植田和男総裁(2024年度上期)

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2024/09/28「9/24大阪経済団体での講演と会見:米国下ブレなどのハトハトチキンな印象の強い内容です」
2024/09/27「MPM総裁会見より(その3):くどくど説明した結果非常にやる気無しに見えますね」
2024/09/26「MPM総裁会見より(その2):説明はもっとシンプルにすべき」
2024/09/25「MPM総裁会見より(その1):米国経済などの「躊躇する材料」の説明が文字起こしをみるとさらに目立つ」
2024/08/26「植田総裁国会閉会中審議招致では内田発言を中和しようとしているのだが他市場に伝わっているかは怪しい」
2024/08/07「総裁会見より(続き):利上げがメインなのはわかるのだが輪番減額に積極性が感じられないトーンの説明ですな」
2024/08/02「総裁会見より:植田総裁の中の人が入れ替わったのかという位に秀逸(今後の政策調整に前向き)な会見でした」
2024/06/19「参院で大塚耕平先生から総裁の言葉の使い方が市場に対してノイズになっている指摘をされています」
2024/06/18「総裁定例記者会見は説明がブレるわ本音らしきものが駄々洩れだわでぐだぐだ会見でした」
2024/05/28「金研国際コンファランスでの挨拶は思いっきりハトハトチキン(なお基調講演で内田副総裁が反対のトーンで公開処刑)」
2024/05/27「月額6兆円の買入を継続しておいて長期金利は市場で形成されることが基本とか何のギャグなのか(メモ)」
2024/05/24「イタリアG7でのぶらさがりインタビューで海外の不確実性を持ち出した植田総裁」
2024/05/09「国会答弁と読売国際の講演は政策調整に消極的と取られて円安一段と進行(155円)」
2024/05/08「官邸でのぶら下がり会見で為替の物価への影響に言及と総裁会見のトーンを大幅修正というブレブレ植田さん」
2024/05/04「決定会合会見の植田総裁は「足もとの円安は基調物価に影響ない」を始めとしてハトハトチキンな内容だらけ」
2024/05/01「円安の物価への影響を出すと言ってたのに考察は無いわ挙句の果てに失言(円安ぶっ飛ぶ系)するわ」
2024/04/24「国会で総裁は「基調的な物価が2%に向かえば利上げ」発言」
2024/04/23「ドル円154円台に円安/G20での総裁発言を確認したが円安で基調的物価に栄養を与えることもある的な話」
2024/04/22「海外での植田発言だがロイターとブルームバーグでは利上げに向けたトーンが真逆って何なの」


2024/09/28

〇植田総裁の9月24日大阪講演関連あれこれ

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2024/ko240924a.htm
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2024/data/ko240924a1.pdf
【挨拶】
最近の金融経済情勢と金融政策運営
大阪経済4団体共催懇談会における挨拶
日本銀行総裁 植田 和男
2024年9月24日

引用はHTML版がもう出ていますのでHTMLの方から行います。

・FEDが50bp利下げ措置を行った米国と現状判断を引き上げた消費が下振れリスクって何だよそれ

『2.経済・物価情勢』の『経済の現状と先行き』ですが、最初にいつもの公式見解なのですけれども、あっという間にこの話がおっぱじまります。

『もちろん、こうした中心的な見通しを巡っては、上下双方向で様々なリスクがあります。ここでは、2点、指摘しておきたいと思います。』

『1点目は、海外経済、特に米国経済の動向とその金融・為替市場への影響です。』

はいはい米国ガー米国ガー。

『図表5をご覧ください。米国では、5%を越える高い政策金利が続いてきましたが、そのもとでも、個人消費が牽引する形で経済は総じて堅調に推移してきました。最近では、労働需給が緩和するもとで、インフレ率は低下してきており、先週、FRBは政策金利の引き下げを決定したところです。』

ということですが、

『こうしたFRBの決定を受けて、米国が、景気の大幅な減速を避けつつインフレ率が2%に向けて低下していくソフトランディング・シナリオを辿るならば、そのことは、わが国経済にとってポジティブに働くと考えられます。』

と言ってるのだが、その直後に

『もっとも、今後の米国経済の展開は依然不確実です。』

FEDがその辺も踏まえてわざわざ25じゃなくて50bpの利下げをしたというのに、これでは読みようによっては日銀がFEDの対応が不十分で先行きリスクありますねえと言ってるようにも見えてしまう訳でして、お前は何でFEDに突撃しているんだとwww

『既往の利上げなどが労働市場に及ぼす影響については不確実であるほか、労働需給の緩和が個人消費に及ぼす影響についてもよくみていく必要があります。米国経済の先行きや内外の金融資本市場の動向がわが国の経済・物価に及ぼす影響については、引き続き、注視していきたいと考えています。』

しかも米国とか言いながら結局市場の話もリスクなんですって。

『2点目は、個人消費の先行きです。先ほど申し上げたように、個人消費が緩やかに増加していくというシナリオの前提は、しっかりとした賃上げが継続し、家計の所得が増加していくことです。この点については、物価の先行きと併せて、後ほど、改めてお話しいたします。』

と思ってるなら何で今回の決定会合声明文で消費の現状判断引き上げているんだよ・・・・・・・・

ってな訳で、まあハトハトチキンにも程があるわけで、この状態でゲル総理総裁に「金融政策の調整は日銀にお任せする」と言われてハトハトチキン調整して円安に飛ばしたり物価を無駄な上げ方をしたりしたら植田さんマジで切腹もんになり兼ねんのだが大丈夫かと申し上げたい。


・来年の賃金ガーで逃げを打つ気満々にしか見えない物価見通しの話

次の小見出しが『物価の現状と先行き』になります。

『そこで、物価情勢に話を移します。図表6の生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、直近8月は+2.8%となりました。』

高すぎなんだが。

『具体的に内訳を確認していきますと、まず、昨年まで物価を大きく押し上げてきた「食料品」や「その他の財」の前年比は、低下しました。これは、コロナ禍後の輸入物価上昇に伴うコストプッシュ圧力が和らいでいるためです。一方、コストに占める人件費の比率が高い「サービス」は、価格の緩やかな上昇傾向が続いています。図表7で、サービス価格の動向を品目別に子細にみますと、賃金上昇の影響が強まっていることが、より明確に分かります。すなわち、昨年は輸入物価上昇の影響を受ける外食などで大幅な価格上昇が目立つ一方、人件費の比率が高い品目の価格は、あまり上がっていませんでした。これに対して、最近では、幅広い品目で2%程度の上昇が確認できます。こうした財・サービス別の物価動向からは、物価上昇の背景が、輸入物価上昇から、景気の改善が続くもとでの賃金上昇へと変化してきていることが示唆されます。』

物価上昇のメカニズムとしてこの説明するのはまあわからんでもないけど、政策判断としては発生している物価上昇が一時的なのか持続的なのか、ということが重要なのであって、この「第一の力」「第二の力」の説明は大概に止めろと昨日も言った気がするが今日も言っておくw

『こうしたもとで、短期的な変動を除いた物価のトレンドは――日本銀行では、基調的な物価上昇率と呼んでいますが――、2%に向けて徐々に高まっています。このことは、図表8の基調的な物価上昇率に関する幾つかの試算値の動きからも、見てとれます。』

でもって、

『先行き、基調的な物価上昇率は上昇を続け、2026年度までとなる見通し期間の後半には、2%の「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えています。』

でまあ問題はこの次で、

『この見通しでは、この数年進んできた企業の賃金・価格設定行動の変化が社会に定着し、来年度以降も賃金の上昇が継続していくことを想定しています。』

これ来年度の賃金見ないと定着したとは言えないって話をしているのに等しいんだが、これを言い出すと永遠に「来年度の賃金上昇も確認して」の連続で達成という判断から逃れる事が可能になる理屈でして、これを出してきている時点で植田総裁(だか振付師だかはともかくとして)はやる気無し無しですね、というのが伝わるわけですよ。

そして、

『この点、これまでの賃上げを支えてきた人手不足や良好な企業収益といったマクロ経済環境に変わりはありません。図表9をご覧ください。労働市場の動向をみますと、人口動態も反映して追加的な労働供給の余地は限られてきており、構造的に人手不足感は高まりやすくなっています。また、先ほど申し上げたように、企業収益は好調であり、人件費が増加するもとでも、労働分配率はむしろ1990年代前半以来の水準まで低下しました。』

と言っているのですがすかさず、

『ただし、今後、海外経済の動向などが、企業収益や企業行動に影響を及ぼすことがないか、丁寧にみていく必要はあります。』

はいまた海外経済とか言ってますよこの人。

『また、企業部門が全体として好調であるとしても、経済・物価情勢が大きく変化するもとで、個別にみれば企業の直面する経営環境は区々となっている点にも注意が必要です。』

挙句に個別企業で上げられないところもあるとか言い出しているし、とにかく2%達成したという判断から逃げたいチキンが爆裂してエライことになっていますね。

『先行き、持続的な賃上げとその販売価格への転嫁が幅広い先で実現し、賃金と物価の連関がしっかりと高まっていくか、引き続き注視していきたいと思います。』

何ですかこのやる気の無さは、ということでそらまあ20日の会見と合わせて植田和男はハトハトチキン、ということになるのは万やむを得ませんわwwww


・そもそもお前のコミュニケーションが悪いのであって市場に伝わっていないとか寝言は寝て言え

でもって次が『3.日本銀行の金融政策運営』です『「7月の金融政策決定会合』の話はすっ飛ばして次の『8月以降の市場動向と先行きの政策運営の考え方』に行きます。

『その後、8月に入り、米国の景気減速懸念の強まりを契機に、世界的にドル安と株価の下落が進みました。ドル/円相場については、日本銀行の政策変更もあって、円安方向に積み上がっていたポジションが巻き戻される局面にあったことから、変動幅が大きくなりました。わが国の株価は、一時、他国に比べても大幅に下落しました。』

でもってここが先日先行で引用していた反省の色が全くない反省の弁もどきです。

『こうした8月にみられた市場の乱高下の背景の一つとして、日本銀行の政策運営の考え方が十分に伝わっていなかったとの批判があることは承知しています。』

ではPDCAをどうするのか、という話になるかと思えばただの言い訳がここからおっぱじまる。

『日本銀行は、これまでも「展望レポート」のほか、講演や記者会見等も活用しながら、金融政策運営に関する基本的な考え方をご説明してきましたが、引き続き、丁寧な説明と情報発信に努めてまいる所存です。この場では、8月以降の状況変化を踏まえつつ、先行きの金融政策運営について、改めて、2点、お話ししたいと思います。』

お前が「丁寧に説明」すると説明がゴテゴテデコレーション満艦飾になって肝心の中身が分からなくなるんじゃヴォケ、ということで以下の説明がもう「無駄な丁寧さ」の典型になっておりますので鑑賞しましょう。


・いやだからくどくど説明しなくていいんだよ!

『1点目は、金融政策運営の基本的な考え方です。日本銀行としては、先行き、基調的な物価上昇率が見通しに沿って高まっていくならば、そうした動きに応じて、政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことが適当と考えています。』

これだけ言っておけばいいのに、

『7月の政策金利の引き上げ後も名目金利から予想インフレ率を引いた実質金利は大幅なマイナスであり、経済活動を刺激し、物価上昇率も押し上げる方向に作用しているとみています。』

って言い出すから「じゃあ今の実質金利はいくらなんですか」→「それは具体的にお示しするのは難しい」となってお前は何を言ってるんだという話になるんだし、

『一方、将来、基調的な物価上昇率が2%前後となる局面では――物価上昇率を更に押し上げていく必要性は低下しますので――、政策金利を、経済・物価に対して中立的な水準に近づけることが望ましいと考えています。』

さらにこれで「中立金利水準はどこからですか」→「それは具体的にお示しするのは難しい」となるわけですな。アホの極みとしか言いようが無い。

『そのため、今後、「展望レポート」でお示ししている経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて、政策金利を引き上げていくことになります。』

「それに応じて」とは何に応じるのか、と聞いても回答は来ない訳でして回答できない要素をゴテゴテ付け加えて話を混乱させる気があって言ってるならまだ救いようがあるのですが、植田日銀の場合これが「丁寧な説明」だと思っているし、何なら「説明が足りなくて理解されていないからもっと説明しよう」とさらに泥沼化しているのが植田(か振付師)クオリティ・・・・・・・・


・シンプルに説明しない上にハトハトメッセージを思いっきり出しているのですが

さらにダメダメなのはこの次の部分でして、

『2点目は、こうした基本的な考え方のもとでの実際の政策運営についてです。経済・物価を巡る不確実性は大きく、予期せぬ事態もしばしば生じます。実際の政策運営は、あらかじめスケジュールを定めるのではなく、様々な不確実性を踏まえたうえで、適時・適切に行う必要があります。』

と言わずもがなのことを言った上にとどめを刺すようにまたまたこの次のパラグラフで、、

『この点、現在の状況下では、米国経済を中心とした海外経済の動向や、引き続き不安定な状況にある金融資本市場の動向について、きわめて高い緊張感をもって注視し、』

米国ガーの何回目の連呼だよという連呼に加えて金融市場(特に株式市場)に全面屈服して株式市場の犬と化したワンワン内田副総裁の路線も継承しておられます、ダメダコリャ。

『これらの動向が、わが国の経済・物価見通しやリスク、見通しが実現する確度に及ぼす影響について、しっかりと見極めていくことが求められます。』

そもそも経済の先行きなんて常に不確実なんだし、市場なんて常に値動きするもんなんですから、この言い訳もやる気無しという認定されてやむなしというお話になりますわな。

『また、わが国では、長期にわたり低金利環境が続いてきたことから、経済・物価が金利の上昇にどのように反応するのか、確認していくことも重要です。』

とまあ利上げしたくないのかよという位にこれでもかといろんな要素を出してきて、挙句の果てに、

『この間、8月に入り、これまでの一方的な為替円安は修正されてきており、直近では、輸入物価の上昇率も鈍化しました。輸入物価上昇を受けた物価上振れリスクは相応に減少しています。』

これだけ言いまくってからの、

『政策判断に当たっては、内外の金融資本市場の動向やその背後にある海外経済の状況などについて、丁寧に確認していく必要がありますし、そうした時間的な余裕はあると考えています。』

ではそらハトハトチキンです、と言われるの仕方ないし、そういう意図で発信していないんだったらお前は何を言ってるんだという話なんですけど、こういって円安煽ったら余裕なくなるんですけど何かもうセンスの無さが泣けてきますな。


という訳で会見ですけど、これがまた愚劣な記者会見で、真面目な話万博に関する質疑と以下引用するのくらいしか話にならんわという感じでした、ということでほとんどメモ状態ですけれども引用しますね。


〇24日植田総裁記者会見はそもそも見るべき部分が乏しい残念な会見

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2024/kk240925a.pdf
総裁記者会見
――2024年9月24日(火)午後4時から約35分
於 大阪市

・正直この質疑が一番意味があったかもしれない

特段この質疑にコメントすることはないのですがなんかいい感じの質疑応答だったので(ちなみにこの講演と会見では植田さんミャクミャクのピンバッジを背広の胸につけていました)。

『(問)万博についての質問なんですけれども、先ほどおっしゃっていたように大屋根リングに行かれたとのことで、それ以外にどのようなところを視察されたのかというのと、あとは協会側の担当者の方から様々な説明を受けられたのかなと思うのですが、実際どのような説明があったのか。

そして最後に先ほど、やはり万博は日本経済にとって重要なイベントになるというふうにおっしゃっていましたが、経済効果を最大限発揮するためにはどのような万博になるべきなのか、どのようにお考えか教えて頂ければと思います。』

『(答)残念ながらあまり時間がありませんでしたので、リングのところに上がって、協会の方から、まずそこから見える姿についていろいろお話を頂き、私からも質問をさせて頂き、ここに至る経緯とか、万博が終わった後どうするのかとか、そういうことについても質疑応答をさせて頂きました。それから、協会の方以外では建設を担当されている建設会社の幹部の方とも意見交換をさせて頂き、建設の過程でどういう点にご苦労があるのかとか、どういう点を注意されているのかとか、そういうことについても興味深い話を伺うことができました。』

たまたま某ベンダーがこれライブ中継してたので流し聞きしていましたが、建設会社の所は思いっきり大林組さんのお名前が出ていました。周知の話なんだし政策運営と関係ある話でもないんだから別にこの会見録で伏せなくてもエエンチャウノと思いましたけど。

『先ほど来、抽象的には申し上げているのですが、この万博で、関西経済ひいては日本経済がうまく活性化されるためにはどういうことがあればいいかという趣旨のご質問、お尋ねだと思いますけれども、抽象的には、そこで新しい技術の展示等があって、そこに集まった人たちがそれを見て議論して、更に新しい、あるいはよりコマーシャライズできるようなものにつながっていくとか、もっと広く世界からいろんな方々が来て、万博を見るだけでなく、関西の大阪を含めた地域を回っていかれる中で、こんなに気が付かなかったいい面が日本の関西にあるんだということを感じて頂くということが必要だと思うんですね。そのためには、あまり準備していない発言で恐縮ですが、こちら側としても、どういう見せ方をするか、マーケティングという抽象的なことになると思いますが、そこにおいていろいろな工夫がなされることが重要だと思いますし、既によく拝見すれば、そういう工夫が随所になされつつあるとは思いますけれども、まだ 200 日くらいある中でいろいろな工夫の余地は今後残っていると思いますけど。すみません、抽象的な言い方で。』

まあこれ自体はほうほうそうですかって話なんですけど、植田さんが政策の説明とかでアホのように満艦飾デコレーションをする背景が何となくわからんでもないという感じが非常にしますなwwwww


・コミュニケーションに関して痛烈な質問があって植田さん見事な無回答の巻

この質問は良かったですね。

『(問)一点、市場との対話のことで伺います。先週末の決定会合後、総裁の記者会見を受けて、市場では利上げに慎重な見方が強いとみられて、2 円強円安に振れました。』

この瞬間茶を吹きそうになって大変でしたwwwwwwwww

『基本、総裁の会見での説明は、経済・物価見通しが実現していけば、利上げを進めるっていうご説明だったと思うんですけれども、このように円安に振れたことで、やっぱり市場との対話っていうのが、非常に、改めて難しいということを感じられましたでしょうか。』

イイシテキダナー

『また、今後利上げを進めていく中で、市場との対話に影響などは何かありますでしょうか。お考えをお聞かせください。』

つまりお前の説明は下手だという自覚を持て、という愛の鞭な訳ですが、これに対するハトハトチキン先生の回答は見るも無残な物でしたw

『(答)いつも申し上げていることですけれども、短期的な、例えば為替レート変動等については、コメントを差し控えたいと思います。そのうえで、できる限り丁寧な、市場、あるいはメディア、国民とのコミュニケーションを続けていきたいというふうに考えております。』

アカン・・・・・・・・・・

2024/09/27

〇植田総裁決定会合の定例会見より(その3)

さーせん全然その後のネタについていってません(7月会合議事要旨も出ちゃいましたね・・・・)

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2024/kk240924a.pdf
総裁記者会見
――2024年9月20日(金)午後3時30分から約75分

・円安で物価の上振れリスクだったが円高では、の質問に対してハトハトチキン回答爆誕の巻

こんなんありましたけど。

『(問)(前半割愛)もう一点すいません。今回の会見で出てたら申しわけないんですけれども、先ほど冒頭で円安の修正によってですね、上振れのリスクが減って、物価のですね、時間的な余裕があるというふうにおっしゃってましたけれども、円高方向に行ったことによって物価の下振れリスクについてはどのように考えてますでしょうか。』

これに対する回答が困ったちゃんなんですよね。

『(答)(前半割愛)それから、ここまでの、8 月以降ですが、円高の動きと今後の物価見通しというご質問だと思いますが、』

そもそも微妙に回答がかみ合っていないんですよね。こんなの「過度な円安による物価の上振れリスクは軽減したが、現状で物価の下押しリスクになるような状況とは考えていません」ってきっぱり回答しちゃえばいいだけの話なのに、

『もちろんそこは強い関心を持ってみていきたいと思いますが、最初から申し上げてますように、その背後にアメリカ経済がどうなっていくのかという全体を動かしている大きな要素がありますので、』

ってここでもアメリカ経済ガーになっています。何なんですかこのハトハトチキンは、ということで、7月会合の会見の時にアタクシ「見たかお前らこれが真の植田和男じゃああああ」と手のひらクルーと大変にご機嫌に駄文を書いたのが今にして悲しいとしか言いようのないハトハトチキンな訳でして、やっぱりこのお方は博多人形のケースに入れて床の間に飾っておいて、会見ではボーカロイドに喋らせた方が良いんじゃないかと思いますし何ならアタクシが着ぐるみ来て喋りますが(超大嘘)。

『これについての見極めの中で、為替レートの動きおよびそのわが国の物価見通しに与える影響についても判断していきたいと思います。取りあえずの姿は、10 月の展望レポートでまずまとめるということになるかと思います。』

この質疑でまさかのアメリカ経済が出るとは、という感じでして、今回の定例会見って文字起こしされたのを見るとハトハトチキンっぷりがさらに目立つ物件に仕上がっていまして(リアタイで聞いていたときは質疑そのものがしょうもない堂々巡りと自民党総裁選だの中立金利だの時間の無駄な質問の連発でそっちの方にうんざりしながら聞いていた)・・・・・・


・ちょっと「アメリカ」でテキスト検索したらw

まあご案内の通りですが、F5で検索窓出せばテキスト検索できますけど、物は試しに「アメリカ」でテキスト検索したら16個出てきて、ざっくり見ますとその中で植田さんの回答で使われていて「アメリカ経済」に関する話をしているのがなんと7か所もありまして、でもってアメリカ経済の下振れリスクがどうのこうのって話をしているんですから、そりゃハトハトチキンに見えますわな、というお話でもありまして、結局植田さんはギロッポン夜の帝王であっても昼はビビりのチキンだったかと甚だ残念に思います次第でありまする。

話を戻しまして、


・第一の力第二の力のバトンタッチ(その2):植田さんのこの説明はちょっと筋が悪くないですかねえ

昨日引用した部分にもありましたが、最後の方で同じ質問が来ていました。まあだいたい同じ質問が来るって時点で植田さんの説明が余計な修飾語満艦飾のせいでわかりにくい、ということを示しているんですけどね。

『(問)もともと輸入物価上昇率について「第一の力」という説明をされていて、国内でも賃金上昇などによる好循環によるものを「第二の力」としていたと思います。そのもともとのお話だと「第一の力」が「第二の力」に影響したりあるいは転化しようとしていくというような言い方をされてたと思いますが、』

ですね。

『これに従うと、現在は「第一の力」が弱まり始めたという言い方ができると思いますが、結局この 1 年弱を「第一の力」と「第二の力」という概念を使った場合に、この「第一の力」と「第二の力」がどういうふうに影響し合っていって今のような状況になっていて、今の状況だと「第二の力」がメインになりつつあるっていうふうに言うことができるのかどうかという、総裁のご認識について改めてお伺いできればと思います。』

ではどう回答しましたでしょうか。

『(答)この 1 年くらいをみますと、インフレ率という意味では「第一の力」はプラスで推移してきたわけですが、それはだんだん弱まり続けている。ただし、その中で 7 月に向けての円安の動きが、もう一度、若干なりとも「第一の力」を上向きの方向に持ち上げる可能性があったというところかと思います。』

って説明が結構危なくて、なんでかというと、そもそも日銀って「円安が物価上昇リスクを高めるから緩和の修正をした」という触れ込みで7月の利上げをした訳ですよね。

然るに、上記の植田さんの説明だと、「円安で第一の力が強まりそうになった」という話になるんですが、従来日銀は「第一の力」で物価が上振れ(コアCPIはとっくの昔に2%超を続けている)しているのに政策対応をしないのを「これは第一の力なので政策対応しません」って説明をしていた訳ですよね。

ですから、この植田さんの説明を敷衍しちゃいますと「7月の利上げを決める要素の一つには第一の力による物価上昇リスクがあった」ってことになって、従来第一の力で(YCCの柔軟化を超えるような)政策修正はしていなかったことと話が矛盾するんですよね。

この説明を見て黒田さんのQQEE2の時を思い出すのですが、あの時には強引な説明ながら、「原油価格の下落などが持ち上がりつつあるインフレ期待を押し下げるリスクがある」という説明をしていて話のつじつまは一応合わせにいってたのですが、今回のこの植田さんの説明だと、全然そのつじつまが合わないわけですよ。

まあ結局はこの「第一の力」「第二の力」という説明を政策対応とリンクさせるからおかしなことになるのであって、インフレ目標政策の下における物価動向と政策対応の関係ってのは、「発生している(あるいは高い蓋然性で想定される)物価の動きが一時的なものなのか、波及効果を伴って定着していく持続的なものなのか」というのを見極めた上で、一時的であれば政策対応は基本的に必要ないし、持続的なものであれば、それに応じた適切な対応が必要になることもあります、って話なので、「第一の力」「第二の力」とは異なる次元での話になるんですよね。

ということで、最近の日銀ですが、折角昭和温泉旅館の金融政策手段の方のスクラップは(国債買入とか各種オペとか残置物が割と特級呪物なのですがまあそうはいっても)進められてYCCだのQQEだのオーバーシュート型コミットメントだのそういう呪物は解体されたのですが、政策ロジックの方がドンドン昭和温泉旅館になってきているような嫌な感じしかしないわけでして、ロジックが昭和温泉旅館ですからそりゃ市場に日銀の意図がねじ曲がって伝わるわ、というお話でもあります。

と悪態を並べましたが植田さんの回答がまだ残っているので以下引用。

『ただそのリスクは、先ほど来申し上げているように、相応に低下したということです。「第一の力」は弱まりつつあるわけですけれども、そこまでの「第一の力」、その他の影響もあって「第二の力」は引き続き、少しずつですが強まりつつあって、今後のインフレ率の動きをみる際の主なポイントになっているというふうにみています。』

ま、「第一の力」「第二の力」を政策に絡めて説明するの止めなさいとしか言いようが無いですね。


・ちなみに先日大阪講演でのコミュニケーションの部分を引用しましたが・・・・・・・

最後の質疑ですけどね。

『(問)市場との対話についての質疑で、植田総裁、十分に伝わっていなかったのではないかと批判があることは承知しているとおっしゃいました。ただですね、やはり今日の記者とのやり取りを聞いていても、中立金利の評価はどうしても曖昧なかたちになってしまいますし、オントラックなら少しずつ利上げという表現も抽象的でして、やはり記者、市場関係者にしてもなかなか将来の政策へのイメージ持ちにくいかと思うんですね。』

これ結局は余計なことを言いすぎ、というのが今回の会見質疑見て改めて痛感するところです。まあ将来の政策のイメージったってそんなもん別に状況次第で変わるんだから、決め打ち説明する必要はさらさらなくて、「毎回の決定会合で経済物価情勢を点検し、総合的に判断をした結果政策対応が必要であれば対応します」で別にいいんですよいやマジで。でもって「今時点ではこう判断しています。展望レポート(展望会合でなければ声明文)に書いてあるとおりですけどね」で終わりなんですよ本来は(だからクレクレをするメディアや市場関係者というのもどうかと思うのです)。

