金融政策概観(2009年度下期前半分(2010年01月〜03月))
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2009年下期後半
2010/03/31「CP現先オペがどうもかなり減額になるようですな」
2010/03/29「バーナンキ議会証言(その2)しかし資産買入に関する話がコロコロ変わりますな」
2010/03/26「バーナンキ議会証言は2月の大雪議会証言の線(その1)」
2010/03/23「イエレン講演続き、低金利政策は長期化しそうです」
2010/03/19「決定会合レビュー続き/政策ロジック崩壊を示す総裁会見/テイラー先生講演」
2010/03/18「どう見ても政府の押し込みの緩和措置決定会合レビュー」
2010/03/17「FOMC声明文は景気認識を引き上げつつ緩和文言は維持/新型オペってそんなに増やせないのよね」
2010/03/16「他市場が盛り上がる決定会合/審議委員人事/イエレン講演続き」
2010/03/15「イエレンSF連銀総裁の2月22日講演より」
2010/03/12「追加緩和の記事がまた出てますなあ/1999年7月16日議事録から」
2010/03/11「バーナンキ議会証言より(続き)」
2010/03/10「まあ追加緩和政策はロジックの世界じゃないですからね/バーナンキ議長議会証言より」
2010/03/09「追加金融政策に関して考えてみる」
2010/03/08「金融緩和記事関連雑感」
2010/03/05「日経一面に日銀金融緩和記事が出ているようですが中身を見ずに愚意見をば」
2010/03/02「菅さんと亀井さんではやはり貫禄が全然違いますなあ」
2010/03/01「菅さんのクレクレ発言とみんなの党の意味不明にも程がある金融緩和案」
2010/02/25「米国財務省の流動性吸収プログラム/GCレートが上昇」
2010/02/24「BOEの量的緩和の説明が時間軸っぽくなっている件について」
2010/02/23「BOEの出オチ議事要旨」
2010/02/19「見事な現状維持でしたが周囲は色々とネタにするのだ/米国早くも連銀貸出レート引き上げ」
2010/02/18「決定会合プレビュー/バーナンキ議会証言からその4、出口政策の手順書」
2010/02/17「GCレートと当座預金残高/山本幸三さんと白川総裁/バーナンキ議会証言からその3、資産買入の説明が従来の話と違うのですが・・・・・」
2010/02/16「バーナンキ議会証言から:その2、各種流動性供給は市場の正常化の為」
2010/02/15「バーナンキ議会証言から:その1、従来の政策を流動性供与と資産買入に分離」
2010/02/12「スウェーデンのカード決済事情/バーナンキ議会証言より(前振り編)」
2010/02/10「ギリシァネタで振れる相場/TBレートも上昇」
2010/02/09「結局大幅不足を抜けたらレートが上昇して元に戻るの巻/1999年8月議事録」
2010/02/03「共通担保オペが札割れ」
2010/01/28「FOMC声明文は結構変わりました/短国レート更に低下」
2010/01/27「決定会合レビュー」
2010/01/26「オペの足が長くなった影響/デフレ宣言の次は財政破綻宣言??」
2010/01/25「米国も金融政策は政治の季節」
2010/01/22「米国金融規制構想キタコレ/決定会合プレビュー/1999年4月19日議事録」」
2010/01/21「残存1年以内の輪番で事実上の札割れ/亀井センセイは何をさせようと言うのだ」
2010/01/14「足元に資金が溜まっています/FRB最高益続き/1999年4月19日議事録から」
2010/01/13「とりあえず材料一段落/FRBが最高益と」
2010/01/12「菅直人大臣発言に右往左往とな/FOMC議事要旨より」
2010/01/08「就任早々為替発言で飛ばしてくれます菅直人さん/その他雑談」
2010/01/07「藤井財務大臣に変わりまして菅直人財務大臣登場」
2010/01/06「1999年4月9日の決定会合議事録から、強い意志を示す事とは何か」
2010/01/05「1999年4月9日の決定会合議事録から、現在に通じる議論が行われています」
2010/01/04「BOEの量的緩和政策効果に関する議論(12月MPC議事要旨より)」
2009年下期前半の見出しは以下の通り(別ファイルに飛びます)
2009/12/30「FRBがタームデポジットファシリティ導入へ」
2009/12/29「どうも足元GCの安定化は難しいようで(本当は難しく無いのだが)」
2009/12/28「末初GCレートに関して」
2009/12/25「GCレートが上昇」
2009/12/24「オペレーションが微妙でGCレートが下がらないです」
2009/12/21「決定会合で物価安定の理解の明確化とな」
2009/12/18「市場雑談/その他気になるクリップ」
2009/12/17「FOMC声明文は非伝統的政策の終結を示唆/バーナンキ議長のFAQその2」
2009/12/16「オペレーションのスタンスが判らんという報道もちらほら」
2009/12/15「どうもオペレーションの意図が上手く伝わらないですな」
2009/12/14「バーナンキ議長のFAQ」
2009/12/11「新オペ実施!」
2009/12/10「TB3か月入札が前週より弱くなりましたな」
2009/12/09「投資家懇談会はまあPD懇程の危機感は無さそうね」
2009/12/08「PD懇参加者にに危機意識/バーナンキ講演が米債の買い材料になったみたいですけどさて・・・・」
2009/12/03「決定会合翌日の相場あれこれ」
2009/12/02「何と10年国債入札日の前場引けに臨時政策決定会合アナウンス」
2009/11/30「FOMC議事要旨より、調子に乗ってドル安を仕掛けるネタとは思えませんが」
2009/11/26「日銀の追加緩和方策に関する雑考とか/超過緩和付利に関し書いた話の訂正」
2009/11/25「結局何もしない政府/で、日銀が追加緩和するとしたら何をやるか」
2009/11/24「決定会合あれこれと政府の対策も無しのデフレ宣言」
2009/11/19「輪番拡大予想が増えてきましたね」
2009/11/18「日銀に無策のケツ持ち攻撃が来たようで」
2009/11/16「BOEは量的緩和政策はクレジットの需要側への政策と説明」
2009/11/11「予算に関しては決意表明よりも実際の予算を出してほしいのですが」
2009/11/06「BOEのMPCから」
2009/11/05「FOMCステートメントから」
2009/11/04「案の定オペは自然体のままでした(^^)」
2009/11/02「決定会合レビュー」
2009/10/30「銀行の資本制約と特別オペの関係を今更ながらに愚考」
2009/10/29「決定会合に向けて観測記事やら政府要人発言のクリップ/投資家懇談会では30年増発の話も」
2009/10/28「引き続き決定会合に向けた雑談」
2009/10/27「PD懇では中期増発の話ですが/今回の決定会合は読みにくい」
2009/10/26「BOE議事要旨より、量的緩和政策の効果に関する議論」
2009/10/23「西村副総裁会見より、景気はバンピーロートなのに臨時措置解除とな」
2009/10/22「西村副総裁講演も時限措置解除を示唆してますけど・・・・」
2009/10/20「9月会合議事要旨では企業金融環境改善の議論/総裁発言がすっかりやる気満々に」
2009/10/19「決済フォーラムから/FOMC議事要旨」
2009/10/16「技術論を言い出す時には碌な事が無いような気がしますが・・・・(総裁会見より)」
2009/10/15「買入解除は先送りになりましたが・・・・/特オペを通常オペで代替できるか(その1)」
2009/10/14「さて決定会合」
2009/10/13「出口政策なんですけど、結局は買入が気に入らないって事なんですかねえ」
2009/10/09「出口政策に関して改めて雑考」
2009/10/07「早速政府サイドから牽制が」
2009/10/06「CP社債買入の解除検討について悪態を」
2009/10/05「モラトリアム法案トーンダウン?/G4になるのは日本の地位低下なんでは」
2009/10/02「早速期初の買い/日銀の政治センスが・・・/モラトリアム雑談」
2009/10/01「証券決済期間短縮ねえ/CP社債買入停止っすか?/内閣府も市場ヒアリングとな」
2010/03/31
○CP現先オペがフェードアウトとかその他
昨日のオペでの話題と言えばCP買現先オペがロールされなかった事でございます。これまでCP買現先オペは3000億円が7本あって2兆円弱の残高(というのは札割れの分がある為です)があったのですが、今回は期日が来る分を華麗にスキップ。
まあこの前もちょっと書きましたが、ここもとCP買現先オペに関しては、オペの期日をそろえるような実施の仕方があったりして、「ロールの時に減額しますよ」とゆーのが見え見えの展開ではあった(現在オペのエンド日が揃っている日が2日分あって、そのエンドで減額ロールをすると、2本減る勘定になる)のですが、期日揃え攻撃だけではなくロールをしない攻撃と来ましたかそうですか。
元々CP現先オペの増額はリーマンショック後の短期市場におけるオープン金利の上昇に対応してCPレートの上昇に対応する施策として積極活用という話になった(なったのに実際に増額したの1本だけだったので効果はほんの一瞬でその後更に金利が上昇して大変な事になった件については当時物凄い勢いで悪態をついていたのでその辺りをご覧ください)所から増えまして、その後利下げ&企業金融特別オペの実施とかになって更に増額となったという流れのものであります。
ということで、CP買現先に関しても危機対策の一環で増額されたと言えばまあそうです(通常は期末あたりに思いだしたように1本実施するだけです)ので、金融市場の機能回復に伴いCP買現先も縮小というのは流れとしてはおかしくは無いという所でしょうか。
特オペがこれから残高が落ちて行きまして、CP買現先も減るという話になりますと、オペを使った場合には共通担保オペでの在庫ファンディングとなるので、従来0.10%で取れていたものが1bp弱上昇するようなイメージになるという感じでしょうか。そうなりますとファンディングコスト由来の短期国債とCPの恒常的なレート逆転もやや是正されるのではないかとは思うのですが、何せ発行企業さんの資金需要が無い状況が続いているので、CP発行額そのものが少なくて需要の方はあるという状態ですので、そんなにレートが上昇するかというと上昇はせんのでしょうけれどもね。
同じくオペの話ですが、末初でオペ残積み上げて当座預金残高も積み上がる形になっております。結局今日の当座預金残高は23.4兆円とかになるようで、当然ながらレートちゃんの方も落ち着きまくっている訳ですが、問題は1日以降どうなるのよという所っすな。つまり当座預金残高をまた減らす中で共通担保オペの期落ちがドカドカやって来る(末初の1日物オペはまあ良いとして、新型オペじゃない方の共通担保オペ残高が1日には1.2兆円、2日には2.2兆円程度落ちる)ので、その分市場調達が増える格好になると思います。まあ昨日までの感じだとGCで資金調達する主体の債券ディーラーでも資金には余裕があるような感じなので金利はまだ落ち着いていますが。
でですな、新型オペの方は増額されるのですけれども、こちらのオペは何せ1回で調達できる額が少なく(按分が15%とかなので応札限度額から計算すると300億程度しか入らない)、債券ディーラーが店頭売買やら入札やらでぶれる在庫ポジションの変化に対応した調達という意味で言えば屁のような額になりますわなという所でして、まあそんなこんなを考えますと、入札方式のオペが減るのもどうなのかねという所でしょうか。
だからCP買現先を減額したという事もあるのでしょうけれどもね。
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2010/03/29
あとはバーナンキ議会証言続きでも。
http://www.federalreserve.gov/newsevents/testimony/bernanke20100325a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/testimony/bernanke20100325a.pdf
概ね2月10日(大雪で順延になった時の証言)のダイジェスト版(最初にそう言ってます)という所で、以前ご紹介した時とそんなに変化もなく、政策インプリケーションもそんなに新しいモノは無いと思われます。
・・・・・だけだと話が終わってしまって甚だ遺憾なので少々。
○議会証言なだけに納税者向けの話もあり
流動性供給プログラムに関する説明の中で今回もこの話を。
『In its role as liquidity provider of last resort, the Federal Reserve
developed a number of programs to provide well-secured, mostly short-term
credit to the financial system. These programs, which imposed no cost on
taxpayers, were a critical part of the government’s efforts to stabilize
the financial system and restart the flow of credit to American families
and businesses.』
no cost on taxpayerというのは端折り過ぎ(2月の証言の時にはもう少し丁寧に説明してて、担保も沢山取って結果としてはコストも掛かりませんでしたという話になってましたが)ではないかと思うのですが、まあこの辺りは議会対策なんでしょうなあという感じです。折に触れて政策効果の中でAmerican
families and businessesの金融環境を改善して助けるというフレーズが出てくるのがチャーミング。
ちなみに、流動性供給プログラムに関しては、目的:市場機能の確保、効果:企業や家計の借入へのアクセスを容易にする、ポイント:短期間かつ十分な担保を確保して納税者負担無し、という感じでしょうか。
○資産買入プログラムはless conventionalとな
資産買入と利下げの話がセットになっているのはこの前と同じ。
『The second part of the Federal Reserve’s response to the crisis and
recession, besides the provision of liquidity to the financial system,
involves both standard and less conventional forms of monetary policy.
After reducing short-term interest rates nearly to zero, the Federal Open
Market Committee (FOMC) provided additional monetary policy stimulus through
large-scale purchases of Treasury securities, agency mortgage-backed securities
(MBS), and agency debt.』
ここで「ふーん」と思ったのは資産買入プログラムをless conventionalという話をしている事ですな。伝統的な政策よりちょっと伝統的じゃないって言うのは何気にチャーミング。日銀は年がら年じゅうless
conventionalな政策をしてますという話になりますなあ(というのは実は説明にインチキ成分が入っているのですが、そのインチキ成分については敢えてスルーします^^)。
で、その政策効果に関しては今回も超過準備の存在が金利を押し下げたという話になっていますが、実際の財務省証券利回りが下がっていた訳ではなくてスプレッドが縮小したのですよという部分は華麗にスルーしているのがチャーミング。
『The Federal Reserve’s purchases have had the effect of leaving the banking
system highly liquid, with U.S. banks now holding more than $1.1 trillion
of reserves with Federal Reserve Banks. A range of evidence suggests that
these purchases and the associated creation of bank reserves have helped
improve conditions in mortgage markets and other private credit markets
and put downward pressure on longer-term private borrowing rates and spreads.』
で、それが「量的緩和じゃない」って言ってた説明と違うじゃんという話は以前も申し上げた通りでございまする。
○まあ基本的には2月10日の議会証言の簡略版ということで
あと、出口政策の実施の際には準備預金付利を利用しながらという話とか、多くの超過準備が存在する中ではFF金利のコントロールが難しくなるという認識とかも同じです。超過準備の吸収に関しては、リバースレポとターム預金ファシリティを主に利用するものの、それだけだとFEDのバランスシートは両建てになるだけなので、資産縮小が必要な時には保有証券の売却も、という話をしていますが、その辺りの順序に関しては従来言われているものと特に変化があるようには見えませんでした。
#ということで引用大会でどうもすいません
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2010/03/26
○バーナンキ議会証言
http://www.federalreserve.gov/newsevents/testimony/bernanke20100325a.htm
今日のはあんまり長くないが、さすがに寝起きでネタにするのは他にネタあるのでパスですが、ちょっと見た所資産買入プログラムの効果についてこんな話を。
『The Federal Reserve's purchases have had the effect of leaving the banking
system highly liquid, with U.S. banks now holding more than $1.1 trillion
of reserves with Federal Reserve Banks. A range of evidence suggests that
these purchases and the associated creation of bank reserves have helped
improve conditions in mortgage markets and other private credit markets
and put downward pressure on longer-term private borrowing rates and spreads.』
資産買入による超過準備の発生がモーゲージ債やその他のクレジット市場の市場環境を改善させて、これらの長い金利の金利およびスプレッドを縮小させました。という話をしてやがるのですが、2月の雪で順延になった議会証言を読んだ時にも申し上げましたが、この説明は元々「我々はリザーブの額に注目する量的緩和政策を実施している訳ではない」と言ってた話と思いっきり違いますし、ついでにツッコミを入れると長期金利のベースになります財務省証券利回りちゃんの方は資産買入プログラムを実施して金利の方は上昇したのですけどね。
しかし何ですな、モーサテの言ってる市場後講釈が正しいという前提ですけれども、議会証言のこの部分を好感してダウ急騰というのはイミフなのでございますが。
『At its meeting last week, the FOMC maintained its target range for the
federal funds rate at 0 to 1/4 percent and indicated that it continues
to anticipate that economic conditions, including low rates of resource
utilization, subdued inflation trends, and stable inflation expectations,
are likely to warrant exceptionally low levels of the federal funds rate
for an extended period. 』
というのと、最後のパラグラフに
『The economy continues to require the support of accommodative monetary
policies.』
という話をしてるのに反応したのかねという感じですが、その他は例によって例の如く出口戦略の説明で、従来の話と変わらんのですが、逆に考えるとそんなに早期引き締めをみてるのかなあという所ですな。
基本的には前2回の議会証言の線です(と思う)ので、詳しくは後日やるかもしれませんしやらないかもしれません。
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2010/03/23
ジャネット姐さんの講演が途中でしたのでその続きを少々。
http://www.frbsf.org/news/speeches/2010/janet_yellen0222.html
http://www.frbsf.org/news/speeches/2010/janet_yellen0222.pdf
○オークン則がどうしたこうした
労働市場に関する話の所で終わってましたのでその続きからです。最初は労働市場には微かに明るい光も差してきているという話をしていますが、そのパラグラフの最後は「回復は弱く、失業率は2011年末でも依然として8%近辺にあり、完全雇用からは程遠い状態」としている時点でまあこりゃ先行き見通しが暗いですなという感じですが、その後がオークンの法則がどうのこうのという話になります。PDFだと7ページめからです。
『I should warn that there is a great deal of uncertainty surrounding this
forecast. In the past, a given level of economic growth produced a more-or-less
predictable change in the unemployment rate. Historically, a pattern emerged
in which unemployment declined by half as much as the difference in the
growth rates of actual and potential GDP.』
景気回復において潜在成長率と実際の成長率増加との差の%表示の半分の数値が失業率の改善になりますとな。
『This is commonly referred to as ”Okun’s law” after the economist Arthur
Okun, who first described this relationship back in the 1960s.』
で、それがオークン則とか言われるそうですが、今後の回復においてそれを当てはめるとこうなるという話が次に。
『Let me sketch out how this should work. In my forecast, GDP growth exceeds
the growth rate of potential GDP by 1 percentage point this year and 2
percentage points next year. According to Okun’s law, the unemployment
rate should fall by about one-half percentage point by the end of this
year and a full percentage point during 2011. These figures are in line
with my unemployment forecast.』
でも、2009年のGDP推移と失業率の急上昇の説明がオークン則だとつかないという話です。
『However, Okun’s law let us down big-time in 2009. Given that GDP was
stagnant last year, the unemployment rate should have gone up by about
1-1/4 percentage points, according to Okun’s law. In fact, it shot up
3 percentage points. Understanding what happened last year has important
implications for what unemployment does in the future.』(機種依存文字部分を改変しました、1.25%の所ね)
ということで、2009年のGDP推移をオークン則に当てはめると、本来失業率の上昇は1.25%となる筈なのに、実際には3%の上昇になりましたよという話ですな。で、その理由って何じゃろというという話が延々と続くのでありますが、とりあえずその部分はスルー(後日紹介するかこっそり追記するかも知れません)しまして、結論部分をば。9ページめになります。
『There is an alternative explanation regarding the events of last year
though that bodes poorly for rapid employment gains going forward. According
to this view, last year’s large increase in productivity is here to stay.
In that case, we won’t see a quick drop in unemployment and may be in
for a jobless recovery akin to those in the early 1990s and early 2000s.
This is closer to my view and broadly consistent with my forecast.』
ということで、イエレンさんは今次回復においてもジョブレスリカバリーを展望しているようでございます。
『According to this perspective, the recession has forced businesses to
reexamine just about everything they do with an eye toward restraining
costs and boosting efficiency. Strapped by tight credit and plummeting
sales, businesses have overhauled the way they manage supply chains, inventory,
production practices, and staffing. Stores don’t order merchandise unless
they think they can sell it right away. Manufacturers and builders don’t
produce unless they have buyers lined up.』
『My business contacts describe this as a paradigm shift and they believe
it’s permanent. This process of implementing new efficiency gains may
have only begun and we may be in store for further efficiency improvements
and high productivity growth for some time. If so, the rate of job creation
will be frustratingly slow.』
という事で、今回の急激なリセッションより雇用環境に関して、というか企業行動に関してパラダイムシフトのような現象が起きており、景気回復が進んでも企業行動が変化しているのであれば、雇用の回復は「いらいらするほど遅い」という事になるという話ですな。
となりますと、物価の安定と完全雇用を目指すというデュアルマンデートを持たされているFRBの政策は緩和的なものになるという話になるのではないかってえ事をイエレンさんのスピーチからはうかがわせるつー話ですな。
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2010/03/19
○もうちょっと今回の決定に関して
昨日は途中から悪態三昧になっておりましたのでもうちょっとトサカを冷やして今回決定に関連しての論点を適当に。
まあ今回のややこしい所は、緩和強化を決定したのは決定したのですけれども、その額については決定会合マターじゃ無くなったという所がヤヤコシヤな点だと思います。まあ記者会見でもツッコミ入ってましたけれども、「新型オペの量を増やす」というのを決定しておいて「その額は現場で決めてちょ」という形を取った(まあ実際には決定会合で額自体は決まっているとは思いますが、形としては決定会合結果を受けてそれに沿って執行部が決めたという形で20兆円と発表しているので、建前と本音の2重構造状態と思われますが)のはヤヤコシヤ。
ただ、もっとそもそも論を言えば、新型オペって単なる「指値方式の共通担保資金供給オペレーション」なのでして、わざわざこのオペを特別視する必要は無いっちゃあ無いですし、逆にこういう形で特別扱いして決定会合マターのような事にしちゃいますと、将来また何かの都合(短期金融市場の事情)で指値オペを打ちたいという時に機動的に実施できなくなっちゃうので後々の事を考えると、どこかで本オペは「現場執行における裁量の範囲内」の話に落としておくべきだと思われます。
#まあそれを言うと輪番もそうなんですけどね
本来的に言えば、決定会合で決定するのはディレクティブの最初の部分の金利の所(金利ターゲットの場合ね)であって、それをどうやって実際に行うかというのがオペレーションの世界であって、そのオペに関しては細かい事まで決定会合でああでもないこうでもないという話をするのもどうなのかという感は致します。
では続きまして総裁会見から色々と論点整理の続き。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk1003b.pdf
○オペの量を増やす決定を緩和としながら量的緩和ではないとな
質疑応答の6ページの下から始まります。
『(問) 今回の措置は、広い意味での量的緩和政策の強化という位置付けでよろしいでしょうか。また、足許、金利は実質ゼロ金利にあるわけですが、今後の政策運営の柱というのは、資金供給の量の操作になっていくという理解でよろしいでしょうか。』
『(答) この席で何度も申し上げている通り、当座預金残高を目標にして金融政策を運営していくといった運営方式は採っていません。その意味で、量的緩和政策を拡充するということではそもそもありません。』
量を増やす決定をしているのですが、声明文に『固定金利オペを大幅に増額することにより、やや長めの金利の低下を促す措置を拡充することとした』(決定会合声明文より)とあるように目的が金利という事ですな。
#本当は3か月TBも6か月TBも0.12%なのに何の金利を下げる積りなのでしょうか??という質問を記者の方にして頂きたかった訳だが
『昨年12 月に申し上げたのは、日本銀行が供給する資金の供給量が制約になって金融機関の行動が制約される、あるいは企業の行動が制約されるという事態は防ぐということです。』
金融システム問題もクレジットクランチ問題も無いのに今更何の話だか。
『これは常々申し上げています。今回の措置は、発表にある通り、やや長めの金利の低下を促すという措置を拡充したということです。』
で、さっきの話に戻るのですが、もし「やや長めの金利の低下を促す」というのを決定するのであれば、そもそも論としては決定すべきはその金利に関する話の部分だけであって、その手段として新型オペを増やすのかそれとも共通担保オペを拡大するのか、はたまたオペ期間を長くするのかとかというってのは本来は調節担当部局が市場動向を見ながら決定するものだとは思うのですけど、政治との対話や日経新聞との対話がややこしい事になるにつれ、その辺の本来手段の話であって、政策決定会合で決めるような話ではない部分にドンドン決定会合が入り込んで来るの図という何だかな〜という所であります。
○そう思うなら物は試しに期待を外してみたらと思うのだが
この会見って中々オモローな質問が多いので本当は延々と引用したいのですけれども、時間と量の都合上(朝書いてるから時間がねえんじゃネーノというツッコミは全力で却下)今日はたぶん少なめになる予定ですが、この質問はまたキツイですなあ。11ページのケツから。
『(問) いくつかのメディアが、今回の決定会合に先立つ事前報道で、日銀の固定金利オペが拡大されるのではないかとのニュースを報じました。これがマーケットに織り込まれて、日銀のアクションがなかった場合には失望のリアクションがあるのではないかとの懸念がありました。また、従来から続いていることですが、今回の決定会合の前に政府の側から、日銀の緩和についての期待が連日のように寄せられました。こうしたメディアの事前報道と政府からの期待表明という2つのファクターは、今回の日銀の決定にどのような影響があったのか、あるいは政策委員の皆さんはどのように受け止めたのかについてお伺いします。』
・・・・これはまた答えられない質問を(^^)。まあこんなの聞く位ですから日経新聞の人では無いでしょう(^^)。
『(答) ご質問は政策委員の皆さんということですが、私自身がどのように感じたかということについて申し上げます。』
で??
『まず、市場との関係ですが、市場というものは、経済の先行きに関する様々な見方が投影されており、それだけに重要な情報を提供する場だと考えています。しかし、近年の金融危機の経験が改めて示すように、金融市場は時として行き過ぎるということも事実です。また、金融政策が、市場の期待に添うかたちで常に運営されると、結果として政策が経済の変動をかえって大きくするということも今回の危機の教訓の1つだったと私自身は受け止めています。』
アラン・ブラインダー元FRB副議長が「自分の尾を追う犬」に例えた件でございます。誠にその通りであると存じます。
『その意味で、私は、市場の動きを注意深くみると同時に、金融政策の運営にあたっては、あくまでも中長期的な経済・物価の姿を点検していく姿勢が重要であると思っています。端的な言葉で申し上げると、金融市場の短期的な動きに過度に引きずられて政策運営をしていくことは、中央銀行としての仕事をしっかり果たすことにはならないと思っています。』
全くその通りでございます。
『また、逆に、金融市場がある反応をしたからといって、その織り込まれたことは実施しないという考え方も適切ではないと思っています。市場の反応について時として自分達と感覚が違うというケースであっても、また、感覚が合っているケースであっても、中央銀行としては中長期な姿をしっかり見据えて運営していくという軸からぶれてはいけないと強く思っています。』
では何故景気の現状判断を引き上げて、先行き判断を据え置いて、リスク認識を上下バランスのまま据え置く中で(=現状判断を上げたとしてもリスク認識を下げれば緩和強化は理屈としてはあり得ると思います)緩和措置の強化をしたのでしょうか??という質問はもうちょっと前の方にありますが(^^)。
『次に、政府との関係ですが、まず、今申し上げた通り、中央銀行が、物価安定のもとでの国民経済の健全な発展ということを意識して中長期的な観点から金融政策を行っていくことは非常に大事なことです。』
はあそうですか。
『中央銀行がそうした目的に照らしてしっかり行動している、あるいは、しっかり行動していると認識されているということは非常に大事なことです。また、そうした中央銀行の姿勢を社会が尊重しているということも非常に大事です。』
この前は「政府が」って言ってましたが、「政府VS日銀」的なフレームアップの絶好のネタにされてしまいましたので、反省して言い換えたものと思料されます(^^)。
『私としては様々な意見を聞いた上で、日本銀行法の精神に従って、政策委員会が責任を持って判断し、決定することを貫いていくことが大事だと思っています。』
だったら今回はパスして4月に物価安定の理解の点検作業と共に時間軸の強化というか、物価目標の見直しを行うのが筋だったんじゃないんですかねえと思うのですけれどもね。
○これまたヤケクソ説明なのですが
まあ今回の質疑応答は中々いい感じでロジックが崩壊してる件についてのツッコミが大量に入っているのが実に(;∀;)イイハナシダナー的な会見なのでございますが、今回の声明文にもあったように、特別オペの残高が減る中で今回のオペ増額をしたという説明をしています。「何故この時期に緩和?」という質問に対する回答の最後の部分でございます。質疑応答の8ページ。
『その上で、そういう時期になぜ追加緩和を行うのかということですが、先程申し上げた通り、まず、企業金融支援特別オペの残高は4月以降確実に減少していきます。そこで、これに対してどういう方針で臨むのかということについては、いずれにしても明らかにする必要があります。また、今このタイミングで私どもが姿勢を明確にすることにより、少なくとも金融緩和の姿勢に関する理解がより広まり、景気に対してプラスの方向に作用するわけです。もちろん、これだけで直ちに景気の雲が晴れるということではありません。』
後半部分の説明はほとんどヤケクソの香りが漂って参りますが(^^)、姿勢を見せてどうにかこうにかとか最早気合というか精神論の世界でございまして、いやまあそれを美しく言えば「アナウンスメント効果」であり「期待形成に働きかける政策」という所なのでしょうけれども、いい感じでヤケクソになっております。
で、更に「またまたご冗談を」というのは実は前半部分。『これ(=特オペの残高落ち)に対してどういう方針で臨むのかということについては、いずれにしても明らかにする必要があります』という話をしているのですけれども、実はこの点って、特オペの終了を決定した10月30日の決定会合でこのような事を声明文に書いているのですな。
『4月以降は、より広範な担保を利用できる共通担保オペ等の金融調節手段を活用して潤沢な資金供給を行う態勢に移行する。』(昨年10月30日決定会合における声明文から)
まあその点を今回明確化したと言えばそれはそれで話の筋は通るかなあとか思ったのですが、そこであたくしは当日の総裁記者会見の発言を見つけてしまう所がチャーミング(^^)。
『来年4月以降は特別オペを完了し、共通担保資金供給オペ等、従来からあるオペで資金を潤沢に供給する態勢に移行することを今の時点で明らかにしておくことによって、市場での様々な不確実性が生まれることを防げると思います。』(10月30日白川総裁記者会見より)
・・・・・「明らかにしておく」とかいるとか言ってるじゃんorz
『共通担保オペと特別オペの違いを考えた場合、特別オペは、金利を0.1%に固定して金額無制限で供給しているほか、期間を3か月と限定しています。このような方式は、リーマン破綻以降のように金融市場が極端に収縮している時には非常に効果的であったと思います。ただし、現在のように金融市場の混乱が解消した後は、中央銀行が資金を潤沢に供給する上で、担保にしても、期間設定にしてもある程度伸縮的に選べる方が一般的には対応力が高いと思います。』
・・・・・期間3か月の固定金利オペよりも通常のオペの方が使いやすいとなorz
いやはや、まああたくしも「特オペの後継として新型オペを実施する」というのが一番日銀の説明で無理にならないとか申し上げていたクチなので、あまりこういう嫌がらせのようなツッコミをするのもブーメラン的な部分があるのですけれども(笑)、これはまた凄いブーメランではございましてオソロシスという所でしょう。
ま、それ言い出したらBOEとかFRBとかも最近の資産買入に関する見解がコロコロ変わる(バーナンキの議会証言とか雪で延期になった回と、本番の回でニュアンスが違っている位なのですから)位ですので、この程度のブーメランをは(・∀・)キニシナイ!という所でしょうね!!!!
#という訳で他の論点は後日やるかもしれませんしやらないかもしれません
○その他世間話少々
・CP買現先オペが減りそうな話
昨日のCP買現先のエンドが4月16日なのですが、その2日前にオファーされたCP買現先のエンドも4月16日でして、これは新型オペで他のオペに皺寄せが行くことを想定して、ここもと応札倍率も常に低いCP買現先を減らそうという事なのでしょうな。現在は3000億円×7本走っているのですが、エンドをそろえて半分だけロールという形で本数を減らすのでしょうかね。
ただまあそれによって何かあるかと言うと、そもそもCP市場は投資資金の方が余っている状態だと思われますのでただちに影響はないでしょうかね。
・テイラー先生講演
http://facta.co.jp/taylor/
平日の昼間だわ有料だわでまあ出席する金もヒマも無かったのですが、ブルームバーグニュースがヘッドラインを打ってまして、それを見てて「ありゃりゃ?」と思ったあたくし。英語のヘッドラインばっかだったのですが、何か「FRBが2000年代に実施した低金利政策が住宅市場崩壊の原因」「FRBの酷い政策が2008年の金融危機を悪化させた」とか「2000年代の日銀の量的緩和が日本の失われた10年脱出に効果」「以前の量的緩和政策は今回日本で実施してもあまり効果がないのでは」みたいなヘッドラインだったんですよね(スクリーンショット取るの忘れたから手元に無くてすいません)。
えーっと、Factaだしこの講演のお題だし、テイラー先生にバーナンキ万歳して貰って返す刀で日銀をボコボコのギタギタにしてもらう積りでお呼びしたと思うのですが、本当にこんな話だったら主催者涙目にも程がありますな、あっはっは(^^)。
何ぼ何でもこれだけヘッドラインがずらずら出てくるという事は、話の趣旨がそういう流れなのでしょうから、ブルームバーグの記者が一部聞き間違えという事でもないと思われるのでして、これは一体どうした事ぞという所ですな(^^)。
日本語のニュースではこんなあっさり味なのですけど(ヘッドラインは色々とあったのですけどねえ)。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=amwtHOa4Wyb0
テーラー元財務次官:円は下落の公算、日銀は他の中銀より長期緩和へ
まあそうなると思われますのでこのビューはアグリー。
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2010/03/18
お題「決定会合レビュー」
どう見ても政府の押しこみです本当にありがとうございましたorz
○という訳で週2回8000億円でした
今回声明文
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k100317.pdf
『2.日本銀行は、昨年12 月、金融緩和の一段の強化を図るため、固定金利方式の共通担保資金供給オペレーション(固定金利オペ)を新たに導入し、やや長めの金利の低下を促す措置を実施してきている。4月以降、企業金融支援特別オペレーションの残高が漸次減少していくことを踏まえ、固定金利オペを大幅に増額することにより、やや長めの金利の低下を促す措置を拡充することとした(注2)。』
で、この注2というのが反対2票という事ですが(^^)。
「やや長めの金利の低下を促す措置の拡充」ってえのですから追加緩和は追加緩和という事になりましたが、企業金融オペの代替に熨斗を付けて10兆円増額という理屈でやってきました。まあこれで「期末対策」とか言い出さなかっただけマシでしたが、4月になると特オペの残高が減るから実施するので3月に決定したというのもまあ頑張って理屈作りましたなという感じです。と申しますのも特オペの日程がこの通りでして。
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/mok0912b.pdf
何の事はない実はまだ特オペってあと1回実施されるんですけど、まあ確かに4月1日からは落ちていくのでその落ちの前に実施を決めるという意味ではこのタイミングという事になりますわな。そう考えるとどう見ても期末対策でも何でもないので、それを言わなくて良かったねという所ですが。
○で、反対2名とな
『(注2)須田委員および野田委員は、本文中、固定金利オペを大幅に増額することにより、やや長めの金利の低下を促す措置を拡充することについて、反対した。』
野田さんに関しては4日に講演を行ったら翌日の5日の日経朝刊にあの記事でございまして、あまりといえばあまりの展開になってしまいましたが、講演および会見で説明していたロジックを敷衍すれば反対というのは態度として一貫しています。須田さんも先日のシンポジウムか何かでの発言からしたら反対しても不思議では無かった所ですので、まあ反対になったんでしょう。
為替市場は最初この反対2名に反応したのか、単に市場予想通りの結果であったことから一旦材料が出尽くしただけなのか良く判りませんが、最初円高という反応をしましたが、その後は円安方向に振れた(ったって90円台の中での動きで誤差の範囲内だが)というややこしい反応で、最初の円高を見て為替系の何とかストとかの皆さんが情報ベンダーにコメントした記事が円安に振れ出した14時ごろに続々と出てきたのには爆笑の発作を禁じ得ませんでした(^^)がそれは兎も角。
しつこく申し上げておりますように、本来の政策枠組みがどうのこうのという本筋の話をするのであれば、4月から宮尾委員が加わる事でもありますし、展望レポートに物価安定の理解の確認という所で、例えば物価安定の理解に関して下限上限の表現を取っ払う(=中心値の1%だけ出す)とか下限のプラスの領域というのを引き上げるとか、そーゆーのが筋であって、正直本件はどうでも良い話だと存じますということで、筋論としての反対が入ったという事でしょう。大体からして景気認識に変化無いのに追加緩和とか筋通ってないし。
須田さんはやや微妙ですが、野田さんの場合は従来の講演での発言などを見ますと、金融機関の不良債権問題が経済に与える影響の長さや深さについて(銀行界出身だけに)より強い懸念を持っていると思われますので、別にタカ派は無いと思われます。で、その野田さんが反対したのは筋論で反対したという風に思えるのですが、これは議事要旨や議事録を見ないと何とも言えませんけどね。
○声明文の景気判断は上がっているのですが・・・・
まあここもとの経済指標全般的に強いですもんね。
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k100317.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k100218.pdf(前回)
『わが国の景気は、国内民間需要の自律的回復力はなお弱いものの、内外における各種対策の効果などから持ち直している。』(今回)
というのがそもそも変わっていませんし、その後もここまでは同じです。
『すなわち、内外の在庫調整の進捗や海外経済の改善、とりわけ新興国経済の強まりなどを背景に、輸出や生産は増加を続けている。』(今回)
で、その後が設備投資で上方修正。
『設備投資は概ね下げ止まっている。』(今回)
『設備投資は下げ止まりつつある。』(前回)
個人消費は変わらずで、公共投資を下げています、ってつまり政府は足を引っ張っているだけだというのが良く判りますな(-_-メ)。
『個人消費は、厳しい雇用・所得環境が続いているものの、各種対策の効果などから耐久消費財を中心に持ち直している。公共投資は減少している』(今回)
『個人消費は、厳しい雇用・所得環境が続いているものの、各種対策の効果などから耐久消費財を中心に持ち直している。公共投資は頭打ちとなっている。』(前回)
金融環境は変化なし。
『この間、金融環境をみると、厳しさを残しつつも、改善の動きが続いている。』(今回)
物価認識では経済全体の需給に関する言及に変化が(^^)。
『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、経済全体の需給が緩和状態にあるもとで下落しているが、その幅は縮小傾向を続けている。』(今回)
『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、経済全体の需給緩和から下落が続いているが、石油製品価格の動きなどを反映し、下落幅は縮小している。』(前回)
これはまた微妙な文学ですが(^^)、緩和というのが緩和「状態」になるのは、超微妙な上方修正で、縮小傾向を「続けている」というのはこれまた微妙ですけれども、物価下落幅の縮小がトレンドになっていますよというアピール感は伝わって来るのであります。
○声明文の先行き判断とリスク要因は見事に同じ
なので引用だけ。
『先行きの中心的な見通しとしては、2010 年度半ば頃までは、わが国経済の持ち直しのペースは緩やかなものに止まる可能性が高い。その後は、輸出を起点とする企業部門の好転が家計部門に波及してくるとみられるため、わが国の成長率も徐々に高まってくるとみられる。物価面では、中長期的な予想物価上昇率が安定的に推移するとの想定のもと、マクロ的な需給バランスが徐々に改善することなどから、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比下落幅は縮小していくと考えられる。』(今回)
『リスク要因をみると、景気については、新興国・資源国の経済の強まりなど上振れ要因がある一方で、米欧のバランスシート調整の帰趨や企業の中長期的な成長期待の動向など、一頃に比べれば低下したとはいえ、依然として下振れリスクがある。また、最近における国際金融面での様々な動きとその影響についても、引き続き注意する必要がある。物価面では、新興国・資源国の高成長を背景とした資源価格の上昇によって、わが国の物価が上振れる可能性がある一方、中長期的な予想物価上昇率の低下などにより、物価上昇率が下振れるリスクもある。』(今回)
毎度見ているのでしまいには暗記しそうです(^^)。で、決意表明文では今回の措置に言及している部分は当然違うのですが、その他では「今後とも」という文言が入っているのがチャーミング。
『日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することが極めて重要な課題であると認識している。そのために、中央銀行としての貢献を粘り強く続けていく方針である。今回のやや長めの金利の低下を促す措置の拡充もこうした方針に基づくものであり、金融政策運営に当たっては、今後とも、きわめて緩和的な金融環境を維持していく考えである。』(今回)
『日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することが極めて重要な課題であると認識している。そのために、中央銀行としての貢献を粘り強く続けていく方針である。金融政策運営に当たっては、きわめて緩和的な金融環境を維持していく考えである。』(前回)
さてこの「今後とも」とは何ぞやという所ですが、英文での声明文を見るとこのようになっております。該当部分だけ引用(^^)。
http://www.boj.or.jp/en/type/release/adhoc10/k100317.pdf
『in the conduct of monetary policy, the Bank will continue to aim to maintain
the extremely accommodative financial environment.』(今回)
http://www.boj.or.jp/en/type/release/adhoc10/k100218.pdf
『In the conduct of monetary policy, the Bank will aim to maintain the extremely accommodative financial environment.』(前回)
「continue to」というのが入りましたな(^^)。
○相変わらずの自分は働かずにクレクレ状態の政府閣僚
冷静に考えたらトップがママンから月の小遣い1500万両とかなのですから、自分は働かずにクレクレ状態なのは仕様なのかもしれませんが、もはやドラ息子というよりは継続的なゆすりたかりの域に近づいてきていると申し上げざるを得ませんとか言うと悪態にも程がありますかそうですか。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=a45JqtEA8LYs
菅氏:デフレ脱却へさらなる政策決定と評価−新型オペ拡充(Update1)
『一方で政府・日銀の定期協議について「オフィシャルに懇談する機会があってもいいと思っている」と述べ、前向きに検討する姿勢を示した。』(上記URLより)
・・・・今後も圧力を掛ける気満々です本当にありがとうございました。
何かね、もう支持率低下を景気で何とかしようとして日銀に圧力掛け続けるとか、何が財金分離の精神で武藤総裁に反対だよと存じますが、他の閣僚も碌な事言いませんな。
それから、日経の本紙の記事になってた割にその後ネットに出てこないのですが、先日もそうですし折に触れて「外為特会見直し」の話が財務大臣や財務副大臣辺りから出てくるのですが、円高でデフレ進行とか言ってる状態なのですから、外為特会見直しって円安方向の材料になり得ない話をする時点でセンスがゼロというよりマイナス無限大なのでありまして、そこまで真剣にデフレを懸念しているのでしたらば財務大臣の権限なんですから為替介入すりゃいいじゃんと思うのですがねえ(まあ米国が激怒しそうですし、中国の為替政策に文句言えなくなる話だから無理筋でしょうし、ついでに言えば介入して本当に為替が動いてくれるのかも判りませんけどね)。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=auH9_626ngws
平野官房長官:追加的なデフレ対策も−日銀決定は歓迎(Update1)
『平野氏は、追加経済対策の必要性について「現状、上向いてきたという流れの中にデフレの状態が続いている、このことをしっかりと受け止めた対策が必要なのかなということは考えられる」と語った。』
・・・・「必要なのかなということは考えられる」って何と言う緊張感の無いお話。まあ大体からして高校無償化法案でコアCPIが0.4%だか0.5%だか下がるというような物を通しておいて(実質的には関係ないけど、統計数値で物価下落が進行したらそれはそれでマインド悪化するでしょ)「デフレ対策が必要なのかな」とか頭がプリオン状態になっておられるのではないかと。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=ahcCdNwl9ixc
鳩山首相:日銀の金融緩和を歓迎、政府が期待している方向(Update1
『首相は日銀の決定について「基本的に日銀の今回の対応を歓迎する。政府は日銀が機動的にデフレ克服のために政策を行動で示してくれるということを期待しているし、今回のこのようなデフレ克服に向けての、ある意味でのさらなる金融緩和の方向というものは政府が期待をしている方向だと思っている」と語った。』
「期待をしている方向」とか政府が圧力掛けて差し込みましたと思いっきり言っているのに等しい訳ですが(まあ他の人達の言い方はもっと強いトーンですが)、相変わらず自分たちの手柄にすることだけは熱心という現内閣のテイタラクを良く示したコメントではあると存じます。
とまあそういう事で、今回の措置って普通に外野から見たらどう見ても政府が差し込んだという風にしか見えないのに、それをわざわざ補強するような話を閣僚がそろって発言するとか、経済の成熟した先進国での出来事とは思えない状況が相次ぐ訳でございまして、これからもこの調子で支持率が低下すると益々日銀に圧力掛けて緩和させようとするのは明らかという事ですから、まあ材料出尽くしでも何でもなく、それよりも薬物依存症患者の如く益々そのクレクレ頻度が高まるだけではないかと思われます。
まあ正直申し上げて、あたくしと致しましては現内閣の皆様におかれましては、是非とも西方浄土にでもお出かけになられて頂けると大変に有り難く存じます次第なのでございますとでも言いたくなる所でございます。
○しかしまあ何ですなとテキトーに悪態
まあ政治に差し込まれてへんてこな事になっておりますが、これまたマズーだと思うのは白川総裁が国会とかで話す時はいつもの理屈を開陳している事でして、「原則論を披露」→「政治が差し込む」→「あっさり陥落」というコンボを続けているという格好になっているのはどう見ても都合が悪い。
確かに現政権がやってる事が支離滅裂というか行き当たりばったりにも程があるので、相手にするのも無理が多いのですが、どうせ差し込まれて突っぱねる訳でもないのであれば、最初から俊ちゃんスキームで「SARSの流行による経済への悪影響懸念」とかトンチキにも程がある理由で華麗に当座預金残高引き上げて大真面目に「緩和強化」と言うというような芝居を打てば良いのでありまして、今般の流れって外野というか金利系の市場的な見方からすれば、「政治の差し込みに異常に弱い中央銀行」という認識になって来ると思うのですよね。
今回の措置自体に既に限界に近い所まで低下している短期金利を下げる効果はあんまり無い(そういや2年新発を0.135%10億だけBBで買ってるお茶目な人がいたみたいですが、0.140%をあっさり10億叩かれたのはワロタです)のでござんすが、長い所って徐々に「このやたら外圧に弱い中央銀行と無茶苦茶にも程がある現政権の組み合わせっていうのが続くと通貨価値の毀損とかに繋がらないか」というようなことまで考え出しても正直おかしくないのじゃないかっていう懸念までしてくる今日この頃。大体からして「追加緩和」のニュースが出て以降長い所の金利が下がったかと言えば10年カレントの金利なんて3月5日(ニュースの出た日)の引けより高くなっている訳でございますし・・・・
いやね、それが日銀の「デフレ対策」が期待インフレ率の引き上げに繋がってその為に長期ゾーンの金利がその分だけ上昇したというのであれば別に良いのでございますが、その辺って結局の所出来上がりの金利しか見えないのでありまして(物価連動国債市場のBEIは1ミリも指標として使えない)、後付けで何とでも言える面があるのですが、漠然とした気持ちの悪いモノは無いでもないという所でございます。
もちろんあたくしは終末論者でも何でもないので、杞憂である事を希望しますがね。
#ということで謎の悪態になってしまいましたが、悪態の整理がつかないのも事実(^^)
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2010/03/17
○FOMCは景気認識を引き上げつつ肝心の所は維持ですが・・・
どちらかと言うと岡目八目じゃないけど、日本の人達の方が今回for an extended
periodが外れるとは予想してなかったんじゃないかなあと思うのだが、報道ベースでの反応を見ると米国市場ってマジでリスクとして認識してたのかよという感じですが、確かに微妙な部分で微妙にアレな所もあったり無かったりという感じの声明文だったりするのですよね。
今回の声明
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20100316a.htm
前回(1月27日)の声明
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20100127a.htm
・景気認識はあちこち改善してます
いきなり冒頭から変化しているのは労働市場に関して。
『Information received since the Federal Open Market Committee met in January
suggests that economic activity has continued to strengthen and that the
labor market is stabilizing. 』(今回)
『Information received since the Federal Open Market Committee met in December
suggests that economic activity has continued to strengthen and that the
deterioration in the labor market is abating. 』(前回)
労働市場が安定してきているに改善しとりますのう。でもってその後もこんな感じだす。
『Household spending is expanding at a moderate rate but remains constrained
by high unemployment, modest income growth, lower housing wealth, and tight
credit. 』(今回)
『Household spending is expanding at a moderate rate but remains constrained
by a weak labor market, modest income growth, lower housing wealth, and
tight credit.』(前回)
家計消費支出の拡大に関する認識は同じなのですが、ここでも拡大を抑制する要因としての労働市場に関して「弱い労働市場」を「高い失業率」に変更するという細かい芸を見せています。
で、何気にこの次の書き方が色々と変わっているのよ。
『Business spending on equipment and software has risen significantly.
