海外金融政策概観(2024年上期後半)

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元はと言えば日銀ネタがなくなってきたのでやりだしたのですが、一時はBOEとか無茶苦茶面白かった(キング総裁の頃はとても読んでて勉強になった)のですが、最近はおおむねFRBで時々ECBって感じですね。過去ログ整理してまいります(2024/10/06)


2024年下期前半(2024/10-12)の見出し

2024/12/19「FOMCは来年の利下げ2回と中立金利の若干の上昇と地区連銀4人が利下げ反対だったのが見どころ(ハマックが反対票)」
2024/12/13「ECBの利下げは「物価はマンデート推移で経済が弱い」と景気に完全にシフト」
2024/12/09「雇用統計は利下げ寄りか/デーリー、ボウマン、グールズビー、ハマックが発言(ハマックは中立金利上昇に言及)」
2024/12/04「クーグラ―は旗幟未定、デーリーも同様だが「中立金利は多少上がったけど3%近辺」と発言」
2024/12/03「ボスティックは両にらみ、ウォーラーは12月25下げの方向ですね」
2024/11/28「FOMC議事要旨(その2):経済物価情勢の認識は「2%に向けて利下げ」色が強い」
2024/11/27「FOMC議事要旨(その1):政策議論の方向性は利下げだがスタンスは出たとこ勝負で慎重」
2024/11/21「連銀高官の発言も最近は「利下げには慎重」が揃ってきましたね」
2024/11/15「パウエルのダラスでの講演は「利下げは急ぎません」が分かりやすいキーメッセージ」
2024/11/14「米国はCPIを受けて益々「インフレ動向の様子見」地蔵モードに向かいそうに見えます」
2024/11/11「ハト派カシュカリがインフレ上振れの確認必要との発言はトランプ財政懸念ですね」
2024/11/08「FOMCレビュー(0.25%利下げ):声明文は今回特徴を出さないようにしている感がありますね」
2024/10/28「ECBラガルド会見(その3)中立金利の話は「マジックワード」でスルーしつつ景気重視スタンスではあるが物価シフトの可能性もあるわな」
2024/10/24「ECBラガルド会見(その2)先行きの話はひたすら回避と/パネッタさんが中立よりも金利引き下げの可能性に言及」
2024/10/23「ECBラガルド会見(その1)利下げの理由が「オントラック」なのか「景気下振れ対応」なのかが謎」
2024/10/18「10月ECB利下げは「物価はマンデート、景気対応」が良くわかるポンチ絵です」
2024/10/11「9月FOMC議事要旨(その2)現状がマンデート達成のようなもん、という説明ですな」
2024/10/10「9月FOMC議事要旨(その1)とりあえず大幅利下げ観測の牽制に入っている感がありますね」
2024/10/01「FED高官発言相次ぎどちらかというと大幅利下げ方向ですな」

2024/12/19

普段は答え合わせしないで最後まで堂々書いて後になってアイヤーとこっそり赤面することも多いのがアタクシのFOMC声明文読みの仕様ですが、今日は日銀ネタの面白ニュースの有無をチェックしないといけませんから、読み終わった(というか書き終わった)後にニュースをチェックしてみますね。

〇FOMC声明文:利下げしながらFED文学で追加利下げに関する勢いを後退、で良いと思うんだが

まずは声明文

https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20241218a.htm(今回)
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20241107a.htm(前回)

・第1パラグラフ:経済雇用物価情勢の現状判断文言は不変です

『Recent indicators suggest that economic activity has continued to expand at a solid pace.』(今回)
『Recent indicators suggest that economic activity has continued to expand at a solid pace.』(前回)

まあこのパラ全部不変なのですがそれも何なのでぶつ切りしてみた企画ですw

『Since earlier in the year, labor market conditions have generally eased, and the unemployment rate has moved up but remains low.』(今回)
『Since earlier in the year, labor market conditions have generally eased, and the unemployment rate has moved up but remains low.』(前回)

からの、

『Inflation has made progress toward the Committee's 2 percent objective but remains somewhat elevated.』(今回)
『Inflation has made progress toward the Committee's 2 percent objective but remains somewhat elevated.』(前回)

ということで、「2%達成に向けた進展が進んでいる」も含めて現状認識は前回と同じです。


・第2パラグラフ:先行きに関する文言も前回と一致なんですよね

『The Committee seeks to achieve maximum employment and inflation at the rate of 2 percent over the longer run.』(今回)
『The Committee seeks to achieve maximum employment and inflation at the rate of 2 percent over the longer run. 』(前回)

ここは2パラの冒頭に出てくる悪魔払いの文言みたいなもんでいつもおなじ。

『The Committee judges that the risks to achieving its employment and inflation goals are roughly in balance.』(今回)
『The Committee judges that the risks to achieving its employment and inflation goals are roughly in balance.』(前回)

今後のマンデート達成に向けたリスクはおおむね上下にバランス。

『The economic outlook is uncertain, and the Committee is attentive to the risks to both sides of its dual mandate.』(今回)
『The economic outlook is uncertain, and the Committee is attentive to the risks to both sides of its dual mandate.』(前回)

今後の見通しは不確実で、上下双方のリスクに対して注意深く見ております、というのも一致で要するに全文一致です。


・第3パラグラフ:文言追加で「利下げありき」から「利下げのタイミングとは」に話を変えていますね

3パラは政策決定と今後の政策に関してのムニャムニャ文言ですが。

『In support of its goals, the Committee decided to lower the target range for the federal funds rate by 1/4 percentage point to 4-1/4 to 4-1/2 percent.』(今回)
『In support of its goals, the Committee decided to lower the target range for the federal funds rate by 1/4 percentage point to 4-1/2 to 4-3/4 percent.』(前回)

前回と同じ認識、すなわち経済物価雇用情勢がマンデート達成に向けて動いているのだから中立金利に向けての利下げプロセスが継続されて25bpの利下げになるのは順当なのですが、今回の声明文で焦点になるのはここになりますね。

『In considering the extent and timing of additional adjustments to the target range for the federal funds rate, the Committee will carefully assess incoming data, the evolving outlook, and the balance of risks. 』(今回)
『In considering additional adjustments to the target range for the federal funds rate, the Committee will carefully assess incoming data, the evolving outlook, and the balance of risks.』(前回)

はい。

前回は「今後の政策金利の追加調整を考慮する際には」(後半は状況を見て判断しますという当たり前の表現だし文言変更ないので気にしないでヨシ)となっていた表現が、今回は「今後の政策金利の追加調整の規模やタイミングを考慮する際には」と、「the extent and timing of」というのを挿入してきました。実質的に声明文で変更があったのがここだけなんですけど。

でまあこれって従来は「政策調整をする」ってのがある種の所与みたいな感じだったのが、今回はトネガワモードが入っていて、まあ「今回まだその時と場所の指定まではしていない。どうかそのことを諸君らも思い出していただきたい。」とまでは弱くなっていないけれども、政策調整に関しての表現は後退していますよね。

・・・・・ってかまあ書き出す前に声明文比較読みしてから、ほうほうSEPはどうなっとるんじゃいと思ったら来年のドットが華麗に上方修正されていてああそういう事ねと答え合わせ出来ましたがw、

『The Committee will continue reducing its holdings of Treasury securities and agency debt and agency mortgage-backed securities.』(今回)
『The Committee will continue reducing its holdings of Treasury securities and agency debt and agency mortgage-backed securities.』(前回)

バランスシートのランオフに関する表現は同じで、

『The Committee is strongly committed to supporting maximum employment and returning inflation to its 2 percent objective.』(今回)
『The Committee is strongly committed to supporting maximum employment and returning inflation to its 2 percent objective.』(前回)

締めの文言もいつもの定型文言でした。ということでさっきの「追加された部分」が焦点になりますな。


・第4パラグラフ:状況見ながらあんじょうようやっときますわ、のところは毎度の如く全文一致

『In assessing the appropriate stance of monetary policy, the Committee will continue to monitor the implications of incoming information for the economic outlook. The Committee would be prepared to adjust the stance of monetary policy as appropriate if risks emerge that could impede the attainment of the Committee's goals. The Committee's assessments will take into account a wide range of information, including readings on labor market conditions, inflation pressures and inflation expectations, and financial and international developments.』(今回)

『In assessing the appropriate stance of monetary policy, the Committee will continue to monitor the implications of incoming information for the economic outlook. The Committee would be prepared to adjust the stance of monetary policy as appropriate if risks emerge that could impede the attainment of the Committee's goals. The Committee's assessments will take into account a wide range of information, including readings on labor market conditions, inflation pressures and inflation expectations, and financial and international developments.』(前回)

こちらは特段どうという事も無いので全文一致ですね、というのを確認するだけですな。


・第5パラグラフ:ハマック総裁(クリーブランド)が反対ですがSEP見るとトータルで4人が反対してますねこれ

SEPの話はこの後にでも、と思いますが今回のドット見ると「年末の政策金利」に4.50-4.75という今回の利下げ前の水準に4票入っていてクリーブランド以外にも地区連銀3つから反対が出ているという中々チャーミングな結果になっています。

『Voting for the monetary policy action were Jerome H. Powell, Chair; John C. Williams, Vice Chair; Thomas I. Barkin; Michael S. Barr; Raphael W. Bostic; Michelle W. Bowman; Lisa D. Cook; Mary C. Daly; Philip N. Jefferson; Adriana D. Kugler; and Christopher J. Waller.』(今回)

『Voting against the action was Beth M. Hammack, who preferred to maintain the target range for the federal funds rate at 4-1/2 to 4-3/4 percent.』(今回)

『Voting for the monetary policy action were Jerome H. Powell, Chair; John C. Williams, Vice Chair; Thomas I. Barkin; Michael S. Barr; Raphael W. Bostic; Michelle W. Bowman; Lisa D. Cook; Mary C. Daly; Beth M. Hammack; Philip N. Jefferson; Adriana D. Kugler; and Christopher J. Waller.』(前回)


・ディレクティブ:レポファシリティのコリドアが25bpになっていますな

https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20241218a1.htm
Implementation Note issued December 18, 2024
Decisions Regarding Monetary Policy Implementation

前回はこちら
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20241107a1.htm

各種オペやらディスカウントウィンドウのレートは基本フルスライドで、限度額ありのファシリティに関しての限度額にも
変更は無かったのですが、

『Conduct standing overnight reverse repurchase agreement operations at an offering rate of 4.25 percent and with a per-counterparty limit of $160 billion per day. Setting this rate at the bottom of the target range for the federal funds rate is intended to support effective monetary policy implementation and the smooth functioning of short-term funding markets.』(今回)

『Conduct standing overnight reverse repurchase agreement operations at an offering rate of 4.55 percent and with a per-counterparty limit of $160 billion per day.』(前回)

ONRRPの適用レートが30bp引き下げになっていまして、これはFED相手に資金放出する金利の方になるのですが、もともとなぜかFF誘導下限の5bp上という謎金利に設定されていたので、調達側のオペ金利との金利コリドアが20bpしかなかったのですが今回25bpになりましたな。こちらアタクシも短期スキーとは言いましても米国の短期市場まで細かく見るような余裕も知能も無いので細かい解説はできないのですが、まあFFの上下限に置いていた方がスマートだとは思います。



〇SEPですがまあドットは上がっていますけどこんなもんちゃあこんなもんではないかとは思ったがさて・・・・・

https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20241218.pdf(今回)
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcprojtabl20241218.htm(HTML版)
Summary of Economic Projections

https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20241218.pdf(前回9月)
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcprojtabl20240918.htm(HTML版)


・まあ個人的にこの方式のコミュニケーションって如何なものかとは思うけど結局つられてドットプロット

だいたい引用はHTMLの方から行っています。

『Figure 2. FOMC participants' assessments of appropriate monetary policy: Midpoint of target range or target level for the federal funds rate』

・2024年:今回の利下げに反対が実は4名

ということで今回は、「Midpoint of target range or target level (Percent)」でみて、

『4.625    4
4.375    15』

というのが一つ目のお茶目ポイントで、ハマックさんの他に投票に参加していない地区連銀総裁3名から反対が出ているということですな。まあ4対15だから大差と言えば大差ですが、(5人ひっくり返っても過半数に届かない)。


・2025年;「来年は2回利下げですなあ」というのを示唆するドットの打ち方になっているようで

『4.375    1
4.125     3
3.875     10
3.625     3
3.375     1
3.125     1』

上の4人がハマック軍団ということで考えてみると、今回の利下げに賛成した15人中10人が「来年は2回利下げでございますな」とゆうとるわけでして、まあそんなもんじゃろとは思うのですが、そもそも論としてアメリカン市場がどのくらいの利下げを期待していたのかが良くわからん(最近はコンセンサスビューがどこにあるのかが訳ワカメな事が多くていけませんわ、ってお前が勉強不足と言われるとぐうの音も出ないのですが)ので、これが市場対比でタカなのかハトなのかは知らんが、あんまりハトではないだろうなというのは直感的にわかる(小学生並みの感想)。


でもって2026年だの2027年だの、というのはこれはドットを打つ身になって考えてみたら「そんなん知らんがな」という話になるわけで、結局は均衡水準になる時期を適当に考えて、その時期の均衡金利水準をおいてあとは2025年末からリニアに引っ張っていくくらいの話になるので、まあ正直あのあたりの水準を見てああでもないこうでもない、というのは(ネタとしては面白いけれども)あまり意味のある議論にはならない、と思うので(あくまでも個人の感想です)パスしまして次はロンガーラン。

・ロンガーラン:多くの皆さんが上げていますなあ

これはクッソバラバラなのですが、

前回(ゼロ人も0にしておかないと見にくいかと思いまして入れてます)

3.750   1
3.625   1
3.500   2
3.375   2
3.250   1
3.125   0
3.000   2
2.875   2
2.750   3
2.625   1
2.500   3
2.375   1

今回
3.875   1
3.750   1
3.625   2
3.500   2
3.375   1
3.250   0
3.125   1
3.000   3
2.875   4
2.750   1
2.625   1
2.500   1
2.375   1

これ前回3.250〜3.750のところにポイント置いてた7人が全員0.125%ずつ上げているというのがお洒落というかなんというかバチクソ笑えるのですが前回3%以下に置いていた人たちの方を見ますとこちらは下の方にあったドットがそこそこ上がっていて、少なくとも3%にかなり近いところにまでは来ていまして、中央値(2.875→3.000)で見るイメージよりも分布を見ると「あら上がりましたね」って感じが見て取れると思うのですがどうでしょうか。

まあ中立金利あがったんでネーノという話は先般来FED高官からも出ていましたので、上がるのは違和感ないけど、結構上げている人が多いなってのは思ったんですけどどないでっしゃろ。


という辺りで今日は日銀ですので面白ニュースがでていないかどうかチェックしながら一旦答え合わせをしてみましょうず。

https://jp.reuters.com/markets/quote/USDJPY=X/
US Dollar / Japanese Yen FX Spot Rate
USDJPY=X
直近の取引 154.56JPY
変化 1.06
変化%+0.69%
2024年12月19日の時点。値は少なくとも15分遅れで表示しています

・・・・・・うーん155円抜けはしないですかそうですか

https://jp.reuters.com/markets/us/5VPAQ4QWLJP2LIIXBKFSMVB5BQ-2024-12-18/
米国株式市場=大幅続落、FRBが利下げペース鈍化示唆
By ロイター編集
2024年12月19日午前 6:29 GMT+9

『[ニューヨーク 18日 ロイター] - 米国株式市場は大幅続落して取引を終えた。米連邦準備理事会(FRB)が0.25%の利下げを実施すると同時に、来年の利下げペース鈍化を示唆したことを受け、当初の高値から下げに転じた。』(上記URL先より)

ふーんなるほろ。まあタカだということですかこれは面白くなってまいりました!!!!





2024/12/13

〇ECB利下げは「経済思ったより弱いし物価はマンデート通りだし」ですね

いつもの奴をとりあえず見ておきますね
https://www.ecb.europa.eu/press/press_conference/visual-mps/2024/html/mopo_statement_explained_december.en.html
Our monetary policy statement at a glance - December 2024

前回はこちら
https://www.ecb.europa.eu/press/press_conference/visual-mps/2024/html/mopo_statement_explained_october.en.html

・今回も「経済が想定以上に弱い」が利下げの理由ということでまあ理由は明快

最初のイラストです

『We cut our key interest rates by 0.25 percentage points』(今回)
『We cut our key interest rates by 0.25 percentage points』(前回)

連続利下げなので小見出しは同じですが、

『We did this because inflation is coming close to our 2% target and the economy is weakening. Our future decisions will depend on how we see the economy and inflation developing.』(今回)

『We can do this because inflation is coming down faster than expected towards our 2% target and also the economy is weaker. Our future decisions will depend on how we see the economy and inflation shaping up.』(前回)

ということでですね、前回は「おもったよりも物価が2%目標に向かって早く進展している上に経済がより弱まっている」でしたけれども、今回は「物価は目標2%に近くなっていて。経済がより弱まっている」になっているので、もはや物価抑制のための引き締めは不要、という話になっている(まあほぼ前回の段階でもそうですが、今回は思いっきり「マンデート達成」という話になっておりますわな)ので、あとは経済状況ですよね、という話なので、経済弱けりゃ中立以下への引き下げもあるで、という話ですが、まあこの辺りに関しては既にそういう話をECBの要人からはホイホイと出されているので、それ自体に新味はないと思うのですが、物価がマンデート達成に極めて近いという形で物価は安定したから経済一本足打法になった、というのが明示されたのが特色。

なおこちらのイラストは階段降りてるものなので特に意味合いがこもってはいないと思います。


・経済は「雨ザンザン」から少しはイラスト的にはマシになったけど

『The economy is recovering more slowly than we expected』(今回)
『The economy is doing worse than expected』(前回)

前回は雨がザンザン降る中でスマートフォンの天気予報情報を見るとこの先に行くと今後雨がやんで3つ先(3四半期先、の判じ物ですかね)のお天気で日が差してくるという中々わかりやすいイラストでした。

でもって今回ですが、前回よりは絵柄の暗さ(基本青色で青色の調色で絵柄の明るさを調整していますけど)がマシになっていて、なんかイラストは割と謎なんですけれども、外は雨が降っていて「ありゃーまだ雨ですか」みたいな絵なので、これまた上記の小見出しに整合的ですな。

『People are not buying as many goods and services. Firms are also holding back investments. Some industries find it difficult to compete with the rest of the world. But over time, the economy should get stronger.』(今回)

『Manufacturing and exports are weak. Firms are not investing much. But services have been doing a bit better, thanks to a good summer tourism season.』(前回)

文章も前回よりは先行きに希望のあるような言い方になっていますな(But over time, the economy should get stronger.)。ただまあこう言っているだけに思ったほど回復が進まなければまた利下げじゃ、というのも含めているということでもあります。


・消費がでませんなあという話が引っ込んでいるのでまあ状況改善は改善なんでしょうかね

『Wages are going up, but by less than before』(今回)
『People are saving more of their money instead of spending it』(前回)

前回は善男善女(かどうかは知らんが)が銀行に貯金に並ぶという絵面になっていましたが、今回はお賃金の交渉をしている絵になっていまして、少しはマシなのかと思いきや絵の後ろにある矢印がジグザグしながら最後は下向きかよ。って感じですが、まあ欧州の場合は賃金が上がりすぎて物価と賃金の「悪循環」が起きていたので、これはたぶんECBの文脈的には「望ましくない高インフレを伴わない程度の賃金上昇におちついておる」という話なので結構なお話だという事なんじゃなかろうかとは思うのだがその辺は総裁会見などを見たほうがよいかも。

