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2008/06/30
お題「中村審議委員会見」
NYまた株安ですなあ。禿先生の落ち短出てくれないかなあ。
中村審議委員会見。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0806b.pdf
○景気認識に関して
輸出に関してはあまり下を見ていなさそうに読めます。
『やや詳しくみると、輸出は、新興国や資源国など、幅広い地域に向けて増加基調を保っており、先行きも基調が大きく変化することはないと考えています。』
『一方、企業は原材料価格高騰によるコスト上昇分を製品価格に十分転嫁できていないことから収益環境は悪化しています。先行き、設備投資や個人消費は底堅く推移する可能性が高いと判断していますが、交易条件の悪化が続いているだけに、これに伴う所得形成の弱まりが国内民需の下振れをもたらすリスクについて、注意深くみていく必要があると思っています。』
『世界経済や国際金融市場を巡る不確実性、エネルギー・原材料価格高の影響などには、引き続き注意が必要です。』
ということで、交易条件の悪化と所得形成の弱まりに関する指摘はございますが、輸出の下振れリスクに関してはあまり強調していませんですなあってちょっと気になりましたです。
#まあ確かに輸出はコケるコケると言われながらコケないのでありますが、それを言い出すと個人消費も中々コケないですよね。
○海外のインフレ懸念問題について
物価見通しに関しては金融経済月報の通りでして、『先行きについては、経済全体の需給が概ねバランスした状態で推移するもとで、石油製品や食料品の価格上昇などから、当面、前年比プラス1%台半ばで推移すると予想されます。』となっております(ちなみに先週末のCPIを受けて秋口にも2%乗せを予想する本職の人が増えてきました)。で、世界的なインフレ懸念問題に関しては白川総裁会見を踏まえたお話に。
『世界各国とも物価上昇率がかなり高くなっており、インフレ懸念が強まっていることは事実です。国によってそれぞれ経済や物価の状況は違いますので、それに伴って金融政策も自ずから異なってきます。勿論、各中央銀行のゴールは、中長期的にみて物価、経済を安定させ持続的な経済発展を図るということに変わりはないと思いますが、そのアプローチについては、必ずしも同じルート、同じやり方ではないと思います。従って、欧米の色々な動きはあると思いますが、日本銀行としては、足許のわが国の経済・物価情勢をみながら、最適な金融政策を図っていきたいと考えています。』
で、この後「じゃあ最適な金融政策はどうなんだ」という突っ込みが飛んできて質疑応答大変そうですなあという部分があるのですが、それは後ほど。
最後の質疑では「でも日本のインフレリスクはどうなのよ」という質問がありまして、それに対しての答えもまあそうかなという感じ。
『確かに、海外の物価上昇に比べれば、足許の日本の消費者物価上昇率は低いわけですが、昨今のエネルギー・原材料や食料品の値上がりは、非常に大きく、このことが日本の消費者心理にどのように影響するか、あるいは企業の価格設定にどのように影響するかをみていく必要があります。』
ということで、以下消費者のインフレ期待の変化とかを見ようってお話になっておりましたです。
○両サイドのリスク高まる
『本日の講演でも説明した通り、海外経済の動向やエネルギー・原材料価格高騰に伴うインフレ圧力、国際金融資本市場の混乱といった日本経済を取り巻くリスク要因については、先行きの不確実性がさらに高まっています。5月の金融政策決定会合と6月の金融政策決定会合を比較すると、6月の時点の方が、両サイドのリスクがさらに高まっているのではないかと思います。』
ということで両サイドのリスク高まるというお話になっておりますが・・・・
○で、どうするの?
という質問が来るのですが、その類の最初の質問に対する答えから。
『このように不確実性が極めて高い状況下にあっては、先行きの金融政策運営について、特定の方向性を持つことは適当ではないと思います。この先、予断を持つことなく、経済・物価の見通しとその蓋然性、上下両方向のリスク要因を丹念に分析して、見極めていく必要があると思います。その上で、経済・物価情勢に応じて、機動的に金融政策を運営していくことに尽きるのではないかと思います。具体的にああする、こうすると言えれば良いのかもしれませんが、そこは非常に不透明であるということしか言いようがありません。』
で、それに対してツッコミが来るのでした。これは中々(^^)。
『(問) 先程、金融政策の先行きについて、「不透明としか言いようがない」ということでしたが、これはつまり、先行きどうするか分からない、全くお手上げだという意味なのでしょうか。また、景気下振れリスクと物価上振れリスクは、5月よりも6月の方が両方向にさらにリスクが高まっているとおっしゃいましたが、この両方のリスクが実現した場合、すなわち景気は下向きになり、物価は上振れていくような場合、どのような政策対応を行なうのか、それとも、やはりあくまで不透明である、分からない、お手上げだということなのでしょうか、考えをお聞かせください。』
そりゃそう聞きたくなりますわな(^^)。
『(答) 私どもの政策決定は毎月の金融政策決定会合で行なっておりますが、色々なデータを分析して、次の金融政策決定会合までは現状の政策金利を据え置くことが最善であるという判断から決めたものであって、不透明であるから何もしないということではありません。』
と、勇ましくスタートしておりますが。
『金融政策については、日銀法の基本理念のとおり、物価安定のもとでの安定した経済成長をどのように図るかということに尽きると思います。したがって、様々な状況の変化がありますので、その時々の状況に応じて最適な判断を行なうということです。』
ほうほうそれでそれで。
『私が審議委員に就任して1年になりますが、就任した昨年の春から夏にかけては、米国の住宅産業を除いて何も悪いことがないし、インフレリスクも低い状況でした。昨年の夏場以降、一転して様々な問題が起こり、エネルギー価格は上昇し、世界の経済情勢は刻々と変わっていくということを実感しています。金融政策についても、今申し上げたことに尽きると思います。分からないから何もしないということでは決してなく、その時点その時点で判断しますが、金融政策は、その効果が現れるまで時間がかかりますから、目先だけを捉えて判断するということでは決してありません。』
うーむ、結局「その時の状況で判断しますよ」というお話にしかなっておりませんなあ。まあ仕方ない面もあるが、もうちょっと説明のしようがあったような希ガス。その時の景気悪化と物価上昇のどちらがより問題なのかのバランス次第とか何とかコメントのしようがあるのではないかとも思うのですがどうでしょ。
○政策委員会の欠員
『副総裁、審議委員は、「両議院の同意を得て、内閣が任命する」ものであり、人選等についてはコメントする立場にはありません。ただ、9名いるべきメンバーが7名しかいないということは、意見の多様性や色々な業務執行の面で、やはり好ましくありません。』
というか、日常の業務執行で大変なのではと思うのですけれども。通常業務執行の決裁関連では武藤副総裁が随分と活躍(というか役にたったというか^^)だったようですし(^^)。まあ早いところ決めて頂きたいものだと存じます。というか西村さんの後任さんの予定在任期間がどんどん短くなっているんですが・・・・・
ということで本日は中村審議委員の会見で手抜きバージョン恐縮至極。
2008/06/27
お題「中村審議委員講演とか」
原油は上がるわドルは下がるわ株は下がるわでこりゃ米国ご愁傷様でございますな。そして「証券会社のレポートで大騒ぎ」(本当にそれが原因なのかはよー知らんが)ってかつての日本みたいで実に香ばしいものを感じますなあ。などとまだ対岸の火事モードなマインドセットなあたくし。
あまり材料にならなかったみたいだけど中村審議委員の講演から参ります。
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0806d.htm
○まず勝手にまとめ
基本的には中村審議委員は就任会見以来景気に関してはやや慎重な見方を示しています。特に地域経済の悪さに関しての言及が就任会見で目を引いたのですが、今回に関しましても景気に関してはやや慎重スタンスと言えるのかとは思います。
今回の説明そのものに関しては金融経済懇談会という場なので政策委員会大勢見通しに沿ったものとなっていますけれども、特にその説明に関連して個人的見解が強く出ているようには見えませんので、景気に関してはここへきて政策委員会の大勢見通しが中村審議委員の景気見通しに近づいてきたとも言えるのかも知れませんね。その辺に関しましては会見要旨も見ないとですけど。
物価に関しては中村審議委員(だけじゃなかったですけど)は就任当初は上昇しにくいという見通しでしたが、こちらに関しては上昇のリスクを強く意識というところでしょう。
○国内景気に関して
海外部分は華麗にスルーして『4.わが国の経済・物価情勢』の部分から。
『足許のわが国の景気は、エネルギー、原材料、食料品価格高騰の影響などから、減速しています。もっとも、先行きについては、当面は減速が続くものの、その後は緩やかな成長経路を辿る可能性が相対的に高いと考えています。』
というのは金融経済月報と同じで。
『資源の多くを輸入しているわが国にとっては、エネルギー・原材料価格の上昇は交易条件の悪化、すなわち、実質所得が海外に流出することを意味します。輸出価格が上昇しない一方、輸入価格が上昇しているため、海外からの手取りが伸び悩む中で支払いが増加している状況です。このため、名目ベースでみる貿易収支は悪化しており、企業収益の伸び悩みに繋がっています。今のところ、設備投資や個人消費は底堅く推移していますが、こうした所得形成の弱まりが国内民間需要の下振れに繋がらないか、注意深くみていく必要があると考えています。』
エネルギーや原材料価格の上昇が交易条件の悪化、所得形成の弱まりに繋がるという話に関しては既に先般ご紹介した5月の金融政策決定会合議事要旨でも触れられていましたが、この点に関しては政策委員会の皆様が毎度毎度指摘していまして、政策委員会的には利上げへの思惑が出るのは取りあえず抑えておきたいというのは把握した。
・企業部門
『国内経済の動きをやや詳しくみますと、輸出は、米国向けは減少していますが、新興国や資源国など幅広い地域に向けて増加基調を保っており、先行きも基調が大きく変化することはないと考えられます。』
『また、企業は、原材料高騰によるコスト上昇分を製品価格に十分転嫁できていないことから収益環境が悪化していますが、収益水準としては大企業中心に一定の水準を維持しているほか、設備・在庫・雇用の面で過剰を抱えていません。こうした点からみて、日本経済はかつてに比べ、景気の下振れのショックに対して、足腰が強くなっていると思います。』
『さらに、金融環境は緩和的であり、引き続き、民間需要を後押しすると考えられます。また、企業の資金繰りや資金調達の面でも、中小零細企業や非製造業の一部では資金繰りが厳しさを増しており、注意してみていく必要がありますが、総じて良好な状態が続いています。』
ということで下振れリスクの話はよく強調されますが、メインシナリオ的にはまあそんなに底割れするような話でもなくて結構確り目の見方であったりするわけなんですな。
・家計部門
『家計関連では、家電販売が堅調に推移しているほか、ショッピング・モールやアウトレットなどの商業施設では売上が好調に推移するなど、個人消費は力強さには欠けるものの総じて底堅く推移しているようです。』
『もっとも、5月の消費者態度指数をみても、石油製品や食料品の値上げの動きが広がる中で、センチメントは弱い状況が続いているほか、小売関係の企業経営者からは、消費者に生活防衛的な動きが一段と強まっているとの声も聞かれます。消費者は、購入する商品に対して高い品質を求めつつ、1円でも安いものを購入しようとしていますが、今後、生活必需品の値上がりが実質所得を下押しした際に、価値観の多様化している消費者の行動がどのように変化するのか、注意してみていく必要があります。』
家計部門に関して言えば、マインド指標がゲロゲロにも程がある状況が続くのに中々底割れしないですなあとか思うのですけど、生活関連商品の価格上昇が効いて来るのはこれからなのかもしれませんね。
・物価動向
『物価面では、国内企業物価は、国際商品市況高などを背景に、5月は前年比+4.7%と上昇幅が拡大しました。消費者物価(除く生鮮食品)は、昨年末頃から前年比のプラス幅が拡大し、足許、+1%程度となっています。先行きにつきましては、経済全体の需給が概ねバランスした状態で推移する下で、石油製品や食料品の価格上昇などから、当面、前年比プラス1%台半ばで推移すると予想されます。』
とこれは金融経済月報通り。
『足許の上昇率は、消費税の影響を除けば、15年振りの高い伸びであり、特に購入頻度の高い生活必需品の上昇が目立つだけに、消費者のインフレ期待の変化や企業の価格設定姿勢の動向、さらには海外で高まっているインフレ圧力のわが国への波及等を注意してみていく必要があると考えています。』
これもまあ月報ベースのお話にはなるのですが、物価に関しては4月の展望レポート時点では政策委員会の大勢的には(人によってばらつきがあるのは当然として)そんなに上昇ってイメージが強くなかったという感じだったので、この点に関してはここ2ヶ月ちょっとでだいぶ変わりましたねえという感じです。そういや4月末のFOMCステートメント(昨日ご紹介した奴)でも「次の四半期にはインフレはやや落ち着きの方向」でしたね。
○不確実性はさらに高まるとな
『5.今後の金融政策運営方針』の部分から。
『繰り返しになりますが、このように、わが国の経済は、当面は減速が続くものの、その後は潜在成長率並みの1%台半ばの緩やかな成長経路を辿る可能性が相対的に高いと考えています。』
これは展望レポートのお話。
『ただし、冒頭に申し上げた3つのリスク要因、海外経済の動向、エネルギー・原材料価格の高騰に伴うインフレ圧力、国際金融資本市場の混乱については、先行きの不確実性がさらに高まっています。こうした状況の中、さらに情勢を見極めることが適当であるとの判断から、6月12〜13日に開催された金融政策決定会合では、政策金利を0.5%に据え置いた次第です。』
6月の会合の話をして、その時の情勢判断として「不確実性さらに高まる」って言ってますから、展望レポート時点あるいは5月会合時点よりも不確実性がさらに高まっていますっていうお話だと思われます。慎重スタンスで誠に結構かと存じますが、まあそんな状況で利上げとか有る訳無いのでありまして、世界インフレに対応して日銀も協調利上げとか講釈を垂れる人はギャグじゃないのなら豆腐の角に頭をぶつけるべきであるものと思料されます。
『政策金利から消費者物価上昇率を差し引いた実質短期金利はマイナスであり、潜在成長率との関係でみて極めて低い水準と評価されます。こうした金利水準の下で維持されている緩和的な金融環境は、民間需要を後押しすると考えています。』
これは下振れリスクが軽減されたら正常化復活という話にも繋がるのですけれども、物価上昇が交易条件悪化だの所得形成の弱まりだのという話をしている分にはあまり慌てなくてもいいのかなと思います。逆にその辺が片付いた場合には正常化ペースってのは速くなる(半年毎に25bpとかいうようなちんたらしたペースにはならんでしょという意味)んでしょうね。まあそれ以前の問題が現状なんですけど。
『先行きの金融政策の運営方針については、経済・物価情勢の状況によって、望ましい政策運営は異なるため、不確実性が極めて高い状況の下で、予め特定の方向性を持つことは適当ではありません。』
利下げ方向も排除しませんと。
『この先、経済のダウンサイド・リスクが薄れ、物価安定の下での持続的な成長を続ける見通しの蓋然性が高まるのか、あるいは、下振れリスクが顕現化する蓋然性が高まるのかを、予断を持つことなく丹念に分析し、見極めていく必要があり、その上で、経済・物価情勢に応じて機動的に金融政策を運営していくことが肝要だと思います。』
でもまあ据え置き継続で様子見継続なんでしょうね。
と、金融政策の部分を引用してたらその次の部分の引用をしている時間が無くなってしましましたが、その次の部分は『6.グローバル需要の取り込み』ってお話でして、これは中村審議委員の持論展開部分と見られます。ここもとの金融経済懇談会での挨拶要旨は構成として最後の部分で政策委員の持論コーナーみたいな部分があって、直接金融政策にどうのこうのという話じゃない場合が多いのですが、これはこれで興味深く読んでおります。
でもそっちは月曜以降で勘弁。
以下余談。
○CPレートが上昇した件について
昨日はスポ末で新発CPが出たわけですが、やや発行が多めだったこともあり、4半期末でCPディーラー様(=銀行さん)の持ち高もそうバカスカ増やすわけにも行かずという需給要因が炸裂して発行レートが全体的に上昇したものが多かったようです。昨日の駄文では小見出しで「6月末はだいぶ片付いてきた・・・のかなあ」とか書いたあたくしとしてはまたまた見事に空振りで俺様涙目と言ったところです。どうもすいませんm(__)m
ショートタームのCP発行も割と多い印象でしたが、短いものに関しては威勢よく上昇してましたわなという感じ。スポットが7月に入る今日からは落ち着くんでしょうけれども、CPの短い発行が結構多いイメージがあるので、その人たちがロールするかどうかにもよりますが、ショートファンディングの余波で目先は急に絶賛低下ってワケにもいかんのではないかと思います。などと書きますとまた赤恥青恥ですかねえ(涙)。
ではでは♪
2008/06/26
お題「柄にもなくFOMCとか」
益々舵取りが大変のようで誠に大変ですなあ(棒読み)。
○柄にもなくFOMCなんぞを
正直申し上げてあたしゃFOMC関連文書まで年がら年中読んじゃあおりませんので、毎度の前回と今回の文章を並べる攻撃しておきますので一つご確認くださいって感じなんですけど(恐るべき手抜き)まあ勘弁ということで。
今回の声明文
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20080625a.htm
前回の声明文
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20080430a.htm
第1パラグラフ
Recent information indicates that overall economic activity continues to
expand, partly reflecting some firming in household spending. However,
labor markets have softened further and financial markets remain under
considerable stress. Tight credit conditions, the ongoing housing contraction,
and the rise in energy prices are likely to weigh on economic growth over
the next few quarters.
前回はどうなってるかと申しますと、
Recent information indicates that economic activity remains weak. Household
and business spending has been subdued and labor markets have softened
further. Financial markets remain under considerable stress, and tight
credit conditions and the deepening housing contraction are likely to weigh
on economic growth over the next few quarters.
消費関連の経済指標ちと強くなりましたというのと、エネルギー価格の上昇の話が第1パラグラフに入りましたですかそうですか。
第2パラグラフ
The Committee expects inflation to moderate later this year and next year.
However, in light of the continued increases in the prices of energy and
some other commodities and the elevated state of some indicators of inflation
expectations, uncertainty about the inflation outlook remains high.
前回分
Although readings on core inflation have improved somewhat, energy and
other commodity prices have increased, and some indicators of inflation
expectations have risen in recent months. The Committee expects inflation
to moderate in coming quarters, reflecting a projected leveling-out of
energy and other commodity prices and an easing of pressures on resource
utilization. Still, uncertainty about the inflation outlook remains high.
It will be necessary to continue to monitor inflation developments carefully.
前回はインフレ圧力について「今後エネルギー価格の上昇がピークアウトして、商品価格も落ち着いてくるからインフレ圧力が緩和されるのではないでしょうか」という話をしてたのが、今回の文章量が妙に減ってるのは何でじゃろうのう。
てか、前回は「次の四半期ではインフレ圧力は緩和でしょう」だったのが、今回しらっと「今年から来年にかけてインフレ圧力は緩和でしょう」になって、おまけにエネルギー価格や商品価格の見通しの話をこれまたしらっと引っ込めてるのね。
第3パラグラフ
The substantial easing of monetary policy to date, combined with ongoing
measures to foster market liquidity, should help to promote moderate growth
over time. Although downside risks to growth remain, they appear to have
diminished somewhat, and the upside risks to inflation and inflation expectations
have increased. The Committee will continue to monitor economic and financial
developments and will act as needed to promote sustainable economic growth
and price stability.
前回分
The substantial easing of monetary policy to date, combined with ongoing
measures to foster market liquidity, should help to promote moderate growth
over time and to mitigate risks to economic activity. The Committee will
continue to monitor economic and financial developments and will act as
needed to promote sustainable economic growth and price stability.
