金融庁・銀行経営関連(2004年度に書いた分)
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えーっとですな、検索エンジン経由で来る方は殆どこのシリーズに辿りつくようです(^^)。文体が斜に構えておりますんで、少々読みにくいかと存じますが何卒お付き合いください。ご意見ご感想はこちらに書いてあるメールアドレスまで一つよろしくです。
2004年下期
2005/03/22「日銀もまた金融の高度化支援なるものをぶち上げる訳だが」
2005/03/09「怪電波コラム発見!」(ここに分類する程のネタでもないけどね)
2005/02/07「銀行規制緩和雑感(「預金金利戦争」記事を見て)」
2005/01/18「金融庁の『金融改革プログラム』に関して」
2005/01/12「迷走する日本振興銀行/竹中さんの国債管理政策専門部署設置案」
2005/01/05「日本振興銀行の問題点/決済用預金を無理矢理作らせている?金融庁」
2004/12/29「どこがどうリレーションシップバンキングなのか理解に苦しむ訳だが」
2004/12/22「やっぱ間接金融じゃないの?」
2004/11/26「証券仲介業解禁は何のため?」
2004/10/05「吉野家と提携ってどうよ」
2004年上期
2004/09/15「金融庁恐怖のマッチポンプ」
2004/08/31「改めて新BIS規制」
2004/08/24「理想と現実のギャップ」
2004/08/23「言行不一致行政」
2004/06/30「バーゼルUの中小企業貸出のリスク算出に関する疑問」
2004/05/26「住宅ローンに関する雑談」
2004/04/26「日経の『規則違反のススメ』?」
2004/04/20「UFJショックリターンズ」
2004/04/19「また金融庁か!」
2004/04/08「銀行の消費者金融業進出に一言」
2004/04/01「ちょっと気になった『仕組み債販売への規制』発言」
2005/03/22
お題「日銀よお前もか・・・・」
休み明けはおおぼけモードなのですが、3日も休むと・・・・って事で今朝は甚だ簡単に。
○ペイオフ全面解禁後の金融システム面への対応について
先週金曜日に上記のお題で機構改革だの今後の日銀の政策運営だのが発表されております。場中にいきなり「ペイオフ全面解禁後の新しい政策運営に関して3時過ぎに発表」ってのが出た時は一瞬何の事かと思いましたがまぁご愛嬌って奴ですか。
http://www.boj.or.jp/set/faa0503a.htm
まぁ「決済性預金全額保護」と言っている時点でペイオフ全面解禁もへったくれもあったものではないと相変わらず思っているんでその時点ではぁはぁそうですかってなもんなのですが、今回の施策は公式発表文を見たところ一応日銀としては政策の基本的なありかたの転換って感じのようですわな。
「基本的な考え方」の冒頭部分にこんな事がかいてあります。
『こうした変化(引用者補足:ペイオフ全面解禁)を受け、日本銀行の金融システム面の対応も、これまでの危機管理重視から、(以下の太字部分は本文中にわざわざ太字にしているものを忠実に太字化したものです)金融システムの安定を確保しつつ、公正な競争を通じ金融の高度化を支援していく方向へと切り替えていく必要がある。』
はぁはぁそうですか。要するに危機管理モードが終了したという事なんでしょうが、この「金融の高度化を支援」ってのはこりゃまた面妖なお話だと思ってその先を読むと、金融機関に対して何でもかんでも手取り足取りな上に、最近では産業政策までやろうとしてませんかっていう勢いで昔の大蔵省もビックリの金融庁さまを彷彿させる記述がございます。
○金融の高度化支援ねぇ・・・・
2段落目はまぁ普通の話(やや気になる点もあるが突っ込み省略)ではありますが、3段落目以降が「金融の高度化支援」話であります。
で、内容を突っ込みながらネタにする前にあたくしの思うところを申し上げますと、金融庁に影響されているのだか何だか知りませんが、日銀が以下にご紹介するように金融機関に対する「高度化支援」みたいな事をやるのはどうかと思いますな。どうもいまやっている(またはやろうとしている)事は、古き昔の「行政指導」と思いっきりかぶるお話(金融庁も日銀も)に見えます。金融自由化だの構造改革だのってのは確か「一定のルールを適用して原則自由化。監督官庁はルールが正しく運用されているかどうかの公正な審判役」ってのが骨子だったと思うんですが、そーゆー精神はどこに逝ってしまったんでしょうなぁ。
と申しますか、やたらと「ご指導」をした挙句に問題が発生した場合にはだれがどう責任を取るんでしょうなぁと思いますと益々寒いものを感じる訳であります。どこぞの役所みたいに「無税償却は認めないけど繰延税金資産認めてやるから引き当て増やせ」と指導した後に「繰延税金資産の過大計上だ」などと梯子を外して涼しい顔をするのでしょうかね。ま、なんちゅうか困った話だ。では本文に突っ込み。タグのようなものはあたくしの補足(太字部分スタート〜エンド)です、念の為。
○鼻息荒く「かくあるべし」
『一方、金融の高度化は、今後、日本経済が持続的、安定的な発展を遂げていく上で、重要な前提条件となる。日本経済を取り巻く環境が急速に変化する状況において、円滑で効率的な資金の配分を実現し、経済全体の活性化を図っていくためには、より多様な信用供与の仲介チャネルが存在し、金融仲介構造が柔軟で頑健なものであることが必要である。』
いやまぁ重要な前提条件だとか必要だとかそう考えるのは結構なのですが、何と言うか「かくあるべし」みたいな理念先行の香りが致しまして、大昔に読んだ小説「官僚たちの夏(城山三郎)」ですなぁなどという感想でございます。つーかそういうものは「かくあるべし」から生まれるものではなくて、その国あるいは経済主体が必要であるとなればちゃんと発生する物ではないかと思うのよ、あたしゃー。
従って本当に必要なのは、新たに生まれる金融手法に関して不必要な規制(その手法が単に詐欺だとか犯罪的な手法だったら規制せにゃーなりませんが)を行わないようにするとか、法律面などでの整備を行うとかってお話だと思うんですけど。
と、思いながらその次に参りますと、益々「かくあるべし」攻撃が爆裂。
『そして、そうした金融仲介構造の実現のためには、融資慣行の見直し、金融機関のリスク管理の高度化、クレジット関連市場の整備など、金融システム面でなお広範な取組みが求められる。』
この太字部分が一々突っ込みどころというのは狙ったギャグなのでしょうかって感じですが、融資慣行の見直しってのは金融庁がお好きなネタ。リスク管理の高度化ってのはバーゼルU絡みなんでしょうが、そもそもバーゼルUは何度か話のネタにしているように「中小零細企業向け小口貸付のリスクウェイトが大企業向け貸付のそれよりも何故か低い」とか「金融機関の金利リスクを図る際に用いる標準的な金利ショックがイールドカーブのパラレルシフトという基本的に有り得ない事を前提にしている」などと精緻化しているように見えても「はぁ何ですかそれは?」ってのがある訳ですな。それをベースに「高度なリスク管理」のご指導をしても、本当に問題が発生した場合に高度なリスク管理とやらで想定しているような結果で収まるんでしょうか?
リスク値の計測そのものは要するに計算の世界でして、問題はその前提条件が実態に即しているかどうかなんですが、だいたい「最新の金融工学を駆使した手法」ってのは計算の精緻化方面に走りたがるらしいんでご注意ありたい所でありますわな。まぁそりゃ世の中全てを前提条件に組み込む事は不可能なんで、使う側はモデルの前提条件がどうなってるかを知っておく必要があるということですわな。何だか話が逸れましたが。
○あっはっは
『このような金融高度化が関係者の努力で進展していけば、日本銀行の金融政策運営面でも、その効果がより効率的に経済に及んでいくものと考えられる。』
これだけ散々「かくあるべし」話をぶち上げておいて「関係者の努力で進展」といきなりひとごとモードになるのは如何なものかと。まぁそりゃ「私たちが絶賛ご指導する」と言うのは問題ありだってのは判りますがねぇ。
『金融の高度化に向けた民間の取組みを支援するため、日本銀行としては、考査・モニタリングにおいて、金融機関のリスク管理・経営管理の高度化を促すことを通じて、新しい業務展開などの動きを積極的に後押ししていくほか、組織体制、金融機関との対話チャネルなどの面でも工夫を凝らしていく。』
と書いてますが、要するに「乃公出でずんば蒼世を如何にせん」って事なんでしょ。まぁ後押しされたらその先は崖でしたって事のないようにして頂きたいものでございます。
ちなみに、基本的な考え方の続きは上記日銀WebからPDFファイルへのリンクがありますので、その辺でもご覧頂けるとなお「???」なのですが、その5ページ目あたりなんぞを見ておりますと、今般の組織改変に伴い「金融高度化センター」なるものが設置されるようでして、「公開セミナーの実施」という目玉施策が予定されているらしく、あんたは金融コンサル会社かと突っ込みたくなります。その部分を引用。
(公開セミナーの定期的開催)
金融の高度化に関する諸問題に取り組むための前提条件として、問題の所在、解決の方策等に関して金融機関等と広く理解を共有する必要がある。そのため、内外の金融機関の経営者や実務担当者を主たる対象とする公開セミナーを定期的に開催する。本公開セミナーは、考査・モニタリングと並ぶ、金融機関等との間の第三の対話チャネルと位置付ける。
テーマとしては、@試算の経済価値把握のための高度な手法の開発と共有、A融資を巡る金融慣行のあり方、B金融情報セキュリティを巡る経営上の問題と解決の方策、C新しい金融業務の展開に見合った会計処理のあり方、D新たに実施する考査・モニタリング技法の解説、などが考えられる。
(引用終了)いやまぁそうですかとしか言いようがありませんが、何か既に「頭でっかちの人たちが寄ってたかって高度な金融手法の話をした挙句、使えない施策を押し付けてくる」という予感が思いっきりするのはあたくしの杞憂ですかそうですか。
○というわけで
まぁこういう方向になりそうだなかというのは昨今の日銀の偉い人たちの言動を見ておりますと予想はできない事もなかったのですが、金融庁と日銀がせっせとご指導(つーか金融庁の場合は強制みたいなもんだが)する金融機関って何なんでしょうなぁというのが感想でございました。まぁ碌なもんじゃあねぇな。
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2005/03/09
(作者口上:本来このエントリーは与太話に分類すべきものなんですが、検索エンジン経由でお越しになられる方はこのページに目を通す場合が多いので、あまりにもふざけている某新聞のトンデモコラムネタについてご一読頂ければ幸いです。)
お題「本日(というか昨日)のトンデモコラム(^^)」
債券相場の方は一通りネタ終了の香りでして、まぁここから日経平均株価が12000円を超えてバンバン上昇でもしないと動意がなさそうですなぁ。ってな訳でたまには軽いお話で参ります。
○困ったコラム発見!
日経金融新聞の1面右端に「複眼独眼」というコラムがありまして、たぶん複数の金融業界関係者かつそれなりのお方がコラムを書いていると思われるのですが、最近このコラムと日経新聞市況面のコラムの内容が著しく劣化しているように(毎日読んでいるわけではないのでアレなんですが印象として)思えるのは気のせいではないかと。で、昨日のコラムはあまりにも豪快な「トンデモ」だったので、市場関係者の方には面白くないかもしれませんが肴にしてみましょう。
複眼独眼のお題は「銀国逆転金利」で著者は「一葉」氏です。本文を引用しつつトンデモぶりについて検証してみませう。以下『』内は3月8日の日経金融新聞「複眼独眼」より引用した部分になります(漢数字を算用数字に置き換えてます)。
『年配の債券関係者なら、「金国逆転金利」という言葉を覚えているだろう。今から25年前ほど昔の話であるが、5年金融債利回りは10年国債利回りより上でなければならないという当時の大蔵省の長期金利体系が崩れ、5年金融債利回りが10年国債利回りより低くなった事をいった。』
ここは話のマクラですし、25年前じゃああたくしもお子ちゃまですんでこの辺は「ほほうそうなんですか」で終了。でもこの頃ってそもそも金融機関による国債のディーリングってやってましたっけ?っていう気がしますわな。まぁいいけど。
『今から考えれば、スティープな順イールドになってスプレッドが信用リスクを上回っただけである。当時は規制金利下でイールドカーブはすべてフラットであったので、規制金利が緩んできたわけである。』
スプレッドってのは5年金利と10年金利のスプレッドの事を指しているものと思われます(用語の使い方に疑問は残りますが)のでまぁ良いんですが、イールドカーブは全部フラットだったんですかそうですか。知らないから「はいはいそうですか」としか言いませんが、当時お年玉預金を銀行で定期預金にしてみたら1年ものよりも2年物の方が金利が高かったんですがまぁいいか。
ここまではまぁよいのですが、最近の話と言うことで「銀国逆転金利」の話になると素晴らしい論説がでてくるのですな。
○比較する対象が無茶苦茶ですが
『最近の金利を見ると、5年金融債で0.1%、10年国債で1.5%となっている。ところが、この状況は驚かなければいけない。5年国債では0.63%となっており、ここでも金融債のほうが国債より金利が低く、金国逆転になっている』
利金債の流通利回りは国債よりも高いんですが何を言っているのでしょうか?と思って商工組合中央金庫(ここで商工中金というのがマニアだが^^)のWebを見ますと、確かに0.1%のリッショーという商品がありますな。でもこれって個人向けの貯蓄商品ですんで、国債の業者間流通利回りと比較しても意味がありません(だいたい個人が既発国債を窓販で買いにいくとその利回りじゃ買えません)から・・・・残念!
