トップページに戻る
審議委員一覧に戻る
福井総裁発言インデックスに戻る

2006年度上期の福井総裁発言等インデックス

2006/09/20「総裁記者会見(9月8日)」
2006/08/15「総裁記者会見(続き)」
2006/08/14「総裁記者会見にサプライズなし」
2006/07/20「総裁記者会見(その2)ロンバート関連」
2006/07/19「ゼロ金利解除の記者会見(その1)」
2006/06/22「記者クラブでの講演続きと記者会見」
2006/06/21「日本記者クラブの講演で「早い」利上げ発言」
2006/06/19「定例記者会見あれこれ」
2006/06/16「参議院財政金融委員会での答弁雑感」
2006/06/15「村上問題で議論が盛り上がるブログ紹介」
2006/06/14「福井総裁の村上ファンド出資問題勃発」
2006/06/07「福井総裁しらっと量的緩和総括中?」
2006/06/02「福井総裁のブルームバーグ社単独記者会見」
2006/06/01「前の話ですが19日定例記者会見よりメモ」
2006/05/24「単独インタビューは火消しの煽りではありませんでした」
2006/05/23「日経新聞福井総裁単独インタビュー記事の報道に脊髄反射してみる」
2006/05/22「定例記者会見メモ」
2006/05/18「月曜講演補足:いつの間にやら物価上昇懸念がメインになってきたんですな」
2006/05/17「引き続き火消し発言(16日参議院財政金融委員会答弁)」
2006/05/16「講演内容は強気、質疑応答は火消しの講演2本」
2006/05/08「4月29日定例記者会見(その2)」
2006/05/02「4月29日定例記者会見(その1)」
2006/04/24「G7での総裁記者会見」
2006/04/18「淡々と公式見解を述べる福井総裁(信託大会挨拶)」
2006/04/13「福井総裁定例記者会見(続き)」
2006/04/12「福井総裁定例記者会見メモ」


2006/09/20

○総裁記者会見(今更9月8日ですが)

ざっくりと読みますと、今般のCPI指標改定に伴う指数の低下に関する質疑と為替市場に関する質疑が目立つところですな。指標改定に関しては色々と質疑が続いてますが、実質最初(2番目)の質問に対する答え部分に大体集約されているような感じがします。

・CPI基準改定に関する総裁のコメント

『基準改定による伸び率低下は、いくつかの要素に分解できます。1つ目は、パソコンなど価格下落幅の大きい品目において指数算式上のリセット効果がみられたこと、2つ目は、足もとで価格下落が加速している薄型テレビなどいくつかの品目が新規採用されたこと、3つ目は、移動電話通信料などの既存品目において指数算出方法が変更されたことが大きく影響しています。他にも細かい要因があるでしょうが、私どもは大きくこの3つの要素に分解してみています。』

『今回の基準改定による0.5%ポイント程度の押し下げ幅が、市場の事前予想を幾分上回ったことについてみると、今申し上げました3つの要素のうち、1つ目の指数算式上のリセット効果や2つ目の新規採用品目の影響は概ね事前予想の範囲内であり、3つ目の携帯電話等の指数算出方法の変更の影響が大きかったとみています。なお、3つ目の指数算出方法変更の影響の多くについては、指数の変化時点から1年を経過した時点で、前年比への影響が剥落する可能性が高いと考えています。』

で、まあその後日銀から関連するレポートが出ているような気がしますが、当たり前のようにまだ読んでおりません・・・・・(汗)。


・市場との対話に関するツッコミ(^^)

この質問は中々結構でございます。

『もう一つは、日銀は、金融政策を運営するにあたって、市場の動きを鏡としてみて慎重に運営していくということでしたが、昨今の長期金利をみると、1.6%まで下げ、今は1.8%に届かない状態です。先般開かれたプライマリー・ディーラー会合では、出席者から2%を突破するシナリオは想定しにくいという報告があったとのことです。』

『日銀のシナリオでは、緩やかながらも景気は拡大していくはずですが、需給ギャップが需要超過にあり、物価も少しずつ上がっていくのであれば、長期金利ももう少し上がってもいいのではないかと思いますが、市場と日銀の考えていることに乖離が出ているのではないのでしょうか。』

んでまあその答えはやたらと長いのですが、中々オモロイのでほとんど全部引用しちゃいますね。

『2つ目のご質問は、市場と私どもとでは行動の仕方が違うということです。市場が、物価指数の基準改定なりそれ以外の経済指標の出方によってその都度強く反応する。ポジティブかネガティブかいずれの方向にせよ強く反応する。これは市場が生きている証拠であり、市場が正しく行動していると私どもはいつも思っています。』

はあはあそうですか。

『ただし、市場がいつも私どもと同じ行動をするのであれば、市場は鏡にならないわけであり、やはり新しく出て来るデータや情報、変化などを、かなり鋭角的に一旦は市場なりに織り込むというのが市場の本来の行動であり、最近の市場の動きを見ていても、市場本来のあり方として動いていると私どもは受け止めています。』

ということは、市場は年がら年中オーバーシュートするというご認識(その通りですが)でよろしゅうございますでしょうか?

『一方、市場は一旦織り込んだからといって、それをそのまま不動のものとして抱え続けるということがないというのも、これまた市場の本性であります。同じ物価関連の動きであっても、今後出て来る新しい指標をまた織り込み、そして過去の織り込み方を見直していくというダイナミックな変化を遂げていくのが市場であります。そういうダイナミックな変化こそが私どもにとって鏡として読み取れる部分です。ある瞬間の市場の反応をスチールカメラで写したものは、私どもにとってあまり鏡になりません。刻々と出て来る変化を市場がどう咀嚼し過去の織り込み方を修正するか、そのダイナミックな変化の部分が私どもにとっては鏡です。』

何と申しますか、それって相場に振り回されますと言ってるのか、それとも相場の織り込み方の都合の良い方を鏡として解釈してますよと言ってるのかのどっちか(あるいは両方)に思えて仕方ないんですけど大丈夫なのでしょうか。まあ鏡とか言い出したんで例えがグダグダになっているだけと言ってしまえばそれまでですが。

『一方、私どもの方は、どんな新しい指標が出てもその都度、経済を深く分析して、経済に対する少し長持ちする判断を出していきますので、市場の様に刻々と判断が振れるということはないわけですが、それでも、情勢判断というのは、経済を奥深く分析しながら先行きの読みを刻々と修正していきます。今月皆様にお示ししました基本的見解はあまり変わっていないのですが、基本的な判断が変われば正直に変えていきます。』

何か景気判断が遅行指標化の悪寒がすると思えば・・・

『こういう私どもの行動の仕方と市場の行動の仕方が違うというところが非常に重要で、行動パターンが違うものがお互いに情報交換しあって、市場の方は金利形成をより熟したものにしていき、私どもの方は、先行きの経済見通しをより確信の持てるものにしていくというコミュニケーションが繰り返しされていきます。』

年がら年中オーバーシュートする市場と、遅行して動く中央銀行のコミュニケーションって何か想像すると寒いものを感じるのですけど。

『従って、今の市場の動き、例えば長期金利をみると、一旦、1.6%まで落ちたものが今日は1.7%台まで戻っておりますが、こういう動きこそが非常に大事です。(以下略)』

どう見ても我田引水です。本当にありがとうございました。


・ところで村上ファンド

村上ファンドに関して質問したのは一人(しかも他のついででしたが)いましたんでそのお答え。

『村上ファンドについては、解約を申し出たのは2 月で、実際の解約は6月と申し上げておりましたが、最終的にファンド側からいくら戻されるのか連絡を受けていません。こんなに時間がかかると思っていませんでしたが、そういう状況ですので、いずれまたきちんとご報告したいと思います。』

ここのところが未だによく判らんのですけど、村上代表が逮捕された時には確か「ファンドのうち6割くらい現金でもっているので解約がきても大丈夫」というようなコメントがファンド側から出されていた筈でして(具体的なソースは失念しましたのでお示しできませんが)、あのコメントは一体全体何だったんだという話になりますわな。何度も同じ話で恐縮ですが。

それに2月に解約申し出て9月になっても清算価格すら判らんってそんな計理やってるファンドって何なのよという話でして、そんあ不透明極まりない(というか強く言えば杜撰)なファンドへ投資をしていた機関投資家がいた筈ですが、この人たちはそれで良いのでしょうかって話になりますわな。自己勘定の資金なら兎も角、他人勘定部分を突っ込んでいるとしたら、それは委託者に対するプルーデンス上問題ありませんですかねえ。

どうも本件は「金融関係者として常識的に考えて不可解極まりない」という部分が未だにございますわな。

#古いネタで恐縮ですが、まあ俺様メモなんで勘弁してください

トップに戻る




2006/08/15

お題「総裁記者会見(8月11日)」

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken/kk0608b.pdf

まあ確かに珍しく落ち着いた会見で、中の人が武藤副総裁に入れ替わったんじゃないか(残念ながらそこまでは落ち着いて無いと思うけど^^)というような会見要旨ですな。質疑応答で出てくる順にいくつか。

○市場との対話という論点から

ゼロ金利解除後の金融市場に関しての質問に対する回答の一部から。

『これ(引用者注:解除後の市場動向です)は、イールド・カーブがあまり変化していないという言い方でも良いかと思いますが、先行きの政策運営のあり方について、展望レポート等による情報発信を通じて、日本銀行の考え方が市場参加者に徐々にではあるが確実に浸透してきていることの証左ではないかと思っています。本年3月に導入した「新たな金融政策運営の枠組み」が、市場とのコミュニケーションにおいて徐々に有効に機能し始めていると私どもは受け止めています。』

ここであたくしが何を言い出すかは既に皆様お判りのことと存じますが(笑)、要するに訳の判らん地均しだかマッチポンプだかと言った行為を政策委員の皆様が仰らなければ、市場の方は経済指標や株価動向や海外市場動向なんかを見ながらそれなりに反応する訳でございまして、まあこの調子で大人しくしてなさいということですわな。

で、まあ年内利上げ云々に関してですが、昨日ご紹介した部分の続きが別の質問の中でございまして・・・・

『私が記者会見でいわゆる連続利上げは想定していないと申し上げた結果として、年内はない、年内はもうルールアウトしていいという受け止め方が一部にあるという話を耳にして、それだと寧ろ私どもが年内はないという予断を持って対処しているような感じに受け止められかねない、というところを心配した発言ではないかと思います。私自身そうですし、おそらく他の委員方もそういう気持ちで話されたのではないかと思っています。』

まあそういう事ですな。本石町日記さんの受け売りになりますけど、政策委員の皆様におかれましては、経済情勢の現状認識と先行き見通しについて持論を展開してくれれば良い訳でして、どこぞの委員のように具体的な金利水準に言及するのは如何なものかというか逝って良し。という訳で水野審議委員の講演に関する質問への福井総裁のお答え。

『今の長期金利の水準そのものが将来に向かって妥当かどうかという点は、なかなかコメントしにくいことです。(途中割愛)様々な周辺事情も合わせながら、市場がこれから織り込んでいく金利水準、そのような動態的な金利の形成のされ方そのものが意味を持ってくるのであり、何か事前に固定的にstatic に(静態的に)一定の金利水準を想定して、これが望ましいというかたちではものを考えない方が、政策運営上は良いと思っています。』


○でも地均しは成功経験と認識されている悪寒も

と、ここまでは珍しくあたくしが悪態をついておりませんが、さて実は今引用した水野審議委員講演に関する質問の部分ですが、最初のところを読んでいると、どうもゼロ金利解除に関しての地均しが成功体験扱いになっている悪寒が。

『ほど申し上げました意味は、ゼロ金利からの脱却という点について、7月前後の状況を思い返しますと、比較的スムーズに市場とのコミュニケーションが進んで、市場においても事前に相当織り込みが進んだという感じがあったと思います。短期金融市場もその後安定していると申し上げましたが、様々な準備が事前に進んでいたと思いますし、より期間の長い金利の形成のされ方が、長期金利も含めたイールド・カーブそのものが、日本銀行の金利引き上げ措置を受けて、その後慌てて様々な調整を市場の中で模索しなければ形成できないというような状況ではありませんでした。市場が、比較的余裕を持って世界経済、日本経済の先行きを考えながら、イールド・カーブを安定的に形成する条件が事前に相当整っていたということを申し上げたつもりです。』

このくだりを読んでおりますと、「次に利上げする時も事前にアナウンスして織り込ませにいきますよ」と言っているように見えてしまうのはあたくしの気のせいでしょうか?

となりますと、全く邪道も良い所なんですが、べき論を離れて予想屋となって次回利上げがいつよって事を考え出すと、短観が強い内容で出てから金融経済月報、展望レポートと地均しを開始して、11月に利上げというのが物凄くありそうな話。

または10月の線で考えると、9月の金融経済月報から地均しを開始して短観が思惑通り強くて千秋万歳という流れもあると思いますし、10月に実施すると量的緩和解除から3か月毎に政策変更という如何にもというリズムになりますので、こっちの線も残っているかと。(逆に考えると、変にリズムを作らない方が妙な期待を醸成しなくて良いとも言えますけど)


○マネーサプライに関して

『このところマネーサプライの伸び率が目立って低下しているという点です。ご承知のとおりその一方で、民間銀行貸出の伸び率は着実に高まってきています。(中間割愛)こうした銀行貸出が伸びているのに何故マネーサプライの伸び率が低下するのか、一見パラドックスのようにみえますが、これは過去の量的緩和政策のもとで起こっていた金融としてはやや異常な姿の巻き戻しのようなところがあります。』

で、またまた中間の説明部分は省略しますが、6ページ目のところに該当する話がございますです。

『現実には過去に膨れ上がった銀行預金から銀行預金以外の金融資産へのシフトが急速に進んでいることによって、貸出の増加が打ち消され、かつ余りある力でマネーサプライの伸び率が低下しています。これは、金融正常化への過程の一つの経過的な現象とみて頂いていいと思います。従いまして、当面は、マネーサプライの伸び率が高まるとは予想しにくいと思います。伸び率自体が低迷する時期がもう少し続くと思いますが、その背後にある要因は今申し上げましたことであるので、このような低いマネーサプライの伸び率といった状況は、緩やかな物価上昇や経済の持続的成長といった経済の姿と矛盾するものでなく、十分両立するものと考えています。』

だそうです。はあはあそうなんですか。


○ところでファンド拠出問題なんですが・・・・・

ここの質疑応答に関しては何だかなあ感が。

『(問)先月の記者会見の質疑応答でもありましたが、総裁は村上ファンドに対して6月末での解約を申し出ていたかと思いますが、その結果はどのようになっているのでしょうか。』

『(答) 具体的にいつどの程度の金額が戻されるのかについて、まだ連絡を受けておりません。従って、今はまだ何もわからない状況です。』

2月に申し出して、6月末付けの解約をしたのに8月になっても金額が判らんってどういう管理状況になっているんだ村上ファンド。

それに物凄く疑問に思うんですが、確か村上代表が逮捕された時にファンドは「現在ファンドの現金部分が沢山あるから解約が来ても心配ないぜ」というような趣旨の発表をしてたと存じますけど、福井総裁の解約処理にこんなに時間がかかるのに「現金部分云々」の話は別に関係ねえじゃんって思うんですよね。

このあたりにも象徴されてるような気がするんですが、村上ファンドに関してはどうもこう皆様から出てくる話を突き合わせて見ると話に整合性が取れない部分が見受けられるように思える次第で、これがまた何とも「胡散臭さ」というものを醸し出す原因の一つとなっているのではないかと思料。

で、何で日銀総裁たる立場の人がそういうもんを継続して取引してたんでしょうなあという話になる訳ですが、まあそれはともかく、ではファンド解約の方はどうなってるのよって質問の続きはこうなってます。

『(問) 問い合わせはされたのでしょうか。』

『(答) 特に問い合わせはしておりません。』

まさか有耶無耶のうちにフェードアウトしようってんじゃあ無いでしょうね。

トップに戻る




2006/08/14

○総裁会見はノーサプライズ

本石町日記さんのところでエントリー上ってましたが、今回の総裁会見は言葉を慎重に選んで物凄く落ち着いた内容だったようです。会見要旨に関しては本日アップされると思うのでそちらを確認したいところですな。ちなみに本石町さんのエントリーはこちら→http://hongokucho.exblog.jp/5463969/

11日18時25分配信のブルームバーグニュースを読みますと、まあ今回は実に落ち着いた内容の会見で、総裁お得意の「不規則発言」が出ていないようで誠に結構でございます。何せ記事のお題が『福井日銀総裁:否定できないが示唆する意図もない‐年内利上げ』ってことになっているあたりが「ああ今日は落ち着いた会見やったんだなあ」と思わせるところでございます。毎度毎度なにか余計なネタ(あるいは燃料)を投下して記事のお題が「ありゃま」ってのになるのが福井総裁クオリティでもございましたんで。以下ブルームバーグの記事より総裁の応答部分。

『先行きの金融政策の運営については、今後とも経済・物価情勢を丹念に点検しながら運営していく。その際のポイントは、経済・物価情勢が展望リポートに沿って引き続き展開するかどうかということであり、もしそのように今後とも見込まれるのであれば、政策金利水準の調整については、経済・物価情勢の変化に応じて徐々に行うことになる』

『この場合、かねてから繰り返して申し上げている通り、極めて低い金利水準による緩和的な金融環境が当面維持される可能性が高いと判断しているあまり繰り返しばかりだと恐縮だが、金利水準の調整は、経済・物価情勢をよく見極めながら、ゆっくりと進めていくということだ』

