海外金融政策概観(2011年下期前半)

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FRBやBOEを中心に趣味成分が高いですが、海外中銀のペーパーや講演などをフォローするのだ。
(2011年度上期後半はこちら

2011/12/30「イタリアとかハンガリーとかが炎上しているようで」
2011/12/27「BOE12月議事要旨と11月議事要旨から少々(ほんのさわりだけ)」
2011/12/22「ECBの3年オペに応札4890億ユーロとな」
2011/12/14「FOMC声明文から」
2011/12/13「FOMCプレビュー雑談/ドラギ総裁会見より(その2)」
2011/12/12「ECB定例理事会後のドラギ総裁会見より」
2011/12/09「ECBは大胆な流動性対策を実施するも国債買入は拡大しませんとはっきりしたスタンスで」
2011/12/07「イエレン副議長の講演より(その2)」
2011/12/06「イエレン副議長のFinancialStabilityに関する講演より」
2011/12/05「11月FOMC議事要旨から:ツイストオペの効果についての言及とか、住宅市場が金融政策の波及経路に悪影響を与える論点とか」
2011/12/02「リッチモンド連銀ラッカー総裁(プロッサー総裁の代打)がスワップ協定拡充に反対/11月FOMC議事要旨ネタ続き、名目GDPや物価水準ターゲット政策に関して」
2011/11/29「11月FOMC議事要旨より、今後の金融政策の新たな枠組みに関しての議論」
2011/11/28「バーナンキ講演更に続き」
2011/11/21「ドラギ総裁の(総裁としての)初講演:金融財政問題は金融政策では解決できませんとな」
2011/11/17「バーナンキ講演更に続き」
2011/11/16「欧州はあちこちに延焼中/バーナンキ講演続き」
2011/11/14「バーナンキ議長の『financial stability』に関する講演より」
2011/11/11「フランスも売られたりしてますが・・・・」
2011/11/10「保身的な動きがまたイタリアの下げを加速と」
2011/11/08「欧州債務危機はイタリアに飛び火/そんな中で資本増強ねえ」
2011/11/07「ECB政策決定会合後の記者会見より」
2011/11/04「ECBがやや予想外の利下げ実施/FOMCは現状維持で声明文のレビューを」
2011/10/21「バーナンキ議長講演ネタ続き:マクロプルーデンスにも言及とはどこの白川総裁ですか」
2011/10/20「BOEの買入拡大は何と全員一致/FOMC議事要旨の続きで金融政策決定部分に関して」
2011/10/19「バーナンキ議長講演で時間軸効果について言及」
2011/10/17「FOMC議事要旨の中での景気認識に関する議論部分から」
2011/10/13「FOMC議事要旨の追加金融緩和ツールに関する論議を読む」
2011/10/07「BOEは資産買入拡大&ECBはカバードボンドの買入」
2011/10/05「ECB理事会プレビュー/バーナンキ議会証言の一部から少々」
2011/10/03「ブラード総裁は「資産買入が政策効果を出す」との主張」

2011/12/30

○欧州は燃えているか

これは酷い。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-LWZDTB0UQVI901.html
NY外為:ユーロが対ドルで1年3カ月ぶり安値−イタリア入札に反応

いや何が酷いってあたくしが見ている時間ですとこのリンク先の記事にあるキャプチャー写真が酷いのですがこれは何ぞ。

『12月29日(ブルームバーグ):ニューヨーク外国為替市場ではユーロが対ドルで1年3カ月ぶり安値に下落した。イタリア入札で発行額が目標上限に届かず、同国債利回りは上昇。ユーロ圏内の債務危機に伴う資金調達難が示唆された。』(上記URLより)

という事で欧州は相変わらずのクオリティのようで、昨日も入札前に見たらイタリア10年国債とかあっさり7%台とかになっていて中々残念な感じでしたが、そもそもイタリア国そのもののファンディングがどうのこうのとかいう話になってしまうと域内の金融機関の資本増強どうするとかいう話が進むわけも無く、金融機関の資金繰りはECBが面倒を見るにしても、ECBだってソルベントじゃない金融機関の面倒まで見きれない(見たらECBが共倒れ)のですし、どうすんのという所になるんでしょうな。

つーことで、まあとりあえず金融機関の資金繰りでのお父さんは回避していくにしろ、今度は域内の国のファンディングがまたまたネタになるとか勘弁です罠。まあオペでバンバン資金が出るので国債買ってちょという事になるのでしょうが、そもそも資本制約的にそういうアレな国債を買えないという状況になっている訳ですから、ファンディングもさることながら金融機関の資本増強をしないといかんのですが、それを誰が出すかって言ったらまあ今の状況なら政府になるでしょと思いますがその政府は財政支出を減らすとかやっている訳でございましてorzorz


ところで、欧州と言えば地味にハンガリーとかアレですの。

http://jp.reuters.com/article/foreignExchNews/idJPJT806918920111228
ハンガリー支援めぐる協議、再開は未定=IMF調査団長
2011年 12月 29日 00:45 JST

『[ブダペスト 28日 ロイター] 国際通貨基金(IMF)のハンガリー調査団を率いるクリストフ・ローゼンバーグ氏は28日、同国への金融支援に関する正式協議が再開されるかどうかは決定されていないと述べた。』(上記URLより)

ふむふむ。そういえば22日にはしらっとこんなのが出てたようで。

http://www.ecb.int/press/pr/date/2011/html/pr111222.en.html
22 December 2011 - The ECB expresses concern about the independence of the central bank of Hungary

・・・・・・・・何ぞこれ。

『Provisions in the new draft constitutional law that affect the personal independence of the central bank’s governor. In particular, by appointing a new President with authority over the Governor of the MNB, who would become the Vice-President of the new institution, the personal independence of the MNB’s Governor would be impaired and Article 14.2 of the Statute of the European System of Central Banks concerning the possible reasons for dismissing the Governor of a national central bank would be breached.』

『The Governing Council of the ECB has requested the Hungarian authorities to bring their consultation practice into line with the requirements of European Union law and to respect the obligation to consult the ECB. Three major revisions of the central bank law in 18 months are incompatible with the principle of legal certainty.』

ほほう。

なお、ギリシャは貫録のギリシャクオリティを発揮しておられるようで何より(違)。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-LWYL0T6JTSE901.html
ギリシャ:収税官が48時間のスト入り−政策や公務員削減に抗議

・・・・・・・ヘッドライン見た瞬間に入れたての紅茶吹いたわ。

まあ年末年始も欧州欧州という感じですなあ。

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2011/12/27

○手抜きでBOE議事要旨を政策決定の部分だけ読む(のと華麗にスルーした11月分も少し)

http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/mpc/pdf/2011/mpc1112.pdf

手抜きで読みたい時には後半の最後の部分『The immediate policy decision』をとりあえず読むのが吉ですが、今回はここを読んだ結果「労働市場に関する部分」を読まないといけないという事に気が付きましたでござるの巻。(ちなみに雇用に関する部分は『Supply, costs and prices』に含まれます)

ではまあ第26パラグラフから。冒頭の現状部分に関する所は割愛してMPCの物価見通しに関する所から。

『Inflation nevertheless remained well above the 2% target, largely as a result of the temporary impact of the increase in the standard rate of VAT in January, and higher energy and import prices. Inflation was likely to fall sharply in the first part of 2012 as the impact of those temporary factors dissipated.』

VAT引き上げ要因とエネルギー・輸入価格要因による上昇が剥落した後の来年入りからは物価上昇率は急速に低下するでしょうという見通しは変わりません。

『There was greater uncertainty about the pace at which inflation would continue to fall thereafter, but the Committee’s central view remained that downward pressure from elevated unemployment and spare capacity would continue to restrain domestically generated inflation.』

んでまあ先行きに関しては本当にそうなるのかという点については不確かな部分がありますが、MPCの中心的な見方としては「上昇した失業と、経済の生産力の余剰が」国内的に発生するでインフレーションに対して下押し圧力をかけるでしょう、となっているのですが、実は(先月MPCネタをスルーしているのに今気が付いたのですがorz)この「elevated unemployment」というのが出てきたのは今月からでありまして、先月までは「企業の資源活動(稼働率みたいなもんでしょうな)が上昇する中で企業の生産性が改善しておらず、その背景には企業が熟練労働者の削減を躊躇している所にある」というような分析がああでもないこうでもないとあります。とりあえず長くなって恐縮ですが11月分のMPC議事要旨の『The immediate policy decision』の第33、34パラグラフを俺様備忘録として引用だけしておきます。

『The degree of inflationary pressure associated with the path of demand would also depend on the evolution of productivity. Although survey measures of capacity utilisation had fallen in the third quarter, they had continued to point to there being only a small margin of spare capacity within companies. But measured labour productivity remained well below the level associated with a continuation of its pre-crisis trend, which appeared to suggest a substantial amount of underutilised capacity within companies. That might reflect some businesses holding on to employees despite lower activity, due to worries that it would be difficult to recruit suitably skilled staff when demand recovered. Such labour hoarding might have been aided by the low level of Bank Rate, and perhaps by forbearance by banks and other creditors. In that case, there would be scope for the economy to grow more rapidly than usual if demand recovered, without any build-up of inflationary pressure. Such widespread labour hoarding was difficult, however, to square with the relatively broad-based strength of private sector employment growth over 2010 and the first half of 2011.』(こちらは11月議事要旨より)

『That said, employment had fallen over the summer, and the amount of slack in the economy was likely to increase in the near term. The key downside risk to the medium-term inflation outlook was that demand growth would be insufficient to absorb this slack, causing inflation to fall materially below the target in the medium term.(あと延々欧州問題の影響に関する話とか他の材料の話があるのですが割愛)』(こちらは11月議事要旨より)

で、まあ前月まではそんな話をしていたのですが、今回のMPCでは労働市場に関して第24パラグラフでこのような指摘をしています。

『The data continued to suggest further weakening in the labour market. According to the Labour Force Survey, in the third quarter employment had fallen by 197,000, unemployment had risen by 129,000 and the unemployment rate had increased to 8.3%. The rise in unemployment seemed to reflect a small fall in private sector employment, and a continuation of larger falls in public sector employment. Employment surveys had weakened further in November, and pointed to further falls in employment over the next few months.』

ということで、労働市場の悪化が顕著になってきたという話で、この悪化もインフレを押し下げる方向に働くという所で、まあ前回からそうですが、今回も金利、資産買入ともに全員一致の決定になりましたという話です罠。

でまあアップサイドリスクとダウンサイドリスクに関しても大体毎度同じなのですが、アップサイドリスクは(1)商品価格の一段の上昇などの外的ショック要因、(2)既にサーベイなどでは示されている短期的インフレ期待上昇の影響、(3)経済の余剰生産力の物価下押し圧力がMPCの見通しよりも弱い、という所でして、まあちょっと変わったなあと思うのは「短期的インフレ期待が現実問題として上昇している」という辺りかと思います。で、ダウンサイドリスクに関しては今回は雇用の問題に加えて「海外経済の拡大が予想よりも弱い」というのも加えていますので、そういう意味ではちょっと先行きの見通しは下に寄ったイメージがあります(一応概ねバランスとはなっていますが)。

でまあ結論ですが第32パラグラフ。

『Against that background, the Committee agreed that a decision to change policy was not warranted at this meeting. Some members continued to note that the balance of risks to inflation in the November Inflation Report projections meant that a further expansion of the asset purchase programme might well become warranted in due course.』

ということで金融政策の変更はないものの、数名のメンバーは今後の追加金融緩和が正当化されるとの指摘キタコレ。

『Of those members, some thought that the outlook had deteriorated somewhat on the month, and noted the further weakening in the labour market and increased concerns for credit supply arising from the continuing strains in bank funding markets.』

その人たちによりますと、今後の懸念は労働市場の更なる悪化と金融市場のファンディング問題から来る銀行のクレジットアベイラビリティーの低下との仰せですな。後者は兎も角、労働市場に関しては今後さらなる悪化があった場合には資産買入の拡大が実施されるという話になるんでしょうね。

『Some other members judged that the risks to inflation around the target were more balanced in the medium term, noting the continued strength in import and goods price inflation, and the risk posed that inflation might be slower to fall during 2012 than implied by the Committee’s central projection.』

一方で輸入物価の高止まりが続く結果来年の物価低下速度はやや穏やかになるという指摘をして、先行きのインフレ見通しはよりバランスされてきたのではないかという話をしている人も数名いるようで、外生的なインフレの問題と失業の上昇という問題でBOEの梶取り大変だわこれという感じは致します。

『Moreover, if productivity growth remained weak, earnings growth might need to fall further from its already subdued rate in order to bring inflation back to the target.』

生産性の上昇が弱い云々は先月の引用した所でも出ていた話ですが、企業の生産性が上昇しない中では所得も伸びないですよねとかいう話ですかな(BOEの議事要旨の英語というか、英国人の書き英語は何か変に表現に含みがあって前後の文脈を全部読まないと判らないように出来ているのが多くて困るんですよね、これが非英国人の英語だと基本的に説明が丁寧あるいはしつこいので前後読まなくても判るのですが)。

『All members agreed, however, that given the magnitude of the current uncertainties, in the external environment in particular, relative to the precision with which the appropriate stance of policy could be calibrated, there was little merit in changing the path of asset purchases at this meeting.』

ただまあ先行き不透明要因のある中で現在実行中の資産買入拡大に何らかの変更をするメリットはあまりないので今回は全員一致での現状維持になりましたということのようで。

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2011/12/22

○ECBの3年オペ

昨日はブルームバーグに悪態つきましたが、FTとかも同じような報道していて、まあ初回の3年オペしかも大注目ということですから、コケないようにECBおよび各国中銀が「ご指導」したのかもしれませんな(^^)。

オペのページ
http://www.ecb.int/mopo/implement/omo/html/index.en.html

3年オペの結果はこちら
http://www.ecb.int/mopo/implement/omo/html/20110149_all.en.html

Longer Term Refinancing Op.-Allotment Reference Number: 20110149
Transaction Type: REVERSE_TRANSACTION Operation Type: LIQUIDITY_PROVIDING
Procedure: STANDARD_TENDER

Tender Date: 21/12/2011 11:15:00
Start Date: 22/12/2011
Maturity Date: 29/01/2015
Duration (days): 1134
Auction Type: FIXED_RATE

Tot Amount Allotted: 489190.75 mn
Tot Bid Amount: 489190.75 mn
Tot Number of Bidders: 523

523の金融機関が応札して落札は4891億ユーロということで、まあ沢山札が入って良かったですね(棒読み)という感じですが、何か今日は「これで金が入っても問題国の国債購入に回るかどうかは不透明」とか昨日の市場と違う話になっているのがはいはいワロスワロスという感じでございます。

いやね、まあ確かに資金供給を3年物でフルアロットメントで打ち込むというのは資金繰り支援という意味では非常に強力でして、何せリファンディングの心配しなくてよい(つーても別にMROだってフルアロットメントでやっているのですからMROをロールしても同じちゃあ同じですけど、ロールをしないで済むほうが資金繰り安定化という意味ではオイチイですわな。1年ごとに中途返済可能ですし)のでこれは素敵。

・・・・・ではございますが、じゃあこれを持って得た金がすかさず問題国の国債購入に回りますかってえ話になりますとそれは別問題。まあこの辺はジャパンの皆様(ただし一定以上の経験値のある方)は記憶に新しいと存じますが、そもそもこういう状況になっている時というのはバランスシート制約があってリスクを取れないという時なのですからして、ファンディングの面倒を見てくれるから問題国の国債を買いますよって話になるかというとそれはねえってなる訳ですよね。そらまあECBにリスクが移転するなら買うでしょうけれども、ECBは問題国国債のクレジットリスクまで取ってくれる訳では無く、リスクは金融機関のバランスシートに残る訳で、今申し上げたようにそもそも域内の金融機関がこれ以上のリスク取れない状態になっているからこの有様ですよね、と考えると、そらまあキャリートレードみたいな動きが全く起きないとは申しませんが、そう簡単に劇的な変化にはならんでしょと。

つまりは、域内の金融機関のバランスシート制約を緩和するような政策を実施しないと一足飛びに問題国国債の購入という話にはならないで、足元では超過準備が積みあがる形になる部分が多くなるでしょ、という所ですわな。

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2011/12/14

○FOMC声明文:経済に関する文言をあちこちいじりつつ政策は文言同じとな

http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20111213a.htm(今回)
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20111102a.htm(前回)

・経済の現状認識について

第1パラグラフが一番文言が変わっていますので細かく比較するだよ。まずは総括判断。

『Information received since the Federal Open Market Committee met in November suggests that the economy has been expanding moderately, notwithstanding some apparent slowing in global growth.』(今回)

『Information received since the Federal Open Market Committee met in September indicates that economic growth strengthened somewhat in the third quarter, reflecting in part a reversal of the temporary factors that had weighed on growth earlier in the year.』(前回)

全体的な経済状況に関しては「expanding moderately」と前回の「strengthened somewhat」から認識を引き上げていますが、その一方で世界経済に関して「some apparent slowing」という認識を示している(この文言は前回は無し)のが引き下げという所です。


次が労働市場。

『While indicators point to some improvement in overall labor market conditions, the unemployment rate remains elevated. 』(今回)

『Nonetheless, recent indicators point to continuing weakness in overall labor market conditions, and the unemployment rate remains elevated. 』(前回)

労働市場環境に関しては失業率が低下した事を背景に「some improvement」と判断を引き上げていますが、失業率の水準そのものは「remains elevated」としていますのでまあくやしいのうくやしいのうという所で。


家計および企業支出。

『Household spending has continued to advance, but business fixed investment appears to be increasing less rapidly and the housing sector remains depressed.』(今回)

『Household spending has increased at a somewhat faster pace in recent months. Business investment in equipment and software has continued to expand, but investment in nonresidential structures is still weak, and the housing sector remains depressed. 』(前回)

家計の消費に関しては「has continued to advance」と前回の「increased at a somewhat faster pace」を引き継いでやや判断を強めに。企業支出に関しては「appears to be increasing less rapidly」と判断を引き下げていまして、今まで「Business investment in equipment and software」および「investment in nonresidential structures」で分けて前者は拡大後者は依然として弱い、という話をしているのを「business fixed investment」という表現に変更してまとめて片付けてますな。住宅セクターに関しては引き続き「depressed」と弱い判断を継続です。


インフレ。

『Inflation has moderated since earlier in the year, and longer-term inflation expectations have remained stable.』(今回)

『Inflation appears to have moderated since earlier in the year as prices of energy and some commodities have declined from their peaks. Longer-term inflation expectations have remained stable.』(前回)

インフレに関して「appears to have moderated」から「has moderated」と明確に落ち着きを示しているとの認識となりまして、従来の「エネルギーや商品価格の上昇要因の剥落」という説明部分を割愛していまして、インフレに関しては落ち着いていますよという話をしています。


・先行き見通し

第2パラグラフから。

『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability. 』(今回)

というのはいつもの文言で前回と同じなので前回分引用割愛して、まずは先行き見通しの全体的な部分。

『The Committee continues to expect a moderate pace of economic growth over coming quarters and consequently anticipates that the unemployment rate will decline only gradually toward levels that the Committee judges to be consistent with its dual mandate.』(今回)

『The Committee continues to expect a moderate pace of economic growth over coming quarters and consequently anticipates that the unemployment rate will decline only gradually toward levels that the Committee judges to be consistent with its dual mandate. 』(前回)

ということで、基本的な経済見通しに関しては変更が無くて、「経済は今後数四半期に渡って緩やかなペースで拡大し、その結果として失業率はFOMCがマンデートで求められると判断するレベルに向けての低下は極めて緩やかにしか低下していかないでしょう」というのは相変わらず同じ。


ダウンサイドリスクに関して。

『Strains in global financial markets continue to pose significant downside risks to the economic outlook. 』(今回)

『Moreover, there are significant downside risks to the economic outlook, including strains in global financial markets. 』(前回)

経済の先行き見通しに関しての「顕著な下振れリスク」について、前回は「there are 〜 including」と「世界的な金融市場の緊張を含むリスク」という表現でしたが、今回は「世界的な金融市場の緊張が経済見通しに対して顕著な下振れリスクという問題を持ち出す」(poseの訳が下手くそですいません)となっていました。

でね、ここの部分に関して下振れリスクが金融市場の緊張の一点張りになりました(のでこれは上方修正)とかモーサテ見てたらドヤ顔で説明している人たちが多いのですが、一方で第1パラグラフの部分では世界経済の成長について「some apparent slowing」と「幾分かの明確な減速」という認識を今回わざわざ示している訳で、世界経済の減速に関しても別にリスク認識から抜けている訳では無い(現状では「世界経済の幾分かの明らかな減速にも関わらず米国経済は緩やかに拡大を続けている」という認識ではございますが)と思うのですが、ここだけを捉えて大騒ぎするポイントなのかは正直疑問があると思うのですがどうでしょうかねえ。


物価見通し。

『The Committee also anticipates that inflation will settle, over coming quarters, at levels at or below those consistent with the Committee’s dual mandate. However, the Committee will continue to pay close attention to the evolution of inflation and inflation expectations.』(今回)

『The Committee also anticipates that inflation will settle, over coming quarters, at levels at or below those consistent with the Committee's dual mandate as the effects of past energy and other commodity price increases dissipate further. However, the Committee will continue to pay close attention to the evolution of inflation and inflation expectations.』(前回)

物価見通しに関しては前回と同様に「今後数四半期に渡ってFOMCがマンデートで求められる水準あるいはそれ以下の水準に落ち着くでしょう」とこれまた同じ見通しとなっていまして、先ほどの物価現状認識での表現変更と同様に「これまでのエネルギーや商品価格などの上昇効果の剥落」という説明部分も割愛されています。その後の「今後もインフレおよびインフレ期待の動向には十分な注意を払う」というのはまあお約束の文言で前回と同じです。


・・・・・・ということで、今回は経済の現状認識に関して上げたり下げたりしているのですが、全体認識は上がっているものの、個別にみると下がっている需要項目もあったりして、やや微妙感はあるかなという感じです。先行き見通しに関しては変わっていないのでまあ政策に変更なしですなということで第3パラグラフ以降は見事に文言が同じなのです。


・政策アクションに関しては文言が前回と見事に一言一句同じ、なのですが・・・・・

従って改行位置まで同じです(^^)。今回分を引用だけしておく。

第3パラグラフは資産買入プログラムに関して。

『To support a stronger economic recovery and to help ensure that inflation, over time, is at levels consistent with the dual mandate, the Committee decided today to continue its program to extend the average maturity of its holdings of securities as announced in September. The Committee is maintaining its existing policies of reinvesting principal payments from its holdings of agency debt and agency mortgage-backed securities in agency mortgage-backed securities and of rolling over maturing Treasury securities at auction. The Committee will regularly review the size and composition of its securities holdings and is prepared to adjust those holdings as appropriate.』(今回)


第4パラグラフは金利政策およびガイダンス文言。

『The Committee also decided to keep the target range for the federal funds rate at 0 to 1/4 percent and currently anticipates that economic conditions--including low rates of resource utilization and a subdued outlook for inflation over the medium run--are likely to warrant exceptionally low levels for the federal funds rate at least through mid-2013. 』(今回)


でまあここまでの文言(実はこの先もですが)が全部一致なのですが、よくよく考えてみますとガイダンス文言って最初に出たのが8月9日のFOMCでして、そこからずーっと文言が変化していないという事は冷静に考えると時間軸が4か月間短期化している(つまり1四半期分は短期化している)という事になるのですが、どうも雨公におかれましては最初に出た時だけ注目して後になると忘却するという便利な脳味噌をお持ちのようでございまして、そこに対して着目する人はいませんな(^^)。

一応足元では米国経済に対する全体的な認識が徐々に改善しているという中なので、まあここの文言を変化させる必要は無いっちゃあ無いのでして、おそらく景気見通しを下げるような時にここのガイダンス文言を長期化して「ほら時間軸が伸びたでしょ」という目眩ましに使うのでしょうなあと思いますのでツッコまないのがオトナの対応なのかもしれませんね(^^)。


第5パラグラフはまあ単なるエイエイオーみたいな文言。

『The Committee will continue to assess the economic outlook in light of incoming information and is prepared to employ its tools to promote a stronger economic recovery in a context of price stability.』(今回)

前回と同じである。


・票決ではエバンス総裁が追加緩和を提案

ちょっとワロタのは第6パラグラフで、前回と同様にエバンス総裁が同様の理由で追加緩和を提案していまして、見事なまでに前回声明文と全文一致になっています。

『Voting for the FOMC monetary policy action were: Ben S. Bernanke, Chairman; William C. Dudley, Vice Chairman; Elizabeth A. Duke; Richard W. Fisher; Narayana Kocherlakota; Charles I. Plosser; Sarah Bloom Raskin; Daniel K. Tarullo; and Janet L. Yellen. Voting against the action was Charles L. Evans, who supported additional policy accommodation at this time.』(今回)


ということでFOMC声明文ネタはここまで。

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2011/12/13

○ブルームバーグ(米国)の変調ニュースを見て雑感

この前も米国のブルームバーグは訳の分からん記事(←URLがクソ長いのでリンクだけ)を書いていました(日本語版が検索できなかったので英語版で勘弁)が、FRBに全力で否定されたばかりではございますけど・・・・・・
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111207-00000025-reut-bus_all(←これはFRBによる否定の状況を報じた方です)

昨日はこんなのが出てました。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-LW2GOL0YHQ0X01.html
秘匿されたままのスワップ資金最終借り手先−誰が受領した5860億ドル

『12月12日(ブルームバーグ):米連邦準備制度理事会(FRB)は透明性に関わるあらゆる法律および司法判断によって情報開示が義務付けられているが、スワップ協定に基づくドル資金の最終的な借り手先については依然秘匿されたままとなっている。』(上記URLより)

・・・・・まあ内容は記事(というかブルームバーグの俺様主張)をご覧あそばせという感じですが、「最終的な借り手」も糞もスワップのカウンターパーティーは各国中銀であって、納税者のリスク云々言うのだったら、スワップ協定で実施された取引の履行に関しては相手方である主要国の中央銀行がケツ持ちをするのですから、そこに対するリスク認識がどうのこうの言うなら話は分かるが、そこから先への貸出は当該国の中央銀行が当該国の納税者のリスクで行っていますわな。

従いまして、各国中銀が行っている取引に関してまで米国の俺様ルールで全部開示しろとかアホか馬鹿かというか、それはお前内政干渉だろという話を平然とするのがメリケンクオリティなのは今に始まった話ではないですがまあ何だろなという感じですし、大体からしてこれらのスワップ協定はドル資金供給オペの為に実施しており、そのドル資金供給オペ先を一から百まで全部開示したら「Stigmaの回避の為」に実施するという政策目的に反するじゃねえか頭おかしいんじゃねえかこの記事としか申し上げようがございません。

・・・・・しかしまあ何ですな、ただまあ何ですな、こういう斜め上の記事が出る背景って何なのよと考えた場合、こちらのアホウ記事の中でもありますが議会とか何とか研究所の人とかがわあわあと透明性がどうのこうのとか言っている訳でして、そういう声が米国ででかくなってきているからブルームバーグのようなマーケット関連と見られるメディアがここまでの斜め上記事を出してくる、という事なのかなあとか思うのであります。

つまりFRBに関する風当たりが段々強くなってきていて、その結果として言いがかりのようないちゃもんが付けられるようになってきている、という米国内の状況を反映した記事なんじゃないのかなあ、などと思ったのですがちょっと考えすぎでしょうかね。


ということで今週のFOMCですが普通に考えると何もないのですが、透明性だの何だのという外野の風当たりが(日本でぼーっと見ているあたくしなんぞが想像する以上に)強いということでありますと、何らかの目眩ましじゃないですけれども、「金融政策の透明性向上」とやらで施策という話になるんでしょうかねという所です。

まあ例えばこんな観測記事が出てますけど。以下先週の記事で恐縮ですがロイターの記事引用。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111207-00000055-reut-bus_all

『[ワシントン 6日 ロイター] 米連邦準備理事会(FRB)は、13日の連邦公開市場委員会(FOMC)で、前回に続き追加緩和の実施を見送る見通し。一方、欧州債務危機の米経済への影響を見極めつつ、政策の透明化に向けた枠組みをまとめる可能性がある。FRBはこれまで、政策運営の一環として市場との対話を検討してきたが、今回、そうしたコミュニケーション面での最終的な政策枠組みが提示されるかもしれない。』

まあ確かにFOMCの議事要旨見ますとずっとその検討してますからね。

『検討されているツールのひとつとして、四半期ごとに公表する経済見通しに金利予測を追加する案がある。金利予想を示すことがはたして金融緩和につながるのか、もしくは単に当局者の見通し公表に過ぎないのかをめぐってはFRB内でも依然議論されている。』

昨日のWSJだか何だかでこの案が有力みたいな報道があったよう(記事見つからなかったので勘弁)ですが、このロイターの記事でも説明されているように、それが追加緩和になるのかというと意味不明としか言いようがありませんわな。

つまりですな、経済見通しに則ってその場合には政策金利パスがこうなるというような予想を先に出してしまうと、その場はまあ政策金利の期待パスを固定化させる効果があるかもしれませんが、経済状況に変化が生じて政策金利パスを変更しないといけなくなった場合に困ると思うのですよね。そのような場合にしらっとパスを変更してしまった場合に「あの公表したパスは何だったんだ」という話になってしまい、信認問題になると同時に、政策金利パスの公表が却ってノイズになる惧れが出てきますし、一方で元々の政策金利パスを守ろうとした場合には金融政策がビハインド・ザ・カーブになってしまい、これまた弊害が生じますがな、という残念無念な話になるリスクがあるんじゃネーノと思うのですけれどもねえ、と思いますがどうでしょうかね。

とまあそんなこんなでFOMCプレビュー雑談のつもりでありました^^;


○昨日の続きでドラギ総裁の定例理事会後の会見Q&Aから

http://www.ecb.int/press/pressconf/2011/html/is111208.en.html
Introductory statement to the press conference (with Q&A)
Mario Draghi, President of the ECB,
Vitor Constancio, Vice-President of the ECB,
Frankfurt am Main, 8 December 2011

まあ何ですな、端的に申し上げますと延々と「SMP(資産買入プログラム)拡大はしないのか?」→「財政マネタイズはしませんが何か?」が続く質疑応答なのですが、最初の質疑応答を引用してみませう。

『Question: You have mentioned again today this fiscal compact which we heard you mention for the first time earlier this month. I wonder if you could elaborate a little for us on what you meant when you said “other elements would follow if the sequencing of those actions was correct”. Are these central bank elements? Does that mean that the ECB will respond with significantly stepped-up bond purchases, for example, if that fiscal compact was shown to be happening?

My second question is on rates. Was your decision today unanimous?

And did you consider cutting more? Is there more room, given the downside risks to the economy?』

まあ2番目と3番目は比較的どうでも良いのですが、答えの方が中々。

『Draghi: The answer to the first question is “no”.

The answer to the second question is “no”.

