決定会合議事要旨や金融経済月報などについて(2014年度上期に書いた分)

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2010年度までの見出しはこちら

2014/09/21「9月月報は先行き見通し重要項目の帳尻合わせに味わいが/8月議事要旨は一部に笑い所がありますよ」
2014/09/19「企業は海外進出すると収益力が上がるというレポートだがいつのまにまた昭和時代に・・・」
2014/09/05「9月決定会合声明文は先行きは同じだが需要項目の現状判断がまた下がるの巻」
2014/08/14「7月議事要旨は短国マイナスの話があまりないですな&与野党審議委員の見解に隔たりが」
2014/08/12「月報では本文中の輸出の記載が「下がっているが基調はプラス」とかかなり無理矢理な部分があります」
2014/08/11「決定会合声明文は輸出生産下げの雇用消費上げも会見内容がグダグダ/機構局からの銀行決算概要解説はやはり地域金融機関の再編を促す内容とな」
2014/08/06「いまさら7月月報ですがテーマは消費税増税の影響が和らぐですな」
2014/07/29「外国為替市場の取引の変化に関する日銀レビュー」
2014/07/22「6月議事要旨では景気の見方や物価の見方など必ずしも一枚岩ではない」
2014/07/16「決定会合声明文は強気継続も物価の文言が半年たっても変わらないのが気になる」
2014/07/08「さくらレポートは内容がやたらめったら強いです」
2014/07/04「生活意識アンケートの内容が暗雲垂れこめているようにしか見えない件」
2014/07/03「短観の企業物価見通しは何とでも取れる内容」
2014/07/02「短観は市場予想より弱めだが基本的に内容は強い」
2014/06/30「5月会合議事要旨では金融政策の論点が何故かあっさり味」
2014/06/27「日銀国債でポートフォリオリバランスという微妙なテイストの日銀レポートキタコレ」
2014/06/18「雇用と所得に関する日銀レビューとな」
2014/06/17「金融経済月報はほぼ声明文どおりだが物価の表現がこちらの方が分かりやすい」
2014/06/16「6月会合声明文は若干の変更のみ」
2014/06/12「調節年報より」
2014/06/02「米国の労働市場スラックに関するレビューが巧まざるして展望レポートのdisに」
2014/05/27「見解の相違の差が拡大している展望レポート議事要旨」
2014/05/22「決定会合声明文からデフレ脱却へ云々が削除でサイレントデフレ脱却宣言とな」
2014/05/12「法定準備金積み増しとな/日銀理事交代/展望レポート全文鑑賞の続き(その2)」
2014/05/09「展望レポート全文鑑賞の続き」
2014/05/08「4月1回目会合の議事要旨では成長率見通し下の物価見通し上の件についての議論が」
2014/05/07「展望レポート全文はこれは基本的見解とはちょっと毛色の違う慎重さがみられます(その1)」
2014/05/01「一読すると超強気なのだが良く見ると色々と謎の味わいがある展望レポート(基本的見解)」
2014/04/30「FSRのテーマはやはり地域金融機関のようで」
2014/04/25「FSRは今回地域金融機関に対する言及が結構露骨になっている感じ」
2014/04/24「FSRで金融活動指数の見直しとな」
2014/04/18「さくらレポートは強気にも程がある内容で地域の視点だけ妙に弱めのテーマ」
2014/04/16「3月金融経済月報は無風で声明文同様である」
2014/04/15「補完供給の運用明確化が明らかに市場のニーズを把握できていない件について」
2014/04/14「3月決定会合内容はまあ普通に強いですな」
2014/04/09「総裁会見生中継の影響でヘッドライン詐欺が激減/声明文はほぼ前回同様の無風」
2014/04/04「現送現受を一部アウトソースとな」
2014/04/03「短観の企業物価関連アンケートが中々面白い件」
2014/04/02「短観は非製造業中心の雇用DIと販売価格判断DIを見ると前向き循環メカニズムっぽい」


2014/09/21

お題「休日虫干し(というか積み残し)ネタシリーズ」

朝でも何でも無いのですがこの調子だと完全に積み残しそうなネタを投下しておきます。

○9月金融経済月報を前回と比較の巻

http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2014/gp1409.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2014/gp1408.pdf(前回)

てな訳ですいませんすいません。

・現状判断部分は(当たり前ですが)声明文と同様で総括同じで住宅と鉱工業下げ

『わが国の景気は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動がみられているが、基調的には緩やかな回復を続けている。』(今回)
『わが国の景気は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動がみられているが、基調的には緩やかな回復を続けている。』(前回)

うむ。

『海外経済は、一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復している。輸出は弱めの動きとなっている。設備投資は、企業収益が改善するなかで、緩やかに増加している。公共投資は高水準で横ばい圏内の動きとなっている。』(今回)

『海外経済は、一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復している。輸出は弱めの動きとなっている。設備投資は、企業収益が改善するなかで、緩やかに増加している。公共投資は高水準で横ばい圏内の動きとなっている。』(前回)

うむ。

『個人消費は、雇用・所得環境が着実に改善するもとで、基調的に底堅く推移しており、駆け込み需要の反動の影響も徐々に和らぎつつある。住宅投資は、駆け込み需要の反動減が続いている。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は、基調として緩やかな増加を続けているが、足もとでは弱めの動きとなっている。』(今回)

『雇用・所得環境が着実に改善するもとで、個人消費や住宅投資は、基調的に底堅く推移しており、全体としてみれば駆け込み需要の反動の影響も徐々に和らぎつつある。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は、足もとでは弱めの動きとなっているが、基調としては緩やかな増加を続けている。』(前回)

ということで、住宅投資が下がっているのと、生産については主文が入れ替わっているのでこれまた下げというのは声明文をネタにした時に投下したとおりです。


・先行き見通しは前回からの推移で考えた場合に帳尻が色々見えてワロタ

『先行きのわが国経済は、緩やかな回復基調を続け、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響も次第に和らいでいくとみられる。』(今回)
『先行きのわが国経済は、緩やかな回復基調を続け、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響も次第に和らいでいくとみられる。』(前回)

へえへえそうだっか。

『輸出は、海外経済の回復などを背景に、緩やかな増加に向かっていくと考えられる。』(今回)
『輸出は、海外経済の回復などを背景に、緩やかな増加に向かっていくと考えられる。』(前回)

ほうほう。

『国内需要については、公共投資は、高水準で横ばい圏内の動きを続けるとみられる。設備投資は、企業収益が改善傾向を続けるなかで、緩やかな増加基調をたどると予想される。』(今回)
『国内需要については、公共投資は、高水準で横ばい圏内の動きを続けるとみられる。設備投資は、企業収益が改善傾向を続けるなかで、緩やかな増加基調をたどると予想される。』(前回)

とまあここまで同じで・・・・・・・

『個人消費は、雇用・所得環境の着実な改善が続くもとで、引き続き底堅く推移し、駆け込み需要の反動の影響もさらに和らいでいくとみられる。住宅投資は、当面、駆け込み需要の反動の影響が残るものの、次第に底堅さを取り戻していくと予想される。』(今回)

『雇用・所得環境の着実な改善が続くもとで、個人消費や住宅投資は引き続き底堅く推移し、駆け込み需要の反動の影響もさらに和らいでいくとみられる。』(前回)

まあ大体こうやって表現が長くなる時というのは碌な事が無い訳ですが、住宅投資の先行き見通しは「当面」反動の影響が残るということですから、短期的な先行き判断を下げておりますな。といいますか、実際には8月月報の時に輸出の判断を下げる代わりに「消費税増税の反動が和らぐ」という形で個人消費と住宅投資の判断を上げていまして、この時に上げてはみたもののやっぱり住宅で反動が和らぐという見方をしたのが時期尚早だったというのがまず第一の帳尻なのですが、生産の所の表現が中々いい感じで味わいを出していてクソワロタという所です。

『以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は、当面弱めの動きを残しつつも、緩やかな増加基調をたどると考えられる。』(今回)
『以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は緩やかな増加基調をたどると考えられる。』(前回)

ということで、これまた生産の所も「当面弱めの動きを残しつつも」と苦しいヘッジクローズが入ってクソワロタという感じなのですが、何故クソワロタかと申しますと、実際問題としては住宅の現状と先行き見通しの短期的な部分がちょっと下がっただけで生産の見通しにヘッジクローズ入りますかねえという風に考えますと、まあ他の部分の文言を変えてはいないものの、これって要するに輸出と設備の判断を下げた前回の月報では前述のように消費と住宅投資の所を生産の見通しを引き上げる事によって帳尻を合わせて、その結果生産の見通し文言に変化が無かったのですけれども、前回帳尻の為に先走って引き上げた住宅投資の判断を下げざるを得なくなったことから、生産も結局帳尻のツケが回ってきたという形になっているのですな。

てなところがまあ味わいというか侘び寂びの世界であります。


・ヘッジクローズ、物価に関しては同様

以下は基本同内容です。

『この間、リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(今回)
『この間、リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(前回)

うむ。

『物価の現状について、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみと、国内企業物価は、3か月前比で緩やかに上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、1%台前半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(今回)

『物価の現状について、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、国内企業物価は、3か月前比で緩やかに上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、1%台前半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(前回)

予想物価上昇率は精々横ばいとかのような気がするんだが、どうも日銀に言わせるとフィリップスカーブは上にシフトしてきているという話らしいので、予想物価上昇率も上昇しているという話になるみたいですよ。何だかなあという感じはしますが。

以下金融環境に関しては引用割愛します。特段のインプリケーションはありません。


○8月会合議事要旨から

市場のヒャッハーと師匠の落語などで後回しになりましたが今さらですがネタ投下。

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2014/g140808.pdf

・前向きの循環メカニズムは確りと働いているとな

まずは『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』の『1.経済情勢』ですが、海外はまあ普通の事しか書いていないので国内から。

『わが国の景気について、委員は、最近の輸出や生産には弱めの動きがみられるものの、家計・企業の両部門において、景気の前向きの循環メカニズムがしっかりと働いていることから、総括判断としては、緩やかな回復を続けているとの評価を維持することが適当であるとの見方で一致した。』

家計と企業の両部門で前向きの循環メカニズムがしっかりと働いているそうですわよ奥様!

『景気の先行きについても、委員は、緩やかな回復基調を続け、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響も次第に和らいでいくとの見方を共有した。』

へえへえそうだっか。


・輸出についての議論部分は日銀文学というか何というかが炸裂している点に注目

『輸出について、委員は、このところ弱めの動きとなっているとの見方で一致した。委員は、弱めの動きの背景として、新興国経済のもたつきや米国の需要が1 〜 3 月期に落ち込んだことがラグを伴って春先まで日本の輸出を下押ししたことなど循環的要因の影響を指摘した。同時にこれらの委員は、製造業の海外生産移管といった構造的要因も相応に影響しているとの見方を示した。』

あくまでも循環要因がメインとな、と思わせますが次の所と合わせてみると味わいがあります。

『先行きの輸出については、委員は、先進国を中心に海外経済の成長率が高まっていくもとで、緩やかな増加に向かっていくとの見方を共有した。このうち複数の委員は、海外生産移管などに起因する構造的な下押し要因の影響も、先行き徐々に減衰していく可能性が高いと述べた。別の何人かの委員は、構造的な要因の影響を重視し、海外経済に対するわが国の輸出の感応度は低下しているとの認識を示した上で、輸出は回復に向かうものの、そのペースは緩やかなものにとどまるとの見方を示した。』

なんかしらっと書いてありますが、先行きの所で思いっきり構造要因の話が出ていまして、というかそもそも執行部以外の審議委員の中ではこの「輸出全然伸びないじゃん」という指摘を以前からしている方々が相応においでな訳でして、実際問題としては輸出をどう見るかという点については相当に見解が割れていると思われますが、前段の部分では弱めの背景について循環重視の委員のコメントだけ掲載するという中々イカサマの香りがする技を使っておりまして、印象として構造重視の所を強く出さないようにしている辺りが日銀文学の妙味というものです。

なお、前段の部分では別に「との見方で一致した」とか書いていなくて、あくまでも循環要因を重視する委員の見解を紹介しているだけですし、そもそも議事「要旨」なのですから別に全部の議論を掲載する必要もない訳で、イカサマの香りとは申しましたが別にインチキでも何でも無く、これはこれで文学的な手法を駆使しているだけという点については誤解の無い様に願います(^^)。


・設備投資は毎度の見通しだがそれは持続性があるのかと小一時間

『設備投資について、委員は、市場予想を上回る好調な企業決算が続いていることや、良好な企業マインドを背景に、緩やかに増加しているとの判断で一致した。先行きについても、委員は、企業が積極的な設備投資意欲を堅持していることなどから、緩やかな増加基調をたどるとの見方を共有した。』

まあ意欲があるのと実際にやるのとはまた別の話ですけどね!!!!

『何人かの委員は、先行きの設備投資に関して、日本政策投資銀行の最新のアンケート結果に言及し、2014 年度の設備投資計画が高めの伸びを示していると指摘した。』

なんかこういう個別の日銀以外からのサーベイの話が事例として出てくるという辺りがこれまたアレ。

『さらに何人かの委員は、労働市場のタイト化を背景とする省力化投資や、設備の老朽化を受けた更新投資が出てくることが期待できると付け加えた。』

でまあこの辺りの部分なんですが、8月議事要旨ではまあこういう状態ですが、今しがた引用した9月月報の元となっている金融政策決定会合では生産の先行きを短期的な部分とは言え見通しを下げる中でどういう留保条件を入れながら設備投資の見通しを突っ込んだのか興味がありますな。

・雇用所得、消費に関する部分

『雇用・所得環境について、委員は、労働需給は着実な改善を続けており、雇用者所得も緩やかに伸び率を高めているとの認識を共有した。先行きについても、委員は、経済に前向きの循環が働くもとで、雇用者所得は緩やかな増加を続けるとの見方で一致した。』

実質賃金ェ・・・・・・・・

『個人消費について、委員は、品目によってその程度には差はあるものの、全体としては、駆け込み需要の反動減の影響は徐々に和らぎつつあるとの認識で一致した。消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動について、何人かの委員は、耐久財を中心に駆け込み需要が大きかったため、反動もそれなりに大きくなると見込まれるとの認識を示した。』

はあそうですか。

『ある委員は、耐久財以外の動向についても、しっかりと注視していく必要があると付け加えた。』

『一方、別の一人の委員は、インターネット通販の販売額は4 月を底に順調な回復が窺われると指摘した。』

前半はまあ耐久財以外も不味くねえかという話で、通販の話とかこらまた唐突に来てますなあ。

『先行きの個人消費については、委員は、実質所得の押し下げの影響には注意が必要だが、雇用・所得環境の着実な改善が続いていることを踏まえると、底堅く推移していくとの見方を共有した。』

何という実質所得問題無し攻撃。つーかこれ企業収益伸びなくなったらどうすんでしょ。


・生産について

『鉱工業生産は、委員は、足もとでは駆け込み需要の反動や輸出のもたつきなどを反映して弱めの動きとなっているが、基調としては緩やかな増加を続けているとの見方で一致した。』

基調としてはキタコレ。

『このうち多くの委員は、足もと、一部業種で在庫の増加や出荷・在庫バランスの悪化がみられることを指摘した。』

ダメじゃん。

『先行きについては、委員は、内外需要の動向などを反映して、緩やかな増加基調をたどり、駆け込み需要の反動の影響も次第に和らいでいくとの見方を共有した。』

ということで、全体的に楽観見通しを根底に置いた結果として楽観の循環メカニズムとなっている見通しというのが続いている訳ですな、9月はどうなったんでしょう。


・円安で輸出が伸びない件の新たなトリクルダウン屁理屈キタコレ!!!!!!

8月会合議事要旨のオモシロポイントに参りましたよ!!!!!!

『複数の委員は、輸出から生産、生産から投資といった、従来の典型的な景気回復のメカニズムが今次局面では変化している可能性に言及した。』

ほうほうそれでそれで????

『これらの委員は、海外の子会社等の収益が国内に還流し、設備投資や、賃金・所得に波及していく可能性を指摘した。』

屁理屈キターーーーーーーーー(・∀・)ーーーーーーーーーーーーー!!!!!!

えーっとですね、つまり「円安になっても輸出数量が伸びないし現地生産部分は兎も角国内生産に跳ねないから回復メカニズム働かないじゃん」という指摘が散々なされている訳ですが、これに対抗する屁理屈を繰り出して来たという話でして、円安になると輸出企業の収益が伸びるのでトリクルダウンが来て国内もウハウハという話なのですが、この手のトリクルダウンネタって何回か言われていますがついぞ実現した事の無いネタでありまして、まあその時点でインチキの香りが大変素敵に漂ってくるというものであります。

なお、そういう観点で先般日銀から出ていた論文を見るとまあ何と申しますかな味わいがあるという話になるのですよね。一応念の為URL貼っておきます。

企業の海外進出と収益力
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2014/wp14j08.htm/(要旨)
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2014/data/wp14j08.pdf(全文)


・物価に関しては師匠の謎理論が登場していたようです

今回の議事要旨ネタのオモシロパートその2は物価の所に少々。

『物価面について、委員は、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、プラス幅が幾分縮小する局面を伴いつつも、暫くの間、+1%台前半で推移するとの見方で一致した。』

『その先の消費者物価の前年比については、大方の委員は、マクロ的な需給バランスが着実に改善を続け、中長期的な予想物価上昇率も上昇していくもとで、今年度後半から再び上昇傾向をたどるとの見方を共有した。』

とまあこれは良いのですが、この次の部分は先般の講演や会見での説明を踏まえると置物師匠の置物理論のようです。

『この点に関連して、一人の委員は、既往の原油高や円安効果が剥落していくため、先行きの消費者物価の前年比伸び率の低下を懸念する声があるが、品目の相対価格の積み上げで物価予測を行うのは不適切であり、マクロ的な物価の決定要因である需給ギャップと予想物価上昇率に着目すべきであると指摘した。』

いやその需給ギャップだって最終的には個別の積み上げだし、そもそも予想物価上昇率って直接的な計測が困難なものに対して着目して先行きの見通しをどうのこうのとかナンジャソラというか、そもそも個別の積み上げを否定してどうすんねんと思うのですが、どうも師匠の謎理論は判らん。

『この間、複数の委員が、このところのサービス価格の動きに回復感を欠いている点には注意が必要であると述べた。このうち一人の委員は、企業が販売価格を持続的に引き上げるようになるためには、成長期待や将来所得の上昇期待が高まる必要があり、この点、政府による成長戦略の迅速な実行や企業による成長力や競争力を高める努力が欠かせないと述べた。』

まあそうですなという所ですが、師匠の置物理論の場合は需給ギャップと予想物価上昇率で決定するそうですし、成長期待とか将来所得の上昇期待とかはインフレ期待が高まって実質賃金が下がると勝手に上がるというポンチ絵を相変わらず書いて講演しておられますので、一人謎理論を炸裂させているという風情なのでしょうな。


・物価を多面的に見るという件について

『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』ですが、いつもの議論といつもの木内さんの反対提案ネタはいつも通りでして、それ以外の所から。

『委員は、金融政策運営に関して月々の消費者物価(除く生鮮食品)の数字に注目が集まる傾向があるが、物価の基調を的確に把握することが重要であるとの認識を示した。』

ほうほうそれでそれで??

『この点に関連して委員は、@「物価安定の目標」は、消費者物価の総合指数で定義している、A物価の予測に当たっては、一時的な変動要因の影響を除いた基調的な動きを捉える必要があるため、展望レポートにおける物価見通しは、基調的な物価の動きを比較的よく表している「除く生鮮食品」指数を用いている、ということを確認した。』

別に確認するまでも無い話のような気がする当たり前の話で、「確認した」という文言が何か物凄い違和感があるのですけどねえ。「という事をより一層周知すべきである事を確認した」というのであれば判るのですが・・・・・・・・・・・・・

『そのうえで、物価情勢の判断に当たっては、引き続き、様々な物価指標を点検することが重要であり、また、それらの指標の背後にある経済の動きとも併せて評価していく必要があるとの認識を改めて共有した。』

今更共有するのかという感じですが、ただまあこういうのって従来置物師匠一派の方々が主張しているインフレ目標政策のメリットとだいぶ違ってくる話になりまして、何せ置物師匠一派の皆様におかれましてはインフレ目標によって総合判断を隠れ蓑にして日銀のデフレバイアス政策が炸裂しないようにすべきとか、甚だしきはインフレ目標政策をそれこそエアコンの自動運転による温度調節に例えていたりしてたりした訳でして、この物価を多面的に判断というのはそういう面からすると置物師匠の従来の理論からは結構背馳すると思うのですけどどうなんでしょうかねえ。

ま、だからこそこの議事要旨が「確認した」「改めて共有した」となっているのかも知れませんけどね!!!


#ということで虫干しネタ恐縮至極

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2014/09/19

○これはまた味わいのありそうなワーキングペーパーシリーズ

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2014/wp14j08.htm/
企業の海外進出と収益力
2014年9月18日

でまあ本文は
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2014/data/wp14j08.pdf

なんですが、本論は12ページ分ほどあってまだ超斜め読みしかしておりませんので内容がどうのこうのの前に最初の要旨の部分を見るとこれはこれで味わいがあるというものです。

『要旨』から。

『本稿では、わが国企業の海外進出の積極化が収益力や企業価値に与える影響について、実証的に分析した。』

ほうほう。

『具体的には、上場企業のマイクロデータを用いて、海外進出の程度を収益率や企業価値に回帰したパネル推計や、国内・海外部門の補完性(一方の事業がもう一方の事業の収益性を向上させる効果)を明示的に考慮した利潤関数の推計を行った。分析の結果、企業が海外進出の程度を高めることは連結ベースの収益力や企業価値にプラスの効果を与えており、さらに、その効果は近年高まっていることが確認された。このことは「収益力や企業価値の高い企業ほど海外進出を行う」という逆の因果関係に起因するバイアスを取り除いた上でも見てとれた。』

なるほどという所ですが、今まさに「企業が海外現地生産したり競争力が低下したりしているから円安になったり海外(というか米国)経済が堅調になっても輸出が伸びないのに大丈夫か日本経済」という話が盛り上がっているタイミングでのこの要旨の投下というのが実にこう侘び寂びの世界を感じるものであります。

『また、企業の海外事業と国内事業の間には補完的な関係があることが示唆された。すなわち、企業は、国内事業を維持しつつ海外事業を拡大させることで、より高い収益性を得ることができる。企業の海外進出による収益力や企業価値へのプラス効果が近年高まっている背景には、海外での経験蓄積、現地需要の取り込み、生産コストの抑制が寄与した可能性がある。』

ということで、企業の海外進出で収益力が向上しますよという趣旨の分析内容になっておりまして、これは裏を返すと国内でなんぼチマチマやっていても企業収益力も上がらんし企業価値も上がらんという残念なインプリケーションを示しておりまして、(別にこのレポートはそんな事を言ってませんけど)海外に進出して稼いで来やがれとか何か時代が一巡して振り出しに戻ったかのような感もする話ですなあという所で。

つーかですな、引用した趣旨の前半部分に話を戻しますと、円安に振っても輸出が増えないから国内生産も増えなくて国内所得の海外漏出のデメリットしか無いじゃないか!!という昨今のツッコミに対する回答である、と考えてこの趣旨を読みますと、企業が海外進出を拡大していく中で国内の生産部分への恩恵が確かに弱まっているのだが、このように企業収益力や企業価値が高まるので、企業部門からのトリクルダウンが発生して結局の所国内経済にはプラスなんです(キリッ)という新たなる「先行き輸出が盛大に伸びなくったって大丈夫じゃないかにんげんだもの」な理屈展開に対する武器としても使えるという辺りに侘び寂びの世界を感じますなあ、というような事でちょっと引用してみましたが、詳しくは週末にでも読んでみようかなあとは思います。

#なお積み残しネタが大量にある(というかネタがわんこそば状態)ので今週末こそ真面目に成敗しないといかん

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2014/09/05

○ジャパンの金融政策決定会合ですがまたも現状判断需要項目の引き下げですなあ

ということでECBの後に肝心のジャパンの金融政策決定となという所ですが、もはやだいぶどうでもよくなっているなどという事はございませんよ(−−;

今回の声明文
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/k140904a.pdf

前回の声明文
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/k140808a.pdf

・現状判断は総括判断は不変もまたまた個別項目で判断の下げとな

まずは総括判断。

『わが国の景気は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動がみられているが、基調的には緩やかな回復を続けている。』(今回)』(今回)
『わが国の景気は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動がみられているが、基調的には緩やかな回復を続けている。』(前回)

往生際悪く毎度の「基調的には」攻撃なのでありますが、会見(会見要旨が出てからネタにしますが)ではひたすら何ちゃら細胞の存在の如く「回復しています前向きの循環メカニズムは続いています」(キリッ)となっているのでありました。以下は個別の需要項目である。

『海外経済は、一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復している。輸出は弱めの動きとなっている。』(今回)
『海外経済は、一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復している。輸出は弱めの動きとなっている。』(前回)

海外と輸出は前回と同じですが、まあ輸出は弱めの動きというままですな。

『設備投資は、企業収益が改善するなかで、緩やかに増加している。公共投資は高水準で横ばい圏内の動きとなっている。』(今回)
『設備投資は、企業収益が改善するなかで、緩やかに増加している。公共投資は高水準で横ばい圏内の動きとなっている。』(前回)

とまあここまでは前回と同じです。

『個人消費は、雇用・所得環境が着実に改善するもとで、基調的に底堅く推移しており、駆け込み需要の反動の影響も徐々に和らぎつつある。住宅投資は、駆け込み需要の反動減が続いている。』(今回)
『雇用・所得環境が着実に改善するもとで、個人消費や住宅投資は、基調的に底堅く推移しており、全体としてみれば駆け込み需要の反動の影響も徐々に和らぎつつある。』(前回)

基調的に底堅く推移しているのは個人消費だけになりまして、住宅投資については駆け込み需要の反動減が続いている、という判断に下がっている訳ですが、では前月の「全体としてみれば駆け込み需要の反動の影響も徐々に和らぎつつある」というこの「全体としてみれば」とは何だったのかと小一時間問い詰めたい。

『以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は、基調として緩やかな増加を続けているが、足もとでは弱めの動きとなっている。』(今回)
『以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は、足もとでは弱めの動きとなっているが、基調としては緩やかな増加を続けている。』(前回)

日銀文学キタコレ(・∀・)!!!

・・・・・・・と申しましてもこれはだいぶ分かりやすくて、要するに従来は主文が「鉱工業生産は緩やかな増加」だったのが今回「鉱工業生産は弱め」と変わっていますので判断が引き下げになったという事です。

なお、声明文英文版(英文版はあくまでもご参考の英訳バージョンでMPMでの決定事項は日本語声明文になります。議事要旨を見れば判りますけど決定事項の所にある声明文は日本語バージョンだけな)を見るとこの禅問答が分かりやすくなります。

http://www.boj.or.jp/en/announcements/release_2014/k140904a.pdf(今回)

『Reflecting these developments in demand both at home and abroad, industrial production has recently shown some weakness, although it has continued to increase moderately as a trend.』(今回)

http://www.boj.or.jp/en/announcements/release_2014/k140808a.pdf(前回)

『Reflecting these developments in demand both at home and abroad, industrial production has continued to increase moderately as a trend, although it has recently shown some weakness.』(前回)

ということで、こちらですと何が主文かが分かりやすいと思いますので、この手の文学鑑賞の場合は英文も併せて読むと吉という場合もありますぞなもし。


『この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、1%台前半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(今回)

『この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、1%台前半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(前回)

おいこらどこの予想物価上昇率が上昇しているんだと小一時間問い詰めたい所ではありますが、ご覧のとおり金融環境や物価に関しての判断もまた不変で、今回下がったのは住宅投資と鉱工業生産となります。


・先行き見通しは同じ文言ですが物価再加速の時期が逃げ水のようにロールオーバーされていますがががががが

『先行きのわが国経済については、緩やかな回復基調を続け、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響も次第に和らいでいくとみられる。消費者物価の前年比は、暫くの間、1%台前半で推移するとみられる。』(今回)
『先行きのわが国経済については、緩やかな回復基調を続け、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響も次第に和らいでいくとみられる。消費者物価の前年比は、暫くの間、1%台前半で推移するとみられる。』(前回)

ということで、先行き見通しに関しては基調判断部分は前回と同じ文言(というか先行きの基調判断を下げるとなると追加緩和待ったなしですがな)になっておりますが、毎度申し上げておりますように、先行きの物価見通しに関しましては本年1月以降延々と「暫くの間」1%台前半で推移という話をしておりまして、暫くの間means半年程度とのことですので、どう見ても物価再加速時期の想定がドンドンと後ずれしている訳で、置物師匠のマネタリーベース直線一気理論によりますと、2%の予想インフレ率達成の為に必要とされていた量を遥かに上回るMB拡大をしている訳でして、デフレは貨幣的現象なんだからマネタリーこんなに出しているのに何でこう物価再加速時期が後ずれするのか小一時間師匠に質問して頂きたいものであります。

・・・・・とか何時の間にか話が逸れましたが、まあ要するに先行き見通し不変も物価上昇再加速時期がどんどんずれていて、2年で2%大丈夫というのはさすがに無理が出て来てないか10月の展望レポートでどう誤魔化すもとい説明するんだという感じではあります。

まあ何ですな、2年で2%行かなかったら置物副総裁様は国会での発言通りに潔くご退任ということで、まあ折角ですので白装束に身を包んで過去に日銀を最大級に罵りつつお書きになられた書籍などを白木の箱に詰めて盛大に焚書でもしていただくセレモニー位して頂きますと誠に有り難く存じます次第ですし、国権の最高機関たる国会で発言した事を今更無かったことにするとなりますと即ち国民の代表を欺いて日銀副総裁にご就任遊ばされたという事になりますからどうなんでしょうかねえとかは全てアタクシの妄想でありまして、実際には「物価目標は金融政策で達成できる」訳ですので、当然期限に達成できると信じていますので楽しみに待っておりますよ!!!!!

・・・・・・うむ、結局話がそれてしまったorzorz


・リスク要因も文言不変

他のリスク要因もあるんだからいい加減文言変えれば良いのにとは思うのですけどねえ。

『リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(今回)
『リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(前回)



・決意表明的な文言と木内さんの提案と却下振りも不変である

『「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う(注)。』(今回)

『「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う(注)。』(前回)

どう見ても全文一致です本当にありがとうございました。

『(注)木内委員より、2%の「物価安定の目標」の実現は中長期的に目指すとしたうえで、「量的・質的金融緩和」を2年間程度の集中対応措置と位置付けるとの議案が提出され、反対多数で否決された(賛成:木内委員、反対:黒田委員、岩田委員、中曽委員、宮尾委員、森本委員、白井委員、石田委員、佐藤委員)。』(今回)

『(注)木内委員より、2%の「物価安定の目標」の実現は中長期的に目指すとしたうえで、「量的・質的金融緩和」を2年間程度の集中対応措置と位置付けるとの議案が提出され、反対多数で否決された(賛成:木内委員、反対:黒田委員、岩田委員、中曽委員、宮尾委員、森本委員、白井委員、石田委員、佐藤委員)。』(前回)

殆ど意地になって提案しているような感じですけれども、前回も申し上げましたように、そもそも来年の4月まであと半年ちょっととかになっている訳で、今さら「2年間程度の集中対応措置」という文言を使わない方が良いのではないかと思うのですが・・・・・・・・


・なお会見は何となくは聞いてみたものの・・・・・・・・・・・・

詳しくは会見要旨出てからにしますが、会見の説明はとりあえず自分の見通しに都合の良いデータをひたすら強調するとか、まあ何ちゅうか説明がアナザーワールドに逝っている感がしまして、段々話がかみ合わなくなっているなあというのが第一印象。今回も説明が無駄に長くて、それはまあ相手の質問に対してストレートに答えると不都合な経済指標とか市場の動きとかが飛び出してくるので、まずはその質問に対してせっせと迂回路を用意して、そこから迂回路経由で自分たちの説明に都合のよい材料を出して来る、という風な説明になるので冗長感が漂うんだと思います。詳しくは後日。

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2014/08/14

○7月決定会合議事要旨ですが微妙にツッコミネタがありますな

7月会合議事要旨である。
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2014/g140715.pdf

・短国マイナス金利が説明でスルーで議論もスルーですかそうですか

ご案内の通り、6月末に向けて短国玉が逼迫しまくって入札は強いわGCレートなども6月末の所でヒャッハー状態になるわとなった後に、7月にはまたぞろ買いが入って短国ゼロだのマイナスだのとかいうのをやっていた訳ですが・・・・・・・・・・・・・・

最初の執行部報告の金融市場のお話から。

『短期金融市場では、金利は、長めのゾーンを含め、低位で推移している。無担保コールレート(オーバーナイト物)、GCレポレートとも、0.1%を下回る水準で推移している。ターム物金利をみると、短国レートは、極めて低い水準での動きとなっている。長めのターム物の銀行間取引金利は、横ばいとなっている』

>短国レートは、極めて低い水準での動きとなっている
>短国レートは、極めて低い水準での動きとなっている
>短国レートは、極めて低い水準での動きとなっている

極めて低いですかそうですか。

で、委員の議論パートでも短国金利が超越低下して市場機能がうんこになってこれでは今後オープンエンドでオペを継続できないのではないかというような考察がある訳でも無いという誠に遺憾の極みな展開で、このような記述があるのみでした。

『最近の債券市場の動向について、何人かの委員は、このところの長短金利の一段の低下には、海外金利の低下が影響しているとの認識を示した。何人かの委員は、市場参加者の経済・物価に関する見通しがここにきて変化しているわけではないことを踏まえると、日本銀行による巨額の国債買入れが進む中で、イールドカーブ全体の金利低下を促す効果が強まってきている可能性があるとの見方を示した。』

まあ何ですな、そういやリーマンショックの時の事案を思い出しますと、取引再構築コストを考えたらGCレポもどうかねみたいな動きになってGCレポレートが絶賛上昇してオープン金利が全般上昇してついにはCP金利まで盛大に上昇してというような時も政策金利の引き下げ対応だけやってオープン金利の高止まりによる金融引き締まりに対して数か月放置プレイだったという事案がありまして、どうもこうオープン市場とか債券市場とかいうような日銀の庭から垣根一つ隔てた位の所になるとその垣根低い筈なのに急速に感度が落ちるのが日銀クオリティというのが全然変わっていないというか全然勉強していないというかだなあというのが良く判る所でして、この程度の認識でQQEの国債馬鹿買い政策の正常化できるのかいなという不安しか起きない今回の議事要旨における市場動向に関する記述でありましたという事ですな。

#興味ないし知らんがな、コールの上げ下げだけやるわというのであればそれはそれで良いのだが、だったら馬鹿買い入れて介入するなと小一時間問い詰めたい訳ですよ


・欧州ディスインフレに関する記述がちと変化と

という悪態は兎も角として『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』から。

『ユーロエリア経済について(途中割愛)緩やかな回復を続けるとの見方で一致した。何人かの委員は、緩やかなディスインフレ基調が続いていることには留意が必要であるとの認識を示した。』

ということですが、前回6月の議事要旨ではここの「何人かの」が「多くの」だったのですが、これはECBの追加緩和政策が効くからヘーキヘーキという事で指摘を止めた人がいるということですかね、まあどうでも良いけど。


・輸出に関して

でまあ問題はジャパンの景気なんですけどね。

『輸出について、委員は、このところ横ばい圏内の動きとなっているが、先行きは、海外経済の回復などを背景に、緩やかに増加していくとの見方で一致した。』

はあそうですか。

『複数の委員は、海外への生産拠点の移管などの構造的な要因が今後も輸出の増加を抑制する可能性があると述べた。何人かの委員は、6月短観における海外での製商品需給判断DIの改善や最近の外需向け機械受注の増加は、先行き輸出が増加していくことを示唆しているとの見方を示した。』

構造要因あって長引くんじゃネーノVS循環要因だからヘーキヘーキ対決。

『このうちの一人の委員は、日本企業が比較優位を持つとみられる設備投資関連財の輸出について、先進国経済の回復を背景に今後増加が期待できるとの認識を述べた。』

ここの部分、前月も同じように構造要因VS循環要因対決があったのですが、今回の記述は循環要因の人たちの説明部分がだいぶ勢いを欠いているのが味わいがあります(比較出すと長くなりすぎるので割愛しますが前月のを見てちょ)


・設備投資に関して

その次。

『設備投資について、委員は、企業収益が改善する中で、緩やかに増加しており、先行きも、緩やかな増加基調をたどるとの見方を共有した。』

ほう。

『委員は、6月短観をみると、企業の業況感は、駆け込み需要の反動の影響がみられているが、総じて良好な水準を維持しているとの認識で一致した。そのうえで、多くの委員は、5月の機械受注など一部に弱めの指標もみられるが、短観では2014 年度に設備投資をしっかりと増加させる計画となっており、企業の前向きな姿勢は維持されているとの見方を示した。』

物は言い様ですね!!!!

『このうちの複数の委員は、企業収益の改善傾向が続く中で、労働市場のタイト化を背景とする省力化投資や、設備の老朽化を受けた更新投資が出てくることが期待できると付け加えた。』

これ毎回言われてますが、生産の拡大に伴うものではないから持続性に欠けるんですねという話にならない所がチャーミング。

『別の複数の委員は、建設投資関連で弱めの指標がみられることには人手不足などの供給制約が影響している可能性があり、先行きの設備投資が計画対比で下振れるリスクには注意が必要であるとの認識を示した。』

ふーん。


・消費に関して

ここの記述はオモロイ。

『個人消費について、委員は、このところ駆け込み需要の反動がみられているが、基調的には、雇用・所得環境が改善するもとで底堅く推移しているとの認識を共有した。』

ということで・・・・・・・

『駆け込み需要の反動減について、委員は、各種のデータや企業からの聞き取り調査には強弱様々なものがあるが、全体としてみれば概ね事前の想定の範囲内となっているとの見方で一致した。』

これ実は前回議事要旨と比較すると更に味わいがあるのですが、ここの部分もちょっと勢い弱くなっているんですよね(^^)。

『多くの委員は、これまで公表されたデータは、反動減が想定の範囲内という企業の見方と総じて整合的であるとの認識を示した。何人かの委員は、旅行や外食などのサービス消費が底堅く推移しており、消費者マインドも改善してきていると付け加えた。』

この説明前月もあったですが・・・・・・・・・

『この間、複数の委員は、企業からの聞き取り調査では想定の範囲内との声が多く聞かれる一方、各種のデータには大きめの反動減を示すものもあるとの認識を示したうえで、これには聞き取り調査の対象が大企業中心であることが影響している可能性があると指摘した。』

イイシテキダナー。

『ある委員は、消費動向調査などでみると消費の二極化が進んでいると指摘したうえで、基調判断にあたってはこうした点にも留意する必要があるとの認識を示した。』

これも実感として判るわ。つまり足元は二極化してるんでしょうという一連の指摘ご尤も。

『先行きの個人消費について、委員は、雇用・所得環境の改善が続くもとで引き続き底堅く推移し、駆け込み需要の反動の影響も次第に和らいでいくとの見方で一致した。』

この部分の議論については前回は微妙に記述があった(実質所得の低下がどうのこうのみたいな話)のですが、今回は議論そのものの記載が無いのが味わいがありますな。


・物価に関して

『物価面について、委員は、消費税率引き上げ以降も物価の基調に変化はなく、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、夏場にかけてプラス幅が幾分縮小する局面を伴いつつも、暫くの間、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、+1%台前半で推移するとの見方で一致した。』

今回ここに「+1%台前半」って思いっきり書いてあるのにニヤリ。

『何人かの委員は、需給ギャップの改善と予想物価上昇率の高まりという物価の基調を規定する2つの要因はしっかりと作用しており、物価上昇圧力は先行きさらに高まっていくと述べた。』

一致してなくて「何人かの委員」ですかそうですか(^^)。

『予想物価上昇率について、委員は、マーケットの指標や各種の調査などを踏まえると、全体として上昇しているとみられるとの認識を共有した。ある委員は、コスト転嫁が難しかったとみられる中小企業・非製造業でも販売価格判断DIが1991 年調査以来の「上昇」超になるなど、企業の価格設定行動は付加価値を高めながら販売価格を引き上げる方向に変化し始めているとの見方を示した。』

ふーん。

『ある委員は、各種アンケート調査における家計や市場参加者の予想物価上昇率をみると、分布の上方シフトがみられる一方、平均値は明確には上昇していないと指摘した。』

なるほどこれは良い指摘。


・展望レポート中間評価

『以上のような認識を踏まえ、経済情勢の先行きの中心的な見通しについて、委員は、2回の消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には潜在成長率を上回る成長を続けるという、4月の展望レポートで示した見通しに概ね沿って推移するとの見方で一致した。』

うむ。

『何人かの委員は、輸出の回復時期が幾分後ずれしているものの、総じてみれば見通しに沿った動きであるとの認識を示した。』

で、物価ですが・・・・・・・・・・

『消費税率引き上げの直接的な影響を除いた物価情勢の先行きの中心的な見通しについて、委員は、消費者物価(除く生鮮食品)は、4月の展望レポートで示した見通しに概ね沿って推移するとの認識を共有した。』

『多くの委員は、消費者物価の前年比は、@暫くの間、1%台前半で推移したあと、本年度後半から再び上昇傾向をたどり、見通し期間の中盤頃に2%程度に達する可能性が高い、また、Aその後次第に、これを安定的に持続する成長経路へと移行していくとみられるとの見方を示した。』

という大勢見解に対して・・・・・・・・・

『これに対し、何人かの委員は、4月の展望レポート時と同様に、見通し期間の中盤頃に2%程度に達するとの見方には不確実性が高いと考えられることなどから、自身の物価見通しは中心的な見通しに比べて慎重であると述べた。』

野党の皆さんですね。

『先行きのリスク要因について、委員は、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられるとの認識を共有した。』

まあここはいつも通り。


・物価安定目標に関する話がチラリズム

『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』ですけどね。

『委員は、金融政策運営に関して月々の消費者物価の動きに注目が集まる傾向があるが、物価の基調を的確に把握することが重要であるとの認識を示した。』

およよ?

『何人かの委員は、物価の基調を規定する要因である需給ギャップと予想物価上昇率の動向をよくみていく必要があると付け加えた。』

えーっとその動向はどうやって測定するんでしょという事で、つまり鉛筆舐め舐めですね与党の皆さん。

『何人かの委員は、物価情勢を総合的に判断するうえでは、生鮮食品を除く消費者物価だけでなく様々な指標を丹念に点検していくことが大切であると述べた。』

これは石田審議委員や佐藤審議委員(良く考えたらお二方とも元は住友銀行ですな^^)が強調している論点であって、今回この話でましたかそうですかという所ですな、うんうん。

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2014/08/12

○決定会合レビュー:金融経済月報を鑑賞の巻(今回は前回比較の他におまけつき)

http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2014/gp1408.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2014/gp1407.pdf(前回)

まずは前回比較をば。

・現状判断部分は声明文と同様です

というか現状判断部分は声明文と同じ文章なので同様なの当たり前なのですが。

『わが国の景気は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動がみられているが、基調的には緩やかな回復を続けている。』(今回)
『わが国の景気は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動がみられているが、基調的には緩やかな回復を続けている。』(前回)


『海外経済は、一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復している。輸出は弱めの動きとなっている。設備投資は、企業収益が改善するなかで、緩やかに増加している。公共投資は高水準で横ばい圏内の動きとなっている。雇用・所得環境が着実に改善するもとで、個人消費や住宅投資は、基調的に底堅く推移しており、全体としてみれば駆け込み需要の反動の影響も徐々に和らぎつつある。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は、足もとでは弱めの動きとなっているが、基調としては緩やかな増加を続けている。』(今回)

『海外経済は、一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復している。輸出は、このところ横ばい圏内の動きとなっている。設備投資は、企業収益が改善するなかで、緩やかに増加している。公共投資は高水準で横ばい圏内の動きとなっている。個人消費や住宅投資は、このところ駆け込み需要の反動がみられているが、基調的には、雇用・所得環境が改善するもとで底堅く推移している。鉱工業生産は、振れを伴いつつも、基調としては緩やかな増加を続けている。企業の業況感は、駆け込み需要の反動の影響がみられているが、総じて良好な水準を維持している。』(前回)

声明文と同様なので手抜き攻撃ですが、輸出、生産の現状判断が下がっていまして、雇用所得環境と個人消費および住宅投資の表現を強めています。


・先行きは輸出を下げていますよ!!!

