朝のドラめもん

2025/12/26

お題「金融政策運営の話が過去比エライ勢いで削減された理由が謎な植田総裁経団連年末講演でした」

ほうほうほう
https://www.47news.jp/13647874.html
【速報】内閣府が科学的裏付けのない動画公開、削除
2025年12月25日 21時31分(コピーライト)共同通信

『内閣府が、今月の障害者週間に合わせて、手話が脳の活性化や記憶力向上につながるとの科学的裏付けのない動画を公開し、批判を受けて削除していたことが分かった。関係者が25日明らかにした。』(上記URL先より)

「財政拡大をすると円高になるので問題ない」という科学的裏付け(強すぎる前提条件がないと成立しない「理論」の裏付けはあるwww)という妄言を公開している何とか委員も政府方面から削除して頂けませんですかねえ。

ちなみに(しつこく繰り返しますが)マンデルフレミング云々はかつてリフレ派の皆さんによる「デフレ脱却に財政拡張を行っても円高になって財政効果が打ち消されてしまうが、金融緩和ではそうはならないので金融政策で対応するのが有効」という金融緩和万能論(と財政はデフレ対策に効かん論)の根拠になっていたものなので、マンデルフレミングを持ち出して財政出しても大丈夫論を同じリフレ派が唱えるのは相当にドイヒーな話なのはしつこく指摘しておきましょうw


〇年末恒例の経団連での総裁講演ですが過去イチに金融政策運営の話をしないとは如何なることぞ

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/data/ko251225a1.pdf
賃金上昇を伴った「物価安定の目標」の達成に向けて
── 日本経済団体連合会審議員会における講演 ──
日本銀行総裁 植田 和男


・分量の少なさが際立つ講演なんですよね〜

この講演、まあテキスト出ましたとなったのでせっせと読んでいたのですが、なんかあっという間に終ってしまってナンジャコリャと思って分量を確認したらナンジャコリャだったわけです。

年末の経団連講演って基本的に(平日ならば)クリスマスの日に打ち込んで来るのが恒例行事になっておられるので、

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_speaker/index.htm
講演・挨拶等(講演者別の一覧)

こんなあたりで植田さんとか黒田さんで見ると一番早いと思うのですが・・・・・・・

今回2025の講演テキスト:7ページ半(PDFベース、以下同様)
前回2024の講演テキスト:ほぼ10ページ
2023年の講演テキスト:10ページ半

となっていまして、じゃあその前の黒ちゃんどうでしたっけという感じですが、

2022年の講演テキスト:12ページと3分の1
(奇しくもこの時のお題が「賃金上昇を伴う形での「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現に向けて」2021年の講演テキスト:ほぼ12ページ

ってな感じで、年末の経団連講演って基本的にその年の集大成みたいな講演だし翌年に向けてのパースペクティブを騙るじゃなかった語る講演だったりしているのですが、今回エライ勢いで分量が減っておりますわな。

モチのロンですが分量だけが問題ではないというのはありますが、内容自体も金融政策運営に関してがエライ勢いでスッカスカでして、なにせこの1年は0.25%だった政策金利が年始に0.50%になり年末に0.75%になった訳ですし、物価安定目標の達成だってかなり見えてきた(個人的にはとっくの昔に達成していてオーバーシュートを気にしないといけない時期になってませんかねえとは思うけど)というかなり大きな変化のあった年なんですから、それ相応の内容があって然るべき、あるいは大勝利宣言でも良いけどと思ったのですが、どうしちゃったんすかこれはというのが初手の印象。

まあさすがにそういう訳でも無いとは思うのですが、これ先般の利上げの際の総裁記者会見がどこからどう見ても「これまでの説明との整合性をつつかれまくった」という会見(なのでつまらない会見だったと言うのが一般的な感想だと思いますが変態のワシにとっては垂涎ものの面白会見でした)が発生したので、今回の年末講演で政策運営ロジックに関する説明をおっぱじめると説明がグダグダになり兼ねないので逃げやがったのかなと邪推までしたくなりました。

ああそれからもう一つ邪推するとしますと、片山財務大臣を始めとする政府方面の渾身の「断固たる」口先介入によって決定会合以降の円安が一旦押し戻されたので安心して円安火消しを止めた、ということでテキストが少なくなったのかとも思いました(かなりの邪推ですので念のため申し添えます^^)。すなわち、円安の火消しをしようとすると利上げに関して威勢の良い事を言わないといけなくなって、それはそれで金利上昇の方が気になってくるので円安の火消をしなくて良い局面だったらわざわざ火消しに行って金利上昇をさせるのもやりたくない、というのはありそうなので・・・・・・

