金融政策概観(2006年度上期分)
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2006年上期
2006/09/26「市場懇議事要旨ネタ補足」
2006/09/08「ネタも無いので市場懇議事要旨を読んでみよう」
2006/09/07「変動利付国債減額話が当然のように出る市場懇」
2006/08/23「輪番が減額されるのかという話(ただし人のふんどし)」
2006/08/21「地均しが行われないと織り込みに行かない短期市場・・・・かな?」
2006/08/14「ノーサプライズの決定会合」
2006/08/09「FOMC利上げ見送り」
2006/08/08「山本幸三先生、それでは市場が味方になってくれませんよ」
2006/08/01「日銀の短期市場レポート」
2006/07/26「珍事、応札時限入力ミスで供給オペ打ちなおし」
2006/07/20「渾身の供給/総裁記者会見続き/その他」
2006/07/19「いきなりコール0.3%/総裁記者会見」
2006/07/18「7月金融経済月報/ロンバート金利0.4%で即時実施など」
2006/07/14「GCレートコントロール出来そうな感じ/ロンバート/いよいよ利上げですなあ」
2006/07/13「0.125%利上げ説/オペ金利高い/ロンバート0.4?0.5?」
2006/07/12「オペ金利上り過ぎなのでは?」
2006/07/11「完全利上げ織り込み状態/ロンバート利用がモラルハザードとか言ってる人」
2006/07/10「しらっと重要な指摘もある日銀の金融調節ペーパー」
2006/07/07「今さら上るか1年以内金利」
2006/07/06「GCレートへの考察続き」
2006/07/05「利上げ後のGCレートなどへの思惑」
2006/07/04「短観はどう見ても利上げ・・・」
2006/07/03「さて短観です」
2006/06/30「FOMC声明文メモ」
2006/06/16「福井総裁の参議院財政金融委員会答弁雑感」
2006/06/15「村上問題で議論が盛り上がるブログ紹介」
2006/06/14「福井ショックと言いたかねえが」
2006/06/07「武藤副総裁と福井総裁のスピーチ」
2006/06/06「日銀のシグナルを欲しがる人」
2006/06/01「ロンバート金利幅話パート3」
2006/05/31「マル公上げの珍説に反論パート2/どうみても地均し礼賛です」
2006/05/30「即日オペ1兆5千億円」
2006/05/29「勢いとは言えそこまで上るか/政策金利引上前にマル公上げという珍説を斬る」
2006/05/26「遂に岩盤到達(足元金利急上昇)」
2006/05/24「記事を見ないで反応して赤恥でした/足元金利上昇が1ヶ月にも波及」
2006/05/23「福井総裁の単独会見報道に記事を見ないで反応/GCレート0.08−0.09%」
2006/05/19「本日の総裁記者会見で『6−7兆円』に突っ込まれた時の想定問答^^」
2006/05/18「講演補足:物価上昇懸念がいつの間にやらメイン?」
2006/05/17「16日参議院財政金融委員会で総裁火消し答弁」
2006/05/16「講演内容は強気、質疑応答は火消しの総裁講演2本」
2006/05/12「レポートについて(円環性の観点から)/その他少々」
2006/05/11「レポートへの悪態の続きあるいはフォロー/3か月FB一気に0.2%!」
2006/05/10「金先を市場の政策先行き予想とするのは・・(TIBOR形骸化の観点から)」
2006/05/08「言葉を選びながらも強気な総裁記者会見(その2)」
2006/05/02「ターム物金利も上昇/総裁定例記者会見」
2006/05/01「どうみてもゼロ金利早期解除です。本当にありがとうございました。」
2006/04/28「GCレポレート急上昇!」
2006/04/27「短期国債が急にヘロヘロに」
2006/04/26「消費者物価指数に関する日銀白塚氏レポート」
2006/04/25「情報発信と期待の安定化に関するメモ」
2006/04/21「一部の大手銀行はプライマリーディラーの義務を果たしていないのではないか」
2006/04/20「4月の原油上昇で売られた米債が3月のFOMC議事要旨で買われる不思議」
2006/04/19「財務省だけが必死に長期金利上昇を牽制している感じですが」
2006/04/18「国債市場特別参加者会合メモ」
2006/04/14「国債投資家懇談会メモ」
2006/04/06「短期金融市場の課題というレポート」
2006/04/05「日銀の密かな政治に対するイヤミなのかな(笑)?」
2006/09/26
○以下余談というか昔の話の補足ですが
・プライマリーディーラーの会合
国債市場特別参加者会合の議事要旨に関して休み前にお話をちとしたのですが、「FBの発行年限多様化は日銀の金融調節のサポートになる(要約)」と書いてあったのを「???」と申し上げてましたが、どうもこの真意は「短期国債の発行を総額ベースで減らして短期国債買入オペが減る方が日銀の金融調節の自由度が上る」ということのようですな。
それは確かにその通りでございます。短期国債が多いわ、短期国債買入が多いわでは金融調節やりにくいことこの上ないところですから。
・全角半角問題
これは先週ですが、9月の金融経済月報を見ながらふと気になったので書いた所、早速過去の文書などを読んで下さった方からメールを頂きました。感謝感激。
文書中に数字の表記で全角になっているところと半角になっているところですが、どうも数値が一桁になっているときには全角表記にして、二桁とか小数点以下の数字があるときとかには半角表記をしているようです。確かにいくつかを眺めてみるとそういう風になっているような感じですね。
つまり、全角と半角の使い分けは、文章の出来上がりのデザインを考えて行っているということでして、あたくしのようにこうその時の勢いで適当にやっている訳では無い(そりゃそうだ)ということです。奥が深い。
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2006/09/08
お題「国債市場特別参加者会合議事要旨を読んでみたよ」
http://www.mof.go.jp/singikai/kokusai/gijiyosi/c180906.htm
例によって昨日も寄り前にアップされていました。この時間にアップすると言うことはテープ起こしして内容チェックしてって考えると昨日は何時までお仕事してるんだか。なお、現在はヘッダー直ってますが、アップされた当初はヘッダーが「第11回」(今回は12回)となっていたのはご愛嬌(^^)。
で、こういうネタには観光釣堀の魚の如く物凄い勢いで食いついて見事に釣り上げられるのがドラめもんクオリティなのですが、今回もまた釣られてみるのでありました。
○国内投資家は安定運用ですかそうですか
最初に『(1)最近の国債市場の状況と今後の見通しについて 』というのがありまして、まあ中々示唆に富む指摘があったり、そりゃお前ポジショントークだろうというのがあったりと、特に相場が暴れた後の会合の時は面白いのですな。でまあ最初から4番目までの意見はなるほどなるほどと読んでいたのですが、5番目の人の部分で飲んでいた紅茶を噴出しそうになったのでした。
『国内の参加者は、比較的ALMを中心とした安定的な運用を続けている一方、海外投資家において、金融政策等の方向性を先回りする動きが見られ、結果的に海外投資家の最近のプレゼンスを高め、海外市場との連動を強めたのではないか。』
ALMを中心とした安定的な運用
ALMを中心とした安定的な運用
ALMを中心とした安定的な運用
・・・・それはひょっとしてギャグで言っているのか(AA略)。
まあ振り回しを最初にするのは海外ファンド系のお人かもしれませんけれども、その振り回しって国内投資家の「皆揃って同じ年限で同じ投資行動を取り出す」という特性を理解した上でぶち込んでいるケースが多々あるんじゃないですかねえと存じますが。大体からして安定的な運用をしている人が沢山いるなら相場のオーバーシュートは抑えられると思うんですけど、何かあたくし勘違いしているでしょうか?
どこのどなたがこのご発言をなされたのかはまるっきり存じませんが、あまりにも「???」なご発言なのではないかと存じますが。
まあ相場の現状に関しては、6番目(最後)の人のコメント(の要旨)がしっくりくる感じでございますな。
『ゼロ金利政策の解除もあったが、7月に入り米国の長期金利が徐々に低下し、グローバルにマーケットのボラティリティが低下してきたところで、CPIの基準改定による低下があったということが、最近の金利低下の一番の要因ではないか。市場への期待が急激に変化してしまったため、昨日の10年債入札のようなテールが伸びる状況になったのではないか。その期待が収斂していくには、時間を経て市場の目がレベルに慣れていかないと安定した状況にはなりにくく、目先が少し振れるような局面というのは十分想定できる。』
『ただ、実際には、金利が低下した現状でも買いたいという投資家がいることは確かであり、ゼロ金利政策解除後は金利が上昇するだろうということで買いを控えていた若しくはショートしていた投資家は、いずれ買う動きはあるので、中長期的に見れば底堅い展開が想定される。』
というところですな。今日の総裁記者会見で毎度お馴染みのやんちゃな発言が出れば話は別ですが、まあそんな事ないと思います。利上げ以降急に発言が大人しくなったように思える福井総裁ですし。
○15年変動国債
何か読んでて落涙を禁じ得ないですな。去年の夏ごろまではあんなに増額増額ニーズありまくり!って話だったのがこの有様。そもそもこの商品自体がイールドカーブのリスクを取るという商品特性がある筈なのに、金利上昇局面でのヘッジ商品であるが如く宣伝されたり、バーゼルUの所謂アウトライヤー規制での「標準的な金利ショック」がイールドカーブのパラレルシフトしか想定していない(イールドカーブのリスクを取る商品にとっては、イールドカーブのパラレルシフトはノーリスクのようなもん)ために「制度のアービトラージニーズ」を集めてしまったとかで、余計なニーズを集めたという所だったんでしょう。
で、まあ市場の消化能力がアップアップですから減額をしないといけないってのは非常に良く判るのですが、そもそも勢い良く増額した背景に「余計なニーズが集まっていた」という事が挙げられたんですな。市場というのは往々にしてそういう期待のオーバーシュートと申しますか、制度上の歪みによる変なニーズを集める(期末になると会計的な理由で特定の商品に変なニーズが発生するとかもそうですわな)という事があるのでして、市場の意見を吸い上げて反映させるのは大事ですけれども、その背景にあるものが何なのかという分析も重要でしょうな。で、そういうのは業者に聞いても必ずしも正しい答が返ってくるとは限らない、と言うよりはポジショントークが炸裂することもあろうかと。
15年変動国債についてというお題の中で理財局からの発言がございまして、さすがにこれまでの「増額」→「減額」に関するレビューと思われる部分も見られました。
『減額するということであるとすれば、やはり15年変動債であり、理論値との関係から見ても、妥当ではないかと思う。ただ、長い目で見れば、金利上昇局面に入った中、投資家のニーズからすれば、やはり変動債に対するニーズは根強いものがあるのではないかと考えており、この15年変動債の商品性についても、今の金利上昇の流れの中で、いろいろな議論があろうと思われる。当初の思い違いというものが我々も含めてあったわけだが、長い目で見た中で、変動債の比率をどう保っていくのかという状況はあるのではないか。』
「当初の思い違い」って話が参加者から出ないで財務省から出てくるのが何ともということで。マーケットプレーヤーなんだから自分に都合のよい主張をするって意見も判らんではないですが、この会合って必ずしもそういう趣旨じゃないと思うんだけどなあ、と15年変動利付国債に関する参加者の発言の1番目にある自己都合丸出し発言を見て思うのでした。
『過去に投資家需要に伴って増額してきたことの裏返しとして、需要減少を受けた減額の余地があると理解している。』
いやあのある程度は安定して発行するもんじゃないのかと思うんですが。国債は発行市場だけじゃなくて流通市場もあるんだしさあ。
財務省の方が流通市場についてよく考えているというのは何ともね。
『15年変動債については減額が良いが、1回当たりのロットが9,000億円になる場合、既発銘柄との発行量の格差が、必要以上に価格の歪みを生んでしまう可能性もある。また、年末以降価格物がバイバックの対象になると、発行量の少ない銘柄が買われてしまうと何らかの影響が出る可能性もあると思われ、1回当りのロットは1兆円程度は維持した方が良いのではないか。』
仰せの通りでございます。
○6か月FBの発行について
『理財局より、「現在3ヶ月物に偏って発行されているFBについて、発行期間の多様化を図るという観点で検討しており、6ヶ月物のFBを発行することも選択肢の一つと考えている。その際、新たにFB6ヶ月物を発行する場合には、1回分のTB6ヶ月物からの振替が適当ではないか。」と発言。』
これだけですと単にTB6か月ものの発行根拠法が変るというお話なので実質的な影響は無いのですが、将来的に既存の3か月FBから振り替える事が可能になる話ですのでちょっとだけ。
TB残存6か月の部分って確かに恒常的に需給はタイト気味ではあるのですけれども、じゃあ増発余地がどのくらいあるのかというと増やしてみないと判らない部分は大有り。たぶん普通預金見合いとかのニーズはあると思うので増発自体はできると思いますが、マネー系の投信(短期公社債投信は基本が満期保有なので超安定した消化先)はそんなに長いものへのニーズが高くないと思い(7月現在で6兆円弱あるMRFの平均残存期間を投信各社の公表資料から類推すると市場平均1か月程度)ます。3か月ってのは運用としては使い勝手良いのですけどね。
参加者から出ているこの意見は意味不明。
『FBの発行期間多様化の扱いは適切。あまり短いゾーンに発行が偏りすぎても、日本銀行の金融調節が難しくなることから、当局案はマーケットのサポートになると思う。』
別に難しくならんと思うけど・・・・・(追記:この発言をした人本人から^^ご連絡頂きまして、要はFBTBの発行量が減るとその分のバランスで短国買入を減らせるのでオペの機動性が増すというお話だそうです。それなら誠にご尤も)
○海外投資家・・・・・
最初の方で国内投資家と海外投資家の投資行動がどうのこうのって意見を紹介しましたが、最近の国債市場の状況云々の部分では海外投資家が動いて相場が暴れました(意訳)という指摘がゾロゾロ。そして最後の『その他』の部分では物価連動国債での海外投資家の動きについて指摘が。
『直近、CPIショックで物価連動債が相当荒い動きとなったが、ここで露呈したのが、ヘッジファンドを中心とした海外投資家の保有比率が非常に高く、彼らがリスク量を3分の1から半分くらい落としただけで、あのような急落が起きるということである。』
いやはや全く大変でございましたなあ(棒読み)という所なのですが、皆さん海外投資家海外投資家とおっしゃいますが、将来的な国債の安定消化を企図して財務省様が海外IRをなさっておられるのですが・・・・・(^^)
#ま、財務省としては超アクティブ運用のヘッジファンドの為にIRしてる積りはないと思いますが。本当に「安定消化」してくれる人を呼びたいんでしょうね。
今回の要旨で「海外投資家が」の連呼を見ると何とも香ばしい。
○ちょっと血圧の上昇する発言が・・・・
海外投資家と関係ないですが、上記発言をしたお方はこんな話もしておいで。
『先程の話にあった、銘柄間の価格差や流動性の歪みを解消していく方策を考えないといけないという問題意識を、今回のマーケットの動きで関係者は痛感していると思うので、色々な知恵を出していく必要があると感じている。』
そんなのはショートスクイーズで何度も酷い目にあわされているマーケットメーカーであります所の現場労役者(カッコよく言えばディーラーあるいはトレーダー)は昔から言ってますわな。「今回の動きで痛感」とか言われると物凄くムカツクんですけど。「再度認識した」ってんなら判るけどさ。
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2006/09/07
○国債市場特別参加者会合
議事要旨が毎度毎度翌日の朝早く(だいたい9時前)に公表されるという会合でして、事務局の人たち頑張りますなあと感心致しますな。で、まあこの時間なので議事要旨を見てからまた何か申し上げるかと存じますが。
昨日は国債市場特別参加者会合が行われたのですが、情報ベンダーの伝えるところによりますと、まあ相変わらずのプライマリーディーラーのポジショントーク大会のようで誠に香ばしい会合でございます。今回は流動性供給入札継続してくれという話に加え、流動性供給増やして15年変動国債減らしてくれとか色々と切実っちゃあ切実ですが、まあアレな意見がでてたようでございますな。
市場との対話って話になりますと、どうも印象として、日銀の場合は市場との対話と政策委員会の方々は口にしつつ、やっているのは地均しと(一部の人に至っては)金利水準やカーブ形状への言及という市場を自分から引っ張ろうとする動き(日々の金融調節の話は別問題なのでここでは気にしないように)で、財務省の場合は市場との対話というのをあまり宣伝しないのですが、どうも市場の話を参考にしすぎなんじゃないかという感じでして、まあ市場との対話という意味では財務省の方が数万倍ちゃんとしている(というかゼロに何を掛けてもゼロなので無限大倍か、笑)のですが、逆にあまり市場の意見聞きすぎるのもどうかなって思うのですよね。
どうも変動利付国債の発行減らして攻撃は相当なようで、ついでにカレント銘柄以外の流動性に関してもちとアレな感じもするようでございますけれども、2年前の国債市場特別参加者会合で国債発行計画に関して意見交換が行われた時の勇ましい議事要旨を見ていると、まあ何と申しますか、参加者の都合を聞くのも大事だけど、発行計画は発行計画でそれなりに安定しないといかんとは思うのですが。たかが2年弱でこの変りようとは・・・・
http://www.mof.go.jp/singikai/kokusai/gijiyosi/c161118.htm
しかし変動国債云々のヘッドラインが出た途端に変動利付国債の気配が強くなるというのは何とも香ばしいお話で。いやはや。
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2006/08/23
○ひとのふんどしコーナー:輪番は減額されるのか
先日どこぞの海外ヨタレポートで「輪番がもしかしたら減額される可能性があるかもしれないという話がありました」みたいなネタが出て、誰も反応しなかったのに数日後に突如それを言い訳にして債券先物を振り回してみた奇特な人がいたと聞いておりますが、んじゃあ輪番減額の可能性はどうよってお話に関して例によって本石町日記さんから→http://hongokucho.exblog.jp/5536086
昨日日銀が営業毎旬報告を出してまして、それに関連して本石町日記さんが解説をしてますので、まあそちらをお読み頂ければというお話ですな。ちなみに、日銀の輪番オペで買われる中長期国債がどのような構成になっているかというのは、日銀様毎月公表の銘柄別保有残高を追っかけていると大体判るのですが、概ね残存1年半あたりの2年国債が入ることが多いですわな。
何故短いのが入りやすいかという話は以前から散々しているので割愛しますが、じゃあその年限が応札されやすいのは何故かと言いますと、残存1年を切ると金利商品のカテゴリーが「短期」扱いになってまいりまして、短期公社債投信の買い対象に入ってきますから新たな投資家層が発生して需給は改善するのですが、それよりちょっと長いということで需給があまりよくないわけですにゃ。しかも残存1年切ると債券インデックスの方からはインデックス落ちになるので、インデックスベースでの投資という観点からすると1年切るあたりで売るという行動になるので、モノが出やすい環境にあると。
ついでに2年債がご案内のように沢山発行されてまして、2年債を新発で買ってロールダウンしたところで売却って投資パターンを取る(量的緩和時代はそれをあまりにもやりすぎてカーブが潰れてしまいましたが)人もいるようですし、まあそんなこんなで1年ちょっとのゾーンは恒常的に需給が悪く、輪番に入り易いと。
そうなると日銀の輪番ポート(なんじゃそりゃ)も短い期間になるので、償還もバカスカ来て輪番の残高自体が中々増えないという誠に結構な状態(日銀にしてみたら)になるんでしょうな。
まあこの話も皆さん指摘してますけど改めて人のふんどしにコメント付け加えてみました(蛇足というツッコミはしないよ〜に)。
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2006/08/21
○デジタル的な反応になるのはなんでなんでしょ
このシリーズはこれからも続く訳で、本日はまあ叩き台みたいなもんです。
最近年寄りの友とマーケットの話をしていると話題になるのは「何か市場の織り込み方がデジタル的じゃないの、特に短期」ってネタでして、まあここのところそのネタを振ってるのがあたくしではあるのですが、中々年寄りには食いつきの良い話(^^)。
何がデジタルかと申しますと、例えば今年の頭の状況を思い出して頂くと宜しいのですが、1月中は3か月ものFBは延々と0.01%以下での推移。予想屋として考えた場合に量的緩和解除が市場コンセンサスが4月、でも一部参加者はもしかしたら3月にあるかも知れないってリスクを話していたのにも関わらず、延々とその状況が続いて「???」でございました。
そしたら2月の決定会合後に3月解除地均しがおっぱじまって今度は物凄い勢いで金利が上昇。FBはまあ0.09%くらいまででしたが、CPの金利が2月末ごろは0.15%以上になったりしてましたわな。まあいずれにせよ量的緩和解除しても金利の引上げは行われないのは確実な情勢で、かつ30兆円の当預残高を引いていく間は足元そんなに上らない筈だしロンバードの上限制約があるというのにそこまでやるんかいなという状況。
で、実際に解除になったらさっくり金利が低下して、4月になったら今度はFB2か月ものが100円まで買われる場面があった訳ですけど(笑)。
えーっと要するに何を申したいかと言いますと、日銀が地均しをおっぱじめると急に反応を始めて、政策実施後の状況以上に織り込みに逝き、実際にアクションがあると材料出尽くしで戻るのは良いのですが、そのうち楽観して戻りすぎるという動きがどうも今年に入ってから循環してるんじゃないかって情況ですな。
何でこうなっているのかという話をつらつらとしてる訳ですが、先日馬鹿話をしているうちに出てきたのは「旧法時代はそもそも金融政策変更の地均しなんて無かったし、いつマル公が変更になるか判らなかったし」ってお題でした。日々のオペレーションにシグナルがあったりはしてましたが、まあ金融政策変更のタイミングが現在のように事前公表された日程(いやまあ今でも臨時会合の実施はできますけど)で確定しているって話ではなかったから、その分市場が色々と頭を捻って考えたり、シグナルを読み取ったりという職人芸的な世界でもあったと存じます(まあその職人芸が毛唐の皆様におかれましてはワケワカラン事から「透明性に欠けるのは如何なものか」と評判が悪かったんですが、どうせ今でもメドレーレポートのようなヨタ文書で売買してるんだから同じじゃネーノなどと言ってはいけません)。
で、透明性を向上したというか、地均し全開攻撃に慣れてしまったせいなのか、単に金利がゼロ近傍でろくすっぽ動かない時代が続いて人材が離散して過去のノウハウの継承が行われていなかったせいなのかは判りません(多分合わせ技なんでしょ)が、見てて口をあんぐりするような地均し待ちモードになっている短期の市場を見てると、透明性ってのも何かやり過ぎるのはどうなのかなあって思うのでした。
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2006/08/14
お題「ノーサプライズで正直ホッとした決定会合」
とは言え月曜ということで基本的には雑談の線です。
○金融経済月報にも変更無し
金融政策決定会合で何の変更もなくついでに全会一致というのはまあ大方の予想通り。8月分の金融経済月報基本的見解も公表されておりましたが・・・・
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0608.htm(8月)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0607.htm(7月)
内容が見事に変更無しなのですが、それで終了してしまうと今日の書き物が終了してしまうので(おい)、内容に関して一応ご紹介をば。
・現状認識
『わが国の景気は、緩やかに拡大している。』(7月と同じ)
項目別の話に関しては、7月に記述のあった『業況感も良好な水準で推移する中』『この間、マクロ的な需給ギャップは、長く続いた供給超過状態が解消し〜』という部分が外れておりますが、他の部分は同じ記述になっております。公共投資以外は全て上向きベクトルという相変わらず強気なお話。
・先行き見通し
『先行きについても、景気は緩やかな拡大を続けるとみられる。』(7月と同じ)
で、まあ項目別の話がこれまた7月と見事に一言一句変らずの巻。
『すなわち、輸出は、海外経済の拡大を背景に、増加を続けていくとみられる。また、国内民間需要も、高水準の企業収益や雇用者所得の緩やかな増加を背景に、引き続き増加していく可能性が高い。こうした内外需要の増加を反映して、生産も増加基調をたどるとみられる。この間、公共投資は、減少基調を続けると考えられる。』(7月とまるっきり同じ)
えーっとですな、海外経済が引き続き拡大するそうでございますし、企業収益の高水準さから雇用者所得へと経済拡大が流れるといういわゆる「ダム論」的な見通しは、見事なまでに判断持続しております。何か相変わらず強気ですなあと言った所です。
・物価に関して
これまた前月と同じな訳でして、つい全部引用に走るのでした。
『物価の現状をみると、国内企業物価は、国際商品市況高などを背景に、上昇を続けている。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、プラス基調で推移している。』
『物価の先行きについて、国内企業物価は、当面は国際商品市況高の影響などから、上昇を続けるとみられる。消費者物価の前年比も、マクロ的な需給ギャップが需要超過方向で推移していく中、プラス基調を続けていくと予想される。』
金融面に関しても同じなのですが、ここは毎度の如く省略。
・・・・そんなわけでして、日銀の景況感は不動の信念の如く強気のままの状態が継続しているということでございますわな。「海外経済の拡大」や「設備投資以外の国内需要(要するに個人消費)の増加」と言った辺りに関してはどうもこう「ええー?」って感が拭えないのでございますけど。。。。。。
○総裁会見はノーサプライズ
本石町日記さんのところでエントリー上ってましたが、今回の総裁会見は言葉を慎重に選んで物凄く落ち着いた内容だったようです。会見要旨に関しては本日アップされると思うのでそちらを確認したいところですな。ちなみに本石町さんのエントリーはこちら→http://hongokucho.exblog.jp/5463969/
11日18時25分配信のブルームバーグニュースを読みますと、まあ今回は実に落ち着いた内容の会見で、総裁お得意の「不規則発言」が出ていないようで誠に結構でございます。何せ記事のお題が『福井日銀総裁:否定できないが示唆する意図もない‐年内利上げ』ってことになっているあたりが「ああ今日は落ち着いた会見やったんだなあ」と思わせるところでございます。毎度毎度なにか余計なネタ(あるいは燃料)を投下して記事のお題が「ありゃま」ってのになるのが福井総裁クオリティでもございましたんで。以下ブルームバーグの記事より総裁の応答部分。
『先行きの金融政策の運営については、今後とも経済・物価情勢を丹念に点検しながら運営していく。その際のポイントは、経済・物価情勢が展望リポートに沿って引き続き展開するかどうかということであり、もしそのように今後とも見込まれるのであれば、政策金利水準の調整については、経済・物価情勢の変化に応じて徐々に行うことになる』
『この場合、かねてから繰り返して申し上げている通り、極めて低い金利水準による緩和的な金融環境が当面維持される可能性が高いと判断しているあまり繰り返しばかりだと恐縮だが、金利水準の調整は、経済・物価情勢をよく見極めながら、ゆっくりと進めていくということだ』
『こうした基本的な考え方の下で、具体的な政策のタイミングや金利水準、つまり政策の中身については、今後の経済・物価情勢次第ということだが、年内の追加利上げの可能性を問われれば、当然、それは否定することはできないし、かと言って、利上げを示唆する意図も全くない。極めてオープンであり、現時点では何らの予断も持っていない』
いやあまあ普段からこういう感じで話をしてりゃあ良い訳で、口を開けば火付けと火消しの繰り返しっていうのは今後とも控えていただくと誠にありがたく存じます。本石町日記さんと同様に一大ネタがなくなるのはアレでございますが、振り回されて血圧上がるのも困るので(笑)。
ただまあ少々気になるのは、記事にもありますが、今後の経済リスク要因として「米国経済」を上げていながらも月報では相変わらず「拡大」の見通しを掲げたままですし、しかも米国経済の減速リスクについて言及しながらも、その中でインフレリスクについて言及しておりまして、景気減速してくれば今度はグローバルインフレ話で金利調整してくるんじゃねえのかと思わせてくれるところでございます。会見要旨が出たところで読んで見たいと思います。
#ま、しかし「総裁会見ノーサプライズ」の予想が当たってホッとしましたよ。
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2006/08/09
○FOMC
利上げしたので大穴予想大はずれでした。まああたくしとしては利上げして声明文で利上げ休止の方向性を出す(要するに材料出尽くし感と打ち止め感をだす)のもアリかなあと思ったのですけれども、決め打ちしない金融政策ということで、「利上げしないけど打ち止め感は出さない」という形になりましたわな。
http://www.federalreserve.gov/boarddocs/press/monetary/2006/20060808/
『Nonetheless, the Committee judges that some inflation risks remain. The
extent and timing of any additional firming that may be needed to address
these risks will depend on the evolution of the outlook for both inflation
and economic growth, as implied by incoming information.』
えーっと、まあ要するに(1)今後の金融政策の方向性は「引き締め」かか「現状維持」(2)経済物価情勢の様子次第ちゅう事ですか。これだと打ち止め感は出ませんわな。まあ打ち止め感出さないのがキモでもあるんで当然ちゃあ当然なんでしょうが。
ちなみに、エネルギー価格上昇に関しては微妙な評価になってまして、冒頭部分で景気の減速の原因の一つとしてエネルギー価格を上げておりますが、その次のパラグラフでは前月までと同様にエネルギー価格など商品価格の上昇に対してはインフレ圧力に繋がるものですって話をしておりまして、まあここの匙加減がムツカシイ(まあそうですけど)ですなあというのを窺わせてくれます。
それから、景気減速要因として冒頭(というか第2パラグラフですが)では『a
gradual cooling of the housing market and the lagged effects of increases
in interest rates and energy prices』ということで、金利引上げの効果が出ていますっていう認識にはなっておりますね。
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2006/08/08
○もうちょっと物の言い方を・・・・・
昨日はブルームバーグニュースでは自民党の山本幸三議員のインタビューが放送されてましたのでちと拝見(5分ほどです)しました。
いやまあ言いたいことの趣旨は判るんですが、山本先生その言い方はもうちょっと何とかならんのかと思うのですよね。てめえの言いたい事だけ言えば別に自分の意図する政策が実現してもしなくても結構というのであればそれでも良いのかもしれんけど・・・・
インタビュー記事のお題がどうなってたかと言いますと(7日15時49分配信)『自民・山本氏:追加利上げ観測は「全くばかげた話」−インタビュー』なんですけど、市場は時期がいつになるのかは別にして、追加利上げはまあどこかでやるでしょうって前提で動いている訳でして、このヘッドライン見せられますと「マーケットは馬鹿」と言われてるような印象を受けてしまうのはあたくしだけではありますまい。
で、件の部分なんですが、ゼロ金利解除が早すぎるという話の流れで追加利上げ観測について質問された時に答えているのですけれども、開口一番が確かに「全くばかげた話だと思う」でした。まあよくよく聞いて見ると、追加利上げに関して話をしている日銀政策委員に対して憤慨しているようでして、「市場を混乱させるのは、審議委員としては資格を疑わざるを得ない」というお話をしているのでありました。
記事中にはないですが「理屈も無しに上げるかもしれませんよと言ったらまともな運営にならない」という発言ですんで、まあどこぞの審議委員に対して言ってたんでしょうな(どこぞの審議委員は理屈立ててますが)。
・・・・とは記事およびインタビューをちゃんと最後まで読めば(聞けば)判るのですが、普通の市場参加者はヘッドラインをまず見て、興味があれば中の記事を見るわけですから、ヘッドラインでどう書かれるかというのはもうちょっと意識してくれないと、折角の主張も見てくれませんですぜ先生。
まあ5分ほどのインタビューを全部聞いてみましたが、正直言って無駄に攻撃的で、これじゃあ主張の内容を吟味する前に感情的反発が先に出てきますがなっていう内容ですわな。インタゲ導入論を唱えてるのは良いんですが、「日銀は責任を取りたくないから導入に反対する」とか言うのは言わずもがなの悪態でしょう。確かに大昔のゼロ金利解除強行も結局「当時は正しい判断だった」になってるから言いたい事も判るけど、今それを蒸し返しても話は前にすすまんでしょ。
それにそこまで責任取れ取れ言うなら、ご自身が「ゼロ金利解除早すぎで11月か12月には景気腰折れ」っていうの外れたらあなた様は責任取るんでしょうかってお返ししたくなってしまうんですけどね(ちなみに景気の見たては山本先生ほどではないがあたくしも弱気なんですけどね、あっはっは)。まー日銀が議論に乗ってこないから苛立つってのも判るんですが、あまり攻撃的過ぎるのも如何なものかと存じますけど、はい。
・・・・うーむ、「オマエモナー」と言われそうな事を書いてしまった(^^)。
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2006/08/01
お題「日銀の金融市場レポート(の追録)」
金融市場局が出している金融市場レポートですが、これは毎度中々面白く読みやすいのでお勧めというわけで本日はこちらから少々。中は皆さん読んでください(おい
本日お勧めは金融市場レポートの追録版でして、お題は「量的緩和政策解除後の短期金融市場の動向」→http://www.boj.or.jp/type/ronbun/mkr/mkr0607b.pdf
日銀のサイトをご覧になると判りますが、新着情報としてアップされたのが追録の方が先というのは思わず微笑と言った所ですが、まあこっちをまず読めって事なんでしょう。
○まずは最初にまとめがあります
1ページ目にまとめがございます。現状分析に関してですが、前回金融市場レポートが出たときの追録で「量的緩和政策解除後の短期金融市場の課題」ってのが出てたときにはレポ市場の問題点(=資金出し手がやたら優位の世界という問題というか欠陥)に関してちと切り込み甘いようなって突っ込みをした記憶がございますが、今回はオペ先など約150社にアンケート調査をしたりとポイントを抑えた内容になっておりますな。9月くらいになったらこの続きの調査をするということでフォローアップすると面白そうですね。
んでまあそのまとめ部分なんですが、皆さんご存知のようにレポ市場がどうなっていくかが重要だっちゅうお話になりますわな。ポイントとして箇条書きに上げられている中で、この辺りに関してはご案内の通り。
『量的緩和政策解除後の翌日物金利の動きをみても、日銀当座預金残高が相当程度減少した5
月以降、レポレートがいち早く上昇し、これが裁定を通じて円転レートや無担保コールレートなどに波及する形となった。ただ、レポレートが無担保コールレートなどに比べて高止まりする傾向が続くなど、レポ市場と無担保コール市場等との間の資金の流れ・裁定が、必ずしも円滑ではない面も窺われた。』
ここで債券市場の話を入れるとややこしくなるので入れなかったんだと思うのですが・・・・TB/FB市場で4月にアフォのようなキャッシュ潰し行為が行われ(何せ3か月FB0.02%だの2か月FB100円テイクーンだの)てその反動が5月大型連休直前から爆発したというお話とか、突如浮上した6月利上げ説によるFBレートの上昇から「FB購入/レポやオペでの調達」というトレードによるオペ金利、レポレートの上昇とかございましたな。それから円転レートに関しては「円転が回らなくなったからレポに調達が流れてレポが上昇した」と言ってた人もいましたな。まあそれはともかく。
『レポ市場と無担保コール市場等との間の資金の流れ・裁定が、必ずしも円滑ではない』・・・つーかだいぶ円滑じゃないのですが、何となく暗黙の了解でコール+5bpでGCレポが回っているかと存じます。そういう意味では裁定してるっちゃあ裁定してますな。インチキの香りがする「裁定」ですが(苦笑)。
で、今後の課題としては・・・・
『その際、市場間の資金の流れを一層円滑にし、より安定的な金利形成を実現していく観点からは、@クレジット・ラインの適切な設定・拡充などを通じて無担保取引を円滑化していくこと、Aより多くの市場参加者が有担保での取引体制を整えていくとともに、即日での取引を含め、レポや有担保コールといった有担保市場の流動性、効率性を高めていくことが、重要な課題となっているように思われる。』
ということで、歴史的に無担保市場の規模がでかい状態が長かったので有担市場をやっていくのに制度上のネックがございまして、今後は有担保市場の深みというか厚みを拡充する事が必要ですわなという話ですな。
でね、取引体制を整えていくという点ですが、「金利が上昇して裁定機会が出来れば市場参加者がクレジットラインとか設定して体制作るでしょう」っていうのも正論ではあるのですが、制度上のネックに関しては個別参加者が手当てすれば良いってもんでもありません。で、本来的にはそんなことまで日銀が口出す話じゃないんですが、まあ日銀も一枚噛んでいただくことになるんでしょうなあ、というかお願いします(苦笑)。
○レポ市場に関して
本レポートではレポ市場に関してページを割いて(10ページ中4ページ)説明しておりますが、内容は非常に良くできていると思います。市場の問題点として、まあ皆様もご存知のようにGCレポ市場での資金の出し手の広がりの乏しさについて指摘がございます。6ページ目のあたり。
『後述するように、地銀や機関投資家などは、レポでの取引体制を構築していない先も少なくないとされており、出し手が少ない一因となっている。また、出し手の約6
割を占める信託は、有価証券信託で受託した国債をSCで証券などに貸し出し、その際に受け入れた現金担保を今度はGCで当該証券等に対して再運用する事例が多い。(中間割愛)信託のGCにおける資金放出はSCとセットで約定されることが多く、相手先との間では、実態として資金的にニュートラルな債券交換に近い取引となっている。』
ということはどういう事かと申しますと、残りの資金の出し手でありますところの都市銀行(シェア約3割)が実質的な資金の出し手になってるということでございますな。信託は在庫調整(証券から見ればショートセールしたものの穴埋めと、ロングで余っているものの在庫ファイナンスがセットになっている)として機能というお話。そうなりますと・・・・
