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田中先生の所でご紹介いただいた武藤副総裁講演関連記事はこちら
2006/02/28
お題「今日は少々脊髄反応気味でお送りします」
悪態はつけども一応日銀を応援しようかなあというあたくしもさすがにこの一連の流れは如何なものかと。
○利上げまで地均ししてどうする
週明けの一部新聞報道では「3月(=来週)」の量的緩和解除になっても政府は止めません」ということで、3月解除は期末前だしやらねえだろうという意識で動いている人が多かっただけに、「サプライズ」となって中短期ゾーンの債券がなおも売られる有様。その後の動きよく見てなかったのですが、前場は10年あたりを支点にしてイールドカーブがツイストしながら平坦化するという銀行業態のポートが傷みまくるような展開で、後場はその巻き戻しで今度は若干のスティープ。
まあ巻き戻したのにはホッとしましたが、前場の時点では2年国債が0.52%になったり、ユーロ円金利先物06年12月限が99.39(=今年12月のTIBOR3ヶ月もの金利が0.61%!)となったりと「年内0.25%利上げ、その後来年の早いうちに更に0.25%の利上げ」を完全に織り込みに逝く豪快な相場展開になったことには目を丸くしちゃいました。
まあ市場的には4月の量的緩和解除に関しては、今までの地均し効果によって「どうぞどうぞ」という状態になっていた(あたくしはその地均し如何なものかと噛み付いてきましたが、日銀の目論見通りにここまで進行していて地均しも効果を発揮した事は認めます)。
しかしそれでは何がご不満なのか知りません(というのは嘘で、緩和解除しても低金利が継続するっていうマーケットコンセンサスが不満なんでしょう、何だかな〜)が、ここもとの前のめりな姿勢やらフォワードルッキング(失敗を恐れず云々のような発言)な姿勢やら、金利への言及(解除後に金利が上がる方向云々とか中立金利水準がどうのこうのとか、結局全て先週の木曜金曜の福井総裁国会答弁なんですが)やらが相まって「量的緩和解除後、当座預金残高を所要水準まで下げたあと早い時期に利上げをするんじゃないか」という話になってしまったのがここもとの相場かと。
まああたくし以前は「解除と利上げはセットでしょ」などと申し上げていましたが、それは量的緩和政策をビハインド・ザ・カーブ的に継続する事によって、世の中にインフレ期待が醸成されて中長期の金利が先行して上昇するという「出口は市場が連れて行ってくれる」路線としてでして、量的緩和解除の地均しをやっている時は「現在の経済物価情勢であれば量的緩和解除(枠組み修正)後の金融政策についても余裕を持って対応できる」とか言っておきながら、政府から量的緩和解除の邪魔立てが入らないと見たらいきなり「金利引き上げ」のような話を始めるような騙し討ち大作戦でセットにするというのは如何なものかと。
○などと急に手厳しい物言いになりましたが
・・・昨日までと比較して随分キツイ言い方になりましたなあと思われる方も多いのではないかと存じますが、これはまあアレですわ、市場の雰囲気をお伝えしようかと思って口調がキツクなっている訳でして(-_-メ)、さすがにこの「3月量的緩和解除への積極姿勢?」に関しては今まで日銀の地均し路線を応援していたマーケットの人たちからも「何で1ヶ月待てない(4月の解除ならマーケットは「ああ解除できてよかったですね」で目出度くシャンシャンだったのに)のか」とか「幾らなんでもしゃべり過ぎ」というような疑問や批判の声がかなり上っているようですよ。
ただでなくさえ従来の地均し路線でイールドカーブがベアフラットして「金利上昇への備え」をした筈のポートフォリオがヘロヘロになっている(原因は15年変動利付国債と中期ゾーンへの厚めの投資配分)銀行業態はさすがにここまで来ると頭が相当痛いでしょうし、ここ連日の相場の荒れっぷりはまさに「壊れちゃいました」って感じになってますわな。
まあちょっとこうまた市場に燃料投下しちゃいましたなあという感じですが、これが確信犯でやっているのなら(確信犯の審議委員もいそうな気がしますが)まだ救いがある(ないけど)かも知れませんが、恐らくそんなことまで考えてないのではないかってのが悲しいです。
ま、あたくしの場合は地均し路線突入の頃に悪態の限りを尽くしてましたので、この「利上げ地均し??」も「まあそんなことをやるかもね」ってなもんで何だか諦観モードなのですが(苦笑)、地均し路線応援組を失望させるこの動きはどうだったんでしょうかねえ。
○「3月解除」の意味すること
いやまあ3月解除って資金需要の高まる期末を前に当座預金残高を引いて行くってのも中々チャレンジャーな話ですが(だからさすがにやらないとは思うんですが)、もうひとつの意味は「3月に解除すると7−9月期に利上げが可能」ってところでしょう。
当座預金残高を所要近辺に落とすのはだいたい3ヶ月程度かかると予想されていますが、3月に解除すると6月から7月にかけては所要近辺での運営となりますわな。ところがご存知のように「平成17年基準への切替えは,平成18年8月の公表日とし,その際に平成17年1月以降の遡及結果を同時に公表します。(http://www.stat.go.jp/data/cpi/keikaku.htm)」というのがあるので、8月末に公表されるであろうCPIには下方圧力がかかりますわな。
となりますと、例えば4月の末に解除となると所要に落とした後にCPIの改定にぶつかりますんで、当預引くのに思ったより時間がかかるとなるとちょっと7〜9月の利上げはどうよって話になることが想定されますが、3月の頭に解除しておけば当預引くのに時間がかかっても問題ないぜってことで、7〜9月期の利上げもその気になれば可能(大義名分どうするんだと思うが)と言うことで、マーケットも俄かに大騒ぎってお話でございますわな。
従来は市場の予想で一番早めの人でも10月利上げだった訳ですから・・・・
○どうみても燃料投下です。本当に(略
昨日の日銀ワーキングペーパーシリーズがまた素晴らしい燃料投下。
http://www.boj.or.jp/ronbun/05/wp06j04_f.htm
お題は「バブル崩壊後の日本の金融政策 ――不確実性下の望ましい政策運営を巡って――」ということで、上記URLから論文のPDFファイルにリンクが貼ってあるのですが、図表を含めて56ページもある大作(本文は34ページ)でございますので、最初の方をパラパラ斜め読みしただけです。ちゃんと読まないといけませんな。
で、URL先には「要約」があるのですが、そこにはこんな一節が。
『日本経済の大型マクロモデルであるJEM(Japanese Economic Model)を用いた確率シミュレーションによると、政策効果(政策乗数)の不確実性を考慮した場合には、当時の日銀の政策運営はほぼ最適なものであったとの結果が得られた。』
はあそうですか。
『一方、インフレ過程の不確実性を重視した場合には、実際の政策よりも積極的な対応が望ましかったとの結果が得られた。このように、どのような不確実性を重視するかによって結論は大きく異なるが、結果的に、1990年代後半以降デフレ克服が重要な課題になった点を踏まえれば、90年代前半においてインフレ過程の不確実性をより重視し、積極的な金融緩和を行うべきであったとの議論は可能であろう。』
ふーん。
で、あたくしの場合はこちらの要約を見る前に本文スーパー斜め読み(式の部分は全部飛ばしてキーワードしか拾わないで読む、というより眺める)したのですが、そこの13ページから14ページには中々結構な一節がございましてあたくしの心を大変に触れて下さいました。
『1990年代前半の日銀の政策運営について、テイラールールをベンチマークに評価した先行研究をみると、使用するGDP
ギャップによって、実際の金利がテイラールールに比べて引締め的であったのか、あるいは中立的であったのか異なる結果が得られている。政策評価を行う分析者が、当時の日銀にとって利用可能でない――とりわけ「後知恵」による――情報を用いて、「日銀は本来こうすべきであった」と言っても、意味のあることではない。日銀が、当時利用可能な情報に基づいて、何ができて、何ができなかったのかを明確に区別しておくことは重要である。』
あえてこの部分に関して感想は申すまい。
ま、しかし何でまたこんなタイミングで出すんでしょうねえ。調査統計局様におかれましてはもちろん市場に喧嘩を売るつもりは全く無いのでしょうが、どうみても燃料投下です。本当にありがとうございました。
#という訳で、本日はやや脊髄反射モードでお送りしたことをお詫び致します。
2006/02/27
お題「織り込みすぎですがな」
「地均しをやりすぎて地割れ」って感じっすか。
○継続的な利上げを織り込んでいるような・・・・
先週末の債券相場ですが、海外の方が福井総裁の国会答弁に反応しちゃったようで円高+中期ゾーンのスワップ払い攻撃。で、金曜日もまた国会(金曜は衆議院財務金融委員会)でやる気満々発言(のように取られる)答弁をしちゃったようで、後場からはスワップ発だと思うんですが中期ゾーンがとんでもない売り売り状態になってしまい先物と中期債大幅下落。
何せイールドカーブ上一番売り込まれていたのが5年の40回債近辺という状況でして、残存4年ちょっと切るくらいという妙に半端な所がダメダメってことは実弾も出たんでしょうかねえってところでございます。折角水曜日あたりにスワップの受けが入って相場が落ち着いたと思った所だったので、まあやってる人としてはちょっとがっくりという感じではございます。どう見ても相場が壊れています。本当にありがとうございました。
昨日の3ヶ月ものFBは板気配がヤケクソで無くなってしまったようですけれども概ね0.04%〜0.045%で量的緩和解除が3月にあるリスクを十分に意識した水準。というか解除しても当座預金がいきなり減りまくる訳ではないので現先レート勘案でそんなに上る事も無いと思うんですが、3月解除して期末越えの金利が気になるとか色々とナーバスになっているのでしょう。大体発行量が多いのもアレですし。
2年国債は0.48%くらいまで売られたらしく、引けは0.47%(大和SMBCの引けですが)となりました。まあ足元金利から積み上げていく方式で考えてしまうあたくしから見ますと、これって向こう2年間で政策金利が1回どころか2回上昇して0.5%に上昇しているって状況を織り込みに行っている感じでございますわな。5年カレント物も1.1%まで叩かれたらしいのですが(引けは1.095%)、中短期ゾーンは継続的な金利引き上げを織り込みに行く勢いになってしまいました。ついこの前まで「量的緩和を解除してもゼロ金利が長く続く」とか言ってたのがどこへ行ったのやら。極端から極端に振れるのが債券市場の伝統芸能ではありますが、それにしてもちょっとこれは・・・・
○短期国債買入でちょっとビックリ
金曜日の短期国債買入。どうせヘロヘロの結果になるんだろうと思ったら、平均落札が前日比+0.014%となりまして、つい3週間前まで3ヶ月FB利回りが0.007%だとか言ってたのが嘘のような数字。あまりにも弱い結果なので腰を抜かしそうになったのですが、よくよく聞いて見ますとここもとの短期国債金利急上昇に対して、公社債売買参考統計値の方がおいついていなくて実勢よりも遥かに強い数字になっていた為の数字のマジックだったようです。ちなみに落札されたと思しき銘柄はFB373回〜375回のあたりかと。
まあ人騒がせな落札結果でしたが、買入予定額5000億円に対して応札2兆4432億円というのもここ数回では最大でして、ディーラーの在庫が結構大変なのねっていうのは判るオペ結果ではございました。
○ベシャリも程々にしていただかないと・・・・
金曜日の衆議院財務金融委員会でも福井総裁がまた変なヘッドラインを打たれるような答弁をしていました。もう頼むから勘弁してくれというのが正直な感想でございます。
ブルームバーグニュース(24日12:16配信)より:
『日本銀行の福井俊彦総裁は24日午前、衆院財務金融委員会で、「政府の経済政策全般との整合性を常に念頭に入れながら政策を行う」と述べる一方で、「失敗を恐れてばかりはいられないところもある。先行きの情勢を読みながら、リスクを取って政策行動をしていく。真剣勝負だ。」と語った。また量的緩和政策の解除について「条件は少しずつ成立しつつあると判断している」と述べ、解除の時期が極めて近いという認識を改めて示した。』
で、この記事のお題は「日銀総裁:政府と整合性図るが失敗恐れずリスク取る、真剣勝負」と書かれてしまうわけで、こう書かれると今まで発言から日銀総裁はもうフォワードルッキングで解除後の早期利上げまでやる気満々ですわなあと取られてしまうでしょう。特に事情を何となくしか判ってない海外の投資家さんなんかは益々。
で、まあ衆議院インターネット中継を聞いてみたんですが、どうもこのくだりは民主党の小沢鋭仁議員が「日銀は政策の責任をどう取るのか」みたいな言い方でやや挑発的な質問をしていたのに対して「日銀は別に無責任体制で政策をやっているんじゃない!」ってニュアンスで答えていたら上記のような答弁になったように(あたくしもその部分だけしか聞いてませんが)思えます。まあまた釣られちゃいましたなって感じ。ちなみに実際は福井総裁「失敗を恐れずと言っても(自粛)撃ちではない」ともお答えしてました(ようにあたくしには聞こえました)が、不適切用語が混じっています(あたくしのヒアリングが正しければ)ので報道しにくい(こういうのは議事録にどう載るの?)でございますわな。残念!
とは言え、今までの総裁の発言が基本的に量的緩和解除とその先の金利引き上げに前のめりに取られる発言が多いわけでして、まあ釣られたというよりは「やはり総裁は金利を早く引き上げたいんだなあ」と思わせてしまうところでございますわな。あまりそのような心情を発言するのは如何なものかと思いますが。本来は量的緩和解除後の金利政策に関しては基本的にその時の物価情勢とか経済状況次第なので決め打ち禁物な筈ですけど、こうやって方向性を出してしまうと市場としてはドンドン先の方を織り込みに行きます。で、上記したような連続利上げ織り込みモードになると。
まあそんな事は考えていないと思いたいのですが、もしかして量的緩和解除をした後に市場金利が跳ねると何言われるか判らんから先に口先介入をして金利を上げておこうとか、(この前似たようなニュアンスの発言を水野審議委員がしていましたが)市場を煽っておいてから「市場は利上げを催促しているので市場追認で利上げ」とか言い出す練習でもしているのではないかと(今回の量的解除ではさすがに利上げをいきなりする訳には行かないでしょうが)いう邪推までしたくなってしまいます。
いずれにせよ、昨日も申し上げましたが、情報発信のやり方にどうも疑問がありますなあという所ではございます。中央銀行総裁がむやみやたらと国会出席させられる状態も何だかなあと思いますし。
○そういや大塚議員のメルヘン質問ですが
この質疑応答は実況中継(参議院インターネット中継)でちょっとだけ聞いていたんですが、大塚センセイからは「良いデフレ」とか「構造改革の成果が良いデフレになっている」とか「この10年で家計の利子所得がいくら失われたのか日銀にお伺いしたい」とか非常に香ばしいメルヘンが炸裂していました。
で、ゼロ金利による家計の利子所得が云々に関しては白川理事が答弁させられていましたが、まあ大塚議員の時間は何と申しますか頓珍漢な問答状態になっていましたな。今週後半にでも議事録がでたら笑いのネタにするかもしれません。
2006/02/24
お題「この前の日銀レビューに関して/その他いくつかの雑感」
昨日の輪番ネタ、ぐっちーさんに振ったら債券市場に詳しく無い人にも判りやすい(つーかオモロイ^^)説明を頂きまして「うまいもんだなあ」って勉強になりました。
で、紹介頂いてお客様が増えた翌日に堂々寝坊して時間が無いという情け無いあたくし。すいませんすいません。
○CPIの上方バイアス
先日ご紹介した日銀レビューに関して「転載可」ということで解説を頂きましたので、さっくり引用させていただきます(引用部分は『』です。誰ですか「また手抜きか!」と言うのは^^)。
『日銀たるもの物価を商売の種にしていながらCPIとGDPデフレーターの違いの基本中の基本を書いていない。』
ということで、では華麗にスルーされていた部分は何かと言いますと、
『それは、何かといえばCPIはラスパイレス、GDPデフレーターはパーシェということ(ここまでは書いてある)。ここから出てくる結論は、ラスパイレスは基準時固定だから上方バイアスがある(誰だって高くなったものは買い控えて安くなったものを買うのにラスパイレスではその効果が出てこない)し、パーシェは下方バイアスがある(ただしGDPデフレータは連鎖方式だからバイアスありとはいえないかもしれない)。』
『真実は中間にありということですが、そんなことは間違っても言わない。かつてはCPIの上方バイアスに文句をつけていたのに。。。(血圧急上昇中)』
なるほどなるほど。このあたりのポイントってのはあまり詳しくない(というのは自分が単に勉強不足なだけですが、汗)あたくしなんぞ指摘されないとうっかり流す所でございます。
『ついでに付言すると、GDPデフレーターが輸入物価を反映しない(だからこそホームメイドインフレの指標だとされている)のは、物価状況を判断をする上で優れた点です。輸入物価が上昇して(要するに交易条件が悪化して日本が貧乏になるということ)デフレ脱却といっても誰も喜びません!』
日銀レビューで物価ネタが出るとそのときは「これからの金融政策の基本だからこのあたりのロジックを勉強しないといけない」って思うのですが、ついさっくり流してしまうあたくしです。でもさすがにこれからは勉強しないといけませんね(って泥縄とも言われるが)。
ちなみにご教授いただきました方も『コアCPIを重視すべきという結論自体は反対しませんが。』と仰っていますので一つよろしくです。
#ご教授メール大変ありがとうございました
○2週間で利回り5倍!
