金融庁・銀行経営関連

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えーっとですな、検索エンジン経由で来る方は殆どこのページに辿りつくようです(^^)。文体が斜に構えておりますんで、少々読みにくいかと存じますが何卒お付き合いください。ご意見ご感想はこちらのメールアドレスまで一つよろしくです。

2005年下期

2006/03/30「(金融庁ネタじゃないけど)信用保証協会が連帯保証人徴求を原則廃止??」
2006/03/17「まあこりゃアリバイ実態調査ですね(その2)」
2006/03/16「何のためにやってる実態調査なんだか・・・・(その1)」
2006/02/22「無反省な人」
2006/01/30「これまた豪快な法令違反」
2006/01/26「東証ちぐはぐですなあ(ライブドア関連)」
2006/01/25「相変わらずの東証(ライブドア関連雑談)」
2006/01/19「東証の危機管理はどうなっているんだ(ライブドアショック関連)」
2005/12/28「これは豪快な法令違反ですね」
2005/12/08「リスクを取らせておいて知らん振りの経済クオリティペーパー」


2005年上期

2005/09/30「金融庁異能官能が綴った”十戒”ですかそうですか」
2005/08/29「23日に積んだ宿題一部消化」
2005/08/23「現状読みかけの金融庁・日銀関係資料(備忘メモ)」
2005/08/16「利用者満足度向上の実態調査?」
2005/08/04「リテール運用の無駄なハイテク化(続)」
2005/08/02「訳判らんリスクをリテールの運用に取らせるのは如何なものか」
2005/07/25「22日の補足」
2005/07/22「地に足の着いたリテール金融の高度化推進をして欲しいのですが」
2005/06/13「振興銀行報道を見て思ったこと」
2005/05/06「また振興銀行絡みの与太話^^」
2005/04/28「相変わらずのお方(この人のネタだけ雑談ネタも金融行政に分類^^)」
2005/04/05「お勉強コース驀進の日銀と仕切り大魔王の金融庁」


2004年下期(過去作成分は別ファイルに飛ぶ仕様に変更作業中、今の所下のほうにもあります)

2005/03/22「日銀もまた金融の高度化支援なるものをぶち上げる訳だが」
2005/03/09「怪電波コラム発見!」(ここに分類する程のネタでもないけどね)
2005/02/07「銀行規制緩和雑感(「預金金利戦争」記事を見て)」
2005/01/18「金融庁の『金融改革プログラム』に関して」
2005/01/12「迷走する日本振興銀行/竹中さんの国債管理政策専門部署設置案」
2005/01/05「日本振興銀行の問題点/決済用預金を無理矢理作らせている?金融庁」
2004/12/29「どこがどうリレーションシップバンキングなのか理解に苦しむ訳だが」
2004/12/22「やっぱ間接金融じゃないの?」
2004/11/26「証券仲介業解禁は何のため?」
2004/10/05「吉野家と提携ってどうよ」


2004年上期

2004/09/15「金融庁恐怖のマッチポンプ」
2004/08/31「改めて新BIS規制」
2004/08/24「理想と現実のギャップ」
2004/08/23「言行不一致行政」
2004/06/30「バーゼルUの中小企業貸出のリスク算出に関する疑問」
2004/05/26「住宅ローンに関する雑談」
2004/04/26「日経の『規則違反のススメ』?」
2004/04/20「UFJショックリターンズ」
2004/04/19「また金融庁か!」
2004/04/08「銀行の消費者金融業進出に一言」
2004/04/01「ちょっと気になった『仕組み債販売への規制』発言」

2003年下期

2004/03/02「金融検査マニュアル中小企業編」
2004/02/19「相変わらず上滑りする中小企業融資論議」
2004/02/09「日銀総裁の銀行経営問題への認識」
2004/01/28「銀行への施策、何とかならんのか」
2004/01/06「中原審議委員による『歴史に学ぶ銀行のありかた』寄稿文を読む」
2003/12/29「銀行の証券仲介業開始に関して」
2003/12/29「金融庁『リレーショナルシップバンキング』の自己矛盾」
2003/12/24「益々ねじれる中小企業金融(金融検査マニュアル改訂案関連)」
2003/12/16「春審議委員の講演から見る中小企業金融への誤解?」
これ以前の駄文はそのうち整理して掲載の所存。


2006/03/30

○信用保証協会が連帯保証を原則廃止?

暫く前の話ですがこんな記事がありました(一応今朝の時点ではまだリンク先生きてました)。

http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20060320i514.htm

『経済産業省・中小企業庁は20日、中小企業向け融資を公的に債務保証する信用保証協会の信用保証制度について、連帯保証を4月1日から原則廃止する方針を明らかにした。今月中に全国の信用保証協会に通達する。経営破たんすると、連帯保証人となった経営者の家族や知人までが債務を負い、再起が難しくなることなどに配慮した。』(上記URLより)

ふ〜んそうなんですかあと思いながら関連するWebを探してみたのですが、一番「???」と思ったのは上記のお話が経済産業省や中小企業庁のWebを見ても全然載っていないこと。こんな重要な話を何故新着情報に載せないのか経済産業省って感じですが、まあ内部通達の話だからしょうがないのかなあ。

で、その記事の続きを読んでみますと・・・・

『これまでも、5000万円以下の無担保融資には連帯保証人を付けないよう同協会に要請していたが、地域によっては連帯保証人を求めることが多く、2004年度に約120万件あった保証承諾件数の2割程度は連帯保証人を付けていた。』

あれれ?あたくしが金貸しやってた時(10年以上前ですが)は保証協会には法人だったら代表者の連帯保証必須だったんですがどうなってるの??と思って思わず東京信用保証協会のWebサイトを見に行くあたくし。

http://www.cgc-tokyo.or.jp/business/faq.html

の3番目にちゃんと『会社の場合は代表者に、また組合等の場合は原則として理事全員に連帯保証人となっていただきます。』と書いてあるではないですか。「2割程度の連帯保証人」ってそりゃ第三者保証人の話でしょ。あたしゃ代表者の保証も取らなくなるのかそりゃ大変な保証協会融資鷺が飛び回るわと思っちゃいましたよ。ああ人騒がせな。


でね、経済産業省のサイトでは関連するお話で「信用力に応じた保証料率の設定」というのがあってこんなプレゼン資料がでております。

http://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/download/060320shinyouhokenhou_kaisei_gaiyou.pdf

これによると保証料率が0.5%〜2.2%に設定されまして、資料によりますとその結果『経営状況が必ずしも良くない中小企業者についての保証機会を拡大』するそうですな。

いやあのその程度の保証料率で信用リスクのカバーになる訳ねえだろうというのは投資不適格格付けの社債のスプレッドがどういう動きをするのかを見ていただければ直ぐ判るお話でして、まあ目くらましのお題目だとは思うんですが、これを経済産業省が本気で考えているのであればちとそれは如何なものかと。一方で第三者保証人を取るなって通達して信用力に劣る債務者の信用リスクカバーを難しくしている(まあ新聞記事によれば別に「保証人になりたい」って人がいれば別に結構って話になってますからその辺は運用で何とかするんでしょうが)訳でして、これが大真面目だったらかなり問題ありますなあ。

その手のお話はあたくしがいつも勝手に勉強させていただいている「シンクタンクのメッ!中小企業金融を考える(30日追記:「中小企業政策を考える」が正しかったです。ごめんなさい)」さんhttp://www.smepolicy.jp/さんのところで既にお話は出ておりまして、このあたりを読むと勉強になります(というか読んでいただければ判りますが、かなーりあたくし受け売りしていますな。とネタバレなあたくし^^)。

「信用リスクに見合った保証料は間違い」
http://www.smepolicy.jp/risktaiou.htm

「リレバンで担保が不要になるか」
http://www.smepolicy.jp/relationship2.htm

で、まあ上記のような勉強になるサイトもありますが、世の中玉石混交と申しまして、まああたくしも石にならないように日々心がけたいとは思っております(が、石も相当混入していると思料されますので、その場合は是非ご指導ご鞭撻を賜りたいと存じます)が、ふと適当にネットを見ておりますと、今般の連帯保証人云々に関しての論考が見つかりまして、まあこんなのが典型的な解説になるんだろうなあって思っちゃうのを見つけてしまったので(別にここの会社に何か含むところがある訳ではないですが、「グローバル投資の視点」とまで言われたら一応突っ込んでおきますよ。いやまあ晒し上げみたいで申し訳ないんですが・・・・)ちょっとURLだけ載せておきます。

http://www.gci-klug.jp/klugview/06/03/20/post_587.php

シンクタンクのメッ!さんの論考と比較してみると宜しいかと。で、最後にある「クイズ」の答えですが、正解は「信用力が相対的に劣る中小企業」ジャマイカと思うんだが。

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2006/03/17

○脊髄反応の続き

昨日脊髄反応して湯気をポッポーと立てておりました過誤発注がどうのこうのという一件、金融庁のWebに当然ながら掲載されておりました→http://www.fsa.go.jp/news/newsj/17/syouken/20060315-2.html


で、こちらを見ますと誤発注の件数が14,318件とか書いてあって、「売買代金1億円超の誤発注は667件。損失金額1億円超の誤発注は1件。」だそうです。

でね、その直ぐ次に『(注)全国証券取引所の平成17年の約定件数(現物株式)は概算で549百万件。これに対する誤発注発生率は100万分の26(0.0026%)となる。また、売買代金1億円超の誤発注発生率は100万分の1.2(0.00012%)となる。』と書いてあるのに、この点について報道で触れていたニュースは昨日朝の時点であたくしが複数のニュース番組をはしごして見ている中では皆無でした。

ちなみにhttp://www.tse.or.jp/market/yakujo/index.htmlを見ていただきますと判りますが、「約定件数」ではなく「注文件数」で考えますと、一日あたり軽く400万件以上ありまして、立会いが年間250日くらいあるのだから注文件数で言えば10億件/年はあるわけでして、その中でまあ委託注文はいくらくらいあるのか知らんですが、まあ誤発注の率は物凄く少ないという話になるような気がするんですが(どこからどこまでを誤発注にしてるのか良く判らんですけど。委託取引で過誤訂正した分を誤発注扱いにしたんじゃねえかと勝手に想像)。

報道では「1万4千件誤発注してるんですよ」という言い方になってしまうのは甚だ遺憾でございますが、よく見りゃ金融庁の発表内容も何だかな〜って感がします。管理体制についての実態調査結果みたいなのが上記URLの『(3) 株式等の売買発注業務の管理』って所にあるんですが、曰く、

@ 発注制限・警告の解除への管理者の関与の状況
A 売買システムを統括するCIOなどの選任状況
B 株式売買発注業務に関する研修等の実施状況

売買の現場でどういう状況が生じているのかちゃんと把握しているのでしょうかとか(@ね)、形式的な責任者を設置したり、実戦と関係ない研修をやってどの程度の意味があるのかお判りでしょうか費用対効果というお言葉をご存知でしょうか(しかも何故だかOJTは研修等じゃないそうです・・・・)って(A、B)とか突っ込みを入れたくなるようなたいへんにすばらしいじったいちょうさをしておいでのようで。

まあアレだ。どうもこの公表文書を読んでいると「証券会社の管理体制に不備が多いから1万4千件誤発注が生じてますよ酷いですねえ」という風に読めてしまいまして、まあそんなニュアンスで報道発表してるからニュース番組でもそういう扱いになってるんじゃないかなどと勝手に妄想を膨らませるのは被害妄想ですかそうですか。

別に調査するなとかいう事をいう積りはないですけど何だかな〜って感じ。

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2006/03/16

○その前に朝からニュースに脊髄反応

オール証券会社@日本で発注ミスが年間に1万4000件ありましたとか鬼の首を取ったように発表されてますが、1秒を争う発注業務をお前らやった事あるのかと小一時間(という自分も大してやった訳ではないっす。証券自己ポジションの売買注文なら山のようにしましたが・・・)ですわなあ(しかも最近は取引所の詳しい板情報が情報ベンダー経由で提供されているので、注文入力までの速度がが早いか遅いかってのが発注している顧客様に直ぐ判ってしまうんですよ)。

そりゃまあ間違えないのが良いに決まってますし、ちゃんと確認して間違えないように努力するのは当然ですが、人間のやることだからミスは一定比率で発生する可能性はありますわな。だからこそ間違えが起きた時に被害が最小で済むような方策を考える方が重要なのではないかと思いますけどねえ。ありえない過大注文をそのまま通して板に5分間晒しっぱなしの取引所なんてのは勘弁ということでしょうなあ。

そうですなあ、公正中立な報道にとっては、放送での過誤というのは大変に重大な問題ではないかと思料されますので、例えば生放送のニュース番組での過誤放送(要するに言い間違え^^)は1年間に何件あるんでしょうか実態を知りたいですなあ。金融庁さまが大変に有益なご検査をなさったようですので、総務省でも検査してみたら如何でしょうか、おほほのほ。

ついでに、NHKの7時のニュースのヘッドラインでは「株式市場を大混乱に陥れたみずほ証券の売買誤発注。証券会社全体で同じような誤発注が1年間で1万4000件もあったということが金融庁の調査で判りました」などと言ってます。しかもニュースの場面では画面に「大量誤発注」の文字が。「同じような」誤発注はそんなに起きて無いでしょうよ。なんちゅう印象操作だ(ちなみに7時29分にもう一度ヘッドラインを読むのですが、この時には「同じような」は言いませんでした。あたくしの念波が到達したのでせうか、笑)。

#と、脊髄反応で証券会社が開き直って悪態ついているとしか思えない事を書いてしましたただの愚痴ですすいません

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2006/02/22

○現実に目覚めたのは結構ですが・・・・・

久しぶりに木村剛センセイのブログを見に行ったらこんなエントリーが。

http://kimuratakeshi.cocolog-nifty.com/blog/2006/02/__a823.html (直リンは自粛)

お話は先般の「グレーゾーン金利判決」問題に関してで、日本振興銀行さまがお得意としている事になっている「ミドルリスクマーケット」である零細企業への融資チャネルが細くなるのではないかというお話をしてるんですが、その最初の方に大変に香ばしい記述が。

『ミドルリスクマーケットと言えば、聞こえは良いが、詐欺リスクと日々戦う熾烈な戦場でもある。無担保貸出は借入詐欺と紙一重。性善説では語りきれない鉄火場がそこにある。』

やっと現実に目覚めたのでしょうかね。まあ結構な事で。

『信用リスクモデルなど何の役にも立たない。モデルの癖を見破られて、詐欺師軍団から集中砲火を浴びる宿命だ。実際、一部のメガバンクは、モデル審査を売り物とした中小企業貸出から密かに撤退した。火傷に気が付き、体裁に構っていられなくなったのだ。』

密かに撤退したという記述の根拠をお伺いしたい所ではありますが、それよりも大変に現実に立脚したお話として「信用リスクモデルなど何の役にも立たない」と大変に結構なお話。大昔(追記:マーケット)リスク管理モデルに関して似たようなお話をしてたのを思い出しますな。

・・・・と言いたい所なのですが、そもそも「信用リスク審査にクレジットスコアリングモデルを導入しろ」という今の金融行政のレールを敷く役割を果たした「金融検査マニュアル」の作成に深く関与したのはどこの誰でしたっけ?
http://www.fsa.go.jp/p_fsa/news/newsj2/f-19990408-1/002.PDF
(あいうえお順に並んでますが、堂々メンバーの筆頭にいるのは誰でしょう)

で、その施策に則ってリレーショナルバンキングのアクションプログラムとやらが作られまして、その進捗状況のご発表なんかがあったりしまして、2004年12月27日のドラめもんでネタにしたのはこのあたりのお話だったりします。
http://www.fsa.go.jp/news/newsj/16/ginkou/f-20041227-2.html

下のほうを読むと、『スコアリングモデル(信用格付モデル)を活用した融資については、全業態を通じて促進が図られてきている。』『(参考) ・スコアリングモデルを活用した商品による融資222,362件、20,118億円 (132,067件、11,403億円)』などという文字が輝かしく記載されておりますな。あっはっは。



で、氏のブログはこの後グレーゾーン金利のお話とかになるのですが、いやまあ何とも面の皮が厚いと申しますか。「モデル審査を売り物とした中小企業貸出から密かに撤退」って如何にもそのメガバンクが間抜けであるかのような記述をしてますが、やれって方向は金融庁が出したものですし、まあこういうリスクモデルを売り込んだりコンサルしたりで関連業界はさぞかし潤ったことでしょうなあなどと思うと、もう血圧が超越急上昇してしまいますわな。

今頃になって現実に目覚めるのはまあ知らないままよりはマシとしましても、現実を知らずに作った金融行政の指針を正そうというご提案はしないんでしょうか?あ、そうするとご自身の今までの言動を全面否定するから「今の批判」だけしておくのですかね。うひゃひゃひゃひゃ。。


2004年12月29日のドラめもんでこんなことを書いていたのを思い出しましたんで、昔の駄文を使いまわすと言う大変に手抜きモードなあたくし。

(以下2004年12月29日に書いた駄文の使いまわし)

・新しい中小企業金融への取組みへの強化

って部分(4番目の項目)はアクションプログラムが出た時点で既にあたくし「何ですかこれは」と悪態をついた覚えがあるのですが、こちらに関してはそもそもが変なだけに、金融庁様におかれましては何で表を作りながら気が付かんのかよって言いたくなる表現が(-_-メ)。

上記項目の事例紹介の最初の項目は『(1)ローンレビューの徹底、財務制限条項やスコアリングモデルの活用等、第三者保証利用のあり方』ってなっているのですが、この時点ですでにダウトな訳ですわな。

ローンレビューの徹底ってのはモニタリングとか事前審査の精緻化ってお話の筈。然るに、スコアリングモデルの活用ってのは貸出審査の簡素化って話な訳ですし、財務制限条項の活用ってのも基本的にはモニタリングを精緻化していれば必要ない(財務諸表に問題が出てくる前に気が付くことだから)筈のことでございますので、こういう項目を作っている時点で「矛盾する概念を包含するとは新しい取組みだわこりゃ」と金融庁様の慧眼に大変感服して顎が外れる思いであります。

まぁ当然ながら並んでいる事例も大変に心温まるものが多うございまして、例えば・・・・

『担保制限条項及び財務制限条項を活用した、原則、担保・第三者保証人不要の新規取引先向け低利融資商品を取扱開始』(関東財務局管轄の銀行)
→そもそもリレバンって「顧客との長期的密接な関係を基にする」って概念ではなかったでしたっけ??

『スコアリングモデルに、業種別(建設業)モデル及び個人事業主用モデルを追加し、精度を向上』(中国財務局管轄の銀行)
→個人事業主の財務諸表なんてあてにならねぇだろうという突っ込みもさることながら、「精度を向上」って開始後半年そこそこで精度が上ったかどうかって結果が出るという素晴らしいレビュー能力に大変に頭の下がる思いでありますなぁ。ワカルワケネェダロ

まぁ何ですな。この「取組み」とやらは結局役に立つのかとっても疑わしい「スコアリングモデル」だの何だのという物を地域金融機関に売り込む「最先端の金融技術」をお取扱になられる方々を大変に潤すだけのお話ではないでしょうかって気が物凄い勢いでする訳でございます。

まぁ地域金融機関(だけじゃなくて大手銀行もそうなんですが)の皆様に置かれましては、この手の「尤もらしい金融工学」に頼ることなく、本来のノウハウを磨いていただきたいものであります。

(以上2004年12月27日に書いた駄文より)

で、木村剛センセイにおかれましては今頃になって鬼の首を取ったかのように、『信用リスクモデルなど何の役にも立たない。』『実際、一部のメガバンクは、モデル審査を売り物とした中小企業貸出から密かに撤退した。』などと言い出す次第で、それじゃあてめえも参画した金融行政に関してはどう落とし前をつけるのかと小一時間問い詰めたいとはまさにこのことでございます。行政に関わったという認識と、本人の良心があったら、他人事のように「信用リスクモデルが役に立たない」とか言ってる場合ではなく、「以前作った指針は現実に則していませんでした。クレジットスコアリングモデルを金融機関に使用させるのを止めさせないと大変なことになります」って提言するもんではないでしょうかねえ(怒)。

まあこのマニュアル作る時には(さっき紹介したメンバー表にもありますように)銀行とか信用金庫とかの人たちも参加してるんですが、大体からしてこの手の会合にあたくしのようにちゃぶ台ひっくり返すような身も蓋も無い話をするような手合いが参加する訳はなく(笑)、しかも当時の雰囲気から言って金融庁様に物申すような訳には行かなかったでしょう(あくまでも想像ですが)し、一緒にやってた銀行関係者にも困ったものだとは思いますが、そう無茶苦茶叩く気にもなれませんな。いやはや。


しかしこの無反省振りは本人の仕様なんでしょうけれども、まるで昭和軍人で言うと辻政信みたいですなあと呆れ果てる次第でございます。

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2006/01/30

○全然関係ないけど雑感

・これは豪快な法令違反ですね

「ステート・ストリート銀行東京支店に対する行政処分について」
http://www.fsa.go.jp/news/newsj/17/ginkou/f-20060127-5.html

何つーか銀行が証券業務やっちゃいかんでしょって思うのですが、ここの信託は相当昔からセキュリティーレンディングやってましたわなあなどと思いつつ。コンプライアンスがどうのこうのって話はよく言われるのですが、正直な印象として、この手の「お前それは凄いな」っていう法令違反は外資系と言われる方が(この前のGS投信も驚き桃の木の花替えをやってましたが、そういえば郵政公社の窓販はそのままなの??)豪快ではないか(捕まる方としては「法令解釈の問題」というんでしょうが)と存じますが。

新生証券のも「普通そりゃまずいだろ、つーか昔長銀証券作った時に弊害防止措置に関して無茶苦茶厳しくチェックしてなかったんでしょうか」って言いたくなります。

「新生証券株式会社に対する行政処分について」
http://www.fsa.go.jp/news/newsj/17/ginkou/f-20060127-4.html

メールで非公開情報の授受ってあんたらアホですか?

しかし金曜のリリースで一番驚倒したのはステート・ストリート信託銀行の方でして、

「ステート・ストリート信託銀行に対する行政処分について」
http://www.fsa.go.jp/news/newsj/17/ginkou/f-20060127-5.html

この内容を熟読すべし。

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2006/01/26

・規制強化ですかそうですか

http://www.tse.or.jp/news/200601/060125_e.html

信用新規禁止、売買代金即日徴収、証券自己の売買禁止、立会い1時間とまあ見事に規制が強化になってしまいましたが、昨日のLD株の板は(途中からどうでも良くなって見なくなりましたけれども)まあようやりますなあという感想。まあ規制強化は仕方ないでしょうけれども、何か昨日一日だけ山のように売買させて今日から規制かよ!とは思いますけど。するなら最初からやっときゃ良いのに。

リバ狙いとかやってたスイングトレードの皆様ご愁傷さまです。つーかこれで今日売買どうなるんでしょうか??買いが入るのか??


・いやだから努力の方向が・・・

http://www.tse.or.jp/guide/interview/index.html

ここの1月24日の記者会見要旨。会見「要旨」のくせにPDFファイルで21ページもあるんで全部読むのは面倒かもしれません。で、10ページ目の質疑応答部分なんかを見ますと、西室社長様におかれましてはシステム容量をもっと強化するというような部分に力点を置いてお話をされておられるように見受けられます。

で、昨日の繰り返しになりますけれども、システム能力の増強をするなと言う気は毛頭無いのですけれども、ここの所の東証を巡る混乱ってのはシステムの問題もさる所ながら、問題が発生した後の対応というソフトの部分に問題があるのではないかと思うのですよ、あたしゃー。

ジェイコム株式に関して言えば、まあそもそもあんな注文を場に通すなよと言うのはございますが、問題を激しく大きくしたのは、その注文を成立させたら明らかに受渡不能に陥るような注文を5分間に渡って漫然と晒しっぱなしにしていた(個別銘柄の注文受付の緊急停止なり取引所での手動取消処理はできなかったのでしょうか)という対応のまずさであり、今回に関しては取引時間中にいきなり「全銘柄の取引を停止するかもしれない」という措置を取って、相場はパニックになるわ、結局引けさせなかったのはちとどうかと。今でもその状況は同じですけどね。

まあ取引のキャパが数百万のオーダーなのに売買単位数ベースで10億もある銘柄が存在することを今まで放置していたもそうですし、システム能力の向上も大事かもしれませんが、それよりも運営に関してもっと何とかしていただきたいと切に願いたいものでございます。

どうも努力の方向がおかしい気がする・・・・

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2006/01/25

○おまけの雑談

ライブドアが寄ったら取引パンクする懸念があるのでこの銘柄だけ立会時間を短くしますそうそう売買に制限を加えるかもしれませんのでよろしく。と東証が仰せです。

http://www.tse.or.jp/news/200601/060124_g.html

ここのリリースにもありますが、「当該銘柄は、上場単位数ベースで当取引所の全上場銘柄の約45%を占めており」ってある訳ですが、取引処理能力でパンクするとか言うのであれば今までそんな状況をよくもまあ放置してましたねさすが東証って感じでございます。

東証も色々な問題が起き続けで災難といえば災難ではございますが、危機対応能力というよりは危機がどうなると起きるかという観点が物凄く欠如した結果がここの所の混乱に拍車を掛けているんでしょうなあと思うわけで、どこぞから最高情報責任者とか言うのを引っ張ってくるのは悪いとは言いませんが、何か努力する方向が間違っているような悪寒が。

まあシステム問題起こしたすぐ後に「夜間取引市場の設置を検討」とかいう話をしちゃう(ご参考:http://www.nikkansports.com/ns/general/f-so-tp0-051216-0024.html)とってもメルヘンなお方がトップにいるという時点で大変に香ばしい訳ですがねえ・・・・

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2006/01/19

お題「また東証か!」

もはやブタエモンショックではなく東証ショックであります。

○ご案内の通りですが一応状況を

昨日の前場ですが、米国の株が下がったり、(米国)引け後のインテル&ヤフー決算が期待外れだったことから平均株価は下落っちゅうか、日経平均よりもトピックスの下げ方がきつかったのでこりゃ参りましたなという感じでした。

で、後場最初は何となく一旦下げ渋りだしたかと思わせたのですが、そこにご案内の東証の発表。「約定件数が400万件になったら全銘柄の売買を停止しますんでよろしく」って発表したのでさあ大変。停止前に売っておかなければというのでパニック状態になって日経平均は危うく16000円割れ(後記:15000円の間違いですがな、ああ恥ずかしい)寸前まで下落。さすがに途中から大型株などに買いが入ったりしてたので持ち直す展開にはなりました。

で、結局目出度く400万件到達して14時40分に取引停止。取引終了なのはまあそうだから仕方無いのですが、引けの板寄せをしていないでザラ場のままで終了させてしまいました。これもまた如何なものかと思いますが。。。。


○東証の対処がアホアホ過ぎ

1.パニックを誘発する対処

http://www.tse.or.jp/news/200601/060118_a.html
「約定件数が400万件になったら全銘柄停止するので、皆様注文を集約して下さい(意訳)」

もうね、アホかと馬鹿かと。そんな事言って注文を自粛する奴がいると思うのがもう頭の中に蛆が涌いているとしか言いようがないですわ。あのね、例えば満員の映画館でボヤが起こった時に誰かが「ここしか出口が無いぞ!」って叫んだらパニックになって圧死者続出でしょうに、そんな連想も起きないのかおまいらはと。

そんなに件数増えるのが困るのならザラ場方式を一旦止めて全銘柄板寄せにしちゃって「約定件数多過ぎなのでこのまま注文は受けますが引けまで板寄せにします」とでもやればいいのにと思うのですが(つーか人間様が立会いやってたら当然約定件数多過ぎで笛吹きですがな)、14時40分に取引終わらせているのにザラ場のままでやっちゃったという事は、システムがそういう対応できて無いんでしょうな。