『こうした基本的な考え方の下で、具体的な政策のタイミングや金利水準、つまり政策の中身については、今後の経済・物価情勢次第ということだが、年内の追加利上げの可能性を問われれば、当然、それは否定することはできないし、かと言って、利上げを示唆する意図も全くない。極めてオープンであり、現時点では何らの予断も持っていない』

いやあまあ普段からこういう感じで話をしてりゃあ良い訳で、口を開けば火付けと火消しの繰り返しっていうのは今後とも控えていただくと誠にありがたく存じます。本石町日記さんと同様に一大ネタがなくなるのはアレでございますが、振り回されて血圧上がるのも困るので(笑)。


ただまあ少々気になるのは、記事にもありますが、今後の経済リスク要因として「米国経済」を上げていながらも月報では相変わらず「拡大」の見通しを掲げたままですし、しかも米国経済の減速リスクについて言及しながらも、その中でインフレリスクについて言及しておりまして、景気減速してくれば今度はグローバルインフレ話で金利調整してくるんじゃねえのかと思わせてくれるところでございます。会見要旨が出たところで読んで見たいと思います。

トップに戻る



2006/07/20

○総裁記者会見続き:ロンバート金利関連

ロンバート関連の総裁コメント。

『まず大変申しわけないのですが、公定歩合という言い方を私どもはどちらかというとお蔵に入れたいと思っています。(中略)今回も公表文の一番下の欄外に「手形割引は停止しています」と静かに書いていますが、この意味するところは公定歩合という言葉は、今後お互いに使わないでいければ非常に嬉しいという意味です。』

物凄く芸が細かいなあと思ったのは、日銀のウェブサイトのトップページでして、あたくしが気が付いたのは6時過ぎ位だったと記憶してますが、この当日にはトップページ右下にある「主な指標」の一番上にある「公定歩合」が「基準貸付利率」となっておりました。そういう所はヌカリがないぜ日本銀行(^^)。

『基準貸付利率と申しますか、補完貸付の適用金利、これは今申し上げました通り、今回は取りあえず少し低いところに抑えたというのが実感です。』

総裁の本音は0.5%だったんですかそうですか、まあそうだとは思うが。

『従って、将来は誘導目標と基準貸付利率とのスプレッドについて、どの程度が本当に適正なのか、外国のように0.5%とか1%というスプレッドが良いのかを、日本の場合、新しい展開の中で決めていかなければならないので、いくら勉強しても机上の作業で事前に一発勝負で最終的な解を出すのは難しいのかなと思っています。』

机上のナントカって言い方が好きですなあ総裁。というツッコミではなくて、まあ誘導目標が0.5%位になったら(何時の事か知らんが、鬱)スプレッド0.5%でも良いんジャマイカと思いますが、ただしちゃんと誘導金利目標近傍で市場が動くようになってればの話ですけど。

『従って、今後の政策変更の過程でその都度、市場機能の回復振りを判断しながら現実的に判断していきたいと思っています。通常は余程のことがない限り、政策変更の時にきちんと判断していくということになると思っています。今回中途半端に止めたからここだけ別途急いで決めたい、というような気持ちを予め持っているわけではありません。』

必ずしも完全否定ではないですけど、ロンバート金利だけいじるという事はやりませんと言ってるようですな。技術的にはアリかなとも思いますが、まあ確かにロンバートを先行して動かしてから誘導水準動かす(昔のブンデスバンクみたいに)というような連想が働きやすいので難しいんでしょうね。


○小ネタその2:株価下落は地政学リスクが影響ですかそうですか

http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20060719AT2C1903G19072006.html

記事のお題は『日銀総裁、株式市場の値動き「地政学リスク影響」』でして、今週になって株が下がったのは地政学リスクが影響との見立てのようでございます。

いやまあそれならそれでも良いのですが、米軍がイラク攻撃をした時に臨時政策委員会を招集して当座預金残高を増やしたお方の同じ口から出る言葉とは思えませんな。中東情勢の激化は先週の決定会合前から顕在化(イスラエル軍のベイルート国際空港空爆は13日)してたと思いますが利上げですかそうですか。

なんちゅうかね、一つ一つの理屈はそれはそれで判るんですけれども、過去からの経緯を並べて見るとその時々で持ち出してくる理屈が違うのが福井総裁クオリティなのは今に始まった事じゃないんですが、それで良いのか金融政策って思うあたくしはケツが青いですかそうですか。


トップに戻る




2006/07/19

○総裁記者会見でとりあえずツッコミたい所

いやまあ総裁記者会見も色々と論点があるような感じですけど、書く方が追いつかないです。やっぱ休み中に少し書けばよかったですよorz

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken/kk0607b.pdf

PDFで20ページ、会見時間が約80分。色々読むべき点はあるのですが、まあぼちぼちと参りますとしまして、本日は読んでて真っ先に気になった点について軽く悪態を。

・市場からのメッセージを取捨選択してませんかあ?

PDFの3ページ目、ゼロ金利解除の日本経済への影響に関する質問に対する福井総裁の説明部分から。

『そういう状況(引用者追記:日銀の経済物価情勢メインシナリオに沿った動きが続くという認識)がイールドカーブに示されるように、市場参加者や企業などの民間経済主体がある程度先行きの政策変更を織り込んだ上で、意思決定を行ってきているということを前提としているわけです。現時点では、そういう姿に市場の認識が揃い、私どもの判断と市場の認識との間に、ほとんど隙間なく一致を見ているという状況であります。従って、今のこの時点では、この程度の政策金利の変更を行うことが、むしろ息の長い成長に繋がっていくと判断しました。』

はあそうなんですか地均ししてませんでしたっけ〜まあいっか。

で、その次の質問で株価が下がってますが?ってのがあってそれに対する答えは4ページ目から5ページ目にかけて。

『株式市場の変動というのは、当然、実体経済の先行きとの関係でそれがどういうインプリケーションを含んでいるかということを十分抽出して判断しなければ、政策判断として一部が欠落することになります。そこのところは私どもは十分意識しており、特に5月中旬以降の世界的な株価の下落あるいは調整については、その性格や実体経済に及ぼす影響を非常に慎重にウォッチしてきました。つい最近までの世界的な株価の下落は、私どもの判断では、結局のところ各国の中央銀行が経済・物価情勢に合わせて金融緩和度合いの修正を慎重に進める中で、市場参加者のリスク評価についての見直しが進み、その結果として株価の調整が生じた面が強かったと思っています。世界経済のファンダメンタルズの先行きの悪さを、株式市場の動きがウォーニングを発しているという感じではないと、取りあえず判断しました。』

日銀と同じ認識の市場動向は良い市場インプリケーション、認識と違う市場はインプリケーションを与えていませんですかそうですか。

ちなみに、ウォーニングを発していない根拠は上記の続きにあるのですが・・・・・『その証拠に、かなりの株価下落だったと思いますが、エマージング諸国の経済を含め世界経済は、先程申し上げた通り、むしろ地域的な広がりを見せながら着実に拡大しています。』だそうでございます。はあそうなんですか。

・・・・何だかなあって思うのでありました。以下続編は明日。

トップに戻る




2006/06/22

お題「福井総裁講演続きと記者会見」

その前に昨日のニュースでちょっと気になったこと。

○首相発言&官房長官発言のトーンが・・・

こういうのは報道だけで判断するのは慎重にしないといけないのでメモメモ程度なんですけど。

昨日のブルームバーグニュースが報じる(12時38分配信)ところによりますと、小泉首相は福井総裁の「早め」発言に対して官邸で記者団に対して「金融政策は、政府と協力し、日銀としてどう判断するかだ」と発言したそうです。また安倍官房長官は福井総裁の村上ファンドへ資金拠出問題に関して、午前の定例会見で、福井総裁に職責をまっとうしてほしいという考えに変りはないとしながらも「国民の信頼が必要だ。やるべきことをしっかりとやってほしい。資産公開など内規の見直しをすべきだというのが国民の声。これなしに国民の信頼を得ることは難しい」と述べた(11時49分配信)そうです。

どっちもちょっと引っ掛かるなあ。最近の首相は金融政策に関しては「日銀が独自に判断すること」という言い方(イヤミっぽい言い方の時もありましたが^^)をしてたように記憶してるんですが、一般論としての政府と協力というのは見たことあるけど、日銀の判断という言葉の前に「政府と協力」って言い方してたかなあとちょっと気になります。官房長官は福井総裁の村上ファンド出資の件に関して「国民の信頼」という言い方でちょっと厳しい言い方してるなあと。うーむ。


○総裁講演の金融政策運営に関する部分(昨日の続き)

http://www.boj.or.jp/type/press/koen/ko0606e.htm

講演後半の『低インフレ環境下の金融政策運営』以降から。

『ところで、少し理論的な話になりますが、低インフレ下における金融政策運営の難しさとしては、これまで主として、デフレ・スパイラルのリスクへの対応という論点が意識されてきました。』

『低インフレ環境においては、一般に、名目金利は低いと考えられますので、金融政策運営上も名目金利のゼロ制約の問題が生じやすいと指摘されています。(途中の説明割愛)わが国でも、1990年代終わり頃から、こうしたリスクが強く意識されるようになりました。現在は、金融システムの安定が回復し、企業の設備、雇用、債務の過剰が解消されていることから、このリスクは小さくなっていると考えられます。』

ほほう。

『一方、低インフレ下で厳しい経済状況に見舞われたときの対応として大幅な金融緩和を行い、経済活動が上向いてきた後には、上振れ方向へのリスクを見極めつつ、金融緩和の度合いをどう調整していくか、非常に微妙な金融政策の舵取りが要求されることになります。』

『例えば、インフレ率の変動には慣性が強い傾向がありますので、経済の需給バランスが逼迫してきても、実際のインフレ率やインフレ予想はさしあたり低水準のまま落ち着いている可能性が考えられます。こうしたもとで、過度の金融緩和を続けることは、経済の一時的な過熱とその反動という形で、経済の振幅を大きくしてしまうリスクを内包しています。』

ということでこりゃまたインフレ警戒全開モードですな。昨日ご紹介した「グローバルインフレで金融引き締め状態という現状認識」と合わせますと、我が国でも金融の過度の緩和は好ましくないって論理展開になっていると見ました。うーむ地均し地均し。

『近年、わが国だけでなく海外を含めて、規制緩和や情報通信技術の発展、経済のグローバル化といった構造的な変化によって、需給ギャップの変化に対する物価上昇の感応度が低下傾向にあります。中央銀行としては、短期的に物価の感応度が低下している分、中長期的なリスクをしっかり見極め、的確に対処していかなければなりません。このことは、金融政策は、十分先行きを展望し、フォワード・ルッキングに対応していく必要があることを示唆しています。』

早めの対処って話でございますな。


それと、まあここの所記者会見などで「今後の判断は総合的に」って話もしてはいるので驚かないのですが、改めて講演テキストとして読むと「これは・・・・」と思うくだりが最後の方にしらっと。

『また、情勢判断に当っては、量的緩和政策の時の消費者物価指数のような、特定の指標にウエイトをかけた判断を行うのではなく、様々な指標や情報を丹念に点検し、全体としての経済・物価情勢を見極めていくことが大切だと考えています。』

それはそれで一つの考え方ではございますが、それなら量的緩和政策の解除をした際に鐘や太鼓を打ち鳴らしながらご披露されました「新たな金融政策運営の枠組みの導入」にあった「中長期的な物価安定の理解」はありゃ一体全体何だったんでしょうかと小一時間問い詰めたくなる訳でございます。


○総裁記者会見(20日)

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken/kk0606e.pdf

文書のプロパティ(文書の概要)を見て全米が泣いた。22日0時・・・・・

例によってファンド問題への質疑なのですが、国会での参考人質疑よりも100億倍まともな応酬となっておりますわな。お読みになると(って23ページもあるのですが)ワイドショーや某野党が喚く「ゼロ金利を強いていながらお前は大儲けでケシカラン」というような質疑は見当たらずですな。まあ読んだのですが、ど〜見ても福井さん本件に関して認識甘かったですなあって感じです。

それはともかくとして、「早め」発言に関する総裁の会見での説明。長いので適当に段落わけしますが。

『フォワード・ルッキングな政策運営と「早めに」ということは、表裏一体のものとして理解して頂きたいと思います。「早めに」と言った場合、市場が何月だと予測しているのに対して早めというような感覚で言ったわけではありません。そういう意味ではありません。』

『フォワード・ルッキングというのは、ずっと先々まで、かなりロングランに見通して、物価安定のもとに景気の波の小さい望ましい経済の姿を実現していくというように、ずっと先まで見通して、例えば、企業の設備投資は強い方が望ましいかと言えば、強すぎると後で大きな波が生ずるから強過ぎてもいけない。これは強すぎると明確に認知出来るところまで行ってしまうと、遅すぎるということであるので、非常に難しいのですが、そのことを「早め」に察知するという意味です。フォワード・ルッキングと裏腹な関係にある「早め」というように是非理解して頂きたい。市場の中で短期的にいつ頃利上げがあるのかという観測がある中で、一番「早め」というような次元の話ではありません。』

いやそれは普通マーケットは「早期利上げ」って理解するぞよ総裁。何でフォワードルッキングだけで発言を止めておかないのかねえ。まあフォワードルッキングを強調しても十分に「早期利上げ示唆」でございますけどね。

トップに戻る





2006/06/21

○「早い」利上げですかそうですか(日本記者クラブでの講演)

http://www.boj.or.jp/type/press/koen/ko0606e.htm

講演テキストには無かったのですが、話題が集中したのは今後の金融政策について「早め」の対応に言及したこと。

曰く、「早めに、小刻みに、しかしゆっくりと政策対応していく」だそうで、ブルームバーグテレビでは発言のシーンも放映して下さっております。

で、まあわざわざ講演テキストに無い発言を入れてしかも「早め」という文言であれば市場に火が付くのは当たり前でして、もともと米国の継続利上げ観測やら、ここもとの世界的な政策金利引上げの流れから反応しやすい地合いに良質の燃料になりました。2年も4甘で0.8%になり、いつも過剰反応することで高名なユーロ円金先はだだ売られ状態。

その後の記者会見で「早めに」というのは「フォワードルッキング」の意味だっていう趣旨のお話をしたらしいのですが、どう見ても証文の出し遅れです。本当にありがとうございました。

で、まあ今回は「総裁のファンド出資問題で7月の利上げが困難になったですなわっはっは」という市場の声に反応したのかどうかは知りませんが、本発言に関しては「7月利上げ困難との市場の見方(=政策判断の独立性への疑問)が生じた為に殊更に利上げへの意欲を見せた」という見立てのレポートを拝見しちゃいました。まあそういう見方は思いっきりあり得る話ですが、何と申しますか日銀にとって非常に不幸な状況になりつつありますなあという感は強いわけですよあたしゃ。

この調子で何とも中途半端な市場環境が続いた場合に、7月に利上げすればしたで「独立性を殊更強調した逆切れ利上げ」と悪態をつかれ、先送りすればしたで「政治圧力で利上げを先送りした」と悪態をつかれるのが目に浮かぶようでございます、ってそういう光景を勝手に目に浮かべるあたくしがひねくれ者ですかそうですか。

ま、あたくし的には(韓リフ先生ブログの「暗黒大陸」さんのコメントの受け売りですけど)7月の決定会合で再発防止策と日銀の中立性とは何ぞやというポリシーを出して頂きまして、0.25%の利上げを花道に福井総裁ご退任ってのが美しい引き際じゃないのかって思うのですが。何か昨日の新聞見てると別件ネタで延焼の悪寒もしますし・・・・総裁の個人的問題の炎上に金融政策を巻き込まないで頂きたいのですけどねえ。NHKニュースの総裁の進退に関する言い方がちょっと怪しいのも気になりますし。

まあ民主党が無茶苦茶な論点で本件を政争に使おうとしてるのが非常に話をややこしくしている訳でして、本来この問題は中央銀行の公正中立とか独立とは何ぞやという重要な論点で前向きな話に発展できる話なのですが、民主党がぶち壊しでございます。こういうのを国賊というのですな。民主党逝って良し。

・・・と、話が横に逸れまくりましたが、さてその講演テキスト。

内容は基本的に景気に強気カンカンになっていまして、また地均しか!と言いたくなる(また福井一座の地均し芝居開始ですかあと頭も痛くなる)のですが、それは先日公表された金融経済月報が平均株価大幅下落にもめげずに同じ内容だったことから勘案すると何ら不思議はございません。


・グローバルな「インフレ懸念」に言及

『わが国経済の先行きを展望するうえで、重要なリスク要因の一つは、海外経済の動向です。』

ということでお話が展開されていますが、米国についてはこんな話を。

『先行きについては、今申し述べたような景気の減速傾向が、米国経済全体のソフトランディングにうまくつながり、ひいてはインフレ懸念の沈静化をもたらしていくかどうかが重要な着目点になっています。』

で、欧州や中国に関しては・・・・

『ECBでは、原油高の物価面への波及を抑制しつつ、息の長い景気拡大を続けるために、昨年から慎重に金利を引き上げています。』

『また、中国も、極めて高い成長が続いており、最近では、マネーサプライ・貸出の高い伸びや設備投資の増加に対応するため、金融引締め策が講じられています。』

『世界経済は、2005年に5%近い成長を達成しました。こうした世界経済の拡大は、物価上昇圧力が抑制される中で、安定的な金融環境が維持されたことに支えられてきたという側面があります。今後、グローバルなインフレ懸念を抑制できるかどうかは、そうした安定的な金融環境を維持していくうえで重要な条件であると考えられます。』

