海外金融政策概観(2015年度上期後半)

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FRBやBOEを中心に趣味成分が高いですが、海外中銀のペーパーや講演などをフォローするのだ。

2015/09/30「メスター総裁が今回利上げ見送りをリスク管理の一環とワケワカラン説明」
2015/09/29「ダドリー講演も年内利上げ主張みたいです/エバンス総裁はハト派講演で政策反応関数の明確化を求める」
2015/09/28「イエレン議長会見より」
2015/09/25「イエレン議長講演は年内利上げと言いつつも腰が弱そうな内容」
2015/09/24「今回の利上げ見送りの政策反応関数が良く分からんというメモ」
2015/09/18「9月FOMCは現状判断を引き上げながら海外要因を理由に政策据え置き&ロンガーラン金利低下」
2015/09/17「ECBプラート理事はトレンド成長力の強化が必要との話(メモ)」
2015/09/11「9月利上げするのかしないのか分からん状態で米国市場もスカスカ/BOEは8-1で据え置き」
2015/09/04「ECB会見を見るにドラギ総裁やるやる詐欺っぽいのですが」
2015/09/02「ECB買入進捗状況/コンスタンシオECB副総裁のQE手前味噌っぽい講演(その2)」
2015/09/01「コンスタンシオECB副総裁のQEに関する講演から(その1)」
2015/08/31「フィッシャー副議長のジャクソンホール講演は利上げやる気はありそうだが腰は入っていない」
2015/08/28「米中中銀の胆力を問われる展開チックですなあ」
2015/08/27「中国当局は売り方タイーホ攻撃ですかそうですか/ダドリー総裁講演も日和モード入る」
2015/08/26「中国人民銀行泡吹き追加緩和/米国はコミュニケーション障害/ECBクーレ理事は足元に一喜一憂しない講演とかお前が言うな的な内容のインタビュー」
2015/08/25「ロックハート総裁講演が一転して腰砕けモードになりつつある」
2015/08/24「7月議事要旨は労働市場に関しては結構利上げモードではあります」
2015/08/21「議事要旨ハトで株下げとな/コチャラコタ総裁が「ロンガーランの実質中立金利」という謎概念でハト講演」
2015/08/20「7月FOMC議事要旨はハト気味だが9月利上げ無しを決め打ちする程ではないと思う」
2015/08/19「パウエル理事講演続き:高速取引とかその手の話」
2015/08/18「パウエル理事講演続き:金融安定化の為に市場流動性の低下はやむなしとの見解」
2015/08/17「パウエル理事講演より国債市場の流動性に関して」
2015/08/14「中国人民銀行が市場の急激な動きを火消ししようとしているもののどうも出し方がヘタクソ」
2015/08/13「1回限りの措置とのアナウンスがあったのに2日連続で人民元切り下げで大騒ぎ&PBOC火消声明」
2015/08/12「中国人民銀行が元を事実上切り下げのフロート拡大/ECBのAPPが若干前倒しに」
2015/08/11「フィッシャー副議長とロックハート総裁が微妙に方向性の違う発言をメディアで」
2015/08/10「雇用統計の反応が為替と債券で別なので解釈に困る」
2015/08/07「BOEは利上げしても良いんじゃないか位の強い内容の金利据え置き」
2015/08/05「コウモリ派のロックハート総裁が利上げ示唆のWSJインタビュー」
2015/07/30「7月FOMC:景気の現状認識を結構上方修正するが次回利上げの明確な示唆は無し」
2015/07/24「夏になって若干ですがECBのAPPペースが落ちる」
2015/07/21「定例理事会後のECBドラギ総裁会見での金融政策効果はおもに貸出環境の緩和になっています」
2015/07/16「イエレン議長の議会証言から」
2015/07/15「ECBのAPP進捗状況/イエレン講演から」
2015/07/14「ギリシャへのつなぎ融資検討とな」
2015/07/01「APPの進捗状況/プラート理事のAPPの効果に関する講演」

2015/09/30

・また地均しをしようとしているのだが(米国)

http://jp.reuters.com/article/2015/09/29/usa-fed-mester-idJPL3N11Z4X720150929
News - Forex | 2015年 09月 30日 04:07 JST
米利上げ見送りはリスク管理の一環−クリーブランド連銀総裁=日経

『[29日 ロイター] - 米クリーブランド地区連銀のメスター総裁は、今月の利上げ見送りの決定について、世界経済をめぐる懸念、および金融市場の混乱を背景とする「リスク管理」の一環と説明した。日本経済新聞とのインタビューで述べた。』(上記URL先より、以下同様)

手元に日経が無いので良く分からんのですが(汗)。

『一方で、米経済は利上げを開始するのに十分力強いと確信しているとの認識をあらためて示した。総裁は、世界経済の成長予想の見直しや中国をはじめ新興国経済への懸念に起因した米経済見通しへのリスクに言及、「9月の利上げ見送り決定はリスク管理に関する判断だ」と指摘した。これに加え「金融市場の混乱や金融状況にややひっ迫が見られた」とした。』

リスク管理というのは分かりましたが、あれだけリスクの話を持ち出した挙句に金融市場の混乱とか金融状況のタイト化とか言いますと、10月大丈夫かよとしか申し上げようがないですし、しかも「利上げするぞー」と構えた状態のままだといつまで経っても金融市場が落ち着かないので状況が改善しないと思うのですが・・・・・・・・

詳しくは元文章を見つけられたらまた確認しますが、この調子だとコミュニケーションがいつまでたっても混乱状態のままでしょうなあとは思います。

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2015/09/29

○ダドリー総裁コメントは本チャンが無いので簡単に

うむ。
http://www.wsj.com/articles/feds-dudley-still-likely-on-track-for-2015-rate-rise-1443448239
Fed’s Dudley: Still Likely on Track for 2015 Rate Rise
New York Fed President remains upbeat on the U.S. economy
By MICHAEL S. DERBY AND JON HILSENRATH
Updated Sept. 28, 2015 10:35 a.m. ET

『NEW YORK-Federal Reserve Bank of New York President William Dudley said Monday he continues to believe the U.S. central bank will be able to boost borrowing costs this year, saying the decision will be driven by a broad array of considerations.』
(上記URL先より、以下の記事は会員じゃないと読めません)


http://jp.reuters.com/article/2015/09/28/idJPL3N11Y3XC20150928
News - Forex | 2015年 09月 28日 23:55 JST
UPDATE 2-米、年内利上げの公算 来年中に物価目標達成も=NY連銀総裁

『[28日 ロイター] - ダドリー米ニューヨーク連銀総裁は28日、米連邦準備理事会(FRB)はおそらく年内に利上げする見通しで、早ければ10月にも決定を下す可能性があるとの見方を示した。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)主催のイベントで述べた。』(上記URL先より、以下同様)

『総裁は、インフレ率が2%目標を達成する時期について、FRB当局者の予想中央値よりも1年以上早い、来年中の可能性があると言明した。』

『世界経済のさえない状況やドル高が米インフレ動向を恒久的に抑制したり市場のインフレ期待を後退させることはないと確信していると指摘。その上でインフレが上向く可能性や経済が引き続き拡大している点を踏まえ、FRBは「おそらく年内に利上げするだろう」と語った。10月27─28日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ決定もあり得ると述べた。』

お、おう・・・・・・・・・・・・・


http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NVE6P56VDKIE01.html
ニューヨーク連銀ダドリー総裁:当局は年内利上げの方向
2015/09/29 00:50 JST

『(ブルームバーグ):ニューヨーク連銀のダドリー総裁は世界の成長に不透明感はあるものの、米金融当局は年内に「恐らく」利上げを実施すると述べた。ダドリー総裁は28日、ニューヨークで行われたイベントで「景気は非常に順調だ」と述べ、下半期の経済成長は上半期に比べて「若干減速」するだろうと続けた。利上げのタイミングについては「明確なガイダンスはない。データ次第だ。景気動向に関する私の見解に基づく」とした。ダドリー総裁は最も注視している海外動向は中国だとしながらも、当局が目指す2%のインフレ率と完全雇用を達成する上で海外から受ける影響は限定的だと強調した。』(上記URL先より)


とまあそういうことで、早ければ10月にもという話なのですが、海外の影響が限定的とか言うのであれば何でFOMCの時にあんなに海外懸念による物価へのリスクとか言い出すのか分からん訳で、ここもと一連の発言って見ていると「利上げ路線の地均しをしていたのにFOMC声明とその後の会見で全部ちゃぶ台返しになってしまったのに慌てて地均しをまた始めている」という風にしか見えないのですが、「データ次第」と言いながら時期についてああでもないこうでもないと言う上に、その時期が全然定まらないとかコミュニケーションポリシーの失敗にも程がありますわな。


今回ダドリーさんは海外の影響が限定的というコメントをしているようですけれども、FOMCでのコミュニケーションとして何が悪かったかと言うと「中国や新興国の懸念」と「市場動向が金融環境をタイト化させている」のを「物価の下方リスク」と「米国経済へのリスクになる可能性」という具体的なお話をしている事でして、単に「利上げの環境は整っているが別に急ぐ必要もないので今回はパス」というような話にしておけば良いものを一々理由を挙げたのがダメで、しかも挙げている理由のうち中国と新興国に関しては「待てば直ぐに状況が良くなる」という代物でもないですし、金融市場の動向に関してはそもそも論として米国の利上げ着手がいつまで経っても始まらないという不確実性がボラを上げたり新興国からのキャピタルアウトフローが起きたりしている訳で、お前のせいだお前のという話をしているので、今回の利上げ見送りで様子を見て時間の経過を待っても状況が改善する訳では無いというのがダメダメですなあとは思うのでした。


つーことで、利上げ路線の立て直しを行っているというのは把握したが、そこまで言うならエイヤっと10月に利上げしたらどうなのよとは思いますけど、そういう胆力が無いのであればズルズルと後ろに倒れていくだけのような悪寒も漂って参りますな。

なお、講演(?)のテキストが出るならこの辺だと思いますが出るかどうかは分からん。
http://www.newyorkfed.org/press/#speeches



○シカゴ連銀エバンス総裁は貫禄のハト派講演だが「政策反応関数を明確化しろ」という説明がありますな

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NVEI946VDKHT01.html
シカゴ連銀総裁:利上げ開始先延ばしを−インフレ加速懸念は行き過ぎ
2015/09/29 04:22 JST

『 (ブルームバーグ):米シカゴ連銀のエバンス総裁は、金融当局はインフレが長期間継続して上向きの動きを示す兆候が表れるまで、利上げを遅らせるべきだと指摘した。またそうした状況は2016年半ばになるまで起こらない可能性があると加えた。』(上記URL先より)

ということで講演はこちら。
https://www.chicagofed.org/publications/speeches/2015/marquette-thoughts-on-leadership-and-monetary-policy
Thoughts on Leadership and Monetary Policy

でまあ中身は色々と面白そう(超ななめ読みしかしていない)なのですが、目先の利上げ路線に関しての部分だと思う所についてちょっとだけ引用。

小見出しに『A Risk-Management Approach to Monetary Policy』というのと『Effective Communications Is a Critical Policy Tool』というのがありまして、全部引用していると結構長いのでほんのさわりだけになりますがまあ大体小見出しでお察しという内容です。


・物価が上がりにくいのだから利上げ着手は遅くて宜しいという話

『Currently, there are some downside risks to reaching our maximum employment goal - namely, the potential for weak foreign activity to weigh on U.S. growth. But, as I noted earlier, we have made tremendous progress toward this goal. Economic growth appears to have enough momentum that I am fairly confident that we will reach our maximum employment goal within a reasonable time.』

と、目標に向かっての進展があるというのは認めていますが・・・・・・

『However, to reiterate, I am far less confident that we can reach our 2 percent inflation target over the medium term because of a number of important downside risks to the inflation outlook.』

ということで物価の話をしていましてですな。

『With prospects of slower growth in China and other emerging market economies, low energy and import prices could exert downward pressure on inflation longer than I anticipate. In addition, while many survey-based measures of long-term inflation expectations have been relatively stable in recent years, we shouldn’t take them as confirmation that our 2 percent target is assured. In fact, some survey measures of inflation expectations have ticked down in the past year and a half. Furthermore, financial market-based measures of inflation compensation have moved quite low in recent months. These could reflect either lower expectations of inflation or a heightened concern for the economic conditions that are associated with low inflation.』

『Adding to my unease is anecdotal evidence: I talk to a wide range of business contacts, and none of them are mentioning rising inflationary or cost pressures. None of them are planning for higher inflation.』

ということで、海外懸念に加えて物価が弱い状況が続いてインフレ期待がやや弱含みになっている可能性を指摘しています。

『How does this asymmetric assessment of risks to achieving the dual mandate goals influence my view of the most appropriate path for monetary policy over the next three years? It leads me to conclude that a later liftoff and a gradual subsequent approach to normalizing monetary policy best position the economy for the potential challenges ahead.』

『Before raising rates, I would like to have more confidence than I do today that inflation is indeed beginning to head higher. Given the current low level of core inflation, some evidence of true upward momentum in actual inflation is critical to this assessment.』

従って利上げ着手するにはコアインフレおよびヘッドラインインフレの明確な上昇が必要と。

『I believe that it could well be the middle of next year before the headwinds from lower energy prices and the stronger dollar dissipate enough so that we begin to see some sustained upward movement in core inflation. After liftoff, I think it would be appropriate to raise the target interest rate very gradually. This would give us sufficient time to assess how the economy is adjusting to higher rates and the progress we are making toward our policy goals』

利上げ後のどうのこうのはまあ良いとしまして、インフレ値の明確な上昇をするには来年の半ば位が適切ということで、年内利上げじゃないドットの1名がエバンスであることも判明。


・政策反応関数を明確にすべきという話

『Effective Communications Is a Critical Policy Tool』の所はまあそうですなというお話なので引用します。

『In my remarks today, I stressed the need for the FOMC to follow interest rate policies that credibly demonstrate its commitment to a symmetric inflation target. As I noted earlier, one of the channels through which monetary policy affects the economy is through its influence on the public’s expectations about inflation and economic activity. Accordingly, a critical component of monetary policy is to effectively communicate how we aim to achieve our long-run goals and strategies.』

ではどういうコミュニケーションをしますかという話ですが。

『Policymakers must clearly describe how their views on the appropriate path for monetary policy will help generate outcomes for employment and inflation that are consistent with achieving the mandated goals within a reasonable time frame. Moreover, they must demonstrate they have appropriately considered the risks to their outlooks on the economy.』

『I hope I have done that for you today by laying out my forecast for the economy and what I consider to be the appropriate path for policy.』

ほうほうそれでそれで?

『We also need to be clear about how monetary policymakers will react to new data as the economy evolves. We talk a lot about data dependence, but what does that really mean?』

データディペンデントとはどういう事かキタコレ。

『To me, it involves the following: 1) evaluating how the new information alters the outlook and the assessment of risks around that outlook; and 2) adjusting my expected path for policy in a way that keeps us on course to achieve our dual mandate objectives in a timely manner.』

マンデートに対してどういう状態かというのを判断するということですけどね。

『So, if in the coming months inflation rises more quickly than I currently anticipate and appears to be headed to undesirably high levels, then I would argue to tighten financial conditions sooner and more aggressively than I presently do. If instead inflation headwinds persist, I would advocate a more gradual approach to normalization than I currently envision. In either case, my policy forecasts would change and I would explain how and why they did.』

ということで(雇用が完全雇用に近いのだから、ということでしょうが)物価に焦点を当てるべきというお話。

『Such communication helps clarify our reaction to new information - the so-called Fed reaction function you hear financial market analysts talk about. This in turn makes it easier for households and businesses to plan for the future. Such transparency is a key feature of goal-oriented, accountable monetary policy.』

これによって政策反応関数を明確化することができて、市場や一般に向けたコミュニケーションが円滑化するでしょうというお話をしておりまして、まあこれはこれで見解ですわなと思います。今のFOMCは正常化着手をしたいと言っている割に何をもって正常化着手するのかの判断基準がああでもないこうでもないとブレ過ぎている(別に「やるからやるんです」でも良いと思いますけどねえ)のがアレという事で。

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2015/09/28

○今更ですが後出しでFOMC後のイエレン会見ネタで(大汗)

先週やれよと言われそうですが(大汗)。
http://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20150917.pdf
Transcript of Chair Yellen’s Press Conference
September 17, 2015

・冒頭説明ですがやはりあれこれ言い過ぎですよね

『CHAIR YELLEN. Good afternoon. As you know from our policy statement released a short time ago, the Federal Open Market Committee reaffirmed the current 0 to 1/4 percent target range for the federal funds rate.』

という事で改めて最初の所ですけどね。

『Since the Committee met in July, the pace of job gains has been solid, the unemployment rate has declined, and overall labor market conditions have continued to improve. Inflation, however, has continued to run below our longer-run objective, partly reflecting declines in energy and import prices.』

ここまでは良いとして、

『While we still expect that the downward pressure on inflation from these factors will fade over time, recent global economic and financial developments are likely to put further downward pressure on inflation in the near term. These developments may also restrain U.S. activity somewhat but have not led at this point to a significant change in the Committee’s outlook for the U.S. economy.』


顕著なリスクではないとは言いながらも新たな懸念要因を出している訳で、

『The Committee continues to anticipate that the first increase in the federal funds rate will be appropriate when it has seen some further improvement in the labor market and is reasonably confident that inflation will move back to its 2 percent objective over the medium term.』

労働市場に関してさらなるもう少しの改善というのを残していますが、それはそれとしてじゃあ何が改善すれば良いのよというのはありますが・・・・・・・・

『It remains the case that the Committee will determine the timing of the initial increase based on its assessment of the implications of incoming information for the economic outlook. I will note that the importance of the initial increase should not be overstated: The stance of monetary policy will likely remain highly accommodative for quite some time after the initial increase in the federal funds rate in order to support continued progress toward our objectives of maximum employment and 2 percent inflation. I will come back to today’s policy decision in a few moments, but first I would like to review recent economic developments and the outlook.』

2%への確信が高まる必要があるという話をしながらその前に物価見通しのリスク要因を増やして説明しておいて「the importance of the initial increase should not be overstated(キリッ)」と言われましてもという感じですわね。


ちょっと飛びましてGDPの説明の中で先行きの輸出がイマイチな要因の説明ですけどね。

『Moreover, net exports were a substantial drag on GDP growth during the first half of the year, reflecting the earlier appreciation of the dollar and weaker foreign demand. The Committee continues to expect a moderate pace of overall GDP growth even though the restraint from net exports is likely to persist for a time.』

ということでドル高と海外要因なのですが、ドル高は兎も角海外要因の方が「for a time」で済むのかねという感じはしますが、ここについてはインフレの見通しの所でまた出てきまして、さらにちょっと飛んで引用しますと・・・・

『Inflation has continued to run below our 2 percent objective, partly reflecting declines in energy and import prices. My colleagues and I continue to expect that the effects of these factors on inflation will be transitory.』

というのは従来の奴ですが、

『However, the recent additional decline in oil prices and further appreciation of the dollar mean that it will take a bit more time for these effects to fully dissipate. 』

ということで時間が少々掛かるような話をしているのに利上げが直ぐに出来るのかという話になりますし、ご丁寧にもその後でBEIの推移まで出ている。

『Accordingly, the Committee anticipates that inflation will remain quite low in the coming months. As these temporary effects fade and, importantly, as the labor market improves further, we expect inflation to move gradually back toward our 2 percent objective. Survey-based measures of longer-term inflation expectations have remained stable. However, the Committee has taken note of recent declines in market-based measures of inflation compensation and will continue to monitor inflation developments carefully.』

しかし今回の説明って見てて思うのですが、やたらめったら「However」が連発されていまして、ああでもないこうでもない言い過ぎですな。BEIについてはそのHoweverから先ですね。


でもって海外経済と金融市場ですけど・・・・・・・・・・

『The outlook abroad appears to have become more uncertain of late, and heightened concerns about growth in China and other emerging market economies have led to notable volatility in financial markets.』

『Developments since our July meeting-including the drop in equity prices, the further appreciation of the dollar, and a widening in risk spreads-have tightened overall financial conditions to some extent. These developments may restrain U.S. economic activity somewhat and are likely to put further downward pressure on inflation in the near term. Given the significant economic and financial interconnections between the United States and the rest of the world, the situation abroad bears close watching. 』

ということで、後の質疑応答では大体チャイナ(と新興国)のせいにしている感はあるのですが、金融市場に関してはお前のスタンスがブレブレだからボラが上がっているんだろと思いまするに、「自分の尾を追う犬」というよりも「自分の鏡に反応している」というような状態になっているのかなあとは思う訳ですよ。まあああでもないこうでもない言い訳を入れすぎたので先週の講演ではちょっと市場がタカ派に取る内容になっていたという事になっていますが、あれも読み方によっては別にタカ派とも言い難い気もする訳で、要はブレブレという事何でしょうなあと思うのでした。

以下質疑応答から少々。


・海外経済とか金融市場に関する懸念とは???

という質問がありまして14ページまで飛びます。

『PETER BARNES. Hi, Chair Yellen. Peter Barnes, Fox Business. Could you talk about-a little bit more specifically about what foreign developments you discussed in the meeting today, what you’re concerned about? We all assume it might be China-that was in the July minutes. Are you concerned about the Chinese economy slowing, the markets there? Do you have any concerns about the European economy? And then, related to stock markets, could I ask you how you feel about U.S. equity markets right now? Because you did talk about your concerns about them back in May. You saw they were generally quite high and were worried about potential dangers in U.S. equity market valuations, but now equity prices have pulled back. Thank you.』

具体的に何をどう懸念しているのか説明してくらはいというのに対しての答えが長い。

『CHAIR YELLEN. So, with respect to global developments, we reviewed developments in all important areas of the world, but we’re focused particularly on China and emerging markets. Now, we’ve long expected, as most analysts have, to see some slowing in Chinese growth over time as they rebalance their economy. And they have planned that, and I think there are no surprises there.』

中国経済がある程度成長鈍化するのはサプライズではないとな。

『The question is whether or not there might be a risk of a more abrupt slowdown than most analysts expect. And I think developments that we saw in financial markets in August in part reflected concerns that Chinese-there was downside risk to Chinese economic performance and perhaps concerns about the deftness with which policymakers were addressing those concerns.』

懸念はより以上のスローダウンになることで、市場が懸念しているのもそこであり、更に言えば政策当局がきちんと対応できるかの懸念があるのでしょうとかややお前が言うな的なアレ。

『In addition, we saw a very substantial downward pressure on oil prices and commodity markets, and those developments have had a significant impact on many emerging market economies that are important producers of commodities as well as more advanced countries, including Canada, which is an important trading partner of ours that has been negatively affected by declining commodity prices, declining energy prices.』

商品や原油の一段の下げは新興国に悪影響でカナダなどにも影響とな。

『Now, there are a lot of countries that are net importers of energy that are positively affected by those developments, but emerging markets-important emerging markets-have been negatively affected by those developments. And we’ve seen significant outflows of capital from those countries, pressures on their exchange rates, and concerns about their performance going forward.』

新興国の資本流出からのドル高も懸念だそうな。

『So a lot of our focus has been on risks around China, but not just China-emerging markets, more generally, and how they may spill over to the United States.』

とまあそういう説明をされるとうーむとしか。というかイエレンさんになってから海外ガーが増えた増えたという感じで、バーナンキの時は「知らんがな」モードだったのにここの変化は大きいですな。

『In terms of thinking about financial developments and our reaction to them, I think a lot of the financial developments were really-so, we don’t want to respond to market turbulence. The Fed should not be responding to the ups and downs of the markets, and it is certainly not our policy to do so. But when there are significant financial developments, it’s incumbent on us to ask ourselves what is causing them. And, of course, while we can’t know for sure, it seemed to us as though concerns about the global economic outlook were drivers of those financial developments. And so they have concerned us in part because they take us to the global outlook and how that will affect us. And, to some extent, look, we have seen a tightening of financial conditions during-as I mentioned, during the intermeeting period. So the stock market adjustment, combined with a somewhat stronger dollar and higher risk spreads, does represent some tightening of financial conditions.』

金融市場の動向に一々反応する訳ではない、と言いながらもああでもないこうでもないと金融環境のタイト化について説明している時点で市場に振らされているわとしか思えん。

『Now, in and of itself, it’s not the end of story in terms of our policy because we have to put a lot of different pieces together.』

ということで色々なピースを出すのは結構だがそのせいで政策反応関数が訳分からなくなっているのですが。

『We are looking at, as I emphasized, a U.S. economy that has been performing well and impressing us by the pace at which it’s creating jobs and the strength of domestic demand. So we have that. We have some concerns about negative impacts from global developments and some tightening of financial conditions. We’re trying to put all of that together in a picture. I think, importantly, we say in our statement that in spite of all of this, we continue to view the risks to economic activity and labor markets as balanced. So it’s a lot of different pieces, different cross currents, some strengthening the outlook, some creating concerns, but overall, no significant change in the economic outlook.』

最後に「no significant change in the economic outlook」と言ってもその前に色々と説明し過ぎだし、まあこういう説明だと利上げできないんじゃないのという話にはなりますなあと思うのでした。


で、その直後にこんな質問が。

『ANN SAPHIR. Ann Saphir with Reuters. Just to piggyback on the global considerations-as you say, the U.S. economy has been growing. Are you worried that, given the global interconnectedness, the low inflation globally, all of the other concerns that you just spoke about, that you may never escape from this zero lower bound situation?』


海外との相互関連だったら物価もそうですよねとか中々意地悪。

『CHAIR YELLEN. So I would be very-I would be very surprised if that’s the case. That is not the way I see the outlook or the way the Committee sees the outlook. Can I completely rule it out? I can’t completely rule it out. But, really, that’s an extreme downside risk that in no way is near the center of my outlook.』

と反論しているのですが、海外が重要な懸念じゃないんだったらその前にあんなに説明するなよという事で、まあイエレンさんが混乱しているというよりはFOMCでの議論が混乱しているからこういう混乱した説明になるんでしょうなあ(立場上イエレンさんとしては中心的な見解の線で説明するしかないから)。


ということでネタはまだ続くのですが本日は時間と量の関係でこの辺りで勘弁(すいません)。

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2015/09/25

○パスすると思ったけどイエレン議長講演

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/yellen20150924a.htm
Chair Janet L. Yellen
At the Philip Gamble Memorial Lecture, University of Massachusetts, Amherst, Amhearst, Massachusetts
September 24, 2015
Inflation Dynamics and Monetary Policy

小見出しを見たら『Historical Review of Inflation』『Inflation Costs』『Monetary Policy Actions since the Financial Crisis』『Inflation Dynamics』『Policy Implications』『Conclusion』とあるので、最後の2つ部分だけ斜め読みしてみた。


・纏めの所では年内利上げが適切という話をしているのですが・・・・・・・・・・・・

『Conclusion』である。

『To conclude, let me emphasize that, following the dual mandate established by the Congress, the Federal Reserve is committed to the achievement of maximum employment and price stability. To this end, we have maintained a highly accommodative monetary policy since the financial crisis; that policy has fostered a marked improvement in labor market conditions and helped check undesirable disinflationary pressures.』

へいへい。

『However, we have not yet fully attained our objectives under the dual mandate: Some slack remains in labor markets, and the effects of this slack and the influence of lower energy prices and past dollar appreciation have been significant factors keeping inflation below our goal.』

労働市場に幾分かのスラックがあってエネルギー価格の下落やこれまでのドル高が物価を抑えています、ってまた今回も言っているんですけれども・・・・・・・・・・・

『But I expect that inflation will return to 2 percent over the next few years as the temporary factors that are currently weighing on inflation wane, provided that economic growth continues to be strong enough to complete the return to maximum employment and long-run inflation expectations remain well anchored.』

結局どっちやねんというのが訳分からん。

『Most FOMC participants, including myself, currently anticipate that achieving these conditions will likely entail an initial increase in the federal funds rate later this year, followed by a gradual pace of tightening thereafter. But if the economy surprises us, our judgments about appropriate monetary policy will change.』

サプライズが起きれば別ですが今年の後半(って既に9月じゃん)には初回利上げが適切と多くのFOMCと同様に私も思っています、だそうですな。

でもってもうちょっと前の所も見てみます(インスタントですが)『Policy Implications』以降ね。


・物価がマンデートに行く見通しに関して

『Assuming that my reading of the data is correct and long-run inflation expectations are in fact anchored near their pre-recession levels, what implications does the preceding description of inflation dynamics have for the inflation outlook and for monetary policy?』

ということで・・・・・・・・・

『This framework suggests, first, that much of the recent shortfall of inflation from our 2 percent objective is attributable to special factors whose effects are likely to prove transitory. As the solid black line in figure 8 indicates, PCE inflation has run noticeably below our 2 percent objective on average since 2008, with the shortfall approaching about 1 percentage point in both 2013 and 2014 and more than 1-1/2 percentage points this year. The stacked bars in the figure give the contributions of various factors to these deviations from 2 percent, computed using an estimated version of the simple inflation model I just discussed.30 As the solid blue portion of the bars shows, falling consumer energy prices explain about half of this year's shortfall and a sizable portion of the 2013 and 2014 shortfalls as well. 』

『Another important source of downward pressure this year has been a decline in import prices, the portion with orange checkerboard pattern, which is largely attributable to the 15 percent appreciation in the dollar's exchange value over the past year.』

FRBのサイトの方ですと「figure 8」って所をクリックすると図表が出てきて分かりやすい(こちらにはそんなことはしていませんすいません)のですが、最近の物価が弱いのは「原油と為替のせい」というお話をしています。

『In contrast, the restraint imposed by economic slack, the green dotted portion, has diminished steadily over time as the economy has recovered and is now estimated to be relatively modest.31 Finally, a similarly small portion of the current shortfall of inflation from 2 percent is explained by other factors (which include changes in food prices); importantly, the effects of these other factors are transitory and often switch sign from year to year.』

一方でスラックによる押し下げ要因は減っているのだから一時的に弱くても基調は確りですねわかります。

『Although an accounting exercise like this one is always imprecise and will depend on the specific model that is used, I think its basic message--that the current near-zero rate of inflation can mostly be attributed to the temporary effects of falling prices for energy and non-energy imports--is quite plausible. If so, the 12-month change in total PCE prices is likely to rebound to 1-1/2 percent or higher in 2016, barring a further substantial drop in crude oil prices and provided that the dollar does not appreciate noticeably further.』

『To be reasonably confident that inflation will return to 2 percent over the next few years, we need, in turn, to be reasonably confident that we will see continued solid economic growth and further gains in resource utilization, with longer-term inflation expectations remaining near their pre-recession level. Fortunately, prospects for the U.S. economy generally appear solid. Monthly payroll gains have averaged close to 210,000 since the start of the year and the overall economy has been expanding modestly faster than its productive potential. My colleagues and I, based on our most recent forecasts, anticipate that this pattern will continue and that labor market conditions will improve further as we head into 2016.』

寝起きどころかさっき出たのを斜め読みなのでこの辺は流してしまいますが、結論としては労働市場に見られるような経済のスラックがほぼ解消に向かう中でロンガーランのインフレ期待が安定しているから物価については2%に向けて中期的には上昇するでしょうし、2016年に向かうにつれてスラックの解消も確認できるでしょうというお話のようで。

『The labor market has achieved considerable progress over the past several years. Even so, further improvement in labor market conditions would be welcome because we are probably not yet all the way back to full employment. Although the unemployment rate may now be close to its longer-run normal level--which most FOMC participants now estimate is around 4.9 percent--this traditional metric of resource utilization almost certainly understates the actual amount of slack that currently exists: On a cyclically adjusted basis, the labor force participation rate remains low relative to its underlying trend, and an unusually large number of people are working part time but would prefer full-time employment.32 Consistent with this assessment is the slow pace at which hourly wages and compensation have been rising, which suggests that most firms still find it relatively easy to hire and retain employees.』

労働市場のスラックは少なくなりましたがまだありますという話ですが、これは相変わらず先般のプレコンで示していたように「労働参加率」だの「非自発的パートタイム労働者率」だの「賃金が上がらん」だのという話をしていてうーむという所です。

『Reducing slack along these other dimensions may involve a temporary decline in the unemployment rate somewhat below the level that is estimated to be consistent, in the longer run, with inflation stabilizing at 2 percent. For example, attracting discouraged workers back into the labor force may require a period of especially plentiful employment opportunities and strong hiring. Similarly, firms may be unwilling to restructure their operations to use more full-time workers until they encounter greater difficulty filling part-time positions. Beyond these considerations, a modest decline in the unemployment rate below its long-run level for a time would, by increasing resource utilization, also have the benefit of speeding the return to 2 percent inflation.』

『Finally, albeit more speculatively, such an environment might help reverse some of the significant supply-side damage that appears to have occurred in recent years, thereby improving Americans' standard of living. 33 』

現在の失業率自体は完全雇用水準という認識で、もしかしたらそれよりも下がる時期もあるかも知れませんという見通しになっていて、その結果として別の指標でみられるスラックも解消に向かうでしょうというお話をしているように読めると思うのですが。


でまあここまでが物価と労働市場のお話でして、この項の後半が政策に関して。

『Consistent with the inflation framework I have outlined, the medians of the projections provided by FOMC participants at our recent meeting show inflation gradually moving back to 2 percent, accompanied by a temporary decline in unemployment slightly below the median estimate of the rate expected to prevail in the longer run. These projections embody two key judgments regarding the projected relationship between real activity and interest rates.』

SEPの見通しの話ですな。

『First, the real federal funds rate is currently somewhat below the level that would be consistent with real GDP expanding in line with potential, which implies that the unemployment rate is likely to continue to fall in the absence of some tightening. Second, participants implicitly expect that the various headwinds to economic growth that I mentioned earlier will continue to fade, thereby boosting the economy's underlying strength.』

ということで・・・・・・・・・

『Combined, these two judgments imply that the real interest rate consistent with achieving and then maintaining full employment in the medium run should rise gradually over time. This expectation, coupled with inherent lags in the response of real activity and inflation to changes in monetary policy, are the key reasons that most of my colleagues and I anticipate that it will likely be appropriate to raise the target range for the federal funds rate sometime later this year and to continue boosting short-term rates at a gradual pace thereafter as the labor market improves further and inflation moves back to our 2 percent objective.』

「most of my colleagues and I anticipate that it will likely be appropriate to raise the target range for the federal funds rate sometime later this year and to continue boosting short-term rates at a gradual pace thereafter」だそうです、ってまあドットチャートはそう言っていますけど。


『By itself, the precise timing of the first increase in our target for the federal funds rate should have only minor implications for financial conditions and the general economy.』

最初の利上げ時期は重要ではない(キリッ)というのがまーた出ている訳ですが、実際に利上げするかしないかという時には非常に重要ですし、何をもってその利上げ時期を判断するのかが結局良く分からん状態のままで(この講演前半殆ど読んでいないのでアレですが、後半の部分見ても「では今回何で利上げを見送ったのか」の説明が分からんまま)キリッと言われても困るのですけれどもね。

『What matters for overall financial conditions is the entire trajectory of short-term interest rates that is anticipated by markets and the public. As I noted, most of my colleagues and I anticipate that economic conditions are likely to warrant raising short-term interest rates at a quite gradual pace over the next few years.』

今はその話を強調しても仕方ないと思う。

『It's important to emphasize, however, that both the timing of the first rate increase and any subsequent adjustments to our federal funds rate target will depend on how developments in the economy influence the Committee's outlook for progress toward maximum employment and 2 percent inflation.』

というのはその通りなのですが、こういう言い方をすると「市場の反応を気にしてビビってるビビってる」と見れるような気もだいぶするんですけど大丈夫かなあ。


『The economic outlook, of course, is highly uncertain and it is conceivable, for example, that inflation could remain appreciably below our 2 percent target despite the apparent anchoring of inflation expectations. Here, Japan's recent history may be instructive: As shown in figure 9, survey measures of longer-term expected inflation in that country remained positive and stable even as that country experienced many years of persistent, mild deflation.34』

で、更におよよと思うのはこの辺でして、日本の例を出してきて何を言い出すのかと思えば「サーベイベースのインフレ期待はプラス圏で推移する中で物価がマイルドデフレーション状態でしたという例があります」とか言い出すのがアレ。

『The explanation for the persistent divergence between actual and expected inflation in Japan is not clear, but I believe that it illustrates a problem faced by all central banks: Economists' understanding of the dynamics of inflation is far from perfect. Reflecting that limited understanding, the predictions of our models often err, sometimes significantly so.』

『Accordingly, inflation may rise more slowly or rapidly than the Committee currently anticipates; should such a development occur, we would need to adjust the stance of policy in response.』

ということで、そういう例もあることですから実は物価の上昇ペースがいま私らが想定しているよりも遅い可能性があるとか日和ってる日和ってるという感じがするのは気のせい???