まあいずれにしましても、今回は(実質金利的な観点では別になんでも無いにしたって名目の数値で言えば)エポックメイキングな75bpの政策金利というのがあったのにこのテキストの量(とスカスカの質)というのには滅茶苦茶違和感を感じましたが、日銀としては為替円安と金利上昇の両方に「いい顔」をできない以上、最早何も言わないモードになったのかとも思いました。実際何でこうなっているのよってなもんではありますわな。


・・・・とボロカス言いましたが、この講演に関しては後半の方で経団連相手に「お前ら散々収益上げてるんだから成長投資と労働分配をもっとしやがれ」という話をしている所はポイントが高いので、そっちに関してはエエンチャイマスノと思いますけれども、金融政策の話をろくすっぽしない(深堀りが無くて公表文書の丸読みの世界)というのは従来路線から大きく変わった感があってナンノコッチャではあります。


ということで金融政策運営に関してですが・・・・・・


・ところで来年の秋口以降になると物価目標達成という見通しなんですが・・・・・・・

まあこれは今回の講演だけの話ではなくて従来から言っている話ですけど、金融政策のパートでのお話は・・・・・・

『こうした最近のデータやヒアリング情報からは、来年以降も、賃金と物価がともに緩やかに上昇していくメカニズムが維持される可能性が高いと考えられます。その結果として、先行き、「展望レポート」の見通し期間の後半、すなわち、来年度後半から 2027 年度にかけて、基調的な物価上昇率が2%の「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移するという、私どもの中心的な見通しが実現する確度は高まっていると考えています。』

という見通し自体は以前より言っていますけど、そうであるならば来年度後半から2007年度に掛けて、即ち2026年の秋口以降には物価安定目標がほぼ達成される、というのが中心的な見方になる訳でして、そうであればその時の政策金利水準って言うのは、長期均衡における名目中立金利、と言いたいですがまあそこはオマケしてもうちょい下だと思うにしたって、名目の物価上昇トレンドであるところの2%に相応の近さになっていないとおかしくねえか、って話になる筈だと思うのですがどうなんでしょうかねえと思います。

『こうした経済・物価情勢を踏まえ、先週の決定会合では、2%の「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現という観点から、政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整することが適切であると判断しました。』

でも水準がまだ0.75%でして、2%どころか1%にも行ってない訳でして、それでエエノカという話ではあるのですが、「金融緩和の度合いを調整」ということになっておりますのはご案内の通りでして・・・・


・先行きの金融政策運営におけるポイントとか考え方とかは一切示さず事実上の声明文棒読みモード

『先行きの金融政策運営については、現在の実質金利がきわめて低い水準にあることを踏まえると、「展望レポート」で示している中心的な見通しが実現していくとすれば、経済・物価情勢の改善に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えています。』

と言っているのですが、特に年度が替わって以降になりますと、「金融緩和の度合いを調整」で済む話なのかという論点がそろそろ出てきてもおかしくない訳で、むしろ引き締め的にならないと思われる程度の水準に向けて政策金利を引き上げますくらいの説明をしていって「緩和的」のアピールを下げないと円安がダラダラと続くんジャマイカという懸念isあると思うんですよね。

とは言えまあこれ自体は今の公式スタンスなので今回の経団連講演ではそれを繰り返しているに過ぎないのですが、以下の説明が・・・・・・

『日本銀行としては、緩和の度合いを適切に調整していくことは、「物価安定の目標」をスムーズに実現するとともに、皆様が安心してビジネスを行う土台となる、息の長い成長につながると認識しています。以下では、日本銀行が目指している、やや長い目でみた経済の姿について、お話しします。』

ということで話が終わっているというのが甚だ怪しからん話でして、この先の金融政策判断について、説明している「「展望レポート」で示している中心的な見通しが実現していくとすれば、経済・物価情勢の改善に応じて、引き続き政策金利を引き上げ」のキーポイントについては一切触れない、という作戦に出てきましたなという感じですわ。

まあアレです。新手の政策反応関数(今回の決定会合のちょっと前から出てきたのが「貸出動向」とか「金融環境」ですが)を引っ張り出してきて説明しておきながら政策決定の説明上都合が悪くなるとしれっと引っ込めてなかったことにする、ということを繰り返すよりは「なんも出さない」方がまだマシとも言えますので一概に怪しからん呼ばわりするのもどうかとは思いますが、しかしまあ先行きの運営に関して何も深堀り説明をしない、ってのも大概な話でして、