で、先行き。

『先行きのわが国経済は、緩やかな回復基調を続け、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響も次第に和らいでいくとみられる。』(今回)
『先行きのわが国経済は、緩やかな回復基調を続け、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響も次第に和らいでいくとみられる。』(前回)

という基調判断部分は声明文の通りで変化はありませんが、その内訳には変化が。

『輸出は、海外経済の回復などを背景に、緩やかな増加に向かっていくと考えられる。』(今回)
『輸出は、海外経済の回復などを背景に、緩やかに増加していくと考えられる。』(前回)

アタクシ基本的にこの手の差分チェックを人力でする人なのですが、文章のニュアンスなどを読みつつもあとチェックするのは字数でして(^^)、文言の位置がずれる→字数が違う→変化がある!とピクピク反応するのですが、こちらの差分は字数を見て気が付くの巻という状態でした(笑)。

この「緩やかに増加していく」→「緩やかな増加に向かっていく」という変化が何ともこう味わいがある訳でして、「緩やかな」というヘッジ文言を入れつつも言い切り方になっていたのが、今回「増加に向かっていく」と更にヘッジ文言が入ってきているという判断引き下げですな。

ちなみにニュアンスを確認する為に英文を比較するとこうなります。

http://www.boj.or.jp/en/mopo/gp_2014/gp1408a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/en/mopo/gp_2014/gp1407a.pdf(前回)

『Exports are expected to head for a moderate increase mainly against the background of the recovery in overseas economies.』(今回英文)
『Exports are expected to increase moderately mainly against the background of the recovery in overseas economies.』(前回の英文)

日本語のまんまという感じですな(^^)。

でまあ輸出が下がっている分の帳尻は同様に雇用所得と消費や住宅になります。

『国内需要については、公共投資は、高水準で横ばい圏内の動きを続けるとみられる。設備投資は、企業収益が改善傾向を続けるなかで、緩やかな増加基調をたどると予想される。』(今回)
『国内需要については、公共投資は、高水準で横ばい圏内の動きを続けるとみられる。設備投資は、企業収益が改善傾向を続けるなかで、緩やかな増加基調をたどると予想される。』(前回)

ということでここまでは同じ。


『雇用・所得環境の着実な改善が続くもとで、個人消費や住宅投資は引き続き底堅く推移し、駆け込み需要の反動の影響もさらに和らいでいくとみられる。』(今回)
『雇用・所得環境の改善が続くもとで、個人消費や住宅投資は引き続き底堅く推移し、駆け込み需要の反動の影響も次第に和らいでいくとみられる。』(前回)

てな訳でこちらでも「着実な改善」とか駆け込みの反動を「さらに」和らぐとか、先行き見通しの輸出の下げ部分を帳尻合わせに来ております。

『以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は緩やかな増加基調をたどると考えられる。』(今回)
『以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は緩やかな増加基調をたどると考えられる。』(前回)

なお、上記のように生産には変化がありませんので下がっているのは輸出だけです。


・リスク要因以下は変化なし

基本声明文と同じなので引用だけ。

『この間、リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(今回)
『この間、リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(前回)

変化なしですな。

『物価の現状について、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、国内企業物価は、3か月前比で緩やかに上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、1%台前半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(今回)

『物価の現状について、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、国内企業物価は、3か月前比で緩やかに上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、1%台前半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(前回)

これまた変化なし。

『物価の先行きについて、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、国内企業物価は、当面、緩やかな上昇を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、暫くの間、1%台前半で推移するとみられる。』(今回)
『物価の先行きについて、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、国内企業物価は、当面、緩やかな上昇を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、暫くの間、1%台前半で推移するとみられる。』(前回)

ところでいるまで「暫くの間」なのでしょうかという話については昨日も悪態申し上げた通りでございます。んでもってその先は金融環境ですが特にインプリケーションも無いので割愛します。


・たまには本文を鑑賞

本文3ページ(ファイルの5枚目)以降に輸出の話があるのですが、こちらを鑑賞すると中々アレ。

『実質輸出は、弱めの動きとなっている(図表6(1)、7)。』という所の先の方からね。

『輸出が新年度入り後も勢いを欠いている背景としては、ASEAN諸国の一部などわが国との関係が深い新興国経済のもたつきが挙げられる。』

ほほう。

『また、駆け込み需要に伴う国内向け出荷優先の動きは概ね収束したとみられるが、寒波等の影響を受けた1〜3月の米国経済の減速が予想以上に大きかったことや、本年にかけて自動車メーカーを中心に海外生産を拡大する動きが相次いだことが、ラグを伴いつつ、輸出の下押し要因として作用している。』

ふーん(棒)。

で、地域別で一番の注目は米国ですが・・・・・・・・

『米国向けは、1〜3月に前期比で小幅増加したあと、4〜6月は幾分減少した。米国景気の緩やかな回復や為替相場動向を踏まえると、基調的には緩やかな増加傾向にあると考えられるが、前述した寒波の影響や現地生産拡大の動きなどが、自動車関連を中心に、下押し要因として作用しているとみられる。』

はあそうですか(棒)という所ですが、この「減少したのに基調的には緩やかな増加」という表現は何というかもうねという表現で、日銀文学というよりは最早大本営発表文学を思わせる(銃声)。

でまあ財別の話もあるので当然自動車に注目するのですが・・・・・・・・・

『財別にみると(図表7(2))、自動車関連は、1〜3月にかけて減少したあと、4〜6月も横ばいにとどまっている。米国の自動車販売が2006 年以来の高水準となっていることなどを踏まえると、基調的には緩やかながらも増加傾向を維持していると考えられるが、一部新興国の弱さや米国の寒波、現地生産の拡大など、前述した諸要因がマイナスに作用しているとみられる。』

まあ米国向けといえば自動車なので同じ表現がここにもキタコレですが、米国の自動車販売が高水準なのにジャパンの輸出が横ばいにとどまっているというのに「僕の輸出がこんなに伸びない訳がない」ということで基調ながら増加傾向を維持とかどう見ても大本営発表です本当にありがとうございました。


でまあ先行きの輸出については本文6ページ辺りになるのですが。

『先行きの海外経済は、先進国を中心に、緩やかに回復していくとみられる。また、上記のような為替相場の動きも、引き続き輸出の押し上げに作用していくと予想される。』

という説明になっているのですが、為替円安になっても輸出伸びていないと思うのですけどという所ですが、その後は地域別の話をしていまして、その次に関連してということで情報関連分野の話が出てくるのですが、肝心の米国向け自動車に関しての先行きの話が・・・・・・・

『この間、自動車を中心とした海外生産拡大の影響は、当面、輸出の下押し要因として残るとみられる。』

の一言で片づけていまして、木内審議委員が指摘する「結局の所全然輸出伸びて無いじゃん」な話については華麗にスルーというのが実に味わいがあるというものです。

ということで、折角輸出の部分が話題になっていたので本文の方の鑑賞結果もおまけということですが、何ともこう大本営発表なテイストを漂わせる表現に味わいがあるという所ですね!!!!!!

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2014/08/11

○MPMレビュー:声明文は輸出と生産をを下げるが微妙に上げる項目ありとな

声明文である。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/k140808a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/k140715a.pdf(前回)

・現状判断:輸出と生産を下げて雇用と個人消費を微妙に上げるとな

『わが国の景気は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動がみられているが、基調的には緩やかな回復を続けている。』(今回)
『わが国の景気は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動がみられているが、基調的には緩やかな回復を続けている。』(前回)

という総括判断には変化ありません。

『海外経済は、一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復している。輸出は弱めの動きとなっている。』(今回)
『海外経済は、一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復している。輸出は、このところ横ばい圏内の動きとなっている。』(前回)

ということで輸出の判断下げているのですが、それはそれとしまして海外経済に関しては「回復している」という判断が継続している訳で、海外経済が回復しているのに輸出が弱めとはこらまたどういう事ですねんという辺りは月報の中で何か書いてあるかどうか確認したいですね!!!!

『設備投資は、企業収益が改善するなかで、緩やかに増加している。公共投資は高水準で横ばい圏内の動きとなっている。』(今回)
『設備投資は、企業収益が改善するなかで、緩やかに増加している。公共投資は高水準で横ばい圏内の動きとなっている。』(前回)

設備投資と公共投資は同じです。

『雇用・所得環境が着実に改善するもとで、個人消費や住宅投資は、基調的に底堅く推移しており、全体としてみれば駆け込み需要の反動の影響も徐々に和らぎつつある。』(今回)
『個人消費や住宅投資は、このところ駆け込み需要の反動がみられているが、基調的には、雇用・所得環境が改善するもとで底堅く推移している。』(前回)

今回は雇用所得環境に関して「着実に」改善と改善の表現を強くしたのと、個人消費や住宅投資に関する表現も「全体として見れば」とか微妙にヘッジを入れながらも駆け込み需要の反動の影響が徐々に和らぎすつあるそうですよ先生!!

『以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は、足もとでは弱めの動きとなっているが、基調としては緩やかな増加を続けている。』(今回)
『鉱工業生産は、振れを伴いつつも、基調としては緩やかな増加を続けている。企業の業況感は、駆け込み需要の反動の影響がみられているが、総じて良好な水準を維持している。』(前回)

生産は今回「足もとでは弱め」となっていますが、基調としては緩やかな増加という判断を継続という良く良く考えたらナンジャソラという感じで、これまた輸出の所と同様に怪しげな説明となっていますなあという感じです。

『この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、1%台前半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(今回)

『この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、1%台前半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(前回)

つーことで金融環境とか物価の話は同じです。


・先行き見通しは同じ

『先行きのわが国経済については、緩やかな回復基調を続け、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響も次第に和らいでいくとみられる。消費者物価の前年比は、暫くの間、1%台前半で推移するとみられる。』(今回)
『先行きのわが国経済については、緩やかな回復基調を続け、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響も次第に和らいでいくとみられる。消費者物価の前年比は、暫くの間、1%台前半で推移するとみられる。』(前回)

でまあ毎度なのですが、物価安定目標に対する水準にまだ届いていないという状況の中で物価の見通しの「暫くの間」の表現が変わらないというのはつまり物価安定目標達成の時期が後ずれする事になるのですけれども置物副総裁首洗ってますか????


・リスク要因も同じ

展望レポートの中間レビューは今回ありませんので飛ばしましてリスク要因。

『リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(今回)
『リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(前回)


・所期の効果を発揮しているとな

毎度の最終パラグラフ。

『「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う(注)。』(今回)

『「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う(注)。』(前回)

ということでこちらも堂々の同じ表現になっています。ついでに木内さんの提案も毎度同じなのですが、「2年間程度の集中対応措置と位置付ける」というのは残り半年とかの状況になっているので表現を変えた方が宜しいのではないでしょうか。


・ということで感想

えーっとですな、この後の会見ネタ(詳しくは本日テキスト出てから)にも通じるのですが、今回の声明文の表現は「輸出は下げるのに海外経済は回復継続のまま」とか「生産は下げるのに基調的な云々は同じ」というような微妙に往生際の悪い下方修正部分に加え、バランスを取っているのか知らんが消費税増税の反動に関する説明を(ホンマカイナという感じもするのですが)入れてみたり、雇用所得環境の表現を強くしてみたりという事で、何というか言い訳っぽいテイストに仕上がっておりますな。

でまあ今回はこのような変化が起きているのですが、何ともまあ中途半端というかな変化だなあと思う所でありまして、ヘーキヘーキと突っぱねる(達観すれば輸出だって横ばい圏内で突っ張って表現するという手はあったと思う)という手もあるような気がする所を素直(かどうか知らんが)に下げてくる辺りがほうほうそうですかという所なのですが、一方で国内需要に関する表現を強くしてみたりという微妙な往生際の悪さもあって、出来上がりのテイストが実にこう微妙になっているようにアタクシには思えますがどうでしょうかね。

ということで、まあ普通に日銀の行動パターンを考えたら10月の展望レポートは突っ張ってくると思われるのですが、経済のデータを素直に見てるとうーむという感じになっているのではなかろうか、という風に今回の表現変化(と会見)を見て思ったのは考え過ぎでしょうかねえ。

従いまして、足元で「追加緩和なし」に「転んでいる」方というのは正直何を考えているのか判らんという所でして、あたくしなんぞだいぶ前から総裁講演やら展望レポートの表現から「これはギリギリまで突っ張り続ける」という想定をしていた訳ですが、展望レポートの7月中間レビューが終わってさて10月展望レポートに向けて経済物価情勢の点検を開始、しかも消費増税以降のトレンドはどうよという時期に経済指標は微妙だわとなっている所に来て、今回の声明文が微妙なテイストな上に総裁会見が更に微妙なテイストになっていて、基本的には10月は突っ張るし下手したら年末も突っ張るんじゃないのと思っていましたが、本当に突っ張り切れるのかについては少なくとも年末はマズーな感じになりつつあるかもというイメージになったんですけど。

もちろん会見での基本的な説明部分は従来通りなのでそこを見ておりますと特段強気姿勢に変化なしという事になるのでしょうから、あたくしの感想もちょっと先走りな所はあるのですが、まあ今回の声明文と総裁会見から受ける印象は「ちょっと苦しくなってきましたな」という感じをあたくし的に受けるものでありまして、まあそういう事なんじゃないのとゆー所っす。


○総裁会見ですが・・・・・・・・(予告編)

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-N9ZC6N6K50XV01.html
日銀総裁:目標達成にリスク生じれば当然、金融政策の調整行う
更新日時: 2014/08/08 18:18 JST

『8月8日(ブルームバーグ):日本銀行の黒田東彦総裁は8日午後の定例記者会見で、「あくまで日銀の政策目標の第一は物価の安定だ」としながらも、物価に重大な影響を与える要因に動きがあり、目標達成にリスクが生じれば、「当然金融政策の調整は行う」と述べ、成長率が今後大幅に下振れた場合などに追加緩和を行う可能性を示唆した。』 (上記URLより)

会見の中継を聞いた限り下振れしたら追加緩和という質問してたのがブルームバーグの日高さんだったと思われますので何というヘッドラインという感じですが、総裁の説明は「リスク要因の大きなものが顕在化した場合」みたいな説明だったのでまあ何ですなという感じですし、大体からしてもうその手の表現はさすがに市場の皆様も見慣れているので特に反応もせずという感じでしたけどね。


・・・・・・・・・でまあそれはそれとしまして今回の総裁会見も一応通して聴いてみた訳ですが、今回の会見での一番の印象は「説明がアホのように長い」という所です。いやまあ具体的に前回と比較して時間を見るとかそういう事していませんのであくまでも印象論になってしまうのですが、一つの質問に対して黒田さんが答えるのがとにかくああでもないこうでもないとか、そもそもその点につきましてはこうでして、みたいな感じの説明が続いてとにかく冗長という印象を与えましたです。

ということで、ああでもないこうでも無いとグダグダと話をこねくり回す、というのは「質問の筋を外して都合の良い話をする」とか「そもそもその部分を説明したくない」などというような下心があるのでは無いかという印象を与える(オマエモナーという声が聞こえたような気がする・・・・・^^)訳でして、本当の本当に自信満々死角なしという状態でしたら言い切り方で(キリッ)というのが語尾に来るような話っぷりになるのですよね。

そういう意味では総裁会見実況放送が始まって「こんなに自信満々なのか」と市場の皆様もビックリという展開だったついこの前の会見と比較致しますと、今回の説明はまあグダグダ感が漂う物件に仕上がっておりまして、さきほどの声明文での微妙な往生際の悪さと相俟って「あれれ??」感を醸し出すテイストになっております、と思ったのですがどうですかな。

ということで、まあ会見要旨は今日アップされる訳ですが、要旨は要旨ですので、質疑応答の趣旨を損なわない程度に答えの方を簡潔にまとめた方がグダグダ感を与えずに済むと思いますので事務方におかれましては会見要旨まとめの力が問われますなあという所で(ニヤニヤ)。


○しらっと機構局から銀行決算の概要が

http://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2014/ron140808a.htm/(要旨)
2013年度銀行決算の概要

全文はこちら(表題含めて26枚カラー刷である)
http://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2014/data/ron140808a.pdf(全文)
リスク管理と金融機関経営に関する調査論文
2013年度銀行決算の概要

ということで、こちらはFSRとかの一環で出ております銀行決算レビューでして、カラーになっておりますので色刷り印刷なんぞをして目の玉ひん剥いて読むのが吉と思われます。内容的にはFSRでの分析と同じような物の内容限定バージョンという感じになっておりまして、基本的にはこの内容がそのままFSRに反映されるという物ですのでFSR並みに確認をするのが宜しいかと。

でまあ中を色々とネタにすると面白そうなのですが月曜でもありますので(??)要旨の所をば引用すつので上記の「要旨」のURLから(ちなみに本文の1ページ(表紙の次なのでファイルの2枚目)にも同じ要旨の記載があります)。

『2013年度の当期純利益は、大手行で前年比約5%、地域銀行で約3割の増益となった。地域銀行では、2005年度の過去最高益を上回った。』

『こうした増益の背景には、国内景気が緩やかな回復を続ける中、資産内容の改善に伴い信用コストが大幅に低下したことに加え、幅広い項目で株価の上昇が利益の押し上げ要因として寄与したことがある。』

ほう。

『すなわち、信用コストについては、不良債権の新規発生の減少や引当率の低下等から、大手行で戻入益が発生したほか、地域銀行でも大きく低下し、増益に寄与した。また、株価の上昇は、(1)償却損(減損)の減少と売却益の増加に伴う株式関係損益の改善に加えて、(2)保有投信の解約益等の増加(資金利益の増加)、(3)投信販売手数料の増加(非資金利益の増加)を通じて利益を押し上げた。』

なるほど。

『この間、国内の貸出利鞘は縮小を続けた。』

キタコレ。

『このため、貸出残高は増加したものの、国内業務部門における基礎的な収益力の低下傾向には歯止めがかかっていない。特に地域銀行では、国際業務部門の貸出増加が増益に貢献している大手行とは異なり、こうした傾向が強い。』

ということで要旨が終了していますが、この前のFSRとか(暫く前からその傾向があるのですが)相変わらず「国内業務部門における基礎的な収益力の低下傾向」の話があって、更にその影響が大きいのが地域金融機関でありますという指摘になっていまして、国内業務部分の基礎的な収益力の低下傾向がどうのこうので地域金融機関の皆様どないかしてください的な締め方を言外に示す要旨(本文は淡々と状況を記述しているだけなんですけどね)になっているのが毎度のテイストであります。

つーてもそもそもQQEとか貸出支援措置とか言って国内業務の基礎的収益力が低下するような事を実施してるの誰ですねんとか、それ以前の問題として物価は上がらん成長力は弱いという状況を長期化させて預貸収益が伸びない構造にしているのはどこの誰ですねんとか、プルーデンスウィングとしては確かにこの指摘は全く持って仰せのとおりではあるのですが、そもそもマネタリーポリシーウィングの方が(銃声)。

つーかこの話って地域金融機関がどうのこうのという話では無くて「そもそも論としてもはや国内で稼げなくなっている」という文脈で読みますと、円安になっても輸出が伸びないという製造業のアチャーな話とオーバーラップして大変に残念な香りが漂ってくるんですけどねえ・・・・・・・・orzorz

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2014/08/06

○そういえば今週MPMだが金融経済月報ネタを忘却していたので慌てて帳尻

今月というか最早先月の月報ですすいませんすいません。

http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2014/gp1407.pdf(7月)
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2014/gp1406.pdf(6月)

例によって【概要】だけネタにするのですが(大汗)。

・現状判断部分は声明文と同様ですけどね

『わが国の景気は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動がみられているが、基調的には緩やかな回復を続けている。』(7月)
『わが国の景気は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動がみられているが、基調的には緩やかな回復を続けている。』(6月)

ということで基調的には緩やかな回復。

『海外経済は、一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復している。輸出は、このところ横ばい圏内の動きとなっている。』(7月)
『海外経済は、一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復している。輸出は、このところ横ばい圏内の動きとなっている。』(6月)

海外の判断は毎度なのですが、木内審議委員に言わせると輸出に関しては「このところ」じゃなくて「リーマンショック以降」になりますね!!!!

『設備投資は、企業収益が改善するなかで、緩やかに増加している。公共投資は高水準で横ばい圏内の動きとなっている。個人消費や住宅投資は、このところ駆け込み需要の反動がみられているが、基調的には、雇用・所得環境が改善するもとで底堅く推移している。鉱工業生産は、振れを伴いつつも、基調としては緩やかな増加を続けている。企業の業況感は、駆け込み需要の反動の影響がみられているが、総じて良好な水準を維持している。』(7月)

『設備投資は、企業収益が改善するなかで、緩やかに増加している。公共投資は高水準で横ばい圏内の動きとなっている。個人消費や住宅投資は、このところ駆け込み需要の反動がみられているが、基調的には、雇用・所得環境が改善するもとで底堅く推移している。鉱工業生産は、駆け込み需要の反動の影響を受けつつも、基調としては緩やかな増加を続けている。』(6月)

業況感に関しては短観を受けた四半期ものですのでそこはパスしまして比較しますと、鉱工業生産に関しての現状判断が「駆け込み需要の反動を受けつつも」から「振れを伴いつつも」となっていまして、これはつまり「駆け込み需要の反動から立ち直っている」という事を意味する言い方になりますので判断を若干強めていますな。


・先行き見通し

『先行きのわが国経済は、緩やかな回復基調を続け、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響も次第に和らいでいくとみられる。』(7月)
『先行きのわが国経済は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかな回復を続けていくとみられる。』(6月)

でまあこれも声明文でもありましたが、上記の続きで「駆け込み需要の反動が弱くなって来ましたぞな」という話になっておりますな。

『輸出は、海外経済の回復などを背景に、緩やかに増加していくと考えられる。国内需要については、公共投資は、高水準で横ばい圏内の動きを続けるとみられる。設備投資は、企業収益が改善傾向を続けるなかで、緩やかな増加基調をたどると予想される。』(7月)

『輸出は、海外経済の回復などを背景に、緩やかに増加していくと考えられる。国内需要については、公共投資は、高水準で横ばい圏内の動きを続けるとみられる。設備投資は、企業収益が改善傾向を続けるなかで、緩やかな増加基調をたどると予想される。』(6月)

輸出はいつになったら緩やかに増加するんでしょうとかいうツッコミはさておきまして、公共投資、設備投資の見通しも含めて変更はありません。

『雇用・所得環境の改善が続くもとで、個人消費や住宅投資は引き続き底堅く推移し、駆け込み需要の反動の影響も次第に和らいでいくとみられる。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は緩やかな増加基調をたどると考えられる。』(7月)
『個人消費や住宅投資は、駆け込み需要の反動の影響を受けつつも、基調的には、雇用・所得環境の改善などに支えられて、底堅く推移するとみられる。こうしたもとで、鉱工業生産は緩やかな増加基調をたどると考えられる。』(6月)

ということで、雇用所得環境に関しては「改善が続く」と若干言い方を強めにしておりまして、消費や住宅投資に関しては駆け込み需要の反動の影響が和らいでくるという先行き見通しの総括判断部分にある話をこちらで持ち出しておりますので、まあ7月月報のテーマは「消費税増税の反動減が緩和されてきました!」という事ですな。


・リスク認識は音が飛んでるレコードの如くの繰り返しである

って円盤のレコードとかソノシートとか言われても若人は判らんですかそうですか。

『この間、リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(7月)
『この間、リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(6月)

しかし毎度同じですの。


・物価に関して

『物価の現状について、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、国内企業物価は、3か月前比で緩やかに上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、1%台前半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(7月)

『物価の現状について、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、国内企業物価は、3か月前比で緩やかに上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、1%台前半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(6月)

同じですなあ。

『物価の先行きについて、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、国内企業物価は、当面、緩やかな上昇を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、暫くの間、1%台前半で推移するとみられる。』(7月)
『物価の先行きについて、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、国内企業物価は、当面、緩やかな上昇を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、暫くの間、1%台前半で推移するとみられる。』(6月)

で、先行きの見通しで「暫くの間」というのは声明文にもございますが、1月から延々と「暫くの間」であって、確かに1月決定会合後の総裁会見では「暫くの間」について「半年程度」という定義を仰せだった筈ですのでどう見ても物価の先行きの見通しで言いますと2%の目標達成時期が後ずれしているようにしか見えませんなあという話は既に5回位申し上げておりますのでしつこくは追求しませんけどね!!!!!

つーかですな、まあ展望レポートとの先行き見通しの棲み分けの問題があるのは承知しておりますけれども、そもそも金融政策に関しては(危機対応みたいな場合は別ですが)目先の動きに対して一々反応するのではなく、もう少し先の状況を展望して運営をするというのが本来の建付けでありますので、金融政策運営に関する声明文とかこちらの月報とかで、物価に関してそんなに目先の話をする必要があるのかねという風にも思えるのですよね。

つまり「暫くの間」の話では無くて、基調として物価安定目標へのパスを外していないのかという話を(特に金融政策決定の声明文では)言及した方がヨロシという事で(まあそこで展望レポートとの棲み分け問題がどうのこうのというのはあるのですが)、目先の見通しの話をするから会見でもそうですし何とかストの方々もそうですし、足元で1%割るか割らないかでひと騒動みたいな本筋から外れた話で盛り上がってしまう訳でして、まあ丁寧に説明したいのは判るけど足元の話をそんなに触れる必要あるのかね(特に物価に関しては)と思うのですけどね。

なお、金融環境の所は毎度同じの『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』なので以下の引用はパスします。

#超昔のネタになってしまいましてどうもすいません

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2014/07/29

○こんなペーパーがありました(日銀レビュー)

最近の外国為替市場の構造変化
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2014/rev14j05.htm/(要旨)
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2014/data/rev14j05.pdf(本文)

でまあ要旨の方では・・・・・・・

『最近の外国為替市場では、市場参加者の構成や取引手法が変化しており、その影響は、各国市場の取引高やレート形成のプロセスにも及んでいる。まず、ヘッジファンドのプレゼンスの高まりから、その拠点が多いロンドン、ニューヨーク市場で取引高の増加が顕著である。また、電子取引の利用拡大とともに、大手金融機関への取引集中と、ディーラー間市場のシェア低下も進行している。東京市場は、ヘッジファンドの取引シェアが低く、世界的にドル/円の取引高が増加するもとでも、東京市場の取引高の伸びは、ロンドン市場やニューヨーク市場を下回っている。外国為替市場の動向を把握する上では、これらの市場構造の変化が市場機能などに及ぼす影響を把握していくことが、一段と重要になっている。』(上記要旨から)

とあるのですが、その影響がどうのこうのの方が面白いので本文の5ページ以降。

『インターバンク市場のシェア低下の影響』という小見出しの所から。

『最後に、前述のような外為市場におけるインターバンク市場のシェア低下の、市場機能面でのインプリケーションについて考察する。』

ということで説明がありまして、インターバンクではなくて個別大手銀行のプラットフォームの中で取引が集約されるようになっています(株で言えば取引所じゃなくてPTSに集中するみたいなもんですな)という話がありましてその結論部分。

『このように外為市場では、インターバンク市場のシェア低下と一部の大規模ディーラーへの取引の集中という傾向が同時並行的に進んでいる。この間、ディーラーが提供する電子取引プラットフォームの性能は向上を続けており、取引の効率化を促す効果が期待されている一方、一部の市場関係者からは、大規模ディーラーとの取引を行っていない先にとっては、電子取引プラットフォーム内で形成されるレートや取引高に関する情報が得られにくくなり、市場全体の動向の把握が難しくなる可能性も指摘されている15。』

そらまあ市場集中しなくなったらそうなりますねという話で、かつての日本株市場における色々な手法というのはそういう意味では小口投資家に対する市場アクセスの公平性という意味では結構重要な論点を提供するものだったと思うのですけれども、何せ大口売買者大歓迎の東証クオリティなのでアレというような話はこちらのレビューの趣旨からずれるので割愛します(^^)。

『おわりに』の所でもその点に触れていまして・・・・・・

『また、取引手法の面では、電子取引の利用が拡大するもとで、マーケット・メイク機能の電子化や、一部大規模ディーラーへの取引の集中が進んでいる。このような、情報技術革新を反映する構造変化は、取引の効率化につながり得るものである一方で、高頻度取引の増加などとも相まって、外為市場に関する情報の偏在につながる可能性も指摘されている。』

ということですが、先ほどのように情報の偏在とかいう話になりますと(もうちょっと詳しい状況に関しては引用中の途中割愛した部分にありますので本文6ページの左半分の中段辺りを読んでちょ)、確かに個別取引を個々に見た場合には「効率化」であるかも知れないのですが、市場全体として見た場合の「価格形成の効率化」に対してどうなのよ、という辺りについては一考が必要なのではないかとも思いますけどね。


というような事をちと思いましたのでメモを置いておきました。内容自体は(債券市場と全然関係ないですけれども)まあ読み物として他市場の人が見ると面白いと思いますが外為市場の方の見解をお伺いしたいですな。

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2014/07/22

○6月決定会合議事要旨から:委員会の経済情勢に関する部分を少々鑑賞

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2014/g140613.pdf

ということで『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』から。

・長期金利低下に関して

『国際金融資本市場について、委員は、世界経済の回復基調が明確化しているにもかかわらず、先進国の長期金利は低位で安定しており、そうしたもとで、株価は、ボラティリティの低下を伴いつつ上昇するなど、非常に堅調に推移しているとの認識で一致した。委員は、新興国の市場も全体として落ち着いているとの見方を共有した。そのうえで、委員は、ウクライナやイラク情勢などを背景に神経質な動きもみられており、地政学リスクには引き続き注意が必要であるとの認識で一致した。』

とまあここまでは良いとしまして。

『最近の世界的な長期金利の低下について、何人かの委員は、緩和的な金融政策の長期化観測などが背景にあるとみられるが、市場参加者が中長期的な成長率見通しの下振れを意識している可能性も考えられると指摘した。』

何人かの委員が成長率見通し下振れの可能性指摘とな。

『複数の委員は、グローバルな長期金利の低下が、投資家のリスクテイク姿勢に与える影響について留意する必要があると述べた。』

一応第二の柱っぽいコメントがあるとなというのもへーと思いました。


・国内景気の部分についての主要項目点検部分に味わいがあるのだ

海外経済の所はスルーしまして国内景気の部分を。

『わが国の景気について、委員は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動がみられているが、生産から所得、支出へという前向きの循環メカニズムが働き続ける中で、基調的には緩やかな回復を続けているとの見方を共有した。景気の先行きについて、委員は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかな回復を続けていくとの見方で一致した。』

とまあそういう基本的な部分はそうですか(棒読み)という所ですが需要項目別の話に味わいが。

まずは輸出。

『輸出について、委員は、横ばい圏内の動きになっているが、先行き海外経済の回復などを背景に、緩やかに増加していくとの見方で一致した。』

というのは良いとしまして。

『委員は、輸出が勢いを欠く背景について議論を行った。』

つーことで輸出に関してはオオカミ少年状態でいつまで経っても伸びに勢いが欠ける状態ですからにゃあ。

『複数の委員は、わが国企業の競争力低下や海外への生産拠点の移管などの構造的な要因が思った以上に影響している可能性を指摘した。』

キタコレ!

『何人かの委員は、基本的には、わが国経済との結び付きが強いASEANなどの新興国経済のもたつきの影響が大きいことを強調した。この点に加え、複数の委員は、駆け込み需要への対応に伴う国内出荷優先の動きなどの一時的要因が、年度初の段階では減衰しつつもなお下押ししていることも影響しているとの見方を示した。海外への生産拠点の移管について、何人かの委員は、既往の為替円安を踏まえると、今後さらに加速するとは考え難く、実際、今年度の企業の設備投資計画は国内投資の比重を高める予定であるとの調査結果もみられていると指摘した。』

ということで「いやそうではありません」という話がその後ここぞとばかりに出ているのですが、まあこれって多分文章のニュアンスから見ると「構造要因が効いて実は輸出ってそんなに伸びないのとちゃいますか」というツッコミの方がそこそこ声が大きい(ただし執行部系ではない)という事で、そこそこ見解に関しての幅はあるのではないかと想像されるのですがどうでしょうか。

と申しますのは、構造要因が云々という人が少数派でほぼスルー状態だったら構造要因についての指摘部分って文章構成上最後の方におまけのような形で付くというのが毎度のパターンだと思われまして、今回の書き方はそういう書き方では無さそうなので。


・設備投資に関してですが・・・・・・・・・

『設備投資について、委員は、企業収益が改善する中で、緩やかに増加しており、先行きも、緩やかな増加基調を辿るとの見方を共有した。』

へえへえ。

『委員は、1〜3月の法人企業統計で製造業大企業の設備投資が8四半期振りにプラスに転じたことについて、これまで出遅れていた製造業部門に動きがみられ始めているとの認識を共有した。』

ほうほう。

『複数の委員は、輸出が勢いを取り戻していない中で、ペント・アップ需要や省力化投資が設備投資を牽引しており、この点、今回の景気回復は、輸出が設備投資を誘発するこれまでのパターンとは異なる姿となる可能性があるとの見方を示した。』

まあ何ですな、これ従来の輸出→生産→設備投資という形がそもそも輸出が伸びないので描けないという状況で設備が出るとなるとヴィンテージの更新とか省力化とかいう話になると思う(まあヴィンテージに関してはそら出る罠とは思いますが)のですよね。でまあこの絵を用意しておくと輸出が伸びなくても設備が出ますという見通しを堂々と出せるというお話だと思うのですよ。

でもね、ヴィンテージの更新と省力化で設備が出るというのはそらまあ出るかも知れませんけど、それで出る設備って所詮はワンタイムエフェクトでしょと思う訳でして、それで出た設備投資っていうのはその先の生産や販売の拡大には直接つながる話じゃないですから、そらまあ出ないよりは出た方が良いのですが別に先行きの持続的な前向きメカニズムにはならんじゃろと思うのですよね。

『一人の委員は、企業は、これまで蓄積してきた内部留保をどのように有効活用するかを市場に示す必要が強まっており、そうしたもとで、設備投資への取り組みが一層前向きになることが期待されると述べた。』

なんか仰っている事が良くわかりませんが設備投資しなくても単に株主還元すれば良いだけの事では???


・消費の説明はまあ一部微妙な話が

続いて所得の話があるのですが、まあこれは順当なのでパスしてその後の消費。

『個人消費について、委員は、このところ駆け込み需要の反動がみられているが、基調的には、雇用・所得環境が改善するもとで底堅く推移しているとの見方を共有した。』

ふむ。

『委員は、各種の統計や企業からの聞き取り調査などを踏まえると、駆け込み需要の反動減の大きさは概ね事前想定の範囲内との見方が多く聞かれており、5月以降は持ち直しの動きもみられているとの認識で一致した。もっとも、駆け込み需要の反動の大きさについて、何人かの委員は、今後公表されるデータでさらに確認していく必要があると述べた。』

この時のMPMは6月12、13日の実施でして、実際問題としては消費関連についての数字はこの後悪化している物が出てきているので、7月の展望レポート中間レビューの時にどういう評価になっているのかは見たいですな。

『この間、多くの委員が、旅行や外食などのサービス消費が底堅く推移しており、消費者マインドも持ち直してきていることを指摘した。』

ふむ。で先行きですけど。

『先行きの個人消費について、委員は、駆け込み需要の反動の影響を受けつつも、基調的には、雇用・所得環境の改善などに支えられて、底堅く推移するとの見方で一致した。』

ほうほうそれでそれで?

『そのうえで、多くの委員は、駆け込みとその反動といった短期的な振れに加えて、消費税率引き上げに伴う実質所得の減少が、やや長い目でみて消費に与える影響について注視していく必要があるとの認識を示した。このうちの一人の委員は、今後、雇用者所得の前年比プラス幅はさらに拡大すると考えられることから、消費税率引き上げに伴う実質所得の減少分を相応に埋め合わせるとの見方を示した。』

まあ何ですな、ここの部分ってやっぱり微妙な所でして、実質所得もさることながら実質可処分所得という意味では今回の各種変更に伴いまして、子育て世代の中所得層とか思いっきり実質可処分所得が落ちていまして、そういう影響ってどうなのよという風には思うのよね。まあマクロ的な話になると消費を引っ張っていて、消費税増税の反動があまり無いとかいう話になっているのが旅行とかに示されるように高齢者層とかの消費が落ちなければあまり大きな影響はないのかもしれませんけど、社会の士気の部分で影響出るんじゃネーノとかその辺は気になるのだが。

ちなみに6月中旬以降の一部消費関連指標の落ちこみですが、家計を精密に管理していない限り、まあ普通の人々が実質可処分所得が落ちている事に気がついてくるのってタイムラグがあると考えられますので、その実質可処分所得の低下がラグを持って効いてきた説をあたしゃ唱えているのですけれどもどうでしょうかね。


・物価に関して

『物価面について、委員は、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、+1%台前半となっており、先行きも、暫くの間、+1%台前半で推移するとの見方を共有した。』

『委員は、全国の4月の消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、消費税率引き上げの影響を除いたベースでみて+1.5%と3月から幾分上昇率を高めており、消費税率引き上げ以降も、物価の基調に変化はないことが確認されたとの認識を共有した。そのうえで、委員は、全国の4月の消費者物価(除く生鮮食品)の前年比はやや強めであり、東京の5月のプラス幅が縮小していることや、この先エネルギー関連の押し上げ効果が減衰することなどを踏まえると、今後は、プラス幅が幾分縮小する局面を伴いつつ、暫くの間、+1%台前半で推移するとの見方で一致した。』

ということでまあ強い話をしていますな。

『ある委員は、先行き幾つかの財・サービスで価格低下が見込まれるとの指摘に対して、個々の財・サービスの価格の変化は、相対価格の変化を表すものであり、中期的な物価動向を考える上では、需給ギャップや予想インフレ率といった、マクロ的な物価決定要因に注目すべきであると述べた。』

マクロ的な物価決定要因というのは判るのですが、需給ギャップと予想インフレ率って前者は事後的にしか判らないし推計に幅がありますし、後者はそもそも推計の方法自体が良く判らんというふわっとした概念で、これだと何を言っているのか良く判らんとしか申し上げようがない。

まあこの部分ですが、前段の前置きを勘案するとこの人は「基調的な物価動向が重要であって、細かい品目の上げ下げの話の手前の部分での説明をするのは適切ではない」という事を言おうとしている(先の方で似た話があるのでそう思った)のかなあとは思うのですがちょっとポカーンという感じでございました。まあ議事要旨になると盛大に端折っている場合がありますからね。

あと少しだけ成長力に関する話があったりするのですが、まあはあそうですかとしか申し上げようが無い指摘があるだけなのでスルーします。


・物価に関する情報発信に関して

『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』ですけど、決定事項とかその辺はまあどうでも良いのですがここはほほーという所で。

『多くの委員は、こうした金融政策運営の考え方をしっかりと情報発信していくことの重要性を改めて指摘した。また、この点に関連して、何人かの委員は、各月の消費者物価の前年比は、エネルギー価格の前年の動きなどの影響を受けて変動するので、経済・物価の基調的な動きを総合的に判断して、これを丁寧に説明していく必要があると述べた。』

ということで、先ほどの部分をそういう風に解釈したのはここを勘案しての話ですが、毎度申し上げておりますように、どうもコアCPI(精々それ以外にコアコアCPI)の説明で総裁会見とか講演とかの話って終始していますし、物価に関する話も「1%」が無駄にフレームアップされてしまうように妙に目先の話ばかりが話題になって、本来問題にすべき「2%安定的に達成」という目標達成へのパスの話が微妙にスルー気味(いやまあ説明はあるのだがそもそも説明が願望成分だし)になっておりまして、その辺の情報発信というかコミュニケーションはどうなっていますねんとか思いますけど、そもそも「物価安定目標」に関する概念が微妙に曖昧(実際の数字をヒットさせるのかフォーキャストなのか、物価の数値はピンポイントの指標を見るのか総合的に判断するのかとか)のまま走っているからこういう事になっている、というのはあると思いますけどねえ。

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2014/07/16

まあ政策継続で先行き見通しも強気のままという点では無風でしたけど・・・・・・・

○声明文比較:見通しオントラックという判断で更に表現が強くなる

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/k140715a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/k140613a.pdf(前回)

・現状判断

『わが国の景気は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動がみられているが、基調的には緩やかな回復を続けている。』(今回)
『わが国の景気は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動がみられているが、基調的には緩やかな回復を続けている。』(前回)

てな訳で総括部分は同じでして・・・・・・・・

『海外経済は、一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復している。輸出は、このところ横ばい圏内の動きとなっている。設備投資は、企業収益が改善するなかで、緩やかに増加している。公共投資は高水準で横ばい圏内の動きとなっている。個人消費や住宅投資は、このところ駆け込み需要の反動がみられているが、基調的には、雇用・所得環境が改善するもとで底堅く推移している。』(今回)

『海外経済は、一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復している。輸出は、このところ横ばい圏内の動きとなっている。設備投資は、企業収益が改善するなかで、緩やかに増加している。公共投資は高水準で横ばい圏内の動きとなっている。個人消費や住宅投資は、このところ駆け込み需要の反動がみられているが、基調的には、雇用・所得環境が改善するもとで底堅く推移している。』(前回)

とまあここまでは同じでして、違うのは生産の部分でしてここが引き上げになっています。

『鉱工業生産は、振れを伴いつつも、基調としては緩やかな増加を続けている。企業の業況感は、駆け込み需要の反動の影響がみられているが、総じて良好な水準を維持している。』(今回)
『鉱工業生産は、駆け込み需要の反動の影響を受けつつも、基調としては緩やかな増加を続けている。』(前回)

業況感云々の所は短観を受けているので入っている部分ですけれども、駆け込み需要の反動云々の部分が今回生産の所からは外しておりまして強くなっているじゃんという所です。ただまあ今申し上げましたように駆け込み需要云々を業況感の所に入れて強気一辺倒っぽく見せていませんな、うんうん。

『この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、1%台前半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(今回)

『この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、1%台前半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(前回)

つーことで金融環境と物価の話は同じですので、今回の現状判断では生産をしらっと引き上げとなっています。


・先行き見通し:強くなっていますがところで物価の見通しって・・・・・・・・

『先行きのわが国経済については、緩やかな回復基調を続け、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響も次第に和らいでいくとみられる。消費者物価の前年比は、暫くの間、1%台前半で推移するとみられる。』(今回)
『先行きのわが国経済については、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかな回復を続けていくとみられる。消費者物価の前年比は、暫くの間、1%台前半で推移するとみられる。』(前回)

ということで、今回ウヒャーというのは先行きの所で、まあ「展望レポートに示した通りのシナリオで推移」という事ではあるのですが、「駆け込みの反動が次第に和らぐ」とは大きく出やがりましたなとゆー所でありまして、6月分の経済指標では微妙に暗雲垂れこめる物も出ているように見えるのですが、どうも暗雲の方は華麗にスルーしているようで大丈夫かという気もするのですけど・・・・・・・・・・

でですな、まあそれはそれと致しまして、ここの物価の先行き見通しなのですが、「暫くの間」1%台前半で推移という見通しを声明文で出したのが今年の1月でして、この時の会見で総裁はこの「暫くの間」について以下のように説明していた訳ですな。

1月決定会合後の総裁記者会見
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2014/kk1401a.pdf

こちらの本文11ページにこのような説明がありましてですなあ・・・・・・・・・・

『1 点目の、「物価安定の目標」に向けて進む道筋です。色々な前提のもとでみると、エネルギー価格などが物価を押し上げていた部分はだんだん減衰していく一方、GDPギャップは少しずつ改善していき、インフレ期待も、少しずつ上がってきており、今後も上がっていくと想定されます。エネルギー価格による押し上げが小さくなるということと、内需を中心に、経済取引全般について需給がタイトになってきて、少しずつ幅広い品目で物価面の改善がみられるということの、両方の面があります。それがちょうど綱引きで、概ね現状程度の1%台前半という水準が、「暫くの間」――これは、半年程度だと思って頂いてよいと思いますが――、続くだろうとみています。』(1月総裁定例会見より)

1月から半年程度ですと7月になると思いますが、ではその後はどのようになるのでしょうか??