毎週水曜日に行われる新発FB(政府短期証券)の入札。大体13週間ものなんで世の中では3ヶ月FBと申しますが、この落札利回りが絶賛急上昇中。2月8日からの平均落札利回り推移はと申しますと、0.0069%→0.0242%→0.0353%(追記:財務省方式の算定です)と利回り4倍に急上昇。
と大騒ぎしますが、まあ一応この説明にも少々トリックがありまして(笑)、発行日が1週間遅くなれば償還日も1週間遅くなりますので、量的緩和政策解除後に掛かる期間が長くなるであろうということで利回りが上昇するのはある意味致し方なしという所・・・・ですが、この新発FBが昨日は0.04%まで売り込まれたと聞くと「???」という感じがしないでもない。
ここまで短い債券になりますと、「買う」→「毎日売現先でファンディングをつける」→「で、勝ち負けはどうよ」っていうコスト計算をしたり、同期間の他のオープン市場商品(CPとかCDとか)と比較してどうよってことを考えるんですが、さすがに量的緩和解除直後の現先利回りが0.05%とかになるというのはちとあがりすぎの香りがするんで、その辺りを勘案するといい加減買いが到来してもって気はします。
気はするんですが、何せ短期市場の巨大プレーヤー様であらされる所のバンクディーラー様が今のところ期末越えとかの資金放出というか買いに消極的のようですので、こういう「お家の事情」モードの時は向う人も中々でてきませんので暫くこんな感じかもしれませんね。CPの金利なんぞも相変わらず上昇してるし。
○ちょっと気になった報道
日銀の中曽金融市場局長が「量的緩和解除後の当座預金残高は6兆円程度に」と発言したという報道があったと仲間から聞いた(おい)んですがって要するに当該情報ベンダーを見ていないって事ですが(笑)。
この発言自体は「量的緩和解除後の当座預金残高は所要近辺で運営する」というごく当たり前の事を言ったに過ぎない(所要準備は全国銀行4兆の日本郵政2兆で6兆円と言ったところです)のですが、このヘッドラインだけ見せられると「えっ?」となってしまう人もいるかと思います。
と申しますのは、現在言われていることとして、「解除後に当座預金を引くとしてとりあえずどの辺がメドなんでしょう」って時に、「量的緩和の世界が長かったんで、暫くは日中資金繰りが慎重になる人も多いだろうか8兆円とか10兆円とかで運営するのかなあ」何て見方が多いんですな。
そういう雰囲気が漂っている時の「6兆円」というのは「バッファー無しにいきなり持っていくのかよ!」という印象を与えかねない言い方でして、発言するならもうちょっと気を使うと申しますか、どういう報道のされ方になるかを考えた物言いをしていただきたいものだと存じます。
今まで日本銀行から出ていた表現ベースで説明するのであれば、上記発言は、「当座預金残高は最終的には当然ながら所要額程度になるが、政策決定会合で決定する金利水準近辺で短期市場金利(無担保コール翌日物金利)が推移するように運営を行う」というような表現にしないと。
大体からして、量的緩和政策を解除したら日銀が誘導目標をおくのは「金利」であって「当座預金残高」はその「金利」を操作させるための道具として調整されるものでございますので、当座預金残高がいくらという数字に殊更意味を持たせる必要は無い(そりゃまあ日々の調節で所要対比いくら準備預金が進捗しているかというのは意味がありますが)のであって、「6兆円」という言葉が一人歩きしだすような可能性だってあるので、まあもうちょっとその辺の微妙な機微についてお勉強ありたいです。
つーか市場についてコメントする時はあまり具体的な事を言わない方が良いと思うんですよ。昨日軽く悪態をついた日銀総裁の輪番がらみ発言(「中期ゾーンの国債の需給が引く手あまたで、民間でさばけているのだろう」)に関しても、総裁は最近のイールドカーブのフラット化傾向とか中期ゾーンが売られているとか言う話は先刻承知の介だと思ってたんですが、瞬間的な需給のよさ(というか売られすぎの巻き戻しというか)を切り取って「引く手あまた」と表現すると「総裁に債券市場の現状がちゃんと伝わっているのだろうか??」って市場の現場にいる方としては懸念しちゃうんですよね。
色々とコメントしてくれるのはそれはそれで有り難いのではありますが、まあ一般的な話をしておいた方が無難ではないかと思います。「引く手あまた」なんて「サービス発言」をしないで「当日のイールドカーブ変化によって発生した偶発的な事だと理解している」とでも言っておけば良いのよ。
なお、このお話は報道されている内容が事実であるという前提ですから、実は記者が端折って書いたというのであればスイマセン。
#えーっと本当は参議院財政金融委員会での大塚議員のメルヘン質問に悪態をつこうかと思ったのですが、時間もないのでネタ切れのときにでも。
2006/02/23
お題「輪番札割れだったんでそれで一席」
えー、先日ご紹介した日銀レビューに関して「なるほど!」と勉強になるメールを頂戴しておりまして、そのお話もとは思っているのですけれども(メールのご返信をこっちでやってスイマセン)、本日はまたネタが投下されてしまったのでそちらを先に。それから中短期の国債やスワップ金利が巻き戻す中で3ヶ月FBの落札利回りがまた上昇して「2週間で利回り5倍!」とどこかの商品の宣伝文句のようなお話もあるんですが、それも含めて明日にでも。
○輪番札割れの現象と原因
昨日債券市場で「ありゃま」という話になったのは日銀による輪番オペ(国債買入)の「札割れ」事件。オペレーションは10時10分に実施の連絡があって、応札時限が11時20分(なので前場引け後)落札結果発表は大体11時30分(稀に10〜20ぷん遅れることもあるが、そういう時は碌でもない事が起きている事が多い^^)。で、それよりも3ヶ月FBの入札(後述)の方が気になっていたあたくしは堂々メシを食いに逝ってましたので帰ってきて「ハァ?」状態でしたが。
購入予定額3000億円(額面ベースです。為念)に対して応札額が2302億円で前日比▲0.044%(4毛4糸強)までの札全部が落札となりまして、後場の寄り付きは「ありゃま入っちゃったよ」組のショート調整+「それなら相場は大暴騰だぜイヤッホウ」組の買い攻め攻撃で先物はいきなり18銭値段が飛んでスタートと相成りました。その後は追随の買いが無く結局ヘロヘロになったのがトホホでしたが。
で、今申し上げましたように、この輪番オペってのは応札が「前日比の利回り較差」で行われまして、その中で安い札(=利回り較差がプラス方向で大きいもの)から順に落札予定額に達するまで落札させるという方式で行われます。するとどのような事になるかと申しますと、前日の引けから比較して当日の現物金利のイールドカーブ上一番売られている(あるいは買われていない)ゾーンの債券が集中的に入ることになります。(対象銘柄は20年国債までですので、その先のカーブと変動利付国債などは無関係です)
従って、大体今までの場合は、相場が上昇しても利回りが下がる訳も無くおまけに既発債が山のようにある2年以下の債券が叩き込まれ(日銀の保有残高を見ると2年債だらけなのに気が付くと思います)、相場が下落している時はその日売りが出たゾーン(が基本的に一番安くなるので)の債券が叩き込まれるの図となりますわな。
で、昨日の前場引けの場合はその前の日の後場から突如中期ゾーンのスワップ金利が低下(大手銀行のレシーブと言われてますが)した流れを引き継いで2年が一番強いという珍妙な気配。先物8銭高(なので大体1毛強)で20年が引けオファーとかやっている中で10年が5糸強の5年が1毛5糸強で2年が2毛強(後で人から聞いて回った数字なんで大まかな数字です。為念)となっていましたんで、常識的に考えますと20年ゾーンの引けが最初に入る札になりますわな。
で、普通ならここで20年だけで3000億の札はないだろうってことで1年半とかのゾーンにもうちょっと上の札が入るところなのですが、何せ2年が一番強いと言う状況で(しかも今まで散々下げられてやる気無し無しでしょうし)このゾーンの札がろくすっぽ入らないという事になったのが今回の札割れの主因なんでしょう。
昨日の前場のようなイールドカーブ変化はここ数年中々お目にかかることは無かった(中期主導で相場が上昇している時は普通5年あたりが一番強いという展開であって、2年が爆発というのは中々見なかった)ので、札割れってのをうっかりしたという所でしょうか。まあ国債入札が札割れしたら洒落になりませんが、輪番オペにそこまで気合を入れるマニアな業者もあまりいませんので偶発的に札割れになっちゃったんでしょう。
○ところで最近輪番の応札が減ってますなあ
で、ちと過去の推移を見てたんですが、今回の札割れの前も輪番の応札ってあまり盛り上がらない(というのは暫く前との比較ですけど)状態が続いてまして、今月に入ってからの過去3回の応札が6793、7077、5009(億円)。まあこれは傍目の勝手な想像なんですが、最近は日中にイールドカーブがアホのように良く動く状態が連日のように発生しておりますので、前場の時点で売りでも食らってポジションがヒーヒーというのなら別ですが、そうでも無いのに応札したら後場になってイールドカーブが変わって外したゾーンが復活(先ほど書いたようにその日ダメなゾーンしか基本的に入らない)したら馬鹿馬鹿しいって発想になって輪番オペの応札が減っているのかなあと思料。
加えて昨日の場合は超長期ゾーンが入りますって板気配ですが、直近発行2銘柄は買入対象外だし、火曜に入札のあった新発債は払込前なのでそもそも発行が成立していないということで、必然的に入れようと思ったら既発の20年ゾーンを応札する事になりますが、ここもとの20年買い買い攻撃で皆様在庫スッカラカン(というかショートでしょ)で入れる人もいなかったので、益々札が集まらなかったということでしょう。
今までですと「2年債新発を購入」→「数ヶ月ホールド」→「利回り下がった所で輪番オペで売却」→「保有期間の利息収入とキャピタルゲインでウマー」という大手銀行様黄金の戦略があったんですが、量的緩和解除がどうのこうのって話になってこの構造が崩壊して、入れる2年債もあんまり無い(塩漬けモードか投げたのか知らんが)って図なんでしょうな。
○で、伝言ゲームな訳だが
本件を昨日13時52分に伝えたNIKKEI NETの記事(1週間でリンク切れです)。
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20060222AT1F2200F22022006.html
『2年や5年物など、これまで日銀の量的緩和の解除観測から売られていた中期国債の需要が一時的に高まっていることが背景にあるようだ。』
まあ何となく妙だが、事細かに説明してもしょうがないといえばそれまでなんで。その後にある「国債買入は資金供給の有力な手段」ってのは益々違和感というか印象操作っぽいんだがそのツッコミはやめておこう。
で、これが福井総裁のコメントになるとこうなります。(22日18:40のブルームバーグニュース記事より)
『日本銀行の福井俊彦総裁は22日夕、月例経済報告に伴う関係閣僚会議に出席後、記者団に対し、同日の日銀の中長期国債買い入れオペが9年5ヶ月振りに札割れとなったことについて、「中期ゾーンの国債の需給が引く手あまたで、民間でさばけているのだろう」と指摘。』
いやあのここもとの債券市場は中短期国債が売られて超長期国債が買われるという状況が続いてイールドカーブが平坦化してヒーヒー言ってるんけど・・・>総裁
実は総裁コメントのニュースを先に見て(日中にNIKKEI NETをわざわざ見る債券市場関係者はあまりいない。情報ベンダーで用が足りるから)「このオッサン何を言ってるんだ???」と思っていたのですが、このネタ書こうと思ってNIKKEI NETを見て初めて最初の記事に気が付いた有様。
も、もしかしてこれはあの「伝言ゲーム」でしょうか・・・・・・・(-_-メ)
#なお、もうちょっと平易な説明を求むという方はぐっちーさんがこのネタで一本エントリーを書く予定ですので(といきなり玉を投げるあたくし。おっほっほ^^)そちらをご参照ありたし。ぐっちーさんのブログ→http://blog.goo.ne.jp/kitanotakeshi55
2006/02/22
お題「反省の無い人/ちょっと気になること」
まあ本日は(も)雑談シリーズ。
○現実に目覚めたのは結構ですが・・・・・
久しぶりに木村剛センセイのブログを見に行ったらこんなエントリーが。
http://kimuratakeshi.cocolog-nifty.com/blog/2006/02/__a823.html (直リンは自粛)
お話は先般の「グレーゾーン金利判決」問題に関してで、日本振興銀行さまがお得意としている事になっている「ミドルリスクマーケット」である零細企業への融資チャネルが細くなるのではないかというお話をしてるんですが、その最初の方に大変に香ばしい記述が。
『ミドルリスクマーケットと言えば、聞こえは良いが、詐欺リスクと日々戦う熾烈な戦場でもある。無担保貸出は借入詐欺と紙一重。性善説では語りきれない鉄火場がそこにある。』
やっと現実に目覚めたのでしょうかね。まあ結構な事で。
『信用リスクモデルなど何の役にも立たない。モデルの癖を見破られて、詐欺師軍団から集中砲火を浴びる宿命だ。実際、一部のメガバンクは、モデル審査を売り物とした中小企業貸出から密かに撤退した。火傷に気が付き、体裁に構っていられなくなったのだ。』
密かに撤退したという記述の根拠をお伺いしたい所ではありますが、それよりも大変に現実に立脚したお話として「信用リスクモデルなど何の役にも立たない」と大変に結構なお話。大昔リスク管理モデルに関して似たようなお話をしてたのを思い出しますな。
・・・・と言いたい所なのですが、そもそも「信用リスク審査にクレジットスコアリングモデルを導入しろ」という今の金融行政のレールを敷く役割を果たした「金融検査マニュアル」の作成に深く関与したのはどこの誰でしたっけ?
http://www.fsa.go.jp/p_fsa/news/newsj2/f-19990408-1/002.PDF
(あいうえお順に並んでますが、堂々メンバーの筆頭にいるのは誰でしょう)
で、その施策に則ってリレーショナルバンキングのアクションプログラムとやらが作られまして、その進捗状況のご発表なんかがあったりしまして、2004年12月27日のドラめもんでネタにしたのはこのあたりのお話だったりします。
http://www.fsa.go.jp/news/newsj/16/ginkou/f-20041227-2.html
下のほうを読むと、『スコアリングモデル(信用格付モデル)を活用した融資については、全業態を通じて促進が図られてきている。』『(参考)
・スコアリングモデルを活用した商品による融資222,362件、20,118億円 (132,067件、11,403億円)』などという文字が輝かしく記載されておりますな。あっはっは。
で、氏のブログはこの後グレーゾーン金利のお話とかになるのですが、いやまあ何とも面の皮が厚いと申しますか。「モデル審査を売り物とした中小企業貸出から密かに撤退」って如何にもそのメガバンクが間抜けであるかのような記述をしてますが、やれって方向は金融庁が出したものですし、まあこういうリスクモデルを売り込んだりコンサルしたりで関連業界はさぞかし潤ったことでしょうなあなどと思うと、もう血圧が超越急上昇してしまいますわな。
今頃になって現実に目覚めるのはまあ知らないままよりはマシとしましても、現実を知らずに作った金融行政の指針を正そうというご提案はしないんでしょうか?あ、そうするとご自身の今までの言動を全面否定するから「今の批判」だけしておくのですかね。うひゃひゃひゃひゃ。。
2004年12月29日のドラめもんでこんなことを書いていたのを思い出しましたんで、昔の駄文を使いまわすと言う大変に手抜きモードなあたくし。
(以下2004年12月29日に書いた駄文の使いまわし)
・新しい中小企業金融への取組みへの強化
って部分(4番目の項目)はアクションプログラムが出た時点で既にあたくし「何ですかこれは」と悪態をついた覚えがあるのですが、こちらに関してはそもそもが変なだけに、金融庁様におかれましては何で表を作りながら気が付かんのかよって言いたくなる表現が(-_-メ)。
上記項目の事例紹介の最初の項目は『(1)ローンレビューの徹底、財務制限条項やスコアリングモデルの活用等、第三者保証利用のあり方』ってなっているのですが、この時点ですでにダウトな訳ですわな。
ローンレビューの徹底ってのはモニタリングとか事前審査の精緻化ってお話の筈。然るに、スコアリングモデルの活用ってのは貸出審査の簡素化って話な訳ですし、財務制限条項の活用ってのも基本的にはモニタリングを精緻化していれば必要ない(財務諸表に問題が出てくる前に気が付くことだから)筈のことでございますので、こういう項目を作っている時点で「矛盾する概念を包含するとは新しい取組みだわこりゃ」と金融庁様の慧眼に大変感服して顎が外れる思いであります。
まぁ当然ながら並んでいる事例も大変に心温まるものが多うございまして、例えば・・・・
『担保制限条項及び財務制限条項を活用した、原則、担保・第三者保証人不要の新規取引先向け低利融資商品を取扱開始』(関東財務局管轄の銀行)
→そもそもリレバンって「顧客との長期的密接な関係を基にする」って概念ではなかったでしたっけ??