・ここで昨年12月の経団連講演における先行き金融政策運営に関する説明を確認してみましょう

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2024/data/ko241225a1.pdf
2%物価目標の実現とわが国経済
── 日本経済団体連合会審議員会における講演 ──

ということで昨年年末の経団連講演ですけれども、ここでは先行きの政策運営に関しまして、『4.2%目標の実現と金融政策』って小見出し一つ使って、政策運営スタンスの説明はその中の1ページほどの分量で説明をしているんですよ。1ページもあるから論点部分だけ引用しますけど、

(以下の部分は直上URL先の2024年12月植田総裁経団連講演テキストより)

『続いて、本日の最後の話題として、今後の金融政策運営に関連して、2点ポイントを申し上げます。』

『第1のポイントは、日本銀行は、2%目標の持続的・安定的な実現に向けた移行期にあたる現時点においては、景気・物価に中立的となる中立金利よりも政策金利を低くすることにより緩和的な金融環境を維持し、経済をしっかりとサポートしていく、ということです。デフレ・低インフレ環境に逆戻りすることは、避けなければなりません。』

『第2のポイントは、経済・物価情勢の改善が続いていくのであれば、それに応じて、政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことが必要になる、ということです。経済・物価情勢が改善するもとでも、現在のような低金利を維持し続ければ、金融緩和の度合いが過大なものとなる可能性があります。そうした政策運営のもとでは、物価上昇率が2%目標を上回って加速し、後になって、急速な金利の引き上げを迫られるリスクが高まらざるをえません。物価の加速や金利の急速な上昇は、企業の前向きな動きを支え、息の長い成長を実現していくうえでもマイナスです。』

(以上の部分のみ直上URL先の2024年12月の植田総裁経団連講演テキストより)

ということでですね、今回は確かに「緩和的な状態を維持」の部分も「政策金利の引き上げ」の部分も前回対比で説明が無いちゃあ無いのですが、それにしても政策金利の引き上げ云々の部分における、「経済・物価情勢が改善するもとでも、現在のような低金利を維持し続ければ、金融緩和の度合いが過大なものとなる可能性があります。」って点を今回触れていないってのは、一段の物価情勢改善が進む中において言わなくて良いのかよと思ってしまう所でして、なんか「遠くでは威勢の良いこと言うけどいざ目の前で決断迫られると急にチキン化してしまう」みたいな風情でおじちゃんは悲しいよと思いました。



・経団連相手の講演でこの説明は良かったので褒めてつかわす(なぞのウエメセ)

・・・・・とまあそういう事でいつものように悪態ジジイなのですが、今回の講演の説明で中々イヤミが効いてて良かったなと思うのは賃金というか労働分配に関連する部分ですね。『3.賃金と物価がともに緩やかに上昇する経済』ってところの『(2)現在地の確認』です。

『次に、我々が目指している経済の姿に対する、わが国経済の現在地を確認したいと思います。図表4をご覧ください。この 10 年余りで、企業収益は約2倍に増加しています。労働市場では、生産年齢人口の減少が続くなか、シニア層や女性の追加的な労働供給の余地も少なくなり、労働需給のタイト化が進みました1。こうしたもとで、図表5で示しているように、長年にわたって停滞していた賃金にも上昇圧力がかかるようになり、ここ数年は高い賃上げ率が実現しています。』

ってあって図表4とかと見たくなるのですが、よくよく本文を読んでみれば「企業収益は2倍」だというのに実質賃金ってどうなっていましたっけ、というツッコミをしたくなりますよねwwwwww

その辺りに関してしらっと先の方(講演テキストの5ページ目、PDFの6枚目)にお話がありまして、

『今申し上げたわが国における賃金と物価の現在地を踏まえつつ、企業部門の収益や支出の動きを確認すると、目指す経済を実現していくうえでの課題が、幾つかみえてきます。図表8の左グラフをご覧ください。』

図表8ってのはPDFの最終ページ(14枚目)の下段になるのですが、もうこれを見た瞬間に「聞け万国の労働者」状態ですわな、ってなもんですよね、特に右グラフwwww

『振り返ると、わが国経済がデフレに陥った 1990 年代後半以降、企業は、雇用の安定を優先し、賃上げや設備投資を抑制してきました。当時の企業行動は、厳しい経営環境に直面するもとで、失業率の上昇を抑える効果があったほか、企業自身の財務体質の改善にとっても必要なものだったと思います。』