However, investment in nonresidential structures is declining, housing
starts have been flat at a depressed level, and employers remain reluctant
to add to payrolls. 』(今回)
『Business spending on equipment and software appears to be picking up,
but investment in structures is still contracting and employers remain
reluctant to add to payrolls. Firms have brought inventory stocks into
better alignment with sales. 』(前回)
企業の支出に関する部分の判断を更に引き上げていまして、設備投資に関する部分は従来一緒くたで調整中という形だったのが、nonresidential
structuresとhousing startsに分けて住宅投資が下げ止まったという言い方になってまして、売上の改善と共に在庫を引き上げ(って事ですよねこれ)って部分が抜けているのはよー判らん。消費そのものに関してはさっき引用したように見通しに変化は無いですからにゃあ。
『While bank lending continues to contract, financial market conditions
remain supportive of economic growth. 』(今回)
ここは前回と同じなので前回分の引用は省略。
・んで肝心な所は変化無いのでありますが
資源の活用状況(って言えばいいのか?)とインフレに関しては前回と同じであります。第1パラグラフの最後と第2パラグラフですな。
『Although the pace of economic recovery is likely to be moderate for a
time, the Committee anticipates a gradual return to higher levels of resource
utilization in a context of price stability. 』(今回)
『With substantial resource slack continuing to restrain cost pressures
and longer-term inflation expectations stable, inflation is likely to be
subdued for some time.』(今回)
とまあそういうことで、低金利継続がどうのこうのという話をする前提の部分が同じなので第3パラグラフ頭の注目の一文も同じなのでありました。
『The Committee will maintain the target range for the federal funds rate
at 0 to 1/4 percent and continues to anticipate that economic conditions,
including low rates of resource utilization, subdued inflation trends,
and stable inflation expectations, are likely to warrant exceptionally
low levels of the federal funds rate for an extended period.』(今回)
・何気に芸が細かい変更があるような気がするのはあたくしの読み過ぎでしょうか
で、その次はいつもの「モーゲージ貸出と住宅市場のサポートおよび民間クレジット市場の全体的な環境を改善する為に実施している各種買入に関しては現在粛々と規模縮小および終了しますがな」という話です。当然ながら閉店に向けての進行中なので前回と書き方は違ってきますがそれは本質的な問題ではないと思いますので、今回分だけ引用。
『To provide support to mortgage lending and housing markets and to improve
overall conditions in private credit markets, the Federal Reserve has been
purchasing $1.25 trillion of agency mortgage-backed securities and about
$175 billion of agency debt; those purchases are nearing completion, and
the remaining transactions will be executed by the end of this month.』(今回)
んでもって今後の所ですが、従来は「金融市場環境に変化あるいは見通しに変化があったら買入規模を見直す=買入終了しません」という言い方をしていましたが、今回は「景気回復や物価安定に必要があったら必要な政策ツールを使います」と言っているのがこれがまた(あたくしが勝手に思っているだけなのかも知れませんが)芸が細かいと思うのですがどうでしょう。
『The Committee will continue to monitor the economic outlook and financial
developments and will employ its policy tools as necessary to promote economic
recovery and price stability.』(今回)
『The Committee will continue to evaluate its purchases of securities in
light of the evolving economic outlook and conditions in financial markets.』(前回)
これってよくよく考えると「物価安定の為に必要だったら超過準備の吸収措置を実施しますよ」という方向にも解釈できるのでありまして、いやまあその点については最近出口戦略に向けての説明をせっせとしている流れからすれば変ではないのですが、バーナンキやイエレンの講演見ているとそんなにとっとと出口に行く感じもしないのですが、ここの所の微妙な変化は出口政策の進展に関して前のめりにも読める(どっちにも解釈できる書き方だが、前回までは「やばかったら出口プログラムを止める」方向でしか書いていないのですから)のでちと気になる所でござる。
・各種流動性プログラムに関して
次のパラグラフは前回対比チョー短くなっているのですが
『In light of improved functioning of financial markets, the Federal Reserve
has been closing the special liquidity facilities that it created to support
markets during the crisis. The only remaining such program, the Term Asset-Backed
Securities Loan Facility, is scheduled to close on June 30 for loans backed
by new-issue commercial mortgage-backed securities and on March 31 for
loans backed by all other types of collateral.』(今回)
でもって今回消えた文言は
『The Federal Reserve is prepared to modify these plans if necessary to
support financial stability and economic growth.』(前回)
っていう所でありまして、まあ確かに終了の巻なので今更modifyもへったくれも無いのですが、ここに関しても先程の表現と同様に出口モードっぽい雰囲気は出していますな。
・ホーニッグさんの反対理由がより強くなっています
票決は賛成多数。
『Voting for the FOMC monetary policy action were: Ben S. Bernanke, Chairman;
William C. Dudley, Vice Chairman; James Bullard; Elizabeth A. Duke; Donald
L. Kohn; Sandra Pianalto; Eric S. Rosengren; Daniel K. Tarullo; and Kevin
M. Warsh. 』(今回)
で、ホーニッグさんの反対票ですが、今回はその反対理由がより強いトーンになっています。
『Thomas M. Hoenig, who believed that continuing to express the expectation
of exceptionally low levels of the federal funds rate for an extended period
was no longer warranted because it could lead to the buildup of financial
imbalances and increase risks to longer-run macroeconomic and financial
stability. 』(今回)
『Voting against the policy action was Thomas M. Hoenig, who believed that
economic and financial conditions had changed sufficiently that the expectation
of exceptionally low levels of the federal funds rate for an extended period
was no longer warranted.』(前回)
前回は「『経済および金融の環境は十分に改善したので』FF金利をfor an extended
periodにexceptionally low levelsとする事は既に正当化されない」という言い方でしたが、今回に関しては「FF金利をfor
an extended periodにexceptionally low levelsとすると『金融の不均衡や長期的なマクロ経済や金融環境の安定に対するリスクを拡大する』」と要するにバブル懸念という意味だと思いますが、まあ反対のトーンがかなり強くなっていますな。
つーことで、日本の例から考えて「そんなに早々に利上げとかねえだろ」と思うあたくし(というか結構日本ではそう思っている人多いと思うのだが)ではございます(議長副議長などがハト的な見解を折に触れて示している点もあるし)が、米国で年内利上げがどうのこうのとかマジで言ってるのもなるほどねえと思った朝のひとときでございました。
#ということで寝起きで前回と比較しながら読んでみましたが、何せあたくしのインチキ英語力なので原文は何だかんだと言いつつ今回分は全部引用しているから正しい解釈は英語を読んで下さいませなのです(汗)
○で決定会合ですが
えーっとですな、まあ色々レポート出てるからお気づきだと思いますが、暫く前にあたくしが特オペの残高書いた時に手元の計算間違えてまして(1本分加え洩れがあった)、9日に書いた数字から3000億円ちょっと多い数字が正解でして、実際の特オペ残高は昨日時点の残高が5.4兆円とです。過去ログには訂正入れておきましたです。お詫びはしますが賠償は致しません。
で、まあ新型オペの拡充に関してですが、額を20兆円にするのは良いのですけれども、昨日の時点での各種資金供給オペを計算すると(一応2月末時点でのオペ残高は東京短資さんのページにあったオペ残高推移で照合しておきましたが、例によってあたくしの手元集計ベースですので間違ってたらゴメンナサイ)、共通担保オペの金利入札方式が25兆円、指値方式(=新型オペ)が10兆円、国債買現先が3兆円、CP買現先が2兆円、企業金融特別オペが5兆円(全部四捨五入してますが、実際は新オペ9.6兆で特オペは5.4兆です)ということで、合計で45兆円という計算になります。
つまり、特オペって増やすのも結構限界があるという話でして、20兆円にした後で期間を6か月にしようとすると、オペオファーの頻度を下げないと(例えば今回20兆にする時に8000億円週2本にしておいた場合は期間延長時してそのまま週2本8000億円打つと実施額が40兆円になる)他の短期オペ(って新型オペも短期ですけどまあそこは比較の問題ということで勘弁)を打つのがえらく窮屈になるという話になりますわな。特に財政要因などで資金が余剰になる時には、ツイスト打たないと足元の資金偏在を均せないというお洒落な事態になる悪寒がしますが、何せツイスト打ったら物凄い勢いで金融引き締めとか外野から言われるでしょうからツイストは打てずという事で、これはまあややこしい事になりますな。
とまあそんなテクニカルな事を考えますと、新型オペって30兆台までは行けるのかもしれませんけれども、意外に増額余地が無いのねという事をつらつらと考えてみた所なのでございます。だからどうしたと言われても困りますが(^^)。
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2010/03/16
お題「決定会合前であれこれと/イエレン講演続き(ちょっとだけ)」
民主党が統治以前のテイタラクだというのに、自民党で俺が俺がと言ってる連中はアホか馬鹿かと・・・・orz
○しかし不思議ではあります
株式市場のコメントから。
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-14320220100312
来週の株式市場、一段の金融緩和なければ海外勢の失望売りも
2010年 03月 12日 19:12 JST
『[東京 12日 ロイター] 来週の東京株式市場は、堅調地合いが続きそうだ。日銀が一段の金融緩和策に踏み切るかどうかが最大の焦点となる。』(上記URLより)
・・・・・国内円金利の市場は全くと言っていいほどどうでも良し状態になっているのに何故最大の焦点???
『緩和に踏み切った場合には、円安/株高に振れるとみられるが、材料出尽くしで売りに転じる可能性も指摘されている。』
・・・・・だから今言われている追加緩和措置が出ても短期金利は全く動かない(理由は既に下がり切っているから)のですが、緩和で為替が動くとか材料出尽くしになる(いやあの別に特別オペの拡充以外にもやろうと思えばやることあるのですが)とか意味分からん。
為替市場のニュースから。
http://jp.reuters.com/article/forexMarketOutlook/idJPnTK037039720100315
〔外為マーケットアイ〕ドル90.70円付近、菅経済財政担当相は日銀決定会合控え「直接的な言い方はしない」
2010年 03月 15日 17:59 JST
まあ表題の発言に関してはもう何を寝言を言っているのかと呆れ果てる次第でありますが、その後のコメントがこれまた意味判らん。
『ただ、市場は新型オペの拡充をかなり織り込んでおり「規模を10兆円拡大して20兆円とし、期間を6カ月まで引き延ばすのが追加緩和としては最大。ここまで出れば材料出尽くしで追加緩和観測は終息する。』(上記URLより)
えーっと、新型オペの拡充は小手先の問題で、金利市場としては本来的には物価安定の理解をどうするかとか展望レポートでの見通しやリスク評価がどうなるのかというような点が本来的な意味のある話でありますので、新型オペ拡充で出尽くしとかアホじゃねえのかという感じなんですけどねえ。
#期間を6か月に拡大したら(実施ペースが同じなら)勝手に20兆円になるのだが
『それ以上の緩和を考えるとすれば、国債買い入れの増額など(マネタイズの観測を生む)悪い緩和になる」』
意味が判らんのだが、国債マネタイズ観測を生んだら円安がもっと進行するんじゃないのかと思うのだが、まさか悪い緩和って日本の長期金利が上昇すると為替は円高になるとか意味不明にも程がある話をしているのでしょうか????
なお、どこの誰が発言しているかは一応引用しませんでしたので念の為申し添えます(^^)。
まあしかし何ですな、政府が景気認識を上方修正しながら日銀に追加緩和を要請するとか、最早何をやっているのかサッパリ判らん国になっておりまして、これじゃあ海外投資家が「この国は何を考えているのか判らん」とばかりに投資をしたくなくなる(5日に急に飛び出た追加緩和報道および前日の相場動向に関しても日本市場の不思議ちゃん振りに随分と評判が悪かったと仄聞しておりますが)のではないかとゆー話ではございますな。
で、ここもとのマインド指数が全体的に良い内容になってまして(と考えると麻生補正の執行停止とデフレ宣言が無かったら(というか政権交代が無かったら、ですかねえ)もうちょっと立ち上がりが早かったのではないかと思われるのでありますが)、そうなると短観がそこまでメタメタな内容になるとも思えません(がそんなに良くは無いでしょうね)し、逆に追加緩和をする名目に益々無理筋成分が高まって来るので、3月に追加緩和(というか緩和措置の強化という言い方になりそうだが)するのも一つの考え方かもしれませんね(^^)。
いずれにせよ今回何かやるとなりますと、その理屈をどうでっちあげるのか(本筋だったら物価下落をリスク認識ですし、こじつけコースだったら現在固定金利で実施している企業金融オペを同じ固定金利の新型オペで継続しつつニーズに応える為に10兆円実施とでも言うのでしょうか)という点をヲチャー的にはニヤニヤしながら眺めるのでありました。
○新しい審議委員は産業界から(金曜のネタですが)
http://www.asahi.com/business/update/0312/TKY201003120218.html
日銀審議委員に森本・東電前副社長提示 国会同意人事案
東京電力からは以前もこれまた副社長を務められた春英彦さんが審議委員になられた事がありまして、同じ企業から2人目というのは新法になってからは初めてですかね。
で、こうなりますと田谷さん→水野さんと続いたエコノミストなのか証券系という括りなのか知りませんが、まあその席が無くなって我こそはと思っておられた一部の何とかストの皆様におかれましては誠に痛惜の念を禁じ得ませんという所でございますな、あっはっは。
という話はどうでも良いのですが、資産大公開されて任期中には株式売買みたいなこともできず、ついでにフルタイムでこき使われてプライベートな時間も十分に取れず(休暇で出掛ける先も片道1日掛かりみたいな所には行けないんじゃ無かったでしたっけ)金融のクソ細かいマニアな事でああでもないこうでもないと言われるという大変なお仕事ではございます。これが金融業界の人とか学者さんだったら本人に箔も付きますが、東京電力副社長だったら別に箔がどうのこうのという話でもなく、恐らくは収入もダウンするでしょうな。公にご奉仕の心でお引き受けになられたかと存じます次第でございます。
つーことで、産業界の人が増える訳ですが、その事によってどうこうというのはそもそも森本さんがどのようなお考えを持っているのかとかは残念ながらあたくし全く存じ上げませんので何とも言いようがありませんが、実体経済の現場の雰囲気を金融政策決定会合により伝えられるような流れになって頂ければいいのかなあとか漠然と思うあたくしでした。
○とか書いているうちにイエレン講演の時間が無くなったので
ジャネット姐さんの講演続きは明日も続きます予定になってしまいましたが。
http://www.frbsf.org/news/speeches/2010/janet_yellen0222.html
http://www.frbsf.org/news/speeches/2010/janet_yellen0222.pdf
・オークンの法則がどうしたこうしたというような話の結論を先に
昨日の続き部分は失業率に関する現状認識というか現状分析が結構長く説明してございまして、その中身は(アホのあたくしでも何となく)なるほどこうやって色々と考えるのですねという感じがしてこれはこれで興味の深い所なのですが、そこをやっていると時間がないざますので、その結論に掛かる部分になります。上記PDFの9ページ目後半以降になりますが。
『There is an alternative explanation regarding the events of last year
though that bodes poorly for rapid employment gains going forward. According
to this view, last year’s large increase in productivity is here to stay.
In that case, we won’t see a quick drop in unemployment and may be in
for a jobless recovery akin to those in the early 1990s and early 2000s.
This is closer to my view and broadly consistent with my forecast.』
その前の理解を端折ったので何ですが、まあ要するに今次回復はジョブレスリカバリーになるというビューにイエレンさんも同意しているという事で、それを基に経済予測を立てていますという話っすな。
『According to this perspective, the recession has forced businesses to
reexamine just about everything they do with an eye toward restraining
costs and boosting efficiency.』
『Strapped by tight credit and plummeting sales, businesses have overhauled
the way they manage supply chains, inventory, production practices, and
staffing. Stores don’t order merchandise unless they think they can sell
it right away. Manufacturers and builders don’t produce unless they have
buyers lined up.』
『My business contacts describe this as a paradigm shift and they believe
it’s permanent. This process of implementing new efficiency gains may
have only begun and we may be in store for further efficiency improvements
and high productivity growth for some time. If so, the rate of job creation
will be frustratingly slow.』
てなわけで、まあ今回のリセッションによって経済活動に根本的な変化が生じており、生産性の向上(その前の部分で話をしているのですが、ここでの生産性向上は生産は拡大するけれども雇用が拡大しないという話のようです、その前では生産が横ばいで雇用が減る状況について話をしていました)はするけど雇用は拡大しないという事になって、雇用創出ペースは「いらいらするほど」遅れるという所でしょうか。
そのほかはまた後日(汗)
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2010/03/15
お題「イエレンさんが副議長になることですし」
イエレンSF連銀総裁がFRB副議長に就任予定ということで、折角ですので先日のイエレン講演でも読んでみようかと。
http://www.frbsf.org/news/speeches/2010/janet_yellen0222.html
http://www.frbsf.org/news/speeches/2010/janet_yellen0222.pdf
HTMLとPDFの違いで中身は同じです。
○景気に対してはハト派であるのはご案内の通り
内容ですが、半分以上が経済見通しでして、その後ちょっとだけサンディエゴ経済の話があって、最後は出口戦略の話をしておりますです。
で、その経済見通しの中でやたらめったらスペースを割いているのは労働市場問題でして、当然ながらその労働問題はダメダメ感が漂っている、ということで話のトーンはハト派になっているってこってすな。でまあ労働市場なんてそう簡単に回復するもんじゃないですから、結論として緩和的な金融政策が長引くんでしょうなあという感じです。
また、出口戦略の説明の中では、そもそも論として出口戦略以前の所でインフレ懸念に対して、経済のスラックがインフレを抑制するという立場にたっているという事を明言して、これまたインフレに対しては懸念が低いという発言でこれまたハト的。
まあこの辺りは基本的にFOMCメンバーの中心的見解でもあるのですけれども、労働市場の問題についてやたらと説明しているのが印象に残る感じではございます。
○失業率は許容しがたい高さとな
講演の冒頭で経済の状況について説明があるのですが。
『Given the dismal economic news we faced for so long, it’s a great relief
for me to report that the tide appears to have turned. We are seeing convincing
evidence that an economic recovery is well under way. Still, as I’ll explain
in greater detail in a few minutes, the fact that the economy is growing
again doesn’t mean we’re where we ought to be. Far from it. In particular,
the unemployment rate is unacceptably high, creating real hardship for
millions of Americans. But, at least we’re heading in the right direction.』
ということで、景気に関しては回復傾向にありますという話はしていますけれども、そんなに力強いものではないという事でして、特に失業率に関してunemployment
rate is unacceptably highだそうですな。
んでもってその続きではGDPが好転している話を説明していまして、その主因としては在庫復元だという話をしていますがそこはスルー。
その次に消費支出の回復の話をしていますが。
『On that front, the most recent data show consumers releasing somewhat
their tight grips on their wallets. But that doesn’t mean that people
have thrown caution to the wind and returned to their spendthrift ways.』
財布のひもが緩むってのを米国的に言うと上記のようになるのね(^^)。で、その次にあるように、そうは言っても以前のような浪費モードじゃないよと。
『Indeed, my business contacts tell me the consumer mindset is still in
a fragile state. Clearly, the big weight hanging over everyone’s heads
is jobs.』
ということで個人消費を抑制しているのは雇用環境ですよとして、この後やたら説明をしていますがそこはスルー。
○MBS買入終了後の住宅市場に関して懸念を示す
住宅市場に関しては回復しているけれども力強い回復ではないという話をしていまして、その要因として税制によるサポートと「低金利」を挙げてしらっと金融政策のアピールをしています。で、そのサポートに関しては、税制のサポートが外れるし、MBSの買入終了後に金利が上昇した場合には住宅市場が再度悪化するのではないかという懸念を示しています。というパラグラフを途中から。
『Existing home sales surged late last year in response to the homebuyer
tax credit. But, the credit expires this spring, so this source of support
won’t be around much longer. The housing sector has also been benefiting
from the Fed’s policy of buying mortgage-backed securities. These purchases
appear to have helped keep home finance rates low. But, the Fed is now
in the process of tapering off these purchases and plans to stop them at
the end of March.』
んでもって、懸念の部分は以下の文。
『As support from Federal Reserve and other government programs phases
out, there is a risk that the housing market could weaken again.』
○金融環境に関して
で、その後は企業活動に関する見方があって、リセッション後の回復にあたってはその記憶が残っている間は企業はどうしても慎重になりますなという話をしてますけれどもそこをスルーしまして、特に中小企業において金融環境が依然として障害になっているという話をしてます。また、直近でクレジットクランチを見ているだけにどうしても保守的になると言う話を。
『Even for those businesses ready to expand?especially smaller ones?financing
remains an impediment. Credit is becoming more available, but terms such
as collateral requirements can be onerous.』
『What’s more, the crisis made businesses keenly aware that they can’t
count on being able to get credit. Some of my contacts say they plan to
keep more cash on hand, rather than investing it, as protection against
a renewed credit crunch.』
まあそうですよね〜という感じです。
その次には商業用不動産市場の話がありますが、これはまあダメダメですよという話をしていますがそこはスルー。でもって銀行の回復が必要という話がその先に。
『In addition to some of the weak spots I already mentioned, a number of
other factors are holding back recovery. 』
ということなのですが。
『First, even though the banking and financial systems are gaining strength,
they still bear wounds from the financial crisis, and these will take a
long time to fully heal.』
『Second, losses on mortgages, commercial real estate credits, and other
loans continue to mount, and the full weight of foreclosures and bank failures
on the economy has yet to be felt.』
傷の回復には時間がかかるわ、今後も商業用不動産関連与信を中心に不良債権の発生は続くわという明るくない話ですな。
『Finally, the Fed, as well as central banks in other countries, has faced
limits in the amount of monetary stimulus we have been able to generate.』
金融緩和余地は限られているという話をしてますな。正直でよろしい、というか白川総裁が同じような事を言ったら(金融市場以外からは)総叩きになりそうな話ですなあ(^^)。
『That’s because we can’t push interest rates below the near-zero level
where they’ve been for more than a year. To be sure, we’ve developed
many innovative programs to make credit cheaper and more readily available.
But, all in all, monetary policy can’t give the same kick to the economy
that it delivered in past recoveries.』
全く仰せの通りでございまする。
○回復はするけれども当面は潜在成長力を下回る回復です
ということで、その先には今後のGDPなどの見通しがあるのですが、来年いっぱいまでは潜在成長を下回る成長が続くと予想していまして、産出ギャップ(だと思うけど、output
gapって書いてるので間違ってたらすいません)に関しては、現在のマイナス6%から2011年にはマイナス3%となるが、解消するのは2013年という話をしています。
で、そのギャップ縮小が遅れると「我々全ての最近の主要な懸念」である雇用環境が改善しないという話をしていて、これまた雇用の話が出ましたなという感じですが、ここから延々と労働市場の分析が始まるのであります。PDF版で言いますと、ここまでが全体で15ページある中の6ページなのですが、そこからほとんど3ページを使って延々と労働市場に関する説明をしているのですな。
○労働市場には微かに光もあるが
現状が悪いという話をした後に、先行きには微かに光もありまして、失業率が低下したとか、一時的な雇用に関しては改善しているという話をしていますが、やはり結論はこうなっています。
『Nonetheless, given my forecast of moderate growth and a shrinking, but
still sizable, output gap, I expect unemployment to remain painfully high
for years. The rate should edge down from its current level to about 9-1/4
percent by the end of this year and still be about 8 percent by the end
of 2011, a far cry from full employment.』(機種依存文字があったので改変しました。9-1/4の所ね)
んでもって、その見通しに不確実性があるということで、分析を色々としているのでありますが、時間と量の関係で以下は割愛、というか明日のネタで勘弁。
ちなみに、じゃあ何ですねんという話ですが、オークンの法則に関する話(って書いてるあたくしも無知無学によってよー知らんが、経済回復で失業率が改善する時には、潜在GDPと実際のGDPの差分の増加(だから実質GDPの改善幅なのか?)の半分の%で失業率が減りますということだそうな)をしてて、それに当てはめると2011年には1%失業率が低下しますって話をしてますが、2009年の大幅な失業の悪化を説明できていなくて、これは労働市場のファンダメンタルズの変化を示しているのではないかという説明と、他の仮説を説明していますです。
まあややこしい話は明日なのですが、結論としてはイエレンさんは今次回復に関してもいわゆる「ジョブレスリカバリー」となる事を展望しているようです。まあそう考えますと労働市場に関するイエレンさんの見方はかなり厳しいのではないでしょうか。
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2010/03/12
○追加緩和がどうのこうの
インターネットで該当記事を見つけられなかったのでソースが張れなくて申し訳ないのですが、昨日の夕方に共同通信が「日銀、追加緩和の検討に入る」という記事を出していまして、今朝の日経にもそんな記事があるそうですな。で、その共同記事を見て???と思ったのですが、共同は「11日に検討に入った
という記事の書き方をしてたんですよね。
・・・・えーっとあのその決定会合は来週なんですけれども何故昨日から検討に入るのかがさっぱり判らないんっすけど???
まあここもとの流れは金融政策のロジックがどうのこうのという点からしたらもう訳判りません状態でして、最近の狂想曲には本石町日記さんとこも呆れて観察中というのが判る訳ですが(えーっと話は全然違いますが、ついったーってえのはブログの更新が止まる魔物ですなあ。あたしゃブログ以前の人なのでよー知らんが)、→http://hongokucho.exblog.jp/12967001/結局の所綺麗に言えば「金融市場以外の他市場などのマインドなどにも広く働きかける」政策という所でしょうから(敢えて身も蓋も無い言い方はしない^^)ややこしい事はキニシナイ。
正直言って他市場あるいは政治家様あるいは日経新聞様(^^)あたりにおかれましては、何だか知らんが毎月のように追加緩和政策をしろとでも仰せのようでありまして、あのその金融政策ってそんなに毎月ホイホイ変更するものでもないのですがと通常より金融政策回りをメシの種の一環にしているあたくしなんぞは思うのであります(具体的にはこの辺とか、と言いましても記事中身は日経ヴェリタス読者向けページなので最初の数行しか読めませんが→http://veritas.nikkei.co.jp/bojwatcher/index.aspx?id=MSFZ1000O%2010032010)けれども、そーゆースカタンを相手にして「マインドに働きかける」というのも大変ですなあという所で。
本来もうちょっとちゃんとした事をというのであれば、4月の展望レポートや物価安定の理解の所での議論をすべきであって、3月に何かやるとするとどう見ても「金利市場的には既に織り込んでいる状態のものを緩和扱いですかそうですか」という話になっちゃうので本質論にならないという点でどうかと思いますけどまあいっか。
ところで、昨日は野田財務副大臣からこのような発言が。
http://jp.reuters.com/article/domesticEquities2/idJPnTK038668020100311
UPDATE1: デフレに日銀も危機感、来週の決定会合に注目したい=野田財務副大臣
えーっと、政府は危機感を持って何を実施されておられるのか全く理解致しかねるのですが、実施してるのって日銀に何かやれ攻撃をするだけだとしか思えませんが何のギャグでしょうかねえ。と思ったらそういう事を言われるのを最近はちったあ意識しているのか、良く良く見ると発言にはこんな部分もあるのね。
>「政府としては(2010年度の)本予算を通すことが最優先」と指摘。
・・・・はて?本予算は衆議院通過したから放置プレイでも(ちゃんと審議してくれとは思うけど)成立は確定しているのですが、まさか参議院での予算審議を自分たちが何もしないで日銀にクレクレ言う事のエクスキューズにする積りでございましょうか。全く意味が判りませんが。
しかしまあ経済見通しを引き上げて緩和というのも中々こう香ばしいものがございまして誠に結構な話です。
http://www.47news.jp/news/2010/03/post_20100311113320.html
政府、景気判断を上方修正へ 3月経済報告、8カ月ぶり
ところで、何か日経新聞によりますと新型オペ20兆円に増額の方向という事のようで、珍しくもあたくしが本命とか書いたのが日経の本命になっていて、益々落馬あるいは落車の懸念がある訳ですが、落馬や落車は投票券が返還されませんのでフライング返還位で勘弁して頂きたく存じます(意味不明)という所で。
この調子ですと「週1回8000億円3か月で合計10兆円」という現状の新型オペは追加緩和の名目で「週2回8000億円3か月で合計20兆円」→「週1回8000億円6か月で合計20兆円」というオモシロコースになるのか(それだと途中で20兆円を維持していくのに変なテクニックを弄さないといけなくなりそうなので^^)、「週3回8000億円で30兆円」というコースになるのかという感じでしょうかねえ(^^)。ただまあ昨日も書きましたように、3か月のオペ残高があまり積み上がってしまいますと、短い所での微調節部分に皺寄せが来てしまいまして、資金の回りが悪くなるので、コールは下がり易いのにGCは資金余剰月になるとやたら確りしてしまうとかのような不思議相場になる事が予想されますので、実を言えば新型オペをむやみやたらと増やせば金利が下がるというもんでもないというのが奥の深い所でありまする。
と書いている事の理屈が判らない場合はお知り合いのレポ市場関係者にでもご質問してくださいませ(^^)。
○ヒマネタで金融政策決定会合議事録シリーズ:1999年7月16日の議事録から
例によって例の如く冒頭部分の金融市場の状況に関する山下金融市場局長の報告とその感の質疑応答なのですが、今の市場状況と比較してみると隔世の感があるというか何と言うか。まあ面白いと思うのはごく一部のマニアだと思いますけど構わず引用。
・皆が市場調達をするのでオペが札割れになるという現象(^^)
現在は市場調達よりもオペという世界になっておりますが(その要因は財政が大幅資金不足になって全銀ベースが大幅資金超過になってという資金保有構造の大きな変化があるので、別に昔が正しいとか今が正しいとかいう事ではありませんけど)、当時は皆が資金供給オペのタイミングまで引っ張らずに資金を市場調達するのでオペが不人気になるという今では考えられないお話。
1999年7月16日決定会合議事録本文7ページより。誤字脱字がありましたら勘弁。
『中原委員
本行オペの応札は低調になってきたのか。
山下金融市場局長
例えば、短国は6月7日のオペで0.71倍、手形買入が6月4日には完全に空振りになり、6月17日も札割れの状況である。5月、6月とイールドが非常にフラット化し、その中で資金供給が難しくなってきていた。その後金利先高感が生じ、ターム物の特に3か月あるいは6か月物が多少強含んできた時には、次第に応札倍率が上がってきたため、若干楽になった局面も一時的にはあったが、現在は、再び金利先高観が後退し、イールドカーブがフラット化してきているため、応札倍率が下がっておち、再び札割れが起きる可能性のある状況となってきた。
三木委員
オペと先日付で行うと当日物との間にこのような形で差が出るのか。
山下金融市場局長
最近は当日物金利が0.03%で安定しているため、各行とも私共のオペ以前の9時頃には皆取引を大体固めてしまう。従って0.01%や0.02%で資金調達ができるとしても、当日にわざわざ本行のオペに応じる事務処理コストをかけてまで資金を取る必要はない。もう十分だということになる。最近は都銀などでは明日スタートの翌日物についても0.03%で取れるため、次第に前倒しで調達を固めていくようになっている。従って、先日付でオペを打てば、0.01%や0.02%でとれるのであればマーケット・レート(0.03%や0.04%)よりはオペの方が有利だということになる。いずれにせよ明日や明後日の資金であればまだ全て固まっていないため、オペに入ってくる可能性が高まるという意味である。
三木委員
やはり流動性の心配がなくなったことと、金利が安定していることの二つから、こうした結果が出てくるということか。
山下金融市場局長
ご指摘の通りである。1か月以下のところは0.03%、ないし0.04%で完全にフラットになっているため、当日物は余り焦らなくても良い訳である。』
いやあ今とは全く違いますな。環境が違うとオペの打ち方とかも違いますし、市場慣行もまた変化するのでありまして、過去こうだったから今度こうやるとどうなるというのはあまり単純に考えるとエライコッチャになるのでしょうな。
・大阪コール市場涙目
その先で武富審議委員がコール市場の話をしていますが、まあ細かい話で(^^)。上記引用部分の続きで9ページ目からです。
『武富委員
コール市場残高の有坦比率が上昇している中で、大阪市場が厳しいと聞くが、それはコール市場全体の機能に対してダメージングな影響をもたらす状況ではないのか。
山下金融市場局長
基本的には大阪のレピュテーションの問題であり、コール市場の機能自体にマイナスの影響をもたらすものではない。大阪市場の取引規模が縮小しているのは、大阪に本店を置いている都銀等が地元に配慮して取引してきた資金調達・放出の額を減らしてきたことによるものである。現在は通信手段の発達等に伴い東京に全て繋いで取引すれば良い訳であり、大阪市場がなくなったといっても格別問題が起こる訳ではない。短資も大阪に人と建物を手当してコストをかけながら営業しており、東京に集約できればコスト削減が図れるメリットもある。
武富委員
短資会社の経営問題という側面からみて大阪に拠点を置くのは如何なものか。
山下金融市場局長
元々取引が大幅に減少しており、お荷物になっているのは明らかである。それを従来はそれなりに厚いスプレッドでカバーしてきたが、それが適わなくなってきており、各社とも真剣にリストラを考えている。大阪の拠点は将来的には大幅に縮小される状況になってくるとみられ、現にそうしたリストラの動きが出始めている。』
各社とも大阪に拠点はあったと存じますが、これはまた何と言う指摘。大阪に本店があった短資さんがいらっしゃった(まあ基本は東京でしたけど)と思いますが、というか名古屋に本店があった名古屋短資さん(今は合併してセントラル短資ね)もありましたが、決定会合の席でこんな話をされているとは涙目というか何と言うかという所ですが、そう言えばOIBORだのとか昔そんな言葉がありましたなあと感慨深いものがあります。
さっきちょっと各社のHP見たら、さすがに大阪が発祥の地であるだけに上田八木短資が東京本社のほかに大阪本社がある(登録機関が近畿財務局ですし)んですな。で、セントラル短資は山根、名古屋短資の流れもあって大阪と名古屋に支店があって、東京短資は大阪に支店ということで、大阪コール市場そのものはどうなのか存じませんが、大阪拠点はまだ存続していると言う事で誠に結構な事でございます(何が結構なのかというツッコミをしないように)。ちなみにセントラル短資と東京短資は登録機関は関東財務局でございまする。(各社HPより)
だからどうしたと言われると困りますが(^^)
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2010/03/11
まずはバーナンキ議長の議会証言(2月24日)ネタから少々。
http://www.federalreserve.gov/newsevents/testimony/bernanke20100224a.htm
○景気に関してはそんなに強気ではないのは変わらず
冒頭の景気見通しの部分ですが、現状の回復基調に関しては政策効果および在庫調整などのサイクルによる一時的なものであり、持続的な回復基調に乗る為には財やサービスに対する民間最終需要が継続的拡大するかどうかに掛かっています、という話をしているようですな。
『Although the recession officially began more than two years ago, U.S.
economic activity contracted particularly sharply following the intensification
of the global financial crisis in the fall of 2008. Concerted efforts by
the Federal Reserve, the Treasury Department, and other U.S. authorities
to stabilize the financial system, together with highly stimulative monetary
and fiscal policies, helped arrest the decline and are supporting a nascent
economic recovery.』
良く見たらここでも金融緩和の成果って話をしてるのね(^^)。
『Indeed, the U.S. economy expanded at about a 4 percent annual rate during
the second half of last year. A significant portion of that growth, however,
can be attributed to the progress firms made in working down unwanted inventories
of unsold goods, which left them more willing to increase production. As
the impetus provided by the inventory cycle is temporary, and as the fiscal
support for economic growth likely will diminish later this year, a sustained
recovery will depend on continued growth in private-sector final demand
for goods and services. 』
ということです。で、民間最終需要に関しては昨日引用したように、金融緩和政策による金融環境の改善も後押しして緩やかな基調で回復しているという話をしています。設備投資とソフトウェア投資や、輸出に関しても好調という話ですが、商業用不動産は駄目ですよ、という感じですな。長くなるので引用割愛。
で、まあ問題なのは労働環境でして、そっちに関しては相変わらずダメダメという話をしています。
『The job market has been hit especially hard by the recession, as employers
reacted to sharp sales declines and concerns about credit availability
by deeply cutting their workforces in late 2008 and in 2009. Some recent
indicators suggest the deterioration in the labor market is abating: Job
losses have slowed considerably, and the number of full-time jobs in manufacturing
rose modestly in January. Initial claims for unemployment insurance have
continued to trend lower, and the temporary services industry, often considered
a bellwether for the employment outlook, has been expanding steadily since
October.』
とまあここまでは明るい話をしているのですが・・・
『Notwithstanding these positive signs, the job market remains quite weak,
with the unemployment rate near 10 percent and job openings scarce.』
労働市場の現状は極めて弱いと。
『Of particular concern, because of its long-term implications for workers'
skills and wages, is the increasing incidence of long-term unemployment;
indeed, more than 40 percent of the unemployed have been out of work six
months or more, nearly double the share of a year ago.』
前もFOMCの議事要旨でこの論議が出てたのですが、長期離職者が増えると労働者のスキル低下に繋がり経済に更に宜しく無いというお話ですわな。
んでまあその後が物価に関する話ですが、住宅市場の改善が遅いことを受けて帰属家賃が上昇しないという話をしているのが「ほほう」という感じでありましたがこれまた割愛。で、経済見通しの結論部分は要するに1月のFOMCで示された話と同じでして、経済は緩やかに改善して、インフレ圧力は抑制されています、といういつもの話でありますのでこれまた引用割愛ね(手抜き)。
○金融政策に関して:のっけからfor an extended period
金融政策のコーナーでは最初からキタコレ。
『Over the past year, the Federal Reserve has employed a wide array of
tools to promote economic recovery and preserve price stability. The target
for the federal funds rate has been maintained at a historically low range
of 0 to 1/4 percent since December 2008. The FOMC continues to anticipate
that economic conditions--including low rates of resource utilization,
subdued inflation trends, and stable inflation expectations--are likely
to warrant exceptionally low levels of the federal funds rate for an extended
period.』
とまあそういうことでのっけからキタコレという所でして、出口政策に関する話も当然この先にあるのですけれども、まず掴みの部分でこれをカマすのがバーナンキ議長の見せ方のお上手さなのかなあと思います。
○金融政策に関して:MBSとエージェンシー債買入の説明がこの前と微妙に違う
雪で流れた議会証言の原稿の時には資産買入プログラムによってもたらされた超過準備が効果を出したというような「量的緩和」的な説明をしていて、従来「我々の政策はバランスシートの資産サイドに注目している政策で、負債サイドで行う量的緩和ではない」という話をしてるのと話が違ってやしませんかという話をした訳ですが、今回のテキストでは量的緩和的な部分が無くなって元に戻っているのは何なんでしょという感じです。
『To provide support to mortgage lending and housing markets and to improve
overall conditions in private credit markets, the Federal Reserve is in
the process of purchasing $1.25 trillion of agency mortgage-backed securities
and about $175 billion of agency debt.』
で、今後は縮小方向ですが必要に応じてそれは見直すと言う文言はいつもと同じなので割愛しますが、今回の説明では(その後でもそうですが)拡大した超過準備の効果についてはスルー気味での説明になっておりまして、前回の雪で流れた回での説明と微妙に違うのが不思議ちゃんなのでございまする。
まーよーするにバーナンキ先生としては、そのあたりのロジックの一貫性だのという事よりも、良くも悪くも政治家チックな柔軟というか実践的というか狸というかとゆー動きであって、学者先生的な動きとは違う人になっているなあというのが(何度も申し上げているような気がしますが)如実に表れているんじゃないかなあとか思うのでありました。
○ディスカウントウィンドウの変更は引き締めではないと強調
で、資産買入の次には各種の流動性プログラムに関する説明をしていますが、こちらは前回(および従来)と同様に中央銀行が市場機能が壊れた所に出張って行って最後のカウンターパーティーとして機能して金融環境の修復を図るという説明と、その結果改善したので現在各種プログラムを終了してきましたという話をしていますが、そこは割愛。
で、その一環としてディスカウントウィンドウの機能も元に戻すという説明をしています。
『In addition to closing its special facilities, the Federal Reserve is
normalizing its lending to commercial banks through the discount window.
