金融政策概観(2003年度下期分)
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2003年下期
2004/02/18「リフレ派の主張に対する違和感」
2004/02/16「国債市場懇談会に見る金融政策への誤解」
2004/02/09「金融政策決定会合の討議事項って・・・」
2004/01/29「時間軸の外し方/高橋財政の評価」
2004/01/21「『金融政策変更』を過去の発言などから整理しました」
2004/01/20「金融政策決定会合の注目点/他2題」
2004/01/19「金融政策決定会合ですが・・・」
2004/01/15「連日の量的緩和談義」
2004/01/14「量的緩和政策再考(昨日の続き)」
2004/01/13「これでいいのか『量的緩和の輸出政策』」
2003/12/30「相場を振り返る(管理相場の進展/日米融通手形経済)」
2003/12/25「動く事が自己目的化してしまった今年の金融政策」
2003/12/12「国債市場懇談会における国債管理政策話を見て思う」
「リフレ派の主張に対する違和感」(2004/02/18)
英「エコノミスト」誌で「世界で最優秀の中央銀行総裁かもしれない」などと相変わらず海外で絶賛されて国内では日銀のお膝元に行けば行くほど酷評されるという不思議な日本銀行総裁様でございます。
FRB理事にバーナンキというお方がいらっしゃいますが、このお方の講演を訳出して解説、インタビューを加えてまとめた本が日本経済新聞社から「リフレと金融政策」という題で出版されています。(高橋洋一訳、吉次弘志解説・インタビュー:ISBN4-532-35075-1価格1900円)
一応読み終えたとはいえ、浅学非才でまだまだ勉強途上の段階で、極めて稚拙な疑問点しか出せないのですが、読後感第一弾という感じで。
○日銀総裁が海外で絶賛なのは当たり前ですな
本書に出てくる氏の講演は5本あるのですが、リフレ政策に関する提言として出てくるのが正に日銀がせっせと実行しているものとして現出しております。かつてあたくし(去年の4月くらいでしたっけ)「日本を新型兵器の実験場にしないで頂きたいものですな」というような駄文を書いたことがあるのですが、まさしく新型兵器の実験中。そりゃ海外からは評判高くなりますわな。
何で日本がわざわざ人柱になって新型兵器の実験を行わなければいけないのかは相変わらず理解に苦しみますし、だいたい株価は戻ってますけど、金融政策が株価の戻りに対してどのような波及効果を与えているのかも明確なパスは見出せていないと思うのですがねぇ。株価の戻りは「りそな救済」と「産業再生機構による救済」という一種の財政政策というか税金投入政策によるところが大きいと思いますが・・・・・。
○通貨価値毀損は良くて財政破綻は不可というのが現実に可能か?
リフレ派の皆様と同様に「不換紙幣システムの元では政府が紙幣をより多く発行する事によって調整インフレが可能である」という貨幣数量論をベースにした金融政策のお話をしております。
貨幣数量論自体はその通りなんですけど、政府部門が通貨供給を野放図に拡大するようなリスクをどうやって抑えるかという話になりますと「財政政策は国債の対GDP比率を妥当な水準に安定させておく必要があります。」としかも「どんなに厳しくても構いません」とまで言っております。
実際の政治の場でそんな規律がきっちり守れるというのは歴史的に見た場合どうなんでしょう?
いわゆる高橋財政でデフレ脱却には大成功しました(リフレ派の方はそれ故高橋財政への評価が非常に高いのですが)が、デフレ脱却に成功し、引締めと財政健全化へと転換しようとしたら軍部の猛反発を受けまして2・26事件に至る伏線になったというのは歴史の教訓。経済問題とは関係ないですけど、ナチス党が政権を取ったのは「最も民主的な憲法」が生きていたワイマールドイツでの出来事でもあります。
金融政策は何でもありで財政政策はきっちり縛るというのは非常に難しいお話だと思うのですが、その点は何かスルーしちゃっているんですよね〜。
というか日本では既に国債の対GDP比率が絶賛増大中なんですけど、その状況を放置して調整インフレ政策とやらを実施したらやはり大変なことになると思いますが。氏の講演を援用いたしますと・・・・・・・・・
○長期金利へのコミットメント
最近は氏もこの主張を取り下げているというお話を聞いたような気もするのですが、「長期財務省証券の金利操作で政策目的を達成できるのではないか」という仮説を述べておられます。
短期金利がゼロになってしまった場合の政策オプションとしてというお話で現在の日本銀行のやっているような「ゼロ金利へのコミットによって長期金利の下落誘導」というのと、「短期金利ではなくやや長い財務省証券(氏は2年物を例にあげています)の利回り上限を公表する」というのをあげております。
でも、結局金利下落が碌に効果を生んでいない(生んでいたらとっくの昔にデフレ脱却できていると思いますが、この低金利状態ですから)のは既に日本において実証済み。
まぁ日本経済と米国経済では根本的な構成要因に色々な違いがあるわけで、日本では効かなくても米国では効くかも知れませんけど、氏が「より好む政策」としている財務省証券の利回りコミットメントっていうのはありていに言えば金利統制みたいなものでして、市場関係者としてはどうかな〜と思ってしまいます。有効かも知れませんけどね、と市場関係者にあるまじき印象は有りますが。
もしかしたら最近急に長期金利の話を福井総裁が国会でするようになったのは「バーナンキ講演集を見た議員あたりが何か言い出す前にコメントしておくと受けが良いだろう」なんて思っていたりして。
○解説で喧嘩を売るのは止めましょう(-_-メ)
この本は解説が2本立てになっていて、その一本が各講演の解説でして、そちらの部分は訳者でもあります高橋洋一氏(財務省総合政策研究所研究員)によります。講演への解説部分はわかりやすく書いてあって大変結構なのですが、高橋氏の主張部分で日本におけるインフレ目標批判に対する解説(反論)がありまして、ここにくるといきなりこの書の格調が低くなってしまうのは残念です。
日本でのインフレ目標批判を列挙して「無効論タイプ」と「弊害論タイプ」に分けております。それはそのとおりですが、その後に「批判には互いに矛盾する無効論タイプと弊害論タイプがある」と文章のレトリックを駆使して如何にもインフレ目標批判者が支離滅裂であるかのような印象をあたえるような書き方をしているのはいただけません。
で、その後には「金利債券市場関係者の反対論が強い」として、その理由を「インフレ目標が採用されると名目長期金利が上昇(フィッシャー効果)し保有債券の評価損が生じると信じられているからであるといわれている」などとあたかも市場関係者が私利私欲の権化であるかのような印象を与えるような書き方をしております(-_-メ)。
せっかく喧嘩を売っていただきましたので格調低く同じレトリックを使用致しますと、「野放図に拡大した財政赤字縮減の政策努力を放棄する為にインフレ目標導入を提唱する存在があるともいわれている」とでも申し上げましょうか、財務省総合政策研究所研究員様。
日本におけるリフレ派の方々の著作(≠思いっきり研究的著作)っつーのを真面目に読むのはこれで2冊目なのですが、自説に対する批判が何でこう格調の低い(というかはっきり言って罵詈雑言)書き方になるのか実に理解に苦しみます。といっているあたくしも殆ど悪口雑言になっている場合が多いのですが、一応学究の徒なんですからもうちょっと格調高く批判して頂きたいのですけど。
念のため申し上げますと、バーナンキ氏の講演は格調の高い調子でありまして、その格調の高さというのは訳者でもある高橋氏の高い能力のお蔭でもあると思います。
とりあえず第一次読後感想ということで本日は簡単に。
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「国債市場懇談会に見る金融政策への誤解」(2004/02/16)
先週の木曜日に国債市場懇談会が実施されました。議事要旨を見る限りでは大した話は無かったようなのですが、今回もまた「え〜そうだっけ〜」と言いたくなるような「意見」が交換されておりました。同じような趣旨で実施されている国債投資家懇談会と比較すると、参加者が多いせいなのかもしれませんが、どうも出席者の皆さん「言いっぱなし」状態になっているのではなかろうかと思ってしまうわけであります。(編集時追記:今回は出席者の方から感想を頂きました。それによりますと「各自が勝手に相場観を順番に発表しておしまい」というまさしく「懇談会」状況だそうです)
http://www.mof.go.jp/singikai/kokusai/gijisyousi/a160212.htm
いろいろな意見が出ておりまして、勿論ご尤もなお話もあるのですが、今回は「金融政策に関する理解」に関する2つの意見に関して突っ込みを入れてみます。
○国債買切オペはそう簡単に増えませんって
『福井日銀総裁が国会等において、追加的緩和政策の効果をして長期金利の低下について言及しているが、その背景について、マーケットでは次のように考えているのではないか。』
『すなわち、福井日銀総裁の発言の背景について、「今後も国債の大量発行が続く中、景気回復無しに金利が上昇する可能性がある。また、景気に回復に伴い、資金需要の逼迫により金利が上昇するなら、景気回復時においても、日銀の国債買切オペを増額する可能性がある。福井日銀総裁は長期金利にも言及することで、いわゆる「時間軸効果」を長くしているのではないか」という見方が出てきているのではないか。』
福井総裁になってからの日銀は「当座預金残高は威勢良く増額するけど、長期国債買切は増えない」というスタンスで一貫しております。これが渋々国債買切を増やしていた速水総裁時代との大きな違いであります。
金融緩和に関する説明はもはや論理破綻状態ですが、先日の記者会見でも福井総裁は長期国債買切に関して『国債の買切りオペについて、私が着任して以来一度も増やしていない。増やす必要がなかったし、増やさないことによって国債に対する信認を確保するということに非常に役に立っていると思う。この考え方は今後とも崩したくないと思っている。』とコメントしております。
このお方、割と何でもあり系の雰囲気ですが、どうもこのこの長期国債買切オペの増額問題に関しては「セントラルバンカーらしい一徹さ」を発揮しているようです。色々やっている「積極的に動く」政策は「国債買切オペの増額を行わない事によって国債に対する信認を確保する」という(本当にそうかいなという気もしますが・・・・・)事を守る為に放っている「犠打」なのではないかと勝手に総裁の心を忖度する今日この頃。
「積極的に動く」という印象につい「何でもやるでしょ」と思ってしまいますが、日銀プロパーの総裁の言動を見ておりますと、やはり日銀のDNAっつーのがあって、どこかで激しく意地っ張りな所があると思うんですけどね。この総裁様も(期待も込めてますが)。
○量的緩和から金利ターゲットに移行してやる事が同じ???