で、本日もこの有様
http://www.tse.or.jp/news/200601/060118_g.html

約定件数で取引制限するくらいなら立会い前場だけにしてその代わり幾らでも持って来なさいと開き直る方が余程良い訳で、こんなことしたら取り付け騒ぎよろしく「400万件に逝く前に取引執行を終了させておかナイト」というインセンティブが働いて却って注文が殺到するでしょうがな。もうお前らは脳味噌が溶けているのかと小一時間。中途半端な開け方をするなと。

この「取引がもしかしたら途中で停止になるかも知れない」っていう無茶な状態は株券等の売買を直接行っている投資家だけでなく、他の方面にも影響が出る話でして、その対処はどうなるんだよって言うのもあるのですけれども、その話はちと置いておきます。


2.何で板寄せをやらないんだ

でまあご案内のように14時40分で取引は停止したのですが、とんでもないことに14時40分時点で引けの板寄せ処理を行わずにザラ場のままでまさに「停止」させてしまいました。その前に「14時40分で売買停止」ってリリースが出たのですが・・・・
http://www.tse.or.jp/news/200601/060118_c.html

「売買停止」だから「引け」ではなく、ザラ場で終了しちゃうって事なんですが、引け条件の注文執行が全部無効になっていますので、引け条件の注文をしている人はポカーンです。そして引けさせなかったので、S安売気配のままだった4753ライブドアの場合は引けの板寄せしてないので比例配分の処理は行われずに気配のままでおしまい。売り方は売れないままに翌日に持ち越しになってしまいました。何というか「取引所は取引執行の場を提供している」という意識はどこにあるのかと小一時間でございます。何故板寄せをせん。

板寄せ板寄せと業界用語を断り無しに使っちゃいましたが、板寄せってこれです。
http://www.tse.or.jp/glossary/gloss_a/itayose.html

#まああれだ、西室某以下幹部職員は全員切腹して詫びろと。


○だいたいグローバルスタンダードとやらにしたのがですなあ・・・・

と書くとグローバルスタンダードな皆様からボロカス言われそうですが、そんな話は忘れられていると思うので敢えて時代に逆行したアナクロな意見をば。

http://www.tse.or.jp/glossary/gloss_t/tyuuikehai.html
注意気配って制度が昔はございまして、直近価格から次の価格(正確には次の価格ではなくてややこしい説明が必要なのですが)に逝くのに1秒かけるというお約束がございまして、その間に注文が殺到すると板寄せになるという形になっていました。各会員会社の市場部員と才取業者が人力で取引執行していた時の方式をシステム化していたのですが、上記の注意気配の説明文にありますように、「株券等に関する注意気配は平成10年8月24日に廃止」となっております。

この時に何が起きていたのかと申しますと、この日本独自の知恵の結晶とでも申すべき(ああアナクロ)注意気配制度が海外の皆様には判り難いし、ザラ場に大量執行しようとしても板がちんたら動くのでその間に提灯がついてしまう(だけじゃなくて逆の場合もあるんですけどねえ)のでムカツクとか、まあ要するに海外投資家様やそのご意見を受けた当業者の皆様などから「ザラ場方式をもっと透明かつ迅速に執行しやがれコノヤロー」と散々言われてザラ場の最良執行が出来る現在の取引執行方式に変更(正確にはその後いじってるかもしれないので正確性は保証しかねます)となった訳。

(この時に東証には物凄い処理能力のスーパーコンピュータが導入されまして、債券先物の取引執行なんかは嘘のような速さになったのですが、速くなり過ぎて板がバカバカ飛ぶようになったので、誰も注文を置かなくなった(出来たと思ったらあっという間に遠い彼方まで値段が飛ぶマーケットにヘッジ注文さらさんわな)というアホな事態になってマーケットの流動性が落ちるシャレにならない珍現象になりました。その後値がバカバカ飛ぶのは改善されて現在に到るのですが。)

注文が殺到したら板を寄せてしまえば良いというのが日本の知恵だったのですが、どうも注意気配制度の廃止と共にそんな仕様は無くなったようですな。遅延が困るから能力増強→能力上ったから注文沢山来る→最初に戻るってやっていたら単なるいたちごっこなだけでして、全然抜本的対策にならん訳ですわな。

ザラ場の注文処理方式を何とかした方が良いと思いますけどねえ。

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2005/12/28

○これは豪快な法令違反ですね

金融庁様におかれましては昨日ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント株式会社(長いのでGSAMにします)に対して行政処分ということで業務改善命令をお出しになっていました。
http://www.fsa.go.jp/news/newsj/17/syouken/f-20051227-3.html

毎度不思議に思うのですが、証券取引等監視委員会では各種処分などをこれみよがしにトップページに掲載してるのに、金融庁ではこの手の処分のリリースがトップページの新着情報に掲載されない(「報道発表等」というカテゴリーをクリックすると一覧が出てくる)んですよね。証券会社に対する待遇が随分と宜しくない事でなどというのは僻みですかそうですか。

まあそれは兎も角として今回の法令違反行為は上記URLに書いてあるのですが、ここに書いてある通りだと「間違い商いの付替」「ファンド間売買」「届出書提出前の事前勧誘」とj今日びコンプライアンスに関して皆さんナーバスになっている時代に随分と豪快な法令違反行為で大変に頭の下がる思いです。間違い商い付替えなんて今時やる奴いるのかよ。。。。

何となく2番目あたりは単にロールの売買が同じタイミングで行われただけのような気がしないでも無いですが(本当に対当させてたらアフォ)、まあそれにしても今時こんな法令違反しないでしょうって内容でして、何か行政処分とかがあるとさっくりと発注停止になる今日この頃ですが、郵政公社でご採用になられたGSAMの投信商品はどういう扱いになるんでしょうかねえと存じます。

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2005/12/08

○マッチポンプ恐るべし(某金融新聞ヲチ)

日本が誇る金融のプロフェッショナル向けのクオリティーパーパー(笑)としてなんちゃら金融新聞という日刊紙がございます。何せ1部220円ですよ先生。で、まぁその新聞さまは昨日の最終面「スクランブル」記事で「オプション売りの怖さ−相場急伸で思惑外れる」ってお話を書いておられました。

あんまり記事を引用しまくると著作権がどうのこうのという話になりますので端折って紹介すると、相場膠着を見越して暫く前まで大流行だったオプションの売り(基本的にはストラングル売りですな)でお小遣い稼ぎをしていた投資信託やら個人投資家やらがここもとの相場急伸で香ばしい事態になっているというお話でございます。で、顎が外れそうになったのは記事中のこのくだり。

『オプション建玉の増加には、ネット証券の普及で取引開始までの障壁が下がり、オプションを売る個人が増えた事も背景にある。(中略)プロの投資家にも難しいオプション売りに、個人がどの程度リスクを認識しているかは微妙だ。』(日経金融新聞12月7日朝刊20面記事より引用・・・あ、名前書いちゃった!)

え?当たり前の記事じゃんと思うのはヲチャーとしてはまだまだでして、ここを見て「あれれ?」と思ったあたくしはてめぇのドラめもん過去ログを調べてみるとこれがまたあるわけですよウッシッシ。本年5月12日のドラめもんで暇ネタ的に採り上げたのが5月9日朝刊の日経金融新聞1面記事でございます。

という訳で昔書いたものを引っ張り出します。

(本年5月12日に書いたお話)
週明けの経済新聞はネタが困るらしくて色々と楽しい記事が登場するものであります。で、ちと古い話ですが今週月曜の日経金融新聞1面の楽しい煽り記事について。(以下あまり債券投資と関係ない話が延々と続きますのでヨロシク)

記事のお題は「個人も参戦『プロ市場』」ってことで、最近ネット専業証券を中心に債券先物やら株価指数先物の取引をやってみましょ(注:ここ変ですな。やってますよの間違いでしょう>自分)って事になっているんですな。ど〜せてめぇが個人で出来ない(注:証券会社の人は先物などの「投機的取引」を個人でやるのは厳禁です)話には思いっきり疎いあたくしは「ほうほう」と感心することしきり。

まぁ大体この手の記事は「皆さんも参加しましょうおっほっほ」という話なのですが、紹介されている取引がお題の順に「先物の裁定取引=比較的堅実」「オプション売り=それなりのリスク」「債先売り・株先買い=かなりプロ向け」、さよですか。
(蒸し返し終了)

売買を煽る記事を書くときには「それなりのリスク」と標榜しておきながら「プロの投資家でも難しい」「個人がどの程度リスクを認識しているかは微妙だ」と早速叩きに回るという素晴らしいマッチポンプクオリティには頭が下がりまくって立位体前屈モードになってしまいます。もうね、アホかと馬鹿かと。ええまあ書いている人は(そのときの記事をスクラップするまでマメではないので正確には判らないのが残念ですが)別人だとは思いますけど、同じ新聞で売買を煽る(いやまあ只の事例紹介記事ですよというのが公式見解でしょうけど)だけ煽っておいて、不具合が発生すると今度は「それ見たことか」的な記事を書くのは如何なものかと思いますけどねえ。

そんなのに一々粘着していちゃもんつけるあたくしも如何なものかとは思いますけれども、あっはっはっはっは(自爆)。

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2005/09/30

○十戒ですかそうですか

超有名Webの溜池通信(http://tameike.net/)の(2005年)9月28日付のエントリーに今週号の「週刊エコノミスト」誌に掲載された「金融庁“異能官僚”が綴った『十戒』」というコラムに関しての話題がございました。現物の週刊エコノミスト誌は読んでませんのでかんべえさんの記事からの孫引きで恐縮ですが、中々良い「十戒」ではございます。でも・・・・

『(4)制度 ワークしない制度を作るやつは最低のバカである。この制度は国民にとって何の意味があるのかを不断に問え。不要化した制度は迅速に撤廃せよ。』(上記Webより)

いやあのそれは正論なんですが、「リレーショナルバンキング」とか言いながら「融資に関してスコアリングモデルの採用」などと広げている風呂敷の右と左で矛盾したお話をしておられたりする組織様のお方にそのように言われましてもうわなにをするやめwせdrftgyふじこlp

いやまぁ「十戒」のような感じで皆さんがんばっていただければまことにありがたいですなあ。こういうひとがえらくなってぜひ「じゅっかい」のとおりにやってほしいものです。(棒読み)

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2005/08/29

○バーゼルU絡みの宿題メモ

先日ドラめもんで「宿題」と称したバーゼルU絡みのペーパーなんですが、結局読んでみたものの、詳しくはやたら量の多い公表文書を読む必要があるので、専門家の人にご教示を乞う方が話が早そうではございます(とあっさり白旗)わな。

で、見た感想というと誠に僭越至極で何なのですが、リスク計測のやり方に関して既存の方式の他に新しい方式を追加している(これはトレーディング業務だけではなくて信用リスクでもそうなのですが)という方向に関しては結構なお話だと思います。懐かしの一昨年の債券相場大下げの時に指摘されていた事として、「金融当局が銀行の債券ポートフォリオのリスク管理に同じ手法をさせている」ってのがございました。同じリスク管理手法をしてたら相場環境が急変化した時に参加者が全員で同じ方向の売買が始まってレミング状態になって集団自殺状態になりますわな。

まぁその教訓が生きて「複数のリスク管理手法を認める」ということになったのであれば(だと思いますが)、一昨年の滅茶苦茶相場も無駄ではありませんでしたなぁという所でしょうか。

ちと気になるのは、どうもリスク算定方式に関して「より適切に反映」という方向、即ち算定の精緻化という方向にあることですかな。「そんなの当たり前だ」といわれそうですが、トレーディング(に限らず市場でバカスカ売買されているようなもの)のリスク管理をせっせと精緻化すりゃあ良いって物でもないと思うのですよ。精緻化していく間に前提条件が段々増えてきて、肝心の「市場環境の急変」の時には「想定の範囲外」になっていたら精緻化の意味なしとなっちゃいますんで。市場環境が平穏無事な時に精緻にモニターできるというのが無駄とは言わんですがね。

などと勝手なごたくを並べましたが、トンチンカンな事を言っていたらゴメンナサイというか誰か指摘してちょ(と人頼み)。さすがに本件は読まないといけないと思いつつも、中々片手間に読める代物でもないので積ん読状態のままです(汗)。

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2005/08/23

○宿題リスト

ここの所金融庁や日銀から色々なペーパーが出ておりますので、そちらについてご紹介しないといけないのですが、何かと雑事が立て込んでいて読んでいる時間がございませんで、すっかり放置プレイとなっておりまして恐縮至極。

という訳で宿題リストです。

その1:バーゼルU関連資料

バーゼルU関連の資料がいくつかあるのですが、その中で債券売買にモロに影響しそうなのは金融庁あんど日銀のWebに載っております「トレーディング業務に対するバーゼルUの適用およびダブル・デフォルト効果の取扱い」についてのペーパー。こちらはカウンターパーティーの信用リスクの扱いとかレポ取引に関する扱いとかを(なぜかプレゼンテーション用のソフトで)書いてあるのですが「なんちゃら方式による算定がどうのこうの」として数学が苦手なあたくしにはお経よりも難しい式が幾つも入っていて誠に遺憾です。

正直、この手の資料に出てくるの「式」ってのは「計算の式」ではなくて「算定に関する基本的な考え方」を書いている事が多いので、わざわざ式にしないで日本語で説明して頂きたいものだと思います。経済学の本を見てても同じ事を思うのですが、基本的なものの考え方を文章でうだうだ書くと冗長になるのは判りますが、読んでる人が読み下しながら「ほうほう」と思うような記述を工夫されたしと前々から思いますな。

などと自分の頭の悪さを棚に上げて勝手な事を言うあたくしでありました。

最後のレポ・フェイル関連の所をざっと見たんですが、現在の実務から見て無理のない(というかいきなりリスク賦課が増える事が無いと申しますか)扱いになっているようですな。DVP決済(証券と資金を同時決済すること)推進の為に非DVP取引の扱いを厳格化するのかと思ってましたが、国内でのヘルシュタットリスクは考慮しない(意訳)というのが最初に目に入りまして、「まぁあまりガチガチにしないんですね」との第一印象です。資金に関しては「内国為替決済における銀行間決済途上の資金」は全額保護ですけど、証券決済って保護対象でしたっけと思いつつも。


その2:金融庁の監督指針

これがもう莫大な量ありまして、おまけに「概要」と書いてあるペーパーを読んでもこれが単なる本の見出しみたいなもんでこれを見ても何の事やら内容が全く判らんという代物。これはちょっとパスかもしれんね。


その3:証券取引等監視委員会関連

証券取引等監視委員会の年度は何故か7月からスタートになってまして、実は7月21日に既に平成17事務年度の証券検査方針に関するペーパーが出ております。まぁこれも読んでおかないとという感じですが、既に出てから1ヶ月経過していて証文の出し遅れですかそうですか。

9月半ばになりますと、「証券取引等監視委員会の活動状況」という本が監視委員会編集で出版(政府刊行物を置いているようなところで売っているものと思われます)されますので、そちらを読むとこれがまた面白い人にはかなり面白いという代物です。特に犯則事例の紹介が中々勉強になるというか示唆に富むというか。まぁお勧めです。

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2005/08/16

○お節介は止めましょうね(はぁと)

ちと旧聞になりますが、日本経済新聞に「金融庁またかよ!」といいたくなる香ばしい記事が8月9日にございました。あたくし過去記事検索のやりかたが下手くそなので何故か「特集生保経営」のコーナーから拾ってしまいました(リンク先は3ヵ月立つと消滅しますんで念の為)。
http://www.nikkei.co.jp/sp1/nt36/20050809AS1F0900W09082005.html

「金融庁、全金融機関に顧客満足度の調査実施を要請へ」って記事でございまして、記事でもさすがに「金融機関からは「民間が自主的にやること」と批判的な声も出ている。」って批判的な感じですが、この元ネタを金融庁のWebで見ると益々香ばしさが爆発して参ります。

http://www.fsa.go.jp/news/newsj/17/f-20050809-1.html

金融庁様におかれましては具体的に何をお考えかというのが上記URLの真ん中あたりに書いてあるのですが、この文章を読んでいると実に慇懃な言い方で「ご要望」をしておりまして、その言い回しの香ばしさに涙を禁じ得ません(-_-メ)。曰く、

『金融庁としては、懇談会でのご意見等を参考に、利用者満足度向上に向けた取組み、すなわち、利用者の声を把握し、それを踏まえ、各金融機関がその創意工夫による自主的な経営改善を行う取組みを、各金融機関が推進していただくことを期待しております。』

懇談会の意見(上記URLの文章からリンクしている先にあるざます)を聞いて満足度向上に向けた取組みをしやがれこの野郎どもという事ですな。

『利用者の声を踏まえた経営改善を行う取組みとしては、各金融機関が利用者保護を更に充実させるために利用者の声を生かし業務改善を行うものと、マーケティングの一環として利用者のニーズを掘り起こし、各金融機関が特色ある金融商品・サービスを開発する等の改善を行うものに大別されるのではないかと考えられます。』

その前の文で各金融機関がその創意工夫による云々と書いている割には、既に取組みに関して規定をしているのが心暖まる訳ですが、2種類あるからその通りに実行しやがれと。

『前者については、各金融機関が積極的に業務改善を行っていただき、改善を行った項目等について公表されることを期待しております。また、後者についても、特色ある金融商品・サービスを開発する等の改善を行っていただき、各金融機関の経営判断のもと、できる限り公表していただくことが望ましいと考えております。』

やった事に関してはちゃんと発表しやがれと仰せですかそうですか。



で、まぁ日本経済新聞の記事を見ますと「満足度調査を実施するよう要請する」とありますが、金融庁の発表文とそのリンク先を読みますと、どうも満足度調査とやらの実施状況に関して各業態の業界団体に実態調査をさせたという事のようです。例えばこれ→http://www.fsa.go.jp/news/newsj/17/f-20050809-1/yokin02.pdf

上記URLは預金金融機関に関るお話なのですが、まぁその実態調査の内容が細かい事細かい事(2ページ目をご覧下さい)。その細かさについては上記資料なんぞをご覧頂くと吉だと存じますが、4ページ目に「顧客へのアンケート調査を行っていないのは何故でしょか」っていうアンケートがあったりして、思わず茶を噴いてしまいました。

『Q7.アンケート調査を行っていない場合、その理由はなぜですか

(1)その他の方法で把握できるとしている金融機関における利用者の満足度の把握方法としては、「お客様ご意見カード(お客様の声カード)」、「投書箱(ご意見箱)」の店頭設置、ホームページに意見受付コーナーの設置を行い把握しているとの回答が多くみられる。

(2)協同組織金融機関では、渉外活動や懇談会・親睦会・相談会を開催し利用者の満足度を把握する活動を行っているとしているとの回答も多くみられる。

(参考)外国銀行については、顧客が少数・限定的であること、個人顧客がおらず法人顧客とは定期的な会合をもっていること等の理由から、特段のアンケート調査は行っていないとしているところが多い(8割)。』

特にこの(参考)のところは・・・・・(^^)


まぁ何と申しますか、ペイオフ完全解禁をして(という事になっているが、尻抜けも良い所だというのはご案内の通り)各金融機関が自主的な経営努力をする事によって金融機関経営が発展していくとか何とかいう建前で「金融改革プログラム」が作られている筈なのですが、監督官庁たる金融庁様が業界団体経由でこんな細々とした「実態調査」を行って「自主的な取組み」もあったものじゃないですわなという感じでございまして、金融機関の中の人も大変ですなぁと涙が止まらなくなるお話でございます。

大体からして、顧客の満足度が最低最悪だったら金融機関じゃなくても顧客から淘汰される訳でして、顧客アンケートの具体的項目まで事細かに「業界調査」を行うというのは暗に「この項目をアンケートに入れやがれこの野郎」と言ってるとしか思えませんが、そーゆーポイントこそ各金融機関の創意工夫で行う話なのでは無いかと小一時間ですわな。大体からしてアンケート形式にしなきゃいけない理由もワケワカメだが。

現在の内閣の絶賛金看板であります所の「構造改革」とやらは「民間でできる事は民間で」「規制緩和」という話の筈ですが、実態として進んでいるのがこれかよおいおいと感心することしきりなあたくしでございました。金融庁だけが突出しているのかも知れませんが、それにしてもこりゃ何なんだってお話でして、中長期国債の入札も無いお盆ウィークですんで、是非当該資料をご覧頂ければと存じます。

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2005/08/04

○リテール運用の無駄なハイテク化(続)

火曜のドラめもんで恐怖金融新聞月曜朝刊1面で堂々特集をしていた記事について悪態をついておりましたが(笑)、同じ事を思うお方は世の中にいる事が判ってホッと致しました。

良くネタに使ってしまい誠に恐縮至極ですが本石町日記http://hongokucho.exblog.jp/3231834/さんの所で「投資銀行はリテール金融のふりかけ論」ってエントリーが上ってまして(今朝エキサイトブログがメンテナンス中なので見えないかもしれません)、「リスク限定型投信って実はリターン限定型投信じゃネーノ(激しく意訳)」って指摘がありましてなかなか。コメント欄での議論も実に興味深いので一読をお勧め致します。

コメントの中に「最低元本保証型の商品で元本90%確保しながら運用するってのがよくあるけど、それなら90%を定期預金にして残りの10%で積極運用すれば良いだけのことじゃん(意訳)」ってのがあって実に至言ですわなぁという印象を受けました(^^)。

手元に大昔に買った「金融のゆくえ(財部誠一、織坂濠共著、総合法令、1995年の本で、織坂濠ってのは実は木村剛さんです)」というのがありまして、「タカラベにキムタケかよ〜」などと著者を見ただけで悪態をつきそうな今日この頃のあたくしではありますが(失礼)、この本はデリバティブに関するお話というかまぁ要するにデリバティブでカモられないようにするにはどうしましょうか何て話を書いたり、今後はどうなるんでしょうって話をしておりまして、ここに書いてある話しが10年前の本なのに今でも通用するのは何と言うか香ばしいことでございます。

『デリバティブをヘッジのために利用しようという良心的な財務マンが、デリバティブ業者とつき合う際に、おさえておくべき基本法則は、次に示す五つである。第一法則:世の中にうまい話は絶対にない、第二法則:シンプル・イズ・ベスト、第三法則:値段だけ叩く、第四法則:論より書面、第五法則:休むもヘッジ。』(同書199ページ第5章「だまされないためにはどうするか」199ページより引用、改行と句読点を若干いじりました)

勝手に想像するにここは木村さんが書いたと思われますが、ここの冒頭部分を「運用のために利用しようという財務マンあるいは個人投資家が」って置き換えたら今のリテール運用ハイテク化時代にぴったりマッチしてしまいますなぁと思うわけですな。まだこの本出てるかどうか知りませんが、内容を読みたい方はISBN4-89346-484-1C0033ですんで一つ如何ですか?

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2005/08/02

○雑談:何でそうややこしいリスクを取らせようとするかな〜

毎度お馴染みの恐怖金融新聞ネタ。

こちらの新聞はどうも我が国の個人金融資産をどうしてもリスクに晒したいらしく、昨日の1面はシリーズ「個人マネー・ウォーズ」第3部リスクと向き合うというお題で香ばしい記事を投入されておられます。

『家計の運用資金が預貯金からリスクのある金融商品に本格的にシフトし始めた。超低金利の中でペイオフが解禁され、一定のリスクを取らないと資産形成が難しい次代になり、(以下割愛)』

毎度毎度この種の煽り文句を見る度にケチをつけるあたくしも暇人というか粘着なのですが、ペイオフ解禁と運用商品の預貯金からのシフトは別問題でしょうに。超低金利の長期化によって預貯金からのシフトが起きているというなら話は判るのですが、この経済クオリティーペーパー(笑)がこ〜ゆ〜子供だましの論法を繰り返しているからダメダメなんじゃないんでしょうか。

で、まぁ色々と投信だの日経平均オプションの売りだのの話が出てきまして、記事の見出しが「言いなり運用はしない」って話になっている割りには、何か「高度な金融商品のススメ」のような記事内容になっているのが実に香ばしい次第でございます。

こんなややこしい商品に手を出す前に現物株式の買いから入ってみた方が判りやすくて気が効いていると思うのですが、まぁそれでは売る方も中々商売にならんわけですな。で、この手の「新しい運用商品」ってのはちょっとハイテク感を醸し出したり、高級感を醸し出したりして買う人の心をくすぐる商品設計が上手でして、商品のリスクがどこにあるとか、手数料や為替鞘を含めたオールインのコストは幾らよってあたりを良く理解して投資しましょうと言いたくなりますが、そもそもそこまで理解する人は一見素晴らしいけど良く見るとアレな商品には手をだしませんですかそうですか。

その横のコーナーには国際商品インデックス投資の機関投資家向けセールスをやっている人の記事が出てますが、いやまぁ面白いですねって感じですな。紹介されているエライ人によりますと、『商品の投機性は工夫すれば抑えられ、インフレへのヘッジなどプラス面を生かせると投資家が気づき始めた。』だそうですが別にインフレヘッジするなら株式でも不動産でも問題ないんじゃネーノなどと言い出すあたくしは野暮ですねそうですね。

いやまぁやりたいならどうぞってお話ですけど、何でも「新しい運用商品」をさせようとするこの煽りっぷりはちょっとどうなのよって感が拭えないのはあたくしが思いっきりローテクな商品をローテクにいじっているから僻んでいるということにしておきましょうか。ややこしい金融商品に手を出す前に、自分の馴染みのある企業の個別株式を配当とか株主優待とか見ながら1単位でも買ってみるほうがよっぽど「投資教育」に資すると思うんですけどね。

と、いつもの話になってしまいましたな。スイマセン。

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2005/07/25

お題「地に足をつけて金融高度化をしていただきたい」

夏風邪に注意しましょう(とほほ)。

○早速読者様からご指摘頂きました

日銀総裁の「リテール金融フォーラム(日経新聞主催だったようで)」における「金融の新潮流――新たな個人金融サービスの創造」って講演をネタにして金曜日に書いた中であたくしはこんな事を。

「リスクを世の中にあまねくばら撒く」という行為でもある訳でして、まぁそれを広く薄くしてるから無問題って理屈は判らんでもないですが、そもそもショック耐性が個人と金融機関じゃ違いわせんですかねぇという気もしますし。

・・・こう書きますと、「金融機関のリスク耐性>>>個人のリスク耐性」という文脈になりますが、この部分は筆の勢い(というかキーボード叩きの勢い)で滑ってしまってますな、恥ずかしい限りです。ということで以下昨日の話の続き。

時価評価とか減損会計とかと無縁な個人というのは「いざとなったら塩漬け」攻撃という最強の攻撃があるので、そーゆー意味ではリスクを個人に負担させちゃいましょうという総裁講演の趣旨は実に仰せの通りでございます。

ただ、現実問題としてどうなのよ?って事になりますと、「貯蓄から投資」という美名の下に新しい投資商品がぶち込まれ、銀行の投信窓販に続いて証券仲介業もおっぱじまっていますわな。でも肝心の証券仲介業もそもそもは「株式の販売チャネルの拡大」の筈だったんですが、だいぶ前にちょっと書いたと思いますが、発表される証券仲介業務の中身って「株式の個人への販売」じゃなくて「外債など(仕組債含む)の販売」という運用商品の販売ですわな。まぁ個人に株式売るって事になるとシステム投資が結構重いんで入り口が運用商品の販売になるのは経営上仕方ない面はあるのですが。

でまぁ金曜も申しあげた「南アフリカランド建て債券」(4月20日にネタにしてました)話もそうなんですが、どうも運用利回りをアップさせるために「そんなリスクを取る必要があるのか?」というようなリスクを取っている人々が世の中に多いように思えますし、大体そのリスクをちゃんと判って投資しているのか実に謎な債券とか外貨預金とかが絶賛販売中という現状があると思うんですけど。

