植田和男総裁(2024年度下期)

トップページに戻る


植田総裁発言目次に戻る
審議委員一覧に戻る

2024/12/20「12月会合後のハトハトチキン総裁会見で円安大進行」
2024/12/05「日経新聞の反応で日銀が困惑、と時事通信砲登場/決済に関する講演の出来が悪い件について」
2024/11/30「日経新聞インタビュー:利上げ路線は利上げ路線なんでしょうけれどもなんかモヤっとした記事ですな」
2024/11/26「名古屋金懇の会見、よくよく見たら米国のリスクを「上下アリ」に修正していましたね」
2024/11/22「パリ・ユーロフォーラムでの講演後質疑がまさかの市場ネタになっていましたがもともと12月以降はフリーハンドですがな」
2024/11/20「名古屋金懇総裁会見は先行きの利上げに特に示唆はしないのだがやる気もいまいちな感じではある」
2024/11/19「名古屋金懇での総裁講演は「丁寧にリスク要因を説明」というパターンで新情報なし」
2024/11/13「読者様から教わったので植田発言の原典を聞いてみたが日本の物価が2%行ってないから云々は明らかに不自然な蛇足」
2024/11/11「BISの気候関連の会議なんだが「財政によるインフレ圧力は対処可能」は発言として不用意」
2024/11/05「10月会合会見:政策は無風でしたがネタはいくつかある比較的面白会見でした」
2024/10/30「よくよく会見を見直したら時間的余裕とマーケット動向に「一応」をつけていてこれはトーン変更の予告ですかね」
2024/10/29「やはりG20後の会見でも「時間的余裕がある」発言を繰り返している植田総裁/G20会見を確認しましょう」
2024/10/25「謎発言は「米国経済の中期的な見通しが不透明」だから利上げを躊躇するという驚愕のハトハトチキン説明でした」
2024/10/24「G20参加中の植田総裁IMFのフォーラムで謎発言をしている模様(速報メモ)」
2024/10/21「信用組合大会での挨拶でメインの見通しとリスク要因の説明が同量って何考えてるんだか」

2024/12/20

お題「一大スペクタクル円安ショーとなった会見雑感とその背景について妄想してみましょう」

明日は我が身かもしれません
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-12-19/SOR232T0AFB400
ブラジルが記録的ドル売り介入、効果持続には疑問符−当局者に無力感
Martha Viotti Beck、Vinicius Andrade、Maria Eloisa Capurro、Leda Alvim
2024年12月20日 3:42 JST

→ブラジル中銀、80億ドルのドル売り入札−1日として過去最大規模
→債務懸念対応にルラ大統領は関心なし、資本流出止まらず

〇決定会合ですが何せ今回は総裁会見がエンターテイメントとしてはバチクソ面白かった件について(面白くない)

通常の決定会合レビューと順序を変えてお送りします。そらそうよという感じですが。

・円安ショーとしては大変に秀逸としか言いようのない総裁会見芸を遺憾なく発揮してくれました

昨日の為替市場ちゃんですが、MPMの結果が出た後って、円債の方は(前場は米国金利上昇を受けて下から始まったものの戻り基調で前場は当日の高値と言っても前日比はマイナスですが、そんな水準でしたけど)後場になっても「そらそうじゃろ」ということで横ばいから始まったのですが・・・・・・・・

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241219/k10014672371000.html
日銀 追加利上げ見送り受け 円安進む
2024年12月19日 12時10分

『19日の東京外国為替市場、日銀が金融政策決定会合で追加の利上げを見送ったことを受けて、円を売ってドルを買う動きが進み、円相場はおよそ1か月ぶりに一時1ドル=155円台まで値下がりしています。』(上記URL先より)

ということで、決定会合の結果出た後円安に思いっきり振れまして、まあ正直円債の中の人的に言えば「日銀が余程発狂しない限り利上げはせんの明らかなのに明らかな結果が出て何でこんなに動いとるんじゃ為替市場はゴリラの集まりか何かか」などとせせら笑っていたわけですな。

なおこのせせら笑いが実はアカンタレであったことが15時以降に判明するのですが・・・・・・・

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241219/k10014672641000.html
円相場 一時1ドル=157円台に 日銀 植田総裁の発言受け
2024年12月19日 18時54分

wwwwwwwwwwww

『日銀は19日までの2日間、金融政策決定会合を開き、追加の利上げを見送ることを決めました。これを受けて東京外国為替市場では、日本とアメリカの金利差が縮まりにくいという観測から、19日正午前に、円相場は1ドル=155円台まで値下がりしました。』(上記URL先より、以下同様)

というのはさっきのですが、

『さらに午後に開かれた会見で、植田総裁が今後の追加の利上げのタイミングについて、「来年の春闘に向けたモメンタム(勢い)など、今後の賃金の動向について、もう少し情報が必要だ」などと発言したことから、日銀が来月の会合でも利上げを見送るのではないかという見方が出るなどして、円安が一段と進み、午後6時前には、円相場は一時、1ドル=157円台まで値下がりしました。1ドル=157円台となるのは、ことし7月23日以来およそ5か月ぶりです。』

とまあ大変にお洒落なことになってしまいまして、

『市場関係者は「今月は追加利上げを見送っても、来月は利上げするのではないかとみる投資家も多かった。ただ植田総裁の発言を受けて、来月の追加利上げも見送られるのではないかという見方が急速に強まり、一段と円売りドル買いの動きが進んだ」と話しています。』

いやもう今回の総裁会見、円安ショーというエンターテイメントだと思いますとそらもうめちゃめちゃ面白くて、最初の方の質疑で「それを言ったら折角市場が1月利上げでコンセンサスできているのを叩き潰す」という「米国次期政権の政策ガー」を言い出したからそらもう大変、この発言出て(ちなみに幹事社質問への回答です)早速155円台後半というか80銭レベルまで行き、その後も「で何で今回利上げしなかったんですか」「今後何を見ていきたいんですか」というような質問に対して重ね重ねの勢いでバンバンと言ってることを額面通りに受け取れば1月に利上げできる判断にならない、なぜなら今後見極めていくことが「米国新政権の政策とその影響」や「春闘の全体像」とか言ってるんですからそらそうよという話でして・・・・・・

まず「米国新政権の政策とその影響」って言い出したらそんなのほぼ無限(トランプの任期中ずっと)見極める理由の言い訳に使える話ですし、「春闘の全体像」って話をしだすと、これ利上げするにしたって春闘は年に1回しかないんだからじゃあお前ら政策調整を年に1回しかしないつもりかという話になってしまう訳でして、まあこんな説明言われたら(しかも繰り返し)円安に飛んでくださいといってるようなもんでありまして、アタクシの手元のノートのメモだと会見開始後20分ちょい(手元には1553と書いてあるが気が付くの遅れている可能性あるので)で156円に乗って、開始30分後(1601と書いてある)には156円20銭近辺、開始45分後くらい(1617と書いてある)には156円60銭水準、ということで、総裁が説明するたびに円安飛ぶ飛ぶ炎と燃えてということで、大変に闘魂がこもったドル円市場の推移となりました。

会見後に海外ニキが本格的にお目ざめになって会見の内容を確認したんでしょうか、その後上記ニュースにあるように夕方遅くには157円に乗りまして、今朝は米国要因でさらに円安加速しておりますわな。

https://jp.reuters.com/markets/quote/USDJPY=X/
US Dollar / Japanese Yen FX Spot Rate
USDJPY=X
直近の取引  157.41 JPY
変化 2.59
変化% +1.68%
2024年12月20日の時点。値は少なくとも15分遅れで表示しています

いやーこれは円安ショーとしては4月決定会合以来の見事なショーでしたが、前回の時は例の「為替は基調的な物価に影響ありません」一発でしたけれども、今回のエンタメとして秀逸だったのは、冒頭から植田総裁の発言が円安煽りモードになっている上に総裁が円安に飛ぶキーワードを何度も畳みかけるという息もつかさぬ円安芸を披露してくれたことでして、リアタイで日銀よつべチャンネル見ながら為替と債券先物の値段見てて笑い死にそうになりました(笑えないけど)。

ちなみに日銀よつべチャンネルですが、会見スタート時は同接2000ちょっとだったのですけど、会見が飛んでもない円安ショーの様相を呈してきまして、ふと16時過ぎに見たら同接5000近く(手元のメモでは1608同接4980とあります)に爆増しておりまして、如何に今回の円安ショーがショーとしては秀逸なものであったか、ということが見て取れると思います、アイヤー。


〇何で1月利上げのコンセンサスを叩き潰して円安を盛大に煽ったのかについて愚考してみる

ということでこういうのは3つくらい並べると頭がよさそうに見える、ってばあちゃんが言ってたので3つの可能性ということで申し上げるわけですがwww

可能性その1:円安上等高圧経済ヒャッハーのスタンスであって政策調整とかクソくらえモード

まあ何ですな、植田さんだって何度も説明していたし、ちゃんと想定問答集見ながら説明していましたので、そもそも論として今回の説明ってのは大本営謹製の想定問答に沿った説明で、植田さんがうっかり失言とかいうレベル(4月のはどっちかと言えば「言っちまった」感じのポロリ系の要素が強かったように見えますが、今回のは明らかに「こう説明します」という意図が十分に感じられる大スペクタクルハトハトチキンショーにしか見えませんでした)ではないのは明らかです。

でですね、折角市場が1月利上げのコンセンサスとなっていて、ただまあ12月やらないにして1月利上げに関してやれ米国新政権だの不確実性だの言い出してしまうと、1月やらないのではの疑念が出るよね、って少なくとも円債市場ちゃんでは思ってた訳ですよ。だって12月と1月の間に何か新しいネタがあるかっていうと春闘に関しての頭出しと支店長会議でのアネクドータルな情報ってくらいになりますから。

ということですから、今回って利上げ見送りになるにしても、あんまり米国新政権ガーとかいうのではなくて「状況は進展しているもののタイミングは今日ではない」みたいな感じで含みを持たせる(その点、今回って田村委員が利上げ提案という勇気溢れる行動に出たので、その利上げ提案をうまいこと使う手もあったのですが会見では綺麗にその逆をしていました)という感じで会見をしないと、1月利上げ見送るんじゃネーノという話になって、コンセンサスビューが動いてしまうので、そらまあ為替に影響滅茶苦茶するわな、というのはまあ普通は分かる話な訳ですよね。しかも米国が(ワイ的には別にこんなもんじゃろと思ったけど米国市場的には)ホーキッシュ利下げをしたのもあるんだし。

・・・・・・とまあそういうわけですので、わざわざ1月利上げを確信犯で叩き潰しに行くような情報発信をしているのは、円安上等なんなら高圧経済じゃヒャッハー、と突然アベノミクスの亡霊が日銀によみがえったとでも考えないと説明がつきませんわ、というのがその1ですな。


その2:円安にぶっ飛ばして1月利上げの機運を煽るという驚異のスーイサイドアタック

実は日銀ちゃん、本当は早期の緩和調整をしたいんだけど、今の状況だと政治方面とか政府方面とかがイマイチ利上げOKで盛り上がってくれないので、今回驚異の円安自爆特攻を図ることによって円安を煽り、その結果「日銀様おねげえです利上げしてくだせえ」と盛り上がらん連中に火を点けて1月利上げに持っていこう、という作戦。

・・・・あのーすいませんその自爆ってこっち散々巻き込まれるんで(最近になって生活価格の一段の上昇を実感している第二種兼業主夫としてはマジ切実)勘弁してくれませんかというかそういうヤケクソ特攻するのは如何なものかと思いますが、まあ確かに「物価高は怪しからん」とか言いながら「高圧経済」とか言っている度し難い馬鹿が国会方面にゴロゴロ転がっているので、この馬鹿どもにてめえらの言ってることの愚劣さを知らしめるというのも致しかたないのかもしれませんな、あっはっは。


その3:そもそもこの受け答えをすると利上げ観測の後退から円安にぶっ飛ぶという認識が無かった

とまあそういう訳で、その1その2は前提として「日銀はちゃんとわかってて今回市場のコンセンサスビューと思われる1月利上げ観測を叩き壊しに行っている」ということから話が入っていますが、その3というのはこれはもういわゆる一つの「ハンロンの剃刀」でございます(ご存じない方は調べて味噌)wwwwwwwwwww

なんせ大本営ちゃん、11月末の日経新聞総裁インタビューであんな両論併記発言を総裁にさせたら市場は「見たいものを見る」んだから12月利上げビューでヒャッハーやってる人たちがヒャッハーしてしまうので、(ウソか真かしらんけどその後のお気持ち駄々洩れ報道による推測では)12月利上げ観測を鎮静化させようとしてあのインタビューを組んだ、という時点で、まあ市場に対する発言などの出し方を分かっていないというか下手糞の極みである、という疑惑が思いっきり湧いて出てくるのですな。

ということはですよ、実は今回の会見も別に円安を煽るような意図は無かった、という大変に斜め上の事故事案、という可能性もあるわけですな恐ろしいことにwwwwwwwwww

まあこの3つのうちのどれか、という事になろうかとは思うのですが、アタクシ正直その3である可能性が一番高かろうと思っているのですけどqqqqq、さてどうなるんでしょうか・・・・・・・


〇来週の経団連での総裁講演がやたら重要になってまいりました!!!!!

まあそんなわけで、上記3つの可能性に関しまして、もし「その3」の「ああいう説明をしたら市場は円安にかっ飛ぶ」(しかもただでなくさえ12月末とかいう時期で市場に残っている投機筋って手負いのヒグマみたいなのしか居ないというヤバい時期なので市場が飛びだすと大変なことになりやすい時間帯ですわな)というのを分からんで無邪気に地雷原でブレイクダンスを踊りまくり、といった場合ですと、来週25日水曜に行われる年末恒例の経団連での講演で慌てて1月利上げあるで音頭を踊りだすことになりますわな。

でまあそうじゃなくて今回の会見と同じく「米国新政権の政策の動向ガー」とか言ってるようですと、来週はもう160円どころかこの前の安値の162円台も抜きに行くという大変に素敵な年末年始を送ることになっても不思議ではない、というどうしてこうなったという可能性が出てくる訳ですな。

という訳で、来週水曜日の経団連講演はワシの妄想のどれが(さっきも申し上げましたがワシは「日銀はこうなると思わないで想定問答作って今頃真っ青になっている」説w)正解だったのか、というのの一部の答え合わせができるかと存じますので、年内無風とか言ってる場合じゃなくなってしまいましてこれはもう来週の相場も目が離せない(というかそもそも今日の相場が目が離せないのですがw)ということになってまいりました、おそロシア・・・・・


まあしかしアレです、今の時点で1月利上げ観測が完全に死んだのかと言えば逆に「円安飛んで1月泣きながら(特攻スキームだったら泣いてるふりして腹の中ではニッコリしながら)利上げに追い込まれるから結局1月利上げじゃろ」という読み筋もかなり有力なので別に1月利上げ観測は死んではいないですし、なんなら円安飛んだら益々1月利上げが現実味を帯びてくるというのが面白パズルなんですけど、まあそれはそれとしまして来週の経団連講演でいきなりタカ転したらコミュ障ここに極まれりということで、それはそれで抱腹絶倒のコミュニケーション芸をお見せした1か月、ということになりますな、はーやだやだ。


〇という事で雑談ばっかりになってしまいましたので備忘めもだけ

・声明文は基本変わらずだが「政策金利の調整」文言わざわざ削らんでもええじゃろ

今回の声明文、先行きの金融政策のところでクソくだらない事を書いたから肝心の「見通し通りなら政策金利の調整」が抜けててナンジャソラと思ったら、そこは総裁会見の冒頭の説明(事実上のオープニングリマーク)のところで発言していたので安心しましたが、重要文言抜くんじゃねえよと思いました。

・田村委員の利上げ提案

感動した!!!

・多角的レビュー

声明文の方でも「効果と副作用の分析をしたのでそれを生かして」みたいなことを書いてあったのだが、あのとんでもない大規模緩和政策の副作用は「出口」の時に顕在化するものであって、現状って出口の入り口のあたりでああでもないこうでもない米国新政権ガーとか言ってる状態であって、その時点で副作用はこうでしたとかいうのは馬鹿にしとるのかとしか申し上げようがない。

・でもって今日は年内最後の3か月TDB入札なんですが・・・・・・

まあもともと短国の金利水準自体がクッソ低いので実はそこまで影響しないのかもしれませんがさてどうなるんでしょうかね

ということで今朝は勘弁してつかあさい






2024/12/05

〇時事通信砲キタコレですが結局日経インタビューは何だったのかと小一時間

とはいえ時事通信さんの方は時事メインの「金融観測」記事なのでネット版というものは多分ない(探し方が下手くそなのかもしれないけど)ので残念ながら記事内容をネットから引用とはいかないのですが。

https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/AMYRR7E4JFKSLCLE43BM7EABWI-2024-12-04/
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は大幅続伸、日銀利上げ観測後退 中長期債主導で金利低下
By ロイター編集
2024年12月4日午後 3:33 GMT+9

ちなみにクソどうでも良いですが、某ブルームバーグさんは昨日の市況解説の中で時事通信のニュースというのを頑なに書いていなくて「12月利上げ観測が一部で後退」としていてくやしいのうくやしいのう(日経のインタビューの両論併記のうちホーキッシュな方を思いっきりクローズアップしていましたからねえ・・・・)という感じでございましたがそれはそうとしまして、

『[東京 4日 ロイター] - <15:15> 国債先物は大幅続伸、日銀利上げ観測後退 中長期債主導で金利低下 

国債先物中心限月12月限は、前営業日比29銭高の143円16銭と大幅続伸して取引を終えた。日銀の早期利上げ観測が後退し、金利は中長期ゾーン主導で低下。新発10年国債利回り(長期金利)は同2.5ベーシスポイント(bp)低下の1.050%。』(上記URL先より、以下同様)

とまあそういうことでして、

『先物相場は午後に入って一段高。時事通信とMNI(マーケットニュース・インターナショナル)から相次いで、日銀の早期利上げをやや慎重視する記事が日本語と英語で伝わったことが材料となり、国債買いの動きに勢いがついた。』

ということで、実際には時事通信の「金融観測」コラムは9時半くらいに出ていたと思うのですが、当然の如く日本語ですし、内容も(日本語使いじゃないひとだと)読むのにお時間かかるでしょうから、なんかまあ伝わるのにお時間かかった模様で後場になって思い出したかのように激強相場になったという有様でした。

でまあ時事さんの金融観測コラムはそういう訳で勝手に引用ってのもアレでございますが、かいつまんで申し上げると(というか後日のワシの備忘用に書いておくと)「日経新聞の植田総裁インタビューで12月利上げ観測が盛り上がったことに関して日銀の中の人たちにおいては困惑を隠せない向きが多いようです」「インタビューを素直に読むと利上げを急いでいるようには見えませんよね」というようなお話でして、中の人云々は取材結果だと思いますが、インタビューを素直に読んだ場合のお話ってのはまあ両論併記なんだからどっちに力点置くかって話なんですが、先日申し上げたように「トランプ政権の経済政策ガー」とか言い出すと実はかなりの先まで利上げを躊躇できるという罠のあるトラップ文言ではありますので、後はチキン日銀の腹の据わり方次第、というお話になろうかと思うのよね。

でまあそんなこんなで12月利上げ観測の火消し入りました(MNIの方は何かこれまた会員記事なのでよー分からんかったが円安対応云々とかこの辺りの水準では関係ねーよみたいな記事だったようですね)という事ですが、まあ少なくとも取材の結果「中の人が12月利上げに困惑」なのはわかったという前提でお話を進めましょうです。


えーっとですな、12月利上げ観測を煽る気が無かったんだったらそもそも何であの両論併記インタビューを実施したんだというお話でありまして、ああいうインタビューをしたら市場は「見たいものを見る」んだし、だいたいからしてついちょっと前の名古屋金懇で「この先いつでもライブよ〜」っていう感じの情報発信によってハトハト音頭のトーンを下げていた訳ですから、なんもあのタイミングで日経のインタビューをやって、しかも両論併記するってのは市場に対するコミュニケーションとして下策というのにも値しないアホの所業で、いつまでたってもマーケットセンスが無いわ日銀って、っていうお話でございます。

でまあ市場だって12月やるかもしれないしやらないかもしれない、って感じで構えている中だったのですから、なんも余計なこと言わないでそのまま決定会合を迎えれば無問題だったのに、結局日銀が市場を煽って火消するマッチポンプを実施して市場に余計なボラティリティを与えただけ、というクッソしょうもない対応をした結果になりまして、振り回された市場の中の人たちからはナンジャコラですし、さらにあの日経インタビューで思いっきり「これは12月利上げですわ」とぶっこんだ結構多くの何とかストの皆様におかれましては面目丸つぶれにも程があるわけでして、市場に喧嘩売ってどうするんだと思うのですが、これがまた日銀の悲しいところは本人たち市場に喧嘩を売るつもりで日経のインタビューを実施したとは到底思えないところでして、これがまあわざとやって12月利上げした時の円高に対する糊代つくりでもしているんだったら面白いんですけど、良かれと思って日経インタビューやった結果、市場が日銀の思う反応を示さなかった(まあワイから言わせてもらえば当然の反応を示したんですけどwww)ので困惑とかおじいちゃん情けなくて涙が止まらないですな、ナムナム。


とまあそういう訳ですので、12月やるにしてもやらないにしてもこれはまあその時の説明(引かれ者の小唄とも言う)がどのようになるのか、というのがクッソ楽しみになってまいりました、というお話でありますが、7月利上げの時にコミュニケーション不足って言われたと思ったら今回は余計なコミュニケーションをぶちこんでしまうというのがもう日銀らしくて素敵ではあります(全然褒めてない)ということで。


