海外金融政策概観(2014年度上期後半)
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FRBやBOEを中心に趣味成分が高いですが、海外中銀のペーパーや講演などをフォローするのだ。
2014/09/30「シカゴエバンス総裁はハト、アトランタロックハート総裁は景気に強めもハト気味」
2014/09/29「クリーブランド連銀メスター総裁は景気には強気若干中立よりタカ寄りかも」
2014/09/26「FOMCプレコンネタ(その4)とにかく「フリーハンド」を確保したイエレン会見」
2014/09/25「FOMCプレコンネタ(その3)説明のロジックは非常に判りやすい」
2014/09/24「FOMCプレコンネタ(その2)フォワードガイダンスから時間軸要素を取り除く」
2014/09/22「FOMCプレコンネタ(その1)冒頭説明は論旨明瞭」
2014/09/19「ドラギ総裁会見ネタファイナル」
2014/09/18「FOMC声明文はあまり変わらないんですけどSEPとか出口の手順書が出る」
2014/09/17「ドラギ総裁会見ネタ(その3)財政に関する関する大演説パートを鑑賞」
2014/09/16「ドラギ総裁会見ネタ(その2)何ちゅうかこう微妙に施策が矛盾しているからツッコミも厳しい」
2014/09/08「ドラギ総裁会見が流れるようなツッコミの連係プレーで素晴らしい件について(その1)」
2014/09/05「ECBまさかの預金ファシリティも含めた全部10bp引き下げで会見冒頭声明も鑑賞」
2014/09/03「ジャクソンホールドラギ講演(その2)要するにドイツなどは財政出せとか言ってる気が」
2014/09/02「ジャクソンホールのドラギ講演は色々と地雷を踏みに行っている感が(その1)」
2014/08/28「ジャクソンホールでのブラード(景気物価強気のタカ)、ロックハート(ハト気味も資産市場のバブルを指摘)インタビュー(Market Watch社による)記事から」
2014/08/27「7月FOMC議事要旨がタカである件(その2)」
2014/08/26「7月FOMC議事要旨がかなりのタカだった件について(その1)/ドラギ総裁ジャクソンホール講演ネタ頭出し」
2014/08/25「ジャクソンホールのイエレン議長講演は市場期待ほどのハトハトではないがまあハト傾向でしょこれ」
2014/08/22「BOE議事要旨(その2)早期利上げ火消し系の話もありますけど・・・」
2014/08/21「7月FOMC議事要旨の毎度の手抜き速読/BOE8月MPC議事要旨では2名の利上げ提案があったとな(その1)」
2014/08/20「ドラギ会見は色々と手詰まり感を示していますな(その2)」
2014/08/19「ECB理事会後の会見はツッコミを結構食らっていますが説明もインチキ(その1)」
2014/08/18「フィッシャー副議長講演のマクプル政策部分(その3)基本はプルーデンスツールの対応」
2014/08/15「フィッシャー副議長講演は経済の見方に関する多くの論点を提供(その2)」
2014/08/13「フィッシャー副議長のデビュー講演は経済の成長の弱さについて切り口を色々並べる(その1)」
2014/08/08「ECBは現状維持もenevenな回復の言及が/BOEは現状維持」
2014/08/07「プロッサー総裁の反対理由/ECB直前にドラギ総裁のインタビュー記事が独紙に出ましたが普通でした」
2014/07/31「7月FOMC声明文は内容が結構強くなっていますな&プロッサー総裁反対投票」
2014/07/29「エバンス総裁とロックハート総裁が金融政策ネタで共演だが賃金動向が重要のようです」
2014/07/23「ウィリアムスSF連銀総裁は物価は懸念せず雇用に慎重でハト派的」
2014/07/16「イエレン議長議会証言はごくごく想定通りの内容だと思う(その1)」
2014/07/15「ラッカーとコチャラコタのタカハト対決:ラッカーはインフレ懸念、コチャラコタはプライスレベルターゲット」
2014/07/14「フィッシャー副議長のデビュー講演:プルーデンスはあくまでも監督で」
2014/07/11「6月FOMC議事要旨(その2)やはりFEDビューへの傾斜が目立つ議論内容」
2014/07/10「6月FOMC議事要旨(その1)金利ガイダンスに関しては委員間に結構な差がありそう」
2014/07/07「ECBが決定会合回数を削減/イエレン議長会見ネタ(続き)」
2014/07/04「リクスバンク利下げとガイダンス導入/イエレン講演はテーマごとに説明が明瞭過ぎですな(続き)」
2014/07/03「イエレン議長が講演でBISビューをケチョンケチョンに(まずは斜め読み)」
2014/09/30
○連銀総裁講演ネタが投下されるのだが読むのが追いつかないわ
期末期初モードで忙しいというのに何という千本ノック。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NCO9L66JTSEH01.html
シカゴ連銀総裁:利上げは2016年が適切−低インフレで
更新日時: 2014/09/30 02:24 JST
『エバンス総裁は29日、シカゴでの講演後に記者団に対し、「金融政策が適切で経済見通しが極めて良好な中で、インフレは緩やかに目標値に近づきつつあるにすぎない」と述べ、「そうした意味で適切な政策は2016年第1四半期の利上げだ」と続けた。同総裁は今年の連邦公開市場委員会(FOMC)で議決権を有していない。』(上記URLより)
シカゴ連銀の講演は毎度なのだがURLが長くていかん
http://www.chicagofed.org/webpages/publications/speeches/2014/09-29-14-charles-evans-patience-monetary-policy-nabe.cfm
http://www.chicagofed.org/digital_assets/publications/speeches/2014/09-29-2104-charles-evans-monetary-policy-patience-nabe-print.pdf
Is It Time to Return to Business-As-Usual Monetary Policy? A Case for Patience
というのが今朝投下されておりまして、つい先日もエバンス総裁は講演をしていたので、これでハト派全開講演の2連発という形になっているのですが、章立てを見ますと『A
Balanced Approach to Monetary Policy』だの『Proceed Cautiously in Normalizing
Policy』だの『History Shows That Premature Exit Is a Risk』だのとありましてお察しという内容ではありますが、何せ寝起きなので最後のところだけ引用してあとはまた明日以降に読んでる暇があったらネタにします(が読んでる暇がないのでその間にECBが投下されると見た)。
最後の『Conclusion』から。
『As I think about the process of normalizing policy, I conclude that today’s
risk-management calculus says we should err on the side of patience in
removing highly accommodative policy. We need to solidify our confidence
that our ultimate exit from the ZLB will occur smoothly - and in a way
that sustains our escape from it. A corollary to this is we should not
shy away from policy prescriptions that generate forecasts of inflation
that moderately overshoot our 2 percent target for a limited time.』
基本的にはこの方のバランスアプローチというのは物価がそんなに上がらんので(中の説明はざっと読んだところそんな感じだし従来からその話をしていて、そもそも論としてゼロ金利制約のある中で今の金利水準はまだ高い的な説明になっている)緩和的な金融政策を続けるべきという話です。
『Such a policy strategy more properly balances expected costs and benefits.
And it would leave me with much more confidence that inflation will not
stall out below target once we start raising rates.』
『I agree with Atlanta Fed President Lockhart in thinking that we ought
to be “whites of their eyes” inflation fighters.[18] The last thing we
want to do is regress back into the ZLB. Indeed, such a relapse would be
a sign there was something else going on that was preventing the economy
from being as vibrant as we thought possible.』
ということで、エバンス総裁の(というかこの部分はFOMCのメジャーな考えだと思うのだが)イメージとしては利上げに着手したら中立金利水準までの利上げを継続して実施できるような状態、つまり相当の自信が無いと利上げ着手をしないという話だと思います。まあそれで結局ビハインドする結果になると思うのですけどね!!!
なおロックハート総裁ネタも投下予定。
『To summarize, I am very uncomfortable with calls to raise our policy rate sooner than later.』
早期利上げについてはvery uncomfortableですってよ奥様!
『I favor delaying liftoff until I am more certain that we have sufficient
momentum in place toward our policy goals. And I think we should plan for
our path of policy rate increases to be shallow in order to be sure that
the economy’s momentum is sustainable in the presence of less accommodative
financial conditions.』
という説明って以前日本の量的緩和解除の時に植田審議委員(当時)が「経済を吹かしてから」というような表現をした事があったなあとか思いだす訳ですが、金利政策はビハインドのリスクを取る分をマクロプルーデンスで調整みたいなのが今の主要国での正常化政策に関する考え方の主流になっているのですが、まあ実際にはマクプルって金利使わないでワークできるのかというのはアタクシ的には非常に懐疑的でして、そうなると結局緩和政策のビハインドが効いてアセットバブルヒャッハーが再びという事になるんじゃネーノとは漠然と思っていますけどね。
『I look forward to the day when we can return to business-as-usual monetary
policy, but that time has not yet arrived.』
でまあその時期について終わった後に記者から質問されて先ほどのブルームバーグニュースにありますように2016年という話になっている訳ですが、まあ最初の利上げを行ってから様子を見て暫く動かない的なアプローチをするなら来年前半というのも有りかも知れないけど、今までのFEDの正常化アプローチってTaperingの時もそうですけれども、一旦開始すると、一応は「状況次第で調整します」とは言うけれども基本的にはゴールに向けてメジャードペースで淡々と実施するという流れでありますので、恐らくはエバンス総裁の指摘するような「相当の自信があるまで」、つまり中立金利までの利上げが可能と見られる状況になってから利上げに着手するんじゃないの(となるとまあ普通に考えても来年9月開始だしもう少し慎重ならもっと先でしょ)という話だとは思うのですがどうでしょうかねえ。
○ロックハート総裁講演ネタと思ったら時間ががががが
時間配分また間違えたorzorz
http://www.frbatlanta.org/news/speeches/140925_speech_lockhart.cfm
http://www.frbatlanta.org/documents/news/speeches/140925_speech_lockhart.pdf
Key Questions for Monetary Policy
Dennis Lockhart
President and Chief Executive Officer
Federal Reserve Bank of Atlanta
今日はとりあえず手抜きで『Key points』だけネタにして続きは明日。
『Atlanta Fed President and CEO Dennis Lockhart, in a September 25 speech
before the Mississippi Council on Economic Education, shares his views
on monetary policy over the medium term. 』
というのはマクラ。
『Lockhart's medium-term economic outlook calls for continued moderate
growth around 3 percent annually accompanied by a substantial closing of
the employment and inflation gaps. He notes that the economy's performance
in coming quarters will dictate the decision to raise interest rates. He
expects conditions for policy liftoff to ripen by mid-2015 or later.』
経済見通しとしては当面実質GDPは3%成長ということで、昨日ネタにしたメスターさんと同様でFOMCの中ではやや強気の部類で、利上げの時期に関しては2015年中盤かもうちょっと後となっていますので、FOMCの中での景気認識はやや強めだけれども利上げ着手時期自体はFOMCのSEPの中心よりはやや遅いイメージですね。
『Lockhart believes the United States will approach conditions consistent
with full employment by late 2016 or early 2017. He believes the gap between
headline employment and broader measures, such as the number of people
working part-time for economic reasons, suggests there is more work to
do before we can be satisfied with employment conditions. 』
まあこの辺はFOMCの中心的見解と同じような感じで、労働市場のギャップに関しては失業率で計測される以上のギャップが存在していますという話。
『Lockhart describes two inflation worries: persistent undershooting of
the FOMC's 2 percent inflation goal and an overshoot of the goal that gets
out of hand. Of those, a persistent undershoot is a bigger concern, in
his view.』
で、物価に関しては「低インフレの継続」の方が大きな懸念であるということで、インフレが上に振れる懸念はあまり見ていませんという話になっております。
『Lockhart also addresses concerns that the extended period of low rates
might be feeding the risk of financial instability. He is comfortable that
being patient regarding liftoff will not trigger a systemic financial event.』
金融安定化の論点の話もしているのですが、ではそれはバブル懸念とかそういう話かと言いますと本編の方でも別にそういう話をしている訳ではなくて、それよりも利上げ着手における市場金利の急騰を懸念するってんですからスタイン前理事的な意味合いとはだいぶ違うわな。
『Lockhart is also carefully monitoring geopolitical risks. He says that
financial markets seem to reflect a view that the U.S. real economy enjoys
some insulation from severe spillover risk.』
まあ地政学リスクに関しては本編でも説明はありますが、リスク認識として注意しますよという感じであります。
ということで、エバンスさんのようなハト派ではない(そもそも経済見通しが強め)のですが、経済の見通しが強めの割に利上げ着手のタイミングやアプローチに関しては慎重であるというのがほほうという感じではありましたです、はい。
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2014/09/29
○クリーブランド連銀メスター総裁は景気には強気とな
http://www.clevelandfed.org/For_the_Public/News_and_Media/Speeches/2014/mester_20140924.cfm
http://www.clevelandfed.org/For_the_Public/Documents/09-24-2014.pdf
The Economic Outlook, Monetary Policy, and Getting Back to Normal
どちらかと言うとあまりタカとかハトとかで確立した芸風を確保していない人の講演を見るという事で、メスターさんはここの所2回ほど講演しているのですが直近の講演から少々ですが、まあ経済に関しては全般的に見方が強いなあという所で『The
Economic Outlook』から参ります。
・GDPは3%成長が続くが潜在成長率の見通しも強い
『 I expect real GDP to expand at about a 3 percent annual pace in the
second half of this year and over 2015 and 2016. This is a moderate pace
of growth, but it is somewhat above my estimate of longer-run trend growth,
which I put at around 2.5 percent.』
今後2年間は実質3%成長が続き、その数値はメスター総裁の考えるロンガーランの実質GDP成長率の2.5%を上回る状態となるでしょうと。
『I believe several factors support above-trend growth over the next couple
of years. Household and business balance sheets have improved and so have
consumer and business confidence, which should support spending. In addition,
monetary policy remains highly accommodative. And I expect labor markets,
which have shown significant progress, will continue to strengthen and
help sustain consumer spending.』
その理由はバランスシートの改善によるコンフィデンス改善、緩和的な金融政策、労働市場の改善が続くことだそうな。
『Of course, there are risks around this forecast. These include geopolitical
risks, which have escalated in recent weeks, as well as weakness in some
economies abroad. Despite the risks, it’s my view that our economy is
on firmer ground than it has been for some time.』
地政学リスクや海外経済の減速リスクなどはあるが景気は堅調に推移するとの見立て。
『My output projections of 3 percent in 2015 and 2016 put me at the upper
end of the central tendency of FOMC participants’ new projections for
2015 and just above the upper end for 2016. The central tendency is obtained
by dropping the lowest and highest three projections from among the FOMC
participants. For 2015, the central tendency is 2.6 to 3.0 percent, and
for 2016, it is 2.6 to 2.9 percent. I note that my 2.5 percent estimate
for longer-run growth is also somewhat more optimistic than the central
tendency of 2.0 to 2.3 percent.』
でまあこのメスターさんの見通しは自分で思いっきり言ってますけど、「FOMCの中では強気の部類」ということでして、成長率見通しについてはcentral
tendencyのレンジの一番上の所にいて、ロンガーランの成長率の見立てに関してはcentral
tendencyのレンジよりも強いという数値になっています。
『Of course, there is always a good deal of uncertainty around estimates
of trend growth, perhaps even more so today in the aftermath of such a
deep recession. I lowered my estimate of trend growth after the Great Recession,
but perhaps not far enough given the low productivity growth we’ve experienced
over the past couple of years.』
ロンガーランの見通しについては金融危機後に下げたものの、まあそんなに大きくは下げていないそうな。
『On the other hand, I think it is premature to discount the future too
much. It is good to remember the experience of the 1990s when over a period
of several years, many forecasters revised down trend growth estimates
only to subsequently revise them up significantly in response to strong
productivity growth.』
ワロタという所ですが、ショックなどの後に低成長が続くとロンガーランの成長を過少推計する向きが多いけれども、1990年代にも同じような事があって結局その後推計を元に戻した人が多かったですよねとのご指摘。
・失業率に関してはロンガーランのノーマルレベルをやや高めに置いている
労働市場の話に関してはそんなに変わった話をしている訳でも無い(足元の数値はがっかりだが1か月の数値で見るもんじゃないとか)ので結論部分だけ引用。
『I expect that by the end of next year, the unemployment rate will fall
to around 5.5 percent, which is my estimate of the longer-run, or natural,
rate of unemployment, and remain near there in 2016. Like longer-run growth
estimates, there is considerable uncertainty around estimates of the longer-run
unemployment rate. These estimates depend on demographics, production technology,
and other structural factors, and can vary over time. My estimate is on
the upper end of the central tendency of 5.2 to 5.5 percent of the FOMC’s
projections of longer-run unemployment. This means that I am projecting
a somewhat faster return to full employment than some of my colleagues.』
ということで、失業率のロンガーラン水準が5.5%でcentral tendencyの上限になっていて、かつ上記のようにGDP見通しもcentral
tendencyの上限ですので、労働市場がノーマルな水準まで改善する時期の予想がFOMCの中心的見解よりも早めになっています。
・物価に関してはそんなに変わった話になっていない
物価の説明部分は超あっさり味でして(GDPと雇用の説明はそこそこ長い)、全部引用しても以下のような感じです。
『Turning to inflation, although it remains below the FOMC’s goal of 2
percent, inflation measured by the year-over-year change in the price index
for personal consumption expenditures has increased to 1.6 percent this
year from 1.2 percent last year. Consistent with a pickup in economic growth
and expectations of inflation remaining well anchored, my projection is
that inflation will gradually move back toward the FOMC’s 2 percent goal
by the end of 2016. Of course, this projection is dependent on appropriate
monetary policy. So let me turn to that now.』
ということで適切な金融政策の元で2016年に向けて物価は2%に向けて接近してくるという見通しになっていますが、ロンガーランの失業率がやや高いのと、ロンガーランのGDP水準がやや高いのが相殺されて物価に関してはニュートラルになっているということでしょうかねえ。特段説明が無いから良く判らないけど。
・フォワードガイダンスは時間軸にあらずという説明部分
で『Monetary Policy』の部分ですけど基本的な説明部分はさておきましてフォワードガイダンスとか時間軸とかの話から。
『As one can see by looking at the SEP, there is some diversity of views
about the appropriate path of interest rates. That is to be expected. Monetary
policy must be dependent on the realized and expected evolution of the
economy, and differences in the outlook across FOMC participants can result
in different views of appropriate policy.』
『In addition, policymakers will calibrate their views on appropriate policy
to changes in their outlook over time. This is what is meant by policy
not being on a preset course: It should respond to changes in the realized
and anticipated course of the economy.』
ということで金融政策は経済の状況および見通しによって変化しますとそらまあ正論ですが・・・・・・・・
『Indeed, this is a part of the Committee’s forward guidance, which remained unchanged last week.』
お、おう・・・・・・・・・・・・
『The guidance indicates that in determining how long to maintain the current
target range for the fed funds rate, the FOMC will assess both realized
and expected progress toward our objectives of maximum employment and 2
percent inflation, and we will look at a wide range of information in making
that assessment. The guidance then indicates that, based on that assessment,
the Committee continues to anticipate that it will likely be appropriate
to maintain the current 0-to-1/4 percent target range for the federal funds
rate for a considerable time after the asset purchase program ends. 』
ほうほうそれでそれで?