『(信託GCレポの)レート形成も、SCレポレートとGCレポレートのスプレッドに重点が置かれ、GCレポレートは市場実勢レートを受けて決められることが少なくないようである。こうしたこともあって、市場参加者の間では、資金の出し手の少なさが意識されやすくなっている可能性がある。』
ということでちょっと資金需給が締まると都銀がレート決め放題となっているという事を穏やかな表現で示しておりますという事ですわな(^^)。
で、まあこの辺りの話は紹介してると全文引用になってしまうので、途中は全部端折りまして(こら)、9ページ目に良い事が書いてあります。
『レポ市場におけるより円滑なレート形成を図っていく観点からは、レポ市場と無担保コールなど他の翌日物市場との間の裁定を働きやすくしていくことが必要と考えられる。そのためには、まず、より多くの市場参加者、とくに資金の出し手がレポなど有担保での取引体制を整え、有担保市場の厚みを増していくことが重要である。』
投信と生保の短期資金がレポ運用するようになると相当厚みが広がると思いますが、制度上のネックや、事務負担に信託銀行が対応できないといった問題があるようでして、まあこの辺りをどうにかしないといかんっちゅう所は相変わらずのようですな。
『また、即日での運用を指向する出し手の存在や取り手サイドのクレジット・ラインの制約などを前提にすると、「先日付・有担保」が中心のレポ市場と「即日・無担保」が中心の無担保コール市場の間を橋渡しする「即日・有担保」市場の拡大、例えばT+0レポ取引の拡大や有担保コール市場の活性化などが一つの鍵となってくる可能性がある。』
(紹介しませんでしたが)有担保コール市場の所であった担保掛目の問題をどうにかしないと中々ムツカシイところもあるかもしれません。今後の課題ですわな。
#本日は寝坊したのでこんなところで恐縮ですが、是非日銀のサイトへ行ってお読み下さいませ。
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2006/07/26
○オペの打ち直し
昨日は9時20分に即日オペを実施した後に9時40分頃にもう一発同じオペを実施・・・・と思ってよく見たら前のオペが取り消しになってまして、その事情はといえばオペの応札時限が「9時20分」になっていて応札が物理的に不可能だったからでした。
いやあこんな事もあるのね〜と苦笑を禁じ得ない所でしたが、システム的にこういう場合オペ内容を変更できないようにしてるんでしょうな。突然応札時限が変られても困りますから、その点ではよく考えてますなと妙な所に感心してしまったあたくしでございました。
一瞬「何で追加オペ??」と驚愕しましたので、そーゆー時は先にお触れを回してからオペの打ち直しをお願い致します、って単にあたくしがお触れを見落としていたのかもしれませんので単に自分が恥ずかしいだけですが(笑)。
もうちょっと皆がピリピリしてる時だと非難轟々なんでしょうが、「あっはっは」で済んでいるのは短期市場は穏やかな天候ですなあって所でしょう(^^)。
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2006/07/20
お題「コールレート低下/その他少々」
バーナンキ議会証言で米国株大上昇金利低下。発言のテキストまで読んで無い状態(ブルームバーグテレビでダイジェスト部分聞きましたが)で申し上げるのも何ですが、印象として「米国市場はグリーンスパン流の決め打ち金融政策時代の意識から中々抜けられませんなあ」という所でございます。バーナンキ議長は決め打ちタイプの人ではないと端から見てて勝手に想像してるのですが、市場が決め打ちを求めているとなると今後も大変ですにゃ。CPIはやたら強かったんですが、そんなに安心していいのか米国市場。
#ところで、モーサテで某雑誌のCFが放映されてたんですが、何なんですかあのアナクロ「会社は誰のものか」芝居は(笑)。
○渾身の資金供給
昨日は9時20分の即日供給でオーバーナイトの共通担保オペ1兆円のぶち込みが行われました。利上げ初日にオーバーナイトが0.302%なんぞになりやがったのでここは冷却が必要ということのようで。んでまあ昼にもご丁寧に即日供給(これまたオーバーナイト)を6000億円打ち込みましたので、さすがにコールも低下して最後は0.2%とかもうちょっと下とかのあたりまで低下したようでございますな。
そんな次第でGCレートも上ったり下がったりしたようでして、前日の続きで朝方やってた21−24のオーバーナイト物は0.36%〜0.38%とかが中心だったようですが、午後になって始まる24−25のオーバーナイト物は0.31〜0.34%あたりだったらしく、まあよう動きますわなという感じです。
いずれにせよ、無担保コール翌日物取引の加重平均金利が堂々0.3%台定着は許さんという極めて当たり前の認識が徐々に市場に広がってきましたなあという感は受けます。日銀公表の日銀当座預金需給速報とか見てると何か超過準備と申しますかブタ積みをしている人が相変わらずお出でのようで(しかしもう準備積み終了ですかそうですか)すが、そんなお金もそのうちブタ積みによる機会損失に目覚めて動いてくれる日も近いのではないかと勝手に想像しております。
で、3か月FBは0.38%あたりでの落札結果になってましたが、最初勢いで0.36%まで買われたものの押し戻され、その後はGC低下でも好感したのか何だか知りませんが再度買われて0.365%となったようで、まあ無難な入札だったんジャマイカと。大体からして既発の10月償還物が軒並み0.36%で、まあ10月第1回会合越えまで意識するこたあねえという状況で既発対比でそんなに甘くなるイメージもなかったんで妥当な線ではないかと思うのでありました。
○総裁記者会見続き:ロンバート金利関連
ロンバート関連の総裁コメント。
『まず大変申しわけないのですが、公定歩合という言い方を私どもはどちらかというとお蔵に入れたいと思っています。(中略)今回も公表文の一番下の欄外に「手形割引は停止しています」と静かに書いていますが、この意味するところは公定歩合という言葉は、今後お互いに使わないでいければ非常に嬉しいという意味です。』
物凄く芸が細かいなあと思ったのは、日銀のウェブサイトのトップページでして、あたくしが気が付いたのは6時過ぎ位だったと記憶してますが、この当日にはトップページ右下にある「主な指標」の一番上にある「公定歩合」が「基準貸付利率」となっておりました。そういう所はヌカリがないぜ日本銀行(^^)。
『基準貸付利率と申しますか、補完貸付の適用金利、これは今申し上げました通り、今回は取りあえず少し低いところに抑えたというのが実感です。』
総裁の本音は0.5%だったんですかそうですか、まあそうだとは思うが。
『従って、将来は誘導目標と基準貸付利率とのスプレッドについて、どの程度が本当に適正なのか、外国のように0.5%とか1%というスプレッドが良いのかを、日本の場合、新しい展開の中で決めていかなければならないので、いくら勉強しても机上の作業で事前に一発勝負で最終的な解を出すのは難しいのかなと思っています。』
机上のナントカって言い方が好きですなあ総裁。というツッコミではなくて、まあ誘導目標が0.5%位になったら(何時の事か知らんが、鬱)スプレッド0.5%でも良いんジャマイカと思いますが、ただしちゃんと誘導金利目標近傍で市場が動くようになってればの話ですけど。
『従って、今後の政策変更の過程でその都度、市場機能の回復振りを判断しながら現実的に判断していきたいと思っています。通常は余程のことがない限り、政策変更の時にきちんと判断していくということになると思っています。今回中途半端に止めたからここだけ別途急いで決めたい、というような気持ちを予め持っているわけではありません。』
必ずしも完全否定ではないですけど、ロンバート金利だけいじるという事はやりませんと言ってるようですな。技術的にはアリかなとも思いますが、まあ確かにロンバートを先行して動かしてから誘導水準動かす(昔のブンデスバンクみたいに)というような連想が働きやすいので難しいんでしょうね。
以下小ネタっぽくなりますが少々気になった経済関係閣僚会議後の話題にツッコミをば。
○小ネタその1:デフレ脱却ではないけどデフレは削除ですかそうですか
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20060719AT3S1901Y19072006.html
↑1か月もすればリンク切れかと存じます。
えーっと上記記事によりますと、「7月の月例経済報告では物価の基調判断を前月に続き上方修正し、約5年ぶりに「デフレ」の表現を削除」だそうなのですが、「物価の伸びが再びマイナスに戻らないか見極める必要があるのでデフレを脱却判断は先送り」だそうな。
デフレの表現を削除したということは日銀の利上げに関して政府も同じ認識ということになるので、利上げコケたら日銀は勿論ですが政府も責任ありですわなあ・・・でも内閣は9月までか(苦笑)、ということになるような気が思いっ切り致しますわな。
そして、後半にある「デフレ脱却判断は先送り」だそうですが、判断先送りなのならば何で金融政策決定会合で議決延長請求をしないんでしょうか内閣府様は。行動が伴わないでヘッジクローズのように「デフレ脱却判断は先送り」などというのは如何なものかと思うんですけどねえ。何だかワケワカラン話ではございます。
○小ネタその2:株価下落は地政学リスクが影響ですかそうですか
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20060719AT2C1903G19072006.html
記事のお題は『日銀総裁、株式市場の値動き「地政学リスク影響」』でして、今週になって株が下がったのは地政学リスクが影響との見立てのようでございます。
いやまあそれならそれでも良いのですが、米軍がイラク攻撃をした時に臨時政策委員会を招集して当座預金残高を増やしたお方の同じ口から出る言葉とは思えませんな。中東情勢の激化は先週の決定会合前から顕在化(イスラエル軍のベイルート国際空港空爆は13日)してたと思いますが利上げですかそうですか。
なんちゅうかね、一つ一つの理屈はそれはそれで判るんですけれども、過去からの経緯を並べて見るとその時々で持ち出してくる理屈が違うのが福井総裁クオリティなのは今に始まった事じゃないんですが、それで良いのか金融政策って思うあたくしはケツが青いですかそうですか。
○そういやまだ読んでませんがこんなのが
面白そうだが量があるので。この手のものは紙に出しただけだと場所も取るし紙ももったいないので、刊行物を買った方が良いんでしょうね。
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/wps/wp06j14.htm
量的緩和政策の効果:実証研究のサーベイ
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/wps/wp06j16.htm
価格弾力性の異質性を考慮したフィリップス曲線の推計
どちらも本文は上記URLの画面にPDFへのリンクがございます。
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2006/07/19
お題「のっけからコールレート0.3%ですかそうですか」
モーサテで「日経平均が2000年と同じ動き」の後付け理屈キター(゜∀゜)って感じですが、ゼロ金利をとっとと解除汁!というキャンペーンを打っておいて解除直後にいきなりそう来るかあって感じですな。
さて本日ですが、金融政策決定会合関連のネタが積み残しなのですが、市場金利があたくしが思ったより上昇気味でそっちから。
○コールレートなど全般強いですな
昨日の無担保コール翌日物金利は0.302%になりました。朝からコールのビットが0.3%→0.35%→・・・などと上昇しまして、準備預金の積みというよりは資金繰りのニーズの方が高い(=準備預金対象資産が邦銀対比少ないから)外銀のビットアップが目立ったようで。日銀も朝9時20分の共通担保即日本店オペ4000億円の後に昼0時50分にもう一発共通担保オペ6000億円を打ち込んだのですが、何かコールで0.45%を取る限界的なお方もいたようで、いやはやコールレート高いですなあという感じ。
本石町日記さんの所では「外銀プレミアムの顕在化」という指摘がありましたが、あたくしと致しましてはそれよりも「資金が引き続き上手く回っていない」「自行準備預金の意図的な積み操作がまだ慣れてない」という方面に目が行ってしまうのですが、まあその線で少々。
世間的(ただし局地的な世間)に言われているのが「今回の積み前半は足元金利が高くて、積み後半は足元金利が下がるでしょう」ってお話でして、昨日のコールレート上昇を受けてGCレポ金利や現先利回りも22日〜24日の翌日物で0.35%以上(0.35%〜0.38%あたり)になっていたようです。このままだと少なくとも月末を抜けるまではこんな感じとも。
でも別に準備預金の積み進捗はちゃんと進んでいる(大体からして1兆円即日供給してますし)状況でして、どうも準備預金の積み上げをコンサバ目に行っている銀行がいるのではないかと思われる訳ですな。勿論ここぞとばかりに資金放出している人もいると思うんですが、どうも相変わらずの「資金抱え込み現象」は全体としては中々解消してないようで。
正直、こんな金利の日に積みの進捗をせっせと進める(コールじゃなくて即日オペで資金を取ったとしても0.29%以上の金利になってます。そりゃまあコール0.27〜0.25%でも取れるのでしょうけれども)のはワケワカランというか損な気がするんですけれども、それでも積みをせっせと進める人もいるようで、まあ意図的に積みを前倒ししてみたり後ずれさせてみたりして準備預金のコストを下げるという所まで体制が出来てないのかもしれませんな。困ったもんですが、まあ初日だから仕方ないのか。
でまあご案内のように昨日もまた邦銀レートと外銀レートが違うようでした(つーかそんなに邦銀取ってるのか?)が、これは資金の出しての方が無担保コール放出体制の中で外銀への放出枠が少ないという要因がでかい(ジャパンプレミアムの時に散々食らったので金なんぞ出してやるもんかという気持ちは理解出来ないでもないですが^^)ということで、まあ相変わらず資金が上手く回らない状況が思いの外継続しているようですにゃ。
そんな訳で、GCレポやら現先の金利が足元の誘導目標からかなり上ブレ(って言ったってコールが高いんだから仕方ないけど)しちゃったので、日本相互証券様謹製のTB/FB引値は9月償還ものまで軒並み0.35%、10月償還ものが軒並み0.36%となったようでして、お約束のイールドカーブベアフラット状態になりました(ちなみに6か月が0.39%)。まあこれもGC上ればこんな感じですわな。
カーブがベタベタに寝てしまうと正直言って工夫の余地が無くなるので、商売としては「差がつけにくい」世の中になってしまいまして誠に遺憾なのですが、そんな中で本日は3か月FBの入札。10月23日償還ですが、どう考えても「10月決定会合超えプレミアム」が発生する訳は無いので、WIは0.4%とかになってますけど既発債並みのレートで落ち着くんジャマイカと思われます。そうすると現先レート対比でかなりカツカツのレベルになるので現先レート見合いで買う人は中々厳しいのかなあという感じですな。
ま、コールがいつまで経っても0.3%では何やってんだって話になりますんで、そのうちもうちょっと落ち着くと思いますし、もしかして前半0.3%で後半0.2%などというようなアフォな事になれば何ぼなんでも意図的な積み操作をする人も出てきて裁定されるとは思うんですが・・・・・
○総裁記者会見でとりあえずツッコミたい所
いやまあ総裁記者会見も色々と論点があるような感じですけど、書く方が追いつかないです。やっぱ休み中に少し書けばよかったですよorz
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken/kk0607b.pdf
PDFで20ページ、会見時間が約80分。色々読むべき点はあるのですが、まあぼちぼちと参りますとしまして、本日は読んでて真っ先に気になった点について軽く悪態を。
・市場からのメッセージを取捨選択してませんかあ?
PDFの3ページ目、ゼロ金利解除の日本経済への影響に関する質問に対する福井総裁の説明部分から。
『そういう状況(引用者追記:日銀の経済物価情勢メインシナリオに沿った動きが続くという認識)がイールドカーブに示されるように、市場参加者や企業などの民間経済主体がある程度先行きの政策変更を織り込んだ上で、意思決定を行ってきているということを前提としているわけです。現時点では、そういう姿に市場の認識が揃い、私どもの判断と市場の認識との間に、ほとんど隙間なく一致を見ているという状況であります。従って、今のこの時点では、この程度の政策金利の変更を行うことが、むしろ息の長い成長に繋がっていくと判断しました。』
はあそうなんですか地均ししてませんでしたっけ〜まあいっか。
で、その次の質問で株価が下がってますが?ってのがあってそれに対する答えは4ページ目から5ページ目にかけて。
『株式市場の変動というのは、当然、実体経済の先行きとの関係でそれがどういうインプリケーションを含んでいるかということを十分抽出して判断しなければ、政策判断として一部が欠落することになります。そこのところは私どもは十分意識しており、特に5月中旬以降の世界的な株価の下落あるいは調整については、その性格や実体経済に及ぼす影響を非常に慎重にウォッチしてきました。つい最近までの世界的な株価の下落は、私どもの判断では、結局のところ各国の中央銀行が経済・物価情勢に合わせて金融緩和度合いの修正を慎重に進める中で、市場参加者のリスク評価についての見直しが進み、その結果として株価の調整が生じた面が強かったと思っています。世界経済のファンダメンタルズの先行きの悪さを、株式市場の動きがウォーニングを発しているという感じではないと、取りあえず判断しました。』
日銀と同じ認識の市場動向は良い市場インプリケーション、認識と違う市場はインプリケーションを与えていませんですかそうですか。
ちなみに、ウォーニングを発していない根拠は上記の続きにあるのですが・・・・・『その証拠に、かなりの株価下落だったと思いますが、エマージング諸国の経済を含め世界経済は、先程申し上げた通り、むしろ地域的な広がりを見せながら着実に拡大しています。』だそうでございます。はあそうなんですか。
・・・・何だかなあって思うのでありました。以下続編は明日。
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2006/07/18
お題「さて色々と話がございますが」
色々とあるのだから連休中に少しは書いておけば良いのですが、いざ休みになると書かないのがドラめもんクオリティなのであります。休み中にも見に来る人がいるというのにスイマセンスイマセン。
○景気判断を益々強気にしている7月月報
金融政策変更のディレクティブの前にマニアっぽく月報ネタ。→http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0607.htm
例によって6月分と比較するのですが、株価下落にもめげずに5月と一言一句変らない月報をだした6月にも瞠目しましたが、今月は利上げしたから判断前進してるのは理屈としては判るんですが、いやあのこのタイミングで判断思いっきり強気化って・・・・うーむ・・・・・。
6月分(http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0606.htm)と比較しながら毎度の如く。
・基調判断を「拡大」に変更
『わが国の景気は、緩やかに拡大している。』(7月)
『わが国の景気は、着実に回復を続けている。』(6月)
この「着実に」と「緩やかに」のニュアンスの差という議論もあるのですけれども、「回復」と「拡大」の方を注目したいというのがあたくしの見立て。何故かと申しますと、今回もそうですけど、ここもとの金利引上げのロジックが「金利の調整」という言い方でして、「景気が拡大しているからそれに併せて調整」という方が回復状態という現状認識よりも話として通しやすいですから。
・微妙な順序替え
景気の現状判断部分も強くなっております。
『公共投資は減少傾向にあるが、輸出は増加を続けている。』(7月)
『輸出や生産は増加を続けている。(途中色々あって最後に)この間、公共投資は減少傾向にある。』(6月)
今まで最後に「この間、公共投資は・・・」って書いてたのがいきなり前に来まして、何とも妙な繋がり方になっているのが今月の月報。文書として何だか妙なのですが、「(悪い材料)だが、(良い材料)です」という書き方にしたのは、悪い材料の影響は少ないですよって言いたいからなんでしょうね。公共投資と輸出を並べて書くのは物凄く妙な書き方ですが、ここしか文章上入れようがなかったんでしょう。で、「生産」はどこに行ったのかと申しますとそれは後述。
・短観の結果挿入
まあこれは短観発表後のお約束ですので、6月分には無い所。
『企業収益が高水準を続け、業況感も良好な水準で推移する中、設備投資は引き続き増加している。』(7月)
『企業収益が高水準で推移するもとで、設備投資は引き続き増加している。』(6月)
・需給ギャップは需要超過へ判断前進
7月月報の現状判断部分に需給ギャップのお話が入りました。当該部分は6月までは先行き見通し部分で記述されていた部分でして、この認識ですと日銀としては需給ギャップは絶賛解消し、もう需要超過で内外需要が増加してますよ。デフレ?何ですかそれは?ってなもんでしょう。
『このように、内外需要の増加が続く中で、生産も増加を続けている。』(7月)
さっき順序替えがどうのこうのという話をした時にどこかに行った生産はこちらにございました。「内外需要の増加」という話を生産にくっつけたかった訳ですな。そしてその次の部分にはこんな記述が。
『マクロ的な需給ギャップは、長く続いた供給超過状態が解消し、現在は需要超過状態に入ってきているとみられる。』(7月)
現状判断が需要超過ですよ先生!で、ちなみに6月はどうなっていたかと言うと、先行き判断部分にこの話がありまして、現状はゼロですよって感じでした。
『マクロ的な需給ギャップは、長く続いた供給超過状態が解消し、現在はゼロ近傍にあるとみられる。』(6月)
ということで、このタイミングで需要超過に判断前進なのでした。
・先行き見通し、物価等は変更なし
で、その先ですが、景気の先行きやら物価に関する部分は変更無しになっております。先行きに関しては引き続き『先行きについても、景気は緩やかな拡大を続けるとみられる。』となってますが、この「緩やかな」という文言を入れる事によって将来的な追加利上げに関して「別に急いでは実施しませんよ」ってニュアンスを包含しているんだと思います。
今回に関しては現状判断の強気っぷりが目に付きますが、まあ利上げした瞬間なので現状判断が強気になってないと話が合わないという事でしょう。
○金利変更即時実施ですかそうですか
14日の「利上げ即時実施」には少々驚きました。翌営業日で良いじゃんとか思ったのですが(今書きながらふと気が付いたのですが、思い切って「補完貸付の金利は16日の利息計算部分から実施」というのはどうだったかしらって多分そんなことしたら事務的に無理ですかそうですか^^)、まあ14日に関してはその時間までに即日スタートのオーバーナイト物(14日〜18日)資金供給をご丁寧にも国債買現先と共通担保オペの2本立てで各8000億の計1兆6000億円ぶち込んでおりましたし、そもそも「翌日実施でしょ」と思ってた人も多かったので、当日のコールはまあ概ね終了の巻となってましたわな。よって利上げは無関係状態でした。
でも、これをやっちゃうと次回の金融政策変更(があるかも知れないと皆が思っている)時に当日のコール出し渋り現象が絶賛大発生して話がややこしくなるんじゃないかなあという懸念も少々どころかかなりございますわな。
・・・などと思っていたのですが、夕刻に公表された資金需給状況を見てロンバートが3兆2000億円も出ていた事を知り、「ああなるほど」と納得してしまいました。朝からそんなにロンバートが出ていたのならば致し方なしですわな。しかしロンバート借りるなら当日の即日オペでも良かった(ちなみにオペの落札金利はどっちも0.1%割れ)のでは無いかと思うんですが、どうもこうインターバンクの中の人たちの行動はワケワカラン。
ちなみに、コールは0.08−0.09で出合ってたと思うんですが、無担保コールのうち短資会社仲介分は0.02%+消費税(なので0.021%)の短資会社手数料が両方から徴収されますので、0.08%で無担保コール取っても直接取引じゃ無い場合のコストは0.1%を超えてしまうので、担保繰りに何の問題も無い昨今の状態ではまあ使われませんわなという感じでこれはこれで仕方ないという所でしょう。
しかし微苦笑したのは最後の即日売出手形オペ結果。ロンバートは出るわ、供給オペは打つわで資金が出まくったので引いたんでしょうが、1兆2000億円のオファーに対して応札が1兆6090億円あって落札が何故か9870億円。よく見たら最高落札利回りが0.4%でして、0.4%超の札が切られておりました。久々に見たぜ応札カット攻撃(^^)。
まあこのオファー見たときに直感的に「金が余っててギャグで入れるなら0.4%」と思った訳ですが、この0.4%というのは公定歩合(という言葉はお蔵入りですのでこれからは「ロンバート金利」ですな)でして、これより上に札を入れると落札分をロンバートでカバーすれば利益確定になってしまいますから札切るのは当たり前といえば当たり前。
つーか0.4%超で応札するのは、資金供給オペでマイナス金利を応札(というのは物理的に不可能です、為念)するくらい喧嘩売ってると思うんですけど、6000億円ほどそのようなオトボケあるいは喧嘩売り札が有ったということですな。というか多分喧嘩売ってる意識はあんまり無いかとは思いますが(苦笑)。
○ロンバート0.4%でしたね
総裁記者会見のテキストが出てからその辺の話をまたしますが、この0.4%に関しては「座りが悪い」とか「コール誘導目標から0.15%は異例に狭い」というようなお話をしていたようですな(ブルームバーグニュースより)。その割には本石町日記さんの所によりますと「ロンバートだけ単独引上げ」を否定していたそうで、それは別に否定する必要はなかったのではないかと思うんですが。
まあ今回3兆2000億円もロンバートが出てましたが、次回に0.25%利上げする時(がいつになるのか前途遼遠だと思うのですが)にまたまた駆け込みロンバートが発生することを勘案しますと、短期市場の金利コントロールがきちんと機能する事が確認できた時点で、しらっとロンバートの幅を拡大する事も有りだと思ってますんで、わざわざその道を否定するのはどうだったんでしょうかねえと思います。
まあ一応「ロンバート0.4%」が好感されたような感じになっていましたが、実際問題としてロンバートが0.4でも0.5でもGCレポや現先レートにそんなに直接的な影響は無さそうなので、あとは心理的な問題という所かと思います。木曜のオペやら金曜のGCなんぞを見てますと、まあ本日のコール市場が落ち着けば、以前どこぞで吹聴されていた「GCレートが0.4%でもしかしたらロンバート金利(当時だと0.5%の認識)まで跳ねることもあるかも」などというような状態にはならんという感じではございます。こればかりは蓋を開けてみないと判らんですが。
話は逸れますが、前回の量的緩和解除の前にも「解除後のコールが0.05%〜0.1%になるリスクも」とか吹聴している人がいた訳ですが、現実には当座預金が思いっきり引かれた2か月後になってやっと上昇したわけで、最初のは勘違いなのかもしれませんが、同じネタが吹聴されるのは勘違いじゃなくてポジショントークの香りがプンプンですな(笑)。
○まあ今後は経済情勢次第でしょうな
結局は物価指数と株価次第ではないかと思います。だと話がそこで終了しちゃいますけど、ディレクティブに関して言えば先行きの金融政策に関して「経済・物価情勢を丹念に点検しながら」と書いていますが、もう一つ注目されていたダウンサイドリスクに関する言及は特に見当たらずですし、同日公表された金融経済月報は相変わらず進軍ラッパが鳴りまくりんぐでございます。市場は「ロンバート0.4%」にやたらと反応していたような気もしましたが、ロンバートの衣の下に何気に鎧も見える感じが少々致しますな。「もう年内利上げ無し」って話もでまくってますが、平均株価が戻ってきたら意外に早く利上げの虫が騒ぎ出すのではないかという点はリスクシナリオとして見て置いた方が良さそうな感じ。
#まあ本日はそんなところで。
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2006/07/14
お題「GCレポ、現先金利のコントロール」
今日も今日とて思いっきりテクニカルなお話ですが。
○大変に素晴らしい国債買現先オペ
昨日午前の金融調節では国債買現先オペを実質8000億円実施したのですが、この期間が実にきめ細かい打ち方でして、オファー時点から「これは凄い」との声が(^^)。
8000億円の現先を14日→18日、18日→27日という2本立てで打ったのですが、14→18というのは今日から翌営業日でして、ロンバート大量利用の懸念ありの本日の翌日物にぶつけてきた格好、そして18→27は前日の共通担保オペの期間と同一で、勿論資金需給予想を反映して足を27日に設定してるんでしょうが、前日のオペとまるっきり同期間という事で、何となく金利下がらんかねえと応札するほうが思う(前日のオペで資金需要に対応してるから)期間。
ま、そんな事もありまして、14→18のオペは平均0.102%で最低0.095%となりまして(ということは0.1%以上の札もあったということですが、一昨日のGCレートから勘案すると低下してるからエエンジャネエノ)まあそこそこ落ち着きモード。18→27のオペ金利は平均0.334%で最低0.303%となりまして、前日の共通担保オペ金利の平均0.389%最低0.360%から大きく低下となりました。
で、まあこの低下を受けまして昨日のGCレポ取引(19日スタートの翌日物取引)は0.30%近辺まで低下して、前日比5BP位は低下した感じで、混乱モードから平静モードへ移行しつつあるといった感がございます。実は共通担保オペ金利は相変わらず高い(と言っても昨日のは期間が長いのでまあ単純比較しにくいですが)状態なんですが、GCレポや現先取引をする時に参考にするオペ金利が共通担保オペ金利から現先オペ金利に移ってきたようで、昨日のオペはGCレポや現先市場を落ち着かせる(って本当に落ち着いたかどうかはまだ判らんですが)効果が高かったと思われますです。はい。
何はともあれ昨日の現先オペの期間設定方法に拍手。午前中にT+1スタートとT+2スタートを2本立て(というか連続方式ですが)で打ったのは中々よく考えられた方法かと思います。
○レポ金利の跳ね上がりも抑えられるのでは・・・・
ということで、昨日の朝に駄文を書いているときは共通担保オペの金利上昇(というか高止まり、火曜のオペ金利も高かったし)→GCレポいきなり0.35%かよ!ってことで「利上げ(まだ決定してないですが)後のレポ市場大丈夫かよ」と思ったのですが、昨日のオペ結果とその後のレポ金利の低下を見ますと「金融調節で落ち着かせることできるじゃん」ってことで、これならまあロンバート0.5%でも心配ないぜって感じでしょうかね。
まあそもそもの話として、誘導目標金利0.25%に対してGCや現先が0.4%近辺で張り付いてしまったら、その時点で金融調節が上手く行ってないという話になりますんで、そういう意味ではロンバート0.4%でも0.5%でも実を言えば同じだったりするという指摘も現場的にはございまして(まあ期末期初だけですか)、あとはまあ心理的な問題に過ぎないという気もします。と、昨日の市場を見てかなり安心したあたくしなのでありました(^^)。
ま、ど〜せ同じなので最初0.4%にしておいて、市場が落ち着いているのでコリドーを広げてみるよってのも別に日和見だとは思わないですけどね。その点では本石町日記さんおよび本石町日記のコメント欄の大勢意見と違ってマル公0.5%にそこまで拘る気分にはならないです。現在の誘導ゼロ近傍+ロンバート0.1%は、上限0.1%(抜けることもありますが)で下限が名目ゼロ金利(だから実は純粋なゼロ金利政策とは言い難い)ですけど、誘導目標が0.25%になった時には下限制約が外れるのでスプレッドが0.1%のままだとしても実質レンジは拡大(まあロンバート0.35%は無いでしょうが)なんですよね。
#たぶんマル公は0.5%になるんでしょうけど。
○しかし共通担保オペの金利高いですな
昨日の共通担保オペですが、本店方式での実行で7月18日〜9月5日の期間。相変わらずレートが意味不明の高さで平均が0.406%の最低が0.381%となっています。いやまあ期間が長いからその分プレミアムが乗っても良いんですけど、それにしても期間中の現先利回りとかを予想するにその金利はちと高くないでしょうかって感じなのですが。
昨日の短期国債市場は全般的に確り(ロンバートの金利が0.4%になるんじゃないかという憶測が流れて買いが入ったというのもあったようですけれども)でして、前日に入札が行われた3か月FBが0.38%近辺まで金利低下してたんですが、共通担保オペだけ何か別世界になっているのは何か違和感ありまくり。他市場の動きや現先オペの金利(共通担保オペは午後に実施されたので、午前のオペ結果は判明している)とかの動きと整合性が取れてないのは何なんでしょ。
ま、共通担保オペを入れる人が何か全然別の論理で動いているとしか思えませんけど、何考えてるんだかって感じです。
○という訳でとうとう利上げですかそうですか
まあここまで来ちゃいますと利上げ確定でしょうし、まあ予想屋(ではないが)としては量的緩和解除の時から「7月利上げの可能性思いっきり大有りでしょう」と言ってた予想大当たりですんでこれはこれはって感じですけど・・・・そんなに急いで利上げする(まだしてないけど^^)必要があったのかはあたくしには謎です。
量的緩和解除をした当初は金利が逆に下がりましたが、5月の連休明けから(6月解除観測が急浮上したせいでもありますが)ターム物金利とかが上昇しだしてますんで、その観点からすると5月以降は市場金利上昇という形でそれなりに金利の引上げ効果が出て来てる筈だと思います。(追記:そう考えますと、株価が5月連休明けから下落しているのと、ターム物金利の上昇が期を一にしているわけですよ。現象面であって因果関係があるのかどうかは兎も角として)で、その影響を見極めつつアクションするならもうちょっと様子見ても良かったのかなあとも思いますけど・・・・
ま、ここまで短期市場金利が利上げを織り込んでしまうと、利上げして材料出尽くしにしちゃった方が却って市場金利が落ち着くんですけど、問題は「ちゃんと材料出尽くしにしてくれるかどうか」でございますわな。その点に関して物凄く懐疑的なあたくしであります。要するにちょっと株価が上ったり、政府のデフレ脱却宣言が出たりしたら、またまた利上げの虫が動き出すのではないかという懸念でございますな。頼むから今度こそちゃんと「利上げの効果を確認」してからにしてくださいね(はあと)。
とりあえず日銀の景気見立ての通りに経済情勢が向ってくれる事を祈ります。
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2006/07/13
お題「決定会合ですが色々と雑談を」
6時のNHKニュースの2本目がゼロ金利解除でしたが、無担保コールの誘導目標について「短期市場金利」という表現で、説明は「日本銀行が誘導目標にする短期市場金利を0.25%に引き上げる見通しです」って言い方をしてましたな。なるほど。
○0.125%引上げとか有り得ねえんですが
一昨日の引け後からユーロ円金利先物が急に上昇したんですが、この時聞いて回ったら「ゼロ金利解除後の目標金利が0.125%とかになる」って観測が突如流れたとのこと。あまりにも馬鹿馬鹿しいので放置してたら昨日の債券市場でもその話題で短いゾーンがしっかりしたとの後講釈(実際は何考えて買いが入ったのか判らんですけど)。
いやあのですな、0.125%への引上げなどという中途半端なことしかやらないのであれば引き上げない方がマシですし、そもそも0.125%だったら量的緩和解除と同時にそこまで利上げしてたと思う(以前そんな事を書いてた記憶がある)。
大体からしてGCレポレートがゼロ金利政策前提でも0.1%近くにある状態ですから、0.125%の引上げだとただの現状追認とあまり変化ない次第ですわな。となりますと、「ただの現状追認をしているのに利上げのアナウンスをした」ということで、利上げをすることによる政策効果が得られないのにアナウンスだけするという無駄玉撃ち行動という事ですから、まあ常識的に考えてそりゃねえでしょ。
で、まあこの後で書きますが、マネーマーケット方面ではそんな観測は完全無視で「無担保コール0.25%、ロンバート0.5%、GCレポレート0.35%」で動いている、というか昨日もまたまた金利が上昇していまして、金利が下がったのは6か月以降のゾーンでございますので、先行きの利上げペースがどうのこうのということに関する思惑なら兎も角、少なくともマネーマーケットで0.125%説は全く相手にされていない事がお判りになるかと思います。
なお、ユーロ円金利先物市場ですが、あれはカテゴリーは短期市場ですが、現状はマネーマーケットのヘッジとして機能してませんので短期市場とは言い難いものがございます。ユーロ円金先が動いてるから短期市場がこう考えているのは昨日のような場合は思いっきりピンボケ論議になります(勿論いつも短期と無関係に動くわけではないですけど)のでご注意ありたし。まあGCレポだの現先レートだのCPレートだのって言われても今幾らですかってのはベンダーとかで公開されてる訳じゃないから知らんがな〜ってのはあるんでつい金先を見たくなるのも判りますけどね。
○オペ金利高けえぇぇぇよ→GCレートも強い
昨日の資金供給オペですが、ついに18日スタートのオペが実施となりました。18日〜27日というショートタームのオペだったのですが、多分ゼロ金利解除されて新金利が始まるであろう初日からの金利の見立てが露骨に判る期間で8000億円のオファー。
結果は平均0.389%ってちょっと待てそれは何ですか状態のレートになっております。ここもとのオペ金利がやたらめったら上昇してるんで、まあそんな勢いなのかとも思いますが、この期間のGCや現先レートが平均で0.39%に達するとか真面目に考えないとそのレートは取れないと思うのですが、何の金利を見てもそんなレートで回っている物はございませんがな。どう見ても逆鞘です。本当にありがとうございました。
そんなこともございましたので、午後遅めの時間に行われた18日スタートの翌日物GCレポ金利も堂々0.35%近傍での取引となりました。14−18日のGCレポ金利が前日の最終で0.10%まで下がったのはありゃ一体全体何だったんでしょうなあ。
多分次回の積み前半は超過準備がある状態からスタートだから本来だとそんなに金利が上らない筈なんですけどって思うのですが、皆さんがこぞって足元で資金を抱え込むと金利は高止まりするわ準備預金の進捗は進むわという非常に香ばしい事態が発生する(積み後半の調節が苦労するという意味です)かも知れませんな。金融調節担当の人も大変ですなあ。
しかし0.35%でもちと高いが、まあ最初だから仕方ない面もあるのかなあとは思いますが、0.4%はあなたそれはマジっすか状態でございますな。
毎度申し上げますが、GCだの現先だのの利回りはターム物金利でありますところのFBだのCPだのの金利にまともに反映されるものでして、この辺の金利が上ると企業の調達コストにも跳ねるお話。つーことは、0.25%の利上げをしているように見えて実はもっと利上げ効果があるんですよウェーハッハッハという話になるかもしれませんなあという論点は正直マニアな話なので(あちこちでその話してる人いるんですが)、あまり話題になって暮れませんな。
#まあそもそも論で言えばFBの発行が市場の処理能力を超えているからこんなにGCのレートが上るのでして、日銀頑張って供給しなさいとツッコミ入れるだけでは話が発展しませんけど。
昨日のFBは0.40%にはさすがに絶対水準バイヤーが登場してたように見受けれられます(最後の最後には0.395%テイクン)ので、昨日の市場を見るとコールが0.25%でGCや現先金利が0.35%あるいはそれよりも高くて3か月FBが0.40%という訳の判らん価格形成になっておりますわな。まあどこかが変なんでしょうけど。
○ふと思ったのだが・・・・下限制約を勘違いしてないか?