The final auction of discount-window funds to depositories through the
Term Auction Facility, which was created in the early stages of the crisis
to improve the liquidity of the banking system, will occur on March 8.
Last week we announced that the maximum term of discount window loans,
which was increased to as much as 90 days during the crisis, would be returned
to overnight for most banks, as it was before the crisis erupted in August
2007.』
でもってその目的ですが。
『To discourage banks from relying on the discount window rather than private
funding markets for short-term credit, last week we also increased the
discount rate by 25 basis points, raising the spread between the discount
rate and the top of the target range for the federal funds rate to 50 basis
points.』
ということで、銀行に対して市場調達を促すということですな。まあ当然ちゃあ当然の説明ですけれども。そしてその後に、本件は引き締めでは無いということを強調しています。
『These changes, like the closure of most of the special lending facilities
earlier this month, are in response to the improved functioning of financial
markets, which has reduced the need for extraordinary assistance from the
Federal Reserve. These adjustments are not expected to lead to tighter
financial conditions for households and businesses and should not be interpreted
as signaling any change in the outlook for monetary policy, which remains
about the same as it was at the time of the January meeting of the FOMC.』
この点も強調しているということで、まあ「引き締め政策は先ですよ」というアピールを必死こいてやっているなあという感じです。
○次の引き締め過程では付利金利をコミュニケーションツールに使うんでしょうな
と、ここまで緩和の話満々でしたが、その先が今後の流動性吸収に関する話。
『Although the federal funds rate is likely to remain exceptionally low
for an extended period, as the expansion matures, the Federal Reserve will
at some point need to begin to tighten monetary conditions to prevent the
development of inflationary pressures. Notwithstanding the substantial
increase in the size of its balance sheet associated with its purchases
of Treasury and agency securities, we are confident that we have the tools
we need to firm the stance of monetary policy at the appropriate time.』
流動性を引くツールも充実してて大丈夫ですという話をしていますが、本当の本当に大丈夫かという話に関しては正直怪しい気がするんだがまあスルーして。
『Most importantly, in October 2008 the Congress gave statutory authority
to the Federal Reserve to pay interest on banks' holdings of reserve balances
at Federal Reserve Banks. By increasing the interest rate on reserves,
the Federal Reserve will be able to put significant upward pressure on
all short-term interest rates. Actual and prospective increases in short-term
interest rates will be reflected in turn in longer-term interest rates
and in financial conditions more generally. 』
『The Federal Reserve has also been developing a number of additional tools
to reduce the large quantity of reserves held by the banking system, which
will improve the Federal Reserve's control of financial conditions by leading
to a tighter relationship between the interest rate paid on reserves and
other short-term interest rates.』
ということで、超過リザーブの下では準備預金付利が重要なツールになるという話をしていますので、まあ超過リザーブがあるうち(=引き締め局面の初期過程)では、やはり先般の雪で流れた版議会証言テキストにあるように、当面は準備預金付利金利をメルクマークにして金融政策のコミュニケーションポリシーとするんでしょうなあ、と思うのでありました。
で、以下流動性吸収の具体論になりますが割愛。
○この先もまあ論点あるけど割愛で勘弁
この先なのですが、FRBの政策に関する透明性に関してという話が延々と続いているのが「ふーん」という感じですが、とりあえず目先の金利政策に関してどうのこうのという点に関してはまあ関係無いので(透明性と個別金融機関の風評リスク問題をどのように折り合いをつけるかとか中々面白い論点ですが)割愛しますです。
で、最後の章がプルーデンス政策に関する話になるのですが、これまた割愛することと致します。(やりだすとキリが無いので)
以上バーナンキ議長議会証言ですが虫干しネタでした。
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2010/03/10
○まあロジックの世界では無くなっていますので
昨日は金融緩和やるならどうなのよという話をうだうだと行いましたけれども、まー正直言って現状はロジックの世界でも何でも無くて、ドラ息子状態になっている政治とか他市場(2月の会合前にモーサテで他市場の人が「2月にも何も無いとすれば2か月連続で金融緩和措置がありませんが」みたいな面白発言をしていましたな)とかの対話、というか対処が眼目になってしまっているので、金利市場の状況からロジック立てて考えるだけ時間の無駄という感じでしょ。
ドタバタの発端はどう見ても12月1日の臨時会合ですが、臨時会合やる破目になったのはスケジュール感を何も考えない(=政府と日銀の連携とは何ぞやというのを理解していない)政治サイドの無作為デフレ宣言が発端だったりして、まあ政府(というか政治)と日銀の連携がダメダメでしょうとしか傍目には見えないという根本的な所にあると思うのだが。まあ山口副総裁お疲れ様ですな。
#返す返すも武藤さんが総裁だったらと思いますし、金融政策を巡る論議を見ていると武藤、伊藤、白川体制だったらとも思います
ところで、まあ金利市場的には追加緩和(のようなもの)が3月に出ようと4月に出ようとどうでも良いので、きっと今月の会合で何も無くても1ミリも反応しないと思いますけれども、何せ相手が蒟蒻問答状態の政治家であったり他市場であったり日経新聞であったりする訳でありますので、スキップしてどうなるのかもよー知らんがなという所もござんす。ということで、3月に何か追加緩和(のようなもの)を実施するんですかねえ。まあ金利ポジションを持つ人としては正直どうでも良い(どうせ市場金利的に言えばターム物金利が下がり切った状態なので)ので・・・・
そういえば昨日書いた後に不覚にも気がついたのですけれども、現在の新型オペって毎週8000億円で期間3か月を12本実行して9.6兆円になっているのですが、期間を6か月にして毎週8000億円をキープすると実行本数が24本か25本位になるので、出来上がりのロットは20兆円近くになるんですな(^^)。つまり「期間を6か月に延長して実行額を約20兆円にしました!!!!」と堂々とチラシじゃなくて説明文書に書けるではございませんか(^^)。
足元のGC需給という超ミクロ的にな話をすると、6か月という長い期間(3か月オペでもまあ微妙なんですが)のオペが20兆円も打たれると、バランス的に短いオペが打ちにくくなる(ツイストすれば問題ないのですけれども、ツイストすると「資金吸収して引き締め」とか言い出すアホウが出るので現状は吸収オペ打ちにくいでしょ)ので、資金需給的に余剰が大きい月になると足元の資金供給額が減り、結果としてGCレポ市場における市場調達が増えたり、市場の資金偏在が中々こなれなくなったりするので、実は足元のGCレートだけ安定しないような事態になるかもしれません(コールは安定だと思うけど)。まあ細かい話ですけどね。
なお、もっとそもそも論をするならば、デフレ解消して緩和的な金融環境を作りたいってえのだったら財務省がドカンと為替介入をすべきだと思うのでありますが。ほら、この前スイスだってスイスフラン売りユーロ買いの介入を実施しましたし(^^)。
○などとウダウダ書いていたら肝心のお題を書く時間が無くなってしまいました
最近「時間がない」というのが仕様になっていますが、寒い中だと目が覚めてから布団でウダウダとする時間が至福だから結果としての寝坊が多いなどというのはここだけの話でございます(^^)。
で、ネタの予告編ですが、これまた古いネタですけど、バーナンキ議長の雪で流れた議会証言の本チャン版が割と「ふーん」という感じだったので、その辺でもと思っておりまして。
http://www.federalreserve.gov/newsevents/testimony/bernanke20100224a.htm
まあいくつか「ほー」と思った所はあるのですが(詳しくは明日)、これを読んでいて最初の部分でいきなり「ほほー」となったのは、冒頭の「The
Economic Outlook」って所の第2パラグラフの頭。
『Private final demand does seem to be growing at a moderate pace, buoyed
in part by a general improvement in financial conditions. In particular,
consumer spending has recently picked up, reflecting gains in real disposable
income and household wealth and tentative signs of stabilization in the
labor market. Business investment in equipment and software has risen significantly.
』
いやまあお話自体はそうですねって事なのですが、民間最終需要の回復傾向に関してわざわざ「buoyed
in part by a general improvement in financial conditions」ってフレーズを入れているのは、恐らく議会(や一般ピープル)から「FRBはウォールストリートの利益の為に行動していてケシカラン」と言われやすいという点を踏まえて、「我々の金融緩和の結果として皆様の経済活動が回復傾向にあるんですよ!!!」と掴みの部分でアピールしようとしているのではないかと思ったのですがどうでしょうかね(^^)。
あと、急にワープしますが最後のほうに「Regulatory Reform」ってのがありまして、その中で例のストレステストを自画自賛しているのはまたまた御冗談をという感じが致しました。一応引用。
『Last spring the Federal Reserve led the successful Supervisory Capital
Assessment Program, popularly known as the bank stress tests. An important
lesson of that program was that combining on-site bank examinations with
a suite of quantitative and analytical tools can greatly improve comparability
of the results and better identify potential risks. 』
前提条件が失業率8.9%のストレステストですかそうですか・・・・・
とは申しましても、こ〜ゆ〜ストレステストっていうのも本当に閉店投げ売りモードになっている時と、時間的余裕があるときとでは全然話が違いますからね。
個別の主体として見た場合に投げ売り価格で見るのが最悪の場合を考えたリスク認識としてはその通りとしても、金融システム全体が投げ売りモードを前提にしたリスク認識をするのが本当に正しいのかどうか(それこそ負のプロクシカリティー状態になってしまう訳ですから)という話もあるので、まー難しい論点ではありますし、当然ながら監督当局の皆様におかれましてはそういう論点も考えながら色々と新たな監督のフレームを作っていることかと存じますし、そんな細けぇ話を議会でしても仕方ない所ではありますが、そう簡単に上記のような話になるかというと難しい問題を含むんじゃないですかねえ、と思いました。
#その他の部分に関しては明日以降どこかでサラサラと
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2010/03/09
○で、緩和って何をどう緩和するのでしょうか???
大体からして「ターム物金利誘導」とか言いましても、2年カレント国債の金利が0.14%などという楽しい状態になっているのでありまして、はてさて何をどうするんだという話は思いっきりある訳ですが(−−;)まあ何せここもとの金融政策は「市場との対話」というよりは「金利じゃない別の市場との対話・・・・というか大体の場合「3か月LIBORの金利差とドル円相場の相関」とか「2年物国債の金利差とドル円相場為替市場の相関」とかいうような意味不明の供述を繰り返す為替市場の人達との対話というか蒟蒻問答ですけど・・・・とか、「政治との対話」とかいうような話になっている訳でありまして(−−;)あまり金利市場的にはああでもないこうでもないと言ってもオモロナイですなという感じでしょうか。
どっちかと言えば他の市場が妙に期待しているのでありまして、先週金曜のロイターの記事ですが、追加緩和記事に関する株式市場識者のコメントに噴いた。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-14198520100305?pageNumber=3&virtualBrandChannel=0&sp=true
株が日銀の追加緩和報道で反発:識者はこうみる
色んな人のコメントがツッコミどころ満載(まともなコメントしている人もいますけど)なのですが、「4月の緩和では遅い」とか「米国の利上げは今年後半」とか意味不明の供述をする方がおられまして誠に香ばしい次第。まあこういう手合いに対する対話って難しいというか何と言うか。金利市場から見たら「ナンジャソリャ」となるけれども、何となく凄そうに見える施策が出てくる可能性も高そうですな。
とひとしきり悪態をついた所で幾つか思いつくままに妄想。
・新型オペの拡充その1:期間延長
従来の3か月を6か月に延長するという話ですが、まあ既にご案内の通りTBの金利って3か月でも6か月でも大して変わらん水準(金曜の入札は例の記事の関係で強くなっちゃいましたが、まあそれが無くても3か月から1bp差は無いと思います)でありまして、何を今更という感じではございますが、象徴的な意味合いという事で中期ゾーンあたりの金利の安定化には役立つかもしれない(既に安定しているが)という程度の話。
そもそも展望レポートの見通しと物価安定の理解を組み合わせて考えると、どう考えても来年の終わり位まで利上げとかいう話が出るとは思えませんというのは既に金利市場で全部織り込んだ結果2年国債金利が0.14%になっているのですから、今の時点ではあまり金利市場的には意味が無い(将来出口が見えてくるような時点になったら意味が出てくるとは思うのですが、それはだいぶ先の話)為替市場や株式市場(特に為替のガイジンかなあ)は理解してなさそうな節がありますからね。
・新型オペの拡充その2:金額拡大
ちょうど4月から順次企業金融オペが落ちますので、名目としては「企業金融オペの落ち分を共通担保オペで代替するのですが、それを通常の共通担保オペではなくて新型オペで対応しましょう。あ、全部で10兆ね」というのがございますがどうすかね(^^)。
ちなみに、企業金融オペの残高は昨日実施したオペロールオーバー後で5兆円程度(現在は5.3兆円程度)5.4兆円程度(現在は5.6兆円程度)(←オペ1本計算洩れてました)となりますので、それだけですと5兆円増額(1回8000億円を12000億円に増額ですかね)という話もありますが、それだとちょっと出し惜しみ感が出て逆効果のような気がするので、週2本8000億円ずつという形になる(実は新型オペは12本しか回っていないので、それだと19.2兆円になるのですが、そういう細けぇこたあいいんだよという事にするんでしょうかね、よー知らんが)のではないかと愚考。
意味に関しては通常のオペがバランス的にどうなるか次第ですが、0.1%の指値オペが増える分足元レートの上昇が抑えられるので、既にターム物金利が潰れてしまっているという点を勘案すると、上昇抑制効果があるのはこっちの方ではないかと思います。
ちなみにあたしゃ3月に何かやるならこの「金額拡大」を本命にしたいと思いますけれども、あたくしが本命にすると落馬しそうなのでダメですかね(^^)。
「企業オペの落ちが来るから企業オペのロールも兼ねて実施です。もちろんこのオペは企業金融債権を担保に入れられますからね」っていうと何となく企業金融への目配りを欠かさずに行っているっぽくて絵として綺麗なのと、期間延長というよりも増額の方が判り易いという辺りが絵として使えそうという風に思うのですがどうでしょ。
それに日銀的にはそもそも企業オペの落ちは共通担保でロールすると言っていたのですから、それが金利入札方式ではなく指値方式になっただけの違いという話ですので飲みやすそうな気がするんだが。
・時間軸の強化になるかどうか判らんが:物価安定の理解をどうにかする
先般の内閣府フォーラムで岩田一政前日銀副総裁が言及してたと思うのですけれども、「中長期的な物価安定の理解」に関して現在の「0%〜2%」というのが下に0%という数字があるので、「0%まで戻ったら自動的に正常化路線をおっぱじめるのではないか」という連想が働く(今の時点ではまあ先の話ですけど)というのは、まー仕方無い面もありますので、その辺のマインドをもうちょっと明るくする為に、この公表の仕方を変更するという話ですな。
確か岩田一政さんは(ちょっと記憶が怪しいので間違ってたらすいませんが)中心値の1%をピンポイントで中心値として示した方が判り易いという指摘をしていたと思いますが、まあその辺りはアリなのかなと。別に1%を硬直的な目標にする訳ではないので実質的にはあまり変わらないのですが、下限にあるゼロというのがどうもアレなので、その数字を取っ払うという事ですな。
または、下限の0%を0.5%位にまで上げるというのもあるかもしれませんけれども、それは(審議委員が一人入れ替わったとは言え)ちょっと唐突感があるような気がする。まあそもそも論としては下限上げた方が良い様な気がするが。
当たり前ですがこれをやるなら4月ですな。
・時間軸の強化というか何と言うか:展望レポートのリスク評価を下向き全開に、とか
これまた4月の話ですが、次回の展望レポートを出す際のリスク評価をする所で、物価がマイナス圏で推移する事に関する下振れリスク評価をより強く打ち出すことによって、時間軸の強化あるいはその先での追加金融緩和を示唆する(で、示唆だけで効果が出ればなお結構)という話ですな。
ただまあこの難点は「他市場との対話」という意味では多分理解されにくいところと、何となく世の中的にはクレクレ状態になっている(小遣いをせびりに来る財務大臣もいますし^^)ので、そういうのって通じるかなというのは微妙。
もちろん、3月に何もしないで、4月の展望レポートやら物価安定の理解やらのタイミングのセット販売でさっき書いた新型オペ拡充を出すという手はあると思います。
・輪番拡大・・・・は財政政策のフレームとセットじゃないの??
輪番については妙にこれまたヤレヤレいう人がいるようですが、ここもと財政赤字発散問題が世界的にもネタになっているという今日この頃で、日銀が単独で長期国債買入を拡大すると、財政赤字発散懸念のプレミアムが乗っかった形でのイールドカーブのスティープ化が進行するだけではないかと思われますので、財政の何ちゃらかんちゃらが出てくる6月とかの話ではないかと思われるのでございますけどね。
#財政なんちゃらがただのポンチ絵だったらこれまたややこしい事になりそう
・当座預金残高の目標復活・・・はちょっとねえ
当座預金残高を目標にするのを復活という手はあって、これまた判り易いと言うメリットはあるのですが、これはまあ見事にコール市場壊滅コース。米国方式で超過準備の付利を残しながら、当座預金残高だけはバカバカ出すという戦法はありまして、ただしこの場合はディレクティブの維持が難しい(超過準備の付利の恩恵にあずかれない人、主に投信になると思いますが、その人達がコールを0.10%以下で出してくるから。当座預金取引先は0.10%で付利されるからその人達のコール0.10%以下の出しは無い)ので、ディレクティブは0.10%を目標にするが若干の下振れは許容というような書き方になるのでしょうな。
この場合、コールは下がりますが、これはまあ限界的な世界の話でして、短期国債が0.10%に近くはなると思いますが、0.10%を割ると当座預金取引先は短期国債を購入する経済合理性が無くなる(担保需要としての購入はあるが)ので、それ以外の人達の買いだけで現在の短期国債の発行量を買えるかというと無理でしょうから、そう簡単にレートだだ下がりという事にもならないでしょうかねえとは思います。もちろん残高をアホ程増やすと担保需要での短期国債の会が増えまして0.10%を割り込むと思いますけど。
ただまあこれはまた短期市場壊滅して市場関係者一家離散状態になるのであたくし的にはご勘弁願いたいものでありますけど。政策としての費用対効果がイマイチにも程があると思いますけどねえ、とポジショントーク成分入りですが思うのでありまする。
まあ他にもあるかもしれませんがとりあえずこんな所で。
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2010/03/08
○ということで金曜の日経記事を読んでみたわけだが
ネット版の記事はこちら
http://www.nikkei.co.jp/sp1/nt37/20100304ASGC0402A04032010.html
(3/5)日銀、4月にかけ追加緩和を検討 短期金利、一段の低下促す
本ちゃんの記事(5日の日経新聞1面)を見たのですが、記事の中身的には別に新味のある話がある訳でもなく、これは別に1面トップで堂々書くほどの内容かよという感じでございますわな。
ということで、まあ妄想満開モードで書く訳ですが(^^)、金曜に悪態申し上げた時は「リーク記事だったら」という感じで話をしたので誠に申し訳ございませんという所でありますが、これはまあもしかしたら「書かせ記事」の類かもしれませんけど、それにしては別に新しい話が1ミリも無いです。
上記記事中で追加緩和を行う理由が『消費者物価が下げ止まらないなかで企業や家計の行動が慎重になるリスクがあると判断。』というのがあるのですが、つい先日の山口副総裁の講演では
『ごく最近の消費者物価指数の動きをみますと、マクロ的な需要と供給のバランスが改善している度合い──これを正確に把握することが難しいという問題はあるのですが──この改善度合いに比べると、物価下落幅が縮小するテンポは若干遅いような印象を受けています。また、持続的な物価の下落、いわゆるデフレが続いているだけに、物価に対する人々の見方が下振れることがないか、十分な注意が必要です。』(2月24日の山口副総裁の講演より)
という話をしている中で記事にある理由だとちと唐突というかロジックが弱い(いやまあバーナンキあるいは福井方式でロジック無理筋で実行というのはありますが)のでありまして、そりゃまあ4月の展望レポートや中長期的な物価安定の理解の見直し(審議委員が入れ替わりますし)の時点で何かするのならまだ話としては判りますが、3月は普通にねえだろという感じで、1面トップでどどーんと出すネタとも思えませんな。
でですな、金曜に悪態書いた時に「先に織り込ませたら緩和した時に材料出尽くしになってしまうので意味ねえじゃん」と申し上げた訳でございますが、日経の記事読んで冷静に考えますと(^^)、利上げの場合は(本格的に引き締めをしたい場面なら別ですが)あまりインパクトを与えない方が良いのでいわゆる地均しみたいなもの(をするというのは筋としておかしいとは思いますけどそれは措く)をする意味はあるのですけれども、緩和方向の時にわざわざ先に言わなくても良い訳でありまして、その意味からしてもこれはまあ「地均し記事」では無いでしょという読みになるのでございますな。
では誰が何考えてこんな記事になったのかという点については考察してみたものの保安装置が発動した為に以下自主規制(^^)。
○あの人はまたアレでございましたとさ
まあ金曜も書きましたが、予想通りの財務大臣反応が実に遺憾。
http://jp.reuters.com/article/foreignExchNews/idJPnTK036954320100305
UPDATE1: 日銀がデフレ脱却に努力することは好ましいこと=日銀追加緩和報道で菅財務相
『[東京 5日 ロイター] 菅直人副総理兼財務・経済財政担当相は5日の閣議後の会見で、日銀が新型オペ拡充などの追加金融緩和を検討しているとの報道について「日銀から直接的なメッセージが来ているわけではない」としながら、国会答弁などにおいてたびたびデフレ脱却に向けた日銀の対応に期待感を表明していることに言及し、「そういうこともあり、日銀で検討しているかもしれない」と語った。日銀の追加緩和について「デフレ脱却に努力することは好ましい」とも述べた。』
ということですが、その先の部分を読んで腰が砕けた。菅さんの発言部分ですが。
『「この間、いろいろな委員会に日銀総裁・副総裁が出席されていて、私も同席しており、政府は政府としてデフレ脱却に向けてさらなる努力をするので、日銀も同じ目標に向かってさらなる努力をお願いしたいと常に申し上げている。そういうこともあって、日銀の方で検討されているのかもしれない」』
>政府は政府としてデフレ脱却に向けてさらなる努力をするので
>政府は政府としてデフレ脱却に向けてさらなる努力をするので
>政府は政府としてデフレ脱却に向けてさらなる努力をするので
・・・・おまいら何の努力してるんだよ。対策無しのデフレ宣言をしてすっかりマインドを冷やす努力はするわ、麻生内閣の補正予算は止めるわ、おまけに(指数だけの問題ではあるが)高校無償化とか高速道路料金下げ(何かまた戻すのこれ?)とか素晴らしい努力ですなあ(棒読み)。
普通「さらなる」というのは従来に加えてという意味だと思うのですが、もともと努力どころか下手したら足引っ張ってないですかという状態でございますのにまた日銀に緩和をせびりにやって参りましたというようにしか見えんのだがあたしには。
と思いつつ知人と話をしてたら、「まるで小遣いを年がら年じゅうせびりにくるドラ息子みたいなもんですな」という指摘がツボった訳だが(^^)、まあ何考えてるんだか(菅さんの事だから何も考えて無く日銀に何か言えば魔法のように物価が上がるとか思ってそうだが)という感じでございまする。
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2010/03/05
何か日経新聞の1面に記事が出ているようですが・・・・・
○追加緩和検討ですかそうですか
で、あたくし日経新聞読まないので良く知らんのですが、日経新聞の内容を報道するテレビ番組様によると(最終版1面限定記事は朝5時だ6時だという時間帯にはNIKKEI NETにアップされないのが日経の仕様)追加緩和検討でございますかそうですか。何か昨日は中短期が妙に強かったのですが(自主規制)。
それは兎も角。
でまあ記事を一行も読まずに勝手に妄想する(ので日経記事と全然違う斜め上の話をしていても気にしないようにお願いします)のだが、GCレートが0.105%〜0.12%辺りの間にいて、3か月TBが0.12%ちょっと割る位で、1年TBが0.125%位でと言う事で、短期のターム物は既に潰れる所まで潰れている(ちなみに2年国債が0.15%辺りなのだが)のですが、何をどう緩和するのでしょうかねえという感じです。
いやまあ何ちゃって緩和するんだったら、今の枠組みをいじらないのであれば指値オペの期間を長くするとか実行額10兆円を20兆円にするとかはあるんですけれども、上記のように既に3か月も1年もレートが存分に低下しているので、実際問題としてはそんなに変わるのかいな(まあ0.12が0.11になって0.125が0.115になるのかもしれないけど)という所でございまして、まあ綺麗に言えば「アナウンスメント効果」ですが、どっちかと言えば「プラシーボ効果」と言った方が良さそうなネタになるとは思います。
と、書くと誤解されると困りますので申し上げますと、指値オペの期間延長の効果が一般的に無い訳ではなく、指値オペ実施およびやや多目の資金供給継続モードと展望レポートによる経済見通しや市場の経済見通しのセットによって、既に政策効果として指値オペの期間延長分まで先食いして表れている為に、今更やってもやらなくてもあんまり金利的に変わらんがなという事でございます。
まあ「景気」は「気」でもありますから、とりあえず緩和姿勢を堂々見せる福井の俊ちゃん方式というのも普通にある訳ですから、緩和強化をする振りをする攻撃というのはそれはそれでありですので一向に構いませんけれども、別に期末でどうのこうのという動きが(金融市場的には)皆無という中(世間様で期末資金繰り危機とか話題になってるとも思えんが)で緩和強化ってのは何かまたスケジュール感が宜しくありませんなあという感じではございます。スケジュール感からすれば4月の展望レポートや物価安定の理解のタイミングで緩和強化した方がもっと堂々の緩和強化策が打てると思うのだが、このタイミングだと小出しになるだけジャマイカ。
あとまあ考えられるのは金利地方では別にどうでもいいと思ってるのですけれども輪番(中長期国債買入)の拡充なんでしょう(業者的にはゴミ箱が大きくなるのは歓迎だからやるのは結構という感じでしょうが)けれども、それが長期金利の低下に資するかというとはっきり言って出たとこ勝負で知らんがなという感じです。為替や株が好感して円安株高になったら長期金利上昇しても何らおかしくは無かったりするけど、まあ日銀も一発知らんがな攻撃を打ちこむのも一興ではないかと存じますけれどもね(ヤケクソ)。
とまあそんな感じですが、相変わらず決定会合の前に観測記事だかリーク記事だか判らないテイストの物が出てくるというのはコマッタモンダという感じですな(いやまあ単に予想しているというのであれば別にそれはどうぞどうぞなのですけど、どうせリークみたいな味わいの記事なんでしょ、と新聞を見ずに言うあたくし)。
でまあ以下リークのようなテイストを前提にして悪態を書く訳ですが、大体からしてこの手の実際問題として効くか効かんか微妙な狙いの政策を実施するのだったら事前リークして市場に織り込ませたら政策出した時には「材料出尽くし」で終わってしまうではないかとゆー懸念があるのですけれども、大丈夫でございましょうかねえ。FRBの財務省証券買入のように延々と「買う買う詐欺」で引っ張るというような感じで、日銀も「緩和緩和詐欺」をするのであれば期待で相場を暫く引っ張れると思いますけれども、そうはならないんでしょうしねえ。
ま、あたくし的にはこの時期に実施というのは馬鹿大臣がまた手柄顔で威張り散らすだけならまだしも、それでまた安心して何もやらなくなるという光景を見る事になるのが正視に耐えない事でもありますし(−−;)、為替市場とかがまた変に毎度毎度の期待をして市場に追い込まれるモードという、ブラインダー元FRB副議長の言う「自分の尾を追う犬」状態に日銀が完全に陥るのもアホラシカと思うので、何かやるなら4月じゃないっすかねえとは思うのですけれども。
(3月6日追記:で、新聞の内容を読んでみたのですが、これはまあ普通に考えると日銀の地均しでは無さそうという判断になります。では誰がどうという話ですが、そこはまあ週明けにでも書いてみますが、あまり憶測で書くのも何ですなあという感じです)
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2010/03/02
○結論はどうかと思うが途中までは亀井さんの方が・・・・・
昨日もまた山本幸三先生の質疑があったようで、菅さんと亀井さんも答弁をしていたようでありまする。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=aP6eVxyF059U
菅氏「年内に物価プラスに」、亀井氏「国債引き受けを」−日銀に要請
『3月1日(ブルームバーグ):菅直人副総理兼財務相は1日午前の衆院財務金融委員会で、消費者物価指数について「今年いっぱいくらいには何とかプラスに移行してもらいたい」と述べた。さらに、亀井静香金融・郵政担当相は同じ委員会で、日銀は「直接国債を引き受けて財源を作るということをやったら良い」と主張。16、17日の金融政策決定会合を前に日銀に対する要請が相次いだ。』(上記URL記事より)
普通は半月以上後の決定会合に対して「決定会合を前に」とは言わないと思う次第で、まあ相変わらずスケジュール感もへったくれもない人達ですわなあというのはまあ良いと致しまして。
菅さんは『消費者物価指数について「今年いっぱいくらいには何とかプラスに移行してもらいたい」と述べた。』と仰せのようですが、あのその日銀だけで簡単にプラスに移行出来るのでしたら何も苦労はしない訳でありまして、この人は日銀を打ち出の(以下毎度同じ悪態なので割愛)。
つーかね、高校授業料無償化とか高速道路料金引き下げとかCPI指数を下げるような予算案を出しているのに今年いっぱいくらいにプラスに移行とかアホじゃねえのとしか言いようがないのでありまして、そんなにCPI上げたいのでしたら、4月から公共料金全部20%引き上げるとか、輸入関税を死ぬほど引き上げるとか、揮発油税を思いっきり引き上げるとか、要するに生活に密着する所で料金が引き上げになるような政策を実施すれば宜しいのではないでしょうかと存じますが如何でしょうか。勿論誰も得しない話なので全然推奨しませんけど(−−;
しかし上記URLの記事にありますように、『欲を言えば(昨年11月に)デフレ宣言をして、今年いっぱいくらいには何とかプラスに移行してもらいたいと感じている』って菅先生は発言しているようですが、デフレ宣言して何の対策もしなくて世間様でデフレを流行語状態にするというマインド大悪化攻撃をしておいて何がどうなったらプラス移行とか言えるのか脳味噌をかっぽじって頭の中を調べてみたいのですが。
どうも菅さんは「物価が上がると景気が良くなる」と因果関係を取り違えているのではないかと思われる節がある訳のですが(マイルドインフレの方が構造調整とかをはじめとして各種政策的にやり易いというのはその通りだと思いますが)、一方で亀井さんの方が話の筋だけは通っている所がオソロシスというかエッシャーの騙し絵というかという所でして。
『一方、亀井金融相は「金融政策だけでデフレを解消できるかと言うと、私は無理だと思う」と言明。「政府が財政出動を含めて需給ギャップを解消していく努力をしなければ、日銀の責任だけで解決できる問題ではない」と語った。また、インフレ目標の導入についても「数値目標を設けたところで、数字通りに経済、物価は動いてくれない」と述べ、否定的な見方を示した。』(上記URL記事より)
いやもうね、こう言う風に日銀の理屈に乗っかって突っ込んでくる方が実は追求としては厳しい訳でして(^^)、『数値目標を設けたところで、数字通りに経済、物価は動いてくれない』とかさすが亀井センセイそこにしびれるあこがれるぅ!という所でございまする。
まあ結局の所亀井センセイの場合は「財政出せ」攻撃になるのでして、結果として出てくる結論はちとあのそのそれは如何な物かと思うのですが・・・・
『亀井金融相はただ、「日銀も政府が大胆な財政出動をしていくときに協力できる点がある」と指摘。「財源は税収が37兆円を超えてどんどん増えるという見通しはない」とした上で、国債について「日銀が市中から買い入れていくだけでなく、直接国債を引き受けて財源を作るということをやったら良いと思う」と述べた。
』(上記URL記事より)
たぶん国債引き受けを行うと、世界はまさに財政リスク問題をネタにしている最中でありますので、長期金利上昇と円安になって大変にオソロシスな展開になる恐れがあるのでござんすが。
いやね、別に1回こっきりで終わるのならば何とかなるのかも知れませんですけれども、そんな「打ち出の小槌スキーム」を政治家に与えて一発で終わる保証は1ミリも無い訳で、普通に乱発されて行きつく先は財政インフレになるでしょと普通に想像できると思うのですけれどもどうなんでしょうかねえ。大体からして一発物の筈の「埋蔵金」とやらに関しても何故か経常的に使われる政府支出に充当されるという現政権(来年度予算どうするんだよ)を見れば、国債引受を財源にどうのこうのとかいうような打ち出の小槌を政治家に与えたら危険極まりないとしか思えんのですけど。
という事で、まあ結論は全く賛同する気になりませんけど(仮に日銀が財政ファイナンスするというのであれば、日銀から政府に対して国債発行に関して命令権を持たせる位の歯止めを付けないと話にならんでしょ)、そこまでの話の筋が通っているだけに亀井さんオソロシスという所でございますな。
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2010/03/01
○なんつーかもうこの人グダグダ過ぎで困りますわ
最近の菅先生と言えば毎日のようにこの発言。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=aantacmzTjCg
菅財務相:日銀にもいろいろな形での努力を期待−デフレ脱却で
これなんかまだCPI受けてからの発言だからマシなのですが、この前なんぞ金融政策決定会合の翌日の国会答弁で同じような発言をしている訳でありまして、何と申しますか相手のスケジュール感とか何も考えて無いでしょうという所がそもそも論としてナットランでしょうと思う今日この頃。
えーっとですな、ローゼン麻生内閣の時はちゃんとした経済対策の発表と日銀の利下げの日程を合わせていた(2008年10月30日の夕刻に政府が真水5兆円の緊急経済対策を発表して10月31日に日銀が利下げを実施した)というように、「政府と日銀の連携」というのをスケジュール感からもきちんと見せていた訳ですな。
然るに、現内閣の場合はと言えば2009年11月20日に何の対策も無いデフレ宣言を行ったのですが、その日が正に金融政策決定会合という全くスケジュール感の無い展開。で、対策も何も無い状態で首相と日銀総裁の会合を12月頭にセットするという無茶振りスケジュールで、お互い手ぶらで会合するのも間抜けということで結局12月1日に臨時会合を実施されてマーケット大迷惑だったという流れですわな。
で、まあ菅さん的には日銀を叩けば何か出てきて株が上がったり為替が振れたりしてくれるとでも思っているのか、てめえらが「財金分離」とか言って財務省出身の武藤さんを外す人事をやっておきながら、その財務省の大臣様が連日のように日銀何とかせい攻撃をするというのが何とも無定見にも程がある話でありまする。
まあ折しも内閣支持率も下がってますし、益々菅さんの叩き攻撃が激しくなるのでしょうけれども、本当に金融緩和が経済の為に必要で圧力を掛けないといけないのであれば、表立って日銀の顔をぶっ潰すような掛け方するんじゃなくて、裏から圧力掛けてちゃんと政府と日銀ともに顔の立つようなやり方をした方が良いんじゃないの(なお、「圧力を掛ける」という行為が存在しているかどうか、それが効くのかどうかという点に関してはあたくし一切存じませんので念の為)と思うのですけど、まあ結局のところ菅さんとしては「日本経済の為に何が大事か」じゃなくて「民主党政権の維持と自分の政治的存在意義の確保の為に何が大事か」という軸で考えているから、やたらめったら日銀への圧力をアピールしてるんでしょという感じっすなあ。
あたくしの杞憂だったら良いんですけど、この流れで輪番拡大したら真面目に「財政ファイナンス」扱いで下手したら長期金利が上昇してもおかしくはないと思われるのでありまして、菅さんの口に誰かチャックしとけと思うのですけど・・・
○具体策が何と言うかこれ・・・・
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=aN2LJ7EgTQw8
みんなの党代表:潮目変わった、政界再編狙う−インタビュー(Update1
暫く前に出てたインタビュー。
いやまあ日銀の庭先論についてはそう批判されても仕方のない面がありますので良いとして、デフレへの具体策が訳判らん。
『具体的な対策としては政府と日銀がアコード(政策協定)を結んだ上で、日銀が金融機関の持っている中小企業向けの債権を20兆円分を買い取り、その毀損(きそん)分は政府が補てんする制度の導入などを求めた。』
ってそれやってどういう経路でどういう効き方をしてデフレ対策になるのかがさっぱり判らんですし、そもそも中小企業向け債権を買い取るって言ったって買い取った債権の管理をどうやって行うのとか、買い取りするのは良いけど具体的にどのような価格で買い取るのよとか、具体的施策に落とせないとしか思えない問題大過ぎ。
大体からして20兆円買い取った分がそのまま中小企業融資に回る訳も無いですし(今新規で20兆円も中小企業に金貸せないでしょ、いや全額焦げ付いても良いのなら幾らでも貸せますけど・・・)、そんなややこしい事しなくても政策金融公庫(のうち昔の国民金融公庫)とか商工中金に政府が予算付けて制度融資を実施して対応すればいいじゃんと思うのですけれども。
もし予算出したくないというのであれば、政策金融公庫に債権の買い取りをやらせて、日銀は政策金融公庫保有の債権を担保に資金供給を実施すればよろしいんじゃないかと思う(適格担保の問題があるが、それなら政府が保証すれば良いのでは)のでありますが、政策金融公庫だったらそれこそ旧国民金融公庫の支店もありますし、従来より民間向けの貸出を実施しているのですから与信管理のノウハウも事務能力もあるのですから、そちらにやらせりゃ良いだけの話でして、わざわざ日銀が買い取る理由がさっぱり判らんのでありまする。
何かね、みんなの党って割と金融市場的には評判良いのですけれども、どうもこのような感じで出てくる政策がいかにも「机上で頭の良い人が考えました」っぽい所があって、結局民主党と同じになりゃせんかという不安があるんですよねえあたしゃ。
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2010/02/25
○米国財務省の流動性吸収プログラム
昨日出てたのですが正直気がつかなかったです(汗)。
http://www.ustreas.gov/press/releases/tg560.htm
Treasury Issues Debt Management Guidance on the Supplementary Financing Program
『"Treasury anticipates that the balance in the Treasury's Supplementary
Financing Account will increase from its current level of $5 billion to
$200 billion. This will restore the SFP back to the level maintained between
February and September 2009.』
『This action will be completed over the next two months in the form of
eight $25 billion, 56-day SFP bills. Starting tomorrow, SFP auctions will
be held each Wednesday at 11:30 a.m. EST, unless otherwise noted."』
つーことで国債発行上限問題もあって暫く止めていた流動性吸収というか短期国債発行プログラムの再開ちゅうことで、これで市場の超過準備を2500億ドル引きますよという話ですな。
んでもって、まーこいつも一連の正常化路線の一環で、直接に利上げに直結する話では無いのですけれども、現実に超過準備を引くという話でもある訳ですので何の影響も無いですよという話ではないと思います。
・・・ま、それだからこそ先般の公定歩合引き上げ以降物凄い勢いで連銀理事やら地区連銀総裁やらから「低金利政策は当面継続」という火消し発言が出まくるという流れになっているのでしょう。
とりあえず「火消ししつつ正常化路線の継続」というスキームは今のところ上手く進行しているようですが、今回は財務省がしらっとリリースをしただけとかいうのを見ると、各種の正常化措置を出来るだけおおごとにしないでしらーっと遂行していこう意図があるんじゃネーノと思う次第。
なお勝手に妄想を続けると、今後の超過準備吸収に関してもこんな調子でしらーっと実施していき、いつの間にか利上げしてもFFレートのコントロールが出来ますよえっへっへという状態にして行きたいとゆー所なんでしょうと妄想をする次第なのですが、そう世の中上手く行くのかどうかは神の味噌汁でございますし、ある程度超過準備を引いてくると市場の方が(FRBの意図するタイミングよりも早いタイミングでの)利上げ路線を織り込みに行く可能性もあるんじゃネーノと好き勝手な妄想をしておきますです、はい。
○GCレートなどが微妙に上昇している件について
昨日の3か月TBの落札結果。
http://www.mof.go.jp/jouhou/kokusai/tbill/tbillnyusatu/resul220224.htm
(3)募入最低価格 99円96銭9厘0毛
(募入最高利回り)
(0.1243%)
(5)募入平均価格 99円96銭9厘4毛
(募入平均利回り )
(0.1227%)
・・・・・ここもと0.12%割れで推移していたのですが、昨日は0.12%乗せの水準。いやまあ超ミクロの世界で細けぇこたあいいんだよ!と言われてしまいますともう土下座するしか無いのですが(笑)、これはまあ足元でGCレートが0.115%だの0.120%だのという水準に上昇している事と関係が無いとは言えないでしょという感じです。
えーっと、今回の積み期間は財政払超の積み最終日を抜けた所(積みの最初のあたり)では当座預金残高が16.5兆円だったのですが、先週末の財政揚げ超の所から15.5兆円レベルに下げてきて、今週になってから15兆円ちょい程度のレベルになるという推移なんですが、当座預金残高をその辺の水準におく中でトムスタートの共通担保供給が打たれない(いやまあ無くても15兆円コースだったのですが、もしかしたらトム打って16兆円に戻して来るのかなとか思う中でオペが無いとちょっと残念感が)とかで、ちょっとGC市場での売り(資金調達)が増えましたねという所でしょうか。
まーGCちゅうのも参加者限定状態の市場で、両サイドともいつものメンバーでいつもの方向での細かい市場で、まあそのロットも結構ございますので結局の所は日銀の資金供給状況次第の面が強い訳ですが、そんな中で何故か知らんが市場機能が大事だとか仰せなので、結果としてオペの打ち方を見ながらああでもないこうでもないという動きになるんでしょうな。
しかし3月入る前に足元上がるような感じで良いのかねという気は若干する。まあさすがに昨日の3月29日エンドという使いにくそうなオペの落札金利は0.11%按分でしたが、そんなオペでも0.11%なのねえという気もするし・・・・
#と、超マニア向けですいません
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2010/02/24
こちらが2月3、4日の資産買入を一旦停止した会合の議事要旨
http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/mpc/pdf/2010/mpc1002.pdf
こちらは昨日実施されたたぶん議会での総裁ご挨拶
http://www.bankofengland.co.uk/publications/other/treasurycommittee/ir/tsc100223.pdf
○BOEの政策効果の説明が時間軸効果っぽくなっている件について(^^)
先般のFRBバーナンキ議会証言原稿絶賛大紹介シリーズの中では、FEDの長期国債&MBS&エージェンシー債買入に関連して、当初導入時には「金利を引き下げる」という(まあ中銀マニアからすると一般的に言えば)結構チャレンジャーな企画をして、「我々の実施しているのはバランスシートの負債サイドではなく資産サイドに注目しているので、量的緩和とは違いますよ!!!」と思いっきり説明していたものが、先般の議会証言では「超過準備が金利や信用スプレッドの押し下げに効果を与える」みたいな量的緩和政策っぽい話をしていますねえという事を申し上げたと思います。
でですな、今回の一連のBOEの発表を見ていますと、堂々「量的緩和」を銘打って実施していた資産買入の効果についての話が微妙にファジーになっておりまして、一方で金融市場環境の改善については時間軸的なお話をしているという、中々味わい深い物を感じる所であります。
議事要旨の頭のところですが、金融市場環境の認識に関する部分では市場環境、特にリスク資産の価格回復が顕著(一部まだ駄目なのあるけど)という話をしているのですが、その最後の部分になる第5パラグラフから。
『Market intelligence indicated that strong cash inflows combined withlow
official interest rates may have led some asset managers to seek out higher
yielding investments in recent months.』
どう見ても低金利によるポートフォリオリバランス効果(本当にそうかという話は華麗にスルー)です本当にカムサハムニダ。
昨日のキング総裁挨拶でも似たような話をしてまして・・・・
『To offset the effects of these headwinds, the MPC decided at its February
meeting to maintain the unprecedented level of monetary stimulus, by holding
Bank Rate at 0.5% and maintaining the stock of assets purchased over the
past year at £200 billion.』
maintainingっていうのが如何にも緩和政策のように言ってますけど、そらあんた売却はよーせんじゃろと思うので、それはただの現状維持だと思うのですけど市場的に言うと。
『The effects of the money-financed asset purchases will persist and together
with the low level of Bank Rate, will continue to provide a substantial
boost to money spending for some time to come.』
これは実はMPCの議事要旨の方でも似たような説明になっているのですけれども、買入をスポット実施してハイおしまいというのがその後効いて来るのかなあというのはこれまた市場的には(目先しか見てねえだろというツッコミはあると思いますが)微妙な感が。
となりますと、結局のところ緩和政策のキモが「低金利の継続」という話になってやせんかいなと思うのでありまして、はてなんざんしょという気がするのでありまする。いやまあ「買った効果これからしばらくも続くんです!!!」と言われたらまあそうですねえ(棒読み)としか申し上げようが無いのですけどね(汗)。
○では資産買入の効果はどの辺りにという話ですが
MPCの議事要旨に戻って、第11パラグラフからの『Money, credit, demand
and output』って所にその手の話が。第12パラグラフから。
『The latest data for 2009 Q3 indicated that nominal GDP had begun to expand
again, at a quarterly pace of 1.1%. Taken at face value, these data were
promising given that the objective of the accommodative stance of monetary
policy, including the MPC’s asset purchase programme, was to increase
nominal demand sufficiently to meet the inflation target.』
という話のようですな。
で、実はこの後、名目GDPはまあ兎も角、実質GDPが期待外れという指摘があって、その理由に関して4つ並べてああでもないこうでもないという話をしていて、これがまた正直読んでてワケワカランのですが、めんどいので華麗にスルーしますが、もしかしたら(結構うだうだ説明しているので)色々と検討している所なのかもしれません。第13〜16パラグラフですのでご参考までに。
で、最後の『The immediate policy decision』ちゅう所ですが、第29パラグラフではこんな話を。
『During the month, the Bank had completed the MPC’s programme for purchases
of £200 billion of assets financed by the issuance of central bank reserves.
