朝のドラめもん

2025/11/28

お題「野口審議委員金懇:「経済の過渡期」の話をするならもっと深堀をしてほしかったのですが」

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB265L90W5A121C2000000/
日銀の早期利上げ、カギは「為替」 有識者の見方に濃淡
東短リサーチ社長の加藤出氏、前日銀副総裁の若田部昌澄氏

経済
2025年11月27日 11:00 [会員限定記事]

例によって中身は無課金マンなのでわからにですが、加藤さんが識者なのは言うまでも無いのだが、もうおひとりの方は識者じゃなくて活動家なんじゃないですかねwwwww


〇野口審議委員金懇挨拶は残念ながらまたリフレモードにお戻りのようで惜しまれますなあ

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/data/ko251127a1.pdf
わが国の経済・物価情勢と金融政策
── 大分県金融経済懇談会における挨拶要旨 ──
日本銀行政策委員会審議委員
野口 旭

・・・・とは言いましても高圧経済万歳とかそういう話をしている訳では無かったので、そこまで酷いわけではないのですが、高市政権発足で折角落ち着いていたリフレ派脳の方が再活性してしまったような感じではあるので、そこは残念無念と言ったところ(表現が悪いアタクシw)。

もし昨日のこれが利上げ無問題ですぜガハハハハ、って内容だったら一発で12月利上げ待ったなしという話になっていたと思うのでそこは残念無念と言った所ではありますが、まあそうは言いましても12月決定会合まで3週間もありますがな、というのも事実としては有るわけで、まだまだ時間はあるのでここからも色々とネタは有ろうかと存じます。

てな訳で残念ながらリフレモードでイマイチおもんないのですが鑑賞していきましょうず。

・「今は過渡期」という認識に対する深堀りをもっとしてほしかったんですけどねえ

『2.経済・物価情勢』の『(1)内外経済情勢』の冒頭にこんなのがありまして、

『わが国経済は現在、 1990年代初頭のバブル崩壊後からコロナ禍前までの数十年間続いたデフレあるいはゼロインフレ経済から、物価と賃金が共に上昇し続ける中で成長していく経済へと移行する、その過渡期にあるといえます。』

というのが一発目にありまして、以降もこの「過渡期にある」というのを連発しておりますな。ちなみにクソどうでも良いですが昭和脳のワイが読むとこの「過渡期」ってのは中ソ対立における過渡期論争ってのを思い出してしまいますが、「過渡期のどの位置にいるのか」という点に関してはそれこそ中ソ対立並みにムツカシイ論争(まあ過渡期論争は言い訳で他の理由があったんでしょうけど中ソの場合は)になる話なので、その辺の考察部分を見たくなるわけですな。

でまあ野口さん、だいたい最近はこの「過渡期にあります」という話をしていて、それ自体言ってることに違和感は無い(なおワイは既に次の定常状態に移行しているのではないかとの認識だが)のですが、この部分の以下の記述は、

『そうした中で、わが国経済では、雇用拡大による人手不足を背景とした賃上げの進展、企業収益の拡大に基づく株価の上昇、ビジネス機会の多様化による新規事業の拡大など、これまで見られなかった新しい動きが生じ始めています。』

というなんちゅうか今起きてる現象面の話になってて、

『他方で、コロナ禍の終了とともに始まったコストプッシュによる物価高は、家計にとっての大きな負担となり、個人消費の下押し要因となっています。したがって、わが国経済が真の意味で成長軌道に復帰するためには、人々の賃金あるいは所得が物価上昇を上回るように拡大し続けていくことが必要不可欠といえます。』

ってふわっとした話になっていて、どういう状態だから過渡期なのかという話がここではない(後でちょっとある)のですけれども、まあこれ構造問題で言いますと、日銀の多角的レビュー(やその後の特に内田副総裁が強調していますけど)で言われたのが「労働市場の構造変化」になりますけど、今回の労働市場の構造変化っていうのは人口動態をドライバーとした自然現象という話ですけれども、そのまえの日本の労働市場構造の形作った日本的労使関係が確立したのっていうのは割と新しくて、第一次・第二次石油ショックを受けたいわゆる「1975年体制」を嚆矢とするというのが有力な説だと思う(ワシの元ネタは「平成バブルの研究(村松・奥山2002)」ですけれども)ので、そこまで遡って話をしていただきたいのですがそういう話は高田さんが得意そうな気がします。


ではどう過渡期なのか、という話を読み取ろうとしてみたのですが、まずは認識の背景が同じく経済物価情勢の『(2)物価情勢』の所でして、

『わが国では、コロナ禍後に生じた世界的インフレの波及を契機に、 年春から現在まで、消費者物価の前年比上昇率が目標とされている2%を上回る状態が続いてきました(図表3)。ただし、その物価上昇に寄与してきた項目は、時期によってやや異なります。』