『I would prefer this second part of the forward guidance be reformulated.
Even though the Committee has emphasized that policy is contingent on the
state of the economy, in my view, the “considerable time” part of the
guidance tends to focus the public’s attention on a calendar-time for
liftoff rather than on the changes in economic conditions that will help
determine changes in appropriate policy.』
ということでフォワードガイダンス文言を直すべきという話なのですが、considerable
timeという文言はtime-dependentのように見えるので直せという話であって、確かこの講演の時に早期利上げガーみたいな反応があったと思うのですが、別にメスターさん早い遅いの話はしていないと思う。
『I believe the Summary of Economic Projections is a better vehicle to
convey information about the anticipated timing of liftoff, as it ties
policy paths to the economic outlook. But I acknowledge there is a range
of views about forward guidance.』
ということで、SEPのドットや利上げタイミング予想をコミュニケーションツールとして使うという話をしているのですが、ただまあSEPを使うのは却って混乱を招くと思いますよあたしゃ。
『With the fed funds rate effectively at zero, forward guidance has been
used as a tool of monetary policy to add policy accommodation.』
でまあそこまでで話を終わらされますと何というフォワードガイダンスのサイレント形骸化と思うのですが、さすがにそこまで図々しくは無くて、「これまでの間フォワードガイダンス文言が時間軸政策として緩和の強化に使われていました」という説明が始まる辺りはメスターさん比較的狸度が低いなあと思うのですよ。
『Indicating that the future path of short-term interest rates will be
low for a long time can put downward pressure on longer-term interest rates,
thereby spurring current economic activity even when the policy rate is
at the zero lower bound.』
先行きの金融政策パスを示すことによって長期金利に低下圧力を掛けるという金融緩和強化をこれまでは行ってましたぞなということですが・・・・・・・・・・・
『But in more normal times, away from the zero lower bound, I view forward
guidance more as a communications device that conveys to the public how
policy is likely to respond to changes in economic conditions. As such,
I would like to see the forward guidance evolve over time to give more
information about the conditions we systematically assess in calibrating
the stance of policy to the economy’s actual progress and anticipated
progress toward our dual-mandate goals, and to the speed with which that
progress is being achieved.』
ということで、メスターさんとしてはフォワードガイダンス文言によって先行きの金融政策パスについてを示すのではなくて、ガイダンス文言は金融政策の反応関数について明示的に示す為のものとして使うほうがヨロシという話をしておりまして、まあガイダンス文言がタイムディペンデントになるのは良くないというのは判るのですが、主張そのものは却って市場を混乱させる可能性があるなあとは思うので、もうちょっと曖昧に「総合判断」でも良いように思えますけどね。
『A faster than expected pace of progress toward our goals would argue
for a faster return to normal-that is, an earlier liftoff and more rapid
funds rate increases than currently anticipated by the Committee?while
a more subdued pace would argue for a slower return-a later liftoff and
less rapid increases. I believe that effective communication about the
contingent nature of our policy will be a key ingredient as we move back
toward more normal monetary policymaking.』
まあこの辺は普通の話でして、金融政策の話に関してメスターさん自身としてどの時期に利上げという部分は避けていて、(引用していませんが)「先般のFOMCでの決定について賛成票を投じました」という表現にとどめておりますが、まあ話のトーンから考えてそんなにハトハトな人では無いものの、この説明の中でファイナンシャルスタビリティーの話とか殆どしていないので別にタカという話でも無さそう。ただまあ今回はどちらかと言うとロンガーランの話をしているのでファイナンシャルスタビリティーに関しての見解はまた別の場所で話があるかもです。
・正常化におけるオペ運営に関しては特段変わった話はありません
以下が『Normalization Principles and Plans』ですが、こちらは特段変わった話はしておりませんので一つだけトピックを。
『In addition, the Fed will use other tools as needed to ensure adequate
control of the policy rate. One of these tools is an overnight reverse
repurchase agreement facility. Basically, with overnight reverse repos,
the Fed lends securities from its large portfolio overnight in return for
liquidity from eligible counterparties. Offering this alternative investment
should help put a floor on the fed funds rate. But there is the potential
that in times of market stress too much liquidity could be drawn from the
private market to the Fed’s facility, thereby exacerbating financial market
stress. To limit this possibility, the FOMC has been considering and testing
different design features, and as the FOMC indicated, the overnight reverse
repo facility will be used only to the extent necessary and will be phased
out when it is no longer needed to help control the fed funds rate.』
ということで出口においてRRPを使う件については、RRPによってMMFなどの運用資金が吸い上げられることによって民間のファンディングに悪影響を与えたくない、という説明になっているのですが、「in
times of market stress too much liquidity could be drawn from the private
market to the Fed’s facility, thereby exacerbating financial market stress」と言っているのはお為ごかしというか理屈の為の理屈みたいな話でして、そもそも市場にストレスがある時にはRRPによるクラウディングアウトもへったくれも無くて、クレジットリスク取れない時なのだからどうしようも無くて、それこそRRPでの資金吸収をしながら民間クレジット商品の買入なり担保政策の緩和なりをするという話じゃないですかねえとは思いました。
ということで、今年の投票権の方なので肝心の来年は投票権無いのですけれども、まあやや強めな感じではあるかなあとは思われます。
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2014/09/26
○イエレン議長会見ネタファイナルである
引っ張ってすいませんすいません。
http://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20140917.pdf
本日は18ページ目の辺りからになりますが、今回は質問する方も論点が整理されていて、しかも良い質問を入れてくるので読んでて読みごたえがあるのと、昨日までネタにしてお判りと思いますが、イエレンさんの説明って長いには長いのですが、ロジックが明快なのであまり長さを感じないで、量(全部で22ページ)ある割にはあまり引っかかりがなく読めるという代物ですのでオヌヌメ。
・フォワードガイダンスの実質的な変化(形骸化)を思いっきり説明している質疑応答
イイシツモンダナーというのがありましてね。
『ROBIN HARDING. Robin Harding from the Financial Times. Madam Chair, I
want to come back to the forward guidance. Quite a large part of the Committee
has recently criticized the guidance as being calendar-based. But if I
understood your comments earlier, that's not correct. How should people
understand that?』
フォワードガイダンスは一種のカレンダーベースなもの(そもそも最初の導入時はそういう雰囲気をプンプンさせることによって効果を出していた)では無いというように説明しておりましたが、どう理解すれば良いのでしょうかとは良い質問。
『And if it doesn't have a defined meaning, what purpose is it actually
serving? And do you expect to have to revisit it in the near future? Thank
you.』
でまあフォワードガイダンス文言に一定の決まった意味づけがないのであれば、そもそも何のためにフォワードガイダンスを入れてるのよ?この文言って近いうちに替わる可能性があると思ってますかねえと大変に良いツッコミが入っていますのでどこぞの島国の中央銀行総裁会見に参加される皆様におかれましてもこのような良い質問を入れて頂きたい物だと切に願いたいものであります。
で大木こだま師匠じゃなかったイエレンさんのお答え。
『CHAIR YELLEN. So we are constantly discussing forward guidance and thinking
about whether it's appropriate and how to revise it. And we did do a major
overhaul of our forward guidance in March. I think the Committee participants
who have spoken out on this topic recently want to make sure that we have
the flexibility, that the Committee has the flexibility to respond to unfolding
developments. They want to make to sure that if progress really does turn
out to be faster than we have--we would expect, that the Committee will
be in the position to start sooner tightening monitor policy. 』
「flexibility」キタコレ!ということで、この先も何発もflexibilityというのが続きまして、まあ端的に言えば従来はいわゆる時間軸効果を出すために使っていたフォワードガイダンス文言が変化して「ただの現時点での見通しを端的に示す文言」になっていることをここでより明瞭に説明しています。
『They do not want to be locked into something that the markets see as
a calendar-based and firm commitment.』
ということで、まあ従来からfirm commitmentとは言ってませんでしたが、思いっ切り「コミットメントに非ず」と直球キタコレでありまする。
『And so they want to emphasize data-dependence of our policy and make
sure that we have appropriate flexibility. But I agree with that. And as
I said earlier, I think we do not have any mechanical interpretation that
applies to this. It, of course, gives an impression about what we think
will be appropriate, but there is no mechanical interpretation. And I've
said repeatedly and I want to say again that if events surprise us, and
we're moving more quickly toward our objectives, and the Committee sees
a need to move sooner or later depending on what the data is, that we do
feel--I do feel we have the flexibility to move.』
いやー説明がしつこいですなあという所で、しかも口調がアレなので相当ねちっこい説明の印象ですかねえとか思ったりする訳ですが(^^)、これバーナンキ先生の口調でのベシャリだと相当明瞭に聞こえそう。
『And it is important for markets to understand that there is uncertainty,
and this statement is not some sort of firm promise about a particular
amount of time.』
この前の「6か月」発言は何だったのかという感じですが(ってまあ6か月というのはそれはそれで見通しとしてその程度を中心とした期間でゼロ金利継続という話ではあるのかも知れませんけど)、今回の説明では思いっ切りこの辺りをフレキシビリティとかデータディペンデントとかで説明している感じですな。
・利上げペースが遅くなる理由についてのロジック
次の質問である。
『STEVEN BECKNER. Good afternoon, Chair Yellen. Getting back to the one
aspect of the forward guidance is the statement, which you’re reiterated
about the funds rate probably needing to stay below normal for some time
after achieving mandate-consistent levels on unemployment, inflation, so
forth. The SEP assessments of appropriate funds rate levels show the funds
rate getting up to that 3.75 percent normal level at the end of 2017. If
you look at the SEP projections of unemployment, inflation, and so forth,
they seem to get back to those mandate-consistent levels by the end of
2016, if not much sooner. So what is the justification for waiting that
much longer to get back to normal, particularly when you have such a large
balance sheet that you intend to reduce only gradually? Is there a danger
of getting behind the curve?』
『And secondly, can I just ask: Can you envision a time when to reduce
reserve pressures you may have to resort to asset sales that you don't
anticipate doing now?』
後半は別の質問(ちなみにその質問の答えはすっかり忘却して次に行ってます^^)ですが、前半はSEPの見通しだと2016年で経済はロンガーランノーマルなのに金利が2017年でロンガーランノーマルだとすると金融政策がビハインド・ザ・カーブになりませんかという奴でして・・・・・・・・・・
『CHAIR YELLEN. So on the first question of some time before rates return
to normal levels, as I mentioned, you can see in the SEP that by the end
of 2017, many participants are anticipating that rates will return to what
they think are normal longer-run levels, but the economy in their view
will have probably gotten back to normal levels of unemployment and near-normal
levels of inflation sometime in 2016. So that looks like a year or more
in which rates would be below normal longer-run levels.』
でその理由はと言いますと・・・・・・・・
『We asked participants why they hold the views that they do about appropriate
policy, and there are number of different explanations that participants
give. But a common view on this is that there have been a variety of headwinds
resulting from the crisis that have slowed growth, led to a sluggish recovery
from the crisis, and that these headwinds will dissipate only slowly, that
they are dissipating.』
議論の中で勿論委員の中での見解の差はあるけれども、基本的に言えば金融危機の後遺症が成長を阻害しており、その後遺症が長引いている為にノーマルレベルまでの金利引き上げには時間を掛けられるという見解ですというのはまあその前にもイエレンさんが言っていたネタなので想定通りちゃあ想定通りの答え。
『An example would be the fact that mortgage credit really is at this point
available really to those with pristine credit. Credit conditions there
are abnormally tight.』
でもってここからほほうという説明がちょっと入るのですが、その金融危機の後遺症の例を挙げているのが興味深い所で、最初がモーゲージクレジットなどのクレジット環境がabnormally
tightだというのを挙げていまして、逆に言えばここら辺の状況が改善されるのであれば正常化ペースは早まる可能性があるという事でもある(イエレンさんはハトだからそんな話はあまり考えてないかも知れないが現実問題としてそうなった場合には変わる可能性がありますよねという意味)と思いますけどどうでしょうか。
『Another thing that we see is that households’ expectations about their
likely income paths remain quite depressed relative to pre-crisis levels.
That’s something that may be holding consumer spending. So the view would
be those forces will dissipate over time, but only very gradually. And
in addition, we have had slow productivity growth and a slow pace of potential
output likely depresses the pace of investment spending. And so, those
are some of the things that participants mention is why it will take some
time to get back.』
他には家計の所得期待が伸びなくて消費がヒャッハーにならない(とは言ってもFOMCでの認識は消費が強いという話になっていますので念の為)とか、生産性の伸びが弱いとか、潜在的な生産が弱くて投資が中々伸びないとか、これらの要因を挙げているので、まあこういう辺りは「金融危機の後遺症」として見ているという話ですな。
『So the story is it's not that the Fed is behind the curve in failing
to return the funds rate to normal levels when the economy is recovered;
it is rather that in order to achieve such a recovery in 2016 or by the
end that it's necessary and appropriate to have somewhat more accommodative
policy than would be normal in the absence of those headwinds.』
ということで結論は「ビハインド・ザ・カーブどころか金融危機の影響が2016年になっても残っているので緩和的な金融環境が適切ですよ(キリッ)」ということで、まあ当然ちゃあ当然ではあるのですけれども、説明ロジックがクリアカットなので分かりやすく、イエレンさんの説明はまあそうだろうなあとは思う物の、これらのヘッドウィンドを過大評価する場合には別のリスクも発生しそうですなということで。
・正常化プロセスが遅れると2004年の二の舞になりませんかというツッコミに対して
その次にPETER BARNESさんのスコットランド住民投票と欧州経済大丈夫かねな質問があるのですが(その前のGreg
IPさんの質問のフォローですが、そもそも昨日引用するときにGreg IPさんの質問を割愛してますので)割愛しまして最後の質問。
『PEDRO DA COSTA. Thank you. Pedro da Costa with Dow Jones Newswires. My
question is about your particular views about whether a gradual approach
to tightening is better than a more aggressive and less predictable one,
because there was some discussion about--internally and externally about
whether it was the Fed’s predictability in the 2004-ish period that kind
of created the conditions of complacency that led to the housing bubble.
