白川方明総裁(2012年度下期)
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2013/03/21「とうとう退任記者会見になりました」
2013/03/18「2月28日の講演から:麿節鑑賞会」
2013/03/11「定例会見より、最後まで麿は麿でありましたとさ」
2013/02/19「2月決定会合後の定例会見は特段のネタも無く」
2013/02/06「副総裁に合わせて白川さんも3月19日に退任を表明」
2013/01/28「金曜日も麿節全開講演をしたのですがすっかり市場は後任への興味で麿レームダック化とな」
2013/01/25「共同文書出したりインフレ目標2%をした決定会合後会見は麿節がそこらじゅうにでるとか何なんでしょ」
2012/12/25「定例会見より」
2012/12/03「名古屋での講演では円高に配慮した発言が多い」
2012/11/26「決定会合後総裁定例会見では安倍さん発言に「一般論」と言いつつ丁寧に反論」
2012/11/07「G20会見ではちゃっかり麿節」
2012/11/05「定例会見ネタ続き」
2012/11/01「定例会見での物価見通し部分はやや無理がある/麿節は大概にした方が良いと思う」
2012/10/18「スイスとの比較に関する講演は毎度の麿節である」
2012/10/17「総裁講演補足」
2012/10/16「IMF世銀総会での白川総裁講演3連発は格調高いです」
2012/10/11「会見は特段の波乱はないものの微妙に麿部分も」
2013/03/21
○総裁退任記者会見
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2013/kk1303d.pdf
まあ何ですな、本当はまあ最初から最後まで読んでちょ、以上終了という所でも良いような気もしますし、色々と白川さんの考えが披露されているのでどれをネタ的に引用しましょうかというのも難しいんですけれども全部引用したら21ページもありますので引用大会になりますがとりあえず幾つか引用させて頂きたく。
・せっかくなので最初の話を全部引用してみる
最初に「5年間を振り返って」という質問があってこの答えが延々2ページ近くあるのですが、まあこれは白川さんの総括なので引用しておこうではありませんか。茶々は入れない(^^)。
『(答) かねて発表していた通り、本日、私は日本銀行総裁を辞任します。この5年間、記者の皆さん方には大変お世話になりました。ご質問にお答えする前に、記者の皆さん方に心からお礼を申し上げたいと思います。ありがとうございました。』
『この5年間を一言で言うと、激動の5年間でした。リーマン・ショック、欧州債務危機、東日本大震災、2回の政権交代と、滅多には起きないことが次から次へと起きたという思いです。そのもとで、急速な円高の進行をはじめ、経済・金融も当然大きな影響を受けました。最も印象深い出来事ということだと、なかなか絞り込めませんので、3つの出来事を取り上げ、その時に感じたことについて述べたいと思います。』
『最初に取り上げるべき出来事は、何といっても、2年前に起きたあの悲惨な東日本大震災です。改めて、亡くなった方のご冥福をお祈りすると共に、今後の復興の進展を心から願っています。震災発生直後から、日本銀行は、金融市場の安定や決済・金融機能の維持のため、市場への大量の流動性供給、リスク性資産の買入れ、被災地への現金供給、損傷した銀行券や硬貨の引換え、海外への情報発信など、本支店・内外の事務所の総力を挙げて対応しました。わが国の根幹的な決済システムである日銀ネットも正常に運行しました。日本銀行が中央銀行として最も存在意義を問われるのは、大地震をはじめとする自然災害への適切な対応であると思っていましたが、多くの関係先のご協力と職員の献身的な努力とによって、何とか中央銀行としての責任は果たし得たと思っています。』
『2番目に取り上げるべき出来事は、2008年9月のリーマン・ショックです。リーマン破綻によって、世界中が大きな影響を受けました。極端な不確実性が発生し、またファイナンスが難しくなる状況のもとで、特に、耐久消費財や資本財の需要が大きく落ち込みましたが、これらは日本の最も得意とする分野であっただけに、まさに需要が蒸発するように急減し、日本経済も大きな影響を受けました。ただ、そのような状況にあっても、2000年代初頭にかけて不良債権問題を解決していたこともあって、わが国の金融システムは海外と比較すると格段に安定していたと思います。この時に改めて感じたことは、中央銀行の「最後の貸し手」としての役割の重要性です。ドル資金市場について、日本銀行は、FRBから為替スワップ取引で調達したドル資金を迅速に供給しました。円の金融市場についても、潤沢に資金供給を行うと共に、機能不全に陥ったCP、社債市場に対し、中央銀行として異例の措置でしたが、CP、社債の買入れを行いました。こうした「最後の貸し手」としての役割は、金融システムの安定を維持する上で極めて重要であったと思います。』
『リーマン・ショックの時は、即時グロス決済――いわゆるRTGS――や、外国為替の同時決済の導入など、決済システムの安全性と効率性の向上に向けて行ってきた様々な取組みがその成果を発揮したという意味でも感慨が湧きました。仮に、こうした努力なしにリーマン・ショックに直面していれば、金融取引は完全に止まりかねない事態になっていたのではないかと思います。』
『中央銀行に対しては、「マクロ経済理論に基づいて政策を行う政策当局である」という見方が根強いように思いますが、中央銀行の銀行業務の重要性について、もっと多くの人に理解して頂きたいと感じています。なお、この点に関して申し上げると、地味ではありますが、「次世代RTGS」が稼働し、また、現在は新日銀ネットの構築に向けた準備が進んでいることを付言したいと思います。これらは長い目でみて、日本の経済や金融に貢献するものだと信じています。』
『第3に取り上げるのは、「出来事」という言葉には馴染まないかもしれませんが、デフレ脱却に向けた金融政策の取組みです。リーマン・ショック後の経済の落込みに対し、日本銀行は、いわゆる非伝統的な金融政策を含め、様々な金融緩和策を実施してきました。また、2010年10月には、長めの金利やリスク・プレミアムに働きかけることを狙って「包括的な金融緩和政策」を導入しました。さらに、緩和的な金融環境が企業や家計にもっと活用されるよう、成長基盤強化や貸出増加を支援するための資金供給も創設しました。また、本年1月には、「物価安定の目標」を導入しました。』
『私としては、デフレ脱却と物価安定のもとでの持続的な経済成長に向けて最大限の努力を払ってきましたが、この課題達成のためには、日本銀行による強力な金融緩和と競争力・成長力の強化に向けた幅広い主体の努力が不可欠です。幸い、最近では、デフレ脱却と物価安定のもとでの持続的な経済成長に向けた議論が活発化する兆しがありますが、是非、この機会を上手く活かして、日本経済の直面する本質的な課題の解決に向けて、様々な取組みが進むことを願っています。』
・評価は時間が過ぎてから・・・・・・・というのはつまりアレですね
次の質問が「自己評価は如何で」という質問でして。
『(答) この5年間、他の8人の政策委員会メンバーとともに、その時々に入手可能であった情報に基づいて経済・物価情勢を丹念に点検し、デフレから早期に脱却し、物価安定のもとでの持続的成長を実現することに最大限の努力を払ってきました。この間の金融政策に関する評価は第三者が行うべきものであり、自己評価を述べることは控えたいと思います。』
でまあここで終わらないのがチャーミングでして。
『自己評価を述べることを控えるもう1つの理由は、政策の評価をするには、もう少し長い時間が必要と思うからです。過去の金融政策運営、例えば、日本のバブル期やバブル崩壊後の金融政策、米国の2000年代半ばにかけての金融政策、いずれをとっても、その評価は時の経過と共に随分変わってきています。』
グリーンスパンdisですねわかります。
『また、かつて欧米から批判を受けた日本の金融政策運営についても、欧米が同じような事態を経験するにつれて、評価が随分と変わってきています。いずれにせよ、現在、先進各国は2000年代半ばにかけての世界的な未曾有のバブルの後遺症から脱却できていない状況です。』
グリーンスパンdisというのはつまり当時副議長だった逆さ絵おじさんェ・・・・・・
『従って、わが国を含め欧米諸国が現在展開している非伝統的な政策の評価も、いわゆる「出口」から円滑に脱出できて初めて、全プロセスを通じた金融政策の評価が可能となる、そうした性格のものだと思っています。』
>「出口」から円滑に脱出できて初めて、全プロセスを通じた金融政策の評価が可能となる
>「出口」から円滑に脱出できて初めて、全プロセスを通じた金融政策の評価が可能となる
>「出口」から円滑に脱出できて初めて、全プロセスを通じた金融政策の評価が可能となる
・・・・・・・・・(^^)
『デフレ脱却に関して言うと、私どもが実現したいことは、単に物価が上がれば良いということではなく、再三申し上げている通り、「デフレから早期に脱却し、物価安定のもとでの持続的成長を実現する」ことです。物価が2%上がり、給料も同率上がるだけでは、国民の生活水準が向上するわけではありません。物価が上がり、円の為替レートが同率円安化しても、対外価格競争力が高まるわけではありません。』
さよですな。
『物価上昇のもとでは、歳入も増えますが歳出も増えるので、財政バランスの改善効果も限定的です。私どもが実現したいのは、実質経済成長率――ただし、人口減少社会では一人当たり実質GDPやGNI成長率ということになるかもしれませんが――が高まり、その結果として、物価上昇率も高まっていくという姿です。(以下割愛)』
でまあこの先もあるのですがさすがに引用だけでアホのように長くなるので割愛。
・マネタリーと物価に関連して
「デフレは貨幣的現象」という点についてどうお考えでしょうかという質問(もう一つ質問があったのですけれどもそちらの答えの部分は割愛)に対して。
『(答)(前半割愛)それから、「デフレは貨幣的現象か」あるいは「デフレの原因は何か」というお尋ねです。ある意味で、この問いは5年間ずっとついて回った問いでした。どのような経済活動も、全てお金を必要とするという意味では、全ての経済現象は「貨幣的現象」と言えます。しかし、だからと言って、全ての経済現象を貨幣だけで説明できるわけではありません。』
ほう。
『仮に、この命題を、「中央銀行の供給する通貨、いわゆるマネタリーベースを増加させれば物価が上がる」という意味に解釈すると、過去の日本の数字、あるいは近年の欧米の数字が示すように、マネタリーベースと物価との関係、リンクというのは断ち切れています。』
キタコレなのですが、こういう言い方では無くて「貨幣乗数が安定しなくなっている」と言った方が変にいちゃもん付けられないと思うのですよね。あたくしが白川総裁時代の会見とか講演とか見てて思ったのは、説明が丁寧なのはまあ判るのですけれども、大体日銀に難癖つけようとしている人たちがどういうポイントで難癖つけてくるのかとゆーのをもうちょっと研究して欲しかったよねと思う訳でして、つまらん揚げ足を取られないような物の言い方というのをもっと工夫した方が良いんじゃないかなと。まあ今後とも課題になると思います(ただし黒田さんの場合は最初のうちは揚げ足の皆さんは揚げ足取りに行かないと思いますのでその辺はちょっと楽かもしれないけれども)。
ちなみにこの部分で揚げ足を取れと言われたら「マネタリーベースが物価に影響しないという珍理論を白川総裁が唱えているが、日銀の珍理論によればそもそも日銀には物価安定をする能力も無ければ意志も無いという事になるのだから日銀自体が要らないんじゃねえか」というようないちゃもんの付け方をしてみますけどね。
『それでは、デフレを克服する上で、中央銀行の強力な金融政策は必要ないのかというと、これはもちろん必要であり、金融政策の役割はあるのかというと、その答えはもちろんYESだと思います。ただ、同時に、現在の日本の置かれた状況を考えると、競争力・成長力の強化に向けた幅広い主体による取組みが不可欠です。』
でまあ揚げ足を取る場合は当然この部分は無視しますが(^^)、それにしても「必要だが他にも必要な物がある」というのは仰せの通りではあっても、結局いちゃもん付ける方にしてみればこれだって「色々と理由をつけてやろうとしない」という話になる訳です。
『金融政策は強力な手段ですが、その効果の本質は、非常に低い金利水準を実現する、あるいは流動性を潤沢に供給することによって、家計や企業が、明日ではなく今日支出するように動機付けていくことです。しかし、明日が今日になり、明後日が明日になり、さらに今日になってきますので、いわば将来から現在に需要を前倒しすることになります。その前倒しにする原資というか需要自体は、日本経済の潜在的な成長力に規定されるわけです。現在、日本では、急速な高齢化やグローバル化に伴って経済の仕組みを見直していくことが遅れがちとなっており、そのことが成長力を下げています。そうした供給面あるいは構造面についての努力と強力な金融緩和が相俟って初めて、デフレの根本的な原因に対応していることになると思います。以上が、5年の経験を踏まえた上で、現在考えていることです。』
もし話をするのであれば「貨幣乗数が不安定になっている」という話と、ここの部分の「低金利政策はそれ自体で新しい需要を起こすのではなく、将来の需要を前倒しで示現させていくものなので、長期に渡ってやっていると徐々に前借りが先にシフトしていくぞなもし」という話に絞った方が論点が散漫にならないんじゃないのかなあ、などと僭越ながら思う次第。丁寧に色々な話をし過ぎて結局細かい所でいちゃもんつけられる、というのが麿モードの麿モードたる所以だったような気がします。
つまりね、相手がそもそも悪意を持って聞いている可能性がある、という点にもっと注意して話をするという政治家的なスキルが必要なんじゃないの、という話っすよね。白川さんの話って丁寧で非常に論点も多岐に渡っていてまあ虚心坦懐に読んでいると色々と示唆される事が多いと思うのですが、残念ながら相手がそもそも足を掬おうとして聞いている(明らかにヘッドラインの打ち方が「騒動を起こす方向で恣意的に発言を切り取る」というようなベンダーがありましたわなあ、どことは言わないけれども汐留の通信社とか酷かったですよねえ)場合にはどうだったんでしょうかねえと思います。
と、全然白川さんの話を聞かないでああだこうだ言ってましてすいません。
・期待のコントロールという論点について
これは質問の方から引用しましょう。
『(問) 10年ほど前に総裁が登場された討論会の記録を読みました。小宮先生や岩田一政先生など、5〜6人での金融政策に関する討論です。白川総裁は、その時、いわゆる日銀批判をしているグループの方に対して、「期待に働き掛ければ物事が解決する」ということについては、「中央銀行は呪文を唱える組織ではない」とか、「驚くようなことをすれば期待インフレ率が上がるということは考え難い」と、明確にリフレ派の教義について否定的な見解を述べていますが、現在、その基本的な考え方は変わらないのか、また先程の話と関連しますが、考えに何らかの変化はあるのか、簡単にご説明をお願いします。』
#そういや小宮先生の「金融政策論議の争点―日銀批判とその反論」を人に貸したままだorz
『(答) 市場とどう向き合うのかというテーマは、非常に重い課題だと思っています。いわゆる「市場との対話」について言うと、市場参加者は中央銀行のコミュニケーションの重要な相手方ではありますが、市場参加者からみて望ましいことが、長い目でみた経済の安定にとって望ましいことと必ずしも一致するわけではないと、私は感じています。』
まさに仰せの通り。
『この席で何度か触れましたが、FRBの元副議長であるアラン・ブラインダー氏は、かつて「市場は中央銀行が何をするかを予想し、ともすればそれに過剰反応する。一方、中央銀行は、政策判断にあたって市場の動向に振り回される」といった状況は、避けなければならないと指摘しています。』
#そういやブラインダーの「金融政策の理論と実践」を以下同文
『つまり、経済を安定させるためには、最後のアンカーが必要です。そういう意味では、中央銀行は、十分に市場を尊重しますが、最後は、中央銀行は判断をしなければいけないと思っています。「期待に働き掛ける」という言葉が、「中央銀行が言葉によって、市場を思い通りに動かす」という意味であるとすれば、そうした市場観、政策観には、私は危うさを感じます。』
まあこれは仰る通りだと思う訳で、思い通りに動かすなどとゆーてましてもそれが永続的に可能な訳は無く、思い通りに動かしている人の前にもザミエルが現れると思いますぞ。
『より広く市場との付き合いということで言うと、私は市場の動きに細心の注意を払い、また、金融市場安定のための円や外貨での資金供給、将来を見据えた決済システムの改善に向けた取組みなど、市場が正常に円滑に機能するために、中央銀行として最大限の努力を払うことも重要であると思っています。つまり、市場のインフラをしっかりと作っていくということです。私は、そうした努力こそが「市場を大事にする」ことの最も本質的な意味だと思っています。』
・金融政策の他国へのスピルオーバー云々について
という質問がありまして、いつもの話をしているのですが今回は集大成で丁寧に話しているので引用。
『(答) まず、金融のグローバル化のもとで、金融政策の相互依存関係について、十分な理論が構築されているかということですが、これについては、残念ながら、構築されていないと思います。「各国が独自に自国経済の安定を図っていくことが、最終的には世界経済全体の安定につながっていく」ということが大きな原則だという考えは、その通りだと思います。』
ふむ。
『その上で、もう少し現実的に考えていくと、例えば、キャリー・トレードの発生は、現在の国際経済学の教科書で十分に取り上げられているかというと、そうではありません。国際会議で新興国の声を聞くと、彼らの悩みが十分に教科書で取り扱われているとは思いません。また、日本あるいはスイスのように、ゼロ金利でイールド・カーブも非常に低くフラットである国を考えると、例えば金利差という意味でも、グローバルな経済ショックが加わって世界各国の金利水準が下がる時に、他の国は金利水準が下がりますが、日本やスイスでは下がるがゼロ以下には下がり得ないということで、金利差は、そこではほとんど受動的に決まってくるわけです。』
さいですな。
『逆に、最近のように欧米経済が少し改善方向に向かいイールド・カーブ全体が少し上がってくると、自動的にまた金利差が拡大するということです。そうした問題、現象は、教科書で十分に扱われていないように思っています。』
『先程、部分最適と全体最適ということを申し上げましたが、実際は「言うは易し、行うは難し」ということです。各国の政府、中央銀行が、自国経済の安定に責任を持つことは当然です。しかし、スピルオーバーと自国に跳ね返ってくるフィードバックということ、外部性をできるだけ内部化していく努力も必要です。BISをはじめとした各種の国際会議は、まさにそうした外部性を内部化していく努力だとも言えます。教科書に答えがないからと言って、中央銀行は止まっているわけにはいきませんので、そうした努力を続けていかざるを得ないと思っています。』
とまあそれはそうなのですが、肝心要の米国がこの辺のフィードバックを考えているかと言うとどうもその辺って伝統的にモンロー主義というか唯我独尊というかってえ面が昔から(たぶん第一次大戦後に英国ポンドブロックが金本位制をバックに世界を支えられなくなって以降って米国が本来は英国の役割をすべき所を必ずしもやらずに大恐慌発生とかそういう時代からだと思うのだが)あるように見える訳でして、その白川さんの理念というのは必ずしも世界の中央銀行に普遍的に共有されているかというと共有されていなくて、その結果日本がリーマンショック後のババ引き状態になったのではないでしょうかとも思えますけど・・・・・・・
『私には、教科書を書くだけのエネルギーはありませんが、今の教科書には、重要なチャプター(章)が、まだ幾つも抜けている感じがしています。そうした章を書き足す作業は、経験を積んだ上で、若い学者あるいは実務家が是非やって欲しいと思います。また、そうしたことがない限り、金融政策を巡る議論がいつまでもこういう状況から脱却できないという感じがします。(後半は別のお題なので割愛)』
いや白川さんまた書いてくださいお願いします。
・セントラルバンカーとして
まあ他にも政策関連の論点があるのですが、大概に引用が大量でありますので最後はあたくしも柄にもなく感傷的になって2つほど最後っぽい質疑を引用致しますです。
『(問) 総裁は、40年近く日本銀行に勤めてきたわけですが、40年の中で、一番大きな収穫と、やり残したことがもしあれば聞かせて下さい。』
『(答) まず、やり残したことについては、一人の人間の力は限られていますので、もちろん全てができたわけではありません。中央銀行というのは、金融政策、「最後の貸し手」としての役割、様々な決済サービスの提供など、色々な機能を担っており、そうした様々な機能を統合しながら経済・金融の安定を図っていく組織です。これは、日本銀行という、5千名弱の職員がチームとして行っていくものです。これは脈々と引き継がれていくわけです。私自身も先輩から引き継ぎましたが、これからまた後輩の皆さんがしっかりやってくれると確信しています。』
『それから、最初の質問ですが、多過ぎて、なかなか1つに絞り切れません。私自身の個人的な思いになりますが、大学を卒業後、漠然とパブリックな仕事をしたいと思っていましたが、それ程深い目的意識があって日本銀行に入ったわけではありません。ただ、結果的に日本銀行に計39年いましたが、中央銀行の仕事というのは、非常に奥が深いという感じがします。経済も金融も常に変化をしていく中で、究極の目標である通貨の信認、あるいは物価の安定、金融システムの安定を図っていくわけですが―─やや抽象的な言い方になりますが―─、変化を常に敏感に察知し、学習していく組織、それが中央銀行の最も根源的な付加価値と思っています。そういう組織に39年間身を置けたということは、私個人からすると、大変恵まれた職業人生活であったという感じがします。それが「収穫」という言葉にあてはまるかどうかは分かりませんが、そう感じています。』
・・・・・・・・・・・・・・・・・(;∀;)イイハナシダナー(;∀;)
・もし生まれ変わったら・・・・・・・
最後の質疑じゃないのですが最後にこいつを引用しておきましょう。
『(問)(前半割愛)もう1つ、もし可能であればお伺いしたいのは、総裁はよく自身のことを「アクシデンタル・ガバナー」という表現でおっしゃることがあると聞きます。まさに期せずして総裁になられたわけですが、もし、もう一度生まれ変わっても総裁をやりたいのかどうか。白川総裁は、「中央銀行業務、金融政策が趣味だ」というお話があるぐらい業務に没頭されていると聞きますが、もし生まれ変わっても、もう一度日本銀行総裁をやりたいかどうか、是非お答えをお願いします。』
『(答)(前半割愛)次に、アクシデンタル・ガバナー云々ですが、私自身5年前に全く図らずも副総裁、総裁代行、そして3週間後に総裁になりました。この間、全力を傾けて総裁という重い職責を担ってきました。十分に職責を果たしたかどうかは自信がありませんが、それだけの遣り甲斐のある仕事だったと思っています。』
『副総裁としての就任時の記者会見でも申し上げましたが、「趣味が金融政策」というと、何かいかにも寂しい人生を送ってきたと、人間的な幅がないということの言い換えという感じもしますので、そういうことではないということで、その時に、趣味にはバードウォッチングもあると申し上げました。』
・・・・・・・・・・・(^^)
『生まれ変わるということではなくて、とりあえず明日からは全く自由な身となりますので、バードウォッチングも含めて、ゆっくりしたいと思っています。』
・・・・・・・・・・・(^^)
『生まれ変わった後に何をやるか、その時にまた中央銀行総裁になりたいかということですが、そんなふうには思っていません。人生には、それぞれチャレンジする甲斐があることが沢山あるだろうと思っています。』
そこは野村克也さんばりに生まれ変わってもセントラルバンキングをやってみたいです総裁をやるかどうかはわかりませんけど位言って欲しかったですが、これが白川さんの正直な姿なのか照れてこう言ってるのか韜晦している(韜晦は無いと思うが)のかは本人にお伺いしないと判りませんが。
>人生には、それぞれチャレンジする甲斐があることが沢山あるだろうと思っています
>人生には、それぞれチャレンジする甲斐があることが沢山あるだろうと思っています
>人生には、それぞれチャレンジする甲斐があることが沢山あるだろうと思っています
先ほど引用した質疑にありますように「チャレンジする甲斐があること」に打ち込める人生というのはやはり素晴らしい事なのではないでしょうか。白川総裁何はともあれお疲れ様でした。で、麿だの何だの好き勝手申し上げて大変恐縮でございましたm(__)m
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2013/03/18
○総裁としての最後の講演ですがこれは白川イズムの鑑賞用である
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/data/ko130315a1.pdf
日本経済の競争力と成長力の強化に向けて
── 日本経済団体連合会常任幹事会における講演 ──
何故か28日の講演テキストが3月15日に出てきましたが・・・・・・・
『本日は、私にとって、日本銀行総裁としての最後の講演となりますが、テーマは、迷うことなく、「日本経済の競争力と成長力の強化に向けて」とすることに決めました。』
ということですので、まあ次の総裁が確定するタイミングまで公表を待ったんですかね(^^)。
『と言うのも、競争力と成長力の強化こそが現在の日本経済にとって最も重要な課題だと考えるからです。このテーマは日本銀行にとっても極めて重要です。』
さいですな。
『ご承知のように、日本銀行は先月の金融政策決定会合において、金融政策の目的である物価安定について、その具体的な数値目標を2%とすることを決定しました1。この「物価安定の目標」は、日本経済の競争力と成長力の強化に向けた幅広い主体の取り組みが進展するという認識に立った上で、導入したものです(図表1)。それだけに、そうした取り組みが現実に進展するかどうかは、金融政策運営上、極めて重要です。以下では、マクロ経済的な視点、企業行動の視点、そして、経済政策の視点を意識しながら、このテーマについて考えていることをお話ししたいと思います。』
ということで始まるのですがまあ麿イズムでありますので麿先生お疲れ様でしたという事を思いつつ鑑賞という所であります。
・経済政策の目的
『2. 経済政策の目的』って小見出しの最初が泣かせます。
『現在、わが国の経済運営を巡って活発な議論が行われていますが、最初に、経済政策の目的は一体何であるのか、我々は日本経済についてどのような状態を実現したいのか、ということについて考えてみたいと思います。経済政策の目的は、最終的には国民一人ひとりの生活水準の向上を図ることにあることは言うまでもありません。』
キタコレ。
『国民の生活の豊かさを測る単一の尺度は存在しませんが、近似的に言うと、国民一人当たりの消費水準、あるいはこれと密接な関係がある実質GDPの水準を持続可能なかたちで高めることがマクロ経済政策の重要な目標です(図表2)。そう申し上げた上で、日本経済の置かれた状況に則して経済政策のあり方を考える際には、もう少しきめ細かな議論が必要です。』
ほうほう。
『第1に、急速な高齢化による労働人口減少の影響を考慮する必要があります。日本の実質GDPは、今もリーマン・ショック前の水準を下回っていますが、人口一人当たりの実質GDPをみると、欧州諸国と比べ、落ち込み幅は相対的に小さくなっています(図表3)。さらに、生産年齢人口一人当たりの実質GDPをみると、日本はリーマン・ショック前の水準を上回っており、米国よりもパフォーマンスは良好です。』
『「人口の減少」は日本経済を語る時の常套句であるにもかかわらず、景気論議においてはこの重要な事実は意外に忘れられがちです。もちろん、四半期とか1年という期間ではどの数字でみても大勢に違いはありませんが、日本経済の中長期的な経済政策のあり方を考える時には、「一人当たり」という視点も重要です。』
まあ仰ることは判るのだが金融危機が直撃した国よりマシだからマシという議論はやはり何だかなあという感じはしますぞな。
『第2に、経済のグローバル化の進行という事実を踏まえる必要があります。具体的に申し上げると、実質GDP(国内総生産)だけでなく、実質GNI(国民総所得)もみていく必要があるということです。』
ほう。
『実質GNIは実質GDPに以下の2つの調整を加えた所得概念です。ひとつは、わが国の居住者が海外で稼ぐ所得です。2012
年の数字でみると、海外で稼ぐ所得は、14.3兆円と、名目GDPの3.0%であり、近年は対外証券投資に伴う収益に加え、対外直接投資に伴う収益も増加しています(図表4)。』
まあこれは良いとしまして。
『もうひとつの調整は、対外的な交易条件の変化に伴う実質的な購買力の変化です。近年は新興国経済の高い成長を背景に資源価格が上昇していることなどから、日本の交易条件は悪化方向にあり、交易利得、すなわち、交易条件の変化に伴う実質購買力は減少傾向にあります(図表5)。交易条件は資源価格だけでなく、日本企業の輸出品の非価格競争力を通じた価格支配力によっても変化します。為替レートの変化、例えば、円安は輸出増加を通じて実質GDPを増やすとともに、交易利得には逆方向に作用する場合があります。実質GNIへの影響は、こうしたふたつの調整を加味したネットの効果に依存します(図表6)。2000年を基準とすると、実質の海外所得の水準は、2012
年に約2.5 倍にまで増加し、2012 年の実質GDPを2000 年対比で1.9%押し上げました。一方、交易利得は、5.8%押し下げ方向に作用しました。』
おっしゃる事は判りますが、それを言うから円高容認と言われる訳でして、まあ最後まで麿は麿ですなあという話ですな。