とまあそんな感じでやたらめったら盛り上がるレポというよりはオペの金利なのですが、色々と妄想しているうちにふと思ったのは、今度実施されるであろう0.25%への誘導金利引上げの「0.25%」をゼロ金利の「0%」と一緒くたにして考えてないかってお話。
「ゼロ近傍」が誘導目標の時は、名目ゼロ金利には物理的に下限制約がある(日銀当座預金金利はゼロ、各種オペレーションの金利はゼロおよびマイナスにならない)ので、「誘導目標ゼロ近傍」と言いましても、実際問題としては「下限がゼロで上限を抑える」という形になるわけで(為替スワップの関係でマイナス金利がどうのこうのという話はとりあえず措く)して、この場合のゼロは目標といいつつ下限金利でもあったわけですわな。
ところが、誘導目標が0.25%になった時には物理的な下限制約は無い(日銀当座預金への付利が行われればその金利がスタンディングファシリティになりえますが、現状では日銀当座預金金利はゼロ)ので、「平均して0.25%近辺になるように」(どういう表現になるのか知りませんが、まあそんな感じになるんでしょ)誘導した場合には加重平均金利が0.25%を下回る日だってある筈ですわな。何かそのあたりに妙な勘違いがあるんじゃないかって気がしてくるこのオペ金利の上昇でございます。
ええ勿論上記の話はあたくしの脳内妄想の世界でして、まさか皆様そんな勘違いしてないと思うんですが・・・・・どうもこのレートは。
○いやあしかし7月にゼロ金利解除ですか
4月に量的緩和解除のコンセンサスが出来上がっていたのに強引に地均しして3月解除を行った時にあたくし「3月に解除すると7月の利上げに間に合いますなあ」などと申し上げてましたが、日銀様のシナリオ通りに7月に利上げでございますかそうですか。
そういえばその前には「量的緩和解除してゼロ金利を長期間継続するのであれば別に量的緩和解除する意味が無くて、『量的緩和解除したという結果だけが残る』ので日銀にリスクだけあって意味無いんじゃないの」などとも申し上げてましたが、結局量的緩和解除してから当座預金残高を引いた時点でさっくりと金利引上げでございますなあ。
・・・・などと珍しく当たったので自慢するあたくしですが、まあ当たったと申しましても、そんな威張るようなもんでもなくて、同じような指摘をしている人は結構いたと思うんですが、あの「物価安定に関する理解」でゼロ金利が長期化するとかいうのは大いなる勘違いでしたなあという所でございますな。
で、今回ですけど、誘導目標は0.25%ですが、ロンバートは市場コンセンサスはたぶん0.5%(少なくとも短期では)だと思うのですが、現状でオペ金利がこんな有様で0.5%になった時には日銀の短期金利のコントロールがきちんと効くのかどうかは色々言われそうな感じではありますな。まあ最終的には収斂するんでしょうけれども、その「最終的には」に2週間も3週間も掛かっているとあちこちから文句が出てくるのではないかと思料される訳でして、今回は0.4%でも良いんじゃないのっては思いますが。落ち着いてきたらorその次の利上げ時に引き上げればよろしアルね。
「市場機能回復の為には一時的な金利上振れも容認すべき」という見解も判らんでもないのですが、その「一時的」が経済に悪影響を与えるような幅や期間になるようであれば、やはりそれはイカンと思う次第でして、まあそこまで来ると皆さんの感覚の世界になるので議論しにくい所ではありますが、市場機能回復に熱心になる余り、金利引上げ効果が過剰になる事を忘れてはいかんと思うのでございます。いやまあそんなに長期間に渡ってショートターム物の金利が高止まりしないとは思うんですが、日銀的には0.25%でもまだまだぶっちぎりで低水準と思っていそうな気がするのがちと気掛かり。
#うだうだ書いてたら長くなってしまいましたな。
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2006/07/12
お題「短期市場雑感」
あまりにも派手派手に動くので他市場をフォローする暇なし。
○どう見ても過剰反応です
昨日実施された資金供給オペはまたまた金利上昇。8月30日エンドの本店オペ(共通担保資金供給です。以下面倒なので本店オペとか全店オペとしか書かないっす)の平均落札利回りが0.374%となり、前日の全店オペの0.357%からなお上昇。昨日のオペは前日のと比較してスタートが1日遅いですが、一般的に全店オペの方が本店オペよりも金利が高めになる(応札できる人が多いから)という傾向を勘案するとやっぱ「金利上ったなあ」という感じ。
えー、このレートですが、こりゃ計算するまでもなく今後の足元のGCや現先利回りが平均して0.35%とかいう数字になってしまう(追記:正確には0.4%です。計算するの面倒だったので手抜きな書き方しちゃいましたが、GC現先が0.35%ベタでも高いのに、0.4%はどう見ても高杉新作です。本当にありがとうございました。)訳ですな。まあ毎日足元でファンディングしてロールオーバーする場合のリスクプレミアムが乗っていると言う事でもあるんで、必ずしも期間中の予想GC/現先レートが平均0.35%を上回るって訳ではないとは思う(というか思いたい)のですけれども・・・・・
んじゃ一方で他の金利はどうなのよと言いますと、業者間取引で8月14日エンドのFB388回が0.29%(手元のメモが自分の字だというのに解読不能なんですが、確かそんな感じかと。違ってたらゴメン)とかで出合っていたようでして、まあ足は違うけどFB利回りVSオペ金利で比較すると、オペの金利は大幅に高いという感じ(ちなみに、昨日の本店オペ7月24日エンドの平均落札利回りが0.294%)ですわな。そして昨日はこんな時期でもまあCPの発行もあったようでして、最上位格付けの1か月ものCPが0.34%近辺だったらしいのですが、これまたオペの金利の方がど〜考えても高いです。
勿論オペと短国セカンダリーやらCPでは捌けるロットが全然違うので、こういう訳の判らん時期には単純比較だけでは測れないものがある(流動性確保という観点がある)のですけれども、それにしてもまあこりゃ随分金利が上りましたなあという感じです。
正直、リスクプレミアム織り込みすぎなんじゃねえかと思うのですけど、あちこちヒアリングしてみると意外に「日銀はGCや現先の金利が瞬間的に跳ね上がっても別に気にしない。平均的に高いと気にするけど」って意見の人が多いようで。瞬間的というのが期末期初だけなら兎も角、やれ国債発行だやれ財政揚げ超だと一々理由をつけて現先やGCレートが跳ねるようなマーケットになるとそれこそ「リスクプレミアム」が付いて恒常的に金利が高止まりするんじゃネーノって気がするのは気のせいですかねえ。
ま、ロンバートが幾らになるかも判らんので何事も蓋を開けて見ないと判らないですが、「ベースレート0.25%の引上げと言ってたのに、実質的に0.35%の引上げになっているのは如何なものか」とか言われない程度には運営すると思ってるあたくしは市場機能の回復を理解してませんですかそうですか。
○14−18のGCレポ取引メモ
いやはやよく動きましたようで。
当初は何となく0.15%−0.25%の気配って感じだったようですけれども、誰かが0.25%で少額の出合いをつけた所からスタートとなったようです。
しかしまあ0.25%って18日スタートならともかく、ロンバート0.1%で借りれるんだからそりゃ高杉晋作でしょうという感じで、その後は0.20→0.18→・・・と物凄い勢いで金利が下がって、最終は0.10%というロンバート水準での出合いもあったやに聞いております。いやあの0.25%は高すぎだと思うが、別に0.1%のGCを買う(=資金放出する)のなら準備預金積んでおけば良いのにとか思っちゃう(準備預金非対象なら仕方ないけど)レベルで、それまた面妖なというお話ではございますが、とにかく訳の判らん動きではございました。
いやまあその前に年寄りじゃなかったベテランな知人たちと「で、どうなんよ」って話はしてたのですが上と下の金利が何か想定をぶち抜けていまして、「何なんですかこれは」と呆れてしまいました次第。まあ余りにも笑えてしまったのでメモメモということで。
しかしまあ「14日は資金を抱え込む向きが多い事が想定されるので資金が出にくい」って観測がメジャーだったというのにこの有様は何と申しますか実に香ばしいですな。
○ところでFB入札ですが
昨日のオペ金利上昇に伴い、本日入札が行われるFB398回(償還日10月16日)のWI取引はとうとう0.40%オファー。既発の10月償還ものはそこまで行ってないようですが、どうも既発10月償還物も業者の持ちっぽいですし、3か月で0.4%とはそりゃまた凄い金利ですねえとは思うのですが、需給が宜しくないので仕方なし。
今回の新発に関してはさすがに水準が0.4%ともなれば決定会合直前とは言っても水準から買いはあるでしょうとは思いますけど、これが毎度お馴染みの既発債からの入替ベースとかで買いにこられると既発が重くなりそうで中々しんどいでしょうな。まあ皆が懸念しているほどGCレートが跳ねなければ落ち着くとは思うんですが。
まあ一応7月ゼロ金利解除後に次回利上げを行う場合最速で10月13日の決定会合という可能性は無いわけで無い(無理でしょうけど)というのはあるけど、さすがにそこをリスクシナリオで見に行くのは時期尚早でございましょう。
・・・と書いて気が付いたが、10月16日償還だから「次の次」の政策変更は全く関係ないですな。わははのは。ま、ゼロ金利解除後の短期市場のリスクプレミアムと申しますか、市場の安定度合いをどの位で見ていくかという部分がFB利回りに反映してくるんじゃないのかなあと思ってます。
ではでは〜♪
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2006/07/11
お題「市場は利上げ態勢」
本日午後からは14日スタートの翌日物(=14→18日)のGCレポ取引がスタートするのでまあそちらには注目したいところでございますな。という訳で本日もその手の話。
あ、それから昨日の訂正なんですが、10月の決定会合は13−14日じゃなくて12−13日でした。積み最終日の週末というのは正しくて、月曜から新積み期間に入るという形になっていますです。謹んでお詫びいたします。
○足元はちぐはぐな状態でタームは上昇
昨日の短期方面ではコールレートが午後からいきなり上昇(国債売現即日のレートが妙に高かったせいもあるでしょうが)する側からGCレポレートは先週後半からの流れを引き継いで低下して0.05%台(無担コールの加重平均金利は0.037%)。
何だかモノによって動きが逆だったりする訳でして、実際に何がどうなっているのかは相変わらず市場の片隅でクダを巻いているあたくしにはイマイチ判りかねるものがございますが、勝手に想像致しますと、これもまあ利上げ準備態勢の一環かなあと。と申しますのは、運用サイドは利上げ確定前になると運用を足元に持っていく傾向がある(長いのを出して利上げになった時に言い訳しにくいと言うことでしょ。本当はターム物金利が利上げを過剰に織り込んでるならタームに出すべきなんですけどねえ・・・)ので、リアルマネー系の足元運用として現先市場に金が入ってGCが影響されて金利低下。コールの上昇はよく判らんけど、最後のストレステストでもやってるのかなあ。ま、勝手な妄想なんですけれども、市場間で資金が回ってるんだか回ってないんだかよく判らん動きになってます。
一方でターム物金利は相変わらず上昇。
CPのレートは相変わらず上昇傾向(あまり発行が無かったようですが)で6か月TBとか1年ゾーンとかはゲロゲロの巻と、ターム物金利は相変わらず上昇してますし、全店の供給オペ8月29日エンド(これ何て略称で言えばいいんでしょ?)の金利は平均で0.357%となってまして、利上げ後のGCレポや現先の金利水準が思いっきり0.35%(もうちょっと高い)というのを織り込みに逝ってる(勿論7月利上げで)水準まで上昇しております。
いやあの足元の誘導水準0.25%に対してその金利は高くねえかと思うのですが、どうも資金出しサイドのポジショントークと不慣れな取り手の不安心理が上手にマッチしているようで、誠に遺憾なことでございますわな。だいたいからしてGCや現先レートは毎度申し上げているように、FB金利やらCP金利、中長期国債のファンディングコストなど「世の中」の金利体系に思いっきり影響を与えるものですので、日銀の誘導目標は確かに無担保コール翌日物金利ですけど、GCレポやら現先レートが跳ね上がるのを放置する訳ねえじゃんという想像は働かないのかおまいらと小一時間ですわな。
というか、そのあたりのオープン市場金利のうち足元の部分がコール誘導目標水準から大幅に上方乖離(何を持って大幅と言うのかは議論の余地がありますが、0.25%に対して0.35%〜0.4%が恒常的なのはあたしゃ大幅に上方に乖離と思うが)しっ放しだったら、金利政策の誘導目標は一体全体何なんですかという批判が起きるでしょ(まあそもそも大昔と違って今の無担保コール翌日物市場は限界的な市場になっているので、その金利が誘導目標というのもどうなのよって議論もありますが、ややこしくなるのでスルーしとく)って思うんですけどね。
ついこの前までは利上げ後のファンディングコストを0.25%前提にしてFBなんかのレートが値付けされてまして、「それもまた妙だろう」と思ってたのですが、今度は利上げ後のファンディングコストが0.35%になるんじゃないかって勢いになっているのは実に香ばしいと申しますか、極端から極端に振れる世の中ですなあという感じです。
ま、そういう市場じゃないと商売のネタが無いのでそれはそれで別に構わんのですけど(苦笑)。
○相変わらずの誤解なのか、それとも・・・・
例によってブルームバーグニュースのネタにちと絡んでみます。
と申しますのも、どうもここの短期市場解説記事は資金出し手に都合の良い話ばかりやたらと流布されてて、取材する相手に偏りがあるんじゃネーノって思う(ブルームバーグ社のポリシーとして、市場関係者のコメントは「所属を明らかにする」っていう仕切りになっているので証券会社の現場の人間からコメント取っても報道できない(社内仕切りとして正式にコメントするのはアナリストの場合が多い)というのもあるとは思うのですが)ので、ここはバランスとらナイトと思う訳でして(笑)。
昨日の10時43分配信の14日の翌日物金利に関する記事の中で、『必要以上のロンバートはモラルハザード?』って小見出しをみてぶっ飛んでしまいました。記事の該当部分を勝手に要約すると・・・
14日はロンバート貸出の金利が0.1%(金融政策決定会合で公定歩合の引上げが行われ、即時実施になればその後は変更後の金利になる)なので、14日にロンバート貸出を利用して当座預金残高を積み上げておけば、16日、17日に0.1%で準備預金の積みができてウマーなので、その時の市場金利次第ではロンバート借り入れが殺到するかもしれませんってお話。で、その記事中で唖然としたのはこんな一節があったことでして、曰く、
『しかし、準備預金の積み上げを稼ぐためだけに、利上げが実施される直前の隙を狙って、ゼロ金利時の特別制度を利用して、必要以上の資金を確保することについては「モラルハザードだ」の意見が多い。』(ブルームバーグニュース10日10時43分配信記事より)
えーっと、準備預金の積み上げニーズは立派な「資金需要」(ブタ積みの方がよっぽど立派じゃないと思いますけど、笑)なんですが、「準備預金の積み上げを稼ぐためだけに」ってそりゃ一体全体どういう意味なんでしょうかねえ。それからロンバート制度は「ゼロ金利時の特別制度」じゃなくて金融調節におけるスタンディングファシリティとして機能するもんなんですけど(昨日ご紹介した6月30日公表の日銀ペーパーを参照のこと)。記事ではロンバートを『本来は異常時対応である補完貸付』とか書いてまして、おまいら日高記者からちゃんと教えてもらえと小一時間でございますわな
そんなわけで、市場金利が上ったらロンバートに行くのは制度の本旨に叶った行為だし、積み期間中に(今回利上げして18日から新金利適用であれば積み3日目ですな)政策金利が変更になる時に意図的な積み進捗操作が行われるのも昨日ご紹介した日銀ペーパーで指摘されている通り。それを「モラルハザード」とか言い出すのはロンバート制度の趣旨を理解しないで言ってるんじゃなければ、金利が上って欲しい人のポジショントークとしか思えませんですわな。いやはや困ったもんだ。
ちなみに、別記事で「公定歩合が0.5%になった時に、大手銀行が運用に慎重になればレポ金利が0.5%付近まで上振れると警戒している可能性」ってのを指摘してましたが、これは出し手の脅しポジショントークというよりは資金取り手が「公定歩合を0.5%にすると大変なことになりますよ」って逆のポジショントークをしているような気もしますな(苦笑)。うーむ、ポジショントーク満載ですなあ。
多分なんですけど、瞬間的に変なことはあるかもしれないけど、そんなに極端な事にはならないと思いますよ。でも何か変な誤解話が堂々流布される状況みてるとちと怖いものは感じますけどね・・・・
#と、うだうだとクダ巻きトークで恐縮至極
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2006/07/10
お題「日銀の金融調節レポート」
ちと前の話ですが、日銀から『主要国の中央銀行における金融調節の枠組み』というのが出ておりました(6月30日)本文はPDF22ページ(最終ページは参考文献リスト)でして、本石町日記さんが「お勧め」って紹介してましたのでお読みになった方も多いかと存じます。確かにマジでお勧め(ただしマニアの方のみ)。→http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/research/data/ron0606c.pdf
○これは「個人的見解」ペーパーではございません
そのレポートの冒頭部分を紹介したページはこちらです。→http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/research/ron0606c.htm
で、ついついあたくし本文読み出す前に妙な点に着目しちゃうのですが、このペーペーよく見ますと普段良く出てくる「日銀ワーキングペーペーシリーズ」と違いまして、毎度お馴染みのヘッジクローズであります所の『なお、本論文の内容や意見は、筆者個人に属するものであり、日本銀行および企画局の公式見解を示すものではない。』というのがございませんな。
まあ内容に関しては日米英にECBの金融調節の枠組みに関する説明ではあるのですが、何気にしらっと重要な論点が転がっているようにも思えますので、個人的見解ではない解説レポートだというのも中々奥深いものがあるかと存じます。
#しかし何でそんな点を最初に書くんだか>自分
○準備預金制度は金融調節の円滑化に寄与
いきなり15ページに飛びまして、3.(3)の『法令または契約に基づく中銀当預の積み立て制度』ってところに参ります。上の方で言及した本石町日記さんの所でも解説がございましたが。
『以上では、主に中央銀行による資金の供給・吸収に焦点を当ててみてきたが、金融調節を円滑に実施するためには、同時に、中銀当預に対する需要が安定的かつ予測可能であることが不可欠である。』
『既に述べたとおり、中銀当預は民間金融機関の様々な取引にかかる資金決済に利用されるため、一義的には、中銀当預に対する需要はそうした資金決済を円滑に行っていくために必要とされる残高(資金決済需要)となる。しかし、個々の民間金融機関の資金決済金額の動きに応じて、全体としての資金決済需要は日々変動し、中央銀行がこれを予め正確に予測することは必ずしも容易ではない。』
という訳で、準備預金制度があると便利ですよってお話になります。
『こうしたなか、中銀当預の残高について、日々の資金決済需要を安定的に上回る一定の水準に維持するように促す仕組みが設けられていれば、中央銀行による中銀当預に対する需要の予測は容易になり、金融調節を円滑に行うことが可能となる。』
実務的な論点では全く仰せの通りでございますが、この点に関して経済学的には準備預金制度というのはどういう扱いになっているのでしょうかというお話を本石町日記さんがしてまして、ここから先の話をするとただの2番煎じもいいところなので、本石町さんの下記エントリーをご覧下さい。→http://hongokucho.exblog.jp/5176437/
○積み期間と金融政策決定会合の関係
20ページのコラム「BOX2」の『ECB、BOEにおける積み期間やオペ期間の変更』部分を読みつつ「ほほう」と。
『法令や契約に基づく中銀当預積み立て制度における積み期間の途中に、金融政策決定会合の開催が予定されていると、時により、目先の政策変更を見込んだ民間金融機関の裁定行動(意図的な積み進捗操作)を通じて中銀当預に対する需要が変動し、オーバーナイト物など、ごく短期の市場金利が政策金利と整合的な水準から大きく乖離することがあり得る。』
この文を一読しただけで何の事か判るのは短期金利が動く時代をご存知の方でしょうな。一応しつこく説明しますと、準備預金の積み方式は対象期間(日本の場合だと当月分の積み期間は当月16日から翌月15日まで)の積数(要するに合計残高ですわな)ですので、極端に言えば初日に全額積んでしまえばそれ以降は準備預金の積み不要となりますが、積み期間中に政策金利が動くという予想をした場合には、積みのペースを速める(金利が上ると思った時)とか遅めにする(下がると思った時)という動きがあるというお話ですな。
この事例って昔々短期金利が動いた時代にはよくあった話でして、政策金利が下がると思う→準備預金の積みを遅らせる→市場の資金需要が大いに減退→コール金利が勝手に下がりだす(→怒りの積み下調節あるいは日銀貸出炸裂^^)というのは何度か見た覚えが微かにございますな。
ちなみに、コラムでも書いてますが、オペが金利指値方式の場合は応札の過熱(金利が上ると思った時)や札割れ(下がると思った時)という形で反映されますわな。従いましてこういう話になります。
『オペの金利を政策金利としているユーロエリア(MROの最低応札レート)や英国(Short-termRepo
OMOsの適用レート)では、こうした事態が発生することを防ぐ観点から、積み期間やオペの実施日・期間を金融政策決定会合の日程と整合的に設定することにより、金融調節運営の円滑化を図っている。』
なるほどそうですな。ちなみに先週もちと書きましたが、今月の金融政策決定会合が行われる7月14日は積み最終日(惜しくも15〜17が3連休で、次の積み期間初日に掛かりますので、厳密な意味では積み最終日+積み初日になります)になりますので、金融政策変更をするのには技術的には都合が良いんですよ(^^)。ちなみに、金融政策決定会合の日程を調べても(実は10月会合も週末の14日(訂正:13日)に実施^^)別に政策的なインプリケーションは発生しない筈ですので勘違いしないようにお願いします。
と申しますのは、金融調節の枠組みという技術的な問題に関して日本と類似しているFRBの場合について同じ20ページの脚注にこんな記述があるわけで、日本の枠組みの場合は別に積み期間中に決定会合があっても無問題な訳ですわな。
『米国では、FOMCが通常積み期間中に開催され、政策金利の変更は直ちに実施されるため、意図的な積み進捗操作を行う誘因が働き得る仕組みとなっており、翌日物の市場金利は政策変更を先取りして動く傾向がある。もっとも、FRSでは、オペの金利は、応札レートに制約のない金利競争入札によって市場動向を反映するかたちで形成されることから、オペの応札過熱や札割れといった事態は比較的生じにくい。また、FRSでは、積み進捗操作に伴う需要の増大をある程度吸収するかたちでオペを運営している。』
昔の日本でも「翌日物の市場金利は政策変更を先取りして動く傾向がある」というのはございましたわな。ただし当時は市場下限金利としての強力な最終兵器「日銀貸出」がございました(ただし低め誘導政策始まってからは最終兵器は使えなくなりましたが)ので、下げ方向であまり無茶な先取り行動はできなかったような記憶も。まあ「怒りの積み下調節」とか色々面白かったですけど(^^)。
同じ脚注でECBについてこんな記述があって「なるほど」と思いました。
『ECBは、当初、政策金利をMROの適用レートとしていたが、利上げ局面においてオペへの応札が過熱する事態が生じたことなどを受け、2000
年6 月にこれをMROの最低応札レートに変更した。2004 年3月の見直しは、利下げ局面においてオペの札割れが生じやすいことを踏まえて実施されたものである。』
なるほどなるほど。
#と、マニアなお話をしてオチも無く本日は終了。
と思ったのですが、一応一言。金融政策の話になりますと、日銀サイドが金融調節の技術的な論点にすぐ話を持っていくとお嘆きの皆様におかれましては、まあこういうのも是非お読みになると宜しいのかと。
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2006/07/07
お題「短期ゾーンがいまさら金利上昇・・・」
今日は短いゾーンの相場後講釈を簡単にという感じで誠に恐縮ですが。
○3か月金利がちょっと上昇
昨日は前日の流れを引き継ぎましてTBFBとか1年ゾーンの利付債なんかがヘロヘロになっていたようでございます。利上げの蓋然性が高〜くなってきた今更になって売り売りになるというのが実にワケワカランのでございますけれども、まあこれが今の短期クオリティなので一々驚かないのが吉かと。
3か月物のFBで見ますと、昨日は前日に入札が行われたFB397回が10月10日償還ですが、これが前日比1毛くらい甘い0.385%とかのレベル(何か値付け師が0.39%を叩いたらしいのですが)で、まあそれは良いとしまして、既発ゾーンがまたもヘロヘロ。
1週間前に0.32%とかで入札が行われたFB396回も397回並みにヘロヘロですし、前週まで妙に買いが入って強かった9月後半償還のFBがどうもダメダメの状態のようですな。前週の入札の時には軒並み0.27%だった9月後半償還物のFBは(水準感はちょっと微妙なのですが)概ね0.31%あたりはオファーのようでして、「利上げ後のGCレポレートへの思惑」とやらが物の見事に直撃しているようですな。
ま、それで思うのは「買い方の皆さんだって7月か8月に利上げって予想してた筈なのに、その時のGCや現先レートについて考えてなかったのかYO!」って所なのですけど。正直今更売りが出てくる意味判らん。ついこの前までは「3か月の0.35%には買い意欲が物凄い勢いでありますなあ」とか言われてまして、ああそれって7月利上げをかなり織り込んでもそうなんでしょうなあなどと思ってたんんですけど、いざ0.35%を抜けて見ると0.4%に接近とはドウナットンジャですな。
さてまあそんな状況であった短期国債方面ですが、CP方面では昨日はスポットスタートが10日になりますので、そこそこの発行が見られました。正直、既に価格形成が7月利上げを完全に織り込み(正直織り込みすぎの気もするんだが、2月末と同様に・・・)に逝ってるので「利上げ前に資金を確保」もへったくれも無いとは思うのですが、それはそれで発行体様におかれましても大人の事情もおありでしょうから余り野暮なことは申すまい(・・・って言ってるじゃんかよというツッコミは却下^^)。
で、金利が大きく動く時にはTBFBに対して割と遅行性があるCPちゃんなのですが、どうも昨日はさっくり追随して上昇したらしく、3か月の最上位格CPで0.4%台に乗ってしまったようでございますな。一応期末越えというのはありますけど、それにしてもここへ来て0.4%台というのはちと上りましたなあ感が致します。
この動きがFB方面に波及しちゃうのかは正直よーわからんのですが、CP金利が上昇してる背景には最終投資家が利上げとその後の現先からターム物の利回り形成を見極めてから動きたいということを考えていることがあるのかもしれませんなあ(ディーラーは既に在庫重いでしょ)と感じる昨日の動きでした。
○1年方面も弱いようで
3か月方面を見るのに多忙のため1年ゾーンは今一歩見てませんがメモメモ。
ここの所1年ゾーンの既発利付債もダメダメのようでして、5年20回債だの194〜196回債だの、つい2週間前にはエライ勢いで強くなってたものが弱いという何だかな〜状態のようですわな。買うときは踏みのような買い方で、売るときは投げのような売り方というのはいやはや何とも。
6か月に関しても弱めですが、まあここのゾーンは品薄をいい事に妙にスクイーズっぽい動きが起き易くて、割高になりやすいゾーンでしたので、まあ入札で需給が変ったところで売られてご愁傷様ですが、昨日は嫌がらせのように値付け師による0.475%ヒットとかあったようで、つい先週の既発が0.37%(新発TB404回と1か月償還が違うので単純比較できませんが)ですよウェーハッハッハとやっていたのが幻のようですな。
しかし最初にも書きましたが、もう利上げですよって煮詰まりまくっているこの期に及んで「利上げ後のGCレポレートが高いかもしれない」とか言われだして相場が動き出すってえのも「おまいら今までこんな大事なことをちゃんと考えて無かったのかよおいおい」って言いたくなりますな。「泥棒を見て縄をなう」というお馴染みの言葉を墨痕鮮やかに大書して贈呈したくなりますな。マッタクモウ。
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2006/07/06
お題「GCレポ金利に関する愚考続き」
さて本日も短期のテクニカルなお話で恐縮です。
○足元金利とロンバート金利の関係
オペ金利上昇のあたりからマル公が幾らになるのかという話題が出ていまして、毎度お馴染み本石町日記さんもエントリーを→http://hongokucho.exblog.jp/5186204/
足元の誘導目標金利が0.25%になった時のロンバート金利(=公定歩合)との幅が現状の0.1%からどこまで広がる(まあ広がっても0.25%ですけど)のかという話題になっているのですが、コールだけの問題だったらマル公が0.4%でも0.5%でも正直どうでもいい話。問題はレポ市場の金利がどうなるのよって話かと。
で、まあ昨日の駄文で利上げ後のGCレートがどうなるのよという愚考をオペ金利から逆算する形でお話しましたが、このGCレートが何らかの状況(期末要因とか)で上昇した時にロンバートが概ねの上限メドになる(暫く前にもGCレポが0.12%とかまで上ってたこともありましたけど)事を勘案しますと、誘導金利とロンバート金利のスプレッドが小さい方がGCレポ金利が安定しやすくなるでしょうという考察もございます。
で、そのGCレポ金利の動向はまともにFB利回りに反映して来るのは昨日も申し上げた通りですし、GCレポ金利が証券業者の在庫ファンディングのコストにまともに跳ねて来る(基本的に証券会社は商品として保有している債券はレポ市場でファンディングをつけますんで)ことからしますと、GCレポ金利が妙に高いところになっちゃいますと、現物債のファンディングコストに反映→現物価格下落=金利上昇というお話にもなりますかな。まあ中長期国債に関してはレポ金利が0.1%違うこと自体、日々の価格変動から見れば微々たる世界ではございますけど。
まあ現状のGCレポ市場環境を見てますと、資金の出し手はご案内の通り大幅に偏在というか寡占状態。資金の取り手は証券業者という図になってますが、どうも双方ともゼロ金利時代しか知らん人が大勢いるので何かこう不安心理というか不慣れというか、年寄りから見ると何だかなあって動きをよーやらかしてますので、ロンバートの支えが外れると暫くは不安定化するのは避けられないかと思います。
で、そうなった時に日銀のオペレーションでレポ金利を(直接働きかけは厳しいですけど)それなりにコントロールできるのかどうかというのがポイントになるかと思います。ちなみにあたくし思いまするに、まあGCレポ市場金利が無用に跳ねた場合にオペレーションで打つ手は幾つか考えられますので、そんなにナーバスになる事はないかもしれません。
「市場機能復活」と言っても、金利政策をやってるんですから無担保コール翌日物金利だけ誘導するけど他の金利は市場にお任せ知らん振りというのはあり得ません(と思う)ので・・・・・
何か肝心のマル公が幾らになるかと言う話をスルーしておりますけれども(苦笑)、まあレポ金利の跳ね上がりをそれなりに抑えるオペレーションが出来るのでしたら(出来ると思いますが)0.5%でも別に無問題だし座りが良いという話になるかと思いますが、まあ量的緩和解除→ゼロ金利と来ているリハビリ期間中という認識で行くのであれば0.4%という(本石町日記さんによりますと^^)中途半端な水準に今回は置いて無用な不安心理の台頭を抑えるのも有りではないかと思うのですが。
例えば脳内妄想ですけど、まずは0.4%にしておいてからレポ市場などの金利が落ち着くのを見極めて(どこぞの某著名ストラテジスト様のように「金利上昇してるので現状容認で」行うのは論外)から公定歩合だけ後から0.5%に上げる(市場が落ち着いていれば上げても無影響)というのはどうでしょう。まあその次に利上げ(いつの事やら・・・)する時に幅を拡大すればいいだけの話ですが。
そういや「国際的に見て100bpくらいあるのが普通」という論もどこかで拝読した覚えがあるのですが、高金利時代からやってるものが金利引下げになってそのまま100bpってのと、これから制度が本格稼動する状況でしかも超低金利って状況ではそもそものスタートラインが違いますので、一緒くたにするのは無理があると思いますな。
○未体験ゾーンと言うのは恐ろしいものらしく・・・・
先ほども申し上げましたが、昨日の駄文ではオペ金利から逆算したGCレポ金利の雑考。結論は「0.3%〜0.35%というあたりは短期金利が0.5%近傍の低め誘導時代のインターバンク金利と現先金利の関係から見ると高い(足元から0.1%は高いでしょ)けど市場環境の変化を勘案するとまあそんなもんかもね」というのでありましたが、よくよく話を聞いて回ると色々と香ばしい見方も流布されているらしいですな。
ロンバート金利が0.5%になったらGCのレポ金利も0.5%近くに跳ね上がるのでは無いかと心配(意訳)というような話があると聞きつけた知人が「んなアホな〜」と教えてくれましたが、どうもマジでそういう話が出てるんだなあと思ったのは昨日のブルームバーグニュースでの本日の短期市場解説記事(昨日のお題は「FBが0.38%台に上昇、来週の利上げに一段と現実味」って奴で15:37の配信のものです)でして、そこに大手銀行のトレーダーのコメントとして『金利回復によって取引が落ち着くことを考えれば、予想されるロンバート貸出金利0.50%にレポ金利が張り付くことはあり得ないと指摘』てのを見た時。
こう指摘するということは世の中のどこかで「あり得るかも」という見方が流布されているということの裏返しに他ならない訳でして、まあこんな事を改めて取材で指摘させられるトレーダーさんも呆れてたと思いますが(^^)、しかしまあどこのアホウがそんな話をしてるのか意味が判らんというか脳味噌に虫でも涌いてるのではないかという感じでざいます。ゼロ金利時代しか知らん人たちは何言い出すか判ったもんじゃないでしゅな。オソロシオソロシ。
ところでこの記事によるとレポ金利が0.35%だという話になってますが、それちょっと高くねえか??0.35%〜0.4%とかいうのにはポジショントークの香りを感じますけど・・・・
○金融政策に関する情報管理を徹底して欲しいのですが
一昨日も書きましたが、相変わらず湯気ポッポーなので。
昨日の日経金融1面左上のコラムは滝田さん執筆。で、そこを見たら『事務方はゼロ金利解除を政府に打診し始めた』という記述(実際はここの間にもうちょっと状況説明があったのですが、資料が手元にないので引用途中部分を割愛していることをお断り致します)があってちょっと嘆息。
「打診する模様」ではなく「打診し始めた」って書かれるのは、要するにそういう行為があるという事が流布されているという訳ですわな。一昨日は東京新聞の記事について湯気をポッポーと立てて駄文を書きましたけれども、読売新聞でも「ゼロ金利解除の方針が4日固まった」というような記事が出てたらしいですし、どう見てもリークです。本当にありがとうございました。
でね、どこの誰が何の意図でリークしてるのか知らんですけれども、金融政策に変更が出るとか、皆が注目してる展望レポートがどうなるかとかいうような時になると毎度毎度お馴染みの如くどこからかリーク情報のようなものがホイホイと新聞紙上を賑わすことに関してはあたくし非常に腹立たしく感じてるんですよ、いやマジで。
#「打診し始めた」って書く滝田さんにも何か失望というか脱力です。
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2006/07/05
お題「短期のマニアなお話で」
ミサイル発射でどうのこうのという話に関してはこれ書いてる時点で情報が判らんので保留。米国の独立記念日あんどスペースシャトル打ち上げにぶつけた嫌がらせというかボクチャン構ってくれなきゃヤダヤダ状態なのかなと直感的には思うのですが、軍事知識はドシロートなのであまり良く判らん。
で、昨日の短期マーケットは7月利上げを完全に前提にした動きになってますんで、あたくしと致しましても利上げの是非がどうのこうのではなくて、利上げ後の世界の話を申し上げたいと思います。
○利上げ後のGCレポや現先レートへの思惑
昨日のオペ金利はまたまた上昇。7月6日→8月7日のCP買現先が平均0.263%で、7月6日→8月15日の共通担保資金供給全店(ちなみに同じエンドで前日に本店方式で実施)が平均0.266%となりました。
えーっと、手前が7月15日までで、16日からレートが上る(実際は15日が土曜なのでそこで分けて計算するのは妙なのですが、14日の決定会合で誘導目標が0.25%に上った場合にコールなどが14日に上昇するのか18日に上昇するのかが微妙なので折半したイメージね)現在のCP現先金利で0.1%(ちと高めですが)と置きます。するとCP買現先の0.263%は手前10日間0.1%で後ろ22日間は0.337%となる計算ですかな。本人計算合ってる積りでやってますけど違ってたらゴメン。14日以降の金利が上昇で計算すると0.32%とかになると思いますが。
さてこの金利ですが、昔々その昔、低め誘導などという物をやっていた時には大体コールが0.47%−49%(それを抜けると下がったとか上ったとか言われる)の時にTBFBの現先レートが0.51%−0.54%くらいだったと10年前の帳面を引っ張り出すと出てくるのですが、まあ当時はコール金利をかなりファインチューニング出来ていた事や、参加者層の変化、TBFBの発行残高の増加なんぞを勘案すると、誘導目標0.25%に対して現先やらGCが0.3%台前半にいる事自体にそんなに違和感は無いのかなあと。ちとスプレッドがついとるような気もしますが。
しかしよー判らんのだが、こんな高いオペでファンディングを敢えてする理由が正直謎。このレートで固めるのであれば、足元で転がしているのとあまり変らんような気がするし、大体からして無担保コール金利は相変わらず低いのに有担保のオペ金利がこれだけ高いのもナンノコッチャという感じです。まあ相変わらず資金がうまく回ってない(参加主体が量的緩和状態前提の体制から中々脱皮できない面がある)のでこういう商品間の需給関係が分断されている状態が続いてるんでしょうなあと思うのですけど。
ま、オペ金利が上る要因として、どうも「オペ金利を高止まりさせることによって以下自主規制」という輩がいるのではとの憶測も勝手に逞しくしているあたくしでございますことを念の為申し添えます。今週になって国債買現先の応札限度額をオファー額の半分から4分の1に減らしたと聞いたもんでして・・・^^;
まあそんな訳でして、本日は3か月FBの入札がありまして、前回の入札では既発の期内償還物が0.28%などという利回りになっていた事もありまして、期末越えなのに落札レートが前回比低下するという実に香ばしい入札になったのですけれども、「利上げ後のファンディングコストが0.3%乗せ」という事に気が付けば0.3%割れのFBをせっせと買う人も減ってくださるのではないかと勝手に想像してます。ただし、「長期債からの退避資金」が入ってくる場合は話しが全然別でして、その人たちは「債券」であって「価格変動リスクが殆ど無いもの」であれば別にレートの細かいことは気にならないぜという豪快な方で、3か月の金利が0.01%(価格に直せば0.2銭ですが何か?)上った下がったときゃあきゃあ言ってる短期の人たちとは別世界の人。
○ところで7月14日は積み最終日
相変わらず来週利上げを前提にしたテクニカルなマニア話。
7月14日の決定会合で誘導目標が引上げになった場合ですけれども、この日は3連休の前日にあたりますのでここの4日分の金利が上るのか上らないのかはマニアには重大な問題。
つらつら考えまするに、準備預金の進捗状況から考えて14日の時点では今回の準備預金積みは終了している筈。よって14日単体で考えれば資金繰り以上の資金ニーズは無い事になります。ただし、16日から新しい積み期間に入るので、そっちの準備積み上げニーズはあるでしょう。その為に全くニーズが無いわけではないですわな。で、当日利上げがアナウンスされるのはど〜考えても午後になりますので、その前の取引から先走りで金利が上るにしても空振りだったら間抜けですからまあそんなに上らんと思います。
でもまあ資金の出し手が超偏在しているGCレポ取引市場だと出し手様が資金抱え込んで金利上げなきゃ出さねーよ攻撃をして積み最終日の利上げ(するかどうか知らんがそれ前提の話ですんで)の意味が良く判らん人たちが何しでかすか判らんので、まあこのあたりも蓋を開けてみないと判りませんな。
しかし積み最終日に政策金利を動かすとなると、途中での準備預金の積み急ぎ(利上げの場合)とか積み渋り(利下げの場合)とかの動きが発生する余地が無く、今般足元金利が動かない(というか進捗が良いので上らんどころか下がる勢い)のもそのためという感じですな。何か昔の記憶が蘇る今日この頃でございますわな。
だいぶ余談ですけど、日銀のサイトを見ると相変わらず当座預金残高がトップページに出てるんですが、金利操作になってることですし、準備預金の進捗状況の方が大事だと思うんで、利上げしたあたりでしらっとあの欄外した方がよいのではないかと。
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2006/07/04
お題「どう見ても7月利上げです」
そういえば引退表明するサッカーの中田選手。東ハトの非常勤執行役員をやってますけど、よくよく考えたら「執行役員」で「非常勤」ってのは執行役員制度の意味から自己矛盾してますなあなどとしょうも無い事を考える(というか多分就任時も同じこと考えてたような気も^^)のがドラめもんクオリティ。
○6月短観をさらっと読みます
毎度お馴染みの「前回の見通し対比で業況判断DIはどうなったか」というのを見ましょう。
製造業大企業(以下3月時点でのDI見通し→6月DI)
22→21
非製造業大企業
19→20
製造業中堅企業
12→13
非製造業中堅企業
5→4
製造業中小企業
9→7
非製造業中小企業
▲8→▲6
まちまちって言えばまちまちですが、3月調査時点で既に良い状態であった事を勘案するとまあ強い数字。中小企業の景況感が改善しているのが強気後押しという感じですな。
で、先行きの予想DIが非製造業中小企業以外で今回比改善あるいは横ばいを見込んでいまして、回答期間がちょうど6月中だった割にはマインドの悪化が見られませんって事でなお強気という感じですわな。まあそうは言いましても、実際問題として日経平均やTOPIXが上った下がったと言って市場が大騒ぎするのと、フツーの企業が受け止める景況感は必ずしもリンクしないというのがあるものと(自社株が暴落でもすれば話は別でしょうが)思われまして、株安のインパクトに関しては市場と一般企業の感じる温度差はあると思いますけど。
その他内容に関してポイントの設備投資、価格、雇用ですけれども・・・・
設備投資計画の数字は全体的に上方修正。製品仕入価格判断DIの改善(というか上昇)傾向が加速。雇用人員判断DIが3月予想時点での不足予想ほどの現状判断にはなっていないものの全規模・業種で不足。しかも先行きの人員判断DIが現状よりも更に不足方向に振れていますな。詳しくはあたくしのようなオタクシロートではなく、専業のお方にどうぞ。
ということで、どう見ても7月利上げです。本当にありがとうございました。
○どうしてこういう書き方になるのでしょう
新聞各紙は日銀短観を受けて来週の金融政策決定会合で金利引上げが行われるのではないかという事を報道しているのですが・・・・
例えば東京新聞朝刊は1面トップで「ゼロ金利 月内解除へ」と報道しており、小見出しが「誘導目標0.25%の公算」となってます。リードの部分を読みますとこう書いてあるのですな(漢数字を算用数字に直してます。東京新聞朝刊12版1面より引用)。
『日銀執行部は3日、今月13、14日に開く政策委員会・金融政策決定会合で、ゼロ金利政策の解除を正式提案する方向で検討に入った。提案されればほとんどの審議委員が賛成するとみられ、月内のゼロ金利解除・利上げが確実となった。』
用語の使い方がきっちりしてるのは感心するのですが、それよりもあたくし的に「はあ?」と思うのは上記記事(リード)中の「検討に入った」って書き方ですわな。もしこれが観測記事ならばこの部分は例えば「ゼロ金利解除を検討する見通し」というような書き方をするでしょう。大手じゃないけど新聞社が1面トップで書くのにこれだけ確信的な書き方をするのはどうなんでしょう。
いやね、市場では確実視されてるし、まあ多分そうなるでしょうとは思うんで、観測記事を「検討に入った」という書き方をしたのかもしれませんし、その辺の真相はさっぱり判りかねます。判りかねるのですが、次回の決定会合で何が提案されるかとかいう話がこのように確定的に報道される(観測記事ならば書くのは勝手)のは如何なものかと思う次第で、こういう報道には日銀は抗議すべきではないんでしょうかねえ。
○そのセンスは何だかなあという感じ
短観を受けて利上げが思いっきり視野に入って来ましたが、牽制発言もまあ出てくる訳で、財務事務次官がゼロ金利継続というのはまあお約束みたいなもんですから良いとしまして(笑)、小泉首相は報道によりますと「経済状況を良く考えて判断して欲しい」という趣旨の発言をしたようですな。
で、安倍官房長官が「ゼロ金利継続」発言をしてるのですが、伝えられる閣僚発言の中で金融政策を「こうすべし」と言うのは安倍さんだけのように見える訳でして、どうもこうセンスがねえお方だなあと思うのであります。時あたかも総裁のファンド出資問題から「日銀の独立性」に関してああだこうだと言われている中で「政治から金融政策に口を出す」ような物の言い方をする時点でなんだかなあ的感じ。小泉首相はその辺よーく理解して間接的にキツーイ言い方(言外に「これで失敗したらタダではすまない」と言ってる訳で)をしてますわな。小泉さんを見習いましょう(^^)。
まあそもそも論として「量的緩和政策解除をしてもゼロ金利継続というのは政策として矛盾してるでしょ」ってだいぶ前から言ってたら見事に外したあたくしとしては、ゼロ金利解除に今更反対するくらいなら3月の量的緩和解除を議決延長動議でも何でもして止めとけば良かったんじゃないですかねえとしか申し上げようがございませんが。
○しかし何でこんなに反応するの?
