金融政策概観(2014年度下期前半(2014年10月〜12月))

トップページへ

見出し一覧のページに戻る

2014年度下期前半の見出し

2014/12/30「この1か月で債券市場が本格的に壊れてそろそろリテールにも金利低下のコストが転嫁される模様」
2014/12/09「GDP2次速報と景気ウォッチャーがダメダメな件」
2014/12/02「ソブリン格下げ/須田さんから砲撃インタビュー&ダドリーさんは原油安はプラスと日銀に巧まざるイヤミ」
2014/11/26「オペの苦情相次ぎ(?)市場参加者とのアリバイ会合久々に開催とな」
2014/11/19「解散総選挙!だが何気に日銀これで追い込まれているような気がする」
2014/11/18「GDP1次速報マイナスキタコレ/金曜のオペが色々とダメダメな件」
2014/11/17「増税先送りで解散総選挙モードらしいですな」
2014/11/08「追加緩和で一旦プラスになった短国利回りは大幅な買入継続でまたまたマイナスに」
2014/11/03「追加緩和関連のレビューを沢山書いてみました」
2014/10/31「3M入札は足切りもマイナス金利/オペの予見可能性に関して少々」
2014/10/29「国会半期報告での岩田副総裁と黒田総裁の答弁が酷い件について」
2014/10/28「月曜の輪番で超長期も増額したが平均残存調整の超小幅増額/その他プレビュー雑談」
2014/10/27「金曜の買入で短国を若干減額して中期輪番まさかの増額」
2014/10/24「3M入札の平均落札価格がオーバーパーで論点とか悪態」
2014/10/22「ECBの追加緩和期待を見て思うのだが次の手が手詰まりなECBと日銀」
2014/10/21「さくらレポートがすっかり執行部の意向を忖度した状態になっている件について(仙台支店除く)」
2014/10/20「短国買入が何と札割れで短国と2年ゾーンが大爆発」
2014/10/16「1年TB入札も強い/財務省が在り方懇で市場の流動性低下に超不快感表明キタコレ」
2014/10/14「市場が壊れているのに市場機能が維持されているという短期市場レビューを出してしまう間の悪さ」
2014/10/08「金融政策決定会合で馬鹿を2名観測しました」
2014/10/06「期初一発目の短国買入はまさかの市場のキャパ殆どの購入攻撃で過去最大の買入オファー」
2014/10/02「追加緩和という問合せも多いのでその関連のMPMプレビュー」

2014/12/30

○市場雑談である

・5年3bpェ・・・・・・・・・

金利が下がるネタは毎度のお話ですし、まあ金曜の場中に10年0.3%までマークしたのですけれども10年の方は昨日はそこまで盛り上がっておりませんのですけど、昨日の引値では中長期が引けで強くされて5年カレントの引けが3bpとかもうねという水準。

引値のマイナスの方も相変わらずで2018年償還の所までマイナス金利になっていますし、利付国債に関しては明確に輪番での買入効果で金利がおかしい水準になっているのと、ここまで来ると投資家の方も持っているモノを売れない状態(だからこそ無抵抗で金利が溶鉱炉に沈んで行くのだが)となっていますな。つまり売ったは良いけどそこで先の期間収益を全部売買益で取ってしまい、先の期間収益を放棄する形になる(買い直すにも4年までマイナスなのですからそのゾーン買えないし)となりますと来期以降どうしますねんとかなる訳でそら売れない罠という所。

となりますと、新発買って日銀に放り込むオペ狙い攻撃の方で輪番に対応となりますけれども、兎に角中期に関してはマイナス金利という普通の投資家の普通の運用を排除する金利水準まで下がっていますし、プラスの金利ったって5年カレント買って預金保険料払ったら大赤字というような水準まで金利を下げられていてどうやって期間収益を捻出しますねんという状況なので、投資家がまともに参加しないというか出来ない状態に急速になってきたこの債券市場では、入札→投資家買えないけど日銀オペでのキャピタル狙いだったら行ける人が行く→日銀のオペに打ち込む、という図が展開されて輪番の残高が拡大しながら金利は親指を立てながら溶鉱炉に沈んで行くという形になるのでした。

んでもって板がスカスカで売り向かう玉が無い(当たり前だがこの状況下でショート降ってもワークしないしレポがまともに続く保証もないから自分からショート振りに逝って勝負してもだいたい間尺に合わないでしょ)2年以内の利付ゾーンの引けってマイナス4bpとか凶悪な水準になっているのですが、まあ日銀以外の買いなんぞは超マージナルな部分しかないので(国債というモノとしてのニーズのみ)金利を下げるにしてもさすがに限界はあるという話でしょうから、そうなると今度は主戦場が徐々に残存の長い所になって行くとなりまして5年の金利が盛大に潰される状態ですな。

でまあオペ狙い系の動きというのはとにかく金利をゼロにまで下げに行くと言う感じですが、当然そうやって金利が低下すると投資家が水準として買えませんがなとなる訳で、イールドカーブの短い所から投資家が追い立てられてとなると、リスク許容度的に買入対象銘柄の年限を伸ばせるだけ伸ばしに行くとなるのでイールドカーブをごこまで潰しに行けるかという動きになって、ここもと急速に金利水準があばばばばーになっていますよね、という所なんですけど、来年も日銀の馬鹿買入は続くので市場の短い所から順に死後硬直のような状態になって逝くという中の人的には夢も希望もない年の瀬なのでありました。


・でまあ弊害キタコレなんですけどねえ

先週のニュースですけどね
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGC26H18_W4A221C1MM8000/
日生、一時払い終身保険など販売停止も 低金利で運用難
2014/12/27 2:01 情報元 日本経済新聞 電子版

『生保最大手の日本生命保険は26日、長期金利の低下が止まらない場合、一時払い終身保険を含む貯蓄性商品の新規販売を一時停止する検討に入ると明らかにした。日生の筒井義信社長が「金利環境は非常に厳しい。保険商品の引き受け停止も視野に入れておかなければいけない」と語った。保険料を国債で運用しても十分な利回りを確保するのが難しくなるためだ。』(上記URLより)

まあこちらの日生さんのケースは中短期のマイナスというよりは長期超長期の方になりますけれども、そらまあそういう話が出ても不思議ではない訳で、以前アタクシが実体経済における名目ゼロ金利制約があるからマイナス利回りを政策効果というのはおかしくて、市場金利のマイナスと名目ゼロ金利制約との差分を金融仲介業務の中だけで吸収できなくなった場合に金融機関の利用者に対して負担をお願いする動きが出てくるでしょと申し上げたようなのが、「新規の金利商品をお受けできません(まだ確定している訳では無くて検討段階のようだが)」というような形(これは直接的にはマイナス金利だから受けられないというのとは違うが低金利の弊害という意味では似たようなもん)で問題が発生している訳ですな。


昨日はロイターでこんな観測記事もありましたよね
http://jp.reuters.com/article/vcJPboj/idJPKBN0K703H20141229
金融庁が低金利下の地銀経営への影響試算に着手、収益減を警戒
2014年 12月 29日 11:45 JST

『[東京 29日 ロイター] - 複数の関係筋によると、金融庁は超低金利の長期化が地域金融機関に与える経営上の影響を推計するための試算に着手した。足元で長期金利が0.3%と過去最低水準を更新する中、今後も現在の低金利環境が続いた場合の利ザヤの縮小による収益減を警戒しているとみられる。今後、試算結果をもとに地銀経営者らと経営への影響について議論していく方針だ。』(上記URLより)

まあ金融庁様におかれましては地銀経営者の方々と議論するよりも日本橋本石町にカチコミに逝って金利を必要以上に低下させることの弊害について小一時間説教してきた方が問題の本質的な解決に繋がると思いますので、是非とも本石町への全力カチコミをお願い致したい所ではありますが、そらまあそういう懸念が起きる罠という所でもありますが、これまあ試算しましょとなりますと銀行の中の人たちを始めとする関係各位が色々と資料揃えたり計算したりとしないといけなくて、それだけでも手間暇かかりますぞなとか直接的な問題もあったりして、そもそも日銀が馬鹿買入を実施しなければ関係各位がこのような問題で頭を抱える必要が無かったのですよねと思いますと誠に遺憾の極みとしか申し上げようがありませんな。


・つーことで来年も買入は続きますが・・・・・・・・・・・・・

でまあ今年は本日で大納会な訳でMB目標とかその辺の着地はする訳ですけれども、2%物価目標が全然いかないという状況の中で日銀の馬鹿買入は継続しますし、しかもマイナス金利を馬鹿のように購入すればMB拡大も可能だわ金利も下がるので実質金利は下がるぜヒャッハーとしか思っていないとゆー政策運営&オペ運営は続く訳ですし(来月の買入は今日でますな)、達観すると金利は日銀買入でイールドカーブがブルトーザーのように潰されるの巻という話でしょうなあとか誠にショボーンな展開しか予想できませんぞなもし。

でまあそれはそれで起きるであろう話ですからシャーナイナイとしましても、そもそも論としてそうやって無理繰り金利を下げてMBを拡大する事の意味はどうなっているのかというレビューを来年はきちんと行って頂きたい訳で、普通に考えてこれだけMB拡大して2%達成が全然見えないというような動きですし、実質金利下がって設備投資が爆発的に出たという話も聞きませんし、まあこういう場合は「そもそもの現状認識が間違っていた為に出した処方箋が間違っており、そのためドンドン追加しても全然効いてこない」という風にPDCAを回して反省すべきだと思うのですが、ここまで馬鹿政策を拡大してしまった為に引くに引けない状態になっており、反省をしたらまあ何人のクビを飛ばしますかという話だからPDCA回さずにひたすら拡大をするのみという事ですな。

まあどう見ても昭和陸軍です本当にありがとうございましたという状態ですが、先般のMPMで見通し上方修正したらお洒落な経済指標がホイホイ出てくるとか、戦局の悪化に対して現状認識を自分たちの説明および面子に都合の良いように作るとかまさに戦争末期っぽくて、最初の奇襲(=去年のQQE導入)がうまく行き過ぎたのが却って仇になって今年の3月4月辺りに大勝利宣言(=カザフスタンでの総裁スピーチとか)したのがやっちまった感が強いですな。

でまあ戦局が悪化しているのに「2%への招待状」とか招待する会場が無いのに何が招待状だヴォケというような講演が打ち込まれる訳ですが、これも戦局悪化してアーアー聞こえない状態になっていると思えば当然の動きでありますし、一方の戦場部隊からは戦局をきちんと把握しようというのではなく、どう見ても参謀本部や司令部向けのアリバイ作りに余念がない動きが出るとか実にこう末期症状っぽくて落涙を禁じ得ませんな。

先週のですけどね。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/rel141222c.pdf
2014 年12 月22 日 日本銀行金融市場局
「短期金融市場取引活性化研究会との実務者レベル会合」の開催について

『日本銀行金融市場局では、本年11 月5 日公表の「市場参加者との対話の強化に向けた取り組みについて」において、市場機能の維持・向上に向けた取り組みの一環として「東京短期金融市場サーベイ」を活用した市場参加者との対話を一段と強化していく考えを示しました。』

はあそうですか。

『その具体的な取り組みの一環として、短期金融市場取引を行う各業態の代表者で構成される短期金融市場取引活性化研究会(以下、短取研)との間で、実務者レベルの会合を以下の要領で新たに開催します。本会合は、今後も年1回程度の頻度で開催していく予定です。』

・・・・・・・えーっとすいません年一回の会合やって「市場参加者との対話の強化に向けた取り組み」って本気でそれ対話の強化に資すると思っていますかと思う訳で、短取研に関しては全銀協のページの方にちょっとだけ説明あるけど確か月イチくらいで会合やってる筈だからそこにオブザーバー参加すればいいじゃねえかと思うのですが、年一回シャンシャン会合をやって「市場機能の維持向上に向けた取り組み」とかこれはまた見事な取り組み過ぎて野々村某並みの号泣不可避という所ですな。


まあ何ですな、追加緩和打ち込み以降この辺りの日銀の動きがちょっと号泣不可避という感じになっているのが実にこうアレなのですけれども、この調子で来年になった時に、チーペストの金利がマイナスになるのと輪番が札割れするのとどっちが早いんでしょうかねえとか(どっちも暗い話だが)そんな事を思いつつズブズブと沈んで行くイールドカーブを呆然と眺めるのでありましたとさ。


#うむ、市場雑談の積りが只の悪態に

トップに戻る



2014/12/09

○GDP2次速報ヒャッハーとかその辺の雑談メモ

・GDP2次速報まさかの下方修正

ほいな。
http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/menu.html
国民経済計算(GDP統計)

でまあ今回のQE2次速報はこちら
http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/gaiyou/gaiyou_top.html
2014年7-9月期・2次速報(2014年12月8日)

http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/gaiyou/pdf/main_1.pdf
国内総生産(支出側)及び各需要項目(PDF形式:145KB)

http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/files/2014/qe143_2/pdf/qepoint1432.pdf
−ポイント解説−(2014年12月8日)(PDF形式:116KB)

法人企業統計が強かったので上方修正必至でもしかしたらプラスが出て選挙期間中にオモシロ改訂ヒャッハーとかいう話は何だったのかと思いつつ、かくいうアタクシもこれはプラスとかゼロが出て消費増税先送り解散とは何だったのかという話になったら面白いですなあと思っていましたので人の事は言えません(汗)。

でまあ詳しい話は本職の方が既に色々とレポートを出していますのでそっちを見る訳ですが、上記の中で「国内総生産(支出側)及び各需要項目」の5ページ目なんぞを見ると『四半期別の実質成長率』(ちなみに内閣府のサイトではPDFをコピペしてテキストに落とすという技が使えないような設定になっているので一々手打ちをしないといけない)というのがありましてですなあ・・・・・・・・・・

これ見るとGDPの四半期展開見た時に(過去のがしらっと修正されているので)実は2013年の10-12期から実質マイナス成長になっていて、消費税増税(およびその他の期限切れ)の駆け込みと反動の部分を均すと4四半期連続マイナスみたいなもんで、リフレ一派の皆様がいう「消費税増税ガー」だけなのかねこれはという気がだいぶするのですがその辺に関しての説明を頂きたい物ではありまする(ちなみに2013年10-12から年率換算で▲1.5%→+5.8%→▲6.7%→▲1.9%な)が、消費税ガーのせいではなくて円安に無理繰り振ってコストプッシュで物価を無理繰り上げに逝った事によって想定効果としていた輸出が伸びなくて輸出起点の循環が回らない中で実質ベースの所得が落ちた影響がじわじわ効いているという事だとすると、強引に短期間で2%物価上昇を目指す必要が本当にあるのかというような議論にならんのかねとは思ったりしますけどね。

ただまあ直近で足元の原油価格下落に反応して追加緩和実施するというルビコン川だか三途の川だか知らんけど思い切ったプレイが炸裂した手前、そんな話は死んでも出てこない(というか出したら少なくとも副総裁1名のクビは飛ぶ罠)であろうと思いますのですが、本来は前例のない事をするのですからMB拡大すると物価とインフレ期待が上がって全てハッピーという置物直線一気理論が何ぼ正しいとしても、やはり検証を行いながら進撃していく方が吉のような気がするんですけど、まーアタクシがそう思うのと実際に起きそうなことといのはこれまた別問題ですからね(−−;


・景気ウォッチャー調査とな

ほれ
http://www5.cao.go.jp/keizai3/watcher/watcher_menu.html
景気ウォッチャー調査

http://www5.cao.go.jp/keizai3/2014/1208watcher/menu.html
平成26年11月調査(平成26年12月8日公表):景気ウォッチャー調査

http://www5.cao.go.jp/keizai3/2014/1208watcher/bassui.html
平成26年11月調査結果(抜粋):景気ウォッチャー調査

『今月の動き(11月)』

『11月の現状判断DIは、前月比2.5ポイント低下の41.5となり、2か月連続で低下した。家計動向関連DIは、小売関連などが低下したこと等から低下した。企業動向関連DIは、非製造業が弱含んだことから低下した。雇用関連DIは、一部で求人の増勢に一服感がみられたこと等から低下したものの、47.6となった。』

ナムナム。

『11月の先行き判断DIは、前月比2.6ポイント低下の44.0となり、6か月連続で低下した。』

ちーん。

『先行き判断DIについては、物価上昇への懸念等から、家計動向部門、企業動向部門及び雇用部門で低下した。以上のことから、今回の調査結果に示された景気ウォッチャーの見方は、「景気は、このところ回復に弱さがみられる。先行きについては、物価上昇への懸念等がみられる」とまとめられる。』

>先行きについては、物価上昇への懸念等がみられる
>先行きについては、物価上昇への懸念等がみられる
>先行きについては、物価上昇への懸念等がみられる

・・・・・・・・・まあ何ですな、別に2%の物価目標そのものがイカンのかというとそれはそうなのではなく、日本経済の成長力から言って無理のない水準が2%になっているというような安定成長経済になっているというのは非常に美しい姿ですから目指すこと自体を否定する積りはないのですけど、それを達成するのにコストプッシュで無理繰り物価を上げてバックワードルッキングでインフレ期待を引き上げる、という手法はデフレ均衡脱却程度ならば使えるのかも知れないけれども、それ以上の所を目指しに行くと実質所得のマイナスが大きくなるのでその悪影響が効いてくるという話なのではないかと。

そうなりますと浜田先生じゃないですけれども、2%は目指すけどそこは時間を掛けても良くて、本来の目的はデフレ脱却ですよね、と開き直るというか名誉ある撤退というか、勝っている内に講和条約みたいな話が選択肢にあったと思うのですが何せ今般追加緩和をしてしまいましたのでどう見てもインパー(以下の部分は内務省検閲により削除されました)。

トップに戻る



2014/12/02

いやー何ですかこれは。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS30H0B_Q4A131C1PE8000/
解散の背景に財務省の増税多数派工作 首相明かす
2014/11/30 19:12

『「財務省が善意ではあるが、すごい勢いで対処しているから党内全体がその雰囲気になっていた」。安倍晋三首相は30日のフジテレビ番組で、衆院解散・総選挙を決めた背景に財務省による消費増税の多数派工作があったことを明らかにした。首相は「責任を持っているのは私だ」と強調。「(増税延期に)方向転換する以上、解散・総選挙という手法で党内一体で向かっていく。民意を問えば、党内も役所もみんなでその方向に進んでいく」と説明した。』(上記URLより)

たぶん小泉郵政解散の手法を意識していると思うのですが、財務省陰謀論にするのはさすがにちょっと理由としてどうなのかっつーか何で延期後は景気判断無しで自動増税という建付けになるのかが謎。


○格下げキタコレ

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NFWC166JTSEL01.html
ムーディーズ:日本国債を「A1」に格下げ−財政に不確実性
更新日時: 2014/12/02 00:01 JST

『12月2日(ブルームバーグ):米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは1日、日本の政府債務格付けを「Aa3」から1段階引き下げ「A1」とすると発表した。見通しは「安定的」。同社は発表資料で、格下げの理由として「財政目標の達成と債務抑制に関する不確実性の高まり」、「経済成長に向けた政策の不確実性およびにデフレ終息に向けての課題」、「政策の有効性および信頼性の低下が債務負担能力を低下させる可能性」を挙げた。』(上記URLより)

消費増税先送りでフィッチとSPがコメント出していてMoody'sがだんまりだったので、選挙の結果が出て先送り正式決定となった所辺りでダマテン格下げあるで〜とか思っていたのですが、何と選挙公示前日に打ち込みとはこらまた素早いですが、まあ仰せの話はそらそうよというお話ではあります。どうせならどうせならMoody'sも格下げついでに白井さんの先日のマネタイゼーション発言にも言及して差し上げたら大変に素敵だったのですけどねえ(^^)。

なお出た瞬間に円安に振れたと思ったら本当に瞬間の反応でドテン倍返しみたいな円高に振れていて、まあ単なる円安ポジション利食いか何かだとは思うのですが、後付け講釈によりますと「株が下がったからリスクオフの円高」とかいう話になっているのですが、いやあのリスクオフの震源日本だろナンジャソラではありますな。

でまあこれで外格2社シングルA格付けになってしまいましたが、足元では中短期の金利がお察しの状態なので海外勢の売却マダーなどと超目先の話をしている場合ではありませんかそうですか(−−;

なお、選挙公示前日に格下げアクションとか中々お洒落なタイミングなのでまた「増税派の陰謀」とか陰謀論スキーな方々が盛大に宣伝するに1万ジンバブエドル。


○各種発言メモ(備忘メモも兼ねて)

・今度は須田さんから砲撃とな

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NFQRCY6S972B01.html
追加緩和で量的・質的緩和に効果ないことが示された−須田氏
更新日時: 2014/12/01 13:00 JST

『須田氏は2001年から11年まで審議委員を務めた。現在キヤノングローバル戦略研究所特別顧問の同氏は11月28日のインタビューで、「結果論からすれば、昨年4月の量的・質的金融緩和の効果は思ったほどではなかったということであり、今回、追加緩和に踏み切ったこと自体、そのことを認めたことになる」と話す。』(上記URLより、以下同様)

・・・・・・・・・・えーっとですな、これブルームバーグの悪い所なので改善して欲しいのですが、ページビューを稼ぎたいという事で妙に過激なヘッドラインを付けてアイキャッチ狙いをするのですけれども、上記のように須田さんはQQEの全てに効果が無いという話をしている訳ではないですし(そもそもそれなら須田さんが過去に実施した量的緩和も効果が全く無いという話になるわな)、実際には盛大な買入を実施したからと言って物価を直接押し上げる効果は極めて限定的という話をしているだけに読めるのに、上記のような書き方をするとその時点で普通にトンデモ論に見えてしまって、須田さんのレピュテーションにも影響すると思うので、こういうあまり過激なヘッドラインの記事立てをするのは止めて頂きたいと思うのですよねえ。

『日銀が国債発行額のほぼ全額を買い入れる一方、安倍晋三首相は来年10月に予定していた消費増税の先送りを決めた。中央銀行が政府の財政資金をファイナンスするマネタイゼーションだという批判も多い。須田氏は「最大の懸念は、事実上のマネタイゼーションから抜け出せなくなり、物価が上がって2%で止められなくなるリスクだ」と語る。』

なおマネタイゼーションは問題ではないなどという審議委員がいる(過去に国債引受の話をしていた置物師匠ですらその手の発言を封印しているというのに・・・・・)訳で、須田さんのご見解を是非お伺いしたいですな。

『黒田総裁は10月31日の会見で、追加緩和により「十分リスクに対応できる」と語った。しかし、同日公表した経済・物価情勢の展望(展望リポート)は追加緩和の効果を織り込んで作成したにもかかわらず、物価の先行きは「中長期的な予想物価上昇率の動向などをめぐって不確実性は大きく、下振れリスクが大きい」と指摘した。』

うむ。

『須田氏は「本当に効果のある政策を取ったのであれば、リスクは上下バランスするはずだ。追加緩和をやりながら、下振れリスクは依然として大きいというのであれば、それは政策対応が不十分だということに他ならないので、十分な措置を取ったというのはおかしい」と語る。』

これは総裁会見で指摘した話を再度蒸し返してツッコミをするのを須田さんインタビューを借りて行っているようにも見えますなwww

『追加緩和を好感し、株価は上昇した。須田氏は「資産価格に影響を与えた面はあるかもしれないが、それがどれだけ実体経済に影響したかはよくわからない。多くの人は実際に効果があるのは円安だと考えているが、当事者は主たる効果が円安だとは口が裂けても言えない。それも効果を論じる上で不幸なことだ」と語る。』

まあQQEに関しては資産価格ルートと為替ルートに効果があったという事でしょうが、為替に関しては貿易赤字への転換とかの背景もあるのでどこからどこまでがQQE効果なのかも微妙だったりしますけれども、市場の価格変動にモメンタムを付けた点に関しては機能したでしょうなあとは思われますな。

てなことで、まー須田さんの説明自体はさいですなという所ではありますが、早川さんのケチョンケチョン砲撃とはまた別の味わいがあって、悪口成分は少な目ですが政策効果の話に関してはかなりケチョンケチョンな説明になっていますなという所で。


・ダドリー講演とな(詳しくは後日読む)

これはwww
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NFX0HF6JTSEV01.html
NY連銀総裁:原油価格の下落は景気回復を強固にする
更新日時: 2014/12/02 03:45 JST

『12月1日(ブルームバーグ):ニューヨーク連銀のダドリー総裁は原油価格の急激な下落は米経済に利益をもたらすと指摘した。家計や企業の支出が増えることを理由に挙げた。』(上記URLより、以下同様)

順当な指摘。

『ダドリー総裁は1日、ニューヨークのバーナード・M・バルチカレッジで講演。講演原稿によると、エネルギー価格の下落は「家計の実質所得の著しい伸びにつながるほか、消費支出を力強く喚起するはずだ」と発言。こうした価格下落は、臨時の実質収入を貯蓄ではなく消費に回す可能性が高い低所得層にとって、特に強い支えになるという。』

全くで。
  
『同総裁は、原油価格の下落が続けば米国での石油やガスへの投資にマイナスの影響を及ぼすことになろうと指摘しながらも、「このリスクを強調するべきではない」と述べた。』

そらそうよという所で、原油価格が下がったから追加緩和というオモシロロジックが炸裂したどこぞの中央銀行が盛大にdisられているように見える辺りがクソワロタとしか申し上げようがないですな。

とまあそれだけだと日銀がカワイソウなので補足すると、日銀的には「インフレ期待がアンカーされていない中なので一時的な物価低迷であっても放置するとインフレ期待を適切な位置でアンカーさせに行く現在の政策に対して宜しくないので反応しているのです」という説明になっているのですが、現象面としては「足元の原油価格大幅下落という経済に良い筈の一時的な価格ショックに対応した緩和」にしか見えないので、その結果原油価格下落→追加緩和ヒャッハーみたいな反応が他の主要国でも起きてしまっていまして、拡大解釈する市場の方が悪いちゃあ悪いのですが、特に出口方向の政策を進めているFRBとしては大迷惑という状態になっているのでしょうなあと思うのですがどうですかね。

トップに戻る



2014/11/26

○久々にアリバイ会合キタコレ!

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/rel141125c.pdf
「市場参加者との意見交換会」の開催について

『日本銀行金融市場局では、以下の要領で「市場参加者との意見交換会」を開催します。本会合は2013 年4 月以降、適宜の間隔で開催されてきているものです。』

適宜の間隔って前回だいぶ前だった気がしますが。

『3.参加予定者

・市場調節取引先、機関投資家などの実務担当者
・日本銀行金融市場局長、金融市場局市場調節課長、金融市場局市場企画課長、企画局政策企画課長 ほか』

『4.内容

日本銀行より、@「量的・質的金融緩和」の拡大後の市場動向と市場調節運営、および、A「市場参加者との対話の強化に向けた取り組み」(「債券市場サーベイ」の開始等)についてご説明し、意見交換を行う予定。』

との事ですが、昨年の場合は折角大規模緩和を打ち込んだのに名目金利を下げたいのか実質金利が下がれば名目金利が下がらなくても問題ない(=インフレ期待が上がれば無問題)のかに関して説明が混乱(導入前に黒田総裁は名目金利を下げるような言い方をしていたのに実際に始まってみると金利が上昇しているのに放置プレイな発言をしたのがそもそもの間違い)したので実施されたという所ですが、今回は日銀的に言えば「政策効果が出て金利が下がっている」という状況なのに会合を久々に実施とはこれ如何にという所ですな(ニヤニヤ)。

でまあこれだけ市場機能を圧殺するわ騙し討ちオペやらバキュームオペやらを実施しておいて対話とかヘソが茶を沸かす事案ではございますが、まーこういうのやると言い出しているのはそれだけ苦情が出ているんでしょうなあというのだけは把握した(^^)。

さて、まあ施策のご説明なんぞはどうでも良いのですが、これだけ市場にフリクションを与えて、金融市場における金融仲介機能を阻害している(ゼロ金利制約における資産買入系の非伝統的政策というのは本来的にそういう副作用があるっつーか、それをする事によって別の効果を出そうという政策なんだから仕方ないのだが)訳でして、しかもそれをさらに強化するという話なのは別に説明されなくても分かっておりますので、折角「ご説明」するのでしたら「市場に死んで頂きます」という政策が「いつになったら出口になるのか」という明確な目処を出して頂きたいですし、目処が無理なら必達目標時期を出して「ここまで籠城戦をしていただければ包囲網が解放されますからそこまで籠城して我慢して下さい、なおその時点でダメなら執行部全員切腹して死にゆく市場の皆様と心中するので許してください」という話をして頂きたいものですな(無理なのを承知な上で言ってますので念のため^^)。

そもそも超大規模国債買入を1年半も実施して「目標達成しないなら更に追加すれば良いじゃないか」という理屈でおかわりをするというのも良く良く考えたらおかしい話で、普通これだけハチャメチャな買入を実施してしかも導入当初には2年で達成できるのは当然で達成できなければ辞任とかこの政策の理論的バックボーン(笑)の副総裁様が仰せだった訳ですから、更に追加緩和して(月によっては)新発国債の当月市中消化部分を全部買う位の勢いでの買入を実施するのにまた半年後くらいに「足りないなら更に追加緩和」とか言い出す前に「そもそも国債買入MB直線一気理論ではデフレ均衡脱出は出来たかも知れない(この調子でスタグフ的に推移するとそれも怪しい気がするが)けれども、2%を達成させるためには別のアプローチがあるのではないか」という話になって頂きたい訳でして、その辺の見極めの目処の時期はいつですねんという話だとは思いますけどね。うんうん。

#しかし今の黒田さんだとそのまま「目標達成が遅れているのは国債買入が足りないから」と言いそうで・・・・・

トップに戻る



2014/11/19

いやーまさかの展開にも程がありますがこれで選挙結果出るまで動きようが無くなりますのう。

○解散総選挙ヒャッハー!

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NF8E7C6JIJVG01.html
安倍首相:衆院解散を表明、消費増税は1年半延期−12月選挙へ
更新日時: 2014/11/19 00:13 JST

ということで解散総選挙ですが、消費増税1年半延期するのは兎も角として景気条項外して1年半後に「必ず実施」なんだったら悪材料は先にやっておいて早期出尽くしにした方が良いんじゃねえのという気もだいぶするのですが、これでとりあえず来年の所で発生し得る駆け込みと反動が無くなったので少しトレンド読みやすくなるかもしれませんな、うんうん。

でまあ選挙がどうなるかはワカランチ会長なのですけれども、会見で勝敗ラインを自公で過半数の所と超安全圏ゾーンに置いていたからどこからどう見ても定義的に負けというのは発生するとは思えませんし、前回さすがに勝ち過ぎですから少しは減らすでしょという程度だと考えるとまあその後どうなのという話ですぞなという事で。

となりますとどうせ政権公約の方で出てくると思いますが成長戦略の方をよろしく実施の程願いたい訳で、選挙後も経済モードで進行して頂きたいと思いますし、まあそう考えますと自公または自民+維新で3分の2を切ってくれた方が憲法改正モードとかにスイッチ入りにくくなるから経済に専念してくれるかも知れませんな。

#なお成長戦略の内容は会見では特に説明が無かった模様なので政権公約でよろしく

・・・・・・・・・しかし「1年半延期するけどその後必ずやるので信を問う」というのは何が何だかよく判らん(消費税増税は一旦止めて別の方法で財政運営しますよ、という方が分かりやすいのだが・・・・・・)ですなあという感じで、為替の動きとか見てたけど延期するけど景気条項外すし財政再建しますよ的な説明の所でいきなり円高に振れていましたな。

しかしまあ何ですな、昨日の会見でも安倍ちゃんが説明していましたが、「デフレ脱却していない」という説明をここの所何度も官邸方面から飛び出しているというのが実に味わいがありまして、これってつまり日銀というか黒田さんにとっては結構プレッシャー掛かっているんじゃネーノと思われるのでして、まーアクチュアルの物価に反応した日銀ですし、2%へのこだわりを無茶苦茶見せてしまった以上、物価上昇率が1%カツカツで推移する期間が続けばまたまた追加緩和(もはや何をするのか知らんが国債100兆にペース拡大くらいしか思い浮かばん、外債買った方が話が早そうだが色々な事情で難しいでしょ)という話になるのが近そうですなあという感じです。

でまあ1年半延期ではありますが、その時に状況的にダメという時は退陣とまで仰せでしたので、逆算して考えたら2016年の秋口には増税大丈夫ですねという状況になっていないといけない訳ですな。さてそうなりますと今回の消費増税の影響が大きかった理由としてデフレ脱却で2%物価目標の達成前に増税したというような理屈も思いっきり成り立つと思われます(というか多分就任前からの話を総合すると安倍ちゃん的にはそーゆー整理になっているのではないでしょうかねえ)ので、そうなりますと秋口がジャッジメントタイム(^^)であります関係上、その前にデフレ脱却して2%物価目標を達成していないとどう見てもマズイという事でもありますなというのが日銀に重くのしかかってくると思われる次第。

ということで、まあ1年半延期したから2年で達成の方はお許しされているような感じがだいぶ漂って参りましたが、では中長期的に目指せば良いというスキームになってくれるかと言いますと、これがまた難しい所で、浜田先生辺りからはデフレ脱却すれば良しという話が出ていますのでそっちに方向性が変わってくれると穏当な方向に収まるのですが、今のままで推移致しますと2016年度の前半には2%物価目標達成宣言ができるような状態になっていないと日銀が火あぶりの刑に処せられるという話じゃネーノと色々と頭を捻っている内に結論付いた次第でございまして、そう考えますと黒田日銀様におかれましては物価目標達成に向けて更に短期決戦大勝負モードになってくるという債券市場涙目の展開になりそうな悪寒。

まあ債券市場涙目になっても物価目標を早期に達成してその後出口政策になってくれれば目先はビバークなのか冬眠なのか分かりませんがとりあえず気を失っていれば良いのですが、問題は猛吹雪も止まずに春も来ない場合に気を失ったままだとお陀仏さんになってしまう事でございますし、金利市場の中の人たち的にはどう計算しても物価がそう簡単に2%目標に達成して安定推移という絵が描けないという話の方が超優勢でして、お願いですからその辺の説得力のある絵が描けるようなストーリーをと思うのですが、相変わらず異次元緩和の波及経路とそのパスが全然具体的じゃないのを何とかして頂きたい物ですな。

・・・・・・と最後は選挙と全然関係ない雑談になってしまいました(−−;

トップに戻る



2014/11/18

○GDPキタコレ

まあ皆様ご案内の通り。というか最初に数字のヘッドラインを見てあまりの数字に乾いた笑いしか出ませんでしたわorzorzorz

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NF075C6K515801.html
7−9月GDPは2期連続マイナス成長、1.6%減−予想と逆行
更新日時: 2014/11/17 15:54 JST

『内閣官房参与の浜田宏一・米エール大名誉教授は同日午後、都内で英語で講演し、消費増税は日本経済にマイナスの影響をもたらし、アベノミクスと逆方向だったと述べた。さらに消費増税の影響から回復するにはもう1四半期以上が必要だとした上で、将来は引き上げられるべきだが、「今はベストではない」と述べた。』(上記URLより)

との事ですが、金融政策で物価目標達成すれば全てハッピーという話は何処へとゆー所でありまして、そんなに消費増税に破壊力があるんだったら別に異次元緩和とかしなくても消費税を下げればあっという間に経済が回復したんじゃないでしょうかって気がする訳で、マンデルフレミングで財政は効果が小さいから金融政策をもっとやれという話は何だったのかと小一時間。

つーか先生リフレで一人あたりの実質所得が減っても雇用が増えるから問題ないって話をしてまして、確かに労働市場はタイトはタイトだと思うので先生の仰せの通りの展開になった結果個人消費が中々伸びてない気がするんですがががががが。

まあ何ですな、円安に振ってコストプッシュで物価上昇させて、そらまあブラードの言う「望ましくない均衡」からは一旦脱却できたのかも知れませんが、為替頼みで物価を上げてアダプティブな期待インフレの上昇も(2%とはいかないけどそれなりに)起きましたけれども、肝心の生産や投資(金融資産への投資では無い投資な)がそれに伴わないと単なるコストプッシュで中期的に見たら却ってディスインフレ圧力を高めるという話で、やはり無理矢理物価だけを上げようというので2%とかまで持って行くとゆーのは無理あるんじゃないですかねえという気が益々してきましたな。

となりますと取り敢えず1%を目指してその後中長期的に2%に向けて頑張りましょうという話の方が分があったように思えますし、金融政策は(LLRとかの話は別として)基本的には経済のデコボコを均す事や時間稼ぎをする事は出来るけれども、それ以上の事を無理矢理進めるというのはやはり限界があるんじゃネーノという気がしますけどねえ。

#つーかこの状況で解散総選挙やってる場合なのか????