『その後は、前者の部分はなくなりますので、後者の部分だけになってきます。さらに、後者の部分についても、潜在成長率を上回る成長が続くわけですので、当然、GDPギャップがずっと改善していきます。そうした中で、物価上昇率が上がり、インフレ期待も上がっていくという形で、物価が上昇していくとみているわけです。その結果として、ここにあるような見通しができているということです。』(1月総裁定例会見より)

という話だったと記憶している訳ですが、この見通しを勘案するとそろそろ物価が上昇しだしてもおかしくはなくて、見通しにもその辺りが反映されているのかとは存じますが、声明文の方は相変わらず『暫くの間、1%台前半で推移』となっている訳で、「暫くの間」の時間軸はどうなっておられるのでしょうかと小一時間問い詰めたい所ではありますし、見通しが後ずれしてるならしてると言わないで日銀文学で華麗にスルーというのがジャパン的な侘び寂びの世界を感じさせるものです(棒読み)。


・リスク要因といつもの文言は同じですな

という事で物価の先行き見通しで「上昇」出すのはいつなんでしょうかねえという点はさて置きまして(しつこい)、以降の部分を比較しますが比較もクソも無く全文一致です。

『リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(今回)
『リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(前回)


『「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う(注)。』(今回)

『「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う(注)。』(前回)

ちなみに(注)は毎度おなじみの木内審議委員の提案ですが、提案内容の「2年間程度の集中対応措置」というのも既にQQE始まって1年以上経過しているのですから表現変えれば良いのにと思うのですけどご検討いただけませんか〜♪



○展望レポート中間レビュー:成長下げで物価が上げとな

『5.4月の「展望レポート」で示した見通しと比べると、成長率、消費者物価ともに、概ね見通しに沿って推移すると見込まれる。』(今回の声明文より)

ということで中間レビューはまあ予想通り「オントラック」でありました(それにしても再度申し上げますが経済指標が微妙に変なのも出ている筈なのに何じゃこの強さはという所ですけれども)が、声明文本文の後に出てくる(参考)の所で示される見通しは以下の通り。

大勢見通し

2014年度
実質GDP:+0.6〜+1.3<+1.0> 4月見通し+0.8〜+1.3<+1.1>
コアCPI:+1.2〜+1.5<+1.3> 4月見通し+1.0〜+1.5<+1.3>

2015年度
実質GDP:+1.2〜+1.6<+1.5> 4月見通し+1.2〜+1.5<+1.5>
コアCPI:+1.2〜+2.1<+1.9> 4月見通し+1.2〜+2.1<+1.9>

2016年度
実質GDP:+1.0〜+1.5<+1.3> 4月見通し+1.0〜+1.5<+1.3>
コアCPI:+1.3〜+2.3<+2.1> 4月見通し+1.3〜+2.3<+2.1>

という事で2015年度以降の大勢見通しは同じなのですが、2014年度に関しては実質GDPの見通しが下がっていて、コアCPIの見通しはレンジの下が切り上がっておりまして、えーっとすいませんこれって国民厚生的に誰得なんでしょうかという話だと思うのですが、

全員見通しを見ると更に分かりやすい訳で。

2014年度
実質GDP:+0.5〜+1.3 4月見通し+0.5〜+1.4
コアCPI:+1.0〜+1.7 4月見通し+0.9〜+1.7

2015年度
実質GDP:+0.9〜+1.7 4月見通し+1.0〜+1.8
コアCPI:+1.0〜+2.1 4月見通し+0.8〜+2.1

2016年度
実質GDP:+0.7〜+1.6 4月見通し+0.8〜+1.6
コアCPI:+0.9〜+2.3 4月見通し+0.7〜+2.3

ということで、物価と成長のバランスという観点から考えますと、今回の展望レポート中間レビューで示されている見通しというのは(これは政策委員個人個人の見通しを単純に集計したものなので合算して一つのビューみたいな捉え方をするなと言われるところであることは承知の上で申し上げますと)、全体として見た場合に成長見通しが下がり気味になっており、物価見通しは上がり気味になっているという結果になっておりまして、それは経済政策を担う部門が本来目指すべき姿なのかというような話って聞かれませんよねえという風には思います。

勿論今申し上げましたように、これは集計物ですから物価見通しを上げた人と成長見通しを下げた人というのが同一人物ではない(というか同一だと整合性としてどうよというのもありますが)ので、まあ直接的にこの点をツッコんでも集計したら偶々こうなったという話で基調的な部分で全員の見方が成長下げの物価上げになった訳ではありませんからそういう指摘は当たらないと思いますという想定問答が返されるかと思いますが、それでも「成長と物価のバランスというのは気にしなくて良いのでしょうか」という点は気になりますな。

なお、4月展望レポートの見通しによりますと先行きの物価は

『消費者物価の前年比(消費税率引き上げの直接的な影響を除くベース)は、暫くの間、1%台前半で推移したあと、本年度後半から再び上昇傾向をたどり、見通し期間の中盤頃に2%程度に達する可能性が高い。』(4月展望レポート基本的見解の1ページ目にある<概要>より)

とありまして、本年度後半とはつまり10月以降の期間になる筈。そして今回の展望レポート中間レビューでは上記引用の通り「概ね見通しに沿って推移」としておりますので、すなわち見通し的言えば本年10月以降には物価上昇が再加速するという見通しが生きている筈でありまして、その見通しと声明文で相変わらず継続している「暫くの間」という表現の間に差があるように思えるのでございますがさて物価上昇見通しのパスはどうなっておられるのでしょうかねえ。

ってな話に関してはさすがに「2年で2%」の空手形もとい手形の期日が1年を切って参りまして、そろそろ手形がちゃんと落とせるのかが気になってくる中で物価上昇のパスはどうしましたかねえウリャウリャウリャという段々焦げ臭い香りが漂って参りますなあニヤニヤという所です。


○総裁会見関連メモ(詳しくはテキスト出てから):コアCPIの数値部分に話が行き過ぎのような希ガス

詳しくは本日テキストが出るのでそれを読みつつという所ですが、報道にありますように今回は「コアCPIは1%を割らない」という発言が思いっきりキャッチーだった為に、途中からの質疑がコアCPIの数値、しかも先行きの上昇パスの話ではなく目先の上昇鈍化という点に集中してしまいまして、会見としての出来は如何なものかという所だったというのが第一印象。

より重要なのは経済と物価のバランスの良い拡大(上昇)だと思いますし、物価に関しても目先の上昇鈍化の話ではなく、先行きのパスがどうなっているのか、そもそも出していた上昇パスとの差が出ているのかいないのかというような基調的な話の方がポイントではないかと思うのですが、どうもコアCPIが過度に注目されるとか、しかも足元の鈍化で1%割るか割らないかとかいう話で盛り上がるというのもちょっと残念ですな。つーか目標は「2%」なのですから2%行くか行かないかとか、そもそもその2%行く行かないというのをどういう風に判断するのかとか、そっちについてもっと突っ込んで頂きたかったという風に思うのですがどうでしょうかねえ。

ま、詳しくはテキスト見ながら明日。

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2014/07/08

○さくらレポートである

概要
http://www.boj.or.jp/research/brp/rer/rer140707.htm/

全文(PDFで1Mとかあります)
http://www.boj.or.jp/research/brp/rer/data/rer140707.pdf

でまあ基本的に以下は概要の方から引用しますね。

・消費税の影響はあるもののキタコレ

『I. 地域からみた景気情勢』である。

『各地の景気情勢を前回(14年4月)と比較すると、全地域が、景気の改善度合いに関する基調的な判断に変化はないとしている。』

ちなみに前回は4月という時期だったというのに判断を引き上げた所があってナンジャソラという所でございましたが、そのつえーという状態を継続。

『各地域からは、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動がみられているものの、基調的には、「回復を続けている」、「緩やかに回復している」等の報告があった。この背景としては、国内需要が堅調に推移し、生産が緩やかな増加基調を続ける中で、雇用・所得環境も改善していることが挙げられている。』

お、おう・・・・・・・・

ちなみに前回4月の当該部分ですがこうなっています。

『各地の景気情勢をみると、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には、「回復を続けている」、「緩やかに回復している」等の報告があった。この背景としては、国内需要が堅調に推移し、生産が緩やかな増加基調をたどる中で、雇用・所得環境も改善していることが挙げられている。』(4月さくらレポート概要から)

ということで、前回も今回も「この背景としては、国内需要が堅調に推移し、生産が緩やかな増加基調をたどる中で、雇用・所得環境も改善していることが挙げられている。」という説明文言が同じというのが非常にこうお洒落なものを感じる訳でございまして、つまり「おまいらが何と言おうともオントラックで来てるんじゃ」というのが示されているという事じゃないですかねえと。

地域別のコメントですが、駆け込み需要に関する部分に味わいが。

北海道:『消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動が一部にみられているが、基調的には緩やかに回復している』
⇒反動は一部だそうで。

東北:『消費税率引き上げの影響による反動がみられるものの、基調的には回復を続けている』
⇒東北だけは反動の影響があることを直球で言及しているのですが・・・・・・・

北陸:『消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかに回復している』
⇒反動を受けつつも、という事で反動はあるものの回復という話ですな。

関東甲信越:『消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動がみられているが、基調的には緩やかな回復を続けている』
⇒うーんこの。東北は「みられるものの」であって関東甲信越は「みられているが」となっているこの日本語の表現にはどういう差がと。いやまあ当然ここの文面は最終的な部分で平仄を取ると思います(違うのかなあ?)ので、これは東北と関東甲信越ではニュアンスが違う筈で、あたくしの貧弱な日本語力からすると多分関東甲信越の方が「反動あるけど無問題」ニュアンスを出したかったように見えるのですがどうでしょうかね。

東海:『足もと消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動もみられているが、基調としては回復を続けている』
⇒反動「も」というのが味わいが深い。つまり大したことは無いという事ですな。


近畿:『消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動がみられているが、基調としては緩やかに回復している』
⇒関東甲信越と同じですな。

中国:『消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動がみられているものの、基調としては緩やかに回復している』
⇒東北だと「みられるものの」なのに中国では「みられているものの」となっていて、この日本語の差は何ですねん。

四国:『消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動がみられているが、基調的には緩やかな回復を続けている』
⇒関東甲信越と同じですな。

九州・沖縄:『消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動減がみられているものの、基調的には緩やかに回復している』
⇒ここだけ「反動減」となっているのは何でやねんと思いますが、わざわざ「減」と入れているんですから反動があるというニュアンスをちょっと強調したかったんじゃないですかねえ(てきとう)。

・・・・・・ということで、文学鑑賞は難しいのであります(^^)。


・需要項目別:設備投資が上方修正&個人消費が全然下がらないという強さ

まずは公共投資。

『公共投資は、東北から、「大幅に増加している」、3地域(北海道、東海、中国)から、「増加している」等の報告があった。また、5地域(北陸、関東甲信越、近畿、四国、九州・沖縄)からは、「高水準で推移している」との報告があった。』

水準自体は高水準なのでしょうが、増加云々に関して言いますと東北の大幅増加は前回と同じですが、今回は「増加」の報告が5地域から3地域に減っていまして、北陸と関東甲信越が増加から格下げになっています。

設備投資。

『設備投資は、北海道、東海から、「一段と増加している」、4地域(東北、北陸、関東甲信越、近畿)から、「増加している」等、3地域(中国、四国、九州・沖縄)から、「持ち直している」等の報告があった。この間、企業の業況感については、「非製造業を中心に悪化した」、「底堅く推移している」等の報告があった。』

前回は「増加している」が5地域だったのですが、今回はそこから「一段と増加」に格上げになったのが2地域、「持ち直している」が「増加している」に格上げになったのが北陸と来ていまして、設備投資の判断が明らかに強くなっていますが、企業の業況感に関しては前回が「底堅く推移」だったので若干悪くなっていますがこちらは短観の結果と整合的ですな。

個人消費。

『個人消費は、雇用・所得環境が改善していること等を背景に、北海道から、「緩やかに回復している」、4地域(北陸、東海、四国、九州・沖縄)から、「緩やかに持ち直している」、「持ち直している」等の報告があったほか、4地域(東北、関東甲信越、近畿、中国)から、「底堅く推移している」等の報告があった。この間、多くの地域から、耐久消費財(乗用車、家電等)や一部の高額品を中心に、「消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動がみられている」等の報告があったほか、「反動減が縮小してきている」等の報告もあった。』

ここは前回4月の文章を引用して比較してみませう。

『個人消費は、雇用・所得環境が改善していること等を背景に、北海道から、「緩やかに回復している」、4地域(北陸、東海、四国、九州・沖縄)から、「緩やかに持ち直している」、「持ち直している」等の報告があったほか、4地域(東北、関東甲信越、近畿、中国)から、「底堅く推移している」等の報告があった。この間、多くの地域から、耐久消費財(乗用車、家電等)や一部の高額品を中心に、「消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動がみられている」等の報告があった。』(4月さくらレポート概要より)

ということで、基調判断の部分ですがオソロシスな事に4月さくらレポートと判断が不変となっている上に、今回は「反動減が縮小してきている」という報告まであるという有様でして、消費税増税の反動減ガーという話は基調の所で入っていますが、それが一番効くはずの個人消費の部分の判断がこの強さとはどういう事ですねんというレベルですな。

で、個別の部分ですけどこれも興味深いので前回と比較してみませう。

『大型小売店販売額をみると、百貨店、スーパーとも、多くの地域から、「駆け込み需要の反動がみられている」、「持ち直している」、「底堅く推移している」等の報告があった。』(今回)

『大型小売店販売額をみると、百貨店は、多くの地域から、高額品の販売が堅調となっているなど、「持ち直しの動きが続いている」、「底堅く推移している」等の報告があった。スーパーは、複数の地域から、「横ばい圏内で推移している」等の報告があった。』(4月さくらレポート概要より)

『乗用車販売は、「駆け込み需要の反動がみられている」、「底堅く推移している」等の報告があった。』(今回)
『乗用車販売は、新型車投入効果等もあって、「増加している」、「底堅く推移している」等の報告があった。』(4月さくらレポート概要より)

『家電販売は、「駆け込み需要の反動がみられている」、「持ち直している」等の報告があった。』(今回)
『家電販売は、節電機能に優れた白物家電等を中心に、「持ち直している」、「堅調に推移している」等の報告があった。』(4月さくらレポート概要より)

『旅行関連需要は、多くの地域から、「堅調に推移している」等の報告があった。この間、北海道、九州・沖縄から、外国人観光客が増加しているとの報告があった。』(今回)
『旅行関連需要は、多くの地域から、「持ち直している」、「堅調に推移している」等の報告があった。この間、北海道、九州・沖縄から、外国人観光客が増加しているとの報告があった。』(4月さくらレポート概要より)

てな訳で、さすがに家電と自動車は落ちていますが、旅行とかしらっと上がっている所がお洒落でして、そらまあその前に駆け込みがあった部分は落ちているのでしょうが、旅行関連というような消費者の懐具合およびマインドに影響されまくりそうな所が消費税増税にも関わらず判断を引き上げているという事ですからこれは日銀の景気判断的に更に自信を深めそうな部分ですよね。


で、住宅投資。

『住宅投資は、消費税率引き上げ前の駆け込み需要の反動がみられているものの、3地域(東北、四国、九州・沖縄)から、「高水準で推移している」等の報告があった。また、4地域(関東甲信越、東海、近畿、中国)からは、「基調的には底堅く推移している」等の報告があったほか、北陸からは「下げ止まりつつある」との報告があった。一方、北海道からは、「減少しつつある」との報告があった。』

さすがに「増加」が無くなった上に「高水準で推移」も含めた部分でも前回の5地域から3地域に下がっていまして、さらに今回は北陸が「下げ止まりつつある」という表現で前回の「基調的には底堅く推移」からしらっと下がっている上に北海道は「減少しつつある」と前回の、「持ち直しの動きが一服している」から下がっていまして、今回は関東甲信越、中国、北陸、北海道の4地域が判断を引き下げていますのでこちらはうーんこのという所ですな。


んでもって生産。

『生産(鉱工業生産)は、消費税率引き上げの反動の影響を受けつつも、4地域(北海道、東北、関東甲信越、中国)から、「緩やかな増加基調にある」等の報告があったほか、3地域(北陸、東海、近畿)からは、「高水準で推移している」、「堅調に推移しているとみられる」等の報告があった。また、四国から、「緩やかに持ち直している」との報告があったほか、九州・沖縄からは、「全体としては横ばい圏内で推移している。この間、一部では増加に向けた動きもみられている」との報告があった。』

こちらについては基本的に前回4月の表現がそのまま横ばいになっていますな。業種別の部分は一応鑑賞の為に置いておきますね。

『主な業種別の基調的な動きをみると、輸送機械、電気機械は、「高めの水準で横ばい圏内の動きが続いている」等の報告があったほか、化学も、「高めの水準を維持している」等の報告があった。はん用・生産用・業務用機械については、「増加している」、「持ち直している」等の報告があったほか、電子部品・デバイスも、「持ち直している」等の報告があった。鉄鋼、金属製品、窯業・土石は、「高操業を続けている」、「横ばい圏内の動きとなっている」等の報告があった。』


雇用所得環境ですけど相変わらずの強さキタコレです。

『雇用・所得動向は、多くの地域から、「改善している」等の報告があった。雇用情勢については、多くの地域から、「労働需給は着実な改善を続けている」等の報告があった。雇用者所得についても、多くの地域から、「持ち直している」、「改善の動きが明確化してきている」等の報告があった。』(今回)

『雇用・所得動向は、多くの地域から、「改善している」等の報告があった。雇用情勢については、多くの地域から、「労働需給は改善している」等の報告があった。雇用者所得についても、多くの地域から、「持ち直している」、「改善の動きが明確化してきている」等の報告があった。』(4月さくらレポート概要より)

ということでこちらはここもとの強い判断を継続しています。


・地域の視点はまあ普通に消費増税の影響ですな&中々味わいがあるので観賞ね

『II.地域の視点』のお題は『各地域における消費税率引き上げ後の家計の支出動向と企業の対応』である。

『消費税率引き上げ後の家計の支出動向をみると、一部に実質所得の低下に伴う節約の動きがみられるものの、雇用・所得環境の改善や企業の販売施策の奏功等を背景に、全体としては底堅く推移している。』

節約の動きは一部とな。

『この間、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動減の影響は、次第に和らいできているとの声が多くの地域から聞かれている。』

ほうほうそうですか。

『各地域の消費関連企業の多くは、消費税率引き上げ後も基調的な消費の地合いは堅調とみている。この点、趣味・嗜好性の強い商品・サービス(選択的支出)に加え、日常的な支出項目(基礎的支出)についても、安さより品質・付加価値、利便性等を重視する支出行動が広がっており、客単価が上昇傾向にあるとの指摘が多く聞かれている。』

何というかこの「選択的支出は強い」って話ってこの数年の間に何度も聞かされたような気がするんだが。

『この背景として、わが国の景気が緩やかな回復を続けているもとで、幅広い地域・属性で雇用・所得環境が改善し、先行きの所得改善期待も高まっていることが挙げられている。』

ほうほうどこの所得改善期待でしょうかなどと言ってはいけません。

『やや子細にみると、労働需給がタイト化するもとで、主婦層、若年層等の雇用機会が増加し、時間外給与の増加、賞与増額、ベア、時給上昇等を通じて正社員・非正規社員の賃金が上昇傾向にあること等を受けて、消費税率引き上げ後も、幅広い属性で消費者の前向きな支出行動がみられている。』

前向きな支出行動とな。

『緩和的な金融環境が続いていることも、こうした動きを後押ししているとの指摘が聞かれる。』

ほうほうそうなんですか(棒)。

『このほか、アクティブシニア層や外国人観光客の需要が引き続き好調で、反動減の抑制や消費下支えに寄与しているとの声も多く聞かれている。 』

ほほー。

『一方で、消費税や光熱費等の家計負担の増加を受けて、品質・機能面で差がない食料品や日用品等については、より低価格なディスカウントストアやドラッグストア等での購入にシフトする動きや、不要不急の支出を抑制する動きが一部にみられるなど、以前にも増して消費にメリハリを効かせているとの指摘が聞かれている。また、実質所得が低下した消費者のマインド悪化を懸念する声や、実質所得低下の影響がラグを伴って顕在化する可能性を指摘する声も聞かれている。』

どう見ても二極化です本当にありがとうございました。というかそろそろ実質所得低下について気が付きだす頃のようにも思えるのですがどうでしょうかねえ。

『この間、家計の住宅に対する支出スタンスは、雇用・所得環境の改善に加え、政府の住宅取得支援策や緩和的な金融環境に支えられ、消費税率引き上げ後も底堅さを維持しているとの声が大勢を占めている。もっとも、低価格の注文住宅では需要の先食いによる反動減の長期化懸念、都市部の分譲住宅では価格上昇や好立地物件の供給減少等を背景とした慎重化の動きも指摘されている。』

ここは微妙に基調判断の所よりも強い話をしている希ガス。

『こうした中、消費税率引き上げ前後の企業の販売施策をみると、セールや催事の強化・開催時期見直し等の短期的な反動減対策に加え、消費の底堅さや消費者ニーズの変化を踏まえた中長期的な視点での需要喚起策や戦略が目立っている。具体的には、(1)価格よりも品質や機能等を重視した新商品の積極投入や商品ラインナップの拡充(高品質・高価格帯の品揃え充実)、(2)新たな付加価値を加えた店舗リニューアル、(3)オムニチャネル(ネットと実店舗販売等の融合)への取り組み、(4)人件費引き上げ等を伴う接客・サービス品質向上など、商品・サービスの内容や販売チャネルに付加価値やコストを加えることで消費者を惹き付け、需要を引き出すための取り組みが進展している。』

この辺りとか本文の方に詳しく書いてありますので鑑賞物として読むと中々面白いですよ。

『企業の価格設定スタンスをみると、消費の底堅さを踏まえて、採算改善を意識した価格改定に踏み切る動きが広がっており、販売価格を改定した企業の多くでは、その後の売上が減速していないことから、新たな価格体系が消費者に受け入れられていると評価している。』

コストプッシュで上げたものの需要が落ちていないのでこれは大丈夫だという話になっていますがさて・・・・・

『まず、消費税率引き上げ分については、その必要性に対する消費者の理解進展や消費税転嫁対策特別措置法で「消費税還元セール」の禁止や外税表示の容認等がなされたこともあって、大半の先が販売価格に転嫁している。加えて、既往のコスト(原材料費、人件費、光熱費等)増加分についても、業績好調な小売や飲食・宿泊サービスを中心に、商品・サービス内容の見直し等を伴いながら販売価格に転嫁する動きがみられている。』

『今後、他社の動向を様子見していた企業や既往のコスト増加分を十分に価格転嫁しきれていない企業を中心に、段階的な値上げや高価格帯の商品・サービスメニュー拡充等を推進していくとの声が相応に聞かれており、当面、価格引き上げの動きは続いていくものとみられる。』

ということで企業の価格設定行動は強気になっているというお話で物価目標達成待ったなしですね(棒)。

『一方、競合の激しい小売(スーパー、ドラッグストア、ディスカウントストア等)では、PB商品や集客力のある売れ筋商品に限定して、価格を据え置く(または値下げする)動きもみられる。生活必需品を中心にコスト増加分の価格転嫁が遅れているとか、値上げは困難との声も聞かれており、消費の地合いが弱含む場合には、これらの動きが広がる可能性もある。』

ということで一応こういうリスク要因を示していますが、いずれにせよその辺の勝負結果は秋口には判明するのでしょうな。


『先行きの個人消費については、雇用・所得環境の改善が続くもとで、夏場にかけて駆け込み需要の反動の影響が減衰し、基調的には底堅く推移するものとみられる。こうした中、先行きの景気や所得の回復期待もあって、メリハリを伴いつつも家計の支出スタンスが前向きになり、品質や付加価値に対するニーズが一段と強まっているとの声が聞かれる。』

まあ正直ホンマカイナと思う。

『これに対し消費関連企業では、今回の消費税率引き上げもひとつの契機となって、全体としてみれば、コスト削減による低価格路線から、高付加価値化・高単価路線に転換し、コストと付加価値に見合った販売価格を設定する動きが広がりつつある。』

ほうほうそうですか。

『経済・物価の好循環を進展させていくうえで、今後も企業努力による商品力やサービスレベルの向上等を通じて、新たな需要を喚起していくことが期待される。』

という締めになっていますが、本当の本当にコストプッシュ起点からでもそういう好循環になるのかいなとゆーのは微妙な気がする訳で、しかも今回の場合は中間層直撃の財政政策になっているので、どこまでサステイナブルなのかというのは少々あるようにも思えるのですが、こちらの記述を見ますと色々とヘッジは入れているものの、基調的には強いという内容。

前回の「地域の視点」は珍しく輸出の話という期待外れネタを打ち込んで来たのですが、まあ今回はこのネタが一択になるのは良いとして、消費に関する基調判断と同様に強い(そらまあここの判断が弱かったら基調判断も弱くなるから当たり前だが)辺り、今回のさくらレポートつえええええと思うのでありました。

#引用増量企画恐縮至極

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2014/07/04

○生活意識アンケートがあまり宜しくないようにしか見えませんが・・・・・・・・・

http://www.boj.or.jp/research/o_survey/ishiki1407.pdf
「生活意識に関するアンケート調査」(第58回)の結果
―― 2014年6月調査 ――

今回は本文2ページからの『1.要 旨』の方から主に引用しますが、Q&Aは26ページ目以降から引用します。

・景況感関連

『景況感のうち、現在(1年前対比)については、「悪くなった」との回答が増加したことから、景況感D.I.は悪化した。先行き(1年後)については、「悪くなる」、「良くなる」との回答のいずれも減少したが、「悪くなる」の減少幅が大きかったことから、景況感D.I.は改善した。なお、現在の景気水準については、「どちらかと言えば、悪い」、「悪い」との回答の合計が増加した。』

ということで、現状は悪化しているけれども先行きは改善という事ですが・・・・・・・・・

『現在の暮らし向き(1年前対比)については、「ゆとりがなくなってきた」との回答が増加したことから、暮らし向きD.I.は悪化した。』

『収入の増減については、実績(1年前対比)は、「増えた」との回答と「減った」との回答のいずれも同程度増加したことから、現在の収入D.I.は概ね横ばいとなった。先行き(1年後)は、「減る」との回答の減少から1年後の収入D.I.はマイナス幅を縮小した。』

『支出の増減については、実績(1年前対比)は、「増えた」との回答が増加し、「減った」との回答が減少したことから、現在の支出D.I.はプラス幅を拡大した。1年後の支出D.I.はマイナス幅を拡大した。』

ということで、暮らし向きに関してのDIは悪化していますし、解説文だけ見るとさらりと流していますが、収入の先行きDIって改善してると言っても減るという人が減っているだけで、支出の方は減らすと言っている人が増えている訳で、方向性としてはマインド悪化してるだろという感じなんですけどねえ。

ついでに雇用の方ですが・・・・・・・・・・

『1年後を見た勤労者(注)の勤め先での雇用・処遇の不安については、「あまり感じない」との回答が減少し、「かなり感じる」との回答が増加したことから、雇用環境D.I.は悪化した。』

あちゃー。

・・・・・・・えーっとですね、先行きのDIが悪化しているのが人手不足だのというのとギャップがありますけれども、そらまあ支出DIの所に見られますように消費増税も込みで名目の支出がドカンと増えているのが実感できるようになっている中で、人手不足だの何だの言ってますがCPI+3.5%とかに対してそんなに収入が増えている訳でもないでしょう(従来は給与横ばいは現状維持でしたが、今年の給与横ばいは実質減俸ですからねえ)という事で、そうなりますとインフレ期待が高まる中で給与はそれに見合って上がらない訳ですし、昔のような賃金カーブも期待できない(つーかそもそも勤労者の平均年齢上がっているからそのカーブの効果も平均勤労者サイドからしたら下がっているでしょうし)となりますと、ミクロの勤労者の将来不安って実は高まっても何らおかしくはないと思うのである意味順当なのかもしれませんぜよ。

まあしかしこれこの先の動向見ないと判断できませんけど、デフレ脱却してマクロ的に見た雇用情勢もタイトになっているのに勤労者の将来不安が高まったらそもそもデフレ脱却とは何だったんだとかいう話になってしまうので(実際問題としてはデフレ脱却の為の金融政策と共に行っている財政政策が勤労者層直撃政策になっているという再分配政策の問題だと思うのですが世間の矛先は分かりやすい物価上昇に向かうでしょと思うのですよ)どうなんでしょと思いますな、うんうん。


・物価見通しもこれ下がり気味じゃねえのという気が

物価に関しては本文9ページからですけどね

『現在の物価(注1)に対する実感(1年前対比)は、『上がった』(注2)との回答が増加し、「ほとんど変わらない」との回答が減少した。また、1年前に比べ、物価は何%程度変化したかについて、具体的な数値による回答を求めたところ、平均値は+4.1%(前回:+4.0%)、中央値は+3.0%(前回:+2.5%)となった。』

『1 年後の物価( 注1 ) については、『上がる』( 注2 ) との回答が増加し、『下がる』(注3)との回答が減少した。また、1年後の物価は現在と比べ何%程度変化すると思うかについて、具体的な数値による回答を求めたところ、平均値は+4.2%(前回:+5.0%)、中央値は+3.0%(前回:+3.0%)となった。』

とまあここまでは良いのですが、ただそこの中にある図表を見ますと先行きの物価見通しに関して「かなり上がる」というのが徐々に減って来ていまして、さすがに「下がる」という回答が減っていてまあそれによってDI自体は強くなっているのですがどうなんでしょうかねという気はします。

『5年後の物価(注1)については、『上がる』(注2)との回答が減少した。また、これから5年間で物価は現在と比べ毎年、平均何%程度変化すると思うかについて、具体的な数値による回答を求めたところ、平均値は+3.5%(前回:+4.0%)、中央値は+2.0%(前回:+2.0%)となった。』

で、5年間の方になると更に「かなり上がる」が減っている感があって、こちらではDIも下がっています(数値の方は中央値は変わらないですけど)し、中央値+2.0%というのは実は前々回は+2.5%だったのが前回+2.0%に下がった所を継続なので何だかなあという感じです。

なお、物価上昇に関する感想の部分ですけど。

『1年前と比べて物価が『上がった』(注1)と答えた人(約7割)に、その感想を聞くと、7割台後半の人が「どちらかと言えば、困ったことだ」と回答した。また、1年前に比べて物価が『下がった』(注2)と答えた人(約3%)に、その感想を聞くと、「どちらかと言えば、困ったことだ」との回答が5割台半ばとなった。』

一瞬この先の図表を見ると急に「物価が下がったのは困ったものだ」というのが禿しく増えているように見えるのですが、そもそも昨年対比で物価が下がったと回答する3%の方というのがかなり面白い方だと思いますので最早それサンプルとして意味を成してないだろとは思います。


・ちなみにこの辺のマインドも・・・・・・・・・

本文14ページ。

『日本経済の成長力については、「より高い成長が見込める」との回答が減少し、「より低い成長しか見込めない」との回答が増加したことから、経済成長力D.I.はマイナス幅を拡大した。』

ここの図表を見ると相当の落涙を禁じ得ませんので見るなよ見るなよ絶対見るなよ!

おまけに本文15ページ。

『日本銀行が、消費者物価の前年比上昇率2%の「物価安定の目標」を掲げていること、および量・質ともに次元の違う金融緩和(「量的・質的金融緩和」)を行っていることについては、「知っている」との回答が2割台後半となった(図表15(2)(3))。』

なお、ここの図表は16ページなのですが、時系列を見ると「2%の物価目標」の認知度であるところの「知っている」というのが徐々に減ってきて、「見聞きしたことがない」が増えているというのが大変に心温まるものを感じます。

とまあそんなこんなで、今回の生活意識アンケートは全般的に何かこう怪しげなものを感じる内容になってるんじゃネーノと思うのですがどうでしょうかねえ・・・・・・・・・・

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2014/07/03

○短観の物価見通し:まあどうとでも取れるので目くじらを立てない方が良いが

http://www.boj.or.jp/statistics/tk/bukka/2014/tkc1406.pdf
「企業の物価見通し」の概要 [PDF 100KB]

ということで出て参りましたが、まあポジ要因とネガ要因と身も蓋も無い要因がある、というのは前回同様ではないかと思います。

まずポジ要因ですけど、前回は『2.物価全般の見通し』の方がポジ要因に読もうとすると読める(というかそういう解釈してるのが議事要旨にもありましたが)のですが、今回は逆に『1.販売価格の見通し』がポジ要因に読めます罠。

つまりですね、今回は『1.販売価格の見通し』の所が前回よりも概ね上昇していまして、まあ相変わらず中小企業の方が元の数字の絶対値が大きいのは良いとしまして、今回ほほーというのは大企業の見通し平均が総じて上方修正(っていったってコンマ1とか2とかの世界だが)になって居る事でして、まあこの辺の「変化」を捕まえて「企業の価格設定行動が強気化している」という物価上昇メカニズムの中で言えばフィリップスカーブの上方シフトなのか需給ギャップ改善による変化なのかは分解できませんけど、まあそういう日銀執行部謹製のポンチ絵に沿った結果が出ていますよどうです凄いでしょうという話をする事が可能なのでありまする。

一方のネガ要因はご案内の通り『2.物価全般の見通し』の方でありまして、こちらは3年後とか5年後とかの数値がこれまたコンマ1とかの世界ですけれども下がっている箇所がポチポチとある一方で全然上昇している所が無いというのが誠に残念でして、予想インフレ率は全体として上昇している(キリッ)とは何だったのかという話です罠。

まあそんなことよりそもそも論として身も蓋も無い要因として、特に物価全般の見通しの方を見ますと回答の中で『イメージなし』という「知らんがな」という回答が沢山ある訳で、特に全ての規模、種類に共通なのですが、3年後、5年後の物価見通し数値の解答欄の中で「知らんがな」というのが一番多いというのが誠にこう心温まるものがある訳で、「予想インフレ率が上昇すると実質金利が低下するので企業の設備投資行動が活発化する(キリッ)」という置物師匠の風が吹けば桶屋が儲かる理論とは何だったのでしょうかというのが身も蓋も無い話ではある(いやまあこれ今回に始まった話じゃなくて前回もそうなのですが)訳でして、そういう意味でまああまり重要視しなくてもよいとは思うのですよね。

ただまあ一方で今申し上げたような感じで、この短観付属アンケートの数値は適当に都合の良い部分を引っ張り出して都合の良い我田引水インプリケーションを引き出す事が可能という諸葛孔明の罠のような物件でもありまして(というか「道具に罪は無い」って奴ですかね^^)、適宜都合の良いように皆様が使ってくる可能性があるという意味では一応そういう数値だと認識しておいた方が良いのではないかと思いまする。

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2014/07/02

○短観である

http://www.boj.or.jp/statistics/tk/gaiyo/2011/tka1406.pdf

市場の事前予想が強かったので「予想より弱い数値」というのが最初に出ていましたけれども、事前予想をスルーしてみた場合には別にこの内容悪くないんじゃネーノと思いますけどどうなんでしょうかねえ。

・前回の先行き予測DIの達成状況

         (3月時点)     (6月時点)
         現状→6月予測    現状→9月予測
製造業大企業   +17→+8     +12→+15 
製造業中堅企業  +12→+3      +6→+8 
製造業中小企業  +4→▲6       +1→+3

非製造業大企業   +24→+13   +19→+19
非製造業中堅企業  +17→+4    +10→+8
非製造業中小企業  +8→▲4      +2→0

これそもそも3月の数値が強すぎでして、12月調査の時点で3月の先行き予測DIって下向きだったのにそれに対して実際に蓋を開けてみると12月の現状DIよりも上振れの結果になっておりまして、3月短観つええええええという感じでしたし、その時点で見ていた落ち込みを示す6月予測数値に対して実際のDIが上に振れている訳で、そういう意味ではやっぱりこれは強いんじゃネーノと思うのですけどどうでしょうかねえ。

ただまあ若干気になるのは9月予測数値が製造業で上向きになっている事で、それ自体は別に悪い話でも無いですし、消費税増税の影響が懸念ほどでは無かったからという事を示しているのかもしれませんが、基本的に回復局面での短観の先行き予測数値というのは傾向として慎重な見方(つまり先行きは基本現状よりも下を向く事が多い)を示すものという風に記憶しておりまして、今回この水準から上向き予測になっているのはマインドの好転と言えばそうなのですけれども死亡フラグのような気もせんでも無い所が引っ掛かります。とは言いましても増税という特殊要因が入っているのでまあ今回の数値は外れ値の可能性もあるのでフラグキタコレとはならんとは思いますけどね。

と申しますのは、非製造業の先行きに関しては横ばいないし下ですが、こちらは概ね昨年9月短観辺りでの現状と先行き見通しの乖離位の水準(絶対値もほぼこの辺)なので、まあこんなもんかなと思いますし、非製造業的には消費税増税要因の直接的な影響は一巡しましたという感じですかねえ良くわかんないけど。


・雇用判断DI(ここの数値はマイナスが大きい方が雇用情勢的には良い)

        (3月時点)      (6月時点)
        現状→6月予測     現状→9月予測
製造業大企業  +2→+4       +2→+1
製造業中堅企業 ▲4→▲1       ▲2→▲4
製造業中小企業 ▲4→▲1       ▲1→▲6

非製造業大企業   ▲14→▲12    ▲14→▲14
非製造業中堅企業  ▲16→▲15    ▲15→▲18
非製造業中小企業  ▲23→▲20    ▲18→▲23

前回との水準感で見ると微妙にマチマチですけれども、前回の予測数値の達成状況という意味でいいますと前回は人員判断の不足が減少する方向になっていたのに対して結局横ばい近辺となっているのでそういう意味では強いですし、更に強いと思われるのは先行き予測指数が今回は「今よりも雇用人員判断的に不足感が高まる」という結果になっていますので、どう見ても雇用情勢絶好調です本当にありがとうございましたという話で、日銀ニッコリの展開。


・想定為替レート

(参考)事業計画の前提となっている想定為替レート(大企業・製造業)

(円/ドル)   2012年度全体(上期)(下期)   2013年度全体(上期)(下期)    2014年度全体(上期)(下期)
2013年3月調査   80.56   79.15  81.94    85.22   85.10  85.33
2013年6月調査   82.21   79.25  85.11    91.20   91.25  91.16
2013年9月調査    −    −    −      94.45   94.77  94.14
2013年12月調査   −    −     −     96.78   97.60  95.97
2014年3月調査   −    −    −      98.37   97.66  99.06         99.48   99.38  99.58
2014年6月調査   −    −    −     99.17   97.87  100.44         100.18  100.14  100.23

こちらは100円台キタコレというのがちと気になりますな。


・価格判断DI

9月短観からしらっと投下された物件。

販売価格判断(「上昇」-「下落」)

        (3月時点)        (6月時点)
        現状→6月予測     現状→9月予測
製造業大企業  ▲3→▲3        ▲2→▲2
製造業中小企業 ▲5→▲2        ▲4→0

非製造業大企業  +6→+6      +8→+6
非製造業中小企業 ▲1→+4      +2→+4


仕入価格判断(「上昇」-「下落」)

        (3月時点)           (6月時点)
        現状→6月予測       現状→9月予測
製造業大企業  +22→+22       +20→+19
製造業中小企業 +39→+46       +40→+43

非製造業大企業  +22→+22      +23→+22
非製造業中小企業 +32→+39      +33→+34

ということでこの数字は相変わらず販売が低めに出て仕入れが高めに出る傾向があって、これは文字通りに受け止める必要はないと思うのですが、前回もそうなのですが今回もまた販売価格判断DIが前回の予測数値よりも改善(上昇)しておりまして、その点で言えば趨勢的にこれまた日銀ニッコリの展開になっているかと思われます。


・毎度お馴染み金融商品取引業の業況判断DI

毎度お馴染み金融商品取引業業況判断DIですが。

        (3月時点)       (6月時点)
        現状→6月予測      現状→9月予測
金融商品取引業 +35→+32   +14→+35

この「先行きが根拠レスに明るい」という数字を見ると何かのフラグにしか見えません><;


・金融環境はさらに改善

企業金融という所の数値を見ますとこれがまた既に良い水準なのですが更に改善となっています。数字の引用は割愛しますが、資金繰り判断も更に改善(中小企業は前回プラス1になっていましたけれども今回はプラス3と更に改善)しておりまして緩和的な金融環境ここに極まれりという所で、これ以上何をどう緩和しますねんという感じだと思います。


・設備投資関連

この辺は本職の方のレポートに出ていると思いますが、まあ今回は通常通りの平常運転という感じになっていまして、まあ良さげな数字じゃないですかねえとも思われる所ですが詳しくは本職の皆様のレポートでも読んでちょ。


・・・・・・・ということで、まあヘッドラインの数字は市場予想対比で弱いとかそういうのはありますけれども、雇用判断の所と販売価格判断の所および設備投資の所がまさに「雇用情勢の改善」「需給ギャップの縮小からプラス圏への改善」「需給ギャップ改善によって設備投資も先行き拡大」というような執行部謹製の見通しをコンファームするような素敵な内容になっておりまして、執行部の皆様もニッコリという所でしょう。

とは言いましても微妙に気になるのが想定為替レートだったり、先行きDIの出方が今回ちょっと変化している辺りがピークアウトの可能性も示唆(ただし消費税要因があるので良く判らん部分がある)しているような気もせんでも無い、とか微妙に微妙な部分もありますが、政策ロジック的に言えばまあ今回の結果もウハウハとまで行くかどうか知らんけどまあドヤ顔という感じだったと思います。

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2014/06/30

○すっかり忘れていたのですが思い出して5月会合議事要旨

どんだけ忘れてましたねんという話で申し訳ございませんが。

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2014/g140521.pdf

・海外経済に関してはそんなに弱くないが市場の示す認識には留意とな

まずは『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』から。

『国際金融資本市場について、委員は、新興国も含め全体としては落ち着いているとの見方を共有した。そのうえで、委員は、ウクライナ情勢などを背景に神経質な動きもみられており、地政学リスクには引き続き注意が必要であるとの認識で一致した。最近の欧米での長期金利の低下について、何人かの委員は、緩和的な金融政策の長期化観測などが背景にあるとみられるが、市場参加者が中長期的な成長率見通しの下振れを意識している可能性も考えられるため、今後の長期金利の動向とその背景について、注意深くみていく必要があるとの認識を示した。』

ということで、まあ基本的に急にどうのこうのという話ではないのですが、「中長期的な成長率見通しの下振れを意識」というのを指摘していますな。

『海外経済について、委員は、新興国の一部になお緩慢さを残しているが、先進国を中心に回復しつつあるとの見方で一致した。先行きについても、委員は、先進国を中心に、緩やかに回復していくとの認識を共有した。』

ということで、基本的に海外に関しては特段弱いという話ではなく(5月声明文での海外経済認識は横ばいで6月声明文で上がっています)、地域別内訳に関しても特段大きなネタは無いのですが、欧州の所ではこんなのがあってほうほうという感じです。

『ユーロエリア経済について、委員は、1〜3月の実質GDP成長率が4四半期連続のプラスになるなど、緩やかに回復しているとの認識を共有した。先行きについて、委員は、マインドの改善などに支えられて内需の回復が続き、輸出も改善すると見込まれるため、緩やかな回復を続けるとの認識で一致した。何人かの委員は、周縁国を中心にディスインフレ傾向が続いている中での金融政策運営に注目していると述べた。』

周縁国のディスインフレ傾向とな。


・国内景気については今回のレビューが6月にどういうレビューに繋がっているかを確認したいですな

国内景気に関しては5月会合時点の認識よりは6月、7月にどういう認識になっていくのかというのを見て行きたい所で、それによって金融政策の先行きの話、つまり出口攻撃とかそっちの方に向かえるのかという点に示唆を与えると思うので、そういう意味で5月会合での認識を確認しておこうという所ですな。

『わが国の景気について、委員は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動がみられているが、生産から所得、支出へという前向きの循環メカニズムが働き続ける中で、基調的には緩やかな回復を続けているとの見方を共有した。』

ということでまずは全般的な部分。

『何人かの委員は、1〜3月の実質GDP(1次速報値)成長率は前期比年率+5.9%と、個人消費の駆け込み需要や設備投資でのソフトウェア更新に伴うパソコン需要など、一時的な需要増加を勘案しても、高めの伸びになったとの認識を示した。景気の先行きについて、委員は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかな回復を続けていくとの見方で一致した。』

とまあそれは良いとして。

『輸出について、委員は、ASEANなど一部新興国向けに弱さが残る中で、横ばい圏内の動きになっているとの認識を共有した。先行きについて、委員は、海外経済の回復などを背景に、緩やかに増加していくとの見方で一致した。』

という事になっているのですがさて・・・・・・・・

『ある委員は、情報関連分野で高付加価値部品の受注に増加の動きがみられており、今後の輸出増加に期待ができるとの認識を示した。何人かの委員は、米国の寒波の影響や駆け込み需要への対応に伴う国内出荷優先の動きなどの一時的な下押し要因が解消した後、輸出が増加してくるかに注目していると述べた。』

でまあその米国が伸びていないような気がするので、さてその辺に関してどのような認識を示しているのかという辺りは今後の議事要旨で確認したいですな。

『複数の委員は、タイの政情不安が、わが国からの輸出に悪影響を与えることがないか、注視していきたいとの見方を示した。』

まあこちらは一時的なものにとどまって落ち着いて良かったですな。

『設備投資について、委員は、企業収益が改善する中で、緩やかに増加しており、先行きも、緩やかな増加基調を辿るとの見方を共有した。委員は、1〜3月のGDPベースの設備投資が前期比+ 4.9%と高い伸びとなったほか、機械受注も1〜3月まで4四半期連続増加し、先行きも小幅増加見通しであることを踏まえると、ソフトウェア更新に伴うパソコン需要など一時的な需要増加を勘案しても、設備投資は緩やかな増加基調にあると判断できるとの認識で一致した。ある委員は、労働市場のタイト化を背景に、今後は労働力を代替するための設備投資の増加も期待できると述べた。』

と、こちらは強気。

『雇用・所得環境について、委員は、労働需給は着実な改善を続けており、雇用者所得も緩やかに持ち直しているとの認識を共有した。』

でまあこちらも強気なのですけどね。

『ある委員は、これまで上昇傾向にあったパート比率に頭打ち感が出てきているが、これは人材確保のためにパートや非正規社員を正規社員化する動きを反映している可能性があり、労働需給タイト化の一つの表れであるとの認識を示した。』

労働需給タイト化とな。

『今春の賃金改定交渉について、何人かの委員は、労働需給のタイト化や企業業績の改善を背景に、ベースアップも含めた賃金上昇の動きが中小企業や非正規雇用にも拡がってきていると指摘した。』

ほほうベースアップも含めた賃金上昇の動きですかそうですか。実際にその数値出てくるの大手企業だとこれからですな。

『ある委員は、実際に賃金決定の際、予想物価上昇率の高まりが考慮されるようになってきていると述べた。』

ほうほうそうですか(棒)。

『先行きの雇用者所得について、委員は、経済活動や企業業績の回復につれて、持ち直しがさらに明確になっていくとの見方で一致した。何人かの委員は、先行き継続的に賃金が上昇していくか、来年度のベアも含め、注視していく必要があるとの認識を示した。』

という事で。


で、個人消費ですけど。

『個人消費について、委員は、このところ駆け込み需要の反動がみられているが、基調的には、雇用・所得環境が改善するもとで底堅く推移しているとの見方を共有した。委員は、4月の全国百貨店売上高、新車登録台数といったデータや企業からのヒアリング情報などを踏まえると、駆け込み需要の反動の影響は想定の範囲内との見方が多いとの認識で一致した。ある委員は、駆け込み需要の反動の大きさについて、今後公表されるデータでさらに確認していく必要があると述べた。』

つーことでまあ消費に関しては消費増税の影響は想定の範囲内という話。

『先行きの個人消費について、委員は、駆け込み需要の反動の影響を受けつつも、基調的には、雇用・所得環境の改善などに支えられて、底堅く推移するとの見方で一致した。』

まあ所得と消費の見通しは強いですよね。

『複数の委員は、景気ウォッチャー調査の先行き判断の大幅な改善は、消費税率引き上げの影響が一時的であることを示唆しているとの見方を示した。』

キタコレ。

『何人かの委員は、駆け込みとその反動といった短期的な振れに加えて、消費税率引き上げに伴う実質所得の減少が消費に与える影響について、やや長い目で注視していく必要があるとの認識を示した。このうちのある委員は、足もとでは名目所得の上昇がみられていることから、喫緊のリスク要因としての懸念は低減したと付け加えた。別の一人の委員は、消費者態度指数の悪化や実質雇用者報酬の伸び悩みを指摘したうえで、先行き個人消費の増勢が弱まる可能性があるとの見方を示した。』

ということで、より長期的な面については見解が分かれているという感じですが、所得に関して言えば雇用者全体でみた総額ベースが上がっているプラスの影響と、実際問題として消費増税をカバーするだけの上昇にはなっていないし、非正規の拡大で上がっている部分ってマージナルな部分であって、コアの部分で実質がマイナスとなっている場合の影響がこれから出てくる可能性とか考えますとどうなんでしょうかねえという話で、さてどっちに出るんでしょうかね。

他の需要項目の話は割愛します。続いて物価ですけど。


・サイレントデフレ脱却モードの声明文だが議論の方はあっさりとな

この回の声明文では最後のパラグラフの所でQQEについて『所期の効果を発揮』というのが入ったのと『デフレからの脱却へと導く』というのが削除されたのが話題になっていましたが、所期の効果云々は後ほど出てきますが、では物価に関する議論の部分はどうかというとこれがまたあっさり味。

『物価面について、委員は、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、+1%台前半となっており、先行きも、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、暫くの間、+1%台前半で推移するとの見方を共有した。複数の委員は、1〜3月のGDPデフレーターが前年同期比0.0%と、下げ止まってきたことを指摘した。』

デフレーターが下げ止まった話はありますが、デフレ云々の文言を削除するという辺りに関しては(この先もそうですが)特段の話がある訳でもなく、何かこうサイレント脱却宣言そのままでサイレントなままにさらっと認識が強くなったという感じですね。

『複数の委員は、新たな付加価値を付けて販売価格を引き上げるという動きがみられ始めており、企業の価格設定行動が変わり始めている可能性があるとの見方を示した。』

とまあ物価に関する部分はこれだけでして何というあっさりという所ですが、この次に供給力の天井論が来ております。


・供給力の天井論について

次に供給力の天井論に関する話があるので引用。

『委員は、「量的・質的金融緩和」などのもとで需要が増加した結果、人手不足など供給面の問題が顕現化してきたとの認識を共有した。多くの委員は、中長期的な観点から成長力を高める様々な取り組みが重要であるとの見方を示した。』

ということで、成長力強化が重要というネタです。

『この点に関し、これらの委員は、「量的・質的金融緩和」によってデフレマインドを早期に払拭することは、潜在成長率を高めていく上でも重要であるとの見解を述べた。すなわち、ある委員は、デフレマインドを転換することによって、企業が積極的な投資や生産性上昇に取り組みやすい環境を作り出すことは、潜在成長率の引き上げにも寄与すると考えられるとの見方を示した。』

こういうマインドで気合でという話が出るのは白日銀とは違いますなという感じがします。

『複数の委員は、長期失業者が存在したり、設備投資やイノベーションが停滞している場合、これを解消することによって潜在成長率を高める余地があり、金融政策は緩和的な金融環境を維持することによって、これを後押しすることができるとの認識を示した。』

まあ成長力強化の話も諸刃の剣で、この話を推し進めるとじゃあ金融政策は何の効果があるのかという話になってしまうので、さっそくこういう話も入ってくるのがお洒落。

『ある委員は、実際、非製造業を中心に、設備投資は堅調であり、幅広い業種で様々な需要の掘り起こしが進んできていることなどを踏まえると、収益力や生産性は上昇してきているとの見方を示した。』

ほう。

『別のある委員は、労働需給のタイト化によって賃金上昇圧力が高まってくると、低い賃金コストを前提に安価な商品を提供するビジネスモデルは成立しなくなると述べたうえで、企業が付加価値の高いビジネスモデルへの転換を図れれば、潜在成長率の引き上げにも繋がるとの認識を示した。』

どこぞの外食チェーンですねわかります。


・金融政策に関する話が超あっさり味な件について

『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』というコーナーが毎回あるのですが・・・・・・・

『金融政策運営の考え方について、大方の委員は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する、その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行うとの認識を共有した。』

『委員は、「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、現在の方針のもとで、「量的・質的金融緩和」をしっかりと推進していくことが適当であるとの認識を示した。』

で、従来だと他に何かコメントがあったりするのですが、今回はこの「所期の効果」キタコレというのが非常にこうさらっと出ているだけでして、まあそのあっさりな部分はあっさりなだけに益々自信の表れという所で、「静かな勝利宣言」という所でしょうか。

なお木内委員の反対論は毎度の通り。

『一方、一人の委員は、「物価安定の目標」を2年程度で達成するのが難しいとみられる中で、「量的・質的金融緩和」が長期間継続される、あるいは極端な追加措置が実施されるという観測が市場で高まれば、金融面での不均衡累積など中長期的な経済の不安定化に繋がる懸念があるため、継続期間を2年程度に限定し、その後柔軟に見直すとの表現に変更することが適当であると述べた。』

ということでこのあっさり味さが却って大勝利宣言という感じがしますな。

『「量的・質的金融緩和」の効果について、委員は、効果は引き続きしっかりと働いており、企業や家計の支出活動を支える金融環境の緩和度合いは、着実に強まっているとの認識を共有した。長めの金利への働きかけについて、委員は、わが国の長期金利は、日本銀行による巨額の国債買入れが行われるもとで、低位安定しているとの見方で一致した。委員は、名目金利が安定的に推移するもとで、予想物価上昇率の高まりを背景に、実質金利は低下しているとの認識を共有した。』

でまあこの効果に関しても超あっさり味にも程がありますという事で、今回は金融政策運営に関する部分で特段の議論らしきのが無いという所で、まあこの前の回が展望レポートの会合で、そこではああだこうだという話がありまして、まあ前回議論しているから同じ話を2か月連続でせんでもエエジャロというのはあるとは思いますが、実際問題として「2年で2%」の手形の期日は着実に迫ってくるので、物価目標に関する論点整理というのはどこかで行わないといかんと思うのですけどどうなるんでしょうかねえという所で。

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2014/06/27

○ちょっと前のネタですがポートフォリオリバランスに関連して

日銀レビューである
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2014/rev14j04.htm/(要旨)
日本銀行の国債買入れに伴うポートフォリオ・リバランス:資金循環統計を用いた事実整理

本文はこちら
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2014/data/rev14j04.pdf(本文)

でまあ要旨の方を見ますとこんな事が書いてありましてですな。

『要旨

2013年4月の量的・質的金融緩和導入以降、日本銀行による国債買入れが大きく増加する中、日本銀行以外の主体は、全体として国債投資を減少させ、貸出のほか、株式・投信や社債への投資フローを増加させている。こうしたポートフォリオ・リバランスの程度には主体間で違いがあり、国内銀行と海外部門でリバランスが見られる一方、生・損保や企業年金基金、公的年金には、現時点までのところ、こうした傾向は観察されない。』

でまあこの辺りの部分に関してはFSRというのがあるのだがそれは後ほど。

『国内銀行による貸出の増加には、銀行のバランスシートの状況や銀行が直面する資金需要といった金融経済状況の変化に加え、日本銀行が買い入れた国債の残存年限の長期化も影響している可能性がある。』(以上要旨(htmlの方)より)

ということで、ナンジャソラという所ですが、本文の方でその説明があったりする。


・国債買入のポートフォリオリバランス発生経路なのだが・・・・・・・・

ということで以下日銀レビュー本文の方からになるのですが、まずは本文2ページ目の『ポートフォリオ・リバランスの発生経路』の所から。

『今次局面におけるポートフォリオ・リバランスは、主に以下の2 つの経路で発生しているものと考えられる。』

ほうほうそれでそれで?

