黒田東彦総裁(2013年度上期)
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2013/09/09「定例会見は「前向きの循環メカニズム」連呼と消費税に関する踏み込んだ発言が見もの」
2013/08/26「ジャクソンホールでの講演はロジックがだいぶ変でちょっと誰が書いたのかこれというレベル」
2013/08/12「定例会見では消費税の質問での財務省モードと政策順調のドヤ顔モード」
2013/07/30「内外情勢調査会での講演は政策成果を自画自賛モードだが我田引水の香りも」
2013/07/16「7月会合後の会見の特徴は「余計な発言」がかなり減った事ですがつまりその背景は・・・・・」
2013/07/09「支店長会議での黒田総裁の挨拶は「2年」が無くなったのですがまあ3か月経ちましたからねえ」
2013/06/21「国会半期報告の話も余計な発言が多いんだよなあ」
2013/06/14「会見ネタ続き:ポイントは現状認識が微妙に変、海外経済が妙に強気、追加緩和への言い方が変」
2013/06/13「クレクレ拒否決定会合後の会見:3つほどポイントがありますな」
2013/05/29「マクロプルーデンスと金融政策の話はロジックが複雑骨折」
2013/05/27「アジア経済関連の講演は特になかったが質疑では債券市場の話が」
2013/05/24「長期金利の質問が続いた総裁会見は配慮は見られるもののやはり上昇そのものはスルー気味な件」
2013/05/23「決定会合後の黒田総裁会見発言にベンダーバイアスが掛かって債券市場ピキピキな件」
2013/05/21「債券市場の下げに追い打ちを掛ける黒田総裁の長期金利上昇放置発言キタコレ」
2013/05/14「ロンドン到着時だけではなくG7やったあとでも急落放置モード発言だったようです」
2013/05/13「債券相場急落を受けても円安株高でハッピーのようで放置プレイ発言をする黒田総裁でした」
2013/05/09「定例記者会見は結局ただの信じる者は救われる論でした」
2013/04/16「支店長会議の挨拶や信託大会の挨拶は新味なし」
2013/04/15「最初の講演はただの根性論で内容があまりにも寂しすぎる」
2013/04/11「黒田総裁共同インタビューでの発言は債券市場の大荒れに対してあまり配慮が無いように見えます」
2013/04/08「異次元緩和後の会見は単なる信念の説明であまり説得力が無いのですけれども・・・・・」
2013/04/03「どうも発言が雑になっているように見える国会答弁」
2013/09/09
○総裁会見は消費税質問のオンパレードでした
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2013/kk1309a.pdf
いやあの消費税の質問をそんなにせんでもという位に消費税関連の質問だったのですが、答える黒田さんは結構踏み込んだ答えをしているのがこれまたへーという感じでございましたな。
・消費税に関する質疑が死ぬほど多いのだが大体こんな感じの答えです
質疑の半分以上が消費税に関するもので、おまえそれ金融政策マターじゃないだろと思うのですけれども、まあ質問が飛ぶわ飛ぶわという所で、引用しているとキリが無いというか単なる反復になるので大体典型的な答えの方を引用するだよ。
まず最初の方での質疑で消費税ネタ一発目があったのですけど、お答えの方だけ引用。
『(答) 以前から申し上げている通り、消費税率の引上げの問題については、政府において、経済状況などを総合的に勘案して判断されると認識しています。』
でまあここからが長い。
『日本銀行では、4 月の展望レポートあるいは7 月の中間評価においても、消費税率が予定通りに引き上げられることを前提に、経済・物価見通しを作成しています。そこでお示しした通り、駆込み需要とその反動といった振れは予想されますが、基本的には、経済の前向きな循環は維持され、基調的に潜在成長率を上回る成長を続ける可能性が高いと考えています。』
ちなみにこの「前向きな循環」が今回のマジックワードなのですがその話は後ほど。
『一方、消費税率の引上げを先送りした場合の金融市場あるいは経済に与える影響は、なかなか見通すことは難しいわけですが、やはり、大切なことは、財政運営に対する市場の信認をしっかりと確保することです。その信認が失われると、国として極めて困難な状況に陥ることになりかねない
わけです。』
財政健全化の重要性という話になると黒田総裁のスイッチが入るようです!
『従って、集中点検会合においても、ご質問があったので、それにお答えし、これを先送りした場合の国債に対する信認への影響を見通すことは非常に難しく、国債価格が大幅に下落するリスクがどれほどあるか分かりませんし、それほど大きくないかもしれませんが、そういうリスクが顕現化した場合の対応は、今申し上げたように、非常に難しくなるとお答えしたわけです。』
キタコレ。
『1 月の共同声明にもある通り、政府において、持続可能な財政構造を確立するための取組みが着実に進められることを強く期待しています。日本銀行としては、常に、上下双方向のリスクをみており、2%の「物価安定の目標」を実現するために必要な施策を行っていくということに尽きると思います。』
でまあ「対応が困難になる」といはどういう事ぞという質問に対してはこの答え。
『(答)(前半は別の話なので後ほど)もう1 点の消費増税を先送りした場合の影響については、マーケットの方は色々なことを言っておられますが、例えば、国債価格がどうなるか、株価がどうなるかは不確実な要素が多いわけです。仮に、そうした状況で財政に対する信認に傷が付き、国債価格が下落することになった場合には、当然ですが、財政を拡張するわけにはいかず、財政政策で対応することは難しいわけですし、金融政策でも、そうした状況では対応することは困難だと思います。』
仰せの通り。
『先程から何度も申し上げている通り、先送りした場合のリスクが顕在化する可能性、確率がどのくらいあるかは、人によって考え方も見方も違いますし、マーケットには「相当ある」と言う方もおられますが、これは、不確実で分からないと思います。ポイントは、仮に、そういうリスクが顕在化した場合には、対応が極めて困難であるということです。』
『それに対して、私どもは、予定通り消費税率を引き上げたもとでも、基調的に潜在成長率を上回る成長が続くと思っており、景気が腰折れするとは思っていません。仮に、景気に大きな影響が出るリスクが顕在化したとすれば、それは、財政政策でも十分対応できるでしょうし、金融政策でも、2%の「物価安定の目標」の実現に対して下方リスクが顕在化すれば、当然、それに対して適切な対応を採ります。これは、4
月4 日の「量的・質的金融緩和」導入時から申し上げている通りです。』
何という分かりやすいプロコン分析という所でありまして、まあ安倍ちゃんにおかれましてはこの黒田さんの説明をご理解頂ければと思います。
でまあ段階的消費税引き上げ論に関しての答えの部分がこれまた踏み込んでいるので観賞鑑賞。
『(答) 段階的引上げについての私の個人的な評価はありますが、どのような税制を採用し、どのような税率にするかは、まさに政府が考え、国会が決定することです。従って、それについて、中央銀行として、何か申し上げることは差し控えたいと思います。』
で、差し控えるのかと思えば全然差し控えないという事で、この件に関してはかつてのどこぞの麿総裁のように一般論として攻撃でこの後スイッチが入ったかのごとく説明が踏み込む踏む込む(^^)。
『ポイントは、要するに、2014 年4 月に3%、2015 年10 月に2%引き上げることは法律で定められており、それと違うことをするということは、新たに法律を出し、国会で可決しなければいけないということです。そのような状況が、市場やその他にどのような影響を及ぼすかは、なかなか予測し難いということです。』
ほうほう。
『私の意見というわけではありませんが、例えば、政府が「一回決めたことを止め、今度は違うことをやります」と言ったとき、「その違うことを100%やる」と市場が本当に信認するかどうかは、少し分からないところがあります。』
私の意見というわけではありませんがとか言いながらこれまた結構手厳しく踏み込んでいます!!!
『小刻みの引上げと2 段階引上げについて、それぞれにどのようなメリット・デメリットがあるかという議論は、今申し上げた点を踏まえ、政府で決めて頂くことと思います。』
と言いつつ最後にまたとどめのように・・・・・・
『ただ、予定通りの引上げを行わない場合の市場やその他の反応というものは、不確実でなかなか予期できないところがありますが、何かあったときの対応は、極めて難しいということに尽きると思います。』
という事で、何かこういい感じで踏み込んでいる黒田さんなのです。
んでもって消費税関連質問ですけれども、「浜田先生や本田先生との主張の隔たりがありますね」という質問に対する答えがこれがまた中々。
『(答)(前半は別の質問なので割愛)次に、浜田先生との考え方の相違は、私はそれほど大きいとは思っていません。』
え????
『そう申しますのは、浜田先生も含め、集中点検会合で意見を述べられたほとんどの方々が、消費税率の引上げが必要とみているわけで、問題は来年4
月に3%、2015 年10 月に2%と予定通りに引き上げることでよいのか、あるいはそれを例えば1%ずつ5
年かけて引き上げるのがよいのか、ということだと思います。』
これは斬新な説明。
『その際、私どもは、先程申し上げた通り、消費税率の引上げと潜在成長率を上回る成長が基調として続くこととは両立し、そういうもとで、当然、マイナスの需給ギャップが徐々に縮小してプラスになっていくことで、消費者物価の上昇率も徐々に2%に向けて高まっていくとみているわけです。確かに、そうではない見方もあることは事実と思いますが、消費税率の引上げそのものについて言えば、基本的には、ほとんどの方が、財政健全化を進める中で社会保障財源を確保するという観点から、不可避・不可欠であるということについて、意見が一致していたように思いました。』
いやあの「財政健全化なんぞしなくて良い」というような変態は責任ある立場で発言する奴ぁいねえだろと思うので、そこを捕まえて「考え方の相違は大きくない」とか言われましても総裁ェ・・・・・と思うのですけれども(重要な相違点は経済の見方でしょ)、こう言い切って大先生方をdisらないというのがさすが財務省出身だけに腹黒政治的配慮のされた説明と感心してしまいました。
・キーワードは「前向きの循環メカニズム」
最初の説明の所でもこういうのがありましてね。
『わが国の景気ですが、企業部門において収益の改善が設備投資にプラスに作用しており、家計部門においても雇用・所得環境の改善の動きが個人消費を支える要因となるなど、企業・家計の両部門で所得から支出へという前向きの循環メカニズムが次第にしっかりと働いてきています。このような情勢を踏まえ、景気の総括判断について、先月の「緩やかに回復しつつある」から「緩やかに回復している」へと前進させました。』
で、この前向きの循環メカニズムですが、「景気の持続力の鍵はどこに見ているのか」という質問がありまして、そこの説明が大変に素敵。
『(答) 最初に申し上げた通り、全体として、経済が回復してきているので、先月に比べ、景気判断を少し前進させました。それが、今後どうなるのかというご質問です。』
『先行きについては、先程申し上げた通り、引き続き海外経済が徐々に持ち直す中で、内需の堅調さを反映して緩やかな回復を続けていくとみています。その場合のポイントは、生産・所得・支出の前向きの循環メカニズムがどのように働いていくかということです。今回、景気判断を少し前進させた背景には、やはり家計と企業の双方で、そういった前向きの循環メカニズムが働いてきていることがあります。家計では、雇用・所得面の改善がみられ、それが底堅い消費を支えるようになってきています。これが、今後どのようになっていくかが一番重要だと思いますが、私どもの見方では、引き続きそうした家計部門での前向きの循環メカニズムが続いていくとみています。一方、企業については設備投資が、色々な先行指標をみて、いずれ出てくるとみていたわけですが、特に最近の法人企業統計で明確に出てきました。この背景には、もちろん、企業の経済に対する見方・マインドの改善があると思いますが、ご承知のように、足許、企業収益が非常に改善しており、また、多くの調査で、こうした企業収益の改善は続くとみられています。従って、企業部門での生産・所得・支出の前向きの循環メカニズムも働いていくだろうとみています。』
『海外経済の動向には、まだリスクがあることは事実ですので、毎期毎期全ての指標がどんどん伸び率を高めていくとは思っていませんが、基本的には、今申し上げたような家計・企業における前向きの循環メカニズムも働き、海外経済も全体としては徐々に改善していく中で、こうした景気の動向が持続できるのではないかと私どもはみています。』
ということで、ここの説明の中で前向きの循環メカニズムが何と5回も出ているという事で、とにもかくにも今回の金融政策決定会合のポイントはこの「前向きの循環メカニズム」の強調(前回の会合時点でも金融経済月報の方では雇用所得環境の改善という指摘が入っていて、今回の布石は打ってあったのですけれどもね)。
・景気と物価に関する質問に対して
こんな質問がありましてね。
『(問) 景気判断を「緩やかに回復している」とされましたが、4 月の段階で「年央頃には、緩やかな回復経路に復していく」と考えていたシナリオがほぼ実現したと考えているのでしょうか。また、これは、一種の日銀による「景気回復宣言」という理解でよいでしょうか。』
『2 点目は、物価動向についての質問です。消費者物価の前年比は0%台後半の伸びで、順調に伸びているという見方もできますが、一方で、中身をみると、コストプッシュ型が中心で、エネルギー価格の上昇や円安を反映しているという見方もあります。庶民はコストプッシュ型の物価上昇では困るという認識も強いと思いますが、「良い物価上昇」に向かうのはいつ頃になるのか、今、脱デフレの道筋はどういうところにあるのか、ご見解をお願いします。』
どっちもさいですなという指摘ですがその答え。
『(答) 4 月に新しい金融政策の枠組みを決め、展望レポートを出し、7 月に展望レポートの中間評価をした過程で考えられていたように、景気は想定通りに回復していると思います。ただ、内外需要別の動向でみると、4
月頃にみていたよりも、外需が少し弱いかもしれません。他方、内需がその時にみていたよりも、少し強いかもしれません。ただ、経済全体としては、いわば想定通りに回復しているということだと思います。』
つまり一種の回復宣言ですねわかります。で、後半。
『物価についても、前々から申し上げている通り、2 年程度の期間を念頭に置いて、2%の「物価安定の目標」を達成するために必要な措置を採るということですので、いきなり物価上昇率が2%になるわけではなく、徐々に物価上昇率が高まっていくということです。そういう意味で、物価上昇率は、私どもが考えていたテンポで徐々に高まってきていると思います。』
ほほう。
『なお、中身については、確かに、ご指摘のように石油製品などのエネルギー関連の押上げが効いている面があることは事実ですが、他方、個人消費がかなり底堅く推移する中で幅広い品目で改善の動きがみられたことも影響しています。』
ほっほー。
『こうした改善の拡がりは、例えば、除く食料・エネルギーでみた消費者物価上昇率でみても、徐々に下げ止まりつつあることからも明らかだと思います。従って、全体として、消費者物価上昇率もいわば想定通りに徐々に高まってきています。』
想定通りキタコレ!
『さらにそうした動きは、経済全体における生産・所得・支出の好循環の中で起きていることですので、当面、エネルギー価格の上昇という面があることは事実ですが、中期的にみて、全体として需給バランスが改善していく中で、2%の物価上昇率へ向けて徐々に高まっていくと思います――需給バランスが改善していかなければ、物価上昇率が持続的に2%に向けて高まっていかないと思いますので、そのようになるだろうと思っています――。実際、雇用・所得の改善がみられており、実質所得もややプラスになっていると思いますので、全体としては、好ましい方向に向けて、徐々に消費者物価の上昇率が高まってきていると思います。』
「経済全体における生産・所得・支出の好循環の中で起きている」とか「雇用・所得の改善がみられており、実質所得もややプラス」とかこれまた大きく出ましたなという所でして、何かやたらと強い話をしている(声明文からしてそうですけれども)という事で、この「前向きの循環メカニズム」攻撃がもう全開モードになっているというのがこちらの質疑でも判ると思います。
・ジャクソンホールでの説明はナンダッタンダという話
いやー質問してくださった方が居まして誠にアリガタヤという所で、あたくしのお願い(というか煽り)が効いていたら(んなこたぁねえ)有り難き幸せ。
『(問) 先般、総裁が米国で講演された内容について1 点お伺いします。講演の中で、総裁は、金融緩和の効果を出すには実質金利を下げることと自然利子率の上昇の両面が必要だとおっしゃいました。後者の自然利子率については、いわば潜在成長率とほぼ同じような概念かと理解していますが、講演によれば、「量的・質的金融緩和」で両面において成果を出しつつあるというご見解を示されました。ということは、「量的・質的金融緩和」は、いわば日本経済の成長力を上げるような効果も狙い、かつその成果を出しつつあるとみておられるのでしょうか。もし、そうであればどのようなメカニズムでそうなっているのか教えて下さい。』
(;∀;)イイシツモンダナー
『(答) ジャクソン・ホールで講演した際、主催者から与えられていたテーマの1
つに自然利子率の話がありました。ご承知のように、自然利子率の概念については、20
世紀の初め頃から延々と議論があり、理論的に考えれば、確かに自然利子率と実質金利のギャップが大きければ大きいだけ投資が促進され、成長が促進される。逆に、自然利子率よりも実質金利が高いと、なかなか投資が出てこない。投資が出てきて経済成長にプラスになるためには、通常は、この実質金利をどのように下げるかということになります。』
ほうほうそれでそれで?
『ただ、自然利子率のことも議論する必要があったので、自然利子率自体にも若干働きかける効果があるのではないかと申し上げ、その関連で、いくつかの日本銀行が採っている政策についても言及しました。』
「若干」働きかける効果が「あるのではないか」とな??
『全体をご覧頂くと分かるように、基本的には、実質金利を下げて投資、消費を促進することにウエイトがかかっており、その点については、従来の考え方と変わっていません。』
うーむ、あの講演の後に森本審議委員の岩手での講演でも貸出支援基金に関する説明のウェイトを増やしていて、従来の考え方は従来の考え方としてあるけれども、一方でフィリップスカーブの上方シフトという話からこっちの方向に話を持って行こうという雰囲気も漂うのですけどねえ。
『中長期的な潜在成長率を上げ、自然利子率を上げていくためには、基本的には、よく言われている成長戦略のようなものが絶対的に必要であって、金融政策でそこを引き上げる余地は極めて限られていると思います。ただ、デフレが長く続き、全体として、やや抑圧されてきた自然利子率を少し回復させる効果は、あり得るとは思っています。』
>金融政策でそこを引き上げる余地は極めて限られていると思います
>金融政策でそこを引き上げる余地は極めて限られていると思います
>金融政策でそこを引き上げる余地は極めて限られていると思います
ということで共同のヘッドラインの方がヘッドライン詐欺だったようですが、それはそれとして、「金融政策でそこを引き上げる余地は極めて限られている」というのであったらあのジャクソンホールでの説明はナンダッタンダという話になるのですけれども、こういう結論になるのだったらあの講演は無いんじゃネーノと思いますし、しかし一方で先ほど申し上げましたように森本さんの講演がああいう感じだったのが気になりますな。
つーこって、この件に関してはもう少し様子を見て10月の展望レポートを鑑賞したいと思います。
#引用大会で増量恐縮至極
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2013/08/26
○ジャクソンホールで微妙な講演とな
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/data/ko130825a1.pdf
日本の非伝統的金融政策と国際金融システム安定に向けた取り組み
カンザスシティ連邦準備銀行主催シンポジウム(米国ワイオミング州ジャクソンホール)における講演の抄訳
ということでバーナンキ先生もドラギ先生もいらっしゃらない中で黒田総裁の講演があったのですけど、面倒なので英文では無く抄訳の方で勘弁。
ちなみに英文は
http://www.boj.or.jp/en/announcements/press/koen_2013/data/ko130825a1.pdf
ですが今日は手抜きで引用するのは日本文の方である(汗)。
『本日は、まず、この4月に日本銀行が導入した「量的・質的金融緩和」の概要を説明します。次に、その波及経路の特徴について、実質金利と自然利子率への影響という観点からお話します。最後に、非伝統的金融政策と国際金融市場との関係について、いくつかの論点に触れておきたいと思います(図表1)。』
ということで説明しているのですが・・・・・・・・・・
・効果の説明部分でツッコミ所というか何というかな箇所がですなあ
何をやりましたかという話はさておきましてその効果に関する説明を『足元までの量的・質的金融緩和の評価』という小見出しから。
『量的・質的金融緩和は、既にその効果を発揮しつつあります。ここでは、3つの点を指摘しておきたいと思います(図表4)。』
ほう。
『第1に、金融市場や企業金融の好転です。』
企業金融の好転とな???
『株価は上昇しており、長期金利は、一時的にボラティリティが高まる局面もありましたが、足元では、海外金利が上昇する中にあっても、ほぼ横這いで推移しています(図表5)。企業金融面でも、銀行貸出が伸びを高めると同時に、貸出金利も史上最低の水準にあります。』
銀行貸出はQQEの前から十分緩和的な状態で関係ないと思うけどね。
『第2に、人々の期待の好転です。消費者マインドや企業の業況感が大幅に改善しています。また、多くの指標が、市場・企業・家計、いずれについても、予想物価上昇率が上昇していることを示しています(図表6)。このことは、名目金利の低位安定と相まって、実質金利の引き下げに効果を発揮しています。』
ほほう多くの指標とな!
・・・・・・・・・と思いまして図表6とやらを拝読した瞬間に盛大に椅子からコケそうになってしまったのですが、図表6には板がスッカスカな上に消費税の分を思いっきり加味している物価連動国債のBEIの推移のみが堂々と出ているのみという図表となっておりまして、どこがどう「多くの指標が示している」という事の説明なのかが1ミリも理解できない上に、いかにも「ここから好転しました!」というような感じでグラフの縦軸に途中で線を引いているのですが、その縦軸の位置がQQE実施時期の4月ではなくてその前の1月であり、4月水準から見たら一旦上がって下がっているので、この数字だけ取り出すと白川総裁時代の物価目標2%への引き上げの方がよっぽど効いているように見えますけれども随分とこらまあ雑な説明っつーか何つーか。
でまあ一発だけなら誤射かもしれないので念の為本チャンのテキスト(英文版)の方を見たのですが、残念ながら図表は同じでしておいおい大丈夫かと思って英文を見ると・・・・・・
『Second, there has been a favorable turn in the public's expectations.
Consumer sentiment and business sentiment have improved markedly. Many
indicators suggest that inflation expectations have been picking up in
the market, as well as among firms and households. A recent development
in one such indicator is shown in Chart 6. This development, together with
low and stable nominal interest rates, has been effective in lowering real
interest rates.』(講演の英文本文テキストより)
「A recent development in one such indicator is shown in Chart 6.」って何か判ったような判らんような言い方だが、こちらでは「多くの指標が改善を示しています、でもってそのうちの一つを示しています」というような英文に読めそうな気がする(何か変な英文だが)のでまだマシな気はするのだが、それにしても「多くの指標が示しています」って言って図表まで出しているのにそれが1つだけというのが何だかねえとは思います。まあBEIが指標として使うにはあまりにも市場がスッカスカでその数値については一定の幅を見て考えた方が良いと思うのですけどみたいな話はジャクソンホールの皆様にバレはしないと思うのですけどね(棒読み)。
『第3に、実体経済や物価の好転です(図表7)。個人消費は、マインドの改善や株価上昇による資産効果もあって、底堅く推移しています。設備投資は、企業の業況や収益が改善する中で、持ち直しに向かう動きがみられています。消費者物価上昇率も、景気改善や円高修正を背景に、ゼロからプラスに転じています。』
景気改善???いやあのここまでのは単なる円高修正のコストプッシュではないかと思うのですけどまあいいです。
・自然利子率が上昇????????
とまあそこまでの説明も微妙にツッコミどころがある訳ですが、その次の部分が更に???である。
『2.非伝統的金融政策と実質金利そして自然利子率』という小見出しなのだが。
『このように、日本銀行の量的・質的金融緩和は既に成果を上げつつありますが、次に、実質金利と自然利子率という2つの観点から、その政策効果の波及メカニズムについて考えてみたいと思います(図表8)。』
ほほう。
『言うまでもありませんが、金融政策の効果は、実質金利と自然利子率の差によって決まります。したがって、金融緩和効果を生じさせるためには、自然利子率を所与として実質金利を引き下げるという方法と、実質金利を所与として自然利子率を引き上げるという方法の2つが考えられます。』
「実質金利を所与として自然利子率を引き上げるという方法」とな??
『日本銀行の量的・質的金融緩和は、実質金利の引き下げと自然利子率の上昇という2つの側面から、効果を発揮しつつあるものと考えられます。以下、順を追って説明していきましょう。』
えーっと、自然利子率とゆーのも定義によって微妙に違うのかも知れませんけど、一般的には自然利子率って潜在成長率とほぼ同じという話で、そうするとQQEをローンチして半年もしないで潜在成長率を引き上げつつあるという話になるのですけど、そこまで金融政策が万能であるみたいな話ってさすがに最近は米国の中銀でもそんな事言わないと思うのですけれども、んな大口叩いて大丈夫でしょうか???
ということで説明を拝読。
『まず、第1の論点として、実質金利の引き下げ効果について考えてみたいと思います。』
『政策的に実質金利を引き下げる場合、名目金利を引き下げるのが普通です。もちろん、こうした政策が可能であるためには、名目金利の低下余地が十分に大きいことが必要です。例えば、米国の場合には、インフレ予想がアンカーされていることを前提に、名目金利の引き下げによって、実質金利の低下が図られました。』
ふむ。
『これに対し、日本の場合は、もともと名目金利の水準が低かったため、名目金利の引き下げによって実質金利の低下を図る余地が限られていました。そこで、実質金利を引き下げるためには別の方法が必要でした。つまり、予想物価上昇率の引き上げです。実質金利を引き下げるという目的自体は米国と同じですが、それを実現するためのストラテジーは対照的です。』
>もともと名目金利の水準が低かったため
>もともと名目金利の水準が低かったため
>もともと名目金利の水準が低かったため
えーっと、QQE最初の頃は堂々名目金利を下げる話をしていた筈なのですが、「もともと名目金利の水準が低かったため」とかそういうのはQQEを打ち込む前およびその時点でちゃんと説明して頂きたいのですがねえ。「それを実現するためのストラテジーは対照的です」とかしらっと言ってるけど元々あんさん(と木久扇師匠)は何って言ってましたっけちょっとお前説明してみろやゴルァと思いますけど見事な変わり身。
『日本銀行が、2年程度の期間を念頭において2%の「物価安定の目標」の実現を目指すことは、こうした政策上の制約を克服する上で有用です。量的・質的金融緩和によって、予想物価上昇率が実際に上昇しつつあるのは、先に述べたとおりであり、日本銀行の政策は、所期の効果を発揮しつつあります。』
図表を見ますとQQE実施前と対してBEIの水準が変わっているようには見えませんけど(ニヤニヤ)。
でまあその次が今回の白眉ではあるのですけど(ここまでも大概に(短い講演なのに)ツッコミどころが多いのだが)自然利子率がどうのこうのの話。
『次に、第2の論点として、非伝統的金融政策と自然利子率の関係について考えてみたいと思います。ただ、こうした論点については、これまでほとんど議論されてこなかったように思いますし、多分に見解が分かれるところかもしれません。』
と一応ヘッジクローズは入ります。
『そもそも自然利子率とは、企業が実物投資を行うことで得られる予想リターンに相当します。日本銀行の量的・質的金融緩和は、人々の間に定着した「デフレマインド」を打ち破り、日本経済が本来持っているダイナミズムを取り戻そうとするものです。その政策的帰結として、日本の潜在成長力が回復すれば、投資機会が増え、自然利子率の上昇という形になって現れてくると考えられます。』
英文を引用してみよう。
『To begin with, the natural rate of interest corresponds to expected returns
from firms' capital investment. The Bank's QQE aims at conquering the "deflationary
sentiment" that has been entrenched among the public and restoring
what had been the intrinsic dynamism of Japan's economy. As a consequence
of the policy, if Japan's growth potential recovers, investment opportunities
will increase and the natural rate of interest will rise.』(講演の英文本文テキストより)
何か言ってる説明がかなり怪しげなのですが、何せこのあたくし浅学菲才につきさぱーりワカランチ会長ではあるのですけど、「デフレマインドを打ち破る」って「インフレ期待の引き上げ」という話だったら今さっき説明した「実質金利の引き下げ効果」を別の言い方をしているだけで、さっきの繰り返しにしか見えませんし、そうじゃなくて経済の構造変化によって潜在成長率が引き上げられるというのであればそれは金融政策の範疇を超えた話じゃないかと思うのですけれども、何をどうして中央銀行が潜在成長率の引き上げを行う事ができるのかねという疑問、つーかバーナンキだってそんな事言わないぞという話だと思うのですが・・・・・・・・・・
『潜在成長力の強化に資する非伝統的金融政策という意味では、実は日本銀行は、「貸出支援基金」という資金供給手段も設けています。同基金は、日本経済の成長基盤強化に資する貸出について資金供給する「成長基盤強化支援」と、金融機関の貸出増加に向けた取り組みを支援するため、貸出増加額についてその全額を低利・長期で資金供給する「貸出増加支援」の2本立てで構成されており、成長性の高い企業や事業分野の資金需要の発掘に向けた金融機関の取り組みを促進することを狙いとしています。』
何と麿の遺産が重要施策に何時の間にか格上げ(いやまあ元々重要でしたけどQQEではあまりクローズアップしてませんでしたからね)になっているんですけど、つーか成長基盤強化の方は兎も角、貸出増加支援ってのは貸出先が非効率的な分野とかだったりすると経済の構造改革に資するかどうかってちょっとアレなんじゃなかろうかという気がするのですけど何かこれまた大きく出ましたなという所で。
『ここで一点だけ補足しておきますと、自然利子率を高く維持することは、様々なショックに対する経済の耐性を高めるという点でも重要です。この点、自然利子率が十分上昇した暁には、政策金利が再びゼロの下限にヒットする可能性が低下し、日本経済の耐性が高まると考えられます。』
まあこれは良いんですけど、何かこう説明が凄まじいというか何というかで、これは唸ってしまうとしか申し上げようが無しの助なジャクソンホールデビューなのでありました。
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2013/08/12
○総裁会見が今回意外にオモロイ件について
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2013/kk1308a.pdf
まあ何ですな、当然ちゃあ当然なのですが、今回は消費税増税に関する質問がバカスカ飛んで来まして、それに対する答えがどう見ても財務省です本当にありがとうございましたという風情ではあるのですが、まあ良く考えたら元財務官というナンバー2なのですからそもそもがザ・財務省みたいなもんですからねえ。
・フィリップスカーブのシフトアップ、ダム論の説明キタコレ
いやあ何でそんなに自信満々なのかよー知らんけど、冒頭の説明部分から一部引用。
『物価面では、6 月の消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は+0.4%とプラスに転じています。予想物価上昇率については、いわゆるブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)などのマーケットの指標に加え、企業、家計、エコノミスト、市場参加者に対する様々な調査も踏まえると、全体として上昇しているとみられます。』
はあそうですかそれでもって具体的にどの辺の数値がどうなったからそういう判断に至ったんでしょうかねえ。
『以上のように、「量的・質的金融緩和」のもとで、実体経済や金融市場には前向きな動きが拡がっており、人々の経済・物価に関する期待は好転しています。』
前向きな循環のダム論キタコレ!!