まぁ債券市場関係者ってのは長期「金利」の世界を仕事にしている割にはその金利のベースになっている短期金融市場に疎いお方が多いのですが、
『短期金融市場では、FBの発行残高が増加する結果、量的緩和政策の解除が困難になると見られていると思う。』
量的緩和政策の解除を行うと今のような無限介入が出来なくなるという見解はあたくしもそうですが、市場の機能低下で絶滅寸前の市場ウォッチャーの見解であって、因果関係が逆になっていると思いますが、(編集時追記:日本語が変です。要するに上記の発言はロジックが逆だと言いたかった訳です。「FBが大量発行だから量的緩和困難」ではなく、「量的緩和を解除するとFB大量発行が困難になる」というのが議論の本筋です。)それはともかくと致しまして。
『しかしながら、量的緩和から引締めに移る場合は、超低金利政策に移ると見るのが一般的であり、仮に無担保コールオーバーナイトを0.25%で誘導目標とした場合、ターム物にはFBの発行残高増による金利上昇圧力が掛かってくるが、無担保コールオーバーナイトを0.25%以下に抑え込むため、例えば量的緩和の時以上に資金を供給すれば、トータルの資金供給は増えるので、心配しなくても良いのではないか。』
最初の一文は仰るとおりです。もしかしたらコール金利0.10%への誘導だってあって然るべきかと思います。しかし最後の部分はちょっと酷い。
金利誘導政策を実施する際の基本は準備預金制度の利用。昔と違って超過準備を持つのに慣れてしまっているので、昔のような「常に準備預金の積み最終日には超過準備を全額吸収する」という事をしなくても短期金利がある程度の水準になってくれるかも知れませんが、今と同じような超絶的超過準備供給しまくり状態で「無担保コールオーバーナイト0.25%」っていうのは有り得ないお話です。
超過準備が30兆円もある状況であれば、資金の取り手は安い金利が呈示されるまでのんびりと構えていれば良いですし、誘導水準を達成するには資金の出し手全員に圧力でもかけて「おまいら0.25%以下で資金放出したら死刑」とでも言って、日銀のオペも入札方式ではなくて強制的に実施する昔懐かしい「日銀貸出(知っている人は年寄りです)」しかできませんな。それってただの統制経済なんですけど・・・・・・
量的緩和を解除して、金利ターゲットという本来の姿に戻った時に、経過措置的に一時的に「ゼロ金利政策」状態になる可能性はあると思いますが、その状態を恒常化させる事はまぁ考えずらいお話です。
この量的緩和政策というのは政策導入時に「量的緩和政策(=当座預金残高を政策誘導目標にする)というのは、過去に実施したゼロ金利政策(=金利をゼロにするが政策誘導目標)とは違います」と言って実施したものであります。量的緩和政策を終了させたあとに金利ターゲットを復活させたのに、やっていることが同じだという事になってしまえば、「量的緩和政策とゼロ金利政策は政策の枠組みが違います」と言っていた事がただの茶番になってしまう訳でして、それは幾ら何でも中央銀行として恥ずかしいというか、議論以前のお話になってしまうのではないかと思います。他に色々と茶番をやっているとはいえども・・・・・。
それより情けないのは、この意見に誰も突っ込まなかったと思われる(突っ込まれた場合それらしい「意見」が掲載される)ところでしょうか。金利のお仕事やっているんだからもうちょっと短期金融市場に対する理解があって然るべきだとは思うのですが・・・・・・・ま、皆様理解されてしまうとあたくしのメモの存在意義が無くなるのでそれはそれで困りますが(^^)。(編集時追記先ほどと同じ方は「上記のようにそもそも突っ込みを入れるような雰囲気の会ではない」という事です)
こ〜ゆ〜突っ込みはやや揚げ足取りみたいであたくし的にはあまりやりたくないのですが、あまりにも気になったのと、「国債市場懇談会で出された意見」という事で、ある意味公的なものになっている事もありまして、あえて取り上げさせて頂きました。誰々だか知りませんが槍玉に挙げて大変恐縮至極でございますm(__)m。無力ディーラーのたわごとだと思って下さい。
では。
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「政策委員会の討議事項が無いんですか??」(2004/02/09)
先日の金融政策決定会合では、何の政策変更もなかったのですが、物価連動国債の適格担保化と国債現先オペでのマージンコールに対する金銭担保の導入というのが発表されておりました。
正直申し上げてこの程度の技術的な話をわざわざ政策委員会で審議するような事項なのか疑問に思う訳です。金融政策決定会合で話をする事がないので、こんな話でもしないと間が持たないのか、はたまたパフォーマンス大好きな今の日銀ですんで、とにかく「何か動いている」というイメージを作りたくてやっているのか。まぁどちらにしても「おまいらは諸葛孔明か」と突っ込みたくなってしまう状況ではあります。
そんな訳で、ますます論理破綻の金融政策で、真面目にチェックするのが馬鹿馬鹿しくなって参りますが、それにもめげずに総裁定例会見チェックを(編集時追記:2004年2月9日付をご参照ください)するのでありました。
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「時間軸の外し方/高橋財政の評価」(2004/01/29)
○時間軸の外し方
昨日のFOMCミーティングではスタンスの変更はなかったのですが、米国流時間軸であります「かなりの期間」現在の金利水準を続けるというお馴染みの文言(for
a considerable
period:スペルあってるかな?)が書き換えられているそうで(実は原文まだ見てません)早速米債は急落と実に香しい状況。
で、ニュースのお話だけで色々書くのも大変恐縮なのですが、文言が変わったとは言え、「低金利は継続する」という趣旨は声明文におりこまれているようです。お馴染みの文言が無くなっただけで「すわ早期引締めか」と動くのは、まぁ仕方の無い所ではありますが、一頃の日本での「時間軸短期化への懸念で大騒ぎ」を彷彿させる物を感じました。
政策当局は「ショックを与えないように徐々に時間軸を外していこう」と思っている段階であって、すぐに利上げがどうのこうのという話ではないと勝手に思っているのですが、それにしても文言一つ書き換えただけでこの有様。時間軸っつー妙なコミットメントを導入すると、その時は効果があるのですが、出口を探そうとすると大変な事になるというわけですな。
今回、米国で時間軸に手をつけようとしているのは「景気回復」だからという事なのですから、債券市場に連れられる形で株式市場が下落したのはご愛嬌なんでしょう。しかし「時間軸にちょっと手をつけるだけで株式市場が下落しちゃいます」という話になってしまうと「設定した時間軸が何時までも外せない」というどこかの国のような香しい状態になりますので、あたくし達もそうですけれども、日銀様はこれからのFRBの舵取りを見ていきたい所でしょう。
○いわゆる高橋財政の評価
金融政策に関して勝手なことを言っておりますので、ちったぁ勉強しなければとおもいまして、金融政策に関して色々と述べている本なんかを買ったり、せこく立ち読みしたりしております。理系出身の筈なのですが経済学の本で算式が出てくるとゲロゲロになるので立ち読み及び読書は遅々として進まないのでありますが。
で、デフレ脱却に関して色々と論議が起こるわけなのですが、どうも「高橋財政」に関する評価をどうするかと言う点がポイントになっているのではないかと。今更気がつくとはあんた遅過ぎと言われそうですが・・・・・・
何で気がつかなかったかと申しますと、「高橋財政って高橋是清さんがやっているときは上手く回っていたけれども、根性の無い後継者たちがやったら財政発散をおさえられずに結局破綻したじゃん」という認識でいた為なんですけど。
上手く回っていたというのはやや正確さを欠く表現だと思います。昭和11年予算案策定時には財政の健全化を求める高橋蔵相と軍部が対立して、2・26事件での高橋蔵相殺害の伏線になっているのですけどね。
今の大衆民主主義国家状態で、コントロール可能な「高橋財政」の実行ってぇのができるとは到底思えない訳でして、理屈上は上手く行くかもしれない「高橋財政」は政治的にコントロール困難だと思いますが、どうなんでしょうね。
(以下の部分は南條範夫著「達磨宰相・高橋是清」PHP文庫から引用致しました)
ちなみに、昭和10年11月27日の新聞紙上では、軍部予算復活問題を論議して閣議における高橋蔵相の意見陳述が掲載(白根内閣書記官長のメモによる)されたそうでして、朝日新聞では「軍部たしなめられる」という見出しで高橋蔵相の意見を報じたそうです。
・・・・予算は国民の所得に応じたものでなければならぬ。財政上の信用と言うものは無形のものである。その信用維持が最大の急務である。ただ国防のみに専念し、悪性インフレをひき起こし、その信用を破壊するごときことがあっては、国防も決して安固とはなり得ない・・・・・
と言うわけで、今更勉強中のあたくしでありました。
#いやはや、今朝のドラめもんが俺様メモと化しておりますな。
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「『金融政策変更』を過去の発言などから整理しました」(2004/01/21)
昨日の金融政策決定会合。ほぼ大勢は「追加緩和なし」と見ていたようですが、あたくしも伊達に自称日銀ウォッチャーやってません。とうとうやりやがってくれました。あまり当って欲しくない予想が当るのも複雑な気分ではあります。