インフレ懸念と金融引き締めネタが満載の印象を受けましたが。


・国内設備投資に関して過熱リスクを指摘

『設備投資につきましては、先ほども申し上げましたとおり、同じストック面の調整ではありますが、短期的な上振れ要因であると同時に、やや長い目でみると、その後の反動のリスクも含め、経済活動の振幅を大きくする要因として考えておく必要があります。』

ということで、設備投資の先行きに関しては『設備投資によって資本ストックの水準が高まって行きますので、設備投資の伸び自体は次第に鈍化していくと考えられます。』という話になっているのですが、その後に延々と過熱リスクに言及しているわけですな。

『特に需給ギャップがゼロ近傍になっているもとでは、設備投資が行き過ぎ、経済がさらに上振れていく場合には、いずれ反動がくる可能性が高くなります。今のところ、設備投資の行き過ぎが生じているという証左はありません。企業は、厳しいグローバルな競争環境などを意識して、必要な分野を選別しながら経営資源を投入していくといった形で、メリハリの効いた行動をとっているとみられます。』

『もっとも、金融環境は極めて緩和的な状態にあり、企業の投資行動が一段と積極化しやすい環境となっているのも事実です。実際、わが国の実質短期金利は、現在マイナスであり、足許3%を上回っている実質成長率や1%台後半とみられる潜在成長率と比較して極めて低い水準にあります。また、金融システム面の改善が進み、民間金融機関は積極的な貸出姿勢を維持しており、民間銀行貸出は、昨年夏以降前年比プラスになった後、プラス幅が次第に拡大しています。』

どう見ても過熱警戒モードです。本当にありがとうございました。

で、上記部分にありますように・・・・

『実際、わが国の実質短期金利は、現在マイナスであり、足許3%を上回っている実質成長率や1%台後半とみられる潜在成長率と比較して極めて低い水準にあります。』(さっきの再掲)

ということでございますので、政策金利の調整が必要ですよって話に展開されるのですが、量と時間の問題で続きは明日にでも(こら)。

トップに戻る





2006/06/19

お題「15日の総裁記者会見あれこれ」

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken/kk0606c.pdf

○無念のPDF29ページ

総裁定例会見が29ページにも及ぶPDF形式で出たのは今回が初めてのことのようです(本石町日記さんのコメントによります)。ちなみに通常は会見翌日の夕方までにはアップされる会見要旨ですが、金曜の場合は夜7時になってもアップされず、深夜に見たらアップされていたのですが、ファイルのプロパティ見ると夜10時近くにファイルが出来たようですね。日銀事務方の皆様のご苦心のほどお察し申し上げます。

29ページある中で金融政策に関するお話は4ページちょっとでして、残りは延々と村上ファンドへの出資問題。まずは金融政策に関して。


○株価下落配慮発言のようですが

株価下落に関する質問に対しての総裁コメントは2ページのあたりからです。

『株価の動きについて、これまでの動きを少し振り返ってみますと、株価は弱含みですが、弱含みという言葉を使って表現できる状況というのは、私どもは5月中旬以降の動きだと見ています。つまり、5月の中旬以降は、株価は弱含みで推移していると認識しています。ただ、このところの株価の下落は、日本だけではなくて、他の主要国やエマージング諸国においてもかなり幅広く見られております。株価はグローバルな現象であるというのが今回の非常に大きな特徴であります。』

ということで、現状としては株価弱含みだと言ってますが・・・・

『その背景として、もちろん様々な要因が指摘されていますが、世界的に金融緩和度合いの調整が慎重に行われている中で、米国をはじめとする世界経済が、引き続きインフレ・リスクを適切に抑制しつつ成長を維持できるかどうか、その点について、不確実性が改めて幾ばくか意識されていることが一つの要因ではないかと思っております。』

株価下落の話の中にインフレリスクという言葉が入っているのは今に始まった事じゃ無いのですが、今回もさらりと入ってます。

『世界経済の状況は、引き続き注意深く見ていく必要があるが、今後とも拡大が続く可能性が高いと考えているわけです。また、わが国経済については、今申し上げた通り、内需と外需、企業部門と家計部門のバランスがとれたかたちで、息の長い成長が続くものとみています。こうした内外経済情勢のもとで、市場は、特に株式市場も含め、新しい材料を次々と消化しながら、市場相互間で牽制を働かせつつ、新しい均衡点を求めて動いているという状況にあると見ています。』

ということで、ここまでの所を読むと今までと余り変らない話をしているのですな。市場の人たちの間で話題になったのは以下の件。

『申し上げるまでもなく、株価については、経済や物価の先行きについての情報を含む重要な指標の一つでございます。従いまして、今後とも、その動きの指し示すところを、やはり十分読み取る努力をしていかなければならず、こうした株価の動きは、企業や家計のマインド面などへの影響を通じて経済全体に影響を及ぼす可能性があります。この点は引き続き注意して見てまいりたいと考えています。』

基本的には「調整の範囲内」という見解なのですが(だから金融経済月報が5月と同じになる)、このくだりで「株価が与えるマインド」について言及しております。この点については短観を見ましょうってことになるのかも知れませんな。個人的印象としてはこの部分はリップサービスのような気がするんですけど。


以下は例によって村上ファンド資金拠出問題

○在任期間中の解約が・・・の方が適切だったのかなあ

先週水曜に「2月に解約したのがマズイでしょう」として「2月に解約した理由ってこういう感じだと言われたら困りますわなあ」というのを書きましたら多くの方に引用されまして恐れ入ります。で、その時に「解約するのなら過去の経緯を開示して堂々と解約すればよかったのに」と書いたので「2月解約がマズイ」という主張になってしまいましたが、つらつら思いまするに在任期間中だったらいつ解約しても問題は問題だったような気も。

でもまあそうだとすると市場の人たち(だけじゃないですが)が口を揃えて言う「総裁就任前に解約すればよかったのに」というのと話が微妙に混乱するので益々話がややこしくなりますが。

まあそっちの話は一旦置きますと、金曜に申し上げたように、「在任中に投資判断をしたのはマズイ」ということかと思います)実際は投資判断じゃなくてホリエモン逮捕で「こりゃ持ってるのが判るとヤバイ」って思ったと邪推してますけど)。

まあ書きながら自分でまだ上手く話を煮詰めて無い事に気がついたので、もうちょっと練ってみますが、「2月じゃなくても解約はマズイ」「その上2月というのはタイミングが最悪」というのがあたくしの見解であることを申し上げさせていただきますね。


○事後報告とは随分甘いルールですなあ

日銀のルールはどうなっているのかという話に関して会見の6ページ目にこんなお話が。

『(水野理事) ルール上は、動かしてはいけないというルールがあるわけではございません。動かした場合には、その報告をするというルールになっています。』

国会でも似たような話を聞いたのですが、こうやってちゃんとしたテキストで見たのは初めてでして、聞いたときから「ええっ!」と思ったのですけれども改めて活字でみるとやはり「これは如何なものか」です。

あのですな、事後報告だったら「やっちまった」らそれまで何じゃないかと。本人をクビなり何なりにして利益返上させることはできるかもしれませんが、「やっちまった」後で信用が傷つくのは日銀という組織でしょ。

普通の証券業務やら運用業務やってる会社だと、役職員の個人的な投資判断行為に関しては、事前に申請して然るべき部署で承諾を受けてから行うのが常識(どこからどこまでの商品が対象になっているのかは各社個別に違いますが、基本的に自社で投資情報を流している商品や、利益相反の可能性が起きる商品は対象になります)でして、「やった後に事後報告」なんてルールで運営してる会社は聞いたこと無いです。

どう見ても大甘ルールです。本当にありがとうございました。


○株式とファンドは別と言うのは詭弁でしょ

投資判断をしたのはおかしいのではないかという質問に対して。質問は6ページ目で答えは7ページ目。

『(総裁) 私は、株式については極力売却しないでおこうと思っています。余程資金繰りに窮しない限り、株式については即、実現損・実現益がでるということになりますのでそれはしません。しかし、このファンドの場合は解約を申し入れてからずっと先になるまで実際の清算が行われませんので、その間どう相場が動くかわかりません。要するに結果がわからない仕方の解約でありますので、そういう意味では、何らかの情報を利用して利益を得るために売買をしたのではないかという問題を避けるためのルールからは、遮断されているという理解であります。ルールの管理者もそういう理解であるということです。』

どうも国会で民主党のアホウどもが「儲かったのが怪しからん」「低金利で庶民は喘いでいるぞ」と実に下らぬ論点でツッコミを入れているのでそのことが頭にあったのかも知れませんが、この答えって(引用してないけど)質問の論点からずれているんですよね。問題は「儲かった」ことじゃあ無いと思うんですけど。

まあそれは兎も角として、この答えはちょっと・・・・でございます。損益が出なけりゃ良いとかいう問題かと思うんですけどねえ。

まずですな、「余程資金繰りに窮しない限り」って言ってるけど、そういうアフォな事が起きないように日銀総裁ってのは待遇されている筈でして、在任期間中に売買が生活上必要になるような事はないでしょ。

それからですな、「ファンドの場合は解約を申し入れてからずっと先になるまで実際の清算が行われませんので」って話ですけど、別にファンドやら投信やらだって可及的速やかに清算されるものが遥かに多い訳でして、この理屈は意味判らんですな。「ファンドなら良い」の理屈になってないとおもうんですが。


#これはまあ取っ掛かり部分でして、延々とやってますが本日は簡単にこんなところで。まあ続きはやるかもしれないしやらないかも知れないです。

トップに戻る





2006/06/16

○福井総裁問題:答弁はちと苦しそうな印象なんですが

国会中継のインターネット放送を見たのですが、民主党の平野議員の追及はズレまくってて20点と言ったところですな。しかしそのズレ質問「ファンドの収益はいくらだったのか」に対して「ただいま精査中」は如何なものかというように、福井総裁の答弁は輪を掛けて如何なものかという感じでしたな。

あのね、確定申告してる(ファンドの帳簿上の損益に対して納税するなんて税制ありましたっけ???と甚だ疑問はありますが)のに収益の額判らんってことはないでしょう。確定申告書の控えくらい保管してるでしょ、申告する時には明細つけるんだから見りゃすぐに判る筈なんですけど。

それとも何ですか?福井総裁は一読してわからない位に多岐に渡って譲渡所得(本件所得?が譲渡所得なのか配当所得なのか雑収入なのかという問題は正直判らんので科目に突っ込まないで下さい^^)が発生してるんでしょうか???

と、意地の悪いツッコミができてしまうのはちょっとねえ。

で、共産党からは前日に引き続き昨日もまた大門議員が登場して突っ込んでましたが、富士通総研の行為に突っ込みをしても仕方ないと思うんですが。そんな中で福井総裁は富士通総研時代に複数企業の社外取締役をしていた関係で複数の企業の株式を保有しているって答弁をしてました。

で、その株式については凍結しているという表現をしてましたが、まあ信託してるとかいうような明確な形じゃないんでしょうなあと思わせるものがございました。それじゃあ何だかなというのもありますが、もうひとつツッコミをさせていただきますとですな・・・・

総裁は富士通総研時代に保有していた株式を「凍結」しているとご答弁されているということは「日銀総裁の在任期間中に個別株式の売買行為を行うのは不適切」という認識はお持ちだという話になると存じますが、ファンドの解約だって売却行為(法律的な形式は措く)じゃないのかと思いますがね。そっちは凍結でこっちは解約という行為の整合性が取れませんわな。極端に言えば「社外取締役を引き受けた時にはその企業の社会的貢献を応援するつもりで受けましたが・・・・」ってな具合で株も売れますよって話にならんかね。

総裁就任時に売却するか在任期間中は売買できないようにきちんとした形で信託なり何なりするかが必要だったと思うんですが、個人の管理に任せたままで推移してファンドを2月に非公開で解約というのが返す返すも痛恨事でしたな。


ま、本日は衆議院財務金融委員会で吊るし上げが待っておりますけれども、昨日までの答弁と矛盾する話がでてきたらさすがにアウトになりそうな予感。


○信認とか期待とかを扱うのだから・・・・

今一歩生煮えのような気がするので論点がグダグダになってしまうかもしれない点は先にお断りしつつ、今日は別の論点を。

本件の推移を受けまして、今朝のモーサテでのゲストコメンテーターもそうですが、早速あちこちのレポートで「本件によって7月のゼロ金利解除の可能性は後退した」(ちなみに短期ゾーンの利回り形成状況を見てるとまだ7月利上げリスクは結構ありで見てるようです、為念)とか「今後日銀は政府に対して意思を通しにくくなった」というような見立てが出てくるわけですよ。当然のことですけれども。

そういう見立てが広がってくると、「官房長官がゼロ金利継続と言ってるから政策金利はいじることができない」というような金融政策決定プロセスと本来関係ない筈の読み方になってくる次第でして、これはやはり日本銀行の政策に関する信認が低下するってお話になるんじゃないでしょうかって思うのですよ。

金融政策ってのは金利操作(この前までは日銀当座預金残高の操作)を使って物価などの経済を安定化させるというもんですが、そこには「中央銀行の政策運営に対する信認」とか「市場のインフレ期待」などというような必ずしも理屈でスパッと割り切れるかというと中々難しいものがある訳でして、金融政策が所期の目的通りに機能するためにはそういう信認とか期待とかいうものを大事にしないといけないと思います。

確かに推定無罪かも知れませんが、「政府に庇われた」人が中央銀行のトップで今後の金融政策への信認ってどうよとか考えると、総裁がこのままでいるのは日銀の為にも良くないような気がするんですけど如何なもんでしょう。

・・・・思いは色々涌いてくるのですが、やはり文章にするのが難しいです。全然論理的じゃなくてスイマセンスイマセン。きっと本石町日記さんがクリアなエントリーをしてくれるでしょう(と人に振る^^)。

#何か今日の天気のような気分でございます

トップに戻る




2006/06/15

○さて金融政策決定会合ですが(話は全然別^^)

当然のように本日の政策変更に関してはノーマーク。会合後の記者会見に関しては、本来注目されるべき金融経済月報だの先行きの金融政策に関する総裁発言などというものがちゃんと出てくるのかは・・・・まあどうなんでしょう(苦笑)。今日の定例記者会見に関しては一般紙やらテレビ局やらがわんさか襲来して大変な事になるんでしょうな。政策広報の皆様におかれましては誠にご苦労さまでございます。

で、その一般紙なんぞがどういう質問をするのかというのが気になる所でして、昨日の朝はどこぞのコメンテーターがテレビのニュース番組で「低金利政策をしながら総裁は高利回りのファンドで儲けてケシカラン」などという思いっきりピントが斜め上に逝ってる話をしてましたが、そんなレベルの質問を意気揚々と会見場でするのは勘弁して頂きたいものです。

まあ今日の記者会見と、今後予定されている国会での閉会中審議でどういう対応をされるのか見ていきたいものです。

で、まあ本件に関しては田中秀臣先生、bewaadさん、本石町日記さん、ぐっちーさんのブログでの議論や、各ブログへのトラックバック先のブログでの見解などを読みながら勉強させていただいております。大体こちらの読者様ならご存知とは思いますが、念の為URLを置いておきます。当該記事のリンクを入れれば良いのですが、ちと面倒なので(おい)トップページで勘弁。

・田中先生(Economics Lovers Live)
http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/
・bewaadさん
http://bewaad.com/
・本石町日記さん
http://hongokucho.exblog.jp/
・ぐっちーさん
http://blog.goo.ne.jp/kitanotakeshi55

#URLを置いて終了とは手抜きではないかというツッコミはしないように(笑)。


で、真面目な話の中でいきなりおちゃらけるのがドラめもんクオリティなのですが(こら)、では福井総裁は辞任することになるのかという点につきましては、兜町の撃墜王であらされるところの髪様がこんなコメントをしてました→http://blog.livedoor.jp/orion3/archives/50580431.html

>辞任はやむなしではないか。

・・・首が繋がりましたか福井総裁。


というおちゃらけ話はともかく、本件が訳の判らん政治的取引の材料になってしまい、結果として金融政策運営に変な影を落とすような事があってはいかんのではないかと思います。(まあ今の結論先にありきみたいに見える運営も如何なものかとは思うけど)

トップに戻る




2006/06/14

お題「福井ショックと言いたかねえが」

昨日の参議院財政金融委員会で明らかにされた福井総裁の村上ファンドへの拠出問題。ニュースが出たときは「まあ99年だから民間人だし、1000万円ってのは一般人感覚から言ってちょっとどうかと思うなあ」ってのが第一印象。ここの所福井総裁が村上ファンドのアドバイザリーボードを昔やってた話とかは夕刊紙ネタだったので、それはまあ兎も角として、あっしなんぞは「いっせんまんえんですかそりゃまたすごいおうえんですねえ」と棒読みになっておりました。でもまあそれは過去の話でしょうと思ったら・・・・・

よくよくそのニュース記事を読んでおりますと、共産党の大門委員からの質問に対して「数ヶ月前(その後記者からの質問に対して2月と答えたそうですが)に解約の申し出を行った」というお話。こりゃマジイダロとか思っていたわけですが。


○それと利上げは別問題だとは思いますが・・・

後場途中からは思いっきり平均株価崩壊あんど金先債先大幅上昇の巻と相成りました。まーこの手の話題に食いつきが宜しい海外の皆様なんぞが盛り上がりそうなネタとしては「福井総裁退任必至」→「ゼロ金利解除困難」→「金先買ってウマー」というお話になるんでしょうけど、まあそのネタはさすがに無理筋の読みでしょう。ま、株式市場がゲロゲロですから利上げをやりにくいというのはあるかと思いますが。