『Considerable uncertainties also surround the outlook for economic activity.』

更に日和が出る。

『For example, we cannot be certain about the pace at which the headwinds still restraining the domestic economy will continue to fade. Moreover, net exports have served as a significant drag on growth over the past year and recent global economic and financial developments highlight the risk that a slowdown in foreign growth might restrain U.S. economic activity somewhat further.』

上げない言い訳の方がこうホイホイ出てくる辺りがなんか弱腰に見えると思うんだよな〜。

『The Committee is monitoring developments abroad, but we do not currently anticipate that the effects of these recent developments on the U.S. economy will prove to be large enough to have a significant effect on the path for policy. That said, in response to surprises affecting the outlook for economic activity, as with those affecting inflation, the FOMC would need to adjust the stance of policy so that our actions remain consistent with inflation returning to our 2 percent objective over the medium term in the context of maximum employment.』

これらの問題がサプライズにならない限りは政策の正常化をしますという話にまとめているのですが、その前の説明が無駄に丁寧過ぎて腰が砕けているようにしか見えないのは気のせいですかねえ。

『Given the highly uncertain nature of the outlook, one might ask: Why not hold off raising the federal funds rate until the economy has reached full employment and inflation is actually back at 2 percent? 』

でもってこの項最後のパラグラフになりました。

『The difficulty with this strategy is that monetary policy affects real activity and inflation with a substantial lag. If the FOMC were to delay the start of the policy normalization process for too long, we would likely end up having to tighten policy relatively abruptly to keep the economy from significantly overshooting both of our goals. Such an abrupt tightening would risk disrupting financial markets and perhaps even inadvertently push the economy into recession.』

アクチュアルの物価が2%になるまで緩和続ければという見解に対しては金融政策の効果のラグの話を出してきてそれは無いという説明。

『In addition, continuing to hold short-term interest rates near zero well after real activity has returned to normal and headwinds have faded could encourage excessive leverage and other forms of inappropriate risk-taking that might undermine financial stability.』

しかも不必要な低金利長期化によって金融の不安定化が起きるという話もしているのね。

『For these reasons, the more prudent strategy is to begin tightening in a timely fashion and at a gradual pace, adjusting policy as needed in light of incoming data.』

だそうですが、まあ「adjusting policy as needed in light of incoming data」というのは理想としては美しいのですが、それは市場の期待が全く安定しなくなるのでどうなのよという風に思うのは既にこの利上げ騒動で経験済みのようにしか思えませんけどね。


#ということで簡単にななめ読みのつもりがそこそこの引用になりましたが正直斜め読みでネタにしているので抜けとかあったら教えてジェネラル!!(週末にじっくり読みます)

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2015/09/24

・結局FRB(というかイエレンさん)やってしまいましたなあという感じで

今回の「利上げ見送り」ですけれども、その後地区連銀総裁とかが年内利上げあるでよという話をしているようですけれども、まー普通に考えてあれだけああでもないこうでもないと利上げを見送る理由を並べてしまいますと「FRBは何考えて利上げ判断できるんだ」ってお話になりますわな。

しかもその中に海外情勢のようなFRB的にアンコントローラブルなのを入れてしまっている上に、市場のボラティリティがどうのこうの的な「それはお前のせいだろ」みたいなのも入るとなるとかなーりどうしようもない状態になっておりまして、結局FRBは自信が無いということで株安になるとか何のために利上げを見送ったのかという結果になってもはや笑ってしまうしかありません。

まあ何ですな、こうなるとFRBの政策反応関数が益々分かりにくくなってしまいましたし、後に行けば行くほど景気循環的にも利上げが難しくなってくるでしょうから、ここは一旦リセットして最初からコミュニケーションを作り直さないとどうしようも無いでしょうなあと思いますし、このテイタラクで10月に利上げ判断できるとも思えませんし、年内本当に上げられるのでしょうかねえと言うとそれもコミュニケーショングダグダになっている中で出来るのでしょうかねえというお話ではあるのでしょうな。まあ議事要旨を鑑賞したいと思いますけど、今回は相当やっちまいましたなという結論でよろしいようですな、というメモだけ置いておきます(今日は日銀議事要旨ネタに走ってしまったのでメモだけ)。

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2015/09/18

○FOMC声明文比較:上方修正しながら「海外ガー」が登場で金利据え置き

http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20150917a.htm(今回)
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20150729a.htm(前回)

・第1パラグラフ:だいたいの判断は上がっているのですが・・・・・・・・・・

『Information received since the Federal Open Market Committee met in July suggests that economic activity is expanding at a moderate pace.』(今回)
『Information received since the Federal Open Market Committee met in June indicates that economic activity has been expanding moderately in recent months.』(前回)

総括判断の表現はexpanding moderatelyからexpanding at a moderate paceなので微妙に上方修正。


『Household spending and business fixed investment have been increasing moderately, and the housing sector has improved further; however, net exports have been soft.』(今回)
『Growth in household spending has been moderate and the housing sector has shown additional improvement; however, business fixed investment and net exports stayed soft.』(前回)

家計消費は同じ、企業の固定資産投資の判断が引き上げになり、住宅市場の改善についても判断が引き上げになっています。ネット輸出についてはsoftという弱めの判断を継続。

『The labor market continued to improve, with solid job gains and declining unemployment. On balance, labor market indicators show that underutilization of labor resources has diminished since early this year.』(今回)
『The labor market continued to improve, with solid job gains and declining unemployment. On balance, a range of labor market indicators suggests that underutilization of labor resources has diminished since early this year.』(前回)

労働市場の認識については、基本的な部分の文言は同じですが、労働市場におけるスラックの減少についての表現が「labor market indicators show that」と前回の「labor market indicators suggests that」となっていまして、サジェストがショウなのですからまあ強い表現になっているなあという所です。

『Inflation has continued to run below the Committee's longer-run objective, partly reflecting declines in energy prices and in prices of non-energy imports.』(今回)
『Inflation continued to run below the Committee's longer-run objective, partly reflecting earlier declines in energy prices and decreasing prices of non-energy imports.』(前回)

物価が低迷している件についてはcontinuedからhas continuedになりまして、継続していますなあ感のある表現に。

『Market-based measures of inflation compensation moved lower; survey-based measures of longer-term inflation expectations have remained stable.』(今回)
『Market-based measures of inflation compensation remain low; survey?based measures of longer-term inflation expectations have remained stable.』(前回)

市場のインフレ期待がmoved lowerと認識として下がっていますが、サーベイベースのインフレ期待は安定していますとな。


・第2パラグラフ:海外経済に警戒キタコレ!

『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability.』(今回)
『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability.』(前回)

これはいつも通り。

『Recent global economic and financial developments may restrain economic activity somewhat and are likely to put further downward pressure on inflation in the near term. Nonetheless, the Committee expects that, with appropriate policy accommodation, economic activity will expand at a moderate pace, with labor market indicators continuing to move toward levels the Committee judges consistent with its dual mandate.』(今回)

『The Committee expects that, with appropriate policy accommodation, economic activity will expand at a moderate pace, with labor market indicators continuing to move toward levels the Committee judges consistent with its dual mandate.』(前回)

適切な緩和政策によって経済が拡大してマンデート達成に向けて経済がモデレートに進んでいくという表現は同じなのですが、その頭に思いっきり「最近のグローバル経済や金融市場の動向は経済活動を幾分か阻害し、近いタームの物価に押し下げ圧力をかける」というのが入りましたな。

『The Committee continues to see the risks to the outlook for economic activity and the labor market as nearly balanced but is monitoring developments abroad.』(今回)
『The Committee continues to see the risks to the outlook for economic activity and the labor market as nearly balanced.』(前回)

リスクはバランス、の次に「but is monitoring developments abroad」とあるのが吹いた。

『Inflation is anticipated to remain near its recent low level in the near term but the Committee expects inflation to rise gradually toward 2 percent over the medium term as the labor market improves further and the transitory effects of declines in energy and import prices dissipate. The Committee continues to monitor inflation developments closely.』(今回)

『Inflation is anticipated to remain near its recent low level in the near term, but the Committee expects inflation to rise gradually toward 2 percent over the medium term as the labor market improves further and the transitory effects of earlier declines in energy and import prices dissipate. The Committee continues to monitor inflation developments closely.』(前回)

ここの部分ですが、物価に対して一時的に影響を与える、という触れ込みになっているエネルギーあんど輸入価格の影響について、従来「earlier declines in energy and import prices」だったのの最初の「earlier」がしらっと抜けておりまして、輸入価格やエネ価格の影響がやや長引いていることを示唆しているのもチャーミング。


・第3パラグラフ〜第5パラグラフは全文一致

全文一致なので引用だけしておく。全文一致であることは何回か目視したのですがホンマカイナと思われる方はきちんとご確認あれ。

『To support continued progress toward maximum employment and price stability, the Committee today reaffirmed its view that the current 0 to 1/4 percent target range for the federal funds rate remains appropriate.』(今回)

ということで金利据え置き。

『In determining how long to maintain this target range, the Committee will assess progress--both realized and expected--toward its objectives of maximum employment and 2 percent inflation. This assessment will take into account a wide range of information, including measures of labor market conditions, indicators of inflation pressures and inflation expectations, and readings on financial and international developments.』(今回)

『The Committee anticipates that it will be appropriate to raise the target range for the federal funds rate when it has seen some further improvement in the labor market and is reasonably confident that inflation will move back to its 2 percent objective over the medium term.』(今回)

第3パラグラフはここまでですが、前回あった「利上げには労働市場のsome further improvementが必要」というのも同じですけど何の改善が必要ですねんという感じですな。

第4パラグラフ、第5パラグラフは相変わらずの変化なしですな。

『The Committee is maintaining its existing policy of reinvesting principal payments from its holdings of agency debt and agency mortgage-backed securities in agency mortgage-backed securities and of rolling over maturing Treasury securities at auction. This policy, by keeping the Committee's holdings of longer-term securities at sizable levels, should help maintain accommodative financial conditions.』(今回)

『When the Committee decides to begin to remove policy accommodation, it will take a balanced approach consistent with its longer-run goals of maximum employment and inflation of 2 percent. The Committee currently anticipates that, even after employment and inflation are near mandate-consistent levels, economic conditions may, for some time, warrant keeping the target federal funds rate below levels the Committee views as normal in the longer run.』(今回)


・第6パラグラフ:ラッカー怒りの反対投票

『Voting for the FOMC monetary policy action were: Janet L. Yellen, Chair; William C. Dudley, Vice Chairman; Lael Brainard; Charles L. Evans; Stanley Fischer; Dennis P. Lockhart; Jerome H. Powell; Daniel K. Tarullo; and John C. Williams. Voting against the action was Jeffrey M. Lacker, who preferred to raise the target range for the federal funds rate by 25 basis points at this meeting.』(今回)

『Voting for the FOMC monetary policy action were: Janet L. Yellen, Chair; William C. Dudley, Vice Chairman; Lael Brainard; Charles L. Evans; Stanley Fischer; Jeffrey M. Lacker; Dennis P. Lockhart; Jerome H. Powell; Daniel K. Tarullo; and John C. Williams.』(前回)

という事でラッカー怒りの反対キタコレですな。


○会見の冒頭コメントをちょっとだけ鑑賞するがちょっと懸念ががががが

http://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20150917.pdf
Transcript of Chair Yellen’s FOMC Press Conference Opening Statement
September 17, 2015

全部引用しているとオワランチ会長になるので詳しくは質疑応答を連休中にじっくり鑑賞して置く所存でございますが、とりあえず寝起きでヒーコラ言いながら斜め読みして今後の利上げに関する部分を紹介してみる。

PDFの4ページ目の半ば位からの話が大体その辺に関する説明になっている。

『The outlook abroad appears to have become more uncertain of late, and heightened concerns about growth in China and other emerging market economies have led to notable volatility in financial markets.』

この前の部分は経済物価情勢に関する説明があって、物価の方がもたついている件についての話もあるのですが、それ以外の話って別によわよわな話をしている訳ではなくて、ここの部分に来て「先行きの不透明」が登場という図です。

でまあエマージング経済への懸念がどうのこうのというのは兎も角として、ここで、「notable volatility in financial markets」という話をしているのがまたアレでして、そのボラは新興国懸念とかももちろんあるのですが、そもそも新興国の懸念の中に米国利上げの影響への懸念もありますし、その米国利上げがどうなるのかの不透明感が市場のボラを高めている、という状況もある訳なのですな。

とまあ考えますと、自分たちが正常化着手に対してグラグラとする動きによって巻き起こされる市場のボラに反応して更にスタンスがグラグラ、という自分の尾を追う犬モードになってきているのではないかというのが大分気になっている所なのではありまする。

『Developments since our July meeting, including the drop in equity prices, the further appreciation of the dollar, and a widening in risk spreads, have tightened overall financial conditions to some extent.』

そらそうかも知れんが金融正常化に対する不透明感というかスタンスがブレブレになっていった中でそういう現象が起きているという面があるのですよねえとしか申し上げようがないのだが、これを言い出しますと本当に利上げ着手する胆力あるのかねと疑問符をつけたくなる。

『These developments may restrain U.S.economic activity somewhat and are likely to put further downward pressure on inflation in the near term. Given the significant economic and financial interconnections between the United States and the rest of the world, the situation abroad bears close watching. 』

ということで、海外情勢および国際金融情勢について動向によっては米国経済物価への下押し圧力の要因になりますのでclose watchingします、というのは自分の影に怯えているように見えまして大丈夫かこれという印象を受けちゃいますがな。


その次のパラグラフ(4ページの後半から5ページの冒頭になります)から。

『Returning to monetary policy, we recognize that there has been a great deal of focus on today’s policy decision. The recovery from the Great Recession has advanced sufficiently far, and domestic spending appears sufficiently robust, that an argument can be made for a rise in interest rates at this time. We discussed this possibility at our meeting.』

今回利上げを実施するかどうかについて議論を行いました、ってことでリセッションからの回復は十分に進んで国内の消費は十分に力強いとかいう状況ですが、では何で利上げを見送るのかというと・・・・・・・

『However, in light of the heightened uncertainties abroad and a slightly softer expected path for inflation, the Committee judged it appropriate to wait for more evidence, including some further improvement in the labor market, to bolster its confidence that inflation will rise to 2 percent in the medium term.』

海外の不確実性の増大と、物価見通しパスが若干弱くなったことによって、先行き経済がマンデート達成するというエビデンスをもっと欲しいという事になりました。でもってそのエビデンスは「some further improvement in the labor market」だそうなのですが、ここから何のimprovementが要るのですかねというお話は労働市場に関する説明部分を見ないといけませんのでちょっと後で。

『Now, I do not want to overplay the implications of these recent developments, which have not fundamentally altered our outlook. The economy has been performing well, and we expect it to continue to do so. 』

別に弱気になった訳じゃないだからね!!!とのことですが、では労働市場に関するアセスメント部分を引用してみましょう。2ページ目の真ん中です。

『The labor market has shown further progress so far this year toward our objective of maximum employment.』

最大雇用のマンデートに向けて更に進展をしておりますという事ですけど。

『Over the past three months, job gains averaged 220,000 per month. The unemployment rate, at 5.1 percent in August, was down four-tenths of a percent from the latest reading available at the time of our June meeting, although that decline was accompanied by some reduction in the labor force participation rate over the same period. A broader measure of unemployment that includes individuals who want and are available to work but have not actively searched recently and people who are working part time but would rather work full time has continued to improve.』

『That said, some cyclical weakness likely remains: While the unemployment rate is close to most FOMC participants’ estimates of the longer-run normal level, the participation rate is still below estimates of its underlying trend, involuntary part-time employment remains elevated, and wage growth remains subdued.』

ということで、失業率とか非農業部門雇用者数とかみたいな数字は問題ないのだが、労働参加率とか非自発的なパートタイム労働の割合とか、労働者の賃金の伸びとかがまだ足りないと仰せになっておりまして、まあ実際に正常化着手するときにはこの話を反故にするという可能性もありますけれども、政策の論理的整合性を考えた場合には、ここで示された労働市場の指標が改善されないと正常化着手に向けた「some further improvement in the labor market」が確認されませんよね、という話になるのですが、改善しなかったらどうする気なんでしょ。


とまあインスタントで金融政策に直接言及している部分とその関連部分についてのみ今回はネタにしましたけれども、イエレン会見は当然ながら質疑応答も含めて鑑賞しないといけませんので連休の宿題ですな。



○SEPだがまたまたロンガーランの中立金利が低下していますな

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20150917.pdf
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcprojtabl20150917.htm

・経済物価見通しでは物価の見通しが若干下がったという感じですか

経済物価見通しに関して今回からMedianというのが出るようになりました。

『1. For each period, the median is the middle projection when the projections are arranged from lowest to highest. When the number of projections is even, the median is the average of the two middle projections.』

ということでまさに中央値を出すという事になっております。めんどいのでこの数字で見ると、成長率見通しは足元がやや上がって先行きが若干下がっているのですが、基本的に2%台前半での巡航速度の成長という見通しが継続。失業率見通しは若干下がっていますがロンガーランの失業率の数値も微妙に下がっているので、そういう意味では中立でしょうな。

でもって物価に関しては2015年の見通しが下がって(当たり前ですが)その先も0.1%ほどなので誤差ではありますが下がっているという感じです。


・政策金利見通しの方に味わいが

『Figure 2.Overview of FOMC participants' assessments of appropriate monetary policy』の方がワロタという感じでして。

Appropriate timing of policy firming

               2015 2016  2017
Number of participants  13   3   1

前回が15-2-0だったので2名増加ですかそうですかという所ですが・・・・・・・・・・・

Midpoint of target range or target level (Percent)の所を見ますと、一番吹くのは『-0.125』という所に2015年と2016年末の金利水準の票が1票入っている所で、政策提案に反映されていない所からして今年投票権のない人がファンキーな提言をしているの図という所でございますが、ここまで変態仮面なことを言い出すのはコチャラコタのおっちゃんですかねえ。

でまあそれはともかくとして、年末の金利水準については利上げしないのが3人と上記利下げという変態仮面が1人ですが、25bp利上げが7人いて50bp利上げが5人となっている(75bp利上げというのはラッカーのおじちゃんでしょう、1名います)のですが、今回利上げ見送りになっているのに見通しが2回利上げになっているというのが5人もいるというのが?????な所です。まあ今回投票権のない人が5名雁首揃えているということなのかも知れませんが、今回の利上げを見送って年内2回利上げは無理だろおいおいおいと思うのですが何でこんなに票が入るのかねと不思議ちゃんでした。


ま、それよりもメインイベントはロンガーランのレートで、今回は概ね3.25%〜3.5%の所が中心的になっていて、目の子で平均3.5%程度。前回は概ね今回よりも0.25%ほど高くなっていまして、ここの数値が匍匐前進の如く下がっていくのが実に味わいがありますなあというお話でした。

#その他詳しくは連休中に研究しておきます

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2015/09/17

ところで、ネタにしようかと思っているうちにすっかり積みネタになってしまっているECBプラート理事の暫く前の講演があるのですが(大汗)、こちらの冒頭でこんな話がありましてですな。

http://www.ecb.europa.eu/press/key/date/2015/html/sp150910_2.en.html
The low interest rate environment in the euro area

Keynote speech by Peter Praet, Member of the Executive Board of the ECB,
at a Pension Funds Conference organised by De Nederlandsche Bank in Bussum, The Netherlands,
10 September 2015

冒頭のちょっと後くらいの所からですが、お題のように話し相手が年金ファンドのコンファレンスでして低金利直撃弾を食らっているところ向けの話なので、冒頭に低金利が長期化する環境についてのお話をマクラとして置いているのですな。


『My answer can be summarised as follows. Very low interest rates are not so much a choice of the central bank as a reflection of economic malaise in the global and euro area economy.』

別にワシらが下げたいから下げている訳ではないぞな経済物価状況に即した金利政策したらこうなりますねんと。

『Some of the drivers of that malaise are secular, which are more challenging for public policy to affect. But others are related to demand conditions that appear weak even when compared with a long-term potential growth rate that is already disappointingly low.』

『Such persistent economic slack relative to potential can be reversed through targeted measures. That includes tackling the cyclical headwinds that are dragging on aggregate demand; facilitating the process of balance sheet repair; and removing the structural barriers to higher real growth prospects, which can itself reinvigorate demand through expectation and confidence channels.』

ということで、トレンドグロースの低下をもたらしている経済の(循環要因に対する意味での)構造的な問題に関してはそれに対応した政策が必要ですがなという話をしておりましてですね。

『The role of monetary policy is mainly to provide countercyclical stabilisation while the economy goes through this transition.』

金融政策の役割はこれらの構造対応の政策を実施する間において経済の循環的な後退に対して経済を安定化させる事がメインである、というお話をしている訳でして、どこぞの置物リフレ理論のようにインフレ目標2%達成すると色々なものが上手く回るぜヒャッハーという金融政策万能論とはだいぶ違う次第で。

『When the economy is weak, after all, disinflationary pressures increase, which we have to counter to deliver on our mandate. The monetary policy measures currently in place in the euro area follow from this: they were decided as a direct result of a euro area inflation rate well below comfortable levels and persistent weakness in the economy. And in meeting our objective, we support growth and inflation, which in turn creates the conditions for interest rates to “normalise” once more. Of course, the level that rates will return to in the future is dependent upon the degree to which the secular drivers, currently depressing rates, can be reversed.』

でもって経済が弱い時にディスインフレ圧力が強まるので金融政策はそれに対応しないといけませんなあ的なお話は当然おこなっているのですが、トレンドグロースが高まる政策によって金利が「正常化」できるような環境が整う、という説明をしている訳でして、一方でどこぞではすっかり消えた第三の矢でないかという状況なのが泣けるというお話ではありまして、非伝統的政策を投下せざるを得ない構造的な問題がある中で金融政策単体の有効性が以前のインフレ目標政策でグレートモデレーションな時代に認識されていた状況とは異なっているんじゃネーノという流れになっているのに日本は1周回遅れの置物理論で勝負している辺りがイカンのではないかという雑談でございました。まあ異論はだいぶあると思いますけど。

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2015/09/11

○米国のコミュニケーションもややこしい事になっていますの

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NUH9H0SYF02601.html
米国株:反発、薄商いで振れ幅の大きい展開−FOMC会合控え
2015/09/11 05:17 JST

『レイモンド・ジェームズ・ファイナンシャルの機関株式トレーディング担当ディレクター、ダン・マクマン氏は「あまり材料がなく、市場では売買高や流動性に欠ける状況だ」と指摘。「投資家は様子見姿勢を取っている。激しく変動しているが、誰もその理由が分からない。特に根拠はないのだろう。こうした環境では合理的な判断を下すのが極めて難しい」と続けた。』(上記URL先より)

・・・・・・・・・・orz

何せFOMC直前になっても9月利上げするのかしないのか分からんという状況で、FEDとしては「利上げの時期よりもペースを見てくれ」という事なのかもしれませんが、そら短期のファンディングレートに直結するのが政策金利なのですから、直前になれば「次回利上げがあるのか否か」というので毎度毎度話がややこしくなるのは仕方ないですし、ここまで直前になっても何が何だか分からんというのもあまり見た事がないから市場がこうなるのはシャーナイナイですわな。

でまあどう見てもこれってFRBの金融政策正常化プロセスに関するコミュニケーションが訳分からん状態になっているのが不確実性を出して、中央銀行発のボラティリティ絶賛ご提供という図になっているのですけれども、この絶賛ボラ拡大を受けてFRBが正常化プロセスの着手タイミングを日和る、という事になりますと、それによって更に不確実性が高まってボラが更に拡大する余地が出てくるというのがお洒落というか何というか。

まさにアラン・ブラインダー元FRB副議長の言う「自分の尾を追う犬」状態になっている訳でして、もし日和見をするならば一度スクラッチでロジックを再構築した説明をしないとどうしようもない状態になってきているなあ(9月利上げするならスクラッチにしなくてもロジックは回せるとは思う)と思いますに、これは中央銀行の市場との対話という意味で非常に面白い教材を提供しているなあとは思うのであります。


・・・・・・・・とまあそう考えますと、実際には「メジャードペースでの利上げ」を模索しておいた方が市場が落ち着いたのではないかとは思うのですが、アタクシが勝手に想像するに、(1)前回のメジャードペースの利上げは結果としてクレジットバブルの拡大を防げなくて後で多大なツケが回ってきた、というBISビュー成分の入った反省というのと、(2)直近のTaperingトークの際にTaper開始前に金利が盛大にスパイクした反省、というのがあって今回のようなコミュニケーションになっているのかなあとは思っているのですよ。

でまあ(2)の話で言えばTaperingを実際に進めていく所ではそんなに問題が発生していないというのがある訳ですから、やはりある程度の事前予告型正常化策の方が市場の安定化に資するんじゃネーノとは思うのですが、割とそこは頑固に「データディペンデント」を強調するのって背景に(1)的な考えがあって、市場にボラが出るのは致し方なしというか、逆に期待を安定化させ過ぎると、そもそも金利水準が正常化されている訳ではないのだから緩和効果が期せずして出過ぎてしまい、ビハインド気味に進めざるを得ない状況の中で、正常化の進行がビハインドし過ぎることを懸念しているんだろうなあとか妄想しているのですがどうでしょうかねえ。

一応強引にそのアタクシの妄想をベースにしますと、正常化ペースが遅めになる中で期待をあまり安定化させないような政策が延々と実施されるということになるので、そらまあ各市場は毎度毎度振り回されるのではないか、という風に思うのですがさてどうなることやらという所ですな。

なお余談になりますが、日銀の場合どうなっているかと言うと、そもそも執行部ベースでは「基調攻撃」によって全部済ませるというコミュニケーションなにそれ新種のパスタでしたっけ状態になっていますし、QQE導入1年後に大勝利モード(実際は単に消費増税駆け込みで下駄を履いていただけの幻影だったのですが)のときには「マーケットのエコノミストなどが間違えており我々大勝利やウハハハハハ(だいぶ意訳)」とカザフスタンの国際会議で黒田総裁が豪語する位の有様ですので、そもそも論として市場に対する「自分の意見の説明」はあっても「対話」というものは存在しないので、コミュニケーションも蜂の頭も無いという状況。

従って市場の経済物価認識および先行き見通しと、日銀のそれに乖離が拡大していくと更に話がややこしくなり、そこにサプライズ追加施策でも入ろうもんならもっとややこしくなるのですが、もうコミュニケーションでもなんでもないのですな。


○BOE金利据え置きで評決は前回と同じく8-1(メモです)

http://www.bankofengland.co.uk/publications/Pages/news/2015/009.aspx
Bank of England maintains Bank Rate at 0.5% and the size of the Asset Purchase Programme at £375 billion

詳細はこちら
http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/Documents/mpc/pdf/2015/sep.pdf

金利に関しては8−1で、マッカーフィー委員が25bpの引き上げを主張している、という図は同じでございますが詳細版じゃなくて手抜きで最初のURL先の方から引用しますと・・・・・・・・・・

『The Committee set out its most recent detailed assessment of the economic outlook in the August Inflation Report. The aim of returning inflation to the target within two years was thought likely to be achieved conditional upon Bank Rate following the gently rising path implied by the market yields prevailing at the time. Private domestic demand growth was forecast to be robust enough to eliminate the margin of spare capacity over the next year or so, despite the continuing fiscal consolidation and modest global growth.』

『And that, in turn, was expected to result in the increase in domestic costs needed to return inflation to the target in the medium term, as the temporary negative impact on inflation of lower energy, food and import prices waned. In the third year of the projection, inflation was forecast to move slightly above the target as sustained growth led to a margin of excess demand.』

経済の余剰があるという認識は毎度の通りなのですが、物価に対してはあまり警戒モードになっていないように読めると思う。

『The Committee noted in the August Report that the risks to the growth outlook were skewed moderately to the downside, in part reflecting risks to activity in the euro area and China. Developments since then have increased the risks to prospects in China, as well as to other emerging economies. This led to markedly higher volatility in commodity prices and global financial markets.』

一方でダウンサイドリスクに「中国とその他新興国のリスクが8月インフレレポート時点より拡大」という認識を示していて、最初はその金融市場と商品価格に影響の話ですが・・・・・・・・・・

『While these developments have the potential to add to the global headwinds to UK growth and inflation, they must be weighed against the prospects for a continued healthy domestic expansion.』

経済物価見通しに関しても悪影響、という話をしていまして、これは警戒モードかと思わせるのですが、返す刀で「they must be weighed against the prospects for a continued healthy domestic expansion」と来ていてちと楽観じゃネーノという気がせんでもない。

『Domestic momentum is being underpinned by robust real income growth, supportive credit conditions, and elevated business and consumer confidence. The rate of unemployment has fallen by over 2 percentage points since the middle of 2013, although that decline has levelled off more recently.』

『Global developments do not as yet appear sufficient to alter materially the central outlook described in the August Report, but the greater downside risks to the global environment merit close monitoring for any impact on domestic economic activity.』

海外情勢にはclose monitoringという話はしているものの、トーンは「海外問題はあるけど国内が強いのでヘーキヘーキ」というニュアンスの方が強いように(こちらのだけでみると)読めますな。まあここも結構ぶれぶれだったりしますが、米国と違ってそのぶれぶれがそこらじゅうに影響を与える訳ではないのでまあいっかという所なんですかね。

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2015/09/04

○ドラギのおじちゃんのやるやる詐欺シリーズ再開のようで

http://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2015/html/is150903.en.html
Introductory statement to the press conference
Mario Draghi, President of the ECB,
Vitor Constancio, Vice-President of the ECB,
Frankfurt am Main, 3 September 2015

なお前回はこちらです。適宜引用しますよ。
http://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2015/html/is150716.en.html


『Based on our regular economic and monetary analysis, and in line with our forward guidance, the Governing Council decided to keep the key ECB interest rates unchanged.』

『Our asset purchase programme continues to proceed smoothly. Regarding non-standard monetary policy measures, following the announced review of the public sector purchase programme’s issue share limit after the first six months of purchases, the Governing Council decided to increase the issue share limit from the initial limit of 25% to 33%, subject to a case-by-case verification that this would not create a situation whereby the Eurosystem would have blocking minority power, in which case the issue share limit would remain at 25%.』

PSPPによる買入について、場合によっては1銘柄当たり33%までの購入を行う事を可能にしたようですが、基本は25%とするようですな。

『Underlying our monetary policy assessment was a review of recent data, new staff macroeconomic projections and an interim evaluation of recent market fluctuations. The information available indicates a continued though somewhat weaker economic recovery and a slower increase in inflation rates compared with earlier expectations.』

若干弱い経済の状況と、最近の市場の動揺を受けて、物価が戻ってくる見通しおよび目先のインフレ期待が戻ってくる見通しの時期が若干遅れるという経済見通しになりました。と見通し下方修正キタコレ。

『More recently, renewed downside risks have emerged to the outlook for growth and inflation. However, owing to sharp fluctuations in financial and commodity markets, the Governing Council judged it premature to conclude on whether these developments could have a lasting impact on the outlook for prices and on the achievement of a sustainable path of inflation towards our medium-term aim, or whether they should be considered to be mainly transitory.』

とは言いましても、最近拡大している成長および物価に対するダウンサイドリスクにつきましては、金融市場と商品価格の急激な動きによるものであることから、委員会としてはこの影響が継続的なものになるのか、一時的なものになるのかについての判断を下すのは時期尚早と考えています。

ここで前回の会見でのこの部分の説明を確認します(後半部分は今回の会見の後のパラグラフに被ります)。

『All in all, the information that has become available since the Governing Council meeting in early June has been broadly in line with our expectations. Recent developments in financial markets, which partly reflect greater uncertainty, have not changed the Governing Council’s assessment of a broadening of the euro area’s economic recovery and a gradual increase in inflation rates over the coming years. The ECB’s monetary policy stance remains accommodative and market-based inflation expectations have, on balance, stabilised or recovered further since our meeting in early June. The latest information also remains consistent with a continued pass-through of our monetary policy measures to the cost and availability of credit for firms and households. Our measures thereby continue to contribute to economic growth, a reduction in economic slack, and money and credit expansion. The full implementation of all our monetary policy measures will lead to a sustained return of inflation rates towards levels below, but close to, 2% in the medium term, and will underpin the firm anchoring of medium to long-term inflation expectations.』(7月の会見から)

ということで前回対比で警戒モード丸出しになっていますな。

で、今回のやるやる詐欺フレーズはこの次。

『Accordingly, the Governing Council will closely monitor all relevant incoming information. It emphasises its willingness and ability to act, if warranted, by using all the instruments available within its mandate and, in particular, recalls that the asset purchase programme provides sufficient flexibility in terms of adjusting the size, composition and duration of the programme.』

前回はこのような説明をしています。

『Looking ahead, we will continue to closely monitor the situation in financial markets, as well as the potential implications for the monetary policy stance and for the outlook for price stability. If any factors were to lead to an unwarranted tightening of monetary policy, or if the outlook for price stability were to materially change, the Governing Council would respond to such a situation by using all the instruments available within its mandate.』(7月の会見から)

ということで、前回は「必要な時には措置をする」という話をしていますが、今回のように具体的にAPPのサイズや買入銘柄やデュレーションを調整する、と具体的行動の内容を入れて説明していますし、表現も「やるときはやりますよ」的な説明になっているので、まあ普通にこっちの方が追加緩和の意欲を見せていますわなと。


その次のパラグラフ。

『In the meantime, we will fully implement our monthly asset purchases of ユーロ60 billion. These purchases have a favourable impact on the cost and availability of credit for firms and households. They are intended to run until the end of September 2016, or beyond, if necessary, and, in any case, until we see a sustained adjustment in the path of inflation that is consistent with our aim of achieving inflation rates below, but close to, 2% over the medium term.』

こちらの説明は従来の説明通りです。で、以下経済のアセスメントと先行き見通しの話とかになるのですが、長くなるので毎度の如くのインスタント読みで勘弁という事で(汗)。


まあ何ですな、今回はFOMCを前に追加緩和をうっかり実施してしまうのもアレということで、FRBの出方待ちという事だと思うのですが、これ日本もそうなのですけれども、欧州の方もFRBが利上げしてくれないと通貨高になってしんどいでしょうなあと思われる次第で雇用統計の奮闘を願いたいものです。

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2015/09/02

・またさぼっていたECB関連の数値ネタ

すいませんすいません。
http://www.ecb.europa.eu/press/pr/wfs/2015/html/fs150901.en.html
http://www.ecb.europa.eu/press/pr/wfs/2015/html/fs150825.en.html
http://www.ecb.europa.eu/press/pr/wfs/2015/html/fs150818.en.html

9/1残高と前週比増加額
CBPP3 EUR111.1 billion +EUR 1.9 billion -
ABSPP EUR11.1 billion -      -EUR 0.1 billion(償還分)
PSPP EUR289.5 billion +EUR 9.8 billion -

8/21残高と前週比増加額
CBPP3 EUR 109.2 billion +EUR 1.3 billion -EUR 0.2 billion(償還分)
ABSPP EUR 11.2 billion +EUR 0.3 billion
PSPP EUR 279.8 billion +EUR 9.9 billion
(その他SMPとCBPP2で償還あり)

8/14残高と前週比増加額
CBPP3 EUR 108.1 billion +EUR 1.4 billion
ABSPP EUR 11.0 billion +EUR 0.3 billion
PSPP EUR 269.9 billion +EUR 10.2 billion

その前の買入ペース

8/7残高と前週比増加額
CBPP3 EUR 106.6 billion +EUR 2.6 billion -
ABSPP EUR 10.6 billion +EUR 0.9 billion -
PSPP EUR 259.7 billion +EUR 10.8 billion -

7/31残高と前週比増加額
CBPP3 EUR 104.0 billion +EUR 2.3 billion -
ABSPP EUR 9.7 billion +EUR 0.3 billion -
PSPP EUR 248.9 billion +EUR 11.0 billion -

月に60ビリオンの買入なので4週で割ると15という事になりますが、一応この2週間位買入のペースを若干落としている感じですが、そうは言いましても極端にペースが落ちた観ではなくて、まあ順調に買入が進捗している感じですな、うんうん。


○昨日の続きでコンスタンシオ副総裁の講演ネタである

http://www.ecb.europa.eu/press/key/date/2015/html/sp150825.en.html
Assessing the new phase of unconventional monetary policy at the ECB

Panel remarks prepared by Vitor Constancio, Vice-President of the ECB,
at the Annual Congress of the European Economic Association
University of Mannheim, 25 August 2015

昨日の続きで恐縮ですが、『Evaluating the new phase of unconventional monetary policy』という小見出しの所から参ります。


・非伝統的政策の効果についての量的なアセスメントキタコレ!なのだが・・・・・・・・・・・

『In order to correctly assess the effects of our policies, we should use what would have happened had we not adopted these measures as a benchmark for comparison. Of course, this is virtually impossible to do since there are no sufficiently reliable and complete models to construct the counterfactual world. We can only analyse how the variables related to the transmission channels or the end results have evolved since we started the new policy. This is what I will do below.』

ということで図表が登場するのですが、最初の図表がいきなり「銀行貸し出しチャネル」となっているのが味わいがある訳でして(図表を貼るスキルは無いので上記URL先を見てちょ)・・・・・・・・・


・銀行貸し出しチャネルを最初に持ってきて説明とな

『Figure 3 shows the evolution of lending rates in the euro area. It shows that the sequence of interest rate cuts implemented by the Governing Council between mid-2012 and mid-2014 was not transmitted to the effective borrowing costs faced by firms. By June 2014 we had cut the main refinancing operation (MRO) rate by 95 basis points, bringing it to 0.05%, down from 1% in June 2012. However, the decline in lending rates for loans in most countries was much smaller, with the median lending rate applied to small-sized loans in the median country having declined by not more than 30 basis points.』

『Since June 2014 the transmission of policy rates to lending rates has improved considerably, with declines in lending rates becoming more pronounced as well as more widely distributed across euro area countries.』

ということで、HFC(非金融部門や家計)向けローンの金利推移と、クレジットイージング政策を実施した後のローン金利変化に関する図表があって、上記の説明のように最初のうちは金利低下が実際の貸出金利に中々跳ねなかったけれども非伝統的政策を実施したら金利低下したので効果かくにん!よかった!!という事のようです。


次が図表4で「クレジットスタンダードの緩和と借入需要」という図表。

『Our quarterly bank lending survey confirms the improvements in broader credit conditions since the introduction of our new non-standard measures. The survey, addressed to the senior loan officers of a representative sample of euro area banks, provides information on financing conditions in euro area credit markets and on banks’ lending policies. The left-hand chart in Figure 4 shows that banks have consistently eased their credit standards for loans to non-financial corporations over the past year.』

『The easing of credit standards stems, notably, from the lower cost of funds and balance sheet constraints, as well as from greater competition among banks. Both developments were clearly objectives of our measures, in particular of the TLTROs. The right-hand chart in Figure 4 shows net credit demand conditions and their contributing factors. Easier access to credit has been coupled with a consistent increase in firms’ demand for loans. The general level of interest rates, according to the survey respondents, is contributing most to the recovery in loan demand.』

銀行のバランスシート改善と貸出金利の低下によってクレジットスタンダードが緩和され、資金需要も出てきましたので効果かくにん!よかった!!という事のようですな。


・・・・・・・・という説明しているのですが、それって非伝統的政策の効果なのかというのはこれまた微妙な話で、単純に低金利政策を長期化するなかでバランスシート調整が進捗したから低金利政策の効果が時間的ラグを持って効いてきているだけで、効果の本質は実は非伝統的政策ではなくて低金利政策の長期化効果(例えば時間軸もどきとか)の方だったりするんじゃないかというツッコミをするとどういう答えが返ってくるのかは謎ではありますな。



・資産効果はまあ分かりやすいですからね


次が図表5で「株価と債券金利の推移」という思いっきり直球な図表。

『As I have already mentioned, an important transmission channel for asset purchases relates to the fact that different assets are imperfect substitutes. Consequently, interventions by the central bank that affect the supply of various assets available to private investors influence the prices of many other assets, including investment grade bonds, equities, real estate and foreign assets, with consequences for the exchange rate. Figure 5 shows the increase in equity and bond prices (the latter illustrated by investment grade corporate bond yields).』