それでは今回の金融政策決定会合での変更点をチェック、あるいは罵倒してみましょう(^^)。
○当座預金残高目標の引き上げ
『日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、金融調節の主たる操作目標である日本銀行当座預金残高の目標値を、これまでの「27〜32兆円程度」から「30〜35兆円程度」に引き上げることを決定した。』
と言う事でして、大体3兆円の目標値引き上げであります。既に先日来ドラめもんだけでなくほんまものの有識者からも「円売り介入の不胎化操作によるクラウディングアウトを防止するための引き上げに過ぎない」と言われておりますし、昨年10月2日にはマネーサプライ真理教徒の岩田日銀副総裁が記者会見で以下のように言及している事は以前こちらのドラめもんでご紹介しているかと存じます。
『8月18日の記事についてであるが、先週、内閣府の国際セミナーでも同様のことを申し上げた。すなわち、今年に入ってからの為替介入額は、財務省の発表によると、現時点では13.5兆円、先月までは9兆円程度であった。一方、年初からの日本銀行の追加的な流動性の供給額は計10兆円──3月2兆円、4月5兆円、5月3兆円──で、偶然ではあるが、為替介入額と追加的な流動性の供給額がほぼ同額であった。このように、国内の流動性の供給と介入を併せて行うと、事後的には、「非不胎化政策」と呼ばれる政策を実行したのと同じ効果が出る。また、これも結果的にはであるが、日本銀行が米国債を購入するのと同じ経済効果が生じる、ということを申し上げた。』
まぁ事後的であれ、従来の日銀理論では実行し得なかった「非不胎化政策」が実施できているのですから岩田副総裁もニッコリと言う事でしょう。一応岩田副総裁はこの(昨年10月の)会見では「あくまでも事後的に発生していることだ」というスタンスでして、同じ会見で「だからと言って介入額の増加=追加的金融緩和の量」である必要は無いとの趣旨の発言もしております。
何はともあれ、今回の当座預金残高目標額の引き上げの理由はこんな感じです。
『日本銀行は、以上のような情勢(引用者注:景気は緩やかに回復し持続性もある。物価は需給バランス改善しつつも小幅下落で、金融為替市場の動きがリスク要因)を踏まえ、デフレ克服に向けた日本銀行の政策スタンスを改めて明確に示し、今後の景気回復の動きをさらに確かなものとする趣旨から、当座預金残高の目標値の引き上げを行うことが適当と判断した。』
もはや説得力皆無です。まるで何処かの国の首相がやっている事と同じではないかと申し上げておきましょう。そういえば瞬間的に話は飛びますが、某国首相はイラクへの派兵の言い訳に事もあろうに「兼愛」「非攻」「尚賢」をモットーにした(尚賢はどうでもよいが)墨子の言葉を引用したそうですな。もうアフォかヴァカかと。
という余計は話は置いておくとしまして、岩田副総裁が過去に指摘しているように
・事後的には、「非不胎化政策」と呼ばれる政策を実行したのと同じ効果が出る
・結果的にはであるが、日本銀行が米国債を購入するのと同じ経済効果が生じる
という当座預金残高目標の引き上げ。金融経済情勢がより一層の緩和を求めるような状況でもないのに目標額を引き上げると言うのでは、岩田副総裁の指摘通りのことが政策目的になっているのではないかと言われても全く反論できないでしょうな。
と言うわけで、金利をゼロにして流動性を供給することによって「ポートフォリオリバランス効果」を期待していた現在の金融政策の枠組みはとっくの昔に崩壊しておりますが、その代わりに日銀の流動性供給で米国債券市場が堅調に推移するために世界景気の下支えが出来きるという無茶苦茶な経路で、量的緩和が国内へ波及効果をもたらしたという事になるのでしょう。
軍事でも経済でもご奉仕とまるで宗主国の手先(以下自主規制)・・・・・
さて、この論理的破綻を来たしている当座預金残高目標額の引き上げなんですけど、もう一つ寒いものを感じたのは総裁記者会見で明らかにされたのですが、「反対が2票しかなかった」という事です。
ご存知の通り、最初は田谷さん、その後は須田さんも反対に加わり、最近は植田さんも「理念無き当座預金残高目標引き上げ」に反対票を投じていると言われておりました。ところが今回、そのうちの1名が脱落(予想では植田さん)してしまったのです。
明らかに今回の当座預金目標引き上げは「円売り介入の事後的な非不胎化」を狙ったものであって、「財務省の円売り介入への強力なサポート」として位置付けられるべきものであります。その性格は前回の引き上げと全く同じであり、なお露骨になってきております。
然るに、今回反対票が1票減ったというのは、完全諦観モードになっているのか、はたまた円売り介入非不胎化賛成なのか良く判りませんが、何はともあれ日銀の政策委員会の機能が壊れてきているという事を意味するのではないかと思う訳でございます。
もはや中央銀行としての矜持も理念もなくなった日本銀行はどこに行くんでしょうかね〜。
○資産担保証券買入の基準緩和
福井総裁の提唱で始まったような鳴り物入りの資産担保証券買入。元はといえば就任記者会見におけるこんな所から始まっている訳ですな。
『日本銀行としては、この面で、国民の皆様の期待に応えられるように、引き続き、知恵を出してまいりたい。「知恵を出してまいりたい」という意味は、日本銀行の最も有力な武器である金利機能が使えない状況に至っているということであるので、日本銀行の総力を挙げて知恵を絞り出し、それによって適切な対処をしていきたいということだ。』
『流動性をより多く供給することによって、マネーサプライ増加につなげる、あるいは実体経済に対して良い影響を与えていくということであるから、それは日本銀行が流動性を供給したその後の伝達径路が、十分磨かれていないと目的を達成できない。お金は供給したけれど、金融部門の中で空回りする事態になる。これまでのところ、そういった状況がかなり現出しており、いわゆる「流動性の罠」にはまったような状況が続いているということである。』
『従って、デリバリー・チャネルというか、お金を末端にきちんと届けるという「出前持ち」のような仕事は、大変地味に見えるが、そこを愚直にやっていきたい。そのためには、銀行貸出のルート、あるいは銀行貸出のルートを通じない場合には、債券市場その他のマーケットの機能の活用を通じて、お金が広く伝播することを考えていかなければならない。』
このあたりが福井さんお得意の「企業金融の目詰まり論」の基本となる部分であります。現実問題ということでは、業務内容は良いけれども財務内容やら何やらの事情で中小企業を中心として企業金融が円滑に機能していないために、乃公いずくんば蒼生をいかにせんって感じで開始した訳であります。>資産担保証券買入
で、始めてみたものの、元々根本であります現状認識が変なので、ニーズがある訳なし。よってオペが機能しない。という悪態は昨日も申し上げたと思います。残念ながら予想通りに(-_-メ)、政策目標の達成よりもオペを機能させる事が日銀にとっては重要だそうで、オペの存続というか拡大解釈によってオペを実施することが目標に摩り替わってしまいました。
で、この内容なのですが、中々香しいものを感じさせます。
元々が「企業金融に目詰まりが生じており、本来資金が供給されるべき優良な中堅・中小企業に資金が回りにくくなっている」という(ありもしない)問題を解決する政策目的で始まった政策ですので、買入対象となる資産担保証券には要件がありました。曰く、
(1)中堅・中小企業関連債権比率要件
・裏付資産に占める中堅・中小企業関連の割合が「金額ベース」で5割を下回らないこと。
・中堅・中小企業は「資本金10億円未満」の会社と定義。
(2)正常先要件
・裏付資産に金融機関の貸付債権が含まれる場合、各貸付債権の債務者が自己査定上の「正常先」に分類されていること。
(3)格付要件
・ABCP等は、a−1格相当の格付を複数取得していること。
・ABS等は、BB格相当以上の格付を複数取得していること。
本来の政策目的を達成する為には実に当然な要件でありますが、ABSのBB格ってのは結構ゆるゆるな要件ですな。で、今回はこれが緩和されたのですが・・・・・・・
(1)の要件については
・5割の算出ベースを「金額または件数」に拡大(件数ベースで5割も可とする)。
・中堅・中小企業の定義を「資本金10億円未満または常用雇用者数999人以下」の会社に拡大。
と言うことです。幾ら何でも最初から極端な事はしないと思いますが、この定義ですとお為ごかしに数千万円程度の中小企業債権を件数稼ぎにプールしておいてドカンと大企業向けの債権をぶちこんだ資産担保証券も対象になるという訳です。実に香しい。
おまけに「常用雇用者数999人以下」という事ですが、なんちゃらホールディングなどという持株会社を始めとして、大企業の金融子会社あたりも見事に対象になってくる事でしょう。非常に香しいものを感じます。要件緩和で骨抜きもいいとこ。
この骨抜きの言い訳がお笑いなのでご紹介しておきましょう(-_-メ)。
・中堅・中小企業関連債権を裏付資産に組み入れるインセンティブを高めるため、新たに「件数」に関する基準を追加し、当該基準を満たす資産担保証券も買入対象に加える。
・中堅・中小企業金融の円滑化に資するとの観点から、「中堅・中小企業」をより肌理細かく定義する。
特にお笑いなのは2番目ですな。「きめ細かく定義」っていうのは定義を厳格化する場合に言う言葉であって、「または」で対象を拡大しておいて「きめ細かく」もあった物ではないでしょう。もしかしてギャグですか??