この状況が福井総裁が講演で言う『金融機関が家計のニーズを適切に汲み取って多様な金融サービスを提供し、それを通じて日本の家計の資金が企業活動のサポートに有効に活用されれば、家計の幸福の増進はもとより、わが国の経済発展にも資するものと期待されます。』っていう状況になっているんでしょうかと申しますと実に「????」だという思いがあるんですよ。

方向性として「貯蓄から投資」っていうのを否定する気はございませんが、現状の「投資」の方向を見ていると、家計というかリテール金融に「リスクを取りましょう」「投資をしましょう」っていう話を日銀が積極的に行うのは、現実を理解してやってますか大丈夫ですかって思いがどうも抜けない次第でございます。

量的緩和政策長期化による運用難の弊害でもあるんですが、まぁ投資に関するというかリスクリターンを把握して投資しましょうっていう啓蒙活動というか教育に力を注ぐ方が日銀としては吉なのではないかと思います。昨日も書きましたが、投資家保護の観点を『このような取り組みに向けて金融機関を突き動かす力は、一言でいえば、市場規律ということになりましょう。(総裁講演)』って言うのは甘いと思いますよ。リスクリターンの関係を見抜くように投資家への啓蒙活動を行わないと「市場規律」も機能しないと思いますが。

まぁそれ以前に「運用利回りのために過度のリスク選好」というのは個人投資家というよりは金融機うわなにをするやめろhdflふkじlk

・・・・金曜も書いたように「お前が言うな」って青臭い話を延々と展開して誠に恐縮でございます。すいませんすいません。

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2005/07/22

○で、リテール金融の高度化な訳ですが

そんなニュース(中国人民元切り上げ)が飛び込む前の昨日の債券相場は訳もわからず上昇して参加者一同「???」ではありましたが、まぁ先物が訳判らず動くのは最近の相場のお約束という事で宜しいのではないかと存じます(おいおい)。

そんな相場の中で福井総裁の講演要旨が公表されました。

http://www.boj.or.jp/press/05/ko0507b_f.htm

何でも「リテール金融フォーラム」という何でもフォーラムとかにするのが大好きですねって会合での講演でして、講演のお題が「金融の新潮流――新たな個人金融サービスの創造」ってお話。

内容は相変わらずでして、リテール金融を高度化させてバラ色の未来を築きましょうっていう楽観的なお話でございます。どうも冒頭の金融の現状認識のあたりから既に机上の楽観論というか現実はそうじゃねぇと思うがどうなのよっていうお話が並ぶわけでございまして、金融庁様のお出しになる「一つ一つは誠にご尤もな政策なんですが、全体を通してみると右の手と左の手でやってる事が矛盾してませんか」という如何にも頭でっかちな施策にも相通じるところがございます。

で、そのあたりを突っ込むというのもやりたいのですが、論点が拡散するのでまぁ本日は別のポイントに突っ込みを。

・どうもこう「リスクの分散」をしたがる訳ですが

まとめの部分で福井総裁はこういうお話をしております。まぁいつもの持論ではございますが。

『繰り返しになりますが、金融機関が家計のニーズを適切に汲み取って多様な金融サービスを提供し、それを通じて日本の家計の資金が企業活動のサポートに有効に活用されれば、家計の幸福の増進はもとより、わが国の経済発展にも資するものと期待されます。また、それは同時に、リスクの分散を通じて、わが国の金融システムが外部ショックに対して頑健性を増すことにも資するのです。』

家計のニーズって企業活動のサポートなんでしょうかねぇという話をしだすともはやイデオロギー論争になるのでその辺は突っ込まない事と致しまして(笑)、浅学菲才なあたくしめがど〜も疑問に思うのは「リスクの分散」というお話。

いやまぁ確かに金融システムっつーか金融機関の経営の安定という観点で言えば確かに仰せのように「金融システムが外部ショックに対して頑健性を増す」のですけれども、それって「リスクを世の中にあまねくばら撒く」という行為でもある訳でして、まぁそれを広く薄くしてるから無問題って理屈は判らんでもないですが、そもそもショック耐性が個人と金融機関じゃ違いわせんですか(編集時追記:この部分は正直おかしい書き方してますんで、翌日のエントリーで追記します)ねぇという気もしますし。

問題を一箇所にまとめておくというのも一つの考え方にならんですかね。何と申しますか、昨今の「金融高度化」で個人にも色々と趣向を凝らした金融商品が販売されているようでございますが、正直「一般ピープルがこんな種類のリスクをとる意味があるのかよ」って商品も目白押しだったりする(かつてドラめもんでちょっとご紹介したIBRD発行南アフリカランド建債券なんぞ序の口)わけでして(と物凄く抑えたトーンで書いているあたくしに気が付きちょっと自分に萎える)、金利が上昇した時に個人のポートフォリオに「塩漬けになった運用商品」がゴロゴロ転がるという間抜けな結果にならないようにして頂きたいものでございます。

・「投資家保護の観点」が甘いでしょ

で、まぁそうならないために投資家保護の観点が必要だって話はさすがに総裁もしておられるのですが、その話の矛先がいわゆる「投資サービス法」の制定に向かっているのが残念な所でございます。肝心の部分はどうも「金融機関の自主的な取組」と「市場規律」ってことになりそうでして、正直それでは金融機関への抑止力には為らないでしょってのがあたくしの印象。

『そこ(引用者注:投資サービスにおける包括法)では、事細かな義務を羅列するような法制を目指すのではなく、金融サービス提供業者が何をおいても遵守すべき基本原則、例えば運用指図への忠実義務、顧客財産の分別管理といったFiduciary dutyを、明確に示すことを基本とすべきだと考えます。そのうえで、より重要なのは、顧客から高度な信頼性を確保するための、金融機関自身による自発的な取り組みを促進するような枠組みです。』

『このような取り組みに向けて金融機関を突き動かす力は、一言でいえば、市場規律ということになりましょう。ペイオフ全面解禁後は、預金者自身が金融機関を厳格に選別することが期待されるわけですが、金融商品が多様化・複雑化する中で、預金者の選別だけで、市場規律が十全に作用するとは言えません。金融機関の株主、債権者のほか、その株式を上場する証券取引所、さらには監査法人や格付機関、あるいは金融機関のガバナンス機構の中での社外取締役といった様々な主体が、複合的に市場規律を働かせていくことが必要です。また、市場規律を働かせる起点となる市場ルールの形成は、監督当局から言われるまでもなく、市場参加者自身が率先して担っていくべきです。』

だそうなのですが、それはちと楽観しすぎではないかと存じますが(ってセルサイドの人間が言うことじゃねぇぞコノヤローと言われますと「誠に申し訳ございません」となりますが)。

まぁお前が言うなといわれるのを承知の上で申しあげますと、金融商品の高度化がどうのこうのという前に、金融知識の普及、しかも「新しい高度な金融商品マンセー」的な某経済新聞的提灯教育ではない知識の普及をする努力が先決じゃねぇかと思う次第。セルサイドの立場としてはアフォばかりのほうがそりゃ儲かるんですけど、日本経済全体ってこと考えるとそれじゃイカンでしょうと何か偉そうな事を申しあげて本日は時間も無くなったのでこの辺で。

「セルサイドにいる人間が何エラソーに言ってるんだ」というご批判は甘んじて受けますんで・・・・・(と、3度も繰り返すのはくどいですかそうですか)

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2005/06/13

○日本振興銀行報道で色々思う

先週号(6月11日号)の週刊東洋経済に続きまして、今週号(6月18日増大号)の週刊東洋経済と日経ビジネス(6月13日号)で日本振興銀行の不透明融資疑惑が報道されております。今週号の記事はまだ読んで無いのですが、先週号の週刊東洋経済の記事を読んだ所、要するに木村剛氏の配偶者が代表を務める「ウッドビレッジ」(まんまですな^^)なる企業に同行の主力商品であるローン金利よりも遥かに低利の融資が行われており、その担保に同行の株式が使われているのは如何なものかって内容でした。

まぁ氏はコンプライアンスオフィサー資格制度がどうのこうのとか実質的に主宰しておられるくらいのお方ですから、法律の形式要件は上手に処理しておいでだとは思いますが、創業メンバーと経営の主導権争いをしていたり、その最中に第三者割当増資やっていたりという事象があって、期末に蓋を開けてみたら氏と氏の関与する企業の持ち株比率が増大してて、かつ記事のような融資がありましたってんじゃあ結果から逆算すると「株式取得にファイナンスつけました」って話にならんのですかねぇと思う訳です。

で、まぁ氏がかつて大手銀行をシバキアゲていた頃に「銀行のインチキ増資をモニタリングしよう」などという記事を日経新聞のWebに書いておりました(NIKKEI NETから辿れますよ〜)が、たいへんにすばらしいかぶしきしゅとくすきーむですなぁと棒読みになるのですが、その話はともかく。


銀行の新規参入を促進していきましょうって施策の第一弾として中小企業への無担保融資拡大と銘打って設立されたのが日本振興銀行であるのは皆様ご存知のところですが、週刊東洋経済の報道が事実であると仮定した上でのお話になりますが、もし記事内容の通りであれば、昔懐かしい「オーナー銀行」の香りまで漂う実に香ばしいものですなぁって感じです。まぁ報道によれば貸出額は1億円2億円だかって話ですんで別にオーナーの機関銀行状態でも何でも無いんですが(貸出の内容と実質の資金使途がどうよって話はともかくとして)、今後の銀行業への新規参入や既存銀行の買収による銀行業への参入に関して「気が付きゃ機関銀行」って事の無いように願いたいものでありますな。


戦前の昭和恐慌前には特定の事業会社がベースになって設立した「機関銀行」や、設立は機関銀行ではないものの特定企業と深く結びついた銀行(台湾銀行=鈴木商店、十五銀行=松方系企業)がございまして、っつーか中小銀行にはそういうのが多かったそうですが、この機関銀行化が貸出先企業の経営悪化に伴い貸出内容が悪化して延命の為に益々状況が悪化するという事態になったわけですわな。(このあたりは「昭和金融恐慌史」(高橋亀吉・森垣淑)を参照してます)

まぁこの時の教訓から現在の銀行行政では事業会社の銀行経営を厳しく制限しており(つーか支配株主になるのは禁じ手ですよね)、大口融資規制とか銀行検査とかで「機関銀行化」の抑止を行っているとあたくしは記憶しております。

昭和金融恐慌当時は預金保険機構などというような気の利いた制度はございませんでした(と思いますが、あったけど機能しなかったのかも知れませんが。どっちにしろ破綻に伴い小口預金もきっちりカットされました)が、現在は預金保険機構という便利なものがございますので、「預金の受け入れは一人当たり1000万円を上限としているので元本と利息が預金保険機構でカバーできています」と堂々と宣伝するような金融機関が高利の預金を集めて、放漫貸出を行いあっという間に破綻された日にゃぁ真っ当に経営をやっている銀行と国家財政の負担が発生してしまい、結果として預金者および国民がケツを拭かされるという涙の出るようなことが起こりかねない(決済システムなどへの影響は軽微かもしれませんけど・・・・)訳ですから、当時よりも現在の方が「特定の銀行が機関銀行化することの弊害」は遥かに大きいと存じます。

そういやどこぞの風雲児が山口県の方にある銀行と共同出資で銀行を作るだの何だのという話がありましたが、ありゃどうなるんでしょうな。

ま、金融庁様がちゃんと機能していただいて、機関銀行が預金保険機構への実質ただ乗りを行うというアフォな事態が起きないように今後とも注意していただきたいものだと切に願いたいものであります。

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2005/05/06

おまけのニュース雑感:歴史上の事件を思い出しますなぁという話。

月曜のニュースでぶっ飛んだのはこれ↓
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT2Y0200K%2002052005&g=E3&d=20050502
リンク先のニュースは(既にリンク先は死んでいると思われますが)何かと申しますと、毎度話題を提供してくれる日本振興銀行が地方自治体や青年会議所などと連携し、大阪府や栃木県、埼玉県で振興銀をモデルにした「地域振興銀行」を設立する構想を打ち出して記者会見をしたそうです。その前に自分の所の預貸率だの貸した途端に大口焦げ付き発生した審査体制だのの改善をしたら如何でしょうかなどとは言ってはいけません。

で、このニュースで思いっきり引っ掛かったのは設立予定地でして、上記3県と言えばりそな銀行と足利銀行のフランチャイズ地でございますわな。金融庁のなんちゃらPTだとかアドバイザーだとかをついこの前までお勤めになられたお方が経営する銀行がその3県に乗り込むんですかそうですか。

で、このニュースを聞いてふと思い出したのが明治時代の「尾去沢銅山事件」です。尾去沢銅山事件って何じゃいな?と申しますと、あたくしの手元にある学研歴史群像シリーズ第21巻「西南戦争」の138ページを引用しちゃうのもアレですので、ネット上から拾ってきたものですと・・・・・

http://www13.ocn.ne.jp/~nanhaku/index.htmlの左側のメニューの「南白史録」ってのをクリックすると右の画面に出てきたり、
http://www.geocities.jp/salonianlib/history1/femmes_fatales_06.htmlの真ん中あたり(本編とは関係ないお話だが)とかをご覧頂ければと思います。まぁそんな事件な訳です。

上記記事にあたくしの手元資料に書いてある事を追加しますと、この時大蔵省は村井茂兵衛に対して2万5千両(1両=1円、ちなみに手元資料では5万5千両になっていました)の即時返金を命じ、村井は年賦返済を嘆願するも拒絶。その後に払い下げを受けた岡田平蔵は無利息15ヵ年賦と言う条件だったとなっております。

あ、別にあたくしはニュースを見て「思い出しました」と言っているだけでして全く他意はございませんですもちろん。えへへのへ。

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2005/04/28

○(おまけの与太話)その態度にある意味感動を覚える訳ですが

「ブログメディア」を標榜して堂々スタートして一時は大いに話題を集めたものの、その論説の自家撞着ぶりを批判されて逆切れしてしまい、俺様ワールドへと見事に回帰しちゃった人といえばあのお方でございますが、久々にそのお方のブログを拝見した所このような論説が。

ttp://kimuratakeshi.cocolog-nifty.com/blog/2005/04/thats_none_of_y_2059.html
(この人のURL書くときだけは何故か先頭の”h”を省略する訳だが^^)

著作権がどうのだとか誹謗中傷だとか色々と喧しそうなお方なので引用はせずまぁ読んでくだされって感じですが、創業早々にそこそこ大きな貸出先が経営破綻した話しをスルーして「貸出件数と貸出金額の目標を達成」って何と申しますか素晴らしい理論ですなぁ(棒読み)と存じますな。この先生のことですからもちろん「目標達成の為に数字作りをする」などということは全くしておられないと存じますが、「貸出件数と貸出金額の目標達成」と威張られてもその前の実績がアレですのでどうもねぇって感じですわな。

で、まぁ要するにご自身の経営する銀行の状況についてあちこちで批判されるのが気に食わないのか「金融や経営の何たるかを弁えない素人の方々が愚論を長々と述べていらっしゃいます(上記記事から引用)」とお話しになっておられますが、んじゃあ過去に銀行経営に関して散々シバキアゲ理論を展開して政策運営に関与しておられたのはありゃ何だったんでしょうかって思うわけですな。あたしゃ。

まぁ別に市井のイチ私人だったら別にあたくしも噛み付かないのですが、こ〜ゆ〜手合いが政策運営に絡んでいた事、現在も銀行という公的サポート(預金保険機構)付きの企業(であるが故にある意味公器なわけだが)の経営をしていると思うと、世の中どうなってるのよって思う次第であります。

久々に見て血圧が上昇したのでついおまけにしてしまいました。健康の為には見ない方が吉ですな>自分

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2005/04/05

お題「お勉強コース驀進の日銀と仕切り大魔王の金融庁」

金融行政ネタであります。

年度替りにかけまして金融庁と日銀から監督だの考査だのという施策に対して色々と発表されております。色々と発表されているだけにまだ全然フォローできてないのですが、まぁとりあえず今までやっている事の傾向が益々加速されて凶暴化しつつありそうですなぁというのを簡単に(^^)。

○「リスク計測オタク」化絶賛進行中のお方

昨日の夕方日本銀行のWebに「平成17年度の考査の実施方針等について」というのがアップされました。大変な力作のようですなぁ。
http://www.boj.or.jp/set/05/fsk0504a_f.htm

力作だけに一々紹介しているといつまで経っても終わらない悪寒が致しますのでまぁ上記URLをご覧頂きたい訳ですが、まぁ読みながら思うのは「リスク管理の精緻化に随分走ってますなぁ」って所でしょう。今年度の考査方針に関してこんな感じで書いてあります。

『考査においては、引続き金融機関の経営実態の把握に努め、最後の貸し手機能の発揮に備えるとともに、今後は、(以下太字になっているのはリンク先文書と合わせてます。日銀の気合を感じますなぁ)金融機関がリスク管理・経営管理の高度化を進め、顧客ニーズに応えて創造的な業務展開ができるよう支援し、それを通じて金融システム全体としての機能度や頑健性の向上に貢献していくことに力点を置く方針である。』

と言うことで、まぁ「金融高度化支援」がどうのこうのという話をしておりますが、この後に延々と書いてある事は(物凄く乱暴な割り切り方でございますが・・・・)あたくしにはどうも「リスク計測の高度化」に走っているようにしか思えん訳です。

『貸出資産については、これまでもDCF(Discounted Cash Flow)法的な考え方を用いて経済価値の適切な把握に努めてきたが、今後もその考え方を広く応用して、金融機関との間で、貸出資産の評価に関する認識の共有を図る。その際、経済価値が金融機関自身の経営状況に応じ変動し得る親密企業向け貸出などについては、その特性を踏まえた評価方法について議論し、評価の精度を高めていく。』

いやもう物凄く難しく書いてありますな。特に後半部分は頭の悪いあたくしにはさっぱりワカランチ会長であります。こんな感じで延々と管理手法の精緻化やら高度化という話をしてます。別にリスク管理をイイカゲンにしろとは申しませんが、どうも努力する方向を間違えているのではないかという気がする訳です。

だいたいモデル化がどうのこうのとかってのは頭が良くて数学のお得意な方が大好きと決まっておりますが、大体からして金融機関経営を揺るがすような大災厄的な変動ってのはモデルで想定している範囲外の時に起きるものですし、そうじゃなかったら昔のベアリングみたいに管理不行き届きによるものでしょう(皆揃って仲良く緩慢に沈没するという国もありますが・・・)。それにモデルに関しても特に信用リスク関係に関してはそんなに理論価格がどうのこうのって割り切れるもんでも無いでしょうと思うんですが。先日はクレジット・デリバティブ市場から信用リスクの市場価値を計算してどうのこうのって話も出てましたが、そもそも市場で付いた値段がまんま正しいかというと、市場規模がそれなりの流動性があって色々なプレーヤーが絶賛ご参加されてる訳でもないですしねぇ。まぁいっか。

最後の方に図表形式で「17年度考査におけるリスク・カテゴリー毎の重点項目」ってのがありまして、まぁ色々と書いてあるんですが、その中でちと笑ってしまったのは「信用リスク」の最後の部分。

『競売や任意売却の実績、担保売却の方針、担保物件の現地での調査結果等を踏まえ、担保の処分可能見込額の適切性を検証。その際、必要に応じて、土壌汚染のある不動産担保の適切な評価が行われているか確認。』

・・・・先日どこぞの不動産会社が土壌汚染地に分譲マンションをぶち建てて問題になった事件を踏まえてますな。何で突然ここだけ急に個別具体論が出てきているのか良く判らんですなぁ。。。何で??


まぁ総じて申しあげますと、兎に角何でも計量化して精緻に管理しましょってお話なんで、まぁその手のご商売をしておられる方々におかれましてはウッシッシという所ですなぁ。しかし小規模金融機関までそんなに精緻な管理って必要なのかねと思うのでありました。



○仕切り大魔王による仕切り行政は終わらないようですな

さて金融庁。3月29日に「金融改革プログラム」の「工程表」やら、「リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラム」などの施策が絶賛大発表されました。で、この金融庁と言うところは相変わらず記者発表はせっせとやってくれるのですが、この手の資料が記者発表当日に全然Webに載らないという特技があります。財務省も日銀も記者発表関連の資料って速攻でWebにも掲載するんですが、誠に遺憾な官庁ではあります。

んな話はともかくとして、金融庁の相変わらずの体質というか、益々凶暴化が進んでいる象徴的な資料ですなぁと思ったのがこのセット。

『金融改革プログラム「工程表」の公表について』
http://www.fsa.go.jp/news/newsj/16/f-20050329-3.html

『リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラム』
http://www.fsa.go.jp/news/newsj/14/ginkou/f-20030328-2.html



工程表の公表云々にはこんな事が書いてあります。

『金融庁と致しましては、本「工程表」に沿って着実に施策を実施することにより、多様な金融商品やサービスを国民が身近に利用できる「金融サービス立国」を「官」の主導ではなく、「民」の力で目指してまいります。』

で、『「官」の主導ではなく、「民」の力で目指してまいります。』って言うくらいですし、ペイオフ全面解禁もしたことですし、これからは金融機関の自主性を重視するのかと思えばあにはからんや。2番目のURL先を見ますと『今後、本プログラムに盛り込まれた措置を着実に実施してまいりたい。』ってなことでアクションプログラムがある訳です。

http://www.fsa.go.jp/news/newsj/14/ginkou/f-20030328-2/01.pdf

このPDFファイルの2ページ目からが措置とやらなんですが、一目瞭然なのは箇条書きで書いてあるのが『金融機関に・・・・要請する。』『業界団体に・・・・・要請する。』ってのばっかりだと言う事(-_-メ)。どこがどう『「官」の主導ではなく、「民」の力で目指してまいります。』なのかもう小一時間問い詰めたい訳ですよ。結局官主導じゃないと安心できないって事とちゃうのかという感じですなぁ。この「金融機関に・・・・・要請する」の数を数えようかと思ったのですが、途中で空しくなってしまったので止めちゃいました。金融期間やら業界団体に要請する話はゲップが出るくらいあるのですが、金融庁がこんなことをやりますよ〜って話はあんまりないのよね。

という訳で、相変わらずの金融庁でありますが、すぐに見る事の出来る場所には「官の主導じゃないですよ」と書きながら、面倒臭がってシロートの人があまり読まないと思われる具体的施策の資料部分では毎度お馴染みの仕切り大魔王爆裂というのも実にアレでございますな。

困ったもんです。

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2005/03/22

お題「日銀よお前もか・・・・」

休み明けはおおぼけモードなのですが、3日も休むと・・・・って事で今朝は甚だ簡単に。

○ペイオフ全面解禁後の金融システム面への対応について

先週金曜日に上記のお題で機構改革だの今後の日銀の政策運営だのが発表されております。場中にいきなり「ペイオフ全面解禁後の新しい政策運営に関して3時過ぎに発表」ってのが出た時は一瞬何の事かと思いましたがまぁご愛嬌って奴ですか。
http://www.boj.or.jp/set/faa0503a.htm

まぁ「決済性預金全額保護」と言っている時点でペイオフ全面解禁もへったくれもあったものではないと相変わらず思っているんでその時点ではぁはぁそうですかってなもんなのですが、今回の施策は公式発表文を見たところ一応日銀としては政策の基本的なありかたの転換って感じのようですわな。

「基本的な考え方」の冒頭部分にこんな事がかいてあります。

『こうした変化(引用者補足:ペイオフ全面解禁)を受け、日本銀行の金融システム面の対応も、これまでの危機管理重視から、(以下の太字部分は本文中にわざわざ太字にしているものを忠実に太字化したものです)金融システムの安定を確保しつつ、公正な競争を通じ金融の高度化を支援していく方向へと切り替えていく必要がある。』

はぁはぁそうですか。要するに危機管理モードが終了したという事なんでしょうが、この「金融の高度化を支援」ってのはこりゃまた面妖なお話だと思ってその先を読むと、金融機関に対して何でもかんでも手取り足取りな上に、最近では産業政策までやろうとしてませんかっていう勢いで昔の大蔵省もビックリの金融庁さまを彷彿させる記述がございます。


○金融の高度化支援ねぇ・・・・

2段落目はまぁ普通の話(やや気になる点もあるが突っ込み省略)ではありますが、3段落目以降が「金融の高度化支援」話であります。

で、内容を突っ込みながらネタにする前にあたくしの思うところを申し上げますと、金融庁に影響されているのだか何だか知りませんが、日銀が以下にご紹介するように金融機関に対する「高度化支援」みたいな事をやるのはどうかと思いますな。どうもいまやっている(またはやろうとしている)事は、古き昔の「行政指導」と思いっきりかぶるお話(金融庁も日銀も)に見えます。金融自由化だの構造改革だのってのは確か「一定のルールを適用して原則自由化。監督官庁はルールが正しく運用されているかどうかの公正な審判役」ってのが骨子だったと思うんですが、そーゆー精神はどこに逝ってしまったんでしょうなぁ。

と申しますか、やたらと「ご指導」をした挙句に問題が発生した場合にはだれがどう責任を取るんでしょうなぁと思いますと益々寒いものを感じる訳であります。どこぞの役所みたいに「無税償却は認めないけど繰延税金資産認めてやるから引き当て増やせ」と指導した後に「繰延税金資産の過大計上だ」などと梯子を外して涼しい顔をするのでしょうかね。ま、なんちゅうか困った話だ。では本文に突っ込み。タグのようなものはあたくしの補足(太字部分スタート〜エンド)です、念の為。


○鼻息荒く「かくあるべし」

『一方、金融の高度化は、今後、日本経済が持続的、安定的な発展を遂げていく上で、重要な前提条件となる。日本経済を取り巻く環境が急速に変化する状況において、円滑で効率的な資金の配分を実現し、経済全体の活性化を図っていくためには、より多様な信用供与の仲介チャネルが存在し、金融仲介構造が柔軟で頑健なものであることが必要である。』

いやまぁ重要な前提条件だとか必要だとかそう考えるのは結構なのですが、何と言うか「かくあるべし」みたいな理念先行の香りが致しまして、大昔に読んだ小説「官僚たちの夏(城山三郎)」ですなぁなどという感想でございます。つーかそういうものは「かくあるべし」から生まれるものではなくて、その国あるいは経済主体が必要であるとなればちゃんと発生する物ではないかと思うのよ、あたしゃー。

従って本当に必要なのは、新たに生まれる金融手法に関して不必要な規制(その手法が単に詐欺だとか犯罪的な手法だったら規制せにゃーなりませんが)を行わないようにするとか、法律面などでの整備を行うとかってお話だと思うんですけど。

と、思いながらその次に参りますと、益々「かくあるべし」攻撃が爆裂。



『そして、そうした金融仲介構造の実現のためには、融資慣行の見直し、金融機関のリスク管理の高度化、クレジット関連市場の整備など、金融システム面でなお広範な取組みが求められる。

この太字部分が一々突っ込みどころというのは狙ったギャグなのでしょうかって感じですが、融資慣行の見直しってのは金融庁がお好きなネタ。リスク管理の高度化ってのはバーゼルU絡みなんでしょうが、そもそもバーゼルUは何度か話のネタにしているように「中小零細企業向け小口貸付のリスクウェイトが大企業向け貸付のそれよりも何故か低い」とか「金融機関の金利リスクを図る際に用いる標準的な金利ショックがイールドカーブのパラレルシフトという基本的に有り得ない事を前提にしている」などと精緻化しているように見えても「はぁ何ですかそれは?」ってのがある訳ですな。それをベースに「高度なリスク管理」のご指導をしても、本当に問題が発生した場合に高度なリスク管理とやらで想定しているような結果で収まるんでしょうか?