『公表文に示されている通り、全体として「緩やかに回復しつつある」との景気判断は前月と同じですが、前月よりも前進しているところもみられます。そうした中で、先程申し上げた「所得から支出へ」という前向きの循環メカニズムが、次第に働き始めていることは確実です。』
どう見てもクソ強気です本当にありがとうございました。
・物価上昇はコストプッシュじゃネーノという質問を一蹴とな
冒頭の質問がまずこれ。
『(問) 物価について伺います。6 月の消費者物価は、1 年2 か月振りにプラスに転じましたが、円安に伴うエネルギー価格の上昇が大きく影響しています。日銀は、需要増を伴う物価上昇を目指していると思いますが、足許の物価状況についての評価、受止めをお聞かせ下さい。』
コストプッシュで喜んでるんじゃねえよヴォケということですねわかります。
『(答) 私どもは、前月も、消費者物価の前年比はプラスに転じていくとの見通しを示していたわけですが、6
月の実績は、こうした私どもの見通しに沿った内容であったと思っています。』
ほう。
『やや子細にみると、6 月の消費者物価が前年比+0.4%になったことには、石油製品や電気代といったエネルギー関連の押上げ分だけではなく、個人消費が底堅く推移するもとで幅広い品目に改善の動きがみられたことも影響しています。こうした改善の動きは、食料・エネルギーを除く消費者物価(いわゆるコアコアCPI)でみても、前年比マイナス幅が縮小していることに表れていると思います。』
>個人消費が底堅く推移するもとで幅広い品目に改善の動きがみられたことも影響しています
>個人消費が底堅く推移するもとで幅広い品目に改善の動きがみられたことも影響しています
>個人消費が底堅く推移するもとで幅広い品目に改善の動きがみられたことも影響しています
コストプッシュの指摘に対してこの切り返しとな!!!
『先行きについても、先程申し上げたように、わが国経済が緩やかに回復し、需給バランスが改善していくもとで、消費者物価の前年比は次第にプラス幅を拡大していくとみています。』
ということで前向きの循環で物価上昇が拡大するんですってよ奥様!
・消費税率の引き上げ云々の質疑鑑賞会である:一般論攻撃キタコレ!
消費税増税を予定通り実施しなかった場合の影響に関する質問がその次にありまして、質問はまあ普通なので割愛しますがその答えを見てあたくしが盛大にウケた箇所がありましてですね。
『(答) いつも申し上げている通り、消費税率の引上げについては、政府において、経済状況等を総合的に勘案して判断されると認識しています。』
そしてその次っすけどね。
『その上で、一般論として申し上げれば、』
麿キター状態ですが、同じ一般論として申し上げればでもポリティカルリソースがある人と無い(−−)人ではまた違いますのでその辺は兎も角としましても、一般論攻撃をして来るというのが黒田さん頑張ってますなあという所です。まあ麿じゃなくて財務省キターという所でしょうけれども(^^)。
『大幅な財政赤字が続き、既に政府債務残高が極めて高い水準になっていることを踏まえると、政府において、今後の財政健全化に向けた道筋を明確にし、財政構造改革を進めていくことが極めて重要であると思っています。日本銀行としては、その着実な推進を強く期待しています。「中期財政計画」も示されたので、これに沿って、着実に財政健全化が推進されることを期待しています。』
・脱デフレと消費税増税とな
消費税増税の質問は続く。
『(問) 消費税に関してお伺いします。日銀は、中期見通しを出されていますが、今、トレードオフとなっているのは「脱デフレ」と「消費税増税」で、どちらを取るのかという議論になっているのですが、消費税増税が脱デフレにとって非常にマイナスになるというお考えをお持ちかどうか教えて下さい。また、政府との共同声明の中で、政府には「持続可能な財政構造を確立するための取組を着実に推進」してもらいたいという文言を盛り込んでいるのですが、持続可能な財政構造を確立する取組みを着実に推進するということに「消費税増税」が含まれるとお考えかどうかお聞かせ下さい。』
『(答) 1 点目は、「脱デフレと消費税増税は両立するか」というご質問だと思いますが、私は、両立すると思っています。』
ほほう。
『以前にも申し上げた通り、政策委員会として、消費税率が法律通りに引き上げられることを前提として、展望レポートや7
月の中間評価における見通しを示しているわけです。』
キタコレ!
『7 月の中間評価においても、政策委員の成長率に関する見通しの中央値は、13
年度は+2.8%、14 年度は+1.3%、15 年度は+1.5%となっているわけであり、消費税率引上げの経済への影響については――もとより駆込み需要とその反動は予想されますが――、基本的には、景気の前向きな循環が維持され、基調的には潜在成長率を上回る成長を続ける可能性が高いと考えています。』
強気ですな。
『2 点目については、1 月の共同声明で示されている政府の財政健全化へのコミットメント、約束は、まさにそこに書いてある通りだと思います。』
まあここではそこまでツッコんで答えていませんが、次にお約束のように財政規律の質問ががががが。
・財政規律と大規模緩和
『(問) 消費税の関連になるかもしれませんが、財政規律のことでお伺いします。総裁就任前の1
月の共同声明には、政府・日銀の間で、日銀が積極的な金融緩和をするという一方で、政府の方には持続的な財政構造の確立を求めています。金融政策運営の立場からみて、なぜ持続可能な財政構造の確立が必要、重要なのか、仮に持続可能な財政構造が確立されない場合に、引き続き大規模な異次元緩和を続けていくことが可能なのか、総裁はどのようにお考えでしょうか。』
まあ前半は「お約束のお答えを期待」という奴ですが、後半の質問の答えも期待される訳で。
『(答) 1 月の共同声明は、まさに、そこに示してある通りです。日本銀行は、金融緩和を行うことによって、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現する一方、政府は、第2
の矢、第3 の矢にあるように、当面は機動的な財政運営を行いつつ、中期的には財政再建を実現するとともに、第3
の矢で示されている、成長戦略、民間部門を中心とした成長力の強化といった政策を実行することになっているわけです。』
ふむ。
『ご指摘の日本銀行の金融緩和と政府の財政健全化は、確かに、関連しています。日本銀行の「量的・質的金融緩和」は、その非常に重要な部分に、長期国債を幅広く、しかも大量に購入することが含まれています。これ自体は、2%の「物価安定の目標」を達成するために必要なものですが、その際、財政規律の緩みや、最近言われる「財政ドミナンス」、あるいは「財政ファイナンス」のような懸念が持たれ、その影響が長期金利に跳ね返るようなことがあると、せっかくの「量的・質的金融緩和」の効果が減殺される惧れがあります。』
ほほう。
『もちろん、財政再建は、まさに財政そのものとして不可避・不可欠、絶対に重要なことであることはその通りですが、財政規律が緩むということがあると、間接的に、金融政策の効果に悪影響を及ぼす懸念があるということです。』
ということで、「日銀が書面にある通りに大胆な金融緩和を行ったのだから財政健全化路線の堅持するのはお約束だろヴォケ」とはさすがに言わない辺りが黒田さん気を使ってるねと思いましたが、それはそれとして「当然やっていただける」とは言わないもののそれに近い話をしている辺りは中々。
次の質問に対する答えで当初の話と違うという見解についてというのを求められてましてね。
『(答) 1 点目については、消費税率を2 段階で引き上げる法律自体、経済動向を踏まえて実施することになっています。経済動向をみることは当然であり、私は、それ自体を不思議なことだとは思っていません。そうしたもとで、政府においては、当然、経済動向を踏まえつつ、中長期的な財政構造の改革、健全化が行われることになると思いますし、そうなるべきだと思っています。』
こんな感じで、今回の会見要旨を見ると消費税増税とか財政再建に関する質疑って最初はソフトな言い方をしながらも記者から色々と煽り質問(^^)が飛んでくるときっちり煽られて結構頑張った言い方をしてますねという風になるのが実にチャーミングです。
・前向きの循環メカニズムとかウソコケという質問も一蹴とな
答えだけ引用したのですが、先ほどの質問が実は2つありまして。
『(問)(前半割愛)もう1 点は、景気について「所得から支出への好循環が出つつある」とおっしゃいましたが、賃金のところで基本給はなかなか上がらないとか、物価のところも円安の影響で特に足許ガソリンが相当上がっているとか、一般からするとまだマイナス面が大きいと思いますが、これは本当に確実に良くなるのかどうか、伺います。』
(;∀;)イイシツモンダナー
『(答)(前半割愛)2 点目の所得から支出への好循環というのは、部分的には既に起こっているわけです。』
ほほう。
『例えば、雇用はかなり改善しています。先程申し上げたように、有効求人倍率は上がってきていますし、失業率も4%を割って3%台に入ってきています。賃金についても、所定外あるいはボーナス等々でプラスがみられる一方、所定内はまだプラスになっていないわけですが、雇用と賃金全体を掛け合わせた雇用者所得は増えてきています。また、夏のボーナスも、久方振りにプラスになっているようですので、雇用者所得が消費に結びついていく部分は始まっていると思います。これがさらに強まっていくことが望まれますが、既に始まっていることは事実だと思います。』
ほほう(棒)。
『他方、企業の側をみると、企業収益はかなり好転していますが、設備投資は、一部に増加している部分もありますが、足許ではまだ具体的に増加していないわけです。全体としては、まだ明確に増加を示していないわけですが、設備投資計画をみる限りは、相当プラス――一部の調査をみると、2
桁台のプラスという結果も出てきています――になっています。これらをみても、企業収益から設備投資への好循環が始まる兆しはあると思いますが、もう少しハードデータをみていきたいという気持ちが、政策委員の中にあるということだと思います。』
へえへえそうだっか。
『全体として、所得から支出への好循環は始まってはいますが、もう少しクリアなハードデータを、特に設備投資については、みたいと考えています。』
とは言ってますが、何かコストプッシュじゃないみたいですね前向きの循環メカニズムだそうですよ!
・海外経済のリスクは減少とな!!
『(問) 2 点お伺いします。1 点目は、海外経済の見方について、ステートメントの文言が前月と若干変わっていますが、全体のリスクは増えているのか、減っているのか、ご所見があればお願いします。(後半割愛)』
海外に関する質問はこの前にもう一つあるのですが、その時はその辺の答えがムニャムニャモードで、判断を強めたのかどうかがワカランチ会長な内容だったのですが。
『(答) 海外経済全体のリスクは、毎回の金融政策決定会合で色々と議論します。全体のリスクは、前月と比べて非常に大きな変化があったとは思いませんが、どちらかと言えば、若干、減少したようにみえます。』
ほうほう。
『米国が引き続き民需を中心に堅調に推移していることに加え、欧州も企業や家計のマインドが改善してきているので、先進国経済を中心に、海外経済は全体として持ち直しの方向に向かっています。また、新興国・資源国は、国あるいはセクターにより若干区々ではありますが、例えば、中国についてみると、現在のような成長率が安定的に続くとみられることなど、どちらかと言えば海外経済のリスクは、むしろ若干減った方向にあると思います。ただ、月々の変動は色々な要素を含むので、私どもが半年毎に展望レポートで行う評価のように、明確な判断が出てくるとは限らないと思います。ただ、どちらかと言えば、全体のリスクはむしろ若干減った方向だと思っています。』
つーことで、今回の質疑を見てて思ったのですが、どうも本人が自信を持って話をする部分に関しては質問を手を変え品を変えて繰り出すと徐々に本音モードというか絶好調モードになってくるというのが黒田総裁の仕様のようでありますので、今後も記者の皆様におかれましては絶好調モードを引き出すような会見質疑をよろしくお願いいたしますm(__)m
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2013/07/30
○黒田総裁講演はまあ普通ですな
内外情勢調査会での講演である。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/data/ko130729a1.pdf
最近の金融経済情勢と金融政策運営── デフレからの脱却に向けて ──
『日本銀行は、この4月に、消費者物価上昇率で2%の「物価安定の目標」を、2年間程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現するため、「量的・質的金融緩和」というこれまでとは次元の違う金融緩和政策を導入しました。それから3か月余りが経ちましたが、この間、金融市場や実体経済には前向きな動きが拡がっており、人々の経済・物価に関する期待も好転しています。同時に、「量的・質的金融緩和」の政策効果について、様々な疑問も頂いています。そこで本日は、この3か月間のわが国経済や金融市場の変化をまとめた上で、経済・物価の見通しについてご説明し、最後に、「量的・質的金融緩和」を巡るいくつかの疑問に対しお答えすることとします。』
・政策効果を盛大に自画自賛するのは良いのですけど・・・・・・・・・
ということで最初に政策効果の話なのですが・・・・・・・・・
『そこで以下では、「量的・質的金融緩和」が進捗するもとで、金融市場や経済がどのように変化してきているのか確認します。結論から申しますと、「金融の好転」「期待の好転」「経済・物価の好転」という3つの好転が起こっています(図表3)。これらの中には、「量的・質的金融緩和」導入前から金融緩和期待を背景に起きていたものもありますし、また、いわゆる「3本の矢」の政策全般への期待や世界経済の動向なども反映しているものもありますので、すべてを「量的・質的金融緩和」に帰するものではありませんが、この政策が重要な要因として貢献していることは間違いありません。』
(キリッ)って感じですが、期待とかはまあ良いとして、「経済・物価の好転」というのを異次元緩和の効果として全面的に宣伝しちゃうと「金融政策の効果が出るにはタイムラグがある」という言い訳が後で効かなくなる(まあしらっとそういう話をするのかも知れんが)ので、物価上昇目標がやっぱり厳しいですなとか言う話になった時に逃げが打てなくなるような気がするんですが大丈夫ですかねえ。
『そこで、この3つの好転を順番にご説明しますと、第1は、金融の好転、すなわち金融市場や企業金融が改善していることです。』
『まずは、株価が上昇しています(図表4)。』
以下は面倒なので引用しませんが(−−)、まあ起点を昨年の秋に置いておけばどこの値段でも株価上昇という話になるからそらまあそういう自画自賛でも良いですけれども、それって随分とまた都合の良い期間を取ってますなあという気がしますけどねえ。
『次に、長期金利をみると(図表5)、新しい金融政策が量・質ともに事前の市場予想を大きく上回るものであったことから、国債市場ではその内容と影響について消化するまでに時間がかかり、不確実性が高まりました。こうした動きは4月末にかけて一段落しましたが、5月上旬頃からは、米国FRBの資産買入れ縮小観測の強まりから、米国の長期金利が急上昇し、その影響が日本にも及び始めました。』
5月上旬からの金利上昇は確かに米国の金利上昇はあったけれどもそこに火を点けたのはおっちゃんが金利に対する発言のせいだと思うのだがまあいいです。
『これに対し、日本銀行は、巨額の国債買入れを続けながら、市場参加者と密接な意見交換を行い、1回当たりの買入れ額を小口化する一方でオペの回数を増やすなど、オペ運営面の工夫も行いました。こうした巨額の国債買入れと弾力的なオペ運営が効果を発揮していることもあって、わが国の長期金利は、海外金利が大きく上昇した中にあっても、このところ0.8%前後でほぼ横ばいで推移しています。』
ふむ。
『第2の好転は、人々のマインドや期待が改善してきていることです。』
まあマインド好転はそうでしょうな。ちなみにこれまた七面倒なので引用しませんが、消費者態度指数とか日銀短観とかを出していますけど・・・・・・・・
『最後に、人々の予想物価上昇率が上昇してきています。』
ほほう。
『企業に関する指標をみると、6月短観の販売価格判断DIは、企業規模や製造・非製造業にかかわらず改善しています(図表10)。大企業では、先行き予測がほぼゼロになりました。これは過去30
年でみても、バブルの末期とリーマンショック直前の国際商品価格高騰期の2度しかみられなかったことです。』
んーっとね、仕入価格判断DIの上昇の方がもっと勢いがあると思うんですけどね!!
『家計に関する指標では、例えば生活意識に関するアンケート調査において、1年後に物価が上がるとの回答割合が8割を超えています(図表11)。』
えーっとですな、このアンケート調査は消費税除くとかいう回答方法じゃないんで1年後の物価上昇期待が直近で上がるのはいやまあいいです。
『エコノミストに対する各種調査でも、予想物価上昇率は上がってきています。また、マーケットの指標を、BEI(ブレーク・イーブン・インフレ率)、これは普通国債利回りから物価連動国債利回りを差し引いたもので、市場の予想物価上昇率を示すものですが、この推移をみると、5月中旬にかけて急上昇した後、その反動で下落しているものの、年初と比較すれば明確に高まっています(図表12)。こうした各種指標の動向を踏まえると、全体として予想物価上昇率は上昇していると評価して良いと思います。』
まあそうですね(棒)。
『第3の好転は、金融市場や人々のマインド改善を受けて、実体経済や物価が好転してきていることです。』
まあ効果を宣伝するからそういう話になるのでしょうけれども、あまり「異次元緩和が短期的に思いっきり効いたんです」という説明をするのもどうなのかという気がする訳で、そらまあ現時点で先行き自信満々だからこういう話になるのでしょうけれども、物価の推移とかが思うように行かなくなった時に異次元緩和が短期的に効果が出たかのような宣伝をしていると後で落とし前付けられに行くときややこしい事になると思いますがの。
で、途中は割愛して結論は・・・・・・
『以上、「金融の好転」「期待の好転」「経済・物価の好転」と見てきました。わが国経済を15
年近く続いたデフレから脱却させるという「量的・質的金融緩和」の狙いは、これまでのところうまく進んでいます。』
そうですね、うんうん。
・先行きの(楽観)見通し具現のためのポイントとな
先行き見通しは展望レポートの通りですけれども、その具現化の為のポイントというのがあるのがほほうという所で。
『1点目のポイントは、堅調な内需の持続性です。先ほど触れた現在の企業や家計のマインド面の改善が、所得の増加を伴った形で、持続的な支出行動につながっていくことが重要です。』
所得の増加を伴わないといけませんよね。仰る通りでございまする。以下まあそんなに変わった話をしている訳でも無いですが引用引用。
『まず、企業部門では、所得から支出へという前向きの循環メカニズムが次第に働き始めているとみられます。「所得」面の企業収益は改善しており、「支出」面の設備投資も6月短観の計画はしっかりしたものでした。企業は、リーマンショック以降、長らく設備投資を抑制してきており、設備の維持・補修や更新などを中心に潜在的需要は大きいと考えられます。先行き、設備投資は緩やかな増加基調をたどる可能性が高いとみていますが、こうした点について、今後実際のデータで確かめていく方針です。』
『また、家計部門に目を向けると、個人消費は、雇用者所得の目立った増加がみられていないにもかかわらず、先行して改善した消費者マインドや株高による資産効果などから、堅調に推移しています。今後は、雇用や賃金の改善というしっかりとした「所得」面の裏付けを伴う形で、個人消費や住宅投資の増加が持続していくことが重要です。』
『この点、労働需給面をみると、有効求人倍率が0.90 倍と2008 年6月以来の水準まで上昇しているほか、失業率も低下に向かうなど、緩やかに改善してきています。また、賃金面をみると、1人当たりの名目賃金は、最近では、時間外給与や賞与などの改善から、前年比−0.1%までマイナス幅が縮小しています。先行き、こうした雇用・賃金面の改善が続き、個人消費の増加を支えていくことを確認する必要があると考えています。』
次が予想物価上昇率に関する話でして、物価目標行く為のフィリップスカーブのシフトアップの話も含む論点ですな。
『2点目のポイントとして、物価を決める要因のうち、特に予想物価上昇率の動向を挙げたいと思います。物価上昇率を決める主な要因は2つあります。経済全体としてのマクロ的な需給バランス、いわゆる需給ギャップと、中長期的な予想物価上昇率です。2%の「物価安定の目標」実現のためには、この両者がともに物価を押し上げる方向で働く必要があります。』
フィリップスカーブのシフトアップ理論キタコレ、ということで需給ギャップの説明はともかくとしましてフィリップスカーブの方を。
『そこで、より注目したいのは、物価を規定する第2の要因である中長期的な予想物価上昇率です。企業や家計は、投資や消費などの意思決定をする場合に、将来物価がどのくらい上がるかを予想して行動します。例えば、先行き「物価が上がる」という見方が人々の間に広がれば、企業はそれに合わせて製品・サービス価格を引き上げるでしょうし、賃金も引き上げられます。その結果、消費者物価も押し上げられることになります。』
・・・・・・・・・となるんですかねえ(・・?
『この点、先ほど触れたとおり、予想物価上昇率は既に上昇してきていますし、先行きは、日本銀行による2%の「物価安定の目標」実現への強いコミットメントと強力な金融緩和の効果から、グローバルスタンダードである2%に向けて次第に収斂していくことを期待しています。』
>グローバルスタンダードである2%に向けて
>グローバルスタンダードである2%に向けて
>グローバルスタンダードである2%に向けて
グローバルスタンダードワロタという所ですが、先進国のディスインフレ傾向という見方もある訳で、あまり世界標準を前面に出すと思わぬところで足を掬われるかもしれませんね(棒)。
『3つ目のポイントは、海外経済の動向です。以上述べてきたような経済・物価見通しに対する最大のリスク要因は、海外経済の下振れと考えています。中心的なシナリオとしては、米国経済が底堅く推移し、欧州経済も底入れしてくることなどを背景に、海外経済は持ち直していく姿を想定しています。しかし、欧州、新興国・資源国、米国それぞれに注意すべきリスクがあることも事実です。』
でまあ以下割愛しますけれども、話に関しては以上に見られますように、ところどころ小ネタ的にグリグリ突っ込むとツッコミ所はあるのですが、基本的な話に関して従来から特段変わった話をしている訳ではございませんので念の為。
・政策効果に関して:長期金利に関して
後半、というか最後の方はこんな話。
『以上、「量的・質的金融緩和」とわが国経済の現状及び先行き見通しについて、ご説明しました。次に、「量的・質的金融緩和」の政策効果を巡る、幾つかの疑問にお答えします。』
ということで最初が『(1)長期金利押し下げの効果』という小見出しなのですが、その中にある小見出しが『名目金利の抑制効果』『実質金利の引き下げ効果』となっていまして、そもそもの異次元緩和ローンチ前から黒田総裁や岩田副総裁が盛大に名目金利を下げるかのような言い方をしていたのはすっかり引っ込むでござるの巻となっていますな、まあ当然そうなるんでしょうが。
で、前半の『名目金利の抑制効果』というのは「低下圧力」と最初言ってた筈のものがしらっと「抑制」という言葉に代わっておりますように、まあどう見てもお前最初の話と違うじゃねえかとゆー気は全力でしますけれども、それはまあさて置きまして、何の話をしているかと言うと、「日銀の大規模買入を行わなかった場合に想定される金利と比較して、金利上昇が抑制されていればそれで良し」という話でありまして、まあ完全にこのロジックで攻めてくるという所っすな。
んでもって後半の実質金利云々は文字通りの話をしておりますので、両方とも引用割愛します(^^)。
・政策効果に関して:銀行貸出とな
ポートフォリオリバランスの効果が出ている可能性がありますってよ奥様!!!