まあこれはそうでしょとしか申し上げようがない。



・インフレ期待とインフレへの効果


次が図表6で「インフレ期待」である。

『The ongoing deterioration of long-term inflation expectations was a major factor in the extension of our purchase programme in January this year. Figure 6 shows the evolution of these expectations over the past decade and since 2012. Euro area longer-term inflation expectations (both market-based and, to a lesser extent, survey-based) had been falling since early 2013, reaching an all-time low by early 2015.』

『Expectations of inflation five years ahead, as expressed in the ECB Survey of Professional Forecasters, fell from 1.98% in the first quarter of 2013 to 1.77% in the first quarter of 2015. The five-year inflation-linked swap rate five years ahead fell from 2.4% to 1.5% over the same period. Since January 2015 this declining trend has been reversed.』

ってドヤ顔(かどうか知らんが)で説明しているのですが、貼ってあるグラフを見ると直近でどう見てもインフレ期待が落ちているんですががががが。

『Both market-based and survey-based measures of longer-term inflation expectations have recovered from their lows. While broadly similar dynamics in market-based measures of longer-term inflation expectations have been observed in other countries, the decline in the euro area somewhat preceded them and was more prolonged.』

ただし他国(USとUK)と比べるとインフレ期待の低下基調が長かったという評価をしているのは、こらまあインフレ期待を上げないといけませんというメッセージを出している訳で、そういう意味ではハト的なお話をしらっと入れていますなという所です。

でもこのインフレ期待に関しては他のファクター色々とあるだろという話であって、「非伝統的政策」が効いているのかというとそこは怪しいんですけどね。


『I will now turn briefly to macro developments, both in terms of inflation and economic growth.』

で、図表7が直球で物価の推移ですが・・・・・・・・・・

『Since last April headline inflation has turned positive but remains very low, affected by the renewed decline in oil prices. Core inflation, excluding food and energy, continues however to firm, reflecting the ongoing economic recovery which is evolving in accordance with our baseline scenario.』

HICPのヘッドラインインフレは弱い(直近+0.24)ですが食糧エネ抜きの基調は確り(直近+0.95)ですとか世界共通の言い訳キタコレ。

『The latest round of our staff macroeconomic projections indicates that by 2017 inflation will be below, but close to, 2% and that GDP growth will also be hovering around 1.9%.』

はいはい見通し見通し。


・非伝統的政策の弊害に関する説明部分が結構長い

『We do not deny that there are risks and shortcomings associated with the type of policies that we have been forced to adopt in view of our mandate to safeguard price stability in a symmetric way. Very briefly I will refer to several of these:』

ということで非伝統的政策の弊害に関する論点にお答えするというコーナー。

『Medium-term inflation risks are very low and central banks have enough instruments to deal with them.』

中期的なインフレへのリスクは低いし対処は可能ですとな。

『The exit strategy may involve the possibility of losses for the central bank. However, as Ben Bernanke has said, this is a possibility that, measured against the gains from a stronger economy and the previous contributions to government budgets, is “not a true social economic risk”. [4]』

出口における財政負担問題に関しては「経済が良くなっていればそっちのメリットの方が大きいから宜しい」という話をしておりますな。まあこれはAPPの規模やバランスシートの保有するモノ次第の面があって、日銀だったりするとこれがまた結構なリスクになる筈なのだが、ここでも引き合いに出されるバーナンキがこう言ってるから大丈夫ヘーキヘーキで済ませようとしているのが今の日銀執行部(とたぶんジンバブエ原田審議委員)なのがオソロシスなのですけど、と話が逸れましてすいません。

『Financial stability risks, stemming from search for yield and higher leverage, are real, but monetary policy cannot be inhibited in the pursuit of its priority goals. Those risks must be addressed by macroprudential policies of a regulatory and administrative nature, and the policy toolkit available to central banks in this respect should be enlarged for that purpose.』

『Potential laxity of credit risk management by financial institutions in a climate of low rates. Supervision, appropriate risk management governance and the regulation of provisions should deal with this problem.』

こらまたバイトマン辺りが目を剥いて湯気を発しそうな事を言ってますなという所で、まあこれはコンスタンシオなので仕様なのですがいわゆるBISビューバリバリの話はしないでマクプルで対処する方面でファイナンシャルスタビリティの対応はヘーキヘーキという説明ですな。まあここはECBでも見解が割れるでしょうなあ。

でまあこの後も説明があってこの次の説明が結構長い。

『Wealth effects and increased inequality. The stronger economy and lower unemployment that result from the LSAPs mitigate but do not eliminate this possible side effect.』

『Sometimes the criticism directed at our policies implicitly attributes responsibility for the low interest-rate environment to central bank policies. But the truth is precisely the opposite: central banks are simply reacting to and trying to correct a situation that they did not create. 』

『Indeed, medium and long-term market interest rates are mostly influenced by investors and market players, as the recent so-called “bund tantrum” illustrates. More importantly though, it should be pointed out that for a few decades now we have been witnessing a sort of secular trend towards lower real interest rates. This trend is related to secular stagnation in advanced economies, resulting from a continuous deceleration of total productivity growth and an increase in planned savings accompanied by less buoyant investment prospects. Monetary policy short-term rates are low because of those developments, not the other way around.』

『At the same time, our monetary policy has to be accommodative precisely in order to normalise inflation and growth rates, thereby opening up the possibility of higher interest rates. Furthermore, in the present short-term conditions, with no fiscal room for manoeuvre, it is monetary policy that has the capacity to create the hope that this normalisation will protect savers in the future and improve net margins for banks.』

2番目以降は同じパラグラフなのですが、長いので分割しちゃいましたけれども、この辺からの説明って「低金利政策が長期化してケシカラン」系の批判にお答えしているのと同じ話で、非伝統的政策の弊害がどうのこうのというのに限定されないでしょというお話になります。


でまあこの後に株価と不動産価格とクレジット市場のバリュエーションに関する説明があるのですが、その最初に『Regarding the risks associated with the search for yield and rich asset valuations, it is important to highlight that there are currently no signs of a general situation of asset overvaluation in the euro area.』という事でお察しの内容ですから引用は割愛します。


・でまあまとめ

最後が『Conclusions』である。

『Our new non-standard measures have successfully improved financial and credit conditions in the euro area and contributed to supporting the normalisation of price stability, as well as the ongoing economic recovery. I am confident that full implementation of the private and public sector asset purchase programmes, as announced, will lead to a sustained return of inflation rates towards levels consistent with our definition of price stability, underpinning the firm anchoring of medium to long-term inflation expectations. As always, the Governing Council stands ready to use all the instruments available within its mandate to respond to any material change to the outlook for price stability.』

まああんまり変わったことを言っている訳でもないのですが、報道ベースでは必要なら措置を取る的なヘッドラインが出ていたように記憶しているのだが、「政策は効果を出している」「弊害も特段顕在化していない」「インフレ期待にも効果は出ているがまだやや弱め」という話をしている上に、ファイナンシャルスタビリティに関するBISビュー的な話を全然していないということで、まあハト的という解釈になるんでしょうなあと思います。

でもって非伝統的金融政策の定量効果については何ちゅうかそれは非伝統的なのの効果なのか低金利政策の累積的な効果が後になって出てきたのかというのは実に怪しいので、その辺は非伝統的政策の仕様ということで、効果とかの話が盛大に我田引水になるんですよねえという所で。

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2015/09/01

○コンスタンシオECB副総裁のQEに関するお話から(多分その1)

コンスタンシオのおっちゃん今朝も『Understanding Inflation Dynamics and Monetary Policy』ってお題の講演をしているのですが、
http://www.ecb.europa.eu/press/key/date/2015/html/sp150829.en.html

今朝は一歩出遅れてこちらから少々。
http://www.ecb.europa.eu/press/key/date/2015/html/sp150825.en.html
Assessing the new phase of unconventional monetary policy at the ECB

Panel remarks prepared by Vitor Constancio, Vice-President of the ECB,
at the Annual Congress of the European Economic Association
University of Mannheim, 25 August 2015


・大規模APPは非伝統的政策のなかでより積極的とな

『My plan today is to present some key features of the monetary policy measures recently implemented by the ECB. As you all know, in January this year the ECB launched the most recent addition to its suite of tools - the public sector purchase programme (PSPP), popularly referred to as quantitative easing. Together with a programme of targeted liquidity provision and a programme of private sector asset purchases, the PSPP marked a new phase of the ECB’s unconventional monetary policy.』

ということで・・・・・・・・・・

『Previous non-standard measures were mainly aimed at redressing impairments in the monetary policy transmission mechanism and fostering a regular pass-through of the monetary policy stance. Their implications for the ECB’s balance sheet were accommodated in a merely passive way to satisfy the liquidity demand created by banks.』

『In contrast, with the new measures implemented since June 2014, the Governing Council is more actively steering the size of the ECB’s balance sheet towards much higher levels in order to avoid the risks of too prolonged a period of low inflation in a situation where policy rates have reached their effective lower bound.』

1月以前の各施策は金融政策のトランスミッションメカニズムをよりワークさせることを主眼に置いていたが、大規模APPによるバランスシート拡大政策は低インフレの長期化によるリスクに対応したものです、とわけておりますな。


・民間部門のクレジットコンディションと中長期的なインフレ期待に注目とな

次が『General considerations underlying the new phase of unconventional monetary policy』という小見出し。

『The launch of the new phase of non-standard measures in June 2014 must be viewed in the context of the decline in inflation rates since the second half of 2013, which was accompanied by persistently fragile euro area growth prospects, even after the sovereign debt crisis abated over the course of 2012.』

非伝統的政策の最初の導入は2013年半ばのインフレ低下以降のコンテクストでみるとな。

『The economy was still in recession for most of 2013 and annual GDP growth figures only became positive in late 2013, leaving significant economic slack. A weak recovery took hold over the course of 2014 with growth rates around and below 1%, but the outlook deteriorated again during the autumn, with inflation turning negative later that year. The 2015 GDP growth forecasts for the euro area in the ECB staff macroeconomic projections had declined from 1.7% in June to 1% by December. At the same time, and in contrast to previous developments, weak growth was accompanied by a prolonged period of declining inflation, which went from 3% at the end of 2011 to -0.2% in December 2014.』

と、ここで物価動向とかGDPとかの話をしていますが・・・・・・・・

『Credit supply conditions in the euro area remained tight, despite signs of improvement, as indicated by the responses to bank lending surveys. These developments were particularly worrying because they were accompanied by a decline in longer-term inflation expectations.』

問題意識としてとらえているのは「クレジットサプライ」のコンディションと、「長期のインフレ期待の動向(低下)」ということになっているので、まあそういう意味でECBが追加緩和をするという話になりますと、この2点に対する問題意識、政策波及ルートの説明を見ておけばヨロシという事になりますな。


・政策の効果についての部分に味わいがある

でまあ上記引用部の続きは「という訳でこのような施策を行いました」というTLTROとかカバードボンド買入とかPSPPとかの説明があるのですがそこはパスしまして。

『The effects of the measures have to be assessed jointly and taking into consideration that some of the measures started to produce results before the decisions were actually taken. This is particularly true of the PSPP, which was adopted in January; a survey of market participants conducted in October 2014 showed that over 50% were already anticipating that such a programme would shortly be adopted.』

『The distinguishing feature of the new phase of our unconventional monetary policy is the switch to a more active steering of the ECB’s balance sheet.』

つーことで図表1を貼れないのですが、バランスシートが大きくなりましたという話をしているのですが、日本のバランスシートの対GDP比を見ると頭がクラクラしてくるのでおヌヌメ。

『It is important to emphasise the nature of this new phase. Our intention is not to expand our monetary base in the expectation that, through the workings of a stable multiplier, this will result in an increase in monetary aggregates, which will in turn cause an upward movement in inflation by whatever means conceived by the traditional quantitative approach.』

MBさえ出せばという理論を元にしておられた置物MB直線一気リフレ理論とかマッカラムルールとかを唱えておられるリフレ派何とかストの皆様に小一時間ほど所感をお伺いしたい。

『Our main reason for adopting a large-scale asset purchase programme was to harness several new channels for the transmission of an expansionary monetary policy.』

LSAPのメインの理由は拡張的な金融政策の新たなトランスミッションメカニズムを利用することであるとな。

『The expansion in the monetary base and total balance sheet is rather a consequence of these new types of monetary stimulus.』

「rather a consequence」って「MB数値」を「目標」にしているどこぞの中央銀行涙目。

『Recent experience shows abundantly that those traditional relationships are not working well in the new realities of the financial system (see Figure 2).』

図2が貼れないのですが(涙)。

『The first channel through which these new unconventional monetary policy measures are expected to stimulate aggregate demand is by signalling the ECB’s commitment to maintain an accommodative monetary policy stance. [1] The TLTROs are a particularly clear example of this signalling channel. With their pre-specified interest rate and their maturity extending over many years, these operations provided information on the likely path of future interest rates. In the case of asset purchase programmes, the signalling channel operates more indirectly, through the expansion of the Eurosystem’s balance sheet.』

緩和的な金融政策スタンスに対するコミットメントによって需要を喚起する、という話がメインで、その中でTLTROについては緩和的な金融環境を作るというコミットに直接つながるものであり、APPに関してはバランスシートの拡大によって間接的なコミットメント効果のようなものがある、というお話。途中の「With their pre-specified interest rate and their maturity extending over many years, these operations provided information on the likely path of future interest rates.」はホンマカイナという気はするけど。


『The second channel results in part from the first, and relates to the direct impact on medium-term inflation expectations that a LSAP programme implies. It is expected that when forming expectations about future inflation, market players factor in the effect of this non-standard policy measure.』

LSAPによって中長期のインフレ期待を引き上げる、というのもまあどこもLSAP突っ込むときにはそういう説明になっているからそんなもんという所ですが、じゃあLSAPってとっとと削減しないとインフレ期待が上振れしませんかねえという時期になるととぼけるのが中央銀行の仕様です。


『Non-standard measures can also stimulate activity through a third channel, specifically by lowering the effective cost and availability of credit to the non-financial private sector. Again, the TLTRO programme does this, providing explicit incentives for banks to extend their credit supply. The effectiveness of this programme was reinforced by the conclusion of our comprehensive assessment of the quality of banks’ balance sheets in autumn 2014, which provided strong incentives for banks to speed up the repair of their balance sheets.』

3番目のチャネルはクレジットのコストやアベイラビリティーを緩和することによって民間の借入を容易にしますという話をしているのだが、最後の「The effectiveness of this programme was reinforced by the conclusion of our comprehensive assessment of the quality of banks’ balance sheets in autumn 2014, which provided strong incentives for banks to speed up the repair of their balance sheets.」というのはホンマカイナという気がする(規制強化方向なのだから逆じゃネーノ)。

『The fourth channel of transmission of the new unconventional monetary policy, which is specific to the asset purchase programmes, operates through portfolio rebalancing. By means of its purchase programmes, the ECB exchanges longer-term and relatively less liquid assets for very short-term and highly liquid central bank money. This mitigates liquidity and duration risks in private sector portfolios and, given liquidity and Value at Risk constraints, reduces the required compensation for holding risky and illiquid assets. [2] As a result, the programmes encourage portfolio rebalancing and support asset prices. The ensuing improvement in the balance sheet position of investors and banks eases leverage constraints and allows banks to extend more credit at lower costs to the private sector. [3] Better financing conditions improve growth prospects, increase profitability and mitigate default probabilities in the non-financial sector. These positive feedback effects further improve the condition of the balance sheets of investors and banks, and increase their willingness to extend new credit in a self-reinforcing positive spiral.』

ウダウダと書いてありますが、要するにECBが相対的にハイクオリティでデュレーションのある資産を民間から買う事によって、ポートフォリオリバランスを起こしますという話で、まあ毎度お馴染みの理屈なのだが、これについては民間に対するポジション等の規制要因の方が強い話で、片方でバーゼル3ヒャッハーとかやっている中でこれをやられるとポートフォリオリバランスではなくてハイクオリティな資産の価格が無駄に上昇(国債金利の無駄な低下など)することになるように思える訳で、ポートフォリオリバランスというのはあくまでもおまけ程度に考えて欲しい(ポートフォリオリバランス狙いで買入したらおそらく費用対効果が合わない)ところです。


というのが政策の効果という説明でして、この次に『Evaluating the new phase of unconventional monetary policy』と定量コーナーが登場するのですが時間の都合上ここで勘弁ということで(汗)。

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2015/08/31

○フィッシャー副議長のジャクソンホール講演はやる気はありそうだが腰が定まっていないというか何というか

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/fischer20150829a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/fischer20150829a.pdf
Vice Chairman Stanley Fischer
At the Federal Reserve Bank of Kansas City Economic Symposium, Jackson Hole, Wyoming
August 29, 2015
U.S. Inflation Developments

はいはいジャクソンホールジャクソンホール(調布ではありません^^)。

『I will focus my remarks today on forces--domestic and international--that have been holding down inflation in the United States,1 and some of the consequences of recent--primarily international--developments.

ということで何でインフレが弱めで推移していますねんという説明と、金融政策運営に関する説明のパートに分かれます。


・インフレに関しては「現在効いている一時的ファクター」の影響の考察がありますが・・・・・・・・

『Although the economy has continued to recover and the labor market is approaching our maximum employment objective, inflation has been persistently below 2 percent. That has been especially true recently, as the drop in oil prices over the past year, on the order of about 60 percent, has led directly to lower inflation as it feeds through to lower prices of gasoline and other energy items.』

と、インフレの話になりますが原油(とエネ価格)のせい攻撃。

『As a result, 12-month changes in the overall personal consumption expenditure (PCE) price index have recently been only a little above zero (chart 1).』

チャートはPDFの後ろにもにあるから見てちょ。これでもいけますが。
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/fischer20150829a1.jpg

『The past year's energy price declines ought to be largely a one-off event (chart 2). That is, while futures markets suggest that the level of oil prices is expected to remain well below levels seen last summer, markets do not expect oil prices to fall further, so their influence in holding down inflation should be temporary. But measures of core inflation, which are intended to help us look through such transitory price movements, have also been relatively low (return to chart 1). The PCE index excluding food and energy is up 1.2 percent over the past year. The Dallas Fed's trimmed mean measure of the PCE price index is higher, at 1.6 percent, but still somewhat below our 2 percent objective. Moreover, these measures of core inflation have been persistently below 2 percent throughout the economic recovery.』

原油価格の下落は全体的に見ればワンオフイベントと言いつつ出ているチャート2がやや怪しげですが、それはともかくとして原油価格低下の影響がコア項目にも拡大しているとな。
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/fischer20150829a2.jpg

『That said, as with total inflation, core inflation can be somewhat variable, especially at frequencies higher than 12-month changes. Moreover, note that core inflation does not entirely "exclude" food and energy, because changes in energy prices affect firms' costs and so can pass into prices of non-energy items.』

原油価格などの影響がコアにパススルーする経路がありますよとあります。で、以下エネルギー価格の影響についての説明が少々続くのですが、結論は「時間が少々かかるが2%に行きます」というお話にはなっているのでした。

『Of course, ongoing economic slack is one reason core inflation has been low. Although the economy has made great progress, we started seven years ago from an unemployment rate of 10 percent, which guaranteed a lengthy period of high unemployment. Even so, with inflation expectations apparently stable, we would have expected the gradual reduction of slack to be associated with less downward price pressure.』

『All else equal, we might therefore have expected both headline and core inflation to be moving up more noticeably toward our 2 percent objective. Yet, we have seen no clear evidence of core inflation moving higher over the past few years. This fact helps drive home an important point: While much evidence points to at least some ongoing role for slack in helping to explain movements in inflation, this influence is typically estimated to be modest in magnitude, and can easily be masked by other factors.2 』

その理由は前半にあるように「経済のスラックが解消に向かっているのでいずれ上昇しますよ」という話で、経済のスラックがアホのようにあった時だってインフレ期待は安定していたので、スラックが徐々に解消していくなかで物価下落圧力が弱くなっていたという事実があるでよ、とまあ見通し自体がそんなに弱い訳ではないものの、トーンとしてそんなに進軍ラッパでもないというどっちつかずなトーンと見ましたがどうでしょうかね。


・ドル高の影響

『In the first instance, as already noted, core inflation can to some extent be influenced by oil prices. However, a larger effect comes from changes in the exchange value of the dollar, and the rise in the dollar over the past year is an important reason inflation has remained low (chart 4).』

ドル高キタコレ。

『A higher value of the dollar passes through to lower import prices, which hold down U.S. inflation both because imports make up part of final consumption, and because lower prices for imported components hold down business costs more generally. In addition, a rise in the dollar restrains the growth of aggregate demand and overall economic activity, and so has some effect on inflation through that more indirect channel.3 』

ドル高は需要や活動の抑制要因にもなるのでそっちでも効きますと。

『To get a sense of the timing and magnitude of these exchange rate effects, chart 5 shows dynamic simulations of a 10 percent real dollar appreciation, based on one of the models we maintain at the Federal Reserve.4 The estimated pass-through from import prices to consumer price inflation occurs relatively quickly, with effects becoming evident within a quarter and the bulk of the overall effect occurring within one year. By contrast, the portion of the dollar effects on inflation that work through the channel of overall economic activity occurs with considerable lags. In the model shown here, the appreciation has its largest effect on gross domestic product (GDP) growth in the second year after the shock.』

チャート5というのがあるが、10%ドル安の影響は短期的に価格ショック、中期的には需要の下押し効果とな。
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/fischer20150829a5.jpg

『Thus, it is plausible to think that the rise in the dollar over the past year would restrain growth of real GDP through 2016 and perhaps into 2017 as well. The rise in the dollar since last summer, of about 17 percent in nominal terms, with its associated declines in non-oil import prices, could plausibly be holding down core inflation quite noticeably this year.』

なので影響は目先の物価下落と2016年辺りの実質GDPのマイナスに出る見込みとな。


・コモ価格の影響

『Commodity prices other than oil are also of relevance for inflation in the United States. Prices of metals and other industrial commodities, and agricultural products, are affected to a considerable extent by developments outside the United States, and the softness we've seen in these commodity prices, has in part reflected a slowing of demand from China and elsewhere. These prices likely have also been a factor in holding down inflation in the United States.』

はあそうですなという感じで。


・インフレ期待は安定して推移するでしょう(キリッ)とな

『The dynamics with which all these factors affect inflation depend crucially on the behavior of inflation expectations. One striking feature of the economic environment is that longer-term inflation expectations in the United States appear to have remained generally stable since the late 1990s (chart 6). The source of that stability is open to debate, but the fact that the Fed has kept inflation relatively low and stable for three decades must be an important part of the explanation.』

とはいえインフレ期待は安定して推移しています(キリッ)。

『Expectations that are not stable, but instead follow actual inflation up or down, would allow inflation to drift persistently. In the recent period, movements in inflation have tended to be transitory. For example, one might have expected the Great Recession to generate a downward wage-price spiral, but this did not occur. Thus, the stability of inflation expectations has prevented inflation from falling further below our objective than occurred, and it has enabled the Federal Open Market Committee to look through some upward inflation shocks without compromising price stability.5』

大恐慌のような賃金と物価の下落スパイラルなど起きない中でインフレ期待は今後も安定するでしょう。ということで、結局途中では微妙にぬえっぽい発言をしているのですが結論は物価は安定して2%を目指すという話。


・といいつつ一応ヘッジクローズが入っている

『We should however be cautious in our assessment that inflation expectations are remaining stable. One reason is that measures of inflation compensation in the market for Treasury securities have moved down somewhat since last summer (chart 7). But these movements can be hard to interpret, as at times they may reflect factors other than inflation expectations, such as changes in demand for the unparalleled liquidity of nominal Treasury securities.』

市場のインフレ期待の変化には注意はしてますよ、でも違う理由でBEI低下してねえか?だそうです。


・だんだん金融政策ネタになってくる

この後ステートメントの金融政策ガイダンス文言を出してきまして以下説明が始まる。

『Can the Committee be "reasonably confident that inflation will move back to its 2 percent objective over the medium term"? As I have discussed, given the apparent stability of inflation expectations, there is good reason to believe that inflation will move higher as the forces holding down inflation dissipate further.』

2%行くと信じるには「there is good reason」とな。

『While some effects of the rise in the dollar may be spread over time, some of the effects on inflation are likely already starting to fade. The same is true for last year's sharp fall in oil prices, though the further declines we have seen this summer have yet to fully show through to the consumer level.』

はいはい一時的一時的。

『And slack in the labor market has continued to diminish, so the downward pressure on inflation from that channel should be diminishing as well.』

スラックも改善しているので物価は上昇していきます(キリッ)とな。で、SEPの話までしていますがそこはパスして。

『Reflecting all these factors, the Committee has indicated in its post-meeting statements that it expects inflation to return to 2 percent. With regard to our degree of confidence in this expectation, we will need to consider all the available information and assess its implications for the economic outlook before coming to a judgment.』

でもまだこれからの指標をみて判断するとかどんだけチキンなんですかとは思う。


・some further improvementに何が必要なのか???

『In addition, the July announcement set a condition of requiring "some further improvement in the labor market." From May through July, non-farm payroll employment gains have averaged 235,000 per month. We now await the results of the August employment survey, which are due to be published on September 4.』

今週末の雇用統計を見たい、だそうですが・・・・・・・・・・・・・

『Of course, the FOMC's monetary policy decision is not a mechanical one, based purely on the set of numbers reported in the payroll survey and in our judgment on the degree of confidence members of the committee have about future inflation.』

でも他の指標も見ますとかもう政策反応関数が訳分からんというか、指標指標言い過ぎなんですよね。FRBの場合は「総合判断」を前面にだしているのだからあまり指標指標言い過ぎない方が良いと思うのですが、まあそれだけシナリオの確信度的に少々ビビッているんでしょうかねえとも思われてしまいますな。

なお特定指標に対する達成期間を前面に打ち出したどこぞの中央銀行がその特定指標や特定の期間をせっせと誤魔化しにかかっているのも対照的で実に味わいがあるというような話をしてはいけません(^^)。

『We are interested also in aspects of the labor market beyond the simple U-3 measure of unemployment, including for example the rates of unemployment of older workers and of those working part-time for economic reasons; we are interested also in the participation rate. And in the case of the inflation rate we look beyond the rate of increase of PCE prices and define the concept of the core rate of inflation.』

という話をしているのですが、結局の所「総合判断」が経済の基調などの判断というよりは「指標を全部みて総合的に分析」という形になっていて、それはビハインド・ザ・カーブというのですがと小一時間。


『While thinking of different aspects of unemployment, we are concerned mainly with trying to find the right measure of the difficulties caused to current and potential participants in the labor force by their unemployment. In the case of the core rate of inflation, we are mainly looking for a good indicator of future inflation, and for better indicators than we have at present.』

なおも指標の判断のお話っぽくなっていますな。



・海外経済の影響に言及する部分がありまして

『In making our monetary policy decisions, we are interested more in where the U.S. economy is heading than in knowing whence it has come. That is why we need to consider the overall state of the U.S. economy as well as the influence of foreign economies on the U.S. economy as we reach our judgment on whether and how to change monetary policy.』

海外経済の影響とな。

『That is why we follow economic developments in the rest of the world as well as the United States in reaching our interest rate decisions. At this moment, we are following developments in the Chinese economy and their actual and potential effects on other economies even more closely than usual.』

で、ここで中国経済の状況に従来よりも注視するという台詞が登場。


・正常化に慎重で云々の部分ですけど

『The Fed has, appropriately, responded to the weak economy and low inflation in recent years by taking a highly accommodative policy stance. By committing to foster the movement of inflation toward our 2 percent objective, we are enhancing the credibility of monetary policy and supporting the continued stability of inflation expectations. To do what monetary policy can do towards meeting our goals of maximum employment and price stability, and to ensure that these goals will continue to be met as we move ahead, we will most likely need to proceed cautiously in normalizing the stance of monetary policy.』

『For the purpose of meeting our goals, the entire path of interest rates matters more than the particular timing of the first increase.』

ということで、正常化に対して慎重に臨むというのがヘッドラインにあった気がしますが、この文脈から考えますと初回利上げを慎重に行うというのではなく、その後の利上げペースの話をしているように見えますので、ここのヘッドラインにつられるとヘッドライン詐欺に引っかかる可能性がありそうですので念のため。

つまり・・・・・・・

『With inflation low, we can probably remove accommodation at a gradual pace. Yet, because monetary policy influences real activity with a substantial lag, we should not wait until inflation is back to 2 percent to begin tightening. Should we judge at some point in time that the economy is threatening to overheat, we will have to move appropriately rapidly to deal with that threat. The same is true should the economy unexpectedly weaken.』

とその次にありますように、金融政策の効果にはラグがあるから2%に物価が達しなくても正常化は着手しますとゆうておりまして(別に今初めて出た話ではないので念のため)、初回利上げを慎重に行う、という話ではないという解釈をする方が正しいと思いますよ。



・海外への影響に言及するとな

最後の部分になります。

『Finally, while I have been talking today about some international influences on economic conditions in the United States, I am well aware that, when the Federal Reserve tightens policy, this affects other economies.』

だいたいモンロー主義ちっくな人がそろっている(という印象の)メリケン金融当局の皆様にはお珍しいがフィッシャーさんはイスラエル中銀総裁やってましたな。

『The Fed's statutory objectives are defined in terms of economic goals for the economy of the United States, but I believe that by meeting those objectives, and so maintaining a stable and strong macroeconomic environment at home, we will be best serving the global economy as well.6』

なお脚注にありますが以前もそんな話をしていたりしますな(汗)。

『6. For more discussion on this theme, see Stanley Fischer (2014), "The Federal Reserve and the Global Economy," speech delivered at the 2014 Annual Meetings of the International Monetary Fund and the World Bank Group, Washington, October 11.』

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2015/08/28

○これは中銀の胆力を問われる展開(という雑談)

ほほう。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NTQHLV6JIJUS01.html
中国、株買い支え介入再開―人民元支援では米国債売り−関係者
2015/08/28 01:58 JST

まあ米国債売りの方はただの為替平衡操作なのですけれども、株式買い支え再開(か?)というのが中々こう味わいが深いお話で、人民元のフロート化に向けた一歩です(キリッ)の為替ペッグの緩和をした時は金融市場の自由化に向けた動きが始まったかと思った訳ですが、株価が下落して上海総合指数で年初からの上昇を全部ふっ飛ばしてすっかりビビッてしまい株式買い支えキタコレというお話で、自由化をしたいのか統制ガチガチにしたいのかの腰が定まりませんなあという展開なので、短期的には結構なお話ですが中長期的に見て何なんだこれはとしか申し上げようがない。


でもって米国
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NTQVFKSYF01T01.html
米GDP:4−6月は3.7%増に上方修正−投資など上向く
2015/08/28 00:04 JST

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NTR9J7SYF01T01.html
米国債:中期債が3日続落−GDPが経済の力強さ示す
2015/08/28 04:38 JST

米国もダドリーが微妙に腰の据わらない会見をしていたりということで、すっかりビビッてるよヘイヘイヘイ状態になっているように市場に取られても文句の言えない展開になっている訳でして、まあそうなって来ますと市場としては「なんだ下がったらプットが出るじゃん」という事で政策プットヒャッハーとなってまたまたリスクオンという名前のヒャッハー相場アゲインとなる訳でございまして、株は戻るわ原油は上がるわと中々の展開になっておりますようで。

でまあこうなると益々9月利上げの話がややこしくなる訳で、市場が落ち着いたから安心して9月利上げとか言い出しますと先日のビビリは何だったのかという話になりますし、とは言え経済で強いデータ(ゆうてGDPは昔のデータではありますが)がホイホイと出てくると9月利上げを先送りするのを合理的に説明するのが難しい(市場に振り回されたと正直に言った日には政策プットヒャッハー相場に火がついてしまうので益々先で苦労するだけ)ということで、判断どうしますねんというのはイエレンさんの胆力がどの程度あるのかというのにかかっている気がします、というか胆力の問われる展開ではありますな。

なお一番穏便に済むのは雇用統計などの数値が悪いので出てきて「回復ペースが鈍化しているので正常化の着手は急がなくて良い」という説明がスッキリと出来るパターンですが、ここから指標が強めに出ると利上げするにしてもしないにしても説明の時に整合性を問われると苦労しますな。


http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NTPYO86K50XY01.html
カンザスシティー連銀総裁:市場変動の影響判断は時期尚早
2015/08/27 19:30 JST

『(ブルームバーグ):米カンザスシティー連銀のジョージ総裁は、市場でのボラティリティ(変動性)の高まりが米経済に影響を及ぼすかどうか判断するには時期尚早だと指摘した。また、連邦公開市場委員会(FOMC)はいずれの会合でも利上げ開始を決定することができるとの認識を示した。』(上記URLより)

ちなみにこんなのありますが、カンサスシティ連銀というのは伝統的に(?)タカ派総裁が連発するのが仕様でして、ジョージおばちゃんは前任よりはややマイルドではあるのですが、芸風としてタカ派となっておりますので、まあいつものタカ芸が出たという程度の反応しかしていないかと。

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2015/08/27

お、おぅ・・・・・・・・・・

http://jp.reuters.com/article/2015/08/26/idJPL4N11117E20150826
2015年 08月 26日 10:36 JST
中国当局、インサイダー容疑などで証券会社従業員ら聴取

『[上海 26日 ロイター] - 中国当局は、株式取引に関する規則違反や情報改ざんの疑いで国内の証券会社などを捜査している。株価が急落するなか、市場の取り締まりを強化する取り組みの一環。

新華社が25日報じたところによると、警察当局は証券取引法違反の容疑で、中国の証券最大手、中信証券(CITICS) の従業員8人の取り調べを行っている。

中国証券監督管理委員会(CSRC)の従業員1人と元従業員1人も、インサイダー取引や公文書偽造などの疑いが持たれているほか、ジャーナリストらも証券・先物取引に関するうその情報をでっち上げ、流したとみられている。』(上記URLより)

いやまあ報道の通りなら別に普通の「公正な市場に向けての取り組み」ではあるのですが、タイミングがタイミングなだけにガチガチに統制するのか市場重視なのかで揺れている感の方を受けてしまうんですよねえ。あるいは諸葛孔明の罠とか。

○ダドリー総裁も日和ってきましたな

ダドリー総裁の講演
http://www.newyorkfed.org/newsevents/speeches/2015/dud150826.html
The Regional Economic Outlook
August 26, 2015
William C. Dudley, President and Chief Executive Officer
Remarks by William C. Dudley, President and Chief Executive Officer, New York, New York

・・・・・・と言いたいところなのですが、こちらはお題にありますように地域経済の話を延々としておりまして、最初から最後まで読んでみたものの残念ながら9月利上げ云々に関しては空振りという講演でして、発言の方はその後の会見で出たようですな(なおこの手の会見に関しては会見録のようなものは出てこないのが米国連銀の基本的な仕様のように見えます)。


ということでニュースから。

http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM26H77_W5A820C1FF2000/?dg=1
NY連銀総裁「9月利上げ、必然性低下」
2015/8/27 0:59

『【ニューヨーク=山下晃】ニューヨーク連銀のダドリー総裁は26日、米連邦準備理事会(FRB)による9月の連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げについて「数週間前よりも必然性が低下した」と述べた。足元の金融市場の混乱を受けての発言で、質疑応答で答えた。』(上記URLより)



http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NTP38I6VDKHT01.html
NY連銀総裁:9月利上げの論拠は弱くなった、世界株安で
2015/08/27 04:17 JST

『(ブルームバーグ):ニューヨーク連銀のダドリー総裁は26日、世界的な株式市場混乱を理由に、9月に利上げを決定する論拠がやや弱くなってきたと述べた。ただ、短期的な動向に過剰反応しないことが肝要だと注意を促した。』(上記URLより、以下暫く同様)

会見録が出ないのが困りものなのですが、ニュースについては今回3か所から拾っておいて確認するつもりでネタにしますが、まあロイターのを見ても似たような感じですな。

・・・・・・・ということでダドリーも腰砕けキタコレなのですが、「短期的な動向に過剰反応しないことが肝要」とかどう見ても短期的な動向に過剰反応しているのはFRB当局者なんですけどねえ。


『同総裁はニューヨーク連銀で記者会見し、「現時点での私の考えでは、9月の連邦公開市場委員会(FOMC)で正常化のプロセス開始を決定する論拠は数週間前に比べやや弱くなっているようだ」と語った。一方、「米経済情勢に加え、国際・金融市場の動向に関する情報がもっと手に入るため、FOMC会合までに正常化への論拠が強まる可能性もある」と付け加えた。』

この調子でやっていたら初回利上げをいつまで経っても市場が織り込めないので、実施したら必ずサプライズになってしまうのですがががががが。

『ダドリー総裁はまた、「私はFOMCが年内に利上げできるようになることを強く望んでいる」と言明。利上げは「米経済の先行き見通しが良好で、われわれが連銀法の定める2大責務達成に向けた軌道の上を進んでいることを示すからだ」と述べた。』

ということで毎度申し上げておりますように「政策はフォワードルッキング」というのと「あらかじめ決め打ちをする訳ではなくてデータ次第」という説明の間にある矛盾部分が相変わらず強くなっていますなあという所で。

『ダドリー総裁は市場のボラティリティが米経済に及ぼし得る重要な経路の一つとして資産効果を挙げ、株式市場で損失が出れば米国民が支出を抑制する可能性があると語った。』

こちらではこういう報道ですが、ロイターの方がちょっと詳しいので後述。

『別の経路としてはインフレへの影響を指摘。「注目せざる得ないのは、米国に輸入する物価やサービス価格のこのような混乱が何を意味するかであり、インフレ見通しにどのように影響するかだ」と述べた。』(以上上記うルームバーグ記事より)

ドル高是正されたら物価にはプラスですが・・・・・・・・・

#QE4の質問まで引用すると全部引用になってしまって申し訳ないので引用パスしてますよん


http://jp.reuters.com/article/2015/08/26/dudley-fed-sep-rate-hike-less-compelling-idJPKCN0QV1TC20150826?sp=true
2015年 08月 27日 04:30 JST
9月米利上げの切迫性、市場混乱で薄れた=NY連銀総裁

