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2005/06/30

お題「相場雑談など」

私事が立て込む時は見事に立て込むものであります。資料整理が溜まって大変なことになっているのですが(涙)。

てなことで本日もまた雑談。

○ビックリした相場反発

昨日の債券市場は大幅反発。1.2%割れをやった後の火曜日に「某経済新聞の法則」が出て米国市場での債券上昇にも関らず円債は下落。で、昨日は米国市場で株高債券安(でも米国10年国債は4%割れていたんですが)となったので「いやまぁこれで続落したら一旦相場は達成感出ちゃうんでしょうかねぇ」などと思ってしまいそうなスタートだったのですが・・・・・

前場は前日比やや安いところでもみ合いでしたが、後場になってから特に材料も無いのに先物やら超長期、中期ゾーンなんかの現物債が業者間でポンポン買われだしまして、前日比変らずレベルを抜けたあたりから上昇テンポが速くなってきまして、結局またまた1.2%割れの先物141円台ですよ先生。終わってみれば超長期ゾーンやら先物やらが堅調な相場となっておりましたが、現物債も全般的にしっかりと言う事で、月末お得意のインデックス系な現物債買いや早速やってきた押し目買い第一弾が「やっぱり相場高いし来週10年入札だからショート目なのかな〜」なんて人のショート買戻しなんかも巻き込むの図と逝った所かと。よーわからんが。

寄り付き前に発表された鉱工業生産は全体の数字は予想通りでしたが、日銀様絶賛ご懸念中の「アイテー関連の在庫」あたりがあまり宜しくなかったので何気にどうよって数字だったらしいですが、正直前場相場が反応していた節が見当たらないので、経済指標に反応しにくい(いやまぁ驚天動地の数字でも出れば別なんでしょうけれども)相場ってのは相変わらずのようですなぁ。

ま、日銀短観待ちなんでしょうけれども。


○それは何かちと方向性が・・・・・?

経産省さま方面からここ数日大変に香ばしい空気が流れていましたが、何か昨日「自粛」の施策が発表されておりました。

えー、元々の経産省ニュースは「財団法人産業研究所」が実施していた委託研究の調査研究費が余った分を未処理のままプールしちゃって、それをまた何故か大臣官房企画室長が代々管理しておられましたというお話でしたな。で、その余ったお金の蓄積あんど外郭団体の資金を大臣官房で管理してたのか意味判らんとか、この財団法人の財源が日本自転車振興協会ですかそうですかなどと実に「???」な話ではあるのですが、どうも「私的流用してカネボウ株の売買をやったのはケシカラン」という話をクローズアップしたようですな。

で、とりあえずの処分として出てきたものの一つが「全職員の株式取引を7月1日から1年間自粛」というのはそりゃ何よと個人的には思う次第でございます。

この問題って正直私的流用がどうのこうのって話よりも、こ〜ゆ〜資金の管理が行われていた事の方が激しいポイントであって、私的流用して株式売買やったってのは「当該職員の個人の問題(確かに軽い話ではないが)」なんじゃネーノって思う訳ですよあたしゃ。

で、処分の一環として上記のように「全職員の株式取引を1年間自粛」ってのが出てくるのは、非難の矛先を「株式売買」に向けるという巧みな目くらましのように思うあたくしは意地悪過ぎですかそうですか。どうも相変わらず「株式売買は悪」的な発想が出てくるのは誠に遺憾極まりないお話ではございます。

ま、しかし「再生銘柄」のホットトピック銘柄でありますところのカネボウ株の売買を関係官庁の官房企画室長なんて思いっきり重職にあられますお方が堂々実施というのは私的流用とか重要情報の授受の有無に関らず「あなたさま公僕としてその感覚ってどうよ?」とは思いますがね。あたくしと致しましては。。。。

ちなみに事の経緯に関してはこの辺を↓
http://www.meti.go.jp/speeches/data_ej/ej050623j.html


○明日は短観で7月入りですな

明日の日銀短観。小幅改善が大体コンセンサスになっていますが、何せ前回の短観では(4月1日発表)「サプライズの悪い数字」が出てきて債券先物が大爆発したら寄り付き5分後に「期初の利食い売り」が大爆発して債券相場は寄り付き直後の高値から74銭叩き売られる(結局前日比変らず近辺まで戻ったけど)というすげぇ動きがございましたので、今回も「結果がどうあれ」という人が待ち構えているのではないかと期待あるいは懸念していたりする訳ですなこれがまた。動けば商売にもなりますので、何気に期待している業者な人たちはいますが、さてどうなんでしょ?

というか、今回の場合そんなに売る玉あるのかよって気もします(何せ調子に乗って掛けたカバードコールがじゃんじゃん行使されて結局現物買っているような動きもあるようですし)ので、短観きっかけにやってくるのは売りなのか買いなのかは出たとこ勝負、と何の意味も無い話ですな。

来月の中長期国債の入札は、毎月の10、20、5、2年に加えまして、15年変動利付国債と30年国債の入札もあって見事に揃い踏み状態ですんで、さて需給関係はどうなるんでしょうというのは気になるところであります。

・・・・でも、皆でそんな事を考えていると、結局「どうせ下がるだろうから、下がってから買うか」となってしまい逆に相場が下がらなくなるという罠。


#と言う訳で本日もまた雑談三昧で恐縮至極。





2005/06/29

お題「相場雑談と春審議委員の記者会見」

引き続き私事多忙中なのでネタ拾いが停滞中・・・・

○某経済新聞の法則(^^)

昨日の債券市場は相変わらず米国債券市場がフォローとなっていたにも拘らず、伸びがイマイチでして、先物が5銭とか上昇しているのに朝っぱらから10年269回債の引けがあっさりオファーサイドになっていたりして「???」の展開。

と、思っているうちにズルズルと10年を中心に相場が下落したのはご案内の通りでして、終わってみれば先物は15銭安の140円85銭で10年270回債は前日比2毛甘であっさり1.2%に戻ってしまいました。

ナンノコッチャという相場ではありましたが、普段某経済新聞を読まないというトレーダーにあるまじきあたくしが日々かかさずに巡回しているブログ(http://blog.goo.ne.jp/kitanotakeshi55)で「こんな記事がありますが」って話を知り、「おひおひ」と思いながら某割高金融新聞をを見ますとその一面の「アングル」というお題の記事に堂々と書いてありましたよご指摘通りに(^^)。

「長期金利1.2%割れ、一段の低下余地も」

えーっとですな、某経済新聞のマーケット面は「ここに書かれると相場がおしまい」という恐怖の法則がある訳ですが、金融新聞の一面に堂々記載というのはやはりアレではなかろうかと思っているうちに上記のような下落と相成った訳でして、毎度毎度の事ですがこの新聞は侮れません(ただし逆指標ですが^^)。一部で「髪(神ではない)」と言われ、彼の「買い推奨」が見事に天井掴みをするとも噂される某人気株式評論家もビックリと逝った所かと存じますわけでして、昨日は某経済新聞の曲げフォースの素晴らしさに感銘をうける一日でございました。

でも相変わらずあたしゃー読まないんですけどね(^^)。


○どうも春審議委員は「慎重派」のようでしたな

昨日は春審議委員の講演をご紹介しましたが、講演後の記者会見がアップされまして(http://www.boj.or.jp/press/05/kk0506d.htm)、そっちを見てますと、昨日申しあげた「当座預金残高目標引下げに柔軟姿勢」というのはちと間違っていたように感じましたので謹んで訂正がてら会見内容ご紹介。

当座預金残高目標引下げに関する質疑に対する応答2題。

景気と当座預金残高の関係について(長いので段落分けました)。

『先ず景気と当座預金残高の関係であるが、今の量的緩和政策そのものについては、私としては所謂3条件が満たされるまで堅持していくということが大前提であると思う。それから、3条件を満たしているかどうかの判断をする際、私自身としては、早過ぎても遅過ぎてもいけないというタイミングが重要であるが、どちらかといえばデフレに戻らないということを重視して判断をしたい、と考えている。そのうえで、量的緩和政策を堅持しながら、今は一時的な下振れはあり得るという形の運営をしているが、それが今後景気が変ってきた場合にどう考えるかということについては、資金需要がどうなるかという問題があろうかと思う。金融機関の経営の安定に伴って資金需要が減退してくる状況にあって、一時的な下振れを許容するということは既に決定したわけである。今後、メガバンクの統合などがある中で、資金需要がさらに減少していくのかどうかというのが1つのポイントと思う。』

『2番目が、景気が良くなるかどうかということと、量的緩和政策を堅持しながらの当座預金目標の引き下げについてどう考えるのかという点である。市場に詳しい方々の意見を聞くと、「量的緩和政策を堅持しながら慎重かつ小幅に当座預金目標を引き下げても市場に与える影響はそう大きくない」とみている方が多いように感じられる。ただ、やはり市場関係者ばかりではなく、一般の方の中には、当座預金目標を引き下げると、それは金融引き締めに向かった第一歩なのではないかという理解も出てくる可能性があることは否定できないと思う。仮に当座預金残高目標を引き下げたとした場合に、そういう意見が出るか出ないかということは、その時の景気実態がどのような状況かということによって、見方が変ってくる可能性があるのではないか。そういうことから、資金需要の状況と、市場関係者あるいはその周辺の方々の受け止め方を慎重にみながら、考えていくべき問題だと考えている。そういう意味で、私は必ずしも3条件が満たされるまで今の目標をそのまま維持するという約束はできないと思うが、基本的には今の残高目標をできるだけ維持しながら3条件が達成されるまで堅持していくのが、私なりの基本シナリオと考えている。』

で、「景気が踊り場を脱しないうちに当座預金残高目標を引き下げることを排除していないのか?」という質問がこの次に飛んできた訳ですが、これに対する春委員の答え。

『景気が踊り場を脱する前に引き下げることは、「100%ないと言うことはない」と言うつもりかという質問かと思う。景気が踊り場を抜け出さない前に当座預金目標を引き下げるということは、先程申し上げた市場関係者の方々やその周辺の方々から「これは日本銀行が引き締めに向っての第一歩を踏み出したのではないか」という受け止められ方をする可能性がむしろ強いし、ある意味では慎重に小幅な引き下げをしたとしても、やや副作用のリスクが多いのではないかと思う。どういう状況になるか分からないので、踊り場を抜ける時期が来るまでは、びた一文変えないと申し上げられるか私はよく分からないが、できればそういうことをしないで済ませることが望ましいと思う。』

という訳で、相変わらず「技術的対応」というか「金融市場の資金需要が減退した場合にどうするのよ」って所が少々気にはなるのですが、どうもこのニュアンスから行きますと、「当座預金残高目標を引き下げる時は景気が相当上向きになっている場合じゃないと難しい」という認識であり、かつ量的緩和政策の解除に向けた取組みへの着手は慎重って事のようですな。

ちょっとホッとしました(^^)。逆噴射当預目標下げはさすがに避けられそうだという感じになってきて誠に結構(と油断してるとアレですけど、今のところは)。

なお、長期金利がどうのこうのって発言もあったのですが、あたくし的には「ふ〜ん」って感じなので引用は致しません。





2005/06/28

お題「春審議委員の講演と相場点描」

週初だというのに個人的用事が立て込み既にばてばて。よって本日はかる〜くまいりますね。

○いやもう債券相場下がらんのですが

昨日の債券市場はまたまた上昇。昨日は先物から長期ゾーンしかも何故か10年じゃなくて9年くらいだったりしますが、まぁまるで下がりませんなぁという感じでしたが、中期ゾーンに関して申しますと、昨日はとうとう相場の関心から外れたかの如く放置プレイ状態。本日入札を迎える2年債だけ意地悪のように堅調推移でしたが、どうも雰囲気的には「下がらないけど敢えて上を買っていく人はいませんなぁ」という印象でした。

まぁ今回は「中短期債を買う人がいなくなってきて、時々売る人がいる」ってな所かと存じますが、そろそろ中期債の利回りでは運用利回りを叩き出し難くなってきたという香りも感じる次第でありまして、あたくしの気分的にはまだ「煮詰まり」では無いですが、やや鍋に入ってきたって感じですかね〜。相場の上げ方がちんたらとしていて、阿鼻叫喚のブルフラットって感じが全然しないので正直この辺で「達成感」とか言われてもピンと来ません。


○先週金曜日に短期国債買入2度目の札割れ

先週金曜に短期国債買入が2度目の札割れと相成りました。100円入札連発とかを見りゃ〜短期国債買入やらない方が「市場機能の復活」に繋がると思うと申しあげましたし、まぁ日銀の中の人も市場ヒアリングとかしてるはずですからその辺りを知らん事も無かろうとは思ったのですが、まぁ週1回実施のペースを守ったんでしょう。それは別にそういう考えもありますから判りますが。

ただまぁ市場機能がどうのこうのとか言ってるけど、札割れ必至の短期国債買入はやる訳ですかそうですかって思うのもまた現場的には感じる訳でして、こういう事を言うとまた日銀さまの機嫌を損ねそうですが(^^)、どうも日銀の言う「市場機能」ちゅうのは「コール市場」の機能のことであって、オープン市場は(自主規制)。。。。。てな事は無いと信じてますが、あっはっは。


○春審議委員の講演

http://www.boj.or.jp/press/05/ko0506e.htm

しかしまぁ何でこの時期に皆様あちこちで講演するんでしょ?

・景気に関しては基本的に強気というか日銀の展望レポートに沿ってる

景気認識に関するお話の部分は「はぁはぁそうですか」という感じで特に引用しませんが、基本的には日銀の展望レポートと同じようなお話です。景気に関する話の最後の部分で春さんは『中央、製造業、大企業における回復が、地方、非製造業、そして中小企業に波及していくことによって、今回の景気回復が本当に持続性あるものになると思います。』と言ってますが、その波及効果は徐々に出てきており、特に雇用部門が好転している事を指摘しています。

・金融政策運営について

簡単に集約しちゃいますと、「量的緩和解除のタイミングは遅めでも構わず」だけど「当座預金残高目標引下げは量的緩和解除と関係なく実施しても良かろう」というお話になってます。

『この枠組みを変更すべきかどうかの決定は、早すぎても遅すぎてもいけない訳ですが、私自身はどちらかと言えば再びデフレに戻らないことを重視して判断したいと考えています。』

ただし、この話もちとアレな部分がございまして、そもそも量的緩和政策継続の3条件には「審議委員の大勢の先行き物価見通しがゼロ以上」というのがあるので、重視もへったくれも無い自明な話なのですが、今までそういう表現をしていた人が多いということでこういう言い方が審議委員の共通表現。まぁ野暮な突っ込みはしないで(してますな)、これは上記したように「タイミングが遅れても構わん」という趣旨に解釈しておきます(つーか多分そう解釈されるものでしょ?)。

『なお、すでに政策決定会合において議論されている、量的緩和政策の枠組みの変更以前に資金需要の状況に合わせて現在の30〜35兆円の目標を引き下げていくことについては、私としては、1)今後予定されているメガバンクの統合等の影響を含め、今後の資金需要の動向や、2)引下げがデフレ克服にマイナスの影響を及ぼすと受け止められる可能性などを慎重に見極めていきたいと考えています。』

どうも(1)にあるように技術論で当預残高目標の下げを行うのは肯定的というか否定しないというか。少々救い(^^)なのは(2)の部分でして、当座預金残高引下げのマイナスの影響について、「デフレ克服にマイナスの影響を及ぼすと受け止められる」という表現になっている所でしょうか。まぁ正直少々意味判らんって気もしますが、どこぞの審議委員のように「債券相場が下がらなければ無問題」という話よりは視点が広そうな気がします。気のせいかもしれないけど。


春委員の景気に関する説明は、だいたい日銀の展望レポートに即した話になっていますので(分量も手ごろですし)宜しいんじゃないかと思います。



2005/06/29

お題「相場雑談と春審議委員の記者会見」

引き続き私事多忙中なのでネタ拾いが停滞中・・・・

○某経済新聞の法則(^^)

昨日の債券市場は相変わらず米国債券市場がフォローとなっていたにも拘らず、伸びがイマイチでして、先物が5銭とか上昇しているのに朝っぱらから10年269回債の引けがあっさりオファーサイドになっていたりして「???」の展開。

と、思っているうちにズルズルと10年を中心に相場が下落したのはご案内の通りでして、終わってみれば先物は15銭安の140円85銭で10年270回債は前日比2毛甘であっさり1.2%に戻ってしまいました。

ナンノコッチャという相場ではありましたが、普段某経済新聞を読まないというトレーダーにあるまじきあたくしが日々かかさずに巡回しているブログ(http://blog.goo.ne.jp/kitanotakeshi55)で「こんな記事がありますが」って話を知り、「おひおひ」と思いながら某割高金融新聞をを見ますとその一面の「アングル」というお題の記事に堂々と書いてありましたよご指摘通りに(^^)。

「長期金利1.2%割れ、一段の低下余地も」

えーっとですな、某経済新聞のマーケット面は「ここに書かれると相場がおしまい」という恐怖の法則がある訳ですが、金融新聞の一面に堂々記載というのはやはりアレではなかろうかと思っているうちに上記のような下落と相成った訳でして、毎度毎度の事ですがこの新聞は侮れません(ただし逆指標ですが^^)。一部で「髪(神ではない)」と言われ、彼の「買い推奨」が見事に天井掴みをするとも噂される某人気株式評論家もビックリと逝った所かと存じますわけでして、昨日は某経済新聞の曲げフォースの素晴らしさに感銘をうける一日でございました。

でも相変わらずあたしゃー読まないんですけどね(^^)。


○どうも春審議委員は「慎重派」のようでしたな

昨日は春審議委員の講演をご紹介しましたが、講演後の記者会見がアップされまして(http://www.boj.or.jp/press/05/kk0506d.htm)、そっちを見てますと、昨日申しあげた「当座預金残高目標引下げに柔軟姿勢」というのはちと間違っていたように感じましたので謹んで訂正がてら会見内容ご紹介。

当座預金残高目標引下げに関する質疑に対する応答2題。

景気と当座預金残高の関係について(長いので段落分けました)。

『先ず景気と当座預金残高の関係であるが、今の量的緩和政策そのものについては、私としては所謂3条件が満たされるまで堅持していくということが大前提であると思う。それから、3条件を満たしているかどうかの判断をする際、私自身としては、早過ぎても遅過ぎてもいけないというタイミングが重要であるが、どちらかといえばデフレに戻らないということを重視して判断をしたい、と考えている。そのうえで、量的緩和政策を堅持しながら、今は一時的な下振れはあり得るという形の運営をしているが、それが今後景気が変ってきた場合にどう考えるかということについては、資金需要がどうなるかという問題があろうかと思う。金融機関の経営の安定に伴って資金需要が減退してくる状況にあって、一時的な下振れを許容するということは既に決定したわけである。今後、メガバンクの統合などがある中で、資金需要がさらに減少していくのかどうかというのが1つのポイントと思う。』

『2番目が、景気が良くなるかどうかということと、量的緩和政策を堅持しながらの当座預金目標の引き下げについてどう考えるのかという点である。市場に詳しい方々の意見を聞くと、「量的緩和政策を堅持しながら慎重かつ小幅に当座預金目標を引き下げても市場に与える影響はそう大きくない」とみている方が多いように感じられる。ただ、やはり市場関係者ばかりではなく、一般の方の中には、当座預金目標を引き下げると、それは金融引き締めに向かった第一歩なのではないかという理解も出てくる可能性があることは否定できないと思う。仮に当座預金残高目標を引き下げたとした場合に、そういう意見が出るか出ないかということは、その時の景気実態がどのような状況かということによって、見方が変ってくる可能性があるのではないか。そういうことから、資金需要の状況と、市場関係者あるいはその周辺の方々の受け止め方を慎重にみながら、考えていくべき問題だと考えている。そういう意味で、私は必ずしも3条件が満たされるまで今の目標をそのまま維持するという約束はできないと思うが、基本的には今の残高目標をできるだけ維持しながら3条件が達成されるまで堅持していくのが、私なりの基本シナリオと考えている。』

で、「景気が踊り場を脱しないうちに当座預金残高目標を引き下げることを排除していないのか?」という質問がこの次に飛んできた訳ですが、これに対する春委員の答え。

『景気が踊り場を脱する前に引き下げることは、「100%ないと言うことはない」と言うつもりかという質問かと思う。景気が踊り場を抜け出さない前に当座預金目標を引き下げるということは、先程申し上げた市場関係者の方々やその周辺の方々から「これは日本銀行が引き締めに向っての第一歩を踏み出したのではないか」という受け止められ方をする可能性がむしろ強いし、ある意味では慎重に小幅な引き下げをしたとしても、やや副作用のリスクが多いのではないかと思う。どういう状況になるか分からないので、踊り場を抜ける時期が来るまでは、びた一文変えないと申し上げられるか私はよく分からないが、できればそういうことをしないで済ませることが望ましいと思う。』

という訳で、相変わらず「技術的対応」というか「金融市場の資金需要が減退した場合にどうするのよ」って所が少々気にはなるのですが、どうもこのニュアンスから行きますと、「当座預金残高目標を引き下げる時は景気が相当上向きになっている場合じゃないと難しい」という認識であり、かつ量的緩和政策の解除に向けた取組みへの着手は慎重って事のようですな。

ちょっとホッとしました(^^)。逆噴射当預目標下げはさすがに避けられそうだという感じになってきて誠に結構(と油断してるとアレですけど、今のところは)。

なお、長期金利がどうのこうのって発言もあったのですが、あたくし的には「ふ〜ん」って感じなので引用は致しません。





2005/06/28

お題「春審議委員の講演と相場点描」

週初だというのに個人的用事が立て込み既にばてばて。よって本日はかる〜くまいりますね。

○いやもう債券相場下がらんのですが

昨日の債券市場はまたまた上昇。昨日は先物から長期ゾーンしかも何故か10年じゃなくて9年くらいだったりしますが、まぁまるで下がりませんなぁという感じでしたが、中期ゾーンに関して申しますと、昨日はとうとう相場の関心から外れたかの如く放置プレイ状態。本日入札を迎える2年債だけ意地悪のように堅調推移でしたが、どうも雰囲気的には「下がらないけど敢えて上を買っていく人はいませんなぁ」という印象でした。

まぁ今回は「中短期債を買う人がいなくなってきて、時々売る人がいる」ってな所かと存じますが、そろそろ中期債の利回りでは運用利回りを叩き出し難くなってきたという香りも感じる次第でありまして、あたくしの気分的にはまだ「煮詰まり」では無いですが、やや鍋に入ってきたって感じですかね〜。相場の上げ方がちんたらとしていて、阿鼻叫喚のブルフラットって感じが全然しないので正直この辺で「達成感」とか言われてもピンと来ません。


○先週金曜日に短期国債買入2度目の札割れ

先週金曜に短期国債買入が2度目の札割れと相成りました。100円入札連発とかを見りゃ〜短期国債買入やらない方が「市場機能の復活」に繋がると思うと申しあげましたし、まぁ日銀の中の人も市場ヒアリングとかしてるはずですからその辺りを知らん事も無かろうとは思ったのですが、まぁ週1回実施のペースを守ったんでしょう。それは別にそういう考えもありますから判りますが。

ただまぁ市場機能がどうのこうのとか言ってるけど、札割れ必至の短期国債買入はやる訳ですかそうですかって思うのもまた現場的には感じる訳でして、こういう事を言うとまた日銀さまの機嫌を損ねそうですが(^^)、どうも日銀の言う「市場機能」ちゅうのは「コール市場」の機能のことであって、オープン市場は(自主規制)。。。。。てな事は無いと信じてますが、あっはっは。


○春審議委員の講演

http://www.boj.or.jp/press/05/ko0506e.htm

しかしまぁ何でこの時期に皆様あちこちで講演するんでしょ?