So I wonder if you'd be more inclined to be gradualist in your approach
and more transparent in outlining future moves, or whether you think keeping
the market guessing there's some values for that? Thanks.』
前回のITバブル対応の緩和からの正常化プロセスが遅かった事が住宅バブルを発生させたという指摘がだいぶあると思うのですが、今回も正常化プロセスに時間を掛けるという点についての説明とか資産市場の現状評価とかどうよと。
『CHAIR YELLEN. You know, this is something the Committee is going to have
to discuss when the time comes to normalize policy. Looking back on the
period, the run up to the financial crisis, I don't think by any means
measured pace and the very predictable pace of 25 basis points per meeting
explains why we had a financial crisis, but it may have diminished volatility
and been a small contributing factor, and the Committee will have to think
about how to do this. I think many people in the aftermath of that episode
think that somewhat less of a mechanical pace would perhaps be better,
but this is a matter that we will in due time have to discuss.』
ここは質疑が(珍しく)微妙に噛み合っていない気がするのですが、前回の正常化サイクルでメジャードペースとして会合毎に25bpずつの利上げを行ったこと自体が住宅バブルを生んだとは考えていないという話をしつつ、それがボラを下げたというのはまあそうかも知れんけどとは言ってますな。
で、正常化プロセスに関してメジャードペースみたいなのが良いのか良くないのかという点に関しては今後とも議論するという話ではあるのですが、まあこのニュアンスからすると正常化へ着手したらそのままメジャードペースで引っ張っていくし、そうであるからこそ利上げの着手はそんなに早くならないというのが(早めにやって止めるというアプローチではない)アタクシが受けたニュアンスなのですが、まあその部分は解釈が分かれそうなのであくまでもアタクシの愚考という事で。
なお、そのアプローチだとやはり正常化プロセスがビハインド・ザ・カーブになるリスクは相応にあると思います。「先の方まで正常化行けるという見通しが出来る」所までゼロ金利引っ張るとなると、恐らくはビハインドするでしょと・・・・・・・・
てなわけでイエレン師匠の会見質疑を3回に分けてほぼ全部引用しちゃいましたが今回は論点をクリアカットに説明しているものでつい長くなってしまいました(大汗)。来週は地区連銀総裁ネタと英国ネタですかねえ。
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2014/09/25
○イエレン議長のFOMC記者会見は説明ロジックが明瞭で分かりやすいという件
http://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20140917.pdf
昨日はQ&Aの最初の2つの質疑(だけで3ページくらい費やしている)をネタにしましたが、本日はその続きをば。
でまあ今回の会見ですが、慣れてきたみたいでイエレンさんの説明が一つ一つの質問に対してかなり長くなってきたという感じ(元々長いのですが)なのですが、今回は説明ロジックがかなり明瞭になっていまして(なお音は聞いていませんがどうせベシャリの方は大木こだま師匠ばりの粘っこい喋り方だとは思いますが)、逆さ絵先生のだいぶイカサマ臭いロジックとか、ドラギ俊彦先生の歯切れは良いけどイカサマ説明とかと比較してみますと実にクリアで分かりやすいです。
まあ現状では金融政策の方向性が確りあって、あとはそのスピード調節をどうするのかという話で金融政策運営の論点が明確になっているから説明ロジックも明瞭になる、という事が原因なのかもしれませんが、前任とはまあだいぶ違うイエレン節というのが見えてきた感じがします。
・労働市場のスラックをとにかく強調する件
3番目の質疑応答も長いのですが、これは後の質疑応答でも同じネタが出てくるのでパスしまして次の質疑応答が基本的な部分を踏まえているのでまあ良い整理である。
『CHRIS CONDON. Thank you, Madam Chair. Chris Condon, Bloomberg News. Madam
Chair, the economy has been growing now for five years and some economists
believe the expansion will last another five years. Why, in your view,
is economic growth not creating more inflation and wages and in PCE? Is
this all about remaining slack in the labor market, or are there other
forces at play?』
これまで5年間経済が拡大していて今後も拡大するという見通しだが何で物価や賃金がもっと上昇せんのかという点の整理を願いますとはまあ基本的だが良い整理。
でまあ説明が丁寧なのよね、全般的に言えるのですが。
『CHAIR YELLEN. Well, to my mind, the very slow pace of wage increases
does reflect slack in the labor market. We had a very deep recession, as
is perhaps to be expected in the aftermath of a very significant financial
crisis. We faced headwinds in the economy recovering, so the recovery has
been slow.』
ということで、「労働市場のスラック」と「金融危機の後遺症」を挙げていますが・・・・・・・・・・
『Growth has been positive, and it's lasted for five years. But it’s nevertheless
been slow relative to past recoveries that have not been associated with
financial crises. And while unemployment has come way down from the slightly
over 10 percent level it reached, at 6.1 percent, it remains significantly
above the level that most FOMC participants would regard as consistent
with normal in the longer run, 5.2 to 5.5 percent.』
景気は5年間回復してて失業の水準も改善したけどまだロンガーランのノーマルレベルよりは「significantly
above」とな。
『So there is significant underutilization of labor resources.』
ということでキタコレである。
『We continue to discuss whether or not the unemployment rate itself is
an adequate measure of how much underutilization of labor resources there
really is. And, as I went into detail in Jackson Hole, and won't repeat
all of that, there are other ways in which we see underutilization--high
levels that have come down only very marginally of part-time employment
for economic or involuntary part-time employment, perhaps some remaining
shortfall of labor force participation as a result of cyclical factors.
And so, I think there still is--and the statement says that--significant
underutilization of labor resources and a very modest pace of wage increases
that's picked up very little I see as essentially a reflection of that.』
とまあ説明がやたら丁寧ですが、その労働市場のスラックは失業率だけではなく色々な指標に出ております通りで、これが相変わらずデカイ結果として賃金の上昇が弱かったりする訳ですという話ですが、まあこんな感じで説明が全部丁寧なのがイエレン師匠のクオリティ。
まあ何ですな、説明が明瞭で丁寧というのはどこぞの極東の島国の中央銀行総裁やら置物副総裁とかもそうですが、当初自信満々の時には明瞭で丁寧でも、ボロが出てくると段々明瞭だけどインチキになるのか、意味不明瞭になるのか、というような流れになるのかも知れませんけどね!!!!
・ドットと市場の見通しとの差異について&イエレン議長の立ち位置を聞くという剛球質問
『JON HILSENRATH. Jon Hilsenrath from the Wall Street Journal. Chair Yellen,
I want to come back to the interest rate projections that have been put
out today. The public, I think, would be enlightened by knowing a bit more
about where you stand in relation to these projections.』
イエレンさんはドットのどこにいますかとはこれまた剛球質問。
『And with that in mind, and in the name of transparency, I wonder if you
could describe to us whether you're at the low end of those projections
within the central tendency or at the high end.』
ワロタけどそれは「んなこと言われたらあんた、往生しまっせ〜」で終了する質問だと思う。
『I also want to ask you about a San Francisco Fed paper that came out
recently, which suggested that market expectations have been running below
the Fed’s own projections.』
誰か聞くと思ってましたが、このペーパーをネタにしている余裕が無くてすいませんすいません。
http://www.frbsf.org/economic-research/publications/economic-letter/2014/september/assessing-expectations-monetary-policy/
September 8, 2014
Assessing Expectations of Monetary Policy
Jens H.E. Christensen and Simon Kwan
(画面レイアウトズレズレ防止にリンクは途中までの所で貼っていますがペーパーにちゃんと飛ぶ予定です)
『So I wanted to ask you if you see that as well, and whether it's all
troubling that market expectations might not be aligned with the central--with
what the Fed put out today.』
市場の予想とSEPのドットが違う件というペーパーは「基本的に市場の方が遅い」という話で、どこぞの中央銀行が市場のインフレ期待と一般人向けサーベイのインフレ期待の特性について紙を出して何とかストの皆さんを盛大にdisったという事案があったのに被るなあという話ではあるのですが、それに絡めた質問ワロタ。
『CHAIR YELLEN. So, with respect to identifying myself, the Committee has
had discussions during the years that we have been providing these forecasts
of the participants to the public as to whether or not it's desirable from
the standpoint of Committee functioning to identify who's who in these
pictures. And thus far, well, occasionally an individual will indicate
in the speech what their personal views are. We have not yet decided that
would be a desirable thing for the point of view of our decision-making
process to identify individuals.』
要するにゼロ回答。
『We have a subcommittee on communications that's now chaired by Vice Chair
Fischer, and they will be considering the SEP and whether or not some changes
are appropriate. But until--and unless there is some change in the Committee
stance on this--I don't want to identify myself.』
一応コミュニケーションの改善検討会はやっているのでそのうち改善するかもしれませんけどとは付け加えていますが、まあ普通この手のドットで一々各人の数値を紐付けしないのが基本でしょうね。
『You asked, second, about the San Francisco Fed paper that did point to
a notable divergence between market views and the views of the Committee.
I'd say that there have been any number of different analyses of this topic,
there are many different survey measures and interpretations of what the
market thinks. And I don't frankly think it's completely clear that there
is a gap.』
実際は市場が示すの金利見通しとFEDのSEPで出ているドットにそんなに大きなギャップがあるとは思わないとはこらまた中々面白い説明なのですが・・・・・・・・・・・
『There are different views on whether or not such a gap exists. To the
extent that there is a gap, one reason for it could be that markets and
participants have different views on the evolution of economic conditions.
For example, I think I'd note that when the Committee participants write
down their forecast for the federal funds rate, they are showing the funds
rate path that they consider most likely. Their economic forecasts are
of the conditions that they think are the most likely ones. You don't see
the full range of possibilities there. And the path for the funds rate
is the path that each individual thinks is most likely.』
『Market participants, understanding that there are a range of possible
outcomes with upside and downside possibilities, are doing something slightly
different, I think, when they're determining market prices. They are taking
into account the possibility that there can be different economic outcomes,
including--even if they're not very likely--ones in which outcomes will
be characterized by low inflation or low growth and the appropriate path
of rates will be low.』
ということで、インチキ説明が待っているのかと思いきや納得のいく分かりやすい説明でして、SEPでの見通しは「メインシナリオ1本」で示しているけれども、市場の価格形成においては「メインシナリオ」だけではなく「リスクシナリオをウェイト付けて考えた部分」が反映され、現状ではダウンサイドリスクに対してウェイトが掛かっているので、SEPの金利見通しが市場の金利見通しよりも強くなる、という説明になっていて、いやあこれは確かに仰る通り。
『So, differences in probabilities of different outcomes can explain part
of that. We, you know, want to learn, we--market participants may have
different views on the economy than the Committee does, and that's something
we want to try to infer and learn market views in part from information
of this type. What can I say is that it is important for market participants
to understand what our likely response or reaction function is to the data
and our job is to try to communicate as clearly as we can the way in which
our policy stance will depend on the data, and I promise to try to do that.』
なるほどとしか言いようがないです。
・バランスシートをどうするのかという件
次の質問である。
『YLAN MUI. Hi, Ylan Mui, Washington Post. My question is about the new
exit principles. You guys say that you don't plan to end reinvestments
until after the first rate hike. Can you give us a little bit of a sense
of what are the conditions you're going to be looking for when you eventually
began to end the reinvestments? It sounds like tapering the reinvestments
is also on the table. What might go into your decision on whether or not
to end them altogether, whether or not to taper them? And do you have a
general timeline for how long you think it will take to shrink the balance
sheet once you actually start?』
再投資停止とかその後のバランスシート正常化のパスについての質問ですな。
『CHAIR YELLEN. OK. All good questions.』
ドラギ俊彦先生とか本家俊彦先生辺りがこういうとインチキ説明の前振りなのですが、イエレン先生の場合は本当に「good
questions」という認識をして嬉々として説明を始めるようです。
『So, I think the Committee would--will be focused on, we intend to use
the path of short-term interest rates as our key tool of policy. And of
course, market participants will be very focused, as we are, on what is
the appropriate timing and pace of interest rate increases when that time
comes. And I think the Committee would like to feel that it has successfully
begun the normalization process and that we're successfully communicating
with markets about how that process will be playing out over time. And
I think when the Committee is comfortable that that process is established,
is working well, and we’re comfortable with the outlook, that they will
begin the process of ceasing--or possibly tapering-- but eventually ceasing
reinvestments. So, we say that it will depend on economic and financial
conditions, but we want to make sure normalization is successfully underway.』
あくまでも基本は金利政策になるのでそっちを注目してくれという事ですが、バランスシートの正常化に関してもあくまでも状況次第で変化するということで決め打ちを全然していないのがイエレンクオリティ。
『If we were only to shrink our balance sheet by ceasing reinvestments,
it would probably take, to get back to levels of reserve balances that
we had before the crisis. I'm not sure we will go that low but we've said
that we will try to shrink our balance sheet to the lowest levels consistent
with the efficient and effective implementation of policy. It could take
to the end of the decade to achieve those levels.』
ということで、再投資停止だけでバランスシートを正常化させるとすると、2020年近くまで正常化に時間が掛かるという事ですが、説明も思いっきり仮定法過去になっていて、とにかく先行きに関しての予断を与えないように与えないようにという説明になっている(ただし経済認識は労働市場のスラックを強調しているから結果的にはハト型になるのだが)という事ですな。
・労働市場の循環論VS構造論
『BINYAMIN APPELBAUM. You said a few moments ago that there is perhaps
some remaining shortfall of labor force participation as result of cyclical
factors. This seems consistent with a recent paper by some members of your
staff finding that labor force participation is unlikely to recover. Is
that now the house view that slack essentially consists of unemployment
plus part-time workers who want full-time work and that labor force participation
is basically out of the equation?』
これ原文ママで引用していますが、たぶん質問者が「cyclical factors」と言ってるのは「structual
factors」なのかと思います。で、2番目の質問は次の小見出しで行います。
『CHAIR YELLEN. I’m sorry. Just remind me what was the first question? The first question--
BINYAMIN APPELBAUM. The first question was--
CHAIR YELLEN. Please.
BINYAMIN APPELBAUM. The first question was has the labor force participation--
CHAIR YELLEN. Ah, labor force participation--
BINYAMIN APPELBAUM. --been removed from slack equation?』
たぶんcyclicalだと質問の意味が通じないのでこんなやり取りをしたのかと思われ。
『CHAIR YELLEN. So the recent Brookings paper by the Fed economists clearly
indicates, and I said this at Jackson Hole, that there are structural reasons,
particularly demographics but not only demographics, why labor force participation
should be expected to decline over time. And I agree with that, and I believe
that most of my colleagues would endorse that as well.』
ということで構造要因があることも認めています(ここにあるようにジャクソンホール講演でもその部分はありましたな)。
『However, they did indicate that in the paper that they see some remaining
cyclical shortfall. By one technique that they used, they placed the estimate
at a quarter percent, but by another technique that they used it could
be, I believe they said, as large as 1 percent. And so my own personal
view is that there is some cyclical shortfall, and something certainly--probably
within that range.』
ふむ。
『But nevertheless, it's a meaningful cyclical shortfall. It's not completely--so
I'm giving my own personal view, not a Committee assessment--that, you
know, I see the flat--and given the underlying downward trend in labor
force participation, we might interpret the flattening out of labor force
participation over the last year as showing that that cyclical component
has diminished somewhat. I think there is something that remains, but eventually
I would certainly agree with the authors, we should expect over time to
see labor force participation declining. And then let's see, the second
piece was--』
ということで、循環要因による影響も相応にあるという説明で、だから緩和的な金融政策をやや長くしても無問題というロジックになる訳で・・・・・・・
・政策金利は当面テイラールールよりも低い位置にいるでしょうという話
先ほどの2番目の質問に戻りますね。
『And the second question, in the statement of exit principles, you said
that the Committee will act as soon as economic conditions warrant. There
had been an idea in circulation at some point that you might stay lower
for longer as a means of compensating for some of the damage done during
the recession. Is this an indication that that debate has been settled
and that that idea is off the table?』
で、イエレンさんの答え(ちょっと上の最後から引用開始します)。
『And then let's see, the second piece was--』
『BINYAMIN APPELBAUM. Is the debate about lower for longer essentially over?』
『CHAIR YELLEN. Well, you know, we stayed low for a very long time. We
have been at zero for a very long time and below the levels that some common
policy rules would now be suggesting, given the level of unemployment and
inflation. So the recovery has been very slow. We've also been doing unconventional
policies, of course, buying assets. And in the general sense, I think we
have been lower for longer than--if you complete that sentence--then many
standard policy rules would suggest.』
テイラールールよりも低い水準の金利を継続しておりますが回復ペースは依然スローですと。
『So in a sense, that is a policy that we have had. And once we decide
it's appropriate to begin to normalize policy and to raise the level of
our target for short-term interest rates, it would still take some time
for rates to get back to levels. You can see in our projection that by
the end of 2017, the participants are on average projecting that rates
will reach the levels they consider normal in the longer-run. And similarly,
we could make a similar statement with respect to where the funds rate
would stand relative to the recommendations of rules. So that would take
some time to return to those kinds of levels.』
でまあその背景の話はさっきもしている通りなので割愛していますが、労働市場のスラックと金融危機の後遺症があるからテイラールールが示す金利よりも低い水準が当面継続されますという話っすな。
・反対意見については自信満々に「あるのが当然」というスタンス
次の質問である。
『MARTIN CRUTSINER. Thank you. Marty Crutsinger with the Associated Press.