『7 月の会合後の市場の乱高下を踏まえて、市場との対話について反省すべき点、改善すべき点というのはどういうところだったのか、それを踏まえて今後どういう工夫をしていこうと考えていらっしゃるのか、植田総裁の率直なお考えをもう少し丁寧にお聞かせ頂けますでしょうか。』

もう少し丁寧に、というのは昨日引用したその前の質疑が回答になってなかったからですね。

『(答)先ほど来いくつか申し上げてきたと思いますが、見通しとか考え方を抽象的に丁寧に説明するということはありますけれども、当面の政策運営をかなり大きく動かしていくのは、見通しの確度がどれくらい高まったかというような点ですので、これに関して大きな動きがあるときには、情報発信をきちんとこれまで以上に丁寧にしていくということは、私なりに気をつけていきたいと思います。ボードメンバー全体としてということも言えるかと思います。それから中立金利、つまり行き着く先についての不確実性が残るということはあるわけですが、これは当面、消しようがない不確実性として残らざるを得ないと思いますが、一段と分析を深めていきたいというふうに思っております。』

ということで、植田さん、自分の無駄にゴテゴテとしたデコデココミュニケーションこそが混乱を招いているという自覚が無いのか無い振りをしているのかわかりませんが、まあ先般ネタにしましたように田村委員は素直に「反省すべき点があったのではないか」と言っているのに、このチキンさん、全然反省していないし、何なら「よーしパパもっと丁寧に説明して分かるようにしよう」とさらに余計な説明のデコレーションケーキを作り出しそうで末恐ろしいものを感じます。

024/09/26

〇遅れ気味で恐縮ですが決定会合レビューで植田総裁定例会見(その2)

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2024/kk240924a.pdf
総裁記者会見
――2024年9月20日(金)午後3時30分から約75分


・オントラックなら政策修正をしていきますよの話がちゃんと浸透しない理由を愚考してみる

昨日の続きの辺りから参りますけど。

『(問)今しがた経済・物価はオントラックと、そういうふうなお話をされたわけですけども、今回は政策を維持されまして、日銀としてはオントラックであれば、利上げを進めていくと、そういう方針を示されておられまして、オントラックが続く中ではですね、例えば半年に 1 回とか、3、4 会合に一度はですね、そういった方針を示されている以上、コミュニケーション上もですね、利上げが必要になるという考え方もあると思うんですけども、このオントラックを前提とした政策パスに関して総裁のご見解を教えてくださいというのが一点です。(後半割愛)』

ちなみに後半は中立金利の質問でして、お前ら何回その回答の無い質問してるんだリアタイで聞いてる方は時間の無駄にもほどがあるわと毎度トサカに来ながら聞いていると思うんですけど、というか少なくともアタクシは中立金利と聞くたびに血圧が上がる。

でまあこの質問も、そもそも論として「利上げを前もってメジャードペースみたいな形で決め打ちしていくわけではない」っての何回も言ってるのに、相変わらず「利上げパスをペースで示せ」って質問している訳で、もうマジで勘弁して欲しいし、既に答えの分かっている質問を皆で何度も聞くのお前らまとめて東京湾ドラム缶片道クルーズ観光にでも行ってこいレベル。

とか言ってる場合じゃなくて気を取り直して回答を見ますと、

『(答)データ等がオントラック、見通し通りに推移していけば、基本的な姿としては少しずつ利上げをしていくという考え方には変わりはありません。ただ、どれくらい見通し通りの動きが続けば、次の利上げの判断に至るのかということについて、決まったスケジュール感とか決まったペース感があるというわけではなくて、ある程度まとまった情報が得られたと判断できたところで、都度、次のステップに移るということにならざるを得ないのかなと思っています。(後半割愛)』

まあこの植田さんの回答なんだか振付師の回答なんだか知らんけど、この回答にも割と問題があって、まず説明がクソ長くて、しかもやたらゴテゴテと条件を付けているので、この形の説明自体が良くないと思うんですよね、まあ異論はあると思いますが。

つまりですね、こんなの「4月および7月の展望レポートでも申し上げております通り、我々の見通しに沿ってオントラックだったら今後も金融緩和の調整を行います」で終わりだし、その判断は「オントラックかどうかの判断は総合判断」で終わりにすればよいのですが、この説明だと「ある程度まとまった情報が得られたと判断」とか余計なことを言っているから、今回みたいにハトハトバイアスとみられる時には利上げに対して及び腰という印象を与える文章になってしまいますし、さらに言えば「ある程度まとまった情報」とは具体的にどのような情報になるのか、というようなクソしょうもないツッコミの機会を与えている訳ですな。

弊駄文では何度も申し上げているつもりなのですが、とにかく植田日銀の説明はここにある「ある程度のまとまった情報」みたいに言い訳をしている間に余計なツッコミを誘発する餌をばらまいてしまって、その餌に食いつかれるとまた別の言い訳をして、そこでまたツッコミ材料のネタという餌をばらまく、というのを延々としているから、ドンドンと説明が満艦飾ゴテコテになってしまって、肝心の基本方針「見通し通りに経済物価(特に物価)が推移すれば金融緩和度合いの修正を行う」がまるで伝わらないで、次回の利上げタイミングの話とか中立金利とかいう計測不能の話とかばっかりになって、マーケットが振り回されるんですよね。

とまあそういう風に思いましたが個人の感想なので異論はあろうかと思います。


・質問が冗長だと真意が伝わらないという例をみてみましょう

『(問)ちょっと先ほどのお話と重なっちゃうかもしれないんですけども、6 月、7 月と賃金が順調に上がって消費が緩やかに増加している中で、価格転嫁も引き続き続いてるというようにみれるんですけども、サービス価格の方もしっかりしていると。しかしその中で、10 月の価格改定に向けてサービスのところは事前にはなかなかつかめないということですけれども、やはり最近の企業の価格転嫁、賃上げみてると、10月の価格改定それなりにその蓋然性が高まってるというか期待してもいいような感じもするんですけども、そこから先行きのその来年の賃上げとか「第二の力」の強さのところを現状でどういうふうにみてるかということをお伺いしたいのが一点。(後半割愛)』

後半は割愛しますが、この前半の質問前置きが無駄に長すぎなんですけど、会見冒頭の幹事社質問がハッスルしたのか知らんけどやたらめったらくどくどと質問してた余波が来ているんじゃないかと思うので次回以降の会見はもうちょっと何とかしてほしいもんですwww

要は第二の力(まあこの言葉もインチキ説明なんですけどね)へのバトンタッチがどのくらい進んでいるのかの現状認識は如何、という質問ですね。植田さんの回答ですが、

『(答)まず前半は、今後の経済データに関する注目点のようなご質問だと思いますけれども、おっしゃるように 10 月を中心とするサービス価格の、そこが一つの改定時期に多くの企業で当たりますので、そこで好調な賃金動向がどれくらい反映されるかというのは、強い関心を持っている一つの点です。それに加えまして、もう少し先、同じくらいの時期ですが、もう一つ最低賃金が上がり始めますので、それのパート賃金等を通じた賃金への影響にも関心がありますし、また、おっしゃったように、来年の春闘に向けてどういう動きが始まるのかという点も注意深くみていきたいと思っています。(後半割愛)』

質問が冗長のため質問に対する回答が得られませんでしたwwwwwwwwww

まあ植田さん、分かってて敢えて回答を外してごまかしたのかもしれませんが、第一の力から第二の力に徐々に移っている、という回答をしても別に害にはならない話で、その質問の回答を誤魔化すインセンティブは無いので、これは素で植田さんが質問の真意をくみ取れなかったんだと思います。

・・・・ということで何か晒し上げ状態ですが、アタクシ何を言いたいかと申しますと、日銀の今の政策に関する説明のゴテゴテ満艦飾状態も同じであって、お前らの政策の説明に余計な要素をああでもないこうでもない丁寧な説明しているつもりで付け加えるから、肝心の中身が訳わからなくなる、ということなので、これを他山の石としていただきたいと思った次第で、あんまり晒し上げの積りではありませんのでご容赦いただきたいです。


・昨日もネタにしたが本人がコミュ障だと思っていないのがヤバイとしか言いようが無い件

こんな質疑がありました、イイゾイイソー。

『(問)前回の 7 月の会見では、総裁の発言内容ですね、市場がサプライズと受け止めたこともあって、8 月頭のマーケットが大きく動く一つのきっかけになったんではないかとの指摘も出ています。日銀によるこの市場とのコミュニケーションについて、総裁は課題があるとお考えでしょうか。もし何かお考えがあるようでしたら、課題をどのように改善していったらよいとお考えなのか、具体的に教えて頂きたいです。(後半割愛)』

でまあこの回答なんですけどね。

『(答)コミュニケーションの方ですけれども、おそらく 3 月の記者会見から申し上げていると思いますけれども、基調的物価上昇率が上昇するとか、あるいはわれわれの物価見通しの確度が上がるということがあれば、適宜、金融緩和の度合いを調整していくということは繰り返し申し上げてきたところですし、』

いやお前3月は「当面緩和的な金融環境が続く」と利上げしなさそうな言い方してたし、4月も展望レポートの表現に同じのが入って混乱する元になったし、だいたいからして会見で円安ぶっ飛ばしている時点でその真意は全然伝わっていないわけで、伝わっていないのは言ってないのと同じな訳ですけど。

『7 月の政策変更もそれに沿った線の動きというふうに私どもは考えていました。そのうえで、7 月の会合後の市場の乱高下の一因として、やはり私どもの考え方が十分伝わっていなかったのではないかと、市場等に、という批判があることは承知しています。』

承知しているけど反省の弁が一切ないのが植田コミュ障爆裂という所でして、植田総裁は田村審議委員の爪の垢を煎じて飲むべきですな。

『引き続き、私どもの経済・物価情勢に関する認識と、それに基づいてどういうふうに政策運営をしていくかという考え方を丁寧に説明していくということに心掛けたいと思っております。(後半割愛)』

この「丁寧に」ということでやっているのが1万回くらい申し上げていますが、「いろんな要素をゴテゴテ盛り込んだ満艦飾の説明」になっていて、その結果結局日銀の基本的な考え方が伝わっていない、ということなので、丁寧に説明しようとすればするほど地獄状態になるわけで、説明はシンプルにしていただきたい訳ですが、一層丁寧に説明しよう、とか言ってる時点で問題の所在を把握していない(ので反省もしない)し、一段と今後コミュニケーションが悪化しますと言ってるようなもんで、これから先が思いやられる話ではあります。


・でまあ「丁寧な説明」をするとこうなってしまうのよね

中立金利の質疑とかもはや回答が分かってるのに何度も質疑があって呆れるのでその辺は全部飛ばしてこの質問から。

『(問)二問お願い致します。一つ目は物価についての評価を伺えればと思うんですが、今日CPIも出まして 2.8%っていうことで、米とかチョコレートとかって、日銀が重視する部分とは違うかもしれないんですが、足元の物価はちょっと想定より少し上振れしてるんじゃないかと思うんですが、それをどうお考えかっていうのと、先行きの物価の見通しも改めて伺わせて頂ければと思います。』

これは「展望レポートの中間評価をお願いします」という意味合いになるということで王道質問ですな。

『もう一点目は、次の利上げ判断するに当たって、決まったスケジュールとかペースとかはないというふうに先ほどおっしゃられたんですけれども、そのうえで都度判断していくうえで、特に重視したいデータだとか指標とか、その辺りを伺わせて頂ければと思います。』

さて・・・・・・・

『(答)まず今朝方のCPI等からみえる物価の姿ですけれども、特に今朝のデータで申し上げれば、少し前にみていたより強めであるということは、そうかなと思います。』

ほう、と思ったらこの後クソ長く説明をするのですね。

『その要因として、指摘頂いたように、米の値段とか、それから一部の輸入財のところが、7 月までの円安の効果もあって、値上がりしているというようなところで、こういう部分については、全部ではないですけれども、かなりのところ、今後、消えていくというふうにみていますし、その他の一時的な要因の中にも消えていくようなものがまだあって、これはインフレ率を少し押し下げる方向に働くとみています。』

米価ってその前にあんまり上がっていなかったし、製造コストの上昇をやっと転嫁できてきたという側面もあるので今後下がるかというと下がらんでしょと思うのだがまあいいです。

『他方で、今朝の物価の中、特にサービス価格の一部には、引き続き賃金の上昇を転嫁するという動き、物価・賃金の好循環に沿った動きですが、これもみられていまして、こちらは引き続きインフレ率に上方の圧力をかけるというふうにみています。』

この説明、もうちょっと簡単に「財価格も一部大きな動きのあった品目が影響して上がっていますが一時的要素が強いです、サービス価格は好循環の動きが続いています」位にしてほしい。

『こういうのを総合して先行きの姿が決まってきますし、そこに先ほど来申し上げてますような、海外発の様々な不確実性が、金融資本市場を通しての影響も加わって、更に追加的な要因として乗ってくるっていうのが、今後の見通しを決める際の大きな構成要素といいますか考えるポイントかなと思います。』

あーあーあーって感じですが、こうやって米国経済ガーというのとさらに金融市場の影響ガーとか言ってしまいますとどう見てもハトハトチキンです本当にありがとうございました、となるわけですけれども、まあこれは植田さんがハトハトチキンだから、ということであればそらまあシャーナイのですけれども、日銀の基本的なシナリオとしては米国はソフトランディングだし、金融市場の影響で物価が下押しというのも別にシナリオには入っていない(リスクとして経済押し下げからの物価への影響というのはあるでしょうが)訳で、メインシナリオじゃないリスクシナリオの話、しかも下方リスクの話だけを殊更に持ち出すのは「ハト派メッセージを出そうとしている」と受け止められても仕方ない話な訳ですな。

でまあそういう意図で植田さんが言ってるならともかく、そうじゃなくて本人が単に「丁寧な説明をするために最近新しく出てきたリスク要因を説明しよう」などと無邪気に考えて説明している可能性があるのがコミュ障植田の恐ろしいところでして、もしそうだとすればちょっとヤバいんですよねこのおじさん。

でまあ後半のデータ云々ですが、そんなの「物価安定目標なので物価は重要ですが、物価だけ2%になればいいというものでもないので全体を踏まえて総合判断します」で良いのにこの回答である。

『その場合にもう少しデータとの関連で何を先行きみていくのかという点については、先ほどご質問がありましたように、賃金、順調に上昇してきているんですが、これが秋以降、動きが続いていくかあるいは最低賃金の引き上げの影響が出てくるのかどうか、それから引き続きサービス価格への転嫁が続いていくのかどうか、それから来年の春闘に向けての動き、それからサービス価格が上がっていくかどうかという点を決める一つの大きな要因として、消費がある程度堅調であるということが必要かと思いますので、消費の今後の姿にも強い関心を持っています。』

色んなものをゴテゴテにデコるの止めてもらえませんかねえ・・・・・・・・・


2024/09/25

〇まあ順番で決定会合総裁記者会見

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2024/kk240924a.pdf
総裁記者会見
――2024年9月20日(金)午後3時30分から約75分

・毎度質疑が押すの分かってるのに幹事社の質問がクソ長すぎでアホかと思いました

まあ毎回幹事社が妙に張り切って質問するのですが、特に今回の会見は幹事社の最初の質疑が無駄にくどくどとクソ長くて、最初の総裁の「今回の決定について」の説明とあわせると、アタクシがリアタイしてた時に書いた手元メモを見ると「9分経過、クソ長い」とか書いてあるという有様で、幹事社が張り切ってクソ長い質問するからその後の質問も長くなって最後に時間が押すんだよと思う訳で、幹事社自主規制してもっと短い質問にしろ、と思いました。

ちなみに昨日の大阪講演は最初の質問幹事社じゃなかったんですけど、最初に質問したどこぞの某社(敢えてどこかは書かない)の質問が同様にクッソ長くて、あまりの長さに質問の趣旨が聞いてるこっちも分からなくなる状態でしたが、それに釣られたのかその後の質問も全般的にクソ長くて非常に聞き苦しい会見でしたので、記者会見そのものをやはり「かずお君のよつべチャンネル生配信」方式にした方が良いんじゃないかとwwwww

しかもクソ長いくせに質問としての価値もないので最初の幹事社の質疑は割愛して次に行くw


・最初の方なんか質疑が全然かみ合ってなくて大丈夫かって感じでしたが・・・・・・

まあ2番目の質問も大概にナンジャソラだったんですけどね。

『(問)まず為替についてなんですけども、先ほど円安が修正されたことで上振れリスクが減ってきたというところですけども、日銀のシナリオ自体への影響を、つまり下押しのリスクですね、その辺りは影響はないのかどうか、今後、アメリカが利下げを進めていけば更なる円高圧力になってくると思うんですけども、それが日銀のシナリオに対してどのような影響を与えるとお考えかという点をお願いします。』

そもそも論としてアメリカが利下げしたら円高になるというのが???なのでそれを言うのは余計にもほどがある。でもって質問の2点目に行く。

『もう一点がですね、先ほど金融市場動向を注視していくというところと、円安が修正されたので、利上げについての判断をする時間的な余裕が出てくるというお話ありました。そうすると年内に利上げをしていくという可能性っていうのは低くなってきたのか、それとも全く排除されないのか、その辺りもお願いします。』

この会見でもそうですし、昨日の会見でもそうなのですが、「年内に利上げ」云々って延々と記者どもが質問しやがるのですが、円債市場の中の人的には12月1月ってのはセットで、どっちで利上げしてもその意味するところは大差ない(短期市場的には大差あるけど)ので、そもそも論として「年内」で区切って質問する意味が全く分からないのですが、何でああ年内利上げに拘って質問するんでしょうか、というのが未だに意味不明です。この会見でも昨日の会見でも何度もこの質問があってリアタイ聞いてて一々血圧をあげていると健康に悪いので甚だ遺憾の極みであります。

さて1番目の質問の回答。

『(答)ちょっと一般的なお答えになってしまうかもしれませんが、先ほど申し上げましたように、アメリカをはじめとする海外経済の先行きを巡る不透明感、これが昨今の金融資本市場の動きの背後にあると考えていますので、その全体を含めて、丁寧に分析して、われわれの見通しに対する影響を確認していきたいというふうに思っています。』

ということで、会見冒頭から「米国(及び海外)経済ガー」という話が出ていまして、最初のうちはそうでもなかったのですが、植田さんがあまりにもこの「米国経済ガー」を連呼するもんだから、「ハトハトチキン植田が再爆誕」ということになってドル円は飛ぶ飛ぶ炎と燃えてだわ円債先物はどすこいどすこいと横綱相撲を始めるわとなった次第。

広範の質問の回答がこれ。

『その確認にどれくらいの時間がかかるかということですが、これは特定のタイムラインというか、スケジュール感を持って、ここまでに確認するというような予断は持っていません。もう少し申し上げれば、アメリカであれば、ソフトランディング的なシナリオに近い姿が実現していくのか、もう少し厳しめの調整になっていくのか、これを丁寧に見極めていきたいというふうに考えています。』

何かここの部分、リアタイで聞いていた時も「全然話がかみ合わないぞ」って思ってまして、またポンコツ質疑かと思ったのですが途中からはかみ合うようになっていたので、単にお疲れだったのかもしれないのですが、今回の金融政策決定会合に疲れる要素なかっただろ、とは思いました。


・米国軟着陸なら利上げできますよね&物価の上振れリスクに関して(個人消費の上方修正に絡め)

3番目にまともな質問がやっと来まして、ここから会見の流れが落ち着いてきた感があります。

『(問)FRBが 0.5%の利下げをしました。アメリカの経済の軟着陸の可能性を高めるために動いたという説明ですけれども、総裁の今の米国経済に対する認識を伺えればと思います。また米国経済が軟着陸するのであれば、アメリカが利下げに動くこと自体は、今後、日銀が見通し期間後半にかけて中立金利に引き上げていくというシナリオに影響を与えないという理解でよろしいでしょうかというのが一点目です。』

米経済なんて日銀が予想できるわけないだろいい加減にしろwwwwというのはさておきまして、米国利下げが米国経済の軟着陸に結びつく利下げならそれは日銀の緩和修正に妨げにならないですよね、という実に真っ当な質問。

後半は、

『もう一点が先行きの物価認識について伺いたいと思います。為替による上振れリスクは 7 月時点と比べて抑えられていると思いますけれども、個人消費を今回判断を上方修正したことないしまた価格転嫁の継続などを踏まえると、一時的な上振れリスクというよりは基調的な物価の上振れが生じる可能性が上がってきていると言えるのではないでしょうか。そこの総裁のご認識と今後どう政策対応していくかを伺えたらと思います。』

確かに。

植田さんの回答。

『(答)まずアメリカですけれども、大まかに申し上げて、判断が難しい部分があるかなと思います。』

って辺りもハトハトチキンっぽいですよね、なんか兎に角この会見は終始「米国経済ガー」を連呼してハトハトチキンを強く印象付けているんですが、これ本人がその意図を持って言ってるならまあ確信犯だから仕方ないのですけれども、植田さんの場合は本人がこの発言をハトハトチキン扱いされるという認識なしに言っている可能性が大有り名古屋は城で持つなのが恐ろしいところです。

『というのは、消費を中心に支出面はかなり好調が持続している。これに対して、労働市場のデータをみますとやや弱めというか、これまでの超過需要が非常に強いという状態から、需給均衡かあるいは失業率はちょっと上昇するような状況になってきて、その間に若干のギャップがある中で、インフレ率ははっきりと低下を続けているということだと思います。』

うーんこの。

『これをまとめて、ソフトランディングになっていくのかあるいはもうちょっと減速が強まるのか、その中でFRBが減速傾向を食い止めるためにどれくらいの利下げをしていくのか、この辺の全体像はまだちょっと、先ほど来申し上げておりますように、みえていないっていうところですので注意してみていきたいと思いますし、そのわれわれの見通しに対する影響を引き続き、丁寧に確認していきたいというところです。』

これはハトハトチキンですわ。では後半の質問に対する回答。

『それから二点目は日本の消費に関するご質問だったと思いますが、今回、若干判断を上方修正していますけれども、データ的には私ども消費活動指数が第 2 四半期は増加に転じた、それから 7 月も増加が続いている、更にその後の動きについてもヒアリングや高頻度のデータでは、緩やかな増加基調が続いているということがまず一点です。』

はい。

『それから猛暑とか台風と自然災害でちょっといろいろ揺れていますけれども、そういうことがありますが、根っこのところで賃金が着実に上昇してきて所得環境の改善が続いている。こういう辺りを総合して少し判断を引き上げたということです。』

分かったが別にそこは質問されていないだから説明しなくて良いと思うのよね。こういうのが一々余計なんですよ植田さんは。

『そのうえでそれが基調的物価上昇の判断にどう影響するかということですが、この消費のデータも含めまして、7 月に申し上げたことと若干重なりますが、その後のデータをみてもわれわれの見通し通りに経済は足元動いてきているというふうに、日本経済ですね、みています。』

そうじゃなくて消費上方修正は物価の上振れリスクになるのか、という話なんだが、

『これは若干なりとも、基調的物価上昇率に対する判断を上げてもいいような材料ですが、他方で、先ほど来申し上げているような海外経済、特に米国経済の動きが先行きに関して若干不透明性を高めている。それが何か相打ちのようなかたちに足元なっているというふうな認識をしております。』

ここでもまた米国経済ガーを連呼しているんですけれども、この説明だと消費の上方修正が「オントラックの中での出来事」なのと「上方サプライズ」なのかが判然としなくて、本来であればこの説明するなら米国云々を言う必要はなくて「もともと家計所得の上昇によって消費は下支えされて先行き堅調に推移する、という見通しに沿った動きであって、特にこの消費判断の上方修正が物価の望ましくない上振れリスクに直結するような材料ではないと考えています、あくまでもオントラックの中での現状判断の修正と考えて頂きたい」と言った方がすっきりするんですよね〜。

というところで最初に余計な悪態書いたから時間が無くなりました続きは明日ということですいませんすいません。




2024/08/26

〇植田総裁国会お呼び出しの巻でしたが

https://jp.reuters.com/economy/bank-of-japan/LYRCAVZWMRLSJOESRW7TPLHYKE-2024-08-23/
内田副総裁と「考え違わず」と日銀総裁、政策調整の戦略を再強調
By 和田崇彦, 石田仁志
2024年8月23日午後 5:30 GMT+9

『[東京 23日 ロイター] - 日銀の植田和男総裁は23日午後に行われた参院財政金融委員会の閉会中審査で、金融政策の考え方について「私と内田(真一)副総裁に違いはない」と述べた。その上で、午前の衆院での質疑に続き、市場動向が経済・物価見通しやリスクに及ぼす影響を見極めた上で「経済・物価見通しがおおむね実現していく姿になっていけば、金融緩和度合いを調整していくという基本的な姿勢には変わりがない」と語った。』

『植田総裁は7月の金融政策決定会合後の記者会見で追加利上げに前向きな姿勢を示した。一方で、内田副総裁は8月7日の講演で「金融資本市場が不安定な状況で、利上げをすることはない」と強調した。』

『植田総裁は、内田副総裁の発言は7月会合後の金融市場の変動を踏まえたものだとの認識を示し、「適切だった」と述べた。』(上記URL先より)

そんなに反応していたようにも見えませんでしたが、「内田副総裁と考えが同じ」というのを債券の方は「つまり内田さんも同様に利上げを排除しているわけではない」と読みとり、株式の方は「つまり植田さんも利上げには慎重」と読み取っていたような気がしますが、内田さんの過去の講演見ればわかるように、内田さんってその場その場での最適な説明はするんですけど、前提条件が変わるといきなり全然違う事言い出すという特性がある、というのはまあだいたい日銀のこのあたりの話を見ていると思われるところでありまして(あくまでも個人の感想です)、内田さん今後利上げ行ったときに「昨年8月の発言との整合性」とか突っ込まれても「あの説明はあの時点における状況を元に行ったもので、その後時間の経過と共に状況は変化しているのだから、その変化を踏まえたうえで最適な政策を行うのは当然である」とか平然と言ってきそうなんですよね。


ということですから、債券市場の反応(というか半というか)の方が妥当だと思うんですけど、まあこればっかりは今後になってみないとわからんし、9月は自民党総裁選の前だし10月は解散総選挙やってそうだし、いずれにしても政策はしばらく地蔵でしょうからまあ今後ということで。


2024/08/07

〇なんか足元の相場大暴れで過去の話っぽくなってしまいましたが植田総裁会見の続き

まあ8月1日からこの方いろんなものがバッタバタでなかなか追いつかなくてすいませんすいません

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2024/kk240801a.pdf
総裁記者会見
――2024年7月31日(水)午後3時30分から約65分

今日は国債買入減額に関連する質疑を確認するわけですが、

・国債買入減額の説明は6月会合で威勢の良い事言ってたのと比較してよわよわ

『(問)幹事社の方から質問させて頂きます。一問目が、説明にもありました長期国債の買入れ減額についてです。7 月 9 日、10 日の債券市場参加者会合の参加者からは、減額の幅やペースについて幅広い意見が出ましたが、この内容をどのように踏まえて今回の決定に至ったのか、そのプロセスについて、可能な範囲でもう少しご説明ください。(後半割愛)』

『(答)最初のご質問ですけれども、債券市場参加者会合では、国債買いオペ減額の幅やペース、買入れ金額の示し方、臨時オペ・指値オペの位置付けなどについていろいろご意見を頂きました。頂いたご意見は、今回の減額計画にも反映されています。』