・景気に関しては基本的に強気というか日銀の展望レポートに沿ってる

景気認識に関するお話の部分は「はぁはぁそうですか」という感じで特に引用しませんが、基本的には日銀の展望レポートと同じようなお話です。景気に関する話の最後の部分で春さんは『中央、製造業、大企業における回復が、地方、非製造業、そして中小企業に波及していくことによって、今回の景気回復が本当に持続性あるものになると思います。』と言ってますが、その波及効果は徐々に出てきており、特に雇用部門が好転している事を指摘しています。

・金融政策運営について

簡単に集約しちゃいますと、「量的緩和解除のタイミングは遅めでも構わず」だけど「当座預金残高目標引下げは量的緩和解除と関係なく実施しても良かろう」というお話になってます。

『この枠組みを変更すべきかどうかの決定は、早すぎても遅すぎてもいけない訳ですが、私自身はどちらかと言えば再びデフレに戻らないことを重視して判断したいと考えています。』

ただし、この話もちとアレな部分がございまして、そもそも量的緩和政策継続の3条件には「審議委員の大勢の先行き物価見通しがゼロ以上」というのがあるので、重視もへったくれも無い自明な話なのですが、今までそういう表現をしていた人が多いということでこういう言い方が審議委員の共通表現。まぁ野暮な突っ込みはしないで(してますな)、これは上記したように「タイミングが遅れても構わん」という趣旨に解釈しておきます(つーか多分そう解釈されるものでしょ?)。

『なお、すでに政策決定会合において議論されている、量的緩和政策の枠組みの変更以前に資金需要の状況に合わせて現在の30〜35兆円の目標を引き下げていくことについては、私としては、1)今後予定されているメガバンクの統合等の影響を含め、今後の資金需要の動向や、2)引下げがデフレ克服にマイナスの影響を及ぼすと受け止められる可能性などを慎重に見極めていきたいと考えています。』

どうも(1)にあるように技術論で当預残高目標の下げを行うのは肯定的というか否定しないというか。少々救い(^^)なのは(2)の部分でして、当座預金残高引下げのマイナスの影響について、「デフレ克服にマイナスの影響を及ぼすと受け止められる」という表現になっている所でしょうか。まぁ正直少々意味判らんって気もしますが、どこぞの審議委員のように「債券相場が下がらなければ無問題」という話よりは視点が広そうな気がします。気のせいかもしれないけど。


春委員の景気に関する説明は、だいたい日銀の展望レポートに即した話になっていますので(分量も手ごろですし)宜しいんじゃないかと思います。







2005/06/27

お題「武藤副総裁記者会見その他」

○相場がさがらねぇぇぇ訳だが

木曜、金曜と債券相場は見事に続伸。木曜日に発表された法人企業統計は債券市場的には「予想(あるいは期待)よりは少々良かった」という評価でしたが、まぁ見事に相場上昇。金曜は後付け理屈でいえば米国株式市場下落を勝手に好感して(?)円債市場はとにかく全然さがらねぇという状態。

ま、金曜の債券相場は米債がほんのちょっと売られたことを受けて当初は思ったほど伸びないというスタートだったのですが、とにかく「下がらん」というのが感覚的な印象でして、「売りの出ない中じりじり上昇」という印象を強く感じました。金曜に関しては先物も強かったですが、現物債がやたら堅調でして、「いやはや」という感じです。

金曜にご紹介した武藤副総裁講演(ハト派の立ち位置を初めて鮮明にした)も何となくサポートになっていそうです。

そんな中で変動15年利付国債が先週木曜からいきなり下落を開始しました。特に金利改定時期が近い7月利払いものとかの売られ方が目立つように思えますが、まぁそれだけではなく全体的に売られておりまして、どこかの大手投資家様が派手派手に変動利付国債の売却を行ったという事でしょうな。債券市場はそう簡単に下がらないって見方+この金利状況で来週10年国債の入札が待っていて、7月利払いものの次回クーポンが下がるのを懸念してって事でしょうが、まぁ今のところ逆の動き(=債券相場が高値圏という認識で一旦資金退避させるという買い)もあるようですが、イールドカーブの動きと全然関係なく15年変動利付国債が豪快に売られているので、相当の売りが出ているようですな。変動利付国債を売った資金が固定利付国債に流れるのではないかという発想もあります。

しかし既に「短観は若干改善」も織り込んでいるようで、平均株価が威勢良く上昇でもしてくれないと中々債券市場下がらないでしょうなぁ。

ちと皆様「6月暴落説」を信用しすぎましたかね。確かに夏になると妙に景気回復期待が盛り上がるというのはよくあることですが・・・



○全国信用金庫大会における福井総裁挨拶

http://www.boj.or.jp/press/05/ko0506d.htm

まぁ大した話はしてないのですが、金曜の経済紙の日銀ウォッチ記事あたりでは「武藤副総裁のハト派講演と平仄を合わせる?」というようなコメントが出てましたのでちょっとだけ。

どうも挨拶のこのあたりをネタにして、「武藤副総裁のハト派講演に呼応して当座預金残高維持を改めて強調した」ということらしく、ちとソースが見当たらないのですが、その後の談話でも同じようなことを強調したと読んだような気が。

『もとより、通常は、「30〜35兆円程度」という当座預金残高目標は維持されます。金融市場に所要準備額を大幅に上回る潤沢な流動性を供給し、これを消費者物価に基づく「約束」に沿って続けていくという、量的緩和政策の枠組みにはいささかも変わりありません。』

「通常は」とか「いささかも」と相変わらず強調をするのがお得意のようですけれども、そんなに一々強調するんだったら何で6月はやる気を感じさせない調節をやってわざわざ当預30兆割り込ませたのか意味判らんということになる訳ですが、突如サービスフレーズが出てくるのは福井総裁の仕様ですので、一々気にしてはいけません(^^)。

今度総裁のサービスフレーズ研究でもしてみたいものですな。


○武藤副総裁記者会見

http://www.boj.or.jp/press/05/kk0506c.htm

金曜にご紹介しなかった部分に関しまして。

『(問)懇談会の講演の最後のほうで、量的緩和解除の時期について、4月に出た展望レポートの内容を繰り返して、2006年度にかけて徐々に量的緩和解除の可能性が高まると言われた。その一方で、講演で消費者物価指数について、2005年度はゼロ%近傍、2006年度はごく僅かなプラスになると、展望レポートと同じ内容を話され、その後で、講演録にはない「デフレから脱却するシナリオはなかなか描けない」と言われた。展望レポートでは2006年度にかけて量的緩和解除の可能性は徐々に高まるという意味で、それなりのシナリオが描かれていると理解しているのだが、ここで言われた「デフレ脱却のシナリオが描けない」というコメントは武藤副総裁の本音なのか。』

質問が長いので一旦ここで対応する回答を。講演録には無かった(ニュースでは確か見た記憶がありますが)デフレ脱却シナリオ云々に関して質問がされましたが、この部分に関してはさらっと流した回答になっております。

『(答)(前半部分割愛)「2005年度がゼロ%近傍で、2006年度が若干のプラス」ということイコール「デフレ脱却」であると断言するのは、なかなか簡単ではないということを申し上げたかったわけである。展望レポートに書いてあることよりも、意味を変えようとか付け加えようと意図してデフレ脱却の姿がなかなか描けないと申し上げたつもりではない。展望レポートでデフレ脱却がもう描けたという意見はなかなかとれないのではないかということである。』

で、この質問の後半部分。量的緩和政策の3条件のいう「デフレ脱却」とは何ぞやという結構これまた微妙な部分です。

『(問)また、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率が来年1〜3月期に僅かとはいえ小幅なプラスに転じるというのが市場のコンセンサスになってきていると思う。あるいは、早ければ今年の10〜12月期にも小幅なプラスになるのではないかという見方もある。そうした中で、なおデフレ脱却のシナリオが描けないというようにみているということは、僅かなプラスではやはり量的緩和を解除するための条件には満たないと考えているのか。』

『(答)従って、今の質問の中で指摘されていたように、確かに来年の1〜3月になると、今は抑制方向に働いている幾つかの要因が剥落するかたちで、どちらかというとプラスの要因のほうが強くなっていくという可能性が十分にあるとみるのが、確かに有力な見方であろうと私も思う。そうであるからこそ、2006年度にかけて枠組み変更の可能性が徐々に高まっていくとみることができるだろうと思っている。』

で、この続きはまたまたハト派発言って感じになります。

『徐々に高まってはいくが、本当に見直すことができるかとなると、それは不透明であると思う。今、申し上げたような物価の見通しが、このシナリオどおりに実現されるかどうかは、現実にこれから時間の経過とともに、どういうことが起こっていくのかということを、足許よく確かめながらみていかなければならない。我々の予測は非常に重要な作業ではあるが、予測にはどうしても限界があるわけであり、予測を持って予断をしてしまうのは、ある意味では危険なことである。予測は予測であり、予測能力にも限界があるし、現実は予測の中に必ずしも織り込まれていないことが起こり得るということを頭に置いておかなければならないのではないかと思う。そういう意味で、これからの量的緩和政策の運営を考える場合には、そういうことを念頭に置いたうえで、時事刻々と変化する事実をしっかりと見極めて適切な政策判断を行う必要があると思っている。』

何と言うか実に微妙な言い方なんですが、先日ご紹介した武藤副総裁の講演で触れられていた景気回復のテンポの遅さという事を併せて見ますと、「今回の景気回復は非常に緩やかなんだから、そんなに慌てて金融政策をいじる事はないんじゃネーノ」ってな所でしょう。


で、この質疑応答に関連してその続きって感じの質疑。

『(問)展望レポートどおりに2006年度の消費者物価指数の前年比が小幅なプラスを実現したとしてもデフレ脱却とは言い切れないというのは、デフレ脱却と言い切れるのはもう少し上の水準であることが条件になってくるとお考えなのか。さらに、消費者物価指数の水準と量的緩和の枠組みの変更との関係についてどのようにお考えなのか。(後半部分割愛)』

『(答)私がデフレ脱却と言い切れないと言った言葉の真意について、今後起こることがシナリオ通りであればどうかということと、シナリオ通り運ぶかどうかということに対しては必ずしも言い切れない部分があって、その両方のことを頭に置きながら簡単に即断できないと申し上げているつもりである。』

まぁそれはともかく。

『もし本当に予定通り(消費者物価指数の前年比が)プラスになり、それが相当続くとなればデフレ脱却と言えるではないかということは議論の余地があると思う。そうかどうかはもう一度慎重な議論が必要だと思う。ただし、見通しにはやはり限界があるとすると、そういう見通しの中でかなり十分にプラスが高いレベルであれば、見通しが多少ずれても大きなずれはないと言えるかもしれないが、わずかなプラスの状況で、少し見通しがずれたら姿が変わってしまうかもしれない中で、本当に言い切れるのかということを言っているつもりである。もっとも、一年経ってみたらきちんとプラスになったということであれば、私の発言は修正を要するだろうと思う。どのように修正するかはその時の足許の状況やプラスになった状況がどのくらい続くのかということを慎重に判断する必要があるだろうと思う。』

足もとの景気回復に関して回復の角度が緩やかという認識だからという事もあるのかも知れませんが、「わずかなプラスの中で本当に(デフレ脱却と)言い切れるのかどうか」と言うのは、一般論とも取れますし、岩田副総裁や中原審議委員の言う「糊代論」とも取れる微妙な言い方ですが、「具体的に糊代を設定」って話になってませんので結局は「その話はCPIのプラスが達成された時の景気上昇角度に依存する」って事なんでしょうが、本件に関しては今後の発言に注目かと。


金曜日にご紹介(ソースがブルームバーグニュース)した当預目標引下げ論に関する武藤副総裁のコメントに関して補足も兼ねてご紹介します。ちと長いけど。

『それから審議委員の中に今回の「なお書き」の対応が出口政策に向けての第一歩であるという趣旨の意見があるという話があったが、まず基本として断らなければならないのは、それぞれの審議委員において自分の信ずるところを述べることに対して、私がいちいちコメントするのは適当でなく、審議委員の一人一人が自分の責任を持って述べていることにコメントするかたちで私は発言しない。』

『 しかし、私自身がその第一歩であるかどうかと考えているのかという問いであるならば、私はそう思っていない。それはもし仮に第一歩を踏み出すのであれば、(量的緩和政策解除の)3条件が満たされたかどうかということを、きっちりと吟味しなければできないことであって、それもしないまま第一歩が踏み出されるというのは適切でないだろうと思っている。』

『日本経済が踊り場を脱却するかどうかということが、当座預金残高目標に何らかの変更を及ぼすかということについては、量的緩和政策がどういうことを意味するのかによって、今の質問には多少ニュアンスの差が出てくると思う。ただ一つ言えることは踊り場にある実体経済が今後どのようになっていくかということが、金融政策を考えていくにあたって一番大事なことであると私は思っている。経済の回復を確実なものにして、(量的緩和政策解除の)3条件を満たすようなかたちで前向きの循環が始まっていけば、その時には色々な金融政策の現状の在り方について議論をするという順番になってくると思う。』

『従って、実体経済が踊り場にあって、マーケットに何らかの事情が生じたら量的緩和政策を変えるかどうかということになれば、実体経済が重要なのであって、実体経済をどのように判断するかということをまず徹底的に議論する必要があると思う。そのうえで次のステップにいくということだろうと思う。踊り場を脱却したら量を引き下げるというのは、あまりにも前提条件なしに議論を簡単にやり過ぎることになる。様々な状況をきちんと整理したうえで判断しないと、その引き下げが何を意味するのか、技術的な理由で引き下げるということなのか、それとも、違った理由で引き下げるということなのか、そういうことも含めて議論しないと、なかなか一言で良いとか悪いとか言うのは難しいと思う。』

当座預金残高目標引き下げがどうのこうのって話をする段階じゃねぇぞゴルァ!と言った所なんでしょうな。

ということで本日も引用で増量になってしまいました。





2005/06/24

お題「武藤副総裁!」

昨日は大分県金融経済懇談会において武藤副総裁が講演を行い、その後記者会見を行いました。内容としては市場では「ハト派発言」として、いままで基本的に当たり障りの無い発言をしていた武藤副総裁だけに少々サプライズという評価だったと思います。

最近の迷走する当座預金残高目標減額論議に関して苦言を呈した事に関連して「出身母体である財務省の意思を反映している」という見解もございますが、講演や記者会見(会見要旨はまだアップされてないのでベンダーからのニュースによりますが)を読みますと、財務省のどうのこうのというよりは、景気回復モードに浮かれる政策委員会に対して「まぁおまえら落ち着け」と言っているようでもありますな。昨今の混迷しまくる政策論議(特に酷いのは水野審議委員だと思いますが)動向に悪態をつきまくっているあたくしとしては「久々によい話を聞いた」ってなもんですが、あはは。

では講演を読んでみませう。
http://www.boj.or.jp/press/05/ko0506c.htm


○景気見通しに関して

先ほども申しあげたように、武藤副総裁は今まで比較的穏やかと申しますか、当たり障りのないお話をするのが常でしたんで、今回の講演では景気見通しに掛かる部分に関しても割と主張が見えてきてることには留意ですな。

景気関連のお話が多くの部分を占めている(お題が「わが国経済の展望について」なので当たり前ですが)のですが、その小見出しを並べますとこうなります。

・(わが国経済の現状と先行き見通し)
・(日本経済が直面した2つの構造調整圧力)
・(2つの構造調整圧力の減衰)
・(残された課題と対応の方向性)
・(構造調整とマクロ政策の関係)

色々とお話をしているので、物凄く端折ってしまいます(というか例によって週明けのネタにするかも知れませんが)と、経済の先行き見通しに関しまして武藤副総裁は「わが国経済の現状と先行き見通し」の部分で以下のように指摘しています。

『こうした経済・物価の見通し(=4月発表の日銀「展望レポート」で示された見通しです)のベースにあるのは、慎重な企業行動が続くという見方です。今回の景気回復については、回復ペースが緩やかで、加速感が乏しいことが一つの特徴となっています。地方への波及も乏しいものとなっています。』

『こうした企業の慎重なスタンスが続くことを前提としますと、先行きの回復のテンポも「緩やか」なものにとどまる可能性が高いと考えられます。そうした一方で、それゆえに、「息の長い」成長が続くと考えられる訳です。』

ということで、比較的景気の先行きに関しては慎重・・・・なのかな?と思うのはこの先の部分です。

『過去の景気の振幅を振り返りますと、企業行動が景気循環を増幅したケースが少なくありません。経済活動が活発化する中で、先行きの成長に対する過大な期待が生まれると、設備投資や在庫投資の面で行き過ぎが生じがちになります。この場合、景気の「山」は高くなりますが、行き過ぎの調整を通じて、その後の「谷」も深くなることが避けられません。今回は、企業行動が慎重である分、そうした景気の大きな振幅は生じにくいという面があるように思います。』

「振幅が生じにくい」ことに関して武藤副総裁は「安定していて結構」という評価ではないのがこの続きにあります。

『しかし、長い目でみると、慎重な企業行動が続くということは、日本経済が本来持つ潜在力を発揮し、さらにそれを高めていくうえで、障害となり得ると考えておいた方が良いと思います。競争環境や利用可能な技術が変化し続ける中で、企業が中期的に高い収益力を維持していくためには、潜在的な高収益分野にチャレンジし続け、経営資源の再配分を継続的かつスピーディーに行っていくことが必要であると考えられるからです。仮に、慎重な企業行動が長く続き、そうしたチャレンジが先送りされていくとなると、日本経済が本来持つ潜在力を発揮し、さらにそれを高めていくことは、難しくなってきます。』

で、『そうしたことも念頭に置きながら、以下では、日本経済が90年代に直面してきた構造調整の性格を振り返ってみたいと思います。』ということで構造調整について話が始まるのですが、ここの部分までご紹介していると本日の文書が終わらなくなりますので本日はパス。


○企業行動の積極化には「期待」が重要と言っているような気がする

「残された課題と対応の可能性」部分から引用します。

『このように問題の調整が進んできているにもかかわらず、企業の前向きな動きが広範に広がるまでには至っていないことは、冒頭述べた通りです。その背景については、まず、これまで低成長の期間が長く続いてきたことが、日本経済の将来に対する人々の成長期待を過度に低くしている面はあると思います。実際、内閣府の企業行動アンケートなどをみますと、企業の成長期待は過去数年の経済成長率の実績に基づいて形成される傾向があります。』

この後話は少子高齢化に関する話になるのですが、先ほどの「慎重な企業行動」云々の部分も含めまして、「景気回復持続期待の形成」が重要だという話をしているような気がするのはあたくしの考えすぎですかな?



