いのですが。
つーかまあ賃金春闘言い過ぎで、これ見通し通りに行かなかったらどうするんだとしか思えん・・・・・・・
http://jp.reuters.com/article/boj-kuroda-idJPKBN0UJ18320160105
Business | 2016年 01月 5日 21:55 JST
バズーカと呼ぶかはともかく、追加緩和いつでもできる=黒田日銀総裁
『[東京 5日 ロイター] - 日銀の黒田総裁は5日放映されたNHKとのインタビューで、2%の物価目標を達成できなくなるようなリスクが顕在すれば「バズーカと呼ぶかどうかは別として、必要があれば十分な追加緩和はいつでもできる」と述べた。インタビューは2015年12月28日に収録された。』(上記URL先より、以下同様)
というのもやっていたようですが、
『追加緩和の有無を問われ「現行の政策で十分物価目標を達成できる」と答えたが、同時に「色々なリスクが顕在化すれば、日銀としての約束がある」とし、必要ならば追加緩和を辞さない姿勢を改めて示した。』
現行の政策で十分物価目標を達成できるのに何で追加緩和を強調する説明をあちこちでしているのかが最早何が何だか分からない状態になっておりまして、ちょっと黒田総裁大丈夫かという感じまで漂って来るのですけれども。
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2016/01/05
24000円ってムーシャ先生にしては随分低い数字ですなあと思ったら年初から株式市場がアレ。
http://www.musha.co.jp/short_comment/detail/153
ストラテジーブレティン 第153号
安倍政権のイニシャティブで「消費力」喚起へ、日経平均24000円も
2016年01月01日
しかしまあ何ですな。
『「量的金融緩和は無力であり失敗した、政策を変えるべきだ」という多くの専門家の主張を、黒田総裁は容認することは絶対できない。早晩量的金融緩和第三弾が打ち出されるのではないか。』(上記URL先より)
という話を持ち出す人って結構いるのですが、QQEそのものは無力どころか、こちとらQQEが強力にも程があって非常に困っている訳でして、市場の価格をちゃんと見ていればQQEが無力と言う人はいるとは思えず、ムーシャ先生のみならず「QQE無力批判はケシカラン(ムキーッ)」って言っている人は一体全体何を相手に戦っているのかさっぱり分からんですな。
問題はQQEが本来効きに行かせる物価に関しての効きが「これだけ金融市場の価格形成に大規模介入して価格を変えているのに」効率が悪いにも程があり、原油価格の低下でCPIが低下というのは個別物価と一般物価を混同している無知な議論(キリッ)というマネタリーベース直線一気理論の皆様の理論が全然ワークしていないという事でして、「QQEは強力に効いているけど物価に対しては効率が悪いし明後日の方向に無駄に効きすぎぃ!」という所なんですけどねえ。
○年初からおはぎゃーですが継続すると日銀マズーの展開か
・株安円高とな
いやまあ導入したらいきなりヒットとかお笑い芸にも程がある。
http://jp.reuters.com/article/china-stocks-circuitbreaker-idJPKBN0TN0QH20151204
Business | 2015年 12月 4日 18:17 JST
中国、来年1月から株サーキットブレーカー導入=上海取引所
http://jp.reuters.com/article/csi-idJPKBN0UI0CO20160104
Business | 2016年 01月 4日 15:39 JST
中国株式市場のCSI300指数が7%下落、大引けまで取引停止
ナンジャソラという感じですが、そうは言いましても上海総合指数ってまだ3300とかですからその前の戻りが訳分からんという気もせんでもないのですが、しかしまあ年初から豪快に下げて下さいましたけど、日本株って中国株下がる前から下がっていてその後中国株が下がると勢い付いた感じですかね。
でまあ年初1日目だけの話ですし、これから更にドカドカ下がるのか次第ではあるのですが・・・・・・