と、悪態をついた所で(2)の要件ですが、こちらの緩和は簡単でして、
・本要件を撤廃する。
です。元々ABSに至ってはBB格付け(元利金の回収に懸念があるって奴ですな)のものまで買入というゆるゆる要件があるので、この要件を撤廃した挙句に(1)の要件が緩和されると、ど〜ゆ〜事になるのでしょうか。
極端な話しをすれば、大口要管理先以下へのでかい貸出債権としょぼい中小企業への貸出債権をプールしたABSを組成しておけば、そのABSのうちBB格部分までは日銀がお買上してくださるという実に美しい話になる訳ですな。
現状では投資適格部分については世の中の機関投資家様が先を争ってお買上となっていますので、不適格部分だけ日銀に押し付ければ良い訳ですな。そのうち格付け要件も緩和されるのではないか(今回も緩和されてますが大勢に影響がない緩和です)という気がしてきます。
本来の政策目的がどこかに行ってしまい、総裁の鶴の一声で鳴り物入りで始まった「画期的な新政策」それ自身を実行させるために驀進する日本銀行。もう情けないとしか申し上げようがありません。世界に稀なる中央銀行です。
○と言うことで、今回の政策レビュー
散々書きましたのでまとめも何もあったものではありませんが(と、あたくし既に激怒状態ですな^^)、今回の政策は近代国家における中央銀行設立の意義、即ち「中央銀行の政治からの独立」を自ら破壊するという実に素晴らしい行為でありまして、そのような歴史的な大仕事を達成された福井総裁さまの英断には実に頭が下がる思いです。
特に大衆民主主義における政治っつーのは極めて場当たり的目先的な政策に走るというのは致し方無い面がございます。そういう意味では某学者大臣さまなんぞ政治における素晴らしい活躍をする資質をお持ちのお方ではございます。
しかし、通貨の番人(正確には通貨価値の番人ではないかと思いますが)たる中央銀行は政治とは一線を画して良くも悪くも安定して構えていないと、通貨の番人たる役割が果たせないというものです。
この調子では、政治からの要求に対して日銀は何でもやるという状況が益々進行することになるでしょう。政治としては結構な打ち出の小槌が出来たわけでして、日銀法改正の理念も全て崩壊という事でしょう。
行き着く先は財政インフレだと思いますよ。何時やってくるのか判りませんが。
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お題「あまり纏まっていないので箇条書きモード」(2004/01/20)
や〜(^^)、調子に乗って2日連続で相場見通しについて能書きを垂れたらきっちりと外しましたな。とほほのほ。
通常国会も始まりますし、金融政策決定会合も実施という事で、やっと政策も動き出す(かど〜かは知らんが)のでもう直ぐネタには困らないでしょうな。只今端境期。
○金融政策決定会合の注目点
本日の決定会合は日銀の「展望レポート」の四半期ごとの見直しというのが(後日追記:発表されるのは通常の金融経済月報で、位置付けが記述の通り)公表されるらしく、ど〜ゆ〜内容になるのかが注目される所です。
と、申しましても最近の政府経済見通しなんかを見ていると、「景気は回復傾向だけど物価は横ばいないしは弱含み」という従来の見通しの延長線上になるでしょう。あたくしの考える理由は非常に単純でして、「まだ時間軸を短縮する訳に行かない」と言う事。あまりにも早くに景気回復モードになってしまった為に、債券市場は暴落スパイラルから早期利上げまで織り込んでまった昨年の反省からして、時間軸が短期化するというような印象を持たせる訳には行かないでしょう。
ところで、昨日もNY市場の祝日を狙ったのかどうか知りませんが、円売り介入があったのではないかと思われる動きが為替市場にございました。相変わらずの円売り介入で、短期金融市場での日銀のオペレーションがややしんどくなっている印象があります。資金供給オペを長めの期間で実施しようとすると、同時または予め資金の吸収オペを実施しないといけない(当座預金残高目標を理由も無く突破しちゃうから)状況になってしまいました。
そんな訳でして「円高への経済への悪影響を緩和する為」と銘打って当座預金残高を引き上げる(実態は介入の非不胎化というマネーサプライ真理教の皆様大喜びの政策なのですが)という苦し紛れの政策もありかなとは思うわけであります。何せ介入の向こうは財政赤字絶賛拡大中の米国大統領でございますから、弾は用意しておかないといけませんな(-_-メ)。
○金融政策にも「損切り」が必要なのではないかと
福井総裁になってからというもの、色々と新たな機軸を打ち出すのがお得意な技となってしまいました。まぁあまり意味があるのかどうか良く判らないけれどもとりあえずサプライズみたいな政策を出すのがお好きな方(どこかの首相みたいですな)だと言うのは良く判りましたが・・・・・
資産担保証券の買取りは本来の「企業金融の目詰まり論」が事実誤認に基づくものだったと思われまして、政策目標に合致した形で実施したオペレーションは開店休業状態(-_-メ)。で、開店休業ならば廃業(オペから撤退)すれば良い物な筈ですが、先日の証券化市場フォーラム(何で日銀が主催しているのか理解に苦しみますがそれは兎も角)では「資産担保証券の買取をより利用しやすくする」などとあらぬ方向に驀進中。本日の金融政策決定会合で何らかの進展があるはずです。
一たび政策が動き出すと政策の実施それ自体が目的になってしまい、本来の目的たる「政策目標の達成」がどこかに行ってしまうというのでは、どこぞの干拓やら河口堰やらダムなんぞを笑えないというものです。というか、土木系公共事業は中止すると雇用が喪失しますが、機能しない金融政策を止めても別に誰も困らないと思うんですけど、どうなっているんでしょうね〜♪
あ、強力に実施を言い出したとある人物の体面上困るのか(-_-メ)。
折角おっぱじめた「長期間の手形オペ、債券買現先オペ」も碌に実施していない(まぁこれもやりすぎると技術的に逆効果なのでやらない方がよいのですが)わけですし、何とかならんもんですかね。訳の判らんものまで日銀が買い取って、震災手形状態になったら洒落にならんのですが。
○構造改革と経済財政の中期展望
http://www.kantei.go.jp/jp/kakugikettei/2004/040119kaikaku.html
昨日の閣議で正式に決定した表題の「中期展望改訂版」をパラパラと眺めていたのですが、何をどうやりたいのかあたくしの知能では判りかねる所が多々ありますので困ったものだと思いつつ。
金融政策に絡むお話は当たり前ですがヘイゾー先生の面目躍如。金融政策に直接絡む話しはそんなにありませんが、その中には「資金供給」のお言葉が並ぶ並ぶ。
『金融仲介機能を回復することや産業金融機能を強化することにより、資金供給を円滑化する。』
『日本銀行は(中略)コミットメントをより明確化した。このコミットメントに従った、潤沢な資金供給が期待される。』
『さらに、政府の行うより強固な金融システムの構築に向けた取組と、日本銀行による金融政策の波及メカニズムを強化するための取組などにより、資金供給が増大していくことが期待される。』
マネーサプライを増やすと何故景気が好転するのかさっぱり判らない、と申しますか通貨やら国債やらへの信認を維持したまま人為的にマネーサプライを増大させる方法(減らすのは可能だとおもうが)が有るのでしょうか??という疑問がありますな。しかもその疑問に関する答えは既に実証されているような悪寒が・・・・・・
「金融政策の波及メカニズムを強化するための取組」って資産担保証券の買取なんでしょうから、残念ながら当分は撤退しないようですな。泥沼化しないようにしましょう。
ま〜よくもまぁこれだけ訳の判らん文章を作りますな〜という感じなのですが、どこがどう変なのか良く判らんという情けない状況ですので、また後日考えてみます。それにしても「改革工程表」をまた改定するそうで、子供の「お勉強計画」じゃあるまいし・・・・・・と思うのでありました。
甚だ纏まっておりませんがこんな所で。
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「ところで金融政策決定会合ですが」(2004/01/19)
金融政策決定会合です。円売り介入のサポートの為に当座預金残高目標を屁理屈をつけて引き上げるという荒業が起きる可能性は無しとは言えませんが、常識的に考えれば何もないと見るものでしょう。物価に関する見方をどうするのかというのが難しいお話でして、先日も鉄鉱石の輸入価格引き上げのニュースがあったり、鳥インフルエンザが流行してみたりとCPIに色々と影響しそうな事があちこちで起きているのをどう捉えるのでしょうな。
一応、現在の表向きの政策の枠組みは「消費者物価指数が趨勢的に前年同月比プラスとなる」事を持ってデフレ終了と認識するようです(実態は円売り介入の為に当座預金残高目標を累増させているだけのようですが)ので、そのあたりの議論がどうなったかというお話に関しては要注意。
散々強気の話をしておいて何ですが、時間軸への信用が薄れるとまた悲惨な相場が待っている訳ですので、その点だけは要注意。まぁ日銀も馬鹿ではないのでそんな事はしないと思います。
って書いている所でふと思ったのですが、所謂「ディマンド・プル」型のインフレならば金融引締めの意味もあると思うのですが、「コスト・プッシュ」でデフレが解消されて金融緩和を終了(今の量的緩和を終了させると相当の引き締め効果があると思いますよ〜)したら只のスタグフレーションになってしまうんじゃないでしょうかね〜。よー判りませんが。(後日注記:ここのところは何を言ってるでしょな>自分・・・・・言いたかったのは「コストプッシュ」というよりは「モノ不足」ということかと)