昨日の市場では前場は株安でも金先やら2年債やらは弱い展開での推移してまして、さすがにちと先週木曜はやり過ぎでしたかって感じだったのですが、思いっきり逆襲の図になったのはいやはやこりゃ参りましたなあという感じです。


○「数ヶ月前の解約申し出」はどう見てもマズイでしょう

本件に関してですが、99年に村上氏の志を応援する為に云々というのは富士通総研理事長という立場だからまあそこまで言う事は無いとは思います。1000万円をポンと出すというのは随分おかねもちですなあ(棒読み)という印象はありますし、本人公職に戻る気があるのならちょっと脇甘いでしょうという印象は拭えませんが。

で、どう見てもマズイのはその「数ヶ月前の解約」ですわな。

1.投資判断(相場が下がる)として解約したのであれば金融政策運営の責任者である日銀総裁という立場を勘案すると日銀の行動倫理の内規に抵触しそうな気が思いっきりします。しかも2月に申し出との事ですからその直後の3月に量的緩和解除してるのはまさにタイミングがアヒャヒャヒャヒャヒャですな。

2.村上ファンドを保有しててマズイと思って解約したのであればこれまた問題。何故この時点で急にマズイという認識になったかという点で突かれだすと、あーたファンドの違法性への認識があったのか捜査ターゲットになってるという認識があったのかなどと突かれ放題。

まあね、「よくよく考えたら日銀総裁が特定のファンドに肩入れしているような印象を与えるのは良くない」と思ったので解約するちゅうのであれば、そもそもの拠出の経緯と現状についてアナウンスして、その上で解約をするって青天白日の下で行うべきだったんじゃないですかね。どうみても「こっそり解約した」としか思えない行動は実に情け無いとしか申し上げようがございません。

本件では与太話盛り上がりましたが、周囲でも「解約はマズイ、持ちっぱなしで何もしてないって状態の方がまだ言い訳がつくでしょう」って話になっておりましたな。「本来日銀総裁に就任した時点で解約するもんじゃねえのか」というのは認識が一致しまくってましたけど。

与太話の一環として「阪神ファンとして怪しからんので解約を申し出た」ってネタで逃れるという案もありましたが(笑)、解約申し出が2月だと残念ながらその言い訳も無理筋の香り(爆)。

という訳で、あたくしと致しましては「拠出したこと」よりも「2月にこっそり解約したこと」の方が大問題であって、福井総裁におかれましては公職の高い地位にあるものとしてその行動に問題があるということで辞任していただきたいと存じます。


○まあしかし脇の甘いことで

・・・・しかし脇が甘いとしか言いようがないですな。

福井総裁は以前も木村剛氏肝いりの金融雑誌の創刊号を飾るという騒ぎを起こしてましたけど、「志のある人を応援する」というお心は男気として誠に美しいのですが、一歩間違えると「広告塔として利用される」という結果になるわけですわな。

結果的に悪徳商法の広告塔になってしまったタレントさんが暫く仕事を干されるのと同じようなもんで、総裁としてはそのお立場を良く踏まえて行動をしていただかないといかんと思う訳ですよ。

#今回の場合はまあ広告塔をやってたわけでは無いのですが。

あっしとしては福井一座の円環性「市場との対話」芝居にはほとほと呆れ果てておりますので、とっとと武藤副総裁に総裁の座をお譲りいただきたいと思うのですけど。武藤さんの就任以降の言動を拝見してますと、別に財務省寄りの金融政策運営するとも思えず、まあバランス取れた運営するんじゃないのかと思うのでありました。

#ネタの宝庫が辞めてしまうと書き物のネタに困るのですが(爆)。

トップに戻る




2006/06/07

○しらっと量的緩和総括中?

http://www.boj.or.jp/type/press/koen/ko0606b.htm

先週木曜の話ですが、福井総裁が日本銀行金融研究所主催の国際コンファランスで開会挨拶をしました。上記URL先に(日本語仮訳)ってあるように英語で挨拶してたんでしょうな。

今回のコンファランスのお題は「低金利下における金融市場と実体経済」だそうでして、量的緩和政策に関して色々とお話してるんですけど・・・・・

『こうした政策パッケージである量的緩和政策は、わが国の金利環境に顕著な影響を与えました。まず、潤沢な資金供給によって、無担保コール市場におけるオーバーナイト物金利―これは、本来借り手金融機関の信用リスクを反映すべきものですが―は0.001%まで下がりました。同時に、量的緩和政策継続の「約束」は、イールド・カーブが低位で安定的に推移することに寄与しました。』

『量的緩和政策が金融市場にいかに大きな影響を与えたかという点は、1930年代の米国の状況と比較すると、よく分かります。1930年代、米国の財務省短期証券の金利はほぼゼロ%まで下がりましたが、フェデラル・ファンド・レート―これは金融機関が短期資金の貸借を行うときの金利ですが―は、0.25%までしか下がりませんでした。また、1990年代以降のわが国の長期国債金利は、1930年代の米国の長期国債金利よりずっと低い水準にあります。このようにしてみると、量的緩和政策が、歴史的な観点からみても、中央銀行にとっていかに断固とした政策的な対応であったか、ということがお分かりいただけると思います。』

量的緩和政策の「量の意味」は金融危機対応でございますと政策ロジックをしらっとまた摩り替えているような気が思いっきりするんですけど・・・・・

で、その後に量的緩和政策の効果について2点挙げてます。

『量的緩和政策は、次の2つの点で目に見える効果を発揮しました。第一に、量的緩和政策は、特に潤沢な資金供給を通じて、金融システムへの強い懸念を払拭し、その安定化に寄与しました。日本銀行による潤沢な資金供給によって、金融機関の流動性需要は満たされ、1997、98年に観察されたような大規模なクレジット・クランチの再来を回避することに成功しました。』

さっきと同じく量の効果は金融危機対応になっちゃってますなあ。

『第二に、量的緩和政策は、ゼロ金利継続の「約束」を通じて、企業金融の面でも緩和的な環境を作り出し、わが国企業の回復をサポートしました。銀行の貸出金利や企業が発行する社債の金利は、イールド・カーブの低位安定に加えて信用スプレッドの縮小もあって、低下基調を続けました。』

時間軸効果といわれる奴ですな。で、ポートフォリオリバランス効果については『この経路が機能したのかどうかについては、量的緩和政策下の期間を振り返ってみても、まだ確たることは申し上げられません。』と、まあそうでしょうなあという評価になってます。

ではどう見ても金融危機状態を脱却していた時期にガンガン量を増やしたのは一体全体何のためでしょうかと小一時間問い詰めたくなるのですが。ロジックがグタグタなのは今に始まったことじゃ無いので余り驚きはしませんが、それで良いのかよとは思うのでありました。体面重視で変なレビューをしてると将来の糧にならんと思うんですけどねえ。

トップに戻る



2006/06/02

お題「火消しのつもりが火付けになる難しさ」

昨日は春審議委員の久々の講演がありましたが、打たれたヘッドラインは割とハトっぽい中立という感じで、要旨もざっと読んだらまあそんな感じになってました。本当はこちらをネタにする所なのですけれども、ブルームバーグの行った福井総裁単独インタビューで引け後に相場が動いたのでその感想をば。

以下ソースはブルームバーグニュース1日16時38分配信の記事を主に、ヘッドラインなども。


○こりゃ誤解しますって

引け後で特に何の予定もない筈ののノーケアー時間帯でありますところの16時になって本件のヘッドラインが打たれました。普通この時間は事務作業タイム(総裁記者会見とかがなければ)でして、しかも日本相互証券の債券引値が公表される時間帯ですからディーラーも事務タイム。

その時間にブルームバーグが31日に行った福井総裁単独インタビュー記事が出て、ユーロ円金先が売られてみたり、2年新発が引けの2毛5糸甘の0.90%まで叩かれてみたりとなった訳ですな。

ヘッドラインをよくよく見ると中立な話をしているようなのですけれども、そもそもが「日銀はホンネじゃ早期かつ連続利上げをやりたがるんじゃネーノ」って警戒心が強い(その背景には量的緩和解除を頑張って3月に行ったうえに水野審議委員あたりから中立金利がどうのこうのという話がでた事がある)になっている所に加えて、昨日はFOMC議事要旨という燃料が投下され(それだけじゃなくて月末の年金リバランス期待で余計に相場が上った反動もあるようですが)て債券市場が派手派手に下落した日なので、売り材料に反応しやすい地合いであった事もあったんでしょう。売り材料っぽいヘッドラインに見事に反応しました。曰く、

『最初のステップ早ければ、2回目以降の判断にむしろ幅』
『何か問題起こってから金利上げるのでは手遅れになる』
『金利も経済の足取りに沿って次の階段用意した方が良い』
『見通しどおりなら金利が変化しないと経済は飛び上がる』
『金利が変化していく方が経済の安定的な運行支える』

#ちなみに売り材料の方だけ並べてますので念の為。

新聞記事のように全部の内容が一覧できるのであれば、ヘッドラインの書き方を工夫して(この前の日経新聞がそうですな)両論併記も良いのですが、ヘッドラインが一本ずつ出てくる情報ベンダー方式だと、全体が両論併記でも一本一本のヘッドラインまで両論併記できませんから、刺激的な内容を見るとまず即座に反応しちゃいますな。今の市場はまだまだ早すぎる連続利上げに対してナーバスになっているからそっちに反応しやすいし。


○最初のステップが量的緩和解除とは普通気が付きません

などと冷静に書いているあたくしですが、このヘッドラインとインタビュー記事を読んでいるときは市場平均と全く同じ反応をしておった訳でして、「火消しの後に火付けしてどうするんだ福井総裁ゴルァァァァ」と湯沸しポッポー状態になっておりまして、記事を冷静に読んでいた冷静な人に指摘されて始めて気が付いたというのが実際の所です。ちなみにもうちょっと正確を期して申し上げますと、その時間は事務作業をやっておりまして、気が付いたら金先が大売られしてて「こりゃ一体どうしたんだ」と人に聞いて回りながらブルームバーグをチェックしてたら見つけたという間抜けな状況であったのはここだけの話です(滝汗)。

一番反応しやすいヘッドラインは『最初のステップ早ければ、2回目以降の判断にむしろ幅』でして、よくよく考えればこれもそんなに強烈な売り材料にはならない筈なのですが、「最初のステップ」=「次の利上げ」と解釈して早期の利上げですよやっぱりタカ派ですよ大変ですよとなりますわな。インタビュー記事の小見出しでも『最初のステップが早ければ次は遅い』ってあったらそう思うわな。

しかし上記の冷静なるお方に指摘されてよくよく記事を見ると、この発言は『日銀が今年3月に市場予想よりも早く量的緩和解除に踏み切ったことで、ゼロ金利解除やその後の利上げが早まるのではないか、という見方が市場で強まっている。』という見方についての福井総裁のコメントだと書いてありました。

・・・つまりこの「最初のステップ」は量的緩和解除だったという事になるんですが、済んだ話を最初のステップとか言われても市場の人たちは普通そう理解しませんって。

それとですな、まあ仮にこの最初のステップを「次回の利上げ」と解釈しても、「2回目以降はむしろ幅が出る」って言い方だと買い材料になってもおかしくない(直線的連続利上げを否定しているのだから)のですが、その話をしてる側から「フォワードルッキング」と言ったりしてますし、そもそも論として3月解除の地均し大会が始まる前にも「余裕を持って対応」みたいな言い方をしていたのにおもむろに解除を急いだというトラックレコードがあるのですから、「やっちまったら後は後でまた別の理屈が出てくるんでしょ」って疑念は払拭できませんわな。


○「最初のステップ」論は前の説明と整合性が取れませんけど

それにですな、量的緩和解除の時の説明では市場の状況について福井総裁というか日銀のご説明は確か「既に時間軸効果が剥落してただのゼロ金利になっているので政策には非連続的な変化が生じていない」という理屈になっている筈。

自分達で「政策に非連続的な変化が生じてない」と説明してから3か月も経たないうちに「量的緩和解除は最初のステップ」とか言われてますと「ああまた後から勝手に理屈が書き換わっているわ」とあたくしなんぞは思ってしまう訳ですな。

まあ「政策が量から金利に変ったから最初のステップだ」っていう理屈なんでしょうけれども、金利政策でステップがどうのこうのって言ったら金利の変更と解釈するのが自然だと思うのですが如何でしょう。本音では「最初のステップ」って初回の利上げなのではないかと思っちゃいますよ。

ちなみに、英文で配信された方には最初のステップ云々の部分に量的緩和解除云々の件がないので、より一層誤解しやすいようで、引け後に一番派手に金先が売られたのは海外タイムでもあることですし、海外勢だったのかもしれませんな。


○「勝ち続ける」よりも「負けない」ようにして欲しい

インタビュー記事は色々と読みどころありそうですが、政策云々じゃなくてあたくしが一番気になりかつ不安に思ったのは福井総裁が意気込みを表明(?)したくだりです。

日本の将来像についてこんな話をしておりました。

『世界経済の中の日本というプレーヤーは、絶対に勝ち続けなければならない。時々勝つのではなくて、勝ち続けることが大事だ。わたしもアスリートの1人だが、競技場において勝つことを意識しないことは、即、死を意味する。勝ち続けること、これは私の哲学だ。』

アスリート系の自信満々の人にありがちなパターンでして、もうスポーツがタコで腕っ節の弱さに定評があったあたくしなんぞは「はあはあそうですかすごいですねえ(棒読み)」という反応しかできません。

あたくし思いまするに、勝負とはもっと息の長いものでして、常に勝つというのは実力に裏打ちされた自信もあるんでしょうが、一歩間違えると傲慢にも繋がると思うんですよね。相場だって上るか下がるかって話だと5分5分ですけど、人間欲があるから目がその分曇るので3分7分とか良くて4分6分(たまに百発百中で外す髪様もいますが^^)だと思うんですよ、上げ下げ勝負だけだと。で、その7分の負けを最小化するとか、自分が相場に参加している立ち位置がどういう点で有利性があるのかを考えてその有利性を生かすかとか、そういう工夫をするのが技術だと思うんですよね。

そりゃまあ外資を幾つも動くような力強いディーラーとかだと100億儲けた後に3年連続40億損しても100億儲けたトラックレコード引っさげて次の会社に転職するとか(やや極端かつ大げさな書き方してますし、全員が全員そういう訳はございませんので念の為申し添えます)いうのも出来ますけど、同じ立ち位置(例えば自分の金で相場に参加する人)から延々と相場に参戦するためには「致命的な負けをしない」というのが大事ではないかと。一度樹海送りになったら終了なんですからね。

あたくし前もちょっと申し上げたかもしれませんが、囲碁なんぞやる(相手が身近にいないので全然やっておらず、いまやったら三段も無いでしょうな)のですが、囲碁とか将棋とかって息の長い勝負(特に囲碁は)でして、一流のプロ同士の勝負であっても「良い手を打って(将棋だと「指して」です)勝つ」よりも「悪い手を打って(指して)負ける」というケースの方が多い競技でございます(この辺のことに関しては確かPHP文庫から出ている将棋の第15世名人大山康晴さんの書いた「勝負のこころ」という本がマジお勧め)。

いやあの延々としょうも無いあたくしの与太話ですが、何を申したいかと言うと、金融政策運営というのも似たようなもんで、延々と続く息の長い勝負であって、「勝ち続ける」なんてのは人間のやることだから所詮無理だと思うんですよ。自分の任期中に勝ち逃げだったらまあ運が良ければ出来るかもしれませんが、もっと長い目で見たら「致命的な悪手を打たない」方がより重要なことだと思うんですよね。

「勝ち続けることが哲学」というのにはその点で物凄く危ういものを感じるのはあたくしがアスリートじゃないヘタレ君だからでしょうかね。何だかな〜って思うんですが。

#最後の方は妙な話になってしまいましたな(汗)

トップに戻る





2006/06/02

お題「火消しのつもりが火付けになる難しさ」

昨日は春審議委員の久々の講演がありましたが、打たれたヘッドラインは割とハトっぽい中立という感じで、要旨もざっと読んだらまあそんな感じになってました。本当はこちらをネタにする所なのですけれども、ブルームバーグの行った福井総裁単独インタビューで引け後に相場が動いたのでその感想をば。

以下ソースはブルームバーグニュース1日16時38分配信の記事を主に、ヘッドラインなども。


○こりゃ誤解しますって

引け後で特に何の予定もない筈ののノーケアー時間帯でありますところの16時になって本件のヘッドラインが打たれました。普通この時間は事務作業タイム(総裁記者会見とかがなければ)でして、しかも日本相互証券の債券引値が公表される時間帯ですからディーラーも事務タイム。

その時間にブルームバーグが31日に行った福井総裁単独インタビュー記事が出て、ユーロ円金先が売られてみたり、2年新発が引けの2毛5糸甘の0.90%まで叩かれてみたりとなった訳ですな。

ヘッドラインをよくよく見ると中立な話をしているようなのですけれども、そもそもが「日銀はホンネじゃ早期かつ連続利上げをやりたがるんじゃネーノ」って警戒心が強い(その背景には量的緩和解除を頑張って3月に行ったうえに水野審議委員あたりから中立金利がどうのこうのという話がでた事がある)になっている所に加えて、昨日はFOMC議事要旨という燃料が投下され(それだけじゃなくて月末の年金リバランス期待で余計に相場が上った反動もあるようですが)て債券市場が派手派手に下落した日なので、売り材料に反応しやすい地合いであった事もあったんでしょう。売り材料っぽいヘッドラインに見事に反応しました。曰く、