『第3に、名目GDPと実質GDPをどのように位置付けるべきかということも議論されます。この点、経済が持続的に成長する時には、両方とも増加するため、中長期的に目指す政策の方向は異なりません。ここで申し上げたいことは、両者の因果関係です。』
キタコレ。
『まず実質GDPが増加することによって需給ギャップが逼迫し、これに伴う物価上昇の結果として、名目GDPは増加するというのが基本的な因果関係です(図表7)。もちろん、石油ショックの時のように、物価が先に変動するというケースもありますが、この場合は景気が悪化し、我々が望んでいる姿とは違います。我々が経済政策で実現しようとしているのは、実質GDPを高め、その結果として名目GDPが高まるという状況です。』
こちらは仰せの通り。
『この点に関し、興味深いのは日本銀行が個人を対象に四半期毎に実施している「生活意識に関するアンケート調査」です。この調査結果をみると、性別・年齢別・職業別のいずれでみても、過去から一貫して、物価の上昇について8割程度の方が「どちらかと言えば困ったことだ」と答えています(図表8)。』
またこれを言う訳で。
『この調査結果の背後には、物価が上昇しても賃金は増加しないかもしれないという不安があります。多くの国民は単に物価が上がることを望んでいる訳ではありません。給料が増加し、雇用も確保され、収益も増加するという状態、つまり、経済がバランスよく改善し、その結果として物価の上昇が実現する状態、これが国民が「デフレ脱却」という言葉で望んでいる姿の実相です。』
でまあ何時の間にやら浜田先生が「物価上昇なき景気回復ができれば、それは最善」などと仰せになるようでございますので誠に香ばしいのですが、惜しくも浜田大先生の名言はこの講演の後でしたので、もしこの講演がその後でしたら「浜田先生も仰るように」とか嫌味フレーズを入れてほしかったと思います。というか今日の退任会見で言えばいいのか(^^)。
第4は「成長しても一部の金持ちだけウハウハだったらシャーナイんじゃないの」というこれまたご尤もな話なのですが、それは経済政策としてはその通りなのですが分配に関わる部分は中央銀行が話をすることではあまりないでしょうし、大体からして人の話する前に自分の頭の上の蠅を追うべきであるという話ではないかと思いますが最後の講演なので思う所を述べたんでしょうな。
ということで引用だけしておく。
『第4は、成長の果実をどう分配していくかという問題です。経済が成長する上で市場メカニズムの果たす役割は大きいものがありますが、そうしたメカニズムを基本的には受け入れる社会としての価値観がその前提となります。』
『この点では所得分配の状況も重要な要素のひとつです。米国では、リーマン・ショック前の景気拡大期、すなわち2002
年から2007 年にかけて、所得上位1%の家計の実質所得が86%、家計の平均所得も20%伸びたのに対し、中位所得、すなわち、所得の高低で並べて丁度中間に位置する家計の所得の伸びは平均所得の伸びの半分である10%にとどまっています(図表9)。所得分配の状況は所得を稼ぐことのない高齢者の割合にも依存するため、単一の指標で捉えることは困難ですし、また、わが国はここまで極端ではないでしょうが、中間所得層を中心に、バランスのとれた経済成長を実現していくべきとの問題意識は、世界的に高まっています。』
・今後の取り組みに関して
でまあその後に『競争力と成長力強化の必要性』という話なのですが、引用していると長くなる上にまあ何時もの話なので最後の所だけ引用してその次の「今後の取り組みについて」以降に参ります。
『もちろん、企業が手元流動性を潤沢に保有すること自体は、バブル崩壊後の金融危機、あるいはリーマン破綻後のドル資金不足やCP市場の機能低下といった経験を踏まえると、ある程度までは合理的な行動です。しかし、現在の手元流動性の水準はそうした予備的需要を遥かに上回っているように思えます。余剰資金の使い道は、国内外の実物投資や金融投資、賃金支払いという従業員への還元、配当や自社株の買入れといった株主への還元の3つの選択肢しかありません。いずれにせよ、このルートのいずれかを通じて、増加した流動性に何らかの変化をもたらさない限り、経済への好影響は生まれません。その意味で、企業経営を取り巻く環境を変え、インセンティブを変えていくことが非常に重要です。物価安定のもとでの持続的成長の実現のためには、金融政策が重要であると同時に、競争力と成長力の強化に向けた取り組みが求められる所以です。』
ということで、ポイントを3つ並べていまして、小見出しが『増大する海外需要の取り込み』、『高齢化への対応』、『資源の円滑な移動促進』というのがありまして、特に最後の3番目の所はいやあそれはポリティカリーにアレだろというのがあったりしますが、これらの話は従来から説明している話の纏めのようになっていますけれどもまあご案内の話だと思いますのでこの辺も華麗にスルーしまして、そのあとに実際に何をすべきかという話がこのような小見出し。
『5.規制・制度改革、コーポレート・ガバナンス改革、社会の価値観』
キタコレという所ですが。
『以上、競争力と成長力強化の基本的方向性について述べてきましたが、本来、個々の企業の合理的な行動の結果、そうした方向に経済は向かう筈です。現実にそうなっていないのは、そこに経済的、制度的ないし社会的理由があるからです。そのように考えると、そうした障害を取り除く環境の整備が必要となります。』
ということで、『規制・制度改革』、『コーポレート・ガバナンス改革』、と来るのですが、その次の『社会の価値観』というのが中々。
『第3に必要なことは、安定と変化のいずれを優先するのかという社会の選択の問題です。』
ほっほー。
『わが国ではこれまで、どちらかと言えば安定重視の価値観が支配的でした。既存の国内市場の中で、消費者ニーズに合わせて、自社の商品を段階的に「改良」していく手法も、安定重視の経営スタイルといえます。しかし、人口が減少する中で、国内市場に焦点を当てた「改良」だけでは、経済は縮小均衡に陥る惧れがあります。』
ということで企業の話をしているのですが、あんさんの所の金融政策の場合、折角色々と思い切った変化をしている筈なのに、その変化を一々麿先生が打ち消して回って変化を改良にしか見せないという事をしていたように思えるのですが何なんでしょとか最後の講演捕まえて嫌味をいうあたくしは性格が悪いですかそうですか。
『雇用確保の要請に応えながら、同時に熾烈な価格競争を続けていけば、長期的に企業の収益環境はますます厳しくなっていきます。やや大胆に言えば、企業は、過去からの連続である「改良」か、非連続的な「イノベーション」かの選択を迫られています。経済に対するショックが一時的なケースでは、「改良」によって当座の苦境を凌ぎ、長い目でみた安定を優先する意味はあります。しかし、グローバル化や高齢化のような永続的なショックに対し、従来同様の「改良」だけで立ち向かっていては、大きな変化への対応が遅れる可能性があります。』
オマエモナー。
『改革は、国民の納得や合意なしに進めることはできません。イノベーションを実現していくためには、企業のチャレンジ精神と、それに必要な経営資源の移動や再配分が不可欠です。その過程では摩擦的現象も起きます。一概に答えの出る話ではありませんが、環境変化が永続的なものであるとすれば、そうした変化を受け入れ、新しいことへのチャレンジを応援する価値観を社会全体で共有することも、成長力強化に向けた改革を実現する上で非常に重要なポイントです。』
大変にイイハナシダナーではあるのだが、それはまさにオマエモナーに繋がるような希ガス。
・改革に必要な意識ときたもんで
この次が物価の話なのですが、上昇するケースについての説明とかこの前の定例記者会見での文脈をもうちょっと丁寧に説明したような話になりますので、この部分は割愛して小見出し『7.改革に必要な意識』という所。
『ところで、競争力と成長力強化に向けた取り組みの必要性にしても、また、それがデフレ克服と物価安定のもとでの持続的成長という課題の達成に不可欠であることも、一般論としては認識されていると思います。それにもかかわらず、そうした取り組みがなかなか進まないのは何故でしょうか。この点で鍵を握るのは、改革の必要性に対する切迫した意識だと思います。』
ほうほう。
『現在日本経済が直面している急速な高齢化やそれに伴う問題は決して一時的なものではありません。その影響は慢性症状のようなかたちで着実に日本経済に及んでいます。財政悪化はそうした問題の典型例です。財政の持続可能性を維持するためには、成長力を高めるとともに、歳出・歳入構造を見直していく必要があります。成長率が高まらない限り、物価上昇率だけが多少高まったとしても、財政バランスはほとんど改善しません。』
『しかし、わが国では、このような慢性症状はあっても、急性症状は発生していません。その大きな理由は、長年続いた経常黒字を反映し、巨額の対外純資産を有していることです。このため、世界的な経済ショックが起きた場合でも、安全資産を求める海外からの資金流入により、長期金利は安定し、為替相場も円高が進行するなど、危機によって円が急激に売られるという事態は経験していません。』
でまあ足元のリスクオンリスクオフの話をしておりましてその辺を割愛しまして・・・・・・・
『わが国における最近の円安や株高も、大きく捉えると、こうしたグローバル投資家のリスク回避姿勢の変化の中で生じています。逆に言うと、投資家のリスク回避姿勢が変化すれば市場の状況も変化します。このことは、10
年近くにわたって、ユーロ加盟国の国債金利がほぼ同じ状況が続いたという事実を思い起こすことで容易に理解頂けると思います。最終的に市場の状況を決めるのはファンダメンタルズです。わが国でも過去15
年近くの間にも何度かの円安局面があり、その局面では輸出や生産は増加しましたが、残念ながら、潜在成長率の引き上げに成功した訳ではありませんでした(図表30、31)。重要なことは、現在の好環境を活かして、競争力と成長力強化に向けてしっかりと取り組むことです。』
まあそうですね。でまあ話はやや脱線しますが、最近あたくしBOE(というか英国経済)の残念な状況を見ておりましてどうしてこうなったというのをつらつら考えているのですが、国内産業力が金融以外大して強くない中で金融危機起きて、それからの戻りにポンド安を誘導して何とかしようとしたものの、結局輸出競争力が為替要因以外に大きく高まる事も無く推移したのでポンド安に伴う物価上昇だけ残ってスタグフレーション一歩手前という惨状になっているのかなあなどと思うのですけれども、日本の場合はそこまで輸出競争力が無い訳では無いとは思いますが、円安一本足打法で他の強化を行わないと日本も英国的なパターンになってもおかしくないのかなあとか思ったりするのでありますがどうなんでしょうかねえ。
以下、金融政策に関する部分はまあ割愛しておきます。とりあえず麿お疲れ様でしたが、折角ですから最後の会見でブチ切れて欲しいけど絶対に切れないだろうなあ(^^)。
#という事で最後の講演なので退任前に駆け込んでみました
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2013/03/11
○白川総裁会見から少々
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2013/kk1303b.pdf
・物価上昇の際の経済状況に関して幾つかのケースを例示と
『(問) 2%の物価安定目標を達成できる時期について、先般、次期総裁・副総裁候補から言及がありましたが、現時点での総裁、日銀は、達成時期についてどうご覧になっているかお尋ねします。もう1
つ、これに関連して、仮に2 年という年限、見通しを明示すると、それによって総裁がかねがね言われてきた、数字なり時期と機械的に連動する金融政策となり、金融政策のフレキシビリティが失われるという惧れはないのか、ご見解をお伺いします。』
という質問がございまして。
『(答) 総裁・副総裁候補の方のご発言についての直接的なコメントは、差し控えたいと思います。』
まあこの質疑は質疑応答の中盤部分なのですが、候補の方の発言のコメントは差し控えつつも白川さんの説明大会は今回も健在でありますけどね(^^)。
『物価安定目標の達成の時期ですが、かねて申し上げている通り、「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資する」という使命、理念に照らして、できるだけ早く実現していきたいということです。前回の記者会見でも同じ趣旨のご質問がありましたので、同じことをお答えしますが、少し整理の仕方を変えてご説明したいと思います。』
ほほう。
『物価の上昇率が高まっていく基本的なメカニズムは、需給ギャップの改善ということです。需給ギャップは、ピークに比べてかなり縮小しており、また、需給ギャップに対する物価上昇率の感応度を前提とすると、この先、需給ギャップの解消だけで直ちに2%の物価目標が達成できるわけではありません。』
ちなみに木内さんの先般の講演および会見ではそもそも需給ギャップの問題よりも供給サイドの問題ではないかという指摘をしていましたが、一応日銀の中心的なビューはこういう感じとな。
『物価上昇率が2%になる経済とは、どのようなイメージの経済で、そこに至る過程で、どのようなメカニズムが作動するのかということを考えてみると、論理的には、4
つ考えられると思います。』
ということで説明。
『第1 は、円安や国際商品市況の上昇によって輸入物価が先行的に上昇するケースです。この場合、実質的な所得は圧迫されるため、これは私どもが望んでいる姿ではありません。第2
は、賃金が先行して上昇するケースです。この場合には、企業収益が圧迫され、なかなか実体経済の持続的な回復にはつながっていきにくいケースです。第3
は、予想物価上昇率が先行して上昇するケースです。この場合は、国債の金利が上昇し、金融機関が保有している国債が値下がりし、金融システムに対して悪影響が出てくるケースです。第4
は、企業や家計の成長期待が高まっていくケース、つまり経済全体の体温が改善していき、その結果、物価も上がっていくケースです。』
第3の部分は何だかねえという感じがする(予想物価上昇率だけが上昇するというのは妙な話で、それよりも財政ファイナンス懸念などによって国債価値というか通貨価値が経済活動と関係なく毀損するという話じゃネーノと思いますが)けれども他の3点はそうっすねという話。ちなみにどこぞのベンダーではこの質疑の3番目のケースだけヘッドラインで打っているというもう何考えてるんだという動きをしていたんですがね。
『望ましいケースは、賃金の上昇、予想物価上昇率の高まり、企業や家計の成長期待の高まりが、同時進行的に展開する状態だと思います。』
という事は前からお話をしていますが、ここもと散々日銀を悪しざまに罵っておられました某内閣参与の大大先生様におかれましてもこのような趣旨の話をしておられるような気がするのは気のせいです(−−)。
『ここでの大きなポイントは、賃金と物価の関係だと思います。』
賃金版フィリップスカーブキタコレ!
『翻って、わが国の物価上昇率が海外に比べて低い1 つの大きな理由は、日本の雇用慣行にも求められると思います。90
年代後半以降、日本の企業は、主として賃金の引下げによってコスト削減を図り、それによって雇用確保を優先しましたが、その反射効果として物価は下落したわけです。』
ただまあ麿的説明の場合はこのフィリップスカーブの話をゴリゴリ詰めないで更なるそもそも論に展開されます。
『このことの根本的な原因を考えてみると、企業の収益力が低下しているということであり、さらに遡れば、潜在成長率が低下しているということです。』
成長力強化の必要性キタコレですな。
『その意味で、企業や家計の成長期待が回復していけば、賃金や物価にも持続的な好影響が及んできます。こうしたことを通じて、長年にわたって定着したいわゆるデフレ期待が払拭されていくと考えます。』
ほう。
『この点、先程申し上げた通り、足許の金融市況は良い方向に展開していますし、海外経済も持ち直しの方向に転じています。それから何よりも、「デフレ脱却」について、本当に我々が必要としていることは何かに関する議論が、ようやく始まりつつあるように思います。そうした議論の結果、真に必要な取組みの進み方により、先程の達成時期は早くもなり、遅くもなるということです。』
>本当に我々が必要としていることは何か
って話をしたら早速浜田先生が先ほどのような話をしているとか(ちなみに会見は7日で浜田先生の講演は8日ですのでこっちの方が先行しています^^)とってもお洒落ですね!
『この間、日本銀行は、しっかりと強力な金融緩和を展開していきます。そうした日本銀行の金融緩和と、様々な主体による成長力強化の取組みがプラスの相乗作用を生んでいくことを期待しています。』
ということで。
・白井審議委員の提案に関してと銀行券ルールの話、基金国債買入の対象銘柄拡大について
『(問) 2 点質問します。1 点目は、本日の会合で、白井審議委員から輪番オペと基金による長期国債買入れの統合という提案が出ていますが、これについて総裁も反対されたと思うのですが、その輪番オペと基金の統合と、「日銀券ルール」の意味づけみたいなものについて──一部には、「日銀券ルール」の意義は、現在はほとんど無くなってきているという見方もあるわけですが──、総裁のお考えを聞かせて下さい。』
『それから、新総裁候補の国会での発言でも、3 年以下とされている今の基金の長期国債買入れの対象年限を、それ以上に延ばしたらいいのではないかという発言もあって、国債の金利低下が進んだというマーケットの動きもあったわけですが、一般論で結構ですが、現在、買入れ対象を3
年以下にしている理由、5 年以上にしていかないことの理由をどう考えればよいのかを、改めてご説明下さい』
ということで。
『(答) まず、白井委員のご提案ですが、物価安定の目標の実現を目指して金融緩和を推進する日本銀行の政策姿勢をより明確化するとともに、最近みられているわが国経済の改善の動きを金融面からさらに後押しする観点から、資産買入等の基金の長期国債の買入れについて、「期限を定めない買入れ方式」を速やかに導入し、「金融調節上の必要から行う国債買入れ」と統合する、との議案を提案されました。詳しくは、次回の金融政策決定会合後に公表される議事要旨をご覧頂きたいと思います。』
うむ、詳細が判らんと白井さんの提案の論評のしようがないので困るのだが。
『総裁候補の方のご発言自体については、コメントを差し控えたいと思います。ご質問は、従来3
年以下にしている理由は何なのか、ということだと思います。再々ここでもお答えした通り、日本の企業の資金調達のうち、8
割ぐらいは銀行借入です。銀行借入の期間を考えてみると、3 年以下が圧倒的に多いということです。そういう意味で、この3
年以下のゾーンに働き掛けることを通じて、企業の積極的な行動を促していくことが目的です。もちろん、買入れ対象自体は3
年以下といっても、3 年以下の金利が下がっていけば、そのことを通じて3 年以上の長期金利にも影響が出てくるということではありますが、主として3
年以下を対象にしたのは、先程申し上げた理由によります。』
とまあここの説明は従来通り。
『「期間」ということを離れて、日本銀行の国債買入れに関して一言申し上げます。』
ということでこの辺からイイハナシが始まる。
『日本銀行は、現在、多額の国債買入れを行っています。日本の財政が非常に厳しい状況にあるだけに、日本銀行の国債買入れが、全体として、内外の市場で財政ファイナンスのために行っていると受け取られると、それが原因となって長期金利が上昇し、多額の国債を保有する金融機関の経営を通じて、実体経済に悪影響を与えることになります。特に、成長力強化の取組みが進展せず、結果として日本銀行の国債保有だけが増加する場合、そうしたリスクが高まります。』
さいですな。
『そういう意味で、政府にも、日本銀行にも、規律(discipline)が求められます。』
後任に向けて発言キタコレという所ですな!!!!
『日本銀行の規律を規定するのは、物価の安定と金融システムの安定を通じて、持続的な国民経済の成長に貢献するという中央銀行に課せられた使命・目的です。政府に求められるのは財政規律です。この点、政府は、財政運営に対する信認を確保する観点から、持続可能な財政構造を確立するための取組みを着実に推進する方針を明確にしています。いったん信認が低下し、経済が混乱してしまうと、その時点では中央銀行の採り得る政策の余地は限られてきます。エコノミストはそのような状態を、“fiscal
dominance”、あるいは「財政従属」という言葉で表現していますが、そうした事態を未然に防ぐためには、財政改革に取り組み、中長期的な財政規律が維持されると同時に、中央銀行の独立性が尊重されることが重要です。』
で締めがこれまた後任に向けた発言だったりする。
『一言で言うと、現在、日本銀行は、非常に積極的に国債買入れを行っていますが、積極性と周到さの両方が求められる、非常に狭い道だと思っています。』
うむ。
・妙な質疑応答から
今回の質疑応答ですけれども、微妙に噛み合わない質問が2つとトンチンカンな質問が1つ見受けられまして、前者の噛み合わない方が同一人物によるものと推測されますのでネタにでも。
さっきの質疑の続きでこのような質問が。
『(問) 財政規律や日銀の国債引受けについて、日銀自体も規律を持って行う必要があるとのご発言はその通りだと思います。国債を引き受けること自体、非常に広い意味では財政ファイナンスだという受け止め方もできないわけではないが、今はそういう状態でないということは、財政ファイナンスになってしまう国債引受けというのは一体どのような状態だとお考えですか。また、それを防ぐために「日銀券ルール」をとってきたわけですが、改めて何らかの歯止めが今後も必要とお考えですか。(後半割愛)』
引受???????と思ったら答える麿先生引き受けの所を買入と読み替えてお返事。
『(答) 中央銀行が国債を買うことの裏側にある国債の発行について、今ご指摘があったような議論が出てくることは、議論としては分かりますが、大きな違いは、中央銀行が、物価の安定を目指して、中央銀行の主体的な判断で国債を買っているかどうかであり、そこが決定的に違うわけです。そういう意味で、日本銀行は、確かにFRBやBOEと同じように国債を買い入れていますが、あくまでも金融政策上の目的のために行っているもので、財政ファイナンスのためではありません。重要なメルクマールは、中央銀行が主体的判断で買入れを行っているかどうかです。(後半割愛)』
そしてこの質疑は更に続く。
『(問) 少し分かりにくい点があったので追加で質問させて頂きたいと思います。国債の買入れを主体的に行えば財政ファイナンスではないということであれば、「財政ファイナンスではないと中央銀行が言い続ければ財政ファイナンスではない」ということになりかねません。もう少し具体的に「こういう状態に陥れば財政ファイナンスだ」と、例えば量的な面でメルクマールのようなものはないのでしょうか。これと関連して、「日銀券ルール」の評価と、それに代わる新たな歯止めのようなものは必要ないのかと先程お伺いしましたので、それについてもお答えをお願いします。』
そもそもあんさん最初に「引受」とか質問していてその時点で麿の答えがこうなってるのに気が付いておりませんんが、まあ「中央銀行が言い続ける」のと「世間様(市場も含めて)がその言い訳を信用する」という2点以外は無いでしょという話ですし、そもそも日銀券ルールに代わる新たな歯止めも糞も現状でまだ一応日銀券ルールは存在していますし、基金という例外の方がバンバン拡大している件に関しては2つ前の質疑の所で規律が重要という話をしてるやんという所でこれは質問者が間抜け。
『(答) 私としては、ご質問に対してお答えしたつもりですが、先程、中央銀行にも政府にも規律が必要と申し上げましたが、中央銀行の場合、規律を規定するのは日本銀行法です。つまり、「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な安定に資する」という非常に重い規定があります。その規定に照らして、日本銀行は規律を課していくということです。従って、何か数値でもって機械的に「ここから先は財政ファイナンスだ」と言えるものではありません。まさに、先程、一方でデフレからの脱却、他方で経済の安定を損なうことがないように、非常に狭い道だが中央銀行としてしっかり追求していきたいと申し上げた通りです。』
ということで規律の話をしておりますわなという事です。ちなみにこの質問者しつこく日銀券ルールの質問をしておりまして、だからお前さっきから説明してるじゃん的な答え方を食らっているのがワロタという所ではございますが引用割愛。
でもってもう一つの質問は何かまたちょっとこれも???だったりしますが。
『(問) 国会に提示された総裁・副総裁候補ですが、2014 年ではなく、できるだけ早い段階で金融緩和を、と言っています。日銀としては、本年1
月に、2014年から無期限で、と言っていますが、なぜ2014 年からにしたのか、その理由をお聞かせ下さい。また、できるだけ早く始めた方がよいと言われていることをどう受け止めていますか。最後に、日銀の体制の継続性は必要だと思いますが、時期を早めたりするという意見をどのように思われますか。』
何故2014年からにしたのかって2013年末までの買入残高をコミットしているのでそれをいきなり反故にできないというのと、そもそもオープンエンド方式になった場合、残高にコミットしない(極端に言えば短国買入の買入銘柄が全部1か月以内の既発物だったりしたら基金短国買入の末残は10兆円位になってしまう)事になりますし、そもそも基金国債買入の場合は今年後半の買入ペースが凄く加速するので、残高目標を必達させに行った方が買入ペースが速いのですけれどもという足し算もせんで何の質問をしておられるのやらという所ではあるのですが。
『(答) 何度も申し上げている通り、総裁・副総裁候補の方の発言について、私がコメントすることは不適切だと思います。次に、なぜ2014
年からなのか、というご質問です。先程も強調してご説明した通り、2013 年中には、期限を定めている従来の方式のもとで、1
年間で50 兆円という大量の資金供給を行っていくということです。これは、既に期限を定めて発表していますから、発表したことを行った上で、さらに2014年には新しい方式を導入するということです。従って、強力な金融緩和を既に行っているし、今後も行っていくということです。』
・最後に日銀券ルールの説明がやっと来ているのですが
代わるものがどうのこうのという質問があるからそもそも麿が答えない訳でして、最後になって日銀券ルールの説明をしてくださいという質問が出たぞな。
『(問) 繰返しになりますが、本日の白井委員の議案は、「日銀券ルール」と密接に関係すると思いますが、一般論として、「日銀券ルール」の考え方について、改めてお話頂けないでしょうか。』
まあ今さらですが折角なので一応引用。
『(答) 白井委員の議案についてはコメントできませんが、従来から行っている「日銀券ルール」についてのご説明は、この場でも何度も行いましたが、改めて申し上げたいと思います。』
『経済が成長していくと、それに伴って銀行券に対する需要も増加していきます。増加した銀行券は、ある種の長期的な負債ですので、それには長期的な資産で対応していくということで、いわゆる「成長通貨オペ」を導入しています。一方、2
年半前に包括緩和を導入した時は、既に金利水準が相当低くなっているもとで、さらに金融緩和効果を作り出していくためには、長めの金利に働き掛けていく必要があるということで、長期国債を買入れることとしました。その時に、これはあくまでも「デフレ脱却」という目的のために行っていくものであり、従来の「成長通貨オペ」とはしっかり分けて市場参加者あるいは国民に対して説明をしていく必要があるということで、導入したわけです。』
・市場との対話キタコレ
『(問) 2 点お伺いします。1 つは、最近、金融政策を巡る議論が活発になっている中で、「期待に働き掛けて期待インフレ率を引き上げることが大切だ」という議論があるようです。特に、「期待インフレ率は日本銀行からのメッセージでコントロールできる」という考え方もあるようですが、これについてどうお考えか、お聞かせ下さい。(後半割愛)』
『(答) これは、非常に大きな問題に関するご質問です。前者の質問については、よく「市場との対話」という言葉で言われるもので、このような問題について、どのように感じているかをお答えすることによって、ご質問への答えとしたいと思います。』
ほほう。
『日本銀行は、法律により独立性を与えられていますが、当然、それはアカウンタビリティーが求められるということです。政策の背後にある経済・金融情勢の判断と、政策運営の基本的な考え方を丁寧に説明することが基本だと思います。』
さいですな。
『特に、現在のように、非伝統的な政策の領域に踏み込んでいる場合には、想定される効果とコスト、あるいはリスクをきちんと説明することが重要です。』
ここが微妙でして、コストとリスクの話に関してはあくまでも政策委員会の中で十分に議論をすれば良い話であって、一々事細かに説明する事によって政策効果を減ずるような事になっては勿体ないのではないかという面もあるかと思います。何せ非伝統的政策の場合、そもそも政策の波及経路そのものが不明(結局最近のFEDの議論とか見ていると何だかんだ言っても伝統的経路に依存しているように見えますけれどもそれはともかくとして)なのですからねえというのもあるのかとは思いますけどねえ。
『「市場との対話」という言葉は、時として、中央銀行の言葉や表現で市場を動かす、ということに力点が置かれているようにも感じますが、やや長い目で見ると、経済の動きを規定するのは、やはりファンダメンタルズです。言葉を裏付ける経済の実態や、政策が存在して初めて経済は動いていくと思います。』
これは麿の主張キター!という感じですな。色々と議論はあるでしょうが。
『先程、他の記者の方から、現在の米国経済がバブル崩壊の影響から脱却したのかという趣旨のご質問がありましたが、2000
年代半ばの世界的な信用バブルの経験が示すように、一つの問題への対応に全力を挙げているときに、実は新たな問題や予想外の危機の種が蒔かれているという事例には事欠きません。』
グリーンスパンバーナンキdisキタコレ!!!!
