決定会合議事要旨や金融経済月報などについて(2012年度下期に書いた分)
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2013/03/22「政策委員会の代行はきくちゃんで執行機関の代行は中曽さんとな」
2013/03/13「2月決定会合議事要旨より:金融政策論議がカオス状態になって収拾がついていません」
2013/03/11「決定会合声明文に実は謎の文言がありました/金融経済月報から:現状判断および先行き見通しを需要項目レベルでやや引き上げ」
2013/03/08「無風の筈の3月会合に何故か白井さんからKY提案が飛び出す」
2013/02/20「1月決定会合議事要旨は想像以上にカオスであったことを示しています」
2013/02/15「決定会合声明文は現状判断を引き上げも先行き見通しは不変」
2013/02/05「1月金融経済月報を見ると1月追加緩和の理由が物価目標1点張りなのかは微妙」
2013/02/04「今さらですが生活意識アンケート」
2013/01/30「2013年度予算に伴う国債発行計画絡みの日銀の施策について」
2013/01/29「「物価の安定」に関する説明資料が麿イズム満載なのでネタに」
2013/01/28「12月決定会合議事要旨より:付利撤廃提案はやはりケチョンケチョンでした」
2013/01/24「物価安定の目標に変な解説が出ました」
2013/01/23「色々とあった今回の決定会合のレビューをば」
2013/01/16「さくらレポートは現状の下方修正と雇用環境の悪化を指摘」
2013/01/04「11月決定会合議事要旨の経済に関する部分などを確認」
2012/12/28「11月決定会合議事要旨の英文版を読むと更に色々と理解が深まるのです」
2012/12/27「11月決定会合議事要旨を見ると12月緩和の布石は打たれていた事などがわかります」
2012/12/21「決定会合で色々とビックリ」
2012/12/18「12月短観は悪いものの極端に悪くは無い」
2012/11/27「10月2回目決定会合議事要旨は色々と論点が盛り込まれています」
2012/11/22「金融経済月報概要は需要項目をこれまた細々と若干の下方修正」
2012/11/21「決定会合は現状維持、声明文内容は景気見通しを若干下方修正」
2012/11/07「10月1回目会合の議事要旨から:資産買入のフロービューとストックビューとか景気見通しとか」
2012/11/06「展望レポートの景気見通しの変化を確認」
2012/11/02「佐藤、木内両委員が反対した展望レポートの部分に関して考察してみる」
2012/10/31「声明文は景気判断引き下げ&追加緩和&新貸出制度&謎の政府共同文書」
2012/10/29「日銀給与削減とな」
2012/10/23「さくらレポートは判断引き下げだらけ」
2012/10/18「LIBOR関連で延期になっていた成長基盤強化のドル特則ようやく実施」
2012/10/12「9月会合議事要旨ではリスク性資産の買い増しに消極的な説明部分が」
2012/10/09「決定会合声明文は特段大きな変更なし/前原さん出席は何だったんでしょ」
2012/10/02「短観/生活意識アンケート」
2013/03/22
○MPMの議長第一代行がきくちゃんとな
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/rel130321c.pdf
政策委員会の議長および議長の職務を代理する者の決定について
『政策委員会は、本日、日本銀行法第16条第3項の規定に基づき、黒田東彦委員を議長と定めた。』
当然ですな。
『また、同法第16条第5項の規定に基づき、政策委員会議長 黒田東彦委員に事故がある場合に議長の職務を代理する者および代理する場合の順位を以下のとおり定めた。
第一順位 岩田規久男 委員
第二順位 中曽 宏 委員
第三順位 宮尾龍蔵 委員』
第3順位の宮尾さんは審議委員の中で先任の人という事ですが、第1順位が岩田副総裁とはこらまたお洒落で、まあ事故があっても困るのでそんな事はゆうてはならんのですがきくちゃんが議長をやって議事進行という状況ってどうなるんでしょうかねえ(ちなみに直近は山口副総裁、西村副総裁、先任審議委員の順だった筈)。
一方で執行機関としての総裁代理ですけれども。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/rel130321d.pdf
『2.総裁の職務の代理・代行(注)
第一順位 中曽副総裁
第二順位 岩田副総裁
第三順位 企画局担当理事
(注) 日本銀行法第22条第2項及び同条第5項に基づき、総裁の職務を代理・代行する場合の順位。』
ふむふむ、何か色々と微妙ですなあというのは把握した(^^)。
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2013/03/13
○2月13、14日決定会合議事要旨から:これは酷いカオス
きくちゃん劇場も大概ではございましたが、これ先週もそうだったのですけれども中曽さんとのセットになっている関係もあってヘッドラインとかは沢山出てくれるのですが、記事として纏められると中曽さんの部分も入れないといけなくなる(のはまあ致し方ないのですが、正直金融市場的には中曽さんの発言が余程ぶっ飛んでいない限り政策インプリケーションは読み取れないというか読まなくても言いそうな事は予想がつくので予想通りの話しかしてないのならニュースにせんで良いわと思いますけど^^)ので、どうも分量が減ってしまいまして、ヘッドラインを見て色々と思っても結局詳しい記事が後からは出てこないのが残念でございますね。
ということで、昨日に関してはきくちゃん劇場の前に出ていたMPM議事要旨が中々アレなカオスと化しておりまして、黒田さん岩田さんのノミネート前に既にこれという事は3月20日以降のMPMはどういう事になるんでしょうもうこの際議事要旨本文50ページになっても許しますので出来るだけ細かくしてくださいお願いしますという風情でございます。
などとのっけから悪態ですが、今回は景気に関する討議の所はほぼスルーしまして主に『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』におけるカオス振りを鑑賞致しましょう。
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2013/g130214.pdf
・金融市場局と調節課が卒倒しそうなマルナゲータキタコレ
『年明け以降、応札額が未達となるいわゆる「札割れ」が固定金利オペで頻発していることについて、多くの委員は、基金の残高を積み上げていく過程で、資金の余剰感が強まり、札割れが発生しやすくなることは予想していたことであると述べた。』
さいですな。
『そのうえで、これらの委員は、札割れの発生自体は強力な金融緩和が市場に浸透していることのひとつの表れであるとしても、基金の残高を予定通り積み上げられるよう、金融調節部署は引き続き、資金供給期間の柔軟な設定など、オペ運営面での工夫を講じていく必要があるとの認識を示した。』
でまあ3週間物などを打ち込んでいる訳ですが、そもそもこの辺のAPPの仕組みをつぎはぎというか昔の渋谷の西武系百貨店か苗場スキー場かというように後から後から継ぎ足しをして増殖してるから話がややこしくなっている訳で、そもそも「金融市場における何に対してどのように作用させたいのか」というのが必ずしも明確化されないまま色々な物を継ぎ足しているからこういう事になる訳で、大本営がその辺の戦線整理をしないで前線の兵士に「お前ら現場がもっと工夫しろ」とかいうのも何なんでしょうねえという所です。まあこの話は今に始まった事では無いのですが。
でまあちょっと飛ばして基金国債買入の金利が低下している話の部分がもっと卒倒モノでございましてですねえ・・・・・・・・・
『別の一人の委員は、市場の実勢レートよりも極端に低いレートでの買入れを行わないよう、金融調節部署が買入れ方法を適宜見直すことが必要との認識を示した。』
・・・・・・・・・いやさすがにこれは読んだアタクシ血圧上昇するよりも盛大に紅茶を噴出しそうになって危なかったわという所で、突発的海原雄山と化して「この認識を示したのは誰だぁ(ガラッ)」と厨房じゃなかったMPM会場に乗り込みたくなるレベルでございますわwwwwwwww
『これに対し、一人の委員は、買入れレートが入札で決まる以上、それが市場の実勢レートから乖離しているかを識別することは困難であるとコメントした。』
この部分、議事要旨ではこういう風に流していますが、実際の議事録ではト書きで(全員が椅子から落ちる)とか「・・・・・・・・・」と全員がゴルゴ13状態になっていたとか、まあそんな記載が10年後に見ることが出来るかと楽しみですので、10年後に読むときの備忘録として全力でここに記述させて頂くという所でございまする。
・いやあのお前それはちょっと変だろ
先程あたくし、具体的な政策に対してどういう部分にどう作用させるかという観点が大丈夫かと申し上げましたが、金融政策に関する討議の前の部分でこんなのもありましてですね。
『一人の委員は、金融面での不均衡の観点からは、金融機関が多額に保有している国債の金利リスクについて注意深く点検していく必要があると述べた。』
いやね、そらそうなのですがそもそもおまいらの包括緩和政策におけるAPP拡大で金利がバンバン潰れているんだから、この点を不均衡とか言われても金融機関の方は「何を寝惚けた事を言ってるんだ」という話になるんですけどねえ。
『別の委員は、長期金利が歴史的な低水準にあることを踏まえると、長期金利の反転リスクに注意する必要があるが、そうしたリスクをしっかりと抑制していくうえでは、財政規律に対する信認を維持していくことが重要であると付け加えた。』
という風にたしなめる別の委員がいるのが不幸中の幸いなのですが、包括緩和で金利潰しているのは何の為にやっているのかという観点からしたら「金融機関が多額に保有している国債の金利リスクの点検」をするのではなくて、「日銀の金融政策が財政ファイナンスと取られるリスクの点検」をすべきでしょという話であって、これまた海原雄山以下同文。
・追加緩和に関する話がこれまた超カオス
またまた金融政策運営に関する検討部分になりますが、「当面の金融政策運営について」以下の部分から引用するでござるの巻。
『一人の委員は、1%の「当面の物価安定の目途」から2%の「物価安定の目標」に変更した分、テイラー・ルールからみた政策金利水準は相対的に引き締まり的になっていると指摘したうえで、強力な金融緩和をしっかりと進めていく必要があると述べた。』
どっちも目標値なのでしたらそらそうなのですが、そもそも1%の目途は「当面目指すべき中間目標」としての位置づけであって最終目標値じゃなかったでしたっけという気がするんですが。
『委員は、@先行き経済が持続的に改善していけば、企業や家計の成長期待が高まり、物価上昇率をさらに高めることにつながっていく、A日本銀行が強力な金融緩和を推進するのと並行して、幅広い主体による成長力強化に向けた取り組みが進展し、企業や家計による緩和的な金融環境の活用が進んでいけば、金融緩和の効果は一層強まる、B政府と日本銀行との政策連携は、そうした好循環を支えていく、といった認識を共有した。』
というのは良いとしまして、
『何人かの委員は、市場参加者は、「物価安定の目標」の実現可能性を十分にイメージできておらず、この点について丁寧に情報発信を行っていくことは、日本銀行の金融政策運営に対する信認を確保するとともに、金融政策の波及効果を高めるうえでもきわめて重要であるとの認識を示した。』
実現可能性がそんなにあるのかよwwwwwwwwという所ではありますが、これ今日はめんどいのと書き物の構成上引用しないのですが、物価に関する見通しの所で急に「2%は行きます(キリッ)」みたいな意見を出している人たちが発生しておりましてもう何なんだというカオス部分にも味わいがありますのでお暇な方は是非ご覧くらはい(^^)。
『これらの委員は、目先、消費者物価の前年比が前年の反動から一時的にマイナスとなることについて、基調的な動きではなく、あくまで一時的な動きに過ぎないことをしっかりと対外説明していく必要があるとコメントした。』
はあそうですか(棒)。
『このうち一人の委員は、持続的な物価の安定を実現するには、需給ギャップの改善のみならず、生産性の上昇など成長力の強化が重要であり、この点について政府や国民と理解を共有していく必要があると付け加えた。』
というのは良いのだがあんさんさっき市場参加者が実現可能性を十分にイメージできていない(キリッ)って話してた割には何か実現可能性のハードル高くねえかという気がするんだがまあいいや。
『別の委員は、情報発信の観点からは、対外公表文のキーワードを強調してメッセージ性を高める工夫をするなど、説明の分かりやすさにも一層配慮していくべきと述べた。』
つまりこれは以前に堂々公表されたスーパーの特売チラシのような対外公表参考資料のような物が出てくるということですかそうですか。
#ご参考→http://www.boj.or.jp/announcements/release_2009/un0912c.pdf
・でまあ更にカオスの鑑賞だが具体策で一番ありそうなのは要は国債を買うという話でしょうなあ
『今後、追加緩和が必要となった場合の選択肢として、何人かの委員は、@補完当座預金制度の適用利率(付利)を引き下げること、A長期国債買入れにおいて残存年限のより長い国債を対象とすること、Bリスク資産の買入れを増額すること、に言及した。』
はあそうですか。
『付利引き下げについて、複数の委員は、ベネフィットとコストを慎重に検討すべきと述べた。』
なんだこの1行状態。
『長期国債買入れについて、何人かの委員は、買入れ対象年限の需給が今後さらにタイト化していく可能性を考えると、基金の積み上げを進めていくためには、残存年限のより長い国債を対象とする判断を行うこともあり得ると述べた。』
とまあそれは良いとしまして・・・・・・
『このうち複数の委員は、長期国債買入れにおいて残存年限のより長い国債を対象とする場合、効果と副作用を十分に検討する必要があるが、分かりやすさなどの点では、基金における長期国債買入れと金融調節上の観点から行っている国債買入れを統合することも選択肢になり得ると述べた。』
でまあ白井さんが3月会合で急に提案したという事になるのですが、しかし統合したきゃしても良いのですが、そもそも包括緩和をどのような位置づけで実施して、何を意図して実施した政策なのかという事をもうちょっと掘り下げて考察して頂きたい訳で、単に「分かりやすさ」という論点で統合という事になりますと、先ほど来あたくしが悪態をついておりますようにオペを実際にやる方が「そんな事言われましても結局何をやろうとしてこのオペを実施するのかちゃんと定義しないで文句言われても困るぞなもし」という卒倒状態になってしまいますがなと思う訳で、あまり安易に政策を打ちこんで整理整頓しないでドンドン戦線を拡大していくと全戦線に渡って戦線が崩壊するだけだと思うのですけどねえ。
『そのうちの一人の委員は、両者を統合する場合には、銀行券ルールの扱いをどうするかという論点が生じるが、仮に銀行券ルールを見直す場合には、政府が財政健全化について市場の信認を確保していることが重要であると付け加えた。』
まあこれは判ります。
『リスク資産の買入れ増額について、複数の委員は、日本銀行が買い入れた資産から損失が生じた場合に、政府に損失を分担してもらう可能性は考えられないか、との問題意識を述べた。』
もう何か次から次へとメニュー陳列大会となっていて、とりあえず何でも出して議論をしておきましょう的な大本営作戦部の戦線整理が出来ていない事が伝わってくる実に素敵な状態ではあります。
『金融資産の買入れと実質的なゼロ金利政策とを継続することにより、強力に金融緩和を推進する期間について、一人の委員は、実質的なゼロ金利政策については、将来の短期金利に関する市場の予想に働きかけるオーソドックスな緩和強化策であり、消費者物価の前年比上昇率2%
が見通せるようになるまで継続して一段と強い意思を示すことが適当との見解を示した。』
これは宮尾さんの提案ですね。
『そのうえで、この委員は、金融緩和が行き過ぎるとインフレ率の過度なオーバーシュートや、信用拡大を伴う資産バブルなどの懸念は生じ得るが、それらは金融面での不均衡の蓄積を含めたリスク要因を点検することにより、適切に対処可能と考えていると付け加えた。』
ふーん。
『こうした見解に対し、何人かの委員は、今後の経済・物価情勢については不確実性が高く、先行きの金融政策運営に関するガイダンスはこの不確実性の高さを十分踏まえたものとする必要があると述べた。』
つまり行くわけもない2%が見通せるまでとか止めなはれという話ですね判ります。つーかこの部分とか実際にどういう調子で意見交換が行われていたかと想像すると胸が熱くなる。
『また、一人の委員は、前回導入したコミットメントは、金融政策の透明性の観点から見直す余地があるとしたうえで、まずは消費者物価の前年比上昇率1%の実現に向けて資産買入れを行い、その先は2%が視野に入るまで緩和的な金融環境を維持するという、2段階で考えていくことが適当であると述べた。』
ほほう。
『別の一人の委員は、期限を定めない資産買入れ方式を直ちに導入し、見通し期間を1年延長したうえで、物価上昇率にかかる政策委員の見通しの中央値が1%台半ばを超えるまで、実質的なゼロ金利政策と資産買入れを継続することを明示することも一案であるとした。』
白井さんだと思うのだが後段の方がワケワカランというか何というか。
『これらの委員は、今回の会合では問題意識の提示にとどめ、大勢意見に従いたいと述べた。』
つまり百家争鳴ということですな。
『こうした議論を経て、金融資産の買入れと実質的なゼロ金利政策の継続期間について、多くの委員は、「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現することを目指し、それぞれ必要と判断される時点まで、とすることが適当との見解を示した。』
とまあそういう事で、何かもう議事要旨段階でこれだけカオスだったら議事録はどんな感じなのでしょうと想像すると中々香ばしい物を感じる議事要旨でございました。
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2013/03/11
・謎の「など」があったりしたのよ
金曜の声明文比較ですけれども、読者様から指摘を頂いたのですが(大汗)こんな相違点がありました。
『先行きのわが国経済については、当面横ばい圏内で推移したあと、国内需要が各種経済対策の効果もあって底堅く推移し、海外経済が減速した状態から次第に脱していくことなどを背景に、緩やかな回復経路に復していくと考えられる』(3月決定会合声明文)
『先行きのわが国経済については、当面横ばい圏内となったあと、国内需要が各種経済対策の効果もあって底堅く推移し、海外経済が減速した状態から次第に脱していくにつれて、緩やかな回復経路に復していくと考えられる』(2月決定会合声明文)
でまあ指摘頂いたのは、上記の中で3月に急に「など」が入っている事でして、これはあたくしも見落としておりまして汗顔至極。ではこの「など」とは何ぞやというのですが、こういう時に便利なのは英文の方なのですが・・・・・・・・・
『With regard to the outlook, Japan's economy is expected to level off
more or less for the time being, and thereafter, it will return to a moderate
recovery path mainly against the background that domestic demand remains
resilient partly due to the effects of various economic measures and overseas
economies gradually emerge from the deceleration phase.』
(3月決定会合声明文英文版)
『With regard to the outlook, Japan's economy is expected to level off
more or less for the time being, and thereafter, it will return to a moderate
recovery path as domestic demand remains resilient partly due to the effects
of various economic measures and overseas economies gradually emerge from
the deceleration phase.』(2月決定会合声明文英文版)
・・・・・・・・・英文を見ると更にワカランチ会長というのがおそロシアな訳ですが、2月との変更点として出ている単語が「as〜」だったのが「mainly
against the background that〜」って変更になっているだけでして、ナンジャソラという感じなのですが、背景って言葉があるから金融市場の状況好転とかマインド面の状況好転とかを指すのかねという話なのか、それとも現状判断のベクトルが下向きから横向きになったので「など」になったのかとか、まあその位しか想像ができませんぞなもしという話でありました。
○金融経済月報から少々:先行き見通しも需要項目でみるとやや引き上げですな
例によって概要部分だけサラサラと。
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2013/gp1303.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2013/gp1302.pdf(前回)
・現状判断:総括判断
『わが国の景気は、下げ止まっている。』(今回)
『わが国の景気は、下げ止まりつつある。』(前回)
声明文と同じく現状判断の方向性がやや下向きから底打ちになりました。
・現状判断:需要項目別
時間の関係で細々引用しないで纏めてどどーんと引用します(すいません)。
『海外経済は、減速した状態が続いているが、持ち直しに向けた動きもみられている。そうしたもとで、輸出は下げ止まりつつある。設備投資は、非製造業に底堅さがみられるものの、全体として弱めとなっている。一方、公共投資は増加を続けており、住宅投資も持ち直し傾向にある。個人消費は底堅く推移している。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は下げ止まっている。』(今回)
『海外経済は、減速した状態が続いているが、持ち直しに向けた動きもみられている。そうしたもとで、輸出は、引き続き減少しているものの、そのペースは緩やかになってきている。設備投資は、非製造業に底堅さがみられるものの、全体として弱めとなっている。一方、公共投資は増加を続けており、住宅投資も持ち直し傾向にある。個人消費は、底堅さを維持しており、乗用車購入における需要刺激策の一部終了に伴う反動減の影響も剥落している。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は、下げ止まりつつある。』(前回)
今回は輸出、個人消費、鉱工業生産の項目について「下げ止まり」の判断あるいは「一時的な反動減の影響」の記述の削除という形で判断を引き上げています。
・先行き見通し:総括判断
『先行きのわが国経済は、当面横ばい圏内で推移したあと、国内需要が各種経済対策の効果もあって底堅く推移し、海外経済が減速した状態から次第に脱していくことなどを背景に、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(今回)
『先行きのわが国経済は、当面横ばい圏内となったあと、国内需要が各種経済対策の効果もあって底堅く推移し、海外経済が減速した状態から次第に脱していくにつれて、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(前回)
ということで、こちらも声明文と同じく「など」という文言が入っていまして、これまた英文の方でもその「など」とは何ぞやというのは曖昧なままにしている、というのがチャーミングであります。まあ意味はあるんでしょうがあまりあからさまに書かないでぼやっとさせておく方が積極的曖昧さという奴でお得な場合もある訳ですが(謎^^)。
・先行き見通し:需要項目別
さすがにこちらは分けますね。
『輸出は、海外経済が減速した状態から次第に脱していくことなどを背景に、持ち直しに転じていくと考えられる。』(今回)
『輸出は、海外経済が減速した状態から次第に脱していくにつれて、下げ止まりから持ち直しに転じていくと考えられる。』(前回)
輸出に関しては現状判断を引き上げた部分があるのですが、実はここにも先程と同じく謎の「など」が入っておりまして、しかもここに該当する英文および先ほどの「など」部分に関しても、昨日ご紹介した『mainly
against the background that〜』という謎表現になっておりまして、誠に味わいの深い仄めかしスキームになっておりますなあという所であります(^^)。
『国内需要については、公共投資が各種経済対策の効果から引き続き増加傾向をたどり、住宅投資も持ち直し傾向を続けるとみられる。設備投資は、当面製造業を中心に弱さが残るものの、その後は、防災・エネルギー関連の投資もあって、緩やかな増加基調をたどると予想される。個人消費は、消費者マインドの改善などから、引き続き底堅く推移していくと考えられる。こうしたもとで、鉱工業生産は持ち直していくと予想される。』(今回)
『国内需要については、公共投資が各種経済対策の効果から引き続き増加傾向をたどり、住宅投資も持ち直し傾向を続けるとみられる。設備投資は、当面製造業を中心に弱さが残るものの、その後は、防災・エネルギー関連の投資もあって、緩やかな増加基調をたどると予想される。個人消費は、基調的には底堅く推移していくと考えられる。こうしたもとで、鉱工業生産は、次第に持ち直していくと予想される。』(前回)
国内需要に関しては、個人消費における「マインド改善」の指摘を行っておりまして、従来「基調的には」底堅く推移というありがちなヘッジクローズが入っていた所が「引き続き」底堅く推移という事になりましたので、これは個人消費の先行きに対してより強い見方になっているという事を示します。でまあ鉱工業生産に関しては現状判断を底打ちにした分もありまして「次第に」持ち直しからというヘッジクローズが外れております。
つーことで、先行き判断に関してみれば、ヘッジクローズ満載だったのが外れてくる流れとなっておりまして、これは先行きの回復に対する自信度が上がった、という事になろうかと存じます。
・リスク要因、物価、金融面に関しては基本的に同じです
金融面に関して、現状認識部分については1月〜2月の市場推移および2月〜3月の市場推移の差分がありますのでその部分について表現が異なっていますが、この部分は特段政策インプリケーションを与えるものではありませんので無問題。
一応リスク要因と物価に関して今回分だけ引用しておきます。
『この間、世界経済を巡る不確実性は引き続き大きい。』(今回)
『物価の現状について、国内企業物価を3か月前比でみると、為替相場の動きを反映して緩やかに上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっている。』(今回)
『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、当面、上昇を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、当面、前年のエネルギー関連や耐久消費財の動きの反動からマイナスとなったあと、再びゼロ%近傍で推移するとみられる。』(今回)
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2013/03/08
という余談はともかくMPMですが謎のノイズ登場という所でした。
○決定会合レビューその1:足元の景気判断を引き上げ、先行きは実質変わらず
まずは声明文本文から
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/k130307a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/k130214a.pdf(前回)
・海外経済はリスクアペタイトの部分を引上げ
『海外経済は、減速した状態が続いているが、持ち直しに向けた動きもみられている。国際金融資本市場については、今後の展開を引き続き注意していく必要があるが、投資家のリスク回避姿勢は後退した状態にある。』(今回)
『海外経済は、減速した状態が続いているが、持ち直しに向けた動きもみられている。国際金融資本市場については、今後の展開を引き続き注意していく必要があるが、投資家のリスク回避姿勢は後退してきている。』(前回)
ということで「リスク回避姿勢は後退してきている」→「リスク回避姿勢は後退した状態にある」という事になりましてリスクオフモードが解消されてきましたという話なのですが、良く良く考えると「リスク回避姿勢は後退した状態にある」というのも何か(ここまでの流れで表現を作っているから仕方ないのですが)妙ちくりんな日本語ではございますな(^^)。
・景気の現状認識:総括判断、輸出、個人消費、鉱工業生産を引き上げ
ということで割と威勢の良い引きあげですが、まあ引き上げたと言いましてもその絶対水準という意味では景気が良い訳ではありませんけどね!!
『わが国の景気は、下げ止まっている。』(今回)
『わが国の景気は、下げ止まりつつある。』(前回)
ほうほう。
『輸出は、海外経済の動きなどを背景に、下げ止まりつつある。』(今回)
『輸出は、海外経済の状況などから、引き続き減少しているものの、そのペースは緩やかになってきている。』(前回)
ということでこちらも下げ止まり。
『設備投資は、非製造業に底堅さがみられるものの、全体として弱めとなっている。一方、公共投資は増加を続けており、住宅投資も持ち直し傾向にある。』(今回)
『設備投資は、非製造業に底堅さがみられるものの、全体として弱めとなっている。一方、公共投資は増加を続けており、住宅投資も持ち直し傾向にある。』(前回)
ここら辺は判断カワランチ会長。
『個人消費は底堅く推移している。』(今回)
『個人消費は、底堅さを維持しており、乗用車購入における需要刺激策の一部終了に伴う反動減の影響も剥落している。』(前回)
ここはエコカー関連の反動減への言及が外れてこれも判断上げは上げですが、まあ水準自体は底堅く推移程度ではありますけどね。
『以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は下げ止まっている。』(今回)
『以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は、下げ止まりつつある。』(前回)
これもまた下げ止まりでして、まあ今回のキーワードは「下げ止まり」という所でしょうな。
『この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっている。』(今回)
『この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっている。』(前回)
ここは変わらずです。
でもってもう一つ前回と紙に打ち出して並べてみると最初に気が付くのが、景気の現状判断部分となります項番3の文章の行数が8行→6行と短くなっておりまして、「下げ止まり」という判断の引き上げが伴っていて文章量が減っている、というのは判断に関しての確信度が引きあがっているという事でもあります(確信度が低い時とか、言い訳が苦しくなってくるとか、話がややこしくなってくると文章がどんどん長くなる、というのは日銀クオリティというか洋の東西を問わずこの手の公表文書で発生する事象ではございますな^^)ので、そういう意味でも今回は「ああ下げ止まり判断の確信度が高まったのね」という印象が強くなります罠。
・先行き判断はほぼ同じ
ほぼ同じなのでめんどいから一気に引用して比較するぞな。
『先行きのわが国経済については、当面横ばい圏内で推移したあと、国内需要が各種経済対策の効果もあって底堅く推移し、海外経済が減速した状態から次第に脱していくことなどを背景に、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。消費者物価の前年比は、当面、前年のエネルギー関連や耐久消費財の動きの反動からマイナスとなったあと、再びゼロ%近傍で推移するとみられる。』(今回)
『先行きのわが国経済については、当面横ばい圏内となったあと、国内需要が各種経済対策の効果もあって底堅く推移し、海外経済が減速した状態から次第に脱していくにつれて、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。消費者物価の前年比は、当面、前年のエネルギー関連や耐久消費財の動きの反動からマイナスとなったあと、再びゼロ%近傍で推移するとみられる。』(前回)
殆ど同じですが、「当面横ばい圏内となったあと」→「当面横ばい圏内で推移したあと」となっているのが相違点。ただしこれは上記の現状判断における「下げ止まり」というのに対応した表現ではありますので、ここの文言だけで言えば先行き判断に関しては従来の判断を維持しているという形ですの。
・リスク要因とか謎の決意表明部分は前回と全文一致
全文一致なので今回分引用だけにしておきますが、ホンマカイナと思われる方は念の為原ソースに当たって確認するのをお忘れなく。
『リスク要因をみると、欧州債務問題の今後の展開や米国経済の回復力、新興国・資源国経済の持続的成長経路への円滑な移行の可能性、日中関係の影響など、日本経済を巡る不確実性は引き続き大きい。』(今回)
で、決意表明みたいな部分ですが引用しようと思いましたが長いので引用する気が失せましたのでスルーでございます(^^)。
○決定会合レビューその2:白井審議委員謎の提案
今回市場の話題というか「??????」を集めたのは白井さんの提案。
『(注1)白井委員より、基金の長期国債の買入れについて、「期限を定めない買入れ方式」を速やかに導入し、「金融調節上の必要から行う国債買入れ」と統合する議案が提出され、反対多数で否決された(賛成:白井委員、反対:白川委員、山口委員、西村委員、宮尾委員、森本委員、石田委員、佐藤委員、木内委員)。』
この提案があったというヘッドラインが出た時に債券先物が反応してやや上昇してましたけれども、これはいったいなんなんですねんという話ではございます。
・そもそも全体像が判らんがな
でね、声明文の場合否決された提案に関して事細かに公表されないので、この白井さんの提案に関してはさすがにもうちょっとディテールを見せてくれないと何を考えているのかがさっぱりワカランのが困ったもんでありますが、まあしょうがないので字面で考えるしかございませんな。決定会合議事要旨である程度どういう趣旨のもとでこういう提案が出た、というのが判るのですが、議事要旨が出るのは(これは今の日銀法のテクニカルな問題だと思うので改正して欲しいわと思うのですが)日銀法の規定上次回以降の政策委員会・金融政策決定会合において承認されないと公表されないので内容が判ったころには過去の話になっているのが遺憾の極みでありまする。
んでもってこの提案ですが、輪番と基金を統合すると言われましてもその瞬間にいわゆる銀行券ルールを突破しまして、まあ包括緩和(量的緩和)やっている時に調節技術上の銀行券ルール抵触云々は正直どうでも良いのですけれども、一応銀行券ルール自体は「財政ファイナンス懸念に対してそうではありませんとお答えするため」としての存在意義がございますので、この銀行券ルールとの折り合いはどうするんでしょうというのが公表文だけだとワカランのがまず第一に困ります。
更に困るのは、統合して期限の無い買入にするにしても、じゃあ買入をどうやって実施するのかとかどの年限をどう買うのかという話がこれまた見事に書いていないので何考えているのかがさっぱり判らないというのが困りものです、というかそもそもどういう年限をどう買うかみたいなのって結構良く練って考えないといけないもので、先行きの買入残高や保有資産構成がどうなるかという試算をベースにそれで良いのかどうかとか考えないといけない話ですからして、その辺綿密に作り込んだ案なのかがさっぱりワカランので判断のしようがないのですが、作り込んでいなかったらちょっとねえという所ではございます。
・オープンエンド買入の前倒しと今のAPP残高目標との関係
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/mei/release/2013/mei1302.pdf
日本銀行が保有する国債の銘柄別残高(2013年2月28日現在)
こちらの2ページ目にAPPでの買入残高がありますので引値表でも見ながらヘコヘコと償還順に額面を計算していきますと償還スケジュールが判るのですけれども、まあそんな事せんでも実を言えば今年償還になるAPPでの国債買入残高は償還分以外の変化は無い(買入をするのは残存1年以上だから)のですけれどもまあそれは兎も角(^^)。
営業毎旬報告ベースで見ますと、2月末のAPPでの国債買入残高が26兆4481億円になっておりまして(→http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/acmai/release/2013/ac130228.htm/)、上記の銘柄別残高でヘコヘコとあたくしが計算した額面ベースの数字が26兆3187億円になっているのでたぶん額面と価格との差分を考えたらあってるだろうと思いつつ申し上げますが、あたくしが手元でヘコヘコ計算したベースなので本人は合っているという自信満々のドヤ顔(ではありませんが)で申し上げますが正確な数値は皆さん計算してちょということで。
現在の買入残高が26.45兆円でして、6月までに来る償還額が9995億円になっているので、残高目標34.0兆円に対して残高達成に必要な買入額は(額面と時価の差があるのでその辺はネグって頂きたいのですが)6月までは(単純に4で割っているだけですが)2.1兆円程度の買入ペースが必要になります。
んでもって12月の目標残高は44.0兆円ですので、6月から12月の6か月での買入が必要なのは10兆円に加えて償還予定額が50965億円ありますので15.1兆円でして、償還分を勘案すると必要買入額は7月以降は月割りすると2.5兆円程度の買入ペースが必要になるんですよね。そんなに買えるのか(超過準備積む人が居なくなって札割れするとか、こっちは札割れしないけれども別の供給系オペに影響するとかになるという話)というのも大変だと思いますが。
つーことでですな、よく「オープンエンド買入を前倒ししないのは消極的」とか言われたりするのでございますが、そもそもオープンエンド買入を開始する前の残高目標ベースの方が長期国債に関しては買入ペースが結果としては早くなる筈という風になっている訳でして、オープンエンド前倒しするのは良いのですが、実は今直ぐにオープンエンド方式に切り替えると、短期国債の方は明らかにAPP積み上げペースが速まる(普通に考えて買入残高が30兆円になるのですが、12月末の目標が24.5兆円ですので)のですけれども、長期国債の方は実は当初の約束よりちょっと遅れる(短期国債の増え方の方がデカイのでAPPそのものという意味ではオープンエンドを前倒しにした方が早く積みあがる)という話でして、短期国債で積み上げペースを加速させたAPPでもヨロシという負債サイドビューだけで物事を語るのであればまあ良いのですが、そうじゃないという方は日銀の公表文書(と各銘柄の償還は財務省のページでもロイターでもクイックでもブルームバーグでも判りますのでその内容)ベースでこの程度の計算はただの足し算割り算の世界で計算できますのでその辺考えてくださいね(はぁと)という所ではございます。
まあその辺を判った上でしらっと演技モードで突っ込むというのは一つの手段ではあるのですが、この部分との折り合いをどう考えて提案したのかも見えないので何だかな論評に苦しむ提案ではあります。
・つーか何もこの時期に提案せんでも良いのではないかと
他に却下されていたのは宮尾さんの提案なのですが、まあ宮尾さんの場合は物価目標2%導入時からの継続提案なのでこれは一貫している話で問題は無いです罠。
一方で次回のMPMから総裁副総裁の3名が変わるというこの時期に新たな政策提案をするとか、緊急性のあるような案件なら兎も角そうでもないのに何で提案するねんそもそも今回で終了の3名にそういう投票行動させるとかナンジャラホイというかTPO的にどうなのというかKYさんですなあというかという感じですが、まああたくしの周囲3メートル(電話線と電子メールの届く範囲内も含む^^)で言われていたのは概ね以下のような感じですかねえ。
その1:新執行部擦り寄り早速キターーーー(・∀・)ーーーーーーーー
その2:提案して却下されるプロレス提案キタコレ
その3:単に目立ちたかっただけなんじゃないでしょうか????
でまあその2というのは時々そういうネタが語られる事もあるのですが、まあさすがにそういう行動というのは取れないでしょ(大体からして1から10まで議事録が後日公表されるからプロレス提案とかしたら文脈で判っちゃうでしょ)と思いますのでまあこれは却下。
そうしますとその1かその3のどっちかという話になる訳でして(オープンエンドを早く実施したいのであれば前回の時になぜ言わないという話ですから)、と勝手に決めつけてしまいますが(すいません)、その位唐突感があるので何なんでしょという所ではございます。いやこれが実は来週2月会合の議事要旨が出て前回もそういう話をしている人がいたというのであれば少しだけ考え方改めますが。
その1はまあ判りやすい(^^)ですけど、実は単にその3であって、石田さんも宮尾さんも佐藤さんも木内さんも色々と目立っている中で「あたしも〜♪」と目立とうとしたのではないかという考察をするのは失礼ですかそうですかもしかして笑点大喜利の黄色い羽織役をまさかの白井さんが買って出たということでしょうかわかりません(><;
などと書いているうちに時間が無くなりましたので今日は甚だ簡単ではございますがこの辺で勘弁という事で。
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2013/02/20
○1月議事要旨がカオスな件について
まあカオスだわなと思いましたが。
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2013/g130122.pdf
・展望レポート中間見直し
本文9ページから。
『先行きの物価の中心的な見通しについて、委員は、消費者物価(除く生鮮食品)は、概ね昨年10
月の展望レポートで示した見通しと変わらないとの認識を共有した。委員は、2014
年度にかけて日本経済が潜在成長率を上回る成長経路を辿り、マクロ的な需給バランスが改善するもとで物価上昇率が徐々に高まっていき、その結果として企業や家計の予想インフレ率も緩やかに上昇していくという、見通しの前提となる基本的なメカニズムは、10
月時点から変わっていないとの認識を共有した。』
そもそも見通しの基本的なメカニズムが10月から変わらないのになぜ物価目標を引き上げる事ができるのかが意味がワカランチ会長ですがそれは別の項でカオス議論がありますので後ほど。
『多くの委員は、2014 年度末までの見通し期間の終盤にかけて、消費者物価の前年比は1%に接近していくとの認識を示した。複数の委員は、今後、政府の取り組みなどによって成長力の強化が実現していく中で、消費者物価の前年比は、見通し期間を超えた2015年度以降、1%を超えて高まっていくと想定されると述べた。』
はあそうですか(棒読み)。
『ある委員は、今後、競争力強化の取り組みが具体的に進み、企業の収益力や生産性が高まることで、家計と企業の将来所得に対する期待が改善し、企業の価格支配力の改善と賃金の持続的な引き上げが両立する、望ましい物価上昇につながる可能性があるとの見方を示した。』
はあそうですか(棒読み)。
『別のある委員は、政策委員の見通しの中央値について、成長率の見通しが全体として前回対比上振れる一方で、消費者物価の見通しはほぼ前回見通し並みにとどまっていることは、政策委員の大勢が、マクロ的な需給バランスに対する物価の感応度が低下していることを想定しているようにみえると指摘した。』
確かに(^^)。
『これに対し、複数の委員は、見通し期間以降に物価上昇率が高まっていくことを想定しており、十分な期間をとれば物価の感応度は低下している訳ではないと述べた。一人の委員は、先行きの物価情勢の変化は、10
月の展望レポート時に比べて、物価に関する見通し分布チャートの下振れの可能性が低下し、上振れの可能性が高まるかたちとなっていることに現れていると指摘した。』
ここのやり取り、まあさらっと読むとふーんという話なのですが、つまりはこの「別のある委員」はおまいら前回の物価の予想が高すぎたのか今回の物価の予想が低すぎるのかのどっちか(まあ普通に考えて前者でしょうが)でそもそも物価の見通しで鉛筆舐めてるだろとツッコんだ、というのを議事要旨という形で出す時に事務局が綺麗な表現に丸めたらこうなった、と解釈したのですがどうでしょうかねえ(あくまでも妄想ですが)。
『別の一人の委員は、現在、政府が打ち出している構造改革の取り組みが、経済の改善を通じて物価上昇率に反映されるまでには長いラグがあるため、より長期的な視点を踏まえて議論する必要はこれまで以上に高まっているとの認識を示した。』
いや物価目標ってそんなに長期的な視点でやってて許されるもんなんですか?という気が思いっきりしますがまあそれはそれとして。
・物価目標に関する議論が更にカオス
『V.「『物価の安定』に関する点検」に関する執行部からの報告および委員会の検討の概要』から。
『1.執行部からの報告』というのがありまして、『2012 年12 月19、20 日の金融政策決定会合で議長より指示があった「物価の安定」に関する論点整理について報告する。』とありますが、これはまあ要するに物価安定目標の文書やその後に出た背景説明文書でああだこうだ言ってた話を説明していますので引用割愛して『2.委員会の検討』の方へ参ります。議事要旨本文12ページから。
途中までの概念の話はまあ全員が一致する話、というか物価安定目標の文書に書いてあった論点になりますので割愛しまして2%の部分に関してカオス鑑賞をしましょう。
『次に、持続可能な「物価の安定」の数値的な表現を検討するに当たり、委員は、@バイアス、Aのりしろ、B国民の物価観の3つの観点を踏まえる必要があるとの認識を共有した。そのうえで、委員は、それら3つの観点について、現時点で大きな変化はないとの認識を共有した。』
大きな変化が無いのに何故2%に上がるし??
