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2009/05/29
お題「総裁の講演とかその他雑感とか」
ほほう米債反発。
まずは総裁講演というか挨拶。
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0905e.pdf
金融研究所主催の国際コンファランスでの開会挨拶です。
○お題は「金融政策の実践と金融システム」
今回のコンファランスのお題は上記の通りだそうでございますが、最近になって金融政策に関する各国の論点が変化してきているというのはご案内の通り。最初の項『金融システムと金融政策の連関』の最後の方から。
『当時も、私たちは、多くの学界の知見を最大限に活用してきましたが、既存の経済理論ではうまく捉えられないような状況にもしばしば直面しました。』
『たとえば、金融面での不均衡は、良好な経済状況のもとで、信用量の急膨張、レバレッジの急拡大、資産価格の急上昇を通して、蓄積されていきました。バブル崩壊後は、市場参加者は急速に弱気化し、リスクテイク能力を低下させました。結果として、金融政策の有効性は大きく低下し、非正統的手段による金融政策対応が立て続けに採られました。』
で、その対応の多くは速水総裁時代に行われたものだったりします(時間軸のコミットメント明文化だけは福井総裁のときですが、時間軸そのものは速水総裁時代に実施されてますな)。
『金融政策の有効性は、中央銀行の信認に大きく依存します。中央銀行の信認は、中央銀行のバランスシートの健全性や中央銀行の中立性に関する国民の認識によっても影響を受けます。これらの経験は、マクロ経済学や金融論の教科書に、金融システムと金融政策の連関に関する新たな章がいくつか必要であることを示しているように思われます。』
『金融政策運営に関する考え方は、2007 年夏の国際金融市場の混乱以降、間違いなく変化してきました。特に、昨年9月のリーマン・ブラザーズの破綻以降、金融と実体経済の負の連鎖を直接経験したことで、政策議論は一段と変化しました。日本の経験は、もはや日本だけのことではないことが明らかになりました。』
○流動性の重要性
でまあ当時の日本の政策対応の話が続くのですが、そこは華麗にスルー致しましてその次の項にある『流動性の重要性』という所があたくし的に歓喜の項目なので喜んで引用(^^)。
『ここで流動性に話を移したいと思います。現在の金融危機について、その要因をただ1つに絞り込むことはできないと思いますが、私は、流動性が現在の金融危機を理解する上で最も重要な概念であると考えています。信用バブルの拡張期において、積極的なリスクテイク姿勢の背後に、流動性が無尽蔵に利用可能であるという根拠のない期待をもとにした安心感がありました。逆に、バブルの崩壊期においては、流動性枯渇への不安が経済活動の異常なまでの収縮をもたらしました。さらに、流動性の状態は、金融資産の価格評価を大きく変化させ、それによって、金融機関の自己資本の状態も影響を受けました。』
したがってリーマンをいきなりコカして市場の流動性を枯渇させた米国政策当局は猛省すべきであると思いますがそれはともかく。
『ここで、私は、「流動性」という言葉を、資金流動性と市場流動性を包括する概念として使っています。しかし、「流動性」は、決して厳密に定義できるものではありませんし、定量的に正確に測定できるものでもありません。このため、「流動性」という言葉には、いくぶん曖昧さが残ることは認めざるを得ません。しかしながら、「流動性」の状況をある程度評価することは可能です。結局のところ、流動性は、中央銀行業務が始まった時から、経済の実体面と金融面の相互依存関係を理解するうえでの中心的な概念です。中央銀行の主な役割は、これまでも、そしてこれからも、流動性の番人(guardian
of liquidity)だといえるでしょう。』
えーっとですね、この流動性の話に関して現場の頭の出来の宜しくないあたくしが感覚的に思う所を勝手に申し上げますとですな(と延々ヘッジクローズ^^)、ポジション持って動いている人的に申し上げますと、「今持ってるポジションをひっくり返す/閉じる事が簡単に出来るかどうか」というのが売買実務的(?)な流動性ってもんなのかなあと思いますです。
例えば短期資金ディーリングみたいなのだと、基本的には足元ファンディングになるので毎日日銭が入るのが普通のポジション(普通の債券ディーリングとは話が違いますので誤解の無いように)のですが、時に思いっきり逆に振らされる事があって、そこをどう凌ぐかがディーラークビになるかクビが繋がるかの分岐点だと思うのですな。で、短期市場の場合は何せ「金融政策変更」というのが年間取引日数から考えたら正規分布の外側にいる訳でして(笑)、まあ日銭入るからと言って漫然とポジション積み上げればよいってもんじゃないですし、逆行った時は全員同じように逃げようとするので、閉じられないポジションを抱えるとそのまま野戦病院送りというケースが多かろうと思われますです。
その辺のポジションとかリスク量のコントロールって、まあ有体に言っちゃえば誰でも必ず1回は何らかの形で痛い目に遭って、そこでコントロールどうするのってえのを感覚として掴むのですけれども、掴まない人は次にもっとでかいやらかしをやって退場になるの巻という話だと思います。まあ確かに今回のベアスターンズが飛んで以来の市場の荒れっぷりは特にイールドカーブの動きの無茶苦茶さが凄かったので、年寄りの感覚も及ばないスケールでもありましたがね・・・・・・
ということで、じゃあその売買実務的(??)流動性ってどうやって計測するのよと言われますと、これまた正直言って現場職人のアートの世界とか言うと大体アホウ扱いされるので申し上げたくは無いのですが(と言いつつアホを自認しているので申し上げてますけどね!)、「答:現場職人の俺様歓喜」(ガッツポーズをするやる大矢のAA略=⊂⊃=⊂⊃=)と勝手に歓喜するのであります。
『このような見地に立つと、中央銀行にとって、経済における流動性の総量を適切にコントロールすることは極めて重要です。しかし、流動性という概念は、必ずしも広義のマネーや準備預金とは一致しないことには留意が必要です。実際、近年の日本では、マネーと経済活動の間に継続的に負の相関が確認されます。経済活動が弱いときにマネーは増加し、経済活動が拡大するときにマネーは減少しています。貨幣乗数もまたかなり不安定です。』
こりゃもう左様でございまして、流動性需要の拡大が金融危機を伴う場合は、問題が悪化する/すると予想される時には予備的な流動性需要が拡大していきますし、問題が解消する/すると予想される時にはその抱え込みマネーが表に出てきますがなっていうところなので、流動性がどうしたこうしたという話をする場合は、その辺りの指標だけ見ててもいけませんがなという事ですにゃ。
○中央銀行の課題
次のパラグラフ『中央銀行にとっての課題』ですけど。
『流動性が重要であるということは、実際的には、何を意味しているのでしょうか。最近の経験をもとに、中央銀行にとっての幾つかの論点と課題に触れたいと思います。』
ということで3つの論点と1つの課題が。端折って印象するです。
『最初に、流動性供給と資本供給の間の微妙な境界について注意を促したいと思います。現在、中央銀行は、非正統的な政策手段を遂行するという喫緊の課題に直面しています。中央銀行の伝統的な役割は、流動性の供給にあります。危機においては、中央銀行は、ときにはある程度の信用リスクをとることで、積極的に流動性を供給しようとします。担保の適格基準の緩和はその一例です。』
ということで、最近に見られるように中央銀行が信用リスクの部分に突っ込んでいく行為には、流動性供給と言いつつも資本供給を行っている面があると指摘し、中央銀行が財政政策の領域に近づくという指摘をしたあと、このようにまとめています。
『そのような状況のもとでは、中央銀行は、政策運営の前提条件である信認が損なわれるリスクにも注意しなければなりません。財務の健全性の悪化や個別の資源配分への大規模な介入といった論点が意識されています。』
信認というのはバランスシートの話だけではないという事ですかね。
『主要国の中央銀行は、一方で物価と金融システムの安定に究極的な責務を負い、他方で民主主義社会における説明責任を適切に図るということのバランスをとろうとしています。普遍的に成立するような明確な答えはありませんが、中央銀行の役割が正しく理解される必要があります。』
で、2番目は最近白川総裁お得意のフレーズ「配管工」が出てまいります。
『第2に、中央銀行は、資金の流れを円滑に効率的にする「配管工」(plumber)としての役割を果たすことが期待されます。ここで重要な分野は、決済システムと中央銀行自身のオペレーション手段です。』
ということで、先日の外国債クロスボーダー担保の話が出てますが、それよりもオペレーション手段の更なる工夫が必要という話のような気がします。
3番目は各国の連携による制度構築のお話をしてますが、その中から引用するとここの部分ですな。
『特に、プロシクリカリティの問題に関しては、ルールや市場慣行に関する適切なインセンティブ機構を構築し、ミクロ・マクロ双方のレベルでインセンティブをコントロールしていくことが求められます。』
先日ご紹介したシカゴやロンドンでの講演要旨にこの辺の話がより詳しく説明されていましたね!
で、最後の課題ですけど。
『最後になりますが、流動性の重要性が十分に意識されると、金融政策はどのように運営されるべきか、という点にも注意を促したいと思います。この点では、中央銀行におけるリサーチが極めて重要になります。』
で、その中では金融面での不均衡の蓄積に注意ということで、まあ所謂BISビューに近そうな論点が出ているのでした。
『良好な金融・経済情勢のもとで低金利が長く続くと、過剰な自信が生まれ、資産価格、担保価値の急激な上昇だけでなく、所得、利益の急上昇を招きやすくなります。すると、リスク認識が甘くなるとともに、リスクテイク許容度が高まります。結果として、金融システム全体における積極的なリスクテイク行動が大きく高まる一方で、金融面での不均衡の蓄積が見過ごされ勝ちになります。このような金融面での不均衡は、経済環境が悪化し始めたときにはじめて顕在化します。』
現行の制度設計の元ではいわゆるプロシクリカリティは拡大方向になり易いと体感的には思われる次第でありまして、その辺の制度設計は難しいと思います。という話をしてるのかと思ったらどさくさに紛れてこんな話を(^^)。
『複雑な波及経路とさまざまな経済主体の行動的側面を考えると、金融政策の制度設計は極めて難しい課題です。たとえば、金融政策の対外説明において、その時間的視野は、インフレーション・ターゲティングで通常想定される標準的な時間的視野と比べて、より長くとる必要が生じます。この場合、もうひとつの重要な政策課題は、いかにして金融政策の透明性を確保するかです。』
いやまあBOEの物価見通しとか既におまいらのインフレーションターゲットはどこに逝ったんだよという数値になってますけどね!
#ということで本件はここで終了、以下雑談メモ
○出口政策と言っても違いがあるのですけどね
昨日ご紹介した決定会合議事要旨。出口がどうしたこうしたという指摘をしていた委員がいたとご紹介しましたが、当然の如くその時に債券市場は1ミリも反応せず。
何故当然かと言いますと、ここで言う出口というのは「危機対応で思い切って実施した政策の出口」であって「低金利政策の出口」では無いというのはさすがに市場の中の人は理解している訳でありまして、何かどこぞの経済クオリティーペーパー様におかれましてはまたぞろその辺を混同した記事を書いておられるようで(中身はマジメに見てない)、そうでしたらばまたルンバ新聞かというところですが。
一方で昨日もちょっと書きましたが、出口という意味で深刻にも程があるのが米国様でございまして、「信用市場の改善の為」という無理やりロジックで長期国債買うわ、しかもエライ勢いで買う上に、そのロジック自体市場からは「モーゲージ金利を下げる為」と見られる中で肝心の長期国債金利は上昇するわですから、まー次のFOMCで買入増やさないとマズイでしょと思われる次第。
ところが、FRBは売出手形みたいな手段持ってないので、物価上昇とかがおっぱじまったらどうやってマネーを吸収するのやらと思う次第ですし、そもそも長期債券アホウのように買った分の見合いで短期吸収をジャンジャン実施すると短期市場金利だけ上昇して基本的にショートファンディングになる金融機関涙目の展開になってしまう訳でして、マジメな話どうやるのよっていうのはヒジョーに気になります。
まーこの話はもっと考えてみたいと思います。
#もうちょっと雑談があったのですが、寝坊して時間が無いのでこの辺で勘弁
2009/05/28
お題「市場余談と決定会合議事要旨(4月30日)」
米国財務省証券10年物利回り絶賛急上昇でやっと株安に反応。さあバーナンキどうするよ。
○市場雑談
本当にざっくり雑談なんですけど、昨日は3か月TBの入札がございましたねえという辺りから参りますと、昨日の3か月TBは平均落札がとうとう0.19%割れたでござるの巻。ついでに言えば応札23.5兆円ちゅうのにもアッヒャーって感じでしたが、引けも0.185%と素敵な水準に。CPは決算資金ニーズの強いスポット月末だったので発行がまあ普通にあったのですけれども、こっちは3か月くらいまで「買える銘柄は何でもかんでも0.14〜0.15%」というこれまた何だかな〜というレート形成(レート形成とは最早言わないけど)の阿片窟相場。
いやもう何だかよく判りませんけど、とにかく超短い所には金がやたらあるようで、GCレートは税揚げなんで足元はちょっとだけ高め(と言っても精々0.15%なので高くは無い)なのですが、どうせイベント抜けたら下がるでしょということでタームの金利は低く、まあ超短い所では色んなスプレッドを潰しに行くという感じでございますです。
一方で長いところは「債券先物7か月ぶりの安値」なんてえのが昨日はヘッドラインで出ておりまして「ほほー」という感じ。10年カレントとか5年カレントの利回りを見ておりますと、そんなに安値更新したイメージは無いのですが、先物に関しては諸般の事情によって他年現対比勝手に割高になったり割安になったりというお茶目な展開が続く(というかつい最近まで延々と絶賛割高だったのですが)の図だったので、まー先物の修正が進んだってえことでしょうけれども。ただまあここもとは何か先物を頑張って下げようっていう人がいるのか、昨日もチャートポイントを売り崩すような動きもあったみたいで、世の中元気な人もいますなあという感じです。
ま、米国の長期金利上昇絶賛スティープニングもそうですし、何となく欧州とかも長いほうが売られるでござるの巻になっていることもあって、何となく日本でも長いところが買いにくいという雰囲気(別に売り叩くほどモノ持ってる投資家もいないと思いますが)っぽいので、これまた超短いゾーンに退避資金が入ってきそうな感じでして、増発って何でしたっけ状態になっている短期国債オソロシスという所でありまする。
しかしまあCPが低い低いとか言ってたら、色々な金余りによって今度はTBのレートが下がってきたでござるの巻とは笑ってしまうしかない素敵な相場でございますです。はい。
#状況をダラダラ書いただけでなんのオチもない
○金沢での総裁記者会見はスルーですぅ
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0905c.pdf
会見要旨を読んだのですけど、あまり新しい論点は無かったので珍しくスルー致します。一応上にURLは置いておきますね。
○展望レポートのときの決定会合議事要旨
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g090430.pdf
・企業金融環境に関連して
『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』の金融市場に関する部分から。
『わが国の金融環境について、多くの委員は、C P や社債の発行環境は改善しているものの、全体としては厳しい状態が続いているとの認識を共有した。』
『ある委員は、企業収益の低迷などを背景に、企業の資金調達を巡る不安は根強いと考えられるものの、在庫調整の進捗や原材料価格の低下などによって資金需要が減少するほか、資金供給面では、貸出が比較的高い伸びを続け、C
P の発行環境も改善していることから、今後、企業金融の逼迫度合いは、次第に緩和していく可能性があると指摘した。』
『他方、別のある委員は、既に2008 年度の業績見通しの下方修正が相次いでおり、5月の決算発表後、企業の格下げが増える可能性は否定できないと述べた。その上で、この委員を含む何人かの委員は、企業業績の悪化が、金融機関の融資姿勢の慎重化を通じて実体経済に及ぼす影響について、注意深くみていく必要があると指摘した。』
この辺に関しては銀行貸出計数とか短観とかを見ていく必要がある話ですね。後でご紹介しますが、このあたりの推移次第ではまた追加施策という話にもなるんでしょということで。
で、景気関連の話も大事な論点なのですが、引用してると終わらないので華麗にスルー。ネタが無かったら明日に続きますけど。
・国債増発に関して
『このほか、ある委員は、今後の国債増発が、債券市場にどのような影響を及ぼすのかという点についても注意を払う必要があるとの意見を述べた。』
ま、日本の前に米英の増発が影響与えちゃいましたが(^^)。日本の場合は7月から増発だから云々ということで目先は様子見モード、実際に増発入札が近くなってくると買わない言い訳に使われるってえ所じゃないかなという所です。短期国債市場が増発何のそので順調に消化されているのも結構安心っぽい気分にさせてくれていると思われますが。
ただまあ国債増発対応で長期国債買入を増やして長期金利上昇抑制というのが絵に描いた餅であるというのをバーナンキ先生の所が身を切って実演していただいておりますので、んじゃあどうするのよという話になるとそれはまたムツカシヤという所になるのかもしれません。まーFRBの身を張った長期金利炎上劇場によって最近は「長期国債を沢山買って長期金利を押し下げろ」的な話が減ってきたのであまり輪番のネタで盛り上がらなくなってきましたが、市場的には。
まー輪番ゾーニング効果でやっと日銀保有の長期国債残高増加傾向になってきました(ただ本当は償還乗換の短国買入分も含めて残高を考えないといかんと思うのですけど、一昨年の分再乗換とかしてるから償還乗換まで含めて考えたらもうちょっと違う話になるのかなあと思ってみたり)ですけれども、輪番ど〜すんのという話は実際に7月の増発、今年度の税収不足対応の増発などをこなしていく段階でまたネタになる事もあるでしょう。
・物価安定の理解に関連して
『V.「中長期的な物価安定の理解」の点検』は面白い。
『複数の委員は、わが国の消費者物価指数のバイアスは引き続き大きくないとの認識を示した。また、何人かの委員は、わが国では、過去長期間にわたり、平均して1
% 弱という低い物価上昇率を経験してきたため、物価が安定していると家計や企業が考える物価上昇率は海外の主要国よりも低く、こうした水準を前提に、経済活動にかかる意思決定が行なわれている可能性があることは変わっていないとの見方を示した。』
だから現状追認を前提に政策組むのが良いのかというとそれはまた別問題のような気もするんですが。
『ある委員は、過去1 年のサーベイ調査によると、消費者物価指数の上昇率が1
〜 2 % 程度の時期に、殆どの人が「物価は上昇した」と回答し、かつ、その多くが物価の上昇を「困ったことだ」と答えていることを指摘し、国民の物価観は引き続き低位にあると述べた。』
逆に考えると、その辺の物価観をほんのちょっと上昇させるだけでも効果抜群なのかも知れないですな。いやまあ正直どっちが良いのかとか言われるとよく判らんのでありますけど。
で、その後に「物価上昇率の糊代論」で意見が分かれたという興味ある下りが。
『また、何人かの委員は、潜在成長率が低下傾向にあることや、金融環境の厳しさなどを勘案すれば、物価下落と景気悪化の悪循環に備えた「のりしろ」が必要であると述べた。』
『このほか、何人かの委員は、最近の経済の大きな変動を踏まえると、「のりしろ」がどれほどの意義を持つのかについて留意する必要があるのではないかとの意見を述べた。』
・・・・・ここの所ってさらっと流れてますけど、結構議論になったんじゃないかと勝手に妄想したいのですが、出て来た数字はあまり「のりしろ」議論での差が出たような数値(下限数値の違い)になってないのが残念(^^)。
で、そこの所は割愛して、この論点。
『この間、何人かの委員は、今回の展望レポートの見通し期間において消費者物価のマイナスが続くことを「中長期的な物価安定の理解」との関係でどう整理するか、という点について意見を述べた。』
ええまあ身も蓋も無い言い方をすればどう理屈の帳尻をつけるかって話になるのでしょうけれども、まあ最初に出てくる意見が実体面からしたらそうでしょという事なのでしょうか。
『ある委員は、経済に対する今回のショックは非常に大きく、当面、現実の物価上昇率が下方に乖離することは止むを得ないとした上で、重要なことは、やや長い目でみて、物価安定のもとでの持続的成長経路に向かうことが展望できているかどうかであると述べた。その上で、この委員は、時間軸を長くとれば、両者に不整合はないとの認識を示した。』
ただまあこうなってタイムスケールを長くしていくと、物価安定の理解を示して数値を出す事と、「総合的判断」で突き進むのとにどういう違いがあるのかという議論にもなってくるのではないかと存じますがどうなんでしょ。
『また、別の複数の委員は、こうした状況は、インフレーション・ターゲットを採用している国を含め、欧米主要国でも同様であると付け加えた。』
まあそうなんですけど(^^)。
『更にある委員は、金融政策の効果が波及するには、通常長い期間を要することから、中央銀行は、十分長い先行きの経済動向を予測しながら金融政策を運営する必要があると述べ、その上で、現在のように経済の変動が大きい時期だからこそ、「物価安定の理解」における「中長期的」の意味が、従来にも増して重要になっていると指摘した。』
何と言う蒟蒻問答(^^)、いやまあ言いたいことの趣旨は何となく伝わりますが、説明は難しそうですなあ(棒読み)。
・追加策or出口政策?
『W.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』から
『先行きの政策運営について、何人かの委員は、今後、市場環境や企業金融環境が想定以上に厳しさを増すなどした場合には、状況の変化に柔軟に対応し、必要に応じて、追加的な措置を検討していくことが適当であるとの意見を述べた。』
こりゃまあそうですねって話ですが、この時点では米銀ストレステストとかの前でもありますから、結構先行き不安モードであったのはございますわなという感じですか。その一方でこの論点はキタコレという感じ。
『この間、ある委員は、先行き、中心的な見通しに沿って、わが国経済が回復に向かうこととなれば、現在講じている臨時・異例の措置を、どのような方法で解除していくかについて、検討する必要が生じ得ると述べた。』
まーこれはどうやっていくのか難しいところだと思います。特に企業特オペ。社債とCPの買切は市場レート低下すると応札減るようになってますけど、企業特オペの金利はそもそもが大サービスレートなので依存症になり易く(というかなっているが)、出口をどうするのか難しかろうとは思います。ま、米国の各種政策の出口の難しさから比較したら屁のようなもんかもしれませんけどね!
・・・・ところでこれ誰が指摘したんでしょ。うーむ。
2009/05/27
お題「総裁講演/金融経済月報」
米国財務省証券10年物3.5%越えキタキタキタ!
