植田和男総裁(2025年度上期)
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2025/08/08「7月総裁記者会見続きで「基調的物価」の話と「何で利上げしないんですか」質問について」
2025/08/05「総裁定例会見はやはりハトハトチキンでした」
2025/06/20「総裁定例記者会見ですがハトハトムーブよりも物価や国債買入に関する発言が如何なものかと」
2025/06/11「国会答弁で「基調的物価2%までまだ少し距離がある」で為替が反応したのはアホなのかと思いました」
2025/06/05「植田総裁内外情勢調査会講演(その2):政策修正の前のめり感は一切出さずに輪番縮小に意欲」
2025/06/04「植田総裁内外情勢調査会講演ですが「利上げへの熱量無し」「輪番削減はやる気満々」かなと」
2025/05/28「金研国際コンファランスで内向け屁理屈満載学問の香気無しの挨拶をさせられる植田総裁・・・・」
2025/05/27「G7で超長期に質問されているのワロタ&物価安定にコミットねえ・・・」
2025/05/07「総裁定例会見:ベースラインシナリオ下げの話でしたが「物価」に関するツッコミが増えてきました」
2025/08/08
〇色々と渋滞していて恐縮ですが総裁記者会見の中では「何で利上げしないのか」が増えましたわな
まあアレです。
https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2025/kk250801a.pdf
総裁記者会見
――2025年7月31日(木)午後3時30分から約70分
・「物価の基調」が政策反応関数ならばそもそも物価そのものの見通し数値出すことに意味があるんでしょうか
弊駄文でも「どうせ2025年度の物価が上方修正されても26年度27年度が上がらんと意味ない」とか申し上げていた気がしますが、当然会見の割と早い段階でこれは質問されますわな。まあこの記者さんは回答がそうなるのを分かっていてわざと質問しているんだろうな、とは思いましたが。
『(問)(前半割愛)あともう一点、今回の展望レポートについてなんですけれども、25
年度の物価は上方修正されまして、26、27 年度は概ね同じとはいえ小幅に引き上がっているという状況であると思います。こうした物価の状況を踏まえまして、総裁としましては利上げの環境というのは整いつつあるというふうにお考えでしょうか。』
日銀大本営の屁理屈合戦をいつも見ていますと、まあどうせこういう見通し出してこういう屁理屈(=基調物価はまだ2じゃないから云々)を捏ねてくるというのはある意味自明なのですが、ソウジャイカンよというのがこの質問でありまして、現にこの日って展望の数字出た瞬間(はジャパン債券市場お昼休みだったので)為替市場が盛大に反応した訳で、日銀のコミュニケーションの中で一種の「日銀がお出しするヘッドライン」の物価見通し中央値というのを素直に受け止めればこうなりますわな。
でもって、当然ながら基調物価ガーという回答をする、というのが様式美ではあるのですが、まあ冷静に考えて見れば、「物価見通し」として出している物以外に「ザ・基調的物価」というのがあって、その数字を見ながら政策反応しています、ってんだったら、各委員が考える「ザ・基調的物価」を出してもらわんとダメじゃんだし、CPIの見通しを出すのはコミュニケーションを訳わからん状態にするだけだから止めたら、って話になるわけですな。
まあ当然ながら今のは極論というか大本営の屁理屈への上げ足取りでして、本来はこの「ザ・基調的物価」みたいな本来は「総合的判断」であり「経済主体の行動なども含めた状況を概念として言語化したもの」をあたかも計測可能な「ザ・基調的物価」があるかのようにして政策行動(要は利上げを渋る)を正当化するような屁理屈(しかも実際の物価が上昇してくると綻びが出てくるという詰めの甘い屁理屈)をこねている方がダメダメなので、コアやコアコアCPI予想出すのがダメって言う訳ではないんですけどねwwwwwwww
でまあこの質問に対するハトハト大先生の回答ですが、
『(答)どちらも今後出てくるデータを、予断を持たずに丁寧にみていきたいというお答えになりますけれども、(質問前半への回答部分割愛)それから、26
年度と 27 年度のインフレ、私どものインフレ率見通しが、少し 26 年、25 から
27(注 1: 会見では「25 と 26」と発言しましたが、正しくは「25 から 27」です。)ですね、上方修正になっている点に関するご質問だったと思いますけれども、25
年度分はかなり大きく上方修正になっていますが、これはほとんど、米を含みます食料品価格のここまでの上昇を反映したものでございます。これが若干の時間がかかるかもしれませんが、今後インフレ率としては低下に向かうというふうに予想していますので、このインフレ率の上方修正だけをもって、金融政策がどっち側に左右されるというような種類のものではないというふうに考えています。』
という説明になっているのだが、そもそも日銀ってこの3年ほどの間、アクチュアルの物価上昇に関して「供給要因だから/コストプッシュ要因だから」「今後は伸び率が低下する」と説明するも、次から次へとその供給要因あるいはコストプッシュ要因が手を変え品を変え続いて物価の伸び率が高止まっている訳でして、現実の物価見通し外しまくっていて、しかもインフレーションターゲットをやっている筈なのに、政策対応は不要です、って屁理屈こくのはやっぱりおかしいんじゃないですか、というお話で、インフレ率の上昇修正をしているのに政策に影響ないってのはさすがに酷いかと。
いやまあこれがせめて「おおむね横ばいとは言え前回引き下げた見通しが若干引き上げられており、従来よりも下振れリスクが低下(本当は今回は「上振れリスクが上昇した結果バランスになった」というのが正しい)しています。ただし現状ではまだ政策調整をするのが適切という判断に至らなかったということです」位にしておけばいいのに、「金融政策がどっち側に左右されるというような種類のものではないというふうに考えています」ってのはハトハトチキン音頭の大盆踊り大会にしか聞こえない訳で、特に今回の総裁会見はハトハトチキン音頭が過ぎるわ、とリアタイで聞いてて思いましたわな。
・ビハインドに関する懸念はそりゃまあ今回据え置きだから「今のところないです」になるのはしゃあないのだが
政策ビハインドに関する質疑です。最初のは先日(火曜日)にもネタにしたのを出すのでそこは再掲になります、出た順に引用しますが。
『(問)二点お伺いします。物価の見通しのところで 25 年を大きく上方修正されたと。ただ、食品価格の上昇については、徐々に減衰していくという見通しを示されています。これまでと同様に一時的要因が大きいということですけども、一時的ではない可能性については、従来よりも高まっているというふうにお考えでしょうか。その場合、日銀の対応が後手に回る可能性があると思うんですけども、その辺はどのようにお考えかというところも併せてお願いします。(後半割愛)』
食料品価格上昇の二次的波及効果、の面でこの質疑ネタにしていますので再掲ですが、回答はこうなっていまして、
『(答)まず、食料品価格の上昇について、一時的と判断してよいかどうかというご質問だったと思いますが、申し上げましたように、インフレ率という意味では、今後低下していくというふうに考えています。そういう意味では一時的である。ただし、ここまでかなりの上昇がみられ、消費者心理にも、これはどっちに影響するか難しいところでございますが、消費者心理を悪化させる方向に働くというケースもあるでしょうし、インフレという面ではインフレが長く続いてしまうという方向に働く可能性もありますが、消費者心理あるいは予想物価上昇率に影響して、そこから例えば基調的なところにも影響するというリスクについては、常に意識しながらデータをみていきたいと思っております。(後半割愛)』
ということで、二次的波及の話は回答しているのですが、政策ビハインドに関する回答はしていない(「意識しながらデータを見ていく」しか言ってない)訳ですな。でもってちょっと先の方になりますけど、
『(問)(前半割愛)二点目はビハインド・ザ・カーブについてです。先日、経済同友会の新浪代表から、トゥーマッチビハインドになることは良くないという声が上がりました。長らくデフレに浸かってきた国がそれなりの率のインフレを経験すると、米国や欧州など諸外国より、その上昇率の幅が小さくても、そうなったときに経済に与える打撃が大きくなるという可能性は考えられないでしょうか。現状のご認識と、ビハインド状態になることを防ぐために、不確実性が完全に晴れない中でも利上げするという判断があり得るのかどうかもお伺いできればと思います。』
これに対して、今はビハインドと考えていない(そりゃビハインドだと考えてたら中立金利まで必死こいて利上げしないと時すでにお寿司になってしまうから「ビハインドです」とは言わないけど)のは当然なのですが、じゃあどう回答したかという話でして、
『(答)(前半割愛)それから、二番目は、ビハインド・ザ・カーブになるリスク等に関するご質問ですが、まず、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、賃金が物価に影響し、物価が賃金に影響するというメカニズムは続いていますけれども、その中で、例えば、賃金がサービス価格に影響するという基調的物価をどんどん押し上げていくときにコアになるような部分が続いていますけれども、すごい加速しているというふうにはみていません。そういうことはビハインド・ザ・カーブに必ずしも陥ってないということの一つの大きなポイントかなというふうに思います。』
ということで物価上昇が加速するとは見ていないからセーフ、って言っておりまして、それ自体は理屈としてはわかるのですが、一方で欧米とはそもそも発射台が違うんだから欧米のようなインフレにならなくても、問題が生じてしまうのではないか、というのが質問の「長らくデフレに浸かってきた国がそれなりの率のインフレを経験すると、米国や欧州など諸外国より、その上昇率の幅が小さくても、そうなったときに経済に与える打撃が大きくなるという可能性は考えられないでしょうか」という話なんですが、じゃあその件に回答しているか、と言えば1ミリも回答していない訳ですな。
でもってこの回答はさらに続くのですが、日本の場合は物価上昇耐性が低いんじゃないの問題は華麗にスルーして次の論点の回答をしているんですけど、
『ただ、基調的物価が以前よりも 2%に近づいてきている中で、あるいは同時に予想物価上昇率もある程度高まっている中で、ヘッドラインといいますか、消費者物価総合の動きが、先ほどもちょっと申し上げたかもしれませんが、基調的物価に、あるいは予想物価上昇率に影響を及ぼしてしまうという可能性は、以前よりも注意してみていかないといけないのかなというふうに思っています。そういうことにも配慮しつつ、政策を決めていければなと思います。』
この点って今回の展望レポートをよく読むと(前述したように)物価のリスクは「中立に戻った」というよりも「上振れリスクの要素も強まったのでアグリゲートすると差し引きバランス」って事なのは明らかなのですが、なんか知らんけど総裁会見の説明ってこの「アクチュアルの物価が高止まりすることによる基調的インフレの上振れリスク」っていうのを明示的に説明しないんですよね。だからハトハトチキン音頭に聞こえてしまう訳ですけど。
とまあそういう訳でこの新浪さんの指摘ネタですがその後にも質問ありまして、
『(問)経済界からの声と利上げについてお伺いします。経済同友会の新浪代表幹事が一昨日、物価が非常に高い状況にあり、利上げしない理由が分からないと発言するなど、経済界からも利上げを求める声が上がっています。こうした声も踏まえて早期の利上げ、年内の利上げがあるのかどうかお伺いしたいと思います。』
質問の後半が残念感あるがそれはさておきまして、
『(答)これは先ほど来、いろいろご質問があってお答えしている点と重なりますけれども、現状は私どもが重視しています基調的な物価の動きは強くなってきてるけど、まだ2%には届いていないというふうにみています。従って、緩和的な金融環境を維持しているということであります。』
とあるように、ビハインドというのが露骨に出ている訳でもないが、「日銀の利上げ判断が遅れて物価が上振れするリスクはどう考える:的なテーマを練りこんだ質問は結構ありまして、でまあその結果として上記のように「これは先ほど来、いろいろご質問があって」になっております。
なので、今回の記者会見って全体の質問のトーンが「ところで何で利上げしないの」という感じになっていたのは結構違っていて、従来だと「利上げで住宅ローン金利ガー」とか「利上げで中小企業ガー」みたいな感じの質問って結構あったのですが、今回はその方向でのトーンが見受けれず、流石に参院選のインパクトがあった罠というのも印象にありました。
では続き。
『それに対する懸念としては、そんなことをしていると、どこか近い将来でビハインド・ザ・カーブになるんではないかという懸念だと思いますけれども、それもいくつかご質問があってお答えしたように、今のところそのリスクはそれほど高くないというふうにみているということでございます。』
ではそのリスクが高くない理由と、どういう状況になったらビハインドのリスクが高まるから、その点を注意したいという例示、というのが出てこないのが日銀大本営のいつものパティーンですが、この回答だともう「大丈夫なんだから大丈夫です」にしか見えませんな。
とは言いましても、先般来悪態ついておりますように、今の日銀の政策説明って「基調的物価」という何だかよくわからないものを政策反応関数にしている、という時点でまあクリアカットに説明する気は無いわけでして、いやまあ別に全部クリアカットに説明できるか、っていうと世の中そんな単純な話でも無いのは分かるんですけれども、「ザ・基調物価」が政策反応関数という闇鍋政策反応関数状態というのはさすがに如何なものかという感じがしますな。
・物価高がイシューになっているのに能天気に「基調物価」を振りかざしている場合なのか問題
という話に対して、物価高がイシューになっていますが云々という質疑も結構ありましたが、特に最後の方では「物価高がイシューになる中で「基調物価は2%に行ってない」って説明で世の中通ると思ってるのか」という火の玉ストレートが飛んできておりました。
『(問)先の参院選でもですね、物価高対策っていうのが最大の焦点だったわけですね。与野党からは給付金や消費税減税・廃止という話も出てると。しかしそういう政策っていうのは、むしろ景気刺激的であって、物価を上げるような、むしろ矛盾した政策なわけですけれども、本来であれば、一番物価高対策になる日銀の利上げというのが、あまり焦点にならないのはどうしてなのかということをお伺いしたんですけど。』
ですよねーーーーーーー
『まず先ほど同友会の新浪さんが利上げをとおっしゃったことに対して、総裁が先ほどご回答がありましたけれども、賃金と物価の好循環論とか、あるいは基調的インフレ率がまだ
2%を下回ってるっていうそういう説明と、今、世間で言われている物価高に対する何らかの対策をということの話に、非常に矛盾というか噛み合っていないご説明のように聞こえるんですけれども、そこはどういうふうにうまく整合性を持って説明されるんでしょうか。』
火の玉ストレートキタコレ。でもって回答ですが、
『(答)物価高対策として金融引き締めがストレートにきれいに当てはまるケースというのはちょっと図式的に申し上げますが、需要サイドからの強い圧力で物価が上がっているという場合だと思います。そうしますと、金利を上げることによって、過熱する景気を冷やしつつ物価を下げるということになるということだと思います。』
はい藁人形論法。
別に利上げしろというのは「引き締めをしろ」と言ってるのではなくて、「過剰な緩和による物価押上げ力をもう少し是正しろ」であるし、「過剰な緩和による通貨安からのコストプッシュ圧力を是正しろ」って話なのであって、利上げで需要を減らせと言うのは政策調整急げと言ってる人の中だってほぼ居ないじゃろというお話ですよね。ちなみにこの説明に触発されたというかその前の段階でもあったのですが、当然ながら円安に関する質疑あったし、何ならこの会見中に円安に飛んでいた訳で、もうこの藁人形論法な回答を初手に持って来ている時点でまともな答えにならないのですが以下読み進めますと、
『これに対して、現在の物価高のかなりの部分が供給サイドの要因によっている。このときに利上げで対応しようとしますと、どういうことになるかというと、必ずしも景気がものすごい過熱しているわけではないのに、景気を利上げで冷やして所得が減るから、例えば食料品に対する支出が減って食料品価格も下がるというルートになります。これは本当に望ましいかどうかということについて、皆さん、考え込んでしまうというところがあるのかなというふうに思っています。』
しねーよ、そんな利上げ今求めてないわこの藁人形論法野郎、ということですが、逆に言えば藁人形論法でしか回答ができない、という状態に陥っている(上記の質問に「基調的物価ガー」と回答しても回答にならんわなそりゃ)のは自覚しているから藁人形論法で逃げるしか無かったんでしょうな。
でまあ関連してもっと鬼質問で火の玉ストレートに石直球をミックスしたような質問が最後の方にありましてですね・・・・・・
『(問)ちょっと感覚的なお話で恐縮なんですが、日本銀行は国民の目にどのように映っていると思われますか。』
とは何ぞ、と思ったら・・・・・・
『というのも、参院選に象徴されるように、国民は物価がだんだん上がることを困ったことだと受け止めていますが、日本銀行は
2%インフレを目指していて、未だそこに届いてはいないと言っている。』
ときましたが質問のこの次の部分でリアタイで聞いてたので不覚にも大爆笑の発作が起きてしまいましたが。
『幸か不幸か、日銀のスタンスというのは国民にあまり認識されてないようにも思うんですけれども、』
wwwwwwwwwwwwwwwwwwwこれはまさに鬼畜の指摘(絶賛していますので念のため申し添えます^^)
『どう映っているのか、どう映りたいのかというところに、思いを伺えればなと思います。』
もうこれは質問だけで立派な物件で回答の方は最早おまけなのですが引用だけしておきますね。
『(答)どう映ってるかという点、必ずしも的確に把握できてるかどうか分かりませんが、大まかにゼロインフレくらいのときから現在の状態になる中で、インフレ率と賃金上昇率、両方上がってるということは、必ずしも大きなマイナスであるというふうには考えられてないと思うんですが、しかし、両者を比較してみると、物価の方が大きめに上がっている。その要因としては、サプライショックの影響が大きかったということだと思いますが、そうした中でデフレの克服あるいは
2%インフレへの動きが続いているということが、国民への説明あるいはコミュニケーション、非常に難しくしてるということは、常に意識しております。』
とまあそういう訳で、アタクシがチェリーピッキングしていません、とまではさすがに自信は無いのですが、ゆうてまあ今回の質疑応答って全体的に見ますと「何で利上げしないんですか」のトーンが従来以上に強くて、やはり物価高批判の流れは強まっているなあという印象ですし、なんだかんだ言ってそこらを意識しだすとまたもジャガーチェンジする可能性もありますし、何ならそのジャガーチェンジする言い訳は今回基調物価の上振れリスクを丁寧に説明している展望レポート基本的見解の本文内に埋め込んでありますので、その辺りが今後どう作用して埋設地雷が火を吹くや吹かざるや、というのが注目される所ではありますな。
てなわけで今朝はこの辺で勘弁してもろていただいて。
2025/08/05
お題「のんびりと総裁記者会見ですがベースはハトハトチキンな説明なんですけど・・・・・・」
まあこれがインフレ目標達成の世界じゃろという話で
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250804/k10014884421000.html
最低賃金 過去最大63円引き上げへ 全都道府県で1000円超に
2025年8月5日 0時58分
実際のCPIが前年比2%どころか3%超で推移していますし、食料品とかもっと盛大に上昇している訳でして、最賃の上げはちょっと威勢良すぎのような気もだいぶする(と言っても元々が低すぎたのを是正しているという事なんでしょうけれども・・・・)けど、まあ何はともあれ生活給の観点でのベースアップをきょうびできないような企業はまあ(ピー音)ってのが「2%への招待状」の内容なのですよ、ってな話なんじゃないかね、とは思う訳ですが・・・・・・・・・
〇総裁記者会見:これがまあハトハトチキン会見という受け止めになりましたけど・・・・
今回は政策変更も無かったのでぼちぼちとやっていきますが(汗)
https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2025/kk250801a.pdf
総裁記者会見
――2025年7月31日(木)午後3時30分から約70分
ご案内の通りでハトハトチキンという評価からこの日は円安ドル高が進行して海外時間になったら150円まで乗せやがりましてアイヤーって感じでしたが、先週末の雇用統計とトランプの発狂(トランプとしては通常運転)のせいで円安反転して良かったですねの世界になっておるわけですが。
・見極めたいとされる関税の影響に関して「わからないけどこれから出てくるはず」ではハトハトチキン解釈だわさ
今回の会見って金利に関して変更は無いですし国債買入は前回やった後なので話題無し、ということになりますと関税の影響と基調的物価の話になるのはまあ順当ではあったのですが、その関税の影響に関する質疑が前半多かった感じでして、最初の幹事社からの質問のうち一つは関税の影響云々なのでそこから始まります。
『(問)幹事社から二点質問させて頂きます。一つ目は、日米の関税交渉がまとまり、日本経済にとって不確実性が低下したと、総裁も大きな前進という発言ありましたが、関税措置が不確実性が低下した一方で、関税措置が日本経済に与える影響がなかなかみえない状況です。次の利上げに向けて重視して確認したい点はどういった点でしょうか。(後半割愛)』
この回答ですけれども、
『(答)まず関税措置の影響のところのご質問ですが、ご指摘頂いた通り、先日の日米間の関税交渉の合意は、わが国経済を巡る不確実性の低下につながると考えています。それでも、いったん成長ペースが今後鈍化し、基調的な物価上昇率が伸び悩むという私どもの中心的な見通しに大きな変化はありません。』
メインシナリオは4月に下げたものをそのまま踏襲していますからね。
『また、これまでより低下したとはいえ、各国の通商政策等の影響に関する不確実性はなお高い状況が続いています。』