リスク値の計測そのものは要するに計算の世界でして、問題はその前提条件が実態に即しているかどうかなんですが、だいたい「最新の金融工学を駆使した手法」ってのは計算の精緻化方面に走りたがるらしいんでご注意ありたい所でありますわな。まぁそりゃ世の中全てを前提条件に組み込む事は不可能なんで、使う側はモデルの前提条件がどうなってるかを知っておく必要があるということですわな。何だか話が逸れましたが。


○あっはっは

『このような金融高度化が関係者の努力で進展していけば、日本銀行の金融政策運営面でも、その効果がより効率的に経済に及んでいくものと考えられる。』

これだけ散々「かくあるべし」話をぶち上げておいて「関係者の努力で進展」といきなりひとごとモードになるのは如何なものかと。まぁそりゃ「私たちが絶賛ご指導する」と言うのは問題ありだってのは判りますがねぇ。


『金融の高度化に向けた民間の取組みを支援するため、日本銀行としては、考査・モニタリングにおいて、金融機関のリスク管理・経営管理の高度化を促すことを通じて、新しい業務展開などの動きを積極的に後押ししていくほか、組織体制、金融機関との対話チャネルなどの面でも工夫を凝らしていく。』

と書いてますが、要するに「乃公出でずんば蒼世を如何にせん」って事なんでしょ。まぁ後押しされたらその先は崖でしたって事のないようにして頂きたいものでございます。

ちなみに、基本的な考え方の続きは上記日銀WebからPDFファイルへのリンクがありますので、その辺でもご覧頂けるとなお「???」なのですが、その5ページ目あたりなんぞを見ておりますと、今般の組織改変に伴い「金融高度化センター」なるものが設置されるようでして、「公開セミナーの実施」という目玉施策が予定されているらしく、あんたは金融コンサル会社かと突っ込みたくなります。その部分を引用。

(公開セミナーの定期的開催)

金融の高度化に関する諸問題に取り組むための前提条件として、問題の所在、解決の方策等に関して金融機関等と広く理解を共有する必要がある。そのため、内外の金融機関の経営者や実務担当者を主たる対象とする公開セミナーを定期的に開催する。本公開セミナーは、考査・モニタリングと並ぶ、金融機関等との間の第三の対話チャネルと位置付ける。

テーマとしては、@試算の経済価値把握のための高度な手法の開発と共有、A融資を巡る金融慣行のあり方、B金融情報セキュリティを巡る経営上の問題と解決の方策、C新しい金融業務の展開に見合った会計処理のあり方、D新たに実施する考査・モニタリング技法の解説、などが考えられる。

(引用終了)いやまぁそうですかとしか言いようがありませんが、何か既に「頭でっかちの人たちが寄ってたかって高度な金融手法の話をした挙句、使えない施策を押し付けてくる」という予感が思いっきりするのはあたくしの杞憂ですかそうですか。


○というわけで

まぁこういう方向になりそうだなかというのは昨今の日銀の偉い人たちの言動を見ておりますと予想はできない事もなかったのですが、金融庁と日銀がせっせとご指導(つーか金融庁の場合は強制みたいなもんだが)する金融機関って何なんでしょうなぁというのが感想でございました。まぁ碌なもんじゃあねぇな。

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2005/03/09

(作者口上:本来このエントリーは与太話に分類すべきものなんですが、検索エンジン経由でお越しになられる方はこのページに目を通す場合が多いので、あまりにもふざけている某新聞のトンデモコラムネタについてご一読頂ければ幸いです。)

お題「本日(というか昨日)のトンデモコラム(^^)」

債券相場の方は一通りネタ終了の香りでして、まぁここから日経平均株価が12000円を超えてバンバン上昇でもしないと動意がなさそうですなぁ。ってな訳でたまには軽いお話で参ります。


○困ったコラム発見!

日経金融新聞の1面右端に「複眼独眼」というコラムがありまして、たぶん複数の金融業界関係者かつそれなりのお方がコラムを書いていると思われるのですが、最近このコラムと日経新聞市況面のコラムの内容が著しく劣化しているように(毎日読んでいるわけではないのでアレなんですが印象として)思えるのは気のせいではないかと。で、昨日のコラムはあまりにも豪快な「トンデモ」だったので、市場関係者の方には面白くないかもしれませんが肴にしてみましょう。

複眼独眼のお題は「銀国逆転金利」で著者は「一葉」氏です。本文を引用しつつトンデモぶりについて検証してみませう。以下『』内は3月8日の日経金融新聞「複眼独眼」より引用した部分になります(漢数字を算用数字に置き換えてます)。

『年配の債券関係者なら、「金国逆転金利」という言葉を覚えているだろう。今から25年前ほど昔の話であるが、5年金融債利回りは10年国債利回りより上でなければならないという当時の大蔵省の長期金利体系が崩れ、5年金融債利回りが10年国債利回りより低くなった事をいった。』

ここは話のマクラですし、25年前じゃああたくしもお子ちゃまですんでこの辺は「ほほうそうなんですか」で終了。でもこの頃ってそもそも金融機関による国債のディーリングってやってましたっけ?っていう気がしますわな。まぁいいけど。


『今から考えれば、スティープな順イールドになってスプレッドが信用リスクを上回っただけである。当時は規制金利下でイールドカーブはすべてフラットであったので、規制金利が緩んできたわけである。』

スプレッドってのは5年金利と10年金利のスプレッドの事を指しているものと思われます(用語の使い方に疑問は残りますが)のでまぁ良いんですが、イールドカーブは全部フラットだったんですかそうですか。知らないから「はいはいそうですか」としか言いませんが、当時お年玉預金を銀行で定期預金にしてみたら1年ものよりも2年物の方が金利が高かったんですがまぁいいか。

ここまではまぁよいのですが、最近の話と言うことで「銀国逆転金利」の話になると素晴らしい論説がでてくるのですな。


○比較する対象が無茶苦茶ですが

『最近の金利を見ると、5年金融債で0.1%、10年国債で1.5%となっている。ところが、この状況は驚かなければいけない。5年国債では0.63%となっており、ここでも金融債のほうが国債より金利が低く、金国逆転になっている』

利金債の流通利回りは国債よりも高いんですが何を言っているのでしょうか?と思って商工組合中央金庫(ここで商工中金というのがマニアだが^^)のWebを見ますと、確かに0.1%のリッショーという商品がありますな。でもこれって個人向けの貯蓄商品ですんで、国債の業者間流通利回りと比較しても意味がありません(だいたい個人が既発国債を窓販で買いにいくとその利回りじゃ買えません)から・・・・残念!

念の為申しあげますと、個人向けの金利が低い(たしかに0.1%はちと低すぎの気はしますが)のは一件あたりの金額が全然違うというのが大きな理由の一つ。資金調達という面で見れば、一発で何十億円と調達出来るのと、その金額集めるのに数千件とかかかるのでは手間賃というコストが全然ちがいますんで、それは金利に反映してくるのは当然のことであります。

『同じ年限であれば、信用力のあるもののほうがより低い金利になるという経済の常識に反している。』

前提条件が同じならそうですが、前提条件が違うものを比較してこっちが高いだの安いだの言うのは経済の常識に反してますが何か?


『実は、同じ2年物でみても、銀行大口定期は0.04%であるが、国債は0.1%とやはり「銀国逆転金利」になっている。』

既発の流通している国債は途中で売却すると元本が必ずしも保証されていません(絶賛販売中の個人向け国債は別ですんで念のため申し添えます。流通性のない国債ですから)ので、中途換金した場合の期間利回りがマイナスになる事もあり得ますが、銀行の定期預金は元本は保証されているんで、中途解約オプションが付いているようなもんですけど、そのオプション料はどう評価するんでしょうなぁ。


○海外との比較についてはちと研究の余地があるかも

『もちろんこんな異様な状況は日本だけであり、しかも金利規制緩和後から今日にいたるまで続いており、先進国の金融市場ではまずみられない。』

そんなもんかいなと思いまして、物は試しに英国(を選定するのがそもそもひねっているが)の商業銀行の定期預金金利はいくらでしょうかと、日本であまりポピュラーじゃなさそうなLloydsTSBのWeb(http://www.lloydstsb.com)を見ますと確かに3年もののTerm Depositの金利が2月末時点で4.9%(金額によってちょっと違ったりする場合もあるようですな)と3年物国債(Gilt)の流通利回り4.761%(複利、ソースはブルームバーグ)に対してほぼ遜色ない水準になっているようです。なるほどなるほど。

『このおかげで、日本の金融機関は預金を国債に運用しても利ざやが稼げるという幸運な環境になっている。』

何か金融機関が怠惰であるかのごとき表現ですが、そりゃあんた日本では余資が思いっきり金融機関に入ってくる構造になっているし、現在はそもそもが民間部門が資金不足じゃないので金イラネって事でもありますし、その断罪ぶりはどうなのよって思うわけです。


まぁ漠然としたイメージなんで話半分に思っていただけるとありがたいのですが、どうも(追記:英国の商業銀行では)貸出金利もそれなりに高いようでして、個人向けローン商品の金利を見ていると金利が7.8%だの9.9%だのという数字がうじゃうじゃ出てくるようでして、まぁそれなりの利ざやは確保できてるのねって思うわけです。ちなみに国民生活金融公庫の教育ローンの金利は1.7%(と保証料が外枠で金利換算するとざっくり0.3〜0.5%くらいっぽい)だったりする訳で、日本ではどうも色々と要因が複合して相変わらず貸出金利が安かったりするわけですな。英国の商業銀行の預金金利がそれなりに高いのはそのせいかな〜何て思いましたが、これは全然まともな分析じゃないので念の為。


○書くほうも書くほうだが掲載するほうも掲載するほうですな

このコラムはその後に結論らしきものがあるのですが、もはや論評する気も起きないのでまぁお暇な方は古新聞をご覧頂くとしまして(笑)、あたくしの結論ですが、「こんな豪快な文章を書くほうも書くほうだが、自分の結論にもっていくために本来比較対象にならないものを比較しているコラムを日経金融新聞はチェックできないのでしょうか」というところでしょうかね。

こんなトンデモコラムがスルーして「金融新聞」を名乗ってプロ向きと称する紙面の1面コラムを飾ってしまいますと、一事が万事って奴でして、この新聞に書いてある記事は大丈夫かよって気にさせてくれる素晴らしい記事(コラム)って事になるかと思うんですが。関係者の猛省を促します。

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2005/02/07

○ちょっと目に留まった記事

先週木曜日の東京新聞の特報面(24面)の囲み記事に「利息バトル・仕掛ける外資系2行」という事で、東京スター銀行と新生銀行が行っているキャンペーン預金(東京スターで10年定期の1.5%、新生銀行で5年定期の1.0%でキャンペーン期間中なのでプラス0.1%)の動きについて報道しておりました。記事から勝手に引用しますと、この2行の動きについて『金利が0.00何%の現在、2行が販売する”高金利”の定期預金は、(中略)ペイオフが解禁される4月を前に、預金分散の動きに対応して、新規の顧客を取り込む狙いがあるといえる。』という解説になっておりました。

で、その後、元経済企画庁事務次官の赤羽隆夫さんのコメントとして『両行とも元は破たん銀行で、大手銀行と同じ金利での競争だと、イメージ的に不利。勝つには高金利しかない。企業戦略としてまったく当然の行為。』『見逃してならないのは、両行とも外資系金融機関の傘下に入っていること。こうした外資系企業は、体力の弱った日本企業やリゾート買収を狙っている、1%の金利で集めた資金を買収に充てれば、大きな利益が挙げられる。高金利の定期預金の向こうには外資のこうした狙いがある。』というのがございました。

「外資系金融機関の傘下」って所には「?」なものがありまして、話の進行が外資ハゲタカ論っぽくて何ともアレなコメント(勝手に記者が面白い方向にコメントを纏めているという疑惑はあるがそれは兎も角)なのですが、まぁ「1%の金利で集めた資金をリスク資金に利用する」って趣旨の指摘は「ほうほうなるほど」と思ってしまう次第でございますわな。

日本振興銀行(そういえば小穴前社長もとうとう会長を辞任してまさに木村剛銀行になっちゃいましたな。なんだったんでしょう)に関して「預金保険機構をバックに預金を集め(木村剛さんがご自身のブログ「週刊!木村剛」で堂々と「一人1000万円までしか預金を受け付けないので預金保険で全額カバーされる所がミソです」と発言してますから〜斬りぃ!)て信用リスクの比較的高い中小企業に高利無担保融資をするってのは、預金保険機構制度に乗ったモラルハザードの一種じゃね〜の」とあたしゃ〜思うのですが、まぁそこまでは申しませんが、銀行という器を使って資金を集めて運用は何でも結構というのはやはりアレなものを感じる次第でありますな。

昨今は銀行への参入規制緩和がどうしたこうしたという話が進行しているようですが、昭和金融恐慌に関する本なんぞを読んでおりますと、昔々のその昔は経営者のお財布状態になってしまった銀行などと言った事例も結構あったようでして、まぁ規制緩和も結構ですが、そもそも銀行制度がやたらガチガチに規制されたのは何ででしょうかっていう面はどうなっているのかな〜と思う次第であります。

まぁ銀行が経営陣の「機関銀行化」するというのであればそれならそれでも構わないのですが、その場合は預金保険制度による保護施策というのはモラルハザードを助長する施策になってしまうのでどうなんでしょうね〜って感じであります(もちろん預金保険制度を生かしつつ銀行の資産をきちんと精査する監督をしろってのが本来のあり方なんでしょうが)。


何か話が上手く纏まりませんが、まぁそういう感じで(汗)。ちなみにこの記事の惜しいところは、最後のまとめ部分に出てくる海外投資アドバイザーの三原淳雄さん(どうでもいいが翌日の囲み記事では三原さんの肩書きが経済評論家になっていましたな、あっはっは)のコメントでして、「集めた資金をリスクを承知で避けられていた企業に高利で融資するのは結構」「例えば楽天が銀行を持って球団が一勝したら利率何%という定期預金が売り出されるようなアイデア合戦が展開されるかもしれない」などという趣旨のコメントをしているのですが、それはあたくしの危惧するモラルハザードがどうのこうのという問題に関してちょっと脳天気すぎではないかと思う次第でして、ちょっと三原さんにがっかりしちゃいました。

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2005/01/18

お題「ちと古い話ですが金融改革プログラム」

年末(12月29日)に金融庁ネタとして何か「それのどこがどうリレバンなんでしょうかねぇ皆様作文ご苦労さん」としか申しあげようが無い「リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラムの進捗状況」をご紹介して、ついでに「ああ相変わらず金融庁様は各銀行横並びでやらせるのね」という「決済用預金の導入に向けた金融機関(業態別)の準備等の状況の公表」ってのをご紹介しましたな。

で、よくよく思い返してみるとあたしゃー「金融改革プログラム」に興味があって金融庁のWebにお邪魔した訳でして、「金融サービス立国」といういきなり「立国」ですかと素晴らしいキャッチフレーズが出ている資料をちょっとだけ拝見しましょう。
http://www.fsa.go.jp/news/newsj/16/f-20041224-6.html

○心意気は壮大で文章が妙に硬い(^^)

『これからの金融行政は、「安定」から「活力」へというフェーズの転換を踏まえつつ、利用者の満足度が高く、国際的にも高い評価が得られるような金融システムを「官」の主導ではなく、「民」の力によって実現するよう目指す必要がある。我々はこのような取組みを敢えて「金融サービス立国への挑戦」と名付け、そのためのプログラムをここに策定した。』

さすがに「金融サービス立国」というのは現状からの乖離が激しすぎるので「敢えて名付けた」という事のようでして、ちょっとだけ安心。でまぁそれはそれで良いのですが、この「はじめに」の文章が妙に生硬な印象を受けるのは(単にあたくしが金融庁作成の文書を読みなれていないせいなのかもしれませんが)気のせいでしょうか??

「はじめに」の冒頭部分を引用しますとこうなるのですが、ど〜も硬い気が。

『わが国の金融システムを巡る局面は、「金融再生プログラム」の実施等により不良債権問題への緊急対応から脱却し、将来の望ましい金融システムを目指す未来志向の局面(フェーズ)に転換しつつある。「金融システムの安定」を重視した金融行政から、「金融システムの活力」を重視した金融行政へ転換すべきフェーズと言っても良い。また、金融のIT 化が進むとともに、経済社会全体においてもインターネット取引の比重が高まっている。今後の少子高齢化、経済のグローバル化の更なる進展に的確に対応し、わが国経済の持続的成長に資するためにも、構造改革の一環としての金融改革の具体的プログラムを以上のようなフェーズの転換に即して考える必要がある。』

今気が付いたのですが、上記段落内での各文が一つ一つ完結していて、話がブツ切れになっている(ように思える)のが読みにくい原因かと(^^)。英語版の方が読みやすいとはこれいかにという感じですな、あっはっは。

それはともかく。


○「リスク管理の高度化」ねぇ・・・・

まぁ細かく読もうとすると色々と債券市場にも宿題がありそうなプログラムではありますが、とりあえず目に付くのは「バーゼルU」に関する言及でございますな。

日本語資料の7ページ部分に『金融機関のガバナンスの向上とリスク管理の高度化を通じた健全な競争の促進』ってお話がありまして、「ああまたリスク管理ですか」ってものなんですが、その辺にこんな事が書いてあります。

<ここから引用>

金融機関のリスク管理の高度化を促すとともに、不良債権問題の再発防止のためのルールを整備し、主要行の不良債権比率が17 年3 月末時点の水準以下に維持されるよう、最善の努力を求める。また、各金融機関において収益性や健全性を示す財務指標や外部格付けが一段と向上することを目指す。

○バーゼルU(新しい自己資本比率規制)の導入に向けた金融機関のリスク管理に関するルール・態勢の整備及び検査・監督当局の体制整備

○ 早期警戒の枠組みの一層の活用
・銀行勘定における金利リスク等、自己資本比率の算定に含まれないリスクの適切なモニタリング等

○ 主要行のリスク管理の高度化
・バーゼルU導入を踏まえ、主要行に対しリスク管理高度化のための計画の策定を要請
・大口与信管理態勢や債務者企業の再建計画の検証
・主要行の自己査定と検査結果の格差に係る業務改善命令の発動等・繰延税金資産の自己資本への算入適正化ルールの検討

○ 証券会社・保険会社のリスク管理の高度化
・証券会社の自己資本規制の算定方法の見直し
・保険会社のソルベンシーマージン比率の見直し、新しい保険商品に係る責任準備金積立ルールや事後検証の枠組み等、財務関連ルールの整備

<引用終了>

まー結局のところ「バーゼルUの考えを金融機関全部に適用していき、ついでに皆様をせっせと監督しますので一つよろしく」と言っているように読めますな(^^)。


んじゃあ「バーゼルU」が導入されるから金融機関のリスク管理がより精緻になるかと言いますと、確かに表面的には精緻になるんですが、実態を反映した精緻さになるかというとこれがまた疑問のかたまり。以前から悪態をついておりますように、バーゼルU自体色々と政治的妥協のようなことをやっていると思しき節がありまして(昨年の6月30日のドラめもんで申しあげた事の繰り返しになりますが)、中小企業向け貸出金に対する所用(追記:「所要」ですな)自己資本が何故か少なくなってしまうという不思議なことがある訳ですな。

『バーゼルUの枠組みは、信用リスクがより高いと考えられる債務者についてはより高い水準の所要自己資本額を課すという手法を全般的に適用することにより、信用リスクに対する自己資本の枠組みの感応度を高める。』

ってのがバーゼル委員会のプレスリリース「編集者のための解説」って所にあるのですが、何故か中小企業向け貸出金は「小口分散によるリスク軽減効果を考慮して、所要自己資本額を軽減」(日銀あんど金融庁の出した「新BIS規制案の概要」って資料のあたりに説明があるのですが)という不思議な扱いになっておりまして、http://www.boj.or.jp/intl/04/data/bis0410c.pdfあたりの資料の3ページ目くらいを見ますと、「標準的手法」によってリスクウェイトを算出すると大企業向け貸出金のリスクウェイトの方が中小企業向け貸出金(追記:一件あたりの上限額が設定されています)のリスクウェイトが高いという極めて意味不明の状況が発生しておりますわな。

債券ポートでも同じような訳のわからん事態が発生しておりますのは皆様ご存知の通りで、何故か変動利付債券の金利リスクが「利息変更サイクル期間が満期の固定利付債と同じ」という状況になってまして、長期金利にフロートしてようと短期金利にフロートしてようと金利リスク量が同じとなっているという実に心の温まる規定がございまして、本日入札が予定されている変動利付国債の人気が絶賛大沸騰しっぱなしとなっている訳ですな。既に市場に「制度による歪み」が発生している好事例(というか悪事例)となっているのが実に素晴らしい。


○地域金融機関にも「バーゼルU」だそうで

「U.地域経済への貢献」って所に「中小・地域金融機関の経営力強化」って部分があるのですが、そこを見ますとこんな件が。

○ 中小・地域金融機関のリスク管理の高度化やガバナンス向上に向けた取組みの促進
・バーゼルUの導入、選択制の下での内部格付け手法の採用

っつー訳でして、何で地域金融機関に対してバーゼルUを適用してどうのこうのという話をするのか相変わらず理解に苦しむ(国際展開する訳でも無いのに、わざわざそんなややこしいものを適用する必然性はあるのか?)のですが、こ〜ゆ〜事を言っておる(まぁ大体こうなるのは方向性として以前から打ち出されておりましたが)とすれば、中小・地域金融機関に対しても金利リスクの計測だの標準的な金利ショックに対する想定損失の算定だのといった七面倒くさいことが求められる事になる訳で、誠にご愁傷様でございます。

面倒になってフローター債ばかりがアフォのように売れるような事態になりそうな悪寒が致しますわな。


○余り関係ないですが・・・・・

まぁおまけなんですが、この「金融改革プログラム」に出ている施策ってやたらと個別具体的な「偽造カード犯罪等の金融犯罪防止のための対策の強化・徹底」などという話があると思えばその並びに「金融商品・サービスにおける情報の有用性に配慮しつつ、情報の適正な保護を図る具体的な個人情報保護ルールの明確化」と何の事かよ〜わからん漠然としたお話があったりと、何かこう「?」なものを感じてしまいますな。

どうもそういう点も含めまして、このプログラムって妙に読みにくいんですよね。ついでに申しあげると、金融庁のWebってのもまた読みにくいデザインになっておりましてなれない人には情報探しにくいったらありゃしないので改善をお願いしたいものです。

ちなみに、バーゼルU関係資料はhttp://www.boj.or.jp/intl/05/intl_f.htmのあたりに資料が纏まっております。

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2005/01/12

お題「ニュース雑談」

本日はもしかしたら米国株安円高を受けてちったぁ動きが有るかもしれませんが、まぁ相変わらず10年1.4%で5年0.5%台後半で推移しとる間はネタも無くて困りますわな。海外出張にいっちゃった人以外の動きは無いですし・・・・・

○努力の方向が激しく変だと思うのですが・・・・

本間宗久相場三昧伝の一節に「米商いは踏み出し大切なり。踏み出し悪しき時は決して手違いになるなり。」なんてぇのがございますが、あたくしが大いに楽しくウォッチしている木村剛大先生肝いりの日本振興銀行さまにおかれましては、現在の金融行政の迷走ぶりをきっちりと具現化していただいているという意味で実に貴重な存在ではないかと思う訳です。

先日の発表でとうとう木村剛さんが社長に就任(した割には早期に後任を見つけ筆頭株主らしいですが木村さんの持ち株も売るかもとか言っている超越的無責任筆頭株主代表取締役なのは激しく顎が外れるのですが)した日本振興銀行ですが、早速新社長ご就任の1月から「土日も営業(ただし午前中だけ)」という新企画を打ち出したようであります。

・・・・・まるで結果から逆算すると債務超過なのに税金を絶賛投入されたのではないかとの疑惑も高い何故か旧国鉄の人がエライひとになっているどこぞの銀行を彷彿させるような企画なのですが、大手町の本店一つしかない銀行(というかただの商工ローン会社だが)が土日に午前中だけ店を開ける意味がどこにあるのか理解に苦しむのですが、まぁご苦労な事です。


この銀行が掲げる理念っつーかどうやって融資やって行きますかって話を見ておりますと、上記したように現在の金融庁の金融行政にも相通じる(金融検査マニュアルの策定に大きく貢献した木村氏肝いりの銀行なんだから当たり前ですが)訳でして・・・・・・

・担保不足で資金需要のある新興中小企業への融資を行う
・融資先の人物本位で審査を充実する
・無担保無保証融資(結局保証人は徴求しているようですが)

ってなお話を並べると、どうも金融検査マニュアルの香りが大変に漂って来るものを感じまして実に香しい。導入当初「これじゃあ担保不足の中小零細企業にプロパー融資できねぇ」ってなもんで「貸し渋りの原因」と悪態をつかれてから政治問題化。で、その後「金融検査マニュアル中小企業編」が出てきてたり、「リレーションシップバンキングの推進」などという話が始まって益々訳がわからなくなったというか現実離れしてきた訳ですな。

金融庁の仰せになられるリレバンに関しては年末(12月29日)のドラめもんで金融庁「リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラムの進捗状況について」の悪態をついたのでご記憶に有るかと存じますが、もう物の見事に鉛筆なめなめ状態になってりまして涙無しでは見られない事例発表となっております。

大体ですな、「リレーションシップバンキング」とか言いながら「クレジットスコアリングモデルの活用」を提唱するという時点で既に話が自己矛盾しているので、本気でリレバンを推進する気があるのかそれとも中小企業イジメとの政治的軋轢を避ける為の方便なのかよー判らんのだが、どうも日本振興銀行がやっている(というかやろうとしている事というか)を傍目から見ておりますと、少なくとも木村さんは素に大真面目になって「中小企業金融は金融検査マニュアル中小企業編の如くあるべし」となって現実に実行しようとしたんでしょうなぁと思わせるものがございます。


まぁ現実の壁にぶち当たって精々「金融検査マニュアル」が如何にとんでもない物だったかという事を反省していただき今後の金融行政に役立てる事が出来るのであれば大変に結構ではありますが、ど〜せそういう話にならないんだろうな〜と思うと実に暗澹たるものを感じます。また、銀行批判というかほとんど誹謗言いがかりに近い素晴らしい言説を展開しつつ金融行政に貢献していた木村剛さまがいざ銀行経営に携わった時に「今まで言ってた事とやってる事が違いませんか?」っていう様子(「銀行というのは融資先に個人の連帯保証を求めるのだから、預金に対して経営者が個人保証すべきだ」などと大変にご立派な話はどうなったのかな?木村さん)を見ておりますと、この国の行政機構はどうなっちゃってるんでしょうか?「吏道」ってもんがありませんでしたっけ?などと悲しくなってくる訳でございます。悲しいもんだ。



○国債管理政策を担う部署の設立話

竹中大臣が何故か「国債管理政策を別組織化するのはどうよ」って話を先日しておりまして、早速谷垣大臣が文句つけておりました。まぁ英国の歳入管理庁とかの例から思いついたのかもしれませんが、国債管理政策だけ別組織にする意味がさっぱり判らん話であります。

それ以前の問題として、国債管理政策でど〜のこ〜のという技術的な話よりも財政健全化に向けて努力するのが筋なんじゃないでしょうかと思う次第でありまして、どうも「2010年度にプライマリーバランスを達成」っていう話が無理だろって話になる前にお得意の目くらましをするという意図があるんじゃね〜のって憶測してしまうあたくしはやはりひねくれ者なんでしょうな。

問題が深刻化してくると目先の組織いじりとか精神的なスローガンをぶち上げて目くらましをするというのは日本古来の伝統芸とも言えるものですので、まぁこの手の話がごちゃこちゃ浮上する時には碌なことはなかろうと思うのが吉かと。相場云々としてはどうでもいい話ですが。

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2005/01/05

○日本振興銀行

今度は小穴社長@元DKBが「健康上の理由」で会長に退いてとうとう木村剛さんが社長に就任ということで、もはや壮大な自爆芸となりつつある「金融維新」に涙を禁じえない所であります。

そもそも「ミドルリスクミドルリターンの中小企業融資」ってのに無理があるというお話はあちこちで指摘されています。まぁあたくしなりに纏めると・・・・

融資先というのは「生きてるか潰れるか」という「1か0か」というもので、おまけに現在の日本の商慣習から言いますと企業というのは「完全に死ぬまでバンザイしない」のが普通。よって死んだときの回収率がいくらかというのは基本的に「物的担保と人的担保で幾らカバーされているのか」がポイントになります。

然るに担保を取らない(代表者の個人保証は処分可能な資産持ちでもない限り基本的に気休め以上の効果は無い)となりますと、要するに貸出金利でカバーするという事になりますが、「リスクに見合った金利」でカバーするためには統計でいう「大数の法則」が成立するくらいに小口分散をする事が必要でしょう。即ち新規開業直後で営業カバーエリアがそもそも狭い状況でいきなり「ややリスクの高い中小企業融資を無担保で実行」するのは無茶としか言いようが無いし、スコアリングモデルのような機械的な与信判断をしないのが基本的コンセプトになっているので、そもそも小口分散的な発想と矛盾していますわな。

おまけにこの銀行は決済業務を全然やっていないに等しい(そもそも決済をやらない銀行を銀行と呼ぶ資格があるのかという疑問もあるのですが)ので、融資先の業況をモニタリングする事が出来ない(特にメイン銀行は融資先の資金の出入りを常時モニタリングする事ができるので、ちゃんと見てれば業況の変化を速やかに知る事ができる筈。特に中小企業の場合は)という絶対的なハンデがあります。もともと高利の金でも喜んで借りに来る相手なんですからまぁ普通の与信先よりはきっちりモニタリングしないと焦げ付きの危険大なのに、30人だか50人だかの担当者(都銀の中規模支店2〜3個分くらいですが・・・・)で1都3県をカバー(しかも新規開拓もしないといけない)するのはそりゃ無理でしょう。

とまぁうだうだ並べると、日本振興銀行の迷走は内紛がどうのこうのというような属人的問題に矮小化されるべきものではなくて、そもそものビジネスモデルに問題があったという話になって頂きますと、金融庁だの日銀だのが持ち出す「頭でっかちプルーデンス」に冷水を浴びせる効果が期待出来るわけでして、壮大な大失敗実験もまた「重要な知見が得られた」(実験やっててよく言うんですけど^^)という事で意義はあるのかなと思うわけです。ケツが国民負担になるのが激しく遺憾なので木村氏今までご主張されていたように精々丸裸になって頂かないとあたしゃー納得いたしかねますがね。


どこかのブログで議論されていた(どこだか忘れた)ものの受け売りになりますが、所謂商工ローンなどの業態の融資開拓の肝は「アウトバウンド営業」(要するにこっちから融資先を決め打ちしてセールスすること)であって、「融資してくれと言って来る相手には基本的に貸さない」というのが常識だそうです。そんな中で日本振興銀行では木村剛さんがブログでも「開業前から融資の申し込みが沢山やってきました」と嬉々として書く位ですからまぁそういう発想は無いんでしょうなぁということがよくわかります。

やっぱ根本的に発想がずれていると思います。精々国民負担が大きくならないようにして頂きたいものです。竹中さんに倣ったのか火中の栗を拾おうという志は壮としたいですがね。



○「決済用預金を作れ」というプレッシャーですか?