念の為申しあげますと、個人向けの金利が低い(たしかに0.1%はちと低すぎの気はしますが)のは一件あたりの金額が全然違うというのが大きな理由の一つ。資金調達という面で見れば、一発で何十億円と調達出来るのと、その金額集めるのに数千件とかかかるのでは手間賃というコストが全然ちがいますんで、それは金利に反映してくるのは当然のことであります。
『同じ年限であれば、信用力のあるもののほうがより低い金利になるという経済の常識に反している。』
前提条件が同じならそうですが、前提条件が違うものを比較してこっちが高いだの安いだの言うのは経済の常識に反してますが何か?
『実は、同じ2年物でみても、銀行大口定期は0.04%であるが、国債は0.1%とやはり「銀国逆転金利」になっている。』
既発の流通している国債は途中で売却すると元本が必ずしも保証されていません(絶賛販売中の個人向け国債は別ですんで念のため申し添えます。流通性のない国債ですから)ので、中途換金した場合の期間利回りがマイナスになる事もあり得ますが、銀行の定期預金は元本は保証されているんで、中途解約オプションが付いているようなもんですけど、そのオプション料はどう評価するんでしょうなぁ。
○海外との比較についてはちと研究の余地があるかも
『もちろんこんな異様な状況は日本だけであり、しかも金利規制緩和後から今日にいたるまで続いており、先進国の金融市場ではまずみられない。』
そんなもんかいなと思いまして、物は試しに英国(を選定するのがそもそもひねっているが)の商業銀行の定期預金金利はいくらでしょうかと、日本であまりポピュラーじゃなさそうなLloydsTSBのWeb(http://www.lloydstsb.com)を見ますと確かに3年もののTerm Depositの金利が2月末時点で4.9%(金額によってちょっと違ったりする場合もあるようですな)と3年物国債(Gilt)の流通利回り4.761%(複利、ソースはブルームバーグ)に対してほぼ遜色ない水準になっているようです。なるほどなるほど。
『このおかげで、日本の金融機関は預金を国債に運用しても利ざやが稼げるという幸運な環境になっている。』
何か金融機関が怠惰であるかのごとき表現ですが、そりゃあんた日本では余資が思いっきり金融機関に入ってくる構造になっているし、現在はそもそもが民間部門が資金不足じゃないので金イラネって事でもありますし、その断罪ぶりはどうなのよって思うわけです。
まぁ漠然としたイメージなんで話半分に思っていただけるとありがたいのですが、どうも(追記:英国の商業銀行では)貸出金利もそれなりに高いようでして、個人向けローン商品の金利を見ていると金利が7.8%だの9.9%だのという数字がうじゃうじゃ出てくるようでして、まぁそれなりの利ざやは確保できてるのねって思うわけです。ちなみに国民生活金融公庫の教育ローンの金利は1.7%(と保証料が外枠で金利換算するとざっくり0.3〜0.5%くらいっぽい)だったりする訳で、日本ではどうも色々と要因が複合して相変わらず貸出金利が安かったりするわけですな。英国の商業銀行の預金金利がそれなりに高いのはそのせいかな〜何て思いましたが、これは全然まともな分析じゃないので念の為。
○書くほうも書くほうだが掲載するほうも掲載するほうですな
このコラムはその後に結論らしきものがあるのですが、もはや論評する気も起きないのでまぁお暇な方は古新聞をご覧頂くとしまして(笑)、あたくしの結論ですが、「こんな豪快な文章を書くほうも書くほうだが、自分の結論にもっていくために本来比較対象にならないものを比較しているコラムを日経金融新聞はチェックできないのでしょうか」というところでしょうかね。
こんなトンデモコラムがスルーして「金融新聞」を名乗ってプロ向きと称する紙面の1面コラムを飾ってしまいますと、一事が万事って奴でして、この新聞に書いてある記事は大丈夫かよって気にさせてくれる素晴らしい記事(コラム)って事になるかと思うんですが。関係者の猛省を促します。
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2005/02/07
○ちょっと目に留まった記事
先週木曜日の東京新聞の特報面(24面)の囲み記事に「利息バトル・仕掛ける外資系2行」という事で、東京スター銀行と新生銀行が行っているキャンペーン預金(東京スターで10年定期の1.5%、新生銀行で5年定期の1.0%でキャンペーン期間中なのでプラス0.1%)の動きについて報道しておりました。記事から勝手に引用しますと、この2行の動きについて『金利が0.00何%の現在、2行が販売する”高金利”の定期預金は、(中略)ペイオフが解禁される4月を前に、預金分散の動きに対応して、新規の顧客を取り込む狙いがあるといえる。』という解説になっておりました。
で、その後、元経済企画庁事務次官の赤羽隆夫さんのコメントとして『両行とも元は破たん銀行で、大手銀行と同じ金利での競争だと、イメージ的に不利。勝つには高金利しかない。企業戦略としてまったく当然の行為。』『見逃してならないのは、両行とも外資系金融機関の傘下に入っていること。こうした外資系企業は、体力の弱った日本企業やリゾート買収を狙っている、1%の金利で集めた資金を買収に充てれば、大きな利益が挙げられる。高金利の定期預金の向こうには外資のこうした狙いがある。』というのがございました。
「外資系金融機関の傘下」って所には「?」なものがありまして、話の進行が外資ハゲタカ論っぽくて何ともアレなコメント(勝手に記者が面白い方向にコメントを纏めているという疑惑はあるがそれは兎も角)なのですが、まぁ「1%の金利で集めた資金をリスク資金に利用する」って趣旨の指摘は「ほうほうなるほど」と思ってしまう次第でございますわな。
日本振興銀行(そういえば小穴前社長もとうとう会長を辞任してまさに木村剛銀行になっちゃいましたな。なんだったんでしょう)に関して「預金保険機構をバックに預金を集め(木村剛さんがご自身のブログ「週刊!木村剛」で堂々と「一人1000万円までしか預金を受け付けないので預金保険で全額カバーされる所がミソです」と発言してますから〜斬りぃ!)て信用リスクの比較的高い中小企業に高利無担保融資をするってのは、預金保険機構制度に乗ったモラルハザードの一種じゃね〜の」とあたしゃ〜思うのですが、まぁそこまでは申しませんが、銀行という器を使って資金を集めて運用は何でも結構というのはやはりアレなものを感じる次第でありますな。
昨今は銀行への参入規制緩和がどうしたこうしたという話が進行しているようですが、昭和金融恐慌に関する本なんぞを読んでおりますと、昔々のその昔は経営者のお財布状態になってしまった銀行などと言った事例も結構あったようでして、まぁ規制緩和も結構ですが、そもそも銀行制度がやたらガチガチに規制されたのは何ででしょうかっていう面はどうなっているのかな〜と思う次第であります。
まぁ銀行が経営陣の「機関銀行化」するというのであればそれならそれでも構わないのですが、その場合は預金保険制度による保護施策というのはモラルハザードを助長する施策になってしまうのでどうなんでしょうね〜って感じであります(もちろん預金保険制度を生かしつつ銀行の資産をきちんと精査する監督をしろってのが本来のあり方なんでしょうが)。
何か話が上手く纏まりませんが、まぁそういう感じで(汗)。ちなみにこの記事の惜しいところは、最後のまとめ部分に出てくる海外投資アドバイザーの三原淳雄さん(どうでもいいが翌日の囲み記事では三原さんの肩書きが経済評論家になっていましたな、あっはっは)のコメントでして、「集めた資金をリスクを承知で避けられていた企業に高利で融資するのは結構」「例えば楽天が銀行を持って球団が一勝したら利率何%という定期預金が売り出されるようなアイデア合戦が展開されるかもしれない」などという趣旨のコメントをしているのですが、それはあたくしの危惧するモラルハザードがどうのこうのという問題に関してちょっと脳天気すぎではないかと思う次第でして、ちょっと三原さんにがっかりしちゃいました。
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2005/01/18
お題「ちと古い話ですが金融改革プログラム」
年末(12月29日)に金融庁ネタとして何か「それのどこがどうリレバンなんでしょうかねぇ皆様作文ご苦労さん」としか申しあげようが無い「リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラムの進捗状況」をご紹介して、ついでに「ああ相変わらず金融庁様は各銀行横並びでやらせるのね」という「決済用預金の導入に向けた金融機関(業態別)の準備等の状況の公表」ってのをご紹介しましたな。
で、よくよく思い返してみるとあたしゃー「金融改革プログラム」に興味があって金融庁のWebにお邪魔した訳でして、「金融サービス立国」といういきなり「立国」ですかと素晴らしいキャッチフレーズが出ている資料をちょっとだけ拝見しましょう。
http://www.fsa.go.jp/news/newsj/16/f-20041224-6.html
○心意気は壮大で文章が妙に硬い(^^)
『これからの金融行政は、「安定」から「活力」へというフェーズの転換を踏まえつつ、利用者の満足度が高く、国際的にも高い評価が得られるような金融システムを「官」の主導ではなく、「民」の力によって実現するよう目指す必要がある。我々はこのような取組みを敢えて「金融サービス立国への挑戦」と名付け、そのためのプログラムをここに策定した。』
さすがに「金融サービス立国」というのは現状からの乖離が激しすぎるので「敢えて名付けた」という事のようでして、ちょっとだけ安心。でまぁそれはそれで良いのですが、この「はじめに」の文章が妙に生硬な印象を受けるのは(単にあたくしが金融庁作成の文書を読みなれていないせいなのかもしれませんが)気のせいでしょうか??