と言う事で、本日の債券市場もまた注目と言ったところですな。
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「連日の量的緩和談義」(2004/01/15)
最初に激しく重要な正誤。昨日と一昨日に為替介入資金の「不胎化」がどうのこうのというごたくを並べましたが、「円売り介入によって市場に供給された円資金を金融市場から吸収しない」というのは「非不胎化」というのでした。思いっきり間違えておりました事を陳謝致しつつこの場で訂正させていただきます。申し訳ございません。
さてさて、マーケット的にネタもございませんので、引き続き同じネタで引っ張りましょう。某著名日銀ウォッチャー様のレポートで量的緩和の出口問題を為替と絡めて議論しているというものが既に先週金曜日に出ていたそうでして、昨日同僚から見せてもらったのですが、概ね同じような事を指摘していたので嬉しく思いました(と自画自賛)。
ただ、某氏の場合は「為替市場への介入は結果として不胎化されている」という結論になっている所があたくしと違うのですが・・・・・・「日銀の当座預金残高目標引き上げの意味付けは今や為替市場への介入を通じた米国金融市場下支え」などという事を会社の名前を背負って書くのは「日銀に喧嘩を売る」というのと同値であるので書けませんわな。心中お察しいたします。>某氏
前振りの与太話が長くなってしまいましたが、本日は別の観点から量的緩和政策を考察してみましょう。
○量的緩和を無邪気に解除した場合に何が起こるのか
昨日の論理展開で行きますと、量的緩和政策というのは実はCPIターゲットが達成されただけでは解除できない訳でして、米国のプライマリーバランスの達成とまでは言いませんが、米国の財政赤字ファイナンスを強力に行わなくても何とかなる状況になるまでは量的緩和政策を継続する必要があるという話でございます。
とは言いながらも、日銀はそんなことは心で思っていても絶対そうは認めない訳でございます(そういうのを欺瞞というのですが)。日銀執行部(というか福井総裁)は昨年の「量的緩和出口政策議論」に見られますように、現状の不本意なる金融政策はとっとと終わらせたいというのが本音かと思います。昨年後半に何度となくご紹介した福井総裁の講演もやたら「景気回復奉祝奉祝」モードになっており、福井総裁が審議委員中一番の景気強気派のようです。
そんな事を考えますと、そもそも日銀は量的緩和政策を終わらせたがっていると考えるのも大いに合理的な推論でございます。で、実態ベースは量的緩和政策が米国の「低金利+財政拡大」という金融財政政策を支える構図になっている事なんぞは無視して「CPIターゲット達成おめでとうございます。デフレは終息しました」と言ってあっさりと量的緩和政策を解除する可能性は大いにある訳でございます。
この場合何が起こるのでしょうか??
@為替介入弾切れ→米国債と米ドルの下落
介入が弾切れした位で米国債が崩れるというのも極端なお話かもしれませんが、これだけ大規模介入を行っていると米国の財政赤字ファイナンスに対して介入が占める比重が高くなって来てしまう訳でして(具体的な数字を出さないところがちと情けないですな)、米ドル下落が先に来てから米国債の支え役がいないことに気が付いて下落となるのでしょうな。
そもそも日本の介入が無ければとっくの昔に上記のような状態になっている筈でして、日本の円売り介入によって余計な先送りが行われているというのが現状なのではないかと思います。余計な先送りをすると問題がドンドン大きくなって、悲劇的な最後を迎える(極稀には先送り中に問題が解決されますが)というのは日本のあちこちで起きている現象かと思いますがねぇ。
A無理矢理介入→日本の短期金利急上昇
量的緩和と金利ターゲットというのは技術的に成り立たないお話ですので、現在の規模で介入を継続的に実施すると、円売りを行った時点で短期金融市場の円資金が余剰になりますので、ベースマネーが拡大しないならば余剰分の円資金は売りオペなど(最終的なケツは政府短期証券の発行増になります)で吸収しないといけない訳であります。売りオペにせよFB発行増にせよ短期金融市場ではテクニカル的に金利上昇要因になる訳ですな。
全然意味は違いますが、資金フローだけ見ますと円売り介入っつーのは国内短期金融市場のお金で米国債を買っているとも言えるわけでして、本来国内短期金融市場で回るべき金が米国債に化けてしまえば、それだけ資金需給が逼迫する。といった方が(ややこじつけ的説明ですが)良いかもしれませんな。
他にもバリエーションが考えられそうなのですが、あたくしが今のところ思いつくのはこんなところでしょうか。。。
○そもそも「財政拡大+低金利」と言っても・・・・・
米国が日本の真似をするが如く財政拡大+低金利(+自国通貨安)という縁起が悪い金融経済政策を実施しておりますが、日本と米国では状況が全然違う訳で、そもそも一緒くたに論じるのも乱暴ではあります。日本の場合は財政拡大を自国内でファイナンス可能なのですが、米国の場合はファイナンス出来ませんわな。その代わりに米国には基軸通貨国だというのが大いなるメリットな訳ですが。
その辺を考え出すとこれまた無限思考ループに入ってしまうので以下省略、というか考え纏まってないので書けません。
○リスクシナリオはドル高かドル安か?
まぁその原因によってどっちが危ないとも言えないですが、これもまた思考実験ということで・・・・・・・
@ドル高のケース
一番洒落にならないケースというのは日本からの資本逃避して、ドル高というよりは円安になった時ではないかと思います。今や米国までも支えるという豪気な日本財政(介入資金は結局財政資金ですから)が無事に回っているのはひとえにマネーが国内に滞留しているからでしょう。
資本逃避が真面目に起き出しますと「円安で景気回復」の前に財政が回らなくなって財政インフレが起きる危険性の方が高いのではないかと思うのですが、例によって数字的な論証が無いのであまり説得力のあるはなしではありませんな(汗)。
単純に現在のドル安状況が改善されるのであれば、米国の「双子の赤字」に対する懸念が後退している事を意味する訳ですから、それは日米融通手形経済状況からの脱却に向けたチャンスになるかとは思います。
調子に乗って「月面開発を行う」とか益々大風呂敷状態になっているブッシュ君が大統領やっているうちは財政均衡化への道なんぞ不可能ですけどね。
Aドル安のケース
ドル円ベースで今程度のちんたらとしたドル安が継続しているうちは、引き続き「円高阻止に介入」と称しつつ「米国債の買い支え」を行うという素晴らしい欺瞞じゃなかった介入を継続できるので何ら問題なし。
問題になるドル安というのはやはりドル急落でしょうか。米国の「双子の赤字」を支えるパワーが無くなってしまっていると言う事を意味において。
まぁ基軸通貨国であり国際経済の中心に位置する国は世界経済成長の為にある程度赤字を出した方が良いとも言えるのですが、何事も過ぎたるは及ばざるが如しでございまして、双子の赤字が拡大しすぎると赤字調整の為にドルが急落するというある意味自動調整装置が働いていたのが管理通貨制度における今までの流れだったかと思います。かなり乱暴な割り切りかたしてますが。
ところが、日本が余計な買支えをしているので、とっくの昔に調整されるべきドルの価値が調整されずに進行しているとも言える訳でして、余計な買支えでドルを延命させると反動が恐ろしい訳ですな。
いくら介入無限大と言いましても、世の中限度という物がありますから(本当に無限だったらそれはそれで恐ろしいが)どこかで無理が生じると思います。ドル安トレンドが終わる前に日本が弾切れになってしまい、おまけに米国財政赤字は相変わらずそのまんまという状況になってしまうと・・・・・・・これまた洒落にならんと思うのでありますが。
と言うわけで、本日もまた何だか纏まっているのか纏まっていないのか良く判らん。
○読者様から頂いたシナリオ
現状の量的緩和の行き着くシナリオとしてこのような図を読者様から頂きました。なるほどなるほどと思いつつご紹介させていただきます。
>次の一手は介入継続→大量資金吸収→「一部」調達不安→@国有化→A量的緩和拡大。これによりペイオフまでに問題行の処理(=@)、少なくとも大統領選まで米国のファイナンス援護(=A)が達成されます。
>@は日銀のかねてからの主張、量的緩和の「理由付け」が出来てブッシュに貸しが出来る(というか総選挙のときの借りを返す?)の図ですね。
>被害をこうむるのは、為替差損をくらい、ぼろ銀行に税金突っ込まれる国民。民主主義下の政府(ふくむ日銀)とは国民意思の「最大公約数」を立案実施する機関なはずですが米国を助けることが国益になるという説明をせず、独立性なんぞというあって無きが如しの看板を振りかざすと看板を守るコストまでかかってしまうわけですな。
と、しまいには人の褌で相撲を取っているあたくしでした。
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お題「量的緩和政策再考(昨日の続き)」(2004/01/14)
昨日の続きでございます。
昨日のドラめもんでは「量的緩和が為替介入を通じて米国の財政赤字ファイナンスに組み込まれてしまうのはいかがなものか」という趣旨で余り纏まっていないお話を致しました。その後何人かの読者様とお話させていただきまして考えを整理中です。整理中なんですけれども、どうも考える程に複雑怪奇な話ですので、なおも整理が必要(というか整理ができれば小論文書けるのでは)です。
