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その他の日銀関係者発言

こちらでは、審議委員以外の方で日銀に何らかの関連のある方の発言・講演などのチェックを行っております。

渡辺努東京大学教授(もと日銀)
2016/01/27「日銀は賃金目標を導入すべき」ってどうやったら金融政策で賃金上がるんだよ


浜田宏一イェール大学名誉教授
2016/01/27「2%早期達成はすっかりはしごを外してああでもないこうでもないと屁理屈を」
2016/01/18「2%達成にはこだわるなとか追加緩和不要とか梯子外しまくりフリーダム発言」
2015/12/09「物価目標よりも雇用目標とかすっかり話がイカサマ化しております」


岩田一政日本経済研究センター理事長(副総裁退任後)
2014/09/24「2%は中長期で目指すべきとな」

梅森徹名古屋支店長(2014年7月時点)
2014/07/08「更なる円安が不要と名古屋支店長が発言する意味は・・・・」

衛藤公洋金融機構局長(2014年5月時点)
2014/05/29「金融不均衡の質問に対しては問題なしの答え」


須田美也子キヤノングローバル研究所特別顧問(審議委員退任後)
2014/04/22「これは学者審議委員2名をケチョンケチョンにしていますな」


外山晴之国際局長(2013年10月時点)
2013/10/25「FOMC関連の講演で論点整理」

早川英男前理事
2014/10/16「さらにケチョンケチョンインタビューキタコレ」
2013/10/18「いい感じでケチョンケチョンモードのインタビューが有りました」


水野温氏クレディスイス証券アジア地区副会長(審議委員退任後)
2015/06/16「東洋経済インタビューでQQEの枠組み変更を提唱」
2013/10/04「水野元審議委員インタビューより」


雨宮正佳理事
2013/03/19「雨宮理事が1年で企画担当に復活とな」


河野龍太郎BNPパリバ証券チーフエコノミスト(審議委員にノミネートされたものの国会で否決)
2012/04/09「引き続き審議委員人事雑談」
2012/04/04「自民党は民主党よりも無茶苦茶な理由で審議委員反対決定」
2012/04/02「自民党も河野龍太郎さんの審議委員就任に反対方向へ」
2012/03/26「次期審議委員候補にBPパリバの河野龍太郎さん/日経謎のチョンボ?報道で1名候補者消える」

堀井理事
2008/10/27「国際金融不安の暫定的インプリケーション」


渡辺博史前財務官
2008/06/06「世界的インフレを懸念するインタビューおよび雑感」


池尾和人慶応義塾大学教授(審議委員にノミネートされたものの国会で否決)
2008/06/04「国会での所信聴取より」


門間一夫調査統計局長
2008/05/28「日経主催の景気討論会にて下振れリスクを強調」


翁邦雄元金融研究所所長
2008/04/25「白川日銀の政策スタンスを解説したロイターインタビュー」


白川理事(企画担当理事時代)
2004/02/03「国債市場と日本銀行」


山口泰前副総裁
2005/04/19「日本証券アナリスト協会に於ける講演と関連エントリ」
2004/08/12「インタビュー続き:いわゆる2段階解除論に関して(構成の都合上、福井総裁の記者会見部分も引用します)」
2004/08/10「時事通信インタビュー続き」
2004/08/05「時事通信との単独インタビュー」


中原伸之前審議委員
2015/10/20「追加緩和は不要といきなり梯子外し攻撃」
2014/04/16「遂に米国が5年QE実施したから日本も5年QQEを実施とかちょっと大丈夫かという発言が」
2014/01/20「去年言ったことはすっかり忘れて300兆円MB可能とか言ってるようですがボ○でも来ましたかねえ」
2013/04/08「異次元緩和を「やり過ぎ」と批判する中原伸之さんの見識はさすがです」
2005/10/11「中原前審議委員、今の日銀は5年前に似ていると指摘」
2005/05/20「これはウケた!日銀政策変更の「中原三原則」」
2004/11/09「中原伸之前審議委員の講演」

2016/01/27

・渡辺先生ェ・・・・・・・・・・・・

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O1I4826JTSED01.html
黒田日銀は賃金目標にくら替えを、「天と地ほど違う」−渡辺東大院教授
2016/01/26 15:42 JST

「賃金上げを目指します!」というのはそらまあ世間受けは良いと思うのですが、中央銀行がどうやって賃金を上げるのかという具体的手段が無い(物価との相関性があるからという話だがそもそも現在の置物リフレ政策という極端な政策でも原油安一発で撃沈しているという状況(個人的にはどこかで突如爆発して誰得物価上昇になるのではないかとは思うのですけど)なのに、そこから賃金にどう波及させられるのかと言う事で、ちと話に無理が無いですかねえと。

まあ出すならフォワードガイダンスとして出すとか、物価安定目標達成時の経済の姿として賃金もこのくらい上がっているというような話を出すとかいう事であって、賃金「目標」というのはお話としては面白い(正直これは飲み会での与太話では良く出る)のですが、大真面目に出すとなると統制経済キターという話になりませんかね。

物価目標達成の目安に賃金上昇みたいな所得の上昇も確認、というのなら良いですが、それって結局「総合判断」の範疇に入るので最早何が何だか。

2016/01/27

浜田宏一イェール大学名誉教授「2%早期達成はすっかりはしごを外してああでもないこうでもないと屁理屈を」

・浜田先生ェ・・・・・・・・・・・

http://toyokeizai.net/articles/-/101990
浜田宏一氏「金融緩和を止めてはならない」
止めてしまえば元の木阿弥になってしまう
2016年01月26日

えーっとですな、金融緩和をいきなり止めろとは多分誰も言ってなくて、今の爆発的な勢いの国債買入MB拡大やっていても追加の買入で得られる効果よりも副作用の方が大きいし、物理的にも長期間に渡って継続できる政策じゃないから、もうちょっと見直して中長期的に継続できる穏当なレベルの緩和政策に切り替えて、物価目標の達成のタイムホライズンももう少し長くして、その間にトレンドグロースを上げる政策を実施していけばという話をしていると思うのですが・・・・・・・・・・・・・・

と思ったら、

『だが金融緩和によってこれ以上需要だけを増やそうとしても、日本経済をさらによくするのは難しい。また欧州危機や「チャイナショック」などもあり、金融緩和をしてもアベノミクスの初期のように劇的な成果を上げるのは難しくなっている。今は日本経済の構造改革を進め、供給力を増やすように持っていくことが大事だ。』(上記URL先より)

ということで何だ中長期的に取り組もうという話だから木内さんみたいな話じゃんと思うのですが・・・・・・・

上記インタビュー記事の2ページ目
http://toyokeizai.net/articles/-/101990?page=2

『私がこうして構造改革の話をすると、かねてから金融緩和を重視した経済政策に異論を唱えている人々は「浜田教授はだいぶ大人になってきたようだ」と喜び、一方で金融緩和論者は「弱気になったのか」と怒り出す人もいるようだ。』(上記URL先より、以下同様)

元々は物価目標達成したらこういう構造問題も解決する的なご説明だったような気がするのですが。

『だが、私が言いたいのは、「金融緩和はこれからも必要」ということだ。もし、今金融緩和をやめてしまったら、日本経済は再び需要不足に陥り、失業が増えてしまう。これでは日銀がせっかく緩和をしたにもかかわらず、途中でやめてしまった時代に逆戻り。元の木阿弥になってしまう。』

えーっとですから別に金融緩和を「止めろ」とか言ってる人は余程極端な話をする人以外ではいないと思う訳で、今の政策を継続するよりも枠組みを考え直したらという話をしているのですけれども・・・・・・・・・・

『現在は残念だが、まだ労働者の賃金が上昇しているとは言えない状態だ。これは本当に労働力がひっ迫していないか、あるいは正規労働者と非正規労働者の二重構造問題などが考えられる。だから積極的に賃金を上げ、生産性の低い企業に退出を促すのが官邸の考え方。私は、賃金を先にあげてしまうと企業のコスト増となりかねないため、一時的に実質賃金が下がっても先に物価を上げて企業の有利にしておくほうが雇用が継続し、需要も増えると考えるが、そこはいろいろな意見がある。』

円安コストプッシュで物価を上げて実質賃金下がると労賃のところでは実質費用下がるかもしれないけど、コスト要因での物価上昇がトータルで企業に本当に有利なのかは微妙な気がしますがそれはさておき。

『日銀が買う国債が不足する「札割れ」の状況などは技術的な問題で、日銀が打つ手がないわけではなく、いろいろな手段がある。たとえば外債を買ってもいい。』

ここからの金融緩和で日本経済をさらに良くするのは難しいのでしたら緩和の手段云々をそんなに気にする必要は無いような気がするのですが・・・・・・・・・・・・・

http://toyokeizai.net/articles/-/101990?page=3

『もちろん、「外債購入は為替操作などにあたる」といった指摘もあり、国際金融畑でならした黒田総裁がそうした政策に踏み切るかどうかはわからない。また、各市場の厚みの問題などもあり、どんな市場で働きかけても、副作用が増えることは覚悟しなければならないのも事実だ。』(上記URL先より)

・・・・・・・・・・・打つ手がない訳ではないとのことですが具体策が結局提示されていないのに打つ手がないと言われましてもいやあのそれは困るのですけれども。

とまあさらっと拝読しましたが、2%物価目標の早期達成は容易で、物価目標を達成したらいろいろな問題も一気に解決に向かうという話はすっかりフェードアウトしておられまして、「2年を念頭にできるだけ早期に2%達成」とやっているのが日銀ばかりなりという状況になってすっかり梯子を外された状態になっているというのは把握しましたが、その梯子外された日銀によってすっかり焼け野原になっている債券市場の片隅で棲息している不肖このアタクシとしては落涙せざるを得ませんな。


とまあ雑談でした。




2016/01/18

○浜田先生がまたも梯子を外しているようで

何ちゅうかもうインタビューするのもねえと思いながらもこうやってネタにして注目記事扱いにすると結局注目記事欲しさのベンダーがインタビューを敢行するという誰得連鎖が回るのでしたorzorz

http://jp.reuters.com/article/hamada-interview-idJPKCN0UT0Z2?sp=true
Business | 2016年 01月 15日 19:26 JST
インタビュー:雇用は良好、1月の日銀追加緩和は不要=浜田参与

『[東京 15日 ロイター] - 安倍晋三首相の経済ブレーンで内閣官房参与を務める浜田宏一・米イエール大名誉教授は15日、ロイターとのインタビューに応じ、中国経済の先行き懸念などを背景に金融市場が不安定化しているが、今月28、29日に日銀が開く金融政策決定会合での追加緩和は必要ないとの認識を示した。雇用環境が引き続き良好なことなどを理由に挙げた。』(上記URL先より、以下同様)

ということで追加緩和は不要らしいですなあ(棒読み)。

『原油価格の下落が続く中、消費者物価(生鮮食品除く、コアCPI)見通しの下方修正や、2016年度後半と見込んでいる物価2%の到達がさらに後ずれする可能性が高まっている。浜田氏は、原油輸入国である日本にとって、原油安は「グッドニュース」と指摘。日銀が物価目標を設定した当時は「大幅な原油安はまったく予想できなかった。原油の影響を含んだ2%のインフレ目標を達成することは、理にかなっていないのではないか」と述べ、日銀が試算している生鮮食品とエネルギーを除いた消費者物価(日銀版コアコアCPI)が2%に向かっている限り「(コアCPIによる)2%の達成にこだわる必要はない」と強調した。』

ということですが、そもそも除く生鮮エネルギーがここから先2%に向けて上がっていくのかという話の方が怪しい気がするのですが、いずれにせよ黒田日銀の方では「早期に達成」という話をしている訳でして、一方で政治サイドの方が物価目標2%の達成時期とかに対して随分と曖昧になってきたという感じ(ちなみにこの記事小見出しの方では『<原油安はグッドニュース、2%達成時期こだわる必要ない>』とあって、記事内を見ると達成「時期」というよりはコアCPIでなくても何らかの形で2%に向かっていれば良い的な話になっているので、どっちが正確なのか良く分からん)でございますな。

まー冷静に考えればインフレターゲットの枠組みの中で中長期の物価見通しが2%近辺でアンカーされている(ということになっている)他の主要国では暫くデフレという環境にはなっていないですが、その一方で物価が上がっていても経済循環の中で経済が下向きになる(まあ最近の場合は経済循環だけではなくてバブル崩壊の後始末もありますが)のは普通に存在する訳で、日本の場合リフレ派の諸先生方が「デフレ脱却してインフレにすれば全て問題解決」的な宣伝を盛大に行ったことのツケがそろそろ回って来ましたよねという所なので、そういう文脈からしますとあまり物価目標の所をギチギチ詰めていかない方が利口というのはその通りなのですが、しかしリフレ政策導入させる前に散々宣伝していた話はどこに逝ったのかと小一時間問い詰めたい所ではあります。

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2015/12/09

浜田先生ェ・・・・・・・・・
http://jp.reuters.com/article/hamako-intaerview-idJPKBN0TR0V620151208
Business | 2015年 12月 8日 19:00 JST
インタビュー:米利上げで円安なら日銀追加緩和は必要ない=浜田氏

『一方、日銀が目標に掲げている消費者物価(総合)の前年比上昇率2%は、見通しの目安としている生鮮食品を除いたコアCPIで足元ゼロ%程度。インフレ率は低迷した状況にあるが、原油安を受けたエネルギー価格の下落が原因とし、総合やコアの2%に「こだわる必要はない」とした。』

『中国の実体経済がさらに悪化した場合、「すべてを財政・金融でオフセットし、日本の完全雇用を保つのは難しい」としたが、「労働市場が悪くなる時は、日銀が追加緩和をしなければならない」と語った。』(以上上記URL先より)

インフレターゲットではなくて雇用ターゲットになったのですか。

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2015/10/20

○中原伸之さんまで梯子を外しに来るとは・・・・・・・・・・・

ほほう。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NWB5S16S972D01.html
「追加緩和は必要ない」、昨年は増税後押しが隠れた理由−中原伸之氏
2015/10/19 10:34 JST

『(ブルームバーグ):元日本銀行審議委員の中原伸之氏は、昨年10月の追加緩和は黒田東彦総裁が消費税の10%への引き上げを計画通りやるべきだというシグナルだったが、今は送るべきシグナルはないと述べ、30日の金融政策決定会合は現状維持で十分だとの考えを示した。』(上記URL先より、以下同様)

ほほう。

『中原氏は16日、ブルームバーグのインタビューで、「世界中が低気圧に覆われている。価格低下圧力がものすごく消耗戦が起こっている。世界的にこの10年間、実質賃金がずっと下がっている」と指摘。価格競争は今後ますます激化し、「イノベーションをやってもすぐに技術を盗まれる。これが世界の天気図だ。これはしばらく続く」と述べた。2%の物価目標を掲げる日銀はこうした天気図の変化に伴い「別のことを考えなくてはならない」と語った。』

何ちゅうか色々とツッコミどころがありまして、そもそも価格低下圧力があるのに「実質賃金」がずっと下がるとはどういう事なのか良く分からんというのもあるのですが、もっとアレなのは「世界中が低気圧に覆われている」という話が「世界的にこの10年間」起きていて、その結果として「こうした天気図の変化に伴い別の事を考えなくてはならない」というのなら元々「2年半前」に打ち込んだ2%物価目標が実際にやるべきことと整合性が取れていなかったという話になるのですが・・・・・・・・・・・

でまあそれは兎も角として、ついに中原伸之さんまで「2%物価目標」について梯子を外しに掛かるというか、置物リフレ理論から続々と沈没船からの逃走が始まるとは実に感慨深いものがあります。

『30日の金融政策決定会合については「日銀の金融政策は現状維持で十分だ。今の天気図がどのようになるか、もう少し様子を見なければならない。』

ここ10年間続いている話が1か月や2か月で変わるものなのですかねえ。

『私はもともとマネタリーベースを600兆円まで拡大していいと言って来たが、今はやる必要はない。為替が落ち着いているので、特にやる必要はない」という。』

ここで昨年9月の中原さんの主張を確認してみましょう。
http://jp.reuters.com/article/2014/09/17/ex-boj-nakahara-idJPKBN0HC0PB20140917
Business | 2014年 09月 17日 18:19 JST
株価上昇には金融緩和、500兆円目指せ=中原・元日銀審議委員

なんか数字が違うような気がするのですが、まあそもそもそのMBどうやって達成するのかという話でして、具体的な施策を伴わないでMB倍増とか言われましてもそれは政策論としてあり得ないのですけど、まあ今回のインタビューのあとの方でも「為替」の話がありまして、よーは為替が円高に振れたら対策やれやという話なのは趣旨として分かりました。

でまあ一方で以前のように円安に振れ的な話って本当に出てこなくなりましたねえという事で、ちょっと為替が円高に振れると追加緩和ガーという話が出てくるのですが、為替が落ち着いて株価がサガランチ会長となって来るとややその辺の話が落ち着いてくる、という辺りに見事なクレクレの香りを感じますが、まあ騙し討ち緩和して円安に振る必然性が無い以上は騙し討ち緩和をすることも無いのではと思いますし、「円高に振れたら緩和登場」的な認識を強く持たせておけば為替に黒田プットが働く的なことになるので、逆に追加緩和カードを切らなくても済むような気がしますから、まあ今の状況で引っ張れるだけ引っ張るということになるんじゃないでしょうかねえ、よー知らんけど。

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2015/06/16

○東洋経済オンラインで水野元審議委員のインタビュー記事とな(メモ)

こんなんありました。
http://toyokeizai.net/articles/-/73232
FRBの利上げ実施後、日銀は枠組みの修正を
水野温氏・元日本銀行審議委員に聞く
2015年06月15日

でまあ4ページありますが、FRBの利上げについて9月で想定しているようですので、つまりこれは次回の展望レポート(10月)に枠組み見直せということで、上記URL先記事の3ページ目にこんな説明が。

3ページ目はこちらです。
http://toyokeizai.net/articles/-/73232?page=3

『日銀は次の「展望レポート」を出す今年10月30日から来年の春までの期間に、うまく、次の金融政策の枠組みに移る準備ができればいいと思う。10月には、日銀が今主張している「消費者物価上昇率が16年度前半頃に2%程度に達する」ということは困難なことが明らかになり、また、FRBが9月に利上げできたかどうかも結果が出ている。FRBが利上げして、一時的にドル高円安が止まっても、景気がしっかりして、再びドル高円安基調になるということが確認できれば、日銀の金融政策運営にも自由度が増すことになる。』(東洋経済上記インタビュー3ページ目(直上のURL先)より)