「はじめに」の冒頭部分を引用しますとこうなるのですが、ど〜も硬い気が。
『わが国の金融システムを巡る局面は、「金融再生プログラム」の実施等により不良債権問題への緊急対応から脱却し、将来の望ましい金融システムを目指す未来志向の局面(フェーズ)に転換しつつある。「金融システムの安定」を重視した金融行政から、「金融システムの活力」を重視した金融行政へ転換すべきフェーズと言っても良い。また、金融のIT
化が進むとともに、経済社会全体においてもインターネット取引の比重が高まっている。今後の少子高齢化、経済のグローバル化の更なる進展に的確に対応し、わが国経済の持続的成長に資するためにも、構造改革の一環としての金融改革の具体的プログラムを以上のようなフェーズの転換に即して考える必要がある。』
今気が付いたのですが、上記段落内での各文が一つ一つ完結していて、話がブツ切れになっている(ように思える)のが読みにくい原因かと(^^)。英語版の方が読みやすいとはこれいかにという感じですな、あっはっは。
それはともかく。
○「リスク管理の高度化」ねぇ・・・・
まぁ細かく読もうとすると色々と債券市場にも宿題がありそうなプログラムではありますが、とりあえず目に付くのは「バーゼルU」に関する言及でございますな。
日本語資料の7ページ部分に『金融機関のガバナンスの向上とリスク管理の高度化を通じた健全な競争の促進』ってお話がありまして、「ああまたリスク管理ですか」ってものなんですが、その辺にこんな事が書いてあります。
<ここから引用>
金融機関のリスク管理の高度化を促すとともに、不良債権問題の再発防止のためのルールを整備し、主要行の不良債権比率が17
年3 月末時点の水準以下に維持されるよう、最善の努力を求める。また、各金融機関において収益性や健全性を示す財務指標や外部格付けが一段と向上することを目指す。
○バーゼルU(新しい自己資本比率規制)の導入に向けた金融機関のリスク管理に関するルール・態勢の整備及び検査・監督当局の体制整備
○ 早期警戒の枠組みの一層の活用
・銀行勘定における金利リスク等、自己資本比率の算定に含まれないリスクの適切なモニタリング等
○ 主要行のリスク管理の高度化
・バーゼルU導入を踏まえ、主要行に対しリスク管理高度化のための計画の策定を要請
・大口与信管理態勢や債務者企業の再建計画の検証
・主要行の自己査定と検査結果の格差に係る業務改善命令の発動等・繰延税金資産の自己資本への算入適正化ルールの検討
○ 証券会社・保険会社のリスク管理の高度化
・証券会社の自己資本規制の算定方法の見直し
・保険会社のソルベンシーマージン比率の見直し、新しい保険商品に係る責任準備金積立ルールや事後検証の枠組み等、財務関連ルールの整備
<引用終了>
まー結局のところ「バーゼルUの考えを金融機関全部に適用していき、ついでに皆様をせっせと監督しますので一つよろしく」と言っているように読めますな(^^)。
んじゃあ「バーゼルU」が導入されるから金融機関のリスク管理がより精緻になるかと言いますと、確かに表面的には精緻になるんですが、実態を反映した精緻さになるかというとこれがまた疑問のかたまり。以前から悪態をついておりますように、バーゼルU自体色々と政治的妥協のようなことをやっていると思しき節がありまして(昨年の6月30日のドラめもんで申しあげた事の繰り返しになりますが)、中小企業向け貸出金に対する所用(追記:「所要」ですな)自己資本が何故か少なくなってしまうという不思議なことがある訳ですな。
『バーゼルUの枠組みは、信用リスクがより高いと考えられる債務者についてはより高い水準の所要自己資本額を課すという手法を全般的に適用することにより、信用リスクに対する自己資本の枠組みの感応度を高める。』
ってのがバーゼル委員会のプレスリリース「編集者のための解説」って所にあるのですが、何故か中小企業向け貸出金は「小口分散によるリスク軽減効果を考慮して、所要自己資本額を軽減」(日銀あんど金融庁の出した「新BIS規制案の概要」って資料のあたりに説明があるのですが)という不思議な扱いになっておりまして、http://www.boj.or.jp/intl/04/data/bis0410c.pdfあたりの資料の3ページ目くらいを見ますと、「標準的手法」によってリスクウェイトを算出すると大企業向け貸出金のリスクウェイトの方が中小企業向け貸出金(追記:一件あたりの上限額が設定されています)のリスクウェイトが高いという極めて意味不明の状況が発生しておりますわな。
債券ポートでも同じような訳のわからん事態が発生しておりますのは皆様ご存知の通りで、何故か変動利付債券の金利リスクが「利息変更サイクル期間が満期の固定利付債と同じ」という状況になってまして、長期金利にフロートしてようと短期金利にフロートしてようと金利リスク量が同じとなっているという実に心の温まる規定がございまして、本日入札が予定されている変動利付国債の人気が絶賛大沸騰しっぱなしとなっている訳ですな。既に市場に「制度による歪み」が発生している好事例(というか悪事例)となっているのが実に素晴らしい。
○地域金融機関にも「バーゼルU」だそうで
「U.地域経済への貢献」って所に「中小・地域金融機関の経営力強化」って部分があるのですが、そこを見ますとこんな件が。
○ 中小・地域金融機関のリスク管理の高度化やガバナンス向上に向けた取組みの促進
・バーゼルUの導入、選択制の下での内部格付け手法の採用
っつー訳でして、何で地域金融機関に対してバーゼルUを適用してどうのこうのという話をするのか相変わらず理解に苦しむ(国際展開する訳でも無いのに、わざわざそんなややこしいものを適用する必然性はあるのか?)のですが、こ〜ゆ〜事を言っておる(まぁ大体こうなるのは方向性として以前から打ち出されておりましたが)とすれば、中小・地域金融機関に対しても金利リスクの計測だの標準的な金利ショックに対する想定損失の算定だのといった七面倒くさいことが求められる事になる訳で、誠にご愁傷様でございます。
面倒になってフローター債ばかりがアフォのように売れるような事態になりそうな悪寒が致しますわな。
○余り関係ないですが・・・・・
まぁおまけなんですが、この「金融改革プログラム」に出ている施策ってやたらと個別具体的な「偽造カード犯罪等の金融犯罪防止のための対策の強化・徹底」などという話があると思えばその並びに「金融商品・サービスにおける情報の有用性に配慮しつつ、情報の適正な保護を図る具体的な個人情報保護ルールの明確化」と何の事かよ〜わからん漠然としたお話があったりと、何かこう「?」なものを感じてしまいますな。
どうもそういう点も含めまして、このプログラムって妙に読みにくいんですよね。ついでに申しあげると、金融庁のWebってのもまた読みにくいデザインになっておりましてなれない人には情報探しにくいったらありゃしないので改善をお願いしたいものです。
ちなみに、バーゼルU関係資料はhttp://www.boj.or.jp/intl/05/intl_f.htmのあたりに資料が纏まっております。
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2005/01/12
お題「ニュース雑談」
本日はもしかしたら米国株安円高を受けてちったぁ動きが有るかもしれませんが、まぁ相変わらず10年1.4%で5年0.5%台後半で推移しとる間はネタも無くて困りますわな。海外出張にいっちゃった人以外の動きは無いですし・・・・・
○努力の方向が激しく変だと思うのですが・・・・
本間宗久相場三昧伝の一節に「米商いは踏み出し大切なり。踏み出し悪しき時は決して手違いになるなり。」なんてぇのがございますが、あたくしが大いに楽しくウォッチしている木村剛大先生肝いりの日本振興銀行さまにおかれましては、現在の金融行政の迷走ぶりをきっちりと具現化していただいているという意味で実に貴重な存在ではないかと思う訳です。
先日の発表でとうとう木村剛さんが社長に就任(した割には早期に後任を見つけ筆頭株主らしいですが木村さんの持ち株も売るかもとか言っている超越的無責任筆頭株主代表取締役なのは激しく顎が外れるのですが)した日本振興銀行ですが、早速新社長ご就任の1月から「土日も営業(ただし午前中だけ)」という新企画を打ち出したようであります。
・・・・・まるで結果から逆算すると債務超過なのに税金を絶賛投入されたのではないかとの疑惑も高い何故か旧国鉄の人がエライひとになっているどこぞの銀行を彷彿させるような企画なのですが、大手町の本店一つしかない銀行(というかただの商工ローン会社だが)が土日に午前中だけ店を開ける意味がどこにあるのか理解に苦しむのですが、まぁご苦労な事です。
この銀行が掲げる理念っつーかどうやって融資やって行きますかって話を見ておりますと、上記したように現在の金融庁の金融行政にも相通じる(金融検査マニュアルの策定に大きく貢献した木村氏肝いりの銀行なんだから当たり前ですが)訳でして・・・・・・
・担保不足で資金需要のある新興中小企業への融資を行う
・融資先の人物本位で審査を充実する
・無担保無保証融資(結局保証人は徴求しているようですが)
ってなお話を並べると、どうも金融検査マニュアルの香りが大変に漂って来るものを感じまして実に香しい。導入当初「これじゃあ担保不足の中小零細企業にプロパー融資できねぇ」ってなもんで「貸し渋りの原因」と悪態をつかれてから政治問題化。で、その後「金融検査マニュアル中小企業編」が出てきてたり、「リレーションシップバンキングの推進」などという話が始まって益々訳がわからなくなったというか現実離れしてきた訳ですな。
金融庁の仰せになられるリレバンに関しては年末(12月29日)のドラめもんで金融庁「リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラムの進捗状況について」の悪態をついたのでご記憶に有るかと存じますが、もう物の見事に鉛筆なめなめ状態になってりまして涙無しでは見られない事例発表となっております。
大体ですな、「リレーションシップバンキング」とか言いながら「クレジットスコアリングモデルの活用」を提唱するという時点で既に話が自己矛盾しているので、本気でリレバンを推進する気があるのかそれとも中小企業イジメとの政治的軋轢を避ける為の方便なのかよー判らんのだが、どうも日本振興銀行がやっている(というかやろうとしている事というか)を傍目から見ておりますと、少なくとも木村さんは素に大真面目になって「中小企業金融は金融検査マニュアル中小企業編の如くあるべし」となって現実に実行しようとしたんでしょうなぁと思わせるものがございます。
まぁ現実の壁にぶち当たって精々「金融検査マニュアル」が如何にとんでもない物だったかという事を反省していただき今後の金融行政に役立てる事が出来るのであれば大変に結構ではありますが、ど〜せそういう話にならないんだろうな〜と思うと実に暗澹たるものを感じます。また、銀行批判というかほとんど誹謗言いがかりに近い素晴らしい言説を展開しつつ金融行政に貢献していた木村剛さまがいざ銀行経営に携わった時に「今まで言ってた事とやってる事が違いませんか?」っていう様子(「銀行というのは融資先に個人の連帯保証を求めるのだから、預金に対して経営者が個人保証すべきだ」などと大変にご立派な話はどうなったのかな?木村さん)を見ておりますと、この国の行政機構はどうなっちゃってるんでしょうか?「吏道」ってもんがありませんでしたっけ?などと悲しくなってくる訳でございます。悲しいもんだ。
○国債管理政策を担う部署の設立話
竹中大臣が何故か「国債管理政策を別組織化するのはどうよ」って話を先日しておりまして、早速谷垣大臣が文句つけておりました。まぁ英国の歳入管理庁とかの例から思いついたのかもしれませんが、国債管理政策だけ別組織にする意味がさっぱり判らん話であります。
それ以前の問題として、国債管理政策でど〜のこ〜のという技術的な話よりも財政健全化に向けて努力するのが筋なんじゃないでしょうかと思う次第でありまして、どうも「2010年度にプライマリーバランスを達成」っていう話が無理だろって話になる前にお得意の目くらましをするという意図があるんじゃね〜のって憶測してしまうあたくしはやはりひねくれ者なんでしょうな。
問題が深刻化してくると目先の組織いじりとか精神的なスローガンをぶち上げて目くらましをするというのは日本古来の伝統芸とも言えるものですので、まぁこの手の話がごちゃこちゃ浮上する時には碌なことはなかろうと思うのが吉かと。相場云々としてはどうでもいい話ですが。
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2005/01/05
○日本振興銀行
今度は小穴社長@元DKBが「健康上の理由」で会長に退いてとうとう木村剛さんが社長に就任ということで、もはや壮大な自爆芸となりつつある「金融維新」に涙を禁じえない所であります。
そもそも「ミドルリスクミドルリターンの中小企業融資」ってのに無理があるというお話はあちこちで指摘されています。まぁあたくしなりに纏めると・・・・
融資先というのは「生きてるか潰れるか」という「1か0か」というもので、おまけに現在の日本の商慣習から言いますと企業というのは「完全に死ぬまでバンザイしない」のが普通。よって死んだときの回収率がいくらかというのは基本的に「物的担保と人的担保で幾らカバーされているのか」がポイントになります。
然るに担保を取らない(代表者の個人保証は処分可能な資産持ちでもない限り基本的に気休め以上の効果は無い)となりますと、要するに貸出金利でカバーするという事になりますが、「リスクに見合った金利」でカバーするためには統計でいう「大数の法則」が成立するくらいに小口分散をする事が必要でしょう。即ち新規開業直後で営業カバーエリアがそもそも狭い状況でいきなり「ややリスクの高い中小企業融資を無担保で実行」するのは無茶としか言いようが無いし、スコアリングモデルのような機械的な与信判断をしないのが基本的コンセプトになっているので、そもそも小口分散的な発想と矛盾していますわな。
おまけにこの銀行は決済業務を全然やっていないに等しい(そもそも決済をやらない銀行を銀行と呼ぶ資格があるのかという疑問もあるのですが)ので、融資先の業況をモニタリングする事が出来ない(特にメイン銀行は融資先の資金の出入りを常時モニタリングする事ができるので、ちゃんと見てれば業況の変化を速やかに知る事ができる筈。特に中小企業の場合は)という絶対的なハンデがあります。もともと高利の金でも喜んで借りに来る相手なんですからまぁ普通の与信先よりはきっちりモニタリングしないと焦げ付きの危険大なのに、30人だか50人だかの担当者(都銀の中規模支店2〜3個分くらいですが・・・・)で1都3県をカバー(しかも新規開拓もしないといけない)するのはそりゃ無理でしょう。
とまぁうだうだ並べると、日本振興銀行の迷走は内紛がどうのこうのというような属人的問題に矮小化されるべきものではなくて、そもそものビジネスモデルに問題があったという話になって頂きますと、金融庁だの日銀だのが持ち出す「頭でっかちプルーデンス」に冷水を浴びせる効果が期待出来るわけでして、壮大な大失敗実験もまた「重要な知見が得られた」(実験やっててよく言うんですけど^^)という事で意義はあるのかなと思うわけです。ケツが国民負担になるのが激しく遺憾なので木村氏今までご主張されていたように精々丸裸になって頂かないとあたしゃー納得いたしかねますがね。
どこかのブログで議論されていた(どこだか忘れた)ものの受け売りになりますが、所謂商工ローンなどの業態の融資開拓の肝は「アウトバウンド営業」(要するにこっちから融資先を決め打ちしてセールスすること)であって、「融資してくれと言って来る相手には基本的に貸さない」というのが常識だそうです。そんな中で日本振興銀行では木村剛さんがブログでも「開業前から融資の申し込みが沢山やってきました」と嬉々として書く位ですからまぁそういう発想は無いんでしょうなぁということがよくわかります。
やっぱ根本的に発想がずれていると思います。精々国民負担が大きくならないようにして頂きたいものです。竹中さんに倣ったのか火中の栗を拾おうという志は壮としたいですがね。
○「決済用預金を作れ」というプレッシャーですか?