経済のダウンサイドリスクが若干軽減されたという話と、インフレおよび期待インフレ率の上昇に対する言及が加わっているんですね。
で、その後はメンバーの投票行動とかのお話ですな。
Voting for the FOMC monetary policy action were: Ben S. Bernanke, Chairman;
Timothy F. Geithner, Vice Chairman; Donald L. Kohn; Randall S. Kroszner;
Frederic S. Mishkin; Sandra Pianalto; Charles I. Plosser; Gary H. Stern;
and Kevin M. Warsh. Voting against was Richard W. Fisher, who preferred
an increase in the target for the federal funds rate at this meeting.
フィッシャーさんが利上げを主張と。前回はフィッシャーさんとプロッサーさんが利下げに反対(据え置きを主張)したんですな。
○いやまあ大変ですな
で、市場が一時ビビリまくっていた程の利上げペースは無さそうだし、あまりインフレ懸念に傾斜した内容でもありませんでしたって評価でドルが下がってみたりしてたみたいですけれども、あんまり金利が下がればなおドルが下がって商品価格が上がると言う仕様になり、インフレ期待がなお高進の懸念とか実にコントロールが難しくて大変ですなという感じが致します。
当面はFF先物とか2年TBillの値動きとか見ながら、適当に口先介入でインフレ懸念砲を打ったり火消し弾を打ち込んだりしながら、市場金利の上昇と低下が行き過ぎないようにしていくというような器用な事をするしかないと思うんですが、それもあまりやってると信認問題(こいつらただの狼ジジイじゃんとなるとマズー)になるのでどうなんでしょうね。
しかしインフレ見通しに関しては見事に外してますな。まあこの原油相場の動きを当てろというのが無理なので、同情の念には耐えませんが。あ、突拍子もない数字を出した人が預言者扱いされるのは洋の東西を問わず変わりませんけれども、突拍子もない数字を口で言うのは別に簡単なので、その手の預言者様におかれましては全財産掛けてそれにお前は張れる根性あるのかと小一時間問い詰めたいものです(話が脱線しましたwww)。
○6月末はだいぶ片付いてきた・・・のかなあ
昨日入札が行われた3か月FBですが、前場引けの板付きどおりの落札結果になりまして、結局足きりが0.6%にちょっと掛かったくらいで平均は0.59%台の穏当な決着となりました。
まあこれで受渡ベースで6月末越えたらもうちょっと買いやすくなるという人もいるでしょうから、特にここから売り込む事もなくという感じでしょうということでめでたしめでたしではあるのですが、世の中の皆様が「6月末のレートだけ跳ねて7月になったら下がるでしょ」と思って行動しておりますもんで、運用側はタームの長いもの(3か月とか)を出したいし、調達側はタームの短いもの(2週間とか1か月とか)を取って7月入りしてレートが下がってから再調達したいとなりますもんで、ここのところ新発CPの発行とかショートターム物多くなってますわな。資金供給オペも短いものになっておりますし。
でね、そうなりますとどうなるかと言うと、ショートファンディングが溜まるので、実は7月になっても調達意欲があまり下がらないことになるので、レートがいきなり下がってくれるのかどうか良く判らん気がしてくるのよという所です。まあ銀行さんがドカンと運用に出てくれば下がるので最終的にはその辺の懐具合に依存するというのが何という市場の厚みの無さという感じですけれども(苦笑)、皆で同じこと考えて動き4月の頭数日間妙にレートが下がらなかった攻撃の再来になったらそれはそれで中々いい味を出しているのでお楽しみにという所ですね。
ということで本日はFOMCで手抜きの巻でした(汗)。
2008/06/25
お題「引き続き小ネタ雑談系で」
週末に向けて相場のテーマが待っていますので。
○補完供給貸付が珍しく連発の件について
昨日は国債補完供給貸付が実施されました。銘柄は10年270回なんですけれども、以前はあまり見なかった補完供給貸付なんですが、この10年270回攻撃って直近で昨日以外にも20日と16日に実施されていまして、この銘柄は利払いの関係上16日スタートの翌日物取引は20日エンドになりますので、実質的にここ4営業日で3営業日渡って同じ銘柄の補完供給貸付が実施されてるんですな。
で、まあこの補完供給貸付ってのは国債市場におけるスクイーズのような動きによって債券市場の価格形成がおかしくならないようにという趣旨の下で日銀が保有する利付国債を一時的に(=あくまでも補完的ですな)供給することによって債券市場の価格形成の円滑化を図るちゅう理念があったと思うんですけど、まあそのスクイーズだの価格形成がおかしいだのというのに日銀が判断を入れるのは市場介入になっちゃいますから、オペ対象先の2社以上からの要望があった場合に実施するということになっていた筈です。(この部分追記あり。7月9日に書いたこちらをご覧下さい)
でですな、この10年270回なんですが、確かにレポ料は何かお高く(というかレート的にはお安くというか)なっているようなのですが、このゾーンのイールドカーブってやたら寝た状態になってまして、3か月短くて同じクーポンの10年269回が(単利で)1.450%、件の270回が1.455%なんですが、その後ろの銘柄では272回(1.4クーポン)で1.460%で275回(1.4クーポンで270回より半年長い)が1.465%と、イールドが横になった状態。
で、ここもと長いところが確りしてきたからここのカーブが何となく順イールドになっているみたいですが、先週末あたりは後ろに対して270回債って堂々の逆イールドになっていたりもしてたりして、レポがきついけど別にこれってイールドカーブ上で言えば別に高くない(というか後ろ対比で爆安になっていた)ので、ショートスクイーズ状態とも違うのに補完供給ってのも(制度がそうなっているからまあ別に良いのですが)何だかなあって感じがせんでもないのでございます。
270回債はこの前のチーペスト銘柄なので何かあるのかもしれませんが、ショートスクイーズとも何か違う感じの中で補完供給ってのも妙ですねと思いながら昨日のオペ通知を見るのでありました。
・・・・なお、ボケーっと見て感じた雑感につき、思いっきり間違えていたら教えてくださいませ現物のマーケットメークしているお方様におかれましてはなのでありまする。
○足元の6月末越えだけ妙に高い件について
昨日の新発CP発行レートは横ばいから長めの期間を中心にやや低下のイメージ。需要の集まりやすいネームの発行があまり多くなかったと思われるのも影響した需給要因というのはあると思いますが、もう一つ考えられるとすれば6月末の月末月初レートがやたら高めに推移しているので、このレートが反映されているうちに長めの資金運用をしておきたい(でも9月末になるとまた上昇するから9月の後半にエンドが来るとエンド時もオイシイのでそんなに長くは放出しない)という運用サイドの意識が反映されてるんでしょ。
ということで、どうせ末初要因が剥落するとまたまたGCが低下して0.5台前半の世界なんでしょという発想になりますと、足元のレートが少々高くても(少々とはどのくらいかって一応電卓叩いてどっちが得かは考えますよ^^)その足元の高い利回りよりもタームで固めて平気なものは固めてしまえ攻撃となるので、短い月末越えの資金運用アホラシスとなってしまうんでしょうな。
てな訳で、今週に入って足元は妙にレートが下がらないのに(というか昨日って上昇したのかな)タームのCPなんかはレートが落ち着いてきたって所なんでしょ。と考えると「末初レートが高いでしょう」という共通認識の下で発生した現象ではありますが、単なる市場の内部需給の問題なのでしょうねというお話になるんでしょ。
しかし四半期末っちゅうのは判るけど、何で3月末よりも盛り上がる勢いになってるんだかという感じでして、毎度毎度の話になりますが、6月前半にGCレート0.50−0.51という素敵なレートになっていた時におまいら何でタームのファンディングをせんのじゃとか思うんですけど・・・・とかえらそうに言ってるあたくしも人のことをそう言えるほど立派なオペレーションをしている訳ではないでしょうとか突っ込まれると答えに困るというのはここだけの話です(汗)。
○FB3か月入札ですが
と言うわけで今日のFB入札は期内落とし最終の3か月物になりますです。発行日が30日ということでとっても素敵な日なのでして、そもそも論として4兆5000億円の新発3か月FBなんぞが瞬間蒸発するようなアリガタヤな市場環境ではないですので、普通に考えるとある程度は業者の在庫になり、そのファンディングが30日のところでビューテホーな状態なので持ちたくないですねって話になるんでしょ。
足もとのGCレートがサガランチ会長になっていて在庫のファンディング負担もある中ですので、普通に純粋運用系の人的には結構アリガタヤ(再投資レートがウハウハ状態になっている筈と予想されるので)な銘柄ですから、流れりゃ普通に押し目買い来ると思うんですがどうでしょ。
とりあえず向こう3ヶ月で金融政策がどうにかなるとか思う人はこの商品いじってる人たちには皆無(そもそも海外のインチキレポートが出て金先とかダダ売られしてた時だって全然反応してませんでしたしwwww)ですので、まあ落ち着いた結果になるんでしょうなと。
○政府部門はつらいよ、ですかねぇ
日銀のページの新着情報を見たら『財務省の政策評価結果(日本銀行に関する部分)
(PDF, 54KB)』などというものがあるではございませんか。
http://www.boj.or.jp/type/etc/zhyoka19.pdf
・・・・・政策評価って業務運営の適切性に関する評価ですね。冷静に考えたら当たり前ですな(^^)。で、その4ページ目を見ますと政府部門って大変ですねと思った部分が。『(3)組織運営に係る状況』ってところなんですけどね。
『平成19 年において、米国におけるサブプライムローン問題が表面化し、国際金融資本市場が不安定化したこと等を踏まえると、日本銀行にとって、従来以上に広範囲な市場や多様な市場参加者の動向を的確に調査・分析し、情勢判断に磨きをかけていくことがますます重要な課題となってきています。』
で、途中を割愛して。
『また、日本銀行は、「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律」(以下、「行政改革推進法」といいます。)等の趣旨を踏まえ、人員の純減に努め、平成19
年度において、対18 年度比で59 人の減少(減少率1.2%<役員の欠員2名を除く>)となりました。』
前半で求められる仕事が広く深くなってますって話なのに、後半では人を減らしてますって話をしてるので、中の人の負担がダブルで大変になりますねってことですかいな。「政府は人減らせ」のポピュリズム大合唱にもお答えしないといけない訳でして、いやもう政府部門の第一線で奮闘している皆さん大変ですなあと思ってしまいましたよ。
2008/06/24
お題「ネタがないので蒸し返しネタなどを」
日本はとっくにそうですが、欧州様も経済指標悪いのキタコレという感じでございまするが、まあFOMC待ちでございましょうかねえ。
○CP祭り不発の予感
昨日は30日に向けてCP祭りかという話を申し上げましたが、25日発行の新発CP(というのは昨日ですが)の利回りは特に上昇することも無く横ばい圏内。発行が思ったほど多く無かった感じでしたのも影響してるかなという感じです。あと足元GCレートが木曜につけたところで一旦ピークアウトして(と言っても60アラウンドにいるので高いには高いですけど)るイメージなのとかも効いてるのかも知れませんが。
まー最終的には末エンドのロールがどのくらい入るかにもよるのでありますが、先週時点で月末に向けた備えモードを一回やっちゃったという所だったのかも知れませんね。どうもこの手の話書くと外してばかりですいませんm(__)m
短い所で言えば今日は2年入札ですが、0.8台後半(になるんでしょうと思うが)ってのは位置的にまあそんなもんでございましょ(後ろとの関係は無視して足元からの足し算でイメージしてます^^)という所なので可もなく不可もなく。明日の3か月FB入札の方が興味あるんですが、発行日が30日ということで落札して在庫にした瞬間にキャリーが厳しくなりそうな月末越えとなりますが、償還は9月の29日と純粋運用サイド的には再投資に困らない足なので、まあ流れるのか流れないのか良く判らんですけれども、どっちが勝つのかってお話かと思います。前回(平均0.60%乗せ)との比較でどうなるか注目しておきますです。
話もうちょっと変わりますが、昨日は現先だの短国買入だの共通担保だの資金供給を良い感じで打ってきましたが、そろそろ足元とか6月末越えとか気にしてきたのかなあという感じであります。気にするのがワンテンポ遅い気もしますけど、そうやって振れてくれないとあたくしのような弱小参加者におきましては収益チャンスも無いので、まあこれはこれで(苦笑)。
○5月金融政策決定会合議事要旨リターンズ
ということで前のネタなんですが。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g080520.pdf
あたくし先週木曜に5月の決定会合議事要旨に関連しまして、こんなことを申し上げたかと思います。
議事内容は当然ながら公表文書(金融経済月報とか展望レポートとか)に沿ったものになりますけれども、政策委員の討議内容という部分を読んでおりますと、景気に対する下振れリスクを意識した内容が目立ちます。ということで、日銀タカ派転向説はこの議事要旨を見てもちょっと有り得ませんわなという所になるのかと思います。(19日の駄文より)
で、その内容をご紹介すると言いつつあまり5月の議事要旨内容を紹介してなかった(物価に関する部分の紹介に終始しちゃいました)ので、5月議事要旨から景気に関する部分をご紹介しますです。別にネタ切れだから書いたんじゃないですからねっ(汗)。
・海外経済、特に米国経済について
『海外経済に関して、委員は、全体として拡大が続いているが、国際金融市場の動揺が続き、米国経済が停滞するなど、ダウンサイド・リスクが引き続き高いとの認識を共有した。』
『米国経済について、委員は、金融市場・資産価格・実体経済の負の相乗作用が、いつどのように収束に向かうのか、不確実性が大きいとの認識で一致した。(途中割愛)もっとも、別の複数の委員は、金融・建設業以外の企業決算はさほど悪くなく、米国経済が大きく下振れるリスクはやや後退したと述べた。』
ということですが、これが金融経済月報(基本的見解)になるとこうなるんですな。
『すなわち、輸出は、海外経済が減速しつつも拡大するもとで、増加を続けていくとみられる。(途中割愛)。なお、海外経済や国際金融資本市場を巡る不確実性、エネルギー・原材料価格高の影響などに、引き続き注意する必要がある。』(5月月報基本的見解より)
6月13日の白川総裁会見を見てからこの議事要旨を見ているのであまり違和感が無いちゃあ無いのですが、月報(基本的見解)での表現に対して言えば議事要旨の方が下振れリスクを強めに意識してますねと思われるのですがどうでしょ。
なお、本当は月報については背景説明を含めた全文を読まないと、特にこういう上下のリスクに関する部分は読み取れない場合がありますので、月報全文というのも(図表が多くてページ数見た瞬間にビビリますが)ちゃんと読み込む必要があったりします。
・所得形成の弱まり
『何人かの委員は、交易条件の悪化に伴い、所得形成力は弱まっており、1 〜
3 月期のG D P 統計でも、G D I の前年比がマイナスとなるなど所得形成の弱さが確認され、こうした動きが国内民間需要の下振れにつながらないか注意してみていく必要があると述べた。』
『このほか、複数の委員は、特に中小企業において、原材料高や円高の影響を受けて、収益が伸び悩み、設備投資や雇用スタンスが慎重化している、と指摘した。』
『多くの委員は、4 〜 6 月期の機械受注の見通しに言及し、過去の修正状況を勘案すれば、上方修正される可能性が高いとはいえ、企業収益の伸び悩みがなにがしか影響している可能性があるとコメントした。』
で、このあたりに関してですが、
『これらの委員は、先行きの設備投資動向については、6 月短観での設備投資計画の修正状況を含めて注視していきたいと述べた。』
ということのようです。
・雇用環境に関して
『雇用者数について、多くの委員は、短期的な振れが小さいとされる毎月勤労統計の常用雇用者数が前年比2
% 程度の伸びで推移している一方、調査対象の広い労働力調査はこれより弱めの動きとなっており、中小企業を中心に限界的な労働需要が鈍化している可能性があると指摘した。』
という指摘が。その他で申し上げますと、所得に関しては夏季賞与の伸びの小ささ、消費に関してはマインド指標の悪化の指摘があり、住宅に関してはマンションを中心に需要の弱さが観測されるという指摘があったりとなっています。
総じて申し上げますと、最初の繰り返しになるのですが、金融経済月報の基本的見解をベースにしつつもあちこちで「でもこんな下振れリスクがありますね」っていう議論が続いているという印象です。逆に上振れになるような威勢の良い議論は殆ど見当たらずという有様でして、この議事要旨がもうちょっと早く出てたら変な思惑も台頭しにくかったかとは思うのですが。
とは言いましても、決定会合議事要旨自体が次回以降の決定会合で内容承認されないと公表できない筈ですので、どうしても次回会合以降になっちゃうんですよね。別に決定会合じゃなくて通常の政策委員会での内容承認で良いじゃんとか思わんでもないのですが(どうせ法改正が必要なんでしょ)。
本日はまあそんなところで虫干し攻撃でした。
2008/06/23
お題「月曜につき雑談で恐縮」
天気予報通りに天気が動いてくれませんなあ。
○見事に戻りましたね
金曜の駄文では中期ゾーンとかに売りがでましたなあというお話を書きましたが、まあ先物とかにも売りが出てたようなんで、買い安心感がっくしとか申し上げたかと思いますが、金曜の債券相場は見事な買い優勢モードと相成りました。見事に逆に行ってしまいサーセンm(__)m
えーっとですね、まあ株価が下がったというのもあるのですけれども、それを言い出したら何で木曜は株安なのに債券下がったのという議論があるわけでして(^^)、金曜の場合はイールドカーブ全体に買いが入ったような動きでありましたと考えますと、これはまあちゃんとした(?)買いが入ったということでしょう。
・・・・よく考えたら金曜は20日でして、今月は償還がたくさんあるので、そもそも20日は黙っていても買い圧力があるのでした。肝心なことをすっかり忘却しておりましたな。償還金が入ってきた所で買うという(他はともかく、国債だったら別に償還されるものだという前提で買っても良いじゃんとか思うのですが)仕切りになっている人が世の中結構いますんで、償還の多いタイミングで買いやすい水準(?)に相場がいた場合株安とか加わるとこういうことになるんでしたな。アセアセ。
○CP祭りの悪寒
金曜は月末越えの国債買現先と共通担保オペが実施されまして、今回は2000億などと言うしょぼい額ではなくどっちも8000億円の打ち込み。で、結果はと申しますと国債買現先が6月24日〜7月4日で0.616/0.61で共通担保が6月23日〜7月1日で0.633/0.62と相成りました。
木曜の共通担保オペが0.6に届いて無かったので、エラク上昇したように見えますが、まあ6月末の所がレート上昇するのではという事になっておりますので、6月30日〜7月1日のレートを0.75%で計算すると残りの期間が現先オペで0.601%、共通担保オペで0.616%(どっちも平均利回りから計算)換算になるのですが、木曜の共通担保が末初0.75%とした場合に0.590%換算になるので、まあ上昇は上昇ですが、そもそも足元のGCレートが木曜に上昇したことを勘案(東京レポレートのS/N取引が金曜発表分は前日比2bp上昇)するとそんなもんかも知れません。ちと高いようには思えますが。
とまあ足元上昇気味(金曜のGCはちょっと下がったんでしたっけ)ではありますが、その傾向が最も顕著に出ているのは今回はCP発行レートだったりするのがチャーミング(去年の今頃はSCが妙に締まりました)な所であります。まあ6月と言うのは納税だ賞与だとかで発行が嵩む傾向があるのですが、今月は月末落としのCPがやたら多くて暫く前から6月末エンドイラネ攻撃になっていたんですよ(エンドを集中させると再投資の時にリスクがある上に月末だと決算とかの関係もあるので必要以上に月末エンドは買いたくない)ね。それで6月30日エンドのCP発行レートが妙に上昇していたのですけれども、ここへきて足元も重くなってきたようで、金曜あたりは発行レートが軒並み上昇。
高位格付けの銘柄でも月末越えのショートタームなどはレートが0.7台後半とかに上昇しやがっているようですし、3か月のその他金融さんで今月前半に0.6%台後半だったお方でも0.7%台に乗っていたりする次第で、妙に発行が多くなっておりますというか足元が重くなってますな。
6月末のエンドがちと大目になっているので、そのロールがどのくらい来るのか読みにくく、その分枠を空けておく必要もあるでしょうからCPディーラーの在庫を減らさないといけないとか、4半期末にあたるのでリスクアセットをあまり多く抱えられないとか、そうは言っても4半期末だからアセットバック物は出てくるでしょうとか、いろんな要因があるとは思うのですけれども、どうもこの上昇っぷりたるや3月末にも匹敵する状態。
月末の着地が読めてくるまではちょっと下がりにくい(逆に言えばスポ末の所では下がるでしょと思うのですが)という感じでしょうか。3月末、6月末と来ましたが9月末は中間期末ですし、12月末は年末年始ということで(今年の末はゆうちょ銀行の全銀接続要因もありますかな)、まあ4半期ごとに祭りになるというのが最近のCP市場の仕様になるのでしょうか。事前にあんまり警戒してなかっただけに今回は存外な盛り上がり方でありますが。
○その他雑談
上に書いてるのも雑談でしょうと言われるとぐうの音も出ませんが(^^)。
・毎度おなじみ人のふんどしコーナー
厭債害債さんまたも勉強にさせていただいております。
http://ensaigaisai.at.webry.info/200806/article_10.html
何か公的年金運用とかへの批判って「日本はダメだ」っていうステレオタイプというか自虐がデフォルトで存在して、それを基本にして「だから海外(だいたい米国)様の素晴らしいものを取り入れるべきだ」っていう話になるんですよね。あたくし的にはこの手の言説読むと何だかなあって思うところが丁寧に指摘されててスッキリ致しましたです。はい。