『現在は、こうした状況を乗り越え、人件費や設備投資が緩やかに増加するようになってきています。』

でもって、この講演の一番イイシテキダナーと思うのはこの次。

『もっとも、企業収益の大幅な増加に比べて、これらの伸びが相対的に緩やかなものにとどまっているとの指摘もあります。』

さすがに経団連相手に断定的な言い方はできないですかまあ仕方ないですね、とこの「指摘もあります」とかいう苦渋の表現には同情をするので悪態をつく気にはなりません、まあこれでも良くぞ言ったという部類ではないかと。

そして講演テキストは聞け万国の労働者轟きわたるメーデーの示威者に起こる足取りと未来を告ぐる鬨の声、な図表右グラフに話が移りまして・・・・・

『結果として、右グラフのとおり、企業が生み出した付加価値の総額と人件費の関係を示す労働分配率は、緩やかな低下傾向が続いています。』

って言う事で、ここの「(2)現在地の確認」コーナーが締まっているのですが、これすなわち「金融緩和でお前らに収益上げさせているのに出し渋るとはどういう事やゴルァアアアアアアアア!!!というのを若干のオブラートに包んで言ってるわけでして、これはまあ当然ですが妥当な指摘ではあるかと存じますのでまあここは評価したいと思います。

なお、この先が『(3)期待されるさらなる変化』ってコーナーで、

『以上を踏まえますと、わが国では、息の長い経済成長を現実のものとするため、将来を見据えた人への投資や設備投資が、これまで以上に強く求められる局面を迎えているように思います。』

「お前らちゃんと動け」といってましてさらに、

『どの時代にあっても、一国の経済成長のエンジンは、企業の皆様の積極的な行動です。以下では、皆様への期待を込めて、この点について少し詳しくお話しします。』

とか「お前らやれや」な話をしているのが実に結構な訳で、以下は成長投資と労働分配をもっと積極的にやらんかいゴルァというのをオブラートに包んで砂糖をまぶして苺のトッピングなんぞをしながらお話をしていまして、まあこの話は大変いただけますわなとは思いましたので、金融政策運営のところの話がろくすっぽ無かったという金融市場の中の人的な憤怒ポイントに関してはある程度は勘弁して差し上げようかとは思いましたwwww


・とは言え最後のこの辺りはいただけない

でまあその勘弁して差し上げる部分では、

『第1に、人への投資については、先ほど申し上げたとおり、ここ数年、高い賃上げ率が実現しているほか、企業規模や地域の面でも、賃上げの裾野に広がりがみられています。来年の春季労使交渉に向けても、経団連では、賃上げのモメンタムの「さらなる定着」を目指すとの方針を打ち出されており、大変心強く感じています。日本銀行では、こうした前向きな動きが続くなかで、わが国における賃金の期待形成メカニズムが変化していくことを期待しています。』

ってな感じでオブラートに包んで砂糖まぶしてトッピングしている訳でして、

『第2に、設備投資に関する取り組みです。長年にわたるデフレ期には、投資を先送りし、将来の不確実性に備えて現預金を積み上げる誘因が働きやすかったように思います。しかしながら、緩やかな物価上昇が続く世界に移行すれば、現預金の実質的な価値が目減りしやすくなる一方、将来を見据え、先んじて投資を行うことの重要性が、これまで以上に高まっていくと考えられます。また、人手不足の継続が見込まれるもとでは、AIの利活用を含め、労働代替型の投資を一段と進めていく余地も大きいように思います。』

こっちもオブラートなのは良いんですけど、日銀総裁が何もわざわざ「現預金の実質的な価値が目減りしやすくなる一方」って言う必要はないでしょ職制的に言って(「成長への投資をしないことによる機会損失」位にしておけよ・・・・)と思ったのが1点目と、このコーナーの締めの部分で、

『今申し上げた企業の取り組みは、政府や日本銀行の政策が適切に後押しすることで、力強さを増していくと考えられます。』

って言ってまあ政府へのヨイショと日銀の自画自賛をしているのですが、本来的に言えばそういう後押しが無くても自発的にそういう取り組みが進まないといけないわけで、いつまでもそういう補助輪つけたまま状態なのは結果として自主的に取り組みをする企業の優位性を失わせてしまうことになるのではないか、と思うのでそろそろこういうのを言うのも大概にした方がエエンチャウノとは思いました、まあ政府部門が実際にこういうスタンスが変わっていないからシャーナイナイなのではありますが・・・・・・・・


#先入先出してたら積み残しが続出しており恐縮ですが今朝はこの辺で勘弁してちょ



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