『従って、政策は、効果とコストの比較考量の上に決定されるべきだと思っています。これが、先程の「市場との対話」という言葉に関して私が感じていることです。(後半割愛)』
・・・・・・・・・・(^^)。
・回顧は19日に行うそうですが
『(問) 今回は最後の定例会合であったと思いますが、総裁は、この5 年間で、金融引締めを1
回もしなかったと思います。それは、デフレから脱却できなかったということの裏返しでもあると思うのですが、この点について、どう思われていますか。』
まあ本格的な金融引き締めという局面は1990年まで遡らないといけないような気がしますけどね。0.25%だの0.5%への利上げとかで終了しているのを捕まえて引き締めとか言い出したら0.5%からよー金利下げないBOEとかどうなりますねんという感じではあるのですがまあそれは兎も角として。
『(答) 3 月19 日に最後の会見を行います。残り2 週間しっかり仕事をしていきたいので、そうした話については、その時にしっかりお答えしたいと思います。その時に、またご質問を頂ければと思います。』
ということですが、先ほど引用した部分にありますように、今回の会見でもしらっとFEDをdisったりしておりますので、最後くらい麿先生ブチ切れて「日本が散々人柱になって非伝統的金融政策の実践をしてそれをかなりパクっている癖に直ぐに我々をdisるウスラハゲの野郎はムカつくので今度会ったら髭を剃ってやるわヴォケ」くらいぶちまけて頂きますと大変に素敵なのですが、まあ麿の事でございますので淡々と終了するでおじゃるという話になるんでしょうね。
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2013/02/19
○ネタは無いのだが総裁定例記者会見の方
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2013/kk1302c.pdf
まあすっかり北京ダック状態ですので質疑もあまり面白くない、つーか質問者も何かしょうもない質問が多くてネタにするのをどうしようかというレベル。
・相変わらずしょうも無い質問に麿FEDを引き合いに出す
もうこの質問いい加減にしろと思うのですが。
『(問) 先程総裁もおっしゃったように、景気にはやや明るさもみられますが、足許の消費者物価については、2%の物価目標を大きく下回った状態が続いています。政府・日銀の共同声明では、金融緩和を推進し目標をできるだけ早期に実現することになっている中で、なぜ今回緩和を見送ったのでしょうか。』
風呂の水じゃあるまいし毎月毎月何兆円も買入総額拡大とか出来るとでも思っておられるのでしょうかもしかして貴殿の頭の中に入っておられるのはオガクズではないかと疑問を抱かざるを得ませんがご発言されている事の具体的な意味についてお考えになってからご質問される事をお勧め申し上げたいと存じます。
とは麿はお答えにはならない訳で(^^)、何か凄い細かい説明してるんですよね。
『(答) なぜ金融緩和を見送ったのかというご質問ですが、私どもとしては、金融緩和を見送ったという意識は全くなく、手綱を緩めることなく、強力な金融緩和を推進しているというのが、まず結論です。』
で、この後どのような経過で買入を拡大しているのかとか、その間の経済状況の好転の説明とかしているのですが、その説明がまあ丁寧な事。そしてその部分が終わるとこんなのが。
『なお、主要国の中央銀行をみても、目標を立てた上で柔軟に政策運営を行っているという点は、日本銀行と共通しています。例えばFRBは、雇用の最大化という使命に関連して、5.2〜6.0%の失業率を目安として示しているわけですが、現在の失業率が8%近傍であることをもって、毎回のFOMCで追加的な金融緩和を行っているわけではありません。』
>現在の失業率が8%近傍であることをもって、毎回のFOMCで追加的な金融緩和を行っているわけではありません
>現在の失業率が8%近傍であることをもって、毎回のFOMCで追加的な金融緩和を行っているわけではありません
>現在の失業率が8%近傍であることをもって、毎回のFOMCで追加的な金融緩和を行っているわけではありません
・・・・・・・・・・・(^^)(^^)(^^)
『BOEは、かなり長い期間にわたってインフレ率が目標の2%を上回っていますが、金融引締めを行っているわけではありません。いずれの中央銀行も、金融政策の効果が波及するまでには、相応の時間を要することを踏まえ、金融面での不均衡を含めた様々なリスクも点検しながら、最終的な目標である物価安定のもとでの持続的な経済成長の実現を目指して金融政策を運営しており、この点、日本銀行も同様の考え方です。』
ということで(途中の長い部分を思いっきり割愛しましたが)説明しているのですが、これネタとして引用しながらふと思ったのですが、この質問での説明って最初引用した部分と、先程の「FEDだって失業率が8%だからって毎回のFOMCで追加緩和してないよね」の二言だけの説明にした方がポイントを絞った形になってオガクズ脳の皆さんにも伝わるんじゃないですかと思うのですよ。
だってさ、上記の趣旨の質問ってまあさすがに毎回同じ人間とは思いませんけれども、結構な頻度で総裁定例会見で行われていて、その度にオガクズの皆さんに対して麿が懇切丁寧に説明しているのですが、懇切丁寧過ぎて肝心のポイントが伝わっていないのではと思ってしまうのですよね。
結局の所、一般向けというか普段そんなに金融政策に関心の無いというか知識が怪しげな金利市場以外の皆様がどういう理解をするのか、というような辺りも非伝統的な金融政策を実施するにあたっては(その政策の内容や効果への理解が伝統的政策のように判りやすく無いしそもそも政策効果の評価も固まっていないのですし)、その丁寧な説明の丁寧さの程度というのも使いようで、もっとポイント絞った答え方をする(ポイント絞った結果回答者がミスリードされたら元も子もないのですが)という工夫も必要だったのかなあとかまさに時既にお寿司なのですがそんな事を思ってしまいました。
・どう見ても認識にズレがあります本当にありがとうございました
この質疑はワロタ。
『(問) 2 点お伺いします。先般の衆議院予算委員会で、安倍首相は「デフレは貨幣現象であり、金融政策で解決できる。2%の物価目標は、日銀の責任で達成して欲しい」と発言されました。政府側は、デフレは金融政策で解決できると思っているという点で、総裁の認識と多少ズレがあると思います。この点についてどのようにお考えですか。』(2点目割愛)
『(答) 1 点目のご質問についてですが、ズレがあるとは考えていません。』
ほほう。
『政府、日本銀行の考え方は、先般公表した共同声明に書かれている通りです。繰り返し説明することは省略しますが、日本銀行は、幅広い主体による競争力と成長力の強化に向けた取組みの進展に伴って、持続的な物価安定の目標が2%であるということを発表しました。そうした物価目標を実現していくために、金融緩和を推進していくことを明らかにしました。政府は、大胆な規制・制度改革、税制の活用など思い切った政策を総動員して経済構造の変革を図るなど、日本経済の競争力と成長力の強化に向けた取組みを具体化し、これを強力に推進すると言われています。』
確かに共同声明にはそのように謳っております。
『共同声明は、政府と日本銀行それぞれが果たすべき役割をしっかり認識し、それを強力に展開していくということです。私は、こうした政府と日本銀行のそれぞれの取組みがプラスの相乗作用を生み出していくこと、またそうしたもとで民間の経済主体が様々な取組みを進めていくことで、デフレ脱却が実現していくことを想定していますし、期待しています。』(2点目割愛)
・・・・・・・・・・結局共同声明の話をしているだけでありまして、安倍ちゃんの発言とのズレに関しては話がございませんでしたねあっはっは。
と言う位しかオモシロ質疑も無かったのでこの辺で。
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2013/02/06
○麿の退任時期が副総裁と揃うとな
昨日の夕方(18時20分過ぎ位)に出ましたが皆様既にご案内の通り。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130205/t10015315671000.html
白川総裁 来月19日付けで辞任の意向
2月5日 18時53分
元はと言えばお縄一派が引っ掻き回したせいで前回の総裁就任が1か月近くずれてしまったため、副総裁2名の任期と総裁の任期が不自然にずれてしまった為、このままだと2名の両副総裁だけ先に交代して総裁が1か月弱ぽつねんと残されるという形になりますなという状態でした。
でまあ日銀の政策委員に関してはいわゆる欠格事由に引っかかる(例えば泥棒をして禁固以上の実刑を食らうとか)以外では本人の意思に反して辞めさせる訳には行かないので、従来のように総裁副総裁3人セットで任期を揃えるためには本人が辞任しないといけないので辞任しました。とまあそれだけの事でそれ以上でもそれ以下でも無いぞなもしという所ですな。
#「突然の辞任表明に関係者から戸惑いの声も」とかモーサテは何を言ってるんだ
まー1つ言えるのは昨日は民主党が総裁人事に関する基準みたいなのを公表しておりました(後でちょっとメモしておきますが)ように、正副総裁の後任人事についてかなり進展して来ておりまして、3月19日の就任に手続き上間に合いそうだから総裁の任期を揃える形で退任しても大丈夫だろうという事になったんでしょうねという所ですわな。もしこれがまだまだ何も決まらず揉めまくっていて、下手したら3月19日就任に向けた国会承認が全然間に合いそうもないというのであれば、業務遂行の都合を考えると総裁が残っていた方が良いのですから退任とか先に言わんぞなという所で。
しかしまあわざわざ話題になるようなタイミングじゃなくて、何となく正副総裁の後任が決まってから退任時期を合わせる表明をしてもよさそうな気がしたんですが、もしかして国会承認の手続きの際に任期に関しても承認事項の中身に含まれるのでしたら、先に退任時期を合わせておかないと国会的にややこしい事になるので先に退任表明したんですかねえとか思うのですがおじちゃんそこまでのテクニカルな話がワカランチ会長なのでご存知の方教えてジェネラルなのでありまする。
まあ何ですな、麿総裁におかれましては就任時から最後まで(途中は平和な時代もありましたけれども)政治に振り回されて誠に残念に存じますという所ですが(大体もとは副総裁の筈だったんですし)、今回の騒動見て思いますに、総裁と副総裁2名をセットで入れ替えるという現在のやり方って今回のように「俺の考えに従え」系の人が出てくると政策ロジックのワープのような事になるリスクがあって、政策の継続性という観点からしてちょっとどうなのと思われますので、正副総裁の任期を1年半くらいずらすような形に変えられないもんかねと思うのであります。一応6名の審議委員とは任期がずれているので、変な馬鹿野郎政権が出てきて(ちなみに安倍ちゃんの事を指している訳では無い(本当)ので念のため)馬鹿野郎執行部を指名しても6名の審議委員が反対に回るというヘッジはついておりますが、まあそうは言っても正副総裁総取り替えというのも継続性的にどうなのという気はやはりするのでありましたです、はい。
しかし酷えなと思ったのはこれまたどこぞのベンダー(というか通信社)でして、このニュース見て早速「白川総裁前倒し退任で円が下落」とか報じていたのですけれども、昨日の夜前半(大体東京の夜8時前位)までの日中足を見るとユーロの対ドル相場とドルの対円相場の日中足の形がまるっきり同じで推移しておりまして(つまりユーロが対ドルで上昇するのと全くパラレルな感じでドルが対円で上昇していたという事)、どこからどう見ても昨日の夕方の値動きってユーロ主導だったと思いますぞなもしという話。まあそのユーロの対ドル昇龍拳状態って東京時間の夕方5時位からやっていたのですが、そもそもその昇龍拳が何で起きたのかが良くワカランチ会長で、ユーロ圏PMIのリバイスガーとか一応後付講釈はされていたのですけれども、そんなに目をひん剥くようなリバイスをしている訳でも無く、それよりも同じタイミングでイタスペ国債の金利が低下していたのでそっちの影響じゃネーノとか思ったのですが、じゃあそもそも何でイタスペ国債の金利が低下した(その前はイタスペ国債金利は上昇気味でユーロは対ドルで下がっていた)のかはあたくし存じ上げませんので甚だ遺憾に存じますという所。
NY市場での日中足まで見てないのでもしかしたら報道に釣られて雨人がジャパンの金融緩和ヒャッハーとかやったのかも知れませんが、他の数字見てるとこれ単に米国市場様における金利上昇株高を受けてドルが上昇しているだけのようにしか見えませんし、大体からして退任前倒しって言ったって2年も3年も前倒しになる訳では無くて、単に4月8日の退任が3月19日に前倒しになるだけの話で、その1か月違って何がどう違うのかお前はどういうタイムスパンで物事考えてるんだ日計りディーラーかよという話でございまして、そこまでヒャッハーと反応する事でも無いと思うのですけどねえ。こんなの単に円売り地合いだからでしょと思いますが。
まあ話題としては面白いしキャッチーだから日銀総裁前倒し退任で円安加速とか報道したいのは気持ちとしては判るのですが、一応プロ向けベンダーにニュース流している人たちだったらドル円だけじゃなくてドルユーロ見るとか欧州周縁国国債金利状況見るとか、その辺を見て「待てよ」となって頂きませんと(大体からしてこのニュース出た瞬間に為替動くかと思って目を皿のようにして見てたけどドル円5分間ほど殆ど動いてなかったし、円安キタコレとか思ってドルユーロ見たらユーロが上昇してて脱力したんですけどね)、ズレたニュースであっても活字として残るので、その瞬間その場に居合わせた人たち的には「こいつは何を言ってるんだ」となっても、その場に居合わせなかった人からすると「そうだったのか!」となって嘘から出た真という事案が発生するという、デマ拡大装置としてニュースベンダーが機能するという糞の役にも立たないどころか弊害モードになってしまいますので、もうちょっと市場後講釈について書く事について良く良く物事を考えて頂きたい物だと存じます。
つーかさ、さっきの「付利下げの思惑ガー」もそうですけれども、こんなのちゃんと見て無かったり、そもそもその辺に詳しく無かったりしたら全力で信じてしまいますぞなもしとゆー所でありまして、こうやって悪態をついている不肖このあたくしだって自分の専門外の事になるとメディアに釣られてああだこうだとか考えているんだろうなあと思います次第でありまして、もうちょっとメディアは報道するにあたって勉強して欲しいもんだとか思うのですけれども、面白センセーショナル報道に釣られて嘘から出た真って感じでNY市場が動いたんですかねえという所ではございまする。
いやまあこのようにあたくし申し上げておりますが、もしかしたらユーロの上昇と円安は独立事象で偶々パラレルに発生しているのかもしれませんので、そーゆー意味ではあたくしのこっちの悪態も的が外れている可能性はあるので外れていたらどうもすいませんという所ですけれども、欧州時間のプライスアクション見るとベンダーニュース程反応していたようには見えませんでしたという事で。
#なお、付利下げの思惑復活とかいうさっきの話に関しては全力で「それは間違い」と指摘させて頂きとうぞんじます(^^)
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2013/01/28
○総裁講演がこれまた麿節モードなのですが・・・・・・・・・・・
金曜の日本記者クラブでの講演ですが、もう題名見た瞬間にお腹いっぱいになりますぞなもし。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/data/ko130125a.pdf
中央銀行の役割、使命、挑戦
── 日本記者クラブにおける講演 ──
題名がもうねという所ですが、更に中身も麿節コーナーが多くて、本文10ページ目からやっと今回の金融政策変更の説明になるということで前半はすっかり麿節であるのは冒頭(と言っても2ページ目のケツ以降)のこの部分で良く判ります。
『ご承知のように、わが国では、過去数か月、金融政策に対する議論がかつてなかったほど活発化しました。また、日本銀行は、今週初の金融政策決定会合で、「物価安定の目標」や「期限を定めない資産買入れ方式」を導入し、金融緩和の思い切った前進を図りました。さらには政府との政策連携の強化を謳った共同声明を発表しました。これらについては、本席の皆さんの関心も高いと思いますが、既に、決定会合後の記者会見などの場においてかなり詳しい説明を行いました。』
いやあの2%の目標値に関する説明が麿の話と企画課長の話で齟齬が有ったりするのですけど・・・・・・
『そこで、今回の決定をより大きな流れの中で理解して頂くことも願いながら、本日は、「中央銀行の役割、使命、挑戦」と題してお話しします。およそ全体の2/3位で中央銀行自体についてお話をし、残り1/3位で今般の措置についてご説明します。私としては、中央銀行の本質を語ることを通じて、金融政策や日本銀行を巡る議論について、多くの方々が考えを深められる上で何がしかお役に立てることが出来れば、大変幸いです。』
ということで麿節の鑑賞会になるのですが。
・独立性の主張キタコレ&雇用目標を要求している人が居る訳ですが・・・・・・
最初に大上段で『中央銀行とは一体何をする組織でしょうか? この点から話を始めようと思います。』解きまして3つの言葉を紹介するのですが、そのうち後半の2つの言葉がもう早速麿。
『第2は、1950 年代から60 年代にかけ、ほぼ20年にわたってFRBの議長を務めたウィリアム・マーティンの有名な言葉ですが、中央銀行の役割について、「パーティーの場が乱れる前にお酒を片づけること」であると述べています。第3は、ドイツの首相として統一を成し遂げたヘルムート・コールの言葉ですが、「政治家としてブンデスバンクの金融政策決定を好ましく思ったことはあまりないが、一市民としての自分はブンデスバンクの存在を喜ばしく思う」と述べています。あとの二つの言葉は、中央銀行の役割を独立性と関連付けて述べています。』
キタコレ。
『こうした比喩ではなく、中央銀行の機能を体系的に説明しようとすれば、中央銀行は「物価の安定」と「金融システムの安定」を目的としているということになります。各国の中央銀行法は立法時点での歴史的経緯等を反映し、時期を遡るほど、多くの目的が掲げられており、目的規定としてはやや曖昧になっていますが、日本銀行を含め、過去20
年位に立法されたケースでは、「物価の安定」と「金融システムの安定」という2つの目的が掲げられるケースが圧倒的に多くなっています。私も中央銀行の本質的役割はこの2点にあると思っています。』
・・・・・・・・・・・・雇用目標に関する話は無いと(^^)。
・BISビュー&FEDビュー
リーマンショックで浮き彫りになった中央銀行の役割がどうのこうのという話がまたキタコレ。
『第3の役割はバブルを防止し、経済や金融の安定を図る役割です。』
キタコレ。
『リーマン・ショック後の低成長を経験するにつけ、改めてグローバル金融危機の根本的な原因である2000
年代半ばにかけての未曾有の信用バブルがなぜ起きたのか、という問いに向き合わざるを得ません。』
『しばしばバブル崩壊後の政策対応について、FRBは日本銀行に比べて積極的であったと言われます。しかし、バブル崩壊後これまでの6年以上の期間でみる限り、米国の実質GDPの回復ペースは1990
年代の日本と比べても鈍いというのが実態です。』
はあそうですか(棒)。
『厳密にどちらのパフォーマンスが良いかはさておき、重要なことは両国の経験が示すように、企業や家計の債務が膨張し、信用バブルが発生すると、その経済的コストは極めて大きいということです。』
キタコレ。
『バブルが崩壊すると、企業や家計は債務の返済を優先せざるを得ず、投資や消費に回るお金が減り、経済活動が全体として圧迫され、低成長が続くことになります。今では信じられないことですが、今回の信用バブルが崩壊する前までは、バブルの関係について言えば、金融政策はバブルが崩壊した後に積極的な緩和政策で対応すればよいというのが、海外、特に米国の学界や政策当局者の間で圧倒的に支配的な考え方でした。つまり大事なのは「事後処理」だというのが当時の理解でした。』
「今では信じられないことですが」とまで来ましたか。
『バブル期に金融緩和が長く続いたひとつの理由は、わが国もそうでしたが、物価が安定していたことでした。1987
年、88 年はいずれもゼロ%台の物価上昇率でした。もちろん、信用は膨張し、資産価格も急上昇していましたが、そのような形で、経済に不均衡が蓄積して長い目でみた経済の安定が害される惧れは意識されていませんでした。』
その通りなのだが今の日本におけるテーマじゃねえだろ・・・・・・・・
『バブルの発生原因は複雑であり人々の熱気としか言いようがない面もあります。金融緩和だけから生まれるものではなく、規制・監督だけで防げるものでもありません。しかし、バブルや過剰な債務の積み上がりを防ぐ上で、適切な金融政策や規制・監督の果たす役割が大きいことは言うまでもありません。』
どう見てもBISビューです本当にカムサハムニダ。
『今回の世界的な信用バブルに関連してもうひとつ私が感じることは、バブルや金融政策運営についても、僅か5、6年でこのように考え方が大きく変わったという事実です。』
いやこんな所で勝利宣言されても・・・・・・・
『さらに言えば、バブルと金融危機は繰り返し発生しているという事実自体を我々は忘れ勝ちだという事実です。その意味で、政策当局者にとっては謙虚さを常に忘れてはならないということも感じます。』
はあそうですか(棒)。
・でまあ財政規律の話と高齢化の話もキタコレですが引用割愛
その後に『欧州の債務危機』という小見出しがあって、一つ飛ばして『急速な高齢化の進行』というのがありまして、最後が『中央銀行の役割を考える上で最後に取り上げるテーマは、わが国で急速に進んでいる高齢化です。』という話になっているのですが、まあここはいつもの話ですので長くなるから引用は割愛します。
・ここは良い話
まあ何ですな、麿節キタとだけ言ってても何ですから決済インフラに関する説明がイイハナシダナーなのでそちらを引用しましょうず。『東日本大震災』という小見出しから。
『中央銀行の役割を考える上で3番目に取り上げる出来事は東日本大震災です。東日本大震災は、一国の金融システムというインフラを物理的に維持する上で、中央銀行が根幹的な役割を果たしており、その重要性を示すものであったと思っています。中央銀行が中央銀行として鼎の軽重が真に問われるのは、どのような危機時においても、一国の金融システムや金融市場というインフラを物理的にもしっかりと維持することではないかと思っています。』
ということでまあこれは余計な茶々を入れないで引用だけしておきます。
『東日本大震災が発生したのはご記憶にあるように、金曜日の午後3時少し前という、金融機関にとっては営業時間が終わる間際でした。大方の金融取引は終わっている時間帯でしたが、日本銀行としてはその日の円資金の様々な決済が円滑に終了するよう万全を期しました。また、週明けの月曜日には政策決定会合を短縮して開催し、企業マインドの悪化や金融市場におけるリスク回避姿勢の高まりが実体経済に悪影響を及ぼすことを回避するために、リスク資産を中心に金融資産の買入れを増額することを決定するとともに、市場の混乱を防ぐため、大量の資金を供給しました。当日だけで21.8
兆円の資金供給をオファーしました。この間、わが国における資金決済システムの根幹をなす日銀ネットは支障なく正常に運行しました。』
『さらに、津波で流されて水をかぶるなどして損傷した銀行券や硬貨の引き換えについても、臨時の引き換え窓口を開設したり、被災地へ応援の職員を派遣したりして、これが円滑に進むようにしました。』
『物理的な意味でのインフラ維持の重要性は、わが国のような地震国にあっては特に重要です。東日本大震災においては、日本銀行は中央銀行としての責任を果たすことができたと考えています。この課題を達成するために、かなりの経営資源を投入していますが、今後も南海トラフや首都直下などでの巨大地震の発生に対する備えを含め、業務継続体制の確保に向けて、努力を続けていく方針です。』
・金融政策決定の説明部分は棒読み感が強いのですがやはり麿テイストが入る
でまあ本文10ページ目から『3. デフレからの早期脱却と物価安定のもとでの持続的成長の実現』という説明になっております。
『以上、中央銀行の役割を説明してきましたが、次に、中央銀行の挑戦という話に移りたいと思います。様々な挑戦課題に直面していますが、現在、何と言ってもわが国にとって、また、日本銀行にとって最大の課題は、デフレからの早期脱却と物価安定のもとでの持続的成長経路への復帰です。日本銀行はこの課題達成は極めて重要であると認識しており、そうした認識のもと、強力な金融緩和を行ってきています。日本銀行が今週初の金融政策決定会合で行った決定のポイントは以下の2つです。』
ということで説明が以下続くのですが、やった事の説明は思いっきり棒読みっぽいので割愛して・・・・・
『目標の達成に向けて』というのがありましてですね。
『先程、日本銀行は、今後、日本経済の競争力と成長力の強化に向けた幅広い主体の取り組みの進展に伴い、持続可能な物価の安定と整合的な物価上昇率が高まっていくと認識し、この認識に立って、物価安定の目標を消費者物価の前年比上昇率で2%とすることにしたと述べました。過去の物価上昇率を振り返ってみると、バブル期の1980
年代後半でも消費者物価指数の前年比は平均で1.3%でした。1985 年から2011
年までの平均で0.5%です。物価安定のもとでの持続的な成長の実現には、様々な主体の相当の努力を要すると思っています。』
・・・・・・・・・・えーっと、それって本当に「目標」なのかよという感じですが。
んでもって次の小見出しが『柔軟な金融政策運営の重要性』でして、今回の決定やら文書やらの中にいくつもこの論点を散りばめていましたなあという所です。
『今回、日本銀行が「物価安定の目標」について決めたことは、「目標」であることと、柔軟な物価目標政策であるということなので、この後者の点についてもお話ししたいと思います。』
ということで柔軟性の話を延々としているのですが最後に決定会合の翌日に投入した微妙に喧嘩売っとるんかというかという説明文が投入(これ冒頭だけネタにしましたが中身も微妙にオモロイので明日にでもネタ投下の所存)されていましたが、その説明文に沿った話が説明の最後に来るのが実に麿である。
『海外中央銀行では、インフレーション・ターゲティングを採用するかどうかにかかわらず物価安定の達成の時期について明確には定めていません。日本銀行の物価安定も、「持続可能」な物価安定を目指すという点で、海外の中央銀行と同様の考え方に立っています。』
持続可能キタコレ。
『日本銀行は先程述べた金融緩和政策を実行しており、目標をできるだけ早期に実現することを目指しています。こうした金融緩和の効果は、緩和的な金融環境を企業等が積極的に活用すればするほど、大きくかつ早期に顕現していきますが、その程度やタイミングを現時点で正確に見通すことは難しいと言わざるを得ません。』
ふむ。
『また、日本では長期にわたって低い物価上昇率が続いてきたことを考えると、消費者物価の前年比上昇率が高まっていく局面で、家計や企業の行動にどのような変化が生じるか、現時点では見通せない要素も多くあります。』
この部分は本当はその説明文を並べてみると誠にキタコレな部分なのですが(^^)。
『さらに、わが国の財政が極めて厳しい状況にあるだけに、内外の金融市場がどのように反応するかについて不透明な面が少なくありません。』
ニヤニヤ。
『日本銀行としては、「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資する」という日本銀行法に定められた目的に沿って、この目標ができるだけ早期に実現することを目指して、最大限の努力を行っていく方針です。こうした日本銀行の政策運営方針は、多くの国民の考え方と整合的だと思っています。』
国民ガーキタコレ!
