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2005/07/29

お題「ちょっとヒヤリとした2年債入札/総裁記者会見」

本題のお話をする前に毎度お馴染みの日銀Webですが、昨日は日銀のWebに「金融機関のリスク管理高度化に向けて」というお題のペーパーが出されています。バーゼルU絡みのお話のようですが、3部構成になっていまして、量が大変多いので全然読んでいる暇はございません。が、さすがにこれは債券業務に関る者としては金融機関経営に影響する話なので読む必要はあるかなと意気込んでいますので週末に読んでみようかと思っています。とここで宣言すればさすがにナマケモノのあたくしも読むでしょうと自分に鞭打つのでありました(笑)。

http://www.boj.or.jp/set/05/fsk0507a_f.htmからリンクがあります。


で、今朝はCPIと鉱工業生産の発表です(寄り前の発表だけど)。

○ちとヒヤリとしましたが

昨日の2年国債入札。朝っぱらからいきなり債券先物は下で寄るわ2年債はのっけから1毛甘ヒットとかやるわユーロ円金先は売られるわと「おいおい」という展開でございました。前場は先物がやたら売られてその間に長期債は先物対比かなり確り(先物VS10年で1毛くらい10年がアウトパフォーム)になりました。

で、前場引け時点での2年新発国債の気配は0.115%(99円97銭)オファーの0.12%(99円96銭)ビットで最終出合いは画面上では0.12%でしたが、まぁ実際は0.1175%(99円96銭5厘)となっていましたんで前場引けの実勢は99円96銭5厘ちゅうことで。

いつもの馬鹿過熱入札だとこの場合99円98銭からの入札となるのですが、さすがに今回は警戒感もあったのかどうか。応札の刻み幅が5厘になった事も功を奏しまして、落札結果は平均99円97銭1厘で最低99円96銭5厘の按分16%と穏当な落札結果になりました。

発表後業者間売買で0.12%を叩くアホウもいたようですが、そこで買いがスパスパ入りだして、その後ゲロゲロ状態だった周囲の債券も確りしだしまして、0.115%がオールテイクンした所から今度は債券先物も上昇しだすという展開になりまして、勢いとは言え債券先物が140円10銭を上回ったのには顎が外れそうになりました。

相場が戻ると下げ局面でやたら先物対比堅調だった長期債の勢いが大失速して、先物は10年対比強くなってしまいましたので、まぁ昨日の戻りは先物の買いで戻ったという事でしょうな。結局のところ、前場は2年国債入札を懸念していた人たちの先物売りに最終投資家さまの押し目買いがぶつかっていて、後場2年国債が入札後に堅調推移してきたのを見て前場売っていた人が買い戻しを入れたっていう理解で宜しいのかと思います。

終わってみれば先物140円に5年0.5%、10年1.3%、20年2%の(若干違いますが)ポイント近辺で終了してますので、まぁここが暫くは相場の起点ちゅうイメージで、今日の経済指標に素直に反応して動く事になるのではないかと勝手に想像しております。


○総裁記者会見

記者会見要旨はhttp;//www.boj.or.jp/press/05/kk0507b.htm

・表現は控えめかもしれないけど景気の先行きに自信ですな

幾つかの質疑応答の応答部分を注釈なしで引用しておきます。

『本日も情勢をつぶさに点検した。前回の金融政策決定会合以降、多くの経済指標が公表されているわけではないが、個別の情報を刻々と把握している限り、日本経済全体としてじわじわと良い方向に動いているという印象を持っている。公表された指標等は、日本の景気が踊り場脱却に向けて着実に回復を続けていることを裏付けるものであったというのが、本日の金融政策決定会合で共有された判断である。』

『物価に関しての私どもの判断は、先程も申し上げた通り、前回から変わっていない。人によっては、あるいはそれぞれ持っているデータによって、予測のニュアンスに幅があることは当然である。しかし全体として、前回以降、物価についての判断を私どもは変えていない。 あえて言えば、今年末から来年初めにかけて、生鮮食品を除く消費者物価指数の前年比がプラスの領域に入っていく可能性が少し見えている。そういうことまでは言えると思うが、あくまで幅を持ってこれをとらえる必要がある。』

『前回以降、新しい経済指標が多くは発表されていないと申し上げたが、新しく発表された数少ない経済指標の中では、輸出入に関する統計がある。輸出の動向を見ると、全世界向けの輸出として全体をとらえた場合には、輸出の伸びに少し回復の兆しが出ており、これは良い指標と見ている。やや仔細に見ると、中国向け輸出はあまり好ましくない状況であるが、全体としてみると、少し良い感じが出てきている。一方、内需を見ると、設備投資は前回以降新しい数字が出ていないが、夏のボーナスを中心に家計の面に経済の良い影響が均霑(きんてん)してくるという印象もあり、足許の動きにも少し良い感じが強まってきているとみられる。従って、地味だが内需と外需の両方のバランスが比較的良い、地道な回復というシナリオが、新しいデータで少しずつ補強されつつある。』


・当座預金残高目標の「技術的」引下げを排除してませんな

こちらは微妙な質疑応答です。

『(問)量的緩和の枠組み修正という意味を確認したい。量的緩和の枠組み修正の中には、量的緩和の解除はもちろん入ると思うが、現在の当座預金残高目標を積極的に切り込んで減額していくということも、この枠組み修正に含まれると考えて良いか伺いたい。』

『(答)量的緩和の枠組みについては、繰り返して申し上げている通り2つある。1つは、所要準備額を大幅に上回る流動性を供給すること。これは、30〜35兆円程度というような具体的な数値とは切り離した概念である。もう1つは、消費者物価指数の前年比変化率が安定的にゼロ%以上になるまで続けるということである。この2つに修正を加える以前の段階は、枠組み修正とは言わない。』

『私が時々申し上げている、積極的に目標値を切り下げるとは、市場条件の変化に則して私どもが受身で何か調整する必要があるかどうかという問題と切り離して、目標値を積極的に切り込んでいくことがあるかどうか、ということを言っている。積極的に切り込んでいくというのは、枠組みの修正に着手したということになっていくだろうと思う。それ以前の段階で──5月に「なお書き」を修正したのもそうであるが──、市場の条件が変わったことに対して受身で現実的な対応をするというのは、基本的なスタンスの修正ではない。別の言い方をすれば、量的緩和の枠組みの修正ではないと明確に言える。そこはセパレートして考えて頂きたい。(以下長いけど同じ話なので割愛)』

要するに「市場の資金需要が乏しく、下限割れを延々と続いた場合の技術的対応はするかもしれませんよ」という事でしょう。会見の度に微妙に強調する部分が違っているようにも(その場にいないからわかんないけど)思えますが、どうも「技術的対応による当預目標引下げ」の願望は強いものと見ましたが
どうでしょうか?

ただ、最近あまり刺激的な言い方をしないのは、景気と物価の先行きに自信を持っているので、そんなに当預目標下げに拘泥しなくても自然と量的緩和政策の解除条件が満たされてくるでしょうって思っているんでしょうかね。


・郵政問題への質問で政治にコメント

会見要旨では最後から2番目の質疑応答部分に相当しますが、例によって本石町日記さんが取り上げておられますので、テキスト引用はせずに、当該エントリーのURLをご紹介しますのでそちらをお読みくださいませ(と手抜き)。

http://hongokucho.exblog.jp/3199278/

ここで『日本の民主政治のレベルを上げる方向』というところに対して、「では政策委員会での金融政策議論のレベルも一つ宜しく」などという野暮な突っ込みをしてはいけませんのでご注意ください(^^)。





2005/07/28

お題「ノーケアーの筈が/中国人民元切り上げ話にひとこと」

相場が動きませんなぁと書くと相場が動く・・・・・orz

○いい加減に黙れや「関係者」(怒)

昨日の金融政策決定会合は1日日程のくせに11時台の昼休みタイムに目出度く終了と言う事で予想通りの平穏無事会合。今回はとうとう結果発表に併せて「賛成多数」の票決内容が発表されることになって、今回の結果は「7対2」とのことで、まぁこれも予想通りでしょう。票決に関してはここのところ毎度毎度話題になり総裁記者会見で質問されるうえに、会合出席者の中で制度の趣旨を理解してないで会合の内容をペラペラ喋るアホウが1名いるのでそもそも記者会見の前に内容がリークされてしまうので、まぁある意味現状追認の発表という感じ。

まぁそこまでは良かったのですが、昨日の債券相場を動かすきっかけになったのはまたまた毎度お馴染みの「関係者」発言だったのが馬鹿馬鹿しい限りなのですよこれがまた。後場寄り付き直後の12時31分に日本語版ロイターで出てきたフラッシュが2発ありまして・・・・・

「踊り場脱却と言い切れないが、経済指標安定し改善の認識でほぼ一致」「秋から年末にCPIがプラス推移との見方が複数あった」

で、この2発目のフラッシュに相場は思いっきり反応する形になってしまい、中短期ゾーンと債券先物に売りが嵩む展開。時間軸短期化とか政策金利変更とかいう話題に弱い2年あたりの現物債のヘロヘロ振りが豪快でして、日本相互証券の債券引値の2年234回債が前日比1.5毛甘の0.095%と下落するわ、(引値ベースではそうなってませんが)3年ゾーンあたりの現物債が5年カレント物あたりと同じくらいの勢いで売られるわと激しく香ばしい相場展開。

まぁ週末のCPI発表を前にここのところ中短期ゾーンの現物債が重いという傾向が続いていたので、5年47回債の100円(=0.5%)は下げ止まりポイントになるのか???だったのですが、物の見事に後場寄り付き後の売りでぶち抜けてしまい、結局昨日は10年1.3%でいったん下げ止まったような形にはなりました。

いやまぁ決定会合結果にノーケアーだけど、週末の経済指標が気になりだす所に「CPIがプラス推移」という心理的インパクトのある発言が出たのは効きましたわなあ。物価や経済の先行きに日銀政策委員会が強気ですよってぇのは前回までの総裁記者会見や日銀の出している金融経済月報に粘着しているあたくしあんどあたくしの駄文を飽きもせず詠んで下さっておられます皆様にして見りゃ「そんなの前から判ってる事じゃん」というところではあるのですが、何事にも市場心理とかタイミングっちゅうもんがございまして、これが引け後の総裁記者会見で同じような発言がでたとしても、身構えているのでここまで動かなかったかも知れませんな。いやまじで。

何と昨日は午後1時にオファーされた手形オペ8000億円で何を考えたのか0.002%で全額落札した人が一人(じゃないかもしれないけど多分一人でしょ)おいででございまして、まぁ「関係者」発言によって時間軸の短期化を懸念した人がファンディングを確保しに行ったというお話になりますわな。何となくわざとらしいけど(^^)。これによって「金利先高感というか量的緩和政策の出口が意識されるとオペの札割れが回避できる」ということが実証されましたねよかったですねということにしておきましょう。

と、書いていて思い出したというか気が付いたのですが、本当に量的緩和政策の出口が意識されると、短い期間の資金供給オペは忌避されて、益々長い期間のオペが選好されますし、将来の金利感を反映した落札利回りが現出されますので、最近政策委員会で議論されている「オペ期間の短期化」というのは基本的に論議の方向が変ですわな。近い将来政策金利が上ると意識されればオペがどうなろうとも短期のイールドカーブは立ってくるものです。


で、話を戻しますとこの「関係者」。毎度毎度自分が決定会合の内容をリークするのが仕事と勘違いしているのか、票決に関して政策委員会がリリースしたもんだから「CPIがどうのこうの」とか言わずもがなの発言をして金利を見事に上げてくれましたが、金融政策決定会合の情報公開に関するポリシーに反する事夥しいお方でございまして、可及的速やかに行動を改善されたいものだと思う今日この頃でございます。

つーか福井総裁が決定会合の議長として一言警告すれば良いのではないかと。

総裁記者会見に関しては明日にでも。まぁ相変わらず強気だったようですが。



○中国人民元切り上げネタで「???」な論点

先週金曜日に人民銀行のリリースも見ないでテキトーな雑談をしましたが、どうも最初に思っていた(けど本当にそうなのかなぁと少々疑問でしたが)変動相場制への移行という感じではなく、「俺様がレートを決めるんじゃゴルァ」という「通貨バスケット(ただし内訳はブラックボックス)導入」のようでナンノコッチャという感じでございますわな。

で、バスケットの中身が何だかワケワカメなので中国人民銀行の保有する外貨準備の構成にJGBやらユーロやらが増えるかもしれませんなぁという思惑は無いではないんでしょうなぁという所なのですが、そんな話題の中で大変に「???」な視点による論考をしている人がおいでのようなので少々。

とある著名マーケットエコノミストのレポートで人民銀行が保有する外準(米債がやたら増えている)の調達金利である国内金利が高く、「JGBを購入すると、所要準備への支払利息や売出手形(介入資金の不胎化のために行う資金吸収なので日本で言えば外為特別会計の発行する為券に相当しますな。為念)の支払利息と逆ザヤになってしまう。(ので保有しにくい)」という指摘がございまして、どうも同じような意見をちらほら聞くわけでございまして、あたくしはどうも「???」なんですな。

いやまぁ運用機関なら「逆ザヤだから買いにくい」って理屈は判るのですが、中央銀行(というか政府部門というか)で保有する外準はそもそも運用するのが目的じゃあ無い筈なんで、その理屈はどうよってことになると思うんですが。それを言い出したら外準でJGB持つ人が皆無になっちゃいますが、そんな事はないでしょう。

物凄く勘違いしてるかもしれませんが、「低金利の外債を買う」→「高金利で国内調達」って流れなら、中央銀行(というか統合政府というか)部門が赤字でも、国内民間部門は黒字になるので無問題ではないか(かなりインチキくさい説明なのは自分でも承知してますが、上手く説明できない)という気もしますが。じゃあ黒字を出している日本の外為特会はどうよって言われるとあれはあれで無問題に思えるので激しく意味不明になってきましたすいませんすいません誰か教えて(滝汗)。

結局「中央銀行のバランスシートってどうよ」っていう以前いくつかの経済系ブログで話題になったお話に帰着しそうな気がする。

で、ちと話がずれますが、現在の中国人民銀行のように「自国通貨切り上げ防衛」のために介入するというのは、自国通貨売り+外貨買いであって、売る通貨は何とでもなる話であり、実はそんなに大した問題ではなく(自国通貨切り上げ防衛で過剰流動性を発生させてエライコッチャになった国もありましたからそう簡単な話ではないでしょうが)、本当にヤバイのは「自国通貨防衛」の為の介入じゃないかと存じます(外準がカラになったら終了確定なので)がどうなんでしょうかねぇ。


#本日の2年国債入札は一応注目しておきましょうね




2005/07/27

お題「20年国債入札はまぁ平穏/国会会議録でも読みますか」

○20年国債入札レビュー

昨日は20年国債入札が実施されました。昨日あたくしは入札前に上も下もやりにくいですなぁと書いたら珍しくも入札前に相場が動かずでございました。やはりヘッジクローズで「事前の買いが入って踏み踏み入札は勘弁」と書いたのが効を奏したということで(嘘)。

入札自体はまぁ妥当な水準で収まったのですが、その後の相場がどうなったかと言えば、落札結果発表前からちと下押ししていた債券先物は、まぁ悪くはない落札結果を受けまして戻る場面もあったのですが、何の事はないその後の高値は前場引けから1銭だか2銭しか上に行かずという実に情けない展開でした。

まぁ毎度毎度入札後碌に上らないという相場が続きますと、結果発表後に慌てて買う必要なしという認識が共有されてしまい、益々相場があがりにくくなるという自己実現モードになっちゃうんですが、今月の国債入札はまさにそんな展開になっておりまして実に困ったもんです。まぁ今回の入札に関しては「相場が下押しして2%に接近すれば買いが入るでしょう」というのが殆ど市場の皆さん(というか少なくとも業者サイドは全員)が共有している認識ですんで、「下がれば在庫は捌けるけど、上るとしんどいですなぁ」というお話になってまして、まぁ来週になると10年国債が1.9兆円発行される事もございますので、相場を持ち上げながら捌くってのも厳しかったんでしょうな。

どうも「需給で見ると買い」だけども「外部環境や日銀のスタンスを見ると売り」という相場が継続しているために、ディーラーがちょこちょこ売ったり買ったりする動きこそあれ、投資家が「上を買わない下を叩かない」状態になっていまして、相場が中々動意付かないという所なんでしょうか。

相場が派手派手に動くためには「投資家の大きなポジションの踏み投げ」が起きる必要があるんですが、まぁ20年国債入札というそこそこのイベントでもこの有様では暫くは大きなポジションの踏み投げは発生せずなんでしょう。8月になると参加者が少なくなる所を狙って仕掛ける向きもあるかもしれませんが、もうちょっと上下やらないと中々抜けるのは難しいのではないかと思われます。