bewaadさんの今回の更新も面白かったです。色々な意味で(^^)。
http://d.hatena.ne.jp/bewaad/
以下新聞ねたから恐縮ですが。
・民主党ウォッチ
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080620-00000155-mai-pol
<日銀人事>池尾氏起用に「不同意」示唆…鳩山幹事長
何という無定見な。というか国民新党にこんな力があったとは(驚)。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080620-00000992-san-pol
山岡・民主国対委員長「歴史的国会で満点以上」 連戦連勝と自賛
えーっと、過ぎたるは及ばざるが如しですね、判ります。
・新銀行東京
http://www.asahi.com/politics/update/0620/TKY200806190301.html
新銀行東京、外国証券で21億円の含み損
『05年9月と07年1月に3種類の外国証券を計115億円で取得したが、08年3月期の価値は93億7600万円に落ち込んでいたという。』
『都は「サブプライム問題から派生した市場の混乱が原因。損失は新銀行だけ突出しているわけではない」としている。』
どう見ても開き直りです本当にありがとうございました。と思ったらさすがに議会からもこんな指摘が。
『しかし、都議会からは「中小企業支援の本業から離れた所でも多額の損失を出し、銀行の存在意義が問われる」と批判の声も上がった。』
そりゃそうですな。新銀行アホスとしか言いようが・・・・
2008/06/20
お題「相場雑談」
「ウッズ骨折今季絶望」というスポーツ新聞の見出しで中日ドラゴンズの選手を連想するあたくしは野球脳ですかそうですか。
#「岡田監督」という見出しからは阪神(以下同じ^^)
○中期に売りですかそうですか
先週の白川総裁会見に加え、海外で利上げ火消しモードになって中短期ゾーンのレートが低下したのがフォローとなって威勢よく低下していた中短期の金利でございますが、昨日は国内株安という材料にも関わらず中期ゾーン中心に金利上昇となったようで。
水曜はどっちかというとオリャオリャという感じで中短期の買いって感じになって、その後から現物全般強くなってきたところでございまして、昨日の海外からの帰り方を見ると「いやあやっと落ち着いてきましたか」となるのかなあとか思った次第なのでありますが、昨日は昨日でオリャオリャという感じの売りとなってしまいまして(さすがに水曜の買いと木曜の売りは別人28号でございましょうが)、やっと落ち着いて安心して買えますとか思ってた人たちがっくしの巻でございますな(というか水曜に頑張って買ってた人涙目のような^^)。
まあ5年1.5%乗せをやってた相場がいきなり水曜の所で1.3%台前半にまで買われましたってのは水準感(イールドカーブの話は華麗にスルー)および速度的にどうなのよという感じでしたので一服しても良いのですが、何も平均株価が300円も下がっているのに中期にそんなに売りが出んでもよいでしょうがなというところでございますな。
ここもと相場が落ち着かないこともあって、金利水準的には買いたいけどちょっと手を出しにくいですねとかいう感じだったと思われるのですけれども(特に中期以降)、昨日の下げは「ああやっぱり落ち着かないのね」っていう印象を与えたという点でもちょっと残念な下げというところですかね。
しかし中々まったりとさせてくれない相場ですこと。
○GCレートが上昇している話
今週から準備預金の積み期間も変わりまして、レポレートはいったん仕切りなおしになる訳ですが、レギュラーが20日渡しの所で59−60とかに上昇したのはまあ毎度のお話としまして、何故かその翌日の水曜はオペなしというお茶目な攻撃が出てレポレートさらに確りの巻となりました。
んで昨日なんですが、これまた現先オペなどが全然打たれずに(短国買入がありましたが)午後に打ち込んだ20日スタートのオペは共通担保本店オペの月末越えだったんですけど、額が2000億円ぽっちと少なく、20日はまだショート目だという中ですのでもうこれはレート上昇して下さいと言ってるようなもんでありまして、オペ結果は0.596/0.59だわ、GCのトモネは63レベルに上昇するわレギュラーも上昇して63−64とかに上昇するわと中々素敵な展開になっております。
東京レポレートのスポネの水準見ますと、17日分(19−20)で0.543だったのが、18日分(20−23)で600に跳ねて、19日分(23−24)で594と下がったには下がりましたが、まあ確りという展開だったざますのですが、オペではあんまりそっちを気にしてる感じが無いですな。インターバンクのコールだけ(いやまあ誘導目標がコールだからそうなるんですと言えばそれまでだけど)見てますねえって所で。
いやまあオペ依存症脱却させる為に資金供給オペをそう煩雑に打つのはしませんですよとかいう意図でもあるのなら判るんですけれども、GCが50近くまで接近してベタベタになっている時にはオペ打ちまくりで、GCが上昇しているのに放置プレイという状況を見とりますと、別にオペ依存症への警告とかいう感じも受けないというか、ただ単にGCレート振れても別にどうでもいいもんね状態なんですかねえという感じ。
市場の額という面では規模が随分でかくなったGC市場ですけれども、メガバンクの気まぐれ資金需給と、GC市場の振れは気にせずオペを乱打したり放置したりの日銀オペ動向に思いっきり振らされる市場であることには変化がなさそうでございますなあ。
短期って何でこう市場間裁定とか機能せんのじゃと思うのですが、何せ短期国債とレポとCPと金先はやってる部署が違いますっていうお答えが返ってきそうな市場ちゃんなもんでねえ。。。。。
○白川総裁の挨拶
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0806c.htm
『わが国の景気は、エネルギー・原材料価格高の影響などから、減速しています。資源の多くを輸入に頼っているわが国にとりましては、エネルギー・原材料価格の上昇は、所得が海外に流出することを意味します。これに加え、生産が横ばい圏内で推移していることもあって、企業の収益はこのところ減少しています。このような所得形成の弱まりが国内民間需要の下振れをもたらすリスクについて、注意深くみていく必要があると考えています。』
と、真っ先に下振れリスクに言及するとともに、物価上昇は交易条件悪化というのを今回も強調し、物価上昇を即座に利上げに結びつける議論を抑えようとしてますね。でも会見になると必ず聞かれるけど。
でまあ景気や物価の話をしてまして、金融政策に関する話もしていますけれども、これは先般来の会見などと同じ話でございますので、その後のプルーデンス関係話でも。
『わが国の金融システムは、ここ数年、着実に安定化の方向に向かってきましたが、金融機関の2007年度決算をみると、全体として減益決算となり、自己資本比率の上昇トレンドも一服しました。信用金庫業界を含め、地域金融機関におかれては、収益力の強化が極めて重要な課題であることが改めて認識されたように思います。(以下割愛)』
『また、昨年来の米国サブプライム住宅ローン問題においても明らかなりましたように、金融市場が複雑化する状況のもとで、金融機関にとってリスク管理の重要性は、一段と高まってきています。日本銀行では、考査やオフサイトモニタリングのほか、金融高度化センターによるセミナーなどを通じて、金融機関のリスク管理体制の充実化に向けたご努力をサポートさせていただいております。』
まあ個人的には自力でそれなりの所(目の子でも良いんですよ)まで時価算定(というかどのくらいのやられになるのかというものを算定)できない商品なんぞ買うなよなと思うのですけれどもね。貸金だったら「この先はちとヤバイ」とか「まあ大丈夫でしょ」とか決算書類見て相手見て判断するでしょ。
などのように「判らないものは買うな」とか言ってると、金融工学を駆使したおエリート様およびその宣伝にきっちり洗脳されて高級なことをやっていると思っているエライ人からKYなバカタレさん扱いされますので十分注意しましょう(^^)。
『この間、日本銀行では、決済システムの安全性・効率性の向上を図る観点から、本年10月に次世代RTGSプロジェクトの実施を予定しています。私どもとしては、金融機関と緊密に連絡をとりあいながら、円滑な実施に向けて万全の態勢で臨みたいと考えていますので、今後ともご協力をよろしくお願いします。』
全件RTGSは面倒なので進化を激しくキボンヌ。というか時点決済復活でも良いんですけど(時点決済は超効率的だが安全性に関してはよろしくないので念の為^^)。いやあの資金の時点決済復活しろとまでは申しませんが、国債の時点決済でSCレポ問題も絶賛縮小(^^)ってのは時計の針を戻す事なのでやりませんわな(笑)。
○人のふんどししかも一言
http://hongokucho.exblog.jp/8834482/
後出しじゃんけんみたいで超こっぱずかしいですが、その発言のあたりはあたくしも何か読んでて「えーっとこのロジックどっかで読んだことあるなあ」という既視感ありありだったのであたくしも引っかかっておりました。
2008/06/19
お題「決定会合議事要旨」
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g080520.pdf(5月19、20日)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g080430.pdf(4月30日)
○全体的に議事内容は慎重な見方が多く
えーっと面倒なんで最初にざっくりとまとめちゃいますとですな、どちらの議事要旨でもそうなのですが、議事内容は当然ながら公表文書(金融経済月報とか展望レポートとか)に沿ったものになりますけれども、政策委員の討議内容という部分を読んでおりますと、景気に対する下振れリスクを意識した内容が目立ちます。
ということで、日銀タカ派転向説はこの議事要旨を見てもちょっと有り得ませんわなという所になるのかと思います。以下かいつまんでご紹介。
○展望レポート第2の柱
展望レポートの第2の柱部分にはこのような記述がございました。
『長期的には、低金利が経済・物価情勢と離れて長く継続するという期待が定着するなど、緩和的な金融環境の長期化が経済・物価の振幅をもたらすリスクは、引き続き存在し、特に上記のような下振れリスクが薄れる場合には、その重要性は増すと考えられる。』(展望レポートより)
で、これ読んだ当時は「おお、一応信管は埋め込んでるじゃん」と思いそんな事を書いたような気がするのですが、4月30日の決定会合議事要旨を見るとこんな記述が(本文7ページ)
『緩和的な金融環境がもたらす影響について、多くの委員は、短期的には経済の減速により、緩和的な金融環境が金融・経済活動の振幅拡大につながるリスクは小さくなっていると述べた。しかし、海外経済の動向などの下振れリスクが薄れ、いわば霧が晴れてくれば、緩和的な金融環境がもたらすリスクが顕現化する可能性があると述べた。』(4月30日会合議事要旨より)
えーっと、「現在はリスク小さい」「霧が晴れたらリスクが顕現化する可能性がある」っていうこっちの表現の方が展望レポートの「リスクは引き続き存在」「下振れリスクが薄れた時に重要性は増す」という表現よりも弱い印象を与えますがどないでしょ。
○物価安定の理解
同じく4月30日会合の11ページ、12ページ目に物価安定の理解の点検部分がありまして、いくつかの論点の記述が。
・物価の糊代論
『物価下落と景気悪化の悪循環に備えた「のりしろ」に関しては、一人の委員は、経済や金融システムの状況に則して、実証的に評価すべきとの見解を示した。この点、多くの委員は、わが国においては、名目賃金の下方硬直性は小さいこと、金融システムの頑健性が高まっていることなどから、悪循環のリスクは小さいとの意見を述べた。』
つまりのりしろは小さくても無問題ということですか。ほほうなるほど。
・ゼロ金利制約論
『ある委員は、金融政策運営上のゼロ金利制約についても、日本の経験では、いわゆる時間軸効果や為替レートの変化などを通じて、その制約は緩和されたと付け加えた。』
ゼロ金利の後は時間軸効果に非不胎化介入・・・なのかな??まあ要はゼロ金利制約は実はそんなに大変じゃないから物価の糊代をそんなに取らなくても良いですよという話なんでしょうか。
・各委員の出した数値
『複数の委員は1%を中心値として上下1%の範囲内との意見を述べた。』
『また、何人かの委員は、1%程度を中心値として上下0.5%の範囲内との認識を示した。』
『ある委員は、0.5〜 1 % との意見を表明した。』
『一人の委員は、1 % よりもゼロ%に近いプラスを中心に考えていると述べた。』
えーっと、出来上がりの数字はゼロから2なのですが、ゼロから1までは全員のレンジなるも、1.5以上になると最初の「複数の委員」だけになるのね。
・で、その批判に対して
『この間、ある委員は、「中長期的な物価安定の理解」に対するいくつかの批判について言及した。』
『まず、レンジにゼロ%が含まれることに対する批判について、この委員は、ゼロ%は最も低いレンジを示した委員の下限であり、大勢として「中心値は1%程度となっている」ことについて理解を求めていくことが適当であると述べた。』
『また、レンジが全体として海外に比べて低いという批判について、この委員は、海外においても、インフレーション・ターゲットや物価安定の定義は、当該国における物価のトラック・レコードを反映している面があり、実際にインフレ率が長期にわたって低位で推移していた日本において人々が物価が安定していると感じるレンジが低くなることは自然ではないかとの見解を示した。』
レジーム転換が必要と主張する人たちが批判しそうですなそりゃ。
と、4月分の引用が長くなりまして5月はどうしたと言われそうですが、5月はそんなに月報での判断が動いてなかったので、トピック的には景気判断的にはやっぱり下向き意識してたんですねというところかと。物価に関する話が多かったりするのでその辺でも。
○物価環境に関して(5月議事要旨より)
本文6ページより。
『グローバルな物価環境について、委員は、原油など国際商品市況は高水準にあり、世界的にインフレリスクが高まっているとの見方で一致した。』
で、その要因分析ですが。
『多くの委員は、現在の一次産品の価格上昇の背景には、新興国の成長に伴う需要の増加があるが、それ以外にも、供給の制約、地政学的リスクの高まり、緩和的な金融環境、flight
to simplicity の動きなど様々な要因が関連していると述べた。複数の委員は、一次産品価格の上昇に伴う所得流出は、新興国などへの日本の輸出増加と同時に生じており、単なる供給ショックとして捉えることは適当ではないと述べた。』
本文8ページより。
『委員は、エネルギー・原材料価格の上昇に起因する物価上昇について、その背景と政策対応について討議を行った。ある委員は、現在生じている一次産品価格の上昇は、需要ショックと供給ショックの2
つの面で日本経済に影響を及ぼしており、これらのショックが持続的に続いていることに特徴があると述べた。』
『この委員は、一次的な供給ショックについては、インフレ予想の変化を通じて二次的な影響が生じないのであれば、必ずしも金融政策で対応する必要はないというのが教科書的な回答であるが、現在は、持続的で複合的なショックが生じているため、政策対応は難しくなっていると述べた。』
どっかで見た表現(^^)。
『何人かの委員は、現在生じている一次産品価格の上昇の背景には、新興国の高成長というファンダメンタルズがあり、日本経済にとっては、輸出増加という需要ショックと輸入品価格の上昇という供給ショックの両方をもたらしていると述べた。これらの委員は、こうした需要ショックと供給ショックが、マクロ的な需給バランス全体にどのような影響を与えていくのかについて丹念にみていく必要があると述べた。』
『また、ある委員は、一次産品価格の上昇は、相対価格の変化をもたらし、資源配分の調整を促すが、消費者のインフレ予想や企業の価格設定行動次第では、一般物価水準の大きな変動につながるリスクもあるので、これらの動向に注意しながら、金融政策運営を行う必要があると述べた。』
という話になっていますが(今回引用しませんが)景気に関してはもう思いっきり5月の時点で下振れリスク警戒モード全開って感じの議事内容になってますので、だから政策対応どうするとなると「警戒しつつ様子見」継続となる感じですわな。
○物価指標の何を見るか
本文9ページより。
『また、こうした物価情勢において、どのような物価指標をみていくことが適当かについても議論が行われた。』
これは重要な論点。
『ある委員は、持続的なエネルギー・原材料価格の上昇が生じている現状では、それらを除いた米国式のコア消費者物価指数は、物価の実勢を表していない可能性がある点には十分留意する必要があると述べた。』
『別の委員は、重要なことは、ヘッドライン消費者物価の中長期的なトレンドを把握する上で、どのような指標が有効であるかという観点であると指摘した。』
まあそれはそうだと思われますですが。
『また、別の委員は、そうした中長期的な消費者物価のトレンドをみる上では、生鮮食品を除く消費者物価指数や刈り込み平均指数が有益であると述べた。』
おお!刈り込み平均指数。ちなみにこれって物凄く地味に延々と(コアが小幅マイナスになっても)小さいプラス数値が継続してたんでは無かったかな。
『また、ある委員は、現在のように川上から川下に価格転嫁が進んでいく状況では、企業物価指数も引き続き重要な指標であると述べた。』
『これらの議論を経て、委員は、様々な物価指標を丹念に点検しつつ、消費者物価のトレンドを把握することを通じて、中長期的にみて物価安定のもとでの持続的成長を目指すことが適当であるとの見方で一致した。』
最後は禅問答っぽくなってますが、まあ色々と見ていきましょうということでしょう。従来の物価上昇と違った形ですからねえ。
2008/06/18
お題「総裁会見続きとかその他とか」
「TCI日本から撤退も」ですか。どうぞどうぞお帰りくださいませ。
○2年など戻りますなあとか雑感
昨日もまたまた中短期ゾーン堅調。FRBの利上げが目先行われないのではとの報道が影響したり、引け後で言えばECBの中の人だと思いましたが、またも連続利上げを否定する発言が出たりと、火消しモードが継続しておりますことからまあ当たり前なんですけど、先週後半は海外で短い所が戻っても短期ゾーン全然ダメダメ感強かったのが嘘のようです。白川総裁会見の強力(というか慎重というか)なメッセージが効いた感じでして、なんちゃらレポートプギャーと言った所でございますな(しつこい)。
しかし2年269回って先週末の引けが1.01%だったのに月曜の引けが0.960%で昨日の引けが0.915%と、物の見事に2日で0.1%近く戻すとは何という素敵な展開。まーその前が叩き過ぎにも程があって、昨日の引けあたりが本来の止まり所なのにそこからなお下をぶっ叩くからこうなっちゃうんですけどね。
戻りと言えば昨日入札があった3か月FBですけど、なんか8月償還のFBとかが妙に重い影響とかがあって久々に0.60%台での決着になったのですが、0.6%になってみたら実は結構ニーズを集めてしまい、結局ショートカバーモードになったようで、0.585とかもやってたようで、何と申しますか「そこまでやらなくても良いのに」という所までやらかした挙句にドテン一挙に戻るというのが最近の特に短い所に関する動きのわけわからぬ所でございます。
まあ要するに逆張りで参加する人が激減してるからなんでしょうけれどもね。
○米国様火消しモードですけど
FRBはすぐに利上げしませんがなとかいう話が報道されて火消しモードに入っておりますけど、まーあたくし勝手に思うのですけど、そうは言いましてもドル安インフレでうっかりするとドルペッグ外す人たち出てきそうとかいう勢いの中ではドル高支持(というかドル防衛というか)の旗をそうそう降ろす訳にも行かん訳で、そのドル防衛で一番手っ取り早く、コストが安そうなのは「利上げのやるやる詐欺」かと思われ。
火消しした結果利上げ期待(というか懸念ですか)が大幅に後退して金利が低下ということになってドル安になると、最近の商品価格はドル安に連動するという素敵な展開になるので、まああまり宜しくはございませんことで。
ということで、利上げのやるやる詐欺状態で引っ張れるだけ引っ張って、市場金利をやや高めに推移するようにして実質的な引き締めしながらドル安と商品価格上昇の沈静化を待つってくらいしかやる事ないでしょ、とは思うんでワッショイワッショイと米国の中短期金利が低下するのも(これまたその前の上昇もやりすぎ感漂いますが)何だかねえと思うのですが、やるやる詐欺に引っかかる悪寒が(^^)。
というあたくしの雑考は兎も角、総裁会見の続き。
○4月レポート対比の判断をきっちりと発言
中間ラップをちゃんと話してくれるのは良い傾向だと思います。
『4月末に展望レポートを公表致しましたが、毎回の決定会合において、展望レポートで発表した景気・物価の見通しを、その後の展開やデータを見ながらどう修正していくのか、修正する必要があるのかないのかを点検している次第です。来月の決定会合では、そうした点検を体系的に行い、中間評価として出すことになりますが、それは、様々な仮説を持ちながら連続的に起こる変化を捉え、3ヶ月毎に評価する、ということだと思っています。』
『従って、4月の展望レポート対比でみてどう判断したのかと問われれば――いずれ体系的に発表しますが――、物価については上振れリスクを意識した発言が多かったと思います。逆に、景気については内需の下振れリスクを意識した発言が多かったと思います。(途中割愛)具体的には、4月対比でみて、景気については下振れリスクを、物価については上振れリスクを意識しています。ただ、体系的な点検は7月に行いたいと思っています。また、局面変化についてですが、その言葉自体は主観的な意味合いを持つものですから、私どもの言葉で言いますと、足許景気は減速しているという先程の説明に集約されると思います。』
金融政策の方向性が決めうちじゃなくなったからというのもあるのかもしれませんが、福井総裁の時はこういう感じでの中間ラップ報告ってあんまり無かった印象がありまして、どちらかと言えば「でも基本的には変わりませんよ回復ですよ」ってお話になっていたと思うんですよね。
ま、結局のところ以前の政策ロジックは景気回復から拡大を前提にして利上げ前提になっていたからこういうのをやりにくかったということなんでしょうかと思うのですがどうでしょう。
○この質問者は速水さんですか?
