朝のドラめもん

2024/09/06

お題「高田審議委員金沢金懇だが案の定今後の政策修正には受動的なスタンスと見ました」

米の品薄が話題ですがその一方で、
https://www.agrinews.co.jp/news/index/257030
2024年9月6日
米農家の倒産・廃業 24年 進まぬ価格転嫁、経営圧迫

『背景にあるのが生産コストの高止まりだ。農水省の7月の農業物価指数(20年の平均価格を100)は、肥料が139、農薬は115、光熱動力は132と高騰する一方、米は95と低迷している。』(上記URL先より)

Oh・・・・・・・・


〇高田審議委員の金懇講演は今後の政策調整に対しての主体性を一切感じず残念なことです

HTML版
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2024/ko240905a.htm

PDF版
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2024/data/ko240905a1.pdf

でまあ今回HTML版とPDF版が同時公表されていまして、コピペにはHTMLの方が便利なので
引用はHTML版から行います。

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2024/ko240905a.htm
【挨拶】わが国の経済・物価情勢と金融政策
石川県金融経済懇談会における挨拶要旨
日本銀行政策委員会審議委員 高田 創
2024年9月5日


・案の定ではあるが今後の政策調整を主体的に進めようという意思は見られません

前回の高田さんの金懇は2/29に実施されていまして、2/29と言えば1月決定会合で予告ホームランチックなものが打ち出されていた後、ということでして、それまで高田さん何で守りに入っているのかさっぱり意味不明ながらまるっきり踏み込んだ発言とかオリジナリティある発言とかしなくて、債券市場のマーケットエコノミスト出身者というカテゴリー(過去は水野温氏さん、佐藤健裕さんという寄らば斬るぞというファンキー(褒めてる)な方々でしたな)なのに何ですかこれはというテイタラクでございましたが、2月の金懇少しだけ踏み込んでいたのでまとめでこんなこと書いたんですよね。

(3月1日に書いた駄文より引用開始)
「しかしまあ何ですな、この前の金懇でも高田さん歴史的な話をしてた割に別に面白い話があった訳でもなくて、多角的レビューということで25年レビューの話をしているのですが、あーたの25年はナンダッタノカと小一時間問い詰めたくなるのをまあ我慢しておるというような状態ですわwwwwwwww

あ、あと会見でも微妙に踏み込み気味の言い方になっていまして、これはまあ「緩和的な環境が続く」というのが効きすぎて特に他市場がヒャッハーヒャッハー言ってるのに対してちょっと水を差しておく必要があるんじゃないか、という人形使いの意志らしきものを感じたのはアタクシの超個人的偏った感想ですが一応そういう読み筋ですというのを申し上げておきます(この前の植田さんの国会答弁も然りで)」
(ここまで3月1日に書いた駄文)

・・・・踏み込んではいるもののご自身の意思というよりは腹話術人形遣いの意図とかアタクシも大概にボロカス申しておりますが、まあ高田さんへの期待値の高さがあったからこうなっておるわけでございますな。

でまあそんなこんなで、今回もそんなに期待してはいなかった(むしろ今回の金懇で踏み込みが出るのを期待している市場の一部の方が健忘症にも程がある)のですが、案の定今回も小見出しの通りで、「主体的に金融緩和の修正を推進しようという意思を全く感じない」という素敵な金懇挨拶(会見もそうですがそちらは会見録でましたら週明けにでも)になっておりました。


ということでまとめを先に出オチにしてしまいましたが中身を鑑賞鑑賞。

・輪番に関しては公式説明をしたあと積極的な話をするかと思えば全然しないのが高田っちクオリティ

てな訳で『2.経済・物価情勢』はかっ飛ばして『3.最近の金融政策運営』の部分から参ります。このコーナーを最初から引用しますが、

『次に、金融政策運営に対する考えをお話しします。日本銀行は、今年3月の金融政策決定会合で、「物価安定の目標」が持続的・安定的に実現していくことが見通せる状況に至ったと判断し、金融政策の枠組みの見直しを行いました。イールドカーブ・コントロールの枠組みおよびマイナス金利政策といった大規模な金融緩和はその役割を果たしたことから撤廃し、短期金利の操作を主たる政策手段として、「物価安定の目標」のもとで、その持続的・安定的な実現に向けて、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営することにしています。』

ってのはまあどうでも良いのですがこの次に輪番の話があって、

『更に、7月の金融政策決定会合で、市場参加者の意見も参考にしつつ、2026年3月までの国債買入れの減額計画を決定しました(図表8)。長期金利は金融市場において形成されることが基本であり、国債買入れは、国債市場の安定に配慮するための柔軟性を確保しつつ、予見可能な形で減額していくことが適切との考え方に基づき、相応の規模となる減額計画を策定したところです。』

とは言ってるんですが、この次がもう腰が砕けるわけでして、

『ただし、日本銀行のバランスシート規模は大きく、今後もかなりの期間にわたってバランスシートの縮小を続けることが予測されるため、現時点では、最終的な国債保有残高やバランスシートをどこまで縮小するのが望ましいかを議論することは難しい点も指摘したいと思います。海外中央銀行が既に保有債券額の削減を進めてきており、こうした事例も参考にしていく必要があります。』