ロイター記事の方からも少々。

『総裁の発言は地域経済に関する講演時における自発的なもので、FRBからの意図的なメッセージとも受け止められる。総裁はFRB内でハト派で、イエレン議長に近いとされる。』(上記URLより、以下同様)

という解釈に関してはまあそうですなと思います。

『総裁は「国際情勢を受け、米経済成長への下振れリスクが幾分高まった」と分析。中国経済の減速や商品価格下落が新興国市場を圧迫して、世界成長が鈍化するほか、米国の財・サービス需要が後退する可能性が生じているとの認識を示した。』

しかしそれは急に始まった話ではないと思うのだが・・・・・・・・

『また市場のボラティリティーにより金融状況は引き締まり、信用スプレッドは拡大したと指摘。インフレ率は原油安やドル高で2%の目標を引き続き大きく下回っているとしたが、「われわれは一時的だと予想している」とした。』

いやですからそのボラを与えているのが利上げに対してフワフワしているFRBも十分に役を果たしているのですけれどもねえ。

『「短期的な市場動向に過剰反応しないことが重要だ。なぜなら一時の調整なのか、米経済成長やインフレ率の見通しに影響を与える持続的なものなのか、不確かだからだ」とし、米国民の消費意欲への足かせとなり得るのは「大幅かつ長期的な」株価下落だけと語った。』(以上上記ロイター記事より)

ということで、先ほどのブルームバーグの記事での書かれ方よりは足元の株価に一々反応しない的なニュアンスになっていまして、多分ダドリー総裁の発言のニュアンスに近いのはこちらの記事の方だと思うのですが(何せ会見内容についてNY連銀が何も出さないので良くわからん)、先ほどのブルームバーグニュースの記事もこれはこれで意味がある話で、要は「ダドリー発言の意図は兎も角として、市場としてはダドリーが足元の株価急落にビビったと解釈しやすい」というのがブルームバーグ記事のトーンに出ているという事だと思うのよね。


・・・・・・・でまあ何ですな、結局これですとダドリービビッてるよヘイヘイヘイ!という所ではございまして、米国債券市場ちゃんの方もすっかり9月利上げの期待を剥がしてしまったものと推察される訳ですが、これで雇用統計の数値とかが無茶苦茶強かったら物凄く香ばしい展開が待ち構えていそうでして、なんちゅうかもう大丈夫かよとしか申し上げようがない。

つーのはですね、これでまた強めの指標がホイホイ出てきてやっぱり9月に利上げしますとか言い出しますと、その間のコミュニケーションは何なんだという話になりますし、より将来の話を考えますと、正常化の過程において毎度毎度の利上げでいちいちこんな調子でやっていたら市場のボラが上がるだけという誰得な展開がさらに高まるという事になりますなあと思うのですよ。そういう意味ではここから強い指標が出てきてドテンしたFEDの方々が泡を吹くという展開の方が見物人的にはオモシロ展開なんですけどね、と不謹慎発言。


なお、折角なので講演の方も引用してみます。
http://www.newyorkfed.org/newsevents/speeches/2015/dud150826.html

まずは講演の途中から。

『Recently, two themes have emerged from our community visits that warrant special attention.』

2つの課題とな。

『The first is in the arena of workforce development. Employers often have difficulty finding potential employees with the specific skills they need, and workers often lack the specific skills employers are looking for. Workforce development aims to bridge this gap. Good jobs increasingly require higher levels of skill and education, and a skilled workforce that is matched to the needs of employers is also necessary for an economy to grow and prosper. That is why I believe workforce development is so important for the long-term health of the economy.』

雇用状況が改善するなかで労働者のスキルとのミスマッチが生じて居るゆー話で、その改善への努力も進められていますよ的な話の後にもう一つの課題は・・・・・・・・・・

『Access to credit for small businesses is another important issue we've focused on in recent years. Our outreach group conducts a bi-annual poll of small businesses in our region to better understand their credit needs and access to credit. The results consistently show that gaining access to credit is one of the top growth challenges for small businesses. In my visits across the District, I have heard small business owners voice similar concerns. 』

小規模ビジネスに対するクレジットアクセスをより改善する必要がある、という話をしておりまして、前者のワークフォースの話は金融政策ではどうにもという話ですけれども、こちらに関しては金融政策あるいはミクロプルーデンス政策の部分で何らかの対処が不可能ではないという話になりますので、もしかしたら一応気にしておく必要はあるかもしれません(基本的には金融正常化方向の中なのでここにフォーカスした政策が打ち込まれるという話ではないと思いますが)。


最後の方ではNY連銀の管轄地域に関する景気の話をしていまして、まあ総じて景気が良いみたいですが一部ダメなのもある的な話にはなっていますな。

『These are just a few examples of the activities that reflect the Bank's commitment to the region. Let me turn now to the subject matter of today's briefing: the economic outlook for the regional economy.』

『There is a lot of good news to share. Many parts of the region have bounced back quite well from the Great Recession, and now have more jobs than before the downturn.』

景気が宜しいとな。

『New York City really stands out in this regard. While the Great Recession was the deepest and longest recession in modern history for the nation as a whole, New York City bucked that trend to a surprising degree, and did it with little help from Wall Street. As we will discuss later in the briefing, one of New York City's strongest sectors has been technology. In this recovery, employment in the city's tech sector has added nearly 50,000 jobs, many of which pay well. The growth of the so-called Silicon Alley has not only helped the city bounce back from the recession, but, I believe, is a key for the city moving forward. When I visited Brooklyn late last year, I saw firsthand how technology is spurring economic activity, directly and indirectly. For example, Etsy, the popular e-commerce website, which in many ways resembles a retail company, relies on technology to underpin its business model.』

こちとら米国の土地勘が無いので良くわからんですが(汗)。

『But it's not just New York City that is growing nicely. Employment levels on Long Island and in parts of upstate New York-most notably the Albany, Buffalo and Rochester metro areas-have also climbed and are at or near record highs. During my recent trip to upstate New York, I saw first-hand some of the positive developments in Rochester and Buffalo. After undergoing a prolonged period of economic transformation and reinvention, Rochester's economy is now more diverse and dynamic than ever before. Meanwhile, the growth in Buffalo was striking. The numbers show a dramatic uptick in construction employment, and the visual evidence of development was widespread. I was especially impressed with the downtown and waterfront areas, as well as the new SolarCity factory-all of which looked dramatically different than when I visited the area less than two years ago. Both of these places are well positioned for future success.』

NY以外にも好況が広がっているとな。

『On the other hand, the employment recovery has been slow to take hold in both Northern New Jersey and the Lower Hudson Valley, where jobs are still not back to their pre-recession peak despite employment growing steadily. For Northern New Jersey, this lag is due, in part, to a stall in the growth of jobs in professional and business services. But the education and health sectors continue to add jobs, and construction employment is seeing a rebound.』


と、雇用の回復が遅れている地域もあるという話ですが、業種によっての差があるようで。

『I also saw a number of bright spots on my visit to the area a few months ago. One was Jersey City, which is leveraging its proximity to New York City to attract residents and jobs. Another was Newark, where I saw signs of downtown development, including Teacher's Village, a mixed-use community of teachers with new schools, housing and retail businesses.』

こちらも威勢の良い話。


『But pockets of weakness remain. For example, in upstate New York, Binghamton has had no meaningful rebound in employment. Although the U.S. Virgin Islands and Puerto Rico remain in a deep economic slump, employment appears to have steadied in both places in recent months. However, Puerto Rico's weak economy coupled with a fiscal crisis means its economic outlook remains uncertain as it struggles to address its unique set of problems.』

最後の所はプエルトリコも入っていて問題ありというのもいるようですが、まあこの地域内経済の見立て部分は割と威勢の良い話になっていますが、威勢の良い話をして景気付けをするという面もありそうな気もします(^^)。

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2015/08/26

・でもって中国人民銀行の泡吹き追加緩和

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NSLSGC6KLVR501.html
中国が利下げ、株安歯止めの伝統的手段−預金準備率も下げる
2015/08/26 00:13 JST

『(ブルームバーグ):1996年以降で最悪の株安と景気減速の悪化に歯止めを掛けるため、中国人民銀行(中央銀行)は伝統的手段を用いることを決め、昨年11月以後5回目となる利下げに踏み切った。中銀は市中銀行の預金準備率引き下げも発表した。人民銀は25日、1年物の貸出基準金利を0.25ポイント引き下げ4.6%にするとウェブサイトで発表。1年物の預金基準金利も0.25ポイント引き下げ1.75%に設定した。新金利は26日から適用する。金融機関の資金不足を解消するため、全ての銀行を対象として預金準備率も0.5ポイント引き下げる。』(上記URLより)

ということで昨日の夜という相変わらずのお時間に追加緩和なのですが、昨日は何せ上海市場様におかれましては総合指数が3500どころか3000を割る水準まで盛大に下がってしまい、年初来の上げを全部飛ばすとか中々お洒落な展開になっておりましたのでさてどうしますのと思ったら昨日の夜に追加緩和砲登場。

ちなみにPBOCのサイトでは例のQ&A方式の説明があることになっているのですが、なぜかアタクシが今朝英文版サイトを見に行ったらページがありませんのリンク先エラーになってしまうという謎プレイが入っているので説明が良くわかりませんのが残念な所。


・・・・・・・しかしまあ何ですな、週末に追加緩和みたいな話が得意技のPBOCが先週末なにもしないというプレイをかましてきたのであばばばばー的な話もありましたとのことですし、それならそれで一回株が投げ切らせるまで投げさせた方が良いと思いますし、中国当局もその辺腹を括って一旦不均衡の是正モードに入ったのかと思ったのですが、昨日の夜急に緩和を打ち込むというのは如何にも「上海総合が3000ポイントを割ったので泡吹いて追加緩和しました」感がヒジョーによく伝わってくる次第なのでありまして、先般の人民元切り下げなのかフロート化に向けた一歩なのか知りませんが(いやまあ両方でしょうが)、例の一連の措置の時にも一回ぶち上げた後の対応が後手後手に回るわコミュニケーションが下手だわという印象を受けたのですが、今回の追加緩和もその流れで「株式市場をいったん灰汁抜けさせる積りでいたのに想定外に下落したので慌てて対応しました」となっているようにしかアタクシには思えず、どうもねえと思うのでした。


・なお米国

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NTN6T7SYF01S01.html
米国株:続落、買い先行も終盤に一気に上げを消す−中国懸念が再燃
2015/08/26 05:40 JST

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NTNJ9T6VDKHT01.html
米国債:急落、逃避需要が後退−2年債入札は需要低調
2015/08/26 04:12 JST

お、おぅ・・・・・・・・・・・

こちらはこちらで特に米国債に関しては中短期がFOMC議事要旨からの一連の金利低下で金利が低下しまして、2年とか今朝は0.6%台に戻りましたが昨日とか0.57%とかで0.6%割れの水準まで逝くとかやっておりまして、せっかく利上げを織り込ませに逝ったはずなのに思いっきり剥落させてしまって、どう見てもコミュニケーションの失敗です本当にありがとうございましたという風情。

昨日ネタにしたコウモリ派のロックハート総裁(アトランタ)の講演での腰砕けっぷりがもう酷いとしか申し上げようがない(まあ市場の動きの方が凄くてあまりネタになっていなかったっぽいですけれども)次第で、8月10日には「間もなく利上げ」と言っておいて8月24日には「年内には利上げ」とかお前は日計りディーラーかと小一時間問い詰めたい訳ですが、こういう時に当局がぶれると市場がそれに対応して思いっきりぶれてしまいますし、大体からして説明の一貫性を欠くようになって来ますと「政策反応関数」がさっぱり分からなくなるので市場は益々足元の指標や地合いに振らされるようになってしまい、それを見た当局がまたビビッて反応するので以下ループとなる訳ですよね。

でまあその辺がおいおい大丈夫かとなっているというのも昨今のボラ拡大に寄与していると思われるところでして、一応世間的には胡散臭いのを全部「中国ガー」と言っておけば話としては済むのかもしれませんが、まーこれFEDのコミュニケーション失敗もマズーだなあとか昨日も申しあげておったところに今度は慌てた感じでの中国追加緩和とか来ていますので、政策当局の対応が良くない、というのがテーマというか不安増幅装置としてワークするという事になりますと、問題の根が深くなるのではないかと懸念されるところですな。


しかしまあ何ですな、すっかり「データディペンデント」が「足元の経済指標に一喜一憂する」という事を示すような感じになっているFRBの対応(というふうに市場に見られている)とは何と情けないとしか申し上げようがないのですが、これで次回の雇用統計が良い内容だったら9月利上げをしない理由というのも中々難しくなって大変香ばしい事になりそうなので楽しみにしております。



○先日クーレ理事のインタビューがあったのですけどね(ただし8/15の物件)

http://www.ecb.europa.eu/press/inter/date/2015/html/sp150814.en.html
Interview with Borsen-Zeitung

Interview of Benoit Coure, Member of the Executive Board of the ECB,
conducted by Mark Schrors of Borsen-Zeitung and published on 15 August 2015

Mr Coure, the last two bailout programmes have failed to get Greece back on its feet. What makes you think that this time everything will be different and this third programme will turn Greece into a “thriving economy”, to use the expression recently employed by Mario Draghi, President of the European Central Bank (ECB)?

ということで、記事の前半部分は当然ギリシャの話になるのですが、こちとらギリシャよりも金融政策の方が気になるのでそっちを見るという対岸の火事感丸出しのアタクシですので、インタビュー後半から。


・とりあえずデータディペンデントと言いながら足元に振り回される人は爪の垢を煎じて飲むべし

まーECBも暫く前のドタバタの時は大概にスットコドッコイな対応をしていたので、マイナス預金ファシリティにAPPとか訳の分からん政策を回しているのでお前が言うな感は無くはないがこれはワロタ。

『Let’s talk about monetary policy. Some economists are already speculating that the renewed drop in oil prices could ensure that the inflation rate, which was 0.2% in July, falls below 0% again. Longer-term inflation expectations have also fallen again slightly. Are you starting to get worried again?』

ということで足元の原油価格で物価が下がっていることと、長期期待インフレ率の低下について指摘がありますが。

『We do not wake up every morning and look at the economic indicators in order to decide whether to raise or lower interest rates or whether to stop or expand QE. We have a medium-term perspective.』

経済指標が出るたびに一々一喜一憂するわけではなく中期的な見通しを持って見ている(キリリッ)とな。

『We have oriented our monetary policy stance - with low and even negative interest rates and forward guidance, together with bond purchases - towards a long time horizon. Hence, we have said that those purchases can run until at least September 2016, or later if necessary. There was a good reason for this long-term focus, namely that the economic recovery is still weak and is only gradually strengthening.』

今の経済状況は見通しを変更して政策を変更するには至らんとな。


・金融政策に関しては金利云々の話よりもクレジットコンディションとかのファイナンシャルコンディションの話をする

まあここは結局の所金利で話をすると説明が苦しくなるからというのがあると思いますがね。


『So, at the moment you do not see any need to act?』

『Our monetary policy decisions are gradually finding their way into the provision of credit and the real economy, even if only slowly. We therefore want to keep a steady hand. We would only see ourselves forced to act if there was a fundamental change in the economic situation or the monetary stance was materially altered because of developments in the markets - for example, in the event of a sharp increase in long-term bond yields. So far, I am not worried by what I am seeing.』

『So, renewed worries about deflation are exaggerated?』

『There is nothing in the data that supports such an assessment.』

キリッ!って感じですが、まあこれは株式市場が世界的にあばばばばばーになる前の能書きですので、足元までの状況を受けてECBも泡吹きモードとかになってくるとそれはそれで中々味わいのある展開になるのですが、株が下がってユーロが上がったからと言って一々対応していたらタマが無くなるわ(そもそもECBはタマがないし)と思われますがさてどうのやら。



・米国が日和モードになった(と市場に思われる)前の説明なので更に味わいが深い問答

『In the United States, the first interest rate rise is on the horizon. Would this make the ECB’s job easier, for example because the euro would lose value against the US dollar, or more difficult because rising US bond yields have often pushed up their European counterparts in the past?』

『If the Federal Reserve comes to the conclusion that it can raise interest rates, that means that the US economy is strong. That would be good news for the global economy, and therefore also good news for the euro area. It will be crucial that global financial markets are resilient enough to deal with this change in monetary policy.』

為替の質問に対してこういう答えになっている訳ですが、今起きているのがその逆の動きになってしまっているというのが(別にクーレさんの見込み違いでもなんでもないのでクーレさんのせいではないが)何とも。

『And, are they resilient enough? Or should we be worried that the first US interest rate rise since June 2006 will cause chaos in the markets?』

『We have been living with very low interest rates for a very long time. The challenge is to ensure that market participants recognise that the future regime will be more like it normally was in the past - with higher interest rates. There is a risk that some have forgotten what that looks like. That also applies to us in Europe. It is extremely important that our unconventional monetary policy does not damage financial markets.』

>It is extremely important that our unconventional monetary policy does not damage financial markets.
>It is extremely important that our unconventional monetary policy does not damage financial markets.
>It is extremely important that our unconventional monetary policy does not damage financial markets.

イイハナシダナーという所ですが・・・・・・・・・・・・・


・非伝統的政策はあくまでもテンポラリーだし市場機能の毀損は避けるべきであるというイイハナシダナー

さっきのイイハナシダナーの次の問答。

『But that is exactly what many market participants are accusing central bankers of - especially the ECB. They are accusing them of overriding market mechanisms and ousting private investors.』

イイシツモンダナー

『It is clear to me that these unconventional measures have to be of a temporary nature.』

『If they became a permanent phenomenon, that would have much more significant implications for market structures and the profitability of financial intermediaries. Then I would be worried.』

(;∀;)円債市場が泣いた。

『But I am convinced that this regime will be temporary, and that is because our purchase programme is already bearing fruit.』

1年後には物価が2%に達すると言っている(安倍ちゃんのお墨付きも出たので来月の決定会合で見通し下げて展望レポートの見通しも10月には下げそうな気がしますが)のに出口の議論は時期尚早とか言っているどこかの中央銀行には爪の垢を(以下同文)。


・2%物価目標の水準の妥当性について

実際はこの後に中国の質問があって、経済の話と人民元の話があるのですけど、さすがにちょっと前の話になってしまった感があるので引用を割愛してこの点でも。まあ答えは当然お察しの内容なのですが、こういう質問が出るようになっていますわなあというのをネタとして、ということで質問の方でも見てちょ。

『To come back to the ECB: there is a global discussion about central banks’ mandates, for example whether financial stability should become an explicit target, and about inflation targets, i.e. whether 2% is still appropriate. Do you see a need for the ECB to rethink its operational framework?』

ほう。

『Here in the euro area, we are slowly fighting our way out of the crisis. Now is definitely not the right time to be having these discussions. We have fared well with our narrow mandate. We are mindful of financial stability considerations, but our primary mandate remains price stability. As regards the figure of 2%, there is not much point in thinking about this when inflation is at 0.2%. We should concentrate first of all on bringing inflation back towards 2%.』

まあ回答はお察しの通り。

『But that is precisely the point. Some people in Germany believe that price stability is not 2% inflation, but rather 0% inflation.』

おー。

『Price stability does not mean 0% inflation. When inflation is measured at 0%, the actual rate of inflation is less than 0%, as there is a tendency to overestimate the rate of inflation by underestimating the underlying adjustments in the quality of goods and services. And just think: if we reduce our inflation objective when inflation stands at 0.2%, how are we to prevent it from being raised the next time it stands at 3.5%? Our inflation objective has served us well, and the medium-term orientation gives us sufficient flexibility.』

とまあそういう所でございましたとさ。

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2015/08/25

○為替がキタコレのようですがロックハート総裁が能書きアゲイン

まずはニュース。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NTLSL26JTSE901.html
米アトランタ連銀総裁:利上げ見通しがドル高や元安で複雑化
2015/08/25 05:30 JST

ということなのでさっそくアトランタ連銀のページに逝ってみる。

https://www.frbatlanta.org/news/speeches/2015/0824-lockhart
https://www.frbatlanta.org/-/media/Documents/news/speeches/2015/0824-lockhart.pdf

The Interplay of Public Pensions and the Broad Economy

Dennis Lockhart
President and Chief Executive Officer
Federal Reserve Bank of Atlanta

Public Pension Funding Forum Speech
Berkeley, California
August 24, 2015


・前回注目された8月10日の講演と今回の講演のサマリーを比較してみる

例によって手抜きですがサマリー部分を引用する。

『・Atlanta Fed President and CEO Dennis Lockhart, in an August 24, 2015, speech to the Public Pension Funding Forum in Berkeley, California, discusses ways that public pensions and the broad economy interact.

・Lockhart says that state and local government spending cuts can become a headwind in a downturn and subsequent recovery, and pension funding gaps can exacerbate this tendency. But he doesn't see the underfunding of public pension funds as a systemic risk.

・Lockhart believes the time to address funding gaps is before the next downturn arrives.』

この辺まではお席のかかっている年金ファンドフォーラムがどうのこうのに関するお話。

『・Lockhart says that since the recession ended, the U.S. economy has grown at an average annual rate of 2.1 percent. His baseline forecast is for moderate growth with continuing employment gains and a gradually rising rate of inflation.

・Consistent with the picture of moderate growth, Lockhart expects the normalization of monetary policy-that is, interest rates-to begin sometime this year, and to proceed gradually, in an environment of low rates for quite some time.』

というのが金融政策の話でして、サマリーの部分を見ますと別に中国の懸念とか書いていない訳ですが、ここで前回話題になった8月10日の講演を改めて確認しましょう。

https://www.frbatlanta.org/news/speeches/2015/0810-lockhart.aspx
https://www.frbatlanta.org/-/media/Documents/news/speeches/2015/0810-lockhart.pdf

A Story of Economic Progress

Dennis Lockhart
President and Chief Executive Officer
Federal Reserve Bank of Atlanta

Atlanta Press Club Speech
Atlanta, Georgia
August 10, 2015

『・Atlanta Fed President and CEO Dennis Lockhart, in an August 10, 2015, speech to the Atlanta Press Club, discusses the economic progress achieved since the Great Recession and the anticipated FOMC decision to move the federal funds rate off zero.

・Lockhart says that from its peak of 10 percent, the rate of unemployment has fallen to 5.3 percent. However, the average rate of inflation over the six-plus years of recovery has been 1 1/2 percent. He expects to see convincing evidence emerge that inflation is rising to a safer level and approaching the FOMC's 2 percent target.

・Lockhart reiterates that the economy has made great gains and is approaching an acceptable normal, and policy should shortly acknowledge this reality. He is prepared to see mixed data, but he thinks the time to begin normalizing monetary conditions is close.

・Lockhart stresses that the path of interest-rate increases will likely be gradual and such a stance of policy will be appropriate for some time after liftoff.』

ということで、サマリー部分で比較するというのも手抜きにも程がありますが、前回は「he thinks the time to begin normalizing monetary conditions is close.」と纏められていたのですが、今回に関しては「the normalization of monetary policy-that is, interest rates-to begin sometime this year」と纏められていましたので、これは年内利上げが可能という基本シナリオを崩すことは無いけれども9月利上げに対してビビっているよという印象を与えそうな纏め方になっているのはまあそうでしょうなあと思うのです。

でまあこの講演ですが、字面を見る分には年内利上げの旗は降ろしていないので、それ自体で年内の利上げも無理とかFEDの悲観シナリオというのはさすがに極端な解釈だと思うのですが、前回の8/10の講演の中身部分と比較をすると「日和りやがったな」という感を受けるのがどう見てもコミュニケーションポリシーの自爆です本当にありがとうございましたという所です。以下サクサクと鑑賞しますね。


・経済アセスメントの話は

ということで
https://www.frbatlanta.org/news/speeches/2015/0824-lockhart
https://www.frbatlanta.org/-/media/Documents/news/speeches/2015/0824-lockhart.pdf
に戻ります。

最後の小見出し『Economic growth and pension funding/investments』をざっと引用します。(その前の話も割とオモロイけど。

『I'll conclude by turning the lens in the other direction. I'll comment on how the macroeconomic growth environment can interact with pension funding.』

『I would think the macroeconomic outlook is of great interest to you as you set your investment objectives for the coming years, review your allocation, and decide how much risk you must accept.』

『Let me frame the topic in this way: it's about the alignment of assumptions about overall investment portfolio returns with realistic assumptions about macroeconomic momentum and trends. Not all investments in portfolios of public pension funds are correlated with broad economic outcomes, but I suspect many are. Forecast assumptions regarding GDP growth underpin, to an extent, forecasts of fixed-income portfolio returns and total returns of other asset classes.』

そのような能書きは良いからお前の見通しをはよ出せと思っていますとここからその話。

『My outlook for GDP growth (for the medium term, at least) cannot help but be influenced by recent economic history.』

というから足元の経済指標に影響されているのかというといきなり話が2010年以降になるというのも何ちゅうかこの総裁の説明の出し方のニュアンスが何とも。

『Since the recession ended in the summer of 2009, the domestic economy has grown at an average annual rate of 2.1 percent. Compared to other post-World War II recoveries, this is slow growth.』

つまりトレンドの成長力が弱いと。

『Over this period, the economy has faced a number of headwinds and shocks. We've pushed through several domestic fiscal showdowns?including one federal government shutdown-a tsunami, two major winter weather events, geopolitical tensions, and wide swings of global energy prices. These developments slowed activity, shook confidence, and bred cautious economic behavior on the part of American consumers and businesses. These spells of cautious behavior have contributed to a slow pace of recovery.』

とまあ前からの話がウダウダと続いていまして、やっとここで足元の話が出る。

『More recently, the Greek fiscal crisis was unsettling with its potential for a major financial event or worse. Currently, developments such as the appreciation of the dollar, the devaluation of the Chinese currency, and the further decline of oil prices are complicating factors in predicting the pace of growth.』

ということでギリシャ問題とドル高と中国の通貨切り下げと原油価格の一段の下落が先行きの成長パスを複雑にする要因である、という風に言っていまして、これがさっきのブルームバーグのヘッドラインになっておりますな、うんうん。


『Our baseline forecast at the Atlanta Fed is for moderate growth with continuing employment gains and a gradually rising rate of inflation.』

しかしベースラインシナリオは従来通りですな。

『The fundamentals underlying this outlook relate to consumer spending, business investment, and the related issues of wage and income growth. I'll comment on the current state of each of these.』

ということで経済の基調的な見通しは消費、企業投資、賃金と所得の成長に主に依存するという話をしておりまして・・・・・・・・・・・

『Over the past year, consumer spending has strengthened to a pace consistent with the solid, but unspectacular, pace of growth I just predicted. This spending has been supported by reasonably good aggregate income growth, but it is important to note that aggregate income expansion has come more from employment gains in the workforce than from gains in wage rates paid to workers.』

消費は強いけれども今後も強くなるには雇用と賃金の改善が必要と。

『Average wage growth has persisted at levels well below the prerecession pace, very likely in part due to subpar labor productivity growth over most of the recovery.』

平均賃金はリセッション前のレベルよりは伸びが弱いのだがこの回復過程において労働生産性の伸びが低い状態になっているのが多くの要因と思われるとな。

『Weakness in the pace of labor productivity gains has been associated with a relatively tepid pace of business investment. For example, during the past year, business spending on equipment has merely matched the lackluster growth of the overall economy.』

労働生産性の伸びが弱いのは企業の投資ペースが弱いことが要因としてあげられるとな。

『I am looking for some improvement in business investment spending other than energy-sector spending on wells and production infrastructure. The lower oil price has caused major cutbacks in that category of investment.』

原油価格の下落で食らっているエネルギーセクターの以外における企業の投資行動の改善を探しておりますとな。

『The fundamental factors underlying GDP growth are linked. Business investment supports productivity growth. Growth of productivity fuels wage growth. Wage growth fosters the acceleration of consumer activity. I'm expecting continuing improvement in all these elements of the growth outlook, but I'm not predicting sharp acceleration in the foreseeable future.』

ということで、今のファクターというのは相互に繋がって居るのですけれども、結論としては「I'm expecting continuing improvement in all these elements of the growth outlook」であって、ただしそれは当面の間は力強く成長することもないでしょうなあというお話ではないかと。


・利上げに関する説明は8/10のと比較してみましょう


『Consistent with this picture, I expect the normalization of monetary policy-that is, interest rates-to begin sometime this year.』

利上げは年内のどこかと来ましたが、あとで前回のと比較しますね。

『I expect normalization to proceed gradually, the implication being an environment of rather low rates for quite some time.』

これはいつもの話。

『Let me wrap up. I've had the following basic messages for you today.』

へえへえ。

『I don't see the underfunding of public pension funds as a systemic risk. Nor do I see state and local government fiscal stresses, to which pension underfunding can contribute, plausibly posing systemic-event risk individually or collectively. However, state and local government spending cuts can become a headwind in a downturn and subsequent recovery. Pension funding gaps can exacerbate this tendency. Failure to shore up the funding of public pensions when times are relatively good can compound stresses on state and local budgets when economic conditions become more challenging. For the sake of the overall economy, the time to address funding gaps is before the next downturn arrives.』

この前半のネタは華麗にスルーしましたが時間があれば読んでみたい(今日は3秒目を通してスルーした)。

『Finally, in setting your expectations for returns, you may wish to consider the outlook for growth over the medium term. My own outlook foresees moderate growth, but not a breakout to strongly accelerating growth.』

ということで、wrapの所では金融政策運営ネタを軽めにしていますな。


では8/10のと比較しましょう。

https://www.frbatlanta.org/news/speeches/2015/0810-lockhart.aspx
https://www.frbatlanta.org/-/media/Documents/news/speeches/2015/0810-lockhart.pdf


前回講演での利上げに関する話はこの辺になります。

『For me, the cumulative evidence of the economy's healing, and the likelihood the economy is on a path to achieving the Fed's mandated objectives, makes me comfortable that the economy can handle a gradually rising interest-rate environment.』

『Fed Chair Janet Yellen has stated she expects conditions to jell, justifying a start to policy normalization sometime later this year. I agree. I think the point of liftoff is close.』

どう見ても進軍ラッパです本当にありがとうございました。

『As the Committee approaches what I consider a historic decision, I am not expecting the data signals to point uniformly in the same direction. I don't need this. I'm prepared to see mixed data. Data are inherently noisy month to month and quarter to quarter.』

『Given the progress made over the recovery and the overall recent tone of the economy, I for one do not intend to let the gyrating needle of monthly data be the decisive factor in decision making.』

つい2週間前には「すべてのデータがプラス方向でなければならないなどということは無い(キリッ)」「私は今後もミックスなデータが出るのは合点承知の助である(キリリッ)」「そもそもデータは月ごとあるいは四半期ごとにノイズが出るものである(キリリリリッ)」と素敵な発言をしておりました。


あと、最後のwrapの所でも・・・・・・・・

『Let me recap my main points. Much progress has been achieved since December 2008, when the Fed's policy rate reached zero, and mid-2009, when the recession ended. That progress has been accomplished with the support of extraordinary monetary policy.』

ここまではどうでもよい。

『Current and prospective economic conditions increasingly do not demand the most aggressive stance of policy. I think the time to begin normalizing monetary conditions is close.』

威勢が良いですなあ。

『Once underway, the process of raising interest rates to more normal, sustainable levels will likely be gradual. It has been a long story, sometimes frustratingly so, but one I am increasingly confident will have a happy ending.』

徐々に利上げして正常化が進んでハッピーエンドとまで大口叩いたおっちゃんなので、まあこの威勢の良い講演から比較すると腰砕けチックに見える訳でまあ大丈夫かというかコミュニケーションの失敗にも程があるという感じですな。



・どう見てもコミュニケーションの自爆ですな

ということで昨日も申しあげましたが、利上げするのに折角織り込ませに掛かっていたのに急にここで日和ったかのようなメッセージがFOMC議事要旨に続いてロックハート総裁の腰砕けという形で出てきまして、このまま9月の利上げをしないとなりますと、それまでの織り込ませは何だったのかという話になりますし、ペースは遅いけど盤石の経済シナリオという説明は何だったのかという話になりまして、実は説明が非常に難しくなりますし、大体からして足元の株価とか中国に振らされた格好になっているけど米国経済ってそこまで依存しているの?とか言うのもこれまた説明しにくいですし、年内利上げする位なら9月に上げちゃった方が説明しやすいし、灰汁抜けしねえかという気もだいぶするんだがさてどうなるやら。

ベースの経済物価見通しがあって、そのシナリオが進んでいく、というのであれば当然ながら1年位先の金融政策をどういう運営に持って行くか、というイメージが適合的にできる訳でして、それに対してある程度逆算して動くというのは(正しいかどうかはともかくとして)まあ普通に考えうる話なのですが、そこまでのショックが起きている訳でもない(いやまあ中国のアレはそこそこのアレでしょう、あとは人民元が本当にフロート通貨になると影響がありそうですが)のにいきなりポッキリとなってしまったように見えるのは「そもそもこいつらのシナリオ大丈夫か」状態になるリスクが大きいようにも思えます。

ということでコミュニケーションがここに来て複雑骨折していますが、昨日も申しあげましたようにちょっと「データ次第」を強調しすぎましたかねえとは思います。あとロックハート総裁はコウモリ派なので主流派の見解を代弁している可能性があるので微妙な立ち位置ですが、そうは言っても執行部主流派なのではないですし、FOMC議事要旨の書きっぷりって基本的に投票権のある人ない人とかのウェイトをつけないであくまでも主張する頭数だけで記載してくるので、そういう意味では発言の重みが軽い人も重い人も同じような「意見」として書かれているので、実際の論調に大体近いとはいえ、ニュアンス読み間違えるリスクは構造上あるんですよねえとは一応指摘しておきますです、はい。

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2015/08/24

○FOMC議事要旨ネタの続きから

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20150729.htm
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20150729.pdf

とまあそういうことでFOMC議事要旨ちゃんですけどね。

・『Committee Policy Action』の所でも議論が展開されているとな

インスタント読みしていた木曜の朝は流していたのですが、通常ここのコーナーって基本的に声明文に記載する文書に関する内容の話が多くて、結局の所声明文で示されている認識を繰り返しているコーナーではあるのですが、今回は微妙にその辺でのニュアンスが書いてあることに気が付くアタクシ(遅いって)。

『In their discussion of monetary policy for the period ahead, members judged that information received since the FOMC met in June indicated that economic activity had been expanding moderately in recent months. The labor market had also continued to improve, with solid job gains and declining unemployment. A range of labor market indicators, on balance, suggested that underutilization of labor resources had diminished since early this year.』

『Members generally viewed these developments, together with appropriate monetary policy accommodation, as supporting their expectations for moderate economic growth in the medium term and for further improvement in labor market conditions. They also continued to see the risks to the outlook for economic activity and the labor market as nearly balanced. Inflation had continued to run below the Committee's longer-run objective, but members expected it to rise gradually toward 2 percent over the medium term as the labor market improved further and the transitory effects of earlier declines in energy and import prices dissipated.』

最初のパラグラフ(途中で段落分けしてます)は声明文で示されている話ですのでスルーなのですが、次のパラグラフが前回までと違ったニュアンスの書き方になっているのですよ。。

『In assessing whether economic conditions had improved sufficiently to initiate a firming in the stance of monetary policy, the Committee noted that, on balance, a range of labor market indicators suggested that underutilization of labor resources had diminished further.』

このパラグラフの6月FOMC議事要旨の冒頭はこうなっています。

『With respect to its objective of maximum employment, the Committee judged that, on balance, a range of labor market indicators suggested that underutilization of labor resources had diminished somewhat over the intermeeting period. Most members saw room for additional progress in reducing labor market slack, while a couple of members indicated that they viewed the unemployment rate as very close or essentially identical to its mandate-consistent level.』(6月FOMC議事要旨より)

つーことでですね、6月FOMC議事要旨では「最大雇用に向けての判断としてはどうっすかねえ」って表現だった訳ですが、7月FOMC議事要旨では直球で「雇用市場が利上げ着手に向けた動きに入るのに十分などうか」という議論のお題になっている訳でして、こういうのを見ると9月利上げ無いぜヒャッハーとなるのは気持ちは分かるがやり過ぎのような気がします。

『Most members saw room for some additional progress in reducing labor market slack, although several viewed current labor market conditions as at or very close to those consistent with maximum employment.』

severalというのはどうも3名よりは多いけどそこまでは多くない(3名だとa fewで来る、severalはsomeよりは人数少なくて、manyだと多分過半数)のですが、利上げに十分という見解がある訳で。

『Many members thought that labor market underutilization would be largely eliminated in the near term if economic activity evolved as they expected. However, several were concerned that labor market conditions consistent with maximum employment could take longer to achieve, noting, for example, the lack of convincing signs of accelerating wages, which might be signaling that the natural rate of unemployment could currently be lower than they previously thought.』

過半数のメンバーは労働市場のスラックが近いうちにほぼ解消されるとの認識を示すが、severalは自然失業率が低下しており、賃金などの労働市場の指標がイマイチなのに示されるようにスラックは長く残るとの懸念を表明と見解が割れています。


『In considering the Committee's criteria with respect to inflation for beginning policy normalization, most members viewed the incoming data as reinforcing their earlier assessment that, although inflation continued to run below the Committee's objective, the downward pressure on inflation from the previous decreases in energy prices and the effects of past dollar appreciation would abate.』

次のパラグラフがインフレーションに関してですが、こちらも政策正常化着手に向けてどないですねんというお題での話になっているのが6月よりも表現的に踏み込んでいる(念のため申し上げると6月も正常化に関してどうのこうの的な見解も入っているのだが、今回は雇用と物価のアセスメントのなかで正面切って最初に「正常化」が出てきている)ので、そういう点で言えば7月FOMC議事要旨って6月議事要旨よりも正常化着手により踏み込んだ内容であるとは言えると思いますけどね。

『However, core inflation on a year-over-year basis also was still below 2 percent. Moreover, some members continued to see downside risks to inflation from the possibility of further dollar appreciation and declines in commodity prices. In addition, several members noted that higher rates of resource utilization appeared to have had only very limited effects to date on wages and prices, and underscored the uncertainty surrounding the inflation process as well as the role and dynamics of inflation expectations.』

でまあ物価はそう簡単に上がらないのではないかという反論の方は色々と出ていまして、「some members」は「continued to see downside risks to inflation」としてドル高とエネ価格を上げ、「several members」はもうちょっとそもそも論として経済のスラックの解消が進んでいるのに物価が上がらんという点についてこれは今後インフレが本当に上昇するんかいねという話やインフレ期待に関する話にもなるという事で、まあここの反論の方に分がありそうな気もせんでもない訳で、そうなるとそもそも利上げ着手大丈夫という話になってしまいますな。