Madam Chair, there were two dissents from today's decision. I’d kind of
like to get your thinking on how you treat dissents. I think in Chairman
Bernanke's eight years, the largest number of dissents was three. Do you
see two dissents as a yellow warning flashing light that policy may need
to be moderated down the road? How should market participants read the
dissents?』
反対が増えているというのは緩和政策をもっとモデレートにすべきという事の警告なのではないでしょうかと。
『CHAIR YELLEN. Well, I think it's very natural that the Committee should
have a range of opinion about a decision as crucial as what is the right
time to begin to normalize policy, and we do have a range of views in the
Committee. I don't consider two dissents to be an abnormally large number.』
現在の政策運営のcrucialな論点は正常化着手をいつすべきかという話であり、それに反対があるのは当然で反対2名が異常な状態とは思いませんよとはそらそうだという話。
『Presidents Plosser and Fisher have been quite clear in all of their speeches
recently in stating that they think the time has come to begin normalizing
policy. I think they perhaps have some concerns that if we don't begin
to do so soon that inflation will pick up above levels we--that they would
consider it desirable, or that they have some financial stability concerns.』
タカ派の2名はインフレ高進やファイナンシャルスタビリティーの問題を懸念していますと。
『But the committee adapted today's statement by an overwhelming majority,
and I don't consider the level of dissent to be surprising or very abnormal.』
ただ委員会としてはご覧のような決定をしましたという事でまあ当然の説明だが自信満々モード。
・潜在成長の低下に関する質疑
『GREG IP. Greg Ip of The Economist. There's been another downgrade in
your near-term growth forecast and a downgrade in your unemployment rate
path forecast. Does it appear the potential is much lower than you thought;
and therefore slack is closing more quickly than you thought? This seems
to be a persistent pattern to your forecasts.』
ということで、成長見通しが下がって物価見通しが上がって失業見通しが下がっているのはそら潜在成長が低下してるってえ話じゃネーノという指摘。あと実は2番目の質問があるのですが、欧州情勢、特に欧州の期待インフレの低下についての質問して、まあ面白くないので割愛します。
『CHAIR YELLEN. So there's been a little bit of downgrading, I think, even
this time in the longer-run, normal growth rates that Committee participants
have written down.』
確かにっ今回のSEPではロンガーランのGDPの数値が中央値で2.1-2.3→2.0-2.3ではありますが、全員の数値は1.8-2.5→1.8-2.6になっていたりします。まあ中央値がそうなっているのですからアグリゲ−トすれば下がったという話ではありますが。
『You are certainly right in saying that over a number of years now, there's
been a pattern of forecast errors in which either we've been on track with
respect to unemployment, or unemployment has come down in some cases faster
than we anticipated, and yet growth has pretty persistently been surprising
the Committee to the downside, and that is a statement about productivity
growth, which has been pretty disappointing. So we have had downward revisions
in the level of potential output and to some extent, at least for a time,
in the projected pace of growth. So that tension has been there.』
ということであっさり味で「we have had downward revisions in the level of
potential output」と言っているのがほほーという所ではあります。
『There are a range of views about long-run growth. A lot of people are
writing about this topic. I think the Committee's longer-run estimates
are neither at the most pessimistic and--nor the most optimistic end.』
ということで、潜在成長が下がっている可能性を認めているとは(ほんのちょっとという話でしょうが)こらまたという所です。
#残り少々ありますので明日にでも投下の所存
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2014/09/24
○イエレン議長会見ネタである:フォワードガイダンス文言の実質形骸化みたいな部分は面白い
http://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20140917.pdf
会見では「従来のスタンスと変わりません」を盛大に連呼していた訳でして、しかもドットの話をするときに2015年末の数値が何となく上昇した話には触れないで、「2016年末という経済がほぼ中立の状態になった時でも金利水準が3%と中立金利水準よりも低い状態になるので金融政策は長期間に渡って緩和的です」(キリッ)と説明する辺りが非常にこう気を使ったというか良く練っている冒頭説明でございましたというのは月曜に申し上げた通りです。
ついでに話を脱線させますと、2016年末が3%だとするとやはり初回の利上げって来年の9月のFOMCで、そこで25-50に上げてから毎回のFOMCで引き上げを続ける、という形にした方が金融市場にはストレスを却ってかけないと思う次第で、次回上げるのか上げないのか判らんという状態で利上げサイクルをやると一々市場が思惑で大きく振れるので実践的では無い気がします。
ということでQ&Aコーナーである(がどうせ今日も一部になります)。
・フォワードガイダンスに関する質問が一発目である
『STEVE LIESMAN. Thank you. Chair Yellen, there was some debate going into
this meeting about the phrase “considerable time,” whether it would remain
in the statement.』
まあ当然だが最初の質問はconsiderable time文言である。
『I want to know if you could me tell just a couple things about it. First,
was it debated at the FOMC as whether or not it should be included? And
I'm sorry, we've been over this before, but what does it mean time-wise,
and that's just two questions. I have just a couple more here. Is the statement
a form of forward guidance? And finally, how do you square this idea of
a date when you and others on the FOMC have continuously said that you're
data dependent to the point where, if the data were to turn, would it not
necessarily be a considerable time until you raise rates? Thank you.』
2つの質問とか最初に言いつつ更に質問をしているのはご愛嬌ですが、まあ達観してしまえば全部金利フォワードガイダンスに関する質問ではあります。
『CHAIR YELLEN. So, of course, the Committee discussed its forward guidance
today, and it discusses what the appropriate forward guidance is at every
meeting.』
今回のみならず毎回議論していますとな。
『This is part of our assessment of economic conditions and the appropriate
stance of monetary policy. In terms of what the term “considerable time”
means, the Committee decided that, based on its assessment of economic
conditions, that characterization remains appropriate, and it was comfortable
with it.』
ガイダンス文言は経済の状況の分析によってこうなっています、という話をしている辺りがしらっと味わいがある所で、つまりは経済の状況が変わればガイダンスで示す文言は変化するのでという話をしており、いつの間にやらフォワードガイダンス文言をコミットメントじゃない状態にしているのに成功しているのがFRBのお上手な所ですな。いやまあ元々からコミットメントでは無いとは言っていましたが、最初のうちはこのフォワードガイダンス文言を使って「先行きの金利見通しに影響を与えて長期金利を低下させる」とか言ってまして、それってコミットメントもどきですよねという話でしたので、まあこの辺はお上手というところではございます。
『I think if you look, for example, at the projections of individual participants
that are revealed in the SEP, well, that's the view of each participant
in, again, I'd emphasize, not a Committee collective view. There is relatively
little change in the assessment of the outlook by participants between
this meeting and the assessment in June. So the outlook is little changed,
a slight decline in the anticipated path of the unemployment rate, and
a very slight uptick in the inflation projection, but really quite minimal.
So, the outlook hasn't changed that much from June and the Committee felt
comfortable with this characterization.』
SEPの使い方もある意味お上手ですが、まあこれはやや諸刃の剣的な部分はあると思いますけど、SEPでのドットでは無くて経済物価見通しの部分があまり変化ないのだからフォワードガイダンス文言も変化なしでカンファタブルであるとか綺麗に整合性を取って説明してくるのがイエレンクオリティかなとは思います。
『Now, you said, "Isn't this calendar-based guidance?" I want
to emphasize that there is no mechanical interpretation of what the term
"considerable time" means.』
・・・・・・・・・・・ここはワロタという所ですが、この前の「半年」はどうしましたねん???????
『And, as I've said repeatedly, the decisions that the Committee makes
about what is the appropriate time to begin to raise its target for the
federal funds rate will be data dependent.』
data dependentキタコレ。
『And in my opening comments just now, I again emphasized something I've
said previously, which is that if the pace of progress in achieving our
goals were to quicken, if it were to accelerate, it's likely that the Committee
would begin raising its target for the federal funds rate sooner than is
now anticipated and might raise--might then raise the federal funds rate
at a faster pace. And the opposite is also true, if the projection were
to change. So there is no fixed mechanical interpretation of a time period.』
あくまでも今後の状況次第という話をしていまして、つまり今のガイダンス文言はあくまでも「今の時点での見通し」という話でありまして、それだったら別にSEP出しているからそれでエエヤンという感じでもあるのですが、まあ先行きの判断を縛らないようにガイダンス文言の実質的な形骸化を図っているというのは把握した。
『I think it would not be accurate to describe the Committee's guidance
about the timing of the federal funds rate and when it will move above
zero as being calendar-based.』
だったらフォワードガイダンス要らないような気もしますがねえ(ゲス顔)。
『The Committee has started with a broad general statement of what determines
how long it will keep the federal funds rate target at zero.』
と思ったらしらっと「has started with a broad general statement」だとよ。
『It is said that it will be looking at the actual and projected pace at
which the gaps between our employment and inflation and our goals for those
variables are closing. And then, what the Committee does at each meeting
is, after saying that the assessment will take into account many different
indicators and take into account inflation pressures and other things,
it goes on to provide at that meeting, its assessment of the implications
of its view of the data at that time. And that assessment really hasn't
changed over the last several meetings. The Committee, based on its assessment
at each meeting, has felt comfortable saying that, based on its assessment
of those factors, it considers that it will be likely appropriate to maintain
the current target range for a considerable time after the asset purchase
program ends, especially if inflation remains below the 2 percent objective.』
『So I wouldn't describe that as--I know “considerable time” sounds like
it's a calendar concept, but it is highly conditional and it's linked to
the Committee's assessment of the economy.』
considerable timeというのはcalendar conceptに聞こえるというのは理解していますが、実はそうではなくあくまでも経済の見通しに沿ってマンデートに整合的な金融政策を実施します、という話をしているのが中々面白いというか、これ一つの質問に対する答えで丸々1ページ以上使って説明している辺りも味わいがありまして、まあ足元の認識は「物価はそんなに上に跳ねない」「労働市場にスラックが残っている」という話になっているので、そうは言っても正常化プロセスの着手は直ぐに行われないですし、「金融危機以降の問題が依然として残っている」という認識になっているから正常化プロセスの時間もゆっくりという話になる訳でして、逆に特に労働市場のスラックの部分に対する見方が変わってくると思いっきり話が変わって来るという話でもあり、まさしくdata-dependentという話になるんでしょうなあと。
・ではデータがどうなると変化するんですかという質問が次に飛ぶ
『HOWARD SCHNEIDER. Howard Schneider with Reuters.』
この人は初顔かな?
『Thank you. So if you would help us--I mean square the circle a little
bit, because having kept the guidance the same, having referred to significant
underutilization of labor, having actually pushed GDP projections down
a little bit, yet the rate path gets steeper and seems to be consolidating
higher. So if it's data dependent, what accounts for the faster projections
on rate increases if the data aren't moving in that direction?』
イエレンさんのお答え。
『CHAIR YELLEN. Well, the growth projections for 2014 are down a little
bit, but the unemployment path is also marginally lower. So, while the
projected path of the labor market, unemployment, and other measures of
the labor market, of course is partly dependent on the growth outlook.
It isn't totally dependent on the growth outlook. And the Committee assesses,
the labor market is continuing to improve, and you see a small reduction
in the path of the unemployment this year, and then over the rest of the
projection period.』
判ったような判らんような説明ですな。
『So, if you ask me--you asked me why is the projected funds rate path
moved up, well, you know, each participant knows the reason they wrote
down what they did. But as a guess, I would hazard--first, I would say
there is relatively little upward movement in the path, and I would view
it as broadly in line with what one would expect with a very small downward
reduction in the path for unemployment and a very slight upward change
in the projection for inflation. So, most participants, in deciding on
the path, I think, look at, as our guidance says, how large is the gap
between performance at the labor market and that associated with our maximum
employment objective, how large is the gap between inflation and our 2
percent objective, how fast will those gaps change.』
今後の見通し変化によってどうのこうの的な説明をしないで足元のSEPでの「今の見通しは変わらない」という話をしている辺りがほほうという感じで、さっきのフォワードガイダンスの形骸化的な話をしながらでも見通しは同じですもんねという話に持ち込む辺りがバランス考えているなあというか、まあイエレンさんの基本がハトなんでしょうねえという所で。
『And you see in the projections very modest reductions in the size of
those gaps and modest--very small change of a slightly faster pace at which
those gaps would change. I would describe the change in the projections,
both for the economy and the path of rates, as quite modest. But the fact
that they move does illustrate the data dependence principle that I think
is really so important for market participants to keep in mind that what
we do will depend on how the data unfolds. There is uncertainty about that.
And as expectations and the actual performance of the economy change, you
should expect to see movements in the dots. I think it's also notable that
the further you go out in the projection period, the wider the set of dots.』
『You see a big range out in 2017 and that reflects, in part, different
forecast by different members of the Committee about how rapid progress
would be. What you don't see in the dot--so-called dot plot, is also the
uncertainty that each individual, each participant, sees around their
own projection.』
で金利見通しのドットの話になってくる訳ですが、今回割とこのドットについて明確に説明してやがるなあと思うのですが、2017年のドットがご覧のように凄まじく幅広いのに見られますように、ドットに関して過大な意味合いを持たせて解釈するよりも経済見通しの数値の方が重要的な言い方をしているのが中々。
『So, things will depend on how the economy evolves. That will change over
time and there's a good deal of uncertainty associated with it.』
ということで、あくまでも先行きは先行きという話をしていますなという所に加えまして、ご覧になって判ると思いますが、最初の2つの質疑でどちらも1ページ以上使って答える攻撃というのもこれまた味わいがあるというものです。
#以下はまた後日に続くということで
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2014/09/22
○イエレン議長の会見であるがまずは冒頭部分をば
http://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20140917.pdf
質疑に入る前の部分を鑑賞してみますね。
・「スタンスは変わっていない」をやたら強調するの巻
『CHAIR YELLEN. Good afternoon. The Federal Open Market Committee concluded
its meeting earlier today and, as usual, released its monetary policy statement.
The Committee also released a document describing the approach the Committee
intends to take when, at some point in the future, it becomes appropriate
to begin normalizing the stance of policy.』
とまあ今回こんなん出しましたという話ですけど・・・・・・
『Let me underscore that our release of this information is not meant to
convey any change in the stance of policy.』
ということで、今回出口戦略云々の話をしましたがこれは何らかのスタンス変更を意味するものではありません(キリッ)って奴ですが、この説明が今回の冒頭部分でやたらめったらしつこく強調されているのが今回の冒頭部分の特徴に見えます。
・物価の見方に関しては「長期間の低下状態のリスクが減る」と示す
でまあ景気に関しての話が始まるのですが、労働市場は更に改善しているものの依然としてスラックがありますよという話と、基調として経済は強くて民間需要が強いですという説明がありまして、まあその辺りは順当かなという所ですけれども、物価に関する部分では小見出しのような説明が。
『Inflation has been running below the Committee’s 2 percent objective,
but with longer-term inflation expectations appearing to be well anchored
and the economic recovery continuing, the Committee expects inflation to
move gradually back toward its objective. Moreover, inflation has firmed
some since earlier in the year, and the Committee believes that the likelihood
of inflation running persistently below 2 percent has diminished.』
キタコレという所で、物価に関しては声明文の方では足元の物価上昇改善が止まっている件を示唆する内容になっていましたが、冒頭説明の方では別に物価に関してはハトという感じではなくて改善を強調も別に改善ヒャッハーという程でも無いという感じですな。
『As is always the case, the Committee will continue to assess incoming
data carefully to ensure that policy is consistent with attaining the FOMC’s
longer-run goals of maximum employment and inflation of 2 percent.』
ということであくまでもデータを慎重に点検するという話をしています。
・フォワードガイダンスに関して
その次がSEPの説明ですが、最初の説明では金利のドットではなくて(それはこれからネタにするフォワードガイダンスの後に出てくる)経済物価見通しの朗読みたいなもんなので割愛しまして、Taperingに関しても従来通りの説明で、次回にTapering終了しますよああそれも状況次第ですからねという話をしています。で、Tapering終了しても残高効果があるから緩和的な環境で云々という毎度の説明をしております。
でもってその次がフォワードガイダンス。
『Regarding interest rates, the Committee reaffirmed its forward guidance
that it likely will be appropriate to maintain the current target range
for the federal funds rate for a considerable time after the asset purchase
program ends, especially if projected inflation continues to run below
the Committee’s 2 percent longer-run goal, and longer-term inflation expectations
remain well anchored.』
ということでご案内の通りですが、フォワードガイダンスは「reaffirmed」されています。
『This judgment is based on the Committee’s assessment of realized and
expected progress toward its objectives of maximum employment and 2 percent
inflation?an assessment that is based on a wide range of information, including
measures of labor market conditions, indicators of inflation pressures
and inflation expectations, and readings on financial developments.』
うむ。
『Further, once we begin to remove policy accommodation, it is the Committee’s
current assessment that, even after employment and inflation are near mandate-consistent
levels, economic conditions may, for some time, warrant keeping the target
federal funds rate below levels the Committee views as normal in the longer
run.』
で、利上げに着手しても利上げプロセスは緩やかなものになります、という説明トーンも従来の説明と変えていませんでして、今回の冒頭説明における金融政策スタンスに関する部分では「従来と同じ」というのをやたらと強調しているなあという印象ですな。
・ガイダンスとドットについて
『This guidance is consistent with the paths for appropriate policy as
reported in the participants’ projections.』
ということで・・・・・・・・・・・
『As I will explain in a moment, the FOMC now anticipates that it will
continue to establish a target range, rather than a single point, for the
federal funds rate when normalization begins, and the dots in the chart
I’ve distributed now show, for each participant, the midpoint of this
target range.』
利上げ着手後しばらくはFF金利ターゲットについてレンジで出すのでSEPでの表示もそれを反映してレンジの中心という形になりましたという事で。
『Notably, although the central tendency of the unemployment rate in late
2016 is slightly below its estimated longer-run value, and the central
tendency for inflation is close to our 2 percent objective, the median
projection for the federal funds rate at the end of 2016, at 2.9 percent,
remains nearly a percentage point below the longer-run value of 3-3/4 percent
or so projected by most participants.』
ここが実に説明の中で味わいがある所で、2015年末の金利がどうのこうのという話をしないで、2016年末という経済見通し的に中立水準まで改善した場合の金利水準の説明をしているのが実に味わいが深い訳ですよ。
つまり、2015年末の話をするとまたぞろ利上げタイミングだの何だのという話になってきて市場がヒャッハーとなる訳ですが、より先の話をして「経済が中立に戻った時でもFF誘導目標金利は中立金利と見られる水準よりも低い水準に留まる」という話をしてタカ色が出ないようにするという工夫が良く出た説明であると思うのですよね。
ちなみに、2016年末が大体3%だとしますと、年間8回のFOMCで25bpづつ利上げをすると考えますと、2015年末が100bp、2016年末が300bpでして、そうなると実は来年9月に利上げを着手してFOMC毎に25bpのメジャードペースで丁度良さそうな気がしますがどうでしょうかねえ。
『Although FOMC participants provide a number of explanations for the federal
funds rate running below its longer-run normal level at that time, many
cite the residual effects of the financial crisis, which, although slowly
diminishing, are likely to continue to restrain household spending, constrain
credit availability, and depress expectations for future growth in output
and incomes. As these factors dissipate further, most participants expect
the federal funds rate to move close to its longer-run normal level by
the end of 2017.』
では経済が中立水準なのに何で2016年末の政策金利が中立より下なのか(=緩和し過ぎじゃないかというツッコミに対してのお答え)という話については「経済の抑制要因となる金融危機以来の影響がまだ残っているから」という説明をしているのはちょっと丁寧になった感があります。
・説明の中で更に「スタンスは従来通り」を強調
その次にしつこくこの説明が。
『Let me reiterate, however, that the Committee’s expectations for the
path of the federal funds rate are contingent on the economic outlook.