さて、あたくしは昨日のドラめもんでこんな事を書きました。
「CPIの内容は「既定路線に変更を加えるものではない」って感じだと思うのですが、その結果が出て債券市場がろくすっぽ反応しなかった所を見ると、とりあえず目先7月か8月の政策金利変更を織り込んでしまったという所で、次のネタ探しの段階になっているんでしょうな。そこで短観なんですが、まあ予想の範囲内であった場合、この調子だと何も起きなさそうな感じですわな(苦笑)。」(以上昨日のドラめもんより)
こうやって自信満々(でもないが)で書くと大外しするのがドラめもんクオリティでございますよええもう情け無いったらありゃしない。
昨日の債券市場ですが、短観発表を受けて朝っぱらから残存1年ゾーンの5年20回債が3毛5糸甘だか4毛甘だか忘れましたがとんでもない所まで叩かれ。金先も債先オープン前の時間から威勢良く売られておりました。つい暫く前にはこのゾーンやたら買われていたのですが、投げなのかスワップ見合いなのか知りませんが、これまた極端な動き。
7−9月のどこかで利上げっていうのは市場のコンセンサスだと皆が思っていた(ってのも変な言い方ですね^^)ので、この豪快な下げにディーラーの皆さん「はぁ?」ですよ。まあ売る言い訳が出来たので翌日(つまり今日)の10年入札に向けて相場水準を調整しますかって動きが出るのは判らんでも無いのですが、それにしても5、6年〜8、9年あたりが威勢良く下がりまして、まあ先物の売りとかそこらへんのゾーンの売りとかあったんでしょうが、よくもまあここまで叩くわと。
「7−9月のいつかの利上げ」が「7月利上げ」に前倒しになったからと言ってそこまで売り込む必要があるのかワケワカランと言いますか、ここまで売るなら何で先週末のCPIで値持ちするのか意味不明なのですけれども、まあ最近の市場はそういう妙な反応をするのが仕様になっているので、一々驚いていると身が持ちません、と言いながらネタにはするのですが(苦笑)。
実は1年ゾーンに関しては先週末も弱くなってまして、週末週初で4毛とかもうちょっと甘くなっている感じなのですが、月末恒例のインデックスから外れた1年ゾーン売りだけじゃなさそうな予感はします。5年20、21回とか194〜196回という残存1年ゾーンの現物が妙に動くのがスワップ連動っぽい香りが致しますな。
ちなみに、もっと短いゾーンはどうなっているかと言いますと、今日の6か月物TBに関しては0.4%台で大丈夫なのでしょうかという気はするのですが、まあ誰か買うのかなあという所。これが0.5%台あれば最悪持ちきりで何とかなりそうという読みから買いが入ってもよいのですが。で、3か月に関しては案の定大して動いてなくて、先週に入札が行われた396回FBは0.33%−0.35%と前日比0.01%くらいしか動いてません。1か月ものや2か月もののFBはファンディング勘案すると持ちにくそうですので、この辺がやや売られそうな感じですな。
まあ3か月ものあたりは見事に「既に織り込み済みですが何か?」という状態になっている感じですな。ただまあ問題として、誘導目標0.25%に対してGCレポレートが本当にその近傍で収まるのかという昨日申し上げたお話がありまして、その絡みで別の雑談もあるのですが、本日はこの辺で。
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2006/07/03
○さて短観ですか
というか金曜にCPIが発表された訳ですが、何かもう7月の利上げに関して市場は「はいはい利上げ利上げ」という感じでどうぞご随意にモードのような気がします。短期だって足元は別だけどもCP発行レートとか思いっきり足元の利上げ織り込みに逝ってるし。問題は次回以降の利上げに関してまたまた前のめりになるかどうかという所でしょうにゃ。
CPIの内容は「既定路線に変更を加えるものではない」って感じだと思うのですが、その結果が出て債券市場がろくすっぽ反応しなかった所を見ると、とりあえず目先7月か8月の政策金利変更を織り込んでしまったという所で、次のネタ探しの段階になっているんでしょうな。そこで短観なんですが、まあ予想の範囲内であった場合、この調子だと何も起きなさそうな感じですわな(苦笑)。
じゃあ次に何がネタになるかと言うと、今後の利上げペースが早くなる(多分市場コンセンサスは7月か8月に1回、その次は年内に出来れば御の字で来年1−3月の間かなあって所かと)というのが一つですが、もう一つあるとすれば足元金利問題。
と申しますのは、さっきさらっと書きましたが、利上げを行って無担保コール翌日物の誘導水準が0.25%になった時に本当に誘導水準近傍で足元金利がファインチューニングできるのかってお話でして、以前のように精緻な積み上積み下調節でコールの金利が狭い範囲で安定するのかって事に関しては甚だ疑問がございますし(実際にやってみたら収まるかもしれないけど)、GCレポ取引は益々ややこしい事になりそうな気もする訳で。
多分、「利上げ後ベースレートが0.25%になります」っていう予定になっているかと思います。で、一方で現在のGCレポレートが0.1%(ここの所0.08%くらいまで下がってますが)だというのが今の前提だとなってますわな。実際に政策金利が変更になった場合にレポレートが市場の想定よりも高止まりした場合に「前提となる短期金利が違う」って話になるのかなあと。
まあどっちも政策金利が動いてからの話になりますので、それまではネタ不足の感は否めませんわな。ちなみに日銀総裁が変ったとしても別に流れは変らんと思いますのであまり気にしていませんです、はい。
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2006/06/30
○FOMC雑感
FOMCの結果を受けて「思ったほどタカ派じゃない」ということで米債がブルスティープして米株が上昇。寝ぼけ眼でFOMCステートメントを読んでみて前回と比較しようとしたのですが、各部分に関して書き方が色々と違っててさすがにこれは寝起きで比較するほどFEDに関してみてる訳ではございませんのでただの俺様備忘録メモなんですけど。
今回の声明文
http://www.federalreserve.gov/boarddocs/press/monetary/2006/20060629/
前回の声明文
http://www.federalreserve.gov/boarddocs/press/monetary/2006/20060510/
今回の声明文から先行きの金融政策がどうのこうのって部分の引用。本文では一つの段落ですけど、各文に分けておきますね。
『Although the moderation in the growth of aggregate demand should help
to limit inflation pressures over time, the Committee judges that some
inflation risks remain.』
『The extent and timing of any additional firming that may be needed to
address these risks will depend on the evolution of the outlook for both
inflation and economic growth, as implied by incoming information. 』
『In any event, the Committee will respond to changes in economic prospects
as needed to support the attainment of its objectives.』
要するに「インフレリスクは全開じゃないけどございます」「そんな訳だから決め打ちせずに先行きの経済状況を見て判断」って話ではないかと勝手に解釈しましたが、市場ではリスクシナリオとして「インフレ懸念決め打ち大全開モード警戒」だったんですにゃあという所なんでしょうか。まあここもとFRBの偉い人からタカ発言全開でしたから仕方無いと言えば仕方無いのですが。
インフレターゲット的な発想としてはあまり「決めうち型金融政策」にはならない(と思う)ので、そろそろ米国市場も「グリーンスパン的決め打ちメッセージを求める」のは諦めれば良いのではと思うんですが、まあここ数年の決め打ちに慣れきっていた米国市場はどうも「決め打ち」をしたいようですな。今日の朝のニュース見てても(モーサテとブルームバーグ)今後の利上げについて論者によって思いっきり解釈が分かれているのがオモロイです。
まあ日本もそうなんですけど、今後は「次のアクションがどうなるかは経済情勢次第」っていうパターンになっていくもんじゃないのかって思うんですけど。あたくしは米国経済のことまで詳しくは知らんので今後の利上げが何回とか判りませんけど、物価上昇圧力がどうなるのかって方がメインになるんじゃないんでしょうかと思うのでした。となると資源等の価格動向と賃金動向なんすかね。
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2006/06/16
○福井総裁問題:答弁はちと苦しそうな印象なんですが
国会中継のインターネット放送を見たのですが、民主党の平野議員の追及はズレまくってて20点と言ったところですな。しかしそのズレ質問「ファンドの収益はいくらだったのか」に対して「ただいま精査中」は如何なものかというように、福井総裁の答弁は輪を掛けて如何なものかという感じでしたな。
あのね、確定申告してる(ファンドの帳簿上の損益に対して納税するなんて税制ありましたっけ???と甚だ疑問はありますが)のに収益の額判らんってことはないでしょう。確定申告書の控えくらい保管してるでしょ、申告する時には明細つけるんだから見りゃすぐに判る筈なんですけど。
それとも何ですか?福井総裁は一読してわからない位に多岐に渡って譲渡所得(本件所得?が譲渡所得なのか配当所得なのか雑収入なのかという問題は正直判らんので科目に突っ込まないで下さい^^)が発生してるんでしょうか???
と、意地の悪いツッコミができてしまうのはちょっとねえ。
で、共産党からは前日に引き続き昨日もまた大門議員が登場して突っ込んでましたが、富士通総研の行為に突っ込みをしても仕方ないと思うんですが。そんな中で福井総裁は富士通総研時代に複数企業の社外取締役をしていた関係で複数の企業の株式を保有しているって答弁をしてました。
で、その株式については凍結しているという表現をしてましたが、まあ信託してるとかいうような明確な形じゃないんでしょうなあと思わせるものがございました。それじゃあ何だかなというのもありますが、もうひとつツッコミをさせていただきますとですな・・・・
総裁は富士通総研時代に保有していた株式を「凍結」しているとご答弁されているということは「日銀総裁の在任期間中に個別株式の売買行為を行うのは不適切」という認識はお持ちだという話になると存じますが、ファンドの解約だって売却行為(法律的な形式は措く)じゃないのかと思いますがね。そっちは凍結でこっちは解約という行為の整合性が取れませんわな。極端に言えば「社外取締役を引き受けた時にはその企業の社会的貢献を応援するつもりで受けましたが・・・・」ってな具合で株も売れますよって話にならんかね。
総裁就任時に売却するか在任期間中は売買できないようにきちんとした形で信託なり何なりするかが必要だったと思うんですが、個人の管理に任せたままで推移してファンドを2月に非公開で解約というのが返す返すも痛恨事でしたな。
ま、本日は衆議院財務金融委員会で吊るし上げが待っておりますけれども、昨日までの答弁と矛盾する話がでてきたらさすがにアウトになりそうな予感。
○信認とか期待とかを扱うのだから・・・・
今一歩生煮えのような気がするので論点がグダグダになってしまうかもしれない点は先にお断りしつつ、今日は別の論点を。
本件の推移を受けまして、今朝のモーサテでのゲストコメンテーターもそうですが、早速あちこちのレポートで「本件によって7月のゼロ金利解除の可能性は後退した」(ちなみに短期ゾーンの利回り形成状況を見てるとまだ7月利上げリスクは結構ありで見てるようです、為念)とか「今後日銀は政府に対して意思を通しにくくなった」というような見立てが出てくるわけですよ。当然のことですけれども。
そういう見立てが広がってくると、「官房長官がゼロ金利継続と言ってるから政策金利はいじることができない」というような金融政策決定プロセスと本来関係ない筈の読み方になってくる次第でして、これはやはり日本銀行の政策に関する信認が低下するってお話になるんじゃないでしょうかって思うのですよ。
金融政策ってのは金利操作(この前までは日銀当座預金残高の操作)を使って物価などの経済を安定化させるというもんですが、そこには「中央銀行の政策運営に対する信認」とか「市場のインフレ期待」などというような必ずしも理屈でスパッと割り切れるかというと中々難しいものがある訳でして、金融政策が所期の目的通りに機能するためにはそういう信認とか期待とかいうものを大事にしないといけないと思います。
確かに推定無罪かも知れませんが、「政府に庇われた」人が中央銀行のトップで今後の金融政策への信認ってどうよとか考えると、総裁がこのままでいるのは日銀の為にも良くないような気がするんですけど如何なもんでしょう。
・・・・思いは色々涌いてくるのですが、やはり文章にするのが難しいです。全然論理的じゃなくてスイマセンスイマセン。きっと本石町日記さんがクリアなエントリーをしてくれるでしょう(と人に振る^^)。
#何か今日の天気のような気分でございます
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2006/06/15
○さて金融政策決定会合ですが(話は全然別^^)
当然のように本日の政策変更に関してはノーマーク。会合後の記者会見に関しては、本来注目されるべき金融経済月報だの先行きの金融政策に関する総裁発言などというものがちゃんと出てくるのかは・・・・まあどうなんでしょう(苦笑)。今日の定例記者会見に関しては一般紙やらテレビ局やらがわんさか襲来して大変な事になるんでしょうな。政策広報の皆様におかれましては誠にご苦労さまでございます。
で、その一般紙なんぞがどういう質問をするのかというのが気になる所でして、昨日の朝はどこぞのコメンテーターがテレビのニュース番組で「低金利政策をしながら総裁は高利回りのファンドで儲けてケシカラン」などという思いっきりピントが斜め上に逝ってる話をしてましたが、そんなレベルの質問を意気揚々と会見場でするのは勘弁して頂きたいものです。
まあ今日の記者会見と、今後予定されている国会での閉会中審議でどういう対応をされるのか見ていきたいものです。
で、まあ本件に関しては田中秀臣先生、bewaadさん、本石町日記さん、ぐっちーさんのブログでの議論や、各ブログへのトラックバック先のブログでの見解などを読みながら勉強させていただいております。大体こちらの読者様ならご存知とは思いますが、念の為URLを置いておきます。当該記事のリンクを入れれば良いのですが、ちと面倒なので(おい)トップページで勘弁。
・田中先生(Economics Lovers Live)
http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/
・bewaadさん
http://bewaad.com/
・本石町日記さん
http://hongokucho.exblog.jp/
・ぐっちーさん
http://blog.goo.ne.jp/kitanotakeshi55
#URLを置いて終了とは手抜きではないかというツッコミはしないように(笑)。
で、真面目な話の中でいきなりおちゃらけるのがドラめもんクオリティなのですが(こら)、では福井総裁は辞任することになるのかという点につきましては、兜町の撃墜王であらされるところの髪様がこんなコメントをしてました→http://blog.livedoor.jp/orion3/archives/50580431.html
>辞任はやむなしではないか。
・・・首が繋がりましたか福井総裁。
というおちゃらけ話はともかく、本件が訳の判らん政治的取引の材料になってしまい、結果として金融政策運営に変な影を落とすような事があってはいかんのではないかと思います。(まあ今の結論先にありきみたいに見える運営も如何なものかとは思うけど)
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2006/06/14
お題「福井ショックと言いたかねえが」
昨日の参議院財政金融委員会で明らかにされた福井総裁の村上ファンドへの拠出問題。ニュースが出たときは「まあ99年だから民間人だし、1000万円ってのは一般人感覚から言ってちょっとどうかと思うなあ」ってのが第一印象。ここの所福井総裁が村上ファンドのアドバイザリーボードを昔やってた話とかは夕刊紙ネタだったので、それはまあ兎も角として、あっしなんぞは「いっせんまんえんですかそりゃまたすごいおうえんですねえ」と棒読みになっておりました。でもまあそれは過去の話でしょうと思ったら・・・・・
よくよくそのニュース記事を読んでおりますと、共産党の大門委員からの質問に対して「数ヶ月前(その後記者からの質問に対して2月と答えたそうですが)に解約の申し出を行った」というお話。こりゃマジイダロとか思っていたわけですが。
○それと利上げは別問題だとは思いますが・・・
後場途中からは思いっきり平均株価崩壊あんど金先債先大幅上昇の巻と相成りました。まーこの手の話題に食いつきが宜しい海外の皆様なんぞが盛り上がりそうなネタとしては「福井総裁退任必至」→「ゼロ金利解除困難」→「金先買ってウマー」というお話になるんでしょうけど、まあそのネタはさすがに無理筋の読みでしょう。ま、株式市場がゲロゲロですから利上げをやりにくいというのはあるかと思いますが。
昨日の市場では前場は株安でも金先やら2年債やらは弱い展開での推移してまして、さすがにちと先週木曜はやり過ぎでしたかって感じだったのですが、思いっきり逆襲の図になったのはいやはやこりゃ参りましたなあという感じです。
○「数ヶ月前の解約申し出」はどう見てもマズイでしょう
本件に関してですが、99年に村上氏の志を応援する為に云々というのは富士通総研理事長という立場だからまあそこまで言う事は無いとは思います。1000万円をポンと出すというのは随分おかねもちですなあ(棒読み)という印象はありますし、本人公職に戻る気があるのならちょっと脇甘いでしょうという印象は拭えませんが。
で、どう見てもマズイのはその「数ヶ月前の解約」ですわな。
1.投資判断(相場が下がる)として解約したのであれば金融政策運営の責任者である日銀総裁という立場を勘案すると日銀の行動倫理の内規に抵触しそうな気が思いっきりします。しかも2月に申し出との事ですからその直後の3月に量的緩和解除してるのはまさにタイミングがアヒャヒャヒャヒャヒャですな。
2.村上ファンドを保有しててマズイと思って解約したのであればこれまた問題。何故この時点で急にマズイという認識になったかという点で突かれだすと、あーたファンドの違法性への認識があったのか捜査ターゲットになってるという認識があったのかなどと突かれ放題。
まあね、「よくよく考えたら日銀総裁が特定のファンドに肩入れしているような印象を与えるのは良くない」と思ったので解約するちゅうのであれば、そもそもの拠出の経緯と現状についてアナウンスして、その上で解約をするって青天白日の下で行うべきだったんじゃないですかね。どうみても「こっそり解約した」としか思えない行動は実に情け無いとしか申し上げようがございません。
本件では与太話盛り上がりましたが、周囲でも「解約はマズイ、持ちっぱなしで何もしてないって状態の方がまだ言い訳がつくでしょう」って話になっておりましたな。「本来日銀総裁に就任した時点で解約するもんじゃねえのか」というのは認識が一致しまくってましたけど。
与太話の一環として「阪神ファンとして怪しからんので解約を申し出た」ってネタで逃れるという案もありましたが(笑)、解約申し出が2月だと残念ながらその言い訳も無理筋の香り(爆)。
という訳で、あたくしと致しましては「拠出したこと」よりも「2月にこっそり解約したこと」の方が大問題であって、福井総裁におかれましては公職の高い地位にあるものとしてその行動に問題があるということで辞任していただきたいと存じます。
○まあしかし脇の甘いことで
・・・・しかし脇が甘いとしか言いようがないですな。
福井総裁は以前も木村剛氏肝いりの金融雑誌の創刊号を飾るという騒ぎを起こしてましたけど、「志のある人を応援する」というお心は男気として誠に美しいのですが、一歩間違えると「広告塔として利用される」という結果になるわけですわな。
結果的に悪徳商法の広告塔になってしまったタレントさんが暫く仕事を干されるのと同じようなもんで、総裁としてはそのお立場を良く踏まえて行動をしていただかないといかんと思う訳ですよ。
#今回の場合はまあ広告塔をやってたわけでは無いのですが。
あっしとしては福井一座の円環性「市場との対話」芝居にはほとほと呆れ果てておりますので、とっとと武藤副総裁に総裁の座をお譲りいただきたいと思うのですけど。武藤さんの就任以降の言動を拝見してますと、別に財務省寄りの金融政策運営するとも思えず、まあバランス取れた運営するんじゃないのかと思うのでありました。
#ネタの宝庫が辞めてしまうと書き物のネタに困るのですが(爆)。
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2006/06/07
○武藤副総裁のスピーチ
武藤副総裁が米国だか何だか忘れましたがどこぞの会議でスピーチをしておりました。日銀のWebサイトには残念ながら掲載されてないのですが、ブルームバーグニュースで通訳付き(スピーチは英語)でやってたのを聞いてみました。さすがは武藤副総裁でして、決めうち一切無しのバランス重視のスピーチという印象。手元のメモベースですが一応備忘録。
・暫くは金利ゼロをベースとする緩和的な状況は続くだろう
・将来は必要に応じて金利を上げていくでしょう
というのが日本の金融政策に関するコメントでした。通訳の日本語ベースをメモしたんで英語のニュアンスと通訳の日本語の間に齟齬があるかも知れんので断言しにくいですけど、聞いてて「おっ」と思ったのは緩和的な状況の枕詞に「金利ゼロをベースとする」ってのがあった事。福井総裁などの発言でも「金利の調整はゆっくり」とか「緩和的な状況を継続する」というのはあるのですが、「金利ゼロをベースとする」って言い方をしているのは(あたくしの記憶が間違ってない限り)見た事はないのでちょっと耳がダンボになりました。
でもその後に必要に応じて金利を調整していく話をしているのでさらりと水を掛けているところがさすがは武藤副総裁という感じですな。暫くのタームがいくらかはさっぱり判らんのですが、まあ先月大騒ぎした6月利上げはさすがにこりゃ有り得んでしょう。
○しらっと量的緩和総括中?
http://www.boj.or.jp/type/press/koen/ko0606b.htm
先週木曜の話ですが、福井総裁が日本銀行金融研究所主催の国際コンファランスで開会挨拶をしました。上記URL先に(日本語仮訳)ってあるように英語で挨拶してたんでしょうな。
今回のコンファランスのお題は「低金利下における金融市場と実体経済」だそうでして、量的緩和政策に関して色々とお話してるんですけど・・・・・
『こうした政策パッケージである量的緩和政策は、わが国の金利環境に顕著な影響を与えました。まず、潤沢な資金供給によって、無担保コール市場におけるオーバーナイト物金利―これは、本来借り手金融機関の信用リスクを反映すべきものですが―は0.001%まで下がりました。同時に、量的緩和政策継続の「約束」は、イールド・カーブが低位で安定的に推移することに寄与しました。』
『量的緩和政策が金融市場にいかに大きな影響を与えたかという点は、1930年代の米国の状況と比較すると、よく分かります。1930年代、米国の財務省短期証券の金利はほぼゼロ%まで下がりましたが、フェデラル・ファンド・レート―これは金融機関が短期資金の貸借を行うときの金利ですが―は、0.25%までしか下がりませんでした。また、1990年代以降のわが国の長期国債金利は、1930年代の米国の長期国債金利よりずっと低い水準にあります。このようにしてみると、量的緩和政策が、歴史的な観点からみても、中央銀行にとっていかに断固とした政策的な対応であったか、ということがお分かりいただけると思います。』
量的緩和政策の「量の意味」は金融危機対応でございますと政策ロジックをしらっとまた摩り替えているような気が思いっきりするんですけど・・・・・
で、その後に量的緩和政策の効果について2点挙げてます。
『量的緩和政策は、次の2つの点で目に見える効果を発揮しました。第一に、量的緩和政策は、特に潤沢な資金供給を通じて、金融システムへの強い懸念を払拭し、その安定化に寄与しました。日本銀行による潤沢な資金供給によって、金融機関の流動性需要は満たされ、1997、98年に観察されたような大規模なクレジット・クランチの再来を回避することに成功しました。』
さっきと同じく量の効果は金融危機対応になっちゃってますなあ。
『第二に、量的緩和政策は、ゼロ金利継続の「約束」を通じて、企業金融の面でも緩和的な環境を作り出し、わが国企業の回復をサポートしました。銀行の貸出金利や企業が発行する社債の金利は、イールド・カーブの低位安定に加えて信用スプレッドの縮小もあって、低下基調を続けました。』
時間軸効果といわれる奴ですな。で、ポートフォリオリバランス効果については『この経路が機能したのかどうかについては、量的緩和政策下の期間を振り返ってみても、まだ確たることは申し上げられません。』と、まあそうでしょうなあという評価になってます。
ではどう見ても金融危機状態を脱却していた時期にガンガン量を増やしたのは一体全体何のためでしょうかと小一時間問い詰めたくなるのですが。ロジックがグタグタなのは今に始まったことじゃ無いので余り驚きはしませんが、それで良いのかよとは思うのでありました。体面重視で変なレビューをしてると将来の糧にならんと思うんですけどねえ。
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2006/06/06
○市場との対話の道は遠いなあと思った挿話
まあこんな見解が出てくるのも判らんでも無いですが。
情報ベンダー提供のニュースでは「今日の短期金融市場まとめ」みたいなのがありまして、その中で昨日ブルームバーグニュースで見た解説の中で、とある市場関係者のコメントと共にあったのは「日銀メッセージを注視」って小見出し。で、その市場関係者のコメントはと言いますと、『本当に7月にゼロ金利政策を解除するなら、日銀はそろそろ市場に明確なメッセージを発する必要がある』(当該記事を補足して引用してます。ブルームバーグニュース5日15時37分配信記事より)ってものでした。
いやあのですな、5月19日の総裁記者会見で福井総裁はこう言ってるんですよ。
『むしろ金融政策のあり方として、普通の状況に戻ったということです。普通の状況とは、一歩先の金融政策そのものについて、具体的な示唆を中央銀行が明確にスプーンに乗せて差し上げ、それをそのまま鵜呑みにして下さいというやり方ではなく、オーソドックスだが新しく工夫を凝らして透明性の高い措置で対処するということです。』
これを額面どおりに受け止めるといつまでもあると思うな「明確なメッセージ」となるのですが、まあ3月の量的緩和政策解除が思いっきり地均し路線大爆発だったから、そういう見方も出るでしょうし、聞いてる記者の方も「まったく仰るとおりですなあ」として記事になるのでしょう。
今後も一々地均し待ちになっちゃうとまさに円環性状態になるのではないかという悪寒がする訳でして、市場との対話とやらも先行きの道は遠そうですな。いやまあ円環性で宜しいと言うのであれば今でも対話になってますけどね(爆)。
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2006/06/01
○マル公論議って盛り上がるんですね
例の公定歩合の話題ですが、昨日はあちこちの人が本件に関するレポートを出していました。ロンバート金利と誘導目標金利の間のレンジをどのように設定するのかって話はかなーり技術的な問題のような気がするのですけど、やはり「公定歩合」という言葉には偉い人の興味を動かすものがあるんでしょうなあと思ってしまいました。本職の人たちの出しているレポートを熟知すべしと言った所で。
レンジが狭い方が良いのか広い方が良いのかというのはケースバイケースとしか言いようが無さそうですが、今後起こるであろう利上げ局面は未体験ゾーンの世界ですので、いきなりレンジを派手に大きくするのはどうなのかって感覚的には思うのであります。
未体験ゾーンというのは何かと申しますと、コール誘導目標を公定歩合よりも低くするという「低め誘導政策」が始まる前(っていつでしたっけ?少なくとも10年以上前だったような気がしますが、低め誘導時代に無担保コールをきゃあきゃあ言いながら日々放出していたのは懐かしい思い出話^^)には日銀は短期金融市場への最強オペレーション手段の強制指値オペ(オペじゃないけど)「日銀貸出」というのがありましたし、そもそも無担保コール翌日物市場がメインの市場だった(今はまだまだ局地的な市場の観が強いと思うのですが)のでコントロールが効きやすいというのがあった訳ですな。
で、今後コール目標金利を引き上げていく際には昔のような強力手段は無いわ、時点決済じゃないわ、そもそも短資経由のコール市場が拡大するのかどうかもよー判らんわというまあ不透明な要素が多い訳でして、まあそんな中でいきなりたがを外しまくるのも無駄な乱高下を招きやすそうでアレでございますな。まあ短期が1%の時にもレンジが0.1%とかいうのは強烈な金利コントロールモードとなりますので、そりゃ現実的に如何なものかと思いますわな。まあ金利を引き上げていく過程で徐々にレンジを拡大していくのが現実的な話でしょう。
まあ幾らになるとか予想するのもど〜でもいい話ですけど、コールレート0.25%の時には現状の0.1%のレンジだと0.25〜0.35となりますが、もうちょっと拡大するのもアリかなとは思います。とは言え、ゼロ金利から0.25%になった如きで正常モードの積りでレンジをいきなり強烈拡大するのは如何なものかと思う(金利政策が実質始まったばかりの時期にあたるから)ので、引き上げて精々0.25〜0.50%でしょう。個人的には中途半端ですが0.4%なんてどうでしょうと思いますが。
まあ経済状況がまともになって短期金利が3%だ4%だというようなまともな金利がつくような時代になる頃には(なるのかどうかは実にアレでございますが)レンジも広くなっているでしょうし、必ずしも常にフルスライドでコール金利とロンバートを変化させる必要もない(記憶が間違ってなければFF誘導金利と公定歩合を昔は必ずしもフルスライドで動かしてなかったと思いますが)でしょうね。
#と、思わずまたこのネタを引っ張ってしまいました。
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2006/05/31
○いやあのやはり結論が変なのですが・・・・
一昨日のドラめもんで「初夏なのに風雪」などというお題でどこぞの著名ストラテジスト様の「公定歩合先行引き上げ論」に呆れておりましたら、まあやはりそれはどうよという声が多かったんでしょうか補足説明のレポートが出てたらしいですな。
で、本来あたくしはWebに出てるのとか新聞媒体や情報ベンダーに出ている公開情報ものをネタにするというのが普段のスタンスですのでドラめもんクオリティとしては趣旨にあってないのですが、乗りかかった泥舟ですのでちょっと指摘しておきますね(^^)。
現在の日銀の金融政策(そういえば「日銀政策」って国会で連呼してた人がいましたなあ)の枠組みでは、無担保コール翌日物金利が誘導目標なのですが、その上限のメドとして補完貸付制度(ロンバートですな)の金利があってその金利が公定歩合として金利回廊を設定しているわけですな。現在の金利回廊は0%〜0.1%となるんでしょう。
で、まあ大先生のレポートによりますと、米国ではFF誘導目標が5%で公定歩合は6%と高めに設定しており、比較して考えると日本の0.1%は無坦コール翌日物誘導目標の「ゼロ近傍」に対して幅が狭すぎではなかろうかというご指摘。
んでもって、次回日銀が利上げをする時に金利回廊を拡大するとなると公定歩合の引き上げ幅が「無担保コール翌日物誘導金利の引き上げ幅+金利回廊の拡大幅」となって結果として公定歩合が大幅に引き上げられる事になりますよというお話。
そこまでの間の論理にもツッコミどころと申しますか、それは本末転倒しておられませんでしょうかってのが多数ありますが、まあそれは本日はスルーしておきましょう。金利回廊の幅がいつまでも0.1%である必要はどこにも無いというのは同意するんですが、じゃあ例えばゼロ金利の時に金利回廊が(今の米国のように)1%もあっていいんでしょうかというとそれはまた違うような気がしますが。で・・・結論がやっぱ妙。
その結論はと言いますと、日銀が上記した公定歩合の大幅引き上げを回避するために6月の決定会合で公定歩合を先行引き上げするというお話なんですが、別に大幅引き上げしたって良いじゃんとしか思えませんがねえ。先行引き上げなんかしたらそれこそ「利上げの準備」と取られて金利が跳ね上がるリスクがでかくて、それに対するリターンが次の利上げの時に公定歩合の引き上げ幅が同じ幅で済むってだけでは全く間尺に合わないですな。それよりも利上げの時に金利回廊の幅を広げて、その時に説明をきちんと尽くしてアフォな解説記事を書かれないようにすればよろしいのではないかと(全然違いますが、昨日の日経金融2面のレポ金利高止まりの話はポイントをうまく指摘してますのでご一読ありたし)思うのでありました。
「市場追随で金利回廊拡大」という怪電波は収まったようですが、まあ相変わらず結論に理屈をムリムリ引っ張っているので論理がグダグダになっていて実に香ばしいですな。途中のツッコミ所はもう面倒なので割愛しておきますね(笑)。
○何かまた燃料レポートの香りが
しかしまあ色々と金融政策に説明を尽くさないと(というか尽くしても)楽しい解釈が飛び出すのがニッポンクオリティなのですが、個人名論文で一々燃料を投下する日銀もどうかと思うぞ、ということで昨日はこんなのが。
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/wps/wp06e09.htm
お題は「スイス国民銀行の金融政策運営:2001〜2004年の経験」ってものですが、恐ろしいことに全文が英語ですのでとてもあたくし読む気起きません。よって上記URLにある要旨しかよんでません(おい)。
そこにはこんな記述が。
『第2に、SNBは、利下げ局面では、結果的に市場参加者の見通しに修正をせまるかたちで政策決定や情報発信を行った。一方、金融緩和の巻き戻し時には、時間をかけて、市場参加者が経済・金融環境の変化などを材料に利上げの可能性を十分に織り込むのを待ってから政策変更を実施した。こうした巻き戻し時の対応は、確率は小さいながらもディスインフレ傾向が再び強まった場合の損失はインフレ率が加速した場合の損失より大きいとの判断から、SNBが頑健な政策運営を行ったものと解釈できる。』
・・・・どう見ても地均し礼賛です。本当にありがとうございました。
#3か月FBは今日も甘そうですね
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2006/05/30
お題「即日オペ1兆5千億円の周辺」
昨日は朝から株式市場に朗報と思ってたのですが、昼過ぎにどこぞの情報ベンダーを見たら某著名ストラテジスト様が「弱含みの株は絶好の押し目買い機会」と怪推奨を・・・・・・orz
短期市場が注目されているのは誠に結構なのですが、昨日槍玉に挙げたどこぞのアホウの「市場追随でロンバード引き上げ説」のような珍妙な解釈も飛び交うというのが困った状態ではございます。ちなみにそのアホウを飼っている会社は当たり前の如くセールスに同じ話をさせているようなのですが、勘弁してくれ。
さてまあ昨日も色々とありましたので備忘録代わりにメモメモしておきます。
○オペ催促チックな朝の動き
昨日はあさいちから無担保コール翌日物で0.10%のビットがしっかり入ってました。まあコストの面から言うと短資会社の手数料が0.02%ある(ちなみに双方から0.02%です。まあ短期金利上って市場も動いたんで、5年間のコストだだ流し状態からの脱却が見えて来ましたですねよかったですね>短資会社のみなさま)ので取り手のコストは0.12%でして、そりゃあなたロンバード借り入れした方が良いでしょうってレートなのですけれども、ここもとの足元資金需給の不透明感というか不安感があるんですよ大変ですよってメッセージ(というか悲鳴)をインターバンク市場が送りましたってお話でしょう。
インターバンクもヒーヒー言ってましたが、オープン(と今は言うのか??)市場も香ばしい状態になっておりまして、GCレポレートの上昇やTBFB(というかFB)の重さで現先金利が高止まり。当然ながらCPにも影響が来る訳でして、つい先日までは需給の悪いTBFBの現先利回りの方がCP現先利回りよりも高いという状況になっていましたが、企業資金需要の高まる5月末〜6月を控えましてさすがにCPの発行が増え需給が悪くなってきて、既発CP売切や現先レートが上昇。しかも昨日は月末スタートのCP発行が大量に実施される予定なので、インターバンクの状況とあわせるとエライコッチャになるかもしれませんなあという感じ。
まあそんなこんなで即日資金供給となったんでしょう。
○中々芸の細かい資金供給
即日オペが本店手形買入1兆5千億でしたが、まあ額として1兆円くらいやらないとインパクトを感じさせないなあというのもありますけど、まあ豪快に出しましたなあという印象を与えるのには十分でございます。これで「誘導目標金利がゼロ近傍なのに0.1%近くに足元金利が張り付くというのはケシカラン」というよくよく考えたら当たり前なのですが、まあそういう運営方針は示されましたということでしょう。
勿論ですが、期末期初のように瞬間的に資金需給が逼迫して金利が跳ねることは昔からあったので、その辺までムリムリに押さえるオペレーションまでやるのかどうかは判りません、というか今までは「過度な跳ね上がり防止」くらいしかやってませんので、今後もそうなんでしょう。あまり何でもかんでも押さえつけると今度はそれを当てにした薩摩守ただ乗り資金繰りを始める輩が出てきますんで。
午前中の即日オペは6月1日エンドで平均落札利回りが0.076%の最低落札利回りが0.060%と、まあこんなもんでしょうという結果になりまして、さすがにオペ前の0.1%ビットのようなものは無くなりましたが、とは言えまあ0.06%〜0.07%のビットは残っていたようですな。
午後も先日付スタートの資金供給オペを実施しまして、これが2本立てで各1兆円と債券市場の人も安心するようなオペの打ち方。さすがに1兆5千供給してから午後に2兆供給と聞くと「日銀は足元金利の上昇を別に容認してるわけじゃないですよ」ってのがインパクトとして伝わるでしょう。3兆5千億円ですからね。
足元金利上昇容認がどうのこうのという話ですけれども、まあ短期市場の中の人は「日銀が短期金利の上昇容認?はぁ?んな訳ねぇだろゴルァ!」と正しく解釈をするのですが、債券市場では昨日ご紹介したどうみても(自主規制)なレポートに見られますように、もっともらしくムチャクチャな解釈を流布する輩もおりますので、そういう所まで意識したんジャマイカと勝手に想像しますが、どうなんでしょうかね(もちろん公式見解では「そこまで考えてませんがな何をご冗談を」でしょうけど)。
で、まあこのオペのどこが芸が細かいかと申しますと、まず全部のオペを本店手形買入ということで全店オペ(即日は全店で打ったら時間的に間に合うのかどうか知らんが)を避けている点。特に地合いが悪い時は本店オペに比較して全店オペは落札金利が上がり易いという傾向があるので、折角オペを打っても肝心の落札金利が上昇してしまうと却って地合いの悪化という印象を与えて逆効果という事でそれを避けてます。
で、1本のロットを今回は1兆円だの1.5兆円だのとでかくしているのも上記した落札金利の跳ね上がり防止に寄与しますので、これもまたよく考えています。それに「1兆円の供給」って桁が変ると心理的にインパクトありますからね。
最後に芸の細かさを感じたのはこのオペ期間でして、即日オペが29日〜6月1日で3日間の供給。午後に打った先日付オペに関しても30日〜6月7日と6月1日〜6月9日の双方とも8日間。税揚げで財政大量揚げ超になる今週末を跨ぐ供給なのは3兆5千億円のうち実は2兆円。しかもお読みになっているうちに気が付いたと思いますが、先日付オペの1兆円2本のうちの1本は実は即日オペの減額ロール(なのでこの落札レートだけ高くなってます)なので3兆5千億円の供給に見えて実は2兆5千億円という事ですな。うーむ奥が深い。
で、この期間も1週間程度ということで、「供給して跳ね上がりは押さえるけれども、別に長い期間の資金供給して金利をムリムリさげませんので」という所でしょうな。まあそれが現在の金融政策のディレクティブに最も適切な運営ですので何の問題もないのですけど。
○CPレート上昇
まあ需給から言って当たり前と言えば当たり前なのですが。
昨日はご案内の通り月末スタートのCPがバカスカ発行されておりました。で、まあどうも1か月ものの最上位格で0.2%近辺で堂々発行されたようでして、前週末から見ると0.02%前後上昇したようなイメージですな。2か月ものや3か月ものも上昇してたようです。まあ明日入札が行われる6月5日発行9月4日償還の3か月FBのWI取引が0.31%あたりの気配になっていますのでレート上昇もやむなしですけど。
これから6月に掛けて企業の資金需要が割と出る時期だと思うのですが、足元の金利がこんな感じなのでまあしばらくは需給が悪くて金利は下がりにくいのではないかと勝手に思料しております。あんまり高止まりすると企業も発行抑えて銀行借り入れに回るかもしれませんが。
という訳で、本日は何の芸も無く短期市場のメモでございました。
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2006/05/29
お題「勢いとは言えオソロシス」
株式市場に朗報です。今朝も心の中でツッコミを入れながら聞き流しているモーサテですが、月曜に毎週出てくる後追い理屈をやたら偉そうに垂れる某経済評論家のコーナーでとうとう出ましたよ。もう思いっきり「市場環境の流れは変った」だそうです。そしてその能書きに対する本村ゆっこさんの応対に何か「そんな景気の悪い話を今更するんじゃないよ」っていう冷ややかなもの物凄い勢いで感じたのはあたくしの考えすぎですかそうですか(笑)。
そんなことはともかく金曜日も短期などのゾーンが大荒れでしたが。
○一番売られたのは1か月?