この質問は・・・・・
『(問) 実質金利といいますか円の価値について質問します。本日の金融経済月報の基本的見解にも、物価上昇率は高めで推移しそうだと書いてありますが、今のままでは、例えば1年物の定期預金をして1年経って利息が増えたと思ってもその価値は実質的には減っているということになります。もう少し長期的な視点に立ってみると、ヨーロッパなどを旅行すると顕著ですが、円の価値が非常に落ちており10
年前や20 年前に比べると、場合によっては貧しくなっていると言えるかもしれません。このようにお金の価値が落ちていることに対して、日銀なり金融政策の責任というものについて、どのようにお考えですか。』
じゃあ御社では円高やデフレの時には当然社を挙げて「実に素晴らしい事です万歳万歳」って報道してるんでしょうな、などというような切り返しをしないのは大人の対応(^^)。
『(答) 今ご質問にあったお金の価値という場合、2つあると思います。1つ目は物価上昇率、2つ目は対外的な為替レートです。』
『まず、前者の物価上昇率のほうですが、金融政策は、最終的に目標とする物価安定のもとでの持続的な成長の実現に照らして、運営していくことになります。局面によっては低金利によって利子収入の減少という債権者の痛みが大きい時期もありますし、逆に金利を引き上げることによって債務者への負担が非常に大きい時期もあります。しかし全体を通して中央銀行が目指すべきは、物価の安定のもとでの持続的な成長であり、この1点に照らして、中央銀行は政策を行っていかなければならず、そうでなければ時に痛みのある金融政策を行ってはいけなくなると思います。』
これが不規則発言王の前任だと誰にも良いようにみたいな調子のいい発言になりそうなのですが、白川さんの場合は債権者と債務者のトレードオフがあるのだからどちらかに痛みのある場面もありますとちゃんと言明してますな。
『為替レートは固定しているものではなく、経済全体の不均衡を調整するように動いていくものだと思います。中央銀行が為替レートをコントロールしていくということではなく、経済全体にある不均衡を調整するように為替レートが動いていくのです。』
『従って、もし一国の経済が弱い状態が続くと、長期的な傾向としては為替レート──正確には実質の為替レートだと思いますが──は下がっていき、一国の経済が強い状態が続くと、長期的には為替レートは強くなっていくと思います。そういう意味で、これは日本経済全体が抱えている様々な問題を反映しており、その中に色々な要素があると思いますし、適切な金融政策運営に努めなければならないということはその通りですが、しかし金融政策と為替レートを一対一で結びつけて議論することは必ずしも適切ではないと思います。』
いやあの茶々の入れようが無くて困りますな(笑)。
『いずれにせよ、経済を強くし、その結果として為替レートがそれに応じた動きをしていくということが一番望ましいと思います。』
そういえば昔は為替レートが強ければ経済が強いことの証明だから素晴らしいと言ってるようにしか見えなかった本末転倒にも程があるお方もいましたような記憶がありますけれども、経済を強くするのが前提ということで順番が合っているのでモウマンタイと思料されまする。
あと長期金利の話とかもありましたが、めんどいので割愛。
2008/06/17
お題「総裁記者会見とか」
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0806a.pdf
例によって16ページもあるわ説明は丁寧だわという代物でありますのでちゃんと紹介しきれるか微妙・・・・・
○最初の質疑で「日本と欧米のステージが違う」を説明
最初の質疑できちんとこの部分を説明していたので、妙なタカ派ヘッドラインを打たれずに済んだとも言えそうです(^^)。
『(問) 国際的なインフレリスクの高まりを受けて、ECBが来月金融政策の変更があり得るという考えを表明し、FRBも利下げの休止を示唆するような発言を出していますが、国際的なインフレリスクに対する総裁のご見解および今後の金融政策の運営方針についてご説明頂けますか。』
『(答) 今のご質問にある通り、原油をはじめとする国際商品市況が高騰していることなどを背景に、多くの国で物価上昇率は高まる方向にあります。こうしたもとで、各国は、それぞれの置かれた状況に照らし、経済・物価を長い目でみて安定させるよう金融政策を運営していると思います。各国が直面している経済・物価の情勢は異なるので、金融政策運営もそれに応じて異なるものになってくると思います。』
まず最初にこの「各国が直面している経済・物価の情勢は異なるので、金融政策運営もそれに応じて異なるものになってくる」というのをきっちりと説明したのが大きい訳でして、冒頭にきっちりとやったので変なタカ派的な印象を与えなかったのでしょうか。その続き。
『多少先程の説明とも重複しますが、わが国経済の状況は、実体経済面では、交易条件の悪化に伴う所得形成の弱まりが国内民需の下振れをもたらすリスク、物価面では、消費者のインフレ予想や企業の価格設定行動を含め、先行きの上振れリスクについて、注意深くみていく必要があると考えています。先行きの政策運営については、いつも申し上げていることですが、こうした経済・物価両面のリスクを踏まえた上で、物価安定のもとでの持続的な成長を実現できるよう、適切な政策判断に努めていきたいと考えています。』
ということで、「景気に下振れリスク、物価に上振れリスク」という部分も強調しまして、これも今回の会見報道の基本的なトーンとなっています。
これが不規則発言王福井俊彦先生だったら何か余計な事を言い出してエライコッチャになっていたかと思うと・・・・・
○協調利上げなんか無いですよっと
別に市場はそんな点での「足並みの乱れ」を懸念しちゃあいないと思うのですが・・・・まあ敢えてそう言ってネタ振りしてみたと思うのですけれども、記者さんの脳内市場で本当にそうなら困りもの。
『(問) 日本、米国、欧州それぞれの金融政策の方向性の足並みが乱れるのではないかという市場の見方があり、この足並みの乱れがマーケットに対して影響を及ぼすのではないかという指摘もありますが、それについてはいかがでしょうか。』
『(答) いつも申し上げていることで恐縮ですが、金融政策の目的は物価安定のもとでの持続的な経済成長を実現していくということであります。そのためには、当然のことながら、具体的な判断は各国の置かれた状況によって異なってくると思います。』
と、さっきと同じ説明をより丁寧に。
『欧州、米国、日本、それぞれの景気と物価の状況は異なっているわけであり、日本については、先程、景気、物価の判断やリスクについてご説明した通りであり、欧州、米国の政策について、この場でコメントすることは必ずしも適当でないと思います。』
『いずれにしましても、各国が自らの置かれた状況に応じて物価安定のもとでの持続的な成長にふさわしい政策を追求していくことが重要であり、結果として各国の政策が同じ方向を向いていることが政策運営の乱れがない状態であるとか、あるいは、同じ方向、動きでないことが政策運営の乱れであるということではないと思います。ましてそのことが世界経済全体の安定を脅かすようなことはないと思います。あくまでも各国の置かれた状況に即して判断していく――この判断自体はもちろん難しいことですが――、そういうことだと思います。』
まあこれだけ説明すれば「協調利上げ」みたいなヘッドラインを打つアホウは現れない(というか打ったら虚偽報道ですがな)のでありまして、これが福井さんだと「もちろん各国の協調が大事なのは言うまでもありませんが」とか言い出して大変なことになるんでしょうなあと(笑)。
ま、これだけ説明すればさすがに必要かつ十分でしょう。その後も(昨日紹介した質問のような)似たような質問がありますが、一つ一つへんな足を掬われないように慎重かつ丁寧な説明をしているのが目に付きます。
○輪番オペに関して
3番目の質問が輪番オペでございますが、超技術的な質問であります。説明も超技術的ですが、あたくしのヘタクソな説明よりも判りやすいので読んでくだされ。
『(問) 少し技術的な質問ですが、国債の買い切りオペについて伺いたいと思います。最近、買い切りオペの資金供給期間がかなり短くなっています。本来、長めの資金供給手段として位置付けていると思うのですが、供給期間が短くなっていることについて、何か対応策を考えていらっしゃるのでしょうか。また、買い切りオペの金額についてですが、まだ決定会合で決めることになっていると思うのですが、事務局に判断を委ねることはしないのか、それとも決定会合で決めることを続けるのか、どうお考えでしょうか。以上2点、お願いします。』
質問者は本石町日記さんですね、わかります(^^)。
で、説明が判りやすいので読んで味噌ということで、まずは国債買入(輪番)オペに関しての位置づけを説明。
『(答) 技術的な質問なので、限られた時間の中で説明するのは難しい面もありますが、日本銀行の長期国債の買入オペ――これはFRBの長期国債の買入オペも同様ですが――、基本的には銀行券の趨勢的な増加に伴って負債が拡大するわけですから、それに見合う資産を買い入れていくというものです。』
『中央銀行にとって、銀行券の趨勢的な増加は、長期的な負債の増加になるわけです。従って、それに対応して、資産面でも長期的な資産を買い入れるわけです。つまり、あまりに短期の国債を買い入れた場合、毎日のようにオペレーションを繰り返さざるを得なくなり、結果として短期金融市場における中央銀行の存在が大変大きくなってしまうため、長期的な資産を安定的に買うという考えのもとで運営しているわけです。』
で、実際の運営がどうなっているのかの説明と現状の説明。
『具体的な方法としては、市場のイールドカーブを基準として、中央銀行にとって有利な札を入れた先から買い入れていく、希望利回較差による入札を行っています。これは、全体としての買入金額を決めた上で、どの期間の国債が日本銀行に売られるのか、すなわち日本銀行がどの国債を買うのかは、市場で決められる金利を基に入札で決めていくというものです。どの期間の債券が買入対象となるかは、その時々のマーケットの状況次第で多少変動がありますが、このところ期間の短い国債が入ってきているということはその通りだと思います。』
ということで超短い所がアホほど入っていることについては認めてます。
『国債買入オペの運営をどうすべきかは、基本的には中央銀行のバランスシートが今後どのような姿を描いていくのかということに依存すると思います。銀行券の発行残高は非常に大きいものであり、例えばGDPと比較すると銀行券の割合は約15%と、非常に高い比率になっています。歴史的にみて非常に高い水準ですが、これは金利が低いことの結果としてそうなったわけであり、どの程度が安定的な水準なのか、これまでどのように趨勢的に増加してきたのかをみることはなかなか難しいと思います。』
えーっと、その銀行券は「金利が低いことの結果」だけなのかはよく判らん気がしますが、それこそデフレなのも効いている(デフレだから金利が低いというのはそりゃまあそうですけれども)でしょうし、地下経済規模対応部分とかあるような気もするし・・・まあそれはそれとしまして。
『そうした状況のもとで、長期国債買入オペの運営方法は、今後の日本銀行のバランスシートの姿を展望しながら考えていく必要があるわけですが、現在、長期国債買入オペの方式を差し迫って検討するということでは必ずしもありません。ただ、長い目でみて、国債買入オペも含めてオペのあり方としてどのようなものがいいのかについて、実務的に検討していくことは非常に大事だと思っています。』
ということで、この答えっぷりからしますと、さすがに5月の国債買入で6月償還銘柄ばかりが打ち込まれたという驚愕というかお笑いの事態に関してそれなりに問題意識は持っているんでしょうなとは思われますがどうでしょうかね。
と、質問を最初から3個引用しただけでテキストファイルで8kbとかになってしまった(質疑全部引用してるのだから仕方ないのですけれども)ので、冒頭の3質問で本日は終了の巻といたしとう存じます。すいません。
以下人のふんどしコーナー。
○オルタナ投資も程ほどに
例によって厭債害債さんの所から。
http://ensaigaisai.at.webry.info/200806/article_6.html
いやあもう後半部分の商品市場に突っ込む年金基金に関する話とか「合理的経済人」の問題とか市場の失敗の問題とか、一々仰る通りでございますというか、あたくしこんなにきちんと考察できないので大変に勉強になりましたです。
排出権取引に関してもその胡散臭さ爆発振りに関しては全く同感。
で、エントリーのこの部分ですが、いやあ確かにそうですねって感じなのですけれども、収益上げに行って結局自分や受益者の首絞めるとはなんという皮肉な展開って感じですよね。
>さらにいえば、マーケットサイズを考えもしないで投資を行った結果、
>必要以上にインフレを高騰させ、株や債券を暴落させてしまったら
>全体としてのパフォーマンスにはマイナスになります。これは受益者
>に対するフィデューシャリー(善管注意義務)を果たしたことになるの
>でしょうか?年金受給者にとってインフレは敵ですが、彼らにとって
>は利益相反行為にならないでしょうか?