確か買入ゼロにしろとか、イニシャルでどどーんと減額してその後はいったん様子見の方が却って市場機能回復が早くなる、というような意見もあったはずだが反映されている気がしませんなwwww

『すなわち、先行きの国債買入れの予見可能性を求める声が強かったということを受けまして、』

なんでしょうね、「反映されています」とか説明しなくて良いわけでして、「頂いた意見を踏まえて検討したらこうなりました」という説明で良いと思うんですけど、なんか知らんけどこの長期国債買入減額問題に関しては、「会合の開催そのもの」もそうなんですけど、この計画に関しても日銀が自分の判断で決めている筈なのに、やたら市場の意見がどうのこうのというトーンでの説明がずっと続いている訳でして、この点に関しては、綺麗に言えば「市場との対話」ということなんでしょうけれども、意地の悪いアタクシから見ますと「市場に責任転嫁する日銀のスーパー保身ムーブ」に見えてしまうんですよね、というか6月会合でそういうツッコミ思いっきり日経新聞を含む複数の方に突っ込まれていましたがwwwww

『一つには 2026 年 3 月までの各四半期毎の買入れ予定額を具体的に示すということにしましたし、また、残存期間別等の買入れ予定額についても、レンジではなく、ピンポイントで示すことにしました。』

『一方で、市場参加者からは、先行きの市場環境等についての懸念も少なからず窺われました。』

ゼロにしろとかドドーンと減らせ、と言ってた人たちもいたんですが、そっちの人たちからしたら「買入減額が足りないことへの懸念」になるはずなんですが、この表現だとまるで買入がやりすぎの方に関する懸念について言及しているように見えます。

『この点も踏まえ、中間評価の実施など、国債市場の安定に配慮するための柔軟性も確保することと致しました。』

ということですが、何回か申し上げているように「国債市場の安定に配慮」という言葉で今まで日銀は散々市場介入をして、出口に近づく中でアホみたいに買入を積み上げまくってしまった、というのがあるわけでして、この説明だと6月に言ってた「減額するなら相応に」とかいうのはどこに逝ったんだ、という話になりますな。

『このように、市場参加者の意見を丁寧に確認することで、市場の現状と先行きを踏まえた、しっかりとした減額計画を決定することができたと考えています。会合に参加頂いた市場関係者の皆様には感謝申し上げたいと思います。(後半割愛)』

あの及び腰の計画のどこがしっかりした計画や、と思いますがまあそれは個人の感想ということで。


・バランスシートの規模を語る時のトーンが政策金利を語る時のトーンと明らかに違う件について

将来の日銀バランスシートに関する質疑もありまして、

『(問)(前半割愛)もう一つが将来的なバランスシートについてお伺いします。今回の減額は、特に資産側、金融機関の国債の買入れ余力の見極めを重視したというふうに認識してます。一方で、その残高のゴールがなかなか見えない中で、将来的に資産・負債サイド、どういった点に着目して目指す残高を決めていきますでしょうか。総裁のお考えをお伺いできればと思います。』

これ毎度思うんですが、マクロ的には日銀が国債買入しなくったってどこかで回る筈で、それが懸念だの何だのって言われるのは、「国債の金利水準がリスクに見合ったリターンになっていない」ということに尽きるわけで、つまりは金利水準が解決する話だし、それでは財務省が困るから日銀は大量購入を続けるべき、ってのはまんま財政ファイナンスであって、ムガベ大統領状態だろとしか言いようが無いのですけどね。では回答。

『(答)(前半割愛)それからバランスシートの大きさですけれども、国債の保有残高ということで言いますと、約 2 年後に私どもの試算では、今回の計画によって 7〜8%程度減少するというふうに考えています。ただ、これはまだおそらく長期的に望ましい水準よりも高い水準であるというふうに思っています。』

高いじゃなくて「きわめて高い」だろうがこのボケナス。

『そのうえで長期的に望ましい水準がどの辺かということは、他の中央銀行もそうですけれども、現在、量的緩和の後、皆さん模索状態にありまして、私どもとしても、海外の例も参考にしつつ、だんだんと見極めていきたいというふうに考えています。』

とありますように、んなもん1割減っても超越過大なバランスシートだというのにお前は何を言ってるんだというお話をしている訳ですよね。

一方で(もうだいぶ前にネタにしたような気のする時間帯ですが)総裁会見における政策金利水準のお話は、ネタにしました通りで「実質金利は大きなマイナス」だし「中立金利とみられるレンジの下限に到達するのも何回かの利上げの後」というように、やたら威勢よく「長期的な政策金利水準と今の政策金利水準の乖離」について植田総裁は説明していたわけでして、この差は何なのという位に大きなトーンの差を感じます。

まあこの点に関しては政策金利に関しては植田さん学者ですからそういう話は身近なのに対して、このクソのように聳え立つ長期国債買入残高と日銀の巨大なバランスシート、ってのは、ムガベ大統領みたいな例外をさておきますと、経済の主要国では今まで見ていなかった物件なので、そういうものに対しては未知のものコワイヨーって話なのかもしれませんな、とは思う訳ですが、それにしても及び腰感が強いですよねこの言い方も。


ということで、植田総裁金利に関しては威勢の良いトーンだったのですが、国債買入に関しては6月に大口叩いていたほどのトーンがない、というのが目立ったなと思います。

・・・・まあ何ですな、これに関しては利上げをぶっこんだので、長期国債買入減額に関してはトーンダウンしておこう、というバランスでやっているのかなあ、とも思うのですが、今回の利上げってまあ直前(前日夜中から朝の報道は除きまして)まで「あっても不思議じゃないけどあるかどうかはよくわからん」みたいな感じになっていましたので、あれはまあサプライズではなかったにしましても、6月の会見の時のトーンは「輪番減額をドンとやるのが7月会合」って線で説明していた訳でございまして、まあ利上げ自体はアタクシやったこと自体は高評価しているのですが、それにしましても、6月会合の会見での説明だと減額がメインテーマのはずがどうしてこうなった、というのは不可解で、そういう辺りが今の日銀のコミュニケーションを訳わからなくさせている背景にあるんだと思いました。


2024/08/02

〇決定会合レビューシリーズの続き:輪番の話の前に総裁会見の話を少々(その1:政策金利回りを中心に)

金利政策に関する部分はまあだいたい昨日申し上げた通りで、あれ書いてあるロジックを真に受けると、「2%物価目標に向かってオントラックで推移しているんだったら、実質金利がクッソ低い状態になって却ってよろしくないので利上げをしまっせ」ということになるので、それはすなわちナンジャラホイというと、10月展望の時点で進捗が順調なのを確認したら再利上げ、になるんですよね。

ただまあ7月10月ってやってしまうと次は1月って話になってしまうので、そこまで根性据わってるのか、と考えると10月は微妙だと思うのですが、もしかして「調整を行って極端な緩和からマイルドな緩和じゃないかと思われるところまではホイホイ利上げして、その後はマイルド緩和を続けて様子見をする」という根性が据わっているのであれば、どうせ今次局面の利上げだって(余程の物価上振れが起きない限り)一旦1%(下手したら0.75%)まで利上げしたら「ちょっと様子見」になると勝手に思っていますので、何ならポンポン利上げしちゃって1%まで来たところで「当面打ち止め、この後はマジのマジで2%物価定着を確認しますのでお時間ちょんまげ」とやるくらいまで腹くくっているなら10月利上げだって普通にありますわな、と思います。

てな話はさておきまして、今回の総裁会見は中の人が入れ替わったとしか思えないほどに秀逸な会見でして、ついこの前までハトハトチキン会見で記者のツッコミにヒーコラ言ってたのに、今回は植田総裁が真人間に戻ってしまった途端に記者の皆様との格の違いを見せつけて、植田無双状態だったし、記者の方がわかりきった質問の連発で、会見止めて「かずおくんのスパチャ読みタイム」にでもしてくれと思うような内容になってしまいましたぬー。

まあアレです、植田総裁が本来の真人間を取り戻せばこんなもんな訳でして、見たかお前らこれが真の植田和男じゃああああああ!!!!といったところでしょうな、

まあ単に羽交い絞めにされてハトハトチキンを封印しているだけの可能性もあるんですけど、やはり今回は何と言いましても昨日ご紹介したように、「金融政策が本当の意味での「普通の中央銀行」に戻り、黒田緩和の呪縛から解放された(長期国債買入とETF残高という特級呪物は残っているのですが)」ということが背景にあり、呪縛から解放されたので植田総裁が真人間に戻った、という説を積極的に提唱したいと思います。

#「金融政策腐蝕列島 呪縛」って電波が空から降りてきましたw

では総裁会見から少々

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2024/kk240801a.pdf
総裁記者会見
――2024年7月31日(水)午後3時30分から約65分

まずは政策金利に関する説明を確認しましょう、というのもそっちのロジックがかなり明快になったからなんですけど。

・利上げの背景となる現状認識

『(問)(前半割愛)二問目は、追加利上げに関してです。3 月の決定会合でマイナス金利政策を解除してから約 4 か月で今回政策金利の追加の引き上げを決めました。その背景となる基調的な物価や経済の動向についての現状認識と、懸念材料として個人消費の弱さを指摘する声などもありますが、これらについて総裁の見解を併せてお聞かせください。』

『(答)(前半割愛)それから、後半のご質問ですけれども、今回の政策金利引き上げの背景ですが、まず、個人消費ですけれども、物価上昇の影響などがみられますが、底堅く推移していると判断しています。最近では、マインド指標にも底入れの兆しが窺われます。』

消費に関して「底堅い」と認識していますね。

『また、5 月の毎月勤労統計では、一般労働者の所定内給与が伸び率を高めたほか、私ども本支店のネットワークを活用して、中堅・中小企業に対して実施したヒアリングでも、幅広い地域・業種・企業規模において、賃上げの実施を指摘する声が聞かれるなど、賃上げの動きが広がってきていることが確認できます。』

中小含む賃金、と来ました。これも従来賃金賃金言ってたわけですので、このタイミングで賃金の強さがあるんだからまあそもそもは利上げしない方がロジックの整合性が無いともいえたんですよね。

『先行き、こうした動きが一段と進むことが見込まれ、賃金・所得の増加が個人消費を支えていくと判断しています。』

先行きはお気持ちの世界なのでまあ何とでも・・・・・・

『物価面ですが、サービス分野を中心に、年度初めの「期初の値上げ」が相応に広がったことが確認されたと考えています。』

サービス価格キタコレ。

『企業ヒアリングでも、ばらつきを伴いつつも、賃金上昇を販売価格に反映する動きが強まってきている点が指摘されていまして、』

賃金の価格転嫁キタコレ。

『先行きも、賃金と物価が連関を高めつつ、緩やかに上昇していくと見込まれます。』

まあこれはお気持ちですが、

『このように、わが国の経済・物価は、これまで展望レポートで示してきた見通しに概ね沿って推移しています。』

オントラックで推移しています、からの、

『また、加えまして、これまでの為替円安もあって、輸入物価が再び上昇に転じていまして、物価の上振れリスクには注意する必要もあると考えています。』

いままで明確にこの話をしないでうにゃうにゃとごまかしていたというのに急に変なもんでも食ったかのように円安輸入物価上昇からのリスクについて言明www

『こうした状況を踏まえ、物価安定目標の持続的・安定的な実現という観点から、今回、政策金利を引き上げ、金融緩和度合いを調整することが適切であると判断しました。』

でもって今回は「金融緩和度合いの調整」ですが・・・・・・・

『先行きについても、先ほども申し上げましたが、経済・物価情勢に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく方針です。』



・「待つことのリスクは大きくない」はいつのまにか封印された模様

こんな質疑がありました。

『(問)(前半割愛)もう一点は、展望レポートの物価見通しについて、円安が基調的な物価に与える影響についてどのように評価されたのか、またそれが今回の利上げの決定においてどの程度考慮されたのかという点も併せてお願いします。』

この部分今回目立ちましたもんね。

『(答)(前半割愛)それから、円安と私どもの[物価]見通しと政策変更の関係という点に関するご質問ですけれども、まず例えば年初来あるいは昨年末来の円安ですけれども、これは消費者物価見通しはほとんど前回と比べて動いていないということですので、[物価]見通しのところに大きな影響を与えたということではないということだと思います。』

とこの点は相変わらずなのだが、

『しかし、先ほど来申し上げておりますように[物価]見通しに対して現実が上振れるというリスクとしては、かなり大きなものであるというふうに評価したうえで、そこまで含めて政策的な対応を今回は打ったということでございます。』

>上振れるというリスクとしては、かなり大きなものである
>上振れるというリスクとしては、かなり大きなものである
>上振れるというリスクとしては、かなり大きなものである

昨年5月のハトハトチキン宣言となった内外情勢調査会での例の「逆方向の、政策転換が遅れて2%を超える物価上昇率が持続してしまうリスクもありますが、こうした2%の定着を十分に見極めるまで基調的なインフレ率の上昇を「待つことのコスト」は、前者に比べれば大きくないと思われます。」(2023年5月19日の内外情勢調査会での植田総裁講演テキストより)と言ってたのは時間の経過とともに情勢判断を変えた、ということだと思うのですが、まあ次の講演どこになるのか分からんけど、リスク認識が変わったから利上げした、っていうのをもうちょっと明示的に講演とかで説明してほしいんですよね。1年経過して判断が変わるのはそりゃまああり得る話なんだから別に恥でも何でもないわけですし。

今回の会見での説明で上記のように「上振れリスクにも対応して政策金利の調整をした」と明言はしているのですが、まあこのあたりの背景説明を今月どうせ総裁か副総裁が説明の金懇なり講演会なりをすると思うのですけれども、この際に「待つことのリスクが大きくないという状況から大きく変化している」というのを明示してほしいし、そうじゃないとまたぞろ「政策調整はゆっくりと行うので当分金利上がらない」みたいな意識って出てしまうと思うんですよね。利上げ前は言いにくかったのかもしれませんけど、利上げしたんですからもうそこは堂々と言ってほしいです。


・「利上げしないリスク」と「そもそも今の金利水準がクソ低い」の明確化

こんな質疑がありまして、

『(問)先ほど利上げに踏み切った理由の部分でですね、利上げするリスク、それから利上げしないリスクを少しお話し頂けたと思うんですが、その辺りちょっと詳しくお伺いしたいと思います。』

良いですね〜

『低い水準の金利を調整しておいた方が、慌てて急激に上げなくて済むというところが、一番今回の追加利上げの判断に影響したのかなと思うんですけれども、一方ですね、景気の腰折れリスクみたいな部分をどう考えられたかというところです。というのも、先週発表されました東京都区部の消費者物価指数をみてみましても、物価の基調がみやすいところの生鮮食品とエネルギーを除く総合の部分は、市場の予想を下回っていますし、サービス価格の部分も鈍化していることが確認されています。そうした中でも、今回利上げをして、日本経済問題ないということなのでしょうか。(後半割愛)』


『(答)前半ですけれども、まずこの辺で金利を引き上げておいた方がいいという際の、その理由ですけれども、それはおっしゃったように中長期的な意味で、持続的・安定的な 2%の物価目標をちゃんと実現するという観点からは、少し早めに調整をしておいた方がいい、というのが一つ大きな理由になったかと思います。』

からの、

『他方でそれは、景気腰折れのリスクを高めてしまうのではないかというご指摘ですけれども、これは、先ほど来申し上げてますように、25bps に上がったといっても、非常に低い水準ですし、実質金利で考えれば、非常に深いマイナスであります。』

まあ今回はこの質疑をネタにしましたが、この点何度も同じ会話になっていて正直げんなりしましたが、「そもそも今の金利水準がクソ低すぎなんだから調整するのは当たり前」っていう説明ですと、これは次の利上げに対してそんなに障害はないって話なので、本来順当な話ではあるけど今までのハトハト風味からしたらウヒャーとなるわけです。

『従って、強いブレーキが景気等にかかる、というふうには考えていないということです。』

実質金利の説明が今回多かったですね。

『その関連で、東京CPIですけれども、私もちょっとみると、少し弱めかなと思ったんですが、いろいろ分析してみますと、一時的な要因を除いたところでは、必ずしも弱くなく、サービス価格等の着実な上昇がみえている、というふうに判断しています。(後半割愛)』


・しれっと「数回利上げしても中立金利より下」というニュアンスの説明がw

最後の方になりますが、

『(問)先ほど、今回の利上げに関して、中立金利の不確実な範囲よりもかなり下の方にあるなかでの調整というふうにおっしゃられましたけれども、では、どの程度ですね、利上げすれば不確実な領域に入るのか、ということなんですが、例えば、0.5%を超えれば意識する必要があるのか、それともあと数回はですね、そういった領域に入らないので大丈夫そうなのか、その辺の総裁のイメージとして持たれていることがあれば、お願い致します。』

うんうん。

『(答)あまり具体的なことは申し上げにくいですが、以前から申し上げてるような中立金利に関するレンジを前提としますと、まだ暫くそういうところには入ってこないというふうには認識しております。』

>まだ暫くそういうところには入ってこない
>まだ暫くそういうところには入ってこない
>まだ暫くそういうところには入ってこない

ちょwwwwwwwwまだしばらく利上げしても緩和的領域です発言キタコレ。でもってその直後の質問で、

『(問)一点ご質問で政策金利の今後の推移について伺いたいんですけれども、総裁は以前展望レポートの見通し期間の後半に、政策金利がこの中立金利近辺になっているんではないかというお話をされてました。今回改めて例えば追加利上げ、それからインフレリスク、物価のですね上昇リスク、あるいは展望レポート改定されたものも含めて、総裁のこの政策金利のパス、従前と変更ないかどうかお聞かせください。』

『(答)先ほど申し上げたんですが、行き着く先の、それこそ中立金利について、ものすごい絞り切れてるという状況ではないので、はっきりとしたパスを将来まで引いたうえで今この辺を走ってるというのではなく、走りながら考えているというところかなと思います。』

まあそりゃそうだ、と思ったらついでに、

『ただ、先ほど直前のご質問にあるようなところを今の状況で走ってるということは言えるかと思います。』

ということで、数回利上げしても緩和的状態キタコレでありますな。


・・・・・まだまだ盛りだくさんなのですが利上げのせいでワシの生業も忙しいので今朝はこんなところで勘弁してつかあさい。週末元気があればさすがに少し何か投下したいと思います(投下確定ではありませんが努力はします)。


2024/06/19

〇国会半期報だが参院の質疑で良い質疑(質問)があったのでご紹介

毎度の国会半期報で昨日は参院財政金融委員会での質疑だったのですが、

https://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/index.php
参議院インターネット中継

こちらで日付を昨日で選択していただいて、財政金融委員会をクリックしていただきますと、昨日の質疑内容の動画が見れるのですが、この中で動画の1時間6分くらいから大塚耕平委員(国民民主党・新緑風会)による質疑があるんですよ。

でもってこれが中々良い指摘を行っていまして、頭からでもよいですし、一番良かったところを聞きたい場合は1時間8分の辺り(最初一瞬何の話かと??になるんですけどそれは本題の伏線ですので我慢して聞いてください)から始まるんですが実にいい指摘をしています。

まあ確認して味噌ってお話ではあるのですが、ものすごくざっくりとご紹介すると、今回の輪番減額予告公表に関して、会見で植田総裁が「相応の規模」という説明をしていることに関して、

「相応」という言葉を別のところ(金融システムの頑健性評価)でも使っているけれども、言葉の意味するニュアンスが文脈によって異なるようにしか見えないがそういう言葉の使い方をするのは如何なものか

この「相応」からは「かなりの規模」というニュアンスが読み取れるし、市場でもそういう解釈になっていると考えるが、実際に減額の公表があった際に、その規模が「相応」から期待される規模に対して失望的だった場合に市場が日銀の期待を裏切る反応をするリスクがあるのではないか

そもそも「相応」のような言葉を使うのがおかしい、私(大塚さんは元日銀です)なら「今後の金融政策運営に適合する規模」というような言葉を選んで想定問答を作成する

ってな感じで質問してて、植田総裁回答はしているけど大塚委員のツッコミには回答できませんでしたわ、というところでして、質疑後半においても今の日銀が情報発信で使っている言葉の使い方がこの相応と同様に「粗雑」である、という指摘をしておられました。

・・・・・・いや全く仰せの通りですわとゆーお話ではあるのですが、このパティーンって結局のところ円安コワイコワイネーなもんだから、円安に配慮してなんか威勢の良いことを言ったり、この前のサプライズ輪番減額5.13事件みたいなことを急にぶっこんだりするのですが、じゃあ実際にどうかというと、今回の決定会合がまさにそうですが、輪番減額を実施しますが規模は市場と相談してから決めますよ、って7月に問題の先送りを行った挙句、市場が期待というか予想してた7月利上げに関しては、なんも言わないならまだしも、「輪番減額による長期金利の動向も短期金利操作を決定する判断材料」とか言い出して、7月は輪番減額だけで利上げはしませんよって言ってしまうという期待を大きく下回る所業に出る、というハトハトチキンムーブをする訳ですな、うんうん。


でまあ金曜月曜は欧州リスクオフのせいでごまかされましたが、結局昨日からドル円また158円台だし、米金利下がっても碌に円戻らないで、これで米国の利下げ期待が後退したらドル円どこまで飛んでいくのという事になりますが、そのたびごとに威勢の良いことは言うんだが行動が伴わない、という世が世なら支店の営業会議で激詰めされてしまうダメダメ営業のようなことを(などと書いててなぜか目から汗が出るアタクシorz)してる次第で、まあシバキ倒されても文句の言えないダメダメムーブなんですよね。


〇総裁記者会見を見ても総裁(というか日銀全体というか)に市場に対するセンスが感じませんよね

ご紹介のおまけのつもりだったのにうっかり脱線して長くなったので小見出しつけるが、実はさっきの続きから話が始まりますわ。

まあそんなわけですから、昨日ネタにした総裁記者会見の

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2024/kk240617a.pdf
総裁記者会見
――2024年6月14日(金)午後3時30分から約65分

『(問)かなり丁寧に進めていきたいということはよく分かったんですけれども、今回動かなかったことによって今日になって円安が進み、158 円台になっているということもあります。この 7 月まで動かないことのリスクについては、総裁どうお考えなのかというのをお伺いしたいのが一つです。

あとは市場の金利形成の自由度を高めるために政策の予見可能性を高めていくというのは、非常に重要なことだと思うんですけれども、それによって市場に事前に政策が織り込まれ過ぎて、それで円安が進む展開のようにもみえるんですが、この市場との対話の難しさについては、今どう感じていらっしゃるでしょうか。』

って質疑に関して、日銀のよつべチャンネルの会見動画を見ますと(これはよつべに行って「日本銀行」で検索してちょんまげ)会見の26分11秒からこの質問が始まるのですが、よくよくこの動画を見ますと回答の際に総裁たぶんこれ想定問答を見ていなくて(少なくとも問答集を繰って探している気配はない)まして、いやこんなの普通に市場の中の人たちが全員思ってるだろうというツッコミ(だからこそ白眉の一つと申し上げた次第)であるのでして、その回答が全然回答になっていないというの想定問答用意してないのかよ何やってるんだと改めて思った次第です。

しかしまあ何ですな、この回答に関しても

『(答)具体案の発表は 1 か月先になるわけですけれども、その間の不確実性を極力避ける意味で、今日は不十分かもしれないですけれども、私どもの減額に当たっての基本的な考え方をご説明しているところです。』

からの、

『もうちょっと長いタームで考えますと、先ほど来出ていますように、どこが最適点か分からないですけれども、望ましい国債保有残高とか超過準備の水準に到達するまでにはかなりの時間がかかることですので、』

と相変わらず「かなりの時間」の話をしている訳ですけれども、この説明もクソ説明にも程がある話で、今問題なのは「輪番減額の規模感」なのに「バランスシートの大きさ」の話に回答をすり替えて説明していることなんですよね。他の質疑でもこういうパターンで回答しているんですけど。

まあ実は今朝は直近の数字でアップデートしたもの作ってないのであれなんですけれども、今の日銀保有国債の構成から計算すると、明日から輪番をゼロにしたとしましても、発行銀行券残高見合いに保有長期国債残高が減少するのに9年とかの規模での時間がかかるのは保有銘柄の銘柄属性を拾って(売買参考統計値で十分拾えるので特殊な装備は不要)エクセルが使えば猫でも計算すれば判る話だし、そんなことは少なくとも円金利やってる中の人で知らん人いないと思いますので、輪番の買入規模が減る話をイシューにする中で「バランスシートが本来望ましい姿(と思われる)水準になる時点までの話」をするのって完全に議論のすり替えになっているんですよね、しかもこのすり替えをすると「かなりの時間がかかる」というハトハトチキン総裁の大好きなやる気なし無しフレーズが使えるというおまけつき。

ですから月6兆円程度の輪番フローをどう減らすかという話と時間軸が全然違う話を持ち出しているのに、上記の説明のに続き、

『ちょっと極端な言い方になりますけれども、短期的に 1 か月、2 か月先になるということ自体のコストはそれほどないというふうに思っております。』

という話をしちゃっていて、これもよく考えたらひどい話で、1か月2か月とか言いながらダラダラ引っ張ることによって誰得円安が進行しているのであって、コストがそれほどない、とか言っているのがもうセンスとして絶望的なのですが・・・・・・・・

なんか話がバンバン逸れてしまいましたが昨日ネタにした会見でやっぱりこれもナンジャソラなのでネタにしますと、本文7ページになりますが、

『(問)(前半割愛、というかそれは昨日ネタにしました)あと二点目は、最近、企業物価指数等みてますと、円安の影響等でまたコストプッシュ型のインフレ圧力が再加速してるようにみえます。また、企業レベルでのサービス価格の動向をみても、「第二の力」の方の広がりが出ているようにもみえます。これを総合すると、基調インフレ、少し上振れ気味になっているのではないかとも思えるんですが、4 月の決定会合以降のこうした物価の動きについて、総裁のご見解をお願いします。』

という質問に対しての総裁の回答では、

『(答)(前半割愛)それから二番目の物価の動きに関するご質問ですけれども、これまで暫く、だいぶ前に始まった輸入価格上昇の国内物価への転嫁に伴うインフレ圧力、「第一の力」については、だんだん減衰してきている。一方で、賃金上昇がサービス価格等に波及するという「第二の力」の部分については、少しずつ上昇してきているという説明をしてきたところで、その点に大きな変更はございません。』

いや円安加速したらまた「第一の力」が出るだろと聞いているのだが変更はないのかよ、って言いたくなりますが、

『ただし、これもおっしゃいましたように、ここのところの円安も含めて、輸入物価等に若干の再上昇の気配がみえる。ある種、「第一の力」の第二ラウンド目が少し始まっているかもしれないというようなところについては、今後、基調的物価上昇の判断をする際に注視してみていきたいと思います。』