金曜の債券、と言いますか短期市場は引き続き大騒ぎ。
債券の方ではあさいちから金先とかスワップとか2年がズタボロ。CPIの東京都区部が予想よりも良い数値だったというのはありますが、そこまで勢い良く売り込まなければいけないような衝撃の数字ってほどでもなかったと思うのですが。まあ朝からでございますし、売られっぷりが如何にもいつものスワップ市場主導の売りっぽい。
しかしまあ2年なんぞは連続火消し効果(?)で火曜日に0.7%割れまでやっておいて金曜は朝から0.8%台から下に叩きまくりという図でありまして、投資家の皆様幾らなんでも右往左往し過ぎなのではないかと存じますが、変に火消しをやり過ぎたからショートが駆逐されて反動の投げになったのかも知れませんぜ旦那さん。
1年の辺りとかもムチャクチャに動きまして、今までいろんなオトナの事情があったのか存じませんが、短期国債に比べてやたらと割高(いやまあ一応利付債の元利金取扱手数料見合いの部分がプレミアムとして存在するんですが)に値付けされていた1年ゾーンの既発利付債の利回りが一挙に修正されるの図。5毛甘とかやってますが、1年のTBは前日の0.485%から上昇して朝っぱらから0.51%オファーだったようですな。まああさいちが一番甘かったのでその後は少々持ち直したようですけど。
で、短期市場も何か大騒ぎ。
朝から無担保コール翌日物で0.10%の取り意向があったとかいう感じで、9時20分の即日供給も期待されたのですが(当日オペ実施前の予想ベースで4400億円不足になっていたので期待してる人もいたようで)オペ無しということでがっくしとなった取り手も0.10%でしっかり資金を取るわ、GCレポレートは0.1%台での堂々の推移とロンバード超えになってしまうわという状況になりました。
まあそんな状態ですし、6月頭の法人税大量揚げやこれからの夏季賞与資金需要なども睨んで資金需給がタイトになっていることもありまして、ターム物金利が物凄い勢いで上昇してしまいまして、金曜日に発行されたCPの1か月物などの金利は軒並み上昇しまして、最上位格でも0.15%以上に上昇。週初に最上位格のCP1か月もの金利が0.1%乗せになってこりゃまた上りましたなとか言ってたのが夢のような有様。体感的に一番金利が上昇したのは1か月なのではないかという感じですわな。こりゃ。
足元のGCレポ金利上昇で当然ながら現先レートも上昇しておりまして、保有してても逆鞘確定の人から順に短い債券やCPは全力投げ合戦になりますわな。3か月のFBとかも当然ながらゲロゲロになっておりまして、先週発行の390回債の居場所が0.28%(金曜に0.28%とか書いたのはWIの値段でした。陳謝致します)でWI取引(とうとう9月償還)は0.31%という有様です。
ちなみに午後になっても短期市場金利は下がらない状態でして、無担保コール翌日物で0.08%あたりのビットも散見される状況だったようですな。いやはやこりゃビックリです。
本日はスポット渡しが31日になりますので、CPの発行がどうせ多いものと思料されますが、ここもとの金利急上昇局面で「そんなに高いなら金イラネ」と頑張っていた発行サイドがどの辺りまでの金利上昇を耐えるのかとか、運用サイドが本当にカラッケツなんでしょうかそんな事も無いんじゃネーノとかどっちも???でありますので、その動向が見られることになるでしょう。
3か月のFBが0.31%とは(WI取引ですが)ちとやり過ぎなのではないかと思うのですが、今の「目標誘導金利がゼロ近傍なのに現先レートが0.1%」っていうのを見せ付けられると足元金利が0.25%に引き上げになった後の現先レートがもう少し高くなるという仮定を置きたくなるのも判らんでも無い。あたくしとしてはこの上昇は(1)資金繰りに慣れない人たちが右往左往している(2)誘導目標が「ゼロ近傍」という曖昧な数字になっている(3)そもそも当座預金残高を一方的に削減する過程なので足元資金の需給が逼迫しやすい(金利政策に移行した後のほうが調節をやり易くなる)というような複合要因だと思うので、政策変更後にはこのスプレッド縮小すると思うんですけどね。
しかしワケワカランのは2年とかの売りですな。1年近辺とかにも売りが出てたよう(そうじゃないと値付け修正しない)ですけど。
○初夏なのに風雪
金曜日に風雪注意報をだしたのですが、案の定ヨタレポートが散見されておりました。典型的な珍説に関して一応否定コメントを、ってお前は日銀かと言われそうですが(苦笑)。
金曜に見た珍説の中で一番トンデモだとある意味感心したのは「市場金利上昇を容認する形でゼロ金利解除前にロンバード金利の引き上げを行うかもしれない」という代物。しかも本人大真面目に論じているようなのがキングオソロシス。
日銀の金融政策は金利誘導政策に移行しておりますので、市場の金利が上昇したからそれに併せて容認するというのは政策ロジックから言って有り得ません。量的緩和政策の時の建前は市場金利の変動を容認しつつ量を潤沢に供給でしたが、この珍説を唱えるお方はどうもその辺をご理解しておられないのではないかと思料。知らないのならストラテジストとしての能力が甚だしく欠如しておられますし、知ってて書いているのであれば風雪のルル(仮称)ではございませんでしょうかねえ。
だいたいからして日銀による補完貸付の金利って金融政策決定会合議決事項だと思うんで、通常の政策委員会でしらっと対応する訳にもいかず、そんだけの為に一々議決するかなあと思います。と、ここまで書いて気が付いたのですが、補完貸付制度の担当部局はプルーデンス(昔の信用機構局、今の名前忘れた)なんでしらっと対応できるのかもしれないです。念の為付け加えておきます(運用の趣旨から言ったら政策決定会合議決事項になるとおもうんですけど)。
確かこの先生は水野審議委員が選任された時に「財務省陰謀論」を唱えて市場の失笑を買っていたような記憶が思いっきりあるのですが、んな事は有り得ないのは木曜にご紹介した政策決定会合における財務省出席者の発言を見れば自明でございまして、まあ寝言は寝てから言って頂きますと甚だ幸いでございます。
○ところで関連余談(金利回廊とオペ刻み幅の話)
ちと関連するけど別のお話になりますが、じゃあ金利回廊がコールレート目標引き上げ後も0.1%のレンジなのかというとそれはまた難しい話。この回廊の幅も金利の絶対水準が違えば違ってくるという方が合理的(0%の時の0.1%と5%の時の0.1%では全然インパクトが違う)でしょうが、次に引き上げる時はコール目標がたぶん0.25%になるんでしょうけど、そこでいきなり回廊の幅を拡大すると次の利上げへのやる気満々みたいに取られる危険性があると思う(例えば回廊の幅を0.25%にいきなり拡大するとかインパクトのあることをした場合ね)ので、まあ取扱は慎重にしたほうが良いかと思いますが。
もうちょっと脱線しますと3月末に日経が思いっきり外れ観測記事を書いていたオペ金利の刻み幅縮小ですけれども、まあ足元金利も上昇してるのでやり時のようにも見えますが、これまたこのタイミングでうっかり実施すると市場金利上昇容認と思いっきり取られそうですし、まあそんな事くらい日銀の中の人たちは先刻ご承知だと思いますので、これもやるなら無担保コール誘導目標金利の引き上げ後に実施する事になるんでしょうな。
ではでは。
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2006/05/26
お題「ちと早い気がしますが岩盤到達」
岩盤云々は本石町日記さんの表現を拝借しております。こちらのエントリーに解説がありまして、本石町日記さんの見立てに同意するものであります。よってこちらをご参照ありたし→http://hongokucho.exblog.jp/4796203/
・・・・だと話が終わってしまいますのであたくしなりに能書きを垂れる事と致したく存じます。
○まあ概況をつらつらと
一昨日はCPの発行レートがまたまた上昇。24日の駄文で書きました足元のGCレポレート上昇がモロに響いてきまして、どう考えても政策金利がゼロの筈の6月中盤エンドの最上格CPでも発行利回りがさっくり0.1%以上の図になりました。6月半ばのエンドで0.13%だの0.15%だのというレートでロンバートより高いとはこりゃまたって感じではございました。で、一昨日の引けの時点でGCレポレートが0.1%まで到達した雰囲気。
そんな状況になった上に、24日の駄文でも触れたように、GCがロンバードより高くなっても理屈はおかしくないという説が(確かにそう言ってしまえばそうですが、幾らなんでもそれはちょっとやり過ぎのような気がする)浸透するわ、24日締めて見るとロンバード貸出が1000億円新規実行になっている(ということは誰かが借りたということ)わという事で、雰囲気は朝から良くありませんでした。
で、25日は朝っぱらからコールには取り上がりがあるわ、現先レートも上昇するわなところに来て、背景がさっぱり判りませんがスワップ発だと思われる2年債の叩き(朝からいきなり3毛甘)やら金先ヘロヘロ(しかし6月限が引けてみたら4.5ティック下落ってそりゃ何よ)で極悪の雰囲気だったところで、やっと打って下さいました即日オペ。
即日オペオファーでいきなり債券先物は戻っておりましたが、肝心のオペ結果を見ると落札利回りは平均0.081%だわ(最低は0.073%)5000億円のオペレーションに対する応札が即日スタートのオペレーションだ゙というのに2兆5246億円もあるわでその応札の多さと落札レートの高さに地合いの極悪さが露呈されてまたビックリという毎度お馴染みのパターンで更にレート上昇。
午後には資金不足日の30日にスタートする本店手形買入オペがオファーされたのですが、この結果がまた頭痛モノの数字でして、5月30日スタート6月6日エンドというショートタームでしたが、これまた5000億円のオペに対して応札総額は3兆5442億円と益々増殖。落札利回りの方がもっと酷くて平均0.114%で最低が0.109%とロンバート貸出レベルを超える利回りともうダメダメ状態。その札の状況だと0.12%とかで応札した輩もいたわけでしょう。おまいらロンバート使えよ。
という訳で、もうだめぽ状態になって前日0.25%での入札になっておいおい状態だった3か月FBが0.28%ヒット(←追記訂正です。0.28%ヒットしたのはWI取引でして、390回債の出合いは0.26%の後0.255%でした。大変に失礼しました。まあ金曜にはなおのこと売られまくってましたけど)されたり、2年カレントがまた0.8%になってみたりと悲惨な状態(さすがに安値からは盛り返しましたが)となった後であります引け後のGCレポ取引では30日スタートの翌日物取引が堂々0.1%からさて幾らでしょうかねえ状態になっておったようで、甚だ遺憾の限りでございます。いやはや。
・・・・とまあ現象なら書けるのですが、さてその背景は一体全体何なんでしょうかねえ。
○さっぱり事情は判らんが色々と考えてみる
まあ妙に早い気はしますが岩盤に到達しちゃいましたなあというのが上記の短期金利上昇の根底にあるのは確定と致しまして。
朝からスワップだの金先だの2年だのが売られていたのはまた面妖な話で、こっちはこっちで金融政策に絡む思惑でもあったのかもしれませんが、まあ朝っぱらから売り売りだったので、海外なのか銀行ALMなのか知りませんが、まあ何をやってるんだか。
何と申しますか、海外勢やら銀行ALMやらが振り回す主戦場では金融政策に関する思惑も極端から極端に振れる傾向があるのではないかといいたくなる状況で、5月に入ってからは「6月利上げで今後も継続して利上げか」→「火消しと株安を受けて今度は7月の利上げも難しい」→「何だか要因判らんですがまた早期利上げ?」というような感じでぶれる事ぶれる事。
で、デンと構えたいのですけど何せ参加してる人も時価会計に洗われておりますので、「これはアホだろう」と思っても皆が集団脱走状態になっているときに一人で向っても押し流されて時価会計でやられ発生の図。よほどタイミング(と参戦時のポジション量コントロール)を考えないとこういう極端に振れるマーケットでは逆張りは順張り集団レミングに押し潰されるのが関の山。なかなか難しいですな。
こっちの動きが良く判らんかったのですが気になるところです。
さてまあその岩盤到達ですが、12兆ちょっとで到達とは随分早い気もしますが、資金繰りにバッファーを確保しながら動く人たちが多いとか、どうせ大して金利付かないからブタ積みしておきましょうっていう余裕資金も結構多かったということでございましょう。いやしかしこうなると福井総裁の先日の6−7兆円発言は結果としてお笑いになっちゃいましたな。だから判りやすく答弁しようというのは判るんですが、具体的な数字への言及ってのは止めとけって感じです。
まあこのちと高めの水準にある岩盤ですけど、これだけ金利が上昇すると偉い人から「あー、金利水準がこれだけあるようだが資金繰りは効率的にやっているのかねチミチミ」などという声が飛んでくることも想定されますので(^^)、そうなりますとこの岩盤の水準も徐々に下がってくるのでは無いかと思料されます。
と、冒頭でご紹介した本石町日記さんのエントリーの見たてと同じ話になってしまいました。
○まあ厳しいのは来週一杯までですかねえ
来週の金曜日は税揚げ日に当たりまして大幅な財政揚げ超。決算納税とか夏季賞与資金とかの法人資金需要も高まる時期になりますので、まあ来週一杯は資金繰りに関しては結構保守的に動かざるを得ないという話になりますので、とりあえずこれ以上ガンガン金利上昇するってのも無茶ですけど、じゃあ金利が下がるかというとそれは中々厳しいかなあという感じ。
まあ税揚げ超えたら少しは落ち着くかと思うのですが、そうは言っても金融政策決定会合日を控えると先日付スタートの取引が縮小するでしょうし、そんな事を言ってるうちに6月20日の国債大量償還日(なので資金の出入りが巨大になって資金繰りが大変になる)がやってくるという誠に遺憾な日々は続きそうです。
まあさすがに連日0.1%以上のGC取引とかはやり過ぎだと思うが。
○風雪注意報
まあこういう短期金利の状況を見るとまたぞろ「利上げの準備だ」とか「短期金利の上昇容認」とか言って「政策金利早期上げ」とかいう輩が出てくる可能性が高いのですが、あくまでもこれはテクニカルな問題であって、短期金融市場の資金の取り手な皆さんが試運転中で不慣れな為に起きた現象であるとあたくしは認識しております。
でもまあそういうのがまた出てくるんだろうなあ。CPI次第かも知らんが。
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2006/05/24
お題「脊髄反射は恥の元/足元金利強いです」
慣例としてオフレコになっているFRB担当記者夕食会発言を物の見事に報道しかもセンセーショナルに書かれてしまったバーナンキ議長はまあ災難といえば災難ですが、まあ遺憾ながら脇は甘かったのではないかと。個人的飲み会の席であっても政策に関する発言は慎重に願いたいものでございますな。それが偉い人の宿命でしょう。
さて、昨日瞬間湯沸しポッポーとなって書いた総裁インタビュー関連記事ですが、肝心の本物をみたら日経節が全然炸裂していない事が判明しました。昨日書いたように正しく「3時間後には書いた事を後悔する」という素晴らしい結果に相成りました。誠に申し訳ございませんが、恥を晒すためにも元々のエントリーもログに残しておくとするか(勿論注釈付き)。モーサテに騙されたよ(←脊髄反射するあっしが間抜け)。
○どう見ても(ryです。本当にありがとうございました
日経経済新聞では今日も「薄れる6月(ゼロ金利)解除」観測というお題の記事が出ているようですが、もともと「当座預金残高が所要近辺に下がったら即解除」というロジックを持ち出して6月解除説を煽ったのはどこの誰でしたっけと思いを巡らせますと、昨日の総裁単独記者会見(実質的にインタビューでしょ)の記事もふがふがもごもごなのでしょうなあという感じですな。
さてその記者会見ですが、昨日の1面トップで並んでいるヘッドラインは『金利水準ゆっくり調整』(モーサテはそれしか言わなかったけど)『「超緩和」は先行きリスクに』ということで日経とは思えない両論併記(苦笑)。いつものヨタモード全開の時はもう物凄い勢いで利上げキャンペーンあるいは利下げ(はできないのでゼロ金利永久化ですか)キャンペーンでセンセーショナルな見出しを出すのですけど、この落ち着いた内容はらしからぬの巻ですなあ。
で、冷静になって考えて見ますと、テレビカメラが入って沢山の記者が色々な質問をする定例記者会見のような場所で言ってるのではなくて本件は単独インタビューなのですから、表に出す時はきちんとした形でだせますわなあということで、その想像が出来ずに湯沸しになったあたくし思いっきり赤面モードでございます(恥)。
その内容ですが、要するに今まで総裁が定例会見や講演などでお話している事と一緒でして、改めて新聞の1面で大きく書くほどの物では無い感が。まあ強いて意味を見つけるならば、今までの日銀あるいは福井総裁の出してきたメッセージを纏めてみましたって事はあるかと思います。
#しかしまあヨタ記事全開から一転してこの殊勝な記事は一体全体何なんでしょうかねえ。
この記事は当然ながらいつも良質の記事を書くことで高名な滝田編集委員が纏めているようでして、滝田さんのコラムというかまとめも1面にあるのですが、ここのコラムが少々アレな香りが致します。何せあなたコラムのお題が『市場味方に政策変更探る』ですよ先生そりゃ一体どういう事ですか。
市場の大方の予想を裏切って強引に地均しをおっぱじめて(そこまでして急ぐ必要があったのか疑問な)量的緩和解除の前倒しを行ったのは日銀様でございまして、量的緩和解除直後には某審議委員様が中立的な金利がどうこうとか言い出してみたりしてましたし、前のめり姿勢と取られても仕方のない態度を散々出してたのはどこの誰だったかと申し上げたい訳ですよ、ええ。
で、滝田編集委員さまのコラムの纏め部分が香ばしい。
『悩ましいのは、ゼロ金利を解除すると、市場が次の利上げを催促する点だ。』
別に政策当局が前のめりな姿勢を出さなきゃ誰も次の催促なんてしませんが何か????この「市場を味方に」ってのはこれから市場が成熟するから味方につけようって話なんですよきっと。いやあすばらしいなあ(棒読み)。
『日本ではインフレ圧力が比較的抑えられていることを念頭に、総裁はあえて「金利水準の調整はゆっくりと実施することができる」と語る。均衡点を探る市場とのつばぜり合いに向けた、総裁なりのヒントだろう。』
火消しサポートご苦労様ですが、これも落とし穴がありまして、会見ベースなどでは強調してないですけど、先日ご紹介した講演なんかでもグローバルなインフレ抑制のメカニズムが変化するリスクだとか懸念してたりしますし、そもそもこの「ゆっくりと実施」ってのはFRBの利上げプロセスで声明文にあった「measured
pace」を念頭に置いての表現ですけど、ペースはゆっくりでも金利引き上げ回数は判らんのでして、ゆっくり実施必ずしも利上げ全然しないという話ではないでしょうな。
それにしても何と申しますかアレな滝田さんのまとめ。これはどう見ても(以下自主規制)です。本当にありがとうございました。
○足元金利はまた堅調
昨日の債券市場も2年とか5年とかやたら堅調で金利絶賛低下していましたが、その一方で足元に関してはGCレポレートがやたら高止まり。当座預金残高が減ったとか、国債発行日要因だとかいう理由で金利が上ると中々下がらんという図には、短期市場参加者の寡占化に伴うパワーゲームが本格化してきているという香りがして誠に遺憾極まり無いのですがまあそれは兎も角。
GCレポレートは0.09%中心という状態になっていたようでして、もうすぐロンバートじゃねえかと言いたくなりますが、ロンバートの場合は担保掛目の問題があるので必ずしも0.1%がレポレートの上限ではないのではないかという理屈まで流布される始末で金利が下がる気配なし。
足元金利の誘導目標が「ゼロ近傍」というやや曖昧な数字になっているのも高止まりの原因なのかもしれませんなあとも思うのですが、無担保コール誘導目標金利から0.1%近く高い金利になるってのは幾らなんでもスプレッド付き過ぎじゃねえのかと思う次第です。まあ資金の出し手が出し手だから仕方ない面もありますけど。
SCレポレートもやっと普通の銘柄でプラス0.02%くらいまでは上昇してきたようですので、ややマシになったとは言え、GCとSCのスプレッドが7bpもあると証券会社の対顧ディーラーはコスト増要因で困りますなあという感じですね。
GCレポレートが0.09%とかまで上昇してるので、1か月ものとかの金利が引っ張られて上昇しておりまして、それに対して1年以上の金利は低下って図になっておりますので、他の外部環境を完全に無視しますと(笑)利上げをしたい人にとってはウハウハの展開になってますな(足元金利の上昇影響が軽減されて、中長期金利ののりしろが出来ているから)。まあどうでもいいですが。
本日の3か月FB入札はそんなわけで足元の現先やGC金利の影響を受ける(先週の入札の時は0.04−0.05%だったのが0.09%に上っている)ので、前回の0.2%割れから今回は0.22%近くまで金利上昇すると思いますが、そんな事情がありますので金利が上昇しても余り驚かないようにお願いします。
では。
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2006/05/23
お題「過ぎたるは及ばざるが如し/GCレートまた上昇」
日経1面に福井総裁のインタビュー記事があるらしいので総裁記者会見ネタを変更して記事も見ないで瞬間湯沸しポッポーをするのでありました。モーサテで紹介された部分に脊髄反射で書いてますので、インタビュー内容を思いっきり勘違いして書いているかもしれないという不安がありますが、たまには勘弁ね。
#いつも瞬間湯沸しポッポーだろうってツッコミはしないように。
(追記:記事を見たら思いっきり不安が的中しました。詳しくは24日エントリーをご覧下さいなのですが、こりゃまたいきなり「日銀の見解をだだ流し記事」とはどういうことでしょうかねえ。よって火消しにはなっていない内容でありました。
○これ以上の火消しは逆方向の期待を煽ると思う
どうも日経の1面で福井総裁が火消しインタビューをやっているようです。内容を読んでない(モーサテでさらっと紹介されているだけなのを見ただけ)ので何とも言えませんが、ちと如何なものかと思いますけどね。
理由は2つありまして、1つ目はタイミング。インタビュー日程自体はもうちょっと前に決まってたと思うのですが、金融政策決定会合で火消しをして更にここで火消しをするという意図があって設定したと思うのですが、市況的には(株安進行が一番効いてるとは思うが)2週間前の6月利上げ懸念騒動は片付いてり、5年国債金利が1.5%近辺から1.3%近くまでと低下しております。イメージ的には年内3回弱の利上げを織り込むような状況から既にまあ年内精々2回っていう状況になっているのですが、ここで早期利上げ懸念の火消しをするのは最早火消しじゃなくて逆方向への火付けになってしまう懸念が大有り。まあ内容見て無いのでそんなに火消し内容じゃなかったらゴメンナサイなのですが、まあどうせ報道してるのが日経新聞なので、ヘッドラインの書き方がバイアス掛かりまくりでしょう。
火消しもやりすぎると今度は逆方向への期待を煽るわけでして、正直言ってその按配って難しい(今回のインタビューもタイミング決定したのはもうちょっと前でしょうから)とは思いますが、火消しと地均しの繰り返しみたいになると期待の安定化も市場との対話もあったもんじゃないと思います。変に逆方向の期待に火がつく前に株価が反転してくれりゃあ大丈夫でしょうけど、何か全然総悲観にならないですからねえ(苦笑)。地均しやり過ぎ→金利無駄に上昇→慌てて大いに火消し→金利無駄に低下→最初に戻るというマッチポンプ循環はある意味オモロイけど政策としては如何なのもかと。
で、まあ2つ目の理由は日経から怒られそうですが、敢えて書きますと「何も日経新聞単独インタビューすることはねえだろう」という所ですな。そもそも今回の6月解除観測騒動は日経金融の暇ネタみたいな記事で、あまり意味のある内容とは思えないものが海外市場で一人歩きしたのが元々の発端(まあ展望レポートが強気ガンガンだったというのもありますが、それで売られているのであれば連休の谷間にもうちょっと売られて然るべきでしたわな)でしたな。確かに日経の1面に出ればインパクトはでかいからそういう選択をしたのかもしれませんが、何も騒動の発端になった日経新聞で火消しをやるこたあねえだろうと思うんですが。
#まあその暇ネタ記事がさもありなんと思われるような動きを今までやらかしてきているというのもあるんですけど。
大体からして金融政策に関して訳のわからんヨタ記事や観測記事を出すのは日経新聞系列に目に付く(というか他の一般紙が全然この点をフォローしないから書く全国紙は日経新聞しかないという点では同情の余地は無いわけでもないが)訳でして、あたくしもしょっちゅう悪態をついているんですけど(一部には素晴らしい記事もあるんですけどね、為念)何だか脱力しちゃうよパトラッシュといったところでございますな。
ヨタ記事が余りにも目につく日経新聞に反省して頂く為にはこのインタビューを他所の新聞でやった方が吉だという発想をするのはあたくしの人間性に問題がありますかそうですか。
#などと好き放題書きましたが、肝心の記事を見ないでこんなに書いた自分を3時間後には後悔するのではないかと思料(笑)。
○GCレポレートまたまた上昇
先週は22日の国債発行日要因とかいう言い訳が発生したためにそれまでの0.04%近辺から0.06%近くまで上昇したGCレポレートですが、昨日は25日スタートの翌日物取引が25日の国債発行日要因という名目でまたまた上昇。0.08%−0.09%ともうちょっとでロンバートですけど良いんですかそれってレベルまで上昇。
言い訳が発生するたびに金利が上昇するという如何にもアヤシイ価格推移なのは資金の出し手が限られていてふがふがもごもごなのが要因なのではないかと思料されますが、それにしてもまあロンバード近くまでとは随分上ったもんでございます。
一方でTBFBやCPのレートを見てると足元はGCレートの上昇に引っ張られてやや上昇気味、というか6月償還や7月償還のFBなんかが重そうな感じでして(だからGCが上がり易いのだが)、人の懐具合は知りませんが、当座預金残高削減に伴って「ゼロ調達の資金潰しにFB購入だぜベイベー資金繰りのバッファーにもなるぜベイベー」っていうFB需要もだいぶ減退してるんでしょうなあという感じ。FBがちと重めの為にCPレートとFBレートのスプレッドは相変わらず縮小したままという感じ(先々週はFBレートが先行して上昇したので一時的に官民逆転状況が局地的に散見されましたが落ち着いたらさすがにそれは解消)ですな。
GCレートが上昇するとTBFBレートなどにも影響を与えるので、ターム物金利が高止まりする要因にもなりますし、GCレートの上昇にSCレポレートの上昇が中々追いつかない(SCレポで玉を放出する人は基本的に投資家で、現状はまだ金イラネ状態の人が多く、レートを上げてでも放出するインセンティブに乏しいかと)ので現物債のマーケットメイクをしている業者から見るとコストの上昇につながります(マーケットメイクするとどうしてもロングショートのグロスポジションが増えるので)のでちとしんどいでしょうな。まあ色々と影響が及んでくるわけです。
だからどうしたと言われると困りますが、コールレートの上昇がまだ大したことの無いうちに先行して随分上昇したレポレート、さすがに0.1%を超えるのはアホですので(ロンバートがあるから)これ以上はようやらんとは思いますけど、まあ火消しで長い金利が低下してますが、地味に足元はジワリ上昇という所でしょうな。
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2006/05/19
○記者会見想定問答(^^)
ネタ無し業務多忙の折ですが、まあつらつらとしょうもない事を想像。
本日の決定会合の政策アクションについては当然ながら皆さんノーマーク。注目されるのは金融経済月報と記者会見ですが、月報の方は展望レポートの時点で利上げ体制磐石でございますのでそんなに驚倒するような内容は出てこないと思いますので、気になるのはやはり記者会見ということになります。
で、まあ誰かがどうせ先日の国会答弁の真意について質問をすると思う訳ですが、「当座預金残高6−7兆円」についての想定解答を勝手に考えてみるとこんな感じでしょうか(^^)。
当座預金残高の6−7兆円という数字を殊更にとらえて金融政策との関連性を論じるのであればそれは先日の国会での発言を誤って解釈している。答弁で言及したのは所要準備額の水準にほど近いところまでの残高引下げというのが趣旨であり、一定水準への引下げを意図しての発言ではない。
えーっと、こんな感じでどうでしょうか(^^)。
まあ先日の6−7兆円という数字に関しては「今の市場環境では(郵政公社預金がぶれる上に資金繰りのバッファーでブタ積みは残ると思われるので)そこまで当座預金を本当に落としたら大変なことになるからやらんでしょ」という事であまり材料にならなかったのですが(ならないのが当たり前)、まあ何せ我が国には金融政策に関してヨタ記事度の高いネタを投下するのを得意とする経済のクオリティペーパーがある訳でして(-_-)、当座預金残高と金融政策をリンクさせて変な観測記事を出す可能性も否定できません(つーか別件で既に書いてるし)。
そうするとその記事を読んだ海外投資家と言われる人が早速ネタにして動くのか仕掛けるのか知らんですが、妙な撹乱要因になっちゃったりするので、その某新聞社への啓蒙も必要かと存じますので本件については誰か質問してくれると良いなあと思うのでありました(笑)。
その他想定されるのは為替と株についてでしょうが、内心はともあれ、公式としては「金融政策は中長期の経済状況を見て物価の安定を目的に行う」ということになると思うので、そんなに配慮した発言が出るとは思われません。
とは申しましても実は気になるのは福井総裁発言がまたぞろ「サービス精神旺盛」モードになってきてないかというところ。量的緩和政策解除直後は別としてそのあとからの総裁発言は慎重に言葉を選んでいる感じはしていたのですが、月曜の火消し発言や火曜の火消し発言(早期利上げ観測に対して「極めてうがった見方」というフレーズを使うとか)にはどうもこうサービスフレーズ復活の香りが漂っておりまして、どうなんでしょうなあって感じです。
いやね、福井総裁のサービスフレーズって情報ベンダーでヘッドライン打たれると市場が過剰反応あるいは誤解しやすい要素が多々あるんで、余計な撹乱要因になるのよ。まあ動くのはオモロイけど、そういうもんじゃないですからねえ。
ま、総裁会見に注目ですな。
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2006/05/18
○月曜の総裁講演補足
何気に読んでて引っ掛かったのはコロンビア大学日本経済経営研究所の記念カンファレンス(長いよ)での講演の方でございました。
http://www.boj.or.jp/type/press/koen/ko0605b.htm
火曜にちょっと引用した「いつまでもあるとおもうな経済のグローバル化の物価押し下げ効果」の先でして、上記URL先の目次の(新しい物価環境と金融政策)という所をクリックすると当該部分に飛ぶと思います。
中央銀行に対する新たな課題ということで第1にあったのが火曜にご紹介した部分ですが、第2の部分でしらっとこんなお話がございました。
『第2に、ただ今申し述べたリスクの把握という課題と関連しますが、物価の国内景気に対する感応度が低下しているということは、これまで慣れ親しんできた経済活動の「体温計」の感度が低下しているということも意味します。』
『そうなると、中長期的にみて物価の安定を実現するためには、当面の物価上昇率を政策運営のガイドポストとするだけでは不十分になってきます。より長い目でみて経済活動や物価の振幅を大きくしそうなリスクをできるだけ敏感に察知して、適切に対応することがいっそう重要になります。』
まあ目先の動きに一喜一憂しないという意味で言ってるとも取れますが、どうもあたくしこれを見るとインタゲ否定に読めてしまうんですがそれは意地が悪いからですかそうですか(笑)。
『実際、近年、先進各国の中央銀行が直面してきた課題は、必ずしもインフレやデフレの古典的なケースだけではありません。中央銀行は、資産価格の変動、金融システム不安、国際的な通貨危機、さらには地政学的な要因に基づく市場の不安定化など、実に様々な問題に対応してきました。』
はあそうですか。日本のデフレは古典的じゃないんですかそうですか。
『これらの問題は、一歩対処を誤れば、中長期的には経済活動ひいては物価の安定を阻害することになるからです。』
ええまあそりゃそうでございますが。
『短期的に物価の感応度が低下している分、中央銀行としては、こうした中長期的なリスクをしっかり見極めるとともに、それを国民や市場参加者に説得的に提示していく能力を磨かなければなりません。』
いやまあそれはそれで一つの見解としてそういう考えもございますなあって所ですが、そうなりますと先日出した「物価安定に関する理解」はありゃ何だったんでしょうかって話になるんですが、長期的な物価安定が中央銀行の任務としてあるというのは判りますからまあそういうものが出ても何ら不思議はないのですが、目先の物価に関して景気への感応度が低いって話をしらっとされてしまうと、あの「理解」はどういう位置づけになってしまうんでしょうかねえって思っちゃうんですが。
まあこの辺りもいざ突っ込もうとして書き物を始めると最近はめっきり書きながら色々と対抗する理屈が自分の頭の中で涌いてくるという現象が発生しておりまして(苦笑)、誠に遺憾極まりない今日この頃ではございます。とほほ。
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2006/05/17
お題「火消しもほどほどに」
続きは明日と書きながら翌日になると話が変わるのがドラめもんクオリティでございますが(おい)、今朝の話題は福井総裁の国会答弁ということで。
昨日は参議院財政金融委員会で福井総裁の答弁があったようです。例によって例の如く国会での質疑応答が会議録としてアップされるのには少々時間がかかりますので、本日のソースはブルームバーグニュース16日11時19分配信のものからということで勘弁。後日要確認。
○あれれ、市場の金利見通しを参考にしたんじゃないの?