では何を重視して確認するのかと言えば、
『こうした中、私どもとしましては、これまで同様、経済・物価情勢が改善し、基調的な物価上昇率が高まっていくという見通しの確度やリスクを確認しながら、先行きの利上げの是非やタイミングを、毎回の決定会合において適切に判断していく方針です。』
言われんでもわかっとるわという話なんですが、利上げ云々ってのを入れておかないとハトハト音頭感が強まるから、ということで入れてるんだろうなあとは思うのでして、この続きが、
『その際、通商政策等の影響が各国の経済や国際金融資本市場にどのように表れてくるか、また、そのもとでわが国企業の賃金・価格設定行動における積極的な動きが途切れることがないかどうかといった点をはじめ、内外の経済・物価・金融情勢を幅広く丁寧に確認してまいりたいと考えています。(後半割愛)』
なんか碌すっぽ回答になっていないのですが、結局のところ「わが国企業の賃金・価格設定行動における積極的な動きが途切れることがないかどうかといった点」というのを見極める、という話になりますと、それは賃金について言えば冬季賞与と来年度の賃金設定、というエライ先の話なりますな。
でもって「じゃあ時期はいつなんだ」と次の方が質問するわけでして、
『(問)アメリカの関税政策の日本経済への影響について伺いたいんですけれども、こちら今後見極めていく場合にですね、大体どのくらいの期間を要するというふうに総裁はお考えでいらっしゃいますでしょうか。大体これ
3 か月くらいで分かるものなのか、それとも半年、1 年くらい要するものなのか。あとですね、影響を見極めている間につきましては、こちら利上げだと金融政策変更の決断というのは難しいということになるのかどうかということでご認識を伺います。(後半割愛)』
その回答。
『(答)どちらも今後出てくるデータを、予断を持たずに丁寧にみていきたいというお答えになりますけれども、アメリカの関税政策の影響につきましては、もう少し詳しく申し上げれば、これまでのところ特に駆け込みとその反動の動きが何回にもわたって続くということが起こって、非常にデータがみにくくなっているかと思います。』
これを言い出すと結局やろうと思えば無限に引っ張れるし、逆にその気になれば無事なのが直ぐにも確認できる、という話になってしまう世界なんですけど・・・・・・・
『ようやく、少なくとも関税率のある程度の部分が落ち着きどころがみえてきたという点もありますので、今後ははっきりした影響が少しずつ出てくるという局面に入るかと思います。』
影響がたいして出なかった場合は「これから影響が出るはず」と言って引っ張れてしまう訳で、文字に起こすとまあ若干中和されますけれども、会見聞いていた印象ではこの調子で「これから影響が出るはず」となんかもう影響が出るのを待ち望んでいるかのような説明っぷりに聞こえましたし、まあそういう感じを会見場の皆様も受けたんだろうなという感じで、ハトハトっぽいヘッドラインが割と流れていた感じがしましたがどうでしたですかしら。
『それがどれくらいの期間、どの指標をみないと分からないのかという点については、現時点ではなかなか確定的なことを申し上げにくいなと思います。早めに大きな影響が出て、それでなかなか大変だというふうに判断がつく場合もあるでしょうし、なかなか影響は出ない、しかし本当に出ないかどうか時間をかけてみるっていう場合もあるでしょうし、そこは予断を持たずに丁寧にみていきたいと思っております。(後半割愛)』
でもってこの「なかなか影響は出ない、しかし本当に出ないかどうか時間をかけてみるっていう場合もある」ってのがまさにハトハトチキン音頭キタコレという感じで、これが会見質疑の実質2発目に出てきたのでそりゃハトハトチキン音頭キタコレとなってしまう訳でして、折角展望レポート基本的見解で全体のメインシナリオ自体は変えてないけど、従来「足もとの物価上昇はコストプッシュでワンオフだから対応しない」の一点張りだった足元の物価上昇へのスタンスを「二次的効果による上振れリスク、メインじゃないけどリスクだよ」という形で一歩としては小さな一歩ですが、アクチュアルの物価上昇をネグっている訳ではない、というスタンスを見せた(「コストプッシュは一時的」で切り捨てていたのだからそこそこ重大な転換である)というのを全部台無しにする勢いでハトハトチキン音頭を踊りだしてしまいました、って話な訳ですわよ。
いやさあ、せめて企業の賃金設定行動について言えば「来年度に向けた賃金設定が今年度同様に続くのか」でもいいですし、もうちょっと積極的に言うなら「来年度だけではなく、中途採用市場やパートタイム従業員への賃金設定状況なども含め幅広く確認する」みたいな感じで説明できんのかと思うわけですな。
まあアレです、「なかなか影響は出ない、しかし本当に出ないかどうか時間をかけてみるっていう場合もある」ってのは賭博黙示録カイジ(でしたっけ)の利根川幸雄の名言(迷言)「つまり我々がその気になれば金の受渡は10年後、20年後ということも可能だろう・・・・」をアスキーアートと共に思い出してしまうという程度にはワシの頭はネットミームに毒されているもんで、益々そう思ってしまうのかも知れませんけどねwwwwwwww
とまあそういう訳で冒頭の2発でハトハトチキン音頭キタコレだった訳ですが。
・基調的物価に関しては色々と聞かれているのですが、そもそも「基調的物価」とは何ぞやという整理が必要ですわな
幹事社のもう一つの質問は基調的物価、ということでまあ今回のテーマを網羅している訳ですな。
『(問)(前半割愛)二点目は、基調的な物価について伺います。足元のインフレ率は
3%を超え、この展望レポートでも、物価見通しを引き上げたかたちです。参議院選挙でも物価高対策が焦点となる中、前回と比べて基調的な物価は高まっていると考えているでしょうか。』
この回答がクソ長いんですよ。
『(答)(前半割愛)次に、基調的な物価についてですが、これの評価に当たっては、いつも申し上げていることですが、各種の物価指標や人々の物価観を示す中長期的な予想物価上昇率、更には物価変動の背後にあるマクロ的な需給ギャップや労働需給、賃金上昇率など、経済・物価に関する様々な情報をみたうえで総合的に判断していく必要があります。』
という事なのであれば、それっていうのは何らかの計測可能な数値なのではなくて、「経済物価情勢を全般としてみた場合に今世の中が考えている物価上昇率の定常状態がどの程度の水準にあるのか」すなわち中長期の期待インフレ率とほぼ同義に近い、という話になる(実際問題として内外情勢調査会での総裁の説明では後半で中長期合成期待インフレ率を基調インフレとした説明をしていました)ので、まさに「総合判断」の話であって、なんかの数値をアグリゲートして加工してどうのこうの、という物ではない筈なんですよ。然るに植田総裁の説明ってここからがイミフでして、
『より具体的に少し申し上げますと、一時的な変動の影響を受けにくい物価指標、例えば加重中央値やサービス価格のトレンドあるいは家計や企業、エコノミスト等の予想物価上昇率に関する指標等をみますと、なお
2%を下回っています。しかし、緩やかな上昇傾向を辿っています。』
という風に具体的な経済指標やらサーベイ指標やら、というようなものを挙げていて、この説明だとまさしく計測可能な「ザ・基調物価」みたいなのがあるかのような説明になってしまう訳ですよ。
でまあそういう説明を従来からしているから(それこそ黒田末期に登場したコアコアCPI見通しを出したのも「ザ・基調物価」の一環みたいなもんでした)、今回はまあそこまででもないですけど、毎度毎度「基調物価はどの水準にあるんですか」というような話をする訳ですし、そもそも論として植田さんも基調物価を精緻に計測しようみたいなニュアンスの話をしたがるので、どうしてもその「ザ・基調物価」の方に話がいきやすくなるわけですよ。
でも、「日本経済のアクターの皆さんの経済活動のベースになっている物価観がどの程度か、というのが実際の物価やら企業行動やらサーベイやらを見て行って2%辺りで安定しているんじゃないかなあと判断できる経済物価状況」が基調物価2%だというのであれば、話がだいぶ違ってくる訳で、結局お前らどっちなんですねん(普通に考えたら総合判断だが)というお話なんすな。まあこの辺をもうちょっと整理して頂きたいもんです、とはおもいました。
というアタクシの能書きはさておきまして続きに行きますと、
『また、労働需給は引き締まった状態が続いており、こうしたもとで、賃金上昇を販売価格に転嫁する動きも継続しています。こうした点を踏まえまして、基調的な物価上昇率は引き続き
2%に向けて緩やかに上昇しているというふうに判断しています。』
という説明をしている訳で、基調物価って総合判断だと思うのですよね。まあその総合判断に緩和政策の調整が紐づいているのが現状な訳ですが、そうなりますと今度は展望レポートでコアCPIとコアコアCPIの見通しを出していること自体に何の意味がありますねんという話にもなろうかと思いますが、その件に関してはまたなんかの機会に考えたいなとは思います。
でもって先行きですが、
『先行きについては、経済の成長ペース鈍化などの影響を受けて、基調的な物価上昇率はいったん伸び悩むことが見込まれます。』
ほーん。
『しかし、賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇していくというメカニズムは維持され、その後は、成長率が高まるもとで、人手不足感が強まり、中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、基調的な物価上昇率は、2%に向けて徐々に高まり、見通し期間後半には物価安定目標と概ね整合的な水準で推移すると考えています。』
ということで、まあ質問に対する答えがクッソ長い次第なのでした。
・とは言え基調物価が総合判断だと腹を括っていないのでこういう説明になるのよね
ちょっと先の質疑になりますが基調的物価に関しては質問が多い訳で。
『(問)一点目はですね、基調的物価についてお伺いします。伸び悩んだ後にまた回復する見通しということですけれども、今現状、総裁の認識としては既に伸び悩んでるような状況なのか。次のですね、利上げの判断をするときは伸び悩んでる状況であっても回復に向かうと確信ができれば利上げをするのか、それとも
2%にですね、持続的・安定的にアンカーすると確信を持てたら次の利上げに踏み切るのか、その考えについて教えてください。(後半割愛)』
まあ質問の方にも微妙に突っ込みたくなりますがそこは割愛して回答を見てみますとですね、
『(答)まず前段ですけれども、基調的物価の現状ですけれども、まだ関税の影響を受けて足踏みするという局面には入ってなくて、ごくゆっくりですけれども上昇が続いているというふうに思っております。』
ここの説明もまあ謎説明でして、もし「総合判断」なのであれば、そもそも4月の展望の時点で経済の見通しを引き下げてリスクを下方にティルトしているんですから、その時点で基調的な物価には下方圧力が掛かるという話になるんですが、一方で基調的物価は上昇が続いている、という判断になっているのはじゃあ何でですかってのを要因分解して頂きたいわけですわ。
まあその回答を出すとなると多分日銀的理屈を捻れば「インフレ期待が徐々に上がっているから経済の不透明要素を打ち消している」というのと「実際にはまだ経済が落ちていないので(ただし消費の判断は今回の展望で引き下げになっている)問題ない」という話になるのか、その合わせ技なのか、って話になると思うのですけどね。
『それから、基調的物価と今後の政策との関係ということでは、本当にそれが
2[%]に定着するまで待って動くというのではなくて、2[%]に到達していくという道筋、今でもそういう見通しを持っているわけですけれども、それの確度が上がるとか、見通しに自信が持てるということになるかどうかという、それもいろんな段階がありますが、ことの方がポイントになるかと思います。』
って話をしているのだが、これも結局のところ「基調的物価が2%に達している」という状況の定義がフワフワしている(ように見える)からこういう話になるのであって、「基調的物価が2%で安定している」という状態は「物価安定目標が達成できている」というのを同義であって、物価安定目標が達成出来ている段階では短期政策金利は中立金利(モチのロンだがこの数値にも幅があるけど普通に考えたらトレンドインフレが2%なら政策金利も2%じゃろというお話)に達していないと過剰緩和による好ましくないインフレ上振れを招くことになるんだから、「2%に定着するまで待ってから利上げ」はどこからどう見たってあり得ない話で、そういう質問が飛んでくること自体がナンジャソラになるんですよね。
でもこういう質問が飛んでくる、というのは結局のところ「基調的物価」という一種の計測可能な物価指数のようなものがあって、その数値と2%物価目標達成は必ずしもイコールではない、というような認識になっている、というかそういう説明を日銀がしているからこういう質問が飛んでくる訳でして、もうちょっとこの「基調的物価」の概念をきちんと整理しないといけないと思うのでした。
まあ2%なんてとてもとても、という状態ならばその辺フワッとしたままでもよかったのでしょうけれども、実際問題として物価目標2%だってもう達成してるんじゃないか(ワシはそっちの説を取りたいがまあそれは少数派オブ少数派だという自認はしてます笑)という考えだってできないことはないというような状態で、少なくとも物価目標達成は近いという状態になる中、この「ザ・基調的物価」はコミュニケーションをややこしくするだけのことにしかなっていないような気がします(個人の感想です)。
ただまあ一方で最後の方の質疑では、
『(問)今の質問と重複するのですが、基調的な物価上昇率につきましては、今後関税の影響でいったん伸び悩んだ後に徐々に高まっていくというふうに言っておられまして、外からみえない基調というものがですね、今後複雑な動きをしていくという局面に入るということだと思うんですけれども、総裁はこの基調的な物価上昇について、そういった局面ではより丁寧にですね、より具体的にもっと分かりやすく説明しなきゃいけないというふうにお考えなのか、その必要性をどのように感じておられるかお願いします。』
「外からみえない基調というものがですね」という辺りがいい感じのイヤミになっていますな^^。
『(答)基調的物価上昇率という概念、大事なんですけれども、なかなか分かりにくいし、データでなかなかきちんとみることができない中で、説明を工夫しないといけないなということはずっと思っておりまして、従って今日の冒頭のご説明でも、やや具体的に基調的物価上昇率の、そのものではないですが、それに近いインフレ率と思われる変数いくつかの動きについてご説明したりしました。こういうことは一段の工夫を重ねつつ続けていきたいと思っております。』
って説明になっていて、まあ経済学者というかエコノミストというか、そっちの系統だとどうしても「総合判断です」って話にならないで計測を精緻化しようというような方向に話を持っていきがちなんだよなーって思うのでした。
・食料品価格上昇の今後と二次的影響について
この点も質疑が幾つかありまして、
『(問)二点お伺いします。物価の見通しのところで 25 年を大きく上方修正されたと。ただ、食品価格の上昇については、徐々に減衰していくという見通しを示されています。これまでと同様に一時的要因が大きいということですけども、一時的ではない可能性については、従来よりも高まっているというふうにお考えでしょうか。その場合、日銀の対応が後手に回る可能性があると思うんですけども、その辺はどのようにお考えかというところも併せてお願いします。(後半割愛)』
しれっと「政策がビハインド」の質問をちりばめているのが芸が細かい(^^)。
『(答)まず、食料品価格の上昇について、一時的と判断してよいかどうかというご質問だったと思いますが、申し上げましたように、インフレ率という意味では、今後低下していくというふうに考えています。そういう意味では一時的である。』
ほう、というかまあそれがメインシナリオですね(なお「コストプッシュだから一時的」という阿保陀羅経を唱え続けて外しているんですけど)。
『ただし、ここまでかなりの上昇がみられ、消費者心理にも、これはどっちに影響するか難しいところでございますが、消費者心理を悪化させる方向に働くというケースもあるでしょうし、インフレという面ではインフレが長く続いてしまうという方向に働く可能性もありますが、消費者心理あるいは予想物価上昇率に影響して、そこから例えば基調的なところにも影響するというリスクについては、常に意識しながらデータをみていきたいと思っております。(後半割愛)』
とありましたが、後半でこのような良い質疑がありまして、
『(問)基調的物価の部分で先ほどですね、ヘッドラインの部分が基調的物価にこれからどういう影響を及ぼしていくかっていうところを、より一層注意してご覧になっていくというお話がありましたが、現状はですね、今の段階ではヘッドライン、消費者物価という部分がですね、いわゆる二次的な影響というかたちで、基調的な物価に影響を与えるっていう状況にはないというふうにお考えでしょうか。今の現状のとらえ方を教えてください。』
これは良い質問。
『(答)例えばここ 3 年くらいを振り返ってみますと、一つのメカニズムを申し上げれば、ヘッドラインのインフレ率が高いことがある年に、その次の年の賃金上昇率に影響を与えて、そうするとまたサービス価格に跳ねるというかたちで、だんだん基調的物価にも影響する、そういうメカニズムはあったと思います。』
というのを素直に認定している訳ですが、これだと「コストプッシュだから一時的」って話を連呼していたし、今でもメインシナリオでは連呼しているんだが、その説明との整合性は何ですかってなもんでして、大体からして「適合的期待形成」について以前は散々言っていたのですから、コストプッシュによる物価上昇が適合的期待形成を通じて二次的効果をもたらす、って話をすっかりネグって延々と「この物価上昇はコストプッシュだからネグって良い」という話にしていたのは何だったんですかと小一時間問い詰めたくなるわけです。
まあ日銀とてアホウじゃないので初手からそういうことは承知のうえで「コストプッシュはワンオフだから」の屁理屈を捏ねていたんだとは思いますが、その屁理屈だけではマズイ(つまり物価上昇が実は定着していて何ならインフレ期待の上振れリスクもあるんじゃねえかというのを真剣に考えないといけない、という可能性について無視できない、ということね)というのはさすがに認識しているからこういう説明のトーンに変化したんじゃないか、とまあそう考えることも可能(あくまでも可能、ということであって実際に大本営が何考えているのかは大本営じゃないと分からんし、関税の影響の話がひたすら利根川幸雄状態だったのでハトハト音頭にしか聞こえなかったし、というのもあるのですよね。まあムツカシイです判断は)というお話になったりする訳です。
よって、この続きですが、
『従って、ヘッドラインのインフレが高いという状態が長く続くという場合にはある程度注意しないといけないと、基調的物価への影響について注意しないといけないということだと思います。』
となっていまして、まあ2%台前半とかなら2%でんがなみたいな話だとは思うのですが、なにせ全国CPI総合ベースで言えば前年同月比3%台(しかも殆ど3%台後半)のインフレが昨年12月から本年6月まで延々と継続している(1月は4%)訳でして、さすがにこれはネグれないって話になっているのかね、って感じで更問があったのですが、
『(問)そうすると今、足元の食料品価格を起因とするものっていうのも、大なり小なり、基調的物価の影響というところを与えているんでしょうか。』
『(答)それはですから、今後見通し通りに食料品価格が落ち着いてくるかどうかというところに大きく左右されるように思います。』
これ微妙に答えが噛み合っていないのだが、本来であれば「今後見通し通りに食料品価格が落ち着いて来たとしても全体の物価がさほど下がらない場合は基調的物価の高まりを意味するのか」って話になるのかな、とは思いました。
・ハトハト音頭なのですゴリゴリ問い詰められるとハトが飛んで逃げていくという面白い質疑
質疑のどちらかというと前半だったのですがこんなのがありました。
『(問)一点目は、ちょっとややこれまでの質問の繰り返しになってしまうかもしれないんですが、関税を巡る不確実性についてやや後退して、きわめて不確実性が高いというところからは、不確実性が高い状態が続いているという表現に変わっています。また、物価についても、25
年度、大幅に上方修正して、物価のリスクバランスも下振れリスクが強いというところから中立的にしていると。全体でみると、基調インフレが持続的・安定的
2%を達成する蓋然性は、前回展望レポート時よりは高まったと言えるのかどうか、そこをまず確認したいと思います。』
『二点目については、物価のリスクの部分で、食品価格の上昇が長引いて、予想インフレや基調インフレに二次的波及の影響を及ぼす可能性について、やや詳細に展望レポートでは記述がありますけれども、これはやはり物価の上振れリスクに、以前よりは意識が高まっているということでいいのか。その場合、経済の下振れリスクとそうした物価の上振れリスクの両方をみるということだと思うんですけれども、そのバランスというのは、前回の展望レポート対比で変化しているのか、その辺りをお願い致します。』
中々明快な質問である。非常にいいですね。では回答ですが、
『(答)一番目のご質問について申し上げれば、特に、関税を巡る不確実性が、最初に申し上げた日米交渉が合意に至ったこと、あるいはアメリカとその他の国との交渉がいくつか合意に至りつつある、至ったということ等を通じて、そこの部分の不確実性がある程度低下し、端的に申し上げれば、私ども、4
月と今回 7 月、展望レポートの見通しをそんなに変えていない、今年度のインフレ率のところ除きますと、あまり変えてないんですが、その見通し実現の確度のようなものは少し高まったというふうに考えています。』
見通しは変えてないが見通し達成(2%物価安定目標達成)の確度は少し高まったと。
『それから二番目のご質問は、物価と経済のリスクのバランスというお話だったと思いますけれども、経済の方は下振れリスクが続いてる、つまり、関税の行き着く先はある程度みえてきた部分があるけれども、その影響についてはまだこれから確認しないといけないということで下振れリスクに配慮しているということですが、物価についてですが、いったん
25 年度の物価見通し、中心的な見通しをかなり大きく引き上げましたので、そこからは物価の上下見通しはバランスしているという姿になっているということだと思います。ちょっと答えになってるかどうか。』
とまあこういう言われ方すれば更問はこうなりますよね。
『(問)そうなるとやはり、経済の下振れリスクの方が政策運営上は重視すべきという理解でよろしいでしょうか。』