大型連休前に改善されたかと思ったCP市場の阿片窟ぶりに益々拍車が掛かっている話もしないとイカンのですけどね。
○金沢での総裁講演:企業金融の動向に注意
まずは金沢での総裁講演から少々。
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0905d.pdf
景気に関する見方についても色々と話をしているのですが、まあ基本的に先般の定例記者会見や金融経済月報でフォローできる話ですので、その辺を華麗にスルー致します。で、金融環境に関連して。
『昨年秋以降の米欧の金融危機の影響は、わが国の金融市場にも波及しました。すなわち、短期金融市場では、銀行間取引金利と短期国債金利とのスプレッドが拡大するなど、緊張が高まりました。また、CP・社債の発行環境が急速に悪化しました。』
『今回の金融環境の逼迫は、出発点が国際的な信用収縮であったことから、この間の変化という点では、中小企業以上に大企業の資金繰りが急速に悪化したことに大きな特徴がありました。海外の金融資本市場の動揺は、海外での銀行からの借入れや国内のCP・社債市場での発行が困難化するというルートを通じて、国内の大企業の資金繰りを直撃しました。そして、資金繰りの悪化した大企業は、銀行からの借入れを増やすとともに、先行き不安から手元資金の積み上げを図りました。そうした大企業の資金繰り悪化は様々なルートを通じて、中小企業の資金繰りにも影響を及ぼしました。』
というのはご案内の通りですね。で、日銀は特別オペを実施したりCPの買入を実施したりしたのですが、その結果どうなったかと言いますと。
『実際、国内金融市場の状況をみますと、潤沢な資金供給によって、短期金融市場は徐々に落ち着きを取り戻し、企業が実際に資金を調達する際に適用されるやや長めの金利も低下しています。また、日本銀行のCP買取り等の効果もあって、CPの発行環境は改善しています。』
よく言う「企業が実際に資金を調達する際に適用されるやや長めの金利」って持って回った言い方はTIBORの事ですよね(^^)。で、CP発行環境ですけれども。
『すなわち、昨年秋のリーマンブラザーズの破綻を契機に、企業に対する市場の見方は厳しさを増し、企業は、短期国債金利にかなりのスプレッドを上乗せした発行金利でなければ、CPを発行できない状況となっていました。』
というよりは、企業の予備的な資金需要と金融機関の予備的な資金需要がつみ上がったことと、株価下落による銀行の資本制約によって市場性商品でのクレジット物に対する配分資本がへったことに加え、ちょっと過剰なリスク回避姿勢が各種要因(当時のドラめもんをみてくんなまし)により発生したことなんかによってCPレートが上昇したちゅう所ですかね。つまりCPホルダーのうち一方にある銀行ディーラーの資金繰りが逼迫した事と、もう一方の最終投資家では市場の資金逼迫に対応して解約等に備えたキャッシュ比率引き上げの動きとか、リスク回避姿勢の強化によって金利がアホほど上昇したという感じですかな。
でね、まあ当時色々と悪態を申し上げておりましたように、GCレートの高止まりとかに対して調節が思いっきり自然体にも程がある(最近の当座預金残高と11月頃の当座預金座残高を比較してみるヨロシ)状況だったのも逼迫感に拍車を掛けたのでありまして、そう簡単に「企業に対する市場の見方は厳しさを増し」で片付けられるのも如何な物かと思いますが。
『しかし、日本銀行をはじめとする政策対応が進められた昨年末頃より、徐々に改善に向かい、足もとでは、上位格付先の発行金利のスプレッドは、リーマンブラザーズの破綻前の水準まで低下しています。また、格付がやや低い銘柄の発行金利のスプレッドも、着実に低下しています。』
えーっと、リーマン破綻前の水準「以下」になっておりますが・・・・・・(-_-メ)
白川総裁の講演からちょっと脱線しますけどね、円債のクレジット市場って毎度毎度思うのですけれども、「買う」「買わない」のデジタル的な2択状態というのが仕様みたいなもんで、いざ「買う」となりだすと買い対象になっている銘柄群だけひたすらスプレッドを潰しに行って、極端になると今のCP阿片窟市場のように、「買い対象銘柄群だけ」銘柄間格差もへったくれも無いような状態になっちゃい、買わないとなると今度は味噌も糞も叩き売り状態になるの巻というデジタルにも程がある動きをするんですよね。結局のところ投資家の多様性が確保されていないってえ事になるんですけれども、これは横並びとかいうだけの問題ではなくて、規制当局による画一的な規制もまた影響しているのではないかとか思うのですが、まあその話はまた後日。
社債の話は割愛してまとめの部分。
『このように、CP・社債の発行環境が着実に改善していることに加え、昨年秋以降みられた手元資金積み増しの動きも後退しているため、大企業の資金繰りには一服感が出ています。中小企業の資金繰りについても、政府による緊急保証制度などの政策対応が下支えの役割を果たしています。』
『以上のように、企業金融を巡る環境をみると、ひところに比べて緊張感は後退しています。ただし、企業業績の悪化などを背景に、資金繰りや金融機関の貸出姿勢が厳しいとする先は依然として多く、全体としては厳しい状態が続いていると判断しています。また、先行きについても、景気の動向如何ではありますが、企業の収益環境が引き続き厳しい中で、企業の信用リスクに対する金融機関や市場の見方が厳しさを増す可能性は否定できません。また、株価が大幅に下落した場合には、銀行の資本制約が強く意識され、貸出姿勢の厳格化に繋がるリスクにも留意していく必要があると思っています。その意味で、企業金融の動向については、引き続き注意深くみていく必要があると考えています。』
企業業績悪化による貸出姿勢に関しては「貸し渋り検査」なるものを実施しておられるようですので、当然ながら金融機関の自己査定を緩和するように金融庁様が動いておられると期待しております次第でございますが、そうは言っても企業業績悪化だの格下げアクションだのという話が出る場合、株価下落で銀行の資本制約が厳しくなる場合のリスクに注意という事ですな。
まー基本的にはこの辺りの動向が次の金融政策アクションに影響を与えるという認識で見ておけば宜しいのではないでしょうかと思います。で、この先で金融政策の説明もしているのですが、これも従来の話と同じですので割愛致します。
○金融経済月報
では金融経済月報を。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0905.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0904.pdf(4月)
で、本当は中身を仔細に見ないといけないのですが、例によって手抜きで概要部分だけで勘弁。月曜日にご紹介した声明文比較と重なる部分もありますが。
・現状判断
『わが国の景気は悪化を続けているが、輸出や生産は下げ止まりつつある。』(今回)
『わが国の景気は大幅に悪化している。』(4月)
ということで、声明文と同じですな。以下需要項目別展開になりますが、記載順が変わっているのでぶつ切りにして比較してみます。順序のベースは今回の月報に致しますが。
・企業収益、設備投資
『企業収益が大幅に悪化するもとで、設備投資は大幅に減少している。』(今回)
『企業収益の減少幅は拡大しており、企業の業況感も著しく悪化している。そうしたもとで、設備投資も大幅に減少している。』(4月)
企業収益部分を下方修正(業況感に関しては短観結果を受けているものなので今回は言及なし)、設備投資は変わらずにしています。
・雇用、所得、個人消費、住宅投資
『また、雇用・所得環境が厳しさを増す中で、個人消費は弱まっており、住宅投資も減少している。』(今回)
『また、雇用・所得環境が厳しさを増す中で、個人消費は弱まっており、住宅投資も減少している。』(4月)
ここは前回と同文。
・輸出、生産、公共投資
『一方、輸出や生産は、大幅に落ち込んだあと、下げ止まりつつある。この間、公共投資は増加に転じつつある。』(今回)
『輸出は、海外経済の悪化などを背景に、大幅に減少している。この間、公共投資は低調に推移している。以上のような内外需要の動向や在庫調整圧力を背景に、生産は大幅に減少している。』(4月)
これらの項目は上方修正と。
・先行き判断
『景気は、当面、悪化のテンポが徐々に和らぎ、次第に下げ止まっていく可能性が高い。』(今回)
『景気は、当面、悪化を続ける可能性が高い。』(4月)
というのは声明文比較の通りです。こちらも需要項目別にぶつ切りして比較します。
・国内民間需要
『すなわち、国内民間需要は、厳しい収益・資金調達環境が続き、雇用・所得環境も厳しさを増すもとで、引き続き弱まっていく可能性が高い。』(今回)
『一方、国内民間需要は、厳しい収益・資金調達環境が続き、雇用・所得環境も厳しさを増すもとで、さらに弱まっていく可能性が高い。』(4月)
さらにというのが引き続きに変更になったのはプチ改善ですが、まあそんなに言うほどの改善ではなく。
・輸出、生産、公共投資
『一方、輸出や生産は、内外の在庫調整の進捗を主因に、下げ止まりから持ち直しに転じていくとみられる。この間、公共投資も増加していくと見込まれる。』(今回)
『すなわち、輸出や生産は減少を続けるとみられるが、内外の在庫調整圧力が減衰するにつれて、減少テンポは緩やかになっていくと予想される。この間、公共投資は、低調に推移すると考えられる。』(4月)
こちらは「減少テンポが緩やか」から「下げ止まりから持ち直し」と上方修正。で、昨日ご紹介した白川総裁定例記者会見にありますように、今回の「上方修正」に関しては前回の金融経済月報における見通しがその通りに進行している結果だという話になるかと思います。
ということで、まあひじょーにざっくりと言ってしまえば、遅行指標項目に関しては一部下方修正しているものがあって、先行指標項目に関しては上方修正をしているという事になるので、まあ内容としてはやはり「底打ち」って奴じゃないのって所かと思いますです。はい。
・物価
物価に関しては前回と殆ど変わらず。国際商品市況の下落の影響が一巡気味になっている所くらいしか変化はなく、先行きもマイナス予想のままです。
・金融環境
『わが国の金融環境は、ひところに比べて緊張感が後退しているものの、なお厳しい状態が続いている。』(今回)
『わが国の金融環境は、厳しい状態が続いている。』(4月)
これまた声明文と同じですけど、若干明るくなったけど厳しいという感じで、市場調達の部分+市場調達できる人という点では昨今の金余り相場状態によって印象としては更なる絶賛緩和(まあ4月の時点でも緩和されてますけど)状態だったりするのですが、全体という意味ではこんな感じなのでしょうか。
『コールレートがきわめて低い水準で推移する中、企業の資金調達コストも、本年初に低下した後、低水準で横ばい圏内の動きとなっているものとみられる。ただし、悪化を続けている実体経済活動や企業収益との対比でみれば、低金利の緩和効果は減殺されていると考えられる。』(今回)
『コールレートはきわめて低い水準にあるが、大幅に悪化している実体経済活動との比較でみると、緩和度合いは低下している。企業の資金調達コストは、政策金利引き下げの波及やCP発行市場の改善を受けて、昨年末に比べ低下している。』(4月)
文章の切れ目の関係でぶつ切り出来なかったので2つの論点を並べてしまいましたけど、今回「ほっほー」と思ったのは金融緩和効果に関して前回対比で厳しい見方になっていること。いやまあ物価上昇率が低下して企業の稼働率とかも低下しているのですから理屈上当たり前と言ってしまえばそれまでなのですけれども、緩和効果の減殺をやっと明記しましたねえって感じです。
『企業の資金調達動向をみると、銀行貸出は大企業向けを中心に高い伸びを続けている。CP発行は減少したが、これは手許資金積み増しの動きが一服したことによる影響が大きいとみられる。社債発行銘柄の拡大等もあわせて考えると、CP・社債の発行環境はひところに比べ改善してきている。』(今回)
『企業の資金調達動向をみると、CP・社債の発行はひところに比べ回復してきているうえ、銀行貸出は大企業向けを中心に高い伸びを続けている。』(4月)
企業の手元資金積み増しの一巡に言及し、社債発行「銘柄」の拡大に言及とこれは白川総裁の講演や会見でも言及されていますが、やや改善という認識になっています。
『しかし、そうしたもとでも、下位格付先の社債発行は依然低い水準にとどまっているほか、資金繰りや金融機関の貸出態度が厳しいとする先は引き続き多い。』(今回)
『しかし、そうしたもとでも、下位格付先の社債発行は依然低い水準にとどまっているほか、資金繰りや金融機関の貸出態度が厳しいとする先が増加している。』(4月)
というころで、こちらに関して引き続き懸念というのがさっきの講演でしたね。
・・・・・ということで、またまた毎度毎度の引用大会でどうもすいません。
2009/05/26
お題「総裁定例会見」
出来ましたらネタは一度に出さないで頂きたく存じます(汗)。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0905b.pdf
○最初に「言葉の定義」の話が出ています
冒頭の説明部分と最初の質疑で「言葉の定義」に関して白川総裁が連発して言及しております(該当部分だけ引用してます)。
『それから、先程質問の冒頭で今回「景気判断を上方修正した」と指摘されましたが、上方修正というのは定義によるのだと思います。今回の景気の落ち込みについては「崖から落ちる」とか「フリーフォール」など、色々な表現がありますが、そういった状態はとりあえず過ぎ去りつつあると思っています。4月末に公表した展望レポートでも、わが国経済は悪化テンポが徐々に和らぎ、次第に下げ止まりに向かうとみられると想定しており、足許の状況はほぼそうした想定通りに変化してきているとみています。従って、景気は私どもの予想通りに展開していますから、これが「上方修正」という言葉に馴染むのかという気持ちはありますが、本日の決定会合での決定内容は以上の通りです。』
ということで、「上方修正」ではなくて「想定の範囲内」というのが正しいという説明を加えております。まあここからは勝手な想像になりますけれども、「上方修正」という言葉のイメージが独り歩きして楽観ムードと見られることに関して釘を刺したという所なのではないでしょうか。
というのは、次の質問で1−3GDPを受けて「景気の底を打ったのではないかという意見があるが如何」とあったのに対して総裁はこのように指摘いる訳でして。
『「景気の底を打った」という言葉自体は文学的な表現であり、お答えするためには「底を打つ」ということについて定義が必要だと思います。』
まー何ですな、先般ご紹介した講演で「偽りの夜明け」での楽観に警戒が必要だという話をしておりましたことも踏まえますと、白川総裁としては今般景気が何となく底打ち感を出している状況に対して「偽りの夜明け」的な警戒を持っているのではないかとあたしゃ想像するんですよ。まあ勿論総裁が本当に何考えているかなんぞあたくしが知る事は出来ませんけど、ここもとの講演や、今回会見の頭で言葉(しかも景気に対する楽観的な)の定義に関して連発で拘る発言をしている所を合わせると、「偽りの夜明け」によるダマシに引っ掛からないように警戒していると想像されるのです。
あとは、メディアが毎度お馴染みの如くヘッドラインにバイアスを掛けて、「上方修正」だの「底打ち」だのとイメージ先行で煽ることに対して、一つは日銀が景気先行きを楽観視していると間違えられたくない(展望レポート標準シナリオが経過しているという線であればそう簡単に楽観にならない)という点と、もう一つはその報道によって「偽りの夜明け」を夜明けとミスリードすることに関して警戒しているんじゃないでしょうか。
などとこの会見冒頭部分を見て思ったのですけれども、白川総裁のホンネはどの辺りにあるんでしょうかねえ・・・・・・
○と言うわけで標準シナリオ範囲内とな
後の方の質問で不確実性について質問されまして。
『(問) 今回の景気判断は、4月末の展望レポートで想定した道のりをほぼ歩んでおり、リスク要因としても不確実性が引続き高い状態であるとのことですが、その不確実性の高さというか不透明さについても、4月末に想定した状況がまだ続いているという理解で宜しいのでしょうか』
『(答) 不確実性の不確実度合いはどうかというご質問になるかと思います。明示的に各政策委員に聞いたわけではありませんが、私自身は、不確実性の度合いがこの20
日間で大きく変わったとは受け止めませんでした。従来と同じように不確実性が大きいということです。』
で、以下割愛しますが、不確実性が大きいので、ピンポイントの数字(成長率など)で見るというよりは全体的にどうなっているのか見てくれって話もしておりまして、展望レポートの標準シナリオの範囲内という話であって、その展望レポートの標準シナリオってのはご案内の通りでして、先行き回復への道は遠いですし不確実ですし物価は全然上昇していきませんよってな話でございますっちゅう事なんでしょ、と思いましたです。
○クロスボーダー担保について
『今回の措置の趣旨については先程簡単に申し上げましたが、改めて申し上げます。近年、国際金融市場の混乱や機能不全を契機として、金融安定化フォーラム──現在は金融安定化理事会と呼ばれていますが──といった場において、クロスボーダー担保の受入れによる流動性供給の実現が各国中央銀行の検討課題とされてきました。こうした中で、主要国の中央銀行では、外国国債等を担保として適格化する動きが広がっており、日本銀行としても、各国と協調しつつ外国国債の適格担保化についての検討をこれまでもずっと進めてきました。ご記憶にあるかわかりませんが、昨年9月の決定会合後の記者会見やその前後の講演でも申し上げてきた通り、クロスボーダー担保の検討はずっと行ってきました。そうした検討が進み、ようやく本日ここに至ったということです。』
法律的にも事務的にも詰める面が多いですし、先様がそれどころの場合じゃないというのもあったんでしょうかね(^^)。
『現状、国内外の金融資本市場の情勢は改善の方向にありますが、なお不安定であることを踏まえ、外国国債を臨時に適格担保とすることとしたわけです。今回の措置は、金融市場の情勢に応じて適格担保を拡大することによって金融調節の一層の円滑化を図り、これを通じて金融市場の安定確保に資することを狙いとしています。それから、先程の説明では省略しましたが、今回適格化する外国国債は、日中当座貸越など金融調節以外の与信の担保としても利用できるようにすることから、円滑な資金決済の確保を図ることを通じて、金融システムの安定にも貢献すると考えています。』
ということは在日外銀とかが助かるんですかね。
『そのうえで今後については、クロスボーダー担保がどの程度使われるかということや、この担保の利用には実務的に大変な面もあるので、そうしたことも踏まえてこれから考えていきたいと思っています。今回、臨時の措置としつつ期限を定めていませんが、先程のご質問のような趣旨で定めなかったわけではありません。』
ということで、まあ担保効率の向上って話だと思うのですが、この質問した人は妙に出口政策の話をしようとしていまして、順序逆になるんですが、質問を引用して見ます(前後割愛しますが)。
『これから景気が持ち直す局面になると、期限があることによって例えば利上げ時期を探る1つの材料になったり、その意味でマーケットにインパクトを与えたりしかねないと思います。そうしたことを配慮して今回の措置には期限を定めなかったのか、それとは全く別の発想だったのかについて教えて下さい。』
・・・・・いやまあその時になってみないと何とも言えませんけど、利上げ時期を探るというレベルの問題になるかに関してはちょっと?が飛びまくり。順序としては各種の臨時措置の解除が来てそれから利上げまではタイムラグあるんじゃないですかって思いますけど。
まーそれ以前の問題として、現状の各種臨時措置っていつ出口になるのよって話は思いっきり致しますけどね。この質問者は次にこういう質問してます。
『出口政策を意識し始めたので期限を定めなかった、という解釈でよろしいでしょうか。』
・・・・・・???????
さっぱり意味判らん質問ですな。出口意識したら逆に期限定めるでしょうに・・・・
○で、タイミングは図ったのですか?
という素敵な質問がございました。米国債券市場における格下げリスクに対応した措置ですかっていう話ですな(^^)。
『ごく最近の海外の国債の格下げリスクが今回の決定の背後の要因なのかというご質問ですが、それは全くありません。私どもとしては、検討が済み次第早く実行したいという気持ちを持っていましたが、それがこのタイミングであったというだけです。国際金融市場のグローバル化が進み、特にこの1〜2年は国際金融市場が動揺しており、中央銀行が流動性を円滑に供給できる体制を作っておいたほうがいいという大きな流れの中で、今回の措置は出てきたものであり、それに尽きています。』
ほうほうそうですか(棒読み)。
○まあ2極化継続はその通りでっしゃろな
『(問) CPと社債の買入れについて伺います。4月の金融政策決定会合では、一部の委員の方から、CP金利が国債金利を下回っていることが市場機能に悪い影響を及ぼしかねないとの発言があったとのことです。最近ではBBB格銘柄の社債発行が再開される見通しにあります。こういう状態は、買入れの基本的な考え方で定められている「著しい市場機能の低下」という条件と合わなくなってきているのではないかと考えるのですが、認識を教えて下さい。』
ある意味別の方向で「著しい市場機能の低下」になっていますが(-_-メ)。
『(答) 確かにCP・社債市場では二極化ともいうべき現象が起きているように思います。上位格付の銘柄については発行条件もよくなっており、発行量も増えているということですが、その一方で、CPにせよ社債にせよ、下位格付の銘柄については基本的にはまだ発行できない状況だと思います。例えば、社債について先ほどBBB格銘柄の発行の話がありましたが、私どもとしては、発行の裾野が広がっていくことを期待しています。現状、BBB格の社債が発行されることはプラスなのですが、業種という面ではまだ広がりがあるわけではありません。そういう意味では、社債市場がかつてのような状況に戻っているとはまだ判断していません。』
結局ですね、「買える銘柄群」と「買えない銘柄群」が明確にあって、その中で買える銘柄群に関してクレジットスプレッドが縮小し、買えない銘柄群に関してはまあ投げ売りモードは一服したかもしれないけれども、別に新規の買いが入っている訳でも無いからダメダメ状態のままで気配値だけ何となく戻っているという所だと思うんですよ。買えない銘柄群で言えば、特定業種や特定企業で投げ売り大会になって極端に開いたスプレッドが縮小したように見えるのですけれども、まー所詮は気配値の世界じゃないんですかちゅう感じじゃないっすか。実際にその手の銘柄売りに行くと相変わらず話は全然違うと思います。
で、買える銘柄群に関しては特に短期ゾーンでは企業特オペと緩めの資金供給の継続というコンボによってスプレッドが縮小し、CPに関して言えばメーカー系中心に発行を抑制(金融系はそんなに変化しませんが)したことも重なり、CPにおいては銘柄間のスプレッドも思いっきり縮小したでござるの巻。つーかそもそも短国よりもレート低いですけど(笑)。
という観点で言えば、まあ市場機能回復には程遠いという認識に同意するものでありまする。
○BISビューとFRBビュー
これはあたくしも聞きたい質問ですな(^^)。
『(問) 大幅な景気変動に対する金融政策の対応において、事前段階からある程度関与するべきであるとするいわゆるBISビューと、事後的に対応するしかないとするFRBビューについて、総裁は昨年4月の記者会見において、自分の考えは敢えていえばその中間にあるとおっしゃいました。先般のロンドンとニューヨークでの講演内容を拝見すると、どちらかというとBISビューにより近いという印象を受けましたが、この1年間で総裁の考え方が変わったのでしょうか。それとも別の事情があるのでしょうか。』
『(答) 便宜的にFRBビューとかBISビューという言葉を使いましたが、FRBやBIS自身が自分たちの公式見解であると明確にいっているわけではありません。私としては当時も今も考え方を変えていませんが、色々な国際会議に出席して感じることは、この1
年間で、政策当局者あるいは学界の議論が随分変わったということです。』
『どのように対応すべきかという点が重要ですが、現時点ではマクロ・プルーデンスといったような言葉で表されますが、金融政策面および金融システム面で色々な議論が進みつつあります。ただし、問題の所在は指摘できますが、具体的にどのように改善を図っていくのかという点については、今後数年間の最も大きな課題だと思います。ご質問の点については、私の考え方は両者の中間で変わっていません。』
ただまあFRBビューではやはり山と谷が深くなるのを覚悟しないといけないということは今般の推移で明らかになったんじゃないのかなってはあたくしは思いますけど。バブル崩壊に対して別のバブル発生して、先に行けば行くほどその振幅がでかくなっているという経過でしょと思ってますので。
○長期金利動向への言及
クロスボーダー担保の質問の中で話がちょっと横になってましたが、ここはちょっと気になったです。
『ご質問の趣旨から多少ずれるかもしれませんが、例えばこの数か月間の欧米の長期国債金利の動きをみますと、若干上がってきています。これは、景気の大幅な落込みがどうやら終わってきて、少しずつ明るい材料が出てきており、その結果先行きの経済の見通しは少しずつ明るくなっているということを反映していると思います。』
勿論それもあるのですが、財政出動に伴う国債需給の悪化も反映しているのではないかと思います。クレジットスプレッドや流動性リスクプレミアム縮小する中での国債金利上昇ですので、まあ勿論ベースに改善期待があるというのもその通りなのですけれども・・・・まあその辺先刻ご承知でこういう言い方になっているのだとは思いますけどね。
『この間、FRBやBOEは長期国債の買入れを実施しましたが、結局、長期国債金利の姿、動きを決めるものは、経済成長率やインフレ率の先行きに関する市場参加者の見方であると思います。短期的な話ではなく、一般的な話として申し上げますと、そうした長期金利が語っているシグナルをシグナルとして受け止めていくという姿勢が大事であると思っています。』
つまり「長期国債金利への働き掛けで金融緩和を行えばよい、歴史的にもそれが有効である」とかつて日銀に向かって言っていた逆さ絵のオジサンへの悪態ですね、わかります(^^)。
まー目先は格下げだ需給悪化だ何だというのと、そもそも金融緩和+財政拡大というコンボは普通にイールドカーブスティープ要因でしょという市場参加者の認識が長期金利を上げている(気がつきゃ米国財務省証券10年もの利回りって3.45%とかに上昇してるじゃねえか)のでしょうけれどもね。
#ということで他のネタに案の定手が回りませんでした。どうもすいませんm(__)m
2009/05/25
お題「上方修正ではないと思うがトーンは明るめに」
金曜日は時事通信インタビューで民主党の中川大先生が引き続き面白発言をしておられたようなのですが、つく悪態は先日と同じなのであえて割愛。
ということで決定会合なのですが、今日は声明文の書きっぷりがちょっと変わった感じがしたので、4月7日分と比較して結局全部比較引用大会でござるの巻。長くてスイマセン。
決定会合結果公表文
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/k090522.pdf
外国債券担保適格化
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/mok0905a.pdf
○一応上方修正という話ですけど・・・・そうかなあ??