4月のペイオフ全面解禁に向けての準備ということで、決済用預金(別名ペイオフ尻抜け預金)の設定が各金融機関で進んでいるようでして、年末のどさくさに紛れて金融庁はこんな発表をしておりました。
決済用預金(当座預金以外)の導入に向けた各金融機関の準備等の状況(平成16
年12 月現在)http://www.fsa.go.jp/news/newsj/16/ginkou/f-20041228-2.html
『この度、「無利息・要求払い・決済サービスの提供ができる」という要件を備えた決済用預金(当座預金を除く)の導入の準備・検討等の状況について、各金融機関に対しヒアリングを実施し、これを取りまとめましたのでお知らせします。なお、当分の間、毎月の取りまとめ結果をお知らせします。』
取りまとめ結果はhttp://www.fsa.go.jp/news/newsj/16/ginkou/f-20041228-2.pdfにあるのですが、確かペイオフ解禁ってのは金融の健全化を推進するために実施する筈でして、健全な金融という状況下では金融機関各自に自主的な経営をしていくって話だったと思うのですが、決済用預金の導入状況を毎月ヒアリングして発表ってのは要するに「金融機関へ導入しろとプレッシャーを掛けてる」んじゃないでしょうかって思うんですが・・・・・
金融健全化どころか益々官が管理(というよりは指導だわな)していく流れが強化されているようですが、国際競争力のある日本の製造業は官の関与がより少なかったという歴史的事実に関してもうちょっと考えて頂かないと。。。
○何か勘違いしている訳でして
報道によりますと、伊藤金融大臣は年頭の訓示だか何だかで、「金融サービス立国」などという話をしていたそうですが、「立国」ってのは普通「貿易立国」みたいな意味で使う言葉でして、「海外にうって出る」というような状況とほど遠い現状でその言葉を使うのはちょっと何と申しますか「??????」なものを感じるわけです。勇壮なキャッチフレーズに貧弱な中身というのはどうも「無敵皇軍」みたいな香りが漂ってくる訳でして、誠に遺憾の極みであります。
何考えてるんだか・・・・・
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2004/12/29
○リレーションシップバンキングねぇ・・・・(-_-メ)
昨日朝の某経済ニュース番組で「金融庁の金融制度改革がどうのこうの」って話しがありまして、「金融改革のポイントが利用者重視に」とかいうごたくを「また寝言か・・・」などと思いつつ金融庁のWebを見に行きましたら別の物を拾って参りました(^^)。
http://www.fsa.go.jp/news/newssj/16/ginkou/f-20041127-2.html
「リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラムの進捗状況について」ってのを拾って参りまして、まぁざっと読んでみたのですが、相変わらず「机上の何ちゃら」という感が拭えない訳でございます。細かい突込みをしだすとこの話もとんでもない大作になっちゃうんですが、そこまで突っ込んで読んでおりませんのでまぁ思いついた突っ込み所を少々。
今回は金融機関の取り組みぶりのご紹介とその評価って話になっておりまして、別紙資料ってのに色々と内容が紹介されております。で、そこを見ると「それのどこがリレバンなのよ」って突っ込みを入れたくなる事例が並んでいて、「作文っていうのは大変なことですなぁ(棒読み)」ってなもんです。
量も沢山あって中々楽しめるのですが、幾つかの項目だけ拾って眺めると致しましょう。
・早期事業再生に向けた積極的取組み
って所(3番目の項目)の最初に中小企業の過剰債務構造の解消・再生の取り組みがどうたらこうたらってのがありまして、その最初の事例としてご紹介されているのを見たらこんなものが。
『本支店の法人営業担当者全員がそれぞれ1社以上の支援企業を選定し、経営改善計画の策定・実行を支援する「一人一社運動」と展開。』(東海財務局管轄下の銀行)
・・・・・あたくしも昔々銀行員って商売をやった事があるので実に良く判る行動様式でして、苦笑を禁じえないのですが、確かリレバンってのは地域金融機関が顧客との長期的な関係ときめ細かいモニタリングによって中小企業金融の活性化を図りましょうって話だった筈なのですが、「一人一社運動」という実に銀行らしい「とりあえず全員一件何かやりやがれこの野郎」という本部主導のローラー作戦のどこがどうリレーションシップバンキングなのかあたくしにはさっぱり理解致しかねるものでございます(-_-メ)。
まぁこのあたりの部分は正直どこがどうリレバンなのかさっぱり判らない「広域企業再生ファンド」だの「DES、DDSの実施」だのという事例が並んでいるわけで、結局「お前ら新しい事をやりやがれ」と言って、ノウハウを導入すると言う名目で余計な負担を地域金融機関に増やして差し上げているだけのような気が激しくするわけでございます。
・新しい中小企業金融への取組みへの強化
って部分(4番目の項目)はアクションプログラムが出た時点で既にあたくし「何ですかこれは」と悪態をついた覚えがあるのですが、こちらに関してはそもそもが変なだけに、金融庁様におかれましては何で表を作りながら気が付かんのかよって言いたくなる表現が(-_-メ)。
上記項目の事例紹介の最初の項目は『(1)ローンレビューの徹底、財務制限条項やスコアリングモデルの活用等、第三者保証利用のあり方』ってなっているのですが、この時点ですでにダウトな訳ですわな。
ローンレビューの徹底ってのはモニタリングとか事前審査の精緻化ってお話の筈。然るに、スコアリングモデルの活用ってのは貸出審査の簡素化って話な訳ですし、財務制限条項の活用ってのも基本的にはモニタリングを精緻化していれば必要ない(財務諸表に問題が出てくる前に気が付くことだから)筈のことでございますので、こういう項目を作っている時点で「矛盾する概念を包含するとは新しい取組みだわこりゃ」と金融庁様の慧眼に大変感服して顎が外れる思いであります。
まぁ当然ながら並んでいる事例も大変に心温まるものが多うございまして、例えば・・・・
『担保制限条項及び財務制限条項を活用した、原則、担保・第三者保証人不要の新規取引先向け低利融資商品を取扱開始』(関東財務局管轄の銀行)
→そもそもリレバンって「顧客との長期的密接な関係を基にする」って概念ではなかったでしたっけ??
『スコアリングモデルに、業種別(建設業)モデル及び個人事業主用モデルを追加し、精度を向上』(中国財務局管轄の銀行)
→個人事業主の財務諸表なんてあてにならねぇだろうという突っ込みもさることながら、「精度を向上」って開始後半年そこそこで精度が上ったかどうかって結果が出るという素晴らしいレビュー能力に大変に頭の下がる思いでありますなぁ。ワカルワケネェダロ
まぁ何ですな。この「取組み」とやらは結局役に立つのかとっても疑わしい「スコアリングモデル」だの何だのという物を地域金融機関に売り込む「最先端の金融技術」をお取扱になられる方々を大変に潤すだけのお話ではないでしょうかって気が物凄い勢いでする訳でございます。
まぁ地域金融機関(だけじゃなくて大手銀行もそうなんですが)の皆様に置かれましては、この手の「尤もらしい金融工学」に頼ることなく、本来のノウハウを磨いていただきたいものであります。
突っ込みだすときりがない上に血圧が急上昇するのでこの辺で。
○プルーデンスの「机上の・・・・」傾向は何とかならんのか
時々日銀の要路の皆様が「金融の新しいあり方」といったお題で講演やら何やらを行うと「なんじゃそりゃ」って突っ込みをあたくしやっておる訳ですが、直接監督を行う金融庁の方がこの傾向は酷いと痛感する次第で、時間の経過と共に少しはましになっているかと思って(期待してませんでしたが)今回の金融庁の資料をチェックしましたが、どうも益々脳内思考モード爆裂の方向に向かっているようで、誠に遺憾でございます。
昨今の金融行政というかプルーデンスに関る政策立案に大きな影響を与えたと言われる(実情は知りませんが)木村剛氏が鳴り物入りでおっぱじめた「新しい金融のあり方」であります「日本振興銀行」がまぁどうも大コケの雰囲気を醸し出しているという大変に判りやすい事例が目の前に展開されているという昨今でありますし、いい加減「頭で考えた金融行政」から脱却して頂きたいと思うものであります。
あたくし銀行の現場で金貸しをする時間はほんの短期間(2年ちょっと)しか無かったのですが、そんなヘボいあたくしの目から見ても「ちょっと今の方向はおかしいんじゃネーノ」って思っちゃう状態な訳でして、どうにかならないものかと思っちゃう訳ですよ。昔のお客さんを思いだすと益々ね。
まぁ身を切って「新しい金融への取組み」が砂上の楼閣であったことを実証して下さりつつある木村剛さまはある意味貴重な天然資源とも言えるのですが、何だか彼の執筆活動状況を見ていると、ビジネスモデルの失敗を認めずに辞めていった幹部社員たちのせいにしそうな気配なので、それはそれで実に残念なことでございますわな。
まぁ「プルーデンス政策=木村剛氏」と言うのは例えとして極端すぎるとは思いますが、何だかそんな感を深くする昨今でございました。
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2004/12/22
○大企業金融の「直接金融」は幻想かも知れないというお話
あたくし昔々とある銀行の支店で金貸しの手先をやっておったのですが、まぁこの時期になると当時の支店長様を囲む会なんかをやったりする訳です。で、昨日はそんな会の一つに逝ってきたのですが、当時の親分は現在某事業会社の財務担当役員をやっておられてまして、企業金融に関して興味深いコメントを拝聴致しました。脳内メモリーから書き出しますとこんな感じ。
「直接金融がどうのこうのと言うが、企業の資金需要の太宗は銀行借入で賄っているわけで、間接金融というか銀行の貸出が何と言っても重要」
「金を貸さない銀行というのは企業として取引を継続する意義は低い」
「そもそも社債発行しても、直接個人が買っている訳ではなく、購入者は金融機関であって、財務状況のプレゼンを金融機関に行っているのであれば結局銀行借入とやっている事は本質的に変らない」
「個人の投資行動が一朝一夕に変るものではなく、これからも金融機関に資金が集まる流れは続くから、直接金融の衣は纏っても資金の流れは間接金融という状況は続く」
「銀行の集約化も進んでおり、これからは銀行の役割は益々重要になる」
まぁ元銀行員が現役銀行員(あたしゃー違いますが)を鼓舞する為のお話でもあったので話しは少々割り引く必要があるかもしれませんが、まぁ「銀行がバランスシートを減らす事を考えるのはおかしい。もっと貸出業務を頑張れ」ってお話でして、妙な米国モデル崇拝によってやたらと直接金融崇拝を行う現在の金融行政のあり方に対する批判にもなっているお話。
だからどうなのよって言われるとまだあたくしの頭の中で整理がついてませんが、ちょっといい話だな〜と思ったので思考のネタとして一つよろしくです。整理ができていないだけにあたくしの思うところが上手く表現できているのか少々心もとないのですが・・・・・
(12月26日追記)要するに「現在の資金の流れは一旦金融機関を通過しており、直接金融の進展とか言ってるが、結局は最終投資家が直接社債を買ってるわけじゃ無いでしょ」ってご指摘なわけですな。当然ながらこの方もIRの意義とかは認めてるんですが、金融機関が投資家になっている直接金融って真の意味で直接金融っていえるのかいなってことでしょう。投信には直接金融の担い手として期待してるみたいですが。(以上追記終わり)
で、その後当時の小僧だけで2次会に行きまして、今や傍観者のあたくしは皆様のお話しを諸々お伺いして「ほうほう」と中々勉強になりましたが、そっちのお話はまぁ追々。皆さん偉くなられてまぁ色々と大変ですな。あたくしは貧乏暇あり(汗)。
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2004/11/26
○何のための証券仲介業かってお話
まるで別件なのですが、昨日のニュースで「広島銀行がみずほ証券と証券仲介業で提携」ってぇのがございまして、報道によりますと(プレスリリースは面倒なので見てません)、広島銀行ではみずほ証券の提供する外貨建て債券や仕組み債の取り扱いを解禁になる12月から開始するそうですな。
いやまぁ別にそれはそれで良いんですけど、最初に扱う商品が外貨建て債券や仕組み債ってのが誠にアレなものを感じる訳ですな。あたくしは兼ねてから「仕組みが複雑な金融商品に碌なものなし」という証券会社の人間がそれを言うと同業者から袋叩きにされそうな事を申しあげているもので、「証券仲介業の第一弾が仕組み債かよ!」と脱力するのでございますな。
金融商品ってのは商品がそのまんま「お金ちゃん同等物」である性質上、製造原価が読みやすい商品でして、物を売るときに「いかに買い手にこっちの利幅を悟らせないか」っていうのが高収益確保の源泉であるという事を考えますと、金融商品のうち仕組みが簡単明瞭なものというのはその分薄利多売を余儀なくされる訳でして、高収益確保の為に色々と訳の判らん装飾を施して製造原価を訳判らなくした商品を手を変え品を変えて提供している訳でございます。当然そのような商品を売っていただければ仲介してくださった業者様にも手数料を多くお支払いできるという訳ですな。
最近銀行業態では「手数料ビジネスの拡大」ってな事で変額年金保険をせっせと販売してみたり(おかげで保険販売員資格者が大量発生したと思いますが)しておるようですが、今般の証券仲介業参入でも結局は「手数料が沢山頂戴できる商品をせっせと仲介しましょう」って話になるようでして、まぁいきなり青臭い正論を言い出しますと、「株式市場活性化の為に証券仲介業制度で証券販売窓口を増やすって話じゃなかったでしたっけ??」と申し上げたくなる訳ですな。ええ、勿論債券だって直接金融ですから「間接金融から直接金融へ」には叶っておりますが。
ま、先日マクラでご紹介した「松竹の映画ファンド」もそうなんですけど、どうも最近は新規に何かやる場合でも「まずは市場を開拓して」っていうような余裕は無いんでしょうな。最初の一発目に手掛ける案件がどう考えても「売る側にとって利幅が確保できそうな商品」になっているのが誠に残念至極でございます。その点で言えば、数年前からやっている銀行の投信窓版は導入当初「銀行の預金者がとっつきやすい商品を」って感じでして、まぁゲテモノ的な商品を積極販売するような向きが無く、市場の拡大に寄与したのではないかと思う次第でございます。
まぁ買うほうが注意すりゃぁ良いんですけどね。お金の「消費者教育」も必要ではないかと思われる今日この頃。ただしあまり皆様賢くなられるとわたくしどもの商売がもう思いっきりしんどくなりますのでそれはそれで困ると言う因業な商売でもあるのですけどね(^^)。
なお、広島銀行とみずほ証券の名誉の為に申しあげますが、2005年2月からは株式などの商品の取り扱いも開始する予定になっておりますので念の為。でもみずほ証券で個人の相手できるのかな〜??