4月のペイオフ全面解禁に向けての準備ということで、決済用預金(別名ペイオフ尻抜け預金)の設定が各金融機関で進んでいるようでして、年末のどさくさに紛れて金融庁はこんな発表をしておりました。

決済用預金(当座預金以外)の導入に向けた各金融機関の準備等の状況(平成16 年12 月現在)http://www.fsa.go.jp/news/newsj/16/ginkou/f-20041228-2.html

『この度、「無利息・要求払い・決済サービスの提供ができる」という要件を備えた決済用預金(当座預金を除く)の導入の準備・検討等の状況について、各金融機関に対しヒアリングを実施し、これを取りまとめましたのでお知らせします。なお、当分の間、毎月の取りまとめ結果をお知らせします。』

取りまとめ結果はhttp://www.fsa.go.jp/news/newsj/16/ginkou/f-20041228-2.pdfにあるのですが、確かペイオフ解禁ってのは金融の健全化を推進するために実施する筈でして、健全な金融という状況下では金融機関各自に自主的な経営をしていくって話だったと思うのですが、決済用預金の導入状況を毎月ヒアリングして発表ってのは要するに「金融機関へ導入しろとプレッシャーを掛けてる」んじゃないでしょうかって思うんですが・・・・・

金融健全化どころか益々官が管理(というよりは指導だわな)していく流れが強化されているようですが、国際競争力のある日本の製造業は官の関与がより少なかったという歴史的事実に関してもうちょっと考えて頂かないと。。。



○何か勘違いしている訳でして

報道によりますと、伊藤金融大臣は年頭の訓示だか何だかで、「金融サービス立国」などという話をしていたそうですが、「立国」ってのは普通「貿易立国」みたいな意味で使う言葉でして、「海外にうって出る」というような状況とほど遠い現状でその言葉を使うのはちょっと何と申しますか「??????」なものを感じるわけです。勇壮なキャッチフレーズに貧弱な中身というのはどうも「無敵皇軍」みたいな香りが漂ってくる訳でして、誠に遺憾の極みであります。

何考えてるんだか・・・・・

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2004/12/29

○リレーションシップバンキングねぇ・・・・(-_-メ)

昨日朝の某経済ニュース番組で「金融庁の金融制度改革がどうのこうの」って話しがありまして、「金融改革のポイントが利用者重視に」とかいうごたくを「また寝言か・・・」などと思いつつ金融庁のWebを見に行きましたら別の物を拾って参りました(^^)。

http://www.fsa.go.jp/news/newssj/16/ginkou/f-20041127-2.html

「リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラムの進捗状況について」ってのを拾って参りまして、まぁざっと読んでみたのですが、相変わらず「机上の何ちゃら」という感が拭えない訳でございます。細かい突込みをしだすとこの話もとんでもない大作になっちゃうんですが、そこまで突っ込んで読んでおりませんのでまぁ思いついた突っ込み所を少々。

今回は金融機関の取り組みぶりのご紹介とその評価って話になっておりまして、別紙資料ってのに色々と内容が紹介されております。で、そこを見ると「それのどこがリレバンなのよ」って突っ込みを入れたくなる事例が並んでいて、「作文っていうのは大変なことですなぁ(棒読み)」ってなもんです。

量も沢山あって中々楽しめるのですが、幾つかの項目だけ拾って眺めると致しましょう。

・早期事業再生に向けた積極的取組み

って所(3番目の項目)の最初に中小企業の過剰債務構造の解消・再生の取り組みがどうたらこうたらってのがありまして、その最初の事例としてご紹介されているのを見たらこんなものが。

『本支店の法人営業担当者全員がそれぞれ1社以上の支援企業を選定し、経営改善計画の策定・実行を支援する「一人一社運動」と展開。』(東海財務局管轄下の銀行)

・・・・・あたくしも昔々銀行員って商売をやった事があるので実に良く判る行動様式でして、苦笑を禁じえないのですが、確かリレバンってのは地域金融機関が顧客との長期的な関係ときめ細かいモニタリングによって中小企業金融の活性化を図りましょうって話だった筈なのですが、「一人一社運動」という実に銀行らしい「とりあえず全員一件何かやりやがれこの野郎」という本部主導のローラー作戦のどこがどうリレーションシップバンキングなのかあたくしにはさっぱり理解致しかねるものでございます(-_-メ)。

まぁこのあたりの部分は正直どこがどうリレバンなのかさっぱり判らない「広域企業再生ファンド」だの「DES、DDSの実施」だのという事例が並んでいるわけで、結局「お前ら新しい事をやりやがれ」と言って、ノウハウを導入すると言う名目で余計な負担を地域金融機関に増やして差し上げているだけのような気が激しくするわけでございます。

・新しい中小企業金融への取組みへの強化

って部分(4番目の項目)はアクションプログラムが出た時点で既にあたくし「何ですかこれは」と悪態をついた覚えがあるのですが、こちらに関してはそもそもが変なだけに、金融庁様におかれましては何で表を作りながら気が付かんのかよって言いたくなる表現が(-_-メ)。

上記項目の事例紹介の最初の項目は『(1)ローンレビューの徹底、財務制限条項やスコアリングモデルの活用等、第三者保証利用のあり方』ってなっているのですが、この時点ですでにダウトな訳ですわな。

ローンレビューの徹底ってのはモニタリングとか事前審査の精緻化ってお話の筈。然るに、スコアリングモデルの活用ってのは貸出審査の簡素化って話な訳ですし、財務制限条項の活用ってのも基本的にはモニタリングを精緻化していれば必要ない(財務諸表に問題が出てくる前に気が付くことだから)筈のことでございますので、こういう項目を作っている時点で「矛盾する概念を包含するとは新しい取組みだわこりゃ」と金融庁様の慧眼に大変感服して顎が外れる思いであります。

まぁ当然ながら並んでいる事例も大変に心温まるものが多うございまして、例えば・・・・

『担保制限条項及び財務制限条項を活用した、原則、担保・第三者保証人不要の新規取引先向け低利融資商品を取扱開始』(関東財務局管轄の銀行)

→そもそもリレバンって「顧客との長期的密接な関係を基にする」って概念ではなかったでしたっけ??

『スコアリングモデルに、業種別(建設業)モデル及び個人事業主用モデルを追加し、精度を向上』(中国財務局管轄の銀行)

→個人事業主の財務諸表なんてあてにならねぇだろうという突っ込みもさることながら、「精度を向上」って開始後半年そこそこで精度が上ったかどうかって結果が出るという素晴らしいレビュー能力に大変に頭の下がる思いでありますなぁ。ワカルワケネェダロ

まぁ何ですな。この「取組み」とやらは結局役に立つのかとっても疑わしい「スコアリングモデル」だの何だのという物を地域金融機関に売り込む「最先端の金融技術」をお取扱になられる方々を大変に潤すだけのお話ではないでしょうかって気が物凄い勢いでする訳でございます。

まぁ地域金融機関(だけじゃなくて大手銀行もそうなんですが)の皆様に置かれましては、この手の「尤もらしい金融工学」に頼ることなく、本来のノウハウを磨いていただきたいものであります。

突っ込みだすときりがない上に血圧が急上昇するのでこの辺で。


○プルーデンスの「机上の・・・・」傾向は何とかならんのか

時々日銀の要路の皆様が「金融の新しいあり方」といったお題で講演やら何やらを行うと「なんじゃそりゃ」って突っ込みをあたくしやっておる訳ですが、直接監督を行う金融庁の方がこの傾向は酷いと痛感する次第で、時間の経過と共に少しはましになっているかと思って(期待してませんでしたが)今回の金融庁の資料をチェックしましたが、どうも益々脳内思考モード爆裂の方向に向かっているようで、誠に遺憾でございます。

昨今の金融行政というかプルーデンスに関る政策立案に大きな影響を与えたと言われる(実情は知りませんが)木村剛氏が鳴り物入りでおっぱじめた「新しい金融のあり方」であります「日本振興銀行」がまぁどうも大コケの雰囲気を醸し出しているという大変に判りやすい事例が目の前に展開されているという昨今でありますし、いい加減「頭で考えた金融行政」から脱却して頂きたいと思うものであります。

あたくし銀行の現場で金貸しをする時間はほんの短期間(2年ちょっと)しか無かったのですが、そんなヘボいあたくしの目から見ても「ちょっと今の方向はおかしいんじゃネーノ」って思っちゃう状態な訳でして、どうにかならないものかと思っちゃう訳ですよ。昔のお客さんを思いだすと益々ね。

まぁ身を切って「新しい金融への取組み」が砂上の楼閣であったことを実証して下さりつつある木村剛さまはある意味貴重な天然資源とも言えるのですが、何だか彼の執筆活動状況を見ていると、ビジネスモデルの失敗を認めずに辞めていった幹部社員たちのせいにしそうな気配なので、それはそれで実に残念なことでございますわな。

まぁ「プルーデンス政策=木村剛氏」と言うのは例えとして極端すぎるとは思いますが、何だかそんな感を深くする昨今でございました。

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2004/12/22

○大企業金融の「直接金融」は幻想かも知れないというお話

あたくし昔々とある銀行の支店で金貸しの手先をやっておったのですが、まぁこの時期になると当時の支店長様を囲む会なんかをやったりする訳です。で、昨日はそんな会の一つに逝ってきたのですが、当時の親分は現在某事業会社の財務担当役員をやっておられてまして、企業金融に関して興味深いコメントを拝聴致しました。脳内メモリーから書き出しますとこんな感じ。

「直接金融がどうのこうのと言うが、企業の資金需要の太宗は銀行借入で賄っているわけで、間接金融というか銀行の貸出が何と言っても重要」
「金を貸さない銀行というのは企業として取引を継続する意義は低い」
「そもそも社債発行しても、直接個人が買っている訳ではなく、購入者は金融機関であって、財務状況のプレゼンを金融機関に行っているのであれば結局銀行借入とやっている事は本質的に変らない」
「個人の投資行動が一朝一夕に変るものではなく、これからも金融機関に資金が集まる流れは続くから、直接金融の衣は纏っても資金の流れは間接金融という状況は続く」
「銀行の集約化も進んでおり、これからは銀行の役割は益々重要になる」


まぁ元銀行員が現役銀行員(あたしゃー違いますが)を鼓舞する為のお話でもあったので話しは少々割り引く必要があるかもしれませんが、まぁ「銀行がバランスシートを減らす事を考えるのはおかしい。もっと貸出業務を頑張れ」ってお話でして、妙な米国モデル崇拝によってやたらと直接金融崇拝を行う現在の金融行政のあり方に対する批判にもなっているお話。

だからどうなのよって言われるとまだあたくしの頭の中で整理がついてませんが、ちょっといい話だな〜と思ったので思考のネタとして一つよろしくです。整理ができていないだけにあたくしの思うところが上手く表現できているのか少々心もとないのですが・・・・・

(12月26日追記)要するに「現在の資金の流れは一旦金融機関を通過しており、直接金融の進展とか言ってるが、結局は最終投資家が直接社債を買ってるわけじゃ無いでしょ」ってご指摘なわけですな。当然ながらこの方もIRの意義とかは認めてるんですが、金融機関が投資家になっている直接金融って真の意味で直接金融っていえるのかいなってことでしょう。投信には直接金融の担い手として期待してるみたいですが。(以上追記終わり)


で、その後当時の小僧だけで2次会に行きまして、今や傍観者のあたくしは皆様のお話しを諸々お伺いして「ほうほう」と中々勉強になりましたが、そっちのお話はまぁ追々。皆さん偉くなられてまぁ色々と大変ですな。あたくしは貧乏暇あり(汗)。

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2004/11/26

○何のための証券仲介業かってお話

まるで別件なのですが、昨日のニュースで「広島銀行がみずほ証券と証券仲介業で提携」ってぇのがございまして、報道によりますと(プレスリリースは面倒なので見てません)、広島銀行ではみずほ証券の提供する外貨建て債券や仕組み債の取り扱いを解禁になる12月から開始するそうですな。

いやまぁ別にそれはそれで良いんですけど、最初に扱う商品が外貨建て債券や仕組み債ってのが誠にアレなものを感じる訳ですな。あたくしは兼ねてから「仕組みが複雑な金融商品に碌なものなし」という証券会社の人間がそれを言うと同業者から袋叩きにされそうな事を申しあげているもので、「証券仲介業の第一弾が仕組み債かよ!」と脱力するのでございますな。

金融商品ってのは商品がそのまんま「お金ちゃん同等物」である性質上、製造原価が読みやすい商品でして、物を売るときに「いかに買い手にこっちの利幅を悟らせないか」っていうのが高収益確保の源泉であるという事を考えますと、金融商品のうち仕組みが簡単明瞭なものというのはその分薄利多売を余儀なくされる訳でして、高収益確保の為に色々と訳の判らん装飾を施して製造原価を訳判らなくした商品を手を変え品を変えて提供している訳でございます。当然そのような商品を売っていただければ仲介してくださった業者様にも手数料を多くお支払いできるという訳ですな。

最近銀行業態では「手数料ビジネスの拡大」ってな事で変額年金保険をせっせと販売してみたり(おかげで保険販売員資格者が大量発生したと思いますが)しておるようですが、今般の証券仲介業参入でも結局は「手数料が沢山頂戴できる商品をせっせと仲介しましょう」って話になるようでして、まぁいきなり青臭い正論を言い出しますと、「株式市場活性化の為に証券仲介業制度で証券販売窓口を増やすって話じゃなかったでしたっけ??」と申し上げたくなる訳ですな。ええ、勿論債券だって直接金融ですから「間接金融から直接金融へ」には叶っておりますが。


ま、先日マクラでご紹介した「松竹の映画ファンド」もそうなんですけど、どうも最近は新規に何かやる場合でも「まずは市場を開拓して」っていうような余裕は無いんでしょうな。最初の一発目に手掛ける案件がどう考えても「売る側にとって利幅が確保できそうな商品」になっているのが誠に残念至極でございます。その点で言えば、数年前からやっている銀行の投信窓版は導入当初「銀行の預金者がとっつきやすい商品を」って感じでして、まぁゲテモノ的な商品を積極販売するような向きが無く、市場の拡大に寄与したのではないかと思う次第でございます。

まぁ買うほうが注意すりゃぁ良いんですけどね。お金の「消費者教育」も必要ではないかと思われる今日この頃。ただしあまり皆様賢くなられるとわたくしどもの商売がもう思いっきりしんどくなりますのでそれはそれで困ると言う因業な商売でもあるのですけどね(^^)。

なお、広島銀行とみずほ証券の名誉の為に申しあげますが、2005年2月からは株式などの商品の取り扱いも開始する予定になっておりますので念の為。でもみずほ証券で個人の相手できるのかな〜??

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2004/10/05

○吉野家と提携ってどうなのよ?

りそな銀行という所に公的資金絶賛大突っ込み攻撃が行われてからはや1年。その後の決算をみればどう考えても突っ込んだ時点で債務超過でして、まぁもともと公的資金突っ込み基準を決めた法律が建前重視で作ったのが問題の始まりだったのですが、ど〜考えても法律を無視した措置でしたな。結果オーライではありましたがね(ただし、この手の結果オーライって2度目に同じことをやると恐ろしく悲惨な結果を招くと思うので、やっぱり如何なものかという感は拭えません)。

で、この銀行さまは時々訳の判らない施策を打ち出してきてあたくしを驚かせてくれますが、今度は吉野家に行員を派遣して24時間営業のノウハウを学ばせると朝のテレビニュースが申しております。あたくしの脳内メモリーから読み出しているので正確さに欠けるかもしれませんが、吉野家の店舗内にATMを設置するという施策もあるそうですな。

まぁ色々と面白い施策を打ち出すのは壮としたいところなのですが、銀行員をとっ捕まえて吉野家で働かせるという訳ではないんでしょうけど、何だかここの社長だか会長だかの出身母体であります旧国鉄が民営化した時に言うことを聞かない国労の組合員で客商売なんかした事ない人間を駅のコーヒースタンドに無理矢理配置転換していた事を思い出してどうもアレな訳であります。

まぁ吉野家でノウハウ学ぶってことですから24時間有人店舗にでもする気なんでしょうけど、それはちょっと努力する方向が変なのではないかと思いますが。それなら土日に住宅地の店舗を開けたほうが良いのでは??と思いますし、ついでに吉野家で500円で釣りがくる飯を食っている時にATMで金をおろすっつー図も今一歩想像しづらいのですが。時間外手数料で(タダなら話は別だが)半熟玉子食ってお釣りがくるんですけど(^^)。

まぁりそな再生だとか言って人間送り込むだけ送り込んだ竹中大臣もアドバイザーとか言って偉そうに仕切っているように世間にアピールしていた木村某もすっかり当事者ではなくなって、苦労するのは送り込まれた連中ですか。でも経営と全く関係ない世界で日々業務を淡々とこなしていた一般行員が一番苦労させられているんですけどね。

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2004/09/15

お題「金融庁あいかわらずいかがなものか」

変動利付国債入札の話は「いやぁ全くニーズがありますな〜」で終了という感じでして、それより不思議なのは現物債が全般的に重い中で先物だけ全然下がらないという現状。と言って先物の建玉は6兆円台という水準だったりするのでして、やたらと買い戻しが入ると言う先物の板付は不思議でございますな。

まぁネタと言うのは同時に色々と出てくるのですが、今朝はそのネタの中であたくしが好きな金融庁関連の悪態でも(^^)。

○先端金融取引の重点検査ですか

変動利付国債入札の話が1面に出てるってぇので日経新聞を拝読しておりましたら、「金融庁、大手銀の先端金融取引を重点調査」って記事がありました。日経のWebによりますと、「金融庁は銀行が取引先企業との間で実施している先端的な金融取引について重点的に検査する。」そうでありまして、その主な対象としてあがっているのが「金利スワップ」や「デットエクイティスワップ」となっているそうです。

記事によりますと、「銀行がこうした取引を使って自らの収益を底上げしたり(金利スワップをイメージしているようです)、取引先の経営状況を実態より良く見せかける(DES=デットエクイティスワップをイメージしているようです)のを防ぐのが狙いだ。」ということになっております。

確かに金利スワップなんぞは会計上の収益の嵩上げ(あるいは益の繰り延べ)に使いやすい商品ですし、どう考えても回収不能な貸出をDESに転換することによって問題の先送りを図ることができるので、検査で重点的に対応したいってのはその場の理屈としては話が通っている訳です。しかし「それは待てよ」と言いたくなる訳でして、毎度ドラめもんをご覧になられている読者様におかれましてはこの先の論理展開が見えていると存じますが(^^)話を続けさせていただく訳ですな。


○金融先端取引を推奨してたのはどこの誰でしたっけ?

金融庁の施策として不良債権処理の加速って所で、金融庁様は擬似資本状態の長期固定貸出金を資本化しましょう何て事を提唱していた筈でして、その中では、

「要管理先以上の債務者区分に属する債務者において、実現性の高い経営再建計画の下で、長期固定化した貸出金をDESだのDDS(=債務の劣後ローン化)だので貸出金を資本性資金に変換するとあら不思議。残った貸出部分が正常先債権に区分されます」

という画期的な施策(あたくしには唯の先送り誤魔化し手法にしか思えませんが)を打ち出して居た筈です。先送りのススメって事で昨年12月に悪態をついております。DDSに関しては金融検査マニュアル中小企業編にこんな記載があるわけで。

『資本調達手段が限られている中小・零細企業においては、事業の基盤となっている資本的性格の資金が債務の形で調達されていることが多い(疑似エクィティ的融資)。このような状況を踏まえて、金融機関が、中小・零細企業向けの要注意先債権(要管理先への債権を含む)を、債務者の経営改善計画の一環として資本的劣後ローンに転換している場合には、債務者区分等の判断において、当該資本的劣後ローンを資本とみなすことができるとする。』


で、これをあたくしなりに翻訳すると12月24日のドラめもんではこんなことになるわけです。改めて書きます(というかコピー&ペーストですが)。

(以下12月24日のドラめもんで書いたこと)
要するに、延滞貸出金状態になっている経常運転資金の短期転がし貸出を劣後ローンに切り替えるとあら不思議、与信先の資本が充実しちゃいますってお話なのですが、もうアホか馬鹿かと。不良債務者の貸出金固定化を推進してどうするんでしょう?

で、この事例を読むと益々訳がわかりません。この「事例」によれば、「実現性が高い経営再建計画」の実施の一環として、一部の貸出を劣後ローンに転換した場合、この会社への貸出金と劣後ローンが全て貸出条件緩和債権に該当しない(=正常先債権)になり、劣後ローンに関しては100%引当を行う、となっておりますな。

これって結局「表面上の不良債権額が減る」だけの事になるようですし、それ以前の問題として契約上短期弁済が可能な(金がないから不可能ですが)貸出金を長期固定化するのを勧めるというのは、単なる「先送りの勧め」であるとしか思えませんな。(以上)


とまぁそんな感じでDDSなんぞのような金融取引を一方で推奨しておきながら返す刀で重点検査をするというこの自己矛盾。お前はどうして毎度毎度やっている事が首尾一貫していないのだと小一時間どころではなく24時間くらい問い詰めてみたくなるわけです。お前は右の手と左の手でやっている事が矛盾しとりはせんかという訳ですな。


○官製の罠ですか?

そもそも、債務の株式化だの劣後ローン化をすると現実的には兎も角として会計上のメリットが大いにあるという状況を作り出しておいて、いざそれをおっぱじめだしたらいきなり重点検査ってんじゃあ金融機関は困りますわな。例えが激しく不穏当ですが、玄関を開放して入り口に札束をこれ見よがしに積み上げておいて取りに来た人間を泥棒としてタイーホすべく待ち構えているようなものではないかと思うわけでして、これまさに官製の罠としか言いようがありません。

既にこの「官製の罠」には「繰延税金資産」という恐ろしいものがあって銀行株は只みたいな値段まで売られるわ、どこぞの銀行は無理矢理吸収合併の方向に持っていかれるわと銀行は散々な目に遭わされた訳ですが、この時の「官製の罠」は繰延税金資産の制度を当初導入した時から監督官庁の体制が思いっきり変わっている(だからと言っていきなり天変地異の如く行政の扱いが変化するというのは行政の継続性という観点からは如何な物かと思いますが)ので、理解できないけどまぁ仕方ないと致しましょう。

しかし今回は何ですか?つい半年前に金融検査マニュアル中小企業編を出したばっかりなのにいきなり重点検査ですか?金融庁は銀行を罠に嵌めて気に食わないと犯罪者に仕立て上げるのが仕事なんですか?