ってこれは誰でもそういう質問をするわ。
『(答)いえ。金融政策上どっちのリスクをということですけれども、当然、物価の上振れリスクは、先ほど来申し上げてますように、見通しで基調的物価上昇率がだんだん2[%]に収束していくというところから更に上振れるリスクのことを意味してるわけですから、それは重視して考えたいと思いますし、』
あら〜重視して考えちゃうんだwww
『経済の下振れリスクの方は、物価にも影響しますけれども、ここから経済あるいは物価が多少下振れた場合に、やはり私どもの立ち位置としましては、政策金利が
0.5[%]の低い水準であるということは意識していないといけないかなということだと思います。』
しかも経済下振れを意識するのは当然だが「政策金利が 0.5[%]の低い水準であるということは意識していないといけないかなということだと思います」っていうのは金融政策が飛んでもなく緩和的であるという事を意識するって話だからやっぱり政策調整ジャン、という話になるわけでして、植田総裁の中でハトハトチキンが降臨したり隠れたりしてますなあ、とは思いました。
あとは物価高批判の話とかビハインドリスクとかの方面の質疑もあってそれはそれでおもろいのですが今朝は時間の関係でこの辺で勘弁してつかあさい。
2025/06/20
〇MPMレビューで植田総裁会見ですがハトハトチキンよりも気になるフレーズがちらほらあってですね・・・・・
https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2025/kk250618a.pdf
総裁記者会見
――2025年6月17日(火)午後3時30分から約65分
・「記者クラブ主催」だから仕方ない面はあるのだがオープニングリマークの位置づけをもっと明確化してほしい
これ仕組み上しょうがないのかもしれないのですが、
『(問)本日の金融政策決定会合の内容について、総裁ご説明をお願い致します。』
『(答)今日の決定会合では、金融市場調節方針を決定したほか、昨年 7 月に決定しました長期国債買入れの減額計画の中間評価を行い、それを踏まえて、2027
年 3 月までの新たな減額計画を決定しました。最初に、これらの決定内容についてご説明します。まず金融市場調節方針ですが、無担保コールレート・オーバーナイト物を
0.5%程度で推移するよう促す、というこれまでの方針を維持することを全員一致で決定しました。(以下延々と続く)』
という形になっているのですが、ECBやFRBの場合はまず説明をしてから「では皆様のご質問をお願いします」っていう形にしていて、「オープニングリマーク」と「Q&A」が別になっているんですよね。
でもってこのオープニングリマークの際って声明文で書かれている話の背景説明も入れていて、経済物価情勢がどうなっているのか、といった辺りについて声明文などよりも詳しい説明をしてくれているのですが、この形だと「決定会合の内容について」の説明になっているので、皆様ご案内の通りで、声明文(展望レポートがある場合は展望レポートの鏡の部分)の棒読み状態になっていて、皆さん聞く時にほぼ意識失って聞いているんじゃないかと思うのです。
でですね、それ時間の無駄でもあるし、勿体ないにも程があるので、最初の部分は「オープニングリマーク」として扱っていただきたい訳で、例えばFOMCだと議事要旨に出てくる議論の中でも「この点についてはオープニングリマークでこう説明すべき」っていう感じで重要なコミュニケーションツールというか、声明文のサプリメンタルツールとして活用していますわな。
ということなので、この実質の冒頭挨拶部分は会見QAの前に独立して行うようにして、今みたいな棒読みじゃなくてもうちょっと背景説明を加えるような形にして頂きたいですね、と前々から何となくは思っていたのですが、今回まあそういうのを最初に申し上げた次第です。
・国債買入に関する質疑なんですが「国債市場の安定に配慮」で結局YCC脳が抜けないんだよな
最初はこれですね。
『(問)幹事社からの質問は二問です。まず一問目は、国債買入れの減額計画についてお伺いします。26
年 4 月以降に四半期毎の減額幅を 2,000 億円にした理由を教えてください。26
年 3 月までと比べて半分のペースに緩めるうえで、どういった観点を重視したのかを具体的に教えて頂ければと思います。(後半割愛)』
オーソドックスに来ましたが、
『(答)まず国債買入れの減額計画ですが、基本的な考え方はこれまでと同じでございます。すなわち、長期金利は金融市場において形成されることが基本であり、日本銀行による国債買入れは、国債市場の安定に配慮するための柔軟性を確保しつつ、予見可能なかたちで減額していくことが適切と考えています。そのうえで、金融市場において長期金利がより自由なかたちで形成されていくようにするためには、国債買入れ額を更に減額していくことが望ましいと考えられます。』
そもそもですね、「金融市場において長期金利がより自由なかたちで形成されていくようにする」って言ってるのに「国債市場の安定に配慮」ってのが話として矛盾している訳で、市場ってのは常に安定しているもんじゃないですし、それこそさっきの山口元副総裁の言葉を拝借すると「変化の時代」なんだったら時に市場が大きく動くことがあったっていいじゃないですかってなもんですわな。
そりゃまあ何とかショックで市場での売買が全くできなくなってしまう、みたいなことがあれば「最後のカウンターパーティー」として中央銀行が介入した方が良い場合もあるでしょうけれども、別にそんなことが起きたわけではないですし、あの程度のことで市場配慮とかビビりだす方が「市場の当局依存」を抜け出せなくするという意味で問題じゃろと思いますがまあそれはワシの個人の見解で、YCCシャブ漬けジャンキー脳の皆様におかれましては当局の介入が必要でちゅーボクたちだけの自由な価格形成なんてこわいでちゅーってお話ではありますので、そこはもう思想の問題になりますな、トホホ。
『一方で、国債買入れの減額が進展する中で、今後の減額ペースが速過ぎますと、市場の安定に不測の影響を及ぼす可能性もあるとみています。』
起きねえよ、とは思いますがいずれにしたってその点を勘案するんだたら、実際に減額が進行していったあととなります年末か年始の会合辺りで判断すればいい話なのに、何で「来年4月以降再来年3月まで」は減額しないと不味いですって判断ができたのかが全く意味わかりませんね。
『本日の会合では、市場参加者の意見も参考にしつつ、この両方の考え方のバランスを勘案し、国債市場の安定に配慮したかたちで市場機能の改善を進めていけるよう、申し上げましたように、来年の
1〜3 月までですね、[毎四半期]4,000 億の減額を続け、26 年 4 月以降は月間買入れ予定額を、[毎四半期]2,000
億円ずつ減額して、27 年 1〜3 月に 2 兆円程度とするということが適当と判断したところでございます。(後半割愛)』
結局「じゃあ何で2000なのか」「じゃあ何で今の時点でそんな先の状況を判断できるのか」という点が全く説明が無いわけです。FEDだってバランスシート縮小を継続する中で特に期限を定めずにオートパイロットで減らしていって、その中で短期金融市場の金融調節上ちょっと微妙になってきたから減額ペースを縮小した、ということをしているというのに、日銀は何でこんな先の事が神のように予測できるんでしょうかってお話で、FED方式で四半期4000を継続するけど、不具合が生じるようならペースはその時に適切に対応する、で何の問題があったのかというお話ですな。
・そんな先の決め打ちをしないといけない背景をさっそくゲロっているのがこの正直者!って感じな訳でして
次の質問の後半で早速追い質問されていて、
『(問)(前半割愛)もう一点が国債買入れの減額について、先ほど減額ペースについては債券市場の安定に配慮したというお話がありました。金利の急騰に対する配慮だと思うんですけども、これは財政に対する配慮という面もあるんだと思いますが、この点を総裁はどのようにお考えでしょうか。』
イイシツモンダナー
『それも踏まえてなんですけれども、減額のペースを緩めなくてはいけないということを考えると、それは異次元緩和の副作用といったものがまだ顕在化してきているという面もあるのかなと思いますが、その点も含めて総裁のお考えをお願いします。』
ですねー。
『(答)(前半割愛)それから買いオペの減額についてですけれども、これは申し上げるまでもなく財政の配慮というよりは、あまり早めに減額を進めて、国債金利が異常なボラティリティを示す、それが経済にマイナスの影響を与える、そういうことが起こらないようにという配慮からの今回の措置でございます。』
>財政の配慮”というよりは”
>財政の配慮”というよりは”
>財政の配慮”というよりは”
これはまた華麗なポロリで(途中からつまらなくなったので実はライブで聴くの止めたのですがこの辺りはさすがに聞いていた)クソ笑いましたが、「というよりは」っていうことはつまり財政にも配慮していますじゃん、というお話でして、財政に配慮して大規模国債買入を継続するし、その規模は中々減らせないんですーって言ってるのはどう見ても財政マネタイズ政策です本当にありがとうございましたという告白をしておりまして植田和男先生それで良いんですかと小一時間問い詰めたいですね。
『従って、大規模緩和の副作用ということとの関連で申し上げれば、副作用が顕現化しないように注意深く進めているということかと思います。』
大規模国債買入、という緩和政策を物価安定目標が達成されそうになる、すなわち金融緩和政策が本来不要になる段階になっても、市場金利への配慮で不要な緩和政策を行わざるを得ないというジレンマがまさに副作用なんですよね。
でまあ財政の配慮という意味ではこんなこともポロリとしておりまして・・・・・・・・・・
後の方の質問ですが、
『(問)二問伺います。まず国債買入れ減額計画についてです。ちょうど 1 年前のこの会見で総裁は減額計画の策定スパンに関して、日銀の向こう
1 年間のオペの大まかな姿を明らかにして、そのうえで政府の国債管理政策などを決めて頂く姿勢、とおっしゃっていました。計画期間を
1 年延長した今回の中間評価においてもこのスタンスは変わっていないのか、改めてなんですけれども財政政策と金融政策の距離感、もう少し言うと政治と中央銀行の距離感について伺えればと思います。(後半割愛)』
ということですが、
『(答)まず、国債買いオペ減額に関連してというご趣旨だったと思いますけれども、政府・財務省との意思疎通はということのご質問だったと思いますが、これは様々なレベルで日頃から密接にとっております。』
別に意思疎通をするのは良いんですけど、
『そうした意思疎通を行ったうえで、今回私どもとしては政策委員会で今回の減額[計画]の案を作成し決定したということであります。』
まずこの時点で説明がデンジャラスゾーンに入ってくる訳でして、中央銀行の長期国債買入は、あくまでも短期金融市場の調節の一環の中で、負債サイド(発行銀行券と当座預金)の見合いで短期資産(短期オペレーション)と長期資産(長期国債)をどのような配分で持つか、ということから決定されるものでして、別に国債発行額がなんぼだからどうのこうのというようなリアクティブなものではない訳です。
さらに、
『それを少し先まで明らかにするということによって、政府にとっても発行計画にとって不確実性が一つ減るというプラスがあるかと思いますが、』
はいアウト―って説明でして、これ日銀の国債買入が政府の国債発行計画に影響します、って堂々と言っている話になるので、これまた財政マネタイズを公言しているようなもんで、会見でのツッコミが甘いから助かっているけど、こんなの全然ダメな説明ですよね。
『引き続き政府とは密接な意思疎通を図っていきたいというふうに考えております。』
実際には今の市場で日銀の馬鹿買入が続いている関係上、そんじょそこらの投資家やPDが足元にも及ばない程の国債投資家状態になっているので、発行当局としては「巨大投資家の日銀」に状況を聞くという意味での意思疎通はそりゃまあせざるを得ないですが、それはGivenになっている今の国債買入規模がおかしいからそうなっているだけの話で、原則論は中銀のオペレーションとしての国債買入は国債発行とは無関係(もちろん国債発行規模によって市中の資金需給への影響は変化するから全くの無関係ではないが)に決まるもの、という則を崩した説明を中銀自らが行うっていうのは、非常に危ない説明なので止めて頂きたいと思います。
市場配慮位なら(それもどうかとは思うけど)まだ財政マネタイズに関する則を外しているわけではないからまだしも、財政との関係のところで原理原則を踏み外した説明をするのに対して無神経すぎる、と思いました。
・足元の物価が想定よりも上振れているというような話は一切なしというのを一発目でぶちかます
景気判断はハトハトチキン、ってのはまあ皆様ご案内のところだとは思いますが、備忘ということで引用しておきましょう。
幹事社質問に戻りますね。
『(問)(前半割愛)二問目は、経済・物価情勢の考え方についてお伺いします。足元のインフレ率は3%を超えています。5
月の展望レポートを出したときと比べて物価上振れリスクは高まっているとお考えになりますでしょうか。また、今後の利上げ判断において経済の不確実性も考慮し、どういう指標を重視するかについて教えてください。』
物価上振れの話は前週金曜日にBBGが報道した訳で、そりゃモチのロンで質問しますよね。でもってこれにどう回答するのかが注目されるわけですが・・・・・・・・・・
『(答)(前半割愛)経済・物価情勢ですが、先ほども申し上げましたように、本日の会合では、前回会合時点からわが国の経済・物価を巡る大きな構図に変化はないと判断致しました。』
まあ「大きな構図」は変化ないと来るでしょう(そうじゃなかったら声明文が事実上の4月展望からの全文一致にならない)が、じゃあ物価はと言いますと・・・・・・
『直近の消費者物価の上昇率は 3%を超えていますが、これにはこれまでの輸入物価上昇や米を含む食料品価格上昇が大きく影響しています。』
BBG報道で言われていた「足元までの消費者物価(生鮮食品を除くコアCPI)は、人件費や原材料価格の上昇を価格転嫁する動きが続き、食料品価格を中心にやや強めの動きとみている。(6/13のブルームバーグ記事より)」ってのは何だったのかという拍子抜けの「はいはいコストプッシュコストプッシュ」ムーブでして・・・・・・・
『こうした物価上昇が国民生活にマイナスの影響を与えていることは、十分に認識しております。』
質問はそっちじゃねえよ。
『先行きについては、これらの影響は減衰していくと基本的には考えています。』
とまあそういうことで、「コストプッシュだから下がります」のままでした。
『ただ、物価を巡って上下双方向のリスクがあるとみています。コストプッシュによる物価上昇が、人々のマインドや予想物価上昇率を介して、基調的な物価上昇率に二次的な影響を及ぼす可能性があることも認識しておく必要があります。そのうえで現時点では、各国の通商政策等の今後の展開や、その影響を巡る不確実性がきわめて高いことを踏まえると、先月の展望レポートで示した通りですが、経済・物価ともに下振れリスクの方が大きいと判断しています。』
下振れリスクの方が大きいんですってorzorz
『日本銀行としては、今後明らかとなるデータや情報を引き続き丁寧に確認し、経済・物価情勢を点検してまいりたいと思っております。不確実性がきわめて高い状況にあることを踏まえますと、各種のデータに加えまして、本支店を通じて得た企業ヒアリング情報を含め、できるだけ幅広い情報に基づいて分析を行うことが従来以上に重要となっていると考えています。』
分析したって最後は「お気持ち物価」じゃんwwwwwww
・「悪くなるの待ち」という謎ムーブキタコレorzorz
2番目の質疑でこんなのがありましてですな。
『(問)二点お伺いします。まず利上げの考え方についてですけども、今後、経済が減速していく見通しの中で、経済の改善に応じて政策金利を引き上げていくというお話でした。その判断においてデータが重要になると思うんですけども、データの改善がなかなか追い付いてこないけれども、見通しとしては上がっていくという見通しがついた段階でもう利上げという判断はあり得るのか、というところを一点目教えてください。(後半割愛)』
という質問があって、この回答が皆様ご案内の通りハトハトチキンでして、まあこの辺りで今回の総裁記者会見は利上げの面では勝負あったって感じでしたな。
『(答)今後の金融緩和度合いの調整を判断するに際してのデータの点ですけれども、難しい局面にありまして、』
もうこの時点でハトハトチキンの香りしかしませんでしたが、
『前回も申し上げたかもしれませんけれども、センチメント関係の指標は今悪いものが割と増えてきています。世界的にですね。一方でハードデータについては、いろんな理由がありますが、まだしっかりとしているという大まかには感じかと思います。』
と来てからのこれですよね・・・・・・
『ですので、おっしゃったように悪いのが良くなってきたところ、そのどこのタイミングで利上げをするのかという話のまだ手前にありまして、悪くなっていない段階で。』
つまりは今は「悪くなるの待ち」という謎ムーブだとおっしゃっているようです。
『ただし、例えばタイミング的にいえば、今年の後半ですね、7 月以降後半に入りますけれども、いくつかのデータに悪い動きがみられるんではないかというふうに予想している人が多いかと思います。』
逆にこの時期にそんなに悪くならなかったらどうするんでしょ、と思うのですが・・・・・・・
『そういう動きがどれくらいになっていくか、われわれの見通しとの関係で、それとの判断、比較において見通しが実現しそうかどうか。その判断次第では、はっきりとそこから先もう
1 回上向きに転じるっていうところが確認できなくてもというご質問の点は、確か
1、2 回前にもそうお答えしたと思いますが、その通りかと思います。見通しの確度次第ということになるかと思います。(後半割愛)』
っていう説明ですが、なんかこれを言い出すとですね、この先まあさすがに幾分かは落ちるとは思うのですが、落ちないとか落ち方が大したことがない、って状態になった時に「いやいやまだ影響が出ていないだけでこれから落ちるにちがいない」と言い出して何時まで経っても利上げを決断せずに引っ張ってしまう、という「物価落ちるだろう」の景気バージョンというのが発生しそうで、ますます過剰緩和の副作用が心配になってきたんですけどアタクシ・・・・・・・
・おそるべき「絶対下がるだろう」ムーブ
別の質疑で物価面にフォーカスしたこんな質問があって中々結構だと思ったのですが、
『(問)先ほど物価の先行きについて少し言及がありましたが、食品価格の上昇と併せて、イランとイスラエルの間の中東情勢の緊張によって、原油価格の上昇も今後懸念されるところですが、既に基調的なインフレが2%に近づいている中でこうしたコストプッシュの上昇圧力と原油価格の今後先行き次第では、物価の上振れリスクが無視できなくなる可能性がどれぐらいあるのか、』
全く仰る通りで、今次物価上昇局面において欧米はこの上振れリスクを当初放置した結果ああいう引き締め政策を打たざるを得なくなり、欧州に至ってはスタグフレーションの様相になってしまった訳でございますということで大変に秀逸な質問だと思いました。
『先ほどはやはり景気・物価ともに下振れリスクが依然大きい、より大きいということでしたが、そのバランスが今後変化して、物価の上昇が家計のインフレや基調インフレに影響を及ぼすリスクがどの程度になりそうなのか、ちょっと原油価格の動向を含めて展望をお聞かせできればと思います。』
しかしこの良問に対してのハトハトチキン先生の回答はと言えば、
『(答)お答えは、基本的に注意深くみていきたいということに尽きてしまうんですが、おっしゃるように、食品関連の価格上昇に加えまして、足元、イラン、イスラエルの問題で原油が上昇している。こうした動きが広がったり続いたりする場合には、期待物価上昇率とか基調的物価上昇率に二次的な影響を与えるリスクはあると思っています。』
とは言ってるのですが、
『現状そこまで至っていないと思いますけれども、そこについては注意深くみていきたいということであります。』
って話なんだが、「ゼロ近傍で安定していた期待インフレ率を2%に引き上げる」という政策を実施して、その期待インフレが上昇しているという認識があるのであれば、インフレ期待が2%でアンカーされている国よりも、アクチュアルの物価上昇が期待インフレの上昇にモロに跳ねやすくなる、と理屈の上ではそうなるので、こんな楽観視してて良いのかというのがある上に、さらに追い打ちを掛けまして返す刀でハトハト先生は、
『ただし一方で、先ほども申し上げましたように、通商政策の影響がだんだんこれから出てきて、製造業、特に製造業ですね、の企業収益が低下に向かう、それが場合によっては、暫く前まで続いていたようなコストカット型の価格、あるいは賃金設定行動を復活させるというリスクも無視できないと思いますので、両方注意深くみていきたいと思っております。』
ということで、まあベースがハトハトなんですよね〜。
・「お気持ち物価」がわからんわという指摘に対して
こんな質疑もありました。中々よろしい質問でして。
『(問)金利操作に関してお伺いしたいんですけども、現状日銀では目標とする
2%の物価と推計された中長期の予想インフレ率で説明されてると思うんですけど、諸外国をみると金融政策運営に関しては実際の物価と目標の物価を使って説明されてるというか、金融政策を運営されてるかと思うんですけど、』
イイシテキダナー
『欧米のように 2%でアンカーされているという点があるかもしれませんけれども、日本でやはりその目標とする2%の物価と中長期の予想インフレ率で説明するのがなかなか分かりにくいと思うんですけども、その辺を現状どういうふうにお考えかということと、』
んだんだ。
『それに絡めて日本でも中長期的に 2%でアンカーされることが必要だということでよろしいんでしょうか。そうすると、結構金融政策の運営スパンが長いような気がするんですけれども、その辺をどういうふうにお考えかよろしくお願い致します。』
でもってこれに対するご回答ですが、
『(答)基本的には 2%の目標インフレ率を短い期間だけではなくて、持続的・安定的に実現するためにどういう政策運営が良いかという観点から政策を行っています。これはある意味では、あるいは少し広くとれば、他の中央銀行も同じかなと思います。』
あっそう(しかしこの前の金融学会の内田さんの説明もそうなんだが「海外もそうです」って言いながらそうじゃないことを言ったりすることがあるので油断大敵)。
『ただ、持続的・安定的に 2%が実現されるためにはということで、われわれは基調的な物価上昇率という概念を使い、様々な指標からそれをみているわけです。』
で、そのお気持ちもとい基調的物価を使う理由は????