まあ何ですな、そういう感じでいければ色々と日銀もやりやすいのではとは思うのですが、何せ「本年度後半から物価上昇が加速する」という説明をしているだけに、10月末だと「いよいよこれからです(キリッ)」で誤魔化すことが可能というのがナムナムな所で、その間に輪番が爆発するとか炸裂してしまえば別なのでしょうけれども、今の執行部のスタンスだと「焼け野原になってポツダム宣言受諾まで戦闘継続」という感じにしか見えませんので、そう簡単にソフトランディングできるのかどうか・・・・・・・ってハードクラッシュされると国全体が巻き込まれる可能性があるので勘弁してほしいのですがががががが。

なお、そのページの『いまさらピーターパン? すでに検証すべき時期』以下の部分は当然のコメントながらウケましたのでご覧あれということで。

内容に関して詳しくは上記URLを見てちょという所ですが、ドラギ総裁のコミュニケーション(2ページ目にあります)に関する評価については直近は市場を突き放すような説明になって、市場を甘やかさない結果として実は無用なボラを与えないので結構という趣旨は分かるのですが、その前のサービス過剰およびグランドデザインのない金融政策(QEやらない代わりにマイナス金利にしたのにマイナス金利のままAPP実施するとか)設計の方で盛大に迷惑を掛けているのでどうも評価する気分になれませんですなという所で。

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2014/10/16

○早川前理事インタビューとな

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NDFCC66S972U01.html
日銀はメンツ捨て「勝ち逃げ」、年内に緩和縮小表明を−早川氏
更新日時: 2014/10/15 11:21 JST

えーっと早川さん口が悪すぎますもうちょっと言い方何とかして下さい(笑)という所ですが・・・・・・・

『早川氏は「確かに、長い目で見れば物価は1%より2%の方がいいし、日銀のメンツもあるが、それを別にすれば、2%を目指すにしても短期間で達成するメリットはあまりない。雇用が増えるわけではないし、成長率が上がるわけでもない」という。』(上記URLより、以下同様)

なお実際は上記記事は結構長いので部分部分を引用しておりますので本チャンの鑑賞は上記URL先を。

『「今はルーレットで勝ってはいるが、掛け金をどんどんつぎ込んでいる状態に近いので、最後に負けたら全てがパーになる。勝っているうちに掛け金を減らし、最後は勝ち逃げするのがルーレットの技だ。太平洋戦争もパールハーバーで止めとけばよかったのに、ミッドウェーでぼろ負けした後もズルズル続けたのであんなことになった」と語る。』

いやあの早川さん市井のインチキおじさんじゃないんですからその譬えはちょっと・・・・・・・・・(^^;

今年の4月辺りの(実は消費税駆け込みと各種税制の駆け込みとXPパソコンの駆け込みで盛大にかさ上げされていた)需要の強さと消費税増税しても割と強いじゃんという辺りがまさに一番の万歳三唱状態だったように見えまして、ちょうどサッカー日本代表の辺りから体感的には消費とかがおかしくなりだしたように見えますのでもしかしたら・・・・・・・・・・・

『早川氏は「もともと量的・質的緩和で本質的なのは2%という目標であって、2年という期限や7兆円という長期国債の買い入れ額は、ある種、皆をびっくりさせるために大きく相場を張って見せたわけであって、本質的なものではない。これらは飾りに過ぎない」という。』

『その上で、「日銀はデフレとの戦いに勝ったと宣言し、2%はいずれ達成するが、しゃにむに達成することはない。2年というのは行きがかりで言ってしまったが、そこは『御免、まあ、いいじゃないか』と言えばいい。そして、どこかのタイミングでテーパリング、つまり資産買い入れ額の縮小を始めればよい」と語る。』

ただ今の執行部方面からの情報発信はどこからどうみても全ツッパリ状態で、その方向転換は自分からは絶対に出来ないと思います。

『そのタイミングについては「景気弱気論が強くCPIも上昇率が下がっている状況なので、まだ勝負のしどころではない。私の読みが正しければ、年末くらいには景気はまあ大丈夫だったねとなってくるので、そこで堂々と勝利宣言すればよい。マネタリーベース残高を決めてあるのも今年末までなので、年末に打ち出すのがちょうど良い」という。』

年末に戻っている事を希望致します。で最後の落ちに吹いた。

『早川氏は「これ以上やっても損だけ大きくなるという時に大事なことは、メンツにこだわらないことだ。メンツを気にすると負ける。かつての日本もそうだった。『デフレは脱却した。2%に向けて着実に進んでいる。したがって無理はしない』とやれれば、黒田総裁は大役者だ。日銀ボードメンバーの1人を除けば乗れない話ではない」という。』

>日銀ボードメンバーの1人を除けば
>日銀ボードメンバーの1人を除けば
>日銀ボードメンバーの1人を除けば

どう見ても師匠です本当にありがとうございました。

・・・・・・・・なお、メンツ云々に関してはオマエモナーというツッコミの気持ちは無いわけでは無い点については念の為申し添えます。

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2014/09/24

○まあどうでも良いですが岩田一政さんの記事

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NC7BVM6JTSE801.html
岩田元日銀副総裁:円安は「自国窮乏化」−08年と類似
更新日時: 2014/09/22 11:55 JST

まあブルームバーグはこの記事を流す時にヘッドラインに「岩田氏」とか「IWATA」だけで流すのは誤解を招くので(師匠が言う話ではないのだが遂に師匠が以下自主規制かと思ってしまうので心臓に良くない)もうちょっと考えて名前をちゃんと入れて欲しいものです。

『9月22日(ブルームバーグ):元日本銀行副総裁の岩田一政日本経済研究センター理事長は、今の円安は行き過ぎとの見方を示した上で、現在の情勢は、円安が「自国窮乏化」につながり、景気後退に至った2008年前半に似ていると警鐘を鳴らした。』(上記URLより、以下同様)

はあそうですかという所でして、ところでおじちゃん2008年3月まで日銀副総裁やってらしてませんでしたっけとか思うのですが、一応過去のアタクシの駄文を見ると交易条件の悪化に関しては何度か指摘をしていて、物価はめでたく上がっているものの、だからそれでウッシッシという訳にも逝かないみたいな説明をしているのはしているんだが、そうだったら量的緩和政策の解除の後にもっと利上げしておけば良かったんじゃないですかねえと思うのでして・・・・・・・・・・・・

『岩田氏は「円安が進み、エネルギー価格も上昇ないし高止まりすると、交易条件は大幅に悪化する。企業の仕入れ価格は大きく上がるが販売価格はあまり上がらず、利潤が圧縮され賃金も抑制される」と指摘。その上で「実質所得の国外流出が輸出や生産、所得の増加といった効果を上回ると、経済全体として消費者の効用の水準は低下する」という。』

2008年2月の講演で2007年の成長下振れの要因として交易条件の悪化と実質賃金の低下と米国サブプライム問題を挙げていますが、特に交易条件の悪化と実質賃金の低下に関して結構しつこく説明していたという事案があることは確認しました。

『岩田氏は「相対的に拡張的な金融政策と原油高騰の組み合わせで、08年前半は言ってみれば自国窮乏化の状態にあった。交易条件の悪化は、消費者からすれば産油国から増税されるのと同じだ。しかも、今年8月の景気動向指数の結果次第で、テクニカルな意味で景気後退と認定される可能性がある点も、08年前半との類似点の1つだ」という。その上で、「今は幸い、地政学リスクがあるにもかかわらず、原油価格は落ち着いているので多少は救いだが、水準としては高いので、自国窮乏化のリスクが徐々に表れている」という。』

原発問題はサラッと触れないのが大人の対応という奴ですねわかりますという所ですが、確かにまあ米国のサブプライム問題があったから中々利上げという話にはなりにくい状況であったのは判るのですが、もし円安もあって交易条件が悪化して景気後退につながったというのであれば、実は当時の適切な金融政策はもうちょっと緩和度合いを下げなければいけませんでしたという話にはならんのかなあと、そっちの考察をして頂きたいものではあります。ただどう見てもそういう状況下での緩和縮小って非常に難しいんでしょうけれども(為替の事をそんなに盛大にキニシナイで済む米国は除く)・・・・・・・・

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2014/07/08

○更なる円安が不要とな

でまあ支店長会議関連その2

http://jp.reuters.com/article/idJPL4N0PI2EY20140707
再送-UPDATE 1-さらなる円安望む声聞かれない、現状心地よい=日銀名古屋支店長
2014年 07月 7日 19:03 JST

『[東京 7日 ロイター] - 日銀の梅森徹・名古屋支店長は7日、本店で開かれた支店長会議後の会見で、現行の為替水準に対する東海地方の企業の受け止めについて、業種ごとに異なるとしつつも「現状程度が原料・製品それぞれに心地よい」とし、「さらなる円安を望む声は聞かれない」と述べた。』

これはほほうという感じで、為替円安で物価上昇ヒャッハーというのはこれ以上行くと単なるコストプッシュにしかならないという事ですねわかりますなのですが、それはそれとして円安に行って輸出が伸びて経済がウハウハですよという話もどこへやら、という事も示しているんですなあという話だと思います。

つーて現地生産が拡大しているから円安関係ないと言えるかと申しますと、海外収益の円建換算という意味で円安になった方がトップラインの数字的にはウマーであったりするので、まあ輸出企業様におかれましてもそのトップラインの数字ウマーよりも原材料費の上昇の方が痛いという状態になっているんでしょうなあ等と思ったのですがどうでしょうかね。

なお、梅森さんの発言の後ドル円が101円台に突っ込んだようにも見えますが、同時にユーロも対ドルで上昇していましたので、梅森さんの発言で反応したというよりは単にドルが下がっただけではないかと思われます、よーわからんけど。

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2014/05/29

○衛藤金融機構局長のインタビュー記事である

http://jp.reuters.com/article/idJPKBN0E72OF20140528?sp=true
インタビュー:金融不均衡みられず、銀行は収益力強化を=日銀機構局長
2014年 05月 28日 11:53 JST

『──QQE導入から1年経過し、金融面で過熱リスクなどの兆候はないか。』

『「現状、日本の金融システムに大きな歪みや不均衡があるとはみていない。株価や地価はひところより上昇しているが、予想や期待が経済実態から大きくかけ離れて強気化しているとは見ていない」』(上記UR先Lより以下同様)

まあFSRの方で色々と書いてありますがそういう認識となっています。何か最近PCCW丸の内ビルの売却だの8801さんの株券印刷祭りだの微妙なフラグ臭も漂いますがさすがにまだだろという気も。

『──ポートフォリオ・リバランス効果について、目立った変化が出ていないとの見方がある。』

『「デフレが15年続き、いろいろな経済主体の行動にも染みつき、金融機関のバランスシートにも根深くその影響が蓄積されてきている部分がある。量的・質的金融緩和の導入以降、デフレを前提としたポートフォリオ戦略を見直そうという金融機関が増えてきており、円債への投資ははっきり減少に転じた」』

それは多分日銀のオペに金融機関が対応しているからではないかと存じますが(^^)。

『「代わりに金融機関は、貸し出しを通じたリスクと有価証券投資を通じた市場リスクをとろうとしている」「目立った変化に乏しいというのは、国内貸出の伸びが2%台であるとか、機関投資家や家計部門など金融機関以外の資産構成の変化がそれほど大きくないことに注目したものだと思う」』

ほほう。

『「しかし、金融機関はポートフォリオ戦略を見直そうと動いており、そのことが経済や企業活動の活発化に貢献し始めている。こうした動きが続けばリバランスももっと広がりが出ると思う」』

ということですがつまりお前らポートフォリオ戦略を見直せという事ですねわかります(なおそういう意図はありませんよ誤解しないでくださいねと、というのが正しい答えになりますので念の為申し添えます^^)。

『──QQEの出口が意識される局面になれば、金融機関の国債売却で金利が急上昇する懸念はないか。』

『「金融機関は、すでに物価や金融政策の先行きを予想しながら、金利リスクの調整を進めている。確かに参加者による一律のリスク削減が相場を増幅してしまうメカニズムを市場は持っている。金融機関は過去のVaRショックなどの経験も踏まえ、自らリスク管理をやっていくことが求められる」 』

つまりお前ら以下同文ということですが、もちろんこれは一般論としての話であって足元の金融政策運営に関して何らメッセージを発している訳ではないですよというのが正しい答えになりますので更に念の為申し添えます(^^)。

・・・・・・・・でまあこのインタビューの残念な所は、FSRを踏まえた質問のツッコミ部分が不足している事でして、この手のマクロ的な話をするとまあこういう答えになるのは明白な訳でして、よりツッコミをするのであれば今回のFSR全編に渡って指摘されている「一部の収益基盤の弱い金融機関群」の話であって、その収益基盤の弱さの背景とか、今後プルーデンス政策に(マクロプルーデンスおよびミクロプルーデンス的の両面から)どのようなインプリケーションがあったり無かったりするのかとか、今後のこれら一部の金融機関群に対して監督当局の立場としてどのような考えがあるのかとか、まあそういう話を突っ込んで頂きたいのですが、基本的にマクロ的な部分の質問しかない(ように見える)のが残念無念。

もちろんFSRで個別行の話は書いていないし書けないですからこの話もレポート上では全体の中の一部的な書き方になっていますし、まあ平場でインタビューしても中々踏み込んだ話はしにくいとは思うのですけどね。

まあ基本的には金融政策運営に関するインプリケーションを読もうとすると諸葛孔明の罠に落ち込む、というかそもそも衛藤局長が諸葛孔明の罠を張っている訳ではありませんので勝手に自分で作った落とし穴に落ちるだけの話ですけど(^^)、まあ普通にこのインタビューは「現状で金融不均衡はありません」「QQEは金融仲介面でも効果が発揮されている事を読みとる事が出来ます」という説明をしているだけと解釈した方が無難だと思います。ロイターが何かこの辺りの件で陰謀脳を逞しくした記事を書いているみたいなのですが(アホラシイのでURLは張らない)、だいたいロイターがこの手の妄想記事を書くと大外ししているのか誰かのポジショントークなのかというような話になっている事が多い(なお記事のクレジット以下自粛)。

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2014/04/22

○須田さんのインタビュー

この方も何ちゅうか良くも悪くも変わったお方でしたな。
http://jp.reuters.com/article/idJPTJEA3K00220140421?sp=true
インタビュー:追加緩和はコスト大きい=須田元日銀審議委員
2014年 04月 21日 21:01 JST

色々と味わいがあるので観賞(^^)。

『──異次元緩和政策の評価は。』

『「安倍晋三政権が推進する経済政策の『3本の矢』の1つであり、金融政策だけを評価することは難しい。もっとも、それまでの決められない政治からの転換や、循環的にも景気が上向きになるという、いいタイミングで打ち出したことは効果があった。金融政策を結果論で評価するなら、これまでのところはうまくいっている」』(上記URLより、以下同様)

「結果論で評価するなら」で吹いたペパーミント茶を返せと(^^)。

『「黒田総裁が効果があると言い続けるなど、それまでとは違ったコミュニケーションが期待に何がしかの効果を及ぼしている可能性はある。しかし、マネタリーベースの拡大が期待に働きかける効果は引き続き明確ではないし、働いているとは思えない。高まった市場の期待も足元で剥がれてきており、期待に働きかける政策の難しさをあらわしている」』

つまり置物先生のマネタリーベース直線理論ではなく気合理論が効果を出しているかもしれないと。


『──出口戦略につい黒田総裁は時期尚早と繰り返している。』

『「あれだけ確信を持って目標が実現できると言うのであれば、当然、出口も考えなくてはいけない。誰も出口が見えない時にこそ出口の話をする方が市場に余計な影響を与えないで済む。出口の話をきちんとやってくれた方が財政ファイナンスに対する懸念も軽減されるし、市場が本気で国債運用のリスクについて考える必要が出てくる。金融不均衡の蓄積を回避するには、リスクに対して鈍感になってはならない」』

まあこの辺は難しい所で、結局の所気合理論での金融政策運営である、と割り切ってしまうとなると、出口の話をするのはやはり時期尚早のような気がするんでどうなんでしょうね。本来的に言えば景況感と物価観の改善に伴って長期金利やらフォワードの金利やらが自然に上昇してくれるのが一番日銀としてはウマーなのですけどはてさてどうなるやら。


『──白川体制以前の日銀とデフレに対する認識の違いは。』

『「今をデフレ均衡と捉えるかどうかだと思う。私が日銀にいたときには、しつこいデフレ期待があることでデフレになっているとは評価していなかった。しかし、黒田総裁はデフレ均衡と発言しており、そう思う限りは、そこから脱出するために人々がびっくりするような政策で期待に働きかけるしかなかったのだろう」』

うーむ、デフレ均衡に関する見解はどうなんでしょ。当時もそれらしい話をしていた人もいたとは思いますけど。

『「一方、白川総裁以前は、不確実性が高く実体経済の把握も十分ではない中で、大きく間違うことがないように、多くの人が納得する範囲で政策効果を考えながら、グラジュアリズム(漸進的)で政策を行っていた。会合ごとに私としては常に最適な政策をとっていたつもりだ。不確実性は依然として高いが、しかし経済物価が上振れしつつある状況で、そのグラジュアリズムを捨てると聞いた時は、デフレの考え方も含めてスタンスが大きく違うと感じた」』

つまり今の政策は気合でやっているので副作用も大きいと言いたいようなのですが、その割には2%物価目標が行かないという見通しになっているのはちと話として微妙に変じゃネーノという気もする。


『──2年で2%の物価目標達成は実現できると思うか。』

『「2年で2%の物価安定目標の達成は、このままでは実現できないと思う。デフレから脱却するには期待成長率を高めていくしかないが、そのためには『第3の矢』である成長戦略の実行が最も重要だ。成長戦略の中心は政府ではない。企業や個人など民間の努力が不可欠だ。個人的には、少子高齢化が進む中、生産性をこれまで以上に高められるのか、財政は大丈夫なのか、という危機感を非常に感じている」』

『「2%のインフレはなかなか達成が難しいと思っているが、日本売りが起きたり、財政の問題が深刻化し、日銀が財政ファイナンスにのりだせば別。特に財政の問題を起点に日本売りになる場合には、円安になる可能性は否定できない」』

ということなのだが、では副作用として金融不均衡の蓄積がどうのこうのという話をしているのですが、それが結果としてどういう形で問題になるのかがイマイチワカランチ会長。まあインタビューの記事なので全部をカバーしている訳でも無いと思うので実際にはもう少し詳しい認識を聞きたい所です。

#どちらかと言うと今の政策のリスクはスタグフレーションだと思うのですけどねえあたしゃ


『──現在のボードの議論をどのように評価するか。』

『「外から見ていると、黒田総裁が上に立っていて、黒田総裁が政策を決めていると見えてしまう。黒田総裁がすべて決めるのだから、となると他のボードの人たちが何を言おうと『どうぞご勝手に』と見えてしまう。皆で作り上げるよりは多数決でいい、多数決なので少数意見は尊重しない、という風にみえる。少数意見をどう重視してどう取り込んでいくか、という部分がなかなか見えない」』