・・・・興奮して少々取り乱しました。暴言勘弁。


まぁしかし何ですな。打ち出す施策を直ぐに検査の名目で否定するような状況が続いたらまともに金融庁の施策を信じて何か始めたら大変な目に遭う訳ですから、まぁ昨今あちこちから漏れ伝わる「銀行の経営は金融庁の方ばっかり見ていて本来の銀行経営をしていない」などという悪態も企業防衛上致し方なしとしか申し上げようがないですな。恐ろしい事です。


という訳で、外傷性頚部症候群だというのに朝から興奮してしまいました。ほかにもネタがあったはずなのですが、時間の都合でこの辺で(^^)。

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2004/08/31

お題「改めて新BIS規制案」

台風到来の為本日は簡単に(謎)。

金融庁および日本銀行のWebに昨日「新BIS規制案Q&A」というものがアップされております。PDFファイル形式でアップされているので(と言う訳でもないのですが)アドレスは手抜きで書きませんが、金融庁のWebはやたらゴテゴテしていて見難いので日銀のWebから探せば宜しいかと思います。内容的にはほんのさわりと言った感じですが。

○個人・中小企業向け貸出に関する謎再掲

一発目の問1に「BISの新規制の枠組み」に関してでかでかと計算式をのっけて説明しております。そこにもありますように、今回の自己資本比率規制の変更においては分子にあたる自己資本に関しての変更は無しと言うことで、分母の部分が変更になっている訳ですな。

で、元々の分母部分が「信用リスク+市場リスク」だったのですが、今回は「信用リスク+市場リスク+オペレーショナルリスク」ということで変更になったのですが、変更の基本的ポリシーはその次の問2にありますように、新規制の3つの柱の一つに挙げられている「市場規律」の重視であり、「リスク計測を精緻化」するというあたりらしい訳ですな。

ところがご存知のように今般の新規制においては、個人だの中小企業向け与信について何故か信用リスクのリスクウェイトを軽減するという大技に出ているというのが大変に素晴らしいというか香しいというか。問6(4ページ目)には、個人・中小企業向け与信に関して具体的にどのようになるかが記載されているので引用します。

・標準的手法については、与信額1億円未満の個人・中小企業向け与信について、現行のリスク・ウェイトから25%引き下げ。75%のリスク・ウェイトとし、また、住宅ローンについてはリスク・ウェイトを現行規制よりも3割削減し、35%とすることとされている。

・内部格付手法では、個人、中小企業向け与信については、同様の与信特性でも大企業向け与信と比べ所要自己資本が軽減されるような算式が示されている。

と言うことでして、小口分散効果が発生するから大企業向け貸付よりも中小企業や個人向け貸付のリスクウェイトが下がると言う理屈になっております。で、この理屈は過去にも申し上げたと思いますが、ローンの信用リスクという観点で言えば無茶苦茶というか論理破綻としか申し上げようがありません。

母集団の信用リスクが高いものを幾ら集めてもポートフォリオ全体の信用リスクは軽減されませんが何か???と言った所でして、上記理屈(というか屁理屈)が成立するのは貸出ポートフォリオが(1)ローンじゃなくてエクイティの場合(2)元々のローンが信用リスクを反映した値付け(まぁ街金レートですな)で購入したもの(貸出金じゃなくて社債ですな、そりゃ。)の場合って事になるでしょうから、基本的な前提が直接金融を意識したものだとしか言い様がありませんな。

科学的に精緻な分析をしているかのような話になっていますが、根本的な部分で(政治的に理由があるにせよ)無理無理な前提を置いてリスクの計測をしているというこの新BIS規制。所詮は単なる「国際展開する銀行へのお約束事」であるに過ぎない筈なのですが、今までと同様に今度の新BIS規制に関しても国際展開をしていない国内銀行にも適用する方向だそうですな(Q&Aの問7に記載されております)。BIS規制参加各国の多様な金融の現状を無理矢理ごちゃまぜにする為に「中小企業向け貸出の方が大企業向け貸出よりも信用リスクが低い」と言い出すような規制を何故国内銀行に適用するのかと考えますと、金融庁の思考停止あるいは海外崇拝の香りが実に強烈に漂ってまいりまして、もう頭が下がるとしか申し上げようがありません。


○まぁ結局は政治の世界な訳ですが

中小企業向け貸出金の信用リスクが大企業向けよりも低いという無茶苦茶としか言い様が無い理屈が採用されたというのは、(ちゃんと調べている訳でないのですが)国際展開している銀行が国内で大々的に中小企業貸出業務に精を出している日本とかドイツとかの銀行に対する配慮、というか日本とかドイツとかが強硬に主張したことが原因なのでしょうなって事はとりあえず想像の付くところでございます。

その点では政治力を評価したい所ですが、どうも金融当局さまにおかれましてはやはりその辺の評価が欲しい(というよりは国内向け政治アピールなんでしょうが)ようで、わざわざQ&Aの問5で「日本の金融当局としては、これまでどのような主張を行ってきたのか。」という誰も質問をしそうもない質問を挙げまして説明しております。まぁもともとBIS規制自体が過小資本で業務を絶賛大拡大させた邦銀への嫌がらせとして成立したような節(その時に日本の金融当局は何をやっていやがったんでしょうな〜)があると考えるのは被害妄想かもしれませんが、今回の2次規制に関しても「科学的に精緻なアプローチ」をしていると言いながら肝心の根本が政治的妥協の産物と言うことな訳ですか。

で、同じ結論になるのですが、そんなものを有り難がって国内銀行にも適用する必要がどこにあるのかサッパリ訳判らんわけですが、って我ながらあたくしも粘着ですな。


○市場リスクに関して

一応債券市場に関連する部分。問8の部分なのですが、どうも今一歩この説明が良くわからんので、BIS規制案を精読する必要があるかも。

・今回の新BIS規制案では、銀行勘定の金利リスクについて、自己資本比率の分母(リスク・アセット)の計算には参入せず、第2の柱(引用者補足:監督上の検証って所です)においてモニタリングすることとなっている。

・したがって、銀行勘定の金利リスクについてアウトライアー銀行に該当したからといって自動的に自己資本の賦課が求められるものではない。

と言うことでして、アウトライアー銀行ってのは標準化された金利ショック(全ての金利が1%上昇するという設定)に伴って発生する金利リスクがTier1とTier2の合計額の20%を超える銀行の事をいうって話はだいぶ前にもしたかと思いますが、ここだけ見ていると、アウトライアー銀行に該当するような金利リスクを取っていなければ無問題って話にも読める訳ですな。

とは言いましても、昨今の国債絶賛大発行+金融市場だけは資金大余り状態の量的緩和って状況からすると、つい1年前の10年0.4%なんてやっていた時のような債券ポート組んでいたらアウトライアー銀行に簡単に抵触しそうな感じもする訳でして、この辺はちゃんと財務諸表を見ないといけませんな。どっちにしろ預貸率が低く、債券投資部門での利息収入が求められるような銀行はある程度気にしておかなければいけないという話でしょう。

しかもこの金利リスクについては監督上の検証ってことで、どの位のリスクを取るとどうなるって話が明確ではなさそう(もしかしたら明確なのかもしれませんが)なのがまた怪しさ満点ですな。「過大な金利リスクを取っている」とか難癖つけるネタになりそうで。


オペレーショナルリスクに関しては相変わらず良く判らないので、本日は簡単にこんな所で。というか結局規制案を精読する必要に迫られているという説もありますな。

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2004/08/24

お題「理想は結構なのですが」

相場も今一歩パンチに欠けますし、金融政策に絡む動きは思いっきり夏休みモードのまんまですので、本日もまたあたくしの勝手なごたくを並べるのでありました。

○蛸壺的専門家は宜しくない訳で

世に言われる「専門家」っつーのは発想がつい固定化しがちだとはよく言われることであります。実際に古今東西の戦記なんぞを見ますと、戦争における戦術の進歩には「素人の新しい戦術によって専門家の遵守していた戦術が敗退する」という事が結構あったりする訳でございます。

まぁ専門家って言っても、多くの専門家の内実はその分野に関する知識が門外漢よりもちょっと豊富なだけだったりする訳でして、知識が豊富なだけに発想が蛸壺に入ってしまい、実は単にマニュアルを適当に組み合わせて運用しているだけという状況になり勝ちなのでしょう。本来はその分野に関する豊富な知識を活用して新たな工夫ってのをするのが専門家の専門家たる所以なのでしょうが。

と、まぁそんな訳で発想が硬直化した専門家が、素人の創意工夫に敗退するという事態が発生する訳ですので、専門家を自称するものは、従来の発想で物事を進めるだけではなく、常に創意工夫を心掛けましょうって事になるのですが、正直書きながら自分の耳に痛いわけであります(汗)。


○日本振興銀行の理想と現実

昨日のドラめもんでも申し上げた日本振興銀行。昨日ご紹介した「シンクタンクのメッ」さんのWebでのコラムと話はかぶるのですが、従来の銀行が陥っている「専門家の蛸壺」を打破しようという当初の動きは「何じゃそのパフォーマンスは」と思いながらも、実際に機能したらそれはそれで面白い壮挙だとあたくしも思っていた訳ですよ。

しかし、蓋を開けてみれば当初は社長になって預金の個人保証をする(現実問題として意味があるのかは別としてもやる気だけは評価したいですな)という話であった落合さんはいつの間にやら取締役でも執行役員でもなくなってしまいました。まぁ現実の壁ってのにぶつかるのは良くある話ですから、それはそれで仕方が無い面はあるのでしょうが、その後の姿勢がいただけない訳でございます。

日本振興銀行設立に際して「金融維新」などというご立派な本をおだしになって色々と主張というか言い訳をしていた人が最近新たなマーケッティングの場として絶賛活用中のBlog(直接リンクにならないように最初の「h」を省略してますのでよろしく)にこんなのがありまして、下の方(=古い記事)をご覧になるとまぁ色々と楽しい事が書いてあります。
ttp://kimuratakeshi.cocolog-nifty.com/blog/07_/index.html

一番下にある2月19日付けの「落合氏が代表から降りたことの経緯説明」もやたらガバナンスがどうのこうのとか書いているのですが、結局「何でそうなったのか」という説明はありませんし、代表者個人による預金への保証に関しても『おそらく決定的な要因(補足:落合さんが代表から降りて取締役や執行役員にもならない事の要因)となったものとしては、「預金すべてに対して連帯して無制限の個人保証を行う」ということのプレッシャーにかなり悩まされていたということがあったに違いない。』などとしれっと書いている訳ですな。

現実の壁に当るのは仕方無いとは申しましても、銀行が開業する前というか預金を集める前からそれは無いでしょ〜よって突っ込みを入れたくなる訳ですが、もっと香しいものを感じたのは、そのちょいと上にあります4月21日付けの振興銀行開業にあたっての記事でして、「預金に対して個人保証を行なう」と大見得を切っていた筈の銀行の非常勤取締役様がこんな事を言い出しているのですよ先生。

『本日、東京青年会議所の有志が呼び掛けた日本振興銀行が開業いたします。預金は100万円以上1000万円以下なんですが、開業キャンペーン中は、5年定期1.00%、3年定期0.80%、1年定期0.65%となっています。本店一店主義を貫きローコストで運営する分、高めの預金金利でお客さまにお返しをするという経営方針です。』

ここまではまぁよろしい。この次の言葉で腰が抜けるのですな。

『いずれにしても1000万円までですから、元本と利息がすべて預金保険でカバーされるというところがミソです。』

・・・・・・(-_-メ)。

もう何をか言わんやという訳でして、「融資に対して個人保証を求めるのに預金に対しては何もしていない銀行の姿勢はケシカランので姿勢を示す為に預金に連帯保証する」というような話をしていたのは貴様のその口か、貴様のその著書かと小一時間問い詰めたくなる訳であります。

昨日ご紹介した「融資先へのアドバイス(アドバイスって言ったって、客として居酒屋に行った時に出された焼きおにぎりの出し方を直しましょうって物でして、それを「融資先へのアドバイス」と言うのかと思う訳なのですが)をする振興銀行の行員の図」ってテレビ番組でのパフォーマンス姿も「何か必死ですな」という感じです。

融資に対する保証人の徴求に関しても、「シンクタンクのメッ」氏が指摘しているように、法人なら代表者の個人保証、個人なら別の保証人を立てる必要があるようでして、著書「金融維新」なんかで「代表者の個人保証は再起の機会を奪うものだ」などと言っていたのはどこへやら。


○現実の壁に当るのは仕方ないのですが

てな訳で、この銀行さまに置かれましては、打ち出した「経営理念」が「現実の壁」にぶち当たる速度があまりにも速すぎる訳でして、理念を打ち出すのは壮としたいのですが、幾ら何でもあまりといえばあまりですし、その後理想と現実のギャップに関して素直に反省してくれれば良いのですが、何か尤もらしい理屈をこねたり、報道パフォーマンスをやったりして「自分たちの思ったとおりに物事が進んでいる」と認識しだすのが恐ろしい訳です。

一般企業や一般個人ならばまぁ破綻でも破産でも勝手にすればって感じなのですが、コトが銀行であれば預金保険機構を通じて国民にあまねく被害が回ってきますし、行政がそんな事を始めると手の付け様の無い暴れ馬状態になる訳でして、暴れ馬に蹴られて怪我人続出となる訳ですな。しまいには現実と脳内現実のギャップがでかくなりすぎてもう無茶苦茶になる訳でして、そんな出来事は大東亜戦争中に山のように事例がある訳です。最後は国家が焦土になる訳ですが。

戦争の常識を変える革命的新戦術は「現実の壁」から蛸壺専門家ではない人間の創意工夫によって出てきたのであって、脳内現実からでてくるのでは無いのですが、どうも昨今は脳内現実から出てきた「美しい理念」が好まれるようでして、例えば上記した「法人融資における代表者の個人保証」問題に関しても、現実は日本振興銀行にあるようなモノだというのに、民主党のアフォな代議士辺りが「融資に対する保証人制度は廃止すべきだ」などと言い出す始末でありまして、誠に困ったものであります。


○金融検査マニュアルへの疑問(ここは未完なのでまた後日)

で、話の流れに無理がある+時間の都合上ちょっと書けなくなってしまいましたが、木村氏も策定に参画しているらしい金融庁の「金融検査マニュアル」に関しましても、書いてあることはそれほどおかしくないのですが、どうも作成している皆様の認識している脳内現実が現実と違うのではないかと思う節があるんですな。

捨印慣行の不適切な運用がどうのこうのという件がありまして、捨印を無闇に押させるのは確かに如何なものかとおもうのですが、例によって木村氏のBlogを拝読致しますと、「捨印を押す事によって契約内容の訂正が出来るので(ここまでは正しい)極端に言えば借入金額を一桁多くする事だって可能だ」などという楽しい話をしている訳でして、その楽しい話のどこがどうおかしいかというのは皆様でお考え頂くと致しまして(書く時間が無いだけです、ゴメンナサイ)、現状認識がそんな状態で政策の立案をされても正直言って現場に無用かつ無駄な負担が掛かるだけなのではないかと思う訳ですよ。

・・・・・・って旧軍の参謀本部と前線の関係と同じじゃん。とほほのほ。

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2004/08/23

お題「言行不一致(-_-メ)」

まぁ相場と関係ない話ですけどね・・・・・

○公共事業は減ったそうですが

オリンピックのドサクサに紛れて国土交通省から実に妙な施策が提案されております。何でも「交通渋滞解消の促進に資する為に高速道路の一部区間の値下げを行なう。財源は特定道路財源ですな。あ、そうそう値下げの対象はETC利用者だけですよ。」とかいうお話。さすがにこの施策は何とも香ばしいのでオリンピック報道の間にきっちり取り上げられております。

料金収受の効率化によって渋滞緩和と経費削減に役立てるってぇのがETC導入の本旨だったと思うのですが、いつの間にやら「ETC普及の為に国費導入」という本末転倒な議論が絶賛大進行中。ETC導入で経費削減が進んだのでその分が利用者に還元されるって話ならまぁ判らん話でもないですが、それはあなた話が思いっきり逆なのではないかと。

で、その背景にはETCが当初思ったほど普及していないってのがあるのでしょうと容易に想像できるのですが、ETCの普及が遅々として進まない理由をもうちょっと真剣に考えて障害となっている部分をどうするのかって事ではなく、極めて安直に「税金を突っ込んで利用料金の引き下げ」という作戦にでてくる国土交通省の姿勢には頭が下がる思いであります。


結局ですな、公共事業の削減とか言って土木工事を減らしているのかもしれませんけど、こういった形で別の分野に公共事業が突っ込まれている訳でして、特に最近(というかここ数年)はアイテー事業の巨大受注先は政府部門というお話が続いているらしいのですな。特にETCのような制度が絡んだ問題になりますと、色々と以下自主規制なお話があったりするようですな。これじゃあ結果土木工事がアイテー事業に置き換わっただけの事であって、お手盛り的ばら撒き構造の本質は何も変わっていないのではないかと思ってしまう訳です。


○裁量行政を超越しているのではないかと

で、まぁ金融行政に話は飛ぶ訳ですが、何時の間にかスルーされてしまっておりますが、りそな銀行に関する税金突っ込み攻撃は未だにあたくし釈然としておりません。突っ込んだ後に厳格な貸出債権引当を行なったら、突っ込んだ税金額と同じ位新たに要引当債権が発生したってぇのは何ぼ何でも人を馬鹿にした話であります。

で、全部が全部りそな方式になるというのであれば、行政として話の筋は通っているのですが、りそな銀行は無事に巨大なる国費(しかもこれが特別会計から突っ込んでいるので、一般会計に出てこない為に分りやすく表沙汰になる訳ではないのがミソ)をぶち込んだのに、より突っ込むべき国費が少ないと思われる足利銀行は問答無用で国有化コース。

そういうことをされますと、大阪選出の国会議員と言えばあんな人がいたなぁとか、そんな政党の強力な地盤だったなぁなどと思い、栃木選出の国会議員といえば内閣の政策に批判的かつ政策通として評価が高い人がいたようですなぁなどと、これがまた自主規制な想像を逞しくしたくなる訳でございます。

最近大手金融機関に入るどこぞの官庁の検査とやらに関しましても、別に直接当事者としてやっている訳ではなく知人からの又聞きベースなので思いっきり不正確なお話である事をお断りしつつ申し上げますと、どう考えても嫌がらせとしか思えないような動きも目に付くそうですな。勿論意図的な検査忌避というのも宜しくはありませんが、貸出債権の査定方法なんて特にDCFなんぞを使ってやるのであれば、将来のCFをどう見積もるかである程度まではなんとでも操作可能なお話なのですから、やはり如何なものかと思う訳ですな。

あるときは国費大投入で組織は残し、あるときは国有化、そして別の時には生殺し状態にして締め上げと、一体全体どういう基準でやっているのかという根拠に関して質問主意書を提出して明確なものを説明されたいって感じですな。


○日本振興銀行のその後

丁度今朝のモーサテで日本振興銀行のヨイショ報道が行なわれております。で、このヨイショ報道で初めて知ったのですが、毎週月曜に出てきて愚にもつかないコメントしかしない某経済アナリスト(何じゃその肩書きは)はこの銀行のアドバイザリーボードに加わっているようで、対メディア対策だけはせっせとやっていますなぁという印象を益々深くするものであります。

そのヨイショ報道によりますと、フランチャイズローンを実行するにあたって融資担当者が当該企業の店舗(小奇麗な居酒屋チェーンのようでしたが)に言って色々なアドバイスをする図などという物がありましたが、従業員の頭数とカバーする営業エリアから逆算すれば、そんな細かい対応を全ての融資先に出来る訳無いと思うわけでして、もう宣伝用のお話なのが見え見えも良い所。

おまけに融資の証書を書いている図に見せようとしている映像で、3千万円という数字をまともに3にゼロ7つの算用数字を書いておりましたが、後日の変造が容易になる算用数字で金銭消費貸借契約書(借金の証文ね)の借入金額を書かないのは金融法務の常識中の常識(読者の皆様も住宅ローンで証書に漢数字で金額書きませんでしたか?)であります。余談ですが、手形や小切手に金額を入れる時には、専用の機械(「チェックライター」でしたっけ?)を使って思いっきり刻印状態にします。手書きの場合は漢数字を使用しないと不備手形扱いです。従いまして、当該映像は「融資が順調に伸びている事を強調する為にただの融資申込みの光景を融資実行の光景に見せようとするミスリード促進映像」なのか「金融法務の常識も欠如した状態での運営をしている映像」なのかのどちらかと言うことですな。如何な物かと。

などとあたくし悪態をつくのですが、もっと冷静に分析している人が世の中にはいる訳でして、個人サイトなんで直接リンクするのは自粛しますが、普段から中小企業金融に関して現場の目から明解に政策提言や政策批判をしているお方が「ミディアムリスク専業銀行はやはり幻影か」というお題で日本振興銀行の現状が当初多いに宣伝していた事から変質してきている点を指摘しております(別にこのお題だけではなく、色々と中小企業融資への施策に対して重要な指摘がありますので、ご一読をお勧めしたいページです)。「シンクタンクのメッ」というお題で検索をかけるとヒットすると思いますし、ヒットしない場合はあたくしに個別にお問合せを。


○まとめにならないまとめ

結局何ですな、近年の風潮として「言ってる事とやってる事がまるで一致していない」というのがある訳でして、大臣に就任した時に「アイテーで450万人(だか何人だか忘れましたが)の新規雇用創出」などという不思議な事を言い出した人もいましたが、この先生もその後何か施策をやった気配はなし。待てよ、土木公共事業がアイテー公共事業になっているのであながち嘘ではないな(汗)。一般会計を削減する側から特別会計は大膨張(外為にしろ預金保険にしろ)とか金融行政の透明化などを標榜して導入した筈の金融検査マニュアルは上記のように運用面で恣意的なのではないかと疑問を呈したくなるような状況があったりする訳ですな。

で、言っている事とやっている事が整合性が取れていないという状況に関してはやや後ろめたい意識でもあるのか、上記の某銀行の如くに宣伝だけは怠りないのがまた困り物としか言い様がありません。で、そういう状況を世の片隅から眺めていると誠に遺憾に思う訳でして、相場とまるっきり関係のないこのような愚痴的な駄文を月曜の朝から書き散らす訳でありました。お付き合いいただきまして恐縮です。

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2004/06/30

○BISの新規制案が出ていますが

先日(26日)のG10中央銀行総裁会合で新BIS規制案が承認されました。バーゼルUとか言いまして、かなり以前に「ならず者(outlier)規制」の実施により変動利付国債のニーズが高まるとかいうお話をご紹介したと思いますが、まぁ色々と金融に影響を与えるお話なのでこれは勉強しておく必要があるかな〜と思っているわけです。

日銀のWebにバーゼル委員会のプレスリリース(だったと思う)の仮訳がアップされておりまして、とりあえず色々と書いてあるのですが、信用リスクがどうのこうのというお話で激しく素朴な疑問が少々あったりするあたくし(^^)。

銀行の自己資本規制に信用リスクを勘案して「より正確に反映」っていうのが今回のポイントなのですが、日銀が簡単にご説明している「新BIS規制案について」っていう簡単なペーパーによりますと、分母(=自己資本規制上のリスクアセット)の計算に対してリスクをより正確に反映、と銘打っていきなり書いてあるのがこんなこと。

『中小企業向け・個人向け貸出については、小口分散によるリスク軽減効果を考慮して、所要自己資本額を軽減。』

ご丁寧にも「中小企業向け・個人向け」って所と「軽減」って所は太字で強調線まで引いているという念の入れようです(^^)。

この「中小企業向け・個人向け貸出の所要自己資本額を軽減」というのが新BIS規制の「リスクをより正確に反映」というのと思いっきり矛盾しているのではないかと思う訳ですな。普通に考えると「信用リスクをより正確に反映」させたら、当然ながら信用リスクが比較的に高い貸出金である中小企業向けの貸出金の所要自己資本額は増える筈。

だいたい、長々と書いてあるバーゼル委員会のプレスリリースの「編集者のための解説」(仮訳)って所の5ページ目に、

『第一に、バーゼルUの枠組みは、信用リスクがより高いと考えられる債務者についてはより高い水準の所要自己資本額を課すという手法を全般的に適用することにより、信用リスクに対する自己資本の枠組みの感応度を高める。』

って書いているのですが。

これは日本独自の判断なのかバーゼル委員会が大真面目にそのような指針をだしているのかは、激しく量のあるドキュメントを読んでみる必要があるのですが、どうにもこうにも理解に苦しむところであります。罠なのでは??という気も。

小口分散されているからリスク軽減効果があるという問題と、個別貸出先の信用リスクの問題は全然別の話だと思う訳(小口分散効果を云々するなら与信先の企業規模で縛るのではなくて、一与信先あたりの与信額で切る話でしょ)でですし、大体からしてその「中小企業貸出」とやらの貸出先がきちんと色々な業種や地域に正規分布されている訳も無かろうかと思うのですが、どうもこの理屈がサッパリ判らないので勉強してみます。ただし時間と気力があるときになのでいつになる事やら・・・・・・。

どうも変な「政策的意図」があるような気がして仕方無い訳でして、またいずれお得意の梯子外し(繰延税金資産を認めるから償却、しかも何故か有税償却を加速しろという甘言を真に受けて後から「おまえら全員資本不足」という恐怖の梯子外しを食らったのは記憶に新しいところですな)を食らうのではないかと思う訳です。邦銀のために誠に憂慮に耐えないわけです。杞憂かもしれんが。


で、もう一つ気になった「信用リスクをより正確に反映」という論理の罠なんですが、一国の経済が悪化傾向になると当然ながら不良債権の発生が増えるわけですが、そうなった場合にはこの「より信用リスクを反映」という理屈を適用すると、貸出は償却するわ信用リスクが増えるから生きている貸出への所要自己資本は増えるわという碌でもない事になるのではないかと、激しくシロート考えなのですが思ってしまう訳です。

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「住宅ローンに関する雑談」(2004/05/26)

文体はともかくとして書いてあることが糞真面目かつ肩の凝る話題が多いので、とりあえず20年国債の入札も終わったので本日は肩の力を抜いて与太話。肩の凝る話題のし過ぎであたくしの肩が滅茶苦茶に凝ってしまって久々に行ったマッサージで呆然とされてしまったのはナイショです(^^)。

○ボーナスを否定しているのに・・・・??