2008/06/16
お題「日銀ここではタカ派にならなかったでしょ」
ということで何とかレポート敗れたりという所なのですが、正直言って量的緩和解除あたりから百発百中で外しているレポートを未だに購読する輩がいるというのが意味判りませんな(まあ百発百中だから逆の意味で使えるかもしれないけど)。
ではまず金融経済月報から。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0806.htm(今回)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0805.htm(前回)
○景気に関する判断をあちこちで下げています
まずは現状判断部分。最初の基調判断は同じですが、中身が結構な下方修正に見えるのですけどどうでしょう。
・輸出
『輸出は、足もと幾分鈍化しつつも増加を続けている。』(6月)
『輸出は増加を続けている。』(5月)
今般の景気における牽引車の輸出に関して「足もと幾分鈍化」としたのですね。
・物価上昇に関する悪影響に関して
企業収益の部分でこういう書き方があるのも注目される所です。
『企業収益は、交易条件の悪化等を背景にこのところ減少している。』(6月)
『企業収益は高水準ながら伸び悩んでおり』(5月)
交易条件の悪化キター。ってのと企業収益もついに減少に。
続きまして先行き部分ですが、こちらも基調判断に変化はないものの、個別部分では下がっているところが。
・企業収益
『企業収益は、当面減少を続けるが、エネルギー・原材料価格の上昇が緩やかになるにつれて、増益基調に復すると予想される。』(6月)
『企業収益が幾分弱まりつつも総じて高水準を維持し』(5月)
ということで、企業収益の先行きには「当面減少を続ける」となってて、理由にはエネルギー・原材料価格という話ですから、上記の現状判断と平仄を揃えた見通しになっていますな。
・住宅投資
『住宅投資は、回復の動きが徐々に一巡していくと予想される。』(6月)
『住宅投資は、回復傾向をたどるがそのテンポは緩やかと予想される。』(5月)
あらま、もう一巡なの。
ということで、あちこち下がっているのですけれども、民間資金需要に関する部分だけ上方修正されています。
・民間資金需要、民間銀行貸出
『民間の資金需要は緩やかに増加している。』(6月)
『民間の資金需要は横ばい圏内で推移している。』(5月)
『民間銀行貸出は増加しており』(6月)
『民間銀行貸出は緩やかに増加しており』(5月)
ということで、この資金需要増加が前向きの資金需要であることを祈ります。
○総裁会見も変なヘッドライン打たれず(詳しくは明日)
とまあそんな訳で金融経済月報があちこち下方修正していた事もありまして、債券先物のイブニングセッション(15時半から)は東証の引けから値を上げてスタートしたのですが、白川総裁記者会見のヘッドラインが打たれだしたところから上げ幅拡大。特に買戻しを誘ったのは・・・・
『16:25 RTRS-日米欧で景気と物価の状況は異なる=白川日銀総裁』
『16:26 RTRS-各国で同じような政策運営が協調しているということにはならない=白川日銀総裁』
(これはロイター日本語版ですが他社も同じ)
って奴ですかね。非常に当たり前の話なんですが、これが前任だと何か余計なことを言い出してタカ派ヘッドラインが打たれてとなるんでしょうが、今回は特に発言に気を使って変なヘッドラインを打たれないように注意しましたね。
その効果か、翌日にあたくしが見た一般紙でも「景気下振れのリスクを強調し、利上げ懸念は遠のく」というようなトーンになっていましたな(その新聞だけかもしれないけど)。めでたしめでたし。
ブルームバーグニュースの総裁会見報道のお題も『日銀総裁会見の発言要旨:各国で情勢異なり金融政策も異なる』となってまして、今回は特に慎重な発言をしたんだなって思いました。
というかですな、福井さんのように何を言いたいのか会見要旨を見てもわけわからんという人と違いまして、白川総裁の場合は総裁会見要旨を読めば何をどう話したいのか明快(ただし説明が丁寧で長いので読むのに時間は掛かるけどそれは頑張って読みましょう。福井さんみたいに読んでて手が止まる場面はないですから^^)ですので、アホウな飛ばし記事とかアホウな質問とかすると後から検証可能でございますわな。これ実は大変に良い傾向だと思うのでして・・・・・
時事メインが金曜の19時04分から05分にかけて14本の記事で総裁会見の詳報を配信していまして(こんな丁寧なのやってましたっけ?)、そこの10番目と11番目に掛かっている質疑応答にいたく感心しましたあたくしがちと引用させていただきとう存じます。(問とか答という部分は現電文の表現を改変しています)
『(問)海外中銀が資源高に対応して、積極的な金融政策を行っている。日銀がこうした流れに乗り遅れると、資金流出や円安などの影響が出てくると思うが、海外中銀の金融政策が日銀の金融政策に影響を与えるか、イエスかノーで簡潔に答えて欲しい。』
なんちゅう質問だと思うのですが、この質問への答えが実に素晴らしい。
『(答)イエスかノーかで簡単に答えられる質問ではない。』
と出鼻をくじいたあとなおも説明(^^)。
『金融政策が動くことをもって積極的というのではなく、状況に則して最適な政策を行うのが本来の意味での積極的な政策だと思う。私どもは現在の政策スタンスが現状では最適だと判断している。ただ、このことが将来にわたって最適であることにはならないので、状況の変化はもちろん丹念に点検していく。』
『海外中銀の金融政策それ自体が影響を与えるというよりも、海外の経済・物価情勢が変化すれば金融政策も変化するし、当然海外の経済・物価情勢が変化する以上、日銀の政策運営の議論も変わってくる。どういう政策になるかは点検の結果によるとしか言いようがない。積極的でないのではなく、積極的に判断している。』
(以上時事メイン13日19時05分配信記事より)
こうきっちりと撃破していただきますと(ご本人的には撃破している訳では無いと存じますが)総裁会見にテレビアナウンサーが出てきて「阪神タイガースが快進撃してますが」というようなアホウにも程がある質問をするような輩とか、筋違い質問をする輩とかが徐々に駆逐されていただいて報道のレベルも上がっていくのではないかとちょっとだけ期待したいです。
というか、質問者がどこに所属しているのかってのは会見要旨(日銀だけじゃなくて各省庁とかでも)で開示されて然るべきだと思うのですけれども。それによって質問者にも緊張を与えないと馬鹿質問と馬鹿報道が止まらんのではないかって気がしますですよ、はい。
2008/06/13
お題「毎度相場雑談で恐縮です」
ええもうこれだけ相場振らされますとヘロヘロですよ。
○短めのところが妙に重そうなのですが
昨日は海外市場で2年債とかがやたら強くなって帰って来たのですが(今朝はその逆ですけど)、こっちの債券市場では1年とか2年とかどうもダメダメ感漂う展開でございまして、まあ朝方2年とかはそこそこ(アメリカ様が2年強いのに敬意を表して??)でしたが1年ゾーンとか先物が40銭上がっても50銭上がっても全然強くならないという素敵な展開(さすがに前日比安いのを叩く程のことはないですけど)。
・・・・えーっと、売ってたネタが「インフレ懸念で金融引き締め懸念」で、その巻き戻しやるなら短めのゾーン戻らんのかよとツッコミを入れたくなる展開なのですが、この辺のゾーンというのは実弾の打ち込みあるいは持って行かれに弱いゾーンというか、プロップトレーダーみたいな裁定掛けてくる人のパワーに対してポートフォリオの事情で動いてくるパワーがだいぶ強い(最近は長いところもプロップさんがヘロヘロみたいですが)ので、需給関係が一旦崩れて相場の位置が変わってしまうと、再度需給関係に変化がないと戻らんという感じになるようですなあ。
てなわけで、本来海外に追随するならこのゾーン戻るだろと思ってたんですが、どうも実弾の需給関係がよろしくないようで1年とかやたら重そうにしていたのが気になりました。
・・・・でも1年ゾーンで0.77%とかなんですよね。それって普通に無担保コールの足し算と比較した場合、1年間で2回利上げでチャラとかいう世界になります(とは言え普通の神経をしていると25bp逆鞘を3か月も引っ張るというのは精神衛生上よろしくないので、まあ気分的には1回ちょっととかの利上げイメージですかね)けれども、あのその利上げってそんなに威勢よくするのかよという感じではございます。
2年のほぼ1%(さすがに1%は大台なので心理的抵抗もあってそこまではマークしないようですが)というのも中々素敵な水準ですが、1年の0.75%越えというのをこう簡単にやらかすとは思わなかったでありますよというのが正直な印象でございまする。利上げ懸念してるのかねえ????
○既に皆様ご存知だとは思いますが念の為
日本銀行が保有する国債の銘柄別残高
http://www.boj.or.jp/type/stat/boj_stat/mei/mei0805.htm
http://www.boj.or.jp/type/stat/boj_stat/mei/mei0804.htm
月初に出てた話を今更で甚だ恐縮ですが(^^)、えーっと2年245回と5年27〜29回と10年203回204回の増加額を全部足すと11500億円位になりますと。
どう見ても短国買入状態です本当にありがとうございました。
・・・・と申しますかですな、いやまあそんなに償還銘柄が重かったのねという所でありますが、何もそう親の敵みたいに売らなくても良いのにとか思うけどまあ色々とお家の事情があるんでしょ。5月に買入した銘柄が殆ど全部6月20日(2年債は15日)に償還になってしまうというのは正直テラアホスとしか申し上げようがございませんが、これをまた8月にやらかすのでしょうか・・・・・
値付けに元利金支払い手数料見合いの部分が外れる10月以降(輪番的には9月中旬以降ですか)にどうなるのかねというのは注目してますというか、その後も似たようなシチュエーションが続くのならば輪番の趣旨に鑑みて実施方法に工夫が必要なんでしょうな。
○今日は月報と会見ですが
正直言って金曜の引け後に金融経済月報読んで会見のニュースフラッシュ見るというのはもう疲れるので勘弁していただきたいのでございますが、まあお日柄がそう設定されているので致し方無しの巻でございますな。
で、その月報に関してですが、ここのところあまり宜しくない経済指標が出ていますが、景気の現状認識と先行き見通しに関してヘッジクローズが増えるかどうか注目したいです(見通し下げてきたらそれはそれでほほーなのですが、下げると言うよりはリスク警戒の文が増えるイメージ。
会見ですけれども、どうせ「欧米がインフレリスク懸念で利上げを模索しているようですが日銀はどうですか」という質問が飛んでくるのでしょう。(本石町日記の中の人を除く^^)メディア的にはタカ派ヘッドラインの打ち込みがオイシイでしょうから、発言の一部を切り取ってタカ派ヘッドラインを打ち込むベンダーや記事書く新聞とか出るリスクありでしょう。ということで、丁寧な説明も大事ですけれども、「欧米と日本では現在取るべき金融政策(というか金利操作)は別である」というのをきちんとメッセージとして打ち出した方がよさそうな希ガス。
などと勝手に申し上げてますが、あたくしの予想は外しても無担保無保証でございますので一つその辺はご勘弁を(^^)。
「市場との対話」の前にメディアとの対話もしないといけませんから大変でございますのおと思いますけど(そういや国会も)、白川さんの懇切丁寧&ちゃんと筋を通したロジカルな説明によって、もう思い込み入りまくりのヘッドライン飛ばしまくりのメディアが徐々に駆逐されることを心の底から願うものであります。
○もっとそういえば池尾先生
衆議院では池尾先生の日銀審議委員選任に関して承認が得られたようなのですが、参議院は放置プレイ。民主党は当初承認すると報道されていたのですが、国民新党が反対するので反対とかもうアホかと馬鹿かと。そりゃ福田首相だって「誰と話をしていいか判らん」と言いたくなります罠。
しかもその理由が郵政民営化推進だからってあのそれは金融政策と全然関係ないのですけど勘弁して下さい。昨日銀イオンの消臭だか脱臭効果が科学的関連なく、根拠なしという事で公取がどこぞの企業に排除命令だしてましたけど、公取様におかれましては「金融政策と郵政民営化の関連性に科学的根拠は無い」ということで国民新党に排除命令出しといてくださいませ。
ちなみに、郵便事業じゃないほうに関しましては国営を維持しながら規模を縮小すべきで、巨大なままで民営化は民業圧迫にも程があるし、規模でかすぎでマーケットインパクトが巨大なので民営化論者が言うような「民営化したら効率化」というのはこと金融事業の部分に関していえば?が百個くらい付くんですけど(財政融資資金の金利ミスマッチを殆ど無くすことが出来るっていう主張に対する???と同じ理屈です)ねえと思いますけど、それと審議委員就任云々に関しては別問題にも程がありますわな。
というわけで延々とただの雑談恐縮至極。
2008/06/12
お題「連日ややこしいですな」
さて今日から金融政策決定会合と。
○2年1%接近ですかそうですか
昨日もまたまた相場弱くて中短期やら金先やらもいい感じでヘロヘロとなっておったようですな。ふと見れば2年国債が0.995%とかになってやがりまして、えーっとあのその水準は早期利上げとか年度内2回利上げとか言ってた時(去年ですよん)の水準なんですけどおまいら本当にそれで良いのかよと。まあ相場がそう言ってるんだから良いんですが(こら)。
んでまあ毎度おなじみのユーロ円金先は09年03月限で1.3%とかの水準まで売られる場面もありまして、いやまあ相場だから別にそういうのもアリなのですけれども、ちょっとまあおまえら落ち着けという感じであります。
昨日の夜から欧米当局から火消し発言が出ているのでちと今日は緩和されると思うのですが、どうもこう「インフレ懸念で日米欧3極協調利上げ」ってのがストーリーとして書きやすいので、それをネタに金先なんか売り勝負してるんじゃないのという感じもしますな。踏まれて大損すればいいのにあわわわわ。
ま、んな状態ですのでOISの1年とか見ると向こう1年で2回近く利上げしそうな勢いですし、何がどうなってるんだかって所ですけど、こういう勢いに変に逆らっても時価評価させられる身としては途中のやられに耐えられなかったりするんで向かえませんのうという所ですわな。
○だから日銀は(今のところ)利上げしないって
昨日のロイターだかなんだかの市況ニュースみてたら外銀さんの中の人のコメントとして「金曜の白川総裁の定例会見で海外と歩調をあわせてタカ派発言が出るかどうか注目」とかいうのがあってぶっ飛んだのですが、いいからお前その席空けて俺に座らせろという感じでございますわな。
まあ昨日もうだうだ申し上げたので繰り返しはしませんけど、そもそも足元の経済指標が悪化方向で、インフレ懸念って何ですかという状況かつ、そもそも物価上昇が前向きの好循環から来てる訳でもないって時に利上げできんでしょ。それに仮に正常化路線とやらを出すにしても、景気に下振れリスクある中で正常化路線って有り得んでしょ。
それにですな、今般のインフレどうのこうのって食糧とエネルギーですけれども、ドル安が効いているというのもあるのですから、ドル安阻止ってのも必要でしょと思うのですから、別に3極協調利上げしなくても良い筈なんですけれども、何で3極協調利上げという話になるのか全く理解致しかねるのですけれども。仮にドル安阻止で米国が利上げするならドル安阻止の政策協調するには他の主要国利下げした方がドル高誘導できるでしょ(さすがにそんな事は起きないでしょうけれども)。
○こうなると欧米金融当局の発言の方が・・・・
昨日の欧州タイムではECBのシュタルク(と読むのか?)さんが「連続利上げ否定」発言をして欧州債券が買われて引け後の先物も上昇しておりましたです。もともと連続利上げをする何て話をトリシェもしとらん筈なのですが、トリシェといえば引き締めという刷り込みが効いている(?)のかどうか知りませんが、利上げ示唆するといきなりもう連続利上げですよ大変ですよとなってしまうのが欧州債券クオリティのようで、火付けしたと思ったら火消しという誠にビューテホーな状態になってますね。
で、米国では今度は早期利上げ懸念に火消しの発言がでておりましたが、そのせいかどうかは知りませんがドル上昇が止まって原油価格がまた上昇してやがって何やってんだかという感じ。米国が今やるのは基本的にドル安阻止なんですから利上げに関しては「やるやる詐欺」で引っ張るのが一番でございますがなと思うですけどねえ。
とまあそんな感じで欧米当局の対応っぷりが中々こう楽しい状況になっておりますので、先物中心に振り回す人たちなんかが海外動向とリンクして動きたがる傾向にある中では日本の金融市場もこのあたりのギクシャクぶりに振り回されるんでしょうかねえという感じです。
ま、当局発言がギクシャクしているというよりは、当局のメッセージがちゃんと市場に伝わってねえだろという所なんで市場も市場なんですけどにゃ。
○オペの打ち方が微妙に意味判らん件について
激しくマニアックなお話ですけど。
昨日の国債買現先オペはまたまた月内落としになっていまして、13日スタートの24日エンド。落札レートはまた低下しやがって何と足きりが52bp(平均は53.3でしたが)まで低下の巻。
これって要するに6月の月中物の金は余ってますよという話なのですけれども、実は東京レポレートの推移を見ますと、T+3スタートの3Wが月末越えになってから2Wと3Wのスプレッドが徐々に(物凄くミクロな話ですが)開いておりまして、このあたり丹念に見てれば現先オペで月中物を打つと超足元の金が益々余ってレートが低下するだけの効果になるんでして、肝心の月末越えに関しては足元余ると逆にニーズが高まるだけなんですな。
・・・と書いてるあたくしもそのロジックを上手く説明できないんですけれども、たぶん今現先オペ打つんだったら6月末越えを打ったほうが資金供給というか市場の平準化としての意味はあると思うのですが。この前の期末みたいに末越えのニーズが高い時に何故かもういらねえ期内落としのオペうちまくりーの寝転がり続出というのと同じ道を歩みそうな悪寒がするので、先回りして書いて見るの巻でした。
ってさすがにこのネタは債券市場の中の人でも10人中9人はポカーンですよね。そこらへんにいるレポディーラーにでも意味を聞いてくださいませ(^^)。
#まだ木曜なのですが、やたら相場で疲れるので今日は雑感で勘弁
2008/06/11
お題「いやもうよくやりますな」
今年の梅雨は温度変化が結構激しくて疲れますね。
○何という金先の動き
昨日は米国でのドル高攻撃に加えてバーナンキのインフレ警戒丸出し(と取られる)発言が追い討ちを掛けた格好で債券先物もバカスカ売られましたが、金先の動きが実に豪快。Mar09は99.880(=1.2%)を抜けたと思ったらもう板の無い中で下叩きの巻になってしまい、安値98.705(=1.295%)ですよ先生。
それって「来年の3月SQ時点でのユーロ円TIBOR3か月が1.295%」という事なんでございますが、どう見ても利上げを2回実施しないとそのレートにはなりません本当にカムサハムニダと言った所の数字なんすけど。まーとりあえずその下を叩く間ろくすっぽ出来高無かったんで、もうとりあえずリスク量落としに来るとか、ロング減らすとかの動きの中で売れるものを売りに行ったからそんな事になったって感じだとは思いますけど、毎日まあよく動く事です。
2年国債も13毛5糸甘の0.98%まで叩かれておりましたんで、中短期ゾーンのポジションを成り行きで落としに行った(あるいは成り行きでショートメイクしに行った)というような動きがあったのかいなという感じでございます。でも日本の政策金利動向をちょっと予想すれば今年中に動きようがないという経済指標が出ている(というか悪化方向なんですから今年どころか今年度動けんのではと思うのですが)のですから、そこまであなた叩かんでもと思うんすけどね。
○金融政策のステージが違うでしょと思うのですが
ECBはご案内の通り物凄い勢いで利上げ体制ですが、こちらの物価上昇は堂々賃金上昇も伴うという日本からするとある意味ウラヤマシスな状態。景気はまあちょっとどうなのよと思うのですけれども、まー普通に利上げしてマインド冷さないといかんですなって感じなんでしょ。でもトリシェ先生連続利上げをしてバシバシ引き締めるって話はしてないんですけれども。
FRBは利上げもやりそうなお話になってますけれども、これってどっちかと言うと原油などの価格止めないとって感じをうけるのでありまして、ドル安阻止ってお話になりますから、そうしますと最終兵器通貨防衛利上げにでもなら無い限り利上げのやるやる詐欺(失礼)攻撃になるんじゃネーノという感じですか。インフレ警戒発言してる側から失業率上昇も懸念してたりするんで、まだまだ「インフレ阻止のためには景気の一時的後退も辞さず」って感じにはなってませんわな。ただまあ次に利上げってのはほぼそんな感じになるんでしょ。
・・・・などと考えますと、日本の金融政策ってのは別に欧米にお付き合いする必要は全然無い状況でありまして、そもそも内閣府によりますとデフレ脱却もしてないことになっているというような情勢ですし、別に円が弱い訳でもないですし、景気に関しては出てくる指標がどうにもダメダメ感が漂う状態で利上げなんぞせんというか出来ないというか、する理屈が存在しませんけどねえという所ですよね。
別に日本は賃金インフレにもなってない(個人的にはなって頂きたいのですが)ですし、通貨防衛の為に景気の一時的悪化も辞さずなどという動きもいらんのですから、「ECBに追随して日銀が利上げ」とか言い出すどこぞの海外レポートの筆者の頭の中身を激しく疑うものでありますわな。
○ところでドル買い介入ってどうするの(与太話)
ポールソンさんが通貨介入を辞さずとかいう話をしてるのでありますが、ところで米国が自国通貨買い介入ってどうやって行うのかなあと思ったんですけど・・・・・
まあ普通に考えた委託介入をするとか日本にちょっとお願いするとか(笑)という感じになるんでしょうけれども、仮に委託介入した場合でもその後委託した国に積まれたドルってどう処理するんでしょ。最終的には米国債を買入消却するとかいう話になるんでしょうかねえと思うと、結局引き締めをどっかでやらないといかんって事なんでしょうか。
・・・・などと馬鹿話をしていて思いついたのは、バーナンキ議長が思い切って「どうだ明るくなつたろう」と大正時代の成金スキームしたらどうよいうのがあったのですが、冷静に考えたらそれは単にFRBのバランスシートの資産サイドに灰が増えるだけでございました、残念無念。
やっぱりヤケクソで通貨防衛利上げするというやるやる詐欺しかないんでしょうか。うーむ難しい。
○リスクバランスチャートの解説ですが・・・・
この前日銀から色々と出てたシリーズの一つですが簡単に。
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/data/rev08j03.pdf
まあ要するに今回の展望レポートで出てきたリスク・バランス・チャートの解説なんでしょうけれども、BOEのファン・チャートを例にして説明しているのでほうほうなるほどと読むのでありましたです。
で、その後半の部分で『3.経済・物価見通しの予測誤差』ってコーナーがございまして・・・・・
『先行きの経済・物価情勢の不確実性について考える場合、過去においてどの程度予測が外れてきたか、すなわち、過去の予測誤差はどの程度であったのか、ということが一つの尺度となると考えられる。こうした考え方に基づき、各国中央銀行では、過去の予測誤差に関する分析を行い、先行きの不確実性を判断する際の材料としている。(途中割愛)以下では、まず、諸外国における予測誤差について概観した後、日本における予測誤差について考察する。最後に、予測誤差の源泉について考えてみたい。』
ということで分析してるんですが。
『日本銀行では、2000 年10 月より、経済・物価の見通しの計数の公表を始めた。経済・物価見通しの対外公表の歴史は浅く、信頼度の高い統計解析を行うことが難しいことには留意した上で、過去の見通しの予測誤差についてみてみたい。まず、1
年先の実質GDP 前年比の予測誤差(RMSE)は1.0%となっている。一方、消費者物価(除く生鮮食品)前年比については、2000
年代の日本において、消費者物価前年比の水準が低かったこともあって、予測誤差は極めて小さく、0.2%となっている。同じ期間における民間見通しの予測誤差をみると、実質GDP
前年比は1.2%、消費者物価(除く生鮮食品)前年比は0.2%となっている。』
めんどいから引用割愛してますけど、欧米に比べて予測誤差小さめに出ていますってお話。
はあはあそうですか。と思うんですけれども、その割に日銀の見通しが毎度外れている印象が強いのは何なんでしょと思うのですが、それはきっと誤差小さいけれども方向性がいつも同じ方向に(要するに景気楽観方向に)働いているからではないでしょうかというのは気のせいですかそうですか。
ま、分析した結果ここ数年の予測誤差が小さいというのですからそうなんでしょう(棒読み)ということで。
ところで最後の部分のまとめの脚注でちょっと微苦笑。
『そもそも、経済・物価の見通しは、様々な前提条件に基づく「条件付の見通し(conditional
forecasts)」であり、常に不確実性は存在する。11』
ってのに11番の脚注があるんですけれども。
『11経済・物価の見通しが、様々な前提条件に基づく「条件付見通し(conditional
forecasts)」であることは、いずれの中央銀行の見通しにおいても強調されている。これは、中央銀行の経済・物価の見通しが「公約(commitments)」であると誤解されないためである。公約であると誤解された場合、市場との対話は、かえって阻害されることになる。』
まあそうですけれどもBOEはインフレーションターゲットの数字がウェブサイトに堂々と記載されておりますと存じますが(^^)。
2008/06/10
お題「せっかくテキストを出してくれたので読んで見るの巻」
民主党が支持率で自民を抜いたらしいんですけどね、日銀人事での言いがかりもそうだし、社保庁だかには「俺様は議員様だから」とか言って平気で建造物侵入するし、まあ民主党政権になったらこんな悪態もそのうち「有害情報」とか言われるんじゃないですかねえ。ま、国民の多数の皆様がお選びになるのですからそれで良いんでしょ。よー知らんが。
相場は連日大暴れですが、正直訳わからんので、先週日銀から出たペーパーでも読みましょということで、金融調節に関するテキストを(PDFです)。
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/research07/data/ron0806b.pdf
○まあ言ってみれば一昨年の続編みたいなもんで
実は以前こんなのが出ているのはあたくし何度か紹介しましたし、本石町日記さんのところで物凄い勢いでお勧めされていましたのでご存知かと(PDFです)。
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/research/data/ron0606c.pdf
こちらのペーパーでは各国の金融調節について解説しておりますが、今回はわが国の金融調節に関して説明を詳しくしておりまして、本文34ページ以降に諸外国における金融調節に関する紹介がございますので、そーゆー意味では今回のペーパーは前回の続編みたいなもんですな。で、前回のペーパーは本石町日記さんによりますと「白川理事の置き土産」だそうですので(本石町日記さんがブログでそう言ってたという意味ですよん)、今回はその続編キタコレという所なんですか。
○ところで何で「金融市場調節」???