If the economy proves to be stronger than anticipated by the Committee,
resulting in a more rapid convergence of employment and inflation to the
FOMC’s objectives, then increases in the federal funds rate are likely
to occur sooner and to be more rapid than currently envisaged. Conversely,
if economic performance disappoints, increases in the federal funds rate
are likely to take place later and to be more gradual.』
まあここも毎度説明しているのですが、この「state-contingent」と「data-dependent」の話をここに入れてくるというところで、とにかくスタンスに変化なしというのを強調していますな。
・正常化の説明が始まります
以下金融政策の正常化の説明である。
『Let me now turn to our statement on “Policy Normalization Principles
and Plans.” This statement is intended to provide information to the public
about the eventual normalization process; it does not signal a change in
the current or future stance of monetary policy. As is always the case
in setting policy, the FOMC will determine the timing and pace of policy
normalization so as to promote its statutory mandate of maximum employment
and price stability.』
ふむ。
『Since the crisis, the Federal Reserve has been providing extraordinary
accommodation using nontraditional tools of monetary policy. The FOMC’s
intention has always been to return to a more traditional approach, and
throughout this period, the Committee has been preparing for the normalization
process. In June 2011 the Committee set out some broad principles and some
more specific tactics for how it envisioned the normalization process to
take place. In June 2013 we noted that conditions had changed significantly
in ways not anticipated in June of 2011, including the size and composition
of the Fed’s balance sheet, and that some revision of those earlier plans
was appropriate. The document released today reflects our updated plans,
which readers of our minutes will know, have been under discussion for
the last few FOMC meetings. The new approach retains many broad objectives
and principles from the original, but also has some new elements.』
延々と説明していますが、要は以前に出した正常化のプリンシパルに対してFEDのバランスシートの状況も変わったし、手段に対する研究も進んだしという事で書き換えましたけど、「which
readers of our minutes will know」ってありますように、従来からの議論として議事要旨で示されていた内容を纏めたものになっていますというのは先日申し上げた通りです。
・金利誘導が重要だが偶にぶれることもありますとな
『As was the case before the crisis, the Committee intends to adjust the
stance of monetary policy during normalization primarily through actions
that influence the level of the federal funds rate and other short-term
interest rates, not through active management of the balance sheet. The
federal funds rate will serve as the key rate to communicate the stance
of policy.』
FF誘導金利が金融政策スタンスを示すようにしていきますとな。
『To begin normalization, the Committee will raise its target range for
the federal funds rate. The Committee expects that the effective federal
funds rate may vary within the target range, and could even move outside
of that range on occasion, but such movements should have no material effect
on financial conditions or the broader economy.』
とサラッといってまして、もう最初からコントロールが難しい時のヘッジをしている感じなのがワロエルのですけれども、多少のブレは金融環境や経済に大きな影響を与えません(キリッ)とかいってますが、それは「ちゃんとコントロールできている」という前提によるものなのではないでしょうかねえ(ニヤニヤ)。
・基本はIOERでの制御をするそうな
『The primary tool for moving the federal funds rate into the target range
will be the rate of interest paid on excess reserves (or IOER).』
ほほう。
『The Committee expects that the federal funds rate will trade below the
IOER rate while reserves are so plentiful, as is the case at present. The
Committee also intends to use an overnight reverse repurchase agreement
facility, which, by transacting with a broad set of counterparties, will
help ensure that the federal funds rate remains in the target range. I
would like to emphasize that the overnight RRP facility will only be used
to the extent necessary and will be phased out when no longer needed to
help control the federal funds rate. In addition, the Committee will adjust
the particular settings of these tools as needed, and could deploy other
supplementary tools as well, to ensure that we achieve our desired stance
of policy.』
でまあ超過準備が死ぬほどある内は短期市場金利が超過準備付利金利(IOER)よりも低くなるので、リバースレポファシリティ(RRP)を使って準備預金適用先以外から幅広く流動性を吸収する事によって金利をコントロールするという話なのですが、ここでほほーというのは思いっきり「RRPは補完的措置」と言い切っている事でして、それで金利コントロールできるのかというと多分無理で、(そもそもFFが25bpから下限ゼロのレンジになったのはIOERでの金利下限がワークしなくなったからなのだから)まあ最終的には泣きながらRRPを連発する事になるんじゃないですかねえ。
基本的に不胎化吸収を行う際にMMFとかから吸収すると短期市場の民間資金調達に対してクラウディングアウトみたいな現象が起きるリスクがあるからやりたくない、というのは分かりますけれども、実際にそのように上手く行くかはかなーり怪しいと思う。
・バランスシートについての説明はまあ順当
『Turning now to our plans regarding the Fed’s balance sheet, the Committee
intends to reduce securities holdings in a gradual and predictable manner
primarily by ceasing to reinvest repayments of principal on securities
held in the System Open Market Account.』
そらまあいずれ減らすわな。
『Regarding the timing for ceasing reinvestments, the Committee now expects
this to occur after the initial increase in the target range for the federal
funds rate. The Committee currently does not anticipate selling agency
mortgage-backed securities as part of the normalization process, although
limited sales might be warranted in the longer run to reduce or eliminate
residual holdings; the timing and pace of such sales would be communicated
to the public in advance.』
基本的に今のところは売却の予定はないとはいってますが、「now expects」だの「currently
does not anticipate selling」だのということで、あくまでもまあ今の話ではありまして、実際に正常化していく中で短期の実効金利がアガランチ会長という事になった場合にはさてどうなるんでしょうねという所です。
まあストック効果については、もしそれがあるのであれば、その分だけ金融市場に効果があるという事ですけれども、金融正常化に置いてはそれは効果では無くて金融市場の価格形成をゆがめる物になるという事でして、もしFEDのバランスシート上のMBS残高が顕著な効果を与えるのであれば、MBSの価格形成を歪める(MBSを割高にする→不動産バブル発生装置になるリスク)訳ですし、長期国債残高が顕著な効果を与えるのであれば、長期国債の価格形成をゆがめる(長期国債を割高にする→イールドカーブを無駄にフラットさせる)訳ですし、まあどうなるのやらというのはFEDが身を切って実践しますけど、良く良く考えたら金利市場という意味では日銀の買入の方が余程凶悪なのであって、そちらの方も気になりますなと話が逸れましたすいませんすいません。
『It is the Committee’s intention that the Federal Reserve will, in the
longer run, hold no more securities than necessary to implement monetary
policy efficiently and effectively, and that these securities will primarily
consist of Treasury securities.』
長期的には必要最低限の国債保有だけにしますよというのも従来通り。
・で最後にまたまたこれ
『As I stated earlier, today’s release of the Committee’s updated normalization
plans is in no way intended to signal a change in the stance of monetary
policy.』
しつこく「スタンスの変更ではありません」である。
『Rather, it is meant simply to provide information about how the Committee
envisions the normalization process in light of the changes in economic
and financial circumstances that have occurred since we put forth our original
plans more than three years ago. That said, conditions could change further
and we will learn about our tools during normalization; the Committee has
agreed that it is prepared to make additional adjustments to its normalization
plans if warranted by economic and financial developments.』
正常化プロセスもデータ次第で状況に応じて判断するとここも強調という中々気を使っていますな。
『Thank you. Let me stop there. I’ll be happy to take your questions.』
質疑応答は後日。
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2014/09/19
○ドラギ総裁の会見(9月4日のネタで今さらにも程がありますが)鑑賞ファイナル
どうもすいませんすいません。
http://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2014/html/is140904.en.html
Introductory statement to the press conference (with Q&A)
Mario Draghi, President of the ECB,
Frankfurt am Main, 4 September 2014
最後の方の質疑を少々鑑賞しますね。
・直球質問に対するお答え
『Question: Mr Draghi, two questions if I may. Firstly, as we sit today
would you describe inflation expectations as anchored? And secondly, could
you address what appears to be an apparent contradiction in the sense that
you've said you have unanimity amongst the Governing Council for the use
of non-standard measures and yet today you had no unanimity. Could you
address that please?』
インフレ期待がアンカーされているの?という結構な直球質問と、決定は全員一致じゃないのに将来必要な際には非伝統的な措置を取りますというのは全員一致とは何ですねん?とこれまた直球質問。
『Draghi: The inflation expectations we've seen, they are still anchored.
But we've seen the downside risk increasing of late, and that explains
why we have decided to strengthen the measures decided in June and complement
these measures with others.』
この辺が微妙に歯切れが悪い所で、アンカーされてるけどリスクが有ると。
『The second point is that unanimity and agreement is not a blank cheque,
as in “No matter what we are going to do, we are going to be unanimous”.
We are unanimous in the intent, but when the time comes to decide exactly
what measures we should undertake there could be differences of view. So
I don't think it's contradictory really.』
どう見ても屁理屈です本当にありがとうございました。つーかその「何をするかについては別として必要な時に必要な行動をするのが全員一致」ってのの全員一致アピールに何の意味があるのかよというと、ただの景気づけだけじゃねえかと小一時間。
・ABS買入プログラムとTLTROの矛盾について
『Question: First one is on the ABS purchase programme. If I understood
correctly, you said that real estate ABS will be included. I wonder why
that is, given the fact that loans to households for house purchases have
been excluded from the targeted LTROs.(後半割愛)』
ABS買入プログラムでは不動産担保のABSを買入対象に加えると言っているのに、何でTLTROでは家計の住宅購入資金融資を対象にしないのでしょうかとはこれまた鋭いツッコミ。
『Draghi: On the first point, you are absolutely right to raise this point.』
だいたいこのおっちゃんが最初にこう言い出す時はその後に無茶振り屁理屈が飛んでくる前触れであるというのは把握している。
『There is an apparent contradiction here, but in facts it's not the case.
What we will do when buying our ABSs will actually free space in the sellers’
balance sheet. The sellers may well not be banks only by the way; they
could be also institutional investors. We free space and then it's not
at all to be taken for granted that the seller will use this money to re-invest
in real estate. The seller will use this money according to his or her
business decisions at that time. That's why there isn’t a contradiction
between our decision with the TLTRO not to finance new investments in real
estate, new lending in real estate. So that's how we can explain it.(後半割愛)』
なんか無茶苦茶強引な屁理屈を展開しているようにしか見えんのだが、中央銀行が資産買入をすると売った人のバランスシートに余裕が出来るのでその余裕で別の投資なりが行われるので経済に好影響とかもはや屁理屈としか思えん訳で、単にABS買入の残高を稼ぎたいからじゃネーノとしか申し上げようが無いのが味わいの深い所。
・利下げがテクニカルかどうかの話
『Question: (前半割愛)And the second question is, to be honest I don't
understand why you call the lowering of the interest rate only a technical
adjustment. I don't think that you called a similar move in June a technical
adjustment.』
そらそうだ。
『Draghi:(前半割愛)Now, I define a technical adjustment. Really, the
reason why I use that is that, for all practical purposes, we were already
at the lower bottom. So people wouldn’t really expect any big change in
interest rate. But you are right. Perhaps my definition is unduly limiting
the movement that we had.』
要するに今回こそ下限に達したと言いたいのと、前回下限みたいな事言ったからそこと整合性を取ったということなんでしょうな、何だかねえ。
・この質疑は味わいがある(^^)
『Question: Mr Draghi, isn't there a risk that with the ECB emphasising
so much the risk of low inflation that this itself could trigger a de-anchoring
of expectations?』
低インフレがインフレ期待を下げるリスクがあると連呼すると却ってインフレ期待を下げる事になりはしませんか?という誠にご尤もな質問に対する答えに味わいが。
『Draghi: Well, you see, this question is actually a question we also asked ourselves.』
ほう。
『But the answer to this question is: would the truth be a risk? In other
words, do we really think that telling people things other than the truth
would affect their behaviour?』
そしてその答えは・・・・・・・・
『And the answer is no.』
中央銀行が物価目標2%と力強く掲げたらインフレ期待が上昇します(キリッ)という訳にはいかないようですよ(ニヤニヤ)。
『We think that we ought to state things as they are. We don't see deflation.
We have seen, as a matter of fact, low inflation for a long time. As I’ve
said several times, the longer the period of low inflation the higher the
risks of de-anchoring.(以下物価の状況と先行き見通しの説明は割愛)』
ということで、たぶん無意識のうちに黒田さん砲撃食らってますなという味わいのある質疑が最後にあったのでありました(^^)。
#ちょっとネタの積み残しが多いので週末少し成敗しますが読まないといけないものも多いので大変ですが今週はマジでやりますよ〜(キリッ)
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2014/09/18
○FOMC声明文そのものはこんなもんでしょうとは思うのですが
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20140917a.htm(今回)
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20140730a.htm(前回)
・第1パラグラフ:景気に関する全体認識を引き上げ
『Information received since the Federal Open Market Committee met in July
suggests that economic activity is expanding at a moderate pace.』(今回)
『Information received since the Federal Open Market Committee met in June
indicates that growth in economic activity rebounded in the second quarter.』(前回)
ということで全体認識に関しては「expanding at a moderate pace」になって上方修正キタコレですが、念のため申し上げると「indicates」と「suggests」の違いがあって、たぶん後者(今回)の方が動詞としては弱いと思うので状況を強くしたものの動詞の所でちょっとマイルドにしている感じで微妙なヘッジ振りもあるのかねと思ったがよーわからん。
『On balance, labor market conditions improved somewhat further; however,
the unemployment rate is little changed and a range of labor market indicators
suggests that there remains significant underutilization of labor resources.』(今回)
『Labor market conditions improved, with the unemployment rate declining
further. However, a range of labor market indicators suggests that there
remains significant underutilization of labor resources.』(前回)
失業率の改善に関する表現の部分は足元の状況を示しているものの、基本的な認識は同じで労働市場は改善しているけれども依然として労働市場のスラックがありますという話っすな。
『Household spending appears to be rising moderately and business fixed
investment is advancing, while the recovery in the housing sector remains
slow. Fiscal policy is restraining economic growth, although the extent
of restraint is diminishing.』(今回)
『Household spending appears to be rising moderately and business fixed
investment is advancing, while the recovery in the housing sector remains
slow. Fiscal policy is restraining economic growth, although the extent
of restraint is diminishing.』(前回)
家計、企業の投資、住宅セクター、財政政策に関しての表現は同じです。
『Inflation has been running below the Committee's longer-run objective.
Longer-term inflation expectations have remained stable.』(今回)
『Inflation has moved somewhat closer to the Committee's longer-run objective.
Longer-term inflation expectations have remained stable.』(前回)
今回物価に関して「has moved somewhat closer」の表現を外しておりますが足元ちと足踏みだからですかねえ。別に下向いているという話ではないですが。
・第2パラグラフ:1か所以外変化なし
『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster
maximum employment and price stability. The Committee expects that, with
appropriate policy accommodation, economic activity will expand at a moderate
pace, with labor market indicators and inflation moving toward levels the
Committee judges consistent with its dual mandate. The Committee sees the
risks to the outlook for economic activity and the labor market as nearly
balanced and judges that the likelihood of inflation running persistently
below 2 percent has diminished somewhat since early this year.』(今回)
『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster
maximum employment and price stability. The Committee expects that, with
appropriate policy accommodation, economic activity will expand at a moderate
pace, with labor market indicators and inflation moving toward levels the
Committee judges consistent with its dual mandate. The Committee sees the
risks to the outlook for economic activity and the labor market as nearly
balanced and judges that the likelihood of inflation running persistently
below 2 percent has diminished somewhat.』(前回)
先行きは適切な緩和的な金融緩和によってマンデートに向けて経済が改善云々という話は前回と思いっ切り同じでして、今回は最後の所の「2%割れの物価水準が長期化するリスクが減っている」という部分が「今年の初めから改善してきています」という表現になっていて、まあ微妙にここの表現が変わっていますが多分少し改善の時間軸を長くしているだけちょっと強くなったように見えますし、足元の改善ペースを受けた表現変更なのかも知れませんが、どちらかというと物価が跳ねださない限りは当面は労働市場の改善の方が金利引き上げに関連する話に影響するので注目度は相対的に低いのかな。
・第3&第4パラグラフ:基本的に同じですな
第3と第4が資産買入に関する部分です。これもめんどいので一気に引用しちゃいますね(読みにくくなりすいませんが)。
『The Committee currently judges that there is sufficient underlying strength
in the broader economy to support ongoing improvement in labor market conditions.
In light of the cumulative progress toward maximum employment and the improvement
in the outlook for labor market conditions since the inception of the current
asset purchase program, the Committee decided to make a further measured
reduction in the pace of its asset purchases. Beginning in October, the
Committee will add to its holdings of agency mortgage-backed securities
at a pace of $5 billion per month rather than $10 billion per month, and
will add to its holdings of longer-term Treasury securities at a pace of
$10 billion per month rather than $15 billion per month. The Committee
is maintaining its existing policy of reinvesting principal payments from
its holdings of agency debt and agency mortgage-backed securities in agency
mortgage-backed securities and of rolling over maturing Treasury securities
at auction. The Committee's sizable and still-increasing holdings of longer-term
securities should maintain downward pressure on longer-term interest rates,
support mortgage markets, and help to make broader financial conditions
more accommodative, which in turn should promote a stronger economic recovery
and help to ensure that inflation, over time, is at the rate most consistent
with the Committee's dual mandate.』(今回)
『The Committee will closely monitor incoming information on economic and
financial developments in coming months and will continue its purchases
of Treasury and agency mortgage-backed securities, and employ its other
policy tools as appropriate, until the outlook for the labor market has
improved substantially in a context of price stability. If incoming information
broadly supports the Committee's expectation of ongoing improvement in
labor market conditions and inflation moving back toward its longer-run
objective, the Committee will end its current program of asset purchases
at its next meeting. However, asset purchases are not on a preset course,
and the Committee's decisions about their pace will remain contingent on
the Committee's outlook for the labor market and inflation as well as its
assessment of the likely efficacy and costs of such purchases.』(今回)
ここを前回と比較するとクソ長くなるの前回分の引用を割愛してすいませんが、今回と前回の違いは第3パラグラフにおける数値(そらまあ資産拡大ペースが変わるのだから当たり前)の部分と、第4パラグラフにおける次回の会合でTapering終了しますよという部分が変わっただけで、基本的な説明となる部分については同じ説明をしていますので、そういう意味で政策的な話としては次回のTaper終了が声明文として明言したという所だけですな。
・第5パラグラフ:フォワードガイダンス文言には変化がありません
まあTaper終わった後にご相談でしょ、と思ったら今回は別の紙が出ていた件は後ほど。
『To support continued progress toward maximum employment and price stability,
the Committee today reaffirmed its view that a highly accommodative stance
of monetary policy remains appropriate.』(今回)
『To support continued progress toward maximum employment and price stability,
the Committee today reaffirmed its view that a highly accommodative stance
of monetary policy remains appropriate.』(前回)
同じですな、うんうん。
『In determining how long to maintain the current 0 to 1/4 percent target
range for the federal funds rate, the Committee will assess progress--both
realized and expected--toward its objectives of maximum employment and
2 percent inflation. This assessment will take into account a wide range
of information, including measures of labor market conditions, indicators
of inflation pressures and inflation expectations, and readings on financial
developments. The Committee continues to anticipate, based on its assessment
of these factors, that it likely will be appropriate to maintain the current
target range for the federal funds rate for a considerable time after the
asset purchase program ends, especially if projected inflation continues
to run below the Committee's 2 percent longer-run goal, and provided that
longer-term inflation expectations remain well anchored.』(今回)
『In determining how long to maintain the current 0 to 1/4 percent target
range for the federal funds rate, the Committee will assess progress--both
realized and expected--toward its objectives of maximum employment and
2 percent inflation. This assessment will take into account a wide range
of information, including measures of labor market conditions, indicators
of inflation pressures and inflation expectations, and readings on financial
developments. The Committee continues to anticipate, based on its assessment
of these factors, that it likely will be appropriate to maintain the current
target range for the federal funds rate for a considerable time after the
asset purchase program ends, especially if projected inflation continues
to run below the Committee's 2 percent longer-run goal, and provided that
longer-term inflation expectations remain well anchored.』(前回)
まあこのパラグラフの方が今回は注目ネタなので前回と並べてみましたがご覧のとおりで全文一致となっておりますよ。
・第6パラグラフ:将来の利上げはバランスアプローチで穏健に実施云々も全文一致
『When the Committee decides to begin to remove policy accommodation, it
will take a balanced approach consistent with its longer-run goals of maximum
employment and inflation of 2 percent. The Committee currently anticipates
that, even after employment and inflation are near mandate-consistent levels,
economic conditions may, for some time, warrant keeping the target federal
funds rate below levels the Committee views as normal in the longer run.』(今回)
『When the Committee decides to begin to remove policy accommodation, it
will take a balanced approach consistent with its longer-run goals of maximum
employment and inflation of 2 percent. The Committee currently anticipates
that, even after employment and inflation are near mandate-consistent levels,
economic conditions may, for some time, warrant keeping the target federal
funds rate below levels the Committee views as normal in the longer run.』(前回)
ご覧のとおりでまるで同じ。
・第7パラグラフ:タカ派芸人2名目も反対とな
『Voting for the FOMC monetary policy action were: Janet L. Yellen, Chair;
William C. Dudley, Vice Chairman; Lael Brainard; Stanley Fischer; Narayana
Kocherlakota; Loretta J. Mester; Jerome H. Powell; and Daniel K. Tarullo.』(今回)
『Voting for the FOMC monetary policy action were: Janet L. Yellen, Chair;
William C. Dudley, Vice Chairman; Lael Brainard; Stanley Fischer; Richard
W. Fisher; Narayana Kocherlakota; Loretta J. Mester; Jerome H. Powell;
and Daniel K. Tarullo.』(前回)
ふむ。
『Voting against the action were Richard W. Fisher and Charles I. Plosser.