『複数の委員は、「中長期的な物価安定の目途」を「消費者物価の前年比上昇率で2
% 以下のプラスの領域」としたうえで「当面は1%」と示している点に関して、今回の見通し期間中に当面の「目途」である1%にかなり近づくと見込まれることを踏まえると、その先、具体的にどの程度の物価上昇率を持続可能な「物価の安定」として想定するかについて、このタイミングで示しておく必要があるとの見解を述べた。』
2%にここで無理矢理引き上げる為の屁理屈とは言え、見通し期間中に1%の当面の目途達成が見えてきたとかテラカオスwwwwwwww
『多くの委員は、政府が、競争力と成長力の強化に強力に取り組んでいくという認識を示していることに言及し、今後、そうした取り組みの進展に伴い、現実の物価上昇率さらには国民の物価観が高まっていくと期待できるとの見解を示した。』
どう見てもただの大和魂あれば竹槍でB29撃墜理論です本当にカムサハムニダ。
『複数の委員は、ゼロ金利制約も勘案したのりしろの必要性を踏まえると、中長期的に目指すべき物価上昇率は1%よりも高いと考えられると述べた。別の複数の委員は、他の先進国が目指す物価上昇率である2%に揃えることが、長い目でみた通貨価値のバランスにも資すると述べた。』
この辺はよりロングスパンというか1%の目途を達成した後と言う意味ではまあそうなのですが・・・・・
『こうした議論を経て、大方の委員は、具体的な数値表現として「消費者物価の前年比上昇率2%」が望ましいとの認識を示した。』
・・・・・・・・いやもう事務局スタッフの文章構成能力がチョモランマより高いというのが判る訳ですが、ここでしらっとロングスパンでの話が飛躍して足元での目標数値表現の変更が正当化されるという話になって、これ読んでいる方もぼけーっと読んでいるとつい納得しちゃうのですが、今申し上げたように「より将来の事を考えた場合には1%より高い数値でしょう」というのと「今金融政策の目標数値として掲げる数値が1%より高い数値であることが適切」というのはその間のロジックにギャップがあるのですが、こういう形で流れるように文章にすると一々ツッコミどころを探しながら(またの名をあら探しともいう)読まないと納得しちゃう書き方をするのが日銀スタッフ恐るべしとしか申し上げようがございません。テラオソロシス(^^)。
話が逸れましたが、ちょっと飛んで2%に対する反対意見(佐藤さんと木内さん)の所がオモロイ。
『この間、複数の委員は、「物価安定の目途」に代えて「物価安定の目標」という表現を用いることには同意しつつも、その数値的な表現については、「消費者物価の前年比上昇率で2%以下のプラス、当面は1%」という表現を維持し、その実現に全力を尽くす姿勢を示すことが適当であるとの認識を述べた。』
しかし就任当初ハト派(と言われる)2名だったのに筋を通して来たのがこの2名というのが実に皮肉な話ですな。
『これらの委員は、その理由として、@消費者物価の前年比上昇率2%は、過去20
年の間に実現したことが殆どなく、そうした実績に基づく現在の国民の物価観を踏まえると、2%は現時点における「『持続可能な物価の安定』と整合的と判断される物価上昇率」を大きく上回ると考えられること、Aこのため、現状、中央銀行が2%という物価上昇率を目標として掲げるだけでは、期待形成に働きかける力もさほど強まらない可能性が高く、これをいきなり目指して政策を運営することは無理があること、B2%の目標達成には、成長力強化に向けた幅広い主体の取り組みが進む必要があるが、現に取り組みが進み、その効果が確認できる前の段階で2%の目標値を掲げた場合、その実現にかかる不確実性の高さから、金融政策の信認を毀損したり、市場とのコミュニケーションに支障が生じる惧れがあることを挙げた。』
誠に仰る通り。
『これに対して何人かの委員は、現状を前提に考えると2%の達成には困難が伴うとの認識を共有しつつ、政府が競争力・成長力の強化に向けた取り組みを強力に推進するもとで、2
% の達成を目指して日本銀行が金融緩和を推進するというかたちで、政策当局者が一体となって取り組む姿勢を明確にすることにより、企業や家計の期待形成に働きかける効果も考えられるため、このタイミングで見直すことには意味があるとの見解を述べた。』
>現状を前提に考えると2%の達成には困難が伴うとの認識を共有しつつ
>現状を前提に考えると2%の達成には困難が伴うとの認識を共有しつつ
>現状を前提に考えると2%の達成には困難が伴うとの認識を共有しつつ
・・・・・・・ワロタとしか申し上げようがございませんが、2名以外にもまあ2%は厳しいけれどもここはおとなのじじょうでと何処のつば九郎だというお方が複数名おいでと。
『このうちの一人の委員は、現時点の国民の物価観に過度に依拠するのではなく、先行きの経済物価情勢も踏まえて望ましい物価上昇率を考える必要があると述べた。もう一人の委員は、過去の低インフレの実績に基づいて多くの国民が現在持っている低いインフレ予想が今後も変わらないと想定するのは適切ではなく、様々な研究結果を見ても、かなりの割合の人々のインフレ予想は、将来の政策やそれによる経済の変化を織り込んで形成されていると考えられるので、これらの人々の予想形成に働きかけることは自然であると付け加えた。』
おまいら今まで1%を目途にしてた時の何故1%という数値を置いたのかという説明と全然違うじゃネーカまた中原三原則がでやがったなという所で。
・共同声明もカオス
順序としてはその前に金融政策方針の決定があって、その後に共同声明の検討があったのですけどさきにこちらを引用します。
『この提案を受け、委員は、デフレ脱却と持続的な経済成長の実現のための政府・日本銀行の政策連携に関する共同声明を公表することについて、議論を行った。』
ということで。
『委員は、政府と日本銀行が、デフレ脱却と持続的な経済成長の実現に向けて、連携を一段と強化することの意義は大きいとの認識で一致した。大方の委員は、現在、日本経済には持ち直しの動きがみられ、緩やかな回復経路に復していくために大事な局面にあること、また、政府が成長力強化に向けた取り組みを強力に推進することを表明していることを踏まえると、そうしたタイミングで政府と日本銀行が連携を強化し、一体となって取り組んでいく姿勢を明確に示すことは、日本経済の回復の動きを後押しするうえで、きわめて重要であるとの見解を示した。』
とまあここまでは良いとして。
『このうちの一人の委員は、政府との共同声明を決めるにあたっては、日本銀行法が定める、中央銀行としての独立性の確保と、政府との意思疎通の重要性とのバランスが重要であり、今回の声明はそうしたものになっているとの見方を示した。』
「共同声明は」そうですね(棒)。
『そのうえで、この委員は、特に、政策連携という言葉が使われていること、具体的な金融政策の運営については日本銀行に任されていることの2点において、政府からも日本銀行の独立性に対する配慮がなされていると理解していると述べた。』
「共同声明」に書かれている意味での「政府から」の配慮はそうですね(棒)。
『何人かの委員は、政府が、財政運営に対する信認をしっかり確保することも、連携を進めていくうえで重要であると述べた。』
まあここは重要なポイントですよね。特にAPPと財政ファイナンスの問題というのがありますので。
『別の複数の委員は、政府との間で、日本経済が直面する課題についての認識の共有が十分に図られているか疑問があり、もう少し時間をかけて望ましい政策連携のあり方を協議すべきと考えられるとの見方を示した。』
キタコレ。
『このうちの一人の委員は、労働力人口が毎年0.6%ずつ減少していく中で、2%の物価上昇率を安定的に実現するためには、きわめて高い生産性の上昇が必要になるという厳しい現実を直視する必要があると述べた。また、もう一人の委員は、政府が消費者物価の前年比上昇率2
% という目標の達成に向けた責任を分かち合うことが明示されなければ、企業や家計の期待形成に働きかける効果は限定的ではないかとの見方を示した。』
このお二方の認識は全くおっしゃる通りでございまして、特に後者に関しては早速安倍ちゃんが金融政策だけで2%やりやがれとか言い出す次第ですからして、後者の点については前者の論点なども踏まえて政府の取り組み姿勢というのをちゃんと出すようにしないといかんという話ですよね。
つまり、この文書自体は2%目標に対して政府と日銀の協力という形になっているのですが、肝心の安倍ちゃんが2%は日銀が実施するもんですよという業務分担的なイメージで共同声明を考えていると、そこに将来とんでもない齟齬が発生する可能性が、というか既に齟齬が発生していますけど・・・・・・・
・ガイダンス文言に関して
『W.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』に戻ります。
『金融資産の買入れと実質的なゼロ金利政策とを継続することにより、強力に金融緩和を推進する期間について、多くの委員は、「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現することを目指し、それぞれ必要と判断される時点まで、とすることが適当との見解を示した。』
ということでまずはガイダンス文言部分。
『これに対し、複数の委員は、現時点で「物価安定の目標」を消費者物価の前年比上昇率で2%とすることに反対であるため、その「物価安定の目標」と関係付けるかたちで金融資産の買入れ等の継続期間を設けることにも反対であると述べた。これらの委員は、現時点では当面1%の物価上昇率を目指すことが適当であり、その際、1%に達する前に拙速な金融緩和策の後退を行う政策意図がないことを明確に示すことが望ましいとの見解を示した。』
佐藤さんと木内さんですな。
『一人の委員は、見通し期間を1年延長したうえで、物価上昇率にかかる政策委員の見通しの中央値が1%台半ばを超えるまで、実質的なゼロ金利政策と期限を定めない資産買入れを継続することを明示することも一案であるとしたうえで、今回の会合では大勢意見に従いたいと述べた。』
「見通し期間を1年延長したうえで、物価上昇率にかかる政策委員の見通しの中央値が1%台半ばを超えるまで」というのは面白い提案なのですが、それをしだすと展望レポートが益々鉛筆舐めの世界になるリスクが高まるのと、見通しが変わった場合に戻したりするのがややこしくなるのであまり明記しない方が良いと思います。
『別の一人の委員は、将来の短期金利に関する市場の予想に働きかけるオーソドックスな緩和強化策である実質的なゼロ金利政策については、金融資産の買入れとは効果・副作用に関する知識の集積が異なることもあり、消費者物価の前年比上昇率2%
が見通せるようになるまで継続して一段と強い意思を示すことが適当との見解を示した。』
FED方式でAPPとゼロ金利を分離しつつゼロ金利の時間軸を強化しましょうという話で宮尾さんの提案ですね。
『これに対し、ある委員は、ゼロ金利政策と金融資産の買入れの効果と副作用の違いを強調することは、かえって現在強力に働いている時間軸の効果を低下させる惧れがあるとの見方を示した。』
うーん、ここは微妙。要は強調しなければ良いだけの話だとは思います。
『別の一人の委員は、先行きの金融政策運営に関するガイダンスは、今後の経済・物価情勢や累積的な金融緩和の効果を巡る不確実性の高さを十分踏まえたものとする必要があると述べた。』
つまりあまりリジットにしない方が良いという話ですな。
『委員は、日本銀行法は金融政策運営の理念を「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資する」と定めており、そのもとで、先行きの金融政策運営方針をどのようなかたちで示していくにせよ、日本銀行は、金融政策の効果波及には相応の時間を要することを踏まえ、金融面での不均衡の蓄積を含めたリスク要因を点検し、経済の持続的な成長を確保する観点から、問題が生じていないかどうかを確認していく必要があるとの認識を共有した。』
というのはまあ普通の話です。
・唐突に来た「APP銘柄5年への延長」&付利関連の議論ナッシング攻撃
で、その部分の前にあるのがオープンエンド買入の検討部分になるのですが、
『こうした説明を受けて、委員は、期限を定めない資産買入れ方式の具体的な内容について議論を行った。委員は、本年末の現行方式での買入れ完了後、2014
年初からは、期限を定めず毎月一定額の資産を買入れ続ける方式を導入することが適当であるとの見解で一致した。このうちの一人の委員は、新たな買入れ方式は直ちに導入することも考えられるが、今回会合では、政策委員会として一致した明快なメッセージを出すことを優先したいと述べた。また、委員は、毎月の買入れ額について、消費者物価の前年比上昇率が1%にまで高まっていくと予想される2014
年中に、さらに「目標」である2%を目指し、手綱を緩めることなく、しっかり金融政策を実行していく観点から、基金の残高を10
兆円程度増加させ、その水準を維持できるよう、当分の間、長期国債2兆円、短期国債10
兆円、CP・社債1兆円の計13 兆円程度とすることが適当であるとの認識を共有した。』
とまあこの辺は特段の議論にはなっていない模様。
『複数の委員は、「物価安定の目標」の実現には相応の時間がかかる可能性が高い中、先行きになればなるほど経済・物価情勢や累積的な金融緩和の効果などを巡る不確実性が高くなることなども踏まえ、当分の間というかたちで期間を定めずに毎月の買入れ額を決めて買入れを行っていくことは、日本銀行の金融緩和姿勢を明確に示すものであるとの見解を述べた。』
とまあここまでは良い。
『複数の委員は、短期国債の買入れの強化は、短期ゾーンの金利低下を通じて、為替市場へ働きかける観点からも重要であると指摘した。この間、複数の委員は、例えば、資産買入れの対象となる長期国債の残存年限を5年程度まで延長することも考えられると述べた。』
>例えば、資産買入れの対象となる長期国債の残存年限を5年程度まで延長することも考えられると述べた
>例えば、資産買入れの対象となる長期国債の残存年限を5年程度まで延長することも考えられると述べた
>例えば、資産買入れの対象となる長期国債の残存年限を5年程度まで延長することも考えられると述べた
>例えば、資産買入れの対象となる長期国債の残存年限を5年程度まで延長することも考えられると述べた
>例えば、資産買入れの対象となる長期国債の残存年限を5年程度まで延長することも考えられると述べた
・・・・・・・・・もうね、5年新発国債入札の日にこういうのが出ちゃうというのが日銀の間の悪さという奴でございまして、しかもこの5年程度への延長云々に関しての理由に関する背景説明が書いていないので、一体全体どういう状況になるとそれが具体化するのかというのがワカランチ会長となるので、そらまあ5年入札に向けて相場がヒャッハー(という程でも無かったが)になるというものでありまして、これに関しては議事要旨が公開される日がまさに5年新発国債入札の当日朝であることを踏まえますと、もうちょっと丁寧に書いてほしかった部分です。
つまり、これは「金利を下げて為替市場に働きかけたい」から5年に延長するのか、それとも「APPの積み上げが困難になる」から5年に延長するのかが判らないので困る訳でして、どっちの観点(または上記以外の別の観点)で話をしているのかによって5年への延長論議がどういう状況で具体化するのかの判断が付きかねると市場参加者に向けたメッセージとしては非常にあいまいで却ってノイズになりますぞなもしという話になるのですよ。
文章からするとたぶん前者だと思うのですけれども、それだと何かちょっと違うんじゃネーノという感じもする訳で、金利差通じて為替市場に働きかける為に5年まで延長、というのはあまりピンとこない論点に思えるのですが実際にはどういう論点でこれが出たのか判らんと言うのが気持ち悪いです。
ということで、今回の議事要旨最大の謎はこの部分でありましたということで時間切れですorz
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2013/02/15
○声明文から:景気判断は現状判断引上げ、先行きは変化なし
今回の声明文
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/k130214a.pdf
前回の声明文
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/k130122a.pdf
・海外経済、金融市場の緊張に関して
『海外経済は、減速した状態が続いているが、持ち直しに向けた動きもみられている。国際金融資本市場については、今後の展開を引き続き注意していく必要があるが、投資家のリスク回避姿勢は後退してきている。』(今回)
『海外経済は、減速した状態が続いている。国際金融資本市場については、今後の展開を引き続き注意していく必要があるが、投資家のリスク回避姿勢は後退してきている。』(前回)
ということで海外経済に関しては「持ち直しに向けた動きもみられている」と入って上方修正。国際金融市場は同じですな。
・現状判断
『わが国の景気は、下げ止まりつつある。』(今回)
『わが国の景気は、弱めに推移している。』(前回)
ということで総括判断を下げ止まりに引き上げ。
『輸出は、海外経済の状況などから、引き続き減少しているものの、そのペースは緩やかになってきている。設備投資は、非製造業に底堅さがみられるものの、全体として弱めとなっている。一方、公共投資は増加を続けており、住宅投資も持ち直し傾向にある。個人消費は、底堅さを維持しており、乗用車購入における需要刺激策の一部終了に伴う反動減の影響も剥落している。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は、下げ止まりつつある。』(今回)
『輸出や鉱工業生産は、海外経済の状況などから、減少している。設備投資は、非製造業に底堅さがみられるものの、全体として弱めとなっている。一方、公共投資は増加を続けており、住宅投資も持ち直し傾向にある。個人消費は、底堅さを維持しており、乗用車購入における需要刺激策の一部終了に伴う反動減の影響も減衰している。』(前回)
つーことで何気に主要な需要項目を引き上げているのですが、輸出は減少の「ペースが緩やか」となり、鉱工業生産は減少から「下げ止まり」に判断を上げてまして、この大物2項目が判断引き上げとなっており、他は判断維持です。
『この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっている。』(今回)
『この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっている。』(前回)
金融環境と物価は同じです。
・先行き見通し
『先行きのわが国経済については、当面横ばい圏内となったあと、国内需要が各種経済対策の効果もあって底堅く推移し、海外経済が減速した状態から次第に脱していくにつれて、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(今回)
『先行きのわが国経済については、当面横ばい圏内となったあと、国内需要が各種経済対策の効果もあって底堅く推移し、海外経済が減速した状態から次第に脱していくにつれて、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(前回)
ということで経済見通しは見事に全文一致。
『消費者物価の前年比は、当面、前年のエネルギー関連や耐久消費財の動きの反動からマイナスとなったあと、再びゼロ%近傍で推移するとみられる。』(今回)
『消費者物価の前年比は、当面、前年のエネルギー関連や耐久消費財の動きの反動からマイナスとなったあと、再びゼロ%近傍で推移するとみられる。』(前回)
物価見通しも全文一致。
・リスク要因
『リスク要因をみると、欧州債務問題の今後の展開や米国経済の回復力、新興国・資源国経済の持続的成長経路への円滑な移行の可能性、日中関係の影響など、日本経済を巡る不確実性は引き続き大きい。』(今回)
『リスク要因をみると、欧州債務問題の今後の展開や米国経済の回復力、新興国・資源国経済の持続的成長経路への円滑な移行の可能性、日中関係の影響など、日本経済を巡る不確実性は引き続き大きい。』(前回)
ここも全文一致です。
○声明文比較その2:最後の項がゴテゴテしていて見苦しいのですが
今回の声明文を見て真っ先に出る感想は恐らく最後の項に関しての小見出しのような印象でして、サンプル数極少であるあたくしのお友達も皆さん揃いも揃って「この6番は何なんですか」というお話に。
この項なのですが、前回まではここの項を1段落に押し込んでいたのですが、色々な物を盛り込み過ぎてついに1段落に入らなくなったというのが実にチャーミングで、昔の渋谷西武系店舗の絶賛大増殖みたいな風情を感じる(古いか)次第でありまする。
前回はこんな感じ。
『日本銀行は、日本経済がデフレから早期に脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することがきわめて重要な課題であると認識している。この課題は、幅広い主体による成長力強化の努力と金融面からの後押しがあいまって実現されていくものである。こうした認識のもとで、日本銀行は、上述のとおり、強力な金融緩和を推進していく。日本銀行としては、大胆な規制・制度改革など「共同声明」に記載された政府の取り組みがしっかりと実行されること、また、持続可能な財政構造の確立に向けた取り組みが着実に推進されることを期待している。』(前回)
ではまあその6番目の今回版を引用しませう。
『日本銀行は、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することを理念として金融政策を運営するとともに、金融システムの安定確保を図る責務を負っている。その際、物価は短期的には様々な要因から影響を受けることを踏まえ、持続可能な物価の安定の実現を目指している。』(今回)
まだ続く。
『日本銀行は、今後、日本経済の競争力と成長力の強化に向けた幅広い主体の取り組みの進展に伴い持続可能な物価の安定と整合的な物価上昇率が高まっていくと認識している。この認識に立って、日本銀行は、物価安定の目標を消費者物価の前年比上昇率で2%としている。』(今回)
さらに続く。
『日本銀行は、上記の物価安定の目標のもと、金融緩和を推進し、これをできるだけ早期に実現することを目指す。その際、日本銀行は、金融政策の効果波及には相応の時間を要することを踏まえ、金融面での不均衡の蓄積を含めたリスク要因を点検し、経済の持続的な成長を確保する観点から、問題が生じていないかどうかを確認していく。』(今回)
まだまだ続く。
『日本銀行は、上記の物価安定の目標の実現を目指し、実質的なゼロ金利政策と金融資産の買入れ等の措置を、それぞれ必要と判断される時点まで継続することを通じて、強力に金融緩和を推進する。併せて、金融機関による成長基盤強化の取り組みおよび貸出の増加を支援していく。』(今回)
ということで4段落もあるという長さでして、まあご覧になれば判るように色々な話をここにぶち込んでいるという事でして、前回も大概長いのですが、前回を遥かに超えた長さになっているのがチャーミング。
まあ一応見ましょうということで再掲しつつ段落ごとに。
『日本銀行は、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することを理念として金融政策を運営するとともに、金融システムの安定確保を図る責務を負っている。その際、物価は短期的には様々な要因から影響を受けることを踏まえ、持続可能な物価の安定の実現を目指している。』(今回)
基本的には前回の会合で出しました『金融政策運営の枠組みのもとでの「物価安定の目標」について』から拾ってきているという感じになりまして、最初の段落は『金融政策運営の枠組みのもとでの「物価安定の目標」について』の1番と4番の部分をまとめたような格好になっていますが、その中でしらっと「金融システムの安定確保を図る責務を負っている」というのを入れているのがチャーミングでして、これはつまり金融システムの不安定化に繋がるような金融の不均衡に対しては対処しますよ、というのを日銀法の趣旨を持ち出してアピール(ちなみに日銀法第1条の2に『日本銀行は、前項に規定するもののほか、銀行その他の金融機関の間で行われる資金決済の円滑の確保を図り、もって信用秩序の維持に資することを目的とする。』ってありますので、金融システムの安定確保を図る責務を負っているというのはこれはこれで正しい)しておりますぞなもしというのがチャーミング。
『日本銀行は、今後、日本経済の競争力と成長力の強化に向けた幅広い主体の取り組みの進展に伴い持続可能な物価の安定と整合的な物価上昇率が高まっていくと認識している。この認識に立って、日本銀行は、物価安定の目標を消費者物価の前年比上昇率で2%としている。』(今回)
これは『金融政策運営の枠組みのもとでの「物価安定の目標」について』の3番に相当します。または前回の声明文1の『(1)「物価安定の目標」の導入』の中の冒頭の文章に相当しますな。
『日本銀行は、上記の物価安定の目標のもと、金融緩和を推進し、これをできるだけ早期に実現することを目指す。その際、日本銀行は、金融政策の効果波及には相応の時間を要することを踏まえ、金融面での不均衡の蓄積を含めたリスク要因を点検し、経済の持続的な成長を確保する観点から、問題が生じていないかどうかを確認していく。』(今回)
ここは前回声明文1の『(2)「期限を定めない資産買入れ方式」の導入』の中の後半の文章に相当します。
『日本銀行は、上記の物価安定の目標の実現を目指し、実質的なゼロ金利政策と金融資産の買入れ等の措置を、それぞれ必要と判断される時点まで継続することを通じて、強力に金融緩和を推進する。併せて、金融機関による成長基盤強化の取り組みおよび貸出の増加を支援していく。』(今回)
まあ金融政策ガイダンス文言としての直接的な意味があるのはここだけでして、こちらは前回声明文1の『(2)「期限を定めない資産買入れ方式」の導入』の冒頭の文章に相当します。
ということで何かもうゴテゴテ書いておりまして、まあ一つ一つの段落に関する話はそれぞれ日銀としては説明して理解をして欲しい、というのは判るのですけど、正直言ってこれだけゴテゴテ書かれましても何かポイントがどこにあるのかが却って判りにくくなっておりまして、何を言いたいのかが一見して判りにくいのはやはり悪文の類であろうと思いますし、大体からしてコミュニケーションポリシーとして如何なものかという感は拭えませんので、この項についてはもうちょっと何とかならんのかとは思います。
いやまあ「物価安定の目標」に関する理解がどう見ても一般的に見た場合にアレだと思うので何度でも説明したい、というお気持ちは非常に良く理解できるのですが、それにしてもこの6番目の項建てはちょっとどうかと思いますけどねえ・・・・・・・・
と言う事でまあ決定会合レビューは本日は声明文のみ。会見については特段突拍子もない話も無かったようで誠に結構という所ですが、そもそも市場的には次の正副総裁体制下でさてどうしますねんという事に注目なので麿発言は見事にスルーというのが世の中オソロシスという所ではございます。
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2013/02/05
○うっかり忘れていましたが1月金融経済月報
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2013/gp1301.pdf(1月)
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2012/gp1212.pdf(12月)
何を今さらネタで誠に申し訳ございませんm(__)m
しかも例によって概要部分だけですが。
・現状総括判断
『わが国の景気は、弱めに推移している。』(今回)
『わが国の景気は、一段と弱含んでいる。』(前回)
前月に一段と弱含みになったのが弱めに推移なのですから、まあ方向性としての下向きは収まりましたが水準感としては前月とそんなに変わらん、という判断になりますわな。
・現状判断需要項目別
『輸出や鉱工業生産は、海外経済の減速した状態が続いていることなどから、減少している。設備投資は、非製造業に底堅さがみられるものの、全体として弱めとなっている。一方、公共投資は増加を続けており、住宅投資も持ち直し傾向にある。個人消費は、底堅さを維持しており、乗用車購入における需要刺激策の一部終了に伴う反動減の影響も減衰している。』(今回)
『輸出や鉱工業生産は、海外経済の減速した状態が続いていることなどから、減少している。このため、企業の業況感は、製造業を中心に慎重化している。設備投資は、非製造業に底堅さがみられるものの、全体として弱めとなっている。個人消費は、底堅さを維持しているが、乗用車購入において需要刺激策の一部終了に伴う反動減の影響が残っている。この間、公共投資は増加を続けており、住宅投資も持ち直し傾向にある。』(前回)
めんどいので一気に引用して並べてみましたが、変更点は以下の通り。
個人消費:底堅さを維持しているが・・・・という表現から、12月時点まで指摘していたエコカー関連の反動減の影響について影響が減衰という言い方をして底堅さを維持、ときっぱり言い切り型になっているので判断改善
企業の業況感:これは短観の月に入る物なので今回抜けているのは特段のインプリケーション無し
・先行き見通し総括判断
『先行きのわが国経済は、当面横ばい圏内となったあと、国内需要が各種経済対策の効果もあって底堅く推移し、海外経済が減速した状態から次第に脱していくにつれて、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(今回)
『先行きのわが国経済は、当面弱めに推移するとみられるが、国内需要が全体としてみれば底堅さを維持し、海外経済が減速した状態から次第に脱していくにつれて、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(前回)
ということで、これは現状判断の総括判断部分の流れと同じですが、方向性として下向きだったものが横向きになるということでまあ改善。国内需要の部分に関しての見通しは結構上げていて、前回入っていた「全体としてみれば」というヘッジクローズに対しまして、今回は「各種経済対策の効果」というのを打ち込んでいますのでこれは改善ですわな、まあ補正予算案が策定されたのですからそれを織り込むのは当然ですけど。
・先行き見通し需要項目別
『輸出は、当面減少幅を縮小したあと、海外経済が減速した状態から次第に脱していくにつれて、持ち直しに転じていくと考えられる。国内需要については、公共投資が各種経済対策の効果から引き続き増加傾向をたどり、住宅投資も持ち直し傾向を続けるとみられる。設備投資は、当面製造業を中心に引き続き弱めに推移するものの、その後は、防災・エネルギー関連の投資もあって、緩やかな増加基調をたどると予想される。個人消費は、乗用車購入の反動減の影響が引き続き減衰する中で、基調的には底堅く推移していくと考えられる。以上のような内外需要を反映して、鉱工業生産は、下げ止まりから持ち直しに転じていくと予想される。』(今回)
『輸出や鉱工業生産は、当面減少幅を縮小したあと、海外経済が減速した状態から次第に脱していくにつれて、持ち直しに転じていくと考えられる。国内需要については、復興関連需要などから、公共投資は、伸びを鈍化させつつも当面は増加を続け、住宅投資も持ち直し傾向をたどると考えられる。設備投資は、当面製造業を中心に引き続き弱めに推移するものの、その後は、防災・エネルギー関連の投資もあって、緩やかな増加基調をたどると予想される。個人消費は、乗用車購入の反動減の影響が減衰するとみられる中で、基調的には底堅く推移していくと考えられる。』(前回)
全部引用したら長かったですねすいませんすいません。変更点は以下の通り。
国内需要:復興関連需要の記述が抜けて、公共投資部分に各種経済対策の効果というのを加える公共投資:これに伴い公共投資にあった「伸びを鈍化させつつも」というのが抜けて単純に増加見通しに鉱工業生産:12月は輸出の見通しと同様の所に入っていて、当面減少幅を縮小した後に海外需要の持ち直しで持ち直しという表現になっていたのが、今回は下げ止まりから持ち直しという事で、国内需要の改善を材料にして判断を前進させている
・早速円高の影響抜けキタコレ
次の所に微苦笑。
『この間、世界経済を巡る不確実性は引き続き大きい。』(今回)
『この間、世界経済を巡る不確実性は引き続き大きいほか、金融・為替市場動向の景気・物価への影響には注意が必要である。』(前回)
「金融・為替市場動向の」云々が抜けておりまして、まあ欧州問題の改善や米国のフィスカルクリフの問題の改善というのは勿論あるのですが、それは金融の方でして為替の方に関しては円高修正の動きに早速反応しているとか何というかもうそういうのだけは反応速いんですよねえマッタクモウという所で、この正直者!としか申し上げようがない香ばしさを感じるのはあたくしだけですかそうですか。
・物価にも為替の影響の記述が
でもって次。
『物価の現状について、国内企業物価を3か月前比でみると、概ね横ばいとなっている。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっている。』(今回)
というのは前月と同じ現状判断ですがこの先の先行き見通しがががが。
『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、当面、為替相場の動きを反映して強含んでいくとみられる。消費者物価の前年比は、当面、前年のエネルギー関連や耐久消費財の動きの反動からマイナスとなったあと、再びゼロ%近傍で推移するとみられる。』(今回)
『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、当面、横ばい圏内で推移するとみられる。消費者物価の前年比は、当面、ゼロ%近傍で推移するとみられる。』(前回)
国内企業物価の見通しに関して早速為替市場の動きの反映で強含み見通しキタコレという所でございまして、もうこういう所だけは反応がビビットですなあというのはさっき申し上げましたかそうですかという所で(^^)。消費者物価に関しては昨年の頭に品目変更の絡みだか何だか忘れましたが(すいません)謎の挙動を示した薄型テレビとかエアコンとかの特殊上昇要因が剥落するのでマイナス継続という去年の裏側が出る件についての記述が加わっていますな。
でもって金融面は特段の変化は無く(社債の発行残高に関する記述が変更になっているのですが、これは事実関係の話なのでまあスルー)判断の部分に関しての変更はありませんので引用を割愛致します。
・ということで
1月の金融経済月報ですが、まあ先行き見通しに関しては経済対策部分で持ち上がっているのではありますが、展望レポート中間見直しで示されていますように、「その先」に関する見通しが上がっているのかというと微修正程度っぽい感じでして、先般の追加金融緩和(と会見などでは言っているが実際問題としては実弾ベースについてどうかというとこれまた微妙だし、時間軸ベースでも一応長期化のようには見えるけれども確実では無い、という不思議な代物であり、だからこそ声明文の題名が金融緩和の強化となっていなかった)の背景が景気見通しなのか物価目標を強く意識したものなのかというのが微妙ちゃあ微妙です罠という感じです。
そーゆー意味では昨年2月の物価安定の目途導入と追加緩和の方が、景気判断を明確に引き上げながらの目途導入と追加緩和だったので物価安定の目途を重視して追加緩和を実施しましたというのが判り易かったのですけれども、まあ引き続きその辺は有耶無耶というかファジーというかってえな所ではないかと存じますです、はい。
#今さらネタでどうもすいませんでした
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2013/02/04
○すっかり忘れていましたが生活意識アンケート
超今更なので(何せ1月11日ですので・・・・・)メモだけ。
http://www.boj.or.jp/research/o_survey/ishiki1301.pdf
「生活意識に関するアンケート調査」(第52回)の結果
―― 2012年12月調査 ――
調査期間が『2012年11月8日(木)〜12月4日(火)』というのもあるのですが、まあこの回は残念な結果になっていまして、興味があるのは次回調査でどの程度改善するかですなという話。
以下『』つけないですけれども、アンケートのQ&A部分は上記URLからです。
・景況感悪化
Q1. 1年前と比べて、今の景気はどう変わりましたか。
1 良くなった1.6 ( 2.9 )
2 変わらない45.6 ( 50.7 )
3 悪くなった52.2 ( 46.0 )
Q3. 現在の景気をどう感じますか。
1 良い0.1 ( 0.0 )
2 どちらかと言えば、良い1.4 ( 2.0 )
3 どちらとも言えない17.2 ( 20.4 )
4 どちらかと言えば、悪い51.6 ( 53.2 )
5 悪い29.6 ( 24.3 )
と言う事で足元悪化。
Q4. 1年後の景気は、今と比べてどうなると思いますか。
1 良くなる4.5 ( 4.6 )
2 変わらない57.7 ( 54.3 )
3 悪くなる37.6 ( 40.7 )
辛うじてマシなのは先行き見通しが少しだけマシになっている事、と言いましても「悪くなる」が減るという形での改善なのであまり景気が良い話でも無いのですが、一応調査機関の中盤以降は総選挙で株が為替がになっておりましたので。
・物価の方が更にアレ
Q13. それでは、1年前に比べ現在の「物価」は何%程度変わったと思いますか。
―― 数値をご記入のうえ、上・下いずれかに○をお願いします。なお、「0%」と思われる方は、記入欄に「0」とご記入下さい。
平均値(注1):+2.0 ( +2.7 )
中央値(注2):0.0 ( 0.0 )
(注1)極端な値を排除するために上下各々0.5%のサンプルを除いて計算した平均値。
―― 全サンプルの単純平均値は + 2 . 1 (前回調査<2012/9月実施>:+ 2 . 8 )。
(注2)回答を数値順に並べた際に中央に位置する値。
Q15. それでは、1年後の「物価」は現在と比べ何%程度変わると思いますか。
平均値:+3.0 ( +3.9 )
中央値:+1.0 ( +3.0 )
Q17. それでは、5年後の「物価」は現在と比べ毎年、平均何%程度変わると思いますか。
平均値:+3.8 ( +4.4 )
中央値:+2.0 ( +3.0 )
・・・・・・・・・・ということで、どう見てもこっちの方がorzorzorzなのですが、物価の現状認識と先行き見通しが今回下がっております。前回9月調査時点でその前の6月調査時点の数値から軒並み上昇して「おー」と思ったのですが、今回また下がりまして、しかも6月時点からの時系列も説明している6ページから8ページの部分を見ると判るのですが、概ねどの数値も9月に上昇した分以上に低下してやがりまして、ダメダメ感を漂わせているのでございます。
まあこの数字に関しても次回アンケートでどの程度改善するのかを見たいですな。
・・・・・・・というメモだけですが、まあ内容は良くありません罠。
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2013/01/30
○国債整理基金残高圧縮や国債発行計画に関連して日銀の措置とか
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/rel130129b.htm/
「対政府取引における非常時の一時貸付けに関する特則」の制定に関する件
『日本銀行は、平成25年1月25日に開催した政策委員会において、日本銀行法(平成9年法律第89号)第34条第2号に基づき、非常時に政府からの要請を受けて行う一時貸付けについて、その適切な実施を確保する観点から、「対政府取引に関する基本要領」(平成11年3月26日決定)の特則として「対政府取引における非常時の一時貸付けに関する特則」を別紙
[PDF 94KB]のとおり制定することを決定しましたので、お知らせします。』
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/data/rel130129b.pdf
「対政府取引における非常時の一時貸付けに関する特則」
『大規模な災害、電子情報処理組織の故障等の事由により、政府(政府短期証券の発行が認められていない特別会計であって、大規模かつ頻繁に民間からの資金調達を実施しているものに限る。)が既存の対民間債務の借換えのために予定していた民間からの資金調達を行うことができず、政府内において採り得る手段を講じてもなお、当該債務を返済できない事態にある場合に、政府からの要請を受けて行う一時貸付け(日本銀行法(平成9年法律第89号)第34条第2号に定める貸付けをいう。)の取扱いについては、「対政府取引に関する基本要領」(平成11年3月26日付政委第51号別紙)によらず、本特則に定めるとおりとする。』
ということで、具体的には例えば3か月TB発行日(現在の発行額は1回辺り約5.7兆円)の前日夜などに大震災が起きたりして、TB発行日に発行代わり金の払込が行われなくなって発行に穴が開くけど償還の方はしないといけません、というような緊急事態が発生した場合、従来ですとそのような事態に対応するために国債整理基金でその分の資金を保険としてプールしていた分で対応していたのですが、今回日銀からの融通を可能にするという措置ですな。
『(1)貸付期間は、必要と認められる最短の期間とし、原則として1営業日とする。
(2)必要と認められる場合には、政府からの借換えの要請に応じる扱いとする。
(3)政府が日本銀行に返済することができる場合には、日本銀行は、(1)に定める貸付期間の満了日到来前であっても、直ちに、返済を受ける扱いとする。』
そらまあそうですなという話で、これ自体はその通りですなという話。
そして国債整理基金の残高が圧縮になりますと・・・・・・・
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/acmai/release/2013/ac130120.htm/
営業毎旬報告(平成25年1月20日現在)
たぶんここにある売現先勘定が減る(現在の当該勘定は基本的に対政府勘定)筈なので、日銀のバランスシートガーの人がそのうち面白い事を言い出すに1万ドラクマですが、現先の期間とかが良くワカランチ会長なのでどのようなペースで減るのか存じませんが、目に見えて減ってくる頃にはこの辺の話を覚えて居ない人が多いのでオモシロ発言が期待できそうですな(^^)。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/rel130129c.htm/
平成25年度中に償還期限の到来する本行保有国債の借換えのための引受けならびに平成24年度および平成25年度における国債買入消却への対応に関する件
『1.平成25年度中に償還期限の到来する本行保有国債(以下「償還期限到来国債」という。)の借換えのための引受け(以下「借換引受け」という。)にかかる取扱いについて、「対政府取引に関する基本要領」(平成11年3月26日決定)2.の規定に基づき、次のとおり定めること。
(1) 償還期限到来国債(ただし、資産買入等の基金における買入残高分を除く。以下同じ。)のうち、利付国債額面総額11兆7,000億円については、割引短期国債をもって、借換引受けを行うこと。
(2) 償還期限到来国債のうち、「平成24年度中に償還期限の到来する本行保有国債の借換えのための引受けならびに平成23年度および平成24年度における国債買入消却への対応に関する件」(平成23年12月22日決定)に基づき借換引受けを行った割引短期国債については、償還期限到来国債である利付国債の額面総額が(1)に定める金額を下回ることになると認められる場合に限り、当該差額につき、割引短期国債をもって、借換引受けを行うこと。
(3) (2)の借換引受けの要否については、総裁が決定すること。』
ということで日本語が難しいですが(^^)、よーは償還乗換は通常通り実施するけれども再乗換は実施しませんぞなという話(ただし現在予定されている償還乗換分が事前に買入消却によって減った場合、減った分だけの再乗換は行いますので総額11.7兆円(額面ベース)はFIXですよという話)でありますけれども、そういやこの償還乗換を捕まえて「日銀は既に大量の国債を引き受けている」と主張するアレな方々がおいでで、相変わらずそれに釣られている方々がおいで(つーか議員まで真顔でそういう話をするのが困りもんなのだが)で誠に遺憾の極みに存じますとしか申し上げようがございませんのでこの辺の文書を穴のあくほど読むなり100回写経するなりしろやと思うのでございます。
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2013/01/29
○「物価の安定」についての考え方に関する付属資料もお洒落であったりするので少々
「物価の安定」についての考え方に関する付属資料
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/data/rel130123a1.pdf(本文)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/data/rel130123a2.pdf(図表)
冒頭部分がどう見ても燃料投下です本当にありがとうございましたという話をこれが出た直後にネタとした訳ですが、中身の方も良く良く読みますと色々とお洒落。
つーかですな、図表の方は兎も角として、説明の本文だけで9ページ分もあるとかゆーのは「説明」としてどうなんでしょという気はします。いやまあ勿論内容的にこの位説明した方がという気持ちも判らんでは無いのですが、誰向けの説明とか考えるとこういうのは総裁講演なり何なりでやった方が良さげな気もします。量が大杉で一般ピープル読まんと思いますぞ(つーかマニア以外市場の人間でも読まん)。
・冒頭の部分は正論だが燃料投下
『1.「物価の安定」とは何か』という所もそうなのですが、図表の冒頭がのっけから生活意識アンケート(そういや直近のをネタにしてない・・・・・)の調査結果でありまして、『(図表1)
物価上昇に対する家計の受け止め方』ってあーたその通りなのですが燃料投下にも程があるぞなもし。せめてこの図表が総務省あたりのアンケート調査とかにでもしておけば良いのですが(そらまあ自分の所で入費掛けてるんだから使うのは正しい態度ですけど)、日銀の実施したアンケート調査でこう出ているんです(キリッ)とか出すと日銀批判の際に悪意満々で藁人形論法も辞さず(と本人たちは思っているかどうか知らんが明らかに藁人形論法持ち出して日銀がこう言っただのという事例は散見されますけどねえ)な皆様に対して絶好の燃料投下になる訳で。まあ日銀におかれましては良く言えばその辺人が良いのでそういう因縁つけ系がどういう因縁をつけてくるのかというに対してどういう風に見えるかという意味での「見せ方」の工夫もした方が良いんじゃネーノという希ガス。
でまあ内容に関してはこの前話をしたので割愛しますが、望ましい物価上昇の姿とはこういうもんです(キリッ)っていうのもまあ中銀として仰る通りではあるのですが、2%の物価上昇を早期に実施したいのでしたらコストプッシュも辞さずじゃないと厳しいような気もしますけどね。
・物価をどのようにして見るかというコーナー
『2.「物価の安定」の数値的表現』というのが次のコーナーですが。
『物価情勢を点検していく際、物価指数としては、国民の実感に即した、家計が消費する財・サービスを包括的にカバーした指標が基本となる。この点、速報性を備えている消費者物価指数(総合)は引き続き重要である。』
という所から始まりまして説明がありまして、この辺りは折に触れて日銀からペーパーが出ているので大体読んだことのある話ではあるのですが。
『こうした一時的な変動要因を取り除いた基調的な変動を捉えるための指標として、わが国では、これまで、消費者物価指数の「除く生鮮食品」や「10%刈込平均値」が、総合指数のトレンドの捕捉力、先行きの総合指数の予測力という観点から、比較的良好な実績を示してきており、この結論は最近までのデータを用いても変わらない(図表2)。ただし、それらの指標だけをみれば十分ということはなく、一時的な要因や特殊要因を認識し、基調的な動きを正確に把握するよう努める必要がある。』
刈込平均値云々については元々日銀のペーパーで説明があったのですが、まあ極めてどうでも良いツッコミをするとそのペーパーって「著者見解ですが日本銀行の組織としての見解ではありません」となっているものの気が付くと説明の中にも織り込まれているという次第でありまして、あのヘッジクローズは何なんでしょうとかいうのは大人の態度じゃないですかそうですか。
『このように、わが国では、消費者物価の基調的な変動を表す指標として「除く生鮮食品」や「10%刈込平均値」が有用であるが、一時的な撹乱要因が物価に与える影響は、各国ごとの経済環境や物価指数統計の作成方法等によって異なる点には留意が必要である。』
キタコレ。
『この点、米国のエネルギー関連価格は日本よりも変動が大きいため、米国では基調的な変動を捉える物価指標として、食料のほかエネルギーを控除した指標(いわゆるCPIコア)を用いることが一般的となっている。』
コアコアを使わないのは何でやとよく言われる件の説明ですな。まあ刈込平均の話とこの辺に関しては以下の日銀レビューがオヌヌメ(最初のレビューは脚注で紹介されています)。
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2006/data/rev06j07.pdf
消費者物価指数のコア指標
2006年4月
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2006/data/rev06j02.pdf
金融政策の説明に使われている物価指数
2006年2月
刈込平均の話自体はもっと昔からあって1999年とかにペーパー出ていますのでお暇な方はどうぞ。
・物価指数のバイアスに関して
でまあその後にこのネタが。
『「物価の安定」を具体的な数値として示すに当たっては、従来と同様、@物価指数の計測誤差(バイアス)、A物価下落と景気悪化の悪循環への備え(のりしろ)、B家計や企業が物価の安定と考える状態(国民の物価観)、の3つの観点を踏まえて検討した。』
2番目と3番目の話は従来通り、つーかまあ1番目も従来通りではあるのですが、バイアスの部分の技術的な話をしつつ「上方バイアスはよく言われるほどさほど大きくない」という説明をしているのがチャーミング。
『第1の観点である「バイアス」についてみると、わが国の消費者物価指数は固定基準ラスパイレス方式に基づいて作成されており、基準年における財・サービスの消費バスケットが5年間にわたり不変であることが前提となっている。こうした指数の前年比には、@相対的に価格が低下した財・サービスの消費バスケットにおけるウエイトが上昇する傾向が反映されない(ウエイト効果)、A価格下落の激しい耐久消費財について、時間の経過とともに指数水準が大きく低下することで、消費者物価の前年比に対するマイナス寄与が実態よりも小さくなる(リセット効果)、といった理由で上方バイアスが生じることが指摘されている。』
『この点、参考指数として別途公表されている連鎖基準指数には、こうしたバイアスが生じないとされている。そこで、固定基準年指数の前年比から連鎖基準指数の前年比を差し引くことにより、バイアスの動きをみると、基準時点からの時間の経過に伴って拡大する傾向があるものの、均してみれば定量的にさほど大きくないことが確認できる(図表3)。』
ほほう。
『さらに、こうした上方バイアスだけでなく、近年では、調査対象が大規模店舗中心となっていること、家賃について品質調整が行われていないことなど、下方バイアスの可能性も指摘されていることを併せて考えると、全体としてみれば、物価指数の計測誤差を物価の安定の数値表現において勘案しなければならない程度は小さいと考えられる。』
下方バイアスキタコレですが、ここに脚注がありましてこの説明が更に興味深い。本文3ページの脚注4なんですけど。
『消費者物価指数に下方バイアスが生じる可能性としては、例えば以下の3つが指摘されている。第1に、消費者物価の調査対象店舗は販売数量または従業者規模等の大きい順に選定されているが、近年、大規模店舗の価格競争は激化し売上もやや弱めに推移しているため、統計作成上は物価指数が弱めに出る可能性があると考えられる。第2に、消費者物価における民営家賃は、賃貸住宅の経年による品質劣化の調整を行っていないため、下方バイアスが生じているとの見方がある。民営家賃の消費者物価(除く生鮮食品)に占めるウエイトは2.8%と小さいが、これは16.2%のウエイトを持つ持家の帰属家賃にも利用されるため、全体としての影響は小さくないと言われている。第3に、耐久消費財の一部に適用されているヘドニック法(価格と各機能の関係を回帰分析を用いて推計し、機能向上分を価格下落と捉える品質調整の手法)について、例えばパソコンの機能が向上したとしても、全ての人がそれを使いこなすことが難しいとみられる現状では、品質調整が時として過剰となり、結果として下方バイアスが生じる可能性も指摘されている。』
まあ帰属家賃の所とヘドニックの所は特にそうですなあと思いますぞな、ではあるのですが、何か2%って数字が本当はおまいらの想像するよりも高いぞなもしという話をしたいというのは判りますな。というかこの後にその話がでるのですけどね
『以上3つの観点からの検討の結果は、これまでと大きな変化はない。こうしたもとで、従来の「中長期的な物価安定の目途」から「物価安定の目標」へと表現を代えたうえで、その目標を消費者物価の前年比上昇率で2%としたのは、以下の認識に基づく。』
んでもってこの先に「では何で今回2%にしたのか」の説明がありますが、こちらにつきましては決定会合時に出ていた説明と同じ何だかこう苦悩の屁理屈という所でありますのでスルーします(^^)。
・おまいら物価指数が2%になったらこんな事になるんだぞという燃料投下キタコレ
『3.わが国の消費者物価変動のミクロ的な特徴点』というのが燃料投下。
『わが国の消費者物価の品目別変化率の分布をみると、第1に、最頻値が若干のプラスながらも、耐久消費財の大幅なマイナスが全体の平均を押し下げる姿となっている(図表6)。こうした傾向は米国を含む海外でもみられるが、日本では耐久消費財の下落が特に大幅になっており、中でも、テレビなどのデジタル家電、パソコンといった品目において、わが国の下落率が大きい。これら品目は、日米でほとんど同種の製品が販売されていることを併せて考えると、耐久消費財価格の下落率に関する日米の違いには、統計作成上の手法(調査銘柄のサンプリング法、品質調整法など)や小売段階の競争環境に関する違いが、影響している可能性が高い。』
耐久消費財の価格下落で日本のCPIは米国対比で低いとな。
『第2に、1990年代後半以降における日米の平均的な消費者物価上昇率の格差である2.6%のうち、内訳を寄与度でみると、家賃が0.8%、サービス(除く家賃)が0.9%となっており、これらサービス部門全体では1.7%(寄与率で約65%)となっている。こうしたサービス価格の上昇率に関する日米格差の背景としては、後述のとおり、わが国企業は、需要の減少に対し、雇用の削減よりも賃金の引き下げで対応してきた面が強く、その結果として、労働集約的なサービス部門の価格が米国よりも下落しやすかったことが考えられる(図表7)。』
これは良く言われる話でして、後の方での説明に出てくる図表11を見ると判りやすいのですが、日本では失業率が比較的安定する中で時間当たり賃金の上昇率を抑える(というか99年以降で見ると日本は殆ど上昇していませんがorz)事によって労働需給を調整するのに対して、米国では時間当たり賃金の上昇率は安定する中で失業率はぶれまくるという現象ですわな。
でまあこの次が実にチャーミングかつ微妙な燃料投下。
『いずれにせよ、耐久消費財については、技術革新による低価格化が今後も進行するとみられるほか、機能や品質の向上分も物価指数上は価格の下落として処理される。これらを背景に、耐久消費財の価格は日本経済の成長力強化が進むもとでも、相応のペースで下落が続くと予想される。』
・・・・・・・・・・・(^^)。
『したがって、消費者物価の前年比上昇率が2%となる状態においては、非耐久消費財や医療・教育等の公共料金、家賃等を含むサービスの価格は2%以上上昇した状態となる可能性が高い。』
>非耐久消費財や医療・教育等の公共料金、家賃等を含むサービスの価格は2%以上上昇した状態となる可能性が高い
>非耐久消費財や医療・教育等の公共料金、家賃等を含むサービスの価格は2%以上上昇した状態となる可能性が高い
>非耐久消費財や医療・教育等の公共料金、家賃等を含むサービスの価格は2%以上上昇した状態となる可能性が高い
キタコレ(・∀・)
まあ何ですな、話はそれますけれども「アベノミクス」の最大の試練は普通に考えて「物価が実際に上昇しだした時」であろうと思う訳で・・・・・・・・
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130129/k10015127621000.html
春闘スタート 賃金引き上げどこまで
1月29日 4時42分
『一方、経団連は円安が進み株価が上向いているものの、海外経済の先行きが不透明なうえ、電気料金の値上げなど企業を取り巻く経営環境は厳しい状況が続いているとして、賃金などの1%引き上げを「経済や企業の実態を無視したものだ」と批判しています。』(上記URLより)
えーっと、政府と日銀で連携して物価上昇率目標2%の数値を共有したばっかりなのですが、経団連様におかれましては国策にご協力する気が無いとでも仰せなのでしょうかというのは半分冗談ですがそれはともかくとして、まあ初期段階では物価が上昇するけど名目賃金は上昇しませんという現象は普通に起きる(というかそもそもマイルドインフレは名目がプラス推移した方が実質ベースの調整をするコストが軽いから望ましいのであるから物価がゼロからプラスになる際にはそうならないと変ですが)のでありまして、そうなった時にどうなるのよというのは衆目の一致する所であろうかと存じます。
いやね、小泉首相時代のように端から「痛みに耐えて頑張ろう」とか「米百俵」とかいう話をしているのでしたら実際に物価が上昇した時点でも「ここを暫く我慢すればトリクルダウンで皆さんハッピーになるんですよ」という話で行けるのかもしれませんが、小泉さんの改革やって結局トリクルダウンになりましたっけとか格差ガーとかいう話になってしまった訳で、その理屈で世論ガーの皆様が納得するのかどうかが怪しい上に、そもそも安倍ちゃんにおかれましてはその辺の覚悟があるような感じには思えず、何か早期に2%物価上昇を達成すると景気は良くなるわ失業は減るわ賃金は上昇するわ宝くじは当たるわ水虫は治るわでもうウハウハですよというようなバラ色の未来しか見ていないのではないかと思われる節がある訳ですな。
今はまあ真面目な話物価は上がらず資産価格と円高調整をしているだけ状態だから良いようなものの、本当に早期に2%物価上昇を目指そうというのであれば為替ルートを使わざるを得ず、それは国内消費者的には誰得物価上昇(得するのは外貨で稼げる人)という話になった際に「こんな筈じゃなかった」となった際のバックラッシュがオソロシス、というのはまああたくしも何度も申し上げていますが、日銀の説明でしらっとそういう話が出ているのがチャーミングというか親切というか誠実と言うかではあるのですが、何もそんな燃料投下せんでもという気もしないでもありませんですな。まあ独立組織(政策運営上の実態的に独立なのかというツッコミはさておいて)としての良心で警告しているという所ではあるんでしょうけど。
・ゼロ金利制約のもとで物価上昇率が高まるメカニズムとな
小見出しからして誠に苦しい説明になりそうですな、と思ってしまうのですが、実はこの話の後半になるといきなり麿節が炸裂するというのが(つーかまあこの文書そのものが麿節テイスト高いのですけど)チャーミングというかこの正直者というか燃料投下というかコミュニケーション政策上あまり上手く無いのではという所なのですけどねえ・・・・・・・・・・
『物価上昇率は、基本的に、以下の3つの要因によって決定されると考えられる。』
ほほう。
『(1)マクロ的な需給バランス:』
キタコレ。
『消費者物価の上昇率とマクロ的な需給バランスの間には、やや長い目でみれば、緩やかな正の相関関係が存在する(図表8)。すなわち、経済全体の需要が供給能力との対比で増加し、マクロ的な需給バランスが改善すれば、数四半期のラグをもって、消費者物価の上昇率は高まっていく。その意味で、物価上昇率を高めていくためには、先行して景気の改善が生じることが必要である。』
・・・・・・・・・ってそんな話でどうして「早期に目標達成」が出来るのかと小一時間。
『もちろん、例えば輸入物価が上昇する場合には、物価上昇率が先行して高まることもあり得るが、この場合、交易条件が悪化し家計や企業の実質所得は減少するため、景気の改善を伴わない物価上昇となる。』
まあ日銀としてそこまでヤケクソになる訳には逝かない、というのが良心なのでしょうが、ここで突如日銀が社畜根性を発揮して「まあ早期に達成しようとするとやはり輸入物価に働きかけるのが手っ取り早いですよね、ええ誰得なんですけれどもだって国民を代表した皆様がそれで良いって言ってるんですよ仕方ないじゃないですか後で泣いても知りませんよ」と来ない所がまあ日本も捨てたもんじゃないという所でもあり、日銀燃料投下してて大丈夫かと思う所でもあります。
つーかこういう説明を安倍ちゃんのお友達の方々が安倍ちゃんにうまく説明できれば良いのですが・・・・・・・
『(2)予想物価上昇率:予想物価上昇率は、賃金・価格設定行動を通じて、実際の物価上昇率に影響を及ぼす。企業や家計は、先行きの物価変動を考慮に入れて販売価格や賃金を決定しようとする。企業や家計の経済的意思決定は、短期的な物価予想よりも、中長期的な物価予想によって規定される面が大きいと考えられる。』
『(3)輸入物価:輸入消費財の価格の上昇や下落は、消費者物価に直接的な影響を及ぼすほか、石油ショックのような原材料の価格の変化は、コストの変化を通じて最終的に消費財の価格に影響する。』
ふむ。
『日本経済の緩やかな物価下落には、循環的な要因と構造的な要因の双方が作用していると考えられる(前掲図表8)。循環的な要因として、リーマン・ショックによる景気の落ち込みがきわめて大きかったため、マクロ的な需給バランスの回復がなお道半ばであることが挙げられる。リーマン・ショック後に一時−8%近くにも拡大したマクロ的な需給バランスは、最近では−2〜−3%程度に縮小しているものの、物価を押し上げていく力は、なお十分強まるには至っていない。』
まあこれは良いとしまして。
『日本経済の緩やかな物価下落には、こうした循環的な要因だけでなく構造的な要因、すなわち慢性的な需要不足も大きく影響している。』
まあそらそうなのですが、これを言い出すと政治将校から敗北思想と言われて人民裁判送りになると思う訳でございますな。んでもって構造要因の説明がクソ長いのがもう構造要因を強調したいというのは判るのですが、これを強調すると「日銀は金融政策無効論を唱えている」という話になってまあ政策の説明上宜しくないと思うのですけどねえ。
『日本経済は、1990年代半ば頃からマクロ的な需要不足基調で推移するもとで、消費者物価(除く生鮮食品)は、1990年代後半以降、2007〜2008年頃の一時期を除けば、緩やかな下落基調を続けている。この間、金融危機発生以前の米国では、安定的に3%前後の経済成長が実現するもとで、マクロ的な需給バランスは、循環的な変動を示しつつも、平均的にはゼロ近傍で推移してきた(図表9)。日本経済が、積極的な財政・金融政策を続けてきたにもかかわらず、マクロ的な需要不足基調から抜け出せない背景には、趨勢的な経済成長率の低下という構造的な要因が作用している。』
どう見ても麿節です本当にカムサハムニダ。
『すなわち、1990年代初頭のバブル崩壊の後、それによるバランスシート調整に時間を要した。加えて、同時期に、急速な少子高齢化やグローバル化など日本経済を取り巻く環境は大きく変化したが、これに対する労働・資本など生産要素の産業間・企業間の移動が円滑に進まず、経済構造の適応が遅れた。そのため、経済成長率が趨勢的に低下し、企業や家計の中長期的な成長期待も低下トレンドをたどった(図表10)。』
で、この程度で終わらない構造問題の説明が続くのです。
『成長期待の低下は、不採算の経済活動に代わる新たな事業や企業を生み出しにくい経済構造とも相まって、企業がコスト削減や価格競争で生き残りを図る状況を作り出してきた。こうしたもとで、わが国企業は、出来るだけ雇用確保を優先しつつ、主として賃金引き下げによってコスト削減を図った。その結果、わが国の失業率の上昇は、米国に比べて緩やかなものにとどまったものの、従来は下方硬直性が強いと考えられていた賃金には、1990年代末頃から慢性的な低下圧力がかかり続けるようになり、このことは、労働集約的なサービス部門を中心に緩やかな物価下落要因として作用した(図表11)。』
ここの部分をもっと強調して説明した方が良いと思うのですけどねえ。
『また、1990年代半ば頃からわが国企業の価格支配力が低下し、価格競争が激化してきたことは、例えば短観の販売価格DIと仕入価格DIの乖離にも表れている(図表12)。』
とまあこの辺が賃金の部分と価格政策の部分になりますが、この次に少子高齢化労働力人口減少キタコレになるのですがちょっとトーンが違うような気も・・・・・・・
『1990年代以降、少子高齢化に伴い生産年齢人口が減少するもとで人口一人当たり潜在成長率が大きく低下したことは、人々の成長期待の低下を通じて、中長期の予想物価上昇率に対する低下圧力として作用してきた。この点、海外主要国では、人口一人当たり潜在成長率と中長期の予想物価上昇率の間に相関は認められない(図表13)。』
ほえ?