銀行決算が横並びよろしくうじゃうじゃと発表になっておりました。で、後付けで見れば結局債務超過なのに公的資金大投入という大技が炸裂したりそなHDなんぞも決算発表してお約束通りの大赤字。

まぁ大赤字なのは兎も角として、只でなくさえ減っている夏と冬のボーナスを出すのを止めて業績連動の報酬とやらを出すそうで、労働組合に呈示しているそうな。ま、銀行の弁解すると石が飛んできそうですが、もともと銀行って年収に対するボーナスの割合がでかく(基本給を高くすると世の中から批判されるので、ということやら厚生年金などの負担分を軽減するためとか色々と理由はあるらしいですが、まぁ大昔からずーっと伝統的にそうなっていたのです。大手行ほど特に)て、ボーナス減らされるのは実質基本給カットなんで、まぁ行員のみなさま大変ですな〜なんて話はさておきまして。


何せ定例のボーナス支給という被雇用者が半年に一回やる気を出す(雀の涙しか出なくて却ってマインドを低下させる場合もありますが^^)イベントを否定するわけですから、従来の一種ぬるま湯的な労働環境を打破して実力本位、実績本位にして行こうという意気や良し。まぁ頑張って頂きたいのですが、それにしては如何な物かと思うのはこの銀行、相変わらず住宅ローンの返済方法に「ボーナス併用払い」というのを当然のように認めている訳でありますな(-_-メ)。

てめぇの従業員には「ボーナスは業績連動(しかも今回の夏の分は一月分の給与にまるで届かないらしいです)」としておきながら顧客への住宅ローンは従来の安定的雇用環境を前提にした支払方法を設定しているというこの素晴らしい自己矛盾。ボーナス併用払いを選択するのは顧客の勝手あるいは自由意志なのかもしれませんが、自分の所の従業員が組んだら一発で資金ショートしかねない返済方式を従来どおりに通常商品にしておくのは如何なものでございましょうか??顧客への親切を考えたらボーナス併用払いはやらない方が良いのではと思うわけで(^^)。

まぁそこまでやらんでも良いと思いますが、ボーナス併用払いの負担が大きい住宅ローン債務者に対して条件変更をより柔軟に行ってあげるとかすれば良いのにな〜などと下らん事を考えてしまいました。


○既存顧客を大切にしましょう

とまぁそんな下らん話を書くために念の為埼玉りそな銀行のWebなんぞをみていたら「住宅ローン満腹感謝キャンペーン」などというのをやっている事を発見。さては住宅ローンの融資目標が達成できて満腹にでもなったのかと感心して内容をチェックしたら、単に住宅ローンを新規にやった人から抽選で3万円分のお食事券(最初に変換したら汚職事件になってしまった^^)があたるというキャンペーンでした。やらないよりはマシかも知れんがどうもしょうもない企画ですにゃ。

銀行っていうのはどうも相変わらず昔ながらの「他行シェア奪取」の意識が抜けないようでして、例えば住宅ローンであれば「他行(住宅金融公庫も含む)借り換え」だの「新規」だのを既存顧客と比較してやたらと優遇する傾向が抜けないどころか益々拍車が掛かっているようです。まぁ新規客は大事ですから優遇するなとは言いませんが、継続的にきっちりと元利払を行っている既存顧客のほうが、もしかしたら不良貸し出しに化けるかもしれなかったり、とっとと条件の良い他行に乗換えかねない新規顧客より少なくとも現時点まででは収益に貢献しているという事実をつい等閑視してしまうのは如何な物かと思う訳であります。何で既存顧客に対してもっと感謝しないんでしょうかね〜。


で、引き続き話のネタで埼玉りそなのWebをつらつら眺めていますと、相変わらず借り換えキャンペーンを絶賛推進中。「りそな借り換えローン」の宣伝文句はと申しますと、「現在ご返済中の金利の高いローンから、今の金利のローンへの借換を、スムーズに実現するための住宅ローンです。」「もしご自宅の担保評価額がローン残高より値下がりしてしまっていても大丈夫なように、担保評価額の最高300%まで借換を可能にしました。」という大変結構な商品。もちろん借り入れ後3年以上正常に返済しているとか色々と条件はつくのですが、担保不足でもオッケーなんて夢のような条件変更ができるのであれば、自行のローン客で3年以上前に高い固定金利で借りた顧客の条件変更なんか大楽勝でできるんじゃないかと思ってしまうわけですが、ど〜せこの銀行も「他行からのお借入の借換に限定」なんでしょう。そうでなかったら中々の勇者なんですけど。

たまたま埼玉りそなが槍玉に挙がりましたが、同世代の人々と呑みながら住宅ローン話になると、もと金貸しということで良く借換話で色々とお話を聞く破目になり、言われるのが「なんであの借換ってのは自分の所のは受けないの?」と至極ご尤もな質問。あたくしはいつも「業界全体で足の引っ張り合いをするのが好きなんでしょ」としか答えませんが(-_-メ)。

ところで、全然話は違うんですが、ここのWebPageってページ幅を指定しているせいなのか紙に打ち出すと右側が切れてしまいます。時々こういうページに出くわすのですが、正直言って使いにくいったらありゃしませんな。


○しかし相変わらずモノをくれてやれば良いと思ってるでしょ

先日は朝のどこぞの公共放送で「銀行の新たなサービス」と題して、どこぞの地方銀行さまがどこぞの航空会社と組んで住宅ローンの借り入れにマイレージをつけて「住宅ローンを借りて何とマイルがたまる!」という企画を紹介してました。他にはいつもどおりに地元の野球やらサッカーチームの応援定期預金なんてのもありましたが。

応援定期預金とか、昔ながらの定期積金で温泉旅行みたいなのは個人的には微笑ましい企画であっていつまでも続いて欲しいと思うのですが、住宅ローンにマイレージって何かサービスの方向が妙な気がするので「???」という感じ。どこがどう??なのかが上手く言えないんですけどね。

そういう意味ではICカードを利用した銀行と事業会社の新たな決済サービスの提供などと壮大なプランをぶち上げているどこぞの都知事の心意気は壮としたいところであります。あまりにも企画が壮大で、実行部隊が貧弱そうなのでど〜せろくな結果にならずに俺の払った都民税返せよなって事になるでしょうが。

何か新たなサービスって言っても結局「モノをくれてやる」なのか「銀行に手数料やらその他の収益が入ってくる商品を販売する」って範囲から脱出できていない銀行の明日はどっちだ!って感を深くする今日この頃なのでありました。



○ここでも首尾一貫していないお方が(-_-メ)

おまけの話になりますが・・・・

日本振興銀行がとりあえず110億円以上の預金を集めてまずは順調なスタートとなっておりまして、社外取締役の木村某鼻高々。誠に微笑ましいのですが、そもそもこの銀行、当初は「預金に対して代表取締役が個人保証をする」などと激しく格好の良いお話をしておりました。まぁ銀行の預金なんて代取が個人保証して払えるレベルの問題ではないので、実態的には意味が無い気持ちの問題ですが、まぁそれでも偉そうに「お客様の預金を大切に運用する姿勢を示す」などとぶち上げていました。

ところが、肝心の代表取締役に色々とややこしい問題が発生して代取はDKB出身の小穴さんになって、肝心の個人保証もどこへやら。で、この銀行「預金の受け入れは一人1000万円を上限にする」などと言い出しまして預金を集める始末。木村某さまは本人が最近熱心にご更新中のBlog(ココログでやってます)では「預金を一人1000万円にすることによって預金が全額保護されるのがポイント」だなどと話しているようでございます。

当初の「預金を個人保証する」という気概がいつの間にやら「預金保険機構に思いっきり依存した預金集め」に転換し、それを臆面もなく公言するところなんぞは最早あたしゃその面の皮の厚さに尊敬の念まで覚えてしまう所であります。この大先生のBlogを見てて思うのは「一つ一つの言ってることは正論(理論的に怪しいのも多々ありますが、まぁ根本的に間違った話はしてない)なのに、全体を通してみると言っている事がコロコロ変わる」という事でしょうか。そういえばどこぞの大臣もそんな感じですけどね。

まぁ日計りディーラーやインチキコンサルが言ってることが首尾一貫してなくても実害は無い(と言うのはやや嘘)んでしょうが、政策に携わるあるいは政策に影響するような方が「毎回やっている事は正論」でも「前後左右でやっている事が矛盾している」ような事をやっているのも如何なものかと思う訳です。それこそ汪兆銘氏がかつて日本の問題として指摘した「上下不貫徹、前後不接連、左右不連携」は70年経っても何も変わらんって事なんでしょうな。




うむむ、肩の凝らない話の積りが、結局また肩の凝る話をしてしまっているようですな。最早持病状態の肩凝りはあたくしのこの性格に依存するのでしょう。因業な話でありまする、とほほのほ。

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「法令違反のススメ?」(2004/04/26)

日曜日は朝からぷらぷらとお出かけして、ある種の広告欄を見る為に140円も払って日経新聞を買って喫茶店なんぞでマターリと読んでおったのですが、その中で腰の砕ける記事があったのですな。

15面の投資のお勧め的な煽り記事に「新規公開投資のイロハ」というのがございまして(しかし日経で記事になると・・・・の法則から逝くとそろそろIPO何でも上昇相場も・・・・・ですかね)、その中で「どういう方法でIPO株を確実に手に入れやすくするか」という話をしております。

で、その方法ってのが中見出しにもデカデカと書いてありまして、「ブックビルディングは複数の証券会社に申し込む」って奴です。

えー、さすがに手元に日本証券業協会公正慣習規則が無いので正確な文章までは出せないのですが、ブックビルディングにおいて「割当を受けるために行われる過大な需要申告」というのは公正慣習規則の多分1号のどこかに抵触(4/26補足:公正慣習規則1号の細則6条の2に抵触です)する行為でありますな。証券業協会の自主規制と言う事ですから直接的に投資家が法令違反になるというお話ではございませんが、証券会社は顧客が複数の証券会社にブックビルディングの申込をしていると知りながらブックビルディングの申込を受け付けると公慣規に抵触(補足:水増し需要の受け付けと言うことになる)でございます。つーか証券会社は「ブックビルディングは一人一件(株数は兎も角)しか申込できませんので宜しく」って(形式的に言っているだけでしょうが)ヘッジ入れてませんかね〜。

まぁ実態が色々とあるというか、そもそも今のブックビルディングの需要調査のやり方が現実的な需要の反映をするのに適していないのではないかというお話はあるのは事実(というかブックじゃなくて入札に戻せよなって感じなんですけど)ではありますが、一応ある規則は規則なのですから、堂々と規則違反をご推奨する記事を掲載するとは注意不足もいいところでしょう。

猛省されたし>日経新聞

#なんて言ってたら規則があたくしの知らぬ間に変わっていたりして。(補足:そんな事はありませんでした)

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「UFJショックリターンズ」(2004/04/20)

昨日のドラめもんでちょっとご紹介したUFJ銀行の記事は意外に知られてなかった(まぁ東京新聞=中日新聞なんで)ようですが、さすがに朝から見事な売り気配。寄りから売り気配なんであたくしが紹介したからどうなるというものでもありませんでしたがね。

しかしUFJ銀行VS金融庁ってのは前も同じネタでUFJHD株が下落しておりましたが、一粒で2度おいしい(全然おいしくないが)と言った所ですな。いずれ金融庁方面からのリーク記事というよりは、反応を見るためにマスコミを使って観測気球を上げるの図という所なのでしょうが、「足利銀行以外に問題のある銀行はない」というような発言で地銀株が上昇した直後というタイミングの選定方法に呆れる訳ですな。

おそらくリークした方は「問題のある金融機関はいない」と先に安心感を広めておいてから悪い材料を流してみたって所なんでしょうけれども、まぁ市場を判っていない事甚だしいわけですな。地銀株暴騰祭りが先行して発生している所に爆弾テロをぶち込んでいるような物で、祭りの参加者総員大炎上となってしまいましたな。

この手のマッチポンプを何度もやられると次第に市場参加者は政策当局の言動を信用しなくなる訳でして、今の所一応発言は信用されているらしい竹中大臣の言動もまた茶番扱いになってしまうのではないかと危惧される所ではあります。


「また」というのは当然ながらどこぞの中央銀行の総裁の事を指しているのですが、英エコノミスト誌で取り上げられたかと思えば米タイム誌の「世界の100人」とかいう記事で取り上げられるといった所で、市場からは酷評を受けまくっているのに、市場から離れれば離れるほど受けの良いお方となっているのは、もはや悪い冗談としか思えない状況であります。

まぁそう言えば、竹中大臣の経済政策(というか銀行政策)ってのも散々なる締め付けをしたかと思えば一転して税金大投入とまぁ首尾一貫してません(強いて言えば「金融庁による業界支配力の強化」というのが根底に一貫してあるが、それは政策ではなくただの金融庁ファッショ)し、大臣さまご本来の御立場であらせられる「学者」世界からは見事なまでに「論外」扱いされているわけですから、似たもの同士上手くやっているって事なんでしょうかね。

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「また金融庁か!」(2004/04/19)

今朝のニュースでは話題になっていなかったのですが、土曜日の東京新聞1面には「UFJ銀行不良債権1兆円増加」という見出しで、金融庁の検査によってUFJ銀行の不良債権を新たに1兆円積み増しを要求されたという記事がありました。この場合には経営責任というお話になるそうですな。

また金融庁か!って感じなのですが、先日担当大臣が「問題のある銀行は無い」などと言って地銀株あたりが暴騰祭りになっている最中のお話で、「なんのこっちゃ」という感を強くするものであります。相変わらずトップの言っている事と現場でやっている事が支離滅裂と申しますか何とも??な役所であります。

ま、世の中平穏無事になってしまうと折角鉦や太鼓で職員を集めて人員を絶賛大拡大した組織の存在感が薄くなる訳でして(自主規制)という事になるのでしょうか。どうも日本の証券取引等監視委員会もそうなんですけれども、監督の強化をするのは良いんですが、その方向が「とりあえずしょっ引く実績を挙げる」というのに向っているのが如何なものかと思う訳ですな。上手く表現できないのですが、何か力の入れる方向が違うのではないかと。

まぁしかしこの期に及んで大手銀行をとっ捕まえて不良債権の認定をせっせと厳しくするというセンスはさっぱりわからん所です。一方で産業再生機構は(本当に実現するのかどうかは謎ですが)鬼怒川温泉にファンドを突っ込むだのというような絶賛大救済スキームを着々と進めている中で銀行への査定は相変わらず厳しくする(というか累積的に厳しくしているのではないかと思う訳だが)とい事ですから、一方で税金を突っ込んで救済しながら、もう一方では査定の厳格化をしている訳で、冷静に考えれば支離滅裂な政策運営でございます。

支離滅裂な政策運営は今に始まった事ではないのですが、特にこの金融庁というお役所に関しては何を考えているのかさっぱり理解のできない行動を取ることが多く、不思議なものを感じます。あたくしドラめもんで時々「金融検査マニュアル中小企業編」だの「リレーションシップバンキングへの疑問」だのと取り上げますが、その度に「この役所は何を考えているのでしょう」と思ってしまう訳であります。

先日横浜銀行が5月(だか4月)にも公的資金の完済をするという報道がありましたが、こんな支離滅裂な監督官庁に資本まで持たれていたら目も当てられないので、返せるものはさっさとご返済って事なんですな。

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「銀行の消費者金融への進出」(2004/04/08)

みずほ以外のメガバンクは消費者金融業者への出資やらなにやらとやっております。で、まぁその動きも世間様には高く評価されておりますが、あたくしは「ちょっと違うんじゃないかな」と思う訳であります。

収益性が高いかも知れませんが、そもそもが銀行の顧客層からかな〜り離れたハイリスクな分野でありますし、一件あたりの貸出額も激しく小口化された分野で、回収のノウハウもまた全然違う世界でもあります。「新たなノウハウの吸収ができる」だのお為ごかしな理屈が出てきますが、正直消費者金融業に看板をすげかえるのなら兎も角、一般的な預貸業務に消費者金融のノウハウを持ち込んでも仕方がないと思いますが。

まぁやっている方も多角化の一環で洒落あるいはポーズでやっているに過ぎないとは思います。本当に個人取引で儲かるのは預金額ベースで上位10%程度の部分でしょうから、真面目に各行取り組んでいるのは大金持ち様との取引です。


つーか、あたくしの預金は日本経済の発展に貢献し、社会に役立つ企業(個人事業者でもいいけど)への融資金としてご運用いただきたいわけでして、チワワを買うのに借金するような非生産的な活動のサポートに使われて欲しくはないのですけどね。

ま、国が借金してチワワ(以下自主規制^^)

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「気になったニュース」(2004/04/01)

ほんのちょっとの扱いのニュースでしたが気になったお話が一つ。

昨日の時事メインのニュースに証券取引等監視委員会の野田晃子委員の講演というのがありまして、所謂「仕組み商品」に関して歯止めが必要という見解を示したそうです。

「商品性が怪しい商品、販売員が理解していない商品が、高齢の投資家などにどんどん販売されている」「これを野放しでいいのか疑問だ。いい方法を考えなければならない」と述べたそうです。(ソースは昨日19:43に出た時事メイン提供ニュースです)

まぁ一般ピープルにとっては相変わらず証券会社との取引をするのは敷居が激しく高いのですが、最近では銀行様までもが色々な仕組み商品を売り出すわ、銀行と証券会社の共同店舗や一体店舗のような形で銀行経由で証券会社の敷居が低くなるわということで、あたくしもいい加減そういう話がでるだろうな〜とは思っておりました。

まぁ仕方無いんじゃないかと思いますが、証券会社ばかり規制しても無意味(というか逆に銀行優遇の尻抜け規制になってしまいますが)ですので、歯止めを考える際にはその辺もちゃんと考えて欲しいものであります。


その一方で一昨日は日銀総裁様が金融広報なんちゃらという所で「ペイオフ全面解禁で預金者には自己責任の意識を持って欲しい」などと相変わらず現場における実態を知ってか知らずかの脳天気なご発言をされており、大変に頭の下がる思いであります。

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「金融検査マニュアル中小企業編」(2004/03/02)

金融検査マニュアルの中小企業編が正式リリースされました。この原案については昨年12月に金融庁から発表されていまして、今回は各方面からの意見、要望を踏まえて内容の手直しを行っております。

金融庁のWebにこの件に関して寄せられたコメントおよびそれに関する金融庁の考え方が掲載されています。量が膨大(よく見ると全般に関する部分とテーマ別分類している部分があるので同じコメントが複数箇所掲載されているのですが)ですが、気がついた点を。

○裁量権の範囲を巡る綱引き

12月24日のドラめもんで「これでは金融庁の裁量権の拡大にならないか?」という疑問を出しておりましたが、さすがにあちこちから同じ趣旨のパブリックコメントが提出されています。

『債務者区分の判断にあたって、(途中省略)キャッシュフローを明確に定義づける(営業キャッシュフロー)ほか、中小企業にとって利用が平易な計算書の様式についても明示するとともに、その普及定着に努めるべきである。(東京商工会議所)』

『(前半省略)「金融機関の企業訪問、経営指導等の実施状況や、企業・事業再生実績等」が良好である場合とはいかなる状況をさすのか、明確にすべきである。(日本商工会議所)』

『現行の別冊では、その対象となる「中小・零細企業等」の定義がなされていない。こうした中、中小企業基本法の中小企業者への特性への配慮がなされず、大企業並みに厳しく検査されたとの金融機関の声がある。このため、検査の現場において別冊の内容を浸透させるため、「中小・零細企業等」とは概ね中小企業基本法の定義による旨を明文化すべきである。(経済産業省)』

最後のコメントを見て初めて気がついたのは我ながら迂闊でしたが、確かにこの肝心の「中小・零細企業等」の定義も曖昧という金融検査マニュアルというのはかなりぶっ飛んでしまいました。

で、これらのコメントに関する金融庁の「コメントに対する考え方」なんですけれども、『一律基準の設定については機械的・画一的な運用にもつながりかねず、適切でもない』という感じの答えとなっております。だいたい予想された事なんですけど、今後の現場での運用が相変わらず恣意的というか妙に厳しい運用になるのではないかと懸念するところです。


○DDSに関する素朴な疑問

過小資本の中小企業において、経常運転資金貸出の「転がし」となっている部分に関しては実質的に資本的性格の資金になっているという事を勘案して貸出金を資本的劣後ローンに切り替えると資本が充実するというお話。銀行から見れば単に貸出金を固定化しているだけのことで、企業にはメリットなので企業から見れば資本が充実するのはそのとおり。

しかし、銀行から見た場合は貸出金の一部が固定化されるので、与信リスクという点からみるとリスクが大きくなっているだけの話だと思うのですが、検査マニュアルの通りに運用すると、資本的劣後ローンの部分の引当率が100%に跳ね上がる代わりに、債務者区分が格上げになります(ならない場合もありますが)。引当が増えるのか減るのかはケースバイケースのような気がしますが、とりあえず公称不良債権額は減少する訳でして、個人的には非常に謎なところです。

ちなみに、パブリックコメントでは「DDSは中小企業取引の実態にそぐわないので、DDSにしていなくてもケースによっては借入金を資本とみなせないか」という意見が幾つか寄せられているのですが、さすがに法的要件を具備しないのに資本と見なすのは不適切という考え方になっております。


その他、色々な面に関してパブリックコメントが寄せられておりまして、紙にうっかり打ち出すと60枚位になってしまいますので、関係者の方しか読む気が起きなさそうですが、とりあえずあたくしが気がついた点についてコメントしておきました。

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「相変わらず議論が上滑りしているようです」(2004/02/19)

昨晩たまたまテレビ東京のWBS(普段は見ないんですけど)を見たら「中小企業金融」というお題の特集らしきものをやっていたのでついつい腰を据えて(と言ってもほんのちょっとした時間ではすが)視聴しちゃいました。

「中小企業融資への新たな施策」という触れ込みでみずほ銀行さんの取り組みが紹介されていました。まぁその施策自体は結構なお話なのですけど、あたくしとしては「新しい取り組み」というのにはあまりにも羊頭狗肉という奴ではないかと思ってしまう次第でありました。

最初に紹介されていた事例はこんな感じです。

新たな中小企業融資(恐らく今金融庁からやれやれと五月蝿く言われている中小企業向け無担保ローンの推進)を融資現場20年以上といったベテラン行員が「電話営業」を行い、いざ融資となると行員の長い融資経験を活かして、顧客の気がつかなかった問題点までアドバイスをしたりして顧客企業からの評判も上々です。


と、ここまで見ている分には「ほほー、中々いい感じじゃん」と思っていたのですが、そのすぐ後にこの業務に従事するベテラン行員さんのインタビューでだいぶ脱力してしまいました。と申しますのも、この行員さんは電話営業のメリットとして「顧客訪問では一日に20件〜30件が限界ですが、電話営業なら一日100件の営業をする事も出来ます」と答えているのです。

一日100件の営業って、一日の実働時間を6時間としても1件あたりの電話時間が3分36秒にしかなりません。預金獲得やクレジットカードの勧誘ならともかく、そんなペースで営業かけるってまるで漫画の「ナニワ金融道」状態。どういう基準で電話をする相手をスクリーニングしているのか良く判りませんが、もし手当たり次第に電話して「やっぱり謝絶」って案件だらけになったら却って顧客に迷惑なのではないかと思うのでありました。仮にも銀行と名のつく所が行う融資なんですから一応事前にアタリをつけて営業するもんではないかと思うのでございますが。

と言うことで、この事例はただ単に年寄り行員にテレアポ絨毯爆撃をさせているのとどこがどう違うのか今一歩わからない(とは事情に詳しく無い人は思わないでしょうからそれはそれで結構なのかもしれませんが)事例であって、特に「これは画期的」というようなお話でもないでしょう。まぁテレアポ営業を大手銀行が融資業務でやるってのは画期的ですが。


次の事例はこんな感じで。

中小企業が船舶を買う(買って海運会社に傭船契約などで貸す)という融資について、その船舶の購入によってもたらされるキャッシュフローを算定して融資内容を決定します。その場合は顧客企業の信用力や船舶の担保価値だけを見るのではなく、船の貸出先の信用力や輸送する貨物の内容などといった点も見て融資内容の検討を行います。融資を受ける社長さんも「銀行が担保だけを見るという姿から変わっている」とインタビューで答えています。


はい。企業の設備投資資金の融資を行う時に、当該設備投資によって発生するキャッシュフローを考慮に入れないで融資する銀行員はいません(バブル時の馬鹿行員にはそういうのがいたかも知れませんが)。そんなのは設備資金融資を行う際の基本中の基本であります。何を今更って感じですね。ただ、あたくしが金貸し現場にいたときには「キャッシュフロー」などという高尚なお言葉はございませんで、「長期資金繰り」などという極めて泥臭い用語を用いて「これは収益返済(企業の収益によって返済原資が確保されている)が可能であるので回収懸念なし」などと申しておりましたが本質は同じ。正確には設備投資それ自体を独立させて考えるか、企業の総合的な収益力を加味して評価するかという違いが有るのですが。

そんな訳でして、これは「極めて伝統的かつ教科書的な設備資金融資の見本」という事例であります。やっている事は非常に立派なのですが、別に新たな画期的手法でも何でもありません。まぁ単に今流行の「キャッシュフローを重視した融資」ってのを番組のゲストである中川経済産業大臣さまに御覧頂きたかったのでしょうな。きっと。

日本興業銀行(なので同じみずほでもみずほCBさんですかね)といえば事業金融(大企業の調達手段が多様化するとともに担保金融もせっせとやっておられたようですが^^)。事業金融融資というのは基本的に担保金融の考えとは一線を画すものでして、米国かぶれの金融庁がやかましく言う「融資先のキャッシュフローを評価して云々」なんていうのは当たり前のお話であります。これを新手法といわれても何だかな〜ってところでしょうね。


念のために申し上げますが、みずほ銀行のこの2事例とも悪い話ではなくて、面白い取り組みであったり、銀行の融資として当然の姿勢であったりするのでございまして、これを殊更に取り上げるメディアが浅薄なのか、それともこういう事をわざわざ好事例扱いにするという茶番を演じさせる金融庁の金融行政がおかしいのか。という所でしょう。

蛇足ながら付け加えますと、金融庁が中小企業金融というか銀行のビジネスモデルとして推奨している「リレーショナルシップバンキング」の定義には「テレアポで新規開拓した顧客に無担保ローンを実行する」というのは甚だしく当てはまらないと思うのですが、如何なもんでしょうかね〜。

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「日銀総裁の銀行経営問題への認識」(2004/02/09)

金融政策と直接関係無いのですが、中小企業融資において「キャッシュフローを見て融資する」という動きが起きるのが望ましい姿であるといった、金融庁と同じく激しく現実を無視したお話を(補足:2月5日における定例記者会見の席上)しておられます。まぁ金融庁がそう言っているのですから仕方が無いかも知れませんが。

『中小企業の世界でも既にキャッシュ・フローという言葉は、外国の言葉ではもうなくなっていて、自分たちのビジネスについて、将来の収益性を数字の上で予測し、それに対してどの程度リスクがあるかという感覚の掴み方も、かなり広範囲に始まっている。』

将来の資金繰りを数字の上で予測するのは昔からやっている話ですが、収益性でございますか。まぁ株式公開でも目指すというなら判らんでもないですが・・・・

『また、そういう条件が整っていけば、金融機関のほうでも新しい審査能力が身に付いてくる。担保ということを頭の中に真っ先に思い浮かべるというよりは、キャッシュ・フローをどう読むか、企業自身の見方と、自分達の見方とは一体どう違うのか──リスクの評価についても同じであるが──、その辺のすり合わせがもう健全に始まっているということもあるので、一概に悲観する必要はないと思う。』

今の制度下において、税務上合理的に中小零細企業が行動すると、企業に内部留保を行うよりは、代表者個人(と家族)に流出させた方が有利。よってまぁ普通の中小零細企業は揃いも揃って過小資本。そんな過小資本かつ社外流出の多い企業に対して、まともにキャッシュフローを重視して融資したら融資謝絶だらけになってしまうと思いますがね。

どうも金融庁あんど日銀は中小企業というのは将来株式公開を目指すべく日々成長にいそしんでいるものだと勘違いしているのではないかと思ってしまいますな。

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「銀行への施策、何とかならんのか」(2004/01/28)

ど〜も相場は手がかりテーマにかける日々が続いておりまして、イールドカーブはそこそこ動けど結局先物の位置はたいして変わらんという感じですが、如何お過ごしでしょうか?