『スコアリングモデルに、業種別(建設業)モデル及び個人事業主用モデルを追加し、精度を向上』(中国財務局管轄の銀行)
→個人事業主の財務諸表なんてあてにならねぇだろうという突っ込みもさることながら、「精度を向上」って開始後半年そこそこで精度が上ったかどうかって結果が出るという素晴らしいレビュー能力に大変に頭の下がる思いでありますなぁ。ワカルワケネェダロ
まぁ何ですな。この「取組み」とやらは結局役に立つのかとっても疑わしい「スコアリングモデル」だの何だのという物を地域金融機関に売り込む「最先端の金融技術」をお取扱になられる方々を大変に潤すだけのお話ではないでしょうかって気が物凄い勢いでする訳でございます。
まぁ地域金融機関(だけじゃなくて大手銀行もそうなんですが)の皆様に置かれましては、この手の「尤もらしい金融工学」に頼ることなく、本来のノウハウを磨いていただきたいものであります。
(以上2004年12月27日に書いた駄文より)
で、木村剛センセイにおかれましては今頃になって鬼の首を取ったかのように、『信用リスクモデルなど何の役にも立たない。』『実際、一部のメガバンクは、モデル審査を売り物とした中小企業貸出から密かに撤退した。』などと言い出す次第で、それじゃあてめえも参画した金融行政に関してはどう落とし前をつけるのかと小一時間問い詰めたいとはまさにこのことでございます。行政に関わったという認識と、本人の良心があったら、他人事のように「信用リスクモデルが役に立たない」とか言ってる場合ではなく、「以前作った指針は現実に則していませんでした。クレジットスコアリングモデルを金融機関に使用させるのを止めさせないと大変なことになります」って提言するもんではないでしょうかねえ(怒)。
まあこのマニュアル作る時には(さっき紹介したメンバー表にもありますように)銀行とか信用金庫とかの人たちも参加してるんですが、大体からしてこの手の会合にあたくしのようにちゃぶ台ひっくり返すような身も蓋も無い話をするような手合いが参加する訳はなく(笑)、しかも当時の雰囲気から言って金融庁様に物申すような訳には行かなかったでしょう(あくまでも想像ですが)し、一緒にやってた銀行関係者にも困ったものだとは思いますが、そう無茶苦茶叩く気にもなれませんな。いやはや。
しかしこの無反省振りは本人の仕様なんでしょうけれども、まるで昭和軍人で言うと辻政信みたいですなあと呆れ果てる次第でございます。
○西村審議委員に関してちょっと気になることなんですが
昨日書き損なったんですが。
先日ご紹介した西村審議委員の記者会見の中で「量的緩和は護送船団」というような言葉があったのを覚えていますでしょうか?
以前からこのお方は量的緩和政策に関して「モルヒネ」という表現をしていましたが、モルヒネの効能とか護送船団を組むという戦術上の利点とかいう話はさておいて、まあ一般的に人口に膾炙している「モルヒネ」「護送船団」っていうと上記のような文脈で使えばまあネガティブな印象を与える言葉ですわな。
でですな、政策を実際に決定する立場にある人間が金融政策に関連して話をする時に上記のような「言葉そのものに否定的なイメージのあるもの」を使うというのは如何なものかという気がするんですよ(「良い」「悪い」って断言した方がいいんじゃねえの?)。例えとして適切かどうかわからんですが、それこそ上記の木村剛さんを思い出してしまう訳で。
金融政策に関して印象操作のような(インフレ期待の醸成とかいうのと全然別の話ですんで念の為)言葉を使うとどうも「アジテーション」という言葉を墨痕鮮やかに大書したくなりますな。
いやまあ西村審議委員はそういう方では無いと思うんですが、どうも著書読んだ時も感じた違和感が先日の記者会見でも感じられる次第で。恐らく本人は「一般の人にも判りやすい例えを使おう」と思っているだけなんだと見るんですが、そこはかとなく不安もあるあたくしなのでございました。
2006/02/21
お題「量的緩和解除後を見据えたペーパー(か?)」
新発20年は撹乱要因にはならないものと思料されます。
○金融政策の説明にGDPデフレーターは使いませんですか
見事なタイミングで発表された毎度お馴染み「日銀レビュー」。いつもはだいたい4〜6ページのものが多い(ちゃんと統計取ってる訳ではございません、為念)のですが、昨日でました「金融政策の説明に使われている物価指数」は10ページの大作でございまして、気合の入り方が判るというものでございます(^^)。
http://www.boj.or.jp/ronbun/05/rev06j02_f.htm
本文はこちら(PDFファイルです)
http://www.boj.or.jp/ronbun/05/data/rev06j02.pdf
で、まああたしゃーひたすら「ほうほう」と字面を追うくらいしか能は無いのですが、このペーパーは3ページ目からいきなり
『各種の物価指数には、カバーする取引範囲が異なるだけでなく、作成方法が異なることに起因する特性もある。消費者物価指数、企業物価指数、および企業向けサービス価格指数などの物価指数は作成方法がある程度共通しているので、本節では、作成方法の異なる消費者物価指数とGDPデフレータとを対比させながら説明する。』
とGDPデフレータに砲撃を加えております(^^)。比較するというよりは物価指数のほうが良いのではないかというお話ですな。
で、その後は「じゃあどの物価指数を使うのか」とか「主要国の中央銀行はどういう物価指数を見ているのか」ってお話が続きまして、読みやすく出来ております。6ページの図表8とか、7ページの図表11なんかが判りやすいのではないかと(図は引用しませんよ)。
『第1 に、インフレーション・ターゲティングや物価安定の数値定義の採用の有無にかかわらず、殆ど全ての国は消費者物価指数を使っている。米国はPCE(個人消費支出)デフレータを用いているが、いずれにせよ、金融政策の説明にあたっては、家計の消費支出を対象とする物価指数を使っている点では共通している。この間、GDP
デフレータは利用されていない。』
「この間」ってのが金融経済月報の概要部分で毎月見る言葉なので(=「この間、公共投資は減少傾向にある」)思わずニヤリとしてしまいました(^^)って話は兎も角、きっちりとGDPデフレータにここでも砲撃でございますか。
『第2 に、インフレーション・ターゲティング採用国、物価安定の数値定義採用国ともにコア物価指数ではなく総合物価指数をターゲットないし定義として使っている。一方、米国は食料品・エネルギーを除くPCE
デフレータを重視しており、日本と共にコア物価指数を使っている。』
『以上のように、主要国中央銀行が金融政策の運営スタンスを説明する際には、家計の消費支出を対象とする物価指数が用いられるとともに、コア物価指数が用いられることは少ないようである。』
ということで、金融政策の指標として見ていくのは(まあ最終的には総合判断なんでしょうが)消費者物価指数総合(時と場合によっては一部を切り取ったコア部分も)を使うんでしょうなっていうお話をしているようでございます。
日銀レビューシリーズは基本的に毎回読むようにしておりますが(ところでこれって活字媒体でまとめて入手(購入)できるんでしたっけ?Webよりも本になってた方が後から読むときに便利なんですが・・・いやまあ紙に出せと言われそうですけどね)、説明に数式が出てくる時点で頭が痛くなるという困ったちゃんのあたくしにとっては今回のような概念的な説明は判り易くって助かりますなあ(って自分の頭の悪さを主張してどうする)。
どこぞの新聞では、このペーパーを「解除に向けた日銀の理論武装の一環」と書いていましたが、あたくし思うにこれは解除後の「道しるべ」に関する考察であると考えるんですけど。というか解除に関してはもう日銀お好きにどうぞ状態になってると思うんですが。
○で、一々悪態も忘れずに
いやまあこちらのレビューもそうなんですが、時々「これは随分とタイムリーなレポートですな」ってのが出てくるのが、これはまあ一番最初に紹介したURLにあるように、『日銀レビュー・シリーズは、最近の金融経済の話題を、金融経済に関心を有する幅広い読者層を対象として、平易かつ簡潔に解説するものです。』ってんだからまあそういうこともありますわな。
でも『ただし、レポートで示された意見や解釈に当たる部分は、執筆者に属し、必ずしも日本銀行の見解を示すものではありません。』ちゅうのもまあ確かに言わんとすることは判らんとは申しませんが、それって何か随分ご都合のよろしいお話だことっていう気は思いっきりするのでございます。まあこれで前向きの議論になればそれはそれでよい話なのかもしれませんが、何か「これは正式に決定した主張ではない」で済ませられるような形式でこういう政策の根本に関わる問題をペーパーにしていくというのも(しかも日銀のWebで公表して「日銀レビュー」って名前をつけてるし・・・)何だかなあと思うのでありました。
いやまあ別に日銀が好き勝手やってケシカランって言うつもりでも何でも無いのですし、まあある意味で言えば先に手の内を見せているとも言えそうなんですけどね。
#他に書く話あったような気がするんですが時間がなくなってしまった。
2006/02/20
お題「西村審議委員記者会見」
自爆は民主党のお家芸ですが、今回の一件はアホアホ過ぎて感動を覚えてしまいます。どこの世界に告発側が調査お願いする奴がいるんだか。適当なネタ引っ張ってきて調査お願いしてたら何でも疑惑を作れますが(笑)。「国民が感じている不信感と疑問」は民主党に向っていると思うんですが前沢くん。あれ、前田くんでしたっけ?
まあ無意味に質問主意書を乱発して、質問主意書の数が多いとか自慢する議員がいる(ちなみに、最近主意書砲撃の激しい宗男先生は件数自慢はしておりません、笑)訳ですから、いつかこういう事が起きるのは必然だったのかもしれませんな。
ガセネタ(と確定した訳ではないが)に引っ掛かるの図と言うと楢崎弥之助さんを思い出しますが、ガセだったら折り紙センセイ当然ながら議員辞職政界引退ですな。就職活動頑張ってね〜。まあ裏も碌に取らないで飛びつくような情報能力しか無い政党には政権を委ねる訳にはまいりませんなあ。じゃあこのガセネタは誰がどうやって掴ませたのかと考えるとそれはそれで考察としては興味深いのでございますが以下自粛。一方は改革とやらが自己目的と化して詭弁でも何でもいいから法案成立させる人たちで、もう一方は情報能力皆無の馬鹿と来りゃあ困ったもんです(後者の方が1億倍問題が大きいが)。
という悪態は兎も角、月曜は雑談を少々なので西村審議委員記者会見を少々。今回はまあデビュー戦みたいなもんでしたが、先に結論を申し上げておくと、基本的には無難な立ち上がりなんですが、何かところどころにツッコミどころがあって、ちと先行きに関してはあたくし的には危ういものを感じますなあって所です。
岩田副総裁の講演もありましたが、講演に関しては金融政策の話ではなくて、プルーデンスと申しますか、金融システムのお話がお題になっておりましたので、まあネタが無いときにでも触れてみましょう。
西村審議委員会見要旨はこちら→http://www.boj.or.jp/press/05/kk0602c.htm
○量的緩和は護送船団??
中期債の金利が上昇している事に関して質問されている答えの中で聞かれもしないのにそんな話をおっぱじめた西村審議委員。
『量的緩和というのは、一種の護送船団である。流動性マネジメントに長けている所も長けていない所も、一様にゼロ%、0.001%の金利である。ところが、量的緩和が解除になると、平均ではゼロ金利の状態であるが、流動性のマネジメントに関して言えば、上手いところと下手な所では差が出てくる。もはや世の中ではどこも護送船団をやっておらず、今はやはり、その意味できちんとした管理をされている所には、それなりのrewardがあるという経済になってきているので、金融もやはりそういった普通の経済に持っていくべきだと思う。』
えーっと、全体では問題起きませんでしたが、量的緩和やってる時でも個別には流動性で問題が発生したような事はございましたが。流動性マネジメントが楽になったのは量的緩和よりも、銀行へのセーフティネットの構築とか、コールなどの銀行間取引の全面保護(今でも保護されてますけど)とか、銀行シバキアゲ行政の転換とか、行政サイドの施策効果じゃないでしょうかねえ。大体オペの担保なかったら高い金利取らないといけませんが。
というか、上手い下手によってコストに差が出てくるって話は流動性マネジメントじゃなくてディーリングの上手い下手の話を言うのであって、まあ用語の使い方が妙なのはマーケットの人じゃないから仕方ないけど、護送船団というディーリングと関係ない話をしながらそういう話になっているのは、何か問題がゴッチャに論じられているという強烈な違和感を覚えます。
「危ういものを感じる」と先ほど申し上げたのはここの部分に集約されるなあって思う次第。まあ他の部分を読んでいても、何と申しますか違和感を覚えるお話がちらほらなんですが。アカデミズム枠(?)から採用するんならもうちょっと(以下自主規制^^)。
○景気に関しては無茶苦茶強気
今後、物価が下がる可能性について相当に低いと理解してよいのかって質問に対してのお答え。
『今の日本は、死角がないという状況である。私はこういう表現が好きなのだが、大艦巨砲主義ではなく、ヒットをたくさん積み重ねながら、日本経済がしぶとく成長している、というのが現在の状況であると思っている。そのように考えると、今の状況では全体のトレンドの動きというものが大きく転換するようなことは考え難い。ただし、何度も言っているように、これはその時点その時点で判断すべきことである。それについて予め予断をもって何かをするということができる状況にはないし、今は非常に不透明性の高い時代なので、慎重に考えなければならないと思っている。』
はいはい強気強気。
○資産インフレに関しては先日の総裁記者会見とだいたい同じ
不動産価格に関連して。
『詳しくは挨拶要旨に書いておいたが、今の状況をみると、資産価格の間でも、二極化が進んでいる。東京のある一部では、住宅地価格が20%、30%上昇している所もある。ところが、例えば同じ区の中でも違う場所では全然動いていないところもある。そういった形で、いわば二極化というか、多極化が進んでいる状況にある。こういう状況では、一般的なインフレ状態が今後予想させる、とはちょっと考えにくい。』
で、その後も話が続いてますが、基本的に先日の福井総裁記者会見と平仄があっているという感じです。
○PCEのフィッシャー指数に関しては「重要だが政策判断には使えない」
講演で(金曜にご紹介しましたが)言ってた政策判断に何を使うのかというお話。
『まず、最初の2点についてだが、GDPデフレータの中身については、最終的な結果を判断するうえでは非常に重要なものだと思っている。ただし、その結果が決まるのは、おそらく5〜6年後になる。1次QE、2次QE、1年経って確報、2年経って確々報、5年経って基準改定という形になるので、この基準変更に至るまでのうちにかなり大きな変更がある。成長率が5〜6%の時代では大した大きさではないが、成長率が0.5〜1%の時代では、結構大きな変更となってしまう。従って、出来上がりで我々が判断すべきは――個人的な考えで他の委員と違うかもしれないが――私は、PCE(Personal
Consumption Expenditures)のフィッシャー指数で考えるのが、出来上がり、つまり評価という点では望ましいと思う。しかし、これが分かるのは、下手すると3〜5年先になるということであれば、当然、政策に使うことはできない。従って、CPIを依然として使うべきだと思っている。』
どっかの本職ストラテジスト先生が「西村審議委員は講演でフィッシャー指数の重要性に関して指摘」とかいうレポートを出していたような気がしますが、政策判断には「当然使えない」とコメントしてますのでお間違えの無いようによろしくお願いします。
○インタゲ等に関しては何を言いたいのか良く判らん。
まあここを読んでください。
『それから、望ましいインフレ率という話であるが、これは理論の世界では当然のことながら望ましいインフレ率を考えることは可能である。しかし、我々の経済は、簡単に言えば、90年代から2000年代の最初の時期というのは非常に危険な時期であった。特に、90年代後半の時期は危機的であった。この危機的な状況から漸く段々と普通の状態へ戻りかけてきたという状況である。その中で、経済政策を考えなければいけない。その時に、望ましいインフレ率の基本は、将来に対して日本銀行がどういうことを考えているかということを明確にするための方策であるので、望ましいインフレ率も、危機的な状況から普通の状態に戻るという状況のコンテクストの中で考えなければいけない。そう考えると単純ではない。言い方を変えると、今までベッドで寝ていた人に対して、医者が量的緩和というモルヒネを打っていた訳だ。そして、その人がベッドから大体起き上がっていいだろうという状況になった時、その人に、あと1年半後には健康体になるので、健康体の人は一日一万歩を歩くのが望ましいから一日一万歩を歩きましょう、がんばりましょう、と言って本当にそれでいいのか。その人、その人の体の状態、気分の状態に合わせて、やはり過度にプッシュするのでもなく、できるだけ良い状態に引き上げていく、という非常に細心の対処が必要になる。そういった形で「道しるべ」を考えなければいけないと思っている。』
正直、何を言ってるのかさっぱり判らん。結論が無いような気がするんですが・・・・
○あなた英語大杉
福井総裁の英語乱発にも参ってますが、西村審議委員の英語乱発は大変に素晴らしいです。何が素晴らしいって、記者会見の要旨を作る日銀の中の人がもはや匙を投げたのか何だか知りませんが、会見要旨にまともに英単語が出てきてしまうという所まである次第。別に日本語でも済みそうな所に英語がでて来るのは如何なものか。ニュアンスが英語じゃないと伝わらないのなら兎も角。
いくつか挙げてみましょう。
『すなわち、これから出てくる様々なデータや見通し、アネクドータルなエビデンスを総合的に調べながら、一つ一つチェックして、適切な時期に判断をする形になると思う。』
『現在、日本経済は、ある意味でovercautiousともいえるぐらい皆さん病み上がりの状況にあるということから考えれば、』
(本当に心配しすぎなのかねってツッコミは致しません)
『色々なところでみられる様々な動き、特に労働市場の動き、それは要するにresource
utilizationの動きというのは、今後の政策判断に非常に重要な役割を果たしていくと思うので、こういうことに関しては、十分注意していかなければならないと思っている。』
何か英語をわざわざ使わないといけねえ文脈とも思えないんですが。
#てな訳でまあ全体を読んでいて何かこう引っ掛かる会見要旨でございました。
2006/02/17
お題「西村審議委員講演」
まずは昨日お話していた短期市場話。
○昨日はとりあえず小動きでしたか
随所にオーバーシュートが見られた債券市場でしたが、さすがに昨日は反発。でまあ短期はそれを横目に見ながらこちらは小動きで水曜のような無茶苦茶相場にはならずに済みました。ユーロ円金先06年12月限は前日比2ティック程度上昇して(でも相変わらず99.50を割ってますが)昨日ボロボロ入札だった新発FB3ヶ月ものの気配は0.025%−0.03%という感じで気配があまり詰まらず皆さん様子見(というか、「こんな利回り投げる位なら抱えてやるわい」という所でしょうな。その気持ちよく判る)モード。20日発行のCP金利は先週から概ね0.01%程度の上昇ですが、3ヶ月のFB金利がこの1週間で0.02%近く上昇した事を勘案するとまあそんなもんでしょ。思ったほど上らなかったという印象。
で、本日は順当なら10時10分の定例オペ時間に短期国債買入がオファーされて、業者の在庫が8000億円(追記:5000億円の間違いです)ほど軽くなる予定になっております。入れ損なって投げ投げモードになるのか、普通に需給が改善するのかは神の味噌汁。
○西村審議委員講演
その前までに別の審議委員様から色々と出ていたので、悲しいほど材料にならなかった模様ですが。
http://www.boj.or.jp/press/05/ko0602b.htm
何か紙に出すと11ページになるんですが、先生お得意の「見えざる構造転換」とか「社会投資ファンド」のお話が3割くらい混入しておりますな。その辺は兎も角と致しまして、何かこの人も言ってますなあというのが「不動産市場のリスク管理」ってお話で、やたら長々と書いてあるのですけどこの辺がどうも気に掛かる。
・不動産などの投融資に関して
『この点(引用者注記:投資家のリスク管理を意味する)は、特に金融機関についても重要です。収益性向上のため、不動産関連融資やオルタナティブ投資に積極的に取り組む金融機関が増加しています。このことは、ポートフォリオの幅を拡げ、社会全体でみれば新しい投資機会が作り出される可能性を高め、そして金融機関の収益も高めるという点で望ましい動きですが、それはきちんとしたリスク管理がなされていることを前提とします。リスクがあるのにリスクを認識できていなかった、ということがあってはなりません。』