http://jp.reuters.com/article/idJPL3N14O1JM20160104
News - Forex | 2016年 01月 4日 14:53 JST
〔マーケットアイ〕外為:ドル/円119円前半、日中の下落幅1円以上に拡大
昨日はご案内のように118円台までドル円が突っ込んでいまして、株がさがるわ円高だわとなりますと急に日銀への当たりが強くなってくる、というのは従来よりの仕様となっておりまして、このまま継続しますと一番マズーな市場からの追い込まれパターンになって来るので意外なまでに素早い展開(つーても今日あっさり反転するかも知れんけど)ですな。
・さっそく追加緩和っぽい威勢の良い発言登場
という市場の動きを受けてかどうかは知らんけど、出た時間的に市場の動きは分かって発言していると思います黒田総裁発言が登場。
http://jp.reuters.com/article/kuroda-boj-economy-idJPKBN0UI0AI20160104
Business | 2016年 01月 4日 13:49 JST
さらに思い切った対応する用意、日本経済は正念場=黒田日銀総裁
日本経済ではなくてテメーの物価目標未達の言い訳の方が正念場だろというか、そもそもこれだけの超強引な緩和政策を3年近くも実施して未だに「日本経済は正念場」とかお前の金融政策は効率が悪いにも程があるわとしか申し上げようがございませんが。
『東京 4日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は4日、都内で開かれた生命保険協会の賀詞交歓会であいさつし、日本経済の前向きな動きが持続するか、今年が「まさに正念場」との認識を示した。そのうえで、金融政策運営は「必要と判断すればさらに思い切った対応を取る用意がある」と語った。』(上記URL先より、以下同様)
ということで、「さらに思い切った対応」というのがヘッドラインで(英文でも)思いっきり出ていましたが株も為替も無反応という(債券はもとより生体反応が無いので知らん)大変にチャーミングな展開になっておりまして、もちろん市場の勢いが強かったからというのもあるでしょうが、黒田総裁の緩和示唆とも思われる発言ヘッドラインでろくすっぽ反応しないというのは、やはり12月に「補完措置の無駄なプレゼン」を行ったしっぺ返しですな。
『総裁は、過去最高の企業収益や賃上げの実現などで、「物価の基調は着実に改善している」とし、こうした前向きな動きが持続するのか、「今年は日本経済にとってまさに正念場」との認識を示した。』
そもそも2年で達成する筈で追加までしているのに3年目が前向きな動きが持続するかの正念場というのであったら、今の短期間勝負の資産買入MB拡大の枠組みだと3年とか4年とかのタイムフレームで持たないんですからダメじゃん。
『金融政策運営は、必要と判断すればさらに思い切った対応をとる用意があると明言するとともに、「できることはなんでもやり、2%の物価上昇は必ず実現する」と強調した。』
はあそうですかという所ですが・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・そもそも2%物価目標について政府が梯子を外している件について(かなり前からですが)
あまりんェ・・・・・・・・・・・
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160105-00000005-asahi-pol
「デフレ脱却宣言できれば最高」 甘利氏が新年の抱負
朝日新聞デジタル 1月5日(火)3時27分配信
『甘利明経済再生相は4日の会見で新年の抱負を問われ、「15年続いたデフレから脱却する。デフレ脱却宣言ができれば最高だ」と話した。また、「企業業績と賃金上昇の好循環が、政府が背中を押さなくても自動循環に入ってくる年であればいい」とも語った。』(上記UR先Lより)
>デフレ脱却宣言ができれば最高だ
>デフレ脱却宣言ができれば最高だ
>デフレ脱却宣言ができれば最高だ