『最初のステップ早ければ、2回目以降の判断にむしろ幅』
『何か問題起こってから金利上げるのでは手遅れになる』
『金利も経済の足取りに沿って次の階段用意した方が良い』
『見通しどおりなら金利が変化しないと経済は飛び上がる』
『金利が変化していく方が経済の安定的な運行支える』

#ちなみに売り材料の方だけ並べてますので念の為。

新聞記事のように全部の内容が一覧できるのであれば、ヘッドラインの書き方を工夫して(この前の日経新聞がそうですな)両論併記も良いのですが、ヘッドラインが一本ずつ出てくる情報ベンダー方式だと、全体が両論併記でも一本一本のヘッドラインまで両論併記できませんから、刺激的な内容を見るとまず即座に反応しちゃいますな。今の市場はまだまだ早すぎる連続利上げに対してナーバスになっているからそっちに反応しやすいし。


○最初のステップが量的緩和解除とは普通気が付きません

などと冷静に書いているあたくしですが、このヘッドラインとインタビュー記事を読んでいるときは市場平均と全く同じ反応をしておった訳でして、「火消しの後に火付けしてどうするんだ福井総裁ゴルァァァァ」と湯沸しポッポー状態になっておりまして、記事を冷静に読んでいた冷静な人に指摘されて始めて気が付いたというのが実際の所です。ちなみにもうちょっと正確を期して申し上げますと、その時間は事務作業をやっておりまして、気が付いたら金先が大売られしてて「こりゃ一体どうしたんだ」と人に聞いて回りながらブルームバーグをチェックしてたら見つけたという間抜けな状況であったのはここだけの話です(滝汗)。

一番反応しやすいヘッドラインは『最初のステップ早ければ、2回目以降の判断にむしろ幅』でして、よくよく考えればこれもそんなに強烈な売り材料にはならない筈なのですが、「最初のステップ」=「次の利上げ」と解釈して早期の利上げですよやっぱりタカ派ですよ大変ですよとなりますわな。インタビュー記事の小見出しでも『最初のステップが早ければ次は遅い』ってあったらそう思うわな。

しかし上記の冷静なるお方に指摘されてよくよく記事を見ると、この発言は『日銀が今年3月に市場予想よりも早く量的緩和解除に踏み切ったことで、ゼロ金利解除やその後の利上げが早まるのではないか、という見方が市場で強まっている。』という見方についての福井総裁のコメントだと書いてありました。

・・・つまりこの「最初のステップ」は量的緩和解除だったという事になるんですが、済んだ話を最初のステップとか言われても市場の人たちは普通そう理解しませんって。

それとですな、まあ仮にこの最初のステップを「次回の利上げ」と解釈しても、「2回目以降はむしろ幅が出る」って言い方だと買い材料になってもおかしくない(直線的連続利上げを否定しているのだから)のですが、その話をしてる側から「フォワードルッキング」と言ったりしてますし、そもそも論として3月解除の地均し大会が始まる前にも「余裕を持って対応」みたいな言い方をしていたのにおもむろに解除を急いだというトラックレコードがあるのですから、「やっちまったら後は後でまた別の理屈が出てくるんでしょ」って疑念は払拭できませんわな。


○「最初のステップ」論は前の説明と整合性が取れませんけど

それにですな、量的緩和解除の時の説明では市場の状況について福井総裁というか日銀のご説明は確か「既に時間軸効果が剥落してただのゼロ金利になっているので政策には非連続的な変化が生じていない」という理屈になっている筈。

自分達で「政策に非連続的な変化が生じてない」と説明してから3か月も経たないうちに「量的緩和解除は最初のステップ」とか言われてますと「ああまた後から勝手に理屈が書き換わっているわ」とあたくしなんぞは思ってしまう訳ですな。

まあ「政策が量から金利に変ったから最初のステップだ」っていう理屈なんでしょうけれども、金利政策でステップがどうのこうのって言ったら金利の変更と解釈するのが自然だと思うのですが如何でしょう。本音では「最初のステップ」って初回の利上げなのではないかと思っちゃいますよ。

ちなみに、英文で配信された方には最初のステップ云々の部分に量的緩和解除云々の件がないので、より一層誤解しやすいようで、引け後に一番派手に金先が売られたのは海外タイムでもあることですし、海外勢だったのかもしれませんな。


○「勝ち続ける」よりも「負けない」ようにして欲しい

インタビュー記事は色々と読みどころありそうですが、政策云々じゃなくてあたくしが一番気になりかつ不安に思ったのは福井総裁が意気込みを表明(?)したくだりです。

日本の将来像についてこんな話をしておりました。

『世界経済の中の日本というプレーヤーは、絶対に勝ち続けなければならない。時々勝つのではなくて、勝ち続けることが大事だ。わたしもアスリートの1人だが、競技場において勝つことを意識しないことは、即、死を意味する。勝ち続けること、これは私の哲学だ。』

アスリート系の自信満々の人にありがちなパターンでして、もうスポーツがタコで腕っ節の弱さに定評があったあたくしなんぞは「はあはあそうですかすごいですねえ(棒読み)」という反応しかできません。

あたくし思いまするに、勝負とはもっと息の長いものでして、常に勝つというのは実力に裏打ちされた自信もあるんでしょうが、一歩間違えると傲慢にも繋がると思うんですよね。相場だって上るか下がるかって話だと5分5分ですけど、人間欲があるから目がその分曇るので3分7分とか良くて4分6分(たまに百発百中で外す髪様もいますが^^)だと思うんですよ、上げ下げ勝負だけだと。で、その7分の負けを最小化するとか、自分が相場に参加している立ち位置がどういう点で有利性があるのかを考えてその有利性を生かすかとか、そういう工夫をするのが技術だと思うんですよね。

そりゃまあ外資を幾つも動くような力強いディーラーとかだと100億儲けた後に3年連続40億損しても100億儲けたトラックレコード引っさげて次の会社に転職するとか(やや極端かつ大げさな書き方してますし、全員が全員そういう訳はございませんので念の為申し添えます)いうのも出来ますけど、同じ立ち位置(例えば自分の金で相場に参加する人)から延々と相場に参戦するためには「致命的な負けをしない」というのが大事ではないかと。一度樹海送りになったら終了なんですからね。

あたくし前もちょっと申し上げたかもしれませんが、囲碁なんぞやる(相手が身近にいないので全然やっておらず、いまやったら三段も無いでしょうな)のですが、囲碁とか将棋とかって息の長い勝負(特に囲碁は)でして、一流のプロ同士の勝負であっても「良い手を打って(将棋だと「指して」です)勝つ」よりも「悪い手を打って(指して)負ける」というケースの方が多い競技でございます(この辺のことに関しては確かPHP文庫から出ている将棋の第15世名人大山康晴さんの書いた「勝負のこころ」という本がマジお勧め)。

いやあの延々としょうも無いあたくしの与太話ですが、何を申したいかと言うと、金融政策運営というのも似たようなもんで、延々と続く息の長い勝負であって、「勝ち続ける」なんてのは人間のやることだから所詮無理だと思うんですよ。自分の任期中に勝ち逃げだったらまあ運が良ければ出来るかもしれませんが、もっと長い目で見たら「致命的な悪手を打たない」方がより重要なことだと思うんですよね。

「勝ち続けることが哲学」というのにはその点で物凄く危ういものを感じるのはあたくしがアスリートじゃないヘタレ君だからでしょうかね。何だかな〜って思うんですが。

#最後の方は妙な話になってしまいましたな(汗)

トップに戻る





2006/06/01

○ちと古いのですが総裁定例記者会見メモメモ

5月19日の会見ですが。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken/kk0605b.htm

こんな質疑応答がありました。

【問】『先日の講演において、市場との対話について触れている部分があって、3月の量的緩和政策解除の前からかなり粘り強く市場──メディアも含めて──と対話を続けていたが、そういうフェーズはもう終って、総裁自身の言葉では、スプーンでそういう材料・ヒントを市場に差し上げるようなことはしないという趣旨の発言があったかと思います。これは市場との対話戦略について何か変化があるということですか。関連して、例えばマーケットの期待があまりにも高まってしまうと、中央銀行がそういった罠に陥って政策の機動性が奪われるという研究が米国でもなされているかと思いますが、そういった期待の罠のようなものを念頭に置かれて、今後コミュニケーション戦略を変えていこうとしているのかを伺います。』

この質問に対する総裁のお答えが何とも南海ホークス。

【答】『講演で申し上げたのは、米国でも、at a measured paceというように、次のステップが具体的に読めるようなかたちで情報提供をしてコミュニケーションを図ってきました。日本でも、量的緩和政策の枠組みのもとでは、消費者物価指数の前年比が安定的にゼロ%以上になるまでこれを続けるというように、先々のことが具体的に読めるような情報提供を続けましたが、これは経済環境がそれを許す状況にあったということです。コミュニケーションの基本ポリシーを変えるというわけではありませんが、米国も日本も、そういうやり方でのコミュニケーションを許す経済環境ではなくなった、そういう意味では局面が変わったと申し上げました。むしろ金融政策のあり方として、普通の状況に戻ったということです。』

まずここで疑問なのですが、それでは展望レポートで『先行きの金融政策の運営方針については、上述の2つの「柱」に基づく点検の結果、現時点では、無担保コールレートを概ねゼロ%とする期間の後も、極めて低い金利水準による緩和的な金融環境が当面維持される可能性が高いと判断している。』って言うのはありゃメジャードペースがどうこうとか言う意味では無いという事でございましょうか?そうなると何のために運営方針については云々ってことを言うのかが良く判らんのですが。。。。

『普通の状況とは、一歩先の金融政策そのものについて、具体的な示唆を中央銀行が明確にスプーンに乗せて差し上げ、それをそのまま鵜呑みにして下さいというやり方ではなく、オーソドックスだが新しく工夫を凝らして透明性の高い措置で対処するということです。』

つい一昨日出ていた地均し礼賛レポート(本文見て無いのでそう断言するのは申し訳ないが、日本語の要旨はどう見ても・・・)は執筆者個人の見解で日本銀行の見解ではございませんですかそうですか。

『国によってやり方は異なるでしょうが、日本銀行について言えば、やや長い先々までの標準的な経済のシナリオを明確に示し、かつそれについての価値判断も示し、実際の動きがそれに沿っているかどうか互いに知見を持ち寄って判断し、その情報をコミュニケートしながら、市場においては正しい市場金利の形成に努めてもらい、私どもとしては適正な政策措置および時期を懸命になって究明します。』

正しい市場金利という言葉につい脊髄反射したくなりますが。

『市場金利、現物や先物の金利を挟みながら──丁度魚釣りの浮きのように常にピクピク動くが、浮きの真下に必ず魚がいるというわけではないので──、私どもは適正な政策の在り処をきちんと探るし、市場では、自らの経済情勢判断、金利感にピタッと合うところに浮きの位置をいつでも調整して下さい、というのがこれからのやり方です。』

どう見ても円環性(ry

『このように、コミュニケーションの仕方を変えただけで、透明性を意図的に後退させようというものの考え方でやっているわけではありません。これまでに比べ、かなりオーソドックスなかたちに戻りましたが、この枠組みの中で今後とも透明性を高める努力を続けていきたい、という基本姿勢には変わりはありません。』

何か益々ややこしいコミュニケーションになりそうな悪寒。

トップに戻る




2006/05/24

お題「脊髄反射は恥の元/足元金利強いです」

慣例としてオフレコになっているFRB担当記者夕食会発言を物の見事に報道しかもセンセーショナルに書かれてしまったバーナンキ議長はまあ災難といえば災難ですが、まあ遺憾ながら脇は甘かったのではないかと。個人的飲み会の席であっても政策に関する発言は慎重に願いたいものでございますな。それが偉い人の宿命でしょう。

さて、昨日瞬間湯沸しポッポーとなって書いた総裁インタビュー関連記事ですが、肝心の本物をみたら日経節が全然炸裂していない事が判明しました。昨日書いたように正しく「3時間後には書いた事を後悔する」という素晴らしい結果に相成りました。誠に申し訳ございませんが、恥を晒すためにも元々のエントリーもログに残しておくとするか(勿論注釈付き)。モーサテに騙されたよ(←脊髄反射するあっしが間抜け)。


○どう見ても(ryです。本当にありがとうございました

日経経済新聞では今日も「薄れる6月(ゼロ金利)解除」観測というお題の記事が出ているようですが、もともと「当座預金残高が所要近辺に下がったら即解除」というロジックを持ち出して6月解除説を煽ったのはどこの誰でしたっけと思いを巡らせますと、昨日の総裁単独記者会見(実質的にインタビューでしょ)の記事もふがふがもごもごなのでしょうなあという感じですな。

さてその記者会見ですが、昨日の1面トップで並んでいるヘッドラインは『金利水準ゆっくり調整』(モーサテはそれしか言わなかったけど)『「超緩和」は先行きリスクに』ということで日経とは思えない両論併記(苦笑)。いつものヨタモード全開の時はもう物凄い勢いで利上げキャンペーンあるいは利下げ(はできないのでゼロ金利永久化ですか)キャンペーンでセンセーショナルな見出しを出すのですけど、この落ち着いた内容はらしからぬの巻ですなあ。

で、冷静になって考えて見ますと、テレビカメラが入って沢山の記者が色々な質問をする定例記者会見のような場所で言ってるのではなくて本件は単独インタビューなのですから、表に出す時はきちんとした形でだせますわなあということで、その想像が出来ずに湯沸しになったあたくし思いっきり赤面モードでございます(恥)。


その内容ですが、要するに今まで総裁が定例会見や講演などでお話している事と一緒でして、改めて新聞の1面で大きく書くほどの物では無い感が。まあ強いて意味を見つけるならば、今までの日銀あるいは福井総裁の出してきたメッセージを纏めてみましたって事はあるかと思います。

#しかしまあヨタ記事全開から一転してこの殊勝な記事は一体全体何なんでしょうかねえ。


この記事は当然ながらいつも良質の記事を書くことで高名な滝田編集委員が纏めているようでして、滝田さんのコラムというかまとめも1面にあるのですが、ここのコラムが少々アレな香りが致します。何せあなたコラムのお題が『市場味方に政策変更探る』ですよ先生そりゃ一体どういう事ですか。

市場の大方の予想を裏切って強引に地均しをおっぱじめて(そこまでして急ぐ必要があったのか疑問な)量的緩和解除の前倒しを行ったのは日銀様でございまして、量的緩和解除直後には某審議委員様が中立的な金利がどうこうとか言い出してみたりしてましたし、前のめり姿勢と取られても仕方のない態度を散々出してたのはどこの誰だったかと申し上げたい訳ですよ、ええ。

で、滝田編集委員さまのコラムの纏め部分が香ばしい。

『悩ましいのは、ゼロ金利を解除すると、市場が次の利上げを催促する点だ。』

別に政策当局が前のめりな姿勢を出さなきゃ誰も次の催促なんてしませんが何か????この「市場を味方に」ってのはこれから市場が成熟するから味方につけようって話なんですよきっと。いやあすばらしいなあ(棒読み)。

『日本ではインフレ圧力が比較的抑えられていることを念頭に、総裁はあえて「金利水準の調整はゆっくりと実施することができる」と語る。均衡点を探る市場とのつばぜり合いに向けた、総裁なりのヒントだろう。』

火消しサポートご苦労様ですが、これも落とし穴がありまして、会見ベースなどでは強調してないですけど、先日ご紹介した講演なんかでもグローバルなインフレ抑制のメカニズムが変化するリスクだとか懸念してたりしますし、そもそもこの「ゆっくりと実施」ってのはFRBの利上げプロセスで声明文にあった「measured pace」を念頭に置いての表現ですけど、ペースはゆっくりでも金利引き上げ回数は判らんのでして、ゆっくり実施必ずしも利上げ全然しないという話ではないでしょうな。

それにしても何と申しますかアレな滝田さんのまとめ。これはどう見ても(以下自主規制)です。本当にありがとうございました。

トップに戻る




2006/05/23

お題「過ぎたるは及ばざるが如し」

日経1面に福井総裁のインタビュー記事があるらしいので総裁記者会見ネタを変更して記事も見ないで瞬間湯沸しポッポーをするのでありました。モーサテで紹介された部分に脊髄反射で書いてますので、インタビュー内容を思いっきり勘違いして書いているかもしれないという不安がありますが、たまには勘弁ね。

#いつも瞬間湯沸しポッポーだろうってツッコミはしないように。

(追記:記事を見たら思いっきり不安が的中しました。詳しくは24日エントリーをご覧下さいなのですが、こりゃまたいきなり「日銀の見解をだだ流し記事」とはどういうことでしょうかねえ。よって火消しにはなっていない内容でありました。


○これ以上の火消しは逆方向の期待を煽ると思う

どうも日経の1面で福井総裁が火消しインタビューをやっているようです。内容を読んでない(モーサテでさらっと紹介されているだけなのを見ただけ)ので何とも言えませんが、ちと如何なものかと思いますけどね。