〇決済に関しての植田さんの講演は色んな事を織り込もうとして話が雑になっている気がするんだが

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2024/data/ko241204a1.pdf
決済の未来と中央銀行の役割
(FISC創立40周年記念講演会)
日本銀行総裁 植田 和男

『2.決済システムの発展とデジタル技術 』ってところの最初の小見出しに、『(マネーの本質-利用者の信認の維持-) 』ってのがあるのですけど、

・別にアゲンストペイメントは必須じゃねえだろ

『まずは決済に用いられる貨幣について考えてみます。図1は、よく用いられる物々交換の不便さ、貨幣の重要さを表したものです。いわゆる欲求の二重の一致が成立しない状態となっており、物々交換はうまくいきません。しかし、皆が信頼する貨幣があれば、物の動きと反対方向に貨幣が動くことによって、交換が成立することは容易にわかります。』

なのは良いんですけど、

『また、この取引では、物と貨幣の引き渡しが同時に行われており、いわゆる DVP(Delivery Versus Payment)が成立していることも重要です。』

いや世の中信用売り(掛け売り)は普通に行われてるじゃろ。

『物やサービス(あるいは資産)の売り手が、売却代金を回収できるか、逆に買い手が代金を払ったにもかかわらず、物やサービスを受け取り損ねることがないかどうかは、決済における最も重要な要素の一つです。』

そらそうなんだが、そこにDVPが必須というのは意味が分からん。まあこの後に続く「決済システムのデジタル化とその技術の進歩」という文脈でDVPの話をマクラにしたかったんだろうなあ、とは思うのですけれども、何ぼ何でも「DVPの成立」をクローズアップすることは無いというか説明が雑だと思う。

・色々なことを織り込みたいのは分かるが話の進ませ方が全般的に雑

でもってこの次に続くのが、

『マネーにとっては信認が命ですが、偽造対策は先人たちの頭を悩ませ続けたようです。』

となっていまして、いやまあ短い挨拶の中にいろいろな要素を詰め込みたかったんでしょうけれども、何でそこでこういう話の飛ばし方をしているのか、と思うのですよね。以下は偽造対策の話になっているのですが、そこでも・・・・・

『江戸時代の日本では、藩や商人によって盛んに紙幣が発行されましたが、現在のマイクロ文字と同様に細かい文字を模様のなかに入れるといった工夫や透かしなどの偽札対策を講じながら、17 世紀から明治初頭まで、約 260 年にわたり流通しました(図2)。今では、発行者が金属との交換を約束しない紙幣(不換紙幣)が流通しており、多くの国で中央銀行が最先端の偽造対策を講じながら紙幣(中央銀行券)を発行しています。』

偽造対策の話と中央銀行発行通貨の兌換性は全く別次元の話で、偽造対策の説明の中で兌換紙幣と不換紙幣の話を入れ込むのは意味が分からん。

『因みに、わが国では、最近は 20 年に一度、改刷を行っていますので、FISC が創立された40 年前は、ちょうど前々回の改刷の年にあたります。今回の改刷でも新たな偽造対策が施されています。』

まあ改刷の話はいいんですけど、というか偽造対策の話をしたいんだったらこの20年に1回実施する改刷の話をもうちょっと詳しく説明した方が身になると思うのですけど、次の段落に行くとまた話が飛ぶのよこれがまた。


・マクラにしてはちょっと話が飛び過ぎですw

この直後がこの話である。

『もちろん、偽造対策だけでマネーに対する信認を確保できるわけではありません。貨幣に関する歴史の教えるところでもありますが、信認維持の最大のポイントは貨幣価値を安定的に保つことです。』

また話がワープしたとおもったら、

『これを裏から指摘したのが、ハイエクの「貨幣発行自由化論」です。これは民間の銀行に自由に貨幣を発行させれば、競争を通じて結局価値の安定した良いものが残っていくだろうという考え方です。』

ということでなんですかこの話の飛び方は、と言いますとその次が、

『現在ではデジタル技術の予想を超える発展によって、マネー間の競争に、新しい技術を体現した使い勝手の良さ、安全性に配慮したうえでの効率性が、本質的な軸として加わっています。この点に関する全体像を提供することはとても無理ですが、今後の展開を考える際の留意点を、今日はいくつかお話しできればと思います。』

という結局はまあデジタル技術の高まりによってどうのこうのというお題になるのですが、いろんなことを織り込みたいのは分かるんだが、断片的に織り込んだ結果何の話をしているんだという出来上がりになっておりまして、ちょっとこれはどうなのかと思いました。

ちなみにこの次ですけれども・・・・・・


・信用創造に関する話ってマネーの話をするなら重要なんだけどなあ

『先に進む前に、もう一度図1に戻りましょう。物の交換が貨幣を媒介に可能になると言いましたが、実は貨幣を使わなくても似たようなことは可能です。細かい点は省きますが、帳簿付けによる方法です。』

これまあ相手が専門家でしょうから良いんですけど、実物貨幣の話と「通貨」の話が混同されやすいので、もうちょっとちゃんと「実物の貨幣」って言うべきだと思うんですよね。

『物が A さんから B さんに渡ったら、帳簿上 A さんの「資産」を増やし、B さんのそれを減らすという操作をし、これを繰り返していくだけです。貨幣による交換と似ていますが、物理的に貨幣が移動する必要がありません。』

でまあこれがいわゆる銀行の信用創造機能を介したマネー供給の二重構造の話の方に進むのかと思いきや、

『ただし、帳簿付けに対する信頼がないといけません。B さんから A さんへの支払い指図が帳簿係に正しく伝わること(メッセージング)が必要です。参加者が増え、帳簿が分断化、複雑化していくと、誰かがそれをちゃんと管理して、同期をとることも必要になります。取引が増えていくと、中間段階である程度の期間の取引を集計し、差額だけを資産変化に反映させる仕組み(ネッティング)も利用されたりします。』

うーん何でそっちの話に行くのよ、と思うのですが、これは次の段落を見ますと、

『現在の決済は、以上のような帳簿付けに関する技術が格段に進歩し、効率性が向上しつつあるところですが、それに伴って、安全性に対する以前とは異なった観点からの配慮も必要になってきています。また、新技術を体現した決済方法間の競争も激しさを増しています。』

となって、次の小見出し『(デジタル技術の発展と決済システムの改善) 』という各論部分に進むので、要はそっちの話をするためのマクラなのですが、この総論っぽい部分の説明のどこがどう雑かと言われると結構めんどいのですが、なんかまあ雑だよね、と思うのですね。

まあマネーの話ではなくて、単純に決済システム技術の話をしようとしていたんでしょうね、というのは以下のところで何となく想像は付くのですけれども、だったらマネー供給の話を混ぜない方が良いというか混ぜるな危険の世界だと思うのですよね。しかもですね・・・・・


・いきなりマネー供給の二重構造の話をするのかよ〜と思いました

『4.決済システムの未来を考える視点』という所に飛びますと、最初の小見出しが『(伝統的な決済システムの利点と課題)』ってあるんですが、そこではいきなり、

『決済システムの未来を考えるために、中央銀行預金、民間銀行預金の二層構造に、ノンバンクによる決済が加わる世界における分業の在り方に関する一つの視点を提供してみましょう。』

いきなり何の断りもなくこの話をおっぱじめるのって、いやまあ相手が専門家だから二層構造のことくらい分かっているってのはあると思うのですが、何ぼ何でもさっきのマクラ部分と比較して話がワープしてないですかね、と思うのですよ。

以下、

『出発点として、伝統的な決済システムの利点と課題について考えてみます。現在の決済システムで大きな役割を果たしているのは、銀行の預金通貨です。預金通貨には、信用創造機能があります。』

事前説明なくこの話持ってくるのかよ。

『銀行が貸出を行うことにより支払手段である預金を創出できますので、大口の資金決済に伴い必要となる顧客の流動性需要(入金に先行して支払いが発生する場合などにおける一時的な資金需要)に柔軟に対応することが容易になります。』

『電子マネーやステーブルコインの場合、支払代金を用意しておくこと(プレファンド)が必要となるため、大口決済になると負担が大きくなります。』

『預金通貨を用いる決済システムは、特に大口決済で効果を発揮します。一方、小口決済の分野では、予め支払代金を用意しておく負担が大口決済ほど大きくありませんので、ユーザーにとっての手続きの簡便さなどのユーザーエクスペリエンスが重視される傾向があります。こうした点で便利なノンバンク決済サービスは利用拡大のチャンスがあります。』

うーんこの、という感じでして、まあ話をしたい趣旨は分かるのですが、この切り口も本当にそれだけなのか、という疑問が大有りな訳ですし、まあ何ちゅうかこの植田さんの講演テキスト、全般的に作りこみが荒いというか粗いというかって感じを受けたので、突如ツッコミを入れてみたくなりましたという事です。






2024/11/30

お題「植田総裁の日経インタビュー:まあ利上げ路線は利上げ路線なんでしょうけどねえ・・・・」

ということでおはようございます土曜の朝(というか電子版は土曜の未明なんですね)にこういうの載せられますと新聞買いに走らないといけないですかwwwwww

〇日経インタビューですが本紙を買って読んでは見ましたので少々

とは言いましてもこちら基本的に有料記事ばっかりなのでそのあたりのことはほんわかとしか書けませんのと、日経本紙買って我憤怒したのは「一問一答を電子版に」ってあって駅売り課金人間には読ませない、という日経の根性が伝わってきたことで朝から血圧が上がるわけですがなこの記事読むだけのために200円も課金したんだぞ200円も(憤怒)。てかしばらく前に日経が総裁インタビューしたときには本紙に一問一答あったような記憶があるんだが(いやあれは読売だったかな)。

・・・・てな話はさておきまして、日経ちゃんの記事の無料部分だけ拾ってみますと、

・まずは日経電子版無課金おじさんでも読めるところから参ります

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB28D410Y4A121C2000000/
植田日銀総裁、利上げ「賃金・米国見極め」 データ想定通り
植田和男・日銀総裁インタビュー
2024年11月30日 2:00 [有料会員限定記事]

ということで電子版は夜中の2時に出る、ということでもはや紙媒体ってなんのためにあるの(スクラップするとか一覧できる以外にメリット無いじゃん)というお話ですし200円ですよ200円(しつこい)。

『日銀の植田和男総裁は日本経済新聞のインタビューで、追加利上げの時期について「データがオントラック(想定通り)に推移しているという意味では近づいているといえる」と述べた。市場では12月か2025年1月の金融政策決定会合で日銀が利上げするとの観測が浮かぶ。植田総裁は国内賃金と米国経済を見極めたいとも主張し、拙速な利上げは避ける考えを強調した。

インタビューは28日に実施した。日銀が追加利上げを決断す』(上記URL先より、以下有料会員記事)

とまあそういうのがあって、さすがに日経1面の見出しくらいは書いても罰が当たらんと思うので見出しを見ますと、本紙(ワシが200円はたいて査収したのは「12版」です)の1面トップ記事がこちらの植田総裁インタビューで、このサイズは何段抜きというのかわかりませんが、まあ一般的な1面トップの表題サイズで『利上げ・「賃金・米国見極め」』となっています。電子版しか契約していない人(という契約方式があるのかは知らんけど)は200円握って駅なりコンビニなりにどうぞ。

でまあ見出しがあって、その横に『経済データ「想定通り」』ともあって、本紙の方でも1面では上記URL先と同様な感じでして『植田総裁は追加利上げが近いと示唆しつつも、拙速な判断を避ける姿勢を強調した』(こちらは11月30日日経新聞朝刊本紙1面トップ記事の本文第4段落目になります)という記載になっていまして、電子版とは文章構成が違いますが、同じような紹介になっていますな。


でまあ電子版の上記の記事の関連記事で、
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB28DE90Y4A121C2000000/
日銀総裁「一段の円安、リスク大きい」 政策変更で対応も
金融政策
2024年11月30日 2:00 [会員限定記事]

ってのがありますが、こちらが日経本紙だと3面に「関連記事」として解説記事がありまして、見出しが同様になっている(表題の構成はちょっと違うけど中身は同じ)という感じです。

『金融正常化を進める日銀が10年超続いた異次元緩和の副作用に向き合っている。植田和男総裁は日本経済新聞の取材で「一段の円安はリスクが大きい」との認識を示した。場合によっては政策変更で「対応しないといけなくなる」と強調した。円安圧力はくすぶり続けており、日銀は経済の不確実性と両にらみの対応を迫られる。』(上記URL先より)

ということで出てきたのはいいんですけどね・・・・・・・


・市場がデータ見ながらいろいろ考えているんだから勝手に考えさせておけばいんですけどねえ

そもそも論としてこれから米国の雇用統計もでるんだし、日銀短観というインフレ定着の度合いを測る大事な指標もあるんだし、インタビュー28日に行われていたということですが、それこそ29日の昨日は東京都区部CPIがバチクソ強い、というのもあったわけで、まだまだ重要なデータや情報が出てくるわけですよ次の決定会合までには(その次は年末跨ぐけど春闘とトランプですよね)。

植田さん、名古屋金懇でこう言いましたよね。

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2024/kk241119a.pdf

『(答)アメリカ経済を含めまして不確実な点とか、あるいは今後変動がいろいろ予想されるというような、変動を確かめたいというような点は、ある意味無数にありまして、それを全部待ってて、それから政策をするということではなくて、毎回の金融政策決定会合で、そこまでに入ってきましたデータ、それからその他の情報ですね、これを毎回毎回点検し、それに対応して適切な政策を行っていくという、これまでの基本姿勢に現在でも変わりはございませんとお答え致します。』(直上URL先11/18名古屋金懇での会見より)

って言ってるんだから、その話とインタビューでの米国経済分からん発言(まあもちろん本紙見ればそういうこと言ってるのは分かるのですがBBGの記事の方にあるので後で貼りますね)とかしているのは、やる気がないですという話にも見えますし、一方で円安はリスクとかいってるのもこれまた「会合までのデータや情報を見ていって判断」という話との間に妙な違和感というか、事前決め打ち感のある話になっているように見えてしまう訳で、何でこんなインタビューするんだよと思う訳ですな。


アタクシこの前の名古屋金懇って「余計な事前決め打ちはしない」、「とは言いましても仔細に読むと判断が前進しているという現状認識は示しているには示している」という感じになっていて、あとはお前ら市場が考えろ、そもそも政策はその時々で適切なものを行うんだし経済は生き物なんだからそんなに事前決め打ちできないから予告ホームランはせんわ、というスタンスになった点に関しては、過去との整合性という点ではナンジャソラとは思いますけど、ただまあ毎度毎度予告ホームランをして政策をする方がそもそも論としておかしい、という原理原則に立ち返ったという意味では評価に値すると思ってた訳ですな(なので最初見たときは何でこんなのするんだと書いたけど途中で少しトーンを変えましたw)。

然るに、なんですかこの余計なコミュニケーションは、って話でして、これ毎度の両論併記になっているから、市場はみたいものの方を見て反応しちゃうし、見たいものの方を見て反応した市場が両論のもう片方を結果として出されて「私言いましたよね」となると激怒激怒大激怒になる、って話ですからして、じゃあこんなインタビューやるなよな、ってなもんでございます、というのは個人の感想ですけれども。

とまあそんな訳でBBGさんが日経インタビュー記事をご紹介している記事を出しているので尻馬に乗ってみる。

・両論併記の弊害なんだが「市場は見たい方しか見ない」ってのまだ気が付かないのかね日銀は

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-11-29/SNNGT7T0AFB400
植田日銀総裁、一段の円安はリスク大きいとの認識示す−日経
伊藤純夫
2024年11月30日 2:12 JST 更新日時 2024年11月30日 4:04 JST

→円安進行なら場合によって政策変更で対応が必要になるとの見解
→データが想定通りに推移、その意味で利上げは近づいている−総裁

ということで、ヘッドラインと最初のリード部分は植田さんインタビュー両論併記の片方にバイアス掛かって報道されちゃっていますよね。まあそうなるのは致し方ない面がある。

『日本銀行の植田和男総裁は、一段の円安はリスクが大きいと指摘し、場合によっては政策変更で対応しないといけなくなるとの見解を示した。日本経済新聞が30日、インタビューでの発言を電子版で報じた。』(上記URL先より、以下同様)

とまあそういうことで思いっきりこういうご紹介なのですが、ブルームバーグさんそこまで書いていないのでアレなんですが、この「一段の円安」に関して日経本紙の方でも(というか無課金なので一問一答見れませんけど)『インフレ率が2%を超え始めているときに』(11月30日日経朝刊総合2面(3面)の記事より)というのが入っていて、一問一答見てないからどういう文脈で言ってるのか謎なんですが、いやお前アクチュアルの物価2%ずっと超えてるだろそれで円安進行がリスクとか何を今さら祐天寺って感じですが、とりあえず朝刊本紙総合2面(=3面)のトップにもデカデカと横に『「一段の円安、リスク大きい」』と出しておりまして、まあBBGさんも(為替市場も)これに反応したって感じですわな。

でまあBBGさんの記事の続きですけど、

『植田総裁は同インタビューで「経済データがオントラック(想定通り)に推移している」と発言。12月の利上げへの明確な支持は示さず、次の利上げのタイミングが近づいているとの認識を示した。その上で、「米国の経済政策の先行きがどうなるか、大きなクエスチョンマークがある」としたほか、賃金動向とその価格への転嫁も慎重に見極めて追加利上げの是非を判断する姿勢を示したと、日経は伝えている。』

ということで、この「米国の経済政策の先行きがどうなるか、大きなクエスチョンマークがある」っての「日経は伝えている」とあるように、日経本紙の方でも記載されていまして、これ言い出すと結局無限に利上げを引っ張れるという事になるので、その意味では飛んでもない逃げ道の用意もしているというインタビュー。

でまあ足元ってBBGさんがこういう記事にしていますけど、昨日の東京都区部CPIが割と飛んでもない強さ(総合は2か月連続で季節調整後前月比+0.5%、コアの前月比は+0.4%→+0.5%と絶賛加速)になっているのを見て、為替市場ちゃんって円高にきっちり振れていて、一方で円債ちゃんは(インデックス長期化とかの影響もあると思うけど)円高を見て金利低下とかいうお茶目なプレイになっているのですが、まあそういう為替市場様の風潮があるだけに、そらまあBBGさん「円安はリスク」を前面に出す罠と思いました。その方がウケるでしょうからぬー。

『ニューヨーク時間29日の外国為替市場では、総裁の発言が伝わった直後に円が対ドルで上げ幅を拡大し、149円90銭台を付けた。いったん150円台に戻した後、上げ幅をさらに拡大して日中としては10月21日以来の高値となる149円47銭まで円高が進んだ。』

ということで、まあ何のためにこのインタビューやったんだかさっぱり意味は分かりませんけれども、下手に両論併記するもんだから折角「フリーハンド」になっているものを逆に12月利上げしないと許さんモードになっていくリスクもあるし、12月やらなかった時の反動を大きくすることにもつながって、却って日銀の自由度を縛るんじゃないかって気はしてきましたこの反応ですと。

(アップしてから読み直して追記しましたけど)
読み直してみたらこれだとワシがこの記事を「12月利上げと見ている」ように読めてしまうのに気が付いたのでさっきの消して別に追記しますね。

えーっとですね、この記事って結局のところ「米国や賃金の見極め」に重点をおくのか、「経済データが想定通りだから利上げが近い」に重点を置くのかで見方が割れるのですが、「円安けしからん」というのがこれまた攪乱要因にも程があるわけで、為替市場様が反応して円高に振れてしまいますと、怪しからん円安傾向が弱まってしまうので、利上げを急ぐ大きな理由が消えてしまうんですよ。

でもってこの駄文の最後の方に書いておりますが、まあ記事のトーンからすると植田さんは利上げをあまりにも引っ張りすぎるのは流石にマズイ、とは思っているようなのですけれども、そもそも今の時点でまだ政策金利が0.25%にしかなっていない、という時点で植田日銀は利上げに対する胆力が乏しいとしか言いようが無いわけで、そういう植田日銀が市場に追い込まれない形で利上げするのか、と言われるとこれまたかなり疑問なところがあるので、結局何とも言えないんですけど、為替が円高に振れてしまうと利上げを急がなくなる、でもまあ引っ張りすぎると円安ぶっ飛ぶのでそれは避けたいでしょうな。

でもってですね、利上げ路線ってのはまあ伝わる構成だし、最後の(これまた後で書いてます)インタビューアーの所感部分見ましても、利上げをアホみたいに引っ張る感じではない、ということになりますと、まあそこまで利上げが先になることもない、という感じになるんじゃないでしょうか12月か1月か、に関しては変わらないんだったら、何でわざわざこんなインタビューしたんだ、という印象がぬぐえません。

いずれにしましても、へんな両論併記をするのは市場を勝手に暴走させるリスクがあるから避けてほしいですね
(とここまで追記しました)

・こういうのは対話強化になっていないように思えるんだが

でまあBBGさんの記事の締め部分(途中は飛ばしています)ですが、

『7月の利上げはサプライズと受け止められて市場が乱高下する一因になり、植田総裁は市場との対話を一段と丁寧に行う考えを表明していた。7月会合前には、政策委員による講演や記者会見など日銀から目立った情報発信はなかった。12月会合を控えたタイミングでの総裁発言を、市場は対話強化の一環と受け止める可能性がある。』