And the answer to the third question is “we never pre-commit”. So, it is two “noes” and one “never pre-commit”. 』

で、その次にそもそも論を持ち出して1番目の質問についての説明を。

『By the way, I was kind of surprised by the implicit meaning that was given by not all of the press, but some, to that “other elements will follow”.』

ほう。

『Let me step back and talk about the compact. A compact is an agreement, fundamentally. One of my collaborators said that compact could also be read as “community pact”, but that was not meant to be my initial suggestion. A compact could be viewed as a three-pillar-concept:』

『The first pillar is national economic policies geared to stability, growth and job creation ? fiscal stability, growth and competitiveness, and therefore job creation.』

『The second pillar is rules at EU level, or in any event rules, fiscal rules, enshrined in primary legislation. These rules would contain limits to structural deficits and to debt. These rules would be automatic and they would in a sense constrain ex ante, because they are in the primary legislation, budgets that are legislated in the secondary legislation. So, one would certainly have ex post controls; they are important, they are essential, but an ex ante constraint of an automatic nature would certainly increase the credibility of this re-design of the EU or the fiscal compact that is now in these very hours under discussion by the leaders.』

『The third leg of this concept would be a stabilisation mechanism. I always find it somewhat puzzling that this is actually where most of the attention is focused when we know that the lack of credibility or the lack of confidence stems from the other two, from the lack of the other two pillars originally. My preference in respect of this stability mechanism - but this is my preference - is for the EFSF, the EFSF first, and the ESM later, to be fully equipped and operational, and made operational as soon as possible. So, sooner rather than later.』

ということでまあEUの財政協定に関するそもそ論の説明しているのですが、EUの協定の話とかになると微妙にあたくしも良く判っていなかったりするので引用だけで手抜きで勘弁であるが、まあ要するに財政問題は財政問題でECBが出張る話じゃないので、新たな財政健全化策が締結されたからと言ってECBが国債買入を拡大するという解釈をされるのはケシカランですよという話をしているようですな。

でまあそんな調子で質疑は続くのですが、その中から少々。


・デフレ入りの可能性は小さいとみているものの警戒&SMPは「金融政策の波及経路確保」

『Question: Mr Draghi, speaking in Parliament you also emphasised that the ECB would ensure price stability in both directions. Does that mean that there is a fear of deflation?

My second question is, from a purely legal point of view, do you think there is any limitation on the ECB regarding the amount of government bonds that can be bought, as long as it can be justified on the basis of monetary policy considerations.』

まあ2番目の質問は引っ掛けっぽいですが(^^)。

『Draghi: At the present time we do not see a high probability of deflation. That is one point to keep in mind.

The second point is, as I have said many times, that the purpose of the SMP is to reactivate the transmission channels of monetary policy. As I said in the statement to the European Parliament, the SMP is neither eternal nor infinite. We must keep this in mind and we do not want to circumvent Article 123 of the Treaty, which prohibits the monetary financing of governments.』

ということで、デフレ入りに関するリスクは大きくは見ていないが1つのポイントとして注視します、という話をしておりまして、後半の質問では「資産買入プログラムは金融政策のトランスミッションメカニズムを活性化させるものである」という原則を説明していまして、ECBは財政マネタイズをしてはいけないという原則にも言及するという流れでありますな。


・利下げに関しての反対は「タイミング」

『Question: Have you had any heavy discussion about the rate cut? Last time it was a board member, Mr Jurgen Stark, who made a proposal and brought it into the Governing Council. Has he done that again?』

『Draghi: It was a lively discussion ? and one should not abuse the word “lively”, because we are central bank governors after all! Opinions were divided, not in terms of the substance but in terms of the timing. It was a majority decision.』

ということで、利下げをすべきかどうかという点に関しては「本質的な意見の対立ではなくて、タイミングに対する見解の相違があった」という事のようで、まあ普通に方向は緩和なんですね、というのは判りました。


・利下げは経済見通しに基づくもの

『Question: Mr Draghi, is there still this taboo that the ECB will not cut interest rates below 1% and, secondly, no amount of rate cuts will really allow the euro area to avoid a credit crunch unless banks are really convinced that euro area bonds are not toxic. So, what can you do, or what are you planning on doing, about this?』

『Draghi: On the first question, I would answer that we never pre-commit.

On the second one, the rate cuts are meant to address a situation where you have weaker global growth, different conditions ? worse conditions overall ? and heightened uncertainty. So, overall, a domestic economy which is weakening. I would not use the word “toxic” for euro area bonds. I think the present stress conditions are mostly due to what I said before, i.e. the lack of the first two pillars of this compact. One ? the national economic policies ? is gradually falling into place, as we have seen in the last two weeks in various countries. But we certainly have to see more improvement on that front. And the second pillar, which is the EU re-design of the compact, is what is happening now. Let’s see. 』

まあ答えの後半の方にあります「国債もっと買えや→ECBは財政マネタイズはしませんが何か?」の方はもはやこの会見のお約束のようなもんですのでどうでも良いのですが、前半にあります「金利の引き下げは世界経済がより弱くなり、見通しが不確かになった事に対応するものです」というのは、今回の金融政策決定における「伝統的政策(=金利誘導)」と「非伝統的政策(=流動性供給)」の区分けを行ったものという事で、まあその辺を曖昧にしておく方が良いのかもしれませんけど、この辺り峻別するのがECBクオリティーが全開という事なのでしょうな、と思うのであります。


・今回50bp引き下げの意見は無かったとな

『Question: Mr Draghi, can you clarify whether anyone on the Governing Council called for a 50 basis point cut?』

『Draghi: No, we did not discuss that. We discussed only what has been announced. Some were in favour, and some were not in favour.』


・しかしまあECBも大変ですな

とはこの質問を見た所で感じたのですけど。

『Question: Why is it so impossible for the ECB to act like the other central banks, like the Federal Reserve System or the Bank of England? Why do you not act more directly to help European countries by buying up the debt on a massive scale? 』

まあ答えは引用するまでも無いので割愛しますが、各国とも中銀大変ですなあと思うのでありました。

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2011/12/12

○ECB総裁会見より

今回は最初から最後まで結構真面目に読んでみた(が例によって端折る)。

http://www.ecb.int/press/pressconf/2011/html/is111208.en.html
Introductory statement to the press conference (with Q&A)
Mario Draghi, President of the ECB,
Vitor Constancio, Vice-President of the ECB,
Frankfurt am Main, 8 December 2011

まずは説明部分。

・利下げの理由は経済見通しとな

説明部分の第1パラグラフ。

『Based on its regular economic and monetary analyses, the Governing Council decided to lower the key ECB interest rates by 25 basis points, following the 25 basis point decrease on 3 November 2011.』

今月も利下げしましたお!

『Inflation is likely to stay above 2% for several months to come, before declining to below 2%. The intensified financial market tensions are continuing to dampen economic activity in the euro area and the outlook remains subject to high uncertainty and substantial downside risks.』

インフレは今後数か月の間は2%越え(今は3%でしたっけ)を続けるがその後は2%以下に低下するでしょう。金融市場の緊張が継続しており、ユーロエリアの経済活動を阻害し、先行きの見通しは引き続き不確実性が高く、相当な下振れリスクがあります。

『In such an environment, cost, wage and price pressures in the euro area should remain modest over the policy-relevant horizon. At the same time, the underlying pace of monetary expansion remains moderate. Overall, it is essential for monetary policy to maintain price stability over the medium term, thereby ensuring a firm anchoring of inflation expectations in the euro area in line with our aim of maintaining inflation rates below, but close to, 2% over the medium term. Such anchoring is a prerequisite for monetary policy to make its contribution towards supporting economic growth and job creation in the euro area.』

このような状況において、ユーロ圏におけるコストや賃金や物価の上昇圧力は金融政策で見通しをする期間中緩やかなものになり、同時にマネタリーの拡大も引き続き緩やかなものになるでしょう。全体としては中期的に物価の安定は確保され、ユーロ圏のインフレ期待も中期的に2%をわずかに下回るというECBの目標に沿ってアンカーされるでしょう。このアンカーはECBの金融政策にとって求められているものです。


・流動性供給は「ユーロ圏の銀行の流動性を確保するため」

『In its continued efforts to support the liquidity situation of euro area banks, and following the coordinated central bank action on 30 November 2011 to provide liquidity to the global financial system, the Governing Council today also decided to adopt further non-standard measures. These measures should ensure enhanced access of the banking sector to liquidity and facilitate the functioning of the euro area money market. They are expected to support the provision of credit to households and non-financial corporations. In this context, the Governing Council decided:』

ということで、後でQ&Aの所に出てくるのですが、この辺のロジックがかなり明快で、「利下げは経済見通しによるもの」「流動性供給はユーロ圏金融市場の緊張に対応するもの」ときっちりと話を分けているのがECBクオリティでございます。


・今回の流動性供給措置は良く考えると結構なサービス内容なのですが・・・・・

以下詳細である。

『First, to conduct two longer-term refinancing operations (LTROs) with a maturity of 36 months and the option of early repayment after one year. The operations will be conducted as fixed rate tender procedures with full allotment. The rate in these operations will be fixed at the average rate of the main refinancing operations over the life of the respective operation. Interest will be paid when the respective operation matures. The first operation will be allotted on 21 December 2011 and will replace the 12-month LTRO announced on 6 October 2011.』

何と36か月物の固定金利フルアロットメントオペの実施とは太っ腹。と思ったら更に太っ腹な事に、このオペは1年後に途中で返済することも可能という設定。このため従来の12か月物固定オペがこのオペに置き換わるのですけれども、これまたこの先にあるのですが、EUとかの経済見通しって2013年までしか出ていないのですけれども、今回のオペは36か月で実施ですから経済見通し期間以上のオペを実施という事です罠。

まあ先ほど申し上げましたように、こちらは経済見通しによるものではなく、金融市場の緊張緩和の為のオペであること、適用金利は固定と言いましても正確には「期間中のMRO適用金利の平均値」なので途中で利上げがあったらその分は反映されるという面はありますが、それにしても3年オペって中々大胆ではございます。


『Second, to increase collateral availability by reducing the rating threshold for certain asset-backed securities (ABS). In addition to the ABS that are already eligible for Eurosystem operations, ABS having a second best rating of at least “single A” in the Eurosystem harmonised credit scale at issuance, and at all times subsequently, and the underlying assets of which comprise residential mortgages and loans to small and medium-sized enterprises, will be eligible for use as collateral in Eurosystem credit operations. Moreover, national central banks will be allowed, as a temporary solution, to accept as collateral additional performing credit claims (namely bank loans) that satisfy specific eligibility criteria. The responsibility entailed in the acceptance of such credit claims will be borne by the national central bank authorising their use. These measures will take effect as soon as the relevant legal acts have been published.』

2番目が担保基準の緩和。ABSに関しては2番目に高い格付けがシングルA相当のものまで担保適格となるように緩和され、住宅ローンや中小企業向けローンの証券化商品についてもECBの担保適格になる(この辺に関してはそもそもの担保基準をあたくし不勉強にしてちゃんと理解していないので読み間違えているかもしれませんので念のため)。それから「バンクローン」と言われるものも適格担保になるという話のようです。まあ緩和しているんでしょ。


『Third, to reduce the reserve ratio, which is currently 2%, to 1%. This will free up collateral and support money market activity. As a consequence of the full allotment policy applied in the ECB’s main refinancing operations and the way banks are using this option, the system of reserve requirements is not needed to the same extent as under normal circumstances to steer money market conditions. This measure will take effect as of the maintenance period starting on 18 January 2012.』

2012年1月18日からの積み期間以降の準備預金率を2%から1%に引き下げて、担保繰りを楽にしますよという話。まあもともとECBは準備率が他の主要国中銀と比べて高めになっていて無駄に準備預金を積ませている(ので逆に預金ファシリティーとかが昔からあった)というイメージがあったので、まあこれはこれでほほーという感じですが、ここの部分を見ても欧州金融市場では「レートの前にアベイラビリティ」という雰囲気になっているんでしょうなあと思うのでありました。

もし担保繰りに余裕がある(今の日本のように)という事でしたらば、別に準備率下げてもはあはあそうですかで終了してしまう(どちらかと言えば「それよりも所要準備にも付利して欲しいですお」とか言い出しそう)のでして、これが対策となるという時点でアレなものを感じるのでございました。


『Fourth, to discontinue for the time being, as of the maintenance period starting on 14 December 2011, the fine-tuning operations carried out on the last day of each maintenance period. This is a technical measure to support money market activity.』

4番目はテクニカルな話でして、積み最終日に実施している調整吸収オペレーションを行いませんですお!という話ですが、これを行わない事によって理屈の上では積み最終まで粘れば預金ファシリティ金利までインターバンクの翌日物金利が低下するよという話になりますので、まあこれは市場が正常化してきた時には効果が出るかもしれませんねという感じでしょうか。


・景気見通しに関して

という発表の後に景気見通しの説明になります。

『Let me now explain our assessment in greater detail, starting with the economic analysis. Real GDP in the euro area grew by 0.2% quarter on quarter in the third quarter of 2011, unchanged from the previous quarter. Evidence from survey data points to weaker economic activity in the fourth quarter of this year.』

というのが現状認識。

『A number of factors seem to be dampening the underlying growth momentum in the euro area. They include a moderation in the pace of global demand growth and unfavourable effects on overall financing conditions and on confidence resulting from ongoing tensions in euro area sovereign debt markets, as well as the process of balance sheet adjustment in the financial and non-financial sectors.』

基調的な景気のモメンタムを悪化させる要因は(1)世界経済の需要の弱さ、(2)ユーロ圏におけるソブリン問題、およびバランスシート調整問題によってもたらされる望ましくない影響、という所ですな。

『At the same time, we expect euro area economic activity to recover, albeit very gradually, in the course of next year, supported by resilient global demand, very low short-term interest rates and all the measures taken to support the functioning of the financial sector.』

同時にユーロ圏の経済は 来年には極めて緩やかながら回復をするでしょうと期待していますと。それをサポートするのは回復力に富むグローバルな需要および低金利と金融セクターの機能維持に向けた政策です。

で、EUの見通しの説明があるのですがそこは割愛してその先。

『In the Governing Council’s assessment, substantial downside risks to the economic outlook for the euro area exist in an environment of high uncertainty. Downside risks notably relate to a further intensification of the tensions in euro area financial markets and their potential spillover to the euro area real economy. Downside risks also relate to the global economy, which may be weaker than expected, as well as to protectionist pressures and the possibility of a disorderly correction of global imbalances.』

ダウンサイド列挙キタコレという感じですが、(1)ユーロエリアの金融問題のスピルオーバー、(2)世界経済が予想よりも弱いかもしれない、(3)グローバルインバランスの無秩序な修正過程におけるリスク回避の動きの拡大、というのが挙がっていますな。


・物価見通しは「おおむねバランス」が継続

でまた飛びまして。

『The Governing Council continues to view the risks to the medium-term outlook for price developments as broadly balanced. On the upside, the main risks relate to further increases in indirect taxes and administered prices, owing to the need for fiscal consolidation in the coming years. The main downside risks relate to the impact of weaker than expected growth in the euro area and globally.』

というのが物価の話ですが、まあ大体いつも通りの話。物価の上方リスクとしては「間接税の引き上げおよび政府関連価格の上昇」、下方リスクとしては「ユーロ圏および世界経済の予想よりも弱い成長」というお話であります。


・銀行のバランスシートの健全性が重要

更に後の方になりますが。

『The soundness of bank balance sheets will be a key factor in reducing potential negative feedback loop effects related to tensions in financial markets, thereby facilitating an appropriate provision of credit to the economy over time. The agreement of the European Council of 26 October to proceed with the increase in the capital position of banks to 9% of core Tier 1 by the end of June 2012 should improve the euro area banking sector’s resilience over the medium term. In this respect, it is essential that national supervisors ensure that the implementation of banks’ recapitalisation plans does not result in developments that are detrimental to the financing of economic activity in the euro area.』

ということで、銀行のバランスシートの健全性が経済と金融の負のフィードバックを避けるために重要という話をしつつ、そのバランスシート健全化がユーロ圏の経済活動を阻害しないように注意すべきという中々無茶振りな話を。


・財政改革と構造改革が重要とな

説明の最後の所は財政改革と構造改革の話だがめんどいので引用だけ。

『Turning to fiscal policies, all euro area governments urgently need to do their utmost to support fiscal sustainability in the euro area as a whole. A new fiscal compact, comprising a fundamental restatement of the fiscal rules together with the fiscal commitments that euro area governments have made, is the most important precondition for restoring the normal functioning of financial markets. Policy-makers need to correct excessive deficits and move to balanced budgets in the coming years by specifying and implementing the necessary adjustment measures. This will support public confidence in the soundness of policy actions and thus strengthen overall economic sentiment.』

『To accompany fiscal consolidation, the Governing Council has repeatedly called for bold and ambitious structural reforms. Going hand in hand, fiscal consolidation and structural reforms would strengthen confidence, growth prospects and job creation. Key reforms should be immediately carried out to help the euro area countries to improve competitiveness, increase the flexibility of their economies and enhance their longer-term growth potential. Labour market reforms should focus on removing rigidities and enhancing wage flexibility. Product market reforms should focus on fully opening up markets to increased competition.』

ということで時間が無くなってしまったので質疑応答の方が後回しになってしまいましたが、今回の会見はまあ延々と「ECBは国債の買入を拡大しないのか?」→「ECBは財政ファイナンスは行いませんですお!」というのが続くという中々お洒落な会見でございました、というのを一応申し上げておきますです、はい。

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2011/12/09

○ECBは「金融環境の緩和はするけど財政マネタイズはしませんよ」ですかそうですか

利下げ実施ですかそうですか
http://www.ecb.int/press/pr/date/2011/html/pr111208.en.html

36か月のオペ実施や準備率の引き下げとか担保掛目緩和とか
http://www.ecb.int/press/pr/date/2011/html/pr111208_1.en.html

ということでまずは利下げのリリースから。

『At today’s meeting the Governing Council of the ECB took the following monetary policy decisions:

1.The interest rate on the main refinancing operations of the Eurosystem will be decreased by 25 basis points to 1.00%, starting from the operation to be settled on 14 December 2011.

2.The interest rate on the marginal lending facility will be decreased by 25 basis points to 1.75%, with effect from 14 December 2011.

3.The interest rate on the deposit facility will be decreased by 25 basis points to 0.25%, with effect from 14 December 2011.』

コリドアも含めてすべてフルスライドで25bp引き下げとな。

でもって次の方ですが・・・・・・・・

『8 December 2011 - ECB announces measures to support bank lending and money market activity』

という方がほほうという感じなのですが。

『The Governing Council of the European Central Bank (ECB) has today decided on additional enhanced credit support measures to support bank lending and liquidity in the euro area money market. In particular, the Governing Council has decided:』

『To conduct two longer-term refinancing operations (LTROs) with a maturity of 36 months and the option of early repayment after one year. 』

36か月物LTROキタコレ。

『To discontinue for the time being, as of the maintenance period starting on 14 December 2011, the fine-tuning operations carried out on the last day of each maintenance period.』

当面は準備預金積み期間の積み最終日におけるfine-tuning operation(資金吸収オペ)の実施を停止すると言う風に理解しましたけどそれで大丈夫かな(汗)。

『To reduce the reserve ratio, which is currently 2%, to 1% as of the reserve maintenance period starting on 18 January 2012. As a consequence of the full allotment policy applied in the ECB’s main refinancing operations and the way banks are using this option, the system of reserve requirements is not needed to the same extent as under normal circumstances to steer money market conditions.』

1月18日からの準備預金積み期間における現在の2%の法定準備率を1%に引き下げ、所要準備を下げることによって調達圧力を緩和しようって事のように読めます。

『To increase collateral availability by (i) reducing the rating threshold for certain asset-backed securities (ABS) and (ii) allowing national central banks (NCBs), as a temporary solution, to accept as collateral additional performing credit claims (i.e. bank loans) that satisfy specific eligibility criteria. These two measures will take effect as soon as the relevant legal acts have been published.』

担保掛目の緩和とか、適格担保基準の緩和とかが入っていますな。


・・・・・・・ということで、利下げはするわ各種流動性供給については結構頑張ってやっているように見えるのですが、市場の反応はこの有様。

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTJE7B700A20111208
ECBが25bp利下げ、国債購入拡大・IMF融資案には否定的
2011年 12月 9日 05:23 JST

『[フランクフルト 8日 ロイター] 欧州中央銀行(ECB)は、8日開催した理事会で、ユーロ圏経済の支援に向け25ベーシスポイント(bp)の利下げを決定した。だが包括的な危機対策として浮上していた国債買い入れ拡大や国際通貨基金(IMF)への融資案については否定的な立場を示し、市場の期待に水を差した。』(上記URLより)

・・・・・・いやお前ら期待する方がおかしいだろと思うのですが、まあこうなってくるとコミニュケーションポリシーは難しいっすなあという話で。

#会見に関しては時間も無いので今日はスルーで勘弁

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2011/12/07

○昨日の続きを少々

と思ったのだが寝坊の為本日はコンプリート困難である(汗)。

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/yellen20111111a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/yellen20111111a.pdf

Vice Chair Janet L. Yellen
At the Fourteenth Annual International Banking Conference, Federal Reserve Bank of Chicago, Chicago, Illinois
November 11, 2011
Pursuing Financial Stability at the Federal Reserve

後半の『Identifying and Addressing Cyclical Forms of Systemic Risk』の所から。


・循環的な形でやってくるシステミックリスクに対して、まあ監督が増えそうな話ですな

『Turning next to cyclical forms of systemic risk, we are working to develop good measures of such risks, to monitor them on an ongoing basis, and to be aware of how they could unwind in a destabilizing way.』

で、何をしているかというのが以下。

『On that score, at the Federal Reserve, we regularly monitor measures of leverage and maturity mismatch at financial intermediaries, and we look at asset valuations, underwriting standards for loans, and credit growth for signs of a credit-induced buildup of systemic risk. We also monitor various systemic risk measures for the largest banking firms. 』

ということで、金融仲介業者のレバレッジのミスマッチの大きさやら、ローンの基準やらクレジットの成長などを注視するし、大きな銀行に対する各種のシステミックリスクもモニターするとな。

『These measures capture financial market perceptions of the risk such a firm could impose on the broader financial system were it to become stressed. Such measures are based on firms' stock prices, credit default swap premiums, and stock price volatility, as well as the correlation in asset prices across firms.』

でまあ金融市場のモニタリングもするとかいう話ですな。んでもってこの次にストレステストについてと、その進化状況についての話がありますがその辺はスルー。


『Another important element in identifying financial-sector vulnerabilities is the continued vigilance to the financial risks that might emerge in parts of the financial sector for which data are very scarce or that have developed more recently and are thus less well understood.』

もう一つの重要な部分は、今まで認識されていないリスクに対する警戒だとか仰せのようです。

『The regulatory community has been working hard to fill these knowledge gaps. For example, in response to the need to improve the monitoring of leverage, particularly outside of the traditional banking system, the Federal Reserve instituted in 2010 a quarterly survey on dealer financing terms (the Senior Credit Officer Opinion Survey on Dealer Financing Terms). 』

ほほう。

『This survey collects qualitative information on the leverage that dealers provide to financial market participants in the repo and OTC derivatives markets. This information complements the data on counterparty credit exposures that supervisors collect on a confidential basis from large, complex financial institutions and higher-frequency data on liquidity profiles.』

『In addition, the Board staff is working in the context of the flow of funds accounts to develop measures of reliance by nonfinancial businesses on nonbank, volatile sources of funds--that is, the shadow banking sector. Such measures would permit us to track this source of risk through the business cycle.』

何か結構いろいろな所に広範に網を掛けてモニターするという話ですが・・・・・・

『Cyclical vulnerabilities seem relatively quiescent at present.』

現状はこのような循環的な問題は特段起きている訳では無いです。としておりますが・・・・

『Still, such vulnerabilities could easily emerge, especially once the economy starts to expand more robustly.』

キタコレではあるのですが、それがいわゆるBISビュー方向にならないのがFEDクオリティ。

『Regulators need to look ahead and be ready to respond. A number of macroprudential policy tools could, in principle, be used to address heightened cyclical vulnerabilities--some of which have been used in other countries and others that have been proposed but not yet tried.』

ということで、昨日引用した部分でもイエレン副議長は指摘していましたが、あくまでも規制監督に関わるマクロプルーデンスを使っていく、という話ではあります。

『Examples of tools that have been used in other countries include time-varying caps on mortgage loan-to-value ratios and household debt-to-income ratios, which have been used in Korea and Hong Kong, and dynamic provisioning for losses by banks, which has been employed in Spain. The Basel III package of reforms that was agreed to last year includes a countercyclical capital buffer that can be imposed when excessive growth of risk-taking in credit markets results in an unacceptable level of systemic risk.』

『Another policy that has been put forward but not yet tried is countercyclical margins and haircuts for funding contracts, as proposed by the Committee on the Global Financial System.』

ということで、いくつかの例がでていますが、多くのマクロプルーデンスツールはまだ実際に試されていませんねという話もしています。すなわち・・・・・

『Of course, U.S. policymakers will need to examine such policy tools in depth before implementing them here. As a first step, policymakers need to establish that countercyclical policy tools address cyclical vulnerabilities more effectively than simpler tools that are constant over the course of the cycle do.』

実現例のない政策ですから実際に大々的に行う前に試すというのが必要でしょうという話ですが、最初のステップとしてはカウンターシクリカルなツールの有効性についての検証って所ですか。

『In addition, in taking lessons from abroad, policymakers need to be aware of institutional differences that may prevent tools from having the same effects in the United States as they do elsewhere.』

こらまあその通りで、金融の構造が国によって違うのですからそのまま海外の事例を持って来ればよろしい、という話ではないです罠という事ですが、かつて散々日本にああだこうだ言って下さった逆さ絵おじさんにも是非その話をしてあげてください。

『A further issue is that the literature on the efficacy of macroprudential tools in limiting the buildup of cyclical systemic risks is still at an early stage. Even for policies that have been used in other countries, the number of papers that evaluate their effectiveness is relatively small, and isolating the effect of a specific policy amid an array of economic and financial developments is a persistent challenge. Nonetheless, these papers are encouraging--at least to the further consideration of the use of cyclical policy tools--and this literature, which also includes more theoretical analyses of such policies, is a vibrant and growing one that should yield useful insights in coming years.』

後半はだいぶ手抜きモードになってしまいましたが、とりあえずマクロプルーデンスの話はこの辺までです。以下欧州債務問題について懸念を強くしているとゆー話があって、最後にまとめがありますが、たぶんそれはネタにしない方向で(汗)。

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2011/12/06

○またまた虫干しネタで恐縮ですがイエレン副議長の「Financial Stability」に関する講演から

11月11日の講演ネタを今さらで恐縮ですが。
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/yellen20111111a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/yellen20111111a.pdf

Vice Chair Janet L. Yellen
At the Fourteenth Annual International Banking Conference, Federal Reserve Bank of Chicago, Chicago, Illinois
November 11, 2011
Pursuing Financial Stability at the Federal Reserve

というお題で講演をしているのですが、これはまあ目先の金融政策云々とは別の話になるとは思うのですが、今後の金融規制とかの方向性についての示唆があるんじゃないかと思いつつ読んだら割とオモロカッタのですが、ネタにするのが遅れてどうもすいません。PDFで実質12ページですが、比較的読みやすい(ただし土地勘のある人向け)かと存じます。

冒頭にありますように、この回の講演はシカゴ連銀のコンファレンスでの講演でして、そもそもコンファレンスのお題がFinancial Stabilityだったりするのでこういう話から始まっています。

『Let me begin by thanking the Federal Reserve Bank of Chicago for inviting me to participate in this important conference on the role of central banks in financial stability. As you know, the Dodd-Frank Wall Street Reform and Consumer Protection Act of 2010 (Dodd-Frank Act) assigned the Federal Reserve a central role in the new framework for achieving and maintaining financial stability. I am grateful for this opportunity to explain how we, together with other regulators, have been moving forward to fulfill our new responsibilities.』

ということで、financial stabilityの観点から金融監督やら規制当局としてのFEDのフレームワークについてのお話をする、という事です。


・新たな規制や監督のフレームワークは「マクロプルーデンスアプローチ」

でその次。

『The Dodd-Frank Act instituted substantial changes to financial-sector supervision and regulation in the United States in direct response to the serious deficiencies in the regulatory framework that were revealed, all too painfully, by the financial crisis and the associated deep recession.』

と、今次金融危機によって従来の金融規制や監督に関する制度的な枠組みには重大な欠陥がある事が分かったので、いわゆるドッドフランク法でこれらの見直しを行っていますとか仰せのようですな。

『One key change was the requirement that U.S. financial regulators take a "macroprudential approach" to supervision and regulation.』

マクロプルーデンスキタコレ。

『In my remarks today, I want to describe how this approach is being put into practice at the Federal Reserve. I will touch on both our own regulatory and supervisory responsibilities and our responsibilities as a member of the multiagency Financial Stability Oversight Council (FSOC), which the Dodd-Frank Act established to promote a more comprehensive approach to monitoring and mitigating systemic risk.』

ということで、その点に関する政策の枠組みのほかに、FEDおよびドッドフランク法で制定されるより包括的なモニタリングおよびシステミックリスクの監督機関であるFSOCの役割に関しての話をしますとか仰せになっているように読みました。


・マクロプルーデンスは「金融監督、規制」が基本ですと

で、その次ですけれども、イエレンさんはのっけからこのような話をしていまして、マクロプルーデンスの観点という話が出てはいるものの、その内容としてはいわゆるBISビュー的な不均衡の拡大に対するプリエンティブな金融政策での対応というような話ではなく、あくまでも(これはまあティンバーゲンルール的にはさよですなという所ではありますが)監督や規制によって実行していく、ということのようです。という訳で引用。

『I should note that an important part of putting the macroprudential approach into practice is establishing a new regulatory infrastructure, including the FSOC and its working-committee structure.』

で、その他の監督機関などもこの観点から新たな枠組みの構築を図るべしという事のようで。

『In addition, individual regulatory agencies have made organizational changes needed to fulfill their new responsibilities. At the Federal Reserve, we have reoriented our supervision of large bank holding companies, and we have created a new office called the Office of Financial Stability Policy and Research, which plays a key role in monitoring financial risks, analyzing the implications for financial stability, and identifying approaches for mitigating identified risks.』

FEDはfinancial stabilityの観点から金融のリスクを分析する「Office of Financial Stability Policy and Research」という部署を新たに立ち上げましたとの事です。


・マクロプルーデンスアプローチの概要について

次のコーナーの小見出しが『Overview of the Macroprudential Approach』です。

『The explicit incorporation of macroprudential considerations into our structure for financial regulation and oversight represents a major innovation in our thinking about how financial stability is most effectively achieved. In contrast to the traditional, or "microprudential," approach to regulation and supervision, which focuses on the safety and soundness of individual financial institutions, markets, and infrastructures, the macroprudential approach also calls for attention to the financial system as a whole.』(原文は「as a whole」が斜字体)