『Many people are in work and new jobs are still being created. But firms are posting fewer vacancies.』(今回)
『Even though many people have more money to spend, they are preferring to put it aside, even more so than before the pandemic.』(前回)

なんか前回のはエライしょんぼりした内容でしたので今回は改善しとるんとチャイマスカね。


・物価に関しては「2%で安定していきます」を明確に示す

『Inflation is gradually on its way down』(今回)
『Inflation is the lowest it has been in years』(前回)

前回はちょうどHCIPがドドーンと下がった(9月に2%割れ)時期だったのでイラスト的には大きく下がってまた戻る、でしたけれども今回はその後2%回復して上がっているので、素直に紙飛行機が2%近辺で安定飛行しているというECB的に美しい絵になっていますね。

『Some services are still getting more expensive, as a late response to the high inflation of the past. In the coming months inflation may go up and down a bit. But overall, we expect it to soon settle at around our 2% target.』(今回)

『Energy prices, especially, have come down a lot. Inflation will likely go up in the coming months but is expected to return to our 2% target in 2025.』(前回)

まだちょっと留保が入っていますが、ただまあ絵面からしても2%程度での安定について自信ニキという感じだと思います。

というところで今朝は勘弁。







2024/12/09

〇アメリカン雇用統計は利下げの障害にならない上にリセッションは示唆しないとな

ロイターさん
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/GCAGW2WL2BKN5DJDH6CPNKYMAY-2024-12-06/
米11月雇用22.7万人増に急回復、失業率は4.2%に悪化
By Lucia Mutikani
2024年12月7日午前 1:45 GMT+9

『[ワシントン 6日 ロイター] - 米労働省が6日発表した11月の雇用統計によると、非農業部門雇用者数は22万7000人増と、市場予想の20万人増を上回り、小幅な伸びにとどまっていた10月から急回復した。

失業率は4.2%に上昇した。前月まで2カ月連続で4.1%だった。労働市場の減速を示唆し、月内の米連邦公開市場委員会(FOMC)での追加利下げを正当化する可能性がある。

10月の雇用者数は1万2000人増から3万6000人増に上方改定され、9・10月分の増加数は計5万6000人上方改定された。』(上記URL先より、以下同様)

ということですが、

『CMEグループのフェドウォッチによると、金融市場ではFRBが今月17-18日の会合で0.25%ポイント利下げを実施する確率は約89%に上昇した。』

ほうほうそうですかそうですか。でもってBBGさん
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-12-07/SO3FT9T0AFB400
12月米利下げ、雇用統計が示唆も確信には至らず−インフレ統計待ち
Amara Omeokwe、Craig Torres
2024年12月7日 9:29 JST

→雇用統計、労働市場は減速だがおおむね堅調さ維持との見方を裏付け
→先物市場が織り込む12月利下げ確率は90%−来年の見方は大きく変化

『11月の米雇用統計は米金融当局が今月利下げを決定する可能性を示唆したものの、重要なインフレ統計の発表を間近に控え、そう結論付けるまでには至らなかった。』(上記URL先より、以下同様)

ということで態度保留って感じですかw


〇でもって高官発言がここぞとばかりに出ていますが

・デーリーさん再びだが結局無回答

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-12-06/SO386NDWRGG000
サンフランシスコ連銀総裁、米労働市場は引き続き良い位置にある
Laura Curtis
2024年12月7日 5:08 JST

『サンフランシスコ連銀のデーリー総裁は、6日発表された11月の米雇用統計を受け、労働市場は引き続き健全との認識を示した。総裁は、スタンフォード大学フーバー研究所で、「労働市場は引き続き良い位置にある」と指摘。「雇用が拡大する中、失業者1人につき約1人分の空きポジションがある。つまりバランスの取れた労働市場といえる」と述べた。質疑応答では、12月の利下げを支持するかどうかについて明言を避けた。』(上記URL先より)

デーリーさん、SF連銀のサイトを見ますと、この時は「デーリーさんとお話をしよう」企画の一環がありましたようで。

https://www.frbsf.org/news-and-media/events/2024/12/mary-c-daly-stanford-university-hoover-institution-2024/
Conversation with Mary C. Daly at Stanford University’s Hoover Institution

Time 10:00 am PST
Location Stanford, California
Topics Artificial IntelligenceLabor MarketsMonetary PolicyTechnologyU.S. Economy

『Summary

President Mary C. Daly will participate in a conversation on emerging technology and the economy at Stanford University’s Hoover Institution with Hoover Institution Senior Fellow John H. Cochrane.

The conversation will be livestreamed and available as a recording after the event.』

とはあるのですが、誠に遺憾なことに1時間21分もある(ちなみに対談形式のものがおっぱじまるのがなぜか15分40秒後)のでご興味のあるかたはどうぞ。


・ボウマン理事は利下げ慎重派

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-12-06/SO2X3BDWX2PS00
ボウマンFRB理事、利下げは「慎重」に−インフレ鈍化の進展停滞
Jonnelle Marte
2024年12月7日 3:21 JST

→物価上昇に対する上振れリスクは依然として「顕著」−ボウマン理事
→現時点では労働市場よりもインフレの方が大きな懸念−ボウマン理事

『米連邦準備制度理事会(FRB)のボウマン理事は、基調的なインフレ率は依然として当局目標の2%を「不快なほど」上回っていると指摘。利下げは慎重に進めたいとの考えを改めて示した。』(上記URL先より)

ボウマンさんはまあいつものクオリティですな、でもってこちらはFRBのサイトには特に何もないです。



・グールズビー総裁は「この先の金利はもっと下がる」の人で

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-12-06/SO2YZCDWX2PS00
シカゴ連銀総裁、米労働市場なお安定−1年後の金利はかなり低い
Catarina Saraiva
2024年12月7日 4:01 JST

『連邦公開市場委員会(FOMC)の次回会合で利下げを支持するかどうかについては明言を避けたが、1年後の金利は「かなり低くなる」との見通しをあらためて示した。』(上記URL先より)


シカゴ連銀に行きますとこんなのがありまして、
https://www.chicagofed.org/events/2024/economic-outlook-symposium
38th Annual Economic Outlook Symposium
December 6, 2024

こちらのアジェンダのタブを見ますと、

『9:30 AM
Fireside Chat with Austan Goolsbee
Speakers
Austan Goolsbee, President & CEO, Federal Reserve Bank of Chicago
Scott Horsley, Chief Economics Correspondent, NPR』

ってのがあって、このサイトの中に「Watch Replay」ってのがありますが、こちらをぽちっとなとしますと、40分の動画が出てきます。ちょっとこちらも詳しく見ている余裕がなかったのでこれまたお暇な方向けではあるのですが、中立金利の話をしているんですかね(見てないけど)。


・一方でハマック総裁(クリーブランド)は中立金利水準がかなり上がっている認識ですねえ

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-12-06/SO30N7DWRGG000
クリーブランド連銀総裁、利下げ減速の地点に「いる、ないし近い」
Jonnelle Marte
2024年12月7日 2:52 JST

→1月末までに1回の利下げという市場の見方に同意と表明
→金利は中立水準から遠くはない可能性−ハマック総裁

『米クリーブランド連銀のハマック総裁は、利下げペースを減速させるべきポイントに当局者は「いる、ないし近い」との見解を示した。経済の力強さと依然高止まりしているインフレに言及した。

『ハマック総裁はまた、現在の金利は経済を刺激も抑制もしない中立水準に近い可能性があるとし、しばらくの間「適度に景気抑制的」に維持すべきだと述べた。「適度に景気抑制的なスタンスを維持する必要性と、中立水準から遠くはない可能性とのバランスを取るため、金融当局は利下げペースを減速させるのが理にかなうポイントにいる、ないし近いと私は考えている」と指摘。』(上記URL先より)


でもってこちらは思いっきり講演原稿がありまして(というかBBGの上記記事でも「講演原稿で示された」ってありますよね)、


https://www.clevelandfed.org/collections/speeches/2024/sp-20241206-views-from-fourth-district-on-economic-and-monetary-policy
Lake Effect: Views from the Fourth District on the Economy and Monetary Policy
Beth M. Hammack
President and Chief Executive Officer

物凄い手抜きなので最後の『Policy Implications』以降を読みますと、

『The US economy at this time has a good amount of momentum and a history of surprising resilience. For example, in the first half of 2023, the Survey of Professional Forecasters captured the expectation that GDP growth would be low, ostensibly reflecting rising interest rates to combat inflation.8 』

『Instead, the economy grew at an above-trend pace that year. Resilient growth, a healthy labor market, and still-elevated inflation suggest to me that it remains appropriate to maintain a modestly restrictive stance for monetary policy for some time. Such a policy stance will help to sustainably return inflation all the way back to 2 percent in a timely fashion.』

インフレ抑制のために利上げをすることによって経済に対してスローダウンの効果が出る、と当初は思っていたのだが全然そうじゃなかったよね、というのが最初に来まして、その次に

『It is difficult to know precisely how restrictive our current policy setting is. Large fiscal deficits, elevated productivity growth, and the Fed’s ample reserves framework with many long-duration securities on the balance sheet are just some of the challenges we face in assessing what constitutes a neutral stance of policy, one which neither stimulates nor restricts economic activity.』

ということで中立的な政策金利水準ってどこでしょうか、という話になるのですが、財政支出や生産性の増加、あるいはFEDの長期債購入を含むバランスシート政策による効果、などによって中立的な金融政策水準が引きあがっているんじゃなかろうか、という論点がありますよね、という話になります。

『 Some of the forces that appeared to be holding down the neutral rate following the Global Financial Crisis may have finally run their course or reversed. In addition, even estimates from the most sophisticated models of neutral rates tend to have a great deal of uncertainty around them. 』

このうち一部の要素はリーマンショック以降中立金利の押し下げに働いていた要因でもある。

『As I take into account strong economic growth, the low unemployment rate, still-elevated inflation, and signals from financial markets, among other factors, my overall view is that monetary policy is only somewhat restrictive today.』

でもってさっきの記事の中の話にもありましたが、「my overall view is that monetary policy is only somewhat restrictive today」と来ましたね。

『In economist-speak, given our sustained robust GDP growth, with U close to U-star and pi close to pi-star, perhaps r is already close to r-star as well. Or, to put it in plain English, we may not be too far from a neutral setting today.』

「we may not be too far from a neutral setting today」と重ねてご説明。

『The target range for the federal funds rate is the FOMC’s primary tool for communicating and implementing monetary policy. At our last two meetings in September and November, the FOMC reduced the fed funds target, which is now in a range of 4-1/2 to 4-3/4 percent. I supported these actions to recalibrate the stance of policy, reflecting the improvements seen thus far in reducing inflation.』

これはマクラでして、ここから政策金利どうします話になりますが、

『To balance the need to maintain a modestly restrictive stance for monetary policy with the possibility that policy may not be far from neutral,』

しつこくも「今は実は中立にそんなに遠くないんじゃないか、ということから考えて政策をバランスさせるべき」と来ました。まあ以下はよってどういう話になるかはお察しという感じですが、

『I believe we are at or near the point where it makes sense to slow the pace of rate reductions. Moving slowly will allow us to calibrate policy to the appropriately restrictive level over time given the underlying strength in the economy.』

慎重にやれと。

『Indeed, since my initial foray into forecasting in the September Summary of Economic Projections, inflation, growth, and the labor market have all been stronger than I and the SEP median had expected. To me, this situation calls for a slower pace of rate cuts relative to my September forecast. Achieving our goals means seeing further convincing evidence that inflation is indeed continuing to decline to 2 percent while sustaining a healthy labor market.』

しかも9月の時点での見通しを上振れているそうです。

『The 1990s provide two separate episodes in which the FOMC reduced the federal funds rate by 75 basis points and then held it there for a time. While today’s economy has both parallels to and differences from that era, I see those shallow midcycle rate cuts as a relatively successful precedent for helping to sustain a long expansion, though I hope not to experience another bubble in equity prices along the way. It will be necessary to monitor financial conditions alongside a broad range of economic data and anecdotes from the business community to guide our decisions.』

1990年代ような緩和転換によってバブルを起こしたようなことがあってはいかんですバイとな。

『As of yesterday, financial markets appear to be pricing in about one reduction in the fed funds target range between now and the end of January and only a few cumulative reductions by the end of 2025. This path is consistent with my current expectation for the funds rate, based on my forecast that features solid economic growth, a low unemployment rate, and gradual improvements in inflation.』

1月までに利下げ、というのが昨日の市場から見た織り込みだが私はそれに違和感ない。

『However, the incoming data, the outlook, and the balance of risks will ultimately determine the future path of interest rates. As with any forecast, there are risks on both sides of my expected policy path. Keeping interest rates higher than needed could unnecessarily harm the health of the labor market. But easing interest rates too much or too quickly could slow the return of inflation to 2 percent and contribute to froth in financial markets, a situation that could undermine financial stability and impede progress on our monetary policy goals. As long as inflation is above our objective and the labor market remains strong, my focus remains on finishing the task at hand. Admittedly, it’s a careful balancing act.』

『There are more data releases between now and the next FOMC meeting that will help to shape the outlook. I look forward to discussing my observations with my colleagues at the FOMC table and will maintain an open mind about the decision that will best position monetary policy to achieve our maximum employment and price stability objectives.』

最後の方は「とはいえデータをよく見ていきましょう」的な話ですな。まあ中立金利どこにあるのか問題はこれから話題になるんでしょうね。






2024/12/04

〇連銀高官がくっちゃべるくる時間帯のようですが

・クーグラ―理事:決め打ちするような感じではないですので先導して引っ張る感じではないですよねたぶん

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-12-03/SNXJ91DWRGG000
クーグラーFRB理事、インフレ率は2%への持続可能な道筋にある
Amara Omeokwe
2024年12月4日 4:17 JST

→FOMCの政策決定にあらかじめ定まった道筋はない−クーグラー氏
→経済は良好な状態にある、労働市場は堅調を維持−クーグラー氏

『米連邦準備制度理事会(FRB)のクーグラー理事は、インフレと広範な経済の軌道について楽観的な認識を示した。一方、連邦公開市場委員会(FOMC)の政策決定にあらかじめ定まった道筋はないとも指摘した。』(上記URL先より)

って話ですが、本チャンの講演はこちらになりまして、

https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/kugler20241203a.htm
December 03, 2024
A Year in Review: A Tale of Two Supply Shocks
Governor Adriana D. Kugler
At the Detroit Economic Club, Detroit, Michigan

激烈に手抜きですが最後の小見出しに『Outlook for Monetary Policy』というのがあるのでとりあえずはそこを読んでみますが、2パラしかないので本当はその前の色々な話を読んでおくべきだと思います、本日は超手抜きで勘弁。

『Given how the economy has developed this year, most notably the continuation of disinflation and a modest cooling in the labor market, I see the Fed's dual-mandate goals of maximum employment and price stability as being roughly in balance.』

マンデート達成への道はおおむねバランス。

『In light of the progress toward our goals, my colleagues and I on the FOMC judged it appropriate to lower our policy rate in September and again last month. These actions were steps toward removing restraint, as we are in the process of moving policy toward a more neutral setting.』

我々は政策スタンスは中立的な状況にもっていくプロセスにある、って思いっきり言っていますな、というのを確認して次のパラに参ります。

『Looking ahead, it is important to emphasize that policy is not on a preset course.』

さっきのBBGもこの辺を見て記事書いたな、と思わせてくれますがw

『I will make decisions meeting by meeting and carefully assess incoming data, the evolving outlook, and the balance of risks.』

しかしこの「中立化プロセスにある」というのと「プリセットコースではないし会合ごとに判断する」ってのはよくよく考えてみると(どっかの日銀とかいうのもそうですが)話がロジック的につながらないですよね・・・・・

『While I have gained more confidence that the two positive supply shocks I described have helped create the solid economic conditions that are currently in place, I will vigilantly monitor for incoming risks or negative supply shocks that may undo the progress that we have achieved in reducing inflation.』

『I view our current policy setting as well positioned to deal with any uncertainties we face in pursuing both sides of our dual mandate.』

『Thank you for your time, and I look forward to your questions.』

ということで政策のところはまあ簡単に終わっている訳ですが、「今の政策セッティングが今後の上下の不確実性に対して良い位置にいる」と言ってまして、その前の部分では何を言ってるかとゆーと、「I will vigilantly monitor for incoming risks or negative supply shocks that may undo the progress that we have achieved in reducing inflation.」ということで、具体的なことはここでは言ってない(前段で言ってる可能性もあるのですが斜めよみすらしていないので分からん)ですけれども、こんなんどう見ても「トランプ政策による各種の供給制約復活や関税による直接的な物価押上げ」の話でありますわな。

そうなりますと、「our current policy setting as well positioned」というのは、トランプ政策の動向とその影響を見極めるのに今の位置は宜しい、という話なので、前段であった「先行きは中立スタンスに持っていくプロセスにある」に対して、寧ろトランプの出方を待つと称してお地蔵さんになる、という意味合いになってきますわな。

でまあ多分これ後半の方が結論だと思うので、そうなりますと利下げはそんなに急がない、という話には見えて来ますが、まあこれはどっちにしてもあまり強い決め打ちをしているわけではないように(この部分だけ読むと)思えるので、最終的には多数派意見に普通に乗っかってくるんじゃなかろうかというイメージを持ちましたがどうでしょうかね。


・SF連銀デーリー総裁:ウォーラーとクーグラ―足したような話ですが実は中立金利の話もしていた模様

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-12-03/SNXJ6MDWX2PS00
SF連銀総裁、金利低下は今後も継続へ−12月の利下げは不確実
Laura Curtis、Vince Golle
2024年12月4日 5:03 JST

『 米サンフランシスコ連銀のデーリー総裁は、12月の利下げは確実ではないが、政策当局者の選択肢としては残っているとの見解を示した。』(上記URL先より、以下同様)

ということですが、

『デーリー総裁は3日、FOXビジネスとのインタビューで「経済を良好な状態に保つためには、政策の再調整を続けなくてはならない」と発言。「12月になるのか、それよりも後になるのか、それは次回の会合で議論する機会を得られる問いだ。しかし重要なのは、経済に合わせて政策金利を下げ続けなくてはならないことだ」と続けた。』

ということで、こちらはFOXビジネスでどっかで文字起こしがあるかもしれませんけれども、インタビュー自体はこちらにあります、全部で7分34秒ですけれども、

https://www.foxbusiness.com/video/6365479293112
Cavuto Coast To Coast
December 03, 2024
07:34

聞き手はFOMCの会見でも登場するエドワード・ローレンスさんですが、こちらの紹介部分にも、

『The Fed is keeping 'an open mind' about rates, macroeconomy: San Francisco President Mary Daly

In an exclusive interview with FOX Business' Edward Lawrence, Federal Reserve Bank of San Francisco President Mary Daly talks next rate decisions, keeping the economy 'in a good place' and potential impacts from a second Trump administration.』

ってことで、さっきのクーグラ―理事と同様に「今の政策の位置は今後のリスクに対して対応するのに適切」というのが紹介されている上に、思いっきり「トランプ政権の政策によるインパクトに」ってのもあるので、これFEDの皆さんの大勢が地蔵なのではという感じもさせてくれますわな。

でもってまあアタクシの怪しげな英語力で掛け流しをしていますが、最初の方で何となく聞き取れたのはデーリーさん「これから金曜日に雇用統計もでますし・・・・・」という感じで、これまた昨日ネタにしたウォーラー理事の説明と一緒になっています。