あまりん
http://jp.reuters.com/article/idJPL3N0T71A920141117
再送-UPDATE 1-最大の要因は在庫調整の進展、GDPマイナスで甘利担当相
2014年 11月 17日 14:20 JST

『そのうえで甘利担当相は「デフレマインドが払拭しきれないなかでの消費税引き上げは、想定よりインパクトが大きい」との認識を示し、安倍晋三首相が近く判断する10%への増税可否について、「消費増税で景気が失速し、デフレに戻ってはいけない。あす以降、(消費増税や景気対策、解散などの)何らかの判断が出ると思う」と語った。』(上記URLより)

デフレマインドが払拭云々なのかな〜とは疑問に思う訳で、そらまあアタクシなんぞは市井のただのオイチャンでしてアネクドータルな話しかしないから何とかスト様からは鼻で笑われると存じますが、デフレマインドがどうのこうのじゃなくて「実際に物価が上がっているのに気がついた」から消費が落ちてきたんじゃネーノと思う訳で、駆け込みその他の雰囲気もあって確かに今年のGW辺りくらいまではアタクシもこれは落ち込み大した事ないし回復行けるやんとアネクドート的には思っていたのですが、5月下旬あたりからヘロヘロになってきましたねというような動きで、W杯予選の辺りから更にアチャーという感じになっていたとゆーのはだいたい「いつも通りに消費していたら意外に金が無くなっているじゃん」という話になってアカンという事になったって流れのように思えます。

何か「デフレ」と「景気後退」が混同して使われてるんじゃネーノというのもありますが、とりあえず「まだデフレ脱却していない」的な話をしておけば便利という事なのでしょうねえとは思ったりしますけど、異次元緩和開始してから1年半も経過しているのにまだ「デフレ」という話になっているというのは何なんでしょうかねえ・・・・・・・・・・・


安倍ちゃん
http://jp.reuters.com/article/idJPL3N0T73TK20141117
UPDATE 1-来年消費税上げるべきか冷静に分析し、判断したい=安倍首相
2014年 11月 17日 19:06 JST

『安倍首相は「いい数字ではなかった」とし「長く続いたデフレから脱却するチャンスをやっとつかんだ。私たちはこのチャンスを手放すわけにはいかない」と述べ、「来年消費税を引き上げるべきか、冷静に分析し判断したい」と語った。』(上記URLより)

CPIが(間接税効果抜きで)+1%を延々とキープしているのにまだデフレから脱却していないとは何という事ぞと申しますか、確かりふれのセンセイによりますと適切な金融政策を実施すると数か月でデフレ脱却が可能という話でしたけどアレは一体全体何だったのかという気がしますがそれは兎も角。

『「経済の好循環が今まさに生まれようとしている」と成果を強調。「3本の矢の政策は着実に成果をあげている」と胸をはり、』(上記URLより)

三本目の矢はどちらに???という気がするのですが好循環が今まさに生まれようとしているのか・・・・・・


つーことで、何ちゅうか丁度良い言い訳の数字が出てこれなら景気条項を使って先送り(ただし1年半とかではなくてもうちょっと短い期間の方が良い気がするが)するのは別にまあ行けそうで、何も解散総選挙をせんでも良かろうという気がだいぶするんですけどねえ。ま、それよりも実は消費増税を予定通りに実施した方が駆け込み需要が発生して景気上向くんじゃないですか(冗談)。



○金曜のオペ雑談(レビュー)とか少々

金曜のオペが色々とアレでございましたなという話で皆様的に今更の話で恐縮ですが。

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of141114.htm
国庫短期証券買入 12,500 2014年11月18日
国債買入(残存期間1年超3年以下) 5,500 2014年11月18日
国債買入(残存期間3年超5年以下) 5,500 2014年11月18日
国債買入(残存期間10年超25年以下) 2,400 2014年11月18日
国債買入(残存期間25年超) 1,600 2014年11月18日


・短国買入がヘタクソすぎて泣ける件について

ということで先週金曜の短国買入は1.25兆円と思いっきり前回の2.75兆円から減額されてオファーされた訳ですが、先々週の金曜のオペのせいでまたまたマイナス金利とかになったじゃねーかと言って土曜日にこっそり更新して悪態を書いていましたが、先週の場合は「1.25兆円しかオファーが無い」→「そんなにマーケットに玉が無いのか!!」となってヒャッハー状態となって(後で引用しておきますが)オペ結果は平均2毛6糸強の足切り5毛1糸強とか盛大にマイナス買入ヒャッハーとなるわ、金曜も昨日もカレント3Mはマイナス5bpだの6bpだのというような水準で出合うわ(ベンダーもヘッドライン打ってますな)という状況に。

ちなみに今日は1年TBの入札がありますが、これぞ日銀お買い上げ向け銘柄となりますので、まあ投資家不在入札をやって投資家不在のまま日銀にお吸い上げになっていくような動きになるんでしょうなあとしか思えませんので予想をする気がそもそも起きませんわマッタクモウ。

でまあこのオペクオリティは何なんだという感じでして、そもそも前々回の短国買入で欲張って5000億円買入を増やすという動きをしなければ恐らく玉がそこそこ残ったでしょうし、そもそも短国の水準がそこまで突っ込むこともなく、1bp〜2bp辺りの目線が継続していた筈でして、目先の5000億円の残高積み上げを急いだ結果として短国市場の需給を思いっきり締めてしまって市場の流通玉は無くなるわオペトレードヒャッハーが復活できる(してるかどうか知らんが)ような相場付きにするわで、その結果翌週の買入を極端に減らさないと行けなくなったとか、お前は9月頭にやらかして10月頭にやらかした事をまたやるのかという事で、同じチョンボを3回もするとかお前の頭はキャベツか何かかと小一時間問い詰めたい訳でございます。


・超長期輪番がいきなり増額された件について

でまあ金曜は超長期輪番がいきなり増額されまして、超長期輪番の25年超が1200億円→1600億円にダマテンで拡大されまして30年ヒャッハーとなりやがりまして、あたくしがおサボリしている間に相場の位置って金曜→金曜で他の年限は結果としてそんなに動いていないのに30年の所だけはカレントで8毛5糸フラットニングしてやがりましてナンジャソラという結果(1日で20-30がカレントの単利比較で4毛フラットニングしてやがった)に。

この前こんなの出てましたよね。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/rel141031e.pdf
当面の長期国債買入れの運営について

『日本銀行は、長期国債買入れについて、当面、以下のとおり運営することとしました(2014年11月4日より適用)。なお、来月以降は原則として、毎月、最終営業日に公表することとします(次回は11月28日に公表する予定)。』

『(注4)2014年11月4日以降の最初のオファー金額は、残存期間1年以下1,100億円、残存期間1年超3年以下5,500億円、残存期間3年超5年以下5,500億円、残存期間5年超10年以下4,000億円、残存期間10年超25年以下2,400億円、残存期間25年超1,200億円、変動利付債1,400億円、物価連動債200億円とする予定です。』

・・・・・・・・えーっとですね、まあ確かに増額そのものは運営で示しているレンジの範囲内ですから、別にまあ日銀からしたら不意打ちしている積りでもないでしょうし、その前の超長期輪番で手前の銘柄がバカスカ入った(相場付きの関係で致し方なし)結果として買入平均年限がいきなり7年を切りそうになったから超長期の後ろの輪番を拡大して帳尻をするというのは日銀のオペ部隊的には別に「ディレクティブの通りに実施しようとしたらこうなります」という話なのかも知れませんが、市場からしますと「毎月最終営業日に公表」として、脚注の4番にあるような具体的な数字を出されますと、普通に考えて「予定よりも年限とかがずれた場合には翌月の買入で帳尻を合わせる為に買入の割り振りが変わるでしょう」という風に考えますがなという所。

これまでは別に「毎月公表」とかしていなくて適宜変更みたいな感じだったのですが、わざわさ「月末に毎回公表します」と銘打っておきながら月の途中で変更とかされますと(途中で札割れでもするような異常事態が発生しているなら途中の変更も分かりますけど)どう見ても不意打ち以外の何物でも無い訳で、日銀による市場マニュピレーションと言われ兼ねない話ですがな。

つーかですね、こちらに関しても前回輪番の買入割り振りの見直しを行ったと思ったら3週間でまた見直しを実施とかしている前科がある訳でして、まーた同じチョンボをしているのかという話でございまして、もうアホかとしか申し上げようがないですが、日銀買入で散々需給を振らされている上にマイナス金利まで突っ込まれて投資ができない状況が頻発しております短期市場の気持ちが長期の皆様にもご理解頂けたかと存じます(−−;


まあ何ですな、恐らく短国の方に関しては「年末の目標に向けて出来るだけ早く数字を積み上げたい」というのがあって、長期の方に関しては「とりあえず7-10年とは言われたけれども出来ればあまり買入年限を長期化したくないので7年少々の所で止めておきたい」というのがあるんだなあというのがアタクシのような部外者からも見え見えの動きになっているのが泣ける訳でございます。

何ちゅうかオペによって起きる市場のフリクションとかをある程度軽減した方が実は買入がスムーズに行くし、市場に無駄なボラを与えない方が金利が安定しやすいので目先ビックリさせたり需給を締めたりして金利を下げるよりもより金利が安定して低下するというのが市場現場職人の考えなのですけれども、ど〜も日銀のオペ部隊の方、というよりはより上の方も含めてそういう認識無いんじゃネーノと思われる節がありまして、それならそれで結構なのですが、そうでしたら「市場機能」だの「市場との対話」だのというような綺麗事は言わない方が良いと思いますし、出口政策のオペレーションをスムーズに実施するとかいうような幻想も持たないでシッチャカメッチャカになることをご覚悟頂ければと思います。

これでもしギャグでは無く市場との対話とか考えているのでしたら、旧法時代から(ずっと短期にいる訳ではないですが)オペを色々眺めておりましたアタクシ的に申し上げますと、そらまあ今のオペが難易度一番高いのは高いですし、まああまりそういう事言いたくはないのですが、学習効果が全然ないオペの打ち方をしてくるとか(さすがに自粛しておく)としか申し上げようがないオペレーションの打ち方を何とかした方が良いんじゃないのとしか言いようがありませんわ。


○決定会合プレビュー雑談

まあ決定会合よりも今日の解散総選挙ですよねという所ですが、今回はまあさすがに政策自体は動きようがないのですが、面白ネタとしては二つほど。

一つ目が「そもそも消費再増税を前提にしていた経済物価見通しがどのように変更になるのか」というのが俄かに面白ネタとして浮上して参った訳でして、基本的には月報や声明文などで出てくるのはそんなに先の話が出てこないというのはあるのですが、理屈から言えば消費再増税の先送りによって経済物価見通しのパスが手前の駆け込みがなくなるけれども来年9月以降の悪化が無くなるいう事になるので、そうなると物価安定目標の達成時期の2015年度を中心とする期間というのはどうなるのでしょうなあというところで。まあ基本的には特段の変化なしという話だとは思いますけどね。

で二つ目は「ところで政府との紙との関係は?」という話でして、こちらの方が当然ながら話は重いのですけれども、消費増税先送りでしかも総選挙という事になりますと、当然ながら財政健全化の話に加えまして政府による成長力の強化という取り組みはどこへやらという話になる筈なのですけれども、そうなりますと日銀の緩和の馬鹿拡大だけやっていて良いのでしょうかという話になりませんかねと思われます。

とは申しましても、一応今回は「取りやめでは無く先送りなので財政健全化の動きには変わらない」という話になるので反故になったという事にはしない(というよりできない)とは思いますが、増税は先送りするわ経済対策ばらまきヒャッハーの話はホイホイ出てくるわという状況で日銀がドンドン緩和拡大というのは財政ファイナンスって何でしたっけねえというような素敵な展開となっておるような気がします。

どちらの件にしても目先の声明文や金融経済月報で何かが出るという話では無いのでしょうが、議事要旨を確認したいという所になると存じますし、今回のMPMの後に出る追加緩和の決定会合議事要旨が更に楽しみという所ですね!!!!


○業態別当座預金残高

毎度のこれ
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/cabs/cabs.htm/

10月の月平を見ますと目立つのは「その他準備預金制度適用先」と「その他の当座預金取引先」が割といい感じで増えているなあという所ですが、他の業態も大体平常運転で増えている感じではありますが、まあここの所ずっとそうなのですが、「都市銀行」があまり伸びてくれないのは今後更に異次元緩和するのに超過準備本当に積み上がるのかいなという気はせんでもない。


というところで雑談ネタばかりですいません。

トップに戻る



2014/11/17

○増税先送りで解散総選挙とな

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20141116/k10013244221000.html
首相 消費税率の引き上げ先送りを示唆
11月16日 18時12分

まあ一連の流れに関してはおサボリしていた不肖このアタクシよりも皆様の方が詳しいと存じますので個人的備忘メモという感じではありますが、感想としてはまあ二つくらいっすかねえ。

まず一つ目は「いや〜黒田さん見事に食い逃げされてしまいましたね〜(・∀・)ニヤニヤ」ってなもんでして、消費税増税を確実なものにする為に追加緩和という説は一体全体何だったのかというお話ですが、そもそもそのような理由での追加緩和はせんじゃろと言ってただけにその部分だけは当たってちょっとホッとしましたというだいぶ不謹慎な個人的感想ががががが。

しかしまあそうなると「では今回は何の為に追加緩和をしたのですか」という話になる訳で、政策判断として明らかに「足もとの物価重視」を示してしまった上に、追加緩和の貴重なカードを無駄遣いにも程がある使い方をしており、しかも今回の消費税率引き上げ先送りってどこからどう見ても日銀の追加緩和を足蹴にした格好で、QQE導入時に稼いだ政治資源はいつのまにやら使い果たしてしまった挙句にもうカードが無い(いやまあ重篤な副作用を無視すれば芋の葉っぱでも便所紙でも対象にして買切オペやれば何ぼでも緩和はできますけれども、それは中央銀行の金融政策として実施して良いのかという話です罠)とかm9(^Д^)プギャーとしか申し上げようがない状態ですなあ。

でまあ二つ目は「先送りするだけで何で解散総選挙になるのよ」という話で、消費税増税そのものを行わないというのであればそらまあ全面的な話の組み替えになるから解散総選挙かも知らんが、先送りだったらそもそも今般の引き上げの付則によって示されている「必要な措置」とやらを取れば良くて、それってつまり法案内容の修正を議会で通すだけの話じゃんと存じますけど、それでわざわざ解散総選挙する(とは決まってませんが)のが意味判らん。結局増税するんだったら前回の選挙での公約と同じじゃねえかとしか申し上げようがないのだが・・・・・・・・・・・・・

今回は内閣改造をして地方創生だの女性活用だのアベノミクス第三の矢だのというのを更に推進するという話だったような気がするのですが、その手の話は華麗にスルーというのもワケワカメですけど、「単なる先送り」で選挙の理由になるかいなと思いますし、まあ先送りによって何らかの問題が生じた時に「国民の選択」を大義名分、というと格好いいですけれども、要するに言い訳の隠れ蓑にして「先送りの決断」に関して起きる結果に対する責任を自分たちではなくて選挙即ち国民にケツ持ちさせようとしてるんじゃないですかねえと誠に無責任なサムシングを感じる所存。

つーかですよ、そらまあ足元は消費税絡みの件がある分で嵩上げされていると思いますけど、それにしても株価は高値水準にあるっちゅうような状態でも予定通りの消費税増税が出来ないという事でごじゃりますと、そらもう一生消費税率上げられないんちゃいますかと思いますし、一方でやれ円安対策だ地方創生だとか言って出るモノは直ぐに出そうとする昨今のクオリティの中でプライマリーバランスとかどうするんでしょうかねえとしか申し上げようがございません。

でまあそういう文脈からすると「でも追加緩和が必要になっているのだからそらまあ消費増税も先送りした方が良いですよね」というツッコミが飛んでくるという素敵なツッコミ所を作っている日銀の追加金融緩和が黒田さんの意図がどこにあるのか知らんけど、増税露払いも兼ねている積りだったら馬鹿じゃネーノというか見事な道化師になってしまいましたねうははははははm9(^Д^)という所で。

でまあここで今日のGDPがつよかったら面白いのですがもう結論は出てるんでしょうかねえ・・・・・

トップに戻る


2014/11/08

○短国金利がまたマイナスになりやがったのでメモを置いておく

・短国買入の結果またまたカレント短国がマイナス金利に逆戻り

水曜の6Mに続き木曜の3Mもプラス金利とはなりましたが、そうは言っても木曜は入札後に結局強含みになって平均落札よりは堅調となるの巻となっていた辺り、投資家の買い意欲は強いですなあという短国市場だったのですが金曜の短国買入が・・・・・

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of141107.htm
国庫短期証券買入 27,500 2014年11月11日
(短国買入分のみ)

・・・・・・・ということで、何でまた前回並み(2.25兆円)にしないで増やすのしかも刻んで来るのかねとは思ったものの、オペ部隊の方はヒアリングちゃんとやっている筈なのでまあ札はあるんでしょうかねえとか思っていたら前場中に妙に強めの出合いとかがあってただまあそれは買入強く入れたいんでしょうかねえとか思っていた訳ですよ・・・・・・・

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba141107.htm
国庫短期証券買入 33,055 27,502 -0.008 -0.005 87.8
(短国買入分のみ)

・・・・・・・・・・・・orzorzorz

8糸強まで入りやがるかというのもさることながら、市場の腰が砕けたのは「応札3.3兆円」の方でして、これって10月の頭と全く同じ事をやっている訳で、学習効果というものは存在しないのかともう小一時間問い詰めたい訳ですよマッタクモウ。

でまあ日経とかにまで書かれていましたがロイターでもこういう風に報道されておりましてね。

http://jp.reuters.com/article/jptokyomarket/idJPL4N0SX40120141107
〔金利マーケットアイ〕翌日物0.05%後半が中心、レポGCレートは低下
2014年 11月 7日 15:34 JST

『日銀が実施した国庫短期証券の買い入れは、強めになった。この結果を受けて、国庫短期証券は業者間取引で強含みで推移した。新発3カ月物は再びマイナス金利となった。』(上記URLより)



・まるで学習していない・・・・・・・・・

10月の頭というのは9月にオペ要因に加えて期末要因で短国特需絶賛大発生となって、玉が盛大に枯渇したあとでちょっと需給が緩み出すんじゃないですかねえとやっている所に、過去最大の3.5兆円の短国買入をオファーしておい何だよそんなに玉があるのかと思ったら応札が3.9兆円しか無くて9糸強まで流れた短国買入でしたが、この結果日銀が市場の金利がマイナスになろうとも知らんがなという勢いで短国買入を進めることを宣言したと受け止められ(まあ実際にその後のオペの打ち方がそうでしたからねえ)、その2週間後には短国入札の平均落札金利がマイナスになってしまい、どうみてもオペ狙いのトレードです本当にありがとうございましたというような国債市場の価格形成を日銀が自ら破壊しに行くという前代未聞の動きが起きるという事案が発生したのはご案内の通り。

でまあ他の理由もあって先般の追加緩和実施のついでに資産買入の短期と長期の割り振りをいじって短期オペに無用な負担を掛けないようにという配慮も入った資産買入方式の見直しが行われた訳でございますが、それを受けまして日銀オペ狙いマイナスヒャッハーというのもさすがに見直しという感じになって5日、6日と短国の入札金利が徐々に上昇してまあ1bp台後半ですから相変わらず低いには低いのですが、それでも0bp台前半とかいうような状態ではなくなるという感じで推移し始めた所に、またまた市場の流動玉を全部買いに行くようなオペの入れ方をするとか、10月の頭に行ったオペのやり方がトンチキだった結果市場が盛大に壊れたという流れを全く認識していないとしか思えない次第で、もう何ちゅうか学習効果が無いんだか市場の機微というか何というかを全く分かっていないというか分かろうとしないというかな話で、その直前に出ていた「市場との対話を重視する為にサーベイを実施」とかいうアナウンスが悪い冗談にしか見えなくなるんですけどねえという所です。


・舌きり雀のゴウツクバーサンかと小一時間

えーっとですね、特殊要因(9月なら期末、10月ならオペ狙いヒャッハートレードとそれを何も考えずに買ってしまう日銀のプレイ)が剥落してちょっと需給が緩んできたら、そこはしばらく我慢して「市場の目線を変える」のがポイントでして、一旦ゼロだマイナスだという目線が定着した場合にはその目線が変わる為には色々なポジションがこなれる必要があると思うのですが、ちょっと需給が緩んだ所で「よーし需給が緩んだから早速多く買っちゃうぞー」とやってしまうと折角変わりかけた市場の目線がまたゼロだマイナスだという話になってしまい、そうなるとまたまた日銀の買入が市場を壊して価格形成ガーという話になる訳でして、金曜日だって5000億円余計に買おうとした結果またまた市場の目線が変わってしまったという話な訳ですよ。

つまり、目先ちょっと多く買おうとして市場の目線をまたまたゼロだマイナスだに戻している訳ですが、こうなるとまたぞろ短国買入をやりにくくなる(いやまあ市場を完全にぶっ壊す積りで買うのなら何ぼでも買えますが、そもそも今回の買入割り振りの変更の中には短国市場へのストレスへの配慮というのもあった筈なのでその趣旨からしたら変な話ですよね)という話で、舌きり雀に出てくる欲張りばーさんが大きなつづらを持って帰ってあばばばばーみたいな風情を醸し出しているのが実にこう侘び寂びの世界というものであります。

いやね、大きなつづらを持って帰って中から毒蛇だのがゾロゾロでてくるのを一種のプレイとしてお楽しみになりたいというようなご趣味でもあれば欲張りメソッドが絶賛発動するのも有りなのかもしれませんけど、わざわざ目先の買入5000億円ぽっちを欲張って将来の買入を打ちにくくするとか自分で自分の首を締めに行くこたあねえと思うのですけどねえマッタクモウ。

まあそれでも10月の時点では延々と短国買入残高をこれからも積まないといけない(年末以降も継続したら更に積まないといけないという無理ゲー状態でしたから)というプレッシャーがあったので同情の余地も無い訳で無かったのだが、今回の買入はさすがに同情の余地が・・・・という所ではございますが、もっとマズイのは実はこういう形で短国またまたマイナスとかになった件について特段問題視していないような気がするのがもっとオソロシスな所です。


とは言いましても、現実問題として先般の追加緩和で短国買入に掛かるプレッシャーは軽減されている筈でして、そうバタバタ買いに行かなくてもという所で、この調子で買入継続していくと12月の早い時期に短国買入の予定分が終わる筈(詳しい計数と長期の方なども含めた計数シリーズはお休みモード終了後に投下する所存)なので、今度はそうなるとフローの買入がいきなりドロップするのでそこで需給の段差が生じるという感じ(ただし一方で長期国債の買入ペースがやたら早くなって中期ゾーンの吸収が進むので四半期末とは言え国債残高調整や担保ニーズが出てきそう)でして、もう何だかねとしか申し上げようがございません。

というメモだけこっそり置いておきます。もうちょっと計数の話とか書こうかと思ったが検算とか精査してからにしますので後日ね。

トップに戻る



2014/11/03

ご案内の通りQQEで2年で2%で逐次投入しない筈の黒田日銀が追加緩和を実施したのですが、色々と論点があり過ぎて何なので11月3日(〜5日辺りを予定)に色々と書き物をしておりまして、ネタが多いのでこちらにまとめて置いておこうかと。

政策ロジック編:政策効果の検証が全くないという点と2%物価目標に対する考え方についてのロジックについて
展望レポート確認編@:全体の説明が雇用情勢一点突破になっている上に潜在成長率が下がっているとはこれ如何に
展望レポート確認編A:どこまで逝っても雇用情勢以外の説明に説得力が無い件
展望レポート確認編B:リスクアセスメントの話とか金融政策運営の話とかちょこちょこ違和感がありますなあ
コミュニケーション&フィージビリティ編:騙し討ち金融政策ですなという話と来年フローで110兆買えるのかという話
総裁会見編:質疑応答で困った質問に全然答えていないという所に追い込まれてバタバタ緩和したというのが見える話

お題「こりゃビックリの追加緩和:その1政策ロジック編」

で余りにも論点が多いので幾つかに分けてこれから徐々にアップしていきます。まずは政策ロジックの面からツッコミ所を幾つか申し上げようかと思います。本当は土曜日からアップするもんなのですが例によってぐうたらと頭を眠らせてあまり動いていなかったので週明けに向けて祝日だが月曜日なのでリズムを取り戻す為に書くというものです。


○全体を一応確認しつつ追加緩和はわかったがこれまで行った政策効果の検証は無いのかという点

やや時間が長かったのは展望レポートの楽観見通しで揉めたのかと思っていたらこんなに早く「降参」するとは思ってませんでした。いやはや話が違うじゃねーか。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/k141031a.pdf
「量的・質的金融緩和」の拡大

『(1)マネタリーベース増加額の拡大(賛成5反対4)(注1)

マネタリーベースが、年間約80兆円(約10〜20兆円追加)に相当するペースで増加するよう金融市場調節を行う。』

実際は足元が70兆円のペースで拡大しているので「10〜20」と書いてある20兆円の方はイカサマにも程があってまずこの時点で毎度おなじみのイカサマプレゼンが出ていますがその話はまた後ほど。

『(2)資産買入れ額の拡大および長期国債買入れの平均残存年限の長期化(賛成5反対4)(注2)

@ 長期国債について、保有残高が年間約80兆円(約30兆円追加)に相当するペースで増加するよう買入れを行う。ただし、イールドカーブ全体の金利低下を促す観点から、金融市場の状況に応じて柔軟に運営する。買入れの平均残存期間を7年〜10年程度に延長する(最大3年程度延長)。

A ETFおよびJ−REITについて、保有残高が、それぞれ年間約3兆円(3倍増)、年間約900億円(3倍増)に相当するペースで増加するよう買入れを行う。新たにJPX日経400に連動するETFを買入れの対象に加える1。』

MB拡大ペースを年間10兆円分引き上げるのですが、従来の70兆円の枠組みの時に20兆円拡大するという事になっていた短期国債およびその他固定金利オペや貸出支援がどこからどう見ても無理になり、現実問題として短期国債入札までもがマイナス金利に突入してしまい、そこら中からカチコミが飛んできているのは兎も角として、この調子で来年も継続するとなると短国金利がどこまでマイナスになるのかもわからんという状況でしたので、短期が買えなければ長期を買えば良いじゃない攻撃を行ったのに加え、当初QQE導入した時よりも発行年限が新規発行分でもストック分でも長期化したことを踏まえて買入の平均年限を長期化しましたという話だが、短期のフィージビリティは一息ついた(が結局これだけの長期国債を買ったら担保足りなくなるだろうし、そもそも誰が当預を積むのかという話もあるがそれも後ほど)けど今度は長期国債市場の方に無茶苦茶なプレッシャーが掛かるという話なので、結局国債市場は長期も短期も将来的に碌な事にならないのは自明。

でまあおじちゃんあまり詳しくないのですが、ETFとREITってこれフィージブルなのですかねえ。何か1兆円のペースをいきなり3兆円とか3の数字合わせみたいな言葉遊びの勢いで3倍にされているのですけどインデックスばっかり強くなるとかREIT物あるのかよとか大丈夫なんですかねえ。


・・・・・・・とまあそういうことで盛大に戦力の逐次投入が実施された訳でございますが、何せ今回の施策の説明に関して声明文および会見(会見テキストはどうも週明けのようなのでそのネタはまた水曜にでも投下予定ですけど今回の会見放送見たら黒田さん顔ひきつってましたよね)での説明を見ますと「下振れ対応」なのは判るが、そもそも論として昨年4月5日のQQE実施において何度も黒田さんは「必要かつ十分な措置を実施」したと説明していましたし、その後の展望レポートなどでも含めて2回の消費増税についても織り込んだ見通しを出していた筈なのですよね。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2013/kk1304a.pdf
『(答) 今回、必要な措置は全て採ったと言ってよいと思います。もちろん、経済も金融も生き物ですので、その時々の状況をみて、必要があれば躊躇なく調整していきますが、2 年で2%の物価安定目標を達成するために、現時点で必要な措置は全て決定したと考えています。』(昨年4月4日総裁会見の4ページより)

そらまあリーマンショックみたいな外的ショックが起きれば2年を待たずして何らかの追加緩和を実施するのも仕方ないのですが、今回の声明文の説明がどうなっているのか確認しましょう。再び今回声明文から引用します。

『2.わが国経済は、基調的には緩やかな回復を続けており、先行きも潜在成長率を上回る成長を続けると予想される。ただし、物価面では、このところ、消費税率引き上げ後の需要面での弱めの動きや原油価格の大幅な下落が、物価の下押し要因として働いている。このうち、需要の一時的な弱さはすでに和らぎはじめているほか、原油価格の下落は、やや長い目でみれば経済活動に好影響を与え、物価を押し上げる方向に作用する。しかし、短期的とはいえ、現在の物価下押し圧力が残存する場合、これまで着実に進んできたデフレマインドの転換が遅延するリスクがある。日本銀行としては、こうしたリスクの顕現化を未然に防ぎ、好転している期待形成のモメンタムを維持するため、ここで、「量的・質的金融緩和」を拡大することが適当と判断した。』(今回の声明文、以下同様)

消費税増税の影響という当初予定通りの事象に加えまして、原油価格の下落というのを入れていますが、そらまあ高値からは下がっているけど別に価格ショックという程の物でも無いですし、大体からして原油輸入国の日本では原油価格が下がって別に困る話ではない(まあさすがに書いてありますが)訳で、この原油価格の下落を捕まえて外的ショックというのは無理があります罠というところです。

・・・・・・・・となりますと、そもそもの経済物価見通しがおかしかったという可能性があるのですが、基本的に消費税そのものは理念的には短期的に言えば駆け込み需要とその反動がチャラ、中期的には消費税で減少する可処分所得分が財政による分配によってどのようにカバーされるのかという点がポイント、とまあそういう話になりますので、経済見通し云々よりは「そもそも論として過激なまでに行っているMB拡大政策が妥当なのか」という点を考え直さないといけないのではないでしょうかねえ。

なお、今回若干良心の呵責でもあるのか声明文の3番がちょっと面白くなっていますけどね。

『3.今後も、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う2(注3)。』

前回の声明文の当該箇所ではこのように記述がありました。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/k141007a.pdf
『6.「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う(注2)。』(これは前回10月7日の声明文)

ご覧になれば判りますように、今回はさすがに恥ずかしいと思ったのか『「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており』というのが抜けておりますが、ただまあ総裁会見の説明ではやはり効果を発揮している的な説明をしていたように記憶しておりまして(詳しくは週明けに出る会見要旨を見る)、結局の所MB投入は効果がある(キリッ)という話になっているのですよ。

しかしですね、少し考え直して頂きたい訳でして、そらまあMB拡大は金融緩和方向になる(少なくとも量的な意味での引き締めにはならん)のですが、そのMB拡大の定量的な効果に関してのレビューも無い状況で「足りないから追加すれば良いじゃないか」というのは、戦局が好転しないから兵士を輸送船で送り込めば良いじゃないかと言いながら大した護衛もつけずに丸腰同然の輸送船を送り込んでバシー海峡でガンガン沈められるわ無事に到着しても物資も武器弾薬も無いので結局使い物にならないわとなっていたどこぞの国の戦争末期とどこがどう違うのかと小一時間問い詰めたい訳でありまして、そらまあ作戦参謀でございと言って椅子にふんぞり返って動員する方は数字合わせだけしてれば満足かも知れませんが、バシー海峡で海の藻屑にされてしまうが如き仕打ちを受ける金利市場関係者としては何の為にその動員を行っているのかきちんと説明しろやと蓆旗でも立てて押し寄せたくなる心境であります。

ええまあQQEの当初導入時に関しては定量的な部分ってやってみないと判らない的な所もあったかもしれませんけれども、既に始まってから1年半も行ったのに未だに定量的なレビューが何もないとか非伝統的政策だから判らんで済ますには余りにも無茶苦茶な話で、これがまあ市場機能とかその辺に対して特段毒にも薬にもならない話ならああそうですかでスルー出来る可能性はあっても、ここまで市場にプレッシャーを掛けた上に、更にもっと強烈なプレッシャーを掛けて金利市場そのものを壊そうとしているのですから、これまでのMB拡大政策がどのように2%物価目標に対して効果があったのか、そしてこれから拡大する予定のMB(および資産サイドの構成)がどのように効果を出して2%物価目標を早期に達成できるのか、という点について「量を出せば効くに違いない」とか「気合」とかでは無いきちんとした見方というのを「政策委員会として」示して頂きたいですし、まさかそのような事は無いと信じていますが、「2じゃインパクトが無いから3だ」みたいな木っ端役人の数字遊びをベースにしてこの追加緩和の数字が作られたなどとい事では無いという事を(日銀レビューみたいな「日銀の見解ではなく個人の見解です」的な逃げの入ったモノではなく)政策委員会としてきちんと示して頂かないと、ほとんど丸腰の輸送船でバシー海峡に送り込まれる方はたまったもんじゃないですよと申し上げておきましょう。


とまあそういう事でして、話の途中で決定内容の確認もしたのでグダグダになったので改めて纏めますと、今回の決定を見て明らかになったのの一つが「政策手段の妥当性に対する効果測定も検証も行っていない」という事でありまして、これだけの市場へのプレッシャーおよび価格形成を歪ませるような副作用を発生させても実施する程の定量的な効果が本当にあるのかのレビューも無ければ先行きの見通しも無いとか、戦争末期で敗戦待ったなし状態のダメダメ軍隊のようで落涙を禁じ得ません。

つーかですな、MB拡大の定量的効果が明らかでこの追加によって確実に早期2%物価目標達成出来るのであればそらまあ一時的なプレッシャーは耐えるしかないでしょうとなりますが、そもそも1年半MB拡大を盛大に実施したのに実は足りませんでしたという状況なのにここから追加して意味があるのかというのもありますし、大体からしてフィージビリティを検証(は後でやります)するまでも無く年間80兆円の国債買入残高拡大とか何年も継続できるとは到底思えない(というか1年持つのかも分からん)のですが、そのフィージビリティが爆発する前にきちんと2%目標が達成されるというグランドデザインが全く示されない(示すも糞も検証していないのだから無理)のに3だから80兆円とか悪乗りプレゼンのノリで政策投下して大丈夫かとしか思えん。



○そもそも2%物価目標に関する定義もちゃんとできていない点について

さてさて、今回の特徴は何せ「実務家の政策委員が全員反対に回った」という所でして、毎度の木内さんは兎も角として、石田さん、佐藤さんに加えまして、基本的に今まで執行部提案に反対はしなかったし、講演などでも執行部見解のリファーから大きく外れる事のなかった森本さん(前職は東電副社長)が反対に回ったというのが前回のQQE実施とは大きく異なる点です。