最初はマクロプルーデンスとは何ぞやという話で、従来のミクロプルーデンスや伝統的な規制監督は個別の金融機関や市場の安全性や健全性を対象にしていましたが、マクロプルーデンスという概念は金融システムを「全体として」注視するとの事ですな。

『In particular, financial institutions are typically linked together in a complex web of relationships, and hence the sudden failure of a single institution can generate spillover effects on other firms and potentially place the entire financial system at risk. Such externalities are most evident for very large institutions and financial market utilities but may also arise within a set of small or medium-sized firms that are engaged in activities with highly correlated returns.』

金融機関は複雑なクモの巣のように互いに連関しているので、一つの金融機関の突然の破綻は他の金融機関に対して影響を与え、金融システムをリスクに晒します(キリッ)とか抜かしておりますが、何ちゅうかね、日本の97年の三洋、北拓、山一の破綻処理時に金融市場の激しい緊張を経て得た教訓をリーマンショックの時に全然生かさずに、リーマンブラザースを突然法的整理しやがったお前ら(大体からしてバーナンキ議長は恐慌の研究者じゃねえのかよ)にドヤ顔でそういう事を言われましても「今さら気が付いたのかよてめえらふざけるな」などとつい思ってしまうのですがまあそれは兎も角。


『Therefore, the macroprudential approach focuses on achieving financial stability by reducing systemic risk--that is, the risk of a financial disruption that is severe enough to inflict significant damage on the broader economy. Ideally, this approach is done through preemptive policies that restrain risks to the financial system before they develop into crises.』

ということで、金融のシステミックリスクをどう「プリエンティブ(予防的)」に抑制するか、というのがマクロプルーデンスのアプローチですという話ですな。

『Macroprudential policies address several forms of systemic risk. One form of risk can be described as structural--such as the presence of systemically important financial institutions (SIFIs) or systemically important payment, clearing, or settlement infrastructures or activities, whose failure or financial distress could have outsized destabilizing effects on the rest of the financial system.』

その一つはシステム的に重要な金融機関や、決済機関や清算機関のような重要な機関のリスクというストラクチャー的なリスクの形ですということで、まあ最近ではSIFIsが沢山列挙されて資本増強しやがれコノヤローという話が出ていましたわな。

『Another form of risk can be described as cyclical and includes, for example, elevated asset prices and excessive credit growth that arise in robust economic times but can leave the balance sheets of both large and small financial firms vulnerable to downturns in the credit cycle.』

ここはほほーという感じですが、もう一つのリスクとして循環的なリスクというのが挙げられてまして、その例として「経済が力強く拡大する中において、高騰した資産価格や過剰なクレジットの拡大が、クレジットサイクルにおける縮小局面において金融機関のバランスシートを毀損する件」を挙げているのはほほうという感じです。


・で、金融政策とマクロプルーデンス政策の関係ですが

この項目のまとめのパラグラフである。

『A key question for central banks is how macroprudential policies fit together with monetary policy. The evolving--though by no means settled--consensus is that monetary policy is too blunt a tool to be routinely used to address cyclical risks to financial stability, and that more-targeted micro- and macroprudential tools should be used to address these risks.』

つーことで、マクロプルーデンス政策と金融政策のフィットという問題に関しては、まだ確固とした結論が出ている訳ではありませんが、まあコンセンサスとしては「金融政策(=金利操作などのマクロ政策)はfinancial stabilityのリスクに対するcyclicalなリスク(=さっきの「クレジットサイクルにおけるバブル」みたいな件)に対して使うにはあまりにも繊細さに欠ける(bluntってのは、ぶっきらぼうとか刃の無いとかいう意味みたい)ので、通常はそれに対して割り当てる政策ではないですよね」ということだと仰せです。

『I agree that targeted prudential policies should be the first line of defense against threats to financial stability. However, because their effectiveness in practice is not yet proven, I would not rule out the possibility that monetary policy could be used directly to support financial stability goals, at least on the margin.』

イエレン副議長もこのコンセンサスに同意していまして、いわゆるティンバーゲンルール的な考えという事になるのでしょうが、financial stabilityを阻害するものに対する最初の防衛線は「ターゲットを定めたプルーデンス政策」であると言ってますが、その一方で「この効果はまだ証明されていないことから、金融政策がfinancial stabilityのゴールに向けて直接使われる事に対して、限界的な部分では排除する訳ではありません」とも指摘しています。


つーことで、まあ最後には一応そのような話を入れていますが、具体的な話が出てくるこの先の部分を読みますと、ひたすら監督と規制とモニタリングの話をしておりますので、いわゆるBISビュー的なアプローチという話にはならないのかなあとは思うのであります。

ただしですな、この前のバーナンキ議長講演(って10月のですが先日ネタにした奴)でもfinancial stabilityの話をしてましたけど、金融政策を直接的に金融不均衡に割り当てるという話については否定的という中でマクロプルーデンスのアプローチをしますお!という流れになった場合には、規制とか監督とかモニタリングとかが変な意味で力が入り過ぎになってしまうのではないかという懸念もある訳でして、しかも米国様の場合は「ワシらがこのようなアプローチを始めるんだからお前らもやりやがれ」的な話になってみたり、「米国がこのような監督をしているのだから日本もやらないと」とかどこぞの官庁が急に力こぶ入れてみたりというようなことが起きやすいのが金融屋的には気になる所ではございますな。


・Structural Forms of Systemic Riskに対する対応について

んな訳で次の章は『Identifying and Addressing Structural Forms of Systemic Risk』というお題の部分です。

『I want to turn now to structural sources of systemic risk and discuss how macroprudential policy can be used to mitigate them. Structural vulnerabilities may go largely unnoticed until they are exposed in financial crises--and at considerable cost. Indeed, many of the regulations now being implemented under the Dodd-Frank Act, as well as the international agreements relating to bank capital and liquidity standards, are a reaction to the events of 2007 through 2009.』

『Such responses include regulations and reforms that address risks resulting from the existence of SIFIs and systemically important financial market utilities (FMUs) as well as other efforts to improve the resilience of important financial markets and infrastructure.』

金融危機が発生して明らかになるまでは中々Structuralな脆弱さが表面化しないものであり、発生した時には大きなコストが発生するということで、国際的な資本や流動性規制や、米国ではドッドフランク法などでSIFIsやシステム的に重要な市場機関に対する規制や監督が進められていますと。

で、具体的にどのような事になりましたという説明部分の引用はスルーしますが、監督権限の拡大や資本増強の要求、および金融機関の合併による巨大化が起きる場合の監督といった問題や、連邦預金保険公社における金融機関に「improved resolution planning by firms and an orderly liquidation authority」という新しいツールを付与しましたという話をしています。

で、そのパラグラフの最後にこんなのが。

『The act also requires centralized clearing of standardized over-the-counter (OTC) derivatives and introduces margin requirements for noncleared derivatives and other measures to strengthen the integrity and functioning of financial markets.』

ドッドフランク法ではOTCデリバティブの集中決済も要求という話ですな。

『Efforts to develop these rules have been progressing well. The Federal Reserve will soon release for comment its proposed rule on enhanced prudential standards that would apply to large bank holding companies and systemically important nonbank financial firms. It also recently approved a final rule implementing the resolution plan requirement.』

ということで、これらに関するコメントは早急にリリースされますという話ですが、あたくし不勉強にしてその辺フォローしてないので後で調べます、つーか誰かしってたら教えてケロ。

『Let me note that in these instances, as in all its rulemaking responsibilities, the Federal Reserve is attentive to aligning the rules required by the Dodd-Frank Act with international agreements, such as higher capital standards and new liquidity standards for large banks and capital surcharges for the largest global SIFIs.』

ほほう。


・FMUsや重要なノンバンクの監督

『The Federal Reserve, working with other financial regulators, has issued a number of proposed and final rules relating to such areas as the centralized clearing of derivatives, swap margin requirements, and the designation of systemically important FMUs and nonbank financial firms.』

ということで、システム的に重要な市場機関とかノンバンクとかのに対するレギュレーションも策定中との事ですな。

『The proposed rule for designating nonbank financial firms was put out for comment in October. This rule specifies a process for designating such institutions, starting by analyzing firms that exceed a size threshold and exhibit characteristics, including excessive leverage and reliance on short-term funding, that could contribute to systemic risk if the firm were to become distressed.』

ほほうという感じですが、この辺りのオーバーサイト監督に関しては脚注に『See Financial Stability Oversight Council (2011), "Authority to Require Supervision and Regulation of Certain Nonbank Financial Companies", second notice of proposed rulemaking and proposed interpretive guidance (FR Doc. 2011-26783), Federal Register, vol. 76 (October 18), pp. 64264-83.』とございますので、そこ読めという話なのでしょうがさすがに読む気力は湧かないので誰か教えてジェネラル。


・MMFに関する規制

『Less-discernible progress has been made to date, however, in addressing other key vulnerabilities that came to the fore during the financial crisis. Indeed, short-term funding markets remain an important source of structural risk.』

短期金融市場も重要なストラクチャルリスクの発生源になりますよね、というまあそれはそれで当たり前の話。

『Despite some significant reforms that enhance liquidity and impose additional restrictions on portfolios, money market funds are still susceptible to liquidity constraints largely because of attributes like their rounded net asset value (NAV) feature and the low risk tolerance of their investors.』

MMFのポジション規制キタコレ。

『Options for further reforms being considered by the Securities and Exchange Commission (SEC) include a mandatory floating NAV to mute the incentive for investors to be the first to redeem, capital buffers to allow funds to deal better with actual and potential losses while sustaining a stable NAV, and limits on redemptions both to provide more time for fund managers to address problems and to emphasize to investors that money market funds do not guarantee bank-like liquidity.』

MMFのNAVに対するエクスポージャーや流動性に対する規制の強化という話でございますが、これってやり過ぎると短期金融市場でのリスクマネー供給能力が極端に落ちてしまうというリスクもあるのでどうなんでしょうねという感じですが、これに関しましても脚注に『Box D of the FSOC 2011 annual report provides a fuller discussion of the financial-sector vulnerabilities implied by money market funds. See Financial Stability Oversight Council (2011), Financial Stability Oversight Council 2011 Annual Report (Washington: FSOC), "Box D: Money Market Funds," pp. 50-51.』とありますが、当然ながら読んでませんので誰か読んでくださいお願いしますお願いします。


・トライパーティーレポの規制

んでその次ですが、段々話が細かくなってまいりました。

『The triparty repurchase agreement (repo) market also continues to exhibit important vulnerabilities. In particular, the settlement process for triparty repo trades continues to rely on massive amounts of intraday credit and, as a result, remains vulnerable to a decision by a clearing bank to withhold funding from a market participant in default or perceived as facing distress.』

確かにレポ市場が飛ぶとそれはもう大変な騒ぎになりますわな。

『The FSOC has recommended reforms to deal with these problems, and an industry task force has taken some key initial steps in that direction--for example, by coordinating the implementation of a robust confirmation process for triparty trades.』

ほほう。

『But more needs to be done. Indeed, given the centrality of this market to the financial system, taking further steps to reduce its vulnerabilities should be given a high priority.』

ということで、レポ市場に対しての規制や監督の話も更に進化の予定との事ですが、MMFとかレポとかがシャドウバンキング規制というような文脈で話が出ている部分だと思われます。


・ETFとか担保付CPなどのような新しい金融商品(ストラクチャー物)に対してまで話が進む

その次はこんな話を。

『In addition to addressing the unfinished business from the financial crisis, financial stability authorities and market participants need to be alert to new structures and products, not just those that caused problems in the past.』

ということで、過去は別にそれで金融危機を起こした訳では無いものですが、そういう物に対しても網をかけましょというような結構アレなお話。

『New financial products--for example, exchange-traded funds and collateralized commercial paper--may foster more efficient intermediation, but they may also raise systemic risk if they increase the complexity and interconnectedness of the financial system.』

まあプリエンティブな対応ということですから仕方ないのかも知れませんが、網が随分とこらまた底引き網状態ですなあという感じでございます。

『Authorities need to collect data and monitor risks associated with new products before the risks become salient. To improve the quality of financial-sector data and facilitate the analysis of data for the FSOC and its member agencies, the Dodd-Frank Act created the Office of Financial Research within the Treasury Department.』

それらの新たな金融商品に対するリスクの研究の為にドッドフランク法によって財務省に「Office of Financial Research」というのが出来たそうで、FSOCとこの機関がその手の研究をするみたいですな。

『The office has initiated a project to design a global classification system based on unique legal entity identifiers to identify parties to financial contracts. This system would allow market participants to better measure on a consolidated basis their counterparty risk across products and other dimensions.』

何か色々と研究して規制監督のかかりそうな話ですな。


・ヘッジファンドなどのモニタリングとな

この最後にはこんな話が。

『In addition, the SEC and the Commodity Futures Trading Commission recently issued a new reporting form for hedge funds and certain other private investment funds, which will provide more information on their size, concentration, funding, and investments; this additional information should shed some valuable light on an important segment of the financial sector for which we have not had consistent data.』

ということで、構造的なリスク対応という話ですが、この調子だと規制監督の強化方向に結構ガチガチでやりそうな勢いですなとは思います。ただまあ米国の事ですからこういう理念は出すものの結局骨抜きになるのがメリケンクオリティーかなあとか高括っている面はあったりするあたくしでございまする。

続きは明日以降ですが、完全に虫干しネタ企画でどうもすいませんでした

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2011/12/05

○11月FOMCネタの更に続きを少々(虫干しネタですいません)

11月FOMC議事要旨から少々ネタを。

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20111102.htm
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20111102.pdf


・ツイストオペの効果キタコレ・・・・なのか?

『Staff Review of the Financial Situation』の部分から。

『Longer-term Treasury yields declined appreciably following the release of the September FOMC statement.』

まあ確かに9月21日にFOMCありまして米国10年金利は22日には1.72%とかに低下してましたわな(20日が1.94%ね)。30年金利とかツイストオペ発表の2日で40毛位低下してましたな。

『Investors reportedly viewed the Committee's assessment of the economic outlook as more downbeat than anticipated. In addition, the announcement that the Federal Reserve would lengthen the average maturity of its portfolio by purchasing longer-term Treasury securities and selling an equivalent amount of shorter-term Treasury securities reportedly contributed to the decline in longer-term yields on the day.』

景気見通しの下げに加えてツイストオペのアナウンスが影響したとな。

『Yields on current-coupon agency MBS also moved lower on the announcement that the Federal Reserve would begin to reinvest principal payments on agency securities in agency MBS.』

MBSのイールドも下がったとな。

『Over the following weeks, movements in yields were driven by shifts in investors' assessments of the ongoing efforts to address the European fiscal and banking situation and by somewhat stronger-than-expected U.S. economic data.』

その後数週間の米債市場は欧州問題の拡大と、米国の経済指標の強さをにらみながら上がったり下がったりしましたとな。

『On balance since the September FOMC meeting, Treasury yields on shorter-dated securities and the expected path of the federal funds rate implied by money market futures quotes were not much changed. Yields on Treasury securities with maturities beyond 10 years moved down.』

短期ゾーンの金利は先行きの金融政策の予想を反映して変化なく、10年超の金利が低下しましたと。

『Measures of near-term inflation compensation derived from nominal and inflation-protected Treasury securities rose slightly over the intermeeting period, while similar measures of longer-term inflation compensation were about unchanged.』

市場金利からインプライされるインフレ期待は短いタームで若干上昇して長いタームではあまり変化はありませんでしたと。

・・・・・・・まあ何だ、あまり露骨にそうだという話はしてないのですが、どうもツイストオペの効果で長期金利が下がったよと思いっきり言いたいようなのですが、それって本当にオペ効果なのか、単なる欧州問題なのかって良く判らん話じゃないのという気がするんですけどにゃあと思うのでありまするが。


・欧州問題が下振れリスクという話は思いっきりありましてですな・・・・・

ちょうどこのFOMCの時点でパパンドレウ首相の国民投票発言が出て急に大騒ぎモードが始まっていたというタイミングでしたが、この時点でも既に景気の下振れリスクに関して欧州債務問題→金融問題→実体経済の悪化という指摘を全力で行っていまして、まあその後はご案内の展開になっているのですけれども、FOMCは次回の会合でこの辺りの下振れに関してどのような判断を下すのかは注目したい所ですな。

でまあ欧州の話はあちこちで繰り返されてますが、『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』の所から適当に。

『In their discussion of the economic situation and outlook, meeting participants regarded the information received during the intermeeting period as indicating that economic growth had strengthened somewhat in the third quarter, reflecting in part a reversal of temporary factors that had weighed on the economic recovery in the first half of the year. Participants noted that global supply chain disruptions associated with the natural disaster in Japan had diminished, and that the prices of energy and some commodities had come down from their recent peaks, easing strains on household budgets and likely contributing to a somewhat stronger pace of consumer spending in recent months. More broadly, final demand from consumers and businesses was stronger than had been expected at the time of the September FOMC meeting.』

米国経済に関してはこのFOMC議事要旨での報告とかでもそうなのですが、上記のように足元の米国経済に関しては年前半の一時的な落ち込み要因(日本の震災によるサプライチェーンの毀損の影響や国際商品市況の高騰)が剥落した事もあって、景気の拡大ペースは予想よりやや強まっている、という話になっている点も一応ノートしておくべきでしょうな。

『Nonetheless, most participants anticipated that the pace of economic growth would remain moderate over coming quarters. While they believed that the economic recovery would continue to be supported by accommodative monetary policy, ongoing improvements in households' and businesses' financial positions, and pent-up demand for goods and services, a number of factors were seen as likely to continue to restrain the pace of economic growth.』

でもまあ先行き見通しは相変わらず「今後数四半期にわたっての米国経済成長ペースは緩やかなものにとどまる」という見込みは変わらずでして、経済成長要因としては緩和的な金融環境、企業や家計のバランスシート改善、ペントアップ需要などを挙げつつ、「多くの要因が経済の成長を阻害すると見られる」としています。

『Those included persistent weakness in the labor and housing markets, still-tight credit conditions for many households and small businesses, low consumer and business confidence, fiscal consolidation at all levels of government, and elevated volatility in financial markets.』

で、そら何ですかというと、労働市場や住宅市場の弱さとか、家計や中小企業のクレジット環境が以前としてタイトとか、消費者や企業のコンフィデンスが弱いとか、公的部門の財政再建要因とか、金融市場のボラ上昇を挙げていますわな。

『Moreover, the recovery was still subject to significant downside risks, including strains in global financial markets.』

で、最後にとどめとしてグローバル金融市場の緊張について「significant downside risks」キタコレという感じですが、まあこんな感じの認識を連銀スタッフの説明部分とかでも示していまして、まあ明らかにこの点についての懸念を強く示している、というのが今回のFOMC議事要旨における特色の一つかなと思います。

以下インフレ見通しの部分についてはここの所判で押したように同じ認識を示しているので引用だけ。

『With longer-term inflation expectations remaining stable, the effects of earlier increases in the prices of energy and other commodities continuing to wane, and low levels of resource utilization restraining increases in prices and wages, most participants anticipated that inflation would settle, over coming quarters, at or below levels they judged to be most consistent with their dual mandate.』


・住宅市場の構造問題が金融政策の波及チャネルに悪影響を与えるとな

そのちょっと先の先行き見通しの部分に参りますとこんな話が。

『While recent incoming data suggested reduced odds that the economy would slide back into recession, participants still saw significant downside risks to the outlook for economic growth.』

リセッション入りのリスクは低下したものの、先行き見通しに関しては「顕著なダウンサイドリスク」がありますとな。

『Risks included potential spillovers to U.S. financial markets and institutions, and so to the broader U.S. economy, if the European debt and banking crisis were to worsen significantly.』

まず最初に先ほどと同じくですが欧州債務問題の拡大からの悪影響ですな。

『In addition, participants noted the risk of a larger-than-expected fiscal tightening and the possibility that structural problems in the housing market had attenuated the transmission of monetary policy actions to the real economy.』

ここ読んでて「おお!」と思ったのですけれども、「想定よりも強い財政引き締めのリスクと、住宅市場の構造的な問題が金融政策の波及効果を薄くする可能性」というのを示しているのが中々アレではないかと思うのです。

『It was also noted that the extended period of highly accommodative monetary policy could eventually lead to a buildup of financial imbalances.』

その上「長期的な極めて緩和的な環境が金融のインバランスを拡大するリスクも指摘された」とかFEDらしからぬ指摘まであるのもほほうという感じです。

『A few participants, however, mentioned the possibility that economic growth could be more rapid than currently expected, particularly if gains in output and employment led to a virtuous cycle of improvements in household balance sheets, increased confidence, and easier credit conditions.』

一部の人はまあこんな指摘もあるのねという所です。


・金融政策に関してですが・・・・・・・

最後の『Committee Policy Action』の部分なんですけどね。

『A few members expressed interest in using language specifying a period of time during which the federal funds rate was expected to remain exceptionally low, rather than a calendar date, arguing that such language might be better to indicate a constant stance of monetary policy over time. However, members generally preferred to retain the existing forward guidance, at least for now.』

ということで、少数名(A few)のメンバーは現在のガイダンス文言について、「特定の日」ではなくて「期間」を示した方がスタンスの変更が無いことを示すのに有効ではないかという指摘をしています。

『A few members indicated that they believed the economic outlook might warrant additional policy accommodation. However, it was noted that any such accommodation would likely be more effective if it were provided in the context of a future communications initiative, and most of these members agreed that they could support retention of the current policy stance at this meeting. 』

ということで、追加緩和が必要になっているという可能性についてこれまた少数名のメンバーが示唆していますが、このような追加緩和はコミュニケーションポリシーを伴って緩和するとより効果的という話をしていまして、何か12月のFOMCで何らかの追加緩和のようなものを実施するにしても、単純にQE3を実施するというよりは、コミュニケーションポリシーの変化によって追加的な緩和効果を期待するというような形になると思いますので、先日引用した部分にありましたような「コミットメントの改善」とか「見通しの示し方」のようなネタで勝負してくるのかなあと思われる節があるなあと思いましたです、はい。


・これは確かにそうですな

『With the Committee in the process of reviewing its monetary policy strategies and communication, and no additional accommodation being provided at this meeting, a few members indicated that they could support the Committee's decision even though they had not favored recent policy actions. 』

9月のFOMCで追加緩和に反対した3名(フィッシャー、コチャラコタ、プロッサー)は今回の決定には反対してませんが、まあ現状では金融政策やコミュニケーションのレビューをやっている最中ですし、今回の「変更なし」についての反対は特段実施しませんでしたということですがそらまあそうですなという所で。


・これはwwww

まあどうでも良いですがこんな指摘がありました。委員の経済見通し云々のちょっと前。

『It was noted that very low interest rates were negatively affecting pension funds and the profitability of the life insurance industry. 』

これは何というイイシテキダナー(運用担当者的に^^)

#まあそんな感じです。景気見通しがどうのこうのの所はまあ本文読んでちょというところで

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2011/12/02

○貫録のラッカー総裁クオリティ

今回の措置ですがリッチモンド連銀のラッカー総裁が反対とな。

http://www.richmondfed.org/press_room/press_releases/about_us/2011/fomc_dissenting_vote_20111130.cfm

November 30, 2011
Jeffrey M. Lacker, President, Federal Reserve Bank of Richmond Statement on Dissenting Vote at FOMC Meeting November 28, 2011
Richmond, Va.

『"On November 28, the Federal Open Market Committee voted 9 to1 to take coordinated action with other central banks to enhance their capacity to provide liquidity support to the global financial system. I participated in the FOMC vote as an Alternate to Charles Plosser, President of the Federal Reserve Bank of Philadelphia, who was unable to attend.』

今回はフィラデルフィア連銀のプロッサー総裁が欠席の為補充メンバーで投票したようですな(ちなみに来年はリッチモンド連銀は投票メンバー)。でもってFRBは28日に決定しているという事ですから、まあそう考えるとS&Pの29日の銀行格下げが予定されているのでその後に何かあったらテラヤバスなので先に米国が準備して各国の対応が揃うタイミングが30日だったのですかねとかしょうも無いことを考えてしまいました(^^)。

『"I dissented on the vote because I opposed the temporary swap arrangements to support Federal Reserve lending in foreign currencies. Such lending amounts to fiscal policy, which I believe is the responsibility of the U.S. Treasury. The Federal Reserve has provided and can continue to provide sufficient dollar liquidity through purchases of U.S. Treasury securities. I also opposed lowering the interest rate on swap arrangements to below the primary credit rate.』

ということで、(1)スワップ協定は財政政策の類である、(2)スワップレートを下げる(=資金供給レートを下げる)事によって貸出ファシリティーレートよりも低い金利にするのは反対です、という話。2番目に関してはよーするに「バックストップとしてのレートが貸出ファシリティーよりも低いというのはそらおめーバックストップじゃなくて市場介入じゃろ」という話ですな。

『"My views on central bank lending were also discussed in a November 16, 2011 speech."』

つまり読めという事ですねわかりますわかります週末時間があったら読みますわ^^;


#とか言ってるうちに時間がががががが

○11月1〜2日のFOMC議事要旨から少々(続き)

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20111102.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/fomcminutes20111102.pdf

冒頭の『Monetary Policy Strategies and Communication』の続き。

・名目GDPターゲットやプライスレベルターゲットについて

『The Committee also considered policy strategies that would involve the use of an intermediate target such as nominal gross domestic product (GDP) or the price level.』

ということで。

『The staff presented model simulations that suggested that nominal GDP targeting could, in principle, be helpful in promoting a stronger economic recovery in a context of longer-run price stability.』

何かこの連銀スタッフが出してくるモデルってホンマカイナという感じがするのでありますが、金融政策のコミットメントに関しても有用とか言ってるし、名目GDPターゲットとかそれさすがに実際にやるとなるとどうなのかと(市場の人的には)思ってしまうのも「モデルによると有効です(キリッ)」とか出るとねえ。

『Other simulations suggested that the single-minded pursuit of a price-level target would not be very effective in fostering maximum sustainable employment; it was noted, however, that price-level targeting where the central bank maintained flexibility to stabilize economic activity over the short term could generate economic outcomes that would be more consistent with the dual mandate.』

さすがに連銀スタッフのモデル様を用いてもプライスレベルターゲットに関してはプライスレベル一点張りだとあまり有効ではないという話になっているようですが、フレキシブルなプライスレベルターゲットなら有効でしょうという話ですが、それってもはや実際の政策フレームワークに落とし込んだ時には何が何だかワカランチ会長なレベルだと思うのですけれどもねえ・・・・・

『More broadly, a number of participants expressed concern that switching to a new policy framework could heighten uncertainty about future monetary policy, risk unmooring longer-term inflation expectations, or fail to address risks to financial stability.』

ということで、多くの(a number of)委員は新しい政策フレームワークに移行する際に先行きの不確実性が増したり、期待の安定化に時間が掛かる惧れがありますよねという点を懸念と。

『Several participants observed that the efficacy of nominal GDP targeting depended crucially on some strong assumptions, including the premise that the Committee could make a credible commitment to maintaining such a strategy over a long time horizon and that policymakers would continue adhering to that strategy even in the face of a significant increase in inflation.』

名目GDP目標の有効性は短期的なインフレの上昇などのような状況があっても、長期的にそのターゲッティング政策を行うというような信頼できるコミットメントが前提になるのではないかと複数名(Several)の委員は指摘していますと。

『In addition, some participants noted that such an approach would involve substantial operational hurdles, including the difficulty of specifying an appropriate target level.』

数名(some)の委員はこれらのアプローチに関しては、色々な大きなオペレーション上のハードルがあって、たとえばそのターゲットとすべき適正水準はどこなのかという事がありますよね、と指摘しています。

『In light of the significant challenges associated with the adoption of such frameworks, participants agreed that it would not be advisable to make such a change under present circumstances.』

ということで、結論としては名目GDPターゲットとか、物価水準ターゲット(インフレーションターゲットではない)に関しては今後の政策の枠組みとしては採用される可能性は低いでしょうな、という所でございました。

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2011/11/29

○11月1〜2日のFOMC議事要旨から少々

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20111102.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/fomcminutes20111102.pdf

冒頭の『Monetary Policy Strategies and Communication』は今後のFEDのコミュニケーションポリシーを見るうえで示唆が多いので読むのだ。

『The staff gave a presentation on alternative monetary policy strategies, and meeting participants discussed those alternatives as well as potential approaches for enhancing the clarity of their public communications. No decision was made at this meeting to change the Committee's policy strategy or communications. 』

ということで、このコーナーは「金融政策のコミュニケーションポリシーを今後どうするのか」というお題であります。以下いくつかのテーマが出てきてpros&consについての話とかもあるので参考になります。昨日まで引用しておりました(大汗)バーナンキ議長の10月18日の講演でもファイナンシャルスタビリティーの話をする中で金融政策のコミュニケーションポリシーおよびそのツールについての話があって、まあそこでの論点と重なる部分もあるので読んでて「ほほう」と思うのでありました。


・明示的なインフレーションターゲットの設定について

『It was noted that many central banks around the world pursue an explicit inflation objective, maintain flexibility to stabilize economic activity, and seek to communicate their forecasts and policy plans as clearly as possible. 』

『Many participants pointed to the merits of specifying an explicit longer-run inflation goal, but it was noted that such a step could be misperceived as placing greater weight on price stability than on maximum employment; consequently, some suggested that a numerical inflation goal would need to be set forth within a context that clearly underscored the Committee's commitment to fostering both parts of its dual mandate.』

明示的なインフレーションターゲット(と言ってもバーナンキ議長講演で言う「フレキシブルターゲッティング」なのですけど)を設定する場合、FRBのデュアルマンデートという観点からした場合に、インフレ目標に傾斜した政策運営を行っていると誤解される惧れがあるという指摘があって、数名(some)の委員は「数値的なインフレ目標を設定する場合には、もう一つのマンデート(つまり雇用)に対しても何らかの目標を同時に設置すべきではないか」と指摘しているとのことで。


・FOMCが予想する将来の政策金利パスを示す件について

『More broadly, a majority of participants agreed that it could be beneficial to formulate and publish a statement that would elucidate the Committee's policy approach, and participants generally expressed interest in providing additional information to the public about the likely future path of the target federal funds rate. 』

フォワードガイダンスの話をしてるのかなとも思ったのですが、その先を読むとちと話が別。

『Chairman asked the subcommittee on communications to give consideration to a possible statement of the Committee's longer-run goals and policy strategy, and he also encouraged the subcommittee to explore potential approaches for incorporating information about participants' assessments of appropriate monetary policy into the Summary of Economic Projections.』

BOEがインフレーションレポートを作成する際に、「現在の政策金利の場合」というのと「市場が織り込む将来の政策金利パスの場合」というのはありますが、SEPで将来の予想政策金利パスを示すってのはどうも「検討課題」という事ですから、もしかしたらそのうちSEPで思いっきりその辺の「見通し」を示すってえ話になるのかも知れませんけれども、これはあたくし個人的な直感で申し上げますと、クレディビリティーの毀損のリスクがあるのであまりお勧めできない希ガス。

つまりですね、市場が勝手に織り込んでいるパスを使う分には別にそれが後日外れになっても別に出した人がどうこう言われることは無いと思いますが、SEPで示すようなスケールの期間における政策金利パスなんてうっかり「我々はこう思う」とか示しちゃうと、物が政策金利という後から誰でもすぐわかってしまう話ですから、後でそこと違う政策アクションをしないといけなくなった場合に、FEDの信認に傷が付く可能性があるんじゃないかと。

そもそもこんな話を出そうというのは、要するに政策金利パスを市場に織り込ませようとしている、という事ですけれども、まあ経済見通しだってそう簡単に当らないのに政策金利パスをマニピュレートしようというのはそらFEDの傲慢って奴じゃないのかねと思うのですけど、どうも(金融市場のレビュー部分でその話があるのですが)今回のFOMCでは「ツイストオペの効果により長期金利が低下した(ドヤ)」というレビューもしておりまして、何かFOMCメンバーは「市場金利はFRBがコントロール可能だわウェーハッハッハ」と言う意識になってるんじゃねえかとそれが気になるのでございました。


・フォワードガイダンスの「コンディショナルコミットメント」について

話が脇に逸れましたが続き。

『Committee participants shared their views regarding the potential merits and pitfalls of making conditional commitments regarding the future course of monetary policy.』

現在の金融政策に対する「コンディショナルコミットメント」についてのメリットと落とし穴について・・・・なのですが、この「コンディショナルコミットメント」というのは何ぞやという話でして、この先(今日は時間が無いので後回しでどうもすいません)で「フォワードガイダンスの先行き期間を更に長くする」という件についての話をしているので、これはいわゆる「条件付きコミットメント」という話になるのかなあとか思ったのですが、間違ってたらゴメンナサイなのでその辺ご指摘賜りますと誠にありがたく存じますので教えてジェネラル!