でまあそれはそうと、これ掛け流しで聞いてたら最後の方に「おお」というのがあったので紹介しますが、最後の方(6分30秒過ぎ)位に最後の質問という事でエドワードさんが名目中立金利について聞いていまして、それに対してデーリーさんは「私はそれ(エドワードさんが言ってた3%後半から4%)よりも低くて3%により近いと思う、若干ではあるが上昇しているかもしれないが、それでもそんなに高くはない」という話をしていて、その中立金利に到達するための時間は「時間がかかるでしょう、今後の経済物価情勢によってその時間は決まります」という話をしていましたですな(なおドメドメジャパニーズおじさんの英語力によるので間違っていたらゴメンチャイですから上記ニュースを確認してね)。


ということで、お前ら揃いも揃って「まだわからん」の連呼じゃな、とは思いましたので、雇用統計から先の経済指標が強い方に上振れになるのかならんのか、というのがキモになるのかしら〜とは思いました。




2024/12/03

〇まあFEDも出たとこ勝負な訳ですよね(今回の雇用統計はかなり重いものになりそうですね)

ボスティックさん
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/LTNVADKIZBO7XJTNECIEO27FZU-2024-12-02/
インフレ引き続き低下へ、 不確実性は高い=米アトランタ連銀総裁
By Howard Schneider
2024年12月3日午前 5:14 GMT+9

『[2日 ロイター] - 米アトランタ地区連銀のボスティック総裁は2日、雇用を巡る経済指標が重要な判断材料になるとの考えを示し、今月の連邦公開市場委員会(FOMC)での追加利下げの可能性について、自身の見解はまだ決めていないと述べた。』

『ボスティック氏は記者団に対し「不確実性が極めて高い。今月の会合に予断を持って臨むつもりはない」と述べ、6日に発表される11月の雇用統計を含む経済指標を注視する姿勢を示した。』(上記URL先より)

ということでボスティックさんですが、本チャンはこちらです(URLが飛んでもなく長いのでハイパーリンクは下記URL先につけますがリンクの文字は途中までにしておきますね)

https://www.atlantafed.org/about/atlantafed/executive-leadership-committee/bostic-raphael/message-from-the-president/archive/2024/12/02/heading-into-2025-with-positive-economic-outlook-mindful-of-risks

Heading into 2025 with Positive Economic Outlook, Mindful of Risks
Raphael Bostic - President and Chief Executive OfficerRaphael Bostic
President and Chief Executive Officer
Federal Reserve Bank of Atlanta
December 2, 2024

アトランタ連銀の場合、最初にキーポイントというのを並べてくれる親切設計になっているので手抜き読みには最適。

ということで『Key Points』ですけど。

『・Conditions on both sides of the Fed's mandate appear to be broadly healthy, and Bostic's economic outlook is positive. He explains uncertainties still persist, however, and risks loom for price stability and the labor market.』

経済は基本的にヘルシーで経済の見通しはポジティブだけど不確実性とリスクはある

『・Atlanta Fed researchers are trying to determine whether the labor market may be cooling more dramatically than Bostic had imagined when he developed his outlook for the economy.』

連銀スタッフは労働市場が今後一段と冷えるのかどうかについてリサーチしており、それの結果も判断に踏まえると

『・While inflation readings have experienced bumpiness, Bostic doesn't think progress toward price stability has completely stalled.』

2%達成が完全に来るかどうかはまだでっせ

『・A major factor contributing to the continued stubbornness of elevated inflation has been housing prices. Market-based measures of rental price growth have been much more muted than the official inflation statistics, Bostic says, and that softening in market rents should eventually filter through to the statistics.』

住宅関連というかレント関連価格のお話をしていますな

『・Bostic also is not seeing signs that a surge in economic energy that could spark inflationary pressures is imminent. He explains inflation expectations have remained quite stable and relatively in line with prepandemic norms.』

あんまりインフレがスパークするような兆候はないし、インフレ期待は極めて安定的に推移していると認識

『・Regarding the path ahead for monetary policy, Bostic says his strategy will be to look to the incoming data, information from the Atlanta Fed's portfolio of surveys, the balance of risks, and input from the Bank's business contacts.』

でまあ最後に今後のデータや連銀スタッフの分析結果などを見ていきたい、ということであんまり決め打ちしないようにしている、って感じの「キーポイント」になっていますね。


でもってウォーラー理事ですが、

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-12-02/SNVV07DWX2PS00
ウォラーFRB理事、12月会合での利下げ支持に傾いている
Craig Torres
2024年12月3日 5:47 JST

『政策金利据え置きが理にかなうデータが会合前に出る可能性はあるとしながらも、「現時点で12月会合での政策金利引き下げを支持する方向に傾いている」と述べた。ワシントンで開かれた米国経済研究所(AIER)主催のFRB政策枠組み見直しに関する会議の講演テキストで明らかになった。』(上記URL先より)

ということですが、こちらの本チャンはこれになりまして、

https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/waller20241202a.htm
December 02, 2024
Cut or Skip?
Governor Christopher J. Waller
At "Building a Better Fed Framework," American Institute for Economic Research Monetary Conference, Washington, D.C.

題名がもう露骨すぎてクソ笑うしかないのですがwwwwwwwwwwwwww

手抜き読みには最後の2パラグラフを読めば結論が書いてあるw

『In deciding which of these two approaches to take at the FOMC's next meeting, I will be watching additional data very closely. Tomorrow, we get the Labor Department's Job Openings and Labor Turnover Survey. On Friday, we get the employment report, which, as I noted, may have misleading payroll data. Then next week, we get consumer and producer price indexes for November, which will allow a good estimate of PCE inflation for the month. Finally, on the first day of the FOMC meeting, we receive retail sales data for November that will give us an idea of how consumer spending is holding up.』

こんなデータがでますのよ、というのをこれでもかと並べて最後のパラグラフ(って途中嫁とか言われそうですが時間が無いのでそっちは皆さんで読んでちょというドイヒー対応)。

『All of that information will help me decide whether to cut or skip. 』

ちょwwww出たとこ勝負wwwwwww

ではあるのですが、返す刀で

『As of today, I am leaning toward continuing the work we have started in returning monetary policy to a more neutral setting.』

謎の間接表現ですが要するに今いまの時点なら利下げだと。

『Policy is still restrictive enough that an additional cut at our next meeting will not dramatically change the stance of monetary policy and allow ample scope to later slow the pace of rate cuts, if needed, to maintain progress toward our inflation target.』

次回FOMCで利下げをしても政策はまだ引き締め的なので無問題無問題との由。

『That said, if the data we receive between today and the next meeting surprise in a way that suggests our forecasts of slowing inflation and a moderating but still-solid economy are wrong, then I will be supportive of holding the policy rate constant.』

つまり、データがサプライズに強い場合は政策金利据え置きを支持するが、そうじゃなくて予想通りのデータが出てきたら利下げ支持しまっせ、と出たとこ勝負ではあるものの旗幟は鮮明にしています。

『I will be watching the incoming data closely over the next couple weeks to help me make my decision as to what path to take.』

だそうですので、まあ25利下げ派で確定、でいいんじゃないでしょうか。







2024/11/28

〇FOMC議事要旨確認の続きである

https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20241107.htm
Minutes of the Federal Open Market Committee
November 6-7, 2024

昨日は寝起き手抜き読みで金融政策運営に関する直接的な部分を読みましたが、あれ見ても結局「状況次第であんじょうようやっときますわ」ですので、そもそも論として連中が何考えているのか、という意味では前半パートを読まざるを得ません。

ということで『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』を頭から読む。

・物価の現状認識と先行き見通し:「2%達成に死角なし」って感じの記述になっていますね

このパートなんですけど、のっけから「インフレーションダイナミクス」の話になるのっていうのが最近の仕様になっている(ただしSEPの出る会合では1パラ目に「検討してSEP作ったよ、議事要旨の最後にSEPは添付するよ」が出ますので2パラになります)のですが、従来のFOMC議事要旨は最初は「経済情勢」についての議論パートになっておりました。

でまあさすがに目が慣れてきたなと思ったので、さっき物は試しに過去の議事要旨をホイホイと当たってみたのですけれども、今年の1月のFOMCまでは議事要旨の書き出しは「In their discussion of current economic conditions」でして、経済情勢と経済先行き→インフレ情勢とインフレ先行き→雇用情勢と雇用先行き、ってな感じで構成を組んでいまして、3月会合の議事要旨から最初にインフレを書くようになった、というのを再確認しておきました。

いやまあだから何なのよと言われると答えに窮するのですがwww

『In their discussion of inflation developments, participants continued to observe that inflation had eased substantially from its peak, although core inflation remained somewhat elevated.』

現状は「remained somewhat elevated」だそうです、まあ数字がその通りなんでしゃーないですが。

『Almost all participants judged that, though month-to-month movements would remain volatile, incoming data generally remained consistent with inflation returning sustainably to 2 percent.』

とは言えほとんどすべての参加者は2%に戻っていく過程にあるとの認識。

『Participants commented that disinflationary progress had been seen across a broad range of core goods and services prices. Notably, in both the core goods and nonhousing services categories, prices were now increasing at rates close to those seen during earlier periods of price stability.』

財と住宅以外のサービス価格のインフレ低下圧力が幅広く展開されているとの指摘。

『Many participants noted that the slowing in these components of core inflation corroborated reports received from their business contacts that firms were more reluctant to increase prices, as consumers appeared to be more price sensitive and were increasingly seeking discounts.』

アネクドータルな企業ヒアリングなどでは物価上昇圧力の弱まりによって企業が強気の価格設定をしにくくなってきているし消費者は価格にセンシティブになっていると多くの参加者から。

『Some participants remarked that although increases in housing services prices remained somewhat elevated, they continued to expect that these increases would slow, as the more subdued pace of rent increases faced by new tenants would eventually be reflected further in housing services prices.』

住宅関連に関してはまだインフレ圧力があるものの、今後はおちついていくんでネーノという指摘が数名の参加者が指摘。

ということで、この1パラ見ますと物価2%目標に向けた現状の進展には死角なし、みたいな威勢のよさ(というか悪さというかw)を見て取れますので、そういう意味では中立スタンスへの道は開かれているようには見えますわな。


第2パラが物価の先行き見通し。

『With regard to the outlook for inflation, participants indicated that they remained confident that inflation was moving sustainably toward 2 percent, although a couple noted the possibility that the process could take longer than previously expected.』

参加者のうち2名は物価の2%達成が想定よりも遅れてきているという見立てですが、残りの皆さんはオントラックという認識ですね。

『A few participants remarked that insofar as recent robust increases in real GDP reflected favorable supply developments, the strength of economic activity was unlikely to be a source of upward inflation pressures.』

でまあこの辺から物価動向の背景に関するFOMCパーティシパントの見解が示されていてオモロイのですけれども、実質GDPが強い(割には物価は落ち着く方向にある)背景には、「供給サイドの状況が好転している(要は供給制約問題の解消)ためであり、よって物価上昇圧力につながらない」という話をしていますな。

これはまあ物価上がらんという話としてみれば政策金利を中立に持っていく理屈ではあるのですが、一方でこれって景気に対しては強いという見たてでもありますので、どっかの中央銀行総裁が10月末の時点で米国経済下振れガーと言ってたのはナンジャソラという話にもつながる(まあそれは名古屋金懇の会見でしらっと無かったことになっていますが)のでありまして、

『Participants cited various factors likely to put continuing downward pressure on inflation, including waning business pricing power, the Committee's still-restrictive monetary policy stance, and well-anchored longer-term inflation expectations.』

物価上昇率を鎮静化させる要素がこんなにありまっせという指摘が来ます。

『Several participants noted that nominal wage growth had continued to move down and that the wage premium available to job switchers had diminished. In addition, some participants observed that, with supply and demand in the labor market being roughly in balance and in light of recent productivity gains, wage increases were unlikely to be a source of inflationary pressure in the near future.』

ここは労働市場に掛かる部分ですが、労働市場における賃金上昇圧力の低下を指摘していて、その中に「転職の際のプレミアムが減ってますな」というのがあるのがオモロイです。


てな訳で先行き見通しについても基本的には死角なしみたいな感じになっていますので、ここだけ見ればああ中立金利に戻していくスタンスだな、というように読めますね。



・労働市場について:労働市場に関しては「今後も適切な金融政策の調整を行えば」ソリッドですよという話

3パラ4パラが労働市場。

『In discussing labor market developments, participants generally viewed recent readings as consistent with labor market conditions remaining solid, although labor strikes and the devastating hurricanes had been important sources of temporary fluctuations in the employment data.』

一時的要因による攪乱はあるものの、労働市場に関しては「remaining solid」であると。

『Participants continued to cite declines in job vacancies, the quits rate, and turnover as consistent with a gradual easing in labor demand.』

求人とか求職とか転職とかその辺の勢いが落ちているそうですな。

『Some participants reported that businesses were becoming more selective in hiring as they faced larger pools of more qualified job applicants, and job applicants were more willing to accept less accommodative work arrangements and more moderate wage offers.』

数名の参加者からは労働市場における採用側と求職者側の力関係の変化を指摘しています。

『Participants generally noted, however, that there was no sign of rapid deterioration in labor market conditions, with layoffs remaining low.』

とはいえここから先急速に労働市場が悪化してあばばばばーとなる予兆は無いよ、だそうです。

『A few participants cited business contacts who were using attrition, instead of layoffs, to manage the size of their workforce. Some participants observed that the evaluation of underlying trends in labor market developments had continued to be challenging- with difficulties in measuring the effects of immigration on labor supply, revisions to data, and the effects of natural disasters and labor strikes among the factors cited as complicating this evaluation-and that assessments of the outlook for the labor market were associated with considerable uncertainty. Participants generally judged that current labor market conditions were broadly consistent with the Committee's longer-run goal of maximum employment.』

でもってアネク中心の話が続いていますが、その中にしらっと今後の懸念として企業が挙げているものの中に「with difficulties in measuring the effects of immigration on labor supply」などとあって、おーおーおー早速大統領選挙の結果が反映されとるわ、と思いました。

でもって4パラは先行き見通し。

『With regard to the outlook for the labor market, participants generally anticipated that with an appropriate recalibration of the Committee's monetary policy stance over time, the labor market would remain solid.』

見通しですとこちらは「適切な金融政策スタンスの修正を今後も実施することによって」労働市場は堅固な状態を維持するでしょう、とあるので、これまた政策金利の中立スタンス化が前提になっておりまして、金融政策パートでは「あんじょうようやっておきますわ」なのですが、こっちでは中立化前提になっているのがかなりのチャーミングさをしめしていますねw

『Participants generally agreed that labor market indicators merited close monitoring. Some participants still saw elevated risks that the labor market could deteriorate, though many participants saw the risk of an excessive cooling in the labor market as having diminished somewhat since the Committee's September meeting.』

前回会合時よりも減ったとは言え、労働市場がコケるリスクについては注意が必要、という指摘で締めていまして、まあこの物価と雇用のところだけ見ると普通に政策中立化に進むのが前提の話になっていますな、というのは把握した。


・経済について:プロダクティビティの向上に関する議論紹介に割いている字数がかなり多いのは・・・・

5パラは経済について。

『Participants observed that recent data on economic activity and consumer spending were largely stronger than anticipated, and they assessed that economic activity had continued to expand at a solid pace and consumer spending remained strong.』

どっちかというと特に労働市場の辺りの話だと政策中立に向けて進めていくのが前提みたいな話もありましたが、経済のパートになるといきなり威勢が良くなる。まあ個人消費が強いからというのもあるけどエライ威勢が宜しい。

『Participants remarked that consumption had been supported by a solid labor market, rising real wages, and elevated household wealth. Many participants observed that recent upward revisions in data on household income and the saving rate had made these series' behavior more consistent with the strength in consumer spending.』

『However, several participants cautioned that low- and moderate-income households continued to experience financial strains, which could damp their spending. A couple of participants cited recent increases in rates of delinquencies on credit card borrowing and automobile loans as signs of such strains.』

でもってその後は個人部門に関する話になるのですが、前半は家計の所得が上振れているので消費が強いという威勢の良い話になっていて、後半はそうは言っても中低所得層においては金融面からの制約が強まって消費を弱くしている、という話になっていますな。

6パラで企業部門の話になりますが、

『Regarding the business sector, a few participants noted that favorable aggregate supply developments-including increases in labor supply, business investment, and productivity-continued to support solid expansion of business activity.』

企業部門のお話になりますが、供給面の改善、というのがさっきも出ていましたが、ここではいわゆる供給制約の問題だけではなくて、「business investment, and productivity」ということで、企業の設備投資および生産性について指摘されているのは何気にポイントではなかろうかと。

というのは以下この生産性の改善に関する背景の議論内容が延々と記載されていまして、

『A couple of participants remarked that there was considerable uncertainty about the durability of recent rates of increase in productivity. Although a few participants attributed some of the productivity gains to potentially transitory factors-such as one-time efficiency gains in response to earlier labor shortages-or the possible underestimation of labor inputs, some participants highlighted more durable factors, such as new business formation and investment, as well as the integration into the workplace of technological advances. A couple of participants discussed some of these recent trends, noting especially possible implications of the expanded use of artificial intelligence in the workplace. Several participants indicated that their District contacts reported larger corporations and firms in sectors like financial services, construction, professional services, and technology as having a generally more optimistic outlook than smaller businesses or firms in the manufacturing sector. Several participants remarked that the agricultural sector continued to face significant strains due to low crop prices and high input costs.』

すいませんここ話の流れ的にぶつ切りにしにくかったので延々と引用してしまったのですが、生産性が向上しているという点について一時的なのか恒常的なのか、背景は何なのか、というような議論が延々と展開されていますが、話の流れとしては「設備投資やらAIなどの技術向上もあって、米国のプロダクティビティは上振れており、それはワンオフではなく恒常的ではなかろうか」というのが方向性としては示されていますわな、ということです。

でまあこれって何を意味するかというと、米国経済強いよねって話で有ることはモチのロンなのですが、恒常的なプロダクティビティの改善がみられるっていうのは、金融政策現世利益的に言えば、米国の潜在成長率が引きあがっていることを示している訳でして、それって名目中立金利の上昇につながる話ですからして、要はロンガーランの政策金利水準が上がるでしょ、ってお話でもあります。

んな訳でして、まあそもそも論としてこのプロダクティビティ向上の話で企業部門の話のパラグラフを殆ど食っている、というFOMC議事要旨を編集している中の人の意図からして、まあそういうことやぞというのを示しているように思えますんですが如何なもんでございましょうか。


・リスクはおおむねバランスですが「上振れ変わらず、下振れ若干減少」ですね

以下はさらさらと流しますが、7パラは先行き見通しに対するリスクと不確実性。

『In participants' evaluation of the risks and uncertainties associated with the economic outlook, upside risks to the inflation outlook were seen as little changed, while downside risks to employment and growth were seen as having decreased somewhat.』

上振れリスクは特に変わらず、下振れリスクは少し減ったそうですわよ。

『Among the upside risks to inflation cited by participants were the possibility of sudden disruptions in global supply chains due to geopolitical developments, a larger-than-anticipated easing in financial conditions, stronger-than-expected consumption, more-persistent shelter price increases, or sharp rises in insurance charges for health, autos, or homes.』

『Some participants pointed to various downside risks to economic activity and employment, including weaker global growth, sharply worsening financing conditions due to an escalation of geopolitical tensions or a sizable asset price correction, or an unwelcome weakening of the labor market.』

この辺はアップサイドとダウンサイドの両方についてどんなのがありますねんというのが指摘されていますが、「larger-than-anticipated easing in financial conditions,」とかいうのがしらっと入っているのはお茶目。

『Almost all participants judged the risks to the attainment of their dual-mandate objectives of maximum employment and price stability to be roughly in balance.』

とは言え結論は「be roughly in balance」です。


・金融安定化リスクは要因いろいろと並べられているけれども特に切実感は無いんじゃないかな

8パラはファイナンシャルスタビリティ。

『In their discussion of financial stability, participants who commented noted vulnerabilities to the financial system that they assessed warranted monitoring.』

金融システムの脆弱性について指摘している人たちがおいでのようですね。

『A couple of participants observed that the banking system was sound but that there continued to be potential risks associated with unrealized losses on bank assets.』

銀行資産の含み損爆裂という潜在的なリスクがある、と2名が指摘していますが、その次には多くの参加者が指摘、として商業用不動産関連の件が出てきます。

『Many participants discussed vulnerabilities associated with CRE exposures, focusing on risks in the office sector. A few of these participants noted signs that the deterioration of conditions in this sector of the CRE market might be lessening.』

商業用不動産の次は・・・・

『A couple of participants noted concerns about asset valuation pressures in other markets.』

2名から他の資産市場におけるリプライシングの発生(値下がり)リスクの指摘があって、

『Some participants commented on cyber risks that could impair the operation of financial institutions, financial infrastructure, and, potentially, the overall economy; these participants noted, in particular, vulnerabilities that could emanate from third-party service providers. A couple of participants also mentioned third-party service providers in the context of risks associated with brokered and reciprocal deposit arrangements.』

サイバーリスクに関しては金融機関直接の話の他にサービスプラットフォーム提供しているベンダー起因のリスク(この前米国で割と派手なのありましたよね)の指摘。

『Several participants noted that leverage in the market for Treasury securities remained a risk and commented that it would be important to monitor developments regarding the market's resilience.