なんすかこのやる気のない説明は、というところでして、いやそもそも論として通常の金融政策運営を行うにあたっては、成長通貨供給に必要な残高+短期金融市場のオペレーションの都合上必要な当座預金残高の底だまり部分以上に長期国債を買う意味は一切存在しないのですから、債券市場とかマネーマーケットとか見てたという触れ込みの人だったら初手はその原則論をぶち上げて、その後に現実論としまして黒田とかいうスカポンタンが日銀当座預金のうんこタワーを積み上げてしまったので、これを一気に崩すとそこら中にうんこが飛び散って悲惨なことになるからそういう訳にはいかなくて、という話をしろよ(うんこタワーとか金懇で言ったら事故だけどwww)という流れで話をするもんだろというところでして、初手でべき論を言わない時点で腰の引け方が半端ないのがよくわかりますね。


・政策金利の調整に関しても腰の引け方が半端ないのだがその前に実質金利論があったので雑感

とまあ輪番減額に対して「ワイが主体的に減額の議論をリードする」とかいうような気概を1ミクロンも感じない残念なコメントの次に政策金利の方の話になるのですが、

『加えて、主な政策手段である短期金利については、0.25%程度への引き上げを決定しました(図表9)。これまで示してきた経済・物価見通しに概ね沿って推移する一方、物価上振れのリスクに注意する必要がある状況を踏まえ、「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現との観点から、金融緩和の度合いを調整することが適当と判断しました。』

公式見解通り。

『政策金利を引き上げましたが、金融緩和度合いを評価するうえでは、実質金利と比較する対象となる自然利子率の把握が重要となります。』

『もっとも、自然利子率は、現実の世界で直接観察できるデータではなく、様々な手法で推計した結果をみても大きなばらつきがあり、足もとの水準をピンポイントで把握することは極めて困難です(図表10)。』

自然利子率の把握って金融政策運営の実務的観点から言えばそれ無理って話で、金融政策を実施していく中でその波及状況と、経済への影響を見ながら今の政策が緩和的なのか中立的なのか引き締め的なのかを結果から逆算して判断していく(ので自然利子率の把握に無駄に拘ろうとすると政策が常にビハインドになってしまうリスクがある)しかないですし、インフレ期待がインフレ目標近辺で長期にわたってアンカーされていて、実際のインフレ率もインフレ目標近辺でサイクルをもって回っている、というような一種の定常状態だったら自然利子率が何となく推計できるかもしれないけど、今の日本の場合はインフレ期待を変化させようとしている(もうしちゃってるんじゃないか説もあるがそこらはさておきまして)という政策をしているんですから、そもそも論として自然利子率云々の話を持ち出すのは話がややこしくなるだけだからあんまりこれ言い出さない方が良いと思うのです。

では何で大本営はこういう話をするのかといえば(っていつの間にか高田っちじゃなくて主語が人形遣いになっていますが気にしない気にしない)、以下にありますように、

『ただし、こうした様々な試算結果と比べても、足もとの実質金利は自然利子率を下回っており、政策金利引き上げ後も、緩和的な金融環境はなお継続しているとみています(図表11)。』

結局ですね、大本営が実質金利の話を持ち出しているのって、マイナス金利解除直前から続いている複雑骨折コミュニケーション、すなわち「マイナス金利を解除しても緩和的な金融環境を続けます」⇒「今後見通し達成が進展してきたら利上げを継続します」っていう流れ、これ初手で「緩和的な環境を続けます」を強く言いすぎたのが元凶で、3月は兎も角4月展望で軌道修正しないといけなかったのに、4月展望でさらに緩和アピールを加速させてしまったようなコミュニケーションをしたのがすべての間違いのもとなんですけど、まあこの複雑骨折コミュニケーションの帳尻を合わせに行くため(と政治方面からうっとおしい蠅が飛んでこないようにするため)に「利上げしても緩和的な状態は続いている」アピールをすることになってしまい、そこで実質金利の話を出すことになってしまったので、結果的に中立金利はいくらか、というデギンドス副総裁の頭髪並みの不毛な質疑応答が繰り返され、このような説明が行われることになっているんですよね。

とまあそういう訳ですので、政策調整の過程において実質金利がどうのこうのって話はこれからも説明で使うんでしょうけれども、あくまでも金融政策アクションという結果から後付けして説明している道具に過ぎないのであって、日銀が実質金利の話をしているからと言ってクソ真面目に実質金利あるいは中立金利水準の推計をしようとかいう作業を下々の市場の中の人たちが行うのは、カシュカリ総裁の頭髪並みに不毛な作業になると思うの。まあ目くらましの説明に便利なのはその通りなんで、あくまでも目くらましだと思って使うんだったらそれはそれでアリだと思いますけどね、と身も蓋もない中立金利雑談でした。