ってこの言い方なんですが、「第一の力」って言ってるけどこれ単なるコストプッシュの話で、この力ってディスインフレの均衡を打破するための力としては必要な力かも知れなかったけど、単なるコストプッシュなんだからそれは日銀法の定める日銀の本来の存在意義である国民厚生の向上から言ったらマイナス要因なんだし、だいたいからしてお前らの情勢判断だって「物価高が個人消費を下押ししている」って判断しているんだから、そもそも「第一の力」が再加速したらダメだろという話な訳ですが、このハトハトチキンは「ある種、「第一の力」の第二ラウンド目が少し始まっているかもしれないというようなところについては、」とかのんびりした事をのたまっている訳でして、実はこいつ円安になって下級国民どもが死ぬのとか知らんわくらいの認識で生きてるんじゃないかと邪推したくなるくらいに円安に関して危機意識無いですよねって話なんですよね。

まあそういう危機意識の無さだから「待つことのコストは小さい」って未だに堂々と言える、ということなんでしょうけれども、根本的にこの点がダメだと何やらせてもダメで、とりあえずその場しのぎの舌先三寸だけは言えても本質的にやばいと思っていないという事ですから、そらなんもしませんわ、と頭がくらくら来る次第なのでありました。

なお、そのヤバさに対して日銀お取り潰し危機意識がバネになって宮廷クーデターでも起きて頂いて、このハトハトチキンのウスラトンカチが幽閉されれば話はだいぶ変わって来ますので、主君押し込めムーブを期待したいものでありますが、そういう蛮勇は・・・・


2024/06/18

〇日銀総裁会見ですけれども会見中に言ってることがブレるのは相変わらずですよね

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2024/kk240617a.pdf
総裁記者会見
――2024年6月14日(金)午後3時30分から約65分

まあ今回はおとりのデコイがあるからそっちに食いつかれてしまって会見質疑そのものは低調って感じではあったのですが・・・・・・・・


・輪番の位置づけについての説明の最初の部分からツッコミどころ満載なんですよね

最初の幹事社の質問(二問と言いつつ三問以上聞いてた気がするが)から。

『(問)幹事社から二問質問させて頂きます。一問目は長期国債の買入れについてですが、今回、次回の金融政策決定会合で今後 1、2 年程度の具体的な減額計画を決めるということですけども、実際に減額を始めるタイミングについては、次回の会合終了後すぐに開始すると、そういうことでよろしいでしょうか。』

『また、減額に当たってですね、日銀のバランスシートの規模を適正化するという観点から、かつ市場の大きな変動を避けながら、どのようなペースで減額を進めるのか伺えないでしょうか。』

『また、国債買入れによるストック効果については概ね 1%程度の長期金利の押し下げ効果があるということですけども、今後、国債の買入れを減額することによって、この金融緩和の度合いについてどのような変化があるのか伺えないでしょうか。』

まあ全部輪番なんですけどこの時点で3つ聞いてるわと日銀のよつべ実況聴いてて笑いました。なおこれ二問目、もありますwww

まあ全部輪番の話だから一つの質問ではあるのですが、さてこの回答なんですけどね。


『(答)今日の会合では、3 月に決定した枠組み見直し後の金融市場の状況を確認したうえで、金融市場において長期金利がより自由なかたちで形成されるよう、国債買入れを減額していく方針を決定したところです。』

ここでは輪番の減額に関して「金融市場において長期金利がより自由なかたちで形成されるよう」ということで、市場機能論的な意味合いでの説明をしているんですよね。これ後で別の話が出てくるから覚えておきましょう。

『その際、国債買入れは、国債市場の安定に配慮するための柔軟性を確保しつつ、予見可能なかたちで減額していくことが適切であるという基本的な考え方も共有致しました。』

「国債市場の安定に配慮するための柔軟性を確保」の件ですが、柔軟性を確保、は金利急騰時に臨時輪番を打つことができるように、という話なのですが、マイナス金利解除移行に行われた輪番減額が一種の「柔軟性」の発露なのですが、この「柔軟性」を発動した途端に輪番運営に関して「突如何か変更するかもしれない」という疑心暗鬼が発生した結果、市場のボラが高まるわ流動性が落ちるわ、ということが起きたわけでして、そもそもこの「柔軟性」によって不透明感が高まってしまうんですよね。

なので、「予見可能な減額」をするのであれば、よほど飛んでもないこと(トラスショックとかコロナショックとかそういうレベル)が起きない限り、この金利上昇はそもそも日銀によって発生させていた不要なプレミアム部分の剥落によるもの、と達観していただきたい訳ですな。

さらに、YCCはもうやっていないのだから、輪番の途中の上げ下げに関しても、その発動基準がさっぱりわからないわけで、うっかり発動ると5.13事件になってしまう、というのがYCC撤廃後の輪番運営における教訓として考えて頂き、今後期中の上げ下げ基本はやらない(札割れ2連発とかでもすれば(1回だけなら偶然かもしれないので)減額してもよいとは思いますが)、つまりオペ紙に関しても今出しているようなガバガバレンジではなくて、ピンポイントでオペ紙の数字出せということに尽きるんじゃないかな。


でもって減額に関して

『減額する以上、相応の規模となるというふうに考えていますが、具体的な減額の幅やペース、減額の枠組みなどについて、市場参加者の意見も確認しながら、しっかりとした減額計画を作っていきたいと考えております。』

という説明なのですが、この「相応の規模」ってフワフワワードに関しては、さっそく昨日あたり何とかスト界隈でトンチ合戦みたいな感じでああでもないこうでもないと取りざたされていましたけれども、こういうのをわざわざ言うのって、「円安進行の足止めをしたいから口先でとりあえず威勢の良い事を言って時間を稼ぎたい」っていう下心満載なのはわかるんですが、こういうのをうっかり言ってしまうと市場の方で勝手に「相応の規模」の期待が膨らんでしまうので、実際にぶっこんだ時に「何だこんな程度か」と失望されてしまって却って円安を加速させてしまう、という間抜けコミュニケーションが発生しているのって、今回のこれもそうなりそうな気しか今のところはしてませんが、植田日銀になってからこの連続じゃん、と思う訳ですが、この論点に関しても後程鋭い質問があって、質問したのTV東京の大江さんですが、金曜の会見の白眉はこの大江さんのツッコミと昨日も申し上げたニュースソクラの土屋さんのツッコミと、実は地味に大ヒットなのが土屋さんの次に質問したお方(どこの方かは乞うご期待、ってかよつべ聞けばわかります)じゃねえのと思いました。

さてその続き。

『金融市場局が開催する、先ほど申し上げました、債券市場参加者との会合を活用しつつ検討を進め、次回の会合において、今後 1〜2 年程度の具体的な減額計画を決定し、速やかに減額を行う予定であります。』

そもそもこんな会合やらなくたっていいだろという話で、普段好き放題やっているのに減額みたいな時だけ市場参加者会合集めて「市場もこう言ってますから減額しました」って自分たちで決定すべき問題のケツ持ちをあわよくば市場にさせようという浅ましい責任転嫁の香りまで感じてしまうのは悪意を持って読んでいるからですかそうですか。

でもって最後なんだがこれがまた問題で、

『今後、国債買入れを減額していけば、日本銀行の国債保有残高は償還に伴い減少していくことになりますが、国債買入れに伴う緩和効果、いわゆるストック効果は、引き続き相応に作用するとみております。』

この「ストック効果」を出してしまうと、それは金融政策において緩和的な金融環境を作るためのツールとして国債買入を今後も使っていきます、といっているのと同義になってしまいまして、最初に言ってた市場機能論による減額、とのコンフリクトをどうさばくんですか、という話になってしまうのですが、以降の説明ではむしろ市場機能じゃなくて国債買入のストック効果の話を軸に説明してたりするので世話はないのですよね。


・国債買入減額が為替を念頭に置いている筈ですが質問に完全スルーするのは笑いました

3ページ目の質疑では

『(問)まずは国債買入れの減額についてですが、金利の形成を市場に任せていくということですが、QTに入ると基本的には円高の要因になると思うんですけども、減額方針決定に当たって円安の影響というのは考慮されたのでしょうか。その点、お伺いします。併せて、前回の会合では、基調的な物価上昇率に対する円安の影響は大きくないとお話しになっていましたけども、その認識に変更はないかということもお願いします。(後半割愛)』

輪番を聞いているというよりは為替の質問ですがまあそこはさておき

『(答)まず、今回の長期国債買いオペの減額の決定の背景ですけれども、これは申し上げましたように、中長期的なタームでみて、市場における金利形成の自由度を高めていくという観点から実施したものでございます。』

だそうでして、その後の説明が、

『次に、最近の円安と基調的物価上昇率との関係ということですが、これは常にわれわれは注意してみているところでもちろんあります。他の変数の基調的物価上昇率の影響についてもそうですけれども、為替について申し上げれば、為替変動の幅とか、その持続性とか、またそれが国内物価にどれくらい転嫁されていくのか、その後また賃金その他への波及がありますが、こういう各点について日々確認しながら、毎回の決定会合で、そこまでの情報を確認して進んでいくという姿勢でおります。(後半割愛)』

という風に話をかっ飛ばしておりまして、輪番減額で為替レートに影響することを意識しているのか、という質問に対しての回答を完全に逃げているのが中々笑えます、


・政策金利との絡みで輪番のストック効果についての説明が絡んでいるのは市場機能論の説明と整合性が取れない

4ページの一番下から5ページにかけてです。

『(問)(前半割愛)二点目が、7 月の会合で具体的な減額計画出すということで、市場への影響それなりに出る可能性もありますけど、こうなってくると 7 月に同時にですね、追加の利上げをするのは難しくなるっていう考え方っていうのはあるものなんでしょうか、お聞かせください。』

この質問に対して植田さんの本音が駄々洩れしたの巻になっているんですよね、すなわち・・・・・・・・・

『(答)(前半割愛)それから、7 月あるいは 7 月以降の短期金利の調節方針ですが、これは先ほど申し上げましたが、経済・物価情勢に沿って、先ほど申し上げたような方針で粛々と決定してまいりますが、』

ここまでは良いんですけど問題はこの次。

『もちろんその際に、長国買いオペの方でわれわれがすること、およびそれがどう市場で消化されていくかということは考慮したうえで、短期金利の設定をしていくということになります。』

はい利上げする気がありません少なくとも植田さんは(この部分前半の質問の時に想定問答を見てたんですけど後半回答する時には想定見ないでしらっと言ってるように見えましたけどよつべ見た感じでは、というのもチャーミング)、と思わせるご発言だった訳ですよ。

これって「輪番減額によって市場金利(長期金利)がどの程度上昇するかを見極めてから短期金利の操作を考えます」って言ってるのと同義にしかワタクシには読めないし、会見中聞いてた人たちも多分同じ感想を持ったんじゃないかな、と思うんですよね。

そうなりますと、ついこの前まで7月利上げが市場的にはコンセンサスビューに近くなっていたので、思いっきりちゃぶ台ひっくり返し事案ということになりまして、その余波が昨日も続いてしまって昨日ってイールドカーブ思いっきりツイストスティープしておりましたが、まあこの発言って「輪番を減額すると長期金利が上がるからそれを見ながら短期金利の引き上げに手心を加えます」ってのが今後の輪番減額のインプリケーションですよって話で、それ最初のところに言ってた市場機能論と話が違うがなと存じます次第。

てかね、普通はこの「ストック効果」の話をする時って、せっせと短期政策金利を引き上げていく過程において「私たちはこのようにせっせと利上げをしていますけれども、一方でこれまでの資産買入によるストック効果の緩和効果があるから、利上げの数値で見るよりも政策は引き締め的じゃないんですよ」って正常化推進するときの方便に使っていたのがFEDとかでして、本来は「長期国債買入によるストック効果があるから多少利上げしてもヘーキヘーキ」って文脈でストック効果の話をするもん(だいたいからして売りオペするわけじゃないんだから既存のストックは時間の経過とともにゆっくり短期化するだけの話だし償還銘柄が落ちたからとて長期金利のストック効果に影響あるか、って話なのよね)だと思うのですが、植田さんの場合は「買入を減らすと今莫大にあるストック効果がちょっと減るから政策金利を引き上げなくてもよろしい」という逆の理屈に使っているのが恐ろしいところな訳です。

いやーマジでこの人やる気ないですね、さっさと床の間の博多人形ケースに入っていただきたいところです。


・本音駄々洩れの後に火消しを行っているのでやっちまったという自覚はあるのか紙でも入れられたかw

とまあこのように利上げコワイヨーという本音が駄々洩れになってしまった訳ですが、やっちまったと思ったのかそれともスタッフがブロックサインでも送ったのかどうかは知りませんが、この先の質疑応答でさっきの7月利上げを如何にもやらないような説明の火消しを実施しています。7ページの質疑応答になります。

『(問)二点あるんですけれども、一点目は、7 月に国債買入れの長期的な減額のプランを出すということで、それはすなわち 7 月の利上げはないだろうというふうな市場の見方が一部にあるんですが、確認なんですが、仮に経済・物価情勢から判断して、7月に利上げするのがふさわしいということであれば、同時に決めるっていうことがあるのか、それとも市場の動揺がやっぱり大き過ぎるのでそこはちょっと考慮に入れるっていうことなのか、その辺のご見解を伺いたいのが一点目です。(後半割愛)』

『(答)まず 7 月の短期金利に関する判断の方ですけれども、これは 7 月に同時に長期国債買いオペに関する具体案をお示しするということでありますけれども、おっしゃいますように、そのときまでに出てきます経済・物価情勢に関するデータないし入ってくる情報次第で、短期金利を引き上げて金融緩和度合いを調整するということは当然あり得る話だというふうに考えております。(後半割愛)』

2ページ前では「国債買入減額による影響を勘案して」と言ってたのにここではそれを言わない、ってのはもちろんのこと2ページ前の質問が植田さんの本音であったにせよ、公式にはそういう建付けじゃないのだし、そもそも7月利上げやりません、って話を明確にしてしまうと「やっぱり日銀は緩和修正に消極的」という評価から円安に持っていかれる(まあ実際問題欧州リスクオフみたいなのあったけどしっかり元に戻ってますからねドル円ちゃん)訳で、そうなると何のために輪番減額カードしかもやるやる詐欺方式を行ったのかがわけわからんという事になるわけでして、慌ててさっきの7月利上げ無しを火消しに入った、ということでしょうなと思いました。


・じゃあ7月の利上げはどうなんですねんという話ですが

12ページに飛びます、今引用した7ページでの質疑を踏まえての質問ですね。

『(問)先ほど 7 月にデータ・情報次第では、当然利上げあり得るという趣旨のご発言をされましたけど、4 月にまず物価がオントラックできている、今回の会合でもオントラックできている、7 月にもしそういった姿が確認できるならば、利上げしてもおかしくないという判断があり得るという、その確信が高まっているということなんでしょうか。(後半割愛)』

でもってまあアタクシMPM前に「7月利上げ予告ホームラン」とか申し上げたのは、この物価情勢が見通し通りオントラックで推移していて物価目標達成に向けて着実に進展している、というような形で強く声明文の情勢判断で言及すれば予告ホームランになるんじゃないかなと思ったのですが、惜しくもそういう話にはならず、挙句に植田さんが「輪番減らしたらその状況をみてからじゃないと利上げできませんでちゅー」と抜かしやがったのであちゃーってなもんだったのですが。

『(答)4 月以降の金融・経済・物価情勢に関する判断、特に基調的物価上昇率周りの判断ですけれども、新年度入り後の様々なデータが出つつあるところですので、もう既に 6 月ですけれども、ようやく 4 月のデータが大体出そろい、これから 5 月のデータが出てくるというところですので、これまでのところは私どもの見通しに概ね沿ったデータの出方になっておりますが、そういうことでいいかどうかもう少し確認したいというところでございます。そのうえで 7 月の短期金利をどうするかということは決定したいということでございます。(後半割愛)』

と言ってるのですが、じゃあこれが前のめりなのかというと残念ながらそういう訳でもなくて、その前の5ページの質疑を見ますと、

『(問)(前半割愛)あと、景気認識の部分なんですけど、こちらの個人消費については、底堅く推移してるっていうふうにご評価されてるかと思うんですけど、そこまでいい経済指標ってのはあまり示されてないように思うんですが、この点、その先行きの見通しと、あと足元トヨタなどの認証不正の問題がこういったところに及ぼす影響についてのお見立てをお願いします。』

に対して、

『(答)(前半割愛)それから、消費の現状をどう読むかということですけれども、おっしゃるように、一つは、おそらく物価上昇の影響で、特に非耐久財中心に、弱めのデータが出ているということとか、これもおっしゃいましたように、自動車の出荷停止の影響が直接消費にマイナスの影響を与えているという部分もありますし、後者の部分はもうワンラウンド来そうであるということも、ここまでに判明しています。』

この説明、聞いてた時にはアタクシの脳内フィルターが掛かっているせいだと信じたいのですが、妙に生き生きと説明していた感じがありまして(あくまでも個人の主観です)、利上げをしない方の材料の話になると勢いづいているように見えてしまって「よっ!この正直者!!」と大向こうから声を掛けたくなる場面でした。一応この後、

『ただ、出荷停止の、最近明らかになった部分については、1 回目の出荷停止の影響よりは、今のところは小さいであろうというふうに私どもは判断しています。そのうえでですが、賃金が緩やかに増加していくというふうに考えていますので、一方で消費者物価総合は落ち着いてきていますので、インフレ率がですね、実質所得の伸び率の低下がだんだん止まっていって、消費が強めの動きに転じていくという基本的な見方については今のところ維持しているということでございます。』

とは言ってるけど、前半の方がどう見ても言ってることが元気で、後半はなんかもう言ってみただけ感がwww


・やっぱり「輪番減額をやったら様子見たいので短期金利は上げたくありません」って言ってるんですよねーーーーー

この関連で9ページの質疑応答になるんですけど、

『(問)ちょっと改めてになりますが、今回、この国債の買入れの減額の予告をしている、この決定はですね、なぜこのタイミングでの決定だったのかについて、総裁のお考えをお知らせください。3 月に大規模な金融緩和を終了して、その時に、一度にやると影響があるというふうに判断されてのことなのか、そういった点を踏まえて考えをお知らせください。』

これ、「なんで3月に減額アナウンスしなかったんですか」と聞いているように見せた諸葛孔明の罠質問なんですが、植田先生ちゃっかり石兵八陣に迷い込むの巻でして、

『(答)これは基本的には、3 月以降申し上げてきましたように、3 月にあの大きな政策の枠組みの変更を致しましたので、その変更を金融市場がどういうふうに消化するかということを少し丁寧にみたいという気持ちで 4 月以降みておりました。それがある程度確認できたという判断のもとに、今回減額を決定し、更に丁寧に市場の意見も伺いつつ、7 月に具体案を発表するという手順を踏んでいるところでございます。』

はい、これさっき引用した5ページの回答を並べると、答えは「僕は7月利上げする気はない」になりますよね。再掲しますと、

『『(答)(先ほど引用した5ページでの質疑応答の回答部の再掲です、前半割愛)それから、7 月あるいは 7 月以降の短期金利の調節方針ですが、これは先ほど申し上げましたが、経済・物価情勢に沿って、先ほど申し上げたような方針で粛々と決定してまいりますが、もちろんその際に、長国買いオペの方でわれわれがすること、およびそれがどう市場で消化されていくかということは考慮したうえで、短期金利の設定をしていくということになります。』

ということで、きっちりとシンクロしている訳でして、まあ要するに植田さんは利上げコワイヨーって言ってるわけですが、この前の金研国際コンファランスでの内田副総裁の植田挨拶公開処刑講演を見れば植田さんが言っていることがそのまま通るのかというとこれまたアレな訳でして、こう植田さんが言ってるから7月利上げが消えたかというと必ずしもそうではないとは思います。まあ鍵はここからの為替が一番効くっしょとは思いますので他力(??)頼みではありますがwww


・舌先三寸で時間稼ぎをすることの弊害について

今回の会見の白眉となる質疑を3つほど。先ほども申し上げましたけど本文6ページから7ページにかけての質疑応答でこれは先ほど申し上げたお方による質問ですが

『(問)かなり丁寧に進めていきたいということはよく分かったんですけれども、今回動かなかったことによって今日になって円安が進み、158 円台になっているということもあります。この 7 月まで動かないことのリスクについては、総裁どうお考えなのかというのをお伺いしたいのが一つです。』

動かないことのリスクの指摘も良いのですがさらに良いのはこの後半でして、

『あとは市場の金利形成の自由度を高めるために政策の予見可能性を高めていくというのは、非常に重要なことだと思うんですけれども、それによって市場に事前に政策が織り込まれ過ぎて、それで円安が進む展開のようにもみえるんですが、この市場との対話の難しさについては、今どう感じていらっしゃるでしょうか。』

物凄く丁寧な言い方をしているのですが、これってアタクシが勝手に解釈してるから間違ってたらゴメンナサイではあるのですが、「円安進行を抑えようとして舌先三寸でいろいろと時間稼ぎをしているもんだから、市場の期待が高まりすぎて実際にやったことが「失望」になっているんだからコミュニケーションの方法もうちょっと考えろ」って話ですよね。これはかなりキツイのですが、植田さんまともに回答をしていないのが残念ですが、まあ「入った」から回答できなかったんでしょうね。

『(答)具体案の発表は 1 か月先になるわけですけれども、その間の不確実性を極力避ける意味で、今日は不十分かもしれないですけれども、私どもの減額に当たっての基本的な考え方をご説明しているところです。もうちょっと長いタームで考えますと、先ほど来出ていますように、どこが最適点か分からないですけれども、望ましい国債保有残高とか超過準備の水準に到達するまでにはかなりの時間がかかることですので、ちょっと極端な言い方になりますけれども、短期的に 1 か月、2 か月先になるということ自体のコストはそれほどないというふうに思っております。』

そうやって引っ張って結果円安進行してますけどねえ。

『市場とのコミュニケーションについては、常日頃から丁寧に私どもの考え方が伝わるように努めていきたい、丁寧に説明していきたいということに尽きるかと思います。』

ということで、全然反省していないのは理解しました。


・参加者会合を招集する件に関するランボー怒りの質問

口調はアレですが質問の内容はまさにその通り、というのが13ページにあって、

『(問)記者会見の運営についてですね、非常に不満を持ちましたので、少し嫌味な質問をさせて頂きますけれども、丁寧にするために市場関係者と会合を設けるとおっしゃってるんですけども、金融市場局は今までそういうことを、これほど重要なことについてですね、ヒアリングをしてこなかったってことなんですか。そんなわけないですよね。ですから、政策担当部局による時間稼ぎですよね、これは。そうじゃないんですか。そう思ってるから円安になってるわけでしょ、市場が。お答え頂きたいと思います。』

ただの時間稼ぎだろ、というのはまさに仰る通りだし、輪番減額の話が急に金曜になって出たわけではなくてマイナス金利YCC解除したあとから、というかうっかりしたらその前から長期的な課題として説明があったのですから、一切ヒアリングしていないなんてことあるわけないし、マーケットでもいろいろと言われていた(のは割愛しましたが前の方の質疑でもありました)訳です。

『(答)これはオペ減額の方針を決定する際、それに伴うヒアリングということですので、なかなかそういう決定がないもとで、いろいろな個別の金融機関とヒアリングで意見を聴取するということが難しい性質の問題かなと思います。』

それ長期金利ペッグ政策の下で政策金利の引き上げとペッグ政策廃止するって話をするときはそうかもしれないけど、

『最初に減額をしますということをみんなにアナウンスしたうえで、ヒアリングをするというステップを踏まないと、それこそ情報リークみたいなリスクを引き起こしてしまう問題にもつながりかねないということで、今回のようなプロセスを踏んでおります。』

いやお前ら散々「長期国債買入は将来的に減額する」って言ってたんだからヒアリングできるだろいつ頃からがいいですかとかどのくらいの期間かければいいのですかとか幾らでも聞けるだろうよ、ということでこの想定問答?もかなり乱暴な回答だったのですが・・・・・・・・・・


・ランボー怒りの質問に他社の記者さんも加勢したのがさらに大ヒットでした

この回答の直後の方が追い打ちをかけたというのも今回の会見の素敵なポイントでして、

『(問)今の質問をもう少し丁寧にご説明頂きたいんですけれども、』

この時点で「わが軍、助太刀に参上!」って感じでよつべライブ聴いてて吹きそうになったです。

『国債減額の計画を決めるに当たって、市場参加者の意見を聞く場をわざわざ設けるということの意義なんですけれども、やはり市場関係者からは、今までこういう機会がなかったのに、なぜ今回はこれを開くのかという、やはり日銀が市場に政策の責任を転嫁してるんじゃないかというような不満の声が早速出てるんですけれども、ちょっともう少し丁寧にご説明頂けましたらありがたいです。』

なお、よつべ聞けばわかりますが、これ追い打ちかけているのが日経の方ってのがさらにポイント高くて、やはりこの国債市場参加者会合臨時開催ってのの茶番性に関して厳しい意見があの時点からあったということですわな。そらそうよ。

『(答)もちろん常日頃から市場とは意見交換をしているわけですが、先ほど申し上げましたように、非常にセンシティブな問題ですので、先に方針を公表したうえでヒアリングをしたいということですし、その中で私どもがこれまでつかめてない情報も入ってくるということだと思います。そのうえで、更に決定の責任は当然日本銀行にあるということになります。』

ということで、まあ自分たちも茶番なことは理解しているんでしょうね、こういう回答をするしかなかったというところでした。


とまあそんなところで今朝は勘弁。


2024/05/28

しかし
https://www.boj.or.jp/research/conf/index.htm
コンファレンス

なぜか知らんのですが、金研がやるのは「コンファランス」で日銀本体がやってるのは「コンファレンス」なんですけどちょっとその理由を教えろくださいお願いします。

https://www.imes.boj.or.jp/conference.html
金研の方は全部「コンファランス」なんですよね・・・・・・

でもって今回のお品書きはこちら(後日いろいろとアップされると思います)
https://www.imes.boj.or.jp/en/conference/2024confsppa.html
2024 BOJ-IMES Conference
Price Dynamics and Monetary Policy Challenges
-- Lessons Learned and Going Forward --
May 27 - 28, 2024
Institute for Monetary and Economic Studies, Bank of Japan
- Preliminary Program (subject to change) -

〇植田総裁のオープニングリマークは相変わらずハトハト音頭が聞こえてきたんですが・・・・・・

モノホンはこちらの先にリンクがありまして、本当は英語でのご挨拶です。
https://www.boj.or.jp/en/about/press/koen_2024/ko240527a.htm
Opening Remarks at the 2024 BOJ-IMES Conference Hosted by the Institute for Monetary and Economic Studies, Bank of Japan

本文
https://www.boj.or.jp/en/about/press/koen_2024/data/ko240527a1.pdf

でもまあ手抜きなので邦訳の方で参りますが(汗)
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2024/data/ko240527a1.pdf
日本銀行金融研究所主催2024年国際コンファランスにおける開会挨拶の邦訳
日本銀行総裁 植田 和男


・まず最初にかつての速水さんの時のゼロ金利解除が適切じゃなかったと言い出している時点で・・・・

『2.わが国におけるゼロ・インフレの罠と大規模金融緩和』ってところですが、その途中から参りますけど、

『(日本銀行による大規模緩和) 』って小見出しの第2段落、本文3ページ(PDF4枚目、以下本文とPDFの関係は同様です)の中段から。

『また、日本銀行が採用した政策枠組みの展開について、いくつかの点でその時点で最適ではなかったと指摘する方もいるかもしれません。例えば、ゼロ・インフレの罠に陥った最初の数年間は、明示的なインフレ目標がありませんでした。』