国債市場における参加者のレバレッジ拡大による逆回転発生時のリスク。

『A few participants discussed vulnerabilities posed by the growth of private credit and potential links to banks and other financial institutions. 』

プライベートクレジット拡大による損失波及のリスク。

『A couple of participants commented on the financial condition of low- and moderate-income households that have exhausted their savings and the importance of monitoring rising delinquency rates on credit cards and auto loans. 』

中低所得者向けのローンやクレジットカードの延滞状況はよくモニターすべきとの指摘。

『A couple of participants remarked on the successful implementation of the Securities and Exchange Commission's money fund rules, noting that it would reduce financial stability risks posed by domestic MMFs.』

最後だけはリスクが減った話で、MMF規制の追加によってMMFからの短期金融市場攪乱リスクが減りましたよね、という話で締めていますが、まあ全般的にファイナンシャルスタビリティ面でのリスクっていう話はそんなにないかなとは思いました。

以下のパラは金融政策の話になって昨日やった部分なので本日はここまでで勘弁。







2024/11/27

〇FOMC議事要旨は利下げの方向性は確認しながらもスタンスは出たとこ勝負だしまあ慎重ですよね

FOMC議事要旨も重要なのですが前座の方もあったので今日は簡単で勘弁

https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20241107.htm
Minutes of the Federal Open Market Committee
November 6-7, 2024
A joint meeting of the Federal Open Market Committee and the Board of Governors of the Federal Reserve System was held in the offices of the Board of Governors on Wednesday, November 6, 2024, at 10:00 a.m. and continued on Thursday, November 7, 2024, at 9:00 a.m.1


・ハイパー手抜き読みなのでまずは政策決定部分から見ますがとりあえず全参加者一致で25bp利下げと

いつものハイパー手抜き読みなので『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』の政策部分を、と思ったらパラグラフが3つですがシンプルっぽいな、と見ましたが読んでみましょう。

まずは今回の決定に関して

『In their consideration of monetary policy at this meeting, participants noted that inflation had made progress toward the Committee's objective but remained somewhat elevated. Participants also observed that recent indicators suggested that economic activity had continued to expand at a solid pace, labor market conditions had generally eased since earlier in the year, and the unemployment rate had moved up but remained low.』

ここの書き出しは基本的に声明文1パラと同じ話をします、今回もそうですね。

『Almost all participants judged that the risks to achieving the Committee's employment and inflation goals were roughly in balance.』

リスクはざっくりバランス。

『In support of the Committee's goals, all participants viewed it as appropriate to lower the target range for the federal funds rate by 25 basis points to 4-1/2 to 4-3/4 percent.』

メンバーだけではなく参加者全員で25bpの利下げを支持。

『Participants observed that such a further recalibration of the monetary policy stance would help maintain the strength in the economy and the labor market while continuing to enable further progress on inflation. 』

政策のrecalibration(再調整)は今後のインフレの推移に対応する体制を維持しながら経済と物価の強さを維持するために寄与しまっせと。

『Participants judged that it was appropriate to continue the process of reducing the Federal Reserve's securities holdings.』

でまあバランスシートのランオフは引き続き実施、と来まして次のパラグラフ。


・先行き金融政策については基本は中立に向けて下げるんだが「データ次第ですよ出たとこ勝負ですよ」ですな

みんな大好き「先行きの金融政策」です。

『In discussing the outlook for monetary policy, participants anticipated that if the data came in about as expected, with inflation continuing to move down sustainably to 2 percent and the economy remaining near maximum employment, it would likely be appropriate to move gradually toward a more neutral stance of policy over time.』

今後の経済物価推移が「about as expected」であれば、徐々に金融政策スタンスをニュートラルに近づけていく(to move gradually toward a more neutral stance of policy over time)のが適切と考えている、からの、

『Participants noted that monetary policy decisions were not on a preset course and were conditional on the evolution of the economy and the implications for the economic outlook and the balance of risks; they stressed that it would be important for the Committee to make this clear as it adjusted its policy stance.』

政策はコンディショナルであって、事前の予定はない、というお話なんですが、いやマジでだったらSEPのどっとチャートだすの止めえと思うのですが(経済物価見通しを出すのは良いし、何ならロンガーランだけ出すのはありかもしれないが中途半端に先の金利出すのは「コンディショナルでプリセットコースは無い」と言っている中では誤解を招くノイズ以外になりえない)。

『While emphasizing that monetary policy would be data dependent, many participants noted the volatility of recent economic data and highlighted the importance of focusing on underlying economic trends and the evolution of the outlook when assessing incoming information.』

データディペンデントがどうした、という件に関して「最近のデータはボラタイルに出てくるので、足許の振れに引っ張られ過ぎないように全体的な基調を見ましょうね」という話をしていまして、まあだんだん先行きの政策運営の時の説明が闇鍋っぽくなって来そうだなという予感がします笑。

『Some participants remarked that, at a future meeting, there would be value in the Committee considering a technical adjustment to the rate offered at the ON RRP facility to set the rate equal to the bottom of the target range for the federal funds rate, thereby bringing the rate back into an alignment that had existed when the facility was established as a monetary policy tool.』

ONRRPのレートを引き下げる(利下げ後ベースで4.55%でしてFFの下限が4.50なので5pp上)という話があるのね。まあこの金利水準でコリドア狭すぎとか思いますし、どっかの日銀とは逆でちょっとこれはこれで過保護な気もするのですけれども、USマネーマーケットの需給関係とか詳しくないのでここは特段判断はしませんが、理屈からすれば実効FFレートが若干なりとも下がる可能性はあるんかいな、くらいの話かなとは思います(マネーマーケットにとっては大問題の可能性はありますがそれはそれということで)。


・リスクバランスに関して

『In discussing risk-management considerations that could bear on the outlook for monetary policy, almost all participants agreed that risks to achieving the Committee's employment and inflation goals remained roughly in balance.』

デュアルマンデートのどちらについてもリスクは上下だいたいバランス。

『Some participants judged that downside risks to economic activity or the labor market had diminished.』

数名が「経済活動や労働市場のダウンサイドリスクは消えましたな」との見立て、ってのがしらっと入ってから、

『Participants noted that monetary policy would need to balance the risks of easing policy too quickly, thereby possibly hindering further progress on inflation, with the risks of easing policy too slowly, thereby unduly weakening economic activity and employment.』

政策修正が早すぎても遅すぎてもいけない、という毒にも薬にもならない(一応語順は先に「早すぎダメ」になっているのは覚えておくことにするが)話があって、

『In discussing the positioning of monetary policy in response to potential changes in the balance of risks, some participants noted that the Committee could pause its easing of the policy rate and hold it at a restrictive level if inflation remained elevated, and some remarked that policy easing could be accelerated if the labor market turned down or economic activity faltered.』

でもってじゃあ何をもって早い遅いの話になるのか、という基準として何人かの委員が言及しているのは、「インフレが高止まるんだったら追加利下げを一時停止すべき」という見方と、「労働市場が想定よりも悪化したり、経済活動が弱まるなら利下げを加速すべき」というのが並んでおります。

『Many participants observed that uncertainties concerning the level of the neutral rate of interest complicated the assessment of the degree of restrictiveness of monetary policy and, in their view, made it appropriate to reduce policy restraint gradually.』

でもってここの最後ですが中立金利水準の話をしているのが味わいがあって、「多くの参加者(Many participants)」が言っていることとして、中立金利水準に関しては不確実性があって、この不確実性によって金融政策の引き締め度合いというのを測定するのが難しくなっていることを勘案すると、金融引き締めの減少については徐々に行うことが適切であろう。という話で締めています。

とまあここまでで手抜き読み部分になるのですが、手抜き読み部分だけでいえば、決め打ち全然していないのと、先行きに関しても方向性は利下げだけどそこまでシャカリキになって利下げするという話でもなくて、むしろ最後の一文にあるように「ホイホイ利下げするとは言ってません」という方が主張されているかな、という印象でした。別に利下げしないとかそういう過激な話ではないので無難にまとめてはいるものの利下げ加速ワッショイの皆さんにとってはしょんぼり―ぬな内容かもしれませんね。

今朝はショパンの事情でこの辺で勘弁してつかあさい。






2024/11/21

〇連銀高官が色々と喋っているのですが追いつきませんすいませんすいません

ほほう
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/D5O5ENNZYVIPHG4TLWWTWH32RM-2024-11-20/
米追加利下げ適切、インフレ鎮静化続くと予想=クックFRB理事
By Howard Schneider
2024年11月21日午前 3:18 GMT+9

『[シャーロッツビル(米バージニア州)/ワシントン 20日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)のクック理事は20日、インフレは引き続き緩和しているとした上で、利下げ継続が適切となる可能性が高いとの見方を示した。賃金の伸びや雇用市場が鎮静化し、価格の過剰な上昇は主に住宅に限られていると指摘した。』

『クック理事はバージニア大学での講演で「時間の経過とともに政策金利をより中立的なスタンスに動かすのが適切となる可能性が高い」と指摘。利下げの規模とタイミングは経済指標次第で、事前には決まっていないとした。』

『雇用市場の最近の鈍化は一時的なストライキやハリケーンの影響によるものであり、全体的に堅調に推移しているとした。こうした中でインフレ率は来年2.2%に低下し、その後もさらに低下するとの予想も示した。』(上記URL先より)

ということで本チャンの講演はこちらですね
https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/cook20241120a.htm
November 20, 2024
Economic Outlook
Governor Lisa D. Cook
At the University of Virginia, Charlottesville, Virginia


タカ派大先生のボウマンさん
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/FNVBAVVXXNJYRIFPREBEZ3RVIQ-2024-11-20/
米インフレ抑制は停滞、利下げに慎重姿勢を=ボウマンFRB理事
By ロイター編集
2024年11月21日午前 4:09 GMT+9

『[20日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)のボウマン理事は20日、インフレが依然として懸念材料となる一方で労働市場は堅調だと指摘し、さらなる利下げには慎重な姿勢を取るよう求めた。』

『フロリダ州での演説でボウマン氏は、FRBが目標とするインフレ率2%に向けた進展が停滞していることに言及。「インフレ目標をまだ達成していないことを認識し、労働市場の動向を注意深く見守りながら、目標達成までの道のりをより適切に検証するために、政策金利の引き下げを慎重に進めたい」と述べた。』

『また、中立政策金利(経済成長を促進も抑制もしない金利水準)はコロナ前よりもはるかに高いと考えており、「われわれは現在考えているよりも中立政策スタンスに近づいている可能性がある」とも指摘。物価安定目標を達成する前に政策金利が中立水準に達するか、あるいはそれを下回るリスクも排除すべきではないとの見解を示した。』(上記URL先より)

相変わらずのボウマンクオリティでありますが、本チャンの講演はこちらになりますな。

https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bowman20241120a.htm
November 20, 2024
Approaching Policymaking Pragmatically
Governor Michelle W. Bowman
At the Forum Club of the Palm Beaches, West Palm Beach, Florida

来月に向けて色々と出ているのですがまあワシにも生業というのがあって中々追い切れていなくて面目ないですorzorz







2024/11/15

〇パウちゃんがお話をしておられたようなので確認したらキーメッセージは「利下げ急ぎません」ですな

FOMC会見ネタをやる前にこっちやってるんじゃねえよというツッコミは謹んで受けます(汗)。

https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/powell20241114a.htm
November 14, 2024
Economic Outlook
Chair Jerome H. Powell
At Conversation with Federal Reserve Chair Jerome Powell, Dallas, Texas

「パウちゃんと話そう」イベントみたいですね(^^)。そんなに長くないので全部頭から駆け足で確認しておきましょう(としらっと態勢を立て直しまして^^)。

『Good afternoon. Thank you to the World Affairs Council, the Federal Reserve Bank of Dallas, and the Dallas Regional Chamber for the kind invitation to be with you today. I will start with some brief comments on the economy and monetary policy.』

『Looking back, the U.S. economy has weathered a global pandemic and its aftermath and is now back to a good place. The economy has made significant progress toward our dual-mandate goals of maximum employment and stable prices. The labor market remains in solid condition. Inflation has eased substantially from its peak, and we believe it is on a sustainable path to our 2 percent goal. We are committed to maintaining our economy's strength by returning inflation to our goal while supporting maximum employment.』

というご挨拶はさておきまして、最初の小見出しが『Recent Economic Data』である。

・成長については威勢の良い話をしているがもしかしたらトランプに当てこすっている部分があるのかしら

小見出しにさらに小見出しがあって最初のが『Economic growth』ですな。

『The recent performance of our economy has been remarkably good, by far the best of any major economy in the world.』

「パウちゃんと話そう」企画なだけにのっけから「アメリカ経済の成長は世界一!」って自賛から始まっているのはご愛嬌ですが、

『Economic output grew by more than 3 percent last year and is expanding at a stout 2.5 percent rate so far this year. Growth in consumer spending has remained strong, supported by increases in disposable income and solid household balance sheets. Business investment in equipment and intangibles has accelerated over the past year. In contrast, activity in the housing sector has been weak. 』

消費の説明の中で家計の可処分所得の上昇を挙げていまして、暗にインフレ退治が功を奏しておりまっせというアピールをしておるのもご愛嬌。

『Improving supply conditions have supported this strong performance of the economy. The labor force has expanded rapidly, and productivity has grown faster over the past five years than its pace in the two decades before the pandemic, increasing the productive capacity of the economy and allowing rapid economic growth without overheating.』

供給制約の解消によって経済は過熱することなく拡大しています、と言ってるのですが、ここの中でしらっと「労働参加者の急速な増加」を挙げているのもお茶目で、これどさくさに紛れてトランプをディスってねえかと思ったのですが深読みのし過ぎでしょうか・・・・・・

・労働市場に関しても結構結構という感じのトーンですな

次が『The labor market』ですな。

『The labor market remains in solid condition, having cooled off from the significantly overheated conditions of a couple of years ago, and is now by many metrics back to more normal levels that are consistent with our employment mandate.』

労働市場に関しては「我々がマンデートとする状況に整合的なノーマルなレベルに近くなっているとみられる証拠がいくつも出ている」という認識でこれも結構なご認識。

『The number of job openings is now just slightly above the number of unemployed Americans seeking work. The rate at which workers quit their jobs is below the pre-pandemic pace, after touching historic highs two years ago. Wages are still increasing, but at a more sustainable pace. Hiring has slowed from earlier in the year. The most recent jobs report for October reflected significant effects from hurricanes and labor strikes, making it difficult to get a clear signal. Finally, at 4.1 percent, the unemployment rate is notably higher than a year ago but has flattened out in recent months and remains historically low.』

個別の労働市場の指標について説明していますが、直近の雇用統計に関してはハリケーンとストライキの影響がありまっせ、という話もしていまして、こちらに関してもよかよかモードになっていて、労働市場のさらなる悪化の懸念がどうのこうのとかそういうトーンはどこに逝ったのよという感はしますな。まあ「パウちゃんと話そう」企画だから威勢の良い話を中心にするというのがあるのかもしれないので、そこはここでは留保しておきますけど。


・インフレに関してもよかよか節で行くのですが最後に「まだ達成してないし道のりはデコボコ」と締めてますな

次が『Inflation』ですけれども、

『The labor market has cooled to the point where it is no longer a source of significant inflationary pressures. This cooling and the substantial improvement in broader supply conditions have brought inflation down significantly over the past two years from its mid-2022 peak above 7 percent.』

労働市場の過熱解消でもう労働市場は高インフレ圧力にはならず、そのことと供給制約の緩和によってインフレは2022年半ばのピーク7%から顕著に下がってきました。と来まして、

『Progress on inflation has been broad based. Estimates based on the consumer price index and other data released this week indicate that total PCE prices rose 2.3 percent over the 12 months ending in October and that, excluding the volatile food and energy categories, core PCE prices rose 2.8 percent.』

それは直近の物価データにも示されています、と指標の数値の話をして、

『Core measures of goods and services inflation, excluding housing, fell rapidly over the past two years and have returned to rates closer to those consistent with our goals.』

除く住宅で見たときのコア物価は目標にかなり近いところに戻っている、だそうでして、

『We expect that these rates will continue to fluctuate in their recent ranges.』

物価は今後も今の辺りでしばらくは上下する感じでしょう、だそうです。

『We are watching carefully to be sure that they do, however, just as we are closely tracking the gradual decline in housing services inflation, which has yet to fully normalize.』

住宅関連サービス価格に関してはまだ注意してみているようですね。

『Inflation is running much closer to our 2 percent longer-run goal, but it is not there yet. We are committed to finishing the job. With labor market conditions in rough balance and inflation expectations well anchored, I expect inflation to continue to come down toward our 2 percent objective, albeit on a sometimes-bumpy path.』

でもってインフレの締めのところですが、色々と言ってたんですけど結局は物価はインフレ目標に対して、「but it is not there yet」と言ってまして、今後の推移に関しても目標に向けて戻るでしょうと言いながら、「albeit on a sometimes-bumpy path」と締めていますので政策の話はお察しという感じですか。


・政策に関しては「今の経済状況は利下げを急げというメッセージは出していませんぞ」がキーメッセージ

でもってまあいつもだと手抜きでここしか読まない(今日のは文章量が一見して短いのでこれなら全文行けると踏んで手抜きをしませんでしたw)『Monetary Policy』ですな。

『Given progress toward our inflation goal and the cooling of labor market conditions, last week my Federal Open Market Committee colleagues and I took another step in reducing the degree of policy restraint by lowering our policy interest rate 1/4 percentage point.』

インフレゴールへの物価の進展と労働市場の鎮静化を受けて先日利下げをしました。からの、

『We are confident that with an appropriate recalibration of our policy stance, strength in the economy and the labor market can be maintained, with inflation moving sustainably down to 2 percent.』

FOMC会見ネタすっ飛ばしてこれ見ているのでアレですが、足許の利下げに関してはFOMCでも「an appropriate recalibration of our policy stance」と政策スタンスの「再調整」としていますな。

『We see the risks to achieving our employment and inflation goals as being roughly in balance, and we are attentive to the risks to both sides. We know that reducing policy restraint too quickly could hinder progress on inflation. At the same time, reducing policy restraint too slowly could unduly weaken economic activity and employment.』

これもFOMC後会見のオープニングリマークで出ている説明。

『We are moving policy over time to a more neutral setting. But the path for getting there is not preset.』

方向性としては「より政策スタンスをニュートラルにする」とは言っていますが、「over time」であって別に急ぐ話はしていませんし(直近の流れからもそういう話が出るとは思えないので順当ですが)、先行きのコースは事前決め打ちしていませんってのも同じ(だったらドットプロットもう次回から出すなよと思うけど)。

『In considering additional adjustments to the target range for the federal funds rate, we will carefully assess incoming data, the evolving outlook, and the balance of risks.』

でもって先行きはデータ次第、というのまではまあFOMCオープニングリマークなどでも示されていますが、

『The economy is not sending any signals that we need to be in a hurry to lower rates.』

>The economy is not sending any signals that we need to be in a hurry to lower rates.
>The economy is not sending any signals that we need to be in a hurry to lower rates.
>The economy is not sending any signals that we need to be in a hurry to lower rates.