『As noted in the staff briefing, economic theory and model simulations suggested that a policy strategy involving such commitments could foster better macroeconomic outcomes than a discretionary approach of reoptimizing policy at every meeting, so long as the public understood the central bank's strategy and believed that policymakers would follow through on those commitments. 』

スタッフのブリーフィングによりますとこの「コンディショナルコミットメント」については経済理論やモデルによるとマクロ経済により良い結果を与えるでしょうという話ではあそうですか(棒)という感じなのですが、まあこの件に関しては先ほどああでもないこうでもないと申し上げたのと同じ理屈でそんなに話は簡単なものではなく、一旦見通しを外してしまった場合に「梯子を外された」形の金融市場がその後FEDの出す「コンディショナルコミットメント」を信用してくれるのかというリスクがあるので、あまりやり過ぎない方が良いと思うのですけどね。

『Some participants noted that conditional commitments might be particularly helpful in providing additional accommodation and mitigating downside risks when the policy rate is close to its effective lower bound, because a central bank can commit to a shallower interest rate trajectory than investors would expect if policymakers followed a purely discretionary approach.』

数名(Some)の委員はゼロ金利制約下において将来の金利パスへのコミットメントを行う事は追加的な緩和効果を与えると指摘してて、コミットメントの強化をしましょうという話をしているようで。

『However, many pointed out that the implementation of such a strategy could pose substantial communication challenges and that the benefits would be diminished if the strategy was not fully credible.』

多く(many)の委員は「ストラテジーが十分に信頼されていない場合にはそのメリットが消滅するというコミュニケーションポリシーとしての難問が起きる」とか何とか言ってまして、ここの部分をあまり強化し過ぎるのもどうかという話が出ていますので、この時点ではフォワードガイダンスの再強化(さっき書いたように期間の長期化とかではなくて何かの紐付けコミットメントかと思われます)というのは優先順位低いのかな(ただしこの後欧州大火災になっているので状況は変わっている可能性はありますが)という所ですな。

『Indeed, one participant suggested that additional purchases of longer-term securities would be a clearer and more effective way to provide additional monetary accommodation when the federal funds rate was near its lower bound.』

そんな事より長期債買おうぜ!という人が一人いるわけですがどう見てもシカゴ連銀エバンス総裁です本当にありがとうございました。


#ということで更に続くのですが今日は時間の関係でここで勘弁

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2011/11/28

○すっかり忘れていたのですが1か月前のバーナンキ講演の続き

The Effects of the Great Recession on Central Bank Doctrine and Practice

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20111018a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20111018a.pdf

この講演の後半である『Financial Stability Policy』に行く前に他のネタ続出でスルーしていましたがもうだいぶ出遅れなので簡単に(追記があったらどこかの土日でこっそりアップしておきます)。

『Even as central banks were innovative in the operation of their monetary policies, they were forced to be equally innovative in restoring and maintaining financial stability.』

ということで、今次金融危機を経て「中央銀行としては金融の安定も物価の安定と等しく重要な政策である」という話をしていた続きにこのコーナーが来るのですが、まず最初にバーナンキ議長は「流動性供給」の重要性の説明をしています。

『Serving as a lender of last resort--standing ready in a crisis to lend to solvent but illiquid financial institutions that have adequate collateral--is, of course, a traditional function of central banks. Indeed, the need for an institution that could serve this function was a primary motivation for the creation of the Federal Reserve in 1913.』

ということでLLRに関する話をしていますけど、バーナンキ議長もここで言ってるようにLLRとしての中央銀行の供給する流動性の基本は「solvent but illiquid」な金融機関に対する供給でありまして、そーゆー意味合いからすると(ここでの話とは関係ないですが)ECBはLLRとして周縁国国債を無限に買えとかいう議論はそもそも中央銀行のLLRとしての意味を取り違えた議論であるという話(財政のおかしい国のマネタイズしろというなら筋は通るが、そう言った瞬間に暴論なのが明らかになります罠という事で)ではございますな。

んでもってその後はdiscount windowの話とかをしておりまして、その次にはクレジット市場への介入の話になります。

『To help stabilize the financial system and facilitate the flow of credit to households and businesses, the Federal Reserve responded to the dislocations in funding and securitization markets by dramatically increasing the amount of term funding that it provided to banks, establishing new lending facilities for nonbanks, and providing funding to support the operation of key markets.』

つまり、整理すると連銀貸出のような制度はLLRとしての流動性供給、クレジット市場へのファンディング供給はクレジットチャネルの円滑化としての流動性供給という話でございますわな。で、また途中を飛ばしまして、

『One of the lessons of the crisis was that financial markets have become so globalized that it may no longer be sufficient for central banks to offer liquidity in their own currency; financial institutions may face liquidity shortages in other currencies as well.』

今次金融危機での教訓の一つとして、マルチカレンシー(というか米国以外でのドル)での資金供給が必要である、という事が挙げられると指摘していまして、まあこれってまさに今も必要な話(つーかやってますが)ですにゃあとか思うのであります。で、その辺のスワップラインに関する説明をしていますがそこは割愛してその次へ。

『As lender of last resort, a central bank works to contain episodes of financial instability; but recent events have shown the importance of anticipating and defusing threats to financial stability before they can inflict damage on the financial system and the economy. 』

ということで、原文ではbeforeがイタリックになって強調されていますが、金融の不均衡について、それが金融システムや経済に与える前に対処する必要があるという話をしていてキタコレとか思うのですけれども、じゃあ所謂BISビュー的な話が出るかと言いますとそういう訳では無くて、あくまでも金融監督によってそれを行うべきという話がFRB的な意味での「マクロプルーデンス政策」という話を以下行っています。つまりこの続きですけれども。

『Among these benefits are the facilitation of close and effective information sharing between supervisors and the providers of backstop liquidity, especially during crises; the ability to exploit the substantial overlap of expertise in the making of monetary policy and financial stability policy; and the usefulness of the information supervisors gather about economic and financial conditions for monetary policy. Appreciation of these benefits is leading to larger roles for central banks in financial supervision. 』

ということで、中銀の役割として金融監督の拡大が行われている事が金融不均衡の望ましくない拡大を抑制するという話をしています。以下は各国の事例なので割愛して最終章の『The Integration of Monetary Policy and Financial Stability Policies』から少々。

『As I noted earlier, in the decades prior to the crisis, monetary policy had come to be viewed as the principal function of central banks; their role in preserving financial stability was not ignored, but it was downplayed to some extent. The financial crisis has changed all that. Policies to enhance financial stability and monetary policy are now seen as co-equal responsibilities of central banks. How should these two critical functions fit together?』

ということで、金融政策の中で経済物価の安定と金融の安定が同じように重要で中央銀行が責務を負うとして、さてその政策をどうやって同時に実施していくのでしょうか?という話なのですが、ちょっと途中を割愛してその結論らしき部分。

『An important debate for the future concerns the extent to which it is useful for central banks to try to make a clear distinction between their monetary and financial stability responsibilities, including designating a separate set of policy tools for each objective. For example, throughout the crisis the ECB has maintained its "separation principle" under which it orients changes in its policy interest rate toward achieving price stability and focuses its unconventional liquidity and balance sheet measures toward addressing dysfunctional markets. The idea that policy is more effective when separate tools are dedicated to separate objectives is consistent with the principle known to economists as the Tinbergen rule.』

ティンバーゲンルールを持ち出していますが、まあ要するに「異なった目的に対しては目的別に政策を割り当てるべきである」という話でして、所謂BISビューとは違う話をしていますな、という所です。すなわち、

『A leading example is the question of whether monetary policy should "lean against" movements in asset prices or credit aggregates in an effort to promote financial stability. In my view, the issue is not whether central bankers should ignore possible financial imbalances--they should not--but, rather, what "the right tool for the job" is to respond to such imbalances.』

「lean against」ってのはFEDビューVSBISビューという話の時に出てくる用語(BISビューが「leaning against the wind」でFEDビューが「clean up the mess」です)でして、まあここでは「資産価格の望ましくない上昇に対して(マクロ経済に作用する形での)金融政策を割り当てるのは望ましくない」という話をしています。

まあ最後の方で一応バーナンキ議長は、

『However, the effectiveness of such targeted policies in practice is not yet proven, so the possibility that monetary policy could be used directly to support financial stability goals, at least on the margin, should not be ruled out.』

という話をしていますが、どうも(まだネタにしてないけど)イエレン副議長の「financial stability」でもそうなのですが、どうも「金融の不均衡」に対して監督政策を割り当てる、という話に傾斜している感じがありまして、そーゆー意味ではFRBについてはいわゆるBISビュー的な「早すぎる金融引き締め」的な動きというのをやるとは思えませんけれども、監督の方に力点を置くというのはこれはこれで金融の動きを委縮させる方向にやり過ぎとなりそうな悪寒もする(まあ米国の場合はそうなりそうになると金融業界が頑張って押し返すのが仕様ですけれどもどこまで出来るかな、と懸念される所ではあります)のでございまして、今後は金融政策だけではなく金融監督というか金融規制の方向性や、その中身に関してどのような市場への影響があるのか、という事にも注意する必要が高まっている、という事なのではないでしょうか。

という事で何となく纏まっためでたしめでたし(^^)。で、この金融監督だの市場規制だのに関する話はイエレン副議長が先々週講演をしていましたのでそのうち続きをやりますが、先週金曜に予告編やって本編やっていない11月頭のFOMC議事要旨もこれがまた中々だったりします、とネタを片付ける前にどんどん溜まっているのは仕様です(汗)。

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2011/11/21

○ECBドラギ新総裁の(総裁としての)一発目の講演である

http://www.ecb.int/press/key/date/2011/html/sp111118.en.html
Continuity, consistency and credibility

Introductory remarks by Mario Draghi, President of the ECB,
at the 21st Frankfurt European Banking Congress “The Big Shift”,Frankfurt am Main, 18 November 2011

『As you know, this is the first time I’m speaking publicly as President of the European Central Bank outside the ECB. I could not think of a more appropriate occasion than the European Banking Congress in the ECB’s home town.』

ということで総裁としての初講演でございますが、フランクフルトでのこちらの会議の今回のお題は新興国経済の拡大という意味で“The Big Shift”というのがお題なのですが、今回の講演でのお題は『Continuity, consistency and credibility』となっているのは実は新興国経済に関しての話ではなくてその前の話であったり致します(^^)。

『Before discussing the shift towards a much greater role of emerging economies, which is the theme of today’s congress, let me elaborate on the current situation in the euro area.』

てな訳で前半のお題は『I. The euro area situation and ECB monetary policy』という皆様ご注目の物でございますのでまあ前半部分を詳しく(つーか後半は読んだけどスルーの方向で)。

・ということでユーロ圏問題と金融政策について

『Activity is expected to weaken in most of the advanced economies. This is the result of a weakening of various components of aggregate demand, both domestic and foreign. And it is evident in ‘hard’ data as well as survey data. In the euro area, downside risks to the economic outlook have increased, and the weaker degree of activity will moderate price, cost and wage pressures. This is why the ECB decided to reduce its key interest rates by 25 basis points on 3 November, acting in full compliance with its mandate to maintain price stability in the medium term.』

ということで、ECBが先般利下げをした背景として「多くの先進国で経済活動が弱まっており、国内及び海外の需要が減退していることが明確になりました。ユーロエリアではダウンサイドリスクが高まり、弱まった経済活動が物価やコスト、賃金の上昇圧力を緩やかなペースにすることが予想されるので」というこれはまあ金融政策変更時の会見で示されたお話ではございますな。

『We are aware of the current difficulties for banks due to the stress on sovereign bonds, the tightness of funding markets and the scarcity of eligible collateral. We are also aware of the problems of maturity mismatches on balance sheets, the challenges to raise levels of capital and the cyclical risks related to the downturn.』

ソブリン債に対するストレスによって銀行が直面する困難、ファンディング市場のタイトさや適格担保の不足について注意しており、更に金融機関のバランスシートのミスマッチ問題(って要するに長短ミスマッチということですから銀行のオーバーローン/オーバーインベストですな)や、資本増強への課題、経済の落ち込みによるシクリカルなリスクに注目しています。

『In the money market, we see rising spreads between secured and unsecured segments, and a widening of repo prices between different types of collateral. Interbank activity remains subdued and concentrated in the very short-term maturities. This limited activity is reflected in increased recourse to our liquidity-providing operations, as well as to our deposit facility.』

短期金融市場においては、我々は担保付と無担保の取引における金利差の拡大や、レポ市場における担保種類の違いによる金利差の拡大を注視しています。インターバンク市場の活動は抑制されており、ターム物取引から極めて短い期間の取引に集中するようになっています。この限定された活動は、我々の流動性供給プログラムへの依存や、預金ファシリティー利用の拡大に反映されています。

ということで、まあこの辺を読んでいてECBってかなりちゃんとマーケットウォッチしてるなと思ったのですが、まあそれだけかなりの緊張感があるんでしょうな、と思うのでした。

『So far, the ECB has taken several non-standard measures to ensure that short-term funding does not represent a problem for euro area banks. The most important non-standard measures are the fixed rate full allotment procedures and the longer-term refinancing operations. We have also implemented three additional US dollar operations, which cover the end of the year, and we have launched a second covered bond purchasing programme.』

で、まあ短期市場問題が爆発しないように非伝統的手段を取りましたという話をしているのですが、ここでほほーと思うのは「もっとも重要な非伝統的金融政策は、固定金利でフルアロットメントで行われる資金供給(今やっているMRO)とより長い期間の資金供給(今やってるLTRO)である」という事でして、つまり国債買入ではなくてあくまでも流動性供給が重要である、と言ってる点ですな。その次に並べているのがUSドル資金供給、カバードボンド買入第2弾となっています。


・金融政策の3つの原則について:continuity, consistency, credibility

『Let me use this occasion to dwell a bit further on monetary policy in the current environment. Three principles are of the essence: continuity, consistency and credibility.』

3つの原則キタコレ。で、この3つの単語の訳語は後でも言い訳しますが、どういう風に訳していいのかイマイチさんにも程がありますので、読者様の中には英語にも日本語にも強い方が大勢おいでであると存じますので、皆様にツッコミを頂くのを待ちつつ下手くそな日本語訳をしてみるのであります(汗)。

『Continuity first and foremost refers to our primary objective of maintaining price stability over the medium term.』

あたしゃ頭が悪いので適当に訳語をぶち込んでしまいますが、「論理的関連性」は最初かつ最も重要であり、中期的な物価安定を維持するという我々の第一の目的に関連している事です。とか何とか適当に訳してみたけど、まあ要するに第一に重要なのは金融政策は物価安定の維持とリンクした形じゃないとダメダメですよと言いたいんでしょうかね、と思いましたがどうでしょ。

『Consistency means to act in line with our primary objective and with our strategy both in time and over time.』

「首尾一貫性」は我々の第一の目的および我々の戦略に沿った形で短期的および中期的な政策の実行をする事を意味します。ってまあ要するに物価安定の維持に沿った行動を一貫して実施するということで、米国で良くそういう議論がでますけれども、物価上昇の一時的な(ここでいう一時的というのは短期変動要因による一時的な物価上昇ではなく、もう少し長いタームの話)やむなしみたいな政策は排除するっちゅう事でしょうかね。

『Credibility implies that our monetary policy is successful in anchoring inflation expectations over the medium and longer term. This is the major contribution we can make in support of sustainable growth, employment creation and financial stability. And we are making this contribution in full independence.』

「信頼性」は我々の金融政策が中長期的なインフレ期待をアンカーさせることに奏功するということを含みます。これは持続的な経済成長、雇用創出および金融の安定に対して我々がサポートできる重要な貢献であります。そして我々はこの貢献を完全に独立して行います。

『Gaining credibility is a long and laborious process. Maintaining it is a permanent challenge. But losing credibility can happen quickly - and history shows that regaining it has huge economic and social costs.』

信頼性を獲得するのは長く骨の折れるプロセスです。信頼性を維持するのは永続的な挑戦です。しかし信頼性を失うことは簡単に起きてしまいます-そして歴史は失った信頼を取り戻すのは極めて大きな経済的および社会的なコストを伴う事をしめしています。とこれまたイイハナシダナーというお話をしていまして、どこぞの国で財政マネタイズを安易に提唱する元首相は耳の穴かっぽじってよく聞けやゴルァと思うのであります。

『These three principles - continuity, consistency and credibility - are at the root of the Governing Council’s outstanding record during the past 13 years in terms of price stability and anchoring inflation expectations.』

ということで物価安定とインフレ期待のアンカーが金融政策の重要な原則という話をしていまして、まあこれは前回の定例理事会後の会見で示された話と原則的に同じなのですが、改めてこの点を強調しているという所ですな。


・金融の安定は各国の経済政策も責務を負いますとキタコレ

んでその次。

『National economic policies are equally responsible for restoring and maintaining financial stability. Solid public finances and structural reforms - which lay the basis for competitiveness, sustainable growth and job creation - are two of the essential elements.』

金融安定の維持と確保には各国の経済政策も等しく(というのは金融政策と等しく、ということでしょうな)責務を負っています。堅固な公的なファイナンスと構造改革-それらが競争力強化、持続的な成長や雇用創出をもたらす-は必須の要素です。

『But in the euro area there is a third essential element for financial stability and that must be rooted in a much more robust economic governance of the union going forward.』

そして第3の必須な要素は、今後のより力強いEUによる経済のガバナンスに根拠を置きますとな。

『In the first place now, it implies the urgent implementation of the European Council and Summit decisions. We are more than one and a half years after the summit that launched the EFSF as part of a financial support package amounting to 750 billion euros or one trillion dollars; we are four months after the summit that decided to make the full EFSF guarantee volume available; and we are four weeks after the summit that agreed on leveraging of the resources by a factor of up to four or five and that declared the EFSF would be fully operational and that all its tools will be used in an effective way to ensure financial stability in the euro area. Where is the implementation of these long-standing decisions?』

ということで、まずはこれまでEUで決定してきた事を各国は遵守すべきという話をしておりまして、まあ要するにECBに何でもかんでも頼るのは甘え、という事でございますわな。

まあ何ですな、そらまあそうやと思う訳で「最後の貸し手」機能ってのは金融システムの維持とか金融安定化の問題としてワークさせるときに使われるものであって、中央銀行が政府に対して「最後の貸し手」をやるっていうのはそらあーたただの「財政マネタイズ」ですがなという事ですからして、それは中央銀行としての物価安定というマンデートに反する恐れが極めて高いのですから拒否だわなと思うのでございます。

で、後半は本来のセミナーのお題でありますところの『II. The shift towards a much greater role of emerging economies』という小見出しで、これはこれでまあまあオモロイですけれども、特段変わった話でもないので割愛でおじゃる。

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2011/11/17

○バーナンキ議長講演(だいぶ前の奴)ネタの続き

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20111018a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20111018a.pdf

昨日の続きから。

・今次金融危機の結果金融政策のコンセンサスに何の変化が起きたか?

というまあ本論開始である。

『To what extent, if at all, has the pre-crisis consensus framework for monetary policy been changed by recent events?』

で、それに対して。

『In part because they recognized the benefits of continuity and familiarity during a period of upheaval, central banks generally retained their established approaches to monetary policy during the crisis; and, in many respects, the existing frameworks proved effective.』

従来の中期的観点からのフレキシブルインフレーションターゲッティング的なアプローチは勿論今次金融危機でもその有用性が発揮されました、ということでこの後うだうだと説明しているのですが引用だけしておく。

『Notably, well-anchored longer-term inflation expectations moderated both inflation and deflation risks, as price-setters and market participants remained confident in the ability of central banks to keep inflation near target in the medium term.』

『The medium-term focus of flexible inflation targeting also offered central banks latitude to cushion the effects of the financial shocks on output and employment in the face of transitory swings in inflation. In particular, they were able to avoid significant policy tightening in mid-2008 and early 2011, when sharp increases in commodity prices temporarily drove headline inflation rates above target levels.』

『Finally, for central banks with policy rates near the zero lower bound, influencing the public's expectations about future policy actions became a critical tool, as I will discuss further shortly. The commitment to a policy framework that is transparent about objectives and forecasts was helpful, in many instances, in managing those expectations and thus in making monetary policy both more predictable and more effective during the past few years than it might otherwise have been.』

最後のところでは金利政策がゼロ金利制約に陥った場合でも、将来の金融政策に対する期待に影響する事によって(=ガイダンス文言の利用でしてこの話は後の政策ツールの部分でも出てくる)効果を発揮したというような話をしておりますな。

で、ここまでがマクラで本論はこの次。

『However, the recent experience did raise at least one important question about the flexible inflation-targeting framework--namely, that although that framework had helped produce a long period of macroeconomic stability, it ultimately, by itself, was not enough to ensure financial stability.』

今次金融危機における経験は、フレキシブルインフレーションターゲッティングによるアプローチは、マクロ経済の長期的な安定には寄与したものの、「financial stability」を確保するには不十分だったのではないか、という論点を提示していると考えますと。

『Some observers have argued that this failure should lead to modifications, or even a replacement, of the inflation targeting approach. For example, since financial excesses tend to develop over a relatively longer time frame and can have significant effects on inflation when they ultimately unwind, it has been suggested that monetary policy should be conducted with reference to a longer horizon to take appropriate account of financial stability concerns.』

その点から考えた場合に、フレキシブルインフレーションターゲッティングのアプローチを変更すべきという意見もある、ということで、ここの脚注にはBOEのBean委員の講演を挙げていますので一応引用しておく。

『2. For example, Charles Bean of the Bank of England has suggested that "taking on board the possible risks posed by cumulating financial imbalances may require a shift in the rhetoric of inflation targeters towards the longer term." See page 70 of Charles Bean (2003), "Asset Prices, Financial Imbalances and Monetary Policy: Are Inflation Targets Enough? " in Asset Prices and Monetary Policy, proceedings of a conference sponsored by the Reserve Bank of Australia (New South Wales, Australia: RBA, Aug. 18-19), pp. 48-76.』


で、その点に関してのバーナンキ議長の見解は以下の通りであります。

『My guess is that the current framework for monetary policy--with innovations, no doubt, to further improve the ability of central banks to communicate with the public--will remain the standard approach, as its benefits in terms of macroeconomic stabilization have been demonstrated.』

コミュニケーションポリシーの進化によって対応ということのようで。

『However, central banks are also heeding the broader lesson, that the maintenance of financial stability is an equally critical responsibility. Central banks certainly did not ignore issues of financial stability in the decades before the recent crisis, but financial stability policy was often viewed as the junior partner to monetary policy.』

『One of the most important legacies of the crisis will be the restoration of financial stability policy to co-equal status with monetary policy.』

マクロ経済の安定だけではなくて「financial stability」も重要である(キリッ)という話ではありまして、まあそれはその通りではあるのですが、んなこたあ日銀が既に散々経験してその手の事に関しても色々と先駆けた事をしているような気がするのでこの辺りの話(というか今回の講演全体がそうなのですが)で日銀の政策枠組みとかに関する言及がオマケ程度というのも何だかなあという感じはしますが、まあやはりかつて日銀をケチョンケチョンに言ってたのに政策の枠組みという面では日銀のアプローチと似てきている、という状況になっている事にかんして微妙にアレなものがあるのでしょうか、とつい思ってしまうのはあたくしの心が濁っているからですかそうですか。

ただまあ「中央銀行はマクロ経済の安定を図るのと同じくらいに「financial stability」を重要視しないといけない」と逆さ絵おじさんをして言わしてめているというのはまあこれはこれで結構踏み込んだ感じかなとは思います。



○更に講演の続きで「金融政策の道具について」のお話

次の章が『Monetary Policy Tools』でありますが、まず最初にゼロ金利制約に達した場合のアプローチとしてバーナンキ議長は「フォワードガイダンス」と「バランスシート政策」の2点を提示していまして、そういう意味ではいつの間にやら時間軸+量的緩和みたいなアプローチになっているという何という福井俊彦状態、といいたいのですが、後で出てきますようにバランスシート政策が金利アプローチになっているという時点で、バーナンキ議長の政策の枠組みの切り分けに自体に無理があるように思えるのですけどねえ。

『While central banks may have left their monetary policy frameworks largely unchanged through the Great Recession, they have considerably widened their set of tools for implementing those frameworks. Following the crisis and the downturn in the global economy that started in 2008, central banks responded with a forceful application of their usual policy tools, most prominently sharp reductions in short-term interest rates. Then, as policy rates approached the zero lower bound, central banks began to employ an increasingly wide range of less conventional tools, including forward policy guidance and operations to alter the scale and composition of their balance sheets.』

・フォワードガイダンスの具体的事例に前の日銀の時間軸が無いのが謎なのですが・・・・・

で、まずはフォワードガイダンスって実は金融危機前からありましたね、という話が続く。

『Forward guidance about the future path of policy rates, already used before the crisis, took on greater importance as policy rates neared zero.』

ときたら普通は日本の時間軸第3弾をネタにするような気がするのですが、もしかしたら日本の時間軸第3弾に見られる「外生的な経済データに対するがっちりとした紐付け」アプローチをFEDは取っていない(のであたくしは以前よりFEDの時間軸は時間軸もどきであってなんちゃって時間軸である、常々申し上げていますが)のでオミットしたのでしょうか・・・・・

『A prominent example was the Bank of Canada's commitment in April 2009 to keep its policy rate unchanged at 1/4percent until the end of the second quarter of 2010, depending on the outlook for inflation. This commitment was successful in clarifying for market participants the bank's views on the likely path of policy rates and appears to have helped reduce longer-term interest rates, thus providing additional policy accommodation.』

『In 2010, the Bank of Japan, which faced ongoing deflation in consumer prices, also used conditional forward guidance, saying that "The Bank will maintain the virtually zero interest rate policy until it judges, on the basis of the ‘understanding of medium- to long-term price stability,' that price stability is in sight, on condition that no problem will be identified in examining risk factors, including the accumulation of financial imbalances."』

前半はカナダの事例、後半は現在の日銀の事例ですが、確かにロジック的にギリギリと詰めると現在の日銀の「物価安定の理解」による時間軸設定というのは「経済見通しによって物価安定の理解が達成されると判断するまで(しかも金融のインバランスが拡大しない限りにおいて、という留保条件付き)」となっていて、福井総裁時代の2003年10月に示された(まあその前段階の2001年3月時点でも表現は微妙ながら同じ話をしていましたけど)「量的緩和政策の時間軸コミットメント」のような「外生的な経済データに紐付け」状態ではない、ともいえる訳でして、そう考えるとバーナンキ議長的には「外生的な経済データの特定数値に紐付けする」というアプローチはフォワードガイダンスとも微妙に違うという事を示唆しているのかもしれませんな、とふと思いました。


・フォワードガイダンスの別法

『Some central banks provide forward guidance directly by releasing forecasts or projections of their policy rate. This practice had already been adopted by the Reserve Bank of New Zealand (in 1997), the Norges Bank (in 2005), and the Swedish Riksbank (in 2007).』

経済状況がどうのこうの、ではなくて、金融政策の見通しまたは計画を公表する、というアプローチもある訳で、NZ中銀やノルウェー、スエーデンなどで実施されましたと。

『Each of these central banks used those projections during the financial crisis to indicate that they were likely to keep rates at low levels for at least a year. 』


・FRBはこんなんしてますという部分。

まあここは言うまでもありませんので引用だけ。

『n the United States, the FOMC introduced language in its March 2009 statement indicating that it anticipated rates to remain at low levels for an "extended period," and at its August 2011 meeting the Committee elaborated by indicating that it anticipated rates would remain low at least through mid-2013. The FOMC continues to explore ways to further increase transparency about its forecasts and policy plans.』


・バランスシート政策のゴールは「金利政策だ」というのはどうかと思うが

その次がバランスシート政策に関して。

『In addition to forward guidance about short-term rates, a number of central banks have also used changes in the size and composition of their balance sheets as tools of monetary policy. In particular, the Federal Reserve has both greatly increased its holdings of longer-term Treasury securities and broadened its portfolio to include agency debt and agency mortgage-backed securities.』

さよですな。

『Its goal in doing so was to provide additional monetary accommodation by putting downward pressure on longer-term Treasury and agency yields while inducing investors to shift their portfolios toward alternative assets such as corporate bonds and equities.』

で、この政策のゴールは、長期国債金利や長期のエージェンシー債金利を引き下げることによって経済に刺激的な効果を与えると共に、投資家のポートフォリオリバランス効果を期待する、ということのようですが、それは中々矛盾をはらんでいるような気もしますけどね。

『These actions also served to improve the functioning of some stressed financial markets, especially in 2008 and 2009, through the provision of market liquidity. 』

あと、バランスシート政策には「金融市場のストレスを解消する」というのもありますと。


で、その次が各国の取り組みに関してですが、今次金融危機前のケースについての例ですな。

『Other central banks have also used their balance sheets more actively than before the crisis, with some differences in their motivations and emphasis, in part reflecting differing financial structures across countries.』

でまあそれは各国の金融構造などの違いにもよりますよ、という話で以下具体例。

『For example, the Bank of England has used large-scale purchases of medium- and long-term government securities as its preferred tool for providing additional stimulus; it expanded the size of its asset purchase program earlier this month out of concern about possible slowing of domestic and global economic growth.』