『金融機関におけるリスク管理の重要性は、過去も現在も将来も変わるものではなく、日本銀行としても、考査を通じてそうしたリスク管理の高度化を促しています。』
で、まあリスク管理とやらの枠組みに歪みがあると商品価格と申しますか市場に妙な歪みが発生するというのは変動15年利付国債で皆様ご案内の通りですが、ちょうどタイミングよろしく本石町日記さんが興味深いエントリーをアップしてましたのでご一読ありたし。
いやね、リスク管理の高度化って言い出すと、とにかく最新の金融工学を駆使して大変に立派な管理モジュールが出来上がってくるのですが、もう単純明快なプレーン商品(いやまあエキゾチックオプションとかもいじったことは無い訳では無いですが)の売った買ったで叩き上げてきたあたくし的には(ポジションの計算ツールは重宝しますが、為念)妙な「高度化」よりも他にやる事はねえのかと感じてしまいますです。管理を高度化して安心するだけになりそうな悪寒。
話が逸れましたが(笑)、何かちと警戒するのが早い気もしますし、まあ何でも良いからオルタナ投資とかやっている人の頭を冷やしましょうってことなのかもしれませんが。
『先行き、資産市場価格の動きと連動して、将来のインフレーション率に大きな影響を及ぼす可能性があると認められる事態になれば、金融政策の面でも適切な対処をとる必要があることはいうまでもありません。そして、そのような場合にも、金融機関のリスク管理が徹底され、健全性を維持することによって、政策の波及経路がしっかりと確保されていることは、金融政策が有効に作用する重要な前提条件となります。』
だそうです。
・金融政策に関して
量的緩和政策の効果について話をしているのですが、そこまでやっているとこの講演のご紹介がいつまでたっても終わらないので(^^)端折りまして「今後の運営」の部分を。
『今後、量的緩和政策の枠組みの変更にあたっては、コミットメントに従い生鮮食料品を除く消費者物価指数変化率を中心として経済・物価情勢を総合的に検証し、コミットメントで示した条件が満たされたかどうかを慎重にチェックしていくことになります。』
ということで、これだけ見ていると慎重対応にも見えないことは無いのですが、記者会見の方では「日本経済はもう病人ではなくなってきつつあるので、あまり病人扱いしてはいけない。モルヒネはもうやめた方がよい時期にだんだん近づいている」「生鮮食品を除く消費者物価指数の前年比上昇率は3ヶ月連続でゼロ%以上になっているので、非常に重要な時期に差し掛かっていることは間違いない(いずれもブルームバーグニュースより)」って言ってますんで、まあ大勢容認コースなんじゃないかと思います。歯止め役を期待するのは無理でしょうなあ。
政策運営を考える場合の「物価」の概念について何ですが、講演(挨拶)要旨にある中で()書きになっている方が何か重要な説明のような気がします。まずは物価の概念については消費者物価指数が適切であると指摘した上でその理由を()書きで説明してますな。
『(概念的にみても、カバレッジからみても、GDP統計家計消費支出に基づくフィッシャー型物価指数が、問題はあるもののおそらくもっとも望ましい指数だと考えられますが、現実問題として政策にそれを利用するのは不可能な状況ですので、消費者物価指数で「インフレ率」を測ることになります。また、すでに他の場所で指摘しておりますが、経済統計の専門家の間では、過去にしばしば問題とされた消費者物価指数のバイアスは日本では存在したとしても小さいというコンセンサスがあります)』
更にGDPデフレーターなどを金融政策判断に使う場合の問題点について。
『(さらに若干技術的なことを追加しますと、よく話題になるGDPデフレーターやそのコンポーネントである家計消費支出デフレーターには、ここでは詳しくは述べませんが、推計値が利用可能になるまでにラグがあること、一次速報から二次速報、確報、確々報、更に基準改定と、頻繁にそして時によると政策判断の方向性が変わってしまう程度に変わる可能性があること、さらにいわゆる「ドリフト」の問題等があり、重要な判断材料ではありますが、それを基に判断して機動的に政策を行う、というのには躊躇せざるを得ません。ただし、これはGDPデフレーターやそのコンポーネントの作り方に問題があると言っているのではありません。それどころか、こうした作成方法は、経済をできるだけ正確に捉えるために必要なやり方なのです。ただ、残念ながら政策判断の基になる機動性は持っていないのです)』
ということから、まあ解除(とその先の金利政策への移行というか金利引き上げ)にあたってGDPデフレーターとかの話を持ち出す内閣府方面からの声に関して釘をさす格好にもなっております。基本的には金融政策運営に関して重視する経済指標は消費者物価指数であり、(講演の先の方にあるんですが長くなりすぎなので引用しませんが)その中に変動の大きい項目(エネルギー価格など)を含めて考えるかに関しては、その変動が将来にわたって影響を及ぼすものなのか、一過性のものなのかという観点から「総合的に判断」というお話になっておりました。
まあやっと西村審議委員が色々とお話をしだしましたなあという感じなのですが、基本的には日銀の公式見解モードからあまり出ていないといった所でしょう。正直、読み方によって強気にも慎重にも読めそうですが、記者会見の記事(の一問一答)を併せて読むと言葉を選びながら強気って所なのではないかと思います。要は現在の政策委員会大勢派ということで宜しいのではないかと。
#いや、今週は長い一週間だ。
2006/02/16
お題「利回り間もなく4倍!」
という訳で短期市場のお話。
○1週間でここまでやるとは・・・・
昨日実施された(だいたい)3ヶ月ものFBの入札。この入札は毎週のように行われているのですが、先週の水曜日に実施された入札が5月17日償還もので平均落札価格を利回り換算すると0.0069%で最低落札価格は0.0073%でした。(追記:財務省方式の計算、以下同じ)先週の木曜のドラめもんでは「何で落札の金利が前回より下がるんじゃ」という話をしておりましたが、その後はご案内の通りで今更になって短期のターム物金利が上昇。
で、昨日の入札はと申しますと、償還は5月22日と前回入札から5日(普段は1週間なのですが、連休の関係でこうなっている)先になっておりまして、その結果は平均落札価格と最低落札価格のテールが利回りにして0.27bp流れてしまいました。平均落札価格が0.0242%で最低落札価格は0.0269%となりました。1週間で利回り3倍以上ですよ先生。
まあ量的緩和解除が具体化してきたから金利が上昇したと言えばそれまでの話しなのですが、それにしても緩和解除しても当座預金残高を一気に回収する訳でもないのに3ヶ月ものの金利まで急上昇するというのは呆れますな。上るのはまあ判らんでも無いが、それなら先週までの無茶苦茶強い短期国債の入札(ちなみに先週火曜の6ヶ月ものTBの落札結果は1月の結果よりも利回り低下して平均0.0288%で最低0.0290%でした)は何を考えてやっていたのかとさすがに呆れるのでありました。
○まあこれもまたバンク効果なのかもしれないけど
まーしかし何と申しますか、相場の外部環境じゃなくて日銀の偉い人の発言とその場の勢いで金利が上っちゃうってのも(それまでの強さがおかしかったと言えばそうなのかも知れませんが^^)毎日申し上げているように無茶苦茶なお話でございますわな。買いの手が引っ込むと急に金利が上り、誰かが買いを入れると急に「俺も俺も」と買いが入るという実に香ばしい横並びの展開が中長期債券市場以上に顕著な短期市場。どうも暫く前から期末越えだの年末越えだのというターム物金利に関して似たような傾向はあったようなのですが、いざ量的緩和政策解除でこれですかそうですかという感じで。
かつて(低め誘導時代まででゼロ金利政策は知らん)マネーマーケット物をお取扱いしていた時代があたくしにもあったのですが、その当時はここまで横並び丸出しじゃなかったと記憶しておりますが、まあその当時と比較して金融機関の数が物凄く減っていてメガ化していますし、メガ化した金融機関の中の人たちは色々と内部的な言い訳と申しますかまあそんな事があって、「上手くいくかも判らないけど逆に逝ったら内部的に言い訳がつかない」という事を避けたくなるというのも良く理解できますですよあたくしだって昔そんな所にいなかった訳でも無いし。そんでもって利回りが3倍だの4倍だのというと無茶苦茶動いた感じ(事実そうですが)だけど、損益の数字的に言うと長期債のポートと比べれば誤差にも掛からないくらいですから、そりゃまあ横並びをやっていて「マーケット平均で回してます」って方が無難ですから周りを見ながらの動きになりますわな。
ということで、ゼロ金利状態になっている以上はこういう集団レミング相場になるのは参加者の特性と、そのインパクトの大きさを考えるとやむを得ないのかなあと半ば諦観しつつ、精々レミングに巻き込まれてつまらん怪我をしないように心がけながらオーバーシュートを拾いに行くようにするしか無いんでしょうかねえ。
ま、昨日も申し上げましたが、量的緩和時代に散々発行を増やしてしまった2年以下の債券(とFB)に関しては、上まで買って下まで叩く上に横並びで、しかも売買の回転が速い人たちが主にやっているという現状を鑑みると、発行を全体的に減らさないと金利の根っこの部分がちょっとしたことでやたらめったらオーバーシュートする(発行量が減れば少しは歯止めになるでしょう)ことになるでしょうなあ。ど〜せ長期ゾーンは「買ったら長期保有」の人たちが多いんですからそっちに振ればっていう気はしますが。
○金先は相変わらず
基本的にあたくしはユーロ円金利先物という商品が昔から嫌いでして、マネーマーケットの商品をやっている頃も全然ヘッジなどで使わなかったという偏屈者(ちなみにその間に金利が馬鹿上がりした事ありましたが、ヘッジで短期国債を無理矢理ショートセールしてました^^)でした。で、その金先ですが、今週になって中心限月の2006年12月限は99.50を割り込んで昨日は99.46とかになっておりました。
これって「2006年12月の清算日(第2週だか3週だかだったと思うのだが)のTIBOR3ヶ月もの金利が0.54%」っていう意味なんですが、それじゃあ年内1回0.25%利上げした上に来年早いうち(年の前半とか)に利上げがあるかもしれません(あるいは来年の早いうちにゼロ金利から0.5%へ金利上昇)って状態になってるって事を意味する筈なんですが、そりゃ幾らなんでもやり過ぎではないか。
・・・と思うのですが、このユーロ円金利先物っていうのはまあ何と申しますか、まあそういう理屈で動いている(場合もありますが)というよりは、その時の勢いで動くという方が今まで見てきた印象。値段がどうのこうのというよりは「売り」か「買い」かが重要って感じですわな。
これが債券先物(長期国債先物)だと、(現在のイールドカーブ形状だと)残存7年の国債現物とかなりきっちりと裁定するので、確かに勢いで先物独歩安とか独歩高とかあってもイールドカーブから考えて何ぼなんでも行き過ぎになると修正されるんですが、ユーロ円金利先物はどうもこの現物金利とちゃんと裁定していない場面が目に付く訳ですな。あまりにも裁定しないので誰も向わなくなってしまい、ますます非現実的な値段がつくようになるという悪循環(^^)。
まあ中短期のスワップやら何やらの勢いがどうなっているのかを見る指標には大変に結構なのですが、(金先使いの人から石が飛んできそうですが)この価格を見て「短期市場は何回の利上げを織り込む」とか解説するのは、話半分にしておいた方が吉では無いかと存じます。とかまた読者の数を減らすような事を言ってしまったあたくし。いやまあその中短期ゾーンのマーケットの息遣いが手に取るように判るからユーロ円金先って面白いと思いますよと今更フォローしても遅いか(笑)。
まあ2006年12月のTIBOR6ヶ月金利が0.54%だと言ってるのに2年国債の金利が0.405%(昨日の引け)というのも誠に香ばしい状況ですな。
#しかしまあこの金利上昇は驚き桃の木山椒の木でございます。明日の短期国債買入で少しは落ち着くのか、それとも投げ投げ合戦になって尚のことヘロヘロになるのかは正直、蓋を開けてみないと判りません。まあ岩田副総裁の講演とかもありますし。それにしてもこのマーケット豹変ぶりは・・・・・
2006/02/15
お題「今更ですが総裁記者会見」
今朝のモーサテ東京スタジオの最初のお話。「」は本村ゆっこさんのお話で()内はあたくしの声ですが^^;
「量的金融緩和の解除がマーケットの注目を集めていますが、気になるニュースがありました(ほほう何でしょう)。時事通信が有力エコノミスト10名にアンケートを行った結果(量的解除で流動性縮小から株が下げるとでも出たのかねえ?)、10名中8名が4月の量的金融緩和の解除を予想しています(いやあの市場でとっくに織り込み済みの話をマーケット情報番組で大ニュースのように言われても。一般ニュースならともかく)。」
いやまあ本村キャスターは言わされているだけでしょうから別にゆっこ様のせいでも何でも無いんですが、朝から物凄い勢いで脱力するのでありました。この番組の編成をしている人間を捕まえて小一時間問い詰めてみたい(そんなことは時間の無駄だが)ものでございます。今朝も「2月15日水曜日です」っていう矢吹さんの声のトーンを聞いただけでNY株式大幅上昇を予想したらその通りだし(笑)。まあお笑い番組だと思って見てるんで余程とんでもない話でも出てこない限りは血圧も上がらないのですけれども、やはり朝は仕事モードで脳内活性化したいですからねえ。
そんな訳で、最近6時からはMXテレビ(と南関東UHF3局でやってる)ブルームバーグテレビの方がまだマシなのでそっちに切り替えてしまうのでありました。まあそもそも日経新聞を定期購読してないんでそれ以前の問題ではありますが(苦笑)。
という訳で遅くなりましたが2月9日の総裁記者会見。質疑応答を読むと中々オモロイのですが、オモロイ部分を引用してると結構長くなりそうな気がするのでテキトーに。それから金曜にブルームバーグニュース記事から引用させてもらった分は今回割愛。
http://www.boj.or.jp/press/05/kk0602b.htm
○明示したコミットメントは取らないという見解ですな
政策枠組みの透明性や期待の安定化をしていくための施策について。
『(前半割愛。一言で言えば「現在検討中」って感じ)従って、今ここで何がしかの方向性、イメージを申し上げることはできない。ただし、毎回申し上げている通り、量的緩和政策は、消費者物価指数を軸にして日本銀行自身の手足を縛ることに意味を持たせた政策として行ってきたが、量的緩和政策解除後は透明性確保と、金融政策の機動的・弾力的な運営つまり柔軟性とが明確に両立するようなメッセージの出し方でなければならない。この点は非常に明確なポイントとして、各委員とも揃って重視しながら検討を続けている状況である。』
ということで、明示的なコミットメントを設定して政策を行うと言うのはあまり採用したくないらしいですなあ。
○今後の情報発信について:展望レポートなどに関連して
展望レポートを今後どうするかという質問がでましてその回答部分。
『もう一つ重要な話であるが、展望レポートについて皆様がどのように評価されているかわからないが、私どもとしては展望レポートの中の特に金融政策に関する部分において、私どもの先行きの政策径路について、できる限りのメッセージ、最大限のメッセージを盛り込んできているつもりである。量的緩和政策の枠組み修正のタイミングについても触れてきているし、枠組み修正後の金利政策の運営についても、私どもとしては相当程度のメッセージをそこに既に盛り込んできているつもりである。』
『今後の私どもの作業としては、仮に枠組み修正後ということになると枠組み修正までのプロセスは終わるわけであるが、その後の金利をターゲットとする通常の金融政策の運営について、既に書いている部分もある。それを今後の新しい経済のアウトルックとの対比において、これで十分かどうか、さらに追加的に情報提供できる部分があれば惜しみなく情報提供していくことになると思う。ごく自然体に考えて、経済の見通しと政策の径路について、できる限り整合性のとれたかたちでメッセージを出していくということであり、ここで離れ業的なことをするつもりは全くない。』
どうもこの辺りのコメントを聞いて(読んで、ですけど)いると引っ掛かってしまうのですが。と申しますのは、どうも今までの実績を勘案するに、これからも「日銀は経済の先行きがこうなると思うから今後の金融政策は引き締めだよ(または緩和だよ)」とかって言い出すんじゃないかという風に思ってしまうのであります。今の「地均し」路線と同じことを今後もやりだすんじゃないかという漠然とした不安が。。。。
昨日ご紹介した(というか記事の引用ですが)水野審議委員の寄稿がまさにそうなのですが、日銀の審議委員が一々市場に手を突っ込むような話をして、それをもって「市場との対話」とか言われても甚だ迷惑。何か日銀が情報を発信してそれに市場が反応するのを見て「期待の安定化をしないと」となって更に情報発信っていうようなアホアホな事態が発生するのは勘弁していただきたいものです。まあ余計な話をするなと思うのだが。
でも福井総裁はこういうコメントをしているのですが。別の質問に対する答え。
『私どもの頭の中に最後に残る長期金利の姿は、基本的には将来の経済や物価に関する市場の見方を反映して、市場そのものが決めるというものである。理論が決めるものでもないし、誰かパワフルな人が決められるものでもない。市場そのものが、将来の経済や物価に関して貪欲なまでのエネルギーを注いで眺め尽くした後、市場自身が判断して決まると思っている。』
その割には地均しとかしちゃうってのがどうもよく判らん。イールドカーブの見通しまでコメントする水野審議委員は論外ですけど。
○ビハインド・ザ・カーブは反故ですかそうですか
今更驚かないけど、総括しないで有耶無耶のうちに反故にするというのは甚だ遺憾でございます。
『毎回申し上げているが、金融政策は、経済・物価情勢の流れの中でもっとも適切なタイミングを、遅からず早からずという意味で適切なタイミングを掴んでいかなければならないので、情勢判断を離れたイベントが、金融政策の判断のタイミングを決める上で、非常に重要なウエイトを占めるということはない。』
ほほうそうですか。
○景気と物価の見通しに関してはいつもどおりの強気です
まあこういうコメントになるのはいつものことですが、益々意気軒昂と行った所で。
『ご説明した通り、日本経済については、理想的とまでは言わないが、どの角度から見ても比較的バランスの良い経済の姿になっている。生産が強く、企業投資、企業所得がしっかりし、それが家計部門にも均てんして雇用者所得も増え、消費も底堅い。つまり国内経済の循環メカニズムが上手く作動しているが故に、着実な回復、持続性を強めながらの回復になっている。別の言い方をすると、外からのショックに対しても、かつては脆弱性を持っていたが、脆弱性の少ないあるいはショックに対してより強い経済になりつつあると思う。しかし、引き続き、特に外から来るショックに対して、日本経済が本当にどれくらい吸収していける力があるかを、十分見定めていかなければならないと思っている。』
そのショックの中で挙げているのが一次産品や原油価格の上昇と、地政学的リスク(イラン問題が日本に対する地政学的リスクなのかよというツッコミはさておいて)です。
『物価は既に3か月連続でゼロ%以上になっており、見通しとしては、1月分以降はより明確なプラスの数字が出るであろうということである。その背後にある経済情勢の分析を加えて判断していけば、物価のプラス基調がより強く定着していくという合わせ技の判断が出てくると思う。その根底は、経済の持続的な拡大の中で需給が改善し、ユニット・レーバー・コスト(単位当り労働コスト)が物価を押し下げる方向に働く力が減衰していくというように、物価形成の基礎がしっかりしてくるということであり、そこが非常に重要な判断の土台である。消費者物価指数自体が、特殊要因、一時的要因で多少上下することはいつでもあるが、その一時的要因で上下するという物価指数の表層部分の動きをそれほど重視して考えなくても、基調がしっかりしてきたという判断があれば、それは私どもの「安定的にゼロ%以上」という判断に結びつきやすいと考えている。』
いやまあ強気ですなあ。
その他、物価安定目標に関する見解とか(金曜日に引用しましたが)のあたりもまあ読んでおくと吉かと。要するに最初に引用した所にあるように、福井総裁としては数値目標を出すのは相当抵抗あるようですな。そう考えるとまあ(ビハインド・ザ・カーブの反故もそうですが)福井総裁は今まで随分一生懸命に猫をかぶっていたんですなあと思ってしまうのでございました。
では。
2006/02/14
お題「いきなり今度は連続利上げ織り込み???」
本日はバン・アレン帯のお誕生日ですか(元ネタ知ってる人は同世代)。
○またお前か!