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2004/10/05
○吉野家と提携ってどうなのよ?
りそな銀行という所に公的資金絶賛大突っ込み攻撃が行われてからはや1年。その後の決算をみればどう考えても突っ込んだ時点で債務超過でして、まぁもともと公的資金突っ込み基準を決めた法律が建前重視で作ったのが問題の始まりだったのですが、ど〜考えても法律を無視した措置でしたな。結果オーライではありましたがね(ただし、この手の結果オーライって2度目に同じことをやると恐ろしく悲惨な結果を招くと思うので、やっぱり如何なものかという感は拭えません)。
で、この銀行さまは時々訳の判らない施策を打ち出してきてあたくしを驚かせてくれますが、今度は吉野家に行員を派遣して24時間営業のノウハウを学ばせると朝のテレビニュースが申しております。あたくしの脳内メモリーから読み出しているので正確さに欠けるかもしれませんが、吉野家の店舗内にATMを設置するという施策もあるそうですな。
まぁ色々と面白い施策を打ち出すのは壮としたいところなのですが、銀行員をとっ捕まえて吉野家で働かせるという訳ではないんでしょうけど、何だかここの社長だか会長だかの出身母体であります旧国鉄が民営化した時に言うことを聞かない国労の組合員で客商売なんかした事ない人間を駅のコーヒースタンドに無理矢理配置転換していた事を思い出してどうもアレな訳であります。
まぁ吉野家でノウハウ学ぶってことですから24時間有人店舗にでもする気なんでしょうけど、それはちょっと努力する方向が変なのではないかと思いますが。それなら土日に住宅地の店舗を開けたほうが良いのでは??と思いますし、ついでに吉野家で500円で釣りがくる飯を食っている時にATMで金をおろすっつー図も今一歩想像しづらいのですが。時間外手数料で(タダなら話は別だが)半熟玉子食ってお釣りがくるんですけど(^^)。
まぁりそな再生だとか言って人間送り込むだけ送り込んだ竹中大臣もアドバイザーとか言って偉そうに仕切っているように世間にアピールしていた木村某もすっかり当事者ではなくなって、苦労するのは送り込まれた連中ですか。でも経営と全く関係ない世界で日々業務を淡々とこなしていた一般行員が一番苦労させられているんですけどね。
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2004/09/15
お題「金融庁あいかわらずいかがなものか」
変動利付国債入札の話は「いやぁ全くニーズがありますな〜」で終了という感じでして、それより不思議なのは現物債が全般的に重い中で先物だけ全然下がらないという現状。と言って先物の建玉は6兆円台という水準だったりするのでして、やたらと買い戻しが入ると言う先物の板付は不思議でございますな。
まぁネタと言うのは同時に色々と出てくるのですが、今朝はそのネタの中であたくしが好きな金融庁関連の悪態でも(^^)。
○先端金融取引の重点検査ですか
変動利付国債入札の話が1面に出てるってぇので日経新聞を拝読しておりましたら、「金融庁、大手銀の先端金融取引を重点調査」って記事がありました。日経のWebによりますと、「金融庁は銀行が取引先企業との間で実施している先端的な金融取引について重点的に検査する。」そうでありまして、その主な対象としてあがっているのが「金利スワップ」や「デットエクイティスワップ」となっているそうです。
記事によりますと、「銀行がこうした取引を使って自らの収益を底上げしたり(金利スワップをイメージしているようです)、取引先の経営状況を実態より良く見せかける(DES=デットエクイティスワップをイメージしているようです)のを防ぐのが狙いだ。」ということになっております。
確かに金利スワップなんぞは会計上の収益の嵩上げ(あるいは益の繰り延べ)に使いやすい商品ですし、どう考えても回収不能な貸出をDESに転換することによって問題の先送りを図ることができるので、検査で重点的に対応したいってのはその場の理屈としては話が通っている訳です。しかし「それは待てよ」と言いたくなる訳でして、毎度ドラめもんをご覧になられている読者様におかれましてはこの先の論理展開が見えていると存じますが(^^)話を続けさせていただく訳ですな。
○金融先端取引を推奨してたのはどこの誰でしたっけ?
金融庁の施策として不良債権処理の加速って所で、金融庁様は擬似資本状態の長期固定貸出金を資本化しましょう何て事を提唱していた筈でして、その中では、
「要管理先以上の債務者区分に属する債務者において、実現性の高い経営再建計画の下で、長期固定化した貸出金をDESだのDDS(=債務の劣後ローン化)だので貸出金を資本性資金に変換するとあら不思議。残った貸出部分が正常先債権に区分されます」
という画期的な施策(あたくしには唯の先送り誤魔化し手法にしか思えませんが)を打ち出して居た筈です。先送りのススメって事で昨年12月に悪態をついております。DDSに関しては金融検査マニュアル中小企業編にこんな記載があるわけで。
『資本調達手段が限られている中小・零細企業においては、事業の基盤となっている資本的性格の資金が債務の形で調達されていることが多い(疑似エクィティ的融資)。このような状況を踏まえて、金融機関が、中小・零細企業向けの要注意先債権(要管理先への債権を含む)を、債務者の経営改善計画の一環として資本的劣後ローンに転換している場合には、債務者区分等の判断において、当該資本的劣後ローンを資本とみなすことができるとする。』
で、これをあたくしなりに翻訳すると12月24日のドラめもんではこんなことになるわけです。改めて書きます(というかコピー&ペーストですが)。
(以下12月24日のドラめもんで書いたこと)
要するに、延滞貸出金状態になっている経常運転資金の短期転がし貸出を劣後ローンに切り替えるとあら不思議、与信先の資本が充実しちゃいますってお話なのですが、もうアホか馬鹿かと。不良債務者の貸出金固定化を推進してどうするんでしょう?
で、この事例を読むと益々訳がわかりません。この「事例」によれば、「実現性が高い経営再建計画」の実施の一環として、一部の貸出を劣後ローンに転換した場合、この会社への貸出金と劣後ローンが全て貸出条件緩和債権に該当しない(=正常先債権)になり、劣後ローンに関しては100%引当を行う、となっておりますな。
これって結局「表面上の不良債権額が減る」だけの事になるようですし、それ以前の問題として契約上短期弁済が可能な(金がないから不可能ですが)貸出金を長期固定化するのを勧めるというのは、単なる「先送りの勧め」であるとしか思えませんな。(以上)
とまぁそんな感じでDDSなんぞのような金融取引を一方で推奨しておきながら返す刀で重点検査をするというこの自己矛盾。お前はどうして毎度毎度やっている事が首尾一貫していないのだと小一時間どころではなく24時間くらい問い詰めてみたくなるわけです。お前は右の手と左の手でやっている事が矛盾しとりはせんかという訳ですな。
○官製の罠ですか?
そもそも、債務の株式化だの劣後ローン化をすると現実的には兎も角として会計上のメリットが大いにあるという状況を作り出しておいて、いざそれをおっぱじめだしたらいきなり重点検査ってんじゃあ金融機関は困りますわな。例えが激しく不穏当ですが、玄関を開放して入り口に札束をこれ見よがしに積み上げておいて取りに来た人間を泥棒としてタイーホすべく待ち構えているようなものではないかと思うわけでして、これまさに官製の罠としか言いようがありません。
既にこの「官製の罠」には「繰延税金資産」という恐ろしいものがあって銀行株は只みたいな値段まで売られるわ、どこぞの銀行は無理矢理吸収合併の方向に持っていかれるわと銀行は散々な目に遭わされた訳ですが、この時の「官製の罠」は繰延税金資産の制度を当初導入した時から監督官庁の体制が思いっきり変わっている(だからと言っていきなり天変地異の如く行政の扱いが変化するというのは行政の継続性という観点からは如何な物かと思いますが)ので、理解できないけどまぁ仕方ないと致しましょう。
しかし今回は何ですか?つい半年前に金融検査マニュアル中小企業編を出したばっかりなのにいきなり重点検査ですか?金融庁は銀行を罠に嵌めて気に食わないと犯罪者に仕立て上げるのが仕事なんですか?
・・・・興奮して少々取り乱しました。暴言勘弁。
まぁしかし何ですな。打ち出す施策を直ぐに検査の名目で否定するような状況が続いたらまともに金融庁の施策を信じて何か始めたら大変な目に遭う訳ですから、まぁ昨今あちこちから漏れ伝わる「銀行の経営は金融庁の方ばっかり見ていて本来の銀行経営をしていない」などという悪態も企業防衛上致し方なしとしか申し上げようがないですな。恐ろしい事です。
という訳で、外傷性頚部症候群だというのに朝から興奮してしまいました。ほかにもネタがあったはずなのですが、時間の都合でこの辺で(^^)。
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2004/08/31
お題「改めて新BIS規制案」
台風到来の為本日は簡単に(謎)。
金融庁および日本銀行のWebに昨日「新BIS規制案Q&A」というものがアップされております。PDFファイル形式でアップされているので(と言う訳でもないのですが)アドレスは手抜きで書きませんが、金融庁のWebはやたらゴテゴテしていて見難いので日銀のWebから探せば宜しいかと思います。内容的にはほんのさわりと言った感じですが。
○個人・中小企業向け貸出に関する謎再掲
一発目の問1に「BISの新規制の枠組み」に関してでかでかと計算式をのっけて説明しております。そこにもありますように、今回の自己資本比率規制の変更においては分子にあたる自己資本に関しての変更は無しと言うことで、分母の部分が変更になっている訳ですな。
で、元々の分母部分が「信用リスク+市場リスク」だったのですが、今回は「信用リスク+市場リスク+オペレーショナルリスク」ということで変更になったのですが、変更の基本的ポリシーはその次の問2にありますように、新規制の3つの柱の一つに挙げられている「市場規律」の重視であり、「リスク計測を精緻化」するというあたりらしい訳ですな。
ところがご存知のように今般の新規制においては、個人だの中小企業向け与信について何故か信用リスクのリスクウェイトを軽減するという大技に出ているというのが大変に素晴らしいというか香しいというか。問6(4ページ目)には、個人・中小企業向け与信に関して具体的にどのようになるかが記載されているので引用します。
・標準的手法については、与信額1億円未満の個人・中小企業向け与信について、現行のリスク・ウェイトから25%引き下げ。75%のリスク・ウェイトとし、また、住宅ローンについてはリスク・ウェイトを現行規制よりも3割削減し、35%とすることとされている。
・内部格付手法では、個人、中小企業向け与信については、同様の与信特性でも大企業向け与信と比べ所要自己資本が軽減されるような算式が示されている。
と言うことでして、小口分散効果が発生するから大企業向け貸付よりも中小企業や個人向け貸付のリスクウェイトが下がると言う理屈になっております。で、この理屈は過去にも申し上げたと思いますが、ローンの信用リスクという観点で言えば無茶苦茶というか論理破綻としか申し上げようがありません。
母集団の信用リスクが高いものを幾ら集めてもポートフォリオ全体の信用リスクは軽減されませんが何か???と言った所でして、上記理屈(というか屁理屈)が成立するのは貸出ポートフォリオが(1)ローンじゃなくてエクイティの場合(2)元々のローンが信用リスクを反映した値付け(まぁ街金レートですな)で購入したもの(貸出金じゃなくて社債ですな、そりゃ。)の場合って事になるでしょうから、基本的な前提が直接金融を意識したものだとしか言い様がありませんな。
科学的に精緻な分析をしているかのような話になっていますが、根本的な部分で(政治的に理由があるにせよ)無理無理な前提を置いてリスクの計測をしているというこの新BIS規制。所詮は単なる「国際展開する銀行へのお約束事」であるに過ぎない筈なのですが、今までと同様に今度の新BIS規制に関しても国際展開をしていない国内銀行にも適用する方向だそうですな(Q&Aの問7に記載されております)。BIS規制参加各国の多様な金融の現状を無理矢理ごちゃまぜにする為に「中小企業向け貸出の方が大企業向け貸出よりも信用リスクが低い」と言い出すような規制を何故国内銀行に適用するのかと考えますと、金融庁の思考停止あるいは海外崇拝の香りが実に強烈に漂ってまいりまして、もう頭が下がるとしか申し上げようがありません。
○まぁ結局は政治の世界な訳ですが
中小企業向け貸出金の信用リスクが大企業向けよりも低いという無茶苦茶としか言い様が無い理屈が採用されたというのは、(ちゃんと調べている訳でないのですが)国際展開している銀行が国内で大々的に中小企業貸出業務に精を出している日本とかドイツとかの銀行に対する配慮、というか日本とかドイツとかが強硬に主張したことが原因なのでしょうなって事はとりあえず想像の付くところでございます。
その点では政治力を評価したい所ですが、どうも金融当局さまにおかれましてはやはりその辺の評価が欲しい(というよりは国内向け政治アピールなんでしょうが)ようで、わざわざQ&Aの問5で「日本の金融当局としては、これまでどのような主張を行ってきたのか。」という誰も質問をしそうもない質問を挙げまして説明しております。まぁもともとBIS規制自体が過小資本で業務を絶賛大拡大させた邦銀への嫌がらせとして成立したような節(その時に日本の金融当局は何をやっていやがったんでしょうな〜)があると考えるのは被害妄想かもしれませんが、今回の2次規制に関しても「科学的に精緻なアプローチ」をしていると言いながら肝心の根本が政治的妥協の産物と言うことな訳ですか。