『その指標の一つが予想インフレ率、あるいは特に中長期の予想インフレ率ということでございます。もう一度、欧米との微妙あるいはかなりの違いということで申し上げれば、予想インフレ率あるいは基調物価のところが
2%にまだ日本ではアンカーされていないという点は意識しつつ、そうなるように政策を続けているということであります。』
・・・・・全然答えになっていないんですが勘弁していただけますでしょうか。
という所で時間が無くなったので今朝はこの辺で勘弁していただきたく存じます。
2025/06/11
〇こんなので為替が反応するもんなのか(「2%までまだ少し距離がある」)・・・・・(呆)
昨日はこんなのがありましたな
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-06-10/SXF8E7T0G1KW00
植田日銀総裁、基調的物価は「まだ2%に少し距離がある」−円下落
伊藤純夫
2025年6月10日 10:56 JST 更新日時 2025年6月10日 12:01 JST
→基調的物価が2%に近づけば、引き続き利上げで金融緩和度合い調整
→0.5%の政策金利水準、利下げで経済刺激の余地は非常に限られている
『日本銀行の植田和男総裁は10日、金融政策運営で重視している基調的な物価上昇率は物価目標の2%まで少し距離があるとの認識を示した。参院財政金融委員会で答弁した。総裁発言を受けて円は下落した。』(上記URL先より、以下同様)
ということで、
『植田総裁の発言後、円はドルに対し一時1ドル=145円29銭に下落。発言前は144円50銭前後で推移していた。株式市場では日経平均株価が上げ幅を拡大し、上昇率は一時1%を超えた。』
ってことになっているのですが、そもそも論として先日の内外情勢における植田総裁の講演の資料を見ますと、
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/data/ko250603a2.pdf
最近の経済・物価情勢と金融政策運営
(図表編です)
図表7『基調的な物価上昇率に関連する指標』を見れば分かりますけど、実はその右下にありますように、マクロ経済モデル回して計算(という一番まともっぽいことを)したらどの指標も「2%に向けて威勢よく接近中」なのでして、植田さんの説明上重視していることになっている(家計のインフレ期待の推計値がどう考えても下方バイアスの掛かる方法を使った)合成予想物価上昇率だって目盛みたら24年で1.5%近辺、25年で1.7%近辺と上がっている訳でして、モメンタムからいったらこんなの2%到達待ったなしだし、元々がこれ計算上下方バイアスが掛かりやすい(予測力を重視しして算出しているんですがそのサンプルがゼロインフレの期間を大きく使っているから)な訳ですよ。
とは言え、足元に関してはトランプ関税とかいう攪乱要因があるから、このモメンタムが止まるかもしれないってんでまあハトハトチキンになっているのはまあ分からんでもないですが(と言ってるけど物価には慣性があって足元の動きは「上に抜ける」方の慣性が掛かっているから逆に止まらんリスクの方が高いと思うのですけど)、これ普通にグラフをみたらこの先基調物価とされるものが2の水準を涼しい顔して上にぶち抜けるリスクの方が高いじゃろ、という図でもあるんですよね。
なのにまあ「少し距離がある」とか言ってるのは、単純に6月7月の時点で利上げをする予定は無い、という「やりたい政策」が先にあって、政策アクション(今回の場合は動かない方のアクションですけど)を正当化するための「お気持ち表明」を「基調的物価は2%までにまだ少し距離がある」と言ってるだけの話なんですよね。というか説明の定義上、基調的物価が2%に到達している、という認識だったら政策調整をゆっくり実施しているどころの騒ぎではなくて、政策を中立ポジションにもっていかないといけないのですから、半年に1回とか悠長なことを言ってる場合じゃなくなるので、6月7月に利上げする気が無いのであれば、上記のような発言が出てくるのは当たり前ですし、逆に為替市場の皆さん6月7月に利上げがあるとでも思っていたのかよお前らの首の上についている物体はカボチャか何かかと小一時間問い詰めたいですな、と思いました。
じゃあ9月10月に利上げがあるか、ってことになると、これはまあ7月展望で何を言い出すか次第ではあるのですが、トランプ関税政策を受けた企業や家計の行動変化(下方屈曲)が起きるかどうかってのを茲許はずっと気にしているような説明になっていますので、そうなると企業の賃金設定行動、すなわち冬季賞与動向と来年の賃金改定に向けたスタンスのアネクドータルなデータが出てくる年末年始、って考えるのが一番妥当なような気がしますが、何せこの人たち「やりたい政策」先にありきで情勢判断を後付けで説明する、というのを全然隠そうとしない(普通は隠そうとして過去との説明の整合性を取ろうとするのですが、黒田時代の末期あたりになってからはもはや過去との整合性を全然気にしなくなっているのは展望レポ^−トハイライトというポンチ絵の推移を見れば一番わかりやすいと思います)ので、つまりは「やりたい政策」が「やっぱり政策金利引き上げないと」って事になるトリガーが先に出てきたら年末年始の限りではない、ってことになるんじゃないですかね、個人の感想ですではありますけど。
てな読み筋って別にアタクシがドヤ顔(の積りではないですが)で言うまでも無くごく普通の読み筋だと思うので、「まだ距離がある」云々は「6月7月(まあ少なくとも6月)に利上げする予定は今のところありません」以外の意味合いは無いので、それすなわちなんら新しい情報でもなくて市場は先刻織り込み済みなんですけど、何でそんなのに為替市場が反応しているんだこれだからAI相場は困るわ、と思いました(個人の偏見です)。
2025/06/05
〇植田総裁内外情勢調査会講演(その2):政策修正の前のめり感は一切出さずに輪番縮小に意欲ですねこりゃ
てな訳で昨日の続き。
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/data/ko250603a1.pdf
・通商政策動向の経済への下押しの説明はやたら丁寧だったが「リスク」の方は割とアバウトで温度差があります
昨日は『2.通商政策の影響と経済・物価情勢』の『(わが国経済・物価の見通し)』の後半部分の物価の見通しに関するところまでやったら時間切れになってしまいましたが(すいません)、その先が『3.通商政策を巡るリスク』ってのがあるんですよ。
まあそもそもが「通商政策の影響」ってところで詳しく下振れ要因をこれでもかと並べて説明していましたので、わざわざ通商政策を巡るリスクってのを書くのも重複感が漂うわけで、そのせいかリスクの方は微妙なつくりになっています。
『ここまで、米国の関税政策による影響を踏まえつつ、わが国の経済・物価の中心的な見通しについてみてきました。こうした見通しに対しては、常に上振れないし下振れの可能性、リスクが存在します。特に、現在のように不確実性がきわめて高い状況にあっては、従来以上にこの点を念頭に置いておく必要があります。』
ここで下振れだけではなくちゃんと「上振れ」も言っているのは(関税交渉が思いのほか順調に進展したり、突然トランプが改心してめだか師匠ムーブになるというような可能性があるんだから当たり前だけど)当然ながら結構なお話。
というのはですね、4月の展望レポートって何がクソインパクトあったかって、経済見通し引き下げでリスクバランスは下、物価見通しも引き下げでリスクバランスはそれまで上だったのが下、でもって会見での植田さんの説明もハトハトチキン、って出し方をしたから「なんじゃこの全面降伏モードは」ということになったわけですよ。単に「今回は1回パス」だけで良かったのに過剰なまでに下方バイアスを強調した情報発信になっていたからあの相場になった、という面は多々ある訳でして、でまあさすがに大本営もやべえと思ったのか主な意見では展望レポート基本的見解や会合後の会見で示されたハトハトチキンバイアスをある程度中和(中立化ではない)させてるな、と思いましたし、その後の国会などでの説明も「見通し達成への確度が高まれば利上げ」ということでコミュニケーションを立て直している感があったわけです。
でまあ今回ですが、ワタクシはやはり遺憾ながらハトハトチキンだなあ(理由は関税政策の影響の説明部分がやたら丁寧なこと)だし、緩和の調整つまり利上げの前のめり感が一切出さない(理由はお気持ち物価の説明に力点置いている、すなわち利上げしない理由の方の背景説明ばかり一生懸命やっててアクチュアルの物価は「コストプッシュです」で方吹けているから)、というコンボなのでハトハトチキン認定しましたが、ここに「通商政策のリスクは上振れ下振れあり」とちゃんと書いている、というのはジャガーチェンジができる(やるかどうかは兎も角)布石はここでも着実に打っていることが分かるわけです。
ということなので、このあたりのジャガーチェンジができるようにしている仕掛け部分を重視すれば、むしろ衣はハトだけど下の鎧はタカじゃん、とも読めますので、タカ解釈がおかしいとは今回は思わないですアタクシ。
えっと、何の話をしていたんでしたっけ(笑)リスクに関するマクラの続きです。
『例えば、本日ご説明した日本銀行の中心的な見通しについては、「各国の通商政策等に関し、今後、各国間の交渉がある程度進展すること」、また、「グローバルサプライチェーンが大きく毀損されるような破壊的な状況は回避されること」などを前提としています。』
何かこの前提がわかりにくいんですよね、関税何%とかをレンジで良いから想定出してほしいわ。
『逆に言えば、こうした前提が崩れれば、先行きの見通しは上下双方向に大きく変化する可能性があります。また、通商政策の展開そのものに加えて、それらを受けて、内外の経済主体がどのように対応するのか、という点を巡っても大きな不確実性があり、十分な留意が必要です。
こうした点を踏まえつつ、以下では、この先、特に留意すべき3つのリスクについて指摘したいと思います。』
ということなので、ちゃんと上振れすなわち利上げ路線復活の話もしている訳ですよ、でもってこれ昨日も書いた気がしますし何ならこの後にも書きますが、まあ結局6月の国債買入減額の継続決定というのが今の最重要課題で、この課題を無事にクリア(=長期金利が無駄に暴れない)するためにはそれ以外の話は「1回パス」しておく、という感じだし、ちょうど関税問題もあるし、こりゃちょうどええとばかりに関税の経済への影響ガーを丁寧に説明した、ということなんだろうなあって思います。
と申しますのは、以下の「関税のリスク」なんですけど、ここで挙げられている話って経済下押しリスクちゃあ経済下押しリスクですが、特に3点目に長々とあるように「グローバル化の巻き戻し」という話に行数を割いていまして、じゃあグローバル化の巻き戻しってそれ経済下押しなのかというと必ずしもそうとは言えず、一方で物価に関しては明らかに構造的な物価押し下げ圧力の減衰を意味しますから、ここで言ってるリスクってリスクの話をしているからまあ見え方はハトなんですけれども、だから緩和政策が必要なのかという論点で見たばあいに必ずしもそうじゃないのではなかろうか、ってお話なのかなって思いました。
『(サプライチェーンの複雑性)
第1は、近年のグローバルサプライチェーンの高度化に伴い、その複雑さも増してきたことが、関税政策の影響に関する不確実性を高めているという点です。』
と、小難しい事を言っているようですが、
『IT関連を中心に、アジアにおける生産ネットワークが複雑に絡み合っている中で、思わぬ形でボトルネックが生じ、それがサプライチェーン全体に波及すれば、わが国の輸出入や企業活動に大きな影響を及ぼすことも考えられます。こうした観点からは、日米間の交渉だけではなく、各国と米国の交渉の帰趨についても丁寧にみていく必要があります。』
要するに日米交渉だけではなくて米中とか米とアセアン諸国の動向も見ないといけませんね、ってお話でした。
でもって次ですが、
『(企業の賃金・価格設定行動)
第2は、各国の通商政策の影響を受けて、わが国企業の賃金・価格設定行動が大きく変化してしまうリスクです。』
まあこれはリスクです、ってことなんでしょうけれども、前段で「マインドへの影響から需要が下押しする影響」について説明をしていて、なんか重複感半端ないですね。
『先ほど、労働需給の引き締まった状態が続く中、企業の積極的な賃金・価格設定行動は維持されるとの見通しを申し上げました。とはいえ、実際の物価の変動が企業や家計の予想や行動様式を変化させ、これを介して、先行きの物価への影響が増幅され得る可能性があることにも注意が必要です。』
賃金設定で言えば冬季賞与と来年の賃金設定、って事になると思うのですが、そこまで見るのか見ないでもどう見ても問題ないじゃろとなるのかの判断のポイントがどこにあるのかが良くわからんので、これまた通商交渉の進展度合いによって「ああ大丈夫大丈夫」となるかもしれませんね。
・インフレ期待は本当に2%に上がる過程なのでしょうかねえ
でもってこの部分で「インフレ期待のアンカー」という話が続くのですが、
『人々の物価観が2%にアンカーされている米欧と異なり、わが国では、いまなお、緩やかな物価上昇を前提とした賃金・価格設定行動が、企業や社会に十分に定着したとは言えない状況にあります。』
という認識になっているのですが、家計に関してはホンマカイナという感じで、緩やかどころではない物価上昇に対してどうしましょって感じになっていないのかねと思いますし、最近の値上げって寧ろお間ら調子乗ってないかムーブも感じないわけでもないし、本当にインフレ期待がまだまだ低い、というのが正しいのかってもうちょっと検討した方が良いんじゃないかって思うのですよね。
もしここを読み間違えていたら割と重大なダメージになるわけでして、この部分ってそりゃまあ日銀だって必死こいて実態について考えているとは思うのですが、緩和政策継続の方に思考が引っ張られていたりしたら後年戦犯扱いになりますよ本当に大事ですからあんまり過去に引っ張られないで、とは申し上げたいところです。
・結局は主要製造業大手企業の冬から春に向けての賃金設定で判断しそうですね
『そうした中にあって、関税政策の影響により、輸出企業やグローバル企業の収益に下押し圧力がかかる場合、それが自社の賃金抑制圧力や、サプライチェーンを通じたコスト削減圧力につながることがないか、については丁寧にみていく必要があります。』
何かオブラートに包んでいますけど結局は主要製造業大企業のこの先の賃金設定がデフレ脳な設定に戻ってしまうか、それともデフレ脳にはならないで、賃上げが多少マイルドになるにせよ、物価上昇にある程度追随できる賃上げになるのか、というのが注目です、って思いっきりゆうとりますなこりゃまた。
『逆に、グローバルに物流が混乱し、輸入物価に上昇圧力がかかるような状況が生じた場合、コストプッシュ圧力が物価、更には賃金に影響を及ぼす可能性がある点にも注意が必要です。』
後半は注意するのは良いんですが今回の講演の理屈、コストプッシュは中央銀行は対応しない、ですと注意が必要ったって注意した結果なんのアクションに繋がるのかが意味不明ですね〜。
・グローバル化の巻き戻しの可能性についての話が一番長いのよ
でもってこの次が『(グローバル化の先行き)』って小見出しですがこれがかなりの大作。
『第3は、より長い目でみて、米国の関税政策やそれを契機に構築される新たな国際的な関係が、グローバル化という世界経済の成長を支えてきた大きな流れにどのような影響を及ぼし得るかという点です。』
という話でして、これもはや目先の金融政策関係ないじゃろという話ですけれども、以下壮大な話になっているので鑑賞するには興味深いお話になっています、引用しますね。
『図表8をご覧ください。左グラフにありますように、世界の貿易や直接投資は、東西冷戦が終結した
1990 年代以降、2000 年代後半にグローバル金融危機が起こるまで、急速に増加しました。その後も、世界貿易は、世界経済の成長とおおむね同じペースで増加を続けています。また、右グラフにありますように、わが国の企業は、生産コストを抑制するサプライチェーンの構築や現地需要の取り込みなどを企図して、海外諸国と比べても、より積極的に対外直接投資に取り組んできました。』
はい。
『こうしたグローバル化への対応は、わが国企業の収益力強化に貢献してきたと考えられますが、一方で、様々なリスクを抱え込むことにもつながっています。』
ほう。
『例えば、製品の生産工程を細分化し、それらを複数の国にまたがって配置することは、コスト抑制に資する一方、生産・在庫管理を難しくしている面があります。こうした脆弱性は、コロナ禍以降に相次いだサプライチェーン障害によって、より明確になりました。』
まあそうですよねってのはありまして、こちとら昭和脳なので、それこそどっかの国でクーデターが起きましてどうのこうのとか、内戦が現在こんな感じで進行していますとか、そういうニュースを普段のニュースでホイホイと聞いていたわけなので、その時代から比較したらそら海外展開も進むし、急に昭和に戻ったらエライコッチャだわという話でもありますわな。
『また、ロシアのウクライナ侵攻などは、各国の経済安全保障に対する意識を高めることになり、これが世界の貿易や企業の生産活動に影響を与えるケースもでてきています。このような流れが続く中、今回の関税政策が、サプライチェーンの在り方に関する更なる検討を促すきっかけとなり、企業行動、とくに生産拠点の立地戦略に大きな変化をもたらす可能性があります。』
今回は戦争と超大国の横紙破りの合わせ技ですもんね。
『もちろん、生産拠点をどこに配置するかは、コストとベネフィット、様々なリスク要因を考慮して企業自身が判断すべき問題です。世界経済を巡る大きな環境変化は、企業が乗り越えなければならない新たな課題ですが、過去にも、わが国経済は、企業の前向きな取り組みを原動力として様々な課題を乗り越え、成長力を高めてきました。』
・グローバル化の話の後半はリスク云々の話ではなくて米ロに向けた素晴らしいメッセージになっていて評価されるべきです
でもってこの後の部分は大変に良いメッセージだと思います、引き続き引用しますが、
『こうした前向きな努力を後押しするためにも、企業が過度に国際情勢等に対するリスクを警戒しなくて済むよう、開かれた、公正かつルールに基づく国際経済秩序を支えていくことが大切です。』
これはまあロシアもそうですがトラ公に向かっても抗議表明しているような話ですが、大変に良いメッセージだと思いました。連中が聞く耳持つとは思えないけど、意思表示をするのはとても大事。
『この点は、私が出席した4月のIMFC会合(国際通貨金融委員会)でも改めて確認されました。』
ほほう。
『過去 30 年にわたる急速なグローバル化が、その成果の分配を巡って様々な難しい問題を引き起こしているのは事実ですが、その一方で、世界経済の分断化(fragmentation)やデカップリングの進展による勝者がいないこともまた、事実です。』
おーーー!