こういう表現にやたら拘るのは日銀文学の読みすぎですかそうですか(^^)。
さて、今回のペーパーですけれども、本文1ページ目(PDFファイルの4ページ目、以下同様で本文とファイルは表紙と目次の関係で3ページずれます)の小見出しが『2.「金融市場調節」とは何か』となっておりまする。
『具体的には、日本銀行は、定期的に開催する金融政策決定会合において、次回の会合までの金融政策の運営方針である「金融市場調節方針」を決定しており、この中で「無担保コールレート(オーバーナイト物)を○%前後で推移するよう促す」ことを定めている。「無担保コールレート(オーバーナイト物)」とは、金融機関等がごく短期の資金を貸借する際の金利であり、「誘導目標金利(あるいは政策金利)」と呼ばれる。また、「○%前後」は「誘導目標水準(あるいは単に誘導目標)」と呼ばれる。日本銀行は、この金融市場調節方針に従って、いくつかの手段を用いて、無担保コールレート(オーバーナイト物)を誘導している。』
『こうした金融政策の実行のプロセス(implementation of monetary policy)を「金融調節」あるいは「金融市場調節」と呼ぶ。本稿では原則として「金融市場調節」の語を用いる。』
えーっと、前回のペーパーではこれに相当する部分がこう書いてあったんですけど。
『現在、金融政策の運営は、民間金融機関がごく短期の資金を貸借する際の金利である無担保コールレート(オーバーナイト物)を一定の水準に誘導し、これを起点として民間経済主体の金融・経済活動に影響を与えることにより行われている。この無担保コールレート(オーバーナイト物)の誘導は、具体的には、民間金融機関が日本銀行に開設している日銀当座預金に対する需給に働き掛けることによって実現されており、これを「金融調節」と呼んでいる。』
・・・・「金融調節」が「金融市場調節」になった(併記してますけど)のは何か意味があるのでせうか、と意味が多分なさそうな気もしますが無理矢理考えると・・・・
(1)センター試験問題がどうのこうのという話題とか、昨年の協調資金供給後の積み最終前吸収でいちゃもん付けられた件とかがありましたけど、金融政策実行の手段としての金融調節って話が金融政策と混同される(=テクニカルな吸収オペを「金融引き締め」とか言い出す人が減らないとか)ので「金融市場調節」と表記することによってテクニカルな面を強調したい
(2)前回のペーパー書いたのは企画局で、今回は金融市場局なので、金融市場局としては「市場」の文言を入れたかった(^^)
こうですか、わかりません(><;
○ここのところは論争になるんでしょうなあ
本文4ページ目から始まる部分。
『3−2.日銀当預の需要と供給』
『次に、日銀当預の需要と供給がどのように決まっているか、また、日本銀行がこれらにどのように関わっているかを説明する。』
ということで、日銀当座預金の需要が「決済需要」「準備需要」でありまして、供給は「外生要因(=市中銀行券の増減および財政資金の受払)」と「公開市場操作(オペ)」となっておりますが、そのオペの部分の説明がこうなっておりますわな(本文7ページ)。
『上記の外生要因の変動により日銀当預残高の増減(「資金過不足」という)が生じる場合、当預取引先全体の日銀当預への需要に変化がなければ、金融機関等の間のコール取引等では調整しきれない資金過不足が残ることになる。その結果、無担O/N
コールレートは大きく変動してしまう。』
『このため、日々の資金過不足を予想したうえで、これを適切に相殺するように日銀当預の供給を調整することが必要になる。日本銀行は、当預取引先との間で、金融資産の売買や資金貸付などの取引を行うこと(公開市場操作<オペレーション>)により、日銀当預の供給を調整している。』
というのは現場で実務を回していると「左様でございますな」としか申し上げようが無いのですが、岩田−翁論争の頃からこの調節を外生要因によって受動的に行うのはどうなのかという話が延々と続いておりますわなという所です。
マーケット実務的に考えますと、金融政策の変数として操作対象になっているものが「短期市場”金利”(日本の場合は無担保コール翌日物加重平均金利)」であることからしますと、日銀が能動的に(というか要するに市場の資金需給を無視してジャンジャンと)資金供給を行った場合は短期市場金利が金融政策の指示通りに動かない(=要するにゼロに向かって低下する)事になると思うのでございます。
ま、短期市場の関係者は先刻ご承知のお話ですし、あんまり短期いじってない債券市場の中の人にも先刻ご承知だと思いますが、本文2ページ目から8ページ目まで読んでおきましょうね♪
○準備預金に関連して
本文8ページから9ページのところが準備預金制度の説明なんですが、9ページ目の部分にこんなことが。
『準備預金制度適用先(準預先)は、積み期間中の日々の日銀当預残高を累計した準備預金積立額(積数)が所要積数に達しない場合、その不足額(準備不足額)に「基準割引率+3.75%」を乗じた金額をペナルティとして支払わなければならない。』
おお、マル公+3.75%は変わってなかったんですね(^^)。マル公じゃないから今だとロンバートでして、過怠金利は4.5%ですな。
『準備預金制度の準備率等については、日本銀行の政策委員会が金融政策決定会合において設定・変更・廃止する。準備率は、1991
年10 月以降変更されていない。このように、本制度の現在の意義は、日銀当預への需要を概ね安定的かつ予測可能にする点にあり、準備率操作により金融緩和・引締めを図るものではなくなっている。』
その脚注。
『準備預金制度について、かつては、準備預金が無利息である下で、準備率を上下させることにより、金融機関のコスト負担の増減を通じてその貸出態度等に影響を与える、つまり、準備率操作は金融緩和・引締めの効果をもつとされていた(例えば、武藤・白川共編<1993>参照)。』
ということで、まあ中国のように準備率操作を金融引き締め(というか銀行貸し出し抑制というか)に使う所もございますけれども、国内の資金需給的なことを考えると(民間も全銀も資金不足じゃないので)準備率操作をしても余程派手に動かさないと引き締めとか緩和とかにならないのではないかと思料されますがどうでしょ。
○これまた確認になりますが翌日物金利形成の説明
本文11ページ目から12ページ目あたりがメインの部分になります。なお、脚注で『以下の説明はあくまで単純化した模式的なものである。』とありますように、もうちょっと細かい話を読むのであれば白川さんが先般書いた「現代の金融政策」の136ページから146ページ(端折るなら142ページから)を読むと吉かと。
で、最初に12ページ目の『準備需要』をポイントにした金利形成の説明部分を読んでから前後を読むと判りやすいかと思う(というか準備需要の部分を理解してくれないと話が始まらない)ので、その部分を引用しますね。
『準備需要(日銀当預を準備預金として保有する需要)は、積み期の最終日とそれ以外の日で次のように異なる。ここでは決済需要は考慮に入れない。』
『積み最終日の準備需要は、残り所要額である。準預先は、この残り所要額を高い金利を払ってでも調達し、必ず積み終えなければならない。準備預金の積立てに不足が生じると、ペナルティが生じるためである。他方、余分に積立てを行うこと(超過準備を保有すること)は、市場での運用機会を逸することになる。従って、準備需要は極めて金利非弾力的になり、需要曲線は残り所要額の位置でほぼ垂直になる。』
用語が難しいのであたくしなりに説明すると、準備預金の積み最終日において残り所要額よりも市場にある資金が多いと翌日物金利はゼロ近傍に向けて低下し、少ない場合は無限大(正確には過怠金金利水準ですよね)まで上昇するというお話だと思うんですが、それで説明よろしいでしょうか。
『積み最終日以外の準備需要は、残り所要額では固定されない。準備預金の積立ては積み期中の平均残高が所要準備額になるように行うものであるため、積み最終日以外の日では、ある日と別の日の準備預金は完全に代替的である。このとき、準預先はその日の金利と将来市場で成立すると予想される金利を比較し、その日の金利が低ければ資金を調達して準備預金の積みを進め、逆にその日の金利が高ければ準備預金を取り崩して資金を運用することで(あるいは市場から資金を調達せず)準備預金の積みを遅らせる。従って、準備需要は極めて金利弾力的になり、需要曲線は、将来予想される金利の水準でほぼ水平となる。』
それ以外の日ですが、準備預金の積みは一定期間の間の合計積数で求められますので、今日のレートは高すぎなので明日多めに積みましょうというような進捗の操作ができますという話。
『こうしたメカニズムにより、オーバーナイト金利は誘導目標水準近傍で安定しやすくなる。これは準備預金制度の「平準化(アベレージング)機能」と呼ばれる。』
これに補足しますと、積み期間中に政策金利の変動が生じないという予想の下では、その日の金利が余程上下に振れない限り進捗操作をするインセンティブは働きませんけれども、期間中に政策金利の変更が予想される場合は、利上げがあると思えば現在の政策金利近傍よりもちょっとくらい高くても積みを進捗させるインセンティブが生じるし、利下げがあると思えばその逆になりますので、政策金利の変更が予想される場合には市場金利が誘導水準から乖離する事もあるという話になりますね。この辺の事情に関してはさっきご紹介した2年前のペーパーに書いてあったと思いますが。
同じ理屈になるんですが、この前の協調供給みたいな時に「大量供給した資金を放置すべきである」という人がいるんですけれども、放置プレイを延々と続けるという予想が市場で確信的になった場合には、上記の理屈で積み最終日に翌日物金利がゼロ近傍に低下するという予想が市場で確信的になる訳でございまして、これは「積み最終に向けて政策金利が引き下げられる予想」と同じ効果をもたらすので、「政策変更しないのに金利が下がってしまう」という結果になるのでありますな。だから「資金を放置すべき」じゃなくて「利下げしろ」というのが筋として正しいのではって指摘をするんですけど、どうにもこうにも理解されないのが困ったもんです。
で、13ページ目の説明にもありますが、実際には決済需要の部分があって、準備預金需要に対する糊代部分として決済需要が機能するのですけれども、糊代がでかい場合(準備率が低くて所要準備が低い場合や、外生的要因によって決済が多くなる場合)には翌日物金利が上下しやすくなるというお話になる訳ですね。
という説明でよろしかったでしょうか(^^)。
ま、読んで味噌ということでよろしくです。
2008/06/09
お題「月曜なので雑談で勘弁」
失業率でNYが動くなんて久しぶりに見ましたな。まあ原油の方が効いていたのかもしれないけど。
○またインチキ海外レポートか!
金曜の債券市場というか金先市場では「ECB7月利上げにあわせて日銀も利上げに」という観測を出したどこぞの海外インチキレポートが話題になっていたらしく、金先が妙に豪快に叩かれておりましたようですが・・・・・あの話題になるレポートって実は実物大昔はもしかして見たことあるかもしれませんが、金融政策に関する観測記事が毎度毎度外れるというただの風雪のルルレポートになってからと言うもの正直全然実物見た事ないのでまあ殆ど都市伝説の世界ですな。
この海外レポートなんですが、どういう取材をするとそういうトンチキな記事になるのかさっぱり判らん観測記事を書くのでございますが、超大昔にはインサイドレポートっぽいお話もあったので過去のトラックレコードというのは大事ですし、一度名声作っておくと虚名になっても相当期間通用するんですねっていうのは別にこの海外レポートだけじゃなくても「麒麟も老いれば駑馬となる」状態になってるあんな人やそんな人などがあわわわわ。
・・・・話は逸れましたが(^^)、日銀としては「経済の下振れリスクが高い」って話をしている中で追随利上げなんぞせんじゃろうと思う訳ですし、白川日銀はちゃんと政策ロジックを踏んでくると見られまして、前任のような最終的に理屈なんぞは後付けで結論の為には何でもありというのとは違うと思いますよ。したがってその辺のロジック構成を変えてくる為には「下振れリスクがかなり晴れてきた」という認識が必要になると思います。よってそのインチキレポートを真に受けるのは只のアホウでありましょうよ。
と思ってたらNY市場があの有様で、インチキレポート真に受けた皆様におかれましてはプギャーとしか申し上げようがございません。
○金先は反応しましたが現物は・・・・・
寄りから債券先物は下がるわ(でも終わってみたら陽線でしたよね→追記:これは間違いで5銭陰線でした)金先は叩かれまくるわという動きで、市場の方も先物は勿論ですが中期が例によって叩かれっぽい動きだったのですけれども、短い所に目を転じてみると1年以内の現物債は見事にウゴカンチ会長の巻。2年新発は4.5毛甘の0.875%の引けとなっていましたが、一方で残存1年ゾーンですと5月償還の256回で0.700%の引けという事で、これが5糸甘だったりするんですな。TBFBなんかですと、12月償還の6か月FBの引けは0.590%で何と5糸強と。
・・・・えーっと、ECBの利上げに日銀が追随するという話はどこへ逝ってるんでしょうかという動きでございますが、要は先物ぶん回している人は兎も角として、短期の資金運用の人からするとそんな雲をつかむ様な話まで一々真に受けてやってられませんですなあというところなんでしょ。高格付けの一般債とかも金曜は在庫捌けていたみたいですし、このあたりのリアルマネーの皆様におかれましては既に海外インチキレポートのインチキ振りは先刻ご承知の巻という所でございますな。
ま、短期のリアルマネーってタームが超短い(3か月FBでラダーのポート組んでたら平均残存期間は1.5ヶ月ですからねえ)ので、具体的なお日取りまでがある程度見えないような漠然とした話に一々乗ってられませんです。長期債投資する人とポートの回転時間が全然違いますから。
○日銀からレポートが3本
あのすいません量が多いのをまとめて出されると読むほうはちと困るのでありますが(^^)。
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/rev08j03.htm
経済・物価見通しの不確実性と中央銀行のコミュニケーション
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/research07/ron0806a.htm
2007年度の金融市場調節
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/research07/ron0806b.htm
日本銀行の金融市場調節
(本文は上記各URLにリンクが張ってあります)
んでまあ特に3番目のレポートはオペレーションに関する説明でございますので、「日銀理論なんぞケシカラン」と仰る皆様におかれましても是非毛嫌いせずに読んでいただくと宜しいのではないでしょうかと思うんですが。オペレーションの話を見事に誤解したままで日銀ケシカランとか言われましても(そりゃまあ一般ピープルはもっと判ってないからそれでもアピールするでしょうが)説得力がございません話ですからねえ。
説得力で思い出しましたが、まあ最近(というか郵政民営化論議あたりから)はロジックが無茶苦茶でも一般ピープルの心情にアピールしちゃえば大勝利というのが政治的には大流行のようでございますのが絶望する話すな。で、郵政民営化論議の時に理屈もへったくれもあったもんじゃないアピールしたのの逆を現政権は今まさに食らっている訳ですが。
内容は追々ご紹介致しますが、3番目のレポートに関してですが、本文の25ページの所にある「オペに関する誤解」という所なんぞまあ読んどけという所ですか。あたくしの駄文などでも同じようなお話はしておるのでございますが。
1番目のレポート(順番逆になってすいません)は今回の展望レポートで出した「リスク・バランス・チャート」が何で出たんでしょというようなレポートだったりしますが、海外中銀での例を紹介しておりまして、これまた参考になるかと思います。と言いましてもまだ斜め読みしかしてないので熟読してから紹介はそのうちやるかもしれません。
2008/06/06
お題「相場雑談とかで勘弁」
暑かったり寒かったりで疲れますのお。
○オペレート低下ですかそうですか
昨日も申し上げましたが、税揚げ抜けたら金が出てきたみたいな風情の超短い所動向でありますが、その動きが継続しておりまして、昨日実施されたオペレーションは午前中に国債買現先6月26日エンドで0.537/0.53という結果になりまして、まあレートが下がりますなあとか思ったのですが、午後の共通担保オペ6月23日エンドはなんと0.529/0.52の結果で、月中ものレート威勢よく低下の巻と。
昨日のFB入札後の堅調さから一連の流れになっているのでまあそんなもんかなという所ではありますが、それにしても税揚げ抜けた途端にレート低下ってのはあまりにもお約束過ぎの展開でありまして、その予定調和っぷりに向かう動き無いんかいなとか思う次第ですけれども、こればっかりは参加者のメガ化が効いてるのかなあと思いますです、はい。商品間の裁定が妙に効かなかったり、見え見えというか機械的な動きになったりとかってのは、恐らくは参加者さんのお家の事情が商品間裁定よりも優先という話になっちゃって、よほど商品間で極端に開かない限り埋めに行くとかにならんのでしょうなあと勝手に想像してますがどうでしょ。
正直申し上げて古参兵としてはちと寂しい物を感じますな。もうちょっと工夫しました!っていうような動きはないのかねと思うんですが、ポジションを積み上げるほどの熱気がこの超短い所(最近は長いところもそうですけど)から感じられませんのですよね。ぶつぶつ。
#これで積み最終後から約定ベースの20日位まで償還銘柄のファンディングとか言ってレートが50台後半とかに上昇したら呆れてしまうのですけれどもさてどうなる事やら。
オペの打ち方も機械的っぽい雰囲気がありまして、何かイマイチ感漂うのですが、その話はまたいずれ期末前にでも(^^)。
○渡辺前財務官のロイターインタビューをマクラに雑談少々
昨日の13時15分配信の日本語版ロイターでは渡辺前財務官のインタビュー記事が掲載されておりますが、資源と食糧価格が上昇する中での金融政策運営の難しさについて指摘しています。
以下引用は6月5日13時15分配信の日本語版ロイター記事より。
『[東京 5日 ロイター]渡辺博史前財務官(一橋大大学院教授)は4日、ロイターとのインタビューの中で、過剰流動性を引き金とした世界的なインフレリスクへの警戒感を示し、「金利を上げるべき状況であるにもかかわらず、最大の金融市場である米国が逆向きになって、インフレに対するツールが使えないインフレ懸念が、今世界市場で起こりつつある」と指摘。「金融市場が足かせになって金融政策が使えない状態を早く解消したほうが良い」と警告した。』
『金融当局・財政当局に対しては、「オーバーリアクトすると市場が逆に大きく振れる」点に注意する必要があるとし、同時に「インフレをにらんだ金融スタンス」にも配慮する必要があるとした。「本当は上げなければならないタイミングに近づいてきていると思う」としながらも、「すぐ金利が上がる」と受け止められることを警戒。「インフレをにらんだ金融スタンス」と早期利上げが直結するものではないと強調した。』
インタビューの詳細はこの日の夕方あたりに配信されたみたいなのですが手元にちょっとないので勘弁というところですが(汗)、まあ要するに米国頑張ってねというところなんですかねえ。
その点で言えば、バーナンキ議長が昨日(というか一昨日というか)力強く懸念(ナンノコッチャ)したドル安問題ですけれども、ドル安から来る商品価格上昇の中でサブプライムだの何だのという流れになっちゃって、米資産離れみたいな話になっちゃったりしちゃった日には、引き締めりゃ景気死亡だし緩和したらインフレドル安進行で、どっちも大変ってなりますから、ドル安で商品価格上昇となっている位のうちに為替面で手を打って置くってお話になるんでしょうかね。
そんな中でサブプライム問題に一筋の光が!昨日14時47分配信の時事メインニュースによりますと・・・・
『14:47 05Jun08 JIJI-◎サブプライム、影響長期化を懸念=米地銀破たん、「第2幕」も-榊原元財務官』
・・・これは第2幕ございませんという理解で宜しいですよね(^^)。
まあしかしここもとそこらじゅうでインフレ懸念インフレ懸念というヘッドラインばかりでして、インフレ懸念の無い(かどーかは知らんけど本気でインフレ大変ですって話にはまだなってないでしょ)日本ですけれども、周囲に煽られやすいという仕様になっている市場ちゃんというのは妙にネタにして走っちゃいますよね。大体ニューエコノミーだの何だのの時代長くて参加者のインフレへの精神的耐性は低いし。
本邦的には、ドル安懸念モードになってくれれば株式市場的には好反応するでしょうし、それとは別ですが最近の東南アジア市場が何となく通貨怪しげモードとかになっているのが、逃避先としての日本株選好になってるんじゃないかって気がするのもあって、まあ株価はあんまりさがらなさそう(当たるかどうかは無担保無保証)になってて、どうも経済のハードデータと市場の乖離は暫く続くんでしょうかねえという風情ですにゃ。どうせなら経済のハードデータが市場に鞘寄せされれば良いのに(それは無理)。
○人のふんどしコーナー
といえば本石町日記様なのでございますが(^^)。
http://hongokucho.exblog.jp/8719781/
そういや金融士(笑)のパブコメって今日締め切りですので、関連エントリーをコピーして本石町日記様是非お送り頂きたく存じます。(http://www.fsa.go.jp/news/19/sonota/20080430-1.html)何せ「氏名又は名称、住所、所属及び理由を付記の上」ということでございまして、所属っていう文言を見て固まってしまったチキンなあたくしとしては以下自主規制(苦笑)。
そのエントリーの中でリンクがあります磯崎さんの関連エントリーで触れられている「プリンシバルベースの規制」に対する指摘とか、コメント欄に登場する金融機関の中の人らしき指摘は泣かせて下さいますです、はい。
あ、それから本石町さんのエントリーですが、ゴシック体で強調された部分を読んで爆笑の発作が起きたことを念の為付け加えます(笑)。
2008/06/05
お題「これは良い国会質疑ですね/その他少々」
誰かさんの帝王趣味が発端だか何だか知りませんが、東京オリンピック招致でまた都民税が投入されるんですかそうですか、などと威張るほど都民税払ってるのかおまいはというツッコミはしないのがオトナのお約束でございます(^^)。
○急に金が来たので(?)