That stock of past asset purchases would continue to impart a substantial
degree of monetary stimulus for some time to come.』
『The completion of the previously announced purchase programme had resulted
in little immediate impact on market yields, consistent with the fact that
market participants almost uniformly expected the size of the asset purchase
programme to be left unchanged at this MPC meeting.』
買入を一旦停止しても、今後も買入の効果がでるでしょうという話と、買入完了ですよというアナウンスの中でも市場金利が上昇していないのは「額は維持されるでしょうという期待から」というのは何か説明として訳判らんのでありますが、ここの部分って理屈が激しく途中割愛しているのか、論理が飛躍しているのかどうなんじゃろという感じでございまする(涙)。
○んでまあ資産買入をこれから増やすとインフレ加速や資産バブル発生リスクと
まあその辺りの理屈はそんなに話が飛躍してませんけどね。第33、34パラグラフから。
『A case could be made for increasing the degree of monetary stimulus at
this meeting. The Committee’s February Inflation Report projection, conditioned
on Bank Rate following market yields, indicated that CPI inflation was
more likely than not to be below target for much of the three-year forecast
period if the asset purchase programme was maintained at its current size
of £200 billion.』
んでもって買入拡大した場合どうなるかと言うと・・・・
『An expansion of the asset purchase facility could bring inflation back
to target more quickly than otherwise. That could also further attenuate,
beyond the measures already taken, damage to the supply capacity of the
economy caused by the recession.』
しかし(引用してなくて恐縮ですが)景気認識においては「底割れリスクはほぼ払拭」としながらも、足元の数値は期待以下だし、先行きのリスク要因はありますよという話でありまして、引用すると長くなるので、昨日の総裁挨拶の冒頭を引用しておくとこういう感じだすな。
『Since members of the MPC last came before this Committee, there have
been some signs of a recovery in demand around the world, and also at home.
But this nascent recovery is fragile. The tensions that underlay the build
up of large world imbalances have not been resolved. And, at home, bank
lending to the non-financial sector continues to fall. So the risks to
the Committee’s central view of a gradual recovery of output remain to
the downside.』(昨日のキング総裁の議会での挨拶から)
てな具合の中で資産買入の拡大を行わないというのも何だか話としてどうなのよっていう気はする、つーかロジック的にはかなり支離滅裂の世界に向かっていないかねとは思いますが、まあ一応第34パラグラフでは理屈は何となくつけています。
『But there were also arguments for leaving the scale of the asset purchase
programme unchanged at this meeting. The February projections did not imply
an overwhelming risk of inflation being below the target over the forecast
period, and so did not suggest an immediate need for a further relaxation
of the policy stance.』
物価下落リスクは少ないので目先の追加緩和は特に不要とな。
『Indeed, given the exceptional degree of uncertainty over how the economy
would evolve, there was little merit in attempting to fine-tune monetary
policy in the hope of achieving comparatively small changes to the future
path of inflation.』
ファインチューニングなんて細けぇこたあいいんだよ!と読んでしまったのはあたくしの誤読ですかそうですか(^^)。
『Furthermore, CPI inflation was currently above the target, and the near-term
outlook was for it to increase further. Consequently, there was a risk
that inflation expectations might rise, and a possibility that expanding
the size of the asset purchase programme at this meeting might add to that.』
ということで、現状CPIがターゲットを超えて推移し、目先も上昇するという中でのインフレ期待の上方修正のリスクがあり、買入を拡大(というか継続実施というか)するとその期待に燃料投下のリスクがあると。
『For some members, there also remained risks that adding to the size of
the asset purchase programme might increase the chance of unwarranted increases
in asset prices, and that attempting to eliminate the degree of spare capacity
too rapidly might eventually result in more inflationary pressure.』
数人のメンバーは買入を拡大(継続して実施というか)した場合には資産バブルの懸念があるという指摘をしているだすな。うーみゅ。
ということでBOEのMPC議事要旨ネタでありましたが、FRBの議事要旨はどうしたというツッコミはしないように(他のネタもあるとしんどい^^)。
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2010/02/23
○時間が無くなったので予告編
資産買入の継続を停止したBOEの議事要旨が訳判らん点について、というのがお題になる予定なのですが・・・・・
http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/mpc/pdf/2010/mpc1002.pdf
2月は資産買入を停止したのですが、この回の議事要旨を(例によって辞書片手に)読んでみた訳なのですが、これが何かもうロジックがあちこちでワープしてて意味分からんがなという代物なのです。いやまあ単にあたくしの英語力が貧弱の為何が何だか分からないだけなら良いのですが、英語の特異な人ちょっと教えてくんなませという感じでございます(><;
なお、まあご案内のように資産買入は継続しなかったのですけれども、肝心の景気認識について、いきなりこのMinuteの第2パラグラフ(番号振っているので見やすい)が出オチ状態になっているのはどうなのかと。
『2 Weaker-than-expected macroeconomic data, including the preliminary
release of UK GDP for the fourth quarter of 2009, had contributed to a
decline in near-term sterling interest rate expectations over the month.』
>Weaker-than-expected macroeconomic data
>Weaker-than-expected macroeconomic data
>Weaker-than-expected macroeconomic data
どう見ても出オチです本当にありがとうございました。
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2010/02/19
お題「これはきっちりと現状維持ですな」
5年で財政均衡達成に向けてとは頑張りますなあ米国様は(棒読み)
#一方で本邦はまあいいですもう(ヤケクソ)
#ディスカウントウィンドウレート引き上げとな(by公共放送速報)
んでもって、昨日は決定会合がございましたのでその関連ですが、声明文よりはその周辺の話の方がオモローだったので。
○これは見事な現状維持
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k100218.pdf(今回の声明文)
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k100126.pdf(前回の声明文)
・・・・・これはネタにならん(^^)。
えーっと、前回との違いは2箇所(展望レポートの中間レビューに関する部分は除く)でございまして、
・景気の現状認識部分の公共投資
『公共投資は頭打ちとなっている。』(今回)
『公共投資は頭打ちとなりつつある。』(前回)
公共投資が頭打ちになっちゃいましたと。
・物価の現状認識部分の石油関連に関する部分
『石油製品価格の動きなどを反映し、下落幅は縮小している。』(今回)
『石油製品価格変動の影響が薄れてきたことなどから、下落幅は縮小している。』(前回)
結論は同じですし、まあここの部分ってテクニカルな話なのであんまりキニシナイのですが、まあ一応そういうことで。
・・・・・とまあそういうことで前回の現状認識、先行き見通し、リスク要因に関しての大筋に変化は無く、特に先行き見通しとリスク要因はワーディングまで一緒という素敵な現状維持なのでございました(^^)。
一応先行き見通しとリスク要因を(後で自分が見る時の為に)まる引用して置きたく存じます。これ全部前回と同じ文言(リスク要因の番号だけ違うけど)なのであります。
『先行きの中心的な見通しとしては、2010 年度半ば頃までは、わが国経済の持ち直しのペースは緩やかなものに止まる可能性が高い。その後は、輸出を起点とする企業部門の好転が家計部門に波及してくるとみられるため、わが国の成長率も徐々に高まってくるとみられる。物価面では、中長期的な予想物価上昇率が安定的に推移するとの想定のもと、マクロ的な需給バランスが徐々に改善することなどから、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比下落幅は縮小していくと考えられる。』
まあナローパスな気はしますが、何気に出てくる経済指標は微妙に良かったりしているのもチャーミング。
『リスク要因をみると、景気については、新興国・資源国の経済の強まりなど上振れ要因がある一方で、米欧のバランスシート調整の帰趨や企業の中長期的な成長期待の動向など、一頃に比べれば低下したとはいえ、依然として下振れリスクがある。また、最近における国際金融面での様々な動きとその影響についても、引き続き注意する必要がある。物価面では、新興国・資源国の高成長を背景とした資源価格の上昇によって、わが国の物価が上振れる可能性がある一方、中長期的な予想物価上昇率の低下などにより、物価上昇率が下振れるリスクもある。』
あたくし的には黒い白鳥さんがエーゲ海から飛んでくるリスクが気になるところでありますが(北禿先生のお告げのせいではありません^^)、その辺りに関する議論はどういう風に進んだのでしょうというのは気になる。
ということで、見事に現状維持でして正午前に終了とは恐るべし。これじゃあ金融経済月報もあんまり変わらないのでしょうかねえ。
以下決定会合レビュー的雑感を少々。
○金利市場的にはサプライズは無かったのですが・・・・・
まあ昨日も申し上げたように、金利市場的な発想だと外部環境は(色々と黒い白鳥の影が見えるのですが)前月から横ばいあるいは若干の好転という感じでありますので、そらまあ金融政策決定会合では何も無いでしょという事になるのですけれども(展望レポートの見通しと物価安定の理解を掛け算すると向こう1年以上は金融緩和状態を継続しますと言っているので、引き締めだのという話はそもそも発生しない)、何か相変わらず金利市場じゃない所(特に為替市場)からの変な期待と変な講釈が飛んでいるのが実に香ばしい所です。
何せ(斜め読みしかしませんでしたが)足元のGCレートが落ち着いてきていて当座預金残高が16.5兆円に増えてきている翌朝(=昨日の事ですが)の朝刊に何故か資金供給が絞り気味でどうのこうのみたいなマーケット解説記事を出す経済クオリティーペーパー様があらされる位でございまして、まあ金利の世界でも短期金融市場のおまけに調節がどうのこうのという話になると、マイナーな上にもマイナーな世界ですから素っ頓狂な話が出てくるのは仕様なのでありますけれども(-_-メ)、
アナウンスが無かったによって、今後もそんなアホウな話は無いと思われますので申し上げますと、昨日の会合では「もしかしたら新型オペをロールする」という話を堂々とするんじゃないかという与太話で友人と盛り上がっていたあたくしでございまして(^^)、何か知らんですけれども、どこぞのレポートを見たら(さすがに金利系レポートではない)「新型オペは既に8.8兆円実施されており、間もなく10兆円に達するので今回何らかの措置がないと枠を使いきる」とかいう指摘があったりして、まあ金利市場以外での理解ってその程度のもんなのかなあと思う次第。まあ資産買入と混同してるんでしょうけれどもね。
つまりですな、金利市場以外への作用のような物を考えて「まあ意味が無さそうだけどもあんまり害も無さそうなのでやっときますか」というのを大真面目な顔をして実施するという福井の俊ちゃんスキームを導入するというのであれば、それこそ(1ミリも意味は無いのですが)新型オペのロールという話でもやって来るのではないかとか思ったのでありますが(笑)、良く良く確認したら新オペ導入時の会見で総裁はオペを当然の如くロール前提の話をしていました(汗)。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0912b.pdf
の最後の質疑から。
『もちろん、将来絶対にこうなるとは言えませんが、今回の措置は金融緩和措置の一環として行っているわけですから、このオペを見直す時というのは、基本的には私どもが経済・物価情勢をみて、金融政策の運営スタンスを変えなければいけないと判断する時だと思います。』
・・・・・ということで、そもそもオペのロールをアナウンスするということはございませんでした(苦笑)。まあ実行額を増やすとか期間を長くする(3か月を6か月にするとか)はアナウンスして来る事になるのでしょうけれども、超将来的な事を勘案すると、この「指値オペ」自体は機動的に使えるように残しておいた方が便利なような気がするので、臨時措置として使っちゃうのも勿体ない気がします。
まあしかし今回の決定会合結果に関しては、先程申し上げたように物の見事に現状維持という結果でありまして、12月に示された俊ちゃんスキームっぽい(新型オペとその後の供給は3か月から2年くらいまでの金利に見事に作用しているので俊ちゃんスキームなだけではないが)路線だったもんで、ついに白川さんも転向して俊ちゃんスキームに走るのかと思ったのでありますが、どうもBOEは資産買入停止するし、FRBは出口戦略の手順書を出すしと、周囲の中央銀行の動きを見ている内に俊ちゃんスキームへの転向を思い止まってしまったようで誠に遺憾の極みでございます(−−)。
○白川総裁の説明が素人向きじゃないのか報道バイアスに問題があるのか
総裁会見のテキストは今日出るのでそっちを読んでからなのですが。
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPnTK036419520100218
UPDATE3: インフレターゲット採用・不採用は意味のある切り口でなくなっている=日銀総裁
白川さんとしては「短期的にCPI数値を厳密に目標にして金融政策(というか金利の上げ下げ)をやるのは如何な物か」という話をしようとしているのだと思うのですが、メディアバイアスに掛かるとこうなる訳で。
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20100218-OYT1T01331.htm
日銀総裁、インフレ目標導入に否定的
『日本銀行の白川方明総裁は18日、金融政策決定会合後の記者会見で、一定の物価上昇率を金融政策の目標に設定するインフレ・ターゲット政策について「金融政策の手法として意味のある論点ではない」と述べ、導入には否定的な考えを示した。菅財務相が16日の衆院予算委員会で、1%程度の物価上昇を政策目標にすべきだとの考えを表明、インフレ目標の導入を事実上促していた。』
そもそも菅さんが短期的な目標を導入すべしという話をしているのかもファジーな話なのですが、まあ報道する方としては「政府と日銀が対立している」という書き方をした方が絵になる訳ですから、そうなる方向にフレームアップして報道するバイアスが掛かるのでありまして、どうしてもこういう話になるんだろうなあと。
大体からして今まで政府が「何とかを目指す」みたいな経済政策目標のようなものを掲げてその通りに行かなくて誰か辞職したか(竹中先生の「ITで雇用650万人(でしたっけ?)」とかね^^)のかと小一時間な訳でありまして、その辺は「目標」が「ノルマ」なのか「目指して頑張ります」というものなのかという論点を良く考えないといかんと思いますし、最近はさすがに「CPIだけ見て金融政策実施しろ」とか言う人はあんまりいないと思う(BOEなんかCPIにまともに連動してたら大変な事になりますが)ので、この辺りの話って定義をちゃんと詰めないでああでもないこうでもないと言うと、議論が無限ループするだけで生産的な話にならんと思うのですけどねえ。
#西日本新聞(なので共同なのか??)はもうちょっとマシかな。
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/153334
『短期的なインフレ目標の設定について』ってのを入れているので
ブルームバーグのこれはなお凄い。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=ai8OR4yQatgc
日銀総裁が政府に異例の注文−市場安定のため「中銀の姿勢尊重」を
・・・・いやあのそこまで対立構造を煽らなくても良いと思うのですけれども。これって要するに「長期国債買入拡大を財政ファイナンスとして捉えられたら長期金利が上昇しちゃって緩和しようとしている逆の事が起きちゃうから財政発散みたいな話は勘弁してね」という話をしているのだと思うのですけれども・・・・・
ま、今日出る会見要旨を見ないと何とも言えませんがね。
でですな、白川さんもまあ丁寧かつ厳密に説明しようとしているのだと思うのですけれども、報道する方の理解力(いやまあちゃんと分かっている人も沢山いるのですけれども)および報道バイアスと言うものにももう少し配慮をした方が良いのではないかと正直思う所でございまして、そもそも日銀は何だか知らんが妙に叩かれやすい存在のようでございますので(叩いても反撃しないしね)、その辺をよーく考えまして発言を工夫した方がよろしいのではないかと思うのでありまする。
あと、まあブルームバーグあたりが上記のような報道をする位なのですから(ちょっと最近の煽りヘッドラインは目に余る場面が多いのですが、ブルームバーグ自体はそこまでアホウじゃないと思ってますので)、白川さんもどうせ心の中では「政府はしょーもない事ばかり言って結局全部日銀にお願いじゃねえかよ」などと苦々しく思っておられるのではないかと勝手に忖度する次第ではございますが(^^)、金融政策は技術的な問題もさることながら、経済とか景気という人間がカオスとなってやっている物に対して働きかけるものでもありますので、やはり本音を適当にはぐらかす猫を被るとか狸状態になるとかいう技を身につけるべきではないかと思われる次第でございます。
○米国様公定歩合引き上げね
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20100218a.htm
『The Federal Reserve Board on Thursday announced that in light of continued
improvement in financial market conditions it had unanimously approved
several modifications to the terms of its discount window lending programs.』
『Like the closure of a number of extraordinary credit programs earlier
this month, these changes are intended as a further normalization of the
Federal Reserve's lending facilities. The modifications are not expected
to lead to tighter financial conditions for households and businesses and
do not signal any change in the outlook for the economy or for monetary
policy, which remains about as it was at the January meeting of the Federal
Open Market Committee (FOMC).』
『At that meeting, the Committee left its target range for the federal
funds rate at 0 to 1/4 percent and said it anticipates that economic conditions
are likely to warrant exceptionally low levels of the federal funds rate
for an extended period.』
ということで、ご丁寧にもfor an extended periodな金利継続に関してもアナウンスしていますので、今回はあくまでもテクニカルな話で、危機対応の正常化の一貫であるという話をしています。
『In addition, the Board announced that, effective on March 18, the typical
maximum maturity for primary credit loans will be shortened to overnight.
Primary credit is provided by Reserve Banks on a fully secured basis to
depository institutions that are in generally sound condition as a backup
source of funds. Finally, the Board announced that it had raised the minimum
bid rate for the Term Auction Facility (TAF) by 1/4 percentage point to
1/2 percent. The final TAF auction will be on March 8, 2010.』
えーっと、ディスカウントウィンドウの期間を翌日物にするという話と、TAFの事が書いてあるような気がするが、最早時間が無いので引用しただけでスルーします。その先も書いてありますけど、まあ本職の人達が何か解説してくれるでしょう。
#何のために引用したのかというツッコミは却下
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2010/02/18
○決定会合プレビューなどなど
今日の決定会合は金利村の人達からすると普通に考えると何もなしとなるのですが、そうは言いましても為替とかの外周部分では金融政策に対する期待は相変わらずあるのでして、どこかの人と話をしてたら「今回何も無いと2か月連続で何も無いのだがそうなるのか」とか言われてちょっとコケたりしたのですが(えーっとあのその金融政策ってそうホイホイ動くもんじゃないのですが・・・・)。
何せここもとの日銀の金融政策って(一応ターム物金利の誘導という話はしてますが)ヤマダ電機のチラシのような「超低金利」という落涙を誘う見出しを載せるように、まあ金利市場の人達というよりは外周部分の皆様に向けてのアピールを行うのがポイントになっているだけに、従来の金利市場ムラ的な発想で決め打ちしていると外す悪寒も。
とは言いましても何せ政策そのものが外周部分へのアピールでありますので、そんなに金利市場ムラに凄く影響があるモノが出てくる訳でもないという気もするのであります。
まあ何かの拍子でハチャメチャな円高株安になったら利下げでもするんでしょうけれども、金利政策という名前で打てるタマは(0.10%を0にして短期金利は兎も角、中長期金利に何の意味があるのかという話はさておきまして)最後なので出し惜しむと思われますんで。
#実際問題としては「ゼロを目標」とするのはFRBもBOEも「それは実務上問題」というスタンスでゼロの手前で寸止めしているのではございますが
ということでまあ結論は無いのだが(いつものこと)、菅さんがまたああだこうだ言ってますので、何かしょーもない「やった振り」政策のようなものが出てくる茶番モードの可能性は排除しない所でありまする。
http://www.federalreserve.gov/newsevents/testimony/bernanke20100210a.htm
昨日の続きから。
○低金利政策は「for an extended period」で継続とな
『The FOMC anticipates that economic conditions, including low rates of
resource utilization, subdued inflation trends, and stable inflation expectations,
are likely to warrant exceptionally low levels of the federal funds rate
for an extended period.』
ということですな。
『In due course, however, as the expansion matures the Federal Reserve
will need to begin to tighten monetary conditions to prevent the development
of inflationary pressures. The Federal Reserve has a number of tools that
will enable it to firm the stance of policy at the appropriate time.』
当面低金利を継続するけれども、いずれかの段階で金融環境を引き締める必要はあるという話はまあ普通ちゃあ普通。ただまあ緩和モード全開の時にはこの話は無かったので、モードとしては最近は出口検討モードというのはその通りなんでしょうな。
○出口政策の手順書:準備預金付利金利
『Most importantly, in October 2008 the Congress gave the Federal Reserve
statutory authority to pay interest on banks' holdings of reserve balances.』
ということで準備預金付利がどう効くかの説明ですが、要するに短期市場金利のフロアになるという説明です。
『By increasing the interest rate on reserves, the Federal Reserve will
be able to put significant upward pressure on all short-term interest rates,
as banks will not supply short-term funds to the money markets at rates
significantly below what they can earn by holding reserves at the Federal
Reserve Banks. Actual and prospective increases in short-term interest
rates will be reflected in turn in longer-term interest rates and in financial
conditions more generally.8』
で、この8番の脚注が泣ける。
『8. Increases in the interest rate paid on reserves are unlikely to prove
a net subsidy to banks, as the higher return on reserve balances will be
offset by similar increases in banks' funding costs. Indeed, on balance,
banks' net interest margins will likely decline when short-term rates rise.
』
準備預金付利は銀行への補助金ではありません!!!!とわざわざ説明。ただまあ「金利が上昇したら銀行のファンディングコストが上昇するからトータルではどうのこうの」というのは説明としてかなーりのインチキ成分だと思います。
○出口政策の手順書:流動性吸収手段
『The Federal Reserve has also been developing a number of additional tools
it will be able to use to reduce the large quantity of reserves held by
the banking system. Reducing the quantity of reserves will lower the net
supply of funds to the money markets, which will improve the Federal Reserve's
control of financial conditions by leading to a tighter relationship between
the interest rate on reserves and other short-term interest rates. 』
ということで、まあ後でも話があるのですが、超過準備の存在を放置したままでFF誘導金利の引き上げを実施しても実効FFレートがコントロールできるのかという点についてはさすがに「無理でしょ」と思ってるんでしょうねという認識だというのは把握した。
『One such tool is reverse repurchase agreements (reverse repos), a method
that the Federal Reserve has used historically as a means of absorbing
reserves from the banking system.』
ということでまずはリバースレポ。以下はリバースレポの内容説明と、リバースレポの実施方法をより広い相手に対して実施するとか、対象証券を拡大するとかいう話をしているので、まあ一応引用だけしときます。
『In a reverse repo, the Federal Reserve sells a security to a counterparty
with an agreement to repurchase the security at some date in the future.
The counterparty's payment to the Federal Reserve has the effect of draining
an equal quantity of reserves from the banking system.』
ここまでが取引の説明で以下が最近の工夫。
『Recently, by developing the capacity to conduct such transactions in
the triparty repo market, the Federal Reserve has enhanced its ability
to use reverse repos to absorb very large quantities of reserves. The capability
to carry out these transactions with primary dealers, using our holdings
of Treasury and agency debt securities, has already been tested and is
currently available. To further increase its capacity to drain reserves
through reverse repos, the Federal Reserve is also in the process of expanding
the set of counterparties with which it can transact and developing the
infrastructure necessary to use its MBS holdings as collateral in these
transactions. 』
で、次はこの前実施が公表されたターム預金ファシリティ。
『As a second means of draining reserves, the Federal Reserve is also developing
plans to offer to depository institutions term deposits, which are roughly
analogous to certificates of deposit that the institutions offer to their
customers.』
定期預金みたいなもんですよと。
『The Federal Reserve would likely auction large blocks of such deposits,
thus converting a portion of depository institutions' reserve balances
into deposits that could not be used to meet their very short-term liquidity
needs and could not be counted as reserves.』
なのですが、この場合、ターム預金ファシリティ部分はマネタリーベースにカウントするのでしょうかカウントしないのでしょうか。うーむ。
『A proposal describing a term deposit facility was recently published
in the Federal Register, and we are currently analyzing the public comments
that have been received. After a revised proposal is reviewed by the Board,
we expect to be able to conduct test transactions this spring and to have
the facility available if necessary shortly thereafter.』
ということで、実施要項を決めて早々にテスト実施するようです。
『Reverse repos and the deposit facility would together allow the Federal
Reserve to drain hundreds of billions of dollars of reserves from the banking
system quite quickly, should it choose to do so.』
ほうほうそうですか。
○出口政策の手順書:具体的な手順
『The sequencing of steps and the combination of tools that the Federal
Reserve uses as it exits from its currently very accommodative policy stance
will depend on economic and financial developments.』
そらそうよ。まあここで具体的な実施時期に関しては徹底的に曖昧にしているのは当然ちゃあ当然ですが正しいスタンスですな。
『One possible sequence would involve the Federal Reserve continuing to
test its tools for draining reserves on a limited basis, in order to further
ensure preparedness and to give market participants a period of time to
become familiar with their operation. As the time for the removal of policy
accommodation draws near, those operations could be scaled up to drain
more significant volumes of reserve balances to provide tighter control
over short-term interest rates. The actual firming of policy would then
be implemented through an increase in the interest rate paid on reserves.』
つーことで、この前も書きましたが、(1)各種吸収ツールのテストを行い、(2)徐々にその規模を拡大して超過準備を引いて、(3)実際に利上げの実施を行うが、その時はFF目標金利だけではなくて準備預金付利金利も引き上げる、という手順ですな。
『If economic and financial developments were to require a more rapid exit
from the current highly accommodative policy, however, the Federal Reserve
could increase the interest rate paid on reserves at about the same time
it commences significant draining operations.』
急ぐ場合は(2)は割愛ということだが、多分大して引けないうちに利上げになるのではないかという予感はする(^^)。
○証券売却はしないようですが・・・・・
『I currently do not anticipate that the Federal Reserve will sell any
of its security holdings in the near term, at least until after policy
tightening has gotten under way and the economy is clearly in a sustainable
recovery.』
この部分に関しては一部のホーキッシュな地区連銀総裁とかからは証券売れやという発言もあるのですが、バーナンキ師匠は否定しているのがほほーという感じです。
『However, to help reduce the size of our balance sheet and the quantity
of reserves, we are allowing agency debt and MBS to run off as they mature
or are prepaid.』
基本的には償還期限が来て普通に償還されるか、繰り上げ償還された分での落ちというのを考えているのでしょうな。
『The Federal Reserve is currently rolling over all maturing Treasury securities,
but in the future it may choose not to do so in all cases.』
償還乗り換えルールを変更して財務省証券の持ちも減らす(昨日紹介したSF連銀のグラフを見ても判りますように、長期財務省証券の市場買入を実施していない時期でもFEDの保有する財務省証券の残高が減らないのは償還乗り換えの問題ですな)可能性も示唆とな。
『In the long run, the Federal Reserve anticipates that its balance sheet
will shrink toward more historically normal levels and that most or all
of its security holdings will be Treasury securities. Although passively
redeeming agency debt and MBS as they mature or are prepaid will move us
in that direction, the Federal Reserve may also choose to sell securities
in the future when the economic recovery is sufficiently advanced and the
FOMC has determined that the associated financial tightening is warranted.』
ということで、普通は償還での縮小でおっけーだが、必要な時は売却もとは一応言ってますが・・・・・
『Any such sales would be at a gradual pace, would be clearly communicated
to market participants, and would entail appropriate consideration of economic
conditions.』
ということなので、そうそう過激な売却はしないという話。ただまあそう世の中上手くいくもんなのかという点はひじょーに気になる。
○FF誘導目標に関しての論点
で、最後はさっきも話があった「超過準備が潤沢にある下でのFF誘導目標の有効性」という話になります。
『As a result of the very large volume of reserves in the banking system,
the level of activity and liquidity in the federal funds market has declined
considerably, raising the possibility that the federal funds rate could
for a time become a less reliable indicator than usual of conditions in
short-term money markets.』
ではどうするのかという話は以下。
『Accordingly, the Federal Reserve is considering the utility, during the
transition to a more normal policy configuration, of communicating the
stance of policy in terms of another operating target, such as an alternative
short-term interest rate. In particular, it is possible that the Federal
Reserve could for a time use the interest rate paid on reserves, in combination
with targets for reserve quantities, as a guide to its policy stance, while
simultaneously monitoring a range of market rates.』
FFを誘導目標水準に持って行くのが困難になった場合のポリシーコミュニケーションツールとして「準備預金付利金利」+「リザーブの額」の合わせ技を使うという可能性を示しました。つまり超過準備の存在によってコントロール不可能になった場合にその数字を目標にするよりは、コントロールが可能なものを指標にした方が政策のコミュニケーションツールとして有効ですよね、という話でありまして、これはこれで実務的には「そうですね」の一言で片付く話ではありますが、金融政策に関する色々な論議の中で言えば結構重い論点なのではないかとも思われますがどうでしょう。
『No decision has been made on this issue; we will be guided in part by
the evolution of the federal funds market as policy accommodation is withdrawn.
The Federal Reserve anticipates that it will eventually return to an operating
framework with much lower reserve balances than at present and with the
federal funds rate as the operating target for policy.9』
ということで、正常に戻ったらまた通常のFF誘導に戻るという話ですが、最後の9番の脚注では、準備預金付利を常設ファシリティ化するという話をしています。
『9. The authority to pay interest on reserves is likely to be an important
component of the future operating framework for monetary policy. For example,
one approach is for the Federal Reserve to bracket its target for the federal
funds rate with the discount rate above and the interest rate on excess
reserves below. Under this so-called corridor system, the ability of banks
to borrow at the discount rate would tend to limit upward spikes in the
federal funds rate, and the ability of banks to earn interest at the excess
reserves rate would tend to contain downward movements.』
常設ファシリティによるコリドア形成の話ね。
『Other approaches are also possible. Given the very high level of reserve
balances currently in the banking system, the Federal Reserve has ample
time to consider the best long-run framework for policy implementation.
The Federal Reserve believes it is possible that, ultimately, its operating
framework will allow the elimination of minimum reserve requirements, which
impose costs and distortions on the banking system.』
だそうで。
○まあまとめはどうでも良いのですが。
折角なので「Conclusion」も引用。
『To sum up, in response to severe threats to our economy, the Federal
Reserve created a series of special lending facilities to stabilize the
financial system and encourage the resumption of private credit flows.
As market conditions and the economic outlook have improved, many of these
programs have been terminated or are being phased out.』
『The Federal Reserve also promoted economic recovery through sharp reductions
in its target for the federal funds rate and through purchases of securities.
The economy continues to require the support of accommodative monetary
policies. However, we have been working to ensure that we have the tools
to reverse, at the appropriate time, the currently very high degree of
monetary stimulus. We have full confidence that, when the time comes, we
will be ready to do so. 』
ということで、まあこれはここまでのまとめなので特にインプリケーション無しと。
#ということで、やたら延々と引っ張ってどうもすいません。結局全文引用の巻でした
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2010/02/17
○雑談ばっかですいませんがGCとかのメモ
昨日のオペも当座預金残高16〜17兆円(つーか16.5兆円)になるような感じでの調節になっておりまして、GCレートちゃんも落ち着いて来ましたでござるの巻。今月はこの調子で16.5兆円をキープするのか何だか知りませんが、とりあえず先月の感覚からすると不足月で15兆円の当座預金残高で結構余剰感が出たので、16.5兆円だと何となく余剰感が爆発してきそうな予感。よー知らんがの。
で、早くも来月の話をしますと、来月は20日(正確には23日)に国債償還要因による大幅財政払い超がございまして、これがまた例によって例の如くここの払い超を跨ぐ資金供給が足りないという事になると、その前で足元レートがアレな事になるというような四半期ごとにやらかしているパターンになる悪寒もするのでありますけれども、今回はどういうオペレーションになるのやら。何か今の調子だと、足元余剰でレートが低いからということで、ショートファンディングが無駄に溜まって3月23日に向けたオペ期落ちでファンディングが重くなって足元が急に逼迫するとか言うようなお洒落な流れになるんでしょうな。とだけ申し上げておきたく存じます。
まあ足元落ち着いたからディーラーが持ちにしやすくなった事ですし、今日の3か月TBは別に安くはならんでしょ、と思います。
で、雑談その2ですが、昨日は衆議院予算委員会で山本幸三さんの質問があったようで、中継見てないから知らんですけど白川総裁との話はまたまた例によって例の如く平行線になったようで残念な事であります。本石町日記さんのエントリー(人のふんどしにも程がありますが)をご参照ありたし。
http://hongokucho.exblog.jp/12853094/
でまあ菅さんの発言が「追加緩和圧力」という文脈で解説されるのが何だかなあという感じですが(この記事ではそうは言ってません、念の為)。
http://mainichi.jp/life/money/news/20100217k0000m020060000c.html
菅財務相:消費者物価上昇1%程度を目標 衆院予算委
1%って低くねえかという話はさておいて(菅さんも言ってるけど)、目標とかデフレ宣言とか言うのは良いけど、おまいらのやっとる施策のどこがどう物価を上昇させるような政策なんだと小一時間問い詰めたいのでありまして(いやまあ思い切って財政発散させて悪性インフレにするのかも知れないが、それは国民厚生上全然幸せにならんじゃろ)、菅さんにおかれましてはとっとと具体策を出せと思うのであります。
#しかしまあ政府の役職に無い党の人が日銀にああだこうだ言っただけで物凄く批判してた野党時代のアレは何だったんだろうねと
ではまた性懲りも無く月曜からの続き。
http://www.federalreserve.gov/newsevents/testimony/bernanke20100210a.htm
○資産購入プログラムを「利下げ後の追加金融政策」と位置づけるとは
やっと後半なんですけどね(汗)。
『Monetary Policy and Asset Purchases』から始まる部分なんですけれども、途中から先は出口政策の手順の話になって、まあ将来のFEDのアクションがどうなるのかという話を考えた場合当然ながらそっちの方が重要なインプリケーションを持つのでありますけど、マニア的にはその前のパラグラフにも味わいを感じるのであります。
『In addition to supporting the functioning of financial markets, the Federal
Reserve also applied an extraordinary degree of monetary policy stimulus
to help counter the adverse effects of the financial crisis on the economy.