『各国は、今後、より良い国際経済秩序を構築する努力を重ねていく必要があります。その過程では、国際金融資本市場や国際金融システムの安定を確保していくことも重要です。日本銀行としても、各国の中央銀行や内外の関係者と情報交換をしながら、自らの持ち場において、こうした課題にしっかりと対応していきたいと考えています。』
なんかここだけ滅茶苦茶異質なんですが、植田総裁が思い入れを籠めて差し込みでもしていたのだったらば植田総裁素晴らしいじゃんと思いますし、まあ日銀としてもこういうメッセージを出したい、というのがあったのでしたらそれもまた素晴らしいことでして、この部分って目先の金融政策と関係ないからニュースネタにはならないのですが、もっと評価されるべきところ(というかまあ今回の講演での評価ポイントはほとんどここしかないわ)だと思いました。
・金融政策運営では金利の運営について今はパスだけど状況好転したらジャガーチェンジの余地を示す
『4.日本銀行の金融政策運営』は『(先行きの金融政策運営)』から始まりますが、ここはもう「当面は分からんのでパス」という説明で一貫しています。
『それでは、日本銀行の金融政策運営に話を移したいと思います。』
『ここまで申し上げてきたように、現時点で日本銀行としては、わが国経済は関税政策による下押し圧力を受けつつも持ちこたえ、賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇していくメカニズムも途切れることはないと考えています。』
「賃金と物価の好循環」やっぱり本格的にお蔵入りなんでしょうね、もうこの表現に統一されてますもん。
『基調的な物価上昇率についても、いったん伸び悩む局面はあるものの、2%に向けて徐々に高まっていくという大きな方向感は、これまでの見通しと変わりありません。その一方で、こうした中心的な見通しに対するリスクとして、各国の通商政策の今後の展開を巡る不確実性はきわめて高く、その金融・為替市場やわが国経済・物価への影響については、十分注視していく必要があります。』
でもってこの次に直近の米中合意(一時停戦合意みたいなもんですが)を受けての見通し変化は起きたのか問題にご丁寧に触れていまして、
『最近の各国間の交渉の進展、とくに米国と中国が、相互の関税率を大幅に引き下げることで合意したことは市場においてポジティブに受け止められていますが、それでもなお、不透明感が強い状況は続いています。金融政策運営にあたっては、これらの動向を丁寧に確認したうえで、適切に判断していく必要があります。』
まあこの書き方をみますと(ただの一時停戦合意だから当たり前ではありますが)先行きはまだ全然わからんから動かんもんねーというのは旺盛にみられるわけで、まだまだ動くような雰囲気は出しませんなというお話。
とは言え返す刀でジャガーチェンジの余地は残していまして、
『その前提として、現状、わが国の金融環境が緩和的な状態にあることは、重要なポイントです。図表9をご覧ください。これまで、予想物価上昇率が緩やかに上昇する中でも慎重に緩和度合いを調整してきたこともあり、現在の実質金利は、大規模緩和の時期をも下回る大幅なマイナスとなっています。また、金融機関の貸出スタンスは引き続き積極的で、社債等の発行環境も総じて良好な状態を維持しています。こうした緩和的な金融環境は、各国の通商政策の影響がみられるもとでも、わが国の経済活動をしっかりとサポートしていると判断しています。』
ちなみにこの「実質金利」(脚注にあるように「実質金利は、国債利回り(1年物)から予想物価上昇率(日本銀行スタッフによる推計値)を差し引くことにより算出」というだいぶ怪しげなものを使っていますけど、これは例によって展望レポート背景説明を見ますと、4月号だと本文32ページの図表47に同じものがあります。
でまあその実質金利の水準の見せ方の怪しさはさておきますけれども、まあこのように実質金利はドマイナスアピールをしているのですから、通商交渉好転の暁にはしらっとジャガーチェンジする布石は盛大に打っているわけですな。
『以上の点を踏まえますと、今後、私どもの中心的な見通しに沿って、わが国の基調的な物価上昇率が2%に向けて高まっていくという姿が実現していくとすれば、経済・物価情勢の改善に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えています。そのうえで、各国の通商政策の今後の展開やその影響を巡る不確実性がきわめて高い状況にあることを踏まえ、そうした見通しが実現していくかについては、内外の経済・物価情勢や金融市場の動向等を丁寧に確認し、予断を持たずに判断していく方針です。』
と最後は従来示している通りの話をして締めています。
・長期国債買入減額に関してはイタコ話法を使って日銀の減額に関するやる気を見せたものと解釈します
一方で異色だったのは次(実質最後)のコーナーの『(国債買入れの減額計画の中間評価)』です。
『最後に、長期国債の買入れについてお話しします。日本銀行は、かつて実施していた大規模緩和からの出口を進めていく中で、昨年6月、我々が市場から買入れている長期国債の金額を減らしていく方針を決定しました。翌7月には、図表
10 にあるような、2026 年3月までの減額計画を策定し、現在は、この計画に沿って実際に減額を進めています。』
から始まりますが、ここも含めて以下はただの現状のご紹介ですので引用はしますが流します。
『そこでは、「長期金利は金融市場において形成されることが基本」であるとしたうえで、日本銀行による国債買入れは、「国債市場の安定に配慮するための柔軟性を確保しつつ、予見可能な形で減額していく」としています。予見可能性という意味では、現在の計画において、来年1〜3月にかけて、国債買入れ額を毎四半期
4,000億円程度ずつ減額していくことをあらかじめ明確に示しています。一方、柔軟性を確保する観点からは、計画の中で、「長期金利が急激に上昇する場合には、機動的に、買入れ額の増額等を実施する」こととしているほか、国債の残存期間別の買入れ額といった具体的な事項は、その時々の市場環境を踏まえて実務的に決定する扱いとしています。』
『さらに、今月開催される金融政策決定会合において、現在の計画の「中間評価」を行うとともに、2026
年4月以降の買入れ方針について検討し、その結果をお示しすることとしています。』
でもって段落が変わって、
『そうしたもとで、現在、日本銀行では、この中間評価に向けて、国債市場の動向や機能度の点検を進めています。その一環として、先月半ばには、債券市場の参加者との意見交換を行うための会合を開催しました。昨日、同会合の議事要旨が公表されていますが、そこでの議論も踏まえたうえで、現時点で私どもが考えているポイントは、次の3点になります。』
ということでマクラが長いのは内外情勢調査会が相手なので背景説明しないで本編から入るのはちょっと不親切だから、ってことでしょう。では3点ですが、
『第1は、これまでのところ国債買入れの減額は、国債市場の機能度回復という所期の効果を発揮しているということです。』
まあやらないよりはましだけどもっと減額すればもっと機能度回復してたんじゃないでしょうかとしか申し上げようがない。
『市場参加者からは、関税政策の影響を受けて、春先以降、市場の流動性が低下する局面がみられたが、全体としてみれば、国債市場の機能度は改善傾向にあるとの指摘が多く聞かれました。こうしたもとで、来年3月までの現在の減額計画の修正を求める声は限られているようです。そのうえで、日本銀行の国債保有残高がなお多額に上るもとで、市場の機能度を一段と高める努力を続けていくことが重要との認識も、多くの市場参加者に共有されていたように思います。』
>来年3月までの現在の減額計画の修正を求める声は限られているようです
>来年3月までの現在の減額計画の修正を求める声は限られているようです
>来年3月までの現在の減額計画の修正を求める声は限られているようです
イタコ話法キタコレ!
『第2は、2026 年4月以降の計画を検討する際には、引き続き、予見可能性と柔軟性のバランスが重要であるという点です。』
なのは良いんですけど、来年4月以降のペースについて今から決め打ちする必要ってあるのかね、というのは疑問で、何ならFEDとかだって(規模が違うから参考にしにくいのはあるけど)とりあえずバランスシートの縮小幅(の限度)を決めてオートパイロットで減らしていって、途中で「今後はこれで行きます」って言ってペースを変更している訳でして、2026年4月以降を決め打ちするんじゃなくて、そろそろオートパイロット方式にしても良いんじゃないか(まあべき論としては加速しろなのでオートパイロット方式を今入れられるとペース遅いわと言い出しそうですけどワタクシ)。
でもって、
『予見可能性を確保する観点からは、あらかじめ、ある程度の期間の計画を示すことが適切と考えられます。一方で、国債市場の機能度の回復がなお道半ばにあることや、春先以降の価格変動の経験も踏まえますと、引き続き、柔軟性を確保する仕組みが必要とのご意見が多かったように思います。』
ここでもイタコ論法なのですが、市場の大きな変動に対する柔軟性、の他に「実はもっと加速しても良かったんじゃないか」なのが見えてきた時の柔軟性ってのもあると思うので、なにも今の時点で1年半とか2年も先の話を決め打ちせんでもよかろうって思うのですが(前回は初回だったから2年というか1年9か月にしてたけど・・・・・)。
まあそれは兎も角3点目。
『第3は、市場参加者からは、2026 年4月以降も、国債の買入れ額を減らしていくことが適切との声が多く聞かれたという点です。』
はいはいイタコ話法イタコ話法。
『もっとも、具体的な減額ペースについては様々な意見がありました。日本銀行としては、これまでの減額の経験を踏まえつつ、こうしたご意見も参考にしながら、次回の金融政策決定会合において、来年4月以降の買入れ額をどのようにしていくのか議論していきたいと考えています。』
いやマジで「方向性としては減額するのは変わらんのだが今後の減額の進捗を踏まえて12月会合か1月会合辺りを目途に26年4月以降の具体的な計画を策定したい」で何が困るのかとは思うんですけどねえ・・・・・・さもなくば普通にオートパイロットにして、何か不具合有りそうだったら修正しますわ方式にするか。
2025/06/04
〇植田総裁内外情勢調査会講演ですが「利上げへの熱量無し」「輪番削減はやる気満々」かなと
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/data/ko250603a1.pdf
最近の経済・物価情勢と金融政策運営
―― 内外情勢調査会における講演 ――
日本銀行総裁 植田 和男
・基本的には「慎重スタンス」の表明とアタクシは読みましたがハトハトと読まない人もいるでしょうな
今回の内外情勢講演はやや解釈に幅が出てくると思うのですよね。と申しますのは「見通し通りに推移すれば緩和政策の調整を行う」というのを強調しているというのがあって、しかも経済に関して言えば関税の影響の話をああでもないこうでもないとしているけれども、実際の経済の認識についてはここまでのところ大コケしている訳ではない、ということになっているうえに、最後の長期国債買入ペース削減問題に関しては割とやる気満々になっているんですよね。
とは言いましても、まあアタクシ思いまするに、政策スタンスの部分、米国関税政策の影響の説明の部分、「基調的物価」の説明部分を見ますと、まあ早期利上げなんてとてもとても、って感じの説明で、利上げをやっていって正常化しましょう感が全然出ていないな、という風に読んだので、どちらかというとハトハトというかや〜るき無し♪無し♪って読みました。
ってな訳でその辺を中心に読んでみるでござるの巻です。
・冒頭の「初心を忘れず」ってのはつまり2023年5月のハトハトチキン講演に立ち戻るということですよね
最初は『1.はじめに』ですが、
『日本銀行の植田でございます。本日は、内外情勢調査会でお話しする機会をいただき、ありがとうございます。今からちょうど2年前、私が日本銀行総裁に就任して初めて講演をさせていただいたのが本席でした。そこでは、総裁の職務を果たしていく際の心掛けとして、「論理的に判断したうえで、できるだけ分かりやすく説明していきたい」と申し上げました。また、物価の安定の達成というミッションの実現に向けて、当時ようやく見え始めていた「2%達成の『芽』を大事に育てていくこと」の重要性を指摘いたしました。』
でまあその「芽」を大事に育てていく、というのが何だったのか、2023年の内外情勢での金融政策運営の最後の部分を改めて確認しましょう。
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2023/ko230519a.htm
金融政策の基本的な考え方と経済・物価情勢の今後の展望
内外情勢調査会における講演
日本銀行総裁 植田 和男
2023年5月19日
『これをわが国の現状に引き直しますと、拙速な政策転換を行うことで、ようやくみえてきた2%達成の「芽」を摘んでしまうことになった場合のコストはきわめて大きいと考えられます。逆方向の、政策転換が遅れて2%を超える物価上昇率が持続してしまうリスクもありますが、こうした2%の定着を十分に見極めるまで基調的なインフレ率の上昇を「待つことのコスト」は、前者に比べれば大きくないと思われます。そうした意味で、先行きの出口に向けた金融緩和の修正は、時間をかけて判断していくことが適当だと考えています。この「芽」を大事に育て、賃金の上昇を伴う形で、2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現することを目指します。』(この部分のみ直上URL先2023年5月の植田総裁講演より)
ということで、「芽を大事に育てていく」とか言ってますがまあ既にセイタカアワダチソウ状態になってるじゃろヴォケと言いたいところですが、では2年前からどうなったのでしょうという話で講演に戻りますと、
『その後、幸いにして、わが国の経済・物価情勢は改善を続け、賃金の上昇を伴う形で2%達成の「芽」は順調に育ってきました。昨年3月には、2%の「物価安定の目標」が持続的・安定的に実現していくことが見通せる状況に至ったと判断し、10
年以上に及んだ大規模な金融緩和の枠組みを見直しました。その後、昨年7月、本年1月と政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整してきたところです。』
芽が育ちすぎてませんかねえ。
『もっとも、本年春先以降、米国が打ち出した一連の関税政策は、多くの人々の事前の予想を大きく上回る規模であり、内外の経済・物価を取り巻く環境は大きく変化しています。わが国の経済・物価を巡る環境も複雑さを増していますが、本日は、初心を忘れず、改めて、私どもの経済・物価に対する見方や金融政策運営の考え方について、出来るだけ分かりやすく説明したいと思います。』
>初心を忘れず
初心を忘れず、というのはまあ現国の試験問題的には「わかりやすく説明したい」だということになるのですが、2年前の講演が衝撃のハトハトチキン講演で為替市場における円安を促進した、ということがありますので、どうもこの「初心」とは「ハトハトチキン」を思い出しますし、ハトハトチキンが言いすぎならば「慎重なアプローチ」であり、「待つことのリスクは相対的に低いという認識」というお気持ちが溢れているようにアタクシには読み取れましたが勝手読みのし過ぎかも知れませんので念のため申し添えます。
・関税政策の影響はひたすら「経済に下」の話ばっかりなのと主役が展望レポート時の見立てから交代している感があります
『2.通商政策の影響と経済・物価情勢』ってのがまあ本編ですが、最初の小見出しが『(通商政策のわが国経済への影響)』ですな。最初の方の能書きは飛ばしまして関税政策の影響について。
『こうした各国の通商政策の動向は、いくつかの経路を介して、わが国の経済を下押しする要因となります。』
はい。
『第1の経路は、米国市場におけるわが国の輸出財の価格競争力の低下を起点としたものです。』
つまり従来の米国向け輸出に関連する数量あるいは収益への悪影響ですな。一応以下の能書きを引用します。
『これは、米国の関税政策の直接的な影響として、メディアなどで取り上げられることも多いかと思います。図表2をご覧ください。輸出関連のデータをみますと、これまでのところ、左グラフの実質輸出の実績はしっかりとしています。これには、今後の関税引き上げを見越した駆け込みの動きが一部影響していると考えられますが、この先、わが国企業が米国での販売価格に関税の影響を転嫁する場合には、米国製品にシェアを奪われるなどして、わが国からの輸出を抑制する方向に作用すると考えられます。』
でもって、
『実際、右グラフにあるように、輸出受注に対する企業の見方は、増加と減少の節目である 50 を下回っています。』
なので、マインドには出ているけれども実際には駆け込み効果などもあって今のところ数値としてはでていませんという評価ですね。
『他方、わが国の企業の中には、米国内の販売価格を変えずに、関税引き上げの影響を輸出採算の悪化という形で吸収する戦略をとる先もあると思います。この場合、現地での売れ行きや輸出数量に対する影響は限定的です。しかしながら、企業収益には下押し圧力がかかることになるため、これが先行きの賃上げや設備投資にマイナスの影響を及ぼす可能性があります。』
こっちは収益なので経済指標みたいな形で出るのにはもう少し時間がかかりますわな。
でもって次。
『第2の経路は、不確実性の高まりによる需要の減少を起点としたものです。』
でですね、この点ですけれどもこの先にしれっとこんな記述がありまして、
『第1の経路に比べて話題になることは少ないですが、むしろこちらのルートの方が、より早い段階でわが国経済の下押しに働く可能性があると考えています。』
あらま、って感じでして、従来(というか4月展望レポート)では関税政策の影響で世界経済に影響が来て(IMFのWEOもちょうど下方修正された時期でした)、それが国内経済に跳ねてくる、というルートで主に説明していたのですが、「むしろこちらのルートの方が、より早い段階でわが国経済の下押しに働く可能性があると考えています。」としているのは注目ですね。
以下能書き。
『関税政策を巡る不確実性がこれだけ高ければ、その影響を受ける可能性がある企業は、当然のことながら、各種の投資案件に対して慎重にならざるを得ません。』
『家計部門でも、将来の景気悪化リスクなどに備え、自動車・家電といった耐久消費財や住宅の購入など、当面、大きな買い物を見合わせるインセンティブが生じます。』
ついこの前(と言っても関税前)は耐久消費財の前倒しの可能性に言及していたのでこの辺エラク弱気化したなと思ったので、まあこの辺りからもワシ的にはいつものハトハト音頭、と思ってしまいました。
『実際、図表3の企業や家計のコンフィデンスのデータをみますと、わが国の企業の景況感や消費者マインドは、ここにきて悪化しており、不確実性の高まりが企業や家計の支出行動に影響を及ぼす可能性があります。』
と来まして、
『実際にどの程度の影響が及び得るのかという点については、日本銀行としても、次回短観において、今年度の設備投資計画の修正状況などをしっかりと確認していきたいと考えています。』
ということで短観の設備投資計画がにわかに大注目となってきましたね。
では3番目行きます
『第3の経路は、世界経済が広く減速し、グローバルな貿易活動が縮小することに伴う影響です。』
4月の展望レポートの時点ではむしろこれがメインになっていて、他の主要国の中央銀行があの時点ではFEDは「まだ様子分からんから1回パス」でしたし、もともと景気減速気味だったECBは「段階的な利下げの追加で政策金利を中立化」はしたものの影響はこれから見て行きます、という中でなぜかフォワードルッキングに世界経済の下押しが強まるからベースラインシナリオを変更しました、とぶっこんで来たわけですが、今回はメインが「米国向け輸出の直接の影響」「マインド悪化による需要減」で、特にマインド悪化の方がこれから直ぐに来ます、ってことで話が変わっていますわな。
以下は能書き。
『いま述べた不確実性の高まりに伴う支出先送りの動きは、日本だけでなく、世界中で生じます。』