『The Bank of Japan has acquired a wide range of assets, including government and corporate bonds, commercial paper, exchange-traded equity funds, and equity issued by real estate investment corporations.』

『The ECB purchased privately issued covered bonds between July 2009 and June 2010 to improve liquidity in a key market segment; it recently announced plans to resume such purchases in November. The ECB has also bought the sovereign bonds of some vulnerable euro-area countries, "to ensure depth and liquidity in those market segments which are dysfunctional," although the monetary effects of these purchases have been sterilized through offsetting operations. 』


・バランスシート政策とフォワードガイダンス政策の比較

『In most cases, the use of balance sheet policies for macroeconomic stabilization purposes has reflected the constraints on more-conventional policies as short-term nominal interest rates reach very low levels. In more normal times, when short-term policy rates are not constrained, I expect that balance sheet policies will be rarely used. By contrast, forward guidance and other forms of communication about policy can be valuable even when the zero lower bound is not relevant, and I expect to see increasing use of such tools in the future.』

バランスシート政策は主にゼロ金利制約の中でのマクロ経済の安定に用いられることが多いですが、フォワードガイダンスやその他のコミュニケーションポリシーはそれ以外の場合でも使えるので、コミュニケーションポリシーの今後の進化によってより改善した政策ツールになるのでは、とかなんとかいう話をしているようですな。

つまりまあ今後もコミュニケーションポリシーの進化的な動きはFEDから出てくるんでしょうなと思うのでありました。

以下続きは次の章に続くのですが今日はこの辺で勘弁。

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2011/11/16

・欧州ェ・・・・・

ほほう。
http://www.bloomberg.co.jp/markets/index_europe.html

フランス10年国債 3.661 0.259 96.535
イタリア10年国債 7.052 0.376 84.620
ドイツ10年国債 1.777 -0.000 104.190

ここにはスペイン国債の数字が出てませんが、スペイン国債も売られていましたが、何かこの辺の記事見ると欧州は燃えているか状態になっているような気がするんだが(ただし記事はスペイン語なので字面で何となく把握しただけだが)。

#なお、URLがクソ長くてブラウザのレイアウト壊す可能性がありますのでニュースのリンクはこちらということで

なお、スペインは日曜に総選挙です。野党PP大勝利の見通しですが。

まあスペインは兎も角として、ECBがどうしますかというのは中々微妙でして、従来のロジックを相変わらず繰り返しているのですが、これって最早「金融市場の混乱対応」という形での国債買入を拡大しても問題ないんじゃないかなと思うのですけれども、どうも政策当局者から出てくるのは「ECBにクレクレ言うのは甘え」という厳しい話が多いのはちょっと大丈夫かよと思うのであります。

こういう時は打つ手が遅れるとあっという間に金融市場の機能不全が起きて急速にエライコッチャになるものでありまして、リーマンショック後の金融市場状態になる訳でして、日本だって利下げしてるのにレポレートがロンバート金利に張り付きCPレートが上昇というような素敵な事が起きたような市場の流動性の蒸発みたいなのが起きるのでもうちょっと政策当局も配慮した方が良いと思うのですけどねえ。



○ということでバーナンキ講演ネタである

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20111018a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20111018a.pdf

しかし今朝は布団の妖術に嵌ってしまって寝起きが悪かったので決定会合ネタをやるべき明日以降にもなだれ込む予定(虫干しネタだから前日中にやっとけという意見はあるのですがorz)。

でまあ昨日申し上げましたように、この講演では金融政策のフレームワークとして、「Financial Stability」の重要性を力説していますが、ただまあその辺りに関しては従来のいわゆるFEDビューは引っ込めたものの、じゃあBISビューに寄ったのかというとそんな話ではサラサラ無いという感じでしょうか。

とりあえず今日は第1章の『The Monetary Policy Framework』からサラサラと。

・従来の金融政策のフレームワークのコンセンサスについて

『During the two decades preceding the crisis, central bankers and academics achieved a substantial degree of consensus on the intellectual and institutional framework for monetary policy. This consensus policy framework was characterized by a strong commitment to medium-term price stability and a high degree of transparency about central banks' policy objectives and economic forecasts.』

従来(今次金融危機前)の金融政策のフレームワークとしては「中期的な物価安定へのコミットメントと中央銀行の政策目的および経済見通しに対する高い透明性」でしたと。

『The adoption of this approach helped central banks anchor longer-term inflation expectations, which in turn increased the effective scope of monetary policy to stabilize output and employment in the short run. This broad framework is often called flexible inflation targeting, as it combines commitment to a medium-run inflation objective with the flexibility to respond to economic shocks as needed to moderate deviations of output from its potential, or "full employment," level. The combination of short-run policy flexibility with the discipline imposed by the medium-term inflation target has also been characterized as a framework of "constrained discretion." 』

でまあそれが長期的なインフレ期待を安定させ、生産や雇用の安定に対して有益な効果をもたらす、というのが政策の波及効果である、ということですが、そのために中央銀行は「フレキシブルインフレーションターゲッティング」という政策を実施していました、という話ですな。つまり機械的なターゲットではなくそこは経済のショックなどにはそれはそれで対応する、というやり方です。


・世界でもそういうのを採用している、という話をしているのですが・・・・・・

で、その続き。

『Many central banks in both advanced and emerging market economies consider themselves to be inflation targeters, prominent examples including those in Australia, Brazil, Canada, Mexico, New Zealand, Norway, Sweden, and the United Kingdom.』

これらはインフレーションターゲット政策を明言している国。

『Although they differ somewhat in the details of their policy strategies, policy tools, and communication practices, today virtually all inflation-targeting central banks interpret their mandate flexibly--that is, they treat the stabilization of employment and output in the short term as an important policy objective even as they seek to hit their inflation targets over the medium term.』

でまあこれらの国でも行っているのは事実上のフレキシブルインフレーションターゲッティングを行っていますよという話ですな。

『Several other major central banks, such as the European Central Bank (ECB) and the Swiss National Bank, do not label themselves as inflation targeters; however, they have incorporated key features of that framework, including a numerical definition of price stability, a central role for communications about the economic outlook, and a willingness to accommodate short-run economic stabilization objectives so long as these objectives do not jeopardize the primary goal of price stability.』

ECBやスイス中銀では、明示的なインフレーションターゲッティングというラべリングはしていませんが、政策のキーとなるフレームワークには「物価安定に関する数値的な定義」「経済見通しの見通しを示すというコミュニケーションポリシーツール」「物価安定を阻害しない限りにおいて短期的な経済の安定を促す」というものが含まれています。とお話をしています。

・・・・・・でね、まあそれは良いのですけれども、そうであれば日銀もECBと同じ(つーかECBよりよっぽどハト的だと思うのだが)ような感じだし何でここで日銀を入れないのと思うのですが、何かやっぱり逆さ絵のおじさんはどこか引っ掛かる所でもあるんでしょうかねえとか思うのは変な裏読みのし過ぎですかそうですか。


・でまあFEDに関してですが

『How does the Federal Reserve fit into this range of policy frameworks? The Federal Reserve is accountable to the Congress for two objectives--maximum employment and price stability, on an equal footing--and it does not have a formal, numerical inflation target. But, as a practical matter, the Federal Reserve's policy framework has many of the elements of flexible inflation targeting. In particular, like flexible inflation targeters, the Federal Open Market Committee (FOMC) is committed to stabilizing inflation over the medium run while retaining the flexibility to help offset cyclical fluctuations in economic activity and employment.』

デュアルマンデートの中で数値的なターゲットはありませんが、いわゆるフレキシブルインフレーションターゲット状態ですよという話をしていますわな。

『Also, like the formal inflation targeters, over time the Federal Reserve has become much more transparent about its outlook, objectives, and policy strategy. For example, since early 2009, the Federal Reserve's "Summary of Economic Projections" has included the FOMC's longer-run projections, which represent Committee participants' assessments of the rates to which economic growth, unemployment, and inflation will converge over time.』

経済見通しに関してはSEPを出していますという話ですな。

『These projections are conditioned on the assumptions of appropriate monetary policy and no further shocks to the economy; consequently, the longer-run projections for inflation in particular can be interpreted as indicating the rate of inflation that FOMC participants judge to be most consistent, over time, with the Federal Reserve's mandate to foster maximum employment and stable prices. 』

『These longer-run inflation projections are thus analogous to targets although, importantly, they represent the Committee participants' individual assessments of the mandate-consistent inflation rate, not a formal inflation goal of the Committee as a whole.』

で、これはSEPの中でも書いてありますが(従来から書いてある)、SEPで示される「longer-run projections」というのがFRBメンバーの現在考えている「インフレ、GDP、物価」に関する長期的な「望ましい水準」となっているという説明ですのでSEP出るときは注目しましょうねという事ですな。

でですな、ここに脚注がありまして・・・・・・・・

『1. In a similar vein, since 2006 the Bank of Japan has provided the range of individual policy board members' understanding of the inflation rate consistent with price stability. That understanding is reviewed annually.』

ということで、日本銀行の「中長期的な物価安定の理解」というのを2006年から示しています、というのが脚注にしらっとあるのがチャーミングでありますが、だったらさっきの所で何で日銀の事例を出さないのよ逆さ絵おじさんと思ったのですけどね(^^)。


・・・・・・で、肝心の部分をやろうとしたら布団の妖術のせいで時間が無くなったので明日で勘弁。まあそんなにこの講演長くないし、もともとバーナンキ議長の講演テキストは読みやすく出来ていますし、まあそれ以前の問題としてだいぶ前のですから既にご案内の方も多いかと存じますけれども、これは良い論点が並んでいると思いますのでまだ続きます。

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2011/11/14

○FRBの最近の新たな注目論点は「Financial Stability Policy」

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20111018a.htm(HTML)
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20111018a.pdf(PDF)

The Effects of the Great Recession on Central Bank Doctrine and Practice

ちと今日は時間がアレなのでとりあえずざっとだけメモ書きで詳しくは後ほどでございますけれども、この講演自体は10月18日で既に一か月前のネタと化しておりまして誠に遺憾ではごさいますが、お題にあるように「今次経済危機によって中央銀行の政策に対するドクトリンにどういう影響があったか」というお話をしていまして、中々重要な論点が含まれていてオモロイので一読推奨です。

でまあ冒頭の部分にこのような話があります。

『In particular, the crisis has already influenced the theory and practice of modern central banking and no doubt will continue to do so.』

ほほう、今次危機は中央銀行のセオリーや行動に影響を与えましたと。

『Although it is too early to know the full implications of recent events for central bank doctrine and operations, I thought it would be worthwhile today to highlight and put into context some of the changes, as well as the continuities, that are already evident.』

もちろん全てのインプリケーションが纏まっている訳では無いですが、これらの変化に関しての論点を一旦整理するのは重要だと思われますと。

『My remarks will focus on how central banks responded to recent challenges related to the conduct of both monetary policy and the promotion of financial stability and how, as a result of that experience, the analysis and execution of these two key functions may change.』

ということで、大事な論点としてここで「the promotion of financial stability」というのが出ているのが大事だというお話ですが、引用しながらやっていくのはまた後日にします(汗)。ただまあ最初に一応申し上げますと、金融政策のフレームワークという最初の小見出しの部分の最後にこのような話がありましてですな、

『My guess is that the current framework for monetary policy--with innovations, no doubt, to further improve the ability of central banks to communicate with the public--will remain the standard approach, as its benefits in terms of macroeconomic stabilization have been demonstrated.』

というマクロ経済の安定におけるコミュニケーションポリシーの一層の進歩という話をしていますが、その次にあるのが「financial stability」の話であります。

『However, central banks are also heeding the broader lesson, that the maintenance of financial stability is an equally critical responsibility.』

「financial stability is an equally critical responsibility」キタコレという感じでして、(これは後日引用予定の部分に何となくそれらしい箇所がありますが)従来の「金融政策はマクロ経済(要するに物価安定)の注目をすれば良くて、バブル崩壊などのような経済のショックは積極的な金融政策で対応すればOK」というFEDビューと言われるものに関してはさすがに引っ込めざるを得なくなったという事でしょう。ただしいわゆる予防的な対処という意味でのBISビューと言われるものに傾斜したかというとそういう訳でも無く、マクロプルーデンスっぽい話はあるのですけれども、規制監督の方の説明もあるかな、という感じではございます。

『Central banks certainly did not ignore issues of financial stability in the decades before the recent crisis, but financial stability policy was often viewed as the junior partner to monetary policy. One of the most important legacies of the crisis will be the restoration of financial stability policy to co-equal status with monetary policy.』

ということで、従来やや脇におかれがちであった「financial stability policy」が今次の危機によって金融政策と同様のステータスで重要であるという事を再認識したというのが教訓である、という話をしています。ちなみにイエレン副議長が直近で「Pursuing Financial Stability at the Federal Reserve」という講演をしていますな。まだ読んでないけど。


つーことで、まあFRBも今回の危機によって「financial stability policy」の観点が重要という話になっている、という点に関しては、足元の状況での金融政策という点ではまあそんなに影響はないですが、先行き金融正常化という話になって来た場合に、従来のFRBクオリティーを前提にして考えると読みを誤る可能性がありますなあ、という話になろうかと思います。

詳しくは明日以降に。

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2011/11/11

・欧州蜃気楼

と書いて元ネタ(PC98時代のシミュレーションゲームですが^^)が分かる人は年寄りです、という話は兎も角として(^^)。

昨日もまあ夕方は欧州債券市場ちゃんの数字を見るともなく見ておったのでございますが、イタリア10年国債の日中の動きとか見てると20銭(銭という単位じゃないですが・・・・・^^)とか50銭とか平気でホイホイと動くような感じでの値段の飛び方になっておりまして、こりゃまあ流動性無いです罠という大変に素敵な市場。

でですな、イタ公はそういう感じで推移していたのですが、その間に更にワンダホーな動きをしていたのはフランス国債ちゃん。いやまあここの所そういう動きで、水曜もそんな感じでしたけれども、昨日はまた欧州時間の寄り付きからフランス国債いい感じで売られて、10年国債で一時2円(だから円というのは単位が変なのですがつい書いてしまう)安とかやってたと記憶しておりまして、「次はフランスじゃああああ」というような風情になっているのがオソロシス。

で、欧州債券市場直近概況。
http://www.bloomberg.co.jp/markets/index_europe.html
左から、利回り、前日比利回り変化、価格

フランス10年国債 3.446 0.267 98.290
イタリア10年国債 6.860 -0.346 85.768
ドイツ10年国債 1.774 0.057 104.227

イタリア1年国債入札が何かとりあえず通過した事もあってイタリア国債の利回りは結局低下した(まあその前にも一回ダダ売られした後に謎の急速切り返しをしていましたが)のですが、今日も今日とておフランス様とドイツの利回り変化幅が妙な数字でございますわなorz

てかね、何かこの動きってあたくしの勝手な妄想成分が多分に入っていますけれども・・・・・・

「ヘッジでどうするとか言ってる場合じゃないから現物売ってエクスポージャー落とすお!」

「でもイタリア国債は流動性がスカスカで業者がレートロクに出さないお!!」

「だからイタリアの代わりにフランスを売るお!!!!」

というような動きになってるんじゃないか(いやまあ当然ですがそれが全部のわけはございませんとは思ってますので念のため)とか妄想をたくましくする今日この頃でありますが、こういう時には厭債害債さんの所できっとエントリーが上がっているだろうと思ったら期待に違わず示唆の深いエントリーがございましたので読みましょう、と最後は人のふんどしでありました。

http://ensaigaisai.at.webry.info/201111/article_4.html
イタリア国債

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2011/11/10

○イタリアキタコレですが保身的な動きが問題を加速させるという話

まあ昨日の(日本時間の)夕方以降はイタ公の国債があれよあれよという間に素敵な暴落状態だったわけですが。

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=aV2Kf4yqiO0I
欧州債:イタリア5年債利回り7.5%超−首相辞意表明やLCH変更

・・・・・・ちょwwwwおまwwwww昨日はこういう相場後講釈してたやんけ。


http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=ajlHpftGayW8
NY外為:ユーロ上昇、伊首相の辞意表明で債務問題解決を期待 (1)

『11月8日(ブルームバーグ):ニューヨーク外国為替市場ではユーロが対ドルで上昇した。イタリアのナポリターノ大統領は、ベルルスコーニ首相が財政緊縮法案の可決後に辞任することで同意したと発表。これに反応した。』(上記URLより)

ということでワロスワロスという感じですが、まあそもそも前日の海外市場でベル様が辞任したのを好感するのもどうかという感じでしたがそれはそれで、最初に引用した記事でも実際にイタリア国債の急落のトリガー引いたのはこっちだという説明がありましたな(つまり日本語記事のヘッドライン書いている人がトンチキなのでは疑惑が)。

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=aiiYdUeZPBRU
LCH:イタリア債の取引コスト引き上げ、価格に重し(1)

『11月9日(ブルームバーグ):決済機関LCHクリアネットは、顧客がイタリア国債や証券を取引する際のコストを引き上げた。LCHのフランス部門がウェブサイトに掲載した8日付の文書によると、年限7−10年のイタリア債の取引で顧客に求める預金の比率(デポジットファクター)は11.65%と、10月7日に発表された6.65%から引き上げられた。新比率は9日の取引終了時のポジションに適用される。』(上記URLより)

・・・・・・ということで、決済機関としては自分の所の庭先掃除の観点からすると当然の行動ではあるのですが、どう見てもその行動が危機を拡大しているというありがちなパターンで、もうアホかと馬鹿かとと言った風情の行動。まあ民間のサンピン市場参加者がそういうのやるのはシャーナイナイと思いますが、仮にも決済機関という公的な所が危機を煽るようなプロシクリカルな動きをしてどうすんだ阿呆と思う次第でございます。

つーことで、こういうのが始まるとプロシクリカルというかバンドワゴンというか、まあそんな感じで一気に祭りになってしまいがちなので、関係当局におかれましてはもうちょっと後先を考えた対応を願いたいものであります、と偉そうに申しておりますが、後先考えない対応が得意なのは民主党政権も同じなので、日本に金融問題とかソブリン問題とかが延焼しないように心から願うものでございます。延焼したら馬鹿閣僚が馬鹿発言してプロシクリカルに危機を急拡大させるに1万イタリアリラ。


そういや昨日はMoody'sが物凄い勢いで金融機関とか新興国とかの格付けを下げていましたな。いやまあ過去格下げが遅れてという反省もあるのでしょうが、こうやって金融市場で火がボーボーの時に物凄い勢いで格下げとか「保身格下げ」にしか見えない訳で、こういうのもまたプロシクリカリティーの拡大に繋がるんじゃないかと思いますですよ。関連ヘッドラインでも引用しようと思ったけどあまりに多いのでパスしますが、ブルームバーグかロイターで「ムーディーズ」関連のニュース検索したら昨日は威勢よく格下げしてまっせ。

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2011/11/08

お題「虫干しネタをやらないうちに欧州雑談とかになるあたくしorz」

えーっと、この前折角空気読んでPD懇と投資家懇で3次補正分の増発を中期債中心で実施するという話をしたのは何だったんでしょ。いやまあ来年度の本予算関連の国債発行計画で調整すれば良い話ではありますが。

http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20111107-OYT1T01217.htm
復興債「25年」で償還、民自公が合意へ


○欧州雑談関連

いやあギリシャでお笑い劇場をやっているうちにイラチの市場ちゃんがイタリアに本格的に放火してきたでござるの巻という風情ですかそうですか。

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=aGbusp1cOYEY
欧州債:イタリア債下落、利回り過去最高−債務問題と景気減速を懸念

昨日の日本時間の夕方に6.6%とかになっておられたイタ公の国債様でございますが、まあ政治がらみで解決に時間が掛かるので市場様がイライラして延焼祭りを開始しましたという事でございますが、まあECBも国債の買入に関しては昨日ネタにしたドラギ総裁の会見のように「まあそれは正論だが火がボーボーとなりかけの時にどうなのよ」というようなスタンスを堅持しているように見えますから、炎上しやすい罠という事で。

昨日(あまりにながくなるので)つい引用をスルーしましたがイタリア国債に関する質疑もあったんですよね、先週のドラギ総裁の会見には、ということでそれを引用。

http://www.ecb.int/press/pressconf/2011/html/is111103.en.html

『Question: Mr Draghi, a question about Italy, which is at the forefront of the current situation. Despite the ECB’s intervention, yields on ten-year Italian bonds are substantially higher than 6%, with an inversion of the yield curve. Is this of concern to the ECB? Did you analyse this particular situation in your meetings today and yesterday?』

ということでイタリア国債市場についてどう思いますか理事会で検討しましたかと。

『Draghi: No, we have not really been focusing on this and similar situations in our discussions today and yesterday. However, it is clear that - as I have said many times - the responsibility for maintaining financial stability and orderly financial conditions lies first and foremost with national economic policies. It is really pointless to think that sovereign bond rates could be stably brought down for a protracted period of time by external interventions. The main pillar of this is the national economic policy response, which is made up of two components: first, put your public finance in order and, second, undertake structural reforms. In doing so, competitiveness is enhanced, thereby fostering growth and job creation.』

特に理事会でイタリア国債にフォーカスしてお話したわけではございませんがなという話ですが、その次にありますように「何度も申し上げていますが、各国の金融の安定や、秩序ある金融環境を維持する責務は各国の経済政策にある事は明白です」という話を思いっきりしておりまして、いやまあそれは正論なのですが、そもそも各国が財政制約に置かれる中で今のような状況になっている時に中央銀行が放置プレイとも取られそうなスタンスを見せるっちゅうのも火に油を注ぎやすいわなとは思います。その後もまあ同じような話をしてて「ソブリン債の金利を買い支えで低下させる事ができる考えてはいけません」とか続き、結局の所は各国の財政当局と政治の努力が必要ですとまあそれはそれで正論なのですがねえという話が続くのがECBクオリティ。

つまりですな、昨日引用したQ&Aの最初の所にありますように、まあ要するにECBは「流動性の供給に関してはジャンジャンやるし必要ならば利下げもしますが、ソルベンシーの問題に関しては中央銀行がどうにかする話じゃありませんので各国頑張りなさい」という話をしている訳で、まあ正論は正論という所ではございますが以下同文という事ですな。

昨日引用した債券買入プログラムの3原則に沿って考えた場合、まあイタ国債の金利が勝手に上昇という中では「金融政策のトランスミッションメカニズムが効きにくくなる」という状況でもありますので、そういう文脈から考えるとまあイタリア国債の買入はしませんがなという話でもないとは思うのですが、一方で「買入は無限ではない」という大原則もあるので、どっちに軸足を置くのかによってまあ見え方も違ってくるんでしょうけど。


○そんな中で資本増強ですかそうですか

既報ではございますが。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/rel111107d.htm/
バーゼル銀行監督委員会による「グローバルにシステム上重要な銀行に対する評価手法と追加的な損失吸収力の要件に関する規則文書」の公表について

日本銀行仮訳はこちら
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/data/rel111107d.pdf

『バーゼル銀行監督委員会(以下「バーゼル委」)は、本日、グローバルにシステム上重要な銀行(G-SIBs)に関する規則を公表した。本日の公表文書である、グローバルにシステム上重要な銀行:評価方法及び追加的な損失吸収力の要件は、バーゼル委のG-SIBs特定のための枠組み、G-SIBsが保有すべき追加的損失吸収力の規模及び本要件の段階的実施の枠組みについて規定している。』

ということでそちらに関するリリースはこっちです。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/rel111107e.htm/
金融安定理事会による「システム上重要な金融機関(SIFIs)に対処するための政策手段」の公表について

日本銀行仮訳はこちら
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/data/rel111107e.pdf

『4. 「大きすぎて潰せない」問題に対処するためには、多面的かつ統合的な政策が求められる。このため、我々は以下で構成される政策措置に合意した。

@)破綻金融機関を当局が秩序ある形で、納税者を損失のリスクに晒すことなく処理することを可能にするために全ての国内破綻処理制度が有するべき責任・手段及び権限を定める、我々の国内破綻処理制度の改革における参照となる新しい国際基準(「FSB 実効的な破綻処理の枠組みの主要な特性」)。

A)グローバルにシステム上重要な金融機関(G-SIFIs)について、破綻処理の実行可能性の評価、再建・破綻処理計画の策定、及びG-SIFIs母国当局とホスト当局の危機への備えを高め、危機における協力方法を明確にするための金融機関ごとのクロスボーダー協力取極めの策定を行う、との要件

B)グローバルにシステム上重要と決定された銀行について、その倒産の影響度合いに応じてリスク資産対比で1%から2.5%(及びシステム上の重要性の程度を更に増す意欲を抑制するための3.5%の空バケット)の普通株で満たすべき追加的な損失吸収力を保有する、との要件

C)監督当局の責務、資源及び権限の強化と、リスクマネジメント機能、データ集積能力、リスクガバナンス及び内部統制についての監督上のより高い期待などを通じた、全てのシステム上重要な金融機関のより密度が高く実効的な監督

2012年初頭には、破綻が生じた場合の伝播リスクを抑制するため、核となる金融市場インフラについての強化された国際基準が最終化される。』

いやまあそれはそうなんですけれども、この状況下で金融機関の資本増強がどうのこうのという話をしだすというのは日本の金融危機の時の状況を思い出さざるを得ません罠と存じます次第なのでございます。しかも日本の金融危機の時と違って世界的にアレな状態になっている中でどこからその資本増強の金が出てくるんですかという気がするのですけど。まあ日本がこの期に海外の金融機関を買うというようなお洒落な話にでもなるなら結構な話ですが。

既報ですが俺様備忘録のため対象金融機関のリストの部分も引用して置くだよ。

『(別添) グローバルにシステム上重要な金融機関(破綻処理関係の要件を2012年末までに満たす必要があるもの1)

Bank of America
Bank of China
Bank of New York Mellon
Banque Populaire CdE
Barclays
BNP Paribas
Citigroup
Commerzbank
Credit Suisse
Deutsche Bank
Dexia
Goldman Sachs Group
Credit Agricole
HSBC
ING Bank
JP Morgan Chase
Lloyds Banking Group
Mitsubishi UFJ FG
Mizuho FG
Morgan Stanley
Nordea
Royal Bank of Scotland
Santander
Societe Generale
State Street
Sumitomo Mitsui FG
UBS
Unicredit Group
Wells Fargo

1 この当初のリストは、2009年末のデータを使用し、BCBSの文書「グローバルにシステム上重要な銀行に対する評価手法と追加的な損失吸収力の要件」において定められた手法に基づいている。G-SIFIsのリストは毎年更新され、各年の11月に公表される。したがって、リストは固定的ではない − 毎年参入や退出の可能性があり、G-SIFIsの数も変動し得る。BCBSの手法は、銀行システムの変化やシステム上の重要性の測定における進歩を捕捉するため、3年ごとに見直される。現在のリストは、グローバルなシステム上重要な銀行グループを含むものである。将来のリストは、銀行グループ以外のG-SIFIsも含み得る。2012年11月より、グローバルなシステム上重要な銀行グループの公表リスト上には、追加的な損失吸収力の要件が仮に発効していたとすれば各グループが達成を求められるであろう追加的な損失吸収力の水準に応じたバケットの割り当てが示されることとなる。追加的な損失吸収力の要件は、まず、2014年11月にグローバルにシステム上重要であると特定される銀行に対して、その時点で割り当てられるバケットを用いて、2016年から適用が開始される。』

ということで、リスト見ると何か無駄に数が多い気もするのですが、脚注にあるようにこのリストは流動的のようで(つーか雲丹クレジットとか資本増強とかの話よりもイタリア国債がどうなるのかという方が喫緊の課題のような気がしますが)ございますが、まあソブリン問題が金融問題に拡大する中で金融機関の資本増強が重要というのは正論なのですけれども以下同文という感じでしょうか。

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2011/11/07

お題「ECB定例理事会会見ネタの続き(前のネタはどーしたというツッコミはしないように)」

http://www.ecb.int/press/pressconf/2011/html/is111103.en.html
Introductory statement to the press conference (with Q&A)

つーことで質疑応答付ですが、第1パラグラフだけ金曜にネタにしましたけれども、その続きを少々。


○総裁変わって初回なので説明部分ももうちょっと読んでみるお

・流動性供給の実施は行いますよと

第2パラグラフではこんな話を。

『The provision of liquidity and the allotment modes for refinancing operations will continue to ensure that euro area banks are not constrained on the liquidity side. All the non-standard monetary policy measures taken during the period of acute financial market tensions are, by construction, temporary in nature.』

ということで、リクイデティーの枯渇によって金融市場が制約を受けることに関しては避けなければいけませんね、という話をしていまして、利下げと共に流動性の供給に関してはきっちり行いますよ、という話もしてますな。


・ユーロエリア経済に関して

んでまあその先が経済分析。

『Let me now explain our assessment in greater detail, starting with the economic analysis. Real GDP growth in the euro area, which slowed in the second quarter of 2011 to 0.2% quarter on quarter, is expected to be very moderate in the second half of this year. There are signs that previously identified downside risks have been materialising, as reflected in unfavourable evidence from survey data.』

足元でのGDPの悪化は、これまでの間に出ていた良くないサーベイデータの数字に示されていた下方リスクの顕在化が起こったサインであると。

『Looking forward, a number of factors seem to be dampening the underlying growth momentum in the euro area, including a moderation in the pace of global demand and unfavourable effects on overall financing conditions and on confidence resulting from ongoing tensions in a number of euro area sovereign debt markets.』

先行きも世界経済の減速とユーロ圏のソブリン問題による金融環境の悪化が基調的な成長に悪影響を与えると思われます。

『At the same time, we continue to expect euro area economic activity to benefit from continued positive economic growth in the emerging market economies, as well as from the low short-term interest rates and the various measures taken to support the functioning of the financial sector.』

でも同時にユーロ圏の低金利政策および金融セクターの機能が維持されることによって、ユーロ圏経済は新興国の継続する経済成長による恩恵を受けることができるでしょう、という事で先進国はどこもかしこも新興国経済の成長頼みですかそうですか。

『In the Governing Council’s assessment, the downside risks to the economic outlook for the euro area are confirmed in an environment of particularly high uncertainty.』

キタコレ。

『Downside risks notably relate to a further intensification of the tensions in some segments of the financial markets in the euro area and at the global level, as well as to the potential for these pressures to further spill over into the euro area real economy.』

金融市場の悪化のスピルオーバー効果キタコレ。

『They also relate to the impact of the still high energy prices, protectionist pressures and the possibility of a disorderly correction of global imbalances.』

エネルギー価格の高止まりやリスク回避姿勢、グローバルインバランスの修正などもリスクと。


・物価に関して

『With regard to price developments, euro area annual HICP inflation was 3.0% in October according to Eurostat’s flash estimate, unchanged from September. Inflation rates have been at elevated levels since the end of last year, mainly driven by higher energy and other commodity prices.』