まあ木内さんとか佐藤さんの講演見ていると必ずしもそうでは無さそうにも見えます、というか気合の政策なので「どうぞご勝手に」ではなく「とりあえずお手並み拝見」という状態になっているだけのようには思えるのですが、一方でどこぞのコウモリ先生のように学者としての見識を期待されながらも何か話の筋はどちらに逝かれてるのでしょうという方も居ますな。

と言ってる須田さんも政策委員やっている間は結構な不思議モードになっていたりしてた時も(全期間ではない)あったのですけどね。何ちゅうかここまで言わんでもとは思いますが、学者モードの審議委員2名に集中的に向けたものと考えますとなるほどという感じもするのです。

まあいずれにせよ今後「物価安定目標とはそもそも何ぞや」というような部分、つまり何でもいいからヤケクソで物価が上がれば良いというもんじゃないでしょう的な話とか、そもそも論として物価安定と言ったって実際の物価水準を2%にするのか、見通しベースの物価水準及びインフレ期待がアンカーされれば良いのかとか、その手の話になる事が期待されまして、その辺りに関して佐藤さんと木内さんは旗幟鮮明(なお佐藤さんと木内さんの主張は微妙に異なる)ですけれども、石田さんは先般の講演でこれまた単に物価が上がれば良いというもんじゃないだろうという話をしていましたので、あと森本さんがどういう話をするのかが楽しみという所ですな。宮尾さんと白井さんは何だかねえという感じで。

『──今後の政策運営に支障が生じる懸念はないか。』

『「今は政府とうまくいっているからいいが、2%の物価上昇を実現できたら国債買い入れをやめないといけない。となると信頼に足る財政再建計画が策定されていない限り、政府との間で軋轢が生まれる。』

ちなみに皆さん忘れているかも知れませんが銀行券ルールは「一時的に停止している」状態であって別に撤廃された訳ではありませんので、QQE終了時に銀行券ルールの一時的停止は基本的には解除される(実際はいきなりは無理なので経過措置が入るでしょうけど)のですよ(2013年4月4日の声明文をご覧くださいませ)。

『黒田総裁が政策を(単独で)決めていると政府が思ったら、対個人で彼を説得すればいい。ボード全員で決めている、ということであれば、(政府の圧力から)一歩逃げられる。この点からもボードで決めるということの重要性をもう少し大事にしてほしいし、ボードメンバーも、いかに自分たちが政策決定するうえで大事な存在かを意識してほしい」』

何かエライ言われようで、そこまで後ろから銃撃せんでもええじゃろとは思いますけど・・・・・・・・・

という鑑賞会でした(^^)。なおニュースヘッドラインになっている部分の質疑応答が無いように見えますが、そこはネタとしてはまあ普通過ぎておもろないのでネタにしていないだけですので念の為。

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2014/04/16

・中原伸之さんェ・・・・・・・・・・・・

読者様からこういう記事がありますがなとご指摘頂かないと気が付かない所でした、感謝感謝。

http://jp.reuters.com/article/idJPTYEA3E04X20140415?sp=true
アングル:中原・元日銀審議委員が追加緩和は「来年」と提唱
2014年 04月 15日 16:14 JST

『[東京 14日 ロイター] -元日銀審議委員の中原伸之氏が、日銀の追加緩和は来年の実施が望ましいと提唱している。現行の異次元緩和が予定している270兆円のマネタリーベース(資金供給量)達成を見極めた上で、さらに100兆円以上の増額を打ち出すべきという内容だ。』(上記URLより)

さて・・・・・・・

http://jp.reuters.com/article/idJPTYE93306B20130404
インタビュー:急激な円安や金利上昇心配=中原元日銀審議委員
2013年 04月 5日 08:42 JST

『これまでも中原氏は、安倍晋三首相の事実上のアドバイザーとして、現在は50兆円超の当座預金残高を年末まで100兆円に引き上げるなどの量的緩和策の再採用を提唱してきた。ただ同氏は2012年末に138兆円だったマネタリーベースを14年末に270兆円まで拡大するとの日銀の発表について「あまりに急激な金融緩和で驚いた」と指摘した。』(上記2013年4月5日の記事より)

とまあそういう事で、この前も似たような話をしていましたが、以前の話との整合性はどこへという感じでございますけれども、良く良く見るとインタビューのその先の部分もアレ。

今回のインタビュー関連記事に戻りまして
http://jp.reuters.com/article/idJPTYEA3E04X20140415?sp=true(再掲)

『そのうえで「米国も2008年以降、足かけ5年にわたり3回の量的緩和政策を続けた。日本も5─6年、量的緩和を続けるべき」との見解を示した。』(上記2014年4月15日の記事より、以下同様)

えーっとですね、2008年っていうのはサブプライムショックとかリーマンショックとかからの話でございまして、信用バブル崩壊による金融危機対応から始まっている米国の金融政策が5年だから日本も5年とか何を仰せなのかよく分かりませんですが、最近の日本のどこにバブル崩壊を伴う金融システム不安とかがあるのか小一時間お伺いしたい所でございます。つーかそもそも論からして日本の実質ゼロ金利も随分長いですし、量的緩和的な言い方を強めたオーバーナイトのバンド化した包括緩和から計算しても2010年10月以降になるんですけどねえ。

『また、追加緩和の手段としては新たに買い入れる資産の2割程度を米国債など外債にするのも選択肢と指摘した。為替介入と同じ効果を持つ外債購入に対して、海外から批判を招きかねないとの指摘も政策当局や学識経験者の中にあるが「米国は金融緩和縮小を進めており、(米国債を買い入れれば)米国から反対はないだろう」との見通しを示した。』

財政ファイナンスという意味ではそうかも知れませんが、以前の米国と違いまして今の米国金融政策当局はマクロプルーデンスの重視という姿勢を強めておりまして、足元で行われているTapringなんてモロにそのマクロプルーデンス丸出しの話をしてますからして、米国の金融政策当局からしてみますと金融政策を正常化方向に進め、しかもマクロプルーデンスの観点というのが追加されている(サブプライム問題前はマクロプルーデンスなんぞ知るかという事で問題起きてから対処すれば良しというスタンスでしたから)中で日本から国債買われたらいい迷惑だと思うのですけど、何か随分安易ですなあ。

ということで、何が何やらというかはいはいおじいちゃんというか何というかで実にこう残念なお話ではある事よと思うのでありました。

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2014/01/20

○これは残念というか何というか(中原伸之さんのインタビュー)

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MZIQ4T6JIJW201.html
中原元委員:日銀は追加緩和余地ある、マネタリーベース300兆円も (2)
更新日時: 2014/01/17 15:39 JST

『1月17日(ブルームバーグ):中原伸之元日本銀行審議委員は日銀には追加金融緩和の余地があり、為替相場は年内に1ドル=115円程度へ下落する可能性があるとの見方を示した。中原氏は16日のブルームバーグとのインタビューで、日銀は4月の消費税率引き上げによる国内景気への影響などを見極めた上で、「必要があれば追加緩和をすると思う。量的・質的金融緩和を強化し、マネタリーベースを300兆円程度へ拡大する余地はある」と述べた。』(上記URLより)

>マネタリーベースを300兆円程度へ拡大する余地はある
>マネタリーベースを300兆円程度へ拡大する余地はある
>マネタリーベースを300兆円程度へ拡大する余地はある

ほほう。

http://jp.reuters.com/article/idJPTYE93306B20130404
インタビュー:急激な円安や金利上昇心配=中原元日銀審議委員
2013年 04月 5日 08:42 JST

『[東京 5日 ロイター] 元日銀審議委員の中原伸之氏は4日、ロイターのインタビューに応じ、日銀が打ち出したマネタリーベース(資金供給量)を2年で倍増させる量的緩和について、あまりに急激・巨額な金融緩和であり、「急激な円安や長期金利上昇などが起きないか私も心配」と懸念を示した。中原氏は2001年の量的緩和導入の先導役だった。』(上記URLより)

えーっとですね、まあ昨年4月時点ではMBの拡大が大きすぎるから弊害という話をしていて、それはそれで従来の木久扇師匠なども仰せの高度な計算式に則った話でこれは正論とかネタにした訳なのですけれども、ところでおじいちゃん高度な計算式の方はどこに逝ってしまわれたのでしょうか説明をお願い申し上げたいという所なのですが、もしかして去年仰せになられたことはすっかり忘れて無かった事にしているのでしょうかはいはい満州満州というところで。

ま、そういう意味では来月6日に賑々しく行われる師匠の金融経済懇談会(記者会見付き)でもその辺の高度な計算式に関する質問をして頂きたい訳で、高度な計算式によりますと当座預金80兆円程度、つまりMBで180兆円程度の水準で物価2%達成であって、金融政策のタイムラグと物価の遅行性を考えた場合、MB270兆円拡大なんかすると物価が上昇しすぎるんじゃ無かったでしたっけどうなんでしょうかという質問は(これを見ている物好きな記者さんがいたら)質問して頂きたいとか思ったのですけれども、どうせ想定問答は用意されていますかそうですか(−−:

という話は兎も角としまして、さっきの方のURLで「MB300兆円程度に拡大する余地」という話をしていますが、まあその数字自体どうせ根拠ない(市場を見てたら270兆円でも本当に大丈夫かという状況なので)のですけれども、そもそも既に260〜270兆円の実施というのはコミットされている中で、たかだか30〜40兆円拡大というのを出した場合に「小出し感」にならないかねと思うのですけどね。まあいいですけど。

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2013/10/25

○外山国際局長講演とな

http://jp.reuters.com/article/idJPTYE99N03M20131024?sp=true
緩和縮小でFRBと市場の理解に齟齬、政策反応共有難しい=日銀国際局長
2013年 10月 24日 15:24 JST

『[東京 24日 ロイター] - 日銀の外山晴之国際局長は24日に開かれた金融市場パネルで、米連邦準備理事会(FRB)の非伝統的金融政策について、いわゆるテーパリング(緩和縮小)をめぐり市場とFRBの理解に齟齬(そご)があったためにタームプレミアムが大きく振れたと指摘した。今後、FRBの政策を占う上では、今年5月以降の政策をどう理解するかが大変重要になるとの認識を示した。また、中央銀行にとって非伝統的政策は財政政策や構造政策の代替とはなり得ないとし、それらが適切に運営されなければ効果を発揮できないと述べた。さらに、その目標が達成できなかったり、弊害が大きくなると、中央銀行の信認が毀損(きそん)されるリスクもあると指摘した。』(上記URLより、以下同様)

ということでFRBの話をしつつどさくさに紛れてしらっと「中央銀行にとって非伝統的政策は財政政策や構造政策の代替とはなり得ないとし、それらが適切に運営されなければ効果を発揮できない」と全く仰せの通りですが軽く地雷のような気がする発言をしているのがチャーミングでございますがががが。

『<テーパリングへの理解の相違が長期金利の変動招く>』って所がまあ仰る通りなのですが。

『政策反応関数の共有の難しさをFRBのテーパリングに当てはめると、バランスシート政策の出口においてテーパリングは金利引き上げに先行するものであり、十分予見できるものであるにもかかわらずマイナスのタームプレミアムが解消するほど大きく振れた背景については、バランスシート政策に対する理解の相違があったこと、投資家の経済見通しが急速に修正されたこと、一部の投資家のリスク許容度が極端に高まったことなどが指摘されていると語った。さらに、市場で低金利が長く続くと理解されていた可能性もあるとした。』

『その上で、同局長は「今後のFOMCの政策を占うにあたっては、今年5月以降の政策をどう理解するかが大変重要になってくる」とした。』

つーことですが、これをFEDの立場から見ますと「イエレン議長に交代するまでの間に政策ロジックの立て直しを行うのが重要」という事にもなる訳でございまして、まあ幸いにして物価の方が望ましくない上昇をする雰囲気も無いという環境であるので、金融不均衡の方をケアしておけばまあそんなに正常化プロセスを慌てて実施する必要が無い、という状態ですからして、ロジックを立て直すための時間はあるでしょと思われますから、イエレン議長になってからのFOMCでロジックを立て直したものを出すというような段取りで、今からその検討をするという感じなんじゃないですかねえと思うのでありました。

ただまあここで問題になるのは、既に米国市場様におかれましては緩和長期化ヒャッハー相場の様相を示しつつあることですが、まあゆうて株はヒャッハーですけどコモディティーとか別ですし、恐らくFED的には株がヒャッハーになってもそんなに懸念しない筈で、それよりも金融不均衡の元になるのは「過剰レバレッジ」と「過剰の期間ミスマッチ」という認識をFEDは持っている(というかスタイン理事の講演とか読めばそういう認識をしているのは大体明白)ので、そういう意味ではハイイールド債とかエージェンシーREIT市場とか、その手の市場がヒャッハー相場になった場合は火消しが入ってくるんじゃネーノとは思いますがどうっすかね。

でまあ外山さんはTaperingトークでFEDの想定以上に長期金利が上昇してアチャーとなった件について上記のように基本的に投資家サイドの話をしていますが、そもそも論からしますと、(この前も申し上げましたように)本当はTaperingとゼロ金利政策時間軸の政策反応関数について別のロジックを提供した方が良かったんではないかという風に思うのですよね。つまり、Taperingにしてもゼロ金利政策時間軸(フォワードガイダンス)にしても、経済状況に紐がついていて、しかもそれがどちらも基本的に労働市場の状況となっている上に、余計なことに逆さ絵会見でTaperingに失業率7%などという具体的数値を出してしまったために、Taperingとゼロ金利政策時間軸の間に連続性が発生してしまった訳で、そらまあ「量的緩和と金利政策は別」と説明しても通じません罠という事になりますな、うんうん。

つーことでおじちゃんの推奨スキームは「Taperingの決定はQE拡大のプロコン比較」というのを前面に出す事であって、プロコン比較した結果として、モーゲージ債の買入は暫く継続した方が住宅市場のサポートになるから続けるとして国債の買入は限界的な金利低下の効用とバランスシート拡大の将来を含めたデメリットを比較した結果追加するの止めますよとか、まあそんな感じで理屈を繰り出せば「金利政策は別の話」ってのが通りやすくなりませんかねという所ですな。

しかしそれは中々難しそうに思えます、という事で次のコーナーの前振りになるのですが・・・・・・・・

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2013/10/18

○早川前理事がこれはまたというインタビュー:しかし日本語記事URLがねえええええ

ということでブルームバーグニュースのプロ向けの方ですと昨日の16時28分配信の記事で、『日銀は外見は自信満々も、内心は不安―早川前理事』という題名で早川さんのインタビュー記事がございまして、6月にブルームバーグで同じく早川さんがインタビュー受けていた時にも大概にケチョンケチョンのインタビューだったのですが、どうもブルームバーグのインターネット版の日本語ページは記事検索機能がオッペケペーなのか、単に日本語記事がアップされていないだけなのか知りませんが、本家のブルームバーグページの方で「hayakawa」で検索すると英文記事の方が見つかります(^^)。

http://www.bloomberg.com/news/2013-10-17/boj-vet-sees-jgb-rout-if-abe-s-third-arrow-misses-japan-credit.html
BOJ Vet Sees JGB Rout If Abe’s Third Arrow Misses: Japan Credit
(画面レイアウト乱れそうなのでリンクを前の方だけにしか張っていません)

『Investors will lose confidence in Japan’s economic revival unless Prime Minister Shinzo Abe adds substance to his growth strategy and relies less on stimulus measures, said a former senior central bank official. “The situation will turn extremely dangerous if Abenomics doesn’t take a new direction,” Hideo Hayakawa, who previously served as executive director at the Bank of Japan, said in an interview in Tokyo on Oct. 15.』

第三の矢を早よ出せという話ですが日本語記事の方がケチョンケチョン度が高いので探してくらはい。

『Instead of laying the foundation for a sustained expansion, “Abe is just putting pressure on the BOJ to buy bonds and increasing fiscal spending by continuously compiling economic packages.”』

安倍政権は日銀に圧力掛けて国債を買わせるわ財政赤字は拡大だわとな。

『“Much of the market is clearly numb to the risks,” said Hayakawa, now a senior executive fellow at the Fujitsu Research Institute. “Plainly stated, the situation in the government bond market is becoming considerably dangerous.”』

キタコレ!ということで以下続くのですが、こちらの英文記事は早川さんのインタビュー関連は前半3分の1くらいで、以下は本田内閣参与の追加緩和期待発言(インタビュー)とか、水野元審議委員の「債券市場は壊れた温度計」発言(インタビュー)ネタとかを交えながらの記事になっておりますので、早川さんのケチョンケチョン節をご覧になりたい方は頑張って探してください(無責任)。

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2013/10/04

○これはまた身も蓋もない指摘を(^^)

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MU17VK6JTSF001.html
債券市場は「壊れた温度計」、日銀は2%目標修正が最良−水野元委員
更新日時: 2013/10/03 13:22 JST

『10月3日(ブルームバーグ):日本銀行の審議委員を務めた、クレディ・スイス証券の水野温氏副会長は、国債市場について「表面的には安定している」としながらも、景気の先行きや財政規律の有無を測る機能は低下しており、「壊れた温度計だ」と語った。また、人々が望んでいるのは景気の持続的回復であり物価上昇ではない、とした上で、日銀は2%の物価目標をいずれ修正するのが「ベスト」との見方を示した。』(上記URLより、以下同様)

全くですなと存じますが、これはまた随分なケチョンケチョンモードでありまして、記事の方読んで味噌という所ですが、「2%の物価目標の修正」というのはこれはいずれ浮上する問題だと思うのですよね。

既に木内審議委員が「中長期的に目指すべき」という提案をしている訳ですが、そもそもこの「2%」の数値自体が実際の数値なのか見通し数値なのかという部分も曖昧になっていますし、仮に見通し数値とした場合のタイムホライズンも不明確ですしという事ですが、ただまあこの「修正」に関しては実際の物価指数が0%台であるうちにその話をしてもただの逃げにしか思われないでしょうから、せめてCPIが1%台に乗ってきてからさてどうしましょという話になるんでしょうかね。

とは言いましても、異次元緩和をローンチして半年経過しちゃいましたので、「2年で2%」の落とし前に関しては来年の春にはそろそろ手形の期日状態になると思うのですけれども、まあ現状では(上記記事にもありますが)経済物価情勢はオントラックでドヤ顔モードになっておられるので、落とし前の件に関しては恐らく来年4月の展望レポート位になってやっと問題になると思われ、それまでロジカルに考えたら追加で何かをするのも無いですし、一方で物価目標の見直しみたいなことも無いでしょうし、ひたすら「経済はオントラック」というだけでしょうなあと思われます。