ちょっと話がそれますが、この「データディペンデント」という説明ってコミュニケーション的に言えば諸刃の剣的な面があって、本来金融政策運営は足元の指標でいちいち反応するような話ではない訳でございまして、フォワードルッキングに対応する(と言いつつビハインドになるのだがそれは兎も角)という建付けになる筈。然るに「データ次第」と言ってしまうとフォワードルッキングどころかバックワードの指標でいちいち反応しないといけなくなりますし、市場の方は当然ながら経済指標出るたびに一喜一憂という話になりますので、これっていわゆるアラン・ブラインダーの言う「自分の尾を追う犬」という状態になってしまう訳ですな、というか正に今そういう動きががががが。

まー何で「データ次第」という話をしているかというと初回利上げ着手のタイミングを決め打ちする自信が無くて、そうは言っても前回の利上げを引っ張ったのが金融不均衡を招いてクレジットバブルを絶賛発生の巻をやらかしたので初回利上げは早めにやっておかないとマズーだろとか、糊代論的な発想とかがあって早めに利上げはしておきたい、という所で決め打ちが出来ないのでこんな感じでウダウダとしているのであって、利上げまでの距離が遠いうちはそれでも回るのですが、日程近くなってきたとなるとこんな感じになりますなってお話。

勿論理想を言えば「出口は市場が連れてってくれる」というのが美しいのですが、事前の織り込ませ無しという状態でそうなるまで待つとなると、恐らくその時には出口政策がビハインドになっている(市場は将来の情報を織り込む、と言われますけど、謙虚に考えて市場って何だかんだ言ってビハインド・ザ・カーブだと思うのよね)というふうに思いますけどね。

で、話を戻します。

『The Committee agreed to continue to monitor inflation developments closely, with almost all members indicating that they would need to see more evidence that economic growth was sufficiently strong and labor markets conditions had firmed enough for them to feel reasonably confident that inflation would return to the Committee's longer-run objective over the medium term.』

ということなので、今回は利上げ無しという事ですが、物価に関しての踏ん切りをつけるにはエネルギー価格がどうのこうのなのではなく、「economic growth was sufficiently strong and labor markets conditions had firmed」とありますので、これはつまり「基調が強いことが重要」という毎度おなじみの話をしている訳でして、原油価格ガーと言って将来の金融政策に対する思惑が市場で盛り上がるのはまあお気持ちは非常に良くわかるのですが、実際問題としてそれはちと違うようにも思えます。


で、次が結論部分。

『The Committee concluded that, although it had seen further progress, the economic conditions warranting an increase in the target range for the federal funds rate had not yet been met.』

そら現状維持なのですからそうなのであって、ではwarrantするまでの距離はどうなのよというのは意見が分かれているのはこの議事要旨を見ても把握できるのだが、実際問題として執行部はどのあたりで考えているのか、というのは中々難しい。この前のロックハート総裁みたいなコウモリ派の人たちが何か言うとそらまあ反応しますなと思います(コチャラコタとかただのネタ人間状態なのでどうでもよい、というか「実質(名目ではない・・・・・)中立金利」ってナンジャソラですわ)。

『Members generally agreed that additional information on the outlook would be necessary before deciding to implement an increase in the target range.』

まあこれはこれで考え方なのだが、こういう書き方だと9月FOMC時点では余程の織り込ませをしないと利上げが全部織り込まれないままで初回利上げに突入することになりまして、それはそれでどうなのかという風に思いますし、このまま「データ次第」という話になると特に雇用関連の指標を中心に(あとは多分小売と住宅と物価かなあ)いちいち「過去の物」であるはずの経済指標に対して市場が盛大に反応し、それに対してFED的にはどうしたもんかね的なことになりかねない(なるとは言っていない)訳で、本来フォワードルッキングに金融政策しないといけないのに「データディペンデント」を過度に強調するとバックワードに影響される金融政策になってしまう上に、市場の反応を気にし過ぎれば「自分の尾を追う犬」の一丁上がりという事になる訳ですな、うんうん。

『One member, however, indicated a readiness to take that step at this meeting but was willing to wait for additional data to confirm a judgment to raise the target range.』

1名は「今回上げても良いくらいだが様子を見たい」という謎見解を出していて、いやお前そういうならどうせ少数意見で否決されるんだから利上げ提案しておけよと思うのだが、議事要旨でこれだけハト扱いになってヒャッハーになるとは思っていなかった(そもそも中国の株安はこの時にあったけどその後の人民元切り下げからの一連のアレは無かったですからね)んでしょうな。


で、声明文に関して。

『In their discussion of language for the postmeeting statement, members agreed that the wording should reflect their assessment that economic conditions showed continued progress toward the Committee's objectives.』

当たり前。

『The Committee updated the statement to indicate that economic activity had been expanding moderately in recent months and that it had seen further improvement in labor market conditions over the intermeeting period, pointing specifically to solid job gains and declining unemployment. In addition, the Committee agreed to state that a range of labor market indicators suggested that underutilization of labor resources had diminished since early this year, acknowledging the cumulative progress that had been made in the labor market.』

労働市場に関しては「some」を入れたのが盛り上がりましたが、まあニュアンスとしてはやはり労働市場の全般に関する現状認識を強くしたのの流れで、先行きのエビデンスが必要、という認識に関してはより利上げに近くなってきたという所でしょうな。

『The Committee also modified the discussion of inflation developments slightly to recognize the more recent declines in energy prices while restating the expectation that inflation would rise gradually toward 2 percent over the medium term as the labor market improved further and the transitory effects of earlier declines in energy and import prices dissipated.』

物価に関しての先行き文言の中でエネルギー価格の一時的な低下が収まったら云々というのはさすがに無理があるのでそこは変更しましたと。

とまあそういう事で、普段は割とスルー気味(一応読むには読んでいるが)な『Committee Policy Action』の部分ですが、読んでいて「おやこれ前回と書き振りのニュアンスが違うな」と思いましたので敢えてネタにしてみましたが、やはりちょっと金融市場が「9月利上げもう無しだぜヒャッハー」のやり過ぎのような気がだいぶしないでも無いなあ、とまあそんな風に思うのでした。

なお今回の議事要旨では他にもネタがあるようなので、議事要旨ネタは明日も続くのだ(たぶん)。

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2015/08/21

・FEDのコミュニケーションがだいぶややこしくなってきたですな

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NTDZFXSYF01V01.html
米国株:S&P500種は14年2月以降で最大の下げ
2015/08/21 05:27 JST

『カブレラ・キャピタル・マーケッツの国際トレーディングディレクター、ラリー・ペルッツィ氏は「現在は期待できる事柄より懸念材料の方がずっと多い」とし、「世界の成長をめぐる懸念があり、米公開市場委員会(FOMC)議事録を受けて政策金利についてやや不透明感が広がった。また原油が40ドルを割り込みそうな状況も影響している」と続けた。』(上記URL先より)

てな感じで、どうも昨日のFOMC議事要旨の反応が景気アチャー的な方向に出ている、というか足元で商品価格がアレだったり中国市場がアレだったりする中で背中を押した感があって中々こうぐぬぬという感じ。

いやね、9月利上げに関しては今回の議事要旨って「9月に上げるかどうかについての見解は結構派手に分かれている」というのはそうなんですけれども、別に方向性としてあげないという話が見解としてそれなりに出ているかというとそうではないのでして、問題は初回利上げに入るタイミングという所だと思うのですよね。

とは言いましても、外野でみているよりは思いのほか「まあそうは言っても9月利上げでしょうし、その程度には米国経済大丈夫なんでしょ」というのがコンセンサスだったのかねという風に昨日今日の動きを見て思うのでありまして(FF先物とかの金利見ていると利上げに対してタカを括っているような価格形成だったので正直そこまで織り込んでいるとは思わずでしたよ)、9月利上げが出来ない→そんなに経済がぱっとしないのか→おはぎゃあああああ、という展開になっている訳でして、これって今後のFRBの情報発信が益々難しくなって来るなあと思うのでした。

いやまあ一応「データディペンデント」とは言っているものの、そうは言いましてもここもとの流れって9月利上げをするのかしないのかという事に関してタカムードの物を出したと思ったらハトムードの物を出すみたいな形で市場の期待を微妙に上げ下げ(というか市場の期待が偏ってくると冷ましにくる)しておった訳で、これで9月に利上げしないでその後もノラリクラリでやっていく、となりますと米国市場の事ですからそのうち「どうなっとるんじゃゴルァアアアアア!!」となってボラ高まって暴れるの巻という事になるんじゃネーノ大丈夫かね、というのが気になるところなのですがどうでしょうかねえ。



○コチャラコタ総裁がかっ飛んでいる講演をしていたようなのでちょっと鑑賞

https://www.minneapolisfed.org/news-and-events/presidents-speeches/public-debt-and-the-long-run-neutral-real-interest-rate
https://www.minneapolisfed.org/~/media/files/news_events/pres/kocherlakota-seoul-8-20-2015.pdf
Public Debt and the Long-Run Neutral Real Interest Rate

Narayana Kocherlakota | President
Federal Reserve Bank of Minneapolis
Bank of Korea Conference
Seoul, South Korea
August 19, 2015

色々と変わったネタを繰り出してくるのといきなりドテンするのがコチャラコタ総裁の仕様なのですが、中立金利というお題が最近お好きなようでその話をしている次第。


・ロンガーランの実質中立金利とな

『Thanks for the introduction and the invitation to be here today. It is a pleasure to be back in Seoul. My remarks today are divided into three parts.』

ということで。

『In the first part of the talk, I examine the behavior of the yields to Treasury Inflation-Protected Securities (that is, TIPS) and the yields to nominal Treasuries over the past decade. Using this evidence, I argue that, over that period of time, there has been a notable decline in the long-run neutral real interest rate.』

TIPS市場の推移をみると長期的な実質中立金利が顕著に低下している事が分かるとな。

『By the long-run neutral real interest rate, I mean the real interest rate that I expect to prevail when the economy is at maximum employment and inflation is at the central bank’s target.』

ちなみにその「長期的な実質中立金利」とはFRBのロンガーランの目標が達成されているときの実質金利水準、という意味だそうな。


・インプリケーションの説明をしているのが言ってることは分かるがナンジャソラという流れなのだ

『In the second part of my talk, I discuss two costs associated with the decline in the long-run neutral real interest rate.』

ということで、ロンガーランの中立実質金利水準とやらが下がるとどういうインプリケーションがあるのかということなのですが、そもそもそこの部分で「実質」が出てくるのがナンジャソラという感じで、そこは名目じゃないのかなあと思うんですが。

『The first cost is that there is an increased risk that monetary policymakers will be constrained by the lower bound on the nominal interest rate. The second cost is that there is an increased risk of financial instability.』

でまあこの2番目の部分がベンダーヘッドラインで出ていて、このおっさん急に金融不均衡ネタを持ち出して利上げを正当化するつもりなのかと一瞬びびりましたが、他のヘッドラインがどう見てもそういう話じゃないということで????だったので読む気になったというのが正直な所です(汗)。

いやまあいわゆる中立金利が下がってしまうと金融政策運営上名目金利がゼロに下げられないから金利政策の下方制約が高まるというのは分かりますが、後段の部分は言っている事は分かるがそこで持ち出すのかというのはちとよくわからん。


『Finally, I discuss how fiscal policy can be used to increase the long-run neutral real interest rate.』

さらにかっ飛び系なのがこの部分。財政政策でロンガーランの中立実質金利水準を引き上げるにはどうするのかという話なのですが・・・・・・・・・・・

『I consider a permanent increase in the market value of the public debt that is serviced by an increase in future taxes or a reduction in future transfers. This policy change increases the supply of assets available to investors. I argue that, in a wide class of plausible economic models, such an increase in supply would push downward on debt prices, and so upward on the long-run neutral real interest rate.』

いやちょっと待てその理屈はナンジャソラなのだが。

『When I put these three points together, I reach my main conclusion. The decline in the long-run neutral real interest rate increases the likelihood of financial instability and the likelihood that the economy will run into the lower bound on nominal interest rates.』

冒頭にまとめが入っているので中々結構。

『Fiscal policymakers can mitigate these risks by choosing to maintain higher levels of public debt than markets currently anticipate.』

だから何でロンガーランの中立金利水準を上げる為に公的債務を拡大するという結論になるんだよと思う訳で、それだったらジャパンのロンガーランの中立金利水準なんか無茶苦茶高いということになるのだがどう見ても違うだろと小一時間。

『I want to be clear at the outset that I am not saying that it is appropriate for fiscal policymakers to increase the long-run level of public debt.』

だからと言ってもっと長期的に公的債務を増やせと言っている訳ではないとな。

『I am simply pointing to two key benefits associated with such an increase.』

ワロタ。

『I will also point to other costs (and benefits) associated with increasing the level of public debt. Sorting through them is outside the scope of my remarks today, and really outside my purview as a monetary policymaker.』


とまあそういうかっ飛び系の講演なのであります。


・そもそも「Neutral Real Interest Rate」とは何ぞやと

『I begin with some context: What do I mean by the neutral real interest rate?』

そらそうよ。

『The neutral real interest rate refers to the real interest rate that would prevail if the economy were at maximum employment and inflation were at target. The neutral real interest rate is a latent-that is, unobservable-variable. But it is a critical variable for monetary policymakers. The goal of the Federal Open Market Committee (FOMC) is to achieve maximum employment and keep inflation at 2 percent over the longer run. Definitionally, the FOMC can achieve this goal only by ensuring that the market real interest rate is, in fact, equal to the neutral real interest rate over the longer run.』

『In contrast, if the market real interest rate is expected to be too high relative to the neutral real interest rate, then the FOMC is providing insufficient accommodation. In such a case, I would generally expect the inflation rate to run below target and employment to be below its maximal level.』

ということで、ロンガーランの目標が安定的に推移する為に整合的な実質金利水準という説明はさっきと変わらんのですが、金融緩和の度合いについても実質金利で比較みたいな話をしていまして、一方で(当たり前ですが)その数値は直接には観測できません(キリッ)とか言われましてもその概念をどうやって実用に使うのかと小一時間ではある。

『As I say, the neutral real interest rate is unobserved. However, there is valuable information about the expected neutral real interest rate in the behavior of observed real interest rates and inflation forecasts. I next turn to how best to use that information.』

ということで、どうも「長期債市場とTIPS市場の価格形成を見る事によって、市場の「期待中立実質金利」(ナンジャソラ)を観測できる」という話のようです。


・でまあ米国のロンガーランの実質中立金利が低下してきているという話

次のコーナーが『The Decline in the Long-Run Neutral Real Interest Rate』ですが・・・・・・

『My first point is that the long-run neutral real interest rate has declined over the past few years in the United States. We can see evidence of this decline in the recent behavior of the long-run market real interest rate.』

ほうほうそれでそれで。

『Consider the behavior of the 10 year-10 year forward yield on TIPS. This is a measure of what financial markets expect the annual real interest rate to average over the 10-year period that starts 10 years from the current date.』

ということで、どうもTIPSの10年先10年フォワードレートと、この後に出てくるのですが10年先10年フォワードのBEIの推移を見ているようですな(グラフは講演テキストの方にあります)。でまあそれが下がっていますよという話をしているのですが、ちょっと飛ばしてその考察部分を。

『Assuming that perceptions of future inflation mismeasurement have not changed over time, I see at least two possible reasons that market real interest rates could have declined.』

『The first is that the long-run neutral real interest rate has declined. The second is that investors expect looser monetary policy, conditional on an unchanged long-run neutral real interest rate.』

ロンガーランの中立金利が下がったことと、市場参加者がより緩和的な金融政策を期待していることから、ロンガーランの実質中立金利が下がったという事を言いたいようです。

『To disentangle these two possible explanations, it is helpful to look at the behavior of inflation forecasts implied by financial market data. This graph depicts the behavior of 10 year-10 year forward inflation breakevens imputed from TIPS. This is a measure of anticipated inflation over a 10-year period that begins 10 years from the current date.』

ということで、先ほど申し上げたBEIの件。

『The graph shows that anticipated average inflation has risen little over the past few years, and may well have fallen.』

というのはグラフを見ると分かりますが、計測期間が2004年からというのにどの程度の意味があるのかというのも気にはなるのですけどねえ。

『This suggests that the decline in the long-run market real interest rate is associated with investors expecting tighter monetary policy in the future, not looser policy.』

なんかかっ飛んだ話になっているのですが、フォワードのBEIが低下しているというのはどういう事かというと、投資家は将来の金融政策についてより緩和的ではなく、より引き締め的な政策を見ているがゆえに、フォワードのBEIが低下するのです。ってな説明をしていまして、いやまあ確かに理屈からしたらそうなのかも知れないが、それは他の条件が一定で変数が将来の金融政策について、という事だったらそうかも知れないけど、なんかさすがにこれは違うんじゃネーノというお話。

『I conclude that the long-run neutral real interest rate has also declined-and possibly by even more than the long-run real interest rate itself.』

ということで、ロンガーランの中立金利も下がっているのだが、ロンガーランの実質中立金利はより以上に下がっている、という説明をしておりまして、まあこの話の展開からしますとコチャラコタ総裁は金融正常化に関してもそうですし、それよりも将来の中立FF金利水準に関してもかなりのハト状態になっているんでしょうなあ、とは思うのですが、時間と量の関係上後半の部分は後日投下の所存です。まあ最初のまとめの部分で結果だけは説明されていますので、後日投下するのは上記でコチャラコタ総裁が示した結果の背景説明という形になりますが。

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2015/08/20

ほほう。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NTCIWO6VDKHS01.html
米国債:反発、FOMC議事録で9月利上げの可能性が低下
2015/08/20 05:29 JST

○ということで寝起きでFOMC議事要旨なのだが

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20150729.htm
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20150729.pdf

つーことで寝起きでインスタント読みをしているので抜けがあったらごめんなのですが、あたくし例によって何のニュースも見ないで議事要旨の参加者の議論部分とかの辺りを流して見たのですが、その後に上記のような市場ニュースを見てちと違和感というか、市場が9月利上げを完全に織り込んでいたのかよ(そうは思えないのだが)とゆーよーな反応を示しているのがちと不思議というのがアタクシ的印象。

・利上げの有無に関しては確かに9月決め打ちではないのだが言うほどハト派なのかなあと

例によって『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』のケツの辺りから利上げタイミングの話を引用するとこうなる。

『During their discussion of economic conditions and monetary policy, participants mentioned a number of considerations associated with the timing and pace of policy normalization.』

という所から始まる部分な。

『Most judged that the conditions for policy firming had not yet been achieved, but they noted that conditions were approaching that point.』

と言っているのに9月利上げ期待(懸念?)後退というのは何ですねんと思いますが・・・・・・・

『Participants observed that the labor market had improved notably since early this year, but many saw scope for some further improvement.』

「some further improvement」って声明文にあって話題になった部分ですな。

『Many participants indicated that their outlook for sustained economic growth and further improvement in labor markets was key in supporting their expectation that inflation would move up to the Committee's 2 percent objective, and that they would be looking for evidence that the economic outlook was evolving as they anticipated.』

物価が2%に上昇するための確信を得る為には経済見通しおよび労働市場のさらなる改善がキーであって、もうちょっとエビデンスが欲しい、という話をしているのでまあそこを弱いとみようと思えば弱いとも言えますが、結局の所データディペンデントという話をしているのであって、決め打ちっぽい話を出さないようにしているというのはあるようにも見えます。


・物価の確信がそんなに簡単に持てるかよという早期利上げ反対の論点である

『However, some participants expressed the view that the incoming information had not yet provided grounds for reasonable confidence that inflation would move back to 2 percent over the medium term and that the inflation outlook thus might not soon meet one of the conditions established by the Committee for initiating a firming of policy.』

一方で複数(後を見るとそこそこいるようである)まだ2%の上昇に対する確信も持てる状況ではないので利上げに関して直ぐにその環境になるとも見ていない、というのがありまして、まあこの辺は9月利上げに対する反対論キタコレということで、こちらはハト的とも読めますなという感じではある。ただしこの後の方では結構利上げバリバリの見解も述べられているので両論併記ちっくではあるのですけど、利上げの環境に至っていないというのが最初に出ている点に加えて、物価2%上昇への確信度という意味での反対論となっているだけに、足元の商品市況の悪化などからやっぱり厳しいじゃんという連想を強くしたのかなあとかまあそんな感じで一応自分の中では整理しておきます。

『Several of these participants cited evidence that the response of inflation to the elimination of resource slack might be attenuated and expressed concern about risks of further downward pressure on inflation from international developments.』

でもって物価の先行きに懸念を示す向きの意見が続くのですが、労働市場のスラックが縮小しても物価に上昇圧力が掛かりにくくなっているという現状から、海外要因から来る物価押し下げ圧力が一段と強まることによってさらに物価が上がらないんじゃネーノという見解ですな。ちなみにここで「Several of these participants」って言ってるからさっきの「Some」は割と多めの複数だということですな、うんうん。

『Another concern related to the risk of premature policy tightening was the limited ability of monetary policy to offset downside shocks to inflation and economic activity when the federal funds rate was near its effective lower bound.』

恐らく今早期利上げを考えているっぽいイエレン議長中心とする執行部の理屈には(正面切っては表明していませんがまあ中銀の行動様式から考えますと)「糊代論」な発想があると思われるのですけれども、この糊代論に対してダメ出ししているような論点に読めたのでほほーと思ったのですがどうでしょうかね。


・一方でとっとと着手と言ってるのもあるので両論併記モードではあるのだが

次のパラグラフである。

『Some participants, however, emphasized that the economy had made significant progress over the past few years and viewed the economic conditions for beginning to increase the target range for the federal funds rate as having been met or were confident that they would be met shortly.』

ということで、別の「Some participants」は次回FOMC位での利上げ適切っぽい見解を示しているのでございましてですな。

『A few of these participants judged that the stance of monetary policy, including the extraordinarily low level of the federal funds rate and the current size of the Federal Reserve balance sheet, was very accommodative.』

『A couple of others thought that an appreciable delay in beginning the process of normalization might result in an undesirable increase in inflation or have adverse consequences for financial stability.』

つーことですので、2名+3名は少なくともさっきの「Some」に入っているようですが、今の政策が極めて緩和的だの、利上げ着手が遅れると金融不均衡を招くだのという見解キタコレであります。

『Some participants advised that progress toward the Committee's objectives should be viewed in light of the cumulative gains made to date without overemphasizing month-to-month changes in incoming data. It was also noted that a prompt start to normalization would likely convey the Committee's confidence in prospects for the economy.』

毎月の経済指標の変化を過度に重視しすぎることなく、経済の累積的な改善を考えるべきであるとか、早めの正常化着手はFOMCの経済見通しに対する信認を増すだのという見解が示されていて。こっちの方はやる気満々モードという感じです。

ただまあ前半の物価に関して自信がねえよ的な見解も結構いる訳で、そういう点からしてFOMCの見解がまだ割れている、というのはそうなのでしょうからして、そこを捕まえれば9月利上げ期待が後退、というのも分からんでもないのだが、そもそも9月利上げが米債市場でそこまで織り込んだ価格形成になっていたのかというとそれは????な気もするんでちと反応にほえーと思ったということですな。


というのが利上げタイミングに関する議論部分ではありますが、他の所から少々。


・利上げパスに関する部分

上記部分の次のパラグラフで、この項の最後のパラグラフになるのですが、そちらでは毎度の利上げパスに関するお話。

『In their discussion of the appropriate path for the federal funds rate and associated communications at and after the time of the first increase in the target range, participants expressed support for emphasizing that the course of policy would remain conditional on the Committee's assessment of economic developments and the outlook relative to its objectives. It was also noted that the Committee's communications around the time of the first rate increase should emphasize that the expected path for policy, not the initial increase, would be the most important determinant of financial conditions and should acknowledge that policy would continue to be accommodative to support progress toward the Committee's dual objectives.』

こちらではいつも通りの話をしています。

『While monetary policy adjustments ultimately would be data dependent, some participants expressed the view that, in light of their current outlook, it likely would be appropriate to adjust the federal funds rate gradually after the first increase to help ensure that the economy would be able to absorb higher interest rates and that inflation was moving toward the Committee's objective.』

つーことで、初回利上げのタイミングよりも将来的なパスとして正常化速度は慎重にというコミュニケーションをすべきという話を毎度の如くしているのですが、そうは言っても実際に利上げがいつですかという話は短期ゾーンのブレークイーブンとなる金利ポイントに思いっきり効いてくるのですから、そうは言っても市場はそのタイミングを気にするわなとは思うのでした。


・バランスシートの縮小に関して

議決の後に『Long-Run Monetary Policy Implementation Framework』というコーナーがあるのだが。

『At the conclusion of the meeting, the Chair noted that the staff would soon begin an extended effort to evaluate potential long-run monetary policy implementation frameworks.』

ほほう。

『In view of the likely time frames for normalization of the stance of monetary policy and the System's balance sheet, the Committee probably would not need to reach any final decisions regarding such a framework for several years.』

という位でして、基本的にゆっくり利上げするんだから当たり前と言えば当たり前ですが、利上げパスの方ばかり注目されているのですが実際問題として重いネタとしての「バランスシートの正常化」に関しては数年かかるプロセス(とっとと中立金利までの引き上げをするとかなら売却も選択肢に入るのでしょうが)ということだがそもそもどうするかという話はまだまだ決定をするような話ではないという認識はまあそうでしょうなあとは思うが、とは言っても放置プレーという訳にもいかんでしょうな。

『Moreover, the process of normalization will likely provide a great deal of information about money markets and the Federal Reserve's policy tools that will help inform the Committee's judgment about a long-run implementation framework. Nonetheless, because the analysis will likely address a wide range of topics, it seemed appropriate to begin now to organize and undertake the work.』

そらそうよという所ですが、バランスシートの正常化に関しては結構悩みが多いネタという認識をしているのは把握した。なおどこぞの中銀は早期に目標達成と言っているのに正常化プロセスについて何の考えも無いという表明をしている訳でイエレン議長の爪の垢を煎じて飲むべきだと思うの。

『Previous staff work on implementation frameworks was presented to the Committee in April 2008 and focused largely on alternative frameworks that could be used to target the federal funds rate. Those topics would be an important part of the current undertaking as well. However, in light of experience over recent years, policymakers agreed that a number of related issues warranted attention, including topics such as the effectiveness of alternative implementation frameworks in scenarios that could require a return to the zero lower bound, regulatory and other structural developments that could affect financial institutions and markets in ways that would affect monetary policy implementation, and the long-run structure of the Federal Reserve's assets and liabilities that best supports the System's macroeconomic objectives and financial stability.』

『In discussing the range of issues contemplated for study under this project, it was noted that the Policy Normalization Principles and Plans reflect the Committee's intention that, in the longer run, the Federal Reserve will hold no more securities than necessary to implement monetary policy efficiently and effectively and that the Federal Reserve will hold primarily Treasury securities.』

ということで、金利の正常化におけるバランスシートの影響という話もありますが、将来的にFEDの保有資産がどうなると金融市場や金融機関に対してどういう影響があるのかという点も研究課題ということのようですが、まあ最終形としては必要な量以上には長期資産のバランスを膨らませず、基本的には米国債のみとするというお話になっておりまして、こちらもそらそうよという話ではありますな。

『Policymakers agreed that it would be important to draw on the perspectives of staff across the Federal Reserve System and to consult widely with other central banks, academics, and other experts on markets, financial institutions, and monetary policy. The project was expected to run through the end of 2016. Policymakers will review progress and provide input as the work proceeds.』

で、バランスシート正常化に関する論点の研究はスタッフだけではなくて幅広い意見を聴取して来年の末まで研究するという位なので、そういう意味では(緩和が効きすぎて景気が過熱するというような事が無い限り)バランスシートの正常化着手には相当の時間を置くという積りでいるんでしょうなあというのは把握した。


・ところで中国リスクへの言及があったとかモーサテが言ってたが

『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』というのは経済の状況と見通しという位ですからそういう話をしていて、全体観の後に項目別の話をしておりますが、そのコーナーの6パラグラフ目に海外経済の話がありますぞな。

『In their discussion of the foreign economic outlook, participants generally viewed the risks from the fiscal and financial problems in Greece as having diminished somewhat, although it was observed that Greece still faced many challenges and that Greek economic progress was likely to be limited over the near term.』

ギリシャリスクが減少したという議論は順当。

『While the recent Chinese stock market decline seemed to have had limited implications to date for the growth outlook in China, several participants noted that a material slowdown in Chinese economic activity could pose risks to the U.S. economic outlook.』

中国に関してですが、株価の急落に関してはまあそこまで気にせんでもよかろうというのも順当でして、中国経済の減速に関して米国経済へのリスクが増大という指摘は確かにあるのですが、それゆうとるの「several participants」なのであって、中国経済への懸念が示されているのでハト派的ってな講釈をモーサテ方面で垂れていた(東京の解説の人ではないです、為念)のはちとそこまで言うかとは思った。

『Some participants also discussed the risk that a possible divergence in interest rates in the United States and abroad might lead to further appreciation of the dollar, extending the downward pressure on commodity prices and the weakness in net exports.』

まあ海外要因に関する懸念の議論部分で注目するならこっちの「金融政策の方向性が違う事によるドル高の悪影響」ではないかと思うのですけどねえ。


とまあそんな感じでインスタント読みなので抜けがあるかも知れませんので念のため申し添えます、というか自分にヘッジを掛けているだけですかそうですか。

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2015/08/19

○パウエル理事の講演ネタ続き

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/powell20150803a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/powell20150803a.pdf
Governor Jerome H. Powell
At the The Brookings Institution, Washington, D.C.
August 3, 2015
Structure and Liquidity in Treasury Markets

昨日はパウエルさんの「規制強化で市場の流動性が低下とか言ってもそれは知らんがな」という市場参加者涙目のお告げのあったところまでネタにしましたが残りの続きを。


・マーケットメーカーの中で取引が完結した場合、という話だが微妙な話をしている気が

『Regulation is only one of the factors--and clearly not the dominant one--behind the evolution in market making.』

ほうほう。

『As we have seen, markets were undergoing dramatic change long before the financial crisis. Technological change has allowed new types of trading firms to act as market makers for a large and growing share of transactions, not just in equity and foreign exchange markets but also in Treasury markets.』

ということで電子プラットフォームでの取引は株式やFXだけではなく米国債市場にも拡大していますというお話。

『As traditional dealers have lost market share, one way they have sought to remain competitive is by attempting to internalize their customer trades--essentially trying to create their own markets by finding matches between their customers who are seeking to buy and sell.』

これUSTの市場の細かい話に詳しくないから誰か教えてジェネラルなのですが、顧客取引をマーケットメーカーのなかでインターナライズして自分の所が取引所っぽい状態にする、というのってワークするようにはとても思えないのですけれども。いやまあそれこそ昔もっと取引が活発だったころの円債のマーケットメーカーだと瞬間的に顧客の売買がぶつかるみたいなことはあったけど、取引プラットフォームの進化でどうのこうのというよりは色々な顧客層が居て、多様なニーズで売買が市場に入ってきてこその「顧客取引のインターナライズ」であって、それは電子プラットフォームを使っているからどうのこうのとはあまり関係ないと思う。

いやまあ勿論電子プラットフォームの方が便利だから客注がそっち経由で来るので電子プラットフォームが発達するとかそういうのはあるかも知れんが、それ自体は電話が電子プラットフォームに変わるだけで構造の変化ではなくて単なる道具のイノベーションに過ぎないと思う。

『Internalization allows these firms to capture more of the bid-ask spread, but it may also reduce liquidity in the public market. At the same time it does not eliminate the need for a public market, where price discovery mainly occurs, as dealers must place the orders that they cannot internalize into that market.』

マーケットメーカーの中で取引が完結してしまうと市場に取引が出てこないので価格が見えなくなるというデメリット、という話をしているのだがこの論点はちょっとずれている感があるし、そもそも論として取引がマーケットメーカーの中でインターナライズされる為には今申し上げたように様々な取引誘因によって市場にはいる人がいるという多様性が必要なのだが、一連の規制変化によって米国債券市場に入ってくる人の取引インセンティブが規制対応によって同じようになってくる、という傾向があるのではないかと思うに、やはりこの論点のセクションはちょっと認識が違うんじゃないかなあと思うのだが、実際のUSTやっている人のご感想を賜りたく存じますのでお願いしますお願いします。


『While the changes I've just discussed are unlikely to go away, I believe that markets will adapt to them over time. In the meantime, we have a responsibility to make sure that market and regulatory incentives appropriately encourage an evolution that will sustain market liquidity and functioning.』

ということで、市場の流動性とか機能の変化に関する規制要因に関しては今後も良く確認したいとのこと。


・高速取引発達の影響について

『In thinking about market incentives, one observer has noted that trading rules and structures have grown to matter crucially as trading speeds have increased--in her words, "At very fast speeds, only the [market] microstructure matters."8 Trading algorithms are, after all, simply a set of rules, and they will necessarily interact with and optimize against the rules of the trading platforms they operate on. If trading is at nanoseconds, there won't be a lot of "fundamental" news to trade on or much time to formulate views about the long-run value of an asset; instead, trading at these speeds can become a game played against order books and the market rules.』

高速取引が入ってくるとファンダメンタルズとかそういうのではなく市場の瞬間的な歪みを取るアルゴみたいなのが入ってくることになるので、そういうトレードは従来の取引をしている人との勝負になる傾向がある、ってな指摘をしていると思いまして、そらまあそうですなとは思うのですが米債市場で先物以外でそういうのってできないようには思えます。まあ先物の事なのかもしれんが。

『We can complain about certain trading practices in this new environment, but if the market is structured to incentivize those practices, then why should we be surprised if they occur?』

ほほう。

『The trading platforms in both the interdealer cash and futures markets are based on a central limit order book, in which quotes are executed based on price and the order they are posted. A central limit order book provides for continuous trading, but it also provides incentives to be the fastest.』

プラットフォームの発達で取引の高速化のインセンティブが働きますよと。

『A trader that is faster than the others in the market will be able to post and remove orders in reaction to changes in the order book before others can do so, earning profits by hitting out-of-date quotes and avoiding losses by making sure that the trader's own quotes are up to date.』

まあそういう事になるのですがこの次に中々良い指摘がある。


『Technology and greater competition have led to lower costs in many areas of our economy. At the same time, slower traders may be put at a disadvantage in this environment, which could cause them to withdraw from markets or seek other venues, thus fracturing liquidity.』

ここの指摘が秀逸でして、高速取引の発達によって低速(?)取引が高速取引の食い物になる、という状態になると、そら当然ですが低速取引の人が市場から退出しやすくなるので、市場の流動性や機能が低下することになるって話をしているのですよね。

まあだから高速プラットフォームはダメとかそこまで話は発展しないものの、市場の流動性を確保させるためには高速取引ばっかり奨励するとそれ以外の人たちが市場から退出してしまい、市場の流動性が落ちるという認識を示しているのが素敵でして、せっせと市場のポジションや売買インセンティブを同じ方向にそろえて市場機能を破壊して回っているのに「市場機能はありまぁす」とか言っているどこぞの中央銀行は爪の垢を煎じて飲むべきであると思います。

『 And one can certainly question how socially useful it is to build optic fiber or microwave networks just to trade at microseconds or nanoseconds rather than milliseconds. The cost of these technologies, among other factors, may also be driving greater concentration in markets, which could threaten their resilience.』

『The type of internalization now done by dealers is only really profitable if done on a large scale, and that too has led to greater market concentration.』

ということで・・・・・・・・

『A number of observers have suggested reforms for consideration. For example, some recent commentators propose frequent batch auctions as an alternative to the central limit order book, and argue that this would lead to greater market liquidity.9 Others have argued that current market structures may lead to greater volatility, and suggested possible alterations designed to improve the situation.10』

でまあ色々な見解が世の中にはあるみたいで、国債入札も一発ではなく小分けにするのが良いとか、今の市場構造はボラを高めているので構造を変えないといけないとか、色々と見解があるんですな、よー知らんけど。

『To be clear, I am not embracing any particular one of these ideas. Rather, I am suggesting that now is a good time for market participants and regulators to collectively consider whether current market structures can be improved for the benefit of all.』

まあ纏めは無難に。


・レポとかクリアリングに関してちょっとだけ触れている

『Questions about market structure also arise in the funding markets for Treasuries. As many have noted, there is a link between funding liquidity and market liquidity, and for Treasury markets the links to funding in the repo market are especially close.11』

ファンディングの流動性という意味ではレポ市場の変化の影響が大きいですと。

『Post crisis reforms have made the repo market safer but also raised the costs of repo transactions. Greater use of central clearing could potentially lower these costs by allowing participants to net more of their transactions. Authorities have emphasized a greater use of clearing for a wide range of products, and I believe there could be benefits to greater clearing in repo markets as well. There are several private proposals to accomplish that, and any solution will have to satisfy demanding regulatory requirements.』

レポ取引の改革でコストが上昇したが取引が安全になったのでそれでオッケーというのは金融規制改革と市場流動性の評価の部分と同じ話をしていまして、まあそうでしょうなあと思います。中央清算機関の利用でトランザクションコストが減る云々の件に関しては、理念的には仰せのとおりなのですが、機関が1個増えることによるコストをどのくらい吸収できる金利環境なのかというのとか、機関の有事対応能力とかにも依存するところがあるように思えます(ので今の日本で進めるとコストばっかり掛かる結果になりそうな悪寒)。

でまあ最後のまとめを引用しておきます。

『To wrap up, we need more clarity on the implications of structural changes in these critical markets for market liquidity and function. This is a good time to hold another public conference to discuss Treasury market structure. In fact, that is one of the recommendations in the October 15 report released last month.』

ほほう。

『The conference will take place this fall at the Federal Reserve Bank of New York, in cooperation with the Treasury Department, the Board of Governors, the Securities and Exchange Commission and the Commodity Futures Trading Commission. My hope and expectation is that it will bring market participants and regulators closer to an understanding of whether there are changes in trading and risk management practices, regulation and market structure that could make our Treasury markets even more liquid and more resilient.』

ということで小分けになってしまいましてすいませんでした。

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2015/08/18

○パウエル理事講演ネタの続きである(汗)