って言ってるけどね、じゃああの時代に2%インフレっていきなり言えたのって話はかっ飛ばしまして、

『日本銀行は、2000 年に、ゼロや小さなプラスの値など、特定のインフレ率の水準を用いて物価安定を定義すべきか否かを検討しましたが、その当時は、コンセンサスには至りませんでした。2006 年3月には、1%を中心値とする0〜2%程度の範囲であれば、各政策委員の物価安定の理解と整合的であるとし、2009 年 12 月には、0%以下のマイナスの値を許容しないことなど、それをさらに明確化しました。日本銀行は、最終的には 2013 年1月に、2%の物価安定の目標を導入しました。』

でもってこの次ですよもういきなりキタコレなんですけどね、

『後知恵になってしまいますが、仮に明確なインフレ目標値が導入されていれば、例えば、2000 年8月のゼロ金利政策解除に至るまでの議論の様相は、実際とは異なったものになったかもしれません。』

ああこの人は未だに2000年8月の反対を金字塔だと思っているんだなって話でして、こんなのいわずもがなの話にも程があるのに、さらに追い打ちをかけるように、

『999 年4月の導入時における短期金利に関するフォワード・ガイダンスの内容をみると、日本銀行は、デフレ懸念が払拭されるまでゼロ金利を継続するとしていましたが、解除時点では、コア・インフレ率は、まだマイナス 0.5%にすぎませんでした。その後のデフレをそのわずかな利上げだけのせいにするのは難しいと思いますが、このゼロ金利政策解除の経験は、その後に行われたフォワード・ガイダンスの有効性を弱めた可能性もあります。』

>このゼロ金利政策解除の経験は、その後に行われたフォワード・ガイダンスの有効性を弱めた可能性もあります。
>このゼロ金利政策解除の経験は、その後に行われたフォワード・ガイダンスの有効性を弱めた可能性もあります。
>このゼロ金利政策解除の経験は、その後に行われたフォワード・ガイダンスの有効性を弱めた可能性もあります。

こらまたエライ粘着質というか、俺が正しかったという主張度合いが凄すぎて笑ってしまうしかありませんし、この言い方をしているのは裏を返せば黒田緩和の正当化ですよね、とも思う訳ですが案の定その直後にそんな話がありましてですね・・・・・・・


・速水時代の俺様は正しかったの次に返す刀で福井白川時代も全部まとめて葬り去るという見事なハトハトプレイ

という風に「2000年のワシは正しかった」アピールが来たと思ったらその直後にさらにとんでもないのが出てくるのでして、

『もう1つ考えるべき点は、資産買入れを開始したタイミングです。』

はい、これです。

『日本銀行による積極的な長期国債の買入れは、図表 1 でお示ししたインフレ動向を踏まえると、比較的遅いものでした。』

は???ていうかそもそもQQEがインフレ期待への直接の働きかけ失敗してるし、足元のインフレ循環の開始だってただの外生要因とこれまでの構造変化によるものだろいい加減にしろと思うのですが、

『日本銀行は、2001 年3月の量的緩和政策の開始に伴い、以前よりも多くの額の長期国債を購入し始めたものの、図表 3 が示すように、その保有残高は、2013 年に入るまでは、顕著に増えてはいませんでした。これとは対照的に、Fed の米国債保有残高は、世界金融危機への対応として、2009 年初に急激に上昇し始めています。』

そら日銀はその前から買ってたからだろうが置物一派みたいな言いがかりつけてんじゃねえよこのウスラトンカチという話だし、「その保有残高は、2013 年に入るまでは、顕著に増えてはいませんでした。」ってだいたいからして国債大量に買ってなんか効果あったのかよこのハゲというところですが、しかもこの表現だと2013年以前は何もしていませんでした福井白川は不作為の罪です、って言ってるようなもんな訳でして、いやーこの人審議委員の時はまともだと思ったので就任の話が出たときに滅茶苦茶期待したんですけど、ここまでのアレだとは存じ上げませんでアタクシも我が身の不明に恥じ入るしかありません。

というかこれはさすがに麿は怒るべきではないでしょうかねえ。


・なんかその後にフォローを入れてはいるのですが結局これだと黒田以前はディスっている訳なので・・・・・

でまあその直後に、

『こで、注目すべき点としては、図表 4 でお示ししたとおり、米国の 10 年物国債金利は、Fed が大規模な資産買入れを開始した時点では4%近くもありましたが、日本の 10 年物国債金利は、1990 年代後半にはすでに2%を下回っていたという点です。この事実は、もし 2000 年代初頭に日本銀行の国債買入れの増額が行われたとしても、果たして十分な効果があったのか、との疑念を生じさせます。』

って言ってるんだが、そう思ってるならなんでその前に2013年以前は不作為みたいな言い方する必要はない話でして、わざわざ国債買入について言及して2013年以前を不作為といってる時点でまあこの人の本音がお察しですわな。


でまあこういう流れで話をしますと、そりゃどういうことになるかといいますと、「黒田緩和の否定から話が入れない」という事になるわけでして、黒田緩和を否定しない、という流れで金融政策運営の話をする、ということになるとこれは常にあたおか緩和バイアスが掛かり続ける、ということになるわけでして、そら政策修正をやる気がないっていう解釈になるわけですよ。


・したがってこの先の政策修正に関してもエライ消極的な発言になるわけでして

でまあちょっと飛ばして『3.今後の課題』って章に進みますと、

『それでは、今後の課題を簡単に述べたいと思います。日本銀行の目標は、2%のインフレを持続的かつ安定的に実現することです。』

むしろ何年オーバーしていると思ってるんだよこのトンカチ。

『これまでのところ、インフレ予想をゼロ%から押し上げることには成功したように思いますが、』

お前の政策で押し上げたわけじゃなくてただの外生要因だろ何が「押し上げることに成功した」だよ勝手に手柄面するんじゃねえよ。

『それを今回は2%の目標値にアンカーしなければなりません。』

インフレ予想なんて正確に計測できるものじゃないのに何でこれが「2%の目標値にアンカーしなければ」みたいな言い方になるのか、というのが相変わらずのアレでして、インフレ予想なんて結局事後的にしかわからないものをあたかもリアルタイムで計測できるかのような言い方をして、結局のところは自分たちの政策に都合の良いようなデータをチェリーピッキングして出してきた「お気持ち」でしょというところなんですけど、まあその「お気持ち」が植田さんとしては「政策修正をするのが怖いから2%でアンカーされていないことにする」って話になっている訳でして、それが何より証拠には、

『日本銀行は、インフレ目標の枠組みを有する他の中央銀行と同様に、その実現に向けて注意深く進んでいくつもりです。』

「同様に注意深く進んで」その挙句にインフレが高進(日本の場合はインフレ高進というより通貨大幅安に伴うもろもろの問題噴出のような気がしますがそれはさておき)して真っ青になるんですねわかります。

まあしかしここで「注意深く進んでいく」となっているのはさっきの本文を見ますと、

『We will proceed cautiously, as do other central banks with inflation-targeting frameworks.』

ってなっていまして、いや他の主要国の中銀が結果的にインフレ圧力を見誤って緩和修正がビハインドして、特に欧州なんぞはスタグフ状態になってしまったのですが、そんな先行事例があるのに「as do other central banks 」ってお前は何を言ってるんだという感じですが、まあそれだけ植田さんは政策修正をやりたくないでござる、ということなんでしょうね、というのが非常に良くわかるわけですな。

『日本銀行が直面する課題の多くは他の中央銀行が直面したものと似た側面を有していますが、いくつかの課題には日本に特有の難しさもあります。』

ということですので、例えばの話日本の場合は他国と違ってそれまでのゼロインフレノルムからの変化が生じているとみられるので、構造変化が起きている場合に適切な金融政策運営も過去とは違う、みたいな(黒田をディスらない形での)黒田時代からのチェンジの話でもするかと思えば、

『そうした課題のうち主要な一つが、自然利子率(r*)をできるだけ正確に把握することです。』

っていやなんなんだよRスターかよってな話ですが、

『その正確な計測は、どの中央銀行にとっても容易なことではありませんが、過去 30 年間の長きにわたって短期金利がほぼゼロに張り付いてきた日本では、特に難しいことです。実質金利は多少なりとも変動してきたとはいえ、金利変動が乏しいもとでは、金利変動に対する経済の反応度合いを計測することには相応の難しさがあります。』

いや何ちゅうかそういう話ではないんじゃないのと思うんですけどねえ・・・・・・・・・・・・

・おまけ:今回の「不作為に関する考察」ってまんま前回(第1回)多角的レビューWSでツトムが言ってたことやんwwww

おまけですけど、この2000年の速水時代のゼロ金利解除と2013年まで国債の買入に対して不作為だった(ということに植田さんの中では成っている)問題に関してが今回のオープニングリマークの白眉なのですが、これを見て思い出したのがこれでしてですね、

https://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2024/data/ron240129a.pdf
「金融政策の多角的レビュー」に関するワークショップ
第1回「非伝統的金融政策の効果と副作用」の模様

こちらの本文26ページ、PDF27枚目になるんですけど、『7.第5セッション:パネルディスカッション』の『7−2.ディスカッション』の中に『(金融政策の効果・副作用の分析手法)』ってコーナーがあるんだが、

『渡辺は、日銀が過去に犯した政策の失敗を振り返ると、何かをやってそれが失敗したというよりも、やるべきことをやらなかったという、不作為の過失の方が問題だったのではないかと指摘した。そのうえで、過去の金融政策運営を評価するためには、実際に講じてきた金融政策の効果・副作用の検証だけでなく、「やらなかったこと」が経済・物価に及ぼしたであろう影響――例えば、仮にインフレ目標がもっと早期に導入されていればその後の困難がどれほど緩和されていたか――を検証することが有用であるとの見解を示した。』(この部分だけ直上URL先の第1回多角化レビューワークショップ議事要旨より引用しています)

ってツトムちゃんの福井白川(多分速水も含めて)ディスり発言というのがあったのですが、ああなるほどツトムちゃんたらいきなり大胆不敵なことを言いますねと思ったんですが、なるほどこういう事だったのかと納得してしまいましたですわおほほほほ。

・ということなのでハトハト音頭だったんですが意外に市場は反応しませんで

昨日の前場引け時点
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/DI3LIWT6NJNPVMYSSCBMOOCETA-2024-05-27/
〔マーケットアイ〕金利:前場の国債先物は横ばい、日銀イベントでの内田副総裁発言に関心
By ロイター編集
2024年5月27日午前 11:19 GMT+9

『[東京 27日 ロイター] - <11:07> 前場の国債先物は横ばい、日銀イベントでの内田副総裁発言に関心

国債先物中心限月6月限は、前営業日比横ばいの143円59銭で午前の取引を終えた。現物市場では長期金利の指標となる新発10年国債の取引がまだ成立していない。市場では、日銀が開催するイベントでの内田真一副総裁の発言を見極めたいとの様子見ムードが強い。』

『本日は入札やオペといった国債需給イベントの予定はないが、日銀の金融研究所が今日明日の2日間の日程で2024年国際コンファランスを開催。午前9時ごろからは植田和男総裁が開会のあいさつを行ったが、相場の反応は限られた。』(上記URL先より)

ということでして、いや植田さんこれ結構なハトハト音頭というかいつもの「金融政策の早期修正をやりたくないでござる円安なんて知らんもん」というハトハト音頭だったんですが、月曜の午前だしアメリカンは月曜も祝日だし、ということで為替ちゃんもあんまり反応しない(むしろ神田大明神の25日の発言で介入警戒モードだったんですかね)ということでなんかまあそういう感じだった訳ですが・・・・・・・・・・・


2024/05/27

は???
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-05-25/SE1LGQT0G1KW00
長期金利は市場で形成されることが基本−1%台に上昇で植田日銀総裁
伊藤純夫、藤岡徹
2024年5月25日 23:30 JST

『植田総裁は、大規模緩和の修正に踏み切った3月の金融政策決定会合で、国債買い入れは「これまでとおおむね同程度の金額で継続する」ことを決定したと説明し、「長期金利は金融市場で形成されることが基本になると考えている」と指摘。日々の短期的な金利の動向や水準にはコメントを控えるとしつつ、「市場の動向を今後とも丁寧にモニタリングをしていく」と述べた。』(上記URL先より)

そもそも月額6兆円も買っておいて何が「長期金利は金融市場で形成される」だよ寝言は寝て言えと思いますし、だいたいからして「長期金利は金融市場で形成される」んでよいんだったら別に「市場の動向を今後とも丁寧にモニタリング」する必要はねえ(通り一遍で十分であって「”丁寧に”モニタリング」というのは一般的に「介入する気が満々」ということになるわな)だろいい加減にしろと(短期金利操作が政策の主軸になっているんだから短期市場のモニタリングは丁寧にやってエエンヤデ。

2024/05/24

〇今度は海外の不確実性ですかそうですか(植田総裁記者向けコメント)

こんなんでてました
https://jp.reuters.com/economy/bank-of-japan/FMOLGBVHYJIUVJKFFFBGR2XKG4-2024-05-23/
日本経済「持ち直しの見方、変わらず」=植田日銀総裁
By ロイター編集
2024年5月23日午後 9:49 GMT+9

『[ストレーザ(イタリア) 23日 ロイター] - 日銀の植田和男総裁は23日、日本経済の先行きに関し、持ち直すとの見方に変わりないと述べた。主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議に先立ち、現地で記者団に語った。』(上記URL先より、以下同様)

会見は会議後に行われるのでこれは記者団向け囲みだかぶらさがりだかのお話ですねきっと。

『1―3月期実質GDPがマイナス成長だったことについては自動車の生産・出荷停止の影響が出たと指摘。一方、事前に予想されていた動きとし、「4月会合後のデータだが、基本的な日本経済についての認識はそのデータを経たあとでも、4月の会合時点から大きく変わっていない」と語った。』

『植田総裁は「残存するインフレ圧力の消費への下押しの影響も予想されていたこと」とし、「第2・四半期以降、自動車まわりのところは改善に向かうと思うし、第1の力からくるインフレのところは減衰していく。予想される名目賃金の上昇で実質所得に上向きの力が働くことから持ち直すという全体的な姿には、今のところ変化はない」と述べた。』

『世界経済に関しても「(4月会合時から)大きく動いていないと思う」とした。』

であれば、4月展望レポート基本的見解で高らかにお示しした通り、「以上のような経済・物価の見通しが実現し、基調的な物価上昇率が上昇していくとすれば、金融緩和度合いを調整していくことになる」という話になるはずなんですが・・・・・・・・

『最大の焦点は「米国経済がソフトランディングの最後のワンマイルをどういう風に完走するのか、あるいはうまくいかないのかというところ」と言及。今回のG7で「色々、皆さんと議論してみたい」と語った。』

『欧州経済を巡り「少し弱めだったヨーロッパ経済が底打ちに向かうという話もあるが、その辺についてもどう考えているかということを議論したい」とも語った。』

ってこれどっからどう見ても「海外が不確実だから金融政策の修正をしたくないでござる」って言ってるようなもんじゃねえかというところでして、またこのハトハトチキンは海外に行くと本音駄々洩れしやがるわという感じで落涙を禁じ得ないのであります。


2024/05/09

お題「植田さんの昨日の国会答弁と読売国際講演である」

あーあーあーあー
https://www.bloomberg.co.jp/quote/JPY:CUR
米ドル/円JPY:CUR
↑155.63JPY
+0.94
+0.61%
更新日時 5:20 JST 2024/05/09

アメリカン金利がちょろっと上昇したというのはあるにせよ、円安がまたも進んでしまっておりまして割と早い時期に打ち込んだ植田さんの講演は円安牽制に全然効いてないどころかこれ講演中のプライスアクションを見ると寧ろ円安を煽ってしまったまであるということですので何のために講演をしたのかよく分からんですな、いや円安をぶっ放して世の中の皆さんから利上げ待望論が出てから利上げする格好にしたい、という深慮遠謀でもあるなら別ですが・・・・・・・・・・・

ということで植田さんの昨日の講演と国会答弁と読売国際の講演(国会会期中だし連休明け直後なので国会答弁の可能性も高いから読売国際の時間を17時半にしたのかな、と後からよくよく考えたら思いましたが、まあ昼にやって欲しいですよねこういう講演は)からという感じですわな。


〇国会答弁でも何気に円安招いちゃってるんですよねー

一般向けテレビニュースでこんな言われ方になっているのはワロタ
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/1158367
1ドル=155円まで円安の中、日銀・植田総裁の発言に変化? 無視から“注視”へ
TBSテレビ
2024年5月8日(水) 19:19
経済

『きょうもじりじりと円安が進んでいます。こうした中、先月、市場に“円安容認”と受け取られた日銀総裁は、発言のトーンに変化が生じています。』(上記URL先記事より)

ということで何かトーンの変化とか思いっきりTBSニュースでネタにされたようで誠にアレという感じですが、公共放送ちゃんの方では、

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240508/k10014443021000.html
日銀 植田総裁 円安が物価に与える影響“リスク意識する必要”
2024年5月8日 14時29分

『日銀の植田総裁は、国会で、記録的な円安ドル高の水準が物価に与える影響について「リスクがあることは意識しておく必要がある」と述べ、円安が物価を想定以上に押し上げるなどの大きな影響を与える場合には、金融政策での対応が必要になるとの認識を示しました。』(上記URL先より)

という認識を示した、とはあるんですが、昨日の国会のお時間もしらっと円安が進行していたんですよね。今朝見たらBBGが読売国際講演の記事と一緒に説明してまして丁度いいのでご紹介しますと、

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-05-08/SD5CDRDWRGG000
物価見通しの上振れリスク大きくなれば「金利早めに調整」−日銀総裁
伊藤純夫
2024年5月8日 17:44 JST 更新日時 2024年5月8日 20:11 JST

→経済・物価見通し巡るリスクが変化すれば、当然金利を動かす理由に
→急速・一方的な円安、不確実性高め日本経済にマイナスで望ましくない

ということで記事があるんですけど、途中はかっ飛ばして先に後の方の小見出しの『一段と円安進行』以下を見ますと、

『講演に続く質疑応答では足元の円安について問われ、「急速かつ一方的な円安は、例えば企業の事業計画策定を困難にするなど不確実性を高め、日本経済にとってマイナスであり、望ましくない」と懸念を表明。基調的な物価上昇率に為替の動きが影響してくる、あるいはそのリスクが顕著に高まってくれば「政策対応することになる」と語った。』

『外国為替市場では、総裁講演の最中に、円相場が1ドル=155円51銭まで下落した。総裁が午前の国会答弁で円安によるこれまでの物価への影響について控えめな見解を示したことをきっかけに、円が一段と下落。介入に慎重なイエレン米財務長官の発言を受け、日本の介入が困難になるとの見方も引き続き円の重しとなった。』(上記URL先より)

>総裁が午前の国会答弁で円安によるこれまでの物価への影響について控えめな見解を示したことをきっかけに、円が一段と下落。

っていうように、日中の国会答弁の時って割と最初の方に出てたヘッドラインがこの前と同じくで「円安が足元で基調的物価を大きく変えていない」みたいなのが出てて、アチャーと思ったら円安に動いてて、こらまあ切り取られてしまっていて植田さんにもカシュカリ総裁の頭髪ほどの同情の念は起きるのですが、まあヘタクソ情報発信と恐らくご本人の本音であるハトハトチキンが招いたドツボって感じで、この人もう口を開くと円安材料にしかされないので、次のMPMまで座敷牢にでも放り込んで氷見野さんと内田さんがスポークスパーソンになった方がいいですっていやマジで、と思いました。


しかしまあ何ですな、この次にネタにする読売国際の講演、もうちょっと円安牽制のトーンでも入れるのかと思えば、どうも為替動向に対して金融政策を割り当てない、というそれはそれで見識としてというか原則論としては仰せの通り(為替政策は財務省の通貨当局が行うべきものですから)な話がベースになっているとしか思えない説明になっておりまして、いやまあその原則論を言う植田さんの見識は分かるんですけど、今それを言ってるのってこれ円高の時の白川さんとコインの裏表みたいな感じになってしまいますし、現実問題として植田さんが何か言う度に円安に振れてしまっているのって、完全にマーケットの状況が植田さんを「詰み」に追い込んでいる(昨日なんて折角すこしトーン上げて発言したけど反応したのは円債と日本株でどっちも下げで反応して肝心のドル円は円安なんだから最早チェックメイト掛っているとしか思えん)し、市場って本質的にとんでもないいじめっ子だし何ならサディストなんで、こういうループに入りだすと植田さん益々ヤバイとアタクシの経験則は申しているのですが大丈夫でしょうか。

てかですね、上記のブルームバーグ記事見ても、「急速・一方的な円安、不確実性高め日本経済にマイナスで望ましくない」といってるんですが、同じ記事中に植田さんの発言として(というかこれは講演の方にもあるけど)、

『一方、見通しが下振れたり、下振れリスクが高まった場合には、「現在の緩和的な環境をより長く維持していくことが求められる」との見方も示した。また、経済・物価に対する大きな下方ショックが生じるような場合には、「必要があれば、これまで用いてきたさまざまな非伝統的な手段も含め、あらゆる手段をあらかじめ排除することなく、対応を考えていく」と述べた。』(先ほどのブルームバーグ記事より)

ってあって、円安が経済にとってマイナスだとそのマイナスに対応して金融緩和を更に続けたりマイナス金利政策含めた対応をするって話になるんだが最早何を言っているのかという話になるんですよね。


でまあ国会答弁の方に話を戻すと、さっきの国会答弁の一連の記事では「為替に対応することもある」とは言ってるんですが、肝心の講演では「円安は第一の力で第一の力には別に金融政策対応しないもんね(意訳)」という話をしているのがこれまた円安牽制になってねえええええええとしか申し上げようがないので、そろそろ植田さんの講演に参ります。


〇植田総裁読売国際講演:政策のやる気は一応見せたが市場には響かんでしょこれじゃ

しかし読売国際と略すとゴルフ場みたいですね。よー知らんけどw

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2024/data/ko240508a1.pdf
賃金と物価の好循環と今後の金融政策運営
―― 読売国際経済懇話会における講演 ――
日本銀行総裁 植田 和男

・まずこの題名でクソワロタ

ということで講演の題名が『賃金と物価の好循環と今後の金融政策運営』ってなっているのがもう笑うしか無くて、ついこの前の展望レポート時の会見での説明って先日ネタにしましたように、「賃金と物価の好循環」の話を引っ込め気味にして、「基調的物価」を前面に押し出した説明で今後の金融政策運営の説明をしていたじゃないですか。

でまあ今回の講演の題名が「賃金と物価の好循環と今後の金融政策運営」ってお前は何を言ってるんだという話で、まあこれも4月会合後の会見での総裁の説明が「基調的物価」を前面に出すことによって早期利上げっぽいトーンをあんまり出さない(なぜなら賃金と物価の好循環を前面に出した場合既にその好循環が今次春闘で具現化しているから次の政策調整の時期の話が直ぐに来るのに対して、基調的物価と言って置けば暫く言い逃れが可能なので)ようにしてその結果円安をぶち招いてしまったという事を受けて、より政策調整トーンの強い「賃金と物価の好循環」の方をタイトルに持って行った、というのが見え見えな訳ですよこんなのwwww

まあそんな次第ですので、とりあえず円安進行が植田のせいで進んでいる、という日銀総スカン状態になって四面楚歌になるのを避けたい、という気持ちはわかりましたので内容に参ります。


・「第一の力」「第二の力」っていう説明を更にトーンアップしているんだが筋悪にも程がある

冒頭挨拶とか経済情勢とかどうでもいいので全部すっ飛ばして『3.物価情勢』に参りまして、最初の小見出しが『(物価の現状と見通し)』ですね。

『続いて、物価です。直近3月の消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、2%台半ばの伸びとなりました(図表3)。2年にわたり、2%を超える物価上昇率が続いていますが、その中身は変化しています。』

という時点ですさまじく嫌な予感しかしませんがまあその通りに話は進みます。

『私は、これまで何度かの講演で、2021 年以降の物価の動きを、「第1の力」と「第2の力」に分けて説明してきました(図表4)。』

でまあこの図表4ってのがPDFだと本文のケツにあって、PDFの15枚目に『物価上昇に作用する2つの力』ってのがありますが、そのグラフというかポンチ絵というかを見れば一目瞭然ですが、こちらはまあ講演テキストなのでちゃんと文章で説明があります。まあここ読まなくても図表4のビジュアルを見た瞬間に(ノ∀`)アチャーとなるんですけどね。

『ここで、「第1の力」とは、輸入物価上昇を起点としたコストプッシュ圧力が物価を押し上げる力のことです。これに対して、「第2の力」とは、景気が改善するもとで、労働需給の引き締まり等を背景に、賃金と物価が相互に連関しながら伸び率を高めていく力、つまり賃金と物価の好循環を指します。』

ちょっと待て今後は第二の力が賃金と物価の好循環とか言ってるのですがこれがもう説明として無茶苦茶筋が悪いんですよね。

だってさ、「中長期の期待インフレ率が2%にアンカーされた状態で経済を構成する皆さんが行動するから物価が中長期的に2%程度で推移する」ってのが2%物価安定が実現している姿、って話をしてた筈で、これだと期待インフレの話が無いじゃんという話(まあ流石にこの先に期待インフレの話もありますけどね)と誤読しかねない説明だし、大体からして輸入物価上昇などの価格転嫁がセカンドラウンドエフェクトを起こすというのも物価形成の話の中で重要で、現実問題として(それが本当にそうだったかは別にして)黒田総裁の時のバズーカ2だのハロウィン緩和だの言われたのって「原油価格下落が足元のやや軟調な経済と相まって物価およびインフレ期待の二次的効果を発揮して押し下げになるのを阻止する」ってお題目で追加緩和を実施したように、輸入物価上昇なり何なりの価格ショックが二次的効果を引き起こすかどうかってのは金融政策運営上重要な論点になる筈なのに、この「第一の力」「第二の力」ってそれを見事に無視した説明になっていますよね。

ということで、そもそも論としてこの第一の力第二の力って説明自体が筋悪としか思えないのに、植田総裁何でこの説明を嬉々として(かどうか知らんが)するんでしょうと疑問で疑問でしょうがないんですよアタクシには。

でまあ植田さんの説明は続くわけで、

『言うまでもなく、「第1の力」は、起点となる輸入物価の上昇圧力が止まれば次第に和らいでいく、一時的な性質のものです。それに対して、「第2の力」は、企業の賃金・価格設定行動の変化を伴いつつ、より持続的に物価上昇率を高めていくことが想定されます。』

でもってこれで整理するというのが筋悪なんですがこの筋悪音頭を聴いてみましょう。

『こうした整理を念頭に、改めて最近の物価の動きを確認します(前掲図表3)。食料品を中心とした財価格の上昇率は、このところ明確に縮小しており、「第1の力」が和らいでいることが確認されます。一方、コストに占める人件費の比率が高いサービスでは、価格の緩やかな上昇が続いています。これは、「第2の力」が強まってきていることを示唆しています。』