『次に、日本銀行がいくらお金を金融市場に供給しても、企業や家計まで届かないのではないか、との疑問を頂くことがあります。これに関連して注目したいのは、銀行貸出の動きです。先程も述べたとおり、昨秋以降、銀行貸出の伸び率は緩やかに高まっており、このところ2%台となっています。この背景には、「量的・質的金融緩和」をはじめとする日本銀行の様々な政策のもとで、企業や家計そして金融機関の行動が前向きになってきている可能性があるとみています。』
ふーんという所ですが、まあこの調子でして全体的なトーンとして予想通りではあるのですが、政策が効いていますという話を何か随分と盛っていませんかという内容でありました。
・しかしヘッドラインになっていたのは最後の最後の所だったりする
とまあうだうだ引用したわけですが、どう見てもニュースヘッドラインになっていたのは最後の財政健全化の部分だったりするのがチャーミング。
『5.おわりに』から。
『以上、日本銀行の「量的・質的金融緩和」の政策効果について、この3か月間の金融市場や経済・物価の状況を踏まえて、説明してきました。「量的・質的金融緩和」は、それ自体、非常に強力なものですが、政府による様々な取り組みと相俟ってこそ、最大限の効果を発揮します。ここでは、特に2つの点を申し上げます。』
で、その2つが「成長戦略」はまあ良いとして2つ目が「財政信認確保」キタコレである。
『第2は、財政の信認確保です。日本銀行による国債買い入れなどの政策は、あくまでも「物価安定の目標」の実現のために行っているものですが、万が一これが財政ファイナンスであると受け取られた場合、リスクプレミアムの拡大から長期金利が上昇し、「量的・質的金融緩和」の効果が失われる可能性があります。1月の政府と日本銀行の「共同声明」では、政府は、財政運営に対する信認を確保する観点から、持続可能な財政構造を確立するための取組みを着実に推進するとされており、その実行は、日本経済がデフレを脱却し持続的な成長を達成する上で必須です。』
でもって質疑コーナーではこんな話だったようで。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MQOKAM6K50Y101.html
日銀総裁:消費税率上げで「日本経済の成長大きく損なわれない」 (1)
更新日時: 2013/07/29 14:13 JST
『7月29日(ブルームバーグ):日本銀行の黒田東彦総裁は29日午後、都内で講演し、2014年4月から2度にわたり予定されている消費税率引き上げの影響について「日本経済の成長が大きく損なわれるということにはならない」との見方を示した。講演後の質疑応答で述べた。』(上記URLより)
まあそう言うでしょうなあという所ですが、消費税率引き上げ延期だの何だのという話になった時に日銀がどういうリアクションをするのか見てみたい気もするとか言ったら不謹慎ですかそうですか。
#予定を変更して総裁講演ネタが長くなってしまったorz
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2013/07/16
○総裁定例会見:今回の会見の特色は特色がないことですな(^^)
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2013/kk1307a.pdf
まあ元々今回の決定会合および展望レポートの中間見直しが「オントラック」であるということもありますので、特色が出にくい、というのもあるのですけれども、それにしても今回は従来毎回のようにかましてくれました債券市場に喧嘩売っとるんかという台無し発言になるものがあまりなかったというのがちょっと気になりましたぞなもし(^^)。
・米国の金融政策の影響云々の件
最初にその質疑があったのね。
『(問) 米国の金融緩和縮小が世界経済に与える影響について、ご見解をお聞かせ下さい。特に、新興国の懸念が強いことを踏まえて、来週のG20会合でどのような議論が行われる見通しかも含めてお聞かせ下さい。』
『(答) 米国において、FRBの資産買入れの縮小が議論され始めた基本的な背景には、米国経済が緩やかながらも着実に回復を続けていることがあり、それ自体は、新興国も含めて世界経済全体にとってプラスであると考えています。また、FRBが資産買入れペースを調整していく前提として、緩やかな成長の持ち直しに支えられた雇用情勢の改善継続を挙げています。ご指摘のように、国際金融資本市場では、このところ、やや神経質な局面もみられましたが、FRBの政策意図については、徐々に市場参加者も含めて幅広く理解が深まってきているように思います。いずれにせよ、こうした金融政策の動向が、新興国を含めた国際金融資本市場にどのような影響を与えるかについては、引き続き注意深くみていく必要があると思います。(G20云々は割愛)』
ということですので、まあ話としては現状の市場動向に関するコメントをしている訳でして、そんなに妙ちくりんな話では無かったのでございましたが、金曜にネタにしたようにヘッドラインの打ち方的には「そもそも世界の金融政策にボラティリティを最初にまき散らしたの誰だかというのを棚に上げてお前が言うな」的な印象を与えるヘッドラインだったりしますな(−−)、まあ米国の影響ガーという話をしている訳では無いからその点では自分の話を棚に上げて云々という話では無いのだが。
・中国リスクがどうのこうのの件
次の質問は中国に関する質問。
『(問) 中国の金融システムに対する警戒感が高まっていますが、いわゆる「シャドーバンキング」の問題が抱えるリスクや、中国経済の先行き、日本経済に与え得る影響について、どのようにみておられるか、ご所見をお聞かせ下さい。』
前回の定例会見ではアジア経済についてやたら自信満々で、この前までADB総裁だったこの俺様が言うんだから大丈夫みたいな印象を与えて下さっていましたが今回はと申しますと・・・・
『(答) このところ、中国経済についての議論が色々と行われています。ご承知のように、中国の政策当局は、成長の「スピード」よりも「質」を重視するスタンスを明確にしてきており、その一環として、信用についても、「安定的で適度な増加」を目指しています。従って、信用が急速に拡大し過ぎることについては、これを是正する方針を打ち出しているわけです。その際、いわゆる「シャドーバンキング」についても、規制の強化を行うなど目配りしているのが現状だと思います。』
さいですな。
『政府は、金融のみならず、各種の政策において、先程も申し上げたように、成長の「スピード」よりも「質」を重視する政策を進めています。数年前と比べると、成長率が低めであることは事実ですが、安定していることもまた事実です。最近公表されたIMFの新しい経済見通しでも、2013年の成長率は、若干、下方修正されたようですが、7.8%という数字であり、中国経済が安定した高い成長を続けるという見通しは変わっていません。経済の内容を色々な統計でみても、個人消費は引き続き堅調ですし、投資も前年比2
割増くらいのテンポで増加しているなど、中国経済の先行きについては、内需を中心に安定した成長を続けることが十分に見込めると思います。』
はあそうですか。
『ただ、政府は、構造改革も含めて、色々な政策を打ち出してきていますが、それらについての市場その他における受け止め方に、まだ不確実性が残っていることも事実です。従って、中国経済の動向は、十分注視していきたいと思います。また、中国は、今や世界第2の経済大国になっており、ご指摘のように、日本経済を含めて、アジア経済や世界経済全体に対する影響も大きくなっていますので、当然、それらの影響についてもよくみていきたいと思っています。』
ということで、まあさすがに今回はそんなに進軍ラッパではないという所でこれまた普通の見解であったりするのですな。
・まあ展望レポート中間レビューのMPMを入れる時期がアレでしたな
当然ながらこういう質疑がありまして・・・・・・・・
『(問) 2 点伺います。今回、「回復」という言葉を使うのは2 年半振りということですが、日銀としては、ある意味、「景気回復を宣言した」という見方でよいのか教えて下さい。加えて、現在は参議院選挙期間中ですが、安倍政権が掲げてきた金融緩和の功罪も選挙の争点になっています。その中で「回復」を打ち出すことは──もちろん、日銀として独自に判断したのだと思いますが──、ある意味、政権を後押しすると受け取られる懸念もあると思います。そういう点は考えなかったのかについても、お聞かせ下さい。(2点目割愛)』
まあ何ですな、参議院選挙が実施されるのは前から判っていた話(投票日は判らんけど)なのですから、MPMの日程をもっと月末に寄せるか月初に前倒ししておいた方が良かったのではないかと思いますが、まさかこの日程決める時に世の中がこうなっていたとは思わなかったでしょうというのは有りますけど、3年後のMPM日程決める時には時期をもう少し配慮した方が良いんじゃネーノという気がするのでありました(8月MPMがお盆を外す関係で7月MPMをあまり変な時期に置けないというのは判るのですが)。
『(答) 公表文にも明確に示されている通り、「わが国の景気は、緩やかに回復しつつある」ということに尽きます。この判断については、当然のことながら、政策委員会で議論し、この公表文について全員一致で賛成しているわけであり、政治的な云々ということは全くありません。従来、景気の動向に従って、色々な言い方をしてきたことと平仄は合っています。最初に申し上げた通り、色々な指標がほとんど全て上方に向かって見直しされています。従って、「わが国の景気は、緩やかに回復しつつある」ということは、明らかに様々な経済指標から素直に引き出せる結論であろうと思っています。』
まあそう答えるわな。しかし生活意識アンケートで「中立の立場で政策が行われているように思えない」という回答が急増したというのが公表された直後にこれというのが実にこう心温まるものがある訳で^^;
・コアCPIとコアコアCPI
これは良い質問。
『(問) 2 点質問します。1 点目は、物価についてです。コアのCPIはマイナスを脱却しましたが、実際には、為替や一次産品価格のコストプッシュ的な側面も強いかと思います。コアコアのCPIは依然マイナスですが、コアコアの方に、日本経済の体力の実力が現れているという見方もあると思いますが、総裁のご所見をお願いします。(2点目は次に)』
『(答) 1 点目については、以前にも似たご質問にお答えした記憶があります。物価の動きをみていく場合には、色々な指標があり、消費者物価についても、「除く生鮮食品」あるいは、おっしゃったような「コアコア」という、食料・エネルギー関連を除いたものもあるわけです。重要なことは、どのようなトレンドで物価が動いているかです。』
さいですな。
『生鮮食品の場合は、天候その他、ごく短期的な事由に左右されて動くので、それを除いてみることには十分合理性があると思います。コアコアも一定の合理性があるとは思いますが、以前にも申し上げた通り、食料品やエネルギー関連まで除いてしまうと、消費者支出のバスケットの3
分の2 ぐらいしか代表しない、つまり、3 分の1 ぐらいが落ちてしまうため、消費者の体感する動きとやや離れるという問題もあるわけです。』
コアコアにすると只でなくさえ高い帰属家賃のウェイトがアホのように高くなりますしねえ。
『私どもとしては、従来通り、生鮮食品を除く消費者物価指数でみていくのが適当とは思いますが、その他の指標も、当然、考慮することはあってもいいと思います。また、消費者物価指数だけではなく、企業物価指数や輸入物価指数など、その他の指標も当然みていくことに変わりはありません。(後半は次に)』
他にも刈込平均とか色々な見方があるので、その辺を勘案して総合的に判断すべきものであって、何らかの一つの指標を「これ」として絶対的に扱うのが必ずしも正しくないという説明ですな。まあ極めて普通っすな。
・財政再建絡みの質疑キタコレ
さっきの質問の後半部分。
『(問)(前半は先ほど)2 点目は財政再建絡みです。IMFのブランシャール氏が、先日、アベノミクスの行方について、2
つ目のリスクとして指摘をしています。具体的には、「抜本的な構造改革が反映されなければ、投資家が持続性を懸念し、より高い金利を日本国債に求める」と指摘されたことについて、総裁のご所見をお願いします。』
『(答)(前半はさきほど)2 点目は、私どもとしても、財政の健全性が確保されなければならないと思っています。現状、日本の財政は、OECD諸国の中で最も深刻な状況にあるので、これを再建することが不可欠であることは間違いありません。財政の健全化が進まなければ、市場から信認されず、金利が上がる懸念もあり得るわけです。従って、政府において、十分にこの懸念を考慮し、財政再建を着実に進めていく必要があると思っています。』
(;∀;)イイハナシダナー
『ちなみに、ご承知の通り、1 月の共同声明でも、政府は、その点を明確に示しています。また、最近のいわゆる「骨太の方針」の中でも、財政の健全化について、2015
年度までにプライマリー赤字の対GDP比を2010 年度と比べて半減、2020 年度までにプライマリー赤字を解消して黒字に持っていくことが明示されており、近々、中期的な財政再建計画も決定されると聞いています。IMFのブランシャール・チーフエコノミストの懸念はよく理解できますし、私も、潜在的にそういうリスクがあるとは思っていますが、今のところ、日本政府は、その懸念を理解して、財政健全化に向けた努力をしようとしているとみています。』
わざわざこの説明を付け加えているのがへーという感じですな。いやまあそもそも政府がちゃんと財政健全化に向けた取り組みをするのが銀行券ルールの停止の条件ですから、話の前提が全て崩壊するんで当然の発言ちゃあ当然の発言なのですけれどもね。
・長期金利に関して
『(問)(前半割愛)2点目は、長期金利についてです。先月の記者会見では、ボラティリティが既に安定してきており、新たなツールを導入する必要はない、ということでした。米国の金利が上がってきている中で、日本の長期金利のボラティリティは引き続きそれほど大きくなく、金利水準も0.8%台ですが、日銀のオペが十分効いているのかどうかについて、今の金利水準も踏まえてご所見をお願いします。』
『(答)2 点目の長期金利については、ご指摘のように、このところ景況感が改善し、物価上昇期待などが高まる中でも、極めて安定しています。また、米国の量的緩和からの出口に絡んで資産買入れ政策が議論され、米国や欧州の金利がかなり上がっている中でも、日本の長期金利は安定し、ボラティリティも低下しています。これは、基本的に、毎月大量の長期国債を購入する──年間で保有残高が50
兆円のペースで増加する、すなわち毎月平均7 兆円を超える長期国債を購入する──ことによるリスクプレミアムの下押し効果が、かなり効いていると思います。この下押し効果は、今後とも累積的に強まっていくと思っています。』
リスクプレミアムの下押し効果なのでは無くて単に「そして誰も居なくなった」だけのような気はするんですけどね。まあどうしても売りたいという人が相応の規模で出てきたら無理っしょ。
『ボラティリティの抑制については、長期国債オペに関する市場関係者との対話、様々な意見交換を行ってきたほか、オペの運営をかなり弾力化したことも、一定の効果を持っていると思います。今後とも、この両面で引き続き努力していきたいと思っています。』
ということで、まあイマイチ判ってい無さそうな気がしますが、ただまあ5月のように「景況感が改善するに伴い金利が上昇するのはある意味自然」みたいな台無しにも程がある余計な発言をしなくなった分だけだいぶ改善の跡が見られますな、うんうん。
・願望レポート質問とな
ワロタ。
『(問) 先程、「複数の委員が物価の見通しについて慎重な姿勢を示された」とおっしゃった点について、差し支えない範囲でもう少し補足して下さい。また、物価見通しの中央値が下がった点について、改めて、物価目標2%というのは、達成可能で現実的な目標なのか、総裁のお考えをお聞かせ下さい。一部の市場関係者の間では、展望レポートのことを日銀の「願望レポート」と揶揄する声もあるようですが、2%というのは現実的な目標なのか、それとも日銀の願望なのか、どちらなのでしょうか。』
一部じゃなくて・・・・・・・・(^^)と言うか別に揶揄している訳では無くて大真面目に「願望でしょ」と思っているような気もしますが。
『(答) 結論を申し上げれば、「展望レポート」は、まさに「展望レポート」であって、日本銀行の政策委員会メンバーの予測であることは間違いありません。』
ほほう。(キリッ)って感じですが。
『ただし、その予測の前提として、どのような政策効果を見込んでいくかということが入っています。従って、市場関係者の見通しと政策担当者の見通しが乖離することがあるのは、別におかしなことではないと思います。』
いやあのそれが願望・・・・・・・・
『私どもとしては、2%の「物価安定の目標」を、2 年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現するために、必要にして十分な政策を採ったと思っています。今後、その上下のリスクに応じた対応は必要になるかもしれませんが、2%の「物価安定の目標」は、十分に達成できると考えています。』
その根拠の説明が無いのですが(いやまあ展望レポートには気合だ気合だと書いていますけど)。
『ただ、複数の委員は、4 月の展望レポートの時も比較的慎重な見方をしておられたわけですが、その方々は、今回も引き続き慎重な見方をしておられるということです。何度も申し上げますが、この見通しの幅や中央値を見て頂いても分かるように、政策委員会メンバー全体の基本的な見方は変わっておらず、大方の委員は、2015年度、すなわち見通し期間の後半にかけて、2%近傍に達する可能性が高いとみているということだと思います。』
・ではフィリップスカーブは??という質問
この質疑の次に良い質問がありましてですな。
『(問) 4 月の展望レポートで、2 年程度で2%の物価上昇率を実現するためには、単なる需給ギャップの改善だけではなく、いわゆるフィリップス曲線そのものをアップサイドシフト、すなわち、従来よりも小さな需給ギャップの改善で物価を上げられるような状態に持っていく必要があるという論理を展開され、そのためには、期待インフレ率が高まることが必要だというロジックを展開されたと思います。今回、中間評価なので、4
月時点のこの想定を踏まえて、景気判断の中で「予想物価上昇率については、上昇を示唆する指標がみられる」という判断を示されたわけですが、いわゆるフィリップス曲線の上方シフトというものの兆しがある、あるいはその可能性が高まっているという判断をお持ちなのかどうか、その点についてお考えをお聞かせ下さい。』
つーかですな、さっきの質疑の際にこの質問の趣旨に沿った説明をしないと単に「行くから行くんです」と説明しているようにしか見えないので聞かれる前に説明したらと思うのだが。
『(答) 修正フィリップス曲線の理論的枠組みは、一定の期待インフレ率を前提にした場合の曲線の形状であり、期待インフレ率が上昇すれば、バイ・デフィニションで(定義により)、その曲線が上方にシフトするわけです。要するに、期待インフレ率が上昇しているかどうかをみれば、フィリップス曲線が上昇していることが間接的にみてとれます。フィリップス曲線は、理論的なフレームワークであり、目に見える形でそこにあるわけではないので、色々な形で推計しています。』
『期待インフレ率についても、色々な指標──色々なアンケート調査、市場のデータなど──があり、それらをみると、明らかに上昇しています。』
そ、そうなんですか。
『この点を踏まえると、理論的な枠組みからいえば、フィリップス曲線がおそらく上昇してきているだろうと思いますが、「見通し期間の後半にかけて、2%近傍に達する」ためには、GDPギャップが縮小してプラスに転じることと、期待インフレ率が十分に上昇してフィリップス曲線が上方にシフトするという両方が必要です。失業率がこれだけ低下してきているので、GDPギャップもおそらく縮小してきていることは間違いないと思いますし、期待インフレ率も徐々に上がってきているということで、両面からそういう効果は出てくると思います。』
『単月の物価上昇率の動きは個々の要素によって影響されますので、ある程度トレンドをみていく必要があるとは思いますが、明らかに消費者物価の対前年同月比はマイナスからゼロになり、プラスになっていくと思っています。』
はあそうですかとしか申し上げようがございませんが、まあその辺の説明をもうちょっと詳しく会見の最初の部分とかでもやった方が良いような気もしますし、逆にボロが出るのでやっぱり気合の世界で済まるというのもあるかも知れませんが、徐々に「2年間」のケツが接近してくるに従ってこの辺の話はややこしくなるでしょうなあという所で。
#つーことで特色が無いとか言いながら延々と引用してしまったorzorzorz
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2013/07/09
生活意識アンケートのPDFって何がどうなっているのか良くワカランチ会長なのですが、テキストにコピペしようとするとやたら体裁が狂うので引用するのに普通の資料の3倍以上の手間が掛かるという代物で有る事を3か月もすると忘れるニワトリ脳のあたくしなので時間の配分を間違えましたが、先週支店長会議があったのでその関連をちょっとだけ。
・黒田総裁あいさつ
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/siten1307.htm/(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/siten1304.htm/(前回)
これ普通は比較してニヤニヤするもんでは無いのですが(^^)、既に好事家の皆様がご指摘になっておられるので屋上屋を架すようで恐縮ですが俺様メモに付き勘弁。
『(1)わが国の景気は、持ち直している。先行きについては、金融緩和や各種経済対策の効果もあって国内需要が底堅さを増し、海外経済の成長率が緩やかながらも次第に高まっていくことなどを背景に、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(今回)
『(1)わが国経済は下げ止まっており、持ち直しに向かう動きもみられている。先行きは、堅調な国内需要と海外経済の成長率の高まりを背景に、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(前回)
まあ金融経済月報などの推移と同じなのは当たり前ですが、基調判断が3か月前対比で上がっていて、先行きに関しては内需上げの外需下げですな。
『(2)物価面をみると、5月の消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、ゼロ%となっており、先行き、次第にプラスに転じていくとみられる。』(今回)
『(2)物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、足もと前年の耐久消費財の動きの反動から、小幅のマイナスとなっているが、予想物価上昇率の上昇を示唆する指標がみられる。』(前回)
予想物価上昇率云々はどこへ?となりますが、実はこの後にあるのですな。
『(3)わが国の金融システムは、全体として安定性を維持している。そうしたもとで、金融環境は、緩和した状態にある。』(今回)
『(3)わが国の金融システムは、全体として安定性を維持している。そうしたもとで、金融環境は、緩和した状態にある。また、ここ数か月、グローバルな投資家のリスク回避姿勢の後退や国内の政策期待によって、金融資本市場の状況は好転している。』(前回)
まあこれは改善しました、ということで文言を今回削除しているので判断改善ですにゃ。
『(4)日本銀行は、本年4月に「量的・質的金融緩和」を導入した。その後、わが国経済は順調に回復への道筋を辿っており、予想物価上昇率について上昇を示唆する指標がみられるなど、その効果はしっかりと働いている。』(今回)
と、効果が出ているという内容として景気が好転している上に予想物価上昇率が上昇示唆という認識になっていますな。
『日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。このような金融政策運営は、実体経済や金融市場における前向きな動きを後押しするとともに、予想物価上昇率を上昇させ、日本経済を、15年近く続いたデフレからの脱却に導くものと考えている。』(今回)
んでもって前回ですけどね。
『(4)日本銀行は、今月初の金融政策決定会合において、「量的・質的金融緩和」を導入した。日本銀行は、消費者物価の前年比上昇率2%の「物価安定の目標」を、2年程度の期間を念頭に、できるだけ早期に実現する。「量的・質的金融緩和」は、これを裏打ちする施策として、長めの金利や資産価格などを通じた波及ルートに加え、市場や経済主体の期待を抜本的に転換させる効果が期待できる。これらは、実体経済や金融市場に表れ始めた前向きな動きを後押しするとともに、高まりつつある予想物価上昇率を上昇させ、日本経済を、15年近く続いたデフレからの脱却に導くものと考えている。』(前回)
・・・・・・・・・・・・・「長めの金利や資産価格などを通じた波及ルートに加え、市場や経済主体の期待を抜本的に転換させる効果が期待できる。」という文言がしらっと削除されていまして、まあ期待の転換はともかくとして「長めの金利」に関しては何せ上昇しちゃっていますからしらっと削除するというのが実に味わいが深いですな。
ちなみに最近は「実質金利が重要」という話が良く出てきますが、そもそも「インフレ期待を引き上げる」という動きをして、それがしかも1%のオーダーで引き上げようという話をしているのですからして、それであれば普通に実質金利は盛大に下がる訳でして、何も「長めの金利の押し下げガー」とか言う必要は無いのですからして、まーどう見ても名目金利の引き下げが念頭に無かったとは言わせませんぞなという所ですな。
あとまあオモロスというかそらそうなるだろうなと思ったのは「2年程度の期間を念頭に」という文言が今回外れた事でして、そらまあ「1年9か月程度の期間を念頭に」みたいなカウントダウンフェスティバルやる訳にも行かんですからシャーナイナイなのですが、はてさて切った手形(あるいは大風呂敷)の期日は着実に迫ってきますけど大丈夫っすかねえ(ニヤニヤ)という所ではございまする。
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2013/06/21
○国会半期報告ネタ
19日にはこのようなネタがございました。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/data/ko130619a.pdf
「通貨及び金融の調節に関する報告書」概要説明
でまあこちらにあること自体は特段変わった話では無いのですが、その一方で報告書出して説明に行った国会の方では黒田さんェ・・・・・・・・・というのがまたまたあったようで誠にアレ。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE95I05620130619?sp=true
政策対応ににじむ日銀の柔軟姿勢、固定オペ延長も必要なら検討
2013年 06月 19日 18:26 JST
『<異次元緩和、2年間動かさないということではない>
黒田総裁は、4月に導入した「量的・質的金融緩和」について「極めて大規模」とし、日銀が掲げる2%の物価安定目標を2年程度で達成するために必要かつ十分な措置との考えをあらためて示した。一方で、金融政策の利点は「機動性と弾力性」とも述べ、経済・金融情勢が変化すれば「当然ながら、それに対応した措置、調整を行う」と表明。異次元緩和は「一切、2年間動かさないということではない」とし、「経済・金融の状況が大きく変化し、4月に決めたものが不十分あるいは過剰であれば、必要な上下方向の調整は考えられる」と語った。』(上記URLより、以下同様)
いやまあ仰ることは確かにその通りでして、そらまあ状況が大幅に変化したら当然それに合わせて調整をするというのは当たり前の話なのですが、「機動性と弾力性」とか「上下方向の調整は考えられる」とか一々そういう事を言わんでヨロシと思うのでありまして、そーゆー話をしちゃうから「2年で2%に必要な事は全て実施した」んじゃ無かったんでしたっけ???となって金融政策の先行き予見可能性が下がってボラの上昇に寄与するんですけどねえというような話って判ってるのかなあと思うのですよ。
『<金利上昇回避に全力、固定オペ延長も選択肢>
不安定な地合いにある円債市場の状況についても、長期金利の高騰回避に最大限努力するとの方針を強調。具体的には、国債買い入れの弾力化によるボラティリティの上昇回避に努めるとともに、必要と判断すれば固定金利オペの期間延長をあらためて検討する可能性があることを示した。』
えーっとですね、こういう辺りも「ぶれている」感を外に向かって出してしまう話でして、まあ記事に出ている話(国会の発言は後日の会議録見ないと判らん)を色々と読んで繋ぎ合わせますと、たぶん黒田さんって全然ぶれていなくて2年で2%物価目標達成に関しても海外経済が牽引して国内景気が回復基調を強めるという見方に関しても自信満々なんだろうなあと思われるのですが、この手のニュースヘッドラインを色々と流されますと、発言全部を一々確認して動く訳でも無い市場の中の人としましては、やはり「あれ?」というような動きをしたくなるというものでありまする。
『固定金利オペは現在1年以内となっているが、2年以上に延長すれば「ボラティリティの抑制により効果的だ」とし、「未来永劫やらないということではない。必要性が出れば政策委員会で審議し、賛成が得られれば1つのツールにする」と選択肢にあげた。』
必要があれば必要な措置を実施する、というのは当たり前の話ではあるのですが、こうやって具体的な政策に関して具体的にああだこうだ言ってしまうと、この前の「必要な措置は全部実施した(キリッ)」というのがぶれてきているんじゃないか的な解釈を生みやすくなるので、2年オペ見送りに関しては「そもそも2年で2%達成するんですけど何か?」というスタンスを貫いた方が良いと思うのですけど。
『6月会合で延長を見送った理由については、足元で市場が落ち着いてきていることに加え、長期の資金供給によって政策意図が誤解される懸念もあったことを明らかにした。その上で「現在のマンデートの中で努力して安定を図るということだ」と説明した。』
市場のボラに関しては調節技術の問題というよりは金融政策によって何をどうしようとしているのか、という点に関する市場に対する部分の説明が色々と複雑骨折をしている所にそもそもの問題が有ると思うのですけど、その辺判って技術論の話に逃げているのか、素で判っていないのかというのが非常に????、というかこのオッチャン後者じゃネーノと思われてしまっているだろうなあというのが致命傷になり兼ねないと思うのですよね。
つまりですね、
http://www.nikkei.com/markets/features/12.aspx?g=DGXNASFL190MZ_19062013000000
日銀総裁「経済・金融の状況が変化すれば必要な調整は行う」
公開日時2013/6/19 14:46
『量的・質的金融緩和のもとで想定する金利水準について様々な解釈があることについては、「大量の国債購入で国債保有のリスクプレミアムを押し下げ、全体として金利に対する下方圧力が累積的に強化することは間違いない」と語った。一方で、「(予想物価上昇率が)マイナスのデフレ期待から2%の物価上昇に向けて上がっていく局面では、常に名目金利が下がらないと実質金利が下がらないというのではない」と指摘。ある程度の名目金利の上昇はやむを得ないとの見方を示した。』(上記URLより、以下同様)
結局ですね、フィリップスカーブを大きく上方にシフトさせるような「期待の転換」を行おうとしている中で、その「期待の転換」が予期した通りに達成できたら、そらまあ金利も大きなシフトを伴うもんでしょうし、そういう文脈で名目の金利が上昇したのであれば、それは金利上昇が失敗なのでも何でも無くて、金融政策による期待転換の成功を意味しますよね、という話だと思うのですが、その間に「イールドカーブを下方に押し下げる」だの「長期金利に低下方向の効果を与える」だのというような威勢の良い話を異次元緩和ローンチ前およびその直後に連発していたのが話をややこしくしている要因ですよね。
大体からして「ポートフォリオリバランス効果」の説明にしたって「日銀が(従来の短めの国債では無くて)長期の国債を買う事によって金利に低下圧力を掛けて他のリスク性資産への投資を促す」というような話ですけれども、これだって名目の話をしているのか実質の話をしているのか判りにくいのですよ。
『黒田総裁は名目金利から期待インフレ率を引いた実質金利を重視している立場を改めて強調した。そのうえで、金利上昇を容認するような発言があったことに関して「日銀の量的・質的金融緩和の意図について誤解や混乱を招いた。大変遺憾であるし、反省している」と述べた。』
反省云々が昨日の金融ファクシミリ新聞にデカデカと出ていましたが(^^)、実質金利重視なら最初からその辺を踏まえた説明をしなはれと思うのであって、そもそもオッサン最初は金利を全体的に叩き潰して効果が出るみたいな話をしてたし、だからこそそれを受けて債券市場があんな反応したんだぞという辺り、本当に判っておいでなのかというさっきと同じ問いになるのでございますけれども・・・・・・・・・・・
『債券市場の流動性が低下したとの見方については、「5月に入ってからは流動性が低下し、ボラティリティーが上がっているという感じはしない」と反論。「(市場の動きを)十分に注視して、ボラティリティーが拡大しないように適切に対応したい」と述べた。』
>5月に入ってからは流動性が低下し、ボラティリティーが上がっているという感じはしない
>5月に入ってからは流動性が低下し、ボラティリティーが上がっているという感じはしない
>5月に入ってからは流動性が低下し、ボラティリティーが上がっているという感じはしない
>5月に入ってからは流動性が低下し、ボラティリティーが上がっているという感じはしない
>5月に入ってからは流動性が低下し、ボラティリティーが上がっているという感じはしない
・・・・・・・・・・・・・・・・・・おいこら長期金利が0.60%近辺から一気にゲロゲロマーライオンになったの何時からだと思ってるんだクイックでもブルームバーグでも自分で叩けやああああ!!!!!!