昨日の債券相場では2年国債金利が一時0.4%をマーク。5年国債は1.045%をマークしまして、2003年の安値を切りました(2年はとっくの昔に切りまくっていますが)。その後株式市場がヘロヘロになった(新興の下げがきつい)ので相場全体は思いっきり戻ったのですが、2年は前日比2毛甘の0.385%の引けと大変に香ばしい状況になっております。
で、まあ昨日は衆議院予算委員会での福井総裁の答弁もあったのですが、それよりも話題になったのは水野審議委員が時事通信の雑誌(会員制)に寄稿した文章の内容が報道されたことでしょうかねえ。この雑誌は「金融財政」と言いますが、会員制なもんであたくしも現物は残念ながら見ておりませんで、仕方が無いのでブルームバーグニュース(13日15:20)の記事から。詳しくは時事通信まで。
まあ要するにまたまた毎度お馴染みの「水野ストラテジストの景気見立て」をご披露しているのですが、そういう景気見立ては公式の講演や政策決定会合で行っていただきたい訳ですわな。以下同記事より『』内は記事中の水野氏ペーパー引用部分です。
『ゼロ近傍に据え置きが適当と考えるほど景気の先行きに自信が持てなければ、そもそも(量的緩和は)解除されないはず』
まあ確かにそれは正論ですが、現在の地均し路線と全然違う話ですな。そこまでいうなら前回の決定会合で量的緩和解除と金利引き上げを提案したら如何でしょうか?今まで公表されている決定会合の議事要旨には「解除即利上げ」という意見がでているとは読めませんが?
『このところの株価上昇は潜在成長率の上振れを示唆している可能性がある』
『潜在成長率の上振れは、均衡水準の実質金利の上振れを意味するため、期待インフレ率上昇に伴う実質金利の低下と相まって、金融緩和効果を増幅していく』
おっちゃん頭が悪いから良く判りませんが、潜在成長率が上振れしたら需給ギャップの縮小が想定よりも進まないので物価が上り難くなるという面もある(http://hongokucho.exblog.jp/4075394)ような気がしましたが、まあ要するに期待成長率の上ぶれって事なんでしょうか。ってここは教えて君なんですが(汗)。
『ゼロ金利が長期にわたって続くという期待が過度に強まってしまうと、需要刺激効果が強まり過ぎて、景気の振幅が大きなものになり、それを受けた政策金利の変動も大幅なものになってしまう可能性がある』
えーーーーーーもうバブル警戒ですかそうですか。で、この文章が世の中に認知された週初は株価続急落なのがお前は北浜かと言いたくなりますが。それは兎も角として、バブル警戒って言ったって物凄く局地的な話(つーか新興市場はPERとか見るとやり過ぎ感ありありですが)だと思うんですが。まあそりゃ水野さんやお友達さまのような外資系金融のお方は景気回復を思いっきり享受しておいでかと存じますがねえ(とまた無用な悪態をついてしまった)。
『中央銀行は、低金利政策が長期化するとの「期待」が過度に強まらないように政策運営すべきである』
なら金利に関してごちゃごちゃお前らが言うなと。まず結論ありきでその結論に向けて市場への配慮(当座預金残高引下げもその趣旨で提案していると理解してますが)して地均しだのご指導だのをしている訳ですが、そーゆー事をやってるから市場参加者が日銀の方ばかりを見るようになるというのは昨日も同じ悪態つきましたな。
まあアレだ、日銀政策審議委員として発言するなら場所と内容を弁えて言えと思う訳でして、「またお前か!」という反応になりますわな。この人何だかんだと言って相場に変な燃料を投下するのがお好きのようで非常に困ったもんです。今までの議論の前提を無視した話をよくするし。「マーケット出身者はこういうもんだ」という評価になりますと次期「マーケット枠」は期待できませんなあ。
○しかしまあ2年0.4%って何よって感じですが
2年国債の最終は0.385%でして、1年TBの最終出合いはWI取引で0.15%となりました。ということで、このイールドを見ておりますと年内の遅い時期か来年に利上げがありそうな予想になりますが、どう見てもその後もう1回の利上げを織り込みに逝っております。おいおいどうなっているんでしょうか??
ということで、まあオーバーシュートの域に入っているのではないでしょうかという気は思いっきりしますが、勢いがついているというのと、そもそも2年国債のゾーンは需給的に最もダメダメな部分になっているというのがありますので、中々この割安(と自分では思ってますが)は解消されないかもしれません(と書くと解消されすのがドラめもんクオリティですが、爆)。
以前から何度も申し上げているので読者の皆様には耳タコかもしれませんが、減ったとは言え現在の2年国債の毎月1兆7千億という発行額は基本的に量的緩和状態を前提にしないと安定消化が厳しいんじゃネーノってお話。しかもこの2年国債ってのは大手銀行がかなりの部分保有している(その他の預金吸収機関も基本預貯金見合いで保有します)商品でして、大手銀行といえば昔も今もやたら売ったり買ったりするのがお好きな人。基本的に順張りで入ってくるので、下を叩き出すととんでもないところまで叩くのは2003年のVaRショックを持ち出すまでも無く毎度の行動です。
(最近は銀行の保有する国債が5年とか2年とかが主になった(あとは変動15年)為に、相場が動く時には「ポジションの踏み投げ」が発生する中短期の方がアホのようにぶれるという現象もあるわけですがその考察はまた別の機会に)
まあそんな訳でして、正直2年国債の発行はもっと減らして超長期とかに回した方が良いんじゃネーノと心の底から思うのですが、短期金利がぶれるようになるとヘッジが難しい(5年ならまだ債券先物が使えるが、ユーロ円金先はちょっと2年とは遠いです)この商品は短期金利の見通し次第でやたらめったらオーバーシュートするようになりかねませんわな。今のままの発行量だと。
○おまけの雑談:3月の解除はどうでしょう?
http://www.boj.or.jp/about/grand/grand0602a_f.htm
学生向けコンテスト「日銀グランプリ〜キャンパスからの提言2006〜」決勝の実施
だそうです。で、この決勝なんですが、こちらにあるように3月10日金曜日の午後丸々潰して絶賛実施されるようでございます。平日の午後じゃ見にいけませんなあと思ったらそもそもプレスと参加者関係以外の一般人は見にいけませんでした。
・・・・で、この前日まで金融政策決定会合を実施しておりまして、この日は5年国債の入札が予定されております。そんな日に副総裁に審議委員が堂々このようなのんびりとした会にご出席ということは3月の決定会合での解除は無いですかねえ??
ええもちろん暇ネタの冗談ですけど(笑)。
#あ、総裁記者会見が・・・・・
2006/02/13
お題「いやまあよく売り込みましたな」
えーっと、あたくしは割と人の趣味嗜好に関しては何でもありじゃないのという人間なのですが、「金に意地汚い(ニュアンス伝わるかなあ・・・)人」というのはどんな立派な仕事をしていても物凄い勢いで否定するという設定でございます(だからあたしゃ金に縁が無いのですが)。西郷南州に影響されすぎですかそうですかと言った所ですが、そんな訳でクリントン前大統領は物凄く否定するあたくし。ところが先週には名議長よお前もかという図を見せられて一気に萎えてしまう訳でして、結局かの国は「権力ある所に金あり」ということで、ひところ東南アジア(特にインドネシア)を捕まえて「身内資本主義」だの何だの言ってた(のはクリントン政権でしたが)ことに関しては「オマエモナー」と返したくなりますわなあ。
なんて話は兎も角として。本来だと総裁記者会見をネタにすべきお日柄なんですが、まあ金曜はご案内の相場だったんで本日は市場雑感先行ということで勘弁。
○中短期債ヘロヘロです
金曜の債券、短期市場はご案内のように中短期市場の金利が物の見事に上昇。5年カレントの利回りが1%をぶち抜けて引けは1.02%(1.025%もマークしたようですが)。ちなみに1%ぶち抜けというのは2003年9月3日にザラ場で1.035%安値という香ばしいお値段(ちなみにこの日に日銀総裁発言が出てやっと戻りました。この日のメモを見たら「5年−20年がピークで前日比20BPフラットニング」だって。その前日も18BP位フラットニングしてますので中々壮絶でしたな)。
ちなみに前日に10年入札があって、入札はまともでせっかく相場が戻ってくれたのに、先物が戻った所に5年ゾーンの売りを大量にぶつけた馬鹿者がいるわ、自分の主管業務でもないのに「新型事業国債の発行を検討」とか言い出す馬鹿大臣(さて誰でしょう)がいるわで一気大暴落して、翌日の前場からはもう現物も売れない大手銀行勢のスワップ払いがあった日でございました>2003年
で、先週の金曜日ですが、まあ5年はそんな感じで叩かれるわ、2年はとうとう0.365%まで下落するわという有様。先日の2年国債入札の時には「0.3%に乗っているあたりちゅうのはまあ向こう2年間で利上げが1回だと思ったら勝てるんじゃネーノ」などと申し上げましたが、こうなってみると市場は「今年10月にも利上げがあるかもしれない」って警戒フラグが立ったという風に解釈するしかありませんなあ(単に勢い余っているだけのような気もするが)と言った所で。
ちなみに、VaRショックとも言われる早期利上げ警戒相場が発生した2003年9月3日は惜しくも一番売り込まれているときのカーブ形状は判らん(引けでは猛反発している)のですが、このときの2年債は0.265だか0.27だか忘れましたが、せいぜいその辺なので、2年とかのゾーンが緩和解除を本格的に織り込んでいるというのが良くお判りかと思います。このときの10年はやっぱり1.7%にも行かず(場中付いたのかもしれないけどメモがないもんでよく判らん先物から勘案すると行ってない気がする)位の図でして、まあ当時と比較して量的緩和解除が見え見えなんでこんなカーブも仕方ないのかもしれません。
○しかしお前ら織り込んでなかったのかよ!