まあ反対した委員の理由はさすがに今回の決定会合議事要旨では詳しく出るでしょう(それより10年後にじっくり読みたい)とは思いますが、声明文では反対理由に関しての説明は無いのが仕様なので理由は足元では想像するしか無いのですが、今回の追加緩和決定理由に該当する声明文の項番2を見ると大体状況が推測できるというものです。ということでさっきの項番2を再掲。

『2.わが国経済は、基調的には緩やかな回復を続けており、先行きも潜在成長率を上回る成長を続けると予想される。ただし、物価面では、このところ、消費税率引き上げ後の需要面での弱めの動きや原油価格の大幅な下落が、物価の下押し要因として働いている。このうち、需要の一時的な弱さはすでに和らぎはじめているほか、原油価格の下落は、やや長い目でみれば経済活動に好影響を与え、物価を押し上げる方向に作用する。』

という所まででは追加緩和をする理由になっていません。以下がポイント。

『しかし、短期的とはいえ、現在の物価下押し圧力が残存する場合、これまで着実に進んできたデフレマインドの転換が遅延するリスクがある。日本銀行としては、こうしたリスクの顕現化を未然に防ぎ、好転している期待形成のモメンタムを維持するため、ここで、「量的・質的金融緩和」を拡大することが適当と判断した。』

ナンジャソラとしか申し上げようがない説明ですけれども、期待インフレ率上昇のメカニズムとして、

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2014/kk1401a.pdf
『そういった政策のアナウンスメントに対応してフォワード・ルッキングに上昇する部分もあると思いますが、実際に物価上昇率が上がっていく過程の中で、いわばバックワード・ルッキングに予想物価上昇率が上昇していく要素も、両方あると思います。』(本年1月22日総裁会見の6ページから)

ということで、バックワードルッキングにアダプティブなインフレ期待形成、というのがあって、この説明ですとまずはその点を意識しているというのもあるのでしょうが、「好転している期待形成のモメンタムを維持」とは何ですねんと考えた場合に「2%物価目標」に対する実務家の皆様と日銀執行部(および腰ぎんちゃくの役にしか立っていない曲学阿世の学者審議委員諸氏)の見解の相違というのが見えてくるように思えます。

つまりですね、「期待形成のモメンタム」というのはよーするに「とにかく勢いで2%を何とかヒットさせる」ことによってバックワードの期待形成も更に強めて2%インフレ予想をアンカーさせたいというお話でありますし、これまた会見での総裁の説明が(記憶に間違いが無ければ)明らかにそういう趣旨の説明になっていて、CPI(中長期的には総合なのですが短期的にコアでしょうかね)2%という数値をできるだけ早期に叩きだしたい、というのが今回の「実際には途中でゴメンナサイしている追加緩和」になった訳でしょう。

一方で木内さんの場合は2%は中長期的に目指すという話ですし、佐藤さんの場合は2%目標という概念についてよりフレキシブルに考えるべきであり、足元のCPI数値を過度に重視するのではなく、よりフォワードタ―ゲット的な説明ですし、石田さんも佐藤さんと似たような話をしていました。森本さんは今まであまりその辺に触れていないのでよく判りませんけれども、実務家として考えた場合にやはり同様に足元のCPIヒットを過度に重視するあまり、国民厚生的に必要が無い施策を実施するのは如何なものかという論点なんでしょうなあと想像しますが、こればっかりは議事要旨を見ないとよく判りませんのでとりあえずこの会合の議事要旨担当の方には出来るだけ分かりやすい記述をお願いいたしたく存じます。

まあそんな訳でして、2%物価目標というのはあるけれども、それに対する具体的な形がどうなのかという点について政策委員会での意見が分かれているということで、そらまあ超コンセプチュアルに言えばフィリップスカーブの切片が2%であり、景気が1サイクル回る中でCPIが平均すると2%程度で安定推移する、という点は全員一致だと思うのだが、足元の数値をどう評価するのかという点で意見が大きく異なっていると思われますし、まあフレキシブルインフレーションターゲットの考え方からすると反対している実務家の皆様の見解に分があると思いますし、実務家の皆さんはこの追加緩和で起こり得る様々な副作用も勘案して実務家として賛成しがたいという事になったと思いますので、今回の反対4票しかも全員実務家で賛成しているのは執行部と腐れ学者2名というのは非常に重い意味を持つと思います。

まあそもそも追加緩和をしたら何で物価上昇のモメンタムが強くなるのかがさっぱり判らない(だいたいからして追加緩和ったって単にMB拡大ペースをちょっと上げているだけ)のですが、まあそれは兎も角としましても、検証という意味で言えば先ほどの「政策効果の検証」の他に「2%の物価数値をを短期的にヒットさせに行くのが本当に妥当なのか」という点についても、先ほどのMB拡大と同様に当初の決定がアプリオリに正しいのでその通りに突き進むだけ、という政策当局者としてあるべき姿勢を逸脱しているのではないかと思われるロジックが絶賛展開されている、という点にこの追加緩和の先行きが危ぶまれる訳です。

いやまあこれによって2%物価上昇して、しかも経済は良くなる(ただの円安コストプッシュ物価上昇だったらそれは短期的には物価上昇だが中期的に見た場合には購買力の低下から需要の低下を通じて先行きのデフレ圧力を高めるだけ)というのであれば別にこれはこれで勢いと気合で結果オーライかもしれませんが、そうなるメカニズムも結局期待と気合だけなのですからまあ先行きは暗いですよね。




2014/11/03

お題「追加緩和に関する論点その2:展望レポートの見通しを点検するとボロがボロボロ」

http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1410b.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1404b.pdf(前回4月)

超長くなるので何回かに分けます(って結局アップするから同じなのだが)。

決定内容の方で皆さん(ってワシもそうですが)ビックリしていて肝心の展望レポートにおける見通しの方へのツッコミが瞬間反応できなかったかと思いますが、展望レポートのとりあえずは基本的見解部分に対してツッコミを入れると色々とボロがあるので逐語確認をしていこう、というかなり無謀な企画を投下します。

土曜日の昼に背景説明を含む全文が出ておりまして、本当は全文を逐語確認をすると更に味わいが深いのと、そもそも前回の展望レポートでも基本的見解部分と背景説明部分で微妙にニュアンスが違う所があったりしてかなり面白かったのですが、今回は前回4月と比較しながら色々と確認していこうと思います。

というのはですね、今回ロジック崩壊の謎追加緩和を実施した訳ですが、そもそも論としてこれだけの謎緩和を実施するのですから、先ほど申し上げたような「MBの定量的効果」についてもそうなのですが、じゃあこの政策を追加投入した結果何がどうなって物価が上昇してインフレ期待が上昇して2%物価目標が達成できるのかという点を確認するのは展望レポ―トなのであるので、メカニズムを確認したいという話な訳ですよね。

○結論から先に申し上げると「労働需給」以外に物価が上昇する明確なメカニズムが無い

まあ小見出しの通りでして、まー大体そこしか物価が上昇します(キリッ)の説明のしようがないという事もありますが、ものの見事にメカニズムが労働需給に関する話に集中しておりまして、雇用所得環境の改善が弱まったらどうするんでしょうねえとしか申し上げようが無いかなーり脆弱な話が以下展開されるのでお楽しみに。

それから政策のそもそも論に関わる部分なども最初の方からいきなり飛び出すので中々面白いのですけれども、結局基本的見解の部分を何度読んでも労働需給以外の状況は物価2%達成に背を向けている状態にしか見えない説明になっています。

なお数値については予想通りで手前はGDPと物価が下げ、2015年度はGDPほぼ横で物価は下げて中心が+1.7なのは兎も角として大勢見通しの上限が+1.9で全体の一番強いので+2.0という下げ方。2016年度はGDPが微かに下がっているけれども物価は変わらず、という中々謎の数値になっていますが、これって「追加緩和込みでこの数字」ですからねえ・・・・・・・


○物価見通し時期とメカニズムの説明が更に雑になっているエグゼクティブサマリー

最初の『<概要>』が全体纏めです。

『2014年度から2016年度までの日本経済を展望すると、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には潜在成長率を上回る成長を続けると予想される2。』(今回)

『2014年度から2016年度までの日本経済を展望すると、2回の消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には潜在成長率を上回る成長を続けると予想される。』(前回4月)

ということでこちらは同じ。

『消費者物価の前年比(消費税率引き上げの直接的な影響を除くベース)は、当面現状程度のプラス幅で推移したあと、次第に上昇率を高め、見通し期間の中盤頃、すなわち2015年度を中心とする期間に2%程度に達する可能性が高い。その後、これを安定的に持続する成長経路へと移行していくとみられる。』(今回)

『消費者物価の前年比(消費税率引き上げの直接的な影響を除くベース)は、暫くの間、1%台前半で推移したあと、本年度後半から再び上昇傾向をたどり、見通し期間の中盤頃に2%程度に達する可能性が高い。その後次第に、これを安定的に持続する成長経路へと移行していくとみられる。』(前回4月)

でまあこれに関しては直近の金融政策決定会合声明文も比較したいのですが。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/k141007a.pdf
『消費者物価の前年比は、暫くの間、1%台前半で推移するとみられる。』(10月7日決定会合声明文より)

となっておりまして、今回の展望レポートで物価先行き見通しの文言を変更しています。つまり従来示していた「1%台前半」という数値が「現状程度のプラス幅」となりまして、その現状とは何ぞやと言いますと直近公表された全国コアCPIが消費税抜きで+1.0%となっている事から、物価の先行き見通しについて手前の部分を下げた格好になっていまして、その期間に関しては従来の「暫くの間」という半年程度を意味するとされる文言から、より期間の短い「当面」に変更になっています。

数値が下がっているのは、以前の会見で黒田総裁が1%を割らないという趣旨の発言を行ったことに対するヘッジ文言でありまして、これで目先1%割れの数字がヒットした時の申し開きが出来た形になっていますが、そこの数値を下げた以上半年程度の期間を意味する「暫くの間」というのを入れると、そもそも論として最初にご紹介した展望レポートの物価見通し2015年度+1.7%という数字がどこからどう見ても無理という話になる(+1.7%と出ている数値は年度平均なので、足元の弱さが継続して発射台が低くなると達成に対しては相当厳しくなる)ので「当面」としない訳に行かなかったのでしょうな。

でまあその辺の操作をして先行きに関しては同じとしているのがもうだいぶ無理がある。

『従来の見通しと比べると、成長率の見通しは、駆け込み需要の反動の影響や輸出の弱めの動きなどから、2014年度について幾分下振れている。物価の見通しは、2015年度については、国際商品市況の下落などから幾分下振れるものの、2016年度については概ね不変である。』(今回)

『従来の見通しと比べると、成長率の見通しは、輸出の回復の後ずれなどから、2014年度について幾分下振れるものの、物価の見通しは、@雇用誘発効果の大きい国内需要が堅調に推移するもとで、労働需給が引き締まっており、この傾向はさらに強まることや、A中長期的な予想物価上昇率の高まりが実際の賃金・物価形成に影響を与え始めているとみられることから、概ね不変である。』(前回4月)

となっていまして、従来との見通し対比の部分の文言がこれまた実に味わいがありまして、成長率の見通しに関して従来無かった「駆け込み需要の反動の影響」というそもそもそれって見込んだうえでの成長率見通しでは無かったのかと小一時間問い詰めたい文言が入っており、消費増税の影響を読み誤りましたというのを本人たちは言わないのでしょうが、どこをどう見てもそうですよねとしか申し上げようがない表現になっているのが味わいがありますな。

更に申し上げますと、物価の見通しの所がもっと味わいがありまして、まず2015年度の所にある「国際商品市況の下落など」からというこの「など」の文言が実に怪しげな雰囲気を醸し出しておりまして、ではこの「など」とは何ですかと小一時間問い詰めたい。

そしてもっと面白いのは、先行きの物価上昇メカニズムに関して前回の展望レポートでは引用した通りにメカニズムの説明があるのですが、今回はその物価上昇メカニズムに関しての言及が無く、要は物価上昇メカニズムが薄弱であるという事を意味しているんでしょとしか申し上げようが無い辺りも実に香ばしい所ではあります。


○中心的な見通し:おいこら潜在成長率下がっているぞという話など

続いて『1.わが国の経済・物価の中心的な見通し』の『(1)経済情勢』から参ります。

『わが国の景気は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動などの影響から生産面を中心に弱めの動きがみられているが、基調的には緩やかな回復を続けている。4〜6月における成長率は、自動車などの耐久消費財を中心に駆け込み需要の反動の影響が大きかったことや輸出が弱めの動きとなったことなどから、大きなマイナスとなった。また、夏場には天候不順も、個人消費の一時的な下押し要因として作用した。もっとも、駆け込み需要とその反動といった振れを均してみれば、潜在成長率を上回る成長が続いている4。また、今回の景気回復は、雇用誘発効果の大きい国内需要に主導されていることもあって、雇用の増加と労働需給の引き締まりは、着実に進んでいる。』(今回)

『わが国の景気は、消費税率引き上げの影響による振れを伴いつつも、基調的には緩やかな回復を続けている。輸出は弱めとなっているが、国内需要が堅調に推移するもとで、景気の前向きの循環メカニズムはしっかりと作用し続けている。国内需要は雇用の誘発効果が大きいため、2013年度の成長率の下振れにもかかわらず、労働需給は概ね想定に沿って引き締まり傾向が強まっている。』(前回4月)

まずご覧になれば判るように、前回対比で文章が長くなっている時点でヘッジクローズ満載の香りという訳ですが、前回対比で異なっているのが「生産面の弱さ」への言及が最初にある部分、次が足元までの弱い要因に関する言い訳文言が入っていて、消費増税駆け込み需要の反動、輸出の弱さ、夏場の天候などを言い訳としております。

従って今回は前回あった「景気の前向きの循環メカニズムはしっかりと作用し続けている」という文言が外れ、「雇用の増加と労働需給の引き締まりは、着実に進んでいる」という表現に替わって(生産が弱いのだから前向きの循環メカニズムとは言えないでしょうからね)、これから先にも頻発するのですが、最初に申し上げたように「雇用情勢の改善」一点突破でメカニズムを説明して行きましょうという流れが鮮明なのが特色です。

ま、それ以外に説得力のある改善メカニズムを示すことが出来ないんすけどね(迫真)!!!!!


・・・・・・・・・・とまあそれよりももっと重大なのはここの脚注4にとんでもない記述があるのですよ。

『4 わが国の潜在成長率を、一定の手法で推計すると、このところ「0%台前半ないし半ば程度」と計算されるが、見通し期間の終盤にかけて徐々に上昇していくと見込まれる。ただし、潜在成長率は、推計手法や今後蓄積されていくデータにも左右される性格のものであるため、相当幅をもってみる必要がある。』(今回)

『3 わが国の潜在成長率を、一定の手法で推計すると、このところ「0%台半ば」と計算されるが、見通し期間の終盤にかけて徐々に上昇していくと見込まれる。ただし、潜在成長率は、推計手法や今後蓄積されていくデータにも左右される性格のものであるため、相当幅をもってみる必要がある。』(前回4月)

ちょwwwww潜在成長率推計が下がっているとはどういう事やねんという話でして、後の方でありますけれども先行きの成長メカニズムの説明の中で前回も今回も「規制改革や成長戦略、企業の生産性向上や内外需掘り起しで中長期的な成長期待や潜在成長率は次第に高まって行く」という説明が入っているのに足元では下がっているとはどういう事ですかという話でもありますし、より深刻な問題としては、そもそもの物価目標2%に関連する話に繋がると思うのですが、「そもそも潜在成長率が極めて低い状態の中で、2%の物価上昇率を短期的にヒットさせるべく政策運営を行う必要があるのか」という点が浮上するのではないかと思うのですけどどうなんでしょうかねえ。


○先行きの見通しは雇用情勢一点張りのメカニズムにしか見えない件について

『先行きを展望すると、国内需要が堅調さを維持する中で、輸出も緩やかな増加に向かっていくと見込まれ、家計部門、企業部門ともに所得から支出への前向きの循環メカニズムは持続すると考えられる。このため、わが国経済は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には潜在成長率を上回る成長を続けると予想される。』(今回)

『先行きを展望すると、国内需要が堅調さを維持する中で、輸出も緩やかながら増加していくと見込まれ、生産・所得・支出の好循環は持続すると考えられる。このため、わが国経済は、2回の消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には潜在成長率を上回る成長を続けると予想される3。』(前回4月)

まず輸出の見通しが「増加していくと見込まれ」から「向かっていくと見込まれ」に下がっているのと、好循環メカニズムで示されている「生産」も諦めてしまって外れておりますので、従いまして「所得が上昇しないと循環メカニズムは持続しません」という完全なまでに雇用一点張りの見通しになっていますので、賃金が上昇しないと話が始まりませんという所でして、先の方でも当然ながら「お賃金は上がります(キリッ)」という説明はしているものの、それ以外のメカニズムが無いというのがダメじゃんというのに加えまして、そもそも足元の需給ひっ迫がそれこそ設備のペントアップじゃないですけれども一時的なペントアップ需要によるものだとしますと結局の所好循環という風にはならないんじゃないですか大丈夫ですか検証しているのですかというお話ではございます。

『こうした見通しの背景にある前提は、以下のとおりである』(今回)


という所で一旦アップします。



2014/11/03

お題「追加緩和の論点:その2展望レポート基本的見解のロジックを鑑賞(経済情勢メカニズム編)」

さあ続きですよ!!

http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1410b.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1404b.pdf(前回4月)

○経済が見通し通りに推移するメカニズムに関して鑑賞

さっきの続きから。

『第1に、日本銀行が今般拡大した5「量的・質的金融緩和」を着実に推進していく中で、金融環境の緩和度合いは一段と強まっていくと考えられる6。すなわち、「量的・質的金融緩和」のもとで、名目長期金利の上昇圧力は抑制されている一方、予想物価上昇率は全体として上昇しており、実質金利は低下している。銀行貸出残高は、緩やかに増加している。このような緩和的な金融環境が民間需要を刺激する効果は、景気の改善につれて強まっていくと考えられる。』(今回)

『第1に、日本銀行が「量的・質的金融緩和」を着実に推進していく中で、金融環境の緩和度合いは一段と強まっていくと考えられる4。すなわち、「量的・質的金融緩和」のもとで、名目長期金利の上昇圧力は抑制されている一方、予想物価上昇率は全体として上昇しており、実質金利は低下を続けている。銀行貸出残高は、緩やかに増加している。このような緩和的な金融環境が民間需要を刺激する効果は、景気の改善につれて強まっていくと考えられる。』(前回4月)

ということで、基本的に言ってる事が4月の展望レポートと変化していないというのは、これ即ち先ほどの政策ロジック編で申し上げましたよう所の「政策の効果測定や検証が出来ていない」という話のような気がしますがそれは兎も角として、実質金利に関して前回「低下を続けている」とあったのが「低下している」に変わったのは何ですねんというのがまず最初の疑問。名目の金利に関してはどう見ても下がっているのですから、予想物価上昇率が横ばいであっても実質金利は「低下を続けている」とするのが妥当でして、然るに「予想物価上昇率は全体として上昇しており」とはどういう事やという所でワロタとしか申し上げようがない。

その他の効果として貸出残高の緩やかな増加とかあるけど、そもそも論として「緩和的な金融環境が民間需要を刺激する」という前提そのものに関してのレビューは全然なくて、実質金利が下がれば消費や投資が拡大されるという置物理論についての検証は皆無のまま推移しているというのが如何な物かと申し上げざるを得ない。

次が海外経済ですが、この調子で前回分まで全部引用しているととんでもない量になってしまうので、基本的にゴリゴリ突っ込まない部分では前回分引用を割愛しますね。

『第2に、海外経済については、先進国が堅調な景気回復を続け、その好影響が新興国にも徐々に波及する中で、緩やかに成長率を高めていく姿を見込んでいる。』(今回)

ちなみに前回との違いは新興国に関して先進国の回復が徐々に波及「していく」だったのが「する」となっている点で、新興国改善について微妙ではあるが若干上げている感じです。

『主要国・地域別にみると、米国経済については、家計支出を起点とする前向きな循環に支えられながら、徐々に成長率を高めていくと予想される。欧州経済については、債務問題に伴う調整圧力が残り、物価上昇率の低下傾向もみられるものの、個人消費の底堅さや輸出の増加などに支えられ、緩やかな回復を続けると考えられる。』(今回)

米国は前回よりも強い表現、欧州は物価に関する表現が加わっているのと、先行きにあったマインド改善の文言が抜けていてやや弱くなっています。

『中国経済については、当局が構造改革と景気下支え策に同時に取り組んでいく中で、僅かに成長ペースを鈍化させながらも、概ね安定した成長を続けると想定している。その他の新興国・資源国経済については、国・地域によるばらつきはあるが、先進国の景気回復の波及と、緩和的な金融環境を受けた内需の持ち直しから、成長率を緩やかに高めていくと見込んでいる。』(今回)

中国は同じ、新興国は金融市場の落ち着きが云々という前回にあった文言が抜けて微妙に上方修正です。

『第3に、公共投資は、経済対策の押し上げ効果から高水準で推移してきたが、本年度下期中には緩やかな減少傾向に転じていくと想定している。』(今回)

これは前回の見通しを横に伸ばしただけ。

『第4に、政府による規制・制度改革などの成長戦略の推進や、そのもとでの女性や高齢者による労働参加の高まり、企業による生産性向上に向けた取り組みと内外需要の掘り起こしなどもあって、企業や家計の中長期的な成長期待や潜在成長率は、緩やかに高まっていくと想定している。』(今回)

ここも前回と同じですが、先ほどの所で申し上げましたように、既に足元で推計される潜在成長率が低下している中でこの説明って何なんですかと小一時間ではある。


では年度別展開を。

『以上を前提に、見通し期間の景気展開をやや詳しく述べると、2014年度下期については、個人消費は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響がしばらくは残るものの次第に減衰し、雇用・所得環境の着実な改善が続くもとで、底堅く推移すると見込まれる7。』(今回)

『以上を前提に、見通し期間の景気展開をやや詳しく述べると、2014年度については、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響から、4〜6月の成長率は、耐久財などの個人消費を中心に、いったん落ち込むと予想される5。もっとも、雇用・所得環境の改善に支えられて、個人消費の基調的な底堅さは維持され、駆け込み需要の反動の影響も夏場以降、減衰していくと考えられる。』(前回4月)

ということで雇用環境に関して「着実な」改善とここだけは自信満々のようで、雇用所得環境改善の一点突破で突撃というのが良く判りますな。

『設備投資は、企業収益の改善や金融緩和効果が引き続き押し上げに働くもとで、長年の投資抑制による設備老朽化に対応した更新投資や、労働需給の引き締まりを受けた省力化投資、為替相場の動きも踏まえた国内拠点の再構築などの投資ニーズの高まりがみられることから、しっかりと増加するとみられる。この間、輸出は、海外経済が回復するもとで、為替相場の動きも下支えとなり、緩やかな増加に向かっていくと考えられる。こうしたもとで、鉱工業生産は、在庫調整の進捗もあって、緩やかな増加に復していくと予想される。』(今回)

『この間、輸出は、2013年度末にみられた駆け込み需要への対応から国内向け出荷を優先する動きや米国の寒波などの一時的な下押し要因が剥落するもとで、先進国の成長率が高まっていくことから、緩やかながらも増加に転じていくとみられる。設備投資についても、企業収益の改善や設備稼働率の上昇、金融緩和効果などから緩やかな増加基調をたどると見込まれる。以上の内外需要を反映して、わが国経済は夏場以降、潜在成長率を上回る成長経路に復していくと予想される。』(前回4月)

ということで、語順が変わっているので何ですが今回の語順で整理して見ますと、設備投資の先行きが強くなるメカニズムとして説明しているのを順に見ていくと、まずは「収益の改善」「金融緩和効果」なのですが、収益の改善が輸出企業の円ベースの収益改善なのであれば経済には好影響かも知れんが、それ単体で設備伸びるかよという話で、金融緩和効果も同様なのですが、それが直接的に投資に繋がるというのをアプリオリに正しいとして良いのでしょうかねえと思われるところです。

前回の時点では「設備稼働率の上昇」というのが説明にあって、まあそれは確かに生産拡大に伴う設備投資だから王道ですなあというのがあったのですが、今回はその部分が抜けていて以下にあるようなそれは前向き循環メカニズムちゃうやろという物しか出ていないのが実に残念というものです。

つまり「長年の投資抑制による設備老朽化に対応した更新投資や、労働需給の引き締まりを受けた省力化投資」というのは基本的に一時的な効果でありますし、省力化投資されたらそもそも労働需給が緩和するだろと思う次第でして、何ちゅうかそれを持って設備が伸びるというのはどうなのかねと思います。それから「為替相場の動きも踏まえた国内拠点の再構築などの投資ニーズの高まり」とは言いますが、そもそも海外生産になっている要因の中に為替以外の「需要地に近い所で生産する」という動きもある訳ですし、円安が一時的にしか進行しないのであればそう為替だけの要因でホイホイ生産拠点を動かしてくるとは思えん。

それともっと意地の悪い話をすると、国内生産拠点に回帰というのは「コスト勘案して国内の方が安くてウマー」という事でもあるのですが、それって結局の所「生産拠点としての国際競争力を為替調整でしていますよ」ってな話で、それは海外の労働者との相対比較で日本が安いという状態になったという話なので、それって単に為替調整で日本が海外対比で相対的に安くなったつまりビンボになったという話であって、本当に国民厚生上正しい姿なのでしょうかねえとは思うのでありました。


『2015年度から2016年度にかけては、2回目の消費税率引き上げによる振れは予想されるが、@緩和的な金融環境と成長期待の高まりを受けた国内民間需要の堅調な増加と、A海外経済の成長による輸出の増加に支えられて、前向きの循環メカニズムは維持され、潜在成長率を上回る成長が続くと見込まれる。』(今回)

『2015年度から2016年度にかけては、2回目の消費税率引き上げによる振れは予想されるが、@緩和的な金融環境と成長期待の高まりを受けた国内民間需要の堅調な増加と、A海外経済の成長による輸出の増加に支えられて、前向きの循環メカニズムは維持され、潜在成長率を上回る成長が続くと見込まれる。』(今回)

でまあここのメカニズムは往生際悪く同じになっています。

『2016年度までの成長率の見通しを、7月の中間評価時点と比べると、2014年度については、駆け込み需要の反動の影響や輸出の弱めの動きなどから幾分下振れるものの、2015年度と2016年度については概ね不変である。』(今回)

あっそう。


○物価の見通しもひたすら雇用情勢の改善による物価上昇の話のオンパレード

次が『(2)物価情勢』である。

『消費者物価(除く生鮮食品、以下同じ)の前年比は、このところ1%台前半で推移している。』(今回)
『消費者物価(除く生鮮食品、以下同じ)の前年比は、プラス幅を拡大しており、このところ1%台前半で推移している。』(前回4月)

現象面なので比較することも無いのですが兵どもが夢の跡っぽいので引用してみた。

『物価上昇率を規定する主たる要因について点検すると、第1に、労働や設備の稼働状況を表すマクロ的な需給バランスは、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、雇用誘発効果の大きい国内需要の堅調さが雇用の増加をもたらすもとで、労働面を中心に着実に改善傾向を続けている8。すなわち、失業率は3%台半ばとみられる構造的失業率近傍で推移しているほか、現在職探しをしていないが求職意欲を持つ人々なども含めた広義の失業率も低下傾向を続けるなど、労働需給は着実に引き締まり傾向が強まっている9。企業は、駆け込み需要の反動による需要の落ち込みを一時的とみているとみられ、前向きな雇用スタンスを維持している。こうしたもとで、所定内給与がはっきりとした増加に転じるなど、賃金の改善も続いている。また、非製造業を中心に設備の不足感も強まってきている。このため、マクロ的な需給バランスは、本年度後半にプラス(需要超過)基調が定着し、それ以降、プラス幅が一段と拡大していくと考えられる。そうしたもとで、需給面からみた賃金と物価の上昇圧力は、着実に強まっていくと予想される。』(今回)

需給バランスに関しては基本的に労働需給が改善してますぜ凄いですぜという話なのですが、とにかく労働需給が改善しているという話を一生懸命にしたいらしく、前回は(引用しませんが)この部分11行だったのが今回は15行に絶賛拡大しておりまして、涙ぐましいアピールの跡が見受けられます。

ということで需給ギャップに関しては労働需給改善の一点張りで勝負に来ておりますが、もう一つの予想物価上昇率を鑑賞してみましょう。

『第2に、中長期的な予想物価上昇率については、やや長い目でみれば、全体として上昇しているとみられる。こうした予想物価上昇率の動きは、実際の賃金・物価形成にも影響を及ぼしていると考えられる。例えば、労使間の賃金交渉において、企業業績などに加え、物価上昇率の高まりも意識され、ベースアップが久方ぶりに多くの企業で実施された。企業の間でも、従来の低価格戦略から、付加価値を高めつつ販売価格を引き上げる戦略へと切り替える動きがみられている。』(今回)

ま、この辺もまた前回と基本的な話は同じなのですが、「ベースアップが久方ぶりに多くの企業で実施された」(キリッ)ってのにはそもそもの政府からの要請もありーの、消費税増税するから仕方無い罠的な話もありーのでございまして、本当にそれがインフレ期待に基づくものなのかねというのは甚だ疑問でありますし、毎度説明されて耳タコなのですが、企業が付加価値高めつつ販売価格を引き上げる戦略云々に関しても結局全体的な意味ではコモディティー化の流れがそう簡単に逆回転するとも思えないので、ミクロの話としては面白いのですが全体の一般物価に関する議論でこの話を持ち出すのはどうかという気がします。

『先行きも、日本銀行が「量的・質的金融緩和」を推進し、実際の物価上昇率が高まっていくもとで、中長期的な予想物価上昇率も上昇傾向をたどり、「物価安定の目標」である2%程度に向けて次第に収斂していくと考えられる。』(今回)

あっそうという所ですが、前回はこの部分、「実際の物価上昇率が1%を上回って上昇する中で」とありましたので、これは即ち日銀が目先1%割れ突入も覚悟しているということを示す訳ですな。最初のエグゼクティブサマリーにもありましたように。

『第3に、輸入物価についてみると、このところの為替相場の動きは、消費者物価の押し上げ要因として作用する一方、原油価格をはじめとする国際商品市況の下落は、当面物価の下押し圧力となる。』(今回)
『第3に、輸入物価については、国際商品市況や為替相場の動きを反映して、エネルギーを中心とした押し上げ効果は本年夏頃にかけて減衰していくと予想される。』(前回4月)

ということで原油が当面下押しという話が入りましたな。

『以上を踏まえ、消費者物価の前年比(消費税率引き上げの直接的な影響を除くベース)の先行きを展望すると、当面現状程度のプラス幅で推移したあと、次第に上昇率を高め、見通し期間の中盤頃、すなわち2015年度を中心とする期間に、「物価安定の目標」である2%程度に達する可能性が高い10。』(今回)

『以上を踏まえ、消費者物価の前年比(消費税率引き上げの直接的な影響を除くベース)の先行きを展望すると8、暫くの間、1%台前半で推移したあと、本年度後半から再び上昇傾向をたどり、見通し期間の中盤頃に、「物価安定の目標」である2%程度に達する可能性が高い。』(前回4月)

ということで、とうとう「2015年度を中心とする期間」に正式に降参してきましたが、岩田副総裁の辞任マダーという所なのですけれども、国会で既に「説明責任を果たすのが重要(キリッ)」と意地汚く地位に執着する姿勢を明らかにしましたので、説明責任とやらを果たしてもらおうじゃないかという所っすな。

『その後は、中長期的な予想物価上昇率が2%程度に向けて収斂していくもとで、マクロ的な需給バランスはプラス幅の拡大を続けることから、強含んで推移すると考えられる。2016年度までの消費者物価の見通しを7月の中間評価時点と比較すると、2015年度については、国際商品市況の下落などから幾分下振れるものの、2016年度については概ね不変である。』(今回)

基本的な見通しは同じです。


#では次はリスク認識と金融政策部分になります


2014/11/03

お題「追加緩和の論点:その2展望レポート基本的見解のロジックを鑑賞(リスク要因&政策編)」

ということで展望レポートの続き参ります。

○上振れ下振れ要因では輸出の所の降参ぶりと雇用の自信満々振りが好対照

続きまして『2.上振れ要因・下振れ要因』のまずは『(1)経済情勢』から参ります。

『上記の中心的な経済の見通しに対する上振れ、下振れ要因としては、第1に、輸出動向に関する不確実性がある。輸出の伸び悩みが続いている背景には、新興国経済を中心とする海外経済のもたつきや世界的な投資活動の弱さに加え、わが国製造業の海外生産移管の拡大といった構造的な要因も影響している。』(今回)

『上記の中心的な経済の見通しに対する上振れ、下振れ要因としては、第1に、輸出動向に関する不確実性がある。このところの輸出の弱さの背景には、基本的に、わが国経済との結びつきが強いASEANなどの新興国経済のもたつきの影響が大きいが、わが国製造業の海外生産移管の拡大といった構造的な要因も相応に影響している可能性が高い。』(前回4月)

ということで、一番外しまくっている輸出の部分ですが、今回やっと海外生産移管に関する構造的な要因について「影響している」と認めた(今までは影響している可能性云々)のは降参モードという感じですが・・・・・・・・

『先行きの海外経済を巡るリスク要因としては、米国経済の回復ペースやそれが国際金融資本市場に及ぼす影響、欧州における債務問題の展開や低インフレ長期化のリスク、新興国経済における構造調整の進展度合い、地政学的リスクなどが挙げられる。また、わが国企業の先行きの内外生産ウエイトについても、為替相場の影響や生産移管のペースなどに伴う不確実性は高い。なお、海外生産の拡大は、輸出を抑制する要因であるが、子会社からの配当など、企業収益の押し上げを通じて成長に寄与する面もある。』(今回)

『このため、新興国経済の先行きや、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどの海外経済の動向やわが国企業の内外生産ウエイトの状況次第で、輸出は上下双方向に変動する可能性がある。』(前回4月)

だいたいこうやって文章が長いのは往生際が悪い状態になっているというものでして、内外生産ウェイトに関しては設備投資の先行きにあるように今後国内回帰が起きるといいなという話をしているんでしょうし、海外生産の拡大で子会社からの配当で企業収益の押し上げ言いますけど、それって別に国内の雇用に必ずしも結びつくかどうかは謎じゃないですかね、というのは毎度お話をしている通りです。

『第2は、消費税率引き上げの影響である。1回目の消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動減や実質所得減少の影響はなお残存しており、引き続き見極めていく必要がある。また、2回目の消費税率引き上げがどのような影響を及ぼすかについても、その時点の消費者マインドや雇用・所得環境、物価の動向によって変化し得る。』(今回)

これは前回分引用しませんが、前回は消費税率引き上げの影響は大丈夫という話でしたので今回は明らかに下げとなっています。

『第3に、企業や家計の中長期的な成長期待は、規制・制度改革の今後の展開や企業部門におけるイノベーション、家計部門を取り巻く雇用・所得環境などによって、上下双方向に変化する可能性がある。』(今回)

『第4に、財政の中長期的な持続可能性に対する信認が低下するような場合には、人々の将来不安の強まりや経済実態から乖離した長期金利の上昇などを通じて、経済の下振れにつながる惧れがある。一方、財政再建の道筋に対する信認が高まり、人々の将来不安が軽減されれば、経済が上振れる可能性もある。』

この2つは前回と同じです。


では『(2)物価情勢』を見てみましょう。

『上述のような経済の上振れ、下振れ要因が顕在化した場合、物価にも相応の影響が及ぶとみられる。それ以外に物価の上振れ、下振れをもたらす要因としては、第1に、企業や家計の中長期的な予想物価上昇率の動向が挙げられる。中心的な見通しでは、実際の物価と賃金の上昇率が高まっていく中で、人々の予想物価上昇率も一段と上昇していく姿を想定しているが、その上昇ペースには、実際の物価の動きやそれが予想物価に及ぼす影響の度合いなどを巡って不確実性がある。』(今回)

前回はこの部分がこうなっていましてですね。

『第1に、企業や家計の中長期的な予想物価上昇率の動向が挙げられる。中心的な見通しでは、実際の物価や賃金の上昇率が高まっていく中で、人々の予想物価上昇率も一段と上昇していく姿を想定しているが、どのようなペースで上昇していくかについては注意する必要がある。加えて、消費税率引き上げに伴う幅広い品目の一斉の価格上昇が、人々のインフレ予想に与える影響についても注意してみていく必要がある。』(前回4月)

アダプティブなインフレ期待の高まりに関して記述しているのは前回も今回も同じですけれども、今回はそのアダプティブなインフレ期待の高まりが足元の物価上昇モメンタムの鈍化で弱まる件について懸念して追加金融緩和を実施した、ということになっていますので、記述が思いっきり弱気トーンになっています。

でまあ今回のは上記に更に続くのですけどね。

『この点では、来年度に向けた労使交渉において、過年度の物価動向や先行きの物価見通しが賃金にどのように織り込まれていくかが重要である。また、このところ、消費税率引き上げ後の需要面での弱めの動きや原油価格の大幅な下落が物価の下押し要因として働いているが、この下押し圧力が残存する場合、予想物価上昇率の改善が遅延するリスクがある。』(今回)

ということで、先ほどの所でもありましたが、要するにインフレ期待を押し上げる為には賃金が上昇しないとどうもならんという話をしている訳ですな。

『第2に、マクロ的な需給バランス、とくに労働需給の動向がある。中心的な見通しでは、労働供給面で、近年の高齢者や女性による労働参加の高まりや最近みられているパート労働の正規雇用化が、今後もある程度続くことを前提としているが、この点を巡っては不確実性がある。とくに、通常の失業率に加え広義の失業率も低水準となっているだけに、人手不足感が一段と強まる可能性がある。』(今回)

ここだけ嘘のように強気の話になっていて、前回対比でもここの表現は強くなっていますので、まあ何度も申し上げておりますように、今回の展望レポートのメカニズムは雇用情勢の改善一点突破になっているのですが、そもそも何でMB拡大ペースを引き上げると雇用情勢が改善するのかさっぱり判らん訳で、今回の追加緩和のメカニズムの説明はどうなってるんだと小一時間ですな。

『第3に、物価上昇率のマクロ的な需給バランスに対する感応度、すなわち、企業が需給の引き締まりに応じて価格や賃金をどの程度引き上げていくかについて留意する必要がある。この点、消費税率引き上げ以降の消費動向が、先行きの企業の価格設定行動にどのような影響を及ぼすか不確実性が高い。』(今回)

こちらについては「この点」以下のやっぱり需要が落ちて物価が上がりませんでしたの可能性について言及が入ったのが前回と違う所で、やはりダメじゃんという風情ではありますな、うんうん。

『第4に、国際商品市況や為替相場の変動などに伴う輸入物価の動向や、その国内価格への波及の状況によっても、上振れ・下振れ双方の可能性がある。』(今回)

これは当たり前の話なのでまあヨロシ。


○金融政策の点検作業だが「物価のリスクが下に大きい」だと?????