今回はこれがキーメッセージですかそうでうすかということで。

『The strength we are currently seeing in the economy gives us the ability to approach our decisions carefully.』

利下げは慎重に、とさらに加えてから、

『Ultimately, the path of the policy rate will depend on how the incoming data and the economic outlook evolve.』

ということで今後次第、としております。でまあ最後に締めパラグラフが入るのですが、これはご挨拶みたいなもんでして、

『We remain resolute in our commitment to the dual mandate given to us by Congress: maximum employment and price stability. Our aim has been to return inflation to our objective without the kind of painful rise in unemployment that has often accompanied past efforts to bring down high inflation. That would be a highly desirable result for the communities, families, and businesses we serve. While the task is not complete, we have made a good deal of progress toward that
outcome.』

ま。これはご挨拶の最後の締め文言って感じで、

『Thank you, and I look forward to our discussion.』

この前のFOMC会見の時も「質問をお待ちしてます」じゃなくて今回もそうなんですな。

ということで全文引用しましたが、中々わかりやすいのは、キーメッセージの「The economy is not sending any signals that we need to be in a hurry to lower rates.」以外は既に説明済みの話に関して一部最新データをアップデートした部分があるかな、っていう程度で(FOMCから間が短いせいもあるけど)余計な事を言わないし、余計なこと言わないけれども説明は丁寧、ということで、丁寧な説明とか必死に議論している極東のポンコツ中銀の政策委員会のカボチャ頭の皆さんや振付が絶望的にヘタクソな振付師の皆さんはちったあ参考にしていただきたいものだと思うところでありますな(隙あらば悪態w)。






2024/11/14

赤一色というと満貫くらいはありそうですねw
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN07EDK0X01C24A1000000/
下院も共和多数派、トランプ新政権「トリプルレッド」に
米大統領選2024
2024年11月14日 4:31 [会員限定記事]

なお
https://jp.reuters.com/markets/quote/USDJPY=X/
US Dollar / Japanese Yen FX Spot Rate
USDJPY=X
直近の取引 155.46JPY
変化 0.84
変化% +0.54%
2024年11月14日の時点。値は少なくとも15分遅れで表示しています


〇米国CPIがあったので反応の備忘用クリップ

・CPIを受けた高官発言は「12月利下げをするにしてもその後は様子見じゃな様子見」っぽく読めました

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-11-13/SMW5M6T0AFB400
米CPIコア指数、3カ月連続で同率の伸び−インフレ抑制足踏み
Molly Smith
2024年11月13日 22:43 JST 更新日時 2024年11月14日 2:02 JST

→総合CPIは前年同月比2.6%上昇、3月以来の伸び加速
→住居費は0.4%上昇と9月より大きな伸び、帰属家賃も0.4%上昇

『米国のインフレは10月も引き続き堅調な伸びを示した。インフレ目標の達成を目指す米金融当局者が直面しているリスクを浮き彫りにした。』(上記URL先より、以下同様)

『キーポイント

・変動の大きい食品とエネルギーを除くコア消費者物価指数(CPI)は前月比
0.3%上昇−3カ月連続で同率の伸び
 ・市場予想に一致
 ・前年同月比では3.3%上昇−予想と一致

・総合CPIは前月比0.2%上昇−4カ月連続で同率の伸び
 ・市場予想に一致
 ・前年同月比では2.6%上昇−予想に一致
 ・3月以来の伸び加速』

とまあそういう訳で、CPIに関しては「下がりませんなあ」ということのようでございまして、高官発言はこのようになっておられますな。


カシュカリ大僧正
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/2E3CKJOKPBMRHKDHRM7CKRCHEY-2024-11-13/
インフレ、正しい方向に向かっている=米ミネアポリス連銀総裁
By ロイター編集
2024年11月13日午後 11:48 GMT+9

『カシュカリ総裁はブルームバーグTVとのインタビューで、物価上昇率や賃金の伸びなどが鈍化していることを指摘し、インフレが2%を超える水準で高止まりしているとは考えていないと語った。

労働市場の状況については軟化しているとしつつも、良好な状況にあり、それを維持したいと述べた。また、上下双方向のリスクが存在するものの、多くの上振れリスクを確認しておらず、インフレの高止まりがより大きなリスクという認識を示した。』(上記URL先より)

最後の部分の日本語がイマイチ何言ってるのか微妙ですが、インフレは鎮静化している過程にあるのは間違いないが、上振れリスクがあるから様子見をするのもあり、みたいな感じでの説明をしているという流れかなとは推察しました。


ロリー・ローガンさん
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/QN4J4VO2AVPHJNI6U662QZPU4A-2024-11-13/
FRB、利下げを「慎重に」進めるべき=ダラス連銀総裁
By ロイター編集
2024年11月14日午前 12:30 GMT+9

『[13日 ロイター] - 米ダラス地区連銀のローガン総裁は13日、インフレを不用意に再燃させないよう、連邦準備理事会(FRB)は追加利下げを「慎重に」進めるべきという見解を示した。』(上記URL先より、以下同様)

ローガンさんはNY連銀の調節デスク上がりのゴリゴリのオペレーション実務派ですので覚えて置いてください。前も何回か言いましたけど。

『ローガン総裁は講演で、FRBはインフレを40年ぶりの高水準から引き下げる取り組みで「大きな進展」を遂げたが、「この道筋を完了させるために、おそらくさらなる利下げが必要となる公算が大きい」と述べた。同時に「どの程度の利下げが必要か、またどの程度のペースで利下げを実施する必要があるかを確実に把握することは難しい」という認識を示した。』

まあ本当の本当に中立金利に近いところにいる場合、政策金利の変更って別にやらなくても良い可能性があるし、何ならうっかり利下げしてインフレ加速させたら間抜けプレイになってしまいますから、まあだんだん慎重になってくるのは仕方ない。米国なんてインフレ期待がアンカーされていることになっていて、長期の景気サイクルにおける政策金利と物価に関する知見の蓄積があってもこのように慎重にならざるを得なくなっている訳ですからムツカシムツカシネーという所ではございます。


セントルイスは変態仮面の跡目相続をしたのがムサレムさんでして、
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-11-13/SMWI0LDWRGG000
セントルイス連銀総裁、緩やかな利下げ想定−インフレ鈍化が続くなら
Amara Omeokwe、Craig Torres
2024年11月14日 4:25 JST

『米セントルイス連銀のムサレム総裁は13日、インフレと雇用の目標達成は視野に入っていると指摘。ただし、物価上昇率が当局目標の2%を上回って推移する間は「やや景気抑制的」な政策を続けるべきだとの考えを強調した。』(上記URL先より、以下同様)

ということですが、

『ムサレム氏はメンフィス・エコノミック・クラブで講演し、「インフレを目標に回帰させ、最大限の雇用を支える上で、金融政策は好位置にある。政策金利を時間とともに中立水準へ漸進的に調整することを通じて、これらの達成を図っている。インフレが2%に向かって低下し続けることが前提だ」と発言。発言は講演原稿に基づく。』

ということで講演原稿出ているようですし、変態仮面後任のこちらの方の講演をまだまとまって読んでいる時間が取れていないのでどこかで気合入れて読まないと、とは思っておりますわ。

『追加利下げを検討する際には、今後入手するデータを「思慮深く、かつ辛抱強く」検証することが可能だと、付け加えた。』

実際に原稿を見た方が良いのかもしれませんので、URL置いときますね
https://www.stlouisfed.org/from-the-president/remarks/2024/remarks-monetary-policy-and-u-s-economic-outlook
Musalem: Remarks on Monetary Policy and the U.S. Economic Outlook
Nov. 13, 2024

『St. Louis Fed President Alberto Musalem spoke at an Economic Club of Memphis event in Tennessee. He gave the talk “Remarks on Monetary Policy and the U.S. Economic Outlook” and participated in a Q&A moderated by Douglas Scarboro, senior vice president and regional executive of the St. Louis Fed’s Memphis Branch.』

・・・・・でまあ最近出てくるコメントですが、トランプ襲来というアチャーイベントが発生しただけに「決め打ち出来ませんモード」の色合いをさらに濃くしているんでしょうなあと思うところですので、まあ普通に考えるとこれ12月は利下げするかもしれないけど1月以降はFED一旦寝転がりしておかないと、トランプがインフレ―ショナリーな政策をぶっこんで来ると緩和政策とか言ってられないので、様子見ますとしか言いようが無いでしょうなあと。

でまあ前回のトランプは緩和しないと怪しからん風味は多分にありましたが、トランプって基本的にその辺のセンスは良いので、今回はインフレを抑制する政策を打たせながら財政は出す(どこのレーガン大統領だよ)という方がありそうなことだし、インフレが再度爆裂しようもんなら民主党政権から共和党政権に変えた意味がねええええええとなる可能性が高そうですわな、とかなんとかつらつら考えますと、利上げとかそういうのはさておくにしてもバンバン利下げってのは余程物価データーがフェイバーとか、物価がそれどころか下がって来たわあら大変みたいな勢いにならないと難しいのとチャイマスカね。


・中立金利に近い米国だって判断が難しい局面なんですから・・・・・・・・(ジャパン雑談)

しかしさっきのローガンさんの発言内容とされるものを再掲しますと、

『ローガン総裁は講演で、FRBはインフレを40年ぶりの高水準から引き下げる取り組みで「大きな進展」を遂げたが、「この道筋を完了させるために、おそらくさらなる利下げが必要となる公算が大きい」と述べた。同時に「どの程度の利下げが必要か、またどの程度のペースで利下げを実施する必要があるかを確実に把握することは難しい」という認識を示した。』(再掲、上にあるロイター記事より)

とあるわけですが、実務家ローガンさんらしい説明かとお見受けしましたけれども、このようにFEDだって中立金利にそう遠くないところにいるんじゃないか、と思われる状況において、政策金利の落ち着かせどころに悩んでいる状態という事を意味しているんだと思います。

そう考えた場合、日銀に関して言えば、「見通し通りなら徐々に金利を調整」の「見通し通りなら調整」に関しては、中立金利がどのくらい、みたいな不毛な話をするんじゃなくて、明らかに中立金利よりも低いだろという水準を最初のゴールにして、そこのゴールについたときは「次のステップに向けて様子見をする」みたいな感じで一休み(休んでいる場合じゃないときは別だけど)する、というような感じでのアプローチで話をした方が現実的で、それが0.5%なのか1.0%なのかはともかく、そこまではもっとホイホイと利上げするというのを主張した方が政策パス分かりやすくなるんじゃないかね、とは思いましたが、既に1%が中立金利の下限値(そんなに低い訳ないと思うが)という話になってしまっているのが結構痛いので、ステップ1の終点ってすぐきちゃうことになってしまうので、これまたやりようが難しいと思います。

まあ何か日銀の場合はその場その場で自分の言いたいことに巧みな屁理屈をつけるのが得意なので、後になってブーメランになって屁理屈の整合性がぐだぐだになる、というのが続いている訳で、いまだって昨日も申し上げたように「円安対策で「見通し通りなら利上げ」と発言する作戦1」と「利上げ批判対策で「隙あらば利上げをしない理由を捻りだしてきて慎重発言する作戦2」を併用するもんだからぐだぐだになっている訳ですが、12月決定会合までにいくつか講演の機会などあると思うので、もうちょっと整理整頓してほしいものです。





2024/11/11

〇まあトランプの政策インフレ的ですからねえ(カシュカリのインフレ鎮静化遅れへの懸念発言をメモ)

カシュカリ大僧正
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-11-10/SMQW1CT0G1KW00
ミネアポリス連銀総裁、景気は力強いもインフレ退治は終わっていない
Alicia Diaz、Catarina Saraiva
2024年11月11日 3:16 JST

『ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は10日、米金融当局がインフレとの闘いで進展する中、米景気は著しい強さを維持しているが、当局はまだ「完全に帰還したわけではない」と述べた。』(上記URL先より、以下同様)

ほうほうという話ですが、まあ一方で大僧正は大僧正なので、

『9月に連邦公開市場委員会(FOMC)に公表した予測では、11月と12月の両方で0.25ポイント利下げを実施する可能性が高いとされていた。カシュカリ氏はこの見方を改めて示し、12月の「追加利下げがあり得るのは確かだ」と話した。』

ということで12月の利下げ(さすがに25でしょうね)に関してはやる気ありそうな説明になっておられますが、トランプ政権がインフレ的な政策をとってくる可能性に関して

『トランプ次期米大統領は不法移民の一斉国外追放を公約しており、米経済や労働市場にどのような影響が及ぶのか疑問が浮上している。カシュカリ氏は、こうした国外追放は一部の米企業に「混乱」をもたらす可能性があるとしつつ、移民労働者の流出がインフレにどのような影響を及ぼすのかは不明だとした。』

とまあそういうことで下手な決め打ちはしないでおられるようですが、これ積極財政と金融引き締めのセットってまさにレーガノミクスじゃねえかということで、そらまあ財政ポジション悪化するわなというお話になるので、こちらは先週金曜の既報にも程がありますが

https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/2P5DBXX6QFPRHD4S3VQVJXIYSQ-2024-11-08/
米の財政健全性リスク高まる、トランプ氏当選で=ムーディーズ
By ロイター編集
2024年11月9日午前 6:21 GMT+9

ってなりますわよね、というような感じです。中長期的にはアメリカの方がもっとひどいとか言うことになるのかもですがさてどうなるやら。

ということでメモばっかりで甚だ恐縮ですが今朝はこの辺で。







2024/11/08

〇FOMCレビュー:声明文比較だが今回はあまり色を出していない感じの声明文ですかね

いつものことだが市場の反応という答え合わせ見ないで書いているが今回のだと先行きについて声明文は何も言ってない感じがしました。

https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20241107a1.htm(今回)
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20240918a.htm(前回9月)

・第1パラグラフ:労働市場に関しては「今年の早い時期以来コンディションが緩和」というジェネラルな表現になりましたな

『Recent indicators suggest that economic activity has continued to expand at a solid pace.』(今回)
『Recent indicators suggest that economic activity has continued to expand at a solid pace.』(前回9月)

この全体状況判断は変化なし。

『Since earlier in the year, labor market conditions have generally eased, and the unemployment rate has moved up but remains low.』(今回)
『Job gains have slowed, and the unemployment rate has moved up but remains low.』(前回9月)

労働市場の認識ですが失業のところは同じで全般的なのは「年の早い時期以来全般的に緩和」というふわっとした全体観の表現になっていますね。まあこれはどう解釈するのかは難しいが、特に現状判断を顕著に上下させたようなニュアンスはなさそうに見えます(ワイはスーパードメスティックおじさんなのでそれでいいのかは知らんけど)。

『Inflation has made progress toward the Committee's 2 percent objective but remains somewhat elevated.』(今回)
『Inflation has made further progress toward the Committee's 2 percent objective but remains somewhat elevated.』(前回9月)

こちら「ファーザー」が無くなりましたが、まあゆうて前回は利下げ一発目だった訳でして、インフレーションの鎮静化にファーザープログレスがあったら利下げしまっせという触れ込みでしたから、そこを強調する必要があったということだと思うので、その意味では別にここから先に一々「ファーザー」を入れる必要もなし、と思えばまあ別に外れたからどうという話ではない気がします。知らんけど。


・第2パラグラフ:利下げ着手のためにぶっこんでいた文言を外しただけなので言ってることは前回と同じ

『The Committee seeks to achieve maximum employment and inflation at the rate of 2 percent over the longer run.』(今回)
『The Committee seeks to achieve maximum employment and inflation at the rate of 2 percent over the longer run.』(前回9月)

これはいつもの開経偈です。

『The Committee judges that the risks to achieving its employment and inflation goals are roughly in balance.』(今回)
『The Committee has gained greater confidence that inflation is moving sustainably toward 2 percent, and judges that the risks to achieving its employment and inflation goals are roughly in balance.』(前回9月)

前回は物価2%マンデートへの鎮静化に向けた「グレーターコンフィデンス」ができました云々、というのがありましたが、これは先ほどのファーザープログレスと同様で、利下げ一発目に際してそれまで言ってた「インフレがファーザープログレスをして2%マンデートへのグレーターコンフィデンスが得られれば利下げに転じる」というお約束があったために入っている文言であって、抜けたからどうということではないですし、中銀文学においては余計な文言がすくなければ少ないほど中央銀行が今の状態や先行きの見通しに対して自信ニキであることを意しますので、グレーターコンフィデンス抜けているのは無問題無問題。

『The economic outlook is uncertain, and the Committee is attentive to the risks to both sides of its dual mandate.』(今回)
『The economic outlook is uncertain, and the Committee is attentive to the risks to both sides of its dual mandate.』(前回9月)

ここは同じですね。

・第3パラグラフ:25bp利下げでその他言ってることは特段変わっていませんね

『In support of its goals, the Committee decided to lower the target range for the federal funds rate by 1/4 percentage point to 4-1/2 to 4-3/4 percent.』(今回)
『In light of the progress on inflation and the balance of risks, the Committee decided to lower the target range for the federal funds rate by 1/2 percentage point to 4-3/4 to 5 percent.』(前回9月)

これまた前回は利下げ一発目でしたのでゴテゴテと理由がありましたが、今回は「目標に向けての動きをサポートするため」とシンプルなものになりましたな。

『In considering additional adjustments to the target range for the federal funds rate, the Committee will carefully assess incoming data, the evolving outlook, and the balance of risks.』(今回)
『In considering additional adjustments to the target range for the federal funds rate, the Committee will carefully assess incoming data, the evolving outlook, and the balance of risks.』(前回9月)

同じですな。

『The Committee will continue reducing its holdings of Treasury securities and agency debt and agency mortgage-backed securities.』(今回)
『The Committee will continue reducing its holdings of Treasury securities and agency debt and agency mortgage-backed securities.』(前回9月)

利下げ局面になっても同じくバランスシートの正常化は継続。

『The Committee is strongly committed to supporting maximum employment and returning inflation to its 2 percent objective.』(今回)
『The Committee is strongly committed to supporting maximum employment and returning inflation to its 2 percent objective.』(前回9月)

ここも同じですね。


・第4パラグラフ:今後の金融政策がどうしたこうしたという部分は今回もいつも通りに文言一致

4パラは最近毎度同じなのでめんどいからパラグラフごと引用しますw

『In assessing the appropriate stance of monetary policy, the Committee will continue to monitor the implications of incoming information for the economic outlook. The Committee would be prepared to adjust the stance of monetary policy as appropriate if risks emerge that could impede the attainment of the Committee's goals. The Committee's assessments will take into account a wide range of information, including readings on labor market conditions, inflation pressures and inflation expectations, and financial and international developments.』(今回)

『In assessing the appropriate stance of monetary policy, the Committee will continue to monitor the implications of incoming information for the economic outlook. The Committee would be prepared to adjust the stance of monetary policy as appropriate if risks emerge that could impede the attainment of the Committee's goals. The Committee's assessments will take into account a wide range of information, including readings on labor market conditions, inflation pressures and inflation expectations, and financial and international developments.』(前回9月)

・第5パラグラフ:今回は全員賛成ですね(前回はボウマン理事が25bp利下げを主張して反対)

『Voting for the monetary policy action were Jerome H. Powell, Chair; John C. Williams, Vice Chair; Thomas I. Barkin; Michael S. Barr; Raphael W. Bostic; Michelle W. Bowman; Lisa D. Cook; Mary C. Daly; Beth M. Hammack; Philip N. Jefferson; Adriana D. Kugler; and Christopher J. Waller.』(今回)

『Voting for the monetary policy action were Jerome H. Powell, Chair; John C. Williams, Vice Chair; Thomas I. Barkin; Michael S. Barr; Raphael W. Bostic; Lisa D. Cook; Mary C. Daly; Beth M. Hammack; Philip N. Jefferson; Adriana D. Kugler; and Christopher J. Waller.