で、同じ結論になるのですが、そんなものを有り難がって国内銀行にも適用する必要がどこにあるのかサッパリ訳判らんわけですが、って我ながらあたくしも粘着ですな。
○市場リスクに関して
一応債券市場に関連する部分。問8の部分なのですが、どうも今一歩この説明が良くわからんので、BIS規制案を精読する必要があるかも。
・今回の新BIS規制案では、銀行勘定の金利リスクについて、自己資本比率の分母(リスク・アセット)の計算には参入せず、第2の柱(引用者補足:監督上の検証って所です)においてモニタリングすることとなっている。
・したがって、銀行勘定の金利リスクについてアウトライアー銀行に該当したからといって自動的に自己資本の賦課が求められるものではない。
と言うことでして、アウトライアー銀行ってのは標準化された金利ショック(全ての金利が1%上昇するという設定)に伴って発生する金利リスクがTier1とTier2の合計額の20%を超える銀行の事をいうって話はだいぶ前にもしたかと思いますが、ここだけ見ていると、アウトライアー銀行に該当するような金利リスクを取っていなければ無問題って話にも読める訳ですな。
とは言いましても、昨今の国債絶賛大発行+金融市場だけは資金大余り状態の量的緩和って状況からすると、つい1年前の10年0.4%なんてやっていた時のような債券ポート組んでいたらアウトライアー銀行に簡単に抵触しそうな感じもする訳でして、この辺はちゃんと財務諸表を見ないといけませんな。どっちにしろ預貸率が低く、債券投資部門での利息収入が求められるような銀行はある程度気にしておかなければいけないという話でしょう。
しかもこの金利リスクについては監督上の検証ってことで、どの位のリスクを取るとどうなるって話が明確ではなさそう(もしかしたら明確なのかもしれませんが)なのがまた怪しさ満点ですな。「過大な金利リスクを取っている」とか難癖つけるネタになりそうで。
オペレーショナルリスクに関しては相変わらず良く判らないので、本日は簡単にこんな所で。というか結局規制案を精読する必要に迫られているという説もありますな。
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2004/08/24
お題「理想は結構なのですが」
相場も今一歩パンチに欠けますし、金融政策に絡む動きは思いっきり夏休みモードのまんまですので、本日もまたあたくしの勝手なごたくを並べるのでありました。
○蛸壺的専門家は宜しくない訳で
世に言われる「専門家」っつーのは発想がつい固定化しがちだとはよく言われることであります。実際に古今東西の戦記なんぞを見ますと、戦争における戦術の進歩には「素人の新しい戦術によって専門家の遵守していた戦術が敗退する」という事が結構あったりする訳でございます。
まぁ専門家って言っても、多くの専門家の内実はその分野に関する知識が門外漢よりもちょっと豊富なだけだったりする訳でして、知識が豊富なだけに発想が蛸壺に入ってしまい、実は単にマニュアルを適当に組み合わせて運用しているだけという状況になり勝ちなのでしょう。本来はその分野に関する豊富な知識を活用して新たな工夫ってのをするのが専門家の専門家たる所以なのでしょうが。
と、まぁそんな訳で発想が硬直化した専門家が、素人の創意工夫に敗退するという事態が発生する訳ですので、専門家を自称するものは、従来の発想で物事を進めるだけではなく、常に創意工夫を心掛けましょうって事になるのですが、正直書きながら自分の耳に痛いわけであります(汗)。
○日本振興銀行の理想と現実
昨日のドラめもんでも申し上げた日本振興銀行。昨日ご紹介した「シンクタンクのメッ」さんのWebでのコラムと話はかぶるのですが、従来の銀行が陥っている「専門家の蛸壺」を打破しようという当初の動きは「何じゃそのパフォーマンスは」と思いながらも、実際に機能したらそれはそれで面白い壮挙だとあたくしも思っていた訳ですよ。
しかし、蓋を開けてみれば当初は社長になって預金の個人保証をする(現実問題として意味があるのかは別としてもやる気だけは評価したいですな)という話であった落合さんはいつの間にやら取締役でも執行役員でもなくなってしまいました。まぁ現実の壁ってのにぶつかるのは良くある話ですから、それはそれで仕方が無い面はあるのでしょうが、その後の姿勢がいただけない訳でございます。
日本振興銀行設立に際して「金融維新」などというご立派な本をおだしになって色々と主張というか言い訳をしていた人が最近新たなマーケッティングの場として絶賛活用中のBlog(直接リンクにならないように最初の「h」を省略してますのでよろしく)にこんなのがありまして、下の方(=古い記事)をご覧になるとまぁ色々と楽しい事が書いてあります。
ttp://kimuratakeshi.cocolog-nifty.com/blog/07_/index.html
一番下にある2月19日付けの「落合氏が代表から降りたことの経緯説明」もやたらガバナンスがどうのこうのとか書いているのですが、結局「何でそうなったのか」という説明はありませんし、代表者個人による預金への保証に関しても『おそらく決定的な要因(補足:落合さんが代表から降りて取締役や執行役員にもならない事の要因)となったものとしては、「預金すべてに対して連帯して無制限の個人保証を行う」ということのプレッシャーにかなり悩まされていたということがあったに違いない。』などとしれっと書いている訳ですな。
現実の壁に当るのは仕方無いとは申しましても、銀行が開業する前というか預金を集める前からそれは無いでしょ〜よって突っ込みを入れたくなる訳ですが、もっと香しいものを感じたのは、そのちょいと上にあります4月21日付けの振興銀行開業にあたっての記事でして、「預金に対して個人保証を行なう」と大見得を切っていた筈の銀行の非常勤取締役様がこんな事を言い出しているのですよ先生。
『本日、東京青年会議所の有志が呼び掛けた日本振興銀行が開業いたします。預金は100万円以上1000万円以下なんですが、開業キャンペーン中は、5年定期1.00%、3年定期0.80%、1年定期0.65%となっています。本店一店主義を貫きローコストで運営する分、高めの預金金利でお客さまにお返しをするという経営方針です。』
ここまではまぁよろしい。この次の言葉で腰が抜けるのですな。
『いずれにしても1000万円までですから、元本と利息がすべて預金保険でカバーされるというところがミソです。』
・・・・・・(-_-メ)。
もう何をか言わんやという訳でして、「融資に対して個人保証を求めるのに預金に対しては何もしていない銀行の姿勢はケシカランので姿勢を示す為に預金に連帯保証する」というような話をしていたのは貴様のその口か、貴様のその著書かと小一時間問い詰めたくなる訳であります。
昨日ご紹介した「融資先へのアドバイス(アドバイスって言ったって、客として居酒屋に行った時に出された焼きおにぎりの出し方を直しましょうって物でして、それを「融資先へのアドバイス」と言うのかと思う訳なのですが)をする振興銀行の行員の図」ってテレビ番組でのパフォーマンス姿も「何か必死ですな」という感じです。
融資に対する保証人の徴求に関しても、「シンクタンクのメッ」氏が指摘しているように、法人なら代表者の個人保証、個人なら別の保証人を立てる必要があるようでして、著書「金融維新」なんかで「代表者の個人保証は再起の機会を奪うものだ」などと言っていたのはどこへやら。
○現実の壁に当るのは仕方ないのですが
てな訳で、この銀行さまに置かれましては、打ち出した「経営理念」が「現実の壁」にぶち当たる速度があまりにも速すぎる訳でして、理念を打ち出すのは壮としたいのですが、幾ら何でもあまりといえばあまりですし、その後理想と現実のギャップに関して素直に反省してくれれば良いのですが、何か尤もらしい理屈をこねたり、報道パフォーマンスをやったりして「自分たちの思ったとおりに物事が進んでいる」と認識しだすのが恐ろしい訳です。
一般企業や一般個人ならばまぁ破綻でも破産でも勝手にすればって感じなのですが、コトが銀行であれば預金保険機構を通じて国民にあまねく被害が回ってきますし、行政がそんな事を始めると手の付け様の無い暴れ馬状態になる訳でして、暴れ馬に蹴られて怪我人続出となる訳ですな。しまいには現実と脳内現実のギャップがでかくなりすぎてもう無茶苦茶になる訳でして、そんな出来事は大東亜戦争中に山のように事例がある訳です。最後は国家が焦土になる訳ですが。
戦争の常識を変える革命的新戦術は「現実の壁」から蛸壺専門家ではない人間の創意工夫によって出てきたのであって、脳内現実からでてくるのでは無いのですが、どうも昨今は脳内現実から出てきた「美しい理念」が好まれるようでして、例えば上記した「法人融資における代表者の個人保証」問題に関しても、現実は日本振興銀行にあるようなモノだというのに、民主党のアフォな代議士辺りが「融資に対する保証人制度は廃止すべきだ」などと言い出す始末でありまして、誠に困ったものであります。
○金融検査マニュアルへの疑問(ここは未完なのでまた後日)
で、話の流れに無理がある+時間の都合上ちょっと書けなくなってしまいましたが、木村氏も策定に参画しているらしい金融庁の「金融検査マニュアル」に関しましても、書いてあることはそれほどおかしくないのですが、どうも作成している皆様の認識している脳内現実が現実と違うのではないかと思う節があるんですな。
捨印慣行の不適切な運用がどうのこうのという件がありまして、捨印を無闇に押させるのは確かに如何なものかとおもうのですが、例によって木村氏のBlogを拝読致しますと、「捨印を押す事によって契約内容の訂正が出来るので(ここまでは正しい)極端に言えば借入金額を一桁多くする事だって可能だ」などという楽しい話をしている訳でして、その楽しい話のどこがどうおかしいかというのは皆様でお考え頂くと致しまして(書く時間が無いだけです、ゴメンナサイ)、現状認識がそんな状態で政策の立案をされても正直言って現場に無用かつ無駄な負担が掛かるだけなのではないかと思う訳ですよ。
・・・・・・って旧軍の参謀本部と前線の関係と同じじゃん。とほほのほ。
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2004/08/23
お題「言行不一致(-_-メ)」
まぁ相場と関係ない話ですけどね・・・・・
○公共事業は減ったそうですが
オリンピックのドサクサに紛れて国土交通省から実に妙な施策が提案されております。何でも「交通渋滞解消の促進に資する為に高速道路の一部区間の値下げを行なう。財源は特定道路財源ですな。あ、そうそう値下げの対象はETC利用者だけですよ。」とかいうお話。さすがにこの施策は何とも香ばしいのでオリンピック報道の間にきっちり取り上げられております。
料金収受の効率化によって渋滞緩和と経費削減に役立てるってぇのがETC導入の本旨だったと思うのですが、いつの間にやら「ETC普及の為に国費導入」という本末転倒な議論が絶賛大進行中。ETC導入で経費削減が進んだのでその分が利用者に還元されるって話ならまぁ判らん話でもないですが、それはあなた話が思いっきり逆なのではないかと。
で、その背景にはETCが当初思ったほど普及していないってのがあるのでしょうと容易に想像できるのですが、ETCの普及が遅々として進まない理由をもうちょっと真剣に考えて障害となっている部分をどうするのかって事ではなく、極めて安直に「税金を突っ込んで利用料金の引き下げ」という作戦にでてくる国土交通省の姿勢には頭が下がる思いであります。
結局ですな、公共事業の削減とか言って土木工事を減らしているのかもしれませんけど、こういった形で別の分野に公共事業が突っ込まれている訳でして、特に最近(というかここ数年)はアイテー事業の巨大受注先は政府部門というお話が続いているらしいのですな。特にETCのような制度が絡んだ問題になりますと、色々と以下自主規制なお話があったりするようですな。これじゃあ結果土木工事がアイテー事業に置き換わっただけの事であって、お手盛り的ばら撒き構造の本質は何も変わっていないのではないかと思ってしまう訳です。
○裁量行政を超越しているのではないかと
で、まぁ金融行政に話は飛ぶ訳ですが、何時の間にかスルーされてしまっておりますが、りそな銀行に関する税金突っ込み攻撃は未だにあたくし釈然としておりません。突っ込んだ後に厳格な貸出債権引当を行なったら、突っ込んだ税金額と同じ位新たに要引当債権が発生したってぇのは何ぼ何でも人を馬鹿にした話であります。
で、全部が全部りそな方式になるというのであれば、行政として話の筋は通っているのですが、りそな銀行は無事に巨大なる国費(しかもこれが特別会計から突っ込んでいるので、一般会計に出てこない為に分りやすく表沙汰になる訳ではないのがミソ)をぶち込んだのに、より突っ込むべき国費が少ないと思われる足利銀行は問答無用で国有化コース。
そういうことをされますと、大阪選出の国会議員と言えばあんな人がいたなぁとか、そんな政党の強力な地盤だったなぁなどと思い、栃木選出の国会議員といえば内閣の政策に批判的かつ政策通として評価が高い人がいたようですなぁなどと、これがまた自主規制な想像を逞しくしたくなる訳でございます。
最近大手金融機関に入るどこぞの官庁の検査とやらに関しましても、別に直接当事者としてやっている訳ではなく知人からの又聞きベースなので思いっきり不正確なお話である事をお断りしつつ申し上げますと、どう考えても嫌がらせとしか思えないような動きも目に付くそうですな。勿論意図的な検査忌避というのも宜しくはありませんが、貸出債権の査定方法なんて特にDCFなんぞを使ってやるのであれば、将来のCFをどう見積もるかである程度まではなんとでも操作可能なお話なのですから、やはり如何なものかと思う訳ですな。