まあ残念なことに「」書きですからさすがにこの発言って本当に言ったんでしょうなあと思われるのですけれども、こういう事を平気で発言しちゃいますと、発言を見た債券市場の中の人たちから「ああ金利市場を判っていないし興味もないんでしょどうせ為替の人ですからねえ」という認識を与えてしまうリスクを大きく高め、その結果として日銀が色々と説明しても鼻毛抜きながらはあそうですかってな反応になってしまうというリスクを高めてしまっている訳で、とにかく言わずもがなの事を言い過ぎにも程があるわという所でありまして全くもって勘弁して欲しいです。
まあオモシロ発言と言えば某福井の俊ちゃんという逸材も居ましたが、俊ちゃんの場合はそもそも判っていておとぼけとかオモシロ発言とかを連発していた(というほど連発していた訳でも無いですけど)訳で、そういう意味ではこの大狸め!とは思われても不安感は感じさせない所だったのですが、その路線とはだいぶ違う気がするのでこの調子で大丈夫かよと思ってしまうのでありました。まあつまり「余計なこと言わないで想定問答集の通りに喋りなはれ」というだけの話なんですけどね。
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2013/06/14
○黒田総裁会見ネタの続き
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2013/kk1306a.pdf
・昨日の続きで2年オペに関連する質疑である
昨日時間切れ(色々と悪態を書いたせいですが)だったので読んでてほほうと思ったもう一つのポイントであります所の2年オペその他に関連する部分から。
『(問) 2 点伺います。1 点目は、本日の決定会合では、基本的には現行の金融政策を継続するという結論になりましたが、市場の一部には、長期金利の乱高下に対応して日銀が何らかの対応を打ち出すのではないかという期待もあったようです。その中の代表的なものとしては、例えば、シグナルオペと呼ばれる最長1
年の共担オペの期限を長期化するというものがありました。実際、この意見は、5
月末の市場との対話でも要望として出ています。本日の会合でこういった議論があったのかどうかを、
まずお聞かせ下さい。(後半割愛)』
『(答) 1 点目についてですが、本日の金融政策決定会合において、いわゆる1年超の共通担保オペを導入するかどうかや、そのメリット・デメリットについて、議論があったことは事実です。』
ふむ。
『これまでのマーケットの状況をみて、長期国債の買入れオペ自体を相当弾力化してきましたが、それが一定の効果を持ったことは市場関係者も認めているわけです。他方、1年までのいわゆる共通担保オペが何度か行われ、それが効果を持ったことも事実です。』
まあそういう戦術レベルの改善を戦略レベルでぶち壊して回っている人がいるけどな。
『さらに、市場参加者との意見交換会では、1 年を超える共通担保オペを検討してはどうかというご意見もあったようで、当然、これについても議論しました。』
へえへえさいだっか。
『結論を申し上げると、現時点では、1 年を超える共通担保オペの導入は必要ないのではないか、ということになりました。1
つの理由としては、日本銀行が行っている巨額の国債買入れは、リスク・プレミアムを圧縮する効果があるわけですから、毎月毎月オペを重ねていくことによって、その効果がさらに強まっていくことがあります。もう1
つの理由は、そうした政策効果をより効果的に発揮させるためにも、市場参加者の意見なども聞きながら、長期国債買入れオペを必要に応じて、より弾力的に運用する──買入れ金額、買入れ頻度、残存期間などについて、弾力的に運用する──方針が、一定の効果を持っているわけです。今後も、必要に応じて弾力的にオペを行うことにより、金利の跳ね上がりや、特にボラティリティの上昇を抑制するよう対応していけるということです。(後半割愛)』
ということで、何かこの話っぷりだと市場のクレクレに媚びぬ!退かぬ!っていう毅然とした態度を取って「逐次投入はしません(キリッ)」という感じがあまり伝わらないのでありまして、ちょっとサービス発言が大杉じゃないのかねえとか思うのでありまして・・・・・・・
『(問) 先程、固定金利オペの期間延長について、メリット・デメリットを議論したということでしたが、デメリットについてどのような議論があったのか、お聞かせ下さい。(後半割愛)』
『(答) 固定金利オペの期間延長のメリットについては、先程申し上げたように、期間1年までの固定金利による共通担保オペが何度か行われ、一定のボラティリティを鎮める効果があったので、市場関係者の意見にもありましたが、おそらく、そういうツールが拡充されれば、必要に応じて使うことで、よりボラティリティを抑える効果があるということは言えます。それがメリットだと思います。』
ふむふむ。
『一方、デメリットというかどうかは別として、この共通担保オペ自体、導入されたときの経緯等もあります。すなわち、あくまでも短期的な資金供給ということで導入され、期間も3
か月、6 か月、1 年と延びてきたわけですが、そういう経緯等を踏まえると、今、それ以上延ばす必要があるかどうか、といった議論があったと思います。』
何か微妙だなおい。最初から建付け上は1年まで出せるようになっているので「延びてきた」というのも変なんですけどねえ。つーか「金融調節としてあまりにも長い期間の資金供給吸収手段しかも指値方式を設ける」というのは金融政策のディレクティブとの整合性という問題の方が根源的な部分(この前も書いたけど金融政策決定会合で決定しているのは「次回決定会合までの金融調節方針」であってその足を遥かに超える期間の金融調節を調節部署が行うというのは権限的な観点からどうなのかという方が重要だと思うのですけどねえ)じゃネーノと思うのだが。
『それから、貸出増加を支援するための資金供給と比べると、制度は全く違いますが、0.1%の固定金利での資金供給という点では同じです。そうした中で、一方では3
年まで貸すといい、他方では2 年あるいは3 年までというように、1 年を超える共通担保オペを行うことは――別に両者は競合するものではないものの――、それがどのようにマーケットから捉えられるか、といった意見もありました。』
難しい意見ですなそら。貸出増加支援に関しては「一般向け融資の拡大」という政策目的があって、その推進のためにお得な融資制度を設けたという形になっているので、市場のボラがどうのこうのというのとは話が違うぞなで整理した方が良いと思いますけどね。
『その他にも色々なご意見がありましたが、何よりも、先程申し上げたように、これまで長期国債オペの弾力化の努力を行い、ボラティリティも大分収まってきている中で、今、何か新たなツールを決めて、いつでも使えるようにすることまでの必要性はないのではないか、ということだったと思います。詳しくは議事要旨が公表される際に明らかになると思います。』
という事で締めているのですが、先程と同じでこの表現だと「じゃあ債券市場がクレクレ催促をすると新しい物が出てくるんですねわかります」という風に取られてしまう訳でして、それよりも「2%達成のために必要な政策は全て投入しており、経済物価情勢についても先般の展望レポートで示した2%目標達成に向けた見通しに沿って推移しているので現状での追加措置は必要ないと判断しました。勿論経済物価情勢の見通しを変えるような状況が生じた場合には適切な措置を取りますよ。」ってな感じであくまでも「経済物価情勢」をベースにして説明すべきだと思うのですよね。
今回の黒田総裁の説明っぷりだと判断のベースが「経済物価情勢」ではなくて「市場動向」であるかのような話になっておりまして、そうなりますと市場というのは基本的にいじめっ子体質、というと何かマイルドでつまらんので加虐性があると言った方が良いのかもしれませんが、まあそういう性質があるものですからして、「市場動向で何か出てくるなら追い込み掛けてやるぜヒャッハー」となり兼ねませんので少々アレだなあと思うのでありました。
でもってちょっと後にしつこく本件に関する質問ががががが。
『(問) 2 点伺います。1 点目は、先程のシグナルオペの関係です。先程、総裁は、金利のボラティリティなども相当低下しているため、新たなツールを決める必要があるか分からないということで、導入を見送られたとおっしゃいましたが、今後、例えば、そのボラティリティが高まった場合には、もう一度導入を検討する可能性があるのかどうか、あるいは、ポートフォリオ・リバランスを促していくという本来の目的とは違うので、もう金輪際、検討する可能性はないということなのか、という点を教えて下さい。(後半割愛)』
まあ質問する方もしつこいなとは思うのですが、確かに「市場動向」をキーにして説明するとこういう質問になります罠という所でしょう。
『(答) 1 点目については、先程申し上げたように、現時点ではその導入は必要ないということですので、将来、必要になったら検討するということだと思います。ただ、今のところ、その必要性はないだろうとみています。(後半割愛)』
つーことでここの部分がベンダーヘッドラインにされていましたが、もうちょっとドラギ総裁ばりに「色々な手段は選択肢としてあるが事前に何をするとかしないとか申し上げませんが何か?」とでも答えておけば良い話で、要らん所でサービス精神を発揮せんでもと思うのでありました。
とまあそんな所です。
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2013/06/13
お題「総裁会見からですがああだこうだアタクシの愚意見を書いていたら長くなったので明日に続く(大汗)」
米国何気にドル安債券安株安なのか・・・・・・・・・
○ということで総裁会見ですが気になったポイントは概ね3つ(のうち今日は2つで勘弁)
微妙にこの会見タイミングで色々な市場が変調だったのですけど会見要旨が出て参りましたので鑑賞。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2013/kk1306a.pdf
まあ何だ、質疑が段々ツッコミ厳しくなってますなという感じですけど。
・黒田さんの現状認識に関する説明が少々アレという件
冒頭説明の直後の実質最初の質疑を読んでますと「イイヨイイヨ!」なのですがその次の質疑を読むと「何か違うんだよな〜」という感じでして、まあ何と申しますか微妙な違和感がある訳ですよ。
これね、報道に関して微妙に変なトーンのヘッドラインが打ち込まれたのはあながちベンダーバイアスだけではなかったりするのではないかと思ったんですけどどうでしょうかね。
つまりですな、最初の質疑なんですけど、
『(問) 金融市場について、お伺いします。足許、株価下落や、再びの円高といった形で、4
月の緩和以降の市場の動きとは若干反して、揺り戻しの動きがみられます。こうした市場の動揺の原因、それからその影響、これをどう分析しているかお聞かせ下さい。』
『(答) 株価や為替相場について、一つ一つの動きにコメントすることは控えたいと思いますが、先程申し上げた通り、わが国経済は順調に回復への道筋を辿っており、金融市場もそうした実体経済の前向きな動きを反映して、次第に落ち着きを取り戻していくと考えています。日本銀行としては、2%の物価安定目標の達成と、経済の持続的な成長の実現に向けて、強い決意をもって、「量的・質的金融緩和」を推進していく所存です。』
とまあここまでは良いのですけれども・・・・・・・・
『(問) 長期金利の上昇や、BEI、期待インフレ率が再び低下するといった、これまで重要視してきた、いわゆる市場の期待の効果にも若干陰りがみられるのではないか、という指摘もあるかと思います。こうした市場の乱高下を踏まえて、総裁がこれまでおっしゃってきた、いわゆる金融緩和の3
つの波及経路が足許どのように作用しているか、改めてお聞かせ下さい。』
と、さらにゴリゴリとツッコまれますと・・・・・・・・・・・
『(答) 先程申し上げた通り、わが国経済は順調に回復への道筋を辿っており、先行きも、「量的・質的金融緩和」や各種経済対策の効果などもあって、緩やかな回復経路に復していくとみています。』
とまあここまでは良いとしまして、
『ご指摘があった、予想物価上昇率については、マーケットの指標などで確かに上昇が一服しているものもありますが、他方、家計やエコノミストに対する調査などをみると、やはり全体としては上昇を示唆する指標がみられているのではないかと思います。』
>全体としては上昇を示唆する指標がみられているのではないかと思います
>全体としては上昇を示唆する指標がみられているのではないかと思います
>全体としては上昇を示唆する指標がみられているのではないかと思います
・・・・・・・・・・ほほう。
まあ声明文でもそういう話をしておりますから公式見解ではあるのですが、(これは金融経済月報ネタになるのですが)ではその状況はどのようにして観測しているかというのは金融経済月報の全文および図表を見ますと書いてあるのですけれども・・・・・・・・・
今回の金融経済月報
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2013/gp1306.pdf
月報本文(全体説明部分)15ページ(PDFファイルで17ページ目)の所で予想物価上昇率に関する記載がございます。
『この間、予想物価上昇率については、上昇を示唆する指標がみられる(図表30)。』(上記URLの6月金融経済月報本文より)
・・・・・・・うむ、前月もそうだが見事な1行コメントなっておりまして、ではこの図表とやらを前月と比べて見ますとどうなるんでしょうかというお話だが、図表を磔の刑にするとかそういう面倒なことをする気はございませんので(手抜き)、図表の場所を示しておきますので並べて確認してちょ。
今月の状況。
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2013/gp1306.pdf
の(図表30)でファイルの50ページ目になります
先月の状況。
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2013/gp1305.pdf
の(図表28)でファイルの47ページ目になります
・・・・・・・・・えーっとですね、このグラフって細かい目盛が記載されていないので今一歩よくワカランチ会長ではあるのですけど、まあ確かに先月に関しては「上昇を示唆する指標が見られる」と言われて若干首を傾げながらもはあそうですねえという感じなのですが、今月のグラフを先月と比較してみると、BEIが盛大に下がっているのはご案内の通りですが、QUICKのサーベイでも長期的なインフレ予想数値は頭打ちっぽい数値になっていますし、消費動向調査の方も上がっている感じじゃないですし、まあ上がっているのってESPフォーキャストの直近リバイスされた新しい分だけじゃネーノという気がするのですけれども、何か前月と同じような判断で本当に良いのかという気がしますけど、まあこれは黒田さんの見解というよりは(月報や声明文で書かれて居る訳ですから当然ながら)政策委員会としての見解となりますからまあこういう説明になるのはシャーナイナイ。
などと話が金融経済月報ネタになってしまいましたが、まあ何ですな。この辺の「予想物価上昇率は上昇を示唆している(キリッ)」というのが大本営発表であってもまずは威勢の良いことを言ってcheer
upしようじゃないの景気は気からだものというのならまだ良いのですけれども、これが何時の間にやら台湾沖航空戦大戦果!とかなってしまって幻の現状認識方向に走られると誠にアレでございますのでその辺の匙加減はご注意ありたいものでございまする。
でまあそこまでは政策委員会の見解の話だから置いときまして、メインイベントはこの先になるのです。発言の続きだよ。
『そういった意味で、「量的・質的金融緩和」の効果──金利全体やプレミアムに対する働きかけ、ポートフォリオ・リバランシングの効果、さらには期待を通じた効果──は、しっかり働いていますし、これが民間需要を刺激する効果は、今後、景気の改善につれてむしろ強まっていくのではないかと思います。金融緩和の効果は、中長期的にみる必要があると思いますし、しっかり働いていくと思っています。』
・・・・・・・・いやね、言ってる事の大筋はこれで良いと思うのですよ。つまり足元の動きというのは当然ながらボラが高まるタイミングだってあるのですけれども、中期的に見た場合には金融緩和を拡大していくのであればその効果というのは出てくる、というのはそうでしょと思うのですよね。
ただ、このおっちゃんの場合何がズレてるかっていうと、前段の所で「金利全体やプレミアムに対する働きかけ、ポートフォリオ・リバランシングの効果、さらには期待を通じた効果──は、しっかり働いていますし」って言いきってしまう所でして、いやいやいや足元では一旦異次元緩和ぶち上げた時点から見たら元の木阿弥状態で金利の上げ損になってるでしょという状態なのですから、そこは「しっかり働いていますし」とは言わないでムニャムニャとごまかしつつ説明して、後半で言ってる「まあそんな手前の話よりも中期的にこの政策が進んで来た場合の事を考えましょうよ」という説明を前面に押し出した方がベターだと思うのよね。
つまりですね、まあ最初は債券でしたけれども、最近では元の木阿弥モードになって株とか為替までも若干(#^ω^)ピキピキ気味の状態になっている市場に対して「ワークしています」とか言わずもがなという所でありまして、こういう言い方するとこのオッサン状況認識してるんかいなとか、状況に目を向けないで現実逃避した脳内で金融政策運営しとりゃせんかとゆー風な悪印象を与えるリスクがある訳でございます。
市場のクレクレに対しては毅然として「退かぬ!媚びぬ!」というのが美しいのですけれども、足元の現状認識でそれをやられても困る訳でして、どうも黒田総裁ってプライドが天より高いのかもしれないですけれども、現状に関する話をするときに微妙に事実を自分の都合の良いように粉飾というとアレですが、脚色成分が入ってしまうような節があるのが、今後の事も考えるとちょっと懸念されるなあと思うのでありました。ええまあ杞憂にも程があるのかもしれませんけどね。
と、一々ツッコミを入れていますがまだこの質疑応答がありまして(笑)、
『なお、長期金利についてですが、現在、日本銀行が行っている巨額の国債買入れは、リスク・プレミアムを縮小させ、金利に下方圧力を加えています。その効果は、当然のことながら、毎月毎月、国債買入れを進めていく中で、さらに強まっていくと思っています。』
・・・・・・ここも同じで、少なくとも足元で長期金利が上昇している中で「リスクプレミアムを縮小させ金利に低下圧力を加えて”います”」とか現在進行形で説明せんでも良い訳でして、「低下圧力を加える方向に作用する性質のものです」とか言っておけば良いのですよ。
それをわざわざ現在進行形で言っちゃうという所がちょっとアレな訳でして、先ほどと同様ですが、このオッサン現状をちゃんと認識して物言ってるんかいなというツッコミに繋がる訳で、ああつまり足元であまり上手くワークしていない事を認めたくないんだなあという風に取られてしまうのでして、そんなのはてきとうにとぼけて置けばよいだけの事なのに、一々「足もとで変調ですね(ニヤニヤ)」というツッコミを受けて「ちゃんとワークしています(キリッ)」とか言うもんだからコミュニケーションがギクシャクするんですがなと思いましたがどうでしょうかねえ。
・早速ツッコミを受けるとな
とまあ最初の2つの質疑を引用しているだけで何故か増量企画になっておりましてこのペースで大丈夫か俺という気がして参りましたが(大汗)、次の質疑応答。
『(問) 関連して2 点伺います。1 点目は、3 つの波及経路について、今、「効果は出ている」というお話がありました。4
月にご説明があった時は、金利を下げることで家計や企業の借入れをし易くするとか、期待に働きかけることで消費を拡大するとか、ポートフォリオ・リバランスによって貸出を増やしてもらうというお話がありました。しかし実際の動きをみると、株や為替に関しては、株高、円安の効果というのは、4
月以降の分がかなり元に戻ってきてしまっています。また、金利も上がっており、貸出も――すぐには増えないとは思いますが――、なかなか増えていません。2
か月経って、一旦出ていた効果が、大分元に戻ってしまっているのが客観的に出ていると思いますが、その点について、総裁はどうお考えですか。(後半は後ほどという事で割愛)』
まあ不肖このアタクシが出来上がりテキストをボケーっと読んでおりましても思ってしまった訳ですけれども、おそらく会見場での実際の説明における流れというのはもうちょっと「えー」という感じだったのではないかと思われるのは、早速この質問が飛んできていることに示されていると思うのですよ。
だからこそ現状の所で「効果が出ている」というような現在進行形の言い方をするのではなく、「これからドンドン緩和が拡大されていく中で効果が着実に出てくるものと見られます」とか言っておけば良いのに、どうも短期的な途中経過であっても負け(短期的に負けても中長期で勝てば良いので足元の事などキニシナイ!というスタンスでどっしり構えておけば良いのに・・・・)を認めたくないというような雰囲気がこのような意地悪ツッコミを誘発するというものでして、そのお答えに関して。
『(答) 第1 点については、先程申し上げたように、イールドカーブ全体に働きかける効果、ポートフォリオ・リバランスの効果、期待を通じた効果、それぞれに影響、効果を持っていると思っています。ご指摘の為替、あるいは株価については、一つ一つの動きにコメントすることは差し控えたいと思いますが、当然のことながら、金融政策は、トレンドとして、それらがどういう動きをしているかを考えながら運営されていくものと思っています。』
一つ一つの動きにコメントするのは差し控えるのであれば、あまり足元の政策効果どうのこうのについても、そもそも金融政策の効果なんぞラグを伴って出てくるものであって、為替平衡操作のように1秒で効果が出るものでは無いのですから、「しっかり働いている」だの「金利に低下圧力を加えている」だの現在進行形チックの話をするのは時間が経過してからのレビューで言えばヨロシアルと思うのですが、どうも為替平衡操作時代の感覚が抜けてないんじゃネーノ的な気もする次第。
・自分のコミュニケーションはスルーですね判ります
で、さっきの質疑応答の第2番目ですけど。
『(問)(前半割愛)2 点目は、金利についてです。5 月の会見後、株価の暴落の前に、長期金利が急上昇して一時1%に達したほか、足許も、金利が非常に高くなっている状況にあって、日銀がなかなか長期金利をコントロールできない状態になっていると思います。その点について、総裁は、現在の金利水準は適切だと思っているのでしょうか。ある程度景気が上向きになってきているので、金利がこのくらい上がってきたのは良いことなのか、あるいはやはりもっと下げるべきと考えているのか、ご説明下さい。』
こらまたアレな質問。
『(答)(前半割愛)長期金利については、確かに、4 月の「量的・質的金融緩和」の直後に、ボラティリティがかなり高まりました。その後、市場との対話を通じて、オペを弾力化したことで、金利変動は落ち着いたわけですが、5
月に入って、米国の長期金利が上昇するといったことを背景に、再び日本の長期金利も上昇し、ボラティリティも高まったということがありました。』
自分の長期金利上昇は自然発言は華麗にスルーですかそうですか。
『そこで、5 月の後半にかけて、市場との対話を重ね、さらにオペの弾力的な運用を決めたわけです。具体的には、毎回のオペの金額について、規模をより小さくし、その代わり、より頻繁にオペを行うとか、月々のオペの量について、年間買入れ額の12
分の1 ずつということではなく、もともと認められていた範囲内で、より弾力的に行うこととしました。また、購入する国債についても、平均残存期間は7
年程度ですが、4 月4 日の発表文にも書いたように、6 年〜8 年程度と、かなり幅をもたせています。さらに、金利がかなり変動していた1
年〜5 年くらいの短中期ゾーンのところで、オペを厚くすることも行っています。そうしたことも含め、より弾力的な扱いを決め、市場自体も、ボラティリティが少し低下してきています。』
とまあ斯様に国債買入オペの運営方法について細々と説明しているのは良いのですが、そもそも問題となっているのは「経済物価状況が改善したら金利が上昇するのは自然」だの「実質金利は低下している」だのというご自身の発言により、結局日銀、というかクロちゃんキクちゃんは金利に対して何をしたい(またはする気が無い)のかという説明が、異次元緩和ローンチ前からの威勢の良い説明からはじまって今に至るまでに一定していない所からややこしい問題になっているのでありまして、そのオペレーションの部分というのもそれはそれでファクターとして重要ではあるのですが、そういう戦術ではなくて今申し上げた戦略の問題にかかわる部分が????状態となっている(例えばまだ物価が上昇していないから問題にならないけれども「2%」の数値がそもそもアクチュアルなのかフォーキャストなのか、そのタイムフレームはどうなっているのか、という辺りだって超ファジーというかカオスのままですよね、というような部分も含めまして)のが不確実性を生み、その不確実性がリスクプレミアムを引き上げてしまっている、という風に思うのですよ。
然るに、もうちょっとここの説明が続くのですけれども、黒田総裁の長期金利に関するここの説明ってオペの具体的手法の話で止まっていまして、まあその辺ゴリゴリ詰めると色々とツッコミ所が出るから技術論で煙に巻いているという事なのかも知れませんが、さきほど引用した質疑応答で示される現状認識に関する発言と合わせて考えると、もしかしてこのオッサン戦略レベルのミスコミュニケーション状態に対する問題意識を持ち合わせてないんとちゃうかという懸念も浮上してくるのが少々アレ。
『今後とも、長期金利の動向には十分注意し、特に、ボラティリティが高まることは好ましくないので、これを縮小する努力は引き続き行っていきたいと思います。それに加え、先程申し上げた通り、年間50
兆円のペースで保有残高が増加するように長期国債の買入れを今後進めていくので、それによる長期国債のリスク・プレミアム圧縮効果は、買入れを進めていくにつれて、さらに強まっていくと思っています。』
つまり、説明としてはここだけにしておいた方が却って内兜を見透かされないような気がするんですけれども、どうも黒田総裁の質疑応答は一言二言多いような気がするのですよ、うんうん。
・海外経済の見立てがちと強気に傾いている気がする件
てなことで最初の質疑応答からの3つの質問を引用して突っ込んでいたら盛大に時間と量を消費するという書いている本人も最初何となく構想していた状況と全然違う展開になって少々慌てておりますけれども(ちゃんと計画しろというツッコミは却下^^)、1年オペどうのこうのに関する質疑も面白いのですが時間がアレなのでもう一つ結構気になったのが海外経済に関する部分なのでそちらを引用しまして続きは明日でどうもすいませんすいません。
『(問) 2 点伺います。1 点目は、総裁は、ADB総裁を務められて、中国の経済に造詣が深いと思いますが、最近の中国の色々なデータ、例えば、4
月の輸出入統計をみると、輸出は様々な理由で急減していますが、輸入もマイナスになっており、実体経済の低迷を反映しているのではないかと思います。一方、上海短期金融市場では、SHIBORの翌日物が9%に跳ね上がるなど、かなり歪な動きをしています。中国経済は、日本経済にとってかなり重要な位置を占めていますが、総裁は、この中国経済の直近の動きについて、どのように分析されていますか。(後半割愛)』
『(答) 第1 点の中国経済については、足許、直近の輸出、輸入の統計が出たわけですが、確かに、かなり伸びが低いというか、一部マイナスになっており、やや驚きをもってみられたと思います。ただ、ご承知のように、輸出入の統計については色々な議論があり、中国政府自体、統計をより精緻にする努力をしていますので、そういう意味で、その前の月とやや不連続な面があると考えられますので、足許の動きが趨勢を示しているとは考え難いと思います。同様に、上海の短期金利が、一時やや大きく上がりましたが、これも色々な短期的要因が重なってそうなったもので、中央銀行が金利を引き締めようとしているわけではないと思いますので、これも安定するのではないかと思っています。中国経済のファンダメンタルズについては、IMFやその他の機関も言っているように、7%台後半から8%という成長を遂げる経路には乗っているわけです。従って、中国経済が急速に減速するとか、あるいはそれに伴って不良債権の問題などが急激に大きくなるといった懸念は持っていません。』
ふむふむ。で、別の質問ですけど。
『(問) 2 点伺います。1 点目は、インド・ルピーの安値更新のような新興国経済の変調についてどうみていらっしゃるのか、簡単にご所見をお願いします。2
点目は、米国経済についてです。フィスカルドラッグの影響が懸念されてしばらく経ちますが、実体経済は堅調のまま続いていると思います。今後、世界経済は、米国1
本で回していけるのか、お考えをお聞かせ下さい。』
『(答) IMFなどの経済見通しをみても、世界経済の成長に非常に大きく貢献しているのは、やはり新興国です。一方、先進国では、米国経済が、ご指摘のように比較的順調に回復・成長しており、これが世界経済を牽引する1
つの力になっていることも事実だと思います。』
ということでやはり強めだなあという感じっすよね。詳しく説明していますので以下見ましょう。