Voting against this action was Michelle W. Bowman, who preferred to lower the target range for the federal funds rate by 1/4 percentage point at this meeting.』(前回9月)

ということですが、じゃあ会見で何話してますねんというのまでは時間が無いのでパスしますけど、基本的に今回は利下げ自体は行っているのですが、なにせトランプ大先生爆誕なので、もともとあんまりフォワードのコミットメントをしないようにしているところにさらに輪が掛かったんじゃないですかねえという気はしますが、はてさてどうなんでしょ(そろそろ答え合わせするかな)。


・インプリメンテーションノート:ディレクティブを見ましたが各種ファシリティ金利はフルスライド、応札限度などは不変ですね

PDFだとそのまま出てくる奴です、HTMLだと声明文最後にあるリンクを踏みにいかないと出てきません。

https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20241107a1.htm(今回)
November 07, 2024
Implementation Note issued November 7, 2024
Decisions Regarding Monetary Policy Implementation

https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20240918a1.htm(前回9月)

これ前回比較の引用とかしているとクソ長くなるので引用比較は割愛しますが、各種オペレーションの適用金利やプライマリークレジットの適用金利、各種オペの応札限度額などに変更はなく、資産残高減少に関してもその減額ペースのマンスリーキャップは前回と同じとなっていて、特段実務的に妙なことはしていない、という感じになっています。


〇会見見ている時間は無いのですがオープニングリマークの最後だけ気になった

会見(今の時点で出ているのはオープニングリマークのみ)

https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20241107.pdf
Transcript of Chair Powell’s Press Conference Opening Statement
November 7, 2024

目を泳がせただけなのでちょっと前回比較とかそういうのやるほど読めていないのですけれども、思いっきりここは引っかかりました。

『We at the Fed will do everything we can to achieve our maximum employment and price stability goals. Thank you. I look forward to our discussion.』(今回)

この最後の部分、前回まではこうだったんですよね。

『We at the Fed will do everything we can to achieve our maximumemployment and price-stability goals.Thank you. I look forward to your questions.』(前回9月)

『We at the Fed will do everything we can to achieve our maximum-employment and price-stability goals. Thank you. I look forward to your questions.』(前々回7月)

ハイフンだかダッシュだかはどうでも良いのですが、最後の最後、今までは「質問をどうぞ」だったのですが、今回は「さあ議論しましょう」になっているのはどういう風の吹き回しなんでしょう、まあ誰か質問しそうですけれども・・・・・






2024/10/28

〇とまあこんなご時世ですがのうのうとECBのラガルド会見の確認最終で(その3)

https://www.ecb.europa.eu/press/press_conference/monetary-policy-statement/2024/html/ecb.is241017~59ad385bab.en.html
PRESS CONFERENCE
Christine Lagarde, President of the ECB,
Luis de Guindos, Vice-President of the ECB
Ljubljana, 17 October 2024

・公式見解では「リセッションはシナリオではない」なんですけど・・・・・・

『The first question is about economic growth. Is a soft landing still your main scenario, and am I correct to see that perhaps your attention has shifted slightly from inflation concerns to growth concerns? (後半割愛というか次に)』

というのが前半の質問で、「ソフトランディングがメインシナリオというのは維持ですか?」なのですが、これに続く後半の質問がコンビネーションでよくできているので次に行きますね。

『On the issue of economic growth, are we still on a soft landing expectation? The answer is: on the basis of the information that we have, we certainly do not see a recession. The euro area, on the basis of what we have, is not heading for a recession, and we are still looking at that soft landing that you have just mentioned.

リセッションは見ていません( ー`дー´)キリッ

『You asked me whether we are more concerned about growth than we are about inflation. I would say that we are concerned about growth to the extent that it has an impact on inflation, and we have to be particularly attentive to both because of the impact that it has on inflation, which is our main focus and our key objective, as you know.(後半割愛というか次)』

ということで、インフレよりも景気を重要視するか、というとそういう訳ではない、ということですが、ここから先の説明が中々面白いので、先ほどの質問の後半に参りますね。


・中立金利との関係は「マジックワード」でもあるという中々面白い説明

先ほどの質問の後半ですけれども、

『(前半割愛、というかさっきの部分)The second question is about a line in the statement which says the rate is still restrictive. But I’m curious. We thought restrictive is this unobservable concept because we don’t know where the neutral rate is. Perhaps you maybe started having a discussion in the Governing Council on where does restrictive stop? I’m curious if you have any thoughts about where does restriction end and where does accommodation begin?』

ステートメントでは「金融政策は依然として引き締め的」という説明になっていますが、そもそも論として中立金利の居場所がどこなのか分からないのですから「引き締め的」という概念は観測できないんじゃないのかと思うのですが、現状の政策が引き締め的なのかとか中立金利水準とかそういうことに関して委員会で何か議論して、どの水準になったら引き締め的ではなくなり、緩和的な水準になる、という話をしていると思うのですけれどもどうなんでしょう、と非常に良い質問をしています。

でもってこの部分の回答がさっきの続きになっていまして、

『(前半割愛、というかさっきの部分)So there is, and you pointed to it, that sentence which is sort of the magic language.』

いきなりラガルドはん何というぶっこみwwwwwwwwwww

『And I’m sure that you will be very attentive if and when that magic language changes a bit. 』

なのでこのマジックランゲージ(=リストリクティブ)を少し変更したらあなたはものすごく興味を持つでしょう、と来ましてですね、

『We still say that “we will keep policy rates sufficiently restrictive for as long as necessary to achieve this aim”, which refers to the previous sentence, which is that “we are determined to ensure that inflation returns to our 2% medium-term target in a timely manner”. 』

ここは声明文をそのまま見た方が良いのですが、
https://www.ecb.europa.eu/press/pr/date/2024/html/ecb.mp241017~aa366eaf20.en.html
(声明文)

声明文の最初の部分の3番目のパラグラフの冒頭から、

『The Governing Council is determined to ensure that inflation returns to its 2% medium-term target in a timely manner. It will keep policy rates sufficiently restrictive for as long as necessary to achieve this aim. 』(この部分だけ直上URL先の声明文から)

となっていますが、というお話ですな。

『So there is no question in our mind that we are currently restrictive, hence that sentence. There is also no question in our mind that we are not yet at this 2% medium-term target in a timely manner, and this has to be sustainable.』

なので今が引き締め的であることに疑問の余地はないし、まだ2%物価目標までインフレを安定的に抑制できているわけではない、だそうです。

『So even if it could well be as markets anticipate, but they are not always right, that the time at which we reach that 2% sustainably has advanced a bit, it is not yet now. And we will have to wait further in order to make sure that we are at that 2% sustainable medium-term target.』

まだ2%の持続的な達成はしていないので待つ必要がある、という説明ですな。


・・・・・ということでですね、結局のところ政策が中立的なのかどうかってのは、過去において一応物価2%が達成できていたことになっているECBですらまあこうやって「言い張る」しかないわけでして、その意味では日銀が中立金利近辺までの政策金利調整、という話をするのは概念としてはありではあっても、金融政策を具体的に運営して金利をどこにセットするのか、という面においては使い物にならん概念となるとしか申し上げようがないので、日銀は中立金利云々の話をあまり前面に出さない方が良い(煙に巻くのには便利な概念だけどコミュニケーションミスを誘発するだけなので諸刃の剣)と思うのですが、先日ネタにしたように「均衡イールドカーブ」とか今更出してくるあたりがお前ら何考えてるんだよヴォケと申し上げたくなるわけですな。


・物価認識に関してはアインフレ率急低下が気になりますよね〜

この次もまあ関連質問って感じでして、物価の認識についてのお話ですね。

『In the introductory statement you refer to this updated assessment of your inflation outlook. Does this refer to the September staff forecast, or has this changed since September within the Governing Council? And if so, could you give us a little bit more colour on what the actualchange in the inflation outlook has been that you’re referring to? 』


今回物価見通しのステートメント文言が変わったのは見通しの変更ですか?変更ならスタッフなのか委員会なのか?変化しているならもう少し説明いただきたい、というのが第一の質問でして、

『And my second question is also again on the theme of undershooting the 2% target. Even the September forecast projected the 1.9% inflationary rate for 2026, I think from the second or third quarter onwards. Has this been changed, and to which degree do you think it already shows that monetary policy is too tight?』

インフレのアンダーシュートについてどう思うのか、インフレ見通し引き下げる中で引き締め的な政策してたら金融政策引き締めのやりすぎにならんのか?ということで一連の質問になっています。

『If anything, I would say that what the numbers are showing at the moment is that our monetary policy is working.』

でもってそれに対してラガルドはんは「これは政策がワークしているからです( ー`дー´)キリッ」という説明をしておりますな。なんかやや無理のある説明な気もするけどw

『And the fact that we’ve managed to bring inflation down as we have so far, not to a complete victory, but to have brought it down so much is an indication that our monetary policy is actually working.』

でもって今までの経過は物価抑制に勝利する道を進んでいるということです( ー`дー´)キリッ、だそうです。

『It’s not the only thing that is operating in that respect, but it is certainly part of the elements to explain that we have moved from very high inflation numbers to much lower [inflation] and hopefully soon to target on a sustainable basis.』

ということで、高インフレが抑制されてきている移行中ですよ、という認識になっていますので引き締め的、というお話になっている訳なんですね。

『Our assessment of inflation as we stand now is really based on all the numbers that are available, and that leads us to assess and take a view on inflation now and the potential impact going forward. But that will be done in a strict, rigorous, published way when we have our December projection exercise. And you will be obviously not privy because it will be public, but you will be on the receiving end of this very clear updating.』

見通しに関しては12月会合の時にアップデートしますので乞うご期待。

『But in the meantime, we are not blind to what happens. And when we receive inflation by way of HICP at 1.7%, when we see core at 2.7%, when we see services moving down to 3.9% and when we look at the three-month-over-three-month services moving significantly from August to September, all of that put together leads us to believe that inflation is definitely on that disinflationary track that I was referring to earlier.』

この辺は直近数字の話ですが、

『On the forecast, again we had a forecast in September. Between September and December, a lot of data, a lot of numbers, a lot of indicators and a lot of surveys will come into play and will be integrated in the work that we do. And we will have a forecast that will be, by the way, extended to 2027 because the December forecast always takes one further year into account. And we shall see. We shall see whether there is a move and in which direction in terms of inflation and in terms of activity.』

『But in between projection exercises, as I said as a case in point, that data matters. We look at everything that we have available, and if it is appropriate to take us closer to this timely reaching of our target of 2% medium-term symmetric, we make the decision, as we have today.』

12月に向けていろんなデータが出てくるのでそれを見てアップデートしていきます、と決め打ちはひたすら回避してデータディペンデントを強調していまして、シナリオ通りならどうのこうのみたいな話(FEDやBOJ)もしない、という形になっていますが、とりあえず「インフレ対応が終わっていないから引き締め的」というのは把握しましたが、12月の見通し時点で認識が変わればインフレ対応から景気重視を前面に出すかもしれませんな、とは思いました。





2024/10/24

〇ECBは何か話が先に行っている気もしますがとりあえずラガルド会見の続き+おまけ

https://www.ecb.europa.eu/press/press_conference/monetary-policy-statement/2024/html/ecb.is241017~59ad385bab.en.html
PRESS CONFERENCE
Christine Lagarde, President of the ECB,
Luis de Guindos, Vice-President of the ECB
Ljubljana, 17 October 2024

昨日の続き参ります。

・金融政策を中立スタンスに戻す流れなのかどうかの質問にも蒟蒻問答

昨日引用した次にはこんな質疑がありましてですね。

『Inflation is expected to reach target in the course of next year instead of at the end. Will we reach the neutral rate earlier than before? Will you recalibrate monetary policy and cuts to come?』

『The second question is whether the German economy is the main reason for the shift since September, when today’s cut was unlikely, or at least is it a good reason?』

インフレ率は年末ではなく来年にはまた2%に戻るとの見通しのようですが、その前の時点で政策金利って中立的になるんでしょうか、金融政策の再調整を行って利下げが今後も来るんでしょうか。と金融政策スタンスの中立化に向けた方向性を聞いていますな。

後半は「今回の政策スタンスシフトは主にドイツ様の経済悪化に対応したものですか」って感じの質問なので、これは「場合によっては政策金利を緩和まで持っていく必要な無いのか」という話にも通じる(そこまで意識しているのかは知らんが)質問ですわな。

ラガルドさんの回答が蒟蒻問答にもほどがあって、

『First of all, we don’t recalibrate, we calibrate, and this is really the process through which we go.』

再調整するわけではなくて調整するんです。っていきなり禅問答なのですが、まあこれはアタクシなりに解釈すると「プリセットコースの再調整をしているわけではなくて、毎回の会合で毎回決定している」ということを言いたいんだと思います以下の文脈から考えて。

『As laborious as it is, we believe in our three-pronged approach. I won’t bore you with the repetition of it all, but it is inflation outlook, underlying inflation and transmission.』

インフレ見通しと基調的なインフレと政策の波及状況の3本の柱(いつのまにかピラーっていわなくなったのね)のアプローチしています、だそうです。

『And we calibrate our monetary policy on the basis of all the data that are available and applying that three-pronged approach.』

でもって会合ごとに前回以降のデータをすべて見て分析して政策の調整をします、って言っているので先ほどの冒頭のところを上述のように解釈した次第。

『 It’s obvious that the state of the economy and the activity has a bearing on inflation. And to that extent, of course, we take that into account in order to assess inflation and its return in a timely manner to our target. But that’s the extent of our consideration: the bearing of activity on inflation. Because our job is price stability and our mission is to return inflation back to the 2% target in the medium term.』

見事に蒟蒻問答になっていますな。結局ほぼ何も言ってないのと同じですけど、この会見って最初からずっとこの調子で来ていて、先の話を一切しないし、そもそも政策の方向性の話もしない、という結構壮絶な会見でしたねこれは。


・なので中東情勢への言及があった(たぶんステートメントの方)にも関わらず・・・・・・

次の質問では、

『You said earlier we will have more data in December, not much more, but more data, and if they all point in the same direction as you outlined earlier as well, you will just have opened the door widely for a new rate cut in December if I interpret you well?』

12月までに出てきたデータがECBの見通し通りなんだったら追加利下げするんですか?と質問したうえで、

『You mentioned tensions in the Middle East that could feed inflation through energy prices. What about domestic stimulus in China, which is huge and could also revive pressures on energy prices through domestic demand and then feed inflation? Is it something that you will combine with those Middle East tensions and look very carefully at in the next months?』

中東情勢や中国の景気刺激策、エネルギー価格動向の影響などは如何に、と聞いてるんですけど、ラガルドはんの答えは、

『It is a fact that at each projection exercise, we receive more data and in particular more updated projections of course, and typically, given that between now and the December meeting there will be more than six weeks, we will also receive more data.』

次の会合まで6週間ありましていろんなデータが入ってくるでしょうが、

『As I said, I did not open the door to anything. I repeated that at each and every meeting we will look at the data. Hence we will be data dependent, not data point dependent, nor anything else. Data dependent - all of it.』

ひたすら「出てきたデータで判断する」とは言っていますが、その途中で「データポイントディペンデントではない」と言っているのがかなりチャーミングでして、単月の一つの指標をとっ捕まえて右往左往したり、瞬間的に株価が下がってションベンちびったりしないということでFEDやBOJに対してもイヤミぶっかましてますな(その意識があるかはさておき)。

『We will determine what is the best rate, what is the best speed, how far and how deep we have to go in order to return inflation to its 2% medium-term target. This is what we will do in December, and I would not give any other commitment, nor make any other statement in that respect. 』

なので12月理事会に向けて何かという話はこれ以上できませんよ、とバッサリ行っている訳でして、どこぞの植田和男以下のコミュ障軍団はちょっとラガルドはんの爪の垢でも煎じて飲んでいただきたい。

『As I said in the monetary policy statement that I read earlier on, we are not pre-committing.』

この「予告ホームランは一切しません方向性も示しません」ってのは中々ですよね。まあそれを補うべく下々の連中がしゃべっている、という実例は後で補足します。

『Again, I think that the decision that we’re making today is a perfect example of how we can be data dependent. You refer to two areas of big concern. One coupled with obviously a major conflict and horrifying one that is taking place in the Middle East. We of course are concerned beyond the humanitarian approach, beyond the conflict aspects. We are looking at the economic consequences and we are looking in particular at the impact that this conflict could have on trade, because that part of the world is very much open to trade and the passing of ships of all sorts. We are also very attentive to the price of oil that can be impacted, and this oil price is a good segue into your question about China. What will happen in China, what kind of stimulus will be activated, with all full details as is expected at some stage, will also be an indication of the demand addressed by China to the oil market and the impact that it will have on the price of such a commodity. 』

質問で言及のあった中東情勢、中国経済、エネルギー価格などの話を説明して、ご指摘のようにこれらは今後の動向次第で影響が起きることもあるのでそれは注意して観察する、とは言って
ますが、

『We are looking at all those components and obviously focusing on the economic consequences and the impact that they could have on inflation, and obviously activity to the extent that it impacts inflation.』

どこかのチキン中銀みたいな「最大限の注意をもって」とか言い出して、いやお前日本の中央銀行なのに何で米国経済米国経済ゆうてますねん、というような話をするわけではないのでしてコミュ障軍団はラガルドはんの爪の垢以下同文。

・・・・・・とまあこんな調子で先行きの事は言いませんよだし、そもそも政策の方向性がどうなのかとかも示さないというある意味潔い姿勢を取っています、もうちょっと読みどころありそうですがちょっと別ネタで・・・・・



・ということでおまけだが今しがたこんなのが入ってきました(パネッタが中立以下への緩和政策の可能性も示唆)