『先行きについても、「第1の力」が和らいでいく一方で、「第2の力」が引き続き強まっていくことを展望しています。4月の「展望レポート」では、生鮮食品とエネルギー価格の影響を除いた消費者物価の上昇率は、2023 年度の+3.9%から 24 年度に+1.9%へと低下したあと、25 年度は+1.9%、26 年度は+2.1%と伸び率を高めていくと想定しています。生鮮食品を除く消費者物価の上昇率は、政府のエネルギー補助金が縮小・撤廃される影響からやや振れが大きくなりますが、2024 年度が2%台後半となったあと、25 年度以降は、概ね2%程度で推移する姿です。』

コアコア+1.9も+2.1も同じだろと言いたくなるのだがそういう説明になっていますなwww


・でもって結局「基調的な物価」に話が行くのですが総合判断じゃないのかよ

でもってこの続きですが、

『このように、「展望レポート」の見通し計数からは、「第1の力」から「第2の力」へのバトンタッチが進む姿を想定していることが概ね分かるわけですが、物価情勢の評価に当たっては、「第2の力」がもたらす物価のトレンド、すなわち、「基調的な物価上昇率」を捉えることが重要となります。そこで、基調的な物価上昇率についてもう少し詳しくみていきたいと思います。』

『基調的な物価上昇率は、単一の指標の動きに基づいて評価できるものではありません。各種の物価指標に加え、物価変動の背後にあるマクロ的な需給ギャップや予想物価上昇率、賃金上昇率など、経済・物価に関する様々な情報を丁寧にみたうえで判断していくものです。そのため、その捕捉は、必ずしも容易ではなく、特に「第1の力」による価格変動が大きい今次局面では、困難な課題です。』

って言ってるんですが、以下の説明を見ますとひたすら定量的な分析をしていって「ザ・基調的な物価」を出そうという話をしていまして、もっと物価の背景にある経済の状況や物価形成のメカニズムといった部分で判断するのかと思ってたんですが(なお上記切り取って引用した言い方自体はこの前の総裁会見と同じ)、こうやって以下説明されると、なんか必死こいてその「ザ・基調的な物価」を出すという話をしているんだがそういうもんじゃないだろと思うんですよね。

つまりですね、インフレーションターゲット政策ってそもそも何のためにやっているかというと、それは「国民厚生を向上させるため」に実施しているのであって、インタゲ自体はその目的達成のために最も適切なメルクマールになるから使っている手段であって、国民厚生を無視して物価だか基調的物価だか知らんけど、その数字を2%に持って行くこと自体を目的にしたら中央銀行が本来やるべきことをやってない、って話になる訳ですからして、その「ザ・基調的な物価」を出すこと自体に何の意味があるんだよという疑問しかアタクシにはわかないのですが、以下延々とその「ザ・基調的な物価」の出し方の話をしているのがもうこの学者しょうもねーとしか言いようが無い訳ですな、南無阿弥陀仏。

『日本銀行では、従来から物価の基調的な動きをみるために有用と考えられる指標を多く試算していますが、それらは、今次局面のような大幅な輸入物価上昇を想定したものではありませんでした。例えば、「刈込平均値」は価格変動が大きい品目を上下 10%分控除した指数です。そのため、広範な品目で一時的に価格が上昇してしまうと、物価の基調を捉えきれなくなってしまいます。今次局面で基調的な物価上昇率を捉えるためには、従来とは異なるアプローチに取り組む必要があります。』

でもってその「ザ・基調的な物価」を出すのに今まで使っていて日銀が毎月公表していた数値は基調的な物価を捉えていない、とか言い出しているんだがだったら何で今まで出してるんだよ馬鹿としか申し上げようがないし、これ要するに例の日銀謹製基調的物価が高く出てて言い逃れが出来ないからこの数値自体がポンコツとか後出しじゃんけんのゴールポスト移動を恥知らずに行っているんですから世話はない訳です。

『4月の「展望レポート」では、今次局面で、基調的な物価上昇率を捉えるための取り組みとして、@物価統計から、従来とは異なる方法で基調的な要素を抽出するアプローチ、Aインフレ予想の指標に注目するアプローチ、B経済モデルからトレンドインフレ率を推計するアプローチ、の3つを紹介しています(図表5)1。これらの指標の動きは様々でその水準にも差はありますが、全体として眺めてみますと、幾つかのことは言えると思います。』

詳しくは展望レポート全文の方のBOXと直近出てた企画局謹製スタッフレポートの日銀レビューシリーズになるのですけれども、今日はそこまで追っかけている時間がどう見ても無いのでその辺はいったんかっ飛ばしますが、これって「家計の期待インフレが+1.5%程度」とかどういう処理をするとそういう結果になるのかよく分からんですが、なんか高度な分析を行った結果として政策運営に都合の良い数字が出て来るとか言う黒魔術が行われて大変に都合の良い数字が並んでいるんですよね。

でまあ以下その能書きが展開されます。

『第1に、これらの指標の水準は区々ですが、何れも「物価安定の目標」の2%は下回っています。しかし、第2に、何れの指標も緩やかに上昇しており、基調的な物価上昇率が高まってきていることは、かなり確からしいと窺われます。つまり、基調的な物価上昇率が、現時点では、2%に向けて高まっていく途上にあるとみられます。』

結果に都合の良いようにパラメーター弄ってけいさんしてるんでしょ疑惑が払拭できませんなwwww

『もちろん、これらの指標は、何れも一定の前提や仮定に基づく試算値であり、かなりの幅を持って解釈する必要はあります。』

なんで「かなりの幅を持って解釈する必要がある」のにピンポイントで都合の良い数字が出て来るんでちゅかねえ〜

『例えば、経済モデルから試算したトレンドインフレ率は、モデルの定式化の影響を受けます。また、繰り返しになりますが、基調的な物価上昇率の動向は、これらの分析だけに基づき判断すべきものではありません。企業からのヒアリング情報なども用いて物価変動の背後にあるメカニズムを見極めつつ、多様な観点から総合的に捉えていくことが重要です。』

総合的と書いて「やりたい政策から逆算」って読むんですねよくわかります。

・・・・・でまあ時間が足りなくなりそうなのでこの先をいったんかっ飛ばして政策運営まで飛びます。

・一応長期国債買入減額に言及したものの

『4.金融政策運営』ですけど最初の『(金融政策の枠組みの見直し)』ではこのように言っておりまして、

『さて、ここからは、金融政策運営についてお話しします。ここまでお話ししてきましたように、賃金と物価の好循環の強まりは確認されてきており、先行き、2%の「物価安定の目標」が持続的・安定的に実現していくことが見通せる状況となっています。こうしたもとで、冒頭で申し上げたとおり、3月の金融政策決定会合では、過去 11 年にわたり続けてきた大規模な金融緩和を見直すこととしました(図表9)。』

まあこの辺はどうでもよいのだが一応引用だけはしておく。

『具体的には、第1に、短期金利については、無担保コールレート(オーバーナイト物)を0〜0.1%程度で推移するよう促すこととしました。マイナス金利政策のもとでは、コールレートは▲0.1〜0%で推移してきましたので、0.1%程度の利上げとなります。第2に、イールドカーブ・コントロールの枠組みを撤廃し、長期金利の誘導目標や上限の目途は無くしました。第3に、ETFおよびJ−REITの新規買入れは終了し、CP・社債についても、買入れ額を段階的に減額のうえ、終了することとしました。』

『このように見直した新たな枠組みを一言で表現しますと、2%の「物価安定の目標」のもとで短期金利の操作を主たる政策手段とする、「通常の金融政策の枠組み」と言えます。』

これだけアホみたいに長期国債買ってしかも減らそうともしないのに何が「通常の金融政策の枠組み」じゃヴォケとしか言いようがありませんな寝言は寝て言えとはよくいったものです。

『国債買入れについては、政策枠組みの見直しの前後で不連続が生じることを避ける観点から、現時点では、これまでと概ね同程度の金額で継続することとし、実際の日々の買入れ額については、市場動向などを踏まえて調節していくこととしています。』

調節してねえじゃん。

『そのもとで、長期金利は、金融市場において形成されることが基本となるため、今後は、長期金利が、海外金利の動向や経済・物価見通しの変化などを反映して変動することは自然であると言えます。』

これだけ買っておいて何言ってるんでしょうかこのトンカチは。

『また、現在は、3月に見直した国債買入れの枠組みのもとでの金融市場の状況を確認しているところですが、今後、大規模な金融緩和からの出口を進めていくなかで、国債の買入れ額を減額していくことが適当であると考えています。』

と、やっと言っているのですけど、まあこの程度では円債市場は反応しても為替市場はどうせ言うだけ番長ということで反応しないのですな、残念無念wwwwww


・Rスターってあれ中銀が政策説明をするときに都合の良い詭弁の道具としかワシは思わんのだが(偏見)

でもってさらに(ノ∀`)アチャーと思ったのはこの次の小見出しでして、

(金融緩和度合いの評価:実質金利と r*)

って来やがったのですが、これ学問的には確かにこういう話になるんですけど、そもそも中立金利とかそういうのってピンポイントで評価するのって事後的にならないと分からん話だし、もしかしたら事後的にもわからんものでありますし、レンジで示すにしたって金融政策運営に使えるようなレンジで出せるようなもんでもない物件なんですよねどっからどう見たって。

そりゃまあ今みたいに誰がどう見たって緩和的な金融環境、というような状況になっている時だと実質金利が低いですねえみたいな話は出来ますけど、例えばFEDみたいな状態ですと本当に今の金利がどの程度引き締め的なのか、はたまた実は引き締め的ではないのか、とかそういう話を実質金利だのRスターだのとか持ち出して議論するのって、概念としての話しならまあいいんですけど、実質金利水準を頑張って計測してその結果としてルールベースで政策運営をしましょう、みたいな実用性はどう見たってないんですよ。

つまりですね、だいたいこの実質金利だのRスターだのって話は金融政策運営の話をするときの「使い勝手の良い道具」に過ぎなくて、変な使い方をすれば詭弁の道具になってしまうようなお話になるですけど、まあこれを堂々とぶっこんできているという時点でちょっともう何だかね、と思うのですが、この辺のツッコミに関しても時間が無いのでパスして次に行きますねwwww


・先行きの金融政策運営の部分で「下振れの場合」を思いっきり言ってしまっているのが植田さんの心象風景でしょうね

Rスターの話をかっ飛ばして金融政策運営最後の小見出しに行きますが、

『(先行きの金融政策運営)

先行きの金融政策については、毎回の金融政策決定会合で経済・物価の見通しやリスクを点検したうえで、2%の「物価安定の目標」のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、適切に運営していく方針です。』

『そのうえで申し上げますと、先行き、見通しに沿って基調的な物価上昇率が高まっていけば、「物価安定の目標」実現の観点から適切となる金融緩和の程度も変化しますので、緩和度合いを調整していくことになると考えられます。また、経済・物価見通しやそれを巡るリスクが変化すれば、当然、金利を動かす理由となります。』

でもってこの後がアレ。

『この点、先ほども申し上げたとおり、物価を巡るリスクが上下双方向に引き続き大きいことは認識しておく必要があります。』

上振れだけじゃないんですよ下振れも大きいんですよもうこの時点でやる気無いのがバレますよね。

『仮に、物価見通しが上振れたり、あるいは上振れリスクが大きくなった場合には、金利をより早めに調整していくことが適当になると考えられます。』

は良いんだが、

『一方、見通しが下振れたり、下振れリスクが高まった場合には、現在の緩和的な環境をより長く維持していくことが求められます。また、経済・物価に対する大きな下方ショックが生じるような場合には、必要があれば、これまで用いてきた様々な非伝統的な手段も含め、あらゆる手段を予め排除することなく、対応を考えていくことになります。』

あーあーあーあーって感じですが、まあハトハトチキン総裁の心象風景はどう見ても後者なんでしょうね、というのが良く分かる締め方でした、最後に『5.おわりに』ってのありますが割愛します。


2024/05/08

〇植田総裁またも発言をぶらすのマジで勘弁してほしい上に今日は講演なんですね

・官邸での総理との会談後のぶらさがりか何かでエライ勢いでトーンを修正する植田さん

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-05-07/SD3VQQT0G1KW00
植田日銀総裁が首相と為替を議論、基調物価への影響を注視−連携確認
占部絵美、萩原ゆき
2024年5月7日 17:45 JST 更新日時 2024年5月7日 19:12 JST

→物価・賃金が大きなポイント−円安は経済物価に潜在的に大きな影響
→最近の円安について日銀の政策運営上、十分注視していくことを確認

『日本銀行の植田和男総裁は7日夕、首相官邸で岸田文雄首相と会談し、為替が経済物価に与える影響などについて議論した。会談後、植田総裁は記者団に対し、基調物価への影響を注視する考えを示した。』(上記URL先より、以下同様)

・・・・・・じゃあ最初からそう言えよこのスットコドッコイという所なのですが、こんなの26日の定例会見がやらかし会見になってしまったので泡を食って発言の上書きをしていますよ、って鉦や太鼓で宣伝しているようなもんでして、お前は気の利いたオリジナル発言をしようとしないで、普通に展望レポートに書いてあることを棒読みしてれば良いんだよ余計なこと言うなこの(内務省検閲)としか言いようがない訳ですよ。

なんで最初の会見の時点で「最近の為替円安はまだ現時点では基調的物価に大きな影響が出ているとはみていないので政策修正をするには至らなかったが、基調的物価の押し上げ効果が出て来るかどうかについて今後の様々な指標をみながら判断していきたい」と言って置けば何の問題も無かった(それでも切り取られリスクはあるが)わけで、結局あれが尾を引いてるから介入2回やって運よくアメリカン金利の上昇が止まってちょっと下がったけど結局ドル円154円台で推移してる訳なので反省して二度とお前の頭で考えた発言をするなと言いたいですなマッタクモウ。

『植田総裁は、会談では物価・賃金情勢が大きなポイントの一つであるとともに、為替も議論したと述べた。その上で、円安は「経済物価に潜在的に大きな影響を与え得るものであり、最近の円安について日銀の政策運営上、十分注視していくことを確認した」と言明。今後「基調的物価上昇率にどういう影響が出てくるかについて注意深く見ていく」とも語った。』

しかしこのBBG記事も中々容赦がなくて、この先の方で

『植田総裁は4月の金融政策決定会合後の会見で、円安進行による政策運営への影響について現時点で大きな影響を与えてはいないと説明。一方、企業の前向きな価格設定行動などを踏まえれば基調的物価に「跳ねるリスクもゼロではない」とし、無視し得ない影響が出るなら政策の変更理由になり得るとの見解を示していた。今回の発言を受け、植田総裁は円安への懸念を強める姿勢を示したとの見方が出ている。』

と思いっきりトーンを変更しているのを強調しておられますので、アタクシがわざわざ総裁会見の発言を引用するまでもないという大変に親切な(ソウジャナイ)仕様となっておりますが、まあ明確に発言のトーンを変えて来ましたよね。

ただ、再三再四申し上げておりますように、そもそも展望レポート基本的見解の最終段落で示された今後の金融政策運営に関する文言を見れば、「今の見通しは見通し期間の後半のどこかで2%物価目標を達成しているという見通しで、今後は経済物価情勢が今の見通し通りに推移していくかを確認していくステージであり、見通し通りに推移するなら徐々に緩和度合いを縮小していきます」って宣言している訳で、そっちが正しいのであれば(というかこれは政策委員会の議決事項だから正しいんですけど)会見での植田総裁の発言の方が暴走発言だった訳で、修正するのは当たり前田のクラッカーではあるのですけど、暴走するには暴走するベースというのがあるのですから、これは即ち植田さんが政策修正したがらないというベースがありますがな、というだけの話ではありますわな。


・そんな中で今日は午後5時半とかいうはた迷惑な時間帯に講演があるらしいですね

(直リンしませんが)
https://finance.yahoo.co.jp/news/detail/1fdff2f7f27e2b1cd5af6c407c646c9a612fde78
植田日銀総裁が読売国際経済懇話会で講演、8日午後5時半から
5/7 19:10 配信

『植田日銀総裁が読売国際経済懇話会で講演、8日午後5時半から
みんかぶ(FX)』(上記URL先より)

アタクシの気が付いた限りでは時事メインが最初にこの速報を出していたと思うのですが、メインのフラッシュと1行記事だとネットの時事ドットコムの方では拾えないのでこんな感じのを拾って参りました。

でまあこれは展望レポートが出たとき(と大きな政策変更を行ったとき)の後に行われる総裁または副総裁の講演(金懇挨拶かどこかの講演)になりますので、モチのロンで重要な講演になりますわな(昨年は5月19日に内外経済調査会(時事通信系)で植田総裁のハトハト講演があって円債市場の皆様に政策修正のやる気の無さを見せてくれた衝撃の講演が行われました)。

この講演、まあ講演ですからちゃんとテキストがある訳で、しかもそもそもが「展望レポートの説明」になりますので、展望レポート基本的見解で示しているお話をすることになりますし、そうなると基本的見解で示している「今後の金融政策運営」についても言及する筈ですから、あの「その気になれば毎回の展望(どころか実は情勢判断は毎回のMPMで実施しているんだから何なら毎会合ですがまあそれは笑)で目標達成に向けた順調な進捗を確認すれば政策修正が可能」という建付けになっている文章についてちゃんと説明して下さるんじゃないの、とまあ思う訳ですよ願望成分が65%くらい入っていますがw

なお、せっかく講演でイイハナシダナーをしても質疑応答というのがあるかどうか知らんけど、たぶん会場でのご質問(ああいうちゃんとした講演会だと基本的に質問は代表質問みたいな感じだと思うので、記者会見のようにはならんと思うんだがどうでしょうかね知らんけど)もある筈ですので、そこで台無し発言をぶっこむという可能性もアリエールなのが恐ろしいのですけれども、まあ何にせよ変な植田オリジナルをその場で繰り出さない限りは展望レポートの線に沿った話、すなわち今後は物価目標の達成を視野に入れた漸進的だけど着実な緩和度合いの縮小、というお絵描きの話をしてくれるんジャマイカ、と期待するところが大であります。

・・・・・などとアタクシが言うと飛んでもない死亡フラグになるんじゃないかとかツッコミを入れているそこのあなたはそういうツッコミをしてはいけません(正直こんなに盛大にフラグ建築して大丈夫かと一番不安になっているのは不肖このアタクシ)。

2024/05/04

お題「決定会合レビューネタで総裁会見の基調的な物価と為替円安と輪番に関してネチネチとツッコミである」

どもども、金曜更新するとか大口たたいてましたが結局土曜になってしまいました。

しかしアメリカン市場も情緒不安定ですな
https://jp.reuters.com/markets/us/KT72EZEHJFNSHL3YO7MYFFU7CE-2024-05-03/
NY市場サマリー(3日) ドル/円3週間ぶり安値、株価急伸 利回り低下
By ロイター編集
2024年5月4日午前 6:38 GMT+9

『<為替> ドル/円が3週間ぶりの安値を付けた。4月の米雇用統計で雇用者数の増加が予想を下回り平均賃金の伸びも鈍化したことを受け、米連邦準備理事会(FRB)が年内に2回の利下げを実施するとの見方が強まった。』

『<債券> 国債利回りが低下した。4月米雇用統計を受け、連邦準備理事会(FRB)が年内に利下げに踏み切るとの見方が強まった。指標となる10年債利回りは一時、2週間ぶりの低水準となる4.453%まで低下した。終盤は6.9ベーシスポイント(bp)低下の4.501%となった。週間では16.7bp低下した。2年債利回りは一時4.716%と3週間ぶりの低水準を付けた。終盤は6.7bp低下の4.809%だった。週間の低下幅は19bpとなった。』(以上上記URL先より)

まあとりあえず日銀の追い込まれがちょっと延命したのは残念無念wwwwwww

・・・・というかですね、円安が止まってちょっと円高(水準的にはクソおぶクソの円安だが160円よりはマシ)に振れている今こそ大チャンスなのですから、連休明けの輪番はバサッと減額したら円安トレンドに歯止めかかるかもしれませんので金融市場局の蛮勇を期待したい(円安の暴動を止めようとするよりも円高になりかけているところで背中押す方が効きが良いと思うの)のですが、まあそんな蛮勇があったら4月の頭に輪番減額しているとしか申し上げようがないので、カシュカリ総裁の頭髪程度しか期待をしておりませんけれども輪番減額(7日は中期前半後半と超長期前半ですな)を
したら褒めてつかわす(謎のウエメセ)。

ま、でもこれからネタにする会見の植田発言を踏まえてバッサリ減額ができない状況になっているのでどうしようもないんですけどねw


〇植田総裁定例会見(決定会合のいつもの奴):どう見てもハトハトチキンです本当にありがとうございました

今回の決定内容って、展望のケツに書いてあった政策ガイダンスちっくなもの(ガイダンスなのかというとガイダンスではないんですけどね)だけを取り出すと「見通し通りに推移すれば徐々に政策の調整」なのですから、それって「毎回の展望レポートで見通し通りに推移しているのが確認出来たら政策の調整」になるんですから、何のことはないそのロジックであれば7月10月1月って利上げできるんですよね。

まあそこまで言わなくたって、別に「今後の政策はデータ次第ですから」とだけ言えばよいものを植田さんは今回の会見の冒頭でやらかした、というのは水曜にもネタにしましたが、ご案内の通りのやらかしな訳ですよ。

ということで
https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2024/kk240430a.pdf
総裁記者会見
――2024年4月26日(金)午後3時30分から約65分

・徐々に「確度」の話を誤魔化しにかかっている件について

今回の幹事社は共同通信だったはず。

『(問)幹事社から質問を二問させてください。3 月にマイナス金利政策の解除を決められ、今後は追加利上げの時期が焦点となっております。利上げ判断に影響を与える物価2%目標達成の確度の高まりについては、今後どのような材料などを重視されて点検されるお考えでしょうか。(後半割愛というかのちほど)』

確度が高まったからマイナス金利解除した、といってたんですから、今後確度の高まりで追加の利上げをする、とまあ普通は思いますよね。というかそういう説明してましたよね。


まずは前半。

『(答)まず先ほど申し上げた点ですけれども、これからの金融政策運営は、その時々の経済・物価・金融情勢次第という考え方が基本となります。』

ん???というところですが先に行きますね。

『短期金利の水準については、毎回の決定会合で経済・物価の見通しやリスクを丁寧に点検したうえで、2%の物価安定の目標の持続的・安定的な実現という観点から、適切に設定してまいります。』

でもってここでは展望レポート通りに説明してるんですけどこの次に、

『これも大体申し上げましたが、先行き、基調的な物価上昇率が見通しに沿って2%に向けて上昇していけば、政策金利を引き上げ、金融緩和度合いを調整していくことになると考えています。更に、経済・物価見通し、リスクが上振れする場合も、政策変更の理由となると考えています。』

それは良いんだが「目標達成の確度」はどうなった??

『この点ですが、基調的な物価上昇率は、何か単一の指標の動きに基づいて判断・評価するものではなくて、各種の物価指標あるいは物価変動の背後にあるマクロ的な経済の姿、需給ギャップや予想物価上昇率、賃金上昇率など、経済・物価に関する様々な情報を丁寧にみたうえで判断していくというふうに、これまでも考えてきましたし、これからも考えてまいります。(後半割愛)』

この「基調的な物価」がメインになっている説明なんですが、これがまたなかなかドイヒーなことに、上記の説明ですと「基調的な物価」ってのは総合判断ですっていう事でして、インフレターゲットやってるんじゃ無かったのかよというお話だし、そもそも総合判断なのになんで「2%行ってない」だけは堂々と言えるのかがよく分からんですよね。

でもってさらにアレなのはこの「確度」の話に関して後の方で質問があったんですよ。

『(問)総裁、先ほどから物価見通しがこのまま実現していけば、というお話されていますけれども、今回もそれがされてきたということだと思うんですが、その確度が高まっているということですよね。とすると、総裁が以前からおっしゃってる閾値っていうのはどの程度高まってきているのか、高まっていると考えていいのか、利上げまでの距離ですね。(後半割愛)』

そりゃ質問しますよね。これに対する回答が中々のゴールポスト変更でしてですね、

『(答)見通し実現の確度という点から申し上げますと、このところ継続的に上がってきているということだと思います。そのうえで、3 月の決定会合では、それまでの枠組みを停止するというために必要な閾値を超えたという判断で政策変更したということでございます。閾値自体はそういうもので、ある種、御用済みになったということかと思います。(後半割愛)』

>ある種、御用済みになったということかと思います。
>ある種、御用済みになったということかと思います。
>ある種、御用済みになったということかと思います。

閾値が御用済みってことはつまり次の利上げの際には「確度」は関係ないってことなんでしょうか、ってな話になるわけでして、いやお前行き当たりばったりにもほどがあるだろその説明、ってなもんな訳ですよ。

「見通し通りに推移すれば利上げ」だから確度の閾値は関係ない、ということなのかもしれませんけれども、その割には実はこの前の質疑(さっき引用した質疑の後段)では確度の話をしていて、植田さんの説明って説明の仕方が首尾一貫しているように読めないというか読みにくくて、これがまたコミュニケーションをグチャグチャにしているんですよね。

というか要は植田さんコミュ障ちゃんにも程があるわけですが、それを言い出すと黒ちゃんも別の方向性でコミュ障でしたし、アタクシ個人も結構なコミュ障です(からネット弁慶はすれけど生業の方は市場の片隅で小さくなって生きておる次第な訳でしてwww)のでまあ植田さんの「なんか上手いこと言いたい」ってのも気持ちはわかるんですけど、コミュ障が上手いこと言おうとすると自爆しかしないので注意しましょう。自戒を込めましてorzorz

ということで新たにクローズアップ気味の政策反応関数「基調的な物価」に関してがこれまたわけわからん説明をしよるのよ植田さんったら。


・基調的な物価とは???

でまあ今回の会見ですが、F5で検索すると「基調的」が29個、「確度」は7個しか出てなくて、確かに「確度」は御用済みというのがよくわかるのですが、マイナス金利解除は「確度」でその次の利上げは「基調的物価」かよなんだその使い分けは(そもそも内田副総裁が理事時代に国会で「マイナス金利解除は利上げ」と言ってたのは何だったんだという話でもある)という話ですがその基調的な物価のお話をちょっと確認してみましょう。

さっき引用したように、

(植田総裁の発言を再掲)『基調的な物価上昇率は、何か単一の指標の動きに基づいて判断・評価するのではなくて、各種の物価指標あるいは物価変動の背後にあるマクロ的な経済の姿、需給ギャップや予想物価上昇率、賃金上昇率など、経済・物価に関する様々な情報を丁寧にみたうえで判断していくというふうに、これまでも考えてきましたし、これからも考えてまいります。(後半割愛)』

としているんですよね。つまりは総合判断のお気持ちが入った鉛筆舐め舐めということなんですが、幹事社質問のところでこういう説明をしているんですけど、この説明についてパラフレーズしてくれという質問が後の方(ちなみに6ページになります)に来るわけですね。

『(問)二点お伺いします。一点目は、為替の円安の基調的物価への影響についてですけれども、総裁、先ほど来年の春闘まで必ずしも待つかというとそうではなくて、予想できる状況になれば、もっと手前で判断することもあるとおっしゃいましたけれども、併せて単一の指標で判断することではないということも併せておっしゃってますが、これもう少し具体的にどういう状況であれば、もっと手前で判断するという可能性があるのか、少し具体的に伺えればと思います。(後半割愛)』

具体的にはどういうことか、という質問に対して、為替の影響の話はかっ飛ばして「基調的な物価をどう判断するのか」という話を始めます、まあそれ自体はいんですけど・・・・・・

『(答)前半ですが、為替が基調的物価上昇率にどう影響するかという点のご質問だったと思うんですけれども、それを確かめるのにどういう指標をみていくのかというご質問だったと思いますが、』

と来て話を一般論に置き換えるのはまあこれ自体はアタクシ別にインチキとは思わないしむしろ丁寧な説明(ご案内の通りに会見劈頭に近いところで伝説の「(蚊の鳴くような声で)はい」といってしまって円安ぶっ飛びが炸裂したので少し反省していたのかもしれないですけど、

『基本的には一般的に基調的物価上昇率の今後、あるいはそれがわれわれの見通しの姿と整合的な動きをしていくかどうかという際のチェックポイントという意味で話しますと、』

ほうほうそれでそれで?