無駄に中途半端な所で終了した昨日の続き。

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/powell20150803a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/powell20150803a.pdf
Governor Jerome H. Powell
At the The Brookings Institution, Washington, D.C.
August 3, 2015
Structure and Liquidity in Treasury Markets


・電子プラットフォームの拡大に関して

昨日引用したのは米国国債市場における変化として、マーケットメーカーのリスクアペタイトの低下という話と、買いきりの投資家が増えたという話をしておりましたが、以下は物理的な取引インフラの話。

『Perhaps the most fundamental change in these markets is the move to electronic trading, which began in earnest about 15 years ago. It is hard to overstate the transformation in these markets.』

ふむ。

『Only two decades ago, the dealers who participated in primary Treasury auctions had to send representatives, in person, to the offices of the Federal Reserve Bank of New York to submit their bids on auction days. They dropped their paper bids into a box.』

昔の話を聞きますと入札書もって日銀に行ってというのがあったようですが、不肖このアタクシは若いので(嘘)小僧の時には既に日銀ネットで応札していましたが、運用部オペとか輪番とかは電話入札で紙を持ち込み(以下はいはいおじいちゃんとか言われそうなので割愛)。

『The secondary market was a bit more advanced. There were electronic systems for posting interdealer quotes in the cash market, and the Globex platform had been introduced for futures.』

うむ。

『Still, most interdealer trades were conducted over the phone and futures trading was primarily conducted in the open pit.』

昔の話を聞きますと東証の債券先物も黒電話で発注してとかの世界ですが不肖このアタクシは(以下割愛)。なおLIFFEのJGB先物はオープンピットでやってましたなあ、

『Today these markets are almost fully electronic. Interdealer trading in the cash Treasury market is conducted over electronic trading platforms.6 Thanks to advances in telecommunications and computing, the speed of trading has increased at least a million-fold.7』

でまあここまでは分かるのだが。

『Advances in computing and faster access to trading platforms have also allowed new types of firms and trading strategies to enter the market. Algorithmic and high-frequency trading firms deploy a wide and diverse range of strategies. In particular, the technologies and strategies that people associate with high frequency trading are also regularly employed by broker-dealers, hedge funds, and even individual investors. Compared with the speed of trading 20 years ago, anyone can trade at high frequencies today, and so, to me, this transformation is more about technology than any one particular type of firm.』

この辺の話って米債市場のど真ん中に居ないと良くわからんので論評はしにくいのだが、基本的に債券市場って先物とか先物オプションなら話は分かるのだが、そうじゃない通常のキャッシュボンドの取引においてそんなにHFTみたいなのってワークしないだろと思う次第。そもそも株式取引みたいに同一銘柄を取引所集中売買している訳でもないですし、為替取引みたいに理論上ロングもショートも基本的に制約が無い(資本制約の問題は置く)というものではなく、債券の場合はモノなだけにショートセールを制限なく可能なのかというとそうでもないですし、そんなにアルゴとかHFTとかが流行するもんなのかというのは?????という違和感があるのだが、実際にそういうのが流行してるんですかねえ。

でまあ話が微妙にそれますけれども、その手のフラッシュクラッシュみたいなのをしたくない、というのであれば、実はHTFにファミリアーじゃないトレーディングプラットフォームにする方が良いのであって、たとえばの話、大昔の日本の債券先物の値付け方法って昔の人力売買時代の取引を電子化したような「注意気配制度」というのがあったのですが、「世界標準ではない(キリッ)」とか言って1998年の秋口位(調べればわかるが瞬間に思い出せない)に世界標準的な高速値動きをするプラットフォームに変えたら、先物の値動きが激しくなりすぎて債券市場のヘッジ機能が低下して、その結果としてマーケットメーカーのリスクアペタイトが低下して金利が上昇して最後にいわゆる運用部ショックでとどめを刺されるの巻(なので運用部ショックと言われているが本当はあの暴落の元の原因はその前の東証先物売買システムの変更)となったというような事案もありまして、取引所が取引持って来て欲しいとしてHFTとかその手の取引を誘因した結果として起きている市場機能の低下というのがあるでしょ、という風に昔から主張しているのですがあまり賛同者がいなくてさびしいアタクシ。


すいません話がそれました。

『Given all these changes, we need to have a more nuanced discussion as to the state of the markets. Are there important market failures that are not likely to self-correct? If so, what are the causes, and what are the costs and benefits of potential market-led or regulatory responses?』

つーことで・・・・・・・・


・金融規制のコストとしての流動性低下は受け入れるべきであるし金融規制要因だけは無い筈だという主張

『Some observers point to post-crisis regulation as a key factor driving any decline or change in the nature of liquidity.』

とは言われるし多分そう。

『Although regulation had little to do with the events of October 15, I would agree that it may be one factor driving recent changes in market making.』

これはまあ運用部ショックの暴落って本当に運用部買入1000億円如きの停止によるものなのか、というような話と同じような話で、直接の原因ともっと本源的な背景というのがあって、この辺のパウエル理事の説明もまあ言いたいことも理屈も分かるし、以下でてくるけど金融安定化というのも重要ではあるのでそのトレードオフの関係でどっちを選ぶという話はあるのだが、ちょっと規制要因を過小評価している可能性はあるなあと思いますし、まあパウエル理事がそういう認識ということは規制要因に関する米国金融当局の考え方というのはお察しということになるのではないでしょうか。

『Requiring that banks hold much higher capital and liquidity and rely less on wholesale short-term debt has raised funding costs. Regulation has also raised the cost of funding inventories through repurchase agreement (repo markets). Thus, regulation may have made market making less attractive to banks.』

金融規制によって市場でのファンディングコストやレポ調達を相対的に厳しくしているのは事実とな。

『But these same regulations have also materially lowered banks' probabilities of default and the chances of another financial crisis like the last one, which severely constrained liquidity and did so much damage to our economy.』

でも規制によって金融危機の発生可能性を減らしましたよと。

『These regulations are new, and we should be willing to learn from experience, but their basic goals--to make the core of the financial system safer and reduce systemic risk--are appropriate, and we should be prepared to accept some increase in the cost of market making in order to meet those goals.』

キタコレという所ですが、そういうことなので流動性低下は受け入れるべきでそれに慣れろということなので、つまりは市場機能の低下はコストだが別のベネフィットがあるからそれを相対的に勘案したものだ、というお話でパウエル理事の面目躍如。

・・・・・・・・と申しますか、市場機能の低下と言えばどこぞの中銀では「市場機能はありまぁす」だの「金融緩和の副作用を示す理論や事実に基づく具体的な根拠はない」だの言いだす人たちがいるという事実に涙を禁じ得ないところであります。

でまあ続きを投下しようとしたらまたまた時間配分を間違えたので続きは明日なのですが、今日の所でのネタとしては「金融規制によって市場の流動性などが低下しているという見解もあるが、それは金融システム安定化のためのコストであると理解すべきである」という金融規制関連をお得意とするパウエル理事の説明でありまして、まあ米国がそういうスタンスでいますと、バーゼルやら何やらの規制に関連してもそういうスタンスが出てくるでしょうし、いずれ米国以外の市場にもこの手の「規制要因による取引コストの増大」とか「規制要因による市場流動性の低下」というのが出てきて、その結果として市場の厚みが薄くなってフラッシュクラッシュみたいなのは増えていくのかも知れませんなあと思うのでした。とはいえ所詮は市場価格で解決する問題であればフラッシュクラッシュしようとも金融機関の資本バッファーを厚くしたりレバレッジ規制掛けたりすれば問題ありませんよという話は理屈の上ではそうですけど、市場に棲息してそのおこぼれを頂戴している無力市場参加者と致しましてはぐぬぬ的なサムシングは感じないでもないですな、うんうん。

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2015/08/17

○パウエル理事の先日(8/3)の講演が論点的に面白かったのでそのネタでも

と思っていたのに前半の雑談で時間をつぶしてしまい肝心の用意していたネタにたどり着けないとかアタクシ間抜けにも程がある。

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/powell20150803a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/powell20150803a.pdf
Governor Jerome H. Powell
At the The Brookings Institution, Washington, D.C.
August 3, 2015
Structure and Liquidity in Treasury Markets

>Structure and Liquidity in Treasury Markets
>Structure and Liquidity in Treasury Markets
>Structure and Liquidity in Treasury Markets

(;∀;)イイテーマダナー

ということでこのネタを打ち込むつもりだったのに雑談ネタで時間を食ったアタクシなのでした。

・市場の構造変化と規制に関する影響における考察なのだ

まずは最初から。

『I'm very pleased to be here to discuss the current structure of the Treasury markets.1 My involvement with these markets dates back to the early 1990s, when I served as Under Secretary of the Treasury for Finance.』

ほほう。

『Some of you will recall the Salomon Brothers auction bidding scandal that broke in the summer of 1991.』

うひゃー懐かしい、というより1991年生まれってもう24歳ということに震えているアタクシ。

『That event required those of us with oversight responsibilities to do a thorough evaluation of the structure of the primary Treasury market, and ultimately to propose a series of reforms.2 As part of that process, we put together a public conference to consider further reforms to Treasury auction procedures, with the participation of regulators, academics, and the financial sector. Some of the ideas that came out of that conference eventually led to changes in the way primary auctions were conducted, changes that I believe were beneficial to the efficiency and integrity of the Treasury market.』

あの事件以来発行市場の改革してましたわな。

『The issues we are discussing today relate to the secondary market rather than to the auctions.』

で、今回のテーマは流通市場に関してとな。

『Although the Treasury market remains deep and resilient, there are nonetheless reasonable questions as to whether market functioning can be improved.』

ちなみにこちらではFEDの資産買入が市場の流動性を歪める的な考察は特段ない、というか持ちきりの投資家が増えたという中ではその話はあるけれども、オペレーションが歪めるという話はなく、まあそもそも論としてFEDの場合は日銀トレード的な話って特に顕在化して大騒ぎという感じではなかったような気がするけど、アタクシもUSTを円債程見てはいませんですからその辺は良くわからんです。それよりもこちらでは規制の影響と市場の設備的なイノベーションの話を主に行っていますので、どこぞの「市場機能はありまぁす」という人に向けてのイヤミたらたらという話には残念ながらならないのですけれども、論点は面白いので鑑賞しようかと(7ページ半しかないのでサクサク読めるし)。


・昨年10月15日の米国市場から話が始まる

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NDI5O16JTSEG01.html
米国債:09年来の大幅な上げ−早期利上げ観測が後退
2014/10/16 06:50 JST

ってのがありましたが・・・・・・・・・・・

『The events of October 15 last year have been folded into the more general debate about market liquidity across a number of markets. I take the concerns about a decline in market liquidity seriously.』

10年が瞬間34毛強とか凄まじい動きのあった時でございましたな(って引けで戻っていたから寝てる間の出来事でこちらは何が何だか状態だったのですが)。

『Hard evidence on the level of liquidity in secondary Treasury markets is mixed, with some measures at or above pre-crisis levels and some suggesting a reduced ability to buy or sell large positions without material price effect--a reasonable definition of liquidity.3 It is also possible that liquidity may be more prone to disappearing at times of stress.』

で金融危機前と流動性が落ちているという話はありますが、特にストレスのかかった時にそれが顕著とな。

『On October 15, for example, market depth declined sharply, and we saw a sudden spike in prices that was without precedent for a period with little relevant news. Other events--such as the 2013 "taper tantrum," the "bund tantrum" last spring, and the sharp moves on March 18 in the euro-dollar exchange rate--all broadly show the same pattern: rapidly diminishing liquidity, and large price moves for a given quantum of news.4』

昨年の10月の米債だけではなく色々な事例を出しています。

『But the causes and implications of these events are unclear. Is this the new normal? We don't know. Current macroeconomic and market conditions are unprecedented in many respects. For now, what we have is a small number of broadly similar events that bear careful consideration.』

でまあその背景とかインプリケーションについて考察して行きましょう的なお話な訳で、話はUST市場の話になります。

『Most of these considerations apply across markets, but they are particularly important here because of the crucial role that Treasury securities play within the global financial system.』

特にUST市場にフォーカスしますがそれはUST市場が重要だからです、ということで以下は何で重要かという話なので軽く引用だけ。

『In addition to serving the financing needs of the U.S. government, Treasury markets are important for the conduct of monetary policy. Treasuries serve as high-quality liquid assets (HQLA) for a wide range of financial institutions, including dealers in the Treasury market, and as collateral in myriad transactions conducted bilaterally and through clearing houses and exchanges. Treasury securities are a global reserve asset, and Treasury markets are a key vehicle through which market participants manage their interest-rate risk. The integrity and continued liquidity of the Treasury markets affect nearly everyone.』

さいですな。


・マーケットメーカーが減っているのと持ちきりの投資家が増えているという構造の変化に関して

『Treasury markets have undergone important changes over the years. The footprints of the major dealers, who have long played the role of market makers, are in several respects smaller than they were in the pre-crisis period.』

まずは市場のマーケットメーカーの減少について。

『Dealers cite a number of reasons for this change, including reductions in their own risk appetite and the effects of post-crisis regulations.』

リスクアペタイトが減りましたと。

『At the same time, the Federal Reserve and foreign owners (about half of which are foreign central banks) have increased their ownership to over two-thirds of outstanding Treasuries (up from 61 percent in 2004).』

FEDを含む海外中銀の保有が増えたという話はこちらにある。

『Banks have also increased their holdings of Treasuries to meet HQLA requirements. These holdings are less likely to turn over in secondary market trading, as the owners largely follow buy and hold strategies.5』

規制の関係で流動性の高い資産を保有したい銀行の持ちきり保有が増えたと。

『Another change is the increased presence of asset managers, which now hold a bigger share of Treasuries as well. Mutual fund investors, who are accustomed to daily liquidity, now beneficially own a greater share of Treasuries.』

これはMMF規制に関連しての国債保有の拡大ですな。


・・・・・・ということで以下続く(この先は電子プラットフォームの拡大に関する話が多くなる)のですが、徐々に論点というかツッコミどころというかジジイのアタクシ的に思う事が出てくるので続きは明日(大汗)。

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2015/08/14

○人民元関連のメモを置いておきますね

・会見登場なのですが

うむ
http://www.pbc.gov.cn/publish/goutongjiaoliu/524/2015/20150813112605642816801/20150813112605642816801_.html
2015-08-13 12:57:19

・・・・・・・ええまあそういうことで中国文での会見要旨は早速アップされたのですが、

http://www.pbc.gov.cn/publish/english/963/index.html

英語版の方は12日の措置に関するFAQみたいなのは出ていましたが、会見の内容となるとややこしいのでアップしてくれないようで残念(まあ日銀だって会見は英文では出てこないですからいちゃもんつける筋合いはないのだが)な所です。

仕方がないのでロイターさんの記事から。

http://jp.reuters.com/article/2015/08/13/yuan-forex-pboc-idJPKCN0QI09220150813?sp=true
中国、「定期的な」為替介入中止 極端な変動は「効果的に管理」へ
Business | 2015年 08月 13日 18:45 JST

『[上海 13日 ロイター] - 中国人民銀行の易綱・副総裁は13日会見し、外為市場での「定期的な」介入はすでに中止したと述べる一方、極端な変動が見られた場合は人民元を「効果的に管理」する方針を示した。副総裁は、12日の市場で元買い介入を実施したのかとの質問に「人民銀行は定期的な介入からはすでに手を引いた」と発言。ただ、極端なショックや極端な為替変動が見られた場合は相場を「効果的に管理」すると述べた。ただ、人民銀行は、元安を食い止め、市場の動揺を収めるために動いているとみられる。市場筋によると、大手国有銀行は人民元買い・ドル売りを行っているもようで、人民元の対ドル相場は12日、取引終了間際に一時大幅に上昇した。』(上記URLより)

・・・・・・・ということで、昨日ネタにした12日の説明とか、そもそもの11日の説明とか、今回の説明とかを見ます(見ますと言ってもモノホンの説明は中国語なのでアタクシの語学力では読めませんので良くわからんが、流れて来るニュースヘッドラインを総合すると)と、(1)この先フロートにしようとしているのかペッグを維持しようとしているのかが分からん、(2)この先は兎も角目先に関して言えば管理フロートにしたいのは分かるが適正水準について確たるビューが本当にあるのかが謎、という印象がございます。

つまり、昨日の会見ですと「5%ほど切り下げたのでこれで無問題」ということになっているのですが、そうはいっても基本的に市場重視という話をしていますし、大体からして現時点では5%切り下げでオッケーとしてもその後の経済情勢の変化によっては適正水準が変化しうるでしょうし、そういう状況になった場合にどうするのというのは謎ですなあとしか思えん。


まあそれよりも今回の一連の動きを見て先行き不安しか感じないのは「コミュニケーションが一々後手に回っている」ということでありまして・・・・・・・・・・・

最初の11日のアナウンス
http://www.pbc.gov.cn/publish/english/955/2015/20150811090254817849287/20150811090254817849287_.html

こちらでは

『 Effective from 11 August 2015,the quotes of central parity that market makers report to the CFETS daily before market opens should refer to the closing rate of the inter-bank foreign exchange market on the previous day, in conjunction with demand and supply condition in the foreign exchange market and exchange rate movement of the major currencies.』

とあって、前日の終値の状況によって翌日のリファレンスレートを定める、という説明をしているにも関わらず、Q&Aの方では・・・・・・・・

http://www.pbc.gov.cn/publish/english/955/2015/20150811090338341860668/20150811090338341860668_.html

『First, after the improvement of the quotation of the RMB central parity, the market makers may quote by reference to the closing rate of the previous day and, therefore, the accumulated gap between the central parity and the market rate received a one-time correction. 』

と説明して「a one-time correction」とか言ってしまったのに翌日にまたリファレンスレートをいじったというのがトンマな話で、確かにアナウンスの言うとおりで前日終値が元安方向に大きく乖離していたので、アナウンスにあるような仕切りの通りにリファレンスレートを下げました、というだけの話だったのですが、Q&Aの方で「one-time correction」と余計なことを言ったが為に水曜もあばばばばーとなるの巻という結果になった訳ですよねこれって。

んでもって水曜の英文の説明もそうですし、昨日のもニュースを見る限りではそうなのですが、「とりあえず市場の大きな変動が起きるのは困る」という中国人民銀行の心意気だけは分かるのですが、問題はその心意気に対して出てくる政策手段の打ち方と市場とのコミュニケーションがうんこ状態になっている事でございまして、大体からして不意打ち政策出してから説明するわ、その説明で余計なことを言うから継続手段実施したら更に市場が不意打ちと見なすわとか、(慣れてないから仕方ない面はあるにせよ)もうそのクオリティがスットコドッコイでして涙を禁じえません。


とまあそういう動きでございますので、一旦「ここで止める」発言で止まっているような感じになっている中国為替ですけれども、この間抜けな市場コミュニケーションを見ておりますと、恐らくは暫くするとまた何かトンチキなプレイが炸裂するのではないかと思われますので、あまり安心しない方が吉と思われますし、まーこの一連のドタバタを見ていると一事が万事という言葉がありますように、為替市場だけじゃなくて経済政策とかに関してもちゃんとコントロールできるのか大丈夫かよというイメージが強まるのは致し方ないという風に思うのですがどうでしょうかねえ。

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2015/08/13

○人民元ヒャッハー

昨日はご案内の通りで10時13分くらいにPBCのリファレンスレートの公表タイムがあって、何と前日終値から1.6%ほど元安の水準でのレートが公表となって、確か前日は「1回の措置」って言ってなかったかというような事で大騒ぎの巻。

と申しましても、良く良く考えますと前日の公表文書(昨日ネタにした奴)でも「市場の終値を参考にしてリファレンスレートを決めますよ」とは言ってたので、そもそも論として一発限りの措置とは何ぞやという感じなのですが、その後PBCは中文で声明(というかFAQ形式の物)を出してきて、暫くして英文版が出てきました。

その間にヘッドラインも出ていたのですが、「継続的な元の下げは経済情勢を判断すると考えにくい」みたいなのありまして、でも「昨日申し上げたように前日の市場実勢からリファレンスレート決めたもんね」的なのがあったりとなっておりまして、何が何やらという感じなのですがまあ声明文(というかQ&A方式の説明)を見てみましょう。

http://www.pbc.gov.cn/publish/english/955/2015/20150812102954586841501/20150812102954586841501_.html
The PBC Spokesman Answered More Press Questions on the RMB Exchange Rate
2015-08-12 10:32:19

『1. Why does the central parity of RMB exchange rate against US dollar change nearly 1.6% on 12 August from that of 11 August?』

何で下げたんですかという説明。

『The central parity of RMB exchange rate against US dollar changed nearly 1.6% (in depreciation direction) on 12 August from that of 11 August. The main reason is that market makers make quotations based on the analysis of financial data of July newly released on 11 August and the announcement of improving central parity quotation of RMB exchange rate against US dollar on the same day.』

下げたのは昨日の人民元市場での価格が元安に振れてリファレンスレートからの乖離が大きくなったからです(キリッ)。

『Due to the existence of intra-day fluctuation in FX market, if the closing rate of previous day deviates significantly from the central parity of that day, the central parity of the following day will deviate from that of the previous day accordingly. The closing rate on 11 August was 6.3231 Yuan per US dollar, depreciating by 1.5% from the central parity on 11 August. This was the major reference for market makers to report quotation on 12 August.』

11日は当日のリファレンスレートから1.5%位元安になりましたからです(キリッ)。

『Other relevant factors include demand and supply condition in the foreign exchange market and exchange rate movement of major currencies. It is clear that under the managed floating exchange rate regime, the fluctuation of RMB central parity is normal, reflecting not only the enhancement of the market-orientation, but also the key role played by market demand and supply in the formation of exchange rate.』

為替市場の需給によって市場レートが調整される事に対応するというのは、マネージドフロート制度としてはRMBのリファレンスレートが動くのはノーマルですよとか何とか言っているようだが。

『After the announcement of improving quotation yesterday, it will take some time for the market makers to adjust quotation and trading practices, as well as explore and find the equilibrium price of the foreign exchange market.』

とか何とか言ってまして、「適切な均衡水準に達成するためには暫く時間を要するでしょう」という話をしているので、今後も動くという話をしているのがナンジャソラ。

『This may lead to potentially significant fluctuation of RMB central parity in the short run. After a short period of adaptation, the intra-day exchange rate movements and the resulting central parity fluctuation will converge to a reasonably stable zone.』

だそうなので、均衡水準になるまでは動くでしょとか能天気(かどうか知らんが)に説明しているのですが、そもそも論として為替の均衡水準言われましてもいろいろなファクターがある訳で、市場が動くことによってその均衡に影響を与えるという変化もあるんですからして、落とし所をどういう風に考えているのかというのと、そもそもそこで落とせるかどうか大丈夫かよという辺りが気になる所ではあるのですが。


『2. Will the central parity of RMB against US dollar converge to the equilibrium market rate?』

『As noted by several market observers, the improvement of central parity quotation helps reduce distortion and push central parity of RMB against US dollar towards the equilibrium market rate. Under the managed floating exchange rate regime, the market rate should fluctuate around the central parity, which serves as the benchmark exchange rate. The trading forces in the market will help correct divergence between the market rate and the central parity.』

という状況に足元なっていないのは現状が均衡水準じゃないから、という話をしたいようでこの次にこんなのが。

『Since the third quarter of 2014, China’s significant trade surplus and the appreciation of USD against other major currencies have affected the RMB exchange rate in different directions. Market makers’ expectation diverged, and market rate deviated from the central parity for an extended period.』

貿易収支の大黒字に加えてペッグしている通貨のUSドルが上昇したのでファンダメンタルからかい離した為替価格になっておりましたとのご認識。

『By improving quotation of market makers, we expect market demand and supply to play a bigger role in central parity formation. This should help prevent persistent divergence between central parity and market rate, enhancing the soundness of central parity as a benchmark.』

そのためリファレンス水準と市場レートの間に大きな乖離があってリファレンスとして遺憾だったので今回の改善をしましたよと市場追随の説明してるんだかファンダメンタル的に見た適正水準が頭にあってそこに誘導したい(たぶんそっちだが)という趣旨でこの話を持ってきているのかいまいち曖昧な説明。

『In the future, the RMB central parity will be formed, primarily by reference to the equilibrium market rate, and at the same time it will play a guiding role for the market rate.』

ということなので、将来的には管理フロートと言いつつ実質的にはフリーフロートに近い事を展望していますということのようで、前日はその辺がどうしたいのか曖昧な話しかなかった(というかその辺りは適当にぼやけていた)のですがまあそういうことみたいですね。


『3. Will RMB depreciate persistently in the future?』

でまあここの部分がヘッドラインニュースで出ていましたが。

『In view of both domestic and international economic and financial condition, currently there is no basis for persistently depreciation of RMB.』

いやあのジンバブエじゃないんだからpersistently depreciationはせんじゃろ。

『First, China registered a relatively rapid economic growth in the first half of 2015, facing complex and challenging environment both in China and abroad. China’s GDP grew by 7% during the six months ending 30 June 2015, which is considerably higher than most other major economies. The relatively large fluctuation of money supply and credit aggregates in July is temporary and tractable. China will continue to pursue prudent monetary policy. Recently, major economic indicators stabilized and showed good signs, which provides a favorable macroeconomic environment for a stable RMB.』

『Second, China has maintained a current account surplus for a long time. In the first seven months of 2015, the trade surplus of goods reached USD 305.2 billion. This is a fundamental factor in determining the supply and demand of foreign exchange, and is also an important foundation to support the RMB exchange rate. Third, in recently years, the RMB internationalization and opening up of domestic financial markets have accelerated. The international demand for RMB-denominated trade, investment and asset allocation is gradually increasing, which creates new momentum for stabilizing RMB exchange rate.』

『Fourth, the USD has been strengthening for some time due to the market expectation that FOMC will raise its policy rate this year, an event that is being absorbed by the market. We believe that the market will have a more rational judgment on exchange rate after the temporary shock of a rate hike.』

『Finally, China maintains abundant foreign exchange reserve, stable fiscal condition and a healthy financial system, which should help bolster a stable RMB exchange rate.』

「永遠に」RMBが切り下げになることはございませんぞなという説明をうだうだとしていますが、経済成長してますとか貿易黒字ですよとか、対米ドルでの関係で言えば米国が利上げしようとしているドル高のせいでもありますよとか、外貨準備ありますよとか、そんな話をしておりますが、そんなことはわかっとるわという説明でしかありませんで、結局この説明見ても「ところで何をどうしたいの」的な意図がイマイチこう分からんステートメントだったりしますので、まあ暫くは振り回されそうな悪寒がしますな。

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2015/08/12

○PBOCキタコレだが関連ページをペタペタ貼っておくだけの企画

昨日の話題はこれですな。
http://www.pbc.gov.cn/publish/english/955/2015/20150811090254817849287/20150811090254817849287_.html
The PBC Announcement on Improving Quotation of the Central Parity of RMB against US Dollar
2015-08-11 09:25:09

『For the purpose of enhancing the market-orientation and benchmark status of central parity, the PBC has decided to improve quotation of the central parity of RMB against US dollar. Effective from 11 August 2015,the quotes of central parity that market makers report to the CFETS daily before market opens should refer to the closing rate of the inter-bank foreign exchange market on the previous day, in conjunction with demand and supply condition in the foreign exchange market and exchange rate movement of the major currencies.』

PBOCのページはちょっと普段フォローしていないのでまあ貼り付けてみたという程度ですが・・・・・・

http://www.pbc.gov.cn/publish/english/955/2015/20150811090338341860668/20150811090338341860668_.html
The PBC Spokesman Answered Press Questions on Improving Quotation of the RMB Central Parity
2015-08-11 09:26:08

ということでQ&A(というかFAQ)がついているみたい。

『1.Why choosing the current time to improve quotation of the central parity of RMB against US dollar?』

何で今実施しましたねんと。

『Currently, the international economic and financial conditions are very complex. The U.S. economy is recovering and markets are expecting at least one interest rate hike by the FOMC this year. As such, the U.S. dollar is strengthening, while the Euro and Japanese Yen are weakening. Emerging market and commodities currencies are facing downward pressure, and we are seeing increasing volatilities in international capital flow.』

ほうほうそれでそれで?

『This complex situation is posing new challenges. As China is maintaining a relatively large trade surplus, RMB’s real effective exchange rate is relatively strong, which is not entirely consistent with market expectation. Therefore, it is a good time to improve quotation of the RMB central parity to make it more consistent with the needs of market development.』

最初の所でRMBが強くて貿易黒字が大きくなってという話をしていまして要は通貨下げて輸出ドライブという話ですから、そらまあ中国が輸出ドライブとなると競合国的にはぐぬぬとなりますな。

『Since the reform of the foreign exchange rate formation mechanism in 2005, the RMB central parity, which serves as the benchmark of China’s exchange rate, has played an important role in market expectation and stabilizing RMB exchange rate. Recently, however, the central parity of RMB has deviated from the market rate to a large extent and with a larger duration, which, to some extent, has undermined the market benchmark status and the authority of the central parity.』

『Currently, the foreign exchange market is developing in a sound manner, and market participants are increasingly strengthening their pricing and risk management capacities. The market expectation of RMB exchange rate is diverging, and the preconditions for improving quotation of the RMB central parity are becoming mature. Improving the market makers’ quotation will help enhance the market-orientation of RMB central parity, enlarging the operation room of market rate and enabling the exchange rate to play a key role in adjusting foreign exchange demand and supply.』

市場の動きに対してフォローした形での改革みたいな話をしてはいるものの、まあそれって言い訳でしょと思う訳で、別に本当のフロートにするというような話ではないのですが、つーてもこうやってどーんと下げると「次はいつ追加が出るの」的なお話になると思われ。


『2.Why did the central parity of RMB against US dollar of 11 August change by nearly 2% compared to that of 10 August?』

何ででしょうかねえ。

『We noticed that the central parity of RMB against US dollar of 11 August changed (in the depreciation direction) by nearly 2% compared to that of 10 August. The following two factors may be relevant.』

ほほう。

『First, after the improvement of the quotation of the RMB central parity, the market makers may quote by reference to the closing rate of the previous day and, therefore, the accumulated gap between the central parity and the market rate received a one-time correction. Second, a series of macro economic and financial data released recently made the market expectation diverge. Market makers paid more attention to the changes of market demand and supply. Compared with the closing rate of 6.2097 Yuan per dollar in the previous day, today’s central parity depreciated by about 200 bps. The market still needs some time to adapt. The PBC will monitor the market condition closely, stabilizing the market expectation and ensuring the improvement of the formation mechanism of the RMB central parity in an orderly manner.』

なおRMBの為替がどうのという話まではアタクシもあまり手が回っていないので詳しい人に聞いてちょというところですが、一応この説明を受けると「2%ほどRMBを下げてみましたが当面はこの水準で推移させるので宜しくお願いしますね、ああ市場がそこに慣れてくるまで少々お時間掛かるんですかねえ」的な説明で、今後一段の下げをするという話はしていませんけれども、まあ実際問題としてはそんなの考えてもよー言わんのでそこは一応こういう説明になっている、というだけの話で。

『3.RMB exchange rate reform: what’s next?』

という位ですから一応「為替市場改革」みたいなものの一環(キリッ)という建付けなんですよね。

『Next, the reform of RMB exchange rate formation mechanism will continue to be pushed forward with a market orientation. Market will play a bigger role in exchange rate determination to facilitate the balancing of international payments.』

でまあ(さっき引用したURL先にもありましたが)今回の為替市場改革に関しては、一応「前日の市場の終値を参照にして基準値を決めて、より市場の実勢を反映させた形で出しますよ」という話にはなっているので、別にこれでフロートになるとかそういう話ではないにせよ、一応先行きのRMB安への期待も出るんでしょ。

『Foreign exchange market development will be accelerated and foreign exchange products will be enriched. In addition, the PBC will push forward the opening-up of the foreign exchange market, extending FX trading hours, introducing qualified foreign institutions and promoting the formation of a single exchange rate in both on-shore and off-shore markets. Based on the developing condition of foreign exchange market and the macroeconomic and financial environment, the PBC will enhance the flexibility of RMB exchange rate in both directions and keep the exchange rate basically stable at an adaptive and equilibrium level, enabling the market rate to play its role, and improving the managed floating exchange rate regime based on market demand and supply.』

取引時間延長したりオフショア市場の改革をするとか、なんかまあ一応そういう話も入っているのですが、何せアタクシRMBの為替市場どうのこうのは不勉強にてメカニズムがイマイチわかっていない(というかそもそもここは経済指標からして官製大本営発表状態だからと思っていたりしますが、汗)ので詳しい人教えてジェネラルなのでした。

『Currently, under the complex international economic and financial condition, we are seeing increasingly large and volatile cross-border capital flow. As such, the PBC and SAFE will strengthen the examination of banks’ FX transactions according to relevant laws and regulations, adopt effective measures to fight money laundering, terrorist financing and tax evasion activities, and improve the monitoring of suspicious cross-border capital flow. The PBC and SAFE will severely punish illegal FX transactions, including underground banks, and maintain a compliant and orderly capital flow.』

内外の資本移動も増えているのでその辺りもより円滑にしますとかそんな話もしてるのね。



・ECB関連ですがAPPの前倒しキタコレなのか????