市場金利が上ってますがどうでしょうという質問が民主党の富岡委員から出まして(何か引っ掛け質問っぽいですが)、福井総裁はこんな話をしたそうな。
『極めて短い金利、あるいは中期ゾーンと言われているやや長い金利は、先行きの金融政策の読みを入れながら、市場金利がかなり動いていることは事実だ』
『恐らく実際に市場で資金を投入しながら、市場取引をしている本当の市場関係者は、ある程度先行きの政策金利の上昇を織り込み始めているとは思う』
『今、市場で実際に変動しているかなりの部分は、まだボラティリティ(過度の変動)というか、先行きが必ずしも読めない中で、いろいろな取引が交錯する中で金利が動いている。そういう意味で、非常に熟した市場条件の形成という段階には至っていない』
ええまあ一番ドタバタ動いてるのはスワップやらALMヘッジやらの玉飛び交うユーロ円金利先物でして、まあ過度の変動をしておりますが(笑)、ここのくだりを拝見しておりますと、市場の動きが成熟してませんとお叱りのようでございますな。ええそうですともしじょうとのたいわがうまくきのうしていませんですね(棒読み)。
で、まあそういう認識ならそういう認識でも結構ではございますが、そんなら先日の展望レポートで「各政策委員は、政策金利について市場金利に織り込まれたとみられる市場参加者の予想を参考にしつつ、上記の見通しを作成している。(皆さんご存知の脚注)」ということで市場参加者の予想とやらを参考にしたのは何だったのでございましょうかと小一時間。
しかも先物金利が参考になるとかいうレポートまで出しておいてその国会答弁は如何なものかと思いますが。「市場は特性として過剰に反応することもありますよえっへっへ」くらいの答弁にしておけば良いのに、どうしてそうサービス過剰答弁をするのでしょうかねえという所。
だいたいからしてボラティリティって用語は市場用語で使うときには上記のような使い方しませんわな。妙な使い方をすると市場が思わぬ反応をしでかすかも知れませんので一般的じゃない用語の利用は控えめに。
○投機的な動きですかそうですか
でまあその続きではこんなお話を。
『外国の金融市場でも、政策金利の変更に先立つ期間においては、実際の市場金利に確信を持って織り込む部分と、まだ確信が持てず、さまざまなボラティリティが入ってくる局面がある。日本は今まさにそういった状況にある』
そのボラティリティという言葉の使い方は物凄く意味不明です。
『これから展望リポートの内容が更に織り込まれ、実際にこれからの経済・物価じの推移を見ながら、より確信を持った織り込み方がなされる。つまり、市場が熟していく、そういった段階にこれからだんだん入っていく。今の市場を見て、何かボイスが発しておられる方はかなりスペキュレーション(投機)が入っていると思う』
ここのくだりも微妙に意味が判らんのですが、市場が日銀の連続的な政策金利変更を織り込みに逝ってしまってますなあとか言ってるあたくしも投機が入ってますかそうですか。
まあとりあえず市場の金利上昇観測を冷やしたいのは判るが、そもそもその金利上昇観測ってのは7−9月と予想されていた政策金利変更時期が6月になるかもしれないという話が出たってのは直接のきっかけかもしれませんが、根底には日銀(というか一部の審議委員)から中立金利がどうのこうのとか(最近そういう言い方は鳴りを潜めましたが)いうようなお話が伏線にあって、「6月に政策金利を上げるのならその先の金利引き上げパスも速いのではないか」って話になってるから金利上昇観測が強くなって2年とか5年とかが弱い訳でして、何と申しますか自分達で火付けをしといて火消しというマッチポンプは勘弁して欲しいですな。
そもそも論で言えば、4月の量的緩和政策解除でほぼコンセンサス状態になっていたのにジャストタイミング重視だか何だか知りませんが、気合満々で強引に地均しして3月に量的緩和政策の解除をしたという実績がありますので、そりゃまあ前のめりの姿勢が見られれば、先行きの金利引き上げが早くなるのではないかと市場は懸念する訳でして、まあ総裁のこのあたりの指摘も随分と虫の良い話ですなあという印象。
○何で数字をそうやって出すかねえ
当座預金残高の削減に関連して総裁答弁。
『当座預金残高はピークには30兆−35兆円あったが、3月に量的緩和政策を解除して以降、いわゆる準備預金制度に基づく所要準備額の水準にほど近いところ、つまり6、7兆円というところに下げていくプロセスを今進めている』
いやあの別に所要まで頑張って下げなくても金利政策は発動できますんで、その数字明言は止めてくれという感じなのですが、これは以前中曽金融市場局長もこの数字をわざわざ言ってしばらく妙な思惑が出たりしてましたけれども、短期市場的には10兆そこそこで十分に所要近くまで落ちているようなイメージ(詳しい理由と解説は本石町日記さんの最新エントリーをご覧下さい)なんで、数字一人歩きのリスクを考えるとそのような数字を出すのは如何なものかと。
『この過程では、短期金融市場にまったく波乱が見られない状況で進んでいる。この状況で行けば、あと数週間でほぼこの流動性を吸収するプロセスは完成すると思っている』
数週間で終わらせろという指令がでておりますが(苦笑)。
まあそれは兎も角として、短期金融市場というのをどこからどこまで意味するのかよー判らんのですが、まあ確かに翌日物コール市場は無風ですけど、先週3か月FBがいきなり金利大爆発したのはご案内の通りですんで、いやあのそれは何ちゅうか本当ですかって突っ込みたくなりますな。
でね、何度も申し上げてますし、総裁も答弁で言ってますけど、当座預金残高の削減過程ってのは単に技術的な問題ですから、別に数週間で終わるとか何兆円になるとか言わん方が良いと思うわけですが。変に確定的な数字を出して説明をすると、その数字からずれた時に「何らかの意図があるのではないか」って受け止め方をして大仰に報道する某経済新聞の如き存在がある訳でして(−−)、短期市場は「ああテクニカルに調整したのね」と理解しても、他市場の人たちはそこまで判ってくれない=変な誤解が蔓延する危険があると思うんですよ。
具体的数字の言及は出来るだけ避けた方が吉かと。
○もっと勉強しましょう(これは質問者向け)
質問したのは民主党の富岡委員ですけど、質疑の中でこんな突っ込みをしていたようでございます。
『あと数週間で流動性の吸収が終わるということが、ゼロ金利の解除が6、7月に早まるという見方につながっている。市場の金利動向についてどのように見ているのか』
そもそも政策金利引き上げに関しては7月説も結構あった(あたくしもそうですが)と思う訳ですし、それ以前の問題として流動性の吸収が早く進んだから前倒しになるって話をするのは日経新聞くらいのもんでして(苦笑)、そういう質問をすると市場関係者から「アフォじゃのー」という認定になりますな。質問するならちゃんと勉強しましょうね(はあと)。
前のめり姿勢が目立つので先行きの金利引き上げパスが速くなるんじゃないかって懸念のが昨今の動きの根底になると思うんですが。
まあ質問者のことなどどうでもいいのですが、市場がどうのこうのって質問する人たちはとりあえずもうちょっと勉強してから質問を願いたいものでありますな。・・・・でもその勉強の素材が日経新聞だから仕方ないのかなあ(爆)。
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2006/05/16
お題「どう見ても物価上昇懸念です。本当にありがとうございました」
昨日は福井総裁が2箇所で講演を行いました。で、債券市場も短期市場も講演そのものやその後の質疑応答にもそんなに反応してなかった(機械受注にちと反応してましたが)のですけれども、毎度お馴染みの如く海外市場の人が動く時間になりましてユーロ円金先がやや上昇(Liffeの方は商品市況あんど米債要因なのかこのせいなのか判らん)。
どうも質疑応答の場面で火消し発言をした(後述)事がガイジンの皆様に置かれましては評価されたんでしょう。と思ったら今朝のモーサテでもヘッドラインで「福井総裁が早期のゼロ金利解除を牽制」って言ってるから、まあ海外ではそんな受け止め方になっているんでしょうな。
しかし、講演要旨を最初に読んだあたくしはお題に書いてある通りの感想しかないわけですな。まあそもそも早期解除観測のヨタ報道をしたのが日経新聞(というか日経金融)な訳でして、まあニッケイのマッチポンプに海外勢が見事に騙されております。これが意図的なマッチポンプでガイジンマネーを日本で焼いていただく為の目的でもあれば神(それじゃあ意図的な風雪のルルか^^)ですが、どう見ても天然で報道しています。本当に(略
という訳で講演が2本ありますので、多分本日は概観で終わってしまうのではないかと思料。決して明日に向けてネタを温存しているわけではございませんので悪しからず(笑)。
http://www.boj.or.jp/type/press/koen/ko0605a.htm
↑内外情勢調査会での講演
http://www.boj.or.jp/type/press/koen/ko0605b.htm
↑コロンビア大学日本経済経営研究所創立20周年カンファレンスでの講演
で、両方とも紙に打ち出すと5ページだの6ページだのとなるものでして、話がややこしくなるので内外情勢調査会の方を重点的に引用しつつなんちゃらカンファレンスをおまけに。
○物価上昇にバイアスの掛かった内容です
まず読んでて最初に思いっきり目に付いたのは『日本経済の現状と先行き』という所です。
『こうした現在の景気の特徴も踏まえますと、今後2年間のわが国の経済・物価情勢を展望した場合、最も蓋然性が高い見通しの骨格として、次の3つのポイントを指摘することが出来ると思います。』
ということでポイントを挙げているのですが、3つ目のポイントで目がゴシゴシでございます。
『3つ目のポイントは、景気が成熟化していく中で、生産性の伸びが鈍化するとともに、賃金が上がりやすくなり、物価に上昇圧力が働いていくとみられることです。』
物価上昇圧力。。。。。(゜д゜)
『景気回復初期の段階では、企業内に労働力や設備の余剰があり、それらの稼働率を上げることで生産性を引き上げることができましたが、景気の回復が続く中で、そうした余地は次第に乏しくなります。先程述べたように、既に経済全体の需給ギャップはゼロ近傍にあり、2007年度にかけて潜在成長率を上回る経済成長が続くと見込まれるもとで、今後需給ギャップは緩やかにプラス幅を拡大していくとみられます。』
『また、労働市場の需給が改善し、既に人手不足感が比較的幅広い分野でみられる中、賃金は緩やかな増加を続けていくと予想されます。このため、製品をひとつ作り出すための労働コスト、すなわちユニット・レーバー・コストは、賃金の上昇、生産性の伸びの鈍化の両面から上昇圧力を受けることになります。この先2007年度にかけて、ユニット・レーバー・コストの下落幅は縮小し、いずれ若干の上昇に転じていく可能性が高いと考えています。』
ということでして、この次の締めで目が丸くなります。
『これまで景気回復のもとでも物価が上がりにくかった原因の一つは、ユニット・レーバー・コストの低下が続いてきていることです。こうした条件が変化してくれば、物価はこれまでに比べ上がりやすくなると考えられます。こうしたもとで、消費者物価(除く生鮮食品)は、昨年11月以降前年比でプラスとなっていますが、先行きもプラス幅を次第に拡大し、2006年度には0%台半ば、2007年度には1%弱の伸び率になると予想しています。』
最後の結論の数字は兎も角、物価は上がりやすくなるですよ先生。
○上振れは懸念ですが下振れは大したことないようです
その次に経済の上振れと下振れ懸念を列挙しておりますが、下振れ懸念は大した事無いと言及しつつ、下振れの中に物価上昇の話がでているというのがこれまたポカーンでございます。
『景気の先行きに関する下振れ要因として、「展望レポート」では、世界経済の成長の下振れと、IT関連分野などでの在庫調整の可能性を挙げています。』
この次に思わず目がいくのは福井総裁はタカ派だという思い込みが激しいからですかそうですか(苦笑)。
『特に、世界経済については、高騰を続ける原油価格の動向やその影響に注意する必要があります。また、そのこととも関連して、「物価上昇圧力が抑制されるもとで、金融環境の安定が維持される」というこれまでの世界経済の成長を支えてきた構図に変化が生じるリスクもあると思います。』
これはどさくさに紛れて「グローバルな物価上昇リスク」に思いっきり言及していると読んでしまいましたが・・・・(゜Α゜)
『在庫調整については、景気が成熟化していくもとで、何らかのきっかけにより発生する可能性があることを認識しておくべきと思われます。もっとも、在庫調整が生じた場合でも、わが国企業が各種の過剰の調整を終え、収益力を回復していることを踏まえると、一部における在庫調整が景気全体へ深刻な悪影響を及ぼすような事態に至る可能性は小さいと考えられます。』
ということで、これを(やや意地悪く)読むと、グローバルな世界経済成長の下振れの時はグローバルな物価上昇を伴い、イット分野での在庫調整圧力は部分的で大した事ございませんということですからどっちにしても金融政策がここから緩和方向に矢印が逝くとは考えられないという風になりますけど。。。。
で、その次が上振れでして、まあここまで引用してると長くなりすぎなので割愛しますが、企業行動の「過度の積極化」に言及してますわな。
○で、物価の下振れ懸念は・・・・
その次に『物価情勢に関する上振れ・下振れ要因』なのですが、ここでの言及もまた物価上昇方面へのバイアスを強く感じさせてくれます。
『次に、物価の先行きに関する上振れ・下振れ要因としては、原油などの国際商品市況の動向のほか、景気の動き、すなわち需給ギャップの変化に対して、消費者物価がどの程度反応するか、ということが重要と考えています。』
ということで見通しを述べていますが、これってどう読んでも「この先は物価上昇ですよ上昇。下落?何ですかそれ?」としか読めないんですけど。
『先ほどの見通しでは、需給ギャップがプラスに転化しても、消費者物価の伸びが目立って高まることは想定していません。これは、近年、わが国だけでなく海外を含めて、需給ギャップの変化に対する物価上昇の感応度が低下傾向にあることを勘案したためです。(以下長いので中間割愛です)もっとも、今後、ユニット・レーバー・コストは上昇に転じることが見込まれます。また、需給ギャップがプラスに転化していく中で、いずれ、企業の価格設定行動の変化などによって、また、これに人々のインフレ予想の上昇を伴う形で、物価の経済に対する反応の度合いが強まり、物価が上振れることも考えられます。』
どう見ても上振れ懸念しかありません。本当にありがとうございました。
でね、割愛した部分なんですが、その中で述べている新興国の工業化による物価の抑制という話なんですが、もう一方の講演の中ではこんな言及がありまして、ここも結構「おお!」と思った訳ですが。
『第1に、経済のグローバル化がいつまでも物価押し下げ効果を持ち続ける保証はありません。実際、最終製品の価格下落により物価の上昇圧力が抑制される一方で、それと対照的な現象も顕著になっています。(長いのでまた中間割愛)こうしたグローバル化に伴う世界的な需要増加ということまで含めて考えると、実は、グローバル化が物価押し下げ要因になるのか、押し上げ要因になるのか、必ずしも確定的なことは言えません。これまでのところ、一次産品の価格上昇が、他の製品への波及やインフレ心理の高まりを通じて、各国の国内物価を大きく押し上げるには至っていません。しかし、世界全体の供給余力が次第に乏しくなっていけば、こうした好環境が気づかないうちに大きく変化しているというリスクには十分気をつけなくてはなりません。』(ということでこれはコロンビア大学研究所カンファレンス講演から)
ということで、まあ総じて物価上昇懸念全開講演な訳です。
○ところでいつの間に物価上昇懸念全開になってるの?
そんなわけで今般の2本の講演ですが(さすがに長くなるので引用は物価方面の部分で終了しておきます)、何のかんのと言いましても、ここの字面を見ていると物価上昇懸念全開モードにスイッチが入っているように見えてしまう訳です。
いやあのこの前まではどっちかというと金融緩和長期化の懸念という事で、資産価格のバブル懸念を中心にしてたように思えるのですが、何となく平均株価が伸び悩みになってくるわ、新興市場がヘロヘロになってくるわで、地価だって上昇してるの大都市の中心部だけでしょって話になって来たところで、すかさず今度は物価の上昇懸念の話がメインになるというのには感心しちゃいましたよ、うんうん。
物価に関して展望レポートの数字(来年度へ向けての政策金利引き上げを織り込んだ上でCPIが0.9%)からの上振れ懸念ばっか並んでいるということは、どう見ても「CPI0−2%が望ましい物価水準という理解」のレンジの上の方に逝く懸念全開ということですわな。いやはやそれでいいのかという気もしますが。
いつの間にか話がなし崩し的に変っているというのは福井日銀お得意のパターンですけどね。
○質疑応答は残らないので・・・・・
ブルームバーグニュースのヘッドラインを見ますと、福井総裁は質疑応答の部分では「経済・物価シナリオ通りなら急がずゆっくり金利調整」とか「流動性削減の時期(=当座預金残高を所要近辺までに引き下げる時期)とゼロ金利脱却はまったく別の問題」というような言及をしております。
で、後者に関してはモーサテでもその場面の画像付きで報道されていましたが、後者の件に関してはそもそも当たり前の話でありまして、「当座預金残高を所要に削減したら利上げ」とか「利上げへのパスは残高削減ペースで読み取れる」などとヨタを飛ばしていたのは日経新聞とモグリの日銀ウォッチャーだけでございますので、それを捕まえて「早期ゼロ金利解除を牽制」といわれても困ります。
でね、まあ前者に関しては公式見解がまあそうなっているからその範囲の話をしてるんですけど、先ほどから延々とご紹介した中にありますように、福井総裁的にはメインシナリオの中に結構物価上振れ懸念が含有されているものと考えられますので、どうもこの「ゆっくり」のペースについては気になる所であります。
総じて質疑応答では火消しを意識しているようなヘッドラインでしたが、講演でもこの手の場合は日銀のウェブサイトには記者会見としての発言が残らないので、まあ無茶な話をすれば別ですが、少々のサービス発言をしても後に残らないから心配ないぜってのは穿ちすぎですかそうですか(苦笑)。
まあアレだ、最初に講演要旨を読んでしまっているので質疑応答のヘッドライン見ても反応する気が起きなかったのですが、世界は広いので反応する人もいるっちゅうことですかな。
○ところで本件とはあまり関係ないですが・・・・
週初というのは色々なレポートを目にするのですが、その中で気になったのは「円高だから金利引き上げをしにくい」って議論。
現況のテーマは円高ちゅうよりはドル全面安だと思うわけですが、そのドル相場を支える為に金融政策で対応するという論議を持ち出す人には「プラザ合意」という文字を額に入れてお渡ししたいと思う訳でして、いやさすがにそれはどうかと思う次第で。確かに為替市場で介入しながら金利は引き上げってのも妙ではありますが、政策金利は基本的に国内要因でいじるっちゅうのが基本ではないかと思うんですが。
ちょっとドル円相場が円高に振れると物凄い勢いで騒ぐ人たちが政界財界にやたら多いので政治的マターとしてややこしいことになるというのは判らんでも無いですが、大体為替相場支えの為に無用に流動性をばら撒いたあとは碌な事が起きていないというのは何度かやっている筈なんですけど、本業がレポート書きの人でも円高で金利は上げられないという意見が堂々出てくるのはどんなもんなのかなあと思うのでありました。
じゃあお前はどう思うんだという話ですが、物価がそんなに威勢良く上る状況でもないし、政策金利をそう勢い込んで上げる必要は無いんジャマイカと思うんですが。上げるにしても1回上げるごとに半年以上は影響を見極めながらだと思うんですけどねえ。
#多分明日に続く
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2006/05/12
ミスター円先生のインタビューがあったのでモーサテ見てましたが、円高円高もう円高で介入ですよ大荒れですよってあたりまではほほうドテン円高論転換ですかお気楽ですなあくらいだったのですが、日銀が日経金融使って利上げキャンペーンという辺りに至って時間の無駄であることを確信(追記:まあ某審議委員だけはそんな発想あるかも知れんが、日銀の中では迷惑している向きが多いと思う)していつものようにブルームバーグテレビ(東京MXで放送中)に切り替えるのでありました。
○結局またもロスカット狙い撃ち攻撃だったのか
昨日のユーロ円金利先物は反発してました。まあ反発は結構なんですが、6月限が3bpとか戻って0.3%までマーク(その後また下がりましたが)しておりました。相変わらず6月利上げを全力で織り込みに行ってる価格ではございますが、まあ一昨日売ってた向きは何だったんでしょうかって感じではございます。
きっかけなのかどうか知りませんが、また毎度の海外レポートでBOJ幹部が日銀は利上げを急いでいないとコメントしたとか書かれてたので一旦売り方の利食いのタイミングになったという感じなのかなあと。しかしまあただのきっかけだとは思いますが人づてに聞く内容は日経のヨタ記事もビックリのヨタ記事のようでして、まあ何と申しますか、偽メールを大喜びで国会に持ち出すどこぞのアホウを笑えませんなあという所でしょうか。
・・・・まあアレです。結局海外で売り仕掛け(タイミング的に別に経済指標が出たわけでも無いのだからこんなのは仕掛けか展望レポートに相当遅れて反応したアホなのかでしょう)をかまして悪材料(今回だと6月利上げ前倒し話)を囃したてて銀行ALMのロスカット狙いに逝ったんでしょうなあという感じが致しますわな。2年0.8%(は一昨日ですが)はねえだろうとどこまでの利上げパス織り込んでるんだYO!って所ですな。
ま、毎度申し上げてますが、銀行様が沢山お抱えになっている中短期ゾーンばかりやたら動くのは銀行のポートが時価評価に晒されっぱなしであって、おまけにリスク管理がどうのこうのとうるさく小言を垂れる御当局様がいるので、立場上やたら直ぐに投げ踏みしたがるという行動様式に起因してるのではないかと勝手に想像してますけど、まあ仕掛ける方も当然ながらそのような構造的な問題点を重視して仕掛けてくるんでしょうなあなどとも思うのでありました。
なお、仕掛け云々の話は状況から勝手にあたくしが脳内妄想を全開にして行っている与太話でございますので、その点はお含み置きを願いたいです。
○悪態はちょっと聞こえたようですが
TIBORがバーチャルマーケットですなあという悪態が聞こえたのかどうか存じませんが(笑)、全銀協様ご公表のユーロ円TIBOR金利あたりを拝見致しますと、昨日はやっと上昇したようでございます。
・・・とは申しましても、12ヶ月ものがようやっと0.408%でございまして、昨日のロンドン11時のLIBOR円12ヶ月もの金利0.5425%(ちなみに10日は0.53%)から見るとエラク違います。で、来年4月20日償還のTB399回債(なので11ヶ月もの)はと言いますと昨日の引けでは0.425%近辺にいまして、まあどっちが実勢に近いのかは推して知るべし。
まあ日銀レビューによりますとそのあたりの問題点も十分に把握なさった上でユーロ円金利先物を参考になさるようでございますので、それほどなーばすになることもないんですよ。いやもうまったくもんだいはないんでしょうなあ(突如棒読み)。
#とは言え、いままでろくすっぽ動かしてなかったものをいきなり昨日の今日でレートを死ぬほど動かすわけにも行かないというのはあたくしも理解は致しますし同情は致しますが、まあネタにはしますよ。
○「円環性」の問題ネタで少々
先日ご紹介した本石町日記さんのエントリーでお話はまあだいたい尽くされているような気はしますが、一応あたくし用手控えメモ。
「円環性」の問題云々って本文見てもねえなあと思って読んでいたのですが、良く見たら最後の脚注の4番に記述がございました。実に迷文ですので残しておかナイト。
『経済のファンダメンタルズから乖離し得る市場の予想金利を経済見通しの前提にして、中央銀行が政策判断をするようになると、市場はそのことを織り込んで金利の予想を行うようになる可能性がある。この時、市場の金利予想は、ますますファンダメンタルズから乖離し、自己実現化するという「円環性」の問題が発生し得る。同問題の影響を断ち切るためには、中央銀行が常に、自らの情勢判断に基づきながら、ファンダメンタルズに沿った政策金利の経路を念頭において政策運営していくことが必要である。』
アラン・ブラインダー氏の言う「自分の尾を追う犬」の話でございます(えっとですな、この話は以前もご紹介しましたが、ブラインダーさんの講演を纏めた「金融政策の理論と実践」ちゅうのが河野龍太郎さんと前田栄治さんの訳で東洋経済新報社から出てるんで読むべし)が、ここの記述ではどう見ても市場の予想金利が勝手に間違える(『経済のファンダメンタルズから乖離し得る市場の予想金利』ってそういう意味でしょ)としか読めませんですな。
ええ、短期市場ってのは中央銀行のアクションに一番ビビットに反応するのでして、期間が長くなればなるほど経済ファンメタに反応するというのが一応教科書的な回答になります(ただし日本の場合は大手銀行が振り回すゾーンがビビットに反応するという説もありますけど、笑)し、基本的にはそういうもんでしょ。
それに地均しをしたがる中央銀行のボードメンバーがセットになりますと、そこから導き出されるインプリケーションは「日本銀行は自分達で市場に対して地均ししておいてその金利上昇を容認して利上げアクションをするんですかそうですか」とどうしてもなってしまいますわなあという所でおじゃります。
上記の記述にある「同問題の影響を断ち切るためには」って話ですが、「中央銀行が常に、自らの情勢判断に基づきながら、ファンダメンタルズに沿った政策金利の経路を念頭において政策運営していくことが必要である。」と小難しい事を書いてますが、それ以前のそもそも論として、「まずデフレを止めよ」じゃなかった「まず地均しを止めよ」でしょう。
政策を語るな、金利水準を語るな、景況感と景気見通しを語れと。
#微妙に切り口は違いますが、本石町日記さんの最新エントリーhttp://hongokucho.exblog.jp/4637891もご参照下さい。
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2006/05/11
お題「いやあの何ですかこの水準は・・・」
日銀レビューをねじり鉢巻で料理などと言ってたら、気が付くと料理場の外が煙モクモク火がボーボーといった所で料理どころではございませんでしたというのが昨日の短期マーケットでございましたな。丸焦げ注意。
しかしFOMCで決め打ち声明文が出るわけ無く、今までずっと言ってるように「金融政策は今後の経済情勢次第」って話しか出ないの判りきった話だと思うんですが、何であれで米債瞬間大売られになるのか意味判らん。
○昨日の続きというか補足(日銀レビュー)
昨日威勢良くボロカスに書きました日銀レビュー。まあレビューをよくよく読みますと金先以外にもTBFBとかTIBOR(の現物)とかスワップとかも「総合的に勘案」っていう事は書いてはございます。で、確かに昔のようにTIBORがターム物取引の市場実勢に近く、短期金融取引(主にターム物取引とかCDとかCPとか)との裁定が効いている時代であればユーロ円金利先物の金利水準は指標として訳に立つ訳ですから、別に書いていることが理念的に間違えているとまでは申しません。(と一応フォロー)
ただね、現在の市場状況として(昨日申し上げたように)TIBORの金利がバーチャルマーケット状態になってしまっている訳で、その状況下でペーパーご紹介ページに堂々「先物が参考になる」ってのは短期とか債券の現場的には燃料になっちゃう訳ですよ。昨日のブルームバーグニュースの短期市場概況解説記事(16時40分配信)では『日銀からは「市場金利から先行きの金利見通しに関する情報を得るには先物金利が参考になる」との個人論文が発表されたことも嫌気され、市場追随で動く日銀を警戒した海外勢中心の売りが膨らんだ。』って書かれちゃいましたが、まあそれはさすがにちと執筆者カワイソスではございますけど、燃料効果オソロシスでもある訳ですな。
でまあ何でTIBORがこんなになっちゃったかと考えますと、何と言いましても銀行間のターム物取引の打ち合いというものが死滅状態になっている訳で、背景には量的緩和長期化とかインターバンクで信用リスクがどうのこうのとかうるさくなったとか大手銀行がマネーポジションからローンポジションになったとか色々とあるようですので、TIBORレートがバーチャルレートでケシカランと言ってるだけでは話が始まらんようではございますが。
とりあえずTIBORレートにそーゆー問題があるという理解の元に相場の方向性とかを見るというお話であれ(レビューを良く読むとそういう書き方をしているようですが)ば無問題なのでしょうが、一部の審議委員様に置かれましては金先「金利」の絶対水準を見て「市場は複数回の利上げを織り込み」と発言しているとしか思えないような人がいる訳でして、レビューとこのような動きをセットで考えちゃうとどうしても「金先金利の絶対水準を見て市場の金融政策織り込み度合いを判断するんですかそうですか」という印象を与えちゃいますわな。
まあアレだ、何というか公表タイミングは相変わらず間が悪かったですなあという感じですが、ついでにサマリーの書き方もちと配慮足りなかったんじゃネーノということにしておきます。
○いやあ0.2%まで逝っちゃいましたなあ(TBFBとかオペとか)
昨日あたくしは3か月FBに付きまして「幾らなんでも0.15%では止まると思うんですが」と書きましたが、物の見事にぶち抜けてしまう所がドラめもんクオリティ。肝心な所でこれだから我ながら情け無い所でございます(恥)。ということで昨日のお話を少々。
朝っぱらからこっそりと0.14%あたりの出合いがあったとか無かったとかだったようなのですが、金先やら2年やらが朝一からズタボロになっているのもあって買いの手引っ込みんぐ。
で、前場の終わりには、0.16%堂々オファーで入札迎えてしまいました。そして結果はご案内の通り。最低落札価格を市場呼び値の利回り(経過日数の計算を受渡日から償還までの片入れで行う)に換算すると0.202%に相当。しかもその価格での按分比率が8割以上とこれまた予想以上に入ったという印象。
だいたい0.2%だと幾らなんでも止まるでしょうと思うのでちょっとシャレで札を入れる人も存在する訳で、按分かかるにしてもそんなに厚い按分になるとは思わないでしょうからちょっとビックリの図では無かったかと思います。お蔭で上が重いの何の。結局昨日の引けは0.19%あたりというのが妥当なようです。
しかし6月に利上げって事が現実になったとして、実際に利上げが効力を発揮するのは6月16日以降になる訳ですから、今回のFB387回債が5月15日〜8月7日であることを勘案すると84日のうち前半32日は最悪でも0.1%(=ロンバード)上限だから少なくとも0.1%は取れる訳で(実際はもうちょっと取れますな)、その分を後半52日に按分すれば0.25%になってまあチャラ近辺というお話になりますわな。6月利上げを思いっきり織り込み価格になっているように見えますがそんなので良いんでしょうかねえ。
などという入札の後に全店手形買入が行われまして、こちらの期間は5月12日〜7月11日でございまして、この平均落札利回りが0.12%になってまた騒動になってましたが(ロンバードよりも高いので)、まあよく考えればFB落札した分のファンディングをこれでつけると(実際は発行日が15日なので直接使えないですが)、同じ理屈で考えると後半1か月を0.35%くらいでファンディングしてチャラという話になりますので、まあそう簡単に負けはせんわなという事で。
一方、一昨日に入札の行われた6か月TBはと申しますと、もはやマーケットがそれどころでは無いモードでしたが、どうも0.25%のあたりかちょっと甘い位の居場所に相変わらずいるようですので、そうなりますといつもの計算で3か月後スタートの3か月金利をエエカゲンに弾くと0.3%とかに(3M0.2%、6M0.25%で置く)なるようですので、まあここを見てると7月までの利上げは取りあえず織り込んだとして、さすがにその後またまた速攻利上げというのは幾らなんでもそりゃアレでしょうと言ってるように見えますな。
これで昨日6か月までズタボロになっていたら驚きでしたけど、まあそんな動きですんで、大懸案の金曜のFB入札あたりでひとまずピークになるんジャマイカとは思いますけど。
○しかし金先やら2年やらは何なんだと
昨日も売られて盛り上がっていたユーロ円金利先物2006年6月限ですが、昨日の清算価格は99.665(だか67だか忘れましたが)で利回り換算すると0.335%(だか0.33%)でございました。
この意味はSQ価格決定日でありますところの本年6月20日のユーロ円TIBOR3か月もの金利が0.335%となるでありましょうという事なのですが・・・・・売ってる人の頭の中身を疑いたくなるようなお値段でございますが、まあロスカッターが登場したり、ロスカッターを炙り出しに逝ったりしてるんでしょう。どういうマーケットなんだと小一時間問い詰めたいとはこの事でございます。だから金先は(以下暴言)。
で、2年とか3年とかも酷いものでして、朝っぱらから6甘だの7甘だのとかやってまして引けてみたらこのゾーン一番甘くて軒並み8甘。2年244回債が0.795%の引けとかやっとる訳ですが、5月1日の引けが0.64%だった訳で、実質1週間で16毛甘ですよ先生。
いやね、マーケットコンセンサスとして7−9月期には0.25%の利上げがあるでしょうよって話はあった筈でして、それが1か月や2か月前倒しになってどこがどう違うんですかって話でして、仮に9月利上げが3か月前倒しになったとしても0.25%の3か月分が2年の金利にどれだけ影響しますかって考えると0.25*3/24ですから0.03%ちょっとでしょ。何でそれが0.16%叩かれになるんだか・・・・・
ま、日銀の前のめり姿勢が嫌気されて利上げ経路のシナリオが大幅に書き換えられましたっていうのが後付け理屈になるのでしょうけれども、本当にお前らそうなのかと小一時間ですな。
そりゃまあ3か月は政策変更時期が1か月や2か月ずれたら直撃だから派手に動くのはまあ仕方無いですが、それ以上の勢いで2年や3年が動くのはもうアホかと馬鹿かという感じですなあ。大体反応するなら展望レポート出た時点で反応(以下いつも言ってることなので割愛^^)。
どうみてもまたお得意のロスカットです。本当にありがとうございました。
#そういえば3月15日の日経金融で「現在の金利水準は9月、来年2月、来夏のそれぞれ0.25%ずつの3回の利上げを織り込んでいる」「06年度新発5年国債の利回りは0.8−1.2%」って言ってたどこぞの偉い人は無事でしょうか。他人事ながら心配。
いやはや、金曜のFB入札まではこんな感じでしょうか・・・・
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2006/05/10
○近来稀に見る手前味噌レポートですね
既に本石町日記先生がエントリーを上げておられる訳ですが。
http://hongokucho.exblog.jp/4616087
昨日の日銀レビューシリーズのお題は「経済見通しの作成における政策金利の前提」というまさに展望レポートの言い訳のようなものでございます。
(要旨)http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/rev06j09.htm
(本文、PDF)http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/data/rev06j09.pdf
で、まあ色々と書いてあるのですが、上記の要旨にもありますように
『実際に観察される市場金利から先行きの金利見通しに関する情報を得るには、先物金利が参考になる。』
という(まあ予想された事とは言え)衝撃の記述が。金先マーケットが主にスワップのヘッジと一部スペキュレーションの玉が飛び交う世界で、日銀の地均しに一番ビビットに反応する商品だとあたくしは思っているのですが、その地均し、と逝っちゃあアレですから「中央銀行のアクション」と言い換えても良いですが、まあその中央銀行が見せる政策への意図に反応しやすい市場が一番参考になるといってる訳ですな。そんな中央銀行はどう見てもアラン・ブラインダー氏の言う「自分の尾を追う犬」です。本当にありがとうございました。
でまあその辺りの論点からのツッコミは本石町日記さんの記事を読んで頂くと致しまして(と手抜き)、現物債やら短期金融商品やらの投資や売買をする人から見ると金先が一番参考につかえるってのが物凄い勢いで違和感がございますって話を別の論点から。
#なお、予めお断りしますが、以下の話は「金先金利を金融政策のリファレンスに使うのは如何なものか」という趣旨で展開されまして、先に申し上げますとオチは「現物金利と乖離してるでしょうこれは」って話になりますが、金先の機能まで否定する積りはございませんので念の為。と、書かないと金先市場関係者(と全銀協とTIFFE)の方が気を思いっきり悪くしそうな気がするので(汗)。よろしこです。
えーっとですな、さっきのPDFの方の5ページ目には主なターム物レートの特徴というコラムがありまして、そこでユーロ円金先を大絶賛しております。ユーロ円金先は『東京金融先物取引所に上場。市場参加者が多く、流動性は極めて高い。』だそうです。
で、その市場参加者に実際の投資マネーのヘッジはどのくらい入っているのですかと小一時間な訳ですよ。例えば短期国債とかCPとかでも良いのですが、現物債(または短期金融商品)の投資をする人やディーラーから見ると現物との相関が弱くてヘッジに使えませんわな(使っている人はヘッジという名目でスペキュレーションやってるようなもので、オマジナイ程度の効用しかありません)。リアルマネー系のヘッジ(売りだけじゃなくて買いだってありえますが)玉が入りにくいんですが、「市場参加者が多く」って・・・・・
債券先物(長期国債先物)の場合は商品設計上、現在のイールドカーブ体系だと7年ですが、受渡適格銘柄のうちどこかが最割安銘柄になるので、そのゾーンの現物債金利と相関するという特徴がございますわな(イールドカーブが思いっきり横になると最割安候補がドカドカ出現するのですけど、まあそこまで今は考えなくて良いでしょう)。ところがユーロ円金先でございますが、上記のコラムにもありますが、このへん(http://www.tfx.co.jp/products/ey.shtml)にもありますように、最終決済はSQ方式でリファレンスレートは全銀協発表のユーロ円TIBOR3か月ものでございますわな。