ということなんですけど、せっかく名古屋金懇のところで「将来的には利上げ路線、でもタイミングはフリーハンドですよ」という説明になったのに、やれ米国だやれ為替だとか言い出すと、折角市場もデータを見てああだこうだ動いているのに、また政策反応関数が訳わからなくなるというものでして、あんまりこういうのを総裁副総裁が言う必要ないんだよな(審議委員に足元の情勢判断を適当にしゃべらせておけば良いのであってその辺が言う事なら何ぼでも上書きできるけど、総裁が言ってしまうと上書きしにくいのですから)とは思うんですよね。


あとですね、この手の一問一答、別に日経電子版に金払いたくないから言う訳ではなくて、これはもうちょっと大真面目な話なんですけど、ECBだとエグゼクティブレベルとかの人がメディア向けにインタビューをすると、その一問一答って基本的にECBのサイトに公開されるような仕様になっていて、まあFEDの場合は地区連銀総裁が地区連銀単位で出したり出さなかったりしていますけど、何なら新聞掲載の翌日でも構わないのですが、一問一答を日銀も出して頂きたいと思います。ヘッドラインの初期反応に対して検証の仕様がない状態が続くと、バイアス掛かった転電記事にそのまま引っかかる、という事になってしまい、それではなんの為にインタビューやっているのか意味がなくなるでしょ、と思うのですよね。

まあそれに関しては一朝一夕にはできないかもしれないけど、一般も含めて世の中への意思疎通という点では、ちゃんと日銀も一問一答を出した方が良いと思います。


・でまあ結局記事読んだおめーの感想はと言われますと「利上げ路線は利上げ路線だが」ですかね
とまあそんな訳で土曜の朝っぱらから血圧を上げたり下げたりしながらw駄文を書き散らかしている訳ですが、日経本紙の記事の書き方のトーンとしては、1面の方はやや慎重に構えているような印象を与えますし、総合2面(3面)の方はやや利上げのやる気を感じるような印象を与える、という感じの紙面構成かな、とは思います。

でまあケチだの何だの申し上げたので詫び石代わりにですが、

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB281770Y4A121C2000000/
日銀、テールリスクとの闘い 通貨防衛の危機感にじむ
金融政策
2024年11月30日 2:00 [会員限定記事]

こちら、無料部分だけですと何が何やらという印象しか受けませんが、電子版じゃなくて日経本紙の方でもこの記事は読めまして、今回のインタビューを行った日経新聞さん(だと思うのですが)の金融部長の河浪武史さんの署名入り記事でして、河浪さんが今回のインタビューで感じた印象とか感想とかまあそんな感じの話になっているのですが、中々この話がよくできていまして、これを見れましたので(さっきは散々言いましたけど)200円払って良かったと思います、と褒めてつかわす(謎の上から目線wwww)。

まあこの所感部分を見ますに、利上げをあんまりビビっているとそれはそれでマズイ、という認識は植田さんお持ちのようではあるのですが、まあそうなのでしたらあとは植田さんの胆力の問題になってくると思う(だって少なくとも国内情勢でみたら利上げを躊躇する理由は無いし何なら既にtoo lateになっているかもしれないくらいでより中立に近いスタンスに戻すのは急務の筈で、それをしないのは胆力の乏しさとしか言いようが無い)のですが、さあどうなることやらですな。







2024/11/26

〇そういえば植田総裁の名古屋金懇ですが流していた部分で重大な見落としがorzorz

すいませんすいませんすいません
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2024/ko241118a.htm
最近の金融経済情勢と金融政策運営
名古屋での経済界代表者との懇談における挨拶
日本銀行総裁 植田 和男
2024年11月18日

リスク要因の説明がクソ長い、という話をしていたのですがその間にすっかり見落としてどスルーしていた部分があったのでここで追記させていただきますが(滝汗)。

『3.経済・物価のリスク』の『海外経済の動向と金融資本市場』のところですね。

これ冒頭に、

『まず、第1のポイント、海外経済について申し上げます。図表5をご覧ください。最新のIMFの「世界経済見通し」では、前回7月の見通しがほぼ維持される形で、世界経済は2025年にかけて、3%台前半の成長を持続する見込みとされました。先行きの海外経済については、緩やかな成長の継続がメインシナリオですが、こうしたシナリオが実現していくか引き続き注意が必要と考えています。先月行われたG20の会合でも、世界経済の見通しを巡っては、このところ、不確実性が高まっているとの認識が共有されました。』

ってあるので「さらに不確実性が高まっているという認識ですがな」というように読めてしまう(まあそういう表現ですけど)ので幻惑されてしまいましたが、米国の部分って、

『米国経済については、夏場には、労働市場の減速を示唆する指標が相次ぎました。その後は良好な統計もみられており、米国において、景気の大幅な減速を避けつつインフレ率が2%に向けて低下していくソフトランディング・シナリオが実現する可能性は高まる方向にあります。』

とあっても、

『ただし、引き続き情勢を丁寧に確認していく必要はあると考えています。』

とあって、結局チキンに見えるわけですよ。でまあその次も、

『米国経済は、コロナ禍以降、新産業での起業の増加やAIの積極的な活用などもあって、生産性を高めてきました。移民の増加などから労働供給も増えており、経済の基調はしっかりとしているとみられます。』

しらっと構造的に強くなっている(生産性の増加は潜在成長率の押し上げに寄与しますわな)話を入れてみておいてからの、

『とはいえ、この間の堅調な個人消費を支えてきた一因であるコロナ禍で蓄積された超過貯蓄は減少していますし、今後、ここまでの急速な利上げの影響がラグを伴って経済活動を押し下げる可能性にも引き続き注意が必要です。』

とあって、下ブレ警戒が直後にあって前の部分を打ち消している、という文章構成になっているのが曲者でして、

『一方で、今後の景気展開や政策運営などを受けて、インフレが再燃する逆方向のリスクも否定はできません。』

ってあるのがポジティブの話なのかネガティブの話なのかが謎と読めますが、よくよく見ますとこの項の結論って、

『米国経済の動向については、こうした双方のリスクを念頭に置きつつ、丁寧に点検していきたいと思います。』

ってありまして、これどさくさに紛れて10月決定会合の発言をひっくり返しているんですよね。すなわち、10月決定会合における植田総裁の発言というのは・・・・・・・・

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2024/kk241101a.pdf
総裁記者会見
――2024年10月31日(木)午後3時30分から約65分

いくつか米国のリスクに関して言及していた、というのはご案内の通りですが、代表的な物としましてはこちらの7ページから8ページに掛けての部分になります。

『(途中から引用します、植田総裁の発言部分です)これに対して、米国等海外要因については、下振れリスクを重視してみていたわけですけれども、少しその霧が晴れつつあるかなというところでございます。そのうえで、例えばアメリカの大統領がいずれにせよ変わるわけですけれども、その新しい政策がどういうものか判明するのはだいぶ先になるのではないかと、』

この文章、読点ばっかりで句点が全然ないから引用しだすとクソ長いので読点だけどここで切りますと、明らかに「従来は下振れで見ていた」だし、

『その点をどう考えるのかということだと思いますけれども、当面時間をかけて見極めたいというふうに申し上げていた米国にまつわるリスクは、少し長く取れば 6 月のどこかくらいから始まった近い将来の米国経済のダウンサイドリスクについての見方ということであるというふうに私どもとしては認識しています。』

思いっきり10月31日の時点では「ダウンサイドリスク」の話しかしてなかった訳ですよこれがまた。

ですから、

『それが少しずつクリアになりつつあるというのが現状で、たださっきも申し上げましたようにそこが当面米国経済、所得も消費も強いというのが続いたとしても、そのうえで、新しい大統領が打ち出してくる政策次第では新たなリスクが出てくるということは申し上げるまでもないですけれども、そこはまた新たなリスクとして各会合で点検していきたいというふうに考えております。』

ということでですね、この時の説明を見るとここの「新たなリスク」ってダウンサイドにしか見えないし、おまけに説明の頭の方にあるように「その新しい政策がどういうものか判明するのはだいぶ先になるのではないかと」だった訳ですな。

然るに、先般の名古屋金懇での説明文ですと、思いっきり「双方のリスク」となっていまして、見極めに時間がかかるような話をしていたダウンサイドリスクが「それが少しずつクリアになりつつあるというのが現状」という説明をわずか半月前にしているのに、何ですかこの豹変は、というお話ではあります。今更気が付きましたすいませんすいませんすいません。

・・・・・ということで、植田総裁10月31日の「米国下振れ強調」をしらっと撤回しているということなんですが、じゃあ何でワイがこれスルーしてしまったかと言えば、ワイの目が節穴なのはもちろんその通りではあるのですが、もう一つだけ見苦しい言い訳をしますと、それは10月展望レポート基本的見解の記述にございましてですね、


https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2410a.pdf
経済・物価情勢の展望(2024 年10 月)
(基本的見解)

毎度問題になるのが最後の金融政策運営に関する文言でして、今回は以前ご紹介した通りですが、

『金融政策運営については、先行きの経済・物価・金融情勢次第であるが、現在の実質金利がきわめて低い水準にあることを踏まえると、以上のような経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えている。』

からの、

『そのうえで、米国をはじめとする海外経済の今後の展開や金融資本市場の動向を十分注視し、わが国の経済・物価の見通しやリスク、見通しが実現する確度に及ぼす影響を見極めていく必要がある。』

と来まして、

『日本銀行は、2%の「物価安定の目標」のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営していく。』

という文章になっているのですが、今回って7月になかった「そのうえで〜」のところが加わって、ああチキン感が、とは思った訳ですが、これネタにした時にもそこは思った訳ですが、この「リスク」って別に下方リスク限定ではなくて、普通に読めば上下のリスクがあるのでそこを見ますよって話になるわけですよ。(今回の話のネタの米国経済とは関係ないですが、金融資本市場の動向、ってのは円安による物価上昇のリスクという上振れも含まれますよね)

なので、もともとこの文言を見たときに「待て慌てるなこれは諸葛孔明の罠」と思って最初下方リスクだけの話じゃないじゃんと思ったら上述のように総裁記者会見の方では思いっきり米国下振れの話をしてたし、しかもこれは会見聞いててのけぞったのですが、6月くらいから下振れリスクがありましたとか抜かしていた訳で、じゃあこの展望レポート基本的見解における金融政策運営の文言は何なのか、という風に思いつつも、そうは言っても会見発言というのは、それが総裁の発言であったとしても、それよりも展望レポートという議決事項で紙に落としてある文章の方がエライ、というのが公表文書の「格」としての建付けなので、はてやっぱり上振れだって検討するよね、という発想が頭にあったので、まあこの名古屋金懇のこの説明をワイどスルーしてしまったんですよ、とものすごく見苦しい言い訳をしておきます。

とまあそういう訳でして、名古屋金懇ってなんも言ってないように見えてどさくさに紛れて10月31日の総裁会見での米国下振れ連呼を打ち消して上下双方向のリスク、に上書きした形になっていて、何のことは無い見方は進んでいるというこの事実、って1週間もしてから気が付くとはワイも焼きが回っているなと反省することしきりな訳ですよこれがまた。

まあ確かに10月31日対比ではトランプ爆誕赤一色ということでトランプ爆誕までは兎も角として赤一色だわトランプさん相手にぐうの音も言わせない大勝利だわ、という上方サプライズはあったにせよ、10月31日にあれだけ(会見発言とは言え)米国下ブレがーって話をしていて、やっと「それが少しずつクリアになりつつあるというのが現状」位の認識をしていたものがいきなり「上下双方向のリスク」まで上書きされる話かよとは思うのですが、まあ実を言えば10月展望レポートでの金融政策運営の記述でも上下双方向のリスクを意識した文言になっていたことを踏まえれば、10月会見では植田さんちょっと口が滑っていたという事なのかもしれませんな、とは思いました。


・・・・・まあ何ですかね、その前に「丁寧に」喋りすぎだった、ということではあるのですけれども、説明がマジで分かりにくいというか、過去の余計な説明が足を引っ張っているせいではあるのですが、中々難しいわ、とか改めて思いました、とかいうアタクシの反省文をダラダラと垂れ流してしまいまして誠に恐れ入ります(汗)。


でまあ12月か1月かとか言われても正直分からんのですが、3月まで引っ張るというのはまた全然話が別次元になりそうではあるのですけど、いずれにしましても状況証拠的には政策修正いつやっても良いのでしょうね、と昨日今更ジローでネタにした展望レポートBOXもそうですけど、まあその辺の傍証はあるにせよ、あとは「お膳立て」の問題ではないかろうか、と斯様に思うのでありました(個人の見解です^^)。







2024/11/22

〇植田総裁の講演・・・・は今の金融政策に関係なかったのですがまさかの質疑応答コーナーがネタになるとな

そういや毎年この時期にこのフォーラムがあるんでした(毎年「あ。そういやその時期だ」と思うの巻)

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2024/ko241121a.htm
【挨拶】
テクノロジーの進化がもたらす金融仲介機能の機会と課題
パリ・ユーロプラス ファイナンシャル・フォーラム 2024における挨拶の邦訳
日本銀行総裁 植田 和男
2024年11月21日

これパリって言ってるけど毎回東京でやっている奴でして、まあこちらの挨拶の方は足元の金融政策云々とは関係ない話なので、と思ったらこんなのがありました、というのは皆様ご案内の通り。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241121/k10014645751000.html
日銀 植田総裁 “今後発表の経済指標を見極めた上で政策判断”
2024年11月21日 18時34分

『日銀が来月開く金融政策決定会合で追加利上げを決めるかどうかに市場の関心が集まる中、植田総裁は21日、都内で開かれたイベントで、会合まで1か月ほどあるなどと述べ、今後発表される経済指標の内容を見極めたうえで政策を判断していく考えを改めて示しました。』(上記URL先より、以下同様)

そうそう「改めて示しました」であって名古屋金懇のガチガチガードの説明と同じなんですよね〜

『イベントで植田総裁は、英語で講演を行ったあと質疑に応じ、今後の金融政策について「次回12月の金融政策決定会合まで1か月ほどあり、それまでに多くのデータが出てくるため次の会合での結論を予期するのは不可能だ」と述べました。』

そらそうよ、という話ではあるのですが、これは10月展望レポート以降の流れと同じでして、10月会合の時点で8月以降に言ってた「時間的余裕がある」とかいうトンチキフォワードガイダンスもどきを引っ込めることによって、この「時間的余裕があるから政策調整は次回は無いよーん」という逆予告ホームランというか予告三振スタンスを引っ込めたわけですから、そもそも論としては12月以降の決定会合は「ライブ」ちゃあライブな状態になっているのは既定路線な訳ですよ。

ただまあその後の信組大会挨拶もそうですし、名古屋金懇でもそうなのですが、なぜかリスク要因の説明をやたらと「丁寧に」行うもんだからやる気があるのか無いのか分からんというかやる気ないのかね、という感じにはなっていますが、まあ予告三振をするわけでもなく、予告ホームランをするわけでもなく、という話ですので、12月やるぞとか1月やるぞとかいう意気込みは無いけど、まあその時にやれるようならやりますかねえ、というような感じなんでしょうね(個人の妄想です)。

ま、そこで問題なのはそもそも「やれるようなのかどうか」の判断基準が訳わからんというかお気持ちになっているのと、今までゴテゴテデコレーションをした「市場が不安定だと利上げしない」(とにかくこれはその場しのぎにしたって最悪の対応で泣いてる子供に下手な安請け合いするの図でしたわな)とか「米国経済下振れリスクガー」とか要らん事言ってるのをどうやって「無かったことにするのか」というイカサマコミュニケーションの手腕が問われるところですが、まあそういう過去の変な「丁寧な説明」があるので、ワシらとしては「じゃあ何をもって政策調整が可能になるのか」がまあ分からんのですが、寧ろ余計な説明をしないようにした方がまだマシ(変なこと考えないで済む)だと思うのよね。

『そのうえで植田総裁は、今後発表される経済指標の内容を見極めながら会合ごとに判断していく考えを重ねて示しました。市場関係者の間では来月の金融政策決定会合で日銀が追加利上げに踏み切るかどうかに関心が集まっていますが、植田総裁は現時点で方向性は決めていないという考えを示した形です。』

これ日銀の場合めんどいのは、そもそも論として現在の金利水準というか金融緩和度合いが政策目標達成に対して適切なのかという問題があって、総裁会見でも「実質金利がとても低い」みたいに認めているように、そもそもがクソ緩和になっているのに、見通しとしては再来年度の途中には物価目標達成と言っていて、そこに向けて政策調整をするって話なので、(状況が下ブレしない限りにおいて)政策ステイを続けるというのが適切な対応になり得ないということで、まあだから「見通し通りなら調整」って言ってるんですけれども、この辺りの理屈が複雑なのもコミュニケーションを非常にややこしくしているんですよね。

でまあそう考えると、下手なガイダンスを入れると、3月以降のように「緩和的な環境が続く」→「見通し通りなら政策調整」→「金融市場が不安定なうちは利上げしない」→「米国経済下振れガーなので時間的余裕がある」とまあ説明がヤヤコシヤ(ちなみにこの間に「円安」という要素の扱いに変化が生じているのにそこを詳しく説明しない)になってしまうのであって、「丁寧な説明」のつもりなんでしょうけれどもこちとらバチクソ振り回されるだけなので、名古屋金懇とか今回の質疑応答のペースを貫くなら貫いていただいた方がまだマシでして、一々次回予告クレクレを求めてそれに応じる、みたいな愚劣なコミュニケーションは要らんじゃろ、と思う次第なんだが、予告ホームラン方式って安易に使える手法だから安易に流れてその場しのぎに使っちゃうんですよね、困ったもんです。

『一方、外国為替市場では植田総裁の発言内容が報じられたあと急に円が買われ円高が進む場面がありましたが、その後は一転、円が売られるなど荒い値動きとなりました。』

ということですが、ついでにBBG先生

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-11-21/SNAKIVT0AFB400
12月会合の「予測は不可能」と植田日銀総裁、ライブになることを示唆
藤岡徹
2024年11月21日 19:12 JST

→12月末に向けまだ1カ月程度、非常に多くのデータや情報が利用可能
→今回の発言で12月の利上げに自らを追い込むことなく、選択肢を残す

『日本銀行の植田和男総裁は、12月の金融政策決定会合で利上げの是非を巡り活発な議論が行われるであろうことを示唆する、これまでで最も明確なヒントを提供したようだ。』(上記URL先より、以下同様)

??????????????

えーっと、まあ先ほどから申し上げておりますので耳にタコではありますが、そもそも論として10月展望の時点で12月以降の会合に関してはライブですわな、っていうのは建付け上そういうことになっている(時間的余裕を言わない、と明言したので)訳でして、最も明確なヒントを提供したようだ、って釣りか何かですか(だってこの記事の署名している方は端から分かってるでしょって思うのですが・・・・)と反応してしまいましたが、まあこのリードの部分は記事注目させるための釣りだと思うのは、その後に、

『今回の発言は、12月の利上げに自らを追い込むことなく、選択肢を残している。植田総裁は政策は毎回の会合で決定され、事前に決められるものではないとの見解を繰り返し示している。』

繰り返し示しているのに「これまでで最も明確なヒントを提供」もへったくれもないじゃろという話でして、まあデスクが勝手につけるとか色々とお家の事情はあると思うのですが、いきなりこっちは茶を吹きそうになったので勘弁してくださいwwwwwwwww

まあそれはともかくとして、

『市場では、次の利上げに動く前に日銀は7月会合で利上げした時よりも明確なシグナルを発信するとの期待が高まっている。7月の利上げは一部の投資家にとって予想外の決定となり、8月の市場混乱につながった一因とみられている。』

とまあそういうことになっている訳ですが、むしろこれまでが過剰に話をし過ぎで、その結果「緩和的な金融環境が続く」みたいな説明が呪縛になって利上げは先じゃろ、みたいなことになってしまったのと、6月輪番減額(その前に5.13事件という不意打ち輪番減額があったので6月はある意味追い込まれ減額に見えたわけですし)の時に「市場に聞きます」とか変な時間稼ぎに見えることをしててたりして、まあそんなこんなで「牛歩戦術」に見えてしまったり、とまあ日銀の意図どおりなのか意図ちがいのかは兎も角として、下手に丁寧なコミュニケーションをしようとしたらコミュ障なので却ってエライことになったでござるの巻、という図になっておられた訳でして、まあゆうてこんな駄文を書くくらいなのでアタクシもコミュ障陰キャの方に分類されるタイプだから身に染みて分かるのですが(泣)、コミュ障が急に社交的陽キャになるとか無理なんで(野々村的号泣)、端からそういうのは諦めた上で情報発信を考えるべきではなかろうか、と斯様に思う今日この頃でありまする(なんのこっちゃ)。

ということでこの辺で今朝は勘弁。週末余裕があればちょっと読みもの読んでみたいところですけど気が付けば師走が近い・・・・・・orz







2024/11/20

お題「植田総裁名古屋講演会見ですが何ちゅうか脱力してしまう会見ではありまして」

いやマジでこのオッサン何なの??
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-11-19/SN6T0QT0G1KW00
日銀は12月か1月利上げを「真剣に検討」、再来年2%近くも−渡辺教授
伊藤純夫
2024年11月19日 18:02 JST

この大先生口を開けば前言の手のひら返しばっかりしていまして、真剣に検討した方が良いのはお前さんの知的誠実性の方じゃないかと思うのですが、とにかくおんどれは金融政策とかそういう話は永遠に黙っとれと思いますしメディアもインタビューするなやと思うのですが、よくよく見ますとこのBBGの記事も大変に素敵な文言が入っていまして、冒頭が・・・・・

『日本銀行出身で物価研究が専門の渡辺努東京大学大学院教授は、』(上記URL先より)

となっていて、「物価研究が専門」という言葉の中に「金融政策は素人」というのが籠められているという素敵なぶぶ漬け話法が打ち込まれている上に、そもそも論として物価研究の第一人者で日本銀行出身、という呼称により相応しい方はいらっしゃるということにBBGさんも気が付いたのか「物価研究が専門(第一人者とは言っていない)」という()も透けて見えるという点でも中々秀逸な間接話法をしておりまして、インタビューはエエカゲンニセエと思いますが記者なのかデスクなのか存じませんが、この書き出しは評価したいwww(個人の勝手な行間読みですよ!!!!)