・・・・・・・・・・えーっとこりゃ随分とハードル下がりましたなという感じなのですが、そもそもデフレ脱却宣言も出来ていない状態なのに何がどうなると2016年度後半に2%物価水準に到達するのか小一時間問い詰めたいのですが、そもそも上の方にありますように日銀というか黒田総裁は「2%物価目標を達成する」と仰せですが、物価だけホイホイ上がっても実際の所得と将来の所得期待が上がってこなければ単に消費を委縮させるだけの話ですし、肝心の政府の方までデフレ脱却宣言できて、要はデフレに戻らないような感じになってくれれば良いという姿勢になっている訳でして、日銀様の仰せになる2%物価目標達成そのものを誰が望んでいるのでしょうかという状況になっている訳ですよね。
だったら2%の看板は看板で残すにしても(残さないとノミナルの為替が高くなりかねないので先進国同時に下げない限り宜しくない)、フォーキャストターゲットなりローリングターゲットなりに移行するとか考えないのかねえ(考えている野党審議委員の皆さんはいますが)と思う訳でして、「最初に2%を早期に実現すると言ったから絶対それを変えない」とか子供のお使いでももうちょっと状況の変化に応じてやり方工夫する相談をするんじゃないのかねえ、などとつい悪態になってしまいましたが、政府の方が2%早期達成に対して色々と助け船を出しているように見えるのに黒田さんどうなっているんでしょうかねえと。
話は全然違いますが、ハードル低いといえばこれもまたハードルが低い・・・・・・・・
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160104/k10010360311000.html
首相 夏の参院選「自公で過半数確保を」
1月4日 12時06分
・元日から謎の日経記事登場とな
元日からこんなのあったと1月4日に気が付くあたくし(汗)。
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO95688200R31C15A2NN1000/
日銀、16年度の物価見通し下げへ 2%目標先送りも
原油安続けば
2016/1/1 2:00日本経済新聞 電子版
というのが元日の日経新聞2面に出ていて、こういうのはブラックアウト期間になると出てくるというのが日経新聞のいつものパターンなだけにちょっと不思議感満載。
『日銀は1月29日に公表する経済・物価情勢の展望(展望リポート)で2016年度の物価見通しを下方修正する検討に入った。原油価格が反発しなければ物価2%目標の達成時期も現在の「16年度後半ごろ」から先送りする可能性が大きい。量的・質的金融緩和(異次元緩和)で物価が勢いよく上がるとの期待は薄れ、日銀が追加緩和のカードをいつ切るかが市場の焦点に浮上してきた。』(上記URL先より)
お、おぅ・・・・・・・・・・・・・
いやーさすがに10月末に見通し時期を半年程度後ズレさせた舌の根も乾かぬうちに2%目標達成時期を先送りというのはさすがに恥ずかしいというか、2回先送りする間に何もしないというのだったらそもそも「2年を念頭に出来るだけ早期に達成という強力なコミットメント」とは何だったのかという話になる訳で、何ぼ何でも次回見通し時期を後に送るなら何らかの落とし前をつけないとアカンでしょということで、それが今の枠組みでの追加緩和になるのか、追加緩和の衣をまとって政策のやり方を変更するのかは分からんですけれども、さすがに漫然と2%達成時期を先送りしつづけるのは無理でしょうと思うのですよ。
でもって「QQEの成果が上がってどうです凄いでしょう」という話をするにしても政府がデフレ脱却宣言を出来ていない状態でまさか凄いでしょうとは言えない以上、足元のこの状況で政府のデフレ脱却宣言が出ないまま株安円高推移とかがおっぱじまってしまいますと、日銀どう見ても追い込まれて窮地に立ってしまいますし、ああだこうだやっているうちに肝心の日銀コア物価の方が頭打ちから下がりだしたりした日にも日銀は追い込まれて窮地に立ちますよね、ということで年初から日銀的にはヒヤリとする市場展開になっていますなという事で。
・なお思い切った手段と言いましても・・・・・・・・・・・・・・・・・