In September 2007, the Federal Reserve began reducing its target for the
federal funds rate from an initial level of 5-1/4 percent. By late 2008,
this target reached a range of 0 to 1/4 percent, essentially the lowest
feasible level.』
2007年9月から利下げ開始をしましたという話。で、現在の0〜0.25%は実務的にフィージブルなレベルとしては最低金利ということで、ゼロ金利とかマイナス金利というのも中々(話の上では可能となりますが)実務的には難しいざますということでしょうか。まあその辺はどーでも良いですが、あたくしが「ほほー」と思ったのはその次。
『With its conventional policy arsenal exhausted and the economy remaining
under severe stress, the Federal Reserve decided to provide additional
stimulus through large-scale purchases of federal agency debt and mortgage-backed
securities (MBS) that are fully guaranteed by federal agencies. In March
2009, the Federal Reserve expanded its purchases of agency securities and
began to purchase longer-term Treasury securities as well.』
伝統的政策(とは金利操作ですな)が弾薬打ち尽くしになったので、追加的な金融緩和策としてエージェンシー債とMBS債と財務省証券の大規模な買入を実施したと仰せです。それって今まで言ってた話と違いませんかねと思うのですが、その話は後ほど。
『All told, the Federal Reserve purchased $300 billion of Treasury securities
and currently anticipates concluding purchases of $1.25 trillion of agency
MBS and about $175 billion of agency debt securities at the end of March.』
というのは買入実績の話で、次がその効果に関して。
『The Federal Reserve's purchases have had the effect of leaving the banking
system in a highly liquid condition, with U.S. banks now holding more than
$1.1 trillion of reserves with Federal Reserve Banks.』
資産買入の効果のルートとして、銀行システムに潤沢な流動性を供給し、現在は超過準備が沢山ありますよという話をしています。
『A range of evidence suggests that these purchases and the associated
creation of bank reserves have helped improve conditions in private credit
markets and put downward pressure on longer-term private borrowing rates
and spreads.』
ということで、資産買入とそれによってもたらされた超過準備がクレジット市場の環境を改善し、非金融セクターの長期借入金利低下やスプレッド縮小に寄与しているという説明になっています。
○何か微妙に説明が「量的緩和政策」になってね?という件について
とまあそういう事で、こちらの説明では銀行システムの超過準備がどうのこうのという話をしているのですな。これは話の流れ(今日は多分間に合わないので引用しませんが、この先に出口戦略の手順書の話があって、まず流動性吸収をするという話と、その際に超過準備が大量に存在した場合に実務上の問題点が生じると説明しているのだ)上そうなったのか、それとも「超過準備そのものの量に効果があった」と言っているのかが、微妙に曖昧な所がチャーミング。
と申しますのは、そもそも財務省証券の大規模買入を実施した時の昨年3月のFOMC声明文ではこんな話をしていた訳ですわな。
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20090318a.htm
『To provide greater support to mortgage lending and housing markets, the
Committee decided today to increase the size of the Federal Reserve’s
balance sheet further by purchasing up to an additional $750 billion of
agency mortgage-backed securities, bringing its total purchases of these
securities to up to $1.25 trillion this year, and to increase its purchases
of agency debt this year by up to $100 billion to a total of up to $200
billion. Moreover, to help improve conditions in private credit markets,
the Committee decided to purchase up to $300 billion of longer-term Treasury
securities over the next six months.』(2009年3月18日のFOMC声明文より)
まあ確かにさっきの議会証言にあるように、最終的には非金融セクターの借入環境が改善したのですけど、この当時の説明は「FRBは日銀のようなバランスシートの負債サイドを目標にした政策を実施していませんが何か?」という話ではなかったかと存じます次第です。
という点に関してはイエレンSF連銀総裁の昨年1月の講演が参考になるのですけれども、それまで引用してるとエライコッチャになるのでモノのURLと、参考になると思われるURLをつけておきます(とまた人のふんどし)。
http://www.frbsf.org/news/speeches/2009/0104b.html(イエレン講演)
http://d.hatena.ne.jp/himaginary/20090111(himaginaryさんの解説)
http://d.hatena.ne.jp/a-kun/20090117(a-kunさんの解説)
http://hongokucho.exblog.jp/10230080/(本石町日記さんの解説)
ついでにSF連銀のサイトには中々便利な説明がありまして・・・・
http://www.frbsf.org/econanswers/response.htm
これは判りやすい(^^)。
でもって、こちらを拝読いたしますと、トップに出てくる連銀バランスシートのグラフなんぞが判りやすいと思うのですが、実際問題としてはFEDのバランスシートって資産買入を実施する前の各種流動性供給オペで既に絶賛大拡大しているのでありまして、そっちが減る中でここもとはエージェンシー債やMBSを買い取ってその規模が更に拡大しているという形になっているのですな。
つまり、超過準備の存在が各種スプレッドを下げているのではなくて(そらまあ危機が発生した後だったら流動性が無い中ではスプレッド下がらんから超過準備そのものは必要だと思うが)、あくまでも従来のFRBが説明していたように、連銀バランスシートの資産サイドで保有する特定市場の資産の構成によって、その特定資産市場の価格形成に影響を与えるというのが本筋なんだろうなあと思われます。超過準備の量があればスプレッドが縮小するというのであれば財務省証券だけ買っていれば良い話ですし、そもそも前半の拡大局面でスプレッドが縮小していて然るべきという話になりますし。
#実際のMBS金利の推移は「What has the Fed done about the economy?」って所をクリックして、そこから出てくる「Purchased
longer-term securities to lower borrowing costs」という所をクリックするとグラフが出てきます
ただまあそれを議会証言で露骨に説明すると、またぞろ変な批判(金融業者救済批判)が出てくるので、超過準備がどうのこうのという見た目判りやすい上に特定業界救済と言われにくい説明をしてるんじゃないかという気がするのは気のせいでしょうか。
それから、さっきMBS金利の推移を出すためにここクリックしてねというのを書きましたが、そこには思いっきりこういう書き方に。
『Purchased longer-term securities to lower borrowing costs
The Federal Reserve purchased longer-term securities to lower the costs
of mortgages and other loans.』
ということで、まあFEDの言い方を借りれば「量的緩和ではなく信用緩和」という話になるんでしょうなあと思うのですが・・・・・・・
○そこで思い出すのが福井俊ちゃんの説明。
まあおまけですが(汗)。
2005年5月13日の俊ちゃん講演より。
http://www.boj.or.jp/type/press/koen/ko0505a.htm
最後の方に(金融政策の効果)ってのがありまして、そこでの説明が何か今般のバーナンキ議長議会証言(の原稿)に重なる所があるのかなあとか思うのは気のせいですかそうですか。
『こうした金融経済情勢の下では、機動的に潤沢な流動性を供給することで、人々や市場参加者の流動性に関する不安心理を抑制し、金融市場の安定化を達成することにより、緩和的な金融環境をしっかりと維持することが必要でした。例えば、2002年秋には、銀行株価の下落や不良債権処理についての方策を巡る不透明感が高まる中で、金融機関の流動性需要が増加傾向を辿りましたが、これに対応した潤沢な資金供給を続けることによって、金融市場は安定的に推移しましたし、企業金融の急激な引き締まりもみられませんでした。』
『この時期、見方によっては、「約束」の効果<いわゆる「時間軸」効果>よりも、流動性不安を鎮めることを通じる「量」の効果の方が大きかったといえるかもしれません。』
『その後、金融経済情勢は改善傾向にあります。2002年度以降、実質成長率が前年を上回って成長を続ける中で、消費者物価の前年比もほぼゼロ%近傍まで下落幅を縮小しました。緩和的な企業金融の環境が維持されていることがその支えとなっています。金融機関の自己資本比率の上昇、企業の財務体質や収益性の改善とともに、量的緩和政策の枠組みのもとで資金調達に対する安心感が定着していることが、こうした望ましい環境を作り出しています。』
『量的緩和政策の枠組みは、景気が回復に向かえば向かうほど、サポートする力も強くなります。この場合、「量」の効果との比較では、「約束」の効果の方に徐々にウエイトが移って来ます。』
それをFEDの場合はバランスシートの資産サイドの構成変化で示しているというのはちと拡大解釈にも程がありますかそうですか(汗)。
で、流動性吸収するのは良いけど、あの莫大なMBS債をバランスシートに置いたままで(償還まで5年とか掛かると思うのだが)どうするんでしょという話は明日以降(おいおい)。
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2010/02/16
以下昨日の続き。
http://www.federalreserve.gov/newsevents/testimony/bernanke20100210a.htm
○ドル資金スワップの説明でも議会向け説明成分が
次の部分は各国中銀間のカレンシースワップの導入の説明でして、米国市場の緊張が世界のドル取引市場に広がった為に、各国の中央銀行と協力してドル資金供給を行ったという話をしています。
そこでの議会向け成分としては、「そもそもそれは米国の為にもなる話」というのと「そのドルスワップでの資金供給は各国の中央銀行の責任によって行われる」というのがあります。まあそれを議会向けご説明とするのもちと意地悪かな?
『Liquidity pressures in financial markets were not limited to the United
States, and intense strains in the global dollar funding markets began
to spill over to U.S. markets. In response, the Federal Reserve entered
into temporary currency swap agreements with major foreign central banks.
Under these agreements, the Federal Reserve provided dollars to foreign
central banks in exchange for an equally valued quantity of foreign currency;
the foreign central banks, in turn, lent the dollars to banks in their
own jurisdictions. The swaps helped reduce stresses in global dollar funding
markets, which in turn helped to stabilize U.S. markets. Importantly, the
swaps were structured so that the Federal Reserve bore no foreign exchange
risk or credit risk.3』
で、脚注3ですが。
『3. In particular, foreign central banks, not the Federal Reserve, bore
the credit risk associated with the foreign central banks' dollar-denominated
loans to financial institutions.』
とまあご丁寧に「これはFRBがクレジットリスクや為替リスクを取ってはいませんですよ」という説明をしている訳ですな。
○んでもってその他の各種措置の説明が続く
金融市場の問題は従来のFRBのオペレーションの主対象である預金金融機関だけに留まりませんというのがまずはマクラ。
『As the financial crisis spread, the continuing pullback of private funding
contributed to the illiquid and even chaotic conditions in financial markets
and prompted runs on various types of financial institutions, including
primary dealers and money market mutual funds.4』
脚注4はプライマリーディーラーとは何ぞやという話なので引用割愛。
『To arrest these runs and help stabilize the broader financial system,
the Federal Reserve used its emergency lending authority under Section
13(3) of the Federal Reserve Act--an authority not used since the Great
Depression--to provide short-term backup funding to certain nondepository
institutions through a number of temporary facilities.5』
で、そのSection 13(3)について脚注5で説明してます。
『5. Section 13(3) of the Federal Reserve Act authorizes Reserve Banks
to lend to individuals, partnerships, and corporations in "unusual
and exigent circumstances" as determined by the Board of Governors.
The Federal Reserve invoked Section 13(3) on two occasions during the 1960s
to establish lending facilities for savings associations; however, no credit
was extended through either facility.』
ということで、非常かつ緊急と連邦準備委員会が認定した場合は、個人や企業や組合組織みたいな所への貸出を行えるということで、2度ほど貸出ファシリティーを作ったことがあるけれども、結局発動はしなかったという事のようです。
で、以下各種流動性ファシリティの説明です。
『 For example, in March 2008 the Federal Reserve created the Primary Dealer
Credit Facility, which lent to primary dealers on an overnight, overcollateralized
basis.』
ということで、PDCFですが、翌日物で担保の掛け目を確保した状態で実施していますと説明しているのですな。以下まあそんな感じで説明が続くのだ。
『Subsequently, the Federal Reserve created facilities that proved effective
in helping to stabilize other key institutions and markets, including money
market mutual funds, the commercial paper market, and the asset-backed
securities market.』
MMFやCP向けや資産担保証券向けの流動性ファシリティですわな。
○で、その各種流動性プログラムは終了の方向ですよと
次のパラグラフは、金融環境の改善でこれらのファシリティーの利用が減って来て、TAFとTALF以外のプログラムは終了ですという説明をしています。で、その利用が市場環境が改善すると減るようになったのは、(1)ファシリティーの金利を市場が改善した場合には利用されないようなやや高めの金利に設定していること、(2)そうでないファシリティーではオファーの額を徐々に減らしていること、という説明になっております。脚注も含めてまる引用。
『As was intended, use of many of the Federal Reserve's lending facilities
has declined sharply as financial conditions have improved.6』
『6. In designing its facilities, the Federal Reserve in many cases incorporated
features--such as pricing that was unattractive under normal financial
conditions--aimed at encouraging borrowers to reduce their use of the facilities
as financial conditions returned to normal. In the case of other facilities,
particularly those that made available fixed amounts of credit through
auctions, the Federal Reserve has gradually reduced offered amounts.』
で、各種ファシリティーが2009年中や、2月1日で終了し、TAFやTALFの今後の措置について説明しています。まあこれは予定通りのスケジュールの話ですがきちんと説明しています。俺様備忘録として整理の為に引用しますが、皆様既にご案内の通りかと存じます(汗)。
『Some facilities were closed over the course of 2009, and most other facilities
expired at the beginning of this month. As of today, the only facilities
still in operation that offer credit to multiple institutions, other than
the regular discount window, are the TAF (the auction facility for depository
institutions) and the Term Asset-Backed Securities Loan Facility (TALF),
which has supported the market for asset-backed securities, such as those
that are backed by auto loans, credit card loans, small business loans,
and student loans.』
『These two facilities will also be phased out soon: The Federal Reserve
has announced that the final TAF auction will be conducted on March 8,
and the TALF is scheduled to close on March 31 for loans backed by all
types of collateral except newly issued commercial mortgage-backed securities
(CMBS) and on June 30 for loans backed by newly issued CMBS.7 』
残っている流動性ファシリティは「自動車ローン、クレジットカードローン、小規模事業主向けローンや学生向けローンなどのようなローン」を対象にする資産担保証券市場をサポートしているものですが、とわざわざ説明している所が議会対策っぽくてチャーミングな所でもあります。
○とまあここまで読むと「公定歩合引き上げ」が全然利上げと関係ない話と判るかと
てな話の流れの先に「ディスカウントウィンドウ金利の引き上げ」(小見出しでは長いので思わず公定歩合とか書きましたが^^)の話が出てくるのでありまして、これ即ちディスカウントウィンドウの引き上げそのものへの政策的インプリケーションはあくまでも「金融市場の機能不全対策の終了」という事であって、金利政策の変更を企図するものではないという事が読みとれるかと存じます。次のパラグラフにディスカウントウィンドウの話が。
『In addition, the Federal Reserve is in the process of normalizing the
terms of regular discount window loans. We have reduced the maximum maturity
of discount window loans to 28 days, from 90 days, and we will consider
whether further reductions in the maximum loan maturity are warranted.
Also, before long, we expect to consider a modest increase in the spread
between the discount rate and the target federal funds rate.』
ということで、ディスカウントウィンドウの借入期間を90日から28日に短くしましたが、その一環として遠くないうちにFF誘導金利とディスカウントウィンドウのスプレッドを拡大するという話をしているのですな。
『These changes, like the closure of a number of lending facilities earlier
this month, should be viewed as further normalization of the Federal Reserve's
lending facilities, in light of the improving conditions in financial markets;
they are not expected to lead to tighter financial conditions for households
and businesses and should not be interpreted as signaling any change in
the outlook for monetary policy, which remains about as it was at the time
of the January meeting of the FOMC. 』
ここまでの説明の流れからすればそーゆー話になるという事でございます。
○ということで金融市場の機能不全対策に実施した政策のまとめ
次のパラグラフが金融市場の機能不全対策に実施した政策のまとめですが、ポイントとして(1)期間が90日以内の短いターム、(2)FEDはこれらの流動性供給プログラムは担保掛け目をしっかり確保するか、法的に保全された形で行っている(って言ってるけどそれはマジかいなという疑問はあるけどね、特に掛け目部分)、という所で、その効果として、金融市場の機能不全を解消する事によって、経済の回復に資するという説明になっています。
『In summary, to help stabilize financial markets and to mitigate the effects
of the crisis on the economy, the Federal Reserve established a number
of temporary lending programs. Under nearly all of the programs, only short-term
credit, with maturities of 90 days or less, was extended, and under all
of the programs credit was overcollateralized or otherwise secured as required
by law. The Federal Reserve believes that these programs were effective
in supporting the functioning of financial markets and in helping to promote
a resumption of economic growth.』
で、これらのプログラムでFRBは損失が発生していないし、将来も損失は発生しないと思いますとわざわざ強調するのが議会証言クオリティ。
『The Federal Reserve has borne no loss on these operations thus far and
anticipates no loss in the future. The exit from these programs is substantially
complete: Total credit outstanding under all programs, including the regular
discount window, has fallen sharply from a peak of $1-1/2 trillion around
year-end 2008 to about $110 billion last week.』
○流動性対策の最後にしらっとベアーとAIGへの融資の話をしています
まあここは苦しいのでうだうだ説明しないというのも議会証言クオリティ。
『Separately, to prevent potentially catastrophic effects on the U.S. financial
system and economy, and with the support of the Treasury Department, the
Federal Reserve also used its emergency lending powers to help avoid the
disorderly failure of two systemically important financial institutions,
Bear Stearns and American International Group.』
さよですな。
『Credit extended under these arrangements currently totals about $116
billion, or about 5 percent of the Federal Reserve's balance sheet. The
Federal Reserve expects these exposures to decline gradually over time.
The Board continues to anticipate that the Federal Reserve will ultimately
incur no loss on these
loans as well.』
ほうほうそうですかそうですか(棒読み)
『These loans were made with great reluctance under extreme conditions
and in the absence of an appropriate alternative legal framework.』
わしはこんなローンはやりとうなかったが、金融システム全体に影響を及ぼす非常事態で他に方法は無かったと。
『To preclude any future need for the Federal Reserve to lend in similar
circumstances, we strongly support the establishment of a statutory regime
for the safe resolution of failing, systemically important nonbank financial
institutions.』
ということで、今後は別の法的枠組みが必要です、という所で締めています。以下明日以降へ。
#まだまだこのネタを引っ張るのは相場がネタ不足だからだろうというツッコミはしないように
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2010/02/15
お題「読んでみると中々味わい深いバーナンキ証言」
中々興味深いモノでマニア歓喜という感じでありまする。
http://www.federalreserve.gov/newsevents/testimony/bernanke20100210a.htm
○まず最初に感想その他を並べておきます
この議会証言(の原稿)ですが、前半が今次金融危機に対応した各種施策の説明、後半が今後の政策に関する説明になっております。
従いまして、当然ながら今後の政策インプリケーションという意味で言えば後半の方が相場的には大事なので、大体そっちの解説が多い訳なのですが、前半部分の各種政策の説明部分も中々味わいの深いものでありまして、まあその辺りから読むとこれがマニア的には大変に宜しいのではないかと存じますが、問題は世の中にそんなマニアがいるのかが判らない所であります(−−)。
つーことで前半も読んでみますが、その前に感想を申し上げると、(1)資産買入(=米国財務省件とMBS)と流動性供給プログラム(=TAFその他諸々)の区別を行っている、(2)資産買入の効果に関して「銀行システムに対しての流動性供給」に加え「大規模な超過準備の供給」ルートを言及している(ので益々説明がカオスになっているのですが・・・・)、(3)議会向けの説明だからだと思うのですが、やたらと「FRBに損失が生じない」「銀行への補助金ではない」という話が目立つ、という感じでしょうか。
あと、後半の出口政策の手順ですが、その手順的には普通に行けば、(1)各種の流動性吸収措置のテストを実施して徐々に慣れる、(2)各種措置の額を拡大してリザーブを目に見える形で減らす(3)準備預金の付利金利を引き上げる(=利上げ)となるようなのですが、場合によっては(2)を端折ることもあるとゆー話。では資産売却はど〜するのかと言いますと、基本的には実施しなくて済むものなら実施しないというのが今回の講演で示されたという所です。強烈な引き締めが必要な時には実施するという説明になっていますな。ちなみに実施タイミングに関しては正直言って曖昧な説明、今日明日に実施する訳ではないと言うことだけは明らかですけれどもね。
それから、FF金利がコントロールできない(まあ今でも結構怪しいのですが)事に関連して、引き締め過程の中では「準備預金の付利金利」と「超過準備額」を政策の「スタンスを示す」指標として使うというコミュニケーションポリシーについても言及しているのが興味のある所でして、まあ要するに超過準備の存在によって、FFレートの能動的なコントロールが難しくなった場合に「政策がちゃんと出来ていないのではないか」と言われるのを防がないといかんという極めて実務的な話をしているのですな(だからリザーブ目標を設定と言っても日本の量的緩和政策でのリザーブ目標とは全然意味が違いますわな)。
とまあそんな感じでございますが、さてまあ最初の方から読んでみたく存じますです、はい。
○政策を「流動性供給プログラム」と「利下げ+資産買入」に分けています
従来は資産買入に関して、流動性供給プログラムとの違いについての説明を曖昧にして通していましたが、今回は資産買入を利下げと同じ方向で説明しているのが「ほうほう」という感じでございます。
『Broadly speaking, the Federal Reserve's response to the crisis and the
recession can be divided into two parts.』
ということで二つに分かれるとな。
『First, our financial system during the past 2-1/2 years has experienced
periods of intense panic and dysfunction, during which private short-term
funding became difficult or impossible to obtain for many borrowers. The
pulling back of private liquidity at times threatened the stability of
major financial institutions and markets and severely disrupted normal
channels of credit.』
ここまで金融市場の混乱で流動性危機が生じましたという話ね。
『In its role as liquidity provider of last resort, the Federal Reserve
developed a number of programs to provide well-secured, mostly short-term
credit to the financial system.』
で、そのために中央銀行が最後の流動性供給者(って言葉があるのか)として金融システムに「well-securedでmostly
short-termな流動性プログラム」を作りましたということで、ここでは「短期資金の供給」と「担保を十分に取って」という所をポイントにしていますな。つまりTAFとかの流動性供給プログラムのことになるのですが。
『These programs, which imposed no cost on the taxpayer, were a critical
part of the government's efforts to stabilize the financial system and
restart the flow of credit.1』
ここの所が議会向けだなあと思う所でして、「no cost on the taxpayerですよ」という話をした上で、脚注では「上手く行ったら収益も出ますけれども、まあそれはおまけみたいなもんです」という話までわざわざするのがチャーミング。
『1. Indeed, when the final accounting is complete, these programs are
likely to generate significant positive returns for taxpayers. Of course,
stabilization of the financial system, not profit, was the principal goal
of the programs.』
この先でもこういう議会向けの話、つまり「FRBは納税者の資金で金融業界への利益誘導を行ってケシカラン」という類の批判に対応した説明が随所に出てくる所が、議会(など)からの風当たりが強いのですねえというのは把握した。
『As financial conditions have improved, the Federal Reserve has substantially
phased out these lending programs.』
ということでこの辺の各種プログラムは現在既に出口過程ですという話ですな。
んでもって資産買入は次の分類になるのでして・・・・・
『Second, after reducing short-term interest rates nearly to zero, the
Federal Open Market Committee (FOMC) provided additional monetary policy
stimulus through large-scale purchases of Treasury and agency securities.』
ということで、財務省証券の購入とエージェンシー債の買入に関しては、利下げに続く「monetary
policy stimulus」という位置づけになっています。まあそりゃエージェンシー債は兎も角、米国国債市場の方は別に機能していない訳では無かったのですから、最初の部分に入れるのは無理がある話だったのですが、財務省証券の買入を決定した時にはこういう切り分けをしないで曖昧な状態で実行していたのでありまして、まあ事後的に整理したという感じでしょうか。
『These asset purchases, which had the additional effect of substantially
increasing the reserves that depository institutions hold with the Federal
Reserve Banks, have helped lower interest rates and spreads in the mortgage
market and other key credit markets, thereby promoting economic growth.』
というのが資産買入の効果という話なのですが、ここの説明は結構インチキ成分が入っていると思われるのでありましてですな、銀行リザーブ(超過準備)に関しては、各種流動性プログラムの実施(つまり分類の前の方)によって急速に拡大したものでありまして(http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/research07/data/ron0907c.pdfの44ページにある図表17-1をご参照)、金融機関に対する超過準備供給がモーゲージ金利やクレジットスプレッドの縮小に効いたというのは(タイムラグを伴って効いたというのかも知れませんが)説明としてどうなのよという感じです。
ついでに言えば、財務省証券の買入に関してはアナウンスを行った所で金利が下がったものの、その後は金利が上昇しましたよねという話はあります(買入によって国債増発による金利上昇をあの程度で抑制できたという説明はあると思いますが)ので、これまた微妙な話ではあるのですが、まあそれは兎も角。
『Although at present the U.S. economy continues to require the support
of highly accommodative monetary policies, at some point the Federal Reserve
will need to tighten financial conditions by raising short-term interest
rates and reducing the quantity of bank reserves outstanding. We have spent
considerable effort in developing the tools we will need to remove policy
accommodation, and we are fully confident that at the appropriate time
we will be able to do so effectively.』
と言う事で、米国経済は依然として緩和的な金融環境を必要としているけれども、将来のどこかでは短期金利の引き上げと過剰なリザーブの吸収を行って金融引き締めを行なう必要が出るでしょう、というのは当然な一般的な話ですが、引き締め実施の為の道具に関しては色々と努力していますよという話ですな。
で、この次は「Liquidity Programs」と「Monetary Policy and Asset Purchases」の二つに分けて説明が行われます。特に流動性プログラムに関しては「どのような施策を行いました」という点について調節技術的な論点も加えながら説明しているのがチャーミングなのであります。
○各種流動性プログラムに関して:ディスカウントウィンドウとTAF
『With the onset of the crisis in the late summer and fall of 2007, the
Federal Reserve aimed to ensure that sound financial institutions had sufficient
access to short-term credit to remain sufficiently liquid and able to lend
to creditworthy customers, even as private sources of liquidity began to
dry up.』
という流動性枯渇状況に対応してまず最初に行ったのはディスカウントウィンドウへのアクセスを容易にしたという話が続きます。
『To improve the access of banks to backup liquidity, the Federal Reserve
reduced the spread over the target federal funds rate of the discount rate--the
rate at which the Fed lends to depository institutions through its discount
window--from 100 basis points to 25 basis points, and extended the maximum
maturity of discount window loans, which had generally been limited to
overnight, to 90 days.』
ディスカウントウィンドウとFF誘導目標の間のスプレッドを100bpから25bpに下げて、借入期間を翌日物(1日)から90日に延長しましたと。
『Many banks, however, were evidently concerned that if they borrowed from
the discount window, and that fact somehow became known to market participants,
they would be perceived as weak and, consequently, might come under further
pressure from creditors.』
次にありますけど、いわゆるstigma問題って奴でディスカウントウィンドウへの借入をしたがらない銀行が多くて、中々この改善を行ってもワークしなかったので、次にあるTAFを突っ込んだと。
『To address this so-called stigma problem, the Federal Reserve created
a new discount window program, the Term Auction Facility (TAF). Under the
TAF, the Federal Reserve has regularly auctioned large blocks of credit
to depository institutions. For various reasons, including the competitive
format of the auctions, the TAF has not suffered the stigma of conventional
discount window lending and has proved effective for injecting liquidity
into the financial
system.2 』
TAFプログラムがstigma問題を回避する為に実施されたという話ですが、んじゃ何で回避できたかという点についえ、オークションが競争入札方式であるという話と、脚注の2番も見ますと、当日取引じゃなくて先日付取引なのも理由ですという説明をしています。うーんそうなのかなあという気もするけどまあいっか。
『2. Another possible reason that the TAF has not suffered from stigma
is that auctions are not settled for several days, which signals to the
market that auction participants do not face an immediate shortage of funds.』
#お気づきになられていると思いますが、延々と逐語訳をしている状態(冒頭の挨拶だけスルーしましたが)ですので長くなりまくりで今日は時間と量の都合上ここまでなのでありました。どうも長くてスイマセンが、ここまでの各種施策の整理に丁度良い講演だと思いますのでまだまだ続くのであります
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2010/02/12
○カード業界の会合みたいな所でのRiksbankのNyberg副総裁の講演から
水曜に予告編と申し上げたRiksbankのネタですが。
http://www.riksbank.com/upload/Dokument_riksbank/Kat_publicerat/Tal/2010/tal_100120e.pdf
まあ金融政策とは関係ないですが興味本位で読んでみた。
・カード払いが発達しているようで
『The payment behaviour of the Swedes』って所を読みますと、スウェーデンでの支払いに関する状況の話があってほほーと思うのでありまする。
『According to the surveys conducted in 2006, approximately half of the
interviewees used cards as the means of payment for at least 80 per cent
of all purchases. Today, almost two-thirds of the interviewees use cards
as the means of payment for all purchases.』
日本とはだいぶ違いますな。
『The great majority of the interviewees in the autumn survey, 95 per cent,
had a debit card. A much smaller percentage, 40 per cent, had a credit
card. Debit cards were used in 96 per cent of all card payments. This is
an increase since the survey in 2006, when debit cards were used for 80
per cent of all card payments. Credit cards thus seem to have become relatively
less important ? at least in terms of the number of payments.』
あたしゃカード払いというものを全然しない(手元に金がある限りは現金払いで、無い時は買わない)人なのでよー知らんのですけれども、確かに日本でもスーパーとかの小口決済でもカードを使う人がいますなあとか思って読んでたのですが、クレジットカードよりもデビットカードの方が利用が多いと書いているようで、益々イメージしにくいあたくし(^^)。
『Despite the fact that card payments predominate in terms of both the
number and value of payments, the Swedish public still prefers cash to
cards for purchases of less than SEK 100. Our survey shows that as many
as 22 per cent choose cash for purchases between SEK 100 and SEK 500. For
amounts under SEK 100, cash is preferred by 63 per cent. There are no fully?comparable
figures from any of the surveys carried out in 2006, but in 2006 the "average
consumer" did not choose to pay by card until the purchase sum exceeded
SEK 123.4』
SEKって10円から15円くらいの間だったと思いますので、平均的な消費者は2000円程度を上回る支払いは主にデビットカードを使って決済してるという話のようですな。結構なカード社会ですなあ。
・カードと現金のどちらを使うのか
『So what governs the choice between cash and cards? The most important
factor, according to our survey, is that the means of payment is perceived
as being convenient.』
そらそうですな。
『Those who prefer cash also say that to a certain extent it may be a case
of old habits dying hard, or that they happened to have cash on them and
therefore used it. Those who prefer cards say instead that one of the reasons
is that they do not like to walk around with cash.』
(^^)。
『A comparison of the interviewees' attitudes to cash and cards also reveals
that cash is perceived as being more secure, while cards are seen as being
somewhat less secure.』
まあ確かにアンケート調査でそういう答えを人に向かってするのもちと気が引けるのですが、ここで現金の匿名性に関する話が特に無い(まあ強いて言えば「現金がカードより安全」という所に含まれるのかもしれませんけれども)のが興味深い所です。
どっからどこまでがという線引きは難しいですが、日本の現金志向には現金の匿名性を選好する面もあるやに聞いております(正直、あたしも日々の全部の買い物のデータがカード会社に行くのは、カード会社に毎日の行動をディスクローズしてるみたいで気分的にどうもと)のですが、その辺りの話がそんなに強調されていないのが、まあ国によって違うんだなあと思うのでした。
『There is also a clear generational aspect to the choice of means of payment.
The youngest age group, those under 25, feel a greater sense of security
when using cards than the other age groups and are more than willing to
use their cards to pay small sums.』
ああはいはいあたしゃ年寄りですよ年寄りですよ。
『Those who are 45 or older pay with cash to a greater extent. The oldest
age group, those who are 65 or older, prefer to pay with cash, even when
they buy something that costs over SEK 500. This tendency is the same now
as it was in the previous survey.』
はいはいあたしゃ65歳以上65歳以上(違)。
・現金とカードの社会的なコスト差に関して
その次の『What does it cost to pay?』って所から。
『Should the trend towards increasing card payments and decreasing cash
payments be regarded as positive or negative? One way of attempting to
answer this question is to consider the cost to society of various payments.
If the payment system is to be efficient, these payments should reasonably
cost as little as possible.』
ということですが、この調査をしているのがRiksbankということで、決済システムに関する調査なんだから中銀がやっても不思議でも何でもありませんが、なんかチャーミングですね。
『A study of data from 2002 conducted by the Riksbank revealed that each
cash payment cost society an average of SEK 4.6, while each card payment
cost SEK 3.0.』
へー。
『The costs associated with the use of cash included not only the handling
and transport costs of the banks and shops but also an estimate of the
time consumers spent on fetching and taking care of the cash.』
上記の数値には色々なものを勘案しているということだそうで。しかし細かいわ。
『The variable costs are considerable, that is it costs more to handle
a large sum than a small sum. Cash has to be counted, transported and stored.
This is not the case with cards. There are major fixed costs in the form
of an infrastructure that includes terminals and communication lines, but
the variable costs are small. It is not more expensive to handle a card
payment of SEK 50 000 than a payment of SEK 50.』
決済の額が大きくなると更にカードの優位性が高まるということですが、現金は現金として貯蓄というか保管可能という面はまあ決済に関しては別の話ですが、さらりと触れているのがチャーミング。
『From this it was possible to calculate that, in 2002, it cost society
less when payments were made using cash providing that the sum involved
was less than approximately SEK 70. For sums higher than this it was cheaper
to use cards.』
ということで、SEK70とは結構小額ですなあと思う次第で、スウェーデンって行った事無いから全然判らないのですが、カード社会でインフラが整っているのでしょうか。人口密度とかも影響するのかなあとシロートながらに思うのでした。
従ってさっきありましたように平均的な消費者はSEK123以下では現金で決済するようですので、このような結果になります。
『If we now compare this with the choices that the consumers actually made,
the conclusion is that in 2002 it would have been better from the point
of view of the Swedish economy if the consumers had made more payments
by card and fewer payments in cash. From society's point of view, it was
profitable to pay by card when the sums were higher than SEK 70, but, as
was the investigation from 2006 made evident, the “average consumer”
nevertheless chose to wait until the sums were higher than SEK 123.』
何と言うお節介な推奨(^^)。いやまあカード協会みたいなところ(Nordic Card
Markets, Stockholm)での講演だからそういう話をしてるというのもあるでしょうけれども(^^)。
・結局は手数料などで選好されるとな
その次の『Highlight the charges!』って所では、まあ要するに価格で差を出すのが大事でしょというお話をしてたりするのであります。つまり、上記のような社会的なコストがどうしたこうしたなんぞは一般消費者が知る訳でもないのでして、実際はどうなのよとなりますとこうなるのでした。
『Previous experience in both Sweden and Norway shows that the choice of
means of payment is price-sensitive.』
そらそうよ。
『In Norway, electronic payments, including card payments, increased very
quickly after the banks introduced charges better reflecting the actual
cost of the various means of payment. Among other charges, there exists
in Norway a small charge for cash withdrawals from ATMs.』
それはそれは。
『In Sweden, we virtually stopped using cheques when the banks began to
charge for them. These two examples show that consumers' choices between
the various means of payment change significantly when they become aware
of the costs.』
つーことで、まあ日本で何だかんだ言って現金決済が選好されるのは、現金を扱うコストが安いというのがあるでしょうし、この状況っていうのは中々簡単に変わらない(ATM使うたびにチャージするような事をしたら一気に顧客が全員離れてもおかしくないですからね)でしょうし、じゃあカード使ったらお安くしますみたいなのって、まあ色々とやってますけど、現金選好の強い人がわざわざ移行する程のものでもないでしょうし、という所なのでしょうか。
で、以下はカードのセキュリティに関する話があって、その取り組みに関する話も結構面白いのですが、まあ割愛します。最後の『Summary』の所にその辺りに関する部分が2つあるのでそれを引用で勘弁。
『The increasing use of cards places increasingly high demands on safety
and on the reliability of the technical infrastructure that supports the
cards. Banknotes retain their value as a means of payment even if the technical
infrastructure is off line. Cards only work when the infrastructure does.』
『Private individuals feel a greater sense of security with cash than with
cards. If card usage is to increase, it must become safer to use cards
in shops as well as on the Internet. Clear information on the frauds that
are committed can also serve to reduce uncertainty among consumers.』
さよですな。
○本当はマジメに読まないと行けないのですが出口政策云々の講演原稿
http://www.federalreserve.gov/newsevents/testimony/bernanke20100210a.htm
Federal Reserve's exit strategy
お題がもうモロにアレなのでして、おまけに昨日の朝には出ていたのでして本当はこっちをネタにしやがれという所ですが、何分にも昨日は冬眠をしておりまして、いわゆるひとつのスリープ状態のPCのようなもんでしたので、まあ本職の方がレポート出してるでしょうから読むのが吉。
・・・・で話を終わらせるのも何ですが、超いい加減に読んだ所では、利上げプロセスに入った所での流動性回収に関して結構気にしている(当たり前だが)感じです。つまりまあこの辺とかね。
『In due course, however, as the expansion matures the Federal Reserve
will need to begin to tighten monetary conditions to prevent the development
of inflationary pressures.』
ほうほうそれでそれで。
『The Federal Reserve has a number of tools that will enable it to firm
the stance of policy at the appropriate time.』
まあそのツールが動くかが怪しいと思ってるからそういう話になるんでしょうな(^^)。でもってそれをテクニカルにどうするのという話は、この辺にある準備預金への付利とか。
『Most importantly, in October 2008 the Congress gave the Federal Reserve
statutory authority to pay interest on banks' holdings of reserve balances.
By increasing the interest rate on reserves, the Federal Reserve will be
able to put significant upward pressure on all short-term interest rates,
as banks will not supply short-term funds to the money markets at rates
significantly below what they can earn by holding reserves at the Federal
Reserve Banks. Actual and prospective increases in short-term interest
rates will be reflected in turn in longer-term interest rates and in financial
conditions more generally.』
ただGSEみたいな人の所に金が行った状態が継続すると、結局の所実効FFレートが誘導目標よりも下がるという状態になりそうな悪寒も。
『The Federal Reserve has also been developing a number of additional tools
it will be able to use to reduce the large quantity of reserves held by
the banking system. Reducing the quantity of reserves will lower the net
supply of funds to the money markets, which will improve the Federal Reserve's
control of financial conditions by leading to a tighter relationship between
the interest rate on reserves and other short-term interest rates.』
『One such tool is reverse repurchase agreements (reverse repos), a method
that the Federal Reserve has used historically as a means of absorbing
reserves from the banking system. In a reverse repo, the Federal Reserve
sells a security to a counterparty with an agreement to repurchase the
security at some date in the future.』
というような感じで、リバースレポだのトライパーティーのリバースレポだの資産売却だのという話をしておりまして、この前実施する事を決定したという定期預金プログラムもありーのと、まあ色んな道具だけは揃えていますという話をアピールして、金融機関救済批判がやかましい議会へのアピールもしているということでしょう。
まあ議会向けアピールは兎も角として、続々と色々な道具を用意しているという事は、逆に言えばそれだけ流動性回収に関して気にしているという所なのではないかと思います。
と、出口政策の技術的な話をしているのですけれども、さっきの頭の部分で、毎度お馴染みの文言があるのでして、出口政策のネタから早期利上げ観測が起きても困るというのがまた運営の難しい所という感じでしょうか。本命は「早めに1%位まで利上げしてからゆっくり利上げ」としたいのですが、何かこの調子だと「利上げの着手が遅れて結局ホイホイと利上げをしないと間に合わなくなる(でも間に合わない)」という前回の流れを踏襲しそうな悪寒がしますわな。
『The FOMC anticipates that economic conditions, including low rates of
resource utilization, subdued inflation trends, and stable inflation expectations,
are likely to warrant exceptionally low levels of the federal funds rate
for an extended period.』
#まあ超簡単にしか読んでないので読みに抜けがあったら勘弁
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2010/02/10
○ということで一応ニュースに釣られてみる
ロイター(ただしインターネット版)で「ギリシャ」で検索を掛けるとニュースヘッドラインが出るわ出るわ。下記以外でもうじゃうじゃ出て来るのですけれども。
http://jp.reuters.com/article/domesticEquities4/idJPnJT862267720100209
UPDATE1: ECB当局者がギリシャ支援不可能と再表明、他国への拡大を懸念
2010年 02月 10日 01:59 JST
http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPJAPAN-13811520100209
ユーロ圏、ギリシャ救済で原則合意=ドイツ与党筋
2010年 02月 10日 02:31 JST
http://jp.reuters.com/article/domesticEquities4/idJPnJT862275320100209
ドイツ政府、ギリシャ救済決定めぐる報道を「根拠なし」と否定
2010年 02月 10日 03:11 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-13812920100209
EU、必要ならギリシャ支援すると確信=ボルトガル財務相
2010年 02月 10日 04:55 JST
結局救済するのか救済しないのかさっぱり分からないのですけれども、市場の動きを見ますとまあ救済の線みたいですし、そもそもからしてEMUを維持する為に突っ込みましょうという話に最終的にならざるを得ないのでしょうけれども、ドイツやフランスとかベルギーとかから見てギリシャなんぞ何で救済せにゃならんのよという一般ピープルの声が出てきても不思議じゃないと思うのですがどうなんでしょ。
いやまあドイツから見てイタリアとか比較的ご近所さんですし、フランスから見てスペインはお隣さんですし、まあそのあたりにどうのこうのという話ならまだ政治的に話を付けやすいでしょうけれども、バルカン半島の先っぽとか思いっきり視野の向こう側のような気がするんだが大丈夫なんでしょうか。
#まあ国の規模が小さいからそんなにコスト掛からないというのが救いなのかな
EMUって追放するという仕組みになっていないので、自主的にご退出頂かないとどうしようもない所でして、今回は救済するにしても相当厳しいことをしないと、ユーロシステムただ乗り攻撃が横行してそもそもユーロがカオスになってしまいますでしょうから、まあ生温かく見守って参りたいと存じます。
#ということで結論は無い
そういやちょっと調べたい事があって、ギリシャ中銀のサイトを見に行ったのですが、何か新着情報が全然更新されてないような気がする素敵なサイトでございましたとさ。
http://eng.bankofgreece.gr/en/(英語トップページ)
http://eng.bankofgreece.gr/en/lateinfo/(新着情報なのかこれ??)