んでまあ結果の公表文なんですけど、そちらの中にある景気認識の部分を4月7日(=展望レポート公表前の方です、展望レポートの方が近くに公表されてますが、中長期的な話になっているので)の決定会合公表文と比較するでござるの巻。
・現状の全体観
『わが国の景気は悪化を続けているが、内外の在庫調整の進捗を背景に、輸出や生産は下げ止まりつつある。金融環境をみると、ひところに比べて緊張感が後退しているものの、なお厳しい状態が続いている。』(今回)
『わが国の経済情勢をみると、海外経済の悪化により輸出が大幅に減少していることに加え、企業収益や家計の雇用・所得環境が悪化する中で、内需も弱まっている。金融環境をみると、CP・社債市場の発行環境は改善しているものの、全体としては厳しい状態が続いている。これらを背景に、わが国の景気は大幅に悪化している。』(4月)
いやまあこれだけ出すと一応大幅下向きから底を見に行く動きって話だから落ち方が緩やかになってきたという意味では改善は改善なんですけれども、絶対的水準という意味では当然ながらそこまでの落ちがでかく、かつ方向が上に向いている訳では無いのですから、「上方修正」とまで言うのはちょっと煽り気味ではないかと思いますけど。
・先行きに関して
『今後は、国内民間需要は引き続き弱まっていくとみられるが、輸出・生産は下げ止まりから持ち直しに転じていき、公共投資も増加していくと予想される。このため、わが国の景気は、悪化のテンポが徐々に和らぎ、次第に下げ止まっていく可能性が高い。』(今回)
『今後は、内外の在庫調整の進捗を背景に、輸出・生産の減少テンポは緩やかになっていくと予想されるが、国内民間需要は更に弱まっていくとみられるため、わが国の景気は、当面、悪化を続ける可能性が高い。』(4月)
まあ同じことですけど、先行き次第に「下げ止まり」であって、「上向き」という話をしているわけでは無いので、そーゆー意味では金融市場がいい感じで値動きをしているのに比較すると温度差があるかなと思いますがどうでしょ。
・物価に関して
これは前月と同じなので今回の分だけ引用。
『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、石油製品価格の下落や食料品価格の落ち着きを反映して足もと低下しており、今後は、需給バランスの悪化も加わって、マイナスになっていくとみられる。』
○海外の回復と財政金融政策効果への期待
4月7日対比ですからまあそうなのでしょうが、もうちょっと先行き見通し。
『2010 年度までの中心的な見通しとしては、中長期的な成長期待やインフレ予想が大きく変化しないもとで、2009
年度後半以降、海外経済や国際金融資本市場の回復に加え、金融システム面での対策や財政・金融政策の効果もあって、わが国経済は持ち直し、物価の下落幅も縮小していく姿が想定される。』(今回)
『景気・物価の先行きについては、2010 年度までの中心的な見通しとしては、中長期的な成長期待やインフレ予想が大きく変化しないもとで、2009
年度後半以降、国際金融資本市場が落ち着きを取り戻し、海外経済が減速局面を脱するにつれ、わが国経済も持ち直し、物価の下落幅も縮小していく姿が想定される。』(4月)
回復していくモノが出てきましたってことですからここは上方修正かも(^^)。
『こうした動きが持続すれば、わが国経済は、やや長い目でみれば、物価安定のもとでの持続的成長経路へ復していく展望が拓けるとみられる。もっとも、景気・物価の先行きは、海外経済や国際金融資本市場の動向に大きく依存した展開を辿る可能性が高く、見通しを巡る不確実性は大きい。』(今回)
『こうした下で、見通し期間の後半には、物価安定のもとでの持続的成長経路へ復していく展望が拓けるとみられるものの、このような見通しを巡る不確実性は高い。』(4月)
見通し期間の後半(=2010年度後半)に回復コースに復帰という見通しが、やや長い目でみればという表現になりましたが、これはまあやや見通しを前進させていると見るべきでしょう。「見通し期間の後半」なんてどう見ても無理無理つけてましたって感じですからねえ。
○リスク要因をシンプルに下だけにした理由は・・・・
まずは今回のリスク要因ですが、やたら短くなっているのが目に付きます。
『リスク要因をみると、景気については、国際的な金融経済情勢、中長期的な成長期待の動向、わが国の金融環境など、景気の下振れリスクが高い状況が続いていることに注意する必要がある。物価面では、景気の下振れリスクの顕在化、中長期的なインフレ予想の下振れなど、物価上昇率が想定以上に低下する可能性がある。』(今回)
前回はこうですもん。
『リスク要因をみると、世界的な金融情勢や海外経済の動向次第では、わが国の景気が下振れるリスクがあることに注意する必要がある。また、企業の中長期的な成長期待が低下し、設備や雇用の調整圧力が高まることを通じて、国内民間需要が一層下振れるリスクもある。金融環境が厳しさを増す場合には、金融面から実体経済への下押し圧力が高まり、金融と実体経済の負の相乗作用が強まる可能性がある。物価面では、景気の下振れリスクが顕在化した場合や国際商品市況が下落した場合には、物価上昇率が一段と低下する可能性もある。この場合、企業や家計の中長期的なインフレ予想が下振れるリスクに注意する必要がある。』(4月)
随分シンプルになりましたなと思いますけど、細々見ますと、まず最初に景気の下振れリスクに関して「リスクがある」というのが「リスクが高い状況が続いている」と変化させていまして、これはまあ表現的にはあんまり変わってませんが、言い切り調じゃ無くなったので表現緩和なんじゃないかと。また、中長期的な成長期待低下やら金融環境悪化に関する細かい記述が削除されたのはまあリスク認識を後退させたって事でしょうね。
ところが、何故か今回はリスク要因で上方向が削除されております。じゃあ展望レポートはどうでしたかって話ですけれども、展望レポートでは(この声明文よりも見ている期間が長いですけれども)上振れ・下振れ要因に関して(大体下振れの方が多いのですが)上振れの話も入っているのですな。
つーことで、今回いきなり上振れリスクの話が無くなっていますが、全体的なトーンを勘案しますと、どちらかといえば前回までに掲げていた「上振れ要因」というのがもう何かとりあえず景気の良い事書かないと暗くなっちゃうから無理無理入れてますっていうような感じでしたので、様子見継続ながら先行きのこれ以上の悪化が食い止められてきているという所にやや自信を持って来たって感じなんじゃないかなあと思いました。
ということで、トーンは全般やや明るめになっているけど別に上方修正じゃないって感じだと思います。
○最後の所も表現がシンプルに
『日本銀行としては、当面、景気・物価の下振れリスクを意識しつつ、わが国経済が物価安定のもとでの持続的成長経路へ復帰していくため、中央銀行として最大限の貢献を行っていく方針である。』(今回)
シンプルなんですよ。前回はこうでしたから。
『日本銀行は、金融政策面からわが国経済を支えるため、昨年秋以降これまでの間、政策金利の引き下げ、金融市場の安定確保、企業金融円滑化の支援という3つの柱を中心に、様々な措置を実施してきた。本日の適格担保範囲の拡大措置も、金融市場の安定確保の観点から、決定したものである。また、金融システムの安定を図るため、金融機関保有株式の買入れを再開したほか、金融機関向け劣後特約付貸付の供与に向けて具体的な検討を行っている。日本銀行としては、今後とも、わが国経済が物価安定のもとでの持続的成長経路へ復帰していくため、中央銀行として最大限の貢献を行っていく方針である。』(4月)
施策の部分があるので長いってのもありますけれども、そこを捨象して読んでも短くなっておりますわな。施策の3つの柱の表現は外しましたが、一方で「下振れリスクを意識」という表現が入っています。
これをどう解釈するのかと言われますと別にあたくし中の人の訳じゃないからあくまでも年がら年中見ている(そこのあなた、すとーかあとか言わないように)あたくしとしては、基本的に「表現がシンプル」というのは「自信度が上昇した時」という解釈になります。で、景気の猛スピードでの悪化が止まりそうですよって見通しが多いトーンになっているという事を勘案すると、下げ止まりに対する自身度が上昇したという事であり、今後の施策に関しては「とりあえず今後の施策に関しては様子見ですよ」という話になるんでしょうかね。ただまあ下振れリスクに関しては勿論気にしてますよって感じなんでしょう(ボードの中でも先行きのリスクに関する意見は割れてそうな気がします。いえ何となくですけど)。
○まさに「次はイタリア抜きで」(違)
ということで、英米仏独の国債を適格担保という事になりましたが、同じくユーロエリアの大国でありますところのイタリア国債だのスペイン国債だのは今回対象外になっております。
具体的にどのような事務実施要領になるのか公表文だけだと何か今一歩良くわからなかったのですが、要するに海外中銀で担保取っている分で余力があったらそいつをクロスボーダーで使えるようにしましょうってイメージなんですけどそれで合っているでしょうか????
ま、イタリアだのスペインだのはそもそも論としてこっちの金融機関がそんなに持ってないでしょうから担保として使うという話しもないでしょうし、両国の国債をジャンジャン持っているような金融機関が日本で大々的に営業している訳でもない(ABNアムロ買収した時もBSCHはアジア部門興味なしって感じでしたもんね)ので、実際問題として実務上のニーズは大して無いでしょうというのが理由。クロスボーダーで担保を取るなんて実務的には相当面倒だと思いますんで、わざわざニーズの無いものを加える理由は無いでしょという話なんでしょう。
・・・・・というところだと思いますけど、まあこーゆー時は「次はイタリア抜きで」が実践されたというネタにした方がオモロイというものです。いやまあ「イタリア軍武勇伝」じゃないですけれども、円債市場をちょっと長くやっている人だと「イタリアのグローバル円債」というと事務面で「イタリア軍武勇伝」的な印象を持っていると思いますからね(^^)。
2009/05/22
お題「今日も今日とて雑談で恐縮でございますが」
今月は5連休が効いて仕事が押しまくっておりますが、期末の糞忙しい時に変な連休を打ち込まれているのが今からガクブルでございます。つーか連休打ち込むなら8月とか11月とかにして欲しかったと思います(祝日のでっち上げが必要ですが)。
○連日の市場雑談で誠に申し訳ございませんえんですが
昨日もまたまた超短い所の金利が素敵に低下、つーかもうそんなに数字的にジャンジャン下がる余地は無い(と思う)のですが、それでも昨日もまた1年以内のレートは進んでおりまして、2年利付国債の残存1年どころで0.21%なんぞに低下するわ、3か月TBは0.19%に低下しているわと、誠にビューテホーなカーブの潰れ方。で、CPレートも相変わらずの低位安定っぷりを発揮していまして、まーこりゃ潰さないといけないキャッシュが沢山おいでのようでってのは先日来申し上げております通り。
でまあ金余りという話をしとる訳ですが、んじゃあ何で金余ってるかとか考えつつちょっと思いついたのは2000年問題。このときはコンピュータがどうのこうのだから予備的な流動性需要が高まるでしょという事になって、国内もそうですけれども世界的に流動性供給をジャンジャン実施。で、予備的につみ上がった流動性が何となく流動性相場を作ってイットバブルがどうしたこうしたとか(あの時は小渕政権の財政政策もありましたっけ)ございましたが、肝心の2000年問題の方はまあそういう時にありがちな話ですが、事前に大騒ぎして準備した結果特に大きな問題も起きず・・・みたいなイイカゲンな理解をしておりますけれども、そんな感じでしたっけ??
勿論今回は全然背景も状況も違うのですけれども、日本の国内市場が金余りって状態を見ておりますと、んじゃあ何で金余りとか言ってるかという流れになったかと言えば、リーマン破綻以来の金融市場混乱の影響によって、「利下げしてるのにTIBOR上昇」に見られるように、金融機関および企業の予備的資金需要が急速に高まったことと、企業の売上急減に伴う資金需要の高まりがぶつかって世の中に資金需要がどどーんと高まったという状況が昨年の10月以降(特に11月から12月)これ有りと言ったところでして、各種安定化策(日本も海外も)による予備的資金需要の低下および企業の売上サイクル一巡による所要運転資金の充足による資金需要の後退がぶつかって、それまでに積みあがった資金が一気に余って来ましたでござるの巻となったという現象なのかなあとか勝手に理解してみるのです。
#かなりエエカゲンな理解なので本当は違うだろというツッコミはある(^^)
ということで、何となく流動性相場っていうのもこれから更にやるのかねとか思ったりもするのですけれども、それではその流動性を今引く時期かといえばど〜見たってこの時期に流動性引くとかわざわざ景気を突き落としに行くようなもんでしょって話になるので、話はヤヤコシヤなんでしょうなあと思うのでした。結局また結論無しの雑感かよというツッコミは勘弁。
ところで、全然話は違うのですが、最近債券市場が後場になるとミョーに動く事が多々あるような気がすんですよ。しかも急に超長期ゾーンが暴れるとか先物が暴れるとかで、その暴れ方も今一歩わけの判らん動きでして、普通に場況を見ながら入っている感じじゃなくて、「何でこのタイミングでこういう動き方するかな」って印象。で、こーゆーイミフな動きを後場にするという場合に一番説明付けやすいのは毎度お馴染みの「海外筋」という奴でして(^^)、まー何でもかんでも訳判らんとガイジン扱いというのもあんまり良くないのですけど、もしそんなガイジンさんたちが復帰してまた訳判らん動きで市場に金を落として頂けるのであれば誠に慶賀の極みでございますので、ちょっとだけ動向留意してたりするのであります。
○英国ソブリン格下げ方向アクションキタコレ
http://mainichi.jp/select/world/news/20090522k0000m020149000c.html
英国債:格下げも 公的債務の急増で S&P
【ロンドン藤好陽太郎】米格付け会社、スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は21日、英国債の長期信用格付けの中期的な見通しについて、「安定的」から格下げの可能性がある「ネガティブ」に引き下げた。
(上記の毎日jp記事より、以下割愛)
・・・・・このニュースを最初に聞いた(見た)市場の中の人たちで「米国をいきなりネガティブだの格下げだのにすると大変なので最初に英国で試しにやってみたんでしょ」と思ったのは100人中(ry
で、ポンドが昨日は素敵に暴落しておりましたが、一晩経ってみると米国でも格下げ懸念がどうしたこうしたで債券が売られてドルも売られるという大変に華麗な展開になっておりますが、Moody'sが日本の自国通貨建て格付けを引き上げた直後にS&Pがこのアクションというところが実に楽しそうな展開でありまして、S&Pが他のソブリンにどういうアクションをしてくるのかは生暖かく見守りとう存じます。
あたしゃイマイチ良く判ってないので英国の話はスルーしますけれども、米国に関して言えば、格下げ懸念の上に最近では早速インフレ懸念とか言い出している始末(インフレじゃなくてスタグフレーションだろと思いますけれども)でありまして、確かにクレジットスプレッドや流動性リスクプレミアムの剥落によって民間クレジット市場は改善しているという話になるのは判りますけれども、財務省証券の買い入れプログラムの政策的な位置付けとか効果とかが益々ロジック複雑骨折状態になってきてませんかねえと思うのであります。
何せ「長期国債買入で民間クレジット市場の改善を図る」がお題目になっているのですが、実際に買入実施する前から比較して長期金利は低下どころか上昇している訳ですからねえ。いやまあ「このプログラムがあったから長期金利の上昇がこんなもんで済んだ」という理屈を捏ねるのは可能ですけれども、かつて「長期国債買入で長期金利に働き掛ける政策」って話をしておられたどこぞの顔が逆さ絵状態のオッサンとしてはどうなんですかねえってまた悪態を。いやまあそんな事言わんとなんか手を打ってみるって状態なので悪態言われてもってことなんでしょうけれどもね。
○FOMC議事要旨(ただしただの引用)
昨日に引き続いてもうちょっとだけ斜め読みしてみた。
・Staff Review of the Financial Situationのところから
この部分の説明、中々いい感じで纏まってて良いですね。本当はもうちょっと長くて、前回(3月)FOMCの後の相場状況の話もあるのですが、市場の流動性がどうなったという話をしている部分が良かったのでベタ引用。
『Conditions in short-term funding markets improved somewhat over the intermeeting
period. In unsecured bank funding markets, spreads of dollar London interbank
offered rates (Libor) over comparable-maturity overnight index swap (OIS)
rates edged down, although Libor fixings beyond the one-month maturity
stayed elevated. Spreads on A2/P2-rated commercial paper and AA-rated asset
backed commercial paper narrowed a bit, on net, staying at the low end
of their respective ranges over the past year.』
『Functioning in the repurchase agreement (repo) market showed additional
improvement, as bid-asked spreads and "haircuts" on most collateral
either narrowed or held steady, although repo volumes were still low. Consistent
with modestly better conditions in the term repo market, all seven auctions
under the Term Securities Lending Facility were undersubscribed over the
intermeeting period, including two auctions that garnered no bids.』
『Trading conditions in the secondary market for nominal Treasury securities
also showed some signs of improvement. Premiums paid for on-the-run Treasury
securities fell, and average bid asked spreads for Treasury notes were
relatively stable near their pre-crisis levels. Still, daily trading volumes
for Treasury securities remained low.』
ask-bidスプレッドの状況とか、レポ市場のヘアカット状況とかもフォローしているのが中々。まあこういうところが延々と出てくるというのは、逆に言えば金融市場の価格自体は回復しても、肝心の市場流動性の回復に関してはまだまだ途上だという認識を持ちつつ対処してるって話なんでしょう。一応上に引用した所では回復の傾向にあるという結論にはなっておりますが、為念。
民間信用市場という点ではこんな指摘も。
『The debt of the domestic private nonfinancial sector appeared to have
contracted in the first quarter at about the same pace as in the fourth
quarter of 2008. Activity in the mortgage market reflected mainly refinancing,
and staff estimates indicated that residential mortgage debt contracted
again in the first quarter, depressed by the very low pace of home sales,
falling house prices, and write-downs of nonperforming loans.』
モーゲージも相場水準としての数値は改善しているけれども中身はまだまだという話ですな。
『Consumer credit was essentially flat in January and February. Expansion
of nonfinancial business debt was tepid, as robust bond issuance was partly
offset by declines in commercial paper and bank loans. Federal debt rose
briskly in the first quarter.』
全部引用してると長くなりすぎなので一部だけ引用しましたが、まあこの辺も読んでて面白いですのでお暇な方にはお勧め。
・Participants' Views and Committee Policy Actionのところから
これまた本当は全部読むのが吉なのでしょうけれども、同じく金融環境の所をベタ引用。
『Financial market developments over the intermeeting period were mainly seen as positive.』
ほほー。
『Equity prices increased, money markets were functioning better, and corporate
issuance of bonds and convertible securities was relatively brisk. Measures
of volatility and financial stress moved down and risk spreads narrowed
in many markets, perhaps partly because of investors' perceptions of diminished
downside tail risks. Even so, risk spreads remained unusually wide and
markets continued to be fragile.』
でも改善は途上も途上と。
『Despite the improvement in financial markets, credit conditions stayed
quite restrictive for many households and businesses. The April Senior
Loan Officer Opinion Survey showed that a large net fraction of banks had
tightened their terms and standards for credit during the previous three
months, albeit a modestly smaller fraction than indicated by the January
survey. Moreover, meeting participants noted that the volume of credit
extended to households and businesses was still contracting as a result
of shrinking demand, declining credit quality, capital constraints on financial
institutions, and the limited availability of financing through securitization
markets.』
ということで、結構ダメじゃん的な話ですが、こっちのコーナーは割とそういう感じのトーンが多い感じだったかなあって所です。なお、昨日申し上げた長期国債買入プログラムのロジックに関しては他でも特にそれらしき議論が見当たらなかったような気がします(見落としはあるかもですので断言しませんが、汗)。
2009/05/21
お題「今日は雑談小ネタで勘弁」
何だかんだと言いましても5月は月初に休業日が多いので仕事の進行が押しまくってかないませんわな、ということで雑談で勘弁。
○再び3か月短国0.2%割れ
昨日は3か月もの短期国債の入札が行われました。一昨日には2か月ものの入札ありまして順当に0.20割っておりましたが、昨日も前場引けで一応0.20%の最終気配とかやってましたけれども買いニーズ強いでござるの巻で、応札は華麗に21兆7590億円もあるわ、平均落札は0.1982%と0.20%割れるわと、またまた潰さないといけないキャッシュが沢山いますねえという状況になっとるようで誠にアレでございまする。
入札で0.20%割ったのもさることながら、セカンダリーの販売も好調で、0.195%の引けとかにしてますけれども、多分まともに買おうとすると0.195%で買えるのかどうか怪しげ(持ちになっていない業者だと195出すのか怪しいんじゃネーノ)という有様になっておりまして、入札堅調だわセカンダリー好調だわという大変に美しい展開になっております。
んでもって、3か月TBが0.2%割れるのは4月とかにもまーあったのですけれども、今回中々ビューテホーなのは後ろのレートが潰れていることでありまして、先週入札が行われた6か月TBは引けベースで0.21%とかで1年TBは0.215%とかになっているようでございまして、この辺のレートが低下しているのが特徴的な所でありまする。
つまりですな、以前だとその辺の金利ってもうちょっとありまして、利付国債の残存1年で0.30%割れ位とかで短期国債で0.25%に毛が生えたくらいのレートだったりして、一応イールドカーブみたいなものがあったのですが、ここのカーブが潰れて来たというのは、運用というか潰すべきキャッシュが寄り潤沢になって来たという事と、まあ冷静に考えれば時間軸状態なのですから別にここのカーブをつけている必要もなかろうという発想っちゅう所なのでしょうかね。その動きが2年とかにも波及してるようで、5月に入る頃から妙に2年の金利が上がらない(後ろの金利が上がっているのに)なあとか思っていたら徐々にレート低下してきたでござるの巻ですしね。
んでもってCPレートは相変わらず素敵なレートでして、こちらはまたメーカー系でも短期国債よりレート低いとかの阿片窟市場になっておりますし、その他金融系でも3か月で0.3%割れとかになって来たようで、4月にちょっと上昇して0.4%に乗ったのはナンダッタンダというこれまたスプレッドを潰す(というか潰し過ぎで逆転なのですが)動きという華麗な展開になっておりますわな。
ま、政策効果が現れたとか、売上減による企業の資金需要が販売の資金サイクルが一巡した結果落ちた為に資金需要が落ちてきたとか、諸々の要因が重なっているのでしょうけれども、まー潰す資金がありますわなあっていう流動性相場状態という事なんでしょ、と思いまする。
○FOMC議事要旨(メモ)
4月のFOMC議事要旨
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20090429.htm
内容は時間を見てマジメに読むのですが、金融政策の検討に関する部分というのは最後の票決の前のパラグラフにあるのでとりあえずそこでも。
『In their discussion of monetary policy for the intermeeting period, Committee
members agreed that the Federal Reserve's large-scale securities purchases
were providing financial stimulus that would contribute to the gradual
resumption of sustainable economic growth in a context of price stability.』
ということで、FRBの資産購入プログラムの効果について確認しているのですが、クレジット市場の改善という具体論がここには無くて抽象的な言い方になっていますな。ただし、もうちょっと前の金融市場の状況とかの認識部分もちゃんと読まないといけませんで、ここだけ読んで即断するのは早計。
『Members also agreed that it would be appropriate to continue making purchases
in accordance with the amounts that had previously been announced--that
is, up to $1.25 trillion of agency MBS and up to $200 billion of agency