○「金融緩和は構造改革を阻害する」論を斬ってますな

「構造調整とマクロ政策の関係」部分から引用します。

『しばしば、金融緩和を続けていると、不採算の企業や事業の延命を通じて、構造改革を阻害する面が出てくるのではないかというご批判を頂戴することがあります。確かに、既に述べた通り、2つの構造調整圧力 ―― 産業構造の調整圧力と地価の下落に関連する調整圧力 ―― は、減衰しており、そうした中で、徐々に持続的な景気回復を展望できるようになってきています。しかし、繰り返しになりますが、現在は、企業の前向きな動きがなお十分には強まっておらず、残された課題への対応が強く意識される状況です。そうしたもとで、金融政策を含むマクロ政策に課されている役割は、資源配分の過度な歪みをもたらさないように留意しながら、やはり、構造改革を進めやすい良好なマクロの環境を整えていくことであると考えられます。』

という事で、金融緩和が構造改革を阻害するという話は否定しておりますわな。ちなみにここで引用したように「構造改革をしましょう」ってお話をこの講演で強調しております。ちなみにマクロ政策における構造改革が何ぞやということに関しては武藤副総裁は、「財政支出の内容を効率的なものに見直し」「規制緩和の推進」「社会保障制度の将来不安を和らげるような制度改革」ってのを挙げておりました。


と、ここまで経済に関する部分を結構引用しましたが、目先の金融政策に関する話は講演と記者会見を併せて読んだ方が良さそうではあります。


○量的緩和政策の効果について

「資金の潤沢な供給」と「時間軸効果」を分けて話をしています。

『まず、第1に、日本銀行は、金融市場に極めて潤沢な資金供給を続けています。(中略)これにより、金融市場では、流動性に関する安心感が隈なく広がるとともに、短期金利のゼロ金利が実現しています。また、金融機関に資金調達に対する安心感が定着することを通じて、緩和的な企業金融環境の維持に寄与し、民間の経済活動を金融面からしっかりと支援する役割を果たしています。金融システムに対する不安感が強かった時期においても、金融市場の安定や緩和的な金融環境は維持され、クレジットクランチに陥ることはありませんでした。また、そのことは、物価下落が企業収益の下落などを通じて経済活動の収縮を招くデフレスパイラルを回避することに大きな効果を発揮しました。』

『日本銀行当座預金残高を増やすことによって、いわゆるポートフォリオ・リバランス効果、すなわち、無利子の日本銀行当座預金が増加することで金融機関が他の資産への投資を増やすということも、政策導入当初より期待されていますが、こうした効果は、これまでのところ、ほとんど確認されていません。』

『第2に、(中略)この「約束」は、市場参加者が先行きのゼロ金利の継続を予想することを通じて、やや長めの金利を低位で安定的に推移させ、企業収益を下支えるとともに、投資採算の改善を実現します。景気の回復が続く中でも低利での資金調達が可能となる環境が整えられているということになります。そうしたもとで、企業が新しい事業機会に挑戦するなど、前向きの姿勢で活動を展開するようになれば、経済全体としての成長期待も高まっていくと考えられます。』

量は流動性供給によって緩和的な企業金融環境を維持したりデフレスパイラルの回避の為の下支え効果があるものの、ポートフォリオリバランス効果は確認できず、時間軸効果は将来においても緩和的な企業金融継続が期待できるというお話でございますわな。日銀の公式見解でもありそうですが、最近はこの「効果」に関して「副作用論」が幅を利かせているような気もしますな。


○なお書き修正に関しては「市場機能対応論」なのは残念ですな

なお書き修正に関してはこんな感じで。

『資金需要が極めて弱い場合には、調節運営上の対応により当座預金残高目標を維持するとしても、その方法如何によって、金利形成を歪めてしまうことなどを通じて、市場機能に悪影響を及ぼす可能性も否定できません。こうした情勢を踏まえ、「30〜35兆円程度」という当座預金残高目標は維持したうえで、金融機関の資金需要が極めて弱いと判断される場合には、当座預金残高が一時的に目標値を下回ることがありうることとした訳です。』

この「市場機能」論は相変わらず如何なものかと思いますが、まぁ出口論を否定しながらなお書き修正を容認するための理屈はこの技術論しかあるまい。

『このように、先般の私どもの決定は、金融システムの安定化のもとでの金融機関の流動性需要の後退とそれへの対応という点にポイントがあるのですが、市場等には、これを量的緩和政策の「出口」に向けた一歩ではないかとする見方もみられるところです。この点、まず強調したいのは、基本的には「30〜35兆円程度」という当座預金残高目標を維持していくことに何ら変わりはないということです。私どもの決定は、決して量的緩和政策の方針転換を企図したものではなく、むしろ、市場機能に配慮しながら資金供給を行っていくことで、量的緩和政策をより円滑に運営していくことが可能になると考えています。』

だそうです。しかし今日は引用増量ですなぁ(滝汗)。


○水野審議委員を初めとする当預引き下げ論を思いっきり否定する記者会見

記者会見の一問一答はブルームバーグニュース23日16時59分配信記事を参照しております。一問一答の最後の部分です。

(問)5月のなお書き修正が量的緩和の出口に向けた第1歩だという指摘が政策委員のなかから出ているが、武藤副総裁はどう考えるか。

(答)わたしはそう思っていない。もし、本当に仮に、第1歩を踏み出すのであれば、(量的緩和政策の解除のための)3条件が満たされたかどうかをきっちりと吟味しなければ出来ないことだ。それもしないままに第1歩が踏みだされることは適切ではないだろうと思う。

(問)政策委員のなかに、景気が踊り場を脱却すれば、当座預金残高目標を引き下げやすくなるという指摘がある。武藤副総裁はどう考えるか。

(答)わたしは(当座預金残高目標を)引き下げるという議論に与していないので、答えようがないというか、答え方が難しいが、「もし資金需要がなくなったから、量を下げても良い」という議論が正しいのかどうか、という議論に関連してくる。いったい、この量的緩和はどういう理由でやってきたのか。確かに、金融システム不安を払しょくするために量を増やしてきた面があるのは、その通りだが、やはりそれだけではなく、もう少し経済全体のデフレからの脱却のために量的緩和政策をとってきたという事実もあるので、わたしは札割れや資金需要の減退だけを理由に(当座預金残高目標の)額を下げるという立場にはたっていない。

・・・・久々に聞くちゃんとした政策話でして、先日ご紹介した決定会合議事要旨で散々悪態をついていたあたくしの心も洗われる清々しい話でした(^^)。

ということで本日は引用ばかりで失礼しました。










2005/06/23

お題「相場雑談」

色々な意味で物事を考える今日この頃(謎)。

○ま〜突っ込みどころはいくらでもありますが

金融政策決定会合議事要旨に関しては色々と「それはどうよ」って話をしだすと延々と出来ることは出来るのですけれども、物凄くざっくりと集約しちゃうと・・・・

1.自分たちが実施した政策の結果として生じた事象を殊更「弊害」呼ばわりするのは如何なものか。
2.金融政策を「ゼロベースから見直す」のは一つの考え方だけど、「期待に働きかける政策」である「時間軸」を実施してる時にそりゃねぇんじゃないかね。
3.量的緩和政策における当座預金の「量」の効果で意見が全然集約できてないのに「量」を減らすという方向に走るのは、景気がシナリオ通りにいかなかった場合のリスクがでかかろう。

てなことですかね。日銀が景気に対して強気なのは良く判るんですけど、別に今「インフレ警戒」をする必要はなかろうって思う訳で。

どうも不動産証券化絡みで証券化商品の価格が美しく上昇したり、関連貸出が素晴らしく伸びたりというような香ばしい動きは確かにありまして、その辺を日銀が懸念しているというのは何となく判るのですが、そーゆー局地的な問題に関して経済活動全般に網をかける結果になる金融政策で対応しようとするのはちと問題があるのでは無かろうかと存じますが。局地的問題に関しては局地的対応で・・・・


○短期国債またも100円

昨日実施されたFB入札もまたまた100円落札。しかも段々100円の按分比率が低下しているような気が(手元に控えが無い)するところがもう涙ちょちょ切れですわな。

で、ここの所週1ペースで実施している短期国債買入なんですが、この結果を受けて額を減らしたり実施見送りでもしてくれると面白いのですけれども、まぁそんな事をしだすと益々「昔の営業局時代のシグナル丸出しオペ復活」となるのが困った所ですわな。

ただ、先日の福井総裁の記者会見にありました、「現場が市場と対話を行って調節を判断する」という何か「市場との対話」を思いっきり勘違いしているようなコメントに即しますと、当座預金残高目標維持の為に短期国債売買市場が馬鹿相場となっている現状を調節で何とかするというのもアリではないかとは思いますがねぇ。

「ターム物取引の活性化」に関して気にするのであれば、短期国債市場がどうなっても結構という事は無いと思うんですが。(ちなみにあたくしは当座預金残高目標を維持するほうが賢明であって、まぁこの辺の市場がヘロヘロになるのは致し方ないと思いますけどね)


○結局「買いたい弱気」ですかね・・・・

昨日の債券市場は、一昨日にスエーデンが予想よりも大幅な政策金利の引き下げを実施したことがきっかけで海外経由でまたまた金利低下攻撃。スエーデンの金利引下げ如き(失礼!)がこんなに波及するとは正直脅威でございましたが(笑)、まぁ要するに米国長期債に関しても「買いたい」って人が多かったちゅうことなんでしょうかね。

正直、値段は一応見てるけど実際に売買しないとよー判らん所はあるのですが、4%割れ状態から脱却した時にブルームバーグあたりで出てきた米国の運用機関の中の人コメントなんかが「それ見たことかぁぁぁ!!10年4%割れは逝き過ぎじゃゴルァァァ!!!!」って感じで大喜びモードだったのはやはり「買いたい弱気」だったんですかそうですか洋の東西を問わずやってること同じですなって所ですな、あっはっは。

で、米国債が買われると円債が買われるという理屈もワケワカメですが、市場全体に手がかり材料難の空気が蔓延しているので、何かネタが欲しいっていうのと、先週末にかけての相場下落でそこそこ買えてはいるものの、かと言って売りに出すほどのタマが投資家様にある訳でも無いってあたりが「相場が動かなくなると全然下がらなくなる攻撃」の背景なんでしょうなぁという感じです。

などと書くと法人企業景気予測調査でサプライズが出たりするのがドラめもんクオリティではございますが(笑)、どうもここの所妙に中短期債が堅調ですので、相場が間違って下がっても下げは限定的もいいところでしょうと思います。大体からしてここもとの相場下落時って「中期ゾーンから先物にかけて」が売られて下がるというパターンが一般的で、中短期が相場の上昇につれて確りの時はよー下がらんと見るのが順当かと。



○おまけの埋め草:Musical Baton

先日「Music Baton」などと書いてましたが(恥)、何かチェーンメールのBlog版みたいなものでして、あちこちのWebで皆様もおみかけかと存じますが、Blog持ちでもありませんが本石町日記さんから振られましたので書いてみるの巻。

1.Total volume of music files on my computer
何かデフォルトで入っている「Samle Music」とかいうのがマイドキュメントにあるだけ。

2.The last CD I bought
東京佼成ウィンドオーケストラの「Favorite Past Albums Vol.4」。お目当てはAlfred Reedが指揮する「Armenian Dances (Part I)」でしたが。

3.Song playng right now
ロートルのCDラジカセのご機嫌が麗しくない(ので最近CDをそもそも買って無いのだが)ゆえそんなに聴いてませんが、駅構内のワゴンセールで売ってた昔の「ジェットストリーム」とかを聴くことが多い。部屋の掃除をするような作業時は景気付けにYMOですよ、お聞きになりますか??いぇ、ま、まさか・・・・

4.Five songs I listen to a lot, or that mean a lot to me
中学生やら高校生の時にはラジカセでせっせとFM放送を録音(エアチェックとか言ってましたな)していたクチ。日曜夜8時からのNHKFMの「ゴールデンジャズフラッシュ」をせっせと聞いておりました。ちなみにジェットストリームの時間は当然寝てましたが何か?

La Fiesta (Chick Corea) 大学受験の前夜これをヘッドホンで聴きながら寝ました。
Rydeen (Yellow Magic Orchestra)YMOはせっせと聴きましたな。別にライデーンだけじゃなくて好きな曲はいくつもありますが、並べるとキリがないので。
Full House(Wes Montgomery)この人の演奏も好きです。家に客が来て格好つけたい時に決まってかける曲だったりしますが(汗)。

で、特に曲がどうのこうのというのでも無いのですが、皆さん一度ならず何度も聴いた事がありそうなこの曲も。(5曲にならんと言われそうですが)
Bittersweet Samba(Herb Alpert & The Tijuana Brass)この人のトランペットは大好きですが、この曲は別の意味で懐かしい。最初の30秒だけですけどね。

5.Five People to whom I'm passing the baton
これはパス。しかし改めててめぇのCDラックを見たらとりあえずロック音楽系の曲が殆ど無いという特徴がありますが、あとはもうジャズありクラシックあり流行歌あり沖縄民謡あり落語のCDありと何が何だか判りませんな。>自分

ではでは。




2005/06/22

お題「突っ込みどころに困る決定会合議事要旨」

政府税調様見事な開き直りですが、またリーマン増税なんですかそうですか。所得の確実なる捕捉とか公益法人などへの課税を検討しててから実施いただきたく大増税大直撃確実のあたくしとしては存じますが。「とりあえず確実に取れる所から取っちまえ」という発想は勘弁していただきたいですな。あ、当然ですが、増税大検討をしているエライ人たちの中で個人事務所を作って節税なんぞしている人なんていませんよね。

と軽く悪態をついて、本題は昨日の続き。


○4月28日の量的緩和政策の効果に関る議論

『何人かの委員は、量的緩和政策の効果について、それぞれの見解を披瀝した。』

ということで「金融経済情勢に関する委員会の検討の概要」から。

『ある委員は、量的緩和政策は、金融システムの安定確保と共にデフレ克服にも効果があると考えていると述べた。』

『この点について、一人の委員は、確かに、量的緩和政策はデフレ・スパイラルの回避に効果があったと思うが、これは、潤沢な資金供給が金融システム不安によるクレジット・クランチの発生を防ぐことに貢献することを通じて達成されたものと考えていると述べた。』

『また、別の複数の委員は、量的緩和政策は、経済・物価情勢の局面に応じて、その効果の出方には違いがあり、例えば、金融システム不安が後退した段階では、量的緩和政策の「約束」を通じた金利の効果がより強くなると指摘した上で、「約束」の強さと「量」の多寡は関係ないことを明確に説明していくことが大事であるとの認識を示した。』

最初のは「まぁそうですね」で終了。2番目に関しては一見ご尤もな話ですが、この議論もどうなのよって言うのが実はありますわな。

と申しますのは、日銀の資金供給って言っても所詮は有担保での資金供給になっているわけでして、本当にクレジットクランチが起きている場合にはなんぼ資金供給していても短期資金繰りに問題が生じてしまえば話にならんのが事実としてありますわな。

その辺が何とかなったのは金融庁の銀行シバキアゲ路線がいきなり転換(りそな絶賛救済スキーム発動)したことやら、その前の大手銀行渾身の増資とかという面が第一にあって、もう一つとしては量的緩和政策の長期化というよりは資金の全体的な流れとして政府部門が絶賛資金不足になっていて、民間(企業)が資金余剰になり、大手銀行のオーバーローン状態が解消した(ために短期資金繰りが改善している)ことなのではないかなぁと漠然としたイメージで裏をちゃんと取っている訳では無いのですが思うわけでございます。

量的緩和政策の「量」を増やしたからどうのこうのっていうのもあるとは思いますが、そんなに流動性問題に寄与しているとも思えず。つーかそもそも事後的には円高阻止介入のファイナンスじゃありませんでしたっけ???

どうもこのあたりを有耶無耶にして増額しておいて減額も有耶無耶かつ増額時と減額時の理屈が違うというのは「??????」でございます。

3番目は「相対性緩和論」と申しますか、量的緩和政策と称して当座預金残高目標ターゲットを置いてやっていたのにいきなり「時間軸付きのゼロ金利政策」に話をすりかえるというお話で誠にふざけたお話でございますと思いますが、金融市場ではこの理屈に理解を示すお方も多いようですな。


○4月28日の当預減額論

『大勢意見に対しては、一人の委員が、金融機関の資金需要が後退していることや巨額の当座預金残高維持のデメリットが相対的に強まっていること等を理由に、量的緩和政策の枠組みは堅持し引き続きデフレからの脱却を図りつつ、当座預金残高目標を減額し、「27〜32兆円程度」とすることが適当であるとの見解を示した。』

この人は後で議事提案しているから福間審議委員。基本的には技術論での対応説って感じですわな。

『また、別の委員は、資金需要が後退する中で、潤沢な資金供給の景気刺激効果が乏しいこと等を理由に、当座預金残高目標を減額することが適当であると述べた。』

これは水野審議委員。水野さんの場合は「人が変われば政策が変わるのは不思議ではない」という「ゼロベース見直し論」という理屈を先日の講演やら記者会見で披瀝していまして、あたくしとしては何ちゅうか一国の金融政策がそうコロコロ変られてもどうよって思うのですが、まぁそんな理屈に則ってますので、「ゼロ金利を維持するために必要な量を超える部分(というのは状況によって可変ですが)に相当する当座預金残高には効果が乏しく、デメリットが大きい」という理屈ですわな。以前にも指摘しましたが、この理屈によりますと今後景気が何らかの理由で悪化した場合に打つ手が無くなるという裸単騎待ちの勇者としか言いようの無い素晴らしい理屈。

これに対して「当預減額は適当ではないが、将来的には理解を示す」って人のご意見(5月における議論)を昨日はご紹介しましたが、だいたい4月時点でも「先行きの金融政策はどうよ」って所で同じような話が展開されていました。そんな中で量的緩和政策の元々のロジックを重視した意見を述べた委員がいるのは救われますわな。

『一人の委員は、金融市場の状況について、金融機関が必要とする以上の流動性を供給することを通じて金融機関行動に働きかけるという意味での量的緩和政策の効果がより強まってきているとみることができると述べ、特に、景気が踊り場局面にあることを考慮すれば、当座預金残高目標を維持することに積極的な意義があるとの見解を示した。』

既に引き下げの旗幟鮮明な人と、どうも引き下げに理解のありそうな人を勘定していきますと、消去法で中原審議委員か岩田副総裁か西村審議委員ということになりそうですな(福井総裁と武藤副総裁はあまりこの辺りに関して意見言わないと思いますし、総裁は引き下げに傾いている感じですし)。まぁこれが大勢意見じゃなさそうなのがトホホ感を強めます。


○5月の「なお書き修正」容認に関する同床異夢あるいは呉越同舟

『こうしたもとで、多くの委員は、現在の金融市場調節方針を維持した上で、目標値の一時的な下限割れがありうるという新たな「なお書き」を付け加える対応が適当であるとの意見を述べた。』

5月19、20日の「なお書き修正」容認に関してですな。

『何人かの委員は、通常は、市場動向を十分に見極めつつ、きめ細かな金融市場調節運営を行うことにより、「30〜35兆円程度」という当座預金残高目標を維持することができると指摘した。ただ、税揚げなど財政資金の動きに伴う極めて大幅な資金不足が見込まれる時期には、当座預金残高目標を常に維持できるか明確ではないと付け加えた。』

で、そのために「程度」という文言が金融調節方針にあったと存じますが・・・

『ある委員は、財政要因の季節的・制度的変動の大きさなどを踏まえると、現行の当座預金残高目標のレンジは十分に広いものとは言えないとの見方を示した。』

そうかぁぁぁ??つーかこれ以上広くしてどうするんだ??

『別の委員は、6月上旬の資金不足が一定期間続くことを踏まえると、下限割れを「程度」で読み込むことが難しくなる惧れがあり、「なお書き」として金融市場調節方針に書き込むことが必要であるとした。』

どういう状況報告になっているのか物凄く気になる所なんですが、どっちかといいますと6月の資金不足はオペバンバン打てば全然大丈夫でしょって見方の方が市場(の現場)としては強かったと思いますが。何かもう大幅不足でこのままでは30兆円維持が大変ですって宣伝してる人もいたかも知れんが。

『その際、ある委員は、上下双方向の「なお書き」が付されることで当座預金残高目標の意義が不明確とならないよう、発動条件については十分に明確なものとする必要があると述べた。』

それはご尤もですけど、結果として出てきた発動条件は「また、資金供給に対する金融機関の応札状況などから資金需要が極めて弱いと判断される場合」という条件でして、正直量的緩和やっている中ではオペの打ち方次第で「資金需要が極めて弱いと判断される場合」の演出は可能ですわな。わざとニーズの無いオペを打てば良い訳ですから。ということで、この委員の意見は取り上げられたように見えて思いっきり骨抜きというか却って裁量の余地を増す結果となってます。

『別の一人の委員は、目標達成の努力が十分に行われるのであれば、当座預金残高目標の一時的な下限割れを許容することには反対しないとした。』

目標達成の努力を十分に行ったかどうかは5月後半に連日悪態をついていたあたくしの過去ログでもご参照頂ければ誠に幸いでございます。おほほほほほ。


何と言うか、議論が迷走していて情け無い限りでございます。



2005/06/21

お題「金融政策決定会合議事要旨を読むわけだが」

6月2日、3日の当座預金残高30兆円割れとかやりましたが、ここの所は当座預金残高はちゃっかり34兆円だとか堂々の30兆円超過。そんなに市場機能の低下が嫌なら今まさに絶賛100円入札で困っている短期国債の買入を暫くスキップしたら如何でしょうかと思うんですが、と軽く悪態をつきまして。


昨日はあたくし的には注目の金融政策決定会合議事要旨が公表されましたが、読むのが七面倒くさいということで内容についてはじぇんじぇん反応した雰囲気は無し。まぁ読み込んだ後に反応するのかしないのかって所でしょうか。

昨日公表されたのは、4月28日の議事要旨と5月19、20日の議事要旨です。特に5月分に関しては当座預金残高目標に関して「なお書き」修正を行った回にあたりますので、物凄い勢いで読み込んでみたのですが、正直量が多い。

(4月)http://www.boj.or.jp/seisaku/05/pb/g050428.htm
(5月)http://www.boj.or.jp/seisaku/05/pb/g050520.htm


○なお書き修正に関る解釈

色々と突っ込みを入れる前にまぁとりあえずまとめと言うか。

4月の時点でも当座預金残高目標引き下げに関する論議はそれなりに行われたようだというのが4月の「金融情勢に関する委員会の検討の概要」の最後の方から読み取る事ができます。で、その中で『また、何人かの委員は、量的緩和政策の効果について、それぞれの見解を披瀝した。』って言う事で色んな「見解」が披瀝されているという大変にアレな状態でございました。突っ込みをしてると長くなるのでとりあえず該当箇所ご参照下さい。


で、5月の「なお書き修正」に繋がる訳ですが、このなお書き修正に関連しても委員によってその解釈が微妙に違っているという状態。そりゃまぁ意見が違うのは良いのですが、景気の先行き見通しがどうのこうのとか、政策の枠組みとして(例えば)インタゲを導入すべきか否かとかというような大枠の話で意見が分かれて議論になってるってお話でも何でも無い所が実に情けない次第。

以下5月分の議事要旨の「当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要」より。

『こうした「なお書き」の修正について、何人かの委員は、金融緩和の後退を意味するものではなく、現行の政策を副作用の少ないかたちで長く続けていくために必要な措置であるとの見解を示した。』