『やはり春闘で強かった賃金が現実に経済全体の賃金にきちんと跳ねていくかどうかという点。それから、上昇していく賃金がサービス価格にどういうふうに跳ねていくかという点、更にそこに円安や原油高に伴う輸入価格の上昇がサービス価格だけでなくて、広い価格水準にどういう影響をしていくかという観点。更には最初の方で申し上げましたが、企業サイドの賃金・価格設定行動が持続的に前向きになりつつありますけれども、これが今後どういうふうに展開していくか、この辺りをみつつ、今後の基調的な物価上昇率の動きを判断していくということになるかと思います。(後半割愛)』

だそうなのですが、もっと後の質疑に来ると、例の「基調的な物価は2%行ってない」という説明がおっぱじまるのですよ、ここまでの説明だともっと定性的な話にしか見えないわけで、定性判断としてまだ物価が安定的に推移しているわけではない、ということなので達成していない、という説明ならわかるのですが、

12ページの質疑に移りますと、

『(問)ちょっと逆説的な質問になってしまうかもしれないんですけども、今回の展望レポートで 26 年度まで1.9%と予測されましたけども、ある意味でより物価目標の達成確度が高まったようにもみえて、そういう意味ではそれこそすぐ利上げしてもいいんじゃないかというような判断もなきにしもあらずと言えたのかもしれないんですけども。改めてですね、今、中東情勢、円安の物価高、海外経済減速リスクもある中で、今回の利上げの判断を見送ったというのはどういった理由なのかっていうのは、ちょっと改めてお伺いできればと思います。』

先行きのリスクがあって不透明だから、という回答を期待したと思うのですが、植田さん謎回答をぶっこんできておりまして、

『(答)この見通しの数字をみますと、概ね 2%か、あるいは除く生鮮の 24 年度は 2%をかなり超えているわけですけれども。こうした 2%前後、あるいはそれを超える見通しの中には、弱まりつつあるとはいえ、過去の「第一の力」の波及効果が含まれているというふうに考えています。』

??????

『ですから、そこを取っちゃうとここより少し下の数字になる。取っちゃったものが基調的な物価上昇率というイメージです。』

な、なんだってー!!!

いやあのですね、そもそも第一の力第二の力とかいう説明が金融政策運営における物価判断の説明の中でインチキ成分が入っているんですよ。何度か弊駄文で申し上げていますけど、第一第二とかいうのじゃなくて、「物価上昇(または下落)が一時的なショックなどのワンオフなものであればそれに金融政策で対応するのは基本的に不適切」「物価上昇(または下落)が恒常化する見通しならば金融政策で必要な対応を行う」って話であって、問題はワンオフなのかそうじゃないのか、という話だし、これだけ散々っぱら日銀は物価見通しを外していて、しかも外し方が同じ方向で恒常的に外しているんですから、その場合は日銀が今物価見通しの前提として考えているもの(経済モデルとか)が構造変化によってズレているんじゃないの、って話だと思うの。

然るに植田先生、第一の力をとったものが第二の力で、それが基調的物価上昇率ってそれいくら何でも説明がインチキ過ぎないですかという話で、日本の金融政策論の第一人者にしてこれかよというのが日本の経済学ってどうなってるんだよ状態の情けななさ。

まあそれはともかくとして、

『その基調的物価上昇率はまだ 2[%]を下回っているというふうに考えていますので、緩和的な金融環境、現実的には今のところは 0〜0.1%という短期金利の水準が適当であるというふうに考えているということです。(後半割愛)』

という説明になっていまして、これまたなんのこっちゃという感じでして、つまりはどういうことかというと、展望レポートの最後の部分に書いてあったガイダンスもどき文言とその説明では、

(植田総裁会見発言の再掲)『先行き、基調的な物価上昇率が見通しに沿って2%に向けて上昇していけば、政策金利を引き上げ、金融緩和度合いを調整していくことになると考えています。』

となっていて、金融緩和に関しては「見通し通りに推移すれば修正」になっているのですが、直上の説明っぷりですと、むしろ「金融緩和政策を推進していくことによって2%が達成される」という言い方に読める訳でして、いやだからお前らはどっちなのか(2%目標達成の移行期間における遷移過程として緩和が続いているのか、目標達成のためには緩和政策が必要だから頑張って緩和していきますよといってるのか)がまあ不明な訳ですよ。というか説明がその時々で都合の良い方を使う、みたいな使い分けをしているのがわけを分からなくさせているんだと思うのよね。


まあアレです、「2%達成の見通し」というのもこれまたわけわからん状態になっていて、展望の見通しだけで言えばどう見ても「今後は見通し達成の見込み」だし、一方で植田さんの説明は一貫してその「今後は達成見通し」というのを言いたがらないように見えるわけでして、いや一体全体どっちですねんと思うのですが、さてこの「基調的物価」ですが、なんか「総合判断」だったのがさっきの質疑で「物価から第一の力を差し引いた部分」ということにされていますよね。でもってとどめにこの先の質疑を載せるわけですが、


14ページになります。

『(問)基調的な物価の上昇率についてお伺い致します。これ一概に示すのは難しいということだと思うんですけれども、総合的に判断するということになれば、その根拠が曖昧で、政策修正の分かりにくさであったり、あるいは恣意的な判断につながりかねないというふうに考えています。客観性を高めたり恣意性を排除したりするためには、どういう考えでしょうか。』

インフレターゲットをやってる、って豪語してるんだからそれはこういう質問になりますよね。でもって回答なんですけど(回答は15ページの頭からになります)、

『(答)難しいのは、基調的な物価上昇率というのは、申し上げるまでもないとは思いますけれども、全体の物価上昇率から一時的な動きを取り除いた部分ということになるかと思います。』

第一の力と一時的な動きはイコールじゃないですし、そもそも質問の方が仰っていたし、あんさんも最初の方で基調的な物価の話をしたときに、

(これまた先ほどの植田総裁の質疑応答での回答の再掲になりますが)『基調的な物価上昇率は、何か単一の指標の動きに基づいて判断・評価するものではなくて、各種の物価指標あるいは物価変動の背後にあるマクロ的な経済の姿、需給ギャップや予想物価上昇率、賃金上昇率など、経済・物価に関する様々な情報を丁寧にみたうえで判断していくというふうに、これまでも考えてきましたし、これからも考えてまいります。』

って言ってるのに、明らかに会見の後半に来て「基調的な物価」の定義が変わっているんですよ。いや黒田日銀というか置物一派が得意としていたのが「説明が全然首尾一貫していないで適当に都合の良い屁理屈をチェリーピッキングする」というのがあるのですが、植田さんの場合は一つの会見の中で「基調的な物価」の説明が会見の頭とケツで違っている、というのは結構これ深刻な話でして、いやまあお前それでも学者かm9(^Д^)プギャーとか茶化している場合でもありませんでして、この調子で同じ会見中でも使ってる言葉の定義が変わってしまうような状況の人たちが金融政策運営していまして、しかも長期国債市場にとんでもないレベルの市場介入を実施している、ということになりますと、長期国債市場の中の人の端くれとしましては、この人たちのとんでもないレベルの介入が今後どうなるかが全くロジカルに読めない、ということになりますので、そりゃ国債市場の流動性が戻らんし、投資家だって回帰しにくいわ、ということになるんですよ、という意味で困ったもんなんですよこの植田日銀ってのは。

『ところが何が一時的かっていうことは、時代、その時点によってどんどん変わっていくということで、あるやり方で、あるいはある項目を外すと、一時的な変動を取った残りの分が出てくるという固定的なやり方がないということが、難しさだと思います。従って、総合的な判断という、ちょっと分かりにくい表現になるわけですが、対応方法としては、いろいろな手法で一時的な変動を除いてみる。そして、作り出したある種の加工された物価指数、これは複数のやり方があると思いますが、それをお示しして、それをわれわれもみるし、皆さんにもみて頂く。あるいは、もうちょっと技術的には難しいモデル分析を使って、基調的な物価がどうかというところを推計してみてその動きをみるような、複数のやり方を重ねて、何とかどの辺にあるかということを見極めていきたいというふうには考えております。』

って説明、明らかに最初の説明(さっき再掲しましたが)と全然違う話を言ってて、経済物価情勢の背景を含めたメカニズムで考えるのではなくて、「基調的な物価」というのが物価の出来上がりから上手いことトリミングをしていくと出てくる、っていう世界での説明をしている訳ですよ、いやもう何なのこの「基調的な物価」という話なのですよね。


・為替円安と基調的な物価

でまあここで冒頭の幹事社質問の後半に戻りますが、

『(問)(前半割愛)二点目が為替です。円安基調が続いています。円安が物価上昇に大きな影響を生じる場合は、金融政策の変更もあり得るとご説明されていますが、現状の円安についての影響をどのようにお考えでしょうか。』

これも水曜にネタにしたようにG20の時の会見で思いっきり言ったんでそれは聞かれますわ。ということで、幹事社の2つの質問(確度と円安の影響ね)、どっちも「ところでついこの前こういう説明してたんで政策反応関数になると思うのですが、その政策反応関数の現状評価を聞きたい」という至極まっとうな質問。

でもって円安に関する方の回答でさっきから引用している「基調的な物価」も出てくるのですが、

『(答)(前半割愛)それから、為替との関係ですけれども、金融政策の主な手段は短期金利になったということで、その水準をどういうふうに決定していくかということですが、その考え方については今申し上げた通りです。』

ということで、

『為替との関係で申し上げますと、まず、金融政策は、為替レートを直接コントロールの対象とするものではありません。しかし、いつも申し上げていますように、為替レートの変動は、経済・物価に場合によっては影響を及ぼす重要な要因の一つになります。仮に、おっしゃられてきましたような基調的な物価上昇率に、無視し得ない影響が発生するということであれば、金融政策上の考慮あるいは判断材料となるというふうに考えます。引き続き、為替市場の動向やその経済・物価への影響を、十分注視していきたいと思っています。』

ということでですね、そもそもこれ植田さん自ら墓穴を盛大に掘っているわけでセルフ坑儒とは秦の始皇帝もビックリというお話な訳です。当然次の人が畳みかけてきまして、

『(問)為替についてお伺いします。今回の展望レポートを踏まえてですね、現状の基調的な物価上昇率に円安が与えている影響について、どのようにお考えかというところをお願いします。仮に円安に対してですね、金融政策で対応する場合っていうのは、急激な日米の金利差から考えると、急激な利上げが必要になる場合もあると思うんですけども、その場合の利上げのペースみたいなものはどのようなお考えかというところをお伺いできればと思います。(後半割愛)』

と来ましたところ植田さんこう回答するの巻(ちなこれは質問が2ページのケツ、回答が3ページの頭です)。

『(答)まず、為替と物価見通しの関係ですけれども、先ほど発表しました政策委員の大勢見通しというところをみて頂きますと、除く生鮮で、24 年度のインフレ率予想がやや大幅に上方修正となっています。この主な理由は原油高ですけれども、一部円安の影響も、各政策委員がそれぞれ見通しを作りますので、その人次第でどれくらい上昇したかというところは違いますけれども、若干は含まれているというふうに思います。』

ほうほう。

『ただ、その他のところには、見通しの変更、大きなものが今のところ出ていないということで、それだけでということではないですが、基調的な物価上昇率にここまでの円安が、今のところ大きな影響を与えているということではないという判断がここに表れてるかなと思います。』

でもって、

『ただ、全般的に物価情勢が上振れてきているといいますか、われわれの言葉で言えば、見通し達成の確度が上がっているという状況でありますし、』

上振れしているのが「確度が上がっている」だったらそれにもし円安が影響しているなら基調的な物価に円安が影響している、という事になるんだが、なんかこう植田さん一生懸命説明しようとしていろいろな角度から説明しようとしている、というのはまあわからんでもないのですが、それが結果として「一つの会見の中なのに言ってることが違う」とか「これまでの説明と違う」ってことに結果的にはなっているし、ヘッドラインリスクは上げてるしで全く良いことないというか逆効果にも程があるので余計な説明するなやと申し上げたい。

『更にここのところ原油高とグローバルなインフレもインフレ率でみて下がってきたのが、若干下げ止まりから、場合によっては反転という話、あるいは見通し達成の確度が少しずつ上がっているということとも関連しますが、企業の賃金・価格設定行動も前向きの動きが継続しているというようなことから、基調的な物価上昇率にここまでのコストプッシュ、第二段階のコストプッシュ的な動きと呼べるかもしれませんが、それが跳ねるリスクもゼロではないと考えていますので、注視してみていきたいというふうに思っています。(後半割愛)』

なんちゅうかですね、こんなの「足元までの円安で大きく先行き見通しを変えるに至っていないけれども、今後の影響は今後出てくる指標をきちんと精査しながら判断していきたい」とだけ言っておけばいいのに余計な事を言いすぎでして、こういうのは(さっきも申し上げたようにワイもコミュ障(そのうえネット弁慶と来ているからさらにたちが悪いですかそうですかwwwww)だからわかるけど)コミュ障が頑張って話をしてやらかす典型的なパティーンではあるwww


でまあこんな回答をしたら次の人がさらに質問をしてきまして、

『(問)今日、決定会合の結果が出てからですね、為替は 1 ドル 156 円台となっています。3月の時点では総裁、利上げは急がないということをおっしゃっていましたが、為替を含めた環境変化を受けまして、利上げ時期に対する姿勢というのは変わったのかどうかですね。早期の利上げが必要な段階に来ているというふうにみているかどうかというのを教えて頂けますでしょうか。

それからもう一点なんですが、物価にどれぐらい為替が影響を与えるかというところでいいますと、円安ですとか原油高といった「第一の力」、外的要因によるコストプッシュインフレであった場合でも利上げで対応する必要があると考えていらっしゃるのかどうか、この点をお願い致します。』

ということで植田さんですけどね。

『(答)どちらも究極的にはこれまで、今日、お話ししてきたこととの関連で申し上げれば、基調的な物価上昇率についての見方に影響があるかどうかというところに沿って、特に金利引き上げ、短期金利ですね、これをいつやるかっていうところは決まってくるということになるかなと思います。』

で?

『為替変動はインフレ率に影響しますけれども、為替が何円から何円に、若干円安になるということのインフレ率への影響は、通常一時的にとどまるということだと思います。』

まあちなみにこの説明も「昨年対比」という意味ではそうなんですけど、ベースの為替が動くのっていうのはそれ自体は「水準を変える」ものなので、前年比で恒常的に影響するものではないのから関係ない、というのもなんか変な理屈のような気がしますがどうなんでしょうかね。

それはともかくとして先に行きます。

『しかし、これが長期化するという場合も、繰り返しですがゼロではなくて、それはいったんインフレ率に影響が出て、それが例えば、今年であれば 24 年のインフレ率に影響が出て、来年の 25 年の春闘の賃金上昇率に跳ねるようなことになれば、それは影響が長期化する、あるいは「第二の力」に影響する基調的物価の動きに影響するということになるということだと思います。』

ベースの為替レートが動いた後戻らない、というのであればこういう事なんじゃないの??って思いますけどね。

『ちょっと長くなっちゃいますが、仮にそういうルートを考えるとして、来年の春闘まで待たないと判断できないのかと問われますと、そうではなくて、そういう動きが予想できるような状況になれば、それはもっと手前で判断できるということではあるかなとは思います。』

まあこれ聞いたときに「えー来年まで判断しないのかよ」とそっちの方を先に思ったわ。


でまあこれらの質疑が来た後に例の質疑が来るわけですね。

『(問)植田総裁はですね、先日の会見で、円安の進行によって基調的な物価上昇率に無視できない大きさの影響が発生した場合は金融政策の変更もあり得ると、先ほどお話しした通りだと思うんですけども、今回金融政策の変更がなかったということは、これはつまり円安の進行が、これ無視できる影響だという、そういう範疇になるというご認識でしょうか。総裁のご認識、お尋ねしたいです。』

これは見事な日銀詰将棋。

『(答)それは今までの回答とちょっと重なりますけれども、取りあえず基調的な物価上昇率への大きな影響はないと、皆さん判断したということになるかと思います。ただ、申し上げましたように、そこに影響は今後発生するリスクはゼロではないので、注意してみていきたいということでございます。』

「皆さん判断したということになるかと思います。」というのが逃げ口上にみえてしまうのが悲しいですなwwwwww

『(問)つまり今回は、これは基調的な物価上昇率への影響は、まあ無視できる範囲だったという認識でよろしいでしょうか。』

『(答)はい。』

まあこれ「はい」の前に「一呼吸置いてから蚊の鳴くような声で」というのを()書きで入れれば完璧でしたねwwwwwwww


・会見の説明だと輪番減額は6月会合で減額の議決が出るまでノーチャンスにしか見えません&能動的な手段云々

輪番についてですけど、本文2ページの最後(幹事社の次の人の質問の後半ね)で最初に聞かれましてね、

『(問)(前半割愛)もう一点は国債の買い入れについてお伺いします。どこかのタイミングで減額されるということをおっしゃっていますけども、それはどのような考え方で進めて、いつ頃を考えてらっしゃるのか。その場合に、要は経済・物価への影響というものをどの程度考慮されるのか、その点も併せてお願いします。』

『(答)(前半割愛)それから国債の買いオペについて、国会等でもあるいは前回の記者会見でも、将来どこかの時点で減額ということを視野に入れているということを申し上げてきました。その点は今でも同じ考えでありますし、残念ながら今、具体的にいつの時点でということを申し上げられる段階ではありません。』

ここまで総裁が言い切ってしまうと5月(つまり連休明けの火曜日)に減額するという蛮勇モードは普通出てこないと思われますよね、残念無念。

『表現を変えてみますと、3 月に金融政策の枠組みを変更して、それが金融市場等でどういうふうに消化されるかというところを今まだみている段階ということかなと思います。』

輪番については消化どころか腹下し状態だわw

『もしも将来減額をする場合に、そういうことになった場合にということですけれども、それは一つの考え方としては、金融政策の能動的な手段としては使いたくないな、ということでございます。』

これまた困るのは、輪番減額はある程度の段階に来たら何らかのオートパイロットで行う、というのであれば「能動的な手段ではない」という話はまあ分かりやすいのですが、

『ただし、もちろん将来的に買いオペの金額が減っていけば、保有している国債も徐々に減っていく、残高ですね、ということにつながりますので、日銀がたくさん国債を持っているということから発生しています長期金利を下げるという方向でのストック効果がやや弱まるという効果は発生するということになるかと思います。そういうことも考慮に入れたうえで、短期金利の方の調整を適切にやっていくということになるかと思います。』

となると、ストック効果が金融政策の手段として使われている、ということになりますので、「能動的な手段としえては使いたくない」というのと話が思いっきり矛盾するんですよね。頼むからこの位置づけもうちょっとわかりやすくしてくれってお話になりますわ。


でもって4ページのケツからの質疑になりますが長期国債買入に関して、

『(問)今回の対外公表文で、長国の買入れの方針は 3 月の金融政策決定会合において決定された方針に沿って実施するということですけども、3 月の、前の対外公表文では、概ね同額の長国を買入れする、更に脚注にはですね、足元では同額ってのは 6 兆円ですというふうになってましたが、今後もですね、3 月に沿って、決定に沿ってっていうことですので、6 兆円程度の国債[買入れ]を当面継続するという、そういう理解でよろしいでしょうか。(後半割愛というか次に)』

とまあこう念を押されるわけですが、

『(答)前半についてはご指摘の通りでございます。3 月の時点でお示ししたものから変更ありません。(後半は次に)』

となっていまして、ここまで言われた日にはまあ普通に考えて輪番を急に減らさんわな、と思うのが妥当というのが結論になりますよね。

でもって今飛ばした後半ですけど、じゃあオペ紙のレンジに関してということで裁量はあるのけ問題についてでして、

『(問)(前半割愛)もう一つ、長国の買入れですけども、仮に同額の買入れを継続するということでは、バランスシート政策上で減らすという意味ではなくて、金融調節で[金融]市場局がやっているようなオペレーションで減らしていくっていう、そういった可能性についてはどうお考えなのかというのですけども。4〜6[月]のオペ紙では、大体 5 兆[円]弱から 7 兆[円]という数字が示されてますけども、例えば市場動向によっては 5兆円弱ぐらいまで減らしていくということが考えられるのか、もしくはその 5 兆[円]から 7 兆[円]っていうレンジってのは、もっと幅を持たせて考えていってもいいのか、その辺を伺えないでしょうか。』

と来ているのですが、

『(答)(前半割愛)それから後半ですけれども、日々の[金融]市場局の調節で、ある程度の幅を持って決定し得るというふうにしていますが、そこはこれまでと同様に、内外の市場の動向とか、国債の需給、例えばオペの応札の状況等をみて、若干の幅の中で[金融]市場局に決めてもらうという程度のことを考えています。』

という説明になっているから、まあ普通に考えて5月に減らさんわなという話だし、この後翌週頭に出たオペ紙もレンジ変更なしだったのはご案内の通り。

『長期的にオペの金額を減らしていくという際には、政策委員会で決定して、きちんとアナウンスをして進めていくということになります。』

はい6月会合までノーチャン。

『(問)確認ですけど、同額というのは 6 兆円ですけど、[金融]市場局に認めている幅ってのはどのぐらいということなのでしょうか。』

『(答)具体的には特に決めておりません。常識的な範囲でという程度でございます。』

wwwwwwwwwwただの丸投げ責任回避ワロリンチョ


ということで、まあ他の論点もあるにはありますが、一応現世利益的にはこの辺をカバーしておけばいいかなと思ったのを詳しく見てみました。要は基調的な物価と為替円安と輪番ですなw


連休明けにネタの山で死ぬのが見えているのでもう少し成敗に関しては検討の余地はあるがまあ一応大型連休ともなるとやることもありますのでとりあえず本日はこれで勘弁ということで。



2024/05/01

〇決定会合レビューですが今回は小ネタがあちこちに散らばっているので小ネタの粒粒を拾いながらシリーズで

日銀公表文書の前回比較、とかいうのはまあ今度の金曜土曜くらいにやりますわ、と今回は断言して自分の首を積極的に締めに行くスタイルですが、何か急に予定が変わらない限りにおいてはまあ追いつきをする所存です。FOMCも明日ありますし。

・展望レポート全文と言えばコラムシリーズなのだが円安の影響分析がねええええええええええええ

展望レポート背景説明を含む全文キタコレな訳でして、
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2404b.pdf
経済・物価情勢の展望
2024 年 4 月

(BOX1)個人消費の現状と先行き
(BOX2)2024 年春季労使交渉
(BOX3)賃金・物価の相互連関:人件費上昇を販売価格に転嫁する動きの広がり
(BOX4)「物価の基調」の捉え方
(BOX5)金利面からみた金融緩和度合いの評価
(BOX6)国債買入れがイールドカーブに及ぼす影響

なんということでしょう。BOXが6つもありまして(前回は3つ)気合の入り方を示しているのは大変結構な上に、個別のBOXも読みどころ(あるいはツッコミどころ)があったりしまして、大変に結構じゃあーーーーーーりませんか。

・・・・・・と思ったのですが、為替の影響に関する考察は何処に????


ここで4月18日に行われた植田総裁の記者会見を確認してみましょう

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2024/kk240422a.pdf
植田総裁記者会見(4月18日)
――G20終了後の鈴木財務大臣兼内閣府特命担当大臣、植田総裁 共同記者会見における総裁発言
―― 於・ワシントンDC
2024年4月18日(木)
午後2時31分から約21分間(現地時間)

(以下引用部分は直上URL先の4月18日植田総裁記者会見の質疑応答より)

『【問】
植田総裁には、最近の為替の円安なんですが、輸入コストの上昇を通じて物価に上昇圧力を加えた場合に、既に高まりつつある「第二の力」、いわば賃金と物価の好循環、これと合わさると物価の上振れのリスクが高まる可能性があると思うんですが、この足元の円安の動きがそうした輸入コストの上昇を通じて物価にどう影響を及ぼし得るのか、またそうした動きが次の金利の調整のタイミングにどう影響するのかについて教えてください。』

『【答】
私からは、為替の円安方向の動きが輸入財の国内価格の上昇を通じて、おっしゃったように場合によっては「第二の力」とわれわれが呼ぶインフレーションの部分、あるいは基調的物価上昇率に影響を与えるという可能性は、それはあり得ると思います。

そこについて無視できない大きさの影響が発生した場合は、場合によっては金融政策の変更もあり得るということだと思いますが、現状その辺りをどのように評価しているか、例えば 1 月以降の円安の動きについて、来週になりますか、決定会合があって展望レポート、新しいものを発表しますので、その中で取り上げて数値的にもお示しするということになるかと思います。』

>展望レポート、新しいものを発表しますので、その中で取り上げて数値的にもお示しするということになるかと思います。
>展望レポート、新しいものを発表しますので、その中で取り上げて数値的にもお示しするということになるかと思います。
>展望レポート、新しいものを発表しますので、その中で取り上げて数値的にもお示しするということになるかと思います。

えーっと、どちらに取り上げて数値的にもお示しになられたのか教えていただけると大変にありがたいのですけど何がどうなっておられるのでしょうか?????????