『新興国については、ご案内のように、インド経済が、昨年は、成長率が5%程度と、やや減速したわけですが、これは中長期的にインド経済が減速していくということではなく、色々なことが重なって減速したとみています。すぐにとは思いませんが、それほど長くかからずに、高めの成長に戻る力があると思っています。』
『一方、ASEAN諸国は、ご承知のように、比較的順調で、特に、インドネシアやフィリピンが順調に成長しています。アフリカ経済もかなり順調です。このように、新興国・途上国については、国によって様々な景気循環その他の要因で成長がやや鈍化しているところもありますが、全体として、世界経済の成長を引っ張っていることに変わりはないと思います。』
『米国については、ご指摘のように、フィスカルドラッグの問題が相当影響するのではないか、という議論もありました。確かに、それは影響していると思いますが、その上で、これだけの成長を続けていますし、フィスカルドラッグの問題自体も、相対的な意味で徐々に小さくなっていくと思います。こうした動きが先行きも続いていくとすれば、IMFなどがみているように、米国経済は、比較的順調な回復経路を辿っていくことになり、それは世界経済にとっても1
つの牽引力になっていくと思います。』
ということで、どちらかというと主要国の中銀がグローバル成長の鈍化について下振れリスクとして見ている中で海外経済の見通しが結構強いですよね、というのがこの会見を見ていて気になった事の2つ目という所(一つ目は冒頭でああだこうだ申し上げた部分で、3つ目は1年オペに関する部分なのですけど3つ目は明日ですんまそん)です。
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2013/05/29
○日曜の黒田総裁講演からはロジックが複雑骨折モードというのが伺える訳で
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/data/ko130527a1.pdf
「量的・質的金融緩和と金融システム」
── 活力ある金融システムの実現に向けて──
日本金融学会2013年度春季大会における特別講演
ということで日曜の講演テキストが出ていたのですが昨日は決定会合議事要旨ネタで潰れてしまったので遅ればせながら本日投下。
・最初から既に話に色々と矛盾ががががが
冒頭部分ですけどね。
『日本銀行は、「物価の安定」と「金融システムの安定」を使命としています。「物価の安定」に関しては、去る4月3日、4日の政策委員会・金融政策決定会合において、「量的・質的金融緩和」を導入しました。15
年に及ぶデフレからの脱却を何としても実現するという強い決意に基づくものです。』
というのは良いとしまして、
『「金融システムの安定」に関しては、現状、わが国の金融システムにおいて、安定性の面で大きな問題が生じているとはみていません。しかしながら、金融機関は、主力の貸出業務において、収益性が低下を続けるという課題に直面しています。こうした下で、貸出による金融仲介活動のバロメーターである金融機関の信用リスク量が減少し、債券投資に伴う金利リスク量が積み上がるという構図が、何年にもわたって続いています。』
はあそうですか。
『「量的・質的金融緩和」は、金融システムのこうした現状に大きな変化をもたらしていくと考えられます。この政策が重要な波及経路として想定している、イールドカーブやリスク・プレミアムへの働きかけ、ポートフォリオ・リバランスは、金融システムを通じて実現されていくものです。』
先ずこの時点で意味が分からんのですが、収益性の低下を問題にしているのに、イールドカーブ全体に影響を与える金融緩和政策を実施したら長短スプレッドが縮小して更に預貸利鞘が減るだろと思いますし、リスク量がどうのこうのという話をする一方でポートフォリオリバランスの話をしている訳ですが、ポートフォリオリバランス効果を出すというのであれば当然ながら金融機関にリスクをより多くとれという話をしている事の裏返しに他ならない訳ですけれども、その辺はどうなんでしょうかねえ。
『また、この政策の効果が浸透し、前向きの経済活動が広がってくれば、より活発な金融仲介活動が必要とされるようになるでしょう。デフレからの脱却過程は、金融システムが活力を取り戻していく過程でもあると考えています。』
別に活力が無いわけじゃないでしょ、貸出に関する需要が中々伸びないだけで。
『本日は、こうした点を念頭に置きながら、「量的・質的金融緩和」と金融システムとの関わり合いや、日本銀行のプルーデンス政策の考え方について、お話ししたいと思います。』
とまあ出オチ状態の講演なのですが・・・・・・・・
・イールドカーブの「低下を促す」ですかそうですか
途中をすっ飛ばしまして異次元緩和の効果に関する話。
『次に、「量的・質的金融緩和」が、どのようなメカニズムによって2%の物価安定目標を達成するのかをお話しします(図表3)。想定している波及経路は、主に三つあります。』
へえへえそうだっか。
『一つ目は、長期国債やETF、J−REITの買入れによって、「イールドカーブ全体の金利の低下を促し、資産価格のプレミアムに働きかける効果」です。これが、資金調達コストの低下を通じて、企業などの資金需要を喚起すると考えられます。』
>イールドカーブ全体の金利の低下を促し
>イールドカーブ全体の金利の低下を促し
>イールドカーブ全体の金利の低下を促し
・・・・・・・・ほほー
『二つ目は、日本銀行が長期国債を大量に買い入れる結果として、これまで長期国債の運用を行っていた投資家や金融機関が、株式や外債等のリスク資産へ運用をシフトさせたり、貸出を増やしていく、「ポートフォリオ・リバランス効果」です。長期国債買入れの平均残存期間を思い切って延長したのは、この効果を意識したものです。』
そもそもポートフォリオリバランス効果とマクロプルーデンスって相性悪いですよねという話は後ほど出てくる。
『三つ目は、「物価安定の目標」の早期実現を明確に約束し、これを裏打ちする大規模な資産買入れを継続することで「市場や経済主体の期待を抜本的に転換する効果」です。予想物価上昇率が上昇すれば、現実の物価に影響するだけでなく、実質金利の低下を通じて民間需要を刺激することも期待できます。』
最初の所では名目金利の低下としか思えない(名目とは言っていないが「資金調達コスト」と言ってるのに実質の話はせんだろ常識的に考えて)話をしていますが、こちらでは実質金利ですかそうですかという話ですが、まあこの辺の話は引き続き継続しているのですが、まあ「金利の低下」という表現の中での言い方は普通に読むと名目金利にしか読めない書き方になっているのを引っ込めていない点は潔さを感じて誠に結構でありますな。
・例の「金利が上昇しても金融システムに問題は無い」部分
金融システムに関する点検の話の部分に飛びますけどね。
『とくに、「量的・質的金融緩和」の下、デフレから脱却し、物価安定の目標を達成していく過程においては、金利上昇に対する耐性を点検することが一つの重要な課題であると考えられます。』
んだすなあ。
『4月に公表した「金融システムレポート」では、金利が1〜3%ポイント程度上昇した場合について、金融システムへの影響を試算しています(図表6)。もちろん、こうした定量分析には多くの留保条件や限界があり、幅をもってみなければなりませんが、仮に金利がこれくらい上昇したとしても、経済・物価情勢の改善を伴うものであれば、貸出の増加や利鞘の改善、株価の上昇などにより金融機関の収益にプラスの影響が及ぶため、金融システムが不安定化する懸念は大きくないと考えています。』
ということで、まあご覧になれば判るように別に変な話をしている訳では無く、至極ご尤もな話をしているのですが、既にベンダーバイアスが掛かって報道されるようになる今日この頃ですので、きっちりと切り取られるヘッドラインになっているのが残念な所ではございます。
『一方、経済状況が改善しない中で財政懸念が強まることを背景に金利が上昇する場合は、貸出の増加や利鞘の改善といったプラスの効果が見込めないことから、金融機関には債券評価損という負の影響が強く出ることとなります。金融機関は、こうした場合でも負の影響を相応に吸収していく体力を備えてはいますが、金利上昇の程度や速さ次第という面はやはり残ります。財政の持続性に対する懸念を生じさせないためにも、政府における財政構造改革に向けた取り組みを着実に進展させていくことが重要です。』
本当はこの話を日銀の立場としては強調しないといけない訳で、そもそも銀行券ルールを一時停止して大規模国債購入をしているという状況なのですから、当然こちらを政府が遵守しないと日銀は盛大なはしご外しの刑になる訳ですからね。
・プルーデンスと異次元緩和
金融機関はどうあるべきか云々という部分もほほうという所ですがそこはスルーしまして最後の論点。
『次に、「量的・質的金融緩和」と日本銀行のプルーデンス政策の関係に触れておきたいと思います。』
『「量的・質的金融緩和」は、金融機関や投資家に対して、リスクテイクを促すとともに、イールドカーブやリスク・プレミアムへの働きかけを通じて、資産価格に影響を及ぼすことを企図しています。一方、プルーデンス政策は、金融機関にリスク管理の強化・充実を促すとともに、資産価格など様々な金融面での不均衡に対して目を光らせることを念頭に置いています。これらの点を捉えて、「『量的・質的金融緩和』とプルーデンス政策は対立するものではないか」あるいは「『量的・質的金融緩和』の下では、プルーデンス政策の考え方も変わってくるのではないか」と考える方がいらっしゃるかもしれません。』
「いらっしゃるかもしれませんとか」じゃなくて常識的に考えるとそうなると思うのだが・・・・・・・
『しかし、「量的・質的金融緩和」とプルーデンス政策は、対立するものではなく、整合的なものであると考えていますし、日本銀行のプルーデンス政策に関する考え方が変わるということもありません。これらの点に関する私どもの考え方は、次の二点に集約されます。』
ほほう。
『第一に、今回の政策が、金融機関等に積極的なリスクテイクを期待しているとしても、「リスク量を経営体力との関係において適切に管理することを求めていく」という基本姿勢は不変であるということです。行き過ぎたリスクテイクは、目先問題はなくても、いずれ金融機関経営や金融システムの不安定化につながり、長い目でみて経済の改善に貢献しません。逆に、適切な管理がなされていれば、収益を高めていくためにもリスクテイクの拡大はむしろ望ましいことでもあります。』
・・・・・・・・・・・・・いやちょっと言いたい事があるけどいいです。格差拡大って言葉を思い出しちゃいましたよ。
『この点、すでにご紹介したように、日本銀行は、考査やモニタリング、セミナーなどを通じて、リスク管理の側面だけでなく、金融仲介や事業再生能力を高めるための意見交換、助言にも力を入れてきています。』
そうでしたね(棒)。
『第二に、資産価格の過熱やマクロ的な金融面の不均衡についても、基本的な考え方は変わりません。』
ほっほー。
『金融面の不均衡は、その事実を認識すること自体に難しさを伴いますが、仮にそれが生じていると判断されるならば、何らかの対応を講じていくことが基本です。一方、資産価格の上昇が、政策効果や先行きの実体経済の改善を反映したものである限りにおいては、資産効果などを通じて実体経済に対してポジティブな影響を及ぼすものです。』
いやあのすいません最近はあのFRBですらこの問題に関して色々と議論が行われているのですけれども黒田さん随分と簡単に済ませますねえ。
『様々な指標や金融機関行動を見る限り、現時点では、資産市場や金融機関行動において、過度な期待の強気化を示す動きはみられていないと考えています。』
ふーん。まあどういうものを見ているのかというような話は金融システムレポートで一部ありますけれども、少なくとも金融システムレポートを出した時点では異次元緩和ローンチの影響って(一部記述がありましたけど)ほぼ反映されない状態だった訳で、そこからのアップデートの話とかもして欲しいですなあこの点に触れるんだったら、と思うのですけどね。
『経済・物価情勢と金融システムは相互に影響を及ぼしあっています。両者の安定は、両立すべきものであって、相反するものではないことを強調しておきたいと思います。』
両立すべきものであるのはその通りですが、先日のバーナンキ議長講演ですら、低金利環境でマクロ経済が安定している時に金融不安低下に繋がる(『To
be sure, a favorable overall environment reduces credit risk and strengthens
balance sheets, all else being equal, but it could also reduce the incentives
for market participants to take reasonable precautions, which may lead
in turn to a buildup of financial vulnerabilities.』)脆弱性を生むリスクを拡大する、という話をしている中でこの纏め方はあまりにもナイーブ過ぎませんか黒田総裁、という所ではございます。
・つーかどうも話がまとまっていないのだが
えーっとですな、途中の引用をしていないからちょっと分かりにくかったかもしれませんが、黒田総裁のこの講演なのですが、プルーデンスプロパーの話をしている所ではプルーデンスの話をまあ普通にしているのですが、その話が異次元緩和と結びつく部分になると急に説明の整合性が取れなくなってくるという不思議な講演テキストでございまして、まあ何と申しますかちょっと????な講演なのですよ。
でまあこういう辺りの?????な所が金利市場的に見た場合に「わけわからん」という部分になり、それがまた不確実性を高めて流動性を落としたり市場のプライスアクションを不安定化させるのではないかとまあ斯様に思うのでありました。
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2013/05/27
○黒田総裁講演:テキストはまあ一般的な話ですが
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/data/ko130524a.pdf
「アジアの世紀」の実現に向けて
―国際交流会議「アジアの未来」における講演―
講演テキストに関しては足元の金融政策がどうのこうのという話はございませんで、長さもそんなにないのですがこの辺に関してはそうですなという所で。
『3.「アジアの世紀」の実現に向けて―「中所得の罠」に陥らないために―』という小見出しの所から引用。
『30年、40年先を見ても、アジア経済には、輝かしい未来が待っていると言えるでしょう。私がこの春まで総裁を務めていたアジア開発銀行は、2011年に「アジア2050─アジアの世紀は実現するか」と題する報告書を発表しました。同報告書は、「現在のような成長が続けば、2050年までにアジアが世界のGDPに占める構成比が現在のほぼ倍となる5割程度に達する」との見通しを示しました。』
『しかし、そうした成功は約束されているものではありません。そこまでの道のりは平たんではないでしょうし、これまでと同じ対応を繰り返せば良いというものでもありません。同報告書では、アジア諸国が政策課題をタイムリーに実行に移せないと、高成長国が「中所得の罠」に陥り、低・中成長国のどの国も経済が改善しないという悲観シナリオも提示し、警告を発しています。』
中所得の罠キタコレ。
『この「中所得の罠」とは、元々は、ラテンアメリカやアフリカなど天然資源の豊富な国が、資源を開発し、輸出することで中所得国に移行した後、先進国になれていないことを指すものでした。アジアでは、天然資源の開発だけに頼るのではなく、労働力という人的資源の豊富さを源泉に製造業が輸出で収入を増やし、低所得国から中所得国に辿り付いた経緯があります。しかし、問題は、農村の余剰労働力が減少し、賃金の上昇圧力が高まる「ルイスの転換点」を通過した後も、相応に高めの成長を安定的に実現できるかどうかです。』
さいですな。
『アジアで戦後に一人当たり年間国民所得が1万ドル以上の先進国になった経済地域は、日本以外では、「四匹の虎」(韓国、台湾、香港、シンガポール)しかありません。このことは、低所得国から中所得国になるのに比べて、中所得国から先進国になることが如何に難しいかを物語っています。』
うむ。
『私は、「中所得の罠」の問題の核心は、成長のフロンティアが存在するか、そのフロンティアを活用する内生的メカニズムが備わっているか、にあると考えています。成長のフロンティアがアジアに存在することについては、冒頭申し上げました。ですから、「罠」に陥らないようにするためには、そのフロンティアを活用するために、健全なマクロ経済政策運営は言うまでもなく、構造改革により、労働、資本、技術革新の生産要素を向上させ、潜在成長率を引上げていく、不断の努力が求められます。具体的な取組みの内容は、各国が置かれた状況によって異なるでしょうし、自助努力が基本となります。しかし、どの国にとっても、規制改革を進めて、イノベーションを促す環境を作り上げていくのと同時に、経済ガバナンスを強化し、社会の透明性・公平性を確保していくことが重要でしょう。加えて、教育水準の向上により、人的資本の更なる高度化を進めていくことも必要です。私自身は、アジアは、それを実現することが出来ると確信しています。』
まあそういう事で。
で、これは別の講演なのですかそれとも上記の講演なのですかね。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MNA95G6JTSEB01.html
日銀総裁:弾力的なオペ運用の方針重ねて表明−ボラティリティ回避で
更新日時: 2013/05/24 12:44 JST
『5月24日(ブルームバーグ):日本銀行の黒田東彦総裁は24日昼、都内で講演し、国債市場での長期金利の乱高下などを踏まえ、市場が「安定的に推移することが極めて望ましい」とした上で、日銀による市場オペの弾力的な運用を通じて「ボラティリティ(変動率)をできるだけ回避していきたい」との方針をあらためて示した。市場との対話も強化していくと述べた。』(上記URLより)
つーてもそもそもの異次元緩和政策が期待の転換を図るための物であり、期待が転換する過程で市場の安定が一度壊れるものでありますので、ボラを回避して行きたいというのはまあ判らんでも無いのですけれども、そもそも政策的にボラがいったん高まってしまうのでありますからして、ゆうとる事とやってる事が矛盾してませんですかとかそういう話になります罠という所で。
更に昨日はこんなのがあったのですね。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MNE5VI6S972801.html
日銀総裁:金利3%上昇しても経済・物価改善伴えば銀行収益に好影響
更新日時: 2013/05/26 14:57 JST
『5月26日(ブルームバーグ):日本銀行の黒田東彦総裁は26日午後、都内で講演し、金利が1−3%程度上昇した場合でも、経済・物価情勢の改善を伴えば、金融システムが不安定化する懸念は大きくないとの見方を示した。』(上記URLより)
内容的にはまあ仰る通りという特に変でも無い話をしているのではありますが、タイミング的に債券市場の流動性が低下して金利が急上昇してアチャーとなる中で、その一因として「経済情勢が改善すると長期金利が上昇するのが自然」みたいな台無し発言を黒田総裁御自らが行ったのもある、という事がありーの、足元ではベンダーのヘッドラインバイアスが「黒田総裁は債券市場に冷淡」というストーリーに都合の良いものを集めてくるという傾向がありーの、とゆー状況でありますので、この発言もヘッドラインが場中に出たらまたまた債券市場がムキーとかなりそうな悪寒でございまして、言う事を悉く円高株安フィルターを掛けて報道された麿総裁の逆パターンではあるものの、債券市場との対話という意味では黒田総裁の対話は今後も前途多難と言うか前途遼遠というべきか、正直溝は相当深くなっていると思いますけどねえ。
ま、それが実体経済的に特段悪影響を与えなければ良いのですけれども、さすがに金利市場の動きが株式市場でも意識されるようになってくるとなりますと、もう少しその辺の溝を埋めにいく努力をした方が良いんじゃネーノとは思いますけどねえ。
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2013/05/24
○総裁会見は予想以上に延々と長期金利の質問でした
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2013/kk1305c.pdf
質疑を見たのですが予想以上に延々と長期金利の質問ばかりでナンジャソラという所です。
・ということで長期金利の質問を全部引用するのはどう見ても重複なのでちょっとだけ
最初の質疑でも引用しますか。
『(問) 長期金利の動向について伺います。長期金利は、足許では、1%を窺うような水準に上がっています。4
月に金融緩和を決める頃よりもむしろ上がっているということで、この理由をどう分析しているのか、決定会合でどのような議論があったのか、この急ピッチの上昇を抑えるために何か対応を考えているのかどうか、その辺りについてお聞かせ下さい。』
『(答) ご案内のように、長期金利は、5 月の初めにかけて一旦低下した後、欧米の長期金利の上昇や本邦株価の上昇、為替の円安進行などを背景に上昇しています。長期金利は――常にそうですが――、先行きの経済あるいは物価情勢に関する見通しに、債券を保有することに伴う様々なリスクに応じた、いわゆるリスク・プレミアムが加わって形成されています。』
>債券を保有することに伴う様々なリスクに応じた、いわゆるリスク・プレミアム
・・・・・・・・・・何か判じ物のような説明ですが。
『日本銀行の巨額の国債買入れには、このリスク・プレミアムを圧縮する効果があり、その効果は、今後買入れが進むにつれて強まっていくと考えています。従って、こうした「量的・質的金融緩和」による強力な金利低下圧力のもとで、長期金利が跳ね上がることは予想していません。』
『いずれにせよ、日本銀行は、「量的・質的金融緩和」の導入以降、これまで以上に、市場参加者と様々な形で意見交換を行うとともに、国債の買入れ方法の見直し、資金供給オペの機動的な実施など、積極的な対応を採ってきています。今後とも、債券市場の動きを十分点検し、市場参加者と密接な意見交換を行いながら、必要に応じて、買入れ頻度や買入れペース、買入れ対象の調整をするなど、政策効果の浸透を促すため、弾力的なオペ運営を行っていく方針です。』
はあそうですか。
で、次の質問。
『(問) 2 点伺います。足許では、住宅ローン金利等に少し上昇の兆しがありますが、長期金利の上昇が、実体経済、金融市場にどのような影響をもたらすと分析なさっているか教えて下さい。もう1
点は、4 月の緩和決定から50 日弱経ちますが、当時おっしゃっていた3 つの波及経路がどのように機能していると分析なさっているか、教えて下さい。』
『(答) 先程申し上げた通り、国債の金利も含めて、債券その他の金利は、先行きの景気や物価の見通しによる要素とリスク・プレミアムの要素があります。このリスク・プレミアムの要素を、日本銀行が年間50
兆円のペースで保有残高が増加するよう国債の買入れを行うことで、今後も圧縮していくわけです。』
どうも言ってることの意味が良く判りませんな。買入しなかったらもっと金利が上昇しとるんじゃヴォケ債券市場のデコスケどもはうるせえということなのですかね。
『そうした中で、長期金利が跳ね上がることはないと思います。ご指摘のように、足許で少し長期金利が上がっており、それを反映して住宅ローン金利等にも影響が出ていることはその通りだと思います。ただ、これが、今の時点で、実体経済に大きな影響を及ぼすとはみていません。先程来申し上げている通り、国債買入れについては、政策効果の浸透を促すために、弾力的なオペ運営を行っていくことで対応していきたいと思っています。』
国債買入に関しては後でオモロイ質疑があったので後ほど。
『3 つの波及経路については、従来から申し上げている通り、第1に、国債を含めて、量的・質的に非常に大規模な資産の買入れを行うことによって、金利全体、あるいは特に民間の色々なリスク・プレミアムにも働き掛ける――リスク資産の買入れも通じてリスク・プレミアムにも働き掛け、金利に下押し圧力を掛けていく――という波及経路は、引き続きありますし、非常に有意義だと思っています。』
ほうそうですか(棒)。
『第2 に、長期国債の保有残高を年間50 兆円のペースで増やしていくことについて、従来のように短期ゾーンに限ることなく、短いものから長いものまで含めて、弾力的に、バランスをとって買い入れていくことで、ポートフォリオ・リバランスを促進する効果もあると思っています。これは、毎月毎月、相当な規模のオペを行っていきますので、いわば毎月毎月、その効果は出てくると思っています。』
どう見ても短い方を集中的に買った方がイールドカーブが落ち着くんですけどねえ。
『第3 に、期待に働き掛ける効果については、かなり明確に、例えば物価上昇期待というものもありますし、株を含めた資産価格への期待の反映で上昇がみられることからいっても、その効果は十分にあると思っています。』
>例えば物価上昇期待というものもありますし
>例えば物価上昇期待というものもありますし
>例えば物価上昇期待というものもありますし
>例えば物価上昇期待というものもありますし
>例えば物価上昇期待というものもありますし
・・・・・・・・・・ほほう
・物価上昇期待とは????
ということでこの物価上昇期待に関してですが、誠に遺憾なことに誰も会見でツッコんでおりませんでして、冒頭説明の所でこういう発言がありました。
『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、前年のエネルギー関連や耐久消費財の動きの反動から、マイナスとなっています。予想物価上昇率については、家計や市場参加者に対する調査、マーケットの指標などにおいて、上昇を示唆する指標がみられています。』
でもってじゃあ金融経済月報で何か言及が詳しく有るのかと思ったのですが・・・・・・・・
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2013/gp1305.pdf(今月の月報)
『この間、予想物価上昇率については、上昇を示唆する指標がみられる(図表28)。』(5月金融経済月報本文14ページより)
ということで、本文の方で何か具体的な指標の話でもあるかと思ったら何もなく、では図表28には何があるかと言いますと、PDFファイルの47枚目になるのですけれども、これは展望レポートでも出している奴で・・・・・・・
『(資料) 内閣府「消費動向調査」、Consensus Economics「コンセンサス・フォーキャスト」、JCER「ESPフォーキャスト」、QUICK「QUICK月次調査(債券)」、Bloomberg』(5月金融経済月報図表28のページより)
ということで、消費動向調査の予想物価上昇率、コンセンサスフォーキャスト、クイックの月次サーベイにブルームバーグとあるのは物価連動国債のBEIでして、さて直近どの数字がどのくらい伸びたのかという解説でも本文にあるかと思ったのですが、グラフが付いているだけという実に不親切な設計になっておりますが、これはつまりBEI拡大が一番でかいので自作自演とか突っ込まれるのを防ごうということですねわかります(−−;)
・長期金利に「働きかける」というのは「制御する」ではありませんキタコレ
会見に戻りまして。
『(問) そもそも、中央銀行は、短期金利をコントロールすることはできますが、長期金利に対しては、働き掛けることはできても、やはり一種の飴細工のように、長期金利を動かすことは難しいのではないかとも思わせるようなことが、4
月4 日の緩和以降に起こっているような気がします。総裁は、長期金利を完全に抑え込むことができるとお考えでしょうか。』
『(答) 先程来申し上げているように、あるいは経済学の理論が教える通り、確かに、長期金利というものは、物価上昇期待や景気に対する期待によって左右される面が大きいわけです。このため、長期金利は、短期金利──例えばオーバーナイト金利──のように、中央銀行が完全にコントロールできるものとは違うというのは、その通りだと思います。』
『他方、世界の他の中央銀行も、短期金利がほとんどゼロに近づいた中で、短期の金利だけでなく長期の金利に働き掛けている──私どもの言い方では「量的・質的金融緩和」を行っている──わけです。これは、やはり、こうしたことを通じて、イールドカーブ全体に働き掛けようということであり、一定の効果は期待できます。』
『おっしゃるように、中央銀行が長期金利を短期金利のように全てコントロールできるのかといえば、
世界の中央銀行の例や経済理論が教える通り、そういうものではありませんが、働き掛ける効果はあるし、現にそれを多くの中央銀行はやっているということだと思います。』
という事で典型的な模範解答キタコレではあるのですが、確かオッサン最初長期金利を下げて云々って言ってたわけで、そこんところいいから一回ゴメンナサイしておかないと何時まで経っても債券市場との市場との対話が成立せんぞと思うのですけどねえ。
・水準では無くてボラである、なのかな???