○ネタ話:国会会議録検索システム

というものがございますって以前申しあげたと存じますが、これが中々楽しめます。今回は最近絶賛紛糾中の郵政民営化法案に絡んで、「衆議院の解散権は」って話をbewaadさんの所(bewaadさんの話は解散権云々ではなく「自民党は誰のものか?」っていうテーマでしたhttp://bewaad.com/20050726.html)で見つけましたので、「新憲法制定前後ではどんな論議になっていたんでしょ」ってのを見ようかと思いましてちと検索。

話はちと逸れますが、ソースが「小説吉田学校」なのですが、民主・社会・国協3党連立の芦田内閣の後を受けた第2次吉田内閣で7条解散をしようとしたらGHQ民政局から「7条解散は不可で69条解散しか認めない」となって解散総選挙を前提に内閣不信任案の可決を行ったとかいうのを読んだ覚えがございますな。そんな吉田内閣も講和条約発効直前には7条解散をしていた筈ですが(これも元ネタが小説吉田学校ですけど)。

国会会議録検索システムはhttp://kokkai.ndl.go.jp/でして、こちらの画面から「簡単検索」をクリックして出てきた画面で期間のFromを適当に切り替えて(デフォは過去5年)からキーワード検索も発言者検索もできるのですが、本日は物は試しに憲政の神様であらせられます尾崎行雄氏で検索してみませう。

2件検索できたと思いますが、この中で昭和23年11月16日の衆議院本会議で尾崎行雄氏がどんな話をしていたかと言うと、当時の世相も何となく判って結構興味あるのですが、引用するとなると昔の復刻本によくあるヘッジクローズ「文中に現在から見ると・・・・」ってのが入りまくりな演説ですので、とても当欄でご紹介できるものではありません(^^)。

で、まぁあたくし的には結局総選挙の後に自動的に内閣が総辞職すると憲法の規定にありますので、7条解散の濫用は担保されているとは素人考えとしては思うのでございますが、憲政の神様は「内閣に解散権無し」としてこんなお話をしています。演説の最後の方です。

『今解散などすれば、もう立憲政治は根本からくずれる。どういうふうにしてくずれるかということも、ほぼわかつている。それは、内閣に解散権を與えますと――吉田君は、そういうことはしますまいけれども、他日罪惡の素質ある人が総理大臣になり、金もとり、暴力も振う、解散に次ぐに解散をもつてすれば、北條、足利の天下をつくることはすぐできる。憲法の明文という間違つた解釈をもつてして、憲法の明文を踏んで北條、足利になることはできる。それになれるように、全国民はもちろん、新聞記者なども、今日聞いている。実に恐ろしい。そんな人が出るかもしれない。』

まぁ政権党が党利党略の為に解散するのはケシカランって話をしておりまして、内閣に解散権を与えるとこれを濫用して政権党の多数化工作に利用する向きが現れたらどうするんだってお話をその前から延々としているのですが、その演説が何と言うか興味深いですな。現在常識とされている事から見ると「??」な物もあるのですが、常識は世が変れば変るものなんだなぁという感慨も起きると言うものです。


で、まぁ話を現在に戻しますと(^^)、参議院で重要法案が否決されたからと言う事で衆議院解散(解散する前に衆議院で再議決して否決されるという手続きが必要ではないかと思うのですが)するのはまぁご存分にって思いますが、その場合は衆議院で再可決可能な議席を確保しないと意味が無い(同じ法案を再提出したって参議院で否決されるから)訳ですから、シロート考えで申しあげると小泉くんは衆議院で3分の2の多数を占めないと信認にならないという訳判らん理屈になってしまうのはあたくしの考えすぎで
しょうか(^^)??

という暇ネタでございました。ちなみにいつのまにやら「帝国議会会議録検索システム」(http://teikokugikai-i.ndl.go.jp/)というものができておりますが、惜しいことに現在は88回〜92回までのテキスト検索しかできませんので、浜田国松氏の「腹切り問答」あたりは読む事が出来ませんですな。今後の充実に期待したいと思います(^^)。







2005/07/26

お題「相場関連小ネタを少々、っていうかネタが無いのよ」

道路公団絡みで槍玉に挙げられるのが揃いも揃って技官系の人間である事に何か釈然としないものを感じる(談合が良いとは申しあげる積りはありませんが、為念)今日この頃のあたくしでございますが、それはともかくとして・・・・・

○明日の金融政策決定会合はとりあえずノーケアーで

明日は1日間の日程で金融政策決定会合が実施されます。先日は当預30兆円割れ問題に関してどうのこうのと申しあげましたが、何故か先週の短期国債買入と昨日の手形買入が札割れしなかったので、30兆円割れはそんなに大騒ぎする事もないのかも知れませんな。というかそもそも金利先高感が出てくると応札意欲が高まるので札割れが回避できるという皮肉な流れがありますけど。

とは言え、とりあえず今週末はこの調子だと30兆円割れの可能性もあるようですし、10打席連続札割れとかまぁ札割れ話は当然ながら議題に上ってくるでしょうから、その辺の議論がどうなるのかは会合後の福井総裁記者会見に注意しておく必要はあるでしょう。それから何故か意見が分裂(詳しい解説は本石町日記:http://hongokucho.exblog.jp/3156756/)していた当預目標引下げ派の2名の提案が変化するのかしないのか、多分そのまま分裂しっぱなしだと思いますが。

何も無しというのはもう当たり前なのでそちらに関してはノーケアーで良いようです。次回の決定会合(8月8〜9日、えっもう8月になるの?)時に当預残高が30兆円割りっぱなし状態とかになると緊張が走るかもしれませんので、どっちにしてもあまりのほほんとしているのは如何なものかとは思いますが。


○20年国債入札ですが

本日は20年国債の入札。ここのところ相場の上げに対して20年がついていかないケースが多く、中々1.9%割れなどという景気の良い展開にならなくて新発債のクーポンはめでたく2%になりそうです。

ここもとの相場では、先週金曜のように値段よりもタイミングを重視しているのではないかと思いたくなるインデックス系の買いらしきものに巻き込まれた踏み踏み相場でもない限り上を買う人はいないものの、同じ先週金曜日の寄り付き直後にみられたように押し目買い軍団は大挙買い準備中。という訳で、相変わらず押し目買いがポイントと言われている「5年1%、10年1.3%、20年2%」をつけないままのレンジ取引が継続しているのですが、さて本日の入札で需給のバランスがどうなるのかは注意しましょって所ですな。

いつも良く外れる予想をたまにはしますと、ど〜せ2%台になれば買いがあるでしょうって認識があまねくございますので、今日の入札は(海外で米債が売られている事もあるんで)相場が下がって入札をするなら20年ゾーンは入札前に相対的に確りとなって入札を行い、その後相場を持ち上げるとなるとまた先物ですか!って感じかなぁと。ヘッジを十分に入れて相場をもう一度下げて20年2%をつけて捌くのも美しい姿ですが、一応月末の買いも意識されますんでそんなに下げるわけにも行かないでしょう。とは言え、来週火曜には10年国債入札があるので、そんなに頑張って強くするわけにも行かずって所でしょう。

前場から事前の買いがあって20年踏み踏み入札になると、毎度お馴染みの「入札だけ強い」っていう涙涙の展開になっちゃいますので、それだけは勘弁願いたいのですが・・・・・


○15年変動利付国債・・・・と物価連動国債

先週木曜に入札が行われた15年変動利付国債が妙に売り物勝ちで昨日は100円をあっさり割り込みとなりました。入札の平均落札価格が100円11銭でしたが、そこからイールドカーブがそんなに変化したのかと小一時間という感じの動きではあります。

何でこうなっちゃったのかは正直「需給ですか」としか言いようが無いのですが、まぁ入札をコンベンショナル方式にしちゃったのも一因ではないかという気は少々しております。もともと15年変動利付国債は先日の入札までは、使うモデルによって違いは少々ありますが、まぁ「理論価格」と言われるものから割高に推移していたのですが、今までのダッチ方式の入札だと「みんなで渡れば怖くない」という毎度お馴染みの群集心理(笑)で何となく高い水準で張り付いていたのかも知れませんな。で、コンベンショナル方式に切り替えてみたら化けの皮が剥がれたという事で。

まぁさすがに昨日も99円90銭を割り込んだ辺りからは下げ止まりの感じになってきましたので、αベースで95を割り込むと「そろそろいいでしょ」ってところではないかと思います。

で、地味目に相変わらずアレなのは物価連動国債でして、かつては入札後3日も過ぎると業者間で板気配が出なくなるという魔法の商品でしたが、何故か最近でも業者間で気配やら出会いがございますが、日本相互証券の債券引値のはるか斜め下をいくお値段で取引されておりますわな。債券市場が強含みでCPIのマイナス幅が拡大している時に何故か10年国債よりも勢い良く買われていたのに、CPIがゼロになって、債券市場もレンジ取引になっているのにボロボロになるという物価連動国債の動きは、まぁ何と申しますかアフォとしか言いようがございませんな。

ま〜どっちにしてもこの2種類の財務省さま渾身の企画商品(とか言うと怒られそうですが)は、商品設計が頭の悪いあたくしにとってはややこしくて敵わんですな。今更ですが、もうちょっとシンプルな商品にして欲しかったと思うんですがね。


○BIS国際与信統計

日銀のWebに出ているのですが、この統計を見るのを趣味としている本石町日記さんが早速ブログにエントリーを上げてます。(http://hongokucho.exblog.jp/3187196/)邦銀のケイマン向け与信の考察をしておりますが、オモロイのでご覧下さい(^^)。

#昨日は風邪のため超越早寝をしたので雑談ばかりで恐縮至極




2005/07/25

お題「地に足をつけて金融高度化をしていただきたい/他雑談」

夏風邪に注意しましょう(とほほ)。

○早速読者様からご指摘頂きました

日銀総裁の「リテール金融フォーラム(日経新聞主催だったようで)」における「金融の新潮流――新たな個人金融サービスの創造」って講演をネタにして金曜日に書いた中であたくしはこんな事を。

「リスクを世の中にあまねくばら撒く」という行為でもある訳でして、まぁそれを広く薄くしてるから無問題って理屈は判らんでもないですが、そもそもショック耐性が個人と金融機関じゃ違いわせんですかねぇという気もしますし。

・・・こう書きますと、「金融機関のリスク耐性>>>個人のリスク耐性」という文脈になりますが、この部分は筆の勢い(というかキーボード叩きの勢い)で滑ってしまってますな、恥ずかしい限りです。ということで以下昨日の話の続き。

時価評価とか減損会計とかと無縁な個人というのは「いざとなったら塩漬け」攻撃という最強の攻撃があるので、そーゆー意味ではリスクを個人に負担させちゃいましょうという総裁講演の趣旨は実に仰せの通りでございます。

ただ、現実問題としてどうなのよ?って事になりますと、「貯蓄から投資」という美名の下に新しい投資商品がぶち込まれ、銀行の投信窓販に続いて証券仲介業もおっぱじまっていますわな。でも肝心の証券仲介業もそもそもは「株式の販売チャネルの拡大」の筈だったんですが、だいぶ前にちょっと書いたと思いますが、発表される証券仲介業務の中身って「株式の個人への販売」じゃなくて「外債など(仕組債含む)の販売」という運用商品の販売ですわな。まぁ個人に株式売るって事になるとシステム投資が結構重いんで入り口が運用商品の販売になるのは経営上仕方ない面はあるのですが。

でまぁ金曜も申しあげた「南アフリカランド建て債券」(4月20日にネタにしてました)話もそうなんですが、どうも運用利回りをアップさせるために「そんなリスクを取る必要があるのか?」というようなリスクを取っている人々が世の中に多いように思えますし、大体そのリスクをちゃんと判って投資しているのか実に謎な債券とか外貨預金とかが絶賛販売中という現状があると思うんですけど。

この状況が福井総裁が講演で言う『金融機関が家計のニーズを適切に汲み取って多様な金融サービスを提供し、それを通じて日本の家計の資金が企業活動のサポートに有効に活用されれば、家計の幸福の増進はもとより、わが国の経済発展にも資するものと期待されます。』っていう状況になっているんでしょうかと申しますと実に「????」だという思いがあるんですよ。

方向性として「貯蓄から投資」っていうのを否定する気はございませんが、現状の「投資」の方向を見ていると、家計というかリテール金融に「リスクを取りましょう」「投資をしましょう」っていう話を日銀が積極的に行うのは、現実を理解してやってますか大丈夫ですかって思いがどうも抜けない次第でございます。

量的緩和政策長期化による運用難の弊害でもあるんですが、まぁ投資に関するというかリスクリターンを把握して投資しましょうっていう啓蒙活動というか教育に力を注ぐ方が日銀としては吉なのではないかと思います。昨日も書きましたが、投資家保護の観点を『このような取り組みに向けて金融機関を突き動かす力は、一言でいえば、市場規律ということになりましょう。(総裁講演)』って言うのは甘いと思いますよ。リスクリターンの関係を見抜くように投資家への啓蒙活動を行わないと「市場規律」も機能しないと思いますが。

まぁそれ以前に「運用利回りのために過度のリスク選好」というのは個人投資家というよりは金融機うわなにをするやめろhdflふkじlk

・・・・金曜も書いたように「お前が言うな」って青臭い話を延々と展開して誠に恐縮でございます。すいませんすいません。


○ネタ話2題

・当預目標割れ回避の秘策(超越大嘘)

資金供給オペが絶賛札割れとなっておりまして、今月29日に当預残高30兆円維持をするのが厳しそうな昨今ですが、さてどうしましょっていう雑談を知人としていたのですが、アフォな秘策がございました(^^)。それはずばり「準備預金率の引き上げ」(笑)。

これによって所要準備が増えるので当預目標を引き下げなくても同じ効果が出るというのがメリットである上に、量的緩和政策を終了させる時の出口への距離が勝手に短くなるので出口政策がスムーズに行くというまさに一石二鳥で政策の継続ができます。

しかし一般的に準備預金率の引き上げというのは金融引き締めであるというのがバレバレだというのがこの大いなる問題点で、「金融引き締めじゃあ」と言われる諸刃の剣、素人にはお勧めできません。

・・・・っていうかただのギャグで書いてますんで念の為。茶番ついでにこの際ヤケクソでどうでしょう?(大嘘)


・IPOは益々アレですなぁ

運用なんちゃらと言えばIPO関連の話は色々と香ばしいものがあったり無かったり。暫く前にもさらっと書いたような気がしますが暫く前のアイテーバブルを彷彿させるものがございますわな。

でですな、日曜だけ気が向くと買う日経新聞(見たいのはある種の広告^^)なのですが、昨日の広告ではとある企業さまが釣り文句に「平成19年11月ジャスダック上場予定」とか書いていたのには思わず茶を噴きそうになっちゃいました。

そんな先の日程で上場が決定されるわけもなく、その「予定」というのは「できたらいいな」の間違いではないかと小一時間ですな(^^)。まぁ未公開株取得しませんか話も最近はあちこちである(その手の話はあたくし無縁ですけれども)ようですし、運用難の昨今ではありますが、銘柄は吟味していただきたいものだと存じます(笑)。




2005/07/22

お題「リテール金融の高度化ねぇ・・・・・」

○その前に人民元の切り上げで考えの整理

お題の雑談を書く積りでいたら中国人民元切り上げのニュースがございまして、はてこれはどうなるのやらと考えているうちに寝入るのが遅くなってしまいましたな。結局米国市場の円高ドル安と米債の大幅下落という反応が一番目立ったわけですが、これが円債にどういう影響を与えるのかは正直判らんです。

米債が急落したのは通貨バスケット導入の方向性が明確になった(つーか将来フロートにするっちゅうのなら当たり前なのですが)のもでかい(中国の外準がドル一辺倒だけではなくなる)と思うんで、米債安かならずしも円債安に繋がらないような気もしますし、やっぱり連動性が高まっているから全般的に金利上昇になるのかもしれないし。

まぁあと考えられるとすれば「人民元切り上げで輸入物価上昇で国内消費者物価上昇(よって量的緩和政策の時間軸が短縮)」って発想ですかね。実際は2%如きの切り上げでそんなに目先影響しなと思いますし、そもそも過去に謳われた「中国発デフレ」ってのが根拠レスもいいところ(岩田先生や田中先生の本をお読みくださいな)というですので同じ理屈で人民元切り上げを日本のCPI上昇に結びつけるのはやや無理がありますわな。そりゃ全く影響が無いとは申しませんけれども。

ただし世の中で宣伝活動が行われて「人民元のせいで物価が上昇するんですね」という認識が出来上がってくると企業物価の上昇分を消費者物価へ転嫁しやすくなるというのもあります(さっそくフジテレビで朝6時に高木勝さんが人民元切り上げで国内物価に影響ってコメントしてましたよ)から決め打ちは禁物。ま、市場心理も同じですから。


人民元の切り上げ幅が2%ぽっちとしょぼくなっているので、却って将来の追加切り上げを連想させて、益々人民元への資金流入が加速されてしまうのではないかという悪寒もしますが、その辺の所はどうなんでしょうね。単純に中国経済の成長失速に直結しないのではないかという気もしますけど。