長いところが昨日売られたというのも中々驚倒な展開でありましたが、昨日動いたといえば超短いところでも動意がありましてまあその辺のクリップを。
昨日は毎度おなじみの3か月FBの入札があって、これまた毎度おなじみのように0.59%台での決着になったのですが、不明が久々に大目でセカンダリーでも買いが入ったようで、堅調推移となりました。FBゾーンで1毛強テイクンとか見るの超久しぶりですがなとか思ってたらGCは51近辺とかになり勢い的には今日当たり50攻撃やりそうな悪寒。GCとかTBFBはやたら堅調(レポレートは軟調というべきか)に推移する中でCPのレートは妙に上昇気味に推移しています。まあ時期的に決算納税だの賞与資金だのでCP発行額が嵩み、需給が悪くなるというのはあるのですが、5月終盤までは6月に発行増えるでしょという中でもレートが上昇しにくかった事を考えるとナンノコッチャな所であります。
ま、CPに関しては昨日のFBなどの金利低下を受けて今日下がるかもしれませんが、ここまでの流れが「TBFBやGCを買う金はあるがCPなどを買う金はございませんですわよ」という感じなのは何でなのかなあと不思議ちゃんな動きでございました。で、昨日はいきなりGCレギュラーもスポットもトムもドカドカ買いが御到来ということのようで、6月4日というお日取りを勘案しますと「税揚げ抜けたので金が出ました」と言わんばかりの展開でございまして、まあ今に始まった事ではないとは言え、最近はこの手の「イベント抜けたので急に金繰りが変わる」という形での変動が大杉勝男でございます。何という機械的なマーケット・・・・・・
○これは素晴らしい芸風ですね
http://sankei.jp.msn.com/economy/business/080603/biz0806032038014-n1.htm
東証上場の中国企業社長、私的に預金流用
>ア社は昨年4月、東証のアジア企業誘致に対応して上場した初の中国企業
>ア社は昨年4月、東証のアジア企業誘致に対応して上場した初の中国企業
>ア社は昨年4月、東証のアジア企業誘致に対応して上場した初の中国企業
ま た 初 物 か
・・・・ていうかですね、そりゃまあ新興企業だから玉石混交なのは仕方ないんですけれども、マザーズ上場第1号銘柄が2つございましたがそのうちの一つの社名が当時はリキッドオーディオジャパンでしたけど、毎度毎度の如く「新企画」をやるとその第1号案件で大コケするというのは最早伝統芸能の域に達しておられまして大変にファンタスティックな状況でございます。
本質的に何か問題があるんじゃないですかね。PDCAとかちゃんとやってますか東証さん??
○これは良い国会論議ですね
日銀の半期報告ですが、報告やっただけで質疑が後日送りになっておりまして、質疑が行われましたのが5月27日でした。その会議録が(たぶん)昨日アップされたのでざっと読んで見ましたですよ。
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kaigirok/daily/select0105/169/16905270060012a.html
量的にはやたらめったら長いので紹介するのも大変なのですけれども、この質疑応答は全般的に「白川先生のゼミ」みたいな感じで質問するほうも好意的だしあまり無茶苦茶ないいがかりみたいな質問も(無い訳でもないのですが)ない割と前向きな論議で読んでて結構でございました。
ということで、まあ読むとオモロイのですが、多くの部分が白川総裁への質疑(途中に預金保険機構理事長への質疑などがございます)となっておりまして、まともに読むと30分じゃ効かなく時間を食うと思いますのでその辺は適当に。でもまあ良いのではないでしょうか。
などと褒めてばかりでは面白くないので、変な視点でおもしれえと思ったところを少々ご紹介。
・政務調査費あるんだから買えよ
1番バッターの民主党の尾立源幸委員の質問(どうでもいいのですが、民主党・新緑風会って名乗ってないのはあたくしが知らぬ間に院内会派に変更あったのかな・・・と思ったら川崎稔委員の名乗りが「民主党・新緑風会・国民新・日本」って言ってるから変更はないみたいですが)の一部から引用。
『ちょうどタイムリーに、総裁、教授時代にこの本でき上がったということで、三月の十七日の出版でございます。「現代の金融政策」というタイトル、川崎議員はもうお買いになったということで、私は図書館から借りてきたんですが、六千円ぐらいでちょっと高いと言っておりましたけれども、この中で非常に独立性についてすばらしい議論がされておりますので、この点をちょっと深掘りをさせていただきたいと思います。今お配りをさせていただいておりますのが、そのコピーをさせていただいておりまして恐縮でございますが、BOXという囲みで中央銀行の独立性指数というすばらしい研究成果でございます。』(尾立源幸委員)
とりあえず図書館から借りてきたものコピーするのは立法府のお方として何とも微妙ですなあと思われるのでありますが、とだけ書くと不公平なのでもう1人買っていない人がおいでなようですのでご紹介すると自民党の田村耕太郎委員でした。
『私も民主党の先生方に負けないようにこの本を借りてきまして、』(田村耕太郎委員)
ま、コピー配って回らないからだいぶマシですけど、6000円の本くらい買えよおまいらと思ったら、最後に質問した共産党の大門実紀史委員の発言にワロタです。
『御本も買わせていただきました。六千円という少々高い本ですけれども、その価値はあるなと。もうこんなに附せんを付けて、私が一番熱心に読んだんじゃないかと。図書館から借りている場合ではないと申し上げておきたいと思います。』(大門実紀史委員)
・・・・・(^^)(^^)(^^)(^^)(^^)
・これはまた財務省に理解のあるお話
2番バッターの民主党の大久保勉委員が、日銀の国際的な貢献とかのお話をして、その中で国際的な機関でもっと活躍する人材を養成すべきであるというお話をしているのですが、財務省の丹呉さんに財務省から国際機関に派遣している職員について質問した流れでこのようなお話を。
『この数字が明らかですが、財務省はやはり歴史的な意味で非常に強い、若しくは人材もいっぱいいるということです。ですから、日銀も是非努力して、六十名とは言いませんが二、三十名国際機関に出向できるようになり、そのうち二割か三割は管理職として、いわゆる将来の議長として職務を全うするだけのいろんな能力を高めていったらいいと思います。』(大久保勉委員)
で、その続きが何とも。
『こういった財務省の人材を見ましたら、こういった人材も日銀の総裁、副総裁等に活用できるのか、あるいは理事として活用できるのか、こういったことも是非考えるべきだと思うんですね。』(大久保勉委員)
・・・・・あれ、この前までそちらの政党様は財務省出身者を欠格事由であるかの如き話をしてましたがどういう風の吹き回しでしょうか???
・で、まあ白川さん個人には好意的と
質疑の内容は色々とございまして、景気認識やら金融政策の話とか、先ほど申し上げた国際貢献の話やら総裁の公用車が高級過ぎだという話とかございますが、ちょうど著書が出たタイミングというのも良かったのか、白川さん個人に対してはまずは好意的なスタートのようで良かったんじゃないでしょうか。皆さん総じてそんな感じですけれども適当に引用するとして大久保さんの質問から。
『私の感想ですが、これまで白川総裁とやり取りしまして、前の福井前総裁とは大分違いまして、非常に安定的、そして言っていることが明快で、事務方としては非常に安心できるのかなと思います。まあちゃめっ気とか若しくはサプライズが少なくて、この辺り、新聞記者と話をしましたところ、過去の記者会見で居眠りをしている方がいらっしゃるということも聞いておりまして、非常に活性化した議論も必要かなと思います。』(大久保勉委員)
大門さんの質問から。
『私なりの感想を述べさせていただきますと、とにかく分かりやすいですね。非常に分かりやすい本でございますし、もっと広く読まれていいと思いますし、非常に基礎から分かる金融政策みたいなことと、何といいますかね、ちょっと実録的な日銀論みたいなものもありますし、大変もっと普及すべき、この委員会の指定文献ぐらいにしてもいいじゃないかと思うぐらい本当に思うんでございます。問題意識も、私がずっと速水さんから福井さんにわたって質問してきたところと重なる部分もありますし、もちろん違うところもありますけれども、本当に白川さんらしい本だなというふうに思っております。』(大門実紀史委員)
・じゃあまあ引用のまとめ代わりに
大門さんの質疑では輪番オペにかんする部分もあって、そこの説明もちゃんとしていたのですがまあそこは割愛しちゃいまして、さっき引用した質問の続きの部分を引用してまとめっぽく。
『この白川総裁の本の前書きにもありますけど、やはりこの数年間は何だったのかということを私も同じように問題意識を持っておりますんで、今日は、個々の金融政策、これから何度もお聞きする機会があろうと思いますので、若干、この数年間何だったのかという総括的なことも含めて、基本的なこれからの総裁のお考えを聞いていきたいというふうに思うわけでございます。』
『私は、白川さん、理事のときから御存じだと思いますが、基本的に日銀にずっと質問してきたのは、速水さんのときからそうですけど、日銀の独立性にこだわっていつも質問してまいりました。もちろん中央銀行と政府が協調するのは当然のことでございますけど、この数年間、かなりそれを超えたことがあったんではないかなと思って、心配も含めて質問してきたわけです。』
『いろんな議論がありましたけど、要するに、財政支出はもうできないと、景気対策としても財政支出はできないから金融政策でやれと、日銀がやれと、少々無理なこともやれというふうな時代が続いて、一時は、言うこと聞かなければ総裁首だと言わんばかりの与党の一部の方の大変ヒステリックな質問がこの委員会の場でもされたのを強く記憶しております。その後、私が質問して、そんなこと、言うこと聞かなくていいという反論の質問を何回かした覚えがあるのがこの委員会での流れでございました。』
『白川さんもこの本の前書きの中に、そういう時代とはおっしゃっていませんけど、とにかく今は冷静に議論ができるときになったとおっしゃっておりますけど、どうなんでしょう、振り返って、あのときはやっぱり冷静な議論がされなかったというふうにとらえていらっしゃるんでしょうか。』(以上、大門実紀史委員)
2008/06/04
お題「今日もまあ雑談で」
あれだけ相場で振り回されたらヘロヘロになりますがな。
○まずは相場メモで
急に信用不安が来たのでということで米債いきなり戻るの巻でございまして、先週木曜に米債4.1%とか言ってたのはどちらに行ってしまったのでしょうという相場。というか今日は3.9%とはまた派手な値動きですな米債ちゃんは。。。。
で、昨日ですが米債が強くて戻ってきたことから窓開けて寄り付きとなった債券ですけれども、10年入札は前場引けの1.785%あたりに対して平均が99円99銭と相変わらずのやる気を感じられない入札(足きりは80銭だわ按分は95%だわということで気合の止め札も無いというのは如何なものかと)でございましたが、リーマンの赤字転落見込みとか増資とかいうネタで為替と株が動いたあたりから債券先物爆発の巻となりました。
・・・・という後講釈になるんでしょうけれども、一昨日と昨日の各年限カレントゾーン(#292は特殊事情につきオミット)のお値段の動きを何となく見てますと、先物の動きもそうなんですけれども、何気に中期ゾーン動いておりますなあという感じがするものでございます。先物の話が派手なんで目立ちますが、そもそもここもとの下げで5年ってやたら威勢よく叩かれたりしてましたし、まあそういう意味では戻るときは中期も戻るのねという感じではありますけれども、これって10年入札の動きよりも中期の実弾が効いてるのかも知れませんな。
で、そんな中で恐怖の#292ですが(昨日は変に煽るのも何だったので書きませんでしたが、マイナス35%(=1日9銭5厘とか)などという取引もあったそうで、何という利息制限法抵触(はたぶんしてないと思われますが・・・・^^)プレイという動きがあったんで、昨日も朝っぱらからいきなり7毛強とかが出合いやがっておりましたが、後場のどこかのタイミングで#290、#291とのバランスが揃ってまいりまして、これはまあさすがに玉が出ましたなと言う感じ。そりゃまあ3か月短い同クーポン銘柄よりも利回り低いとなれば入れ替えますわなという所です。レポの玉も出たようでまあ普通の需給が良い銘柄レートまで戻ったようです。めでたしめでたしと共に、昨日の強いところで入れ替えした人GJでした♪
えーっとそれから、2年だの金先だのがアホほど上がっておりましたが、それまでこちらも足元金利の足し算で考えてそれはねえというところまで叩かれていた訳ですから戻るのも当然ちゃあ当然ですけれども、何もそんなにガンガン戻らんでもええのにとは思う次第。またALMとか海外とかが動いてるんでしょうかね。よー知らんがご苦労なことです。
まあ何にせよこの2日は(というか先週木曜からですが)はエライコッチャな相場でありましたが、リバランスだの何だのと色々と大人の事情もございますので、月末月初にドカドカ動かれるのは勘弁して欲しいものであります、と申しましても月初に10年国債入札があるんで、このようなボラ高くオファービットが広がる相場環境の中では月末月初にぶれてしまうのは仕方ないところでございますか。10年入札日程をもうちょっと後寄せできませんか財務省様(笑)。
○池尾先生の所信聴取
ブルームバーグ(ネット版)から。
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=90003008&sid=aHy7Q8e72svc&refer=jp_politics
上記記事より池尾先生の発言要旨を引用致しますと。
『現下の日本経済については、主として海外発の要因で減速を余儀なくされていると思う。もっとも、もう少し長い目でとらえた場合は、日本経済の成長基盤は数年前よりは格段に強くなっている。企業部門では債務、人員、設備の過剰、いわゆる3つの過剰などの構造的な問題が解消に向かった。また、金融システムの安定も基本的には回復したと考えている
』
ということでして、参議院のほうでの質疑応答では『金利正常化の条件が基本的には整いつつある』とも発言(複数ベンダーが報道、ブルームバーグのネット版ではあたくし見つけられませんでしたすいません)しておりまして、基本的な経済の見方に関してはそんなに弱気ではないようで。
『金融政策の波及等には時間的なラグが存在することを踏まえると、フォワード・ルッキング、つまり先を見て行動することは不可欠だし、その際にも、不確実性を考慮に入れた慎重な対応をとることが望ましいことは理論的にもよく知られている。とりわけ、現在のような微妙な局面では、リスクに注目することは全く当然のことだと考えている
』
ただスタンスとしては現在は中立状態が当然のことという話ですので、基本的にタカとかハトとかという色分けはしにくい感じですね。一方で金融システム論とかに強いお方ですので・・・・
『私自身が特に重要だと考えていることを最後に付け加えたい。それは、金融システムの安定性、健全性を維持することの大切さだ。もちろんこれは言うまでもないことかもしれない。日銀法が日銀の使命として、物価の安定と並んで信用秩序の維持を規定しているのは、こうした認識があるからだと思う』
ということで、日本ではまあそんなに深刻な話にはなってませんが、欧米があの状況でございますので、池尾先生のご提言などを期待したいと思いますです。
参議院ではインタゲ導入がどうのこうのとかいう話や、景気減速と物価高に対応する金融政策がどうのという話もあったのですが、前者に関してはまあ一般的なお話(ただし基本的にあまり肯定的でもなさそう)で、後者に関してはコストプッシュ型の物価上昇を金融政策で押さえようとするとスタグフレーションになっちゃいますよってお話をしてますので、まあ無難ですわなという所で。
○まあどうでもいいのですが
NIKKEI NETで見かけた記事なんですが。
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20080603AT2M3101303062008.html
信用リスク取引CDS、欧米金融が決済機関
ということでCDSの決済機関作るとかゆうとる訳ですが、CDSってトリガー引くといきなりどっちかが元本を実質的にお支払いの世界になるので、普通の金利スワップや先物とは話のレベルがちと違うような気がするんだが。この決済機関の信用力維持の為に幾ら資本が必要になるんだか。
こんな共同ケツ拭き機関の設立に際して何故か日本勢に奉加帳が回ってくるに100ドン・・・・というより上述の理由によって必要なキャピタルが莫大になるので決済機関なんぞ無理あるでしょ。仮に出来ても今回のような騒ぎになってどこかの大口業者が飛んだら取引所とやらが耐えられないっしょ。
2008/06/03
お題「小ネタ雑談で勘弁」
適当に相場が戻ると金融不安問題が出てくるというのは何かの仕様でしょうか(苦笑)。
○10年入札ですが
今日は10年国債の入札なんですが、昨日は何だか先物が威勢よく下落する場面がある中で10年292回がアホほど強くなっておりまして、何がどうしたのやらと思ったら先週後半から292回に買いがドカドカ来てしまい、そのタイミングが揃いも揃って同じだったことから一気に292回債の需給がピンポイントで逼迫して、先週金曜にSCレポが▲5.0%とかやらかしたそうなのですが、昨日は▲5%の1w物だの、▲10%以上(というのか以下というのか)の中々壮絶レートをやらかしてしまったようでございますな。正直利息制限法に抵触しねえのかとか思っちゃいますが(苦笑)。
おかげで引け値は調整してるみたいですが、出合いベースでは3か月手前の同クーポンよりもレートが低いのではないかというような有様になっておったようで、もう何が何やらという感じでございます。
たまたま同じタイミングでいろんな投資家が買っちゃったりした場合に瞬間的にレポが逼迫するというのはありがちな悪事例なんですけど、これって要するに債券投資の世界で約定ベースと受渡ベースの管理が混在している(そりゃまあ混在するのは当たり前なのですが)中で、約定ベースで残高あっても受渡ベースで残高が無いものはレポできないというのが基本になっている(フェイルが前提になっていないというのもあると思われ)のがある関係が効く次第。例えばこんなにアホほどレポレートが低下して貸出するとお得という事態になっても、例えば月末に買っていれば約定ベース残高がある事になるのですけれども、受渡ベースで4日にならないとモノが確認できないので、4日約定じゃないとレポできませんなあというお話になるのですよね。フェイル前提になるとこの辺ちょっとは変わらないのかなと思うのですけれどもどうなんでしょ。
#というか国債決済のRTGS止めて時点決済に戻してループ取引ありにすれば一発で解決なんですけれどもね
まー今回はたまたま相場の下げとインデックスの長期化タイミングがぶつかって、入札時ヘロヘロだった292回に一気に買いが入ったという各種要因がぶつかったので過激な動きになったというのもありますけれども。ちょっと前にもカレントだけアホほど強くなってしまった事がありましたな。
しかしまあ10年カレントの所のカーブだけ見事に寝ておりますけれども、カーブ上踏み入札みたいになるのかよとか思っていたらいきなり海外で債券高攻撃なので、相場の上下的には踏みになるけどカーブ上はちったあ緩和してくれますかね。どちらにしてもヘッジがやりにくそうな感じが致しますけれども。
○ネタがないときには国会会議録
と思って日銀の人が登場する国会会議録でも見ようと思ったのですが、最近の会議録が全然更新されていないのでネタがねえ。
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kaigirok/daily/select0116/169/16905160015007a.html
と思ってたら参議院決算委員会で日銀関連じゃなくて財政投融資貸付の証券化に関する社民党の又市征治委員の質問を査収したもんで。
あ、ちなみに財政投融資貸付の証券化に関してですが、財政投融資特別会計を証券化によってディスクロに晒し、透明化の推進を図るというような意味では結構でしょと思いますが、純経済的にはコスト掛けるメリットがイマイチ良く判らんというのがあたくしの感想なのですが、不勉強にも程があるのでツッコミ希望です。
で、又市センセイに置かれましてはその論点だけ話せば良いものを、最初に思いっきり訳の判らん話を持ち出しているので、どうみてもアホアホ質問にしか見えないという大変に残念というか素敵な質問になっております。質疑は上記URLのほぼ最後です。
『○又市征治君 私は、昨年四月のこの委員会でも当時の尾身財務大臣に、本来国民の税金で形成された財政融資資金という資産を危険なマネー市場に投ずることや、一口が一億円という大口の売買であり、一般国民には全く縁がない、証券業界を利するだけだからということで反対だということを警告を申し上げました。しかし、残念なことに、今お話がありましたように、財務省は一千億円を売り出してしまったわけでありますけれども。』
なるほど、では国債の消化も一口が一億円どころではない大口の売買で一般国民に全く縁が無い危険なマネー市場で行われていますから罷りならんと。国債は個人向け直接販売以外に発行しちゃいけないんですね!