『また、関税を課される国だけでなく、米国など関税を課す側の国でも、輸入物価の上昇などを通じて国内需要が下押しされる可能性があります。』
『とりわけ、多くの生産工程を必要とする耐久消費財や資本財などに対する世界的な需要の減少は、グローバルサプライチェーンを通じて増幅される形で、わが国を含む各国の輸出や生産を下押しする可能性があります。』
とまあエライしょんぼりしてしまう話ですが、
『この点、4月に公表されたIMFの世界経済見通しでは、図表4の右グラフにあるように、先行き、グローバルな貿易量の停滞に引き摺られる形で、世界全体の実質GDPが下振れる姿が予測されています。こうした貿易活動を通じた影響に加え、世界経済の減速が、海外現地法人からの配当金減少という形で、わが国企業の収益を下押しする可能性にも留意が必要です。』
とまあ威勢の悪い話。
最後は金融市場からの話です、まあこれは普通の事しか書いてませんが。
『第4の経路は、金融・為替市場を介したものです。』
はい。
『4月の半ばにかけては、米国による関税政策の発表をきっかけに、世界的に株価が大きめに下落し、ドル安が進みました。その後、こうした動きはある程度巻き戻され、世界的に株価や為替のボラティリティも低下してきていますが、引き続き、金融・為替市場の動向やそれがわが国経済に及ぼす影響を十分注視していきたいと考えています』
てな訳ですが、これ一つ留意点があって、「米国向けの直接的な輸出」と「マインド」ってのは関税交渉次第で一気に晴れる可能性がある代物なので、例によって例の如くこれが晴れたらまたも突如のジャガーチェンジが発生する、という可能性は無くは無い、というか多分そうなる、という点は留意すべき所でして、まあこれ読んでいると見極めに時間がかかりそうな説明にはなっていますが、所詮は関税交渉次第なので、トラ公の方が先に音を上げてしまえばこっちのもの、というのはおおありだと思いますからぜんぜん利上げないでっせと決め打ちするのもちょっとやりすぎ、というのはあると思います。
・現状の経済の走りについては逆に妙に強気ですがこれはジャガーチェンジをするための伏線ですね
次が『(わが国経済・物価の見通し)』ですが、ここの記述は威勢が良いのですよ。
『以上、米国の関税政策の影響について、やや詳しくご説明してきました。続いて、これを前提とした、わが国の経済・物価の見通しについてお話しします。』
という事ですが何とですね、
『いま申し上げたように、最近の関税政策は、いくつかのルートを通じて、わが国経済の下押し要因として作用します。もっとも、現時点で日本銀行としては、わが国経済は、こうした下押し圧力を受けつつも持ちこたえ、賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇していくというメカニズムも途切れることはないと見込んでいます。これは、高水準の企業収益がバッファーとなるほか、これまでの景気回復で家計の所得環境も底堅さを増しているためです。』
実質賃金のマイナスが続いているのに「これまでの景気回復で家計の所得環境も底堅さを増している」ってこれ下手に着火されたらアカン火種じゃろと思うのですが、まあ大本営発表ではこういう話にしているのは要は「足もとは強いよ」と言いたいという事。
『図表5をご覧ください。ここ数年、わが国の企業収益は、全体として歴史的な高水準を続けており、多少の下押し圧力を受けたとしても、資金面から企業行動が大きく制約される状況ではありません。』
『また、先ほど申し上げた関税政策の影響は、まずは製造業・輸出企業を中心に表れると見込まれますが、雇用全体の約8割を占める非製造業が堅調であることから、これが、わが国の経済活動を下支えすると考えられます。』
なんですかこの楽観(のように見える説明)はw
『この点、2019 年に米中貿易摩擦が拡大した局面でも、わが国の輸出や製造業の生産活動が弱めの動きを余儀なくされた一方、非製造業の業績は堅調に推移し、人手不足感が強い状況は維持されました。』
で、ここからが家計の話なんですが、実質賃金の話を丸無視して雇用が強い、という話をしていて、だから「家計の所得環境も底堅さを増している」ということにする、という割と強引感のある説明。
『人口動態の変化を受けて労働供給の限界が強く意識されている中、このところ、非製造業の人手不足感は一段と強まっています。こうしたことから、関税政策の影響を受けるもとでも、わが国の労働需給は引き締まった状況が続き、企業の積極的な賃金設定行動は、全体として維持されていくのではないかと判断しています。』
という根拠になっていますので、つまり現状が強いってのを強調しているのは、関税交渉が進展した場合にジャガーチェンジをするための布石を打っていることに他ならないので、この部分を重視して読めば「割とタカっぽいじゃん」となると思います。
・好循環は遂にお蔵入り(か????)
先ほどの部分を再掲しますが、
『もっとも、現時点で日本銀行としては、わが国経済は、こうした下押し圧力を受けつつも持ちこたえ、賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇していくというメカニズムも途切れることはないと見込んでいます。』
>賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇していくというメカニズム
>賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇していくというメカニズム
>賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇していくというメカニズム
・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・( ゚д゚;)
なんですかこれはという感じですが、まあさすがに「好循環」って言ってると今は政治ばかりが叩かれているので日銀セーフ(寧ろ利上げするなとか言われていて金融リテラシー無し無しムーブなのが悲しいですが)という図になっていますが、どこかでうっかり犬笛を吹かれたらどうみたって「好循環」って炎上要素ですから、そらまあ好循環はお蔵入りさせろというのはあったのですが、今回しれっとお蔵入りですかね、まあ今後も確認したいですけど。
・物価に関しては「基調的物価」の説明でいろいろな図表登場
『次に、物価についてご説明します。足もと、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は3%台半ばとなっています。これについては、図表6でお示ししているように、昨年秋以降、米などの食料品価格が大きく上昇していることが寄与しています。こうした価格の上昇については、輸入した肥料や原材料、天候要因などのコストプッシュの影響が大きいとみており、少なくとも前年比でみた上昇率は、今後低下していくと見込まれます。』
コストプッシュだから対応しない、という屁理屈がおかしい点については今次のインフレ局面で主要国の中央銀行だって対応を間違えていて、その反省の元に米国の定例のロンガーランゴールあんどストラテジーの見直しが行われている、という状況になっているのに、これ黒田末期からの物価上昇をずっと一時的と言い張って政策の見直しが遅れていることの正当化先にありきで「コストプッシュだから対応しない」を続けた結果物価が高止まりしているんですけど、こんなん「初期段階でコストプッシュは一時的と思っていましたがどうもそうではなかったようです」って言えば済むことを何で日銀って「謝ったら死ぬ」ムーブをぶちかますんでしょうかねえと思います、まあいつもの悪態ですが。
『そのうえで、中央銀行の金融政策は、特定の財・サービスの価格を動かすものではなく、需要全体に影響を及ぼすことを通じて物価の安定を実現しようとするものであり、また、その政策効果は時間をかけて経済に波及していくものです。そのため、2%の物価安定を実現していくにあたっては、コストプッシュの直接的な影響を除いた基調的な物価上昇率の動きをみていくことが重要となります。』
はいきました基調的物価とかいうお気持ち物価。
『残念ながら、これさえみれば基調的な物価の動きがわかるという便利な指標は存在しません。物価変動の背後にある労働需給や賃金上昇率など、経済・物価に関する様々な情報とともに、各種の物価指標を丁寧にみていく必要があります。そう申し上げたうえで、図表7にお示しした代表的な指標を見る限り、』
ということで図表7を見ますと、巻末の方に「図表7 基調的な物価上昇率に関連する指標」ってのがあるので見るわけですが・・・・・・・・・・(PDF17枚目になります)
『@価格変動の大きい品目を控除した物価指標』
凡例を見ますと、
『@CPI(除く生鮮食品)
ACPI(除く生鮮食品・エネルギー)
BCPI(刈込平均値)
CCPI(加重中央値)
DCPI(最頻値)』
となっていますけど、毎月出している刈込平均の図表対比で扱いが随分寂しいですな、と思うと次に
『A賃金変動を反映しやすい指標』
というのが出てきまして
『@CPI(低変動品目)
ACPI(サービス)のトレンド』
ってのがあるんですが、これは展望レポート背景説明の方でも同じものがありまして、4月展望レポート全文(https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2504b.pdf)本文28ページ(PDFで30枚目)に3つあるグラフの一番下に「図表38:賃金要因によるCPIの変動」ってのがありまして、まあこれと同じものですわな。
『B中長期の予想物価上昇率』
がこの前もネタにしましたように、そもそもこの数値自体が推計値だし、家計のインフレ期待に関しては定性的な回答(大きく上がるとか上がるとか下がるとか大きく下がるとか)を数値処理しているので、過去の低インフレ局面を割と長い期間含めた処理をしたら局面変化の際にちゃんとその変化を読み取れているのかが怪しい(というのはスタッフペーパーの段階ではちゃんと記載されています為念)のに、あたかも「ザ・10年予想物価上昇率」があるようなグラフになっているのが毎度申し上げている通りの怪しさですし、
『C経済モデルから推計された指標』
『モデル@:フィリップス曲線の切片
モデルA:時変VARモデル
モデルB:準構造モデル』
こりゃ何ですねん(フィリップス曲線は4月号展望全文の本文31ページに出ています)というのがありまして、なんかいろいろと説明しようとしているのは分かるのですが、どうせお前らまたチェリーピッキングしとるじゃろと言いたくなるのですな。
とは言いましても今回新手に出てきたCの数字はなんか急速に2に接近してて、何ならお前らこれ物価目標達成じゃなねえのとも思ってしまいますので何なんでしょうという感じではありますが、本編に戻りますと。
『わが国の基調的な物価上昇率は、これまでのところ緩やかに上昇していこれまでのところ緩やかに上昇しています。』
となっているだけでお気持ち物価の方は威勢良くない説明になっていますわな。ただまあさすがに実際の物価に関しては、
『4月の消費者物価指数をみても、様々な品目において、いわゆる「期初の値上げ」という形で、企業が人件費や物流費を含むコスト上昇を販売価格に反映する動きが続いていることが確認されました。』
としていますが、最後に関税政策を出してきて
『もちろん、関税政策の影響を受けてわが国の経済成長のペースが鈍化することは、物価に対する下押し圧力として作用します。』
つまりは利上げを前倒しする気は皆無というのはよくわかります。
『しかしながら、そうしたもとでも、先ほど申し上げたように、賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇していくメカニズムは維持されると考えています。また、先行き、各国間の交渉が進展し、通商政策を巡る不確実性が低下していけば、海外経済は緩やかな成長経路に復していき、わが国経済の成長率も高まっていくことが予想されます。』
ということなので、まあ一応関税交渉次第ではジャガーチェンジの可能性は大有り、というのは把握できたなというところではあります。
・・・・・ここで時間切れになりましたので続き(主に輪番ネタ)は明日で勘弁してつかあさい。
2025/05/28
〇植田総裁金研国際コンファランスの挨拶がとんでもない屁理屈大王になっていて見苦しいわ恥ずかしいわ
来週内外情勢があるって話をしましたが、よく考えたら5月末は金研国際コンファランスがあるんでした大変に失礼いたしました。
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/data/ko250527a1.pdf
日本銀行金融研究所主催2025年国際コンファランスにおける開会挨拶の邦訳
日本銀行総裁 植田 和男
・基調的な物価(講演原文では「underlying inflation」)の説明が苦しいという自覚はあるようですね
『2.わが国の金融政策が直面している課題』の二つ目の小見出し『(政策金利)』の途中から日銀の屁理屈音頭がおっぱじまりますわよハーヨイヨイ♪
『難しい質問は、実際の物価上昇率が 2%を上回って3年以上推移しているにも関わらず、なぜ日本銀行はそのような緩和的なスタンスを維持しているのか、ということです。』
そりゃお前らが黒田を否定しないでハトハトチキンやってるからじゃろ、と思うのですが当然ながら当事者がそんなことを認める訳も無いので屁理屈が展開されます、以下ご覧ください。
『この問いに対して、日本銀行は、基調的な物価上昇率が 2%を下回っているため、と答えてきました。これは自然と次の質問につながります。基調的な物価上昇率は、何によって構成されているのでしょうか。』
政策から後付けされたお前らのお気持ち表明じゃろ、と言っても当事者がそんなこと以下同文。
『基本的には、基調的な物価上昇率とは、一時的な変動要因を除いた物価上昇率を指します。しかし、実際には、この概念を捉える完璧なデータは存在しません。そのため、データの全体感と経済を巡る情報を勘案して総合的に判断しなければなりません。』
だったら最初から総合判断で恣意的にやっていますって言えば良いのに、そこで何かちゃんとしたベンチマークがあるかのような話をするから苦しい屁理屈になるのですが、というかまあ今回のこのスピーチ、「基調的な物価」での説明が何ぼ何でも限界に来ているってことを大本営でも自覚しているんでしょうね、この段落の最後になるんですけどこの最後の部分はワロタ。
『そして、この点は、人々とのコミュニケーションを難しくさせます。』
そらお前らのお気持ちだしお気持ちの変わる原動力が首尾一貫してないからこっちだって分からんわとしか申し上げようがないですけど、
『私どもは、基調的な物価上昇率を巡る説明が不明瞭であるとの厳しい指摘をしばしば受けてきました。』
wwwwwwwwwwそらお気持ち物価なんだから仕方ないじゃろと思うのですが、厳しい指摘って自覚してるならお気持ち物価止めええやと思う訳ですが、以下更に充実の屁理屈が展開されますので鑑賞しましょう。
・構成要素に明らかに下方バイアスを持っていそうなのを満載にした合成予想物価上昇率を持ち出しまして・・・・
でもって次の小見出しが『(予想物価上昇率)』です。
『基調的な物価上昇率を評価するために注意深くモニターしている指標のひとつは、予想物価上昇率です。』
とまあそういうことで、物価の指標を引っ張り出してもだんだん説明が苦しくなる(後述)なので、とうとう予想物価上昇率を持ち出しているんですけれども、
『基調的な物価上昇率という概念よりは明瞭ですが、予想物価上昇率もまた、誰の予想が最も重要なのか、どの予想年限が適当なのか、などの問題を伴います。』
と言ってるそばから、
『図表 4 は、各指標が有する情報を集約した日本の合成予想物価上昇率に加えて、ドイツと米国の中長期の予想物価上昇率を示しています。』
って言ってるんですが、図表4の『日米欧の中長期インフレ予想』を見ますと、その脚注は
『(注)中長期インフレ予想は、日本は合成予想物価上昇率(10年後)、米国・ドイツはコンセンサス・フォーキャスト(6〜10年後)。(出所)Bloomberg、Consensus
Economics「コンセンサス・フォーキャスト」、QUICK「QUICK月次調査<債券>」、日本銀行』
この「合成予想物価上昇率10年後」ってのは展望レポートの背景説明の方にもあって。最近だと内田副総裁の講演でもリファーされていましたが、なんかいろんなもんをこねくり回していて、例えば短観の物価見通しとか生活意識アンケートの物価見通しとかもコネコネされていて何だかよくわからん数字になっているものな上、米国ドイツのコンセンサスフォーキャストってのは上記の脚注見たら出所がBBGになっているから、それって単に何とかストアンケートの集計結果みたいなもんで、一般市民のインフレ予想との乖離はどうなっているのか、ってなもんだし、同じベースで集計しているのかどうかも怪しいものを並べてどうするんだ、というお話な訳ですけれども、そういうのを比較した上で、
『ドイツと米国では、予想物価上昇率は、おおむね 2%から 3%の間で、驚くほど安定していました。2022
年から 2023 年の間に、物価上昇率が 10%近くに達したときも、それは目標水準近くにアンカーされていました3。この安定は、中央銀行が物価を安定させる能力に対する人々の信頼を表しているのではないかと思われます。』
からの、
『対照的に、日本の中長期の予想物価上昇率は、1990 年代後半から、大規模金融緩和が導入された
2013 年まで、概ね 0%から 1%の間にとどまっていました。予想物価上昇率は、2014
年に1%以上に高まりましたが、2016 年までに低下して、以前の範囲に戻り、2021
年までそこにとどまりました。より短い年限の予想物価上昇率は、よりゼロに近い水準にとどまっていました。ゼロインフレという均衡の強固さを物語ります。』
という話にしていまして、その結果として、
『予想物価上昇率は、グローバルなインフレ高騰と日本の継続的な金融緩和に反応して、2022
年に再び上昇し始めました。予想物価上昇率は、足もと、1.5%から 2.0%の間にあり、まだ
2%の目標水準を下回っているものの、この30 年間で最も高い水準にあります。すなわち、私どもは、予想物価上昇率をゼロから引き上げることには成功しましたが、2%にアンカーされているという状況には、まだ至っていません。このため、私どもは、今なお緩和的な政策スタンスを維持し続けています4。』
という政策の正当化に使っているのですが、そもそも日銀の合成予想物価上昇率については先般弊駄文で申し上げましたのの再掲ですが、
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2024/data/rev24j05.pdf
期間構造や予測力からみたインフレ予想指標の有用性
2024 年 5 月
こちらの5ページ(PDFの5枚目)あたりに『【図表 8】共通成分ベースの集計指標(年限別の合成予想物価上昇率)』ってのがありますが、よく見ますと、
『(注)年限別の合成予想物価上昇率は、家計(生活意識に関するアンケート調査<量的質問・質的質問>)、企業(短観)、専門家(コンセンサス・フォーキャスト、QUICK
調査、インフレスワップ)による各年限のインフレ予想について、主成分分析を用いて共通成分を抽出したもの。2006
年以前の計数は参考値。
(出所)日本銀行、Bloomberg、QUICK 月次調査<債券>、Consensus Economics「コンセンサス・フォーキャスト」』
ってやつなんですが、コンセンサスフォーキャストって過去の実績に引っ張られて今次局面で物価見通しを全然当ててなくて下方に外しっぱなしだし、まあクイック調査とかも然りですけど、これ現時点において下方バイアスを持ってそうなものを使っている時点でお察し指標(ちなみにこの日銀レビューを書いているのが調査統計局じゃなくて企画局というのも味わいが深い訳ですがwww)なんですけどねえ、ってなお話でもあったりします。
・基調的な物価上昇率は予想物価上昇率だという新しい言い訳が構築されてきたようです
でもってその続きですが、『(中央銀行コミュニケーション)』って小見出しになります。
『この政策スタンスのコミュニケーションは容易ではありません。』