『因みに、日本銀行が四半期毎に実施している「生活意識に関するアンケート調査」からも窺えるように、性別、年齢、職業を問わず、多くの国民が望んでいる「物価の安定」とは、雇用の増加と賃金の上昇、企業収益の増加などを伴いながら経済がバランスよく持続的に改善し、その結果として物価の緩やかな上昇が実現する状態です。つまり、わが国が、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰しなければならないということです。』
と言う事で。
○しかしまあ何ですな(麿節関連)
ということで延々と総裁講演を引用したのですが、今回の最大の見どころは講演内容というよりは「市場の反応」でございまして(-_-メ)、結構麿テイストなヘッドラインがホイホイとベンダーを賑わしていたように見えるのですが、決定会合直後の麿節キターで反応した為替市場は今回は華麗にスルー状態。
まあ何ですな、(あたくしもそうですけど)決定会合直後にはああだこうだと解釈しながら麿節にもキターとか反応していた訳ですが、2晩ほど経過して色々と考えてみると、結局の所「麿総裁の在任中は金融政策はとりあえずウゴカンチ会長で、問題は次の執行部になってからですよね」という認識がすっかり人口に膾炙してしまった結果、まあ麿節が出ても華麗にスルー状態になってしまったのではないかという所でございます。
麿節キターで市場が要らん方向に反応してその度に大騒ぎになるというような事象が発生しない、というのはまあ結構っちゃあ結構な話ではあるのですが、一面実に残念な傾向でもありまして、まあ何と申しますか申し上げるのも何ですが書いているうちにあたくし急に何かを思い出して北京ダックを食いたくなったのですがここの話の内容と全く関係ない事をお断り申し上げますので念の為申し添えます(-_-メ)。
市場がスルーするのをいいことに更にこれから退任までに麿テイスト前回の情報発信を連発しそうな悪寒もする訳で、いやまあ麿様におかれましてはそのような信念の発露をされたいとか、説明したいというお気持ちは判るのですけれども、あまりそこらじゅうに喧嘩売るようなプレイは残された日銀の後輩の皆様がケツ拭きで苦労する事になりますので、そういう話は5月以降にして頂きますように伏してお願い申し上げたく存じますm(__)m
#つーことで後入先出ネタでした
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2013/01/25
○では麿会見(決定会合後の会見)から
共同声明公表した時の会見録って財務省見ても内閣府見ても官邸見ても見当たらないのでシャーナイナイということで決定会合後の会見に参りましょうず。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2013/kk1301a.pdf
・共同声明の説明がクソ長いのですが
『(問) 本日、政府とデフレ脱却に向けた共同声明を取りまとめられましたが、この取りまとめに至った理由と背景をご説明下さい。』
というのが実質最初の質問(最初は「今回の決定についてご説明ください」というのがお約束なのでその次から実質的な質疑)に対する説明がまるまる1ページ半とか何ぞそれ。
『(答) ご質問は、理由と背景ということですが、まずは趣旨から説明したいと思います。多少、発表した文書の繰返しになりますが――発表した文書を、全ての方が読まれるとは限らないので――、多少の重複はお許し下さい。その上で、理由についてもお話をしたいと思います。』
ということでマジでクソ長いのですが以下引用します。
『まず、本日公表した政府と日本銀行の共同声明は、デフレからの早期脱却と物価安定のもとでの持続的な経済成長の実現に向け、政府と日本銀行の政策連携を強化し、一体となって取り組むことを文書で明確にしたものです。日本銀行としては、日本経済が現在置かれている状況に照らして、「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資する」という日本銀行法に定められた理念のもとで、日本銀行の使命を果たしていくために、政府との連携強化が必要と判断しました。』
ということですが、共同声明およびその翌日に出てあたくしがネタにした物価目標説明の文書にございます「連携強化」なのですが、2%の物価目標に関して「政府の成長力強化の施策を前提にして」というロジックになっているのはそら本来的に言う「役割分担」「責任分担」になってねえだろと思うのですけどねえ。つまりこの次に麿が話していますけど・・・・・・・
『そこで示しているように、日本銀行は、今後、日本経済の競争力と成長力の強化に向けた幅広い主体の取組みの進展に伴い、持続可能な物価の安定と整合的な物価上昇率が高まっていくと認識しています。この認識に立って、日本銀行は、「物価安定の目標」を消費者物価の前年比上昇率で2%とし、この目標のもと、金融緩和を推進し、これをできるだけ早期に実現することを目指すとしています。』
でまあ安倍ちゃんは昨日の経済財政諮問会議の後にも・・・・・
http://www.tv-tokyo.co.jp/mv/wbs/news/post_34046/
物価上昇目標2% 「3ヵ月後に道筋を」1月24日
というお話をしているのですが、安倍ちゃん的には「これで日銀が2%達成の絵を描けさせるでしょう」とまだ思っているかもしれませんが、共同声明文の中にこの麿総裁の言う文言が埋め込まれており、それが内閣府や財務省の連名でも出ている以上、日銀的にはその「具体的な道筋」の中に「これから政府が骨太の方針を出して成長力を引き上げる戦略が決まって、成長戦略が効果を表すと2%に向けて上がっていくぞなもし」という話で政府に下駄を預ける攻撃の絵になりそうな悪寒。まあそこは大人の対応で露骨にそうは書かないでしょうけれども、実質的にそういう表現が出てきた時に安倍ちゃんどういう反応するんでしょうなあ。
『その際、日本銀行は、金融政策の効果波及には相応の時間を要することを踏まえ、金融面での不均衡の蓄積を含めたリスク要因を点検し、経済の持続的な成長を確保する観点から、問題が生じていないかどうかを確認していくということです。』
第二の柱はいつもの話。
『同時に、政府は、日本経済の競争力と成長力の強化に向けた取組みを具体化し、これを強力に推進すると共に、さらに、財政運営に対する信認を確保する観点から、持続可能な財政構造を確立するための取組みを着実に推進することを表明しています。』
でまあここに関して財務省オソロシスというのは既に申し上げた通り。
『ご質問の趣旨というか、理由について、もう少し噛み砕いて申し上げたいと思います。まず、今回の連携強化ということになりますが、そもそも政府と日本銀行との連携自体は、日本銀行法のもとで、日本銀行は、政府と十分な意思疎通を図ることが謳われており、実際、常日頃からそうした十分な意思疎通を図っています。そうした一般論に加えて、現在の日本経済の置かれた状況を考えてみる必要があると思います。』
はあそうですか(棒読み)。
『日本銀行は、強力な金融緩和を推進し、金融環境は非常に緩和しています。この緩和された金融環境、例えば、今、上場企業の43%位が実質無借金で、手元現預金も非常に多く積み上っていますが、日本銀行の作り出しているこの緩和的な金融環境がもっと活用されれば、もっと大きな金融緩和の効果が生まれてくると思います。この点で、政府の様々な競争力あるいは成長力強化は、日本銀行の金融緩和と並んで必要な取組みです。』
『今、成長力強化のことを申し上げましたが、成長力強化によって金融緩和の効果がさらに引き出されてくるということです。また、日本銀行は、現在、強力な金融緩和を行っており、国債を大量に買い入れているわけですが、もしこの国債の買入れが、内外の市場で、中央銀行による財政ファイナンスであると受け取られると、長期金利が上がり、却って金融緩和の効果が削がれてしまいますし、金融機関経営に対する悪影響を通じて、金融が経済を支える力にも悪影響が出てくることになります。その面では、持続可能な財政構造をしっかりと作っていくことも大事であり、そういう面で政府との連携も必要になってくるわけです。これは大きな流れです。』
『それから、このごく足許の2013 年〜14 年という経済の見通しを見ると、物価安定のもとでの緩やかな経済、景気の回復という見通しの実現の蓋然性が少しずつ高まってきていると思います。2013
年度の経済成長の見通しは、そのようになっています。そういう局面をとらえて、政府と日本銀行が連携を強化するということは、先程申し上げた大きな状況認識の中でも、適切であると判断しました。』
まあ最後のとってつけたような説明に関してははあそうですか(棒読み)としか申し上げようがない所ですが、その前の部分の説明が従来の話と同じ、というのはまあご案内のように共同声明の中に政府も日銀も安倍ちゃんも言いたい事を織り込んでごった煮にしている結果でもありまして、つまり麿ワールドも織り込んでいるのですわな。
・なぜ2%なのかの理由はどう見ても前提条件付です本当にありがとうございました
『(問) 2%の目標に関してですが、これまで日銀は、「当面1%を目指して金融緩和を続ける」と言ってきており、その1%という数字がまだ現時点で必ずしも見通せていない段階で、1%という数字を無くして2%という目標を置かれたわけですが、その2%の数字の根拠と、その実現可能性を日銀としてどうみておられるのかについて、総裁の見解をお聞かせ下さい。』
そらまあ当然の質問。
『(答) 日本銀行は、従来、「物価安定の目途」として、2%以下のプラスの領域であるとし、その上で、当面は1%を目指すと言っていました。また、成長力強化の取組みが実を結んでいくと、これは徐々に上がっていくという認識をかねて示していました。』
『ご質問は、実現可能性ということですが、これは過去を振り返ってみると、1980
年代後半のバブル期の5 年間の平均が+1.3%、それから1985 年以降2011 年までの平均が、確か+0.5%だと思います。そういう意味で、この「2%」という数字を達成していくためには、相当思い切った努力が必要だと思います。』
で、日銀が相当思い切るのかと申しますと・・・・・・・
『日本銀行自身は、こういう形で、強力な金融緩和を推進するということですが、同時に、様々な主体による成長力強化の取組みは非常に重要であり、様々な主体による相当な努力を必要とすると思います。もちろん、そうした努力なしに成長力が上がっていくというわけではありません。そうしたことに向けて、政府も、民間も、それから日本銀行も、それぞれの立場で努力をしていくことは大事だと思います。その上で、実際にどの程度成長力の強化が図れていくのか、あるいは、エコノミストの言葉で言うと、予想インフレ率がどの程度上がっていくのかということは、これもまたしっかり点検をし、金融政策運営を行っていきたいと思います。』
ということで、こちらも共同声明に埋め込まれている文言や、物価目標の説明文書にあるような説明にもありますように、「皆さんの努力が必要」という話をしているのが何だかアレでございまして、「目標」というのだから自分の所で達成させるもんじゃねえのかと思うのですが、どうもこの麿イズムによりますと1%なら自分で行きますが2%は皆さんも頑張ってちょと言っているようにしか読めないのですがどうでしょうかねえ。
・2%目標をどうやって達成するのでしょうか?
『(問) 2 点お伺いします。先程の質問に対して、2%という数字を達成するためには、「相当思い切った努力が必要だ」と総裁はおっしゃいました。現在、日本銀行は、その2%に到達するための手段を持っているのかどうか、それをさらに検討していく余地はないのかどうか、その点をお伺いします。(2点目はオープンエンドに関する質問だが割愛)』
とまあそういう質問が来るのですが。
『(答) まず、日本銀行として、どのような手段があるのかということですが、今回、日本銀行は「包括緩和」を始めて以来、資産の買入れ、あるいは別途の政策手段ですが、成長基盤強化支援、貸出増加支援を行ってきました。中央銀行の金融政策は、基本的に、金融市場から資産を買い入れるということ、あるいは貸し付けるということですから、そうした手段を使っていくことになります。(以下引用割愛)』
ということで、どのようなパスで物価が上昇するのかという話は完全にスルーしているのがチャーミング。
更にツッコミは続く。
『(問) 2 点伺います。総裁は、先程、2%の実現可能性について、「相当な努力が必要だ」とおっしゃいましたが、昨年までは、過去に経験していない物価を目標に掲げると、長期金利の上昇などがあって、非常に経済に悪影響が及ぶというように、かなり1%に固執してご説明されていました。これが、相当な努力をすれば実現できるのだと変わった理由は何なのか、もう一度詳しくご説明願います。(2点目は独立性の質問だが割愛)』
『(答) まず、2%の話です。今回、2014 年度の消費者物価上昇率の見通しは中央値で+0.9%になっています。従って、本日、数字は出していませんが、2015
年度以降の経済・物価情勢を考えた場合、どういう姿になるのだろうかということは、当然皆さん関心があるわけです。』
そうですね(棒)。
『そうだとすると、その先の世界について、私どもがどのように考えているのかは、やはり示す必要があると思いました。』
で????
『先程来、繰り返し申し上げていますが、2%については、成長力強化の取組みの進展に伴い、それに応じて上がっていくという意味で2%を設定しています。しかし、今、現実にそうした取組みが直ちに効果を表しているわけではありません。』
一方で安倍ちゃんは引き続き「早期達成のパスを示せ」という話をしている訳で今後どういう事になるのがオソロシスではありますが、幸か不幸か次回の諮問会議における金融政策集中点検の時にはカウンターは麿では無いのでしょうな。まあ中の企画の人たちは同じなんでしょうけれども。
『従って、金融政策の運営に当たっては、そうした取組みのもとで形成される国民の物価観、予想物価上昇率を点検していくことになります。今回、共同声明にも、日本銀行の金融政策の目的をはっきりと書いています。これは、「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資する」ことであり、物価だけをみて機械的に金融政策を運営するわけではないこと、金融政策は柔軟性が大事であるということを、私は先程も明確に申し上げたつもりです。』
ふーん。
『究極の目的は、とにかく物価だけを上げていくということではなく、あくまでもバランスのとれた経済の姿を実現していくということです。』
まあそれはそうなんだが「とっとと物価を上げろ」と言われている訳でコストプッシュも辞さずと言った方がヤケクソにも程があるけれどもレジームチェンジによろしいのではないでしょうか、なんてゆーのは無責任ですけどね。
『私が度々紹介している、国民の物価上昇に対する受止め方ですが、8 割以上の国民は、物価上昇については「どちらかと言えば、困ったことだ」と答えていると同時に、デフレ克服もして欲しいと願っています。それは、バランスのとれた経済の姿をできるだけ早く実現して欲しいということです。そうしたことをしっかり点検しながら、行っていくということです。(以下引用割愛)』
でまあその麿イズムが出たのが昨日ネタにした物価目標の説明文書の中においてあたくしが「燃料投下」と悪態をついた部分になるということで、まあ最後まで麿は麿で、安倍ちゃん相手には燃料を投下し続けるのが仕様になっている、と言う事が示されているのではないかと思いますと誠に遺憾の念を禁じ得ません。
・中々鋭い上に見事な大物が釣れたしつもん
その後の質問で見事なのがあります。
『(問) 2 つお聞きします。先程、できるだけ早く2%を実現することを意識した場合に、期限を定めない買入れ方式に変えたことについて、より効果的だと判断されたとおっしゃいました。今までの時間軸といいますかコミットメントは、物価上昇率1%を見通せるようになるまでゼロ金利と資産買入れを続けるというものでした。今回は、1%が消えて2%という目標になった一方、時間軸の約束については、いつまでか全く分からない、より裁量的になったとも言えるのではないかと思います。』
これは仰る通り。
『そうした状況にもかかわらず、買入れ方法の見た目を変えただけで、どのような効果があるのでしょうか。コミットメントは、中央銀行の行動を制約することによって金利に影響を及ぼすものと思いますが、そういう制約が曖昧になったとすると、どのような効果が見込まれるのか。これが、1
つ目の質問です。』
実にすばらしい。
『もう1 つ、先程、成長力強化以外で予想物価上昇率が上がった場合に、物価上昇率2%という上限がそうしたことを防ぐ効果があるとおっしゃいました。今回、2%というピンポイントで目標を掲げたわけですが、中央銀行がピンポイントで物価上昇率を目標として掲げる場合、だいたいプラスマイナス1%前後のレンジが意識されているのが基本的な常識ではないかと思います。2%をピンポイントで挙げたことで、今おっしゃったように2%以上はよろしくない、つまり2%が上限でありそれ以上は看過できないという認識をお持ちなのでしょうか。安倍首相は、首相になる前ですが2〜3%が望ましいという見方もされていました。白川総裁は、2%は上限でありそれ以上は容認できない、そういうお考えなのかどうか教えて下さい。』
これが釣果抜群の素晴らしい質問。
ということで最初の答えの方から。
『(答) 1 つ目のご質問の趣旨を必ずしも明確に理解したわけではありませんが、日本銀行は、物価安定の目標を消費者物価の前年比上昇率で2%とし、これをできるだけ早期に実現することを目指すという方針です。この方針のもとで、消費者物価の前年比上昇率が1%を超えることを見通せない現状においては、2014
年初以降、当分の間、毎月13 兆円程度の買入れをしていくという考え方です。』
『先程も申し上げた通り、物価の上昇率は長らく低い状態が続いてきたわけです。この物価上昇率が、現実に上がって、例えば、1%を超えてくる見通しになってきたその時に、どの様な予想物価上昇率の変化が起きてくるのか。あるいは、成長力強化の取組みが実を結んでくる時に、今これだけの金融緩和を行っているわけですから、その時にどういう影響が出てくるのか。これを、今の段階で正確に見通すことができれば、もちろんそういうコミットメントあるいはガイダンスもできるでしょうが、そういう見通しをすることが現時点では難しいということだと思います。』
これは酷い麿節。
『そうした状況の中で、私どもが将来の金融政策運営について、一定のガイダンスを与えることを考えると、先程申し上げた方式が最適と判断しました。』
これじゃあ1%超えたらそろそろ尻がムズムズしてきますとか言ってるようなもんで、まあどうせその時に麿は居ないからどうでも良いと言ってしまえばそれまでですが、言わずもがなの話をして麿の愛する日銀の後輩の皆様すっかりいい迷惑にしか見えませんが。
んでもって次の質問の答え。
『2問目ですが、日本銀行は、従来、物価の安定について2%以下のプラスの領域と判断し、その上で、当面1%を目指すと申し上げていました。2%以下のプラスであるという考え方は、今回の決定会合の議論でも、変わっていません。』
>2%以下のプラスであるという考え方は、今回の決定会合の議論でも、変わっていません
>2%以下のプラスであるという考え方は、今回の決定会合の議論でも、変わっていません
>2%以下のプラスであるという考え方は、今回の決定会合の議論でも、変わっていません
当然ながらこのヘッドラインが出た瞬間に「麿節キター」という声が市場に飛び交ったのは言うまでもありません。
『海外の常識についてですが、色々な中央銀行があり、例えば、比較的数字をピンポイントで挙げているECBは「2%」、正確には「below,
but close to, 2%」として2%以上を容認しない、2%が上限であるという趣旨の表現をしています。もちろん、現実の物価上昇率は、様々な要因でオーバーシュートすることがありますが、中央銀行の考えという意味では、例えばECBがあるということです。』
ということで従来と同じと言わんばかりの物言いというのは如何なものかと思っておりましたら、何故かその発言がインターネット版のニュースで拾えないのが極めて遺憾の極みなのですが、昨日ネタにした物価目標に関する関連資料の記者説明の席上、日銀の神山政策企画課長が「2%はピンポイントで上限であり下限である」という説明をしたというヘッドラインが出ておりまして(ブルームバーグには出ていた)、結局どうなってますねんとゆーのが謎なのでございます。
つーかさ、折角「目標」を入れてその数値を引き上げてという形で「チェンジ」をしようとしているのに、「変わりません(キリッ)」とか説明するとか何をゆうてますねんという所で、新しい物を掲げるという弾打ち(今回は実弾系ではないが)をしているのにそれを「変わりません」とか言ったらダメだろというか、んだったら突っぱねろよと思うのですよ。
でまあ突っ張れないで受け入れる、というのであれば、文言の方でそれなりに実は取っているのですから、後は満面の笑みで「今回は変わりましたよどうです凄いでしょう」と言うのが正しい正しくない以前の問題で「お得」じゃないか、つーか変わらないとか言ったら何のためにコスト払って弾撃ちしているのか全くもって意味不明にも程があるぞなという所でありまする。
とは申しましてもどうせ麿様におかれましてはあと3か月以下同文。
・この質問は酷い
『(問) 先程、共同声明について、独立性に様々な配慮がなされているというお話がありました。確かに、非常に工夫の凝らされた、妥協というか合意が盛られていると思いますが、安倍首相は、就任前から、あるいは衆院選の前から、日銀法改正をちらつかせながら非常に厳しい要求を突きつけてこられた。一連の経緯を全てみると、世の中では、日銀の独立性は侵されたのではないか、あるいは、政治の介入を招いたという印象が非常に強いと思います。改めて、一連の経緯も含めて、総裁は、独立性は維持されているとお考えになっているのか、お聞かせ頂きたい。また、一連の交渉あるいは状況の中で大変厳しい立場に立たれてご苦労されたのではないかと思いますが、独立性を守るために辞任しようという思いがよぎられたことがなかったのかどうか、伺います。』
途中までは良いのですが、最後の部分はこれは何ぼなんでも・・・・・・
『(答) 独立性についてのご質問ですが、先程、別の方にお答えした通り、中央銀行の独立性は国際的に確立された考え方です。中央銀行に独立性を付与し、持続的な経済・物価の安定を図る観点から中央銀行が金融政策を行うという事態が仮に崩れると、そのこと自体が国民経済に相当大きな悪影響を与えるわけです。そうした独立性の重要性は、政府においても十分認識されていると思いますし、また、十分認識するインセンティブがあります。』
『もし独立性を尊重しないということになると、これは、結局は国債の金利に跳ね返ってきて、直ちに財政にも響いてくるわけです。そういう意味で、私は、独立性は尊重され、十分な配慮がなされていると思っています。中央銀行として、独立性をもって運営しているかどうか、最終的にどのような金融政策を運営しているかということは、金融市場の参加者あるいは皆さんが判断することなので、この場では、私の考えを申し上げたいと思います。』
『日本銀行に定められた使命、つまり、長い目でみた経済の安定を図っていくという1
点に照らして、金融政策を運営していくということです。そうした思いは一貫して変わっていませんし、そういう思いでこの数か月も臨んで参りました。』
とまあそう答えたのですが、その後幾つかの質疑の後にこの記者ったら・・・・・・
『(問) 先程の「辞任について考えなかったか」という質問に答えて頂いていないので、答えて頂けるならお答え下さい。』
いやさすがにこれはちょっとどうかと。
『(答) 私は、総裁に就任して以来、総裁としての責任をしっかり果たしていくのが私の務めだと、一貫して思っています。』
ということで、最後の付利の質問で昨日ネタにしましたような物凄い勢いでの全否定モードとかになってしまったのはこの辺りで麿先生も相当トサカにきておられたのではないかと愚考します。
・ではまあ最後の付利の話でも
再掲しておきます。
『(問) 今回の会合の前に、市場の一部では付利の引下げを見込む動きがありました。かねて白川総裁は付利の引下げに否定的な見方をしていると思いますが、その考えは変わっていないのでしょうか。』
『(答) 付利については、この記者会見の席でも、本当に何回答えたかというぐらいです。全く同じことを、もう1
回ここで申し上げたいと思います。』
ここまで再掲で。
『金融政策は、金融市場や金融機関を通じて、企業や家計の金融環境に働き掛ける政策であるため、金利水準が低下するもとでの金融市場の機能や、金融機関が貸出を行うインセンティブ如何で、経済に働き掛ける力は変わってきます。』
ほう。
『例えば、金利がゼロに近づくと、短期資金市場の流動性が著しく低下し、市場参加者が必要な時に市場から資金調達できるという安心感を損なう惧れがあります。また、預金金利をこれ以上引き下げることが難しい中で、資産運用金利の低下は金融機関の収益に悪影響を与えます。その場合、結果として、金融面から経済に働き掛ける力はかえって低下する可能性があります。』
『各国の中央銀行では、それぞれが置かれた状況に応じて、金融政策の効果が最大限発揮されるよう、金利水準を選択しています。そうした判断の結果として、付利金利は各国毎に異なっています。例えばユーロ圏では、当座預金への付利金利は現在ゼロ%となっています。これは、短期資金の取引において、中央銀行に依存する度合いが高く、短期資金市場が事実上機能していない、存在していないということから、付利金利をゼロ%としても、追加的な副作用が限られると判断された結果だと認識しています。』
『一方、その他の主要国では、短期資金市場が引続き機能しており、日本は0.1%、米国は0.25%、英国は0.5%と、完全なゼロ金利にはしないことで、市場機能の維持と金融緩和との両立を図っています。』
ということなのですが、バランスシートの拡大を意図した政策を実施しているかどうか、という点で説明した方がクリアカットじゃないのかと思うのですけれども、記者の人たち向けには無理なのでしょうかねえと思います。金融市場向けに説明するのでしたらバランスシートを拡大する為にどうしたら良いのかという観点から説明するとあたくしの経験則から(サンプルが超限定的ですが^^)してまあ大体理解されるんですけど。
『わが国の場合、2000 年代前半の量的緩和期の経験等を踏まえ、「超過準備への0.1%の付利と、0〜0.1%程度の金利誘導目標」という組合せのもとで、金融緩和効果は最大に発揮されると考えています。』
ということでした。今回の会見はやたら麿先生の説明が長い質疑が多く(状況的に当たり前だが)引用するものを選ぶのが若干いつもよりホネでしたぞなもし。
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2012/12/25
以下まずは総裁会見から(さっきの石田さんの部分も会見ですが)。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2012/kk1212b.pdf
○安倍さんェ・・・・・・・・・・・
例の電話云々の質疑は備忘録で残して置く。6ページと18ページにあるだよ。
『(問) 安倍総裁が、本日午後の会合の挨拶で、本日の朝に、白川総裁からお電話を受け、決定会合の内容についてご説明を受けたとおっしゃっておられます。まず、このことが事実なのかどうか、内容も含めてお話し下さい。(2点目割愛)』
『(答) まず1 問目です。本日の金融政策決定会合終了後――あくまで終了後ですが――、野田総理と安倍総裁に、本日の金融政策決定会合の決定内容を電話でお伝えしました。安倍総裁にお電話したのは、13
時30 分頃です。従って、午前中に電話をしたということは、もちろんありません。(2点目割愛)』
ふむ。
『(問) 決定会合が終わった後、総理や次期総理候補に電話で報告するということは、毎回されているのでしょうか。もし、毎回ではないとしたら、本日は何故、直接お話ししたかったのかを教えて下さい。(2点目割愛)』
『(答) まず、1 点目ですが、従来から、金融政策決定会合において重要な政策決定がなされたときには、総理を始め、関係する大臣に私から直接連絡を差し上げています。今回、安倍総裁については、野党の総裁ではいらっしゃいますが、次期政権を担う方ということでご連絡をしました。従来から、金融政策上の重要な決定がなされたときには、決定後ですが、私から連絡を差し上げています。(2点目割愛)』
ということで、そもそも決定会合前云々というのは安倍ちゃんの記憶違いかフカシっぽい(つーかまあ冷静に考えて決定会合がそもそも合議制なのに決定も糞も言えないし、あの麿がそういうのを事前に言うタイプとは到底思えない上に、従来より決定会合後の報告は何か変化があった時には行っていると考えるとまあそうだ罠という所で)訳ですが、それ以前の問題として「決定会合前に政策決定をどうする的な電話が掛かってくる」という解釈をされそうな発言をする時点で物事のイロハをお判りになっていないという誠に遺憾に存じますという所がある訳でして、いいからお前は喋るなとか思いますし、何かもう周りが「ここで自民党中心の政権がコケると大変な事になるから何とか参議院選挙で安定政権作って欲しい」とか思いながら必死に段取りしたり、海外とかの反応でもそんな雰囲気を感じないわけでもないという状況が垣間見れるような気がするという今日この頃において、実に困ったもんだという所ではございまする。
#つーか閣僚人事とか党役員人事とかでも一部アレなのが散見されるようなので益々アレなんですけど
しかしこの質問ヒドス(ちなみにブルームバーグ提供の録画を見ると実際の質疑は以下自粛)。17ページからの質問で18ページ部分になりますけど。
『(問)(前段割愛)また、安倍さんは総裁選の時から、よく日銀を批判するようなことを言っていたと記憶しているのですが、日銀法改正等も含めて、安倍総裁の金融・経済に対する知識に関して、どのような理解をしていらっしゃいますか。』
『(答) 最後の質問については、発言を控えます。(以下割愛)』
誰だよこんな質問するアホウは・・・・・・・・(ってまあ録画見ると判るのですけどね)
○いやその話ってもう説明してるだろう的な質問が堂々と登場する件
質疑応答読んでいて正直呆れたのは9ページの質疑(つーか質問)である。
『(問) 2 点お伺いします。1 点目は、色々なワーディングが飛び交っているのを少し整理させて頂ければと思います。1
つは、総裁がこれまでおっしゃっていた「物価安定の目途」というのは、「インフレーション・ターゲティング」とは別のものなのか、あるいは同じと考えていらっしゃるのか、違うとすれば何が違うとお考えになっているのかお聞かせ下さい。(2点目割愛)』
だからそれは物価安定の目途を導入した時にも説明してるだろうが・・・・・・・・・・
『(答) まず、最初の用語の話についてです。「中長期的な物価安定の目途」は、中央銀行の金融政策の使命と整合的な物価上昇率を数値的に示していく、それを中長期的に目指していくという点では、「目標」という表現を使っている国の中央銀行の考え方と違いはありません。日本銀行が本年2
月に「目途」という言葉を使ったのは――記者会見あるいは講演でも申し上げましたが――、わが国では、「インフレ目標」という言葉が、一定の物価上昇率と関係付けて機械的に金融政策を運営することとほぼ同義に使われているケースが少なくないという実情を踏まえたものです。』
『海外のインフレーション・ターゲティング採用国でも、当初は、実際にそうした機械的な運営がなされていましたが、そうした機械的な運営が、却って経済の変動を大きくしてしまうことを経験し、現在では、「インフレーション・ターゲティング」とは、中長期的にみて物価や経済の安定を重視していく、いわゆる「フレキシブル・インフレーション・ターゲティング」であるということが共通理解になっています。』
『金融危機後、この数年間、例えばニュージーランドあるいはカナダもそうですが、インフレーション・ターゲティングを採用している国で、枠組みの再点検を行った際、いずれも金融システムの安定も重視するという方向に変わってきています。いずれにせよ、フレキシブルな体系であるということは、ほぼ共通の理解になっています。』
『確か記者会見の席だったと思いますが、日本銀行が本年2 月に発表した枠組みについて、「インフレーション・ターゲティングと呼ぶのか」というご質問を受けました。直前1
月に、FRBが「インフレーション・ゴール」を発表し、バーナンキ議長が記者会見で「これはインフレーション・ターゲティングではない」と明確に否定されました。ただ、FRBの政策の枠組みをインフレーション・ターゲティングであると呼ぶ議論が多かったわけですが、もしFRBの政策について、本人の否定にもかかわらず「インフレーション・ターゲティング」と呼ぶのであれば、日本銀行の今回の金融政策の枠組みは、FRBの金融政策運営の枠組みに近いということを私は申し上げました。』