あるときは国費大投入で組織は残し、あるときは国有化、そして別の時には生殺し状態にして締め上げと、一体全体どういう基準でやっているのかという根拠に関して質問主意書を提出して明確なものを説明されたいって感じですな。
○日本振興銀行のその後
丁度今朝のモーサテで日本振興銀行のヨイショ報道が行なわれております。で、このヨイショ報道で初めて知ったのですが、毎週月曜に出てきて愚にもつかないコメントしかしない某経済アナリスト(何じゃその肩書きは)はこの銀行のアドバイザリーボードに加わっているようで、対メディア対策だけはせっせとやっていますなぁという印象を益々深くするものであります。
そのヨイショ報道によりますと、フランチャイズローンを実行するにあたって融資担当者が当該企業の店舗(小奇麗な居酒屋チェーンのようでしたが)に言って色々なアドバイスをする図などという物がありましたが、従業員の頭数とカバーする営業エリアから逆算すれば、そんな細かい対応を全ての融資先に出来る訳無いと思うわけでして、もう宣伝用のお話なのが見え見えも良い所。
おまけに融資の証書を書いている図に見せようとしている映像で、3千万円という数字をまともに3にゼロ7つの算用数字を書いておりましたが、後日の変造が容易になる算用数字で金銭消費貸借契約書(借金の証文ね)の借入金額を書かないのは金融法務の常識中の常識(読者の皆様も住宅ローンで証書に漢数字で金額書きませんでしたか?)であります。余談ですが、手形や小切手に金額を入れる時には、専用の機械(「チェックライター」でしたっけ?)を使って思いっきり刻印状態にします。手書きの場合は漢数字を使用しないと不備手形扱いです。従いまして、当該映像は「融資が順調に伸びている事を強調する為にただの融資申込みの光景を融資実行の光景に見せようとするミスリード促進映像」なのか「金融法務の常識も欠如した状態での運営をしている映像」なのかのどちらかと言うことですな。如何な物かと。
などとあたくし悪態をつくのですが、もっと冷静に分析している人が世の中にはいる訳でして、個人サイトなんで直接リンクするのは自粛しますが、普段から中小企業金融に関して現場の目から明解に政策提言や政策批判をしているお方が「ミディアムリスク専業銀行はやはり幻影か」というお題で日本振興銀行の現状が当初多いに宣伝していた事から変質してきている点を指摘しております(別にこのお題だけではなく、色々と中小企業融資への施策に対して重要な指摘がありますので、ご一読をお勧めしたいページです)。「シンクタンクのメッ」というお題で検索をかけるとヒットすると思いますし、ヒットしない場合はあたくしに個別にお問合せを。
○まとめにならないまとめ
結局何ですな、近年の風潮として「言ってる事とやってる事がまるで一致していない」というのがある訳でして、大臣に就任した時に「アイテーで450万人(だか何人だか忘れましたが)の新規雇用創出」などという不思議な事を言い出した人もいましたが、この先生もその後何か施策をやった気配はなし。待てよ、土木公共事業がアイテー公共事業になっているのであながち嘘ではないな(汗)。一般会計を削減する側から特別会計は大膨張(外為にしろ預金保険にしろ)とか金融行政の透明化などを標榜して導入した筈の金融検査マニュアルは上記のように運用面で恣意的なのではないかと疑問を呈したくなるような状況があったりする訳ですな。
で、言っている事とやっている事が整合性が取れていないという状況に関してはやや後ろめたい意識でもあるのか、上記の某銀行の如くに宣伝だけは怠りないのがまた困り物としか言い様がありません。で、そういう状況を世の片隅から眺めていると誠に遺憾に思う訳でして、相場とまるっきり関係のないこのような愚痴的な駄文を月曜の朝から書き散らす訳でありました。お付き合いいただきまして恐縮です。
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2004/06/30
○BISの新規制案が出ていますが
先日(26日)のG10中央銀行総裁会合で新BIS規制案が承認されました。バーゼルUとか言いまして、かなり以前に「ならず者(outlier)規制」の実施により変動利付国債のニーズが高まるとかいうお話をご紹介したと思いますが、まぁ色々と金融に影響を与えるお話なのでこれは勉強しておく必要があるかな〜と思っているわけです。
日銀のWebにバーゼル委員会のプレスリリース(だったと思う)の仮訳がアップされておりまして、とりあえず色々と書いてあるのですが、信用リスクがどうのこうのというお話で激しく素朴な疑問が少々あったりするあたくし(^^)。
銀行の自己資本規制に信用リスクを勘案して「より正確に反映」っていうのが今回のポイントなのですが、日銀が簡単にご説明している「新BIS規制案について」っていう簡単なペーパーによりますと、分母(=自己資本規制上のリスクアセット)の計算に対してリスクをより正確に反映、と銘打っていきなり書いてあるのがこんなこと。
『中小企業向け・個人向け貸出については、小口分散によるリスク軽減効果を考慮して、所要自己資本額を軽減。』
ご丁寧にも「中小企業向け・個人向け」って所と「軽減」って所は太字で強調線まで引いているという念の入れようです(^^)。
この「中小企業向け・個人向け貸出の所要自己資本額を軽減」というのが新BIS規制の「リスクをより正確に反映」というのと思いっきり矛盾しているのではないかと思う訳ですな。普通に考えると「信用リスクをより正確に反映」させたら、当然ながら信用リスクが比較的に高い貸出金である中小企業向けの貸出金の所要自己資本額は増える筈。
だいたい、長々と書いてあるバーゼル委員会のプレスリリースの「編集者のための解説」(仮訳)って所の5ページ目に、
『第一に、バーゼルUの枠組みは、信用リスクがより高いと考えられる債務者についてはより高い水準の所要自己資本額を課すという手法を全般的に適用することにより、信用リスクに対する自己資本の枠組みの感応度を高める。』
って書いているのですが。
これは日本独自の判断なのかバーゼル委員会が大真面目にそのような指針をだしているのかは、激しく量のあるドキュメントを読んでみる必要があるのですが、どうにもこうにも理解に苦しむところであります。罠なのでは??という気も。
小口分散されているからリスク軽減効果があるという問題と、個別貸出先の信用リスクの問題は全然別の話だと思う訳(小口分散効果を云々するなら与信先の企業規模で縛るのではなくて、一与信先あたりの与信額で切る話でしょ)でですし、大体からしてその「中小企業貸出」とやらの貸出先がきちんと色々な業種や地域に正規分布されている訳も無かろうかと思うのですが、どうもこの理屈がサッパリ判らないので勉強してみます。ただし時間と気力があるときになのでいつになる事やら・・・・・・。
どうも変な「政策的意図」があるような気がして仕方無い訳でして、またいずれお得意の梯子外し(繰延税金資産を認めるから償却、しかも何故か有税償却を加速しろという甘言を真に受けて後から「おまえら全員資本不足」という恐怖の梯子外しを食らったのは記憶に新しいところですな)を食らうのではないかと思う訳です。邦銀のために誠に憂慮に耐えないわけです。杞憂かもしれんが。
で、もう一つ気になった「信用リスクをより正確に反映」という論理の罠なんですが、一国の経済が悪化傾向になると当然ながら不良債権の発生が増えるわけですが、そうなった場合にはこの「より信用リスクを反映」という理屈を適用すると、貸出は償却するわ信用リスクが増えるから生きている貸出への所要自己資本は増えるわという碌でもない事になるのではないかと、激しくシロート考えなのですが思ってしまう訳です。
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「住宅ローンに関する雑談」(2004/05/26)
文体はともかくとして書いてあることが糞真面目かつ肩の凝る話題が多いので、とりあえず20年国債の入札も終わったので本日は肩の力を抜いて与太話。肩の凝る話題のし過ぎであたくしの肩が滅茶苦茶に凝ってしまって久々に行ったマッサージで呆然とされてしまったのはナイショです(^^)。
○ボーナスを否定しているのに・・・・??
銀行決算が横並びよろしくうじゃうじゃと発表になっておりました。で、後付けで見れば結局債務超過なのに公的資金大投入という大技が炸裂したりそなHDなんぞも決算発表してお約束通りの大赤字。
まぁ大赤字なのは兎も角として、只でなくさえ減っている夏と冬のボーナスを出すのを止めて業績連動の報酬とやらを出すそうで、労働組合に呈示しているそうな。ま、銀行の弁解すると石が飛んできそうですが、もともと銀行って年収に対するボーナスの割合がでかく(基本給を高くすると世の中から批判されるので、ということやら厚生年金などの負担分を軽減するためとか色々と理由はあるらしいですが、まぁ大昔からずーっと伝統的にそうなっていたのです。大手行ほど特に)て、ボーナス減らされるのは実質基本給カットなんで、まぁ行員のみなさま大変ですな〜なんて話はさておきまして。
何せ定例のボーナス支給という被雇用者が半年に一回やる気を出す(雀の涙しか出なくて却ってマインドを低下させる場合もありますが^^)イベントを否定するわけですから、従来の一種ぬるま湯的な労働環境を打破して実力本位、実績本位にして行こうという意気や良し。まぁ頑張って頂きたいのですが、それにしては如何な物かと思うのはこの銀行、相変わらず住宅ローンの返済方法に「ボーナス併用払い」というのを当然のように認めている訳でありますな(-_-メ)。
てめぇの従業員には「ボーナスは業績連動(しかも今回の夏の分は一月分の給与にまるで届かないらしいです)」としておきながら顧客への住宅ローンは従来の安定的雇用環境を前提にした支払方法を設定しているというこの素晴らしい自己矛盾。ボーナス併用払いを選択するのは顧客の勝手あるいは自由意志なのかもしれませんが、自分の所の従業員が組んだら一発で資金ショートしかねない返済方式を従来どおりに通常商品にしておくのは如何なものでございましょうか??顧客への親切を考えたらボーナス併用払いはやらない方が良いのではと思うわけで(^^)。
まぁそこまでやらんでも良いと思いますが、ボーナス併用払いの負担が大きい住宅ローン債務者に対して条件変更をより柔軟に行ってあげるとかすれば良いのにな〜などと下らん事を考えてしまいました。
○既存顧客を大切にしましょう
とまぁそんな下らん話を書くために念の為埼玉りそな銀行のWebなんぞをみていたら「住宅ローン満腹感謝キャンペーン」などというのをやっている事を発見。さては住宅ローンの融資目標が達成できて満腹にでもなったのかと感心して内容をチェックしたら、単に住宅ローンを新規にやった人から抽選で3万円分のお食事券(最初に変換したら汚職事件になってしまった^^)があたるというキャンペーンでした。やらないよりはマシかも知れんがどうもしょうもない企画ですにゃ。
銀行っていうのはどうも相変わらず昔ながらの「他行シェア奪取」の意識が抜けないようでして、例えば住宅ローンであれば「他行(住宅金融公庫も含む)借り換え」だの「新規」だのを既存顧客と比較してやたらと優遇する傾向が抜けないどころか益々拍車が掛かっているようです。まぁ新規客は大事ですから優遇するなとは言いませんが、継続的にきっちりと元利払を行っている既存顧客のほうが、もしかしたら不良貸し出しに化けるかもしれなかったり、とっとと条件の良い他行に乗換えかねない新規顧客より少なくとも現時点まででは収益に貢献しているという事実をつい等閑視してしまうのは如何な物かと思う訳であります。何で既存顧客に対してもっと感謝しないんでしょうかね〜。
で、引き続き話のネタで埼玉りそなのWebをつらつら眺めていますと、相変わらず借り換えキャンペーンを絶賛推進中。「りそな借り換えローン」の宣伝文句はと申しますと、「現在ご返済中の金利の高いローンから、今の金利のローンへの借換を、スムーズに実現するための住宅ローンです。」「もしご自宅の担保評価額がローン残高より値下がりしてしまっていても大丈夫なように、担保評価額の最高300%まで借換を可能にしました。」という大変結構な商品。もちろん借り入れ後3年以上正常に返済しているとか色々と条件はつくのですが、担保不足でもオッケーなんて夢のような条件変更ができるのであれば、自行のローン客で3年以上前に高い固定金利で借りた顧客の条件変更なんか大楽勝でできるんじゃないかと思ってしまうわけですが、ど〜せこの銀行も「他行からのお借入の借換に限定」なんでしょう。そうでなかったら中々の勇者なんですけど。
たまたま埼玉りそなが槍玉に挙がりましたが、同世代の人々と呑みながら住宅ローン話になると、もと金貸しということで良く借換話で色々とお話を聞く破目になり、言われるのが「なんであの借換ってのは自分の所のは受けないの?」と至極ご尤もな質問。あたくしはいつも「業界全体で足の引っ張り合いをするのが好きなんでしょ」としか答えませんが(-_-メ)。
ところで、全然話は違うんですが、ここのWebPageってページ幅を指定しているせいなのか紙に打ち出すと右側が切れてしまいます。時々こういうページに出くわすのですが、正直言って使いにくいったらありゃしませんな。
○しかし相変わらずモノをくれてやれば良いと思ってるでしょ
先日は朝のどこぞの公共放送で「銀行の新たなサービス」と題して、どこぞの地方銀行さまがどこぞの航空会社と組んで住宅ローンの借り入れにマイレージをつけて「住宅ローンを借りて何とマイルがたまる!」という企画を紹介してました。他にはいつもどおりに地元の野球やらサッカーチームの応援定期預金なんてのもありましたが。