しかしまあ何ですな。

『8月の生鮮食品を除く消費者物価指数(コアCPI)前年比はプラス0.8%と事前予想を上回る伸びを示した。黒田総裁は9月20日の講演で、2%の物価安定目標について「実現に向けた道筋を順調にたどっている」と自信を示した。しかし、水野氏は2%の物価目標の是非に対しても疑問を投げ掛ける。「日銀は2%を目標を掲げているが、欧米諸国で消費者物価 上昇率が1%台前半というディスインフレが定着していることをみても、2%の物価目標はもはやグロバール・スタンダードだとは言えない」と指摘。「家計にとって賃金上昇を伴わずに物価が上がることが一番辛い。既に電気料金が10%上がっていて、生活費も上がっている」と語る。』

昨日ネタにした生活意識アンケートで絵に描いたような結果が出ておりましたな。

『さらに、「ほとんどの人は、デフレ脱却イコール2%の物価上昇だとは思ってないはずだ。『え、デフレ脱却って2%の物価上昇という意味だったの? 不況脱出のことだと思ってました』という人がたくさん出てくるだろう」という。』

そうですな。

『その上で「仮に1%か、1%から1%半ばくらいの物価上昇が定着し、政府も日銀はよく頑張ったと言って、最終的に2%という『物価安定の目標』を修正し、1%か1−2%にすることができれば、日銀にとってはベストだろう」と言明。「日銀が2年で2%の物価目標の実現を目指して、日本経済が良くなるのか、この政策をやることによって皆が前よりも幸せになるのか、これらを答えられないと、この政策は難しくなってくる」としている。』

というご指摘ご尤も。まあ良く良く考えてみるとそもそも論として経済に関する政策というのは国民を幸せにする為のものであって、「2年で2%」という設定に対して本当にそれで良いのかという検討が後からやってくる、というのも政策としては変な話ではあるなあと思いますけど、まああの状況では日銀的にシャーナイというのもこれまた分かりますので、適宜大風呂敷に関しては適切に畳んで頂きますように退却戦を上手にやってくらはいと思うのでした。

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2013/04/08

○中原伸之さんの正論キタコレ!!!

http://jp.reuters.com/article/idJPTYE93306B20130404
インタビュー:急激な円安や金利上昇心配=中原元日銀審議委員
2013年 04月 5日 08:42 JST

『[東京 5日 ロイター] 元日銀審議委員の中原伸之氏は4日、ロイターのインタビューに応じ、日銀が打ち出したマネタリーベース(資金供給量)を2年で倍増させる量的緩和について、あまりに急激・巨額な金融緩和であり、「急激な円安や長期金利上昇などが起きないか私も心配」と懸念を示した。中原氏は2001年の量的緩和導入の先導役だった。』(上記URLより、以下同様)

ということで。

『これまでも中原氏は、安倍晋三首相の事実上のアドバイザーとして、現在は50兆円超の当座預金残高を年末まで100兆円に引き上げるなどの量的緩和策の再採用を提唱してきた。ただ同氏は2012年末に138兆円だったマネタリーベースを14年末に270兆円まで拡大するとの日銀の発表について「あまりに急激な金融緩和で驚いた」と指摘した。』

そうですよね〜。岩田副総裁の精緻なる理論による試算について先般山本幸三先生が同じくロイターのインタビューで答えていましたけれども、そちらによりますと『山本氏は、日銀副総裁に就いた岩田規久男氏が学習院大学教授当時に作成したシミュレーションから、消費者物価上昇率2%達成には、現在145兆円のマネタリーベースを160兆円─170兆円に増やしていく必要があるとした。』ということですし、『さらに消費者物価指数を3%にするためには、マネタリーベースを180兆円程度に拡大させる必要があるとし、ドル/円は108円程度、株価は1万3600円程度になるだろうと試算する。』(先日来引用している4月3日のロイター記事より)でしたもんね、と毎日しつこいこのあたくし。

まあ上記数字は並べられると胡散臭さ爆発で、まあ計算についてはもうちょっと差があるのかもしれませんけれども、それにしてもその辺のシミュレーションから見たらMBを年末に200兆円、来年末には270兆円にする、という事になったらMB増やせと言ってた人たちの数値からしたら物価が騰貴して大変な事になるよね、という話を誰かしないのかと金曜も申し上げましたが、今回こうやって従来からの主張と整合的な見解が出てきたのはホッとしましたというか中原伸之さんの主張がさすがとしか申し上げようがございません。

『「市場と駆け引きしながら政策を出していくのが資本主義経済での中央銀行だが、今後2年間の政策の手の内を見せてしまった。リーマン・ショックのような危機が起きた際に追加手段が残されていないのでは」と懸念。先々の政策を縛る今回の発表手法は「戦時中の統制経済を連想させる。日銀の『資産倍増計画』だ」と表現した。』

まあ今回は(後で引用しますが)まず最初に手を全部打ちました、という風に言ってますからね。

『その上で「巨額な資金供給を行うのに必要な国債を市場から買い集めることが可能なのか、政策の実効性も不透明だ」「量は質に転嫁する。急激な金融緩和で円安や長期金利上昇が起きかねない」と懸念する』

正直、当座預金100兆だって結構怪しいのに170兆とかどうやってやりますねんと思いますよ。

『更に「従来政策からの大幅な方向転換にもかかわらず、審議委員が全員一致で決めたのには驚いた」と述べ、委員らの有識者としての見識が問われると同時に「結論ありきで会合が進んだ印象」と警戒感を示した。』

別に凄く新しいことを始めた訳では無くて、やっている事は従来やってたことを全部まとめて大緩和したという所ですが、とは言いましても従来は「非伝統的政策は効果と副作用がよく判らないので斬新的に実施していきましょう」というのがいきなり全部打ち込む方式になったのと、そもそもその出す額といい購入する国債の年限と言い(正直言って平均5年程度とかで月5兆から精々6兆だろと思ってましたしそれでも随分大きい話だと思ってましたぞな)凄い事になっているので、まあこういう風に言われますといやーあっはっはという所でしょうかねえ(だからこそこれもしつこく言いますが3月会合の白井提案が余計過ぎ)。

ということで気が付いたら記事全部引用していましたが(すいません)、まあ後半の方に関しては兎も角として、冒頭の部分にあります「これはMBの出し過ぎ」という点に関しては岩田副総裁およびリフレ派諸氏の見解をぜひお伺いしたいものでございます。というか岩田副総裁については記者会見の場などがあると思いますので、記者の皆様におかれましてはこの辺りに関しての質問を是非ともお願い致したいですよね。それに対して従来の主張と整合的なお答えをしないというのはつまり岩田さんやその周囲の方々におかれましては尤もらしい話を適当にでっち上げて権力者に吹き込んでいたというまあ曲学阿世の徒って言うんでしたっけそういう方々だったという話になりますわなあとゆー所で。

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2013/03/19

何かね、日銀総裁の評価をモーサテのゲスト解説者のどこぞの誰かさんがしているのですが、日銀総裁交代前後の相場パターンで「上昇型」を「一番良い形」とか言いながら「これらの相場は最終的に過剰流動性相場まで突き進んでいます」って最終的に全然良い形じゃねえかテレビに出てきて何を言ってるんだお前は朝三暮四のサルにも劣る馬鹿か今すぐ呼吸を止めろと朝から血圧が急激に上昇したのでテレビショッピングの血圧計をやはり買った方が良いでしょうかねえ。

○これは臨時会合無しフラグですね

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MJU1846K510U01.html
雨宮大阪支店長が企画局担当理事に−黒田日銀の「異次元」政策支える
更新日時: 2013/03/19 00:00 JST

昨年大阪支店長に就任した雨宮理事がまたまた企画局担当で戻ってくるという事ですが、雨宮さんの後任が櫛田理事名古屋支店長で、櫛田さんの後任が宮野谷金融機構局長ですので、大阪と名古屋の引き継ぎを考えると普通に考えて来週月曜とかに企画担当に着任とかいう話になると思います。現在の企画担当門間理事も国際担当副統括(明日から統括ですかね)とはまり役に。

いやまあ別に理事が引継ぎ中でも金融政策変更するのは出来るでしょうけれども、キプロス地雷が火を噴いて金融危機世紀末伝説ヒャッハーとかならない限りそこまで急いで臨時会合をやる必要も無いところに来て、そもそも黒田さんも岩田さんも金融政策の技術的な話はずぶの素人と来ている訳ですから、これは臨時会合はございませんよといういい口実が出来て良かったとも言えますな。

でまあ黒田さん岩田さんじゃあ金融政策の技術論が華麗に素人ですので、ちゃんと具体化することのできる人がサポートしないとダメでしょという話になって企画担当の長い雨宮さんが戻るという話になった訳なのでしょうが、「異次元政策」というよりは「亜空間政策」(ナンノコッチャ)が色々と飛び出してきそうですなあという感じがして色々な意味で盛り上がって参りましたという感じではあります(^^)。

いやね、もう2月のミニッツもそうですし、3月の白井さんの謎提案もそうですし、黒田さんや岩田さんのコメントとかも見てますとそうなのですが、この調子だと「何か良く判らんけれどもとりあえず目に付いた政策から順にどういうロジックか判らんけど実行しようじゃないですか」みたいな超カオス状態になるんじゃネーノ(と考えますと木内さんと佐藤さんがそのカオスを収拾できるための存在として重要になる訳ですが)という気がしていて、それはそれでカオス鑑賞としてのお笑いネタになるかと思っていたのですが、まあ日銀的にはカオスを放置プレイという訳にも行かないでしょうという事ですねわかります。

まあしかし何ですな、黒田さん就任してすぐに何かやるって話も妙に盛り上がってはいますが、何か思いついたメニューを手当たり次第にやっていって「異次元緩和」とやるよりは、本当は色々と継ぎ足してダンジョン状態になっている複雑怪奇な現状の包括緩和政策を整理整頓してもうちょっとスッキリとした形にした方が良い訳で、それには少し戦線整理の時間が必要でしょとか思うので、本来は臨時会合をやってどうのこうのとやるよりは、最初から戦線を整理した形で出した方が「異次元」になるようにも思えるので、個人的には下手につぎはぎ拡大政策を打ち込まないで頂きたいと斯様思いますけどどうでしょ。


ということで土曜にこんなのがありましたけどね。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130315-00001633-yom-bus_all
日銀、量的緩和復活へ…黒田新体制で転換
読売新聞 3月16日(土)3時0分配信

『日本銀行は、金融政策の路線を転換し、世の中に出回るお金の量を増やすことを目的とする「量的緩和」を7年ぶりに復活させる検討に入った。』(上記URLより)

いやあの今やってる包括緩和って量的緩和と信用緩和のハイブリッドで、直近はそのうち明らかに量的緩和にシフトしているのでして、7年ぶりに復活とか仰っている事の意味がさっぱり判りませんけれども読売新聞頭大丈夫かと思ってしまいますがそれはともかくとして。

まあ異次元言いましても実際に打てる弾って何でしたっけという事を考えますと、岩田副総裁がハーブアルパート&ティファナブラスの「ビタースイートサンバ」をBGMに会見に登場して「わんばんこ、いわきくでおま」とか言い出す(というネタは古いですかそうですか)位しか思いつかない訳ですが、確かに読売新聞が「量的緩和7年ぶり復活」とかそれ中身同じで看板書き換えただけぞなもしというのに簡単に引っ掛かるような状況であるという事を勘案しますと、その手の異次元というかイリュージョン緩和政策が展開されるかもしれませんねあっはっはと何だか俊ちゃん時代を思い出す展開もあるのかねえとか、まあつらつらと色々考えてしまった昨日のひとときではございました。

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2012/04/09

○決定会合プレビューとか審議委員人事雑談の続き

金曜に書いたので大体まあそんな感じなのですが、今回の決定会合で何らかの追加緩和みたいなのをするとさすがにアホウ政治家の皆様が「日銀に政治的圧力掛けたら大勝利」と更に調子に乗るのが明らかにも程がありますので、まあ普通に考えて今回は何もなしというか下手に追加緩和すると信認問題になりますので現状維持。まあドル特則の内容決定だけでしょう。

で、これまた金曜にも申し上げましたが、4月27日の展望レポートで緩和のおかわりのような感じで基金国債買入残高目標を10兆円増やしつつ買入の期間を半年延長するのかねとか思ったのですけれども、あのアホウ政治家の大騒ぎで逆に日銀やりにくくなってしまったという感じはする(同じ理屈で政治家が調子に乗るから)のでして、それでしたら10月の展望レポートで見通し期間が1年延びる所で・・・・・という話ですが、まあそこまで待つのもねえという感じです。

まー雇用統計がこれまた測ったようにうんこな結果が出て追加緩和期待がまた米国に出てきそうという流れでございますので、その辺の空気読みながら4月27日に「展望レポートで点検した結果物価安定の理解実現の為には時間がやや掛かるようなので買入期間を半年延長し、その結果として残高は来年の6月末には国債10兆増えますよ」とかまあそんな話で。

でまあ審議委員人事に関してはかんべえさんがこんな話を。
http://tameike.net/comments.htm(<4月4日>(水)の所をご覧ください)

勝手に引用させて頂きまして恐縮ですが、以下引用致します。

○河野さんは非常にまともなエコノミストで、業界内の評判もいい。私から見れば、リフレ論に対しても充分に理解がある人だと思う。ところが自民党がダメ出しをしてしまった。これでは2008年の民主党のやり方と変わらない。というか、政策の中身に口を出している分だけ劣化コピーといえる。日銀の審議委員というのは、本質的に楽しい仕事ではないのだから、こんなことを続けていると、まともな人は誰も引き受けなくなってしまうのではないか。既に少なからぬ経済学者が、「こんなことに巻き込まれるのは御免被る」というモードである。

○で、もう一人の伊藤忠相談役、渡辺康平氏がさらにお気の毒なのである。3月23日に、日経がこの人事を「抜いた」(ちなみにネット上では、この記事はもう消されている)。で、2008年にゴタゴタがあった際に、「事前に漏れた人事はダメ」という合意が与野党間にできたのだそうだ。つまり「日経に抜かれたからつぶされた」人事なのである。そんな記事、載せるなよ。とりあえず、しばらく日経さんは伊藤忠商事にはお出入り禁止でしょう。こんな話、日経にはきっと出ないと思うぞ。

(『かんべえの不規則発言』2012年4月4日より一部引用)

あたくしが連日湯気ポッポ―で悪態書いて金曜の更新忘れで血圧上昇で倒れたのではないかと言う勢いでもあったりするのと違いまして、冷静かつきっちりとポイントを押さえるかんべえさんさすがです。参りました。

ちなみに、これは多分ネットとかで不特定多数向けアップされるような物では無いリサーチレポートなので引用はしませんが、河野龍太郎さんご自身が審議委員否決を受けましてレポートを書いておられます(金曜の午後に配信されていると思います)ので必読。しかし河野さんも書いておられますが(文章の意味が取りにくいと思うので追記しました。でそこをフォントを小さくしています)河野さんて別に「インフレ目標に反対」している訳では無くて、あくまでもリジッドなインフレ目標に反対であり、フレキシブルインフレターゲットは大賛成しているのでして、その河野さんの主張を思いっきり曲解して「インフレ目標に反対」だから審議委員に不適切とか言い出した山本幸三先生って、「前提となる根拠がおかしい状態で問題追及をした人」という意味では永田偽メール事件とやってることが大差ない、というよりも人事一本潰しているだけに永田偽メールよりも酷いわと存じます次第で山本先生におかれましては(以下罵詈雑言と受け止められる可能性がある表現を含むかもしれませんので謹んで割愛)。

どうもね、血圧下げるためには悪態が無いといかんですわorz

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2012/04/04

○自民党もすっかり「昔の民主党」状態になってしまいましたねえ(吐息)

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M1W6SY6K50XS01.html
BNPパリバ・河野氏の日銀委員人事案、自民も反対−同意は困難に
更新日時: 2012/04/03 18:17 JST

『4月3日(ブルームバーグ):野田佳彦政権が国会に提示した、日本銀行の審議委員にBNPパリバ証券のチーフエコノミスト河野龍太郎氏を充てる人事案は、野党が多数派を占める参院で同意を得るのが厳しい情勢となっている。すでに不同意を表明している公明、みんな両党に続いて最大野党の自民党も3日開いた「国会同意人事に関するプロジェクトチーム」の会合で反対する方針を決定した。』(上記URLより、以下同様)

ということで、本当に河野龍太郎さんの審議委員人事がお流れになるような感じになって参りましたが・・・・・・

『自民党の岸田文雄国会対策委員長は記者会見で、河野氏について「不同意という方針で自民党は臨みたい」と明言。その理由に関しては「本人の考え方、政策的な問題、さまざまな見地を総合的に勘案して、と聞いている」と指摘した。』

との事でございますが、こちらの記事中にもございますように、つい先日日経ヴェリタスが発表致しました「債券アナリスト・エコノミストランキング」でエコノミストの第1位(昨年は第2位)に選出されたんですよね、ちなみにこのランキング集計したのってだいぶ前(2月中)ですので、次期審議委員人事とか全然関係なく(そもそもマーケットから誰かが選ばれるとは誰も想定していなかったと思う)選出されましたねというのと、今回のランキング見てまして個人的には違和感もそんなに無いランキングで、妥当な感じだと覆ったんですけどまあそれはそれとして。

『河野氏はエコノミストとしてキャリアを重ね、1日付「日経ヴェリタス」が報じた「債券アナリスト・エコノミスト人気調査」では、エコノミスト部門で昨年の2位から首位になった。』

つーことで、まあ債券市場という金利のマーケット参加者であります所の機関投資家(これは機関投資家の会社単位で答える)のランキングな訳でして、まあ一部何だかそれ会社のネームでランキング入りしてるんじゃないかなあというような人も居ない訳でも無い(まあ近年は割と違和感ないランキングになってきたけど)とゆー気もするけど(-_-メ)、当然ながらランキング入りする方というのはそれなりに市場で飯を食っている人たちが「認める」存在であると思うのですよ。そらまあ1から10まで全部が全部を信奉しているというような人はいないでしょうけれども、まあ主張があまりにも無茶苦茶だとランキングの上位には入れませんわなと思う次第。


つまりですな、まあ自民党様におかれましては『「本人の考え方、政策的な問題、さまざまな見地を総合的に勘案して、と聞いている」』とまあ随分とアレな理由でして、アグレマンに対するペルソナ・ノン・グラータじゃねえんだから、もうちょっと説明しろやボケナスとか思いますけれども、まあそれは兎も角として、自由民主党様は「債券市場の機関投資家が高く評価するエコノミストは日本銀行の政策委員として不適切である」とまあ斯様仰せとの事のようでございまして、誠に恐れ入った事でありまする。少なくとも金融市場を知っている人から見たらこの言いぐさってただのインネン付けにしか聞こえないんですけどねえ。