理由は2つありまして、1つ目はタイミング。インタビュー日程自体はもうちょっと前に決まってたと思うのですが、金融政策決定会合で火消しをして更にここで火消しをするという意図があって設定したと思うのですが、市況的には(株安進行が一番効いてるとは思うが)2週間前の6月利上げ懸念騒動は片付いてり、5年国債金利が1.5%近辺から1.3%近くまでと低下しております。イメージ的には年内3回弱の利上げを織り込むような状況から既にまあ年内精々2回っていう状況になっているのですが、ここで早期利上げ懸念の火消しをするのは最早火消しじゃなくて逆方向への火付けになってしまう懸念が大有り。まあ内容見て無いのでそんなに火消し内容じゃなかったらゴメンナサイなのですが、まあどうせ報道してるのが日経新聞なので、ヘッドラインの書き方がバイアス掛かりまくりでしょう。

火消しもやりすぎると今度は逆方向への期待を煽るわけでして、正直言ってその按配って難しい(今回のインタビューもタイミング決定したのはもうちょっと前でしょうから)とは思いますが、火消しと地均しの繰り返しみたいになると期待の安定化も市場との対話もあったもんじゃないと思います。変に逆方向の期待に火がつく前に株価が反転してくれりゃあ大丈夫でしょうけど、何か全然総悲観にならないですからねえ(苦笑)。地均しやり過ぎ→金利無駄に上昇→慌てて大いに火消し→金利無駄に低下→最初に戻るというマッチポンプ循環はある意味オモロイけど政策としては如何なのもかと。


で、まあ2つ目の理由は日経から怒られそうですが、敢えて書きますと「何も日経新聞単独インタビューすることはねえだろう」という所ですな。そもそも今回の6月解除観測騒動は日経金融の暇ネタみたいな記事で、あまり意味のある内容とは思えないものが海外市場で一人歩きしたのが元々の発端(まあ展望レポートが強気ガンガンだったというのもありますが、それで売られているのであれば連休の谷間にもうちょっと売られて然るべきでしたわな)でしたな。確かに日経の1面に出ればインパクトはでかいからそういう選択をしたのかもしれませんが、何も騒動の発端になった日経新聞で火消しをやるこたあねえだろうと思うんですが。

#まあその暇ネタ記事がさもありなんと思われるような動きを今までやらかしてきているというのもあるんですけど。

大体からして金融政策に関して訳のわからんヨタ記事や観測記事を出すのは日経新聞系列に目に付く(というか他の一般紙が全然この点をフォローしないから書く全国紙は日経新聞しかないという点では同情の余地は無いわけでもないが)訳でして、あたくしもしょっちゅう悪態をついているんですけど(一部には素晴らしい記事もあるんですけどね、為念)何だか脱力しちゃうよパトラッシュといったところでございますな。

ヨタ記事が余りにも目につく日経新聞に反省して頂く為にはこのインタビューを他所の新聞でやった方が吉だという発想をするのはあたくしの人間性に問題がありますかそうですか。


#などと好き放題書きましたが、肝心の記事を見ないでこんなに書いた自分を3時間後には後悔するのではないかと思料(笑)。

トップに戻る





2006/05/22

○記者会見に関してメモメモ

記者会見に関しては例によって日銀が会見要旨をWebに公表してから改めて読んでみたいのですが、ニュースベンダーの記事を参考にして気が付いたところをメモメモ。

・潜在成長率上昇というお話

福井総裁は経済の先行きの判断上方修正に関してこんな話をしておりました(以下福井総裁の発言のソースは19日18時35分配信のブルームバーグニュース)。

『(景気の先行き見通しについて)「拡大」という言葉を使ったが、ますます成長率が上がるという意味ではなくて、成長率自身は成熟段階に入ったので、(1%台後半の潜在成長率に向けて)徐々に減速していくと想定できる』

するってぇと成長率は上らないけど実質金利は益々マイナスになるので、名目金利の調整が必要ですかそうですか。

・インフレ懸念の話

先週月曜日の講演(火曜日にご紹介して、木曜に補足書きましたが)でも触れられていた「インフレ懸念」(!)ですが、世界経済の動向をどう読んでいるのかって質問の時にここぞとばかりにコメントしてますな。

『一方で、グローバル経済なので、末端の消費者物価指数が上がりにくい状況が続いているが、それでも、物価上昇圧力がじわじわと感じられるという状況になっている。従って、世界の中央銀行の金利政策は、極めて慎重だが、緩和の度合いを若干調整する方向で動いている』

だそうですが、FRBって現状中立金利に近いってステートメントになってたような気がするのですがまあそれはともかくとして、物価上昇圧力という直球を投げ出しましたなあという感じ。

ついこの前までは「物価が急激に上昇しにくい経済環境が続けば極めて低い金利の状況を継続できるでしょう」ってお話だったのですが、その話がいつの間にか華麗にスルーされだしたなあと思っていたらここへ来てインフレ懸念ですかそうですか。

・当座預金残高の話

当たり前ですが「6ー7兆円は数字の縛りではない」って話になっていました。今回は6−7兆円発言を捕らえて訳のわからんヨタ記事が出るという事も無かったから良かったんですが、真意を間違って報道されやすい表現は避けて頂きたいと切に願います。

『当座預金残高が何兆円になったら、ということで数字でこだわるのであれば、数字は全部お忘れください。要するに、将来、限りなく時間をかければ、所要準備額に近づいていくとはいえるだろうが、それ以前の段階で、過剰な流動性の吸収プロセスが概ね終わったと言える段階というのが何兆円になったら、というのは分からないと思う』

『われわれのターゲットはあくまで無担保コール翌日物金利でゼロ%近傍なので、それ(当座預金残高)をどんどん数字を低くすれば良いという調節はしない』

当然の発言でございます。でも本当は国会でその話をすれば一々今回説明する必要無かったんですけどね。国会答弁は鬼門ですな。

トップに戻る





2006/05/18

○月曜の総裁講演補足

何気に読んでて引っ掛かったのはコロンビア大学日本経済経営研究所の記念カンファレンス(長いよ)での講演の方でございました。

http://www.boj.or.jp/type/press/koen/ko0605b.htm

火曜にちょっと引用した「いつまでもあるとおもうな経済のグローバル化の物価押し下げ効果」の先でして、上記URL先の目次の(新しい物価環境と金融政策)という所をクリックすると当該部分に飛ぶと思います。

中央銀行に対する新たな課題ということで第1にあったのが火曜にご紹介した部分ですが、第2の部分でしらっとこんなお話がございました。

『第2に、ただ今申し述べたリスクの把握という課題と関連しますが、物価の国内景気に対する感応度が低下しているということは、これまで慣れ親しんできた経済活動の「体温計」の感度が低下しているということも意味します。』

『そうなると、中長期的にみて物価の安定を実現するためには、当面の物価上昇率を政策運営のガイドポストとするだけでは不十分になってきます。より長い目でみて経済活動や物価の振幅を大きくしそうなリスクをできるだけ敏感に察知して、適切に対応することがいっそう重要になります。』

まあ目先の動きに一喜一憂しないという意味で言ってるとも取れますが、どうもあたくしこれを見るとインタゲ否定に読めてしまうんですがそれは意地が悪いからですかそうですか(笑)。

『実際、近年、先進各国の中央銀行が直面してきた課題は、必ずしもインフレやデフレの古典的なケースだけではありません。中央銀行は、資産価格の変動、金融システム不安、国際的な通貨危機、さらには地政学的な要因に基づく市場の不安定化など、実に様々な問題に対応してきました。』

はあそうですか。日本のデフレは古典的じゃないんですかそうですか。

『これらの問題は、一歩対処を誤れば、中長期的には経済活動ひいては物価の安定を阻害することになるからです。』

ええまあそりゃそうでございますが。

『短期的に物価の感応度が低下している分、中央銀行としては、こうした中長期的なリスクをしっかり見極めるとともに、それを国民や市場参加者に説得的に提示していく能力を磨かなければなりません。』

いやまあそれはそれで一つの見解としてそういう考えもございますなあって所ですが、そうなりますと先日出した「物価安定に関する理解」はありゃ何だったんでしょうかって話になるんですが、長期的な物価安定が中央銀行の任務としてあるというのは判りますからまあそういうものが出ても何ら不思議はないのですが、目先の物価に関して景気への感応度が低いって話をしらっとされてしまうと、あの「理解」はどういう位置づけになってしまうんでしょうかねえって思っちゃうんですが。

まあこの辺りもいざ突っ込もうとして書き物を始めると最近はめっきり書きながら色々と対抗する理屈が自分の頭の中で涌いてくるという現象が発生しておりまして(苦笑)、誠に遺憾極まりない今日この頃ではございます。とほほ。

トップに戻る





2006/05/17

お題「火消しもほどほどに」

続きは明日と書きながら翌日になると話が変わるのがドラめもんクオリティでございますが(おい)、今朝の話題は福井総裁の国会答弁ということで。

昨日は参議院財政金融委員会で福井総裁の答弁があったようです。例によって例の如く国会での質疑応答が会議録としてアップされるのには少々時間がかかりますので、本日のソースはブルームバーグニュース16日11時19分配信のものからということで勘弁。後日要確認。


○あれれ、市場の金利見通しを参考にしたんじゃないの?

市場金利が上ってますがどうでしょうという質問が民主党の富岡委員から出まして(何か引っ掛け質問っぽいですが)、福井総裁はこんな話をしたそうな。

『極めて短い金利、あるいは中期ゾーンと言われているやや長い金利は、先行きの金融政策の読みを入れながら、市場金利がかなり動いていることは事実だ』

『恐らく実際に市場で資金を投入しながら、市場取引をしている本当の市場関係者は、ある程度先行きの政策金利の上昇を織り込み始めているとは思う』

『今、市場で実際に変動しているかなりの部分は、まだボラティリティ(過度の変動)というか、先行きが必ずしも読めない中で、いろいろな取引が交錯する中で金利が動いている。そういう意味で、非常に熟した市場条件の形成という段階には至っていない』

ええまあ一番ドタバタ動いてるのはスワップやらALMヘッジやらの玉飛び交うユーロ円金利先物でして、まあ過度の変動をしておりますが(笑)、ここのくだりを拝見しておりますと、市場の動きが成熟してませんとお叱りのようでございますな。ええそうですともしじょうとのたいわがうまくきのうしていませんですね(棒読み)。

で、まあそういう認識ならそういう認識でも結構ではございますが、そんなら先日の展望レポートで「各政策委員は、政策金利について市場金利に織り込まれたとみられる市場参加者の予想を参考にしつつ、上記の見通しを作成している。(皆さんご存知の脚注)」ということで市場参加者の予想とやらを参考にしたのは何だったのでございましょうかと小一時間。

しかも先物金利が参考になるとかいうレポートまで出しておいてその国会答弁は如何なものかと思いますが。「市場は特性として過剰に反応することもありますよえっへっへ」くらいの答弁にしておけば良いのに、どうしてそうサービス過剰答弁をするのでしょうかねえという所。

だいたいからしてボラティリティって用語は市場用語で使うときには上記のような使い方しませんわな。妙な使い方をすると市場が思わぬ反応をしでかすかも知れませんので一般的じゃない用語の利用は控えめに。


○投機的な動きですかそうですか

でまあその続きではこんなお話を。

『外国の金融市場でも、政策金利の変更に先立つ期間においては、実際の市場金利に確信を持って織り込む部分と、まだ確信が持てず、さまざまなボラティリティが入ってくる局面がある。日本は今まさにそういった状況にある』

そのボラティリティという言葉の使い方は物凄く意味不明です。

『これから展望リポートの内容が更に織り込まれ、実際にこれからの経済・物価じの推移を見ながら、より確信を持った織り込み方がなされる。つまり、市場が熟していく、そういった段階にこれからだんだん入っていく。今の市場を見て、何かボイスが発しておられる方はかなりスペキュレーション(投機)が入っていると思う』

ここのくだりも微妙に意味が判らんのですが、市場が日銀の連続的な政策金利変更を織り込みに逝ってしまってますなあとか言ってるあたくしも投機が入ってますかそうですか。

まあとりあえず市場の金利上昇観測を冷やしたいのは判るが、そもそもその金利上昇観測ってのは7−9月と予想されていた政策金利変更時期が6月になるかもしれないという話が出たってのは直接のきっかけかもしれませんが、根底には日銀(というか一部の審議委員)から中立金利がどうのこうのとか(最近そういう言い方は鳴りを潜めましたが)いうようなお話が伏線にあって、「6月に政策金利を上げるのならその先の金利引き上げパスも速いのではないか」って話になってるから金利上昇観測が強くなって2年とか5年とかが弱い訳でして、何と申しますか自分達で火付けをしといて火消しというマッチポンプは勘弁して欲しいですな。

そもそも論で言えば、4月の量的緩和政策解除でほぼコンセンサス状態になっていたのにジャストタイミング重視だか何だか知りませんが、気合満々で強引に地均しして3月に量的緩和政策の解除をしたという実績がありますので、そりゃまあ前のめりの姿勢が見られれば、先行きの金利引き上げが早くなるのではないかと市場は懸念する訳でして、まあ総裁のこのあたりの指摘も随分と虫の良い話ですなあという印象。


○何で数字をそうやって出すかねえ

当座預金残高の削減に関連して総裁答弁。

『当座預金残高はピークには30兆−35兆円あったが、3月に量的緩和政策を解除して以降、いわゆる準備預金制度に基づく所要準備額の水準にほど近いところ、つまり6、7兆円というところに下げていくプロセスを今進めている』

いやあの別に所要まで頑張って下げなくても金利政策は発動できますんで、その数字明言は止めてくれという感じなのですが、これは以前中曽金融市場局長もこの数字をわざわざ言ってしばらく妙な思惑が出たりしてましたけれども、短期市場的には10兆そこそこで十分に所要近くまで落ちているようなイメージ(詳しい理由と解説は本石町日記さんの最新エントリーをご覧下さい)なんで、数字一人歩きのリスクを考えるとそのような数字を出すのは如何なものかと。

『この過程では、短期金融市場にまったく波乱が見られない状況で進んでいる。この状況で行けば、あと数週間でほぼこの流動性を吸収するプロセスは完成すると思っている』

数週間で終わらせろという指令がでておりますが(苦笑)。

まあそれは兎も角として、短期金融市場というのをどこからどこまで意味するのかよー判らんのですが、まあ確かに翌日物コール市場は無風ですけど、先週3か月FBがいきなり金利大爆発したのはご案内の通りですんで、いやあのそれは何ちゅうか本当ですかって突っ込みたくなりますな。

でね、何度も申し上げてますし、総裁も答弁で言ってますけど、当座預金残高の削減過程ってのは単に技術的な問題ですから、別に数週間で終わるとか何兆円になるとか言わん方が良いと思うわけですが。変に確定的な数字を出して説明をすると、その数字からずれた時に「何らかの意図があるのではないか」って受け止め方をして大仰に報道する某経済新聞の如き存在がある訳でして(−−)、短期市場は「ああテクニカルに調整したのね」と理解しても、他市場の人たちはそこまで判ってくれない=変な誤解が蔓延する危険があると思うんですよ。

具体的数字の言及は出来るだけ避けた方が吉かと。


○もっと勉強しましょう(これは質問者向け)

質問したのは民主党の富岡委員ですけど、質疑の中でこんな突っ込みをしていたようでございます。

『あと数週間で流動性の吸収が終わるということが、ゼロ金利の解除が6、7月に早まるという見方につながっている。市場の金利動向についてどのように見ているのか』

そもそも政策金利引き上げに関しては7月説も結構あった(あたくしもそうですが)と思う訳ですし、それ以前の問題として流動性の吸収が早く進んだから前倒しになるって話をするのは日経新聞くらいのもんでして(苦笑)、そういう質問をすると市場関係者から「アフォじゃのー」という認定になりますな。質問するならちゃんと勉強しましょうね(はあと)。

前のめり姿勢が目立つので先行きの金利引き上げパスが速くなるんじゃないかって懸念のが昨今の動きの根底になると思うんですが。

まあ質問者のことなどどうでもいいのですが、市場がどうのこうのって質問する人たちはとりあえずもうちょっと勉強してから質問を願いたいものでありますな。・・・・でもその勉強の素材が日経新聞だから仕方ないのかなあ(爆)。

トップに戻る





2006/05/16

お題「どう見ても物価上昇懸念です。本当にありがとうございました」

昨日は福井総裁が2箇所で講演を行いました。で、債券市場も短期市場も講演そのものやその後の質疑応答にもそんなに反応してなかった(機械受注にちと反応してましたが)のですけれども、毎度お馴染みの如く海外市場の人が動く時間になりましてユーロ円金先がやや上昇(Liffeの方は商品市況あんど米債要因なのかこのせいなのか判らん)。

どうも質疑応答の場面で火消し発言をした(後述)事がガイジンの皆様に置かれましては評価されたんでしょう。と思ったら今朝のモーサテでもヘッドラインで「福井総裁が早期のゼロ金利解除を牽制」って言ってるから、まあ海外ではそんな受け止め方になっているんでしょうな。

しかし、講演要旨を最初に読んだあたくしはお題に書いてある通りの感想しかないわけですな。まあそもそも早期解除観測のヨタ報道をしたのが日経新聞(というか日経金融)な訳でして、まあニッケイのマッチポンプに海外勢が見事に騙されております。これが意図的なマッチポンプでガイジンマネーを日本で焼いていただく為の目的でもあれば神(それじゃあ意図的な風雪のルルか^^)ですが、どう見ても天然で報道しています。本当に(略


という訳で講演が2本ありますので、多分本日は概観で終わってしまうのではないかと思料。決して明日に向けてネタを温存しているわけではございませんので悪しからず(笑)。

http://www.boj.or.jp/type/press/koen/ko0605a.htm
↑内外情勢調査会での講演
http://www.boj.or.jp/type/press/koen/ko0605b.htm
↑コロンビア大学日本経済経営研究所創立20周年カンファレンスでの講演