まあそうでしょうけどね。
『(問) 長期金利について伺います。総裁が先程おっしゃったように、景気回復や物価上昇期待を反映した金利の上昇が、日銀によるリスク・プレミアムの押し下げよりも大きく出てきた場合──両者の切り分けは難しいとは思いますが──、じわじわと上がってくる部分まではコントロールしきれないので、そうした金利上昇は許容せざるを得ないということでしょうか。』
『(答) どのような言い方をしたらよいか分かりませんが、先程申し上げたように、いわば景気や物価上昇期待による金利上昇と、オペによるリスク・プレミアムの圧縮効果は、おっしゃるように分離するのがなかなか難しいわけです。そういう意味でも、先程別の方がおっしゃったような「良い金利上昇」または「悪い金利上昇」と簡単に割り切ることは難しいと思います。』
『いずれにしても、日本銀行として、「量的・質的金融緩和」の中で考えている3
つの波及経路のうちの1 番目の経路(長めの金利や資産価格のプレミアムへの働き掛け)は、依然として重要ですので、その面では引き続き尽力していきます。また、先程申し上げた通り、国債の買入れが進むにつれて、その効果は強まっていくと考えています。何を「自然な金利上昇」と言うのかは、なかなか難しいですが、私どもとしては、今申し上げた方針で臨むわけですし、ボラティリティが過度に拡大するようなことは極力回避しなければならないと思っています。』
ということで、昨日のシグナルオペでのアナウンスにも反映されたということですな。
・実質金利云々の部分
『(問) 現在の名目金利の上昇について伺います。金利は、実質金利で考えた場合でも上がっているとみているのか、あるいは、期待インフレ率の変化で実質金利は下がっているとみているのか、総裁はどのように認識していらっしゃいますか。』
『(答) 先程も申し上げた通り、数量的に明確に分別することは難しいと思いますが、実質金利は、おそらく下がっていると思います。』
・・・・・・・・・・これだけの質疑だったのですが大々的にヘッドラインになっていたのですなあっはっはorz
・資産買入ペースの前倒しを否定するのは正直ワケワカラン
『(問) 先程、オペの弾力的運用に言及されたので確認のためにお聞きします。「ペースの調整」という言葉の意味は、日銀が4
月4 日に、2 年程度で長期国債の保有額を倍にすると約束された、この約束の前倒しも含めて言っておられるのでしょうか。』
『(答) おっしゃったようなことは意味していません。あくまで、本年も来年も、年間50
兆円のペースで長期国債の保有残高を増加させていくことに変わりありません。』
えーっと、そうしますと下手に前倒しで買入をすると年度の後半に買入が減るだろうという事になりますので、却って年度後半の需給に対する不安を招きますから、前倒しの買入がやりにくくなるんですけど・・・・・・・・・・・・・
『しかし、もともと4 月4 日の決定に含まれていることですが、その中でも十分な弾力性をもってオペを実施し得るわけであり、その弾力性を活用して適切に対応していきたいということです。既にご覧になっている通り、月々の国債保有残高の増加は、単純に「50
兆円÷12 か月」ということではなく、弾力性がありますし、買い入れる国債の残存期間も、「平均7
年程度」となっていますが、4 月4 日の公表文の脚注にあるように、「6 年〜8
年程度」という幅もあります。オペについては、既に実施している通り、毎回のオペ金額を小さくして頻度を高めることもできます。4
月4 日の決定の中にこうした弾力性があり、執行部は、認められたその弾力性を活用していくということです。』
・・・・・・・・ということですが、どうもこの辺の説明っぷりを見ておりますとオペの技術論についてもしかしてまだ理解度がかなーり低いままなのかと思われる節がある訳で、ちょっと何だかなあという印象を受けたのはあたくしだけですかそうですか。
まあそんな所でありまする。
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2013/05/23
○決定会合レビューその1:市場雑談というかクレクレというかベンダーヘッドラインキタコレというか
えーっとですな、昨日はご案内の通り金融政策決定会合があったのですが、昨日の債券市場では寄りは下だったのですが前場引けに掛けて先物がホイホイ持ち直してプラス圏内。何で先物上がりますねんという風情でしたが皆さん???という感じで、ベンダーとかでは「金融政策決定会合で長期金利上昇に対応した何らかの施策が取られるとの期待もあるようで債券市場上昇」とか書かれていてナンジャソラと思っていた訳ですが・・・・・・・・
決定会合の結果は12時7分とかあっさり味時間に出ておりまして、当然ながら別に何も出なかった訳ですが、後場の寄りでいきなり先物が禿しく窓を開けて下で寄ったのにはさすがに爆笑の発作を禁じ得ませんでしたというかこういうのを大草原不可避状態というのかという所wwwwwwwwwwwwww
でまあまたまた崩れて10年0.90%とかになってナンジャソラとか思ってたらまた途中から猛然と切り返すとかわけでの判らん相場になって引け際には超長期が失速して終了とかもう何が何だかワカランチ会長ですが、中短期が終日確り目だったような希ガス。
イブニングでは黒田総裁の記者会見のヘッドラインで実質金利が下がっている云々とか、金利は跳ねあがらないでしょう云々とか多分その辺りだと思うのですが、そういうヘッドラインが出た所で先物が下がった(その後夕刻に下がったのは為替要因だと思うのだが)のも中々チャーミングで、まさに「クレクレは甘え」が債券市場に降りかかってくる(どうでも良いが今変換したら最初に「付利かかってくる」とか出たのですがorzorz)となという所で。
しかしまあ何ですな、昨日のベンダーヘッドラインを見たらMPM結果出た後には「長期金利に関して言及なし」とかわざわざ打たれちゃうし、会見のベンダーヘッドラインもまあわざわざ債券市場関係者が(#^ω^)ピキピキとなるようなのを選んでいるのが実にチャーミングでございまして、かつての麿時代にベンダーヘッドラインを見ながら暴れていた株式市場や為替市場の関係者諸氏から見ますと「思い知ったか債券市場」という所でしょうなあと考えますと実に味わいが深いというものでありまするorzorzorz
何かね、「実質金利は低下している」とか「長期金利上昇の影響大きくない」とか「巨額の国債買入はリスクプレミアム圧縮する効果がある」とか「長期金利働きかけに一定の効果ある」とかもうヘッドラインの打たれ方が一々債券市場の神経を逆なでするような代物になっているのが中々お洒落でして、どうも前後の文脈を見ますと一応色々と気は使っていて、この前みたいに長期金利上昇は自然とかそういうスットコドッコイの発言はしなかったようなのですが、そらまあベンダー的にはオモシロヘッドラインを打ちたくなるのが仕様(なお一部そうではないベンダーもあると思いますが)なので、そーゆー意味ではメディアの「異次元緩和VS債券市場」みたいなフレームアップ的報道バイアスによるヘッドラインリスクが債券市場的には今後も高い状態が続くんだろうなあ(債券が戻ったらそのヘッドラインリスク問題は終わりそうな気がするが)という所ではございます。
ということで、総裁会見ネタに関してはこれはちゃんと全文を読まないとベンダーバイアスに乗せられてしまう可能性があるので明日にしますぞなもしという所です。
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2013/05/21
○昨日も債券市場が下げやがったので少々
・下げに結果的に追い打ちっぽくなった総裁発言とな
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MN2GOO6JTSE801.html
債券は大幅下落、黒田総裁発言や株高受け−先物は一時1円近い下げに
更新日時: 2013/05/20 15:47 JST
『5月20日(ブルームバーグ):債券相場は大幅下落。前週末の米国債市場で長期金利が上昇したことや国内株高への警戒感に加えて、日本銀行の黒田東彦総裁の発言も売り材料となり、先物は一時1円近い下げ幅となった。東京先物市場で中心限月の6月物は、前週末比25銭安の142円44銭で始まり、142円50銭まで下げ幅を縮めた。その後は徐々に水準を切り下げる展開。午後の開始後に一段安となり、一時は95銭安まで急落。売買が一時停止となるサーキットブレーカー発動まであと5銭に迫った。結局は57銭安の142円12銭で引けた。』(上記URL先より)
まあ前週末の海外市場の展開からして債券下がります罠という所だったのですけれども、後場ヘコヘコ下げたのは結果的にはこのせいという事になっておりますが、実は最初「黒田総裁発言で下落」とかベンダーに出てたのですが「黒田総裁発言ってどこにあるのよ?」という感じだったりしてましてですな(汗)。
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPT9N0CV00V20130520
経済・物価の先行き見通し改善で金利が徐々に上昇していくのは当然─黒田日銀総裁=内閣府幹部
2013年 05月 20日 11:59 JST
『[東京 20日 ロイター]内閣府幹部によると、日銀の黒田東彦総裁は20日の月例経済報告等に関する関係閣僚会議で、経済・物価の先行き見通しの改善で金利が徐々に上昇していくのは当然だとの認識を示した。』(上記URLより)
まーこれに関してはちょうど(狙った訳でも無いのですが)昨日再度ご紹介したG7後の黒田総裁会見での発言とあまりカワランチ会長だったりすると思うのですけれども、まあつまりきゃりーがマーライオン相場になってシグナルオペとか実施した後になっても特にこの前の発言との認識に変化はありませんですという話をしている、とまあそういう風に債券市場が取ってしまうのは致し方ない所ではあります。
ただまあこれ関係閣僚会議での発言という事になっていますので、そーゆー意味では債券市場と関係ない所での金利上昇のいいわけけとしてのロジックでもあるので、全くその辺の認識が変わっていなくて黒田総裁的には株高円安が正義なので債券市場何でしたっけそれとかいう認識で全て走っているかというと必ずしもそうでは無いのじゃないの発言した場所が場所だけに・・・・・・・などとちょっと気休めを言ってみるテスト。
・・・・・・・とは言えですよ、例えば逆さ絵のおじさんが長期金利の上昇に際して「景気が改善して長期金利が上昇していくのは当然」(キリッ)とか言い出したら米国債券市場がどのようなゲロまみれ相場になるかと想像致しますと、まあ発言として出たのはどうなのかねえと思う次第。さっきのブルームバーグニュースの記事によりますと、
『日銀の黒田総裁は20日、月例経済報告の関係閣僚会議で「経済・物価の先行き見通しの改善によって徐々に金利が上昇していくのは当然」との見方を示した。一方、「日銀の巨額の国債買い入れによる強力な金利低下圧力の下で長期金利が大きく跳ね上がるとは考えていない。いずれにしても市場関係者と密接なやり取りを続けていく」とも述べた。議終了後、内閣府関係者が記者説明した。』(前掲ブルームバーグニュース記事URL先より、脱字と思われる部分は原文ママ)
ということのようですが、まあ確かに「徐々に上昇」するのは自然なのですが、足元の金利動向のどこがどう「徐々に金利が上昇」なのかちょっと小一時間問い詰めたい次第でございまして、先々週末のG7関連での発言でもピキピキ逝っていた債券市場の中の人たちとしてはそろそろドッカーンとなってくるレベルですが市場との対話とか大丈夫ですかとか思うのですけれども株式市場と為替市場との対話ができていれば金利市場なんてあんなものはどうでも良いんですねああそうですかすいませんですねえという風情でして、ネットだと会員向け記事なので引用できないのですが、日経クイックさんの所のNQNニュースでは「はしご外し」とか思いっ切りお怒りなコメントが出てたりして誠にアレでございますな。
つーかこんな発言何で公表するのとゆー所でいやまあ内閣府ですから債券市場がどうのこうのとかご存知ないのでしょうけれども、言うのも不用意だが公表するのも不用意にも程があるわと「内閣府関係者」に八つ当たりしたくなる所ではありますな、とほほのほ。
・まあしかし何ですな
4月4日に異次元緩和をローンチした時の総裁会見を蒸し返してみる。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2013/kk1304a.pdf
会見要旨本文10ページ目より。
『2点目は、市場参加者との対話についてです。これは、従来から金融市場局を中心に色々な形でやっているわけですが、今回の「量的・質的緩和」が、これまでと次元の違う規模であり質であるため、スムーズにオペレーションを行うには、かなり幅広い関係者から、単にオペの状況だけでなく、もう少し広く金融資本市場の動向等も含めて対話をしていく必要があるだろうということです。そういう形で、市場関係者の協力を得る必要もあるし、また、市場に無理なプレッシャーを与えることなくスムーズに「量的・質的緩和」をする必要があるということで、かなり幅広い相手と、幅広いイシューについて、より高いレベルで対話することを考えています。』
「市場関係者の協力を得る必要もあるし」「市場に無理なプレッシャーを与えることなくスムーズに「量的・質的緩和」をする必要がある」との事でございましたが、その協力するのって債券市場なんですけれどもど〜見ても債券市場とのコミュニケーション的には梯子外しとしか思えませんが何かというような大変に素敵な発言を(先週の金利急上昇を受けても)なさるとは誠に結構なお話ではございますなあと存じますが、まー救いがあるとすれば今週の金融政策決定会合での黒田総裁発言で少々梯子外し的な発言が出ても昨日の相場で織り込んだかもしれませんので、ちょっとだけ普通の発言(「経済実態を逸脱した急激な金利上昇は問題だ」くらいのごくごく普通の話)をすれば好感するかもしれませんですねという所ですかねえ。良く判らんけどさ。
ちなみに、昨日は4月12日の講演を引用しましたが、12日と言えば緩和打ち込んだ後に金利が上昇しちゃった後だったりしまして、そういう意味では4日の会見と12日の講演での表現の違いというのも面白いのですよね。つまり金融緩和の波及効果の説明なんですけどね。
上記URLの4月4日会見要旨本文7ページ目より。
『これは、先程も申し上げたように、長めの金利をさらに下げていく、あるいは資産価格のプレミアムに働きかけていくことによって、より十分あるいは迅速に資金需要に対応できるようになり、その結果、これまでよりも、当然、資金需要が出てくるわけです。このような形で、かなり直接的にイールドカーブ全体を下げ、リスクプレミアムを縮小していく効果があります。』
「長めの金利をさらに下げていく」、「かなり直接的にイールドカーブ全体を下げ」ですなあ。
一方で10年金利が0.5%後半で推移してた(12日に0.60%を抜けましたが)4月12日の講演ではこうなっております。講演本文の7ページ目より。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/data/ko130412a1.pdf
『第1に、長期国債やETF、J−REITの買入れは、長めの金利の低下を促し、資産価格のプレミアムに働きかける効果を持ちます。これが、資金調達コストの低下を通じて、企業などの資金需要を喚起すると考えられます。』(上記URLの4月12日黒田総裁講演より)
既にこの時点で金利が上昇しているのでしらっと「長めの金利の低下を促し」となっておりますが、まあ元々決定会合での公表文書の方では
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/k130404a.pdf
『イールドカーブ全体の金利低下を促す観点から、長期国債の保有残高が年間約50兆円に相当するペースで増加するよう買入れを行う。』
『今回決定した「量的・質的金融緩和」は、これを裏打ちする施策として、長めの金利や資産価格などを通じた波及ルートに加え、市場や経済主体の期待を抜本的に転換させる効果が期待できる。』(以上上記URLの4月4日金融政策決定会合声明文より)
ということで、イールドカーブ全体に対して金利低下を「促す」とは言ってますが下げるとは言ってませんよねとか、政策の波及効果に関しても「長めの金利を通じた波及ルート」とは言ってますが下げるとは言ってませんよねとか言い逃れができる日銀の作文力恐るべしとしか申し上げようがない所ではあるのですが、まあそうは言いましても4日の黒田総裁の大見得からしたら梯子外しやがったなコノヤローという所でありまして、まあどこまでそのロジックで進んで行くのかを冷え冷えとした目で眺めたいと存じます。
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2013/05/14
・(#^ω^)ピキピキピキ
黒田総裁のG7終了後の会見内容がアップされました。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2013/kk1305b.pdf
黒田総裁記者会見要旨 (5月11日)
―― G7 終了後の麻生副総理・黒田総裁 共同記者会見における総裁発言要旨
『【問】円安が進んで日本では株高になって結果的に資金が債券から株に移るということが今起こっているような気がします。そうなると、日本では、長期金利の上昇が起こるだろうと思っているのですが、それは金融緩和の効果をある程度削ぐ可能性も出てくると思うのですが、こういう資金の流れが債券売りの加速につながって長期金利が上昇した場合、その悪影響というのが懸念されると思うのですが、今の時点でどうなのでしょうか。特に金曜日、債券売りが相当加速したようなので、そういう懸念が今強まっているのかどうかも含めてお願いします。』
グレートローテーションとかウソコケとか思いますが、まあそれはそれとしまして金曜日に債券が大幅に下落した事を踏まえての質問とわざわざ断っての質問。つーかこれ質問のマクラにわざわざグレートローテーションみたいな威勢の良いことを言ってるのって記者の引っ掛けだろ先生怒らないから正直に答えなさいという所ですが。
『【答】先ほど申し上げた通り、「量的・質的金融緩和」が実体経済に与える影響については、3つのチャネルがあると考えています。そのうち、2番目の「ポートフォリオ・リバランス効果」については、確かに国債から他の資産へあるいは貸出へシフトすることが考えられるわけで、それは既に起こっていると思います。』
あいやー。
『一方、日本銀行は、今後、年間50 兆円のペースで国債の保有残高を増やしていくわけで、それだけ国債を市場から買い取っていくということです。私どもは、短期的なボラティリティの高まりという形で価格が乱高下したことに対しては、オペのやり方を若干調整し、ボラティリティも低下してきており、長期金利が跳ねるようなことは予想していません。』
いやだから金曜日にボラが上昇して長期金利が10bpも上昇した事についての質問なんですけどねえ。大昔みたいに長期金利が3%とか有る時の0.1%と違って金利の絶対水準がここまで低くなっている中での10bpってインパクトでかいんですけれども黒田さんその辺の感覚が無いという事でしょうかと嫌味の一つも申し上げたくなる次第。
『もちろん、長い目でみて、経済が成長し、特に物価上昇率が2%に向けて徐々に上昇していく中で、名目金利が若干上がっていく可能性はあると思いますが、それは、ある意味で自然なことです。当面は、「量的・質的金融緩和」によって長期金利が跳ねることはないだろうと思っています。』
いやだから長い目で見てとかいう話はしちゃダメなんよこういう時に・・・・・・・・
つーことでございまして、長期金利がこの辺りの水準でうだうだする中で来週の金融政策決定会合を迎えた場合、この前の展望レポートにおける会見での記者様のツッコミ振りから勘案致しますと全力で長期金利上昇の1点に絞って集中砲撃をされるのが火を見るより明らかでありまして、その際にオッペケペーな回答をしてどうせ株が上がって為替が円安になっていたら債券市場なんてどうでも良いんですよねという債券市場を更にピキピキさせることの無いように某局におかれましては想定問答集の作り込みをよろしくお願い申し上げたい所ではございます。
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2013/05/13
○しかしそんな中で黒田総裁の(債券市場的に)脱力発言ががががががが
でまあそんなオッペケペーな債券市場でありました金曜の引け後ではございましたが、夜になりまして黒田総裁が英国で発言したヘッドラインが出ていまして、TRADER'S WEB FXさんの所でちょうど良いのが有りましたので引用。
http://www.traderswebfx.jp/news/default.aspx?newscode=386630&dispmode=list#newshead
05/10 20:07
【発言】黒田日銀総裁「債券市場のボラティリティは落ち着いてきている」
・・・・・・・・・まあ大体引用のような感じのヘッドラインがまさに出ていたのですけれども、円安に振れて債券先物が1円下がって10年の金利が0.1%上昇したその日の引け後の発言が「債券市場のボラティリティは落ち着いてきている」ですかそうですかorzorzorz
まーこーゆー発言を見せられますとどうせ黒田総裁は為替の人ですから為替が円安になって株が上昇すれば債券市場なんぞ知ったことかというご認識であらさられまして、国債管理政策とかやっていないだけの事はありますなあなどと嫌味の一つも申し上げたくなる所ではございます。
ブルームバーグニュースの報道だとこんな感じ(これはG7後に出ていた方のニュース)。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MMKLJQ6JTSER01.html
麻生財務相:G7で円安批判なし−「緩和に理解深まった」と黒田総裁
更新日時: 2013/05/12 00:28 JST
円安批判なしとの事で盛り上がっていますが、次のネタのバーナンキ講演とか見ていると本当にそうなのかというのは実は少々アレな気もするのですがその話はさて置きまして、黒田総裁様の長期金利に対するコメントはこう報道されています。
『一方、総裁は国内長期金利の動向について「オペのやり方を若干調整しボラティリティは低下してきている」と指摘。「当面は量的・質的金融緩和によって長期金利が上がるということはないだろう」との見方を示した。』(上記URLより)
>当面は量的・質的金融緩和によって長期金利が上がるということはないだろう
>当面は量的・質的金融緩和によって長期金利が上がるということはないだろう
>当面は量的・質的金融緩和によって長期金利が上がるということはないだろう
・・・・・・・・・・・・・ほほう。量的質的金融緩和の実施前の4月3日から10年とか20年の金利って0.15%位平気で上昇している(もはや4日の引け水準と比較すると泣けるので比較しない)のですけれども、さすが国債管理政策にご興味の無い黒田総裁様だけの事はありまして長期金利の0.15%なんぞは誤差の範囲内ということですかそうですかいやまあ10年0.4%でも0.5%でも0.7%でも低金利で有ることは変わりないですもんねえ(白目)。
更にロイターのニュースがもうちと詳しい。
http://jp.reuters.com/article/jpG20/idJPTK067398320130510?sp=true
UPDATE1: 為替レートは基本的に市場で決まる、水準や動きにコメントしない=黒田日銀総裁
2013年 05月 10日 21:17 JST
5月10日の21:17JSTですのでまあ出たての時と同じような感じだと思いますが。
『円安で株高が進んでいる一方で長期金利が上昇していることに対し、日銀として金融調節上の工夫の必要があると思うか、との質問には「国債の金利については基本的に低い水準で推移している。量的・質的緩和の発表直後はややボラティリティが高まって上下に振れた。その後、市場関係者との対話やそうした対話で出た意見を踏まえ、オペの方法を調整した結果、市場はだんだん落ち着いてきている」と述べた。』(上記URLより)
・・・・・・・・ということでして、別に長期金利の上昇なんぞ知った事かヴォケというような発言をした訳では無さそうですけれども、まあ長期金利が0.1%上昇した日にこういう認識を示されますとちょっと何だかなあという所である点はカワランチ会長。
でまあどうでも良いのですけれども、この前の黒田総裁の定例記者会見見てても思ったのですけれども、今回のこの黒田発言の報道されっぷりとか見ておりますと、何か記者の皆さん既にハネムーンモードからすっかり脱却してツッコミモードになってきてるからこそ、黒田総裁の発言が債券相場の中の人が見たら(#^ω^)ピキピキってなりそうな書かれ方になっているのではないか、とまあ斯様に思った週末のひとときなのでございましたとさ。
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2013/05/09
○虫干しネタで今さらですが定例会見とついでに先日の会見を
いまさらですが定例記者会見
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2013/kk1304d.pdf
・実は今回の会見時間の方が長かったという事実
前回の政策変更時の会見テキストがこちら
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2013/kk1304a.pdf
良く良く比較しますと、会見時間が前回は約60分で今回は約70分となっておりまして、時間が長くなっているのがチャーミングでありまして、会見テキストに関してもこの時間を反映してページ数が1ページ増えているのですよね。
まあそれだけ今回の展望レポートに関するツッコミと、新しい金融政策導入後に改めて色々と考えてみたらツッコミどころが出ていますなあという事だったんでしょうなあと思いますし、質問が何気に嫌味成分の入ったものが増えてきているのが中々チャーミングだと思いまする。
では最初の質疑から。
・予想は政策効果を全部込み込みですねわかります
『(問) まず、今回の展望レポートで2015年度の見通しを新たに示されましたが、予想する期間が長くなればなるほど不確実性が高まると思います。この点を踏まえて、あえて今回2015年度の見通しを公表された理由をご説明下さい。2点目ですが、2015年度の消費者物価上昇率の数字をみると、ゼロ%台の見通しの委員がいるなど、かなりバラつきがあります。加えて、2015年度の数字は、民間の予想などに比べても、少し強いという感じもしますが、この辺のご見解をお聞かせ下さい。』
まあ何気に質疑応答を見ると嫌味な質問が多かったりしますが。
『(答) 展望レポートの見通し期間を2015年度まで1年間延長した理由は、基本的に、金融政策の効果が実体経済、特に物価に波及していくには、ある程度のタイムラグがあるためです。』
つまり自分の政策効果を織り込みましたというのを予想に多く反映させたいんですねわかります。
『従って、各国の中央銀行は、経済・物価の先行き予測を行いながら金融政策を運営しています。海外の中央銀行の状況をみると、現状では、3年程度の見通しを作成・公表しているところが多いわけです。こうした海外の状況なども考慮しながら、特に、経済・物価の先行きに対する日本銀行の認識を分かりやすく示す観点から、2015年度までの見通しを、従来より半年前倒しで公表し、見通し期間を3年程度にしたわけです。』
たぶんその場で説明されるとふんふんと頷きながら聞いてしまうのですが、こうやって後日文章になったのを見ると意味が分からんというか、「見通しを長くすることによって自分たちの都合の良い均衡点を示しやすくしている」というだけのようにしか読めないのは読み方にフィルターが入っていますかそうですかすいませんねえ。
『次に、物価見通しのバラつきについてです。確かに、将来になるにつれて、ある程度不確実性が増すことは事実です。他方、そういったことも踏まえ、先程申し上げたような、2015年度までの3年間の見通しを示したわけです。私どもとしては、先に決定した「量的・質的金融緩和」が直接的にイールド・カーブやリスクプレミアムに働き掛けるチャネル、いわゆるポートフォリオ・リバランスを通じてリスク資産への投資が進む、あるいは貸出が増えるというチャネル、市場あるいは経済主体に対して「期待」の転換を図るチャネル、という3つのチャネルを想定しているわけです。』
『それらを通じて、実体経済が好転していくと、需給ギャップが縮小し、さらには期待物価上昇率も上がっていくということで、本日公表した見通し──2015年度には2%程度の物価上昇率に達するという見通し──を得たわけです。』
ということで、つまりは実施した政策が全部効果を発揮したらこうなるという「予想」になっているという話になりましたよ今回の展望レポートはという話だということですねわかります。
同じ質問がもう一度。
『(問) 2点教えて下さい。今回公表された14年度、15年度の物価見通しは、今、市場が持っている予測値からは若干の乖離があり、日銀の方が強気の予測を出しているように見受けられますが、これについてどう受け止めていらっしゃいますか。(後半は次に)』
『(答) 第1点については、先程申し上げたように、色々なチャネルを通じた効果波及も踏まえ、物価の先行きについて私どもの見通しを作ったわけですが、潜在成長率を上回る成長が続くことでGDPギャップが縮小していく、あるいはポジティブになっていく過程で、当然、物価上昇率が上がってきます。』
>効果波及も踏まえ、物価の先行きについて私どもの見通しを作ったわけですが
>効果波及も踏まえ、物価の先行きについて私どもの見通しを作ったわけですが
>効果波及も踏まえ、物価の先行きについて私どもの見通しを作ったわけですが
ふむ。
『もう1つは、期待物価上昇率が上昇すると、GDPギャップと物価上昇率の関係を示す、いわゆるフィリップス・カーブもシフトします。この需給ギャップが縮小していくことと、期待物価上昇率が上がっていくことの両面から、消費者物価上昇率が次第に上昇していき、2015年度には2%程度に達するという見通しを持ったわけです。(以下割愛)』
つまり政策の波及効果が全部効いて、期待物価上昇率も上昇すると、フィリップスカーブが上方にシフトするに違いないから2%達成する、とまあそういう「見通し」になっておられるというお話なのですが、まあその辺の波及効果をどの程度織り込んだ結果がこの数字になったのかは当然お見せできないでしょうなあというのは分かるのですけれども、その辺の効果が必ずしも全部効かないという場合にさてどうなるんでしょ。
・異次元緩和の効果説明キタコレ
さっきの質問の後半から。
『(問)(前半割愛)次に、4日の「量的・質的金融緩和」の導入から2週間少し経っています。その効果波及ルートが3つありますが、そういった効果がみられるとお考えになっているか、あるいは副作用も含めて、この1か月弱を総括して頂きたいと思います。』
『(答)(前半割愛)2点目の効果が波及する3つのチャネルについてです。金利あるいはプレミアムへの働き掛けという面では、先日の政策発表後、一時、長期国債市場でボラティリティが少し高まった傾向がありましたが、市場関係者との対話を通じて――例えば、1回の入札量を減らし入札の回数を増やすこと等――、次第にボラティリティも下がってきており、またプレミアムは明らかに安定しています。』
えーっと、単に市場の流動性が下がって投資家の売買が減っただけで今週入っても何だかなあという感じなんですけどね。中期が落ち着いたかと思うと長い所と一緒になって下がってみたり微妙ではあるんですが。つーか「プレミアムは明らかに安定」というプレミアムというのの意味がワカランチ会長なのですが。
『そういった市場への直接の働き掛けも効いていると思います。』
ほほう(棒)。まあそもそも国債バカスカ買うというオペレーションは債券市場に対して思いっ切り介入しますよという話ですので、流動性がヘロヘロになるとか市場機能が低下しますよというのは端から政策の効果であり副作用ではあるのですが。
『次に、最も明確であるのはポートフォリオ・リバランス効果です。これは、為替、株あるいは金融機関の貸出についても効果がみられると思います。』
ほう!!!!