しかしまあ何ですな、この発言ってその後決定会合で利上げはしないにしても長期国債買入に関する何らかの手直しでも入るのか、って思惑を呼んでしまったりもしてましたが、結局今回って長期国債買入に関しては6兆円維持っていうのがより明確になってしまったという事になってしまったし、為替の影響に関してはどこからどう見たって植田さん食言しているとしか思えない展望レポート全文が出てしまっているし、どうなってるんですか植田総裁の発言は、とまあそういう話になる訳ですな。

でまあ幣駄文でも再三再四申し上げておりますが、植田さんはこの4/18会見みたいに変に威勢のいいサービス発言をするかと思えば、腰が砕けたのか単にその前の発言がその場しのぎのエエカッコシイで調子のいいこと言ってるだけなのか知らんけど、その後平気で引っくり返すような事をしてしまう、というコミュニケーションとして非常に稚拙というか最早害悪と申しあげて差し支えないと思われるレベルの発言の振れ幅の大きさがあるんですよね。

まあエエカッコシイなのか実はお調子者なのか知らんけど、あんさんもうヒラ審議委員じゃないんだからそうそう発言をぶらすなよと言いたい訳でして、昨日も申し上げたように、3月や4月に声明文や展望レポート基本的見解で示されている政策スタンスってのは「見通し通りに推移すれば徐々に緩和政策の度合いを弱くしていく」「ただし色々と「やってみないとわからない」という面があるので事前にパスの決め打ちをするようなことはなく、あくまでもデータを見ながらやっていく」というものなのですから、その通りにど真ん中の事を淡々と説明すりゃ済むわけですよ。

然るにこのハトハトチキン爺さん、いざ政策をしようとするとハトハトチキンなのに発言だけは急に威勢が良くなったりするので、威勢の良すぎる発言をする→やり過ぎたので反対側に威勢の良い発言をして打ち消す→やり過ぎたので以下無限ループ、というのをやって金融市場に無駄なボラを出しているだけ、という甚だ困ったお方でして、兎に角余計なノイズを振りまくんじゃねえよとしか申し上げようがありませんな。



・お蔭で会見でもやらかしてしまう訳でして

会見をまとめて成敗するのはまた別途行いますけど、
https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2024/kk240430a.pdf
総裁記者会見
――2024年4月26日(金)午後3時30分から約65分

会見録4ページ目(PDFも4枚目)のかの著名な質疑ですけれども。

『(問)植田総裁はですね、先日の会見で、円安の進行によって基調的な物価上昇率に無視できない大きさの影響が発生した場合は金融政策の変更もあり得ると、先ほどお話しした通りだと思うんですけども、今回金融政策の変更がなかったということは、これはつまり円安の進行が、これ無視できる影響だという、そういう範疇になるというご認識でしょうか。総裁のご認識、お尋ねしたいです。』

そら聞かれますわな。これも何で聞かれたかと言えば4月18日の会見で円安の牽制でもしたかっかのか知らんけど上記引用の通りしなくても良いサービス発言をした報いなわけで、サービス発言して国債買入の手直しでも入ったのなら別ですが、完全ゼロ回答になっている、という状況だった訳でして、だったらG20であんなサービス発言するなよとしか言いようがない訳ですな。

『(答)それは今までの回答とちょっと重なりますけれども、取りあえず基調的な物価上昇率への大きな影響はないと、皆さん判断したということになるかと思います。ただ、申し上げましたように、そこに影響は今後発生するリスクはゼロではないので、注意してみていきたいということでございます。』

まあこの辺の質疑日銀ようつべで見てましたけど、アワアワした感じで説明してましたよね。しかしこの「皆さん判断したということになるかと思います。」ってのも、委員会制における議決だから確かに「皆さんが判断したから政策が変わらなかった」というのはその通りかもしれないけど、なんかもうこの時点で逃げを打っているように見えて(聞こえて)しまうのがヤバイ訳ですが、当然ながらこんな回答では許してくれませんので、

『(問)つまり今回は、これは基調的な物価上昇率への影響は、まあ無視できる範囲だったという認識でよろしいでしょうか。』

『(答)はい。』

これ中継見てた方ご案内の通り、というかようつべの日銀チャンネルにアーカイブあるからそれ見て頂ければよろしいのですが、17分30秒くらいから上記質疑が始まりまして、最後の「はい」は18分45秒くらいなのですが、一瞬止まってから小さい声で「はい」といったんですなあっはっは。

・・・・・・・・・そらまあロジカルに行くとこうやって日銀詰将棋って感じになってしまう訳ですが、これだってそもそもあんなことを言わなければ詰将棋にならずにすんでした訳ですし、当然ながら(その前から関連質疑ありましたのでかなりその時点で詰んでいましたけど)この見事な詰めあがりによって為替の円安が飛んだ次第な訳で、おまいはもうちょっとものの言い方を改善しろというか1年経過して寧ろ悪化してないかという世界な訳ですな。

これだって「今回の時点では基調的な物価上昇率への影響がまだ明確に出ているとはいいがたいが、今申し上げましたように基調的な物価への影響が起こる可能性もありますので、今後の物価情勢を丁寧に分析して参ります」とか回答すれば良い(というか最初から最後までそれで通せば終わり)だけの話で、なんかこう「俺様は頭が良いんだゾ」とばかりに上手い事言おうとしてドツボに嵌る、というパターンなのは悲しいとしか申し上げようがありませんな。


てな訳で、今回の会合、やっぱりコミュニケーションに関して重大な課題があるし、それが一部出てしまってこのテイタラク、って思う訳ですよ。


2024/04/24

〇でまあ金曜の会見が悪目立ちしそうなんだが

そういや昨日は国会で植田さんの委員会質疑があったようですが。

https://jp.reuters.com/economy/bank-of-japan/TOI7ST6FYRP2JANBDQ2AO3WZDU-2024-04-23/
基調的な物価、2%に向けて上昇なら金利引き上げていく=日銀総裁
By 和田崇彦、 竹本能文
2024年4月23日午前 11:54 GMT+9

『[東京 23日 ロイター] - 植田和男日銀総裁は23日の参院財政金融委員会で、先行き、基調的な物価上昇率が日銀の見通しに沿って2%に向けて上昇していけば、金融緩和の度合いを調整し、短期金利を引き上げていくと述べた。物価・経済見通しやリスクが変化すれば、政策変更の理由になるとも話した。ただ、金利変更の時期や幅については、予断を持っているわけではないとした。』(上記URL先より、以下同様)

ということでまあ穏当な書き方になっているのですが、実はこれロイターさんこの記事って当初のヘッドラインは上記記事で紹介されている答弁の中の「物価・経済見通しやリスクが変化すれば、政策変更の理由になるとも話した。」の方がヘッドラインになっていたんですよね。

まあ結局はヘッドラインバイアスだったのですが、当初そのヘッドラインでの記事だからってヘッドライン引用した形で別のベンダーさんとかでも記事紹介されてたりしてて、「ちょっとまって植田さん植田さん、そもそも見通し通りに推移したら短期金利は引き上げになるんじゃないの(見通しは「今後2%物価目標に向かって進む」としているのだから)」とツッコミを入れておった次第なんですねアタクシ。

ということでまあ国会中継ちゃんと見てろというお話ではあるのですが、これ植田さんの説明もどういう文脈なのかわからないけど不親切というか余計というか切り取られリスクを意識してないというかな訳で、そもそも論として「この先経済物価情勢が我々が示した見通し通りに推移すれば徐々に金融緩和の度合いを弱くしていきますそれは短期政策金利の引き上げによって実施します、ただしその速度や幅については現時点でお示しできる状況ではありません」という話なのであって、「見通しが〜」ってのは明らかに余計な発言なわけで、こういうのを言ってしまうのが植田さんの悪い所で、こういう余計な発言が切り取られてフレームアップしてしまうから市場がそれ見て反応しちゃうし、そういう市場の反応を火消ししようとして逆の発言をするもんだから言ってることが凄まじくブレブレになっているようにしか見えないし、「不規則発言と市場の悪循環」が高速大回転しておられるようにしか見えない訳です。

・・・・・ていうかですね、わざわざ言わずもがなの「物価・経済見通しやリスクが変化すれば、政策変更の理由になる」って言ってるのって実はこれが植田さんのハトハトチキンな本音がダダ漏れしたものであって、実際には見通し通り推移しているから短期政策金利上げますっていうのにビビっているんじゃなかろうか、とまあそんな邪推もしたくなるわけで、とにかくまあどうでも良いからお前は公式見解以外喋るなという事で金曜に向けて植田さんの余計な発言に不安しかありませんですわよ。


しかしまあ何ですな、こちらの記事によりますと

『植田総裁は先週19日、訪問先の米ワシントンで行った講演で、基調的に物価が上昇し続ければ金利を引き上げる「可能性が非常に高い」との考えを示した もっと見る 。米国での記者会見や講演での一連の発言について植田総裁は「特に新しいことを話したというより、先々週までの記者会見や国会で話してきた内容をもう一度丁寧に説明した」と述べた。』

確かにそんなに新しいことを言った訳でもなさそう、というのはまあそうなんでしょうけれども、どっからどう見ても当初言ってた事からトーンを軌道修正してるようにしか見えない訳でして、これ植田さん頭が無茶苦茶良いもんだから多分ワシのようなアホアホさんの挙動が読めないのだろうなとは思うのですが、丁寧に説明しようとしてドツボに嵌っている、というのがあるのと、さっきの「見通しが変化すれば云々」にありますように、たぶん根が正直者だから言葉の端々から本音がダダ漏れしてしまう、というのに問題がある訳ですわ。


・・・・・・という訳で金曜を迎えるということになる訳ですが、アタクシもさっぱりコンセンサスが分からんのですが、たぶん円債の人って会見での発言トーンがハトハト音頭の緩和節一辺倒ではなくなって、ちゃんと今後は利上げだって国債買入減額だってするんだよ見通し通りに推移すれば、位の発言が出てくればそれでまあ順当って評価だと思うのです。

ただ、為替市場のベンダーニュースで出て来るコメントとかを見てると、なんか他市場、特に為替市場様の方ではもっと威勢の良い発言を期待しているんジャマイカという気がするのですけれども(個人の印象です)どうなんでしょうかね、と思う訳ですよ。もしアタクシの妄想があっているとなると、いつものように植田さんが丁寧な説明の積りで微妙に本音ダダ漏れ系の発言を交えて両論併記をしちゃうと、それだけれ「やっぱり日銀はダビッシュだぜ円売りヒャッハー」となりそうな悪寒がだいぶするんですよね、たぶん足元の円安ってドル高のせいでもありますけど、やっぱり「日銀は財政従属状態で利上げが出来ないから通貨の信認は上がることはないし下がってウヒョーの可能性もあるで」という円の売り方に見えて仕方ない(だから昨今のドル円見てると気持ち悪いことこの上ない)ので、まあ植田さんがちゃんとそのハトハトチキンの本音(かどうか知らんけどアタクシにはそう見えてしまう)を封印して、きっちりと本来すべき話を行って頂きたいですが、まあ無理だろうなあと思って戦々恐々とするのでありました。


いやまあ円安ぶっ飛んでしまえば日銀の「通貨防衛利上げ」が近くなって来るからそれはそれで見たい気持ちはあるが、そんな時にはこちとら舶来品を買えない世界になりかねないので勘弁して頂きたいものであります。

しかしこの植田さんの円安放置の不手際、本来はアベノミクスの答え合わせが今まさに行われている訳なのですが、このままだと「待つことのリスクは大きくない」とか言いながら円安を助長した植田さんの不手際という事でアベノミクスのせいにならなくなってきそうなのがさらにムカツク所ではありますし、黒ちゃんったら為替のこのテイタラクが起きるリスクを勘案して私の履歴書を物凄い勢いで出したんだったら流石だわと思うのでありました。


あ、そうそう。それから最近植田さん「基調的な物価」っていうのをやたら連呼するようになったんですけど、基調的な物価ってなんですかそれ数字と計算方法出してくれませんかねえ・・・・・・・・・・


2024/04/23

さあもりあがってまいりました!!!!!!!
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-04-22/SCCRAIT0G1KW00
円が対ドルで下落、一時154円80銭台−約34年ぶり安値更新
Robert Fullem、Vassilis Karamanis
2024年4月23日 1:37 JST 更新日時 2024年4月23日 1:56 JST

『22日のニューヨーク外国為替市場で、円相場は一時1ドル=154円80銭台に下落。34年ぶりの円安・ドル高を再び更新した。』(上記URL先より、以下同様)

はいいんですけど、

『市場では、日本銀行が25−26日に開催する金融政策決定会合に向けて政策への関心が高まっている。終了後には経済・物価情勢の展望(展望リポート)が公表され、植田和男総裁が記者会見する。』

とのことですがさて・・・・・・・・・・・・


〇例の円安云々の会見録が出ていたのでクリップクリップ

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2024/kk240422a.pdf
植田総裁記者会見(4月18日)
――G20終了後の鈴木財務大臣兼内閣府特命担当大臣、植田総裁 共同記者会見における総裁発言

―― 於・ワシントンDC
2024年4月18日(木)
午後2時31分から約21分間(現地時間)

・例の円安云々発言

『【問】
植田総裁には、最近の為替の円安なんですが、輸入コストの上昇を通じて物価に上昇圧力を加えた場合に、既に高まりつつある「第二の力」、いわば賃金と物価の好循環、これと合わさると物価の上振れのリスクが高まる可能性があると思うんですが、この足元の円安の動きがそうした輸入コストの上昇を通じて物価にどう影響を及ぼし得るのか、またそうした動きが次の金利の調整のタイミングにどう影響するのかについて教えてください。』

なるほど引っ掛けでも何でもなくてちゃんと直球質問ですね。でもって回答。


『【答】
私からは、為替の円安方向の動きが輸入財の国内価格の上昇を通じて、おっしゃったように場合によっては「第二の力」とわれわれが呼ぶインフレーションの部分、あるいは基調的物価上昇率に影響を与えるという可能性は、それはあり得ると思います。』

ほうほう。

『そこについて無視できない大きさの影響が発生した場合は、場合によっては金融政策の変更もあり得るということだと思いますが、』

まあここですね反応したのは。でもこの部分ってこの後もありまして、

『現状その辺りをどのように評価しているか、例えば 1 月以降の円安の動きについて、来週になりますか、決定会合があって展望レポート、新しいものを発表しますので、その中で取り上げて数値的にもお示しするということになるかと思います。』

という回答をしていて、ええええええ足元の円安の影響加味するって名指しで言っちゃうのおおおおって感じですが、ここも何ちゅうかまあ微妙な表現だなと思うの。

というのはですね、展望レポートでは(当たり前なんですが)前提となる為替相場(だけじゃないですけど)には「前提条件が別に共有されていないので各委員の判断に任せる」という建付けになっていまして、その建付けをベースにした場合「展望レポートの中で取り上げてお示しする」ってえのは中々大胆不敵な説明になっているんですよね。植田さんどうもこういう時の説明が一々微妙でして、この説明だって「現状その辺りを〜」以下の説明全部不要で、あくまでも「データディペンデント」を前面に出して「今後出て来る経済物価金融情勢のデータを点検しながら判断していくことになります」とかフワッとした原則論だけ言ってりゃいいんですよ。なんでこう一々余計なサービスフレーズつけるのかねと言いたいんですけど、1年経過しても全然この傾向が治らないどころか最近更に悪化しているように見えるので、たぶんこれ本人は「上手に市場とコミュニケーションが取れている」っていう自信満々モードという大いなる勘違いをしているんジャマイカとしかもうしあげようがない。

でまあ現状の評価であれば別に円安だけじゃなくて、というかもっと大事な評価軸は賃金と物価の好循環とやらの筈なんで、こうやって円安と質問されてそのまま円安で返すのではなく、「為替市場だけではなく経済物価情勢を1月からのデータを点検して現状の評価を行いたい」とでも言えばいいのに、なんでわざわざヘッドラインになるような言い方をするんだか、って感じです。


・金利上昇を止めようとして為替をぶっ飛ばした訳ですねわかります

この質疑応答(ともう一つ)も味がありまして、

『【問】
今回マイナス金利を解除して初めての国際会議になるかと思うんですが、変更後の政策を説明されたのであれば、どのように説明されたのか、解除後の会見で普通の政策というふうにおっしゃっていましたが、その辺り伺えますでしょうか。また各国からどういう受け止めがあったかというのも伺えればと思います。』

ふむふむ。

『【答】
過去 2 日間ですかね、様々な機会をとらえて、場合によってはバイの面談というかたちでいろいろな首脳の方とお会いしました。その中で私どもの 3 月の政策変更についてもかなり関心をお持ちの方はいらっしゃったので、特別どこかに絞ってというわけではないですが、3 月の記者会見でご説明したような内容の話を私から何回か説明する機会がありました。基本的には皆さん、市場等に大きな混乱なく政策変更が消化されつつあるということにある種の満足感といいますか、安堵感を示されていたというのが私の受け取った感じです。』

「市場等に大きな混乱なく政策変更が消化されつつあるということにある種の満足感」ってのがまあキーワードというか何というかで、こんなの植田さんのイタコ芸であって、相手なんぞは別に何とかショックが起きなきゃどうでもよいという程度の認識だと思うのですが、とにかくこの「市場に混乱」というのを植田さん物凄い気にしてたので、何とかショックにならなくて良かったね、というのを受けてまあこういう話になるんでしょ、という所です。

でまあそうやって金利上昇警戒した結果が為替に出てしまう、という国際金融市場のトリレンマ状態に思いっきりなっておるわけなのですが、この期に及んで短期金利の0が0.5とかになって何の問題がありますねんというお話に対して、為替市場が植田さんのいる間に20円以上円安に飛んでいる訳でして、要は通貨を対ドルで2割近く減価させている、という方がどっからどう見ても問題になりませんかねえ、というお話なんですが、そこの物事の軽重についてどのようにお考えなのかというのは訳分らんですけど、まあ訳分らんと言っても植田さんそういう道を歩んでいるんですが覚悟のほどは大丈夫なのかよとはおもってしまいます。、


こちらの質疑のフォロー質問があって一個飛んだところからになりますが、

『【問】
植田総裁に伺いたいんですけれども、先ほど 3 月の政策変更について、他の国の方からの反応で、大きな混乱がなく政策変更がされたということで安堵感を示されていたというご説明があったと思うんですけれども、今後の金融政策の運営について何か期待感だったりですとか、意見だったりですとか、そういったのを聞かれる機会というのはありましたでしょうか。』

と来てからの、

『【答】
そうですね、例えば中銀総裁同士で、おまえの国はこうした方がいいんじゃないかということは普通おっしゃらないですので、今回もそういうのはなかったです。ただ、今後、仮に利上げをするとしたらどういうタイミングで、どういうデータをみてなのかとか、そういう種類の質問はいくつかあったと記憶しています。』

という回答なのですが、「仮に利上げをするとしたら」みたいな話をわざわざ言い出しているのは、まあこれは植田さんが利上げする気が満々というよりは、単に二人羽織の後ろの人(すなわち日銀大本営あるいは新館7階)が為替をけん制して下さいとお願いしているのか、まあそうじゃなくても円安を助長する情報発信をしないでくれとお願いしているのか、というようなものを勝手に感じ取ってしまいました。わざわざこんな「利上げするなら」とか言うの植田さんの今までのハトハトチキンジジイと整合性が取れないんですけど、まあ植田さん突然変なところで変な勇気がモリモリになってハトハトチキンじゃない「植田先生」に戻る時があるので二人羽織効果なのか急に勇気が出てきたのかは判断付かん。


まあ何ですな、上記の円安云々もまあ別にそりゃそうよという話ではある(基調物価が上がるならそれは2%達成の確度とやらが上がるという事になるでしょうから)ので、為替牽制で余計なハトハト発言をしないように気を付けている節はあるけど、ベンダーヘッドラインバイアスがちょっと掛かっている気もしますのでまあ真意は謎って感じですがどうせ金曜に答え合わせがありますんで。


2024/04/22

〇植田総裁が米国でご発言されておられるようですがスタンスを振り過ぎですいい加減にしてください

日銀のサイトにはさすがにまだのようですが(というか出るのかしらよくわからんですね)ベンダーバイアスがかかっているんじゃなかろうか、という事を念頭に置いてニュースをみてみようではあーりませんか。

まずはロイターさん
https://jp.reuters.com/opinion/forex-forum/SGNHL6KWKZI25I6KT4MP5ESUVY-2024-04-20/
利上げの可能性、物価上昇継続なら「非常に高い」=日銀総裁
By 木原麗花
2024年4月20日午前 10:44 GMT+9

ほうほうそうですかそうですか、ってかついこの前ロイターさんって「日銀は展望レポートの物価見通しが2%だからと言ってそれは利上げの理由になる訳ではない」とかいうハトハトバイアスの観測報道してたじゃんどうしたの急に、という話ですが。

『[ワシントン 19日 ロイター] - 日銀の植田和男総裁は19日、米ワシントンで講演し、基調的に物価が上昇し続ければ、金利を引き上げる「可能性が非常に高い」との考えを示した。』(上記URL先より、以下同様)

そりゃまあ確かに基調的な物価が上昇し続ければ利上げするわ、って話なので、

『植田総裁はピーターソン国際経済研究所のイベントで講演し、基調的なインフレ率は日銀が目標とする2%を下回っており、長期的なインフレ期待も1.5%近辺にとどまっているため、当面は緩和的金融政策を維持する必要があると述べた。』

という話なのですが、そもそも「基調的なインフレ率が2%を下回っており」というのは何をもって基調的なインフレというのか、というのが良く分からんですし、長期的なインフレ期待の1.5%ってなんですかというお話ですよね。

いやまあ確かに今の日本の物国BEIって10年カレント、と言いつつ発行の関係で足元では残存9年から1か月短いのですが、確かにカレント銘柄で150bp位なのですけど、まさかとは思いますが物国BEI使って長期インフレ期待を判断しているんですかというお話で、4半期の発行2500億円に対して4半期で1800億円購入されておられる日銀ちゃん(財務省バイバックが四半期で600な)が買入上げ下げしたら長期インフレ期待いじり放題じゃないですかヤダーと思いますし、あとはまあ物価見通しを無残なまでに外し続けているポンコツ何とかストの皆様から集計したESPフォーキャストとかいう集計が確かにずーっと弱いのですが、生活意識アンケートとか短観とかは丸無視なんですかそうですかいやーそういうのチェリーピッキングって言うんじゃなかったでしたっけとかまあそういういつものツッコミをする訳ですが。

でまあここで気になるのは、地の文章を読んでいないから実際にこう言ったのかどうかがわからないのですけれども、

「当面は緩和的金融政策を維持する必要がある」

って部分の意味なんですよね。

つまりですね、3月会合の声明文では「現時点での経済・物価見通しを前提にすれば、当面、緩和的な金融環境が継続すると考えている」となっているし、(基本的に邪道なんだが)声明文英語訳バージョンを見ると、「Given the current outlook for economic activity and prices, the Bank anticipates that accommodative financial conditions will be maintained for the time being.」となっていまして、「継続すると考えている」「the Bank anticipates〜will be maintained」であって、この書き方だと「緩和政策を徐々に縮小していく過程において当面(or the time being)は緩和的な状況が急に無くなる訳ではないですよ」って説明文章に読めてしまうんですよね。

一方で報道の「維持する必要がある」ですとこれは日銀が物価目標達成のために能動的に大規模緩和を継続します、って言っている訳でして、3月声明文のニュアンスと違くないですか?????というお話でありまして、まあ要するにここの定義ちゃんとしやがれコノヤローって話な訳ですよ。


とまあこっちはアレですけどその後が、

『3月の金融政策決定会合で非伝統的な金融緩和策を打ち切ったことから日銀の政策は柔軟化しており、今後のデータ次第では短期金利目標を変更する可能性があるとした。』

となっているのも謎で、さっきは「維持する必要がある」っていってるのに何で「柔軟化していて短期目標を変更する可能性がある」になるのかが訳分らんのですよ。

いやまあどうせ利上げしたって「短期金利水準は経済物価情勢に対して十分緩和的(それはそうだわ)」と言い張るんでしょうけれども、だったらそもそも緩和的金融政策を”維持する必要”がある、というのが誤解を招くだろということで、どっちですねん植田さんというお話な訳です。

でもって記事全部引用になって申し訳ないのですが、

『「われわれは慎重に政策を進め、最近の政策変更が経済と物価に及ぼす影響を評価し、適切と判断すればさらなる調整を検討する必要がある」と述べた。国債買い入れの減額にも言及したが、時期と規模はまだ決定していないと述べた。』

だそうなんですけど、ベンダーバイアス掛かっているとは言え、ここに来てまた急に政策修正の可能性あるで、の方に話振るのは何なんですのという所ですね。


という事で確認のためにブルームバーグさんも。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-04-20/SC7O5NT0AFB400
緩和的な金融環境は当面継続、国債買い入れはいずれ減額へ−日銀総裁
野原良明
2024年4月20日 9:03 JST

→国債市場への介入を完全にやめるのは「危険」と3月会合で判断
→将来のどこかの時点で国債買い入れ額を減らす−ワシントンで講演

・・・・こちらは「緩和的な金融環境は当面継続」をメインにしていますね。

『日本銀行の植田和男総裁は19日、日銀による国債買い入れは継続されると指摘し、緩和的な金融環境が当面続くとの見通しをあらためて示した。』(上記URL先より、以下同様)

これ「緩和的な環境が続く」なのか「緩和政策が必要」なのかだと話の意味合いがだいぶ変わって来るんですが、まあ積極的にあいまいにしているんじゃないかなあとは思うのですが、あいまいにしないでほしいとアタクシは
思うのでありました。

『植田総裁はワシントンのピーターソン国際経済研究所で講演。日銀は将来のどこかの時点で国債買い入れ額を減らすと述べながらも、3月の金融政策決定会合では国債市場への介入を完全にやめるのは「危険」と判断したと説明した。』

完全に止める、ってまた何を言ってるんだこの人はという感じでして、そりゃいきなり輪番ゼロにしたらこっちは楽しいけど(ただの自己都合)そんなの現実的に無理だろお前は急に何を言い出すんだ。


でまあちょっと飛ばして先に行きますと、

『植田総裁は、日銀が慎重に政策を進めるとしながらも、基調的な物価トレンドが改善すれば、さらに金利を引き上げる公算が大きいと指摘した。』

なるほどブルームバーグもこのように説明と。

『植田総裁は、3月会合で政策修正を決めた背景について、30年ぶりの力強い賃上げが日銀政策の修正に十分となる物価目標達成の確率を高めることに寄与したと説明した。』

『同総裁は今月初めの一部メディアとのインタビューで、物価トレンドが改善する公算が大きいことを挙げ、今年後半の追加利上げの可能性を示唆した。最近の円安加速が利上げの時期を早める可能性もあると、複数のエコノミストが指摘している。』

ということで、まあそこまで大した話をしているようでもないのですが、そうは言いましても3月会合前の辺りと3月会合結果を受けた会見におけるハトハト音頭からはだいぶ普通というか本来はそうだろ、というトーンになっている訳でして、そもそも論としてマイナス金利とYCC解除したのって情勢が好転したから(副作用対応ではない、というのも重要な隠れたポイントね)なのであるからして、それは情勢の好転が続けば当然緩和の縮小に向かう、というのをちゃんと説明するというスタンスに戻した、というのが朝日新聞インタビュー辺りからの動き、ということになろうかと思います。

まあそうは言いましても円安に隙あらば振れてしまうのは「日銀は財政を気にして本来行うべき緩和修正が出来ない」と思われだしている、即ち悪性の通貨安連想が段々定着しているんじゃないですかねえ(しかも月初の輪番減額せずが拍車掛けましたわな)となっていて、どうせ植田総裁が今言ってるのは為替牽制の為で実際には何も出来ないでしょ、と見透かされているんだとするヤバいっすねえ。



・・・・・・でまあそれはそれとして、いずれにしても植田総裁の発言というかスタンスが振れ過ぎですよね、というここもと隙あらば悪態ついていますが、まあそこに帰着するのですな。

恐らくマイナス金利解除にセットでYCCとかリスク性資産買入停止とか変な貸出支援基金の是正とかをするために、背景の理屈について曖昧にいうか妥協の産物みたいにしてて、その結果「緩和的な金融環境」の部分もそうですし、長期国債買入の位置づけや建付けについてもそうですし、どういう風にしたら良いのか問題を有耶無耶にして特攻したんだと思うので、4月会合でもう少しこの辺を明確化して欲しい、というのが最近何度も書いておりますがそこに帰着するのでありました。いやこの調子で発言フラフラしてるのヤバいですって。