まあ自民党様がそのように債券市場をご認識であらされる、という事は今回の行動によってよーく分かった訳でございまして、その調子で政権なんぞ取られますと、いずれ債券市場などというような物はケシカランとか言い出すとかまあそういう事でございますかそうですかいやあ困ったもんですなあ債券市場の片隅で飯を辛うじて食わせて貰っている身と致しましてはと、誠に遺憾の意に堪えない所でございます。


更にですな、

『反対の急先ぽうである自民党の山本幸三衆院議員は「インフレ目標政策に反対しており、日銀寄りの発言しかしていない」と指摘。みんなの党の渡辺喜美代表も、河野氏について国会内で一部記者団に「あまりにも役所寄りのスタンスが激しいので反対する」と語っている。』

とのことでございまして、まあみんなの党は所詮は(伏字)なのでどうでも良いのですが、自民党の山本幸三先生におかれましては「日銀寄りの発言しかしていないのでダメ」との事でございますので、これはつまり日銀ケシカラン死んで良しと仰っておられるという事でありますが、まあ山本先生が以前よりそのような話をしているのは別にまあ一つの見解としてそれはそれで別に全否定するような話でも無いですし(ただし最近の山本先生は以前と違って批判してくる筋が無理筋というか言いがかりレベルになっているのが気になります。たとえば輪番の償還乗換と新規発行国債の財政マネタイズを意図的に混同して「日銀は直接引き受け(償還乗換の事)やっているのだから復興債も引き受けろ」みたいな事を言い出すとかね)、批判が全くないのも不健全な話ではございます。

しかしですよ、その山本先生の見解に自民党が機関決定して乗りました、ってえ事はすなわち、自民党が政権与党になったら政治サイドから金融政策に干渉しまくりますよ日銀とは対決しますよと高らかに宣言したようなもんですわな。それが長い目で見てどういう弊害があるのかは歴史が示す通りじゃないかと思いますけどねえ。

#インフレ目標政策に反対云々がゴロツキの言いがかりレベルだろという話は先日書いたので割愛

いやね、日銀法改正でも何でもやりたきゃやればとは思いますけれども、どうせあんさんら日銀にあれやれこれやれとクレクレは言っても、結局その結果責任を取る気はサラサラなくて、上手くいかなかったら「日銀が下手くそだから悪い」とか言うんでしょとしか思えないですけどねえ。


つーことでまあ何ですな、前回の民主党による正副総裁人事でのゴタゴタも大概に酷くて、武藤さんは「財金分離」とか言い出して反対するわ、伊藤先生に至っては「郵政民営化に賛成だからどうのこうの」とかどこの与太者のインネンだよという感じではありましたけれども、政策スタンスがどうのこうのというような反対では無かったですけれども、今回の自民党、公明党の反対って「日銀寄りなのでケシカラン」とかいう話で、しかもその対象が「債券市場では高く評価されているエコノミスト」を捕まえて「政策スタンスに問題がある」だの「日銀寄り」だの言っているとゆーのが前回よりもある意味深刻なお話。

つまりまあ自民党や公明党は市場がどうのこうのとかどうでも良いし、政権取ったら中央銀行にバリバリ政治介入しますよ大喧嘩しますよという話をしているという点で問題がより深刻、っつーかお前ら政権取る気あるのかよ今からそんな宣言してと思うのですけどねえ。

いやね、これがまだ「証券業界などのような利害関係の強い所の出身者は不適切」とかなら理屈として判らんでもない(もちろん世界的にみたら「んなアホな」ですけれども)のですけれども、反対の理由があまりにも豪快過ぎてちょっと何だかな状態ではございます。

確かにそもそもはこの前の正副総裁人事でお縄一派が訳の分からない理屈にもならない理屈で人事に反対して政局にしようとしたという政局優先の態度を取った事が原因で、今回はその仕返しを受けているという図でもあるのですが、この事を別の角度から考察致しますと、選挙に勝つためには屁理屈で日銀総裁人事に反対してみたりというような目的の為にどんな筋悪の事でも行う、という行為に出て、更にはウソツキマニフェストで選挙に臨み、最終的に全てが破綻して政権担当能力の著しい欠如を垣間見せると共に国益を著しく損なうという誠に残念な政党と同レベルになってしまわれた、という事でもございます。まあ野党生活が長くなった結果として文字通り「貧すりゃ鈍す」を地で行く存在になられたという事でもありまして、こらまあ次の選挙で自民党に投票したらかつての民主党政権交代時の二の舞になるのが見え見えではございますなあ、と申し上げたくなる次第という事です。

正直、自民党には期待していたので、こんな所で政権取る気ありません宣言を見ることが出来るとは思いませんでしたよ本当にがっかりだわ。

#とまあそういう悪態ではございましたとさ。

しかしこの調子で産業界からの審議委員就任とか誰も受けないわなとか思うのでありまして、東電会長人事並みの罰ゲーム化とかオソロシス。まあ素人がなるのがケシカラン的な意見もありますが、逆に産業界の声を直接反映させるという発想があっても別にそれはそれで有りだと思うのですけどね。むしろ金融業界出身で、オペレーションとか短期市場とか債券市場とかの実務っつーかまあ実情の理解が中途半端に生半可の状態だと日銀ペースに乗せられてしまう恐れもありますが、産業界出身という一本の柱を確り持っていると、それはそれで日銀ペースと違う柱になって良いのかなとも思います。

まあこの調子だと2名欠員がしばらく続きそうですわな。大体からして「債券市場の評価が大変に高いエコノミストはダメ」とかなった日にはこら暫く市場からの審議委員ノミネートとか無理だろ(逆に次にまた市場関連の人をノミネートしたら、どういう反応をするのかね)と思いますし、実業界から出るとも思えませんとかなる訳で、さてどうなるんでしょうねえ。つーか審議委員決まらないと7名中3名が執行部になってしまいますから、ボードがより「日銀寄り」になっちゃうんですけどねえ(ニヤニヤ)。

#ああ悪態ばかりでこんなに書いてしまったorzorz

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2012/04/02

○何でこうなるのやらという感じですが(審議委員人事)

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M1OAFF6S972A01.html

『3月30日(ブルームバーグ):野田佳彦政権が国会に提示した、日本銀行の審議委員にBNPパリバ証券のチーフエコノミスト河野龍太郎氏を充てる人事案に黄色信号がともっている。公明、みんな両党が反対を表明、最大野党の自民党も反対の方向で調整している。』(上記URLより)

ということで、まあみんなの党はどうでも良いのですが、公明とか自民が反対するというのがワケワカラン。


で、公明党ですが・・・・・・

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M1OH696KLVR401.html
公明:河野氏起用反対を正式決定、考え方に異論−日銀審議委人事

『3月30日(ブルームバーグ):公明党は29日、政府が国会に提示したBNPパリバ証券チーフエコノミストの河野龍太郎氏を日本銀行審議委員に充てるとする国会同意人事への反対を正式に決めた。河野氏の金融政策の考え方に党内に異論あるため。遠藤乙彦衆院議員が30日、国会内でブルームバーグ・ニュースに明らかにした。』(上記URLより)

・・・・・・・・「考え方に異論」って何じゃそらというか、ペルソナノングラータじゃねえんだからもうちょっと理由を説明してくれやという所ではございますが、いずれにせよ「金融政策にタカ派だから反対」みたいな話だとすればそれもまた不見識っつーか何つーかな話で、つまりハト的な金融政策を行って仮に副作用が出た場合は公明党さんは政治責任取ってくれるんですかと借問致したい訳でございます。

つーかさ、そもそも公明党さんの最大支持母体さんって今の計測方法でのCPIが+1%とか実際になった日には「物価上昇で庶民の暮らしが大変」というような話を真っ先にしそうなイメージがあるのですけれども、そういう意味ではいい度胸してんじゃんという気もするんですけど、まあ何にせよ他の党なら兎も角公明党がハト派じゃないから反対みたいな話をするとは意外、つーかその辺のコンフリクト判って話してるんでしょうねえとか思うのでございますけどにゃあ。つーかそもそも河野さんってタカとかハトとかあまり色が無い人なんですけどねえ(緩和的政策を野放図に長期化するのは弊害がって話を捕まえてタカ派とか言うのは言いがかりレベルだと思うのだが・・・・・・)。

あとですね、そもそも合議制でやっている委員会の人選なのですから、タカ派もハト派も居て多様な意見を揃えた方がよりチェック機能が働くと思う次第でして、「考え方が違う」と言って反対するという事は、それ即ち「日銀政策委員は全員同じ考えであるべき」という主張をしているようなもんで、どこの民主集中制あるいはファッショだよと思ってしまいます。つーか普通政府の委員とか諮問会議とかでも色々な意見の人を集めると思うのですけどねえ。まあそこまで言うなら公明党は金融政策に政治責取れるんかいというさっきの話に成る訳ですけど。

財政のサステイナビリティ確保への努力とか何もしないで垂れ流しを続けて金融緩和も続けろという話を延々として財政インフレとかになったらあんさんらが議員辞職してお詫びとか切腹してお詫びとかでは済まない位の大変なことになるんですけどねえ。


で、自民党に関してはさっきの最初の方の記事に戻りますが。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M1OAFF6S972A01.html
BNPパリバ河野氏の日銀人事案、同意に黄信号−自民も反対で調整へ

『河野氏起用に反対している自民党の山本幸三衆院議員は河野氏について「インフレ目標政策に反対しており、日銀寄りの発言しかしていない」と指摘。同党内では「否決すべきだと思って働きかけを強力にやっており、成功すると思う」と反対での意見集約に自信を見せた。すでに政務調査会や国会対策委員会幹部にも働きかけているという。』(上記URLより)

えーっと、そもそも「インフレ目標政策に反対しており」とは何のことだか意味が判らないのですけれども。河野さんのレポートとか全部を熟読して覚えている訳ではないですけれども、特段インフレ目標政策に明確に反対とかしていないと思いますし、大体からしていわゆる「フレキシブルインフレーションターゲット」っていう金融政策の枠組みってえのは主要国の金融政策の常識というか、政策の枠組みがそこに収斂されて来ているという状態であって、今さら「インフレ目標政策に反対」とかいう人居ないと思いますが。

そらまあ暫く前まで良く言われていた「裁量を排した金融政策運営」という意味でのインフレ目標だったら反対する人が多い、というか既にそんな運営で上手くいかないというのは英国を見れば一目瞭然(英国はもう2年くらいインフレ目標上回って物価が推移しているけれども、「見通しとしては今後低下する」というのを建前にして、実際には財政再建やら金融市場の安定化をサポートする為にも必要という認識でやっているのでしょうが、まあ金融緩和を継続しているけれども、これが裁量を排して運営しているとは普通思えませんわなあ)で、そんな政策を信奉していないとダメとかいうのであればそれはお前の方がおかしいわと存じますが、まさか山本先生は未だにそのようなカビの生えた政策フレームワークを信奉していないから反対とか仰っているのではないですよね。

大体からして、「インフレ目標政策に反対」だと、今の日銀の金融政策の枠組みが「インフレターゲットと呼んで頂いてもそんなに変わりはない(ただしフレキシブルインフレーションターゲットという話だよ、というころざんすわな)」という事なのですから、「日銀寄り」にならないと思うのですけどねえ、あっはっは。

つーことで、山本先生の反対運動の理由がどう見ても言いがかりというか、河野さんの主張のどこをどう理解すると「インフレ目標に反対」になるのかさっぱり分からない次第で、ゴロツキの言いがかりかよっつーレベルにしか思えない訳でございまして、まあ何というか「非理法権天」とかいう言葉がございますが、非は理に勝てず、理は法に勝てず、法は権に勝てず、権は天に勝てずと言いまして、まあ無理矢理の話であっても権によってああだこうだと出来るでしょうが、天道恐るべしとか思うのですけれどもねえ。

いやあのですな、公明党の場合は政策への考えがどうのこうのとかいう話ですが、山本先生の場合はどう見ても言いがかり(あるいは曲解)というのが凄いとしか思えない次第で、そんなんで良いのか自由民主党。

まあ何ですな、そこまで言うなら山本先生におかれましては是非とも日銀の審議委員になって頂きたく存じます次第。いやマジでそういう方が1名入ればそれはそれで(ちゃんと議論が成立すればの話ですけれども)面白い議論が見れて宜しいんじゃないでしょうか。

・・・・・・・しかしまあそもそもの話を考えると日銀正副総裁人事においてお縄一派がかつて政局にしようとして、財金分離とか難癖つけたのが事の発端(しかも自分たちがあれだけ財金分離とか言ってた癖にいざ与党になったらお縄一派の皆さんが金融政策にクレクレ言いまくるという見苦しさよ)で、その仕返しを受けているとも言えるのですけれども、野党生活が長くなって公明党や自民党までが同じような話を始めるようになるとは誠に残念至極でございまして、次の選挙で投票する先が益々無くなって参りましたとしか言いようがない(共産党は狂信的反原発なのでアンチビジネスにも程があるのでアタクシ的にはオミット)次第でございますなあという事でorzorz

まあしかしこの騒ぎで財界人とか審議委員の引き受け手が益々無くなりそうですなあ。

#ああ期初から悪態になってしまいました

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2012/03/26

○日銀次期審議委員候補関連である

まあ金曜は関連ネタが色々とあった訳ですのでかいつまんで少々(と言いつつちょっと長いかも)。

・これは日経新聞の粗相なのか他に意味でもあったのか

http://www.nikkei.com/news/latest/article/g=96958A9C93819591E0E0E2E3808DE0E0E2E1E0E2E3E09797E0E2E2E2
日銀審議委員に伊藤忠の渡辺氏 政府が調整
2012/3/23 2:00 情報元 日本経済新聞 電子版

『政府は22日、日銀審議委員に伊藤忠商事の渡辺康平相談役(62)を起用する方向で調整に入った。亀崎英敏(68)、中村清次(69)両審議委員が4月4日に任期を迎えるため、その後任の1人に充てる。衆参両院の同意を得たうえで任命する。(以下の記事は有料版になります)』(上記URLより)

・・・・・・まあ例によって例の如く日経本紙を購読していない(本当です)あたくしなので(つーか駄文書いていると朝刊読む暇はない^^)このニュース河野龍太郎さんのノミネートのニュース出てから気が付くというアホウな事態だったのはさておきまして(汗)。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M1BFUN6JTSE801.html
自民・鶴保氏:渡辺氏の提示はあり得ない−日銀審議委員(訂正)
更新日時: 2012/03/23 11:20 JST

『3月23日(ブルームバーグ):鶴保庸介自民党参院議員(議院運営委員長)は23日午前、4月で期限が切れる日本銀行の審議委員2人の後任候補のひとりとして一部報道で伝えられた伊藤忠相談役の渡辺康平氏について、提示はあり得ないと述べた。その上で、残りの審議委員人事は来週中に提示があってほしいと語った。』(上記URLより)

ということで、前回の総裁人事で散々ゴタゴタした教訓だか何だか知りませんが、「日銀審議委員の人事に関して(なのか国会同意人事全般なのかは存じませんが)、国会提示前に候補者名が報道されるようなのは以ての外であって、そのような事が有った場合にはその人事の提示は行わない」というような話になっていた筈でございまして、まあ今回鶴保さんがこのように指摘したのはその辺りを踏まえての事となっているようです。

ちなみに渡邉康平さんと表記する方が正しいようですが、昨年の3月末まで取締役副会長でいらっしゃったようです。副会長時点での役員プロフィールが伊藤忠商事さんのサイトに載っていたのでその時のリンクと役員退任時のリリースのリンクを。

http://www.itochu.co.jp/ja/ir/doc/disclosure/files/2011/pdf/ITC110202_j.pdf
http://www.itochu.co.jp/ja/about/officer/watanabe.html

まあ何ですな、伊藤忠商事で副会長までお勤めになられた方からしたら罰ゲームにも程がある処遇でのお仕事で、まあ財界の方からしたら懲罰召集だろうにというのをよくぞお引き受け下さいましたという所だったのですが、今回の日経新聞の先走り報道で全ておじゃんになってしまいました罠。

まあ普通こういうの仮に聞いても上記のような事情があるんだから報道自粛するだろと思う次第でして、日経新聞がこの人事を潰そうという意図をもって書いたにしても、単にそういうのすっかり忘れて「スクープだ!!!」と喜び勇んで絶賛勇み足だとしても、まあいずれにせよこれは罪万死に値する行為でありまして、この記事書いた記者とデスクと整理部(になるのか?)は可及的速やかに豆腐の角に頭をぶつけて(以下罵倒文言が続くので自主規制)。


・しかし財界の候補が2名出なかったとはこれまたヒドス

でまあ残りの1名が河野龍太郎さんというのは既に皆様ご案内の通りで、河野さんに関しましての雑感その他は後で書きますが、今回の人事案のニュースを見て一番驚愕したのは「財界で日銀審議委員を引き受けて下さる方がそんなに居ないのかよ」という所でございます。

そらまあ資産は全部公開させられて株やら売買出来ない(信託して凍結モードにするかその前に全部売ってしまうかの2択)とか、通常の政策委員会がこれまたアホのように忙しく(通常の政策委員会が毎週実施されていてその決定事項とかも日銀のサイトに出てたりしますけど通常の日銀の業務執行に関する細かい話が多いんじゃなかったでしたっけ)こき使われるわ、好き勝手言い放題という訳にも行かないわ、おまけに国会に呼び出されたりして何だかんだと言われるわ。しかもそれこそ大企業の経営トップに近い位置にいる人が普通に受けている待遇から見たら半値以下(つーか3分の1以下とかでしょ)の年俸だわとか、そらまあ色々とアレな待遇ではございます。

さらに最近は政治家方面から難癖つけるのがいて叩かれまくるわとなれば、よほど金融政策に興味でもない限り普通は尻込みするわと思うのですが、それにしても今回1名の候補者が河野さんになったというのは、よーするに財界人で引き受け手がろくすっぽ居ないという事で、何だかそれも残念というか困ったもんだという感じではございます。河野さんがどうのこうの(駄洒落では無い^^)という以前に、あたくし第一報を見た時にそっちを先に思ったのでございますよ、はい。


・で、河野龍太郎さんとな

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M1BEFE6KLVR601.html
日銀審議委員にBNPパリバの河野龍太郎氏提示−国会同意人事 (1)
更新日時: 2012/03/23 18:11 JST

河野さんと言えば「金融政策の理論と実践」(アラン・ブラインダー著、河野龍太郎、前田栄治訳、東洋経済新報社 ISBN4-492-65260-4 C3033たぶんもう絶版、初版は1999年12月30日)っつーのをあたくし昔購入した(のは良いのだが弟子の誰かに貸したまま行方不明なのでこれ読んだ身に覚えのある弟子は良い子だから返しに来なさい^^)のでお名前を存じ上げていたりしますし、まあ当然ながらBNPパリバに現在いらっしゃるのでレポートなどは拝読したりしとりますです、はい。