応援定期預金とか、昔ながらの定期積金で温泉旅行みたいなのは個人的には微笑ましい企画であっていつまでも続いて欲しいと思うのですが、住宅ローンにマイレージって何かサービスの方向が妙な気がするので「???」という感じ。どこがどう??なのかが上手く言えないんですけどね。
そういう意味ではICカードを利用した銀行と事業会社の新たな決済サービスの提供などと壮大なプランをぶち上げているどこぞの都知事の心意気は壮としたいところであります。あまりにも企画が壮大で、実行部隊が貧弱そうなのでど〜せろくな結果にならずに俺の払った都民税返せよなって事になるでしょうが。
何か新たなサービスって言っても結局「モノをくれてやる」なのか「銀行に手数料やらその他の収益が入ってくる商品を販売する」って範囲から脱出できていない銀行の明日はどっちだ!って感を深くする今日この頃なのでありました。
○ここでも首尾一貫していないお方が(-_-メ)
おまけの話になりますが・・・・
日本振興銀行がとりあえず110億円以上の預金を集めてまずは順調なスタートとなっておりまして、社外取締役の木村某鼻高々。誠に微笑ましいのですが、そもそもこの銀行、当初は「預金に対して代表取締役が個人保証をする」などと激しく格好の良いお話をしておりました。まぁ銀行の預金なんて代取が個人保証して払えるレベルの問題ではないので、実態的には意味が無い気持ちの問題ですが、まぁそれでも偉そうに「お客様の預金を大切に運用する姿勢を示す」などとぶち上げていました。
ところが、肝心の代表取締役に色々とややこしい問題が発生して代取はDKB出身の小穴さんになって、肝心の個人保証もどこへやら。で、この銀行「預金の受け入れは一人1000万円を上限にする」などと言い出しまして預金を集める始末。木村某さまは本人が最近熱心にご更新中のBlog(ココログでやってます)では「預金を一人1000万円にすることによって預金が全額保護されるのがポイント」だなどと話しているようでございます。
当初の「預金を個人保証する」という気概がいつの間にやら「預金保険機構に思いっきり依存した預金集め」に転換し、それを臆面もなく公言するところなんぞは最早あたしゃその面の皮の厚さに尊敬の念まで覚えてしまう所であります。この大先生のBlogを見てて思うのは「一つ一つの言ってることは正論(理論的に怪しいのも多々ありますが、まぁ根本的に間違った話はしてない)なのに、全体を通してみると言っている事がコロコロ変わる」という事でしょうか。そういえばどこぞの大臣もそんな感じですけどね。
まぁ日計りディーラーやインチキコンサルが言ってることが首尾一貫してなくても実害は無い(と言うのはやや嘘)んでしょうが、政策に携わるあるいは政策に影響するような方が「毎回やっている事は正論」でも「前後左右でやっている事が矛盾している」ような事をやっているのも如何なものかと思う訳です。それこそ汪兆銘氏がかつて日本の問題として指摘した「上下不貫徹、前後不接連、左右不連携」は70年経っても何も変わらんって事なんでしょうな。
うむむ、肩の凝らない話の積りが、結局また肩の凝る話をしてしまっているようですな。最早持病状態の肩凝りはあたくしのこの性格に依存するのでしょう。因業な話でありまする、とほほのほ。
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「法令違反のススメ?」(2004/04/26)
日曜日は朝からぷらぷらとお出かけして、ある種の広告欄を見る為に140円も払って日経新聞を買って喫茶店なんぞでマターリと読んでおったのですが、その中で腰の砕ける記事があったのですな。
15面の投資のお勧め的な煽り記事に「新規公開投資のイロハ」というのがございまして(しかし日経で記事になると・・・・の法則から逝くとそろそろIPO何でも上昇相場も・・・・・ですかね)、その中で「どういう方法でIPO株を確実に手に入れやすくするか」という話をしております。
で、その方法ってのが中見出しにもデカデカと書いてありまして、「ブックビルディングは複数の証券会社に申し込む」って奴です。
えー、さすがに手元に日本証券業協会公正慣習規則が無いので正確な文章までは出せないのですが、ブックビルディングにおいて「割当を受けるために行われる過大な需要申告」というのは公正慣習規則の多分1号のどこかに抵触(4/26補足:公正慣習規則1号の細則6条の2に抵触です)する行為でありますな。証券業協会の自主規制と言う事ですから直接的に投資家が法令違反になるというお話ではございませんが、証券会社は顧客が複数の証券会社にブックビルディングの申込をしていると知りながらブックビルディングの申込を受け付けると公慣規に抵触(補足:水増し需要の受け付けと言うことになる)でございます。つーか証券会社は「ブックビルディングは一人一件(株数は兎も角)しか申込できませんので宜しく」って(形式的に言っているだけでしょうが)ヘッジ入れてませんかね〜。
まぁ実態が色々とあるというか、そもそも今のブックビルディングの需要調査のやり方が現実的な需要の反映をするのに適していないのではないかというお話はあるのは事実(というかブックじゃなくて入札に戻せよなって感じなんですけど)ではありますが、一応ある規則は規則なのですから、堂々と規則違反をご推奨する記事を掲載するとは注意不足もいいところでしょう。
猛省されたし>日経新聞
#なんて言ってたら規則があたくしの知らぬ間に変わっていたりして。(補足:そんな事はありませんでした)
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「UFJショックリターンズ」(2004/04/20)
昨日のドラめもんでちょっとご紹介したUFJ銀行の記事は意外に知られてなかった(まぁ東京新聞=中日新聞なんで)ようですが、さすがに朝から見事な売り気配。寄りから売り気配なんであたくしが紹介したからどうなるというものでもありませんでしたがね。
しかしUFJ銀行VS金融庁ってのは前も同じネタでUFJHD株が下落しておりましたが、一粒で2度おいしい(全然おいしくないが)と言った所ですな。いずれ金融庁方面からのリーク記事というよりは、反応を見るためにマスコミを使って観測気球を上げるの図という所なのでしょうが、「足利銀行以外に問題のある銀行はない」というような発言で地銀株が上昇した直後というタイミングの選定方法に呆れる訳ですな。
おそらくリークした方は「問題のある金融機関はいない」と先に安心感を広めておいてから悪い材料を流してみたって所なんでしょうけれども、まぁ市場を判っていない事甚だしいわけですな。地銀株暴騰祭りが先行して発生している所に爆弾テロをぶち込んでいるような物で、祭りの参加者総員大炎上となってしまいましたな。
この手のマッチポンプを何度もやられると次第に市場参加者は政策当局の言動を信用しなくなる訳でして、今の所一応発言は信用されているらしい竹中大臣の言動もまた茶番扱いになってしまうのではないかと危惧される所ではあります。
「また」というのは当然ながらどこぞの中央銀行の総裁の事を指しているのですが、英エコノミスト誌で取り上げられたかと思えば米タイム誌の「世界の100人」とかいう記事で取り上げられるといった所で、市場からは酷評を受けまくっているのに、市場から離れれば離れるほど受けの良いお方となっているのは、もはや悪い冗談としか思えない状況であります。
まぁそう言えば、竹中大臣の経済政策(というか銀行政策)ってのも散々なる締め付けをしたかと思えば一転して税金大投入とまぁ首尾一貫してません(強いて言えば「金融庁による業界支配力の強化」というのが根底に一貫してあるが、それは政策ではなくただの金融庁ファッショ)し、大臣さまご本来の御立場であらせられる「学者」世界からは見事なまでに「論外」扱いされているわけですから、似たもの同士上手くやっているって事なんでしょうかね。
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「また金融庁か!」(2004/04/19)
今朝のニュースでは話題になっていなかったのですが、土曜日の東京新聞1面には「UFJ銀行不良債権1兆円増加」という見出しで、金融庁の検査によってUFJ銀行の不良債権を新たに1兆円積み増しを要求されたという記事がありました。この場合には経営責任というお話になるそうですな。
また金融庁か!って感じなのですが、先日担当大臣が「問題のある銀行は無い」などと言って地銀株あたりが暴騰祭りになっている最中のお話で、「なんのこっちゃ」という感を強くするものであります。相変わらずトップの言っている事と現場でやっている事が支離滅裂と申しますか何とも??な役所であります。
ま、世の中平穏無事になってしまうと折角鉦や太鼓で職員を集めて人員を絶賛大拡大した組織の存在感が薄くなる訳でして(自主規制)という事になるのでしょうか。どうも日本の証券取引等監視委員会もそうなんですけれども、監督の強化をするのは良いんですが、その方向が「とりあえずしょっ引く実績を挙げる」というのに向っているのが如何なものかと思う訳ですな。上手く表現できないのですが、何か力の入れる方向が違うのではないかと。
まぁしかしこの期に及んで大手銀行をとっ捕まえて不良債権の認定をせっせと厳しくするというセンスはさっぱりわからん所です。一方で産業再生機構は(本当に実現するのかどうかは謎ですが)鬼怒川温泉にファンドを突っ込むだのというような絶賛大救済スキームを着々と進めている中で銀行への査定は相変わらず厳しくする(というか累積的に厳しくしているのではないかと思う訳だが)とい事ですから、一方で税金を突っ込んで救済しながら、もう一方では査定の厳格化をしている訳で、冷静に考えれば支離滅裂な政策運営でございます。
支離滅裂な政策運営は今に始まった事ではないのですが、特にこの金融庁というお役所に関しては何を考えているのかさっぱり理解のできない行動を取ることが多く、不思議なものを感じます。あたくしドラめもんで時々「金融検査マニュアル中小企業編」だの「リレーションシップバンキングへの疑問」だのと取り上げますが、その度に「この役所は何を考えているのでしょう」と思ってしまう訳であります。
先日横浜銀行が5月(だか4月)にも公的資金の完済をするという報道がありましたが、こんな支離滅裂な監督官庁に資本まで持たれていたら目も当てられないので、返せるものはさっさとご返済って事なんですな。
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「銀行の消費者金融への進出」(2004/04/08)
みずほ以外のメガバンクは消費者金融業者への出資やらなにやらとやっております。で、まぁその動きも世間様には高く評価されておりますが、あたくしは「ちょっと違うんじゃないかな」と思う訳であります。
収益性が高いかも知れませんが、そもそもが銀行の顧客層からかな〜り離れたハイリスクな分野でありますし、一件あたりの貸出額も激しく小口化された分野で、回収のノウハウもまた全然違う世界でもあります。「新たなノウハウの吸収ができる」だのお為ごかしな理屈が出てきますが、正直消費者金融業に看板をすげかえるのなら兎も角、一般的な預貸業務に消費者金融のノウハウを持ち込んでも仕方がないと思いますが。
まぁやっている方も多角化の一環で洒落あるいはポーズでやっているに過ぎないとは思います。本当に個人取引で儲かるのは預金額ベースで上位10%程度の部分でしょうから、真面目に各行取り組んでいるのは大金持ち様との取引です。
つーか、あたくしの預金は日本経済の発展に貢献し、社会に役立つ企業(個人事業者でもいいけど)への融資金としてご運用いただきたいわけでして、チワワを買うのに借金するような非生産的な活動のサポートに使われて欲しくはないのですけどね。
ま、国が借金してチワワ(以下自主規制^^)
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「気になったニュース」(2004/04/01)
ほんのちょっとの扱いのニュースでしたが気になったお話が一つ。
昨日の時事メインのニュースに証券取引等監視委員会の野田晃子委員の講演というのがありまして、所謂「仕組み商品」に関して歯止めが必要という見解を示したそうです。
「商品性が怪しい商品、販売員が理解していない商品が、高齢の投資家などにどんどん販売されている」「これを野放しでいいのか疑問だ。いい方法を考えなければならない」と述べたそうです。(ソースは昨日19:43に出た時事メイン提供ニュースです)
まぁ一般ピープルにとっては相変わらず証券会社との取引をするのは敷居が激しく高いのですが、最近では銀行様までもが色々な仕組み商品を売り出すわ、銀行と証券会社の共同店舗や一体店舗のような形で銀行経由で証券会社の敷居が低くなるわということで、あたくしもいい加減そういう話がでるだろうな〜とは思っておりました。
まぁ仕方無いんじゃないかと思いますが、証券会社ばかり規制しても無意味(というか逆に銀行優遇の尻抜け規制になってしまいますが)ですので、歯止めを考える際にはその辺もちゃんと考えて欲しいものであります。
その一方で一昨日は日銀総裁様が金融広報なんちゃらという所で「ペイオフ全面解禁で預金者には自己責任の意識を持って欲しい」などと相変わらず現場における実態を知ってか知らずかの脳天気なご発言をされており、大変に頭の下がる思いであります。
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