〇植田総裁会見ですが金融政策修正に関する根本的な部分でやる気のなさみたいなのが・・・・

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2024/kk241119a.pdf
総裁記者会見
――2024年11月18日(月)午後1時45分から約30分
於 名古屋市

・不確実な点をこれでもかと並べておいてこの回答は嘘つけこのハゲとしか言いようが無い

幹事社質問(今日の所感とご当地質問)の次がもう早速「12月利上げの可能性」になるんですよね。

『(問)アメリカ経済の先行き、様々なリスクがあると、点検していく必要性があると説明されていますけれども、点検には一定の時間がかかるというご認識でしょうか。トランプ氏が大統領に着任するのは来年 1 月になりますが、経済・物価に及ぼす影響、どれぐらい時間をかけて見極めたいとお考えか教えてください。また、講演の中で、毎回のMPMで金融緩和の度合いを調整するか検討していくとおっしゃられてますが、来月にもMPMありますが、次回会合でも利上げの可能性はあるということか教えてください。』

前半は「見極めの時期」の話ですが結局流れるように12月利上げの可能性について話が落ち着いていくのでしたw

答えの冒頭がクソ受けるのですが、

『(答)アメリカ経済を含めまして不確実な点とか、あるいは今後変動がいろいろ予想されるというような、変動を確かめたいというような点は、ある意味無数にありまして、それを全部待ってて、それから政策をするということではなくて、』

じゃあちゃんとそういう説明をしろって話で、米国経済ガーを連呼しまくっていて、先行き分からんばっかりしか言わないで見極めたい見極めたいって連呼している今の日銀がですね、

『毎回の金融政策決定会合で、そこまでに入ってきましたデータ、それからその他の情報ですね、これを毎回毎回点検し、それに対応して適切な政策を行っていくという、これまでの基本姿勢に現在でも変わりはございませんとお答え致します。』

嘘つけという話でして、お前ら二言目には「不確実」をすぐに出してくる訳でして、挙句の果てに氷見野副総裁には昨年12月と今年の8月に会見で「全部青信号ということは無い」って言われている訳ですが、氷見野さんがそういってるのって、結局のところ「植田と内田は全部青信号にならないとやる気がない」って言ってるようなもんでして、やたらめったら「政策修正をしない言い訳を連呼」するもんだからコミュニケーションがおかしくなっている訳なのですが、「丁寧なコミュニケーション」とか言い出してからさらに無茶苦茶になっとるわけでして、昨日弊駄文で申し上げましたように、経済のメインシナリオの1.5倍の分量を使ってリスク要因の説明をおっぱじめたら「リスクがありますから動きませんでちゅー」って言ってるようなもんだし、もしそうでなくて「丁寧な説明」だと思ってあのバランスで講演テキスト作ってたら高校の現国からやり直した方が良いと思います。


・7月に為替の影響が物価に上振れリスクと言って政策修正しているのだからこの説明は如何なものかと

次の質問は為替ですな。

『(問)このところ為替市場で円安圧力が再び強まってます。最近の円安がですね、輸入インフレを上昇させて、国内物価を上振れさせるリスクは強まらないのか。特に 7 月はですね、国内物価の上振れリスクが利上げの一因になったと思います。当時の状況と現状は違うのか、また似たようなところがあるのか。この辺りについてお願いします。』

これ無茶苦茶丁寧な質問ですよね。まあ日銀のロジックを踏まえてゴリゴリ質問、とも言えますが(^^)。

でもって総裁の回答ですが、

『(答)いつものことで申し訳ないですけど、為替レートの短期的な動向にはコメントしないことにしております。』

じゃあ7月は何で為替の影響ガ―と言ってるんだという話だし、展望レポートのリスク要因の中でも「とくに、このところ、企業の賃金・価格設定行動が積極化するもとで、過去と比べると、為替の変動が物価に影響を及ぼしやすくなっている面がある。」って言ってるんだから、「最近の円安の影響はどうなのか」と質問しているのに「短期的な動向にはコメントしない」の返しはおかしいだろ。

・・・・とは言いましても、まあこれは王手飛車取りみたいな質問でして、影響あるといえば利上げが近いという話になるし、影響がないといえば4月の金融政策決定会合後の植田円安の再来、という寧ろ王手王取りレベルになっているのですが、何でこの質問が王手飛車取りになるかと考えれば7月の政策修正とそれ以降に為替円安を政策コミュニケーションに加えた日銀の自らまいた種なので日銀擁護の仕様が無いわけですなw

『ただ、いずれにせよ、為替を動かしている背後の経済要因を含めて、私どもの物価・経済見通しにどういう影響があるか、あるいは中心的な見通しの周りのリスクにどういう影響があるかということを日々分析をし、毎回の決定会合でそれを積み重ねて、そのうえで、各会合で判断していくという姿勢でございます。』

まあこれも「回答せず」で今回は兎に角「回答せず」で一貫しているのは余計なこと言わないだけマシちゃあマシなのですが(なので予告ホームランが無い事を別に悪いとは思わないし、そもそも予告ホームランで地均しとかする必要はなくて、経済物価情勢から世間様が次回は利上げじゃろ、とロジカルに考えられるような情報発信を中央銀行は行うべきで、フォワードガイダンスだのドットチャートだのというのは邪道おぶ邪道というのがワイの基本スタンス)、ここの説明では「為替円安が物価上振れリスクを高めるのではないか」との疑問に一切回答していないという面ではまあどう見ても丁寧な回答とは言い難いですなw


・極端な金融緩和の弊害について「急速なインフレの可能性がゼロではない」だけとはこれ如何に

次の質疑ですけどまあこれも雑なんですよ雑。

『(問)今日午前の講演でですね、金融政策運営のところで、金融緩和の度合いを少しずつ調整していくことは、息の長い成長を支え、物価安定目標を持続的・安定的に実現することに資するとご発言されました。この息の長い成長というのはどういうものをイメージされているのか、もう少し具体的にご説明頂きたい。』

ふむふむ。でもって質問はもう一丁ありまして(関連して話はつながっていますが)、

『あと、金融緩和の度合いを判断する上で、その先行きの見通しというのは、海外経済と賃金と物価の好循環の二つがポイントというふうにおっしゃいましたが、この息の長い成長というのを実現するためには、これもですね、その判断時期ですとか、ポイントになってくるのか、その点について教えてください。』

でもって植田さんの回答ですが、

『(答)息の長い成長と申し上げたのは、足元金融緩和度合いが、例えば実質金利等でみて、かなり強いということとの関係で申し上げたわけですけれども、』

実質金利って安易に使わない方が良いんですけど(講演で思いっきり図表8として出してましたけど)、と思う訳で、実質金利が計測できるんだったら名目金利との差になるんだから中立金利が計算できる、という話になってしまうので、「中立金利水準は広いレンジになっているので将来の政策金利水準に関して何かの具体的ガイダンスにするのは難しい」っていう(仰せご尤もな)説明と思いっきり矛盾するわけでして、あまり実質金利実質金利言わんほうがヨロシと思うのよ。

まあそれはさておきましてその続きですが、

『適宜その度合い、金融緩和度合いを私どもの見通しに応じて調整していかなかった場合には、場合によってはですけれども、どこかでインフレ率が急に加速するとかいうことが発生して、急速な金利の引き上げを迫られるという可能性もゼロではないわけです。』

お前は何を言ってるんだ(ネタ画像は貼れないので貼りませんがw)

という話でして、経済に対して極端な緩和政策を継続することのデメリットって他にもいっぱいあるだろという事なのですが、なんと「どこかでインフレ率が急に加速する」しか言わないし、しかもそれについても「可能性もゼロではないわけです」とか可能性が低いような事を堂々と説明しているのはこりゃ酷いというお話。

まあアレです、今やってて次回会合で結果公表されるらしい例の「多角的レビュー」において、何故だかさっぱりわかりませんけれども、「黒田緩和は正しかったが当初の期待ほど効果が直ぐに出てこなかったのは経済構造要因」という強引な過去の正当化で纏めていこうとしている中で、「極端な金融緩和の弊害」などということを認めるわけにはいかない、という大本営茶坊主が如何にも考え出しそうな発想から、「金融緩和度合いを適宜調整しないとインフレが急に加速する可能性もゼロではない」というエライ矮小化したデメリットの話しかしない、という結論になっているんだろうなあ、と思うとお前らセントラルバンカーとしての矜持は無いのかと小一時間問い詰めたいですが、そんなのは福井さん白川さんまでのお話なんでしょうなと思うと悲しくなってくるのでした(一応俊ちゃんの頃から真面目に見てるから)。

でまあ植田さんの説明ですが、

『そういうことがないような経済パス、あるいは政策運営を行うことによって、例えば、今 1%前後の成長が当面見込まれるという見通しを出していますが、これが長続きする可能性が出てくるというような意味合いで使っております。』

そういうこと、というのは「インフレ率が急に加速するとかいうことが発生して、急速な金利の引き上げを迫られる」という意味になるわけですが、ここにもインプリケーションがあるわけでして、これは二つの意味合いがあって、「インフレ率が急に加速しなければ政策調整なんぞ急いでやる必要はない=よって追い込まれるまでやらない」という話であり、もう一つは「急速な利上げはしたくない=よって利上げペースを速める気はガチの通貨防衛でベルにでもならない限り行わない」という本音が良くわかって中々味わいが深い訳ですが、現国の受験勉強とかいうほとんどパズル(特に共通一次レベルではw)みたいなのをやっておいて良かったわと思う今日この頃でもありますなwww


・なお質問者はこの辺の意図について知ってか知らずかまとめてしまった模様で

これは植田さんですが、

『それから、後半のご質問はちょっと聞き取れなかったんですが。』

からの、

『(問)今の説明で何となく理解できたんですけれども、要するにタイミングを誤らずにやりたいということで、その判断の鍵となるその見通しというのは、海外経済と賃金物価の好循環、これを見極めていくということに変わりはないということでよろしいでしょうか。』

とのことですが、アタクシの勝手な行間読みと言われるとまあぐうの音もでませんが、個人の見解ですということでご勘弁いただきたいのですが、政策修正遅れのデメリットについて「可能性はゼロではない」とかいう腰の引けた説明をしているのに何かエライ美しくまとめましたな、と思ったらしっかり植田さんこれに乗っかって、

『(答)はい。海外経済、賃金動向、そしてその他にもいろいろな要因がありますが、こういうことが物価・経済にどういう影響を及ぼしていくかという、そこの見通しを誤らない
ようにしたいということでございます。』

としていますが、とにかくその前に「調整が遅れた場合のデメリット」が「可能性はゼロではない」とかやる気無し無し説明しているので、まあこれは「シメシメ」と思って質問に乗っかったんでしょ、と思いっきり意地悪な読み方をしておきます。異論は認めるwwwwwww


・オントラックで時間が経過すれば当然ながら調整の必要性は高まりますよねと言われても回答回避とな

次の質問ですけどね。

『(問)先ほどの金融緩和の継続によってですね、場合によってはインフレが加速する可能性もあるというふうにご発言されまして、日銀では経済・物価が見通しに沿って推移すれば、利上げによって緩和度合いを調整してくる話をされてるんですが、』

と前置きをガッツリと置いてから詰めるのは結構結構。

『9 月、10 月の会合ではオントラックとの判断を示されながらも、金融緩和を維持されました。』

ですね。

『先ほどのご発言に沿って考えると、やはりそれによって、ビハインド・ザ・カーブのリスクというのは高まっているのではないか、蓄積されているのではないか。』

理屈の上からは間違いなくそうなりますよね。

『国内の経済・物価は順調な一方で、海外経済というですね、外部要因の不確実性によって金利を抑えつけていると、先行き利上げのマグマがたまるという、そういうようなご認識でよろしいのか確認も含めてお願い致します。』

これ認識でよろしい以外の回答をすると論理的におかしなことになってしまいますが、さてここで植田総裁はどう回避したかしなかったか、ということですが・・・・・・・・

『(答)そこは程度問題だと思いますけれども、』

程度問題で逃げる気満々キタコレ。

『7 月に戻ってみますと、為替からくる物価上振れリスクもありましたけれども、基本的には、そこまでの経済に関する情報が、その前の時点での見通し対比大体オントラックであり、その少し先もそのままいきそうであるという中で、利上げをしたわけでございます。』

あれ?10月の会見では「6月から米国の下振れリスクはあった」って言ってませんでしたっけ????

『その後のデータは、やはり広い意味でオントラックであるわけですけれども、7 月の時点でみていた姿に比べて、どれくらいオントラックの度合いが上方修正されたのか、こういうような点を毎回の決定会合で確認しながら進んでいくということでありまして、』

で??

『オントラックであれば毎回利上げをしていくということではなくて、』

利上げ云々じゃなくて「オントラックなのに緩和を維持したらビハインドのリスクを溜めることにならんのか」という質問なんだが、「自分たちの判断で利上げをしたくないでござる」って本音が駄々洩れですな。

『見通し通りに進んでいることによって、見通し期間後半の足元の見通しが見通し通りに進んでることによって、見通し期間後半の見通しが実現する蓋然性、確度がどれくらい高まったか、』

見通し何回言ってますねんwwww

というのは兎も角として、「オントラックなら金融緩和の調整を行う」って言ってるんだったら、どの程度の度合いで調整していくのが適切なのか、っていう基準があるはずで、その基準があるのか無いのか分からん(たぶんなくてその時の「お気持ち」だけじゃねえのと思いますけどね)ということでこういう話になってしまう訳ですな。だったら最初から「経済物価情勢に対して適切な政策金利水準になるように運営する」だけ言っておいて、緩和的環境が続くだの見通し通りなら利上げだの金融市場が不安定なら修正しないだの余計なこと言うなよという話なんですけどね。

『ある程度以上高まるということが自信が得られたときに次のステップに移るような、大まかなプロセスで考えております。そういう意味では、ビハインド・ザ・カーブには一方で陥らないように、適切に判断は続けていきたいというふうにはもちろん思っております。』

ある程度以上高まる、の基準が「お気持ち」あるいは「外部環境に追い込まれ」しか見えてこないからコミュニケーションがぐちゃぐちゃになるのですが、毎回毎回その場しのぎで適当な理屈を昭和温泉旅館方式で増築していくからグロテスクな理屈が構築されて何が何だか分からなくなるんですな。南無三。


・円安のデメリットとかいう話が中京財界からも出ているというのに・・・・・・・

中京財界と言えば輸送用機械関連を始めとする輸出製造業様の令名が高いわけですが。

『(問)すいません。もう一点あるんですけれども、財界との懇談の中で過度の円安については、コスト高を招いて、非製だけでなく製造業にも悪影響を及ぼすので望ましくないという趣旨の発言がありました。この円安の及ぼす物価だけでなく経済への影響についての評価をお願いします。』

こちらの質問はさっきの質問の続きではなくてちょっと途中を飛ばしています。でまあ輸出製造業様からも問題だという指摘があるが、と思いっきり出口を塞いで質問していて素敵なのですが、まあそういう事やぞという所ではあるのですが、

『(答)これはずっと前から申し上げていることですけれども、円安がコスト高になって、消費者あるいは一部の企業にマイナスの影響を与える面ももちろん大きいわけですけれども、当然輸出企業にはプラスになる面もありますし、それからインバウンドの需要にはプラスの影響もあるということで、経済全体の評価はなかなか難しい、経済全体への円安の影響の評価はそう簡単ではないと思ってはおります。』

・・・・うーんその回答で良いのかなあ(ゲス顔)


・改めて極度の金融緩和のデメリットを聞かれましたが「急にインフレになるかもしれませんね」以外は無い模様です

でまあ後ろの方の質疑(今の人の次ですけど)で先ほどの話を蒸し返した方がいましてこれまた優秀優秀。

『(問)二点お願いします。一つ目がですね、午前の講演の中で、実質金利の水準がかなりマイナスにありますよねという話をされてらっしゃったと思うんですけれども、経済の成長に資するものだとは思うんですけれども、一方で金利が大幅にマイナスな水準にあることの弊害というものがあるのではないかと思うんですけれども、その辺りのご認識をお伺いしたいのと、』

良いですな〜

『それが今後の利上げの判断の材料になるのではないかというふうな印象もあるんですけれども、その辺りのお考えをお聞かせ頂きたいということが一つ目です。(後半割愛)』

しかし植田総裁はこの回答である。

『(答)一点目は、先ほどご質問があった点とちょっと重なるとは思いますけれども、実質金利がすごい低いということからくる悪影響といいますか、弊害ですけれども、私どもの観点からしますと、やはりどこかでインフレ、特に基調的なインフレ率の上昇が加速してしまう、2[%]を超えて加速してしまうというリスクだと思っていますし、』

それだけしかないらしいです、どういう認識しているんでしょうねえ。

『そうなってしまうと利上げのペースを思った以上に早めないといけない、そこからくるいろんな問題が出てくる。』

利上げのペースを速めなければ問題は出ないという事ですね。

『そうならないように適切に金融緩和度合いを調整していきたいというところで、ここの判断は、私どもにとっては本質的に重要なものだというふうに思っております。(後半割愛)』

ということで、極度の金融緩和のデメリットは他にはないという説明になっていますので、経済の非効率の温存だとか財政規律の弛緩を助長するだとか、そういうことは一切知らんがな、という無責任極まりないスタンスである、ということはよくわかりましたwwwwwwwwwwwww



2024/11/19

お題「植田総裁名古屋講演ですが相変わらず「丁寧なリスク説明」するのは何なのよ」

日本の馬鹿政治家にレクをしてくださいお願いします
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-11-18/SN51JEDWRGG000
ECB副総裁、高債務によるリスク警告−長期的な課題克服の妨げに
Mark Schroers、Jana Randow
2024年11月18日 18:49 JST

『フランクフルトで開催された「ユーロ・ファイナンス・ウィーク」で講演したデギンドス氏は、プライマリーバランス(PB)の赤字が膨らみ、債務負担が増加すると、気候変動対策や国防支出、デジタル化、生産性向上といった分野への支出余地が欠如する恐れがあると述べた。

同氏は「財政の遅れや財政再建の道筋を巡る疑問は、ソブリンリスクのさらる(原文ママ)見直しを引き起こす可能性がある」と述べ、「また、現在の大幅なPB赤字は、不測の事態が発生した場合に政府が経済を支えることをより困難にする」と指摘した。』(上記URL先より)

ですよねーーーーーーー、と思うのだが日本に向かって格付け会社がもっとガリガリ言わないと(格付け会社が言うと馬鹿政治家にもちったあ伝わるじゃろ)、と思うのだが、なんだか知らんけど格付け会社なんもいわん(この前フィッチがちょっとコメントしてたようなきがするけど)のが残念無念。


〇植田総裁の名古屋講演は「何の回答もしていません」でしたがだったら金懇何で実施したのやらwwww

・本編の前に雑感その1:外国為替市場は何を期待していたのかと小一時間問い詰めたい

しかしまあ何ですな。
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/PJZUUIMSMZOI5P6BAFVNMUX7TU-2024-11-18/
東京マーケット・サマリー・最終(18日)
By ロイター編集
2024年11月18日午後 6:19 GMT+9

『午後5時のドル/円は、前週末のNY午後5時と比べて小幅ドル高/円安の154円半ばで推移している。名古屋市で講演を行った植田和男日銀総裁の発言を受けて午前中には155円前半まで上昇する場面もみられた。買いが一巡すると154円半ばから後半を中心に一進一退の展開が続いた。』(上記URL先より)

ということで、どうも外国為替市場の皆様は何故か昨日の植田総裁の金懇で威勢の良い12月予告ホームランでも打ってくるとでも思ったのか、金懇挨拶始まる前に154円割れ水準をやっていたのですが、講演テキスト出てよく見たら予告ホームランのよの時も無いという状況でしたので、いきなり円安に飛んで155円台前半にドルは飛ぶ飛ぶとなっておられましたのにはアホなのかと思ってみておりました。

昨日も弊駄文で申し上げましたように(と珍しく当たるとここぞとばかり「私言いましたよね」をするのが浅ましいですかそうですかwww)、そもそも論として政治的に益々微妙なご時世の中、胆力があるとは到底思えない今の日銀執行部(氷見野さんは胆力あると思うけど残りの2名がチキンにも程がある)がこんなところでラーテルの如く蛮勇を振るって予告ホームランとかするわけないじゃないですかヤダーと思っていたので別にアタクシは期待していなかった、というか債券市場の方の反応見ますと別にそんなに期待していなかった(ので失望の買戻しも限定的)という所だったかとは思います。


・雑感その2:まあゆうて予告ホームランは無理じゃないのかねえ

今の日銀って無茶苦茶中途半端な状態で、「見通しオントラックで推移したら金融緩和の度合いの調整(つまり利上げ)を行う」って言ってるんですが、何がどうチキンなのか、というかまあ植田内田に胆力が無いのが要因だとアタクシは見ているのですが、胆力が無いので、昨日ネタにしたような感じの「無邪気な利上げ慎重論を唱える馬鹿外野」の声がやかましい中、自主的に利上げしようとかするわけがなくて、周囲の状況が全部そろわないと利上げしない(まあ別の言い方をすれば追い込まれないと利上げしない、ですけどwwwwwwww)というスタンスで、7月急に利上げしたのって国債買入減額するって言ったのに円安修正大して起きなくて為替介入までする破目になったからその次の決定会合まで為替が持たないので上乗せ措置を講じざるを得なくなった、って話でしょ、という訳ですので、そんな状態の中の日銀ちゃんに予告ホームランなんぞは無理ですな。