『このことは、日本の緩やかな物価下落は少子高齢化が直接的な原因なのではなく、少子高齢化に対応した新たな経済構造へと転換するスピードの遅さや、ひとたび成長力が低下した際にそれが賃金の引き下げや価格競争に直結しやすいわが国の企業行動等によって、緩やかな物価下落が生じやすい状況が続いてきたことを示唆している。』
えーっと、まあ確かに構造部分の話をする中ではここにあるような結論の分析をしているのですけれども、この部分に関してはもっと日銀はアピールしないといけなくて、一般的には「日銀は少子高齢化や生産年齢人口の減少がデフレの原因だと主張している」という風に取られている(この前浜田先生のインタビューだかでもそういう風な認識の下で日銀批判をしている文脈がありました)のでありますぞなもしという所なので、「確かに少子高齢化も課題だけれども本当の問題は成長力強化のための経済構造改革であり少子高齢化はきっかけに過ぎない」というこの部分の主張をもっと全力で行わないと、「日銀は少子高齢化をデフレの原因として敗北思想に陥っている」という風な世間様の認識を改められないと思いますのでもうちょっとアピールの仕方や説明の仕方を考えるべきだと思いますぞな。具体的にどうすりゃ良いのかが今ぱっと思い浮かばないのがあたくしの頭の悪い所なのですがorz
『以上の認識を踏まえると、政策金利が実質的にゼロ金利の状態にあるもとで、日本経済がデフレから脱却するためには、金融面からの後押しに加え、成長力の強化を通じて、マクロ的な需給バランスを改善することが不可欠である。』
ですのでまあ細かく読めばまあそうですねとなるのですが、細かく読まないとこの部分とかも敗北思想にしかみえませんぞなもしという話になる訳でして。
てなかんじでまあ背景説明が延々と続いて肝心の波及経路ですけれども・・・・・・・・・
『こうした金融緩和政策の効果波及経路は、金融緩和によって企業や家計が十分な資金を低コストで調達できる緩和的な金融環境を作り出す第1段階と、企業や家計が緩和的な金融環境を実際に活用して資金を調達し、これが投資や支出の増加を通じて、マクロ的な需給バランスと物価の好転につながる第2段階に分けられる。』
ということで毎度の2段階論になりまして。
『現在、第1段階については、強力な金融緩和の効果がしっかりと発揮されており、金利面でも、資金調達の容易さの面でも、きわめて緩和した金融環境が実現している(図表14、15)。ちなみに、量という観点から、中央銀行の資金供給額の国際比較を行っても、銀行券と当座預金の合計金額であるマネタリーベース、より広義のマネーストックいずれの対名目GDP比をみても、日本は先進国で最大となっている(図表16)。』
『第2段階で、こうした緩和的な金融環境の活用が進んでいけば、金融緩和の効果は実体経済や物価にも大きく現れてくると考えられる。それだけに、幅広い主体による成長力強化への取り組みが進み、緩和的な金融環境がより広範に活用されるようになることが、デフレからの脱却の鍵を握っている。こうした観点から、日本銀行自身も、「成長基盤強化を支援するための資金供給」を拡充したほか、金融機関の希望に応じて無制限の資金供給を行う「貸出増加を支援するための資金供給」を昨年末に導入するなど、金融機関の一段と積極的な行動と企業や家計の前向きな資金需要の増加を促すよう、最大限の支援を行っている。』
という毎度の説明でありまして、この先が『5. 成長力強化の重要性』という事になるのですが、まあこれはこれで説明としてのロジックは判るのですけれども、非伝統的金融政策の遂行にあたって気合とハッタリというのも大事である、という観点から致しますと、こういう説明を延々とするのはまあ正論ではあるのですけれども気合とハッタリというインチキ成分に甚だしく欠ける話でありまして、自ら非伝統的金融政策の政策効果を減殺するようなリスクもある、つーかまあ世間様的な評価としては「日銀は自分の出している政策が効かないと宣伝している」という風に誤解する向きも相当量いると思われるという次第でして、まあ誤解と敢えて書いてみましたけれども、ちょっと悪意を持って解釈すると金融政策の限界論などっていうのはこのように前面に出すのではなくて、まず最初に「どうです凄いでしょう」という話を延々として最後の最後に「でも金融政策は万能薬じゃないんでそこんとこヨロシク」という風にしらっと説明する、というのが気合とハッタリとインチキには必要だと思います。
とか何とか今更もうこんがりと焼かれて店頭で吊るされている北京ダック状態の麿様に説教しても時既にお寿司でございますので如何ともし難い所ですが、こちらのペーパーも技術的な説明部分とか背景説明部分とかは見るべきものが沢山あるのですが、金融政策の効果云々の部分とかになると麿節全開モードとなっておりまして、麿は最後まで麿でおじゃると店頭で吊るされながらも仰せになっているというのだけは把握しましたが、もうちょっと麿節成分何とかならんかったのかねとは思いますがね・・・・・
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2013/01/28
○12月決定会合議事要旨から少々
この回は追加金融緩和の実施はあるわ付利金利撤廃の提案はあったわで論点が多かったような気がするのですが、何せ今月に更に大ネタを打ち込まれてしまったので簡単に(と言いつつ長い)。
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2012/g121220.pdf
・雇用所得環境やマインドの指摘とな
『W.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』から少々。
『わが国の景気について、委員は、輸出や鉱工業生産は減少し、設備投資などの内需にもその影響が及んできており、一段と弱含んでいるとの認識を共有した。足もとの景気について、何人かの委員は、10月展望レポートで示した想定よりも幾分弱めに推移していると述べた。』
ということですが、個人消費に関する部分ではこんな話を。
『個人消費について、何人かの委員は、全体として底堅さを維持しているとコメントした。雇用・所得環境について、何人かの委員は、厳しい状態が続いており、労働需給面においても、製造業を中心に求人や労働時間などで減少しているほか、冬季賞与も弱めとなる可能性が高いと述べた。このうちの一人の委員は、景気ウォッチャー調査の雇用関連D
I 指数が、現状・先行きともに悪化した状態が続いている点が懸念されるとコメントした。』
という話だったのですが、まだネタにしていませんが1月の金融経済月報では個人消費の部分をちょっと引き上げていたりしたのがほほうという所だったりするのはまた後ほど。
『景気の先行きについて、委員は、当面弱めに推移するとみられるが、国内需要が全体としてみれば底堅さを維持し、海外経済が減速した状態から次第に脱していくにつれて、緩やかな回復経路に復していくとの見方で一致した。』
ということですが。
『そのうえで、ある委員は、わが国経済は今春以降、景気後退局面に入っているとみられ、景気後退が年内に終わりミニ後退局面で済むか、あるいは後退局面がもう少し長引くかを注視していると述べた。回復局面に復していくタイミングについて、何人かの委員は、10
月展望レポートの想定よりも後ずれするリスクには注意する必要があるとコメントした。そのうちの一人の委員は、輸出や生産が明確に回復する時期は来年4
〜 6 月以降となる可能性が高いとの見方を示した。』
『先行きの輸出について、ある委員は、わが国からの輸出ウエイトが高い中国・米国に輸入拡大の動きがみられないほか、国内PMIの11
月輸出受注指数といった先行指数も弱めで推移しており、引き続き輸出は減少する可能性が高いと述べた。鉱工業生産の先行きについて、何人かの委員は、生産予測調査では12
月に大幅な増加が予想されているが、こうした予測には技術的な要因が寄与している可能性も高いことから、基調としては引き続き減少するとみられるとコメントした。』
『個人消費について、何人かの委員は、エコカー補助金終了に伴う乗用車購入の反動減の影響が減衰する中で、基調としては底堅く推移していくとみられるものの、雇用・所得環境の悪化が下押し圧力として作用する点には注意が必要であると述べた。』
ということでまあ景気に関してのアチャーな話が続くのでありました。まあこの回に関しては景気判断での追加金融緩和というロジックです罠。
・ということで話はワープして基金拡大の議論部分
『X.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』から。
『資産買入等の基金の運営について、多くの委員は、足もとの景気・物価情勢を踏まえると、日本経済が物価安定のもとでの持続的な成長経路に復していく軌道を踏みはずさないようにするためには、このタイミングで基金の増額を行うことが適当であるとの認識を示した。』
ということですな。
『増額幅について、多くの委員は、10 兆円程度と思い切った額にすることが適当と述べた。増額対象について、これらの委員は、イールドカーブ全体に働きかけていくため、短期国債と長期国債とするのが適当であるとの認識を示した。』
はあそうですか。
『増額のスケジュールについて、何人かの委員は、景気の下支えという観点からは、来年前半に積み上げるのが適当ではないかと指摘した。このうちの複数の委員は、為替相場へ働きかけるという観点から、短期金利の一段の低下を促し、内外金利差の縮小ないし反転を目指すといった目的意識を明確にすることが必要であると指摘したうえで、短期国債の買入れを大幅に増やすべきではないかとの見解を示した。一人の委員は、短期国債だけでなく、長期国債についても増額を来年前半に集中すれば、長めの金利低下を促すうえで効果的であると付け加えた。』
ということで、複数名の委員が「為替市場への働きかけ」というのを強調した基金拡大を行うべき、という話をしているのですが、麿会見でこの辺の話ってあまり強調されていなかったように思えますぞな。辛うじて為替市場への働きかけと言う意味で石田さんが付利撤廃の提案をしたという話があっただけで、実際に「実は政策委員会の中で為替市場への働きかけを相当重視している意見が増えてきている」というのが判ったのはこの決定会合の翌週に公表された11月の金融政策決定会合議事要旨でありまして、麿会見で麿節を披露されるのは兎も角として、こういう議論があったという話をもっと明確に示さないのは情報発信として如何なのもかと思われるのであります。
日銀の場合MPMの議事要旨が出るのが遅い(これは日銀法の建付けで「決定会合で承認する」という書き方になっているので、もし日銀法改正とかいうようになったらこの部分は是正して欲しいのですが)関係上、何の議論が行われたかという説明を総裁記者会見の時点である程度紹介するなり、ニュアンスを示すなりして頂きませんと市場の方も判らんがなという話になりますし、大体からしてミスコミュニケーションの発生する余地が残りますっつー話で、次の石田審議委員の提案に関する部分になります。
・意気込みはまあ判ったが提案内容とその背景認識がやはり無茶苦茶だった石田審議委員の付利撤廃提案
んでまあ基金増額の話は上記の先も少々あるのですがそこはスルーしまして付利撤廃提案部分。
『補完当座預金制度の適用利率について、一人の委員は、@超過準備への付利は、資産買入等の基金の買入れ対象である3年以下のタームの国債金利を、現行の付利金利の水準である0.1%以下に低下させない働きをしており、基金による国債買入れの緩和効果を減殺しているため付利を撤廃すべきとの見解を示したうえで、A付利の撤廃は、退避通貨としての円の魅力を減じておくうえでも望ましいと述べた。』
えーっと、実際は買入をドカドカ行えば金利下がりますし、2番目の理由は言いたい事は判るがそれを行う時のデメリットは???
『また、この委員は、付利を撤廃したとしても、現行の金融市場調節方針のもとで市場機能は維持されるとの考えを述べ、付利を撤廃する際には、資産買入等の基金や貸出支援基金にかかる貸付利率の見直しを行うことが適当であるとの見解を併せて示した。』
>付利を撤廃したとしても、現行の金融市場調節方針のもとで市場機能は維持される
>付利を撤廃したとしても、現行の金融市場調節方針のもとで市場機能は維持される
>付利を撤廃したとしても、現行の金融市場調節方針のもとで市場機能は維持される
・・・・・・・・・・・・・・・・????????????????????????????
んでもって貸付利率の見直しは良いのですが、後で出てきますがその金利が何故か0.03%でして、それはどこからどう見ても基金固定金利オペに加えて成長基盤オペなどの各種成長支援貸出が全部応札ゼロになってしまってまあ固定金利オペはどうでも良いですけれども、各種の成長支援制度に関しては日銀の重点施策という位置づけになっている筈でして何なんでしょうかという所なのですが。
『これに対して、大方の委員は、現状においては、超過準備への付利を維持することが適当との考えを示した。この点に関連して、何人かの委員は、@金利がゼロとなると、短期資金市場の流動性が著しく低下し、市場参加者が必要な時に市場から資金調達できるという安心感を損なう惧れがあること、A金融機関収益へ悪影響を与えること、B「資産買入等の基金」の円滑な積み上げを困難にし、基金運営の不確実性を増加させる可能性があること、C為替相場への影響も一時的にとどまるとみられること、などから、結果として、金融面から経済に働きかける力がかえって低下する可能性があると述べた。』
まあそうですな。
『一人の委員は、付利の撤廃に伴うベネフィットとコストについては引き続き検討していくことが重要であるが、付利の撤廃は現在の金融緩和の枠組みの変更を招来する可能性が高いことから、時期尚早と判断していると述べた。』
というか今の枠組みを変えないと付利の撤廃は出来ませんがな。
『別の一人の委員は、付利の撤廃は本来技術的な議論であって、まず、政策金利、即ち誘導目標金利を下げるべきかどうかを議論することが必要であると述べた。』
これまた仰る通りで。何かこの部分だけヘッドラインになっていてくやしいのうくやしいのうというベンダーもいましたが、恐らく金先が買われているのはこれとは別でTIBORがここの所低下しているのが原因だと思われます。
つーかね、これだけケチョンケチョンにされているという状況がもっと早くに示されていたら市場の値動き(短期の実弾投資においては最終兵器「コール金利対比逆鞘じゃなかったら取りあえず間違って金利低下した時のヘッジをしておく」という動きがある上に、短期物で大きく食らうのは「何かあった時に何の備えもしていなかった」という時なので、短期以外の市場の人から見ると「誰も信じていないのに市場は織り込んでいるかのような動きをする」という現象が起きる事もあるのです)にすっかり釣られて直前になって付利下げの予想をして決定会合後にすっかりだんまりになられた何とかストの方々続出という実に香ばしい光景がここまで見られずに済んだかもしれませんね!!!!
採決の部分から石田さんの提案を引用しておきます。
『2.「『共通担保資金供給オペレーション基本要領』等の特則に関する件」等の一部改正に関する件
石田委員からは、金融緩和効果の一段の浸透を図る観点から、補完当座預金制度における適用利率をゼロ%とするとともに、固定金利オペ、被災地金融機関支援オペ、成長基盤強化支援資金供給および貸出増加支援資金供給における貸付利率を年0.03%とする議案が提出され、採決に付された。採決の結果、反対多数で否決された。』
石田さん以外全員反対ですが、0.03%じゃあ上記各種オペがワークしないんですから賛成する方がちょっとアレとしか申し上げようが無く、残り全員反対したのはまあ当然ですな。
・インフレ目標云々の所から少々
まあどちらでも良いのですが引用。
『こうした議論の過程で、多くの委員は、このところ、物価上昇率を巡る議論が高まっていることなどを踏まえると、次回金融政策決定会合において、金融政策運営に当たり目指す中長期的な物価の安定について検討を行うことが適当との認識を示した。』
ニヤニヤ。
『多くの委員は、今年2月に導入した「中長期的な物価安定の目途」は原則としてほぼ1年ごとに点検していくこととしており、中間評価を行う次回会合でその点検を行うのが自然であるとコメントした。』
自然ですかそうですか。
『ある委員は、日本銀行のデフレ脱却に向けた姿勢に関する海外市場参加者の明らかな誤解を解消するためには、長期的には主要国の多くと共通の物価上昇率を目指していくことをより明確化するのが望ましいのではないかと述べた。』
『別のある委員は、今回の議論について、日本銀行と政府が中長期的な国民経済の健全な発展という目標を共有したうえで、今後前向きなコミュニケーションを通じて、金融政策運営に関する日本銀行の考え方を更に深く理解してもらうことが重要であり、それが日本銀行と政府の間での望ましい政策協調を議論していくうえで欠かせない前提になるとの考えを示した。』
ほほう。
『何人かの委員は、物価の安定を実現するうえでは、政府による成長力強化の取り組みや財政規律の確保など、政府の果たす役割も重要であると述べた。』
『こうした点検を行うに当たって、委員からは、考慮すべき論点として、@日銀法第2条にある「物価の安定」とは何か、A物価安定の数値的表現をどうするか、B政策の柔軟性をどう確保するか、C目指すべき物価上昇率を実現していくための金融政策手段についてどう考えるのか、D独立性や政府との関係についてどのように考えればよいか、といった様々な論点が挙げられた。』
『こうした議論に関連して、複数の委員は、「当面、消費者物価の前年比上昇率1%を目指して、それが見通せるようになるまで、実質的なゼロ金利政策と金融資産の買入れ等の措置により、強力に金融緩和を推進していく」というコミットメントの文言の変更により、物価の安定の実現に向けてより効果的に市場の予想に働きかけることができるのではないかと述べた。このうちの一人の委員は、実質的なゼロ金利政策と金融資産の買入れ等の措置を通じた強力な金融緩和について、消費者物価の前年比上昇率1%を達成するまでオープン・エンドとすることを対外公表文に明記することで、日本銀行の政策スタンスをより明確化できるのではないかと述べた。』
展望レポートの時にも出ていた議論を更にグレードアップですな。
『こうした議論について、ある委員は、現在の表現はインフレーション・フォーキャスト・ターゲティング・アプローチに沿った表現であると指摘したうえで、コミットメントの実現に向けた姿勢をより分かりやすく情報発信していくことを検討する必要があると付け加えた。』
ふーん。
『複数の委員は、物価の安定は経済や国民生活の基盤であり、経済の持続的な成長を伴ったバランスのとれたかたちで実現していく必要があると指摘したうえで、物価安定の数値的表現のあり方や金融政策運営上必要な柔軟性の確保などには、十分な検討が必要と述べた。こうした議論を受けて、議長は、必要な論点を整理し、次回の会合で報告するよう、執行部に指示した。』
はあそうですかという所ですが、まあ一応引用だけしておきましたです、はい。
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2013/01/24
○1つの正論であり丁寧な説明ではあるのだがこれは諸刃の剣にも程がある資料が投下されますた
総裁会見のテキストを鑑賞したり月報を鑑賞したりしてたらこんなネタが投下されやがりました。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/rel130123a.htm/
「物価の安定」についての考え方に関する付属資料(注)
(注) 本文書は、1月21、22日開催の政策委員会・金融政策決定会合で決定された「金融政策運営の枠組みのもとでの「物価安定の目標」について」に関連して、「物価の安定」についての考え方の背景を説明する付属資料である。
つーことで
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/data/rel130123a1.pdf(本文)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/data/rel130123a2.pdf(図表、1M少々あるので注意)
んでまあ本文から引用しますが。
『1.「物価の安定」とは何か』というのが最初に来るんですけどね。
『「物価の安定」は経済や国民生活の基盤である。日本銀行は、日本銀行法に定められているとおり、「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資すること」を理念として、金融政策を運営している。』
確かに日本銀行法では「目的」と「理念」がこう書いてありますな。
『(目的)
第一条 日本銀行は、我が国の中央銀行として、銀行券を発行するとともに、通貨及び金融の調節を行うことを目的とする。
2 日本銀行は、前項に規定するもののほか、銀行その他の金融機関の間で行われる資金決済の円滑の確保を図り、もって信用秩序の維持に資することを目的とする。
(通貨及び金融の調節の理念)
第二条 日本銀行は、通貨及び金融の調節を行うに当たっては、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念とする。』(以上日本銀行法より)
なのでまあ仰せの通りなのですが、これはまた「何で日銀法で物価の安定が「目的」になっていないのでしょうかやはり日銀法改正」という話になりそうな燃料投下でこの正直者としか(苦笑)。
『この理念に照らして、「物価の安定」を概念的に定義すると、「家計や企業等の様々な経済主体が、財・サービス全般の物価水準の変動に煩わされることなく、消費や投資などの経済活動にかかる意思決定を行うことができる状況」である。そうした円滑な経済的意思決定を可能とし、経済の持続的な成長と整合的な「物価の安定」は、特定の物価上昇率を短期的・一時的に実現することではなく、やや長い目でみて持続可能なものでなければならない。』
つまりコストプッシュなどで無理くり物価を上げても誰得でしょというのはまあこれはこれで正論ではあるのですが、デフレ均衡状態にある現状においては、コストプッシュでも何でも良いから、一旦物価の上昇を起こして「マインドセット」の変化を促す事も毒薬っぽいですけれども行うという考えはどうなんでしょうかね。いやまあ普通に考えて日本に強く根付くインフレフォビアから政治的に無理無理無理という事なのでしょうが・・・・・・
まあここまでは理念的な話だから良いのですがこの次がどう見ても燃料投下です本当にカムサハムニダ。
『この点、日本銀行が四半期毎に実施している「生活意識に関するアンケート調査」によると、8割程度の国民は、性別、年齢、職業を問わず、一貫して物価上昇は望ましくないと回答しており、国民は単に物価が上がるという状態を望んでいる訳ではない(図表1)。』
どう見ても燃料投下です本当にありがとうございました。
『この調査結果は、国民が望んでいる「物価の安定」とは、雇用の増加と賃金の上昇、企業収益の増加などを伴いながら経済がバランスよく持続的に改善し、その結果として物価の緩やかな上昇が実現する状態であることを示唆している。』
そらまあそうなのですが、インフレ目標掲げて選挙に勝った、と言ってもまあ投票する方どころか報道機関でもインフレ目標のもたらす物についての想像は欠如していただろうなあというのは先ほどの東京新聞の報道っぷりなどをみると推測するに難くは無いのですけれども、そうは言いましても安倍ちゃん的にはインフレ目標などが国民の支持を受けたという事になっている訳で、わざわざこんな燃料を投下する必要がどこにあるのかと小一時間問い詰めたい。大々的に公表するんじゃなくて「個別ご説明」での話ならまだ判るのだが、これって「政府VS日銀」というフレームアップをしたがるメディアに絶好の燃料投下じゃねえかと思うのだが。
というのもあるのですが、「国民が望んでいるから」みたいな書き方というのは別の意味で諸刃の剣な面があって、じゃあ何のために金融政策を独立した専門機関が遂行しているんだという逆ねじくらわされたらどう答えるのか聞いてみたい訳ですよ。国民が望んでいるからこの政策をやりますとかいう形で短期的な視野狭窄状態での政策を行わないようにする為におまいらは独立した専門機関として機能しているのではないかと小一時間。
そらまあ民主国家ですからして、中央銀行と言えども国民の声から無関係という訳にも行かないというのはその通りなのですが、こういう時だけ「国民の声」を都合よく持ち出してくるのは却って自分の首を絞める事になり兼ねないのであまり持ち出さない方が良いと思うのですけどねえ。
つーかさ、既に先程ネタにしたように、早速インフレフォビア顕在化の兆候が出ている訳でして、別に日銀がこんな所でアピールしなくても勝手に「世論ガー」「庶民生活ガー」状態になってくると思うのですけどねえ。(でまあそれによって1%になるかならないかのうちに結局「世論ガー」に押される格好で今度は金融緩和終了圧力が掛かる、というのが日本経済にとって最悪のシナリオであると思います)
とまあ悪態を並べましたが、2番目以降の小見出しを並べますと・・・・・・
『2.「物価の安定」の数値的表現』:こちらは物価指数のどの辺をどう見るかという話(という部分はまあヲチャーは既に知っていないといけない話ですぞな)から始まり締めは何で目途を目標にしたのかという話です。
『3.わが国の消費者物価変動のミクロ的な特徴点』:短いけどこれまた興味深い
『4.ゼロ金利制約のもとで物価上昇率が高まるメカニズム』:ああだこうだと説明しているのですが、結局の所結論は本文7ページ(PDFだと8枚目)にありますように、
『以上の認識を踏まえると、政策金利が実質的にゼロ金利の状態にあるもとで、日本経済がデフレから脱却するためには、金融面からの後押しに加え、成長力の強化を通じて、マクロ的な需給バランスを改善することが不可欠である。』
ということで、成長力の強化を通じてマクロ的な需給バランスを改善するのが不可欠なのは判ったが、その手段が日銀に無い以上、2%物価目標というのは何なんですかというツッコミが飛ぶような話の展開は避けておりますな、まあそうなるのは立場的にそうだろうなとは思いますけど。
でまあ最後の小見出しが、
『5. 成長力強化の重要性』という結論になるのですが、まあ日銀の今回のロジックからすると「政府と日銀の政策協力によって成長力の強化をすると言う事になっているのだから、その政府による成長力強化への施策も込みで物価上昇率2%を目標にしてるんですよ」という話になっているという所ではございます。
なお、今申し上げました日銀的ロジック(ってまあアタクシが想像しているだけですけれどもまあ普通に関連文学を読むとそうなるでしょう)につきましては岩本康志先生が既に指摘しておりまして、本来のインフレ目標じゃないんじゃないかと厳しい指摘をしておりますのでご参考までに。
http://blogs.yahoo.co.jp/iwamotoseminar/37854954.html
「2%物価目標のために政府がまず責任を果たす」と政府と日銀が共同声明
2013/1/22(火) 午後 11:03
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2013/01/23
お題「決定会合レビュー:関係各位全員の入れたい事を入れて煮込み料理にしてみましたと言う事ですか」
や、やばい!!モーサテ見たら「2014年からの買入だからダメ」(これは昨日の夕方から市場反応の後付講釈でベンダーにも出ていた説明なのでロジックは知っていたが)とか「時間軸が短い」(モーサテに出てきているコメンテーターの解説)とかオモシロ解説が展開されておりまして、もう全力で悪態付き解説をしてみたいのだがそれを始めるとどう見ても肝心のレビューが終わらないので我慢我慢。
そういえばこんなのありましたが。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE90K05920130121
独連銀総裁「日銀の独立性危険に」、通貨安競争に警告
2013年 01月 22日 07:57 JST
『[フランクフルト 21日 ロイター] 欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーのバイトマン独連銀総裁は21日、中銀の役割を拡大し大胆な緩和政策を迫ることは、各国の競争的な通貨切り下げを招くリスクがあると警告した。』(上記URLより)
ということですが、今までユーロ安で散々ウハウハ生活をエンジョイしているお前らのその口が言うかという所ですし、大体からして誰のせいでこっちは円高で苦労させられてんだという話でありまして、お前はザワークラウトと一緒にズッペにぶち込むぞとゆー所ではございますな。
という話は兎も角として今回の決定会合結果なんですけど、ヘッドラインを読んでも何が何やらわからず、声明文を一読しても?が頭の中を駆け巡り、二読すると??となり三読すると????となるという大変に素敵な結果となりまして、もうどこからどう突っ込んで良いのやらサパーリワカランチ会長という実に素敵な内容でありまして正直一晩経っても?????が頭を飛び交っているという状況でありまする。
○最初にあたくしなりの纏め感想を
今回の決定会合なのですが、まあ色々と考えてみたのですが、「とりあえず関係各位の言いたい事を全部織り込んだらこのようなわけのわからない結果になりました」というのが結論でありまして、何か変わったのかというと何だか良く判らないという結果。
実はまあ先日来プレビュー雑談でああだこうだと申し上げていたのは、今回は政府サイド、というか安倍ちゃんサイドがこれだけ気合を入れているのですから、日銀もこの際政府の土俵に乗る代わりにその代償として「政府と日銀の役割分担」「政府と日銀の責任分担」というのを明確にしたものを新たに打ち出して、それに伴い日銀も追加で新たなステージの緩和を打ち出す、ということで、「日銀の金融緩和(特に国債買入)が財政ファイナンスとされないような担保を確りと確保」した上で「銀行券ルールの一時的棚上げによって長期国債の買入拡大(つまり基金オペでは無く輪番の拡大)」を実施する、というような「政府と日銀の間のより踏み込んだ連携と、より踏み込んだ金融緩和政策の実施」という「新たな次元のチェンジ」というのを期待していたのですよ正直言って。
しかしながら、何か出てきたものはと申しますと、従来の延長線上の中に政府サイド、しかも安倍ちゃんだけでは無くてどさくさに紛れて財務省まで言いたい事を盛り込み、一方で日銀はと言うと安倍ちゃんの言いたい事は盛り込んだけど日銀の従来の主張は盛り込んだままというようなブツを出してきたというのが正直申し上げてナンジャソラという感じであります。結局「お互いの主張を確認し合いました」という感じで、まあそれはそれで共有認識になるというのは結構な事ではあるのですが、お互いの主張をぶつけてそれをアウフヘーベンしていくみたいな話にはならんかったんですけど、まーそこまで「握れる」状態になっていなかったという事かも知れませんな安倍ちゃんと麿の間は。
まあ冷静に考え直してみれば残り任期3か月の麿総裁様の所で派手なチェンジは出来ないからお互いに従来の主張を確認し合って後の事は次期執行部でやってくんなまし麿の方は最後まで麿でおじゃるよとかそーゆー話になるのはシャーナイナイですし、そもそも法的に制約力の無い文書で何かの担保を取れるとか思うのが玄宗皇帝なのでありましたとか反省をしているのですが、何か事前の盛り上がりっぷりについ不肖このあたくしも釣られてしまって色々と「新しい何か」に期待してしまったのは不徳の致す所であります。
とは言いましても、今回は前回の前原ペーパーという「紙」から「共同声明」方式にステップアップしましたとか、まあその紙の内容に関しても若干は進んでいるとか、そういう意味では一から十まで従来の延長線上という訳でも無く、そもそも話が従来からワープしてみたりとか色々と香ばしい物もあるのですが、はてさてこれどこから料理して良いのやらという所でございますが、声明文の順番通りに料理しながら関連事項に関していくつか愚考を述べてみたいと思います。
あ、そうそう、先に申し上げておきますが、市場のプライスアクションにすっかり後付で釣られた格好で「付利下げや撤廃」思いっきりあるべし予想を急に持ち出してきた債券何とかスト各位におかれましてはちょっとおまいら何で急にその予想になったのかの理由を説明してみろやとか思うのでございまして、内容によっては市場後追い主義者として顕彰させて頂きたく存じます。んでもって「付利の引き下げや撤廃が無いと市場が失望」みたいなこと言ってた奴ちょっと出てこいとか思いますけどにゃ。
ということで今回出た文書は以下の通り。
別紙含めて9ページもある声明文
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/k130122a.pdf
「物価安定の目標」と「期限を定めない資産買入れ方式」の導入について
その英語版
http://www.boj.or.jp/en/announcements/release_2013/k130122a.pdf
Introduction of the "Price Stability Target" and the "Open-Ended Asset Purchasing Method"
金融政策運営の枠組みのもとでの「物価安定の目標」について
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/k130122b.pdf
英語版
http://www.boj.or.jp/en/announcements/release_2013/k130122b.pdf
The "Price Stability Target" under the Framework for the Conduct of Monetary Policy
政府と日銀の「共同声明」
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/k130122c.pdf
デフレ脱却と持続的な経済成長の実現のための政府・日本銀行の政策連携について(共同声明)
英語版
http://www.boj.or.jp/en/announcements/release_2013/k130122c.pdf
Joint Statement of the Government and the Bank of Japan on Overcoming Deflation and Achieving Sustainable Economic Growth
実際はあと1つオペ実施要綱の改定がありますがこれは純粋に基金オペがオープンエンド方式になる事に対応してオペの実施方法についての規定を手直ししたものになりますのでまあこちらの詳説は割愛します。
まずは声明文の冒頭から。
『1.日本銀行は、本日の政策委員会・金融政策決定会合において、金融緩和を思い切って前進させることとし、@「物価安定の目標」を導入すること、A資産買入等の基金について「期限を定めない資産買入れ方式」を導入することを決定した。また、政府とともに共同声明を公表することとした。』(声明文より、機種依存文字は原文ママ)
・・・・・・ということで
○物価安定の目標の導入に反対が2票キタコレですが
まずは物価安定の目標ですが。
『(1)「物価安定の目標」の導入(注1)』(声明文より、以下暫く声明文からの引用)
でまあこの(注1)で反対票があった話がありますがそれは後ほど。
『日本銀行は、物価安定についての考え方に関する議論を行い、「物価安定の目標」を導入することとした。あわせて、別紙1のとおり、「金融政策運営の枠組みのもとでの『物価安定の目標』について」を公表することとした。』
別紙1というのとさっきつけたURL先の文書の中身は同じです。
『すなわち、日本銀行は、今後、日本経済の競争力と成長力の強化に向けた幅広い主体の取り組みの進展に伴い、持続可能な物価の安定と整合的な物価上昇率が高まっていくと認識している。この認識に立って、日本銀行は、物価安定の目標を消費者物価の前年比上昇率で2%とする。』
何だこりゃ。
『日本銀行は、上記の物価安定の目標のもと、金融緩和を推進し、これをできるだけ早期に実現することを目指す。その際、日本銀行は、金融政策の効果波及には相応の時間を要することを踏まえ、金融面での不均衡の蓄積を含めたリスク要因を点検し、経済の持続的な成長を確保する観点から、問題が生じていないかどうかを確認していく。』
まあ極めて有体に言ってしまえば「安倍さんがいうから2%にした」というのは衆目の認めるところではあろうかと存じますが、物価安定の目標に関する文書に移りますとこれがまた素敵な悪文文学が鑑賞できまして誠にアレでございます。
URL再掲します。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/k130122b.pdf
『金融政策運営の枠組みのもとでの「物価安定の目標」について』
『1.日本銀行は、「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資すること」を理念として、金融政策を運営している。日本銀行は、本日の政策委員会・金融政策決定会合において、昨年2月に導入した「中長期的な物価安定の目途」を上記理念に照らして点検した。その結果、「物価安定の目標」を新たに導入するとともに、金融政策運営の枠組みを改めて示すこととした。』(以下暫く上記物価安定の目標から)
というのはさっきの声明文と同じマクラ。
『2.「物価の安定」を概念的に定義すると、「家計や企業等の様々な経済主体が物価水準の変動に煩わされることなく、消費や投資などの経済活動にかかる意思決定を行うことができる状況」である。そうした「物価の安定」は、持続可能なものでなければならない。』
これは従来通りの話。
『3.今回新たに導入した「物価安定の目標」は、日本銀行として、持続可能な物価の安定と整合的と判断する物価上昇率を示したものである。』
と、まあここまでは従来の物価安定の考え方、目途と同じ事を言っているのですが、ここで話がワープします。
『日本銀行は、今後、日本経済の競争力と成長力の強化に向けた幅広い主体の取り組みの進展に伴い、持続可能な物価の安定と整合的な物価上昇率が高まっていくと認識している。この認識に立って、日本銀行は、「物価安定の目標」を中心的な物価指標である消費者物価の前年比上昇率で2%とすることとした。』
声明文とここまで同じ構成なのでさっき悪態を入れても良かったのですが、書き物の構成上ここで悪態を申し上げますが、「取り組みの進展に伴い持続可能な物価の安定と整合的な物価上昇率が高まっていくと認識している」って実際に進展した結果として高まった訳でも無いのにいきなり今回「高まっていく」とか何でそうなるねんという話です罠。
いやね、もしそういう認識があるのでしたら展望レポートの中間レビューで見通しが大きく上方修正されているとかそういう物に認識が示されると思うのですけれども、実際の展望レポート中間レビューにおきましては、2013年度の見通しについては今回の補正などの効果を見て上方修正しているものの、よりロンガーランとなる2014年度の見通しは10月見通し対比以下のようになっております。中心的見通しのレンジと中央値の10月見通し⇒1月見通しになります。
実質GDP
+0.2〜+0.7<+0.6>⇒+0.6〜+1.0<+0.8>
国内企業物価指数
+3.7〜+4.4<+4.2>⇒+3.8〜+4.5<+4.1>
消費者物価指数(除く生鮮食品)消費税率引き上げの影響を除くケース
+0.4〜+1.0<+0.8>⇒+0.5〜+1.0<+0.9>
・・・・・・・・ということで、2014年度の見通しに関して特段大きな変化が生じている訳でも無い、という現状認識の下で何で「持続可能な物価の安定と整合的な物価上昇率」を引き上げる事が出来るのかと小一時間問い詰めたい訳ですが、この次の「何で変えたのか」という説明部分が実にアレです。
『4.従来は「中長期的な物価安定の目途」として、「消費者物価の前年比上昇率で2%以下のプラスの領域、当面は1%を目途」としていた。今回、「目途」から「目標」という表現に代えたうえで、その目標を消費者物価の前年比上昇率で2%としたのは、以下の認識に基づく。』
さあ悪文鑑賞会ですよ!!