金曜の短期市場も中々強烈でございまして、水曜日に入札が行われた3ヶ月ものFB(政府短期証券)の利回りが何と0.014%まで上昇。先週ドラめもんで申し上げましたように水曜日の入札はその前の週よりも利回りが下がる(平均0.0069%でした)という「???」な結果だったのですが、わずか2営業日で利回り2倍ですかそうですか。
この間に何か重要な経済指標でも出たというのならばまあこういう動きをすることも判るんですが、その間に出てたのは金融経済月報と総裁記者会見。で、総裁記者会見はご案内の通りで別に今まで言われていたことから特に大きく進展するものではなし。大体からして早くて3月、遅くて4月末ってのが量的緩和政策解除のコンセンサスだった筈なんですが。
まあ相場に勢いがついたちゅうのもあるかもしれませんが、お前ら何を考えて市場に参加しているんだと小一時間問い詰めたくなるこの動きでございます。まあ何だかんだと申し上げましても大手銀行の人たちのポジションが圧倒的にでかいマーケットでもありますので、要するにこの人たちを問い詰めたくなるわけですが(苦笑)。
で、まあポジショントーク満開の某情報ベンダーの短期市場ニュースにおける市場関係者コメントを読みますと、どこぞの証券会社のトレーダーコメントとして「無担保コール翌日物取引の上昇を0.1%(=ロンバード)まで容認すると考えれば取引のセンターは0.01%から0.05%位になると予想」とかございました。いやあのロンバードってのは「上昇のキャップ」であって、その容認レンジ上限がポコポコ付くような市場レート形成になったら日銀の誘導姿勢を問われるんで、そんな事は無いと思うんですけどねえ。
まあそれにしてもつい先日までは「量的緩和政策解除してもゼロ金利は少なくとも年内一杯は続く」とかいう価格形成をしていたのは何だったんでしょうかという感じ。何度も繰り返しますが、その間に経済指標の劇的な好転があったとかいう訳じゃないんですよ。何だかなあって感じです。
○まあ結局地均しもどうなのかといういつもの結論になる訳ですが
という訳で、まあ総裁記者会見などに反応した格好になった金利市場なのですが、本来的にいえば量的緩和解除後の金利引き上げ経路に関しては経済物価情勢を見ながらというお話でありますので、経済指標を見ながら金利観が形成されていくというのが「市場機能の復活」である筈ではございますわな。然るに相場の方は相変わらず要人の一挙手一投足に反応するって形になっている訳でして、まあこれは時々申し上げているように日銀が地均し路線で市場にせっせと織り込ませに行ってる事の弊害でもあるのかなあなどと思う次第。
まあ毎度申し上げているようにマーケットもマーケットではありまして、経済情勢よりも日銀の意思とか政府の意思とかを注目して金利観を形成するという妙な傾向があるわけでして、このあたりはどっちもどっちではございます。
で、まあ折角マーケットにショックを与えないようにとか色々と配慮するのですけれども、結局はその配慮によって妙にゼロ金利継続の期待が起こったり、逆に量的緩和解除が具体化してくると今度は10月にも引き締め観測とかが一気に台頭したりという風になってまして、マーケット(というよりは大きなポジションを抱えている横並び意識の強い一部の市場参加者かも知れんが)が一々日銀や政府の顔色を見ながら動くようになっちゃう訳で、あまり「市場との対話」ちゅうのを後生大事に考えすぎると、今度は市場の方が中央銀行の意向ばかりを気にするようになってしまうんで、今後の「市場との対話」路線に関しても(市場を全く無視しろとは申しませんが)どのようにやっていくべきかというのを考える時期になっているのかなあ何て思います。
じゃあお前具体的な案があるのかと言われるとムツカシイのですが、「経済物価情勢に則った金利形成が行われる市場機能」っていうのを復活させたいのであれば、あまり地均しだの何だのということは(まあこれからはそんなにやらんとは思いますが)避けた方が吉かと存じます。後のことは良く判らんが。
#というわけで雑感でした。
2006/02/10
お題「2月金融経済月報/総裁記者会見をちょっと」
本題に入る前に昨日のエントリーの訂正を致します。と申しますのは、昨日「次回の展望レポートは4月上旬の決定会合で公表」と書きましたが、展望レポートが出るのは4月28日でございました(大恥)。ごみんなさいごみんなさい。ちなみに4月上旬の決定会合で公表されるのは4月分の金融経済月報でございました。ご指摘有難うございます。
よく考えるとこの日程の組み方は去年と殆ど同じですな。
○2月の月報は前月比穏当に
というか既にカンカンの強気になっているのですが。
http://www.boj.or.jp/seisaku/05/pb/gp0602.htm
前回の月報と毎度お馴染みの如く比較する訳ですが、よくよく見ると変っているのは生産の現状判断部分と、消費者物価指数の現状判断部分なのでありました。
・生産の現状判断
(2月)『輸出や生産は増加を続けており、』
(1月)『生産も増加の動きが明確になってきている。』
ということで、「増加の動き」だったのが「増加」ということで判断前進。
・消費者物価指数の現状判断
(2月)『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、若干のプラスで推移している。』
(1月)『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、若干のプラスに転じている。』
ええまあ確かに事実関係を書いているだけと言えばその通りなのですが、2ヶ月目のプラスでさっくりと「転じている」が「推移している」という言い方になっていることに関してはあたくし的には一応ブックマーク(^^)。まあ先月末に公表された物価統計で1月の東京都区部消費者物価指数(除く生鮮)がプラスになったんで自信満々ってことなんでしょうな。プラスに転じて2ヶ月目であっさり「プラス推移」というのは中々。
これだけ見ると、量的緩和政策のコミットメントのうち「コアCPIが安定的にゼロ以上」ってのが満たされていると取ろうと思えば取れない事も無いですなあ。言葉の上では、ですけれども(ちなみに記者会見ではさすがに『今日もなお安定的にゼロ%以上とは言えないという判断となった(ブルームバーグニュースより)』という発言を福井総裁がしておりますので念の為)。
○総裁記者会見
日銀発表の会見要旨は本日午後にでもアップされますので、とりあえずブルームバーグニュースのURLを置いときます。
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=90003017&sid=a9QUtHHxukFM&refer=jp_news_index
最近は諸般の事情(でも何でもなく単にそんなに情報ベンダー持っててもしょうがないでしょって理由ですが)により、同時に複数の情報ベンダーのニュースフラッシュを見ながら画面に向うなどというような器用なことをしておりませんので、人に聞いて回った結果なのですが、各情報ベンダーのフラッシュの打ち方を見ると「強気の記者会見」という印象を与えるものと、「配慮をした記者会見」という印象を与えるものと微妙に違っているようでございました。まあどっちとも取れるような会見だったんでしょうね。
で、ブルームバーグニュースの上記記事にあります一問一答から引用致しますが。
――前回の会見で、量的緩和の解除について「冷静かつ適切に判断していく重要な局面に入っている」と述べられた。解除を判断するにあたって、後は何が必要か。
「日銀の姿勢は極めてクリアだ。コアCPIの前年比が安定的にゼロ%になるまで(続ける)というのが、量的緩和導入時に公表した明確な約束だ。それにそって緩和政策を継続しているわけで、枠組みの変更にあたっては、まさにこの条件が満たされたかどうか、それは、経済・物価情勢全体を十分点検したうえで、この約束が満たされたどうか、ということをきちんと判断していく。予断を持たず、冷静に判断していく、ということに尽きる」
「何か後1つ、具体的なものが加われば、というようなことではない。CPIとか、いろいろな経済指標そのものは、いちいち重要な判断材料だが、背後にある経済全体の動きをきちんと点検することが一番大事なことだと思っている。毎回そうした観点から政策決定会合では議論を重ね、判断を続けてきているが、今日もなお安定的にゼロ%以上とは言えないという判断となった」
「今後はどうかと言うお尋ねなので、1月分以降の消費者物価指数は比較的はっきりとしたプラスになると見込んでいる。したがって、次回の会合以降のこうした経済全体を見据えた指数の判断ということは、より重要になっていると考えている」
――3月の決定会合で量的緩和の解除を判断する際、たとえば年度末が近くて金融調節が難しいとか、国会の会期中だとか、自民党の金融政策に関する小委員会の報告書がまだまとまっていないとか、解除の障害になり得るような要素はあるとお考えか。
「来月に限らず、あるいはそれ以降も、年末であるとか、いろいろ政治的なイベントであるとか、いろいろなことは常にあるわけで、そうしたことは毎回申し上げているが、金融政策は経済、物価情勢の流れの中で最も適切なタイミングを、遅からず早からずという意味で、適切なタイミングをつかんでいかなければならない。情勢判断を離れたイベント事項が金融政策のタイミングを決める非常に重要なウエートを占めることはない。これは明確にないと申し上げる」
まあ3月以降のあと3回ある決定会合のうちのどこかで解除になるんでしょうなあ。CPIがいきなりマイナスとかになっちゃったら話は別ですが。
いやまあ今のところ日銀の裸単騎突撃は順調に行っておるようでございますが、読者様からは「裸単騎よりもオープンリーチの方が感覚的に近い気がします」とお話が(^^)。確かにそうですなあ。そういや学生の時に5面チャンで8巡目リーチしたら実はフリテンで、ハイテイで発単騎の緑一色に振り込むという素晴らしいことをした事がございますが(意味の判らない人は周囲のロクデナシに聞いて下さい)、まあ色々と悪態はつきまくっておりますが、事ここまで到ったら「何とか日銀のシナリオ通りに経済が推移して下さいますように」と申し上げるしかございませんな、と言ってる側からハイテイで役満振込などと書くあたくしは性格が悪いですかそうですか。まあ最も遅くても5月の決定会合までに解除しないと流局の悪寒が致しますが。
今後のことを考えますと、まあ全局オープンリーチされても困りますんで、あまり決め打ち勝負しないで金融政策運営を行っていただきたいのと同時に、今回の決め打ち大作戦に関しても「結果が良かったからプロセスは無問題」ということにならんようにお願いしたいものです。まあ当然ながら中の人たちは皆様よく考えておられるものと信じています。
それから、本日は引用してませんが、上記の会見記事にも「解除後に関してはまだ白紙」というニュアンスの発言があったようですので、さすがに解除後の短期金利引き上げに関しては決め打ちを行わないものと期待(?)しておりますです。
インタゲ等に関しては相変わらず否定的でありまして、望ましい物価上昇率に関しても欧米よりも低いのではないかという発言もありまして、その辺ちとオーバーキルの不安もあるのですが・・・・・・
同じく記者会見記事より。
「多くの識者の方でさえ、簡単に海外ではインフレターゲットは2%くらいではないかとか、2%から3%くらいではないかとおっしゃる。これは私にとっては非常に不思議なことだ。日本の国民の物価観はどうですかということは、われわれは本当は正しく知りたい。そういうことを共有しなければ、正しいメッセージを作ることは難しい。概要を言ってみればそんなことだが、まだ具体案は持っていない」
「望ましい物価上昇率ということを簡単に言う人も多いが、そんなことがアプリオリに(先天的に)あるわけはないし、何かこう計算上すぐに出てくるものではないと思う。要するに、金融政策は人々に物価に関して、余計な心配をしていただかなくて、100%経済活動にいそしんでいただくためにやっている。そういう意味での経済的なウエルフェアー(福祉)を確保するために金融政策をやっている」
「人々が物価に対して心配される領域をもし仮に数字で表せば、ひょっとしたら日本の場合は過去の系譜から言って他の国よりは低いのではないかという感じを私自身は持っていると申し上げた」
だそうです。
2006/02/09
お題「何で今になって材料になるん?」
何をネタにして動いているのやら。。。。。
○量的緩和解除が3月になるかもしれない?
一昨日夕方からいきなり円が爆騰したのは必ずしもそのネタでは無いのではという見解もあるようですが、まあ一応マーケット関連のメディア的にはとりあえずそういう扱いになっているようですわな。
で、昨日のどこぞのレポートやら金融ファクシミリ新聞あたりでは3月に量的緩和解除があるかもしれない話のネタとして「3月の決定会合の週にある5年国債入札が決定会合の翌日にセットされており、普通避ける金曜日に入札が実施される」ってのを挙げていたようですが、「またそういうエエカゲンな話を・・・・」とその話を聞いて呆れるあたくしがここにいるのであります。
と申しますのは、以前から基本的に中長期国債入札を金融政策決定会合にはぶつけないというのがありまして(ちなみに決定会合の日程の方が先に決まる)、実は来月の5年債入札が金曜になってしまうのは元々致し方ないところでございます。大体からして日銀の輪番オペ(中長期国債買切)ですら決定会合の日に打たないという(こっちは日銀の話ですが)気の使いようでありますので、入札の日程はあまり関係ございませんわな。残念でした。
とは申しましても、今月末に公表されるCPIが今のところの市場予想数値+0.4%だと「3ヶ月連続でコアCPIがプラス」であって、「方向が上向き」ということで話の上では日銀の言うコミットメント3条件成就という話には持っていけますわな(個人的には早えよとは思うが)、ってことは以前あたくしも申し上げましたし、別にあたくしだけじゃなくても一番早けりゃ3月かもってのは本職の皆さんでも指摘している人は何人もいたと記憶してますが、はてさて何を急にネタにしだしたのやら。
大体からして5年ゾーンとかに売りが出てたらしいのですが、4月の解除が3月になったからと言ってそこまで売り叩くもんかと小一時間。
#まあ中期債のエクスポージャー落とす言い訳に使ったんでしょうが
○利上げが10月位になるかもしれない?
こちらに関しては毎度お馴染みの某海外レポートでそんな趣旨の話があっただの何だのという事が言い訳に使われていたようですわな。あの某レポートもそりゃまあインサイドレポートなのかもしれませんが、どう見てもトンチンカンな話をしているという印象が拭えませんでして、まああれで何万円だか何十万円取れるとは虚名恐るべし。
という悪態は兎も角、別に現物見たわけでも無いのでアレですが、聞いた噂ベースですと、次回の展望レポート(4月上旬の決定会合で公表予定)でのコアCPI見通しに関して、2007年度の数値はプラス0.7%だとかいうような(うろ覚えなんで間違いかもしれませんが、だいたいその近辺)見通しだそうな。
あたくしなんぞはその予想を聞いた瞬間に何を思ったかと申しますと、「ええっ!2007年度で+0.7%だったら少なくとも来年度一杯金利上げられないじゃんそりゃ買いですなあ」という思いっきり逆の反応を、って別に何も買いませんが(笑)。どうもその数字を聞くと最近よく言われている「実質金利マイナスがどうのこうの」ってお話に絡めて、「コアCPIが+0.7%予想だとすると利上げが早まるのではないか」という発想になるらしいです。全くもって意味が判らんのだが。つーかそもそも実質金利が「名目金利−コアCPI上昇率」で単純に出てくるものじゃないでしょうにと思うのでありますが。
まあ先日来うだうだと申し上げておりますように、量的緩和政策解除後の政策誘導金利に関しては特に決め打ちをするものではないと存じます。決め打ちしたければ消費者物価指数の先行きに関してそれなりの精度で予想をするちゅうプロセスが必要ではないかと思いますし、物価が上昇しにくいから長期ゾーンとかの金利がまるっきり下がらないって話じゃなかったんかいなと思うんですが。
今の時点ではその辺りに関しては決め打ち無用でしょう。
○政策決定会合の票決が5対4になるのではないか?