でですな、河野さんはまあ「リサーチ系」という感じで、そらまあ市場の中の人ではございますが、市場現場労務者的な感じとはまた対極にいらっしゃるという印象でございまして(あくまでもあたくしの印象なので違っていたら謹んで訂正しますが)、市場からノミネートされたというよりは総研みたいな所からノミネートされた的なイメージの方を感じますです、いやまあ別にそれは文句言ってる訳では無くてそういう感じですねえというだけの話ですけど。

んでもって河野さんのレポートではそのまあオペの細かい話だとか調節技術の話だとかというのに関しては基本的にスルーという感じだったと思いまして、同じ「証券会社のストラテジスト・エコノミスト」の範疇として以前いらっしゃった水野温氏元審議委員とはまあタイプが違うかなあという所でございます。まあ非伝統的政策を実施とか、危機対応とかの場合って結構この調節技術の細かい話とかのようなオペレーショナルな部分ってひじょーに重要な話になってくるのですが、まあそもそもエコノミスト・ストラテジストという範疇の人で調節技術の細かいマニアックな話に興味および土地勘のある方の方が珍しいのでまー普通ちゃあ普通なのですが、金融政策の技術論で執行部と対抗できるような人も居てほしいかな(ちなみに言うと昔の決定会合の議事録(議事要旨では無い)を見ると過去においては武富さんとか技術論になった時の発言内容が凄い^^)とは存じますけどにゃ。

まーレポートとか拝読する限りにおいて、普通にちゃんとした話を展開する方との印象がございますので、まあ無難な所に落ち着いたという感じではあるのですが、いわゆる市場の何とかストの皆様の中ではやや若い(つーか上の人が全然変わらないから昭和62年の河野さんが若い部類になるのですが)のでほほーという感じですな。

ちなみに、『河野氏は1964年生まれで愛媛県出身。1987年に横浜国立大学卒業後は大和投資顧問や第一生命経済研究所などの民間金融機関でエコノミストとしてキャリアを積み、2000年より現職。』(さっきのブルームバーグ記事より)ということですが、昭和62年住友銀行入行で、これで何と審議委員に住友2名(ってまあ河野さんを捕まえて住友銀行という人はいませんか^^)ですかそうですかというのもアレですが、亀崎審議委員が横浜国立大学出身でして、ついに審議委員に横国の系譜が出来ましたかという事で胸熱(違)。


・ところでこの人たちはいったい何をやっておられた&おられるのかしら

ちょっと前のニュースでネタにもしましたが。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M071551A74E901.html
民主・馬淵氏:次期日銀審議委員にリフレ派登用を−インタビュー(1)
更新日時: 2012/03/01 17:27 JST

何かこの時は物凄い鼻息でいろいろな提言(どう見てもただの金融政策に関する難癖と干渉にしか見えなかったか)をした上に『審議委員に望ましい人としては、これまでの研究会での議論で、「社長経験者、円高や世界経済の中で輸出を中心にやっている産業で痛みの分かる人」という意見が出たという。』(上記インタビュー記事より)とか何とかご人選をしたかのようなお話をしておられたようなのですが、そもそも新聞に記事出たから潰れちゃいましたが渡辺さんにしても商社の方ですから「輸出を中心にやってる産業」という訳でも無いですし、結局おまいら言うだけ番長で自分たちが審議委員候補としてふさわしい人(「やりたい」人ではありません)を探して来て説得するとかいうような最も大事だけど面倒かつ大変なプロセスは自分たちでやらないで文句だけ垂れる評論家かよという所で、まあ何だかなという感じです。


で、まあ何か反対している人もおいでのようですが、さっきの河野さん提示のニュース記事の真ん中辺りなんですけどね(URL再掲します)。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M1BEFE6KLVR601.html
日銀審議委員にBNPパリバの河野龍太郎氏提示−国会同意人事 (1)
更新日時: 2012/03/23 18:11 JST

『河野氏は9日付の同記事で、日本経済が停滞しているのは、@少子高齢化に伴う働き手の減少でトレンド成長率そのものが低下しているA社会保障制度の持続可能性に対する疑念から現役世代が消費を抑制しているB財政赤字拡大で民間の貯蓄が食い潰され、設備投資が抑制されている−ことなど構造問題が主な原因であると指摘。その上で「日銀が政策目標として『物価安定』が与えられている以上、これらの構造問題や円高が引き起こすデフレ圧力を可能な限り吸収することは日銀の責務であるが、構造問題の解決そのものは金融政策で対応できるわけではない」としている。』(上記URL記事より、以下同様)

『安易な追加緩和は不適切』

『河野氏はさらに、「ゼロ金利政策や国債購入政策の長期化・固定化が、銀行行動を通じ、財政赤字のスムーズなファイナンスを可能にすることで、間接的だが、金融政策もトレンド成長率の回復を阻害している可能性がある」と指摘。「大きなデフレショックが訪れた際には金融政策で対応しなければならないが、そもそも政策を長期化・固定化させることの副作用は無視し得ないし、またショックが小さい場合、安易な追加緩和も不適切」とコメントしている。』

という話をしていまして、まあ追加緩和を安易に拡大するのはどうなのか、というような話をしているのですが、何故か山本幸三先生に掛かると・・・・・

『自民党の山本幸三衆院議員は河野氏について、ブルームバーグの取材に対し「量的緩和やインフレ目標政策に否定的な人だから、自民党は反対しなければいけない。参院で否決すべきである。いま日銀審議委員に必要な人材はリフレ派だ」と述べた。』

となるのですが、前半の河野さんの主張のまとめを読んでも「量的緩和やインフレ目標政策に否定的」とするのはちょっと乱暴な端折り方に見えます罠。

ちなみにまあ河野さんの2月20日のレポートとか引っ張り出して読んでみましたが、「積極的な金融緩和の継続に対する副作用が大きくなっている」という話はしていますが、じゃあ今の緩和政策を減らすのかという話をしているかと言うと、別に今すぐそうしろ的な話をして居る訳でも無く。『構造調整を先送りするための言い訳として追加緩和が要求されているように思われてならない。』という結語でレポートを締めているので、まあそういう意味では政治家先生には耳が痛いような気もしますがね(^^)。

現状「安易な追加緩和を野放図に拡大、固定化するな」という話と「量的緩和に否定的」というのは話の次元が合ってないだろと思う次第で、反対するにしてもあーた人の主張の一部を拡大解釈して反対というのも何ですなあと言う所ではございます。

#まあ積極追加緩和前のめり派が必要と言いたいんでしょうけれども

つーか「リフレ派が必要」なら中原伸之元審議委員の著書によりますと審議委員の打診をかつてされたものの「70歳まで大学教授をやっていたい」と言って審議委員をお断りされたとの事であらさられ、そうやってお断りはしながらも著書などでは日銀が極悪で社会の敵で死んで良しみたいな言説だけは熱心にしておられるという大変に立派なお方でいらっしゃられるどこぞの大学の先生の首に縄つけて引っ張ってこられたら良いのではないでしょうか。

『同党の財務金融部会長で「シャドウ・キャビネット(影の内閣)」財務相を務める西村康稔衆院議員も「反対の声が出ているので、慎重に検討したい」と語った。』

この方も何か以前日銀総裁の給与と財務事務次官の給与を比較して高いだの安いだのという話をするというようなアレなお方(これまた昨年の11月にネタにした訳ですが)ですが、何だか自民党もこの調子となると、民主党はもとよりダメでみんなの党は論外で大阪維新とかこっちに来んなと考えますと次の選挙投票する政党が益々あの辺とかその辺とかしか残らなくなって来てるんですけどねえ(吐息)と話が逸れましたが、まあ何なんでしょうねえという感じ。

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2008/10/27

○堀井理事の講演

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0810b.pdf
Global Operations Managers' Conferenceにおける堀井理事挨拶10月16日のお話ですけれども、『国際金融不安の暫定的インプリケーション』という部分についてちと引用を。

『実際、昨年夏以降に国際金融不安が顕現化した後も、外国為替市場については、市場の抵抗力(resiliency)を評価する向きが大勢でした。つまり、初期にはエマージング市場への資金シフト、最近では米国へのリパトリといった形で、クロスボーダーの資金フローが方向を変えつつ増勢を強めたにも拘らず、外国為替取引は総じて大きな問題なく秩序だって執行されてきました。』

10月16日のお話でしたからここは突っ込みません(^^)。

『もっとも、為替スワップ市場では、市場流動性の低下が目立っています。つまり、取引レートが不安定化するだけでなく、取引自体がしばしば困難となっている訳です。これは、カウンターパーティ・リスクへの意識への高まりに伴って、短期金融市場の機能が損なわれた結果、為替スワップ市場での「価格発見」が困難になったことによるものです。』

これ重要な論点でして、結局のところはポールソンのアホウがリーマンを突然法的にこかして決済取引を大混乱させてしまい、通常の売買取引などにおける決済リスクへの警戒レベルを大きく引き上げさせてしまった事が影響しとるとしか申し上げようがございませんですわな。

『このため、ある通貨の資金を調達した上で、為替スワップ取引を通じて、別の通貨の資金調達に充てることが難しくなり、一部のグローバルな金融機関による資金調達に問題が生じました。こうした資金調達の問題は、米ドルにおいて最も顕著に生じています。世界中の中央銀行が時差を超えてドル資金を供給しているのはこのためです。』

欧州におけるドル資金もそうですけど、東京でも取引枠を縮小する動きはありますので、まあ日本でも影響してるでしょと思う訳ですが。ついでに脱線すると、CPレートなんてその煽りを食らっている側面がごく一部かもしれないけども有りそうな希ガス。

『しかも、足許では、為替スワップ以外の外国為替取引に関しても、取引高が高水準で推移する中でもビッド・アスク・スプレッドが拡大するなど、市場流動性の低下の兆しを指摘する向きがみられるようになっています。』

左様でございますな。で、この挨拶の後からそれは拡大してるのではないかと勝手に想像(想像の世界ですが)するのですが。で、この先途中をちょっと飛ばしまして、さっきの論点部分の話の続きを。

『為替スワップを中心とする外国為替市場の流動性の低下は、市場機能の維持に関わる論点を少なからず含んでいます。』

ではどういう論点があるかという話。

『例えば、議論の前提として、近年成長した参加者や取引手法が、市場流動性にそもそも如何なるサポートまたはストレスを齎していたかを整理することは有用です。』

『今回の市場機能の低下に関しては、外国為替市場の基本的枠組みであるブローキングやマーケット・メイキングが受けた影響について、市場機能の頑健性という視点から考えることが必要です。また、日本銀行を含む主要国の中央銀行は米ドル資金供給オペを実施していますが、為替スワップ市場への効果についても伺いたいと思います。』

『決済リスクへの対応も劣らず重要です。ストレスの下で一定の市場機能を維持しうる外国為替市場を展望する上では、主要通貨だけでなくエマージング通貨も含めて、外国為替取引に係る決済リスクの削減を進めることの重要さは一段と増しています。』

たぶん為替の場合は債券と違ってモノの受渡という面ではフェイルのようなややこしい話はない(フェイルじゃなくてデフォルトですわな)と思うのですが、内外での受渡タイミングの問題とか、フォワード取引の問題とか、そっちの方が債券市場よりもややこしい論点になるんでしょうな。

まあちょっと気になったのでクリップしてみました。

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2008/06/06

○渡辺前財務官のロイターインタビューをマクラに雑談少々

昨日の13時15分配信の日本語版ロイターでは渡辺前財務官のインタビュー記事が掲載されておりますが、資源と食糧価格が上昇する中での金融政策運営の難しさについて指摘しています。

以下引用は6月5日13時15分配信の日本語版ロイター記事より。

『[東京 5日 ロイター]渡辺博史前財務官(一橋大大学院教授)は4日、ロイターとのインタビューの中で、過剰流動性を引き金とした世界的なインフレリスクへの警戒感を示し、「金利を上げるべき状況であるにもかかわらず、最大の金融市場である米国が逆向きになって、インフレに対するツールが使えないインフレ懸念が、今世界市場で起こりつつある」と指摘。「金融市場が足かせになって金融政策が使えない状態を早く解消したほうが良い」と警告した。』

『金融当局・財政当局に対しては、「オーバーリアクトすると市場が逆に大きく振れる」点に注意する必要があるとし、同時に「インフレをにらんだ金融スタンス」にも配慮する必要があるとした。「本当は上げなければならないタイミングに近づいてきていると思う」としながらも、「すぐ金利が上がる」と受け止められることを警戒。「インフレをにらんだ金融スタンス」と早期利上げが直結するものではないと強調した。』

インタビューの詳細はこの日の夕方あたりに配信されたみたいなのですが手元にちょっとないので勘弁というところですが(汗)、まあ要するに米国頑張ってねというところなんですかねえ。

その点で言えば、バーナンキ議長が昨日(というか一昨日というか)力強く懸念(ナンノコッチャ)したドル安問題ですけれども、ドル安から来る商品価格上昇の中でサブプライムだの何だのという流れになっちゃって、米資産離れみたいな話になっちゃったりしちゃった日には、引き締めりゃ景気死亡だし緩和したらインフレドル安進行で、どっちも大変ってなりますから、ドル安で商品価格上昇となっている位のうちに為替面で手を打って置くってお話になるんでしょうかね。


そんな中でサブプライム問題に一筋の光が!昨日14時47分配信の時事メインニュースによりますと・・・・

『14:47 05Jun08 JIJI-◎サブプライム、影響長期化を懸念=米地銀破たん、「第2幕」も-榊原元財務官』

・・・これは第2幕ございませんという理解で宜しいですよね(^^)。


まあしかしここもとそこらじゅうでインフレ懸念インフレ懸念というヘッドラインばかりでして、インフレ懸念の無い(かどーかは知らんけど本気でインフレ大変ですって話にはまだなってないでしょ)日本ですけれども、周囲に煽られやすいという仕様になっている市場ちゃんというのは妙にネタにして走っちゃいますよね。大体ニューエコノミーだの何だのの時代長くて参加者のインフレへの精神的耐性は低いし。

本邦的には、ドル安懸念モードになってくれれば株式市場的には好反応するでしょうし、それとは別ですが最近の東南アジア市場が何となく通貨怪しげモードとかになっているのが、逃避先としての日本株選好になってるんじゃないかって気がするのもあって、まあ株価はあんまりさがらなさそう(当たるかどうかは無担保無保証)になってて、どうも経済のハードデータと市場の乖離は暫く続くんでしょうかねえという風情ですにゃ。どうせなら経済のハードデータが市場に鞘寄せされれば良いのに(それは無理)。

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2008/06/04

○池尾先生の所信聴取

ブルームバーグ(ネット版)から。
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=90003008&sid=aHy7Q8e72svc&refer=jp_politics

上記記事より池尾先生の発言要旨を引用致しますと。

『現下の日本経済については、主として海外発の要因で減速を余儀なくされていると思う。もっとも、もう少し長い目でとらえた場合は、日本経済の成長基盤は数年前よりは格段に強くなっている。企業部門では債務、人員、設備の過剰、いわゆる3つの過剰などの構造的な問題が解消に向かった。また、金融システムの安定も基本的には回復したと考えている 』

ということでして、参議院のほうでの質疑応答では『金利正常化の条件が基本的には整いつつある』とも発言(複数ベンダーが報道、ブルームバーグのネット版ではあたくし見つけられませんでしたすいません)しておりまして、基本的な経済の見方に関してはそんなに弱気ではないようで。

『金融政策の波及等には時間的なラグが存在することを踏まえると、フォワード・ルッキング、つまり先を見て行動することは不可欠だし、その際にも、不確実性を考慮に入れた慎重な対応をとることが望ましいことは理論的にもよく知られている。とりわけ、現在のような微妙な局面では、リスクに注目することは全く当然のことだと考えている 』

ただスタンスとしては現在は中立状態が当然のことという話ですので、基本的にタカとかハトとかという色分けはしにくい感じですね。一方で金融システム論とかに強いお方ですので・・・・

『私自身が特に重要だと考えていることを最後に付け加えたい。それは、金融システムの安定性、健全性を維持することの大切さだ。もちろんこれは言うまでもないことかもしれない。日銀法が日銀の使命として、物価の安定と並んで信用秩序の維持を規定しているのは、こうした認識があるからだと思う』

ということで、日本ではまあそんなに深刻な話にはなってませんが、欧米があの状況でございますので、池尾先生のご提言などを期待したいと思いますです。

参議院ではインタゲ導入がどうのこうのとかいう話や、景気減速と物価高に対応する金融政策がどうのという話もあったのですが、前者に関してはまあ一般的なお話(ただし基本的にあまり肯定的でもなさそう)で、後者に関してはコストプッシュ型の物価上昇を金融政策で押さえようとするとスタグフレーションになっちゃいますよってお話をしてますので、まあ無難ですわなという所で。

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2008/05/28

○調査統計局長の指摘

これは一昨日のお話でして、多分ロイターとかブルームバーグとかのネットにも記事があると思うのですが探すヒマが無かったので日本語版ロイターの記事より。以下引用は5月26日17時26分日本語版ロイター配信記事によります。

『日銀の門間一夫調査統計局長は26日、日本経済新聞社主催の景気討論会に出席し、日本経済について「実質購買力の移転を考えると、この2四半期くらいはかなり明確に減速している。ゼロ成長に近いところで走っている」と述べ、エネルギー・原材料価格高騰の影響などから足もと減速しているとの認識をあらためて示した。先行きについても、当面減速が続くが、その後は潜在成長率並みの緩やかな成長経路をたどるとの見解を繰り返した。』

『門間局長は、潜在成長率並みの成長経路をたどる前提として、1)世界経済の拡大基調が崩れない、2)原材料価格は基調としては幾分上昇気味であっても、急激には上昇しない(コストプッシュが緩やかなっていく−の2点を指摘。これらは「非常に不確実性が高い」として、「今後の世界経済と日本経済は、相応のリスクを抱えたまま走っていく」との見方を示した。』

ということで、「かなり明確に減速」と減速を強調した上に、記事によりますと門間局長は「不確実性」という言葉を何度も使い、不確実な状況であることを強調しています。展望レポートの基本的見解部分よりも一層慎重なスタンスですねって所かと思います。特に後半の成長経路をたどる前提に「非常に不確実性が高い」と言及してますが、要するにナローパスですよってお話ですよね。うーん慎重。

『門間局長は、「きょうは何度も『不確実性』という言葉を使ったが、これほど今年度あるいはもう少し先までみても、経済・物価情勢を見通すのは難しい」と述べ、「これだけ不確実性が高い状況では、上下両方向のリスクを丹念に点検しながら、それらの動向に対して謙虚に判断していくことが大事。今の時点で特定の方向性を持たないことが一番大事なことだ」と強調した。』