なお、ギリシャ語版は無教養のあたくし1ミリも解読できません><;
http://www.bankofgreece.gr/Pages/default.aspx
○まだ0.11%台ではございましたが
昨日の3か月TB入札結果
http://www.mof.go.jp/jouhou/kokusai/tbill/tbillnyusatu/resul220209.htm
(3)募入最低価格 99円97銭0厘5毛
(募入最高利回り)(0.1183%)
(5)募入平均価格 99円97銭0厘7毛
(募入平均利回り )(0.1175%)
・・・・ということで資金余剰感爆発でGCレートがベタベタになって、あたくしが「先生!うちの短期市場ちゃんが」とか言ってた先々週(1/27)の3か月TB入札では平均0.1112%という素敵なレートになりました(で、先週は平均0.1138%でしたが足切りも0.1138%でした)が、今週は昨日書いたように、と思ったら何と日経朝刊のマーケット面でも「日銀の資金供給鈍化 短期金利、一部で上昇」という記事が出てたようですが(日経読まないから人から聞いて知ったのがアホウな所ですが)、まあ今週の共通担保期落ち祭りに対応してやや足元GCの市場調達ウェイトが上がってGCレートが上昇した事を反映してレートが上昇でござるの巻となったようですな。昨日の新型指値オペの応札も増えて按分減ってたから「超低金利」のニーズも相対的に増えたということですな。
まーこの前からしつこく書いておりますが、2月は月初に財政の揚げ(主に法人税納税)で大きな財政揚げ超があって(5日には10年国債発行で2兆以上の揚げ超もある)、第1週の大幅資金不足に対応してオペが結構な勢いで打たれていたので、資金調達サイドがオペでのファンディングをしやすくなり、結果として市場での要調達額が軽くなって、GCレートが0.105%だのオペレートが0.10%だので安定しておった訳ですな。で、その間のスタンスが割と安定してましたし、1月は無担保コールの月中平均金利が0.10%を堂々割り込みましたが特にキニシナイという感じでしたから、市場的には「ああやっと日銀はGCなどを下限で張り付けるような運用をするようになったのね」というイメージを持った所だったんですなこれが。
ところが、15日の4兆円資金余剰を前にしての今週のオペ期落ち祭りに対応しての動きは、まあそこまでバンバカロールしてくる訳でもなく、普通に4兆円とかのコブを削りに行く動きになっているので、まあ市場的には肩透かしというか期待空振り感で、ああ結局変わっていないのねという話になってしまったんでしょうな。
#先週変な未達オペを打って、資金需給下振れ分を埋めきれなかった為にそれが早く来たというのはありますが
資金余剰月と資金不足月だと同じ当座預金残高でも(結局のところオペでの資金調達がメインなので)資金供給オペの量が違ってきますので、資金余剰月の方が逼迫感が高いという「余剰月の方が市場の資金繰りはタイト」というもはや達人の禅問答の域に達するようなお話なのではありますが、オペレーションそのものが淡々と当座預金残高水準を維持するような感じで実行されていく中では、資金不足時期になるとレートがベタベタになって、余剰時期になるとちょっとしたことでGCが0.12%辺りまで上昇というような動きが当面続くという事になるんでしょうかね。まあその間の動きは別に「超低金利」の一環だと言われてしまえばああそうですかとしか申し上げようが無いのでございますが、ターム物金利を誘導という話をしてた筈なので、足元をもっと押さえ付けなくて良いのかねというツッコミは飛んでこないのかという懸念も少々。
#まあ微妙ですが、資金不足シーズンで当座預金残高15兆円だと結構な余剰感が出るというのは今回の動きで見えてきましたな。うんうん。
しかしまあ微妙に不思議なんすが、昨日の日経記事の幹部発言によれば緩和状態を評価する尺度は「量では無く、あくまで金利動向」(2月9日日経本紙マーケット面の記事「マーケットウォッチャー」欄より)だそうなのですけれども、では尚更足元のGCレートが上昇した件はどうなのよという感じではありますけどね。まあカレンダーベースで15日になればGCどうせ下がりますからそこまで目くじら立てないという事なんでしょ、という風に普通に考えると理解されると存じます。結局1月の間じゅう「おお!日銀のスタンスが一段と資金じゃぶじゃぶモードにして短期市場ちゃんを瀕死状態に持って行っているわ!!」と思って動いていた皆さん(ええ勿論あたくしも思ってましたが何か?)期待を思いっきり外されてプギャーと言った所でございますな。
とは申しましても、まだ3MTBの落札利回りは0.11%台なのでありまして、12月の0.12%台よりは低い水準にいますし、新型オペ実施のアナウンスや物価安定の理解の明確化を出す前の11月以前の0.14%〜0.16%という水準からはきっちりと低い水準にある訳ですから、まあ細けぇこと言うなよとゆーのが日銀様の思う所なのではないかと妄想成分を入れながら好き勝手に邪推するあたくしでした。
#まあベタベタで全く動かないよりはちったあ動いた方がポジショントーク的には助かるのですけれども
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2010/02/09
○GCレートが微妙に上昇している件について
昨日はレギュラー渡しが12日で積み最終の着地が近くなる所なのですが、15日に財政払い超(年金定時払いが主要因と思う)を控えて共通担保オペの期落ちが今週やたら多い事から、そもそもオペ期落ち分のロールニーズがある所に対して、15日跨ぎになるオペの実行が少ない為に市場調達が多いのと、15日が積み最終と財政の大きな払い超とぶつかる(のは偶数月の仕様ですけれども)事から、GCの資金出し手が着地を意識するというのもあって、レートが微妙に上昇でござるの巻。
先週半ばまではGCは0.105%に張り付くわ2月10日エンドの共通担保オペは未達になるわと余剰感爆発でしたが、未達で出せなかった分を減らした状態で走ったら今週のオペ期落ち祭りにぶつかって昨日は0.12%辺りまでGC上昇となという感じ(金曜とかは超足元のGC取り上がる人がいたみたいですが)でして、いやまあ自然体は自然体でも良いのでありますが、「やっぱりGCを0.105%に張り付ける訳ではないんですかそうですか」という認識になるとさすがに3か月TBを0.11%台前半定着とゆーのも何ですなという感じになりますので、はてさて日銀様の考えている「ターム物金利を低めに推移するように促す」という「低め」とはナンノコッチャという気はせんでもない。
まあそれで3か月TBの金利がどうなるかと言われましても、別にそんなに上昇する訳では無さそうなのはCPのレートが全然上がらないのを見ると(AA格のメーカー系さんだと相変わらず3か月で0.11%を割ったりギリギリだったりですから)、運用資金としての余剰感は別に全く変わっていないと思われる次第ですから、TBの利回りだって0.11%台前半だったのが0.11%台後半になるとか0.12%台前半になるとかその程度のミクロの世界でありますが(^^)、そうは言っても先日の「うちの短期市場ちゃんが息をしていないの!」状態から一応何となく反応はしている程度の状況になるので、まあそれはそれで良い話(なのかどうかは知らんが)。
つまりですな、ターム物レートをどうのこうのという話が、本当に0.10%に向けてターム物金利をベタベタに下げに行くのか、それとも0.10%〜0.13%程度のTB3か月物金利だったら総じて言えば低金利であることには変わりは無いのだから、その辺は振れてよろしゅおすえという話なのかが、ど〜もオペ見てるとよー判らん部分があるのでございまして、いやまあ別にそんなの気にするのは短期村の一部の人達でありますからど〜でも良い(つーか曖昧にしておいた方が何かと便利でしょ^^)のですが、まあそういう状態ではありますなという感じです。
何度もしぶとく申し上げておりますが、GCレートを下限近辺でベタベタにしたければ、出来上がりの当座預金残高よりも、オペを安定してロールした方がレートは安定するのでありまする。ただそれをやっちゃうと、資金余剰時期と不足時期の間で当座預金残高が一定にならない(オペの量をある程度一定にすれば出来上がりは当然ぶれる)ので、一般世間様向けには分かり難いったらありゃしないというか、短期的な資金需給を反映しただけの当座預金残高の上げ下げをみて緩和だ引き締めだとか言い出すトンチキ講釈が出たりして政策運営的に微妙という所なんでしょうかね。
#しかしこう微妙に生殺しというか半殺しというかの状態はコマッタモンデ
○ただひたすら解説を入れずに引用だけする企画(1999年8月13日議事録から)
ネタに困ると議事録シリーズなのですが(汗)、まあどこの議事録でも良いのですけれども、ほうほうこりゃオモロイと思いながら読んだのが1999年8月13日の議事録。
この時期(もうちょっと前から)はオペレーションの技術的な問題とか、市場の流動性の問題(Y2K懸念とかね)が色々と問題になっていたようですが、こういう場面になると武富審議委員がやたら活躍している印象がございまして、まあ武富さんも細かいことご存じですなあと感心しながら見ておったあたくしなのであります。
と前振りをしておいて何ですが、今日は武富さんの話がどうしたこうしたというのではなく(おいおい)、こんな細けぇことまで政策委員会で見ているのですねというのを、会議冒頭の山下金融市場局長の説明から引用致します。まあ市場が安定している無事モードだったらそこまで気にしなくても良いのでしょうけれども、時あたかもゼロ金利政策という非常時モードなのでありますからね。
で、長い(3.5ページ分)ので変にあたくしの講釈を入れずにベタ打ちしたものをそのまま並べます。まあ手抜きとも言うけど(大汗)。で、これは中々細かい話が多くてマニアとしてはオモロイのと、「引き締まる」の反対語が「引き緩む」というのかと初めて知ったです(^^)。冒頭の説明で3ページ目からです。
『1.最近の金融調節に関する報告(資料−1)
山下金融市場局長
前回政策決定会合以降の金融調節については、引き続き1兆円の積み上幅を維持する資金供給を行ってきた。その結果、オーバーナイト・レートは0.03%の実質ゼロ金利水準で極めて安定した推移を辿った。大手都銀等の資金ポジションが貸出の伸び悩み等から好転傾向を持続していることなどを背景に、オーバーナイト資金の要調達額が減少しているため、コール市場の需給は一段と引き緩んでおり、0.02%での出合いも一段と増えてきている。この間、調節面では短期国債の市場規模がFBの公募入札により飛躍的に拡大しており、流動性の高いマーケットに育ってきたため、供給、吸収の両面で短期国債オペを軸に据えた運営を行ってきた。特に資金吸収面では売出手形を使わず、専ら短期国債の売現先を使用してきた結果、売出手形は8月4日の税揚げ日に全額期落ちとなり、96年3月以来久方振りに残高がゼロとなった。この間、短期国債の売現先の残高は8兆1,000億円に達しており、本日のオファーで10兆円を超えることになる。
この1か月間の短期金利動向を振り返り、三つの特徴点を指摘したい。
第一は、短めのターム物を中心にレートが再び弱含み傾向にあることである。ユーロ円出合いレートの推移をみると、例えば1W、1Mは8月に入り0.03%まで低下している。また、CDでは1Mで0.025%、2Wで0.015%など、0.03%ないしそれを下回る水準でかなりの額が発行されている。イールドカーブの変化をみると、前回政策決定会合直前の7月15日と昨日の形状はほとんど変わっていないが、1M以下のところでは僅かにではあるが、先程申し上げた動きを反映してイールドカーブが下方にシフトしている。また、昨年の同時点のイールドカーブと比較すると、昨年は9月の中間期末が意識されて2Mのところがこぶになっているのに対し、本年は2Mの上がり方は極めて小さく、むしろ年度末越えとなる6M以上の跳ね上がりが目立っている。これは本年の場合、9月中間期末の流動性リスクについてほとんど意識されていない一方で、年末越えについては、Y2K問題の存在に加えて、6月10日のGDPショック以降、ゼロ金利政策の解除懸念が台頭してきていることを映じたものと思われる。
このように短期金利は短いターム物を中心に総じて弱含んでいるが、例外はT/Nレートであり、昨日は0.05%まで上昇している。オーバーナイト物とT/Nの出来高とも都銀のオーバーナイト資金調達ニーズの後退を背景に大きく減少してきている。T/Nを含むオーバーナイト資金調達は引き続き徐々に減少する傾向にあるが、特にT/Nの調達額が落ち込んできている。因みにT/Nの出来高をT/Nとオーバーナイトの出来高で除したT/Nの比率が特にここにきて低下傾向にあり、7月の中旬頃までは25%程度あったものが、昨日は10%まで低下してきている。このようにT/Nのウェイトが落ちてきているのは、都銀等では低利の超短期CD調達等が可能となっているため、これにシフトしているからである。つまり都銀等が0.02%〜0.03%で調達していたT/Nの分がCD調達等へのシフト等で落ちたため、信用度の低い高利調達先のウェイトが高まってしまい、その結果としてT/Nの加重平均レートが上昇している訳である。いわば、資金需給が引き緩み、市場規模が縮小した結果として、レートが上昇するという皮肉な姿となっている。
第二の注目点は金先レートが再び緩やかに上昇していることである。これは7月29日に公表された6月の鉱工業生産指数が市場予想を上回る好転を示したことと、その後も景気改善を示す指標が相次いでいることに反応したものである。3月限は7月23日の0.25%をボトムに昨日は0.38%まで上昇している。もっとも、9月限はキャッシュマーケット同様に弱含み基調と続けており、これから推すと金先レートでは0.25%程度の利上げがあり得るとすれば来年度初以降という見方を織り込みつつあるのではないかと思う。
第三はY2K関連の動きであるが、全体としては落ち着いた状況が続いている。まず、ジャパン・プレミアム(6M)は、6月に年末越えになってから大幅に上昇しており、富士銀行で23bp、東京三菱銀行で15bpまで上昇していたが、昨日はそれぞれ19bp、8bpへ低下している。金先レートでみたY2Kプレミアムと円とドルの推移でみると、円は7月中旬以降ほぼ横ばいで推移しており、変化がない。年度末越えCD・CP発行状況をみても、概ね0.1%台後半での調達が散発的にみられており、これもレート水準としては落ち着いた推移となっているが、ここにきてにわかにクローズアップされているのが国債の玉繰り問題である。大手機関投資家がリスク回避の観点から年末越えは貸債レポを停止するとの噂が流れており、国債の玉繰りに対する不安、担保不足、あるいは先物等のショートポジションの決済玉が不足するという不安が高まっている。こうした状況下、昨日は192回債、193回債等がスクイーズされた形になり、貸債レートが大きく跳ね上がるといったややパニック的な現象が生じている。これがY2K問題と直接関係するのかどうかは分からないが、国債市場では玉繰りについて不安感が高まっており、十分注意してみていく必要がある。
最後に短期資金需給の一段の引き緩みに関連した動きを二点報告する。
一つは私共のオペの落札レートの低下である。資金供給オペでは応札倍率が低下し、落札決定レートも0.01%まで低下しており、かなりの工夫をしないと札割れのリスクが大きくなっていると度々報告しているが、資金吸収オペの方は運用難を背景に人気が高くなっている。例えば、短期国債売現先の応札倍率は5倍から9倍と高まっており、連れて落札レートの方も0.03%まで低下してきている。本来であれば資金の取り手である都銀等でさえ、我々の売る短期国債で運用したいという動きが非常に強まっており、同オペにおける都銀落札シェアが高まるなど、金余りの状況が一段と進んでいる。
今一つは準備預金の積みの進捗テンポがかなり遅くなっていることである。都銀の積み進捗率をみると、7月15日以降の今7月期は日割進捗率に比べてかなり遅れた形で積みが進んでいる。これは資金ポジションの好転に伴い放置しておくと準備預金の積みが進み過ぎてしまい、積みの最終局面では超過準備の保有を余儀なくされるリスクがある一方、必要な資金はいつでも0.02〜0.03%で取れるため、都銀各行が意図的に積みの進捗を遅くしている訳である。この結果、今積み期は非準備預金先に対応する預金残高がかなり膨らんできているのが特徴である。これも資金のだぶつきを象徴する動きである。
以上のように短期金融市場ではオーバーナイトを含め短いタームの資金需給が一段と引き緩む情勢にある。一方、年末越えについてはY2K問題やゼロ金利政策解除の思惑からややナーバスな展開になってきている。』
#一応手打ちしたのを読みなおしましたが、誤字脱字があったらゴメンナサイ
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2010/02/03
虫の息の市場でもネタは尽きないもんですな。
○共通担保オペが札割れとな
以下思いっきりマニアネタなので以下の内容で書いている話は皆様の周囲にたぶん一人はいるマニアに聞くアルヨロシね。
昨日のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of100202.htm
その結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba100202.htm
共通担保オペの2月10日エンド分に傾注!
えーっと、CPとか社債とかみたいな特定市場対象のオペですと札割れというのも「まあその市場の需給関係で」という話になるのですが、何せモノが共通担保オペですので、なんちゃら市場の需給問題によりまして札割れみたいな話にならない所がお洒落なのであります。何と言う素敵な札割れ。
まず札割れの背景ですが、要するに1秒で言えば「その期間の資金ニーズが無い」という事なのですが、では何でその期間のニーズが無いかと言えば、今回の準備預金積み期間は進捗も順調で積み期間内の資金ニーズがそんなに高くなく、更に今月は15日に財政の払い超(年金定時払い)があるので、オペで取りたい資金はそこの資金需給のコブの部分の先に足が来るもの(15日の手前で落ちるオペが多くなるから)と相成りますので、いまさら10日エンドがイラナイという事で札が入らなかったという事ですな。
ついでに申し上げると、まあ市場の皆さんのコンセンサスがどこにあったのかはよー知らんですけれども、あたくしが昨日の朝時点で考えていたのは、今週に入って(前日の速報時点での想定ベースで)当座預金残高が1日が14.88兆円、2日が14.50兆円と足元の資金余剰感を背景に当座預金残高を削って来たように見えたので、昨日はトムスタートの資金供給オペを、3日の出来上がりで14.5兆円アラウンドになる1.4兆円程度打って来るものかと思ってまして(その時点で3日の資金需給予想は日銀から出ていないので、3日の資金需給予想は上田八木短資さんのデイリーレポートベースで計算)、そもそも2兆円の共通担保が多いなあとも思った訳ですよ。
3日は税揚げだからということで当座預金残高を再び15兆円に持って行こうとしたのかなあとは思うのと、昨日の引け時点で発表された日銀の資金需給予想が若干不足方向にぶれているので、その為に1兆円2本の供給になったのかとは思うのですけれども、しかしまあ大幅札割れとは何だかなあという感じです。
んーとですな、多分マーケット的には10日に落ちるオペへのニーズが無いというのは1日の共通担保オペでの12日エンド1兆円オファーの応札が減っていたあたりからも読めそうなので、いまさら10日エンド1兆円とか打たれると「まあイラネ」となるでしょうなあってえのは(ここまで札が無いというのは別として)想定できそうなもんなのですけれども、素で普通に供給する積りでオペを打ったのか、それとも札が割れそうなオペをわざと打って足元の資金余剰感を演出したかったのかは中の人のみが知るお話でありますな。どうなんすかね(棒読み)。
#同時に行われた3月3日エンドのオペは17920億円の応札ありましたから、足が先ならニーズがある訳です
でまあその大幅札割れもさることながら、応札6020億円に対して落札2020億円となっていて、脚注にある『応札レート(貸付利率)0.03%以下は不採用としました。』というのがまた素敵なのであります。
4000億円0.03%で入れた人がいるという事ですが、どこか1社(1行?)が0.03%などというギャグのような応札をしたという話になる訳でございますが、預金ファシリティの金利が0.10%というのもさることながら、前日(1日)の無担保コール翌日物の最低金利(日銀公表ベース)が0.07%なのでありまして、それよりも激しく低いレートでの応札とはこれまた良い感じでオペに対しての抗議活動っぽくてもうメロメロでございますわよ奥様♪
まあ即ち「こんなオペに資金ニーズは無いので0.03%だったら入れてやるわいヴォケ」という意思表示を応札レートで示したという事であるかと存じます次第でありまして、中々楽しいお話ではございますな。何せ日銀のオペで未達になったからと言っても、別に日銀は全部の応札を募入にする義務は規定上1ミリも無いのでありまして、そもそも預金ファシリティの存在がある以上、建前上預金ファシリティより安い金利での募入というのは(瞬間的にあからさまな補助金状態になるから)できんでしょというのは自明(ちなみに全然別の話ですけれども、国債入札でも同じなので、未達になりそうだからと言って1円とかで応札するのは大きい葛籠を持ち帰る欲張り爺さんであります)。
つーことで、まあ中々これは素敵な応札ですねという話でありますけれども(実はまあ以前からオペの落札が0.10%一本値の筈なのに按分比率が微妙に合わない事案はあって、0.10%より下の札を入れている人がいるなあとは思っていたのですが、0.10%までで供給予定額が充足されていたので不採用がどうのこうのという話にならなかった)、これがオペに対する悪態活動の一環として実施されているのではなく、素で「今日のオペは流れそうだから0.03%も入るかなあ」とか思って応札してたらこれまた痛い話で、オペ規定を百万回読むべきではないかと思うのでありますが、はてさてこの辺の事情はどうだったんでしょうかねえ、いやまあ中の人じゃないから判らんけど。
ちなみに、12月1日にも共通担保資金供給オペで0.09%以下の応札がありましたけれども、この日はご存じのように臨時金融政策決定会合の招集がありましたので、もしかして利下げがあるかもしれないという意識から下の札を入れたというのは話としては大変リーズナブルな所でありますが、今回の場合は別にあのその10日までに利下げがある可能性はまあ無いですし(つーかそういう意識があったら3月3日エンドの方のオペに札が集まりませんわな)、まあ単に「その期間の金はイラネ」というお話で、0.03%という勇者レートの応札がありましたねという話ではないかと思われます。
しかしこれで「共通担保オペが札割れすると言う事はオペ手段としてもっと長期のオペを行わないと「広い意味での量的緩和」が出来ないではありませんか」という話になって来るとこれまたセクシーなのでありまして、そうなった場合は当然ながら「より長い資金供給&札割れ懸念なし」と言えばそれはもう輪番オペですよ先生という事になって来るというものでありまして(^^)、思わぬ所から輪番拡大論議になったりするとこれまた実にお洒落な展開ではありませんか♪
#まあそんな話になるかどうかは知らんが
まあ何はともあれ虫の息で殺伐とする元気もない短期市場に一陣の風と健やかな笑いを提供してくれた昨日のオペでありました。
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2010/01/28
○寝起きでFOMCステートメントを斜め読み
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20100127a.htm(今回)
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20091216a.htm(前回)
『Information received since the Federal Open Market Committee met in December
suggests that economic activity has continued to strengthen and that the
deterioration in the labor market is abating. 』(今回)
『Information received since the Federal Open Market Committee met in November
suggests that economic activity has continued to pick up and that the deterioration
in the labor market is abating. 』(前回)
既に最初の所で景気認識に対する単語が強くなっていますな。
『Household spending is expanding at a moderate rate but remains constrained
by a weak labor market, modest income growth, lower housing wealth, and
tight credit. Business spending on equipment and software appears to be
picking up, but investment in structures is still contracting and employers
remain reluctant to add to payrolls. Firms have brought inventory stocks
into better alignment with sales. While bank lending continues to contract,
financial market conditions remain supportive of economic growth.』(今回)
『The housing sector has shown some signs of improvement over recent months.
Household spending appears to be expanding at a moderate rate, though it
remains constrained by a weak labor market, modest income growth, lower
housing wealth, and tight credit. Businesses are still cutting back on
fixed investment, though at a slower pace, and remain reluctant to add
to payrolls; they continue to make progress in bringing inventory stocks
into better alignment with sales. Financial market conditions have become
more supportive of economic growth. 』(前回)
書きっぷりがだいぶ変わっているので何ともなのですけれども、住宅セクターの改善の所がばっさり抜け落ちているのが下げで、企業部門に関しては在庫投資の拡大の所は抜けてます設備投資の拡大というのは上げっぽいです。家計に関しても拡大に関する表現の頭にappears
to beというのがあったのが外れているので拡大をより明言で上げ、その他についてはたぶんあんまり変わってないと思う。
『Although the pace of economic recovery is likely to be moderate for a
time, the Committee anticipates a gradual return to higher levels of resource
utilization in a context of price stability.』(今回)
『Although economic activity is likely to remain weak for a time, the Committee
anticipates that policy actions to stabilize financial markets and institutions,
fiscal and monetary stimulus, and market forces will contribute to a strengthening
of economic growth and a gradual return to higher levels of resource utilization
in a context of price stability.』(前回)
前回までは経済活動について「当面弱い」だったのが、今回は堂々の「回復のペースは」という言い方ですな。まあ緩やかなペースだという話ですけどね。で、ふーんと思ったのはその次で、FRBの政策で金融市場安定がどうしたとかマネタリーの刺激がどうしたというような部分がごっそり抜けているのですね。ほうほう。
で、第2パラグラフ。
『With substantial resource slack continuing to restrain cost pressures
and with longer-term inflation expectations stable, inflation is likely
to be subdued for some time.』(今回)
『With substantial resource slack likely to continue to dampen cost pressures
and with longer-term inflation expectations stable, the Committee expects
that inflation will remain subdued for some time. 』(前回)
これまた微妙なのですが、インフレに関して抑制されていくというのがlikely
to be subduedとなっていて、前回がwill remain subduedなので、ちょっとだけその抑制されていく予想を微妙に変えているとか、その前のresource
slackによる価格への影響がもはやあたくしのドメドメ英語読解力ではその微妙さが判らんのですが、手元のデイリーコンサイス英和辞典(お前は高校生かというツッコミは謹んで却下)によると、「restrain=抑制する、拘束する」「dampen=しめらす、落胆させる、くじく」と書いてあるのですが、多分ここまでの話のながれからすると、今回は表現を緩和というか前進させているという話ではないかと思いますけれども、英語が得意な本石町日記さん召喚呪文を唱えておきます(^^)。
第3パラグラフ以降が決定内容。
『The Committee will maintain the target range for the federal funds rate
at 0 to 1/4 percent and continues to anticipate that economic conditions,
including low rates of resource utilization, subdued inflation trends,
and stable inflation expectations, are likely to warrant exceptionally
low levels of the federal funds rate for an extended period.』(今回)
というところは前回と全く同じですので前回分引用割愛。for an extended periodは今回も継続ですかそうですか。
『To provide support to mortgage lending and housing markets and to improve
overall conditions in private credit markets, the Federal Reserve is in
the process of purchasing $1.25 trillion of agency mortgage-backed securities
and about $175 billion of agency debt. In order to promote a smooth transition
in markets, the Committee is gradually slowing the pace of these purchases,
and it anticipates that these transactions will be executed by the end
of the first quarter.』(今回)
ここまでも前回と同じ(正確には前回はfirst quarterの後にof 2010というのが付いているが、さすがにこれは同じ意味でしょ)なので、つまり各種買入は引き続き撤退方向ですな。
『The Committee will continue to evaluate its purchases of securities in
light of the evolving economic outlook and conditions in financial markets.
』(今回)
『The Committee will continue to evaluate the timing and overall amounts
of its purchases of securities in light of the evolving economic outlook
and conditions in financial markets.』(前回)
最早ここまで来ると前回のthe timing and overall amountsつーのが抜けたインプリケーションがよー判らんのだが(涙)。
で、第4パラグラフですが。
『In light of improved functioning of financial markets, the Federal Reserve
will be closing the Asset-Backed Commercial Paper Money Market Mutual Fund
Liquidity Facility, the Commercial Paper Funding Facility, the Primary
Dealer Credit Facility, and the Term Securities Lending Facility on February
1, as previously announced. In addition, the temporary liquidity swap arrangements
between the Federal Reserve and other central banks will expire on February
1. 』(今回)
上記の各種買入メニューは予定通り2月1日に閉店宣言となりましたな。書き方はちと違ってますが言ってる事は前回と基本的に同じだから前回分引用すると長くなるので割愛。
『The Federal Reserve is in the process of winding down its Term Auction
Facility: $50 billion in 28-day credit will be offered on February 8 and
$25 billion in 28-day credit wil be offered at the final auction on March
8. The anticipated expiration dates for the Term Asset-Backed Securities
Loan Facility remain set at June 30 for loans backed by new-issue commercial
mortgage-backed securities and March 31 for loans backed by all other types
of collateral.』(今回)
この辺が今後の縮小計画ですよね。
『The Federal Reserve is prepared to modify these plans if necessary to
support financial stability and economic growth. 』(今回)
というヘッジクローズも前回と同じです。
ということで、まあここまでの話は「景気判断を上げたね」というのと「何気に物価判断も上げてねえかこれ」っていう所ではないかと存じます。で、最後の所でこれまたほほー。
『Voting for the FOMC monetary policy action were: Ben S. Bernanke, Chairman;
William C. Dudley, Vice Chairman; James Bullard; Elizabeth A. Duke; Donald
L. Kohn; Sandra Pianalto; Eric S. Rosengren; Daniel K. Tarullo; and Kevin
M. Warsh.』(今回)
と、ここまではヨロシのですが、
『Voting against the policy action was Thomas M. Hoenig, who believed that
economic and financial conditions had changed sufficiently that the expectation
of exceptionally low levels of the federal funds rate for an extended period
was no longer warranted. 』
経済金融情勢は十分に変化して、例外的な低金利水準を十分な期間継続することは既に正当化されないとはこれまたキタコレという感じですな。
つーことで、まあ今回は瀬踏みみたいなもんだとは思うのですが、これがまた色々と考えられる訳で、いやまあ本当にエマージングアジアが威勢よく伸びているので米国経済も回復ですよあっはっはという話なら良いのですけれども、まあそうじゃないとしたらどうなのかと妄想するのは妄想ネタとしては楽しいですが、時間がないので妄想は妄想のままにしておきます。
○さてまあ時間がないのでその他ネタは勘弁
今回は文言が結構変わったので、さすがに斜め読みと言っても「前回と同じ」という訳に行かない部分が大杉勝男でありまして、これだけ書くのにそこそこ時間が掛かってしまいましたので、予想通りに(もっと早起きしろというツッコミは却下)明日のネタに回るのでありました(汗)。
でも短国レート低下だけ書いておきますね!
○ということで短国レート低下キタコレ
昨日の3MTB(もう割引短期国債全部償還になったんだからTDBっていうの止めてTBに戻しませんか皆様??)入札結果はこの有様。
http://www.mof.go.jp/jouhou/kokusai/tbill/tbillnyusatu/resul220127.htm
(1)応募額 30兆4,311億円
(3)募入最低価格 99円97銭3厘5毛
(募入最高利回り)(0.1125%)
(5)募入平均価格 99円97銭3厘8毛
(募入平均利回り)(0.1112%)
・・・・(;∀;)イイハナシダナー
えーっとですな、何がどうなっているのか良く判らんのですが、お金様が短い所にワサワサとやって来ておられるようで、GCレートは0.105%(もしかすると0.10%も)でベタベタだわ、新発CPレートはこれまた電力会社さんなどの超優良発行体扱いされているネームだと期内もので0.11%を堂々割り込んでおられますし、まあ過去ゼロ金利政策実施や量的緩和政策実施の際に、本当にベタベタになる前段階があって、それから一段低下して短期市場暗黒時代が到来するのですけれども、今回のまあ量の目標は無いけどターム物金利下げましょう「広義の量的緩和」(ってナンジャソリャという気はする用語だが)攻撃の効果が出て参りました。
いやまあ短期市場暗黒時代になっても、その政策実施効果によって回復が速くなって、結果として再び市場が回復してくれれば良いのですが、中途半端に生殺し状態で暗黒状態にされた挙句に回復が遅れるとなりますとこれがまた困る訳ですな。長くなるとまたまた市場関係者が離散してしまう訳でして、大体からして直近の金利復活時代だって既に金利が動いている時代を知っているのが年寄り(含むあたくし)だらけで、若い衆の頭の中が金利が動かないとか流動性はいつでも大丈夫とか思ってねえかコレっていうような市場のアクションを見て微妙なテイストを感じたのですが、ここで暗黒時代が長くなると本当の本当に人とノウハウが離散しちゃいますので、まあ可及的速やかに景気が回復して頂きたく存じます次第なのですけれどもね。
まあ米国の回復が偽りの回復で無く、エマージングバブルがもうちょっと続くとか、バブルじゃなくてマジでしたちゃんちゃんという楽しい結論になることを強く希求するものであります(^^)。
#短期市場の暗黒度を暗黒阪神(過去形)や暗黒広島(現在進行形)と比較するのは馬鹿話ネタとしては使えそうですな(あほ)
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2010/01/27
お題「決定会合レビューなど」
○経済見通しの文言にほぼ変化はないです
今回の声明文
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k100126.pdf
前回の声明文
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/k091218.pdf
んでまあこの声明文を並べて比較すると、12月の通常会合で物価安定の理解の明確化を公表した関係で微妙に違う部分があるのですが、中心的な文言には見事に変化がありません。
・・・と書くと話が終わってしまいますので今回の声明文を引用しつつということで。
・現状認識で新興国経済の認識を引き上げています
『わが国の景気は、国内民間需要の自律的回復力はなお弱いものの、内外における各種対策の効果などから持ち直している。』
『すなわち、内外の在庫調整の進捗や海外経済の改善、とりわけ新興国経済の強まりなどを背景に、輸出や生産は増加を続けている。』
ここのところですが、前回は『新興国の回復』となっていまして、新興国経済の現状認識を引き上げましたというのが前回と違う所。
『設備投資は下げ止まりつつある。個人消費は、厳しい雇用・所得環境が続いているものの、各種対策の効果などから耐久消費財を中心に持ち直している。公共投資は頭打ちとなりつつある。この間、金融環境をみると、厳しさを残しつつも、改善の動きが続いている。』
『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、経済全体の需給緩和から下落が続いているが、石油製品価格変動の影響が薄れてきたことなどから、下落幅は縮小している。』
ということで、12月の現状認識と違うのは新興国経済が強いという話。まーこの前ご紹介した日銀レビューでは「新興国への資金流入」というお題があったように、エマージングはアジア中心に活況みたいですからね。
・先行き見通しは変化無いです
『先行きの中心的な見通しとしては、2010 年度半ば頃までは、わが国経済の持ち直しのペースは緩やかなものに止まる可能性が高い。』
変化無し。
『その後は、輸出を起点とする企業部門の好転が家計部門に波及してくるとみられるため、わが国の成長率も徐々に高まってくるとみられる。』
これまた同じ。本当に波及するのか存じませんが(−−;)
『物価面では、中長期的な予想物価上昇率が安定的に推移するとの想定のもと、マクロ的な需給バランスが徐々に改善することなどから、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比下落幅は縮小していくと考えられる。』
ここで『マクロ的な〜』という文言が前回無かったので一瞬「おお上方修正」と思ったのですが、良く良く考えてみたら今回は展望レポートの中間レビューがありますので、ここの部分は10月の展望レポートとの比較をしないといけない訳でありまして(^^)、10月の展望レポートの基本的見解の5ページ目に、
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/tenbo/gor0910a.pdf(前回の基本的見解)
『消費者物価指数(除く生鮮食品、以下同)の前年比は、(途中割愛)2010年度以降は、中長期的な予想物価上昇率が安定的に推移すると見込まれる中で、マクロ的な需給バランスが徐々に改善することから、消費者物価指数の前年比下落幅は、引き続き縮小していくと考えられる。』(10月の展望レポートから)
てな訳でありますので、今回は物価見通しの基本的な見方を変えたとか上方修正したという話でもないと思われます。
・原油価格の上昇の影響ですが・・・・
『10 月の「展望レポート」で示した見通しと比べると、成長率は、概ね見通しに沿って推移すると予想される。物価については、国内企業物価・消費者物価(除く生鮮食品)とも、原油価格高の影響などから、見通しに比べてやや上振れて推移すると予想される。』
で、まあここの部分で「原油価格高の影響」というのが結構引っ掛かったりするのかもしれませんな。昨年10月の時点でWTI先物がバレル70ドルから80ドルとかでございますので、今とあんまり水準的には変化無いですが、一昨年10月よりも昨年1月の方が原油価格低かった(昨年の今頃はWTI先物で40ドル近辺)から前年比が上がるという話なのかとも思いますが、10月の水準がヨコだと今頃前年比での数値が上がるのは明らかだったので、この辺の趣旨は背景説明を含めた全文を読まないといかんのかなとも思います。
・リスク要因では国際金融面の動きの書き方があっさり味に
『リスク要因をみると、景気については、新興国・資源国の経済の強まりなど上振れ要因がある一方で、米欧のバランスシート調整の帰趨や企業の中長期的な成長期待の動向など、一頃に比べれば低下したとはいえ、依然として下振れリスクがある。』
これは前回と同じです。
『また、最近における国際金融面での様々な動きとその影響についても、引き続き注意する必要がある。』
で、この部分ですが、前回はこのように書いてありました。
『当面は、国際金融面での動きなどが、企業マインド等を通じて実体経済活動に悪影響を及ぼすリスクについても、引き続き注意する必要がある。』(12月声明文から)
だいたいこれはいわゆるドバイショックを受けた文言だったのですが、その時点からは為替、株価ともに状況が好転しているので、やや書き方があっさり味になったという事でしょう。
『物価面では、新興国・資源国の高成長を背景とした資源価格の上昇によって、わが国の物価が上振れる可能性がある一方、中長期的な予想物価上昇率の低下などにより、物価上昇率が下振れるリスクもある。』
これは同じですが、マインド統計がここへきて物価下落方向になってきている点について何かの言及は無いもんかという気はあたくし的にはするのですけどね。
・最後の決意表明のような物には変化なし
まあ当たり前ですけどね、引用だけ。
『日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することが極めて重要な課題であると認識している。そのために、中央銀行としての貢献を粘り強く続けていく方針である。金融政策運営に当たっては、きわめて緩和的な金融環境を維持していく考えである。』
○ところでヨコですがBOEの物価見通し
ちなみに、話はここでいきなりヨコに飛びますが、1月6、7日のBOEのMPC議事要旨が先日公表されてまして、ネタにしようとしつつもスルーしていたのですけれども、こちらの議事要旨の第23、24パラグラフ(議事要旨本文6ページ)にこんな記述がございます。
http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/mpc/pdf/2010/mpc1001.pdf(BOEの1月MPC議事要旨)
『It was increasingly probable that CPI inflation would rise to well above
the 2% target in the early part of 2010 and remain elevated for several
months.』
何と言う景気の良い話。
『The most recent intelligence about the likely pass-through of the January
VAT rise and the potential impact on energy prices from the unusually cold
weather suggested that inflation in the short term would be further above
target than the Committee had previously expected.』
と思ったら下げてたVATの引き上げ影響と寒波襲来によるエネルギー価格の予想以上の上昇が影響ですかそうですか。
『There was a risk that a sustained period of above-target inflation could
cause inflation expectations to drift upwards. 』
(2%という)ターゲットを上回る物価上昇率が継続すると、世の中のインフレ期待が上振れるリスクがあるとはこれまた景気の良い話ですが、上記にありますように、物価の上昇自体が景気が良くなったからという要因でもなさそうなので、残念感が伴うのでありますが。
『The Committee would monitor closely the extent to which price-level shocks
affected inflation expectations. But so long as expectations remained consistent
with the 2% target, the medium-term outlook for inflation ? the key consideration
when setting monetary policy ?would reflect the balance between demand
and the supply potential of the economy. The available evidence continued
to suggest that this balance would bear down on inflation for a considerable
period.』
途中で切るのも何なのでこの段落最後まで引用しましたが、まあ中長期的には安定しているけれども、足元上昇という状況で、別に景気が良い訳でもない(引用始めるとお題が変わってしまいますので引用はしませんが、景気見通しはまあパッとしません)ので中々大変ですなあというお話。なお、事務方からの説明でも物価上昇要因について、
『CPI inflation had risen to 1.9% in November, largely as a result of an
increase in petrol price inflation. This factor, along with the reversal
of the December 2008 VAT cut, was set to boost inflation further in forthcoming
months. 』
とありまして(第18パラグラフ)、この辺の文言をこの前読んだばっかりだったので、あたくしが今回日銀の物価の先行き見通し上方修正(してもマイナスですが)されるような文言があっても「ふーん」程度で終わったのかもしれませんな(^^)。
しかし何ですな、BOEの場合は「上振れた物価状況が続いた場合のインフレ期待の上方シフト」が懸念材料なのでありますが、日銀のおかれた状況はこの逆なのでありまして(−−;)、さてその辺どういう認識になっているのか。いやまあ「そのために中長期的な物価安定の理解の明確化」を出したという事なのでしょうけれども、インフレ期待(というかデフレ懸念というか)の下方シフトに関するリスクを、どの位懸念しているのか、その状況に変化があるのかという所が、決定会合声明文比較だけだとあんまり見えてこないのが微妙に遺憾に存じます次第でありますが、これまた背景説明を含む全文を読んでみると致したく存じます。
○そりゃまあ上方修正っちゃあ上方修正だけどさあ(一部産経電波浴も含みます)
ということで話を戻すと、今回はビューをほとんど変えていないという結論になるのですけれども、まあ見通しに関しては2009年度の実質GDPと、先行きのCPI見通しを引き上げになっています。(書くのめんどいから声明文見てちょ)
ということで、某モーサテ辺りでは「上方修正」というヘッドラインを打っていましたが、今年度の見通しなんぞレビューみたいなもんでそれが上方修正されても意味無いし、GDP見通しに関しては2010年度で0.1%しか上方修正してなくて、2011年度は不変ですので、普通に金融政策へのインプリケーションとしては「変化無し」という話になると思うのですが、まあこういうヘッドラインになるのが、ネタを欲しがるメディアクオリティなんでしょうな。
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/mnews/20100126-OYT8T00786.htm
成長見通し、上方修正…日銀決定会合
いやだから全然上方修正じゃないって。まあ物価の見通しは上げてますけど、上げた結果2011年度でもまだ▲0.2%(従来▲0.4%)なのでして、これまた金融政策へのインプリケーションは同様に「まあ事実上の時間軸が続きますなあ」という話なのですが、日銀を何でも良いから批判するというのが仕様になっている産経に掛かるとこの有様。
http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/100126/fnc1001262013017-n1.htm
日銀“楽観シナリオ”に危うさ 原材料高・内需不足のダブルパンチ懸念
・・・・えーっと、これを楽観シナリオ(一応カギかっこ付いてるけどさ)ってどんなマゾ属性だよという感じではございます。いやあのね、産経新聞ってそれなりに一定の主張があって、それはそれで悪くは無い話なのですが、その主張を補強する為に事実の一部だけを恣意的に切り取って来るとか、限りなく曲解に近い解釈をして報道をするとか、それってもう報道機関というよりは単なるアジビラじゃねえのと思うのでありまして、いやまあアジビラもアジビラとしてのニーズはありますから、商売的にはそれでも成り立つと思いますけど、報道機関としての姿勢としてどうなのよと思うのであります。経済記事よりもどうも外交とか軍事とかの話がもっと斜め上らしいのですけれども、最近は経済記事がすっかりこんな調子になっているのは困ったもんです。
なお、普通に解釈するとこうなる筈というのが東京新聞。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2010012602000226.html
日銀 政策金利据え置き 景気判断も変えず
これは会見前に出た記事みたいですけれども(夕刊記事)、普通に読むとこういう記事になる筈なのですが、これじゃヘッドラインとして面白くないと言ってオモシロヘッドラインにしようする動きにイデオロギー(?)まで入った挙句に電波ゆんゆんの記事になってしまうというリスクにはご注意ありたいものです。
○財金分離じゃなかったんでしたっけ
まあ今に始まったことではないですが。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=aULOZtkDOzGo
菅財務相:もっとという気が率直のところある−日銀の金融緩和策で
『1月26日(ブルームバーグ):菅直人副総理兼財務相は26日午後の参院予算委員会で、日銀の金融政策について、極めて緩和的な環境を維持しているとする一方、「もっとという気が率直のところある」と述べ、さらなる緩和策が必要との認識を示唆した。その上で、日銀とはデフレ克服に向け「方向性は一致している」と述べ、物価をプラスに転じていくため日銀と協力していく姿勢を示した。民主党の辻泰弘氏への答弁。』
昨日は日経新聞だかの朝刊で「財政演説で日銀に追加緩和を求める」云々みたいな記事もあって、金利市場の人は別に何もないでしょとは思ってましたけど、金融政策ネタになると斜め上にも程があるレポートが乱発される為替市場様におかれましてはそれなりに期待もあったり無かったりという感じだったみたいですね。
お前ら財金分離とか言って武藤総裁を潰したんじゃ無かったのかよと小一時間なのでありますが、まあこういう話をして市場が勝手に変な期待をするというのは当面続くという感じじゃないでしょうか。12月の2回の決定会合で市場的な評価って「ああ日銀は政治圧力に弱いのね」という扱いになっていると客観的に思われる次第でありますが、その政治が何せシロウト集団でありまして、何を言い出すかさっぱり読めないという人達でございますので、まあナントカに刃物とは良く言った物だと呆れる次第であります。
まあ政治屋さんとしてはアピールが大事なのは判りますけどね。
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2010/01/26
○やっとショートファンディング推奨スキームでは無くなり
昨日の資金供給オペで国債買現先のS/N取引の供給額がゼロになりました。ネタの無い短期市場ニュースには干天の慈雨の如き事案だったので「1年2か月ぶりにスポネ買現先をゼロに」というニュースになっていましたが、実はスポネの買現先が4000億円減っている間に同時に実行しているスポットスタートの1週間物買現先を6000億円から8000億円に増額してまして、このオペが毎日8000億円になりますと1日あたり2000億円増えるので、5日間で1兆円増えますから実は差引で4000億円のオペ増額となるのです(^^)。
だいたい当座預金残高が15兆円位をキープするような調節を実施しているのですが、共通担保オペの残高が(ちゃんと計算してないからアレなのですが)固定金利物(新型オペ)も含めて増えた分国債買現先が減った格好になったような感じになるのかな。まあ後でちゃんと計算してみますが、ここもと共通担保オペをターム物でコンスタントに打ってきているので、ターム調達が安定化してきて、結果的に足元でのショートファンディングが減り、足元のGCレートが安定してきて国債買現先のスポネ供給を減らしても良くなったという事ですな。
まあそもそも常々申し上げておりましたように、GCレートを安定させたいというのであれば、GCで資金を取る人の調達を安定化させるようなオペを打つべきでありまして、スポネの買現先だのトモネの共通担保資金供給だのというような足の短いオペばかり打っているとどうしても(結局のところファンディングは日銀オペに依存しているという現実がある以上)ショートファンディングに調達サイドが傾く事になって、モノ日のようなイベントが発生する傍からレートが不安定になり、不安定な状態が続くとプレミアムが乗りやすくなってしまうという悪循環になります。従ってそーゆー点では現在のようなオペレーションを打っていれば、GCの資金調達サイドの足元での要調達額が軽くなり、結果としてレートは安定するわ、コマネズミのようにオペを頻繁に出し入れしなくて済むわと皆さんハッピーな展開になるのでございます。
ただ、まあ1月から2月第1週までは資金需給上不足なので、それを埋めるために資金供給を打ちやすいという技術的な面もありまして、これが資金余剰シーズンでもある程度足元の調達が軽くなるようなオペレーションを実施していけばGCはこのまま安定して3か月などのTBの金利も安定する(ので増発上等となる^^)んじゃネーノと思う次第であります。
本来はこーゆー感じでターム中心で打つのは年末月でもある12月からやって下さいなという感じなんですが(12月はスポネで2兆だの、末初オペだけで4兆だのという調達を足元に傾斜しろと言わんばかりのオペでしたわな)、まあ12月の時点では「新型オペの実施をした」という事で、その政策決定が多分に「他市場やら一般向けアピールを狙った」ものであった面が強く(じゃなかったらヤマダ電機の特売チラシみたいな「超低金利」などというチラシじゃなかった説明ペーパーとか出てこないわな^^)、その点で言えば「ほらこんなに資金供給をしましたよ!!!」というのを見せつける必要もあったと思います。
つまりですな、ターム供給を行うよりは翌日物供給をロールした方が見た目の資金供給オペの実施額は増えるのでありまして、特に為替市場あたりへのアピールを考えた場合、「とにかく沢山資金供給をしてますよ!!!!!!」と見せつけるという効果を考えれば、地味にターム物供給でターム物金利を押し下げるよりは、とにかく目立つ形で資金供給をしたように見せる方が重要というのもヒジョーに良く判る話でもありまして、そっちを重視したという事なのでしょうかねえ、と勝手に想像。
ただし、本来はターム物下げるという意味ではGCレートを低位安定させた方が効くので、供給は足元で派手派手に行うのではなくてターム物をじっくり出した方が良い(さっきから書いているように)のでありますが、一旦足元を派手派手に出しちゃいますと、ターム供給にシフトしていく時に足元の供給をバランス上減らす事になるのですが、その時に他市場辺りから「供給を減らした」と言われて変な反応が起きるのは「アピール政策」をやっている時としては本意では無いにも程があるとゆー事ですから、まあ(12月は資金余剰で元々タームではなくてぶつ切りオペになっていたというのもありますが)ほとぼりが冷めるまで足元派手派手供給(実際は今の方が緩和感が高いのだが、オペの総額に目が行きやすい短期村の外側じゃあ気がつかんわな)を行っていたというのであれば、調節担当大勝利という所ではないかと思います。
・・・と勝手に想像してますが、これが単に12月は資金需給のコブが沢山ある上に末初だけ供給したかったからぶつ切りオペになり、現在は2月第1週の資金不足に向けて供給しているからこうなっているというだけの事だったら、色々深読みしたのが全部空振りとなる俺様涙目ですな(−−)
まあ何にせよ、ターム物が増えてショートファンディング傾向が軽くなっているのはGCレートの安定からターム物とか3か月とか金利の安定にとって非常に良い傾向でございます。
○デフレ宣言の次はこれが出る悪寒
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=afYWmzRkAXH4
仙谷戦略相:日本の財政、「説明のつかないほどひどい状況」(Update1
『1月25日(ブルームバーグ):仙谷由人国家戦略相兼行政刷新相は25日夕に開かれた「中期的な財政運営に関する検討会」の初会合の冒頭であいさつし、「わが国の財政は極めて厳しいと言うよりも、説明がつかないほどのひどい状況になっている」との認識を示すとともに、「ミクロ、マクロの視点で予算改革の道筋を示していくことが私たちのミッションだ」と語った。』
・・・・・・(;∀;)イイハナシダナー
何度もあたくしが悪態をついておりますように、先般政府によって実施されました堂々の「デフレ宣言」によりまして物価関連のマインドが急速に悪化しまして、それこそ「デフレ懸念から物価下落を招く」という形のまさにデフレスパイラル入りしてもおかしくはないというマインド面の悪化を招いているという大変に(;∀;)イイハナシダナーとしか申し上げようがない展開になっているのでありまして、無策のままマインド悪化だけ呼び込むアホウ宣言をした連中は全員揃って牢屋か西方浄土にでも逝っていただきたいと存じます次第ですが、今度の何かよく判らん検討会の初回挨拶にこの発言ですよいやですわねえ奥様♪
何つーかね、戦略的に大ボケ発言をかましているのであれば別に良いのですけれども、どっからどう見ても現内閣の閣僚たちが(約1名を除いて)作戦を練って発言しているのではなく、思いついたことをホイホイと口走るだけなのではないかと思われる次第でございまして、まーどうでも良いネタならともかく、財政破綻宣言とか何も考えずに出したらどういう話になるんだかとかあまり想像したくない光景ではございます。
大体からしてさ、「わが国はデフレです景気悪化でどうしようもないですけど金がないので財政も打てません」とか言ってる国に投資する奴がいるのかよ(除くホームバイアス)とゆー風に思われるのでありまして、もうちょっと物を考えて動いて頂きたいものだと思うのであります。
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2010/01/25
お題「金融政策も金融行政も政治の季節ですかね」
名護市長選挙の結果で益々話がややこしくなりましたな。
#以下本日はやや妄想成分入りの雑談であります
○米国様の金融規制なんちゃらかんちゃら
微妙な解説記事があっただよ。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-13471120100122?sp=true
何かマサチューセッツ補欠選挙の結果でオバマさんファビョってしまったのかいなという感じではあるのですが、金曜はこの影響で金融機関の収益が減ってどうたらこうたらとか言ってNY株が続落してダウは先週初の引けから3日で450ドル下げるという華麗な展開。
いやまあ「金融システム救済は国民経済の為だ」と言って税金突っ込んで救済した金融機関の幹部が早速巨額賞与とか言われたらそりゃ有権者は発狂するわなと思うのでありまして、まあ決済システムなどは保護するのは判るけれどもレバレッジ効かせて高収益というような部門を何で保護せにゃいかんのじゃという話は正論といえば正論。
ただ、決済部門だけじゃなくて市場仲介機能まである程度何とかしないと、金融ショックに対する意味はイマイチだと思われる次第でありますので、そうなって来るとじゃあどこからどこまでが保護されるべきものなのかという線引きもこれまた難しい。日本の不動産バブル時代は商業銀行業務の貸出として不動産融資に突っ込んでいたのですし、じゃあバランス規制をすればよいかと言うと、それは色々と回避策がありそうですし。
ま、流れとしては米国的にはその辺を分離するという昔の銀証分離をイメージしてるのでしょうが、実務上のフィージビリティってどうなのよという気がする。まあそれよりも、マサチューセッツの補選結果でいきなりこういう話になってきたというのが極めて政治的な感じですな。
○金融政策が政治っぽくなってきていますなあという与太話
今日と明日は金融政策決定会合。金曜のNY市場でドル円90円割れとかになって(今は90円台みたいですが)、金曜も申し上げましたが、ここもと金融政策決定会合の前になると計ったように株安と円高が進行するという嫌がらせのような展開になるのが日銀の間の悪さのようですな。と思ったのですが、逆に考えたら、決定会合前に外部環境が良くなって大喜びして引き締め方向に行って後で大失敗でしたでござるの巻になるよりは、極めてマシなのでありますので(^^)、実はこれは白川日銀に対する市場の見えざるメッセージなのではないかとか訳判らん事を言い出すあたくし。
まあそれはそれとしまして、日銀の政策決定会合を前に何がどうなるかという話をした場合、12月1日の臨時会合以降はまー日銀の動きを予想するのが経済指標でどうのこうのというよりは政治動向を見ないといかんという感じを強くする所が何とも遺憾なのですが、経済指標云々よりも政治動向というかぶっちゃけ政治方面からやって来る圧力に注意という話ですわな。
そもそも論から言ってそんなのを注目しながら動向を読むという時点でナンジャソリャという感じですが、政府の無策デフレ宣言以降、経済無策の中で日銀に何とかしてくれ状態になるのが仕様となっていますし、(そういやまとめを作ってませんが)そういうモードになるとその圧力の掛け方も露骨ですし(自民党政権時代は党幹事長で日銀法改正と恫喝するのはいたが、政府のメンバーになった場合には露骨な干渉発言を表だって堂々とするのは居ませんでしたからね)という事で、日銀もなんかそれにお付き合いして(させられて)いる感じですからね。
で、その政治動向ですが、何か批判されて困った時に火の粉を逸らすために経済問題経由日銀行きというルートがあるのですけれども、それよりもこちらの政府は何だかよー知りませんが、「市場の圧力」というのに対する煽り耐性が妙に低くて、「財政懸念から長期金利が上昇」と言われると埋蔵金まで全部吐き出して兎に角目先を凌ごうとして44兆円がどうのこうのと無理繰り回しちゃうし(で11年度予算はどうなるんでしょ、オラシラネ)、為替が円高になって株が下がると日銀に圧力を掛けるしと、市場が追いこみを掛けるとすぐにファビョーンとなってしまうのが民主党政権クオリティ。まあ為替に注目なんでしょうな。
ということで、まあネタとしては円高(というかドル安ユーロ安だが)が進行した時に政府から毎度お馴染みの圧力がやって来ると、この前実施した「超低金利、固定」のオペの実行額を拡大するかオペ期間を3か月から6か月に延長するかのどっちかを実施して「決意表明」をするっちゅう事になるんでしょうな。為替市場に効くような形のテイストを混ぜないと行けないのが難しい話ですが。
問題は財政懸念だの国債消化懸念だのという話になった時でして、そーゆー時に輪番拡大をする圧力がどうせ掛かるんでしょうけれども、その時って下手な増やし方をすると財政ファイナンスがどうのこうのという話になってガイジンさんあたりが大喜びして「財政マネタイズヒャッハー」とかやり出しそうでオソロシスなのですよね。
あと話はヨコですけれども、何か民主党におかれましては、どうも「日銀に圧力掛けて金融政策が動いた」というのを自分達の「輝かしい実績」だと思っているのでは無いかと思われる節もある訳でございまして、すっかりネタに使うつもりで使ってない気がしますけれども、12月1日の決定会合の時なんぞぞの直前から主要閣僚が競うようにして日銀に対する露骨な圧力発言を繰り返していた訳でありまして、それは鳩山白川会談を前にまあ近いうちに何かのアナウンスを日銀がやってくれるだろうというという事から(スケジュール感を無視した鳩山白川会談をセットされた為に、日銀としても手ぶらという訳に行かなかったんでしょ)、その時のアナウンスは自分の手柄だという手柄合戦状態になったのが露骨な発言になったんでしょうなあと思うのであります。
まあそんな感じですから、浅ましい人たちの浅まし発言も注目せにゃならんとは情けない話であります。
○バーナンキ再任がうんたらかんたら
さあ盛り上がって参りました!