・・・・・と考えますと、昨日ネタにした先週金曜に出てきた「展望レポートのハイライト」のホームランのイラストはあれ「植田の講演で予告ホームランができないのでせめてイラストでもホームランかっ飛ばして円安阻止ができるといいなあ」という悲しい大本営のお気持ち表明だと思うと中々味わいがありますなw

まあそれはさておきまして、とにかく「データ見ないとわからん」「0.5%への利上げはまだしもその先の利上げとか今世紀になって実施していないですぅ」みたいな状態では利上げのパスを描くのも怖いでしょうし(次回はともかくその先以降)、予告ホームランなんぞ怖くてこれまたできるもんじゃない、というお話になりますので、まあそもそも論として今回予告ホームランなりなんなりが出ると思う方に無理がある、と考えないといけませんでしたねということですし、今後の0.75%だの1%だのという利上げはもっとそういう予告は出てこない、と考えた方が妥当なんじゃないかなと思います。


・雑感その3:ベンダーのライブ映像配信とエンバーゴの関係について

https://www.boj.or.jp/about/calendar/index.htm
公表予定

1月18日(月) 10:05 ○ ● 【挨拶】植田総裁(名古屋)

1005とは珍しい時間ですが、金懇の場合だと1030とかが普通なのでちょっと早いのですが、もともと1005だったかどうかは昨日の朝の時点で不覚にも見てなくてアレでした(汗)。

でまあそれは良いんですけど、昨日は某ベンダーがこの講演会に関してライブ映像で放送をしていましたんですけれども、テキストのエンバーゴの前から講演始まっていて、まあ最初の挨拶の部分で本編に入る前にテキストが出てきたのでいいんですけど、これタイミングがずれたら結果的に某ベンダーエンバーゴ破りをやったことになってしまう諸葛孔明の罠じゃないのかねと思ったのですが。この辺の仕切りがなんか謎なのですがどうなってるんですかね。


という話はともかくとして本編ですが、まあこれが大した話はしていないのですけど総裁講演だから思いっきりネタにはする訳で^^

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2024/data/ko241118a1.pdf
最近の金融経済情勢と金融政策運営
---名古屋での経済界代表者との懇談における挨拶 ---

・経済物価の見立てと先行きの話は展望レポートの後追いで別にあたらしいアップデート無し

『2.経済・物価の現状と先行き』のところですが、これがまあ展望レポートの通りの話をするんですけれども、経済の部分でのまとめは、

『このように企業・家計の両部門で、所得が増加し、それが支出に回る前向きの循環メカニズムが徐々に強まってきています。今回の展望レポートでは、こうした動きが引き続き強まっていくと考え、図表3のとおり、来年度以降、1%程度の成長が続くと想定しました。』

ってことで話が終わっているのですが、展望レポートから3週間経過していて、次の金融政策決定会合まで4週間弱、ということは決定会合間の中間地点辺りにいるんだから、経済(物価もそうですけど)認識のアップデートをなんでしないの、って思うんですよね。

これは日銀の謎仕様でもありますが、先だっての10月会合でも同じようなことがあったわけで、つい直前の10月24日の時G20会見まで「時間的余裕がある」と「一応」」というのをつけながらも発言するもんだから、公共放送ニュースあたりからも『日銀 植田総裁「時間的な余裕ある」利上げ慎重に判断する考え2024年10月25日 9時22分』みたいに報道されてしまって、でもってその直後の10月会合で「時間的余裕があるというのはもう不適切」とか非連続で説明が飛ぶんですよ。

この辺りのコミュニケーションがなんか下手クソで、途中の経済物価情勢のアップデートをこまめに入れて(どの程度まで細かく説明するのかのさじ加減が難しいのは分かるけど)説明する、まあ執行部がそれやると色々とヤヤコシヤというのであれば政策委員が喋れば良いと思うのですが、インターミーティングでの何らかのアップデートが無くて決定会合でいきなり話が非連続に飛んでしまうから説明が訳わからんくなるのよ。

でまあそのアップデートって別に政策をどうしたいみたいな予告ホームランをする必要はなくて、単純に経済と物価の情勢について見通し対比の進捗とか望ましい方向に進んでいるのかどうかの認識とかを示せばいいだけの話だと思うのよね、まあ慣れの問題あるから急にそれを始めて最初はややこしいかもしれないけど。

然るに、なんか知らんけど政策の予告ホームランみたいな事前織り込ませはさせようとする(3月のマイナス解除がまさにそれだしその前の昨年12月のチャレンジングもそうですわな)から、経済物価情勢の認識よりも政策の方が先にあって経済物価情勢の話が後付けになっているようにしか見えないムーブになっているのが残念無念また来年、と思うのでありました。

などというアタクシのポエムはさておきまして物価に関しても同様で、

『物価の先行きですが、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、2024 年度に+2.5%となったあと、2025 年度および 2026 年度は、概ね2%程度で推移すると見込んでいます。既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響は、引き続き、和らいでいく一方、景気の改善が続き、しっかりとした賃上げが継続するもとで、賃金上昇を起点とする物価上昇圧力が強まっていくと考えています。』

・「基調的物価上昇率は2%行ってない」そうですがそろそろ屏風から基調的物価を出してくれませんか

ところでこの続きに、

『輸入物価上昇などに伴う短期的な物価の変動を除いた物価のトレンド、基調的な物価上昇率は、現在は2%を下回っているとみていますが、』

って面白文言があるのですが、だったら「基調的物価」が幾らなのか数字出してくれませんですかねえ、計算根拠もつけて・・・・・・・・・

『今後緩やかな上昇を続け、2026 年度までの見通し期間の後半には、2%の「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移する見込みです。』

ということで、この謎の「基調的物価」ですが数字で出せるんだったら何で出さないのかというお話になりますし、そもそもお手盛りのブラックボックスでございますってんだったらそれはただの結果先にありきのインチキ数字じゃないの、という話になるのですが、そろそろこの「基調的物価上昇率」ってのを屏風から出してくれませんかねえ(一休さんのトンチ使用不可)。

まあ何ですな、黒田末期以降の日銀は「2%物価目標達成の判断根拠を達成していないことにするという結論に合うようにコロコロと変更してきた」という歴史でもあるのですが、とうとうこの「屏風に描かれた虎の絵」状態の説明をメインにするようになったかと思うとインチキここに極まれりとしか申し上げようがないですわ。


・そもそもメインシナリオが2ページでリスクが3ページって時点で説明がおかしい

でもって次が『3.経済・物価のリスク』となるわけですが、

『ここまで、経済・物価の現状と見通しについて申し上げてきましたが、こうした中心的な見通しを巡る不確実性は高いと考えています。先行きを見通していくうえで、特にカギとなるのは、「海外経済が緩やかな成長経路を辿っていくか」、「賃金の上昇が続き、物価との好循環が引き続き強まっていくか」という2点です。そこで、次に、この2つのポイントについて、ご説明させて頂きます。』

でまあこの説明が目の子で見た感じテキスト3ページ分使っていまして、さっきのメインである『2.経済・物価の現状と先行き』が2ページ分使っている、という事で、構成がおかしい訳でございますよ。

先般弊駄文で全国信用組合大会での植田総裁の挨拶(内田副総裁代読)って奴を見たときに指摘しました(10/18に行われた講演でして21日に弊駄文ではネタにしたのですけれども)が、その時は『2.経済・物価情勢』の中の経済物価見通し部分が経済と物価で合わせて473文字(経済131+物価342)リスク要因の説明部分が337文字でして、リスク要因の説明をやたらしてやがってこいつらやる気あんのか、とか悪態を申し上げたわけですが、今回は遂にパワーアップして「懇切丁寧にリスク要因の説明をした結果、メインよりもリスクの説明を延々とやっている」という講演になっておるわけですわ。

とまあそれだけリスクリスク言ってて12月利上げの予告ホームランどころの騒ぎじゃないという感じになろうかと思います。というのがまあわかるんですが、どんどんリスクの部分の説明を一生懸命にやる位なら最初から「なんかもう基調的物価って2%当面行きそうにないから政策修正しませんよ」と言い切ってもらった方が却って清々しいわって感じですな・・・・

なお予想屋さんとして考えた場合、日銀はどうせ自力で政策を決められなくて、周囲からケツ叩かれるまで動かないので、つまりは周辺情勢が悪化、具体的には円安がかっ飛べば政策変更に追い込まれますので、12月にスキップしてもその場合は1月に向けて阿鼻叫喚の円安になって利上げに追い込まれるじゃろ(鼻ホジホジ)って感じに1万ドラクマといったところです(^^)。


・でもってリスク要因ですがこれでもかと並べたてててマジでこいつらやる気あんのかと

『(海外経済の動向と金融資本市場)』って小見出しがあるのですが、これがもう各段落の結論部分を見ると、

全体認識
『先行きの海外経済については、緩やかな成長の継続がメインシナリオですが、こうしたシナリオが実現していくか引き続き注意が必要と考えています。先月行われたG20の会合でも、世界経済の見通しを巡っては、このところ、不確実性が高まっているとの認識が共有されました。』

米国経済
『米国経済の動向については、こうした双方のリスクを念頭に置きつつ、丁寧に点検していきたいと思います』

中国経済
『中国では、こうした内需動向を反映した一部の財での在庫調整圧力の高まりを背景に輸出が増加しており、各国への影響を含め注意を払う必要があります。』

地政学リスク(ここは冒頭部分です)
『地政学的リスクについても、引き続き注意が必要です。』

国際金融資本市場
『国際金融資本市場の変動が、わが国の経済・物価に影響を及ぼすことがないかについても、引き続き、注意していきたいと考えています。』

米国とか一部上振れがあったり、金融資本市場は円安もあって一部上振れ要因もあるのですが、まあこう丁寧に説明しているとそもそもお前らチキンで様子見地蔵だろ、っていう印象の方が強くなりますよねえ、というお話。

でもって次が相変わらずの『(賃金と物価の好循環)』で、

『続いて、第2のポイント、賃金の上昇が続き、物価との好循環が引き続き強まっていくか、という点について申し上げます。』

というのがあるんだが、そもそも好循環が強まっていくも糞も生活物価の上昇に全然賃金おいついてねえだろ(だから実質賃金が上昇するまで利上げするなという無邪気言説が外野から飛び出すんだが)という話で、良いからこの「賃金と物価の好循環」って言う幻想を振りまくの止めろとしか言いようが無いのですが、この説明もだらだらとあるけど読んでもしょうがないので割愛。


・金融政策はまあなんも言ってません(ので為替市場が失望していましたが)

『4.日本銀行の金融政策運営』ですがこれがまた全部引用しますと、

『次に、日本銀行の金融政策運営についてお話しします。

日本銀行は、本年3月に、先行き2%の「物価安定の目標」が持続的・安定的に実現していくことが見通せる状況となったとの判断から、マイナス金利政策やイールドカーブ・コントロールなどの大規模な金融緩和の枠組みを見直しました。その後、7月には、国債買入れの減額計画を決定するとともに、短期金利の誘導目標の水準を 0.25%程度に引き上げました。』

『先行きの金融政策運営については、本日ご説明差し上げたような経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えています。』

いやおまえリスクの説明ばっかり一生懸命やってるだろwwwwww

『ただし、金融政策が経済活動をしっかりとサポートしていく点に変わりはありません。図表8をご覧ください。金融政策は、主として名目の金利から予想物価上昇率を差し引いた実質金利の変化を通じて、経済活動に影響を及ぼします。その実質金利の水準をみますと、物価情勢が好転するもとでも、極めて低い名目金利の水準を維持していることから、2010 年代と比べてもマイナス幅が拡大しており、金融緩和の度合いはむしろ強まっていると評価できます。』

ここ段落分かれているのですが、いったんここで切りまして、

『今後、経済や物価の改善に併せて、金融緩和の度合いを少しずつ調整していくことは、息の長い成長を支え、「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現していくことに資すると考えています。』

?????????

これよくよく考えたら全然説明になっていない説明でして、緩和度合いが高まるんだったら寧ろ経済にさらにプラスのブーストが掛かるんだから別に調整する必要ないじゃん、と突っ込まれたらどう説明するんだよ、という話でこれ明らかに説明が片手落ちなんですよね。

当然ながらこの背景には「過剰な金融緩和は経済への効果よりも将来において大きなマイナスになる副作用の方が大きくなる」ってのがあるのですが、その説明をしない、というのが今の日銀の腰の引けまくったチキンさんのところでして、つまり高圧経済アプローチとかあんなものは馬鹿の所業、という説明(別に馬鹿とか言わなくてもいいけど)というようなことが言えない程度のチキンさんというか胆力がないもんだからこういう謎説明になるんですな。

まずは日銀はちゃんと「なぜ調整をしないといけないのか」というのを会見のオーラル(会見では一応言ってたようだが)ではなく、きちんとこういうテキストで示すべきだと思います。まあそれができないから追い込まれないと政策修正ができない人たちなんですけどね。

ということで以下続きを引用しますが、まあ何も言ってませんがなということで。

『金融緩和の度合いの調整を実際にどのようなタイミングで進めていくかは、あくまで、先行きの経済・物価・金融情勢次第です。米国をはじめとする海外経済の展開や金融資本市場の動向を含め展望レポートで指摘したような様々なリスク要因を十分注視する必要があります。そのうえで、これらの点が、わが国の経済・物価の見通しやリスク、見通しが実現する確度に及ぼす影響を見極めていく必要があると考えています。毎回の金融政策決定会合では、その時点で利用可能なデータや情報などから、経済・物価の現状評価や見通しをアップデートしながら、政策判断を行っていく方針です。』

ということでございましたとさ。




2024/11/13

〇植田さんのスイスでの謎発言の原典をちょいと確認してみましたの巻なのでご紹介

月曜にこの話をネタにしましたが
https://jp.reuters.com/economy/inflation/XYLFN7K4SBOM3CVXULPORXKVFM-2024-11-10/
気候変動の影響注視しつつ2%インフレ目標維持したい=日銀総裁
By 木原麗花
2024年11月10日午後 12:14 GMT+9

再引用しますけど、

『[東京 9日 ロイター] - 日銀の植田和男総裁は9日、スイスのバーゼルで国際決済銀行(BIS)などが主催した気候変動関連の会合に出席し、気候変動が将来の物価動向に長期的なショックを与えるとしても、日銀は2%のインフレ目標を維持したいと述べた。

植田総裁は、気候変動が経済に与える影響や、政府の脱炭素化促進策がインフレ期待に与える影響について、日銀は注視していくと発言。

インフレ期待への影響は心配だとしつつも、気候変動によるショックが起きても「インフレ目標は現在の水準を維持したい」と述べた。』(上記URL先より、以下同様)

という話をしているのはまあ良いんですよね。そもそも論として気候変動対応によってインフレ圧力が高まるのに対して、インフレ目標2%ってのがそもそも正しいのかとかそういう問題が大有りという説を脇に置いて考えた場合、気候変動対応によるインフレの上方圧力ってのは、2%が神の言葉の如く正しいというのであれば、その上方圧力自体は単に中立金利水準(と言われる概念上のもの)を上方シフトするだけの話であって、それによりインフレ目標を変えるというのは話の筋としてはちょっと変な感じですわな。

でまあそういう話は良いのに植田さん何変なもんでも食ったのか引き続いて、

『また、脱炭素化社会への転換を促すための政府補助金も短期的にはインフレ圧力を生むかもしれないが、基調的なインフレ率は現在まだ2%を下回っているため、日本は「当面はそのようなインフレ圧力に対応できる」と語った。』

基調的なインフレが2%を下回っているから云々って何をゆうてますねんという話ですが、こちら元ネタがございましたのでご紹介させていただきたく存じます次第(というかこれ気候変動関連をやっておられる方々に置かれましては既にご存じかとも愚考いたしますが、まあ普段この辺まで見る知能も時間もないワイとしてはドヤ顔でご紹介させていただきたく存じますwwwwwwww)


こんなのがありましてね
https://www.bis.org/events/green_swan_2024/overview.htm
Green Swan 2024: Impact of climate change on the real economy: what does it mean for business and for monetary policy?

『A conference co-organised by the Bank for International Settlements, the Bank of Japan, the Bank of Spain and the Network for Greening the Financial System.』

何気に日銀も共同主催じゃないですか何でこの植田さんのご登壇を日銀HPで紹介しないのよ、と思いますのでちょっとHPに掲載するのどうでしょうか(結構マジ)。

『The fourth edition of the Green Swan Conference brings together high-calibre speakers - comprising corporate leaders from sectors most relevant for GHG emissions, experts, academics and policymakers - to discuss how climate risk, adaptation and mitigation affect the supply side of the economy and what these economic effects imply for the work of central banks.』

ということで金融政策への含意なども含めたセッションがおこなれている(論文もある)のですが、たぶんこのページを開けるとその下にあるタブはデフォルトだと「Videos」になると思うのですが、その一番下に植田さんのパネルの模様が録画されています。

『Closing - Climate risks, adaptation and mitigation: what do central banks make of their economic effects? (1:11:04)

by Andrea M Maechler, Christine Lagarde, Francois Villeroy de Galhau, Jose Luis Escriva and Kazuo Ueda

9 Nov 2024 Green Swan Conference 2024』

でまあそこの画面をぽちっとなとしますとパネルがおっぱじまるのですが、この議論のまとめの部分になりまして、ロイターさんの報道していた植田さんの説明はだいたい上記動画の58分13秒くらいから話が始まっていまして、議論のクロージングをしているのですが、

「インフレ目標を特に変える必要はないという考えに私も同意」という話を58分49秒くらいからしていまして、そのあと、ロイターさんの記事にある「気候変動が経済に与える影響や、政府の脱炭素化促進策がインフレ期待に与える影響について、日銀は注視していく」ってのが59分2秒くらいからありまして、その後に記事にある「また、脱炭素化社会への転換を促すための政府補助金も短期的にはインフレ圧力を生むかもしれないが、基調的なインフレ率は現在まだ2%を下回っているため、日本は「当面はそのようなインフレ圧力に対応できる」」ってのが59分33秒くらいにございましたです。

でまあ動画見ていますと、「アザ―シングスアイウォンテッドトゥーセイ」とかした見ながら最後の「基調的な物価が2%を下回っている」云々のクソ余計な文言がぶっこまれているように見えるのですが、下見てるってえことはそれもしかして予定稿(またの名を想定問答)でも見てるんですかいな(その直前は別に下見てなかった)と思っちゃったりした次第でありまして、いやだから何でその「隙あらば利上げしない言い訳」をこんなところでもするのかね、と思ってしまいましたし、まあ利上げしたくないならしたくないで結構(結構ではないが)なんですけど、だったら変に「見通し通り推移したら利上げ」とか言わないでもろて頂きたい訳でして、昨日ネタにした主な意見もそうなんですけれども、なんか隙あらば利上げしない言い訳をすぐに並べてくるのと、「見通し通り推移すれば利上げ」っていうののギャップが大きいことがコミュニケーションの混乱を招いているんじゃないか、と常々思っていますが、これを見てまたその思いを新たにしましたな、というメモでございました。


#動画再確認とかしてたら時間がアレになってしまって本日は甚だ簡単で恐縮至極







2024/11/11

〇気候変動関連の会議だそうですが「財政支出によるインフレ圧力に対応できる」はどう見ても自爆発言です植田さん

https://jp.reuters.com/economy/inflation/XYLFN7K4SBOM3CVXULPORXKVFM-2024-11-10/
気候変動の影響注視しつつ2%インフレ目標維持したい=日銀総裁
By 木原麗花
2024年11月10日午後 12:14 GMT+9

『[東京 9日 ロイター] - 日銀の植田和男総裁は9日、スイスのバーゼルで国際決済銀行(BIS)などが主催した気候変動関連の会合に出席し、気候変動が将来の物価動向に長期的なショックを与えるとしても、日銀は2%のインフレ目標を維持したいと述べた。』(上記URL先より、以下同様)

ということだそうでして、まあ気候変動関連のお会議のようですので目先の話をしているわけではないのですけれどもこれはいただけません。

『また、脱炭素化社会への転換を促すための政府補助金も短期的にはインフレ圧力を生むかもしれないが、基調的なインフレ率は現在まだ2%を下回っているため、日本は「当面はそのようなインフレ圧力に対応できる」と語った。』

うーんこのという感じでして、これどういう文脈で話をしているのか分からんので何ともではあるのですが、これ気候変動関連での補助金によるインフレ圧力に関して「問題ないし対応できる」って言ってしまうのはどこからどう見ても自分で自分の首を思いっきり絞めるはなしでして、これは「高圧経済の唯一最大の副作用はインフレ」と仰せになっていた国民民主党に免罪符を与えたようなもんでして、ここから先政府がアホみたいなガバガバ財政を出してきた挙句に日銀に対して利上げ遅らせろプレッシャーかけて円安になったり生活物価中心に物価が上がって国民の怨嗟の声が高まった時に、「インフレ圧力に対応できる」とか大見得切ってしまっていたら、日銀がこの国民の怨嗟の声を一手に引き受けさせられることになるわけでして、国民民主だって最初のマクラのところに引用したように「ワシら減税主張するけどその主張を飲むなら財源考えるのは与党の責任」という世界線で生きている(それじゃあ連立与党には一生入れませんわなあ(嘲笑)と思いますが)人たちなので「唯一最大の副作用はインフレ」と言って高圧経済アプローチを呑ませに行ったあとのインフレ批判は日銀に全部おっかぶせるの明々白々なのでありまして、そんな状況なのに「財政補助金の支出によるインフレ圧力に対応できる」とか言い切ってしまうのは間抜け以外の何物でもないんですが、どうしてこう脇が甘いんですか植田さんは・・・・・・・