そりゃそうじゃろお気持ち物価を尤もらしく屁理屈でデコレーションしているだけなんだからwwwwwwwwwww
『それは、基調的な物価上昇率の概念に伴う曖昧さもさることながら、図表 5
が示しているように、総合ベースでみた物価上昇率と基調的な物価上昇率との間に大きな乖離があるためです(ここでは、予想物価上昇率を基調的な物価上昇率の近似として用いています)』
>ここでは、予想物価上昇率を基調的な物価上昇率の近似として用いています
>ここでは、予想物価上昇率を基調的な物価上昇率の近似として用いています
>ここでは、予想物価上昇率を基調的な物価上昇率の近似として用いています
と、どさくさに紛れて勝手に基調的な物価上昇率を予想物価上昇率(しかも日銀計測のお手盛りVer)にすり替えてしまいましたwwwww
『その乖離は、サプライショックの直接的な影響と、総合ベースでみた物価上昇率に影響するその他の一時的な要因に対応しています。』
とのことですが、サプライショックが一過性なのか持続性があるのか、というのを丸無視してサプライショックだからネグリジアブルだ、って屁理屈捏ねてるからそうなるんじゃろという話で、
・推計データと直接計測されたデータが常に大きく乖離するのであればそれは推計がおかしいじゃろとwwwww
『中央銀行は、基調的な物価上昇率に主に反応しますが、人々は総合ベースでみた物価上昇率に反応する傾向があります。この反応の乖離は、常にある程度は存在するものですが、最近の乖離の大きさとそれが長い期間にわたって継続していることは、日本において特に問題となっています。』
>乖離の大きさとそれが長い期間にわたって継続していること
>乖離の大きさとそれが長い期間にわたって継続していること
>乖離の大きさとそれが長い期間にわたって継続していること
そもそも論として「計測可能なザ・基調的物価上昇率」が存在しないのですから、「乖離の大きさとそれが長い期間にわたって継続している」っていうのは、常識的な視点からしたら「お前らがお手盛りで計算している基調的な物価上昇率がそもそも間違えているんだろ」という話になるじゃろ、としか申し上げようがないのですけれども、何をいってるんでしょうかこの人はwwwww
・勝手に「中央銀行」を主語にするなと
さらに続きですが、
『一般的に、中央銀行は、サプライショックに対して、それが基調的な物価上昇率に影響するとみられない限り、その状況を見守るアプローチを採用しています。』
そうじゃなくて「一時的なショックに留まるのか、それとも中長期的な影響をもたらすのか」によって対応をするかしないかが決まる、ってのが中央銀行の物価安定という施策を進める際のポイントじゃろ勝手に「中央銀行は」とか言ってるんじゃないよお前らだけじゃろお前ら。
『私どももまた1度目のサプライショック、すなわち 2022 年から2023 年にかけての輸入財の価格上昇の状況を見守ってきました。しかしながら、日本の近年の経験は固有のものです。総合ベースでみた物価上昇率が高まった一方、基調的な物価上昇率も高まりました。基調的な物価上昇率を高めた要因として、コロナ禍からの景気回復や労働需給の引き締まりに加え、国内物価・賃金に影響を及ぼしたサプライショックを指摘することができます。』
『足もと、私どもは、食料品価格の上昇というかたちで、もう1つのサプライショックに直面しています。私どもの中心的な見通しでは、食料品価格上昇の影響は減衰していくとみています。しかしながら、基調的な物価上昇率が以前よりも
2%に近いことを踏まえると、食料品価格の上昇が基調的な物価上昇率に与え得る影響に注意する必要があります。』
と言ってる本当の物価上昇率が既に2%超えてるんじゃないですかねえ、と思うのですが最後に図々しく、
『サプライショックが世界的により頻繁に生じるようになるにつれて、総合ベースでみた物価上昇率と基調的な物価上昇率の関係が、多くの中央銀行にとって主な焦点であり続けると考えられます。』
とか偉そうに言っているのですが、他の中銀が基調的な物価上昇率と総合ベースで見た物価上昇率の関係でどうのこうのっていう政策対応の説明していましたっけ、ってな問題が有るわけですし、大体からしてコア物価指数を過度に重視することに対しても昔から常に指摘があったんですよね。
・ここで懐かしの変態仮面ジム・ブラード前セントルイス連銀総裁の2011年の指摘を見てみましょう
変態仮面だの何だの聞こえないことを良いことに極東の島国の片隅で勝手な二つ名つけていますが、まあ賛否はありますけどブラード前総裁の論点提起ってのは面白いので良くチェックしていました。
(URL長すぎで画面が乱れるかもなのでハイパーリンクは文字列の途中までに貼っております)
https://www.stlouisfed.org/news-releases/2011/05/23/st-louis-feds-bullard-discusses-commodity-prices-inflation-measures-and-inflation-targeting
St. Louis Fed's Bullard Discusses Commodity Prices, Inflation Measures, and Inflation Targeting
May 23, 2011
『Core vs. Headline Inflation』って小見出しの2パラ目ですが、基調的な物価ガーとか抜かしている屁理屈大本営はちょっとこれでも読めやという感じでして、
『“Headline inflation is the ultimate objective of monetary policy with
respect to prices,” Bullard said, noting that these are the prices that
households actually pay. “Core is not an objective in itself,” he added.
He said that while the only reason to look at core is as an intermediate
target for headline, “its use as an intermediate target is questionable.”』(直上URL先2011年5月のセントルイス連銀ブラード総裁講演紹介文より)
さらに、上記URL先でリファーされているのが『Measuring Inflation: The Core Is Rotten』ってまた
喧嘩を売るような題名の講演テキストになりますが、
https://www.stlouisfed.org/-/media/project/frbstl/stlouisfed/files/pdfs/bullard/remarks/measuring_inflation_may_18_2011_final.pdf
Measuring Inflation: The Core Is Rotten
Money Marketeers of New York University
New York, N.Y.
May 18, 2011
最初の『Introduction』の4パラグラフ目のところにありますけれども、
『One immediate benefit of dropping the emphasis on core inflation would
be to reconnect the Fed with households and businesses who know price changes
when they see them. With trips to the gas station and the grocery store
being some of the most frequent shopping experiences for many Americans,
it is hardly helpful for Fed credibility to appear to exclude all those
prices from consideration in the formation of monetary policy.』
コア指数ガーばっかり言いすぎていると本来の目的である国民が本来負担している「総合物価」との乖離が長期的に生じた場合(ちなみに前の方の先の引用部分の直後にブラードの説明引用として、「For
example, from 2003-2006, while core inflation averaged about 2 percent,
it was consistently below headline inflation. 」ということで、総合物価が長期的にコア物価を上振れていた時期を例に出しています)に、金融政策本来の目的が果たせているのか、というような論点を提示しているわけですよ。
とまあそんあ次第でコア指数ですらコア指数に固執してはいかんのでは、というような指摘が大昔から有る中で、「基調的な物価上昇率と実際の物価上昇率の長期間の大きな乖離がどうのこうの」とか能天気に言ってる場合じゃない訳で、黒田緩和からの修正が遅れまくっているのを正当化するためのしょうもない言葉遊びしてる場合じゃないだろと思います。
・この講演原稿作ったのは誰だあ!(ガラッ)
てなわけでまあ突発性海原雄山状態になってしまうわけですが、この手の屁理屈、〇〇さんや〇〇さん(伏字に関しましては皆様勝手に好きなのを入れてください)が捏ね散らかすならまた大本営の屁理屈かよ、って笑えないけど苦笑しながら見るって感じですが、斯界の第一人者であらされる学者の植田和男先生ともあろうお方がこのような屁理屈満載の説明を、しかも海外からのお客様もお招きしたアカデミック寄りの金研国際コンファランスで行う、ってのさすがに如何なものかって話でして、植田先生だってこの牽強付会ぶりを読んだら分かると思うのですが、いや先生学者として言ってて恥ずかしくないのかね、と思ってしまいますし、そんな講演原稿作ったのは誰だかは存じませんけど、いやちょっと何なんだよ、と思いましたとさ、というのが本日の結論でした。
2025/05/27
〇G7会見でわざわざ超長期について質問されているのはワロタ&物価安定にコミットですかそうですか
しかしまあ何ですな、
https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2025/kk250526a.pdf
植田総裁記者会見(5月22日)
――G7終了後の加藤財務大臣兼内閣府特命担当大臣、植田総裁 共同記者会見における総裁発言
2025年5月26日
日本銀行
―― 於・バンフ(カナダ)
2025年5月22日(木)
午後2時9分から約16分間(現地時間)
『【冒頭発言】
私ども日本銀行に関連するところに関して少しだけ申し上げれば、大臣のお話とちょっと重なりますが、世界経済に関して、各国の通商政策等を巡る不確実性の影響およびその背景にあるグローバルなインバランスの問題、状況などについて議論致しました。それから、不確実性の高さが経済・金融安定に及ぼす影響等について十分に注視し、中央銀行として引き続き物価安定に強くコミットしていくということについて、参加者と認識を共有したところでございます。』
>中央銀行として引き続き物価安定に強くコミットしていく
>中央銀行として引き続き物価安定に強くコミットしていく
>中央銀行として引き続き物価安定に強くコミットしていく
・・・・・ほほう、って感じでして、いやまあ関連の英文での発表を真面目に見ればいいんですけどワシにも生業というのがあって中々手が回らない所ではございますのでパスしますけど、「物価安定に強くコミット」っていうのが、これはFEDのメッセージかな、って思うところでございまして、そう簡単に利下げするかよバーカバーカとホワイトハウスの狂人に向かってメッセージを飛ばしているな、と思いました。
しかしまあ何ですな。物価安定に強くコミットしていくのは結構なのですが、その物価見通しを毎度毎度外し続けて物価が高止まりして遂にはプチ米騒動モードにまでなっている(ちなみに大正の米騒動では内閣が1個飛びましたわな)次第で、まあ米騒動そのものは日銀ワシのせいじゃないって言いたくはなるでしょうけれども、物価引き上げの中でも最後まで上がらなかったのがコメだったので、その分がまとめて出たらこうなりました的な部分もあるので、なんちゅうか供給ショックだからシランガナで済ませていいのかねとは思います(ゆうて金融引き締めまで需要減らせるわけでもないけど)。
でまあ質疑応答ですが、こんな時の質疑がいきなりこれであるwww
『【問】植田総裁には、最近、ちょっとG7と離れてしまうんですけれども、超長期金利が大きく動いていて市場の注目が高まっています。その中で、日銀の植田総裁としてそういった動きについてどういうふうにご覧になっているのかということと、何か対応をされていくような考えはあるのかどうか、その点をお願い致します。』
いやこの程度の動きで一々対応したらアカンヤロと思うのですが、昨日ネタにした野口審議委員の会見でもそうなんですけど、何でメディアは日銀に「対応」をさせたがるような質問ばっかりしてるんだかというのが意味不明にもほどがあって、お前らべき論から考えてもうちょっと筋の良い質問してくれよと思うのですが、そもそもべき論自体が分からんのでしょうから始末に負えません。
『【答】超長期金利の動きについてのご質問ですけれども、短期的な金利の動向については具体的にコメントすることは差し控えさせて頂きたいと思います。ただ、もちろん、市場動向については、引き続きよく注意してみていきたいというふうに思っております。』
まあこれはこれでも良いのですが、もうちょっと市場に対してある意味突き放した方が良いでしょとは思うのですよね。変に含みを持たせる必要があるのか、というか含みを持たせると市場のクレクレコジキどもがコジキ音頭を盛大に踊りだしてやかましくてかなわん訳ですよ。
これがまあ超長期じゃなくて短期まで含めた金利全般が財政懸念で大暴騰して企業金融の目詰まりが発生するとか言う話ならそらまあ何か考えろよ(と言っても財政懸念だったら日銀はやりようがなくて発行当局が何かすべき話ではあるんだが)という話になるとは思うのですが、超長期の金利が上昇ったって、冷静に考えて2%物価目標が達成された世界が続いていくならば均衡物価水準2%で潜在成長率1%だとしてタームのリスクプレミアム乗っければそらもっと上の金利になっとるじゃろ、ということでそもそも今の金利水準短期とか政策金利から見ていくと高く見えますが、そもそもが起点の金利が低すぎなのでおかしい、というお話でもあることを忘れて超長期金利ガーと言ってもねえとは思います。個人の感想ですが。
でまあそれはさておき今回の会見のもう一つの質疑応答ですが、
『【問】植田総裁に伺いたいんですけれども、米国の関税政策を巡る不確実性というところをG20のときにもかなりご指摘があったと思うのですけれども、今回その辺りの、各国の方々とお話をされての認識ですとか、何か変化を感じるところがあれば教えてください。』
これは良い質問でして、まあ別にG7の場を使わなくても、おそらくは各国の金融政策担当当局も財政当局も相互に連携して状況のアップデートを互いに行っているとは思いますが、そういうアップデートを皆で持ち寄って検討する、というのが(表の会合でやっているかは兎も角としてどこかの機会で)今回も行っているでしょうし、そういう状況のアップデートの為にG7みたいなのは非常に大事(しかも5月は月初を除いて主要各国では中央銀行の金融政策決定会合が無いのでこの時期は情報共有にとても重要な時間帯ですわな)だと思いますので、そういう意味合いのある質問じゃないかな、って思いました、知らんけど。
『【答】 まず関税政策ですけれども、ご案内のように、米中あるいは米英の間で一応前向きの動きがあったということが一つ言えるかと。また、他の参加国でもそういう評価はあったと思います。』
ほうほう。
『ただ、いずれにせよ、この二つの二国間の動きを含めて、先行き、関税について非常に不確実な状況が続いているということが一つと、それから、関税がどこに落ち着くにせよ、それが経済にどういうふうに影響していくかという点についても非常に大きな不確実性がまだ残っている、あるいはこれからデータをみていかなくてはいけない局面であるという辺りは、私もそう思いますし、他の参加者も多くの方はそういう認識であったというふうに思っております。』
という説明でして、まあその辺は話をしにくい、というのがあるかもしれませんけれども、もうちょい「今いまで皆さんが認識している状況は、もうちょっと前の直近時点と比較してどこがどういう感じで変化しているのか」というののアップデート状況が分かるような説明を入れて頂きたかったな、と思いました。
一応、さっきのところで「一応前向きの動きがあったということが一つ言えるかと。また、他の参加国でもそういう評価はあったと思います。」というのがあったので、この点が評価すべきプラス要素としてアップデートされました、という話ではあるとは思うのですが、ただまあこの植田さんの言ってる日本語の字面を見ますと、そんなにポジティブ感が無いなとは思えましたのですが、実際のニュアンスはどうだったんでしょうかね。
・・・・と申しますのは、これは日銀が直近の展望レポートでベースラインシナリオを下げてきたことに関連する話なんですが、4月展望レポートで一旦引き下げになったベースラインシナリオって、今後上下どっちにブレる可能性があるのは良くわかるのですが、そもそものベースラインがどこに置かれているのかがフワッとした脚注での説明しか(公表文書では)出てきていないので、植田さんの説明として聞きたいのは「でもって今回のG7での各国政策当局の見方というのは、日銀が4月展望レポートで示しているニューベースラインシナリオ対比上振れ要素なのか下振れ要素なのかカワランチ会長なのか、というのがもうちょっと分かりやすくなって欲しいなってことですな。
毎度申し上げていますが日銀って展望とか政策変更の時に一気にシナリオを書き換える悪い癖があって、途中でのグラデーションみたいなのは無い(その代わりに謎の決め打ちインタビューとか決め打ち観測記事とかは飛び出す)傾向にあるのですが、今回はどうせ「上下どっちにもぶれやすいし何ならベースラインシナリオの書き換えだってありますよ」って言ってるんだから、なんかもうちょい情勢の変化の説明をして欲しいなってことです。
とまあそんな所ですが、植田さんの上記説明のニュアンスだと、たぶん植田さんまだまだハトハトチキンムーブをぶっかましている感じでして、「多少明るい材料は出ているかも知れないが所詮は先行き下振れリスクですがな」って感じで見ているんだろうな、とは思います。
https://www.boj.or.jp/about/press/index.htm
講演・記者会見・談話
今後の講演・挨拶等の予定
『2025年 6月 3日 植田総裁 内外情勢調査会における講演』
ってのがあるので、まあその時にアップデートして頂ければとは思う所でございます。
2025/05/07
お題「決定会合レビューで総裁会見」
さて連休明けですな。でもって明日はFOMCと。
〇総裁会見はまあ普通に展望レポートの「ベースラインシナリオ引き下げ」の説明ですねえ
https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2025/kk250502a.pdf
総裁記者会見
――2025年5月1日(木)午後3時30分から約65分
・ということで最初の質問は「関税政策の影響は」という順当なものですが
『(問)トランプ大統領の一連の関税政策について、現時点でどのように分析していらっしゃいますでしょうか。今回の決定会合の結果と展望レポートについて、関税政策がどう影響したか教えてください。』
順当である。
『(答)今回の展望レポートでは、最近の関税政策ですが、これは海外経済の減速、わが国企業の収益の減少、不確実性の高まりによる支出の先送りなどの経路を通じて、経済の下押し要因として作用すると評価しています。』
いきなりの出オチとしか言いようが無いですが、予断を持たずに判断という事を(ちょっと上の方で引用した展望レポートでは)言ってるのに、思いっきり予断をもって判断しておるわけです。まあこの時点で「シナリオを定性的に下振れさせている」訳ですが。