○当座預金残高引き上げに関する一つの解釈方法
昨日申し上げましたように、為替市場で円売り介入を行いますとその分短期金融市場で円資金が余剰になります。で、現在の金融政策の枠組みは「日銀当座預金残高ターゲット」になっておりまして、当座預金残高目標を引き上げないままの状態ですと、介入で供給される円資金の分だけターゲットをはみ出す事になります。
従いまして、ターゲットをはみ出さない為に(恒常的にターゲットを越えるというのは現在の金融政策の枠組みを否定する事なので、自己矛盾になってしまう)は何らかの手段で資金の回収を行う必要が生じるわけでございますな。
で、日銀総裁が福井さんになってからは、何だかんだと屁理屈を捏ねて当座預金残高を引き上げている訳ですが、おりしも米国のフセイン征伐戦争がおっぱじまったのが福井総裁就任直後でございます。その後戦争に伴い財政支出拡大とドル安に呼応するが如く為替市場への介入が増えて行きまして、日銀の当座預金残高目標が拡大の一途を辿るの図。
これは一つの解釈方法に過ぎないのですけれども、当座預金残高目標の引き上げを「介入を通じた米国金融市場の援護射撃」と考えますと昨今の意味不明な当座預金残高目標引き上げの論理がすっきりとしてくると言うものです。この論理、日銀は絶対認めないでしょうけれども。
さて、今月に入ってからも例によってアフォのように介入をしております。先ほど申し上げましたように、大規模介入をした場合にはその分資金余剰になってしまうので、短期金融市場から資金回収を行う必要が生じてしまうのでございますが、今月はラッキーな事に資金不足月でございます。
日本の短期金融市場というのは昔も今も季節要因での資金余剰と資金不足というのが画然としておりまして、今月は資金不足傾向の月です。資金不足傾向にある場合は短期金融市場に資金供給のオペレーションを行う必要がありますので、今月の大規模介入が資金供給オペレーションの代替機能を果たしておりますので、大規模介入の短期金融市場に与える影響が目立ちません。
とは言いましても、さすがに介入のやりすぎが効いているのか、長い期間の買入手形オペ(=資金供給)を実施する為に資金の吸収を行う必要が生じてしまっているようでして、昨日は国債売現先オペ(=資金吸収)を実施して買入手形オペを実施するという動きをするようになっております。ちょっと厳しそうな雰囲気ですな。
で、先読みを致しますと、そろそろ当座預金残高目標を引き上げておかないと日々の短期金融市場での調節に不具合を起こしそうではあります。起こしそうなのですが、金融政策決定会合で反対票が3票もでている(総裁と副総裁で3票なので、執行部以外の票決が既に賛否同数な訳ですな)理由付けに乏しい当座預金残高目標引き上げがすんなり通るとも思えませんので・・・・・・・(-_-メ)
ということで、今月の金融政策決定会合で当座預金残高を引き上げる可能性は無いとは言い切れません。ただ、本命は資金余剰月。資金吸収オペレーションの実施に無理が生じてしまうので、やむなく当座預金残高が目標を恒常的に上回るようになってしまってから追認のような形で引き上げるという格好になるのではないかと思います。
○量的緩和の出口に関する愚考
量的緩和の出口に関してはご存知のように「CPIターゲット」という事になっております。まぁこれも曲者で、CPIターゲットが達成されても総合的判断という屁理屈を持ち出して量的緩和を終了させないという大技はあるのですが。
ところが、先ほどあたくしが申し上げたような観点、即ち「量的緩和政策は為替市場への介入を通じて米国金融市場の下支えを行っている」というロジックに基づきますと、CPIターゲットが達成されたからと言って量的緩和を終了させる事は出来ないという結論になる訳です。
昨日および上段で申し上げました通り、量的緩和政策を終了させてしまいますと為替市場への介入を実質的に不胎化する事は不可能(介入を不胎化(訂正:非不胎化介入の誤りです)すると自動的に量的緩和になってしまいます。マネタリストに言わせると出来るらしいですが、短期金融市場の技術的観点から不可能です)でして、円売り介入をすればその分何らかの手段で短期金融市場での資金吸収が必要になります。小規模の介入なら問題無いでしょうが、今のペースで介入を続けていると短期金融市場で強烈に資金吸収を行う必要が生じますので、大規模な円売り介入は短期金利の急上昇につながってしまいます。
という事ですので、米国金融市場の下支えを行う必要性が生じている限りにおいて量的緩和政策を終了させる訳には行かないという訳でございますな。
本来「財政拡大」+「低金利政策」のセットによってデフレ脱却を目指していた筈の金融財政政策ですが、何時の間にやらその金融財政政策の意味が変質してきてしまったと言う事なのでしょうか。何だか狐につままれたような気分なのですが、どうも気が付いたら日銀の量的緩和政策が色々な所に組み込まれてしまい、抜けるに抜けない泥沼状態になってしまっているのではないかと思います。
そういえば米国も「財政拡大」+「低金利政策」状態ですな。日本がそのサポート役になっているというのがお笑いなのですけれども。
まだなんか結論が出てませんので、明日も続くという感じですな。書きたいけど今百歩纏まってなくて書ききれない課題が幾つかございまして・・・・・・・・
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「これでいいのか『量的緩和の輸出政策』」(2004/01/13)
先週金曜日には、と申しますか金曜日にも財務省による為替市場への介入が行われましたようであります。珍しく瞬間的に2円以上ドル高になるような派手な介入でした。
派手な介入というのは大体何かのイベント(というか要人発言)とぶつかっていることが多いんですけれども、今回は谷垣財務大臣の会見か何かで出たコメントにぶつけた様でございますな。ちなみにコメントは外為特会から日銀への外債レポ取引に関する類。
しかし介入で2円以上押し戻したドル円相場ですが、戻ったのはほんの一瞬でして、介入が終わったあとではまたまた円じり高となって気がつけばまた106円台になっているようですな。何の為の介入だったんでしょうね。
実際に外為特会から日銀へのレポ形式での外債売却が実施されたかどうかは後付けでしか判らないのようですので、いつ実施されるかと言うのは何ともいえませんが、状況証拠から言えば既に外債レポをあてにした介入は行われているように見えます。
そんな訳でして、とうとう日銀も介入無限連鎖に組み込まれてしまいましたのですけど、この無限介入にお付き合いするという事態は色々と問題があると思うんですけどね〜♪
○いろんな市場のシャブ中化
皆様ご存知のように、短期金融市場では量的緩和政策によって見事に機能不全状態になっているのですが、昨今では為替市場というかドル円相場だけは介入パワーで思いっきり相場が安定的になっております。安定的にドル安になっているだけなのですけれども、他通貨と比較してみれば見事にドル円相場もまた機能不全モードになりつつあります。
で、今朝の報道番組でも言われてましたが、最近は日本の為替市場での介入が米国債市場の下支えになっており、日米の金融市場への流動性供給に繋がっていると言う事も指摘されております。先日来しつこく申し上げているように、意図しているのかしていないのかは判りませんが(というか意図していると思われ)結果的に為替市場の介入が米国の財政赤字ファイナンスになっている訳でして、これもやりすぎると止められなくなる訳ですな。
○米国財政もまた
雑な議論で恐縮なのですが、ブッシュ政権が現在やっている事はブッシュの親父が散々こきおろした(と記憶してますが)悪名高い「レーガノミックス」に似ているようにあたくしには思える訳です。
レーガノミックスは結局政策の誤りを米国債暴落(金利急上昇)という形でツケ払いさせられたのですが、レーガン時代と現在の違いは(もちろん他にも色々ありますが)日本政府による財政赤字ファイナンス装置があると言う事なのではないかと思うわけです。
永久に財政赤字ファイナンス装置が機能し続け、その間に財政均衡ができるようになれば話は全く問題がないとおもうのですが、日本の例を見るまでも無く大衆に主権のある国家における財政支出っつーのは放置していくと益々拡大する物でございます。普通にやっていると減る訳ありません。
で、その財政支出拡大に関する歯止めのひとつとして機能するのが債券市場なわけでございまして、要するに国債が消化不能になれば債券価格の下落を通じて色々な所に不都合が発生してしまうので、財政拡大への歯止めになる訳です。
日本に起きましては、未曾有の財政赤字が絶賛拡大中なのですが、日本政府+日本銀行は日本の財政ファイナンスの繰り回しの為に目先の国債発行額をツケ回しとやり繰りで上手に誤魔化しつつ量的緩和政策によるジャブジャブの流動性供給で「財政赤字」を市場のテーマにさせないようにしているのはご存知の通りであります。
で、これが今のところ非常に上手く機能している事でもありますので、今度は米国財政ファイナンスをおっぱじめているのではないかと思ってしまう訳であります。日本で報じられている米国市場の話題(なんていうのはあまりあてにならないですが)を聞いていても「財政赤字拡大への懸念」というのが意外に話題になっていなさそうな印象を受けます。
まぁ今のところ上手く回っているという事なのでしょうか。
○で、出口はどうするの?