最後の『3.金融政策運営』部分である。

『以上の経済・物価情勢について、「物価安定の目標」のもとで、2つの「柱」による点検を行い、先行きの金融政策運営の考え方を整理する。まず、第1の柱、すなわち中心的な見通しについて点検すると、わが国経済は、見通し期間の中盤頃、すなわち2015年度を中心とする期間に2%程度の物価上昇率を実現し、その後次第に、これを安定的に持続する成長経路へと移行していく可能性が高いと判断される。』(今回)

こちらに関しては2015年度云々が明示されたというのは前の方でもご紹介したとおりです。

『次に、第2の柱、すなわち金融政策運営の観点から重視すべきリスクについて点検すると、中心的な経済の見通しについては、輸出の動向や消費税率引き上げの影響など不確実性は大きいものの、リスクは上下にバランスしていると評価できる。』(今回)

『次に、第2の柱、すなわち金融政策運営の観点から重視すべきリスクについて点検すると、中心的な経済の見通しについては、輸出の動向など不確実性は大きいものの、リスクは上下にバランスしていると評価できる。』(前回4月)

あらら消費税の影響入りましたなあ。

『物価の中心的な見通しについては、中長期的な予想物価上昇率の動向などを巡って不確実性は大きく、下振れリスクが大きい。』(今回)
『物価の中心的な見通しについても、中長期的な予想物価上昇率の動向などを巡って不確実性は大きいものの、リスクは上下に概ねバランスしていると考えられる。』(前回4月)

ちょっと待てお前下振れリスク対応で追加緩和を実施しているのに何でリスクアセスメントが追加緩和込みで前回対比下振れになっているんだと小一時間問い詰めたい。大丈夫かこのアセスメント。

『より長期的な視点から金融面の不均衡について点検すると、現時点では、資産市場や金融機関行動において過度な期待の強気化を示す動きは観察されない11。もっとも、政府債務残高が累増する中で、金融機関の国債保有残高は、漸減傾向が続いているが、なお高水準である点には留意する必要がある。』(今回)

『より長期的な視点から金融面の不均衡について点検すると、現時点では、資産市場や金融機関行動において過度な期待の強気化を示す動きは観察されない9。もっとも、政府債務残高が累増する中で、金融機関の国債保有残高は、このところ減少しつつも引き続き高水準である点には留意する必要がある。』(前回4月)

えーっとすいません、既に散々っぱら国債を購入した挙句にペースを引き上げる決定をしているのに今更金融機関の国債保有残高の話をしてどうするんですかというか、人の心配するよりもてめえの心配をしろと小一時間。

『金融政策運営については、「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、今後とも、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う。』(今回)

『金融政策運営については、「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、今後とも、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う。』(前回4月)

ということで最後の文言は一緒でして、こちらには「所期の効果を発揮しており」とあるのに、冒頭のエグゼクティブサマリーの部分ではこの文言が削除されているというのは何なんでしょうというか、良心の呵責でもあるんですかというかな話ですな。


ということで展望レポート基本的見解の全文鑑賞会となってしまいましたが、何度も申し上げておりますようにメカニズムが全て「労働需給が改善して需給ギャップも改善するし経済物価情勢が良くなる」攻撃一点張りで勝負しておりまして、労働需給コケたらそもそもQQEとは何だったのかという話になる筈なのですけれども、再び兵を集めて輸送船で送り出すという作業になりそうなのがオソロシス。



2014/11/04

お題「追加緩和の論点:コミュニケーションについて&オペのフィージビリティについて」

ということで追加緩和の論点ネタ続きであります。

#うひゃー最も見たくないアレな物体がモーサテに出てるからチャンネル変えるか

○騙し討ちキターということで旧法時代に里帰りですねわかります

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/k141031a.pdf

今回の声明文における決定に至る理由の部分を引用しましょう(しつこいですが)。

『2.わが国経済は、基調的には緩やかな回復を続けており、先行きも潜在成長率を上回る成長を続けると予想される。ただし、物価面では、このところ、消費税率引き上げ後の需要面での弱めの動きや原油価格の大幅な下落が、物価の下押し要因として働いている。このうち、需要の一時的な弱さはすでに和らぎはじめているほか、原油価格の下落は、やや長い目でみれば経済活動に好影響を与え、物価を押し上げる方向に作用する。しかし、短期的とはいえ、現在の物価下押し圧力が残存する場合、これまで着実に進んできたデフレマインドの転換が遅延するリスクがある。日本銀行としては、こうしたリスクの顕現化を未然に防ぎ、好転している期待形成のモメンタムを維持するため、ここで、「量的・質的金融緩和」を拡大することが適当と判断した。』

でまあ今回はアダプティブなインフレ期待の維持というような話と、モメンタム維持という文言に見られますように物価の上昇に勢いを付けたいというのがあるのは把握しました。

・・・・・というのは判るのですが、直近までの黒田総裁をはじめとする執行部の見解はこの声明文の「しかし」以前の話しかしておりませんで、この「しかし」以降の話は別にしてませんでしたよね急に何を言い出しているんですかというのが誠に遺憾としか申し上げようがないことであります。

会見(はテキスト出たらやりますが)での説明ではやたらと早期に2%をヒットさせる事に拘った説明をしているように見受けましたし、声明文にある「モメンタム」というのも踏まえて考えますと、急に「何でも良いから強引に2%に引き上げに行かないといけません(キリッ)」という話に急転換したとしか思えませんで、その間のプロセスがさっぱりワカラン

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko141018a1.pdf
2014年10月18日
日本経済と金融政策── 日本金融学会2014年度秋季大会における特別講演 ──

だいたいですな、この前執行部の腰ぎんちゃくと思われる宮尾さんの講演でも、

『国民の望む「物価の安定」とは、単に物価が上昇するだけでなはなく、雇用、賃金、企業収益の改善などを伴いながら、経済がバランス良く持続的に改善し、その結果として、物価の緩やかな上昇が実現する状態を指します。』(上記URLの宮尾審議委員講演より、以下同様)

ということでモメンタムとかそういう話じゃなかったですし、

『その目標を、消費者物価上昇率で「2%」としたのは、経済の成長力や競争力強化へ向けた幅広い主体の取組みが進展し、持続可能な「物価の安定」と整合的な物価上昇率は上昇していくという認識に基づいています。』

って言ってるけど今回の展望レポートでは潜在成長率の推計値を引き下げているんだから、そうであったらそもそも論として「短期間で2%」を目指す事自体が妥当なのかという議論になってしかるべき(よりフレキシブルに考えるのなら話は別だが)ですが、そういう話も何も無しで急にロジックがワープしている辺り何ちゅうかお前ら昔の「衆議院解散と公定歩合についてはウソをついてよい」時代に戻ったのかよとしか申し上げようが無くて、新日銀法とは何だったのかという話になりますな。


○プレゼンの「3」は悪乗りに過ぎる件&追い込まれるのが先か爆発するのが先か

でまあ会見の中継も当然ながら見たのですが、そこに用意されているフリップが「3」を並べているのにもう血圧急上昇ですよ先生(ちなみにETFとREITが3倍で7年が10年までになるので年限が最大3年で長期国債が50兆から80兆だから30な)。

えーっとですな、前回が2倍だからとりあえず3の数字を出してこけおどしをしようという事なのだと思いますが、何度も申し上げておりますように、展望レポートのメカニズムとかも単なる「労働需給の改善で需給ギャップ改善」「賃金上昇で経済の前向きメカニズムが回る」という労働市場一点張りになっていますし、先般来申し上げておりますように、そもそも論としてMB拡大の効果についてのレビューも説明も無い状況なので「追加緩和やって物価目標行くんですか」というのが信用されてないでしょうから、株価とか為替が頭打ちになると早速催促相場になって「じゃあ次は4ですか」という事になるんでしょうね。

何か薬使っている内に効きが悪くなってもっと薬をとか言って更に強いのをやっているうちにラリパッパ状態になっているとしか思えないプレゼン振りに落涙を禁じ得ないですが、良く良く考えてみると今回の政策はMB拡大ペースは10兆円増えただけで、短国拡大できないから長期に振り替えたのと、ETFとREITの買入ペースを拡大した(これがどの程度の定量的な物なのかは株の人に聞かないとよく判らんのでパスしますが)という内容ですので、「3」という数字でも出して威勢よくプレゼンする(のと騙し討ちしてサプライズ演出する)のしかできないのかねとは思う所であります。

つまりですね、今回逐次投入(逐次投入にしては小出しじゃなくて有り金勝負っぽいが)を開始しましたので、次回に関しては市場から催促攻撃が来て「4」を出すしかないですなという話になるでしょうし、別に今回の施策によって「安定的な2%」のタイミングが近くなるとは到底思えない訳ですから、今回の追加の賞味期限いつまででしょうねという話になりますし、次はより無茶振りな「4」を出さないと効きません罠、というラリパッパ状態の拡大から廃人コースというのが見え見えなだけに実に辛いですな。


だいたいですな、この次で申し上げますが輪番のフィージビリティを簡単に考えますと、来年のフローの買入ペースがカレンダーベースの国債市中発行にかなり接近してくるという状況であって、一方で2%物価目標達成がどうのこうのという話をする訳ですから早いうちに実際の物価が1.5%位まで上がらないと話にならないという状況なのですが、オペのフィージビリティを勘案しますと2%以前の1.5%水準に行くよりも前に債券市場の方がオペ回らなくなって爆発する方がオソロシスという話でもあったりしますorzorz



○来年の長期国債買入はフローベースで110兆円(以上)とな

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/k141031a.pdf

声明文にありますように今回は年間80兆円ペースで長期国債の買入を拡大ということになっております。

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/mei/mei.htm/
日本銀行が保有する国債の銘柄別残高

直近の数字は10月20日の残高になりますが、こちらの残高から来年の償還銘柄の額面を拾って来まして(2年324-335、5年88-94、10年268-276、20年28-30、変国8-10、物国4-6)全部足し合わせると29兆9833億円となりますので、既に現時点で来年の償還額が貫録の30兆円となります。

これから買う中でも来年償還物があるでしょうし、大体からして1年以内輪番での買入は1年以内で償還が来るので、それも加えるとフローベースでの来年の長国買入額は110兆円以上になるという事ですが、ここで今年度のカレンダーベース市中発行額を見てみましょう。

<カレンダーベース市中発行額>
http://www.mof.go.jp/jgbs/issuance_plan/fy2014/calendar131224.pdf

なるほど当初ベースで155.1兆円かまだ45兆円少ないな・・・・・・などと瞬間思ってしまいそうですが、よくよく考えるとここには1年短国が入っていますので、長期国債の市中発行額を計算する際には27.5兆円引かないといけないので、カレンダーベースの市中発行を昨年並みで置くと長期国債の市中発行が128兆円程度の所にフローベースで110兆円を購入するということで、これを新発国債引受と言わずして何というのでしょうかという大変にアレな話で、しかもこの日銀ちゃんは短国買入で見られましたように別に割高割安とか適正価格とかいう概念が無く高級掃除機のように盛大に成行で国債を買ってくるというのは既にご案内の通りで、その結果短国市場が見事に死亡してしまった訳ですから、どこからどう見ても次に死亡するのは債券市場(まあ既にだいぶ死んでいるのですが)です本当にナムナムという所ではございます。


○ということで買入の方も相当苦労しそうですな(買入予定表キタコレ関係)

夕方5時前くらいに出てましたっけ。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/rel141031e.pdf
当面の長期国債買入れの運営について

『日本銀行は、長期国債買入れについて、当面、以下のとおり運営することとしました(2014年11月4日より適用)。なお、来月以降は原則として、毎月、最終営業日に公表することとします(次回は11月28日に公表する予定)。』

何せ今回は量をどどーんと増やすので実際に買うにあたってちゃんと回るのかというのが心配されるという状況でして、もはや平均残存を揃えに行くとかそういう細かい話を気にするよりも「物理的に回るのか」というのが重大という流れになりそうなので、様子を見ながら毎月変更するのは買入する方としてはそうなるなあとは思います。

でまあそれはそれで仕方ないとは思うのですが、年間フローベースで110兆円の買入を行い、しかも買ったものを全く売らないというオソロシスな投資家(ついでに言えばレポ市場への品貸しも消極的(国債補完供給はT+0じゃないと出てこないし5営業日までしかロール出来ないとか市場基準で言えば「買い占め締め上げ投資家」にしか見えません)という人の動きが毎月可変というのも何ともアレな話ではございます。

つまりですね、日銀の買入内容が債券市場の需給に圧倒的に影響を与えていくのが明白な中で、買入の内容が毎月変わるという事になりますと、債券市場の読みで一番重要なのが「来月のオペ明細がどうなるのか」って最早それ相場でも何でも無いですがなと思います。

それから金融市場局気が利かねえなあと思うのはこの公表が「月末」となっている事でして、どうせ月末ったって月末の引け後に公表だと思うのですが、月末というのは債券インデックス対比で投資を行っている人たちが翌月のインデックス更新に対応して売買をするタイミングでございまして、翌月のイールドカーブに思いっきり影響を与える案件が月末の引け後に出てくるとなりますとインデックス系の投資家は月末にインデックス更新の売買するの非常に困るんですけど、まあこれは25日くらいに公表することにしてくれれば済むだけの話ではありますので改善をお願いいたしたく存じます。別に金融市場局で出すものだしタイミングの問題だったら数日前に倒すのも別に問題ないでしょと思いますのでよろしゅうに。

では内容に関して。

『1.買入金額 毎月8〜12兆円程度を基本とする。ただし、政策効果の浸透を促すため、市場動向を踏まえて弾力的に運用する。』

政策効果の浸透云々よりも「買入が出来るか」という感じだと思いますが、これだけのレンジを取っているのは何でですねんというのはあります。今後の買入はオープンエンドになるので、償還ペースに合わせて買入の増減をある程度やって、残高の増加ペースをできるだけ一定に近くしたいという積りなのでしょうかねえ。

『3.国債種類・残存期間による区分別の買入金額 別紙のとおり』

ということで別紙の方ですけどね。

1年以下:1,100〜2,500程度×2
1−5年:5,000〜12,000程度×6
5−10年:4,000〜6,000程度×6
超長期:1,300〜4,000程度×5
変国:偶数月1,400程度
物国:奇数月200程度

ということですが、今生きている紙と比較しますと、中期の上限が7000億円から1.2兆円、超長期の上限が3500億円から4000億円に引き上げられていまして、これはとりあえず中期の買入を思いっきり増やして残高を稼ぐという事でしょうが、中期って今さらポートから外すほど玉持っている人いるのかよと思いまするに実にいやーな予感しかしません。中期の金利が馬鹿低下するのか買えなくなって輪番の買入が長期にシフトするのかよく判らんですが兎に角開けてみないと判りませんな。

ただまあいずれにしても月額10兆円近くの買入フローとかどう見てもこれ1年持たせられるのかも微妙じゃないのと思われますし、金利先高観でも出てくればそらまあ日銀に売りたい人はワサワサ出てくるかもしれませんが、今回の追加緩和決定が物価を2%に上げる事に直接的に繋がるとは到底思えない(円安で瞬間芸で押し上げは出来てもそれはただのコストプッシュ)という風に思っている中なのでそう簡単に売りが出てこないでしょと思いますけどねえ。

あと、今回追加緩和のどさくさに紛れて長期の下限を4000億円に下げて現状追認しているのですが、そもそも今生きている紙の時点でもとっくの昔に1回の買入額が4000億円でして、追加緩和のどさくさに紛れて下げてくるとか姑息にも程がありまして相変わらずディテールを見ると市場をナメトンノカという感じではありますな。

ちなみに、これ買入資産サイドの話だけしましたが、そもそも論として「これによって拡大する超過準備を誰が持つのか」という事を考えますともっと絶望的になる訳で、誰が超過準備を持つのかと考えますと結局短期市場とかにも盛大にプレッシャーが掛かってくる事になるんでしょうなあと非常にくらーい先行き見通ししか出てきませんが、これで物価全然上がらなかったらおまえら常盤橋公園の便所に頭突っ込んで反省してこい(くらいでは済まないが)という所ですな。


#なお、年内の短国買入に少し負担が軽くなる筈(その後は上記の理由でやっぱり酷い事になると思われますががががが)なのですが、いつものパターンだと5日に保有銘柄残高が出るのでそこで長期国債の方も含めて計数確認をアップデートする所存




○総裁会見だが文章に落としたのを見ると「質問に答えていない」のが多いですなあ

いやね、この総裁会見はさすがにベンダーさん提供の中継放送を見たのですが、黒田さんの表情って説明の時にはまあいつもの感じではあったのですが質疑応答が始まると段々表情が険しくなったり目が泳いでいたりと、今年前半の自信満々モードはどこへやらという辺りに今回の決定の背景が垣間見れるような気がするのは気のせいですかそうですか。

でまあさすがに会見をじとーっと見ているだけの余裕は無かったので半分流して聞いていましたが、途中から「何か質疑が噛み合っていないような気がするのだが」と思って音を聞かないで画像だけ見てましたがやはり文章を見るとそうでしたなという感じです。

これはつまりどういう事かと申しますと、今回の決定は確かに騙し討ち的な意味では効果的ではあったのですが、別に狙った訳でも何でも無く事前に練り込んだ訳でないんでしょうなあという印象でありまして(まあ日経あたりがどうせ迫真とか言ってみてきたような自主規制を書いているんでしょうけど読んでないから知らん)そもそも練り込んでいるなら反対4票も出ませんし、質疑応答がここまでグダグダになることも無かろうと思うのですがどうでしょうかねえ。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2014/kk1411a.pdf

○冒頭説明では「2%の達成」への拘りを示すがこれは「足元物価にリンクした政策運営化」を意味しますな

冒頭説明(形式上は最初の質問に対する答え)から。

この辺から声明文の項番2にある今回の追加緩和理由の説明になります。

『「量的・質的金融緩和」の導入以降、1年半が経過しましたが、これまでのところ、所期の効果を発揮しています。すなわち、わが国の景気は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかな回復を続けています。物価面では「量的・質的金融緩和」を導入する直前の昨年3月の時点でマイナス0.5%であった消費者物価の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、プラス1%台前半まで改善しました。』

所期の効果を発揮というのは声明文では図々しいと思ったのか外して居ましたが、展望レポート基本的見解の最後の所にも入っていましたし、こちらでもその説明。でも所期の効果というのをQQE導入前と比較する時点でだいぶ大本営発表の香りがしますが、まあここまでは追加緩和の理由ではありませんな。

『もっとも、消費税率引き上げの後の反動減は、自動車などの耐久消費財を中心にやや長引いています。また、このところ原油価格が大幅に下落しています。こうした需要面の弱めの動きや原油価格の下落は、物価の下押し要因として作用しています。消費者物価の前年比は、9月には+1.0%まで伸び率を縮小しました。もとより、消費税引き上げに伴う需要面の弱さは既に和らぎ始めていますし、原油価格の下落は、やや長い目でみれば、日本経済に好影響を与え、物価を押し上げる方向に作用すると考えられます。ただ、短期的とはいえ、現在の物価下押し圧力が残存する場合、これまで着実に進んできたデフレマインドの転換が遅延するリスクもあると考えられます。日本銀行としては、こうしたリスクの顕現化を未然に防ぎ、好転している期待形成のモメンタムを維持するために、ここで「量的・質的金融緩和」を拡大することが適当と判断しました。』

これは声明文の項番2で書いてあった「しかし」以下をもうちょっと詳しく説明しています。でまあ以下の部分が今回の声明で(キリッ)とやりたい部分ですな。

『「量的・質的金融緩和」は、人々のデフレマインドを払拭し、予想物価上昇率を引き上げることを狙った政策です。予想物価上昇率がどのようなメカニズムで形成されるかについては様々な議論がありますが、長年にわたってデフレが続いたわが国では、米国のように予想物価上昇率が既に2%程度にアンカーされている国とは異なり、実際の物価上昇率の変化が予想物価上昇率の形成に大きな影響を与えていると考えられます。実際の物価上昇率の伸び悩みが続けば、それがどのような理由によるものであれ、予想物価上昇率の好転のモメンタムが弱まる可能性があります。そうなれば、せっかくここまで着実に進んできたデフレマインドの転換が遅れてしまうリスクがあります。その意味では、わが国経済は、デフレ脱却に向けたプロセスにおいて、今まさに正念場、critical momentにあると言えます。今回、追加緩和を決定したのは、こうした考え方に基づくものです。』

今はインフレ期待を上げようという中なので、バックワードルッキングによるアダプティブなインフレ期待形成を重視して物価上昇のモメンタムを与えたい、という理屈は理屈として判るのですが、ではなぜMB拡大ペースを10兆円ほど増やすと物価上昇のモメンタムが付くのか、という点についての定量的な説明が無い訳ですし、そもそも論としてここまでの物価上昇におけるMB拡大の効果が定量的にどの程度あって、どういうメカニズムで作用したのか、というレビューも無い状況で「これまでの政策が所期の効果を発揮したから更に兵力を投入すれば効果を発揮するに違いない」というようなノリだけで突っ込まれても丸腰輸送船で戦地に送られる兵隊の方としては全く納得いきませんが、という話は昨日申し上げた通り。

『今回の措置はデフレ脱却に向けた日本銀行の揺るぎない決意を改めて表明するものです。デフレのもとでは、価格の下落、売上・収益の減少、賃金の抑制、消費の低迷、価格の下落という悪循環が続きました。』

デフレだと好循環が起き難いというのはまあそうですな。

『「量的・質的金融緩和」によって、デフレマインドの転換が実現すれば、価格の緩やかな上昇を起点として、売上・収益の増加、賃金の上昇、消費の活性化、価格の緩やかな上昇というかたちで経済の好循環が実現することになります。』

でも「デフレだと好循環が起き難い」から「何でもいいから物価が上がれば好循環が起きる」というのは別問題ではないかと思われますし、(後の方の質疑できっちり突っ込んでいる優秀な方がいますが)今回の展望レポートで足元の潜在成長率推計を引き下げているような経済状態の中で短期的に強引に物価を上昇させる(そもそもMB拡大で物価が都合よい所に上げられるんですかねえ上がるにしてもハチャメチャな事になりませんかねえという話は一旦措く)のって本当に好循環の達成に繋がるんですかねえと思うのですが、そういう検証や点検は無く「最初にこう決めたのがアプリオリに正しい」という無反省理論で特攻するのが今回の追加緩和の本質であるというのが良く判ります。

『この春の労使間の賃金交渉で物価上昇率の高まりが意識され、多くの企業でベースアップが実施されました。企業の価格設定行動も変化の途上です。』

消費増税とかコストプッシュとかまあいいです。

『いま、この歩みを止めてはなりません。「物価安定の目標」が人々の気持ちの中にしっかりと根付き、これからは2%の物価上昇を前提として行動しようと思うためには、日本銀行がその早期実現に強くコミットし、これを実現していくことが何よりも大切です。昨年4月に申し上げた通り、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の早期実現のためには、できることは何でもやる方針です。』

とまあそういうことで、結局の所追加緩和がどういうメカニズムで効果を発揮するかとか、その定量的な意味は何かという話はこの政策おっぱじめて1年半も経過しているというのに何が何だか判らんというまま特攻が続くという戦争末期状態で、気合だけは十分ということでありまして、それはもしかしたら物価は上がるのかもしれないけれども国民厚生的にどうなんでしょうかねという話っすな。

『今後も日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで「量的・質的金融緩和」を継続します。何らかのリスク要因によって見通しに変化が生じ、「物価安定の目標」を実現するために必要になれば、躊躇なく調整を行うという方針にも変わりはありません。』

ということですが、まあこれを見て明確なのは「今後も足元の物価次第で政策がフラフラする」という話でありますので、目先は当分物価上がらんでしょという事ですから追加緩和クレクレがそのうち始まるでしょうし、将来間違って円安効果で物価が上に振れてくると今度は急に雰囲気が変わる可能性も微粒子レベルでは存在するかなとも思われますしという所っすかねえ、よー知らんが。


・急に決まりましたねえという質問

幹事社の実質最初の質問。

『(問) 2点目の質問ですが、今回の提案というのは総裁の提案という理解でよろしいのでしょうか。また、先程critical moment というご説明がありましたけれども、総裁がその辺のことを胸に抱いたタイミングというのがいつ頃だったのかをお聞かせ下さい。』

『(答) 金融政策決定会合における議論については、議事要旨という形で公表されることになっていますので、具体的に申し上げることは避けたいと思います。』

まあこれは良いとしまして。

『展望レポートが議論される中で、金融政策について、ここで、追加的な緩和──「量的・質的金融緩和」の拡大──を検討すべきだという意見が委員の方々から出され、それを踏まえて執行部に案を作ってもらい、それを巡って議論し、「量的・質的金融緩和」のかなり思い切った拡大を決めたわけです。』

まあ執行部も「政策委員」ですから委員の方々からというのは貴殿の事ではないでしょうかと思いますけれども、展望レポートを議論しているんだったら潜在成長率が下がっている中で追加緩和をして2%の物価目標に短期的に強引に近づけようというのは必ずしも正しいかどうか判らんという話になると思うのですけれども何で追加緩和を検討すべきかという話になるんでしょうかねえ。

つーか景気回復と物価上昇のメカニズムが労働需給一点張りになっていますが、でしたらまあ追加緩和が需給ギャップにどのような影響を与えるのかという説明を頂きたいのですが、この先の質疑でも残念ながらそのような説明は無く、単なる「決意」とか「3」とかの話しかない訳でして、そらまあ初回の昨年4月は気合も判るのですが1年半継続して結局また気合かよという所ですな。

『その理由は、先程申し上げた通りであり、また、この点は「量的・質的金融緩和」の拡大についての公表文でも触れている通り、物価面では、このところ、消費税率引き上げ後の需要面での弱めの動きや原油価格の大幅な下落が、物価の下押し要因として働いている。このうち、需要の一時的な弱さはすでに和らぎはじめているほか、原油価格の下落は、やや長い目でみれば経済活動に好影響を与え、物価を押し上げる方向に作用する。しかし、短期的とはいえ、現在の物価下押し圧力が残存する場合、これまで着実に進んできたデフレマインドの転換が遅延するリスクがあるということから、日本銀行としては、こうしたリスクの顕現化を未然に防ぎ、好転している期待形成のモメンタムを維持するため、ここで、「量的・質的金融緩和」を思い切って拡大するべきであるという結論に至ったわけです。』

こうやって無駄に繰り返しをするのは好意的に見れば気合を強調したいという事ですが、悪意を持って見ますと他に話すことが無いので同じ話を繰り返して時間を稼いでいるという事でもあります。

『私自身も色々な指標を見て、感じるところもありましたし、政策委員の方々も色々とお考えだったと思いますが、より具体的には、政策委員の経済見通しが出され、議論する中で、「量的・質的金融緩和」の拡大が必要であるという意見が出され、今申し上げたような決定に至ったということです。』

ほうそうですか(白目)。


・量的な説明皆無キタコレ!!!

これは直球質問。

『(問) 2点お尋ねします。まず、なぜ10〜20兆円の拡大をしたのかという理由です。もう1点は、日銀はこれまでも大規模な金融緩和を続け、所期の効果を発揮しているとおっしゃっていましたが、今回、10〜20兆円増やすことによって、人々のインフレ期待が急激に変わるのか、その効果についてもう少し詳しく教えて下さい。』

(;∀;)イイシツモンダナー

『(答) マネタリーベースの増額ペースを約60〜70兆円から約80兆円に拡大する際に、資産の内容として、長期国債の保有残高の増加幅を更に30兆円拡大するなどの措置を講じました。これは先程申し上げた通り、足許の消費の弱さや、特に原油価格のかなり大幅な下落によって、物価上昇率が、やや下がってきており、そうしたことが続くと物価上昇期待自体も下がってきてしまいます。そうなると、例えば、将来の賃金や価格の設定についても下がってくる恐れがあります。そうなると、せっかく実現しつつあるデフレマインドからの転換が大幅に遅れてしまう懸念があり、そうしたリスクを未然に防ぐ観点から、必要十分な拡大をしたということです。』

全然答えになってNEEEEEEEEEEEEEE!!!!!!!!

『また、今回の政策により、どのような効果が期待されるかという点については、それぞれの委員がそれぞれの考えで経済見通しを出し、今回の展望レポートに添付されています。それを見て頂いてもわかりますように、物価面を中心に、それなりの効果が出るのではないかと思います。』

もうお前ナメトンノカという答えですが、要するにそういう答えしか出来ないということですので、ここは一発木久扇師匠の木久扇モデルとやらがある筈(以前山本幸三先生がモデルを使って必要なMBについて説明していたから無いとは言わせない)なので、師匠のご登場を切にお願いしたいと思いますし、2年で2%に届かない場合の説明責任を果たすと仰っていたのですから今こそ説明をお願いいたしたく存じますのではよ出てこいやオラオラオラ!!!!


・2年で2%は諦めたんでしょうかとか何で見通し下がっているのかという件

『(問) 今回の追加緩和を受けても、昨年4月の導入時におっしゃられた、2年程度で物価2%を目指すという考えは、今の時点でもお変わりないでしょうか。また、今回の追加緩和を織り込んでも、展望レポートの政策委員の物価見通しをみると下振れていますが、これは政策委員の中で緩和効果に疑問を持っている人がいるということなのでしょうか。追加緩和をしても物価見通しが下振れている理由について、総裁のお考えをお聞かせ下さい。』

そらまあこの調子でゴリゴリやられたら目が泳ぐわなとは思います(・∀・)

『(答) 第1点目については、全く変わっておりません。2年程度を念頭に置いて、できるだけ早期に物価安定の目標を実現するという、そもそもこの「量的・質的金融緩和」の目的がそういったものでありまして、この考え方は全く変わっておりません。』

ほほう。

『もちろん、2年程度というのはもともとある程度幅を持たせた表現であり、そのうえで、昨年4月に「量的・質的金融緩和」を導入した直後の展望レポートでは、2014年度、2015年度の見通し期間の後半にかけて2%程度に達する可能性が高いとしていました。その後、本年4月の展望レポートでは、見通し期間が2016年度まで延長されましたので、2014年度から2016年度までの見通し期間の中盤頃に2%程度に達する可能性が高いとしていました。』

言い逃れキタコレ。

『今回の展望レポートも全く同様に、見通し期間の中盤頃、すなわち2015年度を中心とする期間に2%程度に達する可能性が高いとみており、そういった見通しに変化はありません。いずれにせよ、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に2%の「物価安定の目標」を実現するという考えに変わりはありません。』

ということで「追加緩和をしているのに見通しが下がっていているとはナメトンノカ」という質問に対しては全く答えていませんな。


・円安進行は国民厚生上問題があるのではないかという質問だが・・・・・・・・・

『(問) 総裁は、本日の会合より前も、原油価格が下がり、ガソリン価格が下がるという現状がある中で、基本的に需給ギャップの縮まり等を通して物価が上がるモメンタムは変わっていないというご説明をされていました。それがうまくいっていると言っていて、国会でもそういった答弁をされていたと思います。それがこの2、3日で急に変ったような唐突感を覚えるのですが、物価上昇の基本的なメカニズムというものが変わっていないのかをお伺いしたいと思います。』

これ前段の質問なのですが最後の聞き方が非常に残念で、コミュニケーションポリシーの方で質問すれば良いのにとしか思えん。

『また、既に円安も進んで、地方を中心として円安によるコストプッシュインフレみたいなものを非常に気にされている声もたくさんあり、かえって消費の減退を招くのではないかというリスクも懸念されてきたわけです。あえてここで追加緩和により、さらにリスクを高めるとも言えると思うのですが、そこについてはどのようなご見解でしょうか。』

なので質問するならコミュニケーションで質問するか円安のインフレが目指す姿なのかのどちらかを聞けばよかったと思う。なぜなら答えですけど・・・・・・・・・

『(答) 「量的・質的金融緩和」の基本的なメカニズムは、全く変わっていませんし、その好循環のメカニズムがなくなってしまったということはないと思います。』

と逃げた挙句に以下繰り返しの説明を延々と展開されるのですが、まあ誤魔化しの見本として引用しておきますね。

『基本的に、非常に明確な形で、2%の「物価安定の目標」に強くコミットし、それを裏打ちするために大規模な量的・質的な金融緩和を行うもとで、イールドカーブ全体、名目金利全体を押し下げることを行い、さらにはリスク資産も買い入れて、リスクプレミアムを圧縮しています。同時に、物価上昇期待を引き上げて、実質的な金利、あるいは実質的なリスクプレミアムを圧縮することを通じて投資や消費を刺激し、経済全体を成長させることによって、いわゆるGDPギャップを縮小し、賃金、物価の上昇圧力を作っていきます。そして、またそれを物価上昇期待でさらに押し上げていくという基本的なメカニズムは、変わっていませんし、それはこれまで予期していた効果を発揮してきたと思います。』

『ただ、先程申し上げたように、このところ消費税の駆け込みの反動減の影響が自動車等でやや長引いています。そうしたもとで、ごく最近ですが石油価格が大幅に下落し、そういったことから現に消費者物価の上昇率も少しずつ縮小してきているといったことが起こって、それが今後さらに続くとすれば、やはり物価上昇期待に対する影響も懸念されますし、そもそも好循環にマイナスの影響を与えるリスクがあります。そういったリスクに未然に対処するために、「量的・質的金融緩和」の拡大を決定したということです。』

クドクドと同じ話を繰り返す攻撃キタコレ!!!