まぁ正直思いついたことを並べてみただけなので、意見の叩き台にでもなれば幸いでございます。


○で、リテール金融の高度化な訳ですが

そんなニュースが飛び込む前の昨日の債券相場は訳もわからず上昇して参加者一同「???」ではありましたが、まぁ先物が訳判らず動くのは最近の相場のお約束という事で宜しいのではないかと存じます(おいおい)。

そんな相場の中で福井総裁の講演要旨が公表されました。

http://www.boj.or.jp/press/05/ko0507b_f.htm

何でも「リテール金融フォーラム」という何でもフォーラムとかにするのが大好きですねって会合での講演でして、講演のお題が「金融の新潮流――新たな個人金融サービスの創造」ってお話。

内容は相変わらずでして、リテール金融を高度化させてバラ色の未来を築きましょうっていう楽観的なお話でございます。どうも冒頭の金融の現状認識のあたりから既に机上の楽観論というか現実はそうじゃねぇと思うがどうなのよっていうお話が並ぶわけでございまして、金融庁様のお出しになる「一つ一つは誠にご尤もな政策なんですが、全体を通してみると右の手と左の手でやってる事が矛盾してませんか」という如何にも頭でっかちな施策にも相通じるところがございます。

で、そのあたりを突っ込むというのもやりたいのですが、論点が拡散するのでまぁ本日は別のポイントに突っ込みを。

・どうもこう「リスクの分散」をしたがる訳ですが

まとめの部分で福井総裁はこういうお話をしております。まぁいつもの持論ではございますが。

『繰り返しになりますが、金融機関が家計のニーズを適切に汲み取って多様な金融サービスを提供し、それを通じて日本の家計の資金が企業活動のサポートに有効に活用されれば、家計の幸福の増進はもとより、わが国の経済発展にも資するものと期待されます。また、それは同時に、リスクの分散を通じて、わが国の金融システムが外部ショックに対して頑健性を増すことにも資するのです。』

家計のニーズって企業活動のサポートなんでしょうかねぇという話をしだすともはやイデオロギー論争になるのでその辺は突っ込まない事と致しまして(笑)、浅学菲才なあたくしめがど〜も疑問に思うのは「リスクの分散」というお話。

いやまぁ確かに金融システムっつーか金融機関の経営の安定という観点で言えば確かに仰せのように「金融システムが外部ショックに対して頑健性を増す」のですけれども、それって「リスクを世の中にあまねくばら撒く」という行為でもある訳でして、まぁそれを広く薄くしてるから無問題って理屈は判らんでもないですが、そもそもショック耐性が個人と金融機関じゃ違いわせんですか(編集時追記:この部分は正直おかしい書き方してますんで、翌日のエントリーで追記します)ねぇという気もしますし。

問題を一箇所にまとめておくというのも一つの考え方にならんですかね。何と申しますか、昨今の「金融高度化」で個人にも色々と趣向を凝らした金融商品が販売されているようでございますが、正直「一般ピープルがこんな種類のリスクをとる意味があるのかよ」って商品も目白押しだったりする(かつてドラめもんでちょっとご紹介したIBRD発行南アフリカランド建債券なんぞ序の口)わけでして(と物凄く抑えたトーンで書いているあたくしに気が付きちょっと自分に萎える)、金利が上昇した時に個人のポートフォリオに「塩漬けになった運用商品」がゴロゴロ転がるという間抜けな結果にならないようにして頂きたいものでございます。

・「投資家保護の観点」が甘いでしょ

で、まぁそうならないために投資家保護の観点が必要だって話はさすがに総裁もしておられるのですが、その話の矛先がいわゆる「投資サービス法」の制定に向かっているのが残念な所でございます。肝心の部分はどうも「金融機関の自主的な取組」と「市場規律」ってことになりそうでして、正直それでは金融機関への抑止力には為らないでしょってのがあたくしの印象。

『そこ(引用者注:投資サービスにおける包括法)では、事細かな義務を羅列するような法制を目指すのではなく、金融サービス提供業者が何をおいても遵守すべき基本原則、例えば運用指図への忠実義務、顧客財産の分別管理といったFiduciary dutyを、明確に示すことを基本とすべきだと考えます。そのうえで、より重要なのは、顧客から高度な信頼性を確保するための、金融機関自身による自発的な取り組みを促進するような枠組みです。』

『このような取り組みに向けて金融機関を突き動かす力は、一言でいえば、市場規律ということになりましょう。ペイオフ全面解禁後は、預金者自身が金融機関を厳格に選別することが期待されるわけですが、金融商品が多様化・複雑化する中で、預金者の選別だけで、市場規律が十全に作用するとは言えません。金融機関の株主、債権者のほか、その株式を上場する証券取引所、さらには監査法人や格付機関、あるいは金融機関のガバナンス機構の中での社外取締役といった様々な主体が、複合的に市場規律を働かせていくことが必要です。また、市場規律を働かせる起点となる市場ルールの形成は、監督当局から言われるまでもなく、市場参加者自身が率先して担っていくべきです。』

だそうなのですが、それはちと楽観しすぎではないかと存じますが(ってセルサイドの人間が言うことじゃねぇぞコノヤローと言われますと「誠に申し訳ございません」となりますが)。

まぁお前が言うなといわれるのを承知の上で申しあげますと、金融商品の高度化がどうのこうのという前に、金融知識の普及、しかも「新しい高度な金融商品マンセー」的な某経済新聞的提灯教育ではない知識の普及をする努力が先決じゃねぇかと思う次第。セルサイドの立場としてはアフォばかりのほうがそりゃ儲かるんですけど、日本経済全体ってこと考えるとそれじゃイカンでしょうと何か偉そうな事を申しあげて本日は時間も無くなったのでこの辺で。

「セルサイドにいる人間が何エラソーに言ってるんだ」というご批判は甘んじて受けますんで・・・・・(と、3度も繰り返すのはくどいですかそうですか)







2005/07/21

お題「技術派ニヤリの展開か?」

○怪しげな中短期ゾーン

昨日の債券市場は、連休明けの火曜日と同様に先物が現物債の動きをあまり見ないで動くといった風情が漂っておりました。ただ、火曜日は何だかんだと言っても先物の日中値幅26銭などと動いておりましたが、昨日の値幅は15銭と見事にトホホな展開でした。

さてそんな中で昨日の相場で目に付いたのは、20年以降のゾーンについて弱めだったのと、中短期ゾーン、特に3年〜4年あたりがよわよわだったことです。20年ゾーンに関しては来週火曜日に入札を控えているのでヘッジがどうのこうのって話なのかも知れませんが、気になったのは3年ゾーンあたりが妙に弱いことでございます。

で、よくよく見るとユーロ円金先市場でも期先限月が妙に重くなっていたりする訳で(あまり真面目に見てないけど)、ちと怪しげな雰囲気を醸し出しているのですが、これは昨日の短期金融市場で起きていたことを反映している可能性がございます。


○3ヶ月FB落札価格3打席連続100円

昨日実施された3ヶ月もの政府短期証券の入札は毎度お馴染みの最低落札価格100円で按分比率が42%でした。これで3打席連続100円入札なのですが、按分がこの間に98%→68%→42%と低下しておりまして、益々短い期間のTBFB需給逼迫を感じさせる入札とあいなりました。

3ヶ月程度のTBFBの在庫逼迫→短期国債買入オペでの資金供給が難しくなる→当預残高目標維持マズーという話になりますので、そりゃどうよって連想が働く訳ですな。で、午後の定例オペレーションでちょっとサプライズな事が起きてしまったわけです。


○来年GW明けエンドの手形オペが札割れ

13時の定時オペでオファーされたのは全店方式の手形買入オペレーション。期間が7月22日〜来年5月10日という事で、半期末2回(本年9月末越えという話は意味があまり無いけど)と年末とGW越えという資金供給になります(勿論今回がGW越え初回)のでさすがに札が集まるでしょうって話だったのですが・・・・・

蓋を開けてみればオファー額8000億円に対して応札が7962億円と惜しくも札割れとなりました。昨日は国債発行日にあたるので資金不足気味で当座預金残高が前日の予想時点で30.2兆円(当日引け後に日銀から発表された速報は30.3兆円でしたが)と中々キビシイ状態でございましたので、双方相まって「8月初旬の資金不足期(15日に年金定時払いで不足は解消予定)は当預目標30兆円割れが続く懸念あり」という観測が益々強まって参りました。

今回の札割れはちとタチが悪いお話で、資金供給オペレーションを一応工夫して(って単に期間を延ばしているだけですが)実施しているのに札割れが起きているというのがややマズーな所であります。6月2日、3日の30兆円割れの場合は当時ドラめもんで散々っぱら罵倒しておりましたように供給オペレーションを工夫しない(というか逆方向に工夫するというか)で「ヤラセ」的に30兆円割れを起こしていたという感じでしたが、今回はガチで札割れ連発。札割れが連発すると資金供給オペレーションに応札する人もそれを前提に動くようになるので、益々札割れが恒常化するという悪循環になるのがまた香ばしいのですが。


○30兆円割れ中に8月の決定会合?

という訳で、今月は来週の27日と来月8〜9日に金融政策決定会合が実施されるのですが、この調子だと下手をすると当座預金残高が30兆円を割れ割れ状態継続のさなかで8月の決定会合が行われるという事になりそうで、「技術派」の皆さん大喜びの図という形になりそうでございます。

となりますと、「現状追認型の当預目標引下げ」という訳の判らん事態が生じる悪寒もございますな。昨日ご紹介した6月14〜15日の金融政策決定会合議事要旨に見られるように当座預金残高目標引下げの潜在的賛成者は提案者の2名以外にも最低1名恐らく2名いるという状況ですので、「現状札割れが続いており、30兆円割れ状態が継続的になっているので現状追認で当預目標下げ」というまぁ技術論的な話が浮上してきても何ら不思議ではないという悪寒。

ちなみに8月と言えばゼロ金利解除5周年記念日だったりしますが(笑)。


○ということで・・・・・

ユーロ円金先の期先が重くなっていたり、3年〜4年あたり(5年カレント物は0.5%というお買い上げポイントが近いので確りですが)の現物債が重いというのは、このあたりの観測も少し入って来たということなのかもしれませんわな。考えすぎかもしれないけど・・・・・

とりあえず今のところは1年までのオペは打ってくれるので、そのゾーンあたりまではそこそこ安心です。ただ、市場機能の回復がどうのこうのとか言い出して梯子を外すような懸念(普通そういう話にはならないのですが、何せ今の日銀は「何やってもおかしくない」という認識がありますからねぇ)も出てくるかもしれませんし(つーか当預目標下げたらその分オペ減るし)、まぁ短期金融市場のイールドカーブが立つ(それを時間軸の短期化という筈なのですが)と直撃弾を受けるのは2年〜3年あたりのゾーンになりますから、動きとしては自然といえば自然。そんなに大きい動きにはなってませんが、この動きが継続するのかどうかは気になりますわな。

CPIがプラスになってくると益々香ばしい展開になりそうな悪寒。。。。


○さて政府はどうするよ?

以下与太話なので話半分でお願いします(^^)。

とまぁそうなってますので、政府におかれましては当預目標維持に向けて何かぶち込むというのは如何ではないかと存じます(嘘)。で、超閑散な国債市場を見ながらつらつら下らん対策を考えるあたくし(^^)。

一番効果てきめんなのは「円売りドル買い介入」ですが(^^)、ちょうど中国人民元の切り上げがどうのこうのと微妙に揉めている昨今なので為替操作をおっぱじめるのは明らかに間が悪いので却下(笑)。で、次に考え付くのは「やっぱり決済性預金の全額保護はしないで上限設定するね(はぁと)」という恐怖梯子外し攻撃。どうせ信用不安は払拭されているそうですので(笑)、アフォな国庫負担の元になりそうな施策は排除するに如くは無し(かなりギャグで書いてます)ですわな。

ま、日銀も資金供給オペで漫然と同じ額を実施するんじゃ無くて、一回の額を減らして回数を増やすとか工夫の余地はあるでしょって話なんですが、短期国債買入オペの銘柄選定基準をいじってきたように、どうもあまり「何としてでも供給」という熱意は感じられなかったりする感があるのもまた事実ではございますが。

という訳で、ノーケアーで良かったはずの今月末と8月の決定会合も注目しないといけなくなってきたかも知れませんね。どうなる事やら・・・・・






2005/07/20

お題「会議は踊りっぱなしのようですが」

昨日は知人に久々に会い、今朝は少々マーライオン(にはなってませんけど^^)。よって今朝はちと簡単にさせていただきまして、明日までネタを引っ張ると言う作戦(でもなんでもない)に出る訳ですが。

6月14日〜15日の金融政策決定会合議事要旨が昨日公表されました。

http://www.boj.or.jp/seisaku/pb/g050615.htm

場中に発表された割には相場にインパクトが無かったのは、そもそも昨日の債券市場そのものが動意が碌に無かった(上る時も下がるときも先物がフラフラ動いただけで現物債の売買を伴っていたとは思えない動きでした)こともありますが、この頃絶賛話題沸騰だった「当座預金残高目標引下げ論」がその後の武藤副総裁や福井総裁の発言で一旦冷やされた(先日の決定会合での福井総裁記者会見でなお強調)ために、「まぁ決着済みでしょ」という認識になっている事も大きいのでしょうな。

でも、こ〜ゆ〜ノーケアーの時も注意してみておくのがBOJストーじゃなかったヲチャーのあたくしクオリティなのでありました(^^)。とりあえず相変わらず論議が続く「量的緩和政策の弊害論」について審議委員の皆様どうお考えかという所を今朝はチェックしておきませう。


○政策効果を弊害として捉える人3名也

『また、量的緩和政策のもとでの資金供給が市場機能へ及ぼす影響についても議論があった。』

例によって『IV.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』の部分から引用しますが、本日は何故かこのコーナーの一番最後のあたりからスタートします。

『ある委員は、資金供給オペレーション期間の長期化により、例えば短期国債の金利がほぼ一様にゼロに貼り付くなど、タイム・バリューのない異常な金利形成になっていると述べた。』

タイムバリューなどという小難しい言葉が出てきているところを見ると水野審議委員のご発言ではないかと推測されますな。こちらの先生は何せ「今までの政策は政策として、ゼロベースで新たに政策のあるべき姿を考える」というちゃぶ台ひっくり返しモードも辞さず的なお方なんで、金融政策の継続性に関してきゃあきゃあ言うあたくしのような者とは話が根本的にずれちゃいますけど・・・・・。この先にご紹介されているように「そりゃ量的緩和政策の政策効果じゃねぇの」って話ではありますが、ゼロベースで考えりゃ弊害と見えても仕方なしと言ったところですか。

『また、一人の委員は、2006年度にかけて量的緩和政策の枠組みを変更する可能性が徐々に高まると想定されるもとで、長めの資金供給オペレーションにより金利を無理に押し下げてしまうと、金利に関する市場の情報発信機能を損なうことになるため、オペレーション期間の長期化は避けるべきであると指摘した。別の委員は、同様の観点から、オペレーション期間の短期化を進めるべきとの見解を示した。』

同じような理屈。サラリーマン効果(勝手に考えた造語じゃが読者様には意味通じますよね^^)のせいか年がら年中オーバーシュートしまくる市場の情報発信機能ってそんなにエライ物なのか甚だ疑問を感じたりるのでございますが、まぁそんなに短期金融市場の市場機能がどうのこうのって大騒ぎするんかいなとも思いますな。

で、上記引用にもありますように、この「市場機能封殺論」というのを唱えているのが合計で3名いるというお話になりますして、9名中3名って言いましても正副総裁はあまり積極的に会議をリードする訳にも行かないでしょうから、よくよく考えてみると6名中3名という見方も出来る訳でして、目先何となく当預目標引下げ話は封印された格好ですが、このあたりの展開を見ると「札割れ」が続いた場合に技術論で蠢動が起きるリスクは考えておいた方が良いでしょうな。


○市場機能封殺論に対する他の意見

で、この続き。

『これに対して、複数の委員は、市場機能の尊重は中央銀行にとって極めて重要なテーマであるが、潤沢な資金供給がイールドカーブを押し下げる効果を持ち得ることは量的緩和政策の宿命でもあると指摘した。』

ま、宿命ってのも大げさですが、本来の政策効果でしょ。

『別の一人の委員は、量的緩和政策は、当初から市場機能への影響と政策目的達成との間のバランスを保ちつつ進められてきた政策であるとした上で、経済金融情勢が変化してきている中で、当座預金残高目標が自己目的化し、市場機能に過度の悪影響を及ぼすことは出来る限り避けるべきであると述べた。』

これが微妙な発言でして、技術論というよりは相対性緩和論の香りもしてくるものでございますわな。「当座預金残高目標が自己目的化」っていうフレーズはどこかで見た気がするのですが、アーカイブ調べを手抜きの介により明日にでも追加しておきます。上記の発言は先ほどからご紹介している流れでの表現なので「別の一人」っていうのは「市場機能封殺論」を唱える3名とは違うような気もしますし、単に水野審議委員あるいは福間審議委員の発言を「別の一人」って言ってるのかも。少々謎ですが、これが4人目だとすると、どうも当預目標引下げは予断を許さずって所かも。