足元の物価上昇は主にエネルギーや商品価格の上昇によるものですと。

『Looking ahead, they are likely to stay above 2% for some months to come, before falling below 2% in the course of 2012. Inflation rates are expected to remain in line with price stability over the policy-relevant horizon. This pattern reflects the expectation that, in an environment of weaker euro area and global growth, price, cost and wage pressures in the euro area should also moderate.』

でもその後はユーロ圏の経済が弱く、更に世界経済の減速する中で、ユーロ圏の価格や賃金などの上方圧力は緩和される結果として物価上昇率は低下するという予想ですな。

『The Governing Council continues to view the risks to the medium-term outlook for price developments as broadly balanced, taking also into account today’s decision.』

リスクはおおむねバランスと。

『On the upside, the main risks relate to the possibility of increases in indirect taxes and administered prices, owing to the need for fiscal consolidation in the coming years. In the current environment, however, inflationary pressure should abate. The main downside risks relate to the impact of weaker than expected growth in the euro area and globally. In fact, if sustained, sluggish economic growth has the potential to reduce medium-term inflationary pressure in the euro area.』

物価の上方リスクは財政健全化に伴う間接税の引き上げとか公共料金(ですかこれ)の引き上げとかですが足元の環境では上方圧力は緩和されており、下方リスクはユーロ圏および世界経済の成長がより減速すること、ということで、まあバランスとか言いながらも下方リスクの方が強い感じでして、弱い経済成長が続いた場合には中期的な物価低下圧力になるとしていますな。

つーことで、見通しはだいぶ下がっています。


・そして金融機関の自己資本充実に言及とな

ちょっと飛ばしてその後。

『The overall size of monetary financial institutions’ balance sheets remained broadly unchanged over the past few months. The soundness of bank balance sheets will be a key factor in reducing potential negative feedback loop effects related to tensions in financial markets, thereby facilitating an appropriate provision of credit to the economy over time.』

金融機関のバランスシートの健全性を保つことが金融市場の経済に対するネガティブフィードバックを抑える重要な要因で、それによって金融機関による適切な信用供与が経済に行われることができますよ。

『We therefore welcome the agreement of the European Council to proceed with the increase in the capital position of banks to 9% of core Tier 1 by the end of June 2012. We also fully support the call to national supervisors to ensure that banks' recapitalisation plans do not lead to excessive deleveraging.』

ということで、欧州委員会が2012年6月末までに銀行のコアTier1資本を9%にするように同意した事を歓迎しますし、銀行の資本増強によって過度なデレバレッジが起きないようにサポートします、との仰せなのですが、まあ確かに先ほどの方で流動性供給については万全の体制を取りますという話をしていますし、こちらもサポートするとは言ってますけれども、やはりこれはこれでちょっと景気の足引っ張るんじゃネーノという感じがします。


・最後に「構造改革」について

財政政策面についての話(まあ話ったって「各国は財政健全化を進めてちょ」という話でECBが何かをするという話ではない)の後に構造改革の話が。

『It is crucial that fiscal consolidation and structural reforms go hand in hand to strengthen confidence, growth prospects and job creation.』

構造改革が必要とな。

『The Governing Council therefore calls upon all euro area governments to accelerate, urgently, the implementation of substantial and comprehensive structural reforms. This will help the euro area countries to strengthen competitiveness, increase the flexibility of their economies and enhance their longer-term growth potential.』

『In this respect, labour market reforms are essential and should focus on measures to remove rigidities and to enhance wage flexibility, so that wages and working conditions can be tailored to the specific needs of firms. More generally, in these demanding times, moderation is of the essence in terms of both profit margins and wages.』

『These measures should be accompanied by structural reforms that increase competition in product markets, particularly in services - including the liberalisation of closed professions - and, where appropriate, the privatisation of services currently provided by the public sector.』

ほっほー。

『At the same time, the Governing Council stresses that it is absolutely imperative that euro area national authorities rapidly adopt and implement the measures announced and recommended in the Euro Summit statement of 26 October 2011.』

ということで、まあ総裁変わって最初なのでちと細々読んでみましたが、まあちょうど総裁が変わったというのもあって、ここぞとばかりに景気重視色を強めているなあという感じがします。


○ECB定例理事会後の質疑応答に関して少々メモ

その続きが質疑応答でして、まあ何となく読んでみたのですが、トリシェ総裁も会見の時に記者に文句垂れている場面がございましたが、ドラギ総裁もいい感じで沸点があまり高くはなさそうな感じがせんでもないな、というのもあります。

沸点の話の前に最初の2つの質疑を。

『Question: President Draghi, welcome to Frankfurt. I have a few questions about today’s rate decision, which came as a bit of a surprise. Was the decision unanimous? And can you explain the reasoning behind it, because if the economy needs it and there are very few upside risks to inflation left, why did you not cut by 50 basis points, or are you going to do that next month?』

『Draghi: Lots of questions, in one short question. But, yes, the decision was unanimous. Second, why did we do it? I think I did say why in the statement, but the points are basically the following: first of all, we observed a weakening of various components of aggregate demand, mainly consumption and foreign demand. We observed a worsening, both in hard data and survey data - worsening Purchasing Managers’ Indices (PMIs), especially in manufacturing, in new orders growth, etc. We have also had two or three Consensus forecasts - we have the Eurobarometer and Consensus Economics showing that the likelihood of the weakening of the economic situation has gone up. We have concluded that the present situation would have a dampening effect on wages, prices and costs, so that our decision today is expected to maintain price stability in the medium term.』

今回の決定は全員一致ですというのと、利下げの背景に関しての景気、物価に関する説明をしていますけれども、主に消費と海外の需要が弱まっている点を注目し、それから製造業PMIなどの悪化や、コンセンサス調査などの悪化に注目した結果、現在の経済状況は賃金や物価などに悪影響を与えると見られるので利下げを実施しました、というお話ですな。

『Question: Can you tell us if you can envisage a time frame for when the Securities Markets Programme (SMP) will stop and if its continuation is conditional on the countries or if it is, at least, a factor that the countries adopt the measures that they are asked to take, that they have committed to take? I am referring, in particular, to a letter that you yourself were a co-signatory to, together with Mr Trichet, in the summer for Italy.』

『Draghi: The Securities Markets Programme (SMP) always has had, and was meant to have - as it has been stated since the very beginning - three characteristics. First of all, it is temporary. Second, it is limited in its amount and, third, it is justified on the basis of restoring the functioning of monetary policy transmission channels. So we should keep this in mind because this in a sense answers all the questions that one might have. The relationship with conditionality should be viewed from this perspective. We want our monetary policy to function. And I think that is where the main justification for the SMP lies.』

資産買入プログラムに関する質疑応答ですが、ドラギ総裁はSMPに関して(1)一時的なものである、(2)買入量は限定的なものである、(3)金融政策のトランスミッションチャネルが機能するために行われるという目的のもとに正当化されるものである、という3点を打ち出しております、まあ従来通りではありますが。

つまり、この資産買入プログラムは「金融市場の機能不全によって金融緩和政策の効果が阻害されるのを防ぐために実施する」という意味合いによって実施される流動性供給プログラム的な扱いとなっている、という原則は維持しておりまして、そーゆー点ではまあECBが買入やってお助けオペする訳ではないですよ、と思いっきり仰せのようです。

で、まあ以下はこの話の発展系の話が多いのですが、ECBの場合はタカとハトと両方から質問が来るようで、最初の質問のように「何でもっと利下げしなかったのか」という質問が出ると思えば「ドイツ企業とかの動きを見ていると物価の上方リスクが下がったとは思えませんけど」という質問が出てみたりというような形で、どこかの中央銀行みたいに全部同じ方向で質問が飛んでくるようなのと違うのがオモシロスであります。

ということでこんな質疑応答も。ずっと先の方ですが。

『Question: And a second question if I may: there are more and more concerns about the balance sheet of the ECB. Some economists say the SMP, but also the credit you give to Greek banks, might cause significant write-downs, especially if Greece fails. As an economist, would you say the Eurosystem can operate on a negative equity capital basis?』

で、ECBのバランスシートに対するどうのこうのというこの質問に対して。

『Draghi: There is a strange “schizoid” attitude because some people say that our balance sheet is at risk, while others say we should expand our balance sheet to help everybody.』

schizoidって精神分裂症とかいう意味ね。

『In point of fact our balance sheet is not at risk and many things have been decided at the last European Council which made the Greek debt and the Greek counterparties compliant with our requirements. Our requirements for collateral are 1) that counterparties should be sound, and 2) that collateral should be adequate. There have been measures to recapitalise the banks, there have been measures of credit enhancement, and there have been measures giving guarantees for term funding. And there have been other measures that are reassuring as far as the ECB balance sheet is concerned.』

まあこの辺はECBはバランスシートの健全性についての説明ですが、この質疑の前にも「記者の質問に質問で返す」という技を炸裂させてみたりしてて、これはECBの仕様なのかもしれませんけれども、記者にいきなり切り返すというのが初回から出るというのが中々アレであると思いました(^^)。

あと、この質疑応答もワロタ。

『Question: One question for President Draghi and one question for Vice-President Constancio. I am a bit surprised by your somewhat “legalistic” answer on Greece and that is not in the Treaty. If you have senior euro zone politicians talking about Greece potentially leaving the euro zone, is not it up the ECB to consider how this, if it is supposed to happen, can be done technically and whether it can be done technically or not?

And for Vice-President Constancio: you have seen in your time here at the ECB President Trichet in the chair where President Draghi is sitting now and you have seen President Draghi today. What is the difference in style and substance in the two leaderships?』

まあ1番目の方はどうでも良いのですが。

『Draghi: If I can comment, the second question is much better than the first! (1番目の質問の答え部分全部省略します。まあ要するに「ユーロの理念に則るのが大事だからギリシャの脱退とか有り得ません」という話をしています)』

『Constancio: On substance, it is the same. Do not forget that President Draghi has been a member of the Governing Council for many years, so he is totally embedded in the approach of the Governing Council over the years and you see also the continuity of analysis in the initial statement and in his answers. Let me remind you that, last month, President Trichet said that the possibility of a rate cut was discussed in the meeting, so the decisions today are not something that are out of line with the continuity of analysis and, as the President explained, the indicators since then have only aggravated and justified today’s decisions. So, I would say no differences on substance. On style, there is the same approach of taking the opinions and inputs of everyone. That is also to say, that there are, as always, personal differences. But I will perhaps protect myself by saying that it is too soon to tell! Just one meeting, just one observation!』

そもそも利下げに関して前回も議論してましたので唐突な訳ではないですし、ドラギ総裁も前からメンバーでしたからスタイルの違いと言われましても何ですが、ただまあ個人的キャラという面に関してはまだ1回の会合ですからコメントしにくいですなあ(笑)という感じでしょうな。

『Draghi: I would just like to add one thing. I think your question also has a deeper angle than just pure personalities, and the answer to your question is really that continuity, credibility and consistency are of the essence in the way we carry out our jobs.』

コンスタンシオ副総裁のコメントで終了しても良い所にわざわざドラギ総裁出てきてこんなコメントを付け加えるのが何というかまあそういうキャラクターなんですかね、というお話であります。初回だから張り切っているのかも知れませんけれども、ちょっと沸点が低めの気もするのでありますがどうでしょうかね。


しかしまあ何ですな、「ECBになってブンデスバンクの原則が打ち捨てられたと批判されていますがどう思いますか」というような質問も飛んでくる所がまあ初回の会見らしい所であります(^^)。

『Question: Your predecessor Mr Trichet was criticised by many Germans for throwing the Bundesbank principle overboard, and a lot of Germans are fearfully asking themselves if you stand in the tradition of the Bundesbank. Perhaps you can give these Germans an answer. Secondly, did Mr Trichet give you any advice for today’s meeting and, if so, have you followed it?』

『Draghi: No, Mr Trichet did not give me any specific advice for today’s meeting, but he gave me the comfort of his example, of his being a role model. I had the privilege to work with him for many years. On the first question, I have great admiration for the tradition of the Bundesbank. I was in the Treasury in Italy in the 1990s and we had many opportunities to work with Hans Tietmeyer and Helmut Schlesinger, so I developed a very great admiration for this institution throughout these years. As for the future, let me do my work and we will have periodic checks as to whether I am in sync with this tradition or deviating from it.』

ティートマイヤーとかシュレジンガーとかテラナツカシス。

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2011/11/04

○ECB利下げとな

http://www.ecb.int/press/pr/date/2011/html/pr111103.en.html

『The interest rate on the main refinancing operations of the Eurosystem will be decreased by 25 basis points to 1.25%, starting from the operation to be settled on 9 November 2011.

The interest rate on the marginal lending facility will be decreased by 25 basis points to 2.00%, with effect from 9 November 2011.

The interest rate on the deposit facility will be decreased by 25 basis points to 0.50%, with effect from 9 November 2011.』

コリドアの幅は変えずに全部25bp下げとなりましたとな。


http://www.ecb.int/press/pressconf/2011/html/is111103.en.html
Mario Draghi, President of the ECB,
Vitor Constancio, Vice-President of the ECB,
Frankfurt am Main, 3 November 2011

『Based on its regular economic and monetary analyses, the Governing Council decided to reduce the key ECB interest rates by 25 basis points. While inflation has remained elevated and is likely to stay above 2% for some months to come, inflation rates are expected to decline further in the course of 2012 to below 2%.』

インフレは目先2%超になるがその後2012年の間に2%以下に低下するとの見通し、と言わないと利下げが正当化できないというのはありますが、いきなりハト炸裂という感じでほほうという感じですが、まあ欧州も物価そのものは上昇している印象が個人的にはあるのでこれはこれで今後は大変だなあという感じはせんでもない。

『At the same time, the underlying pace of monetary expansion continues to be moderate. After today’s decision, inflation should remain in line with price stability over the policy-relevant horizon.』

基調的なマネタリーの拡大もモデレートになっているので中長期的な物価安定は今回の利下げによっても保たれますと。

『Owing to their unfavourable effects on financing conditions and confidence, the ongoing tensions in financial markets are likely to dampen the pace of economic growth in the euro area in the second half of this year and beyond. The economic outlook continues to be subject to particularly high uncertainty and intensified downside risks.』

つーことで欧州債務問題による金融市場の悪化が経済の先行きに悪影響および下振れリスクを与えていますと。

『Some of these risks have been materialising, which makes a significant downward revision to forecasts and projections for average real GDP growth in 2012 very likely.』

これらのリスクが顕在化しており、来年の実質GDPの見通しを大幅に引き下げる可能性が「very likely」ですと。

『In such an environment, price, cost and wage pressures in the euro area should also moderate; today’s decision takes this into account. Overall, it remains essential for monetary policy to maintain price stability over the medium term, thereby ensuring a firm anchoring of inflation expectations in the euro area in line with our aim of maintaining inflation rates below, but close to, 2% over the medium term.』

したがって利下げしても物価の上昇圧力は抑えられますとゆー話をしておりますが、まあ今回に関しては明らかに金融市場の混乱とコンフィデンスの悪化に伴う対応という事で、物価云々に関しては後付理屈

『Such anchoring is a prerequisite for monetary policy to make its contribution towards supporting economic growth and job creation in the euro area.』

つーことで総裁変わったらいきなり利下げで結局の所トリシェは逆噴射利上げをしただけでしたねという話ですかそうですかという事ですが、会見詳細は後日やるかもしれませんがたぶんやらないでしょう(汗)。


○FOMC声明文比較

http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20111102a.htm(今回)
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20110921a.htm(前回)


・第1パラグラフ:現状の景気判断が上がっていますな

『Information received since the Federal Open Market Committee met in September indicates that economic growth strengthened somewhat in the third quarter, reflecting in part a reversal of the temporary factors that had weighed on growth earlier in the year.』(今回)

『Information received since the Federal Open Market Committee met in August indicates that economic growth remains slow.』(前回)

一時的な下押し要因の剥落により経済成長は3Qで若干強くなっているとな。


『Nonetheless, recent indicators point to continuing weakness in overall labor market conditions, and the unemployment rate remains elevated. Household spending has increased at a somewhat faster pace in recent months.』(今回)

『Recent indicators point to continuing weakness in overall labor market conditions, and the unemployment rate remains elevated. Household spending has been increasing at only a modest pace in recent months despite some recovery in sales of motor vehicles as supply-chain disruptions eased.』(前回)

ただし労働市場に関する認識は引き続き厳しいのでNonethelessというのが入っているようですけれども、一方で家計の支出に関してはその増加ペースに関して「at a somewhat faster pace」となっていてこちらは上方修正。

『Business investment in equipment and software has continued to expand, but investment in nonresidential structures is still weak, and the housing sector remains depressed.』(今回)

『Investment in nonresidential structures is still weak, and the housing sector remains depressed. However, business investment in equipment and software continues to expand.』(前回)

企業の投資に関する話ですが、設備とソフトウェアに関する投資の部分について今回何故か「has continued to」と時制が変わっているのに何の意味があるのかが頭が悪いので良く判らないのですが、今回語順が変わっていて、前回は「景気の悪い話、However景気の良い話」だったのが今回は「景気の良い話、but景気の悪い話」となりまして、メインが景気の良い話の方になっていますのでこれも微妙に上げという感じがしますがどうでしょうかね。

『Inflation appears to have moderated since earlier in the year as prices of energy and some commodities have declined from their peaks. Longer-term inflation expectations have remained stable.』(今回)

『Inflation appears to have moderated since earlier in the year as prices of energy and some commodities have declined from their peaks. Longer-term inflation expectations have remained stable. 』(前回)

ご覧のとおりでインフレに関する見方は変わっていません。


・第2パラグラフ:でも先行きの回復ペースは鈍化とな

『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability. The Committee continues to expect a moderate pace of economic growth over coming quarters and consequently anticipates that the unemployment rate will decline only gradually toward levels that the Committee judges to be consistent with its dual mandate.』(今回)

『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability. The Committee continues to expect some pickup in the pace of recovery over coming quarters but anticipates that the unemployment rate will decline only gradually toward levels that the Committee judges to be consistent with its dual mandate.』(前回)

経済成長のペースに関して今回の「moderate pace」と前回の「some pickup」のどっちが強いのよという事ですが、その後の所にある接続詞が今回が「and」で前回が「but」となっていまして、後の文章は「失業率はデュアルマンデートで目標とする望ましいレベルに低下する為には極めて緩やかなペースになると予想する」となっているので、つまりは今回の「moderate pace」の方が判断としては弱いという事になります。

・・・・・まあ何ですな、これって「一時的な落ち込み要因が剥落した分で若干回復のペースが拡大したものの、今後はその分の寄与が無くなるから回復ペースは従来の緩やかな水準に戻っちゃいますね」というどこの日銀だよという感じですが、まあそういう事なんでしょ。

『Moreover, there are significant downside risks to the economic outlook, including strains in global financial markets. The Committee also anticipates that inflation will settle, over coming quarters, at levels at or below those consistent with the Committee's dual mandate as the effects of past energy and other commodity price increases dissipate further. However, the Committee will continue to pay close attention to the evolution of inflation and inflation expectations.』(今回)

めんどいので前回分の引用をスルーしますが、ダウンサイドリスクの話とインフレ見通しに関する話についてのこの部分は前回分と一言一句変わりませんです。


・第3パラグラフ以降:まあ今回はそんなに変わっていない

前回はFEDのバランスシートの構成変更に関する決定がありましたのでここは前回比較というのはちとアレでございますけれども、今回の声明文を拝読。

『To support a stronger economic recovery and to help ensure that inflation, over time, is at levels consistent with the dual mandate, the Committee decided today to continue its program to extend the average maturity of its holdings of securities as announced in September. The Committee is maintaining its existing policies of reinvesting principal payments from its holdings of agency debt and agency mortgage-backed securities in agency mortgage-backed securities and of rolling over maturing Treasury securities at auction. The Committee will regularly review the size and composition of its securities holdings and is prepared to adjust those holdings as appropriate.』(今回)

ということで、まあ文言自体は基本的にそんなに変わらず、前回の決定した施策を実行しますよという話である。

『The Committee also decided to keep the target range for the federal funds rate at 0 to 1/4 percent and currently anticipates that economic conditions--including low rates of resource utilization and a subdued outlook for inflation over the medium run--are likely to warrant exceptionally low levels for the federal funds rate at least through mid-2013.』(今回)

このガイダンス文言も前回と同じなのですが、よくよく考えてみますとケツが変わらないというのは時間軸が短くなることを意味しておりまして、次回のFOMCが12月になりますけれども、そろそろここのケツの日程変えた方が良いんじゃないかという気がするんですけどねえ。SEP(経済物価の見通し)では1年時間軸が伸びた格好になっている(これまた日銀の展望レポートと似ていて思わずウケた)のですけどね。

『The Committee will continue to assess the economic outlook in light of incoming information and is prepared to employ its tools to promote a stronger economic recovery in a context of price stability.』(今回)

前回はここに『The Committee discussed the range of policy tools available to promote a stronger economic recovery in a context of price stability.』というのがあったのですが、何故か抜けていて「???」と思ったのですが、まあ会見の方では(会見は動画はみれますけれども、フルテキストになっていないのでめんどい)追加緩和ツールについて言及しているので、別に追加の用意はありますよ、という話は継続なんですな。


『Voting for the FOMC monetary policy action were: Ben S. Bernanke, Chairman; William C. Dudley, Vice Chairman; Elizabeth A. Duke; Richard W. Fisher; Narayana Kocherlakota; Charles I. Plosser; Sarah Bloom Raskin; Daniel K. Tarullo; and Janet L. Yellen. Voting against the action was Charles L. Evans, who supported additional policy accommodation at this time.』(今回)

前回の追加緩和に反対した3名は今回は現状維持に賛成する一方で、従来より失業率の高止まりを政策判断に対してより重視すべきであるという主張をしているシカゴ連銀のエバンス総裁は今回「追加緩和が必要である」と主張して反対しています。


・SEP(経済物価見通し)に関して

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20111102.pdf
Economic Projections of Federal Reserve Board Members and Federal Reserve Bank Presidents, November 2011
Advance release of table 1 of the Summary of Economic Projections to be released with the FOMC minutes

ということで、SEPの詳しいのはMinutesで示されますが、その表紙みたいな部分が今回公表されています。でまあ数字はそこにある通りですけれども、基本的に前回の見通しの足が1年先に伸びているという感じでして、要するに先行き見通しを1年後寄せさせたという感じになっています。ただし足元に関しては物価の見通しが上がっていますが、先行きに関しては上昇していませんので単にこれは現状の数値を見て直したという話になろうかと思います(詳しい数字はコピペめんどいので上記URL先をご参照)。

あと、この見通しに関しては「長期的に望ましいとするレンジ」も示されていまして、そこのチャートの中の「longer-run」の数字がそうなんでしょという所でして、2ページ目にファンチャートがあって、3ページ目に説明がありまして、その中にこんなのがあります。

『The longer-run projections, which are shown on the far right side of the charts, are the rates of growth, unemployment, and inflation to which a policymaker expects the economy to converge over time-maybe in five or six years-in the absence of further shocks and under appropriate monetary policy. Because appropriate monetary policy, by definition, is aimed at achieving the Federal Reserve’s dual mandate of maximum employment and price stability in the longer run, policymakers’ longer-run projections for economic growth and unemployment may be interpreted, respectively, as estimates of the economy’s normal or trend rate of growth and its normal unemployment rate over the longer run. Similarly, the longer-run projections of inflation are for the rate of inflation that each policymaker judges to be most consistent with the Federal Reserve’s dual mandate in the longer term.』

つーことですので、まあ言ってみれば日銀の中長期的な物価安定の理解と同じようなもんですが、FEDの場合は物価だけじゃなくて失業率がデュアルマンデートですから入るのは当然として、実質GDPも入っているんですね、という所でございます。

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2011/10/21

○バーナンキ議長講演が何気にマクロプルーデンスな件について

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20111018a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20111018a.pdf

The Effects of the Great Recession on Central Bank Doctrine and Practice

水曜日にこれ見た時には政策ツールがどうのこうのの部分を読みましたが、その次にある『Financial Stability Policy』というのがまたアレでござる。

『Even as central banks were innovative in the operation of their monetary policies, they were forced to be equally innovative in restoring and maintaining financial stability. Serving as a lender of last resort--standing ready in a crisis to lend to solvent but illiquid financial institutions that have adequate collateral--is, of course, a traditional function of central banks. Indeed, the need for an institution that could serve this function was a primary motivation for the creation of the Federal Reserve in 1913. The Federal Reserve's discount window is an example of a facility that operates in normal times to provide very short-term liquidity to depository institutions. Most other central banks have facilities with similar features that are generally aimed at banks that find themselves with temporary liquidity needs. During the crisis, as short-term funding markets failed to function normally, central banks around the world acted forcefully to channel liquidity to institutions and markets by lengthening the terms of their lending, increasing the range of collateral accepted, and expanding the set of counterparties with which they would undertake operations.』

ということで「金融の安定化」という話がおっぱじまるのですが、最初のパラグラフではいわゆるLLR(最後の貸し手)としての中央銀行という伝統的な手段に関する話で、まあそれも今般の金融危機で少し進化しましたねとか何とか仰せでありんす。

で、その後もLLR関連の話が続くのですが、その後にこんなパラグラフが。

『As lender of last resort, a central bank works to contain episodes of financial instability; but recent events have shown the importance of anticipating and defusing threats to financial stability before they can inflict damage on the financial system and the economy.』

実はこのbeforeはイタリックになっているのですが(コピペの都合で全部字体が同じになって正直スマンカッタ)、いわゆるひとつのFEDビュー破れたり(いやまあ勝った負けたの問題ではないですけれども・・・・・・・)ということで、信用バブルの発生と崩壊に関してはFEDビュー的なアプローチでは時既にお寿司だったという事だったのかもしれませんし、単に着手が遅れただけの話なのかもしれませんし、まあその辺は簡単ではないのですが、いずれにせよ信用バブル崩壊の大きさは通常の金融緩和だけで対処できないという事なので「事前の対応」の必要性が認識されたということになろうかと思います。

#この辺に関しては詳しくは翁邦雄先生のペーパーを見ると吉だと思うのですが、まず入り口としては厭債害債さんのしばらく前のエントリ→http://ensaigaisai.at.webry.info/200905/article_8.htmlを読まれるのが吉かと存じます。翁先生のペーパーはこちら→http://www.esri.go.jp/jp/others/kanko_sbubble/analysis_02_01.pdfでして、そこで言及されている2008年のジャクソンホールコンファランスの内容とかもオモシロスです

んでもってその続き。

『In particular, the crisis illustrated some important benefits of involving central banks in financial supervision. Among these benefits are the facilitation of close and effective information sharing between supervisors and the providers of backstop liquidity, especially during crises; the ability to exploit the substantial overlap of expertise in the making of monetary policy and financial stability policy; and the usefulness of the information supervisors gather about economic and financial conditions for monetary policy.』

どう見てもマクロプルーデンスアプローチです本当にありがとうございました。

『Appreciation of these benefits is leading to larger roles for central banks in financial supervision. For example, the Bank of England received expanded powers and responsibilities for financial stability with the establishment of a prudential regulator as a subsidiary of the bank and the creation of a separate Financial Policy Committee within the bank that will identify, monitor, and take action to reduce systemic risks. In the euro area, the newly created European Systemic Risk Board, which is chaired by the president of the ECB and includes the governors of all European Union central banks, draws heavily on central bank expertise, including analytical, statistical, and administrative support from the ECB.』

ふむふむ。

『In the United States, the Federal Reserve has reoriented its existing supervisory activities to incorporate a broader systemic focus; it also has been assigned new responsibilities for financial stability, including supervisory authority over nonbank financial institutions that are designated as systemically important by the Financial Stability Oversight Council and new backup authorities for systemically critical financial market utilities.』

ただまあこのマクロプルーデンス的なアプローチってのも結局の所規制強化の方向になりやすくなってしまいますので、そうなりますと信用バブルのようなバブルの発生を事前抑止する方向にはなるものの、金融自体が昔々大昔のようになって昨今のようなダイナミズムが失われてしまうリスクもある訳で、まあ今後はこのマクロプルーデンス的なアプローチにおいて規制監督のバランスをどう取っていくのか、という話になるんでしょうな、よー知らんけど。

なお、日銀はこんなのを出しています。まあ麿のご趣味のようですけど。
http://www.boj.or.jp/finsys/fs_policy/fin111018a.pdf
日本銀行のマクロプルーデンス面での取組み

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2011/10/20

○BOE貫録の全員一致

先日の資産買入拡大の議事要旨がでました。
http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/mpc/pdf/2011/mpc1110.pdf

まあ例によって例のごとくちょっとだけしか見ていない(なお宿題が溜まるorz)ですが。

『Regarding the stock of asset purchases, the Committee voted unanimously in favour of the proposition.』

ということで前回の買入拡大は何と全員一致の決定。一方でBOEのサイトにもございますが、一昨日(現地時間ベースでは昨日)公表されていた直近のCPIはと申しますと・・・・・・

http://www.bankofengland.co.uk/index.htm

Current Inflation 5.2%
Next due: 15 November 2011

Inflation Target 2.0%
More information

(ホームの右下の方にあります^^)

貫録の5.2%(先月は4.5%)に上昇という事で、インフレターゲットって何ですねんという話ではございますが、そこのMore informationってのをクリックすると説明があって、そこの中にこんなのがあるのが当然なのですが微苦笑。

『A target of 2% does not mean that inflation will be held at this rate constantly. That would be neither possible nor desirable. Interest rates would be changing all the time, and by large amounts, causing unnecessary uncertainty and volatility in the economy. Even then it would not be possible to keep inflation at 2% in each and every month. Instead, the MPC’s aim is to set interest rates so that inflation can be brought back to target within a reasonable time period without creating undue instability in the economy.』(インフレーションターゲットの説明から)


・・・・・というような中ですけれども、何故かこういう時にはきっちり全員一致になるというのはBOEって結構日銀チックな所がありますなあとか思うのですがそれは兎も角として、買入拡大の背景についてMinuteから少々。

第30パラグラフから。

『While the stimulatory monetary stance and present level of sterling should help to support demand, the weaker outlook for, and the increased downside risks to, output growth meant that the margin of slack in the economy would probably be greater and more persistent than previously thought.』

ほほう。

『This made it more likely that inflation would undershoot the 2% target in the medium term, without further monetary stimulus. There had already been some stimulus imparted from the substantial downward movements in interest rates across the term structure over the past two months, although part of that was likely to have been in anticipation of policy rates remaining unchanged for longer than previously expected and further asset purchases by the Committee. Overall, the case for an expansion of the Committee’s programme of asset purchases financed by the issuance of central bank reserves was compelling.』

ということで、「追加緩和をしないと中期的にインフレが2%を下回る可能性がより高まった」というのが追加緩和の背景という話で、これはまあ前回のMPCの議事要旨でも同じ話をしていましたけれども、前回よりもその確度が高まった、という話ですな。