debt by the end of this year, and up to $300 billion of Treasury securities
by autumn.』
『Some members noted that a further increase in the total amount of purchases
might well be warranted at some point to spur a more rapid pace of recovery;
all members concurred with waiting to see how the economy and financial
conditions respond to the policy actions already in train before deciding
whether to adjust the size or timing of asset purchases.』
複数の委員からは更なる買い入れ拡大の論議がって所ですか。
『The Committee reaffirmed the need to monitor carefully the size and composition
of the Federal Reserve's balance sheet in light of economic and financial
developments. The Committee also discussed its strategy for communicating
the anticipated path of its asset purchases and the circumstances under
which adjustments to that path would be appropriate. All members agreed
that the statement should note that the timing and overall amounts of the
Committee's asset purchases would continue to be evaluated in light of
the evolving economic outlook and conditions in financial markets.』
市場との対話の議論もあるようで、その結果としてこの前の声明文に「経済および金融市場の状況次第では買い入れプログラムの増額も」ってのが出ましたという所なんでしょうか。
正直あたくしも寝起き斜め読みでございまして、とりあえずここのパラグラフだけ引用してみましたでござるの巻というメモで勘弁でありまする。詳しくは後日ご紹介するかも知れないですが、スルーするかも知れません。
○今更国債格付け雑談
えーっと、出遅れましたがムーディーズが日本国債を格上げしたり格下げしたりしてましたな。まあ正直どうでもよいとしか申し上げようがないのですが、格下げした時のロジックを援用するとどう考えてもこの時期に行う格付けアクションは格下げの筈。
よーするに「今まで間違えていましたゴメンナサイ」という事なのでしょうが、そこを間違えといわずに訳のわからん理屈を捏ね繰り回して変な話を展開するのがお勉強のとーっても良くできる人たちのクオリティのようでありますので、今更ねえって感じです。
というか、格上げのニュースを聞いて100人中150人くらいが最初に感じたのと同じように、あたくしも「ああ要するに米国を格下げできないから日本を格上げするんですね」と思いましたですよ、うひゃひゃのひゃ。
・・・・それはそれとして、ちょっと気になったのは同じようなタイミングでMDYが東京都アレンジのCLOをクレジットウォッチにしてたこと(記事自体は出てたのですけどネットでは拾えませんでしたすいません)で、その理由が「CLOの対象ローンがデフォルトになった時には東京都信用保証協会がケツを拭く(そういうローン対象)ので、東京都および日本政策金融公庫(かつての中小企業保険公庫が日本政策金融公庫に統合されてます)の格付け見直しに伴いこちらも格付けを見直す」というロジック。
いやまあそれはそれで判るんですが、要するにおめーらローンプールの分析結果よりも保証先の信用で格付けしとるんかいと思わず突っ込みをPC画面に向かって行っていたとある昼下がりのあたくしなのでありました(^^)。
○「戦後最悪」を宣伝するのは戦前戦中世代に失礼では(ただの与太話ですので^^)
昨日はGDPの発表がありまして、落ち込みの率が第1次石油ショックの時の下げを上回ったということで「戦後最悪」というヘッドラインがニュースでもレポートでも飛び回っております。
・・・・・・えーっと学童疎開経験者の親を持つあたくしと致しましては、「戦後最悪の落ち込み」というのは当然ながら全国各地に空襲を食らった上に朝鮮や台湾などを放棄した昭和20年とかの方が落ち込みでかい(昭和21年だと復興での拡大と領土縮小での落ちのどっちが効くのでしょうか)のではないか!とか思い内閣府のページを見に逝った訳ですよ。
・・・・・あ、国民所得計算って昭和30年以降しかないんですね。
データが無いのであれば比較もへったくれも無いですから仕方ないですわなあと思ったのですが、「戦後最大(最悪)のナンチャラ」というのであれば、復金インフレとか預金封鎖とかドッジラインデフレとか朝鮮戦争特需による成長とかも考慮に入れるべきではないかと存じます次第で(^^)。あーた東証平均株価なんか「スターリン重態で株式重態」とかもフォローしている訳でして、「戦後の株価指数下落率比較」とかやると堂々とその上位にスターリン暴落が出てくるのでありまして、株屋恐るべしということでございます(どこが)。
昭和30年以降しか無い統計で「戦後最悪」とか言われましても、あたくしのようなメタボおじさんとしてはまだ小さい頃にはそこらに普通に戦前戦中のオトナがいたもんで、一瞬「????」と思ってしまうのは頭の仕様がちょっとずれていますかそうですか(汗)。
2009/05/20
お題「金融システム設計に関する西村副総裁講演(その2)」
昨日の続きで恐縮ですが。
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0905c.pdf
○金融システムの制度設計に関して、序論
序論の部分は昨日ご紹介しましたが、その先には今般の「信用バブル」崩壊に際して市場の信頼喪失(コンフィデンスの毀損と言いますか)が特徴にあったという説明がありましたが、それこそシカゴでの講演と重なる話なのでそこはスルーして、シカゴでの講演で「我々は何をすべきか」という話で纏めていた部分を敷衍した部分から参ります。
『欧米では、今回の「信用バブル」を機に、規制の枠組みを見直そうとの機運が高まっています。背景として、1990
年代以降に顕著となった金融規制緩和の動きがあります。』
んでまあその具体的な話はスルーしまして。
『近年、銀行規制の外にある金融業者の存在、いわゆる「影の銀行システム」の役割が大きくなってきました。影の銀行システムの興隆を代表するのはヘッジファンドやプライベート・エクイティ・ファンドです。(あと投資銀行も含まれるでしょうという部分を割愛ます)破綻してもシステミック・リスクを引き起こす危険がないならば、影の銀行システムが大きくなること自体、特に問題はありません。』
『しかし、(具体的な現状の説明は引用割愛)影の銀行システム自体がグローバル金融システムに及ぼす影響も拡大しています。今回の金融危機は、こうした影の銀行システムについても、何らかの規制が必要であるということを示唆しているように思われます。』
まーそうですかね。
『続いて、バーゼル合意(BIS規制)と金融危機の関連について、自己資本比率規制のプロシクリカリティを重要な論点として挙げておきたいと思います。景気が好い時には、ダウンサイド・リスクが低下するのに対応して所要自己資本額が小さくなるため、銀行貸出が増加し、景気が加速されます。逆に、景気が悪い時には、ダウンサイド・リスクが増加するのに対応して所要自己資本額が大きくなるため、銀行貸出が減少し、景気に下押し圧力がかかります。このように、自己資本比率規制には、景気循環を増幅する作用があるとされています。今回の金融危機でも、この自己資本比率規制のプロシクリカリティが、景気の落ち込みを激しくしていると批判されています。』
これもそうなんですけど、それを言い出すならそもそも論として「格付けによって所要自己資本額が増えたり減ったりする」というバーゼルUで導入されるようになった概念をさっさと取っ払って頂きたく存じますと思うのでございますけれども。だいぶ前にも悪態ついたと思いますが、「中小企業やら個人向け貸出のプールは分散が効いているのでBBB格付けの大企業向け貸出よりもリスクウェイトが低い」というような最新の金融工学を駆使した不思議基準を持ち出すような理屈捏ね回しワールドを根本的に改善した方が良いのでは無いかと存じますけれども。いやほんとマジで。
○金融システム安定化の為の「3つのC」
シカゴでの講演に重なる部分があるのですけれども。
『ここからは、個別金融機関の健全性を維持するための諸規制から金融システム全体の安定性を維持するためのセーフティ・ネットまで、最近の議論をトレースしながら、若干の理論的な考察を行っていきたいと思います。その際、いわゆる「3
つのC」の議論が参考になると思われます。3 つのCとは、Comprehensive、Contingent、Cost-effectiveの頭文字をとったものです。』
で、脚注によりますと、この「3つのC」の議論はRajan, R. G. (2009), “Cycle-Proof
Regulation,” The Economist, April 8,2009.を読めということのようですので、まあご参考までに。
『Comprehensiveな規制とは、「包括的な規制」という意味ですが、「抜け穴の無い規制」と言った方が分かり易いでしょう。あらゆる金融機関に網をかけておかなければ、規制が強化されればされるほど、規制の厳格なところから緩やかなところへと資金が逃げてしまいます。』
『Contingent な規制とは、直訳すると、「状態に応じた規制」です。具体的には、次のようなことがイメージされています。システミック・リスクの予防の第一歩は、好況期におけるオーバー・コンフィデンスを防止することです。しかし、実際にシステミック・リスクが顕現化した場合には、規制が景気の足を引っ張ることとなっては困ります。コンフィデンスの喪失が激しい場合には、コンフィデンスを回復するための政策的なインセンティブ付けが必要かもしれません。このように、好況期に厳しく、景気後退期に緩くなる規制が望ましいという基準です。』
ということですが、シカゴの講演では、「我々の規制はその逆で好況期に緩く、景気後退期に厳しくなる傾向がある事に注意しないといけない」と指摘してもいますです、はい。
『最後は、Cost-effective な規制です。この概念は、規制を評価する際に重要です。これは、規制として同じ効果が得られるならば、最も安価な方法を採用すべきであるという基準です。』
という基準の下に、バーゼル銀行監督委員会などで議論が行われていますという説明がありまして、その中身としては「事前的な施策」と「事後的な施策」という観点で切り分けて議論しているということで、その議論内容に関してもこちらの講演では説明しているのですが、長くなりますので興味のある方は講演本編を読んで味噌と手抜きざます。
一応あたくしが怪しい解釈をしますと、まず問題として自己資本規制のプロクシカリティーをどうするのという話があって、それに対してContingentな規制をどう設計するのかって話になるのですが、Contingentって口で言うのは簡単ですけれども、まー具体論に落とすのは難しいですねっていう状態になっています。
でね、その中で西村副総裁が「興味深い論点」として紹介しているのは、流動性リスク管理の観点から、資産と負債の長短ミスマッチを考慮に入れるのはどうよという論点なんですな。
『流動性の問題に関して興味深い考え方がありますので、参考までに、ご紹介しておきたいと思います。今回の金融危機を流動性危機という観点から見たとき、ファンド等のバランスシートにおける行き過ぎた長短ミスマッチが原因であったことは間違いありません。したがって、金融危機を防ぐためには、そうした長短ミスマッチを解消するインセンティブを生み出す規制が望ましいと考えられます。この点について、資産・負債のマチュリティ・ミスマッチを所要自己資本額にリンクさせることは1
つの解決策を提供することになります。』
これまた脚注を見ると元の論点はBrunnermeier, M., A. Crockett, C. Goodhart,
A. Persuad and H. Shin (2009), “The Fundamental Principles of Financial
Regulation,” International Centre for Monetary and Banking Studies &
Centre for Economic Policy Research, Geneva Report on the World Economy,
Vol. 11, 2009.にあるようで、そっちではもっと詳しい話があるので、そんなにざっくりとした話ではないのしょうけれども、まあ簡単にツッコミを。
えーっとですな、流動性という観点で言えば資産・負債のマチュリティ・ミスマッチ管理も勿論大事なのですけれども、実際に現場でその手の事を見たり聞いたり触ったりしておりますと、負債デュレーションが短いとどーにもならんというのもその通りではありますけれども、資産サイドそのものの流動性がどうにもならんとミスマッチが小さくても問題になるんじゃネーノと思うのであります。何かこの議論を負債サイドの流動性って所を重視しすぎちゃいますと、またぞろ「マチュリティーミスマッチは大きくない上に格付けは高いけれども、途中売却すると死ぬほど穴があくので満期保有以外での流動性皆無な高利回り商品」みたいな最新の金融工学を駆使した新商品が登場するんじゃネーノという杞憂を今のうちからしておきましょう(^^)。
でまあ事後的な施策は今まさに各国がヒーヒー言いながら(かどーかは知らんが)実施しているまさにそのことでありますという感じでした。
○新しいセーフティーネットの話
シカゴでの講演ではさらっと説明してたんですけどね。
『今回の金融危機で如実に示されたのは、金融危機の状況に至ったとき、つまりマクロ・システミック・リスクが顕現化したとき、銀行が資本増強を行うことが著しく難しくなるということでした。逆に言えば、金融危機のとき銀行の資本増強を容易にするようなセーフティ・ネットを作っておけば、金融システムの安定化に大きく貢献します。この点に着目したのが、これから説明する新しいアプローチです。』
ということで、んじゃどういうアプローチなのかと言いますと・・・・・
『ここでは、まず通常の保険の発展形である民間の「資本保険」(Capital Insurance)の考え方を最初に紹介したいと思います。次にその問題点を指摘しつつ、それを克服するものとして、いわゆる「パブリック・プライベート・パートナーシップ」の形の資本保険の可能性を紹介します。さらに、これら以外にも、様々なスキームが提案されていますので、それらのうちいくつかを取り上げて、ご紹介します。』
『これらのスキームは、危機の下で必要が生じたときにできるだけ市場にインパクトを与えずに資本増強を可能にするセーフティ・ネットであり、いわゆる「条件付き資本」(contingent
capital)と総称することができます。』
ということで、この説明が後半3分の1位を消費する内容でして、これまた詳しく読むと「へ〜」って感じなのでご紹介したらしたでオモロイというか、金融機関の中の人的には読んでおいた方が宜しいんじゃないの(いやまあ先刻ご承知の話でしたらすいません)というお話なんですけれども、この紹介してるだけでもエライコッチャなので本日は全部スルーしますが、具体的には資本保険の話、資本保険を拡大して包括的に網を被せつつ公的関与も行うパブリック・プライベート・パートナーシップの話をメインにおきまして、その他のスキームとしてはCatastrophe
Bondやら、Reverse Convertible Debenturesという債券とか、Margin Call on
Shareholdersという契約やらという話なのですが、これまた上記URLを読んで味噌と手抜き(じゃなくて引用してると長くなりすぎるので勘弁)。
○で、結論部分ですけど
シカゴでも同じ話をしてましたね。
『現在、欧州を中心に、銀行規制を強化しようという主張が勢いを増しています。こうした主張は、規制が十分強ければ、今回のような世界的金融危機は発生しなかったはずであるという考え方に基づいています。しかし、規制を強化すれば、それだけで将来の金融危機が防げるのでしょうか。この点について、誰も証明を与えたわけではありませんし、そもそも、学界を含めて、十分な議論が行われたわけでもありません。昨今の銀行規制を取り巻く議論の多くは、危機の再発を防ぐためには、規制の強化が必要であるという前提を批判的に検討することなく受け入れているとの印象が否めません。』
ということで、規制強化の副作用として、過度な規制強化は金融仲介機能の向上および、金融イノベーションの進化を妨げるという論点から、一方的な規制強化論に対して批判をしておりますが、そこの引用はスルー致します。これは一昨日ご紹介したシカゴでの講演と重なる部分かなって感じでした。
ま、金融業界に必要なのは規制の強化というよりは強欲の規制あるいは行動規範の確保って感じじゃねえのかと思いますけどね、金融って達観しちゃえばそれ単独で何らかの価値を生むものじゃなくて、実物経済によって作り出された付加価値の上前をはねるものでしょ。まあ私が言うのも変ですけれども(←大門先生の名言のマネ^^)。
2009/05/19
お題「市場雑感/またまた西村副総裁講演(明日に続く予定)」
やる大矢監督が解任って・・・・・=⊂⊃=⊂⊃=
#ほうほう、GSやMSがもう公的資金返済とな
○何か知らんが金余り
昨日、というかここの所そーゆー傾向なのですが、何かこう金利物に向かう予定の資金が沸いてきたって事なのか知りませんが、妙に相場堅調でござるの巻。いやまあ今日米債が10毛甘(10年財務省証券ベースで)とかで帰ってきてるので、5年国債入札のある今日その雰囲気が持続するのかどうかワクワクテカテカという所ですが。
まー何か長いところも堅調っぽく動くのですけれども、短い所がこれまた金余るの巻になってまして、短期国債のイールドはカーブがいい感じで潰れてくる(1年が0.22%で3か月が0.20%とかいう感じですからねえ)わ、大型連休前にちょっと上昇しかかったCP発行レートも低下してますなというお話をしてましたが、ここもとは更に低下して、AA格銘柄とかになると9月末越えのプレミアムまで剥がしに行く勢いになっとります。特に短い所はオペ効果効き過ぎで色んなプレミアム剥がしに行くのは良いのですが、市場(というかCPディーラー)がオペ前提でレート形成しちゃってるので、オペ対象かどうかが最初の判断材料になってしまい、価格発見機能もへったくれもないという状態になってるのは何だかなあ感もございますが、まあシャーナイナイ。
まあ背景はよーわからんとしか申し上げようが無い(あほです)が、運用資金が妙に沸いて出て来た背景としては、期初から財政拡張だ株高だとか言って様子見地蔵になっていた人たちがそろそろ四半期の半分まで来たのでケツに火が点いてきたとか、リスク回避姿勢で退蔵モードだった資金がストレステストやら何やらで金融不安解消モードになって出て来たとか、ここもとずーっと継続している各国による質的緩和(信用緩和)政策およびそれに付随して結果的に量的緩和政策にもなっている効果がここに来て出て来たとか、まーそんな程度のことしか思い浮かびませんけど、実際の所はどうなんでしょ。
・・・・・となりますと、この金余り状態がどの程度の持続性を持ってどの程度の規模で継続するのかというのが今後の注目なのですが、調子に乗って公的資金返済という「出口政策」に入ってきてるというのは物凄く良い傾向なのか、それとも早まったフライングなのかは何だか微妙な気がする。米国10年財務省証券利回りも3%台定着を普通に放置プレーだし、どうなんでしょうかねえ・・・・・
ま、とりあえず目先の5年国債入札は米債のお蔭で0.8%オーバーパーとかいうのは避けられるんでしょうから入札が今日で良かったですねという感じですし、2か月短期国債入札はどっからどう見ても0.20%を切るレベルでどうせ堅調なので、これはこれで今日も順調に金余りってことなんでしょ、とだいぶ投げやり(笑)な相場雑感でした。
○西村副総裁の不良資産問題講演(長いので明日に続く予定)
日本金融学会における講演ですが。
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0905c.pdf
表紙込みで25ページもあるのでおお!と思ったのですが、そのお題が『金融システムの安定性とマーケット・コンフィデンス』というので何かアレな予感がした訳ですが、これがまた案の定昨日ご紹介したシカゴ連銀でのスピーチの詳細版が前半で後半が発展版でございました(^^)。
昨日ヘタクソ英語力を恥を承知で晒したあたくしはナンダッタんですかという話になるのですが(苦笑)、まー昨日と同じような話になりますので25ページあります(西村さん基本的に長いのですよ。西村さんと須田さんと水野さんは講演要旨がやたら長い3巨頭^^)ので前半部分をとりあえずご紹介。ついでに昨日のあたくしの訳間違いも見つけた(大汗)のでその訂正も。
で、講演の冒頭にある話が昨日ご紹介したシカゴ連銀での講演の最後の「では我々は何をすべきか」という話になって、その答えとしての案が講演の後半という感じです。
『各国政府・中央銀行は、足許の危機管理に奔走する中、G20 首脳会合をはじめ、様々な場で、危機の再発を予防する施策を巡って、議論を戦わせています。しかし、そうした多くの議論は、規制を強化することに主たる関心が向けられており、既存の規制の有効性を再検討したり、規制を強化することの副作用を考察することが、やや後回しになっているという印象を受けます。』
『本来、金融システムの安定性維持を使命とする私どもがなすべきことは、これまでの政策が、金融機関を正しい方向に導いてきたのかという点を虚心坦懐に反省し、誤りがあればこれを正し、金融機関があるべき方向へと再び歩み始めることを支援することにあります。規制は、決して、金融業の成長を止めるものであってはなりません。規制は、内的、外的ショックを速やかに吸収する柔軟な金融システムの構築を最終的なゴールとすべきです。』
ということで、規制緩和的な言い方だったりしますし、講演の後の方では新たなセーフティーネットの資本増強ツールの話をしてたりするので、何か割と新しモノ好きなんじゃネーノ(まあ以前書いてた本でもそんな雰囲気を感じましたが)という所はちと微妙にアレなものを感じない訳でもなかったりするのですが、まあそれはそれとして。
○「信用バブル」発生の要因
学会での講演らしく、この「信用バブル」という所にわざわざ括弧をつけてまして、おまけに脚注までつけているのがチャーミング(^^)。
『 「バブル」という言葉は、本来経済学的に厳密に定義して使うべきであるが、政策の議論等にみられるとおり、曖昧に使われることが多い。ここでは、厳密な定義ではなく、通称ということで、「信用バブル」と括弧付けにしておくことにする。』
まあそれは兎も角として、「信用バブル」拡大の素地と背景に関しての説明部分になるのですが、素地は昨日ご紹介した講演と同じで、背景も似たような話になるのですけれども、背景のところで論点を2つに絞っているのでそっちをご紹介。
『もちろん、グローバル・インバランスのみが、経済のファンダメンタルズからかけ離れた「信用バブル」を生成する訳ではありません。ファンダメンタルズからの乖離が生まれるには、サブプライム住宅ローンから証券化商品を組成する際のプロセスに内在する問題がありました。この点を証券化ビジネスの拡大とエージェンシー問題という観点から読み解いていきましょう。』
ということで証券化ビジネスの拡大という観点。
『証券化ビジネスの第1 の特徴点は、「複雑化」という現象です。今日の証券化商品は、構造が非常に複雑になりました。(その過程割愛)しかし、このように何度も合成と分解を繰り返していると、リスクの構造が複雑になり過ぎて、リスク量が容易に把握できなくなります。』
そらそうよ。
『リスクがはっきりしないのなら、買わなければよいのですが、今回は、多くの投資家が、証券化商品に付けられている格付会社の格付を過信して、そうした複雑な証券化商品に次々と手を出していきました。』
いやまあそれもそうなんですけど、バーゼルUだの何だのでこういう商品に対するニーズが必要以上に高まったというのもあると思うんですよ。そらまあ末端のいちディーラーだったら「そーゆー判らない商品やるよりもプレーンな国債や社債のディーリング担当やってますわ」って言えますけど、そうばかり言ってられない立場の人たち沢山いますし、その間に何とか金融新聞やら何とか公社債情報辺りが「高格付けCDO投資で超過利回りを稼ぐ」とか金融工学を駆使した新商品の煽りじゃなかったご紹介記事を書くと偉い人から御下問があったりするのでなあ・・・・
『次に、「機能分化」と言う現象を証券化の特徴の第2 の点として挙げておきたいと思います。(途中割愛)こうした住宅ローンの貸付けから証券化商品の販売までの一連の工程は、OTD(Originate
To Distribute)モデルと呼ばれています。OTD モデルの問題点は、モラルハザードを誘発しやすいという点です。モーゲージバンクは、住宅ローン債権を売却し、リスクを移転できるのであれば、住宅ローンの審査を真剣に行うインセンティブはありません。本来なら住宅ローンの申込者の信用度が基準に達していないようなケースでも、融資が実行されたであろうことは、容易に想像できます。これは、典型的なモラルハザードであり、「信用バブル」を生み出す素になったと考えられます。』
さいですな。で、結果どうなったかというのは皆様ご案内の通り。
『こうしたプロセスを経て、巨額のサブプライム住宅ローン関連の証券化商品が、市中に出回ることになりました。しかも、最上位の信用度を表すAAA
の格付を付与された商品が大量に組成されたのです。驚くべきことに、AAA 格を付与された証券化商品の利回りは、AAA
格であるにも拘わらず、同じくAAA 格である米国債の利回りを大きく上回るケースが珍しくなかったようです。』
前からあたくしの駄文をお読みの方なら大体ご承知かと思いますが、あたくしはとにかくプレーン商品大好きな人なもんで、証券化商品だの金融工学を駆使した商品だのというのを苦手とする(いやまあ一応エキゾチックオプション程度のものでしたら担当してたこともありますよ、念の為申し添えますが^^)もんで、CDPOだか何だか忘れましたが、短期物のこの手の商品とかが結構好評ですなというような話を知るのがかなーり遅かったのですけど(大汗)、スキーム見たときに「これって償還までもってりゃ確かに大丈夫だけど途中で売れないじゃん」とか思った(というか駄文で書いた)覚えがあるんすよね。
『市場が正常に機能しているならば、こうした価格の歪みが長期にわたって維持されるということはありません。しかし、実際には、銀行も、格付会社も、投資家も、監督当局も、誰もこうした現象に異論を申し立てませんでした。おかしいと思わなかった人はもとより、おかしいと思った人も、見て見ぬ振りをしてきたのです。』
まあ総体としてはそうなるんでしょ。実際は判ってて上手く撤退できた人もいるんでしょう。GSとか究極的にはそうなんじゃないですかね。で、本編と関係ない余談になっちゃいますけどバブルの時とかだって、まあそりゃ全部逃げ切りは無理だったと思いますが、てめえらが突っ込んでいる不動産融資がどういう状況なのかある程度判って突っ込んでいった銀行とそうじゃない銀行とがあったという都市伝説は以前から言われていましたよね〜。
『こうしたおかしな状況が、なぜ長期間にわたって続いたのでしょうか。この点について、組織の中での人々の一種の「責任回避」の姿勢、英語の文献でしばしば言及されるPlausible
Deniability ── もっともらしい否認根拠── という組織構成員の行動が、重要な役割を果たしたという議論があります。』
昨日紹介した中にもこのフレーズがあって、あたくしの訳が間違ってましたね(恥)。
『証券化商品の売り手は、自分の商品には問題がなかったことの理由づけとして、他の業者も同じような金融商品を販売していて、誰も問題にしなかったのだから、と免責を主張しています。他の業者と同じく自分たちは商品価格を過去の実績と経験に基づいて計算していたのであり、さらに、格付会社のお墨付きまでもらっていた、つまり今回の価格下落は誰も予想し得なかったのだから、仕方がない、と釈明しています。』
『実は、証券化商品の買い手の機関投資家も、似たロジックで自分たちが買ったことの正当化をしています。曰く、他の買い手も同じような金融商品を買っていて、誰も問題にしなかったのだから、と釈明しているのです。このPlausible
Deniabilityが、証券化商品による「信用バブル」の発生とそれが長期間にわたって継続した1
つの理由と考えるのは自然に思います。』
いやーまったく耳が痛いですな、あははははははは。そして思いっきり市場の楽観も指摘していましてですな。
『このような「信用バブル」の生成に加え、今回特徴的であった点として、ほとんどの市場参加者が、今回のような深刻な金融危機は実際には起こらないと思いこんでいたことを指摘できます。市場参加者は、なぜそのように考えるに至ったのでしょうか。それには、「大いなる安定」(“Great