さぼっていましてすいません。

http://www.ecb.europa.eu/press/pr/wfs/2015/html/fs150811.en.html
http://www.ecb.europa.eu/press/pr/wfs/2015/html/fs150804.en.html
http://www.ecb.europa.eu/press/pr/wfs/2015/html/fs150721.en.html

8/7残高と前週比増加額
CBPP3 EUR 106.6 billion +EUR 2.6 billion -
ABSPP EUR 10.6 billion +EUR 0.9 billion -
PSPP EUR 259.7 billion +EUR 10.8 billion -

7/31残高と前週比増加額
CBPP3 EUR 104.0 billion +EUR 2.3 billion -
ABSPP EUR 9.7 billion +EUR 0.3 billion -
PSPP EUR 248.9 billion +EUR 11.0 billion -

7/24残高と前週比増加額
CBPP3 EUR 101.7 billion +EUR 1.5 billion -
ABSPP EUR 9.5 billion +EUR 0.1 billion -
PSPP EUR 237.9 billion +EUR 10.3 billion -

ということで、「夏枯れに備えて前倒しで購入」とか言ってたの結局8月の週次で入り繰りをするだけで済ませようという感じになっているのがお洒落というか何というか。まあ当初は金利が馬鹿下げして「Majiで買えない5秒前」(若者は元ネタ知らんですかそうですか)って感じでしたから色々と気にしていたようですが、なんかとりあえず市場機能とかそういう話はともかくとして、追加緩和とか
そういう思惑が飛んでしまって経済指標がまずますで、先行きの市場の見方が追加緩和から出口の方になると買入は割と回るというオソロシイ状態なのですが、欧州市場の需給の細かい話になるとちょっと土地勘がございませんのでその辺はちょっと論評を逃げておきます(大汗)。

ちなみに7月の推移はこちらでして、まあ基本的に直近だけペースが上がっているような気がします。

7/17残高と前週比増加額
CBPP3 EUR 100.2 billion +EUR 1.9 billion -
ABSPP EUR 9.4 billion +EUR 0.1 billion -
PSPP EUR 227.6 billion +EUR 11.2 billion -

7/10残高と前週比増加額
CBPP3 EUR 98.2 billion +EUR 2.2 billion
ABSPP EUR 9.3 billion +EUR 0.4 billion -
PSPP EUR 216.3 billion +EUR 11.7 billion

7/3残高と前週比増加額
CBPP3 EUR 96.1 billion +EUR 1.8 billion -EUR 0.3 billion
ABSPP EUR 8.9 billion +EUR 0.3 billion
PSPP EUR 204.7 billion +EUR 10.2 billion -EUR 0.6 billion

#マイナスは償還とかその手の要因です

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2015/08/11

○フィッシャー副議長発言とか

・フィッシャー副議長のブルームバーグインタビュー

該当インタニュー記事はこちら。
http://www.bloomberg.com/news/articles/2015-08-10/fischer-says-low-inflation-won-t-persist-as-labor-market-heals
Fischer Says Temporary Inflation Factors Still a Fed Concern
August 10, 2015 - 9:00 PM KST Updated on August 11, 2015 ? 4:55 AM KST

『Federal Reserve Vice Chairman Stanley Fischer said low U.S. inflation, while probably restrained by temporary factors, remains a concern as the labor market nears a sweet spot.』

という解説ですが・・・・・・・・

『“A large part of the current inflation is temporary,” Fischer said in an interview Monday with Tom Keene on Bloomberg Television. After the effects of cheaper oil and other raw materials dissipate, “these things will stabilize at some point, so we’re not going to be as low as we are forever.”』

『Fischer’s remarks indicate that while he’s pleased with progress on employment, he may be waiting for signs inflation will start moving up toward the central bank’s target. The Federal Open Market Committee meets Sept. 16-17 for a gathering at which many investors and economists expect it will raise interest rates for the first time in almost 10 years.』

『“Employment has been rising pretty fast relative to previous performance, and yet inflation is very low,” he said. “And the concern about this situation is not to move before we see inflation, as well as employment, returning to more normal levels.”』

ということで、労働市場に関しては問題ないのだが物価がアガランチ会長なのを問題視、という話をしているようなのですが、この記事フィッシャーさんのコメント部分が少な目でブルームバーグの能書きと、最後には情報会社のアナリストのコメントまで出しているので、実際どの程度のニュアンスなのかが微妙ではありますが、要は「物価がマンデートに向けた上昇をするというのを確認したい」という話をしているっぽい。

あとフィッシャーさんの発現引用部分はこちら。

『“The problem is not with the part that’s unusual in the dual mandate, namely employment, that’s doing just fine,” Fischer, 71, said. “It’s with the inflation part.”』

つーことでまあここがポイントということなのでしょうが、足元の物価がテンポラリーであって今後堅調に推移していく、というのを確認したいから今は決め打ちできません、という話をしているのですけれども、一方で同日にコウモリ派のロックハート総裁が先日のWBSインタビュー記事の念押し講演をしていたりしますので、まあ利上げに関しては色々と観測気球を上げて様子を見ながら物価を確認しようってな話なんでしょうね。なお物価がバンバン上がらないと利上げ着手できないという訳でも無くて、いわゆる「基調の確りさを確認」したらという話になるとは思いますがね。


・ロックハート総裁講演

https://www.frbatlanta.org/news/speeches/2015/0810-lockhart.aspx
https://www.frbatlanta.org/-/media/Documents/news/speeches/2015/0810-lockhart.pdf
A Story of Economic Progress

Dennis Lockhart
President and Chief Executive Officer
Federal Reserve Bank of Atlanta

Atlanta Press Club Speech
Atlanta, Georgia
August 10, 2015

本文を本当は読むところですけれども、めんどいので本日は最初のサマリーの所をば。

『・Atlanta Fed President and CEO Dennis Lockhart, in an August 10, 2015, speech to the Atlanta Press Club, discusses the economic progress achieved since the Great Recession and the anticipated FOMC decision to move the federal funds rate off zero.』

ということで・・・・・・・・

『・Lockhart says that from its peak of 10 percent, the rate of unemployment has fallen to 5.3 percent. However, the average rate of inflation over the six-plus years of recovery has been 1 1/2 percent. He expects to see convincing evidence emerge that inflation is rising to a safer level and approaching the FOMC's 2 percent target.』

まあ当然ではありますがフィッシャーさんと同じで「雇用に関してはよろしい」という話で、問題の物価に関しては物価2%については「He expects to see convincing evidence emerge」ということで「上昇するより確かなエビデンスが現れます(キリッ)」という辺りは微妙。

『・Lockhart reiterates that the economy has made great gains and is approaching an acceptable normal, and policy should shortly acknowledge this reality. He is prepared to see mixed data, but he thinks the time to begin normalizing monetary conditions is close.』

まーでも利上げしまっせー状態なのでフィッシャーさんのアレよりは利上げ前のめり感が強いというかどう見ても利上げ派です本当にカムサハムニダになっているけど、この辺ミックスして情報が出ているのは市場に対して様子見とかしてるんじゃネーノ的なサムシングを。

『・Lockhart stresses that the path of interest-rate increases will likely be gradual and such a stance of policy will be appropriate for some time after liftoff.』

でまあこれは例のFRBスタッフ見通しお漏らし騒動からもそうなのですが、基本的に「金利誘導の世界には戻すけれども長期金利が跳ねられても困るからそうならないように長期的にはハトちっくな情報発信を継続する」というスタンスが見えるなあ、とまあそういう感じの最近の通常運転ちゃあ通常運転なのでありましたとさという所で。

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2015/08/10

・雇用統計でしたな

結果はこれでしたが
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NSPUBOSYF01V01.html
7月米雇用者数:21万5000人増−失業率と労働参加率は横ばい
2015/08/08 00:09 JST


http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NSQ97XSYF01Y01.html
米国債(7日):利回り格差が縮小−景気懸念で長期債に買い
2015/08/08 06:54 JST


http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NSPQ186VDKHS01.html
NY外為:ドル指数が一時4カ月ぶり高水準、雇用統計に反応
2015/08/08 06:51 JST

・・・・・・・どっちですねんという感じですが、2年の金利はちょっと上がったんですから、「やっぱりこの程度で推移するなら9月利上げあるで」なんですが「とはいっても別に景気が過熱してヒャッハーという訳ではないから長期債まで叩き売るに及ばす」ということですかそうですか。これだけ見ても何が何やらという感じですが。

しかしまあ何ですな、さっきの黒田総裁会見の中(なので今日ネタにしますが)で米国の利上げに関する質疑応答があったんですが、黒田総裁はその中で(さっきの記事中にもあります)「米国の利上げが遅すぎるリスクと早すぎるリスクについては早すぎるリスクが問題」というようなコメントをしていた訳なのですが、今回の米国って前回の正常化が「中立金利までの利上げをメジャードペースで実施出来るくらいに自信が持てた時点で事前予告をしてから正常化を行う」というアプローチをやった結果としてクレジットバブルというか住宅バブルというかサブプライムバブルを盛大に発生させて今に至る、という反省はさすがにあるように見える訳で(公式にそういう言い方は避けてるけど)、今のアプローチって「超緩和政策からの正常化が遅すぎること」に対しても結構なリスク認識をもっているからこその産物なんじゃネーノと思う訳で、黒田総裁の認識が一昔前で止まってないかという疑念が湧き起ったりするのでありましたとさ。

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2015/08/07

○BOEだがこれは寝起きではキツイので声明文っぽい所だけで勘弁願いたい

昨日はロンドンの地下鉄がストライキで全部止まっていた(というか先月もやってたんですが)とのことでしたが政策決定会合は何の問題もなく実施して何の問題もなく紙は出るのでありました。

http://www.bankofengland.co.uk/publications/Pages/news/2015/008.aspx
Bank of England maintains Bank Rate at 0.5% and the size of the Asset Purchase Programme at £375 billion
06 August 2015
Monetary policy summary, August 2015

Available as PDF

ということで、上記URL先ですとそこのPDFの所にアイコンがあって、そちらをポチっとなとすると声明文みたいなのとミニッツみたいなのが融合されたのが見れます。

http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/Documents/mpc/pdf/2015/aug.pdf
Monetary policy summary and minutes of the Monetary
Policy Committee meeting ending on 5 August 2015
Publication date: 6 August 2015


で、構成なのですが、決定内容とその背景を示した日銀で言えば声明文だしFOMCで言えばステートメントのようなものが登場しているのが『Monetary policy summary, August 2015』というのと、『Minutes of the Monetary Policy Committee meeting ending on 5 August 2015』という従来から出ている議事要旨というのがあります。

でまあそれを寝起きで読めと言われましても最近冷房が無いと眠れないだけの事はあって、朝は冷房パワーでヘロヘロになっていまして従来以上に思考力が落ちてしまいますので(いいわけ)、とりあえずステートメントの所でもサラサラと。利上げ近いしミニッツは週末の読書課題として真面目に読みますけど(ちなみに議事要旨の書きっぷりだけ斜め読みすると、書いてある分量と構成は昔と変わっていません、内容の濃さは斜め読みだとイマイチ分からんが)。


『Monetary policy summary, August 2015』

ほいな。

『The Bank of England’s Monetary Policy Committee (MPC) sets monetary policy in order to meet the 2% inflation target and in a way that helps to sustain growth and employment. At its meeting ending on 5 August 2015, the MPC voted by a majority of 8-1 to maintain Bank Rate at 0.5%. The Committee voted unanimously to maintain the stock of purchased assets financed by the issuance of central bank reserves at £375 billion, and so to reinvest the £16.9 billion of cash flows associated with the redemption of the September 2015 gilt held in the Asset Purchase Facility.』

金利据え置きは8-1での賛成多数ですが、市場的にはもうちょっと割れるというという予想だったようですな。でまあBOEの場合はAPPの残高を維持するときの作業としては、BOEの保有銘柄は現金償還されるようで、その分を再投資するという話をしていますね。


・最初が物価の話

『CPI inflation fell back to zero in June. As set out in the Governor’s open letter to the Chancellor, around three quarters of the deviation of inflation from the 2% target, or 1-1/2 percentage points, reflects unusually low contributions from energy, food, and other imported goods prices. The remaining quarter of the deviation of inflation from target, or 1/2 a percentage point, reflects the past weakness of domestic cost growth, and unit labour costs in particular. The combined weakness in domestic costs and imported goods prices is evident in subdued core inflation, which on most measures is currently around 1%.』

CPIがゼロ近傍になっている件ということで物価に関してはインフレレポートの方に出ている(まだネタにしていないというか読んでない、汗)のですけれども、足元でエネルギー、コモディティー要因で0.75〜1.50%ほど押し下げの刑を食らっていて、0.25%〜0.50%ほどは国内の主にユニットレーバーコストの伸びが弱い事だそうで、コストの伸びの弱さと輸入物価の合わせ技によっておそらくコアインフレを1%は下げているという説明をしておるように見える。

『With some underutilised resources remaining in the economy and with inflation below the target, the Committee intends to set monetary policy in order to ensure that growth is sufficient to absorb the remaining economic slack so as to return inflation to the target within two years. Conditional upon Bank Rate following the gently rising path implied by market yields, the Committee judges that this is likely to be achieved. 』

経済のスラックに関しては徐々に解消という毎度の見通しですが、市場がインプライする政策金利パス、すなわち徐々に政策金利が上昇するというパスになっているのですが、それを織り込んだとしても2年程度でインフレ目標の水準に近くなる程度の所まで経済のスラックは解消していくとのお告げ。


・経済アセスメント

『In its latest economic projections, the Committee projects UK-weighted world demand to expand at a moderate pace. Growth in advanced economies is expected to be a touch faster, and growth in emerging economies a little slower, than in the past few years. The support to UK exports from steady global demand growth is expected to be counterbalanced, however, by the effect of the past appreciation of sterling. Risks to global growth are judged tobe skewed moderately to the downside reflecting, for example, risks to activity in the euro area and China.』

海外経済がモデレートに成長するので輸出はモデレートに伸びるでしょうという毎度思うのだが主要国中銀基本この話になっていて、では誰がドライバーなのかというのがアレ(まあ米国なんでしょうけれども)。なおポンド高が輸出を抑制というのと、ユーロ圏と中国に関してはダウンサイドのリスクを見ていますな。

『Private domestic demand growth in the United Kingdom is expected to remain robust. Household spending has been supported by the boost to real incomes from lower food and energy prices. Wage growth has picked up as the labour market has tightened and productivity has strengthened.』

民間需要はロバストだそうで。

『Business and consumer confidence remain high, while credit conditions have continued to improve, with historically low mortgage rates providing support to activity in the housing market. Business investment has made a substantial contribution to growth in recent years. Firms have invested to expand capacity, supported by accommodative financial conditions. Despite weakening slightly, surveys suggest continued robust investment growth ahead. This will support the continuing increase of underlying productivity growth towards past average rates.』

てなわけで、先行きの企業投資に関してややサーベイベースの見通しが怪しいものの、この民間需要がロバストであるというようなお話の内容を見ますと雇用所得は良いわコンフィデンスは良いわ金融環境が良くて企業活動も強いわという良いことずくめな説明。


『Robust private domestic demand is expected to produce sufficient momentum to eliminate the margin of spare capacity over the next year or so, despite the continuing fiscal consolidation and modest global growth. This is judged likely to generate the rise in domestic costs expected to be necessary to return inflation to the target in the medium term. 』

で、民間需要がロバストなので経済のスラックも解消しますよ財政再建していても問題無いよヒャッハーとやたら強い見通し。


・先行き物価見通し

『The near-term outlook for inflation is muted. The falls in energy prices of the past few months will continue to bear down on inflation at least until the middle of next year. Nonetheless, a range of measures suggest that medium-term inflation expectations remain well anchored. There is little evidence in wage settlements or spending patterns of any deflationary mindset among businesses and households.』

物価そのものの上昇は近いタームですぐには上がらんということで、来年半ばまではエネルギー価格の過去数か月の下落が影響するという中々先の方まで上がらんという見通しですが、インフレ期待がアンカーされている(キリッ)だそうですよ。


・為替相場・経済のスラックについて

『Sterling has appreciated by 3-1/2% since May and 20% since its trough in March 2013. The drag on import prices from this appreciation will continue to push down on inflation for some time to come, posing a downside risk to its path in the near term.』

£上昇で物価低下圧力が近いタームでありますよと。

『Set against that, the degree of slack in the economy has diminished substantially over the past two and a half years. The unemployment rate has fallen by more than 2 percentage points since the middle of 2013, and the ratio of job vacancies to unemployment has returned from well below to around its precrisis average. The margin of spare capacity is currently judged to be around 1/2% of GDP, with a range of views among MPC members around that central estimate.』

経済のスラックは現状でGDPの0.5%程度という測定をしているのね。なおこちらの話は基本的に見通し通りに推移したらスラックが解消に向かいますよウヘヘヘヘという威勢の良い話。

『A further modest tightening of the labour market is expected, supporting a continued firming in the growth of wages and unit labour costs over the next three years, counterbalancing the drag on inflation from sterling.』

労働市場が今後も逼迫するので賃金上昇圧力が掛かり、これがポンド高の物価高を相殺して物価にプラス、という話ですが、自国通貨が下がって物価が上がってヒャッハーと大勝利宣言したら物価上昇に賃金が追いつかずに消費がコケて泣きながら追加緩和をしたどこぞの国とはだいぶ違いますな。


・政策判断に関する部分と思われる辺り

『Were Bank Rate to follow the gently rising path implied by market yields, the Committee judges that demand growth would be sufficient to return inflation to the target within two years.』

2年程度で物価はターゲット水準に戻るとの見通しとな。

『In its projections, inflation then moves slightly above the target in the third year of the forecast period as sustained growth leads to a degree of excess demand.』

その後ディマンドが超過するから物価は若干ターゲット以上になるとかこらまた威勢が良い。

『Underlying those projections are significant judgements in a number of areas, as described in the August Inflation Report.』

すいませんまだちゃんと読んでません(汗)。

『In any one of these areas, developments might easily turn out differently than assumed with implications for the outlook for growth and inflation, and therefore for the appropriate stance of monetary policy. Reflecting that, there is a spread of views among MPC members about the balance of risks to inflation relative to the best collective judgement presented in the August Report.』

うむ。

『At the Committee’s meeting ending on 5 August, the majority of MPC members judged it appropriate to leave the stance of monetary policy unchanged at present. Ian McCafferty preferred to increase Bank Rate by 25 basis points, given his view that demand growth and wage pressures were likely to be greater, and the margin of spare capacity smaller, than embodied in the Committee’s collective August projections.』

ということで、利上げ理由に関してもガチの正統派な見解ですが、そもそも論としてMPCの全体のビューだけ見たら別にまあ今回利上げしても良かったんじゃない程度の見通しにはなっているのですが、先に米国に地雷原を突破してもらってから利上げをするとかそういう事なのですかねえ。

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2015/08/05

・ロックハート総裁が利上げ示唆とな

件のWSJの記事は当然のように会員じゃないと詳しくは読めないのだが、さわりの所はきっちり書いているのがニクイね!

http://www.wsj.com/articles/atlanta-feds-lockhart-fed-is-close-to-being-ready-to-raise-short-term-rates-1438709252
Atlanta Fed’s Lockhart: Fed Is ‘Close’ to Being Ready to Raise Short-Term Rates
Lockhart says September could be ‘appropriate time’ to lift interest rate
By Jon Hilsenrath Updated Aug. 4, 2015 3:33 p.m. ET

キタコレ!!!

『Federal Reserve Bank of Atlanta President Dennis Lockhart said the economy is ready for the first increase in short-term interest rates in more than nine years and it would take a significant deterioration in the data to convince him not to move in September.』

『“I think there is a high bar right now to not acting, speaking for myself,” Mr. Lockhart said in an exclusive interview with The Wall Street Journal.』(上記URL先より、以下は会員用記事になります)

ということで、特段の悪材料が無ければ利上げを9月に、という話でそらまあウヒョーとなるんでしょうが、先日来夏休み企画チックに投下している2005年における出口政策への準備モード時代での議事録を鑑賞しておりますと分かりますように、出口政策にある程度の時間がかかる、ということを勘案した場合には、現実問題としては「出口のプロセスを逆算した行動」というのをどうしても意識したくなる、というのはある筈なのですよね(ただし逆算の出口を実施した場合、それが外れだった場合にクレディビリティの面から悲惨なことになる)。

でまあ最終的に中立金利水準に短期金利を引き上げないといけないのだが、前回のFEDの正常化局面では中立金利水準に短期金利を上げるのヘーキヘーキというタイミングまで引っ張ってから利上げに着手したので、事前予告とかしやすかったのですが、恐らくそこまで引っ張った結果正常化着手が遅れて金融不均衡が発生したという評価になっているんじゃないですかね、表向きは兎も角として中のひとたち的には。

でもって今回はそもそもTaperingから始めているのでエライ時間のかかるプロセスになっていて、この時間のかかりっぷりをどう評価しているのかが良くわからん(意見はバラバラっぽい)のですが、中立金利水準に引き上げるまでの時間もかかるような上げ方をするとなりますと、初回の利上げを引っ張ってもあまりメリットは無いでしょうな。

あと、政策対応の糊代作っておくためには利上げをしておくという話もあって、ゼロ金利制約から早く逃れておきたいというのが基本だとは思うのですが、もうひとつアタクシが思うのは非伝統的金融政策からの出口を模索する際っていうのは(と言っても2005年の日銀と今回のFEDしかありませんが)、出口プロセスの途中で従来のロジックを古ゾウリの如く捨てていく「説明の非対称性」が発生する傾向にあるので、いったん出口方向になった後にまた戻す時は政策波及効果やルートの説明が苦しくなってくると思うのですよ。でもその際に金利プラス状態まで戻しておけば、まず金利での政策対応で難なく説明できる部分があるので(本当は「解除してもまだ緩和的な状態」と言ってるのに利下げしてどれだけ追加的な効果あるの?というツッコミをされると困ると思うのだが、さすがに「利下げ」のインパクトは強いので)まあそんなこんなで糊代作りたい、という感じになっていますなFEDは、という雑感なのでした。

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2015/07/30

○寝起きでFOMCだが分かりやすい示唆出さないって僕言いましたよね!

http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20150729a.htm(今回)
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20150617a.htm(前回)

・第1パラグラフ:景気認識のパートはエネ価格以外は上方修正

『Information received since the Federal Open Market Committee met in June indicates that economic activity has been expanding moderately in recent months.』(今回)
『Information received since the Federal Open Market Committee met in April suggests that economic activity has been expanding moderately after having changed little during the first quarter.』(前回)

この総括判断ですが、「1Qちょっと弱かったのから改善して」というのが抜けたのは兎も角として、「economic activity has been expanding moderately」という基本認識は同じなのですが、ここまで得られた情報がその基本認識を「indicates」となっていて、前回が「suggests」ということで、動詞が変わっているのですな。

でもってこちとらジャパンドメドメ人間なのでこの変化をどういうニュアンスとして理解すれば良いのかがデイリーコンサイス英和辞典引きながらレベルなのが残念なのですが、「示唆する」が「示す」になったんですから経済の拡大に関する認識が強まったという事になると思うのですけれどもどうですかねえ(てきとう)。

でもって今回は語順が変わっているので、今回のに合わせて前回のを引用しますので、前回分は引用語順が変わってまいりますのでよろしゅうに。

『Growth in household spending has been moderate and the housing sector has shown additional improvement; however, business fixed investment and net exports stayed soft.』(今回)
『Growth in household spending has been moderate and the housing sector has shown some improvement; however, business fixed investment and net exports stayed soft.』(前回)

住宅セクターに関する評価が「some improvement」から「additional improvement」に変わっていますので上方修正。家計と企業の投資と純輸出に関しての評価は同じですね。

『The labor market continued to improve, with solid job gains and declining unemployment. On balance, a range of labor market indicators suggests that underutilization of labor resources has diminished since early this year.』(今回)
『The pace of job gains picked up while the unemployment rate remained steady. On balance, a range of labor market indicators suggests that underutilization of labor resources diminished somewhat.』(前回)

労働市場に関する表現はかなり強くなっていて、一発目に「The labor market continued to improve」とぶちかましていまして、更に労働の増加に関しての表現も「picked up」から「solid job gains」になり、失業に関しても「remained steady」から「declining unemployment」になっていますし、労働市場のスラックに関する表現もスラックが「diminished somewhat」「has diminished since early this year」と、これもまた強くなっていて、労働市場に関する表現はやたら強くなったなあという感じです。

『Inflation continued to run below the Committee's longer-run objective, partly reflecting earlier declines in energy prices and decreasing prices of non-energy imports. Market-based measures of inflation compensation remain low; survey?based measures of longer-term inflation expectations have remained stable.』(今回)

『Inflation continued to run below the Committee's longer-run objective, partly reflecting earlier declines in energy prices and decreasing prices of non-energy imports; energy prices appear to have stabilized. Market-based measures of inflation compensation remain low; survey-based measures of longer-term inflation expectations have remained stable.』(前回)

物価に関してですが、エネルギー等の輸入価格の影響ガーとかインフレ期待は安定している(これは安定していないというアセスメント出したら政策アクション直結なのでそれ以外のものは出てこないでしょうが)という話は同じなのですが、前回にあった「energy prices appear to have stabilized」というのが抜けて残念無念というかぐぬぬという所でして、まあここに関しては「原油価格の安定という見通しが遅れるから利上げは先に延びた」という解釈をすることも可能だと思いますが、次のパラグラフで先行き見通しがあるのですが、こいつが一言半句変更なし、という状況になっている所からして、「原油価格の一時的な動きではなくて重要なのは基調の見通し(キリッ)」という理屈が飛び出すの巻で大きく変化させるという事でも無かろうという解釈をすることも可能で、どちらかというと後者押しのアタクシ(別に前者の考えが無いとは言わない)。


・第2パラグラフ:見通し部分は盛大に全文一致

全文一致なのに比較するのも何ですが並べてご確認くらはい。

『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability.』(今回)
『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability.』(前回)

これはいつもの呪文みたいなもん。

『The Committee expects that, with appropriate policy accommodation, economic activity will expand at a moderate pace, with labor market indicators continuing to move toward levels the Committee judges consistent with its dual mandate.』(今回)

『The Committee expects that, with appropriate policy accommodation, economic activity will expand at a moderate pace, with labor market indicators continuing to move toward levels the Committee judges consistent with its dual mandate.』(前回)

これまた同じ。

『The Committee continues to see the risks to the outlook for economic activity and the labor market as nearly balanced. Inflation is anticipated to remain near its recent low level in the near term, but the Committee expects inflation to rise gradually toward 2 percent over the medium term as the labor market improves further and the transitory effects of earlier declines in energy and import prices dissipate. The Committee continues to monitor inflation developments closely.』(今回)

『The Committee continues to see the risks to the outlook for economic activity and the labor market as nearly balanced. Inflation is anticipated to remain near its recent low level in the near term, but the Committee expects inflation to rise gradually toward 2 percent over the medium term as the labor market improves further and the transitory effects of earlier declines in energy and import prices dissipate. The Committee continues to monitor inflation developments closely.』(前回)

ということで見通しとしての文言は全く持って全文一致キタコレであります。


・第3パラグラフ:金利政策運営に関する文章では1か所だけ謎の(謎ではないが)単語「some」が入ったよ

『To support continued progress toward maximum employment and price stability, the Committee today reaffirmed its view that the current 0 to 1/4 percent target range for the federal funds rate remains appropriate. In determining how long to maintain this target range, the Committee will assess progress--both realized and expected--toward its objectives of maximum employment and 2 percent inflation. This assessment will take into account a wide range of information, including measures of labor market conditions, indicators of inflation pressures and inflation expectations, and readings on financial and international developments.』(今回)

『To support continued progress toward maximum employment and price stability, the Committee today reaffirmed its view that the current 0 to 1/4 percent target range for the federal funds rate remains appropriate. In determining how long to maintain this target range, the Committee will assess progress--both realized and expected--toward its objectives of maximum employment and 2 percent inflation. This assessment will take into account a wide range of information, including measures of labor market conditions, indicators of inflation pressures and inflation expectations, and readings on financial and international developments.』(前回)

今回は金利政策に変更ありませんよああそれから金利を変更する際には足元および先行きの見通しがマンデートにきっちり向かっているかどうかを判断して決めますけどその時には特定の経済指標だけではなくて幅広い経済の状況やインフレ期待や金融市場や海外の動向なども見ますよ。とまあここも前回と同じ。

『The Committee anticipates that it will be appropriate to raise the target range for the federal funds rate when it has seen some further improvement in the labor market and is reasonably confident that inflation will move back to its 2 percent objective over the medium term. 』(今回)

『The Committee anticipates that it will be appropriate to raise the target range for the federal funds rate when it has seen further improvement in the labor market and is reasonably confident that inflation will move back to its 2 percent objective over the medium term.』(前回)

ということで、今回変わったのは利上げタイミングに関しての話の部分で、利上げに対しては労働市場のさらなる改善と中期的に物価が2%レベルのマンデート水準に戻るという見通しが妥当であるという自信が出来たときですよーんという所で、物価の所は相変わらず「reasonably confident」という表現になりますけれども、労働市場に関しては前回が「when it has seen further improvement」だったのが、今回は「 when it has seen some further improvement」となっていて、この「some」ってのが入ったのは条件を厳しくしたのか緩くしたのかどっちですねんっていう謎文言。

とは申しましても、その前の所で労働市場の認識を散々強くしていますので、この「some」というのは「あとちょっと」という事と理解するのが自然のような気がします。


・第4パラグラフ:資産買入に関しても全文一致

『The Committee is maintaining its existing policy of reinvesting principal payments from its holdings of agency debt and agency mortgage-backed securities in agency mortgage-backed securities and of rolling over maturing Treasury securities at auction. This policy, by keeping the Committee's holdings of longer-term securities at sizable levels, should help maintain accommodative financial conditions.』(今回)

『The Committee is maintaining its existing policy of reinvesting principal payments from its holdings of agency debt and agency mortgage-backed securities in agency mortgage-backed securities and of rolling over maturing Treasury securities at auction. This policy, by keeping the Committee's holdings of longer-term securities at sizable levels, should help maintain accommodative financial conditions.』(前回)

相変わらず変わらないのですが、出口政策の時にいつまでバランスシートの大きな状態を引っ張っていられるかというのは注目したいところです。まずは金利を上げてからの話となるようですが。


・第5パラグラフ:利上げしてもペースは緩やかという話も全文一致

今回も同じ。

『When the Committee decides to begin to remove policy accommodation, it will take a balanced approach consistent with its longer-run goals of maximum employment and inflation of 2 percent. The Committee currently anticipates that, even after employment and inflation are near mandate-consistent levels, economic conditions may, for some time, warrant keeping the target federal funds rate below levels the Committee views as normal in the longer run.』(今回)

『When the Committee decides to begin to remove policy accommodation, it will take a balanced approach consistent with its longer-run goals of maximum employment and inflation of 2 percent. The Committee currently anticipates that, even after employment and inflation are near mandate-consistent levels, economic conditions may, for some time, warrant keeping the target federal funds rate below levels the Committee views as normal in the longer run.』(前回)

同じですの。


・第6パラグラフ:今回も全員一致である

どうせなら誰か利上げ主張すれば面白かった(不謹慎)のですが、まあ今回会見もSEPも無くて、しかも前回予告ホームランをしている訳でもないのに入れるというのもアレですかそうですか。

『Voting for the FOMC monetary policy action were: Janet L. Yellen, Chair; William C. Dudley, Vice Chairman; Lael Brainard; Charles L. Evans; Stanley Fischer; Jeffrey M. Lacker; Dennis P. Lockhart; Jerome H. Powell; Daniel K. Tarullo; and John C. Williams. 』(今回)

『Voting for the FOMC monetary policy action were: Janet L. Yellen, Chair; William C. Dudley, Vice Chairman; Lael Brainard; Charles L. Evans; Stanley Fischer; Jeffrey M. Lacker; Dennis P. Lockhart; Jerome H. Powell; Daniel K. Tarullo; and John C. Williams.』(前回)


でまあ何ですな、利上げ時期がどうなのよという話ですけれども、今回の場合はそもそも「利上げしたら中立金利まで一直線」という方法を取らんと思いっきり言っているという事は、逆に考えれば「中立金利まで確信持って引き上げオッケーという前に利上げ着手する」という事でもあると思うのですよ。

んでもってそれっていわゆる糊代論ちっくな利上げでもあって、利上げしても様子見タイムがあるというスタンスでやるんだったら、初回利上げって基本的にとっとと実施して糊代を作ってから様子見タイムに入った方が政策のフリーハンドを確保できるのでそんなに引っ張らないんじゃネーノとか思うのですけどね。その代り様子見タイムに入る関係上9月に上げても年内の追加なし、みたいな話になると思いますし、長期金利がいきなりすっ飛ばれても困りますからこんな説明機会が無いFOMC声明文で次回利上げ示唆とかする訳ないと思っていたのですが、意外に「次回利上げの示唆が出る」という予想が多かったのを後付で知るこのアタクシ。

えーっとですね、「次回利上げの示唆が出る」というのは、前回がそうだったからそうだという話だと思うのですけれども、前回は初回利上げ後に中立金利に向けて直線一気だった訳で、今回とは全然利上げ後のスタンスが違う訳なのでして、中立金利に向けて直線一気攻撃が出来るのにconfidentな状態まで利上げを引っ張るんだったらそら予告ホームランもできるでしょうが、今回はそういう形ではない(その背景としてFEDの人たちあまり言わないですけれども、そらまあ前回の正常化局面の着手が遅れてサーチフォーイールドを促進した結果クレジット(というかサブプライムというか住宅というか)バブルを発生させたという反省はあるんでしょ、と思うのですけどね)のですから、今回次回の示唆が出ないから次回無しみたいな発想は何ぼ何でも短絡的にも程があると思います。

つーか「利上げしたいけど長期金利跳ねさせたくない」んだったら長期的な見通しでハトちっくなものを見せながら正常化路線に入ることによって、足元金利を徐々に正常化に向けさせながら長期金利はあまり上げないという攻撃に出るもんじゃないのかねえと思うのですけどにゃ。

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2015/07/24

・そういえば忘れていたのでECB資産買入のラップ確認だが毛ほどペースが落ちてるのかな

すいませんすいません
http://www.ecb.europa.eu/press/pr/wfs/2015/html/fs150721.en.html

7/17残高と前週比増加額
CBPP3 EUR 100.2 billion +EUR 1.9 billion -
ABSPP EUR 9.4 billion +EUR 0.1 billion -
PSPP EUR 227.6 billion +EUR 11.2 billion -

今月のラップは以下の通り。

7/10残高と前週比増加額
CBPP3 EUR 98.2 billion +EUR 2.2 billion
ABSPP EUR 9.3 billion +EUR 0.4 billion -
PSPP EUR 216.3 billion +EUR 11.7 billion

7/3残高と前週比増加額
CBPP3 EUR 96.1 billion +EUR 1.8 billion -EUR 0.3 billion
ABSPP EUR 8.9 billion +EUR 0.3 billion
PSPP EUR 204.7 billion +EUR 10.2 billion -EUR 0.6 billion


ついでに先月後半の数値はこうです。

6/26残高と前週比増加額
CBPP3 EUR 94.6 billion +EUR 2.5 billion
ABSPP EUR 8.6 billion +EUR 0.3 billion
PSPP EUR 193.9 billion +EUR 11.6 billion

6/19残高と前週比増加額

CBPP3 EUR 92.1 billion +EUR 2.2 billion
ABSPP EUR 8.3 billion +EUR 0.1 billion
PSPP EUR 182.3 billion +EUR 11.9 billion

ということで、先週1週間の買入がトータルで132億ユーロで、その前が143億ユーロですが、もうちょっと前のペースを見ると大体140億ユーロ/週のペースで打ち込んでいる感じですので、先週は買入ペースが気持ち程度ですが落ちていまして、これはやはり7月に本格的に入ってそろそろ取引が夏モードになってくる(まあ先週だとギリシャモードだと思いますが)ので、以前クーレ理事が余計な発言して物議をかもした「市場の流動性に配慮して買入ペースを調整するけど後で帳尻するから安心してください」攻撃が入るのかなあとか思ったりしたのですけれども今週の実績も合わせてみないと良くわからん。

とは申しましても、クーレ理事の例の発言が出て欧州債券市場が前倒しヒャッハーとなっていた時(ただの朝三暮四にしか見えないが)ですともっと有意に買入の額をいじってくるのかと見られていたと思うのですが、まあECBの皆様が懸念する程の事も無く買入が比較的順調に進んでいるので別に変な調整をして物議を醸すことも無かろうという判断になっているのだと思います。

でまあその買入が順調になってきたのって、要するにドイツ様の金利低下が止まって反動でヒャッハーとなって金利が上昇した結果として買入が円滑に進んでいるだけだったりするのでございまして、そうなりますとそもそも論として何のためにPSPPやっているのかと小一時間問い詰めたいところではありますな。

・・・・・・・・ただし、その答えに関しては先日ネタにした(のはいいのですが質疑応答をまだネタにしていません遅れ遅れですいませんすいません)ECB定例理事会後の会見でのドラギ総裁の説明でして、国債金利水準の話をするのではなくて「企業や家計の借入がやりやすくなった」とか「金融緩和の影響による金利低下が企業や家計の借入金利にパススルーされてきた」というようなところをメインに押し出していまして、つまりは「国債市場金利そのもの」という説明をしらっと後ろに下げまして、「ファイナンシャルコンディションの改善」という話をすることによってその辺のツッコミを有耶無耶にするという作戦に出ている訳ですな(あと金融緩和政策のパススルーのもう一つの話として域内のフラグメンテーションの改善というのも出していて、それもファイナンシャルコンディションの改善という文脈で説明している)。

欧米の場合は基本「中長期的な期待インフレはアンカーされている」という説明になっているので、日本のように実質金利の話を持ち出すのが若干苦しいのですが、金融環境という意味で言えば欧米はまだ金融危機の後遺症がどうのこうの的な説明ができるのが強いちゃあ強いですな。そのかわり市場金利水準そのものには(下がった時は触れるけど)上がった時にはスルーするというのが仕様となっているのですが。

一方でジャパンの場合は金融機関のバランスシートに問題がある訳でもなく、金融危機っていつの時代の話でしたっけ状態になっていて、今更金融緩和によるファイナンシャルコンディションとかいう話には持って行けないですので、インフレ期待と実質金利での説明が主になるんですけど、それって本当にどういう効き方を実体経済にしているのよとなると説明がモゴモゴ状態になってしまう訳で、まー毎度悪態を申し上げているように「ところで何のためにMBと長期国債年間80兆円も積まないといけないの」的な所が単に今更引くに引けないから以外の明快な説明がどうもねえという所ではありますな、うんうん。

#いつの間にか悪態に(汗)

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2015/07/21

○ドラギ総裁のECB会合後の会見冒頭説明だが金融政策効果の説明が「貸出環境の緩和」になっている件について

このページ無駄にでかくて一覧性が悪化してますな。
http://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2015/html/is150716.en.html
Mario Draghi, President of the ECB,
Vitor Constancio, Vice-President of the ECB,
Frankfurt am Main, 16 July 2015

ということで本日は冒頭ステートメントをば。

『Ladies and gentlemen, the Vice-President and I are very pleased to welcome you to our press conference. We will now report on the outcome of today’s meeting of the Governing Council, which was also attended by the Commission Vice-President, Mr Dombrovskis.』

『Based on our regular economic and monetary analyses, and in line with our forward guidance, we decided to keep the key ECB interest rates unchanged.』

まあここまでは良い。

『Regarding non-standard monetary policy measures, the asset purchase programmes continue to proceed smoothly. As explained on previous occasions, our monthly asset purchases of ユーロ60 billion are intended to run until the end of September 2016 and, in any case, until we see a sustained adjustment in the path of inflation that is consistent with our aim of achieving inflation rates below, but close to, 2% over the medium term.』

APPは「continue to proceed smoothly」だそうで、2016年9月まで継続してその後も2%目標達成に向けたパスに対しての進捗に応じて調整しますよと。

『When carrying out its assessment, the Governing Council will follow its monetary policy strategy and concentrate on trends in inflation and the medium-term outlook for price stability.』

で、その判断としては「trends in inflation and the medium-term outlook for price stability」に集中するよという話をしておりまして、まあ昔からそういう話はしていますけれども、現実の足元の物価ではなくて、「物価のトレンドと中期的な物価安定の見通し」を見ますという話を入れているのであって、ここでも原油価格ガーとか物価のトレンドガーという話がある訳ですな。


『All in all, the information that has become available since the Governing Council meeting in early June has been broadly in line with our expectations.』

足元の状況は見通し通りに推移とな。

『Recent developments in financial markets, which partly reflect greater uncertainty, have not changed the Governing Council’s assessment of a broadening of the euro area’s economic recovery and a gradual increase in inflation rates over the coming years.』

最近の金融市場の不確実性の拡大そのものがECBの経済先行き見通しやら金融政策に対する見方を変化させている事はありません(キリッ)。

『The ECB’s monetary policy stance remains accommodative and market-based inflation expectations have, on balance, stabilised or recovered further since our meeting in early June.』

ということで・・・・・・・・

『The latest information also remains consistent with a continued pass-through of our monetary policy measures to the cost and availability of credit for firms and households. Our measures thereby continue to contribute to economic growth, a reduction in economic slack, and money and credit expansion. The full implementation of all our monetary policy measures will lead to a sustained return of inflation rates towards levels below, but close to, 2% in the medium term, and will underpin the firm anchoring of medium to long-term inflation expectations.』

んな訳で、金融政策効果の話をしている中でしらっと「pass-through of our monetary policy measures to the cost and availability of credit for firms and households」ということで、実際の市場金利が暴れてあばばばばーとなっている点は華麗にスルーして、金融緩和政策の効果で家計や企業に対してそのパススルーが起きて金融環境が緩和している、というのを効果として強調しているのがチャーミングというものです。

『Looking ahead, we will continue to closely monitor the situation in financial markets, as well as the potential implications for the monetary policy stance and for the outlook for price stability. If any factors were to lead to an unwarranted tightening of monetary policy, or if the outlook for price stability were to materially change, the Governing Council would respond to such a situation by using all the instruments available within its mandate.』

先行きに関してはギリシャ絡みも含めまして「closely monitor the situation in financial markets」というのはそら入れますなという所で、例によって「unwarranted tightening」になったら金融政策を投下とは言っていますけれども、恐らくその場合っていうのはコア国の金利を下げても仕方ない(というか上段のようにそもそもコア国の金利については華麗にスルーしてクレジットコンディション的な話をしている訳ですから)ので、そうではなくてクレジットイージング的な事にならざるを得ないという所ではないですかね。


で、この後が経済物価情勢の話になりますが経済は飛ばして物価に。

『Inflation bottomed out at the beginning of the year and has moved back into positive territory in recent months. According to Eurostat, euro area annual HICP inflation was 0.2% in June 2015, slightly down from 0.3% in May.』

物価底打ち宣言キタコレ。

『On the basis of the information available and current oil futures prices, annual HICP inflation is expected to remain low in the months ahead and to rise towards the end of the year, also on account of base effects associated with the fall in oil prices in late 2014. Supported by the expected economic recovery, the impact of the lower euro exchange rate and the assumption embedded in oil futures markets of somewhat higher oil prices in the years ahead, inflation rates are expected to pick up further during 2016 and 2017.』

物価は今後原油下落のベース効果が剥落してきますと徐々に上昇に転じますというどこかの中銀でも聞くこの説明。

『The Governing Council will continue to monitor closely the risks to the outlook for price developments over the medium term. In this context, we will focus in particular on the pass-through of our monetary policy measures, as well as on geopolitical, energy and exchange rate developments.』