『なお、この緩和措置というのは、あくまでも今申し上げたようなことを通じて物価安定目標の早期達成をより確実にするために行うわけであり、為替相場等に対する影響を目的としたものではありません。』

ということで、前半のクドクド説明は肝心の「円安の国民厚生」という質問に対して全然答えないで逃げるための前振りでして、これは同じ話をクドクドとされると聞いている方も疲れてきて肝心の所を答えて居ない事にその場では気が付かない可能性が高まる、というこの手の会における基本的なテクニックの一つであります。


・どう見ても戦力の逐次投入ですが

『(問) これは、いわゆる戦力の逐次投入という指摘は当たらないのでしょうか。』

剛速球質問キタコレ。

『(答) 全く当たらないと思います。』

クソワロタ。

『というのは、先程申し上げたように、基本的に「量的・質的金融緩和」の効果は予期した通りの成果を上げてきています。ただ、様々な要因があって――原油価格の大幅な下落も1つですが、消費税の反動減がやや長引いていることや、あるいは世界経済の見通しが、最近のIMFの見通しでも、さらに若干引き下げられたことなど、様々な要因がある中で――、ここで示したリスクが出てきているのです。これが実際に顕在化し、せっかくデフレマインドを転換させてきている途中で、またデフレマインドの方に戻ってしまっては、これまでの成果が減ってしまいますので、そういったことにならないように、こういう対応をしました。』

『様々な要因からリスクが出てきたので、それに対応したということで、戦力の逐次投入にもなりませんし、逆に言えば、これでは不十分でこういったリスクに対応できないとは全く思っていません。これだけのことをやれば、こういったリスクに十分対応できると思っています。』

いやシナリオ通りに行ってて効果を発揮しているのに追加緩和だからどう見ても逐次投入だろ。


・質問が長いが面白いかつ辛辣ですが答えは完全に逃げです

『(問) 昨年4月4日に異次元緩和を実施されて1年半が経ちました。金融政策は、大体1年から1年半ぐらいで効果を現すということですが、今がちょうどそういう時期になっています。』

師匠もそう言ってますな。

『新たに示された経済見通しをみると、今年度の成長率は0.5%に引き下げられて、物価見通しは1.2%に若干引き下げています。これを黒田総裁が就任される前の、2013年1月の白川前総裁の最後の見通しと比べると、当時の2014年度の見通しは、コアCPIが0.9%、成長率が0.8%でした。つまり、物価については、まだ辛うじて上回っていると言えますが、成長率については当時の見通しすら下回っています。』

(;∀;)イイシテキダナー

『つまり、物価はどうにか上がっても成長率は上がらないということを端的に示していると思います。今日の展望レポートでも、こっそりとまでは言いませんが、潜在成長率の評価を引き下げられています。つまり、日本経済は一段と成長しないという姿になっています。』

(;∀;)イイシテキダナー
(;∀;)イイシテキダナー

『先程、「量的・質的金融緩和」は、予期していた効果を発揮してきたとおっしゃいました。ただ、結果としては、物価がちょっと上がったけれども成長率は一向に上がらない、むしろ下がったという姿になっています。』

(;∀;)イイシテキダナー
(;∀;)イイシテキダナー
(;∀;)イイシテキダナー

『日銀法では、物価の安定を通じて健全な経済発展に資することを理念とすると書いています。この理念にすら反していると思うのですが、このQQEというのは本当に効果があったのか、これからあるのか大いに疑問があるのですが、如何でしょうか。』

(;∀;)イイシテキダナー
(;∀;)イイシテキダナー
(;∀;)イイシテキダナー
(;∀;)イイシテキダナー

『(答) その点は、私は全く意見が違いまして、今おっしゃったことは単にかつての見通しが甘かったということを語っているというふうに思います。』

まずこの時点で全然違うだろおいという事ですし、言うに事欠いて前任者の見通しが甘かったので今の見通しが前と対比して弱く見えているだけですとかもうヤケクソですな。

『私どもは、昨年4月4日に「量的・質的金融緩和」を導入して以来、経済の実態を常に慎重、冷静に点検し、金融政策として必要かつ十分なものかどうかというのを毎回の政策決定会合で議論をして参りました。そうした中で、先程申し上げたような消費税の駆け込みの反動減が耐久消費財でやや長引いているとか、世界経済の見通しが全体としてやや下振れているとか、そうしたもとで原油価格がかなり大幅に下がったといった現状を踏まえて、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に達成するために、デフレマインドの転換が遅延するリスクを未然に防ぐという観点から、「量的・質的金融緩和」を拡大したということです。』

またこれです。

『実質成長率は、色々な要因で様々に振れています。そうした中で、中長期的にみた潜在成長率は、常に申し上げている通り、基本的には金融政策でどうこうするというよりも、構造政策、成長戦略に係わるものだと思います。ただ、その中でも、デフレ下では、どうしてもイノベーションが行われない、リスクテイクが行われない、十分な投資が行われないということになりがちです。』

『そこで、2%の「物価安定の目標」を安定的に持続できる形になれば、企業や家計が緩やかな物価上昇を前提にして、賃金とか価格あるいは投資その他を決める、ということで、より望ましい経済成長になるということであり、この点、私どもの考えは現在も全く変わっていません。』

デフレが良くない、という話と「短期間で2%の物価目標を目指す」というのは別次元の話で、デフレが良くないのであればデフレ脱却に向けた動きをすれば良い話で、そのための方便で短期間で2%の物価目標を目指すと言いましたが潜在成長率が中々上がらないので2%目標は急いで目指すものでは無くてもうちょっとだけ長めのスパンで目指した方がプレッシャーかからないですよね的な現実路線に転向する(浜田先生とかそういう話をしてますよね)のかと思いきや足元では潜在成長率が下がっているのにより過激に特攻するという流れになっているという答えになっていますな、オソロシス。


・1.7%だが後半大きく伸びるという見通しのようで

『(問) 今回の緩和は必要かつ十分な緩和とおっしゃいましたが、2015年度のCPI見通しを見ると、中央値で1.7%、かつ分布チャートを見ますと下振れリスクがあるような形です。これで本当に必要かつ十分なのかと疑念の余地もあるわけですが、必要かつ十分だと言い切れるその理由をもう少しご説明頂けますでしょうか。』

そらそうなるわな。

『(答) これはもちろん、政策委員の方々に年度で見通しを出して頂いており、半年とか四半期とかそういうものでは全然ありませんので、何とも申し上げられませんが、基本的に、2015年度の前半は、原油価格の下落が物価の下押し要因として働いていきます。そして、年度の後半にかけて、こうした下押し要因が剥落するもとで、需給ギャップの改善や予想物価上昇率の上昇を背景にして、消費者物価の前年比は伸びを高めていくとみられます。従いまして、引き続き2015年度を中心とする期間に2%程度に達する可能性が高いと思います。つまり、2015年度の消費者物価の見通しが幾分下振れたのは、1.9%という中央値から、1.7%に落ちたわけですが、それは主として原油を初めとする国際商品市況の下落によるものであり、そういったものは先程申し上げたように、年度後半に剥落しますので、十分この1.7%という見通しの中央値のもとでも、2015年度を中心とする期間に2%程度に達する可能性が高いと、そのように考えられるからこそ、展望レポートにそのように書いてあるわけです。』

つまり見通しが低い委員がいるから下振れリスクが高くなり、1.7%になっているのは手前が落ちたから年度平均の数字が下がっただけで後半の見通しは同じですという言い訳になっている訳ですな、うんうん。

トップに戻る





2014/10/31

お題「短国入札とかオペ予見可能性とかマイナス金利に関する諸々の雑談ですいませんすいません」

今日は展望レポートですよまあどうせ中身は結果から逆算(以下悪態^^)。

○短国入札とかオペの予見可能性とかに関する雑談

・短国入札足切りもマイナスとかもうね

ということで皆様ご案内の3M入札でしたけどね。

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20141030.htm
5.価格競争入札について
(1)応募額 47兆6,750億円
(2)募入決定額 5兆3,142億1,000万円
(3)募入最低価格 100円00銭0厘5毛 (募入最高利回り)(-0.0018%)
(4)募入最低価格における案分比率 85.8336%
(5)募入平均価格 100円00銭1厘1毛 (募入平均利回り)(-0.0041%)

・・・・・・・・・・・orzorzorz

100円足切りどころか100円の一つ上が足切り(さすがに按分は厚いが)とか何考えてますねんという所で、どう見てもまたまた普通の国内投資家が排除された入札キタコレとなった次第でありますが、レポGCとか現先とかの状況を見ておりますと(あくまでも極私的感想ですが)実は投資家にマイナス金利で飛ぶように売れていて本当に物無し芳一なのですよ、という風には思えない状況がここもと継続している(だからこそ入札の前でもプラス利回りあるんじゃネーノ的な話もあった訳ですが)のに足切りマイナスってどうも????ではあるのですが、まあ「ヘイヘイ!日銀足元見られてるよ見られてるよ!!」という事ですねわかります(−−;

何せ日銀様がマイナス金利で買入を行う上に、10月の頭の短国買入で3.9兆円しか札が無いのに3.5兆円の買入を実施した事からヘイヘイ日銀焦ってる焦ってる!となって足元見られる攻撃になったのがまあスタートという所でしょうが、固定金利オペのロール歩留まりが足元悪化気味だし、先般買入が札割れしたりその次も買入額減らさざるを得なかったりとなっておりますので、そらまあヘイヘイ日銀焦ってる焦ってるという足元見ますよ攻撃になればどうせ日銀が買うのでマイナスに特攻しても安心感があるということですかそうですかという話。

なお昨日の入札の市場推計落札分布では兆円の桁の落札が無くて所謂不明玉が3.9兆円とかいうオモシロ結果になっておりますが、その後のGCレポや現先市場の推移を見るとその不明玉と言うのは(以下自主規制)。

ただまあ今回の入札がちと前回までの動きと違うのは日本相互証券さんの引けも売買参考統計値の平均単利も0.000%となっている事で、平均-0.41bpで入札しておいて引けが100円だと1厘1毛ぽっちですけど負けとるんですがナンヤソラという風情。ここまでの入札の流れはマイナス入札になる前ですと入札は辛うじてプラスで辛うじて国内投資家に販売→入札後はマイナス金利ヒャッハー→日銀様堂々のマイナス金利お買い上げという流れで、マイナス入札の先週はその最初のステップが無いものの入札後マイナス金利ヒャッハーが更に進むという動きでしたので、まあもしかしたらどこかでマイナス金利で買うニーズが盛大にある(日銀じゃなくて)というような話があったのが蓋を開けてみたら梯子外されたみたいな話があったのかも知れませんが、まーいずれにせよ国内の投資家からするとマイナス金利でのアウトライトの購入って中々ハードル高いと思いますので、入札段階からマイナスをやっていると普通の国内投資家不在状態になる筈なので、投資家不在相場をどこまで続けられますかという話なのかも知れずという所ですがよー知らん。


・固定金利オペの歩留まりも悪いですな

昨日の固定オペ
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba141030.htm
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式>(11月4日スタート分) 1,550 1,550

ちなみにこちらは11月4日にエンドの来る2850億円のオペのロール分になるのですが1550億円のロールとなりまして前回に引き続き歩留まりがあまり宜しくない。

まーこれに関しては応札する人の懐事情聞かないと背景はワカランチ会長ではあるのですが、ただまあ言えるのは足元で短国が入札段階でマイナス金利になっているとなりますと、担保などのニーズで確保していた短国の償還ロールが難しくなっている(担保が本当になくなったらマイナス金利でも買うのかも知れないが余力が落ちた程度でマイナスを買うのは難しいんじゃないですかねえ)ので、その分担保の余力が落ちている可能性があり、そうなりますと3カ月物0.10%固定金利しかも無担保ではなく適格担保までお出ししないといけないというような今となっては悪徳高利貸し条件(というのは大げさ)のオペに担保余力を回しますかという話になるから歩留まり悪化という話です罠こりゃ。

てなわけで日銀短国買入をあまり深く影響を考えずにホイホイマイナス金利買って行った弊害がこんな所にも表れているというのが実に味わいの深い侘び寂びを感じるものでありまする(−−;



・これは火曜日の日銀短国買入が注目されるところで

という事でまあ2週連続短国入札がマイナス金利になり、しかも2回目に至っては入札の足切りレベルまでマイナス金利というどこからどう見ても異常事態になっている中で短国買入をどうするんでしょうかねえというお話になる訳です。一方で固定金利オペの歩留まりは今申し上げましたように若干悪化しているのですよね〜。

まあ投資家不在の相場が何で2週間も形成されているのか(念の為申し上げますが9月の場合は期末絡みのニーズがあってその買いが入った所に日銀の買入が追い打ちを掛けていたし、期末の残高確保ニーズで最後の方は現先玉とかGCレポとかも玉が全然ない状態だったので今の状況と全く話が別)と言えば、それは話は簡単で日銀という名前の太い成行買いバキューム投資家(のようなもの)が存在しているからであって、しかもこのバキューム先生は買入の目標額らしきものがあってその数値に向けて年末までに絶対に買わないと死んじゃう位の勢いで前倒しで買いに来るというお方というのが人口に膾炙している訳で、だからこそ投資家不在相場を継続してもヘーキヘーキという市場の認識という事になっているんでしょとしか思えん流れな訳ですよ。

とまあそういう状態なのでヘイヘイ日銀足元見られてるよ見られてるよ!!というヤジが飛んでくる訳ですけれども(飛ばしてるのはお前だけだろというツッコミは華麗に却下)、昨日の入札がプラスに戻って投資家が買って行ったからその後やっぱりゼロ金利(とかマイナス)とかになりましたね、となりますとまあ割と自然体で買入をオファーできたかも知れませんが、2週連続マイナス金利しかも足切りまでマイナス金利とか足元見られてる攻撃を食らってしまったので、ここは日銀の胆力というか根性というかセンスが問われる展開になったのが実に味わいが深いというものです。

つまりですな、GCレポとか現先とかの状況から類推するに日銀短国買入に入れられそうな札はそこそこあると思われるので、よーしパパ沢山買入してマネタリーベースを進捗させちゃうぞーと言って盛大に買入をオファーするのは思いっきり可能と思われる次第(なおアタクシの類推ベースなので実際は知らん)でして、市場機能とか第二の柱とか金融システム機能とか知らんがなMB積み上げがマンデートなんだもんという話になれば火曜日に思いっきり買入を入れてくるという事になるのですが、当然ながらそういうプレイをしますとマイナス金利の恒常化という投資家不在相場を日銀バキューム買入が全力でサポート(まあサポートも糞も日銀が作っているマイナス金利相場なのだが)するという大変に素敵な結果になりますので、お前は何をやっているんだという話にもなるという所ですな、うんうん。

とは言いましても何せ10月頭の3.5兆円攻撃を見れば判りますように、上からこれだけ買えって言われてるんだから兎に角買うんだもんね状態になっているのが透けて見える状態の中で買入の進捗が予定よりも遅れるというのもこらまたあばばばばーな話で、結局どうなりますねんというのが先週の短国買入だとイマイチ判らんかった(2.25兆円という中途半端なオファー刻みがまた何ともでございましたし)ので、火曜日にどういう買入を打ち込んでくるのか(まあ打ち込まないでマイナス金利を是正した方が買入狙いとしか思えない謎の仮需を減少または排除できるので却って買入がスムーズに進むようにも思えますが外野で気楽に言うのと実際に買えと言われている立場では全然違うというのだけは一応理解する)というのがこらまた注目ですなあと。



・関連してオペの予見可能性に関する雑談

まあ何ですな、この前もちょっとだけ申し上げましたがもうちょっと頭を整理してみるとこんな感じなのではないかと。

確かにQQE実施直後に異次元国債買入によって需給状況の前提となる話が盛大に変化するようになってしまい、「日銀の輪番オペの予見可能性が全然ないから市場のボラが更に拡大して、その結果リスクプレミアムが拡大して長期金利が上昇したじゃないかこのスットコドッコイ」という話になった訳で、その結果としてオペの予見可能性がどうのこうの的な事になった訳で、そういや最初に2回ほど実施して以来すっかり話を聞かなくなった謎のオペ説明会みたいなのとかも実施されたりしてましたよねとかそんなお話。

一方で足元の短国買入に関して言えばオペの予見可能性(ヘイヘイ日銀ビビってるよビビってるよ!)が短国マイナス金利の形成に絶大に寄与して市場の流動性を破壊しているだの日銀が作る投資家不在相場だのと市井の一部のスットコドッコイ(アタクシの事ですが)が悪態を付くという素敵な展開になっている訳でして、オペの予見可能性に関して盛大に悪態つかれるとかこれまた何ですねんという話ではあります。

でね、この差をつらつらと考えてみたのですけれども、ポイントとなり得るのは「市場の参加状況が偏在しているのか否か」という事なのじゃないんですかねえというように思えるのですがどうでしょうという皆様のツッコミ待ちの雑談なのですよ。

つまりですね、昨年の輪番騒動の時っていうのは債券市場はまあ普通に投資家も業者も参加していて、別に極端な在庫の偏在とか玉の偏在とかが発生していた訳では無かったので、そこに堂々登場した日銀の買入が予見可能性がろくすっぽ無いとなると、そらまあ市場参加者としては需給状況の先行き不透明感を思いっきり高める事になるので、リスクプレミアムが拡大するわボラティリティが拡大するわという話になるんだと思うのですよ。

その一方で足元の短国市場というのは日銀の買入ストックがアホのように拡大した結果として、既に市場の需給偏在が発生していた事に加え、一番大きなファクターとして名目ゼロ金利制約の部分をそう簡単に突破できない主に国内投資家に対して、日銀がその名目ゼロ金利制約を軽々と突破することによって普通の投資家を排除するレベルというのを形成してしまい(短国買入が札割れとかする前から入札の瞬間以外マイナス金利というのは継続していましたからねえ)、限られた参加者の中での価格形成となっている中で日銀のオペが予見可能という事になってしまえば、そらまあ限られた参加者×日銀という話になりますから益々普通の投資家が排除されますがなという事になりますぞなってな事になるのかなと思います。


・まあマイナス金利というのはお話の上では魅力があるのですが・・・・・・・・

とまあそんなこんなで雑談ばっかりですいません(なお展望レポートに関してはどうせ見通し下げるのは今年度の所だけで、先についてはするにしても微調整だし肝心の物価見通しの中央値は死んでも下げてこないでしょと思いますし政策変更は無いでしょという事で)が、一連の流れを見て思うのは「マイナス金利というのはお話の上では有っても実際の運用は難しい」ということなのではないかと。

まあECBと日銀の場合はケースがだいぶ違いますので一緒くたにするのがそもそも乱暴ではありますので日銀の話をしますが、「マイナス金利まで購入すれば資産買入はドンドン積み上げられますぜヒャッハー」という話については以前からそういう論点はありまして、何か違う気がするんだよなあと当時から申し上げていたようにも思えるのですが、実際にマイナス金利での資産買入というのが行われて見ると想像以上にマーケットが壊れてしまいましたなあと。具体的には見事なまでに投資家が排除されていることではありますが。

名目ゼロ金利制約というのは金融市場だけで見れば大したことないのかもしれませんが、やはり実体経済(この場合は預金者とかそういう人ですね)とのリンクを考えた場合に名目ゼロ金利以下での資産購入というのはプルーデントな投資家という観点的にどうなのかとなりますと、そこには大きな壁があって、市場が思いの他壊れましたという結果になった訳で、やはりマイナス金利というのはお話の上では魅力的な概念であっても、実際にマージナルな部分ではなく大々的に行うという事になった場合は実務上の問題があり、その問題がどこかに歪を生み出しますし、市場のマイナス金利と実体経済の名目ゼロ金利制約の間に発生するコストの部分を誰が負担するのかという問題が生じるので、実務で大々的に行うのはやはり難しい、という結論を一旦付けてもよいのではないでしょうか。


ちなみに既にご案内の事とは存じますが、ECBのサイトのトップにこんなページのリンクがありましてね。
http://www.ecb.europa.eu/home/html/faqinterestrates.en.html
Why has the ECB introduced a negative interest rate?
Last updated: 12 June 2014

FAQ最初の質問がこれ。

『Do I now have to pay my bank to keep my savings for me? What is the effect of this negative deposit rate on my savings?』

この答えの最初の部分がどう見ても銀行に負担押しつけです本当にありがとうございました(なおこのやり取りはマイナス金利導入時の会見で記者から当然のごとくツッコまれていた論点でもありまして、ドラギさん確かにこういう論旨で説明してました)という風情。

『There will be no direct impact on your savings. Only banks that deposit money in certain accounts at the ECB have to pay. Commercial banks may of course choose to lower interest rates for savers. At the same time, though, consumers and businesses can borrow more cheaply and this helps stimulate economic recovery.』

ワシらは銀行からの預り金に対するチャージを行ったけれども銀行が皆様にチャージするかどうかは銀行の経営判断ですから知らんがなとか何という責任マルナゲータという所ですが、まあ斯様に名目ゼロ金利制約というのものは実体経済の方には思いっきりあるぞなという所でしょう。


#ということでしょうもない雑談大会でどうもすいませんでした

トップに戻る



2014/10/29

○ヘイヘイ師匠ビビってるビビってる!!!・・・・・こうですかわかりません><;

昨日は国会での半期報告がありまして、参議院財政金融委員会での質疑があったのですけれども、総裁答弁は相変わらず物価行きますよ攻撃が続いていますが置物副総裁の質疑が債券金利市場に乾いた笑いを巻き起こしたので、後日会議録を見て楽しく笑おうと思いますがとりあえず本日はニュースヘッドラインから備忘。

http://jp.reuters.com/article/idJPL4N0SN1X020141028
UPDATE 1-就任前の目標未達なら辞職発言、深く反省=岩田日銀副総裁
2014年 10月 28日 12:59 JST

ちょwwwwwおまwwwwwwwwという所ですが。

『[東京 28日 ロイター] - 日銀の岩田規久男副総裁は28日午前、参議院財政金融委員会で、就任前に2年程度で2%の物価目標が実現できない場合は辞職すると発言したことについて、深く反省している、と語った。大久保勉委員(民主)の質問に対する答弁。』(上記URLより、以下同様)

えーっとすいません国会での所信表明でそういう話をしているのですから、それは置物師匠におかれましては「国会で嘘ついて

『岩田副総裁は、昨春の就任前の国会における所信表明で、2年で2%の物価目標が達成できない場合は辞職する考えを表明したことに関し、「(達成できなければ)自動的に辞めると理解されてしまったことを、今は深く反省している」と語り、「まずは説明責任を果たすことが先決というのが真意だった」と説明した。』

えーっとそれなら衆議院と参議院の両方で説明したんですから片方の所で修正すれば良いと思うのですけれどもねえと思いますが、ここで所信表明の際における説明をサルベージしておきましょう。なお、この日の為に備忘も兼ねて8月末にサルベージネタを投下しておりましたので再掲になりますけどね!!!!!!

衆議院での所信聴取はこちら
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/002018320130305012.htm
第183回国会 議院運営委員会 第12号(平成25年3月5日(火曜日))

(改行は適宜省略しています)

『○津村委員 はい。失礼いたしました。二%ということを先ほどおっしゃられていましたが、岩田さんは、全責任を負う、マンデートだ、それを市場が信頼するからこそインフレ期待が上がるんだ、それについては現行の日銀法では不十分ということをおっしゃいましたが、これから中央銀行のトップ、副総裁につかれるとなれば、運用で、自分はこうやるんだ、全責任を負うんだということを明確にされることで、ある意味では、岩田さんのおっしゃる今の法の不備といいますか、そこを補っていかれるということだと思います。そこで、お伺いしたいんです。一つは、二年とおっしゃるのは、この就任の三月から二年後、つまり再来年の春ということでよろしいかというのが一点。それから、もう一つは、全責任を負って市場の信頼をかち取るということですから、それが達成できなかった場合の責任の所在ということははっきりとさせていかなければいけないと思いますが、それは、職を賭すということですか。』

『○岩田参考人 それは当然、就任して最初からの二年でございますが、それを達成できないというのは、やはり責任が自分たちにあるというふうに思いますので、その責任のとり方、一番どれがいいのかはちょっとわかりませんけれども、やはり、最高の責任のとり方は、辞職するということだというふうに認識はしております。』

『○津村委員 二年間というのは、二年後の春、つまり、二〇一五年の春の消費者物価の上昇率二%ということを目標とされる、そして、最高の責任のとり方としては、職をかけるということでよろしいですね。』

『○岩田参考人 それで結構でございます。』(以上上記衆議院HPより)

でまあこの参考人聴取で思いっきり「2年で2%行かなかったら辞任」という潔い姿勢と、津村委員も指摘するように、岩田さんが日銀法の弱い部分と指摘している事を職を賭すということで補うという姿勢までも見せたと評価になった訳ですが、もし説明責任どうのこうのでしたらその後の参議院で訂正していると思うのですけどねえ・・・・・・・・・・・

参議院(国会会議録検索システムから引用しているので直リンができませんすいません)議院運営委員会の昨年3月12日から以下引用しております。発言番号20番以降になります。

参 - 議院運営委員会 - 13号
平成25年03月12日

(改行は適宜割愛しています)

『○中西健治君 みんなの党の中西健治です。 岩田参考人、岩田教授にはこれまでもいろいろと御教示いただいておりまして、大変お世話になっております。今日はよろしくお願いいたします。まず、これまでの岩田教授の主張の幾つかをまとめてみますと、日銀法改正については、責任を明確化することで物価目標の達成が早まる効果があるということで賛成だということだと思います。それから、責任の取り方ということについては、最高の責任の取り方は辞職だということをおっしゃられていると思いますし、あと外債購入については、今は必要ないけれども、手段としては取っておくべきだということだと思いますが、確認ですが、今の認識でよろしいでしょうか。』

『○参考人(岩田規久男君) そのとおりでございます。』(以上国会会議録検索システムより参議院議員運営委員会平成25年3月12日の質疑を引用)

・・・・・・・ということで今回国会でご説明されたような話を全くしておられないようにしか見えないのですけれども、いずれにせよ就任時に話をしていた事は大嘘であられたというような事になるかと存じますが、それって国民の代表たる国会を愚弄するにも程がある話で、そらまあ参考人質疑だから別に偽証云々とかそんな事にはならないけれども、ことは国の重要政策に関わる問題ですから悪質じゃないですかねえ。


でまあロイターの記事に戻ります。

『当時言及した日銀法改正に対する考えについても、2%の物価安定目標が政府と合意されている現在は「あえて改正する必要はない」との認識を示した。』(最初のロイター記事URL先より)

ナンジャソラという所で、政府の方針が変わったら変わるんじゃマズイし、日銀の体制が変わったら変わるでもマズイからグローバルスタンダードとやらの物価2%目標を法に明記する改正するんじゃ無かったでしたっけ?????

『そのうえで、2年程度で2%の物価目標の達成について、人間の行動に働きかけるのが金融政策とし、「電車の時刻表のように、きちんとはできない。不確実性が大きい」と指摘。2年程度での実現を目指して、最大の努力を行うという日銀の行動が大事だ、と語った。』(最初のロイター記事URL先より)

さてここで再び参議院参議院議員運営委員会平成25年3月12日の質疑を引用してみましょう。先ほど引用した中西委員による質疑の続きにちょうど適切な物がございます。

『○中西健治君 これも確認に近いことということになるのかもしれませんが、安倍総理は国会答弁でデフレは貨幣的現象であるということをおっしゃられております。岩田参考人も近い考え方なんじゃないかなというふうに思いますが、貨幣的現象かどうかという言葉はともかく、金融政策だけで物価目標二%は達成し得るということでよろしいでしょうか。』

『○参考人(岩田規久男君) 物価に影響するのは金融政策以外でも確かにございます、先ほど言った輸入物価とかそういうのありますが。結局、いろんなところで、ほかの要因で上げ過ぎる要因があった場合には、金融政策のやり方を変えれば結局は二%のインフレになるということで、あるいはデフレ要因がほかにあったとしても、金融政策が結局しっかりしていれば二%のインフレはできるということで、最終的には金融政策が決めることができるということだと思います。(以上国会会議録検索システムより参議院議員運営委員会平成25年3月12日の質疑を引用)

ついでに申し上げますと、師匠の理論を基に以前山本幸三先生がこのような説明もしていましたよね。

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE93204D20130403?sp=true
インタビュー:2%達成にはマネタリーベース拡大を=自民・山本氏
2013年 04月 3日 15:54 JST

『山本氏は、日銀副総裁に就いた岩田規久男氏が学習院大学教授当時に作成したシミュレーションから、消費者物価上昇率2%達成には、現在145兆円のマネタリーベースを160兆円─170兆円に増やしていく必要があるとした。試算は、リーマンショック後のマネタリーベースの量と予想インフレ率の目安となるブレークイーブン・インフレ率(インフレ期待を測る代表的な指標)の関係からはじき出したもので、同時に円レートや株価との相関式に当てはめると、ドル/円は98円、株価は1万1600円になるだろうとしている。さらに消費者物価指数を3%にするためには、マネタリーベースを180兆円程度に拡大させる必要があるとし、ドル/円は108円程度、株価は1万3600円程度になるだろうと試算する。』(上記URL先より)

なお日銀ホームページのトップを見に行けば判りますが、昨日のマネタリーベースは『マネタリーベース 2,555,800億円(2014年10月27日)』となっておりますので、山本先生が指摘する置物シミュレーションを用いますと15兆円程度のMBを拡大すると消費者物価が1%上昇するように見えますので、今のマネタリーベースですと今頃消費者物価は10%位まで上昇しているように思えますがどういう事なのでしょうかねえ。


・・・・・・・・・とまあそういう訳で、今さら何を言ってるんだこの置物はという所ではございますが、そらまあ鳴り物入りでご就任された置物大師匠の理論が単なる空論だった上に結局物価目標達成できませんでしたので辞任しますとなりますと、アベノミクス第一の矢とは何だったのかという話になるので引くに引けないという状況であるので仕方ないですよね!!!!!!