Moderation”)という現象が関係しているように思われます。(その内容は言うまでもないので割愛)』
で、金融政策に対する過度な信頼も原因という指摘まで(^^)。
『こうした錯覚は、米国の中央銀行であるFRB のグリースパン前議長の名前を冠した「グリーンスパン・プット」、つまり、たとえ金融危機が起こっても、グリーンスパン前議長やFRB
が金融政策で何とかしてくれるに違いないという期待によって強化されたという見方があります。グリーンスパン・プットが本当であるならば、市場参加者にとって、金融危機のような稀にしか起こらないリスク、いわゆるテール・リスクは発生しないという前提でリスクテイクを行うことは合理的です。つまり、市場で形成されたオーバー・コンフィデンスは、金融政策に対する市場参加者の思い込みが原因であったとも考えられます。』
金融政策は23世紀から来た未来型ロボットから出てくる道具じゃないのですよ、という所でしょう。まーこの手の話は皆様におかれましては既に耳タコだとは存じますが、例によって俺様備忘録的には引用しておきたかったので勘弁です。
ということで、講演のマクラの部分だけで時間と量が一杯になったので、今日はこれで終了。本論に全然入らないでどうもすいませんm(__)m
2009/05/18
お題「西村副総裁の不良債権関連講演」
なんかさ、この時期にインフルエンザで休む生徒が沢山出るとかいうのが普通無いのに「海外渡航歴が無いから」でスルーする学校ってアホなのか事勿れ主義なのか何でも機械的にしか判断できなマニュアル人間の集団なのか・・・・・・・
という話は兎も角として、ちょっと前のネタで恐縮ですが、西村副総裁のシカゴ連銀でのスピーチから。
http://www.boj.or.jp/en/type/press/koen07/ko0905a.pdf
シカゴなんで当然英語版なのですが、表紙と図表を含めて全部で8ページになります(本文は6ページ)。
“The Past Does Not Repeat Itself, But It Rhymes”: Four Lessons Learned
from the Financial Crisies
ちゅうお題のスピーチです。ではその4つのご教訓とは何かと言いますと・・・・
○不良債権問題の時間的速さと広がりの加速度合いについて
まずは『1. Lesson One』です。講演の題名にもなっている言葉はMark Twainの言葉だそうで。
『The first lesson is encapsulated in Mark Twain’s famous line, “The
past does not repeat itself, but it rhymes”. It is now fair to say that
many thought Japan’s so-called “lost decade” was a problem peculiar
to Japan, and also, by learning well from that problem, it was not going
to be repeated elsewhere. Unfortunately, this has turned out not to be
the case.』
ちゅうことで、日本の不良債権問題と米国の不良債権(資産)問題の類似点を説明してまして、不良資産が発生して負のフィードバックが生じてその間に各種政策が実施されましたという話をしています。で、そういう事情は似ているけれども、その「時間的なスケール」と「加速度」が違うって話を日米を比較しながら(その図に関しては上記URL先にございます)、当初は米国の1か月が日本の3か月だったけれども、最近は米国の1か月が日本の5〜6か月になっているという説明をしています。
『What made the difference to the time scale and acceleration? Innovations
and structural changes over the last two decades have no doubt played an
important role, namely globalization, advances in information communication
technology, and financial innovations and sophistication. Indeed, compared
with Japan in the 1990s, the current crisis is far more complex, interconnected
and global.』
経済のグローバル化やら通信技術の発達とか金融技術の発達とかによって時間も速くなったし加速度も高まりましたと。ところであたくしの英和辞典みたらsophisticationって洗練とか精巧の他に詭弁って訳語もあったんですが(^^)。んでまあその結果日本の不良債権問題よりもはるかに世界的に破壊力抜群で広がる結果になったという事でした。
○一旦問題が起こると止めるのは容易ではないという話なのですが・・・・・
次は『2. Lesson Two』です。
『The second lesson we have learned from the crises is that once an adverse
feedback loop has been started, it is extremely difficult and costly to
stop it and to restore confidence.』
危機により負のフィードバックが一旦発生すると、それを止めて市場に発生している信用を回復するのは困難だというのが最初のまとめ部分。ここはまあFRBが従来言ってた(さすがに最近はそんな話はよーせんと思いますが)「資産バブルが崩壊した時には適切な金融政策で危機の拡大を防ぐことができる」というお説に対する話をしているようですが、まーその「適切な施策」ってのが難しいって話を日本を例に出しているのでありまして(^^)。
『This was the essence of Japan’s experience; a series of fiscal stimulus
packages and an accommodative monetary policy could not generate sustained
economic growth, as the financial system was severely impaired and market
confidence continued to be eroded. Injections of public capital in 1998
and 1999 were also, in retrospect, not sufficient to convince the market
to jump-start the economy.』
後付で見ますと、日本で打たれた各種施策も不足であったという事ですが、んじゃあ何で日本は回復したかという話をしているのですが、ここの部分に関してはちょっとそれはなんだかねというツッコミをしたくなる説明が。
『So when and how did Japan’s adverse feedback loop stop? With hindsight,
perhaps the turning point was October 2002, when the Financial Services
Agency urged major banks to halve their NPL ratios by the end of March
2005, and pledged to monitor their efforts continuously and rigorously.
The Bank of Japan also urged banks to carry out more rigorous evaluations
of NPLs, and to dispose of them promptly based on those evaluations.』
金融庁が2002年10月に金融機関に対して不良債権の厳格な評価と早期処理を促したのが悪化のスパイラルを止めたという説明なんですが、その辺りから地獄の1丁目が地獄の3丁目位になったような記憶の方があるんですけど・・・・・・
『In retrospect, the timing coincided with the reflection point at which
the economy had just passed the trough of the 2001 recession, and began
to recover, thanks to strong export demand due to the vigorous world economy.』
ということで、この時期が2001年からのリセッションからの変曲点だというお話なのですけれども、それは指摘のように海外需要の引っ張りと、従来のシバキアゲからいきなり政策転換したりそな銀行への公的資金注入方針決定(03年5月)からじゃないのかなあという気がするんですけど。
『This was also the time when substantial progress was being made in corporate
restructuring with respect to the so-called “three excesses”: debt, employment
and production capacity. This restructuring helped the final pick up. In
this way, the Japanese economy was, in general, out of the woods around
2005, although some regional economies lagged behind, having benefited
less from the global growth.』
まー確かに3つの過剰が解消されたのも回復の際に足を引っ張らなかったので結果としては大変に結構な話だったのですが、何かシバキアゲ上等みたいな説明に見えるのはちょっと???感がするんですけどねえ。
というか、資産の時価評価を誤魔化・・じゃなかった一部先送りみたいなことをしている(その上「負債の時価評価」という訳判らん事までして会計上の収益を捻り出す方は厳格(笑)に実行してますがな)米国でそーゆー話をするのは何かのギャグか痛烈なイヤミなのか・・・・・・(謎)。
○不良資産問題の政策対処を早期に行うのは困難です
続いて『3. Lesson Three』です。
『I will move on to the third lesson and ask the following question: “Is
it possible to solve problems with troubled assets at an early stage?”
I find the answer is unfortunately negative: “It is very difficult”.』
まーそりゃそうだわなという話ですが、その理由としては、不良資産の価格が訳判らん時には「とりあえず様子見」が最善の選択肢になるので、動きが遅くなるし、ミクロ的に一部の参加者が動いてもてめえの所の問題解決はさることながら、全体の問題が解決される訳では無い(様子見地蔵が多いから)という話をしています。
『This is because when the valuation of troubled assets becomes highly
uncertain, in the way Frank Knight described here in Chicago eighty-some
years ago, a “wait and see” strategy may be the natural reaction for
both sellers and buyers. So, private initiatives alone may not be sufficient
to solve the problem. We have a list of such private attempts, with the
fate of the M-LEC among them, as well as the Cooperative Credit Purchase
Corporation in Japan in 1993.』
93年の日本って共同債権買取機構の話ですね。でまあ問題がややこしくなって市場が疑心暗鬼になると問題解決が更に難しくなってコストも掛かるし、そもそも問題が小さいと思われているうちは金融機関が当局の介入を嫌がるという事もあって、不良資産問題の早期政策対処を行うのは難しいですよって話を次にしていますが、引用は省略。
○当該資産に対する市場の信頼が悪化すると悪化が過剰に進む
んで4つ目のご教訓は『4. Lesson Four』です。
『What is the core of the problem? Lesson Four of the crises is that it
is the difficulty in getting “reasonable estimates” of losses and a “reasonable
pricing” of troubled assets, on which both sellers and buyers can agree,
that leads to erosion in confidence. It is this erosion in confidence which
then leads to an “excessive” aversion to uncertainty.』
ということで、売買双方が納得する価格やら損失の推定が難しくなるとその間に信頼が悪化し、不透明さが更に高まる事によって今度は悪化に過度のバイアスが掛かってしまいますというお話。で、現下の信頼悪化にはどのような要因があるかという考察をしていまして。
『Firstly, troubled assets have had macro-systemic effects, including unprecedented
levels of downside-correlation.』
『Secondly, these troubled assets’ losses were dynamic and evolved over
time. The “estimated losses” increased continuously as the economy slid
into stagnation. Valuation of these assets, based on pre-crisis norms,
grossly and consistently underestimated the losses, leading to an erosion
of confidence in valuation methods and ultimately in the solvency of the
institutions with these assets.』
規模でも速度でも想像を遥かに上回る下方スパイラルが発生したのと、それ以前の楽観が背景にあったちゅうことでしょうか。で、もう一つは今般の不良資産商品の複雑さという話ですかね。
『Moreover, troubled assets were very heterogeneous, and the erosion of
confidence in existing valuation methods set an adverse selection mechanism
in motion, leading to a marked deterioration in market liquidity.』
で、信頼の悪化が過剰になる流れをまとめるとこうなりますって話を最後に。要は急に想定範囲を超えた訳判らん状況になると、参加者が皆揃って「最悪の状況」を想定して動く為に信頼の悪化に拍車がかかるって話をしているかと思います。
『Once they lose confidence, these investors face “unknown unknowns”
that they never dreamed of before. They then become “excessively” averse
to uncertainty surrounding the future prospects of financial institutions.
That is, they make decisions based on the “worst possible case scenario”
and try to minimize the losses they would incur in this worst possible
case. Their valuation of these financial institutions thereby turns out
to be “excessively” pessimistic, and they become very sensitive to any
news that supposedly has some bearing on the worst possible case scenario.』
『Moreover, they tend to “wait and see,” until they feel more confident
about the valuation of troubled assets. The result of these factors and
their erosion of confidence is a significant undervaluation of financial
institutions at the trough of an economic downturn.』
ということで。
○んで最後ですが、じゃあ何をするのかという話
で、難しいと言ってるだけではしょーがないので、危機が起きる前に政策当局はどのような点を注意しながら規制やら制度やらを組まないといけないのかという話ですが。
『Firstly, we should avoid any “pro-cyclicality” of reforming zeal, such
as strengthening regulations in the downturn when it may further exacerbate
the slump, or deregulating the industry in the upturn when vigilance is
called for. Past experience, as exemplified in Lesson One, suggests we
are very much prone to this tendency.』
規制やらなんやらというのがどうも悪化時には悪化を強めるような規制強化へ、本当に用心しないといけない楽観時には規制緩和へと動きがちなのが過去の経験によるとそうなっているので、それを避けないといけませんねという話ですか。
『Secondly, we should also bear in mind that no regulation is perfect.
The origins of financial crises often lie in financial institutions’ regulatory
arbitrages and investors’ complacent behavior based on “plausible deniability”.
Also, we live in a dynamic world and are always subject to innovations
and structural changes so that, as we have just learned, it is virtually
impossible to identify and eliminate in advance all possible causes of
financial distress.』
で、どのような規制も完全ではないという指摘の次にあるのが「その通りですなあ」と思う指摘でして、金融危機問題が起きる発端にあるのは「規制のアービトラージ」やら「投資家の自信満々」による行動やらであるという話。今回で言えばバーゼルUにおいて格付けを重視しすぎた結果、表面上格付けが高く、高利回りという魔法の商品が出来たことですし、まー別に金融システム関係ないですけれども、同じくバーゼルUで言えば日本の15年変動利付国債なんかもさよですわな。
追記:Plausible Deniabilityっていうのは別の所で西村さんがこのように言及しているのでそういうことなんでしょう。あたくしイマイチ良くわからんので適当に訳しちゃいましたすいません。詳しくは19日のドラめもんで。
『この点について、組織の中での人々の一種の「責任回避」の姿勢、英語の文献でしばしば言及されるPlausible
Deniability ── もっともらしい否認根拠── という組織構成員の行動が、重要な役割を果たしたという議論があります。』
『Thus, thirdly, we should prepare for the conceivably worst case in “normal”
times, when confidence is still maintained. Lessons Three and Four show
the fundamental problem of the financial crises is the difficulty in raising
capital when it is most needed, because of the adverse feedback loop and
erosion of confidence.』
『It is worth exploring the feasibility of macroeconomic pre-committed
or pre-paid “safety-net” schemes to complement ex-ante regulations. In
this regard, contingent capital schemes and their variants are particularly
worth exploring when designing regulatory reforms for macro-systemically
important financial institutions.』
まあそうは仰いますが、平常時っていうのは「資本の効率が悪いからダメ」だの何だのとダメ出しされる訳で。急に資本の充実とか言われましてもっていう感じはするのでありましてですなあとは思いますが、規制当局もそういう意味では平常時にあまり金融機関に頑張らさせ過ぎないようにして頂きたく存じますが。
で、最後にこれらの取組みは民間だけでは難しいので、当局の関与も必要だし、そうなった場合には制度タダ乗り問題を防がないといけないという話を指摘してスピーチをまとめております。
#ということでひたすら引用という週初らしい手抜きバージョンで恐縮でした
2009/05/15
お題「白川総裁のロンドンでの講演」
CPのレートとか短国のレートとかもそうですし、債券市場もそうなんですが、何かどこから金が沸いて出てきたのか知らんが昨日は妙に買い買いっぽい感じだったんですが、あれは一体全体どういう流れなのやら。
・・・という話もしたかったのですが、この講演だけでお腹いっぱいでございます。
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0905b.htm
ロンドンでの講演の日本語訳なので英文読むのが正しいありかたという説は少々ございますが、当然ながら日本語版で勘弁(^^)。
○分量は多いのですが中身は中々
PDFで本文16ページありまして、1ページ目が表題で最終ページが脚注なのでファイルそのものは18ページという量なのですが、中身は白川総裁が最近得意とする、というか米国やら英国やらで絶賛大問題になっている金融危機問題に関する講演、というか白川ゼミって感じ。ページ数多いので一瞬読むのどうしようかとか思いそうですけど、内容的にはスラスラと読めるんじゃないかって所です。
・・・・と書くと話が終わってしまいますので、中身をかいつまんで読んで見るの巻。内容的には重要な論点に次々と言及してて、正直言って要点紹介ってのがちと難しいので、出来れば全文ご覧になることを推奨致したく存じますです、はい。では参ります。
○政策当局が事態解決に万能だと思うのは・・・・・
『3.謙虚に歴史の教訓を学ぶことの大切さ』って小見出しの所から。
『歴史を振り返ると、金融危機は繰り返し発生してきました。(事例紹介部分割愛)こうしたエピソードから分かるとおり、我々は、自己満足に陥らないように、謙虚である必要があります。』
『より具体的には、以下の2つの思い込みに陥らないよう注意しなければなりません。思い込みの1つは、良好な経済環境は将来に亘って継続するという予想であり、もう1つは、バブルが破裂しても、事後的に政策当局が積極的な金融政策や財政政策を行うことで適切に対応できるとの見方です。』
先日もNYで似たような話をしてて、「BISビューキタコレ」とかコメントしましたけれども、この部分ではどちらかといえば「事後的に適切に対応すればバブル崩壊しても大問題にはならないっていうのは傲慢な考え方なんですよ」ってニュアンスになってまして、BISビューキタコレというよりは金融財政政策にも限界があるっていう話なんじゃないかなあと思います。ま、そーゆー点ではバーナンキさん(現在のバーナンキ議長というよりは以前のバーナンキさんですかね)的なある種の政策万能的な発想に対して「当局は謙虚になるべき」って話なんじゃないかなあって思いましたです。
で、『全ての金融危機に共通していることは、良好な経済環境が続いた後に発生するという点です。』ということで80年代後半の例を挙げて説明していますが、まあそこは割愛して最近よく言われる『警告はしばしば無視され、パーティーで参加者が踊っている間は音楽にかき消されてしまいます。』というので締めてます。で、その続き。
『危機は繰り返し起きているにもかかわらず、我々はなぜ教訓から学ぶことができないのでしょうか。』
『第1に、記憶は薄れてしまうからです。先程申し上げたとおり、金融危機の下でも、わが国の金融機関は相対的に健全性を維持しています。幸運なことに90
年代の日本の危機からそれ程長い時間が経っていなかったため、経営陣はその際の痛みを鮮明に覚えており、複雑な形でリスクを取ることに対して慎重でした。ただし、将来も同様であるとは限りません。』
日本でも鮮明に覚えていなさそうな金融機関もあるような気がしますが(苦笑)。
『第2に、危機を直接経験せず、他国で起きたバブル崩壊やショックを傍観したり書物で読んだりするだけでは、危機の教訓を学んで必要な予防策を採ることは難しいからです。日本の危機について書かれた文献は多くありましたし、実際幅広く読まれていた筈ですが、その教訓が正しく認識されていたかどうかは疑問です。』
三洋証券をいきなりこかして大変な事になったという超有名事例があったのにポールソンにバーナンキと来たらリーマンを・・・・・・
『第3に、危機は毎回異なった形で現れるからです。日本の危機と現在の世界的な危機には、共通点が多くありますが、違いも多くあります。日本のケースでは、不良債権のほとんどは銀行の商業用不動産向け貸出であり、本質的には国内の銀行セクターの問題でした。これに対し、現在の危機はグローバルな性格のものであり、銀行セクターと資本市場の双方に跨っています。また、CDO
スクエアードやオフバランスシート・ビークルなど複雑な商品や仕組みの形を採っているため、危機の性質を複雑なものにしています。』
それなのにストレステストは随分と早いげほげほごほごほ。
で、さっきの当局は謙虚になるべき部分ですけど。
『さらに、現在の危機の前には、たとえバブルが崩壊しても事後的に積極的な金融緩和を講じることによって経済の急激な悪化は避けられる、という見方が政策当局や学界の中で広く受け入れられていました。ただ、私自身は懐疑的でした。しかし今や、危機が長期化するに連れて、こうした見方は急速に後退しています。』
『中央銀行の政策金利はゼロに近付き、バランスシートは大幅に拡大しています。信用緩和政策(credit
easing)を採用した中央銀行もあります。しかし、金融システムと実体経済の負の相乗作用は、一部には多少改善の兆しも見られるとはいえ、根強く残っています。先程述べたような無邪気で楽観的な見方を無条件に信奉することは今やできないでしょう。』
『要するに、政策当局や民間経済主体、学界は、いずれも謙虚である必要があるということです。金融と経済の間の相互関係やダイナミクスを完全に理解することは、大変難しいことです。』