『日本銀行は、今後、日本経済の競争力と成長力の強化に向けた幅広い主体の取り組みの進展に伴い、持続可能な物価の安定と整合的な物価上昇率が高まっていくと認識している。』
それはさっき聞いた。
『現在の予想物価上昇率は長期にわたって形成されてきたものであり、今後、成長力の強化が進展していけば、現実の物価上昇率が徐々に高まり、そのもとで家計や企業の予想物価上昇率も上昇していくと考えられる。』
>今後、成長力の強化が進展していけば
>今後、成長力の強化が進展していけば
>今後、成長力の強化が進展していけば
願望ですかそうですか。
『先行き、物価が緩やかに上昇していくことが見込まれる中にあって、2%という目標を明確にすることは、持続可能な物価上昇率を安定させるうえで、適当と考えられる。』
とりあえず威勢の良いことを言ってインフレ期待を引き上げよう、という理屈になっているように読めますけれども願望ベースの物をぶち上げて何時まで経っても行かないと信認ってどうなるんでしょうかねえとかまあそういう観点で反対が出たんでしょうなあという事ですが、次の目途⇒目標の説明が日本語で書いてある文章なのに100回読んでも何が何やらワカランチ会長。
『「目途」から「目標」という言葉に変更したのは、わが国において、柔軟な金融政策運営の重要性に対する理解が浸透してきている状況を踏まえたものである。』
理解が浸透してるならどっちでも良いような気もするのですが何なんでしょうかね。
『金融政策の効果は、経済活動に波及し、それがさらに物価に波及するまでに、長期かつ可変のタイムラグが存在する。金融政策は、物価安定のもとでの持続的成長を実現する観点から、経済・物価の現状と見通しに加え、金融面での不均衡を含めた様々なリスクも点検しながら、柔軟に運営していく必要がある。』
ここで日銀の従来からの主張(別にこれそのものがおかしいという訳では無く当然の話だけど)が登場して、フレキシブルターゲットという金融政策運営上外す事のできない論点を含めています。
『こうした考え方は、各国で広く共有されており、とくに、世界的な金融危機以降、海外主要国では、金融システムの安定へ配慮することの重要性を対外的に明確にするなど、金融政策運営の柔軟性という視点が強く意識されるようになってきている。わが国でも、この1年間で、こうした考え方に対する理解が着実に拡がってきている。』
いやー当初安倍さんが吠えていた「インフレ目標」導入の説明って「目標を超えたら引き締めればよい」とかどう見てもリジットなインフレ目標だったような気がするんですが。と考えますとこれは安倍さんを筆頭にするワカランチンの皆様のご理解が着実に広がってきていると読み替えるとまあ判りやすいのかもしれませんな。
『こうした状況を前提とすると、「目標」と表現することが、日本銀行の考え方を伝えるうえで、わかりやすく適当であると判断した。』
まあ有体に言ってしまえば衆目の一致するように「安倍ちゃんがやかましいですから安倍ちゃんこだわりの"2%"の物価"目標"というワーディングを入れました」という事になるのでしょうが、その一方でこちらの文面にもありますように「フレキシブルターゲット」というのは入れているので、その辺で言えば実質的には「只でなくさえ遠い目標値が更に遠くなった」というのが変化ですが、フレキシブルターゲットという部分は同じですよという話です罠。
悪文悪文申し上げておりますが、そらまあ今回に関してはどう見ても大人の事情です本当にありがとうございましたという事ですから、その大人の事情が大人の事情であればあるほど文章構成が悪文化するのは否めないという所でございまして、よくもまあこれだけの文章を捻りだしたわと感心する所でもありますけどね。
いちおう綺麗に言ってみますと「目標」とするのは気合を見せる為ですが、従来は「目標」と言うと金融政策運営の中で「フレキシブルターゲット」というのが伝わりにくかったので使うのは控えておりました、というのがここの部分の理屈にはなっておりますということなので、まあ悪文なりに後半の方は説明にはなっているのですが、前半の2%については明らかに説明に無理があるわと思うのでございました。
まあ大人の事情なのですからそれを斟酌すべきという考え方も勿論あるのですが、そもそも今回の共同文書云々とかの流れって政策委員会の外側で執行部が政府と話をしてきてアウトラインを進めておりますぞなもしという時点で話に預かっていない審議委員の皆さんから筋論で反対する人がいてもおかしくは無いわという所でしょう。
『(注1) 賛成7反対2(賛成:白川委員、山口委員、西村委員、宮尾委員、森本委員、白井委員、石田委員、反対:佐藤委員、木内委員)。佐藤委員と木内委員は、物価安定の目標を消費者物価の前年比上昇率で2%とすることに反対した。』(声明文より)
その結果、2%へのワープによって従来ハト派審議委員という扱いだった佐藤さんと木内さんという証券エコノミスト出身のお二方が反対に回った訳ですが、これはこの2名がタカ転換した訳では無く、政策委員会の中心の軸が急にワープしたからこうなった、ということでありまして、まさに「金融政策変更の「中原三原則」の面目躍如という事ですが、ちなみにその話は2005年5月18日に時事メインのコラム「金融観測」の中で紹介されていた話でございますので、それをネタにさせていただきまして2005年5月20日に書いたあたくしの駄文から引用して再掲させていただきましょう。
(以下2005年5月20日に書いたあたくしの駄文から、ちなみにこのころの話題は当座預金残高目標の「なお書き修正」です。何のことか判らん人は年寄りに聞くなりあたくしの過去の駄文なりを読んでちょ)
『一昨日の時事通信社「時事メイン」のコラム「金融観測」に「政策変更『中原三原則』の教訓=日銀欠陥は健在?」という記事がございまして、中原伸之元審議委員の披露した「三原則」を敷衍しつつ昨今の政策論議の混迷を辛口批評していた(ちなみに配信時刻は18日の18時24分)。
この「中原三原則」というのが非常に面白かったのでご紹介させていただきます。詳しくは当該記事をご覧下さい(^^)。
日銀の政策変更に関する三原則(By中原伸之元審議委員)
日銀は
(1)突然に
(2)それまでの議論と180度逆の方向に
(3)十分な説明も無しに
政策を決定する。
まさに至言といえましょう。で、同コラムによりますと、中原伸之さんはこの三原則これに量的緩和政策に関連した「プラスワン」というのを指摘されておりまして、できないできないと言ってきた政策を上記三原則に基づいて導入して、「やった後で『効果がない』という原則もある」ということだそうです。』(以上当時の駄文より)
・・・・・・・・・まあやっちまったものは取り消せないのですから、今回の「ワープ」に関しましては後からそれを打ち消すような事をしないで、本当に物価が持続的に上昇するパスへ向けて努力するという姿勢を継続して頂きまして、金融政策運営にあたっても「物価目標の達成に向けて」というのをより前面に出して頂きたいとまあ斯様に思う所でございます。
反対理由に関しては総裁会見でもコメントあったようですが、考えられる理由は2つあって、一つはこの「中原3原則」に通じますが「従来の目途の数値を引き上げるに足る理由になっていない」ということであり、もう一つは「そもそも達成のツールもなく、達成に向けたグラウンドデザインも無い中で出来もしない目標を出すのは金融政策じゃねえ」という事でしょうか、議事要旨見れば判るでしょうが。
つーかさ、昨日も申し上げましたが、そもそも昨年の2月に物価安定の目途を導入した時に「物価安定の目途達成に向けた金融政策」という見せ方をしながら追加緩和を実施したのに、その後あっさりもとに戻って通常の景気判断に伴う金融政策運営になってしまったから今回のテイタラクになったんじゃネーノという風に思う訳でありまして、まあ麿様におかれましては残り短いですが「やった後で『効果が無い』という原則」だけは止めて頂きたいものだと切に願うものであります。
で、「目標」に戻りまして・・・・・・
『5.デフレからの早期脱却と物価安定のもとでの持続的な経済成長の実現には、幅広い主体による成長力強化の取り組みも重要である。日本銀行としては、成長力強化の進展状況および家計や企業の予想物価上昇率の状況について、今後とも丹念に点検していく。この間、政府も、日本経済の競争力と成長力の強化に向けた取り組みを強力に推進するとともに、持続可能な財政構造を確立するための取り組みを着実に推進すると表明している。』(以下物価安定の目標からの引用に戻ります)
表明している、というのは共同文書の事ではありますが、この辺は大体従来の目途での説明と同じですかな。
『6.金融政策は、「物価安定の目標」のもとで、今後とも、次の2つの「柱」により経済・物価情勢を点検したうえで、運営する。』
ということで、結局数値が上がったものの運営する柱とかその辺は同じと言う事です。
『 第1の柱では、先行き2年程度の経済・物価情勢について、最も蓋然性が高いと判断される見通しが、物価安定のもとでの持続的な成長の経路をたどっているかという観点から点検する。
第2の柱では、より長期的な視点を踏まえつつ、物価安定のもとでの持続的な経済成長を実現するとの観点から、金融政策運営に当たって重視すべき様々なリスクを点検する。とくに、発生の確率は必ずしも大きくないものの、発生した場合には経済・物価に大きな影響を与える可能性があるリスク要因として、金融面の不均衡について点検する。
以上2つの「柱」に基づく点検を踏まえたうえで、当面の金融政策運営の考え方を整理し、展望レポート(経済・物価情勢の展望)等を通じて、定期的に公表していく。』
・・・・・・・・・・ということで物価安定の目標に関する文章はここまでなのですが、この「目標」を見てあれれとあたくしが思ったのは「2%という数字は出たのだが他の定義は何処にあるの????」という事であります。
つまりですね、従来の物価安定の目途では
『4. 「中長期的な物価安定の目途」の背後にある「物価の安定」についての基本的な考え方については、以下のとおり、これまでと同様であることを確認した。』(2012年2月14日公表の『「中長期的な物価安定の目途」について』から)
『「中長期的な物価安定の理解」とは:金融政策運営に当たり、各政策委員が、中長期的にみて物価が安定していると理解する物価上昇率(06
年3 月導入)』(2009年12月18日公表の『「中長期的な物価安定の理解」の明確化』から)
などのように説明がありまして、ついでに言えば2006年3月10日公表の『「物価の安定」についての考え方』という文書で細々と書いてあるのですけれども(あまりにも長いので引用するの大変ですからhttp://www.boj.or.jp/announcements/release_2006/mpo0603a.htm/を見てちょ)、今回は「2%」という数値は書いてあるものの、それが実現ベースの数値なのか、見通しベースの数値なのか、それも見通しが足元の数値なのか中長期的な数値なのか、中長期的だとすればタームはどの程度なのか、という辺りについての定義がネグられているように見えますな。
いやまあ従来の「物価安定の目途」の書き換えだからそれは従来通りですよ、という話なのでしょうけれども、「中長期的な〜」とかいうのを今回外しているのは何となく安倍ちゃん向け配慮のようなものを感じるのはあたくしだけですかそうですか。
まあこの文言もツッコミだすと止まらないので次に参ります。
○オープンエンドキタコレ
長期国債2兆円大当たりと自画自賛させて頂きます(^^)。
声明文より。
『(2)「期限を定めない資産買入れ方式」の導入(注2)』(声明文より、以下同様)
導入だけは全員一致。
『日本銀行は、上記の物価安定の目標の実現を目指し、実質的なゼロ金利政策と金融資産の買入れ等の措置を、それぞれ必要と判断される時点まで継続することを通じて、強力に金融緩和を推進する(注3)(注4)。その際、資産買入等の基金の運営について、現行方式での買入れが完了した後、2014
年初から、期限を定めず毎月一定額の金融資産を買入れる方式を導入し、当分の間、毎月、長期国債2兆円程度を含む13
兆円程度の金融資産の買入れを行う(資産買入れ額の内訳は別紙2のとおり)。これにより、基金の残高は2014
年中に10 兆円程度増加し、それ以降残高は維持されると見込まれる。』
こちらには反対ありですな。
でまあ別紙2ですけれども。
『(別紙2)
2014 年初以降の「資産買入等の基金」の月間買入額
総額: 13 兆円程度
うち長期国債: 2兆円程度
国庫短期証券: 10 兆円程度
(注1)長期国債と国庫短期証券については、最近の買入れの平均残存期間を前提とすると、上記の月間買入額により、基金の残高は2014
年中に10 兆円程度増加し、それ以降残高は維持されると見込まれる。
(注2)長期国債と国庫短期証券以外の金融資産については、残高を維持するように買入れを行う。
(注3)固定金利方式・共通担保資金供給オペレーションは、25 兆円程度の残高となるように実施する。
(注4)日本銀行は、資産買入等の基金とは別に、年間21.6 兆円の長期国債の買入れを行っている。』
ということで、注1から順に解説しますと・・・・・・・・
毎月の買入額の12倍が年間の買入額になるのは当たり前ですが、その購入している銘柄が例えば全部2年カレント物だと買入の残高は長期的に見ると2×12×2=48兆円になりますとかまあそういう計算になりますよね。
で、長期国債が全部2年、短期国債が全部3か月のカレントだと置きますと(一番流動性があって応札玉が豊富な物なのでこの置きは自然)長国の買入が48兆円、短国の買入が30兆円という残高になりますわな(短国は10×12×0.25)という事です。
んでもって今の基金買入残高目標が2013年末で長期国債が44兆円、短期国債が24.5兆円になっていますので、あたくしの置きで計算すると長期的に見れば基金残高は2013年末から比較して長期4兆、短期5.5兆円拡大することになるので、まあ10兆円増えるというのは(こちらは実際の買入実績を見ているのでより綺麗な置きでしょう)違和感ないですな。
しかしまあワロタのはさっき冒頭で紹介した「2014年からのオープンエンド開始だと積極的では無い」とかいう話で、いやあの基金の残高拡大ペースって2013年の方が思いっきり多いのですけれども何でそういう評価になりますねんという所で、とりあえず足し算はできるけど引き算が出来ない人が世の中に大杉勝男だというのが良く判ったわという所でございまする。
んでもってこれなんですけど、どう見ても短国市場にしわ寄せが来ておりまして、基金残高9.5兆円に持って行くだけで短国レートが0.09%台に沈んだというのにそれから20兆残高増えるという事になったら付利金利維持したままでも短国レートゲロ下がりする可能性はあるなあとか思います、というか恐怖の玉不足状態になるのは勘弁と言う感じなんですけど、まあ来年の事は来年になって悩むことにしましょう(違)。
んでもって固定金利オペ維持というのがしらっと入っているのですがこれは付利金利を下げないフラグということですね判ります(^^)という所なのですが、まあ次の総裁になった時に〜という思惑はど〜せ続くでしょうとは思うのでありまする。
でね、オープンエンドにするのは良いのですが、償還再投資についてもひっくるめての数値となっているので、実際に買入が始まった場合に購入する債券の平均残存が幾らになるかによって基金残高が増えたり減ったりするという形になりまして、極端な言い方をすれば長期国債の方で全部1年物が入れば基金の長期国債残高は24兆円になっちゃいますし、全部3年物が入れば72兆円になる訳で、2013年末の目標額44兆円対比で上振れるのか下振れるのかは実は蓋を開けてみないとワカランチ会長になるというのがまあアレな所。
だから今回の声明文には「金融緩和の強化について」と書けなかった(オープンエンド方式によって基金の残高が将来的に増えるのか減るのかが足元で決め打ちできないから)のですが、まあその辺りちゃんとしてるわなと変な所で感心するのがドラめもんクオリティですが、ちなみに会見では「追加緩和」と言っていたようですね。そらまあ時間軸伸びる(普通に考えるとそうだが以下いちゃもん有り)んですから当たり前ですが。
『(注3)佐藤委員と木内委員は、2%の物価安定の目標を目指し、実質的なゼロ金利政策と金融資産の買入れ等の措置を、それぞれ必要と判断される時点まで継続することに反対した。』
『(注4)宮尾委員より、別途、実質的なゼロ金利政策について、消費者物価の前年比上昇率2%が見通せるようになるまで継続するとの議案が提出され、反対多数で否決された(賛成:宮尾委員、反対:白川委員、山口委員、西村委員、森本委員、白井委員、石田委員、佐藤委員、木内委員)。』
ということで、佐藤さんと木内さんは2%物価目標に反対しているのですからそうなるのかなと思います(または宮尾さんと同じようにタイムコミットメントの所で引っかかっているのかもです)し、宮尾さんの提案はこれはこれで判ります。
つまり、今回はどさくさに紛れて「それぞれ必要と判断される時点まで継続する」という風にしらっとタイムコミットメントが思いっ切りコミットメントから裁量判断に格下げされておりまして、まあ2%に行く前に「物価だけ上昇して庶民の生活ガー」とかいう話が出てきた時に堂々の緩和縮小とかできる布石が散りばめられているとかナンジャソラという感じで、まあ元々の2%目標に無理があるという認識有ればこそなんだろうなあこの文言とか味わいの深い物を感じるのでありました。まあ普通に考えたら時間軸は伸びるのですが、アリエールなのは緩和している間に世間の風向きが変わって「デフレ脱却したものの2%も物価が上がったら困るぞな」の大合唱になった際という所です。まあ目先は時間軸が更に伸びるという認識で良いと思います。
まだまだ書きたい事はあるのですが時間と量がアレの為最後に共同文書について簡単に。
○共同文書:どさくさに紛れて「財政再建」が入るとか財務省恐るべし
URL再掲。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/k130122c.pdf
デフレ脱却と持続的な経済成長の実現のための政府・日本銀行の政策連携について(共同声明)
平成25年1月22日
内閣府
財務省
日本銀行
『デフレ脱却と持続的な経済成長の実現のため、政府・日本銀行は別紙のとおり政策連携を強化し、これを共同して公表するものとする。』(以下共同声明より)
ということで、前回の前原ペーパーとの違いですけれども、一番の違いはここでして、「組織として」の内閣府、財務省、日銀が「声明」として出したという事で、文書としての格付けは引き上げになっている筈です。前回は前原、城島の各大臣と白川総裁の署名だったので、組織が出しているのか組織のトップの個人が出しているのかワケワカランチ会長だったので、同じ「紙」でも重みは確かに引き上げになっているのですが、「画期的」とまでいう話なのかはよーわからん。
まあ外交プロトコルに例えるのか適切なのかどうかは判らないですけれども、組織として紙に落としたというのはたぶん法的な強制力は1ミリもないでしょうけれども、文書としてはだいぶ重くなっているとは思います。
『デフレ脱却と持続的な経済成長の実現のための政府・日本銀行の政策連携について(共同声明)』
『1.デフレからの早期脱却と物価安定の下での持続的な経済成長の実現に向け、以下のとおり、政府及び日本銀行の政策連携を強化し、一体となって取り組む。』
はあそうですか。
『2.日本銀行は、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することを理念として金融政策を運営するとともに、金融システムの安定確保を図る責務を負っている。その際、物価は短期的には様々な要因から影響を受けることを踏まえ、持続可能な物価の安定の実現を目指している。』
『日本銀行は、今後、日本経済の競争力と成長力の強化に向けた幅広い主体の取組の進展に伴い持続可能な物価の安定と整合的な物価上昇率が高まっていくと認識している。この認識に立って、日本銀行は、物価安定の目標を消費者物価の前年比上昇率で2%とする。』
『日本銀行は、上記の物価安定の目標の下、金融緩和を推進し、これをできるだけ早期に実現することを目指す。その際、日本銀行は、金融政策の効果波及には相応の時間を要することを踏まえ、金融面での不均衡の蓄積を含めたリスク要因を点検し、経済の持続的な成長を確保する観点から、問題が生じていないかどうかを確認していく。』
前原ペーパーとの対照比較とかしたいですが時間と量の関係上スルーしますが、今回前原ペーペーから進展しているのは2%の数値は兎も角として「これをできるだけ早期に実現することを目指す」というのが入っていること。その一方であの展望レポートの予測数値は何なんでしょとか思いますけれども、まあこの文言を入れたのが日銀に対して突きつけられた追加要求。
『3.政府は、我が国経済の再生のため、機動的なマクロ経済政策運営に努めるとともに、日本経済再生本部の下、革新的研究開発への集中投入、イノベーション基盤の強化、大胆な規制・制度改革、税制の活用など思い切った政策を総動員し、経済構造の変革を図るなど、日本経済の競争力と成長力の強化に向けた取組を具体化し、これを強力に推進する。』
まあ組織が変わっていたり、やる事の説明がやや変わっていたり、更に中身が具体的になったりはしておりますなという所。
『また、政府は、日本銀行との連携強化にあたり、財政運営に対する信認を確保する観点から、持続可能な財政構造を確立するための取組を着実に推進する。』
>持続可能な財政構造を確立するための取組を着実に推進する
>持続可能な財政構造を確立するための取組を着実に推進する
>持続可能な財政構造を確立するための取組を着実に推進する
ということで、今回政府サイドで入った目玉商品はこれでして、まあ骨太の方針を策定する際にはこの辺りを踏まえた話をしますぞなってのが今から予告ホームランされたということですねわかります。
『4.経済財政諮問会議は、金融政策を含むマクロ経済政策運営の状況、その下での物価安定の目標に照らした物価の現状と今後の見通し、雇用情勢を含む経済・財政状況、経済構造改革の取組状況などについて、定期的に検証を行うものとする。』
ということで、定期的な点検について経済財政諮問会議で行う、と具体的に定めたのも今回の違いということですな。
まあ何ですな、これに関しては今後の運用次第という面がありますが、何となくアレだなと思うのはベンダーヘッドラインベースだからあまりあてにならないのですが、麿は麿で「金融政策だけではなく他の思い切った努力が必要」という話をして、安倍ちゃんは安倍ちゃんで「2%の目標は日銀の責任」と言ってたというようなヘッドラインが流れていて先行きどうなるのやらと極めてアレなものを感じるには感じますな。
○時間が無いので続きは明日ですがまあ金融政策に関しては次期執行部に委ねるということでしょう
この辺りはまあ会見読んだり更に文書の読み込みをしてみたいと思いますが、とりあえず見た感じの印象ですと、今回は関係各位が思いっきり自分たちの主張をごった煮にして、日銀もまあ大人の配慮はしたものの現実の金融政策運営における裁量部分は確保しているというような感じですなあと言った所ですか、良く判りませんが。
ただまあ今回の(だいたい)追加緩和に関しては先の話はしたものの手前の話はしていない、という事でありますし、固定金利オペ維持とか思いっきり従来の包括緩和の方式自体は継続という風になっておりまして、現象としての足元のオペレーション自体には変化が起きるものでは無いという事でして、「2%目標に無制限緩和と共同文書入れまして、あとは次の執行部と相談して下さい」というような麿の声が聞こえて来るのはあたくしの幻聴ですかそうですか(^^)。
ということで、まあ実弾は殆ど打たずに今回は見せ方で勝負したという形で、先々に関しては次期執行部になってから改めて仕切り直しだなあとか思ったのでした。(その間に急速に株安になったり円高になったりしたら話は別ですが)
あと、今日の2か月TB入札と明日の3か月TB入札が付利下げ目先無しがほぼ確定でどういうレートになるのかについてでもワクテカしておきたいとゆーのを付け加えまして以下続きは明日、というか一晩考えても中々頭が整理しきれんぞなもしという所ではございましたとさ。
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2013/01/16
○さくらレポート関連
さくらレポートキタコレ。
http://www.boj.or.jp/research/brp/rer/rer130115.htm/(概要)
http://www.boj.or.jp/research/brp/rer/data/rer130115.pdf(全文、PDFで58ページあります)
前回の概要はこちら
http://www.boj.or.jp/research/brp/rer/rer121022.htm/
・また8地域で判断引き下げですかそうですか
昨年7月公表のさくらレポートで9地域全部が上方修正、前回10月公表のさくらレポートでは8地域が下方修正というお洒落な結果でしたが、今回は・・・・・・
『各地の景気情勢を前回(12年10月)と比較すると、8地域(東北、北陸、関東甲信越、東海、近畿、中国、四国、九州・沖縄)から判断を引き下げる報告があった。各地域からの報告をみると、海外経済の減速した状態が続いていることなどを背景に、多くの地域が「弱含みとなっている」、「弱めの動きとなっている」などとしているほか、東北、九州・沖縄でも、「回復の動きが一服している」、「全体として横ばい圏内の動きを続けている」としている。この間、北海道からは、「持ち直しの動きが続いているものの、一部に弱めの動きがみられている」と、前回からの変化はないとの報告があった。』(今回の概要より)
ということでいやーあっはっはとゆー所で。でまあ今回の需要項目別の判断ですけれども、前回は生産と消費の下げが目立ったのですが、まあ今回もそんな感じで特に生産の所が下がっているという感じです。
同様に今回の概要から。
『生産は、海外経済の減速した状態が続いていることなどを背景に、8地域(北海道、東北、関東甲信越、東海、近畿、中国、四国、九州・沖縄)から、「減少している」等の報告があったほか、北陸からも、「全体としては高操業を維持しているものの、海外経済減速の影響が広がりつつある」との報告があった。
業種別の主な動きをみると、輸送機械は、6地域(北海道、関東甲信越、東海、中国、四国、九州・沖縄)から、「減少している」、「操業度が一段と低下している」等の報告があったほか、一般機械、鉄鋼でも、多くの地域から、「減少している」等の報告があった。電子部品・デバイスは、スマートフォン向けが好調に推移する一方、家電向けやパソコン向けが低調なことから、多くの地域から、「全体では弱めの動きとなっている」等の報告があった。この間、化学については、複数の地域から、医薬品を中心に「高水準の生産を維持している」等の報告があった一方、「アジア向けを中心とした外需の低迷から、操業度を引き下げる動きがみられている」等の報告もみられるなど、区々の動きとなっている。』
あとほほうと思ったのは所得の所で・・・・・
『雇用・所得動向は、多くの地域から、厳しい状況が続く中で、「労働需給の改善の動きが一服している」等の報告があった。』(今回の概要より)
ということで改善一服でアチャーという所ですな。
『雇用情勢については、多くの地域から、「改善の動きが一服している」、「これまでの改善傾向が足踏み状態となっている」等の報告があった。雇用者所得は、3地域(北海道、関東甲信越、中国)から、「弱めの動きが続いている」等の報告があったほか、北陸からは、「持ち直しの動きが一服している」との報告があった。この間、4地域(東海、近畿、四国、九州・沖縄)からは、「横ばい圏内の動きとなっている」、「概ね前年並みとなっている」等の報告があった。』(今回の概要より)
とまあそんな感じで現状判断引き下げという結果になりまして、まあこれはどう見ても追加緩和実施フラグですかそうですかという所になるのですが、展望レポートの中間見直しで足元の景気の弱さについて言及して物価安定の目途の見直しをするのにも合わせて追加緩和で更にサポート、とまあ日銀的ロジックではそういう話になるのでしょう。
普通に考えてここでの現状判断引き下げはそーゆー事で追加緩和フラグではあるのですが、あたくし的に申し上げますと今回の追加緩和実施にあたっては景気判断での追加緩和というロジックを前面に出すよりは、より「物価目標達成の為に」という論点を前面に出すべきであって、そうしないと「従来の延長線上」という見方をされてしまい、折角の追加緩和というタマ撃ちも「So
What?」で片付けられてしまうという極めて残念な事になり兼ねませんので、そこは注意した方が良いのではないかと思うのですよ。
つまりですね、昨年2月の「物価安定の目途」の導入とセットでやった緩和がその後の麿の麿節によって結局「従来の延長線上」と見られるようになってしまい、2%という数字も入っているし、やっている施策も大概に「大胆な緩和」なのにそういう風に見られない、という盛大な無駄打ち状態とまで言うと麿には酷かも知れんけど、まー結果として今起きてる現象から逆算すればそういう事ですよね、という話になる訳で、今回がある意味最後のチャンスだと思いますので、今回はあまりそういう従来の延長線上的な見せ方をして欲しくないと思うのでありますが麿先生如何でしょうか????
#何か金融決定会合プレビューネタがあちこちの所でばらばらに書いているという感じなので今週中にはまとめておきたいですな^^;
・話は戻って地域の視点のお題も雇用所得状況
でまあ話は戻りまして雇用所得状況の所が改善一服でアチャーなのですが、今回の『II.
地域の視点』のお題も『各地域における最近の雇用・賃金の動向』となっております。
『最近の雇用・賃金の動向をみると、全体として厳しい状況が続いており、労働需給面におけるこれまでの改善の動きも頭打ちとなっている。地域別にみると、産業構造や外需・内需の動向がもたらす影響の違いなどを反映して、ばらつきがみられている。』(今回の概要より)
ということで以下続きますが俺様備忘録なので引用。
『雇用についてみると、製造業では、外需関連のウェイトの高い業種を中心に弱めの動きとなっている。すなわち、海外経済の減速などによる輸出の減少やエコカー補助金の終了などを背景に生産が減少する中で、非正規社員の雇止めが実施されている。加えて、電気機械などで国内生産体制を見直す動きがみられ、希望退職による正規社員削減の動きも生じている。一方、復興・住宅関連、食料品などの内需関連業種の雇用スタンスは堅調となっている。』
輸出企業中心にアレとな。
『非製造業では、製造業の生産減少の影響を受けている業種も一部にあるが、全体としては堅調な雇用スタンスを維持している。すなわち、建設業や介護事業では復興・住宅関連や介護市場拡大による需要増、小売業・飲食業などでは新規出店により、いずれも採用意欲は強い。こうした業種では、求人を出しても、求職者サイドにおいて、例えば、製造部門から営業や接客などに職種を変えることや業種特有の勤務形態に従うことへの敬遠などもあって、十分な求職者が集まらないといったミスマッチが指摘されている。また、実際に職に就いても、思っていたより就労環境が厳しいとして離職してしまう者も多いとの声も聞かれている。』
一方で非製造業は何気に堅調なのですが、まあこちらでもミスマッチの話をしてますけど、そらまあそういう事になりますがなという所で、やはり職業訓練(でどうにかなる話なのかはよく判らんのだが)などのような政府の施策も必要とかそういう話になるんでしょうかね。
『賃金については、製造業を中心に減産などにより所定外給与が減少しているほか、最近の業績悪化や前年度の厳しい業績を背景に冬季賞与を減らす企業が多くみられる。なお、建設業、飲食業、小売業などの一部では、人員確保を狙って賃金をやや引き上げる動きもみられている。』
こちらも二極化ですが短観とかでも観測される話。でまあ雇用環境に関する正規非正規の比較の話と、労働人口の減少に向けた高齢者や女性の労働力活用という話があるのですがその辺の引用は割愛致しまして結論を。
『各地域では、行政、民間、大学が連携しながら、雇用確保・拡大に向けて、成長期待分野の産業育成、企業誘致、ミスマッチの縮小、若年層の就業促進などに取り組んでおり、今後もこうした雇用促進のための一層の取り組みが期待される。』
ということで、雇用責任ガーとか言っている人たち向けに「いやいやいや雇用責任を日銀だけにおっ被せられされても困りますがな」と言いたいのは判るのですが、残念ながらその声が届きそうもないので折角だから引用してみましたぞな(^^)。
なお、個別事案などに関しては本文の8ページ目(PDFファイルの10ページ目になります)以降に色々と書いてあってこれもまた興味深いのですが引用しているとキリが無いので本文読んでちょという事で(^^)。
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2013/01/04
○年末後回しネタ放出である:11月日銀金融政策決定会合議事要旨ネタ
経済見通しの部分がどうのこうのというのをスルーしておりましたので年越しネタです。
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2012/g121120.pdf
経済に関する部分は『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』になりますが、前半が海外経済に関する話でして、いつもはそっちを主に見るのですけれども今回は後半を見るのが吉なのでありました。本文の8ページ(ファイルだと10ページ目です)から。
『以上の海外の金融経済情勢を踏まえて、わが国の経済情勢に関する議論が行われた。』
ということで・・・・・・・・・
・現状認識の基調判断の一部下方修正を示唆するお話
『わが国の景気について、委員は、弱含みとなっているとの認識を共有した。足もとの景気の弱さについて、多くの委員は、@海外経済減速の影響、A最近における日中関係の影響、Bエコカー補助金終了の影響、などを挙げた。輸出や鉱工業生産について、委員は、海外経済の減速した状態が続いていることなどから、減少しているとの見方で一致した。設備投資について、委員は、緩やかな増加基調にあるものの、海外経済減速の影響などから、製造業に弱めの動きがみられているとの認識で一致した。』(機種依存文字は原文ママです)
でもってですな、
『7〜9月のGDP統計ベース(1次速報値)の実質設備投資が大きく減少したことに関連して、多くの委員は、企業マインドが悪化してきており、設備投資の基調に変化が生じているかどうか注意深くみていく必要があると述べた。』
>設備投資の基調に変化が生じているかどうか注意深くみていく必要がある
ふむふむ。
『一方で、これらの委員は、@非製造業を中心に建築着工床面積は引き続き増加していること、A機械受注の非製造業(除く船舶・電力)は10〜12
月の見通しを含め堅調さを維持していること、B 景気動向に左右されにくい防災・エネルギー関連投資は堅調に推移していること、C設備投資はリーマン・ショックによる大きな落ち込みから復元が進んだとはいえ水準としてはなお低く、維持更新投資の先送りには自ずと限界があると考えられること、などに言及し、来月公表予定の法人企業統計やGDP統計の2次速報値、12
月短観の設備投資計画等のデータをみたうえで基調判断する必要があると述べた。』
ということで、12月の追加金融緩和は別に安倍さんにプレッシャー掛けられたからという理由だけで実施した訳では無く、設備投資の基調判断に対する変化がどうのこうのという面もありますぞなもしという話でもあったりするという事ですねわかります。
個人消費と雇用環境に関してはこんな感じ。
『個人消費について、委員は、底堅さを維持しているが、足もとでは、乗用車購入において需要刺激策の一部終了に伴う反動減がみられているとの見方で一致した。消費者コンフィデンス関連指標について、複数の委員は、緩やかな改善傾向を続けてきたが、このところ改善の動きが一服しているとコメントした。雇用・所得環境について、多くの委員は、厳しい状態が続いており、労働需給面においても、製造業を中心に求人や労働時間などで、これまでの改善の動きが一服しているとの見解を示した。』
でその後にまた先ほどの7−9GDP1次速報のインプリケーションの話になりまして、
『以上の景気の展開について、多くの委員は、輸出・鉱工業生産の減少を起点として、企業収益の悪化と稼働率の低下、製造業を中心とした設備投資の先送り、さらには雇用者所得の下押しといった経路で、内需面にも悪影響が及び始めており、このことは、大幅なマイナス成長となった7〜9月の実質GDP(1次速報値)にも表れているとコメントした。』
『複数の委員は、わが国経済は今春以降、景気後退局面に入っている可能性が高く、今後のポイントは景気後退の深さと長さに移っているとの見解を示したうえで、そうした観点から設備投資の動向に注目していると述べた。この間、委員は、公共投資は震災復興関連を中心に増加を続けており、住宅投資も被災住宅の再建もあって持ち直し傾向にあるとの見方を共有した。』
ということで、最後の公共投資に関する部分以外はこらまた弱い話ですなあという所です。
・先行き見通しがこれまた弱め
『景気の先行きについて、委員は、当面弱めに推移するとみられるが、国内需要が全体としてみれば底堅さを維持し、海外経済が減速した状態から次第に脱していくにつれて、緩やかな回復経路に復していくとの見方で一致した。』
とまあここら辺だけ見ると目先の下方修正という話ですねと思うのですけれども・・・・・
『委員は、展望レポートで記述した基本的な見通しは維持されるとしたうえで、当面については、その後得られたミクロ情報等も踏まえると、輸出や鉱工業生産は減少を続ける公算が高く、景気全体も横ばい圏内というよりは、弱めに推移するとみておくのが適当との見方で一致した。この点に関連して、多くの委員は、日中関係の影響などを指摘した。』
>その後得られたミクロ情報等も踏まえると
>その後得られたミクロ情報等も踏まえると
>その後得られたミクロ情報等も踏まえると
ほほうという感じですが、つまり11月会合時点で日銀はミクロ情報(本支店によるヒアリングなども含めて)を総合してこりゃアカンという認識を持っていたという話だと思われるのですが、どうも11月会合は会見に関する報道が妙にフレームアップされてしまった事も影響してかこの辺りの厳しい認識というニュアンスが伝わっていなかったと思います。
つーか昨年(つーか先週^^)来申し上げておりますように、この議事要旨が12月決定会合前に公表されていたらその直前まで必ずしも追加金融緩和という雰囲気(というか事前報道^^)も無かった所に追加緩和実施だったので如何にも安倍さんの押し込み的なイメージを受けて報道もまあそんな感じのトーンが多かったという残念な事態になったのを避けられたのではないかと思うので、この点については日銀法改正するなら盛り込んでくれという所ですな。
#そういや話が飛びますがどこぞの無能な働き者が昨年「安倍政権へのプレゼント」とかドヤ顔で日銀法改正案と公職選挙法改正案を出していたと思いますが、どうせ実務上のフィージビリティーとか碌に作り込んでいないんでしょうなあとか思う次第ですが悪態を書き忘れたぞなもし
#ちなみに昔からの読者様におかれましてはご案内だと思いますがあたしゃ某無能な働き者さんについては金融市場的に絶賛大好評だった頃から無能な働き者であるという評価でボロカスに申しておりますので念の為
話を戻してまあ一部の委員の意見という事ですがこんなのも。
『一人の委員は、経済が回復に向かうメカニズムとして、輸出の回復が重要であるが、現在の局面は過去の同様の局面と異なり、海外経済の回復力は脆弱であるうえ、内外金利差の拡大による為替レートの減価も期待し難いことから、はっきりした回復を見込みづらいとコメントした。』
『経済が回復に向かう時期について、複数の委員は、海外経済が減速局面を脱するタイミング次第ではあるが、来年半ば頃をイメージしていると述べた。別の一人の委員は、輸出や生産の減少局面は来年4〜6月までに脱するとしても、景気回復のタイミングは来年後半までずれ込む可能性もあるとの見方を示した。』
ということで景気回復に向かう時期についても来年半ばごろとか来年後半とか誠に景気の悪い話で。
・物価について
『物価面について、委員は、国内企業物価の3か月前比は、既往の国際商品市況の動きを反映して、下げ止まっており、先行きは、当面、横ばい圏内で推移するとの認識を共有した。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比について、委員は、概ねゼロ%となっており、先行きも、当面、ゼロ%近傍で推移するとの見方で一致した。』
というのは声明文や月報に示された通り。
『何人かの委員は、製造業における稼働水準の低下や、大手スーパーにおける低価格戦略の強まりなどが、物価動向に及ぼす影響に注意する必要があると述べた。一人の委員は、物価の先行きを考えるうえでは、労働市場の需給バランスが重要であるが、賃金の動きなどからみて、先行きについては、慎重な見方を採らざるを得ないと付け加えた。』
こちらもキタコレという感じですな。
・先行きリスクに関しては海外減速の長期化とインフレ予想の下方リスクを懸念
『景気・物価の先行きを巡るリスクについて、委員は、欧州債務問題の今後の展開や米国経済の回復力、新興国・資源国経済の持続的成長経路への円滑な移行の可能性、日中関係の影響の広がりなど、日本経済を巡る不確実性は引き続き大きいほか、金融・為替市場動向の景気・物価への影響にも、引き続き注意が必要であるとの見解で一致した。』
でまあフィスカルクリフの話がああだこうだありますがこれは普通の話なので引用割愛しまして、
『委員は、海外経済の減速が一段と長引く場合、輸出や鉱工業生産の持ち直しが遅れ、ひいては内需への悪影響が強まる懸念があるとの認識で一致した。』
ナムナム。
『ある委員は、電子部品関連ではこのところ持ち直しの兆しもみられるが、世界的に製造業部門の減速が長期化し設備投資の抑制スタンスも続く場合、わが国産業の中で高いウエイトを占める資本財・部品関連において、輸出と生産の減少が続く可能性があることに懸念を示した。多くの委員は、先行き、海外経済が減速局面から脱したとしても、日中関係の影響が残る可能性や、わが国輸出企業の価格・非価格両面での対外競争力が低下している可能性などから、輸出や鉱工業生産の持ち直しに直結しないリスクにも留意する必要があると指摘した。』
ナムナム。
『物価の先行きについて、何人かの委員は、エコノミストや市場参加者の中長期的な予想物価上昇率がこのところ緩やかに低下していると指摘したうえで、こうした動きが家計や企業の予想物価上昇率にも波及し、実際の賃金・物価の下振れにつながらないかどうか、十分な注意が必要であると述べた。』
まあ物価に関しては大勢見解ではありませんが、こんな指摘もあるのねという所です。
・ついでにおまけですが前原さんのコメントですなこれ
『W.政府からの出席者の発言』ですが前原さんが出席している会合になってから発言の書かれている順序が『内閣府の出席者から、以下の趣旨の発言があった。』が先になっているんですよね(^^)。
『円高基調の是正とデフレ脱却は、日本経済のきわめて重要な課題であるが、金融緩和だけで全てを解決できる訳ではなく、経済の体質改善を進めていく必要がある。また、日本銀行の独立性は尊重されるべきである。政府・日本銀行は、10
月30 日、「デフレ脱却に向けた取組について」を発表した。政府および日本銀行が、一体となって、デフレからの早期脱却に向けて、最大限の取り組みを行うことを初めて共同で表明したことは、きわめて重要である。政府と日本銀行は、円高基調の是正に向け協力していく必要がある。』
「金融緩和だけで全てを解決できる訳ではなく」とか「日本銀行の独立性は尊重されるべきである」とか妙に物判りがいいな前原さんという感じではございますが、この時は既に衆議院解散となった後で安倍さんが思いっ切り張り切って経済ブレーン様から吹き込まれたと思しきアレな話を絶賛展開中でございましたので、その辺は意識しているのでしょうが、この辺の論点はそもそもお前が話を大きくしたんじゃねえのかと思いますと首を突っ込んだ物を悉くややこしい事態にするという貫録の前原クオリティについての自己認識に欠ける方ですなあとか思うのでありました。
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2012/12/28
お題「昨日の続きの積りで書いたら昨日の追補版になってしましましたぞなもし」
モーサテ今年の締めは吉崎さんとな(^^)。
うむ。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20121228/k10014490381000.html
NY市場 1ドル86円台に 12月28日 0時27分
『27日のニューヨーク外国為替市場は、安倍内閣が発足し、日銀が一段の金融緩和に踏み切るのではないかという見方から、円を売ってドルを買う動きが強まり、円相場はおよそ2年4か月ぶりに1ドル=86円台をつけました。』(上記URLより)
これね、何でこういう時に日銀の名前が受動的になっているのかと思うのですけれども・・・・・って何でもへったくれもなくていわゆるコメントする人たちとそれを受けて報道する人たちのレベルを反映しているだけではあるのですが、昨日ああだこうだ書きましたように、11月の日銀金融政策決定会合議事要旨に示されているように「11月の時点から日銀は円安を促して物価を上昇させようという姿勢が強まっている」という事が明確になった(だから議事要旨の出たタイミングで為替が84円台から85円台に上昇した)訳でして、未だに「安倍さんの圧力ガー」とか言っている方は以下悪態。
ということで、大ネタが最後に出た上に今週は月曜が休みだったので金曜日気分ですらない年末週末でございます(あたくしだけですかそうですか^^)ので今日も平壌運転のこのあたくしで昨日の続きで11月決定会合議事要旨ネタです。
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2012/g121120.pdf
そして実はマニア向け(ではありませんので念の為^^)にはこのようなものも出ているのでして・・・・・・・
http://www.boj.or.jp/en/mopo/mpmsche_minu/minu_2012/g121120.pdf
○しつこく昨日と同じ部分を今度は英文議事要旨を踏まえながら再確認してみる
ということで昨日は『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』の部分を引用してああだこうだ書きましたが、「為替市場への働きかけ」云々の部分を改めて英文版で読みますとこれが更に味わいがあります。ちなみにその部分は『III.
Summary of Discussions on Monetary Policy for the Immediate Future』です(以下議事要旨の引用部分ですが、基本的に日本文は日本語版、英文は英語版からの引用となります)。
『Some members raised the point that it might be necessary for the Bank
to improve its policy measures further to enhance the influence of monetary
policy on foreign exchange rates. 』
>policy measures further to enhance the influence of monetary policy on foreign exchange rates.