まあ貸出まで効果が見られるとか勇み足でしょと思いますが、全力で為替と株を見ているというのは把握致しましたぞなもし。
『3つ目の「期待」については――以前も申し上げたと思いますが――、直接的には、物価上昇期待がどうなっているかですが、色々な指標をみても、物価上昇期待が高まる傾向がみられます。経済回復の期待という意味では、色々な指標をみると企業や消費者のマインドも向上しています。』
ほっほー。
『このように、3つのチャネルについて、予想された効果が出てきていると思います。そして一番重要なことは、これらを通じて、実体経済が、先程申し上げたように、本年央頃にかけて緩やかな回復過程に入り、今後、潜在成長率を上回る成長が13年度、14年度、15年度と続くことであると思います。』
為替と株価から前向きの循環メカニズムですかそうですか・・・・・・・・
・更に見通しに関する質問ですが
大体質疑の多くがこの件に費やされているのですけれども、質疑を一丁引用しておきますね。
『(問) 2点伺います。日本銀行は、2%の物価安定目標にコミットしていますが、従来の展望レポートは、各委員の「見通し」という形で集約されており、「予想」という色彩が非常に強かったのですが、今回の展望レポートは、そういったコミットメントのもとで、「見通し」というより「目標」に近いものになったのではないか、つまり、展望レポートの性格が変化したのではないかとの見方もあります。その点について、どのようにみておられるのでしょうか。』
後日冷静になってから読むとまた味わいが違うなあなどとネタを後回しにしたエクスキューズをする積りでは無いのですが(笑)、先ほどの質疑にあるように、そもそも先行きの予想が「政策効果を全力で織り込んだ内容」という説明になっている以上、この質問はもうその通り以外の何物でもないので、実は「先ほど政策効果を織り込んでとおっしゃいましたが、政策効果をどの程度定量的に織り込んだ結果この数字になったのでしょうか」と聞いた方が面白かったのかもしれません。と言ってもまあその場だと気が付かなそうに思えるし、出た直後とかでもスルーするかも。
『もう1点は、展望レポートの見通し期間を延長することによって――先程の質問にもあったように、不確実性は高まると思いますが――、仮に、見通しが外れることになった場合、やはり日本銀行の出す予測・見通しの信頼性またはその政策の信頼性に影響を与える恐れがあるのではないかと思います。そのリスクをどのように考えておられるのか、お聞かせ下さい。』
そもそも政策効果を全力で織り込んでいるのでそのリスクはありますがさて・・・・・・
『(答) 私は、「見通し」が「目標」になったとか、今回、展望レポートの性格が特に変わったとは思っていません。この展望レポート全体をご覧になって頂ければ分かるように、もともと、政府あるいは日本銀行といった政策主体の見通しというものは、自らが行う政策も踏まえて作られていますので、市場の見通しと必ずしも一致するわけではないと思います。』
意外に清々しく説明しますな(^^)。
『しかし、展望レポートにある通り、これは、「目標」を示しているのではなく、「見通し」を示していることに変わりはありません。そういった意味で、今回、この展望レポートの性格が変わったわけではなく、従来から、政府や中央銀行の見通しというものは、自己の政策も含めた見通しになっているということです。』
つまり従来から願望レポートだったけれども今回は強力な政策を実施したのでより強力な願望レポートになりましたという事ですねわかります。
・・・・・・・・・まあそうきっぱり言われますとはあそうですかという所ですが、そもそものベースラインがどういう状況なのかとかいう話は中ではしているのでしょうけれども、出てきた結果の方でさっぱりワカランチ会長であるという状況ですと、ベースラインをどう分析したからこういう政策を実施したという話がさっぱり見えてこないので、そもそも政策の反応関数が判らんですし、政策が適切なのか足りないのかやり過ぎなのかの目安も判らんがなという風には思うのでありますけどねえ。
『展望レポートの見通し期間を2015年度までの3年間としたのは、先程も申し上げた通り、金融政策の効果が波及するまでのタイムラグや、諸外国の中央銀行の例をみながら決定したわけで、これ自体は自然なことだと思います。見通し期間を延ばすと、不確実性が高まり、見通しの幅が拡がる傾向があることは事実ですが、必ずそうなるかというと、そうではないと思います。』
ほほう。
『例えば、国際機関などが行う経済見通しも、短期から長期まで色々ありますが、長期になると、色々な機関の見通しが拡がって分散するかというと、必ずしもそうではありません。むしろ、ある程度の長い期間になると、色々な機関の見通しが収斂する場合もあります。』
それって単にDSGEをベースにしていて「長期的には均衡点に収束する」というモデルが前提になっているからじゃないでしょうか。で、今回の政策というのはフィリップスカーブの上方シフトを前提にしているように、そもそもの均衡点の位置を変えようという政策なのですから、その政策が効くのか効かないのかによって話が全然変わってきますわな。
『従って、見通し期間を2年から3年にすると、必ず見通しの幅が拡がるわけでもないと思います。確かに、一般的には、将来になるほど不確実性が高まったり、カウントされる要素が多くなってくることは事実だと思いますが、そのことと、見通しの信頼性や幅が拡がることとは、必ずしも一致した話ではなく、場合によると思います。』
まあ場合によるちゃあその通りですが、今回均衡点を変えようという政策を実施する中で見通し期間を長くするというのはやはり質問者が突っ込むような意図がありますよねと言われますわなあと思うのでありますた。
・中々嫌味な質問は幾つかあるのですけれどもこんなのでも
『(問) 2点伺います。見通し期間を延ばした理由について、タイムラグの話や、外国の例をみてグローバルに合わせたという話をしておられますが、従来の2年という見通し期間では、コミットしている「2%」という数字が出せないので、それに近い数字を出すために2015年度の見通しも出したのではないか、という気がしなくもありません。例えば、政治サイド――政府の経済財政諮問会議でも2%の道筋を必ず示せと言われていますので――の意向も意識して、今回、見通し期間を延ばしたのかどうか、お伺いします。(後半割愛)』
ワロタ。
『(答) 最初の点は、先程申し上げた通り、諸外国の例やタイムラグなどを考慮しながら、このようにしたものです。日本銀行も、以前は、1年の見通しでしたが、やはり1年では短か過ぎるということで2年に延ばしたわけです。それを、今回は半年前倒しで3年としました。これは、タイムラグの問題や諸外国の中央銀行の例に倣って、しかも透明性を高めるという観点から実施したことであり、政府からの圧力といったものは全くありません。(後半割愛)』
ほほう(^^)。
・信じる者は救われる
そもそも「前向きの循環メカニズム」は起きるのかという問いもあったりする(^^)。
『(問) 先程の民間予測と日銀の展望レポートにおける見通しとのギャップの話ともオーバーラップしますが、足許の企業の設備投資マインドや家計の所得状況などを考えると――例えば、需要があっても海外で投資して海外生産するとか、所得を上げるにしても一時金で上げるなど――、展望レポートに書かれている「生産・所得・支出の好循環」にはかなり距離があるイメージがあります。今回、レポートを作成するに当たって、総裁、副総裁や審議委員の方々が、その「生産・所得・支出の好循環」を十分見込めると判断されたのは何故でしょうか。』
そらそうだ。
『(答) お考え頂きたいのは、「量的・質的金融緩和」を決めたのは4月4日だということです。まだ1か月も経たないうちに、今おっしゃった賃金や雇用、生産が目に見えて増えることは、普通はないわけです。』
ふむ。
『私どもは、あくまでも、2%の「物価安定の目標」を、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現するよう、現在の「量的・質的金融緩和」を続けていきます。そうした中で、2013年度から2015年度までを見渡すと、そういった好循環も当然期待できますし、おそらくどのような経済モデルで計算しても、物価だけ上がって賃金が上がらないということにはならないと思います。』
英国経済ェ・・・・・・・・・・・というか「当然期待できる」という答えだとそもそも質問者の質問に対する答えになっておりませんですな。
『おっしゃったように、確かに設備投資はまだ強い動きは出ていませんが、例えば、消費は底堅く推移しており、足許底堅さを増しつつあります。また、雇用や賃金についても、色々な前向きの動きもみられています。生産も、最新のデータをみると、明らかにプラスになってきています。こうした前向きの動きが色々とみられる中で、4月4日に「量的・質的金融緩和」という政策を採り、今後、2015年度までを展望した時に、こういった成長率や消費者物価上昇率が予想されるということです。その萌芽はもちろん見えているわけですが、本格的に景気回復が明らかになってくるのは、先程申し上げた通り、本年の年央以降ということかと思います。』
ということで、前向きの循環メカニズムが必ず働くので必ず効果が出ますという話ですので、皆様におかれましても信心が大事であるということですよ、いいですね!!
・実は量じゃなくて質じゃないのかという質問
これは面白い質問なので最後にネタを。
『(問) 量的緩和について、黒田総裁がどのぐらい信じていらっしゃるかを確認させて頂きたいと思います。この20年間、マネタリーベースは大体4〜5倍に増えていると思いますが、この間、消費者物価および名目GDPはほぼ横ばいだったと思います。これを単純にみると、マネタリーベースを増やしても成長率や物価にはあまり働き掛けられないことが読み取れると思うのですが、それでも「デフレは貨幣的現象」だとお考えなのか。岩田副総裁は、そのようにおっしゃっているわけですが、黒田総裁も同じようなお考えなのでしょうか。』
で、この次のツッコミが中々宜しい。
『あるいは、先程ご説明にあった3つのチャンネルはよくみると、「量的」というよりもむしろ「質的」な方面に働き掛けるルートとみえるのですが、実は、「量的・質的緩和」というのは、順番が逆で、「質的・量的緩和」だったのか、その辺についてお考えをお聞かせ下さい。』
で、お答え。
『(答) 日本銀行は過去に量的緩和を実施していましたし、私どもが「量的・質的金融緩和」を決定する前に「包括緩和」という考え方を採っていましたが、その際も、実は、量的な面と質的な面とが両方が入っていたわけです。また、米国では、QE1、2、3と実施しており、いずれも量的な面の拡大もありますが、どういった資産を購入するかという質的な面との両方を持っています。英語ではQuantitative
Easing(量的緩和)と言われますが、量的・質的の両面を持っています。今回、私どもが決定した「量的・質的金融緩和」は、単純にマネタリーベースを増やすだけではなく、その増やし方において、長期国債を期間の長いところまで含めて購入する、あるいはリスク資産を購入する、そういった質的な面と、量的にも大きな緩和をするという両面があります。』
『最近の欧米の金融政策も、量的緩和あるいは非伝統的金融緩和と言われますが、中身をみれば、やはり、量的な面と質的な面と両面あるということです。今回の私どもの政策もそうであり、それがいわば相乗的な効果をもって、実体経済により効果的に効いてくると考えています。』
まあこう説明するしかないのですが、では量的緩和の方の定量的効果についてはどうなんでしょうという質問に対しては答えていない(まあ答えられませんが)のがチャーミングでありまして、そもそも量的な部分の定量的な効果に対してちゃんと計測しているのであれば、中原伸之元審議委員がMPMの直後に指摘したように「これは量の出し過ぎ」という議論が出てくるはずなのですが木久扇先生ェ・・・・・・・
とまあそんな感じで簡単にと思ったけれどもやはり会見の量がそこそこありましたので長くなりました。
・まあどうでもよいがついでにADB総会関連の会見から
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2013/kk1305a.pdf
ASEAN+3終了後の麻生副総理・黒田総裁 共同記者会見における総裁発言要旨
『【問】麻生大臣と黒田総裁にお伺いします。ASEAN+3の声明には、「世界的な金融緩和から地域に生じる意図せざる負の副作用にも引き続き警戒」という下りが入ったわけなのですが、今回の会合で、世界的な金融緩和の副作用、特にアジアの新興国に対する副作用について、どのような議論がなされたのか。それから、それに対する政策対応について、各国からどういう話があったのか、お伺いしたいと思います。』
『【答】今、ご指摘があったように、ASEAN+3の財務大臣・中央銀行総裁会議後のコミュニケの中でも、最近の経済・金融の状況について、かなり詳しく記されてあります。私からは、ちょうど1カ月前に、日本銀行の政策委員会が金融政策決定会合で決めた「量的・質的金融緩和」の内容、その目的、そして、今後、見通される経済、特に物価の動向等について詳しく説明しました。この金融緩和が、15年続いたデフレからの脱却を目指していることを強く主張し、この点については理解が得られたと思います。また、世界の先進国における大幅な金融緩和は、それぞれの国の経済に必要なことをしているわけです。そうした先進国の金融緩和が新興国市場等に思わぬ副作用を与えないか、十分注視していく必要があることについて、G20でも、今回のASEAN+3の財務大臣・中央銀行総裁会議でも、同様の話が出たということです。』
ということで特段新しい話は無いのですけれども、展望レポートでも輸入価格の上昇を物価上昇のメカニズムの中に加えていたりしてますし、先ほどの定例会見の方でも市場の反応として「為替」というのを思いっきり発言しているように、まあ円安ヒャッハーで資産価格の上昇による資産効果での景気刺激と輸入インフレがドライブしないとフィリップスカーブって中々上方シフトしない(というか資産価格が上昇してもフィリップスカーブが上方シフトするのかというと米国のこれまでの物価動向と資産市場の関係を見ているとそうは思えませんけど)と思われるので、本当はもっと円安ドライブを掛けたい所だと思うのですが、まあどう見てもそれを表立っていう事はご法度になっていますなあというのだけは把握しました。
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2013/04/16
○支店長会議とか信託大会での総裁挨拶とか
支店長会議でのあいさつ
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/siten1304.htm/
『(1)わが国経済は下げ止まっており、持ち直しに向かう動きもみられている。先行きは、堅調な国内需要と海外経済の成長率の高まりを背景に、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。
(2)物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、足もと前年の耐久消費財の動きの反動から、小幅のマイナスとなっているが、予想物価上昇率の上昇を示唆する指標がみられる。』
面倒なので以下引用割愛しますが(手抜き)、まあ明るい話をしたいのは分かりますし異次元金融政策の波及効果の話って結局気合の話ですから期待ルートの話を強調したいのは判るのですが、予想物価上昇率の上昇を示唆云々という話をしちゃいますと上記の時間軸政策という観点からしますと逆に働きまして名目金利的にはどうなのよと思うのですが、予想物価上昇率が上昇するから実質金利が下がるので非金融部門の資金需要が喚起されます(キリッ)って話になるんだろうなあorzorzとゆー所ではあります。
信託大会でのあいさつ
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/data/ko130415a.pdf
まあ特段変わったお話もないのですけれども、金融政策の効果に関してはいつもの話。
『日本銀行は、今月初の金融政策決定会合において、「量的・質的金融緩和」を導入しました。日本銀行は、消費者物価の前年比上昇率2%の「物価安定の目標」を、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現します。「量的・質的金融緩和」は、これを裏打ちする施策として、長めの金利や資産価格などを通じた波及ルートに加え、市場や経済主体の期待を抜本的に転換させる効果が期待できます。これらは、実体経済や金融市場に表れ始めた前向きな動きを後押しするとともに、高まりつつある予想物価上昇率を上昇させ、日本経済を、15
年近く続いたデフレからの脱却に導くものと考えています。』
ということで相変わらず気合のメカニズムの話しかないのでありますが、まあただの挨拶だから内容がこの程度になる、ということであってもうちょっとちゃんとした時には詳しい波及ルートの説明があるものと期待する事を止まないものであります(棒読み)。
つーかさ、確かにあたくしも麿総裁時代には「気合とハッタリが足りない」という悪態を何度もついたのですけれども、世の中物は程度というものがありまして、じゃあ気合とハッタリがあれば他は要らないのかというと、そもそも気合とハッタリというのはそれを裏付ける物が無いとただの寝言のレベルであり、それが嵩じるとはいはいおじいちゃん満州の話はさっきもしたでしょお薬の時間ですよ状態になるだけの話でございまして、この気合とハッタリのメカニズムはもう判ったので、じゃあこの金融政策効果がどういうメカニズムで実体経済や物価に対して影響を与えるのかという話についてご説明頂きませんと、そもそも金融政策の説明変数が判らんので市場が考える時間軸なども設定しようがないのですよね。
ま、足元ではそういう詳細説明をするような場がまだ無かったのでその辺の説明はネグっているだけであって、その辺りの詳細説明に関しても展望レポートなどで示されて次回の決定会合後の会見などを通じて詳細に情報発信されるでしょうし、経済財政諮問会議での説明などもあるんでしょうなあと大いに期待するあたくしでございます(超棒読み)。
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2013/04/15
○黒田総裁講演より:何つーかただの根性論しかないのですが・・・・・・・
本石町日記さんによりますと「黒田節」というようですな(^^)。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/data/ko130412a1.pdf
量的・質的金融緩和
── 読売国際経済懇話会における講演 ──
『日本銀行の黒田でございます。読売国際経済懇話会でお話しする機会を賜り、誠に光栄に存じます。本席は、私にとって総裁就任後初めての講演です。本日は、先週決定した「量的・質的金融緩和」についてお話しします。』
ということで就任後初講演なのですが、この読売国際経済懇話会というのがどういう聴衆を対象にしているのかがイマイチ判らんのですが、総裁就任後初講演かつ就任直後に実施した金融政策変更に関する説明としては何というかアレな内容でして、かつての某携帯キャリアの宣伝文句をもじって「世界で使えて自宅で圏外」というのを俊ちゃんのハッタリに適用しておったのですが、黒田節の場合は俊ちゃんのハッタリとはだいぶ違った次元での「世界で使えて自宅で圏外」振りを発揮しそうでオソロシスという所ではあります。
・まずは最初の説明だが特に新しい話は無い
特に新しい話は無いのだがとりあえず引用だけしておく。『2.基本的な考え方』から。
『日本銀行の総裁を拝命するにあたり、私は、いくつかの基本的な方針を考えていました。』
『第1は、15 年近く日本経済を劣化させてきたデフレから脱却するため、「できることは何でもやる」ということです。日本銀行はこれまでも、ゼロ金利政策、量的緩和政策、さらには包括緩和政策など、様々な金融緩和を行ってきました。しかし、こうした政策の積み重ねによってもなかなか結果が出なかったことを踏まえ、私はここで、戦力の逐次投入、あるいはgradualismは採らずに、日本銀行の持つすべての力を一挙に動員することが必要だと強く思っていました。』
『第2に、日本銀行が「物価安定の目標を責任を持って実現する」と強く明確にコミットすることの重要性です。この点、日本銀行は、1月の金融政策決定会合において、自らの判断で「物価安定の目標」を消費者物価の前年比上昇率2%と定め、これをできるだけ早期に実現するという画期的な約束をしました。その達成期限についてですが、諸外国の事例をみると、多くの中央銀行は、金融政策の効果が浸透する期間として2年程度のタイムスパンを考えながら、中期的な物価安定を実現する努力をしています。私は、日本においても、この「2年程度」の期間を念頭に置いて物価安定目標を実現するとコミットすることが適当だと考えました。』
『第3に、こうした日本銀行の強い姿勢を市場や企業、家計にわかりやすく伝え、「期待」を抜本的に変えるということです。15
年のデフレの間に、人々の行動パターンは「物価は下がる」あるいは「上がらない」ことが前提になっています。「強いコミットメント」と「わかりやすい説明」を通じて、人々のデフレ期待を払拭していくことが必要です。』
『そして第4に、こうしたコミットメントを裏打ちする量的にも質的にもこれまでとは次元の違う金融緩和を行うことです。「量」だけでなく、「質」も重視することには理由があります。日本銀行や先進国の中央銀行は、短期金利の低下余地が乏しい中で、非伝統的な政策として、バランスシートを拡大する政策を行っています。こうしたバランスシート政策の効果についての評価は概ね固まってきました。それは、中央銀行が市場から国債やその他の資産を買い上げることで、市場から金利変動などに伴うリスクを吸い上げ、長期金利の低下を促したり、資産価格のプレミアムに働きかける効果だということです。したがって、「量をどれだけ供給するか」ということと同時に、「どのように量を供給するか」が重要になります。同じ金額であっても、短期の国債を買うのと、満期の長い国債やETFなどのリスク資産を買うのでは、効果は全く違います。量と質の両面が大事だということです。』
・・・・・・・・・まあこの辺の説明は従来から行っていることなので特段の変化は無いのですし、それに対しても微妙にツッコミどころがありますけれども、第1の所に関しては非伝統的政策に関していきなり全部砲撃というのが如何なものかというような論調に海外中銀もなっているように見える(今日は間に合わないからネタにしないけれどもFEDェ・・・・・)とか第2の所は根性論ですねとか、第3の所は「わかりやすさ」というお気持ちは判るけれども、それはわかりやすさかも知れんが肝心の話が全然見えんぞなもしとか、第4の所って既に白川総裁自体からやっている話の延長でその規模をいきなりどどーんと拡大しただけの話じゃんとか、まあ色々と書きだすとトマランチ会長になるがスルーしておく。
・「わかりやすい金融政策」のどこが分かりやすいのかと小一時間
『わかりやすい金融政策』という小見出しの部分なんですけどね。
『「量的・質的金融緩和」の実施に当たっては、先ほど申し上げたように、市場や企業、家計に対する「わかりやすさ」という点も意識しました。』
はあそうですか。
『これまで、日本銀行による長期国債の買入れは、2010 年10 月に導入された「資産買入等の基金による買入れ」と、それ以前からあった「金融調節上の必要から行う国債買入れ」(いわゆる輪番オペ)という2つの方法を通じて行われていました。これは、これまで日本銀行が、経済情勢の変化に対応していろいろと挑戦してきた結果という面があります。実際、両者は、その目的に応じて、買入れ対象となる国債の種類も、買入れの方式も異なっていました。』
まあそうですな。
『しかし、こうした仕組みはやや複雑でわかりにくく、金融緩和に対する日本銀行の本気度が市場や国民になかなか伝わらないという問題がありました。このため、今回、「資産買入等の基金」を廃止したうえで、長期国債の買入れ方式を一本化しました。また、先行きの買入れ目標を年間約50
兆円という国債保有残高の増加分で示すこととしました。こうした工夫によって、私どもの金融緩和の意図が、よりストレートに市場に伝わるようになったと考えています。』
『先ほど申し上げたように、今回の決定では、量的な緩和を行う場合の指標として「マネタリーベース」を選択しました。これも、日本銀行が経済全体に供給する通貨(お金)の総量であるマネタリーベースが、私どもの積極的な金融緩和姿勢を対外的にわかりやすく伝えるうえで、最も適切であると判断したからです。』
ということで「シンプルにした」というのは判るのですけれども、じゃあそれが本当にわかりやすいのかと言うと、宣伝文句としては確かに分かりやすくなったのですが単に説明努力を放棄しているんじゃネーノというツッコミが出来ない訳でも無い。
つまりですね・・・・・・・
・宣伝文句は判ったがその波及効果が根拠レスではないでしょうか
『4.「量的・質的金融緩和」の効果』の説明部分ががががが。
『次に、「量的・質的金融緩和」が、どのようなメカニズムによって2%の目標を達成するのかということをお話しします。日本銀行では、金融緩和の効果は、主に3つの経路を通じて経済・物価に波及すると想定しています。』
はあそうですか。
『第1に、長期国債やETF、J−REITの買入れは、長めの金利の低下を促し、資産価格のプレミアムに働きかける効果を持ちます。これが、資金調達コストの低下を通じて、企業などの資金需要を喚起すると考えられます。』
長めの金利でしたらとっくの昔に十分に低水準になっていますし、大体からして日本には伝家の宝刀政策金融まであって元々間接金融のコストが低い(のも直接金融の市場が中々拡大しない理由じゃネーノと思うのですがまあそれは兎も角として)と思われる次第ですし、資金調達コストの低下云々という意味では成長基盤強化支援貸出制度などが既に存在しておりまして、そういう状況下において何で既に十分に低下している借入金利が低下することによって資金需要が喚起されるのかがさっぱり分かりません。
しかもクレジットコンディションが悪くて企業の資金需要が満たされない、というのであればまだ判るのですけれども、日本の場合はクレジットコンディションが特段悪いという訳でも無いのでして、そんな中で既に散々下がっている中長期金利の低下が「資金需要を喚起する」という理屈が理解致しかねるのでございますがその辺に関しまして小一時間ほど詳しいご説明を頂きたい物です。
『第2に、日本銀行が長期国債を大量に買入れる結果として、これまで長期国債の運用を行っていた投資家や金融機関が、株式や外債等のリスク資産へ運用をシフトさせたり、貸出を増やしていくことが期待されます。これは、教科書的にはポートフォリオ・リバランス効果と言われるものです。長期国債の買入れの平均残存期間を思い切って延長したのは、この効果を意識したものです。』
前回の量的緩和でも特にポートフォリオリバランス効果が大きく発揮されたとは見られていませんし、大体からして米国とかだってそんなに起きてないでしょ(FEDだってポートフォリオリバランス効果じゃなくてクレジットコンディションの緩和を強くアピールしとるわ)と思いますし、大体からして長期国債が買えないから株や外債を買えば良いじゃないって世の中には「リスク対比のリターン」という概念がある訳で、長期金利が下がったから生株買うとかオープン外債に特攻するとかそういう行動に機関投資家が期待するほどホイホイ逝くわけではありませんので念の為。つーかこの説明だと買入国債の長期化が長期金利を下げたいのかポートフォリオリバランス効果を高めたいのかが良く判らん。
『また、第3に、物価安定目標の早期実現を約束し、次元の違う金融緩和を継続することにより、市場や経済主体の期待を抜本的に転換する効果が考えられます。先ほどお話ししたデフレ期待の払拭です。予想物価上昇率が上昇すれば、現実の物価に影響を与えるだけでなく、実質金利の低下などを通じて民間需要を刺激することも期待できます。』
ここのパートだけはまあなんとなく説得力があるように見えない事もないがただの根性論で問題はそれをどう信じさせるかという話と、インフレフォビアどうすんのという話のような気がしますがはあそうですかとしか。
・フィージビリティーも根性論とな
その後の『5.金融政策運営を巡るいくつかの論点』から少々。
『これだけの金融緩和を行う中、「本当にできるのか」、あるいは「そこまでやって良いのか」といった心配の声も聞かれます。また金融政策と政府の他の政策との関係についてご質問を受けることも少なくありません。最後に、そのいくつかにお答えしたいと思います。』
『長期国債残高を年間50 兆円積み増すという新たな買入れ計画は、市場参加者の常識を超える巨額なものです。また、2014
年末のマネタリーベース270兆円を実現するためには、金融機関が日本銀行に175
兆円の当座預金を持つ必要があり、これも極めて大規模なものです。』
『さらに、平均残存期間を現在の3年弱から7年程度(幅をもって見て6〜8年程度)に延ばすためには、20
年債、30 年債を含む長めの期間の国債を買入れる必要がありますが、これら超長期のゾーンは、機関投資家による長期保有目的での購入が中心で売買はそれほど盛んではありません。』
でもって。
『こうした中、市場の一部には、日本銀行による買入れが実務的に可能なのかという声もあります。この点、基本的には、幅広いゾーンの国債を入札方式によって買入れる以上、可能です。必ず実現します。ただし、これまでの常識を超える規模の買入れですので、「整斉と」とはいかない可能性があります。』
どう見ても根性論です本当にありがとうございましたというか、そらまあ副作用全部無視すれば買入は可能ですが、そのへんどうなのという論点は無いのですねわかります。
『もともと金利低下を促すための措置ですから、市場に対するある程度の影響は不可避ですが、それでも、できるだけ円滑に進めたいと思います。そのためには、金融機関による積極的な応札など、市場参加者の協力が欠かせません。日本銀行では、市場参加者との間で、金融市場調節や市場取引全般に関し、これまで以上に密接な意見交換を行う場を設けることにしました。先週以降、様々な市場関係者との間で、こうした取り組みを始めています。』