『要は、フレキシブルな運営であるという理解が――今、日本でもそうした理解が徐々に拡がってきていますが――、さらに深まっていくと、「目途」か「目標」かといった議論は意味がなくなってきます。従って、この問題のポイントは、柔軟に対応していく枠組みであるのか、あるいは物価上昇率が目標より低い限り金融緩和政策をどんどん強化していくことを「インフレーション・ターゲティング」と呼ぶのかです。海外のインフレーション・ターゲティングは、柔軟な政策の枠組みであり、あくまでも金融政策を遂行していくための枠組みであるということが大事です。(2点目割愛)』
まあこの話以前もしてるがなという感じなのですが、結局質問する方の理解がこういう状況だから金融政策の説明が中々一般に伝わらず、お蔭でナンジャソリャな電波金融政策説明が飛び交う状況が改善されないと考えますと、メディアの責任というのは大きいです罠と思うのであります。
でまあ声明文と金融経済月報の比較をしている時間が無くなってしまって甚だ遺憾の極みなのですけれどもそういう事で。ちなみに声明文と月報を見ると「あれ何で追加緩和したのよ」というのがイマイチ伝わらないという仕様になっているのがこれまた味わいのある所でございまする。
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2012/12/03
○名古屋での総裁講演は場所柄円高の話が多い訳で
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/data/ko121126a1.pdf
デフレ脱却の道筋
── 名古屋での経済界代表者との懇談における挨拶 ──
・海外経済と為替市場のレビュー
冒頭のあいさつの次の小見出しがいきなり『2.海外経済および為替レートの動向』となっているのは場所が名古屋だという事もありましてその辺いつもながら(名古屋での講演は毎度でございます)為替の話が多いのですな。
『当地には毎年ほぼ11 月のこの時期にお邪魔していますが、最初にこの1年間の日本経済を取り巻く外的経済環境、とりわけ、海外経済と為替レートの動向を振り返ることから話を始めたいと思います。』
ということでレビューをしていますが、海外経済に関しては中国に関してのコメントがまあその通りなのですがほほうという所です。
『この1年間という点で、地域別に最も変化が大きかったのは中国経済でした(図表3)。成長率はなお高水準であるとはいえ、実質GDPの前年比は昨年第1四半期以降7期連続で低下しており、欧州向け輸出の減少や素材産業における在庫調整などから減速が長引いています。また、そうした短期的な動きとは別に、高度成長から中程度の成長軌道へ円滑な移行ができるかどうかが、政策運営を巡る大きな関心事項になってきているように思います。』
まあ要するに見通しを大きく下振れたのが中国経済です、という事なのですがそこは言わないのがチャーミングというか往生際が悪いというか。
『次に、為替レートの動向です(図表4)。この1年間に限ってみれば、円の為替レートは対ユーロで2%の円高となった一方、対米ドルで4%、対韓国ウォンで8%の円安方向の動きとなっており、それらの動きを貿易額で加重平均した為替レートは4%の円安となっています。』
確かに事実はそうなのですが、それは語順として後にすれば良いのにとか思うのは余計なお節介ですかそうですか。
『もちろん、最近1年間の動きはともかくとして、輸出製造業の多い当地の企業経営者の皆さまの実感としては、為替レートはリーマン・ショック以降、急速に円高化した水準で高止まっており、引き続き厳しい状況に直面しているというものであることは十分承知しています。』
「引き続き厳しい円高が高止まり状態ですが、この1年は若干程度改善していますがまだまだ円高是正には遠いです」という文脈で話を進めれば印象違うような気もしますがね。
『この点、わが国企業の設備投資の状況をみますと、近年、一段と海外の比率が高まっており、企業の海外進出の動きが強まっています(図表5、6)。これは、基本的には相対的に高い海外の成長力を取り込む動きとみられますが、根強い円高傾向がそうした動きを加速させている面もあるように窺われます。』
という話をしておりまして、まあ話のニュアンスとしたら円高に対して随分と配慮した進め方になっておりますので、字面で見るのと講演を実際に聞くのとではイメージが違うのかもしれませんな。
『より長い目でみると、為替レートは大きなスイングを示しています。振り返ってみると、2000
年代半ばにかけては、円キャリー・トレードを背景に、対ユーロを中心に、かなりの円安が進行しました(前出図表4)。リーマン・ショック後は、米欧と日本の金利差が縮小したことに伴い、円キャリー・トレードが巻き戻されたことや、欧州債務問題が進行する中で円が安全な通貨とみなされたことなどを背景に、一転して急速な円高が進行しました。こうした為替レートの大きなスイングは、皆さまの企業経営に大きな影響を与えるものであり、為替レートの安定は政策上の強い要望であると思います。日本銀行としても、現在のように海外経済の先行きを巡る不確実性が大きい局面において、円高が、輸出や企業収益の減少、企業マインドの悪化などを通じ、わが国経済に負の影響を与える可能性があると懸念しています。企業の海外シフトの加速や中長期的な成長期待の低下につながる惧れという観点からも注意が必要と考えています。この後ご説明しますように、日本銀行ではそうした点も念頭に置いたうえで景気・物価情勢を点検し、強力な金融緩和を推進してきています。』
ということで、為替円高に対する配慮を相当見せたサービス成分の高いセクションを最初に持ってきておりまして、まあ一部ツッコミどころはあるにせよこれはこれで相当に気を使った講演であるという感じですな。
・先行き見通しも弱めですな
『次に、以上申し上げた海外経済や為替レートの動向も踏まえながら、日本経済の現状と先行きについてお話しします。』
『わが国の景気は、本年前半は先進国の中では最も高い成長率を記録しましたが、夏場以降は急速に変化し、現在は「弱含み」となっています。景気が弱含みに転じた最大の理由は、海外経済の減速が長引いていることです。』
ふむ。
『7〜9月に続き10 月も輸出は減少し、鉱工業生産も2四半期連続で減少しています(図表7)。10〜12
月については、日中関係の影響が輸出にも明確に出てくると予想され、注意が必要です。』
>日中関係の影響が輸出にも明確に出てくると予想され
ふむふむ。
『一方、国内需要は、最近までは、復興関連需要の増加などを背景に相対的には堅調に推移してきましたが、足もとでは、内需にも徐々にその影響が及び始めています。個人消費は、エコカー補助金終了に伴う反動もあって、勢いが鈍っています。設備投資は緩やかな増加基調にあるものの、海外経済減速の影響から製造業に弱めの動きがみられます。』
ということで、内需にも悪影響と。
『こうした外需の動きを前提にすると、先行きの景気については、当面は弱めに推移するとみています。しかし、その後は、海外経済が減速した状態から次第に脱していくにつれて、緩やかな回復経路に復していくと判断しています。この間、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、当面、ゼロ%近傍で推移するとみられますが、景気の持ち直しに伴い需給バランスが改善するにつれて、徐々に緩やかな上昇に転じるとみられます。2014
年度には、日本銀行が当面の「中長期的な物価安定の目途」としている「1%」へと着実に近づいていくというのが我々の見通しです。』
これは毎度の見通しですが。
『ただし、こうした見通し通りの展開となるかどうかは、海外経済の動向に大きく依存しています。私が出席する国際会議では、米国も欧州も中国も、それぞれにとっての海外経済の動向を自国の経済に大きな影響を与える要因として指摘していますが、世界全体で考えれば、「海外要因」は存在しません。』
まあ最近のあちこちの中銀のミニッツ見ると「ウチはアレだが海外要因は何とかなりそうですな」的なのが多くて誠にアレ。
『言い換えますと、経済のグローバル化の進展が著しいもとでは、世界経済をひと括りにして捉えるという見方も重要です。この点では、改めて、2000
年代半ば、特に2004 年から2007 年にかけての世界経済の拡大が未曾有の信用バブルに支えられた空前の好景気であったことを思い起こさざるを得ません(図表8)。このバブル崩壊の帰結として、世界経済は米国の住宅バブル崩壊から6年、リーマン・ショック発生から既に4年も経過しているにもかかわらず、また、先進各国の積極的な金融緩和政策にもかかわらず、景気回復のテンポは非常に緩やかです(図表9)。このことは、バブル崩壊後の過剰債務の調整が完了するまでは世界経済が高い成長軌道に復帰することが難しいことを示しています。』
という毎度の話なのですが、いつも思うのだが白川さんの(かどうか知らんが)名言「偽りの夜明け」はまさに大当たりでここまで推移しているのに、何でそれが日銀の海外経済見通しに反映されていないのかと小一時間・・・・・・・・
つーことで、まあ景気に関しては下方修正含みなのは把握した。
○でまあ会見ですが珍しくツッコまれて「水準」にも事実上言及
でまあ会見ですが。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2012/kk1211c.pdf
さすがに今回は安倍さん関連の質問は「この前答えたから勘弁」という流れになりましたが(^^)。
・円高に対して
『(問) 中経連の三田会長と名古屋商工会議所の木村副会頭から、円高が続くことによる産業の空洞化への懸念が改めて強く示されましたが、東海地方の今後の経済を考える上で、日銀として、三田会長や木村副会頭等のご要望に対してどのように応えられるのかという部分をお聞かせ願えればと思います。』
『(答) 自動車関連企業を始めとする当地の企業が、円高の問題を始め厳しい競争環境に直面しており、産業の空洞化を懸念されていることはこれまでも認識していましたが、本日の懇談会においても、改めてそうした懸念が表明されたところです。』
でまあその途中部分は華麗にスルーしまして。
『それと同時に、政府が規制等を柔軟に見直すことなどを通じて、企業の前向きな取組みを支援していくことも重要です。日本銀行としても、様々なことに取り組んでいます。海外経済の減速が長引くこの局面での円高というものが、輸出や収益の減少、あるいは企業マインドの悪化を通じて日本経済に負の影響を与えているということは、日本銀行としても十分認識しており、このことは講演の席でも申し上げた通りです。』
ということで円高に関しての強い言及は講演と同様ですな。
『日本銀行は、この9 月、10 月と金融緩和の強化を実施したわけですが、そうした円高の影響も含めて、景気・物価情勢を入念に点検し、そうした措置を採ったわけです。日本銀行としては、金融機関による成長基盤強化の取組みや貸出の増加を支援するとともに、実質的なゼロ金利政策や資産買入等の基金の着実な積上げを通じて、強力な金融緩和を間断なく推進していくことで、中央銀行としての使命をしっかりと果たしていく方針です。』
でまあ他の質問でこれは良いツッコミ。
『(問) また円高関係の質問ですが、先程、講演の中で円相場の高止まりについて企業が引き続き厳しい状況にあることは十分に認識していると指摘されておられましたが、これは今までの一方的な円高の進行ということではなく、高止まりの状況が続く中で、いわゆる相場の変動よりも水準自体を意識しなければならない局面に変化しているという理解なのかどうかということと、そういった変動よりも水準を意識しなければならない変化の中で、日本経済に対する影響の仕方も変わり得るのか、この辺についてお聞かせ下さい。』
『(答) 当地には毎年11 月のこの時期に訪問しています。本日、地元経済界の方に当地経済にとって最大の関心事項である円相場の話をする際に、この1
年間の円相場の動き、これをまず振り返るところから始めたわけです。』
『そこで申し上げたことは、円の対ドル、対ユーロあるいは対ウォンなど、様々な通貨を加重平均した、いわゆる名目の実効為替レートベースでみると、この1
年間では、円高ではなく円安方向になっているけれども、企業経営者にとって、現在の円高化した水準が大変厳しいということは十分に認識しています、ということをまずお伝えしたかったということです。』
ほほう。
『従って、今、記者の方がおっしゃった、水準か、変動か、ということを意識して言葉を使ったのではなく、要は、中央銀行として、経済の厳しい状況について、しっかり認識しているということをお伝えすることが、まず、経営者からの日本銀行への信頼感につながってくると思い、そう申し上げたという趣旨です。』
ということで、まあ立場上「為替市場の水準」について言及するのは避けたという所ではあるのですが、そこは避けながらも麿的には精一杯のアピールをしているというのは把握しました。そして次にこんな質問がありましてね。
『(問) また円高の話で恐縮ですが、午前中の懇談会では、円高に対する懸念が出たものの、今、おっしゃったように1
年前と比べれば、あるいは最近の足許だけをみると、結構円安になっているわけです。これに対して、これが経済に対してどういったインパクトを及ぼすのかということをまず1
点お伺いします。また、金融政策によって、直接的に為替に働き掛けることはできないにしても、何らかの間接的に円安に働き掛ける政策というのは、まだ手段としてあるのかどうか、お伺いしたいと思います。』
『(答) この1 年間に限ってみると、若干円安方向ではありますが、多くの企業経営者がおっしゃっているように、この円高化した水準が続いていることが、企業経営に様々な影響を及ぼしていることは十分認識しています。この9
月、10 月の金融緩和の強化も、そうした影響も含めて決定したものです。何か、足許は楽になっているということを申し上げたいわけではもちろんありません。』
うむ、これは麿にしては結構なサービス発言をしているぞなもしという所です。
『次に、金融政策の為替レートへの影響ですが――講演の席でも申し上げましたが――、日本銀行が強力な金融緩和政策を続け、先行きも消費者物価と関連付けて強力な緩和政策を続けていくことを約束していることは、為替相場には相応の影響があると思っています。』
まあこちらはどうでも良いですが。
・物価目標の2%とか1%とか
『(問) 先日の会見では、3%の物価目標については現実的でないとおっしゃっていましたが、2%の物価目標については如何でしょうか。』
『(答) これも、先日の記者会見でかなり丁寧にお答えしたつもりです。その時のお答えを要約する形でお答えしたいと思います。』
丁寧だけどかなり直球ストレートにお答えしていましたな(^^)。
『日本銀行が「中長期的な物価安定の目途」としているのは、2%以下のプラスの領域であり、当面は1%を目指すことを明らかにしています。これは、成長力強化の取組みが実を結んでいけば、つまり、民間による取組み、それから政府による規制緩和等の取組み、こうしたものが実を結んでいけば、1%よりも少しずつ上がってくる可能性はあります。』
>1%よりも少しずつ上がってくる可能性はあります
>1%よりも少しずつ上がってくる可能性はあります
>1%よりも少しずつ上がってくる可能性はあります
・・・・・・・まあこれ前から(というか最初から)言ってるんですけど、どうも1%達成すればそれで目出度く終了と日銀が認識しているという風に解釈されている節がありますが、まあそういう解釈されても仕方ない面はあるなあとも思いつつ。
『日本銀行は、そうした可能性も意識して、原則として年1 回、この中長期的な物価安定の目途の数字を点検していくということを言っています。いずれにせよ――いつも申し上げていますが――、金融面からの後押しと成長力強化、この2つが揃って初めてデフレからの脱却が実現するということを改めて申し上げたいと思います。』
引用しなかったのですが、講演の方で「デフレ脱却には名目賃金上がらないと」という話をしていまして、まあそらそうですがなとも思うのでありまする。
#ということで、この講演&会見は「円高への配慮を強く出す」というのと、「先行きの下振れ懸念を強く出す」というのが主眼だというのは把握しました
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2012/11/26
○総裁会見では今回随分と頑張って説明している感じです
ということで出遅れましたが総裁会見。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2012/kk1211b.pdf
・景気見通しに関しては願望入りとな
景気見通しに関する質疑は2発。
『(問) 先週発表されたGDPも3 四半期ぶりのマイナス、月例報告でも4 か月連続の景気判断下方修正と、日本経済が景気後退局面に入ったという指摘もある中で、日銀が描いている展望レポートの景気回復シナリオが崩れているのではないかという見方もあるのですが、その点はどのように認識されていますか。』
キタコレ。
『(答) ご指摘の通り、7〜9 月の実質GDP(1次速報値)は、前期比マイナス0.9%、年率マイナス3.5%と、2011
年10〜12 月期以来のマイナス成長となりました。こうしたGDPの動きは、海外経済減速の影響から輸出や鉱工業生産が減少し、内需にもその影響が一部及び始めており、景気全体は弱含みとなっている、という展望レポートでも示した景気の厳しい現状を確認する内容であったと思います。先程も申し上げた通り、わが国経済の先行きについては、当面弱めに推移すると考えています。』
ふむふむ。
『わが国経済が景気後退局面に入った可能性が高いとのご指摘は、景気動向指数の一致CIが6
か月連続で低下したことを踏まえたものと認識しています。景気動向指数の一致CIには、鉱工業生産を始め所定外労働時間、大口電力使用量など製造業の生産活動と密接に関係する指標が数多く含まれているため、最近の海外経済減速の影響が強く出ている面もあるように思います。』
『いずれにせよ、景気基準日付に基づく正式な景気後退局面の認定は、別途、内閣府が決定することになるわけですが、景気後退と認定されるかどうかにかかわらず、景気が弱めであることは事実です。こうした情勢認識に立って、日本銀行は、9
月、10 月と2 か月連続で、景気判断の下方修正を行うとともに、日本経済が物価安定のもとでの持続的な成長経路に復していく軌道を踏み外さないようにするために、金融緩和を一段と強化してきたところです。』
ということでこの前追加緩和を実施したぞなと。
『先程申し上げた通り、わが国経済の先行きは、当面弱めに推移するとみられます。もっとも、そうした局面を脱した後には、展望レポートで記述した通り、国内需要が全体としてみれば底堅さを維持し、海外経済が減速した状態から次第に脱していくにつれて、緩やかな回復経路に復していくと考えています。こうした見通しには、日本銀行が既に決定した累次にわたる金融緩和の効果や、政府の成長力強化の取組みの成果も織り込んでいます。』
願望の鉛筆舐め舐めキタコレ。
『また、こうした見通しの前提となる海外経済の動向に関する日本銀行の見方は、IMF等の国際機関や民間エコノミストの見方と大きく違わないわけですが、同時に様々な不確実性が存在することは十分認識しています。とりわけ、海外経済の減速が一段と長引くことで、輸出や鉱工業生産の持ち直しが遅れ、ひいては内需への悪影響が一段と強まることがないかどうか、丹念に経済指標や各種のミクロ情報を点検していく方針です。』
と、最後に下振れリスクの話をしているのですが、まあ大体ここにありますように説明が長い時とゆーのは(皆様も身に覚えがありますように)説明が苦しい時ですなあというのは把握した。
・下振れリスクについて
んでもって景気のリスク要因に関する話はこちら。
『(問) 今回、先行きの景気については、前回よりも若干下振れに変更されたと思いますが、政策については、9
月、10 月の緩和強化の効果を見守るという中で、短期的な、ソフト・パッチ的な下振れに過ぎないという見方でよいでしょうか。それとも、可能性としてはリーマンショック後のような大きな下振れになり得るが、現時点ではハード・データで確認できないということで、こういう判断になったのか、ご見解をお聞かせ下さい。』
『(答) まず、先程も申し上げた通り、10 月末の展望レポートの基本的なシナリオは変えていません。ただ、展望レポートでも強調している通り、様々なリスク要因が存在しています。私どもは、そうしたリスク要因も踏まえた上で、先般、金融緩和を行ったわけです。足許の景気の弱さの原因を考えてみた場合、幾つか挙げられます。』
ということで下振れリスクですが。
『1 つ目は、海外経済自体の弱さです。これが内需にも波及してきているということです。海外経済については、8
月、9 月と段々悪化していますが、先般出席した11 月のG20では、世界経済がさらに悪化してきているということではなかったように思います。この先は分かりませんが、もし世界経済全体の減速が段々止まっていけば、この面でのマイナスの影響は次第に消えていくことになります。』
さてこの減速って段々止まるのでしょうかという所ですが、米国と中国は確かにちょっと明るい兆しも見えない訳では無いっすな。
『2 つ目は、最近における日中関係の影響です。9 月、10 月と、その影響が強くなってきていると思いますが、この点は、10
月の貿易統計でも確認されると思います。これが、この先、どんどん悪化していくのかどうかについては、今後の展開をみて判断していく必要があると思います。』
日中関係キタコレ。これは新しいリスク要因ですわな。
『3 つ目は、一時的な要因ですが、エコカー補助金終了の影響です。これは、元々予測されていたものですが、やはり影響が出てきたということです。』
ほほう。
『このように考えると、リーマンショック後のような大きな落込みを想定しているわけではありません。しかし、日本銀行の毎回の発表文の最後に書いてある通り、私どもとしては、現在、世界経済に関する最大のリスク要因は何と言っても欧州債務問題だと思っています。足許、投資家のリスク回避姿勢はやや後退していますが、基本的な問題が解決されているわけではありません。リーマンショックの場合、国際金融資本市場の安定が確保されるかどうかが決定的な鍵を握っていたと思います。従って、私どもとして、金融システムの安定に万全を期していくということを毎回書いているのは、そういう趣旨です。』
ということで欧州債務問題とその結果としての金融市場のリスクアペタイトが最大の下方リスクとゆーのはいつも通りでありまする。
・一般論シリーズキタコレということでまずは日銀の政策枠組みの説明である
まあ皆様ご覧になってお判りのように今回は安倍自民党総裁の一連の発言に関連する質疑が多いのでございますが、日銀総裁のお立場としても露骨に物言う訳にも行かずという所で、「一般論として質問しますが」「一般論としてお答えしますが」という一般論攻撃キタコレという所でありまする。
ということでこんな質問が。
『(問) 自民党の安倍総裁が、日銀に対する一段の金融緩和を求める発言を繰り返されていますが、「2〜3%のインフレ目標を設けて無制限に金融緩和を求める」とか、「当座預金の付利について、ゼロかマイナス」という発言、あるいは「建設国債をできれば日銀に全部買ってもらって新しいマネーを強制的に市場に出す」という一連の発言について、総裁はどのようなお考えをお持ちか、お聞かせ下さい。』
キタコレでございますが。
『(答) ご質問の安倍総裁のご発言について、詳細を承知しているわけではありませんので、ご指摘の個々の論点について具体的にコメントすることは差し控えたいと思います。』
と言いつつ一般論攻撃クルー。
『一般論として、日本銀行の金融政策運営の考え方を改めてご説明すると、日本銀行は、中長期的に持続可能な物価の安定と整合的と判断する物価上昇率について、消費者物価の前年比上昇率で2%以下のプラスの領域にあると判断しています。その上で、当面は1%を目指して、それが見通せるようになるまで、実質的なゼロ金利政策と金融資産の買入れ等の措置により、強力に金融緩和を推進しています。』
と、物価目標については今の政策枠組みの説明。
『当初35 兆円程度、2011 年末までとして導入した資産買入等の基金については、現在は91
兆円程度、2013 年末までと、当初の予定を遥かに超えて大規模なものとなり、期限も大幅に延長されています。また、成長基盤強化支援の拡充や、先月決定した新たな貸出増加支援策の導入など、様々な施策も次々と導入してきています。この貸出増加支援策については、金融機関の希望に応じて全額資金供給を行い、限度を設けない、すなわち無制限の資金供給とする、ということは先月公表した通りです。』
無制限やってますよキタコレ。
『このように、日本銀行の考え方は、現在ゼロ%近傍で推移している消費者物価について、当面「+1%」を目指して、その実現に最大限の努力を尽くすということです。デフレからの脱却は、成長力の強化と金融面からの後押しの両方が揃って初めて実現するものです。この点、先般の政府との共通理解にも示されている通り、思い切った規制緩和を始め、政府による成長力強化の取組みは極めて重要であり、日本銀行としては政府の強力な取組みを強く期待しています。そうした成長力強化への取組みの成果が挙がっていった場合には、目指すべき物価上昇率が1%よりも高まっていくと考えられます。日本銀行は、そうした可能性も十分念頭に置いて、「中長期的な物価安定の目途」について、原則として、ほぼ1
年毎に点検していく方針であるということを明らかにしています。』
>目指すべき物価上昇率が1%よりも高まっていくと考えられます
>目指すべき物価上昇率が1%よりも高まっていくと考えられます
>目指すべき物価上昇率が1%よりも高まっていくと考えられます
まあここの所は以前より説明しているのですが、別に中長期的に1%が見通せたら金融緩和を正常化コースに機械的に進める訳では無く、その時の潜在生産とか潜在成長とかが上昇していたら当面の目途の1%は2%になって然るべきという話をしているんすけど、中々この辺は伝わりませんなあというのも有りますが、まあここに関しては過去の日銀に引締めバイアスがあるという認識(というか前科というか)が人口に膾炙しているので致し方なしという気もします。
『また、日本銀行は積極的な金融緩和政策を実施してきているところであり、それだけに、日本銀行による大量の長期国債の買入れが、財政ファイナンスであるという誤解が生じると、長期金利が上昇し、財政再建だけでなく実体経済にも大きな悪影響を与えることになると思います。特に、日本の政府債務残高が大きく積み上がっており、また、金融市場のグローバル化が進展しているもとでは、金融市場の受け止め方には十分な注意が必要であると思います。』
まあそらそうよ。
『いずれにせよ、日本銀行としては、今後とも、政府との十分な意思疎通を図った上で、デフレからの早期脱却と物価安定のもとでの持続的成長経路への復帰に向けて、自らの責任と判断において中央銀行としての使命をしっかり果たしていく方針です。』
・財政ファイナンスについて
でまあそんな答えだけで許してくれないのが記者会見でありまして(^^)、個別具体的な「一般論」の質問が飛んでくるのだ。
『(問) 一般論で結構ですが、国債を日銀が直接引き受ける、買い入れることについて、総裁としてはどうお考えでしょうか。先程、「財政ファイナンス」という言葉がありましたが、なぜそれが問題になるのかという点について、一般論で結構ですから、改めてご説明をお願いします。』
短い質問の中で一般論が2回出てきたのはワロタ。
『(答) 今、記者の方がおっしゃった通り、あくまでも一般論として申し上げたいと思います。』
ワロタ。
『まず、現在、日本銀行は、極めて多額の国債の買入れを行っています。基金では、来年末に向けて、さらに、長期国債を17.4
兆円、短期国債を12.1兆円買い入れることになっています。これに加えて、成長通貨オペとして、年間21.6
兆円の長期国債の買入れを行っています。』
と物凄い勢いで買っているぞなもしというアピールを。
『そのことを申し上げた上で、中央銀行による財政ファイナンス、あるいはそれを端的に表した国債の引受けですが、これは、先進国でそうしたことが行われていないということだけでなく、発展途上国でも、例えば、IMFも中央銀行制度に関する助言を行う際に、行ってはならない項目リストの最上位に掲げるようなものです。これは、中央銀行が、その通貨を発行する権限をバックに、国債の引受け、あるいは引受け類似の行為を行っていくと、通貨の発行に歯止めが利かなくなり、その結果様々な問題が生じるという内外の歴史の教訓を踏まえたものだと考えています。』
全く仰せの通りでございます。
・インフレ目標3%について
更に次の質問も一般論とな(^^)。
『(問) 現在、日銀は、物価目標を1%としていると思いますが、現在の日本経済において、一般論として、3%という物価目標が現実的な目標だと思われますか。』
『(答) まず、日本銀行が発表している「中長期的な物価安定の目途」ですが、これは正確に言うと、「2%以下のプラスの領域」ということです。その上で、当面は1%を目指すというのが、私どもの正式な表現です。今、3%に関するご質問を頂きましたが、その問いに対するお答えは、現実的ではない、ということですし、また、経済に対する悪影響が大きい、と判断しています。』
>現実的ではない
>現実的ではない
>現実的ではない
これはまあニュースヘッドラインに出た通りであります。
『このように判断する理由ですが、いつも申し上げている通り、わが国においては、バブル期で景気が最も過熱した時期、すなわち1980
年代後半においても、海外の物価上昇率よりも低く、平均1.3%でした。1986 年、87
年、88 年には、1%以下、つまりゼロ%台の物価上昇率でした。そうした状況を踏まえると、日本の家計や企業が「物価が安定している」と考える物価上昇率は、欧米の場合よりは幾分低いと判断されます。』
そうなんですよね〜。
『こうしたもとで、例えば、3%という物価上昇率を、国民の皆さんが「物価が安定している」と感じられるのかどうか、これは慎重に検討する必要があると思っています。国民の皆さんが望んでいるデフレ脱却というのは、単に物価だけが上昇する状態ではないと思います。』
>国民の皆さんが望んでいるデフレ脱却というのは、単に物価だけが上昇する状態ではないと思います
>国民の皆さんが望んでいるデフレ脱却というのは、単に物価だけが上昇する状態ではないと思います
>国民の皆さんが望んでいるデフレ脱却というのは、単に物価だけが上昇する状態ではないと思います
名目賃金が上がらないで物価だけ上昇しても意味は無いですからねえ。
『これは先般の講演でも触れましたが、国民の皆さんに対して行っているアンケート調査をみると、物価の上昇について「望ましい」と答える方は少ないという結果になっています。これは、結局、国民の皆さんが望んでいるデフレ脱却とは、単に物価だけが上昇する状態ではなく、企業収益や雇用の増加、賃金の上昇などを伴って、経済が全体として改善し、その結果として物価が緩やかに上昇していく状態であると思います。』
全く仰せの通り。
『仮に、今まで経験したことのない物価上昇率を掲げ、それに向けて政策を総動員していくということで、その物価上昇率だけが信じられた場合には、長期金利がまず上がってしまいます。そうすると、財政再建にも悪影響が出ますし、実体経済にも悪影響が出ます。特に、日本の場合には、金融機関が国債を大量に保有しているわけですから、保有している国債のキャピタルロスを通じて、金融機関が実体経済を支える力も低下していくと思います。私が申し上げている意味で経済全体の底力を上げていく結果として、少しずつ体温を上げていく、物価が上昇していく、という状況を実現するために、日本銀行は最大限の努力を行っていくし、また政府も最大限の努力を行っていく必要があるということです。』
まあそうなんですけど早期の結果を求めるという動きは強まるでしょうなあとは思います。
・当座預金付利について
『(問) 日銀の当座預金の金利を、仮にマイナスにするということを行った場合に、貸出が増えて経済が活性化するという効果が見込み得るのか、また、仮にそのようなことを行った場合にどのような弊害ないし副作用があるとお考えでしょうか。』
ということで説明があるのですが。
『(答) マイナス金利は、エコノミストの議論としては、時折行われているわけですが、先進国で大規模に実施に移したというケースはありません。従って、ご質問の通り、そのあり得る効果なりコストを、想像を巡らせて考えていくことになると思います。これまでの金融経済に関する経験を踏まえて、マイナス金利については、大きく4
つの論点が指摘されることが多いと思います。』
ということなのですが、これは短期金融市場の人間じゃないと中々難しいだろうなあと思う説明が以下続く。
『第1 は、金利をゼロないしマイナスまで引き下げていった場合に、市場参加者がいざ必要というときに市場から資金調達ができるという安心感がなくなってしまうわけです。そうすると、経済に何かショックが加わった場合に、流動性調達に不安が生じるという問題があると思います。』