ふむこっちの方が判りやすいですなという所ですが、まあマニアと申しましてもこのあたくし、マニアレベルから言えばまだまだカルトレベルに全然達していない(世の中の一番の中銀カルトは多分麿だと思われます^^)あたくしでございますので普段の英文書き振りに慣れていないのでございますが、この先の文章を見ると・・・・・・・
『A few of these members expressed the recognition that misunderstanding
and suspicions about the Bank's monetary easing stance existed in, for
example, the foreign exchange market.』
ということで(当たり前ですが)a fewとsomeを使い分けておりまして、昨日引用した時には明らかに文章の流れと12月会合の石田さんの提案から勘案するに3名が為替の働きかけという話をしましたが、もしかしたら3名だけではないかもしれませんな。つーかまあ日本語の方の議事要旨でもあれだけああだこうだ書いてあったという所から勘案すると相当の議論があったはずで、3名だけの話だとここまでああだこうだ書かないという事も実は想定されるので、想定の話かもしれないですけど3名超なのかもとか思いつつ。
ただし、日銀の場合はFRBのミニッツと違うので、たぶん「2名の」という表記を英語ではしていない(日本語で2名という記述をしていないので英文表記でも避ける筈)ので、まあa
fewが2名でsomeが3名の可能性もあるんですけどね。
でまあそれはそれと致しまして。
『In view of the need to dispel such misunderstanding and suspicions, thereby
encouraging further permeation of monetary easing effects, as well as to
influence market expectations, these members then raised the issue, as
in the previous meeting, of whether it would be effective to change the
current wording of the Bank's policy commitment -- namely, that the Bank
aimed to achieve its goal of 1 percent for the time being in terms of the
year-on-year rate of increase in the CPI through the pursuit of powerful
monetary easing, conducting its virtually zero interest rate policy and
implementing the Program mainly through the purchase of financial assets,
and would continue with this powerful easing until it judged the 1 percent
goal to be in sight.』
一文がなげえよと思いますが、こちらはコミットメント文言の変更というか明確化の話で、10月30日の会合で佐藤さんが提案して木内さんが賛成した件です。
○オープンエンドの部分に関して
『One of these members said that an option for the Bank would be to clearly
present in the statement, which was to be released immediately after the
meeting, that it would continue powerful monetary easing mainly through
the virtually zero interest rate policy and the purchase of financial assets,
without setting any timeframe, until it achieved a CPI inflation rate of
1 percent.』
『このうちの一人の委員は、実質的なゼロ金利政策と金融資産の買入れ等の措置を通じた強力な金融緩和について、消費者物価の前年比上昇率1%を達成するまでオープン・エンドとすることを対外公表文に明記することが考えられると述べた。』
ということで日本文(ちなみに日本文がMPMの承認を経た正本で英文は日本文を底本に日銀スタッフが作成したものですので念の為)で「消費者物価の前年比上昇率1%を達成するまでオープン・エンド」とありますが、英文の方がより判りやすくなっているのがチャーミングでして「時間的なフレームを設定しないで」となっている訳で、まあつまり(APPの枠組みを変更しない事を前提に考えた場合)APPについて「2013年12月まで幾らの達成」に上乗せするとすれば、「その後についても一定額の購入を行い、基金買入の償還分については再投資を行う」というような言い方になるのかねとゆー所でしょうかね。
で、ここは英文を読んでいてもあまり確信できなかったのですが、「消費者物価の1%を達成」という所が現在の物価安定の目途に示されている「見通し」ベースのものなのか、「実際に達成すべき数値」なのかがワカランチ会長なのですが、何となくこの書き方のニュアンスは実績ベースのような希ガス。
まあ勝手に想像しますと、実績ベースで1%達成するまで緩和継続という言い方ですと、これは失業率を低下させようとしてロンガーランの5.2-6.0%ゴールの手前である「実績値6.5%」の所に閾値を置いてガイダンス文言を設定したFRBに似たフレームでもあるなあとか思った訳ですけれどもどうでしょうかね(^^)。
○石田さん失礼しましたすいませんでもあの見せ方をされますと・・・・・・・・・
でまあその後の多くの委員の指摘とそれに対するツッコミの部分はスルーしまして、石田審議委員と思われる方の付利撤廃に関する指摘。
『One member -- noting that the shorter-end government bond yields in some
countries with high creditworthiness were in negative territory -- said
that, although the abolishment of the payment of interest on excess reserve
balances at the Bank would pose various problems, such as a decline in
the functioning of financial markets, if such abolishment could bring down
yields further on T-Bills in Japan, this might reduce the attractiveness
of the yen as a safe-haven currency and exert influence on foreign exchange
rates.』
『一人の委員は、信用力の高い一部の国の短めの国債利回りがマイナス圏にあることを指摘したうえで、超過準備への付利の廃止には金融市場の機能低下等の様々な問題があるものの、これによりわが国の短期国債の利回りを一段と引き下げることができれば、退避通貨としての円の魅力を減ずることになり、為替相場にも働きかける可能性があると述べた。』
ということで、こちらも英文の説明の方がニュアンスが伝わりやすい(まあ日本文でも判るちゃあ判るのですが)訳で、石田審議委員としては「付利撤廃を行う事によって短期市場金利がゼロ(下手したら国債の金利などはマイナス)になって短期市場が壊滅状態になったとしても、市場金利の低下で為替市場の円安誘導が図れるのであればそれも止む無し」という認識を示しているというのが英語の方がより判りやすいのですが、つまりはそれだけの危機意識を認識として示したうえで付利金利の撤廃の議論を11月の時点から行っていて、その結果が12月の提案として出た、とまあそういう事だった訳ですよね。
まあ何ですな、そういう背景とかが予め判っていれば12月会合の時に一部市場関係者の間に衝撃と共にブーイングが巻き起こる事も少なかったと思われる次第で、石田さん向けに言い訳を致しますと、何も前振り無しであの提案だけポコッと出され、その理由についての声明文注釈が「為替市場により働きかけるため」だけですとナンジャソラと思うのが市場の中の人的に普通の反応になるのですよ。まあ麿の会見では「金利の引き下げで為替市場に働きかける」という話だけあったのですが、これだけでもやはりポコッと出た感を受けて思いつきっぽく見えてしまうので、そういう反応になって(二日酔いの勢いもありますが^^)しまう訳ですなうんうん。
然るに、実は前振りとしてこのような背景がありましたと言う事ですと、石田さんの提案の背景に対する外野のワタクシ達の認識が全然違ってくる訳で、実務家出身者として大きなデメリットも認識した上で、そのデメリットを背負ってまでも為替市場をどげんとせんといかんとゆーお話をしているってえ事ですので、そらまあ悪態をつくような話とは違いますがなって所ですぞなもしという所で。
ただし、付利撤廃という事になればAPPの残高積み上げは実務上困難(はっきり言って現時点では目標があるからオペ参加者も超過準備積み上げながら対応している面があって、超過準備を積むメリットが無くなって単にバランスシートが拡大(対日銀だからリスク資産は拡大しないと思いますけど)するだけの超過準備をそんなに積む人は居なくなりますし、超過準備持っているよりも国債の形で持っていた方がバランスシート的に美しいからそんなにホイホイと買入オペ(単なる資金供給オペでは無い点に注意)に札入れてこないでしょう)になるでしょうし、そもそも成長基盤強化やら今回の貸出増加支援策などのフレームワークに参加する意味が無くなる(上に従来の固定金利貸出が全部やられになってしまうので、参加した分馬鹿を見た格好になりますので金融機関的にはナンジャソラ状態)ので、それらの枠組みを全面的に入れ替えないといけないという事で、その辺の制度再設計も含めてガラガラポンしないといかんぞなもしというのは連日申し上げている通り。つーかだいたいこういう流れを見て思うのだが、日銀はこの手の仕組みを緻密というか堅牢に作り過ぎで、その後の変化に対応しにくくて現場のオペレーション担当が複雑骨折状態になりながら対応するという残念な事案が良く見られるぞなと思いますので、もうちょっとこの辺の設計をラフにするというのも(FRBなんて前後矛盾をモノともせずにホイホイ変えていまして、あれはあれでいい加減過ぎると思いますが)考慮されたいと思いますけどね。
ちと話が逸れましたが、まあそういう事で、今回の石田さんの提案に関して実は既に前回の会合から問題提起があって、その辺りの議論を経て今回石田さんの提案に至った、というような話が全然伝わらないでいきなり結果だけ出されたのはコミュニケーションポリシーとして実に残念でありまして、まあ連続緩和した翌月だったからあまりその手の話をして市場を煽りたく無かったのだろうなあとは想像できるのですが、11月会見で特に為替市場への働きかけについて様々な議論があったというような話が全然なかったですし、12月会見での石田審議委員の提案に関する説明も金利を下げて為替に影響というだけのあっさり味説明でして、何と申しますか非常に勿体ない話で、別に安倍さんだけじゃなくて日銀だって既に強い問題意識を持って取り組んでいるという部分をアピールできたんじゃないのと思うのですよね。
そのアピール足りないから85円乗せからの円安に関しても未だに一般的な報道が安倍内閣発足云々の方で安倍さんが完全に主体のようになっているように認知されてしまい、日銀の取り組みがアピールされないとか、これはもう見せ方が残念にも程があるとしか申し上げようがございません訳ですな。
#まあ議事要旨のニュアンスを見ると為替云々については執行部サイドじゃなくて審議委員サイド(特に民間企業出身の4名と思われますが)が主導しているので麿的にアレなのかもしれませんけれども
なお、金利市場の中の人的に申し上げると付利撤廃で金利ゼロとかになるとやはり色々な面でのデメリットがありまして、それをするなら「絶対に」円安と株高に持って行って頂かないと、中期ゾーン以下大体短期からやや長めの短期の金利を扱う人間にとっては金利という糧食が無くなってしまってアラカン山脈白骨街道状態になるだけでありまして、従来のオペ拡大の無駄打ちとはレベルの違う何やってるんだ状態になる訳でございますので、それなりの覚悟と用意を持って頂かないとまさに金利のインパール作戦となるという点は全力で指摘させていただきたいと思います。
○やはり短国買入については「確信犯で金利押し下げ」の狙いがあった訳で
さて話が全力で逸れましたが先ほどの続きが残っておりますのでちと引用します。
『On this point, a different member commented that another measure to encourage
a decline in yields on T-Bills would be to increase the Bank's outright
purchases of T-Bills while continuing with the payment of interest on excess
reserve balances.』
『この点に関し、別の一人の委員は、短期国債利回りの低下を図る手法として、現状の超過準備への付利を維持したまま、短期国債買入れを増額することも考えられるとコメントした。』
まあここは日本文で読んでも判りますが、「安全通貨としての円の魅力を下げる」という観点であれば、付利撤廃で短期市場壊滅させなくてもそもそもTBの金利を下げてしまえば良かろうという論点で、これはこれでまあ有り得る話ですし、この手段で確信犯で短国金利を押し下げるというのであればTBの買入枠をもっと増やせますがなという話にはなりますな。
しかしこの点に関しても声明文や会見での説明ではスルーしておりまして、この部分だって「市場金利の一段の低下を促す為に短期国債も含めて買入を拡大する」というような見せ方をしてくれれば、MPMの当日に為替市場がちゃんと反応してくれていた可能性がある訳で、これも見せ方が勿体ないにも程があるわと思うのですが。
ちなみに今回の声明文ではこんな書き方になっていたのですが・・・・・・
『「資産買入等の基金」を91 兆円程度から101 兆円程度に10 兆円程度増額する。基金増額の対象については、別紙2のとおり、短期国債を5兆円程度、長期国債を5兆円程度とする。「資産買入等の基金」を通じた今後1年間の追加的な資産買入れ額は、既に決定したものと合わせ、36
兆円程度となる。このほかに、日本銀行は、年間21.6 兆円の長期国債の買入れを行っている。』(12月決定会合声明文より)
『以上の景気・物価情勢を踏まえ、日本経済が物価安定のもとでの持続的な成長経路に復していく軌道を踏みはずさないようにするため、日本銀行は、金融緩和を一段と強化することが適当と判断した。』(12月決定会合声明文より)
この辺りのどこにもその辺のニュアンスが出ていないというのが残念で、まあ現状で「為替市場へのより積極的な働きかけ」というのが全員の認識になるまで至っていないという事の反映(だから先ほども昨日も書きましたように、12月の決定は「審議委員からの積極的な」という感を受けた訳ですが)なのかも知れないので、そういう出し方をしていない、と言ってしまえばそれまでかも知れませんけど、まあ一事が万事で結果として行っている「オペレーション」そのものはそれこそびた1ユーロたりともOMT買入を実行していないECBと比べたら飛んでも無い勢いで行っているというのに「見劣りがする」だの「緩和が足りない」だの言われる訳ですな。実に残念。
まあ今さら麿がどうのこうの言ってもシャーナイのですが、金融危機における国際協調とか対応とかに関しては麿大活躍(まあ大活躍は麿一人だけではないですが)なのですし、例えば成長基盤強化に類するものをBOEがやっているとかのように、金融政策のあるべき枠組みとか方向性を示す制度設計とかに関しても麿(というか日銀全体)の技量って卓越していると思うのですけれども、ドラギの大爆笑先生のような「ハッタリかまして宝刀見せるけど抜かずに済まして実はタダ」的な非伝統的政策とか、逆さ絵おじさんのように「ストックビューで始めた筈の資産買入の説明がいつの間にかフロービューになっている」というようなインチキ成分が悲しいほど欠如しておられるのがこの辺りの残念な見せ方に反映されているんでしょうなあとは思う所でございます、はい。
・・・・・・・えーっと、何か昨日の繰り返しで景気の現状認識と見通しがエライ弱いという話はどこに逝ったんだというツッコミが聞こえそうな気がしますが、まあ年末ですのでそういう事はツッコまない方向でよろしくお願いいたします。
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2012/12/27
ということで本日の大ネタは昨日公表になった11月会合議事要旨であることは皆様ご案内の通りでありまする。
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2012/g121120.pdf
○11月会合で思いっ切り追加緩和やら為替市場への働きかけやらの話があったのですね
つーかね、不思議でしょうがないのですけれども、昨日の為替市場で朝9時ちょっと前にドル円が85円台に乗ったのに対して(さっきのモーサテのコメントもそうですけど)「安倍内閣への期待が云々」という後講釈が見られるのですけれども、それよりもこの時間帯にあった材料というのはどー見てもこちらの議事要旨だと思うのですよね。
で、この議事要旨が出たタイミングでは中身にあった「為替により強く働き掛ける工夫が必要」「付利撤廃の検討も」「オープンエンド方式の資産買入の検討も」「コミットメント文言の変更も」など、これは(追加緩和決定の)12月決定会合議事要旨ですかと思ってしまうような政策委員の論点が次々にヘッドラインとして出て参りまして、まあ11月会合後の会見では麿の金融政策に関する丁寧な説明(がメディアによって無駄に「安倍VS白川」みたいにフレームアップされた結果として日銀にとっては災難な事になった訳でメディアは全く困ったもんだと思いますがそれは兎も角)の方ばかりになっていまして、この手の論議があったという事はスルー(まあ議事要旨で公表される訳ですから質問されなきゃ答えなくても良いのですけど・・・・・・)という状況だったので、正直これは金融政策動向に注目する人たち的にはかなりのサプライズな内容だったと思うのですよね。
もちろん他の理由もあったとは思いますが、タイミング的に昨日為替がどどーんと動いた時にあった材料はこの議事要旨であって、しかも議事要旨の内容が実は日銀が既に「チェンジ」をしつつあることを示唆するのではないかという物である、という評価になると思う(以下で説明しますけど)のでありまして、普段日銀の姿勢ガーとか言いながらエエカゲンにも程がある講釈をしておられる一部の為替系何とかストやコメンテーターの皆様がこの議事要旨に言及しないのが不思議で仕方ありませんなあという所ではございます。
つーかですな、毎度思うのですけれども、決定会合の議事要旨内容について決定会合での承認事項になっているという今の日銀法の作りってこういう時に非常に残念な事態を招くのでありまして、もしこの議事要旨がもう少し早く出ていたら、まるで1から10まで総選挙と安倍総裁発言(というか殆ど恫喝モード)を受けたかのように報道される12月決定会合の結果も、実は11月の時点で既に政策委員(たぶん執行部系では無くて審議委員の皆さんでしょと思いますけど)の間では「日銀のチェンジが必要である」という議論が醸成されてきていて、その結果として12月の決定があったという事もあったのではないか(即ち実は追加緩和の流れは既に始まっていた)、とまあそういう認識になると思うのですよね。
BOEとかFRBとか、ポリシーミーティングのミニッツを公開している所では次回の決定会合の前にミニッツを公開しておりまして、正直日本の場合MPMのペースが早いのでロジ的にしんどい(特に2回会合の時と盆暮れが絡む時)というのもあるのですが、政策決定関数についての考察をしやすくするという点から言えば、ミニッツは次回のMPMの前に出した方が吉であって、コミュニケーションポリシー上も有益ではないかと思う所でありまして、日銀法改正するならその手のテクニカルな問題点についても改善の余地があると思いますので何卒よろしく。
・・・・・・・・うむ、話が逸れましたな。
○『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』を読むべしということですな
ということですが、最初の方はまあいつもの話なのですけどね。
『当面の金融政策運営について、委員は、日本経済がデフレから早期に脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することがきわめて重要な課題であると確認したうえで、この課題は、幅広い経済主体による成長力強化の努力と金融面からの後押しがあいまって実現されていくものであるとの認識を共有した。こうした認識のもとで、金融機関による成長基盤強化の取り組みおよび貸出の増加を支援するとともに、実質的なゼロ金利政策と資産買入等の基金の着実な積み上げを通じて、強力な金融緩和を間断なく推進していくとの方針で一致した。そのうえで、委員は、引き続き適切な金融政策運営に努めるとともに、国際金融資本市場の状況を十分注視し、わが国の金融システムの安定確保に万全を期していくとの方針を共有した。』
まあいつもの話である。
『前回会合における金融緩和の強化について、委員は、景気・物価見通しの下振れと先行きのリスクを踏まえて果断に対応したことは、オーソドックスな政策運営として受け止められたのではないかとの認識を共有した。』
それはどちらかというと9月の話で10月は前原・・・・いや何でも無いです。
『そのうえで、何人かの委員は、今後も適切な情報発信を通じ、日本銀行の政策に対する信認を確保していくことは、金融政策の波及効果を高めるうえで、きわめて重要であるとの認識を改めて示した。』
ということでこの辺から論点が面白くなってまいります!
『何人かの委員は、景気や物価の見通しが更に下振れたり、見通しを巡るリスクが大きく高まるような場合には、様々な選択肢をあらかじめ排除することなく、その効果とリスクを十分検討したうえで、適切な措置を果断に講じていく必要があると述べた。』
ほほう。
・為替市場への働きかけ:コミュニケーションポリシー
『何人かの委員は、金融政策による為替相場への働きかけを強める観点から、一段の工夫が必要ではないかとの問題意識を示した。』
何人かの委員キターーーーーーーー(・∀・)ーーーーーーーーーーーー!!
『このうち複数の委員は、為替市場などでは日本銀行の金融緩和姿勢に誤解や疑念が存在するとの認識を示したうえで、それらを払拭し、金融緩和効果の一層の浸透を図る観点から、「当面、消費者物価の前年比上昇率1%を目指して、それが見通せるようになるまで、実質的なゼロ金利政策と金融資産の買入れ等の措置により、強力に金融緩和を推進していく」とのコミットメントの文言を変更することが市場の予想に働きかけるうえで有効ではないかと、前回会合と同様の問題提起を行った。』
佐藤委員と木内委員ですねわかります。
『このうちの一人の委員は、実質的なゼロ金利政策と金融資産の買入れ等の措置を通じた強力な金融緩和について、消費者物価の前年比上昇率1%を達成するまでオープン・エンドとすることを対外公表文に明記することが考えられると述べた。』
オープンエンドキタコレという所ですが、まあそもそも物価安定の目途についてはその性質は本来目標達成するまでオープンエンドとなる物でございまして、何でオープンエンドの書き方になっていないかと言うと資産買入等基金という「ストックの量で勝負」をしているから、そのストックの額について幾らですよという話をする為には「何時何時までに幾らの残高にする」という見せ方を採用しているというだけの話ではあるのですが、確かに金融政策が非伝統的な領域に入っているという事を考えますと、さきほどの複数の委員による指摘にありますように、金融政策効果の浸透という意味では「市場の予想(=期待)に働きかける」ための「見せ方」について、金融政策を普段から見ていてそういう点でミスコミュニケーションが発生しにくい金利市場(の一部の・・・・)人に伝わればそれで十分という訳にはいかないのではないか、という論点がここでは提示されていると読みましたが、確かにこれは重要ではあります。
『これに対して、多くの委員は、仮に日本銀行の金融緩和姿勢に誤解や疑念が存在しているのであれば、それは丁寧な説明を通じて解消していくべきものであると指摘した。』
そらまあ本来はそうなのですが、とにかくメディアがあの有様で、他市場から見た場合にどうですねんという話は同様に蒟蒻問答化しやすくなるというややこしい説明になっている上に、これはまあそう言われても麿的に酷な話ではあるものの、一々全部丁寧に説明を尽くした結果としてベースの知識が不足している人たちにとっては却って判りにくくなってしまってませんかという現状も踏まえるべきではないかというのはあたくしも思うのでございまする。
『このうちの複数の委員は、イールドカーブが現状きわめて低位で安定していることを踏まえると、たとえコミットメントの文言を変更しても追加的な長めの金利の低下効果は殆ど期待できないとみられ、そうした意味では日本銀行の金融緩和姿勢は金融市場にしっかりと浸透している、との見解を表明した。』
でまあこの辺が一面では仰る通りなのですが、最初にこの話をした委員からしたら、金利市場の方よりもより幅広い市場の期待に対する働きかけという話をしているのですから、お前それは違うだろというか何を今さら寝ぼけた話してるんだとかそういう言い合いになっていたら非常に面白いのですがそれはさすがに無いですかそうですか(^^)。
『別の一人の委員は、長期金利の低下には、@コミットメント政策により実質的なゼロ金利の予想継続期間が長期化する場合と、A景気・物価見通しの悪化により実質的なゼロ金利の予想継続期間が長期化する場合の2種類あり、両者を明確に識別することは難しいため、注意深く議論していく必要があるとコメントした。』
イイシテキダナー(;∀;)
・為替市場への働きかけ:短期市場金利の低位誘導方策
で、ここで付利撤廃の話が出るのでした。
『一人の委員は、信用力の高い一部の国の短めの国債利回りがマイナス圏にあることを指摘したうえで、超過準備への付利の廃止には金融市場の機能低下等の様々な問題があるものの、これによりわが国の短期国債の利回りを一段と引き下げることができれば、退避通貨としての円の魅力を減ずることになり、為替相場にも働きかける可能性があると述べた。』
石田委員キタコレ(・∀・)という所ですが、先月からこの話をしているのであるならば、直近会合での超過準備付利撤廃提案の際には現在のAPPの枠組みとの整合性を取った形での提案をして頂きたかった訳で、市場機能低下云々以前にそもそも技術論的に整合性の取れない提案を出したのは誠に残念としか申し上げようが無く、あれが出た時にそこらじゅうで「何を考えているんだ」という声が続出して、一部の二日酔い駄文書きからアホだの馬鹿だのという発言が飛び出したのはご案内の通りであります。
『この点に関し、別の一人の委員は、短期国債利回りの低下を図る手法として、現状の超過準備への付利を維持したまま、短期国債買入れを増額することも考えられるとコメントした。』
これも地味だけど重要な話で、直近の追加緩和の際に長期国債の買入5兆円拡大が来年の前半と後半に2.5兆円ずつ割り振られているのですが、短期国債買入の5兆円は来年の前半に全部突っ込まれている、というのはこの「別の一人の委員」の論点を反映したものではないかとゆー話でございます。
・最後の所はまあそらそうなのですがという話
でまあここまで盛り上がったの所で最後の論点ははあそうですかという話ですがせっかく引用しているので一応引用しておく。
『ある委員は、日本を含めた主要先進国では、きわめて積極的な金融緩和政策が講じられているにもかかわらず、各国の景気が本格的な回復に至っていない背景をどのように考えるべきかとの論点提示を行った。この委員は、@米欧経済はバブル崩壊後のわが国と同様、バランスシート調整過程にあり、過剰債務を抱えた経済主体の金利感応度は低下していること、A将来の支出を現在に繰り上げるという低金利の需要創出効果は、低金利の長期化に伴い次第に低減してくること、などを指摘した。』
そらそうなのですが、まあそこは丁寧に説明する所では無い、というのが逆さ絵先生とか俊ちゃんとかの行動を見ると判るような気がするんですけどね。
○安倍さんの押し込みだけではなくて「審議委員の押し込み」もあったのではないかという件
・・・・・・・という事で今日は今回の議事要旨に関して思いっきり1つのコーナーを重点的に攻めて(?)みましたが、少なくとも「為替に積極的に働きかけるべき」という論点について、当初一番強く主張していた佐藤審議委員だけでは無く、少なくともこの議事要旨では(前回展望レポートに反対した)木内さんに加えて石田さんも11月会合の時点で加勢している、というのが明らかになったというのが今回の議事要旨の興味深いというか重要な点。
つまりですな、この会合11月19〜20日の実施ですので、安倍さんの一連の発言第一弾が出た所ではありましたので安倍さん発言の影響も勿論あるのでしょうし、「より物価上昇に強く働き掛けるルートについて積極的にならないといけない」というこの辺の審議委員の皆さんの危機意識が強く示されている、という意味でも見所のある議事要旨であったと思うのですよ。
安倍さんなどによる圧力チックな話がどうもフレームアップされやすいのですけれども、11月会合での(少なくとも3名の)審議委員による危機意識表明というのが12月会合での追加緩和実施の伏線にあるというのはまあ見やすい所でありまして、そう考えますと安倍さん云々だけでは無い意味で、審議委員の方からの日本銀行の「チェンジ」の可能性というのが実はあるんじゃネーノと思わせるのが11月の決定会合議事要旨の金融政策論議に関する部分から読み取れるのでありまして、そういう意味ではこの議事要旨は非常に面白かったと思いますです、はい。
なお、この議事要旨ですけれども、他に景気見通しなどが結構弱いじゃネーノとかそういうのもあったりしますので、それはネタが無ければ明日続きを投入の所存でございます。
ということで11月決定会合議事要旨ネタはここまでね。
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2012/12/21
○付利金利撤廃提案とかアホかと馬鹿かというか出身母体まで心配になるわという悪態
(後日(1/3)追記:実はこの後11月議事要旨が出まして、石田審議委員の提案がポッと出でも何でも無く、以前からの問題意識および危機意識を表したものであった、という事が判明したのですが、この時はその手の情報が無かったので悪口大会になってしまいました)
ということで声明文。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k121220a.pdf
さてまあご案内の通り今回は資産買入拡大が決まりまして、あたくしと致しましてはAPP拡大は次回の決定会合、即ち新政権の経済対策および補正予算策定にぶつける形でインフレ目標のようなものの設定に加えて追加緩和打ち込みというような形で次回会合で出来るだけたくさんのメニューを並べて「チェンジ」的な雰囲気を出した方が見せ方としてビューテホーではないかと思ってましたし、まあ今でもその方が良かったとは思いますが、資産買入拡大が打ち込まれたのは予想を外してこりゃ失礼いたしましたとゆー所ですが、何せ昨日の決定会合で金利市場の中で金融政策にそれなりに認識のある一部の皆様の間で話題沸騰になったのは声明文の本文における資産買入等基金拡大でも貸出促進制度の決定でも物価安定の理解見直し指示でもなく、1ページ目の脚注なのでありました。
『(注)これらとは別に、石田委員より、補完当座預金制度における適用利率をゼロ%とする議案が提出され、反対多数で否決された(賛成:石田委員、反対:白川委員、山口委員、西村委員、宮尾委員、森本委員、白井委員、佐藤委員、木内委員)。』
・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)
どの位衝撃だったかと言いますと、この提案の提案者がまさか銀行出身の方とは思わず、このような感じの会話があたくしとお友達の間で展開される次第。
人:えーっと、(他の人の名前)さんって何でこんな提案するの実務知らないんじゃないの?
私:いやあのアタクシも信じがたいが提案してるのSMBC出身の石田さんぞな
人:・・・・・・・・・・・・・・・(;゚д゚)
何せこういう会話が1例だけではなく複数例発生したという状況でして、恐らく市場のあちこちで似たような会話が展開されていたと勘案しますと、金融政策をきちんと理解している人と申しますかマニア筋と申しますか綺麗に言えば玄人筋と申しますか、まあその手の人たちでは余りと言えば余りの事案発生に最早10兆円とか2%検討指示とかどうでも良いという状態で騒ぎになっておったのですが、その割には昨日の債券市場や金利先物市場が反応しないのを見ての感想。
人:ユーロ円金先も中期債も反応しませんなあ
私:付利撤廃提案って衝撃の提案なんだけどねえ
人:もしかして私たちって市場の超マイナー筋だったの???
私:・・・・・・・・・・・・・・orz
まあ「8対1で否決されたから関係ないじゃん」ということなのかも知れませんが、何はともあれこの提案をしたのが市場の素人衆ではなく、住友銀行資金為替部長や企画部長を歴任された銀行出身の方というのが一部の市場関係者の間で腰を激しく抜かすというか椅子から転げ落ちそうになった事案でございまして、簡単に申し上げますと「何アホウな提案しているんだこのオッサン何考えているんだおいおいおい」という所でございまして、「このオッサン資金為替部長や企画部長やってて何も理解してないとか大丈夫か」という話でもあり、更には「緑の銀行ってこんなのが役員やってるのか大丈夫か」とそこまで話が及ぶ次第でございまして(もはやただのコジツケの域ですかそうですか)、もう皆さん(ただし一部の人々ですが)大騒ぎですよ奥様という所でございます。
えーっとですな、何回かこちらの駄文で申し上げておりますが再度申し上げますと、資産買入の積み上げを行うという事は、その買入に対応して当座預金残高が積みあがるという形になる訳でございまして、その結果として超過準備預金額も積みあがる、とまあそのような形になりますがな(もちろん経済が絶賛急拡大した結果として所要準備額が急拡大すれば積みあがりませんが、どこからどう見ても資産買入基金の増え方がそんなチンケな話を超越する勢いなのは皆様ご案内の通り)という話。
即ち、資産買入等基金(めんどいのでAPPの略称使いますが)の大幅な積み上げにおいては超過準備の大幅な拡大がセットで付いてくる訳でございまして、その超過準備の付利金利をゼロに下げるという事は、超過準備が積みあがりにくくなるという事を意味している訳で、短期市場の金利は下がるかも知れない(というか下がる)のですが、超過準備が積みあがりにくくなるような措置を取るというのは資産買入等基金の残高を積み上げて行くという現在の金融緩和政策のフレームワークに真っ向から矛盾する話でございます。
更に申し上げますと、今回の声明文の5ページになりますが、(別紙3)に『貸出増加を支援するための資金供給の概要』にございますように、今回決定された貸出増加促進スキームにおいて、
『5.貸付利率
貸付けの通知日における無担保コールレート(オーバーナイト物)の誘導目標水準(現在は、年0.1%とする)。』
ということで、この貸出金利が現状では0.10%の固定金利になっているのですが、付利金利が下がるというような話になれば市場金利がその水準まで低下(だから撤廃したら金利がゼロになる)することが想定される訳でして、そんな事が想定される状況下でどこの誰が0.10%などという高金利固定金利での1年とか2年とか3年とかのファンディングをするのだという話になる訳で、貸出増加促進スキームもワークしませんですし、既に実施している成長基盤強化貸出とか、被災地金融機関支援貸出も1年固定金利での貸出を行っている訳でして、これらの貸出がワークしなくなるというのは即ち日銀が重視する成長基盤強化の取り組みを否定するとか、まあそういう話になる訳ですよ。
もちろん、これら貸出制度の枠組みを変更するとか、APPの枠組みを変更して買入残高で勝負するの止めて毎月の買入オファー額だけコミットするとか(市場金利がゼロになってしまうと資産買入だって応じる人が減るのは自明で一定以上の残高積み上げは困難になる)、その辺りの枠組みを全面的に入れ替えるというのとセットであれば付利金利撤廃というのも話としてはアリエール(ただしそれは量的引き締めをもたらしますし、ただでなくさえ開店休業の短期金融市場がどう見ても閉店です本当にありがとうございましたとなるのでそもそも完全ゼロ金利自体が有り得ないとは思いますが)ではあるのですが、このおじちゃん今回の決定においてAPP拡大とか貸出増加支援制度については賛成票を投じている訳で、つまり金融政策運営における提案内容が支離滅裂であるとまあそういう話になりますぞなもしという話。
市場に関して全くのど素人の方が良く判らずに提案しているのなら兎も角、この石田審議委員様におかれましては住友銀行の資金為替部長や企画部長、三井住友銀行でも経営企画部長など歴任されている方でして、いわゆるマーケット出身のカテゴリとは違いますけれども、当然ながら市場のメカニズムなどは熟知されているお方であると理解しておりましたが、石田審議委員におかれましてはもしかして貴殿は馬鹿でいらっしゃいますかとお問い合わせ申し上げたい次第でございまして、今回の提案で市場(ただし一部の金利関係の玄人筋^^)の方々から呆れ果てられたという事はご報告申し上げたい所であります。
つーかですな、こんな提案して付利金利引き下げあるいは撤廃の可能性について本当に可能性が論じられるようになりますと、APPにおける固定金利オペに応札する人がゼロ名に接近してくる(将来の市場金利低下の可能性があるのに0.10%での5か月だの6か月だのの固定金利オペの資金供給に応じる人はいないという意味)のでありまして、早速年明けからの固定金利オペの応札動向が注目されるとまあそういう話になりますぞなもしという所でございます。
#いかん悪態が長くなってしまった
○今回買入拡大ねえ・・・・・・・
新政権の経済対策および大型補正予算策定にぶつけてという形を取って、かつ物価安定の目途の見直しとのセットで資産買入拡大を打ち出した方が「日銀も大型対策」で「チェンジ」というのを見せられたように思えまして、今回は貸出増加支援策と物価安定の目途見直しの議長指示だけに留めても良かったのではないかとあたしゃ思っておったというのは先ほども申し上げましたが、結果出た後の市場の反応が株も為替も債券も「はてこれどう反応したら良いのやら」という感じで上がったり下がったりしたのがチャーミング。
でまあ結果として何だかワカランチ会長ですが、円高に振れたせいもあったのか株が下落して引けてしまいまして、あたくし的には「折角追加緩和したんだから株価前日比プラスで引けろよ」と念じながら画面を見ておったのですが(本当^^)日経平均はずっとマイナスでしたが、引けに掛けてプラスだったトピックスもマイナスになってしまいまして、これなら次回でも良かったんじゃネーノとか残念に思うあたくし。
つーか株式市場あれだけクレクレ言ってたんだから反応してやれよと思う次第で、どうみてもチンピラのカツアゲ状態です本当にありがとうございましたという所ではありますが、まあ買入拡大しなかったらもっと残念な動きになったのかも知れませんし、あたくし的には残念な気もしますが仕方なかったのかも知れずという所ですな。
○短国買入拡大も地味にビックリである
『(1)「資産買入等の基金」の増額決定(全員一致)
「資産買入等の基金」を91 兆円程度から101 兆円程度に10 兆円程度増額する。基金増額の対象については、別紙2のとおり、短期国債を5兆円程度、長期国債を5兆円程度とする。「資産買入等の基金」を通じた今後1年間の追加的な資産買入れ額は、既に決定したものと合わせ、36
兆円程度となる。このほかに、日本銀行は、年間21.6 兆円の長期国債の買入れを行っている。』
ということでAPPの拡大が行われたのですが、10兆円の内訳が短期国債5兆円で長期国債5兆円、しかも別紙2を見ますと、長期国債の増額は来年の前半後半で各2.5兆円の割り振りとなっているのに、短期国債の増額は前倒しで来年の前半で実施というのが目に付きます。
もともと短期国債市場においては、季節的な資金余剰要因(12月は年金と国債償還で月後半に掛けて大幅な資金余剰になる)に加えて日銀買入効果もありまして、短国レートの低下がここへ来て顕著になっていまして、ご案内の方も多いとは存じますが、今月のTB入札は回を追うごとに落札金利が低下していまして、現状では3か月TBが0.09%台前半とかそういう水準感。
現在9.5兆円の買入という状況において既にこの有様なのに、来年前半にはこの残高を19.5兆円にするという事でして、買入の短期国債が概ね3か月TBになっているという現状を勘案しますと、ターンオーバーを考えると(少なくとも後半3カ月は)月に6兆円ペースで短国を買わないと残高の達成が出来ないという状態になりますので、超過準備の付利云々が無い場合でも短期国債の需給がかなりタイトになる事が想定され、金利は来年の6月に向けて一段低下するでしょという事は容易に想定できるお話。
いやまあこれだけ短国を日銀が市場から吸い上げるのであれば、この際財務省様におかれましては大規模に為替介入を実施して頂きまして円安誘導しますと、不胎化介入がどうのこうのとかいうようなチンケな話では無く、何と「為替市場介入資金の国債を日銀が買切しますぞな」という事になる訳で、実質的には日銀の外債購入に近い話になるという大変にファンタスティックな状況となりますので、この際麻生財務大臣(になるという前提で書いておりますが)におかれましては内閣成立と同時に為替介入を名刺代わりにどどーんと打って頂きまして、政府日銀の一体感と為替誘導に関する決意を示すというのは如何でございましょうかと思ったのですがどうっすかねえ^^;
○しかし貸出増加支援制度の所が読みにくいぞな
引用するのが七面倒、というのは言い訳でして単に表組みのコピペとかの能力があたくしに欠如しているだけの事ですが、(別紙1)の所で『各基金の規模と今後の追加資金供給』というのがございまして、ここの表示が最終系の部分での時期が揃ってなかたり、(別紙3)の制度の詳細の部分が2ページに渡っていてこれが一読すると何が何やらという感じで読みにくいのはうーむと思いましたがまあ多くは悪態をつきますまい。
○今回は時間を随分節約しましたなというお話
今回の発表時間は13時01分でございましたが、ご案内の通り今回の声明文は別紙が沢山あって7ページ組でして、議決事項も2つ(否決された提案があったので3つですかね)あったのですが、これを13時01分に終了させるということで前回のアコードとか追加緩和とかの措置で妙に時間が長引いてしまって市場に余計な思惑を起こしたり、残り時間の関係で市場が消化しきれなかったりという悪事例があったのですが、今回はこの前の時間かかり過ぎを反省したのかやたら迅速に処理した観がございまして、これはロジを行っている事務方の皆様大変お疲れ様でしたというのと共に、議事の仕切りも大変だったのではないかと議長であります総裁様お疲れ様でしたという所です。
・・・・・・・・・ということで、決定会合そのもののレビューについては今朝の所はここまでで勘弁ということでした、声明文での景気認識とかの話はどうなっているのかというツッコミはしないように。
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2012/12/18
○ということで短観であるが
昨日スルーした短観ですが
http://www.boj.or.jp/statistics/tk/gaiyo/2011/tka1212.pdf
・前回の先行き予測DIの達成状況
(9月時点) (12月時点)
現状→12月予測 現状→3月予測
製造業大企業 ▲3→▲3 ▲12→▲10
製造業中堅企業 ▲6→▲13 ▲12→▲20
製造業中小企業 ▲12→▲14 ▲18→▲26
非製造業大企業 +8→+5 +4→+3
非製造業中堅企業 +2→▲3 ▲1→▲7
非製造業中小企業 ▲9→▲16 ▲11→▲19
前回は製造業がヘロヘロで非製造業が妙に底堅いという所でしたが、今回に関しては中小などの非製造業にもちょっとヘロヘロ感という所。しかし先行き見通しの達成度合いで見ると実は大企業製造業以外はそんなに大外しをしていないというのが不思議な展開。
先行き見通しに関しては製造業が特に悪く出ているのですが、大企業の方がそれほど悪く出ていないのに中小が悪く出ているというのが何ともでして、また中小に皺寄せが行くのですかそうですかというイメージががががが。
ちなみにめんどいから引用しませんが、前回対比でDIがどどーんと落ちている業種が鉄鋼とか金属とか機会とか造船とかでうーむという所ですの。
・雇用判断DI
(9月時点) (12月時点)
現状→12月予測 現状→3月予測
製造業大企業 +7→+9 +10→+10
製造業中堅企業 +10→+8 +10→+12
製造業中小企業 +11→+11 +14→+14
非製造業大企業 ▲3→▲3 ▲3→▲3
非製造業中堅企業 ▲5→▲6 ▲7→▲9
非製造業中小企業 ▲5→▲5 ▲7→▲8
毎回製造業と非製造業の二極化がアレなのですが、その傾向がますます拡大しているってどうよとは思います・・・・・・・・・・・
・想定為替レート
(参考)事業計画の前提となっている想定為替レート(大企業・製造業)
(円/ドル) 2011年度全体 (上期)(下期) 2012年度全体(上期)(下期)
2011年6月調査 82.59 82.59 82.59 − −
−
2011年9月調査 81.15 81.26 81.06 − −
−
2011年12月調査 79.02 80.26 77.90 − −
−
2012年3月調査 78.93 80.20 77.69 78.14 78.04
78.24
2012年6月調査 79.27 80.18 78.35 78.95 78.98
78.93
2012年9月調査 − − − 79.06
79.16 78.97
2012年12月調査 − − − 78.90 79.09
78.73
前から取っているので今回も引用しますが、これを見ますと想定為替レート的にはこのままの水準でしたら輸出企業の収益的には伸びしろがあるということですかそうですか。
・金融商品取引業クオリティを今回も鑑賞、なのですが・・・・・・・
いつも見込みが華麗に外れるのが仕様の金融商品取引業業況判断DIですが。
(9月時点) (12月時点)
現状→12月予測 現状→3月予測
金融商品取引業 ▲38→▲24 ▲28→▲15
め、珍しく当たっているのですが、これが何かのフラグでない事を祈ります・・・・・・
その他として真面目に見る場合は、やはり設備投資計画の詳細を見るのが正しいあり方でございまして、土地なども含む投資状況を見つつ、その修正状況のグラフなどを鑑賞するという(上記URLの11ページ)のが吉ではないかと存じます次第。
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2012/11/27
展望レポート&追加金融緩和の10/30決定会合議事要旨ですが
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2012/g121030.pdf
○経済情勢および見通しに関して
『U.金融経済情勢と展望レポートに関する委員会の検討の概要』から。
・海外経済について
『海外経済について、委員は、昨年後半以降、欧州債務問題の悪影響が貿易や企業マインドのルートを通じて世界的に拡がっており、最近は、多くの国や地域で、製造業部門を中心に減速の度合いが強まっているとの認識で一致した。先行きについて、委員は、当面減速した状態が続くとみられるが、国際金融資本市場が総じて落ち着いて推移するとの想定のもと、減速した状態から次第に脱し、緩やかな回復に転じていくとの見方を共有した。』
ということで、現状認識が下がる中で先行き見通しは何か知らんが変わらんという不思議な展開が続いていますが・・・・・・・
『一人の委員は、海外経済の回復時期が後ずれしたり、回復ペースが緩やかになる可能性を意識する必要があると述べた。』
一人ですかそうですか。でまあ地域別ですけどね。
『ユーロエリア経済について、委員は、緩やかに後退しているとの認識を共有した。複数の委員は、欧州経済の不振が貿易チャネルを通じて中国経済のブレーキになり、世界貿易量の伸びを強く圧迫していると述べた。先行きについて、委員は、域外輸出の増加からユーロエリアのコア国が成長率を徐々に高めていくものの、周縁国では緊縮財政が続くことから、全体でみても回復の勢いに乏しい状態が続く可能性が高いとの見方を共有した。』
コア国の成長率って徐々に高まる見通しなのか。
『中国経済について、委員は、インフラ投資などに動意がみられるが、素材産業など幅広い分野で在庫の積み上がりが解消しておらず、在庫調整局面が長引いていることから、ここ数か月でみると、成長ペースの減速の度合いもやや強まっているとの認識を共有した。先行きについて、委員は、当面減速した状態が続くとみられるものの、金融・財政両面での景気刺激策の効果が顕在化し、在庫調整が進展していくにつれて、成長率は徐々に高まっていくとの見方で一致した。』
『何人かの委員は、根強い在庫調整圧力や政策効果を巡る不確実性などを踏まえると、成長率が明確に回復するには時間を要するとみられると述べた。』
ということで中国についてはまあ確かに底打ちの香りもしますな。
『NIEs、ASEAN経済について、委員は、欧州や中国の最終需要の弱さの影響もあって、輸出や製造業の設備投資といった企業部門を中心に、持ち直しの動きが緩やかになっているとの認識を共有した。先行きについて、委員は、個人消費を中心に内需が堅調さを維持する中で、輸出が次第に増勢に転じていくことにより、持ち直しの動きがはっきりしていくとの見方で一致した。』
とまあこちらは明るめの見通し。
『米国経済について、委員は、個人消費が緩やかに増加し住宅市場で持ち直しの兆しもみられるなど、全体としては緩やかな回復基調を続けているが、世界経済の減速やいわゆる「財政の崖」を巡る先行き不透明感の高まりから企業マインドが慎重化するもとで、設備投資や輸出、生産の増勢が鈍化しているとの認識で一致した。先行きについて、委員は、緊縮的な財政政策の影響を受けつつも、緩和的な金融環境などを背景に、緩やかな回復を続けるとの見方で一致した。』
まあFRBの見通しと同じですな。
『一人の委員は、欧州や中国経済をはじめ、世界経済の減速が強まっている中で、米国経済が回復を続けることができるか注視していると述べた。複数の委員は、「財政の崖」の影響により、2013年前半の経済活動が大きく抑制される可能性があると付け加えた。』
ということで、海外経済に関しては先行き見通しがそんなに弱くないというのが大勢見解であるというのは把握しました。
余談ですけれども、(今日は時間が無いのでネタにしませんが、って昨日も申し上げた気がしますが)BOE11月頭のMPC議事要旨見ると海外経済の見通しが割と明るめだったりしまして、恐らくは米国が財政の崖を何とかして、中国経済が底打ちモードになって来てるとかその辺が背景にあるのでしょうけれども、「自分の所は兎も角として海外経済は何とかなりそうですなあ」みたいな見通しを同じようなタイミングで別々の中銀から見ると何かちょっとオモシロスではございますな。
・国内経済
『委員は、海外経済の減速した状態が強まっていることを反映して、輸出や鉱工業生産が減少し、内需にもその影響が一部及び始めているとの認識で一致した。一人の委員は、海外経済減速の影響は製造業の設備投資に及び始めているとの見方を示した。委員は、9月の会合以降、景気は一段と下振れているとの認識を共有した。』
という認識の下で追加金融緩和を実施した訳ですが。
『日中関係の影響について、一人の委員は、ハードデータでは十分に確認できていないが、支店長会議の報告などミクロ情報から判断すると、輸出や生産、観光需要に影響が出ているとの見方を示した。複数の委員は、生産や景気動向指数の動きなどを踏まえると、事後的に、景気の後退局面入りが認定される可能性があると述べた。こうした議論を経て、委員は、景気は弱含みとなっており、先行きも、当面横ばい圏内の動きにとどまるとの見方で一致した。』
とのことです。
○展望レポート関連
まあこっちの方が長いのですけれども。
『経済情勢の先行きの中心的な見通しについて、委員は、7月の中間評価時点と比べると、海外経済の減速の影響などから、下振れているとの見解で一致した。そのうえで、委員は、今回の会合で金融緩和を一段と強化するのであれば、海外経済の成長率が再び高まることや、広い意味での復興関連需要などに支えられ、日本経済は次第に緩やかな回復経路に復していくとの見方を共有した。何人かの委員は、政府などによる成長力強化の取り組みが成果をあげることで、景気回復の持続性が増していくとの見方を強調した。』
下振れはまあ良いとして政府などによる成長力強化の取り組みが成果ねえ・・・・・
・見通しの年度別展開を改めて読むとやはり願望成分ががががが
見通しの年度別展開は以下の通り。
『2012 年度下期から2013 年度にかけての景気展開について、委員は、輸出や鉱工業生産は、海外経済の減速が長引くもとで、当面弱めに推移するとの見方を共有した。』
『2013 年度の成長率について、委員は、復興関連需要による景気押し上げ効果が公的需要中心に徐々に減衰していくものの、海外経済の持ち直しが次第に明確になるにつれて、企業収益や雇用者所得の増加を伴いながら国内民間需要がしっかりとした伸びとなるため、潜在成長率をはっきりと上回るとの見方で一致した。』
つまり2013年度は海外次第ですねわかります。
『2014 年度について、委員は、海外経済が過去の長期平均を上回る成長を実現するほか、企業収益の改善や成長期待の高まりを背景に低金利の持つ景気刺激効果も強まっていき、これが国内民間需要を下支えするとみられることなどから、消費税率引き上げに伴う変動を除いた基調でみれば、潜在成長率を幾分上回る成長経路を辿るとの認識で一致した。』
2014年度になると海外の成長が続き、その上国内は成長力強化が成果を上げるとは素敵な願望レポート。
・消費税率引き上げの影響について
『また、消費税率引き上げの影響について、委員は、2013 年度下期には、税率引き上げ前の駆け込み需要が相応の規模で発生すると予想されるため、一時的にかなり高めの成長となる一方、2014
年度の成長率は、上期を中心に駆け込み需要の反動が出ることから、小幅のプラスにとどまる可能性が高いとの認識を共有した。』
毎回思うのですけれども、消費税引き上げの影響の話をするときに駆け込み需要の話を強調しておりますが、そもそも消費税作った当初および5%への引き上げの際はネット減税となっていた訳で、今回の消費税引き上げはこのままだと初のネット増税になる訳でして、影響については普通に考えるとマイナスになると思うのですが、その辺はご配慮が働いているのか、願望レポートの一環なのだか知りませんが、こーゆー評価になっているのはどうも解せないなあと思いますが。
・物価情勢について
『消費税率引き上げの直接的な影響を除いて物価情勢の先行きを展望すると、大方の委員は、中長期的な予想物価上昇率が安定的に推移するとの想定のもと、消費者物価の前年比は、当面ゼロ%近傍で推移した後、マクロ的な需給バランスの改善などを反映して、徐々に緩やかな上昇に転じ、2014
年度には当面の「中長期的な物価安定の目途」である1%に着実に近づいていくとの見方を示した。』
というのが展望レポートのメインシナリオね。
『前提となる国際商品市況について、これらの委員は、当面は、海外経済の減速を反映して、均してみれば横ばい圏内で推移した後、新興国の経済成長に伴う食料・エネルギーの需要拡大などを背景に、基調的には緩やかな上昇傾向を辿ると想定されると述べた。一人の委員は、家計の購入単価の上昇傾向やパート労働の改善傾向などが、今後、消費者物価の上昇につながる可能性を指摘した。』
はあそうですか。
『こうした見方に対し、複数の委員は、マクロ的な需給バランスと消費者物価との相関が依然として緩やかであることを踏まえると、マクロ的な需給バランスの改善が物価上昇率を引き上げる力を控えめにみておくべきであり、「1%に着実に近づいていく」との評価は難しいのではないかと指摘した。』
佐藤委員と木内委員ですねわかります(^^)。
『このうち一人の委員は、物価の先行きを考えるうえでは、労働市場の需給バランスの改善が重要であるが、単位労働コストがここ2四半期はっきりと減少していることなどを踏まえると、先行きについては慎重な見方をとらざるを得ないと付け加えた。』
名目賃金が上がらない中で物価が上がるのかいなと言う事ですかな。つーか名目賃金が上がらないのに物価が上がっても誰得にも程がある訳で、財政インフレ起こして物価上昇とかしても無意味にも程がある訳ですから円安誘導して企業収益が改善したら労働者にジャンジャン分配させる方向で企業に要請というような枠組みで説明したら安倍ちゃんも大受けすると思うのですが(^^)。