・追加の金融政策調整(利上げ)に関しては腰が引けてる引けてる

すいません脱線しました話戻って高田っちの金懇挨拶のこの先に参りますと、

『8月前半に株式・為替相場の大幅な変動が生じその影響が残存するだけに、当面はその動向を注視し影響を見極める必要があります。そのうえで、緩和的な金融環境が続くもと、私自身としては、先行きについても、物価が概ね見通しに沿って推移するもとで、堅調な設備投資や賃上げ、価格転嫁の継続など「前向きな企業行動」の持続性が確認されていけば、その都度、もう一段のギアシフト――金融緩和度合いの更なる調整――を進め、言わば「金利のある世界」にしていくことは必要だと考えています。』

と、一瞬高田っちに自我が芽生えたかとおもってこれはイプセンもニッコリという話になるのですが返す刀で、

『ただし、自然利子率のピンポイントでの把握が困難なもと、「物価安定の目標」実現の時期に向けて一定の中立金利の水準を念頭に政策金利を引き上げていく訳ではなく、十分な時間をかけつつ、その都度、政策金利引き上げの経済・物価・金融情勢への影響を検証しながら対応するというアプローチが現実的ではないかと考えています。』

お、おぅ・・・・・・・・

これね、まあ結局のところ大本営の説明と同じことになるんだけど、大本営理論というか今回の高田っちの説明でも、直前のところで「ただし、こうした様々な試算結果と比べても、足もとの実質金利は自然利子率を下回っており、政策金利引き上げ後も、緩和的な金融環境はなお継続しているとみています」って仰せな訳でして、図表11とかいうのを見ると(PDFバージョンでみてちょんまげ)雑な目の子でみても実質短期金利▲1.7%くらいだし、実質長期(10年)金利は▲0.6%くらいなんですが、図表10の日本の自然利子率、ってのが▲1.0%〜+0.5%のレンジになって居ますから、少なくとも途中までの政策金利調整は高田っちのいう「慎重なアプローチ」をしなくても良い筈だし、逆に慎重にやりすぎて政策がビハインドするリスクがあるから今回利上げしたんじゃなかったっけ、というお話になるわけですな。

ということですので、この高田っちの慎重アプローチ、っての実は大本営理論とは今の金利水準から暫くの間の調整に関しては相性悪いんですよ。高田っちが今の政策金利水準は中立金利にかなり近いところにあって今の政策は実はかなり中立に近い、という認識であれば慎重アプローチで良いんですけど・・・・・・・・・

とまあそういう訳ですので、残念ながら高田っちにおかれましては政策調整に関して及び腰という感じでして、少なくとも利上げについて積極的に主導するということはなさそうだな、というのがアタクシの勝手な結論になるわけですな。まあゆうてなんか明確な理屈をもって慎重派という話でもないので、大本営が政策調整するぞと言えばイエッサーってなるでしょ(あくまでも個人の感想です)というところで。

さらに、

『振り返ると、1970年代の変動相場制への移行後、先進国の金融政策スタンスとそれに対応する景気サイクルは概ね連動していましたが、足もと、内外の景気サイクルは異なります。』

単に日本の政策がクッソビハインドしているだけのような気がしますがそれはさておきまして、

『米欧では利下げに向けた動きが生じていますが、これまでの利上げが急だっただけにその影響が時間を経て生じる場合、わが国の経済を下押しするリスクがあり、同時に、金融政策スタンスの違いから金融市場に変動が生じる可能性もあるだけに、当面は内外の動向を慎重に見守る必要があります。』

と金融政策運営のコーナーをこのように締めておりまして、フォワードルッキングに政策を運営して行きましょう、というスタンスは残念ながら感じられず、言ってることが全部リアクティブというのが誠に残念無念といったところですが、何でこんなにチキンちゃんなんでしょ高田っちは・・・・・・・


・おじいちゃん満州の話はさっきもしたでしょ

ちなみに次のコーナーの小見出しが『4.バブル崩壊からの「過去・現在・未来」』となっていて、過去の金懇で毎回この話題をしておりまして、いやまあ確かに金懇は毎回別会場でやるから聞いてる人は別なんで同じ話をしちゃあいかんという法は無いので別に良いんですけど、さすがに毎回この話を読まされますと読んでる方としてははいはいおじいちゃん満州のお話はさっきもしたでしょお昼ごはんの時間ですよって申し訳ないがなってしまいますな。
なお、その話の中で思いっきり、

『私としては、ノルムの転換には1つの世代を形成する10年単位の時間が必要な可能性を踏まえると、日本銀行が長年にわたって粘り強い緩和姿勢を続け、資産価格の改善や極端な円高からの反転を支えたことが、バブル崩壊からの歴史的な変化となるノルム転換の変曲点を迎える「下地」となったと捉えています。』

ということで、異次元緩和を思いっきり肯定しているので(ノ∀`)アチャーって感じで読んでおりましたが、全体のお話自体はいつもの奴なので割愛します。

あと、最後のところに長期国債買入の話があるのですが、お前は何を言ってるんだという話ではあるのですが時間も無くなりましたし、どうせ主体的に減らそうという話ではない(読めばわかりますが無茶苦茶腰が引けている)ので引用割愛します。

とまあそういうことで。

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