ということで、相変わらず政策委員会では「量的緩和の副作用論」が幅を利かせているようで誠に遺憾なものでございます。確かに「市場機能の低下」といわれてしまうと市場関係者以外の人にとっては「そりゃケシカラン」って反応しそうなネタですが、所詮コール取引が不活性とか短期国債が100円入札とかそんな世界の話だし、まぁあまり効果が期待できないとは言え、そこまで金利がゼロに張り付けば資金が金融市場から実物経済に流れるという理屈もあるんでそんなに大騒ぎすることでしょうかねぇなどと書くと短期金融市場の人の90%(推定)から怒られますので注意しましょう。

『複数の委員は、資金需要が極めて弱い場合に当座預金残高目標を維持し続けると、資金供給オペレーションの長期化により、日本銀行のバランスシートの固定化が進み、機動的な金融調節が阻害されると同時に、市場のリスクプレミアムの極端な縮小など市場機能に一層悪影響が及ぶと指摘した。』

「資金供給オペレーションの長期化でバランスシートの固定化」って話に関しては「日銀のバランスシート」に関して福井総裁がよくコメントしていますんで、この理屈に乗っかっていると思うんですが、「資金供給オペレーションの長期化」って言ったって精々期間1年以内で行っている話でございまして、それでバランスシートの固定化云々って言うのはどうなのよって思うのですが、まぁなんちゃらも方便だの武将のつくなんちゃらは武略と言うなどというありがたい言葉がございますからねぇ。


と、ここまで涙無しに読めない議事要旨が続きましたが、ようやっと一人今までの政策論理を踏まえた発言が出てくるのでした。

『もっとも、これに対して、一人の委員は、市場機能を低下させるまで金利を低下させることによりデフレ脱却までの距離を縮めている面もあるので、市場機能への悪影響を強調しすぎることは適当ではないという考え方を示した。』

しかしこの一人しかいなかったのでしょうか?????(涙)


○なお書き修正後の先行き運営に関して

同じく5月の議事要旨から、というか上記の続き部分。

『何人かの委員は、先行きの金融市場調節運営について見解を示した。これらの委員は、今後、金融機関の流動性需要が一段と減少する可能性もあると指摘した。このうち複数の委員は、景気が「踊り場」を脱し、明確な回復に転じた後に、現行の当座預金残高目標の維持が難しくなった場合には、日本銀行のデフレ克服に向けてのスタンスに悪影響が生じないことを確認しながら、残高目標を減額することも一つの選択肢として考えられるとの認識を示した。』

「減額するのが選択肢」だと言った人が複数名いまして、それが「金融機関の流動性需要が一段と減少する可能性もある」と指摘した「何人かの委員」に含まれるわけですから、3人以上の委員が「流動性需要の減退対応」という視点でものを見ているって話になりますんで、ここをどう解釈するのかはやや微妙ではありますが、当座預金残高目標の将来の引き下げに関しては少なくとも福間、水野の両委員の他にも状況によっては賛同者が出そうな感じですなぁと思わせてくれます。

で、その次にまた解釈に悩む部分が。

『こうした議論を受けて、一人の委員は、今回の対応は、当座預金残高目標の引き下げなど、今後の政策運営の方向とは切り離して理解する必要があると述べた。』

これだけ読むと「ああこの委員は基本的に引き下げ反対でなお書きも消極的なのね」と思うのですが、この人の発言の続きはこうなっています。

『その上で、現時点で先行きの金融機関の流動性需要を予見することは難しく、市場機能を毀損することなく「30〜35兆円程度」という現状の目標値の達成が可能かどうかは、その時々の金融政策決定会合で判断していくことになると述べた。』

これがイマイチ良く判らん。何か目標値が達成かどうかに関して毎回毎回政策決定会合で議論しだすことなのかよって突っ込みを入れたくなりますが、はてさて何なんでしょう。それに「その時々に判断」ってなら前回の決定会合で「なお書き下限割れ容認」を外す提案でも出ているかというと、それも出てない雰囲気ですし何のこっちゃですな。



まぁ山のように突っ込みたい事があるのですが、頭の中で整理できてないので本日は「なお書き修正と今後の政策運営」部分に関してというとりあえずポイント部分のみご紹介しました。続きは明日。




2005/06/20

お題「総裁記者会見続き」

今やっている某経済ニュース番組のコメンテーターさまは米国債券市場について、「原油価格上昇→消費減退→債券買い」だが、「原油価格下落→景気減速→債券買い」だと堂々コメント。ギャグというか債券市場の地合いが良いという事を例えるために言ってるのかと思えばどうも大真面目らしく、ポジショントークもほどほどにしましょうと思うあたくしなのでありました。

どうもネタがあんまり無いので総裁記者会見の続き。

○市場機能がどうのこうのという話

ほとんど蒟蒻問答の世界となっている質疑応答。

『(問)今までの記者会見でも何度か使われている「市場機能を過度に封殺する」ということについて、もう少し具体的にどういうことを言っておられるのか、説明頂きたい。』

『(答)長い期間にわたって、日本銀行は大量の資金供給を市場に行ってきており、その結果として、日本銀行のオペレーションへの民間金融機関の依存度が、実体的にも心理的にも高まっている。また、市場での価格形成も、日本銀行のオペレーションに左右される度合いが強まっている。』

まずこの時点でマッチポンプな訳でして、金融機関が必要とする量を大きく上回る資金を供給した結果ですから、依存度が高まるもへったくれも無いわけですが。

『本来、市場においては、市場参加者が自らの金利感あるいは資金ポジションの動向等を考えながら資金の取引を行う。これが市場本来の機能であるが、そこが必ずしも十分には働きにくいという状況になっている。』

上に同じ。ここから先が判ったような判らんような理屈。
 
『もともと量的緩和を進める以上、そういうことになりかねない、あるいは、現になるだろうし多少はなっても仕方がないと、ある割り切りを持ってやってきていることは事実である。その程度があまりにも行き過ぎないかどうかという極めて難しい判断である。』

いやまぁ量的緩和政策を長期化してるからそうなるもんなのでして、それは量を減らせば済む問題なのかというのは微妙な気がしますし、そもそも当座預金残高目標を設定する根拠の数字が訳判らんから環境に変化(為替市場への介入が無くなったのが主要因かと存じますが)が生じた時にどうなるのかという検討ができませんなぁという話でしょうか。先日申しあげたように、いざ当預目標引き下げの提案って話になったらいきなり引き下げ額の数字が違っているわけですし、あはは。

『ある数字で示すということはできない世界である。実際の市場の中で、市場関係者の主体的な動きがどれくらい弱まっているか、あるいは逆に甦りつつあるのかということは、現実にオペレーションの舞台の主役として市場の中に入っていけば、非常に明確に感じることであるが、一歩離れて数字だけで判断しようとするとなかなか難しい話だということをご理解頂きたい。』

そんなもの市場にいても判断できませんが何か?短期金融市場の市場機能がどうのこうのって問題は量的緩和政策を行うコインの裏表みたいな話ですから、どうもこの「市場機能の封殺がどうのこうの」っていうのを見るにつれ、「短期金融市場(と、直接的表現を避けるあたくし)>>当預残高の量」というスタンスが見えてきますわな。



○でまぁ市場機能の回復をしたいのかと思えば・・・・・

その後の方での質疑応答では上記の「市場機能封殺」問題と話のケツが合わないお話をしているのですが、大丈夫でしょうか??

『(問)先程、当座預金残高目標の下限割れの話の中で、市場からは不規則な反応がなかったという話をされていた。そうした反応がなかったことは良いのだが、そうだとすると、今まで維持してきた30兆円という数字の意味合いというのは、以前と今とでは違ってきているということなのか。29兆数千億円でも市場がそういう反応であるということは、30兆円という金額にどのような意味があるのか、意味が変わってきているとお考えなのか、ということについて伺いたい。』

『(答)消費者物価指数の前年比変化率が安定的にゼロ%以上となるまで所要準備を大幅に上回る流動性を供給するという意味は、流動性を大量に供給することによって短期を中心に金利を低めに抑えるとともに、金融システムにおいても資金繰り面での安心感を恒常的に与え続け、そしてコミットメントによって時間軸効果を働かせて金利の安定を一層補強する、というメカニズムは一切変わっていない。』

えーっとそれは量的緩和政策の極めて公的な見解でございますが、さっき話していた「市場機能を封殺しない」だの「市場の金利発見機能を損なわない」という話と整合性が取れないように思えますな。「短期を中心に金利を低めに抑える」とか「時間軸効果を働かせて金利の安定を一層補強」って・・・・・



○そして禅問答

この質問者はどうも「量的緩和の量」に関して突っ込みをしたかったらしく、次に量についての突っ込みをしているのが惜しい所です。市場機能に関するツッコミをして欲しかった所です。

『(問)下限を割っても市場が反応しないということになると、所要準備より多ければ何兆円でも良いのではないかという話になりかねないと思うのだが、そういうことにはならないのか。』

『(答)意味のない流動性の供給をしてきた覚えはない。実際に金融システムに不安がある時には瞬間蒸発的に日本銀行の供給した流動性が消えるという状況であった。今はその状況が変わってきているということは繰り返し申し上げてきたところである。そういうふうに市場の状況が変われば同じ大きさの金額であってもメリットとデメリットの相関関係は微妙に変わってくるということは正直に申し上げているが、基本的な流動性供給の機能、コミットメントの効果、これは変わらないということである。』

この後の質疑応答で「金融システム不安」というところに対してツッコミがありましたが、その質問に対しては『ペイオフ全面解禁が終わったから金融システムの問題について量的緩和の必要がなくなったというのは、極めて皮相的な見方だと言わせて頂く。』と言っておりまして、もはや何が何だか訳のわからない状態になっておりまして実に香ばしい。正直、引用しているあたくしも一体全体何がどうなっているのかワケワカメになってくる一連の質疑応答でございました。


#えーっと、本石町日記さんから「Music Baton」ネタを振られているのですが、意外にまとめに困っているので本日はパスって事で勘弁。




2005/06/17

お題「相変わらずアレな総裁記者会見」

総裁記者会見がアップされたのですが、それを見た所昨日書いたことの勘違いに気が付きましたので最初に訂正を。

昨日のドラめもんでは「金融政策決定会合で当預残目標下げに関して2種類の提案がされた」という報道に関して「総裁会見で明らかにされたんでしたっけ」と(脳内メモリーが怪しかったので断定せずに)書いてしまいましたが、記者会見で総裁は反対票やら反対提案の内容に関して「内容については後日発表する議事要旨を見るように」ということでノーコメントとしております。

よって昨日書いた中で「反対提案の内容が総裁記者会見で明らかにされたと思うが」と申しあげたくだりは完全にあたくしの記憶違いでした。誠に恐縮至極で伏してお詫びして訂正いたします。(ちなみに票決の7対2に関しては会見で触れております)

まぁしかしそう考えますと、決定会合終了後にペラペラお喋りしていた「関係筋」の方は金融政策決定会合の何たるかを全く理解していないという事になりますな。その任に極めて適正でない人が「関係筋」の中の人であるということでございまして、昨日は豆腐の角に頭をぶつけてと申しあげましたが、本日は可及的速やかに出処進退を考えた方が宜しいのではないでしょうかと申しあげておきましょう。


で、記者会見の話しですが、さすがに大下げした債券相場コメントを。

○その前に相場メモ

昨日の20年国債入札は例によって例の如く前場に余計な先回り買いのような動きがあって20年ゾーンは前場引け時点でカーブ上やたら強くなってしまい入札を迎えました。ただ落札結果は前場引け時点のオファーサイド1.94%よりも安い水準まで最低価格が流れる(平均は1.94%ちょっと割れでしたが)というものでして、さすがに「毎月7000億円」という入札はそれなりに重いということでしょう。

昔のように大手銀行勢が大挙出動するような商品だと先回り買いで踏み上げ狙いというような動きが出たりもするんでしょうが、まぁこのゾーンでアクティブに「売った買った」をやる人があまりいなく(アクティブ系年金と言われる人と証券ディーラーを合算しても暴れん坊将軍な人の動きのでかさには全然敵わないです)なった為に、入札もだいぶ落ち着いてきているという事でしょうか。もちろん最終投資家様のターゲットといわれる2%になりますと話は違ってくるでしょうが。


で、機械受注統計も少々良かったとはいえ概ね想定の範囲内だったのですが、何でもついこの前最高値更新とか言ってた欧州債に売りが出て下落した影響で債券先物に海外勢の売りが出たという説明になっているのですが、今まで延々と底堅く下がらないという困ったちゃんだった債券先物がせっせと売られまして、チョー久々に見る先物独歩安相場になりまして、何と140円割れと相成りました。

超長期国債に関しては平均落札価格ベースでの入札レベルが1.94%ちょい割れでしたが、大引けでは1.96%でして、その間に債券先物が43銭下落しておりますので、ヘッジが少々遅れていてもウッシッシの巻という中々ハッピーな入札になりました。落札結果発表後に下落した所で1.95%に執拗なビットが入っていたところを見ると、まず1.95%で買い第一弾が入ったという感じでしょう。昨日の下げの犯人はどう見ても債券先物。

ただまぁ今まで散々債券先物が強かったことを考えますと、その逆の相場となった場合は債券先物よわよわ相場に一転してなるかもしれませんなぁとは思いますので、先物に関しては暫く暴れるかも。昨日の相場展開では中期ゾーンは下げに対して確り(2年なんか前日比変わらずですよ)でしたが、この辺が売られだすと下げも本格的になる可能性も有りますんで、まぁ本日は昨日の続きで先物が売られやすいんでしょうが、中期ゾーンがどうなるのかを注意したいなぁと存じます。



○総裁記者会見

前置きが長くなってしまいましたが、金融政策決定会合結果を受けた総裁記者会見はこちら→http://www.boj.or.jp/press/05/kk0506b.htm

例によって紙に打ち出すと9ページと内容豊富ですが、勝手にポイントを拾ってみますと(1)調節現場はつらいよ(2)景気認識のダム論話(3)日銀のバランスシートに関する言及と言った所でしょうか。

(1)調節現場はつらいよ(あるいは営業局手法の復活?)

先日からその気配はあったのですが、総裁記者会見では「当座預金残高下限割れは現場の判断」という大変に香ばしい理論が展開されております。

『(問)前回の金融政策決定会合以降、6月2・3日にいわゆる「なお書き」を適用したと見られる当座預金残高目標の下限割れという事態があった。これに関して、総裁は直前に何らかの場で「現場の判断である」とおっしゃったが、その判断についてどのように評価されているか。また一部には、年度末にあったようなオペをすれば、下限割れは回避できたのではないかという指摘もあるが、総裁がこの間繰り返し話されている「市場機能の封殺」というものとの兼ね合いで、どのような市場機能を封殺しないために、そのような下限割れの容認というかたちになったのか伺いたい。』

『(答)(前半部分割愛)前回の金融政策決定会合以降、今日までの金融市場局における具体的な市場調節振りを見ていると、政策委員会が示したディレクティブ通りの調節が行われてきていると思う。かなり期間の長いオペレーションを多用しながら、基本的にはターゲット達成のための資金供給を相当な努力を払いながら続けてきた。しかし、おっしゃった通り、6月2・3日の2日間について言えば、調節部署の市場の中における感触として、極端に無理な調節をするということと、市場機能を過度に封殺するということとの矛盾のひとつの場面に遭遇したということである。その結果として下限割れを容認したということであるので、文字通り、ディレクティブ通りの調節が行われてきたと理解している。実際、市場のほうでも、そうした調節と呼吸を上手く合わせたかたちで市場地合いが円滑に形成されてきていると思っている。市場と日本銀行の調節とのコミュニケーションは、円滑に進んできていると理解している。』

金融調節に関しては政策決定会合で方針を決定する訳で、金利ターゲットであれば誘導金利の目標水準が決定された方針通りに運営されるように行い、現在の当座預金残高ターゲットであれば当座預金が・・・って筈なのですが、どうもこの理屈では調節現場が目標下限割れ容認の判断をするらしいですな。

・・・・大丈夫か政策委員会。。。

ちなみに、6月2日、3日の当座預金30兆円割れに絡んでより直球をぶち投げた質問がございます。紙に出すと3ページ目になるのですが、質問に対する総裁の答えがもう何というか営業局時代のシグナリングオペの容認みたいな話をしたりしてるんですが、引用すると量が多くなりますし、はてさて?って感じですので、楽しい質問に関して引用しておきましょう(^^)。

『(問)6月2・3日の当座預金残高が29兆円台になったことについて伺いたい。5月31日に金融市場局が通知した手形買入全店オペでは、1兆円の供給枠に対して3兆618億円の応募があり、超過的な資金需要がさらに2兆円あったはずである。つまり、6月2・3日に即日オペをやらなくても、前日にオペをやれば不足を埋められたはずである。今、市場からはなんなく受け入れられたとの話しであったが、私の聞くところによると反論もかなりあった。市場の地合いを見ながらオペをやるというのは十分わかるが、5月31日の全店オペ時の2兆円の「落選した資金需要」をなぜ6月2・3日につぎ込まなかったのか。また、「なお書き」で、「資金需要が極めて弱いと判断される場合には」とあり、英語でも「it is judged」となっているが、この判断は誰がするのか。金融市場に普段関わりがある人であれば、以心伝心で何となくわかるかもしれないが、世間一般の人が読んでも、全然わからないと思うが如何か。』

実に素晴らしいツッコミです。答えは会見要旨をご覧下さい。もちろん最初の第一声は『最終的な判断は、現実に市場の中にあって、市場と直面しながら市場の感触というものを全面に受け止めながら調節にあたっている調節責任者に委ねられている。』でして、その後に延々と理屈を並べているのが香ばしい。

この観点の質疑はもうちょっとありましたが、まぁ代表的な質疑はこの2つかな。いつの間に政策決定会合で決めていた判断が現場に降りて来たんでしょうな。


(2)景気認識のダム論

金融経済月報に関してあたくしが「企業収益の向上が雇用環境の改善に向かう」という話が書いてありますなぁと思ったら、同じ事を質問している人がいました。

『(問)景気について伺いたい。金融経済月報にもあったが、輸出は足許少し伸び悩んでいる、生産は4〜6月は少し停滞気味になるだろうという見方が多い中で、企業の収益が雇用や賃金に波及して消費が底堅さを増しているという状況については、企業から家計へのメカニズムという部分が少しクローズ・アップされてきたような感触を受ける。そう考えると、5年前に「ダム論」というのがあり、その時は結局ITバブルの崩壊によって、そこで唱えられていた家計への波及メカニズムというバトン・タッチは行われなかったのだが、足許と5年前の類似点および相違点について総裁の見解を伺いたい。』

『(答)IT調整については、5年前の大きなハイテク・バブル崩壊後の調整と比べ調整の深度が違うという点は明確に言えると思う。現に、足許のIT調整は順調に進捗中だということにそれが表れていると思う。家計のほうについても、これも企業のリストラの進展度合いが5年前と現在とでは大きく違っているわけで、短観などでも人手不足感という世界に一歩足を踏み入れつつあるところまでリストラが進んでいる。雇用の増加、そして雇用者所得の増加、いずれも今回のほうがより確実性をもって、しっかりした土台の上にそれが実現してきているということが言えると思う。従って、両面からの景気回復への軌道の築かれ方というのは、5年前に比べてはるかに安定したものだということが言えると思う。(後半部分割愛)』

もう一回短問短答がございましたが、景気に関しては「回復の裾野が広がっている」という認識のようです。ちなみに総裁は「派手な回復ではなく、地味で息の長い回復」と言ってましたんで、まぁ景気に関しては自信満々でしょう。しかし地味に回復する景気だったらそんなに慌てて量的緩和の出口論を唱える必要は無いんじゃネーノ?慌てるのはインフレ昂進懸念がでるような回復速度の時でしょうに・・・・


(3)日銀バランスシートの話

『(問)日本銀行のバランスシート問題について伺いたい。先日発表された決算で日銀の資産規模は、6年連続で拡大を続け、過去最高を更新したということだが、これは量的緩和政策によって積極的なオペや長期国債買入を行った結果だと思う。先日の水野審議委員の講演では、量的緩和政策の副作用の一つとして日銀のバランスシート肥大化の弊害を挙げているが、改めてGDPの3分の1に達している日銀のバランスシートの規模──諸外国と比較しても極めて突出した状態だが──についてどう見ているのか伺いたい。』

『(答)日本銀行のバランスシートが肥大化するということ自体は、量的緩和政策をとる以上必然的な現象だと思う。従って、そのこと自体が問題というよりも、量的緩和政策をとり続けることによって、市場の中にディストーション(歪み)が生じ過ぎないかということが論点の一つである。』

ここまでは話わかるのですが、

『また、日本銀行のバランスシートについて関心をお持ちであるとすれば、例えば、日本銀行のバランスシートが、期間の長い資産が多くなり硬直化し過ぎていないか、将来の金融調節のフレキシビリティに対して懸念を持たせる材料を累積していないか、といった点が重要だと思う。』

問題は資産の質であって、持ってるものが国債でそんなに問題なのか??