でまあ上振れ下振れの話しは割愛。上振れの話が幾つかあるのがはあそうですか(棒読み)という所ではありましたがめんどいので引用割愛。
○金融政策に関して
『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』から。
『委員は、経済・物価のシナリオは、海外経済、輸出、生産に加え、内需の一部でも、9月の金融緩和の強化時にみていたよりもさらに下振れており、日本経済が物価安定のもとでの持続的な成長経路に復していく軌道を踏みはずさないようにするためには、金融緩和を一段と強化する必要があるとの見解で一致した。』
つまり足元の下振れに対応して追加緩和という理屈になっておりますの。
『そのうえで、委員は、9月に続き、資産買入等の基金を大幅に増額することが適当であるとの認識を共有した。基金の増額幅について、多くの委員は、長めの金利やリスク・プレミアムへのさらなる働きかけを通じて、企業や家計等の金融環境をより緩和的にするため、リスク性資産を含めて10
兆円規模で増額することが適当と述べた。』
まあ良いのですけれども、一方で(こちらの議論でもそうですが)毎回の金融経済月報で示されている金融環境の認識は「緩和した状況にある」という風に大昔からなっているという事を踏まえますと、この「長めの金利やリスクプレミアムへの働きかけで金融環境を緩和的に」というロジックってどうなのかという気もせんでもない。
『一人の委員は、為替相場への働きかけなどインフレ期待を高める一段の工夫が必要ではないかとの認識を示した。』
佐藤委員ですねわかります。まあ金融環境が緩和的という認識なのに「更に緩和的な金融環境を」という動きをして限界的になんぼ効きますねんという事を考えると、何らかの別途の工夫が必要という認識に関しては同意します。まあ問題はそれをどう工夫するかという話でそれが難しいのですけど・・・・・
『包括的な金融緩和政策の効果について、委員は、包括緩和が実体経済に及ぼす影響のうち、第一段階である金融環境への波及という点では、企業・家計が直面する金融環境は緩和した状態にあるとの認識を共有した。一方、第二段階である金融環境から実体経済への波及という点では、委員は、金融環境はきわめて緩和的であるが、こうした緩和的な金融環境が十分に活用されていないとの認識を共有した。』
この金融緩和政策の波及経路2段階論も以前から話をしているのですが、1段階目は十分に緩和しており、問題は第2段階への波及だという認識の中でじゃあ何で第1段階の所を「より緩和的にする」という事になるのかということですな。
『第二段階における緩和効果の一層の浸透を図るため、委員は、金融機関の一段と積極的な行動と、企業や家計の前向きな資金需要の増加を促す工夫をしていくべきとの認識を共有した。』
だったらそれよりも「インフレ期待を高める一段の工夫」の方が話が早いんでネーノという(たぶん佐藤委員の)指摘の方が妥当な気がします。
でまあ基金増額の方の議論ですが。
『以上の執行部説明を受けて、委員は、まず、資産買入等の基金の増額について議論を行った。委員は、基金の増額幅について、長めの金利やリスク・プレミアムへのさらなる働きかけを通じて、企業や家計等の金融環境をより緩和的にするため、10
兆円規模で増額することが適当との認識で一致した。多くの委員は、9月の10
兆円と合わせるとかなり思い切った幅の増額になると述べた。買入対象の資産について、委員は、短期国債、長期国債だけでなく、日本銀行のリスク許容度も考慮したうえで、リスク性資産も幅広く増額の対象とすべきとの認識を共有した。』
『一人の委員は、貸出金利などに幅広く影響を及ぼし得る国債買入れを中心に増額することが適当と述べた。何人かの委員は、リスク性資産の増額の完了期限が本年末に迫っている一方で、わが国の景気が弱含みとなっていることを踏まえると、引き続き、リスク性資産を幅広く買い入れていくことが適当との見解を示した。このうち一人の委員は、リスク性資産を増額対象とすることにより、過度な不安心理の抑制が期待できると付け加えた。複数の委員は、リスク性資産を大量に買い入れると、日本銀行に損失が発生し、最終的に納税者負担につながる可能性に注意する必要があるとコメントした。一人の委員は、こうした強力な緩和措置がより広く周知されるよう、対外的にしっかりと説明していくべきと述べた。』
結構何をどう買うかで揉めたというのが何となく判りますな。
貸出何とかスキームについて。
『続いて、委員は、貸出増加を支援するための資金供給について議論を行った。委員は、金融機関の一段と積極的な行動と企業や家計の前向きな資金需要の増加を促す観点から、金融機関の貸出増加額について、希望に応じてその全額を低利・長期で資金供給することが適当との見解で一致した。また、委員は、資金供給の総額の上限を設定せず、無制限とすることが、金融機関の貸出増加への取り組みの大きな支えになるとの認識を共有した。』
でまあその中でふーんという部分ですが。
『一人の委員は、非居住者向けの円貸出を貸出増加の算出対象に加えることは、円高圧力の緩和という副次的な効果も期待できると付け加えた。』
『一人の委員は、成長基盤強化支援を導入した当初に聞かれた、貸出競争を煽っているとの批判が、政策意図が浸透するにつれ後退していった経験を踏まえると、今回も、政策意図をきちんと説明していく必要があると述べた。』
まあほほうという所です。
○コミットメント文言の変更提案とな
最後の所でこれはこれはという部分が。
『また、コミットメントの文言について、複数の委員は、「当面、消費者物価の前年比上昇率1%を目指して、それが見通せるようになるまで、実質的なゼロ金利政策と金融資産の買入れ等の措置により、強力に金融緩和を推進していく」との文言を変更し、それを対外公表文に明記することで、金利などへの働きかけをさらに強め、日本銀行の緩和姿勢をより明確にすることができないかと問題提起した。』
ということですが、具体的にどういう事かというと更に後ろの方に提案内容がありまして。
『佐藤委員からは、物価見通しの記述について、「消費者物価の前年比は、当面ゼロ%近傍で推移した後、マクロ的な需給バランスの改善などを反映して、徐々に緩やかな上昇に転じ、2014
年度には当面の「中長期的な物価安定の目途」である1%に着実に近づいていく」から「消費者物価の前年比は、当面ゼロ%近傍で推移した後、マクロ的な需給バランスの改善などを反映して、徐々に緩やかな上昇に転じていく」に変更し、政策運営方針の記述について、1%を「見通せるようになるまで」から「安定的に達成するまで」に変更する旨の議案が提出され、採決に付された。採決の結果、反対多数で否決された。』
『採決の結果
賛成:佐藤委員、木内委員
反対:白川委員、山口委員、西村委員、宮尾委員、森本委員、白井委員、石田委員』
ということで、コミットメント文言を「1%を見通せるようになるまで」から「安定的に達成するまで」に変更という提案でして、これは時間軸伸びますし緩和姿勢が明確になりますよねという所ですけど、さて反対の理由でございますが・・・・・
『これに対して大方の委員は、現時点でコミットメントの文言を修正することには慎重な見解を表明した。これらの委員は、市場金利をみると、イールドカーブの中期ゾーンまできわめて低位で、日本銀行が金融緩和を継続していくことに対して市場で疑念が生じているとは考えられず、コミットメントの文言の変更が必要な状況にはないと指摘した。』
金利市場的に言えばそらそうなのですが、金利以外の市場でと考えた場合、実は日本の時間軸が一番クソ長いという事実が認識されているとも思えず(そうなら円高傾向が続くのが変でしょ)、そういう意味では金利市場以外に向けたメッセージとしてはコミットメント文言変更は有りのような気もします。
『複数の委員は、将来的に文言の修正が効果をもつ局面になることも考えられるが、現時点ではないと述べた。また、資産買入等の基金の運営についても、これらの委員は、現行のコミットメントのもとで、増額を完了したら直ちに基金残高を取り崩すという運営を想定している市場関係者がいるとは考えにくいと付け加えた。』
金利市場の関係者としてはそうなのですが、仕組みとして増額完了後何もなければドカドカ残高落ちるような設計になっている(のは出口政策を考えると極めて妥当な作りになっているのですけれども)というのはやはり他市場的には別の認識を持たれている可能性もありそう。
『何人かの委員は、仮に基金の運営について市場に誤解があるのであれば、増額完了後も、「1%」を目指して強力に金融緩和を推進していくというコミットメントの考え方に即して基金を運営していくことを、改めて対外的に説明していくことで払拭すべきとコメントした。』
まあそうですが。
『複数の委員は、日本銀行の現状認識を正確に伝えるため、まだ「1%」を見通せるとの判断には至っていないことをしっかりと説明していくことが重要であると付け加えた。』
いやあの展望レポートの見せ方だとそのうち1%に行くでしょうという話に見えるじゃろ。
・・・・・・ということで、まあこの部分の提案と意見の交換部分は決定会合声明文や総裁会見では見えなかった部分なので面白かったです。
○展望レポートの1%云々
『X.採決』の部分から。
『続いて、「経済・物価情勢の展望」の「基本的見解」の文案が検討され、多数意見が形成された。これに対し、一人の委員は、消費者物価の前年比が2014
年度には1%に着実に近づいていくとの物価見通しに関する記述と、消費者物価の前年比上昇率1%が見通せるようになるまで強力に金融緩和を推進していくとの政策運営方針に関する記述について、変更する旨の議案を提出したいと述べた。この結果、以下の2つの議案が採決に付されることとなった。』
ということで、佐藤委員の議案はさっき引用したとおりです。佐藤さんと木内さんが1%云々の記述に反対した理由はまあ普通に物価見通しによるものということですね。
とまあそんな所でした。
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2012/11/22
○金融経済月報比較
まあ大体声明文比較の所で概ねやりましたので手抜きバージョンでお送りします。
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2012/gp1211.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2012/gp1210.pdf(前回)
前回は追加緩和実施前の10月5日会合の物ですので念のため。
・現状判断は輸出生産と設備投資の一部と自動車関連の需要を下げる
『わが国の景気は、弱含みとなっている。』(今回)
『わが国の景気は、横ばい圏内の動きとなっている。』(前回)
というのは昨日の声明文比較の通りです。
『輸出や鉱工業生産は、海外経済の減速した状態が続いていることなどから、減少している。設備投資は、緩やかな増加基調にあるものの、海外経済減速の影響などから製造業に弱めの動きがみられている。個人消費は、底堅さを維持しているが、足もとでは、乗用車購入において需要刺激策の一部終了に伴う反動減がみられている。この間、公共投資は増加を続けており、住宅投資も持ち直し傾向にある。』(今回)
『輸出や鉱工業生産は、海外経済の減速した状態がやや強まるもとで、弱めとなっている。一方、国内需要は、復興関連需要などから底堅く推移している。すなわち、公共投資は増加を続けており、住宅投資も持ち直し傾向にある。個人消費は、雇用環境が改善傾向にあるなかで、底堅く推移している。設備投資は、企業収益が総じて改善するもとで、緩やかな増加基調にある。この間、企業の業況感は、海外経済減速の影響などを背景に、幾分慎重化している。』(前回)
輸出と生産は「弱め」から「減少」と引き下げ、国内需要に関しては昨日の声明文比較と同様で設備投資にヘッジクローズが入ったのとエコカー補助金打ち切りに関連する記述の部分が入っています。
・先行き見通しは細々と需要項目の見通しが下がる
『先行きのわが国経済は、当面弱めに推移するとみられるが、国内需要が全体としてみれば底堅さを維持し、海外経済が減速した状態から次第に脱していくにつれて、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(今回)
『先行きのわが国経済は、当面横ばい圏内の動きにとどまるとみられるが、国内需要が底堅さを維持し、海外経済が減速した状態から次第に脱していくにつれて、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(前回)
ここは総裁会見の所でも質問があって、かなり苦しげな答弁を総裁がしていた訳ですが(^^)、当面弱めという風に見通しを下げながらも中期的な部分では緩やかな回復経路に復するというのを入れているという形で、一応「足もとで一時的にソフトパッチ」というような見通しとしておりますがさてどうなんでしょうな。国内需要の所で「全体としてみれば」というヘッジクローズが入ったのは昨日の声明文比較で確認済みですよね。
『輸出や鉱工業生産は、当面減少を続けるとみられるが、その後は、海外経済が減速した状態から次第に脱していくにつれて、持ち直しに転じていくと考えられる。国内需要については、復興関連需要などから、公共投資は、伸びを鈍化させつつも当面は増加を続け、住宅投資も持ち直し傾向をたどると考えられる。設備投資は、当面は海外経済減速の影響などを受けつつも、企業収益が総じて改善傾向を維持するもとで、防災・エネルギー関連の投資もあって、緩やかな増加基調を続けると予想される。個人消費は、当面は乗用車購入の反動減などから弱めの動きとなるものの、基調的には底堅く推移していくと考えられる。』(今回)
『輸出や鉱工業生産は、当面弱めに推移するとみられるが、その後は、海外経済が減速した状態から次第に脱していくにつれて、緩やかに増加していくと考えられる。国内需要については、復興関連需要などから、引き続き、公共投資は増加し、住宅投資も持ち直し傾向をたどると考えられる。設備投資は、当面海外経済減速の影響を受けつつも、企業収益が総じて改善を続けるもとで、防災・エネルギー関連の投資もあって、緩やかな増加基調を続けると予想される。個人消費は、当面エコカー補助金の終了に伴う乗用車購入の反動減が見込まれるものの、雇用環境の改善傾向が維持されるもとで、引き続き底堅く推移するとみられる。』(前回)
思いっきり長く引用して比較しにくくてすいません(手抜きバージョンですので)が、表現が変わっているのは以下の通り。
輸出生産に関しては「弱めに推移」→「減少を続ける」、その後について「緩やかに増加」→「持ち直しに転じていく」と全体的にトーンを下げています。
公共投資については先行きの伸びが「伸びを鈍化させつつ」というのが入りました。
企業収益に関しては「総じて改善を続ける」→「総じて改善傾向を維持する」とこれまた若干のトーンダウン。
個人消費に関しては目先については「弱めの動き」という認識になっていますが、まあこれはエコカー補助金関連要因もあるのである程度想定内。先行きに関しては「基調的には」という毎度のヘッジクローズが入りましてこれまた若干トーンダウン。
ということで、需要項目のあちこちを細々とトーンダウン(輸出と生産に関しては明らかにトーンダウン)しておりますが、実は今回読んでて最大の謎だったのはこの部分。
『設備投資は、当面は海外経済減速の影響などを受けつつも、』(今回)
『設備投資は、当面海外経済減速の影響を受けつつも、』(前回)
・・・・・・・・・・この「など」は何を指しているのかがワカランチ会長なのですが、どういうニュアンスなのでございましょう。あたくしの日銀文学解釈的に申し上げると、「など」というのが入った分だけこの文脈で言えば設備投資に悪影響を与える項目が増えているので、そのぶんだけここでもトーンダウンしているという事にはなるのですが、この「など」が何を指すのかが興味津々でございます。
なお、リスク要因は前回と同じ、物価や金融環境部分は特段の政策インプリケーションは無さそうですので割愛します。
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2012/11/21
○決定会合レビュー:先行き見通しを若干引き下げとな
例によって声明文比較ですが、前回決定会合は追加緩和を行っております関係上声明文における経済需要項目の説明などがやや簡潔になっておりまして、10月4〜5日決定会合で出ました金融経済月報(概要)部分との比較も入れながら参ります。ただまあ10月5日対比で引き下げになっているのはある意味当たり前(30日に追加緩和しているのだから)というのもありますのでその辺は比較する際に考慮してくらはい。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k121120a.pdf(今回声明文)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k121030a.pdf(前回10/30声明文)
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2012/gp1210.pdf(10/5会合の月報、月報が出るのはMPM翌営業日なので月報日付は9日です)
・海外経済の現状認識は同じ(10/30対比)
『海外経済は、減速した状態が続いている。国際金融資本市場では、欧州債務問題を背景とする投資家のリスク回避姿勢はやや後退した状態が続いているものの、今後の市場の展開には十分注意していく必要がある。』(今回)
『海外経済は、減速した状態が強まっている。国際金融資本市場では、欧州債務問題を背景とする投資家のリスク回避姿勢はやや後退した状態が続いているものの、今後の市場の展開には十分注意していく必要がある。』(10/30声明文)
減速した状態が強まっている→続いているということで、まあ基本的には現状認識は同じですの。
・国内景気の現状認識はヘッジクローズがあちこちに
『わが国の景気は、弱含みとなっている。』(今回)
『このため、景気は弱含みとなっている』(10/30声明文)
『わが国の景気は、横ばい圏内の動きとなっている。』(10/5月報)
ということで、全体感に関しては前回決定会合で引き下げを行ったものを継続しております。
『輸出や鉱工業生産は、上述の海外経済の状況などから、減少している。設備投資は、緩やかな増加基調にあるものの、海外経済減速の影響などから製造業に弱めの動きがみられている。個人消費は、底堅さを維持しているが、足もとでは、乗用車購入において需要刺激策の一部終了に伴う反動減がみられている。この間、公共投資は増加を続けており、住宅投資も持ち直し傾向にある。』(今回)
『こうした状況のもとで、わが国の輸出や鉱工業生産は減少し、これまで堅調に推移してきた内需にもその影響が一部及び始めている。』(10/30声明文)
『輸出や鉱工業生産は、海外経済の減速した状態がやや強まるもとで、弱めとなっている。一方、国内需要は、復興関連需要などから底堅く推移している。すなわち、公共投資は増加を続けており、住宅投資も持ち直し傾向にある。個人消費は、雇用環境が改善傾向にあるなかで、底堅く推移している。設備投資は、企業収益が総じて改善するもとで、緩やかな増加基調にある。この間、企業の業況感は、海外経済減速の影響などを背景に、幾分慎重化している。』(10/5月報)
とまあ前回声明文が簡潔バージョンになっているので歯抜け部分を補う為に前々回会合の月報を補足しておりますが、今回声明文での需要項目順に比較しますと・・・・・・
まず輸出や鉱工業生産に関しては前回と同様に「減少」となっていまして判断維持。
設備投資に関しては前回声明文ではスルーしていましたので月報と比較してみると「緩やかな増加基調」という所は同じですけれども、その後に「海外経済減速の影響などから〜」とヘッジクローズが入っておりまして、まあこれは前回声明文にある「内需にもその影響が一部及び始めている」という部分がシンクロしそうな気がしますが、いずれにせよ「海外経済減速の影響が及んできている」という認識を示しているのでこれは判断引き下げ。
個人消費に関してはこれまた月報との比較になりますが、「底堅さを維持」としているものの、エコカー補助金終了の影響について言及しているので、これはこれで判断が下がっておりますが、前回月報の先行き見通し部分でこの点については『当面エコカー補助金の終了に伴う乗用車購入の反動減が見込まれるものの』となっておりますので、まあ想定の範囲内の下げではあります。
公共投資、住宅投資に関しては前回月報と同じですね。
『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっている。』(今回)
『この間、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっている。』(10/30声明文)
『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっている。』(10/5月報)
『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(10/5月報)
ということで、こちらに関しては現状認識に変化なしです。
・先行き見通しは若干引き下げとな
『先行きのわが国経済についてみると、当面弱めに推移するとみられるが、国内需要が全体としてみれば底堅さを維持し、海外経済が減速した状態から次第に脱していくにつれて、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(今回)
『先行きのわが国経済は、当面横ばい圏内の動きにとどまるとみられるが、国内需要が底堅さを維持し、海外経済が減速した状態から次第に脱していくにつれて、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(10/5月報)
前回会合声明文では先行き見通しの部分はリスク要因の記述だけでしたので(展望レポートは中長期的な話がメインになるのでスルーの方向で)月報との比較になりますが、「海外経済が減速した状態から次第に脱していくにつれて、緩やかな回復経路に復していく」という部分は同じなのですが、前回月報と比較しますと「当面弱めに推移」と下げておりまして、国内需要の見通しに関しても「全体として」という毎度おなじみのヘッジクローズが入りまして、まあ国内需要の先行き見通しも微妙に下げているという所であります。
消費者物価の見通しは前回月報と同じです。念の為引用。
『消費者物価の前年比は、当面、ゼロ%近傍で推移するとみられる。』(今回)
『消費者物価の前年比は、当面、ゼロ%近傍で推移するとみられる。』(10/5月報)
・リスク認識は前回声明文と同じ
『リスク要因をみると、欧州債務問題の今後の展開や米国経済の回復力、新興国・資源国経済の持続的成長経路への円滑な移行の可能性、日中関係の影響の広がりなど、日本経済を巡る不確実性は引き続き大きい。金融・為替市場動向の景気・物価への影響にも、引き続き注意が必要である。』(今回)
『先行きについては、欧州債務問題の今後の展開や米国経済の回復力、新興国・資源国経済の持続的成長経路への円滑な移行の可能性、日中関係の影響の広がりなど、日本経済を巡る不確実性は引き続き大きい。金融・為替市場動向の景気・物価への影響にも、引き続き注意が必要である。』(10/30声明文)
『この間、世界経済を巡る不確実性は引き続き大きいほか、金融・為替市場動向の景気・物価への影響には注意が必要である。』(10/5月報)
前回声明文とリスク認識は同じで、ここでは前回会合時点で付け加えられた日中関係の影響というのもリスクとして維持していますな。
・決意表明みたいな部分は良く良く見るとこの2回の会合で緩和推進とデフレ脱却への決意表現が強くなっています
以下の部分に関してはまあ毎度の決意表明みたいな部分ですが。
『日本銀行は、日本経済がデフレから早期に脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することがきわめて重要な課題であると認識している。この課題は、幅広い経済主体による成長力強化の努力と金融面からの後押しがあいまって実現されていくものである。こうした認識のもとで、日本銀行は、金融機関による成長基盤強化の取り組みおよび貸出の増加を支援するとともに、実質的なゼロ金利政策と資産買入等の基金の着実な積み上げを通じて、強力な金融緩和を間断なく推進していく。日本銀行としては、引き続き適切な金融政策運営に努めるとともに、国際金融資本市場の状況を十分注視し、わが国の金融システムの安定確保に万全を期していく方針である。』(今回)
『日本銀行は、日本経済がデフレから早期に脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することがきわめて重要な課題であると認識している。この課題は、民間企業、金融機関等の幅広い経済主体による成長力強化の努力と金融面からの後押しがあいまって実現されていくものである。』(10/30声明文)
『政府と日本銀行は、この課題を達成するために、それぞれの役割を果たしていく必要がある。日本銀行は、上述の認識に立って、強力な金融緩和を推進していく。(以下前回会合で出た例の「紙」に関連する説明なので割愛)』(10/30声明文)
念の為10月5日会合での声明文の該当部分も引用してみます。
『日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することがきわめて重要な課題であると認識している。この課題は、幅広い経済主体による成長力強化の努力と金融面からの後押しを通じて実現されていくものである。こうした認識のもとで、成長基盤強化を支援するとともに、強力な金融緩和を推進している。今後とも、資産買入等の基金の着実な積み上げを通じて間断なく金融緩和を進めていく。日本銀行としては、引き続き適切な金融政策運営に努めるとともに、国際金融資本市場の状況を十分注視し、わが国の金融システムの安定確保に万全を期していく方針である。』(10/5声明文)
ということで引用が長くなってしまいましたが、前回うっかり見落としておりましたが、デフレからの脱却という部分に前回から「早期に」という文言を入れてやる気元気井脇を強化しているのですね(汗)。でまあそれはそれとして、ワーディング的に言うと引用した部分の真ん中あたりになりますが、「間断なく推進していく」のが従来は「金融緩和を進めていく」だったのが、「強力な金融緩和を間断なく推進」という言い方になって、これまた表現が強くなっているというのが中々お洒落でして、まあ追加金融緩和のおかわりに関してもやる気を見せているとゆー所でございますな。
#以上引用が多目なのと長めなので読みにくいかもしれませんすいませんすいません
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2012/11/07
○10月1回目の決定会合では微妙に幾つかの論点が
先週金曜に出ていた議事要旨ネタで出遅れすいませんすいません。
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2012/g121005.pdf
執行部の報告部分も微妙にツッコミ所はあるのですが、まあそれはスルー致しまして『V.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』から。
・回復軌道に復するまでの時間
『景気の先行きについて、委員は、当面横ばい圏内の動きにとどまるとみられるが、国内需要が底堅さを維持し、海外経済が減速した状態から次第に脱していくにつれて、緩やかな回復経路に復していくとの見方で一致した。』
まあその時間軸がどうなっているのかという話は展望レポートであった通りですが・・・・・・・
『何人かの委員は、企業からのヒアリング情報などを踏まえると、海外経済の減速を背景に、本年10〜12
月の生産も弱めの動きにとどまる可能性が高いと述べた。』
ということですが・・・・・・・・
『緩やかな回復経路に復していく時期について、何人かの委員は、4月の展望レポートで示した回復時期から半年程度後ずれし、年明け以降になるとの見方を示した。』
というのがこの前まで総裁が会見で言及していた「半年程度」なのですが、良く良くこの部分を読みますと半年程度後ずれというのは「何人かの委員」の見通しでして、全員の意見だとか大勢見解だとかいう話では無かったというお話。
でまあ9月(この前10月とか書いたのですが間違いですすいませんすいません)の決定会合(=追加緩和実施した時)の記者会見では回復時期が「半年程度後ずれ」という話を総裁がしていた訳ですが、その翌月には展望レポートでその時間があっさり伸びてしまうというのは残念と申しますか何と申しますか。いやまあ質問来たので答えたにしても、10月1回目会合(前回会合から2週間)の時点でこういう話になって、6週間後には1年近く後ずれになったというのを見ますと、その前に「半年程度」とか思いっきり数字をピンポイントで出しちゃったのってどうなのよという所ではございます。
『多くの委員は、復興関連の公共投資が徐々にピークアウトしていくとみられる中、輸出や生産の動きが、企業の収益動向や雇用情勢を通じて、設備投資や個人消費にどのような影響を与えるかが、今後の重要なポイントになると指摘した。』
でまあその輸出と生産の判断を下げたので10月30日に追加緩和を実施、という流れですので、その辺のロジックはちゃっかり整合性が取れているという事実。
・物価に関して
『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比について、委員は、概ねゼロ%となっており、先行きは、当面、ゼロ%近傍で推移するとの見方で一致した。』
とまあこれはこれで良いとしまして、
『多くの委員は、基調的な物価がどのように推移するかは慎重に見極める必要があるが、この先数か月は、石油製品価格の動向が物価の前年比押し上げに働くとみられると述べた。』
ふーん。
『何人かの委員は、このところ、製造業を中心とする総労働時間の減少などからみて労働稼働率が低下している可能性があることや、当面、景気が横ばい圏内の動きにとどまるとみられることを踏まえると、その分、需給ギャップの改善ペースは緩やかとなり、物価の先行きパスも下振れることになるとの認識を示した。』
4月展望レポートの物価見通しのメインシナリオを踏まえますと、当然ながらこういうロジックになる訳ですな。
『このうち一人の委員は、2014 年度以降、遠からず1%に達するという、4月の展望レポートで示した見通しが実現する蓋然性はこれまでより低下してきていると述べた。』
キタコレ。
『ある委員は、大手スーパーにおける低価格戦略の拡がりが、消費者物価に及ぼす影響に注意する必要があると述べた。別の一人の委員は、企業の価格設定行動が変わっていくには、企業や家計の成長期待が高まり、そのもとで賃金や物価の上昇予想が強まっていく必要があるため、相応の時間を要すると指摘した。』
という事なのですが、相変わらず賃金が上がるような風潮にならないどころか下がる話ばかりは多いという状況で本当に物価が上がるのかという感もしますし、そういう中で物価が上昇するとしたら為替ルートのようにも思えるのですが、為替ルートで物価が上昇した時に賃金動向が相変わらずとなりますとただのスタグフレーションになるんじゃネーノとか暗い事を考えてしまいましたとさ。
・不動産の話とな
『複数の委員は、最近、大都市圏や被災地周辺において、地価の下げ止まり傾向が明確化してきていることを指摘した。一人の委員は、東京地区の良質な商業用不動産への関心が高まってきていることなどを紹介したうえで、不動産分野の動向は経済全体のマインドにも大きな影響を与え得ることから、引き続きしっかり点検していく必要があるとコメントした。』
ほほうという所ですが、複数の委員ということで大勢見解では無いとは言え、こんな話が合ったのねという事でメモ。
・先行きリスクの部分から少々
『何人かの委員は、今後、海外経済の減速が更に長期化するようなことがあれば、内需への影響を含め、わが国の景気回復の時期が一段と後ずれする可能性があると指摘し、このうち複数の委員は、生産や景気動向指数の動きなどを踏まえると、事後的に、景気の後退局面入りが認定される可能性も排除できないと述べた。』
『こうした点に関連し、多くの委員は、9月短観における2012 年度の設備投資計画をみると、例年のこの時期に比べて高めの伸びを維持しており、6月短観からも上方修正となるなど、今のところ、企業の投資スタンスは引き続きしっかりとしているとの認識を示したが、何人かの委員は、最近の資本財総供給の弱さなども併せて指摘した。一人の委員は、こうした動きに内需変調の兆しも窺われると述べた。そのうえで多くの委員は、今後、投資先送りの動きが拡がることがないか、企業の収益見通しと合わせ、十分注意してみていく必要があると述べた。』
ふむ。まあこの辺に関してもリスクが具現化しているという感じがしますが。
『ある委員は、震災以降のわが国のLNG依存度の高まりなどを踏まえると、今後、中東情勢が更に緊迫化した場合には、わが国の景気や物価に大きな影響を及ぼす可能性があると指摘した。』
ほほう。
『物価の先行きについて、別の一人の委員は、短期的なインフレ予想がなかなか上昇しない中、インフレ率が中長期的にみて安定的な水準(アンカー)に収束していくペースが遅くなる可能性については、十分な注意が必要であると述べた。』
物価については1名の委員が特にアガランチ会長リスクを意識してるという感じですが、何となく誰なのかが透けて見える気がします(^^)。
・フロービューとストックビュー
続きまして『W.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』からこの話。
『包括的な金融緩和政策の効果について、委員は、包括緩和が実体経済に及ぼす影響のうち、第1段階である金融環境への波及という点では、企業や家計が直面する金融環境は緩和した状態にあるとの認識で一致した。』
でまあこの第1段階第2段階の話は前回会合で打ち込まれた新貸出制度導入に繋がる話なのでございますが、まあそれはそれとしてここでの論点は「資産買入の効果に関するストックビューとフロービュー」でございます。
『こうした緩和効果の波及に関連し、一人の委員は、市場の中ではフローの資産買入れペースを重視している向きも少なくなく、前回会合において基金の残高目標が10
兆円程度増額されたものの、本年末までの資産買入れペースには変更がなかったことで、市場の反応が限定的となっている面はないかとの問題意識を示した。』
この論点、米国のQE実施以来延々とFEDの中の人たちが講演でお話をしておりましたが、一応米国的には「資産買入のストックを維持するとそれで効果がある」というような感じの説明になって、ストックビューの論点での話をしていた訳ですが、今回のQE3打ち込みの際には月の買入額を決めるものの、いつまで買入するか、即ち買入によって増加するストックの量については決めないで打ち込んでいるという意味でフロービューに近い話になっているというのが何とも梯子外され感が漂うのでございますが。
ちなみに、じゃあQE3(とその前から実施しているツイストオペ)に関してはストックビューを放棄しているのかというとそういう訳でも無く、資産買入の資産構成を変化させることによって効果を出しましょうという話をしておりますので、あくまでも注目は資産サイドの部分にあるとゆー所は変わらないのですけれども、従来の単純な「量で勝負」では無くなっているという点は何度も申し上げていますが注意したいですの。
でまあ一方で日銀の場合は資産等買入基金に関してはあくまでも「量で勝負」というストックビューの話をしているのですが、確かにまあ9月会合での買入拡大とか見るとフロービューにも配慮して要る部分もありますなあとか思ったのですが、こういう指摘もあったのねという所です。
実際問題としては「本年末までの買入ペースに変更が無かったから市場の反応が限定的」という事は特段無いとは思いますが、ただまあ9月の基金拡大後に皆さんがせっせと買入フローを計算して、「来年の前半に月当たり買入額がドカンと落ちるのは如何なものか」という指摘があちこちから上がったというのはその通りではございます。
ちなみに更に横になりますが、来年の前半の買入額が落ちる云々の指摘をしていた人たちって来年の後半に買入額が再拡大する話をあまり強調してなかったなあというのも片手落ち感が漂う話ではございまして、9月の買入拡大+基金期限の延長を行った時に、わざわざ来年後半に買入拡大しているのって、「来年後半に買入ペースが拡大しますので緩和は来年後半まで強化されるんですよ」というメッセージを出そうとしていたと思いますので、ちょっとその落ちだけの指摘というのも何だかなあとか思ったのですが、というのはまあ余談です。
『この点に関し、複数の委員は、金融緩和の効果については、基金の目標残高を増やすことに伴うストック効果が大きく、フロー効果はそれを補完するものとみておくべきではないかとの見解を示した。そのうち一人の委員は、ストック効果については、基金増額の決定と同時に出尽くす訳ではなく、その後、増額された目標残高に向けて、そのペースはともかく、実際に残高を積み上げていくことにより、日本銀行の政策姿勢に対する信認が徐々に高まっていく点にも効果を見出すことが出来ると述べた。』
ということで、まあ基本的にはストックビューの話をしているのですが、これって突き詰めて話をすると「じゃあ白川総裁時代に行った過去の輪番オペの「月当たり買入額の拡大」において緩和強化と言っていたロジックはどうなりますねん」というロジカルハラスメントが出来るという意味で日銀的にはこのストックビューとフロービューの話をゴリゴリ詰めて藪蛇にならないように願いたい物でございます(ちなみに俊ちゃんの時は「当座預金残高目標」は拡大しましたけれども、輪番の増額は1円もしてないのよね)。
・新貸出制度の布石
まあ先ほどありますように金融緩和の第1段階から第2段階へみたいな話がありましたが。
『続いて、包括緩和が及ぼす影響のうち、第2段階である金融環境から実体経済への波及について、議論が行われた。多くの委員は、金融環境はきわめて緩和的であるが、企業の投資や支出の積極化に十分繋がっていないとの認識を示した。』
ということで議論があるのですがそこはスルーしまして。
『何人かの委員は、第1段階から第2段階への波及を強めていくために、現在、日本銀行は、成長基盤強化支援資金供給などを通じて、中央銀行としての貢献を続けているが、今後は、企業向け貸出が実際に増加していくよう、金融機関の活動をより直接的に後押しする工夫を検討していく必要もあるのではないかとの見解を示した。』
ということで引用だけメモしておきます。
・前原さんキター
ということで前原さん登場の『X.政府からの出席者の発言』ですが、まあ折角なので全部引用しておきましょう。。
『・本日、委員も指摘されていた人口の減少や少子高齢化の問題は、日本経済の最大の制約要因だと認識している。政府としても、これだけ財政赤字が多い中で、予算の使い道を工夫しながら、少子化対策や社会保障の安定・充実に取り組んでいる。日本の経済を良くしていくためには、金融のみならず、政策や予算の使い道の変更、経済の体質を改善するための規制緩和など、様々な施策を総動員して日本の国力を如何に上げていくかが大事なポイントになると思う。
・わが国の景気は 、世界景気の減速等を背景として、輸出・生産が弱含むなど、回復の動きに足踏みがみられる。先行きも、当面は弱めの動きが見込まれ、世界景気の更なる下振れなど景気下押しリスクがあるため、警戒レベルを引き上げて注視する必要がある。物価は、下落テンポが緩和しているものの、緩やかなデフレ状況にある。
・そうした中、先日発足した野田第三次改造内閣は、デフレからの早期脱却、経済再生、中長期的な経済成長の実現を重要課題として位置付けている。政府は、デフレ脱却に向けた政策を強力に推進し、成長力を強化していく。
・デフレからの早期脱却に向け、政府と日本銀行は意思疎通を更に深め、密接に連携していくことが重要である。日本銀行には、政府の取り組みと歩調を合わせ、金融政策面からの最大限の努力をお願いする。まずは、日本銀行が当面目指すこととしている消費者物価上昇率1%をできる限り早期に実現し、結果を出すことがきわめて重要である。デフレ脱却が確実となるまで、強力な金融緩和を継続するよう期待する。また、米欧や新興国など海外の金融政策等の影響を含め、わが国の景気下振れリスクに対して、適切に対応頂くようお願いする。』
・・・・・・・まあこれ要旨ですし、事務局は日銀ですからアレですけど、しかし何か普通の話ですな。
・一方で財務省オソロシス
財務省からの出席者の発言というのもあるのですが、その中でこれはオソロシスというのが。
『・わが国経済は、これまで緩やかながらも回復を続けてきたが、足もと、世界景気の減速等を背景として、回復の動きに足踏みがみられる。世界景気の更なる下振れや、急速な円高の進行・高止まりを含む金融資本市場の変動等、景気を下押しするリスクも無視できない。特に、政府としては、昨今の急速な円高の進行・高止まりは、景気を下振れさせる重大なリスクと考えている。』
>昨今の急速な円高の進行・高止まりは、景気を下振れさせる重大なリスクと考えている
>昨今の急速な円高の進行・高止まりは、景気を下振れさせる重大なリスクと考えている
>昨今の急速な円高の進行・高止まりは、景気を下振れさせる重大なリスクと考えている
・・・・・・・・・・いやそういう風に考えているなら為替介入なんでしないのよとツッコミを入れたくなるのでございますが、返す刀でこういう話。
『・政府・日銀は、デフレ脱却がわが国における重要課題であるとの認識を共有し、これまでも緊密な情報交換・連携を図りつつ、政策努力を続けてきた。日本銀行は、「当面、消費者物価の前年比上昇率1%を目指して、それが見通せるようになるまで、強力に金融緩和を推進していく」との基本方針に従って、金融政策を運営していると承知しているが、物価上昇率は未だ1%に届いていない。引き続き、金融政策の姿勢が伝わるようコミュニケーションを十分図りながら、内外の経済・金融資本市場等の動向を見極めつつ、1%の早期実現に向け、継続的かつ、積極・果断な金融政策運営に取り組んで頂きたい。』
>1%の早期実現に向け、継続的かつ、積極・果断な金融政策運営に取り組んで頂きたい
>1%の早期実現に向け、継続的かつ、積極・果断な金融政策運営に取り組んで頂きたい
>1%の早期実現に向け、継続的かつ、積極・果断な金融政策運営に取り組んで頂きたい
と、こちらを軸に迫るというのがまあ正攻法なのですが、為替介入とかの部分はスルーしてきっちり攻める方だけ攻めるのが中々巧妙なロジックではございますな。オソロシス。
・麿の声???
でまあ何故か最後にこんなのが。
『これらの発言を受け、ある委員は、日本銀行としては、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰するよう、現在の緩和的な金融環境を最大限活用して欲しいと考えており、そのためにも、先般政府が策定した「日本再生戦略」の着実な実現を強く期待していると述べた。そのうえで、この委員は、日本銀行としても、政府と十分な意思疎通を図りながら、デフレからの脱却と物価安定のもとでの持続的な成長の実現に向けて、しっかりと使命を果たしていきたいと述べた。』
>「日本再生戦略」の着実な実現を強く期待している
>「日本再生戦略」の着実な実現を強く期待している
>「日本再生戦略」の着実な実現を強く期待している
まあ誰の発言だか判りませんが、麿が言い返してみたということでしょうかねえ(^^)。
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2012/11/06
○展望レポート(ただし基本的見解)再び参りますです(汗)
展望レポート(基本的見解)
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1210a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1204a.pdf(前回)
・回復メカニズムがどの程度遅れるのかという件
まずは『2.国際金融資本市場および海外経済』の海外経済見通し部分を読む。
『海外経済の先行きに関する中心的な見通しとしては、当面減速した状態が続くとみられるが、国際金融資本市場が総じて落ち着いて推移するとの想定のもと、減速した状態から次第に脱し、緩やかな回復に転じていくと考えられる3。』(今回)
『海外経済の先行きに関する中心的な見通しとしては、国際金融資本市場が総じて落ち着いて推移するとの想定のもとで、新興国・資源国に牽引されるかたちで、徐々に成長率が高まっていき、見通し期間中の年平均成長率は、過去の長期平均との比較で高めになると見込まれる2。』(前回)
ケツについている3だの2だのという脚注はURL先を見てちょという所ですが、IMFの経済見通しを参考につけている、という格好ですがまあそれは兎も角としまして、前回の展望レポートでは「見通し期間中の年平均成長率は、過去の長期平均との比較で高めになると見込まれる」と見通し期間中(2013年度まで)に高めの成長という見通しになっていますので、まあ普通に考えて海外経済が早期に立ち上がって平均を上回るペースで拡大することによって景気のドライバーになるという見込みになっている訳ですが、今回はその辺の時間軸的認識は華麗にスルーという内容になっています。
でもってその辺に関して国内景気の見通し部分である『4.わが国の経済・物価の中心的な見通し』の『(1)経済情勢』を見るとこうなります。
『わが国経済の先行きを展望すると、当面横ばい圏内の動きにとどまるとみられるが、国内需要が全体としてみれば底堅さを維持し、海外経済が減速した状態から次第に脱していくにつれて、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。この間、企業による内外の潜在需要の掘り起こしや政府による成長戦略の実行など成長力強化への取り組みの成果が徐々にあがり、企業や家計の中長期的な成長期待が見通し期間終盤にかけて緩やかながら高まっていくもとで、景気回復の持続性も増していくと想定している。』(今回)
『こうした足もとの状況も踏まえつつ、わが国経済の先行きを展望すると、新興国・資源国に牽引されるかたちで海外経済の成長率が再び高まり、また、震災復興関連の需要が徐々に強まっていくにつれて、2012
年度前半には緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(前回)
まずこの展望レポートの目先の見通しが「当面横ばい圏内」というのが(MPM声明文では目先の見通しの記述が無く、ここに記述されています)いやあのそうですかという気がするのですがそこのツッコミは兎も角として。
まあ大体説明が長くなっている時というのは(皆様の身に覚えがありますように^^)一般的に言っている事が苦しい場合というのが仕様でありますが、日銀文学を鑑賞する際もその辺は基本中の基本でございまして、「この間〜」以下の部分が所謂「政策効果を織り込んだ部分」という話ですが、まあ綺麗に言えば皆さんの政策効果で回復の持続性が高まるでしょうという話ですが、悪態をつくと鉛筆舐め舐めの余地が入る部分ですなという事で。
で、ここでも時間軸の話(前回は2012年度前半に緩やかな回復経路入り)が抜けていまして、いつ回復軌道に戻るのかの時期が明示されない上に、政策効果が高まって成長期待が高まるのが見通し期間終盤とか中々微妙なお話になっています。
で、その景気展開の説明なのですが・・・・・・・・
『以下やや詳しく述べると、2012年度下期から2013年度にかけての景気展開については、輸出や鉱工業生産は、海外経済の減速が長引くもとで、当面弱めに推移するとみられる。こうした輸出・鉱工業生産の弱さは、製造業部門の支出活動を幾分抑制する方向に作用すると考えられる。国内需要については、防災・エネルギー関連の投資を含めた広い意味での復興関連需要などに支えられて、全体としてみれば底堅さを維持するとみられるが、エコカー補助金の終了に伴う乗用車購入の反動減が見込まれるほか、震災後のペントアップ需要も徐々に減衰していくとみられる。このため、国内需要が輸出の弱さを補うほどの増加を続けるとは考え難く、景気は当面横ばい圏内の動きにとどまるとみられる。』(今回)
これで横ばいで止まるのかよという気もしますがそれはそれとしまして。
『もっとも、その後は、海外経済が減速した状態から次第に脱していくにつれて、輸出や鉱工業生産は持ち直しに転じ、経済全体で前向きの支出活動も徐々に強まっていくと予想される。2013年度の成長率は、復興関連需要による景気押し上げ効果が公的需要中心に徐々に減衰していくものの、海外経済の持ち直しが次第に明確になるにつれて、企業収益や雇用者所得の増加を伴いながら国内民間需要がしっかりとした伸びとなるため、潜在成長率をはっきりと上回ると考えられる。』(今回)
ということで、まあ2013年度中のどこかで海外経済の持ち直しが明確になってくる、というのが今回の展望レポートで示された海外経済の見通しという話になりますが、先ほどの4月展望レポートでの経済先行き見通しの全体感説明部分と比較しますと、2012年度前半には緩やかな回復軌道入り、となっておりましたので、つまりは海外経済の拡大軌道入りするまでの見通し期間は前々回の決定会合後の総裁会見での説明では「半年程度」とのコメントがあったのですけれども、ここの見通しを見ますと普通に考えて半年では効かず、1年近く遅れるという見通しになりますぞなもしという話と見えますがどうでしょう。
・消費税増税の影響についての記述には配慮が欠けているような気がするのだがどうでしょうかねえ
『2013年度下期には、消費税率引き上げ前の駆け込み需要が相応の規模で発生すると予想されるため、一時的にかなり高めの成長となると考えられる7。』(今回)
そういやここの部分で日銀ケシカランとか噴き上がっている人がいるとかいないとか聞いたような気もしないでも無いですが、7番とありますように脚注がございますのでそれを読まないといけません。
『7 消費税率の引き上げは、経済に対して、主として税率の引き上げ前後の駆け込み需要の発生とその反動(異時点間の代替効果)を通じて、影響を及ぼすと考えられる。物価上昇に伴う実質所得の低下を通じた影響も考えられるが、やや長い目でみて家計はわが国の厳しい財政事情を踏まえ、将来の消費税率引き上げをある程度織り込んで行動しているとみられることを勘案すると、その影響は所得の減少から機械的に計算されるほどには大きくならないと予想される。以上を踏まえて、今回の消費税率引き上げが実質GDPに及ぼす影響について定量的に試算すると、2013年度の成長率を0.3%ポイント程度押し上げる一方、2014年度の成長率を0.7%ポイント程度押し下げると見込まれる。なお、今回の引き上げにおいては、自動車や住宅に関する激変緩和措置の取扱いなどの詳細が現時点で固まっていないこともあり、経済への影響は不確実性が大きく、上記の試算も相当な幅をもってみる必要がある。』(今回)
ということですので、トータルすると影響はマイナスですよと思いっきり書いてあるのですが、そういう所を読まないで「日銀はデフレ増税派な上に消費税増税が経済にプラスというトンデモを唱える馬鹿」とか噴き上がる人が発生するのは困ったもんですな。
『2014年度については、海外経済が過去の長期平均を上回る成長を実現するほか、企業収益の改善や成長期待の高まりを背景に低金利の持つ景気刺激効果も強まっていき、これが国内民間需要を下支えするとみられることなどから、消費税率引き上げに伴う変動を除いた基調でみれば、潜在成長率を幾分上回る成長経路をたどると考えられる。ただし、年度の成長率は、上期を中心に消費税率引き上げ前の駆け込み需要の反動が出ることから、小幅のプラスにとどまる可能性が高い。』(今回)
ただまあ何ですな、展望レポートであまり暗い話を書くのも如何なものかというのは判らんでも無いのですが、消費税引き上げ前の駆け込み反動云々の話は確かにこの部分に記述があるのですけれども、脚注にあるように「トータルするとマイナス」というのを何で本文の方に記載しないのかと思うのですよね。
つまり、まあこの記載自体は仰る通りではあるのですが、大体からしてあたくしのような(本職ではない)マニアでも例えば背景説明含めた全文とか中々読むヒマ無い(まあ海外系の英文ドキュメント読みに時間が掛かっているからというあたくしの語学力の問題があるのだが、汗)訳でして、そこまでのマニアじゃない人とか、それ以前の問題として原文に当たらずに報道ベースで見て反応するだけの人とかの方が世の中では圧倒的に多いと思われる、とまあ斯様な点を勘案致しますと、何で本文中の記載で「消費税増税の影響はトータルすると実質GDPにマイナス寄与」というのを入れておかないのだと思うのですよ。2013年度のプラス寄与部分は「一時的に高めの成長」という目立つ説明をしているのに対して、それより大きいマイナス寄与部分が「駆け込み需要の反動」で済ませてしまうというのは、明るい見通しを書きたいという気持ちは判るものの、やはりこの展望レポートを精読しない人とかに対して誤認を与える(消費税増税の影響を日銀がプラスであるとしている、と誤解されるという意味)のではないかと思います。
つーことで、まあ毎度の事なのですし、人間心理として判らんでも無いのですが、自分たちの都合の良いというか景気の良い材料に関してはプラスで書くけどマイナスの方はあまり目立たないように書く、というのもまあ程々にしないといかんのじゃないかと思いますけどどうでしょうかね。
#以上ちょっと話が逸れましたが元に戻りまして・・・・
・まあ結局回復の時間軸は「時期が遅れるがその時期はワカランチ会長」とのことで
とまあそんな感じで今回の見通しの期間中の展開が進むのですが、最後にこのような記述が。
『なお、わが国経済が横ばい圏内を脱し、回復に向かう時期については、前述のとおり海外経済の減速した状態が強まっていることなどを受けて、従来の想定よりも後ずれする見込みである。今回の見通しでは、こうした回復時期の後ずれを織り込んだことにより、2012年度の成長率は、7月の中間評価時点の見通しと比べると、下振れしている。2013年度の見通しについても、消費税率引き上げ前の駆け込み需要の影響を除いて考えると、幾分下振れとなる。』(今回)
ということで、その時期については記載はないものの、先ほど引用した部分と前回分を比較して見ると、まあ半年は超えまして1年弱(下手したら1年)という事のようですが、遅れるとはいえ一応回復シナリオは維持となっておりますぞなもしというところです。
でまあこの記述に相当する前回の展望レポートを引用してみましょう。
『すなわち、輸出が増加基調に復するほか、復興需要の増加が公的需要・民間需要の両面で、年度を通じて景気の押し上げに寄与すると考えられる。こうしたもとで、生産から所得・支出への波及メカニズムも徐々に強まるため、2012
年度全体をみると、比較的高い成長率となることが予想される。2013 年度については、復興需要による景気押し上げ効果が徐々に減衰していくことなどから、成長率は、2012
年度対比では幾分鈍化するものの、海外経済が高めの成長を続けるもとで、潜在成長率をはっきりと上回る成長が続くと考えられる4。』(前回)
ちなみに脚注4は潜在成長率の話で、0%台半ばという置きになっています(これは前回も今回も同じ)。
『1月の中間評価時点の見通しと比べると、2012 年度および2013 年度の成長率は、欧州債務問題が金融市場に大きな混乱をもたらすリスクは低下し、市場環境がやや改善したことなどから、2012
年度を中心に、幾分上振れて推移すると考えられる5。』(前回)
・・・・・・・何が凄いと申しましても、今回と前回でこの見通しの展開部分の説明量が全然違っている事でございます。つまり、今回は景気見通しの期間中の展開部分につきまして、丸々1ページ分少々(脚注が多いので稼いでいる分もありますが、消費税の話とかは見通しに直結しているのでその部分も含めると軽く1ページ半を費やしています)となっておりまして、前回はページの半分も使っていないとう説明。
まあ先ほども申し上げましたように、前回と比較してここまで説明がクソ長くなるというのも中々アレなケースでございまして、まあつまり回復シナリオに関してかなり厳しいですなあと見ているとゆーのは把握致しましたが、一方でお先真っ暗物価はアガランチ会長というシナリオをメインとして出すのも如何なものかというのも判らんでもない(それ言い出したら大体世界の中銀含め政策当局の皆さんその傾向はあるのですから)という苦悩が長々とした説明部分に反映されている、とまあそんな話になるんでしょうな。
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2012/11/02
○展望レポート関連である
今日は基本的見解部分で勘弁。
日本語版
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1210a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1204a.pdf(前回)
英語版
http://www.boj.or.jp/en/mopo/outlook/gor1210a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/en/mopo/outlook/gor1204a.pdf(前回)
ということで展望レポート基本的見解でございますが。
・物は試しに佐藤さんと木内さんが反対した部分の英文を読んでみる
物価が「着実に近づいて行く(前回が「遠からず達する」)」と金融政策のセット部分については『VI.