お話の上で出来る出来ないというのと、実際にやろうとした時に出来る出来ない、またはワークするのかしないのかという点っていうのは別問題なのだっていう話なんでしょう。
○流動性リスク管理の重要性
その次の『4.国際金融システムの再構築へ向けて』って所から、最近の金融危機の状況に関して流動性リスク管理問題の重要性を指摘しています。
『なぜ、市場参加者や当局は、差し迫ったリスクに対する警戒を怠ったのでしょうか。なぜ、水面下の問題を発見してリスクを削減する措置を採ることができなかったのでしょうか。この点に関して私が重要と考える3つの点を指摘したいと思います。』
以下の説明はちと長いのですが、重要な論点が続いていて端折るのも難しいのでまんま引用させて頂きたく存じますです。
『第1に、今日の金融市場においては、資金流動性と市場流動性の双方を慎重に評価することが必要ということです。これには2つの側面があります。』
『1つは、流動性と自己資本の相互関係です。』
『たとえば、一部の証券化商品などの複雑な商品については、価格評価とリスクをカバーするために必要な自己資本の水準は、市場流動性と資金流動性の双方に依存しています。規模の小さい市場では、市場流動性が低下すると価格が急落し、銀行の収益や自己資本水準に対する下押し圧力となります。』
『また、主要なディーラーの自己資本が不足すると、マーケットメイク活動に制約が生じ、さらに市場流動性が低下することになります。つまり、所要自己資本の水準は、原資産の信用リスクだけでなく、市場流動性リスクの評価に大きく依存するということです。また、安定的な市場環境のもとで、市場参加者が似通ったポジションを積み上げることから生じるリスクも存在します。こうした状況のもとで、市場環境が悪化すると、皆がポジションの解消を急ぎ、市場の緊張がさらに高まる結果、価格の下落を引き起こします。』
上記の状況、日本の市場では証券化商品市場もそうですけれども、一番顕著にでたのは実は物価連動国債市場だった(今も続いてますが)かもしれませんね。規模の小さい市場の中で主要参加者の海外投資家が自己の資金流動性確保の為にポジションの解消に走ったことから元々低かった市場流動性が更に低下して市場の緊張が高まって・・・・の繰り返し。
『2つ目の側面は、長期の資産を短期の負債でカバーする場合の流動性ミスマッチです。このこと自体は銀行業に伴う根源的なリスクですが、危機の前の局面では過小評価されていたように思われます。』
『危機以前は、CP 市場やインターバンク市場は常に機能し、充分な流動性が確保できると想定されており、これが、たとえばSIVs
などでの大規模な流動性ミスマッチの拡大に繋がりました。AAA 格資産の価値評価は疑われることもなく、ほとんどリスクがないとみなされていました。市場規模や商品の複雑さに関係なく、必要になればいつでも売却してキャッシュを調達できるとの判断の下、流動性リスクが一層積み上がりました。』
これまた証券化市場だけじゃなくて、プレーンな市場でもマーケットメーカーの体力低下で資金流動性の低下が生じ、ドルベースの取引市場での流動性低下をカバーする為に他通貨市場に流動性確保の動きが生じて色々な市場に波及しちゃいましたもんね。
『第2に、レバレッジが積み上がるメカニズムと、その巻き戻しがもたらす影響を理解することが不可欠ということです。』
『市場の混乱が始まる前には、レポなどの伝統的な手法とオフバランスシート・ビークルや証券化商品といった非伝統的な手法の両方を通じてレバレッジが拡大していました。レバレッジ拡大の多くは伝統的な金融機関の外側で生じており、世界中の様々な投資家が保有する複雑な商品に内包されました。その結果、金融システム全体のレバレッジの水準や、一旦巻き戻しが起こった場合の悪影響の大きさについて、誰も正確に把握することができなくなりました。』
『第3に、分散投資とヘッジ戦略の効果を正しく認識することが重要ということです。』
『市場参加者は、完全には分散またはヘッジすることができないリスクも存在することを理解する必要があります。たとえば、住宅ローン担保証券(Mortgage
Backed Securities)は、全国的な住宅価格の下落といったマクロ的なショックから生じるリスクを回避することはできません。また、ヘッジにはカウンターパーティー・リスクやベーシス・リスクがつきものです。AAA
格の取引相手だからといってリスクがない訳ではありません。更に、極端なストレス時においては、ヘッジ戦略の効果は低下します。つまり、通常の市場環境の下ではヘッジされたように見えるリスクも、安定的な市場環境が崩れると、復活してくる可能性があるということです。』
これは全くその通りでございますが、一方で相変わらずバーゼルUでは「中小企業向け貸出は分散が効いているのでリスクウェイトが低い」とか(まあ政治的にそうなって理屈後付けの香りは思いっきりしますけど)いうお洒落な所要資本計算してたりする次第でありまして、正直バーゼルUをもうちょっと何とかした方が良いというか最初から作り直した方が良いのではないかと思う今日この頃。
ということで、次の話になるのですけれども・・・・・・
『グローバルな金融危機の原因は多面的であり、教訓や改善すべき点は少なくありません。既に他でも再三指摘されていることの繰り返しとなりますが、その教訓としては、@市場参加者によるリスク管理の改善、A市場規律を高める観点からのディスクロージャーと透明性の向上、B当局による規制の改善と監督の強化、C当局間の国際的連携の一層の強化などが指摘できます。もとより、これらは全て重要な点ではありますが、以下では、中央銀行の視点から、国際金融システムを再構築していくうえで、私自身が重要と考えている二つの視点についてお話しします。』
という事なのですが、ここから先を引用しているとこれまた話が超長くなる(実はここまでで講演の半分)のでまあ上記URL読んでちょ(来週に続くかもしれませんが)ということで、途中を全部端折りまして、『長期的な観点を持った主体としての中央銀行』って所に参ります。
○中央銀行の長期的な観点・・・というか白川節というかバブル予防的スタンスというか
『第4に、経済や金融市場は常に変化しており、将来を全て見通して詳細なルールを事前に策定することは現実的ではありません。中央銀行は、こうしたルールの限界を補う存在です。最近の金融政策面での経験はその良い例です。』
ということで、長期的な観点に関する説明が始まります。
『全ての中央銀行は、経済の持続的な成長の前提である物価安定の維持という長期的な目標を有しています。問題は物価安定をどう定義し、物価安定を実現するかです。ほとんどの中央銀行は、理解や定義、目標といった違いはありますが、物価安定について数値を用いて表現しています。日本銀行の場合は、「中長期的な物価安定の理解」として数値で表しており、英国はインフレーション・ターゲティングの枠組みを採用しています。独立した中央銀行として金融政策の運営上説明責任を有しているため、これらの数値は重要な役割を果たしています。』
『しかしながら、中央銀行が特定の数字を提示することにより、中央銀行が短期的な物価上昇率だけに着目しているという認識を社会全体が持ってしまうと、低インフレと金融経済活動の過剰なブームが共存するときにバブルの発生が助長されるといった意図せぬ結果に繋がる可能性もあります。そうなると、物価安定の維持と金融システムの安定という長期的な目標を達成する妨げとなりかねません。』
ということで、以下は信用バブル発生に対するマクロプルーデンスの話とかになるのですが、その中でフリードマン教授の「金融政策の役割は、金融市場と金融システムの円滑な機能を維持すること、および物価安定の2つ」という指摘を紹介しながら説明しています。が、例によって引用するとまた長くなるので本文読んでちょ。
まとめの『6.おわりに』の最後の部分もまあその話。ここに出てくる配管工云々の話とかは途中すっ飛ばした所に関連する説明がございますです。
『中央銀行は、実体経済と金融システムの双方に関するマクロ的な視点と、決済システムについての「配管工」としての専門的知識、市場参加者とのやり取りを通じて得られるリアルタイムの知見を有する主体として、将来の危機を予防する上で重要な役割を果たすことができますし、また果たしていかなければなりません。これは中央銀行にとって大きな責任を伴うものです。中央銀行は、他の当局とともに、こうした役割をしっかりと果たすことができるよう、各中央銀行自ら、また他の中央銀行との協調のもとで、幅広く取り組んでいく必要があります。さらに、金融機関やその他の市場参加者との緊密な協力も不可欠です。』
ということで、やはり白川さんいつものバブル事前予防型な話になってますなあ・・・・
#引用大会で誠に恐縮至極
2009/05/14
お題「ドル安雑感/潤沢供給で短国市場安定(か?)/次世代RTGSとか」
などと並べましたが全部雑感シリーズでどうもすいません。
○ドルは信用ならんが米国債は買えるという謎理論
最初はBBCじゃなくてブルームバーグのヘッドラインで見たのれすが。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/business/8046599.stm
お題とヘッドラインがこんなんでして・・・・
Japan 'would avoid dollar bonds'
Japan's opposition party says it would refuse to buy American government
bonds denominated in US dollars, if elected.
・・・いやはやというニュースでございますけれども、この民主党中川正春氏による「ドルはダメだが米国債はおっけー」という理屈は正直よー判らん。しかしさすがにこの書かれっぷりではちとマズイと思ったのかどうか知りませんけれども、中川さんは13日のブルームバーグでのインタビューでは若干火消し気味。
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=newsarchive&sid=aNXfWoVcSzeI
そりゃ個人的提案じゃなかったら(=民主党の正式な政策だったら)エライコッチャでございますので当たり前ですがなという感じですが、政権取る気があるんでしたら、財務大臣を予定されているような人の発言にはそれなりに意味があると見做される訳でして、日本国内相手だったら少々やんちゃな発言しても「また民主党の書生論か」でスルーされるかもしれないけど、国際的にはもうちょっとお考えになられた方がよろしいかと。まさしく「猿にマシンガン」状態ですなあ。
でね、ブルームバーグの方にあるのですが、中川さんドルについて「中長期的に見て価値が今以上に上がっていくということは考えられない」というコメントもしてるのですけど、基本的に「その国の通貨が買えない」って言い出すのならその国の政府の相対的な信用度合いも良くないって話になるんですから、政府の債権である国債も買えないって理屈になると思うのですが、「ドルは買えないが米国債は円建てなら買える」ちゅーのは何だかなと。いやこれがGEみたいな企業で「ドル建て社債だと買えないけど円建て社債なら買える」っていう話なら大いにアリなんですが・・・・・
というかね、それ以前の問題として、日本が持ってる米国債って一応名目は外貨準備なんで、円建てで外貨準備保有ってその時点で自己矛盾にも程があるのですけれども、民主党様におかれましては外貨準備に関して何か物凄く変な理解をしておられませんでしょうかと。
で、この発言に対する市場の反応ですが、正直よー判らんけどドル安の流れが続く中での報道だったからサポートにはなったのかもしれないしスルーだったのかもしれない。ただ、米国債があまり動かなかったですけど債券先物が何故か先物だけ妙に叩かれていた時間とブルームバーグで本件が話題になったタイミングが重なるので、誰か反応したのかもしれませんね(^^)。ただの偶然かもしれないけど。
それはそれとして昨日はこんなニュースもあって、そっちの方が朝はネタになっていたと思います。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090513-00000729-reu-bus_all
米国の「トリプルA」格付けにリスク─元米会計検査院長=FT
『[東京 12日 ロイター] 米会計検査院(GAO)院長を務め、現在はピーター・G・ピーターソン財団の最高経営責任者(CEO)であるデビッド・ウォーカー氏は、英フィナンシャル・タイムズ(FT)紙に寄稿し、米国の「トリプルA」格付けがリスクにさらされていると指摘した。』
よく見ると12日のニュースみたいですけど(汗)、これ最初にヘッドラインだか報道だかを見たか聞いた時にあたしゃー「FTは米国債の格下げを心配する前に自分の国の心配をすべきである」と思ったのですが、米国人が寄稿した話なのね(^^)。まー米国債を格下げしたらついでに世界中のソブリンをフルスライドで格下げしそうな気がしますが、って予想する判断根拠は(自主規制^^)。
まーしかし何ですな、結局の所よーするに「米国がストレステストで金融安定化進展とか言ってるけどあの茶番ストレステストで大丈夫かよ」ってえのが根底にあるような気が思いっきりするのですけれども、それこそモーサテコメントとか聞いていると、その点に関しては見事に回避したコメントが米国市場方面から聞こえて来るように思える次第でございまして、何か日本の不良債権処理が毎年毎年「不良債権処理は峠を越えた」って言ってるのに翌年もまた峠が続くという奥羽山脈状態(以下自粛)。
あんまり書いてると洒落にならない気がしてきたのでまーこんな感じで(^^)。
○短国は(今のところ)増発に負けない子
昨日は3か月TBの入札が実施されました。何か前日にちょっと売りが出てたらしいのも効いて入札の前場引けに向けて0.215/0.22の気配から0.22を叩いてオファーにして入札を迎えたのですが、足きりレートは0.22%に丁度乗った程度の水準で平均は0.219%台となっておりましたです。
でもまあ連休前に0.20割れだのやったり、一昨日の6か月が0.23%水準で投資家にスパッと嵌ったっぽい雰囲気(3.5兆の入札に対して2兆が不明札)だのということを勘案すると0.22%なんてお買い得感が出てしまうというおそロシアな状態になっているようでセカンダリーで売れ売れとなって引けは0.205%でござるの巻。ええもう需給良好にも程がありますわな。
ここもとの短期国債は大変に需給良好って感じで増発も平気で吸収しているのですが、まー背景としていくつか考えられまして、長いところの金利が中々下がらないという相場動向に見えますように、長いところへの買いを抑制気味にしてその分キャッシュを短期で潰しに来ているとか、展望レポートを読めば実質時間軸みたいな状態なのですから、足元からスプレッドを潰しに行く動きがあるのではないかとか、企業特別オペなどの影響で相変わらずCPレートがアホのように低い(3か月の長期AA格メーカーさんで軒並み短期国債利回りを切る素敵な阿片窟状態継続)とかありますが・・・・・
まー資金供給が潤沢に推移していて、足元のGCレートが0.1%台前半で超安定推移していることはでかいかなと思われる次第。別に短国買入を増やさなくても、債券ディーラーのファンディングコストのボラティリティが下がってレートが低位安定すれば、短期国債ゾーンも安心して持ちやすくなるので短国市場も安定するって事なんでしょ。冷静に考えれば12月の決定会合で誘導目標=超過準備付利金利になった時点でこういう市場になる流れだった筈なのですが、まー本来の姿(?)になったんじゃないですかね。
○次世代RTGS(メモだけ)
上記ネタ書いてたら時間がなくなったのでメモだけ。明日に続くかどうかは判らん。
次世代RTGS第1期対応実施後の決済動向
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/rev09j04.htm
本文はこちら
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/data/rev09j04.pdf
日銀レビューの本文6ページの所にまとめがございますので引用。
『まず、安全性の指標として平均決済時刻をみると、第1 期対応実施前では12
時過ぎとなっていたが、同実施後においては、従来14 時半に時点ネット決済により処理されていた外為円決済取引のRTGS
化を主因に11 時過ぎにまで約1 時間の前倒しが実現しており、決済の安全性向上が図られたことを示している。』
『次に、効率性の指標として決済のための流動性をみると、第1 期対応実施前における流動性(各利用先の仕向超過額の日中ピーク額の全先合計額として試算)は約14
兆円であった一方、同実施後における流動性(各利用先が同時決済口に資金振替を行った金額のピーク額として試算)は約12兆円となっている。流動性の計算方法が第1
期対応実施前後で異なるため、単純な比較は難しい面はあるが、上記の試算によれば、2
兆円程度の流動性の節約効果が得られているとみること
ができる。』
ほっほー。導入が物凄いタイミングに当たって(去年の10月14日ね)えーって感じでしたけど、まあ順調なようで何より。債券屋さん的には国債決済のモノの部分が特に変更無い(と思いましたが間違ってたら誰か教えて直すから)筈ですので、やはりこの際国債の時点決済復活とは言いませんが(^^)、ハイブリッドみたいなのを導入してループ取引上等みたいにしてくれると嬉しいなと思うのでありました。
#次世代RTGSの話じゃなくてただのポジショントークに見えるのは仕様です(笑)
2009/05/13
お題「雑感と持ち越しネタで勘弁です」
連休の関係で月初進行が超忙しいので雑感と持ち越しネタで勘弁。
○先週ネタの続きですが決定会合議事要旨から
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g090407.pdf
『V.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』から
・海外経済
『海外の金融経済情勢について、委員は、海外経済は全体として悪化しているとの認識を共有した。』
昨日ご紹介したBOEの声明文(タイミングが1か月BOEの方が後ですが)では「The
world economy remains in deep recession」というお話でしたが、さてこの部分は英語で何と言ってるでしょうと英語版議事要旨を珍しく見ると・・・・
http://www.boj.or.jp/en/type/release/teiki/giji/g090407.pdf
『Members shared the view that overseas economic conditions had been deteriorating
as a whole.』
ほっほー(^^)。で、あたくしドブ板ドメスティック日本人(留学とか海外勤務とか何ですかそれ状態ですわ、あっはっは)でございますもんで、英語の表現の微妙な違いによる微妙なニュアンスってえのが今百歩判らんして、上記文章で最後に「as
a whole」ってえのが付いているのと付いていないのとの違いがよー判らんのですが、あたしゃ何となく最後にヘッジクローズを入れてるようなニュアンスを感じるのですけど、これってどうなんすか??
まーそれは兎も角として、んじゃ海外経済どうなのよという所を読みますと以下こんな感じになるのでありまする。
『多くの委員は、一部の国・地域では、財政支出拡大の効果や在庫調整進捗に伴う生産の下げ止まりなど、悪化テンポの鈍化の兆しがみられていると述べた。もっとも、委員は、世界的な金融と実体経済の負の相乗作用や、生産・所得・支出の負の循環が続く中で、世界経済の先行きについての不確実性は大きいとの見方で一致した。』
この辺って昨日ご紹介したBOEの認識にも通じる所がある(まー当たり前ですけど)
ところで、下げ止まり感は何となくございますかなって話だとは思いますが、例に
よって例の如く不確実性が高いということで相変わらずリスクに注意という話に
なっておりますわな。
『何人かの委員は、海外経済は、現在、過去数年間にわたって積み上がった過剰の調整過程にあり、その調整には時間がかかるほか、過剰の調整を経た後も、成長率は過去の速すぎた成長スピードに比べ低下する蓋然性が高いとの認識を示した。』
暫く前にご紹介した野田審議委員の講演でもこのあたりは強調されていましたね。で、国際金融資本市場の話をスルーして地域別の話をするとこうなるのです。
『米国経済について、委員は、金融と実体経済の負の相乗作用が強まっており、引き続き景気が大幅に悪化しているとの認識で一致した。』
『ユーロエリア経済について、何人かの委員は、大幅に悪化していると述べた。』
『中国経済について、何人かの委員は、大幅に減速しているとの見方を示した。』
内容部分まで引用してるとキリが無いので(^^)、頭にある全体感部分だけ引用しましたけれども、「全体として悪化」という最初の言葉から感じるニュアンスよりももうちょっと個別に展開するとダメダメじゃんという感じになりますわな。
・で、国内経済ですけど
全体感は金融経済月報や展望レポートでも示されているので引用割愛して、先行きの需要項目別展開の部分を引用しつつ。
『輸出は大幅に減少しているとの見方で一致した。複数の委員は、2 月の実質輸出の前月比減少幅が縮小していることに言及したうえで、中国やN
I E s からの引き合いの増加や現地の在庫調整の進捗などを背景に、3 月短観における先行きの海外での製商品需給判断が幾分改善するなど、輸出を巡る環境が好転しつつあると述べた。これを受けて、委員は、当面、輸出の減少テンポは緩やかになるとの認識を共有した。ただし、何人かの委員は、その先については、海外経済の動向など、輸出を巡る環境の不確実性は高いと付け加えた。』
新興国向け需要が戻りつつあるというのはいい話ですが、現地在庫調整が進捗して需給が改善っていうのは、その後の販売増加が起きないと単なるそれはゲタの問題じゃネーノという感じであります。
『設備投資について、何人かの委員は大幅に減少していると述べた。何人かの委員は、設備の過剰感が大きく高まっており、景気の調整が長引き、回復力が弱くなることにより、企業の中長期的な成長期待が低下し、設備投資に一段と下振れが生じる可能性があるとの認識を示した。また、ある委員は、今後、製造業の業績悪化が非製造業に波及するため、非製造業の設備投資が更に減少する可能性があるとの見方を示した。』
・・・・・なんと言うお先真っ暗。特に「設備の過剰」ってのが実に宜しくないのですが。
『個人消費について、何人かの委員は、雇用・所得環境が厳しさを増す中で、弱まっていると述べた。複数の委員は、労働分配率の上昇を踏まえれば、企業は賃金の引き下げや雇用の削減に一段と踏み込まざるを得ず、雇用・所得環境は一段と悪化することから、個人消費は更に弱まっていくとの見方を示した。』
これまた暗い先行き・・・・・
『生産について、委員は、内外需要の減少や在庫調整圧力を背景に、大幅に減少しているとの見方で一致した。先行きについて、委員は、I
T や自動車関連の在庫調整の進捗を受けて、予測指数が下げ止まっており、減少テンポは緩やかになるとの認識を共有した。ある委員は、内外需要の先行きについての不確実性は高く、販売減少に伴い流通在庫が増加する可能性があるため、在庫調整圧力が高まるリスクには留意する必要があると述べた。』
生産はちったあ話がマシですけれども、先日ご紹介した在庫調整に関する日銀レビューで説明がありましたように、急速な需要減に対応した在庫調整が一巡すると数字上は前期比ベースでの下げ止まりから上向きに転じるという話であって、今後本格的に回復するためには需要が戻らないと話にならんですがなという認識なんでしょう。
・・・・・ということで、全体的には厳しい見方が並んでいまして、何となく株価が戻り歩調でウキウキ気分(かどーか知らんが)の金融市場とは温度がちと違いますかねっていう感じを受けましたがどないでしょ。
ちなみに、最初に突如英文議事要旨をご紹介しましたが、展望レポートとか声明文とか議事要旨とか、実は英文の表現を見るのも中々面白いこともあるのですけれども、さすがにそこまで毎回フォローする訳にも参りませんで(大汗)、こーやって時々思い立って英文に当たってみたでござるの巻となるのです。時々オモシロネタの当たりを引くことも(^^)。
・企業金融に関連して
CPIの話はこれまたスルーして金融環境の部分で企業金融に関する部分ですが、ポイントは3点。
『そのうえで、これらの委員を含む多くの委員は、今後の企業金融に関するポイントとして、昨年度の企業決算公表に伴い、企業の信用リスクに対する金融機関や市場の見方が厳格化する可能性、社債の大量償還が予定される中での社債の発行環境、株価下落によって銀行の資本制約が強まるリスク、の3
点を指摘した。』
『また、ある委員は、こうしたリスクが顕現化した場合には、企業金融面から実体経済への下押し圧力が高まる可能性があると付け加えた。』
ということで、月曜日にご紹介した今後の金融政策運営に関する検討の所に話が繋がるのですけれども、まあこの辺りのリスクが顕現化するのかどうかってえ話はこれからでございますな。とりあえず短期ゾーンの市場だけ見てると全然問題ねえって感じなのですけれども、問題は恐らく金融市場でフォローしてない/できない所って事なのでしょうから、市場の中の人としては中々ムツカシヤな所でもあります。
とまあそんな感じで、展望レポートもそうでしたけど、結構先行き見通し暗いのよね。
○市場雑感というか米国雑感(雑談というか単なる悪態ですが)
ここもとドル安が進行。
いやね、あたくし的に申し上げますと、あの予定調和丸出しのストレステスト結果を受けてドルから資金逃避してるんじゃないかとゆーとーってもいやーな予感がするんですが、「リスク回避で買われていたドル買いの流れが反転ですよあっはっは」とかポジティブ思考になるモーサテの解説(それが雨公様の見解なんでしょ)が極東のひねくれ者のあたくしから致しますとさっぱりイミフでありまする。別のコメント氏は米国長期金利上昇を「インフレ懸念」で片付けてますが、これまたあたくしと致しましては、国債大量発行に市場が耐えられないとか、逆算のストレステストによって米国政策当局への信認低下で長期債を忌避するとか、そーゆーのを考えたくなるのですけれども・・・・・
#ええすいませんねえネガティブ思考で(-_-メ)
それから10年財務省証券利回り3%台定着といえば、また毎度の悪態になりますけど、確かかつてバーナンキ大先生は「長期国債の買入による価格支持政策」というのを提唱して、日銀が長期金利コントロールに否定的なことに対して批判して、しかもご丁寧にも「歴史的に見て中央銀行が断固とした決意で実施すれば長期金利の利回り支持政策は有効に機能する」っつーような話をしておられたと記憶しておりますけれども、市場規模の拡大およびグローバル化(特に米国なんて海外の金入りまくり)の中で本当にそれって出来るのかよって感じはする次第。
そりゃまあ歴史的に言えば日本だって戦後の国債発行復活当初は日銀による超強力な価格支持(というかそもそも国債の流通市場が無かった筈、昔の長期金利指標は10年物加入者利付電電債の流通利回りというのは債券市場豆知識の一つですにゃ)政策を実施していたりしてましたけどね〜(^^)。
というような話はもうちょっと練らないとちゃんとした話が出来ませんので月初進行を成敗したらまた考えてみるとしませう。
#それから西村副総裁の講演があったのですが、英文読んでる暇が微妙に無かったので今日はスルーです→http://www.boj.or.jp/en/type/press/koen07/ko0905a.pdf
2009/05/12
お題「先週のネタですがたまにはBOE/その他小ネタ少々」
党首討論直前に辞任ってどこのアベシンゾーですか>小沢一郎さん
○たまにはBOEの説明をちょっと見てみましょう
FRBは一連の金融政策に関して色々と理屈こねてますが、基本的には「連銀が市場機能の代替を行って各種リスクプレミアムを縮小させる」というモロに市場介入な動きを行っているのは皆様ご案内の通り。
一方でBOEは量的緩和とは何ぞやというページを用意して、
http://www.bankofengland.co.uk/monetarypolicy/assetpurchases.htm
その中で資産購入はどう機能するのかってお題の中で市中にマネーを供給するんですよって話を例を出して説明してるというのもこの前ご紹介したと思いますが、まーご案内の通りちゅうことで。
で、先週のBOEの決定はこちら。
http://www.bankofengland.co.uk/publications/news/2009/037.htm
Bank of England Maintains Bank Rate at 0.5% and Increases Size of Asset
Purchase Programme by £50 Billion to £125 Billion
ということで、資産購入プログラムを更に増額と相成ったのですけれども、冒頭の所では経済の現状に関してやためったら暗い話をしております。
『The world economy remains in deep recession. Output has continued to
contract and international trade has fallen precipitously. The global banking
and financial system remains fragile despite further significant intervention
by the authorities.』
世界経済は深いリセッションだわ国際金融システム脆弱だわということですかそうですか。
『In the United Kingdom, GDP fell sharply in the first quarter of 2009.