『当初は、輸入価格の急激な上昇を背景としたエネルギーや食料品の価格上昇がとりわけ大きく寄与していました(図表4)。』

『その後、世界的インフレの収束に伴って輸入価格の上昇が緩やかになり、エネルギーや食料品の価格も落ち着き始めたことで、昨年半ば頃には消費者物価上昇率が2%から2%半ばまで低下しました。』

『しかしそれは、食料品とりわけ米類の価格上昇を主因として再び伸びを高めていきました。その原因の一つは、食料品に関する国際商品市況などを背景とした飲食料品の輸入価格上昇です。そしてもう一つは、昨年来の供給不足を背景とした米類の価格上昇です(図表5)。』

というのの背景が、

『こうした食料価格上昇の背後には、当然ながら輸入食材等のコスト上昇があります。米類の価格上昇も、その直接の契機は供給不足ですが、その背後には、肥料、燃料、農機具など資材価格の高騰による生産コストの上昇があったと考えられます。こうしたコストの価格転嫁は、各所で強く顕在化し始めています。』

であり、

『それは後述のように、ゼロノルムすなわち「価格は上がらなくて当然」という人々の通念が崩れ去っていく中で、これまで累積してきたコスト上昇を一挙に取り戻そうとする動きとして理解することができるかもしれません。』

というのがあるので、ゼロノルムの変化、というのが起きていて現状は2%ノルムへの過渡期だ、と言いたいのかね、と思う訳ですな。でもってこのゼロノルム云々ですが、『4.2%の「物価安定の目標」に向けた政策運営』の『(1)目標達成への見通し』に記述がありましてですね、


『私自身も、この見通し(引用者追記:10月展望レポートの日銀物価見通しである「物価は一旦伸び率を下げるもののその後2%に向けて再度上昇する」というものですね)を大枠としては共有しています。』

『ただし、消費者物価の伸びはこれから全体としては低下していくものの、これまで米類を含む食料品に生じてきたように、局所的な値上げの連鎖が生じる可能性はあると考えています。それは、コスト上昇が積み重なっていけば、価格は結局のところは上昇していかざるを得ないからです。』

『わが国ではこれまで、値上げに対する消費者の忌避感がきわめて強かったことから、多くの企業はコストが多少上昇しても値上げは極力行わず、賃金抑制などによって対応することが常態化していました。それが、賃金・物価のゼロノルムです。』

ふむふむ。

『しかし、長い間ほとんど上昇することがなかった米類を含む一部食品価格の急上昇が示すように、需給逼迫によって上昇モメンタムがいったん生じれば、価格がこれまでのコスト転嫁の遅れを取り戻すように上昇し続けることは決して稀ではありません。そのような「埋め合わせ」型の値上げは、今後も局所的には生じるかもしれません。』

うーんこの説明だとノルムが変わっていないという認識なんじゃネーノと言いたくなってしまうのだが。

『上の見通しによれば、こうした過渡的な価格上昇はあったとしても、消費者物価上昇率それ自体は、今後はいったん低下していきます。問題は、そうした中でも、物価の基調は2%目標に向けて着実に上昇し続けていくのか否かです。それはひとえに、賃金上昇のモメンタムがこれからも維持されるのか否か、さらにはその勢いが中小企業や地方経済にまで浸透していくのか否かに依存します。』

賃金上昇のモメンタムが云々って言ってるけどそもそも論として実質賃金が上昇し続けないと物価があがらんのか、というとそういう話でもない筈だし、なんかそうじゃないんだよな感が。

でもってですね、上記のあとに賃金の話があるのですが・・・・・・

『この賃金動向に関しては、まずは来年の春季労使交渉に向けた動きが注目されます。労働組合側の基本方針は既に、この 月末に公表された日本労働組合総連合会『 春季生活闘争基本構想』に示されています。そこでは、これからの「賃上げノルム」のあり方として、ベースアップで3%以上、定期昇給を含めれば5%以上の賃上げの実現が、すなわち2%物価上昇を前提とすれば1%程度の実質賃金上昇の実現が、目標として掲げられています。』

という話ですが、

『確かに、仮に名目賃金上昇率が3%程度で安定すれば、消費者物価上昇率が2%近傍で推移する限り、わが国のこれまでの労働生産性上昇率にほぼ等しい1%程度の実質賃金上昇が持続的に実現されることになります。』

であったら消費者物価上昇率が2%を超えている状況になっている要因の円安なんとかしたらあっという間に達成ジャンという話なんですけれども、そもそも労働生産性上昇率って1%もありましたっけ??????

『おそらくはそれが、わが国経済が2%目標を達成したのちに到達する定常的な状態です。』

って話をしているんですが、それは2%目標を達成したからそうなるのではなくて単純に労働生産性の伸び率と名目賃金上昇率と物価上昇率の足し算引き算の話では????