これ書きながらヒョイヒョイとニュース確認してたんですがこんなのが今しがた出ていました
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/MNWJ7ICNBNL6DHRJWUY2VHBXQ4-2024-10-23/
ECB、再び低金利が必要になる可能性=パネッタ専務理事
By ロイター編集
2024年10月24日午前 5:56

『[23日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)のパネッタ専務理事は23日、ECBは再び経済を刺激するために十分な低水準まで金利を引き下げる必要があるかもしれないと述べた。訪問先のワシントンで出席したイベントで語った。』

『同専務理事は、現在の金利水準は中立金利からはまだ遠いとした上で、「ディスインフレのペースと実体経済の弱さを考えると、中立金利で止まらなければならないとは考えていない。政策金利が中立金利を下回る可能性も排除できない」とした。』(上記URL先より)

ということで、ECBの場合は「公式見解」では先行きの話は何一つしませんが何か?というスタンスを貫いていまして、その代わりにこういうのがちょいちょいと出てくる、というのが仕様になっています(ただし傾向としてパネッタっておしゃべりなのとお調子者っぽいところがあるのに要注意)ので、そこで補っているという感じでして、一方でどこぞの日銀に置かれましては総裁が全部説明しようとするから「スタンスがブレブレ」批判を浴びる訳でして、この辺は役割をちゃんと分担することによって、根本の部分はぶれないで、周辺の方では意見に幅がある、みたいな見せ方をすべきだとは思うのですが、いかんせん日銀の場合はその意見があるのか無いのかわけわからんドテカボチャ(一部に人間様もいるのだが)がひな壇に並んでいるのがアカンですよね、と思いました。





2024/10/23

〇ECBレビュー(おそくなりましたが)ということで利下げの会見の今回はQAから先にちょいと拝読

https://www.ecb.europa.eu/press/press_conference/monetary-policy-statement/2024/html/ecb.is241017~59ad385bab.en.html
PRESS CONFERENCE
Christine Lagarde, President of the ECB,
Luis de Guindos, Vice-President of the ECB
Ljubljana, 17 October 2024


・景気対応で利下げをしているのか見通しオントラックで利下げしているのか判然としない説明ですな

最初の質疑ですが、

『My first question would be on the next steps. It sounds like you expect to reach a 2% target maybe sooner than predicted in September. Does the decision to cut today really represent a shift of gear? Do you expect a cut at every meeting for the next few meetings now to be the most likely scenario? (後半は米国大統領選挙の件なので割愛)』

見通しよりも2%達成が早まるということで利下げ、すなわち正常化のギアを上げたのかという質問に対して、

『We decided to cut all our rates by 25 basis points because we believe that the disinflationary process is well on track and all the information that we received in the last five weeks since our last monetary policy decision was heading in the same direction - lower! 』

オントラックだから利下げした、という説明になっていて、

『Whether you looked at inflation numbers, headline core, whether you looked at PMI numbers, all categories, composite manufacturing, services, employment - are heading downwards as well. If we look at all the surveys that are in the works at the moment, of which the specific numbers and data will be available soon, it is the same story. Whether it is the corporate telephone survey or other surveys that we have available, it’s all heading in the same direction - downwards!』

この辺りは具体的にどんなデータがありました、ってお話なので流して次。

『That really confirmed for us the confidence that we have that the disinflationary process is well on track.』

物価が落ち着いていくというのがオントラックであるとのコンフィデンスをコンファームしたと。

『That is what has caused us to make the decision to cut our three rates by 25 basis points.』

よって25利下げしましたよ。

『We have also reiterated that we will continue to be data dependent and honestly, this decision is a case in point of us being data dependent.』

データディペンデントを強調。

『We have all the available data all heading in the same direction, the largest countries all also moving in negative territories in PMI numbers. Those are really strong elements - and because of their synchronisation and the similar direction - we have to take into account those data and make the decision that we have made. We are going to continue doing exactly the same thing. It’s clear that between this meeting and the next meeting we have in December, we will be receiving more data - some of it soft, some of it hard - and more readings. All of that will help us decide, as I have said, “meeting by meeting,” what monetary policy stance we should decide at that time. I think there were no variations in that respect from the decision that we made in the past, in terms of methodology. 』

『It’s the same steer, the same stance, the three-pronged approach and the meeting-by-meeting data dependency, no predetermined path. (以下は後半質問の回答なので割愛)』

エライワチャワチャ説明しているのですが、結局「データディペンデントです( ー`дー´)キリッ」って言ってるだけですねこれ。


・景気対応で利下げしてるんだったらなぜ50じゃないのか問題&政策は引き締め的との整合性

次の質問の人、上記のラガルド説明だと「あれれ」ってなりますよね、って感じかと思いますし、ステートメントはネタにしませんでしたが、例のポンチ絵の方でも「金融環境は引き締め的」って説明になっていて、景気対応での利下げという最初の方のポンチ絵と整合性どうなってるのよ感がありますからこういう質問も飛びますよね。

『My first question would be on the economic outlook. You were now referring to and pointing out that the economy doesn’t really look great and all signs point towards more downspin. Why didn’t you go for a 50 basis point cut? 』

当然この疑問は沸き起こりますよね。

『Is that something you have discussed or whether this is on the table for the next ones? And have you been discussing the topic of the possibility that inflation could also undershoot, if you keep your policy stance restrictive? Thank you.』

それに金融政策を引き締め的にしたままだったら物価は(既に2%割れなので)アンダーシュートしないのでしょうか、という至極ご尤もな質問ですが、さてこれになんと回答したのかと言いますと・・・・・

『It is a fact that the economic activity has come in, on the basis of the elements that we have and the indicators that are available, a bit below what we had anticipated. But this is not a projection exercise.』

実際に足元の経済が若干弱かった(a bit below what we had anticipated)のは事実だが、これは経済物価の先行き見通しの話とは別問題、というなんかエライ強引な説明から始まり、

『We are in between two projection exercises, and clearly December will be another opportunity for us to run all the data and all the information through our models and to apply the three-pronged approach to our stance. 』

でもって見通しを検討しまして、12月はこの間に揃ったデータをみながら再検討のする時期です、とかゆうておるのですが、なんかもう煙に巻こうとしている感が漂うのは気のせいでしょうか。

『What was on the table and what was debated and proposed by our Chief Economist Philip Lane was a 25 basis point cut. End of the story.』

ちょwwwwwwおまwwwwwwww

ということで何で50じゃないのか、そもそも景気対応の利下げじゃないのか、というのが全然示されていないという恐ろしい回答になっております。さらに能書きは続くのですが、

『We had discussions and debates and rationales and narratives, and all of that is part of the debate and the legitimate discussions that we have within the Governing Council. But at the end of the day, there was a unanimous decision to cut rates by 25 basis points. 』

ディスカッションをして全員一致でしたよ、は良いんだが結局この利下げの位置づけis何というのは煙に巻いたまま。

『It may have been the Slovenian great atmosphere that precipitated this more than consensus.』

スロベニアのグレートな雰囲気でこんな決定になったのかもね、ってもう煙に巻く気が満々。

『There was a unanimous decision to cut by 25 basis points and we thought that it was the appropriate decision to make in view of the moment, in view of the indicators that we have and our assessment of this disinflationary process that is really under way and well on track.』

結局「アベイラブルなデータやアネクドートを総合的に判断したら25になりました」しか答えていませんね。

『On the risk of undershooting or overshooting, we can debate ad nauseam on this particular matter and you will find views on both sides of the equation. What is clear to all is that we still have risks on both sides of our forecast, upside and downside, probably a bit more on one than the other, probably more downside risk than upside risk. 』

引き締め的にしてたら物価がアンダーシュートするリスクはないんですか、という質問には斜め上の回答をぶちかましておりまして、常に上下のリスクはあるもんだけど、いろいろな要因を勘案すると、物価のリスクはほんのちょっとだけダウンサイドリスクかなあ(probably a bit more on one than the other, probably more downside risk than upside risk.)と引き締め的であることの影響について触れないで説明していて、これまた忍法煙に巻くの術でドロンドロンと逃げている感が強いんですがアタクシの気のせいでしょうかw

なお最後にラガルドはん、

『But I’m talking here about our forecast for inflation and that’s what we are looking at.』

ちょwwwwww「物価見通しの話をしていますし、我々が見るのは物価見通しですから」で締めやがって、何で金融政策スタンス引き締め的のままなのっていう質問に全然回答してないじゃん。

・・・・・てな訳で、以下結構な面白質疑が続くのですが、今朝はこの辺で勘弁してもうちょっとこの「でもって今回の利下げの背景はどうなっているんだよ」の質疑を鑑賞したいと思います(すいません下準備不足で)。







2024/10/18

〇ECBの利下げは「物価も下がったし景気対応ですわ」と分かりやすいのですかね(取り急ぎポンチ絵鑑賞)

取り急ぎポンチ絵を

今回
https://www.ecb.europa.eu/press/press_conference/visual-mps/2024/html/mopo_statement_explained_october.en.html
Our monetary policy statement at a glance - October 2024

前回
https://www.ecb.europa.eu/press/press_conference/visual-mps/2024/html/mopo_statement_explained_september.en.html
Our monetary policy statement at a glance - September 2024

ECBのサイトなんですけど、この手のページを見るときにトップの場所にあった階層表示(例えば日銀のサイトであれば、『ホーム>日本銀行について>講演・記者会見・談話>講演・挨拶等 2024年>【挨拶】安達審議委員「わが国の経済・物価情勢と金融政策」(香川)』ってやつ)が無くなったのと、トップページのサムネから個別の内容に飛ぶときになぜか「別窓で開ける」ができなくなっていて(その下にある「more」からなら行ける)、やたらめったら使い勝手が悪くなった、などと極東で日本語で書いてもECBには届かないのですが、日銀様におかれましてはこのようなクソのようなサイトデザイン変更をしないようにお願いしたいので書いてみました。

ということでポンチ絵ちゃん(上記の理由で階層で前のを見に行きにくくなったのでしゃーないからオクトーバーのところを手打ちでセプテンバーに直して前回のを出しましたwww)ですが、まあ差分はわかりやすくて・・・・・・・


・利下げしましたの理由は明快に説明

『We cut our key interest rates by 0.25 percentage points』(今回)
『We cut our key interest rate by 0.25 percentage points』(前回9月)

ここ単数と複数になっている違いは、前回利下げの際にコリドアの幅を縮めたので25下がっているのが政策金利である預金ファシリティ金利だけだった(MROプラマイ25だったのがMROと預金ファシリティ金利の方のコリドアだけ15になって、メインの政策金利扱いになっている預金ファシリティを25下げてるんですが、MROと限界貸出金利は35下がっている)のですが、今回は3金利ともスライドで下げているからですね。

『We can do this because inflation is coming down faster than expected towards our 2% target and also the economy is weaker. Our future decisions will depend on how we see the economy and inflation shaping up.』(今回)

『We did this because inflation is gradually coming down and has been developing as we expected. Our future decisions will depend on how we see the economy and inflation developing.』(前回9月)

ということで、利下げの理由は物価が予想以上に減速してきたことと、経済が予想以上に弱まっていること、ということでして、これはもう日銀(安達審議委員も含め)が今言ってる「物価目標達成した後になってバンバン利上げをすると後で景気を腰折れさせてしまうリスクがある」の典型でありますので、これすなわち政策調整は事前にやれる分はやっておかないとアカンというのを絵に描いている訳ですな、知らんけど。

でもってちょっと芸が細かいのはこのポンチ絵、前回だと階段降りたら平坦って感じでしたが、今回は階段2回降りたあとの平坦部分が短くなっていて、ほぼ画面の端だけになっているので、絵面としては「まだ階段の段はありまっせ」というのを示唆していますって感じですかね、


・経済が想定よりも悪いキタコレ

まあ最初ので出オチなんですけど以下経済と物価の説明になりまして、

『The economy is doing worse than expected』(今回)
『The economy has been weaker than we expected…』(前回9月)

絵面は前回も暗かったのですけれども、サムネのお題には「経済は想定より弱いです…」と最後に3点リーダーをつけることによって何らかの未練が感じられる表示になっていましたが、今回は未練なく「アカンですバイ」となりました、南無三。

『Manufacturing and exports are weak. Firms are not investing much. But services have been doing a bit better, thanks to a good summer tourism season.』(今回)

『Industry and construction are not doing well. People are spending less and companies are cutting their investments.』(前回9月)

説明文には少しだけ未練があって、サービスが少しマシ、ってのがポンチ絵の中にあるスマートフォンのお天気概況みたいな画面に示されているのがワロタです。

なお、前回9月はさっきの3点リーダーの続きが次のポンチ絵になっていまして、

『…but it should gradually recover』(前回9月)

ってなっているんですな。

『Services, especially, are keeping the economy going at the moment. Rising wages and lower inflation mean that in future people will be able to buy more. Together with lower interest rates, this will help the economy.』

まあでも経済は予想より弱かった、ってんですけど金融政策のタイムラグ考えたら1か月で効果が出て(゚д゚)ウマーとはならんじゃろ(なったら逆におかしい)という話でもありますが、この辺さすがにここしばらくさぼっていたけれども、(いまさらジローで前回と)今回の説明をもうちょっと詳しく見る必要はあるな、とは思いました。土日に見ている時間があるのか謎ですがw


・消費が弱くて貯蓄の積み上げが行われているとな

でもって今回のポンチ絵では一瞬何の絵か分からんのがあって、

『People are saving more of their money instead of spending it

Even though many people have more money to spend, they are preferring to put it aside, even more so than before the pandemic.』(今回)

最初なんじゃこれと思ったのですが、銀行に預金に行こうとして並んでる人たちですねw


・インフレは2%を割り込みましたが戻るでしょうと

次が物価ですが、

『Inflation is the lowest it has been in years』(今回)
『Overall, inflation is on its way down』(前回9月)

『Energy prices, especially, have come down a lot. Inflation will likely go up in the coming months but is expected to return to our 2% target in 2025.』(今回)

『Services prices are still increasing strongly because of rising wages. Inflation may also go up in the coming months because of energy prices. But it is on track to come down to 2% in the second half of next year.』(前回9月)

なんせ直近で7月2.6→8月2.2→9月1.7とかいうお洒落な推移をしていますので、まあこれはこれで分かりやすい状況ではありますが、今後戻るでしょう、というポンチ絵になっていまして、前回の何かノンビリした絵とは違いますがこれは現実の数値がそうだからシャーナイ。


・雇用に関しては明るいですな&ローン需要に関する説明のお題がおかしくねえかこれ

9月はプロジェクション会合なのでこの後は4半期定例のプロジェクションに関する数値とグラフでの説明でポンチ絵無しなので以下は今回のだけになりますが、

『Many people are in jobs

Unemployment remains the lowest it has been since the start of the euro. But firms are posting fewer job adverts. Wages are still growing quite strongly.』(今回)

まあこれは良いんですけど。

『Firms are demanding more loans

People are also feeling more encouraged to apply for mortgages because of lower interest rates and better prospects for the housing market.』(今回)

これ本文とお題があっていないようにしか見えないし、今回の声明文の第1パラグラフでは、

https://www.ecb.europa.eu/press/pr/date/2024/html/ecb.mp241017~aa366eaf20.en.html

『The Governing Council today decided to lower the three key ECB interest rates by 25 basis points. In particular, the decision to lower the deposit facility rate - the rate through which the Governing Council steers the monetary policy stance - is based on its updated assessment of the inflation outlook, the dynamics of underlying inflation and the strength of monetary policy transmission.』

『 The incoming information on inflation shows that the disinflationary process is well on track. The inflation outlook is also affected by recent downside surprises in indicators of economic activity.』

と今回の決定事項の背景を簡単に述べてあって(それが上記のポンチ絵という形になるのですけど)、その最後のところが、

『Meanwhile, financing conditions remain restrictive.』

ということで、借入環境は引き締め的ってあるので、『Firms are demanding more loans』の小見出しとも『People are also feeling more encouraged to apply for mortgages because of lower interest rates and better prospects for the housing market.』とも「引き締め的」がイマイチ整合していないように見えます、というかポンチ絵の方が現状判断に整合していないってことですけど、うーんここは言いたいことはわからんでもないのだがちょっと疑問でした。

ということなので、さすがにちょっと今回の背景説明をもう少し読んでみたいとは思います(読むとは言っていないwww)。





2024/10/11

〇まあゆうて日銀よりもFEDみとけという風潮でFOMC議事要旨ネタの続き

https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20240918.htm
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20240918.pdf

Minutes of the Federal Open Market Committee
September 17-18, 2024

昨日はインスタント読みで政策決定と先行き運営のところだけ見ましたが、経済物価情勢の認識はどうですかという話で『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』の2パラ(1パラは「SEP作ったよ」というパラなので割愛)からサラサラと確認します。

・物価にの現状認識がフラグかと思う位に自信満々モード

2パラから暫く物価の話。

『In their discussion of inflation developments, participants observed that inflation remained somewhat elevated, but almost all participants judged that recent monthly readings had been consistent with inflation returning sustainably to 2 percent』

まだ水準はちょっと高いけど順調に2%に向かって進んでいますよ、とほとんど全員が認識、という出オチのような書き出しから始まりまして、

『Some participants commented that, though food and energy prices had played an important part in the decline in the overall inflation rate, slower rates of price increases had become more evident across a broad range of goods and services.』

物価鎮静化に大きく寄与している食糧エネルギー以外でも幅広い財、サービス価格においてインフレ圧力が低下しているのがよりしっかりと判明してきている、と数名が指摘。

『Notably, core goods prices had declined in recent months, and the rate of increase in core nonhousing services prices had moved down further.』

特にコアの財とコアの非住宅系サービス価格に表れている、だそうです。

『Many participants remarked that the recent inflation data were consistent with reports received from business contacts, who had indicated that their pricing power was limited or diminishing and that consumers were increasingly seeking discounts.』

多くの人が企業の価格設定パワーが落ちてきていることを指摘。

『Many participants also observed that inflation developments in the second and third quarters of 2024 suggested that the stronger-than-anticipated inflation readings in the first quarter had been only a temporary interruption of progress toward 2 percent.』

さらに多くの人は最近の物価の動きを見るに今年1Qに物価が強かったのはあれはテンポラリーであった、ということで、なんか物価鎮静化にクッソ自信満々なんですけどこれは何かのフラグでございましょうかwwww

『Participants remarked that even though the rate of increase in housing services prices had slowed, these prices were continuing to rise at an elevated rate, in contrast to many other core prices.』

住宅サービス価格は強いという指摘が最後にあるけど、このパラはフラグちゃんかという位に物価の落ち着きの話を連呼していますね。


・物価の先行きもフラグを疑ってしまう位にインフレ鎮静化自信モード(じゃなかったら利下げしませんけど)

次のパラ行きますと先行き見通しの話になるのですが、

『With regard to the outlook for inflation, almost all participants indicated they had gained greater confidence that inflation was moving sustainably toward 2 percent』

グレーターコンフィデンス来ました。

『Participants cited various factors that were likely to put continuing downward pressure on inflation. These included a further modest slowing in real GDP growth, in part due to the Committee's restrictive monetary policy stance; well-anchored inflation expectations; waning pricing power; increases in productivity; and a softening in world commodity prices.』

物価鎮静化の見落としがなんかもう自信満々すぎてフラグ建築以下同文w

『Several participants noted that nominal wage growth was continuing to slow, with a few participants citing signs that it was set to decline further. These signs included lower rates of increases in cyclically sensitive wages and data indicating that job switchers were no longer receiving a wage premium over other employees.』