『第1 に、日本銀行の国債買入れに伴い、長期国債金利が低水準となり、さらなる低下余地が小さくなったため、国債価格が先行き上昇するという期待(キャピタルゲインが得られるという期待)が小さくなった。この結果、金融機関や投資家は、国債への投資を減らし、相対的に高いリターンの見込まれる他の資産への投資を増やしたと考えられる。』

えーっとですな、ディーラーじゃないんですからキャピタルゲイン期待できないから債券買わないという投資家の動きというのはそら大昔のポートディール(よく考えたら凄い言葉が昔はありましたなあ普通に皆で言ってたけど)の世界なので、そういうのはマージナルな部分では存在するにせよ、普通の投資誘因ではないと思います。

『また、期間収益を得ることを目的に、満期保有を念頭に国債を保有する主体も、長期国債金利が十分に低い水準まで低下した結果、国債に投資する誘因が小さくなり、他の資産への投資を増やしたと考えられる。』

まあこの「リスク対比の期間収益が合わなくなったからシャープレシオ的に行けそうな所に逝く」という行動が起きるという方が自然なので、ここの説明は順序を逆にした方が説得力があると思います、つーかたぶん前者の説明はシロウトにはなるほどと思われるかも知れんが、実際の金融機関の投資行動インセンティブを考えた場合にはメインの話ではないので、これを最初に出すとその瞬間にプロの皆様からするとこれはシロウトを煙に巻いているだろという読まれ方をされそうなのでお勧めしない。

『第 2 に、1 つ目の経路によって国債保有を減らした主体の国債保有にかかる金利リスク量が減少した。この結果、追加的なリスクをとる余力が生まれ、他の資産への投資が促された。金利リスクとは、金利上昇時に国債保有からキャピタル・ロスを被るリスクのことであり、この経路は、上記1 つ目の経路を補強するように働く。』

いや普通アセットアロケーション考えた場合って金利リスク量が減った分についてよーしパパ金利リスク減った分株を買っちゃうぞーとはならんと思う訳で、戦略的に金利リスクを減らして他に振り替えるというのなら兎も角、日銀の買入に応じて落ちた金利リスク量というのはアロケーション変更という話では無いのですからそのまま金利リスクの再構築に回るだけだと思うのですけど。

もちろん戦略的に金利リスク量を落とす時に日銀の買入があるので金利リスクの削減方向での操作をやりやすいとかそういう意味での日銀買入の効果はあるかも知れんけど。

つーかですな、そもそもこの手のポートフォリオリバランスについては前回の量的緩和時代にも思いっきり期待されていた効果だったのですが、実際問題としてその効果ってありましたっけという話になると、まあ無いとは言わないけれども誤差の範囲内とかそういう世界じゃね?という話だったと思いますので、今次QQEの場合に何で効いたかという話を読みたいのですが、日銀レビューの方ではその辺りはスルーされていたりするというのが実にこう巧妙というか何というかで味わいが深いものでありまする。

まあそもそも論として長期国債買入による金利押し下げ効果がどの程度あるのかという話もこれまた難しい所で、まあ多分押し下げ効果そのものはあるというのはその通りだと思いますが、実際問題としては市場の方が相変わらず2年で2%とか無理無理無理というのがメインシナリオになっており、何とかストの皆様におかれましては(だいぶ転んできた人もいますが)2年で2%無理だから追加緩和ですよという話をしていたりするという要因もあるでしょうからどうなんでしょというのもありますし、そもそも貸出や株式などの投資に回るというのは日銀の国債買入の直接的な効果というよりは金融緩和政策全般の効果ではないかという気もしますがその辺はさすがに後の方に出てきます。


・まあやはり国債買入でポートフォリオリバランスという直接的な話には無理があるような希ガス

でまあその次に『主体別にみたポートフォリオ・リバランス』というのがありますが。

『もっとも、全ての主体についてポートフォリオ・リバランスが確認される訳ではない。国内銀行と海外部門(非居住者)は、日本銀行の国債保有シェアが国債買入れによって拡大した時期に、国債保有シェアが低下する傾向がみられる(図表3)。一方、生・損保や企業年金基金には、現時点までのところ、国債保有シェアを低下させる傾向はみられない。』

そらそうよ。

『この理由の1 つとして、生・損保や企業年金基金は、支払いが先行き長期にわたるという債務構造を持つため、資産と債務のデュレーション・マッチングを目的として、資産側に長期国債を保有しておく誘因が強いことが挙げられる。なお、公的年金と中小企業金融機関等(ゆうちょ銀行を含む)は、2000 年代の終わり頃から継続的に国債保有を減らしている。このうち、公的年金の国債保有の減少については、年金支給のための資産の取り崩しなど、日本銀行の国債買入れとは直接関係のない要因によるものであると考えられるため、以下の分析では捨象している。また、中小企業金融機関等の国債保有の減少についても、ゆうちょ銀行における預金残高減少に伴う資産減少などを反映したものであり、日本銀行の国債買入れとの関係は強くないと考えられる。』

ということで、日銀の国債買入の拡大で国債保有が減りました(これは誰かが減らさないといけないから減るという話)という主体はオペ先がオペに応じましたよという話であって、少なくとも日銀の国債買入がアセットアロケーションに影響しているという話ではないでしょという話になるような気がだいぶするのだが気のせいでしょうかねえ。もし世間全体のアセットアロケーションに影響するようなポートフォリオリバランスが起きると言うのであれば、生損保や企業年金基金などのアロケーションが変わるという現象が必要な気がするのだが。

『次に、国債保有を減らした国内銀行と海外部門が、代わりにどの資産への投資を増やしたのかを確認する。まず、国内銀行についてみると、量的・質的金融緩和が導入された2013 年以降、日銀当座預金が増加するにとどまらず、貸出を増加させている(図表4)。一方、海外部門は、日本の株式・投信のほか、社債への投資を増加させている(図表5)2。』

という図がありまして、まあ個別金融機関の資産構成という意味ではこういう話になるのかもしれませんが、一方で資金需給という面で言えば日銀当座預金の増減は中央銀行(および政府部門)の対民間部分との資金収支尻であって、日銀当座預金の増減に関係なく貸出の増減は起きうる話になるので、資産構成の話と資金需給の話を混同してしまいそうな感じがしますな。書いてる本人もあれれとなって泡吹き状態になったりしてますがががが。

でまあちょっと飛ばしてその次に『銀行貸出増加の背景』という小見出しがある。

『国内銀行による貸出の増加には、銀行のバランスシートの状況や銀行が直面する資金需要といった金融経済状況の変化に加え、日本銀行が買い入れた国債の残存年限の長期化も影響している可能性がある。』

大きく出ましたな。で、日銀の買入年限長期化で金利が下がると貸出の誘因が増えるとかいう能書き部分は割愛しましてその次。

『もちろん、銀行貸出の増加には、企業の資金需要の高まりなど、金利リスク量以外の要因が作用している可能性がある。そこで、量的・質的金融緩和導入後に国債保有を大きく減らしている都銀等に注目し、貸出を被説明変数とし、国債保有にかかる金利リスク量のほか、貸出に影響すると予想される他の変数(預貸金利鞘、企業の資金需要を表すD.I.、銀行の不良債権比率)を説明変数とする回帰分析を行った3。』

お得意の回帰分析キタコレという所ですが、

『3 分析の詳細は、次の論文を参照。齋藤雅士・法眼吉彦「日本銀行の国債買入れに伴うポートフォリオ・リバランス:銀行貸出と証券投資フローのデータを用いた実証分析」BOJ Reports &Research Papers、2014 年6 月.なお、都銀等は、都銀5 行、三菱UFJ 信託銀行、みずほ信託銀行、三井住友信託銀行、新生銀行、あおぞら銀行の計10 行。』

とありますように、日銀のページ見てると判りますが、同時発表でもうちょっと詳細なレポートが出ていますので回帰分析の内容とかはそっちを見るのが吉。

『分析の結果、資金需要の高まりは貸出を増加させる方向に、預貸金利鞘の縮小と不良債権比率の上昇はそれぞれ貸出を減少させる方向に働く傾向があること、そして、これらの効果を勘案しても、国債保有にかかる金利リスク量の減少は貸出を増やす方向に働く傾向があることが確認された。』

ほほう。

『また、回帰分析の結果をもとに、量的・質的金融緩和導入前後の銀行貸出を要因分解すると、預貸金利鞘の縮小が継続的に銀行貸出を下押しするもとで、日本銀行が買い入れる国債の年限長期化に伴う金利リスク量の低下は、銀行貸出の押し上げに寄与していると考えられる(図表7)4。』

ほうほうそうですか、という所ですが、ここで脚注4というのがありまして・・・・・・・・・

『4 ここでは、国内銀行の国債保有にかかる金利リスク量の変化が銀行貸出に影響するという因果関係を想定しているが、実際には、これとは逆の因果関係も存在する可能性がある。この点については、脚注3 に示した論文を参照。』

ということで、同時発表のペーパーの方でも説明があったりするようですが、回帰分析の結果でドヤッとするだけではなく、前提とする因果関係がそもそもどうなのよという点について脚注とは言え触れている辺りに良心を感じる次第ですが、単にツッコミが来るのが明白だから書いたのかも知れず(^^)。


・国債買入効果の宣伝コーナーではあるが一応留保も入れている訳で

でまあもうちょっと分析した部分はスルーしまして最後の所で『おわりに』という小見出しの所。

『2013 年4 月の量的・質的金融緩和導入以降、日本銀行による残存年限の長い国債の買入れが大きく増加する中、主に国内銀行と海外部門において、国債保有が減少し、銀行貸出のほか、株式・投信や社債への投資フローが増加している。』

ということですが・・・・・・・・・

『なお、本稿の分析は、国債買入れを起点としたポートフォリオ・リバランスを捉えることを目的としているが、分析結果の一部が、それ以外の要因によるリバランスを捉えている可能性は否定できない。』

えーっと一部ですかそうですか(棒)。

『例えば、予想物価上昇率や為替減価期待の高まり、景気見通しの改善による株価上昇期待の高まり等も、国債から他の資産へのリバランスを促す可能性がある。こうした期待の変化は、中央銀行の国債買入れによって生じることも考えられるが、中央銀行の目標とする物価上昇率の引き上げ等、国債買入れ以外の要因によっても生じ得ることには留意が必要である。』

ということで、さすがに国債買入の効果が直接的に出たのでポートフォリオリバランスとまで言い切る程は図々しくないようですが、まあ逆に言えばこの手の実証分析に関しても前提とする因果関係とかの置きについて良く良く見ないと適宜都合の良いようなリードをされてしまうという常識的な結論に落ち着くのでありました(^^)。


・なおFSRでの分析も折角ですのでURLだけつけておきます

http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr140423a.pdf

FSRの中で『V.金融仲介活動の点検』というのがありまして、該当するのが本文9ページから28ページ(PDFで14枚目から33枚目)になりまして、こちらでは金融システムの各主体における資産構成の変化に関する状況についてより細かく分析しておりまして、まあこちらは特段政策効果の宣伝コーナーでは無いというのもあるからでしょうが、日銀の長期国債買入がポートフォリオリバランスを促した云々のような図々しい話は特段無くて、緩和的な金融政策がサポートみたいなまあふわっとした説明(自画自賛の香りもせんでもないが)になっておりますので、併せてご確認されるのも吉かと。

あと、先ほどの所にありましたより詳しいペーパーというのはこちら。
http://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2014/data/ron140619a.pdf
日本銀行の国債買入れに伴うポートフォリオ・リバランス:銀行貸出と証券投資フローのデータを用いた実証分析

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2014/06/18

○日銀から幾つかペーパーが出ているのでメモ

・雇用・所得に関する日銀レビューですよ!!!

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2014/rev14j03.htm/
今次景気回復局面における雇用・所得環境の特徴点
2014年6月16日

本文はこちら。
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2014/data/rev14j03.pdf

でまあ要旨の方にきっちりとまとめがあるのでそちらから引用。

『今次景気回復局面での雇用環境の特徴点として、(1)雇用誘発力の高い内需主導で回復が進むなか、雇用の改善が非製造業部門で目立っていること、(2)需給双方の要因から、女性や高齢者を中心とした労働参加が活発化していること、が挙げられる。新たに活用される労働力は、これまでのところ、平均賃金が相対的に低い非正規雇用・短時間労働が中心となっており、その結果、単純に労働者一人当たりの平均賃金をみると弱めとなっているが、労働者一人ひとりが直面する賃金は上昇しているほか、労働参加の拡大効果も含めて雇用者数の増加がマクロの雇用者所得の増加につながっている。』

ほう。

『より長い目でみると、わが国経済が持続的に成長していく上では、(1)特定の雇用形態に偏らない高齢者や女性の一段の労働参加が促進されるか、(2)賃金の上昇が生産性向上を伴いつつ継続していくか、といった点が重要なポイントとなる。』(以上上記HTML先の方から)

ということですが、更に本文の6ページ以降で『先行きの雇用・所得環境を見通す上でのポイント 〜結びにかえて〜』というまとめがありますので引用を。

『最後に、先行きの雇用・所得環境を見通す上でのポイントと、やや長い目でみた日本経済へのインプリケーションを考えてみたい。』(上記PDF本文の6ページから、以下同様)

『1つ目のポイントは、製造業部門における労働需要の動向である。部門別の雇用者数の伸び率を改めて確認すると、本稿で強調した非製造業の雇用環境の改善のほか、足もとでは製造業でもマイナス幅が縮小傾向にある(前掲図表4)。また、先行きの雇用スタンスを窺うと、非製造業だけでなく、製造業も、雇用者数の伸び率を高める方針を示している(図表17)。』

ということで製造業の雇用がポイントとな。

『海外生産移管が進む製造業において、正社員を含め国内の採用計画が積極化している背景には、@本社機能や研究開発の強化を中心に、海外との棲み分けを意識しながら国内の活動充実も図ることや、A「団塊の世代」の退職が進むなかで現場の技術継承を進めることが、強く意識されるようになっていることがあると考えられる。こうした製造業の雇用スタンス積極化の動きが持続していくことで、マクロ全体ではバランスのとれた雇用者数の増加が期待できる。』

マクロ的なバランスという話もあるのですが、実はこの後に賃金の先行きに関する話があって、そこで説明されていますが労働生産性が相対的に高い製造業の雇用が伸びないと実質賃金が上がらんという話に繋がったりしますので。

『2点目は、労働参加を巡る今後の進展である。とりわけ女性の労働参加については、上述したようにこれまでのところ、家事・育児との両立や家計補助といったインセンティブから行われてきた面も強く、それが労働需要増加への初期対応としての企業側のニーズにも合致して、非正規雇用・短時間労働が中心となってきた。もっとも、やや長い目でみると、高齢化の一層の進展や、潜在的な労働供給余力の低下が、雇用者数の伸びに対して下押し圧力となっていく可能性が高く、この点、政府の成長戦略においても具体的な取り組み方針が示されているように8、女性の労働参加をより広い形態で一段と高めていくことは極めて重要な観点である。』

ふむ。

『実際、女性の労働力率を年齢階層別にみると(前掲図表10)、日本においては、結婚・出産期に一旦労働市場から退出する傾向―いわゆる「M字カーブ」―が、徐々に解消されつつあるものの、他国対比でなおはっきりと確認できるなど、女性のさらなる労働参加の余地はなお少なくないといえる9。現在の景気回復を契機として、出産・子育て等を理由とした離職の減少や、指導的地位に占める女性の割合増加など、特定の労働形態に偏ることのない、歪みのない労働参入が促されることが期待される。』

まあそうですなとは思いますがそうなると人口の話はどうなるという気はせんでも無いがそこの話をしている訳ではないので華麗にスルーという事でしょうな、うんうん。

で、実質賃金の話ですが労働生産性との関係という話が出てくるのがさっきの論点と被るのだ。

『最後に、より長期でみた先行きの賃金、特に物価変動分の影響を除いた実質賃金の動向を見通す上では、労働生産性との関係も、大きなポイントとなる。』

ということで。

『実質賃金と労働生産性の間には、理論的に一定の関係があることが知られている10。過去、非製造業の実質賃金の動きは、製造業対比で上昇テンポが緩やかであったが、これは、基本的には、両部門の労働生産性の違いを映じたものと考えられる(図表18)。』

ふむ。

『もっとも、近年は、シニア消費の掘り起こしや物流部門の改善といった企業の取り組みが奏功しつつあるなど、循環的な要因を除いても非製造業部門の生産性が向上に向かう兆しもみられる11。こうした動きが持続性を持つならば、長い目でみて、生産性の向上を伴った非製造業の賃金上昇が期待できると考えられる。』

ということで引用ばっかで恐縮ですが簡単にネタにしてみました。


・金融高度化がどうのこうの系

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/rel140617a.htm/
本店で金融高度化セミナー「金融機関の経営管理の高度化―理論と実践」を開催
2014年6月17日

『金融高度化センターでは、5月29日、30日および6月5日、6日に日本銀行本店で、取引先金融機関を対象に、「金融機関の経営管理の高度化―理論と実践」と題するセミナーを開催しました。セミナーの内容は以下のとおりです。』

ということで資料が毎度のように付いているのですが、今回は何となく従来比資料が多い上に、基本的なお勉強資料まであって中々の充実ぶりで、充実しているので全然読めていない(ちょっとだけチラ見したけど)という残念なアタクシ。

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2014/06/17

○金融経済月報の表現が声明文の表現と語順的な意味などで微妙に違うのが気になった件

金融経済月報である。
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2014/gp1406.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2014/gp1405.pdf(前回)

何っすかねえ、今回の月報に関しては前回比較的には特段これというのは無いのですが、なんか声明文と微妙に語順的な話とかで違うのがあるという方が気になったのですけど・・・・・・・

・現状認識:基本的に声明文と同じです

『わが国の景気は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動がみられているが、基調的には緩やかな回復を続けている。』(今回)
『わが国の景気は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動がみられているが、基調的には緩やかな回復を続けている。』(前回)

ここは同じ。

『海外経済は、一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復している。輸出は、このところ横ばい圏内の動きとなっている。』(今回)
『海外経済は、一部になお緩慢さを残しているが、先進国を中心に回復しつつある。輸出は、このところ横ばい圏内の動きとなっている。』(前回)

これ昨日ネタにした声明文比較の所でチェックが抜けていましたけど(すいません)緩慢さを「残しているが」→「残しつつも」に加えて、先進国を中心に「回復しつつある」→「回復している」となっていますので、やっぱり海外経済についてはきっちり上方修正になっていますな。

『設備投資は、企業収益が改善するなかで、緩やかに増加している。公共投資は高水準で横ばい圏内の動きとなっている。個人消費や住宅投資は、このところ駆け込み需要の反動がみられているが、基調的には、雇用・所得環境が改善するもとで底堅く推移している。鉱工業生産は、駆け込み需要の反動の影響を受けつつも、基調としては緩やかな増加を続けている。』(今回)

『設備投資は、企業収益が改善するなかで、緩やかに増加している。公共投資は高水準で横ばい圏内の動きとなっている。個人消費や住宅投資は、このところ駆け込み需要の反動がみられているが、基調的には、雇用・所得環境が改善するもとで底堅く推移している。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は緩やかな増加基調をたどっている。』(前回)

ということで生産以外の項目は前回と同じ、生産の判断を駆け込み需要の反動という一時的な要因とされるものを理由としてはいますが判断下げは下げという事で。


・先行き見通し:現状判断で海外経済を上げているのに何故か同じとは

『先行きのわが国経済は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかな回復を続けていくとみられる。』(今回)
『先行きのわが国経済は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかな回復を続けていくとみられる。』(前回)

というのは声明文と同じくで前回同様です。声明文では載っていない需要項目別の話ですけど。

『輸出は、海外経済の回復などを背景に、緩やかに増加していくと考えられる。』(今回)
『輸出は、海外経済の回復などを背景に、緩やかに増加していくと考えられる。』(前回)

同じなんですねえという所ですが、海外経済の現状認識は上がっているのに輸出の方は見通しが変わらずに「緩やかに増加」となっているのは何とも残念な所で。

『国内需要については、公共投資は、高水準で横ばい圏内の動きを続けるとみられる。設備投資は、企業収益が改善傾向を続けるなかで、緩やかな増加基調をたどると予想される。個人消費や住宅投資は、駆け込み需要の反動の影響を受けつつも、基調的には、雇用・所得環境の改善などに支えられて、底堅く推移するとみられる。こうしたもとで、鉱工業生産は緩やかな増加基調をたどると考えられる。』(今回)

『国内需要については、公共投資は、高水準で横ばい圏内の動きを続けるとみられる。設備投資は、企業収益が改善傾向を続けるなかで、緩やかな増加基調をたどると予想される。個人消費や住宅投資は、駆け込み需要の反動の影響を受けつつも、基調的には、雇用・所得環境の改善などに支えられて、底堅く推移するとみられる。こうしたもとで、鉱工業生産は緩やかな増加基調をたどると考えられる。』(前回)

ということで国内需要に関しての先行き見通しにも変化はなく、生産に関しては声明文および月報で示されている「駆け込み需要の反動」という現状認識の変化に対して先行きの見通しは不変ですが、まあ基本的に駆け込み需要の反動なので織り込み済みというのと、駆け込み需要の反動なので一過性という事で、こちらが変わっていないのはまあ話としては分かります。


・リスク要因も声明文と同じ

『この間、リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(今回)
『この間、リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(前回)

まあ順当。


・物価に関する部分:声明文よりもこちらの表現の方が分かりやすいように見えるのだが

『物価の現状について、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、国内企業物価は、3か月前比で緩やかに上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、1%台前半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(今回)

『物価の現状について、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、国内企業物価は、国際商品市況や為替相場の動きなどを背景に、3か月前比で横ばい圏内の動きとなっている。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、1%台前半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(前回)

今回は国内企業物価の現状判断が上昇となっていますが、前月の先行き見通しが次に出て来ますけど、前月時点では企業物価の見通しが横ばいでして、実はここの現状認識は前回の見通しを「外した」格好での上方修正になっていて日銀もニンマリですね。

『物価の先行きについて、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、国内企業物価は、当面、緩やかな上昇を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、暫くの間、1%台前半で推移するとみられる。』(今回)
『物価の先行きについて、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、国内企業物価は、当面、横ばい圏内の動きを続けるとみられる。消費者物価の前年比は、暫くの間、1%台前半で推移するとみられる。』(前回)

ということで今回は国内企業物価の見通しを上方修正していますので、物価目標という面で見れば若干ではありますが強気化への道という所ではあります。

でまあそれはそれとして、声明文ですと「消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると」という文言が現状認識では今回から入り、先行き見通しでは今回から外れるというややこしいことをしていまして、こちらでは普通にこの文言が両方に入っているというのは一体全体何ですねんというのが気になる、というかこっちの方が分かりやすいのですがががががと思うのですがどうなんでしょ。


・金融環境では企業の資金需要に関する部分が

『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』以下の所は基本的に事実関係を淡々と記述しているので特段の意志は無いのですけどね。

『資金需要面をみると、運転資金や企業買収関連を中心に、緩やかに増加している。以上のような環境のもとで、企業の資金調達動向をみると、銀行貸出残高の前年比は、2%台半ばのプラスとなっている。CP・社債の発行残高は、概ね前年並みとなっている。』(今回)

『資金需要面をみると、運転資金や企業買収関連を中心に、緩やかに増加している。以上のような環境のもとで、企業の資金調達動向をみると、銀行貸出残高の前年比は、2%台前半のプラスとなっている。CP・社債の発行残高の前年比は、マイナスとなっている。』(前回)

ということで、まあ事実関係の話ではあるのですが、貸出の増加ペースが上がっている事と、市場調達の残高が減少から前年並みに戻っているという企業の資金需要が高まっている結果というのを示しているのがほっほーという感じですな。

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2014/06/16

○決定会合レビュー:まずは声明文比較

ええまあ最近は「決定会合2日目は輪番も入札も無いので材料が無いですねえ(笑)」という会話が盛大に行われるという今日この頃でありますが、その通りに無風の結果たあどういう事よという次第で(^^)。

声明文
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/k140613a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/k140521a.pdf(前回)

・現状判断:海外を微妙に引き上げ、生産を微妙に引き下げ

『わが国の景気は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動がみられているが、基調的には緩やかな回復を続けている。』(今回)
『わが国の景気は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動がみられているが、基調的には緩やかな回復を続けている。』(前回)

ということで基調判断としては駆け込みの反動の影響が継続しているという事になっておりますな。

『海外経済は、一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復している。輸出は、このところ横ばい圏内の動きとなっている。』(今回)
『海外経済は、一部になお緩慢さを残しているが、先進国を中心に回復しつつある。輸出は、このところ横ばい圏内の動きとなっている。』(前回)

今回変化している部分その1の海外経済ですが、緩慢さを「残しているが」が「残しつつも」という表現に替わっていますが、さてこの違いが判りにくいのでこういう時の必殺技「声明文英訳版」を見るという事にしてみましょう。

http://www.boj.or.jp/en/announcements/release_2014/k140613a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/en/announcements/release_2014/k140521a.pdf(前回)

『Overseas economies -- mainly advanced economies -- are recovering, albeit with a lackluster performance still seen in part.』(今回)
『Overseas economies -- mainly advanced economies -- are starting to recover, although a lackluster performance is still seen in part.』(前回)

お、おう・・・・・・・

この接続詞表現の違いがどう違うのかさっぱりワカランのだが、多分日本語のニュアンスからすると多分前回より強いと思うのだががががが。

『設備投資は、企業収益が改善するなかで、緩やかに増加している。公共投資は高水準で横ばい圏内の動きとなっている。個人消費や住宅投資は、このところ駆け込み需要の反動がみられているが、基調的には、雇用・所得環境が改善するもとで底堅く推移している。』(今回)

『設備投資は、企業収益が改善するなかで、緩やかに増加している。公共投資は高水準で横ばい圏内の動きとなっている。個人消費や住宅投資は、このところ駆け込み需要の反動がみられているが、基調的には、雇用・所得環境が改善するもとで底堅く推移している。』(前回)

とまあここまでは全文一致。

『鉱工業生産は、駆け込み需要の反動の影響を受けつつも、基調としては緩やかな増加を続けている。』(今回)
『以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は緩やかな増加基調をたどっている。』(前回)

ということで今回生産の認識を下げていますが、まあこれは駆け込み需要の反動の影響という話なので想定内という事になるかと思うのでそれほど政策インプリケーションは無くて、さっきの海外経済に関する部分についてはまあ超微妙な表現変化で微細にも程があるのですけれども、輸出が伸びねえというのをずーっと問題にしているので、そういう意味ではまあちったあ威勢の良い話という事にはならんでも無い、という所だと思います。

『この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、1%台前半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(今回)

『この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、1%台前半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(前回)

ここの「消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて」というのが見通しの部分でも変化がありまして、単に税率引き上げに伴うテクニカルな部分に関する話だとは思うのですが、先行き見通しの所では逆にこの文言を外しておりますな。


・先行き見通し:特に無いけど消費税率の直接的な影響云々に変化

『先行きのわが国経済については、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかな回復を続けていくとみられる。消費者物価の前年比は、暫くの間、1%台前半で推移するとみられる。』(今回)

『先行きのわが国経済については、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかな回復を続けていくとみられる。消費者物価の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、暫くの間、1%台前半で推移するとみられる。』(前回)

経済の見通しに関しても物価の見通しに関しても基本的に同じ話をしているのですが、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみてという文言を外しておりまして、これはまあ直接的な影響は2か月程度で終了という事になっているのでそういう事ですねというテクニカルな話ですが、間接的な影響の方はどうなんでしょうというのはスルーっつーかまあそもそもその辺りは有耶無耶な訳でして、何か「直接的な影響」というのを出して直ぐ引っ込めるんだったら(現状認識はまあ良いですけど)先行き見通しの所で出したり引っ込めたりしない方が見やすいと思うんですけどね。


・リスク要因と最終パラグラフは同じです

『リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(今回)
『リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(前回)

ということでリスク要因の文言は同じ。


『「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う(注)。』(今回)

『「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う(注)。』(前回)

こちらも前回と同じで、デフレ脱却云々の文言は外れたままで継続となっております。なお木内審議委員の毎度の提案があって毎度のように却下されているのも同じです。


○会見は記者のツッコミ不足が目立ちますが内容はテキスト出てから

ブルームバーグから。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-N73N3W6TTDSK01.html
黒田日銀総裁:恒久減税は恒久的な財源が必要なのは当然−法人減税
更新日時: 2014/06/13 18:12 JST

見出しが恒久減税の話になっている時点でもう無風だったのが非常に良く判る会見ですが、金曜の会見は多分3分の2位は聞いてみたのですが、質問が途中で出なくなりそうになるという位にツッコミパワーの無い会見でございましたが、ヘッドライン詐欺がちょっとだけありましたなということだけメモしておきます。

『15年になったらやめるということない』(上記URLより、以下同様)

という小見出しがありまして、その先にこんな記事が。

『日銀が量的・質的金融緩和について、今年末までしかマネタリーベース残高の見通しを示していないことについて、目標が達成されるまでは、15年1月以降も現在の資産買い入れを続けていくのか、という質問も出た。』

『総裁は「カレンダーで何月までと決まっているのではなく、オープンエンドで、あくまで2%の物価目標の実現、そしてそれを安定的に持続するため必要な時点まで続けることに変わりはない」と指摘。「15年になったら2%に達してないのに、あるいは安定的に持続する状況になってないのに量的・質的緩和をやめるということはない」と述べた。』

ということで、まあ確かにそんな感じで「2%達成できなかったらそらQQE続けます罠当たり前ですがな」ってニュアンスの答えをしていただけなのですが、ここのブルームバーグニュースの小見出しでもその次に『目標達成が後ずれなら追加緩和か』って微妙な小見出しを入れてみたり(良く良く記事を見れば判りますけれども「後ズレなら追加緩和か」というのは質問の趣旨の方であって黒田さんはその件についての説明はしていない)、まあ他にネタが無いからだと思うのですが、微妙にミスリードなヘッドラインを入れていますなあとも思います。

ちなみに盛大にミスリードっぽいヘッドラインを打っていたのは共同通信なのですが、共同のヘッドラインはネットには出てこないので惜しくもネタにするのは今回はパスという事で。

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2014/06/12

○調節年報から少々ですが本日は本当に少々(汗)

出たのは先週ですが佐藤さんの講演とかECBとかで遅くなりましたな。

http://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2014/ron140605a.htm/
2013年度の金融市場調節

http://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2014/data/ron140605a2.pdf(概要)
http://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2014/data/ron140605a1.pdf(全文)

ということですが、まあこれは全文をつらつらと読んでいただくのが吉ですので、そこそこ量はありますがまあ全文読むことを推奨させて頂きます。で、本日はこちらのネタでも盛大に実施という所ではあるのですが、例によって例の如く段取りが宜しくない不肖このアタクシは時間ががががとなっておりますので、まあとりあえず皆様におかれましては大概に耳タコではあるかと思いますが、当座預金残高とポートフォリオリバランスのテクニカルな面での意味合いについて説明している部分がありますのでそこから引用ということで、全文の本文10ページ(ファイルの11ページ目)にある『BOX2 資産買入れと日銀当座預金残高の増減』を引用。


・毎回この説明を入れているというのは実に味わいがあるという話だが今回はポートフォリオリバランスの話も

『BOX2 資産買入れと日銀当座預金残高の増減』から引用しますが本当は図表があって図表を貼り付けると更に分かりやすいのですがそれは上記URLから見てちょという事で。

『日本銀行が資産買入れ、例えば長期国債買入れを行うと、取引相手の民間金融機関のバランスシート上、バランスシートの規模は変わらないが、資産サイドで国債が減少する一方、日銀当座預金が増加するという構成の変化が生じる。一方、日本銀行のバランスシート上は、資産サイドで国債が増加し、負債サイドで日銀当座預金が増加する(図表5)。』

さよですな。

『このとき、日本銀行の長期国債買入れの進捗により、国債利回りに低下圧力がかかるため、日本銀行に国債を売却した金融機関が、当該売却資金の再投資を検討する際、ポートフォリオ全体としての収益性を維持するために、リスク性資産への投資や貸出等を積極化することが期待される(ポートフォリオ・リバランス効果)。』

という説明でして、「再投資」という観点から説明しております。まあ当たり前ですけど。

『なお、ある金融機関がポートフォリオを変化させるために株式投資や貸出を積極化した場合でも、株式の購入代金や貸出金はいずれかの金融機関に預金として流入することとなり、その預金を受け入れた金融機関の日銀当座預金残高が増加する。』

その通りですな。

『言い換えれば、民間部門内での取引により個々の金融機関の日銀当座預金残高は変化するが、その増減は相殺されるため、全体の日銀当座預金残高が増減することはない。全体の日銀当座預金残高は、あくまでも日本銀行の資金供給(資産買入れ等)によって決定される。すなわち、ポートフォリオ・リバランス効果は、全体の日銀当座預金が株式投資や貸出に振り替わるという形で現れるのではなく、民間金融機関のバランスシートの構成を変化させるとともに、その投資行動に影響を与えることを通じて、発揮されると言える。』

ということで、まあ読者の皆様におかれましては耳タコだと思うのですが、調節年報出る度にこの話が毎度のように説明されていまして、どんだけ「超過準備から貸出に回らないのはケシカランので日銀は何とかしろ」みたいな話を日銀は打ち込まれているのかと想像すると落涙を禁じ得ない次第ではありますけれども、何せECBの超過準備マイナス金利チャージ攻撃の翌朝に経済クオリティ番組であらされる所の某テレひがしの番組様が堂々と「超過準備を貸出に回すことを期待しての措置うんぬん」とか言い出す次第でありますので、調節年報出る度にこの話を書かないといけないとは実にこう残念な話ではあります。

・・・・・・・しかしまあ何ですな、この説明は技術的には全く持って仰せのとおりの話なのではあるのですが、良く良く考えてみますと、ポートフォリオリバランスが発生するのは「民間金融機関の投資行動に影響を与えることを通じて発揮される」という話なのですから、それだったら長期国債の買入などという二階から目薬な話をするのではなく、もっと直接的に民間金融機関のバランスシート構成に影響を与えるような制度インセンティブを与えれば良いだけ(資産のリスクウェイトをいじるとか)のような気がするんですけどねえ(すっとぼけ)という所であって、期せずして金融政策によるポートフォリオリバランス効果の発生という政策波及効果の限界の説明にもなっているのが実に味わいが深いと思うのでありました。

#いやまあ書いている方はそういう意図はないと思いますけど

なお、今回の調節年報はQQE導入の影響から「この辺をこう変化させました」系の話が例年よりも多くなっている(当たり前だが)こともあり、何か淡々と事実関係を記述しているというようなあっさり味なテイストを感じるのですが、前年度との詳細比較とかしていないので単なる印象かもしれません。まあBOXと書いてあるコラムは割と面白いので他を飛ばしてBOXだけ拾い読みでも良いかもしれません。

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2014/06/02

・日銀レビューとな

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2014/rev14j02.htm/(概要)
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2014/data/rev14j02.pdf(本文)
米国の労働市場のスラックについて
― 労働参加率を中心に

ということでして中身はまあ読んでちょという感じですが(ネタが無かったら後日ネタにするかも)ここの纏めの部分が実に正論なんだが味わいがあるのでちょっとご紹介。

本文6ページの『おわりに』から。

『本稿では、労働参加率を中心に、米国の労働市場のスラック計測を巡る論点について、整理してきた。金融危機後の経済の大きな落ち込みもあって、各種指標の変動について、「構造」と「循環」を正確に見定めることは難しくなっている。この結果、労働市場のスラックを巡る不確実性は、かなり大きくなっている。』

うむ。

『FRB も、こうした不確実性の高まりを強く意識していることが窺われる。すなわち、3 月のFOMC(米国連邦公開市場委員会)の公表文では、労働市場の「幅広い指標」を点検する必要性が強調されたほか、イエレン議長も、講演において同様の趣旨の発言をしている9。また、ニューヨーク連邦準備銀行やアトランタ連邦準備銀行のホームページでは10、労働参加率に関係する指標や、各種失業率指標に加え、フローデータ(自発的離職率や失業者の就職率等)や賃金など多岐に亘る指標が、「労働市場に関する重要な指標」として掲載されている。』

ですなあ。

『それらをみると、労働市場の相応の数の指標が、失業率が示すほどには労働需給の改善が進んでいない――つまり、労働市場のスラックは、失業率が示す以上に大きい――ことを示唆しているようにみえる(図表11)。一方で、改善の鈍い就業率やディスカレッジドワーカー比率などは、労働参加率と密接に関係しており、そもそも金融危機前の水準と単純に比較することはできない。加えて、長期失業者や非自発的パートタイム労働者などの増加をどのように捉えるべきかについても、コンセンサスは得られていない。「これらを包含した広義失業率(U6)を注視する必要がある」との見方がある一方、「労働市場のスラックの指標としては(長期失業者を対象外とした)短期失業率が望ましい」との指摘もみられている(BOX参照)。労働参加率と同様、失業率についても、その変動を「構造」と「循環」要因に切り分けること、つまり構造失業率を把握することは容易ではない。』

>構造失業率を把握することは容易ではない
>構造失業率を把握することは容易ではない
>構造失業率を把握することは容易ではない

ほほう。

『また、現在のように経済が大きく変動する局面では、「構造」と「循環」に分解する、というアプローチで捉えること自体が、必ずしも適切でなくなっている可能性もある。例えば、最近のFRBの調査統計局長らによる論文( Reifschneider,Wascher and Wilcox [2013])では、循環的に需要の弱い状態が続き、失業期間が長期化していくと、結果として構造失業率が上昇してしまう――循環要因が構造要因に転化する――リスクに言及している。他方、逆の因果関係として、構造問題が強く意識されるもとでは、需要が弱い状態が続き、結果として、経済が停滞してしまうリスクも考えられる。また、技術革新など構造面のポジティブショックが、新たな需要を掘り起こし、景気循環にプラスの影響を与えることもあり得る。こうした議論は、このところ話題に上ることの多い先進国の長期停滞論(Secular Stagnation)とも関連する。』

ということで、ここに述べられている説明は誠に仰せのとおりでありまして、まあ書いている方もピュアにこの問題について書いているという事なのですが、一方で展望レポート基本的見解の中では経済物価見通しの所で思いっきり「潜在成長率を上回る成長が続き」という話をしてみたり、物価上昇のメカニズムの話をするのに需給ギャップを持ち出したりというようなプレイを絶賛実施している訳でございまして、巧まずして大変にイイイヤミダナーになっているのが実にこう味わいがありますなあ、という雑談でした。

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2014/05/27

○4月30日会合の議事要旨:色々な見解の相違が拡大&物価楽観派の説明が色々と怪しい

つーことでメインイベントである。何か寝坊したような気がするがキニシナイ。
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2014/g140430.pdf

・委員会の経済情勢検討部分から:海外はまあ普通ちゃあ普通だが国内が無暗矢鱈と景気に強い件

執行部からの報告部分に関しては(展望レポートの中でああだこうだと示されているのもありますからして)盛大に割愛して本文5ページ(PDFファイルの7枚目)の『U.金融経済情勢と展望レポートに関する委員会の検討の概要』から参ります。

最初が海外金融市場の話と海外経済の話でして、全般的にはまあ概ねそんなもんでしょうという感じですが、米国の現状と先行きに関して。

『地域毎にみると、米国経済について、委員は、寒波の影響は薄れてきており、民間需要を中心に、裾野を広げつつ、緩やかな回復を続けているとの認識で一致した。複数の委員は、最近の各種経済指標から確認できるように、米国経済は、寒波の影響から脱して、景気回復の流れを取り戻していると述べた。複数の委員は、住宅投資の持ち直しのペースが緩やかである点については、今後注意してみていく必要があると指摘した。』

ふむふむ。

『そのうえで、先行きについて、委員は、財政面からの下押し圧力が和らぐとともに、雇用・所得環境の改善が明確となることから、景気の回復ペースは徐々に高まっていくとの見方を共有した。』

ふむ。

『一人の委員は、米国の労働市場に関しては、多数の長期失業者の存在などを背景に賃金上昇圧力は低位にとどまっているとの見方が多いが、賃金・物価に対しては短期失業率が大きな影響を与えるとの見方もあり、現在、短期失業率が相応に低い水準まで低下していることを踏まえると、今後の賃金・物価動向は注意してみていく必要があると指摘した。』

ということで先行きの米国物価動向には違和感ありというのが1名とな。でまあ欧州でも先行き回復という話の中で1名がちょっと待てという話をしているというのがほほうという感じではありますが、アジア新興国に関して。

『先行きのNIEs・ASEAN経済について、委員は、当面、ASEAN中心に調整局面が続き、成長に勢いを欠く状態が続くものの、その後は、金融資本市場が総じて落ち着いて推移するとの前提のもと、先進国の景気回復の好影響が及ぶことから、徐々に成長ペースが高まっていくとの見方を共有した。』

ということで結局先進国次第という話ではあります。でまあこの辺りまではまあそうですかねえという感じではあるのですが、国内の話がこれがまた妙に強いのよ。

『わが国の景気について、委員は、消費税率引き上げの影響による振れを伴いつつも、基調的には緩やかな回復を続けているとの見方を共有した。委員は、輸出は弱めとなっているが、国内需要が堅調に推移するもとで、雇用・所得環境の改善を伴いながら、景気の前向きの循環メカニズムはしっかりと作用し続けているとの認識で一致した。消費税率引き上げの影響について、多くの委員は、駆け込み需要の反動の大きさは、ハードデータが出ていないため断定できないものの、各種のミクロ情報などを踏まえると、今のところ概ね想定の範囲内のようであるとの見方を示した。なお、このうち一人の委員は、自動車業界では、3月までに積み上がった受注残があるために4月は反動減が大きくないとの声もあり、5月以降も状況を注視する必要があると指摘した。』

というのはまあ展望レポートで示されている所です。でまあ以下個別需要項目ごとの話になるのですが、ここの部分って全般的に展望レポートの中で示しているような感じの景気に対するやたらめったら強い話の部分ばかりが連呼されている感じでして、実はこの後に先行き見通しの議論が出てくるのですが、先行きの話で出ている見解との温度差が結構あるのよね。

では見てみませう。

『輸出について、委員は、ASEANなど一部新興国向けに弱さが残る中で、米国の寒波の影響や消費税率引き上げ前の駆け込み需要への対応に伴う国内出荷優先の動きなどの一時的な要因もあって、横ばい圏内の動きとなっているとの認識を共有した。先行きについて、委員は、一時的な下押し要因の剥落や、海外経済の回復などを背景に、緩やかに増加していくとの見方で一致した。ある委員は、既往の円の実質実効相場の低下もあわせて考えると、今後、輸出は堅調に持ち直すと考えていると述べた。』

これ展望レポートでも示されていましたし、この先の部分でも論点になっているのですが、輸出に関しては構造的な要因で伸びていないという話が有る筈なのに、ここでの話って一時的要因で全部済ませている所が大丈夫かおいおいという感じですし、1名が指摘している既往の実質実効為替相場の円安要因で何で今後輸出が持ち直すのかというメカニズムについては説明を頂きたいものであると思いますが何でそう強気なの??