特にマイナスにした場合がそうですけれども、ゼロにした場合でも似たような問題が生じます。つまり、当座預金付利がゼロになってしまいますと資金供給オペに応じるインセンティブが無くなってしまうので、今のように当座預金残高をジャンジャン積み上げるという事が困難になります。かつての量的緩和ゼロ金利政策の場合、当座預金残高目標を設定していましたけれども、結構途中から目標達成に四苦八苦状態になって、市場の「ご協力」によって何とか回っていたという面がございます。
つまりですね、まあその当座預金残高に積みあがっているマネーに意味があるのかという話は兎も角としまして、付利金利をゼロとかにした場合資金供給オペが円滑に進まない可能性があるという話でございますわな。
『第2 に、金融機関からの預け金である中央銀行の当座預金に大幅なマイナス金利を適用すると、額面価値が保証され、かつマイナス金利が付かない銀行券に大規模なシフトが生じることになります。』
うむ、これでは一般的には判りにくいぞな。これまたその通りなのですが、だからどうしたと言われるとうーむなのだが。
『第3 に、金融機関がマイナス金利のコストを貸出金利に上乗せすることになり、結果的に企業が直面する金融環境が引き締まるという指摘もなされています。』
それは可能性としてはあるが金融機関がそもそもそういう事するのは世間が許さんだろうと思うのでございまして、(今日はネタにしませんが)先般のBOEの11月MPC議事要旨で利下げのメリットデメリットに関しての議論があった部分がありまして、「金融機関の収益性が悪化する事によって金融機関の貸出体力を弱め、その結果としてクレジット環境が悪化して経済に悪影響となる恐れがある」と思いっきり指摘しています。
まあ日本の場合は英国と違いましてそもそもクレジット環境は緩和的という話になっておりますので、英国の議論をそのまま持ち込むのも如何なものかというのはあるのですが、もうちょっと判りやすい言い方をした方が良さそうな希ガス。
『第4 に、金融機関は、中央銀行のオペに応じて資金を調達して当座預金に置くとコストがかかるわけですから、むしろオペに応じなくなるということになってくると思います。』
まあ要するにこの話がまずは第一であって、もう一つの指摘として「日銀当座預金に積みあがっている資金を活用」というのは一瞬尤もらしい話なのですが、そもそもどこかの銀行が貸出を行うと、その貸出代わり金というのは当該融資先企業の預金残高に化ける訳でございまして、その預金残高というのは結局金融機関経由で日銀当座預金残高として反映するのであって、日銀当座預金残高的には中立要因でございますぞなもしという単純な話をした方が良い希ガス。
ちなみに当該融資先企業が設備投資をした場合、当然ながらその企業さんの預金残高は減りますが、設備を購入する先の企業なりの預金残高が増えるのでありまして、これまた日銀当座預金残高的には中立要因という事になるので、そもそも「日銀当座預金に積みあがっている資金を活用する為に金利をどうのこうの」というのは話の筋がおかしいですがなという所です。
勿論金利引き下げは経済に対して刺激効果がありますという話ではありますので、そっちの筋からの議論だったらまあ判るのですけれども、じゃあ0.10%の金利を0.00%に下げて期待される効果ってどんなもんじゃろという事を考えた場合に、メリットよりもデメリットの方が大きい、とまあそんな話になるんじゃネーノと思うのでありました。
『いずれにせよ、日本銀行としては、マイナス金利を巡る様々な議論を踏まえた上で、現在日本の置かれた状況に即して最適な金融緩和政策を模索しようということです。先般、貸出増加支援のスキームについて検討することを発表しましたが、私どもは、日本の置かれた状況に即して、一番、金融緩和の効果がある政策を考えていきたいという姿勢です。』
#引用大会で大増量企画になってしまいましたorzなので他の論点はもはやスルーで勘弁
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2012/11/07
○G20での総裁会見はしっかり麿節
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2012/kk1211a.pdf
『【問】金融緩和の施策を説明したということですが、日銀もしくは先進国の金融緩和について、新興国側から意見または質問はあったのでしょうか。』
もうね、思いっきりこういう答えをしてちょという質問が飛んでいるのですが。
『【答】先進国の金融緩和に対する新興国からの声ということですが、これは今回の会議に限らず、新興国に対して資本の流入をもたらし、それが当該国における景気の過熱あるいは自国通貨の為替高という問題を引き起こすという意味での問題意識の表明がありました。』
キタコレ。
『そうした議論に対しては、今回の会議に限りませんが、資本流入を規定する要因として、もちろん先進国との金利差もあるわけですが、基本的な経済の成長率の差が大きな要因として存在するという有力な反論もあります。いずれにしても、この問題を考えていく上では――別の席で申し上げましたが――、自らが行う政策が他国へどのように影響し、それがまた自国にどのように影響してくるのかを再度考えた上で政策をしていくという一般的な政策運営姿勢が、先進国についても新興国についても、ともに要ると思います。』
「一般的な政策運営姿勢」とまで大きく出ましたが、米国ってその辺はしっかり俺様モードでやっているのでして、最後に言いたい事を言うモードになっておりますのおと思うのでありました。
『そういう意味で、G20のような場で、世界的な金融経済の相互依存関係を確認していくことは、大変に意義の大きいことだと思っています。』
とまあこの辺だけ見てほーと思ったのでクリップでした。
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2012/11/05
○総裁会見ネタの続きである
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2012/kk1210b.pdf
・追加緩和の背景となっているもの
今回の追加緩和はメニューがてんこ盛りで、そもそも何で追加緩和をしたのかという話がスルー気味なのでございますが、まあこれは重要な質問。
『(問) これまで、金融緩和を一度実施した場合、何か月か効果を見極めるケースが多かったと思いますが、今回、2か月連続の緩和に至りました。その理由についてお尋ねしたいのですが、これまで想定していなかったような、想定していたシナリオになかったような変化があったとすれば、それは、どういった点なのか教えて頂けますか。』
で、その答えなのですが・・・・・・・・
『(答) この間の一番大きな変化は、やはり海外経済の減速が強まっていることだと思います。そのことは、9月の段階でも認識していましたが、その後の経済の展開をみても、減速はやはり強まっていると思います。』
はあそうですか(棒)。
『これまでも、海外経済の減速が日本の輸出・生産の減少を通じ、やがて内需にも波及してくることは、頭の中では十分に想定しており、データで確認していこうと思っていましたが、例えば、ごく最近の製造業の新規求人あるいは製造業における所定外労働時間等をみても、そうした動きが少しずつ出てきていると思います。』
ほほう。
『そういう意味で、ご質問へのお答えに戻ると、一番大きかったのは、やはり海外経済の減速が強まったということです。』
ということで、今回の追加金融緩和なのですが、声明文比較した(と言っても先行き見通しの所がリスク要因の説明だけでウニャウニャ状態なのが少々アレですが)時に申し上げましたように、景気の現状認識を引き下げたという形になっております。
でまあそれはそれで良いのですけれども、そこで微妙にアレだなあと思ったのは、今回はどちらかと言えばメインが展望レポートで中長期の見通しおよび経済物価情勢の点検を行う、というのが趣旨なのですからして、今回追加緩和を実施する際には「中長期的なシナリオを点検した結果として、物価安定の目途達成までに更に時間が掛かる事が示されたので追加金融緩和を実施する」というロジックで来ると思っておりましたが、今回の追加緩和のロジックが(少なくとも白川総裁のこの説明によれば)「海外経済の減速が強まった」という足元の経済状況に即した話になっておりまして、何かこの部分は少々引っ掛かるなあと思ったのはマニアのあたくしだけですかそうですか。
・謎の文書に関して
まあ既に皆様ご案内の通りかとは存じますが念の為。
『(問) 今ご発言のあった「デフレ脱却に向けた取組について」という政府・日銀の共同文書についてですが、これはいわゆる、政府・日銀の「アコード」に相当するものでしょうか。また、これまでも、政府・日銀でデフレ脱却に向けて連携を取ってきたと思いますが、これを「共通理解」として明確化することによって、今後、どのような変化というか、取組みを強化したということが期待できるのか、という実質的な変化について教えて下さい。』
でまあこの答が延々と続きまして、どのくらい延々かと言いますと1ページ越えになるという代物。
『(答) 先程の説明と多少重複する部分があることはお許し頂きたいと思いますが、まず、今回の文書を発表した趣旨からご説明したいと思います。本日、日本銀行は、金融政策決定会合において、わが国経済のデフレ脱却に向けた当面の取組みについて、政府と日本銀行がこれまでも共有している認識を改めて明確に示すため、政府とともに、「デフレ脱却に向けた取組について」を公表することを決定しました。これは、両者のいわば「共通理解」とも言うべきものです。』
「これまでも共有している認識を改めて明確に示す」という時点で「これはただの紙です」という気が満々でございます。
『そこで示されているように、政府と日本銀行は、わが国経済にとって、デフレから早期に脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することが極めて重要な課題であるとの認識を共有しています。かねて申し上げている通り、この課題は、幅広い経済主体による成長力強化の努力と金融面からの後押しが相俟って実現されていくものです。』
というのは毎度毎度の声明文で主張しているが皆様にスルーされている話。
『このうち、金融面からの後押しという点について、今回のこの文書では、日本銀行は、金融面での不均衡の蓄積などの問題が生じていないことを確認した上で、当面、消費者物価の前年比上昇率1%を目指して、それが見通せるようになるまで、実質的なゼロ金利政策と金融資産の買入れ等の措置により、強力に金融緩和を推進していくことを改めて示しています。』
この「見通せるようになるまで」というのがあって、その一方で政策効果を織り込んでこのような〜みたいな願望じゃなかった展望レポートの数字を出しますと、そのセット結果として金融政策のコミットメントなどに関してミスコミュニケーションが起きるリスクが本当はあるのですが、つーかFEDがこのような感じの物言いをすると経済指標がちょっと良くなると直ぐに時間軸が短期化するのですが、まあ日本の場合は金利市場の参加者が平然と高を括っているのでそう簡単に時間軸が短期化しないというのは先日来申し上げている通りでございます。
『また、成長力強化の努力という点について、今回、政府は、「デフレからの脱却のためには、適切なマクロ経済政策運営に加え、デフレを生みやすい経済構造を変革することが不可欠である」という認識をはっきり示されています。このように、デフレからの早期脱却と物価安定のもとでの持続的成長経路への復帰という課題の達成に向けて、政府と日本銀行が最大限の努力を行うことや、それぞれが果たすべき役割について、改めて明確に示すことは、先程申し上げた通り、それぞれの政策をより効果的なものとしていくと考えています。』
『日本銀行としては、政府との十分な意思疎通を図りながら、引き続き、自らの判断と責任のもとで、その使命をしっかりと果たして参りたいと思っています。』
『また、政府におかれては、繰返しになりますが、デフレを生みやすい経済構造を変革するという観点から、思い切った規制緩和を含め、日本経済の成長力強化に向けた取組みを強力に推進していくことを強く期待しています。』
まああの紙みても政府が何かやります系のコミットが強いようには見えませんで一方的に日銀がやります頑張りますという風情にしか見えませんがね。
『それから、「アコード」に関するご質問についてです。』
ということでやっと質問のお題に。
『「アコード」の定義は定かではありませんが、いわゆる「アコード」としてよく知られているのは、中央銀行の独立性に対する意識が高まる中、円滑な戦費調達のためにFRBが行ってきた国債金利上限維持政策の終了を宣言するため、1951年に米国財務省とFRBが公表した共同声明文です。要するに、FRBの独立性を回復した共同声明文がいわゆる「アコード」です。』
『本日発表した文書については、再三申し上げている通り、わが国経済のデフレ脱却に向けた当面の取組みについて、政府と日本銀行がこれまで共有している認識を改めて明確に示すものであり、いわば、両者の「共通理解」であるということです。日本銀行としては、もちろん、これまでもこういう認識を共有していますが、物価安定のもとでの持続的成長の実現に向けて、これからも努力をしていきたいと考えています。』
つまり紙だよアコード何ですかそれということですね、わかります。
・・・・・・・・でまあ他にも質問があったのですが、拘束力はどうなのよという話からの質問が最後にあったのでそれを引用します。
『(問) 本日、公表された「デフレ脱却に向けた取組について」という文書の性質について教えて下さい。まず、「共通理解」とおっしゃったのですが、これは、日銀もこの内容を達成するように拘束されるということでよろしいのでしょうか。2点目は、この文書は、今回の日銀の決定会合の中で決められたわけですが、政府側は財務大臣と経済財政担当大臣の署名があるだけです。日銀としては、政府側のこの文書の実現に向けた担保というものは、どのように取れたとお考えなのでしょうか。3点目は、決定会合後にこのような文書を出されるというやり方で、今後も日銀と政府とのコミュニケーションをされていくのか、状況が変われば、新たな文書を出してコミュニケーションをされるのか、要するに、この文書を出したことで、1つの前例ができてしまったと考えるのですが、それについてどうお考えでしょうか。』
中々鋭いというか厳しい質問ですな。
『(答) まず、1点目についてです。これは、従来、日本銀行が対外的にも、それから政府にも申し上げている認識を文書に落としたものです。政府も、これまで、日本銀行に述べ、あるいは対外的にも述べていることを文書にしているものです。従って、従来と何か違う認識をここに込めたというものではありません。あくまでも、これまで共有している認識を改めて明確に示したというものです。「拘束される」という言葉の語感ですが、日本銀行が物価安定のもとでの持続的成長の実現に向けて政策を行っていくということは、私どもの意識としては、「拘束」ではなく、それはまさに日本銀行法に定められたことを忠実に行っていくということです。』
ということで、全力で「従来と何か違う認識をここに込めたというものではありません」と主張していますが、さっき引用した大久保副大臣のロイターインタビュー記事や、決定会合後の前原大臣の会見などにありますように、まあ政治家サイドとしては別の意味があるという時点でもう何だかねという「紙」ではございます。
『2点目は、政府の措置について、これを実行する担保は何かというご質問です。こうした文書を共同で発表するというのは、もちろん日本銀行にとっても、改めて認識を明確にするという意味で重いものですが、政府にとっても非常に重たいものです。従って、政府は、これについて強力に取り組んでいくということを政府自身が明らかにしているわけですから、このことの持つ意味は非常に重たいと私は受け止めています。』
これはまあこう答えるしか無いので仕方ない面はございますが、政権変わったらどうなるとかまあそういう話(第3の質問にも通じますが)で、前の政権がこういうのを出したというのが後の政権を拘束するのかという事を考えた場合、まあ普通に拘束せんわなという話ですからねえ。
『3点目の前例云々ということについてです。今回、海外経済の減速や、先程この「共通理解」をなぜこのタイミングで発表したのかについてかなり詳しく説明したつもりですが、そこで申し上げたような状況の中で、今回、両者の考え方を改めて明確に示すことは、それぞれの持つ政策の有効性を高めていくと判断したということです。従って、今後、こういう方法を毎回行っていくということでは必ずしもありません。このタイミングで改めて出すことが有効であると判断したということです。』
>今後、こういう方法を毎回行っていくということでは必ずしもありません
>今後、こういう方法を毎回行っていくということでは必ずしもありません
>今後、こういう方法を毎回行っていくということでは必ずしもありません
・・・・・・・・・つまりこの「紙」は前原さんがうるせーから出したけれども今後はフェードアウトしたいとまあそういう事なのは把握致しましたが、自民党におかれましては安倍総裁がより無茶な紙をださせようとか言い出している感があり、まあ大丈夫かねという気は思いっきりしますけどね。
・どうでも良い雑ネタですが
今回の会見では麿先生しらっと『2015年という3年後について、確度の高い見通しを持つことの方こそ、やや不自然な感じがします。』と、FEDをdisってんのかというフレーズがありましたが、実は他の質疑ではこんなのが。
『それから、2点目の「オープンエンド」という話ですが、日本銀行は、第一義的には、日本の国民に対して説明責任を有しています。もちろん、最終的には、内外の市場参加者も含めて説明責任を有していますが、第一義的には、日本の国民に対して語りかけなければならないという立場です。「オープンエンド」という概念自体、そもそも曖昧ですし、ごく普通の国民からみて「オープンエンド」というものが何を意味するのか、分かり難いと思います。そういう意味で、「オープンエンド」という言葉に違和感はないかというご質問でしたが、私としては、日本語で正確に表現したいと思っています。』
>私としては、日本語で正確に表現したいと思っています
>私としては、日本語で正確に表現したいと思っています
>私としては、日本語で正確に表現したいと思っています
・・・・・・・・・・俊ちゃんをdisってるんですね、わかります(^^)。
#ということで引用大会で恐縮至極でした
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2012/11/01
お題「総裁会見のうち物価に関する部分と麿節の考察(ただの悪態)で終了してしまいましたorz」
カテゴリー1の台風で洪水だわ停電だわ立会2日停止だわ地下鉄水没だわとゆーのを見ると日本のインフラの強すぎさに感心するのだが何でそういうことをニュースでやらないのでしょうかねえ。
それはそれとして、一昨日の金融政策決定会合後の反応を見て「日銀の緩和が足りない」と仰せの方が沢山おられましたが、昨日の引けとか今日のニューヨークとか見てますとすっかり元に戻っていますがそれに対するコメントは???
つーか、謎の文書作成で会合時間がクソ長くなり、その結果変な日計りポジションが溜まった反動と考えると、結局どこぞの大臣はひたすら市場と日銀の足を引っ張るだけのナントカな働き者であるという事でしょうなあ。
という悪態は兎も角まずは総裁会見から。
○総裁会見である
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2012/kk1210b.pdf
まあツッコミ所とかネタとかございますのでその辺を鑑賞しつつということで、まずは冒頭の説明部分から。
・新貸出措置について・・・・・というよりは単に麿節に関する考察
『第2に、今回新たな措置として、「貸出増加を支援するための資金供給」の枠組みの創設を全員一致で決定しました。この枠組みは、金融機関の一段と積極的な行動と企業や家計の前向きな資金需要の増加を促す観点から、金融機関の貸出増加額について、希望に応じてその全額を低利・長期で資金供給するもので、資金供給の総額の上限は設定せず、無制限としています。本日の決定会合では、執行部に対し、この新たな資金供給の枠組みについて具体的な検討を行い、改めて決定会合に報告するよう指示しました。資金供給の規模は、貸出の増加に向けた金融機関の今後の取組み姿勢に依存します。』
>金融機関の今後の取組み姿勢に依存します
・・・・・・・・なんつーかね、まあ仰る通りではあるのですが、こういう所が麿節だなと思う訳でして、何でこう木で鼻を括ったような言い方になるのやらと毎度思うのでございますよ。確かに資金供給の規模については金融機関の申請ベースになるのですけれども、「取り組み姿勢に依存する」とかいう言い方をすると言われた金融機関サイドからすると責任転嫁されているみたいに感じますし、そうじゃなくても何か「制度は作ったので後は金融機関のせいです」みたいな感じが漂ってしまう訳ですよ。
じゃあどう言えば良いかというと難しいですけれども、この次にある昨年の金融機関の貸出実績の数字だけ出して置けば良い訳で、丁寧に説明したいのは判るのですが、一々余計なんですよねえ・・・・・・・
・麿節の考察ついでに「金融緩和のフロントランナー」発言に関する考察
質疑応答の中でFRBとの比較とかの中で毎度お馴染みの「フロントランナー」発言が出ておりますので、麿節考察ついでにツッコミを。
『それからもう1つ、私自身がこういう質問を聞きながら感じることですが、日本銀行は、この10数年間、金融緩和政策の面で常に世界の中央銀行の先頭を走ってきたという自負があります。もちろん、これは日本経済の厳しい状況に対応する必要から生まれてきた様々な政策です。今、海外の多くの中央銀行が採用している政策の中で、日本銀行が採用してこなかった政策はほとんどないという感じがします。それにも関わらず、日本の政策を議論するときに、常に米国の議論があり、それから米国に照らして日本の政策を議論していくというのは、非常に寂しい構図だと思います。私どもとしては、私どもがフロンティアであるという思いを持って、政策を行う者も、あるいは政策にコメントする者も、そういう気持ちで政策を考えていきたいという思いです。』
・・・・・・・・・・一応ご本人も「厳しい経済状況」ってのは断りいれていますが、当然ながらニュースとかで報道される時には「フロントランナー」の方だけがヘッドラインになるし、記事だってまあ普通にそっちだけの話になる訳ですよね。
となりますと、まあ総裁会見の報道記事を見たら「そもそも経済が悪くなければ金融緩和をしなくても良いのだから、金融緩和のフロントランナーとか全然自慢にもならない話でしょ」という事にちょっと考えれば気が付く訳でして、まあ上記のように発言を全部読むとそういう言い方してるけど、一般的に総裁会見要旨のテキストまで細々読む人とか金融市場の中でもたぶん多数派じゃないと思う訳ですよね。従いまして、まあ麿の言いたいこともよー判りますし、火消しスキルというのは非常に重要なので火消しスキルの高さというのは地味で評価されにくいだけに評価すべきである、とまあそ―ゆー事も勿論わかるのですが、まあやはりこのネタってあまり強調すべき話では無いような気がするんですよね。
何か「フロンティア」っていうと物凄い前向きな語感があって、まあ麿的にも前向きな語感なのですが、結果として火消しが中々出来ない(対処療法の火消しはできても肝心のデフレ脱却は出来ないという意味で)ので新たな火消しツールを投入しておりますという状況で、まあ確かに自分たちが言わないと誰も褒めてくれないという状況も残念なのではございますが、あまり前向きっぽく自慢されてもいわゆる引かれ者の小唄にしか聞こえないので、もうちょっとサラッと「大きな資産バブル崩壊後に起きる経済の問題というのは似るので、最近は海外主要国の金融政策がかつての日本の政策を参考に後追いのようになっていますね(ニヤニヤ)」程度に留めておけば良いのにと思うのですよ。
つまりですな、麿の言いたいことも十分理解はできるのですが、この「フロントランナー」という発言がヘッドラインに出ると「また出たよ」というげんなり感の方が恐らく日銀に対してそれなりに理解しようと努めておりますあたくしでも出てしまうという事を勘案しますと、日銀ケシカランとか言ってる人たちの神経を盛大に逆撫でする効果が絶大な気がするんで、もうちょっとこれ何とかならんのかとか思いますが時既にお寿司ですかそうですか。
もちろん、麿の言うように「今、海外の多くの中央銀行が採用している政策の中で、日本銀行が採用してこなかった政策はほとんどないという感じがします。それにも関わらず、日本の政策を議論するときに、常に米国の議論があり、それから米国に照らして日本の政策を議論していくというのは、非常に寂しい構図だと思います。」というのは全くその通りだと思いますが、物は言い様という事で、もうちょっと言い様を考えて頂ければそういう話も日本でもう少し盛り上がると思いますし、大体からしてあたくしがこの前の自民党安倍総裁の時事インタビューに突っ込んだような論点ってもう少し共有されるんじゃないかなとか思うのでして、とにかく日銀が折角色々な事をやっているのに勿体ないと思うのですよね。
・・・・・・・・ありゃ、悪態が長くなってしまいましたよorz
・物価見通しに関して
まずは冒頭の説明に戻りまして、展望レポート反対理由の部分から。
『次に、こうした決定の背景となる経済・物価情勢について、展望レポートの内容を含めて、ご説明します。なお、この展望レポートの記述を巡っては、佐藤委員、木内委員のお二人から反対意見が示されました。お二人の委員は、「消費者物価の前年比が、2014年度には1%に着実に近づいていく」との記述に反対の意を示されるとともに、コミットメントの文言を変更すべきとのご意見でした。その詳細については次回決定会合後に公表される議事要旨をご覧下さい。』
まあ詳しくは議事要旨という所でしょうが、確かに昨日あたくしがちょっと申し上げましたように、物価見通しの数値に加えて「着実に近づいて行く」という表現をセットにしたうえでコミットメントの文言があれだと、うっかりすると次の展望レポート位に「物価安定の目途達成が展望できる」というような事になるんじゃネーノとかいうような話になっちゃいますぞなもしという話です罠。
これね、そもそも日本でそんなに物価が上がるかヴォケとか市場参加者の100人中150人くらいが高を括っているのと、実際に物価がご案内の通りという状況だから時間軸が1ミリも変化しないのですけれども、本来は時間軸が短期化されてもおかしくないようなセットになっていて、やはりコミュニケーションポリシー的に間違ったメッセージを与える惧れがありますなと思います。
『先行きの中心的な見通しについては、当面横ばい圏内の動きにとどまるとみられますが、本日決定した金融緩和措置も踏まえれば、国内需要が全体としてみれば底堅さを維持し、海外経済が減速した状態から次第に脱していくにつれて、緩やかな回復経路に復していくと考えられます。すなわち、2013年度の成長率に関する政策委員見通しの中央値は1.6%と、消費税率引上げ前の駆込み需要の影響を除いても、潜在成長率をはっきりと上回るとみられます。2014年度についても、0.6%と駆込み需要の反動から成長率が低下すると見込まれますが、この影響を除いてみれば、引き続き潜在成長率を上回る成長経路を辿ると考えられます。』
『先行きの物価情勢を展望すると、当面ゼロ%近傍で推移した後、マクロ的な需給バランスの改善を反映して、徐々に緩やかな上昇に転じ、2014年度には、当面の「中長期的な物価安定の目途」である1%に着実に近づいていくとみられます。』
潜在成長を上回る成長が続くので需給ギャップが縮小して徐々に上昇するというロジックなのですが、そもそも足元の景気認識を引き下げており(目先的な先行きの見通しは今回声明文に記載が無いのでよく判らんですが)、更に海外経済の回復が遅れるでしょうという話(展望レポートを前回と比較して読むとこの前会見で麿が言ってた半年どころでは無く、1年近く遅れるようなニュアンスの書き方になっているように見えますがそのネタまで今日時間が回ら無さそうなので(すいません)それは明日に)で、何がどうすると需給ギャップがホイホイ改善するのか謎なのですが、まあそういう見込みと。
でまあその見通しに鉛筆舐め舐め要因が入っているのではないかと思わせる応答があったので(^^)、そこを引用。
『(問) 資産買入等の基金の11兆円増額は、2013年末までに全て完了することになっていますが、消費者物価の前年比上昇率1%が2014年に見通せないという中で、2014年に完了するという考え方はなかったのでしょうか。』
まあこの質問はかなり頓珍漢の抜作先生なのですがそれは兎も角として。
『(答) まず、基金に限らず、金融政策の効果が表れるには少し時間が掛かります。1年、1年半から2年というように、大変長い時間が掛かってきます。また、今回、検討するよう決定した「貸出増加を支援するための資金供給」は、まだ制度の細目が決まっているわけではありません。もちろん、各委員の予測の中には、この貸出増加支援のための資金供給の効果もある程度織り込んでいると思いますが、完全に織り込めているかというと、これはなかなか織り込みにくい性質のものだろうと思います。それからもう1つ、今回の「共通理解」の文書にも示されているように、消費者物価上昇率1%という目指すべき姿は、日本銀行だけで実現できるものではないということを、政府自身も認識している通りであり、政府もこの間、強力に「日本再生戦略」に取り組んでいくということも謳われています。こうした政府の取組みは、具体的には既に決まっているものもありますが、これから決めていくものもあります。そうした取組みによるプラス効果をどの程度織り込むかについて――もちろん委員によって差があると思いますが――、仮にそうしたものが実現していけば、むしろ上振れ要因にもなってくると思います。』
>そうした取組みによるプラス効果をどの程度織り込むかについて
>そうした取組みによるプラス効果をどの程度織り込むかについて
>そうした取組みによるプラス効果をどの程度織り込むかについて
・・・・・・・・・つまり願望レポートということですねわかります。
などという悪態は兎も角として、今回の展望レポートでの表現変化に関してはこんな質疑が。
『(問) 物価安定の目途である1%について、今回の展望レポートでは、2014年度に「近づいていく」という表現になっています。4月の展望レポートでは「遠からず達する」というように、到達する時期について言及していたと思いますが、なぜ今回は「近づいていく」という表現に止まり、1%に到達する時期を示せないのかについてご説明をお願いします。また、2014年度に「近づいていく」ということは、論理的に考えると、2015年度には達成できるという見通しだと考えてよいのでしょうか。』
確かにこういう見方も出来るなあとは思ったのですが、実際問題として2014年度が+0.8%平均で出しているという事は実は到達する時期については今回の方が表現として強くなっているようにも読めますなというのは昨日からあたくしが申し上げている通り。
とまあどっちとも取れる表現になっているという時点でコミュニケーションポリシー的に如何なものかという感じがするので、反対が入るのも何となくわかるのですが。
『(答) まず、物価上昇率が2014年度に1%に「近づいていく」という点です。2014年は、かなり先のことですから、もちろん委員によって多少のニュアンスの差はあります。その辺の見方の違いは、今回お示しした分布図に出ていますが、全体としては、1%に「着実に近づいていく」というイメージだと判断しています。今回の見通しは2014年度までですから、2015年度がどうかということでは、もちろん各委員の頭の中にイメージはあると思いますが、2015年という3年後について、確度の高い見通しを持つことの方こそ、やや不自然な感じがします。』
>2015年という3年後について、確度の高い見通しを持つことの方こそ、やや不自然な感じがします
>2015年という3年後について、確度の高い見通しを持つことの方こそ、やや不自然な感じがします
>2015年という3年後について、確度の高い見通しを持つことの方こそ、やや不自然な感じがします
>2015年という3年後について、確度の高い見通しを持つことの方こそ、やや不自然な感じがします
>2015年という3年後について、確度の高い見通しを持つことの方こそ、やや不自然な感じがします
FRBを盛大にdisる麿ワロタ。
『先になればなるほど、当然、その不確実性は高まっていくわけですが、大事なことは、経済・物価がどういう方向に向かっているかということです。私どもの基本的な想定としては、世界経済の減速がいずれは終息し、
IMF等の見通しと同じように、その成長率が次第に高まっていくというものです。これにより、日本の輸出にも当然相応の影響が出てくる中で、ゼロ%台半ばの潜在成長率を上回る成長率が実現していくわけで、そうして需給ギャップが解消していくとなると、それは、物価上昇率に少しずつ反映されていくことになります。』
え??