But surveys at home and abroad show promising signs that the pace of decline
has begun to moderate.』
個人関連の経済指標にちょっと下げ止まりの兆しとな。で、物価の話。
『CPI inflation was 2.9% in March, significantly higher than the 2% inflation target.』
インフレーションターゲットの数値を華麗に上振れてるのですよね。つまりどう見てもスタグフレーションです本当にありがとうございましたという話なのですが(-_-メ)。
『Past falls in sterling have continued to put upwards pressure on inflation.
But the degree of spare capacity in the economy has increased and the loosening
in the labour market has contributed to a sharp easing in pay pressures.
CPI inflation is likely to drop below the 2% target later this year, driven
in part by diminishing contributions from food and energy prices. The substantial
margin of spare capacity in the economy should continue to bear down on
inflation thereafter.』
ポンドの下落によってインフレ圧力が掛かっているが、生産が過剰になっていることによる労働市場の緩和圧力と、食品やエネルギー価格の下落によってCPIは今年の終わりごろには2%に低下するでしょうとな。
んでまあ英国景気見通しに関してですが。
『The Committee noted that the outlook for economic activity was dominated
by two countervailing forces.』
ほうほう。
『The process of adjustment in train in the UK economy, as private saving
rises and banks restructure their balance sheets, combined with weak global
demand, will continue to act as a significant drag on economic activity.』
家計の貯蓄上昇傾向と銀行のバランスシート調整と世界的な需要の弱さが経済活動の足を引っ張ると仰せです。
『But pushing in the opposite direction, there is considerable economic
stimulus stemming from the easing in monetary and fiscal policy, at home
and abroad, the substantial depreciation in sterling, past falls in commodity
prices, and actions by authorities internationally to improve the availability
of credit. That stimulus should in due course lead to a recovery in economic
growth, bringing inflation back towards the 2% target.』
金融緩和の効果がどうのこうのと言っておりますが、金融緩和の効果が出て経済活動が回復基調に向かうのと、現在2.9%あるインフレ数値が2%に戻ることが両立するというロジックが良く判らなかったです><;
『But the timing and strength of that recovery is highly uncertain.』
しかし最後はこういう結論で、まあいつかは戻るでしょうがどのように回復するのかよーわかりませんなあという話。
『In the light of that outlook and in order to keep CPI inflation on track
to meet the 2% inflation target over the medium term, the Committee judged
that maintaining Bank Rate at 0.5% was appropriate.』
『The Committee also agreed to continue with its programme of purchases
of government and corporate debt financed by the issuance of central bank
reserves and to increase its size by £50 billion to a total of £125 billion.』
『The Committee expected that it would take another three months to complete
that programme, and it will keep the scale of the programme under review.』
ということで、資産購入プログラム増額と金利据え置きを決定という話です。まあインフレーションターゲットがあるのでこういう説明せにゃならんのですが、緩和効果で景気は好転して物価は下落ってナンジャソリャという気はする次第で(^^)、いやまあご苦労なこったという所です。
○日銀の剰余金組み入れ増額
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/zai0905a.htm
第124回事業年度(平成20年度)決算における剰余金の積立てについて
『日本銀行は、第124回事業年度(平成20年度)決算において、財務の健全性確保の観点から、当期剰余金の5%相当額を超える15%相当額を法定準備金として積み立てる方針を決定し、本日、財務大臣に対して日本銀行法第53条第2項に基づく認可申請を行いましたので、お知らせします。』
今朝この話題を報道した公共放送様のニュースによりますと、日銀の自己資本比率が7.47%まで低下する見込みで、メドとしている8%から12%を割り込むんだそうで。
米国ではFRBの各種資産購入プログラムに関する損失負担に関して連邦政府がケツを持つスキームがあったりするような中で、日本の場合は日銀は日銀、政府は政府って格好になっているのでせめて剰余金組み入れでもってお話なのかなあとは思ったのですけれども、まーいずれにしてもど〜せまた「日銀は自分の財務健全性だけ云々」という釣り針になるんだろうなあと思うのでありました。
別に通貨の信認がどうのこうのという話題になりもしない現状において日銀が自分の財務健全性のアピールをせっせとするのも何と言うかやり過ぎ感はとーってもあるのですけれども、財政当局による一定のサポート措置を付けながら各種資産を購入している米国様と比較して考えたら剰余金組み入れ増やす事に関してそうボコボコ叩く(人が多分出る事を前提に^^)のもどうかなって思う(その行為がそんなにケシカランならFRBだってケシカランって理屈になるでしょということ)のですがね。
○とりあえず短期国債は増発吸収ですか
これまた先週ネタなんですけど。
金曜日に3か月ものTBの入札が行われましたです。で、今回から1回の発行額が5.7兆円になりました次第で、前回から3000億円の増発ですが、償還される3か月ものが5.1兆円だったので、折り返し額としては6000億円の増発だったりします。
結果ですが、あっさり味で0.20%台での決着。昨日の引け時点でも0.205%となっていますので、まあ引き続き平均落札近辺での推移が継続しているという感じで、増発は見事に吸収されているでござるの巻。長期ゾーンとか微妙に金利がサガランチ会長ではございますが、短国ゾーンは増発何のそのという華麗な推移となっております。
まー何ですな、ここもとの資金供給オペが比較的安定(連休前に当座預金残高をちょっと崩したらGCレートやオペレートが上昇したのはアレでしたが、その後さっくりと戻しましたんで)しているので、GCレートが0.12%あたりで安定推移(昨日は0.11%とかみたいですな)して、足元のファンディングコストが安定してて変な期間プレミアムみたいなのを意識しないで済むという状況が短期国債の増発に対して良いサポートになっているんでしょという所かと思います。
で、それはそれで良いのですが、金曜に入札された3か月TBって、国庫短期証券「第1回債」の折り返しなんですよね。そりゃまあ3か月ものだからホイホイ償還が来るのはあたり前なのでございますが、「ありゃもう償還なのね」って感じでございます(^^)。
今月は連休によって入札日程が立て込みますので、まー勝負はここからなのですけどね♪
2009/05/11
お題「ストレステストとか決定会合議事要旨とか」
昨日はびっくりするほどベイスターズでしたな(謎)。
○どう見ても茶番です本当にありがとうございました
確か正式発表まで情報管理を厳格に行うとか言ってた筈のストレステスト結果は事前にボロボロ報道された通りだわ、おまけに今回の「ストレステスト」の前提条件ですけど「景気悪化シナリオ」の前提条件が2009年の失業率8.9%という数字だったのですが(金曜の朝はそこまでチェックしてる暇がなかったです)、そりゃ週末の雇用統計で抜けるんじゃねえのかって数値(どこだか忘れましたが9.0%の予想出している向きもあったですし)でしたが、金曜の朝(東京時間の夜)出た雇用統計の数値は失業率8.9%でござるの巻。
・・・・・えーっと、ストレステストっていうのは「ストレス」に対するシミュレーションをするものだと理解しておりましたけれども、飴公様におかれましてはいつの間に「普通の楽観シナリオのシミュレーション」になったのでございましょうかと不思議な思いなのでありますが、週末のNYダウが8500台で引けている(木曜の引けから164ドル高!)所を見ると、「でもそんなの関係ねえ」と海パン一丁で踊る米国市場恐るべしという所ですわな。
いやー官民総出で粉飾して官製相場作りましょってお話でしょうから、まー下手に逆らうよりは市場の片隅で悪態でもつきながらポジションはポジションってえ感じになるんでしょうが(苦笑)、シバキアゲ大会の挙句不良債権処理と称して勤めている/経営している企業をぶっ潰されたり無理矢理業界再編されてしまった結果、人生が変わっちゃった人とか日本には山ほどいる訳でして、そーゆー事を思いますと「官民総出のインチキ粉飾相場で良いんだよ」とは申し上げる気分にはならないですなあと思うのでありまする。
大体ですな、日本の銀行の貸出資産査定だって物凄い時間とマンパワー使っていた訳で、ローンプールの内容とか調べるのにもっと手間掛かりそうなものの査定がそんなに簡単に終わるという時点で茶の香りが素晴らしく漂ってくるのでありますからして、まー今回のストレステストはどう見ても茶番です本当にありがとうございましたっちゅうことですわな。
○日銀の長期国債買入残高
月初のお約束。
http://www.boj.or.jp/type/stat/boj_stat/mei/mei0904.htm
4月末現在の残高ですけど、前月との増分が18430億円と大体月の買入と同じくらいになってますにゃという所でして、そのうち残存2年以内が幾ら増えましたかとあたくしがやっつけで手計算しました所、8600億円ちょいという数字になってました。
先月集計した時も増分(3月は償還もあるのでちとややこしいのですが、償還の所は面倒なので無視してます)14624億円の増分に対して7300億円ちょいという事で、まあ目の子で打ち込まれる半分が2年以内という感じになっているんですねというイメージになるんでしょうか。
とは言いましても、ここもとは延々と相場そのものが安定的っちゅーか揉みあいみたいな推移になっているのでこーゆー買入になっているという所もあるかと思いまして、相場のトレンドが違ってきた時には長期債ばかりの打ち込みという時もあるんでしょうかねえ。でもまあ(当分先の話でしょうが)利上げ観測で金利上昇って時は中短期の方が金利上がりやすいので、まー普通に考えると今のペースが続くような気もする。
で、「5年後にいわゆる銀行券ルールに引っ掛かる」といわれる長期国債買入のシミュレーションってどういう前提になっているのかなあとかちょっとだけ興味がありますね。
○決定会合議事要旨より少々
時間の都合上今日は簡単で勘弁(汗)。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g090407.pdf
今日は『W.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』から。
・企業金融対策関連
『委員は、これまでの企業金融面での政策対応の効果について議論を行った。第1
に、企業金融支援特別オペについて、ある委員は、当該オペによる資金供給が増加しており、ターム物金利低下などの効果が出ていると指摘した。第2
に、C P ・社債の買入れについては、多くの委員は、発行環境が改善しており、着実に効果がみられていると指摘した。』
これはその通り。
『ある委員は、C P 買入れは、高格付先のC P 発行環境だけでなく、低格付先の発行や社債の発行環境の改善も後押ししていると述べた。』
まあこれもそうです。
『別の委員は、C P 買入れの効果もあって、高格付ではC P の発行金利が短期国債金利を下回っている銘柄があるとして、こうした状態が長期化すれば、市場参加者の運用機会を奪うことになり、市場機能に望ましくない影響を及ぼす可能性があると指摘した。』
いやもう可能性があるもクソも無い状態で、びっくりするほど阿片窟でございます(苦笑)。
『この間、市場から社債買入れの増額や買入れ対象の年限延長の要望が聞かれている点について、何人かの委員は、日本銀行が社債市場の機能を肩代わりすることは望ましくないとの認識を示したうえで、現在は安全弁として十分機能しているとの認識を示した。』
セルサイドのクレジットアナリスト涙目。
・長期国債買入とか銀行券ルールとか
『次に、先般長期国債買入れ増額を決定したことを踏まえ、日本銀行の国債買入れの基本的な考え方について改めて議論が行われた。』
『ある委員は、先般の長期国債買入れ増額は、長期の資金供給手段を一層活用し、円滑な資金供給を行っていくために行ったものであり、F
R B やB O E の長期国債買入れの目的とは異なる点をよく説明する必要があると述べた。』
まーそもそもFRBとBOEも言ってる事違いますしね。でも長期国債買入が3本の柱のうち、「潤沢な資金供給を通じた金融市場の安定」なのですが、そのことと長期の資金供給手段の額を増やす話をどう整合性つけるのかって難しくないですか??
『これに関連し、複数の委員は、長期金利の変動を抑え込むために中央銀行が長期国債買入れを行うと、かえって長期金利のボラティリティが高まる可能性があると指摘した。』
ボラ云々はどうなんでしょ。ただまあFRBの長期国債買入は全然長期金利の押し下げに効果が無い(瞬間的にはありましたが)のは今まさに実証されておりますから、これはこれでそうですねという話。
『更に、銀行券ルールについても議論が行われ、何人かの委員は、一般に銀行券ルールの内容や役割については、十分理解されているとは言えないため、その重要性を丁寧に説明していく必要があるとの認識を示した。』
ということで、この前と同じ「長期負債は銀行券発行残高」という話が出ています。
『このうちのある委員は、わが国では、制度的・季節的な要因から短期資金需要が大きく変動するため、それが金利の振れをもたらさないよう円滑な金融調節を行うには、準備預金など短期的に変動する負債に対しては短期の資金供給手段を割り当て、長期の資産である長期国債保有高が長期の負債である銀行券発行残高を超えないようにすることが必要であると述べた。』
理念的には保有国債をホイホイ売ればよいだけの話なのですが、現実問題として難しいというか無理なので、まあこういう理屈になっちゃうんですよね。まー長期負債としては底溜まりになっている当座預金残高も同じじゃないのかとは思いますけれども、銀行券残高と比べるとあんまり大きな話にはならないのが残念な所でございます(量的緩和すれば話は別ですが、今度は「金利付き量的緩和」の意味ってナンナノヨという話になるんでしょうね。金利無し量的緩和だと出口で死ねるし)。
『こうした議論を経て、委員は、銀行券ルールは、円滑な金融調節を行うために必要との見方を共有した。』
ってそんなに威勢良く言い切ってハードル高くしなくても良いと思うのですけど・・・・・後から「一時的な逸脱無問題」とか言い出したり、解釈をビミョーにいじってくる時の事を考えたらその辺はうにゃうにゃとしておいた方が・・・・まあいいですけど。
・次の対策はもう一丁企業金融緩和ですか???
で、最後に先行きの金融政策に関してですが、この調子で引用していると全文引用になって誠に遺憾ですので、ここに関しては端折りまくりますと、今後の政策に関して、とりあえず2月3月にフォワードルッキングに実行したので目先はまあ良いとしてという話をしたあと、最後にこのような指摘が。
『ただし、何人かの委員は、想定に比べて企業金融を巡る環境が厳しさを増した場合には、必要に応じて、企業金融円滑化のための追加措置が必要になり得ると述べた。』
ほっほー。で、企業金融円滑化名目で何やるんですか???
2009/05/08
お題「各種ネタとか雑談とか」
米債3.33%(東京朝6時になる前、6時過ぎてもレート上昇中みたいですが)とはありゃりゃのりゃという楽しい展開になっております。
#ストレステストの結果って金融安定化資金の残額から逆算しt(自粛^^)。
○ということで米国長期金利上昇雑談
今週は都合700億ドルちょっとの入札があるようなんですが、まあ案の定需給懸念で今朝は素敵に米国10年国債利回り3.33%に上昇。しかも長期国債買入プログラムは既に850億ドル程消化しておりまして、この前ぶち上げた3000億ドルの4分の1を使ってこの有様というのが実にお洒落な展開となっております。
まー毎度毎度申し上げてますので皆様におかれましてはまたかと言われそうですけれども、FRB様におかれましては長期国債購入に関して3月18日のFOMCミーティングの声明文でこのように仰せでございますわな。
『Moreover, to help improve conditions in private credit markets, the Committee
decided to purchase up to $300 billion of longer-term Treasury securities
over the next six months.』
この時の10年国債金利は3.1%くらいだったのですが、買うと言って2.5%近辺まで低下して米国10年国債金利はその後1か月半掛けて3.3%まで上昇という華麗な展開になっておりまして、長期国債購入は何の意図を持って実施してるのですか(本当に金利介入する気があるなら連日物凄い勢いで購入した挙句に臨時会合でも実施しないと^^)という話ですわな。まーロジックもクソも無いということなのでしょうが、そーゆー事をやっていると将来的にFRBがやろうとする政策の意図がちゃんと伝わらずって話になるんじゃネーノとは思いますけど。
などといつもの悪態をついておりましたら、本石町日記さん(いつも人のふんどしで誠に恐縮です)「B/S膨張の副作用に反論する米連銀ブログについての考察」というエントリーを→http://hongokucho.exblog.jp/10900394/
・・・・なるほど。FRBのバランスシートポリシーは流動性需要対策ですというロジックを持ち出してるようでして、まーこれは連銀の中の人であっても公式見解ではありませんという話ですからそーっすかという感じでもありますけど、それこそリッチモンド連銀のラッカー総裁が聞いたら文句言いそうな(2月のFOMCでラッカー総裁は長期国債買入をマネタリーベース拡大を目的として実施すべしという議案を提出しました)ロジックでありますが、まーここにも見られるようにロジックもクソもないという素敵な展開はどうなのよという所でございましょうな。
いやまあ結果オーライならロジックもクソも無いのですけれども、無理筋ロジックでゴリゴリやって行った場合っていうのは、結果が思わしくない(失敗じゃない場合であっても)時にロジックが迷走して話がややこしくなりますってのはイラク戦争の後処理のグダグダ振りなんぞが反面教師としての事案(って経済の例じゃなくてどうもすいませんが)の例でしょうかね。
ま、飴公様におかれましては、訳わからなくなると無理矢理ロジックでゴリゴリ突っ込んでいくのが得意みたいですのでシャーナイナイなのかも知れませんが・・・・
○さてECB
さっき見たときに新着情報にあったのはこのあたり。
http://www.ecb.int/press/pr/date/2009/html/pr090507.en.html
『At today’s meeting the Governing Council of the ECB took the following
monetary policy decisions:
1.The interest rate on the main refinancing operations of the Eurosystem
will be decreased by 25 basis points to 1.00%, starting from the operation
to be settled on 13 May 2009.
2.The interest rate on the marginal lending facility will be decreased
by 50 basis points to 1.75%, with effect from 13 May 2009.
3.The interest rate on the deposit facility will remain unchanged at 0.25%.
The President of the ECB will comment on the considerations underlying
these decisions at a press conference starting at 2.30 p.m. CET today.』
えーっと、政策金利(オペ金利)を25bp下げて、貸出ファシリティの金利を50bp下げて、預金ファシリティの金利は0.25%のまま変更無しということで、コリドアが50bp詰まりましたということですが、ベースレート低いんですからコリドアが詰まるのはまー当然ちゃあ当然ですわな。
http://www.ecb.int/press/pr/date/2009/html/pr090507_2.en.html
『The Governing Council of the European Central Bank has today decided
to conduct liquidity-providing longer-term refinancing operations (LTROs)
with a maturity of one year.
The operations will be conducted as fixed rate tender procedures with full
allotment, and the rate in the first of these operations will be the rate
in the main refinancing operations at that time. In subsequent longer-term
refinancing operations with full allotment, the fixed rate may include
a spread in addition to the rate in the main refinancing operations, depending
on the circumstances at the time.』
最初の1年オペ(6月23日に実施予定)は金利1.00%の指値で実行して、その後はスプレッドが乗るとか書いてあるように見えるのだがよー判らん(あほです)。まーしかし1年物のオペを実施するとは(とりあえず3発しかやらないけど)これはターム物金利引き下げの話・・・なのかな???