植田さん、総裁になって1年半もたっているんですから、発言がチェリーピッキングされて好き勝手な解釈をされることと、運が悪いとそれがどんどん独り歩きして後から自分の背中をさす刃になりかねないことに関していい加減自覚的になられた方がよろしいんじゃないですか、と思います。

まあ文脈としてどのように言ったのか、この記事自体もエライ短い記事なので、端折った挙句にこういう内容になっている可能性はある(木原さんの記事だから変な捻じ曲げはしていないのは信用できると思いますけどね)ので何なのですが、何で「当面はそのようなインフレ圧力に対応できる」って言ってしまうのか、ごくごく普通に「財政出動規模、内容によっては短期的なインフレ圧力だけにと留まらない可能性もあるので今後の気候変動対応の議論に関してはその影響を常に考えていく必要がある」とかなんとかフニャフニャした回答をしておくべきだと思いますよ。こんなの玉木さん大喜びですわよいやマジで。

でまあブルームバーグでも報道があったわけですが、こちらは植田さんの発言を箇条書きにした格好になっていまして(もしかしたら詳しいのが他にあるのかもしれないですけどネット版だとこれが最初に見えてしまうので)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-11-10/SMPMW3T1UM0W00
植田日銀総裁、グリーン投資による物価上昇圧力は対処可能
藤岡徹、エディ・ダン
2024年11月10日 10:44 JST

『日本銀行の植田和男総裁は日本の物価上昇率が2%を下回っている現状では、グリーン投資によるインフレ圧力にはしばらく対処できると、スイスで開催された国際会議で9日述べた。』(上記URL先より)

でまあ以下箇条書きになっている植田さんの発言を見ると、気候変動対応に関する政策がどのような影響を与えるか、という話の文脈で説明している話ではあるんですが、こんなの賢しらに「インフレ圧力にしばらく対処できる」とか言う必要ないじゃん以下同文、という話でして、1年半ミスコミュニケーションを繰り返しているのにこの脇がガバガバに甘いの何とか改善しないもんですかねえとしか申し上げようがない。

まあ植田さんがフリーで言ってるのか、大本営の振付師の通りに踊っているだけなのかはよくわからんのですけれども、大本営の振付師の振付でこの発言させてるんだったら、振付師ちょっとお前その席どけやという話で、ミスコミュニケーションの反省が全然ない(我々の発言を理解できない市場が悪い、としか思っていないとそういうムーブになりえる)のが植田さんなのか振付師なのかはわかりかねますが、いずれにしましてももうちょっと脇を締めて頂かないと政局だって不安なんだからいつなんどき日銀に集中砲火が向いてくるか分からんという緊張感をもって頂きたいものです(黒田時代にすっかり弛緩してしまって全然治っていない感が強いんですよ傍からみてると)。



2024/11/05

〇総裁記者会見:いくつか面白特徴のある会見でしたな

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2024/kk241101a.pdf
総裁記者会見
――2024年10月31日(木)午後3時30分から約65分

・すさまじいまでの棒読みムーブに「余計な発言をしないように」という強い意志を感じたwww

最初の幹事社質問ですが、

『(問)一問目が次の利上げについての考え方についてお伺いしたいと思います。次回会合で7 月の利上げ決定から 5 か月ほど経過することになります。次回以降の会合で、経済・物価がオントラックなら、利上げできる環境は十分整うと考えていらっしゃいますか。足元の円安の進行による物価の上振れリスクへの見方も含めてお願い致します。』

円安に絡めては絶対来るわな。

『二問目は米国経済についてお伺いしたいと思います。展望レポートの政策運営のところでも、米国経済に言及しています。米国経済の現状をどう評価し、新大統領の政策が、日本経済、金融政策に及ぼす影響をどのくらいの時間軸で見極めていけるとお考えになりますでしょうか』

これもまあ聞かれる罠、という典型的な質問2問来ましたが植田さんの回答は・・・・・・・・

『(答)まず当面の政策運営についてですが、先ほどの繰り返しになりますけれども、金融政策運営については、経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和度合いを調整していくことになると考えています。』

『そのうえで、米国をはじめとする海外経済の今後の展開や金融資本市場の動向を十分注視し、わが国の経済・物価の見通しやリスク、見通しが実現する確度に及ぼす影響を見極めていく必要があると考えています。』

見事な棒読みムーブというか展望レポートの文言通り。

『見極めに必要な時間や利上げのタイミングについて予断は持っておらず、今後、毎回の決定会合において、その時点で利用可能な各種のデータや情報から、経済・物価の現状評価や見通しをアップデートしながら、政策判断を行っていく方針です。』

これもまた棒読みですねえ。

『為替相場ですけれども、その水準や評価について具体的なコメントは差し控えたいと思いますが、もちろん経済・物価に大きな影響を与えるものではあります。』

からの、

『為替円安の物価への影響を考える際には、先ほど申し上げましたが、企業の賃金・価格設定行動が積極化するもとで、過去と比べると、為替の変動が物価に影響を及ぼしやすくなっている面がある点には、引き続き、留意する必要があると考えております。』

これまた展望レポートに書いてある文言通りの棒読みムーブ。さらに二問目については、

『米国経済ですけれども、前回会合以降、9 月の雇用統計が市場予想を大幅に上回るなど、良好な経済指標がみられています。もっとも、今後の米国経済を巡っては、これまでの利上げが経済・物価に及ぼす影響など、不透明な部分がまだなお大きいと判断しており、その動向を注視していく必要があると考えています。』

で??

『また、アメリカの大統領選挙後の新政権の政策運営、それがわが国に及ぼす影響ですが、これは、他国の政治情勢に関わるものですので、具体的なコメントは差し控えたいと思います。』

じゃあ米国ガーを連呼するなや、と思いますが。

『ただ、もとより、先ほど申し上げましたように、米国をはじめとする海外経済の今後の展開や、金融資本市場動向を十分注視し、私どもの経済・物価見通し、リスク、見通し実現の確度に及ぼす影響を見極めていく必要があると考えております。』

ちょwwwこれも展望レポートの文言通り、ということで初手から盛大な棒読みムーブをかましておりまして、植田さん「余計なことは言わないように」と本人がやっと反省して心掛けているのか、振付師に厳しく言われているのかは知らんですけど、まあ余計な事を言わないように、というのがこの棒読みムーブに出ているんでしょうなあと思いました。


・「時間的余裕」についてと政治圧力に対して植田さん「この正直者!」って思ったんですけどね

次の質問。

『(問)二問お伺いします。一点目が現状で追加利上げの判断に時間的余裕があるとお考えかどうか。もし先ほどの回答であえてそう発言されていないのであれば理由も併せてお願いします。

もう一点が政治との関係についてお伺いします。今月上旬に石破首相が追加利上げする環境にないと発言されました。また、衆院選で与党が過半数割れをして政権の枠組みによっては利上げを急ぐべきではないという声が強まる可能性もあると思います。こうした政治側の意向が日銀の政策判断に与える影響について、どのようにお考えか。』

まあ後半は紋切り型の回答になりますけどねw

『(答)どちらにつきましても私どもの基本的な姿勢は、先ほど申し上げましたように、金融政策運営については、経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて適宜政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくということでございます。』

wwwwww

『これは二問目が先になりますが、特定の政治家のコメントにはコメントしませんけれども、そうしたものがあるとないにかかわらず、今申し上げたようなスタンスで臨みたいというふうに思っております。』

>今申し上げたようなスタンスで臨みたい

ここはリアタイで聞いてて吹いたのですが、「臨む」じゃなくて「臨みたい」ってところに物凄い勢いで植田さんの本音が駄々洩れしているなと思いまして、「臨む」と言い切れないのはつまり日銀が政治圧力によわよわであり、それに対して植田さんは何らか思うところがあるのか、それとも植田さんが「臨みたいんだけどいざ政治圧力が来ると耐えられないんでちゅー」という悲しさを表明してるのか、そのあたりは判然としませんけれども、「臨みたい」という願望系になっていて「臨む」という意思表示系になっていない辺りに植田さんの本音を垣間見ることができましたwwwwwwwwww

『そのうえで一番目のご質問ですけれども、こうした判断、基本的な判断については毎回の決定会合で、そこまでに得られたデータ、その他の情報をもとに判断していくということにしたいと思います。』

>判断していくということにしたいと思います

これも同様なのですが、「判断していきます」じゃなくて「判断していくということにしたいと思います」って持って回った言い方が植田さんの悲しみが止まらないという風情でありまして、中々泣けてくるわと思いました。


・時間的余裕封印宣言

ということでさっきの質問では「時間的余裕」の回答が無かったので更問。

『(問)最近、時間的余裕という言葉を多く使っていらっしゃるように感じるんですけれども、改めて、今どういった理由で時間的余裕がある状況なのかというのと、またその余裕とおっしゃったときに、どのぐらいのスパン、期間で考えていらっしゃるのか、例えば次回の会合までの余裕なのか、それとももっと中長期的なものなのかというのを知りたい方が多いと思いますので教えて頂ければと思います。(後半割愛)』

さっき時間的余裕について微妙にスルーしてたのでこういう質問になったのですが、

『(答)前半ですけれども、時間的余裕という表現についてですが、やや長くなるかもしれませんが、私どもこの表現を使い始めたのは 8 月に入って以降だと思います。』

ほうほうそれでそれで?

『それで、その理由と致しましては申し上げるまでもないかと思いますが、当時の、特に米国の弱い雇用統計、予想以上に弱かった雇用統計、こうしたものに影響されまして、マーケットが非常に荒い動きになったというようなことを、非常に重要な現象だし今後の日本経済をみる際にも重要なリスクと判断しまして、ある意味他のリスク以上にここについて注意深く検討していかないといけないと、この姿勢を注意深く検討していくという意味で、時間的余裕を持ってみていくという表現で表したところでございます。』

振れ幅が大きくて遡及改定もホイホイと行われる雇用統計の単月のムーブでこれだけ注目する中央銀行、しかも自国じゃなくて他国ってのは何かもう笑えますし、そもそも論としてお前ら単に株式市場にビビっただけだろという過去は無かったことになっているのがインチキ臭い。

『現状、その以降の動きをみていますと、データが少しずつ改善し、市場も少しずつ安定を取り戻し、更に米国の統計に限りますと、さっき申し上げましたようにここ 1 か月くらいに出ている統計についてはかなり良いものが続いています。』

人の国の単月の指標で一喜一憂するなよ・・・・・・・・・・・

『それでもなお、完全に安心できるというところまではいっていないんで、先ほどの展望レポートの最後のところにある文章には、米国経済をはじめとする世界経済の動きという表現を付け加えて、ここのリスクをまだ重視してみてるという姿勢は貫いてはいますけれども、』

つまりこの説明ですと展望レポート基本的見解の最終部分にある「追加文言」は「下振れ警戒文言」になるので、こちらを見ますと普通に「政策修正に新たな留保文言を加えた」というハトハトチキンムーブに見えてしまいますが・・・・・・・

『やや行ったり来たりになりますが、リスクの度合いは少しずつ下がってきていますので、もう少しみて今のようないい動きが続けば、普通のリスクと同等のところになる。』

ああ要するに株式市場にビビって入れた「時間的余裕」をフェードアウトさせたいとwww

『そういう意味で、このリスクに光を強く当てて、時間的余裕を持ってみていくという表現は不要になるのではないかというふうに考えて、今日も使ってないということでございます。』

ということでここでやっと「時間的余裕」の封印ムーブが来ましたが、「リスクに強く光を当てる必要はない」のであれば、そもそも論として何で展望レポートの最終段落に余計なもんを追加したのかというのが訳わからんですわ。

『ただ他のリスクは常にあって、それはまた米国について新しいリスクが出てくるかもしれませんし、それについては毎回毎回、普段通り決定会合で判断して、政策判断につなげていくということでございます。(後半割愛)』

って言ってるけど、米国って上振れリスクだってあるよね、というかそっちの方が今は大きいんじゃないですか、というのは後の方でも質問がある。


・「市場の安定性」も結局は8月のその場しのぎのコミュニケーションでしたなwww

こんな質疑がこの次にありましてですね、

『(問)(前半割愛)もう一つ金融市場についてはですね、これまで引き続き不安定であるとおっしゃってましたが、徐々に安定はしてきたというような表現をされてましたけれども、円キャリートレードの投機的なポジションも解消されましたが、今後、市場の安定度合いを見極めるうえでは、どの辺を注意してみていくお考えでしょうか。』

と来まして植田さんの回答ですが、

『(答)(前半割愛)それから、市場の安定性を評価していく際にどういうデータをみていくのかという二番目のご質問ですけれども、これは特定のこのマーケットのこういう指標をみるということを具体的に申し上げるのは適切でないかと思います。つまり、いろいろ不安定な動きになるときにどこが不安定になるかというのは、その時その時で変わり得るものですし、われわれとしては様々な広い指標について、なるべく努力して良い情報を得て、全体をみているというふうに申し上げるしかないかなと思います。』

お前が最初に言い出したんだろうがお前が、ということでどの口がゆうてますねんという発言を堂々としておられる次第ですが、結局この「市場の安定性」も8月の株価にビビって慌ててその場しのぎで威勢の良い事言っちゃいましたゴメンチャイって素直に言えばいいものを素直に言わないもんだからこういう謎発言になるのでした、こまった人たちではあります。


・7月利上げにおける市場金利の動きが「予想通りの動き」ってウソつけとしか言いようが無い

この質疑なんですけどね、

『(問)二点伺います。一点目なんですけれども、現状の利上げの評価、有効性について伺えればと思います。7 月末の追加利上げで企業融資ですとか住宅ローン金利への影響の大きい短期プライムレートも上がりました。一方で、預金も金利が段階的に引き上げられまして、地域金融機関では、市場金利を上回る、ちょっと一見すると経済合理性に欠くんではないかという水準でキャンペーン的に集める先も広がってます。資金余剰の金融環境の中で、あとオーバー・バンキングであったり、あと金利形成で最近ネット銀行も全国的に存在感が増してます。今回の利上げ局面でです。金融緩和度合いは、想定通り調整されているのか、今のご認識を伺えればと思います。(後半割愛)』

長いわ質問が、と思いますがこの回答の中で植田さんはですね、

『(答)まず、7 月の利上げの影響ですけれども、これは概ね予想通りに近いところの動きになっているかなとみています。市場金利の動き、それから貸出・預金金利がいくぶん上昇しているというようなこと、』

ちょwwwwwwおまwwwwwww市場金利の動きwwwwwwwwwww

えーっとすいません、7月から足元にかけてなんですが、市場金利ってろくすっぽ上がっていませんし、何なら短国とか下がってるんじゃないか位の勢いになっていますけれども、どこがどう「7月利上げ後の市場金利の動きがおおむね予想通りに近いところの動き」になるのか小一時間問い詰めたいというか、どういう認識でいるんだよマーケットの事を、という所ではあります。

以下この質疑応答では、

『ただし、もちろんその中に、競争が厳しいところでは、ちょっと動きが大きかったり逆に小さかったり、予想からずれてるところもあるかと思います。それから、そうは言っても、もともとの利上げ幅が 15bps程度であったということで、金融機関の貸出態度や企業からみた資金繰り等のところには、強いマイナスの影響が出ているという状態では、全くないかと思います。マインド面にも今のところ大きな影響はみられていないということだと思います。8月の前半にマーケットの混乱はあったわけですが、それがわれわれの金融システムにマイナスの波及効果をもたらしているということも確認できていないというふうにみております。(後半割愛)』

ということで、そもそも質問も市場金利の話ではなくていわゆるファイナンシャルコンディションの質問だったのでそっちの回答になっているのはまあ良いんですけど、この「市場金利」に関しては聞き捨てならないというか、植田さんがうっかり口走っただけなのかもしれませんけれども、そういう事やぞ植田さん、というお話ではあります。


・市場金利とかいうから債券市場の質問があったのだが

その次の質問。

『(問)最近の債券相場についてお伺いしたいんですけども、ストック効果とか米国の金利低下に影響されてるのは分かるんですけれども、日銀は今日も言われてましたけど、見通し期間の後半にかけて基調的なインフレ率が 2%にいくという見通しを持たれてて、そうなってくると想定される中立金利が大体 1%で、生産性の上昇を入れるとそれよりも上で推移するのが普通かと思うんですけども、長期金利がやはり現状1%以下で推移していると。』

日銀の買入が過大なのがとにかくよくないんですけど。

『現にいろいろ聞くところによると、やっぱり日銀が言われている景気見通し、物価見通し、正常化のパスに関して市場参加者があまり信じてないような気もするんですけれども、』

それはどうかと思うのでありまして、市場でポジション持っている人たちも普通に12月か1月(12月と1月の間に本質的な差はない、これが3月になると本質的に違う感じになってくる)に利上げと思っている人の方が多いし、何なら正常化のパスが日銀は遅いと思っている人多いと思うんですけどね。

『どういう状況になってくれば、市場参加者が日銀の正常化のパスとか、物価の見通しを信じて、それを金利に織り込むようになっていくようなことが考えられるのか、その点をお伺いしたいと思います。』

という質問で、これひっかけなのかもしれないけど、何で輪番の弊害について聞かないんだと思いました。まあそれはともかくとして回答が中々の面白回答でして。

『(答)確かに現状 10 年金利が 1%ないし 1%弱というところと、持続的な物価安定が達成されたときのインフレ率は 2%というものを比べますと、中立金利の見方次第ですけれども、両者の整合性はどうかという質問はあり得ると思いますが、私どもの見通しにしましても、妙な言い方になりますけれども、中心的な見通しとしてこういうことであるという見通しを 24、25、26 年度について出しているわけで、例えば24[年度]については、その可能性はかなり高いと思いますけれども、25、26[年度]と先に行くほど 100%で当たるというところからは、かなり確度は下になっているということだと思います。』

何を言い出すのかと思ったら、

『マーケットの価格形成はそういうところまでも織り込んでなされていると思いますので、中心的な見通しがどうかという質問だけを投げかければ、そんなに違いはないかもしれないかと、そこも違うかもしれませんが、差はそれほど大きくないかもしれないと思います。しかし、いろいろなリスクシナリオを考えた際に、現状程度の長期金利水準になるということは十分あり得ると思います。』

市場が各種の下振れリスクを織り込んでいるので長期金利が一般的に考えられる長期的な中立金利よりもだいぶ下で推移しています、という面白説明をしているんだが、だったらお前ら「ストック効果」とか言ってるのはアレは何なんだという話でして、アホみたいに長期国債の買入を継続して冗談みたいなバランスシートを持っている状態で長期金利に押し下げ効果が出ているのに、その押し下げ効果があたかも無いような話をして「市場は下振れリスクを織り込んでいるのではないか」とか言い出すの幾ら何でも屁理屈にもほどがあると思います。

『両者が収束していくのは、お互いにどちらが先行するか分かりませんが、もう少し先の見通しに関する確度がもう少しみえてくるかなとは思います。』

とかいう無茶苦茶な説明になっていますが、これ長期国債の大量買入れが無いならおっしゃる通りではあるのですが、長期国債買入をバンバン実施して長期金利に低下圧力を恒常的に掛けているのにこの言い草は酷いとしか申し上げようがないのですが、とにかく今の日銀って「その場しのぎの屁理屈」だけは達者なので、このように「依然として続いている大量の長期国債買入というのを無視するとこの部分だけで言えば理屈は通っている」というようなその場しのぎ説明が見れてしまう、ということになってくるんだと思います(個人の感想です)。


・為替円安の物価上振れリスクに関しては終始棒読み対応

実は前にもそういう質疑があったのですが割愛しています。

『(問)質問二問あります。やや重なるんですけれども、足元の為替相場、円安にちょっと戻ってきてるっていう部分について、物価上振れリスクの警戒度合いみたいなところはどういうふうにご覧になってるかっていうのが一点です。(後半割愛)』

『(答)円安がもたらす物価上振れリスクについてですけれども、先ほどもちょっとお話ししたんですけれども、問二ですか、幹事社からの。過去と比べますと企業の賃金・価格設定行動が積極化するもとで、為替の変動が、この場合円安ですが、物価に及ぼす影響が少し大きくなっているという面には注意しつつ、先ほども別の方の質問でお答えしましたように、円安の背後にある経済の動きと総合して物価への影響をみていくということでございます。(後半割愛)』

なんという棒読み(棒読み)


・米国経済のダウンサイドリスクが心配されていたのに7月に大胆にも利上げをしたという恐ろしい発言キタコレ

こちらの質疑で植田さん驚異の回答を行ったのですが、

『(問)総裁、先ほど時間的余裕があるという言葉、リスクが低減することによって必要なくなってきていることをおっしゃっていらっしゃいましたけれども、それに加えて今日の展望レポートでもですね、オントラックという姿がみえてるということは、総裁の中では利上げへの環境は少しずつ、まだ不確実性は高いんですけど整いつつあるというお考えなのか。米国経済についてご覧になっていくということですけれども、大統領選は来週ですが、大統領就任というのは来年 1 月になると思います。それまで総裁は待たなければいけないというようなお考えを持っているのかどうか、お願い致します。(後半割愛)』