しかしまあ何ですな、まだ2年はやってきていない時期なのですから、普通に考えると「当初に申し上げた話は変わりません(キリッ)」「物価目標達成に向けて順調に推移しています(キリッ)」と話をするのが平常運転クオリティであって、この次にちょっとネタにしますが黒田さんはそういう話を継続しているんですが、早くもこの時期に腰砕けモードになっているという辺りに師匠の弱気化が思いっきり透けて見える所でして大丈夫かねという話でありまする。

まあ何せ引くに引けない状況にある中ですので、執行部からこのような弱気発言が早くも出るという辺りは労農赤軍だったら政治将校に吊るされるレベルの敗戦思想と言えそうな話ですが、まあさすがに強気一辺倒もかなーり苦しくなったなあという所で、折角黒田さんが強気の発言を継続して期待の意地もとい維持に努めているのに副総裁が「弱い輪」となって腰砕けてどないしますねんとゆー所でございますので、就任前の所信表明で示しておられた自信満々の超強気置物理論を少なくとも2年の期日が来るまでは継続して頂かないと何のために石持て追われたのかと麿も嘆いておられるでしょう(違うか)と存じますので我らが置物大師匠におかれましては置物理論が正しいので物価は上昇しますよ何言ってるんですか皆さんアホですか位の意気軒昂さを持って頂きたいというものです(棒読み)。


○黒田総裁の答弁も大概にアレだが

同じ国会答弁ニュースだが総裁答弁より
http://jp.reuters.com/article/mostViewedNews/idJPKBN0IH08220141028
消費増税先送りなら対応困難、マイナス金利は政策効果=日銀総裁
2014年 10月 28日 12:53 JST

『日銀による大規模な量的・質的金融緩和(QQE)の推進による需給ひっ迫などを背景に短期国債市場では、マイナス金利での取引が頻繁に発生している。この点について総裁は「日銀は格別、短期金利をマイナスに誘導しているわけではない」としたが、マイナス金利の発生自体は日銀による「強力な金融緩和の表れ」とし、「特に問題ではない。金利水準全体の押し下げの一現象」との見解を示した。日銀による大量の国債買い入れでも「国債市場の流動性が低下していることはない」としたが、「国債市場の動向を注意深く点検し、市場安定に努める」と指摘。こうした国債買い入れは「財政ファイナンスを意図したものではない」とも語った。』(上記URLより)

・・・・・・・はあ何を言ってるんですかという所ですが、何らかの問題があるという話をすると金融政策の限界みたいな話になって期待形成に悪影響を与えかねないから問題があるという話をしない、というのならまあ判らんでも無い。

ただですね、これだけ問題ないを連発されますと、そもそもこのオッサンは為替市場には詳しいかも知らんが金利市場知らねえだろとか思う話になる(だいたいQQE導入後もその手のボケ発言をして債券市場を大混乱に陥れたという前科があるし)し、単にシャチョーが個人的に興味が無いというのだけならまだ救いようもあるのですが、一番恐ろしい想像は「市場で起きている現象とその問題について情報がきちんと執行部に上がっていない」とか「そもそも日銀の実務部隊が状況及びその問題について理解していない」という可能性がありそうにしか見えない点でありまして、まさに先の大戦末期を彷彿させる状態であったらもうダメだこりゃという事ですので、そちらの方が恐ろしいのですよね。

『金融政策運営をめぐっては、目標達成の時期として日銀が明言している「2年程度」と、見通しで示している「2015年度を中心とする期間」との整合性を問われた。これに対して総裁は、QQEに「あらかじめ決まった期限はない」とオープンエンドと説明する一方、2年程度を念頭にできるだけ早期に2%の物価安定目標を達成するという「政策の目的は変わっていない」と言明。何らかのリスク要因によって日銀の見通しが変化し、目標達成に必要であれば「ちゅうちょなく」政策調整を行う考えもあらためて示した。具体策は「その時点の金融・経済情勢を踏まえて、必要・適切な施策を行う」と述べるにとどめた。』(上記URLより)

・・・・・・・・ヘッドラインではもうちょっと「順調に進んでいる」とか「所期の効果を上げている」とかいうのが出ていたのですが、まあ黒田さんはどこその置物のように手形の期日が来る前にオロオロしだすような腰の弱さは当然ながら無い訳で、この調子で話をしている上に、短国のマイナス云々も知らんがな状態となりますと、もとより追加緩和云々という話は無い上に、短国買入と長国買入の振替を行う技術的調整で何となく追加緩和に見せかける攻撃のような忍法小手先目くらましの術も出ない、と考えるのが妥当ではないかと思います。

トップに戻る



2014/10/28

○超長期輪番で調整キタコレ

月曜はまあ順当に輪番がありまして、超長期と変動利付国債の輪番だったんですけどね。

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of141027.htm
国債買入(残存期間10年超25年以下) 1,100 2014年10月29日
国債買入(残存期間25年超) 350 2014年10月29日
国債買入(変動利付債) 1,400 2014年10月29日

・・・・・・・というオファーなのですが、まあ芸が細かい事に超長期輪番を超長期前半で100億円、超長期後半で50億円と合計150億円の増額というのを実施しまして、市場としても数字が出た瞬間は「超長期増額キター」で先物が上がったりしたものの、額があまりにもしょぼいのでどう反応して良いのか困ったという所ではないでしょうか。

でまあ輪番の結果は増額幅にインパクトが無かったのもあったでしょうし、ついでに言えば(後で申し上げますが)これで目先出尽くしというイメージもあったでしょうし、まあそれ以前の問題として超長期が増発だの絶対金利水準の低下だの他の年限が日銀買入も含めて需給がアホほど良いのに対して相対的に需給が悪いだのとかで超長期があまりパッとしないというのもありまして、結局輪番オペの結果は輪番増額の影響は特段ありませんでしたねという内容となりまして、後場は押し戻されてカーブはスティープ(という程のスティープではないが)の巻となりました。


でもってこの超長期輪番の微修正ですが、ここまで露骨に「微修正でござる」というのも中々珍しいちゅうかこの正直者というかな調整でして、昨日ちょっと申し上げましたように輪番で中短期の買入を月間辺り9000億円拡大する事になったので、買入銘柄の平均残存期間の6-8年の縛りに対して平均残存を調整したいですよという話。

んでもってこの買入年限の調整ですけれども、元々「紙」で示している1回の買入予定額を下に逸脱している(約だの程度だのついているしそもそも目安なので逸脱しているからどうのこうのというのは無いです)長期ゾーンの拡大で帳尻という手も思いっきりある筈なのですが、元々長期に関しては輪番によってカレント銘柄の需給がアホのように締まっているからもう勘弁という話が昔からあったので、長期の輪番を増やしにくいというのがありますな、という説明は一応可能は可能。

ただまあそれよりも普通誰もが思うでしょうが、今回超長期の小幅増額を行ったのは、要するに「買入平均残存年限の調整はします」が「額については先週金曜にやった分で目先打ち止め」というのを思いっきり示しているというのが今回の超長期輪番増額でして、これなら月に6回の買入ですから来月からの買入額自体は超長期分では900億円しか増えないので、残高ベースで言えば誤差の範囲内みたいな話になります。

まあ何ですな、別にこの変更自体に特段の政策的インプリケーションは無い筈(そもそもあるなら短国買入による市場破壊行為も政策的に意図して実施しているという事になるのでそれはそれでそこら中からカチコミが飛んでくるでしょ^^)ですが、一応読み取れるのは「できればこれ以上長期国債の残高拡大ペースを上げたくない」という話で、一つには短国買入や固定金利オペなどのその他部分が想定通りに行くかについての不確実性があるのでバッファは取っておきたいというのがあって、もう一つとしては出来るだけ当初の形での着地をしたいというのがあるでしょうから、毎度おなじみの小出し作戦になったという所でしょうし、あとおまけするとなれば、そもそも日銀の旧来のDNAが出てきて長期買入をロット的にあまり増やしたくないというのもあるでしょうなあ、とまあそんな感じで。

つまりですな、足元で短国買入が行かなくなるヘッジで中期を今後2兆円ほど増やしてくるという話になるのですが、それ以上にホイホイ増やすというのは行いませんよってえのが見え見えとなるプレイが今回早くも出たという所で、もうちょっと買入状況を確認してからどうするのか考えるのかと思ったのですが、この出し方を見ると最初からこの積りだったという話で、まあそれはそれで良いちゃあ良いのですが、もうちょっとこう柔軟性というか様子見ながらどうこうって事にならんのかねえと。オペ自体が市場に相当ストレス掛けるような内容になっているのは政策委員会が無茶な政策を実施しているからなのですが、それに対してもうちょっと運用の所で緩和できないのかねと思うのですが、真っ正直に突っ込んでいった挙句に収拾に追われているという風情を出してしまうのもちょっとねえとは思います。


なお、勝手な想像をしますと短国買入の進捗が思ったよりも順調だったら中期の買入を下げるのではないかという可能性は無いではないとは思いますけれども、少なくとも短国買入に関しては9月末の40兆円弱残高の時点であの価格形成であった事を考えますと、買入残高が43兆だの44兆だのになったら(一応中期を2兆積み増したからその程度あれば大丈夫でしょうかねえ)やはり短国市場の需給的にはストック効果が結構効いている状態だと思いますので、金利が上がるにしてもプラスに戻ってああよかったですねえ程度の話にしかならんと思われ、それよりもマイナス金利でホイホイと買い進めることに対してもさすがに不味かろうという話になった結果が今回の調整であると理解しておりますので(そうじゃなかったら笑うしかないが)、まあ短国買入は当初想定よりも若干減る(ただし9月末対比では兆円単位で増えるので需給は別に緩和されない)という事になるんじゃないですかね(よって年内はこのペースで継続)。


○しかし来年どうするんでしょうかねえ

ということで年内は当面今回微調整したペース(しかし超長期150億円というのは気持ちは判るけど先週金曜の2兆2500億円という刻みも含めましてビンボ臭さとか小役人臭を市場に与えると思うのでもうちょっと考えた方が良いと思う)で行くという所だと思いますし、年内はまあ何とかこれで回るんでしょうなあとは思います。

で問題は小見出しの通りで来年どうするのよという話でございまして、短国の残高積み上げがどう見ても無理だし、その他で年間20兆円として3か月で6兆円位積まないといけないという話になりますが、3月末と言えば決算期末だというのにその時点で日銀の短国買入残高が50兆円とかどう見ても無理(そらまあマイナス100%でも200%でも買えば回りますけれども、そうなりますと短国の入札がマイナスで買入レートが超マイナスとかいう最早何のためにオペを実施しているのかさっぱり判らない状態になるのは明らか)ですので、いずれにせよ来年のオペを今のディレクティブ通りに実施するのは困難と思われます。

#ここでタチが悪いのはシャチョーさんが別に買えば良いじゃない位の話しかしていない所ですがその話はさておきます

でまあそうなりますと12月会合の時点ではディレクティブの表現について何らかの手直しを行う必要があって、建付けとしてマネタリーベースが効果を出してインフレ期待が高まって実質金利が下がると消費や投資が促進されて回りまわって物価が上昇しますという置物直線一気理論によりますと物価目標が行くまでマネタリーベース拡大することに意味があるのでオープンエンドで実施、という話になりますので、その建付け上MBの拡大ペースはそのまま60〜70兆円で行くとなりますと、長期国債買入ペースを若干拡大するのか、それとも「約50兆円」を継続しながら50兆円の範囲内で54兆円ペースにして、その他の部分では出来上がりを60兆円にして6兆円で何とか凌ぐとかまあそんな話でとりあえず誤魔化すかという話をするんでしょうかねえ。

それにしても短期もそうですが、今の調子で長期債の買入残高を拡大する方も恐らく無理があって、既に5年以下のゾーンとかの金利は向こう5年くらいゼロインフレなのかよというような金利水準になっていて、日銀の買入効果がでまくっている(短期が潰れているのも影響しているが)次第ですが、これ以上ストック増えて行った時に短国市場で起きているような事がいつ起きるのやらという感じもする訳で、そもそもこのMB拡大政策自体がフィージビリティ的に3年も4年も継続する訳にはいかないペースだと思われますので、実際問題として来年もこのペースでMB拡大とかしたら短期市場だけではなくもっと災厄が増えそうには思えますのでどうなんでしょうかねえとは思います。


○とは言いましてもまあ引っ込みつかないでしょうなあという残念な雑感

とまあ現実的な話をすると、そもそも論としてマネタリーベース馬鹿拡大政策自体が3年も4年も続けられるものではない、でも2年なら何とかなるでしょ、とか思っていたら2年を待たずしてフィージビリティーの限界に到達したでござるの巻となっている訳ですが、何せマネタリーベース拡大2倍2倍の直線一気理論で始めた政策でありまして、しかも白川さんの時のドクトリンを盛大に否定して過激に開始してしまった以上引っ込みがつかなくなっているというのが足元で見られる現象ではないかと思います。

でまあその感を極めて強くしたのが先日来申し上げていますが先般のさくらレポートでございまして、アベノミクスの恩恵が地方まで行きわたっていない!とか地方創生!とか言っている最中だと言うのにさくらレポートでの景気判断は前回対比ヨコとは言え内容的には強い物(仙台支店を除く)となっている辺りが主上の宸襟を煩わせる訳にはいきません状態になっていると申しますか、台湾沖航空戦大戦果報告と申しますかな状態を思わせる所でありまして、まさに先の大戦末期での状況もかくあらんという所であります。

となりますとこれがまあジャパン的組織のアレな部分で、「何らかの強力な力で方向性が出来てしまうと反省も何も無くそのまま突き進んでしまう」というクオリティが見事に炸裂しているのが今の状態ではないかと思われるところでして、今この時点で退却だの戦線縮小だのというのがジャパン的組織の日銀に出来る訳も無いですし、大体からして政府と共同戦線張っている中で勝手に単独講和とか日銀に出来る訳でも無くという事になりますと、恐らくは「本土決戦して水際で一撃を与えれば」とか言う状態になってもまだ引っ込みがつかないでしょと思う次第。


でまあその手の理屈として暫く前から特に置物方面あたりと見られますが議事要旨とかこの前の置物会見でもあったと思いますがある話としては、「物価に関しては個別要因でああだこうだというのではなく、重要なのはマクロの需給ギャップ動向と期待インフレ率の動向を観察する事(キリッ)」というのがあります。

つまりですな、足元での物価上昇再加速が遅れているのは、あくまでも個別の一時的要因や、為替の部分などの需給ギャップや期待インフレというようなマクロ的な部分では無い点が影響しているのであって、重要なのはマクロの要因でありますよああそれで需給ギャップなんですけどご案内の通り労働市場の需給がタイトになっているようにギャップは改善からプラスの方向に着実に向かっていますし、インフレ期待は全体として上昇していますので何の問題もありませんがなという説明が出てくると思います。

そうなりますと、足元で原油価格が下がっていて物価が1%割れとかいう話が出てきて何かが出てくるみたいな話というのは日銀の今の一億一心火の玉で撃ちてし止まんの中では聞く耳をそもそも持たないというのが結論になりますので、追加緩和とかお前は何を言ってるんだという話になると思いますけどどうなんでしょうかね。


いやね、べき論的に言えば結局壮大な実験やったけれどもマネタリーベース直線一気理論は理屈の上ではアリエールであっても、現実としての政策に置いた場合には空理空論であったということがこれだけ散々やって明らかになっただろうという所ですので、黒田さんと師匠のクビ(黒田さんは場合によっては勘弁しても良いが)を土産に退却モードに入って頂きたいと存じますけれども、そのような単独講和モードは不可能という状態ですので予想しろと言われますと「とりあえず12月までは今のまま意地汚く粘る」「来年のMBの数値目標みたいなのは出さないで有耶無耶のうちに継続」「2015年度に達成と言っているのでいずれにせよ来年の夏場から秋口には手形の期日がやってくるし、そもそもそれ以前の2年の所でも揉めるでしょ」という予想しかできませんなああっはっはという所で。


○ブルームバーグがまた飛ばしてますなと思ったら日経も朝刊で触れているようですが

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NE3FA46TTDS301.html
日銀「年度後半の物価上昇」撤回検討、15年度2%達成は維持
更新日時: 2014/10/28 00:01 JST

『10月28日(ブルームバーグ):日本銀行は31日に公表する経済・物価情勢の展望(展望リポート)で、消費増税の影響を除いたベースでみた消費者物価(生鮮食品を除くコアCPI)の前年比が「今年度後半から再び上昇傾向をたどる」という見通しを取り下げることを検討する』(上記URLより)

ということで見出しはインパクトあるのですが、冷静に考えますと声明文(および金融経済月報)での物価見通しが相変わらず「暫くの間、1%台前半」という風になっておりまして、暫くの間が意味するのが半年程度という事になっていますので、そもそも事実上「年度後半の物価上昇撤回」は行われている訳で、あとは展望レポートの文章にどう反映させるかというだけの話で、何かの新たな判断が入るという話ではありません。

でもってこれによって何か政策的に変更があるかと言いますと、まあ白川さん的なグラデュアリズムですと技術的な調整みたいな話での小出しな短期減らして長期増やす的な話をする可能性はありますけれども、黒田さんの退かぬ!媚びぬ!のスタンスだとまあ普通に考えて何もないんじゃネーノとい
ところかと存じますがどうでしょうかねえ。

結局の所先ほど申し上げたような「そもそも需給ギャップ動向と期待インフレ率の動向が重要なので目先の区々たる個別物価の話をしてもシャーナイナイ」という一般物価という意味では確かにそらそうですなという理屈を繰り出してくる(つまり個別物価で何かの価格が下がったとしたらその分全体としての需要拡大に繋がるのだから一般物価的にはツーペーでしょという話ですかね)ので、個別の財価格がどうのこうのの話をしても想定問答的に全然噛み合わないという話になると思いますので、まあ今回の展望レポートでメカニズムが崩れているという話でもしない限り(なおそれは敵前逃亡の単独講和になって政府(というかアベノミクス)の梯子を盛大に外す事になるので日銀が絶対に出来ない)今回は意地汚く現状の見通しを維持するでしょ「全体的なメカニズムは変わっていない」とか言いながら。

なお相変わらず聞く相手間違えていると思われるメンバーが多数混入している(誰がとは言わないが)ブルームバーグサーベイ関連記事はこちら。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NE3BRH6SETC201.html
高まる追加緩和期待と日銀への不信感、強気姿勢は賞味期限切れの声も
更新日時: 2014/10/27 15:38 JST

まあこのサーベイ自体どうでも良いのですけれども、そもそも昨年4月の時点でマネタリーベース馬鹿拡大の政策に対して置物直線理論とかマッカラムルールとか言って盛大に評価していた方々が追加緩和とか言い出すのを見ると実に見苦しいと申しますか、昭和20年8月15日を境に手のひら返しをしたあんな組織やそんな人などのようで実に遺憾にも程があるので置物直線理論崩壊と共に崩壊して頂きたいものだと強く祈念いたします。

しかしまあ何ですな、結局今回もすべてが消費増税のせいになりそうな勢いなのですが、そもそも昨年度の景気拡大には消費増税がビルトインされた形での財政拡大や駆け込み需要がありましたし、今年度のベア復活にも当然ながら消費増税やそれとセットの法人関連税制措置が影響していた訳で、良くなった方は消費税関係なくてコケた方だけ消費税ガーとかこいつら馬鹿じゃねえかとしか思えん(いやまあアタクシも馬鹿ですけれども馬鹿なりに考えますと今回の消費増税前後の施策って再分配の部分でも中間層直撃な動きだったし、その上物価押し上げ政策やっているのですから、そら中間層直撃になっているのだから消費が失速する罠と思うのですがよく判らん)のですけど、まあその辺のレビューなども含めてこれから色々ときちんと検証して欲しい物です。

なお「期待に働きかける政策」を実施しているのですから、皆様におかれましては神州不滅を信じていればもしかしたら神風が吹いて2年で2%も達成するかもしれないですよ!!!!!!!(白目)

#なお今年の4月頭の時点では確かに今頃には物価が再度上昇傾向強まるとアタクシも思っていたのでまあそんなに威張れる話でも無いと言ってしまえばその通りですけどねorzorzorz

トップに戻る





2014/10/27

○短期が買えないなら長期を買えばいいじゃない早速キタコレ!!!

・中期輪番増額キタコレ!!!

さてさて、木曜に驚愕の短国入札マイナス(しかもギリギリのマイナスではなく明らかによーしパパ日銀買入狙いで特攻しちゃうぞーって人がいそうに見える(いるとは言ってないので念のため申し添えます^^)水準のマイナス金利)を受けて日銀買入どうなりますねんという所でしたが、短期だけではなく長期債の人も注目する10時10分がやって参りまして・・・・・・・

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of141024.htm
国庫短期証券買入 22,500 2014年10月28日
国債買入(残存期間1年超3年以下) 3,500 2014年10月28日
国債買入(残存期間3年超5年以下) 3,000 2014年10月28日
国債買入(残存期間5年超10年以下) 4,000 2014年10月28日
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式> 15,000 2014年10月28日 2015年2月6日

なお固定金利オペは実際は午後のオファーですがその話は後ほど。

・・・・・・・・・・ということで短国買入が2.25兆円というまたまた謎の刻み投下という感じで、何じゃこの刻みはという所ですが、輪番の方でオファー額の変更キタコレで債券市場がウヒョーの巻となった訳ですな。

つまり中期債輪番の所で、買入予定額が前回までの「1-3年3000億円、3-5年2000億円」から上記のように1-3年を500億円、3-5年を1000億円ということで、合計で1500億円の積み増しを行って参りましたので、そらまあ債券市場はヒャッハーですよ先生という所で、10年カレントは0.460%(1.5強)つけるわ2年カレントはまたまた0.010%(1.5強)をつけるわという動きでございまして、まあ引けではだいたいパラレルですけれども現実に日銀買入の拡大という需給材料が入った中短期の方が強いという感じになっていましたな、うんうん。

ということで「短期が買えないなら長期を買えばいいじゃないかbyマリーアントワネット」攻撃キタコレという話なのでそらまあ債券市場確りになりますなというお話ですが、今回は長期の買入は増やしていませんで、超長期の輪番については今月分の残り1回があるのでどうなるか判らんのですが、こちらも注目されるでしょうなあという所です。


・短国買入の方は意図的に調整したのか単に札が無いのかが良く判らん

でまあ短国買入の2.25兆円ですが、まあそもそも論としてどうせヒアリングしてその結果で打ってくるでしょう特に今回2回連続で短国買入札割れでもしたらそらもうエライコッチャになりますがなという所ではありましたので、オファーが入った途端にまあ札割れはしないんでしょうなあと思いながらも何ちゅうかこう微妙な感じのする数値としか申し上げようが無かったですな。

でまあ結果の方ですけれども・・・・・・・

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba141024.htm
国庫短期証券買入 33,727 22,501 -0.008 -0.002 1.3
(短国買入だけ引用しています)

ということで、札が3.3兆円ある中で2.25兆円のオファーで、足切りは8糸強まで入っているのでまあこれはこれで応札がこの程度だったら流れるかねという所ですが、札が3.3兆円の所で2.25兆円のオファーというのが、例によって例のごとくで「買入はできるだけしたい」けれども、「さすがに今回は絶対札割れできない」という相克の元で出てきた買入予定額が2.25兆円という刻みに現れているという所ですな。

・・・・・・・・・・というのは判るのですが、この「というのが判る」というのもまあ時と場合によりますよねえという所ではありまして、確かに昨年の4月とか5月に従来の動きを大きく上回る輪番オペをおっぱじめた時にオペの予見可能性が全然無くて債券市場が暴れて困りますがなというような事案もあったので、そういう過去の論点から考えるとまあ今の短国買入の入れ方は10月頭の札がギリギリなのに3.5兆円買入攻撃以来(というかその前から)ヒジョーに判りやすい動きをしていて、結局今回の動きもそれに沿っているなあという所なのですよ。

でまあオペの予見可能性というのはそらまあ全く分からないとそれはそれで市場が文句言い出しそうな話ですが、今の短国市場のように市場のキャパシティ限界一杯に近い所(あるいはキャパオーバーな所)までの買入があって、既にストック効果が出まくっているという状況になりますと、オペの予見可能性の高さは「買入オペの足元を見た市場の動き」という(金曜の日経朝刊本紙では「投機的な売買」とか中々の指摘がありましたなあ)ものを誘発するリスクがありますし、しかもそれが極端な所に逝ってしまうと先週の短国入札マイナスのように普通の投資家が市場から排除される(普通そういう事にならないが日銀の買入ストックが大きいのでそうなる)ような極端な価格形成となるリスクもあるという所なのでしょうな。

つーことで、何ちゅうかその2500億円って何とかならなかったのかよという風には思う所で、いやそれなら別に2兆でも2.5兆でも良いから5000億円刻みでやっておいてよとゆー話でして、大変にいじましいというかビンボ臭いものを感じるので2兆とかの買入の時に2500億円で刻むのやめえと存じますがね。

まあそれは兎も角として、まあ今回は札割れ回避でちょっと調整してきましたが、この2500億円という刻みを見るに「隙あらば買入積み上げ」というのは見え見えという所でもあろうかと思うので、中期を増やした辺り工夫の跡はみられますが、工夫というよりは運営厳しくなっている結果でもあるのかなあとか思うのでした。

なお、実を言うと前回の短国買入が札割れしていて、札割れ分が3800億円程度なので今回刻んだとかいうような話での刻みであった、という斜め上の可能性も無い訳では無い。


・ところで短国買入の残高とか長期の残高とかの件

さてまあ短国買入についてですが、9月末の短国買入残高のうち年末越えの残高が19.8兆円となっておりまして、年末の時点での残高としてバッファも見た場合に必要になりそうな要積み上げ額は出来上がり45兆円弱で置いて残り25兆円弱という数字になります。

でもって今月の短国買入はここまでが3.5+3.5+2.62+2.25なので12兆円弱の買入になるのですが、惜しい事にこの期間の短国買入は12月償還銘柄も買入対象になっていて、ど〜せ9月末の残高調整玉として買われていた年内償還物が打ち込まれていると思われまして、残念ながら12兆円まで進捗していないと思われます。

#というかこれだけ露骨な事やっているんだから買入対象銘柄で12月償還とか最初から外しておけば無駄な買入フローをしないで済んだし日銀買入が無い銘柄で期末ニーズ剥落分の玉が出てくれば需給もうちょっと緩和されたんじゃないでしょうかねえ

で毎度の話ですが進捗状況は月初になって出てくる短国買入銘柄別残高をみないといけないのですが、ざっくり考えて最初の方の買入(2回目とか応札多かったし)では結構年内物も入っていたと思われますので進捗9兆円位で仮に置きますと、11月12月で残りの買入必要額が16兆円とか結構厳しい数値が出てきますな、うんうん。

でまあそうなりますと長期の買入をもうちょっと増やしてヘッジしておきましょうねという話になります(CP買入とかも期近物が打ち込まれるので意外に残高維持が難しい。ただしさすがに兆円単位でぶれる話では無いが)ということで長期の買入が増えましたねという話ですな。


でまあその長期ですが、今回中期の買入が1500億円拡大となったのですが、中期の買入は6回あるので月に9000億円予定を上振れる計算になりますが、残りが2か月ですから全部足して(今月はあと1回中期の買入がある筈)2.1兆円の買入上振れとなりまして、まあこれが入ると着地に向けて結構楽になるかなという所です。

ではその長期の買入ですが、一応年間の買入拡大は50兆円という事になっているのですが、この50兆円に関しては(声明文のディレクティブを参照してちょという所ですが)「約50兆円」という事になっていますので、一応四捨五入して50兆円になる数値だったら現場の裁量で調整可能という建付け(の筈)でして、従いまして今回のマリーアントワネット攻撃は特段の声明文変更なども必要ない部分になります。

あともう一つ、長期国債買入に関しては「平均残存年限を7年程度」と記述していますが、これは6年〜8年の範囲内という建付けになっていまして、さて中期の買入を拡大した時にこのレンジを下にぶれないでしょうかねえというのはありますが、まあ今回相対的に札がありそうな(2年新発があるから)1-3年ではなくて、3-5年の買入額の方が増えているのは、平均残存年限の逸脱について気にした結果なのでしょうなという所です。

でまあ年限が逸脱するかどうかは入った札を見ながら日銀の方で考えると思うのですけれども、中期の買入で2.1兆円の上振れとなりますと、残りのバッファが2兆円程度になりますので、短国の残高積み上げが厳しいとなるともうちょっと買入の拡大という話にはなるでしょうけれども、平均残存年限の方もどうするのかとか悩ましそうですな。

量を伴うという話なら長期を増やす話でしょうし、量は伴わないけれども平均残存を微修正するという話でしたら超長期の可能性も無くはないかなと思いますけどどうでしょうかね。


・固定金利オペである

金曜の固定金利オペ結果である

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba141024.htm
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式>(10月28日スタート分) 10,031 10,031
(固定金利オペのみ引用)

今回のオペは数字を見ればわかりますように昨年のシグナルオペのなれの果てのロール分になりますけれども、足元の短国市場ヒャッハーなので札入るかヒヤヒヤしましたが、折り返し元が11711億円で今回が10031億円なので1700億円程の減少で、また減りやがったなという所ではあるのですが1兆円台に乗っていると見た目だけは安心しますな(^^)。

なお、木曜に実施された固定オペのロール分ですが、こちらは4000億円の落ちに対して4071億円なのでほぼ同じ水準という事になったのですが、まあ落ちるには落ちていますので、こちらの残高推移というのも気になる所ではありますし、短国マイナスで買えない状態(物はあるのだがマイナス金利というのはそもそもの運用資金がどこかから調達(預金なり投資信託なり年金なり)している投資家からしますと確定利回りマイナスというのは運用者としての忠実義務的に極めて微妙なのでマイナスはどうもねえという話だからオファーがマイナスなのは無いのと同じ)なので担保繰りの問題が起きてくると固定オペロール大丈夫かというのは気になります。

まあそんなのもあるから長期国債買入の方でとりあえず2兆円、いざとなったらもう2兆円程度は調整余地があるので調整してきたという所でしょうが、固定オペについても注目ですよ。なお水曜日に月末エンドのシグナルのなれの果て9730億円のロールがあります。

トップに戻る



2014/10/24

お題「短国入札平均落札利回り初のマイナスで論点を整理(といいつつ悪態ですが)しておきましょう」

短国入札マイナスの結果が出る前に出た宮沢センセイのアレは殺伐とした短期金融市場に一陣の笑い(または嘲笑)を引き起こしたとしか申し上げようがありませんですが、あたくしも宮沢先生を見習って老骨に鞭打って頑張らないといけませんね!!

・・・ってだいぶ間違っていますかそうですか(なおその手の趣味はございませんので誤解無きように)

などというギャグでも頭に挟まないと血圧に悪いのが短国入札ネタ。

○平均が100円の2つ上だと?????

でまあ注目の昨日の3M短国入札ですが、朝からWI取引でマイナス0.5bpとかのビットが入っているからまたこれは碌でも無いアオリイカとか思いつつも不穏な流れでありましたが、前場引けの時点ではベンダーとかのフラッシュでも100円足切りかもみたいなのが出ていてうーむという感じでしたが蓋を開けたらこの有様ですよ。

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20141023.htm

(1)応募額 52兆1,052億円
(2)募入決定額 5兆2,576億8,000万円
(3)募入最低価格 100円00銭0厘0毛 (募入最高利回り)(0.0000%)
(4)募入最低価格における案分比率 4.2781%
(5)募入平均価格 100円00銭1厘0毛 (募入平均利回り)(-0.0037%)

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)(;゚д゚)(;゚д゚)(;゚д゚)(;゚д゚)

えーっとですね、最初これ見た時に平均100.0001だと思って、ああそうか100円の落札が4兆円あって100.0005(3M短国入札では応札の刻みが0厘5毛)の札が1兆円入ってしまったのかしょーがねーなーと思ったのですが、それこそ(つд⊂)ゴシゴシしてみたら何と平均落札価格が1厘まで来ているってそれだとオーバーパーの札でしかも1つだけ上(按分読めなくて仕方ないので商品在庫確保を優先というのはアリエール)の札が入って平均がオーバーパーになってしまいましたテペヘロというような可愛い(可愛くも無いが)話では無くて、100円超の3つ目とかの所に思いっきり確信犯(という使い方は日本語表現的に誤用なんでしたっけ)で入れてきている札があってその結果がこの有様というのがナンジャソラという所。

いやまあ100円応札で切れるというのはまあ昨日の地合いだと仕方ないのかなあと思いますが、100円超で刻みが2つ3つ上の所で落札するというのはこらまた露骨に日銀オペ狙い過ぎな上に、毎度申し上げておりますように期末でも無く担保玉がそこまで逼迫している訳でも無く為替ベーシス絡みが大してワークしている訳でも無いという状態の中ですから、マージナルな部分での買いはあっても普通の投資家の買いがあるとは思えない状況。

ついでに申し上げれば昨日のTKRRは上昇していましたので、そもそも昨日の短国入札を実施する前の時点でもGCレポによるファンディングニーズはある訳で、9月末のように投資家の様々なニーズがあって在庫が払拭しているという状況ではないと思われるという市場動向(まあ偏在していたのは先週の札割れを見れば判りますが)でして、そんな盛大にマイナスの所まで応札を突っ込んで行く必要があるのかよというか、そのレートで落札とか投資家と売買する気あるのかゴルァ!という所でございますが、何せ日本銀行様におかれましては普通の投資家と違いまして、確定マイナス利回りという素敵な水準でも国債をご購入される訳でして、しかもその方が物凄い勢いでご購入されると来ましたら、そんな太い上客がいるならそっちに売るわグヘヘヘヘってなもんでしょう(白目)。

まあ何ですな、投資家のロジックとしては普通に考えますとお客様からお預かりした資金を運用するのに確定マイナス利回りのモノを購入するというのはお預かりした資金の利回りがマイナス利回りでも無い限りよーできませんなと思いますが、何せ日本銀行様の場合はお預かりした資金を運用とかいうような概念ではありませんので、そらもうマイナス100%でも200%でも良いんでしょうねえその原資って統合政府なんだから最終的には国民負担じゃないのと思いますけどねえ(迫真)。


○しかしここまでのマイナスというのはどう見てもオペのせいですがそれで良いのかという悪態

・・・・・・・とまあそんな訳で、昨日はついに入札段階でもマイナス利回りという素敵な事態になってしまい、宮沢大臣のオモシロ政治資金で広がった一陣の嘲笑を打ち消す殺伐とした流れとなった訳ですが(まあそれよりも「あ〜あ〜あ〜」という感じでしたけど)、マイナス金利が確かに継続しておりましたけれども、今回の入札は従来のマイナス金利状態とはまたステージの違う話で、やはりちょっと問題が深い話だと思うのよ。

つまりですね、ここまでの短国入札って「入札段階では一応プラス金利でスタート」となっていた訳で(先週の3M入札は100円未満の札で一番高い所になる99円99銭9厘5毛で半分の按分という掛かり方をしたのでマズー感はありましたがそれでも一応アンダーパー)、入札のプライマリー段階では投資家が入ることも出来たのですが、今回の場合は入札プライマリーの時点で足切り100円(しかも超極薄按分で満額札入れて3000億円位しか落札できないという状態)で平均がマイナス利回りになっているので、そもそも(マージナルな部分でのニーズ以外の)普通の投資家を入札の段階から排除した状態になっているというのが一段(どころか数段)ステージがおかしくなっている訳ですよ。

いやまあ業者も商売やってるんだからそらまあより太い上客がいて、その日銀という名前の上客がホイホイ高値を買ってくれるというのなら他の投資家なんぞは知らんがなというのも目先の商売という意味ではそらまあそうかも知れませんけれども、ここで国債市場特別参加者制度の趣旨を確認してみたいと思います。

http://www.mof.go.jp/jgbs/issuance_plan/pd/index.html
国債市場特別参加者制度

『国債の大量発行が今後も続くと見込まれる中、我が国では平成16年10月以降、「国債市場特別参加者制度」を導入しています。これは、欧米主要国において、国債の安定消化促進、国債市場の流動性維持・向上などを図る仕組みとして導入されている、いわゆる「プライマリー・ディーラー制度」を参考としています。』

ふむふむ。

『この制度は、国債入札への積極的な参加など、国債管理政策上重要な責任を果たす一定の入札参加者に対し、国債発行当局が「国債市場特別参加者」として特別な資格を付与することにより、国債の安定的な消化の促進、国債市場の流動性の維持・向上等を図ることを目的としています。制度の概要は以下のとおりです。』

>国債の安定的な消化の促進、国債市場の流動性の維持・向上等を図る
>国債の安定的な消化の促進、国債市場の流動性の維持・向上等を図る
>国債の安定的な消化の促進、国債市場の流動性の維持・向上等を図る

・・・・・・・・・・・・(;∀;)イイハナシダナー

でまあ当然ながらその概要にありますが、『特別参加者の責任』という所にこのような記述があります。

『・流通市場における責任: 国債流通市場に十分な流動性を提供すること。』

・・・・・・・・・・・・(;∀;)イイハナシダナー
・・・・・・・・・・・・(;∀;)イイハナシダナー
・・・・・・・・・・・・(;∀;)イイハナシダナー

ええまあマイナス利回りでも国債流通市場で盛大にニーズがあって飛ぶように投資家に販売が促進されていて、その結果としてGC市場や現先市場でも玉がスッカラカンになっていますよもう大変ですよ、という状況であるのでしたらまあマイナス利回り入札も仕方ないですねという話ではあるのですが、昨日の入札後のスポットスタートのGCとか現先市場の状況(と言っても別にアタクシが全部把握している訳でも無いのであくまでも個人的な印象に基づきますが)とかも参考にすると、マイナス利回りで入札された新発短期国債が流通市場で盛大に流通しているとは思えませんがどうなんでしょうかねえ。

でまあ仮にですよ、仮に一部の方が確信犯(誤用)で日銀オペ狙い応札をした結果、投資家が完全に排除された形の入札&流通市場になってしまっている、というのであれば、上記の「国債の安定的な消化の促進」という文脈で考えれば明らかに国債の安定的な消化の促進に背馳する話でありますので、まあ仮にそのような動きをまさかとは思いますが国債市場特別参加者が行っておられるとなりますと、国債市場特別参加者としての責務を積極的に放棄しに来ておられるという話でもありますので、参加者資格取り上げた方が良いんじゃないですかねえなどと思う次第ですが、もちろん国債市場特別参加者の皆様が目先の銭だけの為に国債の安定的な消化や市場の育成といった本来の役割を忘れるなどという事があるとは全く思っておりませんのであくまでも仮あんど仮あんど仮のお伽噺として申し上げただけでございますので念の為申し添えます(白目)。

しかしまあ何ですな、先日の在り方懇で事務局(つまり財務省理財局)から国債流通市場の流動性維持向上に向けた施策というのが示されていたと思うのですが、財務省が国債流通市場の現状について色々と苦心惨憺されている中でいい根性してますなあとしか思えませんが、一番いい根性してるのは日本銀行金融市場局金融調節課なんですけどね!!!!!!