で、このTIBORが曲者(←北浜先生ではありません)。確かにこのユーロ円TIBOR(国内円TIBORが95年11月16日から、ユーロ円TIBORが1998年3月2日から)が公表された頃はLIBORが国内円の金利と思いっきり乖離するようになってきて、金先が現物の金利からあさっての方向に逝ってしまうのでコリャイカンという話があったというように記憶しておりますし、そもそもこの時代はリファレンスレートを出す大手銀行の多くがマネーポジション(短期金融市場で調達超)であったので、あまりとぼけたリファレンスレートを出していると他行から「じゃあお前そのレートで出すんだな」と攻撃を食らいかねないという時代でもありました(いやまあ一応TIBIDってのもある筈ですが)。
では今はどうなっているかというお話ですが、あたくしもろくすっぽ見て無いTIBORですが(笑)、全銀協のウェブサイトを見ると驚愕の事実が判明するのであります。
http://www.zenginkyo.or.jp/tibor/index.html
ここの一番下にあります「全銀協TIBORレート」ってのをクリックしますと、説明画面の下のほうに「今月のレート」というのと「履歴」っていうのがありますわな。どれを見てもまあ良いのですが、「履歴」をクリックして「2006年」即ち今年をクリックするとまたまたPDFファイルが出てまいりますので、その1月以降のTIBOR3か月のレート推移をご覧下さい。
・・・・・えーっと、今年の1月以降のあたくしの駄文のログでも辿って頂ければお判りになりますし、もうちょっと簡潔にってのであれば財務省のウェブサイトに政府短期証券の落札結果が履歴として出てますんでその間の3か月FBの落札平均利回り(正確には価格)推移をご覧になられると宜しいかと思いますが、ご案内の通り、2月上旬までのんびりと「4月末くらいに量的緩和解除するけどゼロ金利は長期化するからねえ」とやってた市場は2月中旬の福井総裁記者会見のイケイケ発言から大騒ぎになりましたわな。あたくしも駄文で利回り4倍!とか10倍!とか書いてましたが。勿論この間にCPの利回りも急上昇しましたわな。その後実際に解除になってから低下傾向を辿り、4月はなお低下して5月直前から上昇となっている訳ですが。
で、ユーロ円TIBORの2月、3月あたりの金利推移をご覧頂きたいのですけどまあ見事にひたすら似たような数字が並んでおりますわな。これじゃあどう見ても(暴言につき自主規制)です。本当にありがとうございました。
という訳でございまして、現物債と申しますかリアルの短期金融商品の価格推移をちゃんと反映しているのかという点についてあたくしとしては疑問を出したくなりますレートが最終的な決済価格になる「金利先物」はそりゃまあ流動性はありますし、スワップなりのヘッジとかで売り買いしてる人はいますから方向性として値動きを参考にするのは良いのかもしれませんが、絶対水準に注目した「金利」としてのリファレンス機能に関して本当に参考になるんでしょうかって思う訳ですよ、ええ。
でも、このレポートによりますとどうも金先「金利」から導き出されるインプライドフォワードレートとかは『標準的な金利水準の予想』(←本文より)の参考になりますなあ(もちろんリスクプレミアムも反映されてるって話もしてますけど)と言ってるような気がしまして激しくガクガクブルブルなのでありました。
いやまあこのペーパーは久々にねじり鉢巻で料理したくなるような良質の燃料なんですが、あたくしの感覚的に申し上げて「金先金利が将来の市場の政策金利予想として使えますなあ」とか言うのは・・・・債券市場や短期金融市場に喧嘩売ってるような気がするんですけどねえ。金先使いの人は大喜びだと思いますけど。。。。。
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2006/05/08
お題「総裁記者会見(だいたいその2)」
連休で頭の中身が完全にOFFになっておりますので今朝はいつにも増して簡単になると思われます(汗)。
いやまあ連休ボケ頭でモーサテなんぞをみておりますが、マーケットコメンテーターとか逝って出てきてる人って多分本人の専門でも何でもないことにまで一言コメントさせられてある意味カワイソスですなあなどと思うわけで。日経新聞記事に対してコメントしてるんですが、思いっきり個別企業のミクロな話に一々コメント求めたって本当は「知らんがな」だと思うんですけど。しかし今日もコメント出てたけど、「団塊世代のリタイア後のセカンドハウスの需要が期待」っていう理屈ばかりはさっぱり判らん。
と頭の体操にひとくさり悪態をついてから総裁記者会見の続きを少々で勘弁。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken/kk0605a.htm
○それをするなら地均しするなと
既に本石町日記さんの所でエントリーが出てますけどあたくしも一応これはブックマークしておかナイト。
『かねてより申し上げていますが、市場は金融政策運営の場であると同時に、私どもにとっては鏡でもあります。今回は、その鏡としての部分を日本銀行として経済・物価の見通しを立てるにあたり利用させて頂いたということです。(中間割愛)見通しの作成にあたって具体的にどのような政策金利の径路を想定するかについては、他の様々な変数と同様、これはそれぞれの政策委員に委ねられています。従って、どの時期に何回の利上げを織り込んでいるかといった細部について前提を統一しているわけではありません。これは非常に大事な点であり、ご承知置き頂きたいと思います。なお、どのような前提であれ今回の方法による政策金利に関する想定は、あくまで市場金利を参考としたものです。鏡として利用させて頂いたものであり、各政策委員が望ましいと考える政策金利のパスではないという点は、明確にしておきたいと思います。』
それは判ったが、それならば具体的な金利の数字まで持ち出して金融政策のパスについて話をする審議委員を黙らせてから「市場は鏡」という発言をしろと。「ボクちゃん利上げしたいなあ」って言って市場金利が反応したのを見て「市場に催促されたから利上げしたんだよボクが能動的に上げたんじゃないよ」とか言い出し兼ねない危険なものをこの「市場は鏡」理論に感じますなあ。マッタクモウ。
しかしまあ「どの時期に何回の利上げを織り込んでいるかの細部について前提を統一していない」のに「今回の方法による政策金利に関する想定は、各政策委員が望ましいと考える政策金利のパスではない」と言い切れるのかどうか。何だか怪しさ抜群なんですけど。
でね、後のほうの質疑でもこんなコメントしてるんですが、そのヒトゴトっぷりは如何なものかと思うんですけど。
『今後、本当に日本経済がこの標準的な見通しに沿ってきちんと動くかどうかが非常に大事であり、そういう方向で動いていくのであれば、自然と、金利を調整した方がより望ましい経済の運航パスを確保できるという判断に、いつの日か至るだろうと思います。これは私どもが勝手に思っているだけではなく、市場は既に市場の見識で先行きの政策金利の変化を一応織り込んでいるという姿であり、その一部は今回の見通しを立てるにあたり、逆に鏡としてお借りしています。』
何だかねえ。結局のところ日銀(の政策委員)が火消ししたり火付けしたりしてるだけではないかと思う訳でして、何か実に定義の曖昧な「理解」公表でゼロ金利長期化を他市場に誤解させておいて足元に向ってはその後の某政策委員の講演で中立金利とか持ち出す有様のどこがどう「勝手に思っているだけではなく」なのかなあと思うのですけれども。はあ。
『この標準的な見通しとの対比で市場がさらに評価を加え市場金利の中へどのように織り込んでいくか、つれて市場が練れたものとなっていくかどうか。より練れた市場の姿と、私どものこれからの経済・物価情勢に関する判断の積み重ねとの間に自然に接点が出てくると、そこに望ましい政策径路が浮かび上がってくるのではないかと思っています。これからの市場との対話は、そういったダイナミックなものになっていくと思っています。』
どうもこの件を読むと、市場への「語りかけ」を通じて望ましい政策経路を織り込ませに逝きますとしか読めないのはあたくしの考えがひねくれているからですかそうですか(-_-メ)。
○ゼロ金利を解除しても金利は低水準ですかそうですか
これも最初の方の質疑。
【問】『展望レポートの最後のところで、「無担保コールレートを概ねゼロ%とする期間の後も、極めて低い金利水準による緩和的な金融環境が当面維持される可能性が高い」とありますが、この「後も」というところは、日銀がゼロ金利を解除した後、いわゆる利上げをした後も、その金利水準は極めて低いという認識を示されたという理解でよろしいのですか。』
【答】『3月の金融政策決定会合の公表文で発表した内容と、この点は変わっていません。現在、流動性を市場から回収中でありますが、回収が終わったからすぐゼロ金利が終わるわけではないことを申し上げました。その後の経済・物価情勢次第、つまり、しばらくゼロ金利が続く可能性があり、さらに、そのゼロ金利が終わった後も、極めて低い金利水準を背景とした緩和的な金融環境を続け得る可能性が高いという、お尋ねの通りのことを書いていると思って頂いて良いと思います。』
これはまあ「将来のゼロ金利解除は金融引き締めではない」という説明でもあるかと思います。ひところ「中立金利」という話が出てきて思いっきり話題になっておりましたが、さすがにその理屈はちと刺激的ということでここの所「中立金利」の話は引っ込めている観があります。でもまあ上記のような受け答えにもありますように「ゼロ金利を解除しても金融政策は緩和状況」というお話をしてますんで、この辺の受け答えを読むとどうも「とっとと利上げですよウェーハッハッハ」という風にしか思えないんですけど。
この次にこんな質問があります。まあそんな質問しても具体的な答えが返ってくる訳はございませんが(笑)。
【問】『「極めて低い金利水準」というのは、市場では解釈が分かれる表現だと思いますが、総裁としては、「こうだ」というような定義は示されませんか。』
【答】『名目金利の水準について「数字的に一定のレベルまでは極めて低い金利だ」という想定の仕方はしませんが、経済・物価の動きとの相対関係で、企業や家計が感ずる金融緩和感、その度合いがかなり深い金融緩和感が実態的に維持されているような金利や、その他の金融環境ということです。』
いやまあこの部分に関してもあたくしは「ゼロ金利はもう経済刺激的ですよ経済を無駄に過熱させるリスクがありますよ」ってつい読んでしまうのですが。まあ短期市場では一時後退してた7月利上げの見方がだいぶ復活してきたんで、まあそういう解釈になっているのかとは思いますけれども。
○政策金利は動くものでありますな
将来のリスクに関してダウンサイドリスクよりもアップサイドリスクが大きいってお話でもひとくさり質疑応答があったのですが、全部紹介してると量が多くなるのでいくつかピックアップ。
アップサイドリスクにウェイト掛けてませんかって質問に対してはこんなお話をしています(一部抜粋です)。
『つまり、経済はあくまで緩やかだが右肩上りという想定に立っています。その時に、一定の金利水準を前提とすると、時の経過と共に金利による経済に対する刺激効果は強まるということですので、それを念頭に置くと、すぐにではないが、少し将来や長い距離を置いて見た場合には、ダウンサイド・リスクよりもアップサイド・リスクの方が自然に念頭に置かれやすくなるであろうということです。』
で、「アップサイドのリスク・シナリオにおいて経済の振幅が大きくなると述べていますが、もう少し具体的なイメージを伺います。」って質問に対して経済が過熱して過剰な設備投資が起きるとその後の反動で調整が必要になりますよって話をしながらこんな話を。
『従って、そうしたことが起こりやすいのは、政策金利一定ということがあまりに守られすぎた結果として起こる場合があるわけなので、政策判断は慎重にしなければなりませんが、やはり適切なタイミングで適切なレベルに金利をセットしていかなければなりません。ダイナミックな経済を前提にする限りは、金融政策もそういう意味での機動性を失ってはならないというインプリケーションが含まれているところです。』
ということで「政策金利が一定だという考えは持たないでくれ」という話をしておりますわな。そりゃそうですけど、この点を強調しているということがイマイチ浸透してないような気も(他の市場には、ですが)。
まあ言葉を慎重に選びながら強気の話を丁寧にして、変に刺激的な物言いは避けているという所ではないかと思います。展望レポートが十分強気ですしね。
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2006/05/02
お題「短期金利は上昇気味/総裁記者会見(その1)」
バーナンキ議長曰く、「先日の議会証言を市場は間違って解釈している」ってなニュースが朝から入っておりますが、毎度申し上げておりますように「インフレターゲット」的な発想に基づいて金融政策を読む場合は経済動向が重要になる訳で、「次の利上げ後様子見」というコメントは必ずしも利上げ終了を意味しないって当たり前だという事ですな。
まあアレだ、これまた毎度毎度言ってるから皆さん耳タコだと思いますが、海外投資家がどうのこうのって有り難がるけど自分の国の金融政策であっても所詮この程度の解釈しかしてない訳でして、まあ海外海外と有り難がるなという事ですな。ただののフカシとしか思えんメ○レーレポートとかで相変わらず円債が動くのを見ていると実に腹立たしいあたくしは国粋主義者ですかそうですか。
ま、しかし方向は決めうち発言は意味不明のグリーンスパンの後は大変ですな。それこそ市場のFedWatch機能が低下してますから正常化に向けては大変だということで、あれ?
などという話は兎も角、短い所の金利が上ってますなあという話と総裁定例記者会見。
○GCレートは下がらないしFBレートは上昇するし・・・・
先週木曜にご紹介した短期金利の上昇は相変わらずの有様。昨日は主にGCレポ取引市場では9日スタートの翌日物が取引されていた訳ですが、0.04〜0.045%あたりでの取引が継続で、大型連休要因とか何とか言って上ってしまった金利は結局サガランチ会長。
特に昨日に関しては、6月9日エンドの国債買現先や、7月6日エンドの全店買入手形がオファーされていましたが、これよりも期間の短い既発FB(オペに入らないので諦めたのか?)が少々(500億とからしい)ブローカースクリーンで出合っていたらしく、そのレートも堂々0.04%という事でして、こりゃ現先やGCレートは下がりませんなあという雰囲気を強くしちゃいました。
おまけに当たり前ですがオペの落札金利も絶賛上昇しまして、世間様にも地合いの悪さが知れ渡るという結果。いやまあこれは単に市場の特殊性によるもの何ですが、お助けオペを打っている筈がお助けにならずに却って市場に燃料投下になってしまうのが皮肉なお話でございます。
3月末から4月に資金吸収オペを何度か実施してましたが、この時は毎度毎度アホのように低金利で決着してまして、その結果を見て「ああやっぱりそうか」となって諦めモードで踏み踏みになるというのもありましたが(苦笑)、まあ短期市場は思いっきり相対だし、債券市場と違ってカバーの為の業者間市場がそんなにある訳でもないので、正直不透明な世界だったりします。だからオモロイのですが。
特にマーケットが「ありゃりゃ」状態になってる時は参加者が苦しくなっているので、変にブローカースクリーンとかで出合わせないように我慢するんですが、オペは情け容赦なく結果が出る(当たり前ですけど)ので地合い確認できちゃいますわな(^^)。そう考えると売り買い両方向のオペが適当に打たれている状態だとターム物金利の動向が何となくわかって結構ともいえますにゃ。
と、話がちと逸れましたが、そんな訳で3か月のFBなんぞも当然のように売り売りになっちゃいまして先週の水曜日に平均0.032%で落札されてた新発3か月FBは0.065%−0.07%の気配となってしまいまして、「また利回り2倍か!」って感じですな。まあやること極端で困っちゃいますなあ。
その割には6か月ものTBの利回りが妙に下がらない状態。買い手が少々違うのと、そもそもこのゾーンに対応する代替投資物件が少ないので恒常的にショート気味で割高になりやすいのですが、昨日の居場所が0.1%−0.11%くらいらしく、単純に計算すると「3か月後の2か月ちょっと物(何せ償還が微妙に違うので話がややこしい。7月31日スタートの10月10日エンドだ要するに)金利が0.16%少々って話になるんだが、それは7月利上げの可能性0%で8月か9月利上げだと思わないとあり得ないレートなんですが。とは言えレポが非常にやりにくいしコスト高なので誰も向わないのが問題なのですけど。
さっきご紹介した5月償還物のFBの出合いもやや驚きモノでして、3か月の金利上昇もそのあたりが結構効いていると思われます(あとはひところ「7月解除の可能性後退」とか言ってたのが展望レポートで大復活したのもあるとおもうけど)。何せついこの前まで短いTBFBを買っている人のコメントとして「当座預金残高が減った時のシミュレーションの為に敢えて余資をFBで潰す(意訳、しかも新聞報道ベースですが)」とかあったので、この人たちが何かを勘違いして市場に玉を放出すると今までの逆回転になる訳ですからねえ。
だからこそそんなふざけた買いなんかするんじゃねえこのバチアタリは全く迷惑お前それでもプライマリーディーラーか天罰が下ればいいのになどとあたくしが悪態を延々つく訳ですが、笑。
などとダラダラと書いてしまいましたが、債券市場は昨日さっくり大上昇してたんで、その中で金利逆行高となっております短期の人たちは全然金利が下がっておらずということでございましたというお話でした。足元金利が動き出すと中期ゾーンくらいまでには影響が無いわけでもないとおもいますけどねえ。
○総裁記者会見(その1)
マニアな市場の話をマニアにして一人で勝手に盛り上がっているうちに気が付けば時間が無くなって来ましたので(アホです)、総裁記者会見に関しては2回シリーズで、というか今日は超簡単に。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken/kk0605a.htm
・よく考えたら3月解除の方が合理的だったんだよ!な、何だってー
またもどこぞの巨大掲示板用語を使ってしまったorzというのはともかくと致しまして、本石町日記さんの所でも指摘されていた(コメント欄に意味の判らん言いがかりをつけに来た変な人がいましたが、本石町さんの対処の仕方が秀逸なのでブログをお持ちの方は参考になると思います^^)のですが、展望レポートでの物価見通しに「市場の政策金利に関する予想を参考」という「市場は日銀の鏡じゃなくて手鏡(by本石町さんだったかそこのコメント氏)」に関してツッコミが。
『今回の展望レポートから、各政策委員は市場金利に織り込まれたとみられる市場参加者の政策金利に関する予想を参考にしながら、見通しを作成する方法に変更しました。これは考えてみればごく普通のことで、そうなるべくしてなったということです。見通しの前提となる他の長期金利あるいは株価等の金融変数は、先行きの経済・物価情勢やそのもとでの金融政策運営に関する市場の予想に基づいて形成されています。このため、政策金利についてだけ全く切り離して固定的な前提を置くこれまでの「先行き一定」とする方法よりも、政策金利についても前提となる金融変数に含まれている情報、つまり市場の情報を参考とする方法を採ったほうが、全体として整合性がとれ、適当と判断されました。』
まあ確かにその通りといえばその通りですし、先行きゼロのままで予想したらとんでもない上の数字になるという(ゼロ金利の刺激効果リスクを強調してるから)訳ですからそれもまた合理的ではあります(ってのは本石町日記でのコメント欄で指摘している人がいましたとネタバレ)が、よくよく考えたら量的緩和政策を継続中だったらば「ゼロ金利前提」というモノを出さざるを得なかったですし、4月28日解除だと市場金利が先行きの政策金利を織り込んでいないので前提条件としておく「将来の政策金利」の置きようが無いから展望レポートではやっぱり「ゼロ金利」が前提になって物凄い高い予想CPIが出てくる破目になったという事ですな(-_-メ)。
展望レポートのCPI予想数値を刺激的に高くしないためにも3月の量的緩和解除は必要だったんですよ、な、なんだってー(AA略)。
#ギャグの通じない人もいるので念の為。結論はギャグですからね
・またライトタイミングか!
福井総裁は日銀副総裁時代の「ジャストタイミング」発言(正確にはジャストタイミングは福井副総裁が言ったと連合の人が言ったという報道だったような記憶があるのですが、誰か覚えてます?)で債券先物を特別売り気配にして70銭だか1円だか忘れましたが暴落させたという武勇伝をお持ちです。その時ポジションを持っていた人はまず全員記憶が残っているかと思うのですが(とは言え細かいことは忘れられていて、「福井副総裁のジャストタイミング発言」しか覚えていない自分がいるのだが)、最近はジャストタイミングというと悪態をつかれることをお気になさっているのか(笑)、「ライトタイミング」というのを時折使用致します。しばらく言って無かった気もするのですがまた先日は登場。最後の質疑から。
『幸い、私どもが本日公表した標準シナリオでは、この先2年間、物価安定のもとでの持続的な成長というパスを確保し得る蓋然性が高いということですので、なおさらのこと、決して焦らずに臨みたい。しかし遅すぎてタイミングを逸して大きな景気の波を呼んでしまい、金融政策が過大な負担を背負わざるを得ないという状況には持っていきません。今後とも最もライト・タイミングで政策を行う、という一言に尽きると思います。決して焦ってはいけないが、安心して遅すぎてもいけないという難しさは、これからずっと続くと思います。』
はいはいジャストタイミングジャストタイミング(^^)。まあこの辺りだけではないのですが、一生懸命慎重な言い回しをしているように思えるのですが、その中からも「金利の正常化」とやらへの意欲満々なのを窺わせる部分が少々ございますが、時間切れのため後日。
ちなみにこの応答の前半部分では糊代論by水野審議委員について否定しておりますが、まあそりゃ当たり前で、金融政策の筋論としてあまりにも筋が悪すぎですから否定しますわな。
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2006/05/01
お題「どうみてもゼロ金利早期解除です。本当に(略」
先週末は注目の展望レポート(本名は「経済・物価情勢の展望」)が出ました。市場のほうはといいますとさほど反応せずでして、おまけに引け後にユーロ圏のCPIが強い数字出てたんですが、金先は上昇ということで無難な反応。
まあ無難な反応でして、この展望レポートは読み方によってかなりどうとでも取れそうな書き方になっています。しかしまあ今までの日銀の動きから勘案するとこれはどう見てもゼロ金利早期解除です。本当にありがとうございました。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/tenbo/gor0604.htm
○需給ギャップはゼロですかそうですか
冒頭部分に思わず「おお!」となってしまうあたくし。これはまさに2000年の再来ではなかろうかということで。
『わが国経済は、着実に回復を続けている。(中間割愛ですが、項目別に景気の良いことが書いてます)このように内外需がともに着実な増加を続ける中で、2005年度の経済は、昨年10月の「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)で示した見通しに比べて、上振れて推移した見込みである。この結果、マクロ的な需給ギャップは、長く続いた供給超過状態が解消し、現在はゼロ近傍にあるとみられる。』
需給ギャップがもうありませんですよゼロ金利解除ですよという声が聞こえそうなお話です。あまり詳しくは覚えてませんが2000年の時もこんな話になってたような気がする訳で、いやあやりますなあという所です。
○景気先行き見通しのメカニズム(メインシナリオ)について
先行きに関しても勿論強気なのですが、その背景にはこんな見立てがあるそうです。引用だけで手抜きですかそうですか。
『第1に、海外経済の拡大が続くことを背景に、輸出は増加を続けると予想される。』
『第2に、企業部門の好調が続くとみられる。企業収益は、2002年度から4年連続の増益となり、2006年度も売上高経常利益率はバブル期のピークを上回る水準を続けるとみられる(以下長いので省略)。』
『第3に、企業部門から家計部門への波及がより明確になってくるとみられる。企業部門の好調の影響は、雇用や賃金の増加に加え、配当の増加や株価の上昇を通じて、家計部門にも波及している。そうしたもとで、個人消費は、着実な増加を続けると予想される。住宅投資も、都心部などで地価が上昇に転じる中で、金利の底値感が台頭していることもあって、緩やかな増加基調を辿る可能性が高い。この結果、家計支出は、国内民間需要の主たる牽引役になっていくとともに、その堅調が企業部門にフィードバックして、前向きの循環メカニズムが維持されていくと考えられる。』
『第4に、極めて緩和的な金融環境が引き続き民間需要を後押しするとみられる。金融機関の貸出態度は積極化しており、民間の資金需要の下げ止まりとも相まって、民間銀行貸出は前年比プラス幅を拡大している。実質短期金利も低下している。中小企業設備投資や住宅投資の増加には、そうした金融環境も影響しているとみられる。』
○景気の上振れ、下振れ要因が並んでますが・・・・・
上記の4つが前提になっているそうな。このあたりの前提が崩れると話が変りますよって事にはなるんでしょう。で、物価の見通しの話を飛ばしてリスク要因に関してちょっと先で書いています。
『第1に、海外経済の動向である。見通しにおいては、わが国の主要貿易相手国が潜在成長率近傍の成長を続けることを前提にしており、それらの展開次第では、わが国の輸出や生産は上振れ・下振れいずれの可能性もある。』
ということで書いてるんですが、原油価格の話と米国、中国の話をしてるのですけれども、最後に中国をもってきて『見通し期間中の成長率が上振れる可能性がある。』で纏まっているのが「強気だよ強気」って声が聞こえてきそうな構成だとみるのはあたくしにバイアスが掛かっているからですかそうですか。
『第2に、在庫調整の可能性である。』ということで、IT部門の在庫調整に関して例示して書いているのですが、ここの部分の最後はどうまとめているかと言いますと、『もっとも、その場合でも、わが国企業が全体としては過剰雇用・設備の調整を終えており、企業収益も高水準であることは、景気全体への影響を緩和する要因として働くと考えられる。』だそうですよウェーハッハッハ。
『第3に、企業の投資行動の一段の積極化である。見通しにおいては、設備資が徐々に減速することを想定している。これは景気が次第に成熟化していくことに着目した想定であるが、企業の投資行動がより積極化する場合には、成長率が一時的に大きく上振れる反面、その後は資本ストックの過剰な積み上がりの反動が生じ、調整を余儀なくされる可能性もある。』
はいはい上振れ上振れ。で、この後にこんな事を書いているのにも思わず注目してしまうあたくしなのでございますが。
『また、最近における地価、株価等の資産価格の動きも民間需要を押し上げる方向に作用している。』
バブル懸念とは一言も書いてませんが、資産バブルが発生すると民間需要が過大に押し上げられる結果、バブルが潰れた場合に反動で民間需要が大きく落ち込むリスクがありますよ(確かにそりゃそうだが、問題は現状がバブルを懸念するほどの状況かという点でして)ってお話をしてますな。
『他方、金融市場において、経済の実態と整合的な価格形成が行われる場合には、景気の大きな振幅を抑える方向に作用すると考えられる。』
つまりアレだ。今の中長期金利上昇は経済の実態と整合的な価格形成だから景気の無用な過熱を抑える緩衝機能を果たしているんですな。まあ言いたい理屈も判らんでは無いが、そもそもその価格形成は地均しの結果生じたものではないかという気が思いっきりするんで、何か自画自賛の香りが漂ってくる俺様理論っぽい気がするんですけどねえ。
しかし書き方というのは面白いもので、リスク要因の説明をしながら最後には「まあそうは言っても」という感じでまとめていまして、まあよく出来た文章でございます。
○潜在成長率が上昇しているというお見立てだそうで
景気の上振れ、下振れ要因に関して書いている後に物価上昇率の上振れ、下振れの話をしてます。
『第1に、需給ギャップのプラス転化(需要超過)の影響である。』という書き出しから始まって、前半では世界的に需給ギャップに対するCPIの感応度低下の話をしているのですが、最後のまとめが当然ながらこうなるのでありました。
『もっとも、需給ギャップがゼロ近傍から徐々に需要超過に転化すると予想される中では、いずれかの時点で、予想インフレ率の切り上がりを伴いつつ、賃金・物価上昇率が上振れする可能性もある。』
はいはい物価上振れ物価上振れ。
『第2に、原油をはじめとする商品市況の動向には上下両方向に不確実性が大きい。』
前節では原油価格上昇に関連して景気への悪影響という話をしてますが、こっちでも述べているということは原油価格上昇は物価への上振れリスクもありますよという指摘なんでしょうか。
『第3に、潜在成長率の上昇の影響である。潜在成長率の上昇は、供給面からは、物価の押し下げ要因となる一方、需要面からは、将来所得に対する見方の上振れを通じて物価の押し上げ要因となり得る。』
ということでして、『わが国の潜在成長率は、様々な構造調整を経て、足もと上昇方向にあると考えられるが、その変化をリアルタイムで認識することは難しいだけに、この面からも不確実性が存在する。』だそうです。ほほう。
○金融政策運営の部分でもこんな事かいてますが
で、次の『(金融政策運営)』の部分ですが、重視すべきリスクのお話をしてまして、そこにもまた強気なお話がございますが・・・・・
『この間、より長期的な視点を踏まえつつ、確率は高くなくても発生した場合に生じるコストも意識しながら、金融政策運営という観点から重視すべきリスクを点検すると(第2の柱)、企業の収益率が改善し、物価情勢も一頃に比べ好転している状況下、金融政策面からの刺激効果は一段と強まる可能性がある。その場合には、現在、需給ギャップの水準がゼロ近傍にあることから、中長期的にみると、経済活動の振幅が大きくなり、ひいては物価上昇率も大きく変動するリスクは意識する必要がある。』
金融緩和の刺激効果が高くなったリスクキター!ですわな。
『一方、経済活動や物価上昇率が下振れした場合でも、金融システムの安定が回復し、設備、雇用、債務の過剰が解消されてきていることから、物価下落と景気悪化の悪循環が発生するリスクは小さくなっていると考えられる。
』
悪化リスクは小さいですキターー!という感じ。
いやまあ2000年の時から比べると確かにリスクが大きいとは思わないけど、読めば読むほど強気の部分が印象として強くなるのはあたくしが早期ゼロ金利解除を予想しているからですかそうですか。
○総じて申し上げますと・・・・・
結論として出てきている大勢見通しは無難に纏めてますが、中に書いてある文を見ますと、経済物価の上振れリスクといか、金融超緩和状態の長期化リスクという部分が(特に後者)目に付く次第でして、これだけ見てると極端に言えば5月にゼロ金利解除してもおかしくない位の進軍ラッパに見えます。まあさすがに5月はないでしょうが(苦笑)、あたくしの読み筋の本命7月どころか6月にゼロ金利解除しても何らおかしくはないという内容ではございますな。まあ現在の調子だと6月解除しても金利政策に持っていくのは何ら問題なさそうですな。足元金利もやっと動き出した(ただし大型連休要因の可能性もあります)ようだし。
記者会見でも興味深いコメントがあったようですが、こちらに関しては会見テキストが出てから明日にでも。
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2006/04/28
お題「レポレート急上昇」
さてCPIと展望レポートですな。しかし展望レポートで何か出ますよって報道が昨日は出てましたが、先行きの金融政策についてはオープンって書き方で、変に燃料を投下するような不用意な事はしないと思うんですがねえ。
バーナンキFRB議長も基本は「将来の政策は経済情勢次第」って話だと思うんですが、米国の場合は長い期間のメジャードペースの利上げ&グリーンスパン流のやや曖昧なメッセージによる先行き決め打ち示唆攻撃に慣れているので、米国は今後金融政策の先読みでフラフラ動くって感じなんでしょうかね。
利上げ打ち止めをしても(つーか必ずしも打ち止めするのかもよく判らんのですが)次のアクションが利上げだか利下げだかは判らんという事だから、益々難しくなったという気はするんですが(って議会証言の本文読んで無いのでかなり外した話してたらゴメンナサイ)。
で、ちょっと気になったんですが、今朝のモーサテで議会証言を解説する人を紹介するのに「FRBウォッチャー」って言い方してましたが、昔から一般的に「Fed
Watcher」って言うと思うんですけど(まあ英語だとFedって言った方が読みやすいってだけの話ですが)。
#豊和銀行のニュースはよーわからん。
まあそれはともかく今日も短い所の話。
○年末年始かよ!というGCレート
昨日は連休越えとなる2日〜8日のレポ取引が行われたのですが、昨日に引き続きまして金利上昇。結局0.04〜0.045%あたりの水準まで上昇(何せ相対取引市場なのでヒアリングして回った話な所をご了承下さい)しちゃいまして、つい2日くらい前(火曜の前場)の雰囲気は一体全体どこへ逝ってしまったのかという有様。
GCレポレートが0.045%とかになりますと、前日の新発FBは落札コストから勘案すると見事に逆鞘になる訳でして、当然ながら3か月以内のTBFBは全部逆鞘(レポでファンディングをするという前提で書いてますので念の為)になりますし、ついこの前まで0.01%だの0.02%だのというレベルでやっていた1ヶ月あたりのFBなんぞはGC対比で買おうという人がいなくなりますわな。
そんな訳で、短い所のFBも売り物勝ちのようで、レートはやや上昇。3か月も昨日の0.045−0.05%レベルから戻る感じも無くて業者間売買という「表」に出る商いは薄いという感じだったようですな。いやはやいきなりひっくり返しで、しかも連休前にこうなるとはちょっと意外でしたが、まあ世の中皆が思っているタイミングに動くわけでは無いって話ですわな。
○で、要因は?
いやまあ直接的な要因は当然ながらGCレポ取引市場での資金の主要出し手でありますところの大手銀行さまがいきなり資金を出し渋った為なのですが、GCレポレートが上昇するとFBやら2年以内あたりやらの利回りも影響を受けて結局自分に降りかかってくる話なので、単純に資金部門が小遣い稼ぎの為に出し渋るということはないとおもうんですが(やや棒読み^^)。
一応連休で足元資金を確保するとか言い訳はありますが、それはどう考えても取ってつけた屁理屈で、まるで年末年始のような金利上昇をする必要なしでございます。単純に「ちょうど良い言い訳があるから出し渋って見ますか」って思惑が一致しただけだったら実に馬鹿馬鹿しいのですが(しかしその可能性も否定できない)、一応真面目に他の要因も考えて見ましょう。
まああるとすれば当座預金残高が20兆円そこそこまで削減されてきたこと(日銀当座預金残高の日足に関しては日銀のウェブサイトのhttp://www3.boj.or.jp/market/jp/menu.htmあたりをご参考に)かいなってお話にはなりますわな。大体市場関係者のコンセンサス(?)として「当預が15兆円くらいになったら金利が動き出すでしょうってのがあったんですが、まあその数字もドタ勘の数字。よくよく考えてみるとどこぞの大手銀行が「資金繰りの練習」と称してFBを買って自行の当座預金を落としてみるとかいうワケワカメな事をおっぱじめたりしたんで、その分ちょっとタイミングが早くなったとも言えるのかも知れませんな(単なる嫌がらせで金利が上昇してるのなら今日の8日スタートの金利はさっくり低下するかと思料)。
まあそのワケワカメオペレーションの結果FBの金利は下がるわCPの金利は下がるわ(しかも何故か量的緩和解除直後の水準よりも下がった訳だが)とはた迷惑な事態が発生しておりまして、反動もまたでかくなったというお話でしょう。そもそも4月最初の3か月FB(当然償還は7月前半だった訳だが)は平均落札の実質利回りが0.057%とかだったんですから、ようやく元に戻ったという事でもあるんですが、余計に金利低下をした分の反動が来そうな気もややする訳ですが(今日レポの金利が下がらなかったらあり得る話、米国の影響がやってくると無事だと思うけど)。
まあいずれにしても以前からあちこちで指摘されている「GCレポ取引市場の資金出し手が極端に偏っている」という状況の問題点が物の見事に出ているという状況で、この煽りを食らって、現先レートに関してもTBFBの現先レートの方がCP現先レートよりも高いという担保証券の信用力+流動性から行くとそれは逆ではないだろうかっていう状況が発生。まあ有意にこの状況が継続すればCP現先で運用してる資金がTBFB現先に回るんで、あくまでも一時的な話でしょうが困ったもんですなあという感じ。
まあGCレポ対応するためにはそれなりの用意が必要で、そんな用意(=投資)をするほどの利回り水準かと言われると「誠に申し訳ございません」としか言いようがないので(笑)、今しばらくはこんな事が時々起こるんでしょうな。
○今月は19兆円で着地のようですが
http://www3.boj.or.jp/market/jp/menu.htm
昨日の速報ベースの日銀当預残高は20兆200億円。昨日は本店手形買入を6000億円実施しましたが、本日は資金不足日で本日の日銀当預残高は19兆300億円の見込み。
まあ昨日のGCレポや現先市場でのレート上昇はちと先走りというか仕掛けの香りがしますが、今後当座預金残高が削減されていく間に足元の金利などもさすがに動き出すかとは思います。そうなると4月に0.01%あたりで買われていた5月エンドのFBとかを外してくるアホウが出てきて尚の事ややこしい話になるやもしれませんが、まあそういう時には当預残高削減のペースが鈍る場合もあるかと思います。
でもそれはテクニカルな問題であり、先行きの金融政策を示唆するものではないので、あまり当座預金残高の削減ペースで大騒ぎする必要はございません。どこぞのメディアとかが本件に関して話題にして、それを見たエライ人や海外のよく判っていない人やらが妙な指令あるいは振り回しをするのは勘弁していただきたいものです。
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2006/04/27
お題「いきなりヘロヘロの短期国債」
まあアレだ、飲み放題の酒は体に悪いという事で本日は物凄く簡単に勘弁させて頂きたいと存じます(汗)。
えーっと、手元に日経新聞があるわけではないので某テレビでの日経朝刊紹介記事特集ベースなのですが、「展望レポートで日銀はゼロ金利解除の時期を示唆せず」ってお題の記事が出るらしいですが、んなの当たり前なんですけど・・・・・・アホですか?