『経済が、そうした軌道を踏み外しているのかどうかということについては、今回は、このような政策措置も採り、政府も対策を採っていく中で、そうした軌道に乗っているという判断です。』
はあそうですか・・・・・・
とまあそーゆーことで何と申しますか、まあ物価見通しが相変わらず強めの物が出て、そこから経済見通しの基本的な絵が往生際悪く強いとか、どうもねという感じです。
更に文言の定義に関して。
『(問) 消費者物価上昇率1%が見通せるようになるまで実質ゼロ金利、緩和を続けるということですが、その「見通せる」という言葉の定義を確認させて下さい。展望レポートに書かれている「1%に着実に近づいていく」という状態が、この「見通せる」という状態には達していないということなのか、もしそうだとすれば、その「見通せる」という状態になるのは、どのような状況に変化した時なのか、ご説明をお願いします。』
これは良い質問。
『(答) まず、今回の展望レポートの「1%に着実に近づいていく」という判断ですが、「1%が見通せる」という判断には至っていません。どういう状況になれば「見通せる」のか、ということですが、もちろん、物価に限らず景気もそうですが、「見通せる」ための何か機械的なフォーミュラがあるわけではありません。いつも申し上げていますが、物価の先行きを規定するのは需給ギャップであり、あるいは予想インフレ率や輸入コストの動向です。私どもとしては、そうした変数に影響を与えていく様々な要素を入念に点検しながら、毎回の決定会合で点検していくことになります。』
例によって蒟蒻問答に持ち込んでおりますが、要するに「見通せる」ではないというのが結論ですな。
ということで、物価に関する質疑応答を色々と見ていたら気が付けば時間ががががなので総裁会見ネタの後半となる予定の「アコード」とかの所と、展望レポートネタに関してはすいませんが明日という事でよろしゅうに。
・・・・・・・・で、最後にこれはワロタという質疑を一発。
・これは爆笑
『(問) 今回の金融政策決定会合の前に、いくつかのメディアでは「金融緩和10兆円規模」という報道があったと思うのですが、この数字が出たというのは、日銀に取材した事実があった上で出たのでしょうか。それとも、日銀は全く預かり知らずに、こういう報道が出たのでしょうか。(後半割愛)』
>この数字が出たというのは、日銀に取材した事実があった上で出たのでしょうか
>この数字が出たというのは、日銀に取材した事実があった上で出たのでしょうか
>この数字が出たというのは、日銀に取材した事実があった上で出たのでしょうか
・・・・・・・・・・(^o^)/~~~
『(答) まず、買入基金の規模ですが、メディアの方がどのように取材をされているのか私は知りませんから、むしろ、ここにおられるメディアの方に聞いて頂きたいというのが私の答えになります。』
・・・・・・・・・・・とりあえず蕎麦茶吹いたわwwwww
『日本銀行自身は、先程、決定会合の時間が長引いたということを申し上げましたが、決定会合の場で真剣に議論を行っています。従って、これを決めたのはまさに本日です。そういう意味で、先程の日本銀行への取材云々ということについて、私が直接お答えすることは避けますが、日本銀行としては、本日、真剣な議論を行って決めたということです。(後半割愛)』
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2012/10/18
○そういえばIMF世銀総会では麿がこんなのを
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/ko121010a.htm/
【挨拶】在日スイス商工会議所30周年記念会合における挨拶の邦訳
日本銀行総裁 白川 方明 2012年10月10日
例によって実際の挨拶は英文なのですがこちらは邦訳。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/data/ko121010a1.pdf(本文)
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/data/ko121010a2.pdf(スライドショー)
ちなみに本チャンを見たければこちらからリンクを辿ってちょ。
http://www.boj.or.jp/en/announcements/press/koen_2012/ko121010a.htm/
でまあめんどいので邦訳の方からですがね。本文1ページ(ファイルの2ページ目)から。
『当然のことながら、スイスと日本はかなり違います。例えば、スイスには海がありません。ただ、実際には、スイスはEUという大海に浮かぶ島とも言えます。同国の輸出の6割、輸入の8割がEUを相手方とするものです(図表1)。人口を比較すると日本の方がはるかに大きいですし、経済規模は日本がスイスの約9倍あります。一方、共通点もあります。たとえば、どちらの国も非常に安定した物価を享受し、一面ではその安定した物価に悩まされています。1992
年から2011 年までの20 年間の平均インフレ率を消費者物価(総合)の前年比上昇率でみると、スイスでは+1.1%、日本では+0.1%でした(図表2)。また、本年8月の実績は、スイスでは前年比−0.5%、日本では同−0.4%でした。そのことを反映して、両国の金利も、ともに非常に低い水準で推移しています(図表3)。ここ数週間の10
年物国債の利回りの動きをみると、日本の0.7%〜0.8%に対し、スイスではこれを僅かに下回る0.5%前後となっています。また、ジョーダン総裁からご説明があったように、両国通貨の為替相場は、歴史的な高水準にあります。』
・・・・・・・・とまあここまで見ると日本もスイスも為替相場でエライコッチャという話をしているのですけれども・・・・・・
『為替に関するマスコミや世論の関心は、スイス・フランとユーロ、あるいは、日本円と米ドルといった、特定の通貨間の為替レートに集中しがちです。これらのレートは重要ですが、為替相場を表す指標はこれ以外にもあります。』
『為替相場の変動が経済に及ぼす影響を理解するためには、すべての貿易相手国の通貨との為替相場を考慮に入れなければなりません。こうした観点からは、貿易額で特定の通貨間の為替レートを加重平均した、いわゆる「名目実効為替レート」をみていくことになります。』
キタコレ。
『スイスと日本の名目実効為替レートをみると、2000 年1月から本年8月までの間に、それぞれ41.4%と17.4%上昇しています(図表4)。』
スイスの為替上昇の方が遥かに大きいとな、ということですが、スライドショーの図表4を見ると更にこのニュアンスが判りやすいのでお勧め。
『また、インフレ率が高いと競争力が低下するという面も考慮に入れなければなりません。この点、名目の為替レートをインフレ率で調整した、いわゆる「実質為替レート」から追加的な情報を得ることができます。』
あちゃー。
『仮に名目為替レートが上昇しても、低いインフレ率により相殺されれば、実質為替レートの水準は変わりません。もちろん、インフレ率の比較が一筋縄ではいかないため、評価は慎重に行う必要がありますが、2000
年1月から本年8月までの間における実質実効為替レートの動きをみると、スイスでは12.5%上昇しているのに対し、日本では19.3%下落しています(図表5)。』
これまた図表5を見れば判るのですが、「日本はそんないう程円高じゃないもん」的な図になっているのですが、それ日本がデフレなのを「実質」という概念で正当化しているように読めますので、こういう話を持ち出すのはもっと慎重であるべきだと思うのですが。
まあ為替介入とか外債購入議論でスイスとの比較の話が出ることに対して釘を刺したいというのは判るのですけれども、足元でのスイスフランの急騰の話はまあ良いとしても「実質為替」の話を持ち出すと「だから日銀はデフレを容認している」というような言われように繋がる訳でございまして、折角「物価安定の目途に向けて強力に金融緩和をする」という話をしているのですから、コミュニケーションポリシー的な観点から考えてあまりこういうのを持ち出さない方が吉だと思うのですけどねえ。
というツッコミをするのを忘れておりました(訳でも無いが)ので、忘れないうちにクリップしときます。
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2012/10/17
○昨日の総裁講演ネタ補足
実は昨日引用大会をしていながら最後の最後の部分でちょっと引っ掛かったもののスルーしたら読者様からの早速のご指摘がありましてですね。
14日の講演
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/data/ko121014a.pdf
公共財としての国際金融システムの安定
http://www.boj.or.jp/en/announcements/press/koen_2012/data/ko121014a.pdf
International Financial Stability as a Public Good
のあたくしが引用した最後の部分、すなわち『3.グローバル化する世界のもとでのグローバルなガバナンス』のケツの所なんですけどね。
『そうであるならば、私たちは、公共財の問題を解決するために知られた選択肢を組み合わせる、より現実的なアプローチを追求するべきです。グローバルに重要な金融機関の効果的な監督といった一部の公共財は、個々の国のレベルで供給できます。グローバルな金融環境を監視し、マクロプルーデンス上のリスクを特定するといった個別具体的な課題への対応を、超国家的な組織に民主的な原理と整合的なかたちで任せることは可能です。民間の主体に、バーゼル自己資本規制といった一定のルールを守らせることも可能です。これは、国際金融システムの安定を消費するルールにほかなりません。』
ってのを引用して引用しながら「消費?」とは思ったのですが、原文の方を当たりますとこの部分こうなっています。
『We therefore should aim for a more practical approach, combining various
options that are known for solving the public good problem. Some public
goods, such as effective supervision of globally important financial institutions,
could be provided at the national level. Supranational institutions could
be asked to take on specific tasks, such as monitoring global financial
developments and identifying macroprudential risks, without undermining
democratic principles. Private actors could be made to follow certain rules,
such as the Basel rules on capital adequacy, which are in fact rules regulating
the consumption of global financial stability.』
まあ確かにconsumptionって書いてあるから消費は消費なのかもしれませんが、話の流れからするとニュアンスって「消費」とは違うと思いますので、これはもうちょっと適切な訳語があるような気がするんですけど。つーかこれ原文が実はconsumptionじゃなくてassumptionじゃネーノという気もするんだが、まあいずれにせよここの「消費」というのが何か違和感があったのですが、やはり同じようなご指摘を読者様から頂きましたので、折角ですので原文も出してこの部分を再度ご紹介でありました。
ついでですのでその次も引用しておきますね。
『さらに、課税や補助金の支給によって民間の主体の行動に影響を与えることができるかもしれません。たとえば、自己資本規制も、リスクの高い投融資活動のコストを高めるという意味で、この一例と位置づけることもできるでしょう。さらに、私自身は市場流動性に対する悪影響などを踏まえると、ベネフィットがコストを上回るとの考えには賛同していませんが、金融取引課税も選択肢であると主張する方もいらっしゃると思います。いずれにしても、私たちは、グローバル・ガバナンスにかかる柔軟かつ複線的なアプローチを目指さなければなりません。これは、ますます多様化する国際社会にふさわしいものだと言えます。』
『It may even be possible to devise ways to influence the behavior of these
actors through taxes and subsidies. For example, capital adequacy standards
could also be seen in this light, considering that they would increase
costs of engaging in riskier behavior. Some might even argue for financial
transaction taxes as an option, though I do not believe that benefits would
outweigh the costs, such as their impact on market liquidity. In any case,
we must be willing to adopt a flexible and multi-tracked approach to global
governance, which should be more adaptable to and consistent with the increasingly
diverse global landscape.』
まあ話の内容はその通りという所でして、グローバルなマクロプルーデンスや金融レギュレーションの枠組みの構築、というコンテクストの中で、包括的なアプローチにこだわることなく、まずは出来る事からやっていくという現実的なアプローチをしながら、合成の誤謬を避けるというのが重要ですねという話には、実務家としての今までの経験の重みというのを感じる次第でして、直ぐに机上の空論的な包括アプローチに走りたがる国際機関に対しても一定の釘を刺しているという所ではないでしょうか。
とかまあ考えますと、昨日引用したの総裁講演3連発は色々な意味で色々な公的主体に対する提言にもなっているというお話だったなあとか思います。
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2012/10/16
お題「総裁講演が絶好調なので色々と流し読み(今日は引用祭りですいません)」
IMF世銀総会で色々な人が色々と発言とか講演をしたのですが、さすがにこれだけ膨大に出てくるとフォローするのも難しいですなあ、と泣き言モード。
ということでまずは直近の総裁講演(スピーチ)3連発から少々。
ということで、講演やスピーチがある訳ですが、時間的に前の分からサラサラと参ります。でまあ本当は英語の講演なのですが、手抜きで日本語訳の方から(汗)。
でですね、この先が引用大会になって読むのもアレという感じですので、あたくしのどうでもよい感想を先に申し上げますと、この3連発については全てにおいて格調高いお話であいて、本来の白川総裁はこういう所に真骨頂が現れるのであって、アホウな世間を相手に追加緩和で何を買うとかいう目先の話に忙殺されるというのは白川さんという貴重な資源(とか言うと語弊がありますかそうですか)の使い方間違ってるよなあとか思うのでございましたよ
○金融危機の教訓、という話をさせると白川総裁はさすがとしか言いようがない件について
・金融危機の後始末に時間が掛かる&マクロプルーデンスという話
12日の講演
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/data/ko121012d.pdf(日本語訳)
国際金融危機の含意:5年間を経て
http://www.boj.or.jp/en/announcements/press/koen_2012/data/ko121012d.pdf(原文)
The Consequences of the Great Financial Crisis:Five Years On
というのがこちらの話になるのですが、『金融危機発生から5年間を経て』という小見出しの部分から。
『BNPパリバの傘下にあった3つのヘッジ・ファンドの償還停止という、今回の世界的な金融危機の起点となった出来事が発生したのは2007年8月9日のことでした。それから5年以上が経過しました。官民を挙げた対応にもかかわらず、世界経済の成長ははかばかしくない状況が続いていますが、より幅広い観点からこの5年間を評価するとどうなるでしょうか。危機管理、危機後の経済の回復、そして危機の再発防止策という3つの評価軸を設定したうえで、私なりの評価を述べたいと思います。』
ということで。
『第1の評価軸は危機管理です。この点では、1930年代のような大恐慌の再来を回避することには成功しました。その背景として、危機直後の先進各国の積極的かつ協調的な政策の発動も大きく寄与したものと考えています。』
ふむ。
『中央銀行の政策に即して申し上げると、まず、非常に積極的な金融緩和が行われました。そして、より重要だったのは、いわゆる最後の貸し手として中央銀行が積極的に流動性を提供したことで、これは事態が手に負えない状況に陥ることを防ぐ点で大きな役割を果たしました。』
ふむふむ。
『それと同時に、過去20年近くにわたり当局も交えて粘り強く推進されてきた、さまざまな金融インフラ改善の効果を過小評価してはなりません。』
これはまあ確かに。
『たとえば、証券と資金の同時決済化、中央銀行の口座を使った即時グロス決済化、外貨決済の時差リスク、いわゆるヘルシュタット・リスクの解消を目的としたCLS(Continuous
Linked Settlement)といった取り組みです。』
まあ支払い不能の連鎖はRTGSによって起きない、というのは確かにそうなのですが、RTGSにするデメリットとしてはフェイルの連鎖が起きますので、そういう点を考えた場合に、「カネの流動性」だけではなく「モノの流動性」に関しても何らかの施策が打てるようになると、リーマンショック後に発生した市場のシュリンクが起きにくくなるとは思うので、決済システムのデザインにおいて中央銀行などがモノの流動性を何とかできるようになるとベターという気はしますけど無理かなあやっぱり。
あとはまあ前回は初回だったから仕方ない面はありますが、セントラルカウンターパーティーとしてJGBCCが有る訳ですが、このJGBCCが大規模フェイル時に思いっきり大規模フェイルしてしまい、その解消に時間が掛かって市場のシュリンクに拍車を掛けた次第で、まあそれに関してはその後のリカバーはきちんと行えましたからああだこうだ今更悪態つく訳でも無いですが、少なくとも当時は結構大変であたくしも悪態ついてたような記憶だけは思いっきりございます。
つまりですね、これからデリバティブのセントラルカウンターパーティーとかその手の話も出てくるとは思うのですけれども、ただの決済処理機関であれば別にその辺はどうでも良いと思いますけれども、オブリゲーションネッティングとかをして取引処理の効率化を行う、という風になるようなセントラルカウンターパーティーをデザインする場合、その機関が潰れない場合であっても取引が大規模に止まるというようなケースがあれば、結局の所市場の一大シュリンクが発生するという問題が生じますので、デザインの際にはリーマンショック時の混乱に関して「JGBCCは一時的に混乱したが直ぐに復旧して良かったですね」という総括で終了させないで、その辺りを加味して設計を願いたい物だと思います。
・・・・・・などと思いっきり話が逸れましたが続き。
『第2の評価軸は危機が収束した後の経済の回復です。さきほど申し上げたように、世界経済は力強い成長軌道に復帰したとはいえません。実際、過去5年の間に、先行きに対するかすかな期待が台頭した時期が何度かありましたが、私自身の日本のバブル崩壊後の経験に照らせば、そうしたものは「偽りの夜明け」ではないかと当初より懸念していました。』
ちなみにこの部分、後半の文の英文本チャン版はこちら。
『In fact, over the last five years, there were only occasional glimmers
of hope. Nevertheless, in light of the experience of the bursting of the
Japanese bubble, I had always been a little skeptical and suspected that
those glimmers might just be false dawns.』
うむ、これは(^^)。
『先進国のGDPは、現在、リーマン・ショックの前年の水準をかろうじて上回る程度に過ぎません。債務が大きく積み上がった経済では、債務の返済資金を確保しなければならない経済主体が支出を抑制することにより、経済活動が停滞することになります。』
で、「山高ければ谷深し」という話がここで出てくる。
『やや脇道に逸れますが、こうした状況を形容するためしばしば使われる、「失われた10年」という言葉は、ややミスリーディングではないかと思います。』
ほほう。
『この表現には絶対的に失われたというニュアンスが含まれていますが、「失われた10年」の前に「肥大した10年」があったことを忘れてはなりません。』
なるほど。
『いずれにせよ、過剰債務の調整がおわるまでは、本格回復は始まらないという事実を社会として冷静に認識することが重要です。そうでないと、人々の間に不満が高まり、そのことが経済政策のタイミングや内容を不適切なものとするおそれがあるほか、世界経済全体の効率性を低下させたり、安定を脅かしたりすることで、経済の回復をさらに遅らせかねません。その意味で、危機が収束した後の局面においては、目先の状況にとらわれて二次被害をもたらさないようにすることがきわめて重要だと思います。』
これはこれで見解として筋が通っているとは思うのですが、一方で昨日ネタにしたミネアポリス連銀のコチャラコタ総裁講演にありますように「トレンドラインからの乖離が続いているのでケシカラン」という論調もあり、というよりは米国FOMCの現在の中心的見解って恐らくそーゆー見解でありますからして、読みようによってはどさくさに紛れて盛大に米国の金融政策をDisっているようにも見える所がお洒落ですな(^^)。
ちなみにこれまた毎度ネタにしているのでご案内の通りだと思いますが、セントルイス連銀のブラード総裁は「リセッション前の正常状態」というのに経済を戻そうとする動きは、そもそものリセッション前の状態が住宅バブルで下駄を履いている事に対する考察に欠けている、というような主張を全力で行っていますので、別にFOMCが一枚岩な訳でもありませんが、白川さんの話はブラード総裁の論点と同じ話ですにゃあと言った所です。
『第3の評価軸は、危機の再発防止に向けた取り組みです。この点に簡単に触れておくと、2009年秋のピッツバーグのG20サミットで採択された声明に沿って、銀行の資本規制が強化され、OTCデリバティブ市場改革が行われたほか、金融システム上重要な金融機関の責任が強化されるなど、重要な前進がみられます。しかし、こうした努力を単純に延長した先に、危機のない楽園(nirvana)が待っていると考えるのは楽観的に過ぎます。』
ということでマクロプルーデンスキターという所ですが。
『金融危機の重要な教訓の1つは、個々の金融機関に対する規制・監督を十分に行い、金融機関がしっかりと経営されるだけでは、金融システムの安定性が実現するとは限らないということです。そのために必要な政策対応を表現する言葉として、「マクロ・プルーデンス」という言葉が使われるようになっています。この概念自体は新しいものではなく、危機の前からその重要性が徐々に認識されてきていました。危機によってその重要性が広く認識されるようになった今日、各国の政策当局は、こうした政策を具体的に推進していかなければなりません。』
キタコレ。
『この点に関連して、今回の危機を境に強く意識されるようになったのは、金融の安定性を確保するにあたって、国が果たす役割の重要性です。2008年に経験したように、金融システムが崩壊の危機に瀕している状況のもとでは、国だけがそれを食い止めることができます。したがって、国が支援する能力が疑われるような場合には、金融システムの安定性と財政の持続性に対する信認の間で悪循環が生じます。』
さいですな。
『この問題は、グローバル化が深化するもとで金融システムの安定性を維持する負担がますます大きくなり、民主的な国家の負担能力を超えかねなくなっている中、ますます先鋭化しています。「納税者の負担による金融機関の救済拒否」という考え方は、国際的に活動する金融機関の破たん処理にかかる費用を、国家の徴税能力ではまかないきれないのではないかとの疑問に基づくものと思われます。』
でまあこの辺の話は翌日の13日講演にあったりするので後ほど。
『この点について妥当な解決を阻んでいるのは、金融機関に対する信認がなかなか回復しないことです。市場の信認が得られない金融機関はごくわずかなショックでも経営危機に直面し、国の支援を必要とする可能性が高まるため、国が戦略的に安全網を提供することをより難しくするからです。本日、ここにお集まりの皆様には、この問題について、これからも考えていただきたいと思います。』
・日本の教訓からすると回復に時間が掛かるという話
『日本の経験を振り返って』から。
『以上みてきたように、危機発生後の世界経済は多くの課題に直面していますが、希望はあります。私としては、世界経済が持続的な成長軌道に戻ることは可能であり、それには政策も貢献できると考えています。残された時間の中で、先ほどの第2の評価軸の箇所で触れた二次被害の問題も意識しながら、持続的な成長軌道への復帰にかかる課題について述べてみたいと思います。この点でも、日本の経験はいくつかの貴重な手掛かりを提供しています。』
ほう。
『日本経済は、バブル崩壊の兆しが見え始めてから10年以上を経た2003年ごろから回復軌道に復帰し、その後、期間としては戦後最長となる景気拡大を経験しました。これを可能にした条件は3つありました。』
『第1は、過剰債務がようやく解消されたことでした。GDP対比でみた銀行貸出残高は、1990年代の初頭にピークを付けましたが、2003年ごろまでには1980年代半ばの水準に戻りました。』
『第2は、世界経済の高い成長が長期にわたって続いたことでした。2004年からリーマン・ショック前までの世界経済の平均成長率は実に+5.0%程度と、1990年代の平均成長率+3.0%程度をはっきりと上回るものでした。今から振り返ってみると、この時期の世界の高い成長率の少なからぬ部分は未曾有の信用バブルに支えられていました。』
『第3は、その期間中、為替が円安方向に振れていたことです。実質実効為替相場は、2003年末にかけてやや円高に振れた後、2007年半ばにかけて長期の下落トレンドに入り、下落幅は3割ほどになりました。一般的なイメージとは異なり、日本銀行が量的緩和を拡大した時期に概して円高傾向で推移したのに対し、2006年3月に量的緩和を解除してから2007年にかけて円安傾向が加速しました。この円安の進行は、高い成長率を背景に海外の金利水準が引き上げられる中で、日本ではきわめて低い金利水準が続いたこともあって、いわゆる円キャリー・トレードが活発に行われたことなどを反映しています。』
どさくさに紛れて「量的緩和を拡大したから円安になった訳では無い」という話をしているのがチャーミング。
『こうした日本の経験を聞くと、皆さんの気が重くなるかもしれません。世界経済が抱える過剰債務の解消に日本と同じくらいの時間がかかるとすれば、まだ道半ばということになります。また、世界経済で大きなシェアを占める先進国全体が低成長を続けていることから、世界全体の成長も低位にとどまらざるを得ず、「外需」に大きな期待をおくことはできません。すべての通貨を同時に減価させることはできません。』
全くおっしゃる通りです。
『こうした状況のもとで、新興国経済が世界経済のけん引力になるとの議論が多く聞かれています。理屈の上では、新興国経済が世界経済に占めるウェイトがますます大きくなる中、新興国が先進国を停滞から抜け出させることは可能かもしれませんが、本当にそのように考えてよいのでしょうか。これを考える際には、世界経済の成長力というという視点が重要になります。』
ということでじゃあ威勢の良い話が出るのかと思いますと、これがどうも威勢の良い話は出てこないのが白川総裁クオリティではあるのですが、まあこれはこれでそういう理屈は話として通ってますなあとは思います。これまた長いのですが、よーするに中国などは高度成長から安定成長へという話をしています。
・潜在成長率の低下を認識すべきという景気の良くない正論
高度成長から安定成長への移行という意味での日本の教訓部分から。
『どの国もそうですが、経済は一直線に変化する訳ではありません。結果的に、10年間の平均成長率が2桁となるにしても、その間、何年か毎に景気が減速しても不思議はありません。このため、このような潜在成長率の低下をリアルタイムで認識することは容易ではありません。』
ですなあ。
『しかし、そうした判断が難しいとしても、潜在成長率の低下に即応してマクロ経済政策を運営しなければ、問題が生じます。』
キタコレ。
『日本の場合、1970年代から80年代にかけては、経済の状況は、他の先進国と比べれば、総じて良好でした。しかし、この20年間において、日本は、1970年代前半には高い物価上昇を長期間にわたり経験し、また、1980年代後半にはバブルを経験しました。これらの原因は複雑ですが、潜在成長率の低下を十分に意識しない中で、マクロ経済政策が行われたことや、企業や金融機関の経営者がそれ以前の高い成長率に基づいた積極的な経営を行ったことが原因の1つと思われます。』
>潜在成長率の低下を十分に意識しない中で、マクロ経済政策が行われたことや
>潜在成長率の低下を十分に意識しない中で、マクロ経済政策が行われたことや
>潜在成長率の低下を十分に意識しない中で、マクロ経済政策が行われたことや
まあこれは高度成長から安定成長という文脈なので新興国、というか中国経済の話をしているとは思うのですが、読みようによってはバブルで下駄を履いた潜在成長率を前提に金融政策を実施しているのではないかとFRBに対して壮大なダメ出しとも取れますが(^^)。
『たとえ困難であったとしても、政策当局者は、高度成長から安定成長への円滑な移行を図ることによって、経済が被るコストを最小化していくことが求められます。』
・そして最後も白川総裁すっかり麿モードで何より
『国際的な視野からの政策運営の重要性』という所が白川総裁絶好調状態。
『それでは、世界経済における先行き数年間の政策課題は何でしょうか。抽象的にいえば、各国の政策当局者が、世界経済全体の安定ということを意識しながら、それぞれの国の政策運営を行うことではないかと考えています。』
キタキタ。
『先進国では短期金利は事実上ゼロ%となっているほか、長期金利も歴史的な低水準になっています。中央銀行のバランスシートは、危機前には考えられなかったほど著しく拡大しています。金融政策の伝統的な効果波及メカニズムの出発点は金利低下ですが、金利低下の余地は小さくなってきています。』
『しかも、多くの先進国経済は財政状況が悪化するもとで、財政政策もかなり制約されています。このように国内的なルートを通じる景気刺激策が限られている状況のもとでは、為替レートや新興国・資源国からの需要に期待する議論が多くなることも理解はできます。』
『こうした政策対応は、新興国・資源国の立場を難しいものにします。これらの多くの国では、固定的な為替レート制度を採用していることもあり、先進国の金融緩和が直接的に国内の金融緩和をもたらします。先進国にしても新興国にしても、それぞれの行動自体は理解できるのですが、世界全体としての効果や、各国の政策の他国への波及といった観点からみると、緩和方向へのバイアスがあるかもしれません。』
・・・・・・・・ということでキターの話がこの次に。
『こうした意図せざる帰結は、2000年代半ばの未曾有の世界的な信用バブルが発生したときの環境と似た側面を持ってくるのかもしれません。』
キター!