『公共投資について、委員は、増加を続けており、先行きは、経済対策の押し上げ効果から今年度上期にかけて高水準で推移したあと、次第に緩やかな減少傾向に転じていくとの見解で一致した。設備投資について、委員は、企業収益が改善する中で、持ち直しが明確になっており、先行きも、緩やかな増加基調をたどるとの見方で一致した。』

この辺はよろしい。

『ある委員は、実質金利の低下やこれまで先送りされてきた更新投資、賃金上昇を受けた労働節約型投資の必要性などの要因を考慮すると、今後、設備投資の増加ペースは高まるとの見方を示した。』

ヴィンテージの方は判るが実質金利の低下の件と賃金上昇を受けた労働節約型投資ってのは違和感。

『雇用・所得環境について、委員は、労働需給は着実な改善を続けており、雇用者所得も緩やかに持ち直しているとの認識を共有した。今春の賃金改定交渉について、多くの委員が、ベースアップが相応に実現する方向での動きとなった点を指摘した。このうち、何人かの委員は、企業業績の改善を受けて、ベースアップを伴う賃金上昇の動きが中小企業も含めて広がっていることや、失業率が構造的失業率に近づくもとで労働需給がタイト化していることを考えると、今後、賃金上昇圧力は一層強まるとの見方を示した。』

はあそうですかという感じですが、まあこのベースアップの話は後の方での展望レポートの検討に該当する所でも出てくるのですけれども、正直今回のベースアップって消費税増税対応(で雇用者の負担が高まる点)部分の面があるように思われる訳でして、本当に持続的なのかは良く判らんぞなという気はするのだが妙に強いなおい。

『個人消費について、委員は、消費税率引き上げの影響による振れを伴いつつも、基調的には、雇用・所得環境が改善するもとで底堅く推移しており、先行きも底堅さが維持されるとの見方を共有した。複数の委員は、現在、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動がみられているが、雇用者所得の増加が家計支出を着実に下支えしていくことから、早晩、個人消費は底堅い動きへ戻っていくとの見方を示した。』

まあ消費が強いのは判るが雇用者所得の増加って実質ベースではどうなのよという気がする。

更に物価もアホのように強い話ががががが。

『物価面について、委員は、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、+1%台前半となっており、先行きも、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、暫くの間、+1%台前半で推移するとの見方で一致した。消費税率引き上げの物価への影響について、多くの委員は、東京の4月の消費者物価(除く生鮮食品)の前年比が、消費税率引き上げの影響を除いたベースでみて+1.0%と3月から横ばいとなったことから、税率引き上げ分が概ね転嫁されたとの認識を示した。』

まあここまではヨロシ。

『何人かの委員は、需要が底堅さを維持していることから、一部で懸念されていた実質値下げの動きは広がらなかったと述べた。さらに、一人の委員は、まだ増税分を転嫁していない企業も相応に存在しており、こうした先は、今後、消費が戻ってくる中で、徐々に増税分を転嫁していくと考えられるとの見方を示した。』

そ、そうなのか???

『これに対し、ある委員は、4月の消費税率引き上げは、価格改定の絶好の機会であり、5月以降暫くは、価格改定の動きは落ち着いたものとなるのではないかと述べた。』

システム改定が間に合わずに6月値上げになる都営地下鉄くらいでしょと思いますのでまあ普通こっちの見解が普通じゃないかと思うのだが。

『予想物価上昇率について、委員は、マーケットの指標や各種の調査などを踏まえると、全体として上昇しているとみられるとの認識を共有した。ある委員は、今月公表されたエコノミストサーベイで、中長期の予想物価上昇率が着実に上昇してきている点を指摘した。』

まあこれはふーんという感じですが、それまで低かった件はスルーして上昇した時だけ指摘ねえという感じは否めませんな。

ということでここまでアホのように強い話が多く(一部に突っ込みを入れる委員はあったものの)何ですかねえという感じなのですが、この先が見解が割れている所です。


・展望レポートの検討部分:物価に関しては見解がマッコウクジラ

ここまで引用しまくって無駄に増量してしまいましたのでちょっと反省して引用部分を減らしますがががが。

物価の先行きに関しては展望レポートに示されるように需給ギャップとインフレ期待でという話をしているのですけど、その背景に関して物価強気派の見解と弱気というか懐疑派の見解がマッコウクジラで対立状態であるのをまずは鑑賞致しましょう。

『何人かの委員は、企業がこれまでのコスト上昇分を販売価格に転嫁する動きや、付加価値を高めて新たな需要を掘り起こしながら販売価格を引き上げる動きがみられており、その傾向は今後も続くとの見方を示した。』

『また、複数の委員は、今春の賃金改定交渉においてベースアップが復活したことは、来年度以降につながるメカニズムとして重要であると指摘した。このうち一人の委員は、企業の価格設定行動の変化やベースアップの復活は、需給バランスに対する物価上昇率の感応度を高め、人々の中長期的な予想物価上昇率を高めるとの見方を示した。』

いやその需給バランスに対する物価上昇率の感応度が上がったって景気が逆サイクルになったら直ぐに物価が下がるって意味ですけど。あとベアに関しては本当に来年度以降に繋がるのかは謎だわな。

『これに対し、ある委員は、予想物価上昇率の上昇や企業の販売価格引き上げは緩やかに進むため、2%の実現は見通し期間の終盤になるとの認識を示した。そのうえで、物価の先行きの記述としては、「2%程度」という幅のある表現でなく、「物価安定の目標」である「2%」の実現時期に焦点を当てた書き振りとすべきであると指摘した。』

これは後の展望レポートでの反対理由を見ると白井さんのようです。2%はピンポイントで目指すものであるから程度という話は変じゃないのというのは当初の政策協定での説明で確か2%はピンポイントという話と程度の話が混線していたのの継続みたいな感じっすな。

『別の一人の委員は、2%に向かって予想物価上昇率が上昇することは不確実性が高いと述べた。』

『別のある委員は、@今後円安の物価押し上げ効果が剥落する可能性が高い中で、労働需給タイト化などの要因が物価をどの程度押し上げるか不確実であり、A予想物価上昇率についても、「物価安定の目標」である2%に向かって上昇し、収斂していくのは難しいとの見方を示した。』

というのが恐らく佐藤さんと木内さんでどっちがどっちだか判らん(多分前者が佐藤さんで後者が木内さん)ですが、まあこういうツッコミでございますな。

『そのうえで、委員は、1月の中間評価時点と比べて、成長率の見通しは2014 年度について幾分下振れるものの、物価の見通しについては、@雇用誘発効果の大きい国内需要が堅調に推移するもとで、労働需給が引き締まっており、この傾向がさらに強まることや、A中長期的な予想物価上昇率の高まりが実際の賃金・物価形成に影響を与え始めているとみられることから、概ね不変であるとの見解で一致した。』

この辺は定例会見でも散々突っ込まれた話。

『多くの委員は、今回の景気回復は雇用誘発効果の大きい非製造業が中心となっているため、労働需給がタイト化しやすく、労働市場の面から物価が上がりやすくなっているとの見方を示した。』

ふーん。

『一方、ある委員は、供給制約による賃金や物価の上昇は、持続的でない可能性があると述べた。』

4月1回目の会合でも指摘されていましたな。これはご尤も。


・予想物価上昇率の話の部分で短観の企業物価関連の数値を出すのはさすがにちょっと・・・・・・・

その次。

『委員は、予想物価上昇率の高まりが実際の賃金・価格形成に与える影響について議論した。』

ビジュアル化して割り切ればフィリップスカーブの議論でもある。

『委員は、このところ、労使間の交渉において、物価上昇率の高まりが意識されているほか、企業の間でも、従来の低価格戦略から、付加価値を高めつつ販売価格を引き上げる戦略へと切り替える動きがみられるようになっているとの認識を共有した。』

まあ単に低価格だけだとコスト上昇に耐えられないだけのような気もしますがね。

『ある委員は、実際の経済活動の主体である企業や家計の物価観が、これまでの「物価は下がるもの」から、「物価は緩やかに上がるもの」へと変わってきており、そのもとで、企業や家計の行動も変化しているとの見方を示した。』

そうなのかという感じだし、大体からしてデフレとは言われているけどサーベイ見ても「物価が下がる」というのかという感じはするのだが、上がらんという意識は強かったと思うけど。

『企業の物価観について、別の一人の委員は、3月短観で、企業が高めの水準の物価見通しを示し、また、先行き物価上昇率が上昇していくことを予想したことは、一般的に企業は慎重な見方をしがちであることを踏まえると、非常に意味があり、こうした物価観は、今後の価格設定行動や賃金交渉で大きな要素になると指摘した。』

これがまた酷いとしか言いようがないのだが、3月短観での企業の物価見通しは確かに高かったかも知れんが、自社製品(やサービス)の販売価格判断に関しては大企業の見通し数値かなり悲惨だったじゃねえかという所で、あの数値を平場の議論で出してくるとかさすがに如何なものかという話なのですけどねえ。

『複数の委員は、企業や家計の物価観に変化が窺われるもとで、今春の賃金改定交渉においてベースアップが復活した意義は大きいと述べた。』

多分それは復活は復活でも消費税増税対応だと思うぞ。非正規は需給で上がっているにしても。

『また、企業の価格設定行動について、何人かの委員は、景気の持続的改善が続くとの見通しが広がっていることもあり、これまでのコストの上昇を販売価格にストレートに転嫁する動きがみられ始めていると指摘した。』

まあ結局コストプッシュなんですけどね。

『この点について、複数の委員は、こうした動きが今後広がっていくかは、国内需要の堅調さが維持されるかにかかっているとの見方を示した。』

結局はこれなんですけどね。


・マクロ需給バランス云々で成長の天井論

その次である。

『委員は、マクロ的な需給バランス縮小の背景について議論を行った。』

『何人かの委員は、マクロ的な需給バランスが、思いのほか速いペースでゼロ近傍に達していることは、今回の景気回復が労働集約的な非製造業中心であるということに加え、少子高齢化や、リーマン・ショック後の設備投資の先送りなどにより、やや長い目でみて、日本経済の供給の天井が低くなってきていることを示すものであると指摘した。』

キタコレ。何人かの委員とな。

『そのうえで、これらの委員は、日本経済が持続的な成長を続けていくためには、成長戦略の実行などにより潜在成長率を引き上げていくことが重要であるとの見方を示した。』

その場合の成長と物価の話は??というかこの話が出ている(しかも複数委員)のに先行き見通し部分では潜在成長率に関する話が特になくアプリオリに従来の見通しを継承しているような話になっているのは何ですねんという気がするのだが。

『ある委員は、そのためには、非製造業の生産性改善努力が必要であると述べた。別の一人の委員は、女性や高齢者が働きやすい環境を整えることで、労働参加を高めることも求められると指摘した。この点に関して、ある委員は、非製造業では、設備投資は堅調で、収益力も上昇していること、また、幅広い業種で様々な需要の掘り起こしが進んでいることを踏まえると、非製造業の生産性は上昇してきているとの見方を示した。』

ホンマカイナという感じですが。


・先行きの上振れ、下振れ要因で輸出の話と消費税の話を鑑賞

上振れ、下振れ要因に関して少々鑑賞を。

まず輸出。

『輸出動向について、委員は、このところの輸出の弱さは、基本的に、わが国経済との結びつきが強いASEANなどの新興国経済のもたつきの影響が大きいが、わが国製造業の海外生産移管の拡大といった構造的な要因も相応に影響している可能性が高いとの見方で一致した。』

なのに何で先ほどの部分では先行きにその構造要因の言及がないの??????

『そのうえで、委員は、新興国経済の先行きや、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどの海外経済の動向やわが国企業の内外生産ウエイトの状況次第で、輸出は上下双方向に変動する可能性があるとの認識を共有した。』

ということだが構造要因の寄与の話が華麗にスルーとはどういう事ですねん・・・・・・

消費税の影響について。

『消費税率引き上げの影響について、委員は、実質可処分所得にマイナスの影響を及ぼすものの、@政府による各種経済対策等が講じられていること、A税率引き上げは家計部門で以前から相応に織り込まれているとみられること、B財政や社会保障制度に関する家計の将来不安を和らげる効果も期待できることなどから、消費へのマイナスの影響をある程度減殺する力も働くとの見方で一致した。』

まあそんなに大きくないという気もするが、2番目は実際に時間が経過しないと判らんし、3番目はウソコケとしか申し上げようがない。

『一人の委員は、これに関して、昨年後半頃からの消費者マインドの悪化を懸念していると述べた。ある委員は、先行き、雇用・所得環境の改善が、消費税率引き上げの影響をどれだけ吸収できるかがポイントになるとの見方を示した。』

ですなあ。


・第一の柱、第二の柱

他のリスク要因の話はスルーしまして展望レポート検討最後の部分。

『まず、第1の柱、すなわち、先行き2016 年度までの経済・物価の中心的な見通しについて、多くの委員は、見通し期間の中盤頃に、2%程度の物価上昇率を実現し、その後次第に、これを安定的に持続する成長経路へと移行していく可能性が高い、との見解を示した。これに対し、何人かの委員は、物価の先行きの見通しについて、より慎重な見方を示した。』

3名な。

『次に、第2の柱、すなわち、金融政策運営の観点から重視すべきリスクとして、委員は、経済の中心的な見通しについては、輸出の動向など不確実性は大きいものの、リスクは上下にバランスしている、との認識を共有した。物価の中心的な見通しについても、大方の委員は、中長期的な予想物価上昇率の動向などを巡って不確実性は大きいものの、リスクは上下に概ねバランスしている、との見方を示した。これに対し、一人の委員は、リスクは下方にテールが偏っていると指摘した。』

下方にテールとな!というのは後を読むと判りますが佐藤さんです。


・物価安定の理解に関してたぶん佐藤さんと思われますが論点提示とな

本文13ページからの『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』の見どころは一箇所。

『一方、一人の委員は、「物価安定の目標」を2年程度で達成するのが難しいとみられる中で、「量的・質的金融緩和」が長期間継続される、あるいは極端な追加措置が実施されるという観測が市場で高まれば、金融面での不均衡累積など中長期的な経済の不安定化に繋がる懸念があるため、継続期間を2年程度に限定し、その後柔軟に見直すとの表現に変更することが適当であると述べた。』

というのはいつもの木内さんの提案ですけれどもこの先が見所。

『別のある委員は、「物価安定の目標」は、柔軟な枠組みであり、ピンポイントで2%を実現することが究極の目標であるとの誤解を避けるべきであるとの認識を示した。』

10月展望レポートの時にもこの話をしていましたですけど、そういや白井さんは展望レポートの表現で2%ピンポイントみたいな話をしていまして、白井さんともマッコウクジラなのは中々味わいがありますな!!!!


・ということで展望レポートに3名の反対である

つーことで展望レポートに3名の反対があったのですが、3名の反対理由がこれまた微妙に距離がありまして、まあその前の物価の話での強気派とそうじゃない人の距離感を反映しているのに加え、先ほどの政策枠組みなどにも掛かる部分があるなあと思います。まあ鑑賞しませう。

白井さん。

『これに対し、白井委員からは、物価見通しについて、「見通し期間の中盤頃に、「物価安定の目標」である2%程度に達する可能性が高い。その後は、中長期的な予想物価上昇率が2%程度に向かって収斂していくもとで、マクロ的な需給バランスはプラス幅の拡大を続けることから、強含んで推移すると考えられる」を「2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで「量的・質的金融緩和」を継続するもとで、見通し期間の終盤にかけて2%に達している可能性が高い。その後次第に、これを安定的に持続する成長経路へと移行していくとみられる」に変更することを内容とする議案が提出され、採決に付された。採決の結果、反対多数で否決された。』

2%はピンポイントだという話と、見通しの終盤にかけて達成するという話と、その間にQQEを継続するという話を突っ込んでいます。


佐藤さん。

『佐藤委員からは、@物価見通しについて、「本年度後半から再び上昇傾向をたどり、見通し期間の中盤頃に2%程度に達する」から「見通し期間の中盤頃に2%程度を見通せるようになる」に変更すること、A第1の柱の中心的な見通しについて、「2%程度の物価上昇率を実現し」から「2%程度の物価上昇率を目指し」に変更すること、B物価見通しのリスクについて、「上下に概ねバランスしている」から「下方にやや厚い」に変更すること、を内容とする議案が提出され、採決に付された。採決の結果、反対多数で否決された。』

逆に2%はピンポイントではなくて柔軟な枠組みであるという話に加え、「見通せる」という表現を使っているのは以前佐藤さんが講演で説明しているように「フォワードターゲット」の考え方を示していますな。で先行きリスク要因として下方に厚いということですが、物価見通しの「見通せるようになる」という段階での足元の水準感はぼかされているのですが、ただまあ全然無理じゃんという話では無いのですね、うんうん。


木内さん。

『木内委員からは、@予想物価上昇率の見通しについて、「中長期的な予想物価上昇率は上昇傾向をたどり、「物価安定の目標」である2%程度に向けて次第に収斂していく」から「中長期的な予想物価上昇率も安定的に推移する」に変更すること、A物価見通しについて、「暫くの間、1%台前半で推移したあと、本年度後半から再び上昇傾向をたどり、見通し期間の中盤頃に2%程度に達する」から「今後も概ね現状程度の水準で安定的に推移する」に変更すること、B先行きの金融政策運営について、「2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う」から「中長期的に2%の「物価安定の目標」の実現を目指す。そのうえで、「量的・質的金融緩和」を2年間程度の集中対応措置と位置付け、その後柔軟に見直すこととする」に変更すること、を内容とする議案が提出され、採決に付された。採決の結果、反対多数で否決された。』

長いので整理すると、1番は期待インフレ率の上昇は2%ではなくその手前で止まるので十分という見通し&考えで、2番は実際の物価に関しても同様という話。3番目はいつもの提案で、つまりとりあえず2%は中長期的目標であってまずはデフレ脱却した状態で安定すればエエヤンという話だが、それはQQEの2年で2%で均衡を脱却という枠組みとは違う話でもあるというのは毎度のお話です。

ということで、反対しているお三方もまた見解が違うという所ですが、特に物価見通しに関する部分は強気派とそれ以外のお三方(執行部以外の方々が実際にどうなのかというのはこれまたやや謎で実際は強気派じゃない人もいる可能性が)の見解もだいぶ乖離していますし、何かまあその辺を考えながら読むと中々面白い鑑賞物でしたな、ということで引用第増量企画で誠に申し訳ございませんでした。

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2014/05/22

○声明文ではご案内の通り「デフレ」云々の文言削除キタコレ!

ちなみにMPMの終了時刻はQQE導入以来最速となりましたが・・・・・・・・・

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/k140521a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/k140408a.pdf(4月1回目)

景気に関するアセスメント文言がある(=金融経済月報の公表がある)のは前々回になりますので、本日は基本的に4月8日の公表文との比較を行いますね。

・景気の現状認識:設備投資を引き上げ

『わが国の景気は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動がみられているが、基調的には緩やかな回復を続けている。』(今回)
『わが国の景気は、消費税率引き上げの影響による振れを伴いつつも、基調的には緩やかな回復を続けている。』(4月8日)

つーことで表現は変わっていますが、これはまあ時期的に消費税増税直後なのと、増税から1か月経過した後という事での表現変化でありまして、駆け込み需要の反動が発生する事については当初想定通り(ちなみに会見では想定よりも少ないかもという話でしたが詳しくは会見要旨出てから明日)なのでここは実質変化なし。で、以下は各需要項目。


『海外経済は、一部になお緩慢さを残しているが、先進国を中心に回復しつつある。輸出は、このところ横ばい圏内の動きとなっている。』(今回)
『海外経済は、一部になお緩慢さを残しているが、先進国を中心に回復しつつある。輸出は、このところ横ばい圏内の動きとなっている。』(4月8日)

とここは同じ。

『設備投資は、企業収益が改善するなかで、緩やかに増加している。』(今回)
『設備投資は、企業収益が改善するなかで、持ち直しが明確になっている。』(4月8日)

設備投資は持ち直し⇒増加と判断引き上げですな。

『公共投資は高水準で横ばい圏内の動きとなっている。個人消費や住宅投資は、このところ駆け込み需要の反動がみられているが、基調的には、雇用・所得環境が改善するもとで底堅く推移している。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は緩やかな増加基調をたどっている。』(今回)

『公共投資は増加を続けている。個人消費や住宅投資は、消費税率引き上げの影響による振れを伴いつつも、基調的には、雇用・所得環境が改善するもとで底堅く推移している。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は緩やかな増加基調をたどっている。企業の業況感は、引き続き改善しているが、先行きについては慎重な見方もみられている。』(4月8日)

公共投資は増加⇒横ばいですが、高水準でとかいう水準感の文言をわざわざ入れている辺りが味わいがあるというもので、でまあ消費税増税の駆け込み関連の文言を変更しているのは最初の部分と同じです。なお業況感云々に関しては短観直後の声明文にだけ出てくる仕様になっているので削除されている事に関するインプリケーションはありません(筈です)。

『この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、1%台前半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(今回)
『この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、1%台前半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(4月8日)

ここは判で押したように同じですな。


・先行き見通しは不変・・・・・・なのだが物価の「暫くの間」はそろそろ変えないのかね

『先行きのわが国経済については、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかな回復を続けていくとみられる。消費者物価の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、暫くの間、1%台前半で推移するとみられる。』(今回)

『先行きのわが国経済については、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかな回復を続けていくとみられる。消費者物価の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、暫くの間、1%台前半で推移するとみられる。』(4月8日)

ということで相変わらず全く同じなのですけれども、このCPI見通しに関しては今年の1月(展望レポート中間評価)の時にそれまでの「当面」から「暫くの間」に変更しまして、その時に「暫くの間」という文言の解釈について質問された時に6か月程度の期間という話をしていた訳で、最初に文言が出てから5か月経っているのにこの「暫くの間」というのが変わらないというのはもしかして物価目標達成時期の後ズレが起きていませんか大丈夫ですかなどと申し上げたくなりますな。

なお、この前の展望レポートでも物価目標達成時期の表現が四半期から半年程度後ズレしてませんでしたっけというツッコミがあった訳でして、ここの「暫くの間」ってそろそろ「当面」に変えないんでしょうかねえと思うのですがまだそこまで自信ないんでしょウヘヘヘヘと一応ツッコミを入れておこうかと存じます。

ちなみに英文の方ですと、「for the time being」が「for some time」になってそのままで推移しています。


・リスク要因では白井さんの反対が無くなりました

やっと取り下げましたかはいはいワロスワロスという所ですが、その反対理由説明などの時間分だけ今回の決定会合の時間が短縮化されたんですねわかります。

『リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(今回)
『リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられる(注1)。』(4月8日)

リスク認識は同じですが、注1の毎度お馴染み『(注1)白井委員は、国内の雇用・所得環境の改善ペースにも言及すべきであるとして、5.の記述に反対した。』というのが遂に取り下げですかワロタという所です。


・そしてこっそりデフレ脱却宣言キタコレ!

まあ最初に見てあれれと思ったのが最終パラグラフですけどね。

『「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う(注)。』(今回)

『日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う(注2)。このような金融政策運営は、実体経済や金融市場における前向きな動きを後押しするとともに、予想物価上昇率を上昇させ、日本経済を、15 年近く続いたデフレからの脱却に導くものと考えている。』(4月8日)

ということで今回はQQEについて「所期の効果を発揮」とキタコレでありますが、この「所期の効果」というのは先般公表された展望レポート基本的見解の本文8ページにある金融政策運営に関する部分にこのような記述がありますので、実は今回初めて出た訳ではありません。

http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1404a.pdf
の本文8ページ(PDFでも8ページ目)のケツで、本文的にもケツの所です。

『金融政策運営については、「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、今後とも、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う。』(上記URL先の展望レポート基本的見解より)

ということで所期の効果を発揮という大勝利エイエイオーなのは展望レポートを見た時に確認していたのでふーんという感じですが、今回はこのエイエイオーを出したのと一緒に後段の部分がばっさり削除されるの巻となりました(注の部分は木内さんのいつもの提案ね)。

で、以前でしたらデフレ脱却宣言キタコレ!という事になるのですが、何分にも現在の日銀のマンデートはデフレ脱却ではなくて、その先になります2%の物価安定目標でありますので、このデフレ云々の文言削除自体は新たな政策インプリケーションという訳ではありません(ちなみにデフレ判断をする係は旧経済企画庁です)。

つーかですな、そもそもQQEに関して「ここまで順調に推移」という認識を思いっきり示していて、しかも「2年で2%」という目標を立てている中で1年が経過しているのですから、何ぼ何でも未だにデフレ状態だったらダメだろという感じでして、文言が外れない方がおかしい(つーか1月中間評価辺りで外れてもおかしくなかったと思うのだが)ので、まあそういう意味では「ここまで順調に推移」というのを改めてコンファームしましたよという所ではないかと存じますです、はい。


なお、英文ではこの部分はこうなっています。
http://www.boj.or.jp/en/announcements/release_2014/k140521a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/en/announcements/release_2014/k140408a.pdf(4月8日)

『Quantitative and qualitative monetary easing (QQE) has been exerting its intended effects, and the Bank will continue with the QQE, aiming to achieve the price stability target of 2 percent, as long as it is necessary for maintaining that target in a stable manner. It will examine both upside and downside risks to economic activity and prices, and make adjustments as appropriate.[Note]』(今回)

『The Bank will continue with quantitative and qualitative monetary easing, aiming to achieve the price stability target of 2 percent, as long as it is necessary for maintaining that target in a stable manner. It will examine both upside and downside risks to economic activity and prices, and make adjustments as appropriate.[Note 2]

Such conduct of monetary policy will support the positive movements in economic activity and financial markets, contribute to a rise in inflation expectations, and lead Japan's economy to overcome the deflation that has lasted for nearly 15 years.』(4月8日)

Quantitative and qualitative monetary easing (QQE) has been exerting its intended effectsですかそうですか。


○今回の会見は白日銀成分が濃厚な希ガス(詳しくは明日)

会見の録画を見ましたが、ベンダーのヘッドラインと比較して特段のヘッドライン詐欺が見受けられなくなったのは実に結構なことです。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-N5X0PH6TTDTH01.html
日銀総裁:2%達成なら後はどうでもいいわけではない−成長力が重要
更新日時: 2014/05/21 18:00 JST

ということで確かにそんな話を総裁がしておられましたが・・・・・・・・

『黒田総裁は「中央銀行として物価安定目標を立て、それを実現していくことは最大の使命だ」と話した。「実質成長率がどのくらいかということと直接的に何かリンクして、金融政策を緩和したり引き締めたりすることは基本的にはない」と述べた。』(上記URLより、以下同様)

ということでして、つまりこれは現在の金融政策運営における執行部的なロジックとなります(筈です)が、潜在成長率が幾らだから望ましい物価水準が幾らみたいな話、すなわち「中長期的に目指す物価水準は別として、経済の現在の実力から見た場合に実力以上の物価水準を目指すのには弊害もあるのではないか」という話に対しては盛大に反対という立場になっている筈でして、執行部的ロジックですと経済の実力云々と望ましい物価水準は別箇のもので独立事象みたいなもんである、という話になっています(筈です)罠という事です。

つーことでその辺は黒日銀であって、成長率なんぞ知らんがなそんなもんは2%の物価安定を達成してから考えればええんじゃ、とまあやや極端な表現になっていますがそういう話っすよね。しかし(これ会見でも同じフレーズの中で話をしていた筈ですが)この後に漂白されたハルヒコ先生が登場するのである。

『一方で、「日銀法にも書いてある通り、日銀としては物価の安定を通じて、国民経済の健全な発展に資することを使命としているので、物価が2%達成されれば後はどうでもいいということではもちろんない」と話した。』

麿日銀キタコレ!!!

『「生産・所得・支出の好循環の下で日本経済がバランスよく成長し、雇用・賃金などの増加を伴いながら物価が2%程度の上昇に達する、あるいはそれを安定的に持続することが一番望ましい」と語った。』

ということですが、経済の実力を云々という話は金融政策でどうなるかというとそれは知らんがなと開き直って、ワシら2%目標がマンデートですねん2年で達成するけえ成長戦略はお前ら頑張れやゴルァという話をするのが黒日銀であって、こんな話をする黒日銀は塩素剤漂白されている可能性がありまして誠に遺憾というものでありますな。

つーことで会見テキストを見ながら会見ネタは明日投下しますが、今回の会見では追加緩和に関しての話も特になく(質問する方もさすがに追加緩和はどうですかという突っ込み方をする向きが激減しているというのも影響しているが)、全般的に白日銀っぽい感じになっていまして、もしかして黒田総裁におかれましては会見の度に白成分が強い時とそうでない時を日替わりメニューで出してくるというシマウマ展開を考えているのでしょうか(4月8日以降ね)とかしょうもない妄想も沸き起こる今回の会見なのでありましたとさ。

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2014/05/12

・決算剰余金の法定準備金積み立てを増やすとな

これまたコジツケ可能ネタ。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/rel140509c.htm/
日本銀行法第53条第2項に基づく認可申請について

『日本銀行は、第129回事業年度(平成25年度)決算において、財務の健全性確保の観点から、当期剰余金の5%相当額(注)を超える20%相当額を法定準備金として積み立てる方針を決定し、本日、財務大臣に対して日本銀行法第53条第2項に基づく認可申請を行いましたので、お知らせします。』

>財務の健全性確保の観点から
>財務の健全性確保の観点から
>財務の健全性確保の観点から

ほうほう。

まあ足元で国債馬鹿買入によってグロスの総資産ベースが拡大しているから準備金を拡大しましたとか、ETFやJ−REITという償還来ないリスク性資産の買入が拡大しているから準備金を拡大しましたとか、まあそういうのが表面的な話になると思うのですけれども、QQE正常化にあたっていずれかの時点で短期金利をいじらないと行けなくなり、その際に莫大に保有する国債の購入時利回りと短期金利の差分から発生する期間損益が赤くなってしまいますから正常化を見越した対策ですねわかります、とまあコジツケが可能ですなうんうん。まーこの手の話ってえのは何ぼでもコジツケ可能になりますのでご注意ありたしという所ですけどにゃ。


・日銀理事交代

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/rel140509d.htm/
http://www.boj.or.jp/about/organization/tanto.htm/

宮野谷名古屋支店長が理事に昇任されて大阪支店長、大阪支店長の櫛田理事が退任された田中理事の後任担当、名古屋支店長の後任は梅森発券局長という人事が公表されております。で、どうなんでしょうとかいう話につきましては華麗にスルーの所存でメモのみ。


○展望レポートネタの続きである:背景説明の方を読んでいると基本的見解にある進軍ラッパだけでは無いという件

引っ張ってしまいましてすいませんすいません。

http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1404b.pdf

先行きメカニズムに関する項目別部分をもう少し引っ張ってみます。本文24ページ(ファイルの26枚目)の対外収支と貯蓄投資バランスに関する所から参ります。

・対外収支とISバランス

まずは貿易収支。

『貿易収支をみると(図表31(1))、2011年度に1979年度以来の赤字となったあと、2013年度まで赤字幅の拡大傾向が続いている。その影響から、経常収支の黒字幅も縮小している。』

さて・・・・・・・

『名目貿易収支の悪化について要因分解を行うと(前掲図表30(2))、2013年度は、外貨建て取引比率の違いを反映して為替円安の価格への影響が輸出面よりも輸入面で大きく働いたことから、輸出入価格要因がマイナス寄与を拡大させたほか、実質輸出入要因(純輸出)のマイナス寄与も拡大気味となった。この実質要因の弱さについては、海外経済が新興国のもたつきなどから過去の平均的な成長率対比で伸び悩む一方、国内需要はかなり強めに推移するという、内外成長率格差が基本的な背景にある(図表30(3))。加えて、前述のような、構造的・一時的両面における輸出の増えにくさと輸入の増えやすさも、実質収支の悪化に影響したと考えられる。』

となりますと・・・・・・・・

『先行きについては、基調的にみて、国内需要の伸び率は幾分減速方向となる一方、海外経済の成長率は高まっていくため、内外成長率格差による収支悪化圧力は弱まるほか、駆け込み需要に伴う収支悪化要因も剥落するため、貿易収支の赤字幅は縮小していくと考えられる。』

という事ですが、金曜に引用したように可能性として構造要因(海外シフトと輸出の一部セクターでの競争力低下)によって輸出が伸びない可能性があり、貿易収支の赤字幅が縮小しないかもしれませんよね。

『また、所得収支についても、直接投資などによる海外資産の蓄積に伴い、黒字幅が拡大していくと考えられる。このため、経常収支の黒字幅は、緩やかながら再び拡大していく可能性が高い17。』

で、ISバランス。

『概念的に経常収支と表裏の関係にある国内の貯蓄投資バランスについて考えると(図表31(2))、見通し期間においては、民間部門の貯蓄超過幅は緩やかに縮小する一方、一般政府の赤字幅は、消費税率引き上げに伴う税収の増加もあって、それを幾分上回るペースで縮小すると見込まれる。このため、国内全体では、貯蓄超過幅は緩やかに拡大するとみられる。』

ということのようですが、一般政府の赤字って本当に縮小してくれるんですかねえ・・・・・・


・企業収益、設備投資

その次が企業収益と設備投資。

『企業収益は、改善を続けている(前掲図表8(1))。先行きについても、国内需要が堅調に推移することに加えて、輸出の緩やかな増加や為替相場の動きにも支えられて、改善傾向を続けると予想される。ただし、見通し期間の後半には、賃金の上昇などを通じ家計への分配がより進むため、企業収益の伸び率は徐々に鈍化していくと考えられる。』

ちなみに企業収益の伸び率は徐々に鈍化するのですが、この後に出てくる所得環境の話を見ると何故かそっちではこの鈍化する企業収益の伸びの影響がスルーされている辺りが大人の事情という風情を漂わせているのですが、4月1回目の議事要旨でも指摘している委員がいましたな。

『この間、為替円安の企業収益を通じた経済全体への影響という観点から、この1年余りの日本経済の動きを振り返ってみると、円安による円換算後の輸出入価格の変化は、製造業の収益を押し上げる一方、非製造業の収益を押し下げるという部門による違いを伴いつつ、経済全体では交易条件を幾分悪化させる方向に作用してきた(図表32(1))。』

円安の影響ネタキタコレ。

『しかし、為替円安は、製造業のウエイトが高い上場企業の株価上昇を通じて、個人消費などの国内需要にもプラスの影響を及ぼした。そうしたもとで、非製造業においては、従来からみられていた高齢者の消費の活発化や公共投資の増加といったポジティブな動きが続いたこともあって、為替円安による交易条件の悪化の影響は限定的にとどまり、非製造業部門の業況感や利益率はむしろ改善した(図表32(2))。また、製造業についても、為替円高の修正を受けて、業況感や利益率は大きく改善し、これが企業の前向きな動きを後押しした。』

ということで、円安の影響は交易条件の悪化よりもそれ以外で効果という話ですが、どさくさに紛れて為替市場と関係ない公共投資の話を加えていたりしてますし、円安効果でここから一段の株高や企業収益の改善が期待できるかという話はかなり怪しい部分がありそうで、そういう辺りを勘案するとここから先の円安ってどうなのよという話をしているようにも思えますな。

『設備投資については、企業収益が改善を続ける中で、持ち直しが明確になっている。製造業においては、回復の初期段階であるため、老朽化した設備の維持・更新投資や、情報化投資や研究開発投資といった戦略投資が中心になっているとみられる18。非製造業においても、物流システムの革新や堅調に推移するシニア層の消費の取り込みなどを企図して、能力増強を含め、前向きな投資に踏み切る動きがみられている。』

でもまあシニア層の消費活発化というのはサステイナブルな話でも無い(いやまあ構造的に将来不安が無くなるというのならともかく)と思うのですが、そうなると消費税増税後の動向を見てからという話になりそうな気がするんだが今後は。

『先行きについては、見通し期間を通じて、緩やかな増加基調をたどると考えられる(図表33)。すなわち、当面は、循環的な回復力が大きい中で、収益の改善傾向や稼働率の上昇などに伴って、設備投資は緩やかに増加していくとみられる。その後、資本ストックが充足されるに伴い循環的な押し上げ効果は次第に減衰していくが、成長期待の高まりや、それに伴う金融緩和効果の強まり、さらには各種企業向け減税の効果もあって、緩やかな増加基調が維持されると予想される。こうした設備投資を支える諸要因について確認すると、以下のとおりである。』

ということで・・・・・・・・


・先行きの設備投資に関する要因について

『第1に、「量的・質的金融緩和」の効果は、見通し期間中、設備投資を後押ししていくと考えられる。』

というのはいつも通りの実質金利ガーの話なので割愛。

『第2に、設備投資は、リーマン・ショックや震災後の落ち込みから漸く回復過程に入った段階で水準はなお低めであるため、経済活動の水準がさらに高まり、企業収益の改善傾向が続けば、循環的にペント・アップ需要が顕在化しやすいと考えられる。』

これも毎度話をしているネタですけれども・・・・・・・・・

『実際、「設備投資は、一定の成長期待のもとで、生産活動に必要とされる資本ストックを実現するよう行われる」との前提のもと、資本ストック循環の観点から設備投資の伸び率を評価すると、対資本ストックでみた設備投資比率は、企業の期待成長率から予想される水準を大きく下回って推移してきた。このため、当面の期待成長率がゼロ%台半ばにとどまるとしても、設備投資の増加余地はなお大きいとみられる(前掲図表33(1))。』

という話をしておりますが、これに関しては毎回の展望レポートやら金融経済月報やらで、こういう見通しを出している割には全然伸びてこないという実にこう残念な話が続いておりますわな。

『設備投資の対名目GDP比率やキャッシュ・フロー比率をみても(図表35(1)(2))、長期的にみれば低めの水準にある。このところ、改善の遅れていた製造業も含め設備の稼働率が上昇しているうえ、企業の設備過剰感も全体として解消されつつある点も踏まえると(後掲図表48(5)(6))、設備投資の循環的な回復力はよりはっきりしてきていると考えられる。』

という話でして、これってまあ読んでいましてそうだろうなあとはアタクシも思うのですが、その割には実績としての設備投資が待てど暮らせど戻ってこない訳で、ナンナンデショと思うのですけど。


『第3に、政府の規制・制度改革や企業の事業再構築など、競争力・成長力強化に向けた前向きな取り組みなどもあって、企業の中長期的な成長期待は緩やかに高まっていくと考えられる。』

まあ全然進んでいないけどな!!!!!以下書いてあるけど、金曜にもこの第三の矢の部分があったけど、もっと日銀はこの点を散々アピールした方がさすがに良いと思うのです。


・雇用所得環境、家計支出行動の辺りは微妙な見通し説明が続く

『雇用・所得環境をみると、労働需給面では、労働需要を誘発しやすい国内需要がしっかりした動きを続けるもとで、弱めとなっていた製造業を含めて労働需要が増加しているため、全体でも着実な改善が続いている(前掲図表11)。労働投入量(雇用者数×総労働時間)も、雇用者数の伸びを主因に、緩やかな増加が続いている(図表36(1))。』

これはその通り。

『このところの労働需給の引き締まり傾向には、もともと高齢化が労働供給の下押しに作用しやすいことも大きく影響しており、必要な労働力は、失業者の減少のほか、女性や高齢者の労働参加の高まりで確保されている(図表36(2))。こうして新たに活用される労働力は、これまでのところ、パートなどの短時間労働が中心となっており、結果として総労働時間や後述する一人当たりの平均賃金を押し下げやすい状況となっている。もっとも、短時間労働であっても、労働参加の高まりは、所得増加等を通じた需要面への影響も含めて、経済成長の押し上げにつながっていると考えられる(後掲図表38(2)(3))。』

ちなみに基本的見解の所で女性や高齢者云々という話があったのはこの辺りを踏まえた話で、まあ平均所得よりも雇用者総所得がというのは経済成長としてのパイという観点から重要なんだよというのは仰せのとおり。

『労働需給の引き締まりは、賃金にも影響し始めており、労働者全体の時間当たり名目賃金は、振れを伴いつつ緩やかな上昇に転じている(図表37 (3))。一人当たりでみた賃金については、短時間労働者の増加が下押し要因となっている中でも、全体としてみれば、所定外給与や特別給与の増加に支えられて、概ね下げ止まっている(図表37(1)(2))。』

非正規が上げで正規はせいぜいヨコだということですねわかります。

『また、今春の賃金改定交渉では、賞与の引き上げのほか、ベースアップもある程度実現する方向で労使間の議論が進められている(図表37 (4))。』

で、先行きは????

『先行きについても、わが国経済が潜在成長率を上回る成長を続ける中で、企業が正社員を含め採用意欲を高めていることもあって(図表36(3))、労働需給の引き締まり傾向は強まっていく可能性が高く、失業率は構造的失業率並みの水準に向けてさらに低下していくと予想される(前掲図表11(3))20。そうしたもとで、賃金にも、はっきりとした上昇圧力がかかっていく可能性が高い。』

と、こちらでは需給面での説明をしていますが、肝心の原資であります所の企業収益に関しては先ほどの説明部分で収益の伸びが鈍化するという話をしておりまして、そう考えますとあくまでもこの辺のメカニズムが全体としてワークするには「潜在成長率を上回る成長を続ける」というような成長シナリオがベースになっていまして、それって本来的な意味での物価安定目標であります所の需給ギャップがゼロになっている場合での物価上昇率が2%というのの達成って無理なんでネーノという気がしますな。

『賃金の基調的な動きを労働者全体の時間当たり賃金でみると、まず、失業率との関係(賃金版フィリップス曲線)については、非正規雇用の急速な拡大などを背景に弱めとなっていた2000年代央の動きとは異なり、労働需給の引き締まりの影響がよりはっきり現れていくと考えられる(前掲図表37 (3))。』

企業から見たらただのコストプッシュ・・・・・・・・・

『さらには、今後、消費者物価の上昇がより明確になる中で、物価動向がベースアップなどの動きに反映され、賃金全体の上昇につながると想定している(後掲図表46(3))』

昭和時代だったらそうかも知れんが、現状の労使関係とかインフレ期待に関する部分とか考えた場合に、ベースアップの動きには物価動向ではなくてあくまでも企業収益からという話になるんじゃネーノという風にしか思えず、この辺り微妙にロジックが怪しげではありますなという所です。以下ちょっとあるけど割愛。


家計の支出行動ですけどね。

『個人消費は、消費税率引き上げの影響による振れを伴いつつも、基調的には、雇用・所得環境が改善するもとで底堅く推移している。この点、勤労世帯の所得をみると、世帯主収入が賞与を含めて増加しているだけでなく、労働需給の改善などを反映して世帯における有業人員割合が上昇し、その結果、世帯主の配偶者や他の世帯構成員の収入も増加している。このため、世帯単位での所得の増加が、個人消費を支える要因となっていると考えられる(図表38(2)(3))。』

図表38の辺りを見ると2012年の方が増加しているような気もするがまあ良いとしまして。

『先行きの個人消費については、最近までのデータで消費税率引き上げ前の駆け込み需要が相応の規模で確認されている点を踏まえると(図表39)、一旦はその反動からはっきりと減少することが見込まれる。ただし、その後は再び持ち直し、全体としてごく緩やかながらも増加基調が維持されると予想される。』

ほう。

『こうした見通しの背後にあるメカニズムとして、第1に、高齢者の消費が、需要側(団塊世代の高い消費意欲)と供給側(企業による高齢者需要の掘り起こし)両方の要因から、持続的に消費全体を下支えしていくことが考えられる(図表38(5))。』

これサステイナブルなのか????

『第2に、前述のとおり、雇用者所得の改善が次第にはっきりしていくことが、勤労者世帯を中心に消費を後押ししていくと考えられる。ただし、名目可処分所得の伸びは、税や社会保障の負担増加もあって緩やかなものにとどまるうえ(図表38(1))、消費税率引き上げなどが実質所得を抑制する方向に働くと予想される。』

可処分所得名目で伸びるのか????

『こうしたもとで、マクロの消費性向については、高齢化が進むこともあって、高水準を維持する可能性が高い(図表38(4))。』

ということですが、インフレ期待が変わる上に社会保障改革はどうせ実施しないといけないのですから、高齢者の消費性向に関しても変わるような気がせんでもない。


・物価に関する部分は幾つかネタがございまして・・・・・・・・・・

引用大会で長くなって恐縮ですが今回の各項目については後々自分でも見たいので延々と引用しているという所でありまする(大汗)あと少しお付き合いくらはい。

『先行きの物価情勢を展望するにあたり、物価上昇率を規定する主な要因について点検する。』

ほうほうそれでそれで?