つまり、これってインフレターゲットの政策の枠組みの範囲内ではありますけれども、思いっきりフォワードルッキング(めんどいので引用してませんが、前回同様に「インフレは間もなく5%に上昇」という見通しを示している)な政策運営でして、まあこの追加緩和はそう来るでしょうかなという事なので別にそれ自体に違和感は無いのですが、日本の金融政策に関してよく「インフレ目標設定すれば金融政策なんて自動運転で大丈夫」みたいな批判をするお方がおいで(さすがに最近だいぶ減ってきたと思いますが、かつてはそういう人がウジャウジャいましたわなあ)なのですが、この辺りの動きを見てねえねえどんな気持ちどんな気持ち、って申し上げたくなる次第ではございます。

BOEとしても足元の金融市場がアレですし、欧州経済が怪しいという中で追加緩和が必要って話になったとは思うのですが、これでCPIが来年になっても3%以上で推移という事になるとBOE益々大変になると思われるので、まあ正直大変ですねとゆーところではございます。

第31パラグラフから。

『In terms of the timing of further asset purchases, there were clear arguments for acting quickly and decisively now that the need for further monetary stimulus had become clear. The Committee recognised that there could be some benefit in delaying a policy change until November, when the background could be explained in more detail in the Inflation Report. But, on balance, any advantage to delay was thought insufficient to outweigh the arguments for acting immediately.』

11月のインフレレポートまで待つよりも今回追加措置を取る方が妥当との判断とな。

第32パラグラフから。

『There was considerable uncertainty over the scale of asset purchases necessary to keep inflation at target in the medium term. Depending on developments in the euro area and financial markets, the size of the stimulus could be adjusted in either direction. For some members, the substantial downside risks pointed to injecting a larger monetary stimulus than otherwise in order to place the UK economy in a stronger position were those risks to materialise.』

ということで、ユーロエリアの経済と金融市場の状況も踏まえ、ダウンサイドリスクがかなり大きく、より強力な緩和も必要ではないかという意見もあるってな所で、今回の買入拡大は「先行きの物価見通しの下方修正」と「先行きのダウンサイドリスクの拡大」によるものです、という話になっているのですが、まあ何度も申し上げていますように、足元では追加緩和実施後にCPIが(予想通りとは言え)更に上昇しているので、まあここからは結果次第ですなという所です。


○すっかり忘れていた(訳ではないが)9月FOMC議事要旨の続き

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20110921.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/fomcminutes20110921.pdf

『Committee Policy Action』の所であるが最初のパラグラフがくそ長いですお。

『In the discussion of monetary policy for the period ahead, most members agreed that the revisions to the economic outlook warranted some additional monetary policy accommodation to support a stronger recovery and to help ensure that inflation, over time, was at a level consistent with the Committee's dual mandate.』

経済見通しの変更に伴い追加緩和政策が正当化されますとな。

『While they recognized that monetary policy alone could not completely address the economy's ills, most members judged that additional accommodation could contribute importantly to better outcomes in terms of the Committee's dual mandate of maximum employment and price stability.』

でね、ここの部分は読んでいて「ほほう」と思ったんですけれども、「金融政策単体で経済の病気に対して完全に対処はできないけれども、ほとんどの委員は追加的な金融緩和政策がFOMCのデュアルマンデートの達成の為によりベターな結果をもたらす事に貢献すると判断しました」(訳が下手くそなのはあたくしの仕様です)という部分はイイハナシダナーという感じで。

つまりですな、これって福井の俊ちゃんスキームでもあるかとは存じますが(^^)、「効きは悪いかもしれないけれども、まずは追加緩和をしてみます」ってな話ではございまして、まあ何と申しますか福井俊彦的なアレを感じると共に、そうは言ってもこの姿勢というのは大事な点じゃネーノという風にも思ったりするのでございますな。

ただまあ効かない政策を大真面目に打ち続けていると今度は金融政策の効果に対する信頼性が低下してしまうリスクが思いっきりある訳で、イワシの頭も信心からスキームというのは使い過ぎるとそれはそれで将来に禍根を残す話になりますので、非常にその辺のバランスというか距離感覚は難しいというのも判るので、どのくらいのスタンスで行くのかというのはこれからも中央銀行の課題かなと思います。低金利長期化の為に金利操作が効きにくくなって来る中での将来的な政策のフレームワークという話になるんじゃないですかね。

『Those viewing greater policy accommodation as appropriate at this meeting generally supported a maturity extension program that would combine asset purchases and sales to extend the average maturity of securities held in the SOMA without generating a substantial expansion of the Federal Reserve's balance sheet or reserve balances. Specifically, those members supported a program under which the Committee would announce its intention to purchase, by the end of June 2012, $400 billion of Treasury securities with remaining maturities of 6 years to 30 years and to sell an equal amount of Treasury securities with remaining maturities of 3 years or less.』

ということでツイストオペ実施が妥当との結論。

『They expected this program to put downward pressure on longer-term interest rates and to help make broader financial conditions more accommodative.』

これこの前も引用したような気がしますが(というか政策ツールの検討の所で同じ話があるのでそう思っただけでした、汗)、長期金利を引き下げて金融環境を緩和的にする、という話はまああまり前面に出さない方が良いロジックの気がするのですが、FRBってその辺は結構アバウトな所があって、「ツイストオペ実施したら逆に長期金利上がってイールドカーブスティープしたじゃねえか」というツッコミは軽く受け流すのが仕様なのであまりキニシナイのかもしれませんが・・・・

『While the scale of such a maturity extension program was necessarily limited by the amount of shorter-term securities in the SOMA portfolio, most members judged the action as appropriate, given economic conditions and the outlook.』

ここも冒頭にあった政策ツールの検討に関する部分の記述と被りますな、うんうん。

『Two members said that current conditions and the outlook could justify stronger policy action, but they supported undertaking the maturity extension program at this meeting as it did not rule out additional steps at future meetings. Three members concluded that additional accommodation was not appropriate at this time.』

2名は「より強力な緩和が正当化されるが、次へのステップという認識でまあ今日はこれくらいにしといたるわ」と仰せで、3名は「今回の追加緩和は不適切」と仰せといういい感じでカオス状態ですな。

『The Committee discussed whether to specify the parameters of the maturity extension program by stating its intention to complete the full set of transactions by June 2012 or by stating that it would undertake these transactions at a specified monthly pace.』

次は具体的にどう実施するのかの議論。

『Members saw benefits to both approaches: The former would provide the public greater clarity about the likely scale of the program and the latter might allow the Committee greater flexibility to adjust the scale of the program in response to unexpected economic developments. A majority favored the first approach. Members noted, however, that the Committee will continue to regularly review the size and composition of its securities holdings and that it is prepared to adjust those holdings as appropriate.』

ペースなどを事前に告知する(決定されたのと同じ)方法で実施した方が市場に変な不確実性を与えない、という結論になったようですが、ただまあ状況を見ながら変化させる可能性も無い訳ではない(基本は変えない)ということのようですにゃ。

次のパラグラフはMBSの償還再投資に関する議論の所ですが、例によって時間配分間違えて時間が無くなったので引用だけ。

『Most members also supported a change in the Committee's reinvestment policy. To help support conditions in mortgage markets, the Committee decided to reinvest principal received from its holdings of agency debt and agency MBS in agency MBS rather than continuing to reinvest in longer-term Treasury securities as had been the Committee's practice for more than a year.』

『The effect of this change will be to keep the SOMA's holdings of agency securities at an approximately constant level; under the previous practice, those holdings were declining on an ongoing basis. This change in reinvestment policy was expected to help reduce the spread between yields on mortgage-backed securities and those on comparable-maturity Treasury securities seen this year and so contribute to lower mortgage rates.』

つーことでMBSの償還再投資の再開でスプレッドの縮小を狙う、ということのようですな。

『Members also noted that the change in reinvestment policy could help prevent the shares of outstanding longer-term Treasury securities held by the Federal Reserve from reaching levels high enough to result in a deterioration in Treasury market functioning.』

『One member who opposed the maturity extension program also opposed the change in reinvestment policy because he judged that it would not benefit housing markets. At the same time, the Committee decided to maintain its existing policy of rolling over maturing Treasury securities at auction.』

一人のメンバーが反対しましたが今回MBSの償還再投資も実施となりました、ということのようです。

あと、反対した人の理由に関しては後日やるかもしれないですがやらないかも知れません。それより今週FOMCの人たちの講演大会なんですけど・・・・・・・・汗

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2011/10/19

○バーナンキ議長の時間軸話に味わいが

朝見つけたので当然ながら超斜め読み、これも後で読む(宿題溜まり過ぎ)。

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20111018a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20111018a.pdf
Chairman Ben S. Bernanke
At the Federal Reserve Bank of Boston 56th Economic Conference, Boston, Massachusetts
October 18, 2011

The Effects of the Great Recession on Central Bank Doctrine and Practice

でまあ当然ながら起き抜けにこんなのあります(FOMC議事要旨の引用の為にFRBのサイトを見に行ったら見つけた訳ですが^^)とかいうノリでありまするので、本当の本当にピンポイントしか読んでいない、正直そんな状態でというのもアレですが、味わいが深い部分があったので駆け足で引用。

まあお題はこういう状況下で金融政策でどういう事をしますニカというような話みたいですけど。

『Monetary Policy Tools』って所の冒頭から。

『While central banks may have left their monetary policy frameworks largely unchanged through the Great Recession, they have considerably widened their set of tools for implementing those frameworks. Following the crisis and the downturn in the global economy that started in 2008, central banks responded with a forceful application of their usual policy tools, most prominently sharp reductions in short-term interest rates. Then, as policy rates approached the zero lower bound, central banks began to employ an increasingly wide range of less conventional tools, including forward policy guidance and operations to alter the scale and composition of their balance sheets.』

ということでいわゆる非伝統的政策としてバランスシート政策というツールを実施しましたとゆーのはまあ良いとしてその次のパラグラフから。

『Forward guidance about the future path of policy rates, already used before the crisis, took on greater importance as policy rates neared zero. A prominent example was the Bank of Canada's commitment in April 2009 to keep its policy rate unchanged at 1/4percent until the end of the second quarter of 2010, depending on the outlook for inflation.』

フォワードガイダンスキタコレ。で、最初に出すのがカナダの例というのが何ともアレなのですが、カナダの場合ってコミットメントなんだけども最後に物価上昇したので微妙にそのコミットメント前に利上げしてたような気がするが。

『This commitment was successful in clarifying for market participants the bank's views on the likely path of policy rates and appears to have helped reduce longer-term interest rates, thus providing additional policy accommodation.』

まあ市場参加者の政策金利パスの予想に働きかけるというのはそうですが。

『In 2010, the Bank of Japan, which faced ongoing deflation in consumer prices, also used conditional forward guidance, saying that "The Bank will maintain the virtually zero interest rate policy until it judges, on the basis of the ‘understanding of medium- to long-term price stability,' that price stability is in sight, on condition that no problem will be identified in examining risk factors, including the accumulation of financial imbalances."』

日銀の現在の政策をフォワードガイダンスの例として挙げるのキタコレという感じでございまして、まあつまりFOMCも日銀的な時間軸政策を検討という事ですね、わかります。という事ですが、普通に考えて時間軸政策の話をするならその前の福井総裁時代の日銀の時間軸政策の例をだすだろ常識的に考えてと思うのでございますけれども、その時期となりますとバーナンキ議長的にはまあ色々と日銀の政策をああだこうだ仰っていた時だったと存じます次第ですので、それを引き合いに出して時間軸政策の説明をするのはしたくないということですね、わかります。

『Some central banks provide forward guidance directly by releasing forecasts or projections of their policy rate. This practice had already been adopted by the Reserve Bank of New Zealand (in 1997), the Norges Bank (in 2005), and the Swedish Riksbank (in 2007). Each of these central banks used those projections during the financial crisis to indicate that they were likely to keep rates at low levels for at least a year.』

これは時間軸のコミットメントではなくて景気見通しとのリンクというやり方についてですな。

『In the United States, the FOMC introduced language in its March 2009 statement indicating that it anticipated rates to remain at low levels for an "extended period," and at its August 2011 meeting the Committee elaborated by indicating that it anticipated rates would remain low at least through mid-2013. The FOMC continues to explore ways to further increase transparency about its forecasts and policy plans.』

ということですので、まあ次回のFOMCではこれらのフォワードガイダンスの工夫をしてくるというのが本命、というのは先日の議事要旨でも見て取れましたが、まあそういうことなんでしょ。

以下続きがあるのですが引用だけしておきます。

次はバランスシートの構成を使った政策の話で、英国は国債のみの一方で日本は色々なアセットの購入、ECBはカバードボンドの購入をしたり、問題国国債の購入をしながらその分のマネタリーを吸収している、という話をしていまして、何かまあバーナンキ議長が日本を参考事例にするんですねそうですねとちょっと味わいのある感じでした。

『Other central banks have also used their balance sheets more actively than before the crisis, with some differences in their motivations and emphasis, in part reflecting differing financial structures across countries.』

『For example, the Bank of England has used large-scale purchases of medium- and long-term government securities as its preferred tool for providing additional stimulus; it expanded the size of its asset purchase program earlier this month out of concern about possible slowing of domestic and global economic growth. 』

『The Bank of Japan has acquired a wide range of assets, including government and corporate bonds, commercial paper, exchange-traded equity funds, and equity issued by real estate investment corporations.』

『The ECB purchased privately issued covered bonds between July 2009 and June 2010 to improve liquidity in a key market segment; it recently announced plans to resume such purchases in November. The ECB has also bought the sovereign bonds of some vulnerable euro-area countries, "to ensure depth and liquidity in those market segments which are dysfunctional," although the monetary effects of these purchases have been sterilized through offsetting operations.』

最後がまとめみたいなパラグラフです。

『In most cases, the use of balance sheet policies for macroeconomic stabilization purposes has reflected the constraints on more-conventional policies as short-term nominal interest rates reach very low levels. In more normal times, when short-term policy rates are not constrained, I expect that balance sheet policies will be rarely used. By contrast, forward guidance and other forms of communication about policy can be valuable even when the zero lower bound is not relevant, and I expect to see increasing use of such tools in the future. 』

とりあえず駆け足で恐縮至極。

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2011/10/17

お題「FOMC議事要旨ネタの続きでござる」

まあ月曜ですのでサラサラと。

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20110921.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/fomcminutes20110921.pdf

○まずは先週木曜の訂正を少々

『Staff Presentation on Policy Tools』の所を先週木曜に寝起きで斜め読みと称して(いやまあそうなのですが)ネタにしたのですが、その中で長期的な目標の明確化に関する部分でちょっと解釈が間違っていたと思われる部分がありましたのでその辺を。

『Participants generally agreed that a clear statement of the Committee's longer-run policy objectives could be helpful; some noted that it would also be useful to clarify the linkage between these longer-run objectives and the Committee's approach to setting the stance of monetary policy in the short and medium run.』

という「長期的な政策目的に対する明確なステートメント」の部分ですけれども。

『That said, a number of participants expressed concerns about the conceptual issues associated with establishing and communicating explicit longer-run objectives for the unemployment rate or other measures of labor market conditions, inasmuch as the long-run equilibrium levels of such measures are influenced importantly by nonmonetary factors, are subject to change over time, and are estimated with considerable uncertainty.』

『In contrast, participants noted that the long-run level of inflation is determined primarily by monetary policy. 』

ここの部分を先日は判ったような判らんようなインチキ訳をしましたが、改めて読み直してみると、FOMCのデュアルマンデートに関連して「長期的な政策目標」を明確化した場合に、長期的な物価に関しては金融政策によって決まるので問題は無いけれども、長期的な労働市場の均衡水準に関しては金融政策だけで決まるわけではないので、労働市場に関する長期的な目標の明確化に関してはやや懸念がある、という話のようでございましたな。

まあいずれにせよその後に「これらの論点に関しては今後も熟議が必要」という話になっておりまして、次回のFOMCで出るのかどうかは判りませんけれども、政策目標の明確化という形で時間軸のようなものの強化を行うというのが次回の追加緩和(なのかどうかは兎も角として)の本命になるのではないかと思うのでございました。


○FOMCメンバーの経済認識部分から少々

連銀スタッフからの経済に関する説明とか見通しに関してはスルーしますが、まあ内容的には下方修正で先行きもどうも明るくないですねという流れになっていました。で、その後の『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』から。

『In their discussion of the economic situation and outlook, meeting participants agreed that the information received during the intermeeting period indicated that economic growth remained slow but did not suggest a contraction in activity.』

ということで経済成長はスローだけれども収縮までには至っていない、というのが基本。

『Temporary factors that had contributed to slower growth during the first half of the year had partly reversed, contributing to some rebound in final sales and production, particularly in the manufacturing sector where progress had been made in resolving supply chain disruptions.』

という良い話もありますが。

『But stresses in global financial markets, sluggish growth in households' real incomes, and heightened uncertainty about economic prospects seemed to have contributed to lower consumer and business sentiment and to be weighing on economic growth.』

とまあこの辺が経済の足を引っ張っていますと。

『Recent indicators pointed to continuing weakness in overall labor market conditions, and the unemployment rate remained elevated. Inflation appeared to have moderated since earlier in the year as prices of energy and some commodities declined from their peaks, but inflation had not yet come down as much as participants had expected earlier this year. Labor costs remained subdued.』

で、労働市場は相変わらず弱い状態で失業率は高止まりしており、インフレは商品価格のピークアウトに伴い落ち着いてきており、労働コストは抑制されていますとの事で。


『Looking ahead, participants continued to expect some pickup in the pace of recovery over coming quarters but anticipated that the unemployment rate would decline only gradually.』

先行きに関しては回復ペースはやや引きあがるものの、失業率が低下していくには不十分な状態が続くというこれまたいつもの見通しが継続してますな。

『They generally judged that risks to the growth outlook, including strains in global financial markets, were significant and tilted to the downside; moreover, slow growth left the recovery more vulnerable to negative shocks.』

ということでリスクはダウンサイド、しかも足元の緩慢な回復は経済のネガティブショックに対して脆弱な状態になっている、とリスク認識を大きく引き上げているのが今回の基本的な判断という所でしょうか。

『With longer-term inflation expectations remaining stable and the effects of past increases in energy and commodity prices continuing to dissipate, most participants saw both core and headline inflation as likely to settle, over coming quarters, at or below the levels they see as most consistent with their dual mandate.』

物価に関しては商品価格の上昇要因が剥落して今後数四半期の間にマンデートで許容する水準あるいはそれよりも低い水準に低下するでしょうという見通し。

『Participants continued to see the outlook for growth and inflation as more uncertain than usual.』

ただし、成長や物価の先行き見通しに関しては通常よりも不確実性が高いと。


で、この後消費とか住宅とか労働市場とかがあばばばばーな話が続くのですがその辺はめんどいので全部スルーしてインフレの所までワープする。

『Most participants anticipated that, with stable inflation expectations, significant slack in labor and product markets, slow wage growth, and little evidence of pricing power among firms, inflation was likely to decline moderately over time.』

さっきも似たようなのを引用しましたが、まあ基本線はこれなのですけれども・・・・

『Several suggested that slowing growth in the United States and abroad made a new surge in commodity prices unlikely. However, some noted that core as well as headline inflation had moved up, on balance, since last fall. A few suggested that the juxtaposition of higher core inflation and somewhat lower unemployment could mean that the degree of slack in labor markets and the level of potential output were lower than the Committee had thought. Some argued that the rise in core inflation from very low levels reflected the accommodative stance of monetary policy and indicated that the large-scale asset purchases the Committee undertook from November through June had been a successful response to the deflation risks of a year ago. 』

ここにありますように、上記の基本的な認識に対して「Several」だの「some」だの「A few」だのがああでもないこうでもないとお話をしているのがチャーミング。

その結果としてリスク認識がバラバラになっているのです。

『Many participants judged that the risks to the outlook for inflation were roughly balanced. Some saw medium-run inflation risks as tilted to the downside, in light of persistent resource slack; some others argued that the accommodative stance of monetary policy and the upward trend in measures of core inflation this year suggested inflation risks were tilted to the upside.』

基本的にはインフレのリスクはおおむねバランスなのですが、一部の委員にはインフレの下方リスクを見る人がいて、その一方で別の一部の委員は上方リスクを見るとかいい感じでカオス状態。

『Participants generally judged that there was relatively little risk of deflation. 』

ただまあデフレのリスクは小さいという認識をしめしていまして、はてさてその状況の中で大規模な資産買入の追加にコンセンサス取れるのかねという気はだいぶします。

『One commented that surveys showed that forecasters saw a low likelihood of deflation; a second, however, noted that a measure of the probability of deflation calculated from prices of Treasury inflation-protected securities (TIPS) had declined as the Federal Reserve conducted its second large-scale asset purchase program but more recently had been rising.』

ほほう。


で、先行きのリスクに関してですが。

『Participants saw considerable uncertainty surrounding the outlook for a gradual pickup in economic growth.』

「considerable uncertainty」キタコレ。

『It was again noted that the cyclical impetus to economic expansion appeared to be weaker than in past recoveries, but that the reasons for the weakness were unclear, contributing to greater uncertainty about the economic outlook.』

これは前の方でも議論されているのでagainとありますが、重要な論点でもありますけれども、循環的な景気拡大による景気への刺激が過去の回復よりも弱く、その弱さの原因は不確かでありますわなと。

『Several commented that, with households and businesses seeking to reduce leverage rather than to borrow and with housing markets in distress, some of the normal mechanisms through which monetary policy actions are transmitted to the real economy appeared to be attenuated.』

景気の先行き不透明感がベースにあるのでしょうが、要因としては色々と指摘されていますけれども、デレバレッジの動きとか、住宅市場の弱さとかがあって、この辺の要因が金融政策の通常ベースでのトランスミッションメカニズムの効きを悪くしているのではとかあるようで。

『Many participants saw significant downside risks to economic growth.』

キタコレ。

『While they did not anticipate a downturn in economic activity, several remarked that, with growth slow, the recovery was more vulnerable to adverse shocks. Risks included the possibility of more pronounced or more protracted deleveraging by households, the chance of a larger-than-expected near-term fiscal tightening, and potential spillovers to the United States if the financial situation in Europe were to worsen appreciably.』

で、リスク要因に関しては(1)デレバレッジの動き(2)財政の緊縮(3)ヨーロッパの問題のスピルオーバー、という所のようです。

『Participants agreed to consider further how best to use their monetary policy and liquidity tools to deal with such shocks if they were to occur.』

ということで、それらのリスク要因が顕在化した場合には追加の政策をとる、ということでございますな。


○以下明日以降に続く(サーセン)

肝心の『Committee Policy Action』に到達する前に時間切れになってしまいましたorz

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2011/10/13

お題「例によって寝起きでFOMC議事要旨をほんのちょっとだけ斜め読み」

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20110921.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/fomcminutes20110921.pdf

○冒頭部分に政策ツールに関する話がありましてその部分だけで勘弁

冒頭にモロに『Staff Presentation on Policy Tools』というのがあるだよ。

・まずはスタッフの説明

『The staff gave a presentation on several tools that could be used, within the Committee's current policy framework, to provide additional monetary policy accommodation to support the economic recovery.』

ということで以下可能性のある政策が列挙されているのでメモメモ。

『The presentation first reviewed three options for managing the size and composition of the SOMA portfolio: a reinvestment maturity extension program, a SOMA portfolio maturity extension program, and a large-scale asset purchase program.』

FEDのポートフォリオの「量と構成」を変化させるというアプローチには3種類のオプションがありますと。

『Under the first of these options, the Federal Reserve would reinvest the principal payments it receives on its holdings of agency securities exclusively in long-term Treasury securities.』

最初の「a reinvestment maturity extension program」と銘打ったものは、現在(当時)行っているMBS等の再投資にあたってより長い期間の米国債を購入してFEDのポートの長期化を行うというスキーム。

『Under the second option, the Committee would purchase long-term Treasury securities and sell the same amount of shorter-term Treasury securities; these transactions would significantly increase the average maturity of the SOMA portfolio, but the size of the Federal Reserve's balance sheet and the level of reserve balances would be largely unaffected in the near term.』

2番目の「a SOMA portfolio maturity extension program」というのが今回実施したプログラムになりますが、短期債売却の長期債購入はバランスシートやリザーブバランスを大きく変化させることなくポートの残存期間を長期化できますよと。

『Under the third option, the Committee would purchase longer-term Treasury securities, increasing the size of its balance sheet and the supply of reserve balances.』

3番目の「a large-scale asset purchase program」はまあそのまんまで長期国債の追加購入。

『The staff also summarized a set of options for clarifying, for the public, the Committee's longer-run objectives under its dual mandate as well as the Committee's forward guidance about the likely future stance of monetary policy. The options focused on ways to elucidate the economic conditions that could warrant raising the level of short-term interest rates.』

別の方法として、現在の政策金利から脱却する為に必要な経済環境について明らかにすることによって、フォワードガイダンスをより明確化するということで、これは日銀が実施した時間軸政策(明らかにする表現をどのくらいキツキツにするかによってバージョンが違ってきます)のようなもんですな。

『Finally, the staff presentation summarized the potential implications of reducing the interest rate that the Federal Reserve pays on reserve balances that depository institutions hold in accounts at the Federal Reserve Banks (the IOR rate). 』

で、最後に付利金利の引き下げが方法としてございますよという話ですな。


・委員会の検討状況がオモシロス:資産買入に関する話

『Meeting participants expressed a range of views on the potential efficacy of policy tools tied to the size and composition of the Federal Reserve's balance sheet.』

というのですからまあツイストオペが元々の案だったんでしょうな。

『Many judged that these policies could provide additional monetary policy accommodation by lowering longer-term interest rates and easing financial conditions at a time when further reductions in the federal funds rate are infeasible.』

短期の政策金利の引き下げ余地が無い所に追加的な金融緩和効果をもたらす為にはこれらの政策によって長期金利を引き下げて金融環境を緩和する事ができると判断とな。

『However, a number saw the potential effects on real economic activity as limited or only transitory, particularly in the current environment of balance sheet deleveraging, credit constraints, and household and business uncertainty about the economic outlook.』

・・・・・・これはまたどこの日本銀行だよという感じですが、「多数のメンバーはこの政策の実体経済への潜在的な効果は限定的あるいは一時的なものにとどまると見ています。特に現在のようにバランスシートのレバレッジ解消や、信用供与の制約、家計や企業の先行き景気に対する不透明感があるという現在の環境においては。」という見解で、しつこく繰り返しますが日銀の決定会合議事要旨をみているような感じが。

『Participants noted that a SOMA maturity extension program would not expand the Federal Reserve's balance sheet or the level of reserve balances, and that the scale of such a program was necessarily limited by the size of the Federal Reserve's holdings of shorter-term securities so that it could not be repeated to provide further stimulus.』

確かに。ツイストオペやると売る中短期債が無くなったら次は打てませんな。

『A number of participants saw large-scale asset purchases as potentially a more potent tool that should be retained as an option in the event that further policy action to support a stronger economic recovery was warranted.』

てなわけで多数のメンバーは「将来において追加緩和が更に必要になった場合には、大規模な資産購入プログラムの実施が潜在的にはより適切なツールになる」と見ておられると。

『Some judged that large-scale asset purchases and the resulting expansion of the Federal Reserve's balance sheet would be more likely to raise inflation and inflation expectations than to stimulate economic activity and argued that such tools should be reserved for circumstances in which the risk of deflation was elevated.』

(一方で)数名(Some)のメンバーは大規模な資産購入によるFEDのバランスシート拡大は実体経済の活動への刺激効果よりも、インフレおよびインフレ期待により強い効果をもたらすので、資産購入拡大はデフレリスクが起きた時に使うべく温存しておくべきであると主張と。

『In commenting on the implications of a maturity extension program or another large-scale asset purchase program, several participants noted that the System should avoid holding a very large proportion of the outstanding stock of longer-term Treasury securities in its portfolio because the result could be a deterioration in market functioning.』

これまたどこの日銀だという感じですが(ただし論点は違う)、数名(several)のメンバーはFEDのバランスシートに長期債の保有が増えすぎると、市場機能の低下につながる(よく判んないけど、たぶんFEDが買い過ぎて市場に物が無くなるという話だと思います)ので避けるべきであるとな。

『A number of participants suggested directing some purchases or reinvestments into agency MBS; however, a couple of participants saw such actions as unlikely to have benefits, or as a form of credit allocation. 』

で、多くのメンバーはMBSの償還再投資または追加購入の実施を検討しましたが、その一方で2名のメンバーはクレジットアロケーションの観点からはあまり利点が無いのではないかと指摘していますと。


・更に委員会の検討は続く:長期的な政策目標に関するコミュニケーションポリシー

『Most participants indicated that they favored taking steps to increase further the transparency of monetary policy, including providing more information about the Committee's longer-run policy objectives and about the factors that influence the Committee's policy decisions.』

将来の政策に関するコミュニケーションポリシーの明確化の話ですな。

『Participants generally agreed that a clear statement of the Committee's longer-run policy objectives could be helpful; some noted that it would also be useful to clarify the linkage between these longer-run objectives and the Committee's approach to setting the stance of monetary policy in the short and medium run.』

長期的な政策目的の明確化が有効ですという話で全員が概ね一致しているみたいなのですが、それは日銀の時間軸政策パート1からパート3までの変化形を見ておりました所のあたくしと致しましては、そもそも解釈が難しい「デュアルマンデート」を設定している時点で長期的な目的の明確化もへったくれも無いと思いますけど。

『That said, a number of participants expressed concerns about the conceptual issues associated with establishing and communicating explicit longer-run objectives for the unemployment rate or other measures of labor market conditions, inasmuch as the long-run equilibrium levels of such measures are influenced importantly by nonmonetary factors, are subject to change over time, and are estimated with considerable uncertainty.』

とか思ったらその次で多くのメンバーは(ここの解釈間違ってたら教えてちょなのですが)明示的な数値による物価や失業率あるいは労働市場に関する何らかの目標を設定した場合に、目標とする長期的な均衡数値と短期的な非金融的な要因によってぶれる実際の数値とのズレが生じるので、その点で問題が生じるのではないかと懸念している、とか判ったような判らんような訳をしてみましたが、要するに足元の数値のブレと長期的な目標のコンフリクトが起きた場合(今の英国がまさに典型)に「長期的な目標とは何ぞや」という話になるリスクがあって、そうなると目標数値の明示化が逆効果になるかもしれませんね、ってことではないかと思うのですがどうでしょう。

『In contrast, participants noted that the long-run level of inflation is determined primarily by monetary policy. Accordingly, many felt that if the Committee were to reach a consensus on more explicit statements of its longer-run objectives, it would need to provide an in-depth explanation to the public of how those objectives were determined and how they fit into the policymaking framework.』

そうは言いましても、長期的なインフレはまず第一には金融政策要因で決定されるというのはFOMCメンバーのコンセンサスのようでして、その結果として、長期的なFOMCの目標についてより明示的なステートメントの作成を行うことに関してはコンセンサスに達したとのことのようです。ただし、コミュニケーションポリシーの設定に関しては、より掘り下げた議論が必要になる。ということですから、次回のFOMCに向けてこの辺りの明確化というのが出てくる段取りになるんじゃないでしょうか。