President Fisher believed that the continued strengthening of the real
economy, improved outlook for labor utilization and for general price stability,
and continued signs of financial market excess, will likely warrant an
earlier reduction in monetary accommodation than is suggested by the Committee's
stated forward guidance. President Plosser objected to the guidance indicating
that it likely will be appropriate to maintain the current target range
for the federal funds rate for "a considerable time after the asset
purchase program ends," because such language is time dependent and
does not reflect the considerable economic progress that has been made
toward the Committee's goals.』(今回)
『Voting against was Charles I. Plosser who objected to the guidance indicating
that it likely will be appropriate to maintain the current target range
for the federal funds rate for "a considerable time after the asset
purchase program ends," because such language is time dependent and
does not reflect the considerable economic progress that has been made
toward the Committee's goals.』(前回)
プロッサー先生の反対理由は前回と同じですが、フィッシャー先生の反対理由が「フォワードガイダンスで示されるよりももう少し早い緩和の縮小が必要」という風になっているのですが、では何をどうしたいのかがイマイチ判らんので???ですが本人から何か出てくるのでそれを見ましょう。
○「初めて出ました」というか別にこれ議事要旨で散々出てたと思うのだが・・・・・・・・・
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20140917c.htm
Policy Normalization Principles and Plans
ということで正常化に向けた基本的な考えとプランが出ているのですけど、基本的な話はここ数回の議事要旨で散々出ていた話の纏めでありますな。でまあ(この次にネタにする)SEPの利上げ見通しがやや強くなったのと相俟って反応したのかも知れませんが、内容自体は特段驚く事もなくて、最初に見た時にはHPのお題でおーと思って中身見たらなんだ普通じゃんと思って、声明文みたらなるほど声明文があまり変わっていないので下手にハトハト解釈されても困ると思ったのかなあとか単純に考えたのですけどね。
なお、一つだけ意味があるとすれば「償還再投資停止と利上げのどちらが先か」の話が決着している事です。
『During its recent meetings, the Federal Open Market Committee (FOMC)
discussed ways to normalize the stance of monetary policy and the Federal
Reserve's securities holdings. The discussions were part of prudent planning
and do not imply that normalization will necessarily begin soon.』
議事要旨に散々書いてありましたな。
『The Committee continues to judge that many of the normalization principles
that it adopted in June 2011 remain applicable. However, in light of the
changes in the System Open Market Account (SOMA) portfolio since 2011 and
enhancements in the tools the Committee will have available to implement
policy during normalization, the Committee has concluded that some aspects
of the eventual normalization process will likely differ from those specified
earlier.』
『The Committee also has agreed that it is appropriate at this time to
provide additional information regarding its normalization plans. All FOMC
participants but one agreed on the following key elements of the approach
they intend to implement when it becomes appropriate to begin normalizing
the stance of monetary policy:』
建付けとしては以前出した正常化手順に関する話のmodifyという感じのようですが、これが死亡フラグにならないように願いたい物です(ゲス顔)。
『・The Committee will determine the timing and pace of policy normalization--meaning
steps to raise the federal funds rate and other short-term interest rates
to more normal levels and to reduce the Federal Reserve's securities holdings--so
as to promote its statutory mandate of maximum employment and price stability.
○When economic conditions and the economic outlook warrant a less accommodative
monetary policy, the Committee will raise its target range for the federal
funds rate.
○During normalization, the Federal Reserve intends to move the federal
funds rate into the target range set by the FOMC primarily by adjusting
the interest rate it pays on excess reserve balances.
○During normalization, the Federal Reserve intends to use an overnight
reverse repurchase agreement facility and other supplementary tools as
needed to help control the federal funds rate. The Committee will use an
overnight reverse repurchase agreement facility only to the extent necessary
and will phase it out when it is no longer needed to help control the federal
funds rate.』
最初が利上げに関する話で、正常化の時には金利を引き上げていくという形での金利政策に移行して、その際には超過準備付利金利の引き上げや、リバースレポなどの活用を行いますよという話。
『・The Committee intends to reduce the Federal Reserve's securities holdings
in a gradual and predictable manner primarily by ceasing to reinvest repayments
of principal on securities held in the SOMA.
○The Committee expects to cease or commence phasing out reinvestments
after it begins increasing the target range for the federal funds rate;
the timing will depend on how economic and financial conditions and the
economic outlook evolve.
○The Committee currently does not anticipate selling agency mortgage-backed
securities as part of the normalization process, although limited sales
might be warranted in the longer run to reduce or eliminate residual holdings.
The timing and pace of any sales would be communicated to the public in
advance. 』
次がバランスシートに関する話で、基本的には売却は行いませんよという話で、しかも償還再投資の停止は利上げ後に行うそうな。で。仮に必要があって売却する場合は事前にアナウンスしますよと。
『・The Committee intends that the Federal Reserve will, in the longer
run, hold no more securities than necessary to implement monetary policy
efficiently and effectively, and that it will hold primarily Treasury securities,
thereby minimizing the effect of Federal Reserve holdings on the allocation
of credit across sectors of the economy.』
これは将来の話ですが、最終的には金融調節技術上必要な程度(長期負債見合い)の長期国債保有額までバランスを縮小して、当然ながらその時には国債以外の資産を持つのはFEDがクレジットアロケーションに介入することになるので行いませんよと。
『・The Committee is prepared to adjust the details of its approach to
policy normalization in light of economic and financial developments. 』
最後も当然ですが、この原則も経済情勢によって変化する場合がありますということで、報道上は「初めて出ました」と連発されているのですが、思いっきり議事要旨の議論通りになっていまして、まあ一つだけまとまったのは償還再投資の停止を利上げ前にという見解もそこそこあった部分を利上げ後で押し切った所ですな。
○SEPの金利見通し刻みにワロタ
本日はFOMC以外にもネタがあるのでSEPの数字を細々引用するの明日にするかという所なのですけれども(前の日に準備しろですかそうですか)。
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20140917.pdf(今回)
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20140618.pdf(前回)
なお、単に見るだけとか数字をコピペするのはこちらが便利。
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcprojtabl20140917.htm
・例によって実質GDP見通しが微妙に下がって失業率見通しが微妙に上がっています
Central tendencyで見た場合でもRangeで見た場合でもなのですが、見通しの部分で2014と2015についてアグリゲートした実質GDP見通しが微妙に下がって失業率見通しが微妙に下がっている(失業率は2016年も下がっている)という事で、これはつまり本当は中立金利が下がっているという事を意味しますよね、ほんのちょっとですけど。
・金利のドットについて
2枚目の金利見通しのドットの表を見た途端に皆さん気が付くと思いますが、今回は刻みが謎の0.125%になっております。
・・・・・・・・でですね、これを見た瞬間に前回FOMC議事要旨にあった「当面の誘導金利については25bpのレンジで示して、初回の利上げの時には25-50の誘導目標にする」という部分を思い出すのが普通の反応だと思うのですが、どこぞのテレビ番組でコメントしていた人はドヤ顔で「利上げの刻みが0.125%になる」という説明をしていて、爆笑の発作が起きたのですがまあ良く良く考えると確かにナンジャソラというドットでもあります。
えーっとですな、ドットの表の部分ですけど、PDFじゃなくてHTMLの方の表を引用しますとここの部分の定義はこうなっています。
『Midpoint of target range or target level (Percent) 』(今回)
『Target federal funds rate at year-end (Percent) 』(前回)
・・・・・ということで、基本的にドットが0.125になっているのは「レンジの間」という意味だと考えた方が無難なようですが、まあ今回は色々と味わいがある内容です。
(1)2015年のレンジが相変わらずバラバラ&レンジが上方修正な件
2015年末の時点で見通しがまだゼロ金利維持状態になっているのが2名いる(1名降りた)のかよまだゼロ金利かよというのもほーと思いましたが、前回は概ね1.25%の所までで11人が収まっていたのが、今回は1.375%(1.25-1.50)の所までで11人になっていますので、若干上方修正になりました。
(2)どうも初回利上げ9月予想だと遅そうな件
実はアタクシは初回利上げ9月でFOMCごとに上げて年末が75-100だと思っていたのですが、年末75-100までの票が6票しかなくて、9月初回利上げだとちょっとFOMCの中心見解よりもハトのようでございます。
で、中央値を取ると125-150になっているので、その場合は6月FOMCで利上げして25ずつ利上げしてレンジを維持していくという形になるので、まあ順当に6月か7月で考えておくのが妥当のようですね。
(3)不思議なのは金利が相当上がってもドットに0.125%刻みがある点
えーっとですな、FF金利の誘導ですけれども、暫くはレンジにするにしてもそのうちピンポイントにするだろと思うのですが、2016年とか2017年とかでも刻みが0.125%になっている人がいまして、ナンジャソラという感じです。
ただし、FOMCごとに0.125%の利上げというのは出来上がりのドットの位置から逆算すると普通にねえだろとは思うのですけど、確かに2017年とかで3%台の所で0.125%刻みのドットがあるとドヤ顔説明も出る罠とは思いましたですので最初爆笑しましたが、まあそこまで罵倒する気にもならない面はあったりします。
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2014/09/17
○ドラギのおっちゃんネタの続きで質疑1本だけ
http://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2014/html/is140904.en.html
Introductory statement to the press conference (with Q&A)
Mario Draghi, President of the ECB,
Frankfurt am Main, 4 September 2014
・ジャクソンホール講演に関するドラギのおっちゃんの演説を鑑賞
つーことで昨日の続きだけはネタにしておきたいので。
『Question: (前半割愛、というか昨日のネタ)And my second question would
be on your calls for using the fiscal leeway we are having, and how are
the responses from governments? Is it true that there was some frustration
in certain governments, or have you been misinterpreted?』
財政云々のジャクソンホール講演に関して(ドイツの)政府方面から批判が出ているようですが如何?
『Draghi: (前半割愛)Yes, you are absolutely right. There have been many
interpretations on what I said, but in fact, I thought I was exceedingly
clear in what I said in Jackson Hole.』
ほうほう。
『Let me just try to sort of recap, without going through - actually, I
expected a question like that, so I thought I should read through the speech
again, but I’ll save you from that.』
その質問を待ってました!と演説モード開始(^^)。
『The idea is that there are, I would say, three instruments for revamping
growth. Structural reforms, fiscal policy and monetary policy. During that
presentation, I started with monetary policy, I went through fiscal policy,
but then I concluded that there is no fiscal or monetary stimulus that
will produce any effect without ambitious and important, strong, structural
reforms. So in a sense, the key point is to do structural reforms.』
財政金融政策だけではなく構造改革が重要とな。
『On the fiscal policy, I said four things.』
で、財政については4点を申し上げましたと。
『The first is that, and I repeated this in the Introductory Statement
today, the Stability and Growth Pact is our anchor of confidence. The rules
should not be broken.』
『Second, within the existing rules, there is some flexibility, but within
the rules, and also, I would add, that these discussions on flexibility
should not be viewed or should not be such that they would undermine the
essence of the Stability and Growth Pact. Within the Stability and Growth
Pact, one could do things that are growth-friendly and also would contribute
to budget consolidation, and I gave an example of a balanced budget tax
cut. Reducing taxes that are especially distortionary, where the short-term
multipliers could be higher, and cutting expenditure in the most unproductive
parts, so mostly, actually not mostly, entirely, current government expenditure.』
1番目が「Stability and Growth Pact」を順守することが必須という話ですが、次が「でも柔軟な活用が重要なのにそういう議論が少ないのが良くない」という話をしていて、どう見てもドイツに財政出せですなこりゃ(^^;
『I also said, and that’s the third part, that we should have a discussion
on the fiscal stance of the overall euro area.』
3番目も「各国の取り組みでだけは無くユーロ圏全体としての議論が必要」という話で、これまたドイツ何とかしろという話といいますか、ユーロ版地方交付税交付金という訳にはいかないでしょうが、何らかの施策が必要と言いたいのかなあとは思うのでありました。深読みしすぎかもしれませんが。
『And finally, I made a point about - which actually was a reference to
a programme that had been launched by the new president of the Commission,
Mr Juncker - about a very large public investment or private investment
programme in the Union, and he gave a figure of ユーロ300 billion. This
is what I said. 』
EUによる公的及び民間による投資プログラムがあるそうな。
『Let me add one thing from a confidence strengthening viewpoint.』
4つで終わりかと思ったらさらにもう一つ。
『Because in many parts of the euro area, there are several reasons why
growth is not coming back, but one of them is actually that there is lack
of confidence. There is lack of confidence in the future, lack of confidence
in the prospects, in economic prospects, of these countries. From a confidence
viewpoint, it would be much better if we were to have first a very serious
discussion on the structural reforms and then a discussion about flexibility.』
で、成長モメンタムが落ちている(から追加緩和を実施した)のに対して重要なのはコンフィデンスの回復で、そのためには構造改革と財政のフレキシビリティーが非常に需要である、という話をしていまして、まあ政府サイドのケツを結構強烈に叩いている感じでもありますし、金融政策単体では限界があるという話をしているようでもあります。
『That’s the idea, that’s a suggestion, but that’s what I said in Jackson
Hole, so if there have been over- or under-interpretations, it’s not my
responsibility. I think the message came out quite clearly.』
まあ演説して最後に「That’s the idea, that’s a suggestion」と言ったのはちょっと勢いで言い過ぎたかもという事なのかもしれませんが、まあ今回の質疑応答の中で一番の演説パートですのでやっとネタにして遅くてスイマセンでしたという事で。
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2014/09/16
○ドラギのおっちゃん会見鑑賞会ネタの今更ながらの続きである
というか8月決定会合議事要旨ネタとかも味わいがあるのに先週は短国市場ヒャッハー状態と師匠の高座で完全にアレになっておりましたわ(大汗)。今週せっせと立て直します。
http://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2014/html/is140904.en.html
Introductory statement to the press conference (with Q&A)
Mario Draghi, President of the ECB,
Frankfurt am Main, 4 September 2014
先週火曜にネタにして以来続きをやっていませんでしたすいませんすいません。
・ABS買入を不胎化するのか&今回の利下げが何でまた急に来ましたねんという質問
『Question: My first question is more a comprehension question on this
covered bonds and ABS programme to be launched. What about the sterilisation
of the purchase of these assets? Is it something that is in mind, or is
it not relevant, because we heard about sterilisation of purchases of other
kinds of assets, like SMP for example. So it is not a question, but maybe
you can clarify this.』
『And the second one, after having announced a bunch of measures in July,
three months ago, you’re acting now, but in a surprising way with regard
to interest rates, and so maybe the impression could be that the ECB is
acting in a kind of hasty manner. So can you maybe comment on this or say,
why these steps now and not the whole thing three months ago?』
つーことで小見出しにしたような質問ですが、後半は「何か今回の利上げがエライ慌てて実施したように見えますが」というニュアンスでの質問ですの。
『Draghi: This is a very natural question to ask, and one should ask, what has changed since then?』
最初どっちの質問に対する「自然な質問」かと思いましたが後半の質問に対してですな(^^)。
『What happened in August is that we’ve seen a worsening of the medium-term
inflation outlook. We have seen a downward movement in all indicators of
inflation expectations across all maturities. As I had a chance to say
in Jackson Hole, one of the most used measures, the five year in five years
inflation, had dropped by something like, I remember 18 basis points, just
below 2%. So after the speech, some of these measures backed up. Some of
them went back to their original level, but most of them did not.』
ということで、足元での変化は「8月に中期的なインフレ見通しが下がった」というのを「インフレ期待が全ての年限において下落の動きが見られること」というのが今回の追加緩和措置の背景としています。
『Add to this that I would say most, if not all, the data that we got in
August, both hard and soft, on GDP and inflation, as I said in the introductory
statement, showed that the recovery was losing momentum. The growth recovery
was losing momentum.』
で、もう一つの理由が「成長のモメンタムが失われてきている」という事でして、ちなみに会見のこの先でも「recovery
was losing momentum」というのを連呼していて、回復のモメンタムが失われてきているというのを強調しているのがポイントのようです。
『So the Governing Council basically decided to a great extent to strengthen
the measures, complete and strengthen the measures decided in June. In
this sense, the ABS outright purchases could be viewed as a measure that
strengthens the TLTRO. So that’s the reason essentially. And again, the
change in interest rate is also - I would say that the main reason is to
make sure that there are no more misunderstandings about whether we have
reached the lower bound. Now we are at the lower bound. So I think that’s
the answer to your point, which is a very legitimate question really.』
ということで今回の措置を実施したということですが、前回マイナスにした時にローワーバウンドという話をしていた金利をもう一発下げたのは前回の説明にmisunderstandingsな所がありましたが、今回は本当に本当にローワーバウンドという事ですので、まあここからの追加措置は金利以外という事になるんでしょう。
なお不胎化に関する質問はスルーしていますが、まあそもそもSMPの不胎化停止したくらいですから不胎化はしないんでしょう(質問者もそのつもりのようです)。
・どういうABSを購入するのか&利下げで何を狙っているのか
『Question: I have two questions. The first is on the purchase programmes
that you announced. Do you have more details of what kind of ABS you are
planning to buy? Mortgage, residential mortgage, just to SMEs?』
『And on the rate cut, could you give a bit more light on what you expect
to achieve with a rate cut? It will make the TLTROs more attractive? This
is what I’m thinking, but this is the question I’m asking you.』
ということで・・・・・・・・・
『Draghi: The purchase of ABS will involve both newly created and existing
ABS and would also include the real estate, the RMBS, real estate ABS.