リスクに関してはバランスの時は特に言わない(経済の所ではダウンサイドリスクがどうのこうのという話をしている)ようになったのね。


で、あまり引用しないけどマネタリーの所も引用する。

『Turning to the monetary analysis, recent data confirm robust growth in broad money (M3). The annual growth rate of M3 was 5.0% in May 2015, compared with 5.3% in April. Annual growth in M3 continues to be strongly supported by its most liquid components, with the narrow monetary aggregate M1 growing at an annual rate of 11.2% in May.』

M1主体にマネタリーの伸びは良好。

『Loan dynamics continued to improve.』

ということでローンの伸びが改善している件を説明。

『The annual rate of change of loans to non-financial corporations (adjusted for loan sales and securitisation) increased to 0.1% in May, up from -0.1% in April, continuing its gradual recovery from a trough of -3.2% in February 2014.』

『This is consistent with the positive evidence from the bank lending survey for the second quarter of 2015. Banks reported a continued net easing of credit standards on loans to enterprises which was stronger than expected in the previous survey round. Net demand for loans to enterprises increased further, supported by demand for credit related to fixed investment.』

『Fragmentation in terms of credit demand in individual countries decreased and the targeted longer-term refinancing operations helped to improve the terms and conditions for credit supply.』

ローンの態度も需要も伸びているし、ユーロ圏のFragmentationも改善していると。

『Despite these improvements, the dynamics of loans to non-financial corporations remain subdued. They continue to reflect the lagged relationship with the business cycle, credit risk, credit supply factors, and the ongoing adjustment of financial and non-financial sector balance sheets. The annual growth rate of loans to households (adjusted for loan sales and securitisation) increased to 1.4% in May 2015, after 1.3% in April.』

ただ非金融機関に対する貸し出しの伸びはまだ満足いくものではないと。

『Overall, the monetary policy measures we have put in place since June 2014 provide clear support for improvements both in borrowing conditions for firms and households and in credit flows across the euro area.』

ということで、今回の説明では金融政策効果で金利が下がって的な話を華麗にスルーして、主にクレジットコンディションの説明をしているのが目立つなあという事で、恐らくこの調子で長期金利が下がって上がって元に戻るどころか更に上昇したりしてた時間があった件については、一方的に金利が上がらない限りは知らんがなというスタンスが続くのでしょうな、と思うのでした。

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2015/07/16

○イエレン議長の議会証言(メモメモ)

議会証言キタコレ。
http://www.federalreserve.gov/newsevents/testimony/yellen20150715a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/testimony/yellen20150715a.pdf

時間の関係上金融政策のパートだけ引用します(汗)。『Monetary Policy』って所ね。

『Regarding monetary policy, the FOMC conducts policy to promote maximum employment and price stability, as required by our statutory mandate from the Congress. Given the economic situation that I just described, the Committee has judged that a high degree of monetary policy accommodation remains appropriate. Consistent with that assessment, we have continued to maintain the target range for the federal funds rate at 0 to 1/4 percent and have kept the Federal Reserve's holdings of longer-term securities at their current elevated level to help maintain accommodative financial conditions.』

ここは普通の話ですな。

『In its most recent statement, the FOMC again noted that it judged it would be appropriate to raise the target range for the federal funds rate when it has seen further improvement in the labor market and is reasonably confident that inflation will move back to its 2 percent objective over the medium term. The Committee will determine the timing of the initial increase in the federal funds rate on a meeting-by-meeting basis, depending on its assessment of realized and expected progress toward its objectives of maximum employment and 2 percent inflation. If the economy evolves as we expect, economic conditions likely would make it appropriate at some point this year to raise the federal funds rate target, thereby beginning to normalize the stance of monetary policy. Indeed, most participants in June projected that an increase in the federal funds target range would likely become appropriate before year-end.』

で、この辺が直近のFOMCとSEPによって示されている先行きの利上げタイミングの想定の話になっていますが、これまたイエレンさん手堅い事に昨日ネタにした先週の講演と同様に、あくまでもFOMCの中心的見解の説明をしていますな。議会証言だから当たり前ちゃあ当たり前かも知れませんが、FOMCの中心的見解から何か踏み込んだ情報でも出るかと思った向きには少々肩すかしという感じですかね。

『But let me emphasize again that these are projections based on the anticipated path of the economy, not statements of intent to raise rates at any particular time.』

でまあFOMCやSEPの説明をしておいて、更にこのようにトドメで「あくまでもこれはその時点での見通しに基づくものなので利上げ時期とかその手の判断を事前に決め打ちしている訳ではない」といつものように断りを入れるの巻。

『A decision by the Committee to raise its target range for the federal funds rate will signal how much progress the economy has made in healing from the trauma of the financial crisis.』

次のパラグラフではこのような話をしておりまして、「利上げケシカラン」的な話が議会から飛んでこないように「利上げをするという判断が出来るということは、それだけ経済が金融危機からの回復が進んでトラウマから治癒されたという証拠です(キリッ)」という屁理屈(まあ理屈ではあるが)を投入しているのがチャーミング。

『That said, the importance of the initial step to raise the federal funds rate target should not be overemphasized. What matters for financial conditions and the broader economy is the entire expected path of interest rates, not any particular move, including the initial increase, in the federal funds rate.』

であるからして、利上げの時期がいつなのか、という話よりも重要なのは今後の経済見通しに基づく正常化実施のパス全体である、というお話を例によって例のごとく打ち込んでいますが、まあそうは言っても市場的には最初の時期重要なんですけどねえ。

『Indeed, the stance of monetary policy will likely remain highly accommodative for quite some time after the first increase in the federal funds rate in order to support continued progress toward our objectives of maximum employment and 2 percent inflation.』

利上げ着手開始しても政策は緩和的といういつもの話。

『In the projections prepared for our June meeting, most FOMC participants anticipated that economic conditions would evolve over time in a way that will warrant gradual increases in the federal funds rate as the headwinds that still restrain real activity continue to diminish and inflation rises.』

『Of course, if the expansion proves to be more vigorous than currently anticipated and inflation moves higher than expected, then the appropriate path would likely follow a higher and steeper trajectory; conversely, if conditions were to prove weaker, then the appropriate trajectory would be lower and less steep than currently projected. As always, we will regularly reassess what level of the federal funds rate is consistent with achieving and maintaining the Committee's dual mandate.』

とまあこの辺も従来の説明を踏襲していまして、正常化過程における利上げペースは緩慢なものになるという見通しになっていますよというお話とか、そうはいっても経済物価状況を見ながら正常化ペースは調整しますとかそんな話ですな。

『I would also like to note that the Federal Reserve has continued to refine its operational plans pertaining to the deployment of our various policy tools when the Committee judges it appropriate to begin normalizing the stance of policy. Last fall, the Committee issued a detailed statement concerning its plans for policy normalization and, over the past few months, we have announced a number of additional details regarding the approach the Committee intends to use when it decides to raise the target range for the federal funds rate.』

最後は正常化における技術的な対応可能性に関する話をしておりまして、少なくとも金融政策のパートでは新しい話をしないで、従来の話をきっちり踏襲する、という形でイエレンさん議長になってすっかり「政策委員会議長」としての立ち居振る舞いが板についてきましたなあという感想なのでありました。

#ほかのパートについてどうしたというツッコミはしないでください(大汗)

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2015/07/15

○ECBの買入残高の定例チェック

http://www.ecb.europa.eu/press/pr/wfs/2015/html/fs150714.en.html
Consolidated financial statement of the Eurosystem as at 10 July 2015
14 July 2015

http://www.ecb.europa.eu/press/pr/wfs/2015/html/fs150708.en.html
Consolidated financial statement of the Eurosystem as at 3 July 2015
8 July 2015

画面の体裁が変わって、もしかしてスマホ(持ってない)とかタブレット(持ってない)とかだと見やすいのかもしれんが、普通にPCでみると無駄に馬鹿でかくて一覧性が落ちているので見難くなったECBサイトですが・・・・・・・

先週のをネタにしていなかった気がしますのでついでに2週間分。

7/10残高と前週比増加額
CBPP3 EUR 98.2 billion +EUR 2.2 billion
ABSPP EUR 9.3 billion +EUR 0.4 billion -
PSPP EUR 216.3 billion +EUR 11.7 billion

7/3残高と前週比増加額
CBPP3 EUR 96.1 billion +EUR 1.8 billion -EUR 0.3 billion
ABSPP EUR 8.9 billion +EUR 0.3 billion
PSPP EUR 204.7 billion +EUR 10.2 billion -EUR 0.6 billion

7/3の残高に関しては謎の「with 26 June 2015 - quarter-end adjustments」というのがあって、四半期なので何か決算的な補正が入っているみたいなのですが、恥ずかしながらこの会計処理まで詳しく知らない(調べればわかると思うのだがまだ調べていませんすいません)のでそこはスルー致しますと、基本的には淡々と買入が進んでいる感じがします。

なおその前1か月分のペースは以下の通り(過去分再掲)ですのでペースが特に変わっていなあというのが分かるかと思いますが、「夏になると市場の流動性が落ちるからその前に買入を加速させる」といった発言は一体全体なんだったのかと小一時間と申しますか、今朝のモーサテでのコメントの人なんぞは「夏になるとユーロ圏の国債発行ペースが落ちるので金利が低下しやすくユーロ安(キリッ)」とか解説していて、そういうの一応配慮するって話をECB高官発言があったのは無かったかのような認識になっていますな。

などと悪態をついていますが、まあ上記のように買入のペースがそもそも論として前倒しになっていない以上、見通しとして考えるとなると「買入が淡々と続くのであれば発行が減る季節には国債の需給がタイトになります罠」という発想になる方が普通だと思いますので、別に悪態でもなんでもなくて、もともとややこしい話を始めたECBの方が悪いという事になると思いますがね(−−;

6/26残高と前週比増加額
CBPP3 EUR 94.6 billion +EUR 2.5 billion
ABSPP EUR 8.6 billion +EUR 0.3 billion
PSPP EUR 193.9 billion +EUR 11.6 billion

6/19残高と前週比増加額

CBPP3 EUR 92.1 billion +EUR 2.2 billion
ABSPP EUR 8.3 billion +EUR 0.1 billion
PSPP EUR 182.3 billion +EUR 11.9 billion

6/12残高と前週比増加額

CBPP3 EUR 89.9 billion +EUR 2.6 billion
ABSPP EUR 8.2 billion +EUR 0.7 billion
PSPP EUR 170.2 billion +EUR 10.6 billion


○イエレン議長の議会証言前にこの前のイエレン講演を後半だけ(手抜き)鑑賞である

今更遅いですかそうですか(汗)。

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/yellen20150710a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/yellen20150710a.pdf
Chair Janet L. Yellen
At the City Club of Cleveland, Cleveland, Ohio
July 10, 2015
Recent Developments and the Outlook for the Economy

小見出しを並べますと

The Recovery from the Great Recession
Current Conditions in the Labor Market
Recent Inflation Developments
The Outlook for the Economy
Implications for Monetary Policy
Long-Run Economic Growth

となりますが、最初のパートはまあどうでもよくて、その次3つのパートに関してですが、こういうのって労働市場や物価に関して新しい見解が出てくると「おー」となるのですが、議会証言直前にいきなりそういうのを騙し討ちで出してくるというのはよーやらんと思うので、手抜きで読みたければ最後の2パートを読むあるヨロシということで・・・・・・・・・・

・説明は手堅いですなあ

『Implications for Monetary Policy』から

『My own outlook for the economy and inflation is broadly consistent with the central tendency of the projections submitted by FOMC participants at the time of our June meeting.』

ということで、6月FOMCで示された中心的な見解とほぼ同じ経済物価情勢に対する見方をしていますと発言していて、議長になる前のイエレンさんは時々独自見解を飛ばしてくれてハトイメージが強い人でしたが、議長になってからは「FOMCにおける中心的な見解の伝道師」という感じになっている(腹の中でどう思っているのかは兎も角としてこのような形で出てくるものに関しては)のは、政策委員会の議長としては当然ちゃあ当然なのですが、もうちょっとファンキーに出てくるのかという期待(?)も世の中的にはありましたよね。あたしゃイエレンさんって議長としては実に手堅い人だと思うしこれで良いと思いますけど。

『Based on my outlook, I expect that it will be appropriate at some point later this year to take the first step to raise the federal funds rate and thus begin normalizing monetary policy.』

でまあこれがヘッドラインになっていた奴ですが、そらまあSEPの中心的な見解と同じだったら年内利上げの方が圧倒的な意見なのだからそうなるわなということで、ヘッドライン的には話題になっても市場的には「まあそういう罠」という反応になるんでしょうな。

『But I want to emphasize that the course of the economy and inflation remains highly uncertain, and unanticipated developments could delay or accelerate this first step.』

先行きはとても不透明なので、不測の事態が起きたら・・・・・と言う話の部分でもまあ手堅いなあと思うのは、ここの後半の部分がたとえば「unanticipated developments could ”change” this first step」みたいな表現にしちゃうと「不透明なので利上げ先送りを示唆ヒャッハー」と反応されてしまうのを警戒してわざわざ「could delay or accelerate」とか表現する辺りの細かさというか手堅さというかで、相当注意深く書いているなあというのがアタクシの印象ですがどうでしょうかね。

『We will be watching carefully to see if there is continued improvement in labor market conditions, and we will need to be reasonably confident that inflation will move back to 2 percent in the next few years.』

で、労働市場が継続して改善することと、物価が「in the next few years」に2%戻るのが「reasonably confident」であれば正常化ステップという事ですので、この辺も同様ですし、別に物価が2%にならなくても普通に正常化ステップに入るという話。

『Let me also stress that this initial increase in the federal funds rate, whenever it occurs, will by itself have only a very small effect on the overall level of monetary accommodation provided by the Federal Reserve. Because there are some factors, which I mentioned earlier, that continue to restrain the economic expansion, I currently anticipate that the appropriate pace of normalization will be gradual, and that monetary policy will need to be highly supportive of economic activity for quite some time.』

でまあ最初の利上げ時期よりもその後の利上げペースという話も強調するのだが、そうはいっても実際に利上げするとなるとベース金利に跳ねてくる話だから直前になって来ると時期がどうのこうので市場が反応するのは仕方ないと思うの。

『The projections of most of my FOMC colleagues indicate that they have similar expectations for the likely path of the federal funds rate. But, again, both the course of the economy and inflation are uncertain. If progress toward our employment and inflation goals is more rapid than expected, it may be appropriate to remove monetary policy accommodation more quickly. However, if progress toward our goals is slower than anticipated, then the Committee may move more slowly in normalizing policy.』

この辺も声明文通りの話をしていて実に手堅いのですが、まあ超自信満々だったらもうちょっと強いトーンの話が出てもおかしくないとは思うので、そこまでではないんだろうなあとは思いますが、議長になってからのイエレンさんってあまりこの辺についてバイアス掛けてこなくなったのでこの声明文棒読み体制をどう解釈するのかは受けてによって幅があるかも。


・最後の部分では結局の所「生産性の向上が必要」という話なのでそれはつまり・・・・・・・・・・

最後が『Long-Run Economic Growth』でありまして・・・・・・・・・・・・

『Before I conclude, let me very briefly place my discussion of the economic outlook into a longer-term context.』

ほうほうそれでそれで?

『The Federal Reserve contributes to the nation's economic performance in part by using monetary policy to help achieve our mandated goals of maximum employment and price stability.』

そんな事は言われんでもわかっとるんじゃ。

『But success in promoting these objectives does not, by itself, ensure a strong pace of long-run economic growth or substantial improvements in future living standards. The most important factor determining continued advances in living standards is productivity growth, defined as the rate of increase in how much a worker can produce in an hour of work. Over time, sustained increases in productivity are necessary to support rising household incomes.』

長期的かつ持続的な成長に関して一番重要なファクターは労働生産性の向上であるという話が来ました。

『Here the recent data have been disappointing.』

アイヤー。

『The growth rate of output per hour worked in the business sector has averaged about 1-1/4 percent per year since the recession began in late 2007 and has been essentially flat over the past year. In contrast, annual productivity gains averaged 2-3/4 percent over the decade preceding the Great Recession.』

労働生産性の伸びが弱くなっていると。

『I mentioned earlier the sluggish pace of wage gains in recent years, and while I do think that this is evidence of some persisting labor market slack, it also may reflect, at least in part, fairly weak productivity growth.』

で、賃金の上昇が弱いのは労働市場のスラックがまだ経済に残っているからというのが主因とみられるが、要因の中に労働生産性の向上が弱いという面も反映している可能性があるという指摘がキタコレなのです。

『There are many unanswered questions about what has slowed productivity growth in recent years and about the prospects for productivity growth in the longer run.』

でまあこの2007年後半以降の生産性の伸びの弱さに関してや、今後のロンガーランでみた場合の生産性の伸びがどうなるかという見通しに関してについてはまだ解明されていない点が多いという話をしていますな。

『But we do know that productivity ultimately depends on many factors, including our workforce's knowledge and skills along with the quantity and quality of the capital equipment, technology, and infrastructure that they have to work with. As a general principle, the American people would be well served by the active pursuit of effective policies to support longer-run growth in productivity. Policies to strengthen education and training, to encourage entrepreneurship and innovation, and to promote capital investment, both public and private, could all potentially be of great benefit in improving future living standards in our nation.』

ということで、纏めの所では生産性向上の為に労働者のスキルを上げたり、起業やイノベーションを活発化させたり資本投資を活発化させるとか色々な施策をすべき、という話で纏めているのですが、労働者のスキル向上がという話の部分では(このパートでは触れていませんが)従来からイエレンさん(だけではなくFEDの高官のほとんど)が言ってるのが「長期失業者の増加は(該当者のスキル喪失によって)労働者の平均スキルを下げる」という話をしている訳でして、その前に生産性向上が弱いと賃金が上がりにくい可能性についても指摘しているとなりますと、このあたりの労働市場の指標についても単なる労働市場のスラックだけではなくて、中長期的な経済の生産性という面でも留意していますよ、というメッセージになっていますなと思いましたがどうでしょうかね。

つまりですな、労働市場のデータが質的(というのはここで指摘されている労働生産性向上に繋がるようなという意味での)改善を示すのが遅いとなると、経済の生産性向上が弱いので、必然的に賃金や物価への上昇圧力が弱くなるので、初回利上げはともかくとしてロンガーランの均衡金利やら利上げペースやらにも押し下げ圧力が掛かるし、裏を返せばそのあたりの労働関連の指標の質的な改善が進むともっとFEDは自信満々モードになって来てうっかりすると利上げペースとかも速くなるという事を説明しているのではないかなどと思ったりする訳で、雇用関連の指標ではヘッドラインの数字よりもそちらの質的指標を見ていきますよという話をしている(ただしマンデートの関係でロンガーランの失業率というのを出している以上失業率のヘッドラインを軽視はできないと思うけど)ように見えましたぞな、というのが後半部分のポイントだったのかなあ等と思うのでした。

#前半はどうしたというツッコミをしないように(^^)

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2015/07/14

○ギリシャェ・・・・・・・・・・・・

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKCN0PN2FL20150713
ギリシャつなぎ融資検討、ユーロ圏15日朝までに決定
2015年 07月 14日 05:24 JST

『[ブリュッセル 13日 ロイター] - ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)は、ギリシャ第3次支援協議が約4週間かかるとみて、同国向けのつなぎ融資を検討する。14日夜か15日朝に、つなぎ融資の方法を決める方向だ。』(上記URL先より)

ということで、この辺を見るあるヨロシ。

http://www.consilium.europa.eu/en/meetings/european-council/2015/07/12/
Euro Summit, 12/07/2015

『Main results

On 13 July 2015, the leaders from the euro area member states agreed in principle that they are ready to start negotiations on an ESM financial assistance programme for Greece.』

で、「Euro Summit statement, Brussels, 12 July 2015」ってのがあって、 そこをクリックすると条件がああだこうだと書いてあるPDFに飛ぶのですが、ページ上の表示がハイパーテキストプロトコルになっているのでアタクシの手元のPC環境(というかアドビのバージョンとWindowsの関係で)だとPDFアドレスが表示できませんすいません。

『There are a number of strict conditions to be met before negotiations can formally begin.

The agreement will have to be approved by the Greek parliament and by several national parliaments.』

ということなので合意したけれども国会でひっくり返されたら元も子も無いという話だが、まあさすがに今回そういう話になるのかというと成らんでしょうとは思いますが良くわからんですからねえ。

『"I welcome the progress and the constructive position of Greece that helps to bring back trust among euro zone partners", said Euro Summit President Donald Tusk.』

ということで、『Next steps』というのがあって、

『Following national procedures, the Eurogroup will work with the institutions to swiftly take forward the negotiations. Euro area finance ministers will also urgently discuss how to help Greece meet its financial needs in the short term, the so-called bridge-financing.』

つーことでギリシャ議会の動向が重要というお話でして、条件でああしろこうしろという話はさっきの「Euro Summit statement, Brussels, 12 July 2015」先のファイルに(7ページ組で色々とあります)あって、これを議会が承認したらつなぎ融資出るよという話のようですな。

上記URL先の下の方に関連リンクというのがあって、ダイセルブルームさんのステートメントがありますけれども、

http://www.consilium.europa.eu/en/press/press-releases/2015/07/13-dijsselbloem-remarks-after-eurozone-summit/
Press remarks by J. Dijsselbloem, President of the Eurogroup after the Eurozone summit of 12 July 2015

最後の所に同様に、

『So over the next two days the focus of attention will be on the Greek Parliament. As soon as they have completed the legislative process, the other national parliaments will get to work, and hopefully by the end of the week we can take a decision on mandating the institutions to draw up an agreement.』

とありますので、まあギリシャ議会がこれを承認してまずは夏休みしながら行きましょうやということでしょうかよくわかりません><;


#そういや話は違いますがちょっと書き物をサボっている隙にECBのトップページが妙な体裁になっていて見難いこと見難いこと(通常のPC的に)

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2015/07/01

○ECB関連でAPPの進捗状況である

うむ。

http://www.ecb.europa.eu/press/pr/wfs/2015/html/fs150630.en.html
Consolidated financial statement of the Eurosystem as at 26 June 2015

CBPP3 EUR 94.6 billion +EUR 2.5 billion
ABSPP EUR 8.6 billion +EUR 0.3 billion
PSPP EUR 193.9 billion +EUR 11.6 billion

6/19残高と前週比増加額

CBPP3 EUR 92.1 billion +EUR 2.2 billion
ABSPP EUR 8.3 billion +EUR 0.1 billion
PSPP EUR 182.3 billion +EUR 11.9 billion

6/12残高と前週比増加額

CBPP3 EUR 89.9 billion +EUR 2.6 billion
ABSPP EUR 8.2 billion +EUR 0.7 billion
PSPP EUR 170.2 billion +EUR 10.6 billion

6/5残高と前週比増加額

CBPP3 EUR 87.3 billion +EUR 2.2 billion
ABSPP EUR 7.5 billion +EUR 0.3 billion
PSPP EUR 159.6 billion +EUR 12.9 billion

5/29残高と前週比増加額

CBPP3 EUR 85.1 billion +EUR 2.3 billion
ABSPP EUR 7.2 billion +EUR 1.0 billion
PSPP EUR 146.7 billion +EUR 12.4 billion

・・・・・・ということで結局淡々と買入を継続している感じでして、特段加速も減速もしないというのは継続していますな。まあ欧州的にはこの話どころではないという感じでしょうが忘れないようにメモメモ。今週は月末計数に関して出るので平均残存の推移をみるのも楽しみではありますな。


○同じくECBネタでAPPの効果についてのプラートさんの講演

http://www.ecb.europa.eu/press/key/date/2015/html/sp150630.en.html
The APP impact on the economy and bond markets

Intervention by Peter Praet, Member of the Executive Board of the ECB,
at the annual dinner of the ECB’s Bond Market Contact Group,
Frankfurt am Main, 30 June 2015

「at the annual dinner of the ECB’s Bond Market Contact Group」と言う位ですので市場の方を集めて年次で会合をしているようなのだが、ディナーとはこらまた威勢の良い事をしてるのですねとゆーか何かやっぱりこの辺ってジャパンや米国とかのノリとちょっと違う気がする。

という与太話はともかくとして。

『We regard the BMCG as a forum to improve our dialogue with the financial market community on bond market-related issues. Understanding bond markets is obviously key for us, and even more so as bond purchases have become a central part of our non-standard measures. The broad composition of the group has proved useful for understanding the implications of our actions and other market developments for all bond market participants. In remarks today I would like to briefly assess the current economic situation before addressing a few salient points about the ECB’s expanded Asset Purchase Programme (APP).』

ということだそうです。


・経済の部分はECBの公式見解ベースだがやはりこれはちょっと威勢がよすぎる気がする

『So far the economic recovery in the euro area remains on track and, importantly, we are seeing evidence that it is starting to broaden. Real GDP rose by 0.4% q-o-q in the first quarter of 2015, with domestic demand continuing to be the main driver behind output growth.』

見通しは当たり前ですがECBの公式見解通り。

『While growth has been mainly supported by private consumption in recent quarters, there are encouraging signs that private investment is picking up as well. The latest survey results, though showing some signs of stabilisation, remain consistent with continued growth in the second quarter at around the same rate as in the first quarter.』

ユーロ圏の最近の成長ドライバーはおもに消費だそうな。

『A number of factors are underpinning the recovery in activity. First, the earlier fall in oil prices is contributing to higher real disposable incomes and corporate profitability. Second, the accommodative monetary policy stance, including the expanded APP, has led to improvements in financial conditions and credit supply conditions. Third, euro area activity is expected to be increasingly supported by the past depreciation of the euro and the gradual strengthening of external demand.』

『These three factors mean that, while remaining on the downside, the risks surrounding the economic outlook have become more balanced.』

経済の見通しが最近はよりバランスされたという認識をECBは示していますが、回復をしっかりとさせている要因として列挙しているのが2番目の金融緩和で金融環境とクレジットコンディション改善以外(って原油の下げとユーロ安)についてサステイナブルじゃないですし、大体からして金融環境だって緩和していけば徐々に限界的な効果が逓減してきますけれども・・・・・・・・・

『It is nonetheless clear that monetary policy and external factors cannot alone be the basis for a lasting recovery. I see two risks in particular to a stronger, structural recovery. The first is that pessimism among firms about future growth prospects continues to weigh on investment. 5 years ahead growth expectations among forecasters have been falling continuously since 2001, from around 2.7% then to 1.4% today, which may have sapped “animal spirits”. The second is the persistence of a debt overhang in parts of the euro area which acts as a major drag on firm and household spending. In both cases structural reforms come to the fore, as lifting expectations of trend growth is key to reduce uncertainty about the outlook and deleverage private sector balance sheets.』

更に成長期待が高まったり、過剰債務の問題が解消に向かっているという構造的な改善も今後の回復に寄与するとかああそうですかとしか申し上げようがないがまあ威勢の良い事で。

『This context of a firming recovery underpins our expectation for inflation to steadily return towards our objective. Since the trough in January, headline inflation for the euro area has followed a generally upward trajectory as the negative contributions from energy prices have declined. Though Eurostat’s flash estimate for euro area HICP in June came in at 0.2% - 0.1 percentage points lower than for May - this slight decrease largely reflects calendar effects and does not affect our baseline forecast. We still expect inflation to remain low in the months ahead before accelerating later this year, in part on account of base effects associated with the fall in oil prices in late 2014. Thereafter, inflation is expected to gradually converge towards levels closer to but still below 2%.』

でまあ物価に関しても最近改善傾向が見えていますから2%達成に向けて徐々に強くなっていきますよウェーハッハッハという毎度のECB公式見解。


・「この見通しには2015年9月までのAPPプログラムの完遂が前提である」という話をお約束のようにする

『That outlook is of course contingent on the full implementation of our APP. As of 26 June 2015 the ECB had purchased EUR 297.1 bn under the entire APP, including EUR 193.9 bn under the Public Sector Purchase Programme (PSPP), EUR 94.6 bn under the Covered Bond Purchase Programme (CBPP3) and EUR 8.6 bn under the Asset-Backed Securities Purchase Programme (ABSPP).』

でまあこれはドラギのおっちゃんも含めて基本的にECBの与党の人たちは絶対にこれを入れています。明示的に何かに紐をつけてコミットメントを行っているかというとそういう訳でもないですし、物価目標を達成できるかどうかによって実施期限が変わる、というのは実施期限が短くなるのではないかという風に(物価が上昇すると)思われてしまうのは当然ですので、経済情勢の改善で市場の考える時間軸が短くなるのを抑制したいという事で毎回これを強調しているものとみられます。

『Accordingly, the ECB’s balance sheet has expanded by EUR 527 bn to EUR 2,539.5 bn since end-September 2014, mainly due to the asset purchases and the four TLTROs.』

マイナス預金ファシリティの存在があるのだからバランスの総額の話よりもAPPの残高の話をした方が良いと思う。


・PSPP実施後の金利上昇に関する説明

『For the PSPP we have been able to achieve all operational targets (i.e. announced quantities and parameters of the asset allocation) and purchases have by and large not been disruptive to market functioning. Since mid-April, however, volatility has risen markedly, reversing the initial downward impact of the PSPP on sovereign bond yields.』

技術的に買入ターゲットができていないという状況でもなく、市場の機能も低下していない(キリッ)ということですが、4月以降のボラ上昇をその次に出しているのは「市場が機能しているからボラが上がるのも当然(キリッ)」ってことかね。

『GDP-weighted euro area sovereign yields are now roughly half a percentage point higher than the level reached on the day of the PSPP announcement. But we need to be patient in assessing the significance of these developments. Such a reversal of the downward trend in sovereign yields following a QE announcement is common to other jurisdictions which undertook similar policies in the past.』

PSPPを打ち込んだからGDPが上がりましたが今後もその進展を見る為にpatientとかまあいちいち政策効果の話をしながら政策継続のアピールをする辺りはこれ以上の市場の暴れ(ギリシャ要因は除く)を避けたいというのは分かった。で、QEアナウンスして金利が極端に低下した後にその反動が起きるのは他の国でも起きていること、という話もしていまして、まあ市場の動きを押さえつける気はないけれども、政策の早期終了を織り込んだ金利の上昇はされると困る、という事なんでしょうね。


・ABSPP、CBPP3に関して

『Our purchases of private assets have also proceeded relatively well. The CBPP3 has had a strong downward impact on covered bonds spreads, which reached the tightest levels in the last five years at the start of June this year. And though from mid-April yields have increased in line with other fixed income assets, they have done so to a lesser extent. As a result, the attractiveness of covered bonds has declined compared to government bonds, contributing to an increase in the amount of offers available for CBPP3 purchases. This has helped the smooth implementation of the programme thus far.』

CBPP3に関しては買入でカバードボンドのスプレッドが過去5年の最低水準まで縮小して効果があった、という話をしておりましてこれはまあそうですかという所。

『In terms of ABS, while the announcement and start of ABSPP led to a general compression of spreads across all euro area countries, since mid-April the spreads of more stressed jurisdictions have widened and moved above the levels prevailing at the start of the programme. Even so, we understand that the ABSPP is seen as providing the asset class with a credibility boost, which should in turn contribute to revitalising simple and transparent securitisation and reducing its stigma among investors - a key objective of the programme. We have also recently had some encouraging re-openings of public issuance across a broader set of euro area countries, which could invite other issuers to follow up.』

ABSについてはやはりスプレッド縮小の話をしているのですが、それよりも「Even so, we understand that the ABSPP is seen as providing the asset class with a credibility boost, which should in turn contribute to revitalising simple and transparent securitisation and reducing its stigma among investors - a key objective of the programme.」とあるのが興味深く、ECBの買入によって市場を作っていくというようなネタって昔の速水さん時代を思い出す理屈ですなそれは。


・市場のファンディングコストを下げる効果について

『What ultimately matters from a monetary policy perspective, however, is not how well we achieve our operational targets but how much our interventions are reflected in a reduced cost of borrowing for firms and households.』

効果は出ているがまだ目標までは遠いといちいち政策継続をアピールとはお洒落。


『Here we see a positive impact from the APP on both the bank and market finance. The cost of market-based debt has followed a downward trend since end-2011 and stabilised at historically low levels in February-April 2015, before rising again somewhat in May (+16 bp) and June (+20 bp). Market-based financing flows have nevertheless continued to increase in recent months, implying that the lower cost of market-based finance has had an important “first order” monetary policy effect.』

民間金融環境の改善と共に市場のファンディングコストも改善したいという話ですな。

『On the bank side, the APP seems to have been effective in further reducing wholesale funding costs, as portfolio rebalance effects have led to a compression of, for example, bank bond yields. Consequently, while the cost of borrowing from banks for households and firms has been declining since mid-2014, the pace of the decline has increased in recent months. In April, the composite bank lending rates for households for house purchase and for non-financial corporations stood at 2.25 and 2.30%, respectively 61 and 49 bps below the values observed in June 2014. These developments reflect both the effect of the APP and of the previous measures taken in the summer of last year.』

で、銀行のサイドから見ますとAPPの導入以降市場のファンディングコストも低下していますよ!というアピールキタコレで、更にポートフォリオリバランス効果も出ていますとな。

『While it may be too early to see a clear upward effect in terms of quantities, there are several signs that the APP is also contributing to an easing of credit constraints in the euro area.』

まだクリアに定量的には出ていないがクレジット環境の緩和も起きているとな。

『For instance, according to the Bank Lending Survey (BLS) banks have indicated that they intend to react to APP purchases primarily by granting loans. In addition, banks in the survey expect capital gains and a slight improvement in their capital ratios from the APP which could support an expansion of lending, notwithstanding their expectations of a negative impact of the programme on net interest margins and overall profitability (due to sharp flattening of the term structure in a QE environment).』

ここで「クレジットマージンが縮小しているというネガティブインパクトにもかかわらず」貸出環境が改善しており融資態度も改善している、というように指摘しているのがECBのイイハナシダナーな所で、実質金利の低下ガーの一本槍で副作用について知らんどころか理論的に無いとか言い出す阿呆まで発生するどこかの国の中央銀行とは大違い。


・資産買入で金利構造の変化が起きた点の銀行収益に対する総合的な考えという論点

『It must be noted, however, that banks’ expectations that the APP will negatively impact profitability do not seem to be aligned with either market evaluations or our own internal appraisals.』

ほらほら副作用に対して効果が大きいという観点で話をしていますよ置物さんジンバブエさん爪の垢煎じて飲んでくださいね。

『Market studies suggest that, on average, monetary policy news that is expected to lead to a flattening of the yield curve causes an increase, rather than a decline, in banks’ share prices. This is confirmed by estimates of the impact of the APP on banks’ profit and loss accounts and their solvency situation performed by ECB staff. The overall effect on bank capital is found to be positive, as capital gains on securities held, lower funding costs, improved credit quality and higher intermediation volumes outweigh the negative impact of the flattening of the term structure on net interest income.』

APPでイールドカーブがフラットして金利収益の減少というのはあるのだが、それよりも金融機関の株価や金融機関が保有する株価が上昇し、ファンディングコストが減少し、貸出資産の内容が改善したり、貸出取引自体の活発化などによる金融機関への収益や資本の改善の寄与の方が大きい、という話をしていまして、まあやや手前味噌な感じはだいぶしますが、それにしても副作用は無いとかティンカーベルの粉とか政策は効くのは当たり前的な話をするどこかの中央銀行(以下同文)。


・ということで当たり前だがAPPは効果あるという結論

『In sum, it is fair to conclude that, thus far, the APP has been producing its intended aim of easing of monetary and financial conditions, including in the context of heightened volatility since mid-April.』

この前の市場のあばばばばーを含めて考えてもAPPによって金融環境は改善しているとな。

『The very short end of the curve - because of expanding surpluses of liquidity - has remained well-anchored around levels that are broadly in line with our forward guidance over those horizons.』

イールドの超短期の部分は安定していますよフォワードガイダンスのホライズンみたら非常にアンカーされてますよねと。

『We note however that the expected policy rate path implied by markets has shifted up and steepened noticeably in a context of market re-pricing. Still, at present we judge that the recent strong fluctuations in financial markets have not materially altered money and credit dynamics, but close monitoring and continuous assessment are warranted from a monetary policy perspective.』

市場のインプライする将来の政策金利予想パスがシフトしてカーブがスティープした件については、これは市場のリプライシングであるという認識だが、そうは言っても今後の動向については注意する、と足元の金利上昇に関しては知らんがなとは言っているものの、ではドンドンとAPP短期化を見て金利が動かれる点についてはいかんぞなという風に考えているんでしょうなという所で。

『Moreover, to ensure sufficient predictability for markets and citizens about our future policy, we have provided communication on our reaction function. We have underlined that the APP is intended to run until the end of September 2016 and, in any case, until we see a sustained adjustment in the path of inflation. Our monetary policy stimulus will stay in place as long as needed to deliver our mandate on a truly sustained basis.』

先行きの金融政策パスと市場機能に関しては今後も情報発信してコミュニケートするとな。


・最後にギリシャ問題絡みで「足元の危機発生しても遮断」宣言ですな

最後にしらっとこんなのが。

『We are not only willing to act, but capable of doing so. The recent ruling by the European Court of Justice, while finding that OMTs fall within the scope of the ECB’s mandate of maintaining price stability, also stated clearly that the ECB must be allowed “broad discretion” when preparing and implementing its monetary policy.』

やるやる詐欺だったOMTも必要なら投下というのは当然最近のギリシャあばばばばーが他の南欧に波及しないという決意を示している訳で、まあギリシャがどう転んでも域内の影響は遮断したいしそのツールもあるとのアピールでございますよ!!

『In short, we have the tools available, if needed, to ensure the appropriate monetary policy stance for the whole euro area, and to react to specific impairments in the transmission mechanism - if, as was the case in the past, such impairments were judged to undermine the recovery and slow the process by which we anticipate inflation to return to levels closer to 2%.』

「we have the tools available」とアピールアピール。

『Stability cannot however be provided by monetary policy alone. All policymakers have to play their role in improving the functioning of monetary union, both by meeting their responsibilities domestically and by fundamentally strengthening the euro area’s common institutions.』

とはいえ金融政策単体だけで安定が出来るわけではないので政策当局の皆様宜しくというので締めになりました。


#少々とか言いつつ結局全部ネタにしてしまいました、超駆け足だけど(汗)

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