この声明文の後半では現在の各種オペを2010年末!まで延長という豪気な延長の話も出ています。
http://www.ecb.int/press/pr/date/2009/html/pr090507_1.en.html
EIB(European Investment Bank)をオペ対象にしたという話みたいです。
http://www.ecb.int/press/pressconf/2009/html/is090507.en.html
トリシェおじさんの会見。利下げをした話と共に新たなオペ導入の予告を。
『The Governing Council has decided in principle that the Eurosystem will
purchase euro-denominated covered bonds issued in the euro area. The detailed
modalities will be announced after the Governing Council meeting of 4 June
2009』
次回会合で詳細を決めるとかどこの日本銀行だよという感じですが(^^)、決定内容に関してはこのような効果を意図しているようで。
『These decisions have been taken to promote the ongoing decline in money
market term rates, to encourage banks to maintain and expand their lending
to clients, to help to improve market liquidity in important segments of
the private debt security market, and to ease funding conditions for banks
and enterprises.』
ターム物金利下げるのは利下げと1年オペおよび各種オペ延長措置の合わせ技、貸出の増加は新しいオペの実施の効果という所なんでしょうか。本当は会見の中身ってとっても長いのですが、朝起きて斜め読みなので最初の所だけで勘弁。
○在庫調整がどうのこうのという日銀レビューシリーズに関して
きのうちょっと申し上げた日銀レビューシリーズですけどね。
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/data/rev09j02.pdf
折角なのでインプリケーションの所だけでもご紹介致したく。
『わが国のGDP ベースの在庫水準は、前述の通り、2008 年10〜12 月にかけて上昇を続け、実質GDPの落ち込みから在庫率が急上昇するなど、明らかに過大となった。2
月の鉱工業指数統計ベースの在庫残高をみると、既に減少に転じており、GDPベースの在庫残高についても、2009
年1〜3 月以降、上昇に歯止めがかかる、ないしは低下に転じていくとみられる。』
『すなわち、2009 年の早い時期には、上記A、Bの局面を経ることになるため、在庫投資の実質GDP
成長率に対する寄与は大幅なマイナスとなる可能性が高い一方、2009 年の後半から2010
年にかけて、在庫の削減ペースが緩やかになる上記C〜Eの局面が訪れる可能性が高く、その場合は実質GDP
成長率はプラス方向に押し上げられることになる。たとえ在庫が「積み増し」に至らなくても、「削減ペースが緩やかになる」だけで実質GDP
成長率が押し上げられる、というのがここでのポイントである。』
ということで、今般の在庫調整がこれから急速に進みそうな動きを示しており、その進み方があまりにも強烈なので、2009年度前半の在庫調整の影響が実質GDP成長率に大きくマイナス寄与した後、その後はプラス寄与するという見通しだというお話です。
この2だの3だの(機種依存文字は原文ママで勘弁)ですけれども、どういう状況かというのは図表での説明と共に、ちょっと前(本文6ページ)に載っているのですが、引用(図表は引用しない)するとこんな感じです。
『局面@:在庫水準が上昇している局面
局面A:在庫水準の上昇に歯止めがかかり、「不変」となる局面
(それまでの「大幅な上昇」と比較し、GDP 成長率への寄与は大幅なマイナスとなる)
局面B:在庫水準が「大幅な低下」に転じる局面
(それまでの「不変」と比較し、GDP 成長率への寄与は大幅なマイナスとなる)
局面C:在庫水準が「大幅な低下」を続ける局面
(それまでの「大幅な低下」と比較し、GDP 成長率への寄与はゼロとなる)
局面D:在庫水準が「小幅の低下」となる局面
(それまでの「大幅な低下」と比較し、GDP 成長率への寄与はプラスとなる)
局面E:在庫水準の低下に歯止めがかかり、「不変」となる局面
(それまでの「小幅の低下」と比較し、GDP 成長率への寄与はプラスとなる)』
図表がないとちと判りにくいのですが、要するに在庫投資の水準変化がGDP変動に対してどのような影響を与えるかという事を考えた場合、在庫圧縮中は当然ながら在庫投資がマイナス推移するのですが、前期比との差分で考えた場合にマイナスのペースが同じように続けば途中から前期比ベースでの寄与はゼロになり、その後在庫圧縮が止まればその期の在庫投資がゼロであっても前期比ベースでの寄与はプラスになるという、成長率のゲタの話みたいなもんですかこりゃという所です。
という所で時間と分量が長くなってしまったのでまあ本文を読んでちょという話ですが、本職さんにとってみたらまあ当たり前の話ですかそうですか(汗)。
2009/05/07
お題「総裁定例会見より」
5日間もボケておりますとマインドセットが切り替わりませんな(汗)。
#前金融庁長官様が目の前のテレビで銀行国有化に絡めて「日本の銀行は最初『国立銀行』で始まった(ので国有化に国民の抵抗が少ないとでも言いたいのか?)」と仰ってますが、明治初年に設立された日本の「国立銀行」って「国法に準拠して設立された民間銀行」って意味なんですけど(米国のナショナル・バンクの訳語)。ってかこの「日本の国立銀行は民営」ってのかなりの有名豆知識だと思うのですが・・・・・
という話をするとややこしくなりますので(笑)、余談はさておき総裁会見。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0905a.pdf
○いつものように日銀券ルールの話
これはまた質問時点で既に纏まっている質問ですが(^^)。
『(問) 銀行券ルールについて改めてお尋ねします。ルールがない場合には、日銀の資産の大宗が究極的には長期国債になってしまい、オペレーションが窮屈になり、長期金利・短期金利の撹乱要因になるという技術的な問題があります。さらに、国債市場における規律が無くなり、国債の格付けの低下を通じた日銀の資産の劣化、ひいては中銀や通貨の信認の低下につながります。こういった事態を懸念しているため、銀行券ルールは必要であるという理解でよろしいのでしょうか。』
で、毎度お馴染みの説明が延々とあるのですが、途中切りつつ読んでてほほーと思った部分を。
『(答) 繰り返しになってしまい恐縮ですが、教科書的な説明をもう1度致します。そもそも日本銀行が長期国債を買入れているのは、物価安定を通じて持続的な成長を実現していくという金融政策の目的を達成するために、資金供給オペレーションを行っているからです。』
ということで、「長期国債購入は資金供給オペの一環」という説明をここで改めて行っております。いやまあ「成長通貨の供給」というかつての意味付けに関しては償還乗り換えルールの変更によって変わっていたのですが、こうやって明快に意味づけをしたのは白川総裁になってからですな。
『例えば共通担保資金供給オペのような相対的に短い期間の資金供給オペと、長期国債による資金供給オペの両方を使って金融調節を行っているのが現在の姿です。その際銀行券という長期安定的な負債に見合った資金を供給するために、長期の安定的なオペレーション手段として国債を買入れることが、円滑な資金供給につながります。』
ということですが、これまた毎度申し上げておりますように、銀行券以外にも実質的な長期安定負債がちょっとだけあるようには思えますけど、まあそれはそれと致しまして。
『要は、長期国債の買入れは金融政策運営のために行うものであり、それはつまり物価安定を通じた経済の持続的な成長の実現のために行っているものです。』
で、その結果現在の数値になりましたという話ですね。以下「長期国債買入が財政ファイナンス目的と見做される場合にはイクナイ」という説明をしてますけど引用割愛します。
で、後の方で別の質問。
『(問) 先程の質問にもあった通り、総裁は、いわゆる銀行券ルールを堅持していくことを繰り返しいわれていますが、原則を維持しつつ、例えば、残存期間が1年に満たないものについては短期国債扱いにするなど、ある程度柔軟な運用を今後検討ないし実施していく可能性はあるのでしょうか。』
まあ実は残存1年切ってる利付国債の場合は償還乗り換えで1年TBに化けるので短期国債より足が1年長いのですが(^^)、短期国債のオペレーションはフレキシブルにいじれますからその辺はうにゃうにゃと曖昧な世界にぶち込んでしまえばヨロシという事で(^^)。日銀保有の長期国債残高に関しては色々と話題になるのですけれども、短期国債残高に関してはまーそこまで気にする人も多くないとは思いますということで、即ちうにゃうにゃの世界にぶち込まれる訳ですな。
などというあたくしの怪しい話は兎も角として(汗)、総裁の答えですけど。
『(答) いつも一般論として申し上げていますが、金融政策を遂行していく上では、経済・物価情勢について予断を持つことなく丹念に点検していくとともに、予め特定の政策を排除したりあるいは必ず採用するといった考えを持つべきではない、というのが私の考えですし、政策委員会のメンバーもそのように考えていると思います。』
ほほう。
『国債の買入れは金融政策の一環として行っているわけですから、金融政策の目的に照らして考えていく必要があると思います。私はルールという言葉をあえて使いませんが、それは、日本銀行が金融政策上の判断から離れて、自らが決めたルールに従って機械的に政策を運営しているというニュアンスがそこに込められているように感じるからです。』
って部分にコアCPI縛りのインタゲ採用とかをしたがらなさそうなニュアンスを感じたのは裏読みのしすぎですかそうですか。
『長期国債の買入れをどの程度にすれば金融政策を円滑に運営できるのか、という観点で考えるべきことであり、繰り返しになりますが、現状の買入れ規模が最適であると考えています。』
・・・・・結局最後まで禅問答で通してしまいましたとさ。
○成長率のゲタの話
既に本職の皆様がご指摘しておりますが、これは俺様備忘録でもありますのでメモメモ。
総裁会見の発言からいくつか引用しますが・・・・
まずは冒頭の説明部分から。
『それから、今回の見通しに関しては、どうしても数字に関心が集まるわけですが、2008
年度後半のGDP前期比成長率が大幅に低下したことが2009 年度GDP成長率に与える影響に注意が必要です。2009
年度は極めて低いGDPの水準から始まるため、この年度中に日本経済が下げ止まる場合でも、前年度対比の成長率自体は大幅なマイナスとなります。このように、経済の変動が極めて大きい場合には、各時点における成長率、すなわち前期比でみた成長率と年度平均の成長率が大きく異なり得ます。』
というのがゲタの話でして、別の所で改めて説明が。
『今回の場合、2008 年度の第3四半期、第4四半期にかけて急激に落ち込みました。その結果、仮に2009
年度がずっとゼロ成長で推移した場合でも、年度平均ではマイナス成長になるわけです。これは、いわゆる「統計上のゲタ」と呼ばれていますが、計算をしてみると、大体「ゲタ」がマイナス5%程度あります。』
ほほう。
『こうした点を踏まえると、先程の数字は2009 年度中の動きとしてはプラスの成長を意味しています。問題はこうした景気の回復経路、すなわち年度後半に向けて成長していくという見通しが正しいかどうか――この理屈については先程申し上げましたが――、その妥当性にかかっているわけです。数字とメカニズムの関係は以上申し上げた通りです。』
ということで、2009年度中の動きはプラス成長という話なのですけど、まあ実際に景気回復経路に乗るのかって話になるとこれはまあ当然ながら弱めの話になっています。
○景気に関しては弱めの見通し発言ですわな
先般引用したNYでの講演で信用バブル崩壊の影響が深刻ですよねって話をしていましたが、その講演を絡めて質問がありまして、それに対する白川総裁のコメントではこんな話を。
『今回の見通しについても、足許これだけ大きな生産調整が行われ、在庫調整が内外で進展しているわけですし、金融政策・財政政策の効果もこれから期待できるということを踏まえると、この先の経済の経路は先程申し上げたようなこと(引用者追記:展望レポートのメインシナリオですね)になると思います。』
『しかし、その調整後の姿がどのようになるかは、様々な要因に依存します。つまり、世界経済が2004
年から2007 年にかけてみられた高い成長率に戻っていくのか、あるいはもう少し低い成長率になるのかは、今後の展開をみて判断していく必要があります。かつての高い成長率の姿に戻ることをもって回復といっているわけではなく、あくまでも、短期の循環としてメカニズムを説明したということです。』
ということですからまー全然強気じゃないですねってお話。もちろん展望レポートにおける景気見通しも暗いのでこんなもんなのでしょうけれども。
○デフレリスクに関して
デフレリスクに関して2度ほど質問がありまして、それに対する答え。
『デフレという言葉で物価の持続的な下落を定義しますと、私どもは、デフレスパイラルに陥ることがないかどうかを注意しています。デフレスパイラルに陥るかどうかはいくつかの条件に依存しますが、最も重要なことは、中長期的な予想インフレ率がどうなっているかということだと思います。それに加えて、今後の経済情勢の展開、金融システムの状況などにも依存すると思います。』
『デフレスパイラルのリスクについて、これを軽視しているのではないかというご質問だとしたら、そういうことは全くございません。物価の下落がデフレスパイラルにつながるかどうかは、金融政策の運営上非常に重要なポイントですから、今回の決定会合でも丹念に議論し、先程申し上げたような結論に至ったわけですが、私どもとしては、今後とも引き続き注意深くみていきたいと考えています。』
ということで、物価の下落がデフレスパイラルになるのかどうかという点に警戒していますなという話は出ておりますですな。
○5月危機に関して
『「5月危機」という言葉が適切かどうかは別にして、決算の発表と前後して、企業金融あるいは金融市場がどのようになっていくのかということについては、毎回の決定会合で注意深くみています。企業金融の現状をみると、日本銀行や政府による政策対応を背景に、CPの発行金利が一段と低下しています。また、これまで発行が止まっていた社債についても足許ではシングルA格の発行がみられるなど、企業の資金調達環境の緩やかな改善が続いていると判断しています。もっとも、企業業績の悪化傾向に加えて投資家の選別姿勢の強まりが続くなど、企業金融はなお厳しい状況にあると認識しています。』
ということですけど、まーCP市場(と残存1年以内の社債市場もA格以上は含むかも知れない)に関しては政策効果出過ぎにも程がありますので、正直言って市場の中にいると「5月危機って何でしたっけ???」状態なのですけれども(汗)、銀行貸出の状況とか見ていかないといけませんね。という話になると金融庁の世界になって日銀だけでは如何ともし難い部分がありますわな。
ま、貸し渋り検査とやらをやっているようですので、当然ながら銀行の自己査定に関して緩和的に運用して貸出をしやすくするようにしてるんでしょうかね、ニヤニヤ。
○在庫調整に関連して
最後に何故か冒頭説明部分の話に戻りますと、メインシナリオではこのような話をしておりましたわな。
『まず、中心的な見通しを述べます。景気面では、2009 年度前半は、内外の在庫調整の進捗を背景に悪化テンポが徐々に和らぎ、次第に下げ止まりに向かうとみられます。その後、2009
年度後半以降は、各国における各種政策が効果を顕わすとともに、金融や実体経済における様々な調整も徐々に進捗するとみられるため、国際金融資本市場が落ち着きを取り戻し、海外経済も持ち直していくと考えられます。わが国経済も、こうした海外経済や国際金融資本市場の回復に加え、各種対策の効果もあって、緩やかに持ち直し、見通し期間の後半には、潜在成長率を上回る成長に復帰していく姿が想定されます。』
その潜在成長率が下がっているのがチャーミングなのですがそれはともかくとして、この在庫調整に関するお話はこれまた測ったようなタイミング(というか測っているのでしょうけれども^^)で日銀レビューシリーズが出ております。
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/rev09j02.htm(紹介のページ)
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/data/rev09j02.pdf(本文)
『最近の在庫変動について――今次局面における特徴点と今後の景気展開に対するインプリケーション――』
えーっと一応これも読んだのですが、時間の都合上割愛。インプリケーションに関しては6ページ目の第4節の部分になりまして、そこまでは基本的な概念の説明になっていますが、あたくしの苦手とするややこしい微分積分や確率の話がございませんので(あほですいません)さっくり読めます。
2009/05/01
お題「展望レポートを素直に読むと時間軸なのだが・・・・・」
H1N1のA型インフルエンザとな。名前なげーよ。
で、決定会合結果は予想通りの現状維持。
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/k090430.pdf
と言うわけで展望レポート。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/tenbo/gor0904a.pdf
○現状認識では政策効果に期待するも・・・・・
1年前の展望レポートや半年前の中間レビューと比較すると落涙を禁じ得ないのであまり比較はしませんが、過去の展望レポートはこちらにリンク集がございますです、はい。
http://www.boj.or.jp/theme/seisaku/sakiyuki/tenbo/index.htm
まずは冒頭部分から。
『2008 年秋以降、米欧の金融システムや国際金融資本市場の動揺が深刻化する中、世界経済は同時かつ急速に悪化した。最近に至り、在庫調整の進捗などを背景に、世界的に景気の下げ止まりに向けた動きがみられ始めているほか、各国当局は大規模な政策対応を検討中あるいは実施途上にあり、今後、これらの政策が効果を発揮していくことが期待される。もっとも、こうした動きが、世界経済の順調な回復につながっていくかどうかについては、なお確実とはいえない状況にある。』
ということですが、従来の金融経済月報ではこの政策効果に関連する記述は無かったのですが、より長期的展望という論点から政策効果で下げ止まりという話が出ているのはちょっとだけ明るい話と。1月の展望レポート四半期レビューではこのように書かれていました。
『景気・物価の先行きについては、2010 年度までの中心的な見通しとしては、中長期的な成長期待やインフレ予想が大きく変化しないもとで、2009
年度後半以降、国際金融資本市場が落ち着きを取り戻し、海外経済が減速局面を脱するにつれ、わが国経済も持ち直し、物価の下落幅も縮小していく姿が想定される。こうした下で、見通し期間の後半には、物価安定のもとでの持続的成長経路へ復していく展望が拓けるとみられるものの、このような見通しを巡る不確実性は高い。』(1月決定会合公表文より)
ちゅーことで、3か月前との違いは各国による政策がより豪華に打ち込まれているところとなるでしょう。効果が出るといいですね(棒読み)。
『先行きの世界経済を展望する上では、米欧の金融システムの建て直しがどのように進むのか、また、新興国も含め世界需要がどの程度のテンポで回復していくのか、といったことが重要な着目点となる。』
つまり最後は毎度お馴染みの外需頼みですね、わかります。
『以下、このような点における不確実性も十分念頭に置いた上で、わが国の経済・物価情勢の展望について、中心的な見通しとリスク要因の双方を検討することとする。なお、新型インフルエンザの拡がりと経済活動等への影響については、今後、注意深くみていく必要がある。』
新型インフルエンザキタコレ。
○回復は外需頼みとな
んでまあ次の経済見通しです。
『わが国経済は、大幅に悪化している。2008 年度のわが国経済は、1月の中間評価時点と比べると、大幅に下振れた。企業部門では、海外経済の急速な落ち込みから輸出が著しく減少したほか、企業収益や金融環境の悪化により設備投資も大幅に低下した。家計部門でも、消費者マインドや雇用・所得環境の悪化を背景に、個人消費が弱まってきた。』
この辺はここもとの金融経済月報と基本観は同じです。で、先行き。
『先行き2009 年度から2010 年度を展望すると、わが国経済は、海外経済や国際金融資本市場の動向に大きく依存した展開を辿る可能性が高い。』
・・・・・・・ということは回復は中々しませんということですね、わかります。
まあその残念な見通し部分を一応引用しますとこうなります。
『2009 年度前半は、国内民間需要は引き続き弱まっていく一方で、内外の在庫調整の進捗を背景に、輸出・生産の減少に歯止めがかかっていくと予想される。このため、わが国経済は、悪化のテンポが徐々に和らぎ、次第に下げ止まりに向かうとみられる。』
まーもしかしたらここの所の経済指標は下げ止まりっぽかったりするんジャマイカという感じではありますが。
『2009 年度後半以降は、各国における各種政策が効果を顕わすとともに、2000
年代央にかけて蓄積された金融や実体経済における様々な過剰の調整も徐々に進捗するとみられるため、国際金融資本市場が落ち着きを取り戻し、海外経済も持ち直していくと考えられる。わが国経済も、こうした海外経済や国際金融資本市場の回復に加え、金融システム面での対策や財政・金融政策の効果もあって、緩やかに持ち直し、見通し期間の後半には、潜在成長率を上回る成長に復帰していく姿が想定される。』
ここなんですけどね、過剰の調整ってそう簡単に片付いてくれるのって疑問は結構あったりします。ただまあマネタリー絶賛大供給時代でございますので、どっかでまたバブルみたいなものが発生して過剰の調整をバブルで誤魔化すという大技はアリかなあとはあたしゃ思っておる次第なので、必ずしも全然ダメでしょとは思いませんけどね。
○物価情勢を素直に読むと時間軸なのですが・・・・・・
で、経済の項目別展開は端折りまして、物価情勢の見通し部分。めんどいので結論部分だけ引用。
『消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比は、石油製品価格の下落や食料品価格の落ち着きに加え、経済全体の需給バランスの悪化などを反映して、2009
年度半ばにかけて下落幅が拡大していく可能性が高い。その後、中長期的なインフレ予想が安定的に推移するとの想定のもと、石油製品価格や食料品価格の影響が薄れていくため、下落幅は縮小していくと考えられる。もっとも、需給ギャップのマイナスが残存し、賃金も弱い動きを続けるとみられるため、2010
年度においても下落が続くと見込まれる。』
ということで、こちらもまあ金融経済月報などでもそんな話になってはおりますが、改めてこれを素直に読めば堅く見ても今年度中、普通に考えたら来年度の前半くらいまで時間軸って話になると思うのじゃが、何で1年から2年の所ってあんなにイールド立ってるのじゃろ(ここ数日レート低下してますけどね)。
○上振れ、下振れ要因
『第1に、国際的な金融と実体経済の負の相乗作用の帰趨である。』
ということで説明が続くのですが、一言でまとめると「色々と下ブレ要因がありますよ」ってな感じです(^^)。
『第2に、世界各国で取り組んでいる各種政策の影響である。』
こちらですが、政策効果に関しては意外にも『上振れ・下振れ両方向の不確実性があることに留意する必要がある。』と、両睨みになっておりますにゃ。効果空振りで下振れ懸念ってのは米国の不良債権処理問題という所なんでしょうか。
『第3に、企業の中長期的な成長期待の動向である。』
悪化が続いて成長期待が下振れしたら設備投資や消費支出が下振れするでしょという話。
『第4に、国内の金融環境の動向である。』
金融資本市場の緊張が高まった場合に金融面から実体経済への下押しという話も毎度のように出ておりますが、今回もこの文言があったのは「ほ〜」という感じ。
『一方、やや長い目でみた場合には、成長率が徐々に高まっていく中で、緩和的な金融環境が続く場合、金融・経済活動や物価の振幅が大きくなるリスクには、引き続き留意する必要がある。』
この部分、昨年10月の展望レポートでも同じ表現になっております。もうちょっと芸が細かい話をすると、昨年4月の展望レポートではこうなっていまして、
『第4に、緩和的な金融環境が続くもとで、金融・経済活動の振幅が大きくなる可能性があることである。』(これは昨年4月の展望レポート)
物価がマイナスの中での金融環境って話になったら緩和もへったくれもないという現状を踏まえまして、なのかどーかは知らんけどまー意識してるでしょ当然とは思いますが、成長率が高まってきたら現在の金融環境が緩和的になるのか、それとも現在の金融環境が既に緩和的なのかは、微妙に断言を避けている表現に前回から進化(?)しているという事が判るかと思います(昨年4月の展望レポートでは現状の金融環境を緩和的という前提になった表現になっておりますわな)。
ま、細けぇこたあいいんだよ!(AA略)と言われそうですが(^^)。
#という所まで引用したら時間と量がなくなったので以下後日に続くかもしれない
ちょっとだけ雑感。
○バーナンキどうするどうする
って別に義太夫ではありませんが。
米国長期債の話昨日ちょっとしましたが、景気底打ちもさることながらここもとの絶賛国債大発行に対する警戒(というか入札悪いし)も含めて金利上昇しているでござるの巻となっているようで、昨日も10年3.11%で戻ってきたみたいですし、30年も4%乗せとかになったりしたりするとな。
で、昨日もFOMC声明文にありますように、長期国債買入って各種資産購入プログラムの一環として実施しており、その趣旨は「信用市場の緩和」であるという豪快な理屈になっておりまして、その伝で言えば長期金利が上昇するのを抑制しないといけませんがなという楽しい話になるんですな。
いやまあ「クレジットスプレッドや流動性リスクプレミアムが縮小してスプレッドが縮小しているから別にベースレートが上昇しても無問題」という強引な理屈を持ち出すのは可能かもしれませんが、やはりあーゆーメッセージを出している以上、市場ちゃんは「FRBは長期金利上昇を抑制する」と期待するのは当然ちゃんなのでありまして、長期国債買入のアナウンスがあった時点の10年3.1%に金利が戻ってしまった以上、バーナンキどうするどうする状態になっているという所でしょうな。
しかし、一方で折りしも国債大増発&増発ネタで金利上昇なので、このタイミングでいきなり長期国債買入増額を堂々言いだすと、それはどう見ても財政マネタイゼーションです本当にありがとうございましたとなりますので、はてさてどうなる事か。
「管理通貨制度下での実質的な基軸通貨状態になっている国が財政マネタイゼーションを実施」というのはどうなるのやらというお話で、何か壮大な実験になるのか、それとも微妙にそういうこと突っ込まないでスルーしちゃうのか、今後の動向は生温く(といいつつ結構債券市場参加者的には必死に^^)見守っていく必要があろうかと存じますです、はい。