では追加緩和に「追い込まれる」ということになった場合に日銀どうするのという話ですが、そもそも日銀がここから「追い込まれて追加緩和」という状況になった時点で武蔵坊弁慶もビックリの立ち往生にも程があってタダでは済まないと思いますが、まあそれはそれとして手段として考えられるのは・・・・・・・・
今の枠組みを前提にすると、米国債でも買えば別ですが、日本国債買うにしても買入の限界がどうのこうのと言われる上に、更に10兆円の買入拡大とかしたら年間買入フローが市中発行額を確実に上回ってしまう訳ですから、財政ファイナンス云々の前にオペレーションの限界を強力に手前に引き寄せる形になるので時間稼ぎにすらならないし、下手したら「打ち止め観測」が出るかも知れませんぞな。地方債だの財投機関債を買うとか言っても10兆とかのロットが稼げるものでもないですし、12月の補完措置は基本的に「今の枠組みの延命策」なのでもっと先なら兎も角4月くらいまでに追加緩和やるのに12月の補完措置を無視するというのも意味不明。
ではヤケクソで金利政策をやって追加緩和の振りをする、という手は無くは無いと思いますが、付利関係に手を出すとMB拡大が効果という今までの説明との整合性が取れなくなるし、マイナス金利なんぞにしますとテクニカルにも問題が起きるっぽい話(詳しくは研究中)でこれもまたアカン。
金利指値無制限買入みたいなので思いっきり感を出すというのはあり得るかも知れませんが、その時点で市場との対話とかそういうものは全てすっ飛んでしまいますし、それって金融政策第二の柱的にどうよというのもありますし、大体からしてそれは事実上の規制金利導入みたいなもんですから市場経済を基本にする先進国の一角としてだいぶ恥ずかしい(5年位までで止めるならまだしも長期超長期までというのはさすがに・・・・・・・・・・)のですがどうしましょうという所で。
でまあ「追い込まれ緩和」だとゼロ金利政策時間軸長期化みたいな話をしてもインパクトがない(「攻め」の枠組み変更だったら行けると思うけど)ので、まー追い込まれて追加緩和というのはその時点で手段がかなーり限られてくるので相当しんどいでしょうなあと思うので、そんなこんなを考えますと、まさか今月というのは無いと思うのですが、追い込まれるのを避ける意味でもそんなに日銀に残された時間は無いと思うのですがどうでしょうかねえ。
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2016/01/04
○謹賀新年
突然なんの挨拶だよと言われそうですが、今年の相場がどうのこうの的な事をちょっと考えてみた。
・物価が何となく適当な数字で1%ちょっと乗せ程度が一番たちが悪そう
本来は物価目標なので政策反応関数はトレンドとしての総合CPIであり、それを見やすくしてくれるのはコアCPIですがな。という話であれば反応関数は分かりやすいのですが、公式にそういう話をしている側から「物価の基調を見るための日銀謹製指標」とか出てくるという時点で「結局何をどう見て行こうとするのか」が不明の状態ですし、日銀サイドも作為的にこの辺りは訳分からんようにしているというので、何を持って物価目標の達成を言い出すかというのがさっぱりワカランチ会長になっている訳ですよ。
勿論すんなり総合CPIなりコアCPIなりが2%に到達する(あるいはそういう見通しが見えている)というのなら1ミリも問題は無いのですが、今年はエネルギー価格下落分の寄与と為替分の寄与が両方前年比で剥落していく中で物価上がるのかよ大丈夫かよという見通しになっている中で、どういう申し開きをしてくるのかというのがさっぱり謎で、一番やりそうなのが「更に新しい物価指標の見方」を繰り出してくる作戦ですかね。
でもって、物価が何か日銀に都合のよいコア指数を取り出して来たら+1%台にちょっと乗った辺りで推移する、という状況が続かれた場合というのは債券市場的には一番タチが悪くて、この場合何となくズルズルと問題の先送りが継続されるのではないかという悪寒がするのであります、
・申し開きというのは何時出てくるのか