はあそうですか(棒)
『さて、「量的・質的金融緩和」のもとで、日本銀行が大規模な国債買入れを行うとなると、どうしても、「日本銀行が財政赤字の穴埋めをするのではないか」という心配を呼び起こします。現状、国債市場は安定していますが、日本銀行による多額の国債買入れが、内外の投資家から、ひとたび「財政ファイナンス」と受け取られれば、国債市場は不安定化し、長期金利が実態から乖離して上昇する可能性があります。これは、金融政策の効果を減殺するだけなく、金融システムや経済全体に悪影響を及ぼしかねません。』
さいですな。
『もちろん、「量的・質的金融緩和」による長期国債の買入れは、金融政策上の目的で日本銀行自身の判断で行うものであり、財政ファイナンスではありません。また、日本銀行による国債買入れが増加する中、それが、財政ファイナンスではないかといった議論をそもそも惹起しないためにも、政府が、今後の財政健全化に向けた道筋を明確にし、財政構造改革を着実に進めていくことは極めて重要です。この点、政府も、1月に公表した「共同声明」において、「日本銀行との連携強化にあたり、財政運営に対する信認を確保する観点から、持続可能な財政構造を確立するための取組を着実に推進する」と明確に述べており、私どもとしても、そうした取り組みに強く期待しています。』
これまた先般の会見での説明と同様に根性論の世界でありますな。以下銀行券ルールの話があるけど割愛しますが、まあ特に波及効果の説明の部分があまりと言えばあまりでして、会見の時の説明からしたらこんなもんなのかも知れませんが、記念すべき初回の講演がこれかよという所で何だかなあという所ではございましたとさ。
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2013/04/11
○黒田総裁共同インタビュー
昨日の夜9時からこの内容が出ていきなり為替が円高に振れたからほえ?と思いましたが。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-ML121U6S972R01.html
黒田総裁:物価目標達成に「必要かつ十分な措置」−政策効果見極めへ
更新日時: 2013/04/11 00:00 JST
為替が反応してたのはヘッドラインの中で「今回十分な措置を行った」的な部分の英語ヘッドラインで「おかわり無し」みたいな感じでの書かれ方だったので、50銭少々為替が飛んでいたようですが、まあその後ドル円で言えばFOMCのミニッツ(今日はネタにしている暇がないので勘弁)辺りでドル高になったようですけど。
『総裁は金融市場の動きが「基本的にポジティブな反応」だったとした上で、乱高下した長期金利については「今回の金融緩和は量的にも質的にもこれまでの緩和とは相当違ったものだった」ため、「ある程度あり得る動きだ」と指摘。その上で「市場がそういう形で新しい均衡点に向かっていく動きは十分注視し、市場の反応を点検していく」と述べた。』(上記URLより)
・・・・・・・・・・・・・・・まあ何ですな、そもそも金利誘導のディレクティブ外していますし、債券市場は死んで良しと言わんばかりの国債買入規模を金融政策として打ち込んでいるのですから、こういう扱いになるんでしょうなあ(さっき書かなかったけれども、そもそも債券市場死んでよしと言わんばかりの施策を打ち込んでおいて対話の強化云々とか言われても何なんでしょうねえという所ではある訳で)とゆー所で、基本的にこのおじちゃん為替市場と株式市場がフェーバーな方向にある内は金利のランコルゲなど誤差誤差誤差と思っておられるのではないかというのを感じたのは金利屋の僻みですかそうですかすいませんすいません。
まあ他の話に関しては基本的に(他のベンダーの記事とかも見ましたが)決定会合後の黒田総裁記者会見と同じ話だと思いますのでその他は特段のインプリケーションは無いと思います。まあ金利市場に関してはそれこそ「金利上昇で銀行株がゲロゲロ」とかそういう事にでもならない限り「知らんがな」という所になりそうな黒田総裁(いやまあ現場はそうは言ってられないし言わないとは思いますが)という事ですが、「期待に働きかける」と遠大な話をして遠く(株式市場や為替市場)ばかりを見ながら進んで、本来金融政策として働きかける足元の金利市場を誤差誤差誤差とか言っておりますと、まあ足元を盛大に掬われる事態も起きそうですなあウェーッハッハッハとかそういう事も考えてしまったインタビュー記事でした。
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2013/04/08
○黒田総裁記者会見:結構質問が辛辣ですな(^^)
ということで会見引用大会である。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2013/kk1304a.pdf
・引用大会の前に印象を少々
今回の会見ですけれども、読んでいてへーと思ったのは質問が結構辛辣なのが多かった所なのですけれども、肝心のお答えの方が良く言えば自信満々で「これで2%行きます」という信念の披露の場になっておりまして、悪く言えば明らかに全然答えになっていないわそりゃという応答になっているなあというのが結構ワロタというか笑えない所でございます。
つまりですね、まあ今は良いのでしょうけれども、実際問題としてこの政策によって本当に経済の成長を伴う物価上昇に繋がるのかという点、これだけの国債買入がどういう影響を与えるのかというまあ副作用系の話とか、そういう辺りって結構なナローパスつーかキャットウォークつーかという話だと思うのですが、何かもう黒田さんの質疑応答での言い方を見ていると全然ナローパスじゃなさそうな言い方になっていまして(一応「相当な困難」とかは言ってるけど)、さて想定通りに行かなかった場合にどうするんでしょうかねえというのが懸念される所です。
何せこれから引用しますけれども「出すものは全部出した」という格好になっていますので、これで2年2%行きます(キリッ)というのが全然行かない場合、あるいは想定以上に円安に振れてコストプッシュになった場合とか、よーは本来想定するパスじゃない場合にさてどうするんでしょうかねえというか、まあそうなった場合のツッコミが今から楽しみな質疑応答でございました。
・学界ガーという話がやたら多いのだが
冒頭説明の次の質問ですが。
『(問) ターゲットを金利からマネタリーベースに変えた狙いについて、もう少しご説明下さい。また、銀行券ルールを一時停止しますが、これに代わるルール作りを何か考えていらっしゃるのでしょうか。』
『(答) ご承知のように、従来は、無担保コールレート・オーバーナイト物を金融市場調節の操作目標としていましたが、他方、資産買入等の基金で国債も購入していました。現時点では、無担保コールレート・オーバーナイト物の金利はほとんどゼロである中で、量的かつ質的に金融緩和を進めるという観点から、最も端的にマネタリーベースを操作目標にして量的な緩和を進めるわけです。他方、質的な緩和の面では、先程申し上げた通り、長めの金利を引き下げるために長期国債の購入を大幅に拡大する、あるいはリスクプレミアムをさらに圧縮する観点からETFやJ−REITの購入も倍増することも考えていますので、金融市場調節の操作目標としては、マネタリーベースが一番適切だろうと考えました。それから、マネタリーベースは、端的に言うと、日本銀行の出す通貨、お金という意味でも分かりやすく、学界でも一番よく知られている指標ではないかと思います。』
ということでMBの話になると学界ガーという発言がこの後も何回か出ているのがはあそうですかという所で、えーっと確か単純にMB増やしても物価に直接的な影響があるのかという話ってその学界ガーの主流としての見解は米国のQEなどを受けてどうなったんでしょうかねえとか思うのですけれどもすっかり学界ガーというドヤ顔モードになっているのが何ともはや。
『銀行券ルールについては、現時点でも、いわゆる「輪番オペ」の分と資産買入等の基金の分を合わせた長期国債の保有残高は、日本銀行券の発行残高を超えています。今後、さらに長期国債を大量に買い入れる状況のもとでは、銀行券ルールをそのまま踏襲していけないわけです。従って、当面、こういった量的・質的な金融緩和を行い、2%の物価安定目標を達成するまで、国債保有残高は非常に大きいままで推移しますので、銀行券ルールを一時的に停止するということです。』
ということで銀行券ルールに代わる指標などは特段ありませんという事のようです。
・とりあえず全部弾を撃ったようですが
次の質疑では「もうこれで2%行きますよウェーハッハッハ」という意味では従来の方式とは違うというのを示しています。
『(問) 先程、「戦力の逐次投入はせず」とおっしゃいましたが、とりあえず、現在考えられるメニューは、今回で全て出し尽くしたという感覚でよいのでしょうか。』
『(答) 今回、必要な措置は全て採ったと言ってよいと思います。もちろん、経済も金融も生き物ですので、その時々の状況をみて、必要があれば躊躇なく調整していきますが、2
年で2%の物価安定目標を達成するために、現時点で必要な措置は全て決定したと考えています。実際の国債の買入れやマネタリーべースの拡大については、日本銀行として、毎月毎月、オペレーションを続けていくことになります。』
躊躇なく調整とはゆうてますが、「現時点で必要な措置は全て決定したと考えています」との事ですので全部弾を撃ったというのと、これで2%行きますよという話をしておりまして、いやまあ信じる者は救われるのか足を掬われるかは今後の展開次第ですなあニヤニヤ。
でまあその後の方でこの答に対する追加ツッコミが。
『(問) 先程、「現時点で必要な措置は全て採った」とおっしゃいました。その一方で、「経済は生き物なので、必要な情勢になれば、躊躇なく調整していく」とおっしゃいました。この「調整していく」という言葉を発する前に、それこそ少し躊躇されたのではないかという感じもしたのですが。この2
年間で2%の物価安定目標を実現できない、ないしこれから半年、1 年経つにつれ、実現が難しいとなった時には、今回は「2
倍」というのが非常に大きなキーワードになっていると思いますが、足りないということになれば、これらを3
倍、4 倍というように増やしていくのかどうか、長期国債の保有残高や平均残高、マネタリーベースを2
倍から3 倍、4 倍と増やしていくのかどうか、お聞かせ下さい。』
ワロタ。
『(答) この点については、公表文の中でもかなり明確に書いています。「『量的・質的金融緩和』は、2%の『物価安定の目標』の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う」と書いています。当然、経済情勢をみながらリスク要因を点検し、必要な調整があれば躊躇なく行うことになると思います。ただ、何度も申し上げますが、私どもとしては、現時点で考えられるあらゆる政策を総動員して、2%の「物価安定の目標」について、2
年程度を念頭に置いて実現する。そのために必要な措置は、ここに全て入っていると確信していますし、実際に、2
年程度で物価安定目標を達成できるものと思っています。』
ということで黒田総裁エライ自信満々ですけれども・・・・・・・
・じゃあその波及経路はどうなんでしょうと言う質問が多岐にわたっていてオモシロスというか辛辣
MB重視になったのかという質問に対して。
『(問) 3 つ質問します。今回の政策変更で、今まで岩田副総裁が主張してこられた「マネタリーベースを増やすことで、BEIを含めて予想インフレ率を上げていきましょう」という理屈に、全面的に乗られたとの理解でよいのか確認させて下さい。(以下割愛)』
『(答) 第1 点目ですが、先程申し上げた通り、今回の措置は、量的・質的な金融緩和です。もちろん、「量的」な緩和という面では、バランスシートであれ、マネタリーベースであれ、当座預金であれ、全て大幅に拡大するわけですし、金融市場調節の操作目標としてマネタリーベースを採っていきます。他方、「質的」な緩和も大幅に進めます。これは、長期国債の全ゾーンを買入れ対象とし、しかも、買入れの平均残存期間を現状の3
年弱から7 年程度へと倍以上にする、さらにETFやJ−REITも大幅に買入れを拡大するということで、今回の措置には量的・質的の両面があります。(以下割愛)』
何か質疑が噛み合っていませんなあと思ったらこの次の質問が結構辛辣。
『(問) 2 点伺います。今回、新たにマネタリーベースを目標にしましたが、かつての日銀が実施した量的緩和政策では、マネタリーベースではありませんが、その一部である当座預金残高を目標にして緩和策をやりました。しかし、その結論として、ここに書いてあるようなポートフォリオ・リバランス効果はなかったのではないかと結論付けているようです。けれども、今回、新たにこのようなことをやる、マネタリーベースを増やせばデフレから脱却できるとは、どういう波及経路を考えているのか、前回は効果がなかったのに、なぜ今回は効果があるのか、総裁のお考えをお伺いします。(2点目は後ほど)』
ですなあ。
『(答) 第1 点については、かつて、当座預金残高を操作目標として量的緩和が行われたわけですが、例えば、最近のFRBのいわゆる量的緩和をみても、単に負債側の量あるいはバランスシートを拡大するだけではなく、その際に、資産の中身、内容についても、質的な面で緩和効果がより出るように工夫されています。日本銀行でも、包括緩和の中で、量的な拡大もしてきましたし、質的な面も努力してきたわけです。従って、量的な拡大は必要ですが、それだけで十分な効果があるわけではないので、それと同時に質的な面での緩和も、根本的・抜本的に、いわば次元の違う程の質的な緩和も併せて行うこととしました。量的・質的両面から効果を発揮できるように行うということです。』
という答えに対してまた別途ツッコミが。
『(問) 波及経路について、もう少し噛み砕いてご説明をお願いします。資金の量を増やしても、実際に民間の資金需要がなければ、なかなかデフレ脱却につながらないというのが、麻生大臣などもおっしゃっているように、1
つの説になっています。これに「質的」な緩和を加えることで資金需要を高めるメカニズム、効果があるというのは、どういうことなのか、噛み砕いて説明して頂けますか。』
イイシツモンダナー。
『(答) これは、先程も申し上げたように、長めの金利をさらに下げていく、あるいは資産価格のプレミアムに働きかけていくことによって、より十分あるいは迅速に資金需要に対応できるようになり、その結果、これまでよりも、当然、資金需要が出てくるわけです。このような形で、かなり直接的にイールドカーブ全体を下げ、リスクプレミアムを縮小していく効果があります。』
えーっともしもし?金利下がって資金需要が高まるんだったらとっくの昔に長期金利は低位水準が続いていますし、迅速に資金需要に対応って金融機関は前向きな資金需要が無くて困っているんですけれどもねえ。
『また、こうしたことを通じ、金利が下がり、リスクプレミアムが下がっていけば、投資家や金融機関、あるいは企業や個人などの主体は、他のポートフォリオに資産をシフトしていくわけです。そのようなポートフォリオがシフトしていく先には、色々な資産、例えば、株や外債やその他たくさんあると思いますし、一部の経済学者には、直接的に投資や消費に――特に投資に――シフトしていくという議論をする方もおられます。従って、ポートフォリオ・リバランス効果というのも、かなり期待できるのではないかと思います。』
すいません金融機関は規制が五月蝿くてそんなに驚くようなシフトとか出来ない(大体からして外債買うにしたって為替ヘッジ付きですがな)ですし、企業の資金っていうのは企業活動に使うものでポートフォリオリバランス????という所なのですが。
『その上で、市場・経済主体の期待に影響が出てくると、物価がこれまでよりも上がっていくという見方が出ます。今後、物価が2%程度上がっていくと見込まれた場合には、設備投資や住宅投資、その他の投資の需要も増えてくることになります。このように、複数のチャネルを通じて、経済の拡大、2%へ向かっての物価の上昇ということが期待できると思います。』
期待の所が辛うじて説明にはなっているのですが、物価が上昇すると見込まれるので設備投資や住宅投資などの投資需要が増えるというパスも何か前提条件が怪しいぞなという所で、だったら物価水準高くて期待インフレも高めに推移している英国で設備投資や住宅投資がバンバン拡大して景気が良くなっているのかと小一時間。
波及経路に加えて積算根拠の質問というのが次に会ってこれがまた結構キツめ。
『(問) 2 点伺います。まず、2 年程度で2%という目標を達成するために今回の措置を採った、すなわち、マネタリーベースと長期国債・ETFの保有額を2
年で2 倍にするということですが、なぜ2 倍なのか、どういう根拠で2 倍にすることが必要と判断されたのか、分かりやすく説明して下さい。(2点目割愛)』
『(答) 2 年で2%の物価安定目標を達成するのは、相当容易ならざることであることは事実です。しかし、これまでのように、いわばincremental(漸進的)に、少しずつ量的・質的な緩和を拡大するやり方では、このデフレから脱却して2%の物価安定目標を達成することはできないと思います。そこで、現在採り得るあらゆる手段を動員して、2
年程度でそれを実現するということです。その際、例えば、GDPギャップがどの程度縮小していく、あるいはポジティブになる必要があるかとか、物価上昇期待がどの程度上昇していく必要があるかといったことなどは、色々な学者が分析し、あるいはモデルでの計算等をしているようです。そういったものも考慮しながら、現在の経済状況を踏まえ、2
年程度で2%の物価安定目標に近づけ、それを実現するためには、これより少ない額では不十分であり、ここまでやれば物価安定目標の達成が可能になるということで、この額としたわけです。(2点目割愛)』
前提となる積算根拠を教えてという質問なのにこれはヒドスという感じの答えですが、こういうのを見るとまあモデルらしきものはあるのでしょうが、前提条件について突っ込まれると色々と不具合が生じる類のものですねわかりますという所で、要は気合なんでしょ気合。
でまあ更に波及経路の質問は他にもありまして・・・・・・・
『(問) 国会でも、マネタリーベースのトランスミッション・メカニズムについておっしゃっており、スピルオーバーについてもお考えがあると思いますが、具体的に、様々な資産マーケットへの波及効果等も当然念頭に置いていらっしゃるのでしょうか。今回、マネタリーベースの残高を重視する枠組みに変更されたと思いますが、これは、岩田副総裁が以前からおっしゃっている「期待に働きかける上で、マネタリーベースの残高が重要」というお考えを踏まえたものではないかと思いますが、その点について、もう一度――復習のようで恐縮ですが――、お願いします。』
『(答) 様々な資産市場があると思います。固定金利の国債、社債等の資産もありますし、株式市場や外貨建て資産の市場もあります。様々な市場があると思いますが、マネタリーベースについては――何度も申し上げますが――、これだけの国債あるいはリスク性資産の買入れという資産側の増加と見合って、当然に負債側も増加していくわけです。そういう意味で、「量的」な緩和と「質的」な緩和とを併せて行っていくわけです。その際の金融市場調節の操作目標については、これまでのように、無担保コールレート・オーバーナイト物を操作目標にする意味がもうあまりなくなってきているため、「量的」な目標をきちっと導入した方がよいわけです。その際の目標の候補としては、一番狭い意味では、かつての量的緩和時のような「日銀当座預金」があり、広いものでは「マネタリーベース」、さらには「バランスシート」があると思います。このうち、経済学的な観点から言えば、やはり「マネタリーベース」が分かりやすく、かつ金融市場調節の操作目標として適切な指標であろうと考えました。資産総額であれ、当座預金残高であれ、期待に与える影響は一定程度あるとは思いますが、マネタリーベースが、学界で一番エスタブリッシュされている量的な指標であるということと、金融市場調節の操作目標という観点からマネタリーベースが一番適切ということで、このようにしたわけです。』
学界だの経済学的な観点だのというキーワードがまたも出てきて誠にアレですが、結局ここまで説明しているのが全然答えになっていなくてワロタ。でまあ続きがあるのですが。
『いずれにせよ、重要なことは、「量的」にみて非常に大きく拡大するという点と、イールドカーブを全体的に引き下げたり、リスクプレミアムを圧縮するという「質的」な点を、両方併せて行うことに尽きると思います。』
いやだからそれをしたい、というのは言われるまでも無くこれから実施する話なのだが、問題はその拡大した量とその質がどのように実体経済というか物価に対して働きかけるのかを質問しているのですが、結局質問の答えになっておらず、単に最初の方で引用したように「2%達成できると確信しています(キリッ)」というのだけというが何ともアレでございまして、まあ当然ながら今は新たな政策をやりますとリリースしたばかりですからこうやって「これからやるから大丈夫です(キリッ)」だけで肝心の核心部分になる筈の波及経路の話をろくすっぽ説明されないで押し通されてしまいますと「はあそうですか(棒読み)」としか言いようがなくなりますが、これまあ当然ながら半年なり1年なりして(キリッ)の方が全然進みませんでしたなあという事になった時のツッコミに耐えられるのかが実に楽しみになって参りましたという所です。いやまあ勿論そのナローパス通りに行っていただければそれに勝る幸せはございませんけれどもねえ。
・財政ファイナンスに関連して
銀行券ルール一時撤廃に関連する質問から。
『(問)(前半割愛)次に、財政についてです。先般の国会で、総裁自身も、今の日本の財政状況について、「持続不可能である」という発言をされています。その中で、発行額の7
割もの国債を買うということ、しかも銀行券ルールもなくすと、財政ファイナンス――事実上の直接引受け――ではないかという受止め方も出てくると思うのですが、足許、そういった懸念がないにしても、今後出てくることを考えないのか、通貨の信認を維持する立場としてのご発言をお願いします。』
ですなあ。
『(答)(前半割愛)財政ファイナンス云々については、「『量的・質的金融緩和』の導入について」という公表文にも記している通り、あくまで、2%の物価安定目標を達成するために行う金融緩和の方法として、最もマーケットの広い、深い、流動的な国債市場においてオペをするということであり、財政ファイナンスをする意図は全くありません。そういう意味で、日本銀行が、自主的に、金融緩和の方策として長期国債の買入れを行っていくということです。』
はあそうですか(棒)。
『もとより、政府において、国債の信認を確保する必要があるのは言うまでもありません。ご承知の通り、1
月に公表した「共同声明」において、政府は、「日本銀行との連携強化にあたり、財政運営に対する信認を確保する観点から、持続可能な財政構造を確立するための取組を着実に推進する」としているわけです。当然、日本銀行としては、こうした取組みが進んでいくことを強く期待しています。』
で、その取り組みが進まない場合はどうするんでしょうかねえという所で、この辺も何か気合の世界っぽいですなあ。いやまあ確かに麿には気合とハッタリが足りないとは思いましたが、ここまで根拠レスの気合を出されましても大丈夫かよという感じでして、何ともまあ極端から極端に振れるのやらという所でございます。これが福井の俊ちゃんみたいに中身的には対した話をしなくても気合でお見せするというのなら兎も角、やる方も極端ですからねえ。
・債券市場の市場機能関連とか付利の関連とか
まずは付利の関連。
『(問) 採り得る手段は全部採ったということですが、この半年くらいテーマだった付利金利の引下げについては、今回はテーマにはならなかったのでしょうか。』
『(答) 先程述べた3 つのチャネルを通じて、景気の拡大、2%へ向かっての物価の上昇が達成できる、従って、付利金利を引き下げる必要はないという結論に達したので、それについては何も触れていません。』
ということで短期市場干天の慈雨というよりは、単に市場の投資機会を食い尽くすイナゴの大群が短期方面から長期超長期方面に凶悪化してお出掛けしただけの話でして、イナゴがそこも食い尽くしたのに落ち着かない(=経済が思うとおりに行かない)となると今度はヤケクソを起こして資産の拡大じゃなくて付利の下げだ〜とか言い出すリスクは無い訳ではないでしょと思うので安心している場合でも無いような希ガス。
でまあどう見てもオソロシスというのは国債買入の市場への影響に対する質疑応答。
『(問) 2 点お伺いします。1 点目は、先程、長期国債の新規発行に関して、日本銀行の購入額が7
割になるという話がありましたが、7 割を日本銀行が購入するというのは、まさに「池の中の鯨」のような状況になってしまうと思います。市場の金利形成、価格形成についてどう考えたらよいのか、お考えをお聞かせ下さい。(以下割愛)』
池の中のクジラとなどというカワイイ(?)ものよりは、投資家の投資機会を奪って行くという観点からしますとイナゴの大群とかグンタイアリの大群とかそういう感じなのですが。
『(答) まず1 点目ですが、先程申し上げた「7 割」というのは、国債残高を毎年約50
兆円ずつ増やしていく際に、グロスでみた毎月の買入れが7 兆円強になり、それが、毎月の国債発行額の7
割近くになるということです。国債の価格形成に一番重要なのは、おそらくストックの話だと思います。ストックでは、7
割などということには到底なりません。従って、市場に大きな歪みを生じることにはならないと思います。』
いやいやいやいや、何をゆうてますねんオッサン。
『ちなみに、これまでのいわゆる資産買入等の基金では、残存期間1〜3 年の国債を買ってきましたが、その際も、実は、グロスの買入れ額は発行額の7
割に達していました。今回やろうとしていることは、いわば全てのゾーンに拡げてやっていこうということであって、これまで以上に市場金利の形成をそれぞれのゾーンでやり難くすることは意図していません。』
ということで、さっきも引用しましたが、つまり全ゾーンに渡ってこの前までの3年以内のゾーンと同じ現象が起こるということですよ先生!
・・・・・・つーかまあ配分から言うと5年超10年以内の所はもっとすごい事になりそうな希ガスorzorz
で、その他少々ネタがあるのですが、金融経済月報と共に明日に続きます。どうせ今回の後しばらくは追加ネタの打ち込みが無いのですから今回くらいは細々メモしておきたいですからね!!
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2013/04/03
・まあ国会では喋ってもよいのですけれども&段々物の言い方が雑になってきましたよ大丈夫ですか
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MKMB3A6KLVRE01.html
黒田日銀総裁:基金と輪番オペを合体、日銀券ルールは廃止審議へ (1)
更新日時: 2013/04/02 17:52 JST
『4月2日(ブルームバーグ):日本銀行の黒田東彦総裁は2日午後の衆院予算委員会で、長期国債の買い入れについて、資産買い入れ等基金と、成長通貨供給のために行っている輪番オペを統合する考えを示すとともに、日銀券ルールも廃止を含め審議する必要があると述べた。』(上記URLより)
まあ国会ですから良いのですけれども何かさすがにペラペラしゃべり過ぎじゃないですかねえと思いましたがそれより後の方の記事内容にワロタというか何というか。
『大胆な金融緩和に反対票が出る可能性については「政策委員会は9人の委員からなる合議体なので、賛否がいろいろあるというのは当然だ」と指摘。その上で「合議体として、既に1月に2%の物価安定目標をできるだけ早期に実現する、そのために金融緩和を推進するということまでは、政策委員会としての決定事項なので、その時の賛否に関わらず、それを実施していく義務がある」と述べた。』(上記URLより)
・・・・・・・・・いやあの否だったら実施しちゃいかんと思うのですけれども先生お疲れのようでこちらの記事小見出しにも『賛否あるのは当然だが実施する義務ある』とか合議制を総裁が自ら無視したような言い方をしているように書かれてまして表現には注意した方が良いかと。
まあ黒田さんは「細かい政策の具体的部分に賛否があるのは当然だけれども、2%の物価目標を決めたのだからそれに向けて金融緩和を実施していく義務がある」という話をしたのだと思いますが、ちょっと表現がアレという所ですな。
でまあそのアレな表現はもうちょっと先にも。
『その上で「私としては、金融政策の効果が浸透していく期間として、通常2年程度のタイムスパンを考えるというのが多くの中央銀行の例なので、2年程度の期間を念頭に置きながら、期待に裏付けになるような量的にも質的にも大胆な金融政策を行うということでなければならないと思っている」と語った。』(上記URLより)
・・・・・・・・・えーっともしもし?2年間で達成すると言ってるのに金融政策の効果が2年程度のタイムスパンで浸透するんだったら「2年で達成」って出来るんですか大丈夫ですかというのが最初にありますし、大体からして効果が浸透するまで2年もタイムスパンがあるんだったらこの前発言していた「2%の目標を達成するまで金融緩和」なんて実施したら2年分も金融緩和をオーバーシュートさせて打つことになってそれは2%インフレを大幅に上に逸脱するリスクが高いんじゃないでしょうかおじちゃん大丈夫ですか国会に7時間も呼ばれてお疲れになってませんかという所ですな。
その後にこういうのもありまして。
『黒田総裁はまた「何としても2%の物価安定目標を、2年という期間を念頭に置いて実現したい、実現する必要があると考えており、国債、特に期間の長い長期国債を含めて、量的にも質的にも、大胆な金融緩和を進める必要がある」と語った。』(上記URLより)
いやだから効果が浸透するのに2年かかるのに何で2年で物価目標が達成できますねん・・・・・・
てな訳で、何か段々ボロが出てきている気がするんですが、ボロが出るのはせめて夏まで我慢して頂きたい(まあその間に成長して頂ければ良いのですが^^)という所でございまする。
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