お賃金方面からのインフレ鎮静化という指摘が来まして、

『A couple of participants remarked that, with wages being a relatively large portion of business costs in the services sector, that sector's disinflation process would be particularly assisted by slower nominal wage growth. In addition, several participants observed that, with supply and demand in the labor market roughly in balance, wage increases were unlikely to be a source of general inflation pressures in the near future.』

お賃金の上昇圧力の軽減によってサービス価格にも物価鎮静化の動きが想定されますと2名が指摘し、

『With regard to housing services prices, some participants suggested that a more rapid disinflationary trend might emerge fairly soon, reflecting the slower pace of rent increases faced by new tenants. 』

住宅サービス価格に関しても今後間もなく沈静化するでしょう、という見通しを出している参加者も数名おいでです。ということで何か知らんが先行きもフラグちゃんとしか思えないこの物価鎮静化自信ニキネキ。

『Participants emphasized that inflation remained somewhat elevated and that they were strongly committed to returning inflation to the Committee's 2 percent objective.』

まあ最後のは悪魔払いの呪文みたいなもんなので気にしなくてよろしい。


・労働市場に関しては現状が既にマンデート状態(過熱解消)という認識ですね

次が労働市場で、

『Participants noted that labor market conditions had eased further in recent months and that, after being overheated in recent years, the labor market was now less tight than it had been just before the pandemic.』

労働市場の需給は緩和してきて、パンデミックの直前よりも若干緩和されているんでネーノということのようです。

『As evidence, participants cited the slowdown in payroll employment growth and the uptick in the unemployment rate in the two employment reports received since the Committee's July meeting, lower readings on hiring and job vacancies, reduced quits and job-finding rates, and widespread reports from business contacts of less difficulty in hiring workers.』

ここの説明hは「先ほどの認識はこのような指標に表れている」って話ですな。

『Some participants highlighted the fact that the unemployment rate had risen notably, on net, since April 2023. Participants noted, however, that labor market conditions remained solid, as layoffs had been limited and initial claims for unemployment insurance benefits had stayed low. Some participants stressed that, rather than using layoffs to lower their demand for labor, businesses had instead been taking steps such as posting fewer openings, reducing hours, or making use of attrition. A few participants suggested that firms remained reluctant to lay off workers after having difficulty obtaining employees earlier in the post-pandemic period.』

この辺は失業率が上がっているという話から、そうは言ってもまだ労働市場の状況はソリッドですよ、って認識からレイオフの少なさ、新規失業保険申請の少なさという話になって、じゃあ何で企業がレイオフ減らしているのかという話(労働力の保持のためだったりする)になっていますな。

『Some participants remarked that the recent pace of payroll increases had fallen short of what was required to keep the unemployment rate stable on a sustained basis, assuming a constant labor force participation rate. 』

『Many participants observed that the evaluation of labor market developments had been challenging, with increased immigration, revisions to reported payroll data, and possible changes in the underlying growth rate of productivity cited as complicating factors. 』

『Several participants emphasized the importance of continuing to use disaggregated data or information provided by business contacts as a check on readings on labor market conditions obtained from aggregate data. Participants agreed that labor market conditions were at, or close to, those consistent with the Committee's longer-run goal of maximum employment.』

ふと気が付くと時間が無くなって来たのでいきなり流しますけど、労働市場のデータに関しては構造変化なども受けて結構解釈するのが難しいね、というような話が最後の方に来ておりますが、結論としては現在の労働市場がおおむね「最大雇用」というFEDのマンデートに一致している、という認識です。

でもって先行きは、現状認識がマンデートに一致なので、

『With regard to the outlook for the labor market, participants noted that further cooling did not appear to be needed to help bring inflation back to 2 percent.』

これ以上の労働市場の弱まりは物価2%達成には必要ないです、という話になって、

『Participants indicated that in their baseline economic outlooks, which included an appropriate recalibration of the Committee's monetary policy stance, the labor market would remain solid. Participants agreed that labor market indicators merited close monitoring, with some noting that as conditions in the labor market have eased, the risk had increased that continued easing could transition to a more serious deterioration.』

経済は堅調で労働市場も堅調、という見通しではありますが、これ以上経済を冷却させてしまうのはイクナイ、という話になっておりまして(まあだから利下げしているんですけど)そういうことやでって話ですね。

つまり、労働市場は既にマンデート達成してて、あとは物価がちょこっと下がればよろしという軟着陸にも程がある見通し、ホンマカイナという気もしますがそういう認識を示している、ということだと思います。

あと2つパラがありますが(経済全般の話とリスク要因)まあこの辺まで読んでおけば基本線はOKということにして、単に時間が足りなくなっただけなのですがここで勘弁してつかあさい。







2024/10/10

〇FOMC議事要旨とりあえずインスタント読み:早期のバンバン利下げ観測は消しにかかっていますかね

https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20240918.htm
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20240918.pdf

Minutes of the Federal Open Market Committee
September 17-18, 2024

『A joint meeting of the Federal Open Market Committee and the Board of Governors of the Federal Reserve System was held in the offices of the Board of Governors on Tuesday, September 17, 2024, at 10:30 a.m. and continued on Wednesday, September 18, 2024, at 9:00 a.m.1』

ということでインスタント読みをしてみます。引用はHTMLから。例によってインスタントなので政策決定に関するパラグラフだけ今朝は読んでまいります。『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』の最後の3パラグラフが該当しますが、3パラと言っても結構長いです「。

・「今回の政策決定」部分ですが、25bpが適当という意見の記述がちょっと長いのがなんかのメッセージですかね

『In their consideration of monetary policy at this meeting, participants noted that inflation had made further progress toward the Committee's objective but remained somewhat elevated. Almost all participants expressed greater confidence that inflation was moving sustainably toward 2 percent.』

物価の水準はまだ高いが(高くなかったら目標達成だから速やかに中立金利に戻さないといけないから「まだ高い」になるのは理の当然)f「グレーターコンフィデンス」になったわよ、とほとんどすべて(Almost all)の参加者が示しました。

『Participants also observed that recent indicators suggested that economic activity had continued to expand at a solid pace, job gains had slowed, and the unemployment rate had moved up but remained low.』

声明文1パラに書かれる説明方式ですな。

『Almost all participants judged that the risks to achieving the Committee's employment and inflation goals were roughly in balance.』

リスクバランスはバランス。

『In light of the progress on inflation and the balance of risks, all participants agreed that it was appropriate to ease the stance of monetary policy.』

物価の進展とリスクバランスを勘案して「全員が」金融政策スタンスを緩和するのが適切と合意。

『Given the significant progress made since the Committee first set its target range for the federal funds rate at 5-1/4 to 5-1/2 percent, a substantial majority of participants supported lowering the target range for the federal funds rate by 50 basis points to 4-3/4 to 5 percent.』

今の政策金利に引き上げて以降のインフレ鎮静化の「significant progress」を背景にすると、「a substantial majority of participants」というナンジャソラという形容詞があるのですが、これは「かなりの多数の参加者」ってことでよろしいですかね、と思いますが、何はともあれ大勢の方が50下げに賛同したようで、

『These participants generally observed that such a recalibration of the stance of monetary policy would begin to bring it into better alignment with recent indicators of inflation and the labor market. They also emphasized that such a move would help sustain the strength in the economy and the labor market while continuing to promote progress on inflation, and would reflect the balance of risks.』

経済物価などにもこの利下げは良い効果だそうで(そりゃそういうわな)。

『Some participants noted that there had been a plausible case for a 25 basis point rate cut at the previous meeting and that data over the intermeeting period had provided further evidence that inflation was on a sustainable path toward 2 percent while the labor market continued to cool.』

何人かは前回25bp利下げが適切と言ってて、でもってこの間の進展を見るにさらなるエビデンスが確認できましたよね、という認識。

『However, noting that inflation was still somewhat elevated while economic growth remained solid and unemployment remained low, some participants observed that they would have preferred a 25 basis point reduction of the target range at this meeting, and a few others indicated that they could have supported such a decision.』

何かここの表現も微妙に妙な感じの書き方になっているのですが、まだ物価も高いし雇用も強いし経済も堅調なので今回の利下げは25の方が良い、という some participantsがいる、というのは良いんですけど、その後半に、「a few others indicated that they could have supported such a decision.」ってあって、何でこれ同じカテゴリにしないで、「数名が25bpの利下げが望ましいと言ったら他の何人かがその意見に賛同した」って妙な言い方になっているのかな、という違和感があるのですが、ワシ英米人ではないのでこの辺のニュアンスは正直ワカランチ会長。

以下の部分で「何で25bpの方が望ましいか」という意見が示されているので、その流れなのかもしれませんけれども・・・・・・・・

『Several participants noted that a 25 basis point reduction would be in line with a gradual path of policy normalization that would allow policymakers time to assess the degree of policy restrictiveness as the economy evolved.』

25bpの利下げの方が「先行きの中立金利化をグラデュアルに行うという方針にインラインである。

『A few participants also added that a 25 basis point move could signal a more predictable path of policy normalization.』

25bpの利下げで十分に「今後政策が中立金利に向かいます」ってメッセージになる。

などという意見が示されていまして、まあこの議事要旨ってやや「後付けで都合の良い部分をクローズアップする」という傾向があるので、この辺って「そうホイホイと利下げを急ぐわけじゃないですもんねえ」というFEDの現時点での市場へのメッセージだと思うと吉なんじゃないかな、とは思いました(個人の感想ですけど)。

『A few participants remarked that the overall path of policy normalization, rather than the specific amount of initial easing at this meeting, would be more important in determining the degree of policy restriction.』

初回の利下げ幅うんぬんよりも方向性の話なんじゃないか、とさっきの意見に反論がありまして、

『Participants judged that it was appropriate to continue the process of reducing the Federal Reserve's securities holdings.』

最後は資産買入縮小の話(継続)で締めています。


・先行き政策パスの話の中でも「そんなにバンバン急いで利下げするわけじゃないよ」な表現が目立つ

次のパラグラフは先行きの金融政策運営。

『In discussing the outlook for monetary policy, participants anticipated that if the data came in about as expected, with inflation moving down sustainably to 2 percent and the economy near maximum employment, it would likely be appropriate to move toward a more neutral stance of policy over time.』

仮定法使ってますが今後も物価2%に向かって進むならさらに利下げをしまっせと。

『Participants emphasized that it was important to communicate that the recalibration of the stance of policy at this meeting should not be interpreted as evidence of a less favorable economic outlook or as a signal that the pace of policy easing would be more rapid than participants' assessments of the appropriate path.』

じゃあ50下げるなよとは思いますが、「今回の50利下げに関して、FEDは経済の先行きにクソ弱気、とかFEDはものすごい勢いで金利を下げようとしている、とミスリードされないようにコミュニケーションを行う必要がある」などとのたまっています。

『Those who commented on the degree of restrictiveness of monetary policy observed that they believed it to be restrictive, though they expressed a range of views about the degree of restrictiveness.』

特にものすごい勢いの利下げと思われるべきではないと主張する人たちは、金融政策に関しては引き続き引き締め的であるべきと、その人によって度合いは違いますが主張しているそうな。

『Participants generally remarked on the importance of communicating that the Committee's monetary policy decisions are conditional on the evolution of the economy and the implications for the economic outlook and balance of risks and therefore not on a preset course.』

FOMCの金融政策決定は「コンディショナル」でその時の状況によって判断しており、プリセットコースはない、というのをよくコミュニケーションすべき、という話になっているんですが、だったらお前らドットチャート出すのいい加減に止めろやと思います。

それはともかくとして、先行きの金融政策の話、ここまで見ると「別にじゃんじゃん利下げするわけじゃないもんねー」というメッセージにこちらも見えてしまうのは気のせいでしょうかどうでしょうかねえ。

『Several participants discussed the importance of communicating that the ongoing reduction in the Federal Reserve's balance sheet could continue for some time even as the Committee reduced its target range for the federal funds rate.』

先行き政策の最後のところに資産買入の縮小に関する今後の話もした方がエエンチャウノというコメントが入りこのコーナー修了。


・利下げのペースは遅すぎイクナイ派と早すぎイクナイ派で拮抗って感じの書き方ですかねえ

最終パラはリスクマネジメントアプローチの観点から、って奴で。

『In discussing risk-management considerations that could bear on the outlook for monetary policy, almost all participants agreed that the upside risks to inflation had diminished, and most remarked that the downside risks to employment had increased.』

全員がインフレ上振れリスクは消えて、多くの参加者は雇用のダウンサイドリスクが高まった、って指摘。

『Some participants emphasized that reducing policy restraint too late or too little could risk unduly weakening economic activity and employment. A few participants highlighted in particular the costs and challenges of addressing such a weakening once it is fully under way. 』

ということで数名の参加者は利下げの遅れや少なさは経済をこけさせるリスクを高めるとか、他にも経済がガチで弱まってからの対処をするのはコストが余計に掛かるという指摘もありまして、

『Several participants remarked that reducing policy restraint too soon or too much could risk a stalling or a reversal of the progress on inflation. Some participants noted that uncertainties concerning the level of the longer-term neutral rate of interest complicated the assessment of the degree of restrictiveness of policy and, in their view, made it appropriate to reduce policy restraint gradually.』

一方でこっちは対処が速すぎた場合には物価上昇再燃するリスクあるという指摘の他に、そもそも中立金利の水準自体が決め打ちできない状況なので、利下げに関しては慎重に行った方が(うっかり下げ過ぎないという文脈ですよねこれは)良いという意見があって、ここでこの部分は終わっています。


ということで、まあとりあえず速成インスタント読みの結果としては「利下げはお前らがヒャッハー言ってるほど急がねえんじゃもっと頭冷やせ(利下げしないとは言っていない)」という感じに思えましたがどうでしょうかね。




2024/10/01

〇何か連銀高官が色々とお話をしているようですが

ほうほうそうですかそうですか

https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/RUG6OHJ4UVJQJOW63AWRNUF2MI-2024-09-30/
1年以上かけ大幅な利下げ必要=米シカゴ連銀総裁
By ロイター編集
2024年10月1日午前 4:12 GMT+9

『[ニューヨーク 30日 ロイター] - 米シカゴ地区連銀のグールスビー総裁は30日、経済の現状と今後の見通しを踏まえると、米連邦準備理事会(FRB)による大幅な利下げが必要だとの見方を改めて表明した。フォックス・ビジネスのインタビューで語った。』(上記URL先より)

確かにSEPの経済物価見通し通りだったら中立にしないと話がおかしいですからね。ということでまあFOXなので記事は拾えるかもしれないので努力しておきましょう。


https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/J3TAF3ZBCBOT3DCU25S5OYEQ2A-2024-09-30/
11月の0.5%利下げに「オープン」、労働市場軟化なら=アトランタ連銀総裁
By ロイター編集
2024年10月1日午前 2:48 GMT+9

『[ナッシュビル(米テネシー州)30日 ロイター] - 米アトランタ地区連銀のボスティック総裁は30日、今後入手される指標が労働市場のさらなる軟化を示せば、11月の連邦公開市場委員会(FOMC)でさらに0.5%ポイントの利下げを実施することに「オープン」という認識を示した。

ボスティック総裁はロイターとのインタビューで、米連邦準備理事会(FRB)が今後15カ月間で「秩序ある」金融緩和を実施し、2025年末時点で政策金利が3.00ー3.25のレンジに達するというのが自身の基本的な見通しと語った。』(上記URL先より)

確かにSEPの経済物価見通し通りだったら以下同文。

とまあそんなわけですが、昨日はパウちゃんの法話もあった次第でして、

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-09-30/SKN0IIT0G1KW00
パウエルFRB議長、政策は「時間とともに」より中立スタンスに
Amara Omeokwe
2024年10月1日 3:05 JST 更新日時 2024年10月1日 5:24 JST

→物価上昇圧力が一段と緩和する情勢「整っている」−パウエル氏
→パウエル議長「あらかじめ定まった道を進んでいるのではない」

なぜかBBGになっているのは一応バランス配慮ですw

『米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、連邦公開市場委員会(FOMC)では「時間とともに」政策金利を引き下げていくと表明した。一方で経済全般については、しっかりとした足取りを続けているとの認識を改めて示した。パウエル氏はまた、インフレ率がFOMCの2%目標に向かって低下を続けるとの確信を改めて示し、経済では物価上昇圧力が一段と緩和する情勢が「整っている」と述べた。』(上記URL先より、以下同様)

ということですが、なんか方向逆ですけどどっかの中銀みたいですねw

しかしこの記事見てて思ったんですけど、記事中にこんなのがありましてですね、

『投資家にとっては今後数カ月の利下げ幅とペースが極めて重要な問題だが、今回の発言はそうした疑問に答えを与えなかった。』

ってお話。先般来植田総裁の記者会見で記者が年内利上げするのかという質問をしておりましたけれども、これまさにウッドワードとバーナンキの残した最大の負の遺産でして、「普通の金融政策」をしているんだったら、経済情勢なんて常に生き物で、先行きどうなるかなんてえのは100%の確信をもって決め打ちできるものではないのですから、本来は「毎回の金融政策決定を討議する場において経済物価情勢と先行き見通しを判断し、その討議を受けて適宜適切に政策判断を下す」というのが正しいのであって、だからこそ年に8回も金融政策決定をする機会があるわけですよ。

然るに、長期にわたる非伝統的な緩和によるフォワードガイダンスという名の決め打ち政策に慣れてしまっている人たちがモルヒネ薬中になってしまっていて、中央銀行は先の政策に関して常に何かを与えてくれるもんだ、というクレクレ病が市場全体に非常に深く蔓延していて不治の病なんじゃないか位のモルヒネっぷりになっているので、まあこういう風潮になるわけで、中銀がなんも言わないでも経済物価情勢を分析しててめえが判断するんだよ馬鹿かお前ら、と馬鹿市場と馬鹿メディアに小一時間問い詰めたいわけですよ全く、と思いました。

・・・・気を取り直しまして、記事の一部の続きをば

『講演後の質疑応答でパウエル議長は、9月の利下げ決定と同時に発表された当局者予測が、11月と12月の2会合で0.25ポイントずつの利下げを示唆していることを認めた。しかし、まだ入手していない情報も含めデータに基づいて決定を下すと注意を促した。』

そらそうだ。

『さらに「委員会は利下げを急いでいない」と発言。「最終的には、これから入ってくるデータに導かれるだろう。景気が予想以上に減速すれば、利下げを速めることが可能だ。景気が予想ほど減速しなければ、もっとゆっくりしたペースで利下げを実施できる」と語った。』

結局FEDが市場のクレクレを止められない理由は簡単で、政策金利のドットチャート出すからなのでありまして、そんなのFEDも分かっているのでしょうけれども、まあもしかしたら「中立金利」に戻したところで「経済は均衡状態に入ったので長期的な政策金利見通しを出すのは良くない」といかなんとか言って(なぜなら均衡状態からの「先行き見通し」を出すとどうしても手前での見通しの微小な変化を先の見通し部分で増幅して出すような形になって市場の安定化に反する結果になりかねないから)廃止するチャンスは狙うだろ、と思うのですが実際どうなんでしょうかね。

なおパウちゃんの本チャン講演は、
https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/powell20240930a.htm
September 30, 2024
Economic Outlook
Chair Jerome H. Powell
At the National Association for Business Economics Annual Meeting, Nashville, Tennessee

にあるのですが、期末期初ということもありまして生業も暇ではありませんので今朝はこの辺でご勘弁いただきとう存じますすいませんすいません。