で、両方とも紙に打ち出すと5ページだの6ページだのとなるものでして、話がややこしくなるので内外情勢調査会の方を重点的に引用しつつなんちゃらカンファレンスをおまけに。


○物価上昇にバイアスの掛かった内容です

まず読んでて最初に思いっきり目に付いたのは『日本経済の現状と先行き』という所です。

『こうした現在の景気の特徴も踏まえますと、今後2年間のわが国の経済・物価情勢を展望した場合、最も蓋然性が高い見通しの骨格として、次の3つのポイントを指摘することが出来ると思います。』

ということでポイントを挙げているのですが、3つ目のポイントで目がゴシゴシでございます。

『3つ目のポイントは、景気が成熟化していく中で、生産性の伸びが鈍化するとともに、賃金が上がりやすくなり、物価に上昇圧力が働いていくとみられることです。』

物価上昇圧力。。。。。(゜д゜)

『景気回復初期の段階では、企業内に労働力や設備の余剰があり、それらの稼働率を上げることで生産性を引き上げることができましたが、景気の回復が続く中で、そうした余地は次第に乏しくなります。先程述べたように、既に経済全体の需給ギャップはゼロ近傍にあり、2007年度にかけて潜在成長率を上回る経済成長が続くと見込まれるもとで、今後需給ギャップは緩やかにプラス幅を拡大していくとみられます。』

『また、労働市場の需給が改善し、既に人手不足感が比較的幅広い分野でみられる中、賃金は緩やかな増加を続けていくと予想されます。このため、製品をひとつ作り出すための労働コスト、すなわちユニット・レーバー・コストは、賃金の上昇、生産性の伸びの鈍化の両面から上昇圧力を受けることになります。この先2007年度にかけて、ユニット・レーバー・コストの下落幅は縮小し、いずれ若干の上昇に転じていく可能性が高いと考えています。』 

ということでして、この次の締めで目が丸くなります。

『これまで景気回復のもとでも物価が上がりにくかった原因の一つは、ユニット・レーバー・コストの低下が続いてきていることです。こうした条件が変化してくれば、物価はこれまでに比べ上がりやすくなると考えられます。こうしたもとで、消費者物価(除く生鮮食品)は、昨年11月以降前年比でプラスとなっていますが、先行きもプラス幅を次第に拡大し、2006年度には0%台半ば、2007年度には1%弱の伸び率になると予想しています。』

最後の結論の数字は兎も角、物価は上がりやすくなるですよ先生。


○上振れは懸念ですが下振れは大したことないようです

その次に経済の上振れと下振れ懸念を列挙しておりますが、下振れ懸念は大した事無いと言及しつつ、下振れの中に物価上昇の話がでているというのがこれまたポカーンでございます。

『景気の先行きに関する下振れ要因として、「展望レポート」では、世界経済の成長の下振れと、IT関連分野などでの在庫調整の可能性を挙げています。』

この次に思わず目がいくのは福井総裁はタカ派だという思い込みが激しいからですかそうですか(苦笑)。

『特に、世界経済については、高騰を続ける原油価格の動向やその影響に注意する必要があります。また、そのこととも関連して、「物価上昇圧力が抑制されるもとで、金融環境の安定が維持される」というこれまでの世界経済の成長を支えてきた構図に変化が生じるリスクもあると思います。』

これはどさくさに紛れて「グローバルな物価上昇リスク」に思いっきり言及していると読んでしまいましたが・・・・(゜Α゜)

『在庫調整については、景気が成熟化していくもとで、何らかのきっかけにより発生する可能性があることを認識しておくべきと思われます。もっとも、在庫調整が生じた場合でも、わが国企業が各種の過剰の調整を終え、収益力を回復していることを踏まえると、一部における在庫調整が景気全体へ深刻な悪影響を及ぼすような事態に至る可能性は小さいと考えられます。』

ということで、これを(やや意地悪く)読むと、グローバルな世界経済成長の下振れの時はグローバルな物価上昇を伴い、イット分野での在庫調整圧力は部分的で大した事ございませんということですからどっちにしても金融政策がここから緩和方向に矢印が逝くとは考えられないという風になりますけど。。。。

で、その次が上振れでして、まあここまで引用してると長くなりすぎなので割愛しますが、企業行動の「過度の積極化」に言及してますわな。


○で、物価の下振れ懸念は・・・・

その次に『物価情勢に関する上振れ・下振れ要因』なのですが、ここでの言及もまた物価上昇方面へのバイアスを強く感じさせてくれます。

『次に、物価の先行きに関する上振れ・下振れ要因としては、原油などの国際商品市況の動向のほか、景気の動き、すなわち需給ギャップの変化に対して、消費者物価がどの程度反応するか、ということが重要と考えています。』

ということで見通しを述べていますが、これってどう読んでも「この先は物価上昇ですよ上昇。下落?何ですかそれ?」としか読めないんですけど。

『先ほどの見通しでは、需給ギャップがプラスに転化しても、消費者物価の伸びが目立って高まることは想定していません。これは、近年、わが国だけでなく海外を含めて、需給ギャップの変化に対する物価上昇の感応度が低下傾向にあることを勘案したためです。(以下長いので中間割愛です)もっとも、今後、ユニット・レーバー・コストは上昇に転じることが見込まれます。また、需給ギャップがプラスに転化していく中で、いずれ、企業の価格設定行動の変化などによって、また、これに人々のインフレ予想の上昇を伴う形で、物価の経済に対する反応の度合いが強まり、物価が上振れることも考えられます。』

どう見ても上振れ懸念しかありません。本当にありがとうございました。

でね、割愛した部分なんですが、その中で述べている新興国の工業化による物価の抑制という話なんですが、もう一方の講演の中ではこんな言及がありまして、ここも結構「おお!」と思った訳ですが。

『第1に、経済のグローバル化がいつまでも物価押し下げ効果を持ち続ける保証はありません。実際、最終製品の価格下落により物価の上昇圧力が抑制される一方で、それと対照的な現象も顕著になっています。(長いのでまた中間割愛)こうしたグローバル化に伴う世界的な需要増加ということまで含めて考えると、実は、グローバル化が物価押し下げ要因になるのか、押し上げ要因になるのか、必ずしも確定的なことは言えません。これまでのところ、一次産品の価格上昇が、他の製品への波及やインフレ心理の高まりを通じて、各国の国内物価を大きく押し上げるには至っていません。しかし、世界全体の供給余力が次第に乏しくなっていけば、こうした好環境が気づかないうちに大きく変化しているというリスクには十分気をつけなくてはなりません。』(ということでこれはコロンビア大学研究所カンファレンス講演から)

ということで、まあ総じて物価上昇懸念全開講演な訳です。


○ところでいつの間に物価上昇懸念全開になってるの?

そんなわけで今般の2本の講演ですが(さすがに長くなるので引用は物価方面の部分で終了しておきます)、何のかんのと言いましても、ここの字面を見ていると物価上昇懸念全開モードにスイッチが入っているように見えてしまう訳です。

いやあのこの前まではどっちかというと金融緩和長期化の懸念という事で、資産価格のバブル懸念を中心にしてたように思えるのですが、何となく平均株価が伸び悩みになってくるわ、新興市場がヘロヘロになってくるわで、地価だって上昇してるの大都市の中心部だけでしょって話になって来たところで、すかさず今度は物価の上昇懸念の話がメインになるというのには感心しちゃいましたよ、うんうん。

物価に関して展望レポートの数字(来年度へ向けての政策金利引き上げを織り込んだ上でCPIが0.9%)からの上振れ懸念ばっか並んでいるということは、どう見ても「CPI0−2%が望ましい物価水準という理解」のレンジの上の方に逝く懸念全開ということですわな。いやはやそれでいいのかという気もしますが。

いつの間にか話がなし崩し的に変っているというのは福井日銀お得意のパターンですけどね。


○質疑応答は残らないので・・・・・

ブルームバーグニュースのヘッドラインを見ますと、福井総裁は質疑応答の部分では「経済・物価シナリオ通りなら急がずゆっくり金利調整」とか「流動性削減の時期(=当座預金残高を所要近辺までに引き下げる時期)とゼロ金利脱却はまったく別の問題」というような言及をしております。

で、後者に関してはモーサテでもその場面の画像付きで報道されていましたが、後者の件に関してはそもそも当たり前の話でありまして、「当座預金残高を所要に削減したら利上げ」とか「利上げへのパスは残高削減ペースで読み取れる」などとヨタを飛ばしていたのは日経新聞とモグリの日銀ウォッチャーだけでございますので、それを捕まえて「早期ゼロ金利解除を牽制」といわれても困ります。

でね、まあ前者に関しては公式見解がまあそうなっているからその範囲の話をしてるんですけど、先ほどから延々とご紹介した中にありますように、福井総裁的にはメインシナリオの中に結構物価上振れ懸念が含有されているものと考えられますので、どうもこの「ゆっくり」のペースについては気になる所であります。

総じて質疑応答では火消しを意識しているようなヘッドラインでしたが、講演でもこの手の場合は日銀のウェブサイトには記者会見としての発言が残らないので、まあ無茶な話をすれば別ですが、少々のサービス発言をしても後に残らないから心配ないぜってのは穿ちすぎですかそうですか(苦笑)。


まあアレだ、最初に講演要旨を読んでしまっているので質疑応答のヘッドライン見ても反応する気が起きなかったのですが、世界は広いので反応する人もいるっちゅうことですかな。



○ところで本件とはあまり関係ないですが・・・・

週初というのは色々なレポートを目にするのですが、その中で気になったのは「円高だから金利引き上げをしにくい」って議論。

現況のテーマは円高ちゅうよりはドル全面安だと思うわけですが、そのドル相場を支える為に金融政策で対応するという論議を持ち出す人には「プラザ合意」という文字を額に入れてお渡ししたいと思う訳でして、いやさすがにそれはどうかと思う次第で。確かに為替市場で介入しながら金利は引き上げってのも妙ではありますが、政策金利は基本的に国内要因でいじるっちゅうのが基本ではないかと思うんですが。

ちょっとドル円相場が円高に振れると物凄い勢いで騒ぐ人たちが政界財界にやたら多いので政治的マターとしてややこしいことになるというのは判らんでも無いですが、大体為替相場支えの為に無用に流動性をばら撒いたあとは碌な事が起きていないというのは何度かやっている筈なんですけど、本業がレポート書きの人でも円高で金利は上げられないという意見が堂々出てくるのはどんなもんなのかなあと思うのでありました。

じゃあお前はどう思うんだという話ですが、物価がそんなに威勢良く上る状況でもないし、政策金利をそう勢い込んで上げる必要は無いんジャマイカと思うんですが。上げるにしても1回上げるごとに半年以上は影響を見極めながらだと思うんですけどねえ。


#多分明日に続く

トップに戻る




2006/05/08

お題「総裁記者会見(だいたいその2)」

連休で頭の中身が完全にOFFになっておりますので今朝はいつにも増して簡単になると思われます(汗)。

いやまあ連休ボケ頭でモーサテなんぞをみておりますが、マーケットコメンテーターとか逝って出てきてる人って多分本人の専門でも何でもないことにまで一言コメントさせられてある意味カワイソスですなあなどと思うわけで。日経新聞記事に対してコメントしてるんですが、思いっきり個別企業のミクロな話に一々コメント求めたって本当は「知らんがな」だと思うんですけど。しかし今日もコメント出てたけど、「団塊世代のリタイア後のセカンドハウスの需要が期待」っていう理屈ばかりはさっぱり判らん。

と頭の体操にひとくさり悪態をついてから総裁記者会見の続きを少々で勘弁。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken/kk0605a.htm


○それをするなら地均しするなと

既に本石町日記さんの所でエントリーが出てますけどあたくしも一応これはブックマークしておかナイト。

『かねてより申し上げていますが、市場は金融政策運営の場であると同時に、私どもにとっては鏡でもあります。今回は、その鏡としての部分を日本銀行として経済・物価の見通しを立てるにあたり利用させて頂いたということです。(中間割愛)見通しの作成にあたって具体的にどのような政策金利の径路を想定するかについては、他の様々な変数と同様、これはそれぞれの政策委員に委ねられています。従って、どの時期に何回の利上げを織り込んでいるかといった細部について前提を統一しているわけではありません。これは非常に大事な点であり、ご承知置き頂きたいと思います。なお、どのような前提であれ今回の方法による政策金利に関する想定は、あくまで市場金利を参考としたものです。鏡として利用させて頂いたものであり、各政策委員が望ましいと考える政策金利のパスではないという点は、明確にしておきたいと思います。』

それは判ったが、それならば具体的な金利の数字まで持ち出して金融政策のパスについて話をする審議委員を黙らせてから「市場は鏡」という発言をしろと。「ボクちゃん利上げしたいなあ」って言って市場金利が反応したのを見て「市場に催促されたから利上げしたんだよボクが能動的に上げたんじゃないよ」とか言い出し兼ねない危険なものをこの「市場は鏡」理論に感じますなあ。マッタクモウ。

しかしまあ「どの時期に何回の利上げを織り込んでいるかの細部について前提を統一していない」のに「今回の方法による政策金利に関する想定は、各政策委員が望ましいと考える政策金利のパスではない」と言い切れるのかどうか。何だか怪しさ抜群なんですけど。


でね、後のほうの質疑でもこんなコメントしてるんですが、そのヒトゴトっぷりは如何なものかと思うんですけど。

『今後、本当に日本経済がこの標準的な見通しに沿ってきちんと動くかどうかが非常に大事であり、そういう方向で動いていくのであれば、自然と、金利を調整した方がより望ましい経済の運航パスを確保できるという判断に、いつの日か至るだろうと思います。これは私どもが勝手に思っているだけではなく、市場は既に市場の見識で先行きの政策金利の変化を一応織り込んでいるという姿であり、その一部は今回の見通しを立てるにあたり、逆に鏡としてお借りしています。』

何だかねえ。結局のところ日銀(の政策委員)が火消ししたり火付けしたりしてるだけではないかと思う訳でして、何か実に定義の曖昧な「理解」公表でゼロ金利長期化を他市場に誤解させておいて足元に向ってはその後の某政策委員の講演で中立金利とか持ち出す有様のどこがどう「勝手に思っているだけではなく」なのかなあと思うのですけれども。はあ。

『この標準的な見通しとの対比で市場がさらに評価を加え市場金利の中へどのように織り込んでいくか、つれて市場が練れたものとなっていくかどうか。より練れた市場の姿と、私どものこれからの経済・物価情勢に関する判断の積み重ねとの間に自然に接点が出てくると、そこに望ましい政策径路が浮かび上がってくるのではないかと思っています。これからの市場との対話は、そういったダイナミックなものになっていくと思っています。』

どうもこの件を読むと、市場への「語りかけ」を通じて望ましい政策経路を織り込ませに逝きますとしか読めないのはあたくしの考えがひねくれているからですかそうですか(-_-メ)。



○ゼロ金利を解除しても金利は低水準ですかそうですか

これも最初の方の質疑。

【問】『展望レポートの最後のところで、「無担保コールレートを概ねゼロ%とする期間の後も、極めて低い金利水準による緩和的な金融環境が当面維持される可能性が高い」とありますが、この「後も」というところは、日銀がゼロ金利を解除した後、いわゆる利上げをした後も、その金利水準は極めて低いという認識を示されたという理解でよろしいのですか。』

【答】『3月の金融政策決定会合の公表文で発表した内容と、この点は変わっていません。現在、流動性を市場から回収中でありますが、回収が終わったからすぐゼロ金利が終わるわけではないことを申し上げました。その後の経済・物価情勢次第、つまり、しばらくゼロ金利が続く可能性があり、さらに、そのゼロ金利が終わった後も、極めて低い金利水準を背景とした緩和的な金融環境を続け得る可能性が高いという、お尋ねの通りのことを書いていると思って頂いて良いと思います。』

これはまあ「将来のゼロ金利解除は金融引き締めではない」という説明でもあるかと思います。ひところ「中立金利」という話が出てきて思いっきり話題になっておりましたが、さすがにその理屈はちと刺激的ということでここの所「中立金利」の話は引っ込めている観があります。でもまあ上記のような受け答えにもありますように「ゼロ金利を解除しても金融政策は緩和状況」というお話をしてますんで、この辺の受け答えを読むとどうも「とっとと利上げですよウェーハッハッハ」という風にしか思えないんですけど。

この次にこんな質問があります。まあそんな質問しても具体的な答えが返ってくる訳はございませんが(笑)。

【問】『「極めて低い金利水準」というのは、市場では解釈が分かれる表現だと思いますが、総裁としては、「こうだ」というような定義は示されませんか。』

【答】『名目金利の水準について「数字的に一定のレベルまでは極めて低い金利だ」という想定の仕方はしませんが、経済・物価の動きとの相対関係で、企業や家計が感ずる金融緩和感、その度合いがかなり深い金融緩和感が実態的に維持されているような金利や、その他の金融環境ということです。』

いやまあこの部分に関してもあたくしは「ゼロ金利はもう経済刺激的ですよ経済を無駄に過熱させるリスクがありますよ」ってつい読んでしまうのですが。まあ短期市場では一時後退してた7月利上げの見方がだいぶ復活してきたんで、まあそういう解釈になっているのかとは思いますけれども。


○政策金利は動くものでありますな

将来のリスクに関してダウンサイドリスクよりもアップサイドリスクが大きいってお話でもひとくさり質疑応答があったのですが、全部紹介してると量が多くなるのでいくつかピックアップ。