http://jp.reuters.com/article/foreignExchNews/idJPnJT858122020100122
一方で米国様におかれましても何か上記のような微妙なテイストの話が。さすがに再任されるでしょうと思うのですが、こういう感じで世の中の空気を読まないと行けないという展開になった場合、元々からバーナンキ先生は俊ちゃんメソッドで空気を読みながら、市場的にそれは無茶振りのような気もするがという施策を出しつつも、福井の俊ちゃん流の融通無碍と申しますかインチキ成分入りと申しますかな信用緩和策を行っておりましたけれども、今後の流れをどうやっていくかというのが、これまた政治的な読みを入れながらという観点が必要になりそうな気がする。
で、その場合正常化路線とかになるのか、バランスシートを縮小する方向になるのか、それとも緩和政策を長期化させる従来の流れを堅持できるのかというような話って米国人じゃないから正直判らん。誰かご存じでしたら教えてちょという所でございます。
まあそこまで読みに行くのはだいぶオッチョコチョイ成分の入った読みだと思うのですが。
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2010/01/22
○米国はじまったな
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-13459120100121
オバマ米大統領が金融機関に対する新規制提案
2010年 01月 22日 04:50 JST
『[ワシントン 21日 ロイター] オバマ米大統領は21日、金融機関のリスクテークに関する諸制限を一段と厳格化するよう提案した。政権が2年目を迎えるなか、低迷する支持率の底上げにつなげたいとの意向があるとみられている。提案を受け、午後のニューヨーク市場で株価は大幅安となった。』
ということで、マサチューセッツの補欠選挙で負けた影響が早速出るとは実にお洒落な展開でありまして、これはまたどこかで見たことのある流れになって参りましたという事ですか。
まあ公的資金突っ込まれて回復したと思ったら高額報酬復活とか金融機関サイドの動きが下品かつ強欲豚な上に空気を読まないアホウと来ているのでこういう話が出てくるのも致し方なしという感じですが、まー日本の場合は別に米国みたいな高額報酬とかいう話で無くてもあの有様という残念なお国柄でしたが、そうでない米国様におかれましてこういう話が出てくるというのは如何にウォール街とかが品性下劣かというお話なんでしょうなあ。まあその辺はちったあ空気読んで大人しくすりゃ良いのにとは思うのですが、強欲がエネルギーでもあるので全否定もできないという所でしょうかねえ。
それはそれとして、現在BIS方面でやっている各種規制に関しても、特に流動性規制とかかなーり厳しいものがあると存じますし、英国に次いで米国でも個別国での規制がという話になりますと、前もちと書いたと思いますけど、投資銀行業務を国際展開ってのがひじょーにしんどくなってくるので、業務展開の形態に変化が出るようになるんでしょうが、それが債券市場的にどういう話になるのかは正直判らん。判らんなら書くなと言われそうですが(^^)、流動性規制だのレバレッジ規制だのという話になって、商業銀行業務がナローバンキングに近くなってくるとゆー話になりますと、プレーンな債券とか国債とかのニーズが高くなるんでしょうかねえという位の妄想が湧きますけど。
なおも金融規制と全然違う話を続けると、じゃあナローバンキングちっくな状態でメシ食えるかという事になりますと、米国みたいにFF金利が(実効レートで)0.1〜0.2%位で回って2年国債が1%をちょっと切る位で10年国債が3.7%だの3.8%だのとかいう状態なら、低リスク資産でも期間ミスマッチそれなりに泳げると思うのですが、日本のようにイールドカーブが潰れておりますと如何ともし難い所がありそうですな。
でもまあ世の中そんなにウマーな話は無いと思いますので、米国において金融規制強化だの商業銀行の保有資産をより安全な物にするだのというような話になって来ると、米国のイールドカーブがそのままで済まないのではないかなどという妄想もまた湧いてくるのであります。まあただの妄想ですけれども。
○しかし決定会合前に微妙な動きに
今月の決定会合は来週なのですけれども、まあ今朝の米国の動きがどの位トレンドになるのか知らんので何とも言えませんが、またぞろドル安という話になって参りますと、決定会合前に市場がいい感じで嫌がらせモードになってきましたという感じで、実にビューテホーなものを感じる次第でございます。何つーかここんところ毎度毎度の如く決定会合の前になると金融市場が嫌がらせモードになるのが仕様のようになっておりまして大変に結構なお話です。
ということで、今回の会合で何かあるかと言うと普通に考えると無いというのが一般的な読み筋になるのですけれども、オバマ大先生がお洒落なことをやってくれましたので、会合前にまた円高株安とかが急速に進行してくると、只で無くさえ困った時に日銀を空爆するのが仕様になっている現政権の事ですから何を言い出すか判らんのがオソロシスな所。
#まあこの前の安値を見に行くまでの距離があるから今回は大丈夫でしょうけど
普通に考えたら無いというのは、外部環境の水準感もさることながら(という風に考えると12月に実施された俊ちゃんメソッド採用のなんちゃって金融緩和政策は為替市場と株式市場に対する効果は中々高かったので今のところは日銀大勝利なのですが)、もし今回何かやらかすとなると3打席連続で会合で何かやる攻撃となるので、しまいには毎回何かやらないと逆に市場ががっかり状態になるという訳判らん展開になり兼ねないというのも有りまして(^^)、そーゆー変な意味での期待を市場に与えすぎちゃうのも何ですので今回はさすがに何もないでしょという読みなんですけどね。
更に蛇足にはなりますが、一昨日ご紹介した新興国バブルがどうしたこうしたレポート(http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/rev10j01.htm)を日本以外の主要国が緊急避難政策からの正常化(ただし正常化するのは信用緩和部分だけで金利は変更しないという話ですが)という中で日本だけ蚊帳の外状態になっているという微妙な中で微妙にしらっと公表などとゆーのを見ておりますと、まあ追加緩和は(追い込まれれば別ですが)そうホイホイ出てこないという感じなんでしょうなあ、と思うのであります。
#追加緩和を出し渋った結果、回復が遅れていつまでたっても金利市場の人がおまんま食い上げになるのは勘弁という論点はとりあえず措く
いやまあ日銀レビューとかワーキングペーパーとかって基本的には中の人の自由課題みたいなもんですという建付けは理解しておりますが、どうも(日銀レビューの方がその傾向強いのですが)出てくるタイミングとそのお題が微妙にある意味で空気を読んだ出方(^^)をするのが仕様となってますからねえ。
○虫干しネタですが1999年4月9日会合議事録ネタ
で、会合の最後の方で各委員が今後の金融政策運営に関する意見表明を行っている部分が現在の主要国における金融政策運営にも通じる論点が満載ですねという話をここしばらくやっておりましたが、今日は先日(14日)にご紹介した速水総裁の発言の続きを。
過去の関連駄文
http://www.h5.dion.ne.jp/~bond7743/seisakugijiroku.html
本文76ページから、ということで先日ご紹介した発言の前の部分になります。
『なお、市場関係者の間には現在のゼロ金利政策によって、日銀が何を目指しているのか分かり難いとか、ここ二、三回の会合でもそうした問題意識からご意見を述べられた方々も少なくない。』
ほうほうそうだったんですか。
『この点については、日本銀行の目的はあくまでも日銀法2条に明示された物価の安定であり、物価の安定を通じて健全な経済成長を促していくことにある。現在の金融緩和はデフレ懸念が払拭されるような状況を目指して行っていると申し上げる以外にないのではないか。』
まあそれは良かったのですが、ゼロ金利解除が果たして「デフレ懸念が払拭されるような状況」のタイミングだったかというとそれは怪しかったですが、それはこの翌年のお話。
『確かに、金利と量についての考え方はあると思うが、日々変化する市場に適切な措置を打っていくことが大切であり、私共の出したディレクティブを忠実に守っていれば、現在のところ私共の責任は一応果たしていける。こうした日本銀行の考えはこれまでも対外的に十分明らかにしてきているが、それでもなお日本銀行の狙いが分かり難いということがあるとすれば、一つには、日本銀行が物価の安定について具体的な数値で示していないことを言いたいのかもしれない。』
んでまあ結局時代が後になってみれば量的緩和政策のコミットメントや、中長期的な物価安定の理解というような物が出てきた次第。
『そうした議論の中で暗に問われていることは、仮にデフレ懸念がなお存在しているとすれば、日本銀行はさらに量的緩和でも何でも追加的な措置を打っていくべきではないかということかもしれない。ただ、物価の安定を一つの指標で単純に数値化することは難しい。あるいは、そうすることが適当なのかについては、慎重に考えなければならない側面も少なくない。例えば、仮に消費者物価を0〜2%にするという目標を作ったとしても、このレンジから少しでもはずれれば問題で、逆にこのレンジに入っていれば安心といった機械的な運用は実際問題としては極めて危険である。』
まあさすがに最近はガチガチのターゲット運用をすべきという話では無くなっていますが(BOEなんかターゲット通りに厳格運用して金利を上げ下げしたら大変な事に^^)、まだこういう話もあったんでしょうな。11年前ですからね。
『結局のところ、物価の安定に何らかの数量的な定義を与えようが与えまいが、最終的にはその時々の情勢を踏まえて日本銀行が判断していく訳であり、毎回の決定会合において金融経済情勢の入念な点検と質の高い議論を積み上げ、それらを対外的に明らかにしていくことこそが何といっても最も重要なことではないかと思う。』
で、先日引用した部分の対外的に判りやすいメッセージとは何ぞやという話になるのですが、短期市場やら債券市場みたいに日銀の一挙手一投足を細々チェックした上で通常のオペレーションとかも見ているという人達には速水総裁の言う方法でも話は通じると思われるのですが、結局のところ景気は「気」でもありますので、(特に金融政策についてあーでもないこーでもないと言うのに短期資金取引に関しても怪しそうな)為替市場の中の人達(日米のLIBOR金利差で円高円安とかあれは短期市場の実務者から言わせると都市伝説の一種ですからね^^)やら株式市場やらといった全般的なマーケットとか、より広く一般ピープルという所に向けての説明とゆー事になると、更に政策の「見せ方」に工夫が必要だったという事もあるんでしょうな。
で、その結果として福井の俊ちゃんメソッドやらバーナンキ先生のメソッドなどが発生したという事でもあるのでしょうけれども。
○そう言えば尾身先生は正しかった(のかもしれない)というお話
これだいぶ前にネタにした話ですけれども、ここの下の方のお話ね。
http://www.h5.dion.ne.jp/~bond7743/seisakugijiroku.html#gijiroku080801
1998年4月9日の会合で尾身経済企画庁長官が大暴れした事をネタにした訳ですが、これも今になって読むと味わいが深いものがあります(^^)。ということで再掲しますけど。
1998年4月9日の決定会合議事要旨35ページから。
『今度のレポートは大変大事だと思っている。今の分析を全体としてみて、パターン認識的に景気が下に行きそうだということを説明するためにいろいろなことをくっつけているような感じがする。私どもも景気の現状の厳しさについては、日銀とそれほど違わない考え方を持っているが、政策責任官庁としては、この日本の景気を上げなければならないということで、いろいろな手を打っている訳である。そのいろいろな手を打つという状況の下で、明日、月例経済報告を出す。そして、「景気が停滞をしていて、厳しさが増している」という表現でいく。しかし、資料−3の1ページは「マイナス方向に働き始めており」と言っている。つまり景気の循環局面がマイナスの方向であるという表現になっている。』
『我々は、今度の対策で、景気を上に向けようとして、対策を出す訳である。だから、景気の底は3月か4月であるという方向でやっていく。それを片方で、日銀がいわゆるエコノミスト的な分析で、「マイナスの方向に働き始めており」という感じにすると、我々としていろいろな対策をやった時にコンフィデンスが回復しない要因がこのレポートにあるというようになる可能性がある。』
『確かに、数字の動きは全部マイナスであるから、日銀としてはある部分のエコノミスト的な感覚で言えばそういう感じを持つのも分からなくはないが。それは良く分かっているが、このレポートそのものがマイナスの暗示に非常に敏感に反応しているものになっていて、プラスの暗示に反映していない。全部が感性が鈍くなっている状況である。感性が鈍くなっている状況の下において、それをやや強調するような下振れ圧力とか、マイナスの方向に働き始めているとか、そのような方向に行くと、せっかく我々が4月に対策を出した時に、経済の動向が下を向いているというレポートになり、「政府がいろいろなことをやっても気分が悪くなっているのでうまくいきませんよ」というような、我々の景気対策の効果を、ここではっきり申し上げるが、足を引っ張るようなレポートはなるべく避けてもらいたいと思う。(以下割愛、さっきのURL先には後半部分もあります)』
大した対策も用意しないでデフレ宣言を堂々実施した結果、すっかりデフレマインドが人口に膾炙してしまって、マインド調査関連での物価見通しに関する数値が物凄い勢いで悪化してしまうという大変にセクシーな実績を残しておられるお遍路カイワレ大先生および閣僚一同は尾身さんの言葉を百万回味わうべきだと思います。
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2010/01/21
あんまりまとまった話が無かったりします。
○輪番オペでやたら強い所まで落札
昨日のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of100120.htm
で、その結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba100120.htm
結果の方の上から4番目に何か桁が全然違う表示があると存じますが、残存1年以内対象の輪番オペで最高落札利回り格差が▲0.129%となりました。最初見た時に桁間違いかと目をゴシゴシやったのはあたくしだけではありますまいて(^^)。
確か残存1年ゾーンの銘柄の一昨日のBB引けが0.13%とかだったので、この数字というのは要するに「出来上がり0.001%で応札したら堂々の落札」という話でありますので、落札した人ウハウハでございますが、まあ無駄と判っていてもラッキー札は差しておくべきであるというお話ではありますな。
じゃあこの結果に何か凄いインプリケーションがあるかと言うと、いやまあこじつければ色々とあるのかも知れませんけれども、よーするに業者の在庫が軽くて、別にまあ昨日のオペにしても、前場の時点で残存1年近辺って堅調は堅調ですけれども、5糸強から1毛強あたりがオファーサイドだと思われますので、普通に輪番に入れようと思えば別に出来上がり0.001%などというお洒落な札じゃなくても入れられたのですが、ここもと短い所の買いニーズも強いみたいだし、在庫も軽いしということで、別にちょっと強い程度の所で輪番に入れなくても良いやって感じだったのかと存じます。
で、そういう人が多かったのでこんな結果になったという事では無いかと思います。
ちなみに、輪番札割れって前もあった(今回は札割れではないが似たようなもん)よなあと思ってちょっと調べてみたら前回は2006年2月22日に堂々の輪番札割れがあったんですね。
昔懐かしい前回の輪番札割れ
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba060222.htm
その時の駄文
http://www.h5.dion.ne.jp/~bond7743/mitoushi05-02.html#mitoushi060223
まー結局単に相場付きのアヤでたまにこういう事が起きるのですが、2006年の札割れが9年半ぶりとかなのですけれども、まあそれはそれとして、時々札割れに近いような事が起きるのはその前にもあったのですけれども、ある時(すっかり忘れた)輪番が札割れ近くなってやたら強い所まで札が入った時に、あたくしの冗談札が入ってラッキーと思ってたら後場の寄りから相場がちゃっかり強くなって結局同値だか踏みで買い戻してしょぼーんとなった事があったなあ(遠い目)とか思うアタクシなのでありました(^^)。
でね、今回の輪番札割れですけれども、じゃあ今後札割れするかと言えば、まあ次回以降「ラッキー札は入れておくべき」というご教訓を思い出した人達がラッキー札を入れて来るので、暫く札割れはしない(前回の札割れの時も同じ現象が起きたと記憶している)でしょう。まあ人の記憶からそういうご教訓が抜けるのに4年くらい掛かるという事が今般のインプリケーションちゃあインプリケーションなのでありますな(嘘)、つまり、バブルがどうのこうのという教訓が抜けるのに大体4年という事も言える訳で(超大嘘^^)。
それとですな、これはまあテクニカルというかトリッキーな話になるのですけれども(^^)、資金供給オペと吸収オペっていうのは、それぞれ落札金利の下限と上限が日銀の預金および貸出ファシリティ(預金ファシリティは今の所常設じゃないので常設ファシリティとは書かない)レート、つまり資金供給の下限が0.10%で資金吸収の上限が0.25%(ではなく0.30%ですね、単なる間違え)になるのですが、国債売買系のオペの場合は、落札の出来上がり売却レートが0%以下(0%を含む)というのが却下される(というか昔は間違えて(利回り格差なのでボケていると間違える)0%以下レートの応札をすると日銀から電話が来たのだが最近はどうなんですかね)のですが、預金ファシリティの金利までは気にしないので、預金ファシリティの存在を勘案した場合の実質的なマイナス金利の応札が可能という事になりますわな。
と考えますと、まあ今後オペが札割れという懸念は普通に考えると無いという事になるかと存じます。コール誘導金利をゼロ金利状態にしていた時は、実質的なマイナス金利での応札もへったくれも無かったのですが、今回は預金ファシリティが存在するので実質的なマイナス金利応札が出来るので札割れというのは考えにくいという結論になるかと存じます。
つまり、国債売買系のオペでの資金供給(つまり国債買入と国庫短期証券買入)を使えばなんぼでも札割れ対策になるという事でもあって(いやまあ以前の量的緩和でも札割れ対策で短国買入を乱発しましたが)、しかも実質的なマイナスレートでもオペが打てるので調節のテクニカル的な意味では今回の方が使いやすいとも言えるのではないかと愚考するのでありました(^^)。
#またマニアネタを書いてしまいましたorz
○これは見事な責任転嫁ですね
昨日のロイターニュースから
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPnTK035309920100120
亀井金融担当相と白川日銀総裁が中小企業めぐり議論、月例経済報告関係閣僚会議で
あまりにもアレな話なので記事をだいぶ引用しちゃいます。どうもすいません。
『津村政務官によると、亀井担当相が白川総裁に対して「中小企業の資金需要はどうか」と質問。これに対して、白川総裁は「売上が急に落ちて資金繰りを苦しくしている状態だ。一昨年来の緊急保証制度によってとりあえず金融機関から資金を受ける形で、いったん上がった倒産リスクは、その後は比較的抑えられている」と説明した。』
そうですな。
『この説明に対し、亀井担当相は「そういうことを聞いているのではない。中小企業の設備投資意欲はどうなっているのか。新たな資金需要はあるのか。中小企業の設備投資意欲はなお極端に低いのではないか。そういうことを全体的に聞いているのだ」とさらに質問。白川総裁は「ご指摘の通りで、設備資金は全体としても弱いが、特に中小企業の資金需要は弱い」と答えた。』
それもそうですね。
『亀井担当相は「こうした中小企業の厳しさが日本経済全体の悲観的な見方につながっているのではないか。それとも、大企業が大丈夫だが、中小企業はもう構わないということなのか。そのあたりはどうなんだ」と白川総裁に迫り、これに対して、白川総裁は「中小企業には注目している」と中小企業の軽視を否定した上で、「ただ、新興国経済が非常に強いという話の中で、これを直接享受するのは大企業であったり、特に製造業ということになると思う。中小企業が経済を中心となって引っ張っていくという高度経済成長のときのような姿とは少し違うかもしれない」と答えたという。』
・・・・えーっと、で日銀に何をしろと井脇ノブ子じゃなかった亀井センセイは仰せなのかさっぱり判らんのですが、中小企業の設備投資意欲が弱いのがケシカランとか日銀に言うのじゃなくて、それは経産省やら(銀行の貸出態度を変えるという話だったら)金融庁のお仕事ではないかと存じますが。
何かね、もうとりあえず日銀を空爆しておけば経済無策(いや一応何かビジョンみたいなのはあるけど、あれのどこがどう成長戦略??という感じで、総花的に並んでいる施策を全部実行したら成長力が更に低下するような話ではないかね)のツケ回しを日銀に一部は持っていけるという点で政治的なセンスが素晴らしい発言である事は間違い無かろうという所でございまして、さすがは井脇センセイだと感心することしきりのあたくしでございました(棒読み)。
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2010/01/14
○足元にお金がだいぶ溜まっているようで
昨日は毎度お馴染みの3か月TB入札。前回は年初1発目という事もあったのかまあ普通の入札になって平均落札と最低落札が0.01銭(利回りで0.1233/0.1237)の差だったのですが、今回は平均落札が0.1223%と前回よりもちゃっかり強くなってテールと0.05銭離れたと思ったら不明玉2兆近くだわショートカバーだか何だか知らんが0.12%までしっかり買われるわということで、まあ投資家のニーズが割と確りありましたねという感じです。0.125%じゃないと買わないとかセコイ事を言い続けて結局上を踏むことなる欲張りさんプギャーって感じですな。まあ、特に資金の所ってゆーのは普段は細かい事をうだうだ言っていても、「潰さないといけないキャッシュ」というのが出てくるといきなりそれを踏み潰してしまうの巻になりますし、そもそも短期資金取引って投資対象のターンオーバーも短いですから(一番短いのは翌日物ですからね!)長期債の長期投資みたいにじっくりと利回り上昇チャンスを待って押し目買いなどという技が使えない事もあるので、中々その辺の間合いの取り方はビミョーだったりしますな。
で、その最近の流れなんですが、どうも年初になってCPレートが微妙に下がって、既にたいがいに低いTB利回りよりも更に低かったりする現象は継続するわ、銘柄間の格差が益々無くなってきて「とりあえずa-1格付けのCP」と名前が付いていれば同じような利回りになっちゃう(というのは典型的な市場機能喪失状態ですが)とか、まあ何かキャッシュを潰したい人がそこかしこにいるんだろうなあという感じはしておりましたが、昨日のTB入札でその辺りがしっかりと出てきましたなという感じですかね。もうちょっと引っ張るかと思ったけどあっさりキャッシュ潰しパワー炸裂しちゃいましたな。
んでもって、昨日はスポットが15日で今回は積み最終だけど積み初日にも掛かる週末というGCの主要な資金出し手が資金を出し渋る言い訳がある日だったのですが、朝いちのスポネ国債買現先オペをしらっと連日の減額となりやがりまして、足切りレートも0.11%になったもんですから、GCレート上がる流れになり「また微妙にGCを下げ切らないオペを」と思っていましたが、それでも結局はGCは普通に0.11%とかになったようで、さすがに当座預金残高を15兆円ペースで積み上げてきた効果が徐々に効いてきたのかなあとか思うのでありますが、次の積み期間に来週から(正確には今週土曜日から)入りますので、そこでのGC動向とかも勝手に注目しております。
まあ何となくのイメージですが、当座預金残高は積み上げるものの、オペのタームは短いのが多い(昨日の共通担保も14日スタートとか微妙に要らないスタートで25日足という比較的使いやすいのを打ってみたり(20日エンドはちょっと)気を使ってるんだか使ってないんだか良く判らん、というか多分あまり気を使って無さそうなオペが続くので)ので、まあショートファンディング状態は継続するという感じのようですな。ただまあオペのテクニックみたいな話になっちゃうような気がしますが、実際問題として少し長めのタームの共通担保を安定的に打った方が「少ないオペでもレートが安定しやすくなる」とは思う(つまりスポネの買現先を今みたいに出し入れしなくても良くなる)のですが、短期村だけじゃなくて市場一般向けのアピールという点を考えた場合には、当座預金残高の数値自体をある程度積み上げた方が判りやすく(GCレートがどうしたとかって5bpでもぶれれば別ですが、長期債の世界の人でもそんなに細かくは気にしないっしょ)なるので、そーゆー意味では「当座預金残高を積みつつオペを実施」という事を優先するとなると、どうしてもショートファンディングちっくなオペになっちゃうのかも知れませんね。
#またマニア話になってしまったよorz
○FRB最高益関連続き
昨日FRBが最高益でどうのこうのという書き物をしている時に書き忘れたのですが、そのニュースを報道してた某経済ニュース専門番組様に出ていたコメンテーターズ(なので当然市場の関係者ね)が「金融危機対策が効果を発揮したという証拠ですね」とか「??????」なコメントをしていて悪態を書こうと思ったのですが、書き忘れた(別の書き方したけど)ので念の為。
えーっとですな、FRBって別に購入した債券を時価評価している訳ではない(というか主要国の中央銀行は別に金融政策でトレーディングをしている訳ではない(ジャファール総裁のマレーシア中銀とか古き悪事例はありゃ特殊事案ね^^)ので、今般の最高益っていうのは「安い所で買ったから買ったものが儲かった」というような種類の話ではなく、単に実質ゼロ金利でファンディングした金で高利物の証券を買ったからキャリーで収益が出ただけの話ですから。いやまあBOEみたいに買ったものを本当に売り飛ばして儲かったというのなら本当の実現益ですからそれはそれで別問題なのですけどね。
いやまあ、昨日は本職と思われる方がそんな説明をどこぞの専門番組でコメントしてたのがちょっと何だかなあという感じだったので敢えてツッコミなのでありました(^^)。
○1999年4月9日の金融政策決定会合議事録ネタリターンズ
過去の関連駄文
http://www.h5.dion.ne.jp/~bond7743/seisakugijiroku.html
今回は速水総裁の発言から。発言は議事録本文75ページからなのですが、まさに先般の「中長期的な物価安定の理解の明確化」に繋がる論点についてとか、財政ファイナンス問題に関してとかの話をしていた部分がありましたので、発言の最後の方を先に引用します。単に時間の都合で今日はちょっとだけ引用ですというのもあるのですが(汗)。
本文77ページからです。
『一方、デフレ懸念があるならば、日本銀行は一段の緩和を行わないのかという論点についても、そもそも一段の金融緩和の余地が残されているのかという本質的な問題に関わってくる。つまり、金利の引き下げ余地がほとんどなくても、何か量的なターゲットを持つようになれば、本当に追加的な金融緩和の余地を作り出すことができるのか、その場合、際限のない財政赤字のマネタイゼーションに繋がるリスクはないのか、といった点である。』
暫定的にとか言っておっぱじめた事が延々と続くのが日本の仕様でもありますので、ここの論点ってやはりなおざりにしない方が良いと思うのであったりします。
『そして、この財政赤字のマネタイゼーションの問題を物価安定の観点から理解しようとすると、目先のデフレ懸念を払拭するためには、将来のインフレリスクをためこんでいくリスクがある。そうしたリスクを内包する政策であっても、次々に行なっていって良いのかという厄介な論点をはらんでいる。』
ふむふむ。
『金融政策は打ち尽くしたというイメージを与えないためにも、量的なターゲットを設けるべきではないかという考え方もあるかもしれない。しかし、私はやれることとやれないこと、あるいはやってはいけないことを整理したうえで、仮に現時点で対外的に分かりやすいメッセージをより明確に伝えるべきであるのであれば、そのメッセージは我々が経済情勢をどう判断しているかに関する詳しい説明とともに、デフレ懸念の払拭に向けて日本銀行としてやるべきことは全て行っている、あるいはほとんど行っていることに重点を置くものであると考えている。そうすることが、わが国全体の経済政策を考えるうえで、地に足のついた議論を促すことに資するのではないか。』
経済情勢をどう判断しているかに関する説明とデフレ懸念の払拭という話のセットというのはまさに「展望レポート」と「中長期的な物価安定の理解」のセットと同じ話でありますな。
で、そこまでは良いのですが、「日本銀行としてやるべきことは全て行っている、あるいはほとんど行っていることに重点を置く」という結果として、「日銀は引き締めバイアス」という認識が世間一般に広がってしまうのもこれまた困ったちゃんな所で、金利市場の人達だけが理解すれば金融政策そのもの問題無いという話かというと、期待に働きかけるとかいう論点を考えるとこれまた不十分じゃないのという気もするのであります。難しい所ではありますけどね。
ところで、この時期っていうのは「デフレ懸念の払拭に向けて」という言い方で金融緩和政策を継続していくという話でしたが、現在はデフレ懸念どころかデフレな訳でございまして(−−;)誠に遺憾の極みであると存じますという所でしょう。
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2010/01/13
○とりあえず材料一段落のようで
米国様の雇用統計が弱いんだか強いんだかよく判らん内容(人のレポート見ると書いてる人によって評価が微妙に違う)で、米国の金利上昇っぽい動きが一段落。日本を見ますと菅直人先生のオモシロ発言でちょっと盛り上がったのですが、週末の内閣支持率調査を見るとこれがちゃっかり横ばいとなりまして、とりあえず政権がおかしくなってどうのこうのというネタも一段落ちゅう感じ。
今月は決定会合もFOMCも月末週に実施されるので金融政策ネタでどうのこうのというのにも時間が少々ありますし、とりあえず何か一通りの目先的なネタが片付いてしまいましたので、まあ様子見地蔵をしている言い訳も減りましたなあ(ニヤニヤ)という感は致しますが、何せまだ1月でございますので時間がある(これが2月末とか3月とかだと素敵な事になるのですが)つー所なんでしょうかね、よー知らんが。
昨日は昨日で前場何かよーわからんが先物がホイホイと上昇して、「???」と思ってたら後場になったらホイホイと下がって結局1毛強になってましたが、結局その間何があったのかよー判らん(先物の出来高は月曜にしてはあったような気がするが)という謎展開でもございましたが、まあガイジンさんだか何だか知りませんけれども、先物とかスワップとか振り回している人も一旦目先的に戻す人とか淡々とポジション仕込んでいる人とかいるんですかねえという所っすかね。
とりあえず次の相場ネタが出るまでは淡々と平準買いと入札をこなしながらという感じなんでしょうかね。まあ先週の様子見大会の中での下げが動きましたなあって感じでしたので益々膠着っぽい印象になっているのかも知れませんけどね。
○ほほう最高益とな
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-13303220100112
米FRBの09年純利益・国庫納付額が過去最高、債券購入や融資拡大で
FRBのリリースは多分この辺。
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/other/20100112a.htm
『For immediate release
The Federal Reserve Board on Tuesday announced preliminary unaudited results
indicating that the Reserve Banks provided for payments of approximately
$46.1 billion of their estimated 2009 net income of $52.1 billion to the
U.S. Treasury. This represents a $14.4 billion increase over the 2008 results
($31.7 billion of $35.5 billion of net income). The increase was primarily
due to increased earnings on securities holdings during 2009.』
いやああれだけイールドカーブが立ってると期間収益もでかいですわなとイールドカーブが寝っ放しで長短スプレッドが米国様から比較したら鼻糞のようなもんという日本から見ると裏山歯科としか申し上げようがございませんですな。
というのは良いのですが、そんだけ期間収益が出ているということは、そんだけ長い物を買っているという素敵な状況でもある訳でして、出口政策とか言って金利が上がる話になって来ると一転してビューテホーな状態になるのでしょうなあと今から楽しみに(何と言う野次馬状態)するあたくしがここにいるのでありました。
と、全部雑談でしたな、どうもすいませんm(__)m
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2010/01/12
○これじゃドリフのコント状態ですな(菅直人先生関連)
菅財務大臣堂々の為替言及に関連して金曜は鳩山さんと何故か仙石さんが火消しコメントをしておりましたのはご案内の通り。ブルームバーグニュースから引用。
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=newsarchive&sid=aorP3IaD5AC4
鳩山首相:為替の相場水準に政府が言及すべきでない(Update3)
『1月8日(ブルームバーグ):鳩山由紀夫首相は8日朝、菅直人副総理兼財務相が円ドル相場の水準などに言及したことについて聞かれ、為替の急激な変動は良くないが政府が言及すべきではないとの認識を示した。公邸前で記者団に語った。』
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=newsarchive&sid=aeP7gFBC.3jw
仙谷国家戦略相:影響ある立場で言わない方がよい−為替(Update1)
『1月8日(ブルームバーグ):仙谷由人国家戦略相兼行政刷新相は8日午前の閣議後会見で、菅直人副総理兼財務相が前日の会見で円相場の水準に言及したことについて「特に経済財政金融にある種の影響を与えかねないポジションにあればあるほど、あまりレートの高い、安いを言わない方がよいというのが持論だ」と語った。』
何と申しますか揃って火消し発言という感じですが、何か流れがドリフのコントみたいでして、あっちに走って行ったらハリセンで頭はたかれて上からタライが落ちてくるし、反対側に走って行ったら今度は小麦粉が降りかかるみたいな様式美すら感じてしまうのであります。
ということでですな、まあ菅さんは前も円高良くない発言をしていましたし、そもそも「デフレ宣言」の張本人でもありますからして、円高よりは円安の方が良いという話をするのは従来の政策ロジックからしたら特におかしくはない(というか言わない方が不思議な位)のですが(90円台半ばだのもうちょっと円安が良いだの、具体的な水準に言及してサービス発言をしたのはトンマではありましたが・・・・)、翌日になって総理大臣が副総理の発言に火消し作業をして回るというビューテホーな状況というのは、要するに菅財務大臣の発言が特に事前の根回しも下ネゴも無くホイホイと出てきた発言なのではないかと思わせてくれます。
つーかですな、報道のされ方を見てると、「こりゃ米国様辺りから何か言われたんじゃネーノ」くらいの邪推をしたくなってしまう次第でありまして(^^)、菅さんの円安支持それ自体は別に悪いことではない(他の主要国だって最近は自国通貨安の輸出に対する好影響に関して金融政策決定会合の議事要旨とかで言及してる事ですし、別に円安支持をしても良い話、問題はその出し方をスマートにって事でしょ)と思うのですが、まあ全然事前の打ち合わせもへったくれも無かったでござるの巻という所なのでしょう。あっはっは。
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=newsarchive&sid=auSIGVev.aQc
財務相:「従来より重い立場の自覚必要」−為替発言で釈明 (Update2)
『1月8日(ブルームバーグ):「従来よりも重い立場にあるという自覚が必要だとあらためて思った」−。菅直人副総理兼財務相は8日午前の閣議後会見で、自らの為替水準に関する発言の影響で前日から円が急落したことについて「経済界にマイナスを与えることになったとは思っていない」と強気の姿勢を示しながらも、為替介入の権限を持つ自らの発言の重さを認めた上で、反省の弁を述べた。』
ということですが、ご案内の通りそんなに反省してなかったりするのでして(^^)。
『菅氏は8日午前の会見で、「為替は基本的に市場が決めること」とした上で、前日の為替発言について、為替相場が「大きく変わってくると、景気にいろいろな影響を与えることが同時に起こり得る。経済界の期待も十分勘案しなければならない立場にあるということで申し上げた」と釈明した。』
『ただ、市場に影響を与えたことへの責任を問われると、「経済界の多くの意向がどうあるかを申し上げた。経済界の皆さんにとっては、何か大きなマイナスを与えることになったとは思っていない」と強調した。』
(;∀;)イイハナシダナー
『一方、菅氏は一般論と前置きした上で、「いざという時には為替に対して何らかの行動をとるということも、財務大臣の権能の中に入っている。そういう権能があるということも自覚しなければならない」と言明。さらに、藤井裕久前財務相が就任当初に円高容認とも受け取れる発言をし、市場に混乱を招いた前例にも触れ、「発言には責任を感じなければならない」と語った。』
(;∀;)イイハナシダナー
・・・ということで、日本総売りにならない程度に円安ということで宜しくお願い致したいと存じますが(^^)、副総理発言を総理が速攻火消しするという素敵な展開を海外投資家はどう見るのでしょうかね(ニヤニヤ)。まあ暫くは菅さんからは楽しい不規則発言が飛び出して楽しませてくれるでしょう。
○12月FOMC議事要旨から少々
12月15日から16日のFOMC議事要旨から少々であります。
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20091216.htm
と言いましても、細々と読んだのは後半の委員による議論の部分(前半のスタッフによる経済状況や金融環境の説明部分は流して読むのでありました)ですので、まあ手抜きは手抜きなのですが。
で、これを前回11月FOMC議事要旨と比較するとまあ面白そうなのですが、残念ながらそこまで細かくは見ていない(次回以降もうちょっと細かく見るかもです)のが惜しい(読んで赤ペン入れたそばからホイホイ捨ててたもんで、前回の細かく読んだ紙が手元に無いのだ、汗)のでそこは軽く。
『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』以下の所なんですけど、まず最初の部分では、景気の回復に関しての全体観は一応トーンが強くなっているような気がします。
『In their discussion of the economic situation and outlook, meeting participants
agreed that the incoming data and information received from business contacts
suggested that economic growth was strengthening in the fourth quarter,
that firms were reducing payrolls at a less rapid pace, and that downside
risks to the outlook for economic growth had diminished a bit further.