昨日と本日実施されます今月の金融政策決定会合で現状維持の反対票が増えるのではないかとか、量的緩和解除の提案が出るのではないかって憶測もあったらしいですわな。
・・・・だからどうしたの?ってツッコミしかできないのですが。ちなみに今までは7対2(2票は当預目標引下げの水野審議委員と福間審議委員)の賛成多数だったのですけれども。そもそも現時点で(その是非は兎も角として)日銀さまによる熱心な地均し(何せ最近は金融市場局長様が金融機関に向けて解除後の準備をしましょうねえって大変に判りやすいメッセージを発信してくださる位ですし)によって、量的緩和政策解除を今更引っ込めると逆に日銀の立場が無くなるのではないかという勢いですんで、今月に解除があればちょっと驚きますが、そうでないなら別に3月になろうと4月になろうと(短期市場ではだいぶ違いますが)中長期国債にそこまで大騒ぎするほどの違いはあるんでしょうかと思いますけど。ベースレートが上る(0.001%→0.01%位にはなるかもしれないけど)ような話でもないですし。
まあどちらにしても、何かポジションアンワインドの口実に使われただけのような気もしますし、単に米国債券市場に連動しただけなのかもしれませんけど、何だかなあって感じでございました。
○しかし短期国債もワケワカメ
昨日行われた3ヶ月物政府短期証券(FB)入札は、一昨日の6ヶ月TBが何故か堅調も堅調大堅調だったので、皆さんショートカバーで死ぬのを警戒して、先週発行されたFBと償還が2日しか違わない(エンドが連休明けに当たるため償還日程がタイトになった)上に中期債市場はヘロヘロだというのに前週の入札よりも強くなっちゃいまして、平均落札価格を利回りベースに直すと0.0069%(先週は0.0073%)になってしましました。一体全体何を拠り所にして入札をやっているんだこの人たちはと思うのですが。
しかも入札は強かった癖に、何故かその後の売れ行きが芳しくなかったのかそれとも売りでも食らったのか知らんのですが、後から投げ投げになってしまいまして、引け後の出合いは0.01%だったらしい(さすがにそこはビットが残りまくりらしいが)です。どう見てもハーメルンの笛吹き男(に連れて行かれる人または鼠)です。本当にありがとうございました。
まあこの短期国債とCP市場の金利がもうどうみても単に内部要因の需給だけで動いているとしか思えない事例が良く見られまして、一応金利があった(低め誘導はしてましたが)時代にマネーマーケットできゃあきゃあ言いながらやっていたあたくしから見ますと頭痛がすることの多い今日この頃なのですが、その辺りに関してはいずれまた。
という訳で雑感でございました。NY株式反発してよかったですね。
2006/02/08
お題「経済財政諮問会議ヲチ」
そのお話をする前にまずは文仁親王妃紀子殿下のご懐妊を心よりお祝いすると共に、ご無事にご出産を迎えられますよう心よりお祈り申し上げます。
慶事なので生臭い話をするのもちょっと・・・ですけれども、今国会で内閣が成立させようとしている皇室典範改正法案に関しても、未だ法案の意味が周知されていないと見られる現状での拙速な強行成立を避けられるものと思います。と書いているから当然読者の皆様お判りになると思いますが、現在の皇室典範改正法案は全力で反対するものでございます。郵政民営化法案と話は全然違うのですがねえ。って話をしだすとそれだけで凄く長くなるのでこのあたりで。
#しかし「のりこ」様はねえだろう岡田克也くんよ
で、本日のネタは2月1日に行われた経済財政諮問会議の議事要旨からでござる→http://www.keizai-shimon.go.jp/minutes/2006/0201/shimon-s.pdf
○相変わらず成長率と長期金利の関係の話をしておりますが
議事要旨の10ページ目あたりから竹中議員が本件について話をしております。本来は全部引用しないといかんのでしょうが、今回の議事要旨は全体で17ページもありますので、あたくしが「本件はこの辺で議論になってるんだろうな」などと勝手に理解した所を引用しちゃいます。
竹中議員の成長率と長期金利のお話。
『では、まず長期的なファクトはどうかについて。私が経済財政政策担当大臣をしていた時のアメリカのCEA委員長で、今、ハーバード大学教授のマンキューという有名な経済学者がいる。マンキューがCEAに入る前に、「デフィシットギャンブル」という大変有名な論文を書いているが、その中でマンキューは過去120
年、過去70 年、過去50 年のアメリカの国債金利と名目成長率の関係を整理している。答えは簡単で、過去120
年の場合も、70 年の場合も、50 年の場合も、いずれも成長率が国債金利を上回っている。ミシュキンが、国際的な比較を行っているが、他の主要国についても、成長率の方が金利より高かったということを明らかにしている。』
で、そのあとより理論的な話をしてますが、そこまで引用すると長くなるので割愛。この竹中さんの指摘に対して吉川さんはこのように指摘しております。
『最後に、個別の問題になるが、長期的に名目成長率と名目金利がどのような関係になるのか。これについても竹中議員からお話があったので、私の考えを述べておきたい。まずは長期の平均をとってみる。竹中議員の御指摘のとおり、アメリカだと成長率の方が少し高くなる。しかしイギリスだと、逆に金利の方が高くなるという関係が出てくる。いずれにしても私が指摘したいことは、多くの国で長い時系列をとると、国債市場で規制がきつい時期があった。例えば、日本の場合だと、戦後かなり遅くまで規制市場であった。民間のシンジケート等が国債を保有して、国債をマーケットで売却するようなことを禁じていた時代もあった。要は、規制金利でそれが低くなっていた時期がかなりある。そうした時期を参考にするのは適当ではない。繰り返し話しているとおり、「官から民へ」ということは、マーケットを尊重することであり、まさか規制金利の時代に戻ろうということはないはずであって、そうなると、自由市場で決まる金利ということになり、データの扱い等に注意が必要だと考える。』
で、議論のあとの方で本間議員からの指摘がございまして。
『その上(引用者注:これは議事要旨の16ページになりますので、「その上」が何を指すのかはそちらをご参照と手抜き)で金利と成長率を分離して議論できるかどうか。この点は幾分私も吉川議員に賛成であり、これはやはり連動するだろう。全くそれを分離することが金融政策でできるのだろうか、あるいはその他の手段でできるのだろうか、この辺も整理していく必要性があるという気がする。これはシミュレーションの段階で、また相当詰めなければならないテーマだと思うが、論点だけ指摘させていただいた。』
で、竹中議員はこの要旨をみるとどうもたじたじの図に見えるのですが。
『手短にするが、我々は成長モデルを議論するためにここに集まっているのではない。これから10
年、20 年の財政健全化と経済成長をどうしようかという観点から議論している。したがって当然のことながら、国債残高が発散するかというときは、国債金利を我々は議論してきたわけで、これからも議論していかなければいけないと思う。』
昨日のブルームバーグニュースによりますと、27日に行われた財務省の財政制度審議会では長期金利が名目成長率を上回ることが自然との見方で一致したそうですな。まあ長期金利の見込みを高く置いたほうが緊縮財政路線をやるのに都合が良いというのもあるので色々と政治的というか思惑も入るのかなあという気がしないでもないですが、どうも竹中先生分が悪そうですなあ。
○竹中先生やや混乱しているような気も
その金利と成長率論議の中で竹中議員はこんな話も。
『長期の金利はマーケットで決まる。しかし同時に中央銀行は、それに対して影響力を与える。極端に言葉尻をとらえるつもりはないが、金利はマーケットで決まると言ってしまえば、これは中央銀行の存在意義が問われてしまう。ここに対して金融政策というのは、なにがしかの影響を与えることはできるわけだ。』
で、最後の方では(成長モデルを議論するために云々発言の続き)このように話をしているのですが・・・・
『それと、今日の私のペーパーは1つの考え方の整理として出しているから、当然、それによってどの程度の歳出の増加があるかとか、そのときにプライマリー・バランスがどう変わっているかということは、時系列の中でダイナミックに議論するのは当たり前の話。無理に資源配分を歪めるように名目金利を低くしろなどということは全く申し上げていない。私が申し上げているのは、名目成長率と名目金利がほぼ同じぐらいの自然の運営ができるはずであるということ。』
どうも中央銀行に長期金利のケツを持って行こうというように読めて仕方ないのはあたくしが竹中さんを嫌いだからですかそうですか(笑)。
まあこの論議は正直経済学の素養が無いあたくしには難しいのでどんな本を読んで勉強すりゃよいのか教えて。計算式の入って無い本を激しく希望するのですが(←あほです)。
どうもこの議事要旨を見ていると竹中先生激しく劣勢に見えるのですが、どこぞのレポートでは首相は竹中さんに軍配みたいな事を書いていたような気がしましたが、あたくしにはそう読めませんでした。
○ところで今更気が付いたのですが
経済財政諮問会議はわざわざドメインを別に取っていまして、あたくしも久しくhttp://www.keizai-shimon.go.jp/をブックマークしていて気が付かなかったのですが、今年に入って内閣府のWebページがリニューアルされていまして、内閣府のトップページにおける経済財政諮問会議の場所が随分と引っ込んでしまっております。トップページから直接行けなくなってまして、「内閣府の政策」の一番最初に「経済財政」ってのはありますが、そのリンク先にいくと諮問会議へのリンクがあるという状態でございます。
以前は内閣府のトップページに並んでいる中で一番最初に経済財政諮問会議があり、いきなり諮問会議のドメインに行けたのですが、まあ何と申しますか担当大臣が与謝野さんに変ってちょっと位置づけが変化してきてるのかなあ何て思っちゃったりするのは深読みのしすぎでしょうか(笑)。
#引用だらけの手抜きで恐縮。
2006/02/07
お題「余りネタも無いので蒸し返しの雑談」
#蒸し返しでスイマセン。
○いやあフラットニングですか
昨日の債券市場では30年債爆発。引けでは30年が6毛強の20年が4.5毛強の10年が2.5毛強ということで30年が引っ張るフラットニング。
米国で久々に発行される30年国債の入札を前に30年債が事前に絶賛大人気だそうなのですが、それにしても市場規模だけで言えば世界一(だと思うのですが)の日本国債市場は相変わらず他所様の値動きによー反応しますわなあという感じで、日本もフラットニングのようでございます。
ご案内のように、米国では2年債と10年債で利回り逆転という状態になっているのですが、こちらでは「金融引き締め最終局面だから」ということでこの逆イールドも理解できますが、米国の4.5%の短期金利に対しまして日本の短期金利はゼロでして、ここから短期金利の引下げ余地が無い(マイナス金利をやれば話は別だが)のに、今からイールドカーブをフラットさせてどうするんでしょうなあと実に不可思議でございます。
まあ不可思議不可思議と言いつつこういうのって結構延々と続く傾向がある(その代わり反動が来た時に投資家サイドに怪我人が続出するのだが)ので馬鹿にしてはいけないのです(だからこういう相場は業者も困るが、投資家の方がもっと困る)けど。まあ本職のストラテジストの方々が色々とレポートを出しておられるようですけどあたくしもこの相場に半ば呆れながら雑感。
最近(でもないが)言われるのが「グローバルフラットニング」云々ってお話でして(水野審議委員は「ストラクチュアルル(=構造的)フラットニング」と仰せでございました)、年金資金なんかの超長期資金が増えた何てのも言われますが、どっちかというと単に低成長で金が余って運用難なので、より金利の高い物に手を出すって事のような気も致します。まあいつまで金余りが続くのかはよく判らんですけど。
外債投資をする時に「ヘッジ付き外債投資」ちゅうのがございますが、為替ヘッジをしながらその国の債券を買うっていうのはど〜ゆ〜話かと申しますと(って債券市場の人は先刻ご承知でしょうが)短期の直先フォワードで為替ヘッジ入れながら中長期の債券を買うということですから、短期金利と中長期の金利差を取りに行ってる訳ですが、主要国のイールドカーブがこんな有様になってしまうと、ヘッジ付き外債投資が全然ワークしなくなりなすわな。で、突っ込む所もございませんので日本にでも突っ込みますかおお短期金利と20年金利の金利差が2%もあるよこれは凄いって話になるらしいです。
そんなん短期金利が上昇しだしたら一発で死亡なのではないかとシロウトのあたくしは思うのですが、まあ確かに短期金利が上昇すると申しましても1%やら2%になるのはいつの話よって返されますといやお説ご尤もとか言いそうですな。何か違和感は拭えないが。
もう一丁あるのが変動利付国債のヘッジでって話なんですが、それは在庫抱えている業者がヘッジというよりはディーリング感覚でやっている(中期的にはヘッジの相関はするけど、短期的には全然ヘッジになっていない事も多々ある)とか、どちらかと言うと足の速い資金でディーリングみたいにでやっている投資家さんとか、変動国債を投げさせようとして仕掛けているどこぞの人たち(最後のはあくまで憶測ね)とか、本当の意味で変動国債のヘッジが入っているのかなあというのは少々疑問を感じつつ(いやまあ勿論15年変動利付国債は商品性としてイールドカーブにフラット化圧力を掛けるものではありますが)。大体からしてエキゾチック(って程でもないが)な商品に投資しておいてヘッジにプレーンな商品を購入するって話が逆だろとは思いますが。
などとダラダラと書いてしまいましたが、これから金融を引き締める(いつから始まるか知らんが)国のイールドカーブと金融引き締めそろそろ打ち止めの国のイールドカーブを一緒くたにするなと言ういつもの結論ですな。
○しかしまあ正常化ですかそうですか
先週末に日銀の金融市場局長が量的緩和解除に向けて金融機関の皆様準備をちゃんとしましょうねって話を時事通信にしたというのを昨日申し上げましたが、一々手取り足取りは如何なものかとかいう野暮な話は本日は置いて別の雑談を。
最近債券市場よりも短期市場に近い方を良く見るようになっているのですが、この市場って最近は一応金利がそれなりに動くようにはなっているように思えます(長期金利から見ると超ミクロの決死圏ですけど)って以前をあまり真面目に見てませんでしたが、感覚的には11月くらいに6ヶ月とかの金利が動きだして、1月くらいからは3ヶ月くらいの金利も動くようになってきましたですかなあと言った所。まあ量的緩和解除の時期が具体化してきたから当たり前と言えば当たり前ですが。
でまあその金利が動くのは結構なお話なんですが、どう贔屓目に見てもこの金利の動きは「お前ら単に需給だけで他市場見てねえだろう」という物にしか見えませんな。まあ昔から短期市場には商品ごとの金利裁定が全然働かないとか、需給だけで動いてるとかいう傾向はあったのですが、それにしてもちょっとどうよ感が漂うのでございます。あまり具体的な事例を出すのはちとアレでございますが、短期国債(のうち3ヶ月くらいの奴)とかCPとかの金利とかの上げ下げっぷりは何かまだ「需給だけで動いてるなあ」って感を強くするものでございます。
まあ無茶苦茶に動いてくれた方があたくしとしては収益機会があって結構なんですけど、まあ市場の先行きって事を考えると収益機会がありゃ良いってもんでもございませんわな。将来の金利感を反映した市場金利の形成ってのは中々大変なのではないかと思う今日この頃でございます。
と、イマイチ考え中モードなのでとりとめの無いはなしになってしまいましたな。
2006/02/06
お題「月曜なので雑談/武藤副総裁記者会見」
なぜか雑談が先行する訳だが。
○よーしパパ脊髄反射しちゃうぞー
あまり深い考えなく反応するのを「釣りに引っ掛かった」とも申します(苦笑)。
連合会長「正社員賃下げも」パート格差是正で
http://www.chunichi.co.jp/00/kei/20060204/mng_____kei_____000.shtml
中日&東京新聞のインタビューで連合の高木会長様が仰せだそうです。
いやまあ労働組合員じゃなくなってからn(1≦n≦9)年程経過しておりますので、こいつの食い扶持があたくしの懐から鐚一文たりとも出ていないのが唯一の救いとしか言いようの無いニュースでございますな。もうね、アホかと馬鹿かと。未組織労働者の待遇改善をして全体の底上げを図るのがお前らの社会的使命ではないかと小一時間問い詰めたいとはまさにこのことでございますわな。発想が相変わらずデフレ不景気状態から一歩も出ていないのではないでしょうか。ちなみに別のニュースを見るとこんな感じなのですが。
http://www.asahi.com/job/news/TKY200602030373.html
「格差社会の解消という社会的使命を担った交渉でもある。こんな条件のいいときに、成果を上げられないようでは労働組合失格と言われても仕方ない」だそうですので、連合会長そのものが失格ですなあ。
まあ正論かも知れんがお前が言うなと。どうも最近その手の発言があちこちで目立つように思えるのは、偉い人たちの面の皮が厚くなっているのかなあとも思う訳ですが、えっ?あっしがひねくれているからですか?
○武藤副総裁記者会見
http://www.boj.or.jp/press/05/kk0602a_f.htm
・道しるべ云々に関して
『講演でも申し上げたように、展望レポートの見通しに沿って先行きの経済が進展すると仮定すると、2006年度にかけて、金融政策の枠組み変更の可能性が次第に高まっていくと思われる。そういう状況の中で、どのような透明性向上のための対応をしていくか、そしていつそれを行っていくかということは、コミュニケーションポリシー、あるいはマーケットとの対話といった観点から大変重要であるという基本認識を持っている。これが、「道しるべ」という言葉を使って申し上げたかったことである。』
『具体的にどういう枠組みが、金融政策の透明性を向上させるのかということについては、中央銀行を取巻く環境によっても異なり、従って国によっても異なり、様々なバリエーションが存在していると思われる。そういう中で、よく言われるフォワード・ルッキング・ランゲージといった言葉・文章の方法が良いのか、なんらかの数値的なものがあり得るのかという点については、これからの検討課題であると申し上げたことは、今でも変っていない。特に、「道しるべ」という言葉の中身について、現時点で予断を持っているということではない。』
ということで、「道しるべ」に関しては武藤副総裁はイメージをもっているのかも知れませんけども、何をどうするという話に関しては明言を避ける格好でございますな。で、引用し続けると長くなるのでインタゲに関してですが、『私は、現時点で申し上げれば、インフレーション・ターゲティングについては検討すべき多くの課題があるのではないかと思っている。』だそうです。
・先行きの政策に関して
『(問)先ほどの透明性の向上について、フォワード・ルッキング・ランゲージという言葉があったが、透明性を向上させるために、その時点時点の日銀の考え方を説明するだけでなく、将来の金融政策の予測可能性を高めるという観点で、検討する必要があるという考えを持っているのか。(他もう一つ質問がありましたが)』
『(答)フォワード・ルッキング・ランゲージと申し上げたことに対するご質問の趣旨は、その時々の状況ではなく、将来の政策の方向性を具体的に示すかどうかということを尋ねられているものと理解した。将来の政策の方向性について、どこまで言えるか、何が言えるか、ということを含めて、検討されることだろうと思う。FRB(米連邦準備制度理事会)がこれまで行ってきたことをイメージされながらのお尋ねかもしれないが、それを排除するつもりもないものの、それとは違うものもあるかもしれないので、予断を持っていないと申し上げた次第である。何らかの透明性向上のための配慮は必要だということを基本に、どうしたら良いか考えていくが、中身については今後の検討課題と申し上げさせて頂きたいと思う。』
まあいずれにせよ、金融政策の予測可能性を高めるために何らかのアナウンスメントを政策決定会合で行うというお話なんでしょう。それが何か「地均し」になられても困るのですけれども。
何か時事メイン報じるところによりますと、日銀の金融市場局長様が量的緩和解除に向けて各金融機関は準備しましょうねってコメントをしているとか聞きましたが、そういう「予測可能性」はどうでもいいんで、つーか一々手取り足取りやってたらいつまで経っても金融機関の経営の中の人たちが経済状況じゃなくてお上の方を向いたままになっちゃうんで、本当にそれが長い目で見て金融機関のためになっているのか考えた方がよいのではないかと存じますが。ってまたいつもの話になってしまった(汗)。
・量的緩和解除後の金利に関して