『現在、中央銀行の積極的な金融政策によってグローバルな規模でインフレや信用バブルがすぐにでも発生しかねないと申し上げるつもりはありません。これは誤解していただきたくない点です。』
『しかし、政策の射程を狭くとらえ過ぎることにより、本日お話ししたような二次被害が発生する可能性はあります。グローバル化の深化を踏まえると、責任ある政策当局者として、自国の政策の他国への波及と、その自国への跳ね返りを無視することはできなくなっていると感じます。』
いやまあそう仰いますがここまでこういう話をすると「白川総裁はバブル警戒」と言われますがな。
『各国の中央銀行が現在行っているのは「時間を買う」政策です。中央銀行は、過剰債務の調整の痛みを和らげるなど、金融緩和から得られる便益がそのコストを上回っていると判断して、こうした政策を採用しています。同時にこうした金融政策は、過剰債務の調整をはじめ、政府による構造改革を代替するものではないことも認識する必要があります。買った時間はうまく使われなければなりません。』
と、この部分が実にその通りではあるのですが、要は「金融緩和を行っている間に政府による構造改革を推進しないと本当に長期化した金融緩和の弊害がグローバルに発生するリスクが高まるから政府は何とかせえ」という話をしたかったと思いますし、それは全くおっしゃる通りだと思います。
・・・・・・思うのですが、前振りの部分がバブル警戒とかその手の話を強調し過ぎで、折角の最後のこの良い話が霞んでしまうのが惜しいなあと思うのでありました。
○13日の講演でも「国際的な配慮」と「政府の取り組み」を強調
13日の講演
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/data/ko121013a.pdf
グローバル金融危機の教訓 ―アジアの視点とグローバルな視点―
http://www.boj.or.jp/en/announcements/press/koen_2012/data/ko121013a.pdf
Lessons from the Global Financial Crisis: Asian and Global Perspectives
まあ上記の講演と話の筋は同じなので、おもろそうな所だけ引用。
『第二の教訓は、自国経済の安定を確保することは、各国が持続的な成長を達成するための必要条件ですが、十分条件ではないということです。マクロ経済政策に取り組むにあたっては、自分の家を身ぎれいにすること(put
one’s house in order)、すなわち自国経済の安定を確保すること、が伝統的に強調されてきました。しかし、そうした各国の政策対応を単純に積み上げただけでは、世界全体にとって最適な結果になるとは限りません。各国の政策担当者が自国の立場から見て合理的に行動しているとしても、全体としては「合成の誤謬」が生じるリスクがあります。』
いやもうね、読みようによってはこれまたバーナンキ盛大Disとも読めるのですが(^^)。
『このほかにも、国内の経済成長を促すために外需への依存を高める傾向も指摘できます。これは、内需が弱い時には自然な反応です。こうした反応は、世界経済全体が急速に成長している時には問題になりませんが、世界的に経済成長が弱い時には、他国経済の潜在的な成長機会を奪ってしまう可能性があります。一方、急速に成長する新興国が自国通貨の増価を食い止めようとする誘惑に屈してしまえば、グローバルな視点からみると、むしろ望ましくない効果をもたらしうるでしょう。』
これまた一般論としては仰せの通りですが、読みようによっては円高ガーというのに嫌味を言っているようにも読めるところがオソロシス。
『第三の教訓は、危機時における中央銀行の政策対応は、個々の中央銀行による対応も中央銀行間の協調行動によるものも、経済や金融システムを安定化するうえで成果を挙げてきましたが、だからといって、中央銀行を含む政策担当者がそれで安心してしまってはならないということです。』
『例えば、欧州中央銀行による新しい国債買入プログラム(Outright Monetary
Transactions、OMT)は、ユーロ圏におけるテイル・リスクを縮小させました。しかし、こうした状態は一時的なものに過ぎず、この機会を欧州債務問題の本質的な原因を根本的に解決するために活用していかなければなりません。』
ということで・・・・
『中央銀行による流動性供給は、経済の調整過程に生じる痛みを緩和する場合や、危機時に状況を一時的に安定化させるうえで非常に有効です。重要なことは、この一時的な小康状態の期間を活用して、抜本的改革のための好循環を起動し、強固で持続可能かつ均衡ある成長に向けた基盤作りを進めることです。』
と、こちらでも政府の取り組みの重要性について主張しているのですが、残念ながら報道ベースを見てもこの白川総裁のメッセージが報道されているという雰囲気は見当たらない(あたくしが見落としているだけかもしれませんが)のが残念無念な所であります。
○14日の講演はちょっと毛色が変わってグローバルな金融ガバナンスに関して
14日の講演
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/data/ko121014a.pdf
公共財としての国際金融システムの安定
http://www.boj.or.jp/en/announcements/press/koen_2012/data/ko121014a.pdf
International Financial Stability as a Public Good
こちらもまた格調の高い講演でありまして・・・・・・
『グローバル化が進展し、各国の金融システムがますます相互依存性を強める中では、金融システムの安定性はグローバルに達成されなければならなくなっています。これを実現するには、グローバルなレベルにおいて良いガバナンスを確保しなければなりません。幸いなことに、グローバルなガバナンスを強化することに対し原理的に反対する人はいません。金融システムが国境を越えて展開し、グローバルになってしまった状況では、何らかの対策なくして金融システムがその機能を適切に発揮できないということを誰もが直感的に理解しています。他方、金融危機によって加速されたとはいえ、この面における進展は決して速いとは言えません。それはなぜでしょうか。』
『ハーバード大学のダニ・ロドリック教授の視点が参考になります。同教授は、深化したグローバル化と、国民国家と、民主的な政治を同時に達成することはできないと指摘しています。』
なるほど。
『たとえば、近年、情報通信技術の進歩は、国境を越えて金融機関が活動することを可能にしました。アイスランドやアイルランドで最近生じたように、金融機関は母国以外における活動で経営危機に陥ることがあります。仮に、母国の政府が、国際金融システムの安定性を確保するためにこれらの金融機関を救済しようとする場合、母国の納税者が負担し得る以上の巨額のコストがかかり、民主主義が制約される可能性が生じます。』
『こうした結果を回避しようとすれば、グローバルな安全網を提供できる民主的な世界政府を樹立するか、民主的に選出された各国の政府が制御できる程度までグローバルな金融活動を制限するしかありません。前者の場合は国民国家を、後者の場合はグローバル化の深化を制約することになります。』
確かに・・・・・・・
『3つの選択肢のうち、ロドリック教授は、3番目の選択肢、すなわち、過度なグローバル化ではなく、賢いグローバル化(smart
globalization)を提唱しています。合理的な考えをする方の多くもこれに賛成すると思います。グローバルなガバナンスの強化がなかなか進まず、近い将来これが加速しそうもないとみられることを考えると、このような選択は常識的にみえます。』
『しかしながら、問題は、グローバル化を効果的に制御しようとしても、これが難しいことです。公共財の過剰消費は裏を返せば、そうした財の供給のためのコストが十分に内部化されていないということです。これは、グローバル化した金融活動がもたらし得る利益がかなり大きくなり、金融活動に対する制約を回避するようなインセンティブが強く作用することを意味している可能性があります。また、交通手段や情報通信技術の進歩は、民間の経済主体が不都合なルールや規制をすり抜けることをますます容易にしています。』
『私たちの経験に照らせば、この面における民間の創意工夫の才を過小評価してはなりません。ブレトン・ウッズ・システムの崩壊を覚えておられると思います。同システムは、賢いグローバル化の試みと言えましたが、それが崩壊してしまったことは、賢いグローバル化の難しさを示しています。さらに、経済活動にかかわるさまざまな公的あるいは民間の主体がますます多様になるもとでは、何が望ましいグローバル化であるかについて合意を得ることは難しいと考えられます。もし、そうした合意が得られないまま、貿易の制限、支店による進出の禁止や、海外業務からの強制撤退といった一方的な措置がとられるようなことがあれば、すべての人々が不利益を蒙ることになります。こうした問題を回避することはできるのでしょうか。』
ということで、グローバルガバナンスをどうすれば良いか、という話になるのですが、ここで白川総裁は変な理想論ではなくて現実的にどうしたら良いかという話をしているのがさすがとしか申し上げようがございません。
『私がこれまで参加してきたさまざまな国際的な議論の場における経験を振り返ってみると、私たちは、もっとも直截な方法、すなわち公的部門による公共財の提供という解を追求することによって、問題の解決をかえって難しくしているような気がします。』
ほほう。
『パドア・スキオッパ氏が指摘した通り、個々の国民国家がグローバルな公共財を提供することにはおのずと限界があります。単一のグローバルな公的な主体によって体系的に公共財が提供されることが望ましいのは事実ですが、そうした仕組みを私たちが依って立つ民主的な原理に基づいて実現することは難しいといえます。』
どういう事かと言いますと・・・・・・・
『国際機関は、民主的なアカウンタビリティに欠けているという批判をしばしば受けます。他方、徴税力をもった民主的に選出された世界政府を樹立することが近い将来に実現するとは考えられません。最近のユーロ圏に起きている問題はこの難しさを示しています。』
確かにおっしゃる通り。
『そうであるならば、私たちは、公共財の問題を解決するために知られた選択肢を組み合わせる、より現実的なアプローチを追求するべきです。グローバルに重要な金融機関の効果的な監督といった一部の公共財は、個々の国のレベルで供給できます。グローバルな金融環境を監視し、マクロプルーデンス上のリスクを特定するといった個別具体的な課題への対応を、超国家的な組織に民主的な原理と整合的なかたちで任せることは可能です。民間の主体に、バーゼル自己資本規制といった一定のルールを守らせることも可能です。これは、国際金融システムの安定を消費するルールにほかなりません。』
ということで、国際金融システムの安定という意味で国際協調の下でのガバナンスが重要である、という話がここから先にも続くのですが、引用ばかりで今日はむやみやたらと長くなってしまいましたのでこの辺で。
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2012/10/11
○総裁会見は特段の波乱はありませんでしたが
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2012/kk1210a.pdf
・物価見通しに関して:下方修正は認めるものの細かい説明で微妙にボロが
元々何かやるとか言うような期待があった訳でも無く、注目は次回の展望レポートであるという状況でしたので、問題はそちらに関する質疑の辺りとかになりますかな。
『(問) わが国の景気は「横ばい圏内の動き」ということで、日本経済の停滞感が強まっているわけですが、物価の持ち直しの動きも、これに伴って遅れが生じているという認識をお持ちかどうかお聞かせ下さい。』
『(答) 私どもは、前回の金融政策決定会合で、景気・物価の基本的なシナリオを明確に下方修正しました。』
>明確に下方修正しました
>明確に下方修正しました
>明確に下方修正しました
ほほう。
『物価を規定する1 つの大きな要因は、需給ギャップです。その需給ギャップのマイナス幅が解消するスピードが、この景気の下方修正のもとで、その分緩やかになってくるわけですから、その分、物価の上昇圧力が低下することになってくるわけです。定性的には、そうした整理になります。そうしたことは、既に前回の決定会合で定性的に織り込んで対応を採ったわけですが、現在、数量的あるいは時期的にどういうイメージになるのかという点検作業を進めています。今月末の展望レポートで、その辺を入念に点検した上でお示ししたいと思っていますが、定性的にはそうしたことだと思います。』
(;∀;)イイハナシダナーという所でございますが、「その需給ギャップのマイナス幅が解消するスピードが、この景気の下方修正のもとで、その分緩やかになってくるわけですから、その分、物価の上昇圧力が低下することになってくるわけです。」とこの辺をすんなり認めておりまして、まあこらどう見ても物価見通しが下がります罠という所。
ただまあこの後にこんなのが続くのが毎度の麿クオリティ。
『その際、物価の短期の動きには足許の景気動向が影響しますが、物価がどういう大きな方向へ向かっているかが、非常に大事であると思っています。現在、日本の潜在成長率はゼロ%台半ばであり、それを上回る成長率であれば、概念的には、需給ギャップが縮小していくわけですから、経済がそうした方向に向かっているかどうかが、物価をみる上では非常に大事だと思っています。』
つまり展望レポートで示しているような成長率(実質GDPが2013年度で1%台後半)ですと概念的には需給ギャップが縮小という話になるのでしょうが、いくら方向性がそうだからと言いましても、その間に掛かる時間がアホウのように必要だというような状態、即ち「景気の回復ペースは物価安定の目途を達成する為に十分な強さでは無い」というような状態の場合にどうしますねんという話になりますし、大体からして日銀だって「成長基盤強化」の推進をしている訳で、その成長基盤強化が奏功すれば潜在成長率だって高まるという話になる筈なのですから、まああまりこういう説明をするのも如何なものかという気がするのであります。
まあ何ですな、これはFRBとかも同じなのですが、次の金融政策についてどうするかという話であまり予断を強く持たせるような事を言わないようにしたい、という発想があって、その為に前半の部分だけで済ませると「次回の追加緩和確定」みたいに言われるので、方向性ガーとかいう後半の話をして予断を強くさせたくないというのが背景にあったのではないかとも思えるのでございますが、そう好意的に解釈したとしても何か後半部分って言わずもがなじゃないのという気がします。
いやね、「経済がそうした方向に向かっているかどうか」だけじゃなくて、それと同様に重要なのは向かっていく「速度」であって、その速度があまりにもチンタラしていたら結局の所現状維持に関する皆さんの期待が定着してしまい、結果デフレ均衡みたいな話になるんじゃネーノという風に思うのですからして、せめて「方向」に加えて「ペース」について言及した方が吉だと思うのですよね。そこを言わないと、悪意を持ってこの発言を解釈すれば「日銀は低成長を容認している」「日銀は物価上昇のペースが極めて遅くても問題無いと言っているという事はやっぱり現状のデフレ容認だ」という風に読めるのでありまして、こーゆー所で配慮がどうも無いのが麿クオリティだと。
いやまあ勿論理念的に言えば麿の話がおかしい訳では無いと思うのですが、やはり物には言い方というものがあるのではないか、と斯様思うのございまする。
でまあその後にもこんな質問が。
『(問) 3 点お伺いします。1 点目は、先程、前回の金融政策決定会合で景気見通しを明確に下方修正したとおっしゃいましたが、その時に、景気だけでなく物価シナリオも明確に下方修正したとおっしゃったのかどうかお伺いします。2
点目は、もともと日本銀行は、14 年度以降、遠からず消費者物価指数の前年比が1%に達する可能性が高いという大きな「旗」を掲げてきたと思うのですが、物価見通しも下方修正したということであれば、この見通しも撤回されたのかどうかお伺いします。3
点目に、もしまだ撤回されていないのであれば、展望レポートで、改めてこの見通しがやはり達成できない、遅れてしまうということであれば、もともと1%を目指して強力な金融緩和を推進してきているとおっしゃっている手前、やはり追加的な対応が新たに必要になってくるのではないかと思いますが、その点についてお聞かせ下さい。』
こうやって日銀のロジックを踏まえて質問してくるのが良いのでありまして、日銀のロジックを踏まえないで外債購入ガーとか不胎化介入ガーみたいな質問をするのは時間の無駄であるとしか申し上げようがありませんので記者の皆様におかれましてはよろしくお願いいたします。
『(答) まず1問目については、先程の問いに対する答えで申し上げたつもりですが、景気、成長率について下方修正するということは、その分、需給ギャップについて下方修正するということになります。そのため、物価についても、定性的には、下方修正することになってくるわけです。』
素直に認めましたな。前もまあ同じ事言ってますけど改めて認めています。
『近年、需給ギャップに対する物価の感応度が低下しているため、短期的に非常にビビッドに影響するということではないかも知れませんが、先程申し上げた通り、定性的には修正を行ったということです。その数字や時期については、展望レポートでお示ししたいと思いますが、これは「旗」ということではなく、「見通し」を再度点検していきたいということです。』
でまあこの辺も麿的に物価がアガランチ会長なのに対して説明が苦しいなあと思う所なのでございますが、「需給ギャップに対する物価の感応度が低下している」というのはまあその通りなのですが、そこの話をしますとじゃあさっきの「潜在成長率を上回る成長をしていれば需給ギャップが縮小して物価が望ましい方向に向かうので方向性が重要」という理屈はどうなりますねんという所でございまして、おそらく麿的にはここでの説明は「需給ギャップに対する物価の感応度が低下しているので、需給ギャップの縮小が遅れるまたは拡大するようになっても物価はビビットに低下する訳では無い」ので「見通しを定量的に大きく下げるかは判りませんぜ」というロジックだと思われますが、さっきの話はどうなってますねんという気がする訳でございまして、まあ要するにこの辺の物価に関する説明が苦しいですなという所ではございます。
『それから、政策対応ですが、9 月は、日本銀行が望ましいと考えているパスから踏み外すことがないように、強力な金融緩和をさらに追加したということです。大事なことは、1%という物価上昇率に向けて経済が向かっているか、ということです。これは、物価に限らず、FRBの場合でいえば、米国の失業率についてもそうだと思いますが、ある政策的な目標を考えていく場合に、それを追求する上での「最適なスピード」が常にあると思います。』
ふーん。
『最適なスピードを無視して、例えば、今、どんどん国債を買い入れるということをすれば、確かに、一時的には長期金利が下がるかもしれませんが、そのことによって、何かのきっかけでまた反転上昇していくようになると、却って金融機関の経営にもマイナスの影響が出てくるわけです。従って、私どもとしては、常に、最適なスピードを考えながら政策を運営していくことが必要です。』
何で長期金利の話になるの???という所ですが、じゃあ今の回復ペースや物価のペースが最適なペースなのかと小一時間問い詰めたい訳で、ここの説明ってもうちょっと何とかならんのかと。
まあ麿が言いたいのは「そんな強引にたとえば突如200兆円国債買うとかそういう無茶振りをするのはできませんぞなもし」というような話をしたいのだと思うのですが、これまた悪意で解釈すると「日銀は現在の景気回復ペースが最適なスピードだと考えていてデフレ容認していてケシカラン」という話になる訳で、というかこれ悪意で解釈しなくてもそう解釈され兼ねないのでありまして、何ちゅうか言ってることそのものは仰せの通りなのですが、物には言い様というものがあろうかと思うのですけれども、と大事なことなので2回申し上げました(^^)。
『そうした意味で、物価の見通しと政策対応が機械的に1 対1 に対応しているわけではありません。いつも申し上げている通り、様々なリスクも含めて点検をし、最適なスピードで行っていきたいということです。』
まあ要するに「次回やる」とは言えないという所なのでしょうが、そもそも麿の場合は普通のトークをしているだけで緩和積極的では無いという印象を与えるというのが仕様になっておりますので、別に次回やるかどうかに関する話でも普通トークをしておけば良いのではないかと存じますが、まあ残り半年ですのでそんな話をしても時既にお寿司ではございますが。
・海外経済について
特に中国経済の質問がありましてね。
『(問) 2 つ質問します。1 点目は、中国経済の調整について、先程もご説明がありましたが、だいたいどの程度で終了しそうだというイメージをお持ちでしょうか。日本の自動車メーカーが減産するという話も出ていますが、中国経済の減速が日本経済や日本企業に与える影響について、どういう分析をされているのでしょうか。(2点目は割愛)』
先ほどの説明というのは冒頭での説明になるのですが、
『中国経済は、ウエイトの高い欧州向けの輸出が落ち込んでいることに加え、素材産業など幅広い分野で在庫調整圧力が増していることなどから、減速感の強い状況が長引いています。』
という話を総裁がしております。
で、その答え。
『(答) まず1 問目ですが、いつ頃、どの程度でと、定量的にお答えするのは難しいように思います。お答えになるかどうか分かりませんが、こう考えています。』
で、この後が長いのよ。
『中国経済は、なお高めの成長を続けながらも、成長ペースが鈍化し、減速局面が長引いていますが、その要因を整理すると2
つあると思います。第1は、欧州景気が緩やかに後退するもとで、輸出の2 割を占める欧州向けが落ち込んでいることです。第2
は、素材を中心に在庫が積み上がる中でも、生産の抑制が進んでいないために、生産調整に時間が掛かっていることです。』
さいですな。
『先行きを展望した場合、当面は成長ペースが鈍化した状態が続くとみられます。もっとも、その後は、良好な雇用・所得環境のもとで、堅調な消費が見込まれる上に、金融緩和やインフラ投資の前倒しなど財政面からの刺激効果も加わるため、徐々に成長ペースは高まっていくと考えています。』
ほう。
『ただ、そう申し上げた上で――前回の会見の時も申し上げましたが――、やや長い目でみると、かつての日本と同様、中国も、いずれかの段階で、高成長から中成長に移行してくことが避けられないと思います。むしろ、中成長への移行自体は望ましいものであり、重要なことは、そうした移行を円滑に進められるかどうかという点にあると考えています。』
『中国の当局者と議論していると、日本の安定成長への移行期の経験などを含めて大変良く研究されていると感じることが多いです。5
月以降の金融緩和やインフラ投資の前倒しなどの一連の政策は、中国景気の減速局面がやや長引いていることへの対応であると同時に、経済を持続可能な成長経路に円滑に移行させることも意識しているように思われます。ご質問は、具体的に自動車メーカーへの影響ということでしたが、いずれにせよ、不確実性が大きいので、中国経済が抱えるこれらの点についても、引き続き注意を払ってみていく必要があると考えています。』
ということでまあ要するに「高度成長はそろそろ無理ゲーで安定成長に向かうための調整中です」という認識でして、まあこれはちょっと長めの話です罠。でもって更にちょっと後にも質問が。
『(問) 2 点質問します。(最初の質問割愛)もう1 点は、中国の尖閣問題に関連して、経済的な影響が大きいのではないかという懸念が特に広まっています。このことについて、本日の決定会合において議論がされたかどうか、もし議論があったのであれば、差し支えない範囲でご紹介頂きたいと思います。』
で、その答え。
『(答)(前半割愛)次に、2 つ目のご質問です。最近の日中関係の悪化が日本経済の現状および先行きに対して影響を与えるのではないかという観点、問題意識での議論は、昨日の執行部からの報告、それから本日の会合における政策委員間の議論でもありました。』
『貿易面において、言うまでもなく中国は日本最大の輸出先で、中国にとっても日本は米国に次ぐ大きな輸出先です。国際的な分業体制のもとで、日本から中国には資本財・部品や中間財が輸出され、中国はこれらを加工した最終財を、日本を含めた各国・各地域に輸出しています。このように、日中両国の経済はグローバル・サプライチェーンのもとで、重層的な相互依存関係にあります。このように日中経済の相互依存関係が高いだけに、今後の展開や経済面の影響を注意深くみていく必要がある、という議論でした。』
・・・・・・・・何か判ったような判らんような説明ですが、まあ要するに最初の所で懸念しているという議論が出ていましたという所なのですが、後半にああだこうだと謎の説明を入れているので何が何やらという感じになりますな。さっきの方の質疑でもそうでしたが、まあよーするに説明がうだうだ長くなっているというのは「中国経済に対する見方がちょっと楽観的で外していましたなあ」という辺りが背景にあるんだろうなあ、などと意地悪な解釈をしてしまいました。
・前原さんの出席に関しては質疑は多いが正直どうでも良いので外債購入について
正直どうでも良いのでちょっとだけ引用するに留めておきますが。
『(問) 念のためですが、本日の会合で、前原大臣からどういう発言があったのかご紹介ができるのであれば、教えて頂けますか。また、前原大臣は、アコードについての発言もありますが、外債購入について、「デフレ脱却に向けた有力な材料の1
つ」とおっしゃっています。改めて、外債購入について総裁のお考えを伺います。』
『(答) まず、前原大臣のご発言ですが、決定会合での各参加者の発言については、議事要旨、議事録という形で公表する扱いになっています。前原大臣のご発言については、来月に議事要旨を公表するので、それをご参照頂きたいと思います。』
『次に、本日の決定会合から離れて、一般的に、日本銀行による外債購入についてどう考えているかとのご質問にお答えします。あくまでも一般論として申し上げると、現在聞かれている日本銀行による外債購入議論は、為替相場を円安に誘導することを目的として論じられていると理解しています。こうした為替介入と同等の効果を狙った外国為替の売買については、日本銀行法上、日本銀行は「国の事務の取扱いをする者」――これは法律の用語ですが――として行うこととされており、為替介入は財務大臣の所管となっています。』
『これは、現在の日銀法を議論した時における、国会での政府の答弁にも示されていますが、為替の問題は常に相手国が存在するので、通貨外交の面で一元的に対応すべきであるという考え方に基づくものと認識しています。こうした点については、先般の国会において、安住前財務大臣も、為替介入は「財務大臣が一元的に対応すべきであって、日銀が為替介入に代わるものとして外貨建て資産の購入を行うことは適切ではない」と説明しておられます。』
『また、藤村官房長官や城島新財務大臣も、日本銀行による外債購入については、慎重な検討が必要と述べておられ、政府の法律解釈は以上のようなものであると理解しています。』
とまあこういう説明をしているのに報道ベースでは「総裁は外債購入に否定的」とか言われるのってどうなのよという風に思うのですけどね。単に「今は法律および制度の建付け上から言ってちょっと無理筋です」という話をしているだけなのですが。
『もちろん、為替相場の動向は、家計や企業の購買力やマインド面への影響等を通じて、日本経済や物価に大きな影響を及ぼし得るものであることは言うまでもありません。こうした観点から、日本銀行は、為替相場の動向や、その経済・物価への影響を常に点検し、金融政策運営に当たってしっかりと考慮に入れてきています。今後とも、先行きの金融経済動向を丹念に分析しながら、適切な金融政策運営に努めて参りたいと思っています。』
まあ何ですな、この部分をもっと前の方で言うだけでも印象が違うと思いますので、この説明をする際には「為替相場の動向については常にその影響を点検しています」という話を先に行いまして、おもむろに「とは言いましても現在の制度の建付け上は為替介入は日銀の仕事ではありませんぞな」という話をすればもうちょっとその「否定的」的なニュアンスでの報道も軽減されるのではないかと。
話がやや飛びますけど、ネットの発達でPVが多くならないと売れないとか、まあその手の話って恐らく紙媒体の時よりも更に傾向が強くなっていると思いますし、更には金融機関が情報ベンダーの経費削減とかやっているので、ニュース配信するベンダーもPV稼ぎたいという風になっているように思えるのですよ。
その結果として、情報ベンダーとか報道機関とかが出すニュースヘッドラインがどうも釣りというか誇大広告系の物が昔に比べて増えているような印象があります(まあ読むヘッドラインの総数がそもそも増えているからというのはあると思いますが)し、何かウケの為に直ぐに「○○と○○の対決」みたいなのをフレームアップするようなのが目につくようになっているんですよね。
という事も勘案しますと、情報発信する方もその辺フレームアップされるというのを考慮に入れて発信しないと勝手に変な報道されて真意が伝わりにくかったり曲解されるリスクが高まっているのではないかなあとか思うあたくしでございました。いやまあ勿論ヘッポコなのはオモシロヘッドラインを打とうとする報道サイドなのですけどねえ。
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