アップサイドリスクにウェイト掛けてませんかって質問に対してはこんなお話をしています(一部抜粋です)。

『つまり、経済はあくまで緩やかだが右肩上りという想定に立っています。その時に、一定の金利水準を前提とすると、時の経過と共に金利による経済に対する刺激効果は強まるということですので、それを念頭に置くと、すぐにではないが、少し将来や長い距離を置いて見た場合には、ダウンサイド・リスクよりもアップサイド・リスクの方が自然に念頭に置かれやすくなるであろうということです。』

で、「アップサイドのリスク・シナリオにおいて経済の振幅が大きくなると述べていますが、もう少し具体的なイメージを伺います。」って質問に対して経済が過熱して過剰な設備投資が起きるとその後の反動で調整が必要になりますよって話をしながらこんな話を。

『従って、そうしたことが起こりやすいのは、政策金利一定ということがあまりに守られすぎた結果として起こる場合があるわけなので、政策判断は慎重にしなければなりませんが、やはり適切なタイミングで適切なレベルに金利をセットしていかなければなりません。ダイナミックな経済を前提にする限りは、金融政策もそういう意味での機動性を失ってはならないというインプリケーションが含まれているところです。』

ということで「政策金利が一定だという考えは持たないでくれ」という話をしておりますわな。そりゃそうですけど、この点を強調しているということがイマイチ浸透してないような気も(他の市場には、ですが)。


まあ言葉を慎重に選びながら強気の話を丁寧にして、変に刺激的な物言いは避けているという所ではないかと思います。展望レポートが十分強気ですしね。

トップに戻る




2006/05/02

○総裁記者会見(その1)

マニアな市場の話をマニアにして一人で勝手に盛り上がっているうちに気が付けば時間が無くなって来ましたので(アホです)、総裁記者会見に関しては2回シリーズで、というか今日は超簡単に。

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken/kk0605a.htm

・よく考えたら3月解除の方が合理的だったんだよ!な、何だってー

またもどこぞの巨大掲示板用語を使ってしまったorzというのはともかくと致しまして、本石町日記さんの所でも指摘されていた(コメント欄に意味の判らん言いがかりをつけに来た変な人がいましたが、本石町さんの対処の仕方が秀逸なのでブログをお持ちの方は参考になると思います^^)のですが、展望レポートでの物価見通しに「市場の政策金利に関する予想を参考」という「市場は日銀の鏡じゃなくて手鏡(by本石町さんだったかそこのコメント氏)」に関してツッコミが。

『今回の展望レポートから、各政策委員は市場金利に織り込まれたとみられる市場参加者の政策金利に関する予想を参考にしながら、見通しを作成する方法に変更しました。これは考えてみればごく普通のことで、そうなるべくしてなったということです。見通しの前提となる他の長期金利あるいは株価等の金融変数は、先行きの経済・物価情勢やそのもとでの金融政策運営に関する市場の予想に基づいて形成されています。このため、政策金利についてだけ全く切り離して固定的な前提を置くこれまでの「先行き一定」とする方法よりも、政策金利についても前提となる金融変数に含まれている情報、つまり市場の情報を参考とする方法を採ったほうが、全体として整合性がとれ、適当と判断されました。』

まあ確かにその通りといえばその通りですし、先行きゼロのままで予想したらとんでもない上の数字になるという(ゼロ金利の刺激効果リスクを強調してるから)訳ですからそれもまた合理的ではあります(ってのは本石町日記でのコメント欄で指摘している人がいましたとネタバレ)が、よくよく考えたら量的緩和政策を継続中だったらば「ゼロ金利前提」というモノを出さざるを得なかったですし、4月28日解除だと市場金利が先行きの政策金利を織り込んでいないので前提条件としておく「将来の政策金利」の置きようが無いから展望レポートではやっぱり「ゼロ金利」が前提になって物凄い高い予想CPIが出てくる破目になったという事ですな(-_-メ)。


展望レポートのCPI予想数値を刺激的に高くしないためにも3月の量的緩和解除は必要だったんですよ、な、なんだってー(AA略)。

#ギャグの通じない人もいるので念の為。結論はギャグですからね


・またライトタイミングか!

福井総裁は日銀副総裁時代の「ジャストタイミング」発言(正確にはジャストタイミングは福井副総裁が言ったと連合の人が言ったという報道だったような記憶があるのですが、誰か覚えてます?)で債券先物を特別売り気配にして70銭だか1円だか忘れましたが暴落させたという武勇伝をお持ちです。その時ポジションを持っていた人はまず全員記憶が残っているかと思うのですが(とは言え細かいことは忘れられていて、「福井副総裁のジャストタイミング発言」しか覚えていない自分がいるのだが)、最近はジャストタイミングというと悪態をつかれることをお気になさっているのか(笑)、「ライトタイミング」というのを時折使用致します。しばらく言って無かった気もするのですがまた先日は登場。最後の質疑から。

『幸い、私どもが本日公表した標準シナリオでは、この先2年間、物価安定のもとでの持続的な成長というパスを確保し得る蓋然性が高いということですので、なおさらのこと、決して焦らずに臨みたい。しかし遅すぎてタイミングを逸して大きな景気の波を呼んでしまい、金融政策が過大な負担を背負わざるを得ないという状況には持っていきません。今後とも最もライト・タイミングで政策を行う、という一言に尽きると思います。決して焦ってはいけないが、安心して遅すぎてもいけないという難しさは、これからずっと続くと思います。』

はいはいジャストタイミングジャストタイミング(^^)。まあこの辺りだけではないのですが、一生懸命慎重な言い回しをしているように思えるのですが、その中からも「金利の正常化」とやらへの意欲満々なのを窺わせる部分が少々ございますが、時間切れのため後日。

ちなみにこの応答の前半部分では糊代論by水野審議委員について否定しておりますが、まあそりゃ当たり前で、金融政策の筋論としてあまりにも筋が悪すぎですから否定しますわな。

トップに戻る





2006/04/24

○G7での総裁記者会見

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken/kk0604b.htm

この手の会見ですが、普段は「今回の国際会議ではこんな事がありました、以上」で終了なのですが、珍しく質疑応答があったりしましたので少々。しかも土曜日にアップされてるし。質疑応答は3つありましたので、全部紹介してると全部引用になりそうな悪寒がしますが行って見ましょう。


・12月のG7声明と比較してインフレの話が楽観的ですが

という質問がありまして、それに対する福井総裁のコメント。

『インフレのリスクに対する認識が12月の時点に比べて大きく変わっている、ということではないと思う。ただ、現実に世界経済はそうしたリスクを孕みながらも、今日までの適切な政策運営の効果もあってバランスのとれた着実な回復をたどっている、ということも事実である。そうした事実を踏まえながら、インフレ圧力についてのリスクは、より根底的な理由である世界的な不均衡の問題や、持続的な景気回復の妨げとなったりインフレを強くもたらすリスクのある原油高の問題等に、包摂して書かれていると理解している。』


・長期金利上昇の話はどこ逝ったの?という質問が(^^)

いやあの「財務省幹部発言」って債券相場への牽制でしょ(^^)。

『長期金利に特に強い焦点を当てて議論する、ということはなかった。ただ、現実に世界的に長期金利が上昇してきており、その動きの中でボラティリティが高まっていると認識されているのも事実である。』

つーことでボラティリティが上昇というこの前の国会答弁でもお話した言葉を使っておりますな。で、その続き。

『今回、長期金利に強い焦点を当てて議論が行われなかったのは、(1)これが世界的な景況感を背景とする動きであり、(2)世界的にみて株価が概して堅調である、また、(3)米国・日本・欧州の長期金利の動きがバラバラではなく連関性を持った現象である、といった共通の認識があったためではないか。』

ということでして、福井総裁は長期金利上昇に対して景況感に基づくものであり、世界的な景況感(や、本人言って無いけど多分物価に関する見方も含まれるんでしょうな)を受けた長期金利上昇だから心配ないぜと仰せでございます。

『他方、この先、金利に不確定な動きが出た場合には、金融市場はデリバティブの発達等により大きな変化を遂げていることもあり、気が付かないところで大きなフィナンシャル・リスクが発生する可能性がある点には十分注意しなければならない、という議論も行われた。』

ほほう。


・世界的な金融引き締め傾向に関する質問

『【問】世界的に金融引締め方向にあることが財政状況の悪い新興市場国に悪影響を及ぼすのではないか、というような点が議論になったのかどうか、伺いたい。』って質問がありました。

『主要国の中央銀行の金融政策は揃って引締めの方向にあるが、これは2000年秋のハイテク・バブルの崩壊後の事態に対応した超金融緩和からの復帰過程、いわばreturn to normality(正常な状態への復帰)のプロセスと性格づけられている。』

ということですので、まあ認識は「正常化」ということですな。ところで「揃って引締めの方向」ってのに日本は含まれるのでしょうか(笑)?

『従って、これは経済に対し政策的に強いショックを与えるものではなく、物価安定の下で持続的成長を確保していくという性格を持った金融政策であり、基本的には安定指向である、ということが理解されていると思う。実際に主要国の中央銀行は、自国経済への影響や相互の経済への影響を点検しながら、慎重に金融政策運営を行っている。』

で、この後に一般論的に「グローバル化の為に主要国の金融政策は世界に影響を及ぼすから目配りが必要」ってお話もしていまして、恐らくそれが質問の答えって感じでしょう。

で、まあ過去の話の流れから考えると、早急な「正常化」のリスクよりも、超金融緩和の長期化の方がグローバルにも問題っていう考えのような気がするのは読み筋にバイアスがかかっているからですかそうですか。


まあアレだ。基本的に現状追認で、将来の金融政策は別に決め打ちしてないけど、ゼロ金利長期化という発想は無い(まあゼロ金利長期化する位なら何のために量的緩和解除したのか訳判らんですからねえ)ということで宜しいんじゃないですか。

トップに戻る




2006/04/18

○ところで福井総裁の挨拶

信託大会で福井総裁ご挨拶。
http://www.boj.or.jp/type/press/koen/ko0604c.htm

『景気が着実に回復を続ける中で、物価情勢も改善しています。生鮮食品を除く消費者物価指数の前年比は、昨年11月にプラスに転じた後、足許では比較的はっきりとしたプラスで推移しています。このような経済・物価情勢のもとで、日本銀行は、先月、5年間にわたって継続してきた量的緩和政策を解除し、金融市場調節の操作目標を無担保コール市場におけるオーバーナイト物レートに変更した上で、これを概ねゼロ%で推移するよう促すことを決定しました。あわせて、金融政策の透明性を確保する観点から、「物価の安定」についての明確化を含め、金融政策運営の新たな枠組みを導入しました。』

『日本銀行としては、こうした枠組みのもとで、経済・物価情勢の変化に応じて金融政策を適切に運営し、物価安定のもとでの持続的成長の実現に引き続き貢献していく所存です。』

どう見ても公式見解そのものです。本当にありがとうございました。

・・・と言うのを常に愚直に語り続けておけば何の問題も無いのですが、既に中立金利だのフォワードルッキングだの資産価格高騰懸念だのという話が出た後なので証文の出し遅れ感は否めません。

ま、最近の総裁講演やら記者会見はやっと金融政策に関しては公式見解をなぞるようになって来たのはかなり証文出し遅れですが、まあマシな傾向かなあとは思うのですが。

http://hongokucho.exblog.jp/4416453
本石町日記さんが「金利上昇の心理分析=日銀フリーハンドへの恐怖心」というお題でエントリーを上げてますのでご参照ありたし。

トップに戻る





2006/04/13

○総裁記者会見

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken/kk0604a.htm

会見録画も見たんですが、まあ淡々と終始したという印象です。昨日ご紹介した「債券市場がボラタイル云々」は最初の部分で総裁が説明していました。昨日書いたことに特に付け加えることはございません。

・ゼロ金利の景気刺激が強くなりすぎるリスクについての質疑

【問】『前回の量的緩和政策を解除した際、金融政策面から刺激効果が一段と強まるリスクを挙げられていたと思う。現段階で金融緩和の度合い、ゼロ金利に伴う緩和水準が以前に比べて強まっているという判断をされているのか。(後半割愛)』

【答】『前回の金融政策決定会合以降まだ1か月である。この1か月間の変化は、色々な経済指標、物価指標が出て、景気の着実な回復振りと、消費者物価指数のプラス基調がさらに定着しつつあるということが確認された。一方、ゼロ金利に伴うリスクは、この1か月の間に強まったかどうかは、この間の情報だけではまだ判断できない。これは次回の金融政策決定会合で出す展望レポートにおいて長期的な経済・物価の見通しを示し、その見通しについて2つの柱によるクロスチェックをかけていく。特にその2つ目の柱はより長期的にみたリスク要因に関するものであり、そのレポートの中でもう少し詳しい分析ができれば、示していきたいと思っている。』

月末の決定会合で出される予定の展望レポートでそのあたりの説明がなされますって事のようですんで、展望レポートと総裁会見は注目ということですな。えー月末の週末かよーどと言ってはいけません(笑)。


・資産バブルに関して

【問】『先程の経済に対する判断の中で、企業行動は極めて慎重であって過熱感が出ていないという話があったが、最近資産価格の上昇や株価、地価について色々と指摘される面もあるかと思う。そうした面で企業の投資行動に資産バブルの予兆というものをリスクとして感じられているのかどうか、現在の所見を伺いたい。』

【答】『(前半部分割愛)資産価格の動きについてのお尋ねがあったが、最近発表された不動産価格の指数などをみても、中央と地方、あるいは中央の中でも地域によってまだかなり開きがあるが、一部の地域では不動産価格のかなりの上昇がみられるようになってきている。これは過去と比べて大きな変化だと受け止めているが、大きくとらえると、収益還元法の中での価格の動きという健全な範囲内での動きを逸脱している、あるいは大きく逸脱しそうであるとは、まだ受け止めていない。』

懸念してるんだか懸念して無いんだかよく判らんです。どっちでも無いということなのかなあ。


・市場金利に関して

基本的に長期金利の上昇を懸念というような事は無いでしょう。ただし急激な動きや、経済実態からかけ離れて上昇するとかいうのは如何なものかというスタンスだなあと昨日も書きましたが、最後の方の質疑ではこんな感じになってました。

【問】『これまでの量的緩和時は非常にリジッドな条件だったのでどうしても先行きが読みやすいという側面があったと思うが、総裁の発言を伺っていると、市場にとって金融政策の先行きがあまりに読み取りやすくなるのは好ましくないという考えをお持ちのように感じられるが、そのあたりの考えを伺いたい。』

【答】『(冒頭部分割愛)量的緩和政策のもとでは、短期金利はゼロ制約に縛りつけられて動かない。従って、言葉のやりとり、文字通りコミュニケーションにかなりのウエイトがかかっていた。量的緩和政策解除後は、金利が動く世界にだんだんなっていく。ゼロ金利といえども、皆さんから「ゼロ金利はいつ動くんだ」というようなお尋ねがあること自体、「金利は動くものだ」というようになっている。そして、現に先物市場や長期の債券市場をみても、先程のお尋ねのように既に金利が動いている。金利を軸とする政策の時代のコミュニケーションは、常に市場金利を真中に挟んでコミュニケーションが行なわれる。言葉のやりとりだけではコミュニケーションは全うしない。(まだ続くのですが以下割愛)』

ということですんで、基本的に現在の金利上昇についてまあそんなに無茶な動きじゃなくてじりじり上昇する分には無問題(ただし上り過ぎは困る)という認識でございましょう。まあその「コミュニケーション」がブラインダー元FRB副議長が指摘する「自分の尾を追う犬」の図にならないようにしていただきたいです。

まあ今回はそんなに不規則発言(といったら失礼か)は無かったって感じじゃないですかね。

トップに戻る





2006/04/12

○総裁記者会見メモ

詳しくは本日のテキスト出てから明日にでもということでメモだけ。

債券市場の動向についてブルームバーグニュースおよび今朝のブルームバーグTVで放映されてました。

『もっとも、海外市場の動向とも絡んで、債券市場の一部にボラタイルな動きがみられることも事実だ。日銀としては引き続き金融市場の動きを十分注視していく必要があると考えている』(ブルームバーグニュースより)

ここで注意しなければいけないのは、債券市場の動向について「ボラタイルな動き」と言ってることでして、「金利上昇」と言って無い事です。まあ総裁(あるいは政策委員会)としては経済実態(と思っているもの)にあったメジャードペースな金利の上昇に関して別に文句を言う気は無いっちゅうことでしょうにゃ。ただまあボラタイルに相場が暴れられると問題ですがなって所なんでしょ。もし金利上昇ケシカランと言うのであれば「経済実態から乖離した相場のオーバーシュート」みたいな言い方をしてくるでしょうから。

で、これが某テレビ局の経済お笑い番組の手にかかると「福井総裁、長期金利上昇を注視」というヘッドラインになるわけですな(もしかしたらヘッドラインは注視じゃなくて牽制って書いてたかも知れないけどもう忘れたよあっはっは)金利上昇を牽制した発言でも何でもないんですが、例によって(本当にそうなのか知らんが)海外投資家さまにおかれましては円売りのネタにしたらしく(まあ純粋外国人マネーを日本市場で焼いていただくのは日本国民として誠に結構なお話ですのでどんどん勘違いして焼いてくれ)。ブルームバーグTVでは「債券市場に注視必要」と見出しを打ってましたが、どう見ても
こちらの方が正確ですな。


トップに戻る