『バランスシートが大きくなる過程で、資産の中身を見た場合に、極めて期間の短い資産で積み上げられている場合と、期間の長い資産で積み上げられていく場合とでは、そのリスク度に対する判断は随分変わってくると思う。最近までのところを見ると、日本銀行はかなり期間の長いオペを多用しながら流動性供給目標を達成してきており、その結果、日本銀行の資産の平均的な期間は長くなってきている。市場の機能を封殺し過ぎていないかということと、日本銀行のバランスシートの資産面での期間の長期化ということは裏腹の関係にあり、どちら側から見ても、同じ判断に結びつくような状況が出てきているということは確かで、私どもは強い関心を持って見ている。』

うーん・・・・・


ちなみに、他にも結構お笑い(というか笑えない)質疑応答(市場機能がどうしたとか、「関係筋」によると議論が白熱したはずなのに、何か淡々と議事が進行したかのようないい方をしてますなぁとか)があるのですが、まぁ来週ネタが無かったら掲載致します。




2005/06/16

お題「金融政策決定会合と金融経済月報」

総裁記者会見の要旨はまだ日銀Webにアップされてません(いつものパターンですが)。金融政策のディレクティブを下限割れ容認のなお書き修正して、お約束どおり(一応日銀的には「意図的に30兆円割れをやった訳ではない」となりますが^^)に当座預金残高30兆円割れを実施したことによって一旦作戦成功なので、今回はあまり刺激しない方が吉だという感じなのか、ヘッドラインにはそれほど刺激的な話はなかったよう(突っ込みたくなる件は少々)ですな。


○当預減額提案が何故か2本出ていたようですが

(たぶん)総裁記者会見で明らかにされてましたが(6月17日追記:総裁記者会見では言ってませんでした。当たり前ですわな。やはり関係者コメントでした)、今回の「現状維持」の票決は7対2と前回と同じ。で、その2票なんですが、当座預金残高目標引き下げの提案が出ていたようなのですが、その提案が「25−30兆円への引き下げ」と「27−32兆円への引き下げ」との事。

何も別々の引き下げ幅で提案するこたぁねぇだろうなどと思ってしまいましたが、まぁどうせ「腰だめの数字」って奴なんでしょうなぁと思う次第。「27−32兆円」の方は福間審議委員が以前も提案していたので今回も福間さんだとして、いきなり5兆下げるというのはここもとの言動からすれば水野審議委員なんでしょうな。まぁ政策委員会の外で金融政策の現状方針を変えようっていう話をするんなら金融政策決定会合で議事提案と投票をして下さいなって文句が聞こえたようですな。

しかし引き下げ派2名いて提案する引き下げ幅が違うってのもそこはかとなく香ばしいものを感じない訳でもありません。どういう根拠でその数字を出したんでしょう(ってそもそも引き上げの時も数字の根拠は良く判らんでしたんですが。実質ドル買い介入支援だったんでしょうが)かねぇ。


○決定会合の内容をペラペラしゃべる「関係筋」は誰??

金融政策決定会合結果が出てから暫くして各情報ベンダーが「関係筋」の話として決定会合の議事についてヘッドラインを打っておりました。「決定会合の票決は7対2」だの「議論が白熱したが皆納得している」だのというようなお話なんですが・・・・・

決定会合の票決については「全員一致」か「賛成(あるいは反対)多数」という発表をしてますんで、何対何だったかというのは議事要旨の公表を待つことになっている筈でして、まぁここの所福井総裁が記者会見で「反対が何票」とか言うのも趣旨としては余計なお話ではありますわな。ただまぁ総裁としては変な思惑を出したくないから総裁の判断で何対何というのを公表しているんだと思います。

などと考えますと、決定会合の内容に関して総裁記者会見の前にペラペラ喋っている「関係筋」の行動は政策決定会合が現在行っている対外公表のやり方を無視とは言わんが軽視しているものでして、そのようなお方は可及的速やかに豆腐の角に頭をぶつけていただきたいものだと思うあたくしは原理主義者ですかそうですか。

誰が関係筋なのかと思って昨日の決定会合結果発表文を見て参加者をチェック(http://www.boj.or.jp/seisaku/05/pb/k050615_f.htm)すると、まさか審議委員でそんな不見識なおしゃべりさんはいないと思います(つーかいたら嘆かわしい)し、日銀事務方やら政府官僚でそんなことする人はいないと考えると消去法で1名浮上しちゃいますが、まぁその方かもしれませんしその方じゃ無いのかも知れませんが、なんちゅうかもうちょっと何とかならんのかと思います。

っていうか、そもそも結果発表の際に「票決が何票だった」とか「否定された議案が何だったか」ってのを発表しない理由が良く判らんので改善キボンヌでありますわな。ただ今の枠組みでは票決だの反対議案だのは議事要旨発表時のお楽しみになっているんで、そのあたりを形骸化するおしゃべりは如何なものかと思いますがね。


○金融経済月報は雇用の改善についてコメント

今月の月報はこちら→http://www.boj.or.jp/seisaku/05/pb/gp0506.htm

小見出しにありますように、今回の月報は雇用状況に関る部分の現状判断、先行き見通しが前進しております。「ダム論」というとアレですが、「企業収益の改善が雇用情勢の改善につながり景気回復の裾野が広がる」という理屈が現出してますよってお話ですんで、日銀としては「景気回復シナリオ」に自信って所でしょうか。5月分と比較。

・基調判断と先行き見通しは変わらず

『わが国の景気は、IT関連分野における調整の動きを伴いつつも、基調としては回復を続けている。』
『先行きについても、景気は回復を続けていくとみられる。』

これらは5月分と同じです。

・雇用に関る部分

現状判断で「雇用者所得の増加」について言及しています。

(6月)『雇用面の改善や賃金の下げ止まりから、雇用者所得は緩やかながら増加しており』
(5月)『雇用面での改善傾向が続き、雇用者所得もはっきりと下げ止まる中で、』

先行きに関しては企業の人件費抑制姿勢が改善するような説明ですな。

(6月)『企業は人件費を抑制するよう慎重な姿勢を続けていくとみられるが、』
(5月)『企業の人件費抑制姿勢は引き続き根強いとみられるが、』

・設備投資

設備投資が製造業中心から非製造業にも広がり、はっきり増加してると言いたいようですな。

(6月)『設備投資は、高水準の企業収益を背景として、増加している。』
(5月)『設備投資は、高水準の企業収益を背景として、製造業を中心に増加傾向にある。』

あとは「輸出か持ち直し→伸び悩み」って微妙な変化がありましたが、今回は雇用と設備投資の判断を微妙に前進させているのが目につくところです。景気回復の足取りは確りしているって判断なんでしょうね。


ではでは〜♪






2005/06/15

お題「まぁ本日もあまり目新しいネタは無い訳ですが」

当座預金残高の「技術的対応」で大騒ぎした反動なのか、急に静かになってしまいましたな。今回の金融政策決定会合は・・・・

○相変わらず元気な短期国債

昨日実施された1年ものTBの入札も相変わらず堅調でしたが、さすがに1年ものともなりますと100円馬鹿入札にはなりませんで、最低落札価格は0.002%相当。とは言え若干強めの結果だったようなのですが、業者間売買では相変わらず0.0025%を叩くアホウあり。まぁ小額の出会いの後に0.0025%は買い気配になりましたんで、叩いた方も単なる嫌がらせで叩いたのかもしれませんが、相変わらず入札後に値持ちしてくれないのは困ったものであります。

もしかしたら消耗戦でもやっている積りなのかもしれませんが、100円で落札しても同値で最終投資家さまにも日銀の短期国債買入オペにも嵌らないというのによくもまぁ100円落札しますわなって思うわけでして、正直短期国債マーケットに関しては量的緩和政策の弊害云々よりも馬鹿入札をする業者(オマエモナーと言われそうですが、あっはっは)の姿勢もどうかとは思いますがね。

ま、確かに100円で落札して99.9999円で販売したとして1兆円落札してもイカレルのは100万円ですから店頭売買をつけるためのコストと考えれば理屈としてはその通りなんですけど、長期債で割高入札した場合その後取り返す可能性が無い訳では無いんですが、いかれ確率100%でそれをやるのはちと何と申しますか、ディーラーとしてやってて忸怩たるものを感じつつというかストレスが溜まるマーケットですなぁと存じます。ナムナム。


○物価連動国債・・・・・

昨日ご報告した物価連動国債は益々香ばしさを増しております。一昨日の最終出合いが今月発行の4回債で98円80銭と申しあげましたが、昨日もまた業者間での売り気配が何となく下がって来まして、債券相場が後場復活してるのに売りはそのまま。終わってみれば10年利付国債は前日比変わらずなのに10年物価連動国債は98円50銭に堂々の売り残りとまたまた下落(ちなみに日本相互証券の引値はもうちょっと高いのですが)。一昨日の引け後は物価連動国債を売った後に債券先物が買われてたりしてましたが、ヘッジをしてもしなくても負けという超越的に香ばしい商品になっており、まぁロスカットも入っているんでしょうなぁという感じでございます。合掌。

まーこの動きってのも思い起こせば15年変動利付国債に似たものがございまして、15年変動利付国債は発行開始当初はイールドカーブがどうなろうと知った事なし状態で全銘柄100円の引値という今思えば(というか当時からそりゃどうよと囁かれてましたが)妙な値付けが横行しておりまして、「価格が変動しないのに4年国債並みの金利収入が入る魔法の商品」となっておりましたですわな。

ところが、超越的フラットニング相場が発生して10年金利が下落する中で「ふと気が付くと金利改定で次回クーポン激下がり攻撃(しまいには0%になりましたが)」に気が付き、ふと見ると発行も増加してきましてやっとまともな値付けに近づいて来まして、その後は長期金利が反転上昇したのに羹に懲りて膾を吹くよろしく暫くモドランチ会長になったもののバーゼルUの金利リスク対策商品として脚光を浴びて今に至るって動きになって割と安定してきました。

てなことを考えますと、この物価連動国債のボロボロ振りは過去の値付けに問題がございましたってことでまぁ過渡期における混乱のようなもんだと言う事で宜しいのではないかと。ただ昨日も申しあげたように、現在の我が国ではまともに「インフレヘッジをする金利系金融商品」と銘打ったものが殆ど無いに等しく(まぁインフレヘッジしたけりゃ安定配当してる公益企業株あたりでも買ってホールドしときゃ良い訳ですし)、多くの金融商品(金利系)はインフレリスクを契約者が被るようになってますんで、まぁ鶏が先か卵が先かって話になるのかもしれませんが、その手の金融商品の発展を期待したいと申しますか、正直言って個人が401kとかで買えるようにしたらどうよって思う次第でございます。一番ニーズあるのは個人でしょう。繰り返しになっちゃいましたが。


○明日は20年国債入札ですが

相変わらず金利が下がったままの債券市場ですが、以前の相場と違うのは金利低下で不足する目標収益を稼ぐために取る動きでして、大昔は「期間の長いものへのシフト」って事でデュレーションリスクに逝くという展開でしたが、さすがに一昨年の大暴落で痛い目にあったのと、そもそも格上げ合戦に見られるように信用リスクに関して相当改善されたのもございますので、昨今も「一般債のご購入」って動きの方が目につきますわな。

そんなわけで長期金利低下の恩恵が中々20年ゾーンに向かわない訳でして、「絶対水準が低いと意地でも買わない最終投資家」VS「そろそろ買いが入るだろうと思ってロングにしている業者」のにらみ合いの図(そこにアクティブ系の投資家が売ったり買ったりして持ち上げたり振り落としたりが発生するのですが)という感じになっているのではないかとあくまでも勝手に想像。

で、まぁ何だかんだと20年ゾーンは今月に入ってからもどうもぱっとしない展開が続いておりますが、散々置いていかれている20年が明日の入札でどう動くのかは注目される所かと。入札後それなりに値持ちすれば(昨日の債券相場見てると次に相場下がっても10年1.3%や5年0.5%は強力サポートされそうですけれども)入札通過後次の長期債入札が7月まで無いと言う事になりますんで、月末にかけて徐々に強くなるんでしょうなぁと思いますが、恐らく皆同じ事を考えているので、今日の後場辺りからいきなり20年が復活して入札割高になってしまう悪寒が(汗)。

多分今日実施される輪番オペで超長期ゾーンが入るかどうかってあたりも注意しておくのが吉かと。超長期が入るようなオペだと入札前に業者の事前準備万端モードになるかと思われます。


#ま、今日の決定会合はどうでも良くて、金融経済月報と総裁記者会見注目。






2005/06/14

お題「今日もそんなにネタはなく雑談で」

○物価連動国債の悲劇

物価連動国債が豪快に下落しております。7日ですから先週の火曜に入札が行われたのですが、入札前日の入札前取引での出合いが0.46%(売り残り)だったのですが、ご存知のように入札結果は0.58%となりまして、当日瞬間は「あまりにもそりゃ安いだろ」って反発もしたのですが、その後も豪快に下落してとうとう昨日は引け後に新発4回債は98円80銭での出合い(おまけに売り残り)ですが、何故か日本相互証券の引値は99円00銭だったりするわけですが。

単純な利回りに引きなおす(手元の電卓でイイカゲンに計算する)と0.625%くらいになる訳でございまして、その間にフツーの10年国債はどうなっていたかと申しますと、6月6日の10年270回引値が1.24%で昨日が1.235%とまぁ上に行って来いって奴ですな。0.15%も動くもんかよおいおいって所でございますわな。投信なんかで物価連動国債を組み込んでいるものがあると聞いておりますが、世の中大きく変わった訳でも何でもない(要りもしない債券が5000億円発行されたというのはあるが)のに基準価格が1週間で1%以上下落したという事になっているものと思われまして、誠にご愁傷様にてございます。


まぁまだまだ商品としてこなれていないので価格形成もへったくれも無いというのが背景にあるのですが、そもそもがここもとの金利低下局面で10年長期利付国債と同じ(どころかそれより勢い良く)ように値上がりする所が話として無茶があったんじゃネーノとは思いますわな。金融政策がCPIにペッグしている現状で長期金利が低下するっちゅうのは足もとのデフレ継続を織り込みに行っていくわけですんで、物価連動国債の価格上昇はマイルドになるとあたくしは思ってたんですが、消費税が上昇するとCPIが技術的に上昇するからどうのこうのってのを過大評価してたんじゃネーノっていう気はしますわな。

この商品は何だか良く判らんのですが想定元本が物価指数フロートするという代物ですんで、足もとでデフレが継続するとドンドン(というのは大げさですが)元本が減価していくという素晴らしい商品。いくら将来消費税が上昇するって言ってもそりゃ何年先の話よっていうか、デフレ継続中に消費税引き上げの環境が整うんですかねぇってシロート的には思うので、まぁここもとの価格形成の方がしっくり来る所ではあります。もうちょっと長期金利が上りだすと相対的な魅力は出てくる(ただし10年国債でもあるので相対的な魅力は出ても絶対的には値下がりするのですが)とは思うんですが。


まぁしかし何ですな。もともとの価格が割高なのが適正水準に戻る動きなのはよく判りますが、国債市場特別参加者会合やら国債投資家懇談会なんかの議事要旨を見ると「超長期国債のニーズがある」だの「物価連動国債のニーズがある」だのという話が良く出てくるのですが、いざ増発してみると20年ゾーンのイールドカーブはスティープするわ(単純に10年金利が同じあたりにいたのは福井総裁の「金利に蓋をする」という迷言があった後の昨年2月あたりですな)物価連動国債は増発した途端に0.1%以上安くなるわという結果を見ますと、「おまいらニーズがあるってんなら買えよ」と悪態をつきたくなりますな。

・・・・・また読者が減るようなことを書いてしまった(大汗)。


ま、市場の予想インフレ率を見たいって発行側の意図は判るんですが、購入できる投資家層が薄すぎなのと、そもそも日本の機関投資家に物価連動国債のニーズがあるのかはあたくし的には激しく不明(って大昔も書きましたが)。以前国債投資家懇談会でどこぞの参加者が「インフレヘッジであれば物価連動国債以外にもトータルアセットアロケーションの中で株もあれば不動産もあるから物価連動国債なんぞ別にイラネ」(不動産って言うくらいだから生保さんの発言なんでしょうかね〜)って発言をしていたと議事要旨にございましたが、まぁ今のところ残念ながらそれが実情でしょ。

この商品ってどっちかというと、個人などのような自己勘定な人にニーズがある気がするんですが。正直、インフレヘッジがどうのこうのって言うけど、他人勘定な皆様って現状インフレリスクは資金の出し手が被る構図になってるのが殆どだと存じますが。銀行預金しかり多くの保険商品しかり。変額年金保険とか401Kとかが今後拡大すると思うんで、そのあたりに期待(あとは投信ですか)という所でしょうか。個人が買えないのは(税制上の問題があるから仕方ないんですけど)どうよって思います(が、個人がこの利回りで買うのかな?)けど。


悪態ばかりついても仕方ないので今後に期待したい所ではあります。



○東証VS金融庁

カネボウがどうのこうのというので揉めているのかと思ったら今度は市場管理部門を分離するのどうのという話で揉めているようですな。実に香ばしい。

そもそも取引所が上場する意味がどこにあるのかさっぱり判らん(設備投資に金がかかるのならその受益者は市場参加者なんですから場口銭引き上げるとか新規上場企業から手数料ふんだくるとかすればなどというとあちこちから石が飛んで来ますか(汗))のですが、そんなこと言ってられないほど資金ニーズあるんかね。

東証上場に先立って上場した大証はどこぞのお方に株を買われて大騒ぎになっておりますが、戦前にも東株買占め事件って起きてたような記憶がございましたな。代替取引所が実質的に無い状態で取引所が議決権のある普通株式を公開するってのはちとアレではないかと存じますが。何でも米国の真似すりゃ良いってもんじゃ無いと思うんですがね。

すんげぇシロート発想ですが、どうせなら業績連動型の配当を行い、議決権は無い(か無配になったら議決権が発生とか)ような新株でも発行すれば東証株式も指標銘柄になりそうですが、平和不動産が困る・・・事も無いか。

ま、今まで会員組織でやっていたのを株式会社にした経緯とかがあって、上場しないならしないで別の問題も発生してきそうですが、そんなに上場に拘る必要は無いと存じますけどね。


○金融政策決定会合

今日と明日行われますが、さすがに当預目標はいじらないと思います。ここもとのオペ札割れ攻撃を受けて「市場機能の低下」がどうのこうのって話に対して記者会見で総裁が何を言い出すのかが楽しみです。なお書き修正後、総裁の「とことんオペを行う」発言にも関らず(っていうか恐らくその場の勢いで言っちゃったんでしょうな)あっさりと6月2日、3日に当座預金残高30兆円割れをやってしまった点に関しては突っ込みがあるのかな(多分そういう話は出てこないと思いますが)とか、当預30兆円割れ後の水野審議委員の「ゼロベースで金融政策を見直す」というちゃぶ台をひっくり返す星一徹のような意見表明に対する評価とか、色々と聞いてみたいものですな。

総裁記者会見内容は明日の4時過ぎとかになると報道されると思います。




2005/06/13

お題「市場と余り関係ないお話ですが振興銀行報道で思ったこと」

少年老い易く学成り難し(謎)。

○日本振興銀行報道で色々思う

先週号(6月11日号)の週刊東洋経済に続きまして、今週号(6月18日増大号)の週刊東洋経済と日経ビジネス(6月13日号)で日本振興銀行の不透明融資疑惑が報道されております。今週号の記事はまだ読んで無いのですが、先週号の週刊東洋経済の記事を読んだ所、要するに木村剛氏の配偶者が代表を務める「ウッドビレッジ」(まんまですな^^)なる企業に同行の主力商品であるローン金利よりも遥かに低利の融資が行われており、その担保に同行の株式が使われているのは如何なものかって内容でした。

まぁ氏はコンプライアンスオフィサー資格制度がどうのこうのとか実質的に主宰しておられるくらいのお方ですから、法律の形式要件は上手に処理しておいでだとは思いますが、創業メンバーと経営の主導権争いをしていたり、その最中に第三者割当増資やっていたりという事象があって、期末に蓋を開けてみたら氏と氏の関与する企業の持ち株比率が増大してて、かつ記事のような融資がありましたってんじゃあ結果から逆算すると「株式取得にファイナンスつけました」って話にならんのですかねぇと思う訳です。

で、まぁ氏がかつて大手銀行をシバキアゲていた頃に「銀行のインチキ増資をモニタリングしよう」などという記事を日経新聞のWebに書いておりました(NIKKEI NETから辿れますよ〜)が、たいへんにすばらしいかぶしきしゅとくすきーむですなぁと棒読みになるのですが、その話はともかく。


銀行の新規参入を促進していきましょうって施策の第一弾として中小企業への無担保融資拡大と銘打って設立されたのが日本振興銀行であるのは皆様ご存知のところですが、週刊東洋経済の報道が事実であると仮定した上でのお話になりますが、もし記事内容の通りであれば、昔懐かしい「オーナー銀行」の香りまで漂う実に香ばしいものですなぁって感じです。まぁ報道によれば貸出額は1億円2億円だかって話ですんで別にオーナーの機関銀行状態でも何でも無いんですが(貸出の内容と実質の資金使途がどうよって話はともかくとして)、今後の銀行業への新規参入や既存銀行の買収による銀行業への参入に関して「気が付きゃ機関銀行」って事の無いように願いたいものでありますな。


戦前の昭和恐慌前には特定の事業会社がベースになって設立した「機関銀行」や、設立は機関銀行ではないものの特定企業と深く結びついた銀行(台湾銀行=鈴木商店、十五銀行=松方系企業)がございまして、っつーか中小銀行にはそういうのが多かったそうですが、この機関銀行化が貸出先企業の経営悪化に伴い貸出内容が悪化して延命の為に益々状況が悪化するという事態になったわけですわな。(このあたりは「昭和金融恐慌史」(高橋亀吉・森垣淑)を参照してます)

まぁこの時の教訓から現在の銀行行政では事業会社の銀行経営を厳しく制限しており(つーか支配株主になるのは禁じ手ですよね)、大口融資規制とか銀行検査とかで「機関銀行化」の抑止を行っているとあたくしは記憶しております。

昭和金融恐慌当時は預金保険機構などというような気の利いた制度はございませんでした(と思いますが、あったけど機能しなかったのかも知れませんが。どっちにしろ破綻に伴い小口預金もきっちりカットされました)が、現在は預金保険機構という便利なものがございますので、「預金の受け入れは一人当たり1000万円を上限としているので元本と利息が預金保険機構でカバーできています」と堂々と宣伝するような金融機関が高利の預金を集めて、放漫貸出を行いあっという間に破綻された日にゃぁ真っ当に経営をやっている銀行と国家財政の負担が発生してしまい、結果として預金者および国民がケツを拭かされるという涙の出るようなことが起こりかねない(決済システムなどへの影響は軽微かもしれませんけど・・・・)訳ですから、当時よりも現在の方が「特定の銀行が機関銀行化することの弊害」は遥かに大きいと存じます。