It would also include a fairly wide range of ABS containing loans to the
real economy.』
不動産担保証券なども含めて広い範囲のABSを購入するそうな。
『The other question is about the interest rate. Well, it’s a convention,
a standard monetary policy decision, and one expects effects according
to the usual line of thinking, but in this case it clearly signals to the
banks that are going to participate in the TLTRO that they should not expect
any further lowering in interest rate, so they should not hesitate to participate
in the TLTRO because of this reason, because they could wait for a lower
interest rate in the future. 』
特に追加のツッコミは無かったのですが、ここの説明の中で一つアチャーなのは政策の狙いについて「a
standard monetary policy decision」としている事でして、さっき(と言っても先週火曜引用ネタの部分ですが)「テクニカルな調整」と言っていたのは何だったですねんという所で、まあ先週引用した「我々は既に担保としてABSを受け入れているのでABSには詳しいです(キリッ)」→「だったら何でブラックロックをABS買入プログラムのアドバイザーに起用したのでしょうか(ニヤニヤ)」というコンボが炸裂したように、どうも今回の追加緩和は色々と細かい所の説明が雑というか練りが甘くなっているなあという感じです。
つまり、何か議論百出でとりあえず打ち込めるものを打ち込んでみたという印象を強くするものでありまして、だからこそ説明の中で微妙なボロが出てくるという話で、従いましてこの決定内部でも相当議論があって出来上がりになる所でつぎはぎとか入ったのではないかという気もするのですがどうでしょうかねえ。
なお、この説明の後半にありますし、質問者が質問していましたけれども、もう利下げが無いとなるとTLTROの借入枠を利下げまで温存するという思惑は起き難くなるわなとは思いますのでその部分は質問者とドラギ総裁に同意。
・追加緩和の背景は判ったが見通しが変わっていないとはどういう事ぞという質問
いやあ中々良いツッコミが続きますよ。
『Question: I have two questions. Considering the inflation expectation
in your staff projections, which have not moved for 2015 and 2016. Why
have they not moved if you’re seeing a clear trend of lower inflation
in the future?(後半割愛)』
良いツッコミですな。なお2番目の質問がまた大ネタ(ジャクソンホール講演に関してで答えも長い)なのですが時間の都合上(汗)明日に続きます。
『Draghi: On the first question, the staff’s projections foresee a return
of inflation and an upward trend essentially because of the recovery, of
the exchange rate, of the effects of our monetary policy, of better prospects
for global demand.』
スタッフ見通しは今回の金融政策も加えての先行き見通しですよとかワロタという感じですが、ここでもしらっと為替レートの単語がありまして、とにかくユーロ安にしたいのは良く判るというものです。
『So by and large, these are the underlying assumptions, and in some cases,
I do think they also foresee an increase in the price of food. So there
are assumptions. The usual assumptions are behind this. The downward trend
that we are witnessing this year is viewed as a temporary deviation from
a baseline which will see inflation expectations going back toward 2%,
but not at 2%, in 2016.』
ベースラインシナリオは同じで足元の動きは一時的な乖離だがという説明をしているのと、インフレ期待が下がって経済の回復モメンタムが失われつつあるという説明をしているのとがどうもこう上手く繋がっていないように思えますが、見通しは下げないというのも何だかねえとは思うのでした。
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2014/09/08
○ドラギ総裁の会見ネタである(^^)
どうも連日短国市場ネタでああでもないこうでもないと書くので時間と量が費やされてしまって甚だアレでございますが。
http://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2014/html/is140904.en.html
Introductory statement to the press conference (with Q&A)
Mario Draghi, President of the ECB,
Frankfurt am Main, 4 September 2014
手抜きでWebcast見てないですけど、質疑応答そのものは基本が一人一発だと思われますのですが、一人の人が連続して無慈悲なツッコミを入れているかの如く流れるように質疑が展開されているという美しさが実に素敵でありまする。
・前回「利下げは限界に達した」ってゆうてませんでしたっけという質問キタコレ
最初の質疑である。
『Question: My first question is, was this a unanimous decision on the
interest rates and on the ABS and covered bond purchase programme? And
my second question is about your previous comments about, for all intents
and purposes, being at the lower bound on interest rates. You’ve cut interest
rates further. Is there a risk that this undermines a bit the reliability
of your forward guidance and your communications on the policy outlook
to the financial markets and to the public?』
決定は全員一致だったのですかというのはまあお約束の質問としまして、後半の質問は「前回利下げした時にlower
bound(下限ですかね)に到達したと言ってたのにまた利下げしやがりましたが、そういうウソツキをしていると信認問題になりませんかねえ」とはこれまた辛辣。
『Draghi: The answer to the first question is no. It was not unanimous.
And to the second question: no there isn’t such a risk, because we announced
about the interest rates that they would be for all practical purposes
at the lower bound, but technical adjustments could be possible, and that’s
what we did. And now we are at the lower bound, where technical adjustments
are not going to be possible any longer.』
全員一致じゃないというのはまあ良いとしまして、後半の説明が既にインチキの風格を漂わせておりまして、大体からして「there
isn’t such a risk」とか信認問題はお前が大丈夫だと言ってもこのウソツキ野郎という風に外野が思えば信認問題な訳で、お前が「そのリスクはありません」(キリッ)とか言っても知らんがなとしか申し上げようがなく、この辺りに関してはやはりあの福々しく景気が良さそうに見える福井の俊ちゃんが満面の笑みで話をするのとは貫録の差があるという所でしょう(なぜならこの後も無慈悲なツッコミが飛ぶので)。
でまあ「今回こそ下限に達しました」ということで、では今回の利下げは何ですねんというと「technical
adjustments(技術的調整)」ってナンジャラホイというか、じゃあ利下げの目的は何ですねんという感じですがこれはかなり後の方でツッコミが飛んできますので乞うご期待(^^)。
・バランスシートのインパクトとかQEの議論があったのかとかのQE質問
次の質疑である。
『Question: Mr Draghi, you said that the new measures and the TLTROs will
have a sizeable impact on your balance sheet. Could you give us more insight
into how much you expect the impact to be for the new measures? And my
second question is, following your speech in Jackson Hole, did you discuss
QE today?』
先ほどのステートメントで今回の買入とTLTROはバランスシートに「sizeable impact」があるという説明をしていましたが実際そのインパクトはハウマッチ?というのと、ジャクソンホールの講演のフォローとしてQEの議論はあったの??という質問です。
でまあこの2つの質問を見て分かりますように、ドラギ総裁の会見質疑については質問する方が過去や直近の説明に対して「えーっと前回の話と違いますが〜」って感じでツッコミを入れてくる所が実に美しい展開でありまして、まあECBの場合は他の主要国中銀と違って総裁のグリップが掛け難いのではないかと愚考される部分はあるので同情の余地はあるのですが、それにしてもドラギのおっちゃんはどこの福井俊彦だという感じでその場その場で結構都合の良いような説明でお茶を濁したり、威勢の良い空元気を出して来たりというような感じはある訳で、まあ最初の内はその威勢のよさに圧倒され気味ではありましたけれども、さすがに同じ事何年もやっていますと段々威勢だけでは回らなくなってくるという事でしょうかねえ
『Draghi: On the first question - you know, this is quite a complex package of measures.』
複雑とか言ってとりあえず話を誤魔化す気満々の掴みです。
『You have the TLTROs which are going to unfold over several operations
over two years initially, then two more years. So that’s one thing. Then
you have the ABS, which is in a sense a very novel programme. Then we have
the starting again of a covered bond purchase programme. As you all know,
it’s not a new thing, but the purposes of this programme are very different
from the previous programmes.』
尤もらしい話をしているが結局「新しい取り組みです」(キリッ)という話しかしとらん。
『So all this makes a precise estimate of the impact that these transactions
will have on our balance sheet very complicated, especially at the stage
when none of these operations have as yet been undertaken. So we may be
more precise especially once the TLTROs, at least the first two TLTROs,
have taken place.』
やってみないとバランスシートへのインパクトは判りませんというのはその通りとしか申し上げようがないですが、だったら冒頭説明部分で何で「sizeable
impact」とかQEを連想させるような話をしたのよという所ですが、まあ当然ながら市場はヘッドラインで動いてしまいますし、まあ何とかストとか言われる人でも一々会見を逐語確認していない人もいるでしょうから、冒頭声明文の「balance
sheetへのsizeable impact」のQEチックな部分を見て米英日のようなバランスシートターゲットヒャッハー的な反応をする向きもあるでしょうなあ(実際は預金ファシリティマイナス拡大とバランスシート拡大政策の相性は明らかに悪い)ということで。
『The aim here, however, is twofold. The aim is to increase the measures
that produce credit easing for the banking industry and banking sector,
which as you know represents more than 80% of total intermediation, credit
intermediation, in the euro area. The second aim is to steer, significantly
steer, the size of our balance sheet towards the dimensions it used to
have at the beginning of 2012.』
でまあこの目的として、1番目の方の「credit easing」というのはまあ判らんでも無いが、実際にはABSなどを買うのは良いけど、どの辺のクラスまで買うかによって単なる流動性供与になるのかクレジットイージングになるのかは変わるので制度のデザイン次第(シニアと保証付メザニンを買うという話がその後にある)ではございます。2番目の説明はなんじゃそらという感じで、バランスシートを拡大とか言ってるなら預金ファシリティをプラスにしろよという事で、QEな話をして市場を喜ばせようというのは判るのだが、実際にやっている事との乖離があるじゃろと思う次第。
『Yes, it was discussed. QE was discussed. Some of our Governing Council
members were in favour of doing more than I have just presented, and some
were in favour of doing less. So our proposal strikes the middle of the
road, but to answer your question, yes it was discussed. A broad asset
purchase programme was discussed, and some Governors made clear that they
would like to do more.』
QEが議論されたのかという質問に対しては「もっとやれという意見もあったし、そうじゃないのもあって中庸を取りました」という説明をしていまして、おお威勢が良いじゃんと思われるのですが、次の質問が中々優秀。
・そもそもQEの定義が「資産買入です」ってナンジャソラ
『Question: I wonder if maybe you could clarify for us what your definition of quantitative easing is.』
ところであんさんのQEの定義って何ですねんというのは中々優秀な質問。
『I gather from the answer to the last question, the size of this programme
will not yet qualify as quantitative easing, and maybe you can clarify
at what point we should start calling it quantitative easing.』
これは良い質問ですな。
『And the second question is, I’ve seen various estimates of the size
of the asset-backed securities market in the eurozone. I’d be interested
in what your estimate is and whether that puts any kind of ceiling on what
you can do with the programme you’ve just spoken about.』
ABS市場の規模から考えると買入サイズのリミットとかありませんですかねえと。
『Draghi: On the first thing, the definition of QE is not really related
to its size, but rather to its modalities.』
な、なんだってー!!!
『So QE is an outright purchase of assets.』
アウトライトでの買入がQEというのもナンジャソラという所で、調節技術論的に言えば中央銀行の長期負債に対して長期資産を保有するのはリーズナブルな話になりますので、中央銀行発行のバンクノート見合いで長期国債を保有していても別におかしくないので、それまで含めてQEになるんかいなという気はだいぶする。
『To give an example: rather than accepting these assets as collateral
for lending, the ECB would outright purchase these assets. That’s QE.
It would inject money into the system. Now, QE can be private sector asset-based,
or also sovereign-sector, public sector asset-based, or both. The components
of today’s measures are predominantly oriented to credit easing.』
ということでその資産買入の説明ですが、今回の買入は主にクレジットイージングに基づいているという説明になっておりまして・・・・・・・・・
『However, it’s quite clear that we would buy outright ABS, the senior
tranches, and the mezzanine tranches only if there is a guarantee. In other
words, very much like what the Fed did a few years ago. So there is also
this component.』
でまあここで買入資産についての話がありまして、シニアと保証付メザニンを買うという話をしていまして、それを「FEDが前に行ったものに似ている」という話をして「So
there is also this component」という話なのですが、現実問題として概ねシニア債しか買わないで、しかもそもそも論としてABS市場自体が大したことない中で本当にクレジットイージングの効果が出るのかいなという気はだいぶします。金利は下がるかも知らんが。
つーか、米国の場合はMBS市場のスプレッド縮小とかを狙っていたのに対して、ECBは金融政策のトランスミッションメカニズムを機能させるとかクレジットの供給を促すという話になっている辺りが若干アレで、結局どういう経路で効かせたいのかが良く判らんというところではあります。
『Let me also add, to answer your question about the size of the ABS: this
is very difficult. We have gone through several figures. Some of them even
leaked out, and it’s pointless I think to discuss. We would have loved
to give you a figure, obviously. For communication purposes, it’s much
better to be clear, but at this stage especially, it’s very difficult
to assess the size of this.』
でまあロットの方に関してはコミュニケーションポリシーとしては数字をクリアにした方が良いのだが、やってみないと判らないから何とも言えませんという話をしているのでありました。まあ仕方ないけどね。
『Let me also add one thing, because the ABS may sound more, I would say
novel, than they are in the ECB policy-making, and indeed, the modality
is novel, because we would do outright purchases of ABS, but the ABS have
been given as collateral for borrowing from the ECB for at least ten years,
so the ECB knows very well how to price and how to treat the ABS that’s
accepted, especially since we have, - and this is in a sense another dimension
that makes any precise quantification difficult at this point in time -
we have narrowly defined our outright purchase programme to simple and
transparent ABS.』
あまり判らん判らん言ってるとマズイと思ったのか追加で説明が続いてまして、「我々はABSをこれまでもずっと金融機関の担保として扱っていますので、これらの商品内容については良く分かっております(キリッ)という話をしております。
『We have gone through this several times, and that’s where in a sense
the credit easing component comes back into place, because we want to make
sure that these ABS are being used to extend credit to the real economy.』
でまあABS買入によってクレジット環境の緩和を期待する、という話ですな。
・見事な逆手取り質問また炸裂
でまあ次の質問もこれまた優秀というか逆ねじモードキタコレなのが一つあります。
『Question: For my first question, you noted that the decision today was
not unanimous. Could you tell us a little more about the scale and the
nature of the dissent, and you noted just in your previous answer that
the ECB already has a lot of expertise when it comes to the handling of
asset-backed securities because they’re accepted as collateral. Given
that, what is the hiring of BlackRock adding to the process of devising
the programme?』
前半の反対はどの位のレベルの反対があったのかというのは兎も角として、後半の質問がワロタというか優秀にも程があるという所で、ECBはABSについて充分な知見があるとさっき言ってたけれども、じゃあ何でブラックロックをアドバイザーに起用したんですかとはこれまた意地悪。
『Draghi: On the scale of the dissent, I could say that there was a comfortable
majority in favour of doing the programme, and now on the content of the
discussion, I’ve given some hints before.』
賛成がcomfortable majorityだったという話だけでお茶を濁すという時点でお察しという所で、反対したドイツ方面の方々は相当文句タラタラだったんではないでしょうかと。
『On BlackRock: one thing is to accept the ABS as collateral, another thing
is to design a programme of outright purchases, and that’s where BlackRock
Solutions would actually be helpful in doing it.』
ブラックロックソリューションをアドバイザーに採用したのは買入プログラムのデザインの為ですとな。
『As had been announced some time ago, they’ve been hired by the ECB through
a competitive tender within the existing rules. They’ve been tendered
out in the form of a competitive negotiated procedure without publication
of a notice. This procedure is foreseen in the ECB Rules of Procurement,
Article 6.1, in line with the European Public Procurement Directive. It’s
common practice in EU member states.』
選定の際には然るべき手続きを取って入札とかしていると説明しているのはまあ質問の意地悪成分に対応しているという所ですの。
『So their contribution would be to advise on developing a programme to
purchase ABS. I could go on with the tendering procedure if you are interested.