本日は金融庁関連雑談。

○良かれと思ってやっているんでしょうけど・・・・・・

日銀もやたらと銀行経営がどうしたこうしたとか、ペイオフ完全実施に向けての金融システム安定化がどうのこうのと言うコメントを連発しておりますが、金融庁も相変わらず大手銀行グループへの実質常駐検査に加えて、今年もまた特別検査の実施ということで、銀行経営の監視(あるいは傍迷惑な口出し)をせっせと行うようです。

先週末にUFJ銀行の融資先に関する資料がどうのこうのというお話がいかにも「UFJに裏資料あり」と言わんばかりの言われ方で報道されており、おまけに金融庁が調査を行うというような報道でしたな。何故か金融庁は否定してましたが。

「裏資料」と言えば先日の道路公団騒動を思い出します。任期切れ直前の藤井総裁を無理矢理クビにする口実に裏資料問題が使われておりましたが、あの時も資産評価の仕方で何とでもなる財務諸表が何本かあってもおかしくない筈なのに、さも大問題であるかのように報道されておりましたな。

で、今回のUFJ銀行に降って湧いた裏資料報道ですが、これとて報道の通りに隠蔽しているのかどうかは判らんわけでして、まぁ昨日正式に通告された「来月からの特別検査」に向けて、銀行へ緊張感を持たせようという意味でのリークさせ記事では無かったのではないかな〜と思う訳です。こういうのを別の言い方をすると恫(自主規制)とも言いますがね。

劣後債の発行が延期になってしまったUFJさんはお気の毒でございましたね。


という訳でまたも特別検査なんですが、常駐状態で検査が行われおまけに特別検査が年に一回。欧州訪問時に竹中大臣は特別検査を2005年3月期まで続ける考えを示唆した(日経新聞)との報道もございましたので、来年も特別検査。

銀行の不良債権を何とかしたいと言うお気持ちの現れと好意的に解釈したいところですが、かつて現場のヒラ銀行員をやっていて当時の大蔵省の検査というのがあった時の経験を思い出しますと、これほど営業妨害なお話はございませんです。

まぁ特別検査は限定された超大口の債務者が対象だからまだいいのかも知れませんが、当時「MOF検」と呼ばれていた検査の資料作成というのがこれがまた悲惨なくらいに大変。あたくしの勤めていた会社では融資部門の内勤(事務方ではない内勤)というのはいませんで、日没時間あたりに営業から帰り、通常業務をこなした後に検査資料作成と言うことで、検査前は1ヶ月以上休日出勤と残業の嵐でした。

あれを通常業務のようにやらされるとは悲惨極まりないと思ってしまいます。特に最近は営業店の人減らしで(もしかしたら合併で人余っているのかも知れませんが)ひーひー言っているらしいですし。ご愁傷様です。

ま、景気の悪化が続いているからある意味し方が無いとは言え、銀行が「不良債権わんこそば」「債権放棄わんこそば」を実演し続けていたのがこういう結果を呼んでいるので、銀行経営者にはあまり同情の念は無いんですけどね。


○そもそもチグハグな金融庁

ま〜それ以前の問題として、金融庁が行っている銀行に関する各種施策を傍から見ておりますと、「アクセルとブレーキを全力で踏む」という状況が相も変わらず続いておりますな。以前もドラめもんで申し上げたのでくどくどは書きませんが、中小企業金融に関する施策として金融庁のWebに掲載されている「リレーションシップバンキング」に関する部分なんぞ、門前の小僧であるあたくしですら内容の矛盾が指摘できるわけです。

リレーションシップバンキングってのは「融資判断にあたっては顧客との長期的な取引関係から事業内容を重視しろ」という事だそうでして、それはそれで正しい。しかしその理念から出てくる具体的施策が「スコアリングモデルの活用(顧客の財務データから機械的に判断する方式なんですけれども、それって)」とか「起業段階にあるベンチャー企業への融資(起業したばかりの会社のどこに長期的な取引関係があると言うのか)」とか実に香しい状況。

スコアリングモデルにしろ、ベンチャー融資にしろ、一つ一つの言っている事が間違っているとは思いませんが、その施策がトータルで矛盾しており、おまけに全ての施策を各セクションが大真面目かつ厳格に実行しようとしているという状態では現場の銀行は溜まったものでは有りませんな。

一事が万事。恐らく検査の現場では「厳格なる検査」が実施されているのだと思いますが、そんな状況下で「中小企業融資の目標が未達だからケシカランので業務改善命令」などと言われてしまう銀行の経営者も良くもまぁ暴れださないものだと感心する事しきりであります。


そういう状況に対する批判どころか、「全ては銀行が悪い」という事にしておけばウケもよいのでそのまま銀行悪玉論で通しきってしまうメディアの有り方も、金融庁の整合性の無い金融行政に拍車を掛けているのではないかと先週の報道を見ていて思うのでありました。

念のため繰り返しますが、銀行も相当問題あるんですけどね。

と、本日は全然相場と関係ないお話でした。相場関連ネタがないっす。

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「中原審議委員による『歴史に学ぶ銀行のありかた』寄稿文を読む」(2004/01/06)

と言う訳で始まってしまいました新年相場。そんな中日銀のWebに本年一発目にアップされたのは中原審議委員が全国銀行協会の「金融」(たぶん機関誌だとおもうのですが)2004年1月号に寄稿した「歴史に学ぶ銀行の在りかた」という文書でございました。

http://www.boj.or.jp/press/03/ko0401a.htm

で、内容の話はともかくと致しまして、まず気になるのはと申しますと、日銀Webに年初一発目でのアップが「銀行経営がらみ」だったという事でしょうか。

昨年末あたりから日銀の複数の審議委員からやたらと銀行経営に関して色々とご提案と申しますか、外野のお節介と申しますか、まぁいろんな発言がされているのはご存知の通り。でもって、今年の日銀からの情報発信の一発目がやはり銀行関連っつー事でありますので、今年の金融政策における最大の関心事が「量的緩和の解除をどうするか」ではなく、「来年のペイオフ完全実施が無事に出来るか」という事のようだとも勝手に推測出来る訳ですな。

ではちょっとだけ内容を拝見。

○銀行への苦言

まぁ最初は苦言から入るという感じでございます。最初のお題が「銀行への不満」であります(^^)。

『「銀行は要らない」。新年早々、穏やかでない話から始まって恐縮であるが、昨年、東京下町のある工業会々長とお会いした際にお聴きした言葉である。同氏曰く、「民間銀行は担保の積み増し、理不尽な金利引上げを要求してくるだけだ。どんな事業計画を持っていっても聞く耳を持たず担保しかみていない。将来の企業の成長性に着目して融資するということができないでいる」ため、「銀行は要らない」と言われる。』

「担保しかみていない」というのは不正確な表現で、「担保割れしかみていない」の間違いではないかと思うのですが(^^)、金融庁の検査マニュアルの弊害がもろにでているのが昨今でもある(検査マニュアルを言い訳にして無茶やっているという面も否定できませんが・・・・・)と言ったところでしょうな。

特に昔からの顧客からはこういう風に言われるでしょう。

『また、海産物を販売している中央区の老舗の商店主さん曰く、「銀行は今になって金利を引き上げてくれというが、昔は我慢して高い実効金利を払ってやったではないか。まず、昔支払った分を返せ」。これは、かつては、貸し手優位の中で拘束預金や協力預金が存在していたことを指摘されておられるのだろう。』

そういえば銀行は銀行で「昔は税効果資産を認めるからと言われて不良債権の償却を前倒ししたが、今になって税効果資産を否認する行動に出るとは何事だ、まず、昔支払った有税償却分の税金を返せ」と言いたいでしょうな。そう考えるとこの国は結局「ナンジ人民飢えて死ね」って事何でしょうな、とほほのほ。

で、銀行の立場からの弁明というか言い訳が後に続くのですが、それはともかくとして、次のお題の「新しいビジネスモデルを求めて」という部分の冒頭にこんな事を言っておりまして、思わずウケてしまいました。

『もっとも、総じてみれば、依然として銀行の評判が芳しくないのは認めざるを得ないだろう。私自身、民間銀行出身なので、上述のような銀行批判に対し、「そうは言っても・・・」と反論するものの、その途端に「すわ回し者か」と睨まれることもある。』

わはは、あたくしも身に覚えが(^^)。



○「銀行のビジネスモデル」論議への苦言(か?)

で、「新しいビジネスモデルを求めて」です。

さすがに中原審議委員は元々が銀行員ですし、寄稿している文書の読み手が銀行関係者だというのを意識しているのもあるでしょうが、他の日銀審議委員やどこぞの監督官庁の人々のような現実を全く無視した夢物語みたいな話は致しません。こういう人の意見が金融庁の金融政策にちったあ反映されて欲しいものです。

『銀行の新しいビジネスモデルは何かとの議論が盛んだが、民間銀行に身を置いた経験から言うと、収益力を一挙に高め、一気呵成に不良債権問題を解決できるような普遍的な単一のビジネスモデルがあるとは思えない。』

金融庁の画一的な管理って一体全体何なんでしょうと思ってしまう訳でございまして、その辺も思い切って指摘して欲しいのですが、まぁそこまで言わせるのは無理というものですね。

『そもそも、足許の不良債権は、日本経済の構造問題と結び付いている根の深い問題だ。外需によってもたらされたフロー収益の国内への還元と、その再分配を前提とした株価・地価等ストックの膨張、これらを担保とした信用供与によって経済を発展させるという旧来の日本経済の構造自体が大きく変化している。』

『他産業と同様、銀行もこのような構造変化に対応した経営を行おうと必死になっているが、新しいビジネスモデルは、思い付きで生まれたり、"お上"から与えられるものではない。』

銀行業界が"お上"に完全屈服状況でございますので、中原さんが言わないといけないっつー事なんでしょうか。何気なく書いていますが、昨今の銀行を巡る好き勝手な議論に物申すって感じに思えるのですが(^^)。

『さらに、銀行業には様々な点で規制が多く、歴史的にみて、収益性の高い業務分野への参入が難しかったということや、公的な金融機能が肥大化し民間市場の拡大の妨げとなっていたことも忘れてはならないだろう。』

『リテール業務の一部の分野や公共料金の振替等、「儲からないからやめる」とは言わせてもらえない分野も多い。新しい銀行のビジネスモデルといった場合、このような銀行に求められている公共性、社会性との関係をどのように考えていくべきかも重要なポイントである。』

そういえば決済業務という一番コストのかかる部分をやろうとしないで「銀行」と銘打って中小企業金融をやるといった「それは商工ローン会社とどう違うんだ」と言いたくなる某銀行(設立予定)もそうですし、民営化してから主要駅を巨大ターミナルにして近隣の商圏を食って成長した積りになっている某国有鉄道からやって来た経営者に好き勝手言われてる(言われる方にも問題があるとおもいますが)某銀行。

現在の銀行の状況は確かに利用者的に言えばかなり「いかがなものか」という感じであるのは事実でございますが、元々精緻な決済インフラが構築されている訳でして、このインフラ整備に如何にコストが掛かっているのかといった宣伝を銀行はもっとすべきであろうかとは思います。正直言って銀行が収益性を重視しだしたら殆どの小口金融が相手にされなくなる(あるいは無茶苦茶手数料が高くなる)と思うわけです。

銀行に規制緩和で色々な業務が出来るようになれば、結局国鉄民営化の二の舞でありまして、それこそ近隣の中小商店あたりがゲロゲロ状態になってしまうとおもうんですけどね。

と、話が何時の間にかあたくしのご機嫌斜め的な発言になってしまった事をお詫びしつつその先を読みますと、銀行に対してきちんと苦言も呈しております(^^)。

『しかし、だからといって開き直ることもできない。取引先企業のニーズを満足させるとともに、社会経済の構造変化に対応した経営を構築し、安定した収益をあげていく、そのために銀行は今後如何にあるべきなのか?明確な将来像は未だ見えていない。』

で、まぁ温故知新っつー事で「銀行の歴史」についてお話があるのですが、こちらは読み物としては楽しいので是非御覧下さい。さすがは「銀行の銀行」の日銀さまだけにこういう文書は天下一品なんでしょう。


○まとめの部分

「歴史に学ぶ銀行のありかた」というのが続くのですが、これはまぁシュンとしている銀行へのエールみたいなもんですので本文を読んでくだされ。

で、最後の「おわりに」ではやはりペイオフ完全実施のことに触れている訳でして、日銀の今年の金融政策の最大の焦点が「ペイオフ完全実施へのスムーズな移行」だという事なんでしょうな。

『明年春からのペイオフ完全実施、再来年の新BIS規制導入は、全銀行一丸となって乗り越えねばならない大きな課題である。今後、今まで経験したことない大きな厳しい環境が待っているかもしれない。しかし、縷々述べた歴史から学べる教訓は、決して悲観することはないということではないか。戦後蓄えた豊かな富を次世代に引き継ぐため、今ほど銀行の叡智が求められている時代はない。換言すれば、いつの時代であっても「銀行は要る」どころか、「経済社会発展の要である」ことを証明するのが、私を含め銀行業に携わる者の責務と認識している。』

と言う事で、今年のメインテーマはペイオフ完全実施への地ならし。その為には量的緩和解除は有り得ないと考えるのはまぁ勝手(というか金利水準は今年1年の量的緩和解除に関して全く意識していない)なのですが、そちらに関しては「関心が薄い」だけのことではないかとも思っちゃうんですけどね〜♪


ではでは。

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「銀行の証券仲介業開始に関して」(2003/12/29)


先日、証券取引法や保険業法の改正に関する話題がでておりました。要するに規制緩和関連と言うことですが、証券に関しては「銀行に証券仲介業務を解禁しましょ」ってお話のようです。市場活性化といいますが、本当に良いのしょうか??

相変わらず銀行は貯蓄金融機関として機能している面もあるわけでして、銀行の側もそうですが、客の方も銀行=貯蓄機関=確定利付商品という意識が強いわけでございます。

世の中日々投資活動に専念できる人がそう多くいる訳ではなく、投資活動に関してややこしいことを考えている時間が勿体無い人の為の貯蓄性商品に関する需要は相変わらず強いわけでございます。

その象徴ともいえるのが「個人向け国債」。変動金利型にしたのは兎も角として「元本保証」商品になっております。貯蓄性商品として購入者に受け入れられる為には商品設計として元本保証が必要だという現実があるわけですな。

と、まぁそんな状況の中で銀行の店頭でこれ以上リスク商品を売る(外貨商品以外には投信と変額保険を扱ってますな)必要があるのかは消費者保護の面から甚だ疑問であります。

証券業界で売る側に回った事のある人ならばご存知の「適合性の原則」ですが、銀行という元本保証商品しか売り歩いた経験のない状況においてはこの「適合性の原則」という発想は起きない訳であります。何せ安全な商品しか売らないのですから、常に消費者保護がなされている訳ですから当然です。

で、その銀行っつー箱でリスク商品を売らせると、販売実績をあげる為に(ならば逆の意味で良いのですが、恐らく販売する側が非常に無邪気に)「適合性の原則」を思いっきり軽視、あるいは無視したような販売を行うというのが目に浮かんで来るわけでありますな。

「販売に際しては資格制度などを設けて、適切な投資勧誘を行うようにする」という事で当局的にはオッケーなのでしょうが、組織っつーのは一朝一夕で文化を変える事はできない訳でして、今から先行きが思いやられるものでございます。



「金融庁『リレーショナルシップバンキング』の自己矛盾(2003/12/29)

話は全然変わりますが、先日金融庁から出てきた「経済活性化の為の産業金融強化策」(産業金融機能強化関係閣僚等による会合ってところから出ているらしいですが)なのですが、それを見ているとまたも香しい記述があったのでそれに対して。

『リレーショナルシップバンキングにおける新しい中小企業金融への取組』というお題で、『金融機関による貸出後の業況把握の徹底、財務制限条項や信用格付けモデルの活用等により、不動産担保・保証に過度に依存しない融資の促進を図る』と言っております。

これだけ見ていると流してしまうのですが、この施策の別の所で「信用リスクデータベースの機能強化」が謳われておりますので、恐らく「信用格付けモデルの活用」というのは「企業の信用リスクを定量的に把握するモデルの活用」という事になるであることが推測されるわけですな。

企業の財務データから定量的に信用リスクを算定するというのは、お題にあります「リレーショナルシップバンキング」と思いっきり矛盾すると思うのですが、こういうフレーズがさらっと出てしまうところが実に香しいところでございます。

結局「骨太の方針」みたいなもんで、この首相にしてこの行政ありといった所になるのでしょう。困った話ですな。

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2003/12/24

お題「益々ねじれる中小企業金融」

あまり債券市場とは関係ないですが、「脳内現実」を元に訳判らん政策を打ち出し続ける現在の「頭でっかち政策」を象徴するような出来事と感心したもので。

上が上なら下も下。現実を本当に把握して政策立案しているというよりは、何でもかんでも米国で行われている事や米国の学者の言説を金科玉条の如くありがたがって政策の機軸を打ち出す金融庁の出す碌でもない中小企業政策。その最大の作品であります「金融検査マニュアル」の改訂案が出されました。

マニュアル本体をきちんと読むべき所なのですが、例によって量が膨大なので正月にでも読むと致しまして(読み物だらけになりつつありますな^^)、「主な内容」の部分で気になった所を並べて見ましょう。詳しくは金融庁のWebで読む事ができます。


○貸出金固定化の勧めですか??

まずは「U.擬似エクィティへの対応」でございます。ここには「資本的劣後ローンによるデット・デット・スワップ」っつーのがございます。

『資本調達手段が限られている中小・零細企業においては、事業の基盤となっている資本的性格の資金が債務の形で調達されていることが多い(疑似エクィティ的融資)。』

しかし誰が言い出したのか知りませんが、相当の昔から行われていた融資形態をさも大発見かのように命名するっつーのも香しいですな。先日あたくしがドラめもんで申し上げた通り、過小資本の方が有利になったり、企業に利益の内部留保するよりも給与の形式で社外流出させちゃった方が有利になるという税制、中小企業政策をどうにかすべく提言するほうが先決ではないかと思うのですがね。

『このような状況を踏まえて、金融機関が、中小・零細企業向けの要注意先債権(要管理先への債権を含む)を、債務者の経営改善計画の一環として資本的劣後ローンに転換している場合には、債務者区分等の判断において、当該資本的劣後ローンを資本とみなすことができるとする。』

で、まぁ事例みたいなものも別紙で書いてあるのですが、読んでも全く理解に苦しむ内容でございます。何考えているんだか・・・・・

要するに、延滞貸出金状態になっている経常運転資金の短期転がし貸出を劣後ローンに切り替えるとあら不思議、与信先の資本が充実しちゃいますってお話なのですが、もうアホか馬鹿かと。不良債務者の貸出金固定化を推進してどうするんでしょう?

で、この事例を読むと益々訳がわかりません。この「事例」によれば、「実現性が高い経営再建計画」の実施の一環として、一部の貸出を劣後ローンに転換した場合、この会社への貸出金と劣後ローンが全て貸出条件緩和債権に該当しない(=正常先債権)になり、劣後ローンに関しては100%引当を行う、となっておりますな。

これって結局「表面上の不良債権額が減る」だけの事になるようですし、それ以前の問題として契約上短期弁済が可能な(金がないから不可能ですが)貸出金を長期固定化するのを勧めるというのは、単なる「先送りの勧め」であるとしか思えませんな。


中小企業の過小資本を問題にするのであれば、その企業の代表者などが行っている自社への貸出金を資本へ転換させるとか、代表者個人へ融資させて企業の資本金を払わせる(これは商法上の見せ金にあたるので問題がございますが)など、まぁとにかく何でも良いのですが、今まで企業から代表者(およびその親族など)に社外流出していた金を企業に戻させるようにした方が良いのではないかと思いますがね。


○マニュアルの恣意的運用に拍車がかかるのでは??

順番が逆になりましたが「T.債務者との意思疎通」の部分がございます。

『金融機関が、的確な金融仲介機能を発揮していくためには、その前提として金融機関自らが日頃の債務者との間の密度の高いコミュニケーションを通じて、債務者の経営実態の適切な把握など的確な債務者管理に努めていることが不可欠である。』

言われなくても普通にやっていると思いますがね。まぁそれはともかく。

『こうした事から、検査に当たって借り手企業に関する説明責任の履行状況を検証するとともに、これに加え、金融機関の中小・零細企業に対する企業訪問・経営指導等の実施状況についても検証し、それらが良好であると認められる場合には、以下の取扱を行うこととする。』

ってな訳で「企業の成長性等について金融機関の評価を尊重」だとか「金融機関による中小企業の再生支援の実績を引当率に反映」という話になっております。

この部分、一見するともっともらしく読めるのですが、よく読めば結局金融庁の自由裁量部分が増えております。「良好であると認められる場合」っていうのがどういう内容なのかというのは結局金融庁の検査官に判断が任される(マニュアルそのものにはもうちょっと詳しく書いてあるでしょうが)訳でありますな。

元々「裁量的金融行政を排除する」とか偉そうな事を言っておっぱじめた金融検査マニュアルの策定でありますが、案の定金融庁の権限拡張の道具になってしまい、裁量行政の推進を行う一助となっている訳ですな。こういうものは最初の理念とは関係なく自己拡大していくんですよね。全く困ったものです。

そういえば金融検査マニュアルの策定やら、30社問題やら好き勝手言っていたもと日銀マンの某氏は、りそな救済に関して何の総括もしないままに妙な銀行の設立に名前を出したりしていましたが、今般はFPの新たな認証機関を設立するそうですな。自分の政策の検証とか総括をやらないで次々と新機軸(?)をうちだして「やり逃げ」状態のこのお方、まさに現在の象徴みたいなお方ですな。



ま〜その他にも妙な「キャッシュフロー重視」主義なんかも気になる所でありまして、中小企業融資に関して配慮したマニュアルの改訂らしいのですが、相変わらず零細企業を大企業をごっちゃにしたような内容になっております。

こんな無茶苦茶な当局に資本を持たれてしまっている金融機関というのも実にご愁傷様としか申し上げ様がありませんな。この国の中小企業金融政策ってどうなっちゃうんでしょうね。頭が痛いものです。

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2003/12/16


お題「またも中小企業金融について」

ちょっと古いのですが、12月4日に愛媛県金融経済懇談会で春英彦審議委員が講演をしておりました。講演の内容自体は最近の日銀審議委員の講演と余り変わらないのですが、この中で中小企業金融の問題について触れておりまして、相変わらずの現状認識か!と思わせるものでした。

というわけで、時々書いておりますが中小企業金融に関して元金貸しの手先として愚考を再度。ところで、話は全く逸れますが、最近日銀審議委員の皆様があちらこちらで講演してますけど、講演の原稿作る事務方も大変ですな。最近どう見ても使い回しをしているように見えます(^^)。

http://www.boj.or.jp/press/03/ko0312a.htm

この講演のうち、景気の現状認識や日銀の金融政策に関する自画自賛的なお話に関しては正直言って他の人の講演と変わらないので紹介は省略。「中小企業金融の円滑化」というお題の部分だけちょっと読んでみましょう。まぁいつもの日銀の見解といった文書ではありますが、何故か今回の講演要旨は箇条書きになっておりまして、日銀的現状認識がコンパクトに纏められております。


○それはマッチポンプではないでしょうか??

「中小企業金融の円滑化」というお題で「中小企業金融の課題」というお話が行われたのですが、その一発目がこんな感じです。

『中小企業の活性化のためには中小企業金融の円滑化が欠かせませんが、日銀短観を見ても企業側から見て金融機関の中小企業に対する貸出態度は依然として厳しく、貸出残高も大企業向けよりも大きく落込んでいます。』

金融機関の貸出に関して厳しい自己査定を要求しているのは日銀ではなく金融庁ではありますが、まぁ日銀も不良債権処理をしろと散々言っている訳でして根は同じ。自分たちの政策効果が上がって中小企業の金融が厳しくなってきているのを捕まえて「問題だ」と言うのは如何な物かと思う訳ですよ。

で、その自分たちで作った「問題」を解消するためにABSの買取を行っておりますが、買入対象を「正常先債権を流動化した商品」としたら案の定債券の買取もCPの買取も盛り上がらない事夥しい状況。

この結果から容易に類推される結論は「中小企業金融の目詰まりが起きると宜しくない箇所では実際問題としての目詰まりは発生していない」というお話になる訳ですな(^^)。不良債権処理という政策が進行している中では、不良債務者の金融が目詰まりするのは政策の結果として当然起きることであります。

てな訳ですから、「企業金融の目詰まり論」って話は根本から崩壊しているのでして、日銀短観の数字(対象企業には要管理先以下もいる訳ですから)を都合よくつまみ食いしているというお話だったという事であります。

というか、貸出態度DIってここの所そんなに激しく悪化してないんですけれども・・・・・・・・

ちなみに最近は「日銀による資産担保証券の買入がワークしない」という意見が民間の方から出てきておりますが、正常先債権以外も日銀が買取りをするというのは只の「震災手形」への道だと思いますが。


○現象には理由があるはずなのですが・・・・・

『中小企業の資金調達の特徴は、所謂メインバンクからの土地担保や個人保証による借入が中心で、自己資本比率が低く、約定日(返済日の間違いですな。編集中に気がつきました)毎にロールオーバーを繰り返す形の短期の借入金が言わば自己資本に代る機能を果たしてきたとされています。』

確かに現実はそうなのですが、もともと中小企業の過小資本というのは、企業規模の小さい企業をやたらと優遇する税制にも問題があるわけでして、企業が経済合理性を追及した結果、銀行と企業の利害が一致する形として「貸出金の永久ロールオーバー」という形態が生まれたという面も強いわけであります。

税法上のメリットもそうですし、公的金融(保証協会や制度融資などなど)においても過小資本にしておいた方がメリットが高い(はっきり言って非常に高い)という制度の下では、公開企業を目指す人でもない限り過小資本にする方がお得。その点に関する考察無しに「中小企業の過小資本問題が課題だ」とか言っても困る訳ですな。

さっきの話とも重なりますが、「課題」といっている現象に関して、元々何が原因なのかという因果関係に関する掘り下げが不足しているのではないかと思う訳ですよ。日銀のおエリート様やら大企業出身の大経営者様は・・・・・


○担保や個人保証を徴求するのは悪なのか??

で、この次はこんな事を言うとるわけですな。

『ところがデフレ等により企業業績が悪化すると、土地価格の下落により担保価値が低下し、金融機関の側にも不良債権処理による自己資本比率の低下や利鞘確保の必要があって債務者に厳しい態度を取らざるを得ない状況が出て参ります。この場合、個人保証の存在は、経営者にとって重荷になっていきます。』

不良大企業に対する部分的徳政令の横行に伴い、皆様すっかりモラルを失ったようでありますが、「借りた金は返す」というのが本来の姿なのではないかと思う訳ですよ。特に中小企業では代表者個人の信用力が企業の信用力を補完するものでありますし、税法上企業で内部留保するよりも社外流出させたほうが有利という無茶苦茶(追記:無茶苦茶は暴言ですな、失礼)な税制を取っている日本においては尚更の事。

仮に連帯保証人制度が廃止されて、企業が支払不能になっても代表者個人に遡及できないというような話にまでなってしまいますと、まぁかなーり多くの中小零細企業では普通の金融機関では借入を受けられませんわな。企業の内部留保がろくすっぽありませんもん。

日銀はそこまでアフォな事は言いませんが、一部では「連帯保証人制度を無くせ」という議論を大真面目にしている人もおります。政治家が人気取りで言う(そういえば民主党ってそういうアフォな事言ってましたな。さすが民主党)のが多いとは思いますが、このテキストの底にも同じような思想が流れている訳でして、全く困った物だと思ってしまう次第であります。

ちなみに、この講演の続きには「中小企業金融に関する新しい動き」と称して『その第1は、不動産担保、個人保証に頼らない融資の動きです。』と言っておりまして、要するに担保や個人保証を徴求するのは悪だという論調になっております。

ほんの少しの期間だけですが、金貸し(および回収)の手先をやっていたあたくしとしてはどうも釈然としませんな。



○信用リスクを金利でカバーするのが正しいのか??

この点に関する考察はまだあたくしの中で煮詰まっていないので、お題だけ提示するのですけれども、どうも理解できない点なのであります。講演の中でもこんなことを言っているのですが・・・・・

『また、現在、中小企業にとっての資金調達先は、金利5%以下の金融機関借入と金利15%以上の所謂貸金業者の借入しかなく、その中間のミドルリスク・ミドルリターンの借入の余地が小さいという問題もあります。』

『最近では審査の効率化により、融資の申込みに対して即日可否を決定し、無担保のリスクを若干高目の金利でカバーする形での所謂無担保、無保証の小口ビジネスローンへの取組みが活発になっています。』

まぁこの点はもうちょっと考えて見ますが、そもそも貸出金の信用リスクを補完するのは担保(人的担保を含む)でありまして、貸出金利を高く設定してさっさと回収する事によって信用リスクを補完するというのは、街金の発想ではないかと思う訳ですよ。

でですな、この講演では金融機関借入と貸金業者の設定金利が死ぬほど違うと言っているのですが、そもそも金融機関借入と貸金業者からの借入では、借入の期間も金額も全然違うという観点が抜けているのではないかと思う訳です。貸金業者からウン千万円の借入を無担保で長期で行うという人はいない(というか普通は業者が貸さない)ですし、銀行は小口のカードローンを除けば30万や50万で貸出期間が一月以内などという貸出はやっていない訳でして、金利設定には事務コストという観点もある(筈)です。

だいたい、ジャンク扱いされている社債の流通利回り(公社債店頭売買参考統計値でも御覧下さいませ)を考えたら、信用リスクをまともに金利に反映させたら利息制限法の上限なんぞあっという間に突破すると思いますけど。(追記:この頃はそういう銘柄がゴロゴロしてました)

ちょっとこの点については考えてみます。どうも「信用リスクに見合った金利」という理屈が釈然としないのですが、反論する理論武装もできませんな。


ではでは。

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