『第1に、マクロ的な需給バランスは、緩やかな改善を続け、足もと需給はほぼ均衡している(図表40(1))。ここ数四半期の動きをみると、需給ギャップの推計値の改善ペースは、実質GDPの動きとの対比でみて速めとなっているが、この点については、今回の景気回復が雇用を誘発しやすい内需中心で実現してきており、そのもとで短期的には、労働需給のタイト化に結びつきやすかったことが影響していると考えられる22。』

そもそも需給ギャップに関しては、ここの脚注22にありますように・・・・・・・

『22 ここでの需給ギャップは、GDPそのものから推計しているのではなく、投入される生産要素(労働・資本)の動きから直接求めている(需給ギャップについて詳しくはBOXを参照)。このところの需給ギャップの改善には、労働と資本の双方が寄与しているが、労働面では、ギャップの寄与が既にプラスに転じているなど、改善がとりわけ目立っている。』

でまあBOXの方は詳しく見てちょ(さすがに引用大会にも程があるのでスルーする)という話ですけれども、本文の方で内需中心での回復で労働需給がタイト化しやすいという話をしている事を勘案すると、需給ギャップの推計そのものが従来の製造業中心の景気回復サイクルの時と違うんじゃないのですかというツッコミが無い訳では無い。

というかそもそもそういう感じで推計誤差のある需給ギャップやら潜在成長率やらの話を思いっ切りベースに持ってきて見通しを出すというのもどうなのかという気が盛大にするのですけどね。

『先行きのマクロ的な需給バランスは、消費税率引き上げによる振れを伴いつつも、潜在成長率を上回る成長が続くという景気展開を反映して、2014年度下期には需要超過基調が定着し、見通し期間の終盤にかけて、緩やかに需要超過幅を拡大していくと予想される。』

で、第2はインフレ期待の話でこれはいつも通りですが、基本的見解にあったように「実際に物価が上昇する形でのフィードバックサイクルも働いてきている可能性」みたいな威勢の良い話が加わっているのがキタコレですが引用割愛。

そして第3は輸入物価ですが、こちらに関しては一旦エネルギー価格の影響の裏が出て、その先は世界経済の拡大に伴い緩やかに上昇というこちらは穏当な話をしています。

で、フィリップスカーブに関する話ですけれども、途中を飛ばしましてその辺の話だけ。

『こうした物価見通しをマクロ的な需給バランスとの関係(いわゆるフィリップス曲線)で整理すると(図表44、45(1))、消費者物価の前年比は、需給バランスの改善に比較的明確に反応していくことに加え、中長期的な予想インフレ率の高まりに沿うかたちでのフィリップス曲線のシフトアップも伴いながら、次第に高まっていく姿を念頭に置いている。』

『このように、今回の局面では、フィリップス曲線を押し下げるような要因がみられないもとで、需給に対する物価の感応度や短期を含めた予想インフレ率が、高まりつつあるかたちで観察されていると考えられる。』

ということで、基本的には足元でフィリップスカーブのスティープ化か進み、今後はシフトアップもしますよという見通しになっています。まあホンマカイナという気はしますが。

#ということで延々と引用大会ですいませんでした

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2014/05/09

○展望レポート全文ネタの続き(汗)

てなわけで一昨日の続きですすいませんすいません。
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1404b.pdf

本文20ページ(PDFファイルの22枚目)からが各需要項目別の見通し前提およびメカニズムになっておりまして、まあ政府支出の所は順当な話をしていますのでパスしまして海外経済以降を引用するのだ。

・海外経済に関しては「その他新興国・資源国」以外はまあ強めの見通しだがリスクは概ね下

『先行きの海外経済については、先進国が堅調な景気回復を続け、その好影響が新興国にも徐々に波及していく中で、緩やかに成長率を高めていく姿を見込んでいる。』

とありまして、基本的見解の所でも同じような感じでの説明になっていましたが、米国、欧州、中国という主要地域に関しては割と強めの見通しを置いていて、その他新興国・資源国に関しては当面は厳しいがその後何とかなるでしょうみたいな説明になっておりますがその部分は基本的見解の説明と概ね同じなのでパスしまして先行きリスクに関して。

『もっとも、先行きの海外経済については、上下両方向の不確実性が存在する。』

上下とな。

『中国経済については、リーマン・ショック後の景気刺激策に起因する過剰設備の問題が根強いほか、過剰債務や当局が進める構造改革の影響を巡る不確実性も依然として大きい。それ以外の新興国・資源国経済については、対外バランス面の脆弱性やインフレ率の高まりといった問題に対する各国の取り組み、地政学要因も含めた国際金融資本市場の動向など、先行きの展開を注意深くみていく必要がある。』

ということで出てくる順が中国→その他新興国となっているとはほほうという感じです。

『欧州経済については、循環的に景気を押し上げる力が想定以上に強い可能性もある一方、最近のディスインフレ傾向や債務問題の帰趨、金融システム健全化に向けた動きには引き続き注意を要する。米国経済については、家計のバランスシートの改善が進んでいるもとで、個人消費を起点とした回復メカニズムが強まる可能性がある一方、企業の投資行動に慎重さが残り続けるリスクもある。』

欧州と米国に関しては先行きの不確実性に上方向もあるのですねという感じですが、欧州のディスインフレの指摘とかしらっと指摘していますなという所で。


・輸出が伸びない要因に関する説明は全文の方が項目が多いですなあ

次が輸出入。

『実質輸出は、勢いに欠ける状況が長引いているが、この点については、以下で述べるような様々な要因が影響していると考えられる。』

ということですが・・・・・・・・・・

『第1に、地域別にみてASEAN向けの輸出が不振となるなど(図表28(1))、わが国経済との関係が深い新興国経済のもたつきの影響が大きいとみられる。』

という説明は基本的見解でもあったな。

『第2に、世界的な投資活動の緩慢さなど、マクロ平均の成長率では説明し切れない海外需要の鈍さが、資本財や部品に比較優位を持つわが国の輸出に対して、とりわけ抑制的に作用している面がある(図表28(2)(3))。』

という説明は基本的見解ではスルーされていましたぞ。

『この点、中国を中心に新興国では、リーマン・ショック後の景気対策などによって設備投資比率が大幅に高まったことから、過剰設備問題が発生し、投資調整圧力が生じている。欧米でも、信用バブル崩壊の後遺症から企業の投資行動には慎重さが残っている。』

ってしらっと書いていますが、これは「先行きも厳しいです」と言っているのと同じですな(−−)。

『また、第3に、より構造的な要因として、情報関連分野などにおいて、競合する東アジアなど海外企業の技術面でのキャッチアップに伴って、わが国企業の国際競争力が一頃に比べて低下していることが、やや長い目でみた輸出の下押しに働いている可能性が高い(前掲図表28(1)、図表29(1)(2))。』

構造的な問題の方でもこの次に出ている方は基本的見解に出ていましたが、こちらの残念な話に関してはスルーされていましたけど、これしかし先行きの夢も希望も無い指摘っすな、ナムナム。

『さらには、第4の要因として、現地調達の拡大を伴う海外生産移管の加速も、輸出の抑制につながっていると考えられる(図表29(3))。この点、海外生産の意思決定から現地設備・生産の立ち上がりまでには相応のラグを伴うことを考えると(後掲図表34(2))、足もとはリーマン・ショック後に円高が進んだ際に決定された海外生産が本格化している局面であり、輸出への下押し効果がとりわけ大きなものとなっていると考えられる。』

ほー(棒)。

『このほか、第5に、消費税率引き上げ前の駆け込み需要への対応から国内向け出荷を優先する動きや米国の寒波が、2013年度末にかけて、輸出の一時的な下押し要因として作用していたとみられる。これらの要因は、輸入に対しても、第3、第4の要因が構造的な押し上げに、第5の駆け込み需要が一時的な押し上げに作用している。』

ホンマカイナというかあるにしても局地的な話で大袈裟にいう話かねえとは思いますが。


で、先行き。

『先行きの輸出を展望すると、上記の一時的な下押し要因が剥落し、海外経済が全体として緩やかに回復するにつれて、輸出は次第に増加に転じていくと考えられる。ただし、現在、輸出を下押ししている様々な要因のうち、海外生産移管などの構造的要因が抑制的に作用する面があるため、輸出の伸び率は緩やかなものにとどまると考えられる。』

>輸出の伸び率は緩やかなものにとどまると考えられる

おーのー。

『この間、為替相場の変動が輸出に与える影響についてみると、元々、企業が現地通貨建ての価格をある程度安定化しようとする行動をとるもとで、為替相場の動きと比べれば外貨建て輸出価格の変動幅はさほど大きくないものの、今次円安局面における外貨建て輸出価格の引き下げ幅が、過去の局面と比べ、目立って小さいわけでない(図表30(1))。これまでと大差のない輸出価格の引き下げが行われていることは、今後も輸出の下支えに作用していくと考えられる。』

ほー。

『また、やや長い目でみれば、既往の為替円安は、これまで加速してきた海外生産移管のペースを幾分鈍化させることを通じて、輸出の下押しの程度を和らげる方向に働くと予想される(後掲図表34(3))16。』

為替で海外生産というのもファクターとしてあるとは思いますが、それよりも海外生産移管って需要が旺盛な地域で現地生産とかそっちのファクターもあるんちゃいますかとは思うが。

『一方、実質輸入は、消費税率引き上げに伴う個人消費の振れなどの影響を受けつつも、基調としては、堅調な国内需要を背景に緩やかな増加を続けている。先行きの輸入については、個人消費の反動減などの影響から減少する局面を伴いつつも、基調としては、国内需要の動きなどを反映し、緩やかに増加していくと予想される。』

輸入は相変わらず堅調だそうでGDP押し下げ作用になりそうですなあ。


・ISバランス関連

まずは貿易収支。

『貿易収支をみると(図表31(1))、2011年度に1979年度以来の赤字となったあと、2013年度まで赤字幅の拡大傾向が続いている。その影響から、経常収支の黒字幅も縮小している。』

『名目貿易収支の悪化について要因分解を行うと(前掲図表30(2))、2013年度は、外貨建て取引比率の違いを反映して為替円安の価格への影響が輸出面よりも輸入面で大きく働いたことから、輸出入価格要因がマイナス寄与を拡大させたほか、実質輸出入要因(純輸出)のマイナス寄与も拡大気味となった。この実質要因の弱さについては、海外経済が新興国のもたつきなどから過去の平均的な成長率対比で伸び悩む一方、国内需要はかなり強めに推移するという、内外成長率格差が基本的な背景にある(図表30(3))。加えて、前述のような、構造的・一時的両面における輸出の増えにくさと輸入の増えやすさも、実質収支の悪化に影響したと考えられる。』

『先行きについては、基調的にみて、国内需要の伸び率は幾分減速方向となる一方、海外経済の成長率は高まっていくため、内外成長率格差による収支悪化圧力は弱まるほか、駆け込み需要に伴う収支悪化要因も剥落するため、貿易収支の赤字幅は縮小していくと考えられる。』

先行きの方はそうなのかねえという気はしますが。

『また、所得収支についても、直接投資などによる海外資産の蓄積に伴い、黒字幅が拡大していくと考えられる。このため、経常収支の黒字幅は、緩やかながら再び拡大していく可能性が高い17。』

だそうな。

『概念的に経常収支と表裏の関係にある国内の貯蓄投資バランスについて考えると(図表31(2))、見通し期間においては、民間部門の貯蓄超過幅は緩やかに縮小する一方、一般政府の赤字幅は、消費税率引き上げに伴う税収の増加もあって、それを幾分上回るペースで縮小すると見込まれる。このため、国内全体では、貯蓄超過幅は緩やかに拡大するとみられる。』

まあ経常黒だから貯蓄超過は拡大となりますけど、本当にこういうバランスで推移するのかというとそれはまた怪しげな感じはする(特に一般政府)のですけどね。


・企業収益とおよび為替の影響の所も中々味わいが

次が(企業の収益環境・設備投資)という所です。

『企業収益は、改善を続けている(前掲図表8(1))。先行きについても、国内需要が堅調に推移することに加えて、輸出の緩やかな増加や為替相場の動きにも支えられて、改善傾向を続けると予想される。ただし、見通し期間の後半には、賃金の上昇などを通じ家計への分配がより進むため、企業収益の伸び率は徐々に鈍化していくと考えられる。』

ほほうという所ですが、しかし良く良く考えてみますと企業収益の伸び率が鈍化した場合に賃金の継続的な上昇というのがサステイナブルなのか、という点は先般ネタにした4月1回目のMPMでも指摘している人がいましたな。

『この間、為替円安の企業収益を通じた経済全体への影響という観点から、この1年余りの日本経済の動きを振り返ってみると、円安による円換算後の輸出入価格の変化は、製造業の収益を押し上げる一方、非製造業の収益を押し下げるという部門による違いを伴いつつ、経済全体では交易条件を幾分悪化させる方向に作用してきた(図表32(1))。』

あちゃー。

『しかし、為替円安は、製造業のウエイトが高い上場企業の株価上昇を通じて、個人消費などの国内需要にもプラスの影響を及ぼした。そうしたもとで、非製造業においては、従来からみられていた高齢者の消費の活発化や公共投資の増加といったポジティブな動きが続いたこともあって、為替円安による交易条件の悪化の影響は限定的にとどまり、非製造業部門の業況感や利益率はむしろ改善した(図表32(2))。また、製造業についても、為替円高の修正を受けて、業況感や利益率は大きく改善し、これが企業の前向きな動きを後押しした。』

という説明になっていまして、要は交易条件の悪化のマイナスをその他のファクターが相殺してプラスになったという話ですが、はてさて今後は円安進めてどうなんでしょうかねという話になると何か怪しいですねえという話になりそうに思えます。というかそういう事を暗に示しているような気ががががが。


・設備投資

『設備投資については、企業収益が改善を続ける中で、持ち直しが明確になっている。製造業においては、回復の初期段階であるため、老朽化した設備の維持・更新投資や、情報化投資や研究開発投資といった戦略投資が中心になっているとみられる18。非製造業においても、物流システムの革新や堅調に推移するシニア層の消費の取り込みなどを企図して、能力増強を含め、前向きな投資に踏み切る動きがみられている。』

ほほう。

『先行きについては、見通し期間を通じて、緩やかな増加基調をたどると考えられる(図表33)。すなわち、当面は、循環的な回復力が大きい中で、収益の改善傾向や稼働率の上昇などに伴って、設備投資は緩やかに増加していくとみられる。その後、資本ストックが充足されるに伴い循環的な押し上げ効果は次第に減衰していくが、成長期待の高まりや、それに伴う金融緩和効果の強まり、さらには各種企業向け減税の効果もあって、緩やかな増加基調が維持されると予想される。こうした設備投資を支える諸要因について確認すると、以下のとおりである。』

成長期待の高まりには何か必要な物があるような気がしますが・・・・・・・・・・(^^)

『第1に、「量的・質的金融緩和」の効果は、見通し期間中、設備投資を後押ししていくと考えられる。この点、投資採算の観点からみると、企業収益の改善に伴い資本収益率が上昇していくと同時に、予想物価上昇率の高まりなどを反映して実質金利が低下していくため、金融緩和の投資刺激効果は強まっていくと予想される(図表34(1))。また、各種企業減税の効果も、資本コストの低下、キャッシュ・フローの上振れといったルートを通じて、設備投資を支えていくと考えられる。』

実質金利の話はいつも通りなのですが、良く良く考えると最初の一文が微妙でして、そもそもQQE政策は2%の物価安定目標の達成の為に実施しているものであるからして、2%の目標が達成される「見通し期間の中盤」には解除の方向になっている筈で、QQEの効果が「見通し期間中」後押しするというのは何か図々しい表現のようにも思えますが、もしかして実は物価安定目標が厳しいからQQEは続くという意味ですかこれはとかニヤニヤしたくなるフレーズではあります。

『第2に、設備投資は、リーマン・ショックや震災後の落ち込みから漸く回復過程に入った段階で水準はなお低めであるため、経済活動の水準がさらに高まり、企業収益の改善傾向が続けば、循環的にペント・アップ需要が顕在化しやすいと考えられる。実際、「設備投資は、一定の成長期待のもとで、生産活動に必要とされる資本ストックを実現するよう行われる」との前提のもと、資本ストック循環の観点から設備投資の伸び率を評価すると、対資本ストックでみた設備投資比率は、企業の期待成長率から予想される水準を大きく下回って推移してきた。このため、当面の期待成長率がゼロ%台半ばにとどまるとしても、設備投資の増加余地はなお大きいとみられる(前掲図表33(1))。』

ペントアップ需要の話は前から指摘されている割にイマイチ伸びないのですが、先行きの成長期待の問題とか、輸出の所にあった海外シフトの問題とか、そもそも日本の製造業の競争力低下による問題とかがあって実は構造的に戻りにくくなっているという可能性はどうなんでしょうかね。

『設備投資の対名目GDP比率やキャッシュ・フロー比率をみても(図表35(1)(2))、長期的にみれば低めの水準にある。このところ、改善の遅れていた製造業も含め設備の稼働率が上昇しているうえ、企業の設備過剰感も全体として解消されつつある点も踏まえると(後掲図表48(5)(6))、設備投資の循環的な回復力はよりはっきりしてきていると考えられる。』

まあそうだと良いですねという所ですが。

『第3に、政府の規制・制度改革や企業の事業再構築など、競争力・成長力強化に向けた前向きな取り組みなどもあって、企業の中長期的な成長期待は緩やかに高まっていくと考えられる。』

全然進んでいないと思いますが、これは日銀から政府へのメッセージということですね!!!!

『こうした成長期待の高まりは、資本ストックの積み上がりに伴う設備投資の減速圧力を和らげる方向に作用すると考えられる。設備投資の対資本ストック比率の観点から考えても(図表35(3))、見通し期間の終盤にかけて潜在成長率が徐々に上昇していくもとで19、設備投資はその動きに沿って水準を次第に切り上げていくと考えられる。この間、海外設備投資の動きを考えると、海外進出への意思決定から現地設備の立ち上がりまでには相応のラグを伴うことを考えると(図表34(2))、過去1〜2年程度はリーマン・ショック後に円高が進んだ際に決定された海外設備投資が本格化した局面であり、海外設備投資比率の拡大ペースはとりわけ大きなものであった可能性が高い。海外設備投資比率は、今後も増大する海外需要を取り込むために上昇傾向を続けるとみられるが、そのペース自体は、過去も為替相場の影響を受けてきた点を踏まえると、幾分和らいでくると考えられる(図表34(3))。』

という事ですが、つまりは第三の矢マダーって話なのですが、もうちょっとこの辺に関して日銀はアピールというか要求した方が良いとは思います。つーかそうしてくれんと短期市場に加えて債券市場まで先生!市場ちゃんが息をしていないの!!状態になってしまっている市場ちゃんが浮かばれんわと思う次第。

・・・・・・・・何か引用祭りで増量になってしまいましたが時間と量の関係で残りは来週(汗)。

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2014/05/08

○4月1回目の金融政策決定会合では「成長率と物価の関係」が議論とな

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2014/g140408.pdf

・国内経済情勢に関する委員会の議論から需要項目部分をダラダラ引用してみる

ということで『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』から国内経済の需要項目別の議論部分を見ましょう。

『輸出について、委員は、ASEANなど一部新興国向けに弱さが残る中で、米国の寒波の影響や消費税率引き上げ前の駆け込み需要への対応に伴う国内出荷優先の動きなどの一時的な要因もあって、横ばい圏内の動きとなっているとの認識を共有した。先行きについて、委員は、一時的な下押し要因の剥落や、海外経済の回復などを背景に、緩やかに増加していくとの見方で一致した。ある委員は、今後輸出が増加していけば、駆け込み需要の反動による国内需要の落ち込みの影響を緩和できると付け加えた。』

ということですがホンマカイナという気はせんでもなくて展望レポートの背景説明の所を見ると味わいがあったりする(のだが上記のように昨日から今朝のネタを優先した結果昨日の続きが間に合うか微妙orz)のですな。

『設備投資について、委員は、企業収益が改善する中で、持ち直しが明確になっており、先行きも、緩やかな増加基調を辿るとの見方で一致した。』

こちらに関してもより長期的に見た場合には2015年度から2016年度に掛けて循環的に景気が下を向いてくるのでという話が展望レポートの背景説明にありましたよね。

『複数の委員は、資本財総供給が伸びを高めているほか、機械受注も増加を続けるなど、持ち直しの動きがはっきりしていると指摘した。』

ほほう。

『3月短観の結果について、委員は、企業の業況感は幅広い業種で引き続き改善しているが、先行きについては慎重な見方もみられているとの認識を共有した。委員は、先行きの業況判断DIの低下には、駆け込み需要の反動に対する企業の警戒感が示されているとの見方で一致した。もっとも、多くの委員は、それでも、先行きの業況判断DIの水準はなお高めであるほか、2014 年度の設備投資計画が例年を幾分上回っており、企業の前向きな姿勢は維持されていると付け加えた。』

まあ短観は強い罠。で次は雇用所得環境。

『雇用・所得環境について、委員は、労働需給は着実な改善を続けており、雇用者所得も緩やかに持ち直しているとの認識を共有した。先行きの雇用者所得について、委員は、経済活動や企業業績の回復につれて、持ち直しがさらに明確になっていくとの見方で一致した。』

こちらも強いです罠。そらそうよという所ではありますが。

『何人かの委員は、失業率が3.6%まで低下していることや、短観の雇用人員判断DIの「不足」超幅が引き続き拡大していることなどを踏まえると、今後も労働需給のタイト化は続き、賃金上昇圧力が一段と強まっていくとの認識を示した。今春の賃金改定交渉について、何人かの委員は、労働需給のタイト化や企業業績の改善を背景に、ベースアップも含めた賃金上昇の動きが拡がっていると指摘した。』

ほっほー。

『このうちのある委員は、これまでの連合の集計結果をみると、中小企業においても、賃金上昇の動きが拡がることが期待できると付け加えた。別の一人の委員は、ベースアップが復活したことにより、今後、物価上昇が賃金上昇に反映されやすくなる可能性があると指摘した。』

とまあ威勢の良い話が続くのですが、最後にしらっとこれはまた仰せのとおりな指摘ががががが。

『この間、ある委員は、企業の増益率が低下する可能性などを踏まえると、来春の賃金改定交渉では、むしろ賃金引き上げのモメンタムが低下する可能性があるとの見方を示した。』

いやー何という身も蓋も無い指摘ですが、そらまあそうよという感じも思いっきりしますな。どっちに転ぶのかはまだ判らないですけど。


個人消費の所でも最後に微妙な指摘があったりしますな(^^;

『個人消費について、委員は、消費税率引き上げの影響による振れを伴いつつも、基調的には、雇用・所得環境が改善するもとで底堅く推移しているとの認識を共有した。』

ふむ。

『ある委員は、企業からのヒアリング情報などを踏まえると、駆け込み需要は1997 年の税率引き上げ時に比べて大きいとの見方を示したうえで、その背景として、税率の引き上げ幅が大きいことや、雇用・所得環境の改善から家計の購買意欲が強いことを指摘した。』

ほうほう雇用所得環境の改善ですかそうですか。

『先行きの個人消費について、委員は、駆け込み需要の反動から減少する局面を伴いつつも、基調的には、雇用・所得環境の改善などに支えられて、底堅く推移するとの見方で一致した。』

まあそうですな。

『ある委員は、4〜6月も輸出の増加や公共投資の前倒し執行に経済全体が下支えされる姿が確認されれば、このところ弱めの動きとなっている消費者コンフィデンスも持ち直してくるとの認識を示した。』

実際に1か月経過した足元では反動減が限定的みたいなニュースフローの方が先に出ていたりしますけどね。

『別の委員は、消費の堅調が持続するためには中長期的な成長期待が高まることが重要だが、「生活意識に関するアンケート調査」の経済成長力DIはここ半年ほど改善しておらず、構造改革など今後の政府の取り組みに期待していると述べた。』

これはまたイイシテキダナーな話っすな、ニヤニヤ。


鉱工業生産に関してはまあ普通の話をしています。

『鉱工業生産について、委員は、以上の内外需要を反映して、緩やかな増加基調を辿っており、先行きも、基調として緩やかな増加を続けるとの認識で一致した。複数の委員は、4月の生産予測指数は小幅の減少にとどまっていると指摘した。このうちの一人の委員は、3月短観で先行きの業況判断DIが大幅に低下した輸送用機械においても、4月の生産は小幅減との予測であり、輸出向けや在庫復元のための生産が国内向けの落ち込みを緩和させる方向に働く可能性があるとの見方を示した。』

という所で。


・物価に関する話である

『物価面について、委員は、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、+1%台前半となっており、先行きも、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、暫くの間、+1%台前半で推移するとの見方を共有した。多くの委員は、2月の消費者物価(除く食料・エネルギー)の前年比が+0.8%となるなど、エネルギー関連だけでなく、幅広い品目において改善がみられていると述べた。』

まあこの現象面は仰せのとおり。

『ある委員は、消費税率引き上げを契機に過去のコスト上昇分を転嫁する可能性もあるため、4月以降、消費税率引き上げの影響を除くベースの物価上昇率はむしろ高まる可能性もあるとの認識を示した。複数の委員は、短観の販売価格判断DIは、非製造業を中心に改善していると指摘した。』

ほっほー。

『この間、ある委員は、デジタル家電製品などを中心に輸入品の浸透度が上昇していることを背景に、かつてに比べて物価が為替相場の影響を受けやすくなっており、為替円安の一巡が物価に与える影響を注視する必要があるとの見方を示した。』

つまり円安効果の剥落分が思った以上に出るという指摘と、そもそも論としてここまでの物価上昇は円安効果と言えば聞こえが良いけれども単なるコストプッシュの面が強かったのではないかという指摘をしておられるように見えまして中々こう味わいがあるというものでございまする。

『予想物価上昇率について、委員は、マーケットの指標や各種の調査などを踏まえると、全体として上昇しているとみられるとの認識を共有した。』

で、短観の例のアンケート。

『3月短観における企業の物価全般の見通しについて、多くの委員は、初回調査でありその結果は幅を持って評価する必要があるものの、市場関係者やエコノミストの見通しに比べて高めとなっているほか、短期に比べて中長期の物価見通しが高くなっており、企業は先行きの物価上昇率が高まっていくとみているとの見方を示した。』

>市場関係者やエコノミストの見通しに比べて高めとなっている
>市場関係者やエコノミストの見通しに比べて高めとなっている
>市場関係者やエコノミストの見通しに比べて高めとなっている

(・∀・)ニヤニヤ

というかこの前の日銀レビューと言い、最近は「予想インフレ率に関しては市場は所詮後追い」という市場dis理論がすっかり日銀の定番となっていますなあ(ニヤニヤ)。

で、物価はいいけど価格設定の大企業の5年後ってゼロ近傍じゃなかったでしたっけと思ったらその直後にこんな話も。

『このうちの一人の委員は、こうした傾向は、価格へのコスト転嫁が難しいといわれる中小企業において、むしろ強いという結果になっていると指摘した。この間、ある委員は、販売価格の見通しをみると、前年比伸び率が次第に低下しており、自社製品・サービスの販売価格については引き上げが難しいと判断している可能性があると述べた。』

まあ物価見通しと価格設定は別物状態(特に大企業)という謎な結果でしたから、都合の良い解釈が色々と可能なので、そういう意味ではさすがに執行部の説明部分(前段の方にある)でも短観の話はちょっとあるにしても物価アンケート部分についてはスルーしていましたな。うんうん。


・成長率と物価の関係の議論があったとは!!!!

ということで前の部分がちと長くなってしまいましたがメインイベントキタコレ!です。

『成長率と物価の関係について、委員は、1月時点の見通し対比で成長率が下振れる可能性が高まる一方、消費者物価が幾分強めとなっていることをどう考えるか、という観点から議論を行った。』

展望レポートの前の回でもこの話があったのは当然ちゃあ当然ですけれども、まあ中々興味深い所です。

『多くの委員は、今回の景気回復は雇用誘発効果の大きい非製造業が中心となっているため、労働需給がタイト化しやすく、労働市場の面からは物価が上がりやすくなっているとの見方を示した。このうちの何人かの委員は、成長率自体は下振れているが、労働や設備といった生産要素の稼働状況から需給ギャップを計測すると、最近はゼロ近傍までギャップが縮小しており、成長率以上に賃金や物価に対する上昇圧力が強まっていると付け加えた。』

この辺は展望レポートの説明などでも示されている解釈で、非製造業中心の景気改善によって労働需給のスラックが(製造業中心の時と比較して)解消しやすくなるという点からの指摘です罠。

『複数の委員は、わが国の産業構造は非製造業中心に変化しつつあり、賃金の動向が物価全体に及ぼす影響の度合いが強まる傾向にあるとの認識を示した。』

ということですが、次の「ある委員」の指摘が実にこうご尤もあんど重要だと思うのですが、議事要旨では極めてさらっと一言コメント扱いにしている辺りに大変に深い味わいを感じる侘び寂の世界を垣間見る次第です。

『一方、ある委員は、供給制約による賃金や物価の上昇は、持続的でない可能性があると述べた。』

>供給制約による賃金や物価の上昇は、持続的でない可能性があると述べた
>供給制約による賃金や物価の上昇は、持続的でない可能性があると述べた
>供給制約による賃金や物価の上昇は、持続的でない可能性があると述べた
>供給制約による賃金や物価の上昇は、持続的でない可能性があると述べた
>供給制約による賃金や物価の上昇は、持続的でない可能性があると述べた

・・・・・・・・・・・(;∀;)イイハナシダナー

つまり従来の想定以上に今次回復においては供給制約があり、この結果賃金や物価が上昇している訳ですけれども、今後の可能性として一つは「大して成長しないのに物価だけホイホイ上昇」というのがあり、もう一つは「循環的に景気が下向きになった時に、今回の裏が出るので雇用所得環境が急速に悪化し、物価に関しても下押し圧力がかかりやすくなる」という話があり、まあつまりは先般の総裁会見でもゴリゴリ突っ込まれていた潜在成長率が実は下がっているんじゃネーノ的な話に関してやはり政策委員会の方でも指摘をしている人が居ます罠というのが大変に味わいのある所です。でまあ更に侘び寂の世界だなあと思うのはこの辺りの部分についてしらっと1行で丸めている所でございまして、何とも心が温まるものを感じる次第ではあります(^^)。

いずれにせよ潜在成長率が低下という話であれば、物価が本当に2%で安定推移するのかとか、そもそもその2%というセッティングが本当に短期的に目指して良い数値なのか(中長期的な看板として置くのは別に問題無いと思うが)とか、その辺の議論になってくるというのは先般来申し上げている通りなので、とりあえず実際に物価がホイホイ上昇して成長しないのに物価だけ上昇するとは何事みたいなアジェンダが発生しない限りは執行部的にはこの点突っ張るしかないというのはあると思いますけどね。


『企業の価格設定行動について、多くの委員は、需給環境の改善や円安による競争緩和、予想物価上昇率の上昇などから、これまで抑制してきた価格引き上げに前向きになってきている可能性があるとの見方を示した。一人の委員は、労働需給がタイト化する中で、必要な人材を確保するために企業が積極的に賃金を引き上げ、それに伴う労務コストの上昇をサービス価格に転嫁する動きが拡がっていくと付け加えた。』

とまあそういう話を「多くの委員」がしているので、まあ政策委員会の基本線は前向き物価上昇的な話になっています罠という感じは受ける書きっぷりになってはいるので、先ほどの1行部分をここまでクローズアップするのもクローズアップし過ぎですかそうですかという説もありますが、やはりさっきの部分は気になるちゅうか、展望レポートの基本的見解の方で全くもってスルーされていた部分だったのでその前の回のMPMで指摘があったのはニャルホドと思いましたですニャ。

『この間、ある委員は、ヘッドラインの成長率は下振れているが、これには内需堅調を反映した輸入の予想外の強さによる押し下げが大きく、その影響を除けば、2013 年後半も年率3%程度の成長率が維持されていると指摘した。』

まあこの部分も物は言い様で、そうかも知れんが実は供給制約の影響かも知れん。

なお政策決定に関する部分はいつもの話(木内さんの提案も含めていつもの話)なので割愛します。

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2014/05/07

○展望レポート背景説明を含めた全文は中々面白いという件について

89ページ版PDFにつき注意下さい。
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1404b.pdf

・2013年度後半のレビューに関して

背景説明は12ページ目(ファイルの14枚目です)からになります。

『2013年度後半の日本経済を振り返ると(図表1)、輸出は全体として勢いに欠ける状況を続けたものの、国内需要が堅調に推移するもとで、労働需給の着実な改善を伴いながら、景気は緩やかな回復を続けた。年度末にかけては、個人消費や住宅投資において、消費税率引き上げ前の駆け込み需要もみられた。』

図表1を見ますと直近2Qは外需マイナスで内需に関しては民需が徐々に上昇という絵です。

でまあ輸出入に関して。

『輸出については、海外経済が回復しつつあるもとで、為替相場の動きも下支えとなって、秋口までは持ち直し傾向をたどったが、年度末にかけて横ばい圏内の動きとなった(図表4(1)(2))。この点については、わが国製造業の海外生産移管の拡大といった構造的な要因も相応に影響しているが、わが国経済との結びつきが強いASEANなどの新興国経済のもたつきの影響が大きく(前掲図表2(2))、さらには、駆け込み需要への対応から国内向け出荷を優先する動きや米国の寒波など、一時的な下押し要因も作用したと考えられる。』

で、輸出がヨコの中で輸入が上昇したので外需マイナスなのですが、輸出に関しては駆け込みでの影響があるならばその後は回復という絵になるのですが、ここの点について本当に戻るのかという点についてはホンマカイナという感じではあります罠。今後に注目。

『もっとも、こうした輸出の勢いの鈍さにもかかわらず、国内需要が堅調に推移するもとで(図表5)、景気全体の前向きな循環メカニズムは、しっかりと働き続けた。企業の生産活動の水準をみると(図表6)、過去の局面では輸出の影響を受けやすかった鉱工業生産を含めて、緩やかに増加し、そのもとで企業の収益・業況感は広がりを伴いつつ改善を続けた(図表7、図表8(1))。』

ふむ。

『また、雇用の誘発効果が大きい内需中心の景気回復が続く中で、失業率が構造的失業率に近付くなど(後掲図表11(3))、労働需給は引き締まり傾向となった(前掲図表5(2))。』

キタコレ。

『この間、国内需要の堅調さは、輸入の大幅な増加を通じて(前掲図表4(1)(3))、ネットでみた外需の減少にも影響した(前掲図表1(1))。』

ということですが、まあこの点に関しては実は供給制約の可能性というのもあったりして、内需を吹かし過ぎるとコストプッシュでの物価上昇になりやすくなるという可能性も。

でまあその他国内需要や物価に関してはまあ強い話をしていますが、物価に関する図表15辺りを見ますと何か公共料金の上昇が盛大に寄与しているように見えますけどキニシナイ!


・先行き見通しの部分だが記述が怪しい

『3.2014年度〜2016年度の経済・物価の見通し』から。

『2016年度までのわが国経済の先行きを展望すると、国内需要の堅調さが持続し、輸出も緩やかながら増加していくことから、生産・所得・支出の前向きの循環メカニズムは働き続けると考えられる。このため、わが国経済は、2回の消費税率引き上げの影響による振れを伴いつつも13、基調的には潜在成長率を上回る成長を続けると予想される。』

というのはまあ良いとしまして。

『2014年度については、家計支出は、上期を中心に、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動減が相応に見込まれる。また、公共投資は、昨年度補正予算の執行などから引き続き高水準で推移したあと、下期にかけて緩やかな減少に転じていく可能性が高い。このため、年度全体の成長率も、かなり高かった2013年度に比べれば、鈍化すると見込まれる。』

ふむ。

『もっとも、輸出は、海外経済の回復を背景に、為替相場の下支え効果もあって、緩やかな増加に転じていくと考えられる。』

この見通しが色々と怪しげな気がする・・・・・・・

『また、国内民間需要の基調的な動きをみると、設備投資は、企業収益の改善傾向が続く中、金融緩和効果や各種の企業向け減税策の効果が下支えとなり、緩やかに増加していくと予想される。個人消費については、消費税率引き上げ等が実質可処分所得の押し下げに働くもとでも、雇用・所得環境の改善に支えられて、基調的な底堅さが維持されると考えられる。』

ふむ。

『このように、国内民間需要が基調的にはしっかりとした動きを続け、輸出の改善も加わることで、2013年度に続いて前向きの所得形成の力が働き、年度全体の成長率は、引き続き潜在成長率を上回ると考えられる。』

でまあその後の記述が何気にほほうという感じなのがありましてですね・・・・・・・

『2015年度から2016年度にかけても、設備投資には次第に循環的な減速方向の力が作用していくものの、前向きの循環メカニズムは働き続けると考えられる。』

しらっと書いていますが、景気循環サイクル的にも先行きは下向きになるというのがあるのがおーという感じです。

『2015年度については、公共投資が緩やかな減少傾向をたどると考えられる。その一方で、海外経済が長期平均並みの成長ペースに復するもとで輸出が緩やかに増加するほか、国内でも、成長期待の高まりと緩和的な金融環境が、設備投資や住宅投資を下支えすると想定している。』

という話ですが、そもそも海外経済が拡大して輸出が伸びてという形ではない回復になっている訳でして、しかもここまでの輸出の拡大が期待外れになっているという中で本当に大丈夫なのかねという話でして・・・・・・

『また、個人消費についても、雇用・所得環境の改善に支えられた基調的な底堅さが続く中で、駆け込み需要の反動減の影響を受ける2014年度と比べれば、伸び率が高まるとみられる。このため、2回目の消費税率引き上げによる振れを伴いつつも、基調的には引き続き潜在成長率を上回る成長が見込まれる。』


さらにこの後の説明も何か微妙な部分ががががが。

『2016年度については、海外経済が長期平均並みの成長を続けるもとで輸出が増加を続けるうえ、緩和的な金融環境が成長期待の高まりとも相まって国内民需を支えると考えられるため、なお潜在成長率を上回る成長が続くと予想している。』

ということですが、本来物価安定目標が達成されますと、QQE政策というのは終了しますし、その間に潜在成長を上回る成長が継続するとなりますと、物価には当然ながら上昇圧力が掛かり続ける訳でして、そうなった場合には「緩和的な金融環境」がいつまでも続けられる訳ではないと思うのですが、何でここでの置きが「緩和的な金融環境」になっているのかがワケワカランチ会長ではあります。

いやまあ市場の金利を置きとして(今回は長期金利中心に一部補正が入っているようですが)見通し期間中の金利がゼロでの置きになっているような事が基本的見解の方にも書いてあるので、これはこれでそうなのかも知れませんけれども、実際問題としては仮に見通し通りに推移して物価安定目標が達成されているならば、少なくとも2016年度には中立水準に向けた調整が開始される筈で、QQEのような強力な金融緩和は無くなっている筈で、緩和的な金融環境を当てにした見通しというのは変じゃネーノとも思えますがどうなんでしょ。

ま、もしかしたら目標達成に自信がないのかもしれませんけどね!!

で、この後個別需給項目の話になりまして、輸出入、ISバランス、企業、雇用所得環境の辺りが色々と面白いのですが、連休明けで頭の暖機運転に時間がかかったせいで既に時間切れになってしまいました続きは明日ですすいませんすいません。

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2014/05/01

○展望レポート:何か今回は色々な方向に伏線を張っていますな

展望レポート(基本的見解)
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1404a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1310a.pdf(前回10月)

・全体的な感想:微妙に色々な伏線を張っているようにも見えますし解釈が少々困るわ

・・・・・とまあ書いてみましたが、今回の展望レポートなのですけれども、基本的にはここまでの推移がオントラック、というよりは物価に関してはむしろ上振れ推移しているという部分に関しては想定通りに強い話が展開されていまして、先行きに関しても強気の話が入っているのですが、微妙な所で微妙にヘッジが入っていたり、その一方で貫録の上振れみたいな出口政策への意識付けをさせるような見通しも入っていたりと、読み方にバイアスを掛けると上下両方に読める可能性があるという中々微妙な作品に仕上がっています。

ということで、恐らく今日は展望レポートを受けて何とかストの皆様がああだこうだとコメントやらレポートを出して来るのですが、割とバイアス掛けて読むことが可能な展望レポートである、という点を認識してコメントを読んだ方が吉のような気がする訳で、てめえの相場観やポジションに都合の良さそうなものに安易に飛びつくと怪我の元かも知れませんよ。

なお、普通に読むとやはり追加緩和は無い、という話になる筈なのでクレクレの皆さん残念でした(^^)。


・内容に入る前に先に数字の方を確認しましょう

2013年度の数字についてはまあご案内の通り下方修正ですが、まあこれに関してはところで何でそうなりましたねんという話について概要説明の中で一応あるのでそちらで。

でまあ先行きですけれども、

2014年度:GDP見通しが下がっているけど物価見通しは上昇。特に全体見通しを見ると下限の人が+0.7%だったのが+0.9%、下から2番目の人が+0.9%だったのが+1.0%となっていまして、ある程度想定範囲内でしたが物価見通しの下の人が上に寄せてきましたな。

2015年度:こちらはそれほど変わっていないのですが、物価見通しの大勢見通しを見ると何故か上限の人が+2.2%から+2.1%に降りてきておりまして、何か知らんが謎だぞそれという所です。

2016年度:今回初めて出ましたが、まあ想像通り+2.1%とかで物価が出ているのですが、後の方にご紹介しますが、潜在成長率について0%台後半から徐々に上昇という見通しになっている中ですし、説明部分でも「基調的には潜在成長率を上回る成長を続ける」という話になっているのに、物価の方は2015年度が+1.9%で2016年度が+2.1%って、潜在成長率を上回る成長が続いて、しかも(後の方で出てきますが)金融緩和政策は継続しているというような前提っぽい想定になっているのに何で物価が上に跳ねないのかは意味がワカランチ会長。

・・・・・・ではありますが、まあこれを質問しても(つーか会見で質問があったような気もするが)これは政策委員会の各メンバーの数値をアグリゲートしたもので前提が違いますからと逃げられてしまいますのですよね。

ということで、数字を細かく見ると何か物価の見通しが微妙に下がった人がいる辺りに味わいもあるなあという所ですが、では内容に参りますとこれがまた一見すると強気の内容で、二度読むと微妙にほえ??というのがあるという味わいのある内容です。


・「基本的見解」の「概要」とな

今回は基本的見解の文章部分が前回の7pから9p(最後の1pは2行なので実質8p)と増えていまして、えーっと確かQQE導入後に一回この基本的見解を簡素化するとか言って色々な説明をバッサリ減らしませんでしたっけ何で増えるんでちゅかねえという所なのですが、良く良く見たら基本的見解の最初の所に「概要」という概要の概要みたいな屋上屋を架すみたいなコーナーが追加になっております。

ナンノコッチャという感じですが、これって勝手な妄想をしますと「分かりやすい表現」がどうのこうのと謎提案をする白井審議委員の見解を反映して最初にエグゼクティブサマリーみたいなのを突っ込んだという事かなと思いますし、白井審議委員ニッコリと言いたい所ですが、後の所でリスク要因の中で雇用や所得に関する部分が削除されていて従来よりリスクとして認識という話をしていた白井さん涙目で相殺ですかそうですかという所で。

でまあ概要なんですけどね。

『・2014年度から2016年度までの日本経済を展望すると、2回の消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には潜在成長率を上回る成長を続けると予想される。』(以下暫く今回分)

まあここは毎度同じですな。展望する年度が1年延びています。

『・ 消費者物価の前年比(消費税率引き上げの直接的な影響を除くベース)は、暫くの間、1%台前半で推移したあと、本年度後半から再び上昇傾向をたどり、見通し期間の中盤頃に2%程度に達する可能性が高い。その後次第に、これを安定的に持続する成長経路へと移行していくとみられる。』

総裁会見で質問がありましたが、この「見通し期間の中盤」というのは2015年度半ば頃という話だが若干幅はあるという概念だそうでしてここについては後ほど。

『・ 従来の見通しと比べると、成長率の見通しは、輸出の回復の後ずれなどから、2014年度について幾分下振れるものの、物価の見通しは、@雇用誘発効果の大きい国内需要が堅調に推移するもとで、労働需給が引き締まっており、この傾向はさらに強まることや、A中長期的な予想物価上昇率の高まりが実際の賃金・物価形成に影響を与え始めているとみられることから、概ね不変である。』

@の労働市場を中心として経済のスラックがほぼ解消に向かう中で需給ギャップが改善傾向を辿る、という需給ギャップ方面のアプローチに加え、Aの方がキタコレな話で、フィリップスカーブが上方シフトしているのではないか攻撃キタコレであります。

『・「物価安定の目標」のもとで、以上の中心的な見通し(第1の柱)と、これに対する上下双方向のリスク要因(第2の柱)を点検した2。金融政策運営については、「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、今後とも、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う。』(今回)

ここの金融政策運営の部分については文言に非常に深い味わいがありますのでそれも後ほど。

つーことで、まあ表面上は強い話でしてフィリップスカーブの上方シフトの可能性を全面的に指摘とかキタキタキターな部分が思いっきりある一方で、ヘッジクローズにあまり良く見えないけれどもヘッジとしても使える部分というオモシロイ部分がありまして、そういう点では実にこう何か「周到に作られた」印象を受けますですよ、はい。

・中心的な見通し:輸出の現状判断は下がったけど内容は強いです罠

『わが国の景気は、消費税率引き上げの影響による振れを伴いつつも、基調的には緩やかな回復を続けている。輸出は弱めとなっているが、国内需要が堅調に推移するもとで、景気の前向きの循環メカニズムはしっかりと作用し続けている。国内需要は雇用の誘発効果が大きいため、2013年度の成長率の下振れにもかかわらず、労働需給は概ね想定に沿って引き締まり傾向が強まっている。』(今回)

『わが国の景気は、緩やかに回復している。需要面をみると、輸出は持ち直しつつもやや勢いに欠ける一方、個人消費をはじめ国内需要は堅調に推移している。こうした内外需要を反映して、生産面では、鉱工業生産の増加ペースが緩やかにとどまる一方で、サービスや建設など非製造業の活動は強めに推移している。』(前回)

輸出が「弱め」と下がっている(4月金融経済月報概要は「横ばい」ですがこれは方向性の話で水準とは別)のですが、一方で「景気の前向きの循環メカニズム」というのが思いっきり入っているのが強いですなあという所で、しかも今回は「労働需給の引き締まり」ということで、雇用のスラックがほぼ解消されたと見なされるという話も出ていてまあ強い強い。


『先行きを展望すると、国内需要が堅調さを維持する中で、輸出も緩やかながら増加していくと見込まれ、生産・所得・支出の好循環は持続すると考えられる。このため、わが国経済は、2回の消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には潜在成長率を上回る成長を続けると予想される3。』(今回)

『先行きは、内需が堅調さを維持する中で、外需も緩やかながら増加していくと見込まれ、生産・所得・支出の好循環は持続すると考えられる。このため、わが国経済は、2回の消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には潜在成長率を上回る成長を続けると予想される2。』(前回)

輸出の見通しはしつこく「今度こそ上昇する」というオオカミおじさん状態ですが、それ以外に関しては基調として強い話です罠。

脚注は潜在成長率に関する記述です。

『3 わが国の潜在成長率を、一定の手法で推計すると、このところ「0%台半ば」と計算されるが、見通し期間の終盤にかけて徐々に上昇していくと見込まれる。ただし、潜在成長率は、推計手法や今後蓄積されていくデータにも左右される性格のものであるため、相当幅をもってみる必要がある。』(今回)

『2 わが国の潜在成長率を、一定の手法で推計すると、見通し期間平均では「0%台半ば」と計算されるが、見通し期間の終盤にかけて徐々に上昇していくと見込まれる。ただし、潜在成長率は、推計手法や今後蓄積されていくデータにも左右される性格のものであるため、相当幅をもってみる必要がある。』(前回)

ということで、潜在成長率の推計が微妙に上がっている(前回は平均が0%台半ばだったのに対して今回は直近の数値として0%台半ばだから)ように見えるのですが、潜在成長率が上がったら物価って上がりにくくなるんじゃないですかねえ何でGDPが見通し下振れているのに物価が上昇するねんというのは後ほど説明が出てくるですよ。


・謎の脚注4

その続き。

『こうした見通しの背景にある前提は、以下のとおりである。第1に、日本銀行が「量的・質的金融緩和」を着実に推進していく中で、金融環境の緩和度合いは一段と強まっていくと考えられる4。』(今回)

でまあそこの話は良いとしまして(実質金利の低下が効果で云々の話)脚注4が今回の展望レポートの謎記述にも程がある部分。

『4 各政策委員は、既に決定した政策を前提として、また先行きの政策運営については市場の織り込みを参考にして、見通しを作成している。具体的には、短期金利について、市場は、見通し期間を通じて、実質的にゼロ金利が継続することを織り込んでいる。長期金利について、市場は、見通し期間を通じて、低位で推移すると予想しているが、これには市場参加者の物価見通しが展望レポートに比べ低いことが影響している。各政策委員は、こうした市場の見方を踏まえ、物価見通しの違いも勘案して、長期金利の先行きを想定している。』(今回)

ということなのですけど、まあ基本的に展望レポートの作りというのは置きになる金融政策運営に関して「市場の織り込む金融政策パス」というのが全体になるというのがお約束になっていると理解している(ちなみにFEDのSEPは「各参加者が適切と考える金融政策パス」というのが置きになりますし、BOEの場合は「市場織り込み」と「現状維持」の二本立ての筈)のですが、今回に関しては脚注にもありますように、市場の先行き経済物価見通し(というよりは物価見通し)と日銀の出して来る見通しとの間に相当のギャップがありますので、市場の織り込む金利パスを使うとそもそも金融政策として適切ではない(緩和し過ぎ)パスになるように思えます。

しかしどうもこの書きっぷりだと政策金利の置きをゼロ金利政策2016年度まで継続するような形になっていますが、実質金利がマイナスで潜在成長率を上回るような状態が1年半位は続くという中で物価水準が2%近辺でそのままアンカーされるには経済に相応のスラックでも無いと難しいんじゃないでしょうかと思うのですが、一方で日銀の見通しの中心的なベースの説明では需給ギャップは解消からプラス方向に推移するという話になっており、基本的に経済のスラックが解消方向という説明をしているのに、何で2015年度は兎も角2016年度に安定して2015年度の水準を維持するのかが良く判らんですなあというようなお話です。

これ「長期金利の先行き想定」って話で最後サラッと逃げているので、短期金利の想定がどうなっているのかが判らないですし、「物価見通しの違いも勘案して、長期金利の先行きを想定している」って言うのは要するに市場の織り込みパスだと低すぎるから上方修正しているという事だと思うのですが、何かここって丁寧に説明しようとして却って訳分からなくなっているように思えるのですけどねえ。