この回答、クソ長いので途中から引用しますのはビックリしたのはこの部分でして・・・・・

『(答)まず、ここのところ、私どもが私どもの見通し実現の確度についてどういうふうに判断しているかというご質問だと思いますけれども、これは政策委員一人一人で違うと思いますけれども、今日はそれを総合した結果、今日のところは現状維持でいいという答えになったということだと思います。(途中割愛)当面時間をかけて見極めたいというふうに申し上げていた米国にまつわるリスクは、少し長く取れば 6 月のどこかくらいから始まった近い将来の米国経済のダウンサイドリスクについての見方ということであるというふうに私どもとしては認識しています。(以下割愛)』

> 6 月のどこかくらいから始まった近い将来の米国経済のダウンサイドリスク
> 6 月のどこかくらいから始まった近い将来の米国経済のダウンサイドリスク
> 6 月のどこかくらいから始まった近い将来の米国経済のダウンサイドリスク

おいこらちょっと待てという話ですが、この次の質疑でも同様に、

『(問)(前半割愛)もう一点がさっきからちょっと出てる時間的余裕の部分なんですけれども、今日はあえて使っていないっていうふうにおっしゃったと思うんですけど、今日はあえて使ってないってことでよろしかったんでしょうか。』

というのに対して、

『(答)(前半割愛)それから、二番目の時間的余裕の話ですけれども、これは直前のご質問でもありましたが、6、7 月から 9 月上旬くらいまでに心配されていた米国経済のダウンサイドリスクにまつわるもの、そこのところを見極めるための時間的余裕という意味で使っていますので、これがなくなるとともにこの表現も使わなくなるというふうに考えています。』

>6、7 月から 9 月上旬くらいまでに心配されていた米国経済のダウンサイドリスク
>6、7 月から 9 月上旬くらいまでに心配されていた米国経済のダウンサイドリスク
>6、7 月から 9 月上旬くらいまでに心配されていた米国経済のダウンサイドリスク

まwwwwwじwwwwwwかwwwwwwww

こではリアタイで聞いてて思わず声が出てしまった部分ですが、ちょっと待てお前ら7月利上げの時に米国のダウンサイドリスクを心配してたのかよという話で、そんな心配があるのに何で利上げしたんだよおどれらはという話だし、だいたいからして7月お前らそんな説明してなかっただろというお話。

まあアレですな、この「米国経済のダウンサイドリスク」を持ち出したのも結局のところ8月の株価暴落にビビって言い訳を考えて後付けで持ってきた話であることはほぼ確実なんでしょうけれども、そう言ってしまうと身も蓋も無いので、もうちょっと高尚に考えていましたと見栄を張るために「8月」とは言わずに「6、7月」って言い出したんだろういい加減にしろというお話なんですが、別に植田さんが間違えていったわけではなさそうなのは2回連続してこの言い方をしていたのですから、そういうことに後付けで勝手になっている、という事を示すわけでございまして、さっきの市場金利の説明もそうですけれども、何ちゅうその場しのぎの屁理屈昭和温泉旅館、とあきれてしまう次第であります。


・8月の市場の動きはまさにお前らのコミュニケーションによる投機ポジションの積み上がりだろいい加減にしろ

こんな質疑がありましてですね、

『(問)(前半割愛)二点目は、先週ですか、IMFの講演において、総裁がおっしゃってた点で面白いなと思ったのが、不確実性が高いうちは、金融政策の変更は慎重にゆっくり動きたいんですけれども、あまりゆっくりするという印象を与え過ぎると、低金利が長期間続くことによって、そういう市場の期待によって、投機的なポジションが積み上がってしまう可能性もあると、その両方のバランスが大事なのである、というご発言があったと思います。両者のバランスを考えた際、今の日本の経済やマーケットの環境というのは、どちらをより重視して政策運営、コミュニケーションをとるべきなのか、お考えをお願いします。』

『(答)(前半割愛)二番目の不確実性が高いときには、確かにいろいろな政策は注意深く進めるということですが、金融政策においては、そういう期待を過度に作り出すと、場合によっては不健全な投機的ポジションの積み上がりになってしまうリスクもあるということで、その辺のバランスをどう考えるのか、というご質問だと思いますが、これは、今どの辺というふうにお答えするのは難しいですけれども、結局は、私どもの経済・物価見通しと、それから今後の金融政策の考え方、戦略を丁寧に繰り返しご説明していくということに尽きるのかな、というふうに思っております。』

いやそれに失敗して8月頭の盛大なポジション巻き戻し起こしたんだろ反省するという思想は無いのかよ・・・・・


・植田さんの本音駄々洩れシリーズその2で「8月9月は普通の政策運営じゃなかった」らしいです

これはワロタw

『(問)先ほど来からの繰り返しで恐縮なんですけども、時間的余裕があるという言葉をですね、今回使わなかったとおっしゃった理由に米国経済のある種のリスクが低減したということの趣旨をおっしゃっているんですけども、なかなかちょっと理解しにくいとか、市場も理解しにくいかなと思うんですが、この時間的余裕があるという表現、今回なくしたことは端的に大雑把に言うと、これは次の利上げに向けてのステップが以前よりも高まったという理解でいいんでしょうか。』

に対して、

『(答)先ほど来申し上げてきたような意味で米国経済に関するある種のリスクに特に注目するということは、将来復活する可能性はゼロではないとは思いますけれども、いったんやめて、普通の金融政策決定のやり方に戻るということでございます。毎回毎回データと情報を点検して判断していくということでございます。』

>いったんやめて、普通の金融政策決定のやり方に戻る
>いったんやめて、普通の金融政策決定のやり方に戻る
>いったんやめて、普通の金融政策決定のやり方に戻る

本音駄々洩れwwwwwwwwwwwwwwwwww

ってこれつまりは8月9月は異常なことをしていた、っていうのが植田さんの認識だって話ですな。いや別にリスクが高いものがあるのを見極めるってのも普通の金融政策決定だと思うのですが、このように8月9月の動きから今回への流れを「変化」と見て「普通の金融政策決定のやり方に戻る」って言ってるのは、それ以前が普通じゃなかったというのを思いっきりお漏らししている状態で大変に味わいが深いですwww


・財政健全化についてはもっと言え

この質疑は良かったがもっと財政の健全運営について日銀は言うべきである。

『(問)
金利が上がってくるってことが前提として、企業とか家計とかっていうのは金利が出てくる世界に対して備えってのができてきてるかと思うんですけど、政府の部分ということを考えるとどうなのか、先ほどからも政治の影響っていうのが出てきますけど、だんだんと財政拡張的な政策が打ち出されていくと、今後日銀としてはどういうふうになっていくのかということを、お考えをお聞かせ頂けますでしょうか。』

『(答)私ども、財政政策については、政府、国会においてお決めになるものですので、コメントを差し控えるということでずっときております。ただし、そういう中でも、中長期的な財政の維持可能性についてきちんと配慮して頂くことは重要であるということはいつも申し上げています。』

いつも申し上げております、って大見得切るほど言ってるかいな・・・・・


・展望レポート最終段落の文言追加はこの質疑を見ているとやっぱり「下振れ警戒追加文言」に見えてしまいますよね

『(問)今回の展望レポートの最後の部分の金融政策運営の文章に加わった、7 月になかった新たな文章の部分ですけども、これは今のところ市場のファーストリアクションとしてはどちらかというと、物価目標実現の確度が下がる下振れリスクについて注意を喚起したって文章だという解釈をされているようですけども、』

でしたなあ。

『逆にその確度が高まる上振れリスク、例えばアメリカの新政権の政策運営次第ではインフレ的あるいは金利に上げ圧力がかかって円安になって、結果的に日本の物価に上げ圧力が加わる、結果的に確度が高まるような上振れリスクもあり得ると思うんですが、』

これは実にいい質問である。リアタイで聞いてて「よく聞いた」とか声出てしまったw

『そういったリスクも留意するという含意があってそれを加えているんでしょうか。その辺りはいかがでしょうか。』

でもって植田さんの回答。

『(答)ちょっと難しいところですけれども、7 月と比べますとおっしゃったような含意もあるかもしれませんが、むしろもっと直近の 9 月ぐらいに私どもが申し上げていたことからしますと、ここの米国をはじめとするというリスクをもっと強く申し上げていたわけで、それと比べて少しリスクの評価、弱めになってるけれどもちょっと残っているという感じを出せればなという文章でございます。』

うーんこれだと下振れ警戒だけに見えてしまうな〜。


・植田さんの本音駄々洩れシリーズの白眉「ワシは内田や渡辺とは違うんじゃ馬鹿にするな」

これはクソワロタんですけどね。

『(問)春闘についてお伺いします。先頃、連合は基本構想として 2025 年の春闘で 5%以上と、昨年と同じ水準の目標を示しました。昨年が 5.1%の賃上げを実現したことと、足元の物価を考えると抑えた目標とも言えるかと思うんですけれども、中長期、巡航軌道として 2%の物価目標が実現するという前提をもとに巡航軌道を描いているということです。政府・日銀が掲げる物価目標が、賃金の一つの、決める大きな要素である春闘でも前提とされたことについて総裁どう受け止めますか。』

とまあ質問の方は至って普通の質問なんですけどこの回答を聞いててこれまたリアタイで爆笑の発作が起きました。

『(答)以前より私はあまり使ったことはないかとは思いますが、物価や賃金が上がらないというノルムが社会の中に
形成されて、』

>以前より私はあまり使ったことはないかとは思いますが
>以前より私はあまり使ったことはないかとは思いますが
>以前より私はあまり使ったことはないかとは思いますが
>以前より私はあまり使ったことはないかとは思いますが
>以前より私はあまり使ったことはないかとは思いますが

もうね、この枕詞の後に出てきたのが「ノルム」なわけですよ「ノルム」。

先般もこの話をネタにしましたが、
https://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2024/data/ron240627a.pdf
「金融政策の多角的レビュー」に関するワークショップ
第2回「過去 25 年間の経済・物価情勢と金融政策」の模様

のPDF20枚目にある『(ノルムの位置づけ)』のコーナーで柳川先生と吉川先生が「ノルム」の話をケチョンケチョンにしていた訳ですが、植田さんも真っ当な学者として柳川先生や吉川先生の主張にシンパシーを感じている、というのがこの「以前より私はあまり使ったことはないかとは思いますが」に出ているのがクソ笑いましたし、

『それがインフレ率が上がることを難しくしてきたということがあったかと思います。おっしゃったように春闘の中で、2%という私どもの目標が一つのメルクマールとして使われるということになれば、』

という後にもう一度、

『そうしたノルムみたいなものが変わりつつあるということとも言えまして、2%の[物価安定の]目標が持続的になるという状態に一歩近づくのかなというふうに判断致します』

>ノルムみたいなもの
>ノルムみたいなもの
>ノルムみたいなもの
>ノルムみたいなもの
>ノルムみたいなもの

wwwwwwwwww

まあこれは「ワシは内田や渡辺とは違うぞ」という植田さんの気概を感じて大変に素晴らしく思いました。

といったところで他のネタまでやっている時間もないので本日はこれで勘弁。







2024/10/30

〇総裁会見ってよく見たら味わいがある部分があったことに今更気が付くなど

まあ気が付いたというよりも読者様から「これって意味あるんじゃないの」と言われてああそうだとなったわけですが、こういうのって画面でスクロールしながら見ていると見落としがちでして、紙に打ち出して一覧性のある形で視認した方が気が付くんですよね。

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2024/kk241028a.pdf
植田総裁記者会見(10月24日)
――G20終了後の加藤財務大臣兼内閣府特命担当大臣、植田総裁 共同記者会見における総裁発言
2024年10月28日
日本銀行
―― 於・ワシントンDC
2024年10月24日(木)
午後2時20分から約18分間(現地時間)

2ページの部分ですけれども、ここで2回連続してある単語が出ているのですよ。それが・・・・・

『【問】時間的余裕は。

【答】 ””一応”” 、時間的な余裕はあるというふうに考えております。』(強調部分は引用者による、以下同じ)

『【問】 (割愛しますが金融市場が不安定云々の話)』

『【答】 マーケット動向ですけれども、 ””一応”” 、引き続き不安定な状況にある、あるいは例えばインプライド・ボラティリティ等をみても、(以下割愛)』

っていうことで、「時間的余裕」の話と「金融市場が不安定」の話に関して今回どっちも植田さんしらっと「一応」というのをつけている(ちなみにF5でテキスト検索すると「一応」がこの2か所だけなのでハイライトされたのを見るとビジュアル的にエモいですwww)という面白ポイントをうっかり見落としてしまいました。スクロールしながら逐語チェックだけするよりも、印刷で紙に出して紙ベースで全体を見る、という作業ダイジダイジネーと思ってしまいましたというご教訓ですな。(最近はワイも全部紙に出すのではなくてWebベースでみることが増えた)

てなわけで、この「一応」の連呼、しかも7月会合の後のハトハトチキン転換の際のポイントになっている「金融市場が不安定」という部分と、金融政策修正に対するやる気のなさ満々のメッセージとして打ち出している「時間的余裕」(この物言いがなんかの拍子に日銀を焼き尽くす言葉になりかねないので言い方変えろというのは昨日申し上げた通り)というのに「一応」というのが今回しらっと入っているのは実は大事かもしれない話でして・・・・・・・

まあ何ですな、この為替水準ですと、そもそも前回利上げ前の水準(介入前160円台、介入後155円近辺)に接近してきているのですから、その理屈から言えば「上振れリスク対応の政策調整」っていうのをしないと話がおかしくね??って水準になっている訳ですから、この状況でさらに円安を加速させる不用意なことをしてしまうのはあまりにも宜しくないということになるので、日銀とてそこまでのホームラン級の馬鹿ではないはずなので、今回は円安加速させないメッセージの出し方をしてくると思うのですよね。いやまあもちろん日銀がアタクシの考えるほど危機感以ってなくて能天気に太平楽なんだったらその限りに非ずですが。

という読み筋では考えているものの、先週金曜日の説明って結局時間的余裕はあるわ金融市場は不安定だわで大丈夫かこいつら、というのが昨日の趣旨だったと思うのですが、上述のように読者様(持つべきものはツッコミを入れてくれる読者様です感謝感謝)から「一応」の意味はどうよ、とぶっこまれてみまして「ほほー」と感じ入る次第。

つまりですね、この「一応」はトーン変更の予告でして、明日出てくる展望レポートというようりはその後の記者会見になると思うのですが、これまでのハトハトというかチキンの方に寄っていますけれども、「米国経済ガー」とか「金融市場の不安定ガー」とかの話について、ある程度中立に戻す形で説明することによって、ハトハトチキン会見からの円安爆裂、という日銀悪夢の展開を回避したいのだが、時間的余裕云々や、金融市場の不安定云々をいきなりジャガーチェンジしたらウソツキと言われますので、ここは一丁「一応」と入れることによって、「展望レポートの作成にあたり熟慮してみましたが」とか言いながらトーンをいじってくるんじゃなかろうかって気がしてきました。

とは言いましても、いきなり「時間的余裕はない」とか言い出すわけにもいかないでしょうから、「7月に政策調整を行う判断をした時点では上振れリスクの対応が必要だったが、現時点では7月の時のように直ぐに追加の政策調整を行わなくても良い状況と判断している」とかいう感じのトーンにする程度でしょうし、金融市場についても「投機的な動きによる不安定さなどは特段観測されません」位のトーンダウンにとどまるでしょうから、それで為替市場様が許してくれるかどうかは知らんけどな。

なので、7月展望の物価見落としのリスクの上振れ文言って削除しない方が安全(削除したら目立つので円安に飛びそう)だと思っていましたが、この「一応」というトーン修正予告(とアタクシが勝手に思っているだけ)を見てやっぱそっちの方向じゃないのかねと思うのでありました。

ま、当たるも八卦当たらぬも八卦ということでオナシャス!!




2024/10/29

〇今回の決定会合の注目材料は「日銀のハトハトチキン情報発信をどうるすのか」ですね

・・・・ということで木曜日の日銀会合、政策動かないのは確定で良いのですけれども、問題になるのは「ハトハトチキンモードの情報発信をどうするのか」という話になると思います。

でまあG20後の会見ですが(そういやネタにするの忘れてたかなと思ったら会見録が出たの昨日でしたので後の方でもう一度ネタにします)

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241025/k10014618691000.html
日銀 植田総裁「時間的な余裕ある」利上げ慎重に判断する考え
2024年10月25日 9時22分

『その上で今後の金融政策の判断について植田総裁は「円安だけではなく、背後にあるアメリカ経済や大統領選挙の動向など全体を見た上で日本の物価にどういう影響を及ぼすのか丹念に分析して見極めていきたい。時間的な余裕はあると思っている」と述べ、利上げは急がず慎重に判断していく考えを改めて示しました。』(上記URL先より)

>時間的な余裕はあると思っている
>時間的な余裕はあると思っている
>時間的な余裕はあると思っている

って選挙前ではあるのですが、こう言ってしまったの結構な不覚でして、ここから円安が進行したり、物価高批判が高まったりした場合において、日銀がこのように「時間的な余裕はある」などと言っていると「日銀は人々の暮らしを何だと思ってるんだ」と批判の矛先を向けられやすくなる訳で、石破さん(あるいは野田さん)からしてみたら植田総裁って前任の首相から引き継がれた総裁だから別にぶった斬ってしまっても痛くも痒くも無いわけで、不人気モードの起死回生の一発に「日銀が円安などによるコストプッシュを抑制しないのが悪い」と批判の矛先を日銀に持って行って経済政策の不人気挽回というストラテジーに出るかもしれない訳でして、そんな中でこの「時間的な余裕はあると思っている」という言い方は表現として如何にもマズいと思うのですよね。

ということでして、今回の決定会合で別に予告ホームランとかそんなもん出る訳はないと思っていますが、従来の米国経済下振れリスクガーと金融資本市場の不安定さガーのハトハトというかチキン全開の物言いをどの程度修正してくるのか、それから「時間的な余裕がある」発言の中和(例えば「待つことのリスクがさほど大きくないと認識している」程度に寸止めしておけば、いざとなったら「状況が変化して待つことのリスクが大きくなったので対応した」と言えるのでまだマシかなと思うのですが)をしてくるのか、という辺りが注目されるところだと思います。

まあこの辺りで従来通りのハトハトチキン発言をして、「米国の中長期的な見通しが不透明」だの「時間的な余裕はある」とかチキンモードを連発しておりますと、それはどっからどう見ても円安投機してくださいと言わんばかりの情報発信になってしまいますし、さらに言いますとそれって12月利上げを完全否定する情報発信になってしまいます(日銀が後日どう屁理屈を捏ねようとも市場は「サプライズ」扱いするという意味)ので、やはり円安に飛びやすくなる訳でして、その辺の懸念が今の日銀大本営にアリやナシや、というのが会見(あるいは展望レポートのリスク認識とかの辺り)で見えてくるんじゃないかと思います。ということで注目したいですな。


〇という訳でG20後の植田総裁会見です

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2024/kk241028a.pdf
植田総裁記者会見(10月24日)
――G20終了後の加藤財務大臣兼内閣府特命担当大臣、植田総裁 共同記者会見における総裁発言
2024年10月28日
日本銀行
―― 於・ワシントンDC
2024年10月24日(木)
午後2時20分から約18分間(現地時間)

・米国経済の不確実性問答

『【問】植田総裁に伺いたいんですけれども、総裁は最近の講演や会見で、今後の利上げの判断に当たって、米国をはじめとする海外経済を注視するという姿勢を繰り返し述べられています。特に、米国経済の先行きについては依然不透明だという認識も示されてきましたが、今回G20などの会議に参加されてですね、この辺の認識がどのように変わったか、それから特に、直前に迫っているアメリカの大統領選のですね、不確実性についてどういうふうにお考えになっているかというのを伺えますか。』

コミュニケーションの時にああでもないこうでもないと次から次へと条件を変えてその場で都合の良い話をするもんだからこうやって聞かれるわけですが米国経済について聞かれるわけですな。

『【答】まず、大統領選については、皆さん、選ばれた大統領はどういう政策をするか、そしてどちらが選ばれるか分からないということで不確実性が高いなということは気にされていたところですが、』

まずこの時点でアホなんじゃないかと思うのですが、日本の総選挙みたいに急に実施の運びになっているなら兎も角として、米国大統領選挙なんて大昔から日程が分かっている話で「不確実性が高いから何もしません」とか言ってたら、事前にわかっている日程を捕まえて不確実性とか言ってるポジションテイカー普通にシバかれますけどこの人(なのか振付師なのかは知らんけど)は何を言ってるんでしょうかというお話ではあります。

『どっちに転ぶかは分かりませんし、私も特別な情報を持っていないので、それ以上のことはちょっと申し上げられないというふうに思います。』

事前に予定されている大統領選挙が不確定だからって言い出したら未来永劫「不確実性が高い」になりますが、植田さんとてアホウじゃないはずなのでどういう思いでこのクソ屁理屈を捏ねているのかちょっと頭の中を見てみたいですな。

『それから、米国経済を中心として、何か今回の会合で追加的な情報ないし認識が得られたかという点ですけれども、素直に申し上げまして、ごく最近のデータがそこそこいい、ということから、雇用統計等ですね、多少アメリカ経済の先行きについて楽観論も少し広がりつつあるかな、という気も致しました。』

米国経済の下振れリスクガーは引っ込めるつもりなのかしら10月展望で。

『ただ冷静に考えてみますと、その前は少し暗いデータが出ていたわけで、その後はちょっといいデータが出ているということですので、もう少しこのいいデータが長く続くのか、あるいは一時的な振れに過ぎないのかということについて分析を深めないといけないな、というふうに思ったところです。』