時間の都合上および頭の中が纏まっていないので、以下は思考実験のテーマと言うことで。本日考えたいところですが、何故かロンドン市場で激しく債券先物が買われているので多分本日は暇無しでしょうな(-_-メ)。
日本政府による為替市場の介入が度を過ぎてしまって米国の財政赤字ファイナンスに組み込まれてしまっている現状。何事もやりすぎは良くない訳でございまして、米国の財政赤字ファイナンスに日本政府による米国債購入が重要な寄与をする訳ですから、逆に言えば日本政府が米国債購入を止めれば米国債も米ドルもエライコッチャになってしまうと言う事でしょうな。
その前に米国財政が均衡化して、財政赤字の拡大が止まれば何の問題も無いのですけど、政治状況を考えれば期待薄。よって日本政府は市場介入の名目で米国の赤字ファイナンスを支えないといけない破目に陥るの図。
為替市場で無限介入をしている中で量的緩和政策を解除するとどういう事が起きるかと考えますと、その影響たるや考えれば考えるほど複雑怪奇なのですけれども、とりあえず言えるのは外為特別会計によるクラウディングアウトが生じて短期金利への上昇圧力が掛かるのではないかという事かと。
現在の為替市場への介入は実質的に不胎化介入(1月14日訂正:非不胎化介入の誤りです)をやっているのと余り変わりが無い状況です。為替市場への介入資金によって発生する円資金(円売りドル買いをやるから)がジャブジャブになって日銀当座預金残高が増えてくると、何だかんだと屁理屈を捏ねて当座預金残高の引き上げを行っております。
と言う事は、為替市場での無限介入を続けたままで量的緩和政策を解除して、昔と同じような金融調節を行ってしまいますと、介入で出てきた円資金を強力に回収する必要が出てきますので、短期国債(正確には政府短期証券)の消化難を通じて短期金利に上昇圧力が掛かるということですな。
で、為替介入規模を減らすと今度は米国債価格の下落に繋がってしまい、その後ドル高になるのかドル安になるのかは良く判りませんが、色々と良からぬ事が起きてしまうのではないかと思ってしまうのですが、これが良く判らんので思考実験のテーマとして考えてみたいと思います(^^)。
どちらにしても、日銀の量的緩和政策は考えれば考える程に「出口無しの袋小路」状態に陥っているのではなかろうかと思ってしまう今日この頃でございます。
あんまり纏まって無くてスイマセン。量的緩和政策の出口を為替市場介入とリンクして考えると面白い(けど全然洒落にならない)思考実験ができるかと思いますので、皆様もよろしく〜(^^)。
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「年の瀬に思う」(2003/12/30)
てな訳で皆様のお蔭をもちましてドラめもんを続ける事が出来ました。誠にありがとうございました。気がついた点などございましたらこれからもご意見ご感想頂けますと励みになりますので、こんな駄文ですがお付き合い頂きたい
と思います。
と、挨拶が先に来てしまいましたが、来年の相場がどうなるのやらとつらつら考えつつよしなし事を思うあたくし。
○管理相場化の進展
今年の債券市場は、前半は一方的なじり高→長期債の売りで大幅下落→中期債の売りでもう一発大幅下落という動きでありました。で、このアフォのような下落、何せ2年債が0.25%を超えて売られてみたり5年債が1%を超えて売られてみたりと見事に「量的緩和政策の時間軸」を無視した動きになってしまいました。
で、その動きに懲りたのか、結局日銀は量的緩和の強化策として「量的緩和政策の継続に関するコミット」を行う破目に陥ってしまいました。また、財務省は「国債管理政策」と称して、国債の消化のための施策を打ち出していますが、方向性としては大手業者による寡占状態に拍車がかかるような施策。
まぁ悪いとは言いませんし、大体この国債発行量が平気な顔をして消化されているのは、何だかんだといっても日銀の量的緩和政策と財務省による市場への働きかけによる効果がでかいわけですから、それはそれで評価しないといけません。かつて30兆円枠が突破するだの構造改革路線の継続が危ないだのと言って債券市場が売られた事を思うと隔世の感があります。
先日のドラめもんで雑談的に触れましたが、今や債券市場はパッシブと順張りプロップディーラー的な投資家のウェイトが高まってきておりますし、当局による債券市場管理の強化傾向は強まりこそすれ、弱くなる事はないじゃろうな〜と思いつつ、この調子では来年もまた大手業者による市場の寡占傾向に拍車が掛かるのでしょうな〜とあまり楽しくない気持ちで思う年の瀬でありました。
介入のやりすぎで市場として死んでしまったドル円為替のようにならないことを祈りたいものです。まぁいきなりそうはならないでしょうけどね〜。
○日米の「融通手形経済」
金貸しあるいは自営業をやった事のある方ならご存知の「融通手形」。ご存知でない方のために簡単に申し上げますと、企業同士で商取引の裏付のない手形をお互いに融通し、資金繰りに困った企業が入手した手形を割引に回して当座の資金繰りを凌ぐというもの。一読してお判りになると思いますが、倒産への一番の近道でもございまして、金貸したるもの融資先が融通手形や高利金融に手を出していないかどうかというのは一番気にする所であります。(金融庁や学識のある方々に言わせれば「銀行は貸した後はほったらかし」にしているらしいですけどね)
財務省の外為特別会計といえば、公表資料を見ても何がどうなっているのかよ〜わからん伏魔殿状態なのですが、先週金曜日に日銀が外為特会の資金繰り融通策として10兆円を限度に特会保有の米債を現先方式で円貨でお買い上げという素晴らしい施策が発表されました。
日銀の公表文では色々と但し書きのような表現をいれて、この施策が永続的な物にならないように歯止めを入れようとしていますが、ど〜せこの施策も来年3月末の期限が来たら目出度くロールオーバーされる事となるかと存じます。これで無制限介入への道が開けたと言うものです。
・米国財政赤字垂れ流し
↓
・日本が外為特会という財政資金で買い支え
↓
・米国財政赤字が安定的にファイナンスされるので米国経済失速せず
↓
・米国経済依存の日本景気にもプラス
という図式になっているのでしょうけれども、このスキームの大きな問題点は、どこかで「米国財政赤字の縮小」とか「日本の財政赤字の縮小」という動きに繋がらないと、日米双方とも財政の拡大が見事に進行してしまう事でしょう。
日本が外為特会、しかも打ち出の小槌付きという状況で米国債を買い支える以上、米国としては財政赤字のファイナンスを心配する必要なしと言う「ありがたや節」状態。んな状態に置かれていると財政緊縮政策なんぞ取る意欲も失せるという物でしょうな。
とまぁこの状況たるや、まさしく「融通手形」状態なわけでございます。
一度始めると中々足抜けできず、足抜けどころかどんどん深みに嵌ってしまい、破綻するまでどんどん大掛かりになって行く所なんかは正に現在の拡大する外為特会と二重写しになる所でございます(-_-メ)。
で、この融通手形の行く先なのですが、最初のうちは融通手形の相手方となった資金繰りの悪くない方の企業の力で何とか回るのですが、そもそも資金繰りがいかれるような企業というのは赤字体質なわけでして、融通手形状態を解消できないまま上記のように規模が拡大するものでして、気が付けば双方とも融通手形依存体質になる訳です。
で、当然どこかで資金繰りに破綻を来たした瞬間に終了になってしまいます。その破綻が連鎖反応を起して全部逝ってしまうのが実際の融通手形なのですが、この日米融通手形、もとい介入ファイナンス装置はこのままやっていくとどうなってしまうんでしょうね〜。あまり想像したくない光景ですが・・・・・・・
既にドルユーロ相場で兆候が出ていると言う気も致しますが・・・・・
○そう考えると国内も同じか
良く良く考えれば最近の債券市場でもやっていることは大同小異であるわけです。一般会計では「2010年にプライマリーバランス達成」というお題目に沿って色々とせこいやり繰りをしているのですが、特別会計とか財投機関、地方財政なんかにやり繰りのケツを回しているのを意識的にか無意識の内にか頬かむりしているような債券市場。
国債新規発行30兆円枠を「あれは精神の問題で数字はどうでも良し」的な発言を堂々と行う内閣を捕まえて「構造改革が進展している」という評価もあった物ではないと思うのですが、結局「財政発散問題」という一番重要な問題には触れないままに、無事に国債を安定消化しつづける債券市場もまた同じである訳ですな。
債券市場の場合は「日銀の量的緩和による恒常的な資金余剰」と「財務省による管理政策の強化」によって、何時の間にか国債発行(というか財政赤字)が持続可能かどうかといった観点が抜けて来ている訳でして、まぁいつの日にか寒い事態が起きることになるのは間違いなしながら、その日がいつやってくるのか判らない訳ですな。これがまた困った話ですけど。
○てなわけでして・・・・・・・
来年の日本経済は見かけの数字は結構な状態になるかもしれませんが、所詮は花見酒経済でしょうな〜と思うわけでありますな。もし何かあるとすれば、その時のキーワードは「持続可能性(あえて「サステナビリティ」と言わずに日本語で^^)」かな〜と思っております。