『ただその後は、海外経済が緩やかな成長経路に復していくことなどから、下押し圧力は次第に弱まっていくとみています。』
このような器用な見方をするよりも「今は良くわからないからベースラインシナリオを維持するけど今後の動向を見ながら考えます」の方が良いと思う訳でして、今回の日銀方式ですと、思ったより影響が大したことがなかった場合に下振れさせた見通しを再度上げるのが出遅れる可能性があるのもそうなんですが、「影響はいずれ無くなっていく」という見通しを置いていることによって、実は関税政策の影響がもっと持続的かつ構造的なものになったという場合に「今は弱いけどいずれ戻る」という看板を下ろすのが遅れてしまうリスク、ってのもあると思うのでして、あんまりこういう小賢しい見通しを出さない方が良いと思うのですよね、もっと見えてからで良かったと思うのですが。
『物価に対しては、成長ペースの鈍化などを通じて、押し下げ方向に作用をすると考えており、基調的な物価上昇率もいったん伸び悩む姿を想定していますが、』
グローバルな供給網の変化とかそっちの方は気にしないんですかそうですか(展望のリスクシナリオの中にはあったけど)。
『その後は徐々に高まっていくと予想しています。』
このような器用な見方以下同文。
『ただ、物価安定の目標と概ね整合的な水準で推移すると考えられる時期は、見通し期間の後半になる見込みです。』
こういう表現をしていますので、時期が1年先送りになっています。よって、
『こうした意味で、今回お示しした経済・物価の見通しは前回と比べて下振れていますが、見通し期間内に基調的な物価上昇率が物価安定の目標と整合的な水準まで高まるという姿は、これまでと変わっていないところでございます。』
ベースラインシナリオを下げているのに「これまでと変わっていない」っての訳わからんから勘弁して欲しいんですが、そうしておかないと円安にぶっ飛ぶから、って配慮は有るんだと思います。
『こうした中、今回の決定会合では、実質金利がきわめて低い水準にあることなどを踏まえ、現在の緩和的な金融環境を維持することで、引き続き、経済活動をしっかりとサポートしていくことが適当と判断しました。そのうえで、各国の通商政策等の今後の展開や、その影響を巡る不確実性がきわめて高い状況にあることも認識しております。』
でもって、
『この点を含め、経済・物価の見通しが実現していくかについては、今後とも予断を持たずに点検し、2%の物価安定の目標の持続的・安定的な実現という観点から、適切に政策を判断してまいりたいと考えています。』
特に現時点で明らかに出ているような経済指標も(たぶんアネクも)ないのにベースラインシナリオ下げている時点でお前ら「予断を持ってシナリオ変更」じゃろとしか申し上げようがないのだが、どこまで行っても今回ここでいきなりベースラインシナリオを下げるとかいうある種の蛮勇を振るった意味が分からんですな、というお話でした。
・これもよいそもそも論でまあこの辺りまでで論点はかなり出ている感じがw
会見の頭の辺りからクソ忙しくてヘッドラインしか追えなかったのでリアタイであんまり聞けてなかったのですが、これはよいそもそも論質問。
『(問)二問お願い致します。最初は、展望レポートの中で、持続的な安定的な物価、基調インフレが達成する見通し期間が後半ということで、展望レポートの見通し期間が1
年間延びた、その中での後半に物価安定の目標と概ね整合的な水準で基調物価が推移するということであれば、当然のことながら利上げのタイミングやペースもその分遅れるという判断でよろしいのでしょうか、という点が一点目です。』
そらそうだ。
『二点目は、金融政策の基本的な方針は利上げを続けるということだと思うんですけれども、これはすなわち賃金と物価の好循環等の基本的なメカニズムは維持されていると、ただそこを巡る不確実性が高いと、そういう理解でよろしいでしょうか。』
うんうん。
でもって回答ですが、
『(答)後半からお答えしますと、この見通しのまず成長率といいますか実質GDPの姿に示しましたように、関税政策の影響等を受けて、今年度と来年度、成長率が少し下振れするという姿をみています。その結果として、物価上昇率と賃金上昇率はやはりやや下振れするというふうに、あるいは伸び悩みの状態に入っていくというふうに考えています。ただ、その間もかなり深刻な労働者不足は続いているというようなこともあって、賃金と価格がお互いに相手を上昇させるという意味での好循環は継続していくというふうに考えています。もちろんどの程度の水準でそれが続いていくかという点については、見通しの姿のうえで、上下にリスクがあるということは認識しております。』
丁寧に説明したいのは分かるのだが、こういう説明をするから植田さんの会見はクソ長くなってしまう訳でして、こんなの「ご指摘の通りで、足踏みはするかもしれないが基本的なメカニズムが崩れたという認識をしている訳ではありません」って回答すればいいだけなんですよね。昔どこかの記事だかインタビューだか講演だか忘れたけど、共立女子大の先生やってる時に「講義がつまらない・わかりにくい」とか言われたと自嘲ネタを植田総裁ぶっこんでいましたけど、全然反省してねえだろとしか申し上げようがありません。
『そのうえで、それを前提にということですけれども、おっしゃいましたように、基調的物価上昇率が
2%に近いところに収束していくというタイミングは、見通し期間が延びてその後半ということですので、やや後ずれしているという姿になっています。』
はい後ずれ明言キタコレな訳でして、関税の影響がまだ全然わからんという状況なのに「予断を持って」思いっきり政策運営にかかわる物価目標達成時期の後ずれをしているんですよね。
『それが金融政策にどう影響するかということですけれども、これまでのように割と単調に基調的物価が
2%の上昇率に収束していくという姿から、いったんちょっと足踏みするようなところを経てまた上昇するという姿にやや修正していますので、その中のどこでその見通しの確度が高まったということを判断できるかというのは、なかなか難しい問題かなと思います。その辺、柔軟に考えて政策対応したいと思いますし、それから、先ほども強調させて頂いたと思いますが、中心的な見通し自身の確度が、これまでほどは高くないというふうに残念ながらみています。従って、例えば関税政策等について大きな動きがあるという場合には中心的な見通し自体も変わり得るし、それが将来の金融政策の動向にも影響を与えるというふうにみております。』
ワシもしつこいのだが「関税政策等について大きな動きがあるという場合には中心的な見通し自体も変わり得る」のに何で今回動きもない段階で中心的な見通しを変えたんだよとしか言いようが無い。
・・・・まあそれだけハトハトチキンの血が騒いでコケコッコーとなったんでしょうとしか思えませんが。
・よく考えたら財政とかは「決まったものだけ織り込んでいる」のに何で今回の関税は・・・・・・・
次の質問の前半ですが、
『(問)前回の 3 月会合で、総裁は米国の関税も含めて、4 月になればある程度みえてくるというふうに話しておられましたけれども、その結果として米国の関税政策というのは想定よりも悪かったというか、景気に対しては下押しかなり強かったと考えているのかという点と、その結果として、現時点でですね、経済と物価、オントラックというふうに言えるのでしょうか。(後半割愛)』
これに対する説明だが。
『(答)まず経済自体ですけれども、足元までは概ねオントラックできているというふうにみています。経済と物価ですね。ただし、おっしゃったように、懸念していた米国の関税政策が、特に
4 月 2 日の時点では、かなり悪い方に振れた。その後、若干の巻き戻しがあって、現在もうひとつ分からない状態になっているということ。その後、ある程度交渉の進展があるということは、見通しの中に織り込んでいますけれども、それでも無視できないレベルの関税が残るということを前提にした見通しになっています。その結果、見通しがやや下振れたという姿になっています。(後半割愛)』
は良いんですけど、展望レポートの作りとして毎回「各政策委員は、既に決定した政策を前提として、また、先行きの政策運営については、市場の織り込みを参考にして、見通しを作成している」としていて、財政政策とか、物価対策の各種措置とかそういうのは「最終決定するまで入れない」という仕切りになっていまして、だったら今回だって「関税が分からんからとりあえず無視して(あるいは10%の部分だけにして)出すけれどもより影響が大きくなる可能性はありその場合は見通しを変更します」と言って出す方が分かりやすかったと思うのですけど、ハトハトチキンがコケコッコーだから仕方ないですわな。
でもってこの人の次の人の質疑で「では関税の置きはいくらか」という話があったのですが、
『(問)総裁、冒頭のご説明で、この中心的な見通しを作るうえで各国間の交渉がある程度進展すると、関税についてですね、ということを前提に置いているというご説明がありましたけども、具体的には現在、日米の関税交渉が進行中でありますけども、相互関税の上乗せ分が今一時停止されてますが、それがかからない、発動されないということなのか。それともう一つ、自動車への関税っていうのもこれは撤廃されるという前提で想定して見通しを作ってるのか。各委員それぞれ前提が少しずつ変わると思うんですけど、総裁自身はどういった前提を置いて見通しを置いたのかをまず伺えないでしょうか。(後半割愛)』
それはその通りで、「置きを置いて見通しを作った」のであれば、その置き自体を見せてくれれば、実際の交渉の進展次第で日銀の今回の見通しが今後どっちに転ぶのか、というのが分かりやすくなるんですが、回答がこりゃまた摩訶不思議でして、
『(答)まず、関税に関する仮定ですけれども、おっしゃるように各委員、個別にそれぞれだと思いますけれども、私も含めて大まかな姿としては、これまでに議論されてきたものの中の一番極端なところにはいかない、それから全くゼロとか、10%だけで済むというよりはもう少し高いレベルに交渉の結果落ち着く程度の前提で、それぞれ具体的な姿は各委員に任されているというところでございます。(後半割愛)』
・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)
いやちょっと待て、展望レポートの説明だと「今回の展望レポートの中心的な見通しは、今後、各国間の交渉がある程度進展するほか、グローバルサプライチェーンが大きく毀損されるような状況は回避されることなどを前提に作成している。」けど「なお、今後の各国の政策の帰趨や、それを受けた各国の企業・家計の対応次第で、経済・物価の見通しが大きく変化しうる点には注意が必要である。」ってあるんだが、その前提がそもそも各委員でバラバラにばらけていたら置きの意味はどうなっているんだというお話ですがな。
関税率がこのくらいとした場合に、この程度の下押しが考えられます、のこの程度の下押し、という部分に関して各委員の評価が違って、その結果見解がバラけるというのは別に普通の話だから良いんですけど、その関税率がこのくらい、自体が全然バラバラの前提で置いてるんだったらそれ意味ねえだろというか、だったら最初から「関税は不確実なのであくまでも不確実要因」とかまあ何なら10%だけ入れておくとかの置きにしておいて今後の展開次第で6月の会合での見通し変更も視野に入れた方がええじゃろと思う訳なのでこの説明はナンジャソラとズッコケてしまいますな。
つまりですね、このちょっと先の質疑であったのですが、
『(問)今の質問にも関連する点で二点お願いします。一つは、これだけ読みにくい関税政策の影響、きわめて高い不確実性ですけれども、見極めに現時点でどの程度時間がかかるかという点において、例えば今
90 日間の関税の猶予期間というのをトランプ政権、設けてますけれども、これが
7 月の上旬に来ますけれども、例えばやはりその 90 日の期限が終わってある程度関税の中身が確定するまでは、なかなかこれは見極めにくいと現状でみていらっしゃるのかどうかという点が一つです。(後半割愛)』
というのがあったのですが、これには植田さん、
『(答)まず、関税政策について不確実性が大きく低下するのはいつ頃かというご質問だと思いますが、おっしゃるように
90 日間で交渉を米国政府としては終わらせたいという意向が表明されてますので、そこは一つのポイントになるとは思いますけれども、その手前でも、例えば現在の日米の交渉のように順次行われている交渉もありますし、90
日経ってもまだっていうところも残ると思いますので、そこは何とも言えないと思いますし、いったん大体これでいくというふうにセットされても多少の不確実性はまだ残るという、何とも断定のしにくい状態が続くかなと思います。それと余談になるかもしれないですが、関税の体系が決まっても、その経済への影響というところは、これまでにない規模の関税の発動ですので、なかなか不確実性は大きいということだと思います。(後半割愛)』
だったら今回はベースラインシナリオを維持して7月に下方修正必要なら下方修正して、もし6月の時点である程度アウトラインができたら出す、で良かったと思うのですが、結局どこまで行っても今回こんなにハトハトチキン音頭でコケコッコーとなる理由が分からんですな・・・・・・・・
・輪番に関しては「政策意図を輪番では使わない」ようでそれは大変に宜しいお話である
『(問)(前半割愛)もう一点、次回の 6 月会合で国債買入れの中間評価と 26
年度の減額計画を示すと思うんですけども、経済の減速のリスクを受けてですね、景気を支えるために買入れの減額ペースを緩めたり、あるいは減額を止めたりといったことは選択肢として取り得るのでしょうか。』
という質問に対しての回答ですが、
『(答)(前半割愛)そのうえでですが、国債の買いオペの中間評価に関わる部分ですけれども、これは以前から申し上げていますように、金融政策としての対応は短期金利の操作を中心に行うということで考えています。今回の中間評価は、債券市場、国債市場の市場動向、機能度をしっかり点検しつつ、26
年 4 月以降の姿も提示するということを基本線に行うということでございます。』
ということなので、基本的に政策ツールではない(もうYCCじゃないんだから)というのを明らかに説明しているのは中々結構だと思いました。さらに別の質問で、
『(問)(前半割愛)あと国債の買入れについてですけれども、次回会合で議論されるということですが、最近の超長期金利の動きだとか、債券市場全体のボラティリティだとかを受けてですね、もっと減速ペースを来年度ですね、26
年度に早めるべきだとか、いやそうじゃないという意見もいろいろありますよね。今、総裁、そういったことについてはどういうふうにお考えになってるんでしょうか。』
に対しては決め打ちは特に行わずに、
『(答)(前半割愛)それから国債の買入れについては、中間評価でこれまでの経験をレビューするわけですけれども、おっしゃった点を含めまして、市場参加者会合でのやり取りも含めて市場の機能度等について判断していきたいというふうに思っています。』
としていましたな。
・基調的物価とアクチュアルの物価に関しての指摘に対して
『(問)国内物価に関して二点伺います。一点目が海外が騒がしくなってちょっと霞んでしまってますけれども、国内のインフレは、年度ベースでみると日銀の見通し期間と同じスパンの
3 年間 2%を超すというか 3%台となってます。一方で、実質金利はきわめて低い水準で推移しておりまして、そうした情勢下で不確実性はきわめて高い局面に入りました。この局面での政策判断の考え方をちょっと改めて伺いたいなと。正常化のタイミングが遅れたある種のビハインド・ザ・カーブに陥っているのではないのか、現状の認識を伺えればと思います。(後半割愛)』
ということで、基調的物価を連呼するが現実の物価が延々と上振れているじゃないかという石直球な質問に対して植田さんの回答は、
『(答)消費者物価総合では 3%を超えるインフレ率が足元続いていまして、これは直ちに2[%]に下落するとか
2[%]を下回るという状況ではないわけですけれども、一方で、これも前から申し上げています通り、数字できっちりお示しすることができないのは、なかなか申し訳ありませんが、基調的物価上昇率は、2%をやや下回っているというふうにみています。』
数字できっちりお示しできないのでしたらそれはただの「お気持ち表明」ではないでしょうか、と言いたくなるわけで、展望レポートの背景説明の方なんかでも説明はあるのは分かっていますが、でも結局この2%行ってない云々って「お気持ち」じゃないのかと言いたくなる訳ですな。
『上昇してきてはいるけれども、2%まではある程度の距離があるというふうにみていたわけですが、従って金融緩和基調を、ここまで調整しながらも維持してきたということでございます。』
その調整が足りないからアクチュアルの物価が高止まりしているんじゃないか、ということには毎度毎度特殊要因ワンタイムエフェクトだから、で説明をしているのが現状ですわね。
『ちょっと先に行きますけれども、この基調的物価上昇率がどんどん急上昇してくるということになれば、場合によってはビハインド・ザ・カーブということだと思いますが、これまでのところゆっくりとした上昇できている、ということで、ビハインド・ザ・カーブではないというふうに考えてきましたし、』
それはビハインド・ザ・カーブじゃないとしたいから基調的物価が急上昇しないということにしているだけなのかもしれませんし、更に別のポイントとして、1989年に見られましたように、物価が反応する前に緩和的な金融環境が資産価格形成を歪めてしまってから物価がノコノコと上がりだす、ということもあり得るわけで、基調的物価一点張りで説明している(ように見える)スタンスって如何なものかとは思います。
『更に今回の見通しにありますように、少し先にいって、基調的物価の上昇には足踏みの可能性が出てきている、という中では、現在の金融緩和の程度を取りあえず、少なくとも今回の会合では維持するのが適当というふうに考えたところです。(後半割愛)』
だそうです。
・この質疑は中々でした
これに一種関連した質疑があったのが面白かったけど、
『(問)総裁、先ほどビハインド・ザ・カーブは否定されましたけれども、やはり現状をみてますと絶好の正常化のチャンスを逸してしまったんではないかっていうような感じにも受け取れております。』
からの、
『ゆっくりやってきた前提というのは先ほどお話あったように基調的物価上昇率が
2%に達してないってことですけれども、その基調的物価上昇率って非常にブラックボックス的な指標の前提っていうのは、おそらく賃金と物価の好循環があり得るという前提だったと思うんですが、』
と来まして、
『現実に起きていることはですね、2 年連続で非常に高い春闘の賃金上昇率が、賃上げがあったにもかかわらず、ほとんどの月で実質賃金がマイナスになってると。つまり現実に起きてることは、賃金と物価の悪循環が起きてるわけですけれども、そもそも植田総裁が追い求めていた賃金と物価の好循環というのは幻想だったんではないんでしょうか。』
イイシツモンダナー
でもって回答ですが、まあこれは引かれ者の小唄として鑑賞する物件ですな。
『(答)賃金と物価の好循環はある程度回っているというふうに、もちろん考えております。』
盗人モーモーしいとはこの事w
『ただ、やや誤算だったという意味では、去年の半ば過ぎから、食品価格の上昇が目立ってきた、これが以前に使っていた言葉で申し上げれば「第一の力」がまた出てきたような動きで、賃金がある程度上がっているにもかかわらず、実質賃金を抑えてきたという動きになっているということだと思います。』
第一の力だからしゃーなし理論で誤魔化すのかw
『それからもう一つ、好循環という意味では、まだかなと思いますのが、賃金が上がり続けていますし、今回の春闘も強いわけですけれども、財価格への波及はある程度進んでるわけですけれども、サービス価格のところへの波及がもう一つ思ったほどのところではないかな、というところを注意してみております。』
サービス価格がもっとあがるべきとな・・・・・
あと、なんかお前の感想を会見で大演説するなそういうのはチラシの裏にでも書いとけ、というような文字列があった(リアタイ視聴してないからイマイチよくわからんが)ような気がするんですが、巣に帰って寝てろって感じですな。