人の心配する前に日本の心配してほしいですし、そういうのはFEDがちゃんと分析していますよね、ってお話でFEDからしてみたら大きなお世話にもほどがありますね。


・円安と「時間的余裕」問答

次の質問は円安です(しかしさすがにG20ともなると質問がちゃんとしていますね)。

『【問】足元で為替の円安が進行しています。物価の上振れリスクに対するご認識と政策判断の時間的余裕があると言えるのかどうかについてお願い致します。』

ということでもう早速「時間的余裕」がバズワードになって質問されるわけでして、これ事あるごとに質問されますし、この「時間的余裕がある」を連呼するとニアータームの政策修正をマッコウクジラで否定することになりますし、「時間的な余裕がある」を言わなくなった途端に予告ホームラン、みたいになってしまってコミュニぇーション的によろしくない(政策反応関数が「時間的余裕がある/ない」は不味いでしょ)と思うのですが、まあこれはマズイ傾向ではあります。

『【答】足元の円安傾向の日本のインフレ率への影響というご質問だと思うんですけれども、これは先ほど申し上げましたような米国経済に関する見方の振れ、それが特に足元はちょっと楽観的な方に振れてる可能性があるというような背景のもとで起こってる現象、他の要因もありますが、というふうに思いますので、円安だけではなくて、その背後にあるアメリカ経済動向に対する見方、その他大統領選も関係しているかもしれませんが、この全体をみたうえで、それが日本の物価にどういう影響をするかということを、丹念に分析して見極めていくということかなと思っております。』

とりあえず「円安で物価上振れ懸念」と言いたくないのだけはわかった。

『【問】時間的余裕は。』

『【答】一応、時間的な余裕はあるというふうに考えております。』

何だのこの「一応」ってのは、って感じですが、さて10/25にこういっておいて10/31には時間的余裕の部分をどう説明するのか、まあ不毛な話ではありますが笑えるネタではあります。


・金融市場の不安定性

次がこの問答。

『【問】マーケットは最近、8 月初旬の大きな混乱からは安定してきたように思いますが、マーケットの不安定な状態というのは解消されたのか、まだいろいろリスクが残っているのかという点をお願いしたいです。マーケットやアメリカ経済の動向全体を踏まえて、世界経済について、総裁ご自身は以前に比べて若干リスクは後退したというご認識なのか、改めての確認をお願いします。』

これも結局毎回「マーケットが不安定か」って聞かれるわけで、政策反応関数をわけわからなくする屁理屈なんですよね〜

では回答。

『【答】マーケット動向ですけれども、一応、引き続き不安定な状況にある、あるいは例えばインプライド・ボラティリティ等をみても、一部のマーケットではかなり高い状態が続いているというふうに考えております。今後については、先ほど申し上げましたように、これを生み出している背後にある経済に関する認識がどういうふうにいくかということも含めて考えたいと思います。』

これもさっき引用したニュース記事が金曜の朝には出ていたので引用しましたが、急にIVとか持ち出してきましてお前は何を言ってるんだ状態。

『それも含めて、世界経済全体ということですけれども、全体としてはソフトランディングが実現していくという認識は引き続き皆さんの中にあると思いますけれども、国毎にある程度のばらつき、かなりのばらつきがあるというところに皆さん注意を払っているという点はあったかな、というふうに今回の会合を通じてみておりました。』

世界経済に関してソフトランディングが全体として実現だったら米国経済下振れガーの連呼とか中期的に不確実性が高いとか言ってる場合じゃないと思うのですけどね〜

ということで、この辺の説明が木曜の決定会合でどうなるのかを見てみたいので、今日明日でドル円155円オーバーでオナシャスと言ったところですな〜





2024/10/25

〇今更10月利上げしない理由を「丁寧に」説明する意味が一切ないんですがねえ(一連の植田発言)

まあ順当に日銀公式から出てこないのでニュース報道で確認するしかないですな。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241024/k10014617711000.html
日銀 植田総裁“米経済の中期的な動向見極められず”
2024年10月24日 11時20分

『アメリカのワシントンを訪れている日銀の植田総裁は、IMF=国際通貨基金が主催するイベントに出席し、アメリカ経済がどうなるのかという懸念を持ち続けてきたがなお中期的な動向は見極められていないという認識を示しました。』(上記URL先より、以下同様)

ということですが、公共放送さん中々いい感じの説明になっていましてですね。

『日銀の植田総裁は、最近の講演などでアメリカ経済の先行きは不確実だと繰り返し発言していて、さらなる利上げについては慎重に検討する姿勢を示しています。』

とまあ解説を入れてから、植田さんの発言について報道していまして、

『植田総裁は日本時間の24日朝早くワシントンで開かれたイベントに出席し、アメリカ経済について、「この数か月間、アメリカ経済がどうなるのかという懸念を持ち続けてきたが雇用のデータが変動していることもあって中期的な動向はまだ見極められていない」と述べました。』

アメリカの中長期的な動向を見極めるとか何を寝言を言ってるんだという話ですが、まあこれは何でこうなっているかと言えば、「米国経済の下振れリスクガー」を(上記記事にありますように)連呼してしまった手前、その米国経済様がどうもソフトランディングするんじゃネーノとなって来た中で、10月利上げしない言い訳をするために「中期的な動向がわからん」とか普通分からんわという話を言い訳に持ち出す、という見苦しいことをしている訳ですな。

まあそう言っておかないと10月会合のところで「米国経済の下振れリスクは足元相当下がっているように見られますが何故利上げしないんですか」と言われたときに答えに窮するからなんですけれども、そもそも答えにもなっていない「中期的な動向は見極めていない」という無茶苦茶な理屈(日本どころか米国の中期的な動向が見極められるんだったら今すぐパウエルと交換して頂けますかねえ植田さん)を持ち出しているのは、そもそも論としてこの人たち別に米国経済について何らかの見通しができたら政策を動かす、というような発想はない(あったら中期的な見極めとか永遠にできもしないことを理由にするわけない)のですわ。

てなわけで、さすがにこの「中期的な動向」はアホチャイマスカという言い訳なので、これを堂々と持ち出してきたという所で、米国経済ガーを真に受けてはいけない、というのが確信できました、というのがワシの見立てです異論は認める。

でもって記事の方では

『また、日銀の金融政策について、ことし7月に追加の利上げを決めたものの依然としてかなり緩和的な金融政策のスタンスを維持していると説明しました。』

この言い方、なぜか植田さんがしたがるのですが「緩和的な金融政策のスタンスを維持」という言葉の使い方が悪い、というのは3月声明文や4月展望の時から散々指摘されていて、7月展望の時にやっと表現が整理されたと思ってたんですが、またこの言い方が元に戻ってきておりまして、これがまた植田日銀のミスコミュニケーション誘発話法なんですよね。

というのは「かなり緩和的な金融政策を維持」っていったらそれ利上げには消極的とすくなくとも市場をやっている人なら理解するし、これ英文でどういってるのかにもよりますけど、おそらくはこれ英文で見たらもっと直接的に「緩和姿勢の維持」っていうニュアンスが強くなると思うのでございまして、これは明らかに「見通し通りなら徐々に利上げ」と真っ向対立する説明になっているんですけど、性懲りもなくこれを続けるのマジで何とかならんのかね。

『その上で、日本では長い間、物価が低い水準で推移したことで物価上昇に対する考え方が非常にゆっくりと変化しているとし、2%の物価目標を持続的に達成するにはなお時間がかかるという認識を示しました。』

でもって「非常にゆっくり」でしょ。何で一々強調するんですかねえ。

『さらに植田総裁は、不確実性が大きい場合は、慎重に、そして徐々に政策を進めていくものだが、金融正常化を進める中で低い金利が続くという期待が生み出されるとのちに問題になることもあると指摘し、バランスをとって政策を進める必要があるという認識を示しました。』

ってすいません記事全文引用になって申し訳ないのですが、最後にこういっているのだが、「かなり緩和的な金融政策のスタンスを維持している」「慎重に、そして徐々に政策を進めていく」って言っておいて、低金利長期化期待を牽制したいような発言をするのは典型的な両建て説明で、まあこの調子でやっていると利上げするたびに大騒ぎになるに1万パウエルといったところですな、ナムナム。


でもって会見もあってこちらは後程出てくると思いますが、ロイターさんとブルームバーグさんが記事にしているのでそちらも拝読。


ロイターさん
https://jp.reuters.com/opinion/forex-forum/BCQKANXV5ZNHFGNTPWAE4H6JTA-2024-10-24/
市場動向は不安定、物価情勢分析に「時間的余裕」=植田日銀総裁
By 山口貴也
2024年10月25日午前 4:28 GMT+9

『[24日 ロイター] - 日銀の植田和男総裁は24日、米ワシントンで開催された20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議後に会見し、市場動向は引き続き不安定との認識を示した。為替の円安に伴う物価情勢への分析に時間的余裕があるとの考えも語った。』(上記URL先より、以下同様)

だから10月利上げを否定する説明はもうせんでええねんというお話なので、この説明見ていると12月1月もやらんのではないか、という感じになってしまいますよね。

まあ実際には日銀の振付師の皆さんが市場とのコミュニケーションという文脈においてポンコツにも程があるので(個人の妄想です)、これ12月1月の利上げを全面否定している積りではなくて、あくまでも10月会合というその場をしのぐための説明をしているに過ぎないので騙されてはいけないと思うのですよね、個人の感想ですけど。

『G20での討議を巡り、植田総裁は「ごく最近のデータがそこそこ良いということから、多少、米経済の先行きについて楽観論が広がりつつあるという気もした」と振り返った。「もう少し良いデータが長く続くのか、一時的な振れに過ぎないのかは分析を深めないといけない」と指摘した。』

自分の国の物価の分析してください。

『為替の円安に伴う物価影響に触れ、「日本の物価にどう影響するかを丹念に分析して見極めていく。時間的余裕はあると考えている」との認識も示した。』

この調子で来週会見して11月に円安地獄になって植田総裁の顔が真っ青になることを希望しますwwwwwwww

『「マーケット動向は引き続き不安定な状況にある。インプライドボラティリティ(将来の変動率)を見ても一部ではかなり高い。今後は背後にある経済に関する認識も含めて考えたい」と語った。』

IVまで持ち出してきてますが、そもそもお前の政策運営が何をどうしたいのかわからん上に突如変な物でも食ったかのようにジャガーチェンジして動いたりするからボラが高いんとチャイマスカって突っ込みたくなりますね。まあ「市場を見ています」アピールでしょIVとか言ってるの。シッタカカコワルイ。


BBGさん
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-10-24/SLVJQMDWRGG000
日銀植田総裁、「時間的な余裕はある」−金融政策の判断について
藤岡徹
2024年10月25日 4:57 JST

→米国経済の良いデータが長く続くのか分析を深める必要−植田総裁
→加藤財務相、為替市場の過度な変動をあらためて指摘−注意払う必要

『日本銀行の植田和男総裁は金融政策の判断について問われ、時間的な余裕があると回答した。』(上記URL先より、以下同様)

ってことで、この「時間的余裕」ってのをこのタイミングで聞かされたら市場の中の人的な感覚で言えば「ああじゃあ12月1月も政策修正する気ないんだな」と思う、という認識が全然無いのが困るんですよね。

『植田総裁はワシントン時間24日、20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議を終えて加藤勝信財務相との共同記者会見に臨んだ。

植田総裁は日本の物価への影響を見極める上で、円安だけでなく米国経済も含めて全体を見る必要があると指摘したうえで、政策判断については「時間的余裕はある」と述べた。前日のイベントでは「先行きの正常化の適切な規模が全体でどうなるかや、利上げ全体を時間的にどのように配分するのかについて考えている」とした上で、「四六時中」寝る間を惜しんで熟考していると語っていた。』

寝不足で考えると碌なことを思い浮かばないので寝る間は惜しまないでくださいと思うし、まあ本人はテーブルジョークみたいな感じで言ってるんでしょうけれども、市場の中の人はお前らの意味不明コミュニケーションで振り回されてそのたびに疲弊させられている訳で、こういうのをいうのって(全員がそう思わないでしょうけれども一部からしたら)おどりゃワシらに喧嘩売っとるのか、という感じでカチンとくる人もいるんじゃネーノと存じますので、植田さん下手糞なジョーク言うのは止めた方が良いと思うんだよな〜。センスがない。

『植田総裁は24日の会見で、米国経済についての楽観論が少し広がりつつあるが、米国の良いデータが長く続くのか分析を深めなくてはならないと述べた。市場は依然不安定という見方も示した。』

ということでロイターさんと解釈一致して(当たり前ですけど)いますので、これ結局は「ハトハト情報発信をしてきました」ということでして、この調子でやっているとまたどこかで情報発信のトーンが急変する可能性が多々ある罠という気はするのだがトリガーは多分為替なので今しばらくは米国長期金利様ってところになるでしょうね、しょーもな。




2024/10/24

〇今朝入ってきたこの発言の真意はどっちなのよちょっと日銀公式文字起こしだしてよ

このパネッタ発言と同じタイミングで記事出ていまして、まあこれは同じG20にぶつけたイベントだと思いますが。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB23DVX0T21C24A0000000/
日銀総裁「金融正常化は始まったばかり」 利上げ継続示唆
金融政策
2024年10月24日 5:41 (2024年10月24日 5:55更新)

『【ワシントン=大島有美子】日銀の植田和男総裁は23日、米ワシントンで「我々の金融正常化への取り組みはまだ始まったばかりだ」と述べた。不確実性が増す世界経済の動向については「過去2-3カ月、米国経済の先行きを懸念し続けてきた」と語り、雇用指標など米国経済の先行きを注視する姿勢を示した。

日本の物価と金融政策の立ち位置をテーマに、国際通貨基金(IMF)アジア・太平洋局長のクリシュナ・スリニバーサン氏と対談した。金融政策の先行きについて具体的な言及は避けたが、今後も利上げを継続する方針を示唆した。』(上記URL先より、以下同文)

しかしまあ何ですな、

『これまでの正常化の取り組みについて、2023年7月と10月にまずイールドカーブ・コントロール(YCC)を徐々に柔軟化させ、その後にマイナス金利など他の政策を解除したことは「成功だった」と振り返った。基調的なインフレ率が緩やかなペースで上がっていたため、時間をかけて正常化に着手できたことが「幸運だった」とも語った。』

成功かどうかはこれからわかる話で、今の時点で「成功だった」とか言ってるのお前ふざけるなという発言にもほどがある話で良いからお前もう帰ってくるなと思いました(個人の感想です)。


なおこれがロイターさんになりますと、

https://jp.reuters.com/economy/bank-of-japan/X3IJID5EWJMRBLGAJBPNMWSZBA-2024-10-23/
インフレ目標の持続的達成には「まだ時間必要」=日銀総裁
By 木原麗花
2024年10月24日午前 5:54 GMT+9

『[ワシントン 23日 ロイター] - 日銀の植田和男総裁は23日、基調的なインフレ率は緩やかに上昇しているとした上で、インフレ目標を持続的に達成するには「まだ時間がかかる」と述べた。訪問先のワシントンでパネルに出席した。』(上記URL先より、以下同様)

ってこっちだと何かもう利上げする気がだいぶなさそうに見えますけど、

『植田総裁は、不確実性が大きい時は政策変更を慎重に段階的に進めたいとしながらも、金利が非常に長期間にわたって低水準にとどまるという期待を抱かせると投機的なポジションが大量に蓄積される可能性があるとの問題点を指摘。円キャリートレードの過剰な積み上がりを抑制するため、金融政策の基本戦略を明確にすることが非常に重要だと述べた。』

明確にしないでブレブレにしているの問題だし、そもそもそれ以前に「ゆっくりと緩和の解除をする」というスタンス自体が「緩和の長期化」と言ってるのと同義なんだからキャリートレードの積み上がりを促進してるだろお前は何を言ってるんだという話で、さっきの「成功」もそうなんですけど、植田さんってこんなにアホだったのかとは俄かに信じがたいポンコツ発言をしているように見えます。

ということでなんだかよくわからんのでちょっと日銀公式文字起こし出せやという話でよろしくお願いします。




2024/10/21

〇全国信用組合大会での植田総裁挨拶が相変わらずのハトハトチキン情報発信なんだよなー

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2024/ko241018a.htm
全国信用組合大会における挨拶
日本銀行総裁 植田 和男
(代読 日本銀行副総裁 内田 眞一)
2024年10月18日

PDFバージョンしか出ていないのでPDFから参ります。
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2024/data/ko241018a.pdf

現世利益的には経済物価情勢のお話のところになるのでそこを拝読するのですが・・・・・・

・分量の構成が明らかに「リスク要因こわいでちゅーーーー」になっているのですよね

『2.経済・物価情勢』という部分ですが、

『はじめに経済・物価情勢についてです。』

ということで話が始まりますが、最初に景気面の話をして物価面の話をしまして、その後にリスク要因の話があるんですよね。

でもってその各パートなのですが、景気・物価の話、すなわちメインシナリオの話が文字数にして473文字(改行部分を0文字カウントで句読点含む)。景気の話が131文字で物価の話が342文字な訳ですよ。

でもってその次のリスク要因の説明がなんとまあ337文字もありまして、物価のメインシナリオと同じ分量をリスク要因に関して説明している訳でございまして、いやお前ウェイトのかけ方おかしくないか、という感じですが、とにかく「リスク要因の説明がクソ長い」というのが今回の特徴になります。

ということで、そもそも文章構成をみた時点で「リスク強調→政策修正のやる気が全然ない」という情報発信をしたいんですね、という解釈にならざるを得ない訳ですよこの挨拶。

これで来週の展望レポートでいきなり豹変してきたらお前馬鹿にしてるのか、ってな話ですし、そもそもこの文章構成をなんも考えないで作っているなら情報発信のあり方が何ぼ何でもおかしいとしか申し上げようがないんですし政策修正する気がないんだったらもっと堂々と「政策修正する気はありません」と言ってくれれば話はすっきりしますし、何なら長期債から短期に一時避難している資金も長期に戻るんじゃないですかねえ位のお話でして、とにかく日銀の情報発信が中途半端に両建てしているのは大変によろしくないと思います。


・経済物価見通しのメインシナリオはいつも通りの話ですが

文字数確認のために引用しておきますね。まずは経済状況。

『わが国の景気は、一部に弱めの動きもみられますが、緩やかに回復しています。先行きは、海外経済が緩やかな成長を続けるもとで、緩和的な金融環境などを背景に、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まることから、潜在成長率を上回る成長を続けるとみています。』

『物価面では、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響は減衰してきているものの、賃金上昇などを受けたサービス価格の緩やかな上昇が続くもとで、足もとは2%台半ばとなっています。先行きは、既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響が減衰する一方、来年度にかけては、政府による施策の反動などが前年比を押し上げる方向に作用すると考えられます。この間、消費者物価の基調的な上昇率は、マクロ的な需給ギャップの改善に加え、賃金と物価の好循環が引き続き強まり中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと想定しており、「展望レポート」の見通し期間後半には2%の「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移するとみています。』

ということでこちらが131文字+342文字な訳ですよ。思いっきりいつも通りなんですな。


・リスク要因の説明が長いのもさることながら「米国の先行きが不安定」ってどういう認識なんですか

でもって問題はリスク認識のところで、文字数は先ほど申し上げたように337文字もある力作??になっておりまして、まあこちらは途中ぶつ切りしながら引用しますね。

『リスク要因としては、海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、わが国経済・物価を巡る不確実性は引き続き高いと考えています。』

だそうですが、

『そのもとで、金融・為替市場の動向やそのわが国経済・物価への影響を、十分注視する必要があります。』

『特に、このところ、企業の賃金・価格設定行動が積極化するもとで、過去と比べると、為替の変動が物価に影響を及ぼしやすくなっている面があると考えています。』

円安修正止まったんですけれども再度注意するんですか、というのがあるもののこの次が酷くて、

『米国をはじめとする海外経済の先行きは引き続き不透明であり、金融資本市場も、引き続き不安定な状況にあります。』

米国って何だよそれという話でして、直近は米国経済の予想以上の堅調さというのがテーマだし、金融資本市場に関してだってSP500指数とか高値更新とかそういう威勢の良い話をしていますし、何なら日本株だってしっかり戻っているのですけれども、何がどういう認識だと「米国経済の先行きは不透明」となるのかという話で、将来のことが予想できないのが全部不透明だったら未来永劫不透明だろいい加減にしろという話だし、戻り高値(というかアメリカの場合は高値更新か)付けに行ってる株式市場が不安定な状況というのなら未来永劫不安定だろという話で、この「先行き不透明」と「金融資本市場が不安定」ってのを使い続けるのはコミュニケーションやる気あるのかと小一時間問い詰めたい。

まあこれが中国とか欧州とか書くならまだしもだが、「米国をはじめとする」とかいうのはお前ら7月末からタイムスリップでもしてきたのかという話でして、こういうのをアップデートしないでそのまま出してリスク認識って言ってしまうのはひどくないですかと思いますが、まあ政策修正したくないでしゅハトハトチキンでちゅーーーーバブバブって言ってるんだったら話は分かる(賛同しないが)。

なもんで、

『当面は、これらの動向を極めて高い緊張感をもって注視し、わが国の経済・物価の見通しやリスク、見通しが実現する確度に及ぼす影響を、しっかりと見極めていく考えです。』

高い緊張感をもってって8月頭ならともかく今言う言葉じゃないだろ馬鹿にしてるのか、という所でリスク要因の説明が締まるのでした、ドイヒー。


なお、このコーナーの最後は、

『今後とも、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営していく方針です。』

とのことだが、全然経済物価に応じてないだろというお話でして、とにかく政策反応関数が全然定まっていないお前が何を言うという感じですな。