そういやどこぞの風雲児が山口県の方にある銀行と共同出資で銀行を作るだの何だのという話がありましたが、ありゃどうなるんでしょうな。

ま、金融庁様がちゃんと機能していただいて、機関銀行が預金保険機構への実質ただ乗りを行うというアフォな事態が起きないように今後とも注意していただきたいものだと切に願いたいものであります。


○週末に読んだ本のご紹介

・「大英帝国衰亡史(中西輝政著、PHP文庫)」

近世の「世界帝国」であった大英帝国の歴史と、その帝国の本質は何であったかという点について論考する著書。とりあえずヨーロッパ近代史を勉強したくなりました(あたくし実はその辺りの知識は殆ど無い)んですがそれはともかく。

大英帝国の本質について著者が語ろうとし、現代社会へのメッセージとしたのはこの辺りなのかなぁと勝手に想像したのが94ページの第三章「帝国を支えた異端の紳士たち」の部分。引用させていただきます。

『世襲によるかどうかは別にして、まず何らかの意味での「貴族」の存在が許されない社会に、「剛直なエリート」のキャラクターは生まれえない。何らかの意味で文化としての「貴族」をなくした社会は結局、エリートを知識人双方のはてしない卑俗化を招き、いずれ民主主義あるいはリベラルな価値そのものを崩壊させかねない。というのも、民主主義とかリベラリズムといった価値は「大勢に抗する精神」がどこかにあって初めて存続しうるものであるのだが、そうした精神は、「大衆」の側からはけっして生まれず、それゆえ、「貴族」こそが民主主義の支柱、と考えられてきたのが近代英国の思想的文脈であった。そしてそれがまた、大国としての「帝国」の域に達したイギリス社会の、長期的存続の保障ともなってゆくのである。少なくとも、こうした意味での「貴族」をなくした社会が大国となってつくる「帝国」は、つねに数世代を経ずして終わる短命な「帝国」でしかないのかもしれない。』

まぁこのくだりが気に食わないという人は読まない方が吉だと思います。

ISBN4-569-57895-0 C0120 \648


2005/06/10

お題「5年国債入札レビューその他」

○資産担保証券買入は今年度で終了でした

まずは昨日の訂正というか補足。

資産担保証券の買入スキームに関してですが、引用した日銀の発表文にありますように、このスキームは「時限的措置」です。で、その時限は今年度一杯ということですんで、延長措置でもしない限り今年度末をもって無事フェードアウトと相成ります。制度が残るような書き方をしておりましたが、あたくしの思いっきり勘違いですので謹んで訂正致します。メールでのご指摘ありがとうございました。m(__)m

ま、いつものように「終了時はフェードアウト」というのも良いのですが、半年前に終了を前倒しで実施してアナウンスメント効果を出しても宜しいのではないかとは思いますが。


○5年国債入札レビュー

昨日の債券相場、朝方から堅調気味だったのはまぁ兎も角として、困った展開だったのはとにかく5年ゾーンが一番堅調だった事です。特に0.5%クーポンがアナウンスされたあたりでは、5年ゾーンの既発5年国債にビットがうじゃうじゃ涌いて出てくるという香ばしい展開。「また事前の買いかよ!」ってなところで。

で、なおも血圧が上昇するのが、そんな展開の中で20年国債がいきなり大甘になってしまい、先物が前日比殆ど下がっておらず、5年債の引けは叩かれるけどすかさずビットがうじゃうじゃという状況の中で20年カレントが1毛甘ヒットなどとやりやがって事でして(怒)、「5年入札日の前場に短期化するはた迷惑な奴はごーとぅーへるじゃあ!」なんて血圧急上昇でした。(さすがにやり過ぎ感からその後20年にはビット入りまくっておりましたが)まぁ単に「20年ゾーンの売り」と「入札前の先回り買い」が別々に起きただけだとは思いますが(^^)。

で、入札直前ももう強い強い。先物(9月限)は前日比3銭高の140円69銭だというのに5年カレントゾーンの既発5年44回〜46回債は5糸強がバカスカ出合い(46回のみ5糸強オファー残り)、5年47回債入札前取引では単利ベースで0.455%がドカドカ買われるという「買う気満々」モード。

で、ご存知の通りの入札結果になってしまいまして、最低落札価格が100円24銭で按分も5割弱という結果。この100円24銭が0.450%に相当しますが、前場引け時点での5年44回〜46回債が0.42%でしたんで、前後のイールドカーブ及び受渡が先になる分を勘案すると概ね1毛割高という割高入札となりました。

で、尚の事憎たらしいのは、後場になってみるといつの間にやら中期ゾーンが失速している事でして(--;)、終わってみれば先物が140円82銭と前場引けから13銭上昇しておりまして、肝心の5年新発債は0.445%の引値(しかもオファーサイド)でして、価格に直すと100円26銭8厘と平均落札価格からわずか1銭8厘しか上昇しませんでした。ナンノコッチャという感じ。

市場推計ベースでは例によって例の如くで大手銀行系証券様が大量落札されておられましたが、入札が思ったよりも少々強かった割にはまるっきり踏みあがりの動きがなかった所から考えますと、まぁ事前の買いと入札時点での買いでニーズが見事に終了してしまい、セカンダリーの買いはあまり無かったですなぁという事だったのでしょうな。

以前だとこういう割高入札をやるともうゲロゲロの踏みあがりになったものですが、最近はめっきりそういう動きが無くなっている5年国債。発行量が2兆円な上に第U非価格競争入札で追加発行が最大2000億円というのが無用な踏みあがりを抑制しているんでしょうなぁと思いますが、結局入札だけ割高水準で買うってのはマーケットメーカーとしてどうなのよって文句つけたくなりますわな。短期国債に関しても大量落札の皆さん100円で落札している訳ですが、そいつを皆さん100円で販売しているのかと思えばうわなにをするlkじhjgんmfj


○ところで全店手形オペが札割れしてますが

昨日は全店手形オペが札割れしておりましたが、ここのところへ来て少々長めの期間の資金供給を熱心に実施しておられるようですな。まぁ資金供給を「とことん」実施しているのはお約束どおりなんでしょうが、そんなら何で5月末はあんなにあっさりとした供給をしてたんでしょうなぁと思う次第。

まぁ以下あたくしの激しく意地の悪い読み筋なので話10分の1くらいでお願いしますが(^^)、6月2日の資金不足時期に関しては「なお書き修正」を決定した手前、当預下限割れを一度はやっておかないとって事で自然体供給を行い、今度は量的緩和政策の副作用として宣伝されておりますところの「市場機能の低下」をアピールするためにバンバン資金供給(ただし精々年末越えなのでまぁ猛烈に行っているという程ではない)を行って「札割れ頻発で市場機能が低下してますなぁ」という展開を狙っているのではないかと超邪推(^^)。

ま、それじゃあただの猿芝うわなにをするやめろkljgふkぉkdh

という訳で来週は金融政策決定会合でございますな。





2005/06/09

お題「今日も雑然と雑談で」

まぁ何と申しますか、当預目標下げましょうってのは金融市場の輿論(金利が上らないと困る人たちが多いので)という雰囲気になっているようで、当預目標下げに関しては思いっきり「理解ありあり」状態のようになってますな。という訳であまりうじうじ粘着していても空しいあたくしなのでありました。

○当預目標下げの票読みまとめ

・目標引き下げ今すぐやれやゴルァ!派
→福間さん、水野さん

・目標引き下げ積極容認派
→須田さん、春さん(春さんは4月の決定会合議事要旨から類推)

・目標引き下げ理解ありあり派
→西村さん、いちおう福井総裁(総裁の場合本音は積極派と思われ)

既にこの時点で6票。福井さんは立場上に多数派に賛成となるので5票とも言えますが、どっちにしろ9人中5人ですわな。

・目標引き下げ消極派
→武藤副総裁

・目標引き下げ反対派
→中原さん、岩田副総裁

ということで、あとは上手い「言い訳」さえあれば当預目標引き下げって話になるんでしょうな。「債券市場を崩さなければ当預引き下げ成功(by水野審議委員)」などという意見もあるくらいですから、そーゆー意味ではとっととやったら如何でしょうかねぇ(棒読み)。というか、景気が本格的に好調って経済指標が連発して、株式市場が上昇してきたら債券市場も反応しちゃうでしょう。その時にCPIがマイナスなのに当預目標を下げだすと(プラス転換してるならそもそも市場が量的緩和解除を織り込んでくれますので無問題)時間軸が思いっきり短くなりますから、当預引き下げは債券相場崩しますわな。

・・・でもそれで良いんでしょうかね??その理屈から逝くと、景気の先行きが不透明だと思っている人が多くて債券市場が買い優勢の時には当預残高引き下げが出来るって不思議な話になるんですけど・・・・・



○正常化にはABCP買入の終了宣言もどうでしょう?

昨日実施されたABCP買入。もともとろくすっぽ応札の無いという素晴らしいオペでしたが、昨日の応札額はとうとうこのオペ発足(初回実施が2003年8月11日オファー)以来初の2桁億円(28億円!)となりました。

このオペは「企業金融の円滑化」と申しますか、福井総裁に言わせますと「資金の出前持ち」という譬えになるんですが、まぁ当時鳴り物入りで導入したオペレーションですが、よくよく考えますと速水前総裁の置き土産みたいな面もあったオペでございました。

http://www.boj.or.jp/seisaku/03/pb/k030611b.htm

本来この施策ってプルーデンスじゃねぇのかと今更ながらに思う(速水さんの時はプルーデンスに関る施策は金融政策決定会合ではなく通常の政策委員会で決定してましたな。銀行保有株買取が具体例)のですが、この買入実施にあたって日銀はこんな表明をしておりました。

『資産担保証券については、信用リスクを全体として削減し、投資家のリスク許容度に応じたリスク移転を図ることを通じて、企業金融の円滑化に貢献する効果が期待される。中央銀行が民間の信用リスクを直接負担することは異例であるが、わが国の金融機関の信用仲介機能が万全とはいえない現状においては、時限的な措置として買入れを行うことを通じて資産担保証券市場の発展を支援し、金融緩和の波及メカニズムを強化することは意義があると判断した。』

ということであれば、金融政策の正常化って文脈であれば、資産担保証券の買入を一旦終了させるちゅうことで宜しいのではないかと存じますが、なぜか進軍する時は鉦や太鼓で鳴り物入りモードなのに、撤退する時はこっそりと行うというのが得意技のようですので、このままフェードアウトなんでしょうかね。

ま、機能しなくてある意味良かったですなぁと思いますが、変に制度として残しておくと、遠い将来に復活して筋悪政策として利用される可能性もありますから・・・

(追記:10日の本文にございますが、本制度は本年度末で目出度く終了となっております。延長すれば別ですが、まぁそんなことも無いでしょう。メールでのご指摘ありがとうございました。)


○ところで5年国債入札ですが

相場は高値ゾーンに相変わらずおりますが、退避資金だの、こんな所で買いたく無いけど仕方ないって資金がうじゃうじゃ転がっている状況ですんで、特に問題ないでしょうなぁ。これで0.4%クーポンにでもなって「きゃー」といいながらも買いが集まっちゃったりすると相場にも達成感が出てくれるのですが、誠に惜しい事に(笑)、今回のクーポンも0.5%となりますので、達成感が出ない入札ということになりそうですなぁ。

米国債がやや売られているのが救いと言えば救いですか。下がった方が入札やりやすくなるでしょう。正直、最近の相場は火曜日に中期ゾーンが無茶苦茶堅調だったのに昨日は途中からいきなり中期ゾーン売り売りになるとか日替わりメニューで変りすぎ。大手投資家さまの動きが一々反映されているような相場であまり思い入れをもって臨まないほうが吉という相場でございます。


○最近読了した本

・「第三帝国の神殿にて ナチス軍需相の証言(アルベルト・シュペーア著、品田豊治訳、中公文庫)上下」

最近は日銀の人たちの講演などを読むのに忙しくて、読み終わるのに時間がかかってしまいましたが、「ヒットラーの建築家」から軍需大臣に転じ、ニュルンベルグ裁判で禁固20年の判決を受けたシュペーアの回顧録。

第三帝国の上層部が組織としてダメダメだったというような話も興味深かったのですが、あたくしとしてはヒトラーの人となりとか、第三帝国崩壊寸前の要人の動きとか、シュペーアのヒトラーに対する葛藤とか、そういう面を興味深く読みました。

ISBN4-12-203869-3 C1123 \1095(上巻)
ISBN4-12-203881-2 C1123 \1143(下巻)


・「金融政策の理論と実践(アラン・ブラインダー著、河野龍太郎、前田栄治訳、東洋経済新報社)」

元FRB副議長のブラインダーさんが96年に行ったロビンズ記念講演をまとめたもの(の訳本)です。そんなに量はないですが、金融政策に関する示唆に富むお話ですな。というかこの本は1999年12月30日初版なんで(書店に行ったら思いっきり初版本が置いてありました^^)大昔の本なので既にお読みの方も多いかと存じますが(大汗)。

各章の結びの部分を読むだけでも「うーん」と唸らされました。読んでいないお方は是非お勧め。何でこの本重版されてない(たまたま初版が在庫にあったのかもしれませんけど・・・・)んでしょうか??

ISBN4-492-65260-4 C3033 \1800




2005/06/08

お題「色々と小ネタがございますが」

小ネタと申しますか、相場が香ばしい状況になってきているので思うことはあっても考えが全然纏まらない訳でして・・・・・・

○岩田副総裁の「ゼロ金利の副作用論」(続き)

・・・ということだったのですが、昨日書いたことにあまり追加する必要はなさそうです。敢えて講演要旨引用すれば増量できますが、勝手に端折りますと、1.量的緩和政策の副作用といわれるものはゼロ金利の弊害と同じ、2.CPIがプラス転換に近づくにつれて次第に長めの金利が上昇していくでしょう、3.CPIがゼロ以上になった時にはコミットメントの「安定的にゼロを上回る」「デフレに再び戻らない」というのを数値化する必要があるでしょう。という感じですか。

今までの岩田副総裁の発言から類推すると、コミットメントの数値化ってのは「CPIゼロに糊代を」って話で時間軸の強化になりますので、2.のところが微妙にアレなお話ですが。


○西村審議委員のインタビュー

西村審議委員がブルームバーグニュースでインタビューを受けておりました。堂々15枚組みのインタビューですので一々ご紹介していると終わらないので6月7日12:30配信のニュース読んでね(はぁと)ってことですな。基本的には、1.当座預金残高目標について現時点では変えるべきではない、2.ただし、将来(じつはこの将来が曲者なのですが後述)も下げないかというとんなこたぁ無い、3.CPIの先行き見通し、景気見通しは結構強気。といった所です。


ところで、この「将来」に当座預金残高目標を下げることを否定しないって話の「将来」の定義。この人はもしかして日計りデイトレードでもやっているのでしょうかと突っ込みたくなるアレなコメントがございました。(ブルームバーグニュース6月7日12:30配信ニュースより)

『今の時点では当座預金残高目標を変える必要はないが、ずっと変えないということではまったくない、ということだけははっきりしておきたい。今は変える必要はないが、1週間か2週間すれば変わるかもしれない。経済や市場には魔物が住んでいるので、それが動いたら変らなければならない。』

・・・・・「1週間か2週間」ってそんなスパンで金融政策がコロコロ変るのかよ!と思わず激しい勢いで腰が砕けるあたくし。最近就任された審議委員は何と申しますか、たいへんにじゅうなんなはっそうをおもちのかたばかりでひじょうにすばらしいしきけんをおもちですなぁ(あぁ棒読み)と言った所ですか。とほほのほ。


で、まぁレトリックで言っているのか素で言っているのかは判りませんが(という時点でやはりこの「政策論」は怪しい限りなのですが)、西村審議委員はインタビューの中で今回の「なお書き修正」について「金融政策の方向性を変えているわけではまったくない」とコメントしておりまして、水野審議委員の「金融政策の正常化、金利の正常化に向けた一歩」という解釈と全然違っております。施策の解釈が既に同床異夢ってのは今の金融政策を象徴してますなぁって感じですわ、とほほ。

インタビュー全体を読みますと、上記の話にありますように、CPIのプラス転換に関して結構強気ですし、何せ「1週間か2週間すると変わる」お方ですので、どうも読んでいると当座預金残高目標引き下げに関しては柔軟なんでしょうなぁという印象です。



○まぁしかし何と申しますか当座預金残高目標

6日のドラめもんで「過去の当座預金残高目標引き上げの経緯とその時の言い訳」についてご紹介しましたが、当座預金残高目標を引き上げる時の理由も「とって付けた様な」ものでしたし、最後の上限35兆円への引き上げなんぞは「景気見通しは上方修正なのに目標引き上げ」という素晴らしい理由。

その間の当座預金残高目標引き上げに関しては岩田副総裁が以前講演で指摘していたように、事後的には「為替介入のファイナンス」になっていた訳ですが、そのあたりに関するレビューも無いままですと、どうも「無計画かつ根拠薄弱に当座預金を拡大しておいて、やり過ぎとなったら一転して弊害だの副作用だのと言い出し、今度は技術論とか言い出しながら当座預金の引き下げをする」の図にしか見えないですわな。そんな無計画っぷりでどうなんでしょうかねぇ。

#ま、そんな感じで理論的整合性もへったくれも無い動きなんで、真面目に突っ込みを入れるあたくしもだいぶ空しくなってきましたな。


○物価連動国債の入札がありましたが

昨日の物価連動国債入札。前場の業者間入札前取引では0.5%の出合いがありまして、最終は0.5%買い気配。入札の事前ヒアリングでは全然盛り上がらずに「まぁニーズねぇだろ」って話でしたが、入札の蓋を開けてみればあっと驚く0.58%。

結局終わってみれば既発債のお値段も新発債に鞘よせされてしまい、日本相互証券の引値ベースで既発債は軒並み95銭安だの1円安だのとなっておりました。まぁ元々引値がおかしかったのもありますが、物価連動国債を組み込んだ投信のファンドマネージャーの皆様ご愁傷様でございますと言ったところですかな。合掌。

この商品の商品性については財務省のWebにも載っているのですが、正直難しいっす。変動利付国債なのになぜか10年金利にフロートするからイールドカーブリスクとか諸々のリスクファクターがあるという不思議な15年変動利付国債もそうですけれども、何でこう商品の仕組がややこしいものを作るかねって思うわけで。シンプルイズザベストだと思うんですがね。

まぁこの商品に関してはあたくしも正直勉強途上なのでそのうち。



2005/06/07

お題「今日はあっさり目で」

水野審議委員の発言やら記者会見というのは就任当初からそうなんですが、やたらと量が多いので水野さんをネタにするとど〜も増量になってしまいますな。ということで本日は減量で。

○水野審議委員の小まとめ

記者会見で延々と量的緩和解除のスケジュールを語る部分も突っ込んでおくべきなのかもしれませんが、「まぁもうちょっとおちつけ」というコメントだけしておくと致しまして、昨日ドラめもんに何となくまとめを書いた後に読者様ともお話をして何となく氏の「そこはどうよ」ってところをまとめるとこんな感じかなぁ。

1.戦略性に乏しい「金融政策正常化」スケジュール

→水野審議委員は量的緩和の(ある程度を超えた)量の効果を思いっきり否定しております。で、「景気がリスクシナリオに沿った動きをした場合には量的緩和政策に代わる新たな政策枠組みが必要」というのはそれはそれで筋の通った話なのですが、その政策枠組みに関しては「念頭に無い」と(まぁそりゃ無い訳はないでしょうが)しております。

メインシナリオ通りに世の中行くとは限らない訳ですし、景気が悪化した場合の退路をわざわざ断ちながら「金融政策正常化」のスケジュール着手(水野さんに言わせれば「なお書き修正」が第一歩)をおっぱじめるというのは例えて言えば「米国との戦争には直接繋がらない」と言いながら南部仏印進駐をするようなもんではないかと存じますが。

2.金融政策決定会合を軽視してませんでしょうか

→昨日も申しあげたとおり。本来金融政策決定会合で提案すべき内容を外部講演やらインタビューなどで「個人的意見」と言いながら表明するのは如何なものでしょうかねぇ。まぁ先月の金融政策決定会合の議案がそのまんま日経新聞にスクープされる(って言うか事前リークしたんでしょ?)というのが日本銀行政策委員会クオリティだと言ってしまえばそれまでですが。

3.ゼロベースで見直すのも一つの考え方ですが・・・・

→過去の話は置いといて、ってことで金融政策を見直すというのはそりゃまぁ一つの考え方でしょうけれども、そもそも現在の金融政策の枠組みは通常の政策とは異なり、「将来にわたるコミットメント」を前提にしておりますので、「過去の話はともかく、現在あるべき政策を考える」というのは即ち現在の政策の否定になりますわな。

その辺を微妙に避けて「金融政策の正常化」という表現で話を美しく修飾してませんか?ってのがどうもねぇ。


ま、そんなところで水野さん話一旦終了。


○岩田副総裁の講演

5月28日ですから当預30兆円割れ確定前ですが、日本金融学界の2005年度春季大会における岩田副総裁講演要旨がアップされました。
http://www.boj.or.jp/press/05/ko0506b.htm

えー正直申しあげて基礎的知識の無いあたくしには誠に難しい部分が多々ございますので、まぁ誰か解説してくれないかなぁと期待しておりますが(お前が勉強しろと言われそうですな)、量的緩和政策の批判とその効果に関る話の部分が参考になりそうなので引用をば。

量的緩和政策への批判として4点挙げてまして、引用してると長くなるので筆者が勝手に端折りますと、1.ゼロ金利下では流動性の効果は小さくなり、流動性の罠に嵌れば効果はゼロ、2.当座預金と手形や短期国債などの短期債券の交換をするのは効果がない、3.量的緩和政策はデフレ脱却に十分な効果を持っていない、4.量的緩和政策は市場機能を麻痺させ、資産価格のバブルを促進するなどの副作用が大きい、となっています。まぁそんなところですな。