もともと2年で達成とか言っているのを原油価格ガーだけで1年引っ張ってしまうという荒業をやっているのですが、最近は春闘連呼もありますし、原油のベース効果のことも勘案しますと4月に何らかの落とし前をつけないとマズイでしょう、とは思いますので、今の枠組みで追加緩和というのもかなり無理があるのでこの時に政策枠組みの組み換えでゼロ金利の長期化コミットメントという時間軸方向に振ってくるというのが一番美しい絵なのですが、黒田総裁が申し開きをする気が全くなさそうなのが日銀政策の読みがとても難しい所。
何せ先日ご紹介したように、ネットリフレのヨーイチ先生ですら「2年で2%」の話を全然しないで「日銀の国債買入で何と財政再建達成!!」と超ジンバブエ理論から入ってくるようになっている、ということで、そもそも論としてマネタリーベース直線一気理論の人たちがべた降りしているというのに、なぜか黒田総裁は謎の突っ張りを続けている訳で、今やリフレ派もビックリのマネタリーベース直線一気理論突撃状態になっている形なのですよ。
でもって直線一気理論は恐らくどこまでやっても意味がなくて、いわゆるバーナンキの背理法宜しくどこかの時点で財政インフレという制御が難しいダブルデジットレベルのインフレが発生する所でいきなり不可逆変化が発生という誰も得しない結末になるんでしょうとは思うものの、「MBが356兆円で物価が行かないなら436兆円にすれば良いじゃない」と、一度始めた戦線を最後に自己崩壊するまで延々と拡大を続ける昭和軍事官僚もビックリの動きをしているとしか思えない黒田さんがどこで翻意するのかがまあ一番のキー何でしょうな、という全く意味の無い説明になっていますが、まあ結局の所最大のキーがこれなのだからどうしようもない。
・オペの限界に関して
オペの限界に関してですが、まあこの調子で買っていればいずれ限界に達するのは全員同じ見解だと思います(なお日銀が買うので財政再建とか言い出すのは論外)が、これがどこまで持つのかは見解が割れる所で、毎度申し上げておりますように大体聞いていると非オペ先の特に投資家サイドが一番限界が近いと言っていて、オペ先の方が限界遠いと思っているというまあそうでしょうなという展開。
そもそも「オペの限界」とか言ってますが、じゃあ何を持ってオペの限界というのかというお話に関しても「輪番札割れ」とか「金利の急速な低下」とか言われますけれども具体的にイメージがあまり固まって居なかったりしまして、これって要するに「みなさんがオペの限界だと言い出すときがオペの限界」という裸の王様の寓話みたいな話で、定量的にどこで限界と言えなさそうな気がするのがアレ。
一つの参考としては12月の決定会合での公表が「追加緩和の限界を露呈した」と言われてしまって決定公表直後に発生したインデックス日中足のイナゴタワーが瞬間崩壊(その後年末にかけて戻って良かったですね(棒読み))したように、「今の政策の枠組みの中での単なる調整」と下手に鉦や太鼓で宣伝するときなのかも知れませんね。つまり、一番ありそうなのは月末の「翌月の輪番予定」の所で買入年限を長期化(短期減らして超長期を増やす)というのを静かじゃない形で実施しちゃうというのは鬼門になるかも知れませんなとか思ってみたりします。
オペの限界と言えば財政ファイナンスとの懸念という話もあって、新規に出てくる市中消化分を全部日銀がフローで購入とかどう見ても財政ファイナンスです本当にありがとうございましたという話になるのですが、こういうのはこれまた裸の王様的な「お約束」の世界でして、今いきなり財政ファイナンス懸念とかいう事は無いでしょうが、そら日銀総裁がいきなり「日銀の国債買入によって財政再建が完了しました(キリッ)」とか言い出すとそれは財政ファイナンスそのものずばりでありますので、これもまた信じる信じないの問題。
ということで、オペの限界についてはジリジリと限界が来る(市場のボラが益々なくなる)という方で当分生殺し状態になるのですが、本当の限界という時には「信じるか信じないか」によって閾値が発生するものであり、これまた定量的には分からん、としか申し上げようがない。
・・・・・・・・・・・・結局全部「定量的には分からん」が「どこかでツケが回ってくる」というだけの話だったら誰でもできますかそうですかすいませんすいませんすいません。
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