・先行き見通しの主な変更部分

『第1に、日本銀行が「量的・質的金融緩和」を着実に推進していく中で、金融環境の緩和度合いは一段と強まっていくと考えられる。』(今回)
『第1に、日本銀行が「量的・質的金融緩和」を着実に推進していく中で、金融環境の緩和度合いは一段と強まっていくと考えられる。』(前回)

金融環境の緩和云々については前回と今回ほぼ同じ(謎の脚注部分を除く)です。

『第2に、海外経済については、先進国が堅調な景気回復を続け、その好影響が新興国にも徐々に波及していく中で、緩やかに成長率を高めていく姿を見込んでいる。』(今回)
『第2に、海外経済については、4月の展望レポート時点の想定と比べると幾分弱めに推移しているが、国際金融資本市場が総じて落ち着いて推移するとの前提のもとで、先進国を中心に、次第に持ち直していく姿を見込んでいる。』(前回)

ここに関しては項目別に見ると中国経済が若干下がっていますが、米国欧州は割と上げ、その他新興国資源国については
やや上がっています。

『第3に、公共投資は、2014年度上期にかけて、経済対策の押し上げ効果から高水準で推移したあと、次第に緩やかな減少傾向に転じていくと想定している。』(今回)
『第3に、公共投資は、既往の各種経済対策の効果に加え、新たに策定される予定の経済対策による追加の押し上げ効果も予想されることから、2014年度上期にかけて高水準で推移するとみられる。』(前回)

こちらはさすがに下がります。


『第4に、政府による規制・制度改革などの成長戦略の推進や、そのもとでの女性や高齢者による労働参加の高まり、企業による生産性向上に向けた取り組みと内外需要の掘り起こしなどもあって、企業や家計の中長期的な成長期待は、緩やかに高まっていくと想定している。』(今回)

『第4に、政府による規制・制度改革や今後見込まれる各種の企業向け減税措置、企業による内外需要の掘り起こしなどもあって、企業や家計の中長期的な成長期待は、緩やかに高まっていくと想定している。』(前回)

今回ほほうと思ったのは『女性や高齢者による労働参加の高まり』、『企業による生産性向上に向けた取り組み』という部分ですな。


・駆け込み需要の反動からの回復時期

『もっとも、雇用・所得環境の改善に支えられて、個人消費の基調的な底堅さは維持され、駆け込み需要の反動の影響も夏場以降、減衰していくと考えられる。』(今回)

『以上の内外需要を反映して、わが国経済は夏場以降、潜在成長率を上回る成長経路に復していくと予想される。』(今回)

ということで、まあ元々そういう感じではありましたが、前回の見通しよりはややニュアンス的には強くなっていると思います。というのは前回は下の通り。

『2014年度の成長率については、上期を中心に駆け込み需要の反動が出ることから、前年度に比べればかなり鈍化するとみられる。ただし、海外経済の持ち直しが明確となる中で輸出が伸びを高めるほか、金融緩和や各種企業減税の効果などから設備投資もしっかりとした増加を続けるため、潜在成長率を上回る成長は維持されると考えられる。』(前回)


・物価情勢の所は色々とオモロイ

『物価上昇率を規定する主たる要因について点検すると、第1に、労働や設備の稼働状況を表すマクロ的な需給バランスは6、雇用誘発効果の大きい国内需要が堅調に推移していることを反映して、労働面を中心に改善を続けており、最近は過去の長期平均並みであるゼロ近傍に達しているとみられる。』(今回)

『第1に、マクロ的な需給バランスは、消費税率引き上げの影響による振れを伴いつつも、緩やかな改善傾向をたどり、見通し期間後半にかけて需要超過幅を拡大させていくと予想される』(前回)

という事でまずここで需給ギャップゼロキタコレですよ!!というのと、今回は需給ギャップの改善時期に関しても前倒しになっていいてキタコレです。

『すなわち、失業率が3%台半ばとみられる構造的失業率に近づきつつあるなど7、労働需給は着実に引き締まり傾向が強まっているほか、非製造業を中心に設備の不足感も強まってきている。先行きも、消費税率引き上げの影響による振れを伴いながら、2014年度下期にプラス(需要超過)基調が定着したあと、プラス幅が一段と拡大していくと考えられる。そうしたもとで、需給面からみた賃金と物価の上昇圧力は、着実に強まっていくと予想される。』(今回)

いやー強い強い。更に・・・・・・・

『第2に、中長期的な予想物価上昇率については、全体として上昇しており、こうした動きは実際の賃金・物価形成にも影響を及ぼし始めているとみられる。』(今回)

『第2に、中長期的な予想物価上昇率については、「量的・質的金融緩和」のもとで、実際の物価上昇率の高まりもあって上昇傾向をたどり、「物価安定の目標」である2%程度に向けて次第に収斂していくと考えられる。こうした予想物価上昇率の高まりは、企業や家計を含めた価格・賃金形成に徐々に浸透していくとみられる』(前回)

ということでここのインフレ予想に関する表現も強くなるわフィリップスカーブの上方シフトを示唆する表現になるわで強い強い。

『第3に、輸入物価については、国際商品市況や為替相場の動きを反映して、エネルギーを中心とした押し上げ効果は本年夏頃にかけて減衰していくと予想される。』(今回)
『第3に、輸入物価については、国際商品市況や為替相場の動きを反映して、当面は上昇要因として作用すると見込まれる。』(前回)

まあこれは下がる罠。

で全体なのですが・・・・・・・・・

『以上を踏まえ、消費者物価の前年比(消費税率引き上げの直接的な影響を除くベース)の先行きを展望すると8、暫くの間、1%台前半で推移したあと、本年度後半から再び上昇傾向をたどり、見通し期間の中盤頃に、「物価安定の目標」である2%程度に達する可能性が高い。』(今回)

『以上を踏まえ、消費者物価の前年比(消費税率引き上げの直接的な影響を除くベース)の先行きを展望すると4、マクロ的な需給バランスの改善や中長期的な予想物価上昇率の高まりなどを反映して上昇傾向をたどり、見通し期間の後半にかけて、「物価安定の目標」である2%程度に達する可能性が高いとみている。』(前回)

えーっとですな、前回の見通し期間は2013年度から2015年度までなので、見通し期間の後半に掛けてと言いますと2015年度の頭は既に後半になると思うのですけれども、今回の見通し期間の中盤頃というのは会見によると2015年度中ということですので、この表現だと物価安定目標の達成見込み時期が後ズレしているような書きっぷりになっているのが実にこう怪しい表現。

でまあ会見(詳しくはテキストを見てから)によりますとどうもここは「特段の政策的な意図はなく、見方は変わっていません(キリッ)」という話らしいのですが、そうは言いましてもここの表現はそろそろ達成云々の時期が近づいてきたので、微妙に表現をぼやかしてインチキグラデーション攻撃を掛けてきたのではないかとの疑惑も流れる所でございまする。


・上下要因(経済):白井審議委員涙目&輸出に注目

こちらに関しては基本的な部分は前回と同じなのですが違ったのが2か所。

今回の要因としては輸出、消費税の影響、成長期待、財政の維持可能性というのがありまして、前回あった『第2に、家計の雇用・所得動向がある。』(前回)というのが無くなっていまして、雇用所得動向に関するリスク認識が無くなったとか強い強い&白井さん涙目。

輸出に関しては今回新たにこのような記述が入りました。

『このところの輸出の弱さの背景には、基本的に、わが国経済との結びつきが強いASEANなどの新興国経済のもたつきの影響が大きいが、わが国製造業の海外生産移管の拡大といった構造的な要因も相応に影響している可能性が高い。』(今回)

ということでシクリカルな部分だけでは無くてストラクチュアルな部分を入れていますな。まあ輸出に関しては明らかに日銀の期待外れの状態が続いていますからね。


・上下要因(物価):上振れ要因キタコレ

『それ以外に物価の上振れ、下振れをもたらす要因としては、第1に、企業や家計の中長期的な予想物価上昇率の動向が挙げられる。中心的な見通しでは、実際の物価や賃金の上昇率が高まっていく中で、人々の予想物価上昇率も一段と上昇していく姿を想定しているが、どのようなペースで上昇していくかについては注意する必要がある。加えて、消費税率引き上げに伴う幅広い品目の一斉の価格上昇が、人々のインフレ予想に与える影響についても注意してみていく必要がある。』(今回)

『物価に固有の上振れ、下振れ要因としては、第1に、企業や家計の中長期的な予想物価上昇率の動向について不確実性が高い。人々のインフレ予想が、過去にみられた物価や賃金の緩やかな下落を反映して、なかなか高まらない可能性がある一方、実際の物価や賃金の上昇率が高まっていく過程で、予想物価上昇率が比較的早期に上昇する可能性もある。加えて、消費税率引き上げに伴う幅広い品目の一斉の価格上昇が、人々のインフレ予想に与える影響についても注意してみていく必要がある。』(前回)

ということで、既に今回は予想物価上昇率について上がる事を前提にした話になっている(前回は動向が不確実とか割と謙虚な表現でしたけど)上に、最後の所なんぞインフレ予想が上振れの話ですがな・・・・・


『第2に、マクロ的な需給バランス、とくに労働需給の動向がある。中心的な見通しでは、労働供給面で、近年の高齢者や女性による労働参加の高まりが、今後もある程度続くことを前提としているが、この点を巡っては不確実性がある。また、同じ成長率であっても、労働集約度の異なる製造業・非製造業間のバランス次第で、経済全体でみた人手不足感は変化する可能性がある。』(今回)

これ新しく入った所ですな、でこちらも上振れ方向の話がメインっぽいですよオソロシス。


『第3に、物価上昇率のマクロ的な需給バランスに対する感応度、すなわち、企業が需給の引き締まりに応じて価格や賃金をどの程度引き上げていくかについて注意が必要である。』(今回)

『第2に、マクロ的な需給バランスに対する物価の感応度についても不確実性がある。企業が、厳しい競争環境が続く中でも、財・サービスや労働の需給の引き締まりに応じて、価格や賃金を引き上げていくかどうか注意が必要である。』(前回)

こちらも既に上昇するのが前提で、その幅が問題という感じですな。でまあ最後は輸入物価ですがここは前回同様なので割愛。


・金融政策運営の表現がこれまた微妙

第一の柱ですが時期の表現が先ほどと同様に微妙。

『まず、第1の柱、すなわち中心的な見通しについて点検すると、わが国経済は、見通し期間の中盤頃に、2%程度の物価上昇率を実現し、その後次第に、これを安定的に持続する成長経路へと移行していく可能性が高いと判断される。』(今回)

『まず、第1の柱、すなわち中心的な見通しについて点検すると、見通し期間の後半にかけて、日本経済は、2%程度の物価上昇率が実現し、持続的成長経路に復する可能性が高いと判断される。』(前回)

ということで先ほどと同様に時期の表現が妙ですな。

第二の柱の点検部分はニュアンス概ね同じなので割愛しますが、最後の結論部分の表現が更に妙です。

『金融政策運営については、「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、今後とも、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う。』(今回)

『金融政策運営については、「量的・質的金融緩和」のもとで、実体経済や金融市場、人々のマインドや期待など、好転の動きが幅広くみられており、わが国経済は2%の「物価安定の目標」の実現に向けた道筋を順調にたどっている。今後とも、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う。』(前回)

・・・・・・・・・・・さてどこが変わっているかと言いますと、まず第一文の中でQQEの効果に関しては「所期の効果を発揮しており」と勝利宣言っぽい表現をして(キリッ)という風情を醸し出しているのですが、その後いきなり「今後とも、日本銀行は〜」という文章になっていて、文章の流れに違和感ががががが。

で、良く良く前回と比較してみると、前回あった「わが国経済は2%の「物価安定の目標」の実現に向けた道筋を順調にたどっている」という一文が抜けておりまして、つまり前回は「ここまでの政策評価」→「経済物価情勢のパス」→「今後の金融政策運営」という表現の流れだったのが、今回はその「経済物価情勢のパス」に関する表現が無くなっているというのが実にこう味わいが深い訳ですよ。

まあ総裁会見によりますと展望レポートに3名反対が出たとの由ですので、その反対の3名(の誰かか全員か知らんが)が2%へのパスを「順調に」辿るとはケシカラン表現であると全力で主張したのではないかと妄想される所ですが、ここの「順調に」云々が削られている辺りや、達成時期の表現が微妙に変化している辺りなどにフォーカスを当てると実は今回の展望レポートって「先行きの物価目標達成の時期やパスに関して微妙に日和った表現が入っていてヘッジを入れていますな」という解釈も可能というのが何ともまあ味わいの深い所で、これはもうジャパニーズ侘び寂の世界であると認識せざるを得ないという所でありまする。

なお、全文と総裁会見のテキストが今日出ますのでまたそれを鑑賞しつつ続きます、という所で。

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2014/04/30

○金融システムレポート関連雑談メモ(とりあえずメモのみ)

FSR雑談を書こうかと思ったのですが本文を引っ張り出してああだこうだという話をおっぱじめようとしますと結構ヘビーだったりするので本日はメモだけ書いておきます。先日概要部分をネタにしたのですがその追加みたいな感じです。

本文16ページで金融機関の貸出と有価証券投資に関する話がああだこうだとあるのですが、この辺りをみておりますと「貸出は伸びている」という話をしておりまして、企業向け貸出に関しては幅広い業種や、従来の大企業中心から中小企業にも貸出が伸びていますよという話もしていてほほーという感じではあるのですが、不動産関連貸出に関して本文21ページに微妙な記述がありまして、本文21ページで言及されているのですが、不動産向け貸出の伸びが地域銀行や地方圏での伸びが高くなっているという指摘をさらっとしておりまして、ほほうという感じでありまする。

で、本文54ページ以降で「地域銀行の収益性について」というコーナーがありまして、まあ地域銀行の収益性に関する話は毎度言及されていて今回はその辺の記述が露骨になったなあというのは概要部分の紹介をした時に申し上げたと思いますが、この部分に関する記述がこれでもかと本文の方でも続いているのが印象的な所ではあります。

つまり、「地域銀行の域外貸出増加の影響」(56p、域外貸出をするとロットは増えるし多様性も増すけれども導入段階でサービスレートを入れないといけないので収益性が手前で悪化する上に進出先の金融機関が貸出競争に巻き込まれる)とか、概要の方でもあった「BOX1 人口動態の変化と家計預金」(59p、今後の人口動態の変化は金融機関の預金吸収力の低下をもたらすがその影響は地域金融機関の方が先に出てきて大きいでしょう)などの話をしておりまして、まあうーむという感じではあります。

一方でマクロストレステストの方では国内基準行に関してはTier1に金利上昇時の国債含み損発生部分を気にせんでよいというのを使っている(もちろん売却すると損が出るので影響するという話はしているけれども)ので、そこまで厳しい話をしていないのは、まあマクロストレステストの部分って報道で使われる可能性の高い部分だから、こちらではセンセーショナルな書き方をしないのが吉というのは(今に始まった事では無く前回もそういう計算してます、為念)継続しておりまして、地域金融機関に対するやや厳し目のトーンはあるのですが、報道ベースなどで悪目立ちしないようにという配慮をしている辺りが味わいがあるっちゅうか却ってアレな所でもあるなあ、という話をもうちょっと詳しくやろうかと思ったのですが、うまく考えが纏まらなかったのでメモで勘弁させて頂きましたです、はい。

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2014/04/25

○金融システムレポート(概要)を斜め読み:地域金融機関に関する指摘が増えている希ガス

http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr140423b.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr131023b.pdf(前回)

前回と今回を比較すると今回やたら量が多くなっているのがほほうという感じですな。

・8ページ増えているのですが内訳

前回と今回を比較して今回って8ページ量が多くなっているのですが、どこのページが増えているのかと見ますと・・・・・・・

『U.外部環境の点検』:変わらず
『V.金融仲介活動の点検』:そもそも小見出しがちょっと変わったのだが(今回の方があっさり味)2ページ増えています
『W.金融資本市場から観察されるリスク』:1ページ増えています
『X.金融仲介機関に内在するリスク』:1ページ増えています
『Y.金融システムのマクロ的なリスク評価』:2ページ増えています

ということで、基本的に万遍なく増えていまして、まあ内容が充実しましたなという話ではあるのかもしれませんが、増えた部分とかをチラチラ見ると味わいがあったりなかったりする。


・住宅ローンの項が登場とな

『V.金融仲介活動の点検』の辺りを見ますと、幾つか味わいがあるのですけれども、不動産関連の貸出に関連して今回住宅ローンの項目が概要に出てきたのがほほーという感じ。

『住宅ローン

・ 金融機関の住宅ローンは、増加傾向が続いている。

・ 消費税引き上げ前の駆け込み需要などを背景として住宅投資が拡大していることに加え、貸出金利の低下など金融機関の融資姿勢が積極化していることによるもの。

・ こうしたもとで、住宅ローンの採算性は趨勢的に低下している。』(今回分、以下断りの無い限り今回分から引用)

まあこの辺りに関しては従来のFSRでも指摘されていた事ではあるのですが、今回概要部分に堂々のご登場というのはほほうという所ですな。


・国債投資に関しては物は言い様とはまさにこのこと

『有価証券投資』の所では国債の部分でこんな記述が。

『・ 金融機関の有価証券投資は、全体としてみると、円金利リスクの一段の積み増しに慎重な先が増加するもとで、円債以外の有価証券への投資を徐々に増加させていく動きが広がってきている。

・ 円債投資は、昨年秋頃にかけて、大手行が投資残高を大幅に削減、地域銀行と信用金庫でも残高は小幅な減少に転じた。もっとも、その後は、債券利息収入を確保するために残高を復元する動きと、引き続き残高を削減する動きが混在。

・ 外国証券や投資信託への投資残高(円換算ベース)は、昨年末にかけて、大手行・地域銀行を中心に増加。本年入り後、投資姿勢は幾分慎重化しているが、これら資産での運用を増やそうとする先は、昨年前半までに比べると広がっている。』

とまあしらっと書いてあるのですが、「円金利リスクの一段の積み増しに慎重な先が増加するもとで」円債が減っているのではなくて、単に日銀が盛大に購入するのに金融機関が協力しているから国債の残高が減っているだけの話ではないでしょうかと存じますが何というポートフォリオリバランス進展自画自賛モードの大本営発表モード。

有価証券投資、というカテゴリーにおいて国債残高が落ちている分に関しては、日銀当座預金の拡大もある意味投資ではあるとは思うのでそれも考慮したらどうでしょうとは思いますが、恐らくFSRの趣旨から言って日銀当座預金についてはオーバーナイト運用の無限ロールになっていることから金利上昇リスクという意味では皆無に等しい、という認識になるからスルーしているという事だとは思いまする。

ただまあポートの金利リスクという意味ではそれはそうなのですけれども、ポートフォリオリバランスが進展しています(キリッ)的な話をするのってどうなんでしょという気はせんでもない。つーか御行の金利リスクはどうよと思いますけど。


・円滑化法案関連

『X.金融仲介機関に内在するリスク』の『中小企業金融円滑化法の下での企業の財務状況』というコーナーは今回入ったのですがここはほほうという所。

『・金融機関の資産内容の改善や信用コストの低下には、景気回復のほか、中小企業金融円滑化法のもとで業績不振企業に対する金融機関支援が実施されてきたことも、寄与しているとみられる。

・ 円滑化法の適用を受けたとみられる企業では、それ以外の中小企業に比べて、信用評点が「改善」した企業の割合だけでなく、「悪化」した企業の割合も高くなっている。

・信用評点が「悪化」した企業では、リーマン・ショック前の時点で評点がもともと相対的に低位で、かつ緩やかな低下傾向にあったが、円滑化法の適用を受けても、低下傾向に歯止めがかからなかった。

・ 今後、これらの企業についても経済・物価情勢の好転の影響が及んでいくのかどうか、また、金融機関の支援のもとで財務や事業の再構築を進め、企業価値の向上を図っていくことができるかどうかが注目される。』

ということで、ここは円滑化法案のメリットだけではなく、円滑化法案で問題の先送り攻撃をしている面のデメリットを指摘している辺りが中々イイハナシダナーという感じですな、うんうん。


・地域金融機関の収益性とな

『X.金融仲介機関に内在するリスク』で今回は思いっきり『地域銀行の収益性について』というのが出て参りました。まあ従来よりFSRでは地域金融機関の収益性に関して趨勢的な低下とか、有価証券投資(しかも債券)一本足打法は如何なものかとか、コスト下げるのに経営上の工夫(まあ露骨に言えば再編)をしたら如何でしょうかみたいなニュアンスのネタが毎度ホイホイと出てくるのですが、今回は収益性について出てきましたな。

『地域銀行の収益性について@

・ 2012年度におけるコア業務純益ROAの上位10%(高収益グループ)の先と下位10%(低収益グループ)の先について、コア業務純益ROAの推移を比べると、両者の差は1997年頃から拡大傾向が続いている。

・ 収益性の差が拡大していることについて、その要因を分解すると、2000年代前半以降、貸出利鞘、有価証券関連収益、非資金利益などの違いが寄与してきたが、2007年頃からは、貸出利鞘の相違が特に目立ってきている。』

貸出利鞘の足りない金融機関は取れということですかそうですか。


『地域銀行の収益性についてA

・低収益グループでは、高収益グループに比べて、中小企業向け貸出が伸びておらず、2000年代半ば以降は個人向けの伸びが抑制されている一方、地方公共団体向け貸出の伸びが大きい。

・ 高収益グループの自己資本比率は、低収益グループよりも高く、その差は近年になるにつれて拡大している。地域銀行の中でも、充実した財務基盤のもとで、適切にリスクを管理しつつ、貸出を増加させている先が、高めの収益性を維持している姿が窺われる。』

貸出増やせ言いましても地公体くらいしか優良な資金需要がある先が無かったりするケースもあるように思えるのですがががががが。


で、地域銀行云々ですが、次のコーナーでも何かこう地域金融機関の経営環境に関するアレな指摘が。

『人口動態の変化と家計預金

・人口動態の変化の影響は、これまでのところ、全体として家計預金の押し上げに寄与している。

・先行きについて一定の仮定のもとで試算すると、人口動態の変化の影響は、2020年代後半には全体として家計預金を押し下げるとの結果になる。

・人口動態の影響は、地域間で相応に異なり、大都市圏では当分の間押し下げ圧力として働かない一方、地方圏では徐々に押し下げ圧力として働いていくと見込まれる。』

うーむという感じですが、これ以外でも基礎的な収益力が弱い金融機関が国債投資に依存しているだのその手の指摘があちこちにちらほらという感じでして、総じて地域金融機関の課題みたいな話をしているように思えたのですがまだ斜め読みの段階(本文精読はまだ途中も途中なので)ですのでまた補足すると思います。

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2014/04/24

○FSRネタは時間が無いのでまた後に続くのだが少々

FSRである
http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/fsr140423.htm/(要旨)
http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr140423a.pdf(全文)
http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr140423b.pdf(概要)

でまあこれをネタにするとかなりのヘビー振りになるので時間と量の関係上今朝はパスなのですが。


日銀の新着を見るとしらっとこのFSRと同時にこんなのがあります。

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2014/wp14j07.htm/(要旨)
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2014/data/wp14j07.pdf(全文)
『金融活動指標』の見直しについて

要旨の方のURL先から引用しますとこうなります。

『本稿では、『金融活動指標』の見直しを行う。指標の選定にあたっては、まず、候補となる指標を14のカテゴリーに分類した。次に、これらのカテゴリーごとに、分類された指標の有用性を以下の2つの観点から検討した。第一に、わが国の経済・金融活動に大きな影響をもたらした平成バブルの過熱を察知できたかという観点である。第二に、各種の統計的な過誤を小さくできるかという観点である。その際、指標のトレンドの算出方法や、トレンドからの乖離がどの程度であれば過熱と判断するかの基準(閾値)についても、複数の選択肢を考慮した。各カテゴリーから最も有用性の高い指標を1つずつ選んだ結果、従来の金融活動指標の10指標のうち、2指標を廃止する一方、1指標については継続使用、3指標についてはトレンド算出方法を変更、4指標については利用データの加工方法を変更することとなった。これら8指標に、新たに採用する6つの指標を加えた14指標が、新しい金融活動指標である。』

ということで、この金融活動指標自体は2012年4月の金融システムレポートから公表されているのですが、中々こう味わいのある指標でして、まあ今までの所この指標が何らかのアラームを出しているという事案は無いのですけれども、マクロプルーデンスという観点からはこの金融活動指標ってそこそこ重要な話になるのではないかと思われるので、内容とかも注意したい物です。

でもってじゃあ内容どうなってますねんという話はこれまた論文まだろくすっぽ読めてませんのですが、まー要旨と最初の数ページ見る限りではそこに何らかの政策意図が入ってどうのこうのという事ではないようには見えます(と言いつつ全部読んだらまた話が変わるかも知れん)けど、マクロプルーデンス的に重要そうなので読むのが吉のように思えます。

なお、この金融活動指標ですけれども、FSRの概要(PDFファイルの小さい方)ですとスライドショーの本文29ページと30ページ(PDFの30枚目と31枚目)に説明がありまして・・・・・・・・

『Y.金融システムのマクロ的なリスク評価』

『金融面の各種リスク指標を点検すると、金融資本市場や金融機関行動において、マクロ的に留意すべき不均衡や過熱方向の動きは示されていない。
・ 総与信・GDP比率は、長期的な趨勢の近傍で、横ばい圏内で推移。
・ 金融活動指標をみると、ほとんどの指標で過熱方向の動きは示されていない。』(FSR概要の本文29ページから)

という評価になっていますので、まあマクロプルーデンス発動という話でも何でも無いのですが、日銀の目線がまあ目標達成の方にある中ですからして、まあ出口政策の話は時期尚早とは総裁はゆうてますけど衣の下から鎧がチラリズムというのは杞憂の深読みですかそうですかという所で。

#まあ本当に目標達成すると思ってるなら出口の後の事を考えない訳無いと思いますがねえ

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2014/04/18

○さくらレポート関連:このタイミングで上方修正箇所があるとは強気にも程がある

http://www.boj.or.jp/research/brp/rer/rer140417.htm/(概要)
http://www.boj.or.jp/research/brp/rer/data/rer140417.pdf(本文、PDF注意)

なお、以下の引用は特に断りの無い限り上記URLのうち概要の方からとなります。

・判断が全然引き下げられないとかテラ強気

『各地の景気情勢をみると、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には、「回復を続けている」、「緩やかに回復している」等の報告があった。』

「影響を受けつつも」「基調的には」回復ということですが、駆け込み需要の反動で足元落ちてきていますなあという言い方では無くてあくまでも「これは一時的な話」という主張が思いっきり篭っているのがこの辺の文言に出ていまして、何ちゅうかその強気攻撃でろくにヘッジが入っていない(月例経済の方は若干ヘッジが入りだしている感じがある中で)とかエライ強気ですなあという話っす。

『この背景としては、国内需要が堅調に推移し、生産が緩やかな増加基調をたどる中で、雇用・所得環境も改善していることが挙げられている。』

雇用所得環境キタコレ!

『前回(14年1月)と比較すると、8地域(北海道、東北、関東甲信越、東海、近畿、中国、四国、九州・沖縄)は、景気の改善度合いに関する基調的な判断に変化はないとしている。北陸は、設備投資の持ち直しの明確化等を背景に判断を引き上げている。』

という内訳は以下の通り。

『北海道: 緩やかに回復している
→消費税率引き上げの影響による振れを伴いつつも、基調的には緩やかに回復している

東北: 回復している
→消費税率引き上げの影響による振れを伴いつつも、基調的には回復を続けている

北陸: 緩やかに回復しつつある
→消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかに回復している

関東甲信越: 緩やかに回復している
→消費税率引き上げの影響による振れを伴いつつも、基調的には緩やかな回復を続けている

東海: 回復している
→足もと消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動もみられているが、基調としては回復を続けている

近畿: 緩やかに回復している
→ 消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動がみられているが、基調としては緩やかに回復している

中国: 緩やかに回復している
→消費税率引き上げの影響による振れを伴いつつも、基調としては緩やかに回復している

四国: 緩やかに回復している
→消費税率引き上げの影響による振れを伴いつつも、基調的には緩やかな回復を続けている

九州・沖縄: 緩やかに回復している
→消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかに回復している』

消費税率引き上げの話がああだこうだという話をしておりまして、結局の所必殺ワード「基調的には」の後の部分を読むしかないのですが、そこを見ますと北陸だけ「緩やかに回復しつつある」→「緩やかに回復している」になっていて、それが上方修正となっているようですな。


・各需要項目に関して

まずは公共投資。

『公共投資は、東北から、「大幅に増加している」、5地域(北海道、北陸、関東甲信越、中国、四国)から、「増加している」、「増加傾向を維持している」等の報告があった。また、3地域(東海、近畿、九州・沖縄)からは、「高水準で推移している」等の報告があった。』

まあこれは良しとしまして設備投資。

『設備投資は、5地域(北海道、東北、関東甲信越、東海、近畿)から、「増加している」等、4地域(北陸、中国、四国、九州・沖縄)から、「持ち直している」、「持ち直しが明確になっている」との報告があった。この間、企業の業況感については、「引き続き改善している」等の報告があった。』

北陸が設備投資を上方修正して景気判断引き上げ、他は概ね前回同様。で次は個人消費。

『個人消費は、雇用・所得環境が改善していること等を背景に、北海道から、「緩やかに回復している」、4地域(北陸、東海、四国、九州・沖縄)から、「緩やかに持ち直している」、「持ち直している」等の報告があったほか、4地域(東北、関東甲信越、近畿、中国)から、「底堅く推移している」等の報告があった。この間、多くの地域から、耐久消費財(乗用車、家電等)や一部の高額品を中心に、「消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動がみられている」等の報告があった。』

基調判断の話はまあ同じような感じ。

『大型小売店販売額をみると、百貨店は、多くの地域から、高額品の販売が堅調となっているなど、「持ち直しの動きが続いている」、「底堅く推移している」等の報告があった。スーパーは、複数の地域から、「横ばい圏内で推移している」等の報告があった。』

前回はスーパーで下げ止まりとかになっていたので改善。

『乗用車販売は、新型車投入効果等もあって、「増加している」、「底堅く推移している」等の報告があった。』

前回は駆け込み需要で強めだったので若干下がっています。

『家電販売は、節電機能に優れた白物家電等を中心に、「持ち直している」、「堅調に推移している」等の報告があった。』

こちらは何と前回よりも若干上がっています。納車とか納品の関係で車より家電の方が駆け込み遅かったんでしょうな。なおこの辺の消費税影響云々については本文の方で多分説明があるのですが時間と量の関係でパス。

『旅行関連需要は、多くの地域から、「持ち直している」、「堅調に推移している」等の報告があった。この間、北海道、九州・沖縄から、外国人観光客が増加しているとの報告があった。』

円安効果キタコレですが、前回は「複数の地域」で今回は北海道と九州とな。

『住宅投資は、消費税率引き上げ前の駆け込み需要に伴う既往の受注増等もあって、5地域(東北、関東甲信越、中国、四国、九州・沖縄)から、「増加している」、「高水準で推移している」等の報告があった。また、東海、近畿からは、「駆け込み需要の反動もみられているものの、基調としては底堅く推移している」等の報告があった。一方、北海道からは、「持ち直しの動きが一服している」との報告があった。』

東海、近畿は駆け込み需要の反動が指摘されてまして前回対比下がっています。

『生産(鉱工業生産)は、国内需要が消費税率引き上げの影響による振れを伴いつつも堅調に推移し、海外需要も緩やかに持ち直していることを背景に、4地域(北海道、東北、関東甲信越、中国)から、「緩やかな増加を続けている」等の報告があったほか、3地域(北陸、東海、近畿)からは、「高水準で推移している」、「堅調に推移しているとみられる」等の報告があった。また、四国から、「緩やかに持ち直している」との報告があったほか、九州・沖縄からは、「全体としては横ばい圏内で推移している。この間、一部では増加に向けた動きもみられている」との報告があった。』

こちらは前回対比で見ると全体的には若干強くなっていますかね。微妙だけど。業種別の話はとばしまして・・・・・

『雇用・所得動向は、多くの地域から、「改善している」等の報告があった。』

引き続き強い。

『雇用情勢については、多くの地域から、「労働需給は改善している」等の報告があった。雇用者所得についても、多くの地域から、「持ち直している」、「改善の動きが明確化してきている」等の報告があった。』

キタコレで今回も強くなっているのでした。


・地域の視点のテーマの選び方が結構驚いたぞなもし

今回のお題は『各地域の製造業の生産・輸出動向と事業戦略』となっていました。で、内容に関しての引用は時間と量の関係で割愛しますが、今回ほほーと思ったのは「製造業の輸出」という微妙に期待外れの物に関してのテーマというのがほほーという感じ。

例えば前回の地域の視点のお題は『各地域における最近の雇用・賃金動向 ――人手不足感が強まるもとでの企業の対応――』となっていまして、だいたいこの手のネタを出す時というのは自分たちの政策がこう展開していってイイハナシダナー的な物を持ち出すのが仕様になっているのですが、今回は微妙に期待外れのテーマを取り上げている辺りが味わいがあるのでした。

で、最後の結論部分だけ引用します。

『最近の製造業を巡る環境変化や企業の事業戦略が地域経済に与える影響をみると、主要産業における海外生産シフトや国内生産拠点の再編等が経済を下押ししている地域がみられるほか、内需型産業中心の地域でも、円安に伴う電力料金・原材料価格の上昇が企業収益を圧迫しているとの声が少なくない。』

自画自賛系じゃないのが出てくるとな。

『こうした状況を踏まえ、量産工場による雇用創出等を重視してきた地方自治体の企業立地等の産業政策にも変化がみられている。たとえば、大手製造業の撤退が続いた地域では、優れた技術を有する地場企業の育成や既存技術の転用などにより成長分野への新規参入を促す動きがみられている。また、大都市近郊では食料品・物流等の内需型産業、災害が少ない地方ではBCP拠点、専門研究機関が集積している地域では研究開発拠点など、誘致企業のターゲットを明確化する動きがみられており、特定業種への補助金など、支援制度も多様化している。』

ほう。

『この間、大手・地場企業を問わず、従業員の雇用確保や技術流出リスク回避の観点から、引き続き国内生産を重視する声が少なくない。こうした企業からは、研究開発・設備投資に係る支援、労働市場の柔軟性向上、金融サポートの充実等を求める声も多く、官民が連携し製造業の国際競争力の維持・向上に向けて取り組んでいくことが期待されている。』

だから成長基盤強化であり貸出増加支援ですねわかりますという所ですが、レポートの中の「地域の視点」としては威勢の良い話じゃないのがお題になっているというのがほーという所でした。色々と妄想はたくましくなるのですが割愛。

なお、支店長会議での総裁冒頭あいさつは平常運転にも程がありました。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/siten1404.htm/

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2014/04/16

○金融経済月報比較を忘れていたので投下

どうもすいませんすいません。

http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2014/gp1404.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2014/gp1403.pdf(前回)

・現状認識は声明文と同じっすけどね

『わが国の景気は、消費税率引き上げの影響による振れを伴いつつも、基調的には緩やかな回復を続けている。』(今回)
『わが国の景気は緩やかな回復を続けており、このところ消費税率引き上げ前の駆け込み需要もみられている。』(前回)

基調判断は声明文の通り。

『海外経済は、一部になお緩慢さを残しているが、先進国を中心に回復しつつある。輸出は、このところ横ばい圏内の動きとなっている。』(今回)
『海外経済は、一部になお緩慢さを残しているが、先進国を中心に回復しつつある。輸出は、このところ横ばい圏内の動きとなっている。』(前回)

海外の見方は変わってないのですよね〜(声明文でもそうですけど)。

『設備投資は、企業収益が改善するなかで、持ち直しが明確になっている。公共投資は増加を続けている。個人消費や住宅投資は、消費税率引き上げの影響による振れを伴いつつも、基調的には、雇用・所得環境が改善するもとで底堅く推移している。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は緩やかな増加基調をたどっている。』(今回)

『設備投資は、企業収益が改善するなかで、持ち直しが明確になっている。公共投資は増加を続けている。雇用・所得環境が改善するもとで、引き続き住宅投資は増加し、個人消費は底堅く推移しており、これらの分野では消費税率引き上げ前の駆け込み需要もみられている。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は伸びが幾分高まっている。』(前回)

これまた声明文どおりですが生産の現状判断を3月に上げた分を2月以前の状態に戻しています。

『企業の業況感は、引き続き改善しているが、先行きについては慎重な見方もみられている。』(今回)

これは短観対応ですな。


・先行き見通し

『先行きのわが国経済は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかな回復を続けていくとみられる。』(今回)
『先行きのわが国経済は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかな回復を続けていくとみられる。』(前回)

駆け込み需要は終わりましたからその分が抜けるのは当然で見通し通りっす。

『輸出は、海外経済の回復などを背景に、緩やかに増加していくと考えられる。国内需要については、公共投資は、高水準で横ばい圏内の動きとなっていくとみられる。設備投資は、企業収益が改善傾向を続けるなかで、緩やかな増加基調をたどると予想される。』(今回)

『輸出は、海外経済の回復などを背景に、緩やかに増加していくと考えられる。国内需要については、公共投資は、当面増加傾向をたどったあと、高水準で横ばい圏内の動きとなっていくとみられる。設備投資は、企業収益が改善を続けるなかで、緩やかな増加基調をたどると予想される。』(前回)

公共投資の見通しが「横ばい圏内」に代わっているのですが、これは前回を見れば分かりますように前回の時点での「織り込み済み」の話なので従来の見通しからのオントラックである事には変わりはありません。

『個人消費や住宅投資は、駆け込み需要の反動から減少する局面を伴いつつも、基調的には、雇用・所得環境の改善などに支えられて、底堅く推移するとみられる。こうしたもとで、鉱工業生産は緩やかな増加基調をたどると考えられる。』(今回)

『個人消費や住宅投資は、振れを伴いつつも、基調的には、雇用・所得環境の改善などに支えられて、底堅く推移するとみられる。こうしたもとで、鉱工業生産は緩やかな増加基調をたどると考えられる。』(前回)

個人消費や住宅投資に関して今回は消費税前の駆け込み成分が無くなっているので、従来の「振れを伴いつつ」から「減少」という話になっていますが、これもまた従来の見通しのオントラックの範囲内の話でありまして、形式的には見通しが下がっていますが、惜しくもこれは実質的な見通しの下げとは言えませんのでクレクレの皆様残念無念。


・先行きリスク

『この間、リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(今回)
『この間、リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(前回)

声明文どおりで全文一致。今さら欧州債務問題ねえという感じですがががが。

・物価

『物価の現状について、国内企業物価を3か月前比でみると、国際商品市況や為替相場の動きなどを背景に、緩やかに上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、1%台前半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(今回)

『物価の現状について、国内企業物価を3か月前比でみると、国際商品市況や為替相場の動きなどを背景に、緩やかに上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、1%台前半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(前回)

何という全文一致。

『物価の先行きについて、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、国内企業物価は、当面、横ばい圏内の動きとなるとみられる。消費者物価の前年比は、暫くの間、1%台前半で推移するとみられる。』(今回)

『物価の先行きについて、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、国内企業物価は、当面、緩やかな上昇を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、暫くの間、1%台前半で推移するとみられる。』(前回)

ほほー。国内企業物価に関して先行き見通しがしらっと横ばいになっていますな。


なお、金融環境の所は特段変化がない(現象面の記述はアップデートされていますけど)ので引用割愛します。

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2014/04/15

○一瞬改善にみえるが盛大に改悪の変更(正しくは「明確化」)とは遺憾の極み(補完供給関連)

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/rel140414b.pdf
国債補完供給の実務運用の変更について

これはペーパーの右上に「日本銀行金融市場局」とありますように金融市場局の判断での決定でありまして、基本要綱の範囲内の運用についてのお話ですな。

『日本銀行は、国債の市場取引や決済に係るストレス要因を緩和することにより、金融調節の一層の円滑化を図るとともに、国債決済の円滑確保にも資する観点から、国債補完供給に関して、下記の措置を実施することとしましたのでお知らせします。』

ほう。

『1.オファーの1 日2 回化』

『1 日2 回のオファー実施を可能とする取扱いに変更します。概要は以下のとおりです。』

・・・・・・・・ということで従来オファーが午後2時だけだったのですが午前のオファーもするようになったと。うんうん。(次の『ロ. 銘柄別の売却上限額』は単に前場に貸出した分は貸せなくなりますよという当たり前の話です)

『2.「日本銀行が保有する国債の銘柄別残高」に関する公表頻度の引上げ』

『―― 本件の取扱いは、5 月9 日時点の残高にかかる公表(5 月13 日公表予定)から開始します。』

末残公表だけではなくて旬報方式になるようですな。

・・・・・・・・とまあここまでは良いのですけど、問題はこの次。


『3.連続利用に関する取扱いの明確化

国債補完供給の連続利用の可否について予見可能性を高める観点から、同一銘柄の売却(注1)に関する取扱いを以下のとおり明確化します。

今回明確化する取扱い

(2014 年4 月21 日以降のオファー実施分から適用)

同一銘柄の売却に関する取扱い
一のオペ先に対して同一銘柄を連続して売却することのできる日数は、原則として最長5 営業日とします(注2)。

- 金融市場の情勢等を勘案して日本銀行が必要と認める場合は、延長することがあります。

(注1) 利回り競争入札を通じた売却を指します(再売却は含みません)。
(注2) 買戻日については、従来の取扱い(原則として売却日の翌営業日に買戻を実施(オーバーナイト供給))から変更はありません。』

・・・・・・・・・・・・・おおもう何だかねえ。

えーっとですね、「5営業日までしか使えない」という制度にする意味が全くもって意味不明と言う所でございまして、オファーを1日2回にして残高公表を月3回に増やすという努力がこの「明確化」で全部台無しどころかドテンマイナスになっているというここまで市場センスの無いのも珍しいわという事でネタというか以下悪態になるのでした。

つまりですな、これロンバード貸出が最初に導入された時にも補完措置というような感じで同様に5営業日しか貸しませんという建付けになっていたのですが、この「5営業日しか貸しません」というのは要するに「この制度は限界的な制度だからなるべく使うな」と言っているのに等しく(仮に日銀の現場がそうではないと言ってもカウンターパーティーたる民間はそういう受け止め方をするし、大体からしてそういう認識が無いなら常設ファシリティー化するでしょ)、つまりは国債補完供給オペ利用にはStigmaがあると言っているのに等しい訳ですよ。

いやまあこれで足元で別に日銀がろくすっぽ国債を保有していないというのであれば別なのですが、国債市場の流動性を馬鹿買い政策で盛大に殺しているのに、わざわざ国債のレンディングにStigmaを設けて使いにくくしてどうしますねんと存じます次第。

更にこれ酷いと思うのは、先ほど引用しましたようにリリースで『国債の市場取引や決済に係るストレス要因を緩和する』とか言っている点でして、まあ確かに他の施策を見ると補完供給の使い勝手を良くしようと思って色々と新しい措置を突っ込んでいる積りなのでしょうが、この「努力したつもりでやっている事が逆方向」というのがもうアレな働き者の風情を醸し出している訳で、市場との対話がどうのこうのとか言ってその成果物がこれですかと非常に残念としか申し上げようがない部分。

金と違ってモノの場合って限界的な部分で問題になるのは該当のモノがあるかどうか(金には色は無いがモノは個別ですから)という話になるので、そのロールが5営業日しかできないというのはかなり問題になるというか基本的に借りに行かん罠となりますし、そうなりますと限界的にショートセールに制約が掛かりやすくなるんですけどという話っすな。

ちなみに通常ベースで業者が投資家からレポする場合って決算制約のような時期の場合は別ですが通常はロールを前提にタームで借りたりして、ロールが止まるというのはその投資家が売却をする場合ですから世の中のショートセールがその分減るというような状況な訳ですが、日銀の場合は国債は馬鹿買いして買い集めるわ、売却はしないわな所に来て、持っている玉をレポ市場でロールしないわと仰せという事ですから、国債流通市場的にはナンジャソラという話です罠。

いやあのですね、別に通常ベースの金融政策やってて日銀が国債市場に対するプレゼンス無いなら兎も角、しつこく申し上げておりますように日銀が盛大に国債を買い占めて国債流通市場に対して盛大にストレスを掛けている状態になっているのに、そのストレスを解消するどころか悪化する方向(正確にはこれ「明確化」ですので従来から運用面で使いにくくしてたんでしょうなあという想像に難くないので、悪化ではなくて明確化なのかも知れんが)の話をするとか、国債大量発行&事実上財政ファイナンスと言われても文句の言いにくい状態になっており、将来的にこの金融政策を正常化しようという事を考えているのであれば、何でレンディングファシリティーをわざわざ使いにくくする「明確化」するんだよと思う次第。

まー何ですな、これ借入の日数制限残したままで出口政策モードになった時に国債流通市場が更に低下しちゃって何かの拍子に金利急騰みたいなリスクの背景になる可能性も無い訳では無いという話になると思われます(1998年や2003年の国債市場暴落はトリガーは別ですが背景にはどちらの場合でも「国債流通市場での流動性の低下」(特に98年の場合は極端な低下で原因は前年の東証債券先物取引のシステム変更がきっかけでしたが)があるので、将来の出口政策モードあるいは財政拡大状態の継続時に大丈夫かよとか思うのでありますわ。

ちなみにFEDの場合ですが。
http://www.newyorkfed.org/markets/securitieslending.html
Securities Lending

『The Bank provides a secondary and temporary source of securities to the financing market through a Securities Lending program to promote smooth clearing of Treasury and Agency securities. The program offers securities for loan from the System Open Market Account (SOMA) portfolio in accordance with program terms and conditions. Securities loans are awarded to primary dealers based on competitive bidding in an auction held each business day at noon eastern standard time. 』

関連して各種のファシリティーの紹介ページ
http://www.newyorkfed.org/markets/Forms_of_Fed_Lending.pdf

細かい要綱がちと見つかりませんでしたが、別に「何日間限定」というような制限はなく借りれますと言う風にしか見えないのですし、セキュリティーレンディングの方のトランザクションボリュームを見ますと恒常的に残高があるようでして、日銀の補完供給のように実施される日があったりなかったりするようなオペではなくて、常設ファシリティ―みたいな形になっています罠という所です。まあ普通にこういうもんでしょと思うのですけどねえ。



そういや話はちと違いますが、国債市場の流動性という話では相変わらず「国債決済アウトライトT+1化」というのも日銀様におかれましては推進していると仄聞しますが、未決済取引残高の圧縮よりもレポT+0化によるレポ市場に掛かるストレスの拡大と、T+0化の事務コストを嫌ってレポ市場から退出する参加者が出る事による国債流通市場に掛かるストレスの方が同様に出口政策や国債大量発行という財政問題がある中ではシステミックリスクに繋がる話だと思うのですが、相変わらず少なくとも表に出ている部分ではそういう考察も無かったりするという次第で、引き続き債券市場との対話というのはどうもグダグダですなあというのと、庭先お掃除が得意ですなあというお話なのでございましたとさ。

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2014/04/14

○3月金融政策決定会合議事要旨から少々

議事要旨
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2014/g140311.pdf

まあ経済の見立てが強いですねえという所なのですが、『V.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』から少々参りますです、はい。

・経済全体に関して

『わが国の景気について、委員は、生産から所得、支出へという前向きの循環メカニズムが働く中で、緩やかな回復を続けており、このところ消費税率引き上げ前の駆け込み需要もみられているとの見方を共有した。』

前向きの循環メカニズムキタコレ。

『何人かの委員は、昨年10〜12 月の実質GDP(2次速報値)は外需の影響を受けて前期比年率で+0.7%と、昨年前半に比べて低めの伸びとなったが、内需は底堅く推移しており、基調的には潜在成長率を上回るペースで回復を続けていると付け加えた。』

つまりGDPの足元の減速に関してはあまり懸念していないという話。

『景気の先行きについて、委員は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかな回復を続けていくとの見方を共有した。』

これまた声明文などにあった通り。

『何人かの委員は、駆け込み需要は住宅投資や耐久財消費で顕在化しているが、3月末にかけて非耐久財についても影響が出てくるとみられ、今後も駆け込み需要の規模とその反動については、注視していく必要があると述べた。』

という所でしたが、先ほどネタにした宮尾審議委員の会見での話などは「思ったほど駆け込みの落ちこみが大きくないかも知れない」という岡山恐るべしという話になっておりますのでこれはという話ですな。

あと需要項目に関してですけど輸出と所得と消費を見てみましょう。


・輸出について

『輸出について、委員は、ASEANなど一部新興国向けに弱さが残る中で、米国の寒波や東アジアの春節の影響、消費税率引き上げ前の駆け込み需要に伴う国内出荷優先の動きなどの一時的な要因もあって、横ばい圏内の動きとなっているとの認識を共有した。』

国内出荷優先の動きとな??そんなに日本経済って供給制約のある経済でしたっけ????