で、これに関する岩田副総裁の意見を引用します。

『拡張された岩田=浜田モデルの枠組みから、量的緩和政策に対する第一と第二の批判について以下のようなことが言えます。』


『まず、第一に、当座預金残高引き上げの有効性は、当座預金残高目標実現のために実施される短期、長期の市場オペレーションを通じた資金供給増加が金融市場や経済活動に与える効果の有効性の問題に帰着するということです。』

『第二に、この市場オペレーションを通じた資金供給増加の効果は、すべての金利がゼロではないという状態の下で、市場利子率(ここでは国債、貸出の利子率)に与える効果を通じて銀行の貸出行動に影響が及ぶことになります。』

『第一の批判が指摘するように、銀行部門の段階で銀行準備の利子弾力性が無限大になる「流動性の罠」に陥っている場合には、資金供給増加の効果はゼロになります。しかし、かりに短期の市場利子率がゼロに張り付いていたとしても、より長めの金利が正である限り、そしてその金利が資金需給に反応して変動し、銀行が望ましいとする超過準備が変化する限り、銀行部門の段階で「流動性の罠」にあるとの判断を下すことは適当ではないでしょう。』

『「流動性の罠」に陥っていない場合には、十分に大きな刺激効果があるかどうかその大きさを実証的に確かめる必要があるものの、貸出供給行動にプラスの効果が発生するはずです。さらに、市場利子率の変化を通じて国債市場における需給が変動するので非金融民間部門の資産選択行動にも影響が及ぶはずです。』

『第三に、企業が望ましいと考える債務を上回る超過債務の存在、または、企業部門が保有する担保価値の圧縮は、銀行貸出を減少させ、市場利子率を低下させる効果があります。(中略)量的緩和政策の実施にもかかわらず銀行貸出が減少を続けているのは、企業部門が超過債務を返済し続けているからです。』


この辺まではあたくしの脳みそで「ほうほうなるほど」と読めるのですが、実はこの先の「デフレ克服についての有効性」という話になりますとちと難しい話になります。

が、乏しいあたくしのみそで読んでおりますと、今までも岩田副総裁がお話していた「物価水準目標政策」と「マネーでファイナンスされた減税政策」のセットというお話になるのですが、この「マネーでファイナンスされた減税政策というのがあたくしの脳内では「それは財政マネタイゼーションになって、一度実行すると力関係から言って政府が日銀を打ち出の小槌にしませんか」という方向に懸念が拡大しちゃうんですが。

高橋財政それ自体は成功事例なんでしょうが、制度として国債の日銀引受を確立し、その後の軍事予算マネタイゼーションへの道が開いたという事は言えませんでしょうかねぇと思うあたくしとしては、マネーでファイナンスされた減税(政府紙幣の発行なんですかねぇ)というのにはどうも将来に問題を残すんじゃないかなぁという懸念が相変わらず抜けない訳ですな。

と、とりあえず書いておきますが、実の所このあたりの理論的背景に関して造詣がある訳ではないので、まぁ一般ピープルのたわごとだと流しつつ理屈をご教示賜れば誠に幸いでございます(と図々しいあたくし)。


・副作用に関しては・・・・・

第4の「副作用」の点に関しては「ゼロ金利の基本的な問題点」として話をしております。例によって時間と分量の関係上明日に回っちゃいますが(大汗)、この部分に関しては、何となく「副作用論」を声高に主張する人のペースに嵌っているような気がしないでもありませんな。このへんをネタにして「岩田副総裁も長めの短期金利の上昇に理解を示している」とか言い出す人が出てきそうな悪寒も致しますので念の為申し添えます。





2005/06/06

お題「水野審議委員講演をなおも読む」

○その前に債券相場

金曜の債券市場では5年より短いゾーンの債券はダメダメ状態で、先物から長期ゾーンに関してはやたらと堅調という展開。まぁ長めの短期金利を上昇させようって人がいるんだからイールドカーブが中短期金利の上昇幅>長期金利の上昇幅って形のフラットニングになるのは分かり易い結果ではありますが、それにしても長期債やら超長期債を買い上げ(金利低下)る勢いで相場が上昇するというのも中々恐れ入ったお話ですわな。ま、先日申しあげた某有力生保の偉い人発言に見られるように、皆様長期債買えてなかったんですかそうですかって所でしょう。

金曜も堂々の30兆円割れとなり、なし崩し的当座預金残高の減額という事で、事実先行によるなし崩し的解釈による政策の転換という、我が国の伝統芸能として古来親しまれている事象が発生しておる訳ですが、ようやっと債券市場はそれを解釈した(割には長期金利が低下すると言うのも?????ではあるのですが・・・・)ということにして置きましょう。よーわからんが。


○水野審議委員の講演と記者会見を読む

記者会見要旨が金曜の夕方過ぎにやっとこさアップされておりました。http://www.boj.or.jp/press/05/kk0506a.htm

講演と記者会見を読んでますと、水野審議委員の主張するところってのは「要するに過去の経緯はさておいて(というのがポイント)今必要な政策は何かと考えるとこのようになりますが何か?」って事のようでございます。道理で先週末に講演について論理的整合性はちゃんとなっているので憎たらしいなどと思った(というか書いたんですが)訳ですわな。

ま、それならそれもひとつの考え方でしょうが、それなら政策決定会合の場で、(水野さんの主張を敷衍すると)「ゼロ金利政策(多分時間軸付きになると思うのだが)への政策転換」の提案をしてからこの手の主張を外部に向かって行うべきであり、政策委員会の外でいきなり発言するのは、金融政策決定会合の形骸化になりゃしませんかねぇと思いますよ。

どうも記者会見とかまで読みますと、「景気が回復する」というメインシナリオに向かった時には「金融政策の正常化」が出来ますよってことらしいので、そういう意味では「まだ政策決定会合で提案すべき経済情勢ではないので提案しない」ということなのでしょうけれども、それなら尚更そのような発言を軽々にすべきではないでしょうと思うところでございます。

・水野審議委員トロイの木馬説

金曜にもご紹介した講演(http://www.boj.or.jp/press/05/ko0506a.htm)の一節を読むと、何気に日銀にとってはどうよって件もありますわな。

「4.金融政策の正常化(ノーマライゼーション)について」より

『個人的には、量的緩和継続のコミットメントによる長期金利安定の効果はあるものの、30〜35兆円程度という大量の当座預金残高目標を維持することから期待できる景気押し上げ効果はほとんどないと思っています。』

と、量的緩和政策の「量」の効果に関して否定的な主張をしていますが、こりゃまぁある意味諸刃の剣というか村正の妖刀と申しますか。。。。ってなもんで、その後には日本銀行身も凍るって話をしている訳です。

『景気がリスクシナリオに沿った展開をみせた場合、デフレ克服を目指すため量的緩和政策の枠組みに変わる新しい金融政策の枠組みを求める声が強まってくる可能性があると考えています。現時点で、量的緩和政策よりも景気刺激効果が大きい具体的な枠組みが念頭にあるわけではありませんが、景気回復が途切れた場合の金融政策運営面での対応についても考えておく必要があると思っています。』

そりゃまぁ当座預金残高目標を持ち上げても景気押し上げ効果が無くて、将来的に副作用が出るって言ってるんですから、別の枠組みが必要になるという訳ですわな。で、その枠組みって何でしょう??

ここで水野さんは「量的緩和政策よりも景気刺激効果が大きい具体的な枠組みが念頭にあるわけではありませんが」とその「枠組み」に関して話をしていないのですが、フツーに考えると国債引受あるいはそれに類するような財政マネタイゼーションとか、日銀特融乱発とか昔の震災手形類似行為のような結果的には無原則な通貨濫発となるような制御不能なインフレ政策の実行に追い込まれませんかねぇってことになるというのはあたくしの杞憂ですかそうですか。

でも、「量的緩和政策よりも景気刺激が大きい政策」って言われると、どうもそういう筋悪政策を連想しちゃうんですけどね。



かつて、「量的緩和政策の継続に批判的な水野氏の審議委員就任に財務省サイドが異を唱えなかったのは、水野氏をして日銀に『拙速な緩和解除』をさせ、失敗させることによって日銀を政府(というか財務省)の支配下に置く」という「財務省陰謀説」を日銀OBのどこぞのストラテジスト様が言ってまして、ドラめもんで「んなアフォな」と悪態をつきましたが、水野審議委員のこの「地雷付き量的緩和解除提唱」を見ておりますと、しょうもない「陰謀説」を信じたくなってきますな。

あ、勿論我が国の財務省が日銀の政策失敗を望むなんて事をする訳はないと確信しておりますので念の為(^^)。

問題は水野審議委員が確信犯でやっているのか、単に福井総裁を始めとする日銀の「量的緩和解除したい症候群」を慮って「人の切れ目が政策の切れ目」理論を引っ張り出してきたのかって所でしょうか。自ら「トロイの木馬」役を確信犯でおっぱじめているとすれば相当の狸ですな>水野さん



・「真の説明責任」を果たしてないのは誰でしょうかねぇ?

「5・真の説明責任」の件から。

『一部の市場参加者、メディア(勝手にコメント:もしかしてこれはあたくしと本石町日記さんでしょうかってのは自意識過剰ですかそうですか^^)は「真の説明責任」と「表面上の説明責任」を混同しているのではないでしょうか。私は、「真の説明責任」、「透明性の高い政策運営」とは、ある政策についてその目的を適切に説明できると同時に、その結果について責任を持てる政策運営である、と理解しています。』

そりゃそうですけど。。。。。。

『これを当座預金残高目標の引き下げ問題に絡めて言えば、「30〜35兆円程度という当座預金残高目標をあくまでも維持することが説明責任を果たしていることにはならない。物価と金融システムの安定、持続的な景気拡大、想定される副作用の最小化をできる限り全て満たすことができる適切な当座預金残高目標をボードメンバーが責任をもって決定する」ことであると思います。』

という御尤もな理屈なのですが、それでは、福井総裁就任後の日銀は何をやっていたんでしょうかと申しますと・・・・・

「イラク戦争を理由にして臨時政策委員会実施して補完貸付の強化(2003年3月25日→http://www.boj.or.jp/seisaku/03/pb/k030325.htm)」を実施。蛇足ですが、4月1日の日本郵政公社発足に伴い当座預金残高目標を純粋技術的に2兆円引き上げ(15−20兆円→17−22兆円)。

その後矢継ぎ早に当座預金残高目標の引き上げを行いましたが、その理由はと申しますと、「SARS騒動によるアジア経済の影響(2003年4月30日→http://www.boj.or.jp/seisaku/03/pb/k030430.htm)」そして「りそな銀行問題(2003年5月20日→http://www.boj.or.jp/seisaku/03/pb/k030520.htm)」。

で、これらの「懸念材料」(笑)が片付いたと思われる後でもそのまま放置して、量的緩和政策コミットメント3条件の明文化をする破目に陥った2003年10月10日には「金融調節の柔軟性を高め、流動性供給面から機動的に対応する余地を広げる観点(http://www.boj.or.jp/seisaku/03/pb/k031010.htm)」から27−30兆円の目標を27−32兆円に引き上げましたわな。

その後、金融経済月報で景気判断を上方修正しているのにも関らず当座預金残高目標を「デフレ克服に向けた日本銀行の政策スタンスを改めて明確に示し、今後の景気回復の動きをさらに確かなものとする趣旨(2004年1月20日→http://www.boj.or.jp/seisaku/04/pb/k040120.htm)」という理由を持ち出して引き上げておりましたな。

で、これら政策の説明も結果のレビューもございませんですなぁと存じますがどうでしょうか?


・金融政策の自由度を縛ったのは自業自得なんですが?

「6.金融政策の自由度がない状況は国益に反する」ってお題も中々凄いのですが、その前の「5.真の説明責任」って所から既に「金融政策はフォワードルッキングであるべき」という話をしております。現在の金融政策に関しては総裁を始めとしてほぼ全ての審議委員が今まで「量的緩和政策のコミットメントによるビハインド・ザ・カーブのリスクと、政策の効果を比較勘案してます」って発言を折に触れてしておりますので、その前提条件を根本から覆す話ではございますが、もともと「ゼロベースであるべき金融政策を語る」というのがこの講演の趣旨ですんではぁはぁそうですかって感じですわな。

「5.真の説明責任」より。

『量的緩和解除の3条件については、現時点で解除条件を見直すと、「市場との対話」で不都合が生じます。しかし、量的緩和解除の3条件は、様々な問題を内包していることも事実です。例えば、金融政策は本来、「フォワード・ルッキング」であるべきです。その観点からは、足許のインフレ率よりも、将来のインフレ率とも言える「インフレ期待」をにらみながら金融政策運営を行う方が良いと思っています。』

『金融政策の最終目標は、物価の安定・金融システム安定・持続的な景気拡大の実現です。量的緩和解除の3条件は強い「コミットメント」ですが、割り切った言い方をすれば、金融政策運営における中間目標という位置付けに過ぎません。持続的な景気回復が展望できる状況となった場合は3条件を柔軟に解釈しても日銀の信認は低下しないと思います。』

そりゃまぁ金融政策をゼロベースで見直しますよって話をするならそういう理屈も大有りでしょうけれども、これもまた歴史的経緯(というと大げさだが)を無視している訳ですな。あ、ゼロベースで見直すから良いのか(苦笑)。

そもそも量的緩和政策のコミットメント3条件を明文化したのは2003年の10月で(http://www.boj.or.jp/seisaku/03/pb/k031010b.htm)、コミットメント明文化をする破目に追い込まれた経緯はといえば・・・・・

りそな銀行絶賛税金投入の大救済スキーム発動による「銀行シバキアゲ政策の転換」によって株価が反転。おまけに株価反転に気を良くした日銀方面からの強気発言やら金融政策決定会合議事要旨から「量的緩和の早期解除があるのではないか??」という疑念が金融市場に流布された事と、それまでの長期金利の低下のし過ぎによる金融機関の債券投資の大拡大の反動。

これが相まって、「量的緩和解除織り込み相場」状態ともいえる5年国債1%超えだの2年国債0.25%超えだのという阿鼻叫喚相場が現出してしまったために「時間軸は揺るぎないもの(2003年9月3日の福井総裁発言)」とわざわざ言わざるを得なくなったわけでして、その一環として「量的緩和コミットメント3条件の明確化」をする事になったわけですわな。


ということで、そもそも量的緩和政策の3条件というものを設定したのは、「日本銀行が政策の自由度を持っていると見做されると問題がある」(これもまた情けない話ではあるが)というのが根底にある訳でして、それを捕まえて「金融政策の自由度がない状況は国益に反する」って言われましても、あたくしのように金融政策を粘着して見ている人間に取っては「ハァ??」ってなですわな。

まぁ金融市場参加者が皆粘着しているかって申しますと、そりゃま粘着していない人の方が多いのではないかと存じます(苦笑)し、「過去に必要以上に拘る事はない」というお方もまたあまたおいでのようですので、あたくしからみればこんな暴論はねぇと思いますが、まぁどうなんでしょうね。


・当座預金残高目標の引き下げに関する説明が微妙に変化するのはどうかと思うぞ

いやまぁ一々引用しているとやたら長くなりそうなのですが、とにかく今回の措置やら将来の当座預金残高目標の引き下げに関して、「金融政策の正常化」という言い方を振り回しながら、金利を上げたいような言い方をしてみたり、量的緩和政策の枠組みは不変だという言い方をしてみたりという感じで、都合よくコロコロと言ってる事が変化しているというのが非常に気に食わない所です。だいたいからして、長めの短期金利の引き上げを狙いながら時間軸効果は不変というのは矛盾というか詭弁の世界ではないかと思うのですが。「4.金融政策の正常化」から。

『短期金融市場を正常化させるためには、当座預金残高目標を段階的に引き下げて、無担保コール翌日物金利はゼロ近辺で安定させる一方、短期のイールカーブは将来の金融引き締めを多少意識して緩やかにスティープ化している状況が望ましいと思います。』

で、この後にはこういってます。

『当座預金残高目標を引き下げることは、「量」の効果の部分について調整を加える措置であって、時間軸に影響を与えることを狙った措置ではありません。』

その直後には・・・・

『また、当座預金残高目標の引き下げ、あるいは、一時的な目標割れ容認のどちらについても、「技術的な対応」と言うよりも、「金利の正常化」、あるいは、「金融政策のノーマライゼーション」に向けた一歩という意識で政策対応をすべきであると考えています。』

一体全体どっちなんでしょうという感じです。良く判らんというか小一時間問い詰めたいです。


・まとめにならないけど(というか記者会見まで逝かなかった)一応まとめ

今の所あたくしが思うところの小まとめ。

1.金融政策見直すなら政策決定会合で提案するのが先で、「個人的見解」という形で外部発表するのを先行させるのは金融政策決定会合の軽視じゃないでしょうか?

2.ゼロベースで過去の金融政策見直すというのはひとつの見解かも知れんが、やはりそれは政策決定会合(以下同文)。

3.ところで見直すなら過去の清算もちゃんとしてね。量的緩和政策の枠組みとして今まで積み上げてきたものの相当部分を否定しているんですからね。

まぁ何ですな、そんなに慌てずにCPIがゼロになるまで何故待てぬと言った所でしょうか。

それに債券市場が今高値圏で堅調だから当預目標即座に下げてもオッケーみたいな話を記者会見でしてるんですが、あたくしが本年1月31日にご紹介したブルームバーグニュースとのインタビューでの当座預金残高目標引き下げ否定論と全然話が違うというのも困ったものです。無原則もいいとこ。ストラテジスト気分が抜けてないんじゃないの???






2005/06/03

お題「あっさり30兆円割れ/水野審議委員・・・・・(-_-メ)」

燃料投下し過ぎです。何と申しますか言いたいことが山のようにあってこっちも整理しきれないというのが正直な所です。さてどこから書きましょうか・・・・・

○アリバイオペは実施せず

昨日の即日オペ時間ですが、オペ実施せずとアリバイオペ(一番有力な線は15日の年金定時払いの資金余剰にエンドを合わせた2週間の即日オペ1兆円。以前のように即日オペで300日以上の期間のものが実施されるとはさすがに誰も予想してませんでした)実施の意見がありました。ど〜せならアリバイオペを実施した所に神ディーラーが降臨してオペ札割れせずに30兆円維持って図が一番笑えたのですが。どうもその雰囲気を察知したのか(爆笑)、オペ実施せずで堂々の30兆円割れを達成しました。

で、まぁつい2週間前に記者会見で総裁の言った「オペはとことんやる」というのは一体全体何の発言だったのかという話になる訳ですが、もともとこのお方のご発言はその場の勢いで調子の良い事を言うという極めて悪質な問題点(恐らく悪意で言ってるのではなくて、勢いで言ってるんだと信じたいですが)がございまして、この人の発言を公式資料や報道から就任以来チェックしているあたくしとしては、「またいつもの食言か」って所ですわな。

当座預金残高目標を引き下げたいというのであれば、今までの政策を政策委員会としてきっちりレビュー(効果が分からないという部分があっても然るべきですわな)して、今後はどういう政策の枠組みで当座預金残高目標というものを捉えていくのかというような話を政策委員会として機関決定すべきものでしょう。それを行わないで、「政策の枠組みは変っていない」「技術的対応」と説明し、その上「オペはとことん実施する」と言いながら全然とことん実施しないで、「当座預金残高は市場が決めること(昨日ご紹介した総裁発言)」などという発言までしちゃうという「政策の欺瞞性」に対して物凄い勢いで血圧が上昇しております。


○水野審議委員講演と記者会見(記者会見まで手が回らず!)