Conduct of Monetary Policy』の所になります。
『The year-on-year rate of change in the CPI, excluding the effects of
the consumption tax hike, is expected to hover around 0 percent for the
time being and start rising gradually thereafter as the aggregate supply
and demand balance improves. In fiscal 2014, it appears likely that it
will move steadily closer toward the Bank's "price stability goal
in the medium to long term" of 1 percent for the time being.』(今回)
『On the assumption that medium- to long-term inflation expectations remain
stable, the year-on-year rate of change in the CPI is expected to gradually
rise to a range of above 0.5 percent and less than 1 percent toward the
latter half of the projection period as the aggregate supply and demand
balance improves. Thereafter, it will likely be not too long before the
rate reaches the Bank's "price stability goal in the medium to long
term" of 1 percent for the time being.』(前回)
これね、まあ前回と比較という話とは別にしまして考えますと、英語の表現と日本語の表現って同じなのは間違いないのですが、ワーディングを見ると日本語よりも英語の方が明瞭になっているのがチャーミングというか何というか。
つまりですね、英語の表現だと上記のように、1%の定義が「足元の数字」じゃなくて「中長期的な物価としての1%」という言い方を明瞭にしているのですが、日本語の表現はご案内の通りでございまして、今回分の該当箇所はこうなっています。
『消費税率引き上げの直接的な影響を除いた消費者物価の前年比は、当面ゼロ%近傍で推移した後、マクロ的な需給バランスの改善などを反映して、徐々に緩やかな上昇に転じ、2014年度には、当面の「中長期的な物価安定の目途」である1%に着実に近づいていくとみられる。』(今回)
これと、物価見通しとしての2014年度平均+0.8%という数字を出されると、ここでの1%という表現が普通に足元の数値としての1%であるとしか読めない訳でございまして、ロンガーランの物価数値なのか足元の物価数値なのか判らんぞなもしというか、普通に読んだらこれロンガーランの1%とは読めないでしょと思うのですよ。
だからこそ昨日引用したように、総裁記者会見での物価に関する質疑でも2014年平均が+0.8%で「着実に近づいて行く」のだったら2015年は1%ですよねという質問が飛んできて、それって中長期的な物価安定の目途を達成ですかそうですか、という風に解釈されやすいと思うので、ここのワーディングってもう少し工夫の余地があるのではないかと思うのですよ。このまままともに解釈すると時間軸が全然長くないという話になっちゃいますし、日銀は中長期的な物価安定の目途達成とか直ぐに言い出すんじゃないかとか思われるリスクを高めているだけのように思えます。
で、1%云々の英文表現を見ると前回が「it will likely be not too long before
the rate reaches the Bank's "price stability goal in the medium to
long term" of 1 percent for the time being.」で今回が「it will move
steadily closer toward the Bank's "price stability goal in the medium
to long term" of 1 percent for the time being.」なので、確かに英文で見ると1%に達するまでの見通しが明言状態から近づくでしょう状態になっているので、表現としては後退しているというのがまあ判るのですが、日本語の表現の場合はそもそもそこが判りにくい上に、昨日も申し上げておりますように数値としての見通しが2014年度で+0.8%中心という置きをされると、2014年度後半には+1%乗せですよね物価安定の目途達成ですよねという解釈をされやすいでしょとゆー話。
どうもここのワーディングに連日拘っておる訳ですが、やはりこの辺りの書きっぷりをもうちょっと工夫した方が良いのではないかと思うのでああだこうだ書くあたくし。昨日会見ネタの所で申し上げましたように、この2014年度+0.8%という数値に「政策効果を織り込む」成分が強く入ったりしてるんじゃネーノというのがあるせいか、どうも展望レポートの中の見通しも随所に微妙にそれ強いんじゃねえのというのが見受けられるような気もせんでもないですし、何かねえ感がするという一環でこの辺りのワーディングも気になる、とまあそういう事ですな。
でまあ強力な緩和を推進云々ですが。
『First, the Bank aims to achieve its "price stability goal in the
medium to long term" of 1 percent for the time being in terms of the
year-on-year rate of increase in the CPI through the pursuit of powerful
monetary easing, conducting its virtually zero interest rate policy and
implementing the Asset Purchase Program mainly through the purchase of
financial assets.』(今回)
『First, the Bank aims to achieve its "price stability goal in the
medium to long term" of 1percent for the time being in terms of the
year-on-year rate of increase in the CPI through the pursuit of powerful
monetary easing, conducting its virtually zero interest rate policy and
implementing the Asset Purchase Program mainly through the purchase of
financial assets.』(前回)
ということで、前回と表現に変化は無く、さっきの部分とセットでみると「ロンガーランの1%」は2014年度ではまだ達することがなく、その先は「着実に近づく」とは言っているものの、前回のように「not
too long」とかいう表現が抜けているので、したがって2014年度一杯は強力な金融緩和を推進しますという結論になる(はずなのに買入のコミットメントをしているのは2013年末までというのも微妙にアレですし、まあそういう質問も総裁会見でありました)のですが、日本語の表現では前段の1%云々の部分が足元の数字なのかロンガーランの数字なのかが判りにくい事から、想定される時間軸が英文と日本文で微妙にこれ違いませんかという気がしますがどうなんでしょ。
でもって総裁会見での説明を通して読む(といいつつまだ成敗してませんなすいませんすいません)、どうも日本語の正本よりも参考扱いの英文の方のニュアンスで総裁は話をしているようにも読めますし、微妙にそうじゃなさそうな部分もあったりしてわけわかんねーという感じなのですが、ここは時間軸に関する部分なので、もう少し全体として判りやすい言い方をした方が良いと思うのですが如何なもんでしょうかねえ。
#まあ曖昧にしておいてフリーハンドを確保したいという気持ちも判らんでも無いが、今はそんな事言ってる場合じゃないでしょと思いますので・・・・・
・リスクバランスチャートがしらっと変更
図なので磔の刑が出来ないという事で、基本的見解の最終頁を見てちょという所ですが・・・・・・
ご覧になると判るように、リスクバランスチャートが今回若干BOEのファンチャートっぽくなっております。で、上位○%とかの分布で色を塗っていますので、例えばCPIに関しての2014年度の予想ですが、全体のレンジが+0.2〜+1.0で上下1名控除後の大勢見通しが+0.4〜+1.0となっていますが、そこに分布が見えるので途中の票の入り方が何となく透けて見える感じです。
で見ると、リスク認識は明らかに下なのですが、政策効果とやらを織り込んだ人が結構いやがるなあとか思うのでございますが、見通しのレンジに対して中央値が+0.8%というのは、そらまあ投票集計的にはそういう事になるんでしょうが、分布をみるとうーむという感じではございます。
とか何とか書いていたら時間が無くなったので、景気見通しだのその辺の話と総裁会見ネタの続きは来週でご勘弁くらはい。
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2012/10/31
お題「決定会合レビューでござる」
まあごちゃごちゃとありましたので色々と。
○しかしまあ時間が掛かりましたな
金融市場調節方針に関する公表文 2012年
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/state_2012/index.htm/
『2012年10月30日 金融緩和の強化について(14時46分公表) [PDF 305KB] 』
ということで結果発表は14:46という事で、ご案内の通りに展望レポートの公表が30分後ろ倒しになって総裁会見が15分後ろ倒しになりましたけれども、まあ散々引っ張ったので為替市場はやや円安(と言っても80円乗せ程度だが)に時間の経過と共に振れるわ、株式市場は為替を見て平均株価先物で9000円手前近辺にじり高になるわとやっておりました。
で、結果出たのは良いのですが、あまりにも引っ張った上に何か情報ベンダーを見るとややこしいヘッドラインがゴタゴタ出てきたということで、ナンジャコリャとなるのが人情というもので、その人情が殺到した結果日銀のサイトへのアクセスが鬼のように重くなり(かく言うあたくしも暫くエラーで往生しまっせ〜状態)という事になりましたが、どうもAPP拡大11兆円という数字が、事前にどこぞの電波浴新聞辺りが20兆とか意味不明の煽りをしたせいもあってインパクトがイマイチだったのかどうか知らんですが、まあその数字の件と、他に色々とゴタゴタと文書が出たり貸出制度が出たりで何が何やらと混乱したせいもあるのかどうか知らんですが、ドル円は80円近辺からいきなり79円30銭位まで(最近の為替市場の値動きからしたら)急落ちっくな円高になってしまい、それを見て株価も指数先物で8800円レベル位までどどーんと落ちるの巻。
債券は最初どうしたもんかという感じで、0.1%の貸出制度で4年だのとかいうヘッドラインで確りしかかったような感じもありますが、APPは拡大されたものの、まあ債券関連の買入については債券的には予想通りだったという事だったのか、単に何かよく判らないからクローズしたかったのかどうか知らんですけど、前場安値の1銭上まで押し込む(47銭近辺から28銭近辺まで下げたでござるの巻)という動きになりましたが、引けに掛けては先物とか10年とか戻って結局144.40(+0.18)で終了の巻となりました。
でですな、今回は以下に申し上げるように色々と変な物がでたせいもあって、本来もっと注目されないといけない声明文での経済現状認識の大下げとか、市場の煽り文句は兎も角として、実際問題として総合指数型ETFの市場規模というか流通残高から勘案するとそんなに買って大丈夫かというレベルになりそうなETFの5000億円追加購入という、他が無ければ結構目立つネタがスルーされてしまったのが日銀クオリティと申しましょうか、それよりは前何とかさんがドヤ顔で首を突っ込むとロクな事にならない(どこぞの偽メール事件に始まり、どこぞのダムとかどこぞの離島の侵犯船問題とか)の法則が炸裂して日銀残念無念と言った所では無かろうかと存じます。
○では本線から参りますので声明文比較:景気の現状認識を下げるが先行きの所が良くワカランチ会長
今回の声明文
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k121030a.pdf
前回(10/5)の声明文
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k121005a.pdf
APPとか貸出支援何とかの話は後ほど行いますのでまずは声明文相当部分から。
・景気認識(その1)海外経済は減速感を高める
『海外経済は、減速した状態が強まっている。国際金融資本市場では、欧州債務問題を背景とする投資家のリスク回避姿勢はやや後退した状態が続いているものの、今後の市場の展開には十分注意していく必要がある。』(今回)
『海外経済は、減速した状態がやや強まっている。国際金融資本市場では、欧州債務問題を背景とする投資家のリスク回避姿勢はやや後退した状態が続いているものの、今後の市場の展開には十分注意していく必要がある。』(前回)
一瞬同じかと思いますが、前回は減速に関して「やや強まる」という表現だったのが「強まる」となっておりまして、これは即ち海外経済の減速感が高まっているということです。
・景気認識(その2)輸出や鉱工業生産を下げ、内需にも悪影響という認識を示す
ちょうどまた間の良い事にというか悪い事にというか、当日朝に公表された鉱工業生産が華麗にうんこな内容でございましたが・・・・・
『こうした状況のもとで、わが国の輸出や鉱工業生産は減少し、これまで堅調に推移してきた内需にもその影響が一部及び始めている。』(今回)
『輸出や鉱工業生産は、海外経済の減速した状態がやや強まるもとで、弱めとなっている。一方、国内需要は、復興関連需要などから底堅く推移している。』(前回)
ということで、この辺思いっきり下がっておりましてその結果ですが・・・・・・・
・景気認識(その3)総括判断を引き下げる
『このため、景気は弱含みとなっている。』(今回)
『わが国の景気は、横ばい圏内の動きとなっている。』(前回)
通常は総括判断が最初にあるのですが、今回は追加緩和の実施というのもあったりしましたので、語順がいつもと違いまして、その辺に関しては今回の声明文の語順に合わせております。
・景気の先行き見通しについては不確実性のコメントのみで、こちらも下方リスク物拡大
『先行きについては、欧州債務問題の今後の展開や米国経済の回復力、新興国・資源国経済の持続的成長経路への円滑な移行の可能性、日中関係の影響の広がりなど、日本経済を巡る不確実性は引き続き大きい。金融・為替市場動向の景気・物価への影響にも、引き続き注意が必要である。』(今回)
ということで、リスク要因の話はあれども見通しの話は無しということで、これは展望レポートの方では中長期見通しが出ますけど、金融経済月報は月初のMPMで作っていますのでちょっと比較の仕様がありません。
『先行きのわが国経済についてみると、当面横ばい圏内の動きにとどまるとみられるが、国内需要が底堅さを維持し、海外経済が減速した状態から次第に脱していくにつれて、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(前回)
というのが前回の先行き見通しで、リスク要因はこうなっています。
『リスク要因をみると、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復力、新興国・資源国の物価安定と成長の両立の可能性など、世界経済を巡る不確実性は引き続き大きいほか、金融・為替市場動向の景気・物価への影響には注意が必要である。』(前回)
でまあ今回の声明文での話と比較してみますと、新興国資源国に関しては従来は「物価安定と成長の両立の可能性」とあったものが「持続的成長経路への円滑な移行の可能性」とありまして、これは即ち新興国資源国において、成長という認識から、持続的成長になれるかどうかですねえというステージに変化しているという事でこれまた下げな上に、今回は「日中関係の影響の広がり」というのも入っているということで、下方リスク拡大という格好になっておりますな。
・謎の文書に関連して政府への要望が入る
今回の第6パラグラフになりますが。
『政府と日本銀行は、この課題を達成するために、それぞれの役割を果たしていく必要がある。日本銀行は、上述の認識に立って、強力な金融緩和を推進していく。日本銀行としては、政府が「デフレからの脱却のためには、適切なマクロ経済政策運営に加え、デフレを生みやすい経済構造を変革することが不可欠である」との認識のもとで、日本経済の成長力強化の取組を強力に推進することを強く期待する。』(今回)
まあ政府もやれやゴルァ!としたのは結構な話ではありますが・・・・・・・・
『こうした両者の取組について、共有している認識を改めて明確に示すため、本日、政府とともに「デフレ脱却に向けた取組について」を公表することとした(別紙3)。このことは、それぞれが行う政策をより効果的なものとしていくと考えている。』(今回)
この謎文書に関しては後ほどコメントというか悪態を申し上げますが、また前原かという感じでございまして、この人が首を突っ込んだ案件はその場あるいは近い将来地雷化するの法則からしますと、何だかなあという文章がでましたねという所です。
○APPの拡大なんですけどね
声明文3ページ目の(別紙1)がAPPの増額内容に関してです。
声明文本文の最初のパラグラフにもありますように、今回の買入拡大は・・・・・・・
長期国債:5兆円程度
国庫短期証券:5兆円程度
CP等 :0.1 兆円程度
社債等 :0.3 兆円程度
指数連動型上場投資信託:0.5 兆円程度
不動産投資信託:0.01 兆円程度
となっております。CPとか最早買入せんでええぞなもしという所ではあるのですが、何気に今回ETFの買入を5000億円打ち込んでいるのは市場規模的に頑張っていると思うのですが、他に色々あって霞んだのは残念というのはさっき申し上げた通り。
あと国債買入のペースについてまた計算してみた(ただし電卓片手にやっつけで計算しているので間違ってたらゴミンナサイ。計算ロジックは以下の通りだから自分で計算できるでしょ)ので一応書いてみる。
データ元はこの辺。
営業毎旬報告(平成24年9月30日現在)
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/acmai/release/2012/ac120930.htm/
日本銀行が保有する国債の銘柄別残高(2012年9月28日現在)
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/mei/release/2012/mei1209.pdf
でまあこちらの銘柄の額面残高を償還毎に集計するとこうなる(はずですが間違っていたらスイマセン)のですけどね。
2012年12月までの償還:4898億円
2013年1月〜6月の償還:12529億円
2013年7月〜12月の償還:46966億円
2014年1月〜6月の償還:80847億円
2014年7月〜12月の償還:12549億円
2015年1月〜6月の償還:22663億円
2015年7月〜12月の償還:43億円
んでもって、9月30日時点でのAPPでの長期国債買入残高が営業毎旬報告の別表2にありますように18.1兆円程度ある(ちなみにこれは簿価ベースの数字で、上記のは額面ベースなので微妙に違います)のですが、ここから10月の買入が4回で合計3.1兆円の購入となっておりますので、10月末時点での買入残高が21.2兆円。12月までに4900億円の償還があるので、それを差し引くと今のラップは20.7兆円。年末の目標残高24兆円に対して残り3.3兆円の買入が必要になりますので、11月12月の買入は月に1.7兆円程度の買入を行えばヨロシという計算になりますな。
でもって来年前半ですが、今回の基金国債買入の割り振りは何故か前半に全部振らないで2.5兆円ずつ前半と後半に拡大分を振っていますので、目標31.5兆円なので残高拡大での必要額が7.5兆円、償還(買入は1年超なのでここの償還額は確定)は1.3兆円弱となりますので8.8兆円の買い増しが必要となり、6で割ると月に1.5兆円弱の買入ペースになります。
来年後半に関しては償還額が増える可能性も無いでは無いですが、普通に考えると残存1年はあまり入らないと思いますのでまあこの償還額と思いますと、目標拡大額が7.5兆円で償還が4.7兆円になりますので買い増し額が12.2兆円になり、月に2兆円強の買入ペースになりますな。
でまあ目標達成後も残高維持という話になりますと、2014年の前半は黙っていても8兆円の償還手当の買入が必要になりますので、結局月に1.4兆円弱の買入ペースになるという計算。
恐らく買入で入りやすいのは2年超の部分と2年カレント近辺になると思われますが、そうなると今後の買入では2014年後半以降の償還物が打ち込まれやすくなると思いますが、いずれにせよ基金残高を維持するだけでも結構な買入を継続する、という話になる訳で、そんな中で長期国債の買入額をもっと増やせ云々という話をするのってお前らこういうフィージビリティー考えているんかいなと小一時間という気はする訳です。
まあいずれにせよ、今回の拡大は11月以降の買入ペースという意味ではスムージングな割り振りにも見えるのですが、何気に来年後半の方が厚い割り振りになっておりまして、来年後半になると買入ペースが加速するというお洒落な配分になっているのはどういう意味なのでしょうかねとゆー所ですが、ありそうな推測ではありますが、まだ来年前半の買入拡大余地(つーても5兆はもう物理的に無理なので買入の期限を半年延長しながらとかしながら嵌めるのかな)が辛うじて残っているという事で念のため温存したのかも知れませんが、後半にペースが拡大する形になるというのも「先々の買入ペース拡大を確約して買入が強力に続く事を示す」という所ではあるかと思います。
○企業向け貸し出し云々は物凄く効くのかニーズが無いのかよく判らんのですが・・・・・・
声明文にこんなのがありましたが。
『(2)貸出増加を支援するための資金供給の枠組みの創設(全員一致)
金融機関の一段と積極的な行動と企業や家計の前向きな資金需要の増加を促す観点から、金融機関の貸出増加額について、希望に応じてその全額を低利・長期で資金供給する。資金供給の総額の上限は設定せず、無制限とする。議長は、執行部に対し、この新たな資金供給の枠組みについて具体的な検討を行い、改めて金融政策決定会合に報告するよう指示した(骨子素案は別紙2)。』
・・・・・・・・無制限とアピールしたかったんですね判ります。
で、別紙2ですが。
『「貸出増加を支援するための資金供給」骨子
・取引先金融機関の貸出増加額(基準時点からのネット貸出増加額)について、当該金融機関からの希望に応じて、その「全額」を日本銀行から資金供給する。
・ 本措置による資金供給の総額の上限は、設定せず、「無制限」とする。
・ 貸付金利は、貸付実行時の誘導目標金利(現在は0.1%とする。)による長期固定金利とする。
・ 貸付期間は、各取引先の希望に応じて、1年、2年または3年とし、最長4年までロールオーバー可能とする。
・ 本措置の開始後、1年程度の間、適宜の頻度で資金供給を行う。
・ 資金供給の方式は、共通担保を担保とする貸付けとする。
・ 対象先は、預金取扱金融機関とする。
・ 貸出増加額を算出する対象与信は、対民間(金融機関向けを除く)貸出とし、円貨建て・外貨建てを含む。
・ 本措置による資金供給と「成長基盤強化を支援するための資金供給」を合わせて、「貸出支援基金」とする。』
ということで詳細は次回以降の会合で決定のようですが、これはFLSチックではあるのですが、FLSの場合は貸出先に対していちゃもん付けたり、プログラム参加した銀行の貸出動向を公表したり、貸出が伸びないとFLSで出したものに対してペナルティー金利を適用したりと、割と喧しい制度であるのに対して、日銀の出した今回の資金供給はかなりの「掴み金」的な風情を漂わせるものがございます。
つまりですな、金融機関向けを除く対民間貸出の増加額について、資金使途を問わずに4年まで0.1%まで貸出をしますよというのはこらまた結構な大盤振る舞いという話。しかも円貨外貨問わずということですから、どこぞの携帯電話会社の海外買収資金だろうが、REIT向けの貸出だろうが、じゃんじゃんオッケーですよという事ですし、まあ金融機関は預金超過で金イラネというのはあるかも知れませんが、それはそれとして0.1%で最大4年まで調達サイドをFIX出来るのはこらまあオイチイ話である、という面もありますので、これはこれでワークしたらかなりの大漢和辞典じゃなかった大緩和になると思いますが、銀行さんがどういう反応するか次第ですわな。
記者会見では(会見要旨は今日出るので続きは明日)全部出たら15兆円との事ですが、さてどうなりますやら。
・・・・・・・・・でもって、このスキームに関してはまたまた共通担保方式の貸出を行うという事でして、銀行の担保繰りがまあ足元で逼迫というような話は聞いていませんので特段の問題は無いと思うのですけれども、今後の基金国債や基金短国の買入拡大に加えて、全力で今回のスキームがワークした暁には更に担保が使われるという事になります。
まあ国債発行自体も増えていますし、また為替介入でもやってくれれば更に短国の発行が増えてくれるとは思いますが、日銀がこの調子で色々と資金供給をしてくると少なくとも共通担保オペの固定金利物のニーズが落ちてきたりするでしょうし、まあ短期市場的な悪夢としては量的緩和で当座預金30兆円とかやってた時にターゲット達成の為に無理無理短国の買入をした結果、短国市場が割引債なのに100円入札という勘弁してください状態になり、担保不足で有担保コール市場が瀕死状態となるとかゆーのがございますので、まあ買入等もほどほどにという感じであります。つーかCP買入増やさんでもええちゅうに。
あとですね、何気に言えるのですけど、今回のスキームに関しても固定金利オペと同様で「貸出実行時の金利が適用」という形になっておりますので、つまりこれは途中で利下げをした場合には日銀のこれらの資金供給の趣旨を踏まえて一生懸命応札した金融機関の梯子を盛大に外すという事になりますので、益々付利下げとかの措置が遠くなると思うのですが、相変わらず付利下げをすると当座預金に滞留している資金が市中に出回って云々という資金需給の基本すら抑えない議論をする方が本職の方々の中でも存在するのが甚だ遺憾の極みでございます。
○謎の文書ですがまあ前原さんの法則炸裂という感じですなあ
声明文別紙3にもありますが、この文書は何ですねんという感じで。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k121030b.pdf
デフレ脱却に向けた取組について
『政府及び日本銀行は、我が国経済のデフレ脱却に向けて、当面、以下のとおり取り組む。』
ということでうだうだとクソ長い文章がありますが一応全部引用である。
『1. 政府及び日本銀行は、我が国経済にとって、デフレから早期に脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することが極めて重要な課題であるとの認識を共有しており、一体となってこの課題の達成に最大限の努力を行う。』
はあそうですか。
『2. 日本銀行としては、上記1.の課題は、幅広い経済主体による成長力強化の努力と金融面からの後押しがあいまって実現されていくものであると認識しており、政府が成長力強化の取組を強力に推進することを強く期待する。』
まあこういう共同文書出すんですから「政府もやれやゴルァ!」という文言はいれます罠。
『日本銀行としては、「中長期的な物価安定の目途」を消費者物価の前年比上昇率で2%以下のプラスの領域にあると判断しており、当面、消費者物価の前年比上昇率1%を目指して、それが見通せるようになるまで、実質的なゼロ金利政策と金融資産の買入れ等の措置により、強力に金融緩和を推進していく。その際、金融面での不均衡の蓄積を含めたリスク要因を点検し、経済の持続的な成長を確保する観点から、問題が生じていないかどうかを確認していく。』
従来から説明していることですね。
『日本銀行は、『経済・物価情勢の展望』(平成24年10月30日)において消費者物価の見通しを公表した。日本銀行としては、引き続き「1%」を目指して、強力に金融緩和を推進していく。今後の物価動向については、「デフレ脱却等経済状況検討会議」において定期的に報告する。』
何じゃこの会議と思ったらこんなのがあるのね。
http://www5.cao.go.jp/keizai1/deflation/
デフレ脱却等経済状況検討会議
『また、日本銀行は、金融政策運営の考え方を市場にわかりやすく説明していく努力を続ける。』
判りやすく説明するよりも、麿の麿節を止めさせて、ハッタリをかまして配慮をしたプレゼンをさせればそれだけでこうかはばつぐんだではないかと思いますけどねえ・・・・・・・
で、政府ですが。
『3. 政府は、日本銀行に対して、上記2.の方針にしたがってデフレ脱却が確実となるまで強力な金融緩和を継続することを強く期待する。』
それは判ったがあんさんは何をするのよ。
『政府は、デフレからの脱却のためには、適切なマクロ経済政策運営に加え、デフレを生みやすい経済構造を変革することが不可欠であると認識している。このため、政府としては、足下の景気下押しリスクに対応し経済活性化に向けた取組を加速すべく、平成24年10月17日の内閣総理大臣指示に基づき、経済対策を速やかに取りまとめる。』
日銀の緩和実施に対してお前ら何やってますねん。
『また、政府は、「日本再生戦略」(平成24年7月31日閣議決定)に基づき、平成25年度までを念頭に、「モノ」「人」「お金」をダイナミックに動かすため、規制・制度改革、予算・財政投融資、税制など最適な政策手段を動員する。』
で、何かしましたっけ??
『デフレ状況を含めた経済状況及び経済運営については、「デフレ脱却等経済状況検討会議」において、定期的に点検を行う。』
とまあそういう事で、どうせこんなの政府、というか前原さんがお手柄にしたいから作らせたというものでしょうが、ここには新しい取り組みとかの話は1ミリも無く、更に政府に関しては特に何もしていなくてこれから頑張りますよという「明日から本気出す」みたいな話な上に何らコミットメントも無い、という事でまあはっきり言ってただの作文じゃねえかと思うのですが、前ナントカさんは会見でドヤ顔で画期的などうのこうのとか仰せで全くもって何やってるんだかと申しますか、政府が実は何もやっていない事をこの文書で大々的に大公開しているのによくもまあ恥ずかしげもなくドヤ顔出来るわと呆れる次第。
つーかね、小泉首相と福井総裁時代だったらこんな文書を書くまでも無く、ここの文書に示されたような話って共通認識されていましたし、経済財政諮問会議に俊ちゃんも出席していた訳で、わざわざこのような作文を公表してドヤ顔で会見をしなくてもこの程度というよりはこれ以上の連携感を出していた訳ですよ。
然るに民主党政権は日銀がデフレ脱却でどうのこうのとか言ってる側から何の対策もセットにしない「デフレ宣言」をするアホウは居るわ、本来当たり前の事をわざわざ作文にさせてドヤ顔して自分の手柄アピールするアホウは居るわとか、もういい加減にしろと思うのですよね。
でまあこの文書はこれ自体では何も言っていない(どころか政治の無策を浮き彫りにしているだけ)代物なので、このままこのしょうも無い文書がフェードアウトしてくれれば何の問題もないのですけれども、将来更にアホウな政権が発足して、「過去にこういうの出したんだからウチの政権時にも文書出せやゴルア!」と言い出して今度は中央銀行の独立性を裏口からおかしくしていって財政発散マネタイズで通貨価値毀損で誰も得しない悪性インフレの種を撒くとかになりますと、全くもって糞としか言いようがない訳でございまして、こういうのがハンス・フォン・ゼークトの言う(実際はゼークトの言葉じゃないそうですが)ところの以下暴言の為割愛という所ではないかと存じます。
つーかこんな文書公表を入れるもんだからMPMがアホのように長引いて引け際15分しかなかったのは全く参りましたぞな。MPM引っ張るから変な期待が高まっちゃった(先般の学習効果で今回はそこまで極端に為替や株が動かなかったのが不幸中の幸いでしたが)じゃねえかゴルァという所です。
でまあ余談ですけど。
『平成24年10月30日
日本銀行総裁 内閣府特命担当大臣(経済財政政策担当)
白川 方明 前原 誠司
財務大臣
城島 光力』
署名している皆さん来年の今頃はこの地位に居ませんよねとかいうブラックなツッコミは兎も角と
いたしまして(^^)。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/rel121030a.pdf
「資産買入等の基金運営基本要領」の一部改正等について
の別紙3にある財務大臣宛認可申請書を見たら宛先が『財務大臣 城島 正光 殿』となっていまして、間違えたのかと思ったら城島財務大臣って堺屋太一あるいは扇千景スキームで本名が正光さんで光力さんというのは芸名というか政治活動名なんですね。不覚にも存じませんでしたです。
○展望レポートですが詳細は会見要旨と共に明日である
本当は展望レポート詳細(というほど詳細でも無いが、汗)のあたりもあるのですが、つい例によってノリノリで悪態を書いていたら時間ががががが。
基本的見解が昨日でまして、全文は今日出ます。
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1210a.pdf
経済・物価情勢の展望(2012年10月)
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1204a.pdf
経済・物価情勢の展望(2012 年4月)
展望レポート9ページです。
『以上の環境を前提に、消費税率引き上げの直接的な影響を除いて物価情勢の先行きを展望すると、国内企業物価は、当面、国際商品市況が弱含みで推移することを反映して、前年比で下落するものの、2013年度以降は、国際商品市況の緩やかな上昇や、マクロ的な需給バランスの改善を反映して、緩やかな上昇基調に復していくと見込まれる。消費者物価の前年比は、当面ゼロ%近傍で推移した後、マクロ的な需給バランスの改善などを反映して、徐々に緩やかな上昇に転じ、2014年度には当面の「中長期的な物価安定の目途」である1%に着実に近づいていくとみられる。』(今回)
ちなみに前回の同様部分ですけどね。
『以上の環境を前提に、物価情勢の先行きを展望すると、国内企業物価指数の前年比は、国際商品市況の緩やかな上昇や、マクロ的な需給バランスの改善を反映して、見通し期間を通じて緩やかな上昇を続けると見込まれる。消費者物価の前年比は、中長期的な予想物価上昇率が安定的に推移するとの想定のもと、マクロ的な需給バランスの改善を反映して、今回の見通し期間後半にかけて0%台後半となり、その後、当面の「中長期的な物価安定の目途」である1%に遠からず達する可能性が高い。』(前回)
ということで、「遠からず達成する可能性が高い」というのと「着実に近づいていくとみられる」の表現がこれがまたどっちが強いのかがさっぱり判らんという難解ホークスにも程があるのでございますのでこういうイミフ表現は勘弁願いたいのですが、会見の報道を見る限りでは「着実に近づいているというのは1%を見通せるという意味では無い」という話らしいのですが、2014年の物価見通しが平均で0.8%となっているという数字を出した上に「着実に近づいていくとみられる」と表現されると、素直に考えると「えーっと、2014年後半には1.0%になってくるという話ですよねえ」と受け止められても仕方ないと思うのですよね。
で、その一方でいつものように金融政策の所では16ページにありますように、
『すなわち、第1に、日本銀行は、当面の「中長期的な物価安定の目途」である消費者物価の前年比上昇率1%を目指して、それが見通せるようになるまで、実質的なゼロ金利政策と金融資産の買入れ等の措置により、強力に金融緩和を推進していく方針である。』(今回)
と説明していまして、上記の「着実に近づいていくとみられる」のワーディングと、2014年0.8%という数字(この数字が妙に高いのではないかという話は明日また行いますとして)と、この文言のセットを見ると、何かあっさり金融緩和が終わりそうな感じで読めてしまいまして、誤解を招くのではないかと思うのですけどどうなんでしょうかねえ・・・・・・・・・
とまあそんな所で本日は勘弁。
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2012/10/29
・日銀給与削減とな
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/rel121026b.pdf
平成24年度および25年度における日本銀行の職員給与の減額支給措置について
・・・・・・・・・・orz
復興財源確保の為にとか言って公務員給与の時限的な引き下げ措置が実施されましたのでそれに平仄を合わせるというお話ではあるのですが、デフレ脱却の為に金融政策を打っている側から給与削減というデフレ政策をしてどないしますねんという気はする。つーかこの削減率結構でかくねえか。
『減額率
管理1級▲9.79%
企画役補佐級▲8.24%
その他の職員▲5.94%』
まー公務員給与下げたら平仄を合わせないといけませんぞなもしというのは今の世の風潮で有ります所の引き下げデモクラシーに沿っているので如何ともし難いのですけれども、給与削減して復興財源にというくらいならば、削減相当分に関して「被災地域の物産購入や被災地域への観光限定で利用可能な期限付きの商品券」形式で交付した方が宜しいんじゃねえかとか思うのですけれども浮く額よりも実施コストの方が掛かりますかそうですかorz
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2012/10/23
○さくらレポート関連
まあサラサラと参りますが。
http://www.boj.or.jp/research/brp/rer/rer121022.htm/(概要)
http://www.boj.or.jp/research/brp/rer/data/rer121022.pdf(全文)
ちなみに前回の概要はこちらです。
http://www.boj.or.jp/research/brp/rer/rer120705.htm/
概要の方から。
・概要では生産、消費の引き下げが目立ちますな
『各地の景気情勢を前回(12年7月)と比較すると、8地域(北海道、北陸、関東甲信越、東海、近畿、中国、四国、九州・沖縄)から、海外経済の減速した状態がやや強まっていることなどを背景に、前回までの持ち直しや回復の動きが一服している、またはそのテンポが緩やかになっているとの報告があった。この間、東北からは、「一部に弱めの動きがみられるものの、公共投資が大幅に増加しているなど、全体として回復している」と、前回までの回復の動きが続いているとの報告があった。』
何という事でしょう(某番組風に^^)、3か月前のさくらレポートでは9地域全部が上方修正だったというのに、今回は8地域が下方修正(1地域は横ばい)という急変振りでございます。いやあこのような経済の大きな急変は皆様の予想の範囲を大きく超えるもの・・・・・・という事になっているんでしたっけ(ニヤニヤニヤ)。
でまあ需要項目についてほぼ引用祭りでサラサラと参りますが、前回との比較に関しては引用すると長くなりすぎるのとゴチャゴチャするので上記URL先を見て確認してちょ。
『公共投資は、東北から、「大幅に増加している」、5地域(北陸、関東甲信越、近畿、中国、四国)から、「増加している」や「持ち直しつつある」等の報告があったほか、3地域(北海道、東海、九州・沖縄)からも、「下げ止まっている」、「概ね横ばいで推移している」との報告があった。』
まあ公共投資に関しては前回対比で総じて上方修正になっていますが、その公共投資に関しても例の復興予算の使途問題で絞られそうですし、大体からして特例公債法案が通らなかったら新規事業に関する執行とか先送りになりますぞなと思うのですが。
『設備投資は、8地域(北海道、東北、北陸、関東甲信越、東海、近畿、中国、九州・沖縄)から、「増加している」、「持ち直している」等の報告があったほか、四国からも「底堅い動き」との報告があった。』
設備投資に関してはだいたい前回と同じトーンですが、今回まあ当然ちゃあ当然だと思ったのは前回ありました「企業収益が改善しつつあるもとで」という文言が削除されました。
『個人消費は、3地域(東北、関東甲信越、九州・沖縄)から、「底堅く推移している」との報告があったほか、5地域(北陸、東海、近畿、中国、四国)からは、「横ばい圏内の動きとなっている」、「持ち直しの動きが一服している」との報告があった。この間、北海道からは、「このところ弱含みとなっている」との報告があった。』
で、その個人消費関連で幾つかの項目に関して記載があるのですが・・・・・
『大型小売店販売額は、関東甲信越、九州・沖縄から、「底堅く推移している」、北陸、四国から、「横ばい圏内の動き」との報告があった。この間、残暑の影響などもあって、北海道からは「このところやや弱めとなっている」、東北からは「前年を下回った」との報告があった。また、東海や近畿、中国からは、「スーパーは弱めの動き」との報告があった。』
前回は増加だの堅調だのというのが7地域にありまして、今回はここの落ちがアチャーという感じでございます。
『乗用車販売は、全ての地域から、エコカー補助金の終了を背景に、「このところ減少している」、「水準を切り下げている」等の報告があった。』
『家電販売は、多くの地域から、薄型テレビを中心に「低調に推移している」や「前年を下回っている」との報告があった。』
『旅行関連需要は、ほとんどの地域から「持ち直している」、「総じて堅調に推移している」等の報告があった。なお、ごく最近では「外国人観光客の来訪が減少している」等の報告があった。』
ということで、ここに出てくる項目に関しては旅行以外景気の悪い話が並んでおりますが、前回と比較してダメダメ感高まったのは小売販売と乗用車販売ですの。
『住宅投資は、東北から、「増加している」、3地域(関東甲信越、近畿、九州・沖縄)から、「持ち直している」との報告があったほか、東海からは、「底堅く推移している」との報告があった。一方、北海道、中国からは、「持ち直しの動きが鈍化している」等の報告があったほか、北陸や四国からは、「弱い動きとなっている」との報告があった。』
まあ大体同じです。中国地方が「持ち直し」から「持ち直しの動きが鈍化」に下がっている程度。
『生産は、海外経済減速の影響などを背景に、6地域(北海道、関東甲信越、東海、近畿、中国、九州・沖縄)から、「減少している」、「弱めの動き」との報告があった。また、東北からは「横ばい圏内の動き」、四国からは「持ち直しのテンポが緩やかになっている」との報告があった。この間、北陸からは、「全体としては高操業を続けている」との報告があった。』
消費と並んでアチャーなのが生産でして、こちらに関しては前回は「増加」だの「持ち直し」だのというのが計6地域(2+4)に見られていたのがいきなりこの落ち込み方。
『業種別の主な動きをみると輸送機械は、5地域(北海道、関東甲信越、東海、中国、四国)から、「減少している」、「生産水準を引き下げている」等の報告があった。一般機械、電子部品・デバイスでも、多くの地域から、「弱い動きとなっている」等の報告があったほか、鉄鋼についても、5地域(北海道、北陸、東海、中国、九州・沖縄)から、「一部に弱めの動きがみられる」等の報告があった。この間、化学については、複数の地域から、医薬品の堅調などもあって「高水準の生産を維持している」、「横ばい圏内の動きとなっている」等の報告があった。』
でまあ輸送機械、一般機械、鉄鋼に関しては前回は増加だの高水準の操業だのという話をしていたのですがその辺がアチャー状態。電子部品・デバイスに関して前回から残念な状況だったのでここは横ばいですが、チャーミングなのは前回のっけていなかったケミカルに関して概要に記載をしていることですな。
『雇用・所得動向は、多くの地域から、厳しい状況の中で、引き続き改善の動きがみられるとの報告があった。もっとも、一部の地域からは、「改善の動きに一服感がみられる」等の報告があった。』
今回は「改善の動きに一服感がみられる」というのが一部の地域からあったというのが前回と違う所ですが、ここは改善の動きというのは変わらないですの。
『雇用情勢については、多くの地域から、「回復している」や「改善傾向にある」等の報告があった。雇用者所得は、北陸、四国から、「持ち直している」や「前年を上回って推移している」との報告があった一方、東海、近畿からは「持ち直しの動きが一服している」、「足もと幾分弱含んでいる」との報告があったほか、3地域(北海道、関東甲信越、中国)からは、「弱めの動きが続いている」等の報告があった。』
雇用情勢に関しては同じですが、雇用者所得に関しては前回は「多くの地域で「下げ止まっている」と報告があった」という形でしたが、今回は持ち直しと弱めとの報告が出ていまして、まあ製造業と非製造業の動きの違い高まるとかそんな文脈ですかね。
・地域の視点では観光業とな
こらまた中国との問題がどうのこうのという中でこのテーマというのがアレですが。
『II. 地域の視点
各地域における最近の観光関連需要の動向各地域における最近の観光関連需要の動向をみると、全体として堅調に推移している。すなわち、各地域とも、東日本大震災後は、旅行自粛ムードなどから観光関連需要が一旦減少したものの、その後は、国内観光客を中心に、「持ち直している」とか、「堅調」といった声が多く聞かれている。ただし、地域別には、震災からの回復度合いに幅がみられている。新たな観光スポットがオープンした地域や交通インフラの整備が進んだ地域では、観光客が震災前の水準を上回っている一方、震災や豪雨などによる被災地域では、客足の回復が遅れている。この間、外国人観光客については、「欧州や韓国からの旅行客の戻りが鈍い」という声が多く聞かれる。また、増加していた中国などからの観光客についても、ごく最近では「中国からのツアーがキャンセルになった」とか、「中国や韓国からの新規申し込みが減少している」という声が聞かれる。』
ほほう。
『観光関連分野における最近の特徴としては、需要サイドで構造的な変化が生じていること、また、供給サイドでも、そうした変化への対応を進めていることが挙げられる。こうした需要・供給両サイドの動きがかみ合いつつあることが、最近の観光需要を下支えする一因になっていると思われる。』
ということで、需要供給サイドの話とかあるのですが長くなるので割愛しますが、まあ皆様この部分に釣られクマーと言った所だと思いますが、ワタクシも盛大に釣られておきます。
さくらレポート本紙の12ページ(PDFファイルの14ページ目になります)から。
『(c)ブログやSNSの普及による「クチコミ」での需要喚起
● さらに、スマートフォンやSNSの普及に伴い個人による情報発信が一般化したことで、「クチコミで人気を集める施設や商品が生まれたり、今まで注目されていなかった観光資源が一躍人気を集める」など、需要サイドからの情報発信による新しい観光関連需要の発掘がみられている。』
ということで【クチコミなどによる観光関連需要の喚起についての声】というのがあるのですが、その最初の所で盛大に釣られクマーである。
『・SNSなどを通じて、アニメファンの聖地巡礼(アニメの舞台となった地域を訪問すること)が自然発生的に始まった(本店<埼玉>)。』
・・・・・・・・・・ワロタ。
・でまあ円高とか景況感悪化に関するコメントが雨宮大阪支店長からキタコレ
ブルームバーグニュースから。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MCA97T6K50Z301.html
日銀大阪支店長:景況感が急速に慎重化、円高是正の声一段と (1)
『10月22日(ブルームバーグ):日本銀行の雨宮正佳大阪支店長は22日午後、本店で会見し、世界経済と日本からの輸出の先行き不確実性が高まっている中、近畿地域の企業経営者の間で、景況感が「短期間で急速に慎重な方向に傾いている」とともに、円高の是正を求める声が「一層強まっている」と述べた。』
『日銀が同日公表した地域経済報告で、同地域は「全体として足踏み状態となっているが、一部に弱めの動きがみられている」として、前回7月から判断を下方修正した。雨宮支店長はその背景として「外需の弱さが目立ち始めた。内外のIT(情報技術)需要が期待に反して回復感が乏しい状態が続いている」と指摘。近畿は電機産業が集約していることから、「IT産業の苦境の影響は幅広く及んでいる」と述べた。』
『さらに、「アジア、特に中国向け輸出の低迷が長引いている」と指摘。日中関係が悪化している影響に言及した上で、「中国は日中関係の問題が発生する前から減速が長引いているので、これにこうした問題の影響が加わることの影響は、大きい可能性がある」と述べた。』
『雨宮支店長は「現段階で明確に影響が出ているのは観光だ。中国人にとって大阪は観光の人気スポットで、欧米の訪日客のうち大阪を訪問するのは2割くらいだが、中国人の訪日客のうち5割以上が訪れる」と指摘。最近の観光客のキャンセルなどで「特に中国ビジネスに注力してきた業界や小売業には、相当の影響が及ぶとみている」と述べた。』(以上上記URL先より)
ということで、円高、輸出低迷、日中関係の悪化、とまあダメダメな話の連発という事になっていまして、こらまあアチャーという所ですぞな。
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2012/10/18
・ドル特則の成長基盤強化オペ
火曜日の結果を今頃で恐縮ですが。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/rel121016a.pdf
成長基盤強化を支援するための資金供給の実施結果【米ドル特則分】
LIBOR云々で初回のオファーが遅れたといのも何だかなあという感じでしたが、ドル特則の成長基盤強化の第1回めでたく実施。
『貸付日における貸付予定総額 711 百万米ドル
貸付先数 6 先』
2ページ目に内訳が。
『(1)資金が国外において使用される外貨建て投融資にかかる成長基盤強化への効果別分布状況(注1)』
『国内における生産・サービス活動、設備投資または雇用の増加に資することが見込まれるもの 482 (61.6%)
国内における企画・研究開発機能の強化、新規事業の立ち上げ、業務継続態勢の強化等を伴う
国際的分業態勢の構築に資することが見込まれるもの 234 (29.9%)
国内において使用する原材料の安定調達に資することが見込まれるもの 66 (8.5%)
その他 0 (0.0%)』
で、4ページの注1にありますように・・・・・
『(注1)本資金供給の米ドル特則(成長基盤強化を支援するための資金供給における米ドル資金供給に関する特則)は「第1期(2012
年4 月〜6 月)分」として、2012 年7 月2 日から同7月19 日までに提出され、成長基盤強化に向けた取り組み方針(米ドル特則用)のもとで実行されたことが確認された「個別投融資実績」の分布状況。なお、本資金供給は、個別投融資実績の範囲内で貸付対象先が希望する金額に基づいて実施されるため、貸付予定総額と個別投融資実績の合計金額とは必ずしも一致しない。表中の成長基盤強化への効果の分類は、「成長基盤強化を支援するための資金供給における米ドル資金供給に関する特則」の別紙で例示された3
つの効果に基づいている。』
でまあ何だ6件しか無いのかという風に一瞬読めますが、注2、注3の方に・・・・
『(注2)2012 年5 月28 日から同7 月10 日までに「成長基盤強化に向けた取り組み方針(米ドル特則用)」の提出を行い、当該取り組み方針が本資金供給の要件を満たすと確認された金融機関等の数。』
『(注3)2012 年5 月28 日から同7 月10 日までに提出され、本資金供給の要件を満たすと確認された「成長基盤強化に向けた取り組み方針(米ドル特則用)」において、表に掲げる効果を「当該取り組みによってもたらされ得る、資金が国外において使用される外貨建て投融資にかかる成長基盤強化への効果」として選択した金融機関等の数。表中の成長基盤強化への効果の分類は、「成長基盤強化を支援するための資金供給における米ドル資金供給に関する特則」の別紙で例示された3
つの効果に基づいている。なお、複数の効果を選択している金融機関等が存在するため、先数の合計は「『成長基盤強化に向けた取り組み方針(米ドル特則用)』について確認を受けた金融機関等の数」とは必ずしも一致しない。』
とまあ長々と脚注があるのですが、3ページの所にこのような記載が。
『(1)「成長基盤強化に向けた取り組み方針(米ドル特則用)」について確認を受けた金融機関等の数(注2)30