○FB入札が・・・・・
昨日は例によって例の如く大体3か月物のFB(政府短期証券)の入札が実施されました。
今回のFBは5月1日〜7月31日の期間になるのですが、前場の引け時点ではWI取引で0.35%で取引されてまして、まあ大体その辺でしょうかという感じで入札を迎えました。
で、結果は平均落札価格が99.9915円で0.03409%(財務省方式だと0.0337%)の平均落札価格が99.9905円で0.03810%(財務省方式だと0,0376%)ということでここもとの入札でラリー攻撃から見ると案外な結果。しかも応札が11.79兆円でこれまたイマイチの感じでした。
とは言え、ここの所ずっと入札つよつよでその後益々つよつよという攻撃もありましたので、当初は平均落札のあたりで販売は進んだようなのですが、リアルマネー系の買いが後で申し上げる理由から続かずで、最低落札価格ゾーンを抜けた後は一気にヘロヘロになりまして、0.04%レベルでの銀行勢の買いはあったものの、さっくりと下落して0.045%まで下落。
引け後だか引け近辺だか知りませんが、最終は0.05%まで出合いだったそうで(さすがにそのレベルはビットが残っていたようですが)、まああたくし的には「何となくロング溜まってるなあ」と思ってましたが(いやあの後講釈で言ってますけど、一応一昨日にはそんな話を仲間内でしてたんですよマジで)、いきなりこのタイミングで来るとは少々意外。
○ようやく需給超タイト状態が緩和されたようで
昨日はスポット渡しが月末になりますので、短期市場ではCPの発行が結構ございました。額もさるところながら発行される銘柄も多くもうエライコッチャだったのですが、実は前日も発行が結構ありまして、量的緩和政策の解除以来のきもち発行が少なめですなあ状態がここへ来て雰囲気ちと変った感じ。
しかも昨日は今まで利上げ警戒ゾーンの為に発行が手控えられていた7月中旬以降にエンドが来る発行も行われまして(FBなどのレート低下が影響したのかと思いますが)、まあそうなるとリアルマネー系がCP市場の方に流れて、7月の利上げに関して完全無警戒となっている利回りになっているFBはイラネーヨ状態になるのも当然かと。
以前にも申し上げたかなりインチキな計算ですが、7月に利上げになったとすると、今の金利だと利上げ後2週間(正確には13日)間の逆鞘が確定になる訳でして、それに対して3か月が0.03%とか言うのはそりゃまあ一応7月利上げの可能性がある状況(だとあたくしは思うのですが)下でリスク無警戒状態の価格形成は如何なものかっちゅう話にようやくなってきたということでしょう。
まあ今まで大手銀行を中心にしてキャッシュ潰し系の買いが旺盛だったのでリアルマネーの人たちが泣きながら買わざるを得なかったという側面が強かったのですが、そのキャッシュ潰し隊が一服すればこんなもんだということでしょうかねえ。
○GCレポレートが急上昇
で、まあキャッシュ潰し攻撃の一服というのもありますが、まあ必ずしもそうではなくて単にGW越えの一時要因かもしれないのですが・・・・・
昨日実施された本店手形買入オペ(6月27日エンド)の平均落札金利はいきなり0.037%(最低金利が0.033%)となりました。6月27日エンドで0.03%台ならば7月31日エンドのFBが0.03%台って事は無いでしょうって言う発想も起きましてFBが売られた一因にもなっているとは思うのですが、このオペ金利で早速GCレートが上昇。
うまいことに(?)連休越えという金利上昇の絶好の言い訳がありますので、資金の主要な出し手の頭数が少ないGCレポ取引では14時半過ぎくらいから絶賛急上昇して前日までの0.01%近辺からいきなり0.035〜0.04%近くまで上昇。つい数日前の足元資金余りまくり状態は何だったんだという感じで、まあ相変わらず極端に動く困った市場ですなあという感じです。しかし受渡が先になるからとか、コールでの調達能力が弱い証券会社が資金取り入れの主体だからとか理由はあるにせよ、本来国債担保で一番リスクフリーな資金取引の筈のGCレートが真っ先に上昇するのもアレですなあという感じです。資金の出し手の頭数が少ないのがやはり問題のような希ガス。
ま、本日は先週実施が見送られた短期国債買入オペがお助けオペの如く実施されると思われますが、2日ー8日のGCレポレートがこの調子で上昇傾向ですと、昨日落札したFBを抱えている人の中で店頭販売力が劣後する人はヤケクソでオペに投げに行く(店頭でリアルマネー系を押さえていれば0.05%はさすがにかなり捌けると思われますが)可能性がありますので注意が必要ですわな。地合いの悪さを見せ付けちゃったら却ってお助けにならなかったりして^^(現実問題として3000億の吸い上げになるので最終的にはお助けですけど)。
○で、2年入札ですが
この短期金利の妙な上昇は、キャッシュ潰し隊が手を引いた一時的なものなのか、その外れた梯子がこのまま外れっぱなしなのかというのがイマイチよー判らんのですが、まあ4月半ば以降のアフォのような足元金余りの雰囲気が解消されているのは事実。
で、そんな雰囲気があると中々2年国債も(買い手のうちでかいのが大手銀行のため)やや盛り下がるという話になるのですが、今書きましたように雰囲気が単にGW越え限定のインチキ気配なのかもしれないのでちと難しいですな。まあ逆に言えば2年入札がどっちに転ぶかが短期にそこそこ影響しそうな気もしますね。
#悪性アルコール攻撃に我が軍は撃破されておりますので今日は相場の概況メモ(しかも短期)で勘弁していただきたく存じます。
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2006/04/26
お題「消費者物価指数に関する日銀レポート読書メモ」
米国債券市場、経済指標が出るたびに上ったり下がったりというのはまあ自然といえば自然ですが、まあコロコロと見方が変化する不安定な動きというのは「延々と金利下げ」→「延々と金利上げ」というトレンド状態が長かったのでこーゆーのに慣れてないちゅうのもあるんじゃないかと。
まあ本日は3か月もの政府短期証券の入札があるとか、月末発行のCPがやたら多いですなあとかいう話題もありますが、まあ週末の展望レポートに物価統計がありますので、そこまではとりあえずそんなに相場の決定的な取っ掛かりも無しということで、昨日もちょっと申し上げましたが、日銀レビューシリーズのお話を。
『消費者物価指数のコア指標』というお題のレポートが、この展望レポート公表直前というまたまた狙ったようなタイミングで出てくる所にどうしても意図を感じざるを得ない訳ですが(勿論日銀はそんな意図は毛頭無しという見解ですが)、今回のお題は「一時的な要因を極力排除したCPIのトレンドを見るためにはどの数字に注目するのが良いのか」というものです。
要旨はこちら
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/rev06j07.htm
本文はこちら(PDFです)
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/data/rev06j07.pdf
○結論は「CPIの10%刈込平均」が良さそうとの事で
金融政策で今後見ていくCPIは「CPI総合」だという話は3月の決定会合以降何度もお話がされてます。とは言え、このCPI総合のトレンドをじゃあどうやってみるのかという話に関しては今まで出ていなかったかと記憶しております(違ってたらゴメン)。で、今回のペーパーということですんで、まあ(日銀の公式見解じゃあありませんが)こんなのを見てますよってのをさらっと説明したペーパーではないかと勝手に解釈しております。
で、CPI総合をどう加工するとCPIのトレンドがより読みやすくなるのかという点について、本ペーパーでは「除く生鮮食品(今まで皆が見てた所謂日本でのコアCPI)」「除く食料・エネルギー(総務省の偉い人の肝いりで唐突という印象で公表が始まった奴)」「除く農水畜産物・エネルギー・公共性料金」「10%刈込平均」の4つを日本のデータから比較検討するという事をしてます(5ページ目以降)。
で、この10%刈込平均って何でしょってのも最初の方に書いてあるんですが、他の3つの算定のように項目を選んでCPI総合から除外するのでは無くて、項目中の前年比変化が上下に大きい物から順にCPI総合に対するウェイトで10%になるところまで除外して(品目数で10%ではありません)内側のウェイト80%部分(上下10%を除外するから)を採用するって事だと本文を読んで理解したのですが、違っていたら誰かご指摘いただくと誠に助かります。
ちなみに何でこの10%という数字が出てきたかという話は本文の前半部分に過去のデータからこうやって出しましたってのがありますのでそちらをご覧頂ければ。
まあ今後CPIのトレンドを見るときは10%刈込平均のトレンド(んなもん発表されないでしょうから本職の方は算出するんでしょう^^)も見るちゅう話になるのかなあとは思いますが、ペーパーにもあるように、そんなに極端な差が出る訳ではないようですな。まとめ部分の7ページ目にこんな記述がございます。
『これまでの検討結果を整理すると、各指標のパフォーマンスに決定的な優劣の差はみられなかった。ただ、あえて優劣をつけると、全体的なパフォーマンスは、除く生鮮食品、10%刈込平均がやや高く、除く食料・エネルギー、除く農水畜産物・エネルギー・公共性料金が幾分見劣りする。』
『まず、除く生鮮食品は、除外対象を最小限とした上で、一過性の要因を的確に除外し、基調的な物価変動の捕捉や将来の予測力といった点で、安定したパフォーマンスを示している。したがって、これまで長期にわたって利用されており、定着度が高いことも踏まえると、引き続き、コア指標として注目していくとの判断は妥当と考えられる。』
『また、10%刈込平均は、全体としてみると、コア指標としてのパフォーマンスは高く、基調的な物価の動きをみるために除外すべき品目が、経済・物価情勢に応じて変化している可能性を示唆している。ただ、上述したように、将来の総合指標の変化の方向性の予測力は、2000年基準改定の影響を受けている可能性があるが、2000年基準改定以降のデータが蓄積されることで、この問題は徐々に解消されていくと考えられる。』
○何気に竹中先生に反論が(^^)
と、ごく真面目に読んでいるだけではアレでございますので、あたくしとしてはやはり竹中先生肝いりで公表がさっくり開始になった「除く食料・エネルギー」に関するこのペーパーの扱いに微妙に注目する訳でございます(^^)。
『また、最近では、高止まりが続く原油価格の影響も控除するため、食料品とエネルギーを除外した指数(食料<酒類を除く>及びエネルギーを除く総合)も公表されている。』
ということで、脚注には「米国のコアCPIに対応する概念」という説明もあるこの指数ですが、しれっとボコボコにされているような気がするのはあたくしの読み方にバイアスがかかっているからですかそうですか。
5ページ目のBOXっていう囲みコラムコーナー(?)には米国のコアCPIと日本の「除く食料・エネルギー」の比較をしているのですが、そこでは日米データを比較して、今まで日本でのコアCPIとしてエネルギーを除外しなかったのは妥当ではないかというお話をしてます(^^)。そして先ほどご紹介したまとめの部分の8ページ目なんですが、とどめのようにこんな事を。ちと長いですけど。
『この間、除く食料・エネルギーと除く農水畜産物・エネルギー・公共性料金は、除外対象をやや広くとっており、カバレッジが低くなっている。このため、基調的な物価変動を反映した情報までをも除外している可能性があり、これがコア指標としてのパフォーマンスを低下させていることも考えられる。』
『特に、両者ともエネルギーを除外しているが、その妥当性は、背後にある原油価格の変動要因等に依存している。例えば、近年の原油高の背景としては、中国等の新興市場諸国における高成長によって需要が増加しているという側面が重要である。こうした趨勢的な原油需要の増加は、供給面での制約とは異なり、一過性のものとして除外することは、必ずしも適当とは言えない。』
『また、除く食料・エネルギーは、必ずしも攪乱的な動きを示していない生鮮食品以外の食品までも除外しており、わが国消費者物価の変動の特性を踏まえると、必ずしも適当とは言えない。』
・・・・・・・(^^)
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2006/04/25
○情報発信と期待の安定化という話(の前振り)
雑談というか思考のネタにでもなると幸いですが(要するに自分の中で生煮えなのにご提供するわけですがorz)、ここのところつらつらと考えているネタを一つ。
先日FOMC議事要旨で米国債券市場がいきなり急反発して米国株式も高値更新とかやっていた訳ですが、ここもとの米国での金融政策に関する先行き見通しがまあやたらめったらぶれるのが気になる所で。
最近でも経済指標でぶれるのは兎も角として、FOMCの声明文でぶれ、地区連銀総裁などの発言でぶれ、FOMC議事要旨でぶれるということでして、まあグリーンスパンの言語不明瞭運営からのレジーム転換の最中だから仕方ないのかもしれませんけど、「次回で利上げ打ち止め」から「向こう3回は利上げ間違いなし」の間を行ったり来たりとややこしいことこの上なし。
まあそんなややこしい相場になっていることもあって、(手元に資料が無いのでうろ覚えですが)Moody'sだったと記憶してるですが、日米の中央銀行の情報発信は如何なものかというようなレポートが出てたような気がしましたが、まあそんな感じで早速情報発信に対する批判もでているやに仄聞しております。
まあ就任直後は色々と大変ではあるのですが、情報発信に関しては日本の方が物凄い勢いで市場との対話という名前の政策委員の講演が行われておりますので、まあこの状況をバーナンキ議長もご参考にして頂ければと存じます。参考にすると言いましても反面教師にするのも参考の一種ですのでそこの所は一つよろしくお願いします。
ま、グリーンスパン議長の任期中(特に最後の2年くらい)にはボードメンバーが何か言ったとかで大いに注目ってケースがあまり無かった感じだと思うんですが、ここへ来て皆さんの発言が一々注目されるようになった感じがする(まあ日本でボケーっと見てる人の気のせいかもしれませんけど)ところであります。
あたくし的には退任直後にグリーンスパン議長が金融政策についてベシャリをしたんで火がついたような気がする次第でして、まあバーナンキさん的には後ろから撃たれたようなもんだったのではないかと思うんですがどうでしょう。あたくしとしては、あの発言(しかもどこぞの投資銀行のVIP客向けプライベートセミナーの席上だし)でグリーンスパン氏の評価はストップ安なんですが。
と、結局書いてはみたものの何か生煮え料理をご提供してしまったので、もう一度煮直していただけると宜しいかと。
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2006/04/21
○国債市場特別参加者がそれは・・・・・
短期国債市場の話というか要するに悪態ですが(^^)。
ここもとの短期国債(TB、FB)市場で短い期間のものが見事に需給大逼迫でございまして、とうとう昨日は水曜に入札が行われたばかりの3か月ものFB(償還日は7月24日)は0.03%を割り込むという有様で、10月償還の6ヶ月物TBで0.12%とかになってまして、ここだけ見るとゼロ金利7月解除どころか7−9月の解除もひょっとすると無いかもしれませんなあ状態になっているという香ばしい状況。それより長くなるとやや金利が付き出すのですが、2年の0.6%(昨日の引けで0.62%)と何かこう整合性がイマイチ取れませんなあ。
ま、短期市場に資金が退避して大混雑というお話は以前にも申し上げましたけれども、先日は日経新聞の市況面でも報道されてまして、昨日はブルームバーグニュースの市況解説でも同じ話が出てましたが、報道が正しいのであればこんな現象もあるようで。20日15時53分配信のブルームバーグニュースより。
『短期国債市場では、残存期間が1、2ヶ月の短いゾーンを中心に需給が逼迫してきている。大手銀行を中心に余剰資金を短国に振り向ける動きが強いためで、背景には当座預金の超過準備を早めに削減した資金繰り運営に慣れる要因もある。その結果、金利低下圧力が徐々に広がってきている。』
確か一昨日の日経新聞市況面には「関西に本拠を置く銀行」の動きとして上記の「資金繰りの練習」話が載っていまして、まあ同じような話でございますな。ええまあ資金繰りの練習で買うなら利回りが幾らという事が問題になる訳では無いですな。
しかしちょっと待って欲しい(突如天声○語調になってますが^^)。「資金繰りの練習」で短期国債を大量に購入するというというのは一見すると金融機関の危機管理ができているように思えるが、大手銀行には別の役割があった事を忘れてはいないだろうか。(ああこれだけ書くだけで疲れる^^)
・・・・というのが何かと申しますと、大手銀行と言われる方々は国債市場特別参加者という資格をお持ちでして、(先日議事要旨ご紹介した)財務省の国債市場特別参加者会合にも出席している訳でございます。
→http://www.mof.go.jp/jouhou/kokusai/jgbsp/060403a.pdf
で、この国債市場特別参加者制度というのは何で設けられているかと言えば、制度作った時にこんなの出てまして、そこの冒頭にこんな事が書いてあります。
→http://www.mof.go.jp/jouhou/kokusai/siryou/kihonyouryou.pdf
『今般、財務大臣が、国債市場(発行市場及び流通市場)において重要な役割を果たし、国債管理政策の策定及び遂行に協力する者であって、国債市場に関する特別な責任及び資格を有する者を「国債市場特別参加者(以下「特別参加者」という。)」として定め、特別参加者及び財務省等により、国債の安定的な消化の促進並びに国債市場の流動性、効率性、競争性、透明性及び安定性の維持並びに向上等を図ることを目的とする国債市場特別参加者制度を導入することとした。』
まあ難しい事かいてますけど、要するに国債流通市場の円滑化に寄与するような人たちとして期待されいるんですよね。効率的かつ流動性の高い国債流通市場があれば国債消化の円滑化にも寄与するんですから。
でね、まあその次にある「指定基準」にはこんな事書いてあるんですけど。
『(3)国債流通市場に十分な流動性を提供することができると見込まれる者であること。』
ま、仮にですよ、仮に国債市場特別参加者の人で報道されているようなことを本当に実施して短期国債の需給を利回り無視水準まで逼迫させているというような行為があるのでしたら、上記URL先にある国債市場特別参加者制度基本要綱を百万回読めと申し上げたいですな。
ま、「投資家」として市場に参加して「お家の事情」で国債を買い上げたり投げ投げをしたりするのは別にお止め致しませんが、「国債市場特別参加者」として市場に参加する人がそれをするのは(程度問題というのはあるけど)如何なものかと思うんですけどねえ。
#久々に悪態でした。
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2006/04/20
○米国債券市場雑感
今朝はコアCPIが強い数字だったことから再度インフレ懸念で米国債券は売られて帰ってきたのですが、昨日はFOMC議事要旨で利上げがあと1回で打ち止めの見方が出て債券上昇株式大爆騰したのはご案内の通り。
「バーナンキ議長はやっぱりハト派」って見方も出たりしてたようなのですがちょっと待てと。今回公表されたFOMC議事要旨は3月27、28日のFOMCミーティングのものですけど、この後米債が売られたのは原油価格上昇に代表されるインフレ懸念だった訳だが、じゃあ3月末から現在に到るまで原油価格どうなってるかというと、WTIの原油先物価格が3月末の65ドル近辺から、昨日は71ドルで今朝も高値更新だと。
つまりですな、3月末の議事要旨で論議されていた経済の前提条件が変ってきてるってのが4月入り以降の米国債券売り売り(と言っても大した売りっぷりじゃないけど)状態のテーマだった筈なのに、前の状況を前提にした議論を捕まえて「利上げ打ち止め観測」が出てくるのはとっても間の抜けた話ではなかろうかちゅうことですな。
という話を書くつもりでいたら、先ほど申し上げたようにCPIが強い数字+原油上昇で米債あっさり反落したので、あまり逆張り系の話にならなくなったんでイマイチですな(笑)。
いやね、普段あまり読み込んでないFOMC議事要旨なんでアレなのですけど、FEDの利上げサイクル終了がいつかっちゅうのは基本的には経済物価情勢次第って話(議事要旨にそんな部分もある)ですから、まあ先行き連続利上げで大騒ぎしてたのがやり過ぎだったという話もありますが、次回利上げで打ち止めと決め打ちしてもしょうがない話でしょって所ですな。グリーンスパンの何だかよく判らん曖昧な発信から、連銀のエライ人が色々とおしゃべりをする情報発信に切り替わって米国市場でも間合いを計りかねているような感じがしますな。
・・・などと素人が書くとろくな事が無いのですが(汗)。
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2006/04/19
○財務省or財務大臣が孤軍の香りが
10年金利2%ということで昨日の報道を見てますと谷垣財務大臣は「日銀総裁何か言え」モードまで発言のトーンを強めてますが、惜しいことに与謝野経済財政担当大臣は「長期金利は市場が決める」的な発言をしてまして、今一歩政府が一致結束して金利上昇に異議申し立てという図になってませんな。
経済政策におけるポスト小泉がどうのこうのとかの絡みもあるのかも知れませんし、まあ小泉さんの花道がデフレ脱却経済正常化だとなると「長期金利上昇ケシカラン」と殊更に強調するのは花道と話が矛盾するんであまり騒げないとか、色々としょうもない裏読みをしたくなりますけれども、まあ現状では量的緩和解除前の大騒ぎと比較すれば静かなもの。
昨日の報道のヘッドラインと、ベンダー提供の記事をちらっと見ただけですんで、間違って解釈してるかもしれませんが、昨日は谷垣大臣「国債の利払い費負担」にも言及してましたな。まあ財政再建も重要課題なのでその話をするのもよく判るんですが、先日来あたくしが申し上げてますが、そっちの論点よりも「企業の調達コストの上昇が景気に悪影響」というような話をした方がアピール度が高いんじゃないかと思うのはあたくしの勝手な感想ですけど。どうも利払い費の話を持ち出されると「財務省の事情話」が全面に出る印象を受けてしまいます。
ついでに申し上げると、昨日の報道では谷垣大臣が「日銀総裁何か言え」みたいな発言をしていたように伝えられてますが、それをやりだすとまたまた変な思惑が発生して相場が無駄に乱高下しそう(口先介入で低金利継続のコミットメント出して、あとから梯子を外すの巻になる)で、まあそうなったらなったで相場としては笑えますが、それはちょっと難しい「お願い」なのではないかという感じです。
ちなみに前回10年新発が1.94%なんぞを付けた時(2004年6月17日の引け後、ちなみにこの日スイスがゼロ金利政策解除してましたな)はドル円は110円近辺で日経225は11500円近辺(11607.90円)という数字になってまして、まあそこから見ると確かに経済の腰は相当強くなってるでしょうなあ。解除したらいきなり「次」の地均し攻撃を受けて財務省としてはまあ一杯食わされたって切歯扼腕かと存じますが、やや苦戦か?
本石町日記さんが昨晩のエントリー(http://hongokucho.exblog.jp/4427542)で『長期金利の上昇に対して日銀は何もしないと思い込んではいけないのではないか、と逆バリ的に考えることがある。』ってことで興味深い考察をしてますが、確かに福井日銀に限っては「何をやらかすか判らん」という所がある(から相場が妙にオーバーシュートしたりとなるんですが)のは事実ですな。
まあ政府が一致結束して長期金利上昇ケシカランになったらまた変るのかもしれませんが、今の感じだとまあ市場の動き容認のような気がします。まあいままで「マジっすか」というような目くらましをやって変に期待持たせてから後から梯子外しをするというのが(一番印象にあったのは「金利に蓋をする」という国会発言。あれを信用して長期債買った人は後でエライ目に遭ってましたなあ)毎度のことでしたが、それがまた大復活すると思うと頭が痛くなりますな(笑)。さてどうなることやら。
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2006/04/18
お題「国債市場特別参加者会合議事要旨を見ると・・・」
昨日の信託大会の日銀総裁挨拶がモーサテで報道されていましたが、「原油価格高騰を懸念」という話になってまして、何だかなあという感じ。後でちょっと触れますが。
○国債市場特別参加者会合
先週木曜日に実施された国債市場特別参加者会合。
http://www.mof.go.jp/singikai/kokusai/gijiyosi/c180413.htm
・何か財務省の中の人の気持ちが出てますなあ
最初のお題は毎度お馴染みの「最近の国債市場の状況と今後の見通しについて」ですが、冒頭から中々いい感じで議事要旨作った事務方の心が(^^)。
『金利上昇の要因は、基本的に2つあると考えている。1つは言うまでもなく日銀が量的緩和を解除したことである。特に、幹部の発言により、マーケットに「これから先、日銀は中立的金利を目指す」というイメージが醸成されてしまったのは確かである。(以下略)』
この意見は続きが延々とあって、この続きにはグローバルなディスインフレ状況からインフレ懸念への転換がどうのこうのという話があって、必ずしも日銀の前のめりだけではないって話になっているのですが、冒頭一発目からこれなのは、財務省の中の人の気持ちが出てますなあということで。
3番目の意見も中々。
『3月以降の金利上昇については、量的緩和が解除されたこと自体よりも、その後の言動により、日銀がゼロ金利解除や金利正常化に対して前のめりになっていることが明らかになった結果であるとの見方をしている人が多いのではないか。そうした中で、海外の金利が上がり、株価もしっかりとしていることもあって、ここ数週間で夏場の利上げを織り込むような形になっている。』
『(途中省略)仮に、日銀がそうしたカーブの状況(引用者追記:フォワードカーブが今後1年くらいで3回程度の利上げを織り込む状況)に基づいて、「マーケットが日銀に対してゼロ金利の解除を催促している」という解釈をすれば、結果的にそれが債券マーケットを壊してしまうことになりかねないと懸念している。』
『(途中省略)日本銀行には、是非、市場に対する細心の注意を払い、発言についても慎重を期して頂きたいと思っている。』
このあたりはモロに水野審議委員の言動を批判してますな。まあこの位言われて当然なんですが。
・その説明は何となく大げさな気が
先ほど引用した3番目の意見言ってた人のお話ですが。
『ユーロ円金先は確かに来年にかけて3回位の利上げを織り込んでいる水準になっているが、キャッシュのターム物金利は6Mで0.18%近くであり、まだそこまでの利上げを織り込んではいない状況。従って、実際に夏に日本銀行が0.25%金利を上げるようなことになれば、中期ゾーンの金利の調整も大きくなるおそれがある。中期ゾーンの主要な保有者は銀行であり、時価会計に晒され、来年3月にはアウトライヤー規制の適用が始まることもあり、もう一段の売りを誘うリスクもある。』
そもそもユーロ円金先は恒常的にヘッジで売りのニーズがあり(時間軸があった時にはロールダウン取りに買う人も沢山いたようですが)、期近もの以外は「お前その値段はねえだろ」という所まで叩かれるのがいつもの傾向。で、以前書いたような気がするのですが、6ヶ月ものの短期国債は1年以内の短期ゾーンの中では需給が相対的に良好(3か月はFBが大量に発行されるし、1年はインデックスから外れた投資家からの売りが恒常的にある。6か月TBは大体需給が良好な事が多い)でして、まあその比較をするのはちょっとどうかという気がします。
というかですな、ユーロ円金利先物ってバンクALMがアフォのように振り回す中短期のスワップ市場のヘッジ玉が飛び交っているので、ここの価格形成を捕まえて「短期市場の金利観」とか言うのは物凄く違和感あるのですな。金先の価格を「市場は何回の利上げ織り込み」って言う人多いんですけど・・・・
で、まあ中期債の事はよー知らんですが、夏(7月から9月)に0.25%の利上げは短期市場はまあ大体織り込んでるんで、利上げした後「ここで利上げの影響を確認する(=しばらく小休止)」ってコメントでも出れば逆に金利低下するんジャマイカという感じでして、ここから尚の事中期が売り込まれるって見立てには少々違和感がありますな。ちと騒ぎすぎのような。
・まあ落ち着けって意見もございます
4番目の人の意見(一つ一つが長いので割愛ばっかで恐縮ですが)より。
『(前半の見立て部分割愛)緩やかな成長の中で緩やかに金利が上がっていくというのが、一番あり得るシナリオであると思っており、そうした前提に立てば、銀行としては、コア預金などの負債動向とのバランスを考えながら、中期債を中心に従来どおり継続的に投資していくことになるだろう。今後、利上げのパスの行き過ぎ感の修正や景気回復のスピードが少し緩やかになることが確認されれば、足元少し消極的な運用スタンスとなっていたこともあり、ちょっと積極的にしてみたいという気持ちもある。なお、アウトライヤー規制についての発言があったが、我々の感覚としては、ヒットするのは相当遠いという印象を持っている。』
5番目の人の意見より。
『当行でも、預貸金の状況はまったく変わっておらず、加えて昨年来ポジションを落としてきた関係もあり、運用資金は潤沢にある。一方で、時間軸効果がなくなることについて、ある程度覚悟はしていたものの、ここまで不安定な状況になるとまでは思っていなかったこともあり、先行きには今一歩自信が持てないというのが実情である。ただ、マーケットは、発行者、投資家、金融当局の3者の阿吽の呼吸みたいなものがあり、その間で、一種の信頼関係が醸成されれば、資金がある以上、当然、将来的に一定額の運用は考えていくことになる。(以下略)』
まあそんな感じなので、3番目の人の見解はインパクトあるんですが、「そりゃちょっと騒ぎすぎではなかろうか」って話のようですな。
・マーケットメークに関連して
2番目のお題は「今後の国債発行について」という意見を聞くとその瞬間における参加者の自分に都合の良い意見が出たがるものです。まあそっちは「ふーん」と思いながら読みましたが、最後に興味深い部分が。
『理財局から、「本日のヒヤリングを通じて、超長期債や物価連動債に対するニーズの高まりと、中長期的にこれらの市場を育成すべきとの期待を感じたところであり、発行体として発行量を増加させるよう努めていきたい。他方、投資家からは30年債、15年変動利付債、物価連動債の流動性についてフェア・プライスがついていないのではないかとの懸念が表明されているのも事実。その点についてどう考えておられるのか、マーケット・メイクの現状も教えてほしい。」旨発言したところ、出席者から以下の発言があった。』
で、この後に続く発言なんですが、惜しいことに言い訳大会(3人しか発言してませんが)の様相を呈してますな。市場参加者の厚みだとか、オファービットのスプレッドだとかの話になってるように見受けられますが、オファービットが狭けりゃ良いっていう投資家の意識も何とかならんのかと思いますわな。だいたいフェアプライスって何よ?って思うのだが(以下罵倒文言になりそうな悪寒がするので自主規制^^)。
まあそれは兎も角として、最大の問題は特に30年債とか(うっかりすると20年債なんかでもそうですが)でレポ市場の流動性が乏しいことではないかと思う訳で。30年債に限らず、マーケットで特定銘柄が無意味に人気化してその銘柄だけレポがやたらめったらタイトになり、それを聞きつけた人たちが業者に買いに来るので益々タイトになるなどという下品な状況をもうちょっと何とかしろという意見が欲しかったですな。
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2006/04/14
○国債投資家懇談会(4月11日)メモ
http://www.mof.go.jp/singikai/kokusai/gijiyosi/b180411.htm
・相場展望の部
相場見通しに関わる部分で金利上昇を見込んでいる人は「将来の連続的な利上げ」を展望していますなあというのは「ほほう」と思いました。まあそんなに上らないって意見もありまして、この部分は色々とお話でてます。個人的にしっくり来たのはこの意見かなあ(段落分かれてますが、同じ人の一つのコメントです)。
『日本銀行の新しい政策のフレームワークは、一言で言えば、より柔軟性、裁量性のある政策への移行ということではないかと考えており、それによるリスク・プレミアムの上昇は当然見込まれることになろう。ここ3ヵ月くらいの間に、リスク・プレミアムはかなり拡大してきているが、まだ十分には織り込まれていないと見ており、国債については、ディフェンシブな運用姿勢で臨みたい。』
『今回の段階的な利上げは、我が国では80年代後半の利上げ以来、市場参加者も政策当局も含めて、久しぶりの経験になるため、それによる市場の混乱、あるいは経済の混乱の可能性は、やはりゼロとは言えず、今後の見通しをたてるのは難しい。』
『なお、今回のアメリカの利上げ局面の最初の段階において、いわゆるフォワード・カーブが実現されないということにベットして、債券は買われたが、実際にはその後、その時点のフォワード・カーブが実現されたということがあった。従って、日本においても、今のこのフォワード・カーブが実現されていくことが、債券運用における一番のリスクと考えている。』
・国債発行の部
15年変動利付国債減らしてくれのオンパレードと、30年国債の流動性の無さに関しての指摘(結局発行増やしてくれという話になるのですが)のオンパレードという感じです。
30年債は一部海外勢とごく一部の国内投資家の挙動で振り回されるという毎度お馴染みの展開ですんでまあ発行増やしましょうってのは誠にその通りで。イールドカーブの一番ケツが流動性なくてチョッピーに動く(全然動かないか派手派手に動くかの両極端)というのは困ったもんです。20年と30年どっちかに集約するのも一方だとは思うんですが。。。
まあ30年が荒れ荒れで参りますなあという意見がこれだけ多くなったのも現状を見れば当たり前といえば当たり前ですが、良い傾向といえばよい傾向かとは思います。イールドカーブ全体に悪影響与えて、結果として相場全体に悪影響って問題意識が高まってますな。
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2006/04/06
お題「短期金融市場の課題というレポートが出ていました」
月末月初(しかも期末期初)は本業多忙でネタはあれども検証する暇はあまり無く・・・で、今日は日銀が昨日出していた『量的緩和政策解除後の短期金融市場の課題』というペーパーを見ながら雑談。
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/mkr/mkr0604.pdf
(PDFファイルです)
昨日日銀金融市場局から出た金融市場レポート追録は短期金融市場が過去(ゼロ金利前)と比較してどういう変化が起きて今後どのような課題がありますかってお話です。さすがに金融市場局が作っているだけに状況をよく把握しておられますな。お勧めなんですけど短期市場に興味がないと何が何だかって所かもしれませんな。
○レポ市場に関して
だいたい書いてあることに異論はないのですが、ちょっと気になったのはレポ市場に関連してのところかなあ。6ページになるのですが。
『レポ・現先市場は着実に拡大してきており、市場機能面で大きな課題がある訳ではないが、敢えて挙げればやや長めのタームの取引が薄い点がある。』
この辺は実際に証券会社で玉繰りをやってる人を横で見てた感覚からすると、ターム物取引の前にレポ市場の厚みというか深みというか、確かに取引高はでかいのですが、市場の懐がそんなにまだ深くないんじゃないのかって気はします。
まあこれは国債の保有主体がメガ化した影響もあるんでしょうが、先日の国債補完貸付で見られたように、何かちょっと相場が下がると現物債のSCレポ取引で玉締め類似行為(微妙に断言しませんが)が横行しちゃったり、大して意味も無く「マーケットで業者のポジションがショートになっている銘柄」を聞きつけて大手だけじゃなくてフツーの投資家さんまでもが特定銘柄ばかりを買いに来て変な価格形成になるとか。まあ何か相変わらず「残高はでかいけどマーケットの懐は浅いんじゃネーノ」という気は思いっきり致します。
GCレポ取引に関しても資金の出し手がバリエーションに乏しいというのは課題ではないかと思う(本来安定的な出し手として登場して欲しい投信とか年金とかがそんなに出ているとは思えない)次第ですが、多分事務が回らない(レポをやるとなると担保値洗いをどうするとかいう話が浮上してくるし)ものと思料。ちなみにSC取引に関しても投信とか年金の保有は基本的に安定保有(アクティブ運用は別ですが)だから本当は安定的な供給主体になる筈ですし、品貸しによって品貸料(正確にはSC取引で入ってきた現金をGC取引で運用して稼ぐGC-SC金利スプレッド分ですが)が入ってくるので本来ならやった方が良い筈なんですが、事務の問題に加えまして、これをやると運用の見かけ上「レバレッジが掛かった」状態になってしまう(=100億円の資金を100億円債券で運用してSC取引に放出して品貸料取りにGC取引で資金運用したら運用額が200億円になってしまいます)ので、これが基本的には出来ない(レバレッジ掛けて運用するって決めになっていれば別ですが、債券の年金運用でレバレッジ掛ける人はまあ殆ど居ないでしょう)という問題点が。。。。。
調達サイドは調達しないとケツに火が点くのでまあ体制整備はサクサク進むのでしょうが、運用サイドに関してはケツが重そうな気がしますな(レポの所ではないですが、別のところでペーパーでも同じような指摘が)純粋資金運用の投信や年金側としてはレポを行ってレバレッジがかかる問題(単純に資金放出してるだけならその問題はないですが)を業界としてどうクリアするか何て話には・・・ならないだろうなあ。
ペーパーにあるように当日スタートのレポ取引も広がると面白いんですが、まあ事務が回らんでしょうな。で、そのあたりの事務が回らないから短期金融市場の機能が回復しないって話に関しては、短期市場の事務体制に金を掛けて間尺に合わない時代が長かったんで、実際問題として短期金利がそこそこついて商売として成立すれば自然と機能回復はするでしょうから無問題だと思う。(市場機能が回復しないから当座預金残高下げられないとか、市場機能を回復させるために利上げするとかいう議論は勘弁して欲しいのですが、笑)
○まとめの部分ですが
で、7ページ目のまとめの部分ですが。
『日本銀行は、量的緩和政策の解除後、数か月程度を目途にしつつ、当座預金残高を所要準備額に向けて削減していくこととしている。削減にあたっては、以上みてきたような問題意識を踏まえ、短期金融市場の動向や機能回復の状況を十分に点検しながら、進めていくこととしている。』
早速クイックでは「短期金融市場の動向や機能回復の状況を十分に点検しながら」って所にスポットをあててヘッドラインを打ってまして、何か如何にも「当座預金残高の削減には時間が物凄い勢いで掛かります」という印象を与えてましたが、まあここの所は「強引に引くことはしませんよ」という意味と理解したほうが良いかと。さっき申し上げたように、市場機能の回復云々と言いましても、現実問題としてゼロ金利状態でわざわざ手間隙掛けて資金の放出をするのは腰の軽い人でして、大体世の中は8月20日過ぎに夏休みの宿題をやるような人が多いっすから、現実に金利が上昇しないと資金の出し手が涌いて出てくる状況にはならないでしょうし。
『また、補完貸付について、現在0.1%である適用金利を据え置くともに、同金利による利用日数に関して上限を設けない臨時措置を当面継続することとした。補完貸付は短期金融市場での安定的な金利形成を目的として設計された制度であり、日本銀行としては必要に応じ躊躇なく利用されることを期待している。』
多分ここの所は活字を大きくして強調したいところでしょう。ロンバート貸出が機能しないと短期市場金利のキャップ(有担保ですから無担保取引のキャップには直接はなりませんけど、まあ有担保でもキャップがあるのは大きい訳で)が機能しませんからねえ。
次世代RTGSの話はスルー致しまして。
『短期金融市場は、金融機関間の資金の過不足の調整の場であると同時に、金融市場調節の場である。したがって、日本銀行としては、短期金融市場の機能がどのようなペースで回復していくのかについて、大きな関心を有している。こうした観点から、市場参加者との意見交換を通じて短期金融市場が今後どのように変化していくのかを把握するとともに、市場参加者の市場機能の向上に向けた取組みを支援していきたいと考えている。』
市場参加者に意見を聞くときには皆さんまあ基本的に自分の都合で話をするという事を割り引いていただくと誠に幸いですので(笑)、できるだけ広範囲の人にお話を聞かれる事を願いたいものです。まあ金融市場局だったらクオンツ系(笑)じゃないと思いますが。
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2006/04/05
○ほとんど雑談ですが日銀総裁の入行式挨拶など
http://www.boj.or.jp/type/press/koen/ko0604a.htm
月曜の話ですけど今年度の入行式挨拶を読んだ訳ですが、ウェブサイトのリニューアルに伴い小見出しが付く様になりまして、去年もありましたスローガン「戦略、起動、実現」が小見出しに載っております。
昨年度は見事な「戦略、起動、実現」でしたなあなどと申し上げる前に昨年書いた駄文を読み返してみると、物の見事にこのキーワードをスルーしている自分がいる訳で、誠に遺憾でございますな(苦笑)。
ちなみに去年の入行式挨拶の方が何かオモロかったんですが・・・・・
で、ついでにウェブサイトを見ていたんですが、どうも慣れると調べやすいのかもしれないのですが、前の状態に慣れているせいもありますが、トップページから目的の場所まで辿り着くまでのステップが若干多くなったせいかどうも使い勝手が宜しくなく、普段見る統計なんかを悉くブックマークする破目になっております。まあ慣れの問題なんでしょうが。。。
と愚痴を書くのではなく(笑)、ちと見てて笑ったのはこんなコーナー
http://www.boj.or.jp/type/press/kokkai06.htm
以前はこんなコーナーありましたっけ?って感じなのですが、まあこれはきっと「日銀はこのように国会に出席して国民の皆様に説明責任を果たしています」っていうことのアピールでもあるのでしょう。国会の会議録を検索してオモシロネタを拾う(たまにはちゃんとしたネタも含まれます、為念^^)あたくしには便利でございますが(笑)、まあこれは言外に「こんなに国会に引っ張り出しておいてまだ『説明責任不足』とか言いやがるのかエエカゲンニセエ」とか「諸外国の中銀と比べて物凄い勢いで議会に引っ張り出されてますが何か?」という事をさりげなく主張しているものと思料。
ま、確かにこれだけの勢いで国会に出席して「説明が足りない」という議員の皆様におかれましては、文句を言う前に皆様の糞下らない質問(例えば・・・暫く前に槍玉にあげた参議院での「日銀株式が買占めの対象になった時の対処は考えてますか」というお馬鹿な質問とか、量的緩和解除直後の衆議院予算委員会でただひたすら何でもかんでもクソミソに文句だけつけて、質問に一貫性のない事を聞く人(ちなみにリンク先に出てくる最初の人ではありませんのでお間違えのないように念の為申し添えます。次の人ですよ)とか)を改善された方が宜しいのではないかと切に願いたいものです。
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