『私自身は、こうした地点への到達は、見通し期間の前半は難しいにしても、おそらくはその後半、すなわち来年度後半から再来年度にかけての頃には実現されると考えています。ただしそれは、米関税による下押しの影響は今後も大きく深刻化はせず、また新たな地政学的リスク等も生じないという前提条件に基づいています。したがって、それらのリスクが顕在化した場合には、この見通しはおそらくさらに後ずれすることになります。』

労働生産性、名目賃金、名目物価の3つのうちどの変数を捕まえて直上の話をしているのかが良くわからんですがな。

ということでまあ謎なんですが、ノルムという意味ではインフレ期待の話もあるじゃんと思う訳ですがインフレ期待の記述部分を見てみますと、その次の『(2)目標達成までの政策調整のあり方』というところにあるのですが、

『こうした、過去における長期デフレやゼロインフレの影響が最も明確に現れているのは、インフレ期待の動向です。』

むしろこの話を先にしろと。

『コロナ禍以降のインフレ局面を通して、わが国における期待インフレの各種指標は徐々に上昇してきました(図表9)。とはいえ、2%超の物価上昇が既に3年以上も続いているにもかかわらず、それらはまだ2%に届いていません。』

??????

と思うかもしれませんが、巻末の図表9(PDF19枚目)を見ますとそこの下半分に「インフレ期待」ってのがあるのですけれども、

『市場で示された予想物価上昇率』→物価連動国債のBEI(とインフレスワップ)

ですし、

『日銀が推計した予想物価上昇率(主体別)』は、

「うち家計」は例によって家計意識アンケートの5択選択肢情報を用いた修正カールソン・パーキン法の数値という低い数字が出やすいのを使っていて(ちなみに11/20の小枝さんは他に±5%以上の回答を±5%に置き換えて算出するという謎刈込は行っているもののもっと高い数値の出てくる数値的なものを出していたのに・・・)

「うち企業」は何か知らん謎の数字が出ていて、短観の全産業平均で出したらとっくの昔に2%超えになっている筈で(念のため展望レポート全文の方の図表38--@まで確認したわw)なんかよくわからん数字が出ているし、

「うち専門家」ってのはこのインフレ局面で低い方に外しっぱなしの「コンセンサス・フォーキャスト」を使う、

ということになっていまして、まあ見事に「2%行ってないもの」をチェリーピックして並べているというのが野口さんの説明の信用性を無くすお話になってるなあ、とアタクシは思いましたがあくまでも個人の感想ですwwwwwww


まあそれはそうとしてその続きは、

『それは、コロナ禍以前の過去数十年にわたってデフレあるいはゼロインフレが続いてきた影響が、人々のインフレ期待の中に未だ残り続けていることを示唆します。その影響が払拭され、インフレ期待が2%近傍でアンカーされるようになるには、まだ時間が必要なのです。』

だそうなのですが、低く出ている数値を恣意的に拾ってきてその説明は如何なものかと思いました。


でもって実質最後(本当の最後はご当地経済の話)の部分にこの「過渡期」の話が出てきまして、

『(3)過渡期としての日本経済』って小見出しになりまして、

『冒頭で述べたように、わが国経済は現在、賃金と物価の上昇ゼロが持続する経済から、それらが共に緩やかに上昇し続ける経済へと移っていく、その過渡期にあります。多少抽象的な言い方をすれば、われわれは今、一つの定常均衡から別の定常均衡への移行の最中にあるといえるのです。』

移行の最中だからどの段階にあるのかを見極めながら政策運営をしていく、という話はわかるんですれども、そうであるならば移行のどの段階にあって。新しい(望ましい)定常均衡との距離はどのくらいなのか、というのをもっと示すような講演をして頂きたかったです。

『コロナ禍前までのゼロインフレの時代には、物価、賃金、金利は上がらないことが当然と考えられており、企業や家計は常に、それを前提として行動していました。しかしながら現在は、それらはむしろ上がっていくのが当然と考えられ始めており、そのことが企業の経営や家計の資産運用などにも大きな変化を与え始めています。』

そんな雑な分析じゃなくて・・・・・

『日本銀行のそこでの役割とは、適切な政策調整を通じて、その移行に伴う摩擦や混乱を可能な限り抑え、経済を新たな成長経路へと導いていくことです。ただし、航空機の運航は離着陸時が最もリスクが高いのと同様に、その調整の遂行にはおそらく様々なリスクと困難を伴います。私自身はしかし、それらを乗り越えた先には、日本経済の新しい姿が現出していることを信じて疑いません。』

ってのは分かるんだが、結局今回の金懇の話って引用割愛した部分は足元の経済情勢の話(米国ガーみたいなお話)になっていて、経済社会構造の変化とかそっち方面の話になっていないので、それじゃあ結局ブラインドでエイヤー運転するのと変わらなくねえか、って思ってしまいました。ということで折角過渡期云々の話をするならもっとそちらの考察を入れて欲しかったと思いました、まる。

今日は他のネタもあったような気がしますがこの辺で勘弁させていただきとう存じます(4日経ってやっと体調と脳が戻ってきた感がwww)




トップページに戻る