『講演で申し上げたのは、新しいことを申し上げたつもりはなく、この考え方は、基本的に展望レポートで既に述べられていると思っている。お尋ねの1月の中間評価において、上振れて推移するという評価の部分との関係ということであれば、確かに経済全体についてはそういう評価もしているが、消費者物価については大体展望レポートに沿った展開であると評価している。この点、特に上振れたとは私どもは考えていない。そういうことを前提として、量的緩和政策解除後、ゼロ金利がどのくらい続くのか、あるいはどのくらいの時点で、経済物価情勢に見合ったということで金利が引き上げられていくのかということについては、今の展望レポートの中間評価の段階で、そのお尋ねに答えるだけのデータは揃っていないと言うべきだと思う。ここにあるように、「まさに経済・物価の展開や金融情勢に大きく依存する」というのは、これから毎月出る経済・物価のデータ、金融情勢に依存するのであって、今暫くこの状況を観察するということである。そこから先のことは、「経済がバランスのとれた…」以下の一文に全て集約されていると自分は思っている。』
えーっと長くなりましたが一つの質問に対する答をまるまる引用しちゃいました。
要するに、(1)量的緩和解除と同時の政策金利引き上げ(0.25%とか)は現状段階では無い、(2)将来の金利政策に関しては全くの白紙。ということでしょう。CPIに関して「特に上振れたとは私どもは考えていない」という事ですので、まあもともとの見通しが強気っちゃあ強気ですけど、現状では引き締め方向に傾斜しているという訳でも無さそうな感じ。まあ結局将来に関してはあくまでもその時次第ちゅうことですわな。量的緩和解除だけは既成路線のようですが(笑)。
とまあそういうことで。物価や景気に強気じゃないのなら判りますが、何かちょっと債券市場はゼロ金利の長期化見通しに傾斜気味なんじゃねえのかという気がややするのではございますが(って先週後半は金利上昇しましたけど)。
2006/02/03
お題「武藤副総裁講演」
えーっと、株を大量取得した人が経営陣(と従業員)に「MBOを提案」すると言うと横文字使っているから格好良さそうに聞こえるんですけど、それは「買占め屋が会社に株の肩代わりを要求している」というのとどこがどう違うのかと小一時間問い詰めたいですなあ。
などという悪態は兎も角本題ですが。
10年国債入札の日に講演とは困ったもんですが、武藤副総裁だけに物凄い勢いで手堅く纏まった講演テキストです。しかしあのテキストを読んで「低金利長期化」に決め打ちするのはどうなんでしょ?とまず結論を先に申し上げて。
武藤副総裁講演テキスト
http://www.boj.or.jp/press/05/ko0602a.htm
その後の記者会見関連ニュース(ブルームバーグ)
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=90003017&sid=aMU2SxYqgJ5g&refer=jp_news_index
○受け取られるニュアンスが「ハト派」に聞こえたのでしょうか
講演テキストを読んだ限りではどう見ても「決め打ち禁物」にしか思えないのですが、日経クイックでは講演に関して「当座預金残高引下げは情勢を見ながら」というフラッシュを打ってましたし、上記ブルームバーグの記事のお題が「量的緩和解除まだ判断するのは早い」となっています。その場で講演や記者会見を聴いた人が受け取るニュアンスが「ハト派」に見えたということなのかなあとは思うんですが、雰囲気わからず字面を見ていると、そんなにハト派発言をしているようにも思えず。
と申しますのは、昨年6月23日に「武藤副総裁ハト派の旗幟鮮明に!」と思わせる講演を行って(昨年6月24日と27日のドラめもんでネタにしましたのでご参照を)たのですが、9月2日のブルームバーグニュースとのインタビューでは「何かこの前と勝手が違うんですけど」ってお話になって(こちらは昨年9月5日のドラめもんでネタにしてます)ましたな。この時には武藤さん『わたしとしては、6月の会見でそれほど難しいことを言ったつもりはない。あの時申し上げたかったのは、4月の経済・物価情勢の展望(展望リポート)の見通しだけに基づいて量的緩和政策解除の時期を予断するのは適当ではない、ということだ。現実の政策判断は、今後の経済、物価情勢を十分見極めたうえで判断していくものだということを申しあげたかった』ってお話をしております。
まああの時は金融政策論議は無茶苦茶(というか今も論理は破綻してますが)だわ、何か複数の審議委員が超前のめりになっていた(ので相場の方疑心暗鬼になっていた)ので、それを抑えるというニュアンスもあったんでしょうかねえとは思いますが、結構武藤さんもタヌキはタヌキだなあとこの時に思った訳でして。まあ市場との対話って言ったってメディアとの対話もうまくなきゃあいかん訳でして、そーゆー意味では武藤さん上手いのかなあとも思いました。
○先行きの金融政策に関して−良く見りゃとにかく「フリーハンド」ですな
こちらの講演ですが、内容はかなり網羅的で、しかも日銀が何をどう考えているのかというのを丁寧に説明しておりまして、まあ勝手な想像をすると日銀の企画部門の人たちによる渾身の作品ではないかと思うのですが(ってちなみにそれは別に武藤副総裁がオリジナルの意見で言わないと文句を言っている訳ではないので念の為)、色々と読むポイントがございます。何かちとそれは日銀さま何となく我田引水チックじゃネーノか(貸出約定平均金利の低下を金融政策効果と絡めてるようにも感じられるところとかね)つーのもありますけど。まあとりあえず今朝は一番市場が気にする「先行きの金融政策」に関る部分に関して。
講演後半の「日本銀行の金融政策運営」という部分に関して。
『枠組みの変更に当たっては、金融調節の主たる操作目標を日本銀行当座預金残高から短期金利に変更するとともに、日本銀行当座預金残高を所要準備の水準に向けて削減していくこととなります。各金融機関は、量的緩和政策のもとで、長期間にわたって多額の当座預金残高を前提として資金繰りを行ってきています。短期金融市場の機能はいずれ回復するとしても、枠組み変更後しばらくの間は、金融市場における円滑な資金の運用・調達という点から注意が必要になると考えられます。それだけに、当座預金残高の削減にあたっては、金融市場の状況を十分に点検しながら行う必要があると考えています。』
で、この部分に関してクイックがフラッシュを打っていたのは先ほど申し上げた通り。別にややこしい事を言っている訳ではなくて、字面だけみているとごく普通の話をしているに過ぎません。過大評価するのは禁物。
『ここまでは、所要準備を上回る当座預金が存在することになりますので、ごく短い金利は、多少の振れはあるにせよ、基本的にゼロ%となります。量的緩和の効果は、現在、短期金利がゼロ%であることが中心となってきていますので、枠組みを変更すること自体、政策効果の面では大きな変化がないと考えています。』
これは最近お得意の理論。それに関するツッコミをするのは疲れたので略。
『むしろ、物価が上昇していく中で、実質金利はさらに低下することになります。つまり、こうしたプロセスの間、短期金利がゼロ%であることを考えると、景気・物価に対する刺激効果は一段と強まっていくことになると考えられます。』
ということで、ここも最近の公式見解でございます。
『その後、極めて低い金利水準を経て、次第に経済・物価情勢に見合った金利水準に調整していくという順序を辿ることになりますが、この過程における金利水準や時間的経路は、まさに経済・物価の展開や金融情勢に大きく依存します。』
ということでして、まあ先行きの金利に関しては経済物価情勢次第ですわなあという感じでして、特に決めうちをしていないです。ただ、今回の講演でも同様に述べていますが、物価が上がりにくいというのであればそんなにガンガン利上げをする事はないのでしょうなあということですかな。
『この点、経済がバランスのとれた持続的な成長過程をたどる中にあって、物価の上昇圧力が抑制された状況が続いていくと判断されるのであれば、引き続き極めて緩和的な金融環境を維持していけると思っています。』
ただまあ「低金利の刺激効果が一段と強まっていく」というのが正しいのであれば、物価の上昇圧力が抑制された状況と両立したままって訳にいくのかなあという疑問は個人的にはあるんですが。
○その他としては・・・・
箇条書きで。
・物価動向に関しては強気、雇用環境の改善(本当なのかという話は置いて)に伴うマインド好転に触れ、また大都市圏の一部の地価に関して「経済の先行きに関する人々の見方が好転しつつあることを示唆するものとして注目」と指摘
・日経新聞インタビューで言及のあった政策運営の「道しるべ」に関しては特に言及なく、インタゲなどの導入に関しては否定も肯定もせず
・記者会見では「金融政策が目指すべき物価上昇率が何%かというのが重要なファクターになるが、そういうことがなかなか明確に決めがたい」「わたし自身は現時点で申し上げれば、インフレターゲッティングについては検討すべき多くの課題があるのではないか」(ブルームバーグニュースより)と発言しており、まあ消極的なニュアンス
・ブルームバーグニュースのニュースのお題にある「まだ早い」はよくよく記事を見ると「確かに昨年10月にゼロ%、11、12月にプラス0.1%の上昇となったが、これをもって条件が満たされたかと言うことであれば、今申し上げたようなデータなので、まだわたしは判断をするのは早いと思う。引き続き状況の推移を見ていく必要があると考えている」という発言であり、今すぐに解除する状態では無いと言っているに過ぎないので、ちとアレですな。
といった所で。まだまだありそうですが。。。。
2006/02/02
お題「また○○か!」
不思議な入札でした。
○またも事前予想より強い入札
昨日のFB(政府短期証券)の入札ですが、連休の関係で償還が前週に入札の行われたFBから14日も伸びてしまいまして、5月15日償還となりました。前回は5月1日償還でして、昨日申し上げたように量的緩和政策の解除(しかし解除ねえ・・・)として本命視されているのが4月28日らしいので、まあ解除になっても直ぐ償還だからという事で、割と平気で平均落札価格の利回りが0.0039%とやっておりました。まあその時点でCPIが発表されていませんでしたけど。
で、昨日の入札ですが、さすがに警戒感も出たようでWI取引では0.007%から0.008%での出合いが前日あたりにあったようでして、入札直前も0.008%かもしかしたら・・・という感じだったらしいのですが、入札の蓋を開けてみると平均落札が利回りで0.0073%、最低落札は0.0081%だったのですが、按分比率が2.5%じゃあ入ってないに等しい入札となりました。
落札結果発表後、ショートカバーっぽく0.006%まで買われる場面があったようなのですが、どうも追随の買いは特に見られずで、値付けの香りもする出合いだったようです。実力は0.007%らしい。
○で、その前後の動きを妄想する訳だが
・・・・という入札だったのですが、市場推定の落札結果を見ますと、一昨日2年国債を沢山高いところでジャンピング大量落札していたどこぞの業者様が1兆2千億円ほど落札をされていたようです。
この一連のインプリケーションを例によって真面目に考察すると、量的緩和解除の時期は4月28日じゃネーノというのが市場の平均的な見方(13週間とか14週間とかの債券利回りですから、真面目に計算するとどこで解除になったらブレークイーブンとかは判るのですが、今日の所は面倒くさいので省略)という事になるんですけど、例によって不真面目に考えますと・・・・・
前週の27日金曜日には全店手形買入オペで突如落札金利が上昇して最低落札利回りが0.011%1本値になって(1月24日の全店手形買入の最低落札利回りは0.006%で平均落札利回り0.009%)おり、その時は「いやあCPI効果ですかなあ」などと思っていたのですが、まあこのオペも結構ジャンピング応札でして、こりゃどこかの大手が一発で入れたんでしょうなあという話になっておりました。
まあ手形オペの金利が上昇すれば短期市場的にはちと不安感が台頭する訳でして、昨日の入札もこりゃちょっとしんどいかもしれませんなあなどという感じも出た訳ですが、何か2年債に引き続きどこかが大量購入したようでして、手形オペ突っ込んで雰囲気悪くして入札前に売り込んで大量落札ですかそうですか大変ご苦労様ですという所ですな。
・・・という不真面目な考察部分は事実から勝手にあたくしが類推した憶測ですので、内容の真偽に関しては全く責任を取りませんのでよろしく。
しかしまあ一昨日の2年入札と言い、「また○○か!」と(大外しの妄想かもしれないけどね^^)いうところで。
ちと疑問に思うのは、昨日の入札のオファーの時に来週入札のFBの概要が発表されているのですが、来週のFBの償還日が5月17日でございまして、今回のFBの2日後に償還が来るということになります。いつもだと1週間の感覚で償還が来るところに対して、次回債償還まで2日しかないFBをそんなにせっせと買う必要があるんでしょうかねえ。
○まあ一応FOMCステートメント
一日遅れですので既に皆様ご存知かと思いますが、あたくしの備忘録代わりに。
金融政策をどうしますかってくだりのコア部分。
(1月)『The Committee judges that some further policy firming may be
needed to keep the risks to the attainment of both sustainable economic
growth and price stability roughly in balance. 』
(12月)『The Committee judges that some further measured policy firming
is likely to be needed to keep the risks to the attainment of both sustainable
economic growth and price stability roughly in balance. 』
measuredを外して、likely to be neededをmay be neededに入れ替えたという英語の試験のような変化ですが、まあ要するにこれって次期議長にあまり手かせ足かせを嵌めないようにしようってことでしょうな。
景気の見方に関する部分。
(1月)『Although recent economic data have been uneven, the expansion
in economic activity appears solid. Core inflation has stayed relatively
low in recent months and longer-term inflation expectations remain contained.
Nevertheless, possible increases in resource utilization as well as elevated
energy prices have the potential to add to inflation pressures.』
で、実を言うと最初の1文以外は12月と同じですので、12月分は最初のところだけ。
(12月)『Despite elevated energy prices and hurricane-related disruptions,
the expansion in economic activity appears solid.』
経済指標がunevenですかそうですか。ということで、景気に関する見方に関しても決め打ちを避けた格好になっています。こちらも景気への見方がどうのこうのと解釈するよりはバーナンキ氏にフリーハンドを渡したと見るのが自然な解釈のような気がする。
といったところで。
2006/02/01
お題「量的緩和解除雑考」
という話を書こうと思っていたら本石町日記さんが昨日の夕方に詳しいエントリーを投入していた事に寝坊した朝に気が付き、只今物凄い勢いで焦っているあたくし(汗)。
まあ量的緩和解除してゼロ金利継続する位なら別に緩和解除せんでもええんじゃねえのとは今でも思うのでありますが。(市場が本命視する)4月に解除してもゼロ金利を年内引っ張る位なら、あまり根拠のない物凄いドタ勘話で恐縮ですが、量的緩和を夏辺りまで引っ張れば解除即利上げができるような気がしますし、物価動向が予想に反した場合はそのまま引っ張ればいいんだから無問題。
ま、今となっては引き返せないんでしょうが・・・・
○本石町日記さんのご指摘に関連して
だいたいドラめもんをご覧になる方は本石町日記さんもご覧かとは存じますが、最新のエントリー→http://hongokucho.exblog.jp/4098219
いやもう大変に良く纏まっています。何か補足することがあるかなあと思って考えますと、この中にある「資金放出側のクレジットライン問題」というのと「日中の資金偏在」は結構ややこしいかもしれませんな。クレジットライン問題に関しては、数年前までの信用問題で大騒ぎモードの影響によって資金放出側で格付けでガチガチに縛っていたりするのがそのままになっているというケースが多いのではないかと思料。
まああとは別の問題になりますが、主戦場を最近短期にシフトしておりますあたくしが7年ぶりとかに真面目にヲチしてますとですな、何というかお前ら横並び丸出しでやってねえかと思う次第。大手銀行が集約されてみずほ2行とあと2行体制になっちゃったというのが影響してるのか、若い衆しかいなくなって相場になって無い時代しか知らないせいか判らんが。金融機関経営という点で言えばメガ化も仕方ないのでしょうけれども、市場って観点だと、参加者の集約化はあんまり宜しくはございませんなあと思うのでありました。
本件、興味深いネタですのでまたいずれ別の機会に。
○2年国債入札を見ると「2年間で利上げ1回」」か
昨日の2年国債入札。前場から2年国債だけじゃなくてスワップの払いだとか中期ゾーンの売りだとか何か今更「おいおい」って感じの状態だったようでして、前場の終了時点では2年新発債の入札前取引の気配は0.32%−0.325%。ところが入札結果はと申しますと、最低落札価格が99.965円と、0.317%相当でして、何のこっちゃという感じでございました。市場推定では大和証券SMBCが5000億近くの大量落札のようで。
で、まあこの入札を真面目に評価すると、やっぱり「年内の政策金利引き上げ」はまだまだ市場コンセンサスになってないんですねえというのと、「2年間で利上げ1回、2回あっても2回目は2年後にかなり近い段階」という読みになっているんでしょうなあという所ですな。理由は昨日書きましたので(ってあのざっくりした分析でよいのかという議論は華麗にスルーしておいてください^^)割愛。
もうちょっと不真面目に分析しますとですな、先週末に掛けて2年が急に売られているわけで、昨日も申し上げましたが、0.23%とかやっておいて0.3%まで売りこむとはよーやりますなって感じですが、実弾売りも出ていたそうですし、まあどこかの投資家様が頑張って売って今回の入札で拾いなおしということでございましょうか。まるでディーラーですなご苦労な事ですなあという所で。
ま、もしあたくしの想像が正しくてでかいポジションを利用して「ポートディール」みたいな事をやってるんだったら、個人的感想としては「それやってるといつの日か相場からしっぺ返し食らうから程々にしといたら」と思いますけどねえ。
○本命は4月28日らしいのですが
量的緩和解除の本命として市場が考えているのは4月28日の決定会合らしいです。(ちなみに決定会合の日程はこちら→http://www.boj.or.jp/seisaku/05/pb/s051216.htm)で、このコンセンサスにあたくしは「???」なのですが。
と申しますのは、4月28日だと月末な上にその後がゴールデンウィークになる訳で、解除やった翌日が実質月末なのにその週が2日しか営業無いという事で銀行の現場的にはかなりてんてこまいな時ですし、為替決済や手形交換も物凄い勢いで件数のある日がぶつかりますわな。
その点で申し上げますと、4月10日、11日であれば、その当日以降の決済がそんなに忙しくない時期にぶつかりますんで、実務的な問題を考える(というのが邪道と言えば邪道ですが、爆)と、4月にやるなら11日じゃネーノと思うんですがどうでしょう???ちなみにあたしゃー3月にやっても全然おかしくはないとは思いますが。今月末に発表になる全国CPIはコアで+0.4%とかが予想されてますが、その数字だったら今までの日銀の話の進め方だと解除あっても不思議ではない。
ここまで量的緩和解除で盛り上げて(?)おいて4月末までやらないとなると、日銀はまたマッチポンプかと悪態をつかれる事必定でございますので(本当か??)、5月というのはやや考えにくいですが、まあそこまでなら引っ張れるかなあ。
○確かにこれは新手のネタですな
田中秀臣先生のブログ「Economics Lovers Live」で気が付いたのですが・・・・
http://reflation.bblog.jp/entry/269773/【新手のネタか】須田氏再任
結局竹内氏の審議委員就任話は毎日新聞飛ばしちゃいましたなあということだったようなのですが、エントリーで記事中の再任理由を引用して田中先生が『一時の微苦笑をあなたに。』と。あたくしは微苦笑どころか飲んでいた紅茶で霧吹きをやらかしそうになりましたが、危うく踏みとどまり鼻に・・・・(^^)
いやあのこれまでの議論を骨抜きにしているのでは・・・・
ということで、これはきっとニュースソースに話をした政府筋の人が皮肉を言っているんですよ。と思ったのですが、よく見るとソースが毎日新聞か・・・・・orz