『先行きについて、委員は、一時的な下押し要因の剥落や、海外経済の回復などを背景に、緩やかに増加していくとの見方で一致した。もっとも、何人かの委員は、輸出が勢いに欠けている背景には、循環的な海外需要要因や、一時的な要因だけでなく、わが国製造業の現地調達拡大を伴う海外生産シフトといった構造的な要因の影響も大きいことから、先行きも弱さが残る可能性があると述べた。この間、一人の委員は、4月以降、輸出が一時的な下押し要因の剥落から増加すれば、駆け込み需要の反動による国内需要の落ち込みの影響を緩やかなものにするとの見方を示した。』

構造的な説明をする人も複数いるようですが、1名は強い話をしているとなという所です。


・雇用・所得について

これは強い。

『雇用・所得環境について、委員は、労働需給は着実な改善を続けており、雇用者所得も緩やかに持ち直しているとの認識を共有した。先行きの雇用者所得について、委員は、経済活動や企業業績の回復につれて、持ち直しがさらに明確になっていくとの見方で一致した。』

とまあ強い訳ですが。

『賃金の先行きについて、多くの委員が、今春の賃金改定交渉においてベースアップも含めた賃金上昇の動きが拡がっていると指摘した。複数の委員は、ベースアップは直接的には正規社員の所定内給与の引き上げを指すが、過去の傾向からは、非正規社員も含めた労働者全体の時間当たり賃金とも高い相関がみられ、全体としての賃金増加に繋がる可能性が高いと述べた。このうちの一人の委員は、景気回復期には所定外労働時間やボーナスの支給月数も上昇するので、基準となる所定内給与の上昇は賃金全体への影響が大きいと付け加えた。』

やたら強いですな。

『何人かの委員は、消費の基調や人々の物価見通しに対しては、人々の恒常所得の見通しが重要であり、賃金上昇に向けた動きが持続的なものかどうかを引き続き点検することが重要であると述べた。』

まあ慎重な見解もありますな。

『一人の委員は、現状の良好な雇用環境が、恒常所得の見通しを押し上げている可能性が高いと付け加えた。』

でも強い人がいますな。

『この間、ある委員は、今春の賃金改定交渉後も、賃金上昇率が、消費税率引き上げの影響を除いたベースでみた物価上昇率を下回る可能性があるとの見方を示した。』

まあそうでしょうねえ。ということで一部指摘する人もいるけれども全体の認識が強いという感じになっております。


・物価もキタコレ

物価に関して。

『物価面について、委員は、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、+1%台前半となっており、先行きも、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、暫くの間、+1%台前半で推移するとの見方を共有した。』

これは声明文で示されている現状と見通し。

『多くの委員は、1 月の消費者物価(除く食料・エネルギー)の前年比が+0.7%となるなど、エネルギー関連だけでなく、幅広い品目において改善がみられていると述べた。』

キタコレですにゃ。で、まあめんどいのと量が多くなりすぎるので2月分の当該部分を引用しないのですけれども、2月会合議事要旨でもこの物価に関する議論があるのですが、2月会合時点でも強めの話になっていたのですがここは3月議事要旨で更に強気化しているという感じです。

『一人の委員は、昨年後半の成長率が、前半に比べて低下した一方で、物価上昇率は想定よりやや強めに推移しているが、この背景としては、@非製造業を中心とした景気回復のため労働需給がタイト化しやすいことや、A企業の価格設定行動の変化が影響している可能性が考えられると指摘した。』

これまたキタコレな話で、経済成長見通しに対して実績が下振れたのに物価上昇率は想定よりも上振れたという事の背景に労働需給と価格設定行動の変化という話をしているというのはこれすなわちフィリップスカーブが上方シフトしている可能性を示唆するという理屈を立てることも可能ですわなという所(コストプッシュで云々の話では無いから)で1名の指摘だけどほえーという感じです。

『この間、一人の委員は、為替円安が物価に与える影響がかつてに比べて大きくなっている可能性があるとの見方を示した。』

例によって端折っている記述で何とかならんかと思うのですが、恐らくこれは「いやいやそんなにベースラインは強くないでしょう為替で下駄履いているでしょ」という話をしている人の見解だと思うのですよね。つまり直前のフィリップスカーブ上方シフトみたいな話をしている人に対して「いやそうじゃなくて円安のコストプッシュだし、円安のベース効果が剥落したら物価上昇率止まるっしょ」という話をしていると見ました。

ま、その人が1名しか居なかったりするのがアレですけど。

『4月以降の物価の基調判断について、委員は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いて評価することが適当であり、消費者物価については、課税品目すべてにフル転嫁された場合に見込まれる2.0%ポイント程度を差し引いたベースで評価することを確認した。ただし、4月に限っては、消費者物価統計の作成上の要因から、1.7%ポイント程度を差し引いたベースで評価することが適当であり、このことを対外的にも丁寧に説明していく必要があるとの認識を共有した。予想物価上昇率について、委員は、マーケットの指標や各種の調査などを踏まえると、全体として上昇しているとみられるとの認識を共有した。』


ところで話はずれますが、まあ今回に始まった話では無くて展望レポートの時以外ずーっとそうなのですけれども、声明文のリスク要因の中で謎の反対をしている白井さんの見解と思われる部分に関する見解が議事要旨に見られないという不思議現象が起きているのですが、これはつまり白井さんの謎反対に関する説明はそもそも議事の「要旨」として残すほどのものでは無い、という事を意味しているのでしょうか(銃声)。


・金融政策決定に関して超あっさり味ですな

『W.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』の部分が超あっさり状態。

全部引用すると長くなるので途中からね。この前の部分は単に金融政策を維持しますという決定の話です。

『金融政策運営の考え方について、大方の委員は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する、その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行うとの認識を共有した。委員は、わが国の経済・物価が、概ね見通しに沿った動きとなっており、現在の方針のもとで、「量的・質的金融緩和」をしっかりと推進していくことが適当であるとの認識を示した。』

うむ。

『一方、一人の委員は、「物価安定の目標」を2年程度で達成するのが難しいとみられる中で、「量的・質的金融緩和」が長期間継続される、あるいは極端な追加措置が実施されるという観測が市場で高まれば、金融面での不均衡累積など中長期的な経済の不安定化に繋がる懸念があるため、継続期間を2年程度に限定し、その後柔軟に見直すとの表現に変更することが適当であると述べた。』

木内さんですな。

『「量的・質的金融緩和」の効果について、委員は、効果は引き続きしっかりと働いており、企業や家計の支出活動を支える金融環境の緩和度合いは、着実に強まっているとの認識を共有した。長めの金利への働きかけについて、委員は、わが国の長期金利は、日本銀行による巨額の国債買入れが行われるもとで、低位安定しているとの見方で一致した。委員は、名目金利が安定的に推移するもとで、予想物価上昇率の高まりを背景に、実質金利は低下しているとの認識を共有した。』

効果に関してもまああっさり味ですが、ここの記述の変化が面白かったので後ほど。

『貸出増加支援資金供給等について、何人かの委員は、前回会合で決定した制度の延長・拡充を受けて、一部の金融機関が当制度に応じた貸出ファンドの増額を決めるなど、良好な反応がみられているとの認識を示した。このうちの一人の委員は、貸出競争を助長する可能性など将来の金融機関の財務体質に及ぼし得る影響にも引き続き注意していく必要があると述べた。』

まあここもあっさり味という事で、金融政策運営に関する議論の部分が見事にあっさり味なのはほほーという所ですな。


○3月金融政策決定会合議事要旨から(スペシャル編):QQEの効果の記述が気になったので確認した件

今回の議事要旨
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2014/g140311.pdf

過去の議事要旨はこの辺に
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2014/index.htm/

さて、今回の議事要旨ですが、毎度の『W.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』の所なのですけれども、毎度流して読んでいた『「量的・質的金融緩和」の効果について』という議論の部分が、というか今回の場合は『W.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』の部分そのものがあっさり味にも程があるという点は今申し上げた通りですが、これを過去から並べてみると意外に面白かったりするのでご報告。

今回の記述(さっきの再掲)。

『「量的・質的金融緩和」の効果について、委員は、効果は引き続きしっかりと働いており、企業や家計の支出活動を支える金融環境の緩和度合いは、着実に強まっているとの認識を共有した。長めの金利への働きかけについて、委員は、わが国の長期金利は、日本銀行による巨額の国債買入れが行われるもとで、低位安定しているとの見方で一致した。委員は、名目金利が安定的に推移するもとで、予想物価上昇率の高まりを背景に、実質金利は低下しているとの認識を共有した。』(3月会合議事要旨より)

ま、あっさり味で予想物価上昇率が高まっている中で金利は安定推移だから実質金利は下がっているの巻ですな。

2月議事要旨から。

『「量的・質的金融緩和」の効果について、委員は、効果は引き続きしっかりと働いており、企業や家計の支出活動を支える金融環境の緩和度合いは、着実に強まっているとの認識を共有した。長めの金利への働きかけについて、委員は、わが国の長期金利は、日本銀行による巨額の国債買入れが行われるもとで、低位安定しているとの見方で一致した。委員は、名目金利が安定的に推移するもとで、予想物価上昇率の高まりを背景に、実質金利は低下しているとの認識を共有した。』(2月会合議事要旨より)

全文一致ですね。では1月はどうでしょう。

『「量的・質的金融緩和」の効果について、委員は、効果は引き続きしっかりと働いており、企業や家計の支出活動を支える金融環境の緩和度合いは、着実に強まっているとの認識を共有した。長めの金利への働きかけについて、委員は、わが国の長期金利は、日本銀行による巨額の国債買入れが行われるもとで、低位安定しているとの見方で一致した。委員は、名目金利が安定的に推移するもとで、予想物価上昇率の高まりを背景に、実質金利は低下しているとの認識を共有した。この間、一人の委員は、資金循環統計や広義流動性で、家計の株式や投資信託などの保有が拡大していることを指摘し、家計を中心としたポートフォリオ・リバランスが着実に進んでいるとの見解を示した。』(1月会合議事要旨より)

ポートフォリオリバランスに関する指摘をしている文言がありますね。では12月は??

『「量的・質的金融緩和」の効果について、委員は、効果は引き続きしっかりと働いており、企業や家計の支出活動を支える金融環境の緩和度合いは、着実に強まっているとの認識を共有した。長めの金利への働きかけについて、委員は、わが国の長期金利は、日本銀行による巨額の国債買入れが行われるもとで、低位安定しているとの見方で一致した。委員は、名目金利が安定的に推移するもとで、予想物価上昇率の高まりを背景に、実質金利は低下しているとの認識を共有した。この間、複数の委員は、投資信託などの増加により広義流動性の前年比伸び率が拡大していることを指摘し、家計を中心としたポートフォリオ・リバランスが着実に進んでいるとの見解を示した。』(12月会合議事要旨より)

あらら?この時はポートフォリオリバランスに関して「複数の委員」が指摘していましたね。

・・・・・・・てな感じでこの辺の記述でポートフォリオリバランスの話が無かったことになるかのように華麗にフェードアウトしているのがワロタという感じですが、一方で予想物価上昇率が上昇するメカニズムについて云々というのも実は2月議事要旨から記述が無くなっていまして(1月までは引用部分の直後にあった)、2月の場合は貸出支援措置の延長+拡充というのがあって、それに関する記述を追っかけていてうっかりここら辺りの記述あっさり味化を見落としたのですが、今回特段の決定も無い会合だったのであっさり味状態になったのが分かりやすくなっていまして(実際は前回あっさり味になっている)、ふとこの辺りを時系列で追ってみた次第。

実際は(延々やっていると長くなりすぎますので割愛しますが)このQQEの効果や状況に関する部分の説明ってもっと前に遡ると遡る程にああでもないこうでもないという成分の記述が増える傾向にありまして、徐々に足元ではその辺に関しては「実質金利低下」すなわち実際問題としては「期待インフレが上昇(して2%目標に近くなっている)を受けた実質金利の低下」をQQEの効果に関する説明部分として一本足打法状態になっているというのが見て取れますなという話で、本来はこれを1か月間前にもっと掘り下げないといかんかった話で1か月遅れまして誠に慚愧の念に堪えませんm(__)m

#引用しませんがもうちょっと前から見ると色々とオモシロヤですよ

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2014/04/09

ふむふむ。
http://jp.reuters.com/article/idJPTJEA3700F20140408
NY外為市場・序盤=円上昇、日銀の追加緩和見送り受け
2014年 04月 8日 23:48 JST

『[ニューヨーク 8日 ロイター] - 8日序盤のニューヨーク外為市場は、円がドルやユーロに対して上昇した。日銀が追加金融緩和を行わず、黒田東彦総裁が現時点で追加緩和を検討していないなどと表明したことを受け、円が買われた。』(上記URLより)

さてこれはという所ですけど・・・・・・・・・


○総裁会見ライブ中継でヘッドライン詐欺が大幅に軽減されたようです

昨日から総裁定例会見がライブ中継可能となった(従来は基本的に会見が15時半からで会見内容について会見終了だか16時半だかまでエンバーゴが掛かっていた)のですが、日経電子版とブルームバーグ(たぶんプロフェッショナル版限定だと思うが)が会見の内容を生中継していたようです。

でまあ当然ながらニュースの方も会見と同時にニュース配信可能で、中継画面が引きになった時に見たら最前列でラップトップPC使っている人とかいて会見の感じが違うように見えた訳ですが(ちなみに従来からエンバーゴの後にはブルームバーグと日経CNBCが会見の録画画像を放送していたと思います、ブルームバーグしか見たことないけど)、そんなわけで会見の音声が聞ける中でベンダーのヘッドラインが流れるという初めてのパターンで中々新鮮な感じがしましたよ。


でですね、まあ今回の会見なのですが、例によってテキストの方は本日出ますので詳しい話はまた明日のネタにしようか(今晩はFOMCミニッツがあったような気がしますが)という所っすけど、兎に角今までと全く違っているのが・・・・・・

「ベンダーのヘッドライン詐欺がほぼ皆無になった」

というのが物凄い勢いで大きな変化になったと思います。

・・・・・・・・・つまりですね、今までは会見終わってからベンダーがニュースヘッドラインを打つという形になっていまして、会見録画もまあ見ることは出来るのですけれども、普通はヘッドラインを見てから会見の最初から最後まで録画を見るというのも中々めんどいですし、そもそもヘッドラインが最初に出てしまって相場の方が反応してしまう(しない事もあるが)という事で、ヘッドラインでまずは動いていた訳ですな。

でまあよく不肖このアタクシなんぞが翌日に出てくる会見要旨の方をネタにしながら「ヘッドライン詐欺」などと申しておった訳ですが、会見要旨をどう見ても(たまに会見録画もチェックしたりしましたが)そんな趣旨の発言じゃねえだろという内容のヘッドラインを流すベンダーというのが複数(全部ではない)いまして、まあ要するに会見での発言の中でニュース見る側が反応しそうなフレーズだけを前後の脈絡をスルーして切り取ってヘッドラインにする、という動きってまー昔からあったのですよ。特に最近だと英文のヘッドラインが酷かったりするのですが。


然るに、今回からはライブ中継でベンダーの向こう側の人たちが見ているという事で、発言の一部を切り取ってセンセーショナルなヘッドラインをフレームアップするという時間的余裕(他社のヘッドラインに盛大に遅れるリスク)も恣意的な切り取り(をするとライブで見ている人たちに真っ向勝負でバレるので)も出来なくなったようで、今回の会見放送に関して言えばチェックしていたベンダーヘッドラインで従来あった発言の一部を切り取ってフレームアップしたヘッドラインというのがほぼ観測されなくなったというのが物凄い勢いで違っている点ではないかと思いました。

つーことでですね、まあ以前より会見要旨を確認(稀に気になる時だけ録画チェック)して内容を拝読しております不肖このアタクシに言わせて頂きますと、今回の総裁会見もまあ平常運転でいつもの話をしているようにしか見えないのですけれども、最初に引用した記事にありますように、会見の途中から徐々に円高進行しまして、まあ海外の円高は他の要因もありそうではございますが、ニュースでも追加緩和観測後退みたいな話がホイホイ出てきているようで実に香ばしい展開となっております。

よーするにですな、おまいらベンダーのヘッドライン詐欺に乗り過ぎじゃヴォケという所でございまして、大体からして今回だって日銀公表文書特段の変化なく(その件は下の方で)、その公表文書に沿った話を黒田さんしているだけの話だし、大体からして「現時点で追加緩和を考えていない」というのが何故かニュースになっていましたが、そもそも追加緩和を現時点で考えているんだったら当日の決定会合で追加緩和してるだろそらニュースでも何でも無い当たり前の話だろと思う次第でございまして、まあつまりは「追加緩和を煽ると市場(特に海外投資家)が好意的に反応する」ので追加緩和方向になる発言を殊更に強調したヘッドライン(英文の方が基本的に酷いケースが多い)詐欺だけ見てああだこうだ反応してただろおまいらという所でございまして、そういうノイズが激減したというのはコミュニケーションポリシー上大変に良い傾向になったと思うのでございます。

ただまあこのライブ中継の問題としては、不規則発言をうっかりしてしまうとそれはそれでエライコッチャになってしまいますので、現在の黒田総裁のように発言が大体安定している方(この前ちょっとアチャーという感じのもありましたがアレは珍しいケース)ですと大丈夫だと思うのですが、そうじゃない方だと色々とやらかしが発生しそうでリスクかなとは思います。

でもまあそんなリスクを勘案したとしても、ベンダーが勝手に掛けるバイアス(黒田さんの場合は就任時の経緯やQQEでのバズーカの影響で緩和バイアスをベンダーサイドが思いっきり掛ける傾向があって最近は市場のクレクレの影響で更にそのバイアスが強くなっている(なお念の為申し添えますが必ずしも全てのベンダーがバイアス掛けているわけでは無い)次第)によって本来発言している趣旨が微妙にバイアス掛かって伝わってしまう、というある意味ベンダーのプロテクションレントみたいな部分が排除されるというのは実に良い話でありまして、そう考えてみると何を発言しても兎に角台無し方向のヘッドラインバイアスを掛けられていた前の麿総裁なんぞはベンダーヘッドライン詐欺の被害者でありまして、こんなに効果があるならもっと早くから実施できていれば良かったですよねという所かと思います。

ま、いずれにせよ今までベンダーがどんだけヘッドライン詐欺をしていたのか、という事や、どこのベンダーのヘッドライン詐欺が酷かったのか、という事などを皆様におかれましてもご検証して、総裁会見でそういうのを従来していたという事は他のネタでもその手のベンダーバイアスが掛かっていたのではないか、などという辺りをご確認しつつニュースベンダーの見方を検討される事をオヌヌメしたいという所かと存じます。

この差が昨日の「追加緩和期待の剥落」という為替市場の反応でしょという所かと存じますが如何でございましょうかね。


○声明文の確認である:「想定通りの反動が見込まれる」って感じですかね

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/k140408a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/k140311.pdf(前回)

#どうでも良いのだが今回決定事項の公表文書1つの筈なのに何故URLに「a」が付いているんじゃ????

・現状判断:生産が下がっていますが基本的には消費税の駆け込み反動対応という認識ですかねえ

『わが国の景気は、消費税率引き上げの影響による振れを伴いつつも、基調的には緩やかな回復を続けている。』(今回)
『わが国の景気は、緩やかな回復を続けており、このところ消費税率引き上げ前の駆け込み需要もみられている。』(前回)

ちなみに前々回ですけど・・・・・

『わが国の景気は、緩やかな回復を続けており、このところ消費税率引き上げ前の駆け込み需要もみられている』(前々回)

ということで、前回までは駆け込み需要に関する言及があり、その部分が今回消費税増税になったということで「振れを伴いつつ」という表現に変わっています。ただし、この部分に関しては(後でも引用しますが)前回(なお前々回も同様)の先行き見通しの中で、

『先行きのわが国経済については、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかな回復を続けていくとみられる。』(前回)

という形で見通しに言及していますので、つまり「見通し通りに推移しております」という話であって表面上は下方修正ですが、これは「想定通りの下方推移」であり政策判断に影響を与えるものではありませんな。


以下需要項目別。

『海外経済は、一部になお緩慢さを残しているが、先進国を中心に回復しつつある。輸出は、このところ横ばい圏内の動きとなっている。設備投資は、企業収益が改善するなかで、持ち直しが明確になっている。公共投資は増加を続けている。』(今回)
『海外経済は、一部になお緩慢さを残しているが、先進国を中心に回復しつつある。輸出は、このところ横ばい圏内の動きとなっている。設備投資は、企業収益が改善するなかで、持ち直しが明確になっている。公共投資は増加を続けている。』(前回)

海外、輸出、設備投資、公共投資は全文一致です。

『個人消費や住宅投資は、消費税率引き上げの影響による振れを伴いつつも、基調的には、雇用・所得環境が改善するもとで底堅く推移している。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は緩やかな増加基調をたどっている。』(今回)

『雇用・所得環境が改善するもとで、引き続き住宅投資は増加し、個人消費は底堅く推移しており、これらの分野では消費税率引き上げ前の駆け込み需要もみられている。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は伸びが幾分高まっている。』(前回)

冒頭の部分で示された消費増税の振れに関する部分が個人消費と住宅投資の部分に対応している形で、今回は基調的にはということで下方修正。雇用所得環境については「改善」という判断を継続し、生産についてはこの「緩やかな増加基調」という表現は前々回と同じ表現に戻しておりまして、生産に関しては前回上方修正したのに今回元に戻った点がまあ若干ションボリーヌという所で、今回の声明文の中で敢えてネタにするならここかなとは思いまして、「生産が思ったより伸びてくれない」という認識を示しているかねとゆー所ですが、駆け込み需要という攪乱があるのでニャンとも。

『企業の業況感は、引き続き改善しているが、先行きについては慎重な見方もみられている。』(今回)

これは短観出た直後の回に出てくる仕様のようなもんです。先行きDIは盛大に落ちてますが「慎重」ですかそうですか(ニヤニヤ)。

『この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、1%台前半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(今回)
『この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、1%台前半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(前回)

物価は貫録のカワランチ会長。


・先行き見通し:貫録のカワランチ会長

『先行きのわが国経済については、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかな回復を続けていくとみられる。消費者物価の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、暫くの間、1%台前半で推移するとみられる。』(今回)

『先行きのわが国経済については、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかな回復を続けていくとみられる。消費者物価の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、暫くの間、1%台前半で推移するとみられる。』(前回)

何という全文一致。


・リスク要因:カワランチ会長は良いのだが欧州債務問題はさすがにもう良いんじゃないですか?

『リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられる(注1)。』(今回)
『リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられる(注1)。』(前回)

注1というのはいつもの意味不明審議委員の意味不明な反対ですが、それはそれとして今更欧州債務問題の今後の展開でもねえだろとは思う。主要国のバランスシート調整の動向とかにした方が良いんじゃないですかねえ。


・最後の決意表明みたいなところも同じですな

『日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う(注2)。このような金融政策運営は、実体経済や金融市場における前向きな動きを後押しするとともに、予想物価上昇率を上昇させ、日本経済を、15 年近く続いたデフレからの脱却に導くものと考えている。』(今回)

『日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う(注2)。このような金融政策運営は、実体経済や金融市場における前向きな動きを後押しするとともに、予想物価上昇率を上昇させ、日本経済を、15 年近く続いたデフレからの脱却に導くものと考えている。』(前回)

でまあ木内さんの提案も同じですが、先般の木内さんの講演を見ましたのでまあ何で「集中対応期間」という分かりにくい文言が出てくるのかは把握したという感じですな。この「集中対応期間」という表現ってそれ以外の期間はちゃんと対応しないような言い方に見えるからもうちょっと表現が何とかならんのか(だいたいからして残り1年だし)と思いますけど。

『(注2)木内委員より、2%の「物価安定の目標」の実現は中長期的に目指すとしたうえで、「量的・質的金融緩和」を2年間程度の集中対応措置と位置付けるとの議案が提出され、反対多数で否決された(賛成:木内委員、反対:黒田委員、岩田委員、中曽委員、宮尾委員、森本委員、白井委員、石田委員、佐藤委』(今回)


ということで声明文もほぼ無風という感じ(生産の所だけ若干微妙という程度)です。

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2014/04/04

○市場雑談では無いがこれはほほうというネタ

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/rel140403a.htm/
「市中流通拠点における貨幣の受払要綱」の制定について
2014年4月3日
日本銀行

『日本銀行は、貨幣流通の円滑化を図る観点から「市中流通拠点における貨幣の受払要綱」を制定し、日本銀行本店における当座預金取引先が、当座勘定への入金および当座勘定の払戻のための貨幣の受払を、市中において貨幣流通の拠点となっている貨幣センター(以下「市中流通拠点」といいます。)において行い得ることとしましたので、お知らせします。』

『市中流通拠点での貨幣の受払は、市中流通拠点を運営する警備輸送会社を選定した後、2015年4月中の別に定める日から実施します。』

http://www.boj.or.jp/paym/torihiki/touyo14.htm/
市中流通拠点における貨幣の受払要綱


・・・・・・えーっとこれはつまり現在各銀行が個別に日銀に取りに行っている(といっても行員がジュラルミンケース持ってヘコヘコとかいうのではないが)現送現受業務に関して、警備輸送会社がカストディアンというか一次下請けをしますよという風に変わって、警備輸送会社の現送拠点みたいな所で受け払いの代行を行うという話ですかそうですか。多分初めての企画でこれは結構歴史的変化の気がするのだがあまり詳しくないので間違ってたらすいません。

まあどこかがやるんでしょうけれども、これ受けるの凄い高度な能力が必要になりそうですね〜。

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2014/04/03

お題「短観の「企業の物価見通し」結果を肴に雑談三昧企画(^^)」

ということで企業の物価見通し集計(短観の一部です)ですが、まあ肴として面白いのでネタにせざるを得ないアタクシ(^^)なのですが、ノリノリで雑談してたら月初恒例の計数ネタを書いている時間が無くなるという誠に遺憾な事案が発生してしまったことを平にお詫びいたしますm(__)m

○「2%届いてないから追加緩和待ったなし」という奴は修業が足りん(と思う)

つーことで今回初見参の集計である。

http://www.boj.or.jp/statistics/tk/bukka/2014/tkc1403.pdf
2014年4月2日 日本銀行調査統計局
短観(「企業の物価見通し」の概要)―2014年3月―
第160回 全国企業短期経済観測調査

・そもそも第一回なのであまり意味を捻りださない方が良いのですけどね

えーっとですな、この集計結果が話題になっていますし、この結果色々な意味で鑑賞物としてはかなり秀逸なので以下ネタにしない訳には逝かない(野次馬かと)という事でネタにはするのですが、極めて真面目に申し上げますと、この手の統計って数回行って統計の癖とかが出て来てからじゃないと直接インプリケーションを引っ張り出すべきではないと思われますので、そもそも論としてはこの統計をもって金融政策に対するインプリケーションを過大に引き出さない方が良い訳です。

とは申しましても、これ酒の肴としては(いやまあ今飲んでるのはペパーミント茶ですが)相当にウマーなのでネタにするという所である点は最初にお断りしておきますね、とマジレス。


・どう見ても執行部ウハウハです本当にありがとうございました

まずは上記URL先の2ページ目の『2.物価全般の見通し』に目が行くと思います、というか普通最初に注目するのはこれですけれども、この数字最初に見たアタクシの感想は「これはまた日銀執行部してやったりの結果キタコレ!!」という代物でありまして、この数字を見て「2%届いてないから追加緩和待ったなし」とか(4月馬鹿以外で)言う人は基本的に政策ウォッチャーを名乗ってはいけないと思いますが、アタクシが見た(あまり真面目に見てないが)範囲内ではさすがに円金利系の何とかストの皆様で2%達成しないから追加緩和待ったなしという話は無かったと思います。

まー何ですな、この数字自体は単なるアンケートで良く見ると「知らんがな」という回答も多くて正直どうなんだという気もするのですが、料理の仕方によってはかなり面白料理が仕上がるというものになりますので、まずは自信満々モードの執行部様になった積りでこのアンケート結果を見るあるヨロシアルね。


まず「1年後の全業種見通し平均1.5%」ってのが何故かニュースのヘッドラインになっていたりしてて、この数字を持ってああだこうだ言い出すのはもう根本的に赤点再履修クラスでして、1年という短期のインフレ予想というのは足元の色々な要因によってぶらされやすい物なので、そらまあ極端に上や下に振れた場合にはそれが中長期的なインフレ予想に影響するかとかを考えないといけませんけれども、金融政策インプリケーション的に言えば本来はどうでも良い数値であって、まあ極端にぶれない限り知らんがなという話です。


ということでまあ見るなら3年とか5年の所の数値を見るのが筋の良い話になる訳ですが、こちらの全業種全産業平均の数値は3年も5年も1.7%になっていまして。「1.7%なので2%に足りないから追加緩和」という方がまだ筋は良いのですけれども、まあそれもやっぱり指摘としてはちょっと残念な部類になる訳です。つまりですね、じゃあ逆に聞くけどこの数字が2.2%だったら引き締め待ったなしなのかという話でありまして、この手の数字って当然ながら上下に適宜アローワンスのある話でしょとゆー所で、1.7%という数値は「2%に近い」と十分に言える数値じゃないですかねえと解釈する方が政策当局者的には普通の解釈になる筈。

ただまあ先ほども申し上げましたが、この統計自体が初回ですから前回との比較とかできませんし、インフレ予想として使う事を考えた場合にどのような癖があるのかとかもわからなない状態ですから、これが本当の意味での物価安定2%に近いような結果なのかというとそれはまだワカランチ会長としか申し上げようがないでしょうねというのが本来の話。

でもこれを無理矢理料理すると「企業の期待を見た場合にデフレ期待からは脱却している可能性がありますなあ」とか「1.7%という数値になっているということでこれは日銀の提唱する物価安定目標2%に期待が収斂されていってるような状況を示唆していますなあ」とか威勢の良いことを言い放題となりますので実にこう心温まる内容ですな。

それからですな、欧米の中銀だっていつも「中長期的なインフレ期待はマンデート水準で確実にアンカーされています(キリッ)」とか言い張り続けてアクチュアルの物価水準がマンデート水準を盛大に上回って推移したり盛大に下回って推移したりしているのにインフレ目標は達成出来ているという話をしている(しかもそのインフレ期待とは何ぞやという話は細かく定義しないで有耶無耶のまま)訳でございまして、そういう意味からしたらこの数字だけを使えと言われたら普通は「中長期的なインフレ期待は2%近辺」とか平然と言ってのける事も可能という結果でございます罠、と思うのがこの統計の物価部分を見た場合の感想にならないと政策ウォッチャー的にはおかしいですという所です。


さてさて、ここで更に味わいがあるのは何かと申しますと、ここの物価全般の見通しに関して「大企業」と「中小企業」に分かれている所でございまして、ここの数字を見ると更に味わいというか侘び寂びというか伏線張りまくった映画かよというものを感じる訳でございます。

つまりですな、物価見通しに関しての数値ですけれども、大企業と中小企業では思いっきり差があって、大企業の見通しって短期も中長期も1.1〜1.3%という残念な水準となっている一方で中小企業の見通しは短期だと1.7%ですけれども中長期の見通しが1.9%で思いっきり揃っているという大変に素晴らしい結果で、日銀ヲチャーに年季が入るとまずこの数字を見てキタコレとなるのが正しい在り方(かどうかは知らんが)というものです。

さてそれはどういう事かと申しますと、日銀レビューとしては結構な話題になったような気もする先般の『家計のインフレ予想の多様性とその変化』という日銀レビューを先日アタクシもネタにしたと思いますが・・・・・・・・・

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2014/rev14j01.htm/(概要説明)
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2014/data/rev14j01.pdf(本文)
家計のインフレ予想の多様性とその変化

こちらでああだこうだと説明している中で企業のインフレ期待に関するレビューが本文の1ページのケツの所から2ページの左側の辺りにありまして、『QUICK 短観』の2 年後以降予想を基にして試算している企業のインフレ予想に関してこのような分析をしております。

『上場企業間のインフレ予想のばらつきも、市場のそれに近い。特に大企業では、業界の需要予測を立てる際、エコノミストの経済・物価予測を参照したりすることから、結果として、市場と似通ったばらつきが生じやすいと考えられる』(上記日銀レビューより)

で、その参照にされる市場のインフレ予想に関してはこのように説明していましてですな・・・・・・・

『一方、市場関係者やエコノミストの場合、予測モデルにマクロ経済情報を投入することで、インフレ予想を立てている。このため、インフレ予想のばらつきは、モデルの予測精度の差などに起因したものとなる傾向が指摘されている3。市場のインフレ予想の多様性は家計ほど強くなく、今後10 年間のインフレ予想(10 年予想)は、2004 年の調査開始以降、中央値を挟んで上下0.3%pt という極めて狭い範囲に半数の予想が集中している。』(上記日銀レビューより)

ここの部分ってぼかした言い方してますけど、しらっと「市場の予想は予測モデルを使って経済の前提数値を置いてインフレ予想を出すという形なので、従来の延長線上の予想になってしまう」という事を暗に指摘しておりまして、つまり「日銀様が今行っている期待の転換によりフィリップスカーブを上方にシフトさせるというレジームチェンジの政策効果を市場関係者やエコノミストは織り込んでないんですよねえあっはっは」という事でもありますな。

でまあ先般このような伏線が張られていたものがここで回収される訳ですが(^^)、大企業のインフレ予想というのはつまり市場の予想であります所の「レジームシフトを織り込んでいない」数値を前提にしたものであるので低めに出るのは当たり前で、より幅広い経済主体のインフレ予想がどうなっているのかとして見た場合には中小企業のインフレ予想が中長期でほぼ2%となる1.9%になっている点により注目すべきではなかろうか、とまあそういう話になる訳ですよね、うんうん。

そうやってこの数字を執行部になったつもりで料理致しますと、2%行ってないから追加緩和待ったなしどころか執行部の大勝利宣言とか某局某課あたりで万歳三唱と共にインフレ予想2%慶祝提灯行列が練り歩かれてもおかしくは無い、というアンケート結果になるというキタコレにも程がある結果である、とまあそういう話になるので無いかと存じますが如何でございましょうかねえ。

まあしかし何ですな、「2%」って連呼してみるもんですなという所でありまして、気合でフィリップスカーブを上方シフトして信じる者は救われるというシンデレラの魔法も使ってみるもんですなあ(棒読み)というのが今回の結果(の物価全般の見通し)だと思われます。3ページ目に回答の分布図があるのですけれども、先ほどの日銀レビューで説明があったような分布の偏りに関しては2ページ目に思いっきり記載されていましたけど、折角だから規模別まで含めてグラフも乗っけて頂ければ更にビジュアル的に面白かったと思います。

ま、最初に申し上げたように、この数字って初回集計ですからまあこの結果を振りかざしてドヤ顔すると次回のアンケートで盛大なブーメランになるリスクも思いっきり存在しますから、そらまあこれでドヤ顔とかするとは思えません(というかドヤ顔したらトンマにも程がある)ですけれども、少なくともこの物価全般の見通し数値を見て悪い数値とかいう方は追加緩和クレクレ病の症状が深刻になっておられると存じますので、参禅でもして心を洗ってこられる事をお勧め申し上げたいと存じます。


・と申し上げましたが1ページを見ると実にアレな結果もあったりする訳で

とまあそういう事で政策自画自賛モードの脳内セッティングを行った場合に2ページ目が極めて魅力に富んだ解釈ができるという事がお判りになったかと存じますが、一方で1ページ目を見ていると実にこう寒風吹きすさぶシベリアの冬といった風情を感じさせるものであります。

つまりですね、1ページ目って『1.販売価格の見通し』なんですけれども、これを見ると大企業の見通しと中小企業の見通しに乖離があって、大企業は販売価格見通しを製造業でゼロ近辺だの甚だしきは5年後がマイナスとかどう見てもデフレマインドです本当にカムサハムニダという数値になっておる訳ですよね。

一方で中小企業に関しては製造業で短期が1.2%で中長期になると徐々にその数値が上がっているのですけれども、当然ながら価格支配力という観点で考えた場合、製造業大企業様が販売価格上げねえよという中で本当に製造業中小企業が見通し通りの販売価格上昇ができるんですかとか考えますと実にこう薄ら寒い物を感じる次第でありまして、こっちを見ると「コストプッシュのインフレが川上で止まって企業収益や生産性が低下してハイおしまい」というあばばばばーな図しか思い浮かばないという大変にアレな数値。

非製造業の方が若干数値は上になっていますが、こちらでも大企業の方が先行きの販売価格見通しが低くなっておりまして、つまりはコストプッシュの影響を吸収する体力のある大企業と体力が相対的に弱い(と思われる)中小企業の間の差が表れていると考えますと、なるほど短観で(ってこれも短観ですけど)中小企業の先行き業況指数(ってこの先行きは3か月後ですけど)の水準が落ちるわなとかこれまた勝手にオモシロストーリーを立てて料理ができる話だなあと思うのであります。

てな訳ですからして、まあいずれにせよこの数値をどう解釈するかという話はあと数回データの蓄積が無いと行かん訳ですが、まああと2回短観行えば10月展望レポートの季節となりますので、そういう意味では丁度良いかもしれませんな(ニヤニヤ)。


・ところでこのような指摘ががががが

あたしゃこの短観の回答票なんぞを見たことは当然の如くございませんのでよー知らんのですが、今回の見通しアンケートなんすけど物価見通しに関する選択肢の分布票(2ページにある)のを見ると数字を選ぶ方の選択肢(知らんがなという選択肢が3つある)の回答の真ん中になるのが選択肢の5番と6番になると思うのだが、その5番と6番ってゼロ近傍ではなくて何故か+2%程度、+1%程度という選択肢になっているのは何かの工夫あるいは意図でございましょうか???というツッコミをする人が実は大変に多いのでございますけれども、この点につきましては是非ともご説明をお伺いしたい物でありますな(^^)。


○月初計数関連ネタががががががが

なお、月初恒例の国債購入銘柄とか短国の償還予定計算とか資金需給とかに加え、生活意識アンケートの結果も出ておりまして、その辺のネタをいじらないと行けなかったのですが、最初に申し上げた(というか最初に申し上げた部分に今追記したのだが^^)ようについうっかりとノリノリで料理大会をしてしまったので、時間がなくなってしまいましたすいませんすいません。

まあ何ですな、今回一番困るのは国債購入銘柄の明細の中で月末跨ぎの輪番で超長期の購入があるので、平均残存を計算しても6年台半ばとかになってしまうので今月の平均残存調整攻撃が来るのかどうかの当たりが全然つけられないという役立たずな結果になっているのですよね〜。

まあ何ですな、当日の実勢と売参から入りそうな銘柄を想定して計算するのが一番良さそうで、そうじゃ無かったら月末跨ぎ分の1702億円を10年超の買入実績で按分して買ったことにでもしますかねとなるのですかね、よー知らんけど。

なおその辺のネタは多分明日投入の所存ですが、ついでに本日は3MTBの入札もあるので、まあどんな感じになるんでしょうかという所です。

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2014/04/02

○短観である

http://www.boj.or.jp/statistics/tk/gaiyo/2011/tka1403.pdf

ちゃんとした分析は本職の何とかストのレポートでも見てください。つーかこれは株価チャートか何かだと思って業種別計数とかその他諸々の全ての計数をチャートにしてゴールデンチャートの如く並べてただひたすら眺めていると何かが見えて来そうな気がします。なかなかやってるヒマも気力もないのだが。


・前回の先行き予測DIの達成状況

         (12月時点)     (3月時点)
         現状→3月予測    現状→6月予測
製造業大企業   +16→+14    +17→+8 
製造業中堅企業  +6→+3      +12→+3        
製造業中小企業  +1→▲1       +4→▲6

非製造業大企業   +20→+17   +24→+13
非製造業中堅企業  +11→+10    +17→+5
非製造業中小企業  +4→+1      +8→▲4

9月、12月に引き続きで前回先行き予測DIを達成しかも上振れという状態で、12月に引き続き足元の数値はやたらめったら強く、前回基本的に先行きを下で見ていたのに上に振れているというのがつえええええという感じです。

とは言いましても、先行き予測の落ちこみ方が基本的に「12月に予想していた先行きよりも悪くなるし、12月の水準は盛大に下回る」という結果になっているのはあばばばばーという所で、しかも中小企業の先行き予測数値がうんこなのが実にこう見苦しい内容ですな。

ちなみに前回駄文では『まあしかし何ですな、今回の3月予測の数値をみると全てのセクターにおいて3月予測の数値が9月時点の現状判断、先行き判断DIよりも上な訳ですから、まあ若干頭打ち感はあるかも知れんが水準自体悪くなる雰囲気じゃないですな。』(昨年12月17日に書いた駄文)とか申し上げておりましたが、まあそんな感じでしたなという所ですが、あまりにもここまでが絶好調過ぎで、駆け込み需要が予想以上に優勢だったという事ですかそうですかという事なんですかねえ、よー知らんけど。


・雇用判断DI(ここの数値はマイナスが大きい方が良い)

          (12月時点)      (3月時点)
          現状→3月予測     現状→6月予測
製造業大企業  +3→+3       +2→+4
製造業中堅企業 +0→+1       ▲4→▲1
製造業中小企業 +0→▲2       ▲4→▲1

非製造業大企業   ▲11→▲11     ▲14→▲12
非製造業中堅企業  ▲13→▲14    ▲16→▲15
非製造業中小企業  ▲19→▲21    ▲23→▲20

製造業大企業以外がマイナスになっているとかイイハナシダナーとしか申し上げようがない良い数値で、先般の雇用指標と整合的ですね。


・想定為替レート

(参考)事業計画の前提となっている想定為替レート(大企業・製造業)

(円/ドル)   2012年度全体(上期)(下期) 2013年度全体(上期)(下期) 2014年度全体(上期)(下期)
2013年3月調査   80.56   79.15  81.94   85.22   85.10  85.33
2013年6月調査   82.21   79.25  85.11   91.20   91.25  91.16
2013年9月調査    −    −    −    94.45   94.77  94.14
2013年12月調査   −    −     −    96.78   97.60  95.97
2014年3月調査   −    −    −    98.37   97.66  99.06       99.48   99.38  99.58

まあこんなもんですかそうですか。さすがに100円台ではまだ組みません罠。


・価格判断DI

9月短観からしらっと投下された物件ですが、『2.需給・在庫・価格判断』にございますな。

販売価格判断(「上昇」-「下落」)

          (12月時点)      (3月時点)
         現状→3月予測     現状→6月予測
製造業大企業  ▲4→▲3        ▲3→▲3
製造業中小企業 ▲7→▲5       ▲5→▲2

非製造業大企業  +1→+3      +6→+6
非製造業中小企業 ▲5→▲2      ▲1→+4


仕入価格判断(「上昇」-「下落」)

             (12月時点)      (3月時点)
          現状→3月予測      現状→6月予測
製造業大企業  +21→+20       +22→+22
製造業中小企業 +37→+44       +39→+46

非製造業大企業  +21→+20      +22→+22
非製造業中小企業 +30→+34      +32→+39

・・・・・・・・・まあこの数値ですが、基本的にここまで3回の傾向として、仕入の方は実際よりも高めの数字が出て販売の方は実際よりも低めの数字が出てくるという傾向が見られるとは思うのですけれども(こんなのが事実ベースだったら企業の業況判断が良い訳ないので)、まあコストプッシュ的なサムシングは相変わらずという所です。

今回日銀がニッコリと思うのは販売価格判断DIが非製造業の方で前回予測数値以上に改善しておりまして、先ほどの雇用判断の改善と整合的になっていまして、そういう意味では単なるコストプッシュでは無くて、雇用の改善に伴う販売価格の上昇という前向きの循環メカニズムキタコレという理屈が盛大に登場できるという意味でホクホクにも程があるでしょうなあと思うのでした。


・金融商品取引業の業況判断DIェ・・・・・・・

毎度お馴染み金融商品取引業業況判断DIですが。

          (12月時点)      (3月時点)
          現状→3月予測   現状→6月予測
金融商品取引業 +68→+64   +35→+32

前々回は28悪化、前回は29改善、今回は33悪化とか何ちゅうボラだという金融商品取引業ですが、前回あたくしこんな事を書いておりましたよ。

『今回はまた華麗に上昇とかワロスワロスなのですが、何かのフラグにしか見えないのは実は6月短観の時もDIが現状判断+67で先行き見通しDIが+60と、まるで今回と同じような水準になっていることでございまして、このジンクスが再発すると3月短観では全業種中最悪の落ち込みを金融商品取引業が華麗に示すのではないかとか変なフラグに気が付いてしまいましたorzorz』(昨年12月17日に書いた駄文から)

・・・・・・・・orzorzorz

まあある意味北禿先生かムーシャ先生かという業況判断DIで実にこう面白いのですが、そらまあ追加緩和クレクレクレクレピーチク煩いわなという事ですねわかります(違)。


なお、一応真面目な話もしますと、ヘッドラインの数字は市場予想よりちと悪かったようですが、そもそも水準自体が馬鹿みたいに高いのでアレ。先行きの落ち込みが大きいのは気になりますけど、単に事前の山が高すぎだったので反動が出ているだけかもしれないですし、良く良く見ると雇用と価格の所が如何にも前向きの循環メカニズムが働いているっぽい内容になっているので、短観そのものを普通に見ると微妙に微妙かも知れんけど、日銀政策ロジック的(調統エコノミスト的な話じゃなくて企画的に)に見た場合には日銀益々自信を深める内容になっているんじゃないの、とは思いますがどうでしょうかね。

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