○なおどうせ「借りる方が利息を貰える」とか微妙なミスリードしてるんだろうなあと思いますが・・・・・・・・

モーサテで日経新聞の記事紹介とかを見ただけの話で申し上げるのも何ですが、どうせマイナス利回りの入札になったから「発行体が利息をもらえる」という文脈で解説してやがると思うのですが、今回の場合はそもそもマイナス金利入札になったのが日銀の馬鹿短国買入が極めて大きな原因(というか日銀がマイナス買わなかったらこんな事になっていない筈)でありますので、実際問題として考えた場合には「国はマイナス金利で短期国債発行」をしているものの、ご丁寧な事に「そこで発行された5.7兆円のうちのうっかりしたら半分以上は日銀がもっとマイナスの金利でご購入」している訳でして、それって統合政府で考えた場合に本当に「国が利息を貰っている状態」と言えるのかという話ではございますし、何ちゅうかまあ(内務省検閲により削除されました)みたいな論点も出てきませんか大丈夫ですかという話。

つまりですな、一口に「マイナス金利」と申しましても色々な背景がある訳で、単純な利子部分の移動で誰が金をもらえる云々という話をするのは、まあ金融にあまりご興味の無い方ならば他の部分は見えにくいと思うのですが、一応経済新聞みたいな所でしたらこの背景部分をもっと整理して頂きたいと思うのですが、実際の記事では説明してるんでしょうかねえ。まあ本チャンの記事見てないからとりあえずはその程度の指摘だけしておきますが。

例えばECBのマイナス金利というのは「超過準備および各種中銀やら決済システムやらの預け金に対してペナルティ金利を課すことによって金利を引き下げよう」という話で、その裏側として「超過準備等にペナルティが掛かるから超過準備積み上げのインセンティブが無くなる(というかペナルティになる)ので、中央銀行の資産拡大政策をするのが技術的に難しくなる(特にリスクフリーに近い資産の購入について)」という話であり、日銀の馬鹿買入によって起きているマイナス金利というのは「中央銀行の資産買入政策の拡大をし過ぎた結果、名目ゼロ金利を突き抜けた高値まで資産買入をしないと政策が維持できなくなっている」という状態ですから、同じマイナスでも違いますよ位の話は天下の日経新聞様ですからご説明しておられるものと存じますがオラシラネ。

つー訳ですから、同じマイナス状態でも時によって背景が違いますので、単純な講釈されても困るんですけどねえとは思いますという雑談でありました。


○しかし副作用とか何も考えないとかそれでも政策当局者かと小一時間

まあそもそも論として日銀様におかれます馬鹿短国買入が元凶の多くを占めている昨今の短期国債市場(というか市場の体を更に成していない)ではございますが、そらまあマネタリーベースを盛大に積み上げることによって2%の物価安定目標を早期に達成するという政策の建付けだから、マネタリーベースの積み上げが大事です、というのは判るんですよ。判るんですけどお前ら政策当局の担当部門なんだからちったあ物事考えろよいつから日銀は只の事務屋になったのかと小一時間問い詰めたいところではあります。

つまりですな、散々申し上げておりますように今回は日銀の買入を過激に進めた結果として遂に短期国債市場において「投資家が排除された状態」になっている(いやまあマイナス金利で盛大に投資家に嵌っているのにアタクシだけ気が付いていないというのでしたら百万回土下座しますけど)訳でして、その状況というのは少なく申し上げても「国債市場の安定化」に反する状態になっている訳で、それは「金融の不均衡」というような「第二の柱」の観点からみて如何なものかという状況に立ち至っているのではないかと思うのですよね。

然るに現在の状況は日銀の機械的な短国買入によって完全に足元を見られてしまった状態になって、その結果短国がプライマリーからマイナスに突っ込むということになった訳で、明らかにこれ第二の柱的な観点も考えたら短国買入のやり方を工夫するなり他の買入に振り替えるなりして金融不均衡の拡大を抑止するように運営面で何とかするのかディレクティブをどうにかするのか知らんけど、このまま放置しておくと金融市場の安定化という文脈でドンドンおかしなことになってくるリスクが高まって来ると思うのですよね。

でまあ執行部隊の金融市場局だって、金融市場で起きている事態について調査してその結果どうなっているかという事を考えたらもう少しオペの工夫をするとか、MB積み上げの具体的な内訳について執行部に何らかの進言をするとか、そういう話になるだろと思うのですが、お前らそこらのコーヒーチェーンのアルバイト店員だってもっと色々と工夫して動いているぞとゆー話で、政策のバランスとか市場への目配りとかそういう物が全く感じられないで、上から降りてきたディレクティブを何の疑いも無く推進するだけの機関なのかよだからお前らは御(以下の部分は内務省検閲によって削除されました)。



○いやあ本日の10時10分が楽しみになって参りましたなあ(棒読み)

とまあそういう訳で、本日は定例の短国買入デーでございますが、まー本日に関しては昨日の新発3Mのうち確信犯(誤用)で投資家無視の突撃をしている人がおいでだったりしますでしょうし、この利回り水準でまともに投資家に売れているとも思えないので(アンダーパーでご売却される奇特な方でもおいでになっていれば別ですが)、まあ入札にいれる玉自体はあるでしょう(偏在しているかどうかは知らん)という所で。

でまあ偏在しているとちょっとたくさんオファーする訳にはいかないでしょうけれども、(投資家に売れていないという事を前提にした場合)まあ玉が全然ないということもないでしょう(先週までの新発は先ほど申し上げたようにプライマリー段階で投資家のポートに沈んでいるのが多いから買入の応札可能玉が偏在した格好になったと思料)とは思いますので、どうせ何も考えていない日銀ですので、普通に3兆とかオファーするんですかよく分かりませんけどねえという所なんでしょうかねえ。

なお、先週の短国買入がご案内の通りで札割れとなっていますので、そういう意味では予定量の買入が出来ていない、という事も勘案すると「先週の分を取り戻す!」とか言って更にオファーしてくるとか普通この入札結果を見てそんなアホウな事はあり得ないと思うのですが、何せ今の短国買入スタンスって普通じゃない(今の日銀ロジック的には普通なのでその乖離が問題なのだ)ので何をしでかすか判らん。

まあ短期国債市場が異常な状況になっている事を鑑みて買入を一旦止めて様子見をしましょうなどと言い出すと前項あたりで(いやまあその前から申し上げてますが)ついた悪態は取り消して平伏するところではありますが、そんなことして12月末の短国買入残高が積めなくなったら大変だ!という方が頭にあるでしょうし、まあ可哀想だからちょっと擁護すると、足元で買入残高をある程度積んでおかないと12月末までの期間が短くなった時に買入金額が増えてより酷いマイナスを買わないといけなくなってもっと足元見られる相場になって四半期末と相俟って大変な事になるリスクとか、下手したらMBを積めなくなる方がより大きな問題、ということでしょうから(本来は60-70兆円というアローワンスがあるのですし、そもそも相手があるのだから「いやあ札割れでしたねえああそれからあまり理不尽なレートでは私ら買わないですからそこんとこヨロシク」で済ませることは可能だと思うのですがそうはいかないのが今の黒田日銀クオリティ)、あまり期待しないで10時10分を待ちたいと思います。

なお、オファー額と応札限度額の関係がどうなるのかというのもこれまた見物かなと思いますが、いずれにせよこちとら玉状況がどうなっているかワカランチ会長ではありますので、その辺は短国買入のオファー内容から落札結果までをじっくり眺めながら推測したいと思います。


ということで、今朝は短国入札札割れネタが続きましたが、何となく一部の悪態が強かったような気がしないでも無い点、ご不快に思われた諸兄にはあくまでも市場の片隅でひっそり棲息する無力参加者の戯言につきこのような仕様だということでご寛恕頂きたく伏してお願い申し上げますm(__)m


まあ結局の所、為替介入のノリで国債等の買入を考えていて、市場機能とかマクロプルーデンスとか全然そういう発想が無い(としか思えない)シャチョーがいるのが大本部分にあるんですけどね!!!!!!!

トップに戻る


2014/10/22

○次の手が手詰まりな人たち(日本とかECBとか)

・ECBの施策が更に訳分からなくなりそうな件について

ふむ。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NDSB6J6S972M01.html
NY外為:ユーロ下落、ECBが刺激策拡大との観測−円上昇
更新日時: 2014/10/22 04:53 JST

『ユーロは主要16通貨の大半に対して値下がり。ECBが2日連続でカバード債を購入したほか、ECBが社債購入を検討しているとのロイター通信の報道が手掛かり。』(上記URLより)

・・・・・・・・・・うーん。

財政ファイナンスはしないけれども社債は購入できるとか、中央銀行の社債購入ってそれあなた中央銀行による財政出動なんですけど大丈夫ですかと思いますが、まあ信用緩和政策で自国の国債以外の資産直接購入するとそれは財政出動になるので既にカバードボンド買っているだけに同じっちゃあ同じなのですけれども、国債購入が出来ないし、預金ファシリティマイナスにしているからそもそも超過準備が必要以上には積み上がらない状態になっているし、まあヤケクソで何かするなら信用緩和しかないですけどねという所です。

まあそういう話になるのが見え見えだからこそ預金ファシリティをマイナスにしたのは明らかに悪手でしたし、出た時に滅茶苦茶ビックリしたのですけれども、今の状況を見るとドラギのおっちゃんにおかれましては「とりあえずあちこちから文句が出るので文句の出にくい施策から順に追加緩和として打ち込んでみる」というだけの事しか考えていなくて、もはや全体のデザインとか政策の整合性とか考えている余裕が皆無という状態になっているんでしょうなあというのが把握されてきたところでございます。

でまあそうなりますと、次の政策として何が出てくるのかというのが非常に読みにくいとしか申し上げようが無いですし、出た政策がどういう効果があるかとかいう話よりも「とにかく何でもいいから追加緩和ネタを出して時間を稼ぐ」というだけの話になってくるので、まあ読むとすれば「考えられる施策の中で反対が少なさそうなものは何か」というのを考えるという大変に不毛な作業をすることになりそうですねorzorzorz

まー結局の所ドイツが財政をせっせと出さない事にはどうしようも無いんでしょうけどね!!!


・日銀の追加緩和という話も良く聞かれるが何をするのか具体策を小一時間お伺いしたい

でまあ我らが日銀でありますが、連日(というかよく考えたらこの1月半ほど)の如く短国市場ネタを振っておりますが、日銀の場合は「マネタリーベース積み上げの物理的な限界」に達しているというのが政策枠組み的な問題の一番のネックでありますな。

何せ今の置物りふれ直線一気理論によりますとマネタリーベースを積み上げると定量的に効果が出てインフレ予想が(以下同文)となりますので、その直線一気理論に基づきまして現在の日銀の金融政策における操作変数はマネタリーベースになっている訳でありますよ。

でもって足元で起きている現象はそのマネタリーベースの拡大を直線一気で拡大するのが困難という話でありますので、そうなりますとECBとは別の意味(ECBの場合は適当に施策を突っ込んだら盛大な食い合わせが起きている状態)で追加政策の限界という話になってしまうのですな、うんうん。

つまり、日銀の場合問題になるのは、現在の政策枠組みの置物理論が「マネタリーベース拡大で予想インフレを下げてそれに伴う債券購入で(フィッシャー効果に伴う)名目金利の上昇を抑制することによって実質金利を下げたら全て上手く回りだす」という代物になっているので、ロジック構成の根本のところをガチガチに作ってあり、マネタリーベースの拡大が困難になると途端に予想インフレ率から先の部分の効果の話が使えなくなることであります。

もちろん世の中にある国債を新発どころか既発まで全部購入する(短国買入のように市場残高の3分の1を買うとかすればまだまだ何ぼでも積めまっせという位の認識でしょ黒田さんは)勢いで国債購入をすればMBは積み上がるかもしれませんが、それこそ短国買入の札割れみたいな話になるかも知れませんし、そもそも金利投資の世界が壊滅してしまう日銀による一種のクラウディングアウトが生じた場合に、他の所で色々と弊害が生じて(まあそれを一般的に副作用というのだが)そもそも論として金融政策のトランスミッションメカニズムたるトランスミッションが破壊されるのではないでしょうかという話ですよね。

・・・・・・で、ここで更にオソロシスなのは、何せ政策の枠組みがMB拡大であって、金融政策の操作変数がMBの量とガチガチに作り込んでいますので、方向転換がそう簡単に出来ない(方向転換したら今までの政策は何だったのかという話になるので置物副総裁辞任待ったなし)ですし、大体からして先日来出ておりますが、宮尾九官鳥審議委員様の大本営発表講演で見られました「都合の良い話は熱心にするが都合の悪い話には目を向けない」経済物価認識の説明やら、先日のさくらレポートでの「驚愕の声明文よりも強い日銀支店の報告書」というように総裁様のご意向に沿った報告が下からホイホイ上がるとか、どこの昭和陸海軍だよという素敵な状態で撤退の検討をするのは敗戦思想で非国民くらいの勢いになっておられますので(月末の展望レポートもそんな感じで出てきそうですが、ここでどういう出方をするのかは重要)、そうなりますと兵站(政策のフィージビリティー)も戦局(経済物価情勢)も気にせずに牛を連れてジンギスカン戦法とか言いながらアラカン山脈をインパールに進攻する牟田口中将の巻となりますので、まあ普通に12月以降も今の政策をそのままリニアに継続とか言い出しそうではありますな。

まあさすがに現実問題として兵站が爆発している短国の所に関しては現状維持程度に留めてとなるとは思うのですが、MB拡大に意味があるという建付になっているので、短期増やせない分は長期国債を増やす(今のプロラタで拡大しそうだが新規発行の年限とのズレが拡大しているのでそこは微妙)という話でしょうし、まあその時についでにETFの買入ペースをちょっと上げる位のおまけサービスがあるかも知れませんね程度しか予想ができませんな。


まあそもそも論としてはこれだけのペースでMB拡大しておいて、確かにまあデフレ状態では無くなったのは効果だとは思います(MBそのものが効果があったのかどうかは謎だが)が、そこから先の2%への部分は全然達成の目処がつかないという状態なのですから、そろそろMBから他の枠組みにシフトして頂きたい訳なのですけれども、今の黒田体制って元々が白川ドクトリンの強烈な全否定状態から入っている(白川さんや山口さんを石持て追い出した訳ですからねえ)ので、今さら引くに引けないという意識が強いんだろうなあとは思われる訳で、どうも「枠組みが変わったら死んじゃう」位の感じで「MB270兆円で行かないなら350兆円にすれば良いじゃないか」と来るというのに100団扇という所ですな。

ただしディレクティブにおける内訳変更は行うにしても、さすがに年末目標値は出さないと思われます。理由は途中で今回のように限界に達した時に手の施しようが無くなるのと、そもそも「2015年度中に2%に到達」と言っているんだから2015年末まで資産買入拡大を継続する必要があるかどうかは不明だし、最初の時点で2015年末までの数値を出すと「何だ年末になるまで目標達成できないのか」という話になり置物師匠の首が更に危なくなるから(そもそも2年で達成と大口叩いたのだから今度の展望レポートで2年での達成の絵が描けない時点で退任しろとは思うが)という所かと思います。

とまあうだうだ書きましたが、要するに本命はこのままダラダラ引っ張って12月か1月辺りの声明文でしらっと買入の構成をいじってくるだけで「MB拡大年間60-70兆円」というのはそのまま継続する、という事だと思いますし、そうなると長期国債買入拡大ヒャッハーで需給があばばばばー(長期金利は需給だけで決まる訳ではないので実際の金利がどうなるかは知らん)方向という話になるんでしょ、よー知らんけどな。

トップに戻る



2014/10/21

○さくらレポートの基調判断が強めの件について

展望レポートを前に支店長会議が開催されましてね。

総裁の挨拶(のうち原稿部分)
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/siten1410.htm/

もうコピペですなという感じですが。

『(3)わが国の金融システムは、安定性を維持している。そうしたもとで、金融環境は、緩和した状態にある。
(4)「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う。』

ということで、金融システムに関しては先週金融システムレポートが出ていてまだネタにしていなくてすいませんすいませんという感じですが、QQEについても所期の効果を発揮云々といういつもの話でありまして、とりあえず黒田総裁におかれましては金融システムの安定的なマクプル話とか、短国市場が壊滅している市場機能がどうのこうの話とか、そういう話には1ミリも興味をもっていない(そもそも黒田さんは財務省時代に理財畑は殆ど踏んでいないので国債流通市場とかに関する理解が全然無いはず)ので、国債流通市場が壊滅すると実は金融システムに対しても一部負荷が掛かってくるんですよねえとかそんな事全然考えないでしょという所ではあります。

話が逸れましたがさくらレポート。

http://www.boj.or.jp/research/brp/rer/rer141020.htm/(概要)
http://www.boj.or.jp/research/brp/rer/data/rer141020.pdf(本文、重いので注意)

つーことで概要の方から少々。

・展望レポートの中長期見通し下方修正は無いということですねわかります

『I. 地域からみた景気情勢』から。

『各地の景気情勢を前回(14年7月)と比較すると、東北から、回復テンポが緩やかになっているとして判断を引き下げる報告があったものの、残り8地域では、景気の改善度合いに関する基調的な判断に変化はないとしている。』

ほっほー!!!

『各地域からの報告をみると、東北を含め全地域で、基調的には、「回復を続けている」、「緩やかに回復している」等としている。この背景として、生産面において一部に弱めの動きがみられるものの、国内需要が堅調に推移し、雇用・所得環境が着実に改善していることが挙げられている。この間、個人消費については、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響は、ばらつきを伴いつつも全体として和らいできている等の報告があった。』

ということでどう見ても強気です本当にありがとうございましたという所ですし、個人消費に関しての先行きが上記のように強めになっている辺りを見ますと、まあこれはどこをどう見ても展望レポートでの先行きシナリオには変更が加えられない(足元の数値を受けた修正はあってもそれは単なる修正で済ませる)というのが想定されるというか各取り纏め店の方で忖度いや何でもないです。

なお7月さくらレポートの当該部分を引用してみましょう。

『各地域からは、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動がみられているものの、基調的には、「回復を続けている」、「緩やかに回復している」等の報告があった。この背景としては、国内需要が堅調に推移し、生産が緩やかな増加基調を続ける中で、雇用・所得環境も改善していることが挙げられている。』(7月さくらレポート概要より)

となっていまして、大体まあ文章量が長くなる=いいわけ文言の増加=判断が怪しくなっている=そのうち下方修正待ったなし!!という話ではあるのですけれども、まあその日銀文学鑑賞面からみた話は兎も角としまして、「生産に弱めの動き」というのを入れながら「消費が持ち直し」という表現を打ち込むことによって相殺するというお得意の作戦を使っておりまして、これは今月の展望レポートではヘッジクローズが長くなる見苦しい文書になるものの、結局の所見通しは変えませんよと言ってるようなもんでしょうなあ。

・・・・・ただし子細に見ると微妙な部分もある、というのが以下のお話ですけど、まあ総括的な基調判断がこのような代物ですので強いという話になるんでしょうね。


・消費税増税の反動に関連して総括表現を鑑賞

北海道

『基調的には緩やかに回復している。この間、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動は、和らいできている』(10月)
『消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動が一部にみられているが、基調的には緩やかに回復している』(7月)

前回は駆け込みの反動が「一部に」見られていた筈なのに何故かその反動がまだ続いているですかそうですか(棒読み)。

東北

『消費税率引き上げの影響による反動がみられるものの、基調的には緩やかに回復している』(10月)
『消費税率引き上げの影響による反動がみられるものの、基調的には回復を続けている』(7月)

東北は前回の時点でも消費税増税の反動に関して直球で指摘していた唯一の地域でして、今回下方修正したのもまあその流れから考えますとフラットな指摘なんでしょうな、うんうん。

北陸

『消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかに回復している』(10月)
『消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかに回復している』(7月)

全文一致キタコレなのですが、駆け込み需要の反動の影響が続いているじゃんという気がするのですがががが。

関東甲信越

『消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動などの影響から生産面を中心に弱めの動きがみられているが、基調的には緩やかな回復を続けている』(10月)
『消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動がみられているが、基調的には緩やかな回復を続けている』(7月)

ヘッジクローズキタコレですかそうですか(^^)。

東海

『基調としては回復を続けており、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響も、幾分ばらつきを伴いつつ全体として和らいできている』(10月)
『足もと消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動もみられているが、基調としては回復を続けている』(7月)

東海は堂々駆け込み反動が和らぐという表現が入っていますね!


近畿

『消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動がみられているが、基調としては緩やかに回復している』(10月)
『消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動がみられているが、基調としては緩やかに回復している』(7月)

おやこちらも全文一致。


中国

『生産面で幾分増勢の鈍化がみられるものの、基調としては緩やかに回復している。この間、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響は全体として和らぎつつある』(10月)
『消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動がみられているものの、基調としては緩やかに回復している』(7月)

こちらも駆け込み反動の緩和という話をしているのですが、東海は「和らいできている(キリッ)」という感じなのですが中国については「和らぎつつある」と微妙にヘッジの入った文言(そもそもその前にどちらも「全体として」という盛大なヘッジ文言が入っていますが)ですな。


四国

『消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動などがみられているが、基調的には緩やかな回復を続けている』(10月)
『消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動がみられているが、基調的には緩やかな回復を続けている』(7月)

趣味の日銀文学鑑賞苦節(嘘)10ウン年のアタクシ歓喜の文言変更でありまして、この「など」というのが曲者であるというのは日銀文学鑑賞の基本中の基本でありまして、駆け込み需要の反動というのは基本的にこれは弱い話でありまして、その弱い部分に「など」という万能ヘッジワードが入ってきた訳で、質問をできるのであれば「ここに入った”など”というのには何が含まれているのでしょうか」と聞くのが基本であります。

ということは四国は実質的には現状判断下げてますな。


九州・沖縄

『基調的には緩やかに回復している。この間、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動減は、徐々に和らいできている』(10月)
『消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動減がみられているものの、基調的には緩やかに回復している』(7月)

徐々にという表現ではありますが、反動減の緩和については東海並みに普通に強い説明していますな。

・・・・・・・ということで、まあ判断が総じてみると横ばいなのですけれども、各地域の報告部分を個別に展開していくと、最初の所にあった説明文言にあるほど消費増税の駆け込み反動って緩和されてきているのか????という感じはせんでも無い。


・需要項目別に関しては時間が無いので(こら)設備投資と消費だけ

『設備投資は、北海道、東海から、「一段と増加している」、4地域(東北、北陸、関東甲信越、近畿)から、「増加している」等、3地域(中国、四国、九州・沖縄)から、「持ち直している」等の報告があった。この間、企業の業況感については、「底堅く推移している」、「製造業・非製造業とも横ばい圏内で推移している」等の報告があった。』

前回ですけどね。

『設備投資は、北海道、東海から、「一段と増加している」、4地域(東北、北陸、関東甲信越、近畿)から、「増加している」等、3地域(中国、四国、九州・沖縄)から、「持ち直している」等の報告があった。この間、企業の業況感については、「非製造業を中心に悪化した」、「底堅く推移している」等の報告があった。』(7月さくらレポート概要から)

設備投資の判断は前回は上がったのですが、今回は基本的に横ばいで、一方業況感に関しては短観の現状判断DIを反映して改善という感じになっていますな。

『個人消費は、雇用・所得環境が改善していること等を背景に、北海道から、「回復している」、4地域(北陸、東海、四国、九州・沖縄)から、「基調として緩やかに持ち直している」等の報告があったほか、4地域(東北、関東甲信越、近畿、中国)から、「基調的に底堅く推移している」等の報告があった。この間、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響については、複数の地域から、ばらつきを伴いつつも、「全体として和らいできている」等の報告があった。』

前回はこの通り。

『個人消費は、雇用・所得環境が改善していること等を背景に、北海道から、「緩やかに回復している」、4地域(北陸、東海、四国、九州・沖縄)から、「緩やかに持ち直している」、「持ち直している」等の報告があったほか、4地域(東北、関東甲信越、近畿、中国)から、「底堅く推移している」等の報告があった。この間、多くの地域から、耐久消費財(乗用車、家電等)や一部の高額品を中心に、「消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動がみられている」等の報告があったほか、「反動減が縮小してきている」等の報告もあった。』(7月さくらレポート概要から)

何か現状判断の総括部分的には駆け込み需要の反動が和らいでいるという話になっていた筈なのですけれども、良く良くここ見ますと「基調的には」というヘッジ文言が乱発されているようになっていて本当にこれ強いのかよという感じですな、うんうん。


・地域の視点は観光ですかそうですか

『II.地域の視点』のお題は今回『各地域における観光振興に向けた取り組みと地域経済への影響 ― 成長産業としての期待の高まりと観光需要の創出・獲得等に向けた取り組み ―』というブツになっておりまして・・・・・・・・・・

『1.各地域の観光需要の動向』

『各地域における最近の観光需要の動向をみると、大方を占める国内観光客が堅調に推移する中で、外国人観光客が大幅な増加を続けているため、全体としては緩やかながら着実に増加している。すなわち、国内観光客は、ガソリン価格の上昇、ETC割引率の縮小、天候不順等に伴い、夏場にかけて幾分弱めの動きとなったとの声も聞かれているが、基調としては、景気回復や雇用・所得環境の改善等から、堅調に推移しているとの声が多い。』

ほうほう。

『この間、消費税率引き上げに伴う影響は特段うかがわれないとの声が相応に聞かれている。』

そらそうよ。

『また、外国人観光客は、為替円安、ビザ発給要件の緩和に加え、アジアにおける中間所得者層の拡大、交通インフラの整備・拡充(空港発着枠拡大、定期便就航・LCC増便、港湾整備等)等を背景に大幅な増加が続いており、観光客全体に占める割合も徐々に高まっているとの声が少なくない。』

円安キタコレ!

『もっとも、そうした中にあって、東日本大震災で被害を受けた地域の一部や、他の地域との差別化が進んでいない観光地等では、依然として厳しい状況が続いているとの声が聞かれており、地域によって観光需要の獲得に差が生じている面が見受けられる。』

まあどこもかしこもという訳にはいかんでしょうな。

でまあその次の『2.最近の観光需要の特徴等』ですけど、国内の方が味わいが。

『国内観光客は、アクティブシニアの需要が引き続き旺盛なうえ、雇用・所得環境の改善等から、このところファミリー層や若年層の観光需要も回復傾向にあるとの声が多い。』

なるほど高齢者の消費に依存ですかそうですか。

『また、一部地域では、企業業績の改善等を背景に法人需要が増加しているとの指摘も聞かれる。こうしたもとで、名所旧跡見物等の従来型観光に加え、地元の自然や伝統文化・産業等を体験したり、スポーツやアニメ関連のイベント等への参加を目的とする体験型・交流型観光を志向する観光客が増加しているとの声が多く聞かれている。この間、観光客の消費行動に関しては、シニア層を中心に価格が高めであっても良質なサービスを求める傾向が強まっているとの声が少なくない一方、交通費等を抑制し、その分、飲食、アクティビティなど旅行の主目的への支出を重視するメリハリ消費が広がっているとの声も聞かれている。』

つーことで、まあ一方的に観光でヒャッハーという訳でも無さそうですなという所です。詳しくは本文を読みますと色々と面白いのですが時間と量の都合上単に備忘代わりに引用だけしておきました。

トップに戻る



2014/10/20

○短国買入やや予想外に札割れで短期市場や債券市場が酷い事になったの巻

しかしまあ金曜は上記のちょっと人間としての神経を疑う人のインタビュー記事があるかと思えば何と言ってもこれですよこれ。

えーっとですね、金曜の朝に駄文で申し上げましたが、木曜の3M短国ってまあ入札は激強でついに100円未満での応札する札の一番高いお値段で按分5割という入札になってしまい、市場推計の不明玉が3兆からあったのですけれども、それはそれとしてもGCレートとかは上昇していたし、そもそも1年と3Mで合計8.2兆円のオペ対象新発が出ているからまあ普通にオペは3.5兆円継続ですかねえとか思っていた訳ですな。

そうしたら短国買入が3兆円でオファー。

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of141017.htm
国庫短期証券買入 30,000 2014年10月21日
(国債補完供給は引用割愛)

まあ何ですな、水曜に財務省から在り方懇に向けて国債市場の流動性対策ということでプライマリーディーラー対象に国債応札制限の強化(要はPDは市場流動性を供給する責務があるから買い占めとかするんじゃねえヴォケという話)なども含めて色々なネタが打ち込まれましたので、ほうほうそうですか日銀もちったあ気を使って減額してきましたかそうですかなどと思っていたら(実際に若干引け甘の出合が業者間ではあったようだが引け甘と言ってもマイナス利回り)結果が何とビックリの内容。

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba141017.htm
国庫短期証券買入 26,220 26,220 -0.097 -0.005

・・・・・(;゚д゚)
・・・・・(;゚д゚)
・・・・・(;゚д゚)

先週の短国買入5兆から札があったのに何で今回2.6兆円しかないのやらという話ではあるのですけれども、どうも昨今の入札で盛大に不明玉があって、マイナス金利買えない人たちがプギャーとなる中で日銀短国買入攻撃に向けた在庫が一部の所に非常に偏在しまくっていて、玉はあれども超偏在しているのでGCレートとかは在庫ファイナンスの都合上上昇するのだが、偏在の影響で玉が出てこない(そもそもマイナスの利回りだと普通の最終投資家は買えない)状態になっているが、最終的に日銀がバキューム市場破壊オペをするので値持ちだけはしてしまう、という事になった結果としまして、玉が超偏在しているので、ロットで応札した人がうっかりしたら1名しかいませんでした(なおその時によって1社当たりの応札限度額は異なるのですが、基本的に買入系のオペで1社全部応札可能という形にはしないのが仕様)という事で、結果として札割れになるわ、全取レートが前日比マイナス9.7bpってありますが、これは要するに売買参考統計値単利(が基準利回り)がマイナス0.3bpの銘柄について(応札の呼び値は出来上がりレートなので)入れるような札が碌に無い人がギャグでマイナス0.1%とかで応札したら見事に全取に掛かって入ってしまったという結果になったのでしょうな、としか申し上げようがない状態。

しかしまあこの結果が出たのが5年入札の応札締切前(いつもだと11時40分のオファーバックだけど若干遅れていたような希ガス)でナンジャソラ状態になって、債券市場は後場から上昇の巻となるのでありました。

でまあこれはつまり短国市場において日銀買入に応じるほどの在庫を持っている人が殆どいないというかこの時点で1名しかいないという状態になっていた、という事が示されましたので、持っている人以外誰も売りが無くて結局金利がホイホイと下がって、短国はすかさずマイナス3bpがビットとかになったとか思ったらその後カレントがマイナス5bpだのマイナス7bpだのとなって多分最後はベンダーによるとマイナス9bpとかになっていたと思われます。

というかロイターさんのこちらの記事なんぞをご参照ください。
http://jp.reuters.com/article/treasuryNews/idJPL3N0SC2IP20141017
〔金利マーケットアイ〕翌日物0.056─0.057%中心、国庫証券利回り大幅低下
2014年 10月 17日 15:29 JST

『<15:25> 翌日物0.056─0.057%中心、国庫証券利回り大幅低下

無担保コール翌日物は0.056─0.057%中心での取引。主な取り手は地銀、信託、証券で、大手行は0.055─0.056で一部調達した。取引金利は前日と大きな変化はないが、週末要因が意識されてたことから調達意欲は若干強めとなった。レポ(現金担保付債券貸借取引)GCT+1レート(平均)は発行要因で上昇。日銀が17日実施した国庫短期証券の買い入れで、応札額が買い入れ予定額に届かず、札割れが生じた。同オペの札割れは、資産買入等基金を通じて買い入れを行っていた2012年5月以来、2年5カ月ぶり。新発3カ月・6カ月国庫短期証券が業者間取引で過去最低利回りとなった。3カ月物(488回)がマイナス0.090%、6カ月物(484回)がマイナス0.050%となった。需給が極端にひっ迫していることを反映したレート推移になった。ユーロ円3カ月金利先物は小動き。』

『<15:15> 国債先物は大幅反発、2年債利回り0.005%と過去最低水準

長期国債先物は大幅反発。前日の海外市場でリスク回避ムードがいったん和らいだが、東京市場では日経平均株価が大幅に軟化したため、日中取引の最高値を更新した。現物債は中期ゾーンの利回り低下が目立った。需給がひっ迫する国庫短期証券の利回りが恒常的にマイナス金利となる中、金利比較から少しでも利回りが乗っている中期ゾーンに銀行勢などの余剰資金が流れ込んだ。2年債利回りは0.005%と過去最低水準に低下した。きょう実施された5年利付国債入札が強く、中期ゾーンの利回り低下に影響した。長いゾーンもしっかり。長期国債先物中心限月12月限の大引けは、前営業日比21銭高の146円45銭。10年最長期国債利回り(長期金利)は同1.5bp低下の0.470%。』(以上上記URLより)


・・・・・・・ということで、3M新発はマイナス9bpというのも酷い話なのですが、2年新発が0.5bp(桁間違いではない)となっている方もたいがいに酷い話で、短国買入に引っ張られて煽りが入った分はあるにせよ、何ですかその利回りはという所で、短期から2年位までのゾーンの国債市場が無茶苦茶な事になってしまいましたということで。


そういや先月は最初のマイナス金利短国買入があったのではないか(実際は微妙だったが翌日の日経などではマイナス金利と来ましたな)となって、その後期末要因もあって玉が逼迫する中でカレント3銘柄の引けがマイナスの中で玉が極端に無くて、どう見ても玉が偏在していてまともに応札できる人がうっかりすると1名しか居ないのではないかという状況となっていたのが9月12日でしたが、この時に意地になって(かどうか知らんが)無理繰り2500億円の短国買入でマイナス金利の買入をする気満々という入札をしたというのがありました。

まあこの時も足切りは流れて9糸強とかになって、このオペの結果「日銀はマイナス金利でも何でもとにかく買入をします宣言」という風に解釈され(まあそう解釈するわな)すっかり短国のマイナス金利状態が続いた訳ですが、この時は一応期末要因というのもあったからねえとか思っていた訳ですが、ご案内の通り期末要因が残っている中で「応札が3.9兆円しかないのに短国買入のオファーを過去最大の3.5兆円実施する」という市場機能丸無視買入を今月の頭から実施して短国金利のマイナスが全然解消しないままで推移する中で遂に札割れという間抜けプレイに相成った次第で、日銀の短国および国債市場破壊行為ここに極まれりという所でございまして、水曜に国債市場の流動性維持の施策を提案していた財務省理財局も血圧を盛大に上昇させているでしょうと思うのでありまする。


まあしかし何と申しますか、オペ打つ方もヒアリングとかしてる筈で、市場の玉が偏在しているのは把握している筈だと思うのですが、その結果札割れオペを打つとかアホというか間抜けというか無能というかなのですが、大体日銀というのはチョンボがあっても言い逃れが可能な場合はチョンボと言わないで却ってそれを取り繕いに来るというのがヲチャーから見ますと仕様になっております(金融政策決定においても同様、というかそちらの方が著名ですかそうですか)ので、「相手が市場だから札割れもあり得る」とか「マイナス金利での買入をして市場金利が低下するのは金融政策効果の浸透である」とか、まあそんな話が出てきて更に燃料を投下するのが得意技という所かと存じますので益々複雑骨折振りが拡大するんでしょうなあと存じます次第。

いやね、そこまで市場をシッチャカメッチャカにしたとしても、この政策の最終盤の思いっきり最後の所なのでこういう事もあるけれども、政策効果が覿面に出てきてその結果として政策は終了するので、このシッチャカメッチャカは最後の最後の花火みたいなもんだというのであれば、そらまあ一時的にそういう事になったとしても生みの苦しみみたいなもんで我慢しましょという話になると思うのですが、そもそも来年の政策をどう継続するのかというのが話題になるような状況であり、そもそも論として最初に適当に勢いだけで提唱した「2倍」理論が正当であったのかという点が全くもって疑問としか申し上げようが無いという中で、その「2倍」達成の為という極めて合理的根拠のない目標の為にのみ行われている資産馬鹿買入政策しかも出口見えずという状態だというのが金利市場参加者的に絶望した!!となる話でありますが、どこからどう考えてもこの辺の市場機能云々という観点が今の執行部に皆無と思われる所が更に絶望を呼ぶわけですよね。


まあしかし何ですな、9月の時点で「マイナス金利でも何でも買う」し「市場の流動玉が無くても兎に角札が有ればそれは買う」というのを見せてしまって、マイナスで買う日銀短国買入があるから別に最終投資家の買うレベルの金利を叩き売らなくても良いじゃんという認識を広めた上に、「年末の目標積み上げの為に前倒しでどんどん積む」という姿勢を10月の頭から見せるというようなオペの打ち方がもう何ちゅうかよく言えば真正直なのだが対市場という意味では足元を見られるだけな訳で、もっと運営を工夫しないと目標残高積むのにとんでもないマイナス金利を掴まされる結果になるでしょうし、逆に目標行ったらそこで買入フローが落ちるのでしょうから逆の現象が発生して市場に無駄なボラを発生させる(というか既に2年の金利とかにとんでもないボラを発生させているが)事になるということで、何か昨年のQQE導入直後の国債買入を巡るボラ拡大(背景にあるストック効果などが違うから単純に合わせ絵には出来ないけれども)を思い出してしまうような動きではあります。

つーかまあこれで「MB拡大70兆円を国債50兆円その他20兆円」という「その他」の方がどう見てもこれ以上サステイナブルではない(年末は何とかなるとは思うのだが)のが明らかで、そもそも「その他短期オペ」ったって貸出支援にしろ共通担保オペにしろ担保が必要なのですから、短国買入も増やせないでしょうが、担保余力の問題からも短期のオペ残積み上げって物理的に無理が来ていると思われますが、一体全体どうする積りなんでしょうか日銀は・・・・・・と思うのですが、何せこの辺の問題って審議委員の中でも分かっていそうなのが石田さん(銀行の資金証券にいたから恐らく一番理解している筈)と佐藤さん、木内さんくらい(中曽さんは分かっているとは思うのだが執行部なので・・・・・・)でして、ここは一丁石田審議委員の大暴れに期待したいと思いますというかお願いします暴れて下さい(平伏)。

もしMB年間60〜70兆円に意味がある、というのであれば「長期国債60〜70兆円」とかにするしかないのですが、そもそも論としてそのMBに意味があるのかという事も考えて頂きたい所なのですが置物のクビを飛ばさないと置物理論を捨てられないから「MB拡大すると期待インフレ率が上昇して実質金利が低下するから全てハッピー」というハッピーなのは提唱している人の頭の中なのではないかという理論が継続して国債の買入が増えるというオソロシスな話になってしまうんでしょうなあナムナムナム。

#最近の円債サガランチ会長中短期ド堅調にはその思惑成分があるものと想像しますがどうでしょうかねえ

トップに戻る

2014/10/16

○1年短国入札が相変わらずである件

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20141015.htm

(3)募入最低価格 99円99銭8厘 (募入最高利回り)(0.0020%)
(4)募入最低価格における案分比率 22.7237%
(5)募入平均価格 99円99銭9厘 (募入平均利回り)(0.0010%)

えーっとですね、昨日の1年短国では前場引け辺りにどこぞのベンダーが足切り0.5bp位になりそうですねという観測記事を出していましたが、まあ前場引けに掛けて0.5bpよりはちょっと甘い水準、と言っても1bp割れの水準の気配だった訳ですが、入札の結果は上記のとおりで水準は100円カツカツのレベルになって、思いっきり強い所に札が入って上で切られましたなあという結果になりまして、早速マイナス金利突入して引けはマイナス0.6bpという毎度おなじみの結果となっておりまして、ああそうですね日銀オペですかそうですかという所であります。でまあ上で切られてしまった影響ではないかと思われますけれども、市場推計の落札分布はかなーり偏った結果になっているっぽい(市場推計なので実際は判らんけど)状況で、これは日銀短国買入打ち込み待ったなしで市場に流動玉が出ないわという格好になった訳ですが・・・・・・・・・・・


○財務省理財局怒りの鉄拳(かどうか知らんが)キタコレ!!!!!