○当預目標引下げ提案に対する意見

当預目標引下げはご案内のように福間委員(27〜32兆円)と水野委員(25〜30兆円)から提案があったわけですが、この辺りに関して。

福間委員と水野委員の意見はこんな感じです。

福間さん:『一人の委員は、金融環境が変化しているにもかかわらず巨額の当座預金残高を維持することは市場機能の回復を妨げるほか、金融規律の低下に繋がるリスクがあるなどデメリットの方が大きいとして、当座預金残高目標を「27〜32兆円程度」に減額し、「なお書き」を前回決定会合での修正前の文言に戻すことが適当であるとの見解を示した。』

水野さん:『また、もう一人の委員は、当座預金残高をある程度引き下げていかないと短期金融市場の機能は回復しないと主張し、当座預金残高目標を「25〜30兆円程度」に減額することが適当であると述べた。』

はぁはぁそうですか。で、他の人の意見。

『多くの委員は、景気が「踊り場」にある中で、金融市場調節方針の変更を行うと、日本銀行の金融緩和スタンスが後退したと誤解されるリスクがあるとの認識を示した。』

ということで、どんなことを言ってるのかと思えばこんな感じ。

『一人の委員は、デフレ克服にマイナスの影響が出ないことへの理解を得ながら、慎重に当座預金残高目標を減額していくことは将来の選択肢の一つと指摘しつつも、景気が「踊り場」にある中では、現状の金融市場調節方針の継続が適当であると述べた。』

こりゃ須田さんっぽいですな。

『ある委員は、量的緩和政策の効果の中には家計・企業の期待に働きかける効果があると思うが、金融市場調節方針の修正にあたっては、こうした期待に働きかける効果を損なうことのないよう、極めて慎重な配慮が必要であるとの認識を示した。』

『別の一人の委員は、当座預金残高目標を減額することは、量的緩和政策の時間軸効果を減殺してしまうリスクがあり、現在の目標水準を維持することは、デフレ克服を確かなものとし、市場機能の回復を可能とする最短の途であると述べた。』

まぁ最後の意見が現在の金融政策の枠組みから行くと最も正論ですわなぁって思いますが、植田審議委員の残した遺産は継承されているようで(本当は全員継承して欲しいものですが)誠に結構でございます。


○なお書きの扱いについて、そして水野審議委員少数意見認定の件

何故か議論をしています。

『前回決定会合で修正した「なお書き」の扱いについて、一人の委員は、金融機関の流動性需要の減少やそのもとでの「札割れ」の頻発といった基本的な構図に変化がないもとで、今後様々な要因によって、金融機関の資金需要が減少するような場合には、市場機能への影響に配慮しつつ、最大限の資金供給努力を行っても、当座預金残高目標の維持が難しくなる場合も考えられることから、「なお書き」を維持することが適当であると述べた。』

『また、何人かの委員も、「なお書き」を修正した趣旨については、市場でほぼ正確に理解されてきており、「なお書き」を変更する必要はないとの見解を述べた。』

『この間、一人の委員は、前回修正した「なお書き」を維持することには敢えて反対するものではないが、発動基準や配慮すべき市場機能の内容について、必ずしも明確でない面もあることから、今後とも議論を行いつつ、残高目標達成に向けてのオペレーション上の努力を一貫して続けていくことが重要であると述べた。』

この「一人の委員」が誰なのかは判りませんが、オペレーション上の努力をしろってのはあたくしも同意でございます。この議論の中で微苦笑したのはこの先にあるくだり。

『複数の委員は、金利の正常化に向けた第一歩というような今後の政策と結びつけた形で解釈されることがないよう、対外的な情報発信には正確を期す必要があると付け加えた。』

水野審議委員の意見は少数意見ですよってメッセージが発信された(まぁ票決見れば既に確定の赤ランプですけど)ということでございまして、まぁやっと正式(?)に晴れて少数意見認定されましたので、後は何言っても「ふ〜ん」としか市場は反応しなくなるでしょうなぁという感じ。他の審議委員が水野審議委員に同調するようになってくれば話は別ですが、目先は水野さんの発言で無駄に相場が撹乱される事も無いでしょうな。

ちなみに財務省さまにおかれましてはこんな事を仰せでございました。

『また、前回会合においては、技術的な観点から「なお書き」を付記することが決定されたが、これについてもその趣旨に沿った適切な運用を図って頂きたいと考えている。』

若干こめかみのあたりがピクピクいってる感じもしますが(^^)。


○やや余談ですが:なぜ「8対1」??

話はやや余談ですが、お笑いだなぁと思うのは当座預金残高目標引下げを提案した2名のそれぞれの議案が何故か両方とも「8対1」で否決されていること。あたくしの同僚なんぞはそのフラッシュを見た瞬間に爆笑の発作を起こしていましたが(^^)、そもそもこの引下げの数字そのものに科学的根拠(笑)があるとも思えず、別に二人でわざわざ別の提案をしておまけに相手の意見に反対票を投じる事もあるまいと思うのはあたくし達だけではありますまいて(^^)。

という訳で本日の議事要旨ウォッチは例によって金融政策運営に関する部分だけご紹介致しました。景気に関する部分も見たほうがよさげではありますが、まぁその部分を見るなら判断内容を前進させて月報の表現を随所でいじってきた7月の議事要旨のほうが注目でしょうな。

#結局途中で復活していつものペースになっていました(汗)






2005/07/19

お題「例によって週初は与太話」

梅雨が明けたばかりなのに既に夏バテだったりしますが(汗)、何か米債も夏バテでございますかねぇ(苦笑)。

○先物を振り回している妙な人がいます

木曜の債券相場は先物がいきなり140円09銭とやたら安いところから始まり先物が弱い中で現物債は妙にしっかり。ところが、後場途中からいきなり先物が上昇して、大引け直前の先物のバイカイでも妙に買いが入って先物は踏み上げ状態で当日の高値で引けたという先物振り回し相場でもございました。おまけに何だか分からないけどイブニングセッションでも先物上昇と相成りまして、30年国債の入札と言うイベントがあったのに高値引けとは恐るべしという展開でしたな。でも最後上昇したのが先物と30年国債だけだったので「???」でもありましたが・・・

金曜日の債券相場は前日の引け際の勢いはどこに行ったのやらという先物よわよわ相場。現物債は比較的確りだったのですが、先物が妙に上値の重い展開が続き、(寄り付きで前日から10銭飛んで下から寄ったので)あまり値幅は取らなかったのですが、終わってみれば安値引け。引け際に妙に先物に売りが出ておりまして、これまた「???」な相場でございました。

どうも現物債の動きに比べて先物に対して妙にアクティブな人がここもと出てきているような先物の値動きでございまして、しかも値動きの仕方が最終投資家さんの現物売買の動きを反映していないようなリズム(別に売買が見えている訳ではないですが。為念)ですんで、まぁこりゃ先物を単独で振り回している人がいるんでしょうなぁというのがあたくしの勝手に出した(一応お友達とも意見交換してますよ)結論でございます。

どこの誰なんだか良く判りませんが、先物だけ振り回しても一時的な値動きはするんですけど、結局は現物債の売買動向がどうなるのよって話だとは思うんですけどねぇ。特に発行額がここまで増えている状況を考えますと・・・・・・まぁご苦労なこったという事で。


○与太話:厚生年金基金連合会の損賠提訴に思う

金曜のテレビニュースと日経新聞の記事を見ただけで脊髄反射して書くと碌な事はないとは重々承知の介ですが書くのであった(^^)。西武鉄道と堤さんに対して損害賠償訴訟を起こしたって話ですね。
http://www.nikkei.co.jp/sp2/nt85/20050714AS1C1400614072005.html

日経の記事や、同紙記事中の前田編集委員の解説を読みますと、どうも厚生年金基金連合会さまにおかれましては同社株を「インデックス運用の一環として購入」(日経新聞金曜日朝刊3面の記事より)されたそうでして、まぁそれで購入した株が有報虚偽記載で上場廃止になったのはケシカランって理屈のようですな。そこだけ見てるとはぁはぁそうですかという反応になりますが、その記事によりますと連合会さまは「上場してなければ買ってなかった」(これまた記事より)って仰せだそうでございますな(-_-メ)。

えーっとそれでは何ですかね、連合会さまにおかれましてはインデックス運用という名目があれば上場してりゃぁ銘柄の検討もせず見境無しに買うとでも仰るのでしょうかと小一時間問い詰めたい所でございますな。言っちゃあ何ですが西武グループの全体の財務が他の上場鉄道事業者と比べて不透明だとかリゾート開発しまくってますが何か?とかって話は別に本件の問題が発生する前からまぁ金融市場でメシを食う者にとって自明と言って宜しい話じゃなかったのかなぁと思う訳ですが、インデックス運用なので機械的にご購入されたっちゅう事でしょうか。

何と申しますか、連合会さまの理屈(日経新聞が報じる所なので、本当に連合会さまがそう仰せになったのかは存じませんが)を見ますと、かつてのアイテーバブル時代に起きたアイテー関連銘柄の馬鹿高値現出相場を思い出す次第でございます。

当時は浮動株式が少なく時価総額がでかい一部のアイテー銘柄(光通信だのソフトバンクだのが有名でしたな)に対して買いが入って、特定銘柄の株価がスパイラル的に上昇するって今思えば実に馬鹿馬鹿しい(当時もメカニズムは指摘されてましたが、何せ相場の勢いが凄かった)事がおきておりました。まぁご存知の方も多いとは思いますが・・・・

・浮動株が少なく時価総額がでかい銘柄を集中的に買う

・株式インデックスに対する当該銘柄の寄与率が上昇する

・インデックス運用をしている人が当該銘柄の運用比率を引き上げる

・更に上昇する

・2番目に戻る

まぁ何ですな。確かに色んな人が踊っていて、必ずしもインデックス運用の人だけが買い上げた訳ではないのはその通りではありますが、時価総額が上るとインデックスの上昇に負けない為に買うという人の動きを見透かして買いを入れていた人は結構おいでだったと思う訳です。

で、話が戻りまして今回の連合会さまの「インデックス運用の一環として買った」「上場してなければ買ってなかった」という理屈を見ますと、何と申しますかアイテーバブル崩壊の学習効果はどこへ行ったのでございましょうかという感想を持つ次第なのでございます。困ったもんです。


いやまぁ最近はアイテーバブルの時をも上回る勢いで日々絶賛株式公開が行われておりまして、まぁ正直申しあげて当時よりもアレな企業がラインアップに加わっておられるというケースも散見されるようでございます。勿論優良な企業様も続々IPOしてますけど(ここは旧知というか昔散々世話になったベンチャーキャピタリスト氏の受け売り部分あり。あっしも昔取ったなんちゃらで偶に暇つぶしの一環で株式公開の目論見書読む事もありますよ)。

で、最近は銀行やら証券会社からもっと一般向けに至るまでプライベートエクイティだの公開なんちゃらビジネスだのという話があちこちから聞こえて来る訳でございますが、まぁ皆様におかれましては銘柄選定をちゃんとしまようねっていうのが与太話のありきたりの結論になる訳ですが、どうも今回の連合会さまの理屈を見ておりますと、本当に大丈夫かいなというそこはかとない不安が漂って来るのでありました。

#一部暴言があったのではないかという気もしますが、まぁ勘弁してちょ。





2005/07/15

お題「総裁記者会見(続き)」

会見要旨が日銀Webにアップされましたので昨日の続きをば。

http://www.boj.or.jp/press/05/kk0507a.htm

○景気に関する質問が目立つ会見でした

今回の記者会見要旨を読みますと、(昨日ご紹介した)金融経済月報において景気に関る部分の文章構成を組み替えて、強気っぽい書き方が増えたり、先行きの懸念材料の部分を削除したりと「強気トーン」が目立つものだった事もありまして、景気に関する質問がうじゃうじゃ。全部引用していると例によって記者会見要旨の3分の2くらいを使ってしまいますんで。

会見の冒頭で述べた景気に関する現状認識と先行き見通し&踊り場脱却云々の部分。

『若干敷衍すると、日本の景気は、IT関連分野における調整の動きを伴いつつも、回復を続けている。今申し上げた通り、輸出は伸び悩んでいるが、IT関連分野の在庫調整が進むもとで、生産は緩やかな増加傾向にある。企業収益が高水準を続ける中、企業の景況感にも再び改善がみられ──これは短観が示している通りである──、設備投資は増加し続けている。そして、雇用面の改善や賃金の下げ止まりから雇用者所得は緩やかながらも増加しており、そのもとで個人消費は底堅く推移している。』

『先行きについても、海外経済の拡大が続くもと、輸出の伸びが次第に高まっていくとみられるほか、国内民間需要も、高水準の企業収益や雇用者所得の緩やかな増加を背景に引き続き増加していく可能性が高い。こうしたことから、緩やかながらも息の長い景気回復が続くと判断している。』

『踊り場脱却に関するお尋ねであるが、わが国の景気は踊り場を脱却したとまで明確に言い切れないものの、脱却しつつあると判断して良いのではないかと思う。IT関連分野の調整は、なお若干尾を引いているが、企業部門の状況の良さが家計部門に次第に浸透してきており、景気回復が当初のシナリオよりは少し広がりを持って動いて来ている。そこまで含めて私どもは踊り場を脱却しつつあると判断している。』

ということで、景気に関しては昨日ご紹介したように「内需が予想より好調で、外需の伸び悩みをカバーという好循環」になっているというお話で、その結果として好調な企業業績が家計部門に浸透するという昔の「ダム論」的な表現に自信を深めているという所でしょう。


○物価に関して

『消費者物価指数については、本日の中間評価においても、2005年度中は前年比ゼロ近傍、2006年度は前年比プラスに転じるとの見通しであり、前回の展望レポートの見通しに概ね沿って推移すると予想している。私どもは、本年末から来年初にかけて、米価格の下落や電気・電話料金引き下げといった特殊要因の影響が順次消えていく過程で、消費者物価指数の前年比がプラスに転じる可能性が少しずつ見えて来ていると思っている。』

『もっとも、こうした見通しには、原油価格の動向をはじめとして、様々な不確定要因、上振れ・下振れ要因があり、今の段階では幅をもって見ていく必要がある。なお、物価情勢の基本的な判断については、消費者物価指数の動きだけでなく、他の物価指標の動き、その背後にある経済の動向等を総合的に検討していく必要があるという点は、これまでも繰り返し申し上げている通りである。今後ともそうした立場に立って、物価動向を丹念に点検して行きたいと思っている。』

で、原油価格が高止まりしてCPIがプラス転換した場合の「経済と物価の関係」に関する質問に関してはこういう風に答えております。

『いずれにせよ、仮に原油価格が比較的高い水準に止まり、人々の事前の予想よりも高止まりするという動きをする場合には、程度の差はあれ、物価には上昇要因、そして経済にとってはマイナス要因となる。従って、その場合には、いわゆるデフレ経済からの脱却についての判断は非常に複雑なことになってくると思う。』

CPIプラス転換に関しても自信を持っているということのようですが、原油価格要因で物価が上昇した時点での景気動向に関しても注意しておきますよって言っており、CPIの先行き見通し強気発言が過度にマーケットに思惑を呼ばないように気を使っていると見ました。


○やはり家計部門への波及を重視していますな

先ほどと同じ質疑応答で家計部門への景気回復効果波及が物価に及ぼす影響との関係を述べてます。

『一方、景気については「踊り場を脱却しつつある」というように申し上げたが、景気が踊り場を脱却しそれが順調に推移していく中で、家計部門への好影響が順調に進むということであれば、それはユニット・レーバー・コスト(単位当りの労働コスト)の上昇というかたちで、物価面に徐々に浸透してくる可能性がある。この場合は、景気の堅調さと物価の上昇とが両立してくるケースであるから、デフレ経済からの脱却という点では、原油価格の場合よりは方向性が揃っているので判断がしやすいと思う。』

『しかし、今後は原油価格の要因、ユニット・レーバー・コストを通ずる要因、両方が複雑に絡み合って出てくると思うので、良く噛み分けながら正確な判断が必要だということである。』

強気コメントをしながらも、余裕綽々といった雰囲気が感じられますわな。


○「余裕を持った対応」の大切さ

てな訳で、昨日も申しあげたように「余裕」が見られる総裁記者会見。

景気の先行きに関して自信がより強くなったので「余裕をもって対応」できるようになったという事のようで、誠に結構なお話ではございますが、裏を返せばちょっと減速するとまた「余裕が無くなる」のではないかという悪寒もする訳ですが、まぁこの調子で落ち着いて欲しいものです。