ま、多分「持続可能性」への議論は頬かむりして一年が過ぎることになるとは思うのですが、構造改革らしきものも進まない中で先送りと財政へのツケ送りをいつまでも継続できるとは思えませんけどね。
今年もご愛読ありがとうございました。来年もまた宜しくお願い致します。良いお年をお迎えくださいませ(^^)/~~
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「動く事が自己目的化してしまった今年の金融政策」(2003/12/25)
昨日の時事メインコラム「金融観測」では「今年の日銀十大ニュース=やった全てが事件?」というお題で、福井日銀新総裁就任以来の9ヶ月の金融政策を見直しております。で、結局日銀が矢継ぎ早に動いた事が全て事件なのですが、そもそも何でこんなに派手に日銀が動くようになったかと言う点については「日銀総裁の行動主義の結果と受け止められる」と指摘しております。
まぁ思い出してみれば、総裁就任直後の3月24日に「25日に臨時政策委員会を開催」とアナウンスして以来、この総裁は動く動く。で、この動きもちゃんと現状認識して動いているというよりは、いつの間にやら「動く事自体が目的化してませんか総裁」ってな状況になっているのはご存知の通りです。
先日の金融政策決定会合では「資産担保証券買入の基準見直しについて執行部に検討を指示」をしていた日銀総裁。どういう基準見直しをする結果になるのか知りませんが、先日ドラめもんで悪態をついたように、どっちにしても当初の「中小企業金融の目詰まり論」の政策目的に合致しない方向での基準見直しになる事は間違いない(執行部がゼロ回答すれば別ですが)所でございます。
当初の入口部分に間違いがあった訳ですから、損切り(=施策の中止)をすればいいだけのことですし、「まず行動してみて、うまく機能しないなら取りやめる」という事こそが本来の「行動主義」ではないかと思うのでございますが・・・・・結局「はじめた事を止められない」という帝國陸軍状態に陥りつつあるのが今年の日銀ではなかったかと思う訳ですな。
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2003/12/12
お題「国債市場懇の事を書いているうちに別の話になりました」
国債市場懇談会っつーのが先週金曜に行われておりまして、財務省のWebに議事要旨が載っております。先週金曜の話を今頃するのも何ですが、市場懇談会に参加していない無力業者のあたくしとして思った事を今更。
○参加者多すぎ
今回のお題は「国債市場特別参加者」制度に関する質疑応答というか意見表明って感じなのですが、意見の羅列だけで12ページもありまして、これだけ見ていると纏まってるのか纏まっていないのかよく判らんという所。
単に意見を好き勝手言わせる会なのかもしれませんが、それにしても投資家懇談会と比較してあまりにも「船山に登る」って感を強くする内容(今に始まった事ではないのですが)ですな。
良く良く見ればこの市場懇談会ってメンバー20社以上もいて、その中には「確かに突発的に大量落札するけどコンスタントに市場に顔をだしてるかいな??」というような業者さんもいたりします。
何らかのまとめをするなら参加者絞った方が良いんじゃないのかな?
○国債市場特別参加者になぜ投資家が入るの??
どうも質疑応答を見ておりますと、国債市場特別参加者には業者だけでなく、投資家、というか多分参加したがるのは大手銀行さんだけでしょうが、とにかく何故か業者じゃないお方が参加する可能性があるそうな。
特別参加者の権利と義務というのを並べて考えますと、この制度はどう考えてもマーケットメーカーとしての業者に対するものだと思います。その上、現在の国債市場においては、残念ながら特定銘柄を大量に購入してレポ市場への品貸しを渋るといったパワープレーが横行するのが現実。
投資家さんが業者と同じ権利義務をもって国債市場特別参加者になるのは本当にできるのならば結構なのですが、現実問題としてマーケットメークできるわけではないですし、何でもレポ市場に出せるわけでもないでしょうから、根本的発想にやはり無理があると言わざるを得ない所でございましょう。
ま、そこを頑張って頂いて大手銀行さんが特別参加者に入っていただくというならば非常に結構至極なお話であります。財務省さまにおかれましては下手に基準を緩和して特別参加者を増やすという方向に走らないようにして頂きたいものです。
意見の中では多分銀行業態の方からの意見として「自分たちも特別参加者に手を挙げたい」という話もでております。実質的にプロップディーラーとしてしか参加してない大手銀行さんの商品勘定に参加能力があるとも思えませんが、まぁ精々頑張って頂きたいものです。
○そういえば小ネタですが
この国債市場懇談会と国債投資家懇談会の議事要旨をみますと、財務省WebでのURLに「審議会」って言葉が入ってるんですよね。まぁ所詮は審議会って事なんでしょうかね、うしゃしゃのしゃ。
○器も大事ですが・・・・・・
さて、議事要旨を拝読いたしますと国債発行計画に関しては話題が碌にでなかったと思われる節がございます。「意見等の概要」を見ますと最初の5行だけが国債発行計画のお話のようですので、まぁ見事に話題にならなかったという事なのでしょうな。
最近しょっちゅう「国債管理政策」という言葉が聞かれるようになりました。非市場性国債の発行構想やら個人向け国債の新バージョンの発行構想、そして今回の国債市場特別参加者計画と、国債の安定消化に対して色々と手を打っておられます。
でも、国債発行額がバカスカ累増しているという厳然たる事実は変わらない訳でありまして、正直言って現在の超絶的金融緩和というつっかい棒を外した時に本当に国債が消化できるのかよ〜わからん所ではあります。
先日どこかで書きましたが、「国債管理政策への信認が高いので、国債の発行が増えても安定消化可能」というのは論理的におかしな話です。国債が安定消化できるのは、あくまでも財政が持続可能な状況だという信認がなければいけない話でありまして、「財政赤字の持続可能性」についてまともな議論がないままに国債管理政策への注目を持って「国債発行増に対応可能」というコンセンサスになっている現状の債券市場での論議は如何な物かと。
ま、まともに検証しだすと洒落にならんというのもあるのでしょうが、それでは先送り思考と同じお話ではないかという風に思えますが、どうなんでしょうかね。
○書いているうちにぜんぜん違う話になってしまいます(^^)
てなわけで、ここから先は、というかさっきから既にそうですが、国債市場特別参加者制度とも国債発行計画とも全然関係のないお話です(^^)。
さてさて、先日ご紹介したように日銀副総裁の岩田さんは講演で堂々と「財政政策の方は、2010年代初頭に本源的赤字がゼロになるように運営されています。」と言っておりました。政治的に「自分の政策は破綻していない」という発言をせざるを得ないどこぞの首相様の発言ならわかるのですが、日銀副総裁という表面上は政治から独立している人が、公的な場で文書として残る形でこんな発言をしている現状を見ると、あたくしは実に寒いものを感じるわけであります。
ここ数年の政策運営。個別の政策を見るとそれなりに筋は通ったことをやっているのかもしれませんが、どうも根本的な現状認識を行わないで、この副総裁(もともと内閣府にいた学者さんですな)の発言「財政政策はプライマリーバランスの達成に向けて動いている」に代表されるようなといった虚構を元に政策を運営してるという感を強くするものであります。で、その矛盾が先に行くと爆発が起きて修復のために余計なエネルギーを消耗するというのがここ数年の政策運営の現状ではないのかと思ってしまう訳でございますな。
良く良く考えたら、銀行の不良債権問題も何度となく「不良債権処理は峠を越えた」という前提で次の政策が実施され、時の経過とともにそもそも崩壊している前提条件の問題点が爆発して大騒ぎ、という経過を繰り返している訳です。そういえばあしぎん問題につきましても「足利銀行のような問題のある地方銀行は他には無い」という公式見解で通しておりますな。
不安を煽らないために「問題無い!大丈夫だぞ!」と言うのは結構でありますが、その発言が何故か「正しい現実」として認識されて次の行動につながるというのは実に困った話。まぁ日本の制度疲労もここまできたかという感じであります。
兵隊に「神州不滅」とか「大和魂」を説くのは鼓舞の役には立つかもしれませんが、参謀本部や陸軍大臣までもがそれを信じて戦争遂行するというのは愚の極みだという事例がほんの60年前にあった筈なのですが・・・・・・・幻の戦果や幻の現状認識を元に作戦を発動して数多くの英霊を失ってしまったという事例も無数にありましたよね。インパール作戦やレイテ沖海戦なんぞが有名ですが、それ以外にも無慮多数(-_-メ)。
#何時の間にか毎度の大東亜戦争引用というお馴染みの話ですな、スイマセン。
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