』(12月)
『In the meeting participants' discussion of the economic situation and
outlook, they agreed that the incoming data and information received from
business contacts suggested that economic activity was picking up as anticipated,
with output continuing to expand in the fourth quarter. 』(11月)
つーことで、回復はより強くなっているという話が最初の全体観にあるのですけれども、回復はしているものの、インフレや雇用に関しては上に振れるような見通しにはなっていないというのが大勢の意見で、生産と雇用の回復が従来の景気回復より遅れるだろうというような話をしてるよいうに見えます。
『Participants expected the economic recovery to continue, but, consistent
with experience following previous financial crises, most anticipated that
the pickup in output and employment growth would be rather slow relative
to past recoveries from deep recessions. A moderate pace of expansion would
imply slow improvement in the labor market next year, with unemployment
declining only gradually. Participants agreed that underlying inflation
currently was subdued and was likely to remain so for some time. 』
ということで、インフレ圧力も抑制されているという話ですが、一部の委員はインフレリスクが向こう2年程度の期間を見た場合に拡大する圧力がある可能性を示したとこの次に書かれていましたです。
で、そのインフレに関する所もこれまた前回と同じ指摘をしているのですが、とりあえず引き続きファイティングポーズだけは見せているという事で引用。
『Most participants anticipated that substantial slack in labor and product
markets, along with well-anchored inflation expectations, would keep inflation
subdued in the near term, although they had differing views as to the relative
importance of those two factors. The decelerations in wages and unit labor
costs this year, and the accompanying deceleration in marginal costs, were
cited as factors putting downward pressure on inflation.』
『Moreover, anecdotal evidence suggested that most firms had little ability
to raise their prices in the current economic environment. Some participants
noted, however, that rising prices of oil and other commodities, along
with increases in import prices, could boost inflation pressures going
forward. Overall, many participants viewed the risks to their inflation
outlooks as being roughly balanced.』
というのが全体観でまあリスクはバランスなのですが、これまた毎度説明されているように、雇用環境やら企業の価格政策態度などが足を引っ張って物価の上昇はリスク少ないですねという話。
『Some saw inflation risks as tilted to the downside, reflecting the quite
elevated level of economic slack and the possibility that inflation expectations
could begin to decline in response to the low level of actual inflation.』
これまた毎度の指摘ですが、需給ギャップが大きい状況が継続した場合に従来のインフレ期待に下向き方向への変化があるのではないかという指摘ですよね。
『But others felt that inflation risks were tilted to the upside, particularly
in the medium term, because of the possibility that inflation expectations
could rise as a result of the public's concerns about extraordinary monetary
policy stimulus and large federal budget deficits.』
ただ、さっきのがsomeでこっちがothersなので、基本的にはFEDの拡大しまくっているバランスシートと米国財政赤字問題がインフレ期待を高める方向へのリスクを考えている人が多いのでしょうかね。まあこれまた11月と同じ表現ですが。
『Moreover, a few participants noted that banks might seek, as the economy
improves, to reduce their excess reserves quickly and substantially by
purchasing securities or by easing credit standards and expanding their
lending. A rapid shift, if not offset by Federal Reserve actions, could
give excessive impetus to spending and potentially result in expected and
actual inflation higher than would be consistent with price stability.』
ということで、金融緩和政策の行き過ぎによる資産価格や貸出のバブル的な伸びによってインフレが拡大するリスクを一部の委員が指摘というのも今回も載せています。つまり・・・
『To keep inflation expectations anchored, all participants agreed that
monetary policy would need to be responsive to any significant improvement
or worsening in the economic outlook and that the Federal Reserve would
need to continue to clearly communicate its ability and intent to begin
withdrawing monetary policy accommodation at the appropriate time and pace.』
というのが毎度の結論なのですけれども、こちとら米国人じゃないからよー判らんのですけれども、金融緩和政策のやり過ぎに関する部分を相変わらず指摘し続けているのは、本当にマインド(物理的にインフレへに影響するというよりはマインド経由で)にこの辺りの話が効いているのか、それとも何か政治的配慮があるのかというのがあたくし的には少々興味がある所でありまする。
後の部分は引用するかもしれないし引用しないかもしれません(^^)。そう突拍子も無く話が変わった部分は見当たらなかったような気がしますが、まあ念の為再度確認してみます。
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2010/01/08
お題「就任早々から盛り上がって参りました!/その他少々」
いやあ今週は長かったですなあ。
○さすがは菅直人クオリティ
就任記者会見で早速色々とやって下さるとはさすが菅直人。
会見要旨のような記事
http://jp.reuters.com/article/economicIndicatorsAndComments/idJPnTK034917520100107
UPDATE2: 財政再建は需要拡大政策が基本、もう少し円安がいい=菅財務相
市場の動きとかの記事
http://jp.reuters.com/article/politicsNews/idJPJAPAN-13244520100107?sp=true
もう少し円安がいい、財政再建は需要拡大政策が基本=菅財務相
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=newsarchive&sid=aT1HFJmLidoI
東京外為:円が急落、菅新財務相の発言を受けて午後の上昇幅打ち消す
この発言のヘッドラインが出た所で為替が飛んで(ドル円で瞬間50銭くらい飛んだ)そっちに反応したというのもありますが、最初の所にございます
『菅氏は予算編成の過程について「今、緊縮財政にしていいとは一度も思わなかったし、そのような主張はしてこなかった。ある程度、景気刺激的な財政をとるべきと多くの内閣のメンバーも考えていた」と景気への配慮と説明。』
(ロイター記事最初のURLから)
というのが、ロイター日本語版がヘッドラインで「緊縮財政にしていいとは一度も思わなかった」というようなオシャレ発言として報道したのもありまして、債券先物は下落致しまして、結局東証イブニングセッションでは15時引けの138.91円から15銭下がって138.76円まで下落しやがるという素敵な流れになりました。いやあお洒落お洒落。
いやもうツッコミどころの多い素敵な会見で、これはまた就任早々から早速市場が動いてくれましたので、今後はメディア的にもオイシイ大臣という事になりますから、益々不規則発言が出て来て各市場にノイズを与えてくれそうなお話になって参りました。いやまあ円安になるのはそれはそれで結構な話なのですけれどもね(^^)。
つーことでこの辺から。
http://jp.reuters.com/article/economicIndicatorsAndComments/idJPnTK034917520100107
『為替動向については「うかつに答えると、とんでもないことになる」としながら、「経済界からは(1ドル)90円台半ばあたりが貿易の関係で適切との見方が多い」と指摘。』
・・・・・どう見てもうかつに答えています本当にありがとうございました。
まずですな、為替問題というのは基本的に露骨に水準の話をしない方が吉だと思うという所はさておいて、まあ国際政治的に色々と微妙な問題にあたりまして、どう見ても米国や欧州の通貨当局と握りが出来ていない中で堂々この露骨にも程がある為替介入発言をしますと、今後国際金融問題とかの話になった時に(ただでなくさえ金融担当大臣があの人だというのに)日本がハブられてしまう惧れが益々高くなるのでありますが、時あたかも新たな金融市場やら金融機関経営に関する管理監督態勢を構築しようというような話を国際的に行っている訳でありまして、そーゆー時にドシロートの横紙破りが代表となりますと、そっちでも日本が相手にされない中勝手に欧米の都合のよいルールがまたしても構築されてしまうでござるの巻になってしまうんじゃねえのかね。とそっちの方がとっても懸念されるあたくしは心配のし過ぎですかそうですか。
あとね、水準が90円台半ばあたりって随分としょぼい水準で、どうせ言うなら120円位じゃねえの(その数字に特に根拠は無いがこの前の安値水準をイメージ)と思いますが、どっちにしても具体的水準を言うと市場がそれこそアタックして来るだけですので、まあ数字は言わない方がとは思いますけど。
『菅氏は予算編成の過程について「今、緊縮財政にしていいとは一度も思わなかったし、そのような主張はしてこなかった。ある程度、景気刺激的な財政をとるべきと多くの内閣のメンバーも考えていた」と景気への配慮と説明。』
この発言が前後を切り取られて「緊縮財政は良くない」という発言にされている(発言の趣旨は一般的な緊縮財政に関する話では無くて現在の景気状況下における緊縮財政はどうかという話と思われるのでそう無茶な話ではないが)のが、まあこの手の発言をすると切り取られて市場が反応するマーケットクオリティに対する無理解(あの「マーケットアイミーティング」だか何だか知らんが、謎のヒアリング大会は何だったんだと小一時間)な所ですし、まあ財務省の中の人がご説明する間もなくやりましたなあという感じですな。
でもって、まあそう無茶な発言では無いとは言いましても、藤井財務大臣の時には(実態としては恒久財源に使えないものを無理無理繰りまわしているので2011年度予算になったら話がハチャメチャになりそうですがそれはともかく)一応何とか新規財源債44兆円という事で何となく財政規律っぽい流れと債券市場が一応理解して動いておった次第ですが、まあ早速こう来ましたかという感じですな。
いやまあ今申し上げたように、どうせ2011年度予算編成になったら話はエライコッチャになるというのは市場の中の人たちも認識していても、まあ実際問題としてそれが具体化するのは今年の年末ですし、実際に国債が出てくるのは更に先の話だという事を勘案しますと、目先の相場的にそこまで気にしてたら収益機会を逸する(何も買わないというのはそれだけ利息負けしますからね^^)し、もしかしたら参議院選挙が終わって強力政権になったら財政健全化してくれるかもしれないしとか、まあそんなこんなの見方がありますが、こーゆーのが出てしまうと、その財政云々の話が少し前倒しになって来る惧れがございますなっちゅうことで。
あと、まあシナリオドリブンでポジションを仕掛けるストーリーとして今まさに使いやすいネタは「主要国の財政破綻シナリオ」というのが最も描きやすい所にわざわざネタ投下というのが中々お洒落な所であります。いやまあそれで円安が進行してデフレ脱却するなら長期金利上昇しても無問題(短期的にはそうなのですが、長期的に見た場合にそれは日本売りになって結局日本人が誰も得しないような気がするという話はありますけどね)という議論はあるかもしれませんけどね(^^)。
でもまあ市場が暴れると直ぐに色々な発言が飛び出す現政権クオリティからすると、「財政懸念で長期金利が上昇!」とか言われると急に発言が変わって「財政規律が必要ないと言った事は無い」とか言い出すに100万カイワレ。
『景気の先行きには依然として不透明感が広がっているが、「金融政策との連動を含め、景気の二番底を回避したい」と日銀の金融政策への期待感も表明した。』
えーっと、確か武藤副総裁の総裁就任に反対した時の理由は「財金分離」じゃなかったでしたっけ????????????
しかし金融政策との連動ってまたてめえは何もしないで日銀にクレクレ攻撃ですかってえ所で、とんだ抱きつき心中ヤローですなという所でございます。いやまあこれでどどーんと単独介入でもするんだったらそれはそれでオモロイですけど、何の握りもない中で為替市場の水準発言しちゃったから、逆に介入をする為のハードルが上がってしまったような気がする。
とまあそういうことで、早速不規則発言で楽しませてくれました菅直人大先生でございますが、メディア的にオイシイ財務大臣登場ということで、益々発言がクローズアップされて相場的には楽しませてくれる(無用な撹乱要因とも言うが)に100お遍路でございます。
#あの先生の表情から出る微妙な幸せオーラを見ると故ノムたんを思い出すのは私だけ?
○その他少々
・BOEは据え置き
http://www.bankofengland.co.uk/publications/news/2010/001.htm
『The Committee expects the announced programme to take another month to
complete. The scale of the programme will be kept under review.』
んまあBOEのトップページにありますように、
Inflation Report Nov '09 Next due: 10 Feb '10
ということで、次回のインフレーションレポートが出て、今回の資産買入プログラムが終了する2月会合で延長決定という話でしょうけれども、12月のMPC議事要旨を見ますとまあ普通に延長するでしょうし、最近量的緩和の結果が微妙にマネタリー関連の数字に出ていないという議論もあるので増額とかしてもあまり違和感がないような気がするのは傍観者モードだからなのですけどね。(次回のMPCは2月4日)
(1月8日の夜追記:何かベンダー見たら量的緩和の買取なんちゃらは2月でオシマイみたいな意見が多いのね。なんかあたくしがほかのプログラムと勘違いしているような気もしますが、量的緩和の枠組み自体がこのタイミングでなくなるのかなあって素朴に思うのですが・・・出口は早い気が)
・これはこれは
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/fsc1001a.htm
ワークショップ「VaRの活用と留意点」を開催
『本ワークショップは、2007年以降の市場環境の急変や金融危機の経験を踏まえ、VaRの活用方法とその留意点を改めて議論し、リスク指標としてのVaRの利用可能性について、金融機関のリスク管理の技術的な側面から、経営上の活用の側面に至るまで、幅広く理解を深めることを目的としたものです。第1回は、午前の部に「市場急変時におけるVaRの活用」、午後の部に「VaRとストレステスト」を、第2回は「『定常性の仮定』の緩和とその活用」をテーマとしました。なお、第3回は「リスクと資本の管理」をテーマとする予定です。』
ということで、パワーポイントの香りが漂うプレゼン資料へのリンクが上記URL先にありますので、何となく雰囲気は分からんでもないという感じでございまする。まあグレートモデレーションだか何だかという中で、リスク管理の細かい計算モデルのようなものは恐ろしく精緻化されていきまして、そういう話にどうもついて行けない現場のトレーディング職人叩き上げで数学と聞くと尻に帆掛けて逃げ出すあたくしのようなアホウとしては、そんな細かい所を精緻化するよりストレステストの概念だよと思っておりましたので、まあ何となく嬉しいような嬉しくないようなお話ではあります。
そういやこの前どこかの掲示板かブログかすっかり忘れましたが、「年がら年じゅう「100年に1度の危機」とか言ってる金融屋ってどこのボジョレーヌーボーだよ」とかいう(正確な記述は忘れた^^)のがあって、妙にツボにはまったのを思い出すのでありました(^^)。
ま、だいたい企業が飛ぶような損失が出るのって、精緻なモデルで行う管理の外側にある斜め上の事態(普通は過大なポジションですよねえ)でありまして、そういう鼻が効くのが現場叩き上げ職人クオリティだとは思ってるのですけれども、多分それは自分勝手な思い込みなんでしょうな(−−;)。
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2010/01/07
○菅直人さんですかそうですか
藤井財務大臣辞任で後任が菅さん。というのが出たのが昨日の夜7時回っていたので市場がどう反応するのか今日にならないと正直よー判らんのですが、債券の売り材料なのか買い材料なのかとゆー話に一応頭の整理をしておくと・・・・
国家戦略担当相としての動きと言えば、一番アレだったのは「対策を何も打たないデフレ宣言」というお洒落な行為の印象があたくし的には強うございまして、まあどう見ても経済オンチです本当にありがとうございましたという感じでしょう。ということはこれがまたコインの表裏みたいな話ですが、経済オンチなので財務省ベースの動きを取ってくれるのではないかという可能性もありますし、逆に国家戦略相やってる時にも変てこりんな「市場の声を聞く」とか言ってどう見てもやってみただけで全然聞いた意味ねーだろというような動きをしてた位ですので、独自色みたいな物を出そうとしてカオスになる可能性もありますしと、まあ出てみないと分からんですな。
それからまあ財政健全化問題とか、為替市場とかの問題を考えた場合には、債券市場的に藤井さんよりも金利低下しやすい人は居なかったので、そっち的には(わざわざ売るかは兎も角)買い材料一つ減りましたっすかねえ位。問題の財政健全化云々ですけれども、菅さんは財政健全化への思い入れはなさそう(というか何も考えてなさそう)なので、あとはこれまた菅さんが(小沢さんあたりに対する対抗意識から)どういう動きをしてくるのかがこれまた読みにくいですかねえという所だと。
まあ菅さんは経済閣僚というよりは政局の人だと思われますので、どう出てくるのかは正直よーわからんですが、今の内閣が大物閣僚揃いなので、予算を総括する部門の大臣が軽量級だとキツかったと思いますので、その点では重量級大臣で宜しかったのではないでしょうかね。よー知らんが。
あとですな、「菅さんに安定感」と言われますと、まあ確かに大物だから安定感あるんでしょうけれども、未納3兄弟に示されるように、どうも「行動力があって良い動き(薬害エイズ問題とか)もするのですが、オッチョコチョイで台無しにする」のが仕様のような気がしますけどどうっすかね(^^)。
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2010/01/06
○植田委員の指摘(その2):政策スタンスに対する強い決意を示すことに関して
つーことで昨日の続きですが、植田委員の発言順からすると次のネタが先にあるのですが、書き物の都合上昨日の続きと書きつつちょっとだけ発言の中の順序で後にある部分を先に引用します。まあモノが議事録というそのものズバリですので、あまり恣意的に順番変えたり割愛するのは良くないと思ってますがどうもすいません。
ということで、議事録本文72ページの真ん中辺りから。
『その点を申し上げた上で、前回お話した点とかなり重なるが、山口副総裁が言われたことと関係があるため、若干敷衍して私の意見を再度申し上げてみたい。すなわち、コールレートの最近の低下幅と比べると、色々な金融資産の価格、特にターム物金利の低下幅等は非常に大きいが、これをどう解釈するかという問題がある。量的緩和等への期待も織り込まれているのではないかという話があったが、別の角度からもある程度説明できるのではないか。』
その点というのは後で引用しますが、中原委員が指摘した実質金利とマネーの量が対応するという議論に対する反論部分です。
『つまり、金融政策のその他金利への影響はコールレートの水準そのものよりは、現在から将来にかけての金融政策のスタンスについてマーケットがいかなるパーセプションを持つかで決まってくると思う。』
ということで、後に時間軸効果と言われる件についての論点です(^^)。
『今回の場合も25bpからゼロに下がった変化幅が重要だったというよりは、ゼロにすることがもたらす何らかの決意やコミットメントをマーケットが感じ取り、それがオーバーナイト市場以外の市場にも波及したと解釈できる。すなわち、かなりの期間に亘りオーバーナイト金利がゼロの水準を続けるという決意をみせているのではないかというところに反応し、それがターム物等、イールドカーブの長目のところに徐々に波及していったプロセスであると解釈できるのではないか。』
10年以上経った今にしてみればこの結論なんでしょうなと思われる次第で。
『その意味では、量的緩和が目指しているものと同様の効果を、そうした決意をマーケットが感じ取ってくれたことにより作り出しているように思われる。量を出すことが重要というよりは、強いコミットメントを通じて金融緩和の強い姿勢をマーケットに伝えるというところに力点がある。』
バーナンキ議長の実施した各種買取に関しても、個別にどれがどういう風に効いたのかと言う話になると財務省証券買入のように最初に言ってた狙いに関しては全然効いていないけれども、恐らく「強いコミットメントを通じて金融緩和の強い姿勢をマーケットに伝える」という点での効果は思いっきりあったのではないかと見られる次第でありまして、まさにこの辺りの指摘に通じるものがありますな。
『これに関してテクニカルになるが、注意すべき点はオーバーナイト市場に限れば金利の低下余地はなくなっており、変動余地があるとすれば上向きの方向である。従って、他の手段による緩和を除けば、金融政策の将来像について若干でも不確実性が出てくると、金利を上げる方向でマーケットは受け取る。そうした不確実性が増大すれば、オーバーナイトをゼロに据え置いてもターム物金利は上昇を始める可能性があることになる。勿論、景気が良くなる中でそうした状況が起こるのは自然なことであるが、そうでない時に不確実性が出てくることは極力避けたい。』
これはまあ匙加減が難しい話なのですが、その後の量的緩和解除に向けた動きの中で、いわゆる地均しのようなものが始まった時に植田さんはその動きに対しては批判的な発言をしてまして、まあその辺りあたくしも以前にご紹介したのがこの辺りにございましたです。ご参考までに。
http://www.h5.dion.ne.jp/~bond7743/hatsugenueda.html#ueda051031
『従って、山口副総裁が言われたように、何らかの形でオーバーナイトゼロの政策に強いコミットメントを持っていることをマーケット等に表明することは私も共感を覚える。我々の経済に対する見方は経済月報に示されるのであり、月報の中でデフレリスクがなくなったとか、持続的経済成長のパスに乗り始めたという見方が示されるまでは続けると表明すれば、非常に強いコミットメントになると思う。あるいは、総裁の記者会見等で表明して頂くという手もある。とにかく三木委員が指摘したような副作用も我々としては認識しつつ、オーバーナイトゼロの政策を当面続けることを追加的に表明してみることは賛成である。』
ただまあ残念なことに、と言うべきなのかどうか知りませんが、金融政策に関する話って金融市場でもよく伝わらない面が多々ございまして、先般の日銀の「中長期的な物価安定の理解の明確化」みたいなもんを出さないと話が始まらないという困ったちゃんの事態もござんすが、まあこれらの「見せ方」に関しては日本だけではなく他の主要国でも悩んでいる所でしょうな。
○植田委員の指摘と中原委員の反論・・・なのですけど・・・・
で、先程飛ばした部分なのですけれども、植田さんと中原さんが論争をしていると言うと美しいのですが・・・・・
議事録本文72ページの頭の辺りから引用。
『中原委員の先程の意見の中で一つ賛成できない点がある。それは名目金利がゼロになった後は実質金利とマネーの量が対応するという議論である。』
中原さんの議論は詳しくは以前ご紹介しましたので最初方のリンク先をご参照くださいませ。
『これは極めて難しい議論をされるのであれば別であるが、普通に考えられる範囲では初歩的な誤りである。』
初歩的な誤りキタコレ(・∀・)
『すなわち、期待インフレ率が上昇し、実質金利が低下し、IS曲線を通じて景気がよくなり、それが貨幣需要を押上げ、マネーサプライを増やしていくルートがあるかもしれない。しかし、いわゆるLM曲線に金融政策が直接働きかける場合は、量と金利の関係は量と名目金利の関係である。別に表現すれば、仮に何らかの理由で期待インフレ率が上がったとすると、名目金利は後藤委員も言われたように、場合によっては上昇する可能性があるし、せいぜい低下しないということである。債券等の名目金利が若干上昇する。』
中原委員はどうもマネーを出して実質金利を下げるというような話をしていたみたいなのですが、期待インフレ率が上昇した場合って当然ながら中長期の名目金利には上昇圧力が掛かる訳でありまして、「期待インフレ率を引き上げながら名目金利も下げる」というような虫の良い話というのは机の上での話では出来るのかも知れませんが、中々難しいんじゃねえのかというのはそれこそ先般実施したFRBの長期財務省証券絶賛大購入でも示されているんじゃねえのかと思われますがどうなのでしょうか。とは言え、期待インフレ率が上昇してくれりゃあ名目の金利が上がっても実は問題無い(実質が上がる訳ではない)のだからそれはそれで政策としては十分にアリエールな話だと思いますけど。
で、前半で引用した部分が続くのですが、この「初歩的な誤り」に中原さんが反論した部分が議事録本文74ページからございます。実はその前に藤原副総裁の発言がありまして、これはこれでまたネタになるのですが、そこは飛ばしまして植田VS中原の議論を引用。
『中原委員
植田委員に反論したい。一つは初歩的な誤りだと言われたが、それはそうかもしれないが、私はこの点についても世界的な金融論の先生と色々ディスカスして申し上げており、もし論争されるのであればその方々を紹介する。
植田委員
それはフェアーな議論ではない。中原委員の意見としてここで述べて頂きたい。
中原委員
納得しているから言っている訳である。
植田委員
そうであれば、私の言ったことに反論してもらいたい。
中原委員
IS曲線の影響など色々あるとは思う。ただ、ここで長々と言っても仕方ないが、私は若干違うということである。今回の緩和が何故効いたかといえば、2月12日がサプライズだったということと、2月25日以降に非常なスピードをもってアグレッシブに引き下げたことである。しかし、それは先ほど言われたように、日銀の意思とは離れてどこかでフェード・アウトしてくる危険性がある。私は現在のスタンスを続けていくと、仮に経済の実態が悪くなればそこで効かなくなると思う。』
・・・・最後は明らかに中原さん話を逸らしてフェードアウト状態になっておりまして、まあ中原さんも変に意地張らなくても良いのにという感じでして、別に政策論として中原さんは実質金利がどうのこうのという点に固執する必要は無い訳で、単に「より緩和効果のある政策手段を実施すべきである」という点での主張をすりゃ良かったのではないかと思うのですが。
ただまあその手段について中原さんはマネタリーベースやベースマネーに関する数値の部分に対する拘りが強かったので、話として噛み合わなかったんでしょうなあと思われる次第。この頃の議論って「短期金利の誘導水準がゼロ制約に引っ掛かってしまった後でより緩和効果を出す政策ツールがあるのかないのか、あるとすればどのような物か」という点で盛り上がっていたと見られます。
後知恵で議論を読めば色々と意地の悪いツッコミもできますけれども、まあそれよりは10年以上前にも現在の主要国での金融政策論議に通じる議論が行われていた事や、その内容を読むことができるという事を素直に喜ぶべきなのでしょうな。
#ということで、続きは次にネタの無い時または近日中に(^^)
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2010/01/05
お題「久々の虫干しネタで1999年4月9日の決定会合議事録です」
昨年の決定会合議事録シリーズなのは年初ネタなし状態だからだというのは仕様です。何せ前回このネタやったのが昨年8月でございましてですな(大汗)。
以前の決定会合議事録ネタはこちらに。
http://www.h5.dion.ne.jp/~bond7743/seisakugijiroku.html
で、決定会合議事録は日銀サイトのここにリンクがございます(PDF8Mとか平気であるので、当該議事録の直リンは控える)。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gijiroku/data/gjrk.htm
前回(去年の8月ですいませんが)引用した続きなのですが、この辺りの議論は10年経った現在になって読みますと中々味わいが深いものがあります。というか量的緩和だのマネーのどうのこうのだの、金融市場機能だのという話をまさにこの時もやっていたと思いますと、現在主要国の金融政策でああでもないこうでもないという話をしている議論に通じるものがございます。
○篠塚委員の指摘:ゼロ金利政策による市場の緊張緩和(なのかな?)
上記URLから1999年4月9日の議事録(この回は割とページ数が多く無くて議事録は93ページ立て)を見て頂くとしまして(高速インターネット回線じゃない人はPCが固まるのでご注意)、そちらの69ページから。
なお、こちらの議事録は議事録の紙ベースの物をスキャンしてPDF化した(と思われる)ものですので、引用と申しましてもあたくしが自力でタイプ打ちしたものなので、(一応確認しましたが)誤字脱字などがございましたらご勘弁賜りたく存じます。
では引用開始。
『篠塚委員
私は、これまでGDPのコアを形成している消費、設備投資に資金需要がない時に、資金を大量に供給しても実体経済への効果が不明であるという立場をとってきたが、ここにきて、ゼロ金利に誘導した結果、確かに小康状態にあるとみている。ただ、小康状態にはあるが、かなり不安定な状況であるとも思っている。』
ということで、資金需要が無い時に資金を供給して実体経済に波及するのか(そりゃ無限に出せばどこかで凄い影響が出てきますけれども、それこそ昨日ルワンダ中央銀行総裁日記ネタで紹介した服部正也さんの国会答弁関連じゃないですけど、政策実施において効率というものも考えないとって話でしょうな)という話ですが、公的資金注入とゼロ金利政策の影響について以下のように指摘しています。
『まず第一点は、公的資金7.5兆円が投入された結果についてである。数字で整理して漸く分かったが、3月30日時点で日本銀行から1.2兆円、農中から3.3兆円、外銀等から3兆円と預保に合計で7.5兆円入った。その7.5兆円の公的資金を受け入れた金融機関がどのように動いたのかであるが、3.8兆円とかなり大きい額がコール市場で運用されていた。準備預金や本行オペに流れたところは除くと、その他負債等の返済として投信、地銀等に2.6兆円流れていた。その2.6兆円のうち2兆円がオープン市場に流れ、残りの0.6兆円がまたコール市場に戻るというように、結局7.5兆円の公的資金からコール市場に3.8兆円、負債から0.6兆円と入ってきている。外銀は3兆預保に貸付けたが、外銀はコール市場から1.9兆円取っていた。農中は3.3兆円預保に貸付けたが、その際、コール市場から(空白)兆円取っていた。』(引用者追記:個別行の非公開係数のため、空白で公表されたものと思われます)
と、数字の話が多くて何ですが、公的資金注入と言いましてもじゃあ実際問題としてその間のキャッシュフローベースでの動きはどうだったのかという話でありますな。
『これまで日銀とインターバンクとの間で資金が往復していたところに、預保が入って資金が回るようになった、というイメージが出てきた。問題は、日銀がゼロ金利政策を採った結果、こうした事態が発生したことである。仮に、ゼロ金利でなければ、農中も外銀もこれ程大量には出せなかったであろう。私共は日本銀行が預保の必要資金の半分以上を受け持たなくてはならないと思い、非常にパニックになった時期があった。現在小康状態にあるにしても、預保の借入れ期限が来た時にはどうなるのかという問題が残る。外銀がいつまでもこうした資金運用を繰り返して行くのかどうか非常に不安定な材料である。現時点だけをとれば、これもゼロ金利によってもたらされたということができるが、非常に先行きが不安である。』
篠塚さんはご存じのように(って最近の人は知らんか)ゼロ金利政策に常に否定的な立場をとっていた少数派(というか1名だけでしたが)でしたので、こういう説明になっていますが、この説明をゼロ金利政策の効果としてみた場合、預金保険機構による銀行への資本増強(この時の資本増強って同年3月に行われた大手行への7.5兆円投入ってやつですね)とゼロ金利政策による流動性供与の拡大によってインターバンク市場のストレスを軽減したという議論になると思われる訳でして、後になって言われている「量的緩和によって金融市場の流動性問題を軽減した」という論点や、それこそFRBによる信用緩和政策が「中央銀行が市場の代替となって機能する事によって市場機能毀損による経済への悪影響を防ぐ」という動きとなっている事にも通じていく指摘なんじゃないかと思います。
『昨年9月と今回とで二回の金融緩和措置を実施してきたが、9月の金融緩和と今回のゼロ金利を比べて、銀行収益にどのようなインパクトがあったかを分析してみた。資金調達利回りから運用利回りを引き算してどうなったかという単純なアプローチをしてみると、9月の場合の利鞘は+0.02%と僅かであるが鞘があった。しかし今回の2月22日の週から3月23日までの期間の計算では、調達利回りと運用利回りの差はほとんどゼロであった。従って、両方(9月と2月)合わせれば若干の利鞘はあるが、特に今回のゼロ金利誘導により、銀行収益へのインパクトはかなり厳しい状況になっている。そうした状況の下で公的資金が注入され、来年3月までに貸出残高を総額6.7兆円にする方針である。各銀行は慎重に審査をしながら、融資を伸ばしていかざるを得ない。低金利水準の下での難しさがあり、やはりゼロ金利というのは非常事態であると認識した。』
例によって結論が篠塚さん仕様なのですが、そこを気にしないで読みますと、不良債権処理をするのだから銀行収益へのインパクトがどうなのよという論点。最近はこういう論点に関しては意識的なのか無意識なのかは別として微妙に避ける傾向がありますが、銀行の財務リストラを行う状況下において、銀行収益が何らかの形で出る(米国のようにイールドカーブがスティープして国債の長短スプレッドでも期間収益が出るというのが美しいのだが)かどうかというのは実はバランスシート調整途上の中では重要な話でもあるかと。
『三番目はやはりゼロ金利の結果、ベースマネーは緩やかに上昇してきたし、マネーサプライも徐々に増えてきている。このマネーサプライの緩やかな上昇と名目GDPとのギャップがどういうところに流れていくかについては分からない。ゴルフ会員権や店頭株の上昇に表れたという意味では、あるいは二次バブルのような状況になっているのかもしれない。いずれにしても、ゼロ金利によって実体経済にどのような影響が出てきているのかが非常に不明である。以上、現在は小康状態にあるが、非常に不安定な状況にあると思っている。』
で、2000年初頭にかけてIT関連株式を中心にバブルが絶賛大発生して大崩壊したのはご案内の通りかと存じます。そのITバブル景気にうっかり煽られてゼロ金利解除をしたのはあっちゃーという感じですが(-_-メ)。
ということで、後になって読みますと中々重要な論点がいくつも指摘されているのですなあと思われるのでありました。また、現在の米国や英国、欧州なども実質的には低金利政策でもゼロ金利にベタベタに張り付ける政策をしていないという(というか英国なんぞは0.5%から下げても効果が少ないとか言ってるくらいですし)のも、実は味わいがあるのかも知れません。
○植田委員の指摘(その1):量か金利かという論点
その1と書いている位ですからその2があるのですが、その2は(どうせ今日もネタが無いでしょうから)明日に続くでござるの巻、とネタを引っ張る伏線でどうもすいません。
#というような姑息な事をしていると今日の市場で大ネタが出たりするフラグなのですが
議事録本文71ページから。
『植田委員
私は現状維持ということだけ申し上げようと思っていた。しかし、再び量か金利かという議論が出ており、私はこの点に関しては十分申し上げた積りだったが、やや議論が混乱しているため、再度意見を申し上げてみたい。』
というのは具体的には中原委員の議論(さっき上の方でリンク入れておいた昨年8月に書いた駄文をご参照くだされ)に関する所です。
『まず第一に、量的緩和といっても色々あるが、前回も申し上げたように、日本銀行は日々の金融調節のインストゥルメントとして朝方の積み上、積み下により量を取り敢えずみている。それを用いて日々のターゲットであるコールレートをヒットしようとしている。ただ、その第一段階での量としてのインストゥルメントを量的目標とは呼ばない。』
さよですな。
『その上で、間にコールレートがあり、その先に量的緩和という場合は量に関する中間目標を設定するということだと思う。勿論、間にあるコールレートを飛ばして中間目標であるマネタリーベースやベースマネーをヒットしようとする方法もあり得る。コールの先にある量についての何等かの新目標を持つのが良いのかどうか、が通常の量的緩和論の議論の対象ではないか。』
これまたそうですな。
『その点については色々議論してきたが、私個人はそうした目標を掲げることにある種の魅力は感じつつも、様々な理由から難しいため取り敢えず提案していないし、本席での平均的な議論としては設定は難しいということだったと思う。私なりの理由としては、目標をどのように設定するのかという基準が難しいことと、設定した場合にヒットできるかどうかにも若干難しい問題があるということである。』
その後当座預金残高ターゲットという誰が考え付いたのか存じませんが(企画局の中の誰かじゃないのとは思いますが)極めて画期的なコントローラブルな「目標」が開発されて2001年3月に量的緩和政策と言われるものが実施されましたが、この量的緩和政策って実際問題としては植田委員がここで指摘し、中原委員がこの会合だけでない折に触れて提案していた「マネタリーベースやベースマネーをヒットしようとする方法」とはちょっと(どころではなく)話が違うのでは無いかと思うのであります。
#つまり、中原委員が「私の言っていた量的緩和政策が実施された」と鬼の首を取ったように著書で書いていましたが、それは看板は量的緩和政策だけども中原さんが主張してたマネタリーベースあるいはベースマネーの目標とは別もんだったんじゃないのかねという観が思いっきりあるのですけど、まあそれは蛇足
で、この続きもオモロイのですが、時間と量とあたくしのタイピング能力(さすがにこのタイピングは予め行ってますけど見直しが結構手間だったりするのと、引用大会をするとあっという間にタイピングのストックが無くなるので^^)の問題から続きは明日または後日ということで。
#以上超虫干しネタでございました、明日も続く(つもり)
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2010/01/04
○BOEの量的緩和政策の効果に関する議論
と言ってもそんなに大ネタではないですので。
http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/mpc/pdf/2009/mpc0912.pdf
12月のMPC議事要旨なのですが、景気に関する見方はまあ見通し暗いですなあという感じでしたが、本文7ページ(PDFファイルの8ページ目)でこんな話を。第30パラグラフから。
『But equally there had been some less favourable developments. Money growth
had been disappointing.』
ということで、マネーの伸びが失望だよ!という話。
『And while the growth rate of households’ and non-financial companies’
money balances had held up better than aggregate broad money, it remained
weak in absolute terms. The narrowing of the spread between gilt yields
and corresponding OIS rates, which Committee members had viewed as an indicator
of the positive impact from the asset purchase programme, had partly reversed
over the previous two months.』
一部英文の意味が良く判らん(単語一個一個の意味は分かるのだが言ってる事のニュアンスを取りにくいのは私の脳味噌の問題ですが)けど、ここで資産買入プログラムの効果に「ギルトとOISのスプレッド」を挙げているのは、それって量的緩和と言っておっぱじめている政策の筋としては異筋っぽい気がするんだが。
まあマネーも減ってる(後で関連部分を引用します)し、このスプレッド低下もここ2か月逆方向というのは「うちは量的緩和でFRBともBOJとも違います」(キリッ)と銘打っておっぱじめて継続中の量的緩和政策としてはロジック的にややこしそうな感じっすな。
『The reasons for that were unclear, however, and it remained likely that
the full impact of the asset purchase programme on the economy would be
felt only with a lag. The Committee would continue to monitor closely the
evidence on the impact of its asset purchase programme.』
量的緩和政策の効果が出るのに時間が掛かるからというのは何だかね(^^)。
さて、そのマネーの部分に関する云々は金融状況に関する本文3ページの第12パラグラフと4ページの第13パラグラフにございます。第12パラグラフから。
『M4, adjusted to exclude the money holdings of institutions that intermediate
funds between banks, had declined by 5.3% on a three-month annualised basis
in October, weaker than in earlier months.』
ということでマネーが減りましたとな。
『That fall in money balances was a source of concern.』
そらそうでしょうなあ。量的緩和政策でマネーを出すと言っているのですから。
『Households’ and non-financial companies’ money balances had, however,
continued to grow, albeit at weak rates, together increasing by 3.3% on
a three-month annualised basis in October. Instead, the weakness of adjusted
M4 remained centered in the money holdings of financial companies not involved
in intermediation between banks, primarily institutional investors. These
had fallen by £31 billion between August and October.』
で、第13パラグラフ。
『It was likely that such financial companies had been running down bank
deposits partly to finance the acquisition of corporate sector assets.
That would have depressed aggregate money growth if those assets had been
issued by banks or by other businesses that had subsequently used the proceeds
to repay bank borrowing. Both capital raising by banks and increased capital
market issuance by non-financial businesses seeking to reduce their reliance
on bank credit were symptomatic of the ongoing weakness of the banking
sector.』
つーことで、例によって直訳は出来るけど意味がイマイチという部分があるのがあたくしの知能の悪さなのですが、どうも英国では相変わらず銀行部門のバランスシートのリストラ過程にあるため、銀行部門は資本増強をするし、非金融部門は銀行借入に頼らないようにしてこれまた市場調達できる所は市場調達するという動きになっているようですな、と何となく読みました。
『But such developments might prove beneficial to the economy if they enabled
banks to restructure their balance sheets faster, and while they did so
allowed businesses to access an alternative source of credit. Having fallen
back during the late summer, total capital market issuance by UK non-financial
companies had picked up more recently, including among a few lower-rated
issuers. Throughout the year to date, capital market issuance had been
running some way above the levels seen in the years leading up to the financial
crisis.』
まあ調達市場の状況はリーマンショックの頃よりは改善しているようですし、これらの動きが銀行の財務リストラを促進すれば結果としては経済に有益でもありますというような前向きな話にしておりますわな。じゃあ資本市場へのアクセスが無い中小企業はどうなのよという話は次の第14パラグラフにありますけれども、マネーの伸びがどうのこうのという話じゃなくなってくるので引用割愛。
ちなみに、MPCメンバーの景気と物価に関する話は第31パラグラフと第32パラグラフにありますが、「ポンド安と世界経済の回復で期待された程輸出が伸びていない」とか「ドバイやギリシャなどの問題は英国経済への潜在的なショック圧力を示した」とか景気はどうもパッとしない話。物価に関しては、中期的な見通しは変わらないとしていまして、「足もとの物価は上昇しており、目先上昇圧力があるが、英国経済の過剰設備は大きく、インフレ圧力を抑制するでしょう」という話をしています。先行きに関しては銀行の貸出態度や家計のバランスシート調整、雇用悪化懸念による貯蓄率の拡大や財政健全化問題などが影響するとか言ってるように見えますが、あたくしがそのように読んだだけの話ですので、正しくは本文をご覧あれ。
ということで、量的緩和政策を打ったものの効果が微妙な状態になっておりまして、ちょっとBOEちゃんも大変ですなあ(棒読み)という感じかと。
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