前総裁への悪態ですね、わかります(違)。

なお、個別項目の話とかサブプライム問題に関する話とかもあるのですが、それに関しては当該記事をご覧いただければ(というか引用のタイプ打ちが疲れるから勘弁^^)と。

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2008/04/25

○翁邦雄さんのロイターインタビュー

昨日はこんなのがございました。
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-31485220080424
インタビュー:白川新総裁は柔軟対応が持ち味=前日銀金研所長

翁先生といえば昔々その昔に翁さんの書いた(確か)「金融政策」って題のそんなに厚くない本を書店でみつけて、当時はまあ小僧に毛が生えたようなもんでポジション持ってきゃあきゃあ言ってた状態でしたが、金融調節に関する説明とか物凄く腑に落ちながら(まあそういう立場の方が書いているのだから当然ですが)読んで、金融政策のお話に興味を持つようになってしまったというのが個人的にはございます(^^)。ちなみにその本はたぶん絶版になっていまして、大昔勤務してた会社の弟子に貸したままどこか誰かのデスクか本棚に鎮座ましましているものと思われるので現物はいずこへ。

などという話は兎も角として。

『[東京 24日 ロイター] 翁邦雄・前日銀金融研究所所長(現・中央大学大学院特任教授)はロイターとのインタビューで、白川方明日銀総裁の政策スタンスについて、理念にこだわらずに局面変化に応じて柔軟に対応することが持ち味との見方を示した。』

『タカ派的な発言が目立つことについては、上ぶれリスクもありうるとのメッセージであり、金利正常化路線へのこだわりを示すシグナルではないと指摘。白川総裁は市場機能を生かす政策が基本にあり、効果の乏しい利下げではなく時間軸効果などを狙った政策を選択する可能性が高いとの見方を示した。』

ま、メディアなんかでは「白川さんはタカ派」という言われ方してますけれども、実際に白川さんの国会などでの発言に対する市場の反応っぷりやら、ちゃんとした本職ウォッチャーさんたち(何とかストの肩書き持ってる人であってもかなりエエカゲンな解釈をする人もいるので要注意です)の解釈を見ておりますと、「自分はそんなに白川さんをタカ派とは思わないけど、まあそういう言われ方をしてるから市場もそういう反応するかもしれませんね」と考えながら動いているって所ですか(^^)。

『長年、白川総裁をよく知る立場から翁氏は「福井前総裁とは実務的である点では共通しているが、福井前総裁が理念型であるのに対して、白川総裁は理念や学派に偏らず、柔軟に予断を持たずに対応することが持ち味だ」との見方を示す。過去の経験を振り返っても、現実の局面が予想以上に悪化した場合、それまでの対応を反省して路線転換を図ってきた柔軟性があるとも指摘。』

という翁さんの指摘は恐らく国内で金利物やってる市場の中でも大体そんな感じで思っている人は多いと思うのですが、ガイジンさんとかは何をどう考えているのか知りませんが、(たぶん知恵袋が穴の開いたズタブクロだからだと思いますけど)かなり斜め上の行動をする上に動かすロットも妙にでかいんで、こと金融政策ネタに関しては政策の読み筋もさることながら、世の中どう思っているのかを気にしないといけないというのが何ともであります。

で、金融政策の読みに関してですが。

『「まず日本は政策金利がかなり低い水準にあるという現状がある。その上で、足元の金利を動かすことが有効なのか、それとも先行きへのシグナルを出すのが有効なのかという考え方がある」と指摘。事態の悪化に対応して利下げをしても、一時的なものにとどまり、その後の政策の方向性が読みづらい状況になれば、経済に影響する長めの金利は低下しない可能性がある。一方、足元の金利を下げずに、当分無理はしないというメッセージを出すなど時間軸効果を狙ったほうが市場の安定につながり効果があるとの見方を示した。』

緩和しても「それで打ち止め」という風になれば超足元以外の金利は上昇しやすくなりますわなというのは次回利下げも確実視されている米国の動きを見れば一目瞭然っすから。

「何となく時間軸」みたいな感じになるのが次の金融政策に関するお題で、次の次はその時間軸がいつまでなのって所になるんじゃないでしょうか。無事にこのままサブプラ問題が大爆発せずに景気悪化が回避できればの話ですけど。

『一方、食品や原油、資源などの価格高騰でインフレ懸念が強まったとしても、「一次産品の価格上昇を無理に抑え込むような短期的な引き締め政策はショックや調整が大きくなることから、無理な対応はしない」との見方を示した。』

『また、白川総裁が長い目でみた物価の安定を重視する立場であることを強調していることについて翁氏は「例えばバブル後の消費者物価は10年単位でみてデフレへと変化し、経済に大きな打撃を与えた。短期的な物価安定よりも、長期で見て物価が安定することを目指したもの」と解説。したがって「白川総裁は短期的な物価のレンジを達成するようなインフレターゲティングには懐疑的なスタンスだ」と説明した。』

白川総裁のスタンスに関するあたくしの読み筋(とか言うとえらそうですけど、まあ常識的に見てましてって感じですよ)と同じようなお話でございましたのであたくしとしてはこのインタビュー記事で正直ホッとしましたです、はい(^^)。

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2005/10/11

○中原伸之前審議委員の時事通信インタビュー

金曜の時事メインに記事が出ていたようですが、そのヘッドラインの中に『今の日銀はゼロ金利を解除した5年前と良く似ている』というのがありまして、ゼロ金利解除前後の様子をイマイチ知らないあたくしとしてはそうなのですかというしか感想は無いですけど、景気に関して『悪い金利高とスタグフレーションが最大のリスクだ』というのには頷けるものがございますな。詳しくは時事メイン、あるいは時事通信社刊行の「金融財政」(でしたっけ?ただし一般店頭販売はしてない筈なので詳しくは同社にお問い合わせを)にインタビュー記事が出ると思いますのでそちらをご参照下さいな。(と無責任なあたくし)

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2005/05/20

○これはウケた!政策変更「中原三原則プラスワン」

一昨日の時事通信社「時事メイン」のコラム「金融観測」に「政策変更『中原三原則』の教訓=日銀欠陥は健在?」という記事がございまして、中原伸之元審議委員の披露した「三原則」を敷衍しつつ昨今の政策論議の混迷を辛口批評していた(ちなみに配信時刻は18日の18時24分)。

この「中原三原則」というのが非常に面白かったのでご紹介させていただきます。詳しくは当該記事をご覧下さい(^^)。

日銀の政策変更に関する三原則(By中原伸之元審議委員)

日銀は
(1)突然に
(2)それまでの議論と180度逆の方向に
(3)十分な説明も無しに
政策を決定する。

まさに至言といえましょう。で、同コラムによりますと、中原伸之さんはこの三原則これに量的緩和政策に関連した「プラスワン」というのを指摘されておりまして、できないできないと言ってきた政策を上記三原則に基づいて導入して、「やった後で『効果がない』という原則もある」ということだそうです。

今回の当座預金残高目標引き下げあるいは下限割れ容認論にもまるっきり当てはまる所が誠に香ばしいものがございますわな。もう血圧が上昇するよりも情けないって気持ちになってしまいます。

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2005/04/19

○まぁそりゃそうなんですがタイミングが・・・・

理論派で鳴らした(つーか今でも理論派ですが)日本銀行前副総裁の山口泰さんが昨日都内のどこぞで講演をしていたそうです。情報ベンダーにちょっとだけ記事がでてフラッシュを打たれていたのですが、記事によると話の内容はこんなところ。

・量的緩和政策の「量」そのものには意味が無かった(ゼロ金利+時間軸には意味がある)
・札割れ対策で長期国債の買入を増やすと、反対に売却する場合にインパクトが相当に激烈になると思うので日銀が長期国債買入増額に慎重なのは理解できる
・最近の福井総裁発言などを踏まえると日銀は札割れがなくても景気が回復するのであれば当座預金残高目標の引き下げを考えているかもしれない
・量的緩和の出口に向かうと言っても、その先にインフレ的経済や高金利の経済が待っているわけではなく、超低金利が続く可能性が高い
・デフレ下でも景気回復はしている

3番目の話以外は昨年8月にこちらでもとりあげました時事通信社発行の月間誌「金融財政」でのインタビューで同じようなお話をしておりましたな。3番目の点に関してはまぁあたくしも同じ見解だったりする(やるべきではないと思うのと、日銀はこうやるでしょうという見通しは別問題^^)のですが、果たして市場はどこまで織り込んでいるのか。株式市場やら為替市場(はそもそも反応しなさそうですが)なんかはどう反応するのかは未知数の段階ですわな。日銀としてはどうやって織り込ませるのか難しいでしょうなぁってところですな。

ま、それは良いのですが、株式市場が実に怪しい状況になっているさなかに日銀方面から聞こえてくる話は当座預金残高の引き下げだの景気回復だのというものばかりですな。間違って株式市場が腰折れ状態になって景気も怪しくなってきた時に大丈夫なんでしょうか?

山口前副総裁の講演自体は事前準備していることなんで株式市況がゲロゲロになっているから内容いじるって訳には行かないのは判りますが、何ちゅうかタイミングが宜しくありませんでしたなぁ。


○しかし当座預金残高目標引き下げして大丈夫か?

という話になる訳ですよ。どうもここもとの株式市場の下落に関してもそんなに気にしている雰囲気もないし、山口前副総裁の講演を引くまでもなく日銀は相変わらず景気には強気で消費者物価だけは下がらないですねってスタンス。昨日の信託大会での福井総裁挨拶(武藤副総裁代読ですが)でもこんな感じ。

『景気回復の基本的なメカニズムはしっかりと維持されており、最近では、生産も横這い圏内に持ち直しております。わが国経済は、遠からず「踊り場」を脱し、持続性のある成長軌道に向けて回復を続けていくものとみています。』

『この4月1日から予定通りペイオフが全面解禁され、わが国の金融システムは新しい時代を迎えることとなりました。この間、預金者や金融機関の動向は落ち着いたものとなっており、ペイオフ全面解禁は円滑に実施に移すことができたと思います。』

相変わらず強気モードでありますな。そういえばペイオフ全面解禁が尻抜けだという話を特集する積りだったのに調べ物をする余裕が無くてそのまま放置になってましたな。興味深いエントリーが昨日の「本石町日記」にありますんでご覧下さいませ(とまた手抜き)。

それはともかくとして、当座預金残高も「量」に関しては、既に当座預金残高目標引き下げ議論で「テクニカルな減額」だの「流動性対応分の減額」だのという話をしている訳ですんで、山口前副総裁のように断言はしませんが、実質的に「量の増額=金融緩和」と言っていた理屈がなし崩し的に骨抜きになっているのが現状でありまして、仮に景気がマジで腰折れモードになった場合に日銀として次に打つ手は無くなっているという状況になりつつありますわな。ま〜面の皮が物凄く厚ければいけしゃあしゃあと「量を増やしたから金融緩和」とか言って当座預金残高目標増額でお茶を濁すのかもしれませんが、最早そうなったら金融政策支離滅裂ですわな(^^)。

という訳で、日銀の中の人は結構ドキドキしているのではないかと思う今日この頃でありました。

(4月20日補足エントリ)

○山口前副総裁の講演関連

一昨日の山口副総裁の講演は日本証券アナリスト協会主催だったそうで(最近お知らせ郵便が廃止になったので何があるのか知らん。一々アナリスト協会のWebなんぞ見るかっちゅーの)、講演でのお話に関しては早速東短リサーチの加藤氏がレポートを出しております。また「本石町日記」氏が「会場が一瞬静まり返った」質疑応答場面アップしておりますんで、まぁそちらをご参照されたしという所で。必見です。

昨日も申し上げましたが、金融政策っつーか量的緩和政策の評価に関する山口さんの発言というか見解に関しては、(講演に出席した人によりますと)ご本人も「インタビュー記事も読んでね」っていうような発言をしておられたようですので、詳しい見解に関してはあたくしの昔のドラめもん(えーっと昨年の8月前半に3回ほど書きましたんで)をお読みくださいと手前味噌(^^)。記事そのものをお読みになりたい方は時事通信社にお問い合わせ下さると吉かと。バックナンバーとかあるのか知りませんが。


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2004/11/09

○中原伸之元審議委員の講演

いつのまにやら金融庁顧問をやっておられる元日本銀行政策審議委員の中原伸之さんが都内で講演をやっていたようであります。まぁ市場へのインパクトという意味ではあまり関係ない話ではありますが。

中原伸之さんといえば日銀審議委員の時に景気弱気の急先鋒でいわゆる非伝統的政策の提唱で有名なお方でした。結果としてみれば中原伸之さんの主張がかなり取り入れられた政策運営を日銀が行っているので、そ〜ゆ〜意味では慧眼の持ち主でありました。ただ、惜しむらくは氏の主張っつーのがどうも金融政策の伝統的な立場に対して無用に攻撃的というか喧嘩売りまくりの印象を強く与えるのと、政策運営をどうするかって話になると提言内容が少々極論のきらいがあったので、当時は「ふ〜ん」という感じで見られていたのが残念でしたな。

で、この講演なのですが、残念ながら講演テキストを拝見しておりませんので、情報ベンダーが打ったフラッシュを脳内メモリーから書き出しますとこんな発言がありました。

「景気は下降局面にあり、次に景気の底を確認してから量的緩和政策の解除を検討すべき」
「緩和政策解除に関しては地方の土地価格や銀行貸出の増加傾向なども確認する必要がある」

「景気下降局面」というのも相変わらず中原伸之さんやりますな〜と思う訳でして、立場的に何を言ってもまぁ無問題な位置なんでいいのかもしれませんが、相変わらずもうちょっと物の言い方があるのではないかと思うわけですな。日銀に対して政策提言する気があるならそんなに直球剛速球で日銀の景気に対する正式見解を全面否定するこたぁねぇと思うのですが(などと悪口雑言三昧のドラめもんに言われたくは無いですな、すいません。)、まぁそれはそれとして。

講演の全文を見ているわけでは無いので想像になるのですが、恐らく中原伸之さんは「循環的に景気が回復しているからと言っても資産デフレが止まるまでは量的緩和政策の解除は時期尚早」と言いたいのではないかな〜と思う訳でして、即ち、一般物価のデフレより大きな問題は資産デフレであってフローよりもストックが問題ではないですか?ということなんでしょうな。それならあたくしも同意。

で、まぁ中原伸之さんの良い所でもあり悪いところでもあったのですが、審議委員時代にこういう話を始めた場合どうなるかと申しますと、もし今このときに審議委員やっていたら「量的緩和のコミットメントにCPIだけでなく地価動向などを加えるべき」と言い出して「それはあまりにも政策としておかしかろう」と言われて話が終わってしまうわけですよこの先生は。

まぁその辺は「総合判断」で何とかしましょうって事になるんでしょうな。


で、何でまた測ったようなタイミングでこんな講演をしているのかは良く判りませんが、まぁ取り敢えず日銀は「量的緩和解除を具体的に検討したいな〜」モードに入っており、政府は「国民負担増キャンペーン」を張っているという「循環的な景気回復ムードに早速煽られている」金融当局と財政当局へ一石を投じていると言う事でも評価に値する講演なのではないかと思う次第であります。

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2004/08/12

お題「山口前副総裁の示唆〜いわゆる2段階解除論に関連して」

「法的拘束力は認めるが、信頼関係が損なわれているので仮処分申請は認めない」ってぇ事はこの国では「法の正義」よりは「やった者勝ち」だという認識で宜しいと言う事な訳ですか。もしくは「力が法」なのかも知れませんな(-_-メ)。

という話はさておきまして、日銀総裁の記者会見も含めまして先日の山口前副総裁の時事通信社インタビューのお話を含めて表題のお話。


○量的緩和政策の出口イメージ

まぁ別に近い話とは思っていないのですが、量的緩和政策の「出口」のイメージとしてあたくしが考えているのは、(1)資金供給オペを絞りながら当座預金残高を減らしていき、(2)所要準備まで当座預金残高が減少した後の無担保コール翌日物金利は(暫定的にゼロ%近傍にするかもしれないが)0.10とか0.15%あたりにして、ロンバード金利で一時的な上昇を抑える。という感じですな。

で、この量的緩和政策の「出口」に関連しては「量的緩和政策の解除」と「無担保コール翌日物金利の誘導目標金利の引き上げ」がセットになるのかならないのかという話があるようです。で、どうも「量的緩和政策の解除の後はゼロ金利政策の期間が入る」という2段階解除論の方が優勢らしい訳です。

先日日経新聞社主催のセミナーで挨拶した福井総裁が時の質疑応答で総裁が「量を減らすということと金利を引き上げていくという2つの側面を合体して考える」という発言をしたのが実は話題になっていたそうで、これを捕まえて「2段階解除論を前面否定したので量的緩和が終了したら短期金利がドカンと上がる」という話になったのも債券相場下落の後付け理由の一つになっていたらしいのですな。


○山口前副総裁の指摘

時事メインの記事によりますと、山口前副総裁のインタビューでこんな質疑があったようです。全文は時事通信社発行の「金融財政」をご覧下さい(と、毎回言っておかないと^^)。

(問)時間軸のコミットメントは「量的緩和の枠組み」に対するもので当座預金残高目標は除外される。物価が下がり気味でも持続的成長によって大きな変化が表れそうな局面では、残高目標の引き下げは行なえるのではないか。

(答)もちろん技術的には可能だ。だが、その政策運営にはほとんど意味はないと思う。当座預金残高を減らし始める、つまり「出口政策」と開始する事は、最終的に金利機能を復活させる事が目標になる。それに至るまでどれくらい時間をかけるのかは重要な判断になるが、結局は30何兆円という当座預金残高を5−6兆円に着実に減らしてゼロ金利という短期市場の状態をプラス金利のゾーンに持っていくことになるのだと思う。

金利機能の復活という事になりますとやはりゼロ金利だと都合が悪いと思う訳ですな。で、2段階解除論に関してもこんな質疑をしています。

(問)解除方法をめぐっては、まず当座預金残高を減らしてゼロ金利状態とし、そして様子を見て金利をプラスにする「二段階解除論」なる説もある。

(答)それは技術的には可能だろう。ただ、基本を言えば、それは「量」の供給自体にどれ位の効果があったかという点の理解にかかっている。私たちが量的緩和を開始した時点では、そこはやってみないと分らない部分で、だからこそ踏み切ったのだが、結果ははっきり出たように思う。日銀は4月の「展望リポート」で量的緩和の効果を強調しているが、良く読みとゼロ金利か低金利の効果だ。つまり現在でも金融緩和の核心は「ゼロ金利プラス時間軸」にあり、そうすると「二段階」は技術的にはともかく論理的には説明が難しい。

(答えの続き)ここで大事なことは、当座預金残高を当初5兆円弱から30数兆円に増やしてきた量的緩和政策そのものの景気押上げ効果、物価押上げ効果というものが本当はどれぐらいあったのか、ということだ。仮にほとんど効果がなかったのだと考えられるならば、比較的短期間に過剰流動性を回収してかまわないことにある。一方、かなりの効果があると認められるならば、徐々にしか吸収オペレーションはできないはずだ。この点、日銀にはぜひ過去3年以上にわたる量的緩和政策のレビューをきちんとやってほしい。