でまあそんな入札結果が出て毎度のクオリティにどよーんとする中でこんなヘッドラインが。

http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS15H0B_V11C14A0MM0000/
国債の大量買い防止 財務省検討、発行の半分までに
2014/10/15 13:12 情報元 日本経済新聞  

『財務省は国債入札に上限制を設ける検討に入った。1回の入札で証券会社や銀行が応募できる金額を発行予定額の2分の1に制限する案が有力で、2015年度にも実施する。一部の金融機関に落札が集中するのを防ぐ。市場での売買を活発にし、価格の透明性を高める狙いもある。』(上記URLより)

・・・・・・・・いやあなるほどこの手があったかと思いっ切り「おー」と思ってしまう攻撃でありまして、財務省理財局マジ有能としか申し上げようがありません。まあ2015年度と言わずに今日の入札から実施して頂きたい所ではありますが(^^)、日銀オペ狙いで市場で流通しないレート水準まで強くなってしまって結果市場がハカイダー状態になっているという事案が期末要因だけならまだしも期末要因剥落しているのに絶賛継続中の短期国債市場に対して財務省理財局怒りの鉄拳キタコレという所で、まあ実に良い注意喚起ということですかよく判りません(^^)。

短国入札もそうですが、流動性供給入札みたいに1回の発行額が小さい時に前場引けよりも思いっ切り上の方で切るプレイとかも時々出ていたりしますし、その辺も勘案しているのではという気もしますが、目先的な一番のメッセージは短国金利のマイナス定着状態であるかと存じますので今日の3M入札に影響するかというとまあそれはしないと思いますけど(^^)。

つーかですね、これって日銀の短国買入の実施方法があまりにも無造作かつ乱暴で、市場機能の維持という面に関しての思慮が足りないですよという理財局のメッセージでもあると思うのは読み過ぎかも知れませんけれども、そもそも論として言えば、発行サイドからしてみたら応札制限なんぞ設けるとそれだけ札が分散するので入札価格が安くなる可能性が出てくるのですが、それよりも大量買いプレイによって市場機能が低下した場合、それが長期化してくると市場参加者の減少などのような弊害が発生し、中長期的に見た場合の国債安定消化に対して弊害であるという認識を持っているから、こういう「応札制限」みたいな話になってくる訳でありまして、目先のMB積み上げと残高をリニアに拡大していくという庭先も庭先で超庭先な事を視野狭窄で考えてアホウのように短国買入をオファー実施しつづける日銀金融市場局との格の違いというのが良く判るというものでありますが、市場局様の所感をお伺いしたい物ではありますなという所でございます。

#なお念の為繰り返しますが直上の段落部分に関してはあたくしの想像ベースの代物ですのででよろしくお願いします

ま、将来的にはまた応札制限戻すというのも有りかもしれませんし、まあそんなに予算年度に拘って実施時期をいじる必要も無いようにも思えます(ただしいきなり黙って変えられると困るので事前告知は必要でしょうが)ので、ある程度機動的に対処した方が良いのかもしれません。極端に言えば日銀がバランスシート縮小とか始めた時には応札限度額を外した方が良さそうに思えますし・・・・・・・・・・


○ということで在り方懇

でまあその在り方懇の資料はこちら。

http://www.mof.go.jp/about_mof/councils/gov_debt_management/proceedings/index.html

でまあ直近のはこの辺にありますけどね。

http://www.mof.go.jp/about_mof/councils/gov_debt_management/proceedings/material/d20141015-3-2.pdf
今後の主な検討課題(案)

・国債市場流動性確保の為に応札制限という文句のつけようがない正論キタコレ

『主な検討課題』が色々とありますが、上記の件については

『○ 国債市場の流動性の維持・向上
・流動性供給入札の増額
・10 年債リオープン範囲の拡大
・1 社あたりの応札額の上限設定及び応札義務率引上げ』

という所になっていまして、『報告書等での指摘内容』としては

『○ 日本銀行が市中で大量の国債を買い入れている現状の下、流動性を含めた国債市場の状況の把握・分析を一層強化し、状況の変化に対し柔軟に対応していく必要がある。(報告書)

○ 今後とも、流動性の維持・向上の観点から、海外主要国と比べて銘柄数が多いという日本の国債市場の現状を踏まえ、中長期的にリオープン方式の適用範囲の拡大に取り組む必要がある。(報告書)

○ アメリカは1 社当たりの応札額に制限を設けているが、このような措置も流動性に寄与する。(委員発言)』

となっています。確かに現在の日銀大量買入れ攻撃のせいで色々とエライコッチャになっているのですけれども、暫く前に導入されていたリオープン制度の変更が無かったら中長期国債市場での流動性は更に悲惨な事になっていたに違いないですよねとか思いますと、やはり理財局マジ有能と言う所なのですが、流動性維持の観点からの応札制限という理屈はまあ仰せのとおりで、そもそもいわゆるプライマリーディーラー(国債市場特別参加者)というのは制度の建付けからして「国債流通市場への流動性供給」という責務を課されている訳でありまして、国債入札大量購入して日銀国債(や短国)買入にスルーで打ち込みだぜヒャッハーというのは、まあ節度を持ってやって頂きたく存じます次第で、ヒャッハーのおイタが過ぎて市場流動性皆無となるのであれば何のためのプライマリーディーラー制度ですかという、制度設計の趣旨というそもそも論に帰着する訳ですから、こういう話が出てくるというのは実にぐうの音もでない筋論でもあったりするのですな、うんうん。


・発行年限長期化の件

でまあ債券市場的に気になるのはその上段にある話。

『○ 国債の平均償還年限の長期化

・超長期債(30 年債、40 年債)の増額、中短期債(5年債、2年債、割引短期国債)の減額等による平均償還年限の長期化』

まあ発行年限長期化自体はいつもの話ですし、方向性がそうなのは本来のべき論的にもそうですし、市場もその方向性は理解していると思うのですが、今回は超長期という所に思いっきり「30年40年」と来まして、20年という文言が入っていないのがチャーミング。

『○ (償還年限の)決定に当たっては、国債市場特別参加者会合や国債投資家懇談会の場における市場との対話を通じ、透明性・予見可能性を確保しつつ、市場のニーズを踏まえて行うべきである。したがって、市場参加者の意見を踏まえた柔軟な決定を行う中で、単年度の国債発行計画における年限構成の長期化には必ずしもとらわれず、ストック・ベースでの償還年限の長期化を行っていくことが重要である。(報告書)

○ 今後、償還年限の長期化を行うに当たっては、超長期ゾーンの増発のほか、リーマン・ショック後に増発してきた短期ゾーンの発行の減額又は中・長期ゾーンへの振替など、様々な組合せを工夫しながら進めていく必要がある。(報告書)』

ストックベースの長期化という事を考えると実は中途半端な中期の発行は減らして短期と超長期を増やすと(それをすると短期の借り換えの問題があるのでそれが良いのかはわからんけど)短期が償還した時に機動的に対応できるような気もしますが、この辺に関しては色々と発行当局が考えているんでしょうなとは思いますが、いずれにしても「30年40年」の増発待ったなしというのだけは把握しました。20年の発行も増えているので20増発するよりも30と40だろとはある程度織り込まれていたとは思いますがどうなんでしょうかね。いずれにせよ目先の発行額は同じですけど。


・資料4に味わいがある

http://www.mof.go.jp/about_mof/councils/gov_debt_management/proceedings/material/d20141015-4.pdf
国債管理政策の当面の課題

今回の在り方懇資料の中では上記URLにある資料4の『国債管理政策の当面の課題』というプレゼン資料に味わいがあります。

でまあプレゼン資料なので一々貼りつけとか出来ませんのでページだけご紹介しますけど・・・・・・・

本文9ページ(PDFファイルの10ページ、以下同様に本文ページと1ページずれています9

・日本国債の平均償還年限
→まあご案内の数値ではありますが、こうやってビジュアルで出されると方向性が良く判るというものです

本文14ページ

・国債及び国庫短期証券(T-Bill)の所有者別内訳の変化(25年3月末→26年3月末)

○国債発行残高は増加+28.7兆円
○日本銀行の保有額は増加+73.2兆円
○銀行等の保有額は減少▲48.4兆円※生損保等の保有額はほぼ横ばい+2.1兆円

→3月末でこれですからねえ・・・・・・・・・・・

本文16ページ

・長期金利の推移(平成25年4月〜)

→途中に日銀の動きを入れているのが実に味わいがあるというものです(^^)


しかしまあ何ですな、統合政府という枠組みで見た場合、発行サイドがせっせと発行年限を長期化している訳ですが、その一方で日銀が国債買入によって長期化して出てきたベースの国債を盛大に短期化している訳でして、実際には(フローはともかく)ストックベースの国債発行平均年限については日銀保有分を控除したものがどうなっているのか(まあ自分でも計算できそうですが)というのも見たい気はしますなという所で(財務省は当然計算しているでしょうけど)。

日銀が買入をしている場合でもリファイナンスの観点では長期化している意味がありますが、統合政府の金利リスクコントロールという意味ではまた別の話になってしまいますので、ここをそもそもどういう観点で考えているのかという辺りも(双方の意味合いがあるし、金融政策で必要な措置についてはそれは日銀があんじょうようやってくれるでしょうから発行サイドだけの都合の話をする訳ではない、という模範解答が帰ってくるんでしょうが)お伺いしたいものだという所です。

トップに戻る




2014/10/14

○それに関連してアンケートにも悪態の火の粉が飛ぶのである

金曜にこんなの出てましたけどね。

http://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2014/ron141010a.htm/
わが国短期金融市場の動向
――東京短期金融市場サーベイ(14/8月)の結果――

サーベイ結果および解説の全文はこちら。
http://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2014/data/ron141010a.pdf

ではありますが、まあ纏めのHTMLの方から簡単に悪態を。

『東京短期金融市場サーベイの概観』

ってえことで、最初に『はじめに』ってのがあるんですけどね。

『日本銀行金融市場局は2008年以降、わが国短期金融市場の取引動向などを把握するため、「東京短期金融市場サーベイ」を実施している。このサーベイは当初は隔年で実施していたが、市場動向をより的確にフォローする観点から、昨年より毎年実施することとしており、本年8月、第5回目となる調査を実施した。』

ほうほうそれでそれで???

『このサーベイは、従来同様、日本銀行のオペレーション対象先および短期金融市場の主要な参加者を対象として実施している。今回のサーベイの調査対象先は296先と、昨年の284先からさらに増加している(回答率100%)。』

へえへえそうだっか。

『なお、従来、サーベイ実施時点(8月)から結果公表(同年12月〜翌年2月)までかなりの期間を要していたが、今回、市場参加者からの要望などを踏まえ、できる限りの公表早期化を図っている。』

まあ確かに早くなりましたな。

『すなわち、調査の基準時点は従来の調査同様7月末時点とし、集計結果の時系列的な比較可能性を確保する一方、結果の公表は従来と比べ2〜4か月以上前倒しし、10月に公表することとした。これは、市場動向を適切にフォローし、必要に応じて市場整備のための取り組みを円滑に進める観点から、サーベイ結果を極力速やかに市場参加者の方々などと共有した上で、これを有効に活用しながら、関係者などとの対話を重ねていくことが望ましいとの問題意識に基づくものである。』

ほっほー。

『日本銀行金融市場局としては、今回のサーベイ結果も有効に活用しながら、短期金融市場も含めたわが国金融市場の活性化に向けた関係者の取り組みを積極的に支援するとともに、自らも中央銀行の立場から、可能な限りの貢献を果たしてまいりたい。』

貢献した結果があの短国買入による市場機能の破壊行為なのは何かのギャグでしょうか?????

・・・・・・ということで掴みの所で「んなこと言われたらアンタ、往生しまっせ〜」と申し上げたくなるのですが、この次の『概要』が落涙を禁じ得ません。

『短期金融市場での資金調達残高は増加し、リーマン・ショック以前の2008年夏頃の水準近くまで戻している。』

『この背景としては、まず、日本銀行の補完当座預金制度のもとでの超過準備の付利金利(0.1%)をメルクマールとする裁定取引の広がりが挙げられる。また、市場参加者の一部には、取引関係や社内の事務体制・ノウハウの維持、業務継続体制の強化などの目的から、無担保コール取引を継続的に行っている先もみられる。こうした動きが、取引全体の下支えに寄与していると考えられる。さらに、投資信託などの主体が、株価上昇などを受けて増加した余剰資金を短期金融市場で運用していることや、日本銀行の大規模な国債買入れのもとで国債の特定銘柄の調達ニーズが高まったことなどを受け、レポ取引が増加していることが、取引全体の増加に寄与しているとみられる。』

はあそうですか。

『この間、国庫短期証券などの運用利回り低下や収益性が見込みにくくなった有担保コール取引を抑制する動きが一部でみられていることを受けて、短期金融市場の収益性や機能度が前年に比べ低下したと回答する先が全体の3割程度でみられた。もっとも、全体の6割程度の先では、短期金融市場の収益性や機能度は、前年と比べ「概ね変わらない」と回答している。』

そらまあ8月時点の調査ですからねえ。

『これらの点を踏まえると、わが国の短期金融市場の機能は全体として維持されていると考えられるが、日本銀行としては、今後とも短期金融市場の動向を、日々のモニタリング活動や本サーベイ、市場参加者との対話などを通じて、適切にフォローしていく考えである。』

>わが国の短期金融市場の機能は全体として維持されていると考えられる
>わが国の短期金融市場の機能は全体として維持されていると考えられる
>わが国の短期金融市場の機能は全体として維持されていると考えられる

おもろいやないかい〜、腕上げたな〜、という所でございますが、ここの説明文中に「7月末を基準として8月に調査した時はこうでしたがその後の状況はこのサーベイに反映されていません」というような文言でも入っていればまだ望みがあるというものですが、ご案内の通り9月以降からは市場の様子が様変わりしている訳で、まずこのサーベイの紹介文書である所のこの書面中にそれらしき記述が全然存在しない(ついでに言うと本文中にもその手の記述が1ミリも存在しないのでお暇な方はご確認あれ)という時点で金融市場局が短国買入で市場の玉を全部買ってマイナス金利にするわ市場取引を干上がらせるわというプレイを演じている事に関して何らの問題意識を持たずに無邪気にMB積み上げがディレクティブだから買うんだもんね〜とやっているってえのが良く判るという代物であります。

いやまあアンケート自体のタイミングは仕方ないですし、サーベイ取ったのだから公表した方が良いのですけれども、上記にあるように8月のサーベイの時点で既に「短期金融市場の収益性や機能度が前年に比べ低下したと回答する先が全体の3割程度でみられた」という状態であったならば、その後の9月における市場状況を加味したら「わが国の短期金融市場の機能は全体として維持されていると考えられる」と平然と纏めるのは如何なものかとしか思えませんですわなあ。

そらまあ8月に実施したサーベイの時点では確かに市場機能は低下はしているものの全体としては維持されていたと思いますが、その後の市場環境の急変(しかもそれが日銀ドリブンなのですが)に対する考察なりが何も入らないという時点で「金融市場」局という名前ついてるセンスが感じられないという誠に残念なものが公表されましたなあという所で。

なおサーベイの中身に関してはお暇な方はご覧あれなのですが、何せ9月に市場環境が変わってしまいましたのでそこは補正を掛けて読まないといけませんぞな。

#しかしまあ間が悪いタイミングで出てくる所が日銀クオリティですなあというところで

トップに戻る


2014/10/08

○決定会合レビュー:白井さんの謎提案キタコレ

全くもってこのお方は何なんでしょうかとしか申し上げようがない。

『(注1)白井委員は、予想物価上昇率の記述について、足もとでは横ばいになっている指標が多くなっているものの、やや長い目でみれば上昇傾向は続いている、との表現にすべきであるとして反対した。』(今回)

・・・・・・・・・・・・・??????????????

何ちゅうか貴女様の頭の中に詰まっているものはまさかオガクズか何かでいらっしゃいますかとお伺いしたくなるかのような表現変更でして、そもそも直接的な計測が難しくて総合判断しないといけない予想物価上昇率の部分について政策変更を伴わないのに表現を変更するというのが政策ロジック的に全然整合性が取れない話でありまして、こういう表現変更を提案するならそれにセットとして予想物価上昇率を望ましい水準に引き上げる為の施策を出さなかったらそれは政策当局者ではなくてただの傍観者でありますし、しかもインフレ期待の部分についてはまさにQQEの建付け的に金融政策で何とかしようというものでありますので、この提案しておいて政策変更提案無しという行動はそもそも論として現在の金融政策運営の建付けとなるロジックを理解していない事を意味しているのですが、まあオガクズ脳なので理解できていなくても致し方ないのかもしれませんね。

しかしまあ何ですな、このオガクズ先生は講演などで毎度毎度クソ長いけれども単に「ねえねえアタシってこんなに色々な事を知っているのよ凄いでしょう」という内容の文章を投下してヲチャーの時間を浪費させるのを得意技としておりますので、単なる自己顕示の世界で提案しているのかも知れませんが、もう一つのケースとしては昨年3月の謎提案によって自分だけ新体制に向けたゴマスリ提案をして他の政策委員に反対票を投下させてコミュニケーションをややこしくしたという実績がありますように、年金問題で散々引っ掻き回した挙句に具体的な話の前にコロンビア大学に逃亡するというどこぞの先生と同様に、沈没前の船から逃げ出すネズミのような動きを示しているのかも知れず、ただの自己顕示ならばどうでも良いのですが、もしかしたらドブネズミモードが入っているかも知れませんなあと思うのでありました。


○自己顕示といえばゴミのような質問で金融政策決定会合を中断させる馬鹿のホームラン王がいるようで

声明文は「以上」ということで終わりなのですが、3ページ目に『(参考)』というのがありまして・・・・・・

(参考)
・開催時間――10月6日(月) 14:00〜16:18
10月7日(火) 9:00〜9:54、11:22〜13:49(注)
(注)会合は、黒田委員の国会出席のため、9:54〜11:22の間、中断した。

ということで、ご案内の通り国会出席がありましたが、質疑の内容はと言いますと(詳しくは国会会議録が出るのですが数週間程度後になるので直ぐには判らん)・・・・・・・・・・

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-ND1ZZK6KLVRE01.html
日銀総裁:「円安で問題生じてない」、見通し下振れれば緩和
更新日時: 2014/10/07 12:44 JST

『民主党の福山哲郎氏の円安についての質問に対し、黒田総裁は「円安が輸出、グローバルに展開している企業の収益、設備投資等に一定のプラスの効果がある一方、輸入コストの上昇、あるいはその価格転嫁を通じて、特に非製造業の収益に押し下げ圧力として作用するということは事実」と述べた。その上で、「その影響は産業や企業規模によって異なるが、一般論として言えば、経済や金融のファンダメンタルズを反映した形で円安になるということであれば、多分、全体としてみれば景気にとってはプラスであろう」と指摘。「金融あるいは経済のファンダメンタルズを反映して為替レートが動くことは経済にとって、全体としてマイナスではない」と語った。』(上記URLより、以下同様)

金融政策決定会合を止めてまで質問するのですからさぞかし緊急性と重要性の高い質問をしているんでしょうねえ福山哲郎先生。

『どういう状況になれば追加緩和の引き金を引くのか、という質問に対しては、「これまでのところ2%の物価安定目標の実現に向けた道筋を順調にたどっている。したがって、2%の物価安定目標の実現を目指して、これを安定的に持続するために必要な時点まで量的・質的緩和を継続していくことが重要だ」と言明。 その上で、「何らかのリスク要因で見通しに変化が生じて、2%の物価目標を実現するために必要になれば、調整を行う。具体的には、見通しが下振れになった場合は当然、調整は追加緩和になろうと思っている」と語った。』

・・・・・・・・・えーっと質問は「円安の影響」と「追加緩和について」のようにお見受けしますが、それのどこが金融政策決定会合を止めてまで行う程の緊急性と重要性を伴った質問なのか全く理解致しかねるのでございますが、もしかして福山哲郎委員様の自己顕示アピールだけの為に政策決定会合という大変に大きな資源を投下して、しかも市場に大きな影響を与える行事を中断させたのでしょうかと疑問を呈したいところでございまして、まあこの一件で福山哲郎先生のお名前は金融市場に轟き渡る事になりましたので、自己顕示が出来て大変良かったですね悪名だけどと存じます次第。

まあ可及的速やかにこういうホームラン級の馬鹿者は議員バッチを外される事をお勧めしたいと思うのでございますが、どうしても質問しないといけない超重要問題であったというのであれば福山哲郎先生の見解を是非お伺いしたい訳で、実は超重要で緊急性を要するような質問をしたのにニュースになっていないだけだったというのであればこの部分は全面的に撤回して深く陳謝しないといけなくなるので説明プリーズという所ではありますな、うんうん。

#そういや昨日の国会と言えば団扇のニュースを国営放送で全然やっていませんでしたが(銃声)

トップに戻る


2014/10/06

○短国買入3兆5000億円とかもうね

ということで金曜のオペですけどね。

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of141003.htm
国庫短期証券買入 35,000 2014年10月7日
(他のオペもあったけど短国買入だけ引用しますよ)

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)

ということで前日の3M短国入札が引けでマイナス0.7bp(というのはBB引けで途中の出合いベースだともう少し突っ込んだ場面もあった筈)というレートがついているのに何と過去最大額の買入オファーを投下の巻。

でまあこんな買入打ち込むもんだからスポネのGCや現先はまたまた物無状態になってしまって多分マイナスとかに突入するわ、どっかのベンダーで出ていたと思うのだが新発3Mはマイナスレートが更に突っ込んでしまうの巻となって、期初から何ちゅうことをしてくれはるんや日銀はん状態。

でまあ落札結果を見たら更に腰が砕ける訳でして・・・・・・・・

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba141003.htm
国庫短期証券買入 39,389 35,002 -0.009 -0.003 3.9
(他のオペ結果は割愛)

・・・・・(;゚д゚)

と再度呆れ果ててしまう結果でして、えーっと3兆9000億円しか札が無いのに買入を過去最大の3兆5000億円で打つとなりますと、それはもうオペでも何でも無く、単に「オペ先にある玉を全部購入します宣言」以外の何物でも無いと思うのですけれども大丈夫ですかそんなことしててという世界。

当然ながら短い所の気配は全部強くなる(というか板が無くなるというか)訳でございまして、新発3MのBB引けはマイナス1.2bpとか異次元にも程がある状態になってしまいましたし、他もまあ軒並み金利が低下するわ、期末要因剥落だかで一瞬利回りが上昇しかけた短い所の利付も盛大に気配を強くしてこれはどこの期末ですかというような引けが強くなるとか、期末要因剥落ネタは金曜前場の2時間で終了しましたという風情に落涙を禁じ得ません。

まあ何ですな、今回の短国買入ですけれども、買入の桁が1つ違っているん(当然少ない方ですよ)だったら「ああ札の無い中兎に角買入オペはしたいんだなあ」というので苦笑と共にお迎えという感じなのですが、過去最大額になる買入オファーをするのに実際の応札がそのオファー額ほぼカツカツとなっているとか、市場との対話とか市場機能とかのお題目が聞いて呆れる話でありますが、そもそも論を言えばMB積み上げのフィージビリティー的に回らないオペをやれと言われる中でなりふり構わず下品なオペ(というか需給動向を確認してその需給いっぱいまで買入を入れるってそれはもうオペでも何でも無いが)を実施せざるを得なくなっているのは、そもそもの政策決定会合におけるディレクティブの設定がおかしいという話ではあるのですが、それにしても何というかもう少しやりようは無いのかねとは思う次第。

つまりですね、期初からこの打ち方をしていると、もう「年末のMB目標達成の目処が付くまでは全力で買入を行って、その後はその後のディレクティブ次第ですが残高行った所で梯子を外します」と宣言している状態な訳で、そうなりますとオペに札を入れる側としては「余っている分は全部日銀がお買い上げして下さるしかもマイナス金利でも何でも(ただし目標達成するまで)」という話になりますので、そらあ安心して入札ゴリゴリ突っ込んでも大丈夫だわなとなる訳で、こういう状態を一般的に「足元を見られる」と申すものだと思います。

でまあ更にそもそも論を致しますと、確かに紙の方で270兆円というMBの数字が出ているのですけれども、実際にディレクティブで決まっているのは「年間60兆〜70兆円のペースでMBを積み上げる」というのと「国債、CP、社債、ETF、J−REITの残高増加額」でありまして、「その他」の部分に関しては「年間60兆円から70兆円に相当するMBの積み上げ」の調整項目なのですから、オペレーション上弊害があるのであれば別に年間70兆円である必要は無くて65兆円でも60兆円でも良い筈なのですが、もう明らかに年末の270兆円の紙に合わせて無理してでも買うというようなのを露骨に見せてしまって、マイナス金利をドンドン購入するわある玉全部買うわという態度だと、今申し上げているように「足元を見られる」状態になって市場の価格形成もへったくれもない状態になりますぞなという話で、「いや別に70兆必達じゃないですよ60兆円から70兆円の間ならディクティブ通りですよねえ」というような感じで市場に緊張感与えておいた方が却って足元見られるような価格形成にならなくて、結果買入がスムーズに行くかも知れないのにねえ(まあ残高効果がデカイからどこまで効くかは知らんが)とは思うのであります。

つーかそもそも輪番にしろそうでしたが、MB目標のコンポーネントの数字に関してはそれなりに幅を持って見ましょうみたいな話をQQEの当初はしていたと記憶していましたが、もう完全にMB目標の数値をリジットに着地させることだけが念頭にあるかのような視野狭窄オペレーション状態になるとかどうしてこうなったんでしょうという所ではございますな、うんうん。

しかしまあ何ですな、金曜の買入3.5兆ですけれども、新発3Mの入札時の状況から勝手に妄想をすると、前の月に全然買えなくて悶絶していた最終投資家の買いもそこそこあった筈で、その玉はポートに沈んで償還まで基本出てこない類の物なので、この買入の中には期末の残高調整で買いが入っていた年内物の3M既発とかも入っているような気がする(全部新発なら恐れ入りましたという感じですが)次第で、それって何も頑張って買わなくても良いんじゃネーノという風に思う次第で、どうせ「MB目標達成のためある物全部買います攻撃」をこれだけ露骨にやっているんだったら、露骨ついでに年末のMB目標に跳ねない分は買入対象から外せばちったあ短国需給も改善するし、ファンディングコストが変われば短国買入狙いでヒャッハーの動きも緩和されませんかねえとか思ったりもしますが、そうすると今度は短国のイールドカーブが凄まじく歪になりそうですね。

・・・・・・・・・まあ結論としては戦術での工夫の余地はありそうなのだが、そもそも論として政策委員会が決めたディレクティブにフィージビリティの考慮が無いというか、細々色々な物を決め過ぎているので柔軟性に欠ける状態になっていてフィージブルじゃない部分の皺寄せが思いっきり出ているという話になっていると思うのですよね。

でまあそんな質問を総裁会見でしても暖簾に腕押し糠に釘だからまあ質問しないというお気持ちも判らんでは無いですけれども、やはりそういう質問に対して「こう言った」というのが記録に残るということも重要ではありますので、そういう観点からも明日の定例会見でのツッコミをお願い申し上げたい所ではあります。というか最近のECBの会見とか(FEDもそうですが)見ておりますと彼我の質疑応答のレベルの差が見ていて情けなくなる場面というのが散見される訳でございまして、もうちょっと何とかならんのかという所ではありまする。

トップに戻る



2014/10/02

○そういえばMPMプレビュー雑談

何か最近「追加緩和」みたいなネタの問い合わせ(??)も来るので雑談ですけどね。

えーっとですな、円債の方では必ずしも追加緩和ネタ主流ではないと思うのですけれども、それ以外の所では10月の展望レポート(なので来週のではないが)で追加緩和がどうのこうのというのが良くネタになっているみたいなので頭の整理代わりにちょっと論点整理。

まずですな、今の政策の建付けは金融政策決定会合後の声明文から主要部分を抜粋するとこうなる訳ですよね。以下はいずれも前回金融政策決定会合後の声明文から引用。

『日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を、以下のとおりとすることを決定した(全員一致)。マネタリーベースが、年間約60〜70兆円に相当するペースで増加するよう金融市場調節を行う。』(項番1から)

『日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。』(項番5から)

ということでして、つまりそもそも論としてQQEはオープンエンドで行いますよというのと、その政策の内容としてMB拡大が年間60〜70兆円というのがある訳で、基本的な政策フレームがMBの拡大な訳ですよ。

・・・・・・・・・・でまあ最近時々「付利下げ」という話を出してくる人がいるみたいなのですが、オペレーション技術上の観点からしますと、MB拡大が難しくなってきているから短国買入の金利がマイナスまで突っ込んでいる訳でして、付利下げを実施してしまうと超過準備保有のインセンティブが低下してしまいますので、MB的には縮小方向への圧力を掛ける事になりますからそれは普通せんわなと思う訳で。

そらまあ金融政策のフレームをまた金利に戻してしまえば別に良いのですけれども、ECBの動きを見れば分かりますように超過準備マイナスチャージとかしちゃうとドンドン超過準備が減るように、量的な部分では縮小方向になってしまいますので、それは「マネーの拡大でインフレ期待を高めて実質金利を低下させて金融政策効果を」という枠組みを全面改訂する事になりますので、まあ普通に考えて無理だと思います。

あともう一つあるのは、固定金利オペとか貸出支援オペとかの固定金利貸出の金利が0.1%固定になっておりまして、3か月のオペは兎も角として4年の貸出とか固定でやっているのがどうなりますねんという話もありますわな。でまあそういうのは制度変更してしまえば良いみたいな乱暴な話も時々聞きますけれども、それって「貸出条件の変更」ですから契約上の概念からするとイベントオブデフォルトにも程がある訳で、かつての電力債の一般担保を反故にしようという言説に猛烈に噛み付いたアタクシとしては同じ文脈でそれはドイヒーにも程があると思う次第。つーかまあそういう「後付で条件変更」みたいな事をすると、金融政策運営のコンフィデンスの問題になって、それこそコミットメント的な金融政策を実施するのが難しくなると思われます。


あと聞くネタとしては「来年以降のマネタリーベース拡大について明文化する」という話なのですけれども、まあそれ自体は「ただの紙」ではあるので出すという可能性は無いでは無いとは思いますが、そもそも「2年で達成しないと責任を取る」と大口を叩いた置物副総裁がおいでになる中で、来年以降のMB拡大ペースがこのまま継続しますというのを紙として出すとなりますと、当然ながら「日銀は2年で目標達成することを諦めたからもっと長い期間のMB拡大を続けると表明した」という事になりますので、置物大先生の進退問題マダー?という話になるのでどう見てもパンドラの箱です本当にありがとうございましたという所です。

それに加えて連日アタクシが悪態をついております短国市場の問題があって、そらまあマイナス無限大利回りまで日銀が買えばとりあえず短国発行額全部買うとか出来ますけれども、既に市中発行額対比で3分の1の買入残高を抱えているストック効果がこれだけ出る中で、更に買入残高を年間20兆円拡大できますかというような話になるので、ここの技術的な問題の考察というか見極めが必要だから、先先のMBをどうするという話は、今の建付けのように『安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続』というオープンエンドにしておいて微妙な状態に置いておくしかないと思いますけどね。


その他の追加緩和ネタとしては、「国債の買入ペースがもっと増える」というのは調節技術上の問題としてMB拡大を維持するために短期が買えないのなら長期を買えば良いじゃないですか方式での拡大は思いっ切りあり得ると思いますが、もしかしたら2年で2%を達成するかもしれない訳で(相当難しいとは思いますが)何もそれを今から明言する必要はないですし(したがって12月以降のどこかではアリエールと思う)、「消費税増税サポートでの追加緩和」というのはそもそも論として2回の消費税増税を織り込んだ上での経済物価見通しを立てて、しかも(ハードデータは怪しいものの)短観などに示される指標は見通し通りの推移となっている状況ではまあ無いですなという所。

しかも、消費増税単体の影響に関しては黒田総裁は会見などで何度もリカードの中立命題を踏まえて説明している訳ですから、経済物価見通しが下振れて展望レポートの先行き見通しを大きく下げないといけないような状態にならない限り追加緩和アクションをするという話にはよーならんでしょとゆーところでございます。

ちなみに、MBを更に拡大しやすくする為には付利下げではなくて超過準備付利金利を更に引き上げした方が超過準備積み上げインセンティブが生じるので日銀の資産買入がより円滑に進みますし、所要準備にも付利しちゃえば預金保険料とかコスト的に赤だから今は普通やっていないと思われる金融機関預金もちったあ受け入れやすくなって(真面目に計算して居ないから知らんが)当座預金制度の外側にある資金の吸収手段が拡大して更に買入拡大しやすくなるような気もせんでもないし、海外中銀のデポに付利しちゃうとか、まあ基本的に今の政策を今後も拡大したいとなりますと付利をより広範囲に付けないと回らないと思うのですけどねえ。

#まあそれによって拡大したMBが実際に何の意味があるのかは意味不明としか申し上げようがないですが

トップに戻る