つーかこうやって総裁が景気の先行きに自信をもって落ち着いた対応をしていれば、マーケットも「なるほど景気回復ですかそうですか」という反応を示すというもの(あまりにも根拠レスな自信だったらダメでしょうが^^)でございます。ここもとの当座預金残高目標引下げ論議大迷走状態の時は「今の機会に当座預金残高目標を引き下げて置かないと、目標引下げのチャンスを失うかもしれない」というような日銀の「焦り」のようなものが感じ取られるというものでして、その辺の微妙な焦りを感じた市場が、10年金利1.2%割れを演出したなどというのはちょっとマーケットを褒めすぎのような気もしますが(苦笑)。

勝手な推測になりますが、景気が回復傾向→財務省の財政再建路線が炸裂→景気が頭打ち→量的緩和継続→日銀マズーという流れになる前に当預目標を下げておきたいっていう思惑も頭をかすめたのかも知れませんが、まぁ兎も角4月くらいからおっぱじまった「当座預金残高目標引下げ騒動」が日銀の「余裕の復活」で収まったというのは結構なことであります。


○ということで、もう一つのポイントだった今後の金融政策に関る総裁コメント

昨日引用した部分の再掲になりますが、ここの質疑はポイントですんで質問も含めて引用します。

『(問)総裁が景気認識で踊り場を脱却しつつあるとおっしゃった一方で、当座預金残高目標を変更しなかったことは、景気が踊り場から完全に脱却したことを確認しないと当座預金残高の目標を引き下げないという理解で良いのか、あるいは違うのかを伺いたい。』

『(答)これも繰り返しお答えしてきたことをもう一度きちんと申し上げる。量的緩和の枠組みの修正という意味において、当座預金残高の目標額を日本銀行として積極的に切り込んでいくというアプローチは、消費者物価指数が安定的にゼロ%以上になるまでは行わない。つまり、3条件を満たしたと政策委員会が判断するまでは行わない。』

質問では「景気認識の上方修正と当座預金残高目標減額をリンクさせるか否か」という意味も込められていると思いますが、この答えによりますと、景気認識そのものだけでの当座預金残高目標減額は行わない(量的緩和政策解除の条件が整えば話は別)ということになる訳ですわな。つまり「解除する時に金利ターゲットに切り替えます」って話でして、まぁ一気に当預残を30兆円減らすのは技術的に問題があるでしょうから半月とか1ヶ月とかかけて減らすんでしょうが、とりあえずそういう対応を取る所存ってことでしょ。その続き。

『もう1つは、先般「なお書き」をつけたように、枠組み修正ということとは全然別に、金融市場の状況の変化に即して現実的な金融政策としての何がしかの調整が必要かどうか。この点については前々回「なお書き」を修正することによって、この金融市場における流動性需要の大きな波という厳しい局面に対応し得るようになった。今後の市場状況の変化と照らし合わせながら、よく観察していけば良い。今のところ、ここで何らかの予定的行動を隠し持っているということはない。今後、全くオープンに判断していけば良いと思っている。』

別の質疑ではこういう話も。

『(問)先程の質問で当座預金残高目標を切り込んでいくといったお答えがあったが、流動性の需要が非常に厳しい状況には、現実的な政策で対応すると言われたということで良いか。』

『(答)対処していくと申し上げたわけではない。そこは全くオープンである。金融システムの安定度合いが強まるにつれて、金融市場の中の反応がどのように変わるか、それは今までのところ「なお書き」措置で十分だということで対処したわけである。今後、市場がどのような反応をさらに示してくるかということによって判断していかなければならない。今のところ「そうしなければならない」という感じで見ているわけではない。 なお、量的緩和の枠組みそのものを修正するということとは別の話としてお答えしたところである。』

つー事で、「技術的対応」に関してはなお書き修正を行ったので当面の対応は済んでいますという立場。まぁ確かに先々の「更なる技術的対応」は排除してませんので、また「やらせ割り込み」でもやらかす可能性は否定できませんが、まぁとりあえず余計な騒ぎを起こさないようにしましょうって事かと。



○「市場との対話」を阻害するもの

えーっとですな。そんな記者会見を受けて某恐怖金融新聞さまにおかれましてはその1面トップ記事の見出しに「秋にも当預残高目標引下げ議論再燃も」というものを掲載して、「次回の展望レポートで景気に関してより判断を前進させて、当座預金残高目標の引下げ議論が再燃するでしょう」みたいな見通し記事を書いておられたりする訳ですが、あんたアフォですかと小一時間ですわな。

だいたい金融政策に関して折角日銀が色々アナウンスしているのに、何故か予断をもって解釈してるんだか何だか知りませんが、素直じゃない珍解釈をおっぱじめて電波な解説を流しだすというのが時折見られるこの新聞社。困ったことに経済のクォリティペーパーなもんで、偉い人とかが見ちゃいまして、ここの言説に思いっきり世の中が誘導されやすいのは悲しいかな現実としてある訳
でございます。

てな訳で、どうも折角の「市場の対話」に関してノイズ発生あるいは増幅装置としての役割を果たしているのではないかと思われるこの新聞社はもうちょっと勉強して欲しいものです。

あ、そうしたらドラめもんの存在意義(んなもんあるかどうか知らんが)無くなるか(爆)





2005/07/14

お題「景気判断強気の金融経済月報と総裁記者会見」

まずは金融経済月報から。

http://www.boj.or.jp/seisaku/05/pb/gp0507.htm

○月報を見たあたくしの総体的印象

景気に関して強気のトーンになっております。今回は「基調判断」を堂々上方修正しているのと、IT分野の在庫調整と原油価格に関する「先行き懸念」部分が削除されたのが目立ちます。

また、読者様におかれましてはご存知の通り、あたしゃ毎回毎回ドキュメントチェックのように月報の前月比較をおこなって行っておりますが、今月の月報は景気に関する書き方が前月までと言い回しと言いますか、書き方の順序と申しますか、まぁそのあたりを変えている箇所が多くなってます。表現の仕方を変えたというのを勝手に深読みしますと、景気認識と景気先行き見通しについてより強気に設定してきた(うーん、何か上手く表現できないけど言いたいこと伝わりますかねぇ・・・)となるのですが、どうでしょ?


○景気判断を前進、IT調整の先行きに楽観的

上で申しあげたように、いつもの前月比較をしようとすると基本的見解の3分の2位を全部引用する事になってしまいますので、あたくしの勝手な判断でポイントと思われる部分のみ前月比較。

・現状の景気判断(最初の一文)

(7月)『わが国の景気は、IT関連分野における調整の動きを伴いつつも、回復を続けている。』
(6月)『わが国の景気は、IT関連分野における調整の動きを伴いつつも、基調としては回復を続けている。』

「基調としては」というヘッジクローズが外れていますな。


・IT調整と原油価格の「なお書き」削除(^^)

今まで入っていた「景気先行きの懸念材料」に関してIT調整と原油価格動向について言及していた「なお書き」が今月削除されました。前月まで入っていた「なお書き」を念の為。

(6月まで、7月に削除)『なお、IT関連需要や原油価格の動向と、その内外経済への影響については、引き続き留意する必要がある。』

先行き懸念材料としてみていた部分を削除。何か鉱工業生産統計とか原油市況とか見てると今この文言を敢えて外す意味がイマイチ判らんのですが、まぁ日銀としては総裁記者会見で言及されていましたが、個人消費や設備投資などの好調さがあるので、こっちの悪影響は薄れてきましたってイメージなんでしょうかね。


・なぜか「札割れ」話

あんまり読まない金融面の現状判断部分に何故かこの一節。

(7月新規登場)『金融市場の動きをみると、日本銀行による潤沢な資金供給のもとで、資金供給オペレーションに対する「札割れ」が続くなど、短期金融市場ではきわめて緩和的な状況が続いている。』

総裁記者会見によりますと(ソースは時事メイン昨日17:58のニュース)『「なお書き」を付け加えて(中略)金融調節をしているのだからその後の市場状況を述べる場合に札割れ現象に全く触れないでいくということはあまり正直ではないだろう』というコメントで深読み無用だそうで。

記者会見で総裁が同時に「コミットメント3条件達成前の当預目標引下げを否定」しましたので、変な憶測は発生しないと思います。つーかその言及が無い状態でこの一節を入れるとちょっとややこしいことになったかも知れませんな。


ま、総じて強気のトーンという事で。


○総裁記者会見:景気には強気、政策スタンスは緩和維持の腰が強くなる

以下のソースは昨日18時22分のブルームバーグニュース。会見要旨は本日日銀Webにアップされると存じます。

・景気は踊り場を脱したんでしょうなぁという認識

『まだ景気が踊り場を脱却したとまで明確に言い切れないところが残っているが、脱却しつつあると判断できるのではないか。IT関連分野の調整がなお若干尾を引いているが、企業部門の状況の良さが家計部門に次第に浸透して、景気回復が当初のシナリオより少し幅を持って動いている、広がりを持って動いている。そこまで含めて、われわれは踊り場を脱却しつつあると判断している。』

コメント付け加える必要もない強気トーン。


・コミットメント3条件達成前の当座預金残高目標引下げ否定

『これまで繰り返してお答えしたことをもう1度きちんと申しあげると、量的緩和の枠組みの修正という意味で、当座預金残高の目標額を日銀として積極的に切り込んでいく、というふうなアプローチは、消費者物価指数が安定的にゼロ%以上になるまではしない、つまり、3条件を満たしたと政策委員会が判断するまではしない、ということだ』

『もう1つは、先般、なお書きを付けたように、枠組み修正ということとは全然別に、金融市場の状況の変化に即して、現実的な金融政策としては何がしかのアジャストメントがいるかどうか、この点については、なお書きを修正することによって、金融市場における流動性需要の大きな波という厳しい局面には対応し得るようになったので、この状況で、今後の市場の動向、推移というか、市場状況の変化と照らし合わせながら、よく観察していけばよい。』

『今のところ、ここで何らかの予定的行動を隠し持っているということはない。まったくオープンに今後判断していけばよい。こういうふうに思っている。』

じゃぁ「技術的に」目標を下げないのかという点は巧みに回避してますが、まぁこの部分を市場参加者がフツーに読みますと、上記小見出しのような解釈になるのではないかと思いますんで、市場は「やっと落ち着きましたか」とホッとしている(除く短資会社)かと存じます。


景気判断を前進させるとこれまでの場合は大はしゃぎモードになって当預目標引下げがどうのこうのとかもっと昔は緩和解除をどうするのか何て話で盛り上がるという悪癖がありましたが、今般のなお書き修正騒動が相当堪えた(かどうかは知りませんが)のか、今回はヒジョーに「落ち着いた対応」になっておりまして、誠に結構でございます(^^)。というか本来こうあるべきであって(だいたいまた書きだって本来当預残高目標に「程度」って入っていたんだからイラネェ筈だったんですけれども)、やっと本来の落ち着きを取り戻したというのが正しい。

まぁそれだけ先行きの景気に対して強気なんで、「果報(=量的緩和解除の条件が満たされる)は寝て待て」モードになってきたんだと見るのが妥当な所でしょう。

記者会見はもうちょっと見るところがありそうなのでまた明日。


○おまけ:また「関係者」か!

今回の決定会合でも総裁記者会見前に「票決が7対2」というのが「関係者」のコメントとして流れておりました。今回は仕方が無いので総裁も記者会見で票決について答えていたようですが、今の枠組みでは議事要旨発表時点でないと票決が何対何だったか公表しないことになっていたはずでして、まぁ相変わらず意識の低い「関係者」だなぁと思う訳です。ちなみに出席者はここの下の方に書いてあります。→http://www.boj.or.jp/seisaku/05/pb/k050713_f.htm

ま、言いそうな人は一人しかいませんわな。お前は黙ってろと。





2005/07/13

お題「今日もネタ無く昨日の相場の話」

○5年国債入札レビュー

えー、昨日はあたくしこんな事を申しあげましたな。

まぁ昨日(=11日)の引けレベル(=0.455%)で2兆円捌ける訳もなく、と言って0.47%あたりを利回りで上回ると事前の買いが入りやすそう(前回の下げでの安値は瞬間風速で0.485%、実質は0.48%)なので、まぁ売ったり買ったりしながら水準をちんたら下げていくんでしょう。今回は久々のリオープンですが、リオープンになると発行量が倍増ですので投資家さんの事前の買い攻撃も少々手が鈍って業者のお助け入札になる事を期待したいですな。

まぁ大体ここの所「事前の買い」を入れた人にいい事あったかというと、実はそんなでもなく、単に入札を割高にする効果しか発揮してませんので、いい加減学習効果がはたらいて欲しいなぁとは思います(が学ばないのが債券相場クオリティ)。(ここまで)

・・・・で、入札はと言いますと、事前の買いは入った(と思われる)わ、入札はど割高になるわと実にトホホな入札でした。前日比高いところでの入札じゃなかったのが唯一の救いではありましたが。

昨日の債券相場は朝一から海外市場での株高を受け債券先物は前日の安値をいきなり切って140円48銭でのスタート。そしてそうやって調子に乗って売る人がいるもんで、暫くすると5年47回債(どう考えても47回債のリオープン発行確実だったので実質新発債取引と変らん)を中心に5年ゾーンの現物債がビット確り。「こりゃまた事前の買いですかそうですか」って感じになってしまいまして、せっせと0.46%あたりを売る人もいたのですが、結局は前場引けに掛けて5年カレントしっかりで、47回債の新発債の気配が何故か受渡が10日手前の既発債と同じ0.46%−0.465%となってしまいました。本来5糸弱違うはずなんですが・・・・・

てな訳で、お約束の通り入札は前場引け気配から算定される適正水準の100円18銭を上回り、既発債のオファーサイド0.46%を上回った100円20銭(0.458%)が平均落札価格で、100円19銭(0.46%)の按分が13%と強い結果の入札だったのですが・・・・・

前場の引けが先物7銭安だったのですが、100円20銭だと前日比変らず水準で落札している計算になりますんで、随分頑張って高くなりましたなぁという印象で、まぁ直前のプライストークでは20銭での札入れもやむなしなんですかねぇという諦めモード。まぁ入札が強いかもしれないってのは良いんですが、実にケシカラン事に後場のスタートでいきなり47回債新発が0.465%が叩かれてしまったりする訳で、おまいら(人のことはあまり言えないが)は一体全体何を考えて入札しているんだというか投げる位なら入札するなよと小一時間問い詰めたくなるような動き。

落札結果が発表された時も「おお強い!」という結果だったのですが、ろくすっぽ相場は上がらす、というか前場引けレベルに先物がいるのに、最低落札価格の0.46%に堂々オファー並びまくって誰も買わずという涙の出るような展開。あまりにも上らないのでヘッジ売りが入ったりもしましたが、引けに掛けては謎の上昇で何となく誤魔化した形になっていますが、引けに掛けて相場上昇してましたが、第U非価格競争入札は見事にゼロ(14時半まで0.46%なんぞ買われてませんでしたから当たり前ですが)でしたし、実力的には「入札だけ5糸〜7糸くらい強くなってしまっただけ」という入札でありました。

割高入札になっても相場水準が動いてロングポジション大勝利とか、相対的に強くなってヘッジワークすて大勝利とかいうのなら兎も角、純粋に「入札空振りの方が儲かる」っちゅうのはさすがに情けない入札ですわな。嫌がらせのように事前の先回り買いを入れてた人も別に儲かっているとも思えませんし、素直に入札参加(でも落札結果発表後に買いでも良いけど)すればどうなのよって思うのですが、「人の買う前に買いたい」というしょうもない性根で入札を毎度毎度荒らすのは勘弁頂きたいものでございますわな。

と、延々と自分向けの相場メモ兼やや愚痴でありました。つまんねぇ入札でありましたことよ。


○少々雑談

・そうはいかんざき(?)