『そこで大臣にお伺いしますが、米国のサブプライムローン問題はまさに証券化が生んだ問題で、今米国政府は後始末の追加融資に追われている、こういう状況ですね。証券化の共通点というのは、個別の債権をいったんばらばらにした上でミックスして売り出すということでありますから、この結果、その証券は債権者がだれか特定ができない、転売され、だれがばばをつかまされたのかも分からない、こういう仕組みですね。サブプライム問題は、こういう証券化メカニズムの本質、マネーゲーム性が露呈をして信用不安が連鎖的に金融界全体に拡大したと思うわけですが、この点については、大臣、どのように御認識なさっていますか。』
なるほど、財政投融資資金の貸付はサブプライムローン並みに信用力の無い貸付を行っていたんですね!でもそれを証券化して販売したら国のリスクを民間に押し付けられると思うんですけれどもそれでもダメなんですかそうですか(笑)。
で、まあ当たり前ですが額賀大臣の答弁はこうなります。
『○国務大臣(額賀福志郎君) 財務省といたしましては、今回の財政融資資金貸付金の証券化について、裏付け資産が十二の政府関係機関向けの貸付金でありまして、極めて高い信用力を持っているということで、委員がおっしゃるサブプライムローンを裏付け資産とした商品とは、その裏付け資産の質等の差から全く違うものであると市場の皆さん方は受け取ってくれていると思っております。いずれにしても、財務省としては、今後とも市場の状況をよく見守りながら証券化を実施してまいりたいというふうに思っております。』
そして又市先生なおも爆走(笑)。
『○又市征治君 サブプライムローンと全く関係ない、性格が違うというふうにおっしゃったんですが、実際に財融の借り手である、例えば夕張市のような自治体や政府関係機関、例えば旧公営企業金融公庫や国民金融公庫だって、今の新自由主義政策の下では政府保証から切り離されて破綻の危機にさらされることがあるわけです。証券保有者はそういう不安を言い立てて政府にリスクの肩代わりを求めてくるということは当然あるわけでありまして、そういう意味で私はサブプライムと余り大差ない、このように思います。』
百万歩譲って財政融資資金の貸付先が支払い不能になった(ならないというのが基本ですが、為念)としまして、証券化しなかった場合は財政融資資金にそのケツが回ってくる訳ですから、証券化したものを買った投資家が発行体にケツ持ちを依頼する(それって何の証券化ですかという話はここではスルー^^)のであれば同じ事ですが、他に何か深い意味があるのでございましょうか。というかお前新自由主義政策って言いたかっただけちゃうんかと。
『そこで、このことは答弁求めませんが、私が述べたこのリスク面というのは、殊更、何も野党だから我々は言っているんじゃなくて、財政審の小委員長も務められた富田教授を始め専門家の意見でもあるわけですね、これは。』
多分野党だからじゃなくて馬(以下自主規制)。反対する理由は全然別の筈なのにこんなところで名前を出されて富田先生カワイソス。
・・・・で、まあここで切ってしまうとただのアレな人になるので、一応又市先生の名誉の為にこの先を引用しますと、ここから先の話では基本線としてコストを掛けるメリットがどこにあるのかをもっと明確に説明しやがれという話になっております。それだけ質問しとけばよいのに・・・・
『また、財務省の内部でも反対論があった、こんなふうにお聞きをいたします。財務省の答弁、これまでの答弁でいえば、ひたすら金融変動リスクの軽減、この一点張り、こういうことでの答弁ですね。しかし、私、このことについて幾つか具体的にお聞きをした。』
『例えば、財融は原資が国債なんだから、金利は両建てであり、相殺されるんじゃないですか、こういうふうに反論したら、おおむねこれは肯定をなさる。あるいは、割引して売り出さねばならないから、財融特別会計にコストが発生するんじゃないですかという点についても、これは肯定をなさる。さらに、大量の売出しによって、住宅ローンなど他の証券とバッティングして値崩れするんではないのか、こういう民間の観測についても、財務省としては一定程度これについても肯定をされてきたんじゃないのか。』
『としますと、もうほとんど無理にこれを証券化する理由というのはないんじゃないのか。どうしてもやらなきゃならぬ理由というのがそんなにあるのかということなんですが、この点どのようにお考えですか。』
で、この質疑暫く続くのですが、質問の端々に「証券会社は悪」「市場はマネーゲームをするケシカラン所」というような大変素敵なイデオロギー丸出しの部分がありますので、読んでいると実にこう何ともアレな物を感じる次第でございます。何だかな〜って感じですわ。
しかしどう見ても社会党の末裔である筈の社民党の質問が共産党の質問と比較するのも(共産党に)失礼なほどレベルが低いのはどうなのよと思うのですけれども。
○ちょっとした疑問なのですが
引用するのは大和投信のページですが、ツッコミの対象は大和投信じゃなくてFTSEですので念のため申し添えます(^^)。
http://www.daiwa-am.co.jp/doc/news/news_20080527_2.pdf
話題になってましたからご存知の方も多いかもしれませんが、イスラムの教えに抵触しない商品・サービスを扱う企業群を指数化した「FTSEシャリアジャパン100」というのに投資する商品がシンガポールで上場されたってお話が先日ございましたわな。上記URLは日本語版のリリースです。
で、そのシャリア指数なんすけど、上位10銘柄に関して上記リリースの3ページ目に出ていまして、シェア第3位でベンチマークウェイトが4.5%ある銘柄を見てあたくし物凄く不思議に思ったのでございますけれども。
http://www.nintendo.co.jp/n09/index.html
念のため外務省の海外安全ホームページで確認したんですが。
http://www.anzen.mofa.go.jp/info/info4_S.asp?id=046
・・・・まあこれってイランの例だから必ずしもという所なんでしょうけれども、トランプとか花札とか麻雀牌を製造する会社ってシャリア適格なんですか?あたしゃ正直良く判らんのですけれども誰か教えてくださいませプリーズ。
2008/06/02
お題「亀崎審議委員会見」
先週金曜は久々に暴騰暴落が無かったですね(^^)。
今日は亀崎審議委員の記者会見を簡単にで恐縮。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0805c.pdf
○物価に関する亀崎委員の見解
今回の会見の半分くらいがこの話になっておりますので、まあ延々と引用という手抜き攻撃で参ります。
国際商品価格高騰の背景に関して。
『国際商品価格の高騰には、いくつか背景があると思いますが、一つは、何と言っても中国・インドをはじめとする新興国の旺盛な需要であり、この影響は継続していくものと思われます。二番目には、鉱山開発や精製設備、港湾整備等の遅れによるボトルネックが供給側の要因としてあります。三番目は地政学的リスクで、資源が非常に偏ったところにあるということです。四番目には、サブプライム住宅ローン問題を契機とした国際金融市場の混乱を受けた投機資金の流入、フライト・トゥ・シンプリシティ(商品性がシンプルな商品への資金の逃避)が背景にあるのではないかと思っています。』
日本経済への影響。
『日本経済にとっては、国際商品価格の上昇は、物価上昇要因となる反面で、資源国などへの所得流出を通じて景気の下押し圧力となる可能性もあります。ただし、資源価格の高騰は、鉱山開発向けの建設機械、油送用パイプ等の資源関連技術や、省エネ技術に優れた日本企業に恩恵をもたらす面もあります。これに加えて、資源国の景気拡大を背景として自動車をはじめとする消費財やインフラ関連財などの輸出増加も見込まれます。このため、日本の景気へのプラスの面、あるいはマイナス面の影響が今後どのような形で現れてくるのか必ずしも明確ではないと思います。』
どちらかというと亀崎さんはハト派に分類される人ですが、資源価格高騰の影響を製品の輸出という所にコメントするのはやはり商社マンらしいですねと思ったんですけど(^^)。要は輸出がコケるかコケないかというのがポイントになるんでしょうか。
さて、講演の中で(紹介しなかったんですが)「国際商品市場で日本の「買い負け」が出ている」という話がありまして、その点についての質問に対しての亀崎さんのお話なんですが、やはり商社出身だけに説明が長い、というか本人が生き生きとして説明してるんじゃなかろうかと勝手な想像をしちゃいます。
『資源は、必ずしもエネルギーだけではなく、穀物、あるいは水産物などもありますが、これらは有限であることから、需要の増加に伴って価格が上がっています。例えば、原料炭が前年比3倍ぐらいの高い価格で交渉が妥結したと報道されています。ずっと前を振り返ってみますと、原料炭というものは、鉄鋼製品をつくる際に利用されるわけですが、日本が一番大きな輸入国であったわけです。それが今現在では中国であり、さらにはインドもまた原料炭を必要としています。日本はタームで価格を決めて買い付けておりましたが、インド等はスポットで購入しています。そうしますと、昨年のようにオーストラリアで大豪雨がありますと、露天掘りが出来なくなり、どんどん価格が上昇するわけです。よって、今は、日本の要因というよりも、旺盛な他国の需要に影響される国際需給によって価格が決まっているのです。』
で、この後他の話(豚肉とかマグロとか)の話もあるのですが割愛致しまして・・・・・
『この背景には、新興国――BRICs だけの人口をみても、30 億人近くの人口がありますが――の生活水準が急激に上がり、世界の需給関係が引き締まってきていることがあります。日本が昭和30
年代後半から40 年代に急激に成長していった時にいろんな需要がもたらされましたが、同じように、大変な人口の層が生活水準を高めてきています。需給関係はそういった要因で決まってくるので、日本企業が買えない状況も起きているということです。』
で、それと国内物価への関係についてのお話ですが。
『現在のCPI の前年比+1.2%を分解してみると、エネルギー、すなわち、ガソリン、灯油、プロパンに加え、電気・ガス代などが+0.7%ポイントほど押し上げていますが、これは間違いなく日本の需給要因というよりも、先ほど申し上げたグローバルな需給関係の中での価格決定が影響しているのです。また、食料等が+0.4%ポイントほど寄与していますが、この中には、小麦や飼料など様々な商品の価格が海外の要素で上がっている面もあります。』
『このように、現在の状況は日本国内の需給関係のみではなくて、世界の需給関係の影響をグローバリゼーションの中で受けざるを得なくなっている、ということが言えると思います。』
『従いまして、CPI にしても、どのような要因で上昇しているのかをみる必要があります。原油価格は一本調子で上昇し続けてきましたが、この状態で止まっていけば、いずれは前年同月比で押上げ効果が剥落していくわけであり、そうすれば指数自体は0〜2%の中に落ち着いていくでしょう。消費者物価指数を構成する521
品目の動きについて、それが今だけではなく今後どのように動いていくのかを、よく中身をみていかなければならないと感じています。』
原油価格がこのまま上昇し続ける訳ではないのでCPIも落ち着いて来るでしょうという話にはなっていますが、食料なども上昇してますし、それが新興国の需要増加からもたらされているというお話になっております事からしますと、消費者物価指数に関しては案外上昇が止まらないリスクもあるんじゃないかというニュアンスなのではないかと。
○国際商品価格上昇と金融緩和
こんな質問がありました。
『(問) 先ほどの国際商品市況の上昇につきまして、付け加えてお伺いさせて頂きたいのですが、一部に金融的な要因を強調する説というのがありまして、昨日、日銀本店で行われましたコンファランスでも、著名なエコノミストのテイラー教授が、「国際的な金融緩和が商品市況の上昇をもたらしているのではないか」ということをおっしゃっていました。この点について、委員は、日銀に限らず世界的に見て、金融緩和がやや行き過ぎたことが商品市況の上昇をもたらしているという可能性があるのかどうか、その辺りをお伺いしたいと思います。』
微妙な答え方ですけれども・・・・
『(答) 先ほど、国際商品の価格上昇の背景について4つほど申し上げました。その中の一つに、投機資金の商品への流入がありますが、それだけの要因で価格が上昇したということではなく、4つの要因が影響していると思います。もっとも、例えば原油に限定してみますと、特に足もとの100
ドルを超えてからものすごく早い調子で135 ドル前後まで上昇した動きについては、4つの要因の中でも緩和的な金融環境というのが、どちらかといえばウェイト的には大きな影響を及ぼしているのではないかと思います。ただし、繰り返しますが、その要因の影響だけによるものではないと思っております。』
即ち、基調としての上昇は世界的な需要の増大によるものだが、足元の急速な上昇に関しては投機資金の影響というお話ですな。まあ前半でご紹介したように、基本的な見方としては新興国の需要増加によるものという認識ですわな。でもまあもっとそもそも論になると新興国の成長って商品価格の上昇であったり、国際的な投資活動の活発化によるものだったりするので、どちらが先なのという議論になるとややこしい気がするんですけど。
今回の会見は物価の話がまあメインでしたがその他少々。
○本邦金融機関に関して
荘内銀行と北都銀行の経営統合に絡んで最近の地域金融機関に関するコメントを求められて亀崎さんの発言。
『一般論として申し上げれば、わが国の金融機関は着実に経営体力を回復してきております。ただし、地域金融機関も含めて収益基盤をみていきますと、依然として脆弱であると言わざるを得ないと思います。そうしたもとで金融機関は、一層多様化する顧客ニーズに的確に応えていくことが求められているわけであります。(途中割愛)そうした努力の一環として、民間金融機関の自主的な判断として、他の金融機関との経営統合等が検討されるとすれば、それは地域の期待に応えていくうえでの一つの重要な選択肢ではないかと思います。』
大手銀行に関してはなんだかんだと言いましてもそれなりに経営基盤が確りしてきたように見えますが、地域金融機関まで目を広げるとそういう感じなんでしょうな。
○長期金利上昇について
これはまあ正直質問の方が良い論点なのですが(^^)。
『(問) 1点目は、本日の午前中に長期金利が1.8%目前まで上昇しておりまして、インフレ懸念とか債券市場の需給要因で上がっているわけですが、白川総裁は金融政策を考える場合には、短期金利だけでなく長期金利も議論の対象となると発言されていますが、今回のような景況感の改善を伴わない金利上昇は、日銀の意図せざる金融引締めではないかとの声も聞かれています。これについて委員の見解をお伺いしたいと思います。(以下割愛)』
『(答) まず長期金利については、確かにこのところ上昇気味で1.8%前後まで上昇しておりますが、こういった現在の金利水準について具体的にコメントすることは差し控えたいと思います。ただ、あくまでも一般論としてですが、あまりにも急激に上がったり下がったりすることは決して良いことではないと思っています。(以下割愛)』
ということで、話はスルーされてしまいましたが、質問にあります『景況感の改善を伴わない金利上昇は、日銀の意図せざる金融引締めではないか』というのは論点として重要な所でしょうな。とはいえ日銀が何かできるのかというとこれまた難しい話なんですけど、とりあえず輪番オペが短国オペ化している現状を何とかするのは吉かと。いやまあその他に東証のシステム改悪何とかさせるとか色々と考えられますが、相手のいないことであればとりあえず輪番ちゃん何とかならんですかね。
#ということで今日も引用で増量しまして誠に恐縮至極