昨日福島県金融経済懇談会で水野審議委員が講演を行いまして、この内容がかなりやんちゃな内容。10年国債入札実施日にこの講演はどうよって思ってたのですが、その後に行われた記者会見の内容が報道されると債券市場は急速に値を崩す展開。講演の内容もやんちゃなものでして、もうちょっと債券市場でもちゃんと読めよって気はしましたが、その後の記者会見が益々過激な内容だったのは呆れました。

10年国債入札日の午後2時過ぎといえば沢山落札した大手業者の方はまだヘッジを全部している訳じゃねぇと思うのですが、そのタイミングで債券相場が相当嫌気するような発言をするというのは一体全体どういう神経をしているのか。とても「債券市場関係者」だったお方とは思えない見事な「相場とのゲーム(後述しますつもりが時間切れ。記者会見でのご発言です)」ですなぁとその見識に関して激しく疑問をぶつけたくなります。っていうか、ちょっと青臭い言い方すれば「相場を泥靴で踏みにじった」って思うんだけどね。

大体この講演内容が6月2日という当座預金目標下限割れの日に予定されていたという時点で「おまえら端から30兆円維持する気なかっただろう」と言いたくなる訳でして、何と申しますかもうこの素晴らしい予定調和茶番劇に対しては呆れてものも言えないといいながら文句を垂れるあたくしでございました。

で、まぁその講演というか挨拶要旨はこちらです。
http://www.boj.or.jp/press/05/ko0506a.htm

もう突っ込みというか文句言いたくなる所満載なのですが、突っ込みだすとこっちの方が論点が拡散しちゃうという素晴らしい代物ですので、まぁ本日は軽めに反駁してみます。続きは週明けにでも(^^)。


・目次を見た瞬間にのけぞりましたが(--)

目次の後半部分に呆然。曰く、
『4.金融政策の「正常化(ノーマライゼーション)」』
『5.「真の説明責任」』
『6.金融政策の自由度がない状況は国益に反する』。

いやまぁ凄い題名で、まぁこの内容をもうちょっと熟読する暇が債券市場関係者にあれば昨日の入札実はもっとボロボロになったのかもしれませんが、当然熟読する間もなく入札締め切り時刻と相成る訳でして(--)、記者会見でよりこの講演より過激な内容が報道されて中期債中心にボロボロ相場になるのでありました。


・ストラテジスト気分が抜けて無いですなぁ

「1.はじめに」ってところで水野審議委員はこう言いました。

『今年の金融市場をみると、事前の市場のコンセンサスが外れることが多いように思います。』

えーっと、それはメディアのインタビューにしゃしゃり出てきて「世界的に金利が特に超長期ゾーンでフラットニングする」とか発言すると日本の債券市場で超長期ゾーンを中心にしたスティープニングが起こる事を指して仰せなのでしょうか(笑)????まぁそれはともかく。

『金融市場のボラティリティーは低い状況にありますが、ヘッジファンドに巨額な資金が流入していることもあって、なぜか居心地の悪さを感じます。日本銀行は金融市場の動向を常にウォッチしていますが、今年は株価・長期金利が実体経済を正確に反映していないような気がします。』

この部分が記者会見では「長期金利の低下が実態経済と違う踏み上げ相場になっている」などと益々具体的な言い方になるのですが、別にマーケットストラテジストのごたくなんぞ聞きたかぁございませんが。

と軽く突っ込みまして肝心の金融政策運営に関る部分。


・言ってる事があちこちで自己矛盾してるようにしか読めないのですが

このセンセイの挨拶要旨なんですが、一つ一つの内容は「左様でございますか」となるのですが、全体を通して読んでみるとそれこそ物凄い「居心地の悪さを感じます」って所です(笑)。よってちゃんと突っ込もうとすると結構下準備が必要なのですが、下準備不足なので(スイマセン)、ほんのさわりだけ。

例えば、「4.金融政策の正常化」って所で(A4の紙に打ち出すと6ページ目のあたり)水野さんはこう言ってます。

『当座預金残高目標の引き下げは、結果的に、量的緩和政策の方向転換の第一歩と解釈される可能性があるため、慎重な議論が必要であることは理解しています。ただ、当座預金残高目標を数兆円程度引き下げても引き続き潤沢な流動性を供給していることに変わりはありません。個人的には、金融市場に悪影響を及ぼさない幅で、当座預金残高目標を引き下げに踏み切っても良いと考えています。』

で、このちょっと後ではこう言っている訳ですが・・・・

『当座預金残高目標の引き下げ、あるいは、一時的な目標割れ容認のどちらについても、「技術的な対応」と言うよりも、「金利の正常化」、あるいは、「金融政策のノーマライゼーション」に向けた一歩という意識で政策対応をすべきであると考えています。』

その後では今回のなお書き対応についてこう発言。

『総裁をはじめボードメンバーがこれまで対外説明に時間をかけてきたので、「当座預金残高目標は資金需要の減退に対応した受身的な対応であって、金融引き締めではない。」という我々の考え方は、金融市場では相当程度受け入れられていると理解しています。』

一応この間の文を一生懸命に読むと、かなり強引な理屈の展開にしか思えませんが、さすがに頭のよろしい方が講演しているだけに、論理的に明白な破綻は無いところがまた憎たらしいのですが(^^)、こう並べると(゜д゜)ハァ??って感じになりませんか??

それに政策決定会合後の総裁記者会見では「なお書き対応は技術的対応」となっておりましたて、それが政策委員会の公式見解であると理解しておりますが、それを技術的対応じゃないというのであれば、水野さんは政策決定の場でちゃんと議論を行い、「技術的対応という位置づけならば反対」とするのが審議委員としての筋というものでは無いでしょうか????


こんな所でも自己矛盾。さっきの「当預残目標引き下げオッケー」の続きにこんなことを仰せでございます。

『短期金融市場を正常化させるためには、当座預金残高目標を段階的に引き下げて、無担保コール翌日物金利はゼロ近辺で安定させる一方、短期のイールカーブは将来の金融引き締めを多少意識して緩やかにスティープ化している状況が望ましいと思います。』

ところが、この後に「量的緩和政策はゼロ金利+時間軸」って話をしておりまして・・・・

『長期金利の低位安定は、量的緩和政策の効果というよりも、ゼロ金利政策の効果であると判断しています。(中略)仮に私が「現在のわが国の経済金融情勢に最も適当と思われる金融政策の枠組みは何か?」と聞かれたならば、ゼロ金利政策であると答えると思います。』

・・・・・・・・・(-_-メ)




・日銀批判に答えておりますが・・・・

あたくしの悪態が聞こえているのであれば誠に光栄でございます(^^)。

「4.(以下面倒なので目次は数字だけ)」の前半部分。

『一部に、人が変わると金融政策が変わることは危険であるという考え方もあるようですが、任期5年の政策委員会のメンバーが複数入れ替わる頃には、経済・金融システムなど金融政策を取り巻く環境は変化していると考えるのが自然です。また、政策委員会のメンバーは、金融政策運営についての考え方、哲学が異なります。』

じゃあ政策運営が「前後不接連」でも宜しいと仰るわけですかそうですか。そうであれば、今後は量的緩和政策に関して「期待に働きかける」だの「時間軸効果」だのということは有りえませんな。何せ人が変ると金融政策が変るんですから、あっはっは。

『金融市場では、どのメンバーはインフレ・タカ派、あるいは、インフレ・ハト派であると言った議論をしますが、その背景には金融政策に関する政策委員会のメンバーの考え方が異なるとの判断があるはずです。米国では、FRBの理事の任期が終了すると、新政権の考え方に近いメンバーがFRBの理事に任命されます。ですから、まさに「人が変われば、金融政策が変わる」と言えるかもしれません。』

と、こういうときにさっくり米国様の事例を持ち出しますが、そもそも日本の行政機構は「ビューローは変らず」となっているので、都合のいいところだけ引っ張ってきて比較するというのは科学的態度とは申せませんなぁ。

しかし本石町日記の中の人を意識したかと思われるこの件はシビレました。



「5.」の最後の方。

『一部の市場参加者から、量的緩和解除の3条件が満たさないうちに当座預金残高目標を引き下げることは約束違反である、と批判を受けることがあります。個人的には、この見解は金融のプロらしからぬ見解だと思います。』

もしかしてこれはあたくし向けですか(なんて訳はございませんですね^^)??

えーっとですな。約束違反などとは申しあげてませんが、んなこと言う方もいるのでしょうか?約束違反なんじゃなくて、当座預金目標を引き下げるなら引き下げるでちゃんとした政策ロジックを組んでいただいかないと、その政策の妥当性に関して論議も出来ないと思うのですが。

『ここでは、2つのことを指摘したいと思います。第一に、日本銀行は、量的緩和解除の3条件が満たされるまで、量的緩和政策の「枠組み」を変更しないとコミットしているのであって、当座預金残高目標を30〜35兆円程度に維持することをコミットしているわけではありません。』

素晴らしい屁理屈。ではこちらからも。誘導目標を幾らにするというのを「金融政策」として決定しておりますが何か?誘導目標を引き上げる時に「量的緩和政策の強化」と言ってますが何か??

『第二に、仮に日本銀行が量的緩和政策の枠組みの「量」の部分について当初期待していたほど効果がないと判断したならば、30〜35兆円程度という巨額な当座預金残高目標を維持することは、「真の説明責任」を果たしているとは言えないと思います。むしろ、量的緩和政策の副作用を少しでも和らげることが国益に合致していると思います。』

それは機関決定されてますでしょうか?先日の展望レポートでは副作用の話はありましたが、効果と副作用を比較論じて副作用の方が大きいというような話ってありましたっけ??その説明抜きで「金融政策の正常化」とやらに手をつける欺瞞性に関して悪態ついてるんですが。


○えーっと時間もなくなりましたので・・・・・

やっぱり時間切れになってしまったので、記者会見に関して書けませんでした。ブルームバーグニュースの昨日17時5分付のニュースに詳しく(また日高さん福島にご出張ですな^^)ございますので読んでいただければ(つーか多分今日の夕方になると日銀Webにアップされるでしょう)血圧が上昇することうけあいです(-_-メ)。

当座預金残高引き下げのスケジュールを延々と話したり、「不謹慎な言い方だが」と断りは入れながらも「日銀がゲームに勝つためには、債券市場を崩さなければ結果責任を果たせるのではないか」と話をしたりもう言いたい放題で誠に香ばしい。

でも、あんたの発言が報道されてから中期債中心に相場は下落しましたから〜残念!って感じですわな。まぁたかだか30銭程度の下げでは下げとは言わんけど、入札日の後場という業者がロングになっている所でそれを言うなって感じですなぁ。

それから「わたし自身は5月の債券相場は絶対に堅調だと思っていた」などとも会見で話していたようですが、あんたはストラテジストじゃないですから〜残念!イールドカーブスティープニング斬り〜!って感じですな。正直、この人が債券市場代表者として扱われるのは物凄く頭が痛い。

詳しくは週明けにでも。







2005/06/02

お題「結局30兆円割れですな」

○昨日の金融調節と債券市場

昨日もしかしたら翌日スタートの資金供給があるかもしれないという期待がかすかにあったのですが、まぁ案の定昨日のオペもは6月3日スタートでおまけにエンドが10月4日で本店オペとまぁ相変わらずの自然体オペレーション。結局本日の当座預金残高見通しは1日残高速報31.36兆円から現時点では2.21兆円マイナスで29.15兆円となる見込み。本日即日供給オペが実施されないとそのまま無事に(?)30兆円割れがスルーとなる見込みでございます。詳しくはこの辺をご覧下さい。

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/jp050602.htm
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/jx050601.htm


ところで、債券市場は相変わらずの状況で、火曜日に米国10年もの国債が4%割れ(今朝はもう一発金利低下してますが)となり、こっちの10年国債入札が翌日に控えているのにまぁ見事な上昇と相成りました。昨日は一応押し戻しましたけど、まぁこの買い方は久々に見る「踏み上げ相場」の様相でしたわな。

どうもここ2年ほど6月になると株高債券安ってのが記憶にあったこともあって「6月暴落説」ってのが結構信じられていたようですが、この手の話は皆が信じると逆に行くというお約束通りにまず最初にショートの踏み上げをやる破目になったようですな。ナムナム。

本日は10年国債入札なのですが、余計な事に米国債が大幅続伸しておりますので、1.2%クーポンでも無問題くらいの勢いになってしまいましたわな。昨日の高値近辺では戻り売り(カバードコールも含め)がそこそこ出たようですが、昨日の高値をあっさり抜いちゃうと益々踏み上げという実に涙無しでは見られない展開の悪寒も。

いやはや驚きましたが、31日のドラめもんで生保決算での偉い人コメントを捕まえて「結局買えてないんでしょうなぁ」などとやや本人半分軽めのタッチで書いた通りの動きですか。もっと前に日経公社債情報での大手銀行運用計画アンケート結果が揃いも揃って本年度10年金利下限1.3%になっていて、その記事が出た時に既に1.3%割れていてその後も全然金利上らないという香ばしい現象の再来となってしまいましたな。

まぁどうでもいい話かも知れませんが、金融機関のメガ化によって大手運用機関の一挙手一投足がそのまま相場のファンダメンタルズを形成しちゃうようになっている昨今ですし、一々この手の運用計画に関して具体的な金利水準とか投資予定額とかを開示する必要があるのか、質問されたからといってホイホイ答える必要があるのかという点については考え直した方が良いのではないかと思いますがね。そりゃまぁ開示してくれた方が局外者にとってはウッシッシではありますが(^^)。


○総裁、その発言はどうかと思うぞ

時事通信の報じる所によりますと、福井総裁は経済財政諮問会議終了後に当座預金残高の目標下限割れが起きるとの見方について、「あすになってみないと分からない。市場の中で自ずと決まる」と答えたそうです(ソースは1日19時11分配信の時事メイン)。

まぁお馴染みのその場での当意即妙なるご発言だと存じますが、今現在まさしく当座預金残高の誘導を政策として行っている筈なのですが、「市場の中で自ずと決まる」ってそりゃ何よという感じでございますな(-_-メ)。まぁ要するにその辺が福井総裁の本音ってことで今まで良くもまぁ猫をかぶり続けたとそっちのほうに感心するやら呆れるやらと言ったところです。

ちなみに、そのニュースでは調節方針について「(現場に指示は)しない。現場の責任でやらなければうまくいかない」とも仰せでして、「市場機能を封殺しないでとことん供給」という訳の判らん方針にのっとってオペレーションをしなければいけない現場の中の人に対しては激しくご同情申しあげたいところです。

昔々あたくしがとあるところ(今いる所ではないので念の為^^)でディーラーをやっていた時に、一日終わってから日中のチャートを見ながら「ここで売ってからこのあたりで買い戻しをしていくんだ」と得々と解説したり、「良い所で買っとけ」などという発言をする素晴らしい上役がいましたなあそういえばあのひと元気でやってるかなあなどと懐かしく思い出してしまうような福井総裁様の「現場の責任」発言でありました。あっはっは。



○で、本日の予想

資金供給オペレーションに関しては、一応30兆円維持の茶番もとい努力の姿勢はお見せしないとアレでしょうから、本日は9時20分に即日供給オペ8000億円とか1兆円とかやってくるのかと思います。即日オペの場合は事務作業の都合上だと思うのですが、基本的に本店オペ形式で実施する筈ですんで、そもそも札が集まりにくいのですが、念には念を入れて(笑)期間2週間とかで益々札の集まりにくいオペレーションを実施するものと勝手に大予想。

これでノーオペだったらもうやる気無し無しもいいところなんで、中々根性の入った姿勢だという感じですが、はてどうなるんでしょう。結構楽しみではございます。


○債券市場は当預目標下げを織り込みに逝ってるの鴨・・

まぁ与太話ですが・・・・

ここもとの債券市場上昇。需給関係とか米国の長期金利低下に引っ張られているとか色々要因はあるのですが、以前ちょっとギャグで申しあげたように「景気先行き不透明な中での日銀逆噴射の悪寒」というのがメインシナリオだという事になりますと、米国債券市場でまさに起きている長期金利低下&短期金利はあんまり下がらない、(つーか米国だと政策金利は上るので上る)というセットが発生しても何らおかしくはないとなりますか。日本の場合は日銀逆噴射でオーバーキル懸念ってことになるかと思いますが。おーおそろし。

まぁ短期金融市場と債券市場だけ見てる分には、明日いきなり当座預金残高目標を引き下げても何ら問題ないって相場の様相でございますんで、中央銀行の皆様に置かれましてはウハウハなのかも知れませんが、ちょっと落ち着いて欲しいなぁとあたしゃー思うのでありました。いちトレーダーとしては相場が暴れた方が楽しいというのはありますけどねぇ。。。。。

という訳で10年入札に関してコメントする気力が起きませんでしたが、どうせ踏み上げ入札になるんでしょとしか言いようがありませんな、とほほ。



2005/06/01

お題「当預残目標下げたいのでしょうか???」

日銀方面から連日大量のネタが投下されておりまして、フォローが全然追いつきません(涙)。

○昨日の資金供給オペも自然体?

昨日の資金供給オペは通常6月2日スタートになりますので、最も注目を集める所なのですが、実施されたオペレーションは手形オペ1兆円。このオペ実施まで織り込んで6月2日の当座預金残高を推測すると28.5兆円〜29.5兆円程度と想定される(予想する人によって少々違うが大体29兆円くらい)ようで、いよいよ30兆円割れが眼前に迫って参りました。

しかも今回はどう見ても総裁の言う「とことん」でも何でもないオペレーションでして、当座預金残高目標の30兆円を何としてでも維持しようという姿勢に著しく欠けるオペレーションですわな。

その割には某経済新聞あたりからはあまり「30兆円割れを意識的にやってるだろうゴルァ!」という声が聞こえないのは、日銀の宣伝が効いているのか、それとも目先の損得勘定が得意な金融市場と致しましては金利が上昇してくれた方が利益に繋がるので敢えて余計な事を騒ぎ立てないうわなにをするkmjhgぃjr。


・・・・以前もちょいと書きましたが、これは金融市場が誤解されている面なのですが、債券市場って確かに暴落されると困る人は多いのですが、少々の下げあるいはペースのちんたらとした下げであれば「運用環境の改善(債券は持ってるポートフォリオが時間の経過と共に利払いあんど償還されていくので再投資リスクというものがある)」と歓迎される傾向にございます。

ということで、今のところ債券市場は当預30兆円割れとその先にあるものに関して織り込んでいるのか織り込んでいないのかよく判らんといったところでしょうか。まぁ昨日ご紹介した生保決算での生保の偉い人コメントなんか見てると運用圧力は相変わらずですんで、下がっても限定的でしょっていう目先の需給問題が大きいのだとは思いますが。


○2004年度の金融調節

26日に「2004年度の金融調節」というお題で本文20ページに図表つきまくりで40枚分くらいの大作が日本銀行金融市場局のお名前で出ておりました。40枚あるので読むの後回しにしていたら早速各所でネタになっておりまして、某マーケットエコノミスト様におかれましては「日銀が行っている資金供給オペが、短期金融市場の機能を破壊していることに明確に言及している」「金融市場局は常日頃、市場と直接対話しているだけに、量的緩和策が市場機能にダメージを与えていることに対する問題意識は強い」などとわが意を得たりと意気軒昂の図と言ったところですな。

で、まぁ量が多いのでとりあえず話題になっている「金融調節に関する留意点」ってところを読むと、確かに「???」な記述が。

http://www.boj.or.jp/ronbun/05/data/ron0505b.pdf
の18ページから始まる部分です。

『一方で、これまで上述のような金融調節を行なってきた結果として、次のような現象が生じている点にも留意が必要である。』

『第一は、短期金融市場の機能についてである。高水準の当座預金目標を達成するために、資金供給期間の長期化や需要が見込めるオペ手段の機動的な実施が必要となり、結果として、関連する市場のリスク・プレミアムを、需給を通じて直接的に縮小させる面があった。』

いやあのそれは量的緩和政策の企図した所の筈なんですが。

『こうしたプレミアムは、民間経済主体の将来に対する予測に基づいて変動するものである。日本銀行がオペを積極的に活用することは、自らこのような市場機能を代替することとなるため、市場取引を減少させる面がある。』

総裁様は就任記者会見(http://www.boj.or.jp/press/03/kk0303c.htm)でこんなことを仰せでしたが、そのご発言の目的が達成されているのであれば、例えば資産担保証券の買入は廃止するとかアクションは無いのでしょうか。どうもこう整合性の取れないというか広げてる大風呂敷の右と左でやってる事が違いませんかねぇと思います。

『従って、デリバリー・チャネルというか、お金を末端にきちんと届けるという「出前持ち」のような仕事は、大変地味に見えるが、そこを愚直にやっていきたい。そのためには、銀行貸出のルート、あるいは銀行貸出のルートを通じない場合には、債券市場その他のマーケットの機能の活用を通じて、お金が広く伝播することを考えていかなければならない。』(2003年3月20日の就任記者会見)

つーかそれ以前の問題として、銀行貸出って伸びてるんですか?不動産向けは絶賛大拡大でしょうけど。

『例えば、コール市場取引をみると、金融機関の信用力の改善に伴ってある程度回復しているが、(以下馬鹿馬鹿しいので引用略)』

で、また金融機関の信用力の改善によってコール取引が活発化(この時点で変だが)する時に資金供給をしまくるのはけしからんという無茶苦茶な理屈が爆裂しております。そんなに短資会(自主規制)。次に参ります。


『第二は、日本銀行の資産の流動性についてである。』

ってな事でオペ期間が長い事と保有国債が多いことを問題視しているという誠に意味の判らん話が延々と書いてあるのですが、そもそも短期市場金利がゼロになっておらず、金利操作をやっている国の金融調節とわが国の金融調節を比較して論じる時点で訳判らんのですが、これはいわゆるひとつの我田引水ってやつですかそうですか。

『また、短期資金供給オペについては、2000 年度末時点のオペ残高は、3 か月以内に満期を迎えるものが全てであったのに対し、2004 年度末時点でのオペ残高の残存期間をみると、半分近くが3 か月以上となり、2 割程度が半年以上となるなど、かなり長期化している。』

2000年度末は量的緩和政策導入直後で当座預金残高目標は5兆円でしたが、その時点と今を比較してオペの期間が長くなったって当たり前のような気がしますが、どこがどう問題と仰せで??

『主要国中央銀行は、オペの期間を短期に設定するなど、資産の流動性確保に努めているが、日本銀行にとっても、金融政策の遂行能力に対する信認を確保するために資産の流動性を維持することは重要な課題のひとつである。』

あまりそういう意味での流動性は意味あるのかねって思う(以前申しあげた理由ですな)のですが、百歩譲って流動性を維持するのが重要な課題だというのであれば、流動性を維持することによって量的緩和の量を削減する場合のデメリット(デメリットは無いと言うのであれば、今までの金融政策は全部茶番だったと言う事になりますが・・・・)と比較論評して然るべきではないでしょうかと思うのですが、当座預金残高目標の維持に問題ありありという論理展開は中々豪快で頭の下がる思いであります。


○備忘録:福井総裁のソウルでの発言

ブルームバーグニュースに発言内容が載ってましたな。5月27日13時55分配信のニュースでした。しかし日高記者@ブルームバーグってソウルにもお出かけだったんですね。まさに東奔西走(^^)。

「市場のなかで、従来の(景気が)悪いとき、日銀という一種の散水車が水を撒いても何も芽が生えてこなかったのと比べると、今は、散水車が同じように水を撒き続けているわけだが、地面は水浸しになっている。しかし、その中から『取引は自分たちでできる、少しは金利機能を生かしながらできる』という新芽が出てきている」

「そんなに新芽が一夜空け(原文ママ)たら出揃うわけではないにしても、ポツポツと新芽が出てきたとき、散水車がそれを全部踏みにじったり、それで根腐れを起こしても平気だ、というのは、やはり将来のことまで考えて良い結果を出そうとする金融政策の姿勢からすれば、無責任になる。引き続き、散水車は水を撒き散らして走るが、新芽には注意深くいかなければならないのではないか」

以上自分の備忘録のために引用しておきました。まぁこれら状況証拠を並べると当座預金残高目標引き下げはもう目前ですな。なんちゅうか人から聞いたゼロ金利解除前の日銀驀進モードに似ている気が・・・・(-_-メ)。