朝のテレビニュースでちらっと聞いただけなのでどうなのか存じませんが、何か公明党の神崎代表が小泉首相に「郵政民営化関連法案が参議院で否決されて衆議院を解散するのは反対」という申し入れをしたとか。

まぁあたくしは今回の民営化法案に関しては拙速の感があるのと、そもそも事業見通しとかがちと??(あまり真面目に検証してませんのであくまでも漠然とした印象)なので「もうちょっと時間を掛けたらどうよ」って思うのですが、何か法案反対派は兎も角、賛成派の方も段々頭に血が上ってきているのではないかという感じになってきて、「まぁおまえらおちつけ」というのが正直な所。

賛成派の論陣を張ってる人の意見をネット上で見ると何か最近お慌て気味の感があるのが実に香ばしい。つーか何で「郵政民営化賛成ならこの法案に賛成するのが当たり前」って論理になるのかさっぱり判らん。

で、話戻して神崎さんの意見が公明党の組織としての意見だとさてどうなるんでしょうなぁって思う次第。まぁ最終的には首相が解散権持ってるんですが。


・日銀総裁のちょっとした講演

経済教育サミットとやらで「いま、なぜ金融教育か」ってお題の講演を。

http://www.boj.or.jp/press/05/ko0507a_f.htm

まぁ言葉尻に反応してもしょうがないのですが、どうも福井総裁のお話は「お金をどのように使うかという事を皆で考えていきましょう」的な感じ。まぁそれはそれで極めて正論なのですし、何でも『日本銀行自身としても、今年度は学生を対象として金融経済をテーマとしたコンテストを実施したいと思っています。』(講演より)と意欲的で大変結構ではあります。

でもね、金融教育がどうのこうのって話であれば、後ろ向きな話になっちゃうのかもしれませんが、金融商品の広告に惑わされないようにしましょうとか、世の中そんなにうまい話はありませんよとか、まぁそういうレベルの「教育」をするのが先決ではないかと思うのですが。「国債の利回りが1%台前半で電力株の配当利回りが2%だと利回り3%の上場REITが魅力的」とか堂々と書いちゃう新聞が経済のクオリティーペーパーですからねぇ(吐息)。

いやまぁそれだけの話ですけど。


#今日の金融経済月報は注目しておきましょう





2005/07/12

お題「金融政策関連小ネタ/5年国債入札です」

まぁあまり大ネタはございませんですな。(無いわけでも無いのですが、下準備が必要っぽいネタになりそうですので・・・・)

○金融政策決定会合ですが

今日から金融政策決定会合ですが、金融経済月報での景況感判断がどうなるかってのが注目材料でしょうな。ここもとの経済指標を見るとどうも「IT部門の在庫調整」がイマイチなのではないかという気もしますが、恐らく短観の数字が良いほうに反応した月報になるでしょうなぁと思われます。

先日短観をほんのちょっとだけご紹介した際に申しあげましたが、金融機関の業況判断DIって物凄く良い状態でして、金利市場の参加者がだいたい金融機関の人間であることを踏まえますと、市場の雰囲気的にはやっぱ「景気は良いでしょ」って話になり易い傾向にあると思うんですよあたしゃ。で、気分的に好調の業界の人々が集う雰囲気がどうしても日銀に伝染しやすくなってその結果が日銀の強気の景況感に反映しとりゃせんかっていうのは考えすぎなのかもしれませんが、素朴な疑問として思うのでありました。

個人的には回復感を全然実感してない負け組君ですので(自爆)、景気が良い良いという話にはどうも???なんですけどね。個別銘柄は賑わっても平均株価は上らないってイメージですなぁ。


○ブラックアウトに関して

先日のドラめもんで月刊現代の記事をご紹介しましたが、その最後のほうでブラックアウトがどうのこうのという話をしたら、本石町日記さんがブログで解説をしてくれました。(http://hongokucho.exblog.jp/3090355)で、まぁそれを読んでね(はぁと)で話は終了してしまうのですが、要するにブラックアウト期間って言ってるのは日銀内での自主ルールであって、そもそも官庁と国会は対象外。あんなに国会に引っ張り出されて金融政策についてああだこうだと喋らされているのだからブラックアウト期間もあったあもんじゃねぇなと思ってましたが、なるほどそういうものでございましたか。

まぁ政策決定に関して日銀の独立性がどうのこうのって話は確かにあるのですが、月刊現代の当該記事にある「今回のケースが問題なのは、決定会合直前の「ブラックアウト」期間中のトップ会談が、「一般的な意見交換」と言えるかどうか疑問が残るからだ。」という記事は少々ピンボケですわなぁという所で。惜しいですな。

つーか政策遂行に関して政府と日銀が打ち合わせをするのは普通だと思いますが、月刊現代の記事にもありますように「日銀が財務省の意向に従属するかのように、具体的な政策手段を含めて財務省の言うとおりに動くとしたら問題だ。「政策の方向は政府と一致しても、具体的な政策手段は日銀に委ねる」という日銀の独立性は、歴史から生まれた知恵のようなものだ。日銀が政府の財布にならないようにするための担保である。」ってところが問題のポイントですわな。上記リンクで本石町日記氏も指摘しておられますが。

じゃあ決定会合の前々日にどこぞの新聞がリークするのはありゃ何なのよって所ではございますが(笑)。


○5年国債入札ですが

一時は0.4%クーポンかとびびっておりましたが、昨日の引けでは5年47回債めでたく0.455%となり、海外市場でも株高ですし、0.5%のリオープンはほぼ確定的になりました。

まぁ昨日の債券相場では週末の海外市場で無事に株高債券安になったこともあって「0.4%クーポンはご勘弁」攻撃で相場はヘッジ売りが入る形になりました。何かその売り方を見てますと結構慎重に売りながらって感じでして、先物も沢山落札する業者さんは当然売っているんでしょうが、先物の買戻しの入り方も早く、まぁ調子に乗って売り叩くという感じでは無い所が好感されますな。

あまり調子に乗って下げてしまいますと、毎度お馴染みの「事前の先回り買い」という意味不明の攻撃がでてしまう訳でして、特に5年債はディーラーっぽい動きをしたがる大手銀行勢の主戦場なので業者の方もその爆弾が降って来ないように注意しながらヘッジ売りを掛けているの図って所でございますわな。

まぁ昨日の引けレベルで2兆円捌ける訳もなく、と言って0.47%あたりを利回りで上回ると事前の買いが入りやすそう(前回の下げでの安値は瞬間風速で0.485%、実質は0.48%)なので、まぁ売ったり買ったりしながら水準をちんたら下げていくんでしょう。今回は久々のリオープンですが、リオープンになると発行量が倍増ですので投資家さんの事前の買い攻撃も少々手が鈍って業者のお助け入札になる事を期待したいですな。

まぁ大体ここの所「事前の買い」を入れた人にいい事あったかというと、実はそんなでもなく、単に入札を割高にする効果しか発揮してませんので、いい加減学習効果がはたらいて欲しいなぁとは思います(が学ばないのが債券相場クオリティ)。

特に波乱は無く、下がればそこそこの買いは期待できるでしょう。上ったら売れないので、戻る時はまたまた先物のヘッジ買戻し主体になるんでしょう。下がった場合は5年の0.5%よりも20年の2%が先にやってきそうですが(笑)。

#相変わらず物価連動国債がヘロヘロに見えますが、研究不足なのでパス。




2005/07/11

お題「相場点描」

月曜は毎度のように雑談、つーかここの所雑談が多いけど。

○機械受注を受けた謎の反応

金曜日の債券市場。ロンドンでの同時爆破テロを受けて海外市場では米国10年国債金利が一時4%割れどころか3.9%に接近したりしてましたが、結局行って来いになってしまった為に、東京市場の債券相場は反応しようが無く、前日比少々上昇したレベルでのもみ合いになりました。

でまぁ例によって機械受注待ちとか言って動かなくなったのですが、肝心の5月機械受注は市場予想の▲2.5%を大きく下回る▲6.7%となりました。

では債券市場は当然上昇かと思えばあにはからんや、瞬間的には債券先物は140円73銭から84銭まで上昇したのですが、そこであっさりとストップしてしまい、80銭台前半でのもみ合いになってしまい「ふ〜ん」とおもっていたのですが、14時15分頃から債券先物は再度上昇と相成りまして、今度は140円90銭台でのもみ合いになりました。

「何でそんなにタイムラグを伴って反応するんだ?」と思っておりましたが、よくよく見れば日経平均株価が下落しておりまして、本当の所は良く判りませんが、一応「機械受注統計が弱い数字だったので平均株価が下落した」ということになっていたようで、債券市場はその平均株価を見て反応したというのが実際に値動きにヒーヒー言って(ませんでしたが)た人としての感想であります。

つーことで、金曜の債券市場の上げは「機械受注統計を受けて上昇した」というよりは「機械受注統計を受けて下落した平均株価を受けて上昇した」というのが実感としては正しそうで、毎度毎度どこかの市場に振り回される債券相場である事よとトホホ感の漂う展開ではございました。ま、とっかかりのネタにインパクトが無いから仕方ないといえばそれまでですが。


○その他相場メモ

気にはなったが突っ込むほどのものじゃなかったり先々のネタ用メモを少々。

1.東証謎の発表

金曜の取引開始前に東京証券取引所様はわざわざ「本日は通常通りに取引を開始します」って発表したようですが、そんなの当たり前でアナウンスする話でもなかろうにって思うのですが、突発事件への耐性が一番無いのはこの国ですかそうですかって所なんでしょうか?そういえばイラク戦争開始した日にいきなり「臨時政策委員会」を招集した中央銀行もいましたなぁと懐かしく思う
次第でございます。

2.短期国債買入の銘柄選定基準が手直しか?

金曜日も相変わらず短期国債買入を実施していたのですが、今回は買入対象外銘柄が妙に多く、どうも今までだいたい「発行量の70%以上を日銀が保有すると買入対象から外す」という感じでやっていたものの「70%」を「50%」にして買入対象銘柄を減らしているようですわな。

買入のペースを変えるわけにも行かないので対象銘柄を絞って市場機能とやらの復活に資すという事なのかどうなのか。んな事するより短国買入のペースを落とせば良かろうと思いますが、あまり詳しく調べてないのでこの先はパス。

3.物価連動国債

いつの間にやらまたまた弱含みなんでしょうか(ってあまり真面目に見てない事がばれる言い方ですが)、日本相互証券の債券引値から50銭ほど安くなったお値段で昨日も少々出合っていたようです。これも詳しく調べてないのでこれ以上の話は調べ物後となりますが(汗)、まぁ相変わらずだという事のようで。


○読んだ本

「濠端随筆(入江相政著、中公文庫)」

昭和天皇の侍従(最後は侍従長)を務めた入江氏の随筆。昭和天皇のお話もありますが、入江さんが昭和30年代後半の日本の表情を描きながら、当時の東京が大きく変貌していく姿を歎いているくだりもまた興味深い。というか昭和天皇のお話と言っても別に政治的な話ではなく、天皇の人となりに関するお話ではありますが。

で、以前山本七平さんの本(角川文庫)を紹介した時にも思ったのですが、この本も宣伝用の帯がミスリード。宣伝用の帯には「昭和天皇侍従長の戦後秘話」と書いてありますが、そのお題で想像されるようなお話ではありません。宣伝用の帯が「売らんかな」精神なのはともかく、中身読んで作ってねぇだろうという宣伝文句だというケースにまた出くわしたって所ですが、こ〜ゆ〜のはどうかと思うぞ。

ま、そうならないようにあっしは基本的には書店でパラパラ中身を見てから購入することにしているのですが。

ISBN4-12-204496-0 \1429


○ど〜でもいい世間話だが

ハイテンションの割りに激しくツマラン朝の経済バラエティ番組に替わって最近朝6時からは東京MX(と南関東UHF3局)で絶賛放映中のブルームバーグテレビを視聴しておりますが、今朝は政府税調石会長のインタビューのダイジェストをほんのちょっと放映してした。

でまぁ石さん要するに「サラリーマン増税」と言われて物凄く反発を食らっていることに反論しているのですが、相変わらずこの先生はアレですなぁと感心するやら呆れるやらなんですが、まずインタビューの場所が悪いのかも知れんが「ふんぞり返ってインタビューを受けている」というカメラアングルになっているのが実に香ばしい。増税を甘受するのは当然というトーンでのお話をしているのもまた呆れるほど香ばしいですわな。そりゃまぁ正論なんですが、最終的に世論を喚起しないといけないのですから、そのベシャリはどうかと存じますがね。

で、その「椅子ふんぞり返り姿勢」と「裏返っているのではないかというような声での受け答え」がセットになって、見ているほう(って言ったって超ダイジェストなので1分もありませんでしたが)は益々血圧が上がる事請け合いでございます。ブルームバーグ端末(もしかしたら同社のWebでも)でインタビューのログ調べたらインタビューを発見できる(当然全部視聴できる)と存じますが、低血圧でお困りの方にはお勧めです(嘘)。税制改正大綱発表時に毎度のスマイルで「サラリーマンに頑張ってもらう云々」という話をした時点でその内容の是非を超越した「ヘラヘラ笑いながら(あの顔は石さんの地顔らしいので仕方ないのですが)飛んでもねぇ話するんじゃねぇ」という感情的反発を食らっているという事に思いが回らないようでございまして、実に香ばしいお方というか何と言うか。>石さん

ほんのちょっとだけ「クロヨン」という懐かしの言葉がでてきたように聞こえたのが唯一の救いかなぁと思いましたがね。





2005/07/08

お題「サラリーマンモード全開なのか・・・・」

相場の話の前にロンドンでの同時爆発テロでお亡くなりになった方々に哀悼の意をあらわすと共に、被害に遭われた方々が一日でも早くご回復される事をお祈り致します。

ニュースの第一報はロイターの英語記事で「リバプールストリート駅で爆発音がして、複数の地下鉄駅で避難が行われている」(17時20分過ぎ)だったんですが、その後エッジウェアロード駅でも爆発とかロンドンの地下鉄が全部ストップだとかニュースが出てきまして、18時過ぎに時事AFP電で「バスが爆発した」というのが出た時にはLiffeの債券先物がいきなり141円(昨日の東証引けは139円64銭)に上昇して米国10年債は4%割れになりました。

テロのパターンがマドリッドでの鉄道テロと同じ(通勤時間帯に公共交通機関を狙う)ものですから、同じ背景を持つ組織の犯行なのでしょうが、暫く封印されていた地政学リスクも気になる所ではないかと存じますが、とりあえずNY市場では一旦株安債券高になった後株は戻して債券も小幅上昇になっていましたので、過剰反応はしないというか、テロもありうるリスクと織り込まれたという事なんでしょうね。


○それはともかく昨日の情けない相場

昨日の債券市場は毎度お馴染みの如く米国市場での債券高を受けて寄付きからいきなり前日比11銭上昇でスタート。まぁ先物が上昇するのは判らんでもないのですが、昨日の相場で呆れてしまったのは「とにかく現物債がやたらと堅調」だった事。

先物の上昇でいつもだと上げが遅れてしまう現物債が昨日の日中は確りでして、長期ゾーン中期ゾーン共に強く、特に来週火曜日に入札が行われる5年国債は後場に入り先物が高値140円78銭なんぞをマークするような時には、5年47回債が0.445%ビットになっちゃいまして「おいおいそれじゃあ来週0.4%クーポンになっちゃうよ」ってなものでして、その後先物が下落する過程でもビット確りだった事を勘案すると、中期ゾーンにはそれなりに買いが入っていたようですな。

長期ゾーンに関しては、高値マークあたりまではやたら堅調でしたが、先物が高値から下落する段階でちと失速気味でしたので売りも出ていたとは思います(業者間で妙に安めのところで出合っていた5年35回債も怪しかったです。念の為)が、とにかく後場途中までは明らかに「現物債に買いが入って上昇した」という相場付きになっておりました。


いやまぁ現物債に買いが入るのは結構ですし、前日に目先の底値を確認してから買うってのも判らんでもないですが、何も下落前の水準まで戻ってから買うこたぁねぇだろうと思う訳ですよ、あたしゃ。投資をする価格水準っちゅう概念はないのかと小一時間問い詰めたいとはまさにこの事して、「底値確認前だと買わないけど、底値確認したら同じお値段でも買う」っておまいはディーラーかと言いたくなってしまいますわな。しかもこの相場付きで30銭下がって戻ってから買いが入るというのは誠に「???」なわけですよ。

まぁ同業のお友達も「ここまで戻って今更買うってそりゃどうよ?」と大いに呆れている人が(まぁ類は友を呼ぶというのもあるからメジャーな意見かどうかは知らんが)多かったと申しあげておきましょう。


「下値確認したからさて買いますか」ってのは判るんですが、水準感ちゅうものがどこに逝ってるんだと言う事で、何と申しますかサラリーマンモード全開の昨日の動きであったことよと思いました。もちろん、多くの投資家さまにおかれましては一昨日の10年安値1.275%近辺レベルで買いを入れておられまして、まぁ昨日の「底値を確認したので戻ってしまいましたが買います」という動き自体がメジャーなものでは無いと思いますというか信じたい(ど〜せ一部の大手投資家の動きでしょと勝手に想像してますが)ところでございます。

ま、脱力感漂う昨日の債券相場であったことよという所でしょうにゃ。


○恐怖新聞ウォッチング

恐怖新聞を1回読むと何日寿命が縮むんでしたっけ(苦笑)?