『Participants generally saw the Committee's post-meeting statements as not well suited to communicate fully the Committee's thinking about its objectives and its policy framework, and agreed that the Committee would need to use other means to communicate that information or to supplement information in the statement.』

まあそうなりますとこういう話になるのですが、前回のフォワードガイダンス文言の変更はコミュニケーションポリシーとしてはあまりしっくり来ていませんという事で全体的に同意したという事で、何という君子豹変と感心してしまいますが、まあこの部分が次回また変更ということで、次は時間軸強化みたいな政策になるんでしょうな、と予想される所でございます。


・更に委員会の検討は続く:時間軸のコミットメントについて

コミュニケーションポリシーの次にフォワードガイダンスの話がまだ続く。

『Most participants also indicated that they saw advantages in being more transparent about the conditionality in the Committee's forward guidance by providing more information about the economic conditions to which the guidance refers.』

フォワードガイダンス文言が参照とする経済状況をより明確化するという件についてですな。

『They judged that such a step could make the Committee's forward guidance more effective and increase the likelihood that financial markets would respond to incoming economic information in ways that would help monetary policy achieve its goals.』

メリットは市場に対する政策期待の安定化ですな。

『However, several participants saw a risk that any explicit statement of economic conditions specified in the Committee's forward guidance could be mistaken for a statement of its longer-run objectives. Others thought this risk of misinterpretation could be managed through careful communications. A number of participants suggested that the Committee's periodic Summary of Economic Projections could be used to provide more information about their views on the longer-run objectives and the likely evolution of monetary policy.』

一方のデメリットは、固定的な紐付けをした場合にFOMCの長期的な政策目標に対する誤解が生じるリスクがあるという指摘を数名(several)が懸念という事ですが、他のメンバーはそれは丁寧なコミュニケーションで解決できるとも指摘。そしてこれまたどこの日銀だよという感じですが、FOMCの出すSEP(経済見通し)が長期的な政策目標に対する今後の金融政策の動向に対するポリシーツールになるでしょうという件で多くのメンバーが示唆しているとの事で、それってもう思いっきり日銀の「中長期的な物価安定の理解」+「展望レポート」のセットと同じ話になりまして麿のドヤ顔が目に浮かんでまいります。


・更に委員会の検討は続く:付利金利の引き下げに関して

『Participants discussed whether to reduce the IOR rate, weighing potential benefits and costs.』

短期市場関係者戦慄の検討キタコレ。

『A number of participants judged that a reduction would result in at least marginally lower money market rates and could help stimulate bank lending. Several noted that reducing the IOR rate could help signal the Committee's intention to keep the federal funds rate low. Some participants observed that keeping the IOR rate noticeably above the market rate on other safe, short-term instruments could be perceived as subsidizing some banking institutions.』

いやまあそうでございますけど・・・・・・・という感じですが、金利はマージナルだけど下がるでしょとか、FF金利を低い水準で長期間維持するメッセージになるとか、市場金利よりもIORの金利を高くしておくと銀行がIORに金を突っ込んでしまうので下げるメリットがある、というのはまあその通りですな。

『However, some others noted that a recent change in deposit insurance assessments had the effect of significantly reducing the net return that many banks receive from holding reserve balances. Moreover, many participants voiced concerns that reducing the IOR rate risked costly disruptions to money markets and to the intermediation of credit, and that the magnitude of such effects would be difficult to predict in advance.』

短期市場関係者のポジショントーク的には(;∀;)イイハナシダナーでございますが、預金保険料率の変更によって銀行の準備預金保有コストが高まっているので付利金利引き下げは銀行に厳しい措置になるとか、これは多くの人が警告していて(;∀;)イイハナシダナーですけれども、付利金利の引き下げは短期金融市場の機能を壊すというリスクの高い結果に繋がる可能性があり、しかもその悪影響の大きさに関しては事前に予想するのが難しいという指摘をしていてこれまたどこの日本銀行だという感じですな。

『In addition, the federal funds market could contract as a result and the effective federal funds rate could become less reliably linked to other short-term interest rates. Participants generally agreed that they needed more information on the likely effects of a reduction in the IOR rate in order to judge its usefulness as a policy tool in the current environment.』

更に、そもそも実効FFレートが他の短期金融商品の価格形成にあまり強くリンクしている訳でもない、という現状の市場環境も考えると、IORの引き下げに関してはそのメリットとしてどのような物があるのかという点についてもっと情報が必要である、という点で同意したという事でございまして、こりゃつまり付利金利の引き下げはオプションとしてはあっても具体的なオプションとして検討されるのは順序が後の方になりそうで、ポジショントーク的に(;∀;)イイハナシダナーでございましたとさ。


という所までが「Staff Presentation on Policy Tools」部分でしたが、そこで時間と力が尽きたので肝心の今回の金融緩和政策実施に関する議論の部分は全部スルーである(キリッ)。

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2011/10/07

○BOEは資産買入拡大決定

まあ昨日も申し上げましたが、前回のMinuteを見ると今月に資産買入拡大しても全くおかしくない勢いでしたが、11月のインフレレポートでやって来るのかなあとも思ったので、Minute見た最初の直感を維持すれば良かっただよ(汗)。

http://www.bankofengland.co.uk/publications/news/2011/092.htm

Bank of England Maintains Bank Rate at 0.5% and Increases Size of Asset Purchase Programme by £75 billion to £275 billion

動いた時だけは声明文がやたら長いのでネタになるだわさ。

『The Bank of England’s Monetary Policy Committee today voted to maintain the official Bank Rate paid on commercial bank reserves at 0.5%. The Committee also voted to increase the size of its asset purchase programme, financed by the issuance of central bank reserves, by £75 billion to a total of £275 billion.』

750億ポンドの追加資産購入の実施だそうで。

『The pace of global expansion has slackened, especially in the United Kingdom’s main export markets. Vulnerabilities associated with the indebtedness of some euro-area sovereigns and banks have resulted in severe strains in bank funding markets and financial markets more generally. These tensions in the world economy threaten the UK recovery.』

世界経済の拡大ペースは特に英国の主要な輸出先において弱まっており、ユーロ圏の一部の国のソブリンと金融機関の債務問題がもたらす脆弱性によって、銀行の資金調達および金融市場に極めて大きな制約をもたらしている。

『In the United Kingdom, the path of output has been affected by a number of temporary factors, but the available indicators suggest that the underlying rate of growth has also moderated.』

英国においては生産のパスは多くの一時的要因に影響されていますが、経済指標によりますと基調的な成長率は緩やかになっています。

『The squeeze on households’ real incomes and the fiscal consolidation are likely to continue to weigh on domestic spending, while the strains in bank funding markets may also inhibit the availability of credit to consumers and businesses.』

家計の実質所得が(一時的な要因による物価上昇で)絞られている事や、財政再建の動きが国内の消費に引き続き重石となり、その間に銀行の資金調達市場における制約が(資金調達制約に起因する銀行貸出の抑制を通じて)消費者や企業のクレジットのアベイラビリティーを抑制します。

『While the stimulatory monetary stance and the present level of sterling should help to support demand, the weaker outlook for, and the increased downside risks to, output growth mean that the margin of slack in the economy is likely to be greater and more persistent than previously expected.』

緩和的な金融政策スタンスと、現状のポンドのレベル(ポンド安)は需要を支えているものの、生産の伸びに対する先行き見通しがより弱く、下方リスク認識が高まっていることは、経済におけるスラックの程度が従来想定していたよりもより大きく、より持続的であるという事を示している。

『CPI inflation rose to 4.5% in August. The present elevated rate of inflation primarily reflects the increase in the standard rate of VAT in January and the impact of higher energy and import prices. Inflation is likely to rise to above 5% in the next month or so, boosted by already announced increases in utility prices.』

CPIインフレーションは8月には4.5%に上昇しました。足元の上昇しているインフレは主に1月のVAT引き上げと、エネルギーと輸入価格の上昇が要因です。インフレは既に決定している公共料金の引き上げの影響によって来月近辺には5%以上に上昇すると見られます。

『But measures of domestically generated inflation remain contained and inflation is likely to fall back sharply next year as the influence of the factors temporarily raising inflation diminishes and downward pressure from unemployment and spare capacity persists.』

しかし国内要因によって引き起こされる物価上昇は引き続き抑えられており(と訳したけれども、要するに一時的な要因の2次的な物価引上げ効果が起きていない、という事を言いたいのだと思う)、インフレは一時的な上昇要因の剥落に伴い、来年になると大きく上昇率が低下するものと思われ、その要因は失業および経済における余剰生産力の存在による物価引下げ圧力です。

『The deterioration in the outlook has made it more likely that inflation will undershoot the 2% target in the medium term.』

このような経済見通しの悪化によって、中期的にはインフレが2%のインフレ目標から下振れする可能性がより高まっていると思われます。

『In the light of that shift in the balance of risks, and in order to keep inflation on track to meet the target over the medium term, the Committee judged that it was necessary to inject further monetary stimulus into the economy.』

上記のような先行き経済のリスクバランス認識の下方シフトおよび物価を中期的にターゲット近辺に保つため、という観点に基づき、政策委員会は追加の金融緩和が必要であると判断しました。

『The Committee therefore voted to increase the size of its asset purchase programme, financed by the issuance of central bank reserves, by £75 billion to a total of £275 billion. The Committee also voted to maintain Bank Rate at 0.5%.』

これによって、政策委員会は中央銀行のリザーブによってファイナンスされる資産買入プログラムの総額を750億ポンド拡大し、2750億ポンドとする事を決定しました。また、政策金利は0.5%のまま据え置きました。

『The Committee expects the announced programme of asset purchases to take four months to complete. The scale of the programme will be kept under review. The minutes of the meeting will be published at 9.30am on Wednesday 19 October 2011.』

政策委員会は追加資産買入を4か月間で完了することを想定しています。買入プログラムの規模については今後も見直しの対象とします。議事要旨につきましては10月19日の午前9時30分に公表します。


・・・・・・・ということで思わずインチキ日本語訳をしてみました(下手くそなのはご勘弁)が、今回のポイントは「下振れリスクだけではインフレターゲットとの整合性が取れないので直球ストレートで物価見通しを下げてきた」というのが一番大きくて、まあその見通し変更の中では「経済のスラックが予想よりも大きい」「失業と経済の余剰生産力が先行きの物価を押し下げる」という認識を示した部分が従来(というか2か月前くらいまでというか)のややどっちつかずの認識から一気に進めてきた感じです。

まあこうなってきますと、5%に上昇した物価が来年の前半にとっととターゲット近辺に低下してくれないとBOEのクレディビリティーの問題になりかねないですけれども、まあそこは頑張って勝負したという感じですな。いやまあこの状況で引締めとか有り得ないですけど、量的緩和じゃなくて何らかの信用緩和をするという選択肢もあったんじゃないかなあとは思うのですけれどもね。というのは、上記の認識にもありますように、金融機関のファンディング市場のストレスが銀行の貸出チャネルを通じて景気に悪影響を与えるリスクを指摘しているので、直接的に金融機関のファンディング市場に突っ込んで行くという手もあったんじゃないかなあという事なのです。まあリザーブ拡大に繋がる資産買入拡大自体は短期金融市場の緊張を緩和する効果がありますけれども、欧州銀行問題が短期金融市場の信用収縮になった場合はリザーブ拡大の効きが悪くなりますので。


まあいずれにせよBOEも中々大変ですなあという感じですな、うんうん。


○ECBは利下げしないで資金供給拡大&カバードボンド購入という信用緩和政策

まあこれはこれで筋が通っている罠ということでトリシェ総裁最後は結局正常化政策が盛大に空振りして終了ですかそうですか。

http://www.ecb.int/press/pr/date/2011/html/pr111006.en.html
6 October 2011 - Monetary policy decisions

『At today’s meeting, which was held in Berlin, the Governing Council of the ECB decided that the interest rate on the main refinancing operations and the interest rates on the marginal lending facility and the deposit facility will remain unchanged at 1.50%, 2.25% and 0.75% respectively. The President of the ECB will comment on the considerations underlying these decisions at a press conference starting at 2.30 p.m. CET today.』

今回の理事会はベルリンで実施したんですかと変な所に目が行くあたくし(^^)。

http://www.ecb.int/press/pressconf/2011/html/is111006.en.html
Introductory statement to the press conference
Jean-Claude Trichet, President of the ECB,
Vitor Constancio, Vice-President of the ECB,
Berlin, 6 October 2011

でまあ全部読む時間も語学力もありませんので最初の2パラグラフだけ。

『Based on its regular economic and monetary analyses, the Governing Council decided to keep the key ECB interest rates unchanged. Inflation has remained elevated and incoming information has confirmed our view that inflation is likely to stay above 2% over the months ahead but to decline thereafter. At the same time, the underlying pace of monetary expansion continues to be moderate.』

この辺の認識は(めんどいので前回のは引用しませんが)あまり変わっていない(物価について「来年になって低下する」というのが「今後低下する」と変化しているのがどういうインプリケーションなのかが微妙だが)です。

『Ongoing tensions in financial markets and unfavourable effects on financing conditions are likely to dampen the pace of economic growth in the euro area in the second half of this year. The economic outlook remains subject to particularly high uncertainty and intensified downside risks.』

ここの部分が前回の声明文の冒頭部分では指摘していなかった点になります。金融市場の混乱によって先行きの不確実性が極めて高まり、下方リスクを高めているというのを冒頭の全体認識部分に持ってきていますので、どうみてもスタンスは緩和方向寄りに変化でしょう。

『At the same time, short-term interest rates remain low. It remains essential for monetary policy to maintain price stability over the medium term, thereby ensuring a firm anchoring of inflation expectations in the euro area in line with our aim of maintaining inflation rates below, but close to, 2% over the medium term. Such anchoring is a prerequisite for monetary policy to make its contribution towards supporting economic growth and job creation in the euro area.』

短期金利の水準は引き続き低いという話の後はまあいつもの話なのでスルー。

『A very thorough analysis of all incoming data and developments over the period ahead is warranted. 』

今後入手される全てのデータや経済状況の極めて徹底的な分析が必要ですとかわざわざ入れてる(前回は無かった)のはまあ警戒スタンスを示したちゅう事でしょうかねえ。

『The Governing Council has decided to conduct two longer-term refinancing operations (LTROs), one with a maturity of approximately 12 months in October and the other with a maturity of approximately 13 months in December. The operations will be conducted as fixed rate tender procedures with full allotment. The rate in both operations will be fixed at the average rate of the main refinancing operations (MROs) over the life of the respective LTRO, and interest will be paid when each operation matures. These operations will be conducted in addition to the regular and special-term refinancing operations, which remain unaffected. 』

ということで、今回はLTROの追加実施ということで、10月に12か月物、12月に13か月物(年末を2度越えるということだな)の固定金利(レートは期間中の政策金利水準の平均値を適用するので利下げを食らっても別に損はしませんぜ旦那という事だ)、応募額は全部出します無制限(担保は必要だが)というのを実施するとゆー事で案の定流動性拡大策を実施(利息は後取りで、このオペは新規で追加するので今までアナウンスした資金供給はそれはそれで実行という説明もしています、為念)。


また、カバードボンド買入がどうのこうのとかのアナウンスも。

http://www.ecb.int/press/pr/date/2011/html/pr111006_3.en.html
6 October 2011 - ECB announces new covered bond purchase programme

『The Governing Council of the European Central Bank (ECB) has today decided to launch a new covered bond purchase programme (CBPP2). 』

なんだこのCBPP2って変な略称だなとかそういう所に目がいくあたくし。

『The programme will have the following modalities:

・purchases will be for an intended amount of 40 billionユーロ(←すいませんアップローダーの関係で表記改変です);
・purchases will have the capacity to be conducted in the primary and secondary markets and will be carried out by means of direct purchases;
・purchases will begin in November 2011 and are expected to be completed by the end of October 2012.

Further details regarding the modalities of CBPP2 will be announced after the Governing Council’s meeting on 3 November 2011.』

詳しくは11月3日に決めるそうですが、400億ユーロカバードボンドを1年間掛けて購入するとかなんとか仰せのようです。


・・・・・・ということで、まあECBは利下げは行わずに信用緩和方向での金融緩和拡大というこちらはある意味順当な結果になりましたな。

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2011/10/05

○今週はECBの理事会もあるのですが雑談

まあ雑談である。
http://www.ecb.int/mopo/html/index.en.html

『Monetary policy』って所でまあシンプルに説明しているのですけれども、そちらにはこのように。

『Objective』

『The primary objective of the ECB’s monetary policy is to maintain price stability. The ECB aims at inflation rates of below, but close to, 2% over the medium term.』

ということなのですが、そこには物価動向の表示もありまして。

『Inflation refers to a general increase in consumer prices and is measured by an index which has been harmonised across all EU Member States: Harmonised Index of Consumer Prices (HICP). The HICP is the measure of inflation which the Governing Council uses to define and assess price stability in the euro area as a whole in quantitative terms. Inflation in the euro area (annual percentage changes, non-seasonally adjusted)』

てな事でそこにHICPの推移のグラフがあるのですが、そこの直近の数字を見ると思いっきりHICPが上昇しております(直近は+3.0%)次第でして、いやまあマーケット的にも金融市場の状況的にも利下げでしょとか思うのですけれども、ECBの政策目的という観点からすると利下げも苦しいですなあとか思った次第なのでECB理事会前にメモだけしてみただよ。

ちなみに、そこのグラフに『Average inflation since 1999』というのがあって、2%ですよというのがあるのですが、ユーロ導入以来このように成功してますよとか思いっきり書いているのがチャーミング。

・・・・・・・まあ利下げよりも足元で必要なのは信用緩和ですから、利下げは後回しでも良いっちゃあ良い(えーっと、なんかリーマンショック後に日々「利下げしたってGCレポレーととかCP発行金利が上昇してちゃあ意味が無いんだが」と悪態をついていた日々を思い出す訳だが)のですけどね。


○バーナンキ議長の議会証言なんぞ全部読める訳はありませんが

http://www.federalreserve.gov/newsevents/testimony/bernanke20111004a.htm

当然ながら起き抜けで全部読むのは無理であるので最後のインフレの所と金融政策のところだけ(つまりそこまでの経済見通しの話はスルーであるが、それって意味があるのかお前というツッコミはしないようにお願いします)。

『Returning to the discussion of the economic outlook, let me turn now to the prospects for inflation. Prices of many commodities, notably oil, increased sharply earlier this year, as I noted, leading to higher retail gasoline and food prices. In addition, producers of other goods and services were able to pass through some of their higher input costs to their customers.』

『Separately, the global supply disruptions associated with the disaster in Japan put upward pressure on prices of motor vehicles. As a result of these influences, inflation picked up during the first half of this year; over that period, the price index for personal consumption expenditures rose at an annual rate of about 3-1/2 percent, compared with an average of less than 1-1/2 percent over the preceding two years.』

と、ここまがインフレの現状ですな。

『As the FOMC anticipated, however, inflation has begun to moderate as these transitory influences wane. In particular, the prices of oil and many other commodities have either leveled off or have come down from their highs, and the step-up in automobile production has started to reduce pressures on the prices of cars and light trucks. Importantly, the higher rate of inflation experienced so far this year does not appear to have become ingrained in the economy.』

でもFOMCの予想通りに足元の一時的な要因が弱まった結果、インフレは緩和中とな。

『Longer-term inflation expectations have remained stable according to surveys of households and economic forecasters, and the five-year-forward measure of inflation compensation derived from yields on nominal and inflation-protected Treasury securities suggests that inflation expectations among investors may have moved lower recently.』

長期的なインフレ期待は安定していると。

『In addition to the stability of longer-term inflation expectations, the substantial amount of resource slack in U.S. labor and product markets should continue to restrain inflationary pressures.』

米国の労働および生産市場のかなりの規模のスラックがインフレ圧力を抑制しますと。

・・・・・ということでまあその辺はいつもの話ですな、うんうん。


『In view of the deterioration in the economic outlook over the summer and the subdued inflation picture over the medium run, the FOMC has taken several steps recently to provide additional policy accommodation.』

(その部分は引用してませんが)経済の見通しの悪化と、中期的なインフレが抑制されているという見通しのもと、FOMCは追加緩和施策を順次実施していますと。

『At the August meeting, the Committee provided greater clarity about its outlook for the level of short-term interest rates by noting that economic conditions were likely to warrant exceptionally low levels for the federal funds rate at least through mid-2013.』

まあこれが本当にgreater clarityなのかというツッコミはあるものの、まあ時間軸"のようなもの"を8月に導入したと。

『And at our meeting in September, the Committee announced that it intends to increase the average maturity of the securities in the Federal Reserve's portfolio. Specifically, it intends to purchase, by the end of June 2012, $400 billion of Treasury securities with remaining maturities of 6 years to 30 years and to sell an equal amount of Treasury securities with remaining maturities of 3 years or less, leaving the size of our balance sheet approximately unchanged.』

でこちらが前回のツイストオペとMBS等の償還再投資再開ですが、size of our balance sheet approximately unchangedってわざわざ言っているのが議会対策と。

『This maturity extension program should put downward pressure on longer-term interest rates and help make broader financial conditions more supportive of economic growth than they would otherwise have been.』

ツイストオペは長期金利に低下圧力をかけて、幅広い金融環境をもたらして経済に効果をもたらすとの事ですが、さてどうなるのでしょうかねえ(棒読み)。

『The Committee also announced in September that it will begin reinvesting principal payments on its holdings of agency debt and agency mortgage-backed securities in agency mortgage-backed securities rather than in longer-term Treasury securities. By helping to support mortgage markets, this action too should contribute to a stronger economic recovery.』

MBS等の償還再投資はモーゲージ市場のサポートになると。

『The Committee will continue to closely monitor economic developments and is prepared to take further action as appropriate to promote a stronger economic recovery in a context of price stability.』

で、必要なら追加緩和しますよという話ですがまあ当たり前の話と言えば当たり前の話で、特に具体的に何をやるとかいう手の話は全部スルーしていますな。当然ではありますが。


そして最終パラグラフがチャーミング。

『Monetary policy can be a powerful tool, but it is not a panacea for the problems currently faced by the U.S. economy.』

金融政策は力強い道具だが、米国経済が現在直面する問題に対する万能薬ではありません(キリッ)。

『Fostering healthy growth and job creation is a shared responsibility of all economic policymakers, in close cooperation with the private sector. Fiscal policy is of critical importance, as I have noted today, but a wide range of other policies--pertaining to labor markets, housing, trade, taxation, and regulation, for example--also have important roles to play.』

健全な成長と雇用の創出には全ての政策担当者が責任を負わなければいけません、ということで議会ちゃんとしやがれやゴルァという話をしておいででござる。

『For our part, we at the Federal Reserve will continue to work to help create an environment that provides the greatest possible economic opportunity for all Americans.』

ということでワシらはちゃんとやっとるけえ議会はしょーもないことやっとらんとはよ働けえやというのが議会証言の締めでありました。なお、経済に関する部分はそのうち読みます(^^)。

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2011/10/03

○ブラード総裁は「資産買入が政策効果を出す」といつもの話

実は30日に新しい講演が出ているので既に証文の出し遅れなのですが(汗)

http://www.stlouisfed.org/newsroom/displayNews.cfm?article=1156
SEPTEMBER 26
St. Louis Fed’s Bullard Discusses America’s Investment Problem and Monetary Policy

プレゼンのスライドショーはこちら
http://research.stlouisfed.org/econ/bullard/pdf/Bullard_MGA_September26_2011_Final.pdf


まあいつもの話をしてるっちゃあいつもの話をしているので上の方のサマリーのページから適宜引用しながら簡単に。

・不動産バブル崩壊による投資の減少が米国経済に大きく影響

リーマンショック前の2007年のピークと米国のGDPの状態およびその構成項目を比較した所、輸出や消費、政府支出というような項目は2007年のピークを上回っているものの、不動産関連の投資が大きく落ち込んでいる、という事を指摘。

『Bullard noted that most of the main components of real GDP are at a higher level today than they were in the fourth quarter of 2007, which marked the previous business cycle peak. While consumption, government expenditures, imports and exports have all recovered, investment remains about 16 percent below its level in the fourth quarter of 2007.』

したがって2007年のピークは不動産バブルで押し上げられたものとし、その「バブルビュー」は米国の基礎的な成長力が低下している事を示すという話。

『Thus, Bullard said that the previous business cycle peak is not a good benchmark for GDP growth. “It is not reasonable to expect the economy to climb rapidly back to the 2007 Q4 peak since part of that peak was due to artificial growth driven by bubble behavior,” he said. “A more reasonable interpretation is that fundamental potential growth in the U.S. has been somewhat lower than previously thought.” He added that the behavior of inflation during the past year provides some evidence for this.』


・でもって物価に関しては「インフレ期待が物価に大きな影響を与えている」

一方の物価に関してですが、「昨年の米国の物価の変化は、米国経済の基礎的な産出ギャップが想定よりも大きくなく、インフレ期待の変化が物価に大きく影響を与えた事を示す」という話をしていて、「FRBの資産買入がインフレ期待に影響を与え、それがインフレに影響を与えた」という話をしています。

『“The FOMC’s asset purchase program clearly drove both inflation and inflation expectations higher and closer to the Committee’s implicit target over the last year,” Bullard said. Given that actual real economic performance was weaker than the FOMC anticipated last fall, according to the July 29 GDP report, “this should have meant less inflation, not more,” he stated.』

『“This suggests that the output gap may have been considerably smaller than previously thought, and perhaps also that the output gap has considerably less influence on inflation than commonly thought,” Bullard said. “The larger influence on actual inflation comes from inflation expectations,” which have tended to be higher over the past year, according to TIPS measures, he noted.』

ホンマカイナという気もしますが、まあそういう事ですので、資産買入が効果が高いという話になるというブラード総裁のいつもの話になるのですが・・・・・・


・金融政策は基本的に「ミーティング毎」で行うものであると

『Bullard also shared his views on the FOMC’s policy tools going forward. “The Committee needs to be able to conduct a systematic countercyclical monetary policy during the period of near-zero policy rates,” he said.』

ほほう。

『He noted that “asset purchases are a potent tool and must be employed carefully” and cited the increase in inflation and inflation expectations during the past year, despite many measures of economic performance indicating a relatively weak economy.』

資産買入の効果がインフレ期待の引き上げに役立った結果、景気の回復が比較的弱かったにも関わらずインフレ期待と実際のインフレが引き上げられたという事で(それもまあホンマカイナという気がしますが)資産買入は有効なツールなので慎重に運営しないといけませんと。

『“The meeting-by-meeting approach would allow the Committee to carefully monitor and adjust any program,” he stated.』

なので、FOMC会合ごとに金融政策を調整すべきと。


・時間軸政策の弊害について

で、現在行われている時間軸政策に関しては、ブラード総裁のお約束通りですが否定的見解となります。でもって従来の「デフレ均衡になる」という話の前に別の理由が出ていまして、まあ妥当と思われるのですなこれがまた。

『Bullard said the FOMC could use the promised date of the first interest rate increase, which is the so-called communications tool, as the primary policy tool during the upcoming period of near-zero policy rates.』

今行われている時間軸もどきですな、まあ全く無いとは言ってないみたいですが。

『According to some models, he said, the Committee could influence financial market conditions and provide monetary accommodation by shifting the promised date. He noted that while the communications tool may work inside models, it has some important caveats for the application of policy.』

でまあ時間軸的な政策は、そういうモデルでシミュレーションする分にはワークすると思いますが、現実に当てはめた場合に幾分かの「政策を適用する際の重要な警告」があるだそうで、それは以下の通り。

『For example, he said it is not clear how credible the announcements would be. “If the economy is actually performing quite well at the point in the future where the promise begins to bite, then the Committee may simply abandon the promise and return to normal policy,” he said. “But this behavior, if understood by markets, would cancel out the initial effects of the promise, and so nothing would be accomplished by making the initial promise.”』

まあ何ですな、この辺の話って日本のゼロ金利政策や量的緩和政策の中での時間軸政策の推移、というか時間軸1号から3号までを見たニポーンの皆様(ただしマニアに限る)にとっては先刻合点承知の助だと思うのですけれども、問題は時間軸コミットメントが本当にコミットメントなのかどうかという部分に関わってくる訳でございまして、その辺のコミットメントへの信頼がなくなると政策効果が一発で剥落するという問題点がある、とブラード総裁が指摘しているのは、まあ日本の時間軸の第1号から第3号までの進歩(?)を研究したんでしょうかねとか思うのでありました。


でまあもう一つの理由はデフレ均衡という話で、そちらに関しては「去年のペーパーをご覧くださいませ」という結論でもあります。

『Bullard talked about another drawback to the communications tool, which he also discussed in his paper, “Seven Faces of ‘The Peril,’” published in 2010. “Simply promising to keep the policy rate near-zero for longer and longer periods of time may encourage a Japanese-style outcome in which the policy rate simply remains near zero and markets come to expect a mild rate of deflation,” he said. “This possibility has clear support in the theoretical literature but is too often ignored in policy discussions.”』

単純にゼロ金利を長期間継続するという約束をするのは、マイルドデフレとゼロ金利の均衡という日本スタイルの結果をもたらすという話はいつもの話でございまする。


・ということですのでブラード総裁は予想通り追加の資産買入で行くべしなんでしょ

って話になるのがブラード総裁の話。ブラード総裁は今年は議決権無いのですが、昨年のQE2導入時にもさっきの「Seven Faces of ‘The Peril,’」にあるように何となくそれらしい背景の理屈を出して来たという実績があるのと、まあこういう感じでホイホイ色々と先端を走って話をするのがお好きな人のようですので、そーゆー文脈からブラード総裁のプレゼンは微妙に注目しております。

でもって、まあだいたいこういう結論だろうなあというのは予想される所でしたが、QE2につきましては「インフレ期待の引き上げ」という政策効果を強調していますので、そういう意味からすると現状のツイストオペに関しては(今回何も言及していない位ですから)あまり期待せず、しかもデフレ均衡云々という話がありますので、現状のゼロ金利状態では、追加の金融緩和は金利方向ではなく、やはり直球ストレートに量の方向になるのでしょうな、と思うのでした。

ただまあその量的拡大が政治的に難しい面がありますし、そもそもブラード総裁も「効果的だが運営に注意」というくらいですから、明らかに物価が弱くなる(ブラード総裁は足元の回復の弱さからしてインフレ拡大よりも低下の可能性をみているようですけれども)兆候が出ないとこの理屈だと動きにくいのが、ちと話を難しくしている感はあるかと存じます。

従いまして、ブラード総裁云々は兎も角として、FRBの次の政策は何ですねんと考えますと、これがまあ何が出るのか良く判らんと申しますか、目くらまし的に効果があるのか無いのか判らん政策をさも効果がありそうに出してくるという福井俊彦的な狸スキームで進めていくしか無さそうな気がします。たぶん何もしないのも市場が許さんと思いますので・・・・・・・・・

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