(問)量的緩和の効果はほとんどなく、解除は比較的簡単なのでは

(答)3年余りの経験を見た後では、私の考えもそれに近い。だが、30数兆円は大きな額だし、この吸収をいざ始める時は金融市場の反応を確かめる必要があろう。現実的には、何回かのステップに分けて、足場を踏み固めながら解除せざるを得ないのではないか。実際にどれぐらい時間をかけて、どのような手段で過剰流動性を吸収するのかは、日銀もまだ十分には詰めていないだろう。言わずもがなだか、「出口政策」のあり方は、そのときの経済・物価情勢によって左右去れると考えるのが常識であり、かなりスピードアップしないと間に合わない事もありえるわけで、今の時点では十分に議論しきれない。


長々と引用(記事を転記したので手が疲れた^^送り仮名などの違いは勘弁してちょ)致しましたが、「まず量的緩和の効果」というか「過剰準備になっている過剰部分を上げ下げ(実際には下げてないが)する事に意味があったのか」という点の検証が必要という指摘は仰せの通りであります。

ただ、「量的緩和の強化」と称して実施した「当座預金残高目標の引き上げ」を「政策の変更」としていただけに今更「あれは意味が殆ど無かったので実は茶番でした」とは言いにくいという説は大有りでしてまさに諸刃の剣(^^)。量的緩和政策の本質が「ゼロ金利+時間軸」であるという話は以前須田審議委員もどこぞの講演でお話しておりましたが、量的緩和政策の終了において「量的緩和は終了しますが金利はゼロにします」という話になりますと(時間軸をどうするという問題はありますが)政策としての一貫性はどうなってるの?という話になる訳です。


どうも量的緩和が終了してゼロ金利政策が解除された場合に、前回のゼロ金利解除のイメージから短期金利がいきなり0.25%くらい上昇するというイメージを債券市場関係者は持っているのではないかという風に思うのですが、短期金融市場が見事に破壊されて3年もたっているので「金利機能の復活」をするのも慎重になっていくと思う訳ですよ。その為に、「ゼロ金利解除後の短期金利は0.15%位」ってイメージを最近のあたくしは持っているのですが、実は少数派の意見のようですな。

長期金利のことまで考えますと、本当はいきなり0.25%くらいまで引き上げて「打ち止め感」を出した方がイールドカーブ全体への影響が逆に小さいという話もあるのですが・・・・・・。


量的緩和解除によって財政赤字を反映した長期金利の上昇が起きるという問題についても山口さんコメントしてますが、そちらはまたいずれ。



○福井総裁の「いわゆる合体発言」に関して

前の方で申し上げた「市場の話題になった福井さんの合体発言」でございますが、もともと日銀は「量と金利はコインの裏表の関係」だという認識でおりまして(現象的にもその通りなのですが)、福井さんもその趣旨で「量を減らすということと金利を引き上げていくという2つの側面を合体して考える」といった趣旨の発言をしたのではないかと。要するに2段階解除論がどうのこうのという話ではなく、あくまでも一般論ですな。

その点に関しての記者会見(http://www.boj.or.jp/press/04/kk0408a.htm)での質疑はこうなっております(コピペは楽だ^^)。

(問)(前半部分割愛)もう1点は、いつも出口政策について伺うと、「あまりにも時期尚早だ」と一蹴されるのだが、最近の都内での講演の質疑応答で、総裁は「量を減らすということと金利を引き上げていくという2つの側面を合体して考える」という発言をされて、市場でも非常に話題になった。市場のほうからも、もっと具体的に話を聞きたいという声も上がっているので、もう少しわかり易い言葉で講演の時のご指摘をご説明頂きたい。

(答)(前半部分割愛)2番目のご質問についてだが、この前、私が金融システムについて講演をしたときにお尋ねがあったので、米国との比較で、一言言葉を付け加えさせて頂いたわけである。米国の連銀の場合には、今は低い金利をこれから経済と見合った正常な金利にもっていく、そういうステップを踏み始めたということだが、日本の場合は、エグジット(出口)と言ってもまだその時期はあくまで見えていないという前提だ。しかし、仮にそういう時点に来た場合にも、米国との違いというのは、単に金利水準の調整ということだけではなくて、量的緩和という領域にかなり深入りをしているので、非常に過大に供給している流動性をどう吸収するかという部分と金利の問題とを、頭の中で常にこの両側面を考えながら、連銀に比べるとより難しい工夫をしながらやっていく必要がありそうだ、という極めて当然のことを申し上げたつもりである。「合体して」という言葉に引っかかったという人もおられるが、もともと金利と量とを分離して考えるのがおかしい。今はゼロ金利になっているから量だけを考えていて良いわけだが、将来のことを考えた場合、金利と量を分解して考えるということは論理的におかしいのではないかと思う。

長くなってしまいましたが、要は最後の部分な訳でして、これは「量と金利はコインの裏表の関係にある」というお話。従いまして、いわゆる2段階解除論を肯定したわけでも否定したわけでもないというのが真意ではないかと推測します。だいたい先ほど山口前副総裁が指摘しているように、いざ「出口政策」となった時の経済状況次第でそのあたりは変化しうる物でして、時間軸効果が「ビハインド・ザ・カーブ」を認めている事も考えますと、場合によっては出口直後に結構頑張って引締めしないと行けないかもしれないですし、逆に景気はイマイチで一般物価が上昇するかもしれません
し、まーあまりその辺にナーバスになるのも如何なものかとは思います。

ただ、あたくしは純理論的に「量的緩和後のゼロ金利」は論理が破綻しているので、それをやるなら「低金利」にしておけばよいと思っているだけな訳ですな。


#どうも分ったようなわからんような話で恐縮です。

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2004/08/10

○今更ですが山口前日銀副総裁のインタビューから

先日ちらっと触れました時事通信社による山口泰前日銀副総裁のインタビューですが、4日の時事メインで報道されたインタビュー内容を読めば読むほど示唆に富む内容です。時事通信社発行「金融財政」に全文が掲載されているそうですので、機会があればご覧になるのが吉かと存じます。ってどこで「金融財政」を入手できるのかあたくし不覚にも存じませんが(大汗)。

金融政策の根幹に据えられる破目になってしまった(山口さんはCPIを金融政策の根幹に据えるのは否定的ですが)消費者物価に関してはこのようにコメントしております(以下、8月4日の時事メイン記事より内容を引用しております)。

『(前半部分省略)コンマ以下の(消費者物価の)マイナスがあとどれくらいで解消されるかは不確実性が高い。なぜなら景気回復で需給関係はかなり改善し、需給ギャップも目立って縮小してきたと考えられるが、それにしては物価指数の反応が鈍いからだ。』

『要因の一つは、消費財の国際的な競争環境が非常に厳しいこと。もう一つは、日本でも生産性上昇がかなり見られ始めること。昨年度は3%強の成長が実現したが、雇用はほとんど増えず、生産性上昇が速かった。この場合に賃金が欧米のように上昇すればサービス価格は上昇する。日本では名目賃金は一昨年までかなり下がり、最近やっと下げ止まってきた。生産性上昇と賃金の落ち着きでユニットレーバーコスト(単位労働コスト)はかなり下がっている。』

『従って、「デフレがいつごろ解消するか」を言い換えると、生産性の速い上昇が今後どうなっていくのか、下がり気味だった賃金がどうなるのか―の2点をどう見るかにかかる。成長が持続し、来年度にも潜在成長率を上回る成長が実現し、その間に生産性上昇が鈍化すれば、雇用と賃金の上昇圧力は強まらざるを得ない。そうなると物価の基調が本格的に変わる可能性がある。』

ということで、賃金の動向と生産性が物価基調の鍵だというお話ですな。

統計上は賃金って下げ止まっているようなのですが、世の中の片隅に居ながら眺めておりますと、可変部分の賃金(賞与に当る部分)が一時的に上昇しただけで、基本給にあたる部分が上昇しているっていうような景気の良い話はあまり聞かないので、山口さんの仰る賃金の上昇圧力ってのは中々来ないのでは無いかと思いますが、あたくしと致しましては。



「デフレは経済にマイナス」という論点、というか殆ど定説化しておりますが、この点に関しても疑問を投げかけております。「デフレはもはや経済にマイナスだとは考えにくいが」という質問に関してこんなコメントを。

『事実として、マイルドな消費者物価の下落が経済成長を阻害する、ないしは景気回復を基本的に制約する、といったことは起きていないと見るのが常識的だ。どんなにマイルドでも物価の下落はとにかく景気回復に大きな制約になるとの先入観にとらわれると景気判断が歪み恐れがある。』

本当はこの先の話も引用しないと話が上手くつながらないのですが、時間と量の都合上明日(以降)に続くの巻とさせて頂きます。まぁ実はこの点に関してはあたくしイマイチ考えが纏まっていないのですが、賃金というか労働コストの下方硬直性が以前ほど極端なものではなくなってきている(と思っているのですが)中であれば、消費者物価が前年比ゼロコンマ%の世界でマイナスになっているのがそんなに経済成長を阻害するのかというのは正直同じような気がしております。

問題は資産デフレな訳ですが、そもそも90年代からの資産デフレはその前の資産価格の上昇が実態価値から乖離したものであった事の修正でもある(従って資産バブルを放置した政策に問題があって、消費者物価が低位安定してしている中で住宅価格の上昇を牽制する為に金融引締めを行なったBOEは日本の失敗に学んでいると言えるのですが)という面もありましたので、話がややこしいのがまた困ったものなんでしょうな。と、話があらぬ方向に行きましたが。

山口さんはこの後のコメントで「80年代後半のバブル期でも拡大期でもCPIはせいぜい0.5%程度しか上昇しておらず一番最後の時期に3%くらいに上昇した」と「コアのCPIが物価指数の中で最後に動くものだ」と指摘しておりまして、消費者物価に注目しすぎる事への警鐘を鳴らしている(ように見える)訳ですな。

という事で、続きは明日にでも。

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2004/08/05

○山口前副総裁のインタビュー

昨日の時事通信社「時事メイン」に山口前日銀副総裁のインタビュー記事が報道されておりました。結構な長いインタビューで、何でも時事通信社の月刊だか何だか失念しましたが、雑誌のほうに全文は掲載されるそうなのですが、山口さん金融政策に関しては中央銀行として極めて真っ当というか正統的というか、まぁ本来中央銀行としてはこうではないといけないというお話に終始しておりまして、久々に爽快な金融政策へのコメントを見る事ができました。

で、まぁ有料の雑誌に掲載されるというインタビューなのでほいほいと引用するのもアレかと思いまして、というのは半分だけ本当で、実は紙に打ち出した肝心のインタビュー記事をお持ち帰りするのを失念したので書こうにも書けないというのが最大の要因なのですが、まぁネタに困ったら詳しく書くかもしれませんが、昨日の時事メイン記事あるいは時事通信社発行の「金融経済」(でしたっけ??)誌(追記:「金融財政」でした。大変恐縮です)をご覧ください。

福井総裁になってから益々混迷というか最早論理が破綻した政策運営を続けている日銀を見るのに慣れてしまうとつい忘れがちな「中央銀行の論理」を読むことができるので、是非ご一読をお勧めします。

ちなみに、ちょっとだけご紹介すると(あたくしの記憶ベースですので正確な引用ではありません。趣旨は合っていると思いますが)、

「量的緩和政策の効果と言われているものは『ゼロ金利+時間軸効果』であって、量的緩和政策そのものに効果があるのか検証がされていない」「2段階解除論(量的緩和終了後にゼロ金利政策に移行する)は技術的には可能かもしれないが、論理的整合性がなく議論に値しない政策」「中央銀行の『透明性の高い政策運営』は数値目標などで示すのではなく、中央銀行が何を考えて政策運営を行なっているかという事を論理的に説明することである」

などなどであります(違っていたらご指摘ください)。特に2段階解除論に関してきっぱりと否定していただいたのは「どうも2段階解除論がおかしいとか言っているあたくしの方が少数派?」と思い出している昨今でしたので、ちと安心しました(^^)。もちろんインフレ参照値に関しても思いっきり否定的です。







「白川理事のスピーチ(国債市場と日本銀行)」(2004/02/03)

先週末は日銀関係で白川理事のスピーチ、武藤副総裁の講演、田谷審議委員の記者会見といきなり3本もネタがご登場。武藤副総裁の講演が一番量があるのですが、どうも講演の相手が金融関係というよりは一般ピープルに近いお方が主だったようでして、非常に惜しい事にお話が極めて一般的。武藤副総裁の意見に属するような部分がまるでありません。よって読んでも全然面白くなく、今回はご紹介を省略します。

てな訳で白川理事のスピーチ。

http://www.boj.or.jp/seisaku/04/mpo0401a.htm

「金融調節に関する懇談会」というのがございまして、そちらで日銀白川理事のスピーチが行われました。お題は「国債市場と日本銀行」ということで、国債市場改革の話と金融調節の話がメインになっております。

惜しい事にこのお話、資料も色々あるんですが、非常に一般的なお話が多く「日銀事務方の意思」が前面には出てきておりません。って当たり前と言えば当たり前ですけど。そんな中ですが、まぁ意見表明的な部分を無理矢理見つけて読んでみましょう。


○国債投資家層の拡大について

『例えば、わが国の経済や国債市場の規模を考えると、非居住者の国債保有はもう少し増えても不思議ではありませんが、非居住者の国債保有割合は依然として数%に止まっています。勿論、どの国の市場にも自国の金融資産を選好する、いわゆるホーム・バイアスは存在しますが、わが国の場合は、非居住者の国債保有割合が小さく国内投資家の割合が高いことが、海外主要国とは際立った違いとして指摘されます。この点は、同じわが国の金融資本市場でも、投資家層のグローバル化が進んでいる株式市場とは対照的です。』

日本の国債市場の問題といえば日頃からあたくしが悪態をついておりますように、投資主体が機関投資家ばかりで、おまけに金融再編によって個別投資家がメガ化。止めに横並び(当局がリスク管理の名目で横並び化を推進しているのも問題)という事です。

『保有者構造に偏りがある市場では、保有者の相場観やリスク管理手法、投資ホライズンのバラツキが小さくなるため、多様な投資家が存在する市場に比べ、局面によっては相場が一方向に大きく振れてしまいやすくなります。昨年夏の国債相場の下落局面では、債券ポートフォリオに占める国債のウェイトが高く、市場でのプレゼンスが大きい金融機関が同じようなリスク管理手法を採用していたことが相場下落を増幅したとの指摘も多く聞かれました。』

と言う事なのですが、機関投資家の対極に位置する個人投資家は「個人向け国債」という思いっきり非市場性国債へと誘導する国債管理政策を絶賛推進中であります。個人投資家を参加させない(と言ってこの市場環境で参加する訳ありませんが)方向なのに投資家層の拡大をしようとすれば必然的にそれは非居住者と言う事になります。

『非居住者の国債保有割合が際立って小さいのは何故か、その原因は何であるかは改めて検討する必要があると思っています。』

本質的には金利が低すぎる所にあるのではないかと思いますが。


○金融調節に対する密かな悩み

金融調節に関して、白川理事はこのように言っております。

『日本銀行は近年、国債系オペの様々な見直しを行ってきましたが、それらを貫く縦糸をひとつ挙げるとすれば、私は「市場に対する中立性の維持」ではないかと思っています。』

現在の金融政策の枠組みにおいては、短期金利の基本であります翌日物金利がゼロに張り付いておりまして(金利はターゲットになっていないのでゼロである必要はないのですが、実質的にやっている事はゼロ金利固定政策)、「時間軸効果」に代表されるように「市場の期待形成に効果を与える事を狙った政策」を行っております。先週末の日銀総裁の国会答弁なんてまさにその典型。

基本政策が「市場の期待形成に効果を与える事を狙った」ものとなっている中で「市場に中立」というのも中々苦しいお話ではあります。まぁこの場合の「市場に中立」というのは「期待形成の結果として現れる取引価格に極力介入しない」という事なんでしょうな。

旧日銀法時代のように、金融調節に一々日銀の「意思」がでている方があたくしのような(元)職人としては判り易いんですけど、新日銀法時代になってからは淡々とした調節になってしまっておりますので、そういう点では「市場に中立」となっております。

『日本銀行は金利ターゲットの下ではコールレートを、また現在のような量的緩和のレジームの下では、日本銀行当座預金のコントロールを目的としています。ただ、金融調節によってコールレートあるいは当座預金の総量はコントロールしますが、あとは極力市場に任せ、市場機能や個別銘柄の価格形成に対しては、中立的であることが望ましいと考えています。』

『と言うのも、中央銀行が市場をドミネートするようになると、「リスクフリー金利を示す機能」、「金融政策判断を行う上での情報源機能」が損なわれることになるからです。そうなると、「金融調節を実行する場」としての役割も低下しかねません。』

と、言いながらもやはり悩みは累増する長期国債買入残高なんでしょうな。

『長期国債についても、多額の買入オペを行っており、市場でのプレゼンスは拡大しています。デフレからの脱却を図るという重要な課題と、経済の発展を支える市場の機能を維持するという重要な課題との両立をいかにして図るかは、昨年7月の本席で武藤副総裁が述べたように、悩ましい問題です。』


日銀(の事務方)としては、市場機能を封殺するような現在の金融政策の枠組みについては「困った物だ」と思いつつも、その政策の枠組みが強化されている訳で、実に苦しいところでしょうな。ご同情申し上げます。


○おまけ

『本日は、国債市場の機能向上に向けた日本銀行の取組みについて、とりわけ金融調節の面での工夫を中心に、お話させて頂きました。国債市場を巡る議論の中では、このような実務に関するお話は、テクニカルな部分も多いため、ややもすると見過ごされがちですが、市場が本来あるべき機能を健全に発揮するためには、そうした面での改善の積み重ねは極めて重要です。』

誠に仰せのとおりです。

『私は仕事柄、国債市場を含め金融市場に関するエコノミストやストラテジストの皆様のレポートには比較的目を通しています。その際、私にとってはマクロの金融経済情勢に関するレポートも重要ですが、市場機能に関するやや専門的なレポートや分析も非常に貴重で、そうしたレポートや分析には必ず目を通すようにしています。』

ぜひドラめもんも御覧下さいませ(嘘^^)。

本当は(昨日手抜きだった分)田谷さんの記者会見も入れないといけない所なのですが、こちらに関しては基本的部分は講演で言い尽くされておりますので、明日ネタが乏しい場合にはちょっと登場するかもしれません。読むと田谷さんの金融政策に関する「言いたい事はあるけど立場上これは言えない」という雰囲気が伝わってきまして、これはこれで中々のもので(^^)。