今週に入って恐怖金融新聞様におかれましては、「不動産投資事始め」などというお題で3日に渡って特集連載をおこなっていまして、まぁ要するに個人投資家に不動産の投資だとか不動産証券化商品への投資などを煽るという典型的な煽り記事なんですが、まぁ頼むから恐怖金融新聞で不動産投資を煽らないでくれ(不動産市況が崩壊するから^^)という話はともかくとして、昨日の記事中にあった理屈にはまたもアゴが外れるほど驚きました。

REITへの投資を煽る件なんですが、そこには「国債利回りが1%台前半で電力株の配当利回りが2%台の現在、上場REITの3%の利回りは魅力的に映る」って趣旨のくだりがあったわけですが、商品特性(金利が上昇するとダブルでいかれる商品だとか、一旦売りが出だすと一方方向に動き易そうだとか、そもそも組み入れている不動産だってテナント退出リスクあるし、非上場のREIT商品だったら流動性ねぇぞとか)を考えるとその利回りはリスクリターンに本当にあっているのかと「????」なんですが、恐怖金融新聞に煽られると「魅力的だから買いますか」って人も出てくるのではないかと思うと、涙を禁じ得ません。正直、個人的には配当利回り重視なら株主優待とかも見ながら自分の馴染みがある民生品銘柄でも買った方がよっぽど気が利いていると思いますが。

この連載記事でその前に紹介されていた事例とかも中々香ばしいものがございましたが、一応「プロ向きの金融紙」という触れ込みで売っている新聞なんですから、もうちょっとまともな書き方をして欲しいものだと思う次第でございます。もう5年以上まともにみてない(従って渡辺某のピンク小説もろくに読んだ事無く話題についていけない、つーかあーいう記事のある新聞を職場で堂々と読むのはセクハラ行為に該当せんのかと思いますがやはり「報道無罪」ですかそうですか)のであんまり比較できませんが、感覚的には以前に比べると内容の乏しさが激しくなってきているんですが、色々な情報を入手しやすくなった(通信手段の発達で)せいなのかも知れませんな。

ま、ギャグとして見て「あっはっは」と突っ込みを入れながら読むのが正しい読みかたかと存じます。昨日の2面記事の「円安と原油高でデフレ解消」という理屈も凄かったけど、一々突っ込むのは不毛なので以下省略。


ではでは。




2005/07/07

お題「買い場ご提供の後は/地域経済報告」

いやまぁニューヨークダウも威勢良く上ったり下がったりしますな。

○とりあえず初押しは買われました

昨日の債券相場、例によって米国市場で株高債券安だったのと、前日の引け後に20銭くらい下がって(売りでもあったんでしょうな)た勢いの合わせ技でいきなり33銭安だの10年や5年が3毛甘レベルだのとなりました。先物の安値は寄り付き直後の9時3分にマークして、10年271回債の安値が1.275%、5年47回債の安値が0.485%までありましたが、9時半くらいからはまず現物債がビットしっかりになってきまして、その後次第にじり高という動きになりました。後場に入りますと益々堅調という形にななって、まぁとりあえず昨日は1.25%超えで一旦買いが入るの図とあいなりました。

まぁ昨日に関しては前日の10年新発国債に新発政地債とございまして、相場が下落した所では各業者さまの店頭には投資家様の買いが大挙ご登場となっていまして、買いのタイミングを逸したというか1.2%台でさすがに売ってしまってさてどうしましょ状態だったりしていた人に絶好の買い場を提供したの図という感じではございました。

じゃあ1.2%台前半まで戻った本日以降はどうなるのよってのを良く外れるあたくし(爆)がつらつら考える訳ですが、毎度の事ですが、「下げ止まった」と確認されて上昇しだしてからいきなり買うというケツが重いというか○○○というか、まぁ「投資」なのに金利水準よりも地合いを重視しますかそうですかというような御投資家様がどの程度御出動なされるのかが戻りのメドとありきたりな事を申しあげておきましょう。

ま、相変わらず債券投資のニーズはあるんで、下がれば買いが来るけど、上ると買いが細くなる。でも別に下を叩いて売る人はいませんなぁという状況は変らないようですな。その中で「売り」はどこにあるかというと、何だか国内投資家&業者的には訳がわからん所まで叩いてくる事もある海外投機筋と、(こっちの方が断然でかいが)「新発国債の発行」という感じ。上でも買うのが所謂インデックス系の資金の買いと、ディーラーみたいに売り買いしたがる一部のお方(とディーラー)という所でしょうか。暫くはこのバランスを見ながらやっていくという思いっきり需給相場が継続と言った所でしょうか。

結論:次に下がった時は10年1.3%をちょっと超えた位(多分1.32%くらい)か、5年の0.5%ちょっと超えか、20年の2%のうち一番最初についたものがサポート。ちなみにサポートの信用度は20年>10年>5年でしょう。

来週は5年の入札があるので、まぁ昨日の下げ止まりで調子に乗って買い上げる必要はないと思いますが、どうも最近は馬鹿相場ですんで。


○相変わらず3ヶ月FBが100円ですか

今月実施の入札から応札制限が設けられた国債入札(按分狙いで過大な注文を入れる行為が現物株式では不可なのに、国債入札で99兆円とか今まで応札できていた方が変だったと思いますが)と相成りました。で、応札の刻み幅を今までの0.05銭から0.01銭に変更してまぁ要するに99円99.99銭で入札できるようになった昨日の3ヶ月もの短期政府証券の結果はこの通り。

http://www.mof.go.jp/jouhou/kokusai/fb/fbnyusatu/resul170706.htm

いやまぁ相変わらず困ったものですなぁ以外の感想は無いのですが、この全く儲かる可能性の無い長期戦(たしかに大して損もしないけど)どこまでやるんでしょうねぇと傍観しております。刻み幅を細かくしてはみたものの、結局「100円で誰かに札を入れられたら99.9999円の按分が少なくなるから」という事で目出度くも100円落札となってしまいました。ご苦労様な事でございます。

こうなっちゃうと発行量の絶対額が増えるか、相変わらず週1ペースの短期国債買入を減額あるいはパスするような事がないと中々復活するのは難しいでしょうな。残念!


○日銀の地域経済報告

今回が第2回だと思いましたが、モノはこのあたりに概要と本文(ただし表紙含め47ページ)へのリンクがございます。

http://www.boj.or.jp/ronbun/05/chiiki0507_f.htm

『各地域の取りまとめ店の報告によると、足もとの景気は、多くの地域で緩やかな回復基調にあり、弱めの動きも解消しつつある。すなわち、全9地域のうち、7地域の景気判断は「緩やかな回復基調」となっており、景気回復の「一服感」が弱まりつつあることを指摘している。一方、北海道、東北では、引き続き横ばい圏内で推移している。なお、4月支店長会議時と比べると、3地域(北海道、東北、九州・沖縄)は前回判断を維持しているが、残り6地域が設備投資計画の上積み、雇用情勢の改善、IT関連分野の調整進捗などを背景に、総括判断をやや上方修正した。』

ということでして、地域経済報告は「設備投資」「雇用情勢」「アイテー関連の調整進捗」という日銀の月報などで景気の先行き判断で今一番注目している分野について判断上方修正となっていることは気にしておく必要はあるでしょう。

日銀的には景気判断に関して「踊り場脱出」への見方を益々強めているということになろうかと思います。そうするとまた「隠れタカ派」(じゃなくてまんまタカ派だと思いますが)の福井総裁の腰も(せっかく武藤副総裁が据付けたのに)またウキウキしだす懸念も無きにしも非ずという訳でして、まぁ当預目標引下げ問題に関する過度の楽観視(というか引下げが遠のいたという見方)はあまりイクナイと存じます。今すぐどうこうという話ではないでしょうが。

ちなみにこの報告は『なお、記述内容は支店等地域経済担当部署からの報告を集約したものであり、必ずしも日本銀行全体の統一した見解ではない。』となっております。米国の地区連銀報告を意識して作ってるんでしょうな。本石町日記さんによりますと日銀はこの報告を「さくらリポート」と命名したそうですな。


○おまけ:財務省の予算作成ゲーム

http://www.mof.go.jp/zaisei/game.html

あちこちで話題になっておりましたので遅ればせながらあたくしもやってみました。で、ドラめもん大臣は来年度予算で税制を改正して前年比50%の税収アップを果敢に実施(^^)。ちとお父さんが「いったいいくら税金を払えばいいのだろう」とか困り顔にはなってましたがノープロブレムで歳出はそのまま予算編成終了。

・・・・「当年度の政策のための支出について、租税及び印紙収入等の内でまかなった上、剰余金を残すことが出来ました。借金残高を減らし、次世代負担を減らすことが出来ました。」と褒められましたが。

まぁ既にbewaadさんが「全歳出50%カット、増税50%の組み合わせでもgood endですよ!!」と既にご指摘だったので想定の範囲内(^^)。

こ〜ゆ〜のは作ると却って逆効果と思われ(苦笑)。




2005/07/06

お題「相変わらずここぞというネタは乏しいのですが」

いやまぁ米国債券市場もぶち切れ相場のようですが、こちらでは小ネタをいくつかという感じで。

○10年国債入札レビュー

昨日の債券相場。前日に引き続きという感じで先物寄り付き前から業者間スクリーンには長期債の引けにオファーがズラズラ並んでおりましたが、何故か先物は前日比1銭安の140円69銭で寄り付きました。しかし「みんなでヘッジ売り」ってなもんで、先物の高値は71銭まででして、前場は長期債は当然でしたが、何故か中期ゾーンも引き続き重く、とは言え下を派手派手に叩くとお馴染みの「先回り買い」を誘発しかねないのでまぁ匍匐前進って感じで相場を下げました。

前場引け近くに新発271回債で調子に乗って1.25%まで叩いちゃった人はいましたが、さすがにやり過ぎ感が漂い、前場の引けでは1.24%オファーの1.245%ビットで債券先物は140円59銭。

で、今回の入札は前日からのヘッジがワークしている形ですんで、業者的には応札余力のある結構な入札になっていたのですが、落札結果はご存知のように平均落札価格99円90銭(1.237%相当)で最低落札価格99円88銭(1.239%相当)と、最近の傾向どおり割と穏当な入札結果になりました(と言っても相変わらずオファーサイドよりは強いのですけれども)が、落札結果が堅調だったくせに発表前の後場寄付きから上昇したのは先物でして、結果発表後も一旦相場が戻った所での上昇は先物でした。

本当に順調な入札であれば、落札結果発表後に当該ゾーンが踏み上げモードになるはずであって、先物が持ち上がるというのは「入札だけ強い」ってパターンですなぁなどと見ていたら14時半くらいからいきなり30年(もともと引値が割高になっていたのですが)が弱くなるわ、20年も弱くなるわ、おまけに5年以下のゾーンもヘロヘロになるわという展開になり、先物だけは妙に底堅かったのですが、最後は前日比4銭安の140円66銭で終了。ど〜考えてもオファーサイドの引けになった10年271回債は1.235%(=99円69銭で入札レベルで言えば92銭)となってましたので、前場引け対比で先物7銭上って10年新発は平均落札価格から2銭しか上昇してませんですかそうですかって奴ですな。

まぁ相変わらず表面上は堅調な入札でしたが、どうもぱっとしませんでしたなぁってなもんです。引け後にいきなり140円45銭まで叩かれたのも驚きましたが。。。。


○しかしまぁ恐怖新聞おそるべしですな

先週の金曜に短観が発表された時点では見事に全然下がらなかったという形ですが、米債がいきなり売られて帰ってきた今週の初めからはいきなり雰囲気が一変。今度は「入札ラッシュ」が気になるのではないかという勢いでどうも皆様様子見攻撃になりつつあるというこの変化も何のこっちゃという感じでして、まぁ節操のない相場でありますことよと感心するところでございます(^^)。

で、昨日も申しあげましたが月曜の日経公社債情報「緊急誌上座談会」記事がまさしく恐怖新聞(ただし逆張り指標)状態でしたなぁということでございまして、天才(天災?)的な高値掴みの技を見せて頂きまして誠に敬服する思いでございます(^^)。

ま、ここのメディアの記事(除く市場データ)とかを真に受けて売ったり買ったりすると以下自粛という典型的な事例でして、偉い人におかれましてもこの特性をよく理解して下々の者にご指示など出されて頂きたいものでございますな、あっはっは。

まぁこういう雰囲気になっちゃいますと、「絶対水準での買い」を入れて来る人が出て相場が明確に下げ止まり(というか反発)しないとズルズルと下落って感じでしょうな。先週金曜は買っているのに何で買わないんでしょうなどという野暮な事を言ってはいけません。



○月刊現代の記事

bewaadさんの所で紹介(http://bewaad.com/20050705.html)されていたので珍しくも購入して読んでみました。ジャーナリストの桜井慶二さんが書いたもので、「日銀激震、福井総裁「恥辱の大敗北」−独立性はいまや風前の灯火」って記事です。うーん、720円かぁ・・・・

まぁ内容はといいますと、先日の「なおがき修正」の内幕記事という感じで、当預目標の扱いについてタカ派とハト派の間の落とし所として武藤副総裁が「なお書き修正」の線をまとめたものの、福井総裁が谷垣財務大臣に「なおがき修正は政策転換」を認めさせようとしたが敗北しましたって話。

どうも読んでいると「日銀に介入した財務省はケシカラン」という論調にも見えるのですが、どうも「???」と思うのは、結論部分にあるところ。

『今回のケースが問題なのは、決定会合直前の「ブラックアウト」期間中のトップ会談(注:記事によると武藤さんや福井さんが谷垣さんと相談したということになっています)が「一般的な意見交換」と言えるかどうか疑問が残るからだ。』

いやまぁ決定会合が形骸化するのはケシカランというのは判りますが、ブラックアウトがどうのこうのって話をしだすと、ブラックアウト期間中に日銀総裁を委員会質疑に呼び出して金融政策に関して話をさせる国会はどうなってるのよって思いますが。

まぁそんな突っ込みはともかく、福井総裁がタカ派ってのは過去の言動を追っかけていると、別に内幕的な話を持ち出すまでもなく「まぁそうでしょうなぁ」というところではないかとは存じます。内輪で「早く、金利を復活したい」と言っているという記事中のお話はちとその文脈によりけりだと思いますがね(「早くデフレ脱却して欲しい」って意味なのかも知れませんし)。

記事最後の「ある日銀ウォッチャー」のコメントが妙に変なのも「??」でございます。同じく記事より。

『「もともと日銀内でも、デフレが続いているのに、どうして引き締めができるのか、という疑問が出ていた。それが有力な勢力にならず、結局、タカ派は財務省に挑戦して一敗地にまみれた格好です。今回の措置は引き締めではないことになっているから”敗北”がはっきり見えないが、ホンネの戦いでは完全に負けている。一方、市場はとっくに日銀のホンネを見透かしている。これでは日銀への信頼が高まるはずもありません。」』

えーっと、第一文と第二文のつながり方が妙。日銀内では結局引き締め派が優性だったって言いたいのでしょうか?それはどうかなぁと申しますか、そもそも福井総裁トップダウン型なので日銀内がどうのこうのという話も変なんですが。で、今回の措置が引き締めでないことになっているから「敗北」というのも訳判らん。措置が引き締めじゃないけど引き締めの第一歩というホンネがあるのであれば「ホンネの戦い」は勝利ではないかと存じますが。。。。

まぁご興味のある方は月刊現代8月号126〜132ページをご覧下さい。


○郵政民営化法案雑感

いやまぁ5票差ですか。時事通信のフラッシュニュースを見た記憶によれば採決の議場閉鎖直前に古賀さん高村さんだのが7名退席したって事ですから、まぁやる気満々だったら衆議院でも否決できたという事なのか、とりあえず反対派も最後までは突っ込まないで妥協を探っているのかは存じませんが。

しかし参議院で否決されて衆議院解散するというのも妙な話ですんで、これは参議院まで持っていく作戦なのか(まぁ解散するんでしょうが)どうか。まぁてめぇらが自民党総務会で強行突破しておいて党議拘束とか言い出すから反発も広がったんでしょうなぁと勝手に思ってますが、この辺の話はよーわからん。

本法案が政局になるようですと、債券相場はどうなるかって話ですが、何か直感的には株安債券安なんですが、正直良く判らんです。相場の位置が位置なだけにちょっと売りっぽい雰囲気かとは思いますが。

まぁしかしあたくしも「なんのための民営化なのか(by田中秀臣先生)」がさっぱり見えてこないこの法案強行突破攻撃はちと疑問を感じる次第で、賛成派な人と意見交換をすると、「おまえは民営化反対の既得権益保護主義者か」と言わんばかりの勢いで駄目出しされるのは正直辟易している(のであまりその話はしませんが)次第でございます(ちなみに田中先生のブログのコメント欄で先生が高橋洋一氏と論争してまして中々興味深かったです。「なんのための民営化なのか」はこちら→http://blog.goo.ne.jp/hwj-tanaka/e/85f9d6e4f423f0de2e18afdee48800a5)。





2005/07/05

お題「10年国債入札です」

まぁ日銀方面は武藤副総裁のご登場+福井総裁が落ち着きを取り戻した(いつまた当預目標引下げの虫が動き出すかは少々不安が残りますが)ということで現在小康状態で目出度い事でございます(水野審議委員は相変わらずですが、福井総裁が揺れない限りはあくまでも「少数派意見」扱いです)。

という状況でネタも不足気味(ではないが調べ物が必要っぽい話が多いので、汗)でして本日も相場雑談をば。

○神メディア日経

FOMCの結果では何故か金利が低下(しかも6bpとか)した米国債券市場が金曜日のISM製造業景況指数でいきなり13bp売られるという米国債券市場もまぁ馬鹿相場っぽい状態ですが、昨日の債券市場では米国の長期金利上昇を受けていきなり140円台からスタートして結局安値引け。輪番オペを受けてちょっと戻る場面もありましたが、長期債が入りそうなオペの割にはオペ結果が結構悪くて長期債売り売りモードが判明してなお後場売られるの巻になりました。