先』
『(2)「成長基盤強化に向けた取り組み方針(米ドル特則用)」における資金が国外において使用される外貨建て投融資にかかる成長基盤強化への効果の分布状況(注3)』
ということで、まあ実際はもう少し対象はあるようでございますな。内訳の部分を引用すると長くなるので上記URLを見てちょという所ですが。
・・・・・・・でまあそれはそれで良いのですが、このオペってそれなりに長期間のものになるのですけれども、1Wと3Mのドル資金供給オペと違って元の銭が日銀の「現に保有しているドル」(ドル資金供給オペは中銀間のスワップ取極めによる)なので、そーゆー意味では外債購入議論が実際に検討とか言うようなことになった場合に(まあ量的緩和状態の中では日銀が買っても財務省が買っても実質何が違うんだと思うので無駄な議論だとは思うけど)実務上の論点としてここの日銀保有資産が貸し出しによって実質固定化されて動かせなくなってくる点についてはちょっとややこしい事になるような気がせんでもないです。
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2012/10/12
○9月決定会合議事要旨から少々
9月議事要旨が出たのですがね。
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2012/g120919.pdf
・執行部報告を珍しくネタにしてみる:海外経済に関して
ちょっと『T.金融経済情勢等に関する執行部からの報告の概要』から見てみます。
この時の会合ではご案内の通り追加緩和が打ち込まれたのですが、その中で声明文などで下げましたなという『3.海外金融経済情勢』に関する執行部の報告をまず読んでみたりする。
『世界経済は、減速した状態がやや強まっている。』
というのは声明文で示された通りですが、まずは米国。
『米国経済は、企業マインドなどに弱めの動きがみられるが、基調としては緩やかな回復を続けている。企業部門をみると、生産は緩やかな増加を続けているが、先行きへの不透明感の高まりを受けて、企業マインドは慎重化しており、設備投資の増勢は鈍化している。一方、家計部門をみると、バランスシート問題の重石が徐々に和らぐ中、雇用情勢も緩やかな改善傾向を辿っていることを背景に、個人消費は緩やかに増加している。住宅投資についても、低金利の後押しもあって、低水準ながらも持ち直している。物価面では、財市場や労働市場の緩和的な需給環境が引き続き物価押し下げ圧力として作用するもとで、既往のガソリン価格下落の影響から、総合ベースの消費者物価の前年比はプラス幅が縮小している。もっとも、足もとでは、原油価格上昇から、ガソリン価格がやや大きめに上昇しており、その影響は顕在化しつつある。』
ふーんという所ですが、良く良く考えますと9月FOMCで追加緩和(MBS買入)を実施していますが、実はFOMCの景気認識は上がっていたのでこんなもんなんでしょうかね。
『欧州経済をみると、ユーロエリア経済は、緩やかに後退している。輸出は伸び悩んでいる。内需についても、民間設備投資は減少し、個人消費も概ね横ばいとなっている。更に家計や企業のマインドの悪化が、周縁国からコア国にも拡がっている。こうしたもとで、生産は減少している。物価面をみると、緩和的な需給環境などが物価押し下げ圧力として作用しているが、ガソリン価格が足もと上昇していることなどを映じて、総合ベースの消費者物価の前年比はプラス幅が幾分拡大している。この間、英国経済は停滞している。』
まあこの辺もこんな所ですかの。
『アジア経済をみると、中国経済は、減速した状態が長引いている。輸出は、欧州向けの減少を映じて、弱めの動きとなっている。固定資産投資は、民間不動産投資の減速を主因に、また個人消費は自動車販売などの減速を受けて、各々伸びがやや鈍化した状態が続いている。こうしたもとで、在庫調整圧力の強まりもあって、生産の増加ペースも鈍化している。もっとも、足もとでは、インフラ投資の増加や不動産販売の持ち直しなど、一部では改善の兆しも出てきている。』
でですな、今回明らかに認識が下がったのって中国経済でございまして、前回8月議事要旨での執行部報告ではこういう表現になっているのですよね。
『アジア経済をみると、中国経済は、なお高めの成長を続けながらも、そのペースは鈍化している。固定資産投資は、民間不動産投資の減速を主因に、また個人消費は、家電など耐久財消費の減速を受けて、各々高めながらも伸びが鈍化している。こうしたもとで、在庫調整の動きもあって、生産の増加ペースは鈍化している。もっとも、足もとでは、インフラ投資の増加や不動産販売の持ち直しなど、一部では改善の兆しも出てきている』(8月8、9日決定会合議事要旨の執行部報告部分より)
まあ昨日ネタにした先日の総裁定例記者会見では「中国経済が高度成長をいつまでも続けるのは無理ゲーなので持続的な安定成長に向けて変わるのは結構な事」とかいうような話をしておりましたけれども、そもそも中国経済などの高めの成長がドライバーとなって海外経済が拡大して、その外需が今後の日本経済成長のドライバーになるという先行き見通しの前提を考えますと、元々の前提が狂う話です罠という所で、その辺は後の委員会の議論の所にも出てくるのでした。
ちなみにその他アジア新興国はこんな感じ。
『NIEs、ASEAN経済は、持ち直しつつあるが、その動きは企業部門を中心に緩やかになっている。内需についてみると、個人消費は底堅く推移している一方で、設備投資の増加テンポは緩やかになっている。輸出や生産は、欧州や中国向け輸出の減少などを映じて、弱めの動きとなっており、企業マインドも慎重化している。物価面をみると、これらの国・地域の多くでは、労働需給の逼迫を受けた賃金上昇が持続するなど、物価上昇圧力はなお残存しているが、物価上昇率は横ばい圏内で推移している。インド経済は、減速した状態が続いている。』
・執行部報告を珍しくネタにしてみる:輸出と生産について
こちらも声明文で下方修正されていたので読んでみる。
『輸出や鉱工業生産は、海外経済の減速した状態がやや強まるもとで、弱めとなっている。実質輸出は、4〜6月は3四半期振りに前期比増加したが、7月は4〜6月対比で大きめの反動減となった。前月比の動きをみると、4月に増加したあとは、7月まで3か月連続で減少している。先行きについて、輸出や鉱工業生産は、当面弱めに推移するとみられるが、その後は、海外経済が減速した状態を次第に脱していくにつれて、緩やかに増加していくと考えられる。企業からの聞き取り調査などを踏まえると、7〜9月の鉱工業生産は幅広い業種で減少が見込まれる。10〜12
月は、小幅ながらプラスに転化すると予想されるが、海外経済の持ち直しの時期が後ずれしてきているだけに、そうした動きが実現するかどうか不確実性が高い。』
ほほう(棒)。
でもって委員会の検討部分に参ります。
・海外経済に関して
『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』から。
『海外経済について、委員は、減速した状態がやや強まっているとの見方で一致した。先行きについて、委員は、当面減速した状態を続けたあと、次第に減速した状態から脱していくと見込まれるとの認識を共有した。』
ほほう。
『減速した状態がやや強まっていることについて、多くの委員は、欧州債務問題の影響が拡がる中で、グローバルに企業の景況感が悪化していることが大きいと述べた。』
まあそれはそうなのですが、そもそも欧州債務問題については従来から解決に時間が掛かるという見方を政策委員会でもしていた筈で、そっちは見通し通りなのに、減速の状態がやや強まっている事に関しては今回改めて気が付きましたちっくな話になるのは何ですねんというか、まあ要するに元の見通しが楽観でしたという事でしょ。
『このうちのある委員は、前回会合以降、多くの国・地域で製造業を中心に減速の度合いが強まっており、この間の世界経済の下振れは、企業マインド指標の悪化にも表れているとおり、想定を超えるものであったとコメントした。』
>企業マインド指標の悪化にも表れているとおり、想定を超えるものであった
>企業マインド指標の悪化にも表れているとおり、想定を超えるものであった
>企業マインド指標の悪化にも表れているとおり、想定を超えるものであった
・・・・・・・・・おお、山口副総裁講演に出ていたフレーズという感じですが、「想定を超えるものであった」と元々の見通しが楽観的だったというのを認めているのは率直で宜しいのですが、そこに何故「企業マインド指標の悪化にも表れているとおり」って「ボクだけじゃないもん」みたいなのが入るしとゆー悪態は先日も申し上げたので悪態割愛。
『一人の委員は、7月の中間評価以降、気がかりな材料が少しずつ増えてきていたが、これまでの情報を累積的に判断した場合、海外経済の減速した状態がやや強まっていると述べた。複数の委員は、リーマンショック後のバランスシート調整などを背景に、海外経済の中長期的な成長率が低下している可能性があるのではないかと指摘した。』
まあ何ですな、中長期的な成長率が低下して云々ってのも総裁もかねてから仰せだったと思うのでありまして、こういう所で構造要因の話を出すのってロジック的には見方を変えるときの言い訳行動として使えるには使えるのですけれども、そもそも構造要因だったらそう1か月や2か月で話が豹変するようなものでもない(まあ偶にはそういう事もありましょうが)という事を勘案すると、やはり従来の見方が甘かったですよねという話になろうかと存じますがどうでしょうか、と嫌味連発(^^)。
で、この後は地域別の話になるのですが、順序として「ユーロエリア」「中国」「アジア新興国」「米国」の順になっているのがほほうという感じでございます。ちなみに8月の議事要旨ではこの順序が「米国」「ユーロエリア」「中国」「アジア新興国」の順になっていまして、これは執行部報告の順序と同じなのですが、この回の議事要旨の順序が上記のようになっているというのは、つまりは「先行きのリスク要因」「予想よりも悪化している地域」というカテゴリーを先に入れるという事で、まあ検討における重要性をこの順序で示したのではないかと思ったのですが、深読みのし過ぎでしょうかねえ(^^)。
でまあユーロエリアは普通に普通の話をしているので割愛して中国の部分を引用します。何故かと申しますとこの部分が同コーナー中で一番量が多くなっていまして、つまりは中国経済の減速に関する議論が色々と行われていて、そういう意味では今後の政策委員会の景気認識に関しても中国経済の状況に影響されやすそうですなという事を示しているのではないかとあたしゃ勝手に思ったのですがどうでしょうかね。
『中国経済について、委員は、欧州向け輸出の落ち込みや在庫調整圧力の高まりなどから、減速した状態が長引いているとの見方を共有した。』
『先行きについて、委員は、徐々に回復傾向が明らかになっていく可能性が高いものの、回復の時期は後ずれするとの見方で一致した。』
で、この後が色々と。
『ある委員は、既に金融機関の新規貸出増加額は拡大しており、先行きは不動産投資を中心に回復傾向が明らかになってくる可能性が高いと述べた。一方、別の複数の委員は、供給過剰である鉄鋼などではなかなか減産が進んでおらず、在庫調整の終了までには相当程度の時間を要するのではないかと指摘した。』
『減速した状態が長引いている背景について、ある委員は、銀行の不良債権問題等の構造問題によって、所期の政策効果が減じられている可能性もあると述べた。9月上旬に認可された中国当局による景気刺激策について、何人かの委員は、リーマンショック後の政策対応と比べると慎重であり、政策効果は限定的となる可能性が高いとコメントした。この点について、複数の委員は、リーマンショック後の景気刺激策が不動産市場の過熱や銀行の不良債権増加という問題を引き起こした経験から、積極的な景気対策をやや躊躇しているのではないかと指摘した。一人の委員は、対策の中心は不動産投資であり、わが国の輸出に対するプラスの影響は限定的であると指摘した。』
まあ話としては分かるのですが、循環要因の話よりも構造要因の話が多いのですが構造要因って急に出てくるような話では無いという事を勘案しますと以下同文の悪態(^^)。
『やや長い目でみた中国経済の先行きについて、ある委員は、固定資産投資に偏重した経済構造からの転換やこの先訪れる人口減少の問題に対処しながら、いかに高成長から安定成長にスムーズに移行できるかが課題であるとコメントした。別の一人の委員は、経済規模や高い成長率を追及するいわゆる「量」の成長から、高付加価値産業と消費中心の「質」の高い成長への転換が課題であるが、成長力は依然として高く、ハードランディングの可能性は低いと述べた。ある委員は、中国経済の回復力について、構造的に回復のモメンタムが弱まっている可能性が高いとの見方を示した。』
だそうで。
・なぜ後ずれが「半年」と言い切れるのかと
でまあ国内経済に関する検討部分なのですが、先行き見通しの部分にヲチャー的に味わいの深い部分が。
『景気の先行きについて、委員は、当面横ばい圏内の動きにとどまるとの見方で一致した。』
これは声明文に示された通り。
『委員は、輸出や鉱工業生産は、当面弱めに推移するとみられる一方、国内需要は、復興関連需要などから先行きも底堅さを維持すると見込まれるが、これまでのように、輸出や鉱工業生産の弱さを補えるほどの盛り上がりは期待し難いとの認識を共有した。』
ほほう。
『一人の委員は、当面の実質GDPは横ばい、ないしはかなりの低成長にとどまるのではないかと述べた。別のある委員は、先行きの景気の方向性を示すと考えられる景気ウォッチャー調査も、低調な動きが続いていると述べた。』
とまあ先行きの見方が厳しい方が2名。
『委員は、先行きの景気はいずれ緩やかな回復経路に復していくとみられるが、その時期は、4月の展望レポートで示した回復時期よりもかなり後ずれする可能性が高いとの見方で一致した。』
さいですな。
『何人かの委員は、海外経済の回復時期にも依存することから不確実性が大きいものの、後ずれの長さは半年程度となる可能性が高いとの見方を示した。』
・・・・・・・・・・・?????
えーっと、かなり後ずれする上にそもそもの海外経済、なかんずく中国経済がアレという議論をしているのになぜ「半年程度」とかいう見通しになるのやらと。「半年以上になるかも」みたいな話ならまあ分かるのですが、資産買入等基金の期限半年延長を行ったという結論から逆算したかのような「半年程度」というのが出てくるのが何とも味わいというか何というかアレなものを感じるのでございますが(−−)。
・物価について先行きの伸びが厳しいという意見が複数
『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比について、委員は、概ねゼロ%となっているが、既往の原油価格の下落が下押し要因となっているとの見方で一致した。先行きについて、委員は、当面、ゼロ%近傍で推移するとの認識を共有した。』
というのはまあ声明文どおり。
『ある委員は、ガソリン価格の動向や電気料金の値上げ等を勘案すると、前年比の下落幅が更に拡大していく状況にはないが、これらの要因を除いた基調的な物価がどのように推移するかを慎重に見極める必要があると指摘した。複数の委員は、刈込平均値などはここ数か月間弱めの動きとなっており、物価の基調自体が幾分弱まっているのではないかとコメントした。ある委員は、賃金の動向を踏まえると、物価の先行きについては慎重な見方をとらざるを得ないと述べた。何人かの委員は、当面、景気が横ばい圏内にとどまるとすれば、需給ギャップの縮小ペースは鈍化し、消費者物価の上昇ペースは幾分弱まる可能性があると指摘した。』
ということで、まあ先行きに関してもアガランチ会長になるのではという指摘が相次いでいまして、展望レポートでどういう風に反映されるのかが今からワクワクテカテカでありまする。
・資産買入拡大決定に関連して:決定の背景、量で勝負するのか金利で勝負するのか、リスク性資産については?
『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』に参ります。
『資産買入等の基金の運営について、委員は、足もとおよび当面の景気・物価情勢の下振れを踏まえると、日本経済が物価安定のもとでの持続的な成長経路に復していくという軌道を踏みはずさないようにするためには、このタイミングで基金を増額し、金融緩和を一段と強化することが適当であるとの認識を共有した。』
ほう。
『何人かの委員は、足もとの景気が想定対比下振れていると現時点ではっきりしている以上、展望レポートでの点検を待つまでもなく、今回のタイミングで政策対応すべきであると述べた。このうちのある委員は、政策対応が遅れた場合には信認を低下させるリスクがあり、今回のタイミングで政策対応を行うことにより、日本銀行の政策運営スタンスを市場にはっきり示すことが必要であると述べた。』
>政策対応が遅れた場合には信認を低下させるリスクがあり
いやもう仰る通りでして、9月時点で追加やっていて良かったですねという所ですが、まあそれ以前の見通しが甘くて時既にお寿司ではないかという気もしますが、そこはスルーする事と致しましょう(^^)。
その次なんですけどね。
『基金の増額幅について、委員は、10 兆円程度などといった大幅な増額が適当との認識を共有した。そのうえで、委員は、イールドカーブ全体への影響を考えると、短期国債と長期国債をバランスよく大量に買入れていくことが適当との見方で一致した。大方の委員は、企業の資金調達が基本的には円滑に行われている現状を踏まえれば、今回は、増額対象を短期国債と長期国債とするのが適当であるとの意見を述べた。』
イールドカーブ全体もクソも3年までの買入やっているのにイールドカーブとは何ぞねという話もさることながら、基金の増額に関して「額が多いのが良い」的な話になっている辺りってどうも「量で勝負」しているのか、本来の包括緩和の「リスク性資産も含めた買入」で勝負しているのかがワカランチ会長というか、すっかり包括緩和じゃなくてただの量的緩和になっているような気がしますが・・・・・・と思いつつその先を読みますと・・・・・・
『ある委員は、これらに加えてリスク資産の買入れも増額することによって、リスク・プレミアムへ更に働きかけ、国債買入れの波及メカニズムを補強する効果が期待できるとの認識を示した。』
『また別の一人の委員は、為替相場への働きかけなどインフレ期待を高める一段の工夫も必要ではないかとの見方を示した。』
というような指摘(後者はどう見ても佐藤審議委員ですな)はあるのですが・・・・・・・
『以上の委員の議論を踏まえ、議長は、日本銀行のリスク許容度や市場規模等からみた各種金融資産の買入れ余地について、執行部に説明を指示した。執行部からは、@短期国債や長期国債については、市中の保有残高やフローの発行額からみて増額後の買入れは可能であること、A増額に伴うリスク量は自己資本で吸収可能であること、Bリスク性資産の増額に伴うリスク量は国債より相当程度大きいことを報告した。』
・・・・・・・・・・orz
いやね、ベンダーのニュースとか見てると前段の「リスク性資産買入の提言」の方がクローズアップされていますが、注目すべきはこちらの執行部説明の方でありまして、「リスク量を自己資本で吸収出来る」云々ってこれまたアレな論点でございまして、包括緩和やってて必要だという話なのであればどちらかと言えば日銀の自己資本を増強するような形(つまり政府が日銀の資本増強をするという方向ですな)でリスク性資産の購入余地を高めるというようにして行きましょう!というような議論になって然るべき所でありまして、ここの下りを読んでいますと日銀執行部がリスク性資産買入の拡大をやりたくない気満々である、という風にしか解釈できない所でございます。
まあ日銀の国庫納付金ガーとかいう問題とか、その手の事情もあるんでしょうなあとは勝手に忖度する所ではあるのですが、しかし何ちゅうかこういうのが出てくると「やはり日銀は海外中銀と違って緩和の積極姿勢に欠ける」という話になる訳ですな。
つまりですな、このちょっと後にこんなのがあるんですけど・・・・・・
『9月中旬に決定されたFRBによるMBS買入れについて、ある委員は、予め上限や期限を決めずに買入れる点が注目されているが、日本銀行でも資産買入等の基金の上限や期限を累次にわたって拡大・延長してきており、当初の予定をはるかに上回る大規模かつ長期の緩和政策を行っていると述べた。』
そらそうなのですが、上記のような話が折に触れて出てみる(昨日ネタにした先週の決定会合後の総裁定例会見でも「適切なベースガー」とかいう麿発言があった訳ですが)という中で、こういう話をしましても「おまいらの見せ方、というか姿勢の出し方に問題があるからそうなるんじゃヴォケ」としか申し上げようがございませんなあという話になろうかと存じますが如何でしょうかねえ。
・・・・・・いかん、また悪態になってしまった(^^)。
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2012/10/09
お題「日本の方の決定会合レビューである」
金曜に打ち込まれた声明文その他少々に加えまして、土曜には総裁会見が打ち込まれ、その間に金曜の朝にはECB定例理事会ネタにFOMC議事要旨も打ち込まれるでござるの巻という流れでありまして誠にネタが多いのでありました、つーかおまいらタイミングずらしてくれよおおおおお。
○声明文比較である
まずは声明文比較。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k121005a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k120919a.pdf(前回)
んでまあ前回なのですが、ご案内のように前回は追加金融緩和を行ったので、景気認識に関する文言について、需要項目別の内容が無いという形となっておりますので、こういう時には前回の金融経済月報を比較するのが吉。
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2012/gp1209.pdf(9月月報)
ということで、今回の声明文比較ですが、需要項目別の部分は9月月報との比較となっておりますのでよろしくです。そして更に英文の比較もするのですけれども、英文は何故か月報の概要部分だけというバージョンがあるのでそちらのURLを張っておきますね。
http://www.boj.or.jp/en/announcements/release_2012/k121005a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/en/announcements/release_2012/k120919a.pdf(前回)
http://www.boj.or.jp/en/mopo/gp_2012/gp1209a.pdf(9月月報概要)
・海外経済
『海外経済は、減速した状態がやや強まっている。国際金融資本市場では、欧州債務問題を背景とする投資家のリスク回避姿勢はやや後退した状態が続いているものの、今後の市場の展開には十分注意していく必要がある。』(今回)
『海外経済は、減速した状態がやや強まっている。国際金融資本市場では、欧州債務問題を背景とする投資家のリスク回避姿勢はやや後退しているものの、今後の市場の展開には十分注意していく必要がある。』(前回)
「リスク回避姿勢がやや後退している」という状態が「続いている」と文言を追加しております。
英文ではこうなっています。
『Overseas economies have moved somewhat deeper into a deceleration phase.
In global financial markets, while investors have remained somewhat less
risk averse on the back of the European debt problem, particular attention
should be given to developments in these markets.』(今回)
『Overseas economies have moved somewhat deeper into a deceleration phase.
In global financial markets, while investors' risk aversion on the back
of the European debt problem has abated somewhat, particular attention
should be given to developments in these markets.』(前回)
よーするに変化があるのは・・・・・・
「investors have remained somewhat less risk averse on the back of the European debt problem」(今回)
「investors' risk aversion on the back of the European debt problem has abated somewhat」(前回)
ということですが、何となく今回の方がニュアンスとしては認識が上向きになっているような気もするが、正直良くワカランチ会長。
・国内経済現状認識:総括判断
『わが国の景気は、横ばい圏内の動きとなっている。』(今回)
『わが国の景気をみると、本年前半は堅調な内需を背景に高めの成長を実現してきたが、上述の海外経済の状況を反映し、持ち直しの動きが一服している。』(前回)
となっていて良くワカランチ会長なのですが、月報と比較すると判りやすい。
『わが国の景気は、持ち直しの動きが一服している。』(前回月報)
よーするに「持ち直しの動きが一服」から「横ばい圏内」に下げたという形ですが、これはまあ後で出ておりますように前回会合時点での見通しに沿った動きちゃあ沿った動きですが、まあ下方修正ではあります。
で、英文なのですが・・・・
『Japan's economic activity is leveling off more or less.』(今回)
『Japan's economy registered relatively high growth in the first half of
2012, supported by the firmness in domestic demand. Nonetheless, the pick-up
in economic activity has come to a pause, reflecting the aforementioned
developments in overseas economies.』(前回)
『The pick-up in Japan's economic activity has come to a pause.』(前回月報)
まあ同じ事なのですが、英文にしますと前回声明文で色々と余計な説明成分を加えているのが判りやすいぞなもしという所ですな。しかし「leveling
off more or less」ってまあ前回の声明文での先行き見通しにもあったのでまあ見覚えはあるのですが、手元のデイリーコンサイス英和辞典を見ると「level
off」が「水平飛行に移る」でまあそれはそれで良いのですが、「more or less」が「多分、幾分か」という風になるので、まあ確かに「横ばい圏内の動きとなっている」なのですが、あたくしが英語苦手だからよく判らんだけなのかもしれないけれども、一応金融政策関連のステートメントみたいなのを読んでいるつもりのあたくしが一見して何のこっちゃというような表現になるのってどうなんでしょうかねと思うのであります。
とは言いましても、これは英文作っている人たちの問題というよりは、そもそも決定会合におけるオリジナルの日本文声明文が「日銀文学」と言われるアレな文章であり、その辺りがヤヤコシヤで有る事が英文に直すと何か捏ね繰り回したような表現にならざるを得ない、とまあそういう話になるのでしょうなあと思ったり思わなかったり(^^)。
まあこの「横ばい圏内の動き」というのは、それだけ見るととりあえず下方修正したのですねというのは判るのですが、「more
or less」というのを入れている辺り微妙に執行部の気持ちを忖度しているという事ですかそうですかと思ったりするのであります。
・需要項目別
『輸出や鉱工業生産は、海外経済の減速した状態がやや強まるもとで、弱めとなっている。一方、国内需要は、復興関連需要などから底堅く推移している。すなわち、公共投資は増加を続けており、住宅投資も持ち直し傾向にある。個人消費は、雇用環境が改善傾向にあるなかで、底堅く推移している。設備投資は、企業収益が総じて改善するもとで、緩やかな増加基調にある。この間、企業の業況感は、海外経済減速の影響などを背景に、幾分慎重化している。』(今回)
『輸出や鉱工業生産は、海外経済の減速した状態がやや強まるもとで、弱めとなっている。一方、国内需要は、復興関連需要などから底堅く推移している。すなわち、公共投資は増加を続けている。設備投資は、企業収益が改善するもとで、緩やかな増加基調にある。また、個人消費は、雇用環境が改善傾向にあるなかで、底堅く推移している。住宅投資も持ち直し傾向にある。』(前回月報)
こちらは前回月報との比較になりますが、まず表現的に言いますと、企業収益の部分が従来の「改善するもと」というのに対して「総じて」という毎度おなじみのヘッジクローズが入って若干弱めにしております。あと、短観直後でしたので、企業の業況感に関する話がありますがまあこれはこんなもんでしょう。
あと今回の違いとしては語順が変わっている所でして、さてそれに何の意味があるのかはワカランチ会長ではございますが、前回月報の表現と比較しますと、「威勢の良い順から並べている」という所に特徴がありまして、つまり設備投資の部分ですけれども、企業収益に関する認識を下方修正したこの項目を需要項目別の部分の一番ケツに持ってきているというのが特色。
まあ何ですな、前回もニュアンスとしては威勢の良い順から並べている積りなのかもしれませんので、だから何なのと言われても困りますが、ただまあここではとりあえず威勢の良い順に並べて行きたいという執行部のお気持ちは把握しました(^^)。
しかし直近の短観を見ると企業の雇用判断とか悪化傾向にあるように見える次第でございまして、「雇用環境が改善傾向になる中で」というのって実際問題としてどうなんでしょという気がせんでもなかったりするあたくし。いやまあイメージだけの問題ですけれども大手電機とかで大量リストラとかの話が出ている昨今を考えますとどうなんでしょうかねえ。
英文である(こらめんどいわ^^)。
『Exports and industrial production have been relatively weak as overseas
economies have moved somewhat deeper into the deceleration phase. On the
other hand, domestic demand has been resilient, mainly supported by reconstruction-related
demand. Specifically, public investment has continued to increase, and
housing investment has generally been picking up. Private consumption has
been resilient with the employment situation on an improving trend. Business
fixed investment has been on a moderate increasing trend as corporate profits
have improved on the whole. As for business sentiment, firms have turned
somewhat cautious mainly against the background of the deceleration in
overseas economies.』(今回)
『Exports and industrial production have been relatively weak as overseas
economies have moved somewhat deeper into a deceleration phase. On the
other hand, domestic demand has been resilient, mainly supported by reconstruction-related
demand. Specifically, public investment has continued to increase. Business
fixed investment has been on a moderate increasing trend with improvement
in corporate profits. Private consumption has been resilient with the employment
situation on an improving trend. Housing investment has generally been
picking up.』(前回月報)
語順が変わっているのは同じで、企業収益がどうのこうのの部分ですけれども、「as
corporate profits have improved on the whole」が今回で前回が「with improvement
in corporate profits」と、「総じて」らしきものが入っていますが、まあ英文の方が下がった感が強いかなという希ガス。
・金融環境、物価等
『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(今回)
『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(前回月報)
『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっている。』(今回)
『この間、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっているが、既往の原油価格の下落が下押し要因となっている。』(前回)
ということで、既往の原油価格云々の話がある程度ですな。英文比較は割愛。
・先行き見通しは変わらず
『先行きのわが国経済についてみると、当面横ばい圏内の動きにとどまるとみられるが、国内需要が底堅さを維持し、海外経済が減速した状態から次第に脱していくにつれて、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。消費者物価の前年比は、当面、ゼロ%近傍で推移するとみられる。』(今回)
『こうしたもとで、当面、景気は横ばい圏内の動きにとどまるとみられ、消費者物価の前年比はゼロ%近傍で推移するとみられる。』(前回)
『先行きのわが国経済は、当面横ばい圏内の動きにとどまるとみられるが、国内需要が底堅さを維持し、海外経済が減速した状態から次第に脱していくにつれて、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(前回月報)
『消費者物価の前年比は、当面、ゼロ%近傍で推移するとみられる。』(前回月報)
ということで、こちらの表現は前回月報と同じですので、先行き見通しは変わりません。英文でも同じ表現になっていますので比較は割愛します。
・リスク要因、決意表明に関する部分も同じ
先行き見通しに加えまして、リスク要因などの部分は表現が全く同じですので、今回分だけ引用します。英文はスルーということで。
『リスク要因をみると、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復力、新興国・資源国の物価安定と成長の両立の可能性など、世界経済を巡る不確実性は引き続き大きいほか、金融・為替市場動向の景気・物価への影響には注意が必要である。』(今回)
『日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することがきわめて重要な課題であると認識している。この課題は、幅広い経済主体による成長力強化の努力と金融面からの後押しを通じて実現されていくものである。こうした認識のもとで、成長基盤強化を支援するとともに、強力な金融緩和を推進している。今後とも、資産買入等の基金の着実な積み上げを通じて間断なく金融緩和を進めていく。日本銀行としては、引き続き適切な金融政策運営に努めるとともに、国際金融資本市場の状況を十分注視し、わが国の金融システムの安定確保に万全を期していく方針である。』(今回)
○で、結局前原さんは何だったんでしょうか・・・・・・・・・
金曜の決定会合ですが、ベンダー情報などを見ていたら「前原大臣が日銀に入った」というようなフラッシュが11時位(共同のフラッシュは11時02分だったと思う)に打ち込まれまして、ほうそんな時間にやってきましたかそうですかとか思いつつメシに逝ったら・・・・・・・・
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/state_2012/index.htm/
2012年10月 5日 当面の金融政策運営について(現状維持、12時14分公表) [PDF 158KB]
ご案内の通り、決定会合の結果は12時14分に公表されておりまして、いやあ前原先生が来てから1時間で決定会合結果発表かよとかズッコケにも程があるのですが、先ほど引用した声明文を見ますと政府からの出席者の詳細が判ります。
『上記のほか、
10 月4 日
佐藤 慎一 財務省大臣官房総括審議官(14:00〜17:04)
松山 健士 内閣府審議官(14:00〜17:04)
10 月5 日
武正 公一 財務副大臣(8:59〜12:00、12:04〜12:09)
松山 健士 内閣府審議官(8:59〜10:56)
前原 誠司 経済財政政策担当大臣(10:57〜12:00、12:04〜12:09)
が出席。』(声明分から)
で、この12時00分〜12時04分というのは採決を行っている時間で、この時間帯は政府から出席者は席を外していまして、出来上がった声明文などをリリースするまでのロジに必要な時間(声明文の紙をスキャンしてPDFに出してとかやってるんでしょうなあ)が5分という事になりますので、前原先生がおいでになった時間はほぼ1時間。
直近で閣僚の方がご出席していたのは報道されてご案内の通りですが、2003年4月8日(銀行が潰れるだの何だの言ってメガの合併最終時期でしたなあ)の決定会合となりますけれども、この時は・・・・・・
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2003/k030408a.htm/
『上記のほか、
4月7日
津田廣喜 財務省大臣官房総括審議官(14:00〜15:52)
小林勇造 内閣府審議官(14:00〜15:52)
4月8日
谷口隆義 財務副大臣(9:00〜12:46、12:55〜13:17)
小林勇造 内閣府審議官(9:00〜10:28)、
竹中平蔵 経済財政政策担当大臣(10:41〜12:46)
が出席。』(2003年4月8日決定会合声明文より)
となっておりまして、竹中平蔵大臣(当時)は採決前の2時間5分に渡って参加しておりまして、開始から採決前までの時間が3時間46分あるのですが、その半分以上に参加していますがなという所でございます。決定会合の議事要旨を見ると判りますように、「経済物価情勢に関する委員会の検討」というのと「当面の金融政策に関する委員会の検討」というパートがあって、各審議委員が一人一人意見表明を行います。あと、過去の議事録見ていると声明文の表現とかで議決前にああだこうだという場面もあり(今回は割とすんなりだと思うけど)まして、そんなこんなを考えますと前原先生のように最後の1時間の出席だとどこからどう見ましても討議の最後の方にしか出てないだろという風に思える次第でございます。
いやね、まあ当然日銀サイドとしてはヨイショしますから、総裁会見では『大臣には、私どもの真剣な議論を聞いて頂き、また大臣も自らの考え方を披瀝され、私も大臣のお考えとして受け止めさせて頂きました。私どもの真剣な議論を直接聞いて頂くことは、意義があることと考えています。』(今日ネタにする時間が無いがこれは総裁会見からです)というようにヨイショヨイショとなりますけれども、結局の所肝心の議論の内容とか別に全部見ているとも思えない次第でございまして、お前は一体全体何をしに来たのかと小一時間問い詰めたい所ではございますが、まあ前原先生が勢い込んでドヤ顔で乗り込んで予想通り過ぎる展開に落涙を禁じ得ないものでございます。
まあ何ですな、ボロクソ言うばかりでは申し訳ないのでちょっとだけ前原さんの為に前回の竹中さんの時と比較すると、出席した時間の頭については10時41分VS10時57分ですから16分違いで大差ないというのが支援材料なのですが、まあ結局そこから1時間で会議が終了しているという事は即ち前原先生議論に特段貢献しないで、最後だか最初だか知りませんが「ぼくのかんがえたきんゆうせいさく」の話をして「いやあご高説ありがとうございました(棒読み)」となったのでしょうなあとか思うと更に落涙がトマランチ会長となるのでございました。
ということで悪態書いてたら時間が来ましたので総裁会見やら何やらは明日お送りいたしますm(__)m
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2012/10/02
○さて短観ですが
http://www.boj.or.jp/statistics/tk/gaiyo/2011/tka1209.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/statistics/tk/gaiyo/2011/tka1206.pdf(前回)
まあ例によって例の如く短観で債券市場が反応しないのは最近の仕様なのですけど残念なお話ではございますなあという所で。
・前回の先行き予測DIの達成状況
(6月時点) (9月時点)
現状→9月予測 現状→12月予測
製造業大企業 ▲1→+1 ▲3→▲3
製造業中堅企業 ▲6→▲7 ▲6→▲13
製造業中小企業 ▲12→▲15 ▲12→▲14
非製造業大企業 +8→+6 +8→+5
非製造業中堅企業 +3→▲3 +2→▲3
非製造業中小企業 ▲9→▲15 ▲9→▲16
前回は「予想より悪くなかったですね」という感じで、まあ今回もヘッドラインの数字そのものは市場予想よりも良かった感じなのですが、今回見ますと6月時点で予想していた大企業製造業の改善が達成されておらず逆方向になっている上に、先行き見通しが改善方向から横ばい方向になっているので、まあ製造業の方がヤバス感がございますぞなもしという所でしょうなあ。
でもって非製造業に関しては前回予測から先行きの所では状況が悪化するかもという感じだったのに結局前回比DIがほぼ横ばいとなっていまして、非製造業が妙に底堅いという所でして、製造業がダメダメ感漂い非製造業が妙にしぶといというある意味二極化ちゃあ二極化なのですが、一般的には製造業がヘロヘロになるとラグを伴って非製造業がうんこ化するという認識だと思いますので、まあ先行き碌なもんじゃねえとは思いますがどうでしょう。
製造業大企業と製造業中堅企業が(まあ事前の市場予想はもっと悪かったのかもしれませんが)突出してダメダメ感、というのが目立ちますなあという所です。
・雇用判断DI
(6月時点) (9月時点)
現状→9月予測 現状→12月予測
製造業大企業 +8→+6 +7→+9
製造業中堅企業 +8→+8 +10→+8
製造業中小企業 +10→+8 +11→+11
非製造業大企業 ▲3→▲3 ▲3→▲3
非製造業中堅企業 ▲4→▲6 ▲5→▲6
非製造業中小企業 ▲3→▲5 ▲5→▲6
これまた製造業と非製造業で明暗分かれるの図になっていまして、これも前回と同様の傾向ですし業況判断DIの方でも見られている図ではございます。でまあ見ててまっさきにあちゃーと思ったのは製造業大企業の先行き雇用判断DIが現状から悪化方向になっている所でして、まあその悪化幅自体は大したことないのですけれども、6月時点では改善予想になっていた(と言ってもまあ余剰は余剰ですけど)ところが悪化予想という事は、まあ「雇用環境の改善で個人消費の持ち直しガー」という日銀の見通しに対してそれはいかがなものかというお話でもあるような。それに製造業全体として6月時点での雇用判断に関する目論見が逆方向に進んでいるというのも残念感漂います。
ただまあ非製造業の雇用判断DIに関しては引き続き不足傾向ですし、割と堅調な推移を継続しておりますので、そっちはそっちで悪くは無い話ではございますが製造業がこの調子でこの先大丈夫なのかというのは以下同文。
・想定為替レート
為替が何だかんだ言いましてもウゴカンチ会長のせいかすっかり話題にならなくなった想定為替レートですが、折角前回も数字を拾っておりますので。
(参考)事業計画の前提となっている想定為替レート(大企業・製造業)
(円/ドル) 2011年度全体(上期)(下期) 2012年度全体(上期)(下期)
2011年6月調査 82.59 82.59 82.59 − − −
2011年9月調査 81.15 81.26 81.06 − − −
2011年12月調査 79.02 80.26 77.90 − − −
2012年3月調査 78.93 80.20 77.69 78.14 78.04 78.24
2012年6月調査 79.27 80.18 78.35 78.95 78.98 78.93
2012年9月調査 − − − 79.06 79.16 78.97
・・・・・・・・・・そらまあこんなにウゴカンチ会長だったら話題にもなりません罠。
・金融商品取引業クオリティを今回も鑑賞
これまた毎度耳タコだとは思いますが、ここのカテゴリーが「証券会社」「投資業等」と分かれていた時は物凄い面白いブレを示していたのですが。
(6月時点) (9月時点)
現状→9月予測 現状→12月予測
金融商品取引業 ▲38→▲11 ▲38→▲24
この前の3月短観から6月短観の比較(3月時点での業況判断DI予測+16が何と54ポイントも悪化するという状況)の素晴らしさには敵いませんが、6月時点では「もっと状況が改善するだろう、うんそうに違いない」と思っていた数値が結局全然無理無理無理という結果になった訳ですが、まあ良く良く考えてみますと3月短観の時のように「調子に乗って先行き大幅改善予想」した時よりはだいぶ反省の色が見える先行き予測DIとなっている辺りは、底打ちフラグが見えてきているのかも知れないという意味では良い傾向ではありますな(違)。
とは言いましても、先行きDIがまだまだ「より悪化」になっていない所が往生際の悪さを示しているのでございまして、これがもっと先行き予想もうダメです世の中終了です的な数値が出てきた時には完璧なる底打ちサインであると認識するのが宜しいかと存じます、って何かもうね・・・・・・・・
・在庫判断とか価格判断とか
何となく読んでみたが普段細かく見ていないからあまり数字のイメージがつかないので今回は見ただけ。何となく販売価格判断の数字がパッとしないような気がしましたがどうでしょうかね。
#まあ全体的には「想像していた程悪くは無かったけれども、まあイマイチですなあ」という所でしょ
○生活意識アンケート
これまた毎度の四半期初恒例。
http://www.boj.or.jp/research/o_survey/ishiki1210.pdf
以下引用部分に『』つけると体裁が見苦しくなりますので付けませんが、質問と選択肢の部分が引用になります。で、()内は前回6月調査の数値になります(それも引用)。上記URLの本文20ページ以降から引用します。
・景況感ェ・・・・・・
Q1. 1年前と比べて、今の景気はどう変わりましたか。
1 良くなった2.9 ( 4.5 )
2 変わらない50.7 ( 51.3 )
3 悪くなった46.0 ( 44.0 )
ということでまあ「悪くなった」が増えているのですが・・・・・・・・
Q2.Q1のご回答について、そのようにお考えになるのは、主にどのようなことからですか。【2つまでの複数回答】
1 マスコミ報道を通じて27.5 ( 31.3 )
2 景気関連指標、経済統計をみて10.9 ( 12.7 )
3 勤め先や自分の店の経営状況から34.7 ( 35.2 )
4 自分や家族の収入の状況から53.2 ( 48.1 )
5 商店街、繁華街などの混み具合をみて25.2 ( 24.9 )
6 その他4.0 ( 3.6 )
何気に「収入の状況から」というのが増えているのがあちゃーな感じで、比較的堅調な雇用が個人消費を下支え的なシナリオってどうなのよという感じがするのですけどというのは短観の所でもお話しましたがこんな辺りにも。
・物価感ェ・・・・・・
Q12.次に「物価」についておうかがいします。
あなたご自身の感じでは、「物価」は1年前と比べてどう変わりましたか(「物価」とは、あなたが購入される物やサービスの価格全体のことです)。
1 かなり上がった5.2 ( 5.9 )
2 少し上がった38.7 ( 39.9 )
3 ほとんど変わらない44.0 ( 42.2 )
4 少し下がった10.4 ( 10.6 )
5 かなり下がった0.9 ( 0.7 )
この部分は数字を見るよりもグラフのある上記URL先の前半部分を見た方が判りやすいのですけれども(ちなみに6ページ以降になります)、上昇の答えが着実に減ってきているという感じになっております。
Q13. それでは、1年前に比べ現在の「物価」は何%程度変わったと思いますか。
平均値:+2.7 ( +3.2 )
中央値:0.0 ( 0.0 )
とまあそんな感じで、物価上昇(これは毎度高めに出てくる)に関する実績への見方がドンドンと低下傾向となっておりまして、まあインフレフォビア的には結構なのかもしれませんが、こらまたデフレマインド定着でアチャーという傾向のような話ではありますが・・・・・・・
Q15. それでは、1年後の「物価」は現在と比べ何%程度変わると思いますか。
平均値:+3.9 ( +3.6 )
中央値:+3.0 ( +2.0 )
何故か先行きの方は6月数値よりも上昇という不思議な展開。
Q17. それでは、5年後の「物価」は現在と比べ毎年、平均何%程度変わると思いますか。
平均値:+4.4 ( +4.0 )
中央値:+3.0 ( +2.0 )
こちらも上昇。消費税の件があるのかもしれませんけれども、こちらに関しては変なのという感じです。現状の物価上昇のイメージが下がっているのに先行きが上がるというこの回答がどういう思考回路によって出るのかがおじちゃん頭が悪いのでワカランチ会長。
・インフレフォビア拡大ェ・・・・・・・
そらまあてめえの収入状況とかが悪化したらそういう傾向になるのはシャーナイナイではあるのですがこれはまたアレ。
Q12-a.(Q12で1または2『上がった』と答えた方へ)「物価」が上がったことをどのように思いますか
1 どちらかと言えば、好ましいことだ1.5 ( 2.1 )
2 どちらかと言えば、困ったことだ86.0 ( 84.6 )
3 どちらとも言えない11.6 ( 12.4 )
Q12-b.(Q12で4または5『下がった』と答えた方へ)「物価」が下がったことをどのように思いますか。
1 どちらかと言えば、好ましいことだ34.9 ( 32.4 )
2 どちらかと言えば、困ったことだ30.9 ( 30.5 )
3 どちらとも言えない32.9 ( 35.5 )
これまた本文9ページにある図表の方を見た方が判りやすいですが、どう見てもインフレフォビア拡大でデフレ歓迎拡大です本当にありがとうございましたorzorzorz
・今回の特集ですがデビットカードプギャー
『以降のQ21〜25は家計の決済行動に関する質問です。(注)今回特別に調査。なお、3月および9月調査ではその時々の情勢を踏まえながら個別のテーマに関する調査項目を設定しています。』
ってなことで、今回は決済手段の利用状況に関する話がございますが、その手のものをろくすっぽ使わないのが仕様のこのあたくしから致しますとほほうという結果も少々ありましたが、まあ興味のある方は見てちょ(解説付き図表は本文11ページ以降)。
Q22. 普段の買い物やサービスの支払いでデビットカードを使いますか。
1 よく使う(月3回以上) 0.8
2 ときどき使う(月1、2回程度) 1.1
3 まれに使う(月1回未満) 5.4
4 使わない/デビットカードを持っていない60.9
5 どんなものか知らない/関心がない25.8
・・・・・・・・・・・(・∀・)
Q22-b.(Q22で1、2または3『使う』と答えた方へ)支払いにデビットカードを使わない場面があるとしたら、その理由は何ですか。【複数回答】
1 暗証番号の入力が面倒である12.5
2 使いたい場所や時間帯での取り扱いがない23.8
3 支払いは現金でしたい(カードで支払うことが好きでない) 30.0
4 クレジットカードなど、他の決済手段の方が使い勝手がよい21.3
5 ポイントなどのお得感が少ない15.6
6 支払金額に上限がある3.8
7 セキュリティなど安全性に不安がある9.4
8 特に理由はないが、なんとなくデビットカードは使いたくない6.9
9 その他2.5
・・・・・・・・・・・(・∀・)支払現金主義が3割もまだいるのですね、つーか3割しか居ないというのか。
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