で、まぁ例によって例の如く毎週月曜に発行される日経公社債情報を読みますとこれがまたトップ記事が、

「誌上座談会(=インタビューを対談形式にアレンジしたもの)、長期金利9月までに1%に低下も」

でございました(^^)。なるほどそれは債券相場売られますわなと感心することしきりのあたくしでございましたが、まぁ人から聞きますと先週金曜は日銀短観の結果を受けまして運用機関の皆様におかれましては「さて今後どうしましょう」という会議が行われた方も多いようで、席上「偉い人のご託宣」が出ているような会議様も散見されたのではないかと勝手に思料されますわな。

まぁしかし先週の「長期金利1.2%割れ、一段の低下余地も」という日経金融新聞一面記事もそうなんですが、ど〜してこの新聞社が市況の話をすると見事に逆に逝くんでしょうなぁ。色々と考察されている訳ですが、ま〜相場見通しに類する話題をぶち込む時には、あまり「色」を出すわけには行かないってのもあるんでしょうから、どうしても「大勢が判明してきた所でそっちに乗る」という形になりやすい為に、結果として「ここが相場の何かを語るとその逆に逝く」という怪法則が成立してしまうのでしょうなぁとちょっと日経の立場を慮った積りの書きかた(^^)。

ま、観測記事書いて外れると困るから大勢が判明したと誰もが思うような所に来ないと書かないって言うのはもう絵に描いたような天井買いの底値売りでございますので、そういう意味ではマーケットセンチメントを測るためには便利な指標ですので、今後も曲げ神様の技を精進して頂きたいものでございます。


○さて久々の1.2%クーポンですが

本日の10年国債入札のクーポンは1.2%が有力ですが、ふと見ると1.2%のクーポンって242回債以来なんで3年近く無かった水準ですな。前回の戻り(とある人が金利に蓋をするとか迷言をしていた頃)は1.3%クーポンで跳ね返されておりますので、確かに消化は懸念されそうではございます。

ただ、今回の入札に関しては、ご存知のようにその前に1.2%割れを2回やっておりまして、その間に(そりゃまぁ買いもなきゃ相場は上がりませんが)それなりに投資家さまの戻り売りも出ていました(=よって下がれば買いもあるでしょう)し、昨日は輪番オペで長期債(だけじゃないかも知れませんが)が3000億円吸収されていて、なおかつ昨日の債券相場は安値引けとなっております。

これら状況を勘案すると、業者の事前準備はそこそこ出来ていると見るのが妥当でありまして、かつ昨日の引値ベースを新発債の1.2%クーポンに当てはめるとだいたい1.225〜1.23%位になりますので、まぁ心理的なポイントになる1.25%まであと先物ベースで20銭ちょっととかになる訳ですので、相場が戻って上昇しちゃうとちと売りにくいかもしれませんが、相場が下がった時はそれなりに消化できるでしょうという感じ。

一番困るのは、寄付きからいきなり「先回り買い」が入ってしまう事でして、朝から調子に乗って270回債の2毛甘(1.235%)だのとやってしまうと買いを誘発する懸念大有り。昨日の後場の長期ゾーンや先物の売り方も何かちと調子に乗っている(特に昨日は米国が独立記念日で休場なので「米国市場で債券急反発」という足掬われリスクが無かったですし)節が見られたのですが、まぁ今日も調子に乗って早い時間帯から売り込まない方が吉かと存じますな。

先回り買いが入った場合のシナリオは、「先回り買いが入る」→「業者が踏みあがって入札」→「入札割高」→「当然追随無し」→「仕方が無いので先物あたりを思いっきり叩いてイールドカーブ上10年を相対的に強くしながら買いの来るポイントまで相場下げ」→「戻る時は先物だけ戻る」という参戦者皆不幸(後から参戦した人は不幸にならないが)なものになる悪寒。まぁ前場途中まで値持ちして前場引けに掛けて駄目押しのヘッジ売りで相場を下げるというのが一番嬉しいシナリオなんですが。


また、今回からは応札額制限が課せられると記憶しておりますが、まぁ1銭刻みの応札になってからというもの10年国債入札が一番真っ当な入札になっておりまして、満額単位の兆円単位応札らしき動きも見られませんので、それほど影響は無いかと思います。応札制限で影響があるのは2年以下の国債(と短期国債)の入札ですので・・・・・


#ま、一応郵政法案本会議採決はチェックしておく必要ありそうですわな。



2005/07/04

お題「何か全然下がらない相場ですが/短観をテキトーに読む」

週初につきただの世間話。

○日米ともに馬鹿相場の様相(か?)

米国市場ではFOMCの結果を受けて売られた筈なのですが、いきなり切り返しとなりまして、米国長期金利は「政策金利引き上げ」+「引き続き引き上げを示唆」という状況なのに何故か木曜は金利低下。しかも株式市場は利上げ継続を嫌気して下落ってそりゃどうなってるのよという相場でしたが(金曜はISM製造業指数が予想以上に強かったので株高で債券売り売りでまた4%乗せになりましたが)、まぁ米国債券市場もどうも馬鹿相場の雰囲気。

で、日本の債券市場はと申しますと、金曜の寄り前に発表された日銀短観の業況判断DIは事前予想の上限数字になります主要企業製造業で+18となったのですが、これがまたろくすっぽ下がらないという展開になってしまいました。

金曜日の債券相場では先物が妙に堅調というか下がらない展開でして、ちょっと先物が下がるとすかさず買いが入るような動きが終日継続してましたんで、まぁ相場がこの位置であることを考えますと、投資家様のカバードコール被行使だの利食い売りだのというものもそれなりに嵩んでいて、業者のポジションがそこそこ現物ロングの先物ショートになっているのでしょうなという印象を受けました。

しかし短観は結構良さげな数字だと思ったのですが、所詮アンケートだと思って売られないのか、単に「下がったら買いたい」人がいるからなのか。まぁ金曜日あたりは短観も出た事ですので運用会議も絶賛実施されたと存じますが、明日の10年入札を前に(米国債券市場も下がっている事ですし)少しは債券相場下押しして下さいなって思うのですが。

まぁ本日と明日あたりで大して下がらないとなると7月相場はただのじり高になってしまいそうな悪寒。


○短観のあたくし的な楽しみ方

日銀短観(概要)を毎度毎度ぼーっと眺めるのですが、何せ本職ではございませんのできちんと分析する訳でもなく個人的にネタとして見るわけでございます。

・業況判断DIの達成度合い

で、あたくしがネタとして見る場合一番最初にチェックするのが、「前回調査時点での先行き見通しが今回どのくらい達成されているか」というところでして、3月時点での「先行き(=6月予想)業況判断D」Iを見ますとこんな感じになります。

製造業
・大企業:+14→+18
・中堅企業:+2→+8
・中小企業:▲2→+2

非製造業
・大企業:+10→+15
・中堅企業:▲4→+1
・中小企業:▲15→▲12

ということで、物の見事に全セクターで3月時点で思っていたより業況判断が宜しいと。ちなみに3月時点では先行き予想の数値が基本的に足元の数値よりも悪く、「先行きの業況判断が悪化」というお話になっていた(ので債券買い材料だったんですが)ので、この結果は「企業業績判断は悪化するかと思っていたのに実は悪化してない(どころか3月の数字から好転してます)」というものでございますわな。

で、まぁ今回の先行き業況判断DIは横ばいないし若干下向き(1ポイント位)となっておりますが、毎度毎度短観を見ていまして、この「先行き業況判断DI」ほど当てにならないものはございませんなぁという印象があるんですが。

・今回は雇用人員判断DIも見てみましょう

最近の景気見通しの話では必ず「雇用情勢の好転」というお話になってくるので、雇用人員判断DIを見ようかと。ちなみに短観(概要)の6ページ目になりますわな。

雇用人員判断DIは「過剰」−「不足」で出すので、マイナスがでかいほど人員不足(=景気が良い)となるのでちょっと妙な数字ですが、こちらに関してさっきと同様に3月時点での先行き雇用人員判断DIと今回の数字を比較してみます。

製造業
・大企業:+4→+4
・中堅企業:+1→+0
・中小企業:+1→+2

非製造業
・大企業:▲4→▲4
・中堅企業:▲6→▲4
・中小企業:▲3→+1

まーモノが「雇用」なんでそんなにぶれないのかも知れませんが、それにしてもこの辺の数字見てますと3月時点で予想している状況からそんなに改善してはいませんねって事で、業況判断DIの改善ほどは好調ではないかと。まぁ3月時点での予想そのものは全般的には改善傾向でしたので、3月の足元の数字よりは今回は改善しているのは確かですけど。念の為。


・余談:金融機関の業況判断等

7ページ目に「金融機関の業況判断等」ってのがございまして、業況判断などのDIが出ております。まぁおまけのようなコーナーではありますが、業況判断DIを見ますと相変わらず結構な数字でございますわな。金融機関合計で+38ということで、大企業製造業もビックリの数字。ちなみに+38を越える数字が出ているのは大企業では鉄鋼(+60)と一般機械(+39)なんですが、そりゃ金融市場で「景気回復ムード」が盛り上がるわけですなぁと思う次第でございます(^^)。

今回笑ってしまったのは「証券業」の業況判断DIでして、3月時点での足元DI数値が+34でして、3月の先行き予想DIが何と+50となっていたのですが、いざ今回蓋を開けて見ると6月の業況判断DIが+19ってそりゃあんたあまりにも予想との乖離が凄すぎ(^^)。その時の雰囲気に影響されやすい数字が出てくるというのは証券業界の仕様ですか??

というか、金融機関では短観の回答をまさか三下が勝手に書いているとは思えませんので、それなりの部門のそれなりのお方がチェックしていると想像しますと、この豪快な乖離っぷりはうわなにをするlkjんhふじkmj

ちなみに、金融機関の雇用人員判断DIも中々。「貸金業・投資業等」では3月時点での足元数値が▲14で先行き見通しが±0だったのが、6月の数値が▲27とこれまた豪快な上方修正になってますが、まぁ金融機関全体で調査対象になっているのが207社と母集団が小さいので、このカテゴリーに何社入っているのよっていうお話もございますが。

「証券業」の雇用人員判断DIが今回も▲38と相変わらず絶賛人手不足との事ですが、その割にはあたくしにおしごとの口が掛からないのはあたくしが役立たずだからですかそうですか、とほほのほ。







2005/07/01

お題「燃料投下恐縮でございます(^^)」

さあ短観ですよ〜♪と言いましても既に1.2%割れな訳でして、来週火曜に10年国債入札があることは気にしないでゴーゴーレッツゴー状態になっている債券市場恐るべしといった所ですな。これで予想より弱い数字が出たら何が起こるのか想像はあまりしたくありませんな。おーおそろし。

○市場の「達成感」はどうよ?って話になりますが

昨日の債券市場、後場途中くらいまでは例によって例の如くという感じで、何となく下がらない状態で推移していたのですが、後場途中から中期から長期ゾーンにかけて現物債が買われて確り。途中までは買い方が「明日無き買い」という風情を示しており、実に香ばしい状況でしたが、いきなり20年債のカレントゾーンあたりに売りが出てしまいまして、結局相場は上昇するも超長期ゾーンがヘロヘロという引け。

まぁ何ですな、相場の上昇で「いやー、こりゃ逝ってますなぁ」という感覚が出てくるためには、やはりこう「買い方がもう相場に明日無しって感じの動き」になって、おまけに「イールドカーブが気持ちよくブルフラット」という感じになって頂かないと、いつまでたっても「達成感」らしきものが出てこない不完全燃焼モードになる訳ですわな。なんてぇのはあたくしが勝手に思っているだけの話かもしれませんが、どうもこう「いや〜こりゃやっちゃいましたな〜」感が出てこないのがこの相場のタチ悪い所でもございますな。

という訳で、短観でどっちでもいいから一発ぶれてくれる事キボンヌ。


○この人はどうなっちゃってるんでしょうと懸念される訳だが

昨日の引け後に情報ベンダーから金融政策に関する発言フラッシュが打たれまして、またまた例によって例の如く「当座預金残高を引き下げるべきだ」とか「量的緩和の量の効果が長期金利を押し下げている」とか「手形オペの期間を短くする」などと債券市場を下げるようなコメントが出てきた訳ですが、やはりこの人でありました。

http://www.boj.or.jp/press/05/ko0506f.htm

どうも29日に水野審議委員が日本経済研究センターで講演していたようでして、その講演要旨が夕方に日銀Webにアップされた訳ですにゃ。お題は「今後の金融経済情勢―景気回復シナリオの再点検」ですので、一応経済情勢に関するコメントも読んでみますが、この講演録の最大の見所は最後にある「5.量的緩和政策は「魔法の杖」ではない」であることは申すまでもありません。

・景気に関する現状認識と今後の見方

色々と話をしてますが、要するに・・・・
1.中国向け輸出が伸び悩み、輸出の伸びが弱い
2.アイテー関連の需要の回復が力強さを欠くので輸出も含めて生産が弱い
っつーのが悪材料で、一方で
3.設備投資が増加しており、企業行動に変化が見えてきている
4.雇用情勢が改善し、個人消費が増加傾向にある
というのが好材料。

トータルすると「企業収益の改善によって、企業の投資行動と雇用情勢が好転することによって景気回復が進展する」という外需主導型とは違う景気回復メカニズムのシナリオを示しております。先行き見通しは強気というところでしょう。

・さて本日のみどころはこちらです

『最後に金融政策運営について、少し長めのスパンの話を中心にお話ししたいと思います。』

という訳で、大先生金融政策について語っておられる訳ですが、まず最初にあたくしのアゴが外れそうな位に驚愕したのはこのくだり。

『一般的に、中央銀行は、金融政策運営に関するコメントによって、短期金融市場や債券市場に一定の影響を与え、イールドカーブの形状を変化させる一方、長期金利水準やイールドカーブの形状から市場の景況感を読み取ります。』

「相場に口先介入する」っていうセンスも素晴らしいですが、それ以前の問題としてこの文章って前半と後半で言ってること思いっきり矛盾してねぇかと思うのはあたくしだけではありますまい(-_-メ)。

自分で市場に口先介入しておいて変化を読み取るも糞もねぇだろうという訳でございまして、続きに『従来は、長期金利水準の変化から情報を読み取ることができたのですが、最近では、世界的に長期金利は低下傾向を続けており、特に米国では政策金利を引き上げても長期金利が上昇することのない状況になっています。』って言ってますが、そりゃ単に中央銀行と市場の感じる景況感が違うって話(あるいは景気過熱をコントロールできていると市場が認識している)ではないのかと小一時間問い詰めたいという感じですな。


ここの部分もあたくし的には「???」ですが・・・・

『日本銀行はかねてより、長期金利は「コミットメント」の効果によって低位安定していると説明してきましたが、最近では「量」の効果が長期金利を押し下げている面が強いのではないかと思います。』

あなた様は「量に意味はない」と言ってませんでしたかと小一時間(略)。


そして財政政策と金融政策の関係に関して、「デフレスパイラルのリスクが払しょくされたので金融政策の正常化をする」という誠にワケワカメな理論が最後の方に披露されておりまして、中々楽しいのですが、最後の方にある話がこれまた泣かせます。

『すなわち、当座預金残高目標をいずれ引き下げる局面がやってくると思いますが、このままの残高水準を維持したままであれば、量的緩和政策の枠組みを突然変更することにつながりかねず、中期的には、無理な資金吸収オペを行う必要が出てくるおそれがあり、長期的にも、金融政策がビハインド・ザ・カーブに陥る結果、期待インフレ率が上昇して長期金利が本来あるべき水準よりも高い水準まで上昇する可能性があります。また、想定外の金利上昇を回避し、あるべき長期金利水準への収束を速めていくためには、適切な国債管理政策が不可欠です。』

量的緩和解除に至るプロセスにあたって「慌てて引き締めないといけない」のか「ちんたら引き締めて無問題」なのかはその時の景気上昇の角度がどのようになっているかに依存するので、現状のCPIゼロペッグが必ずしも長期金利の上昇を起こすとはいえませんわな。それはともかくとして、この話いきなり「適切な国債管理政策」に話がワープしているように思われるのですが・・・・


・まぁ救いはと申しますと・・・・

この講演、景気に関する話はともかく、金融政策に関する話はご紹介した部分以外も「???」なものがございますが、この講演の最大の救いは何かと申しますと・・・・・

「債券相場が全く反応しなかった」

事でしょうな(爆)。当預目標下げどころか、オペ期間の短縮化とかわざわざ寝た子を起こすような提案をしている訳ですが、債券市場全く無反応で。それどころかイブニングセッションでも債券先物上昇ってなもんでして、市場としては「また言ってやがるわ」という扱いになりつつあるようで実に結構でございます。あひゃひゃひゃ。