The ECB has invited a number of appropriate consulting firms to take part
in the tender etc, but just be assured that the rules have been followed.』
まあそう答えるしかないですが、確かに「我々はABSについては既に詳しいんです(キリッ)」とか説明したら「じゃあ何で外部アドバイザー採用して金払ってるんだお前は馬鹿か」という質問が飛ぶわなという所で、記者のツッコミもさるところながらドラギのおっちゃん余計な話をし過ぎのような気もしますなあという所で。
#以下さらに続くが時間と量の関係で今日はここで勘弁
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2014/09/05
○ECBヤケクソ(かどうか知らんが)利下げキタコレ!!だが量的緩和どうすんの??
ということで今回は別に何もやらないでやるやる詐欺をどの位のチラリズムなどと思っていたのですが、まさかの利下げキタコレであります。
http://www.ecb.europa.eu/press/pr/date/2014/html/pr140904.en.html
4 September 2014 - Monetary policy decisions
『At today’s meeting the Governing Council of the ECB took the following
monetary policy decisions:
・The interest rate on the main refinancing operations of the Eurosystem
will be decreased by 10 basis points to 0.05%, starting from the operation
to be settled on 10 September 2014.
・The interest rate on the marginal lending facility will be decreased
by 10 basis points to 0.30%, with effect from 10 September 2014.
・The interest rate on the deposit facility will be decreased by 10 basis
points to -0.20%, with effect from 10 September 2014.
The President of the ECB will comment on the considerations underlying
these decisions at a press conference starting at 2.30 p.m. CET today.』
ということで何と全部10bpの利下げで、これで預金ファシリティ金利が▲0.20%になるとはこりはまたヤケクソキタコレという感じですが・・・・・・・・・・・・・
いやまあ利下げがやや意外だったのは、オペレーショナルな面から考えた場合に「量をターゲットとした緩和政策」を実施する際には預金ファシリティーの金利は高めに置いた方が超過準備積み上げに対するインセンティブをご提供するので量が積みやすくなるのに対して、ECBの場合は預金ファシリティー金利のマイナスを拡大している訳で、つまり超過準備保有に対してペナルティーを課す状態で量の拡大をしろとか言われても難しい事になるので、今後国債購入をして量的緩和スキームの方向にレジームを変更するためのハードルを更に引き上げているので、利下げはあまりやらないかなあと思っていたのですけどね。
更に申し上げますと、まさかMRO金利をマイナスにする訳にも行かない(マイナスにしたらどう見ても「銀行に補助金を出している」という批判が殺到して収拾がつかなくなるでしょ)ので、金利を下げるにしても今回で打ち止めになってしまいますし、上記の理由で量的ターゲットを用いたレジームを導入するのが更に難しくなっているので、ここから先の手段自体はあるのですけれども、「見せ方」が難しくなっているなあとは思います。
でまあこの次にありますように、今回はABSとカバードボンドの買入というAPPだけど量というよりは信用緩和っぽい施策が打ち込まれておりますが、マイナス金利の中での資産買入で残高が積み上がるものとしては、このように信用緩和ちっくな物でしたらクレジットリスクや流動性リスクの部分が預金ファシリティのマイナス金利のデメリットよりも上回るからおっけーという話でしょうし、同じ理屈で域内国債でもへっぽこ銘柄であれば買入残高は積み上がるでしょう。そうでなければマイナス金利の水準まで委細構わず買入を続けるという荒業を炸裂させるしかありません(後の方で申し上げますが今日辺り下手したら短国だけど出来上がりマイナス金利の購入ケースが出そうな日銀がいますが^^)ので、まあそういう意味では「量をターゲットにした量的緩和」ではなくて「買入対象資産をターゲットにした資産買入政策」であればマイナス金利との併存は技術的には可能だと思います。
でまあ後はレトリックの話で、資産買入政策を量的緩和ちっくに見せておくものの、量を前面に出してしまうとマイナス金利の関係上量が積みにくいから見栄えが悪くなるので、あくまでも「買入対象資産」を前面に押し出して、マネタリーベース云々に関しては「これこれの資産買入を実施しました、ああ量に関しては市場の皆様がこれだけしか持ってこなかったから仕方ないですねウチのせいじゃありませんよ」という事で済ませるという形になるんでしょうな。
ということでまあ基本的にはこれとりあえず為替と債券には効くわなと思いますが、マネタリーベースがどうのこうの的な話では弱いので、この辺のバランスが市場の着眼点が変わった時にどうなのよというのは無いでもないですが、目先は米国が出口モードですからドラギのおっちゃんが言う「金融政策の方向性が違います」(キリッ)ってのが効くんでしょうかね、良く判らんけど。
#しかし「金融政策の方向性が違います」っていうと格好良さげに見えるが、「うちは他の先進国と比較してダメダメです」って話の裏返しであって自虐ネタにも程があるんですけどね!!!!!!!
○ドラギ総裁会見であるがQ&Aまで読みこめていません(すいません)
http://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2014/html/is140904.en.html
Introductory statement to the press conference (with Q&A)
Mario Draghi, President of the ECB,
Frankfurt am Main, 4 September 2014
もうQ&Aが出ていますな。
『Ladies and gentlemen, the Vice-President and I are very pleased to welcome
you to our press conference. We will now report on the outcome of today’s
meeting of the Governing Council, which was also attended by the Commission
Vice-President, Mr Katainen.』
カタイネンさんも出席してますねん(言ってみたかっただけ)。
『Based on our regular economic and monetary analyses, the Governing Council
decided today to lower the interest rate on the main refinancing operations
of the Eurosystem by 10 basis points to 0.05% and the rate on the marginal
lending facility by 10 basis points to 0.30%. The rate on the deposit facility
was lowered by 10 basis points to -0.20%.』
利下げキタコレ!
『In addition, the Governing Council decided to start purchasing non-financial private sector assets.』
民間の非金融機関の債務の購入を開始することを決定しましたキタコレ!
『The Eurosystem will purchase a broad portfolio of simple and transparent
asset-backed securities (ABSs) with underlying assets consisting of claims
against the euro area non-financial private sector under an ABS purchase
programme (ABSPP). This reflects the role of the ABS market in facilitating
new credit flows to the economy and follows the intensification of preparatory
work on this matter, as decided by the Governing Council in June.』
ABSの購入を行う事によってABS市場を通じたクレジット供給を促進しますとな。
『In parallel, the Eurosystem will also purchase a broad portfolio of euro-denominated
covered bonds issued by MFIs domiciled in the euro area under a new covered
bond purchase programme (CBPP3).』
ユーロ建てのカバードボンドの購入も行いますと。
『Interventions under these programmes will start in October 2014. The
detailed modalities of these programmes will be announced after the Governing
Council meeting of 2 October 2014.』
これらの施策は次回の定例理事会で詳細を決定して、10月より実施しますと。
『The newly decided measures, together with the targeted longer-term refinancing
operations which will be conducted in two weeks, will have a sizeable impact
on our balance sheet.』
おーインチキレトリック早速出しているじゃんという事でして、資産買入政策を打ち込んでおいて常設預金ファシリティー金利のマイナスは拡大しているので、先ほど申し上げたように「バランスシートの量で勝負」の政策とは相性が悪いのですが、あえて「sizeable
impact on our balance sheet」と言って何となく量的緩和をしているっぽい説明をしているのがドラギ総裁の福井俊彦力とでも申しますインチキクオリティであります。なお「バランスシートにインパクト」とはいってますが「量」(またはサイズ)とは言っていない辺りが中々チャーミング。
『These decisions will add to the range of monetary policy measures taken
over recent months. In particular, they will support our forward guidance
on the key ECB interest rates and reflect the fact that there are significant
and increasing differences in the monetary policy cycle between major advanced
economies.』
で、パラグラフで思いっきり為替誘導ちっくな話をしているのがまたお洒落にも程がある訳で、「there
are significant and increasing differences in the monetary policy cycle
between major advanced economies」って要するに米国や英国は出口モードだけどEUは追加緩和だからユーロが安くなりやがれこの野郎という事で、まあ以前からちらちらこの話はしていますが、今回はまた盛大に露骨な発言ですな。
『They will further enhance the functioning of the monetary policy transmission
mechanism and support the provision of credit to the broad economy.』
まあこれは普通の文言。
『In our analysis, we took into account the overall subdued outlook for
inflation, the weakening in the euro area’s growth momentum over the recent
past and the continued subdued monetary and credit dynamics. Today’s decisions,
together with the other measures in place, have been taken with a view
to underpinning the firm anchoring of medium to long-term inflation expectations,
in line with our aim of maintaining inflation rates below, but close to,
2%.』
でまあここの表現もまた微妙な言い方になっていますが、今回の決定によって中長期のインフレ期待がターゲットの2%に確りアンカーされる事を展望しているという話になっていまして、まあこの前のジャクソンホールでの話とかとも総合しますと、「中長期的なインフレ期待の低下を防ぐ」という目的があるという建付けになっているという事ですわな。
ただまあインフレ期待の低下リスクへの対応という意味では米国でも日本でも基本的には「量的緩和政策による国債大量購入」というスキームを使っていまして、今回のような「ゼロからマイナスの金利と信用緩和的な資産買入のセット」というのはECBが嚆矢となるので、はてさてどうなるのやらという所ではあるのですけどね。これで「期待に働きかける」のですかねえ・・・・・・・
『As our measures work their way through to the economy they will contribute
to a return of inflation rates to levels closer to 2%. Should it become
necessary to further address risks of too prolonged a period of low inflation,
the Governing Council is unanimous in its commitment to using additional
unconventional instruments within its mandate.』
今後必要になれば更なる追加緩和を実施する用意がある事を全員一致ということですが、じゃあ何をやるのかという話は無いですけど、まあ利下げ余地がマジでなくなった(しいて言えばあと4.9bp位下げられるかもしれませんけど)ので、次に何か必要になったら必然的に非伝統的政策になるので、まあこういう話になりますし、大体からして景気見通しが強くなっても居ないのに「これで打ち止め」という訳にも行きませんからシャーナイナイですな。
で、この先が経済物価情勢および金融面での現状認識と先行き見通しの話になるのですが、途中を飛ばしてまずは物価の部分を前回と比較しつつ引用しますね。
http://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2014/html/is140807.en.html(前回)
『According to Eurostat’s flash estimate, euro area annual HICP inflation
was 0.3% in August 2014, after 0.4% in July. This decline reflects primarily
lower energy price inflation, while the other main components remained
broadly unchanged in aggregate.』 (今回)
足元の下げについては一時的なエネルギー価格の要因が大きいという話をしていますが・・・・・・・・・
『Inflation rates have now remained low for a considerable period of time.
As said, today’s decisions, together with the other measures in place,
have been taken to underpin the firm anchoring of medium to long-term inflation
expectations, in line with our aim of maintaining inflation rates below,
but close to, 2%.』(今回)
ということで先ほど冒頭の部分にあったインフレ期待がどうのこうのの部分がまた説明されています。
『On the basis of current information, annual HICP inflation is expected
to remain at low levels over the coming months, before increasing gradually
during 2015 and 2016. 』(今回)
ということですが、前回はどうなっていたかと言いますと・・・・・・・・・
『According to Eurostat’s flash estimate, euro area annual HICP inflation
was 0.4% in July 2014, after 0.5% in June. This reflects primarily lower
energy price inflation, while the other main components of the HICP remained
broadly unchanged . On the basis of current information, annual HICP inflation
is expected to remain at low levels over the coming months, before increasing
gradually during 2015 and 2016. Meanwhile, inflation expectations for the
euro area over the medium to long term continue to be firmly anchored in
line with our aim of maintaining inflation rates below, but close to, 2%.
』(前回)
ということで、物価の足元の弱さの要因、先行きに関して数か月の間低い状態が続いて2015年から2016年に向けて物価が2%に向けて戻るという見通しについては前回と同様ですが、ご覧になれば判るように、前回は「中長期のインフレ期待は確りとアンカーされている」(キリッ)という文言からご覧のような表現に変更になった訳で、まあどうせ質疑応答でこの辺は質問あるでしょうからQ&Aで確認したいですな。
『The September 2014 ECB staff macroeconomic projections for the euro area
foresee annual HICP inflation at 0.6% in 2014, 1.1% in 2015 and 1.4% in
2016. In comparison with the June 2014 Eurosystem staff macroeconomic projections,
the projection for inflation for 2014 has been revised downwards. The projections
for 2015 and 2016 have remained unchanged.』(今回)
先行き見通しに関するECBスタッフの見通しに関しては文章にありますように四半期毎に出てくるので前回は出ていませんが、足元の見通しは下がっているけれども先行きの見通しは変わっていないとか中央銀行の願望レポートクオリティにも似た大変に心温まるものとなっています。
『The Governing Council, taking into account the measures decided today,
will continue to closely monitor the risks to the outlook for price developments
over the medium term. In this context, we will focus in particular on the
possible repercussions of dampened growth dynamics, geopolitical developments,
exchange rate developments and the pass-through of our monetary policy
measures.』(今回)
『The Governing Council sees both upside and downside risks to the outlook
for price developments as limited and broadly balanced over the medium
term. In this context, we will closely monitor the possible repercussions
of heightened geopolitical risks and exchange rate developments.』(前回)
ということで、今回のIntroductory statementでは物価に関する部分での先行きリスク認識がバランス云々という文言がばっさり抜けまして(追加緩和しましたし中長期的なインフレ期待に関する警戒をしているのだから当然ですが)、先行きの動向に注意するという形で、実質下振れリスク警戒の姿勢を強めた(ただし下振れリスクが高いという表現は避ける)というのが前回との違いです。あと、今回しらっとここでも為替市場の影響とか入れているのがお洒落ですな。
あとついでに折角だからジャクソンホール以来に話題の財政に関する文言を前回と比較してみます。
『With regard to structural reforms, important steps have been taken in
several Member States, while in others such measures still need to be legislated
for and implemented. These efforts now clearly need to gain momentum to
achieve higher sustainable growth and employment in the euro area. Determined
structural reforms in product and labour markets as well as action to improve
the business environment are warranted. As regards fiscal policies, comprehensive
fiscal consolidation in recent years has contributed to reducing budgetary
imbalances. Euro area countries should not unravel the progress made with
fiscal consolidation and should proceed in line with the Stability and
Growth Pact. The Pact acts as an anchor for confidence, and the existing
flexibility within the rules allows the budgetary costs of major structural
reforms to be addressed and demand to be supported. There is also leeway
to achieve a more growth-friendly composition of fiscal policies. A full
and consistent implementation of the euro area’s existing fiscal and macroeconomic
surveillance framework is key to bringing down high public debt ratios,
to raising potential growth and to increasing the euro area’s resilience
to shocks.』(今回)
『As regards fiscal policies, comprehensive fiscal consolidation in recent
years has contributed to reducing budgetary imbalances. Important structural
reforms have increased competitiveness and the adjustment capacity of countries’
labour and product markets. These efforts now need to gain momentum to
enhance the euro area’s growth potential. Structural reforms should focus
on fostering private investment and job creation. To restore sound public
finances, euro area countries should proceed in line with the Stability
and Growth Pact and should not unravel the progress made with fiscal consolidation.
Fiscal consolidation should be designed in a growth-friendly way. A full
and consistent implementation of the euro area’s existing fiscal and macroeconomic
surveillance framework is key to bringing down high public debt ratios,
to raising potential growth and to increasing the euro area’s resilience
to shocks.』(前回)
ということで、前回よりもそもそも分量が多くなっているのですが、これに関してはEUでの各種施策の進展を踏まえた部分もあるので微妙ですが、今回はcomprehensive
fiscal consolidationの話では無くて最初に来ているのがstructural reformsの話になっている辺りが、ジャクソンホールの講演との地続き感を見せているのが作りとして考えているなあというのと、後半の方にあります「成長にフレンドリーな財政健全化政策」という話に関する表現が・・・・・・・・・・
『There is also leeway to achieve a more growth-friendly composition of
fiscal policies.』(今回)
『Fiscal consolidation should be designed in a growth-friendly way. 』(前回)
ということで、「財政健全化政策を成長にフレンドリーに」という表現から「財政政策の組み合わせにより成長にフレンドリーになる余地がある」という表現になっていまして、財政政策を出せやゴルァというような表現に近づいてきている辺りもこれまたジャクソンホールの地続きという所でしょうか。
『We are now at your disposal for questions.』
以下は週明けで勘弁ナリ。
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2014/09/03
○ドラギ総裁のジャクソンホール講演ネタ後半戦である
http://www.ecb.europa.eu/press/key/date/2014/html/sp140822.en.html
Unemployment in the euro area
Speech by Mario Draghi, President of the ECB,
Annual central bank symposium in Jackson Hole,
22 August 2014
ということで「労働市場の改革が失業の改善に重要」という話をしているのですが、その改革というのが思いっきり「賃金の調整をもっと可能にする」だの「金銭による整理解雇をもっと可能にする」という盛大に地雷案件を踏み抜きに逝っている辺りがおっちゃんやるなあという内容であることに加え、お前それは思いっきりデフレ圧力を掛ける話じゃねえかECBの物価安定目標との整合性はどうなりますねんという気がするというのは昨日引用したとおりで、では金融政策でどう対応すべきかという部分は、先般斜め読みシリーズで前段の前提なしで引用しましたが、再掲モードになりますがもう一度ここを読み直すと別の味わいがあるのだ。
『2. Responding to high unemployment』という小見出しから参ります。
・単に「金融政策緩和し過ぎのリスクを恐れるべきではない」だけの話ではない最初の部分
『So what conclusions can we draw from this as policymakers? The only conclusion
we can safely draw, in my view, is that we need action on both sides of
the economy: aggregate demand policies have to be accompanied by national
structural policies.』
政策としては需要サイドと労働市場の構造問題(前半で引用した制度改革のような話などですにゃ)サイドの対応の双方をしないといけません。
『Demand side policies are not only justified by the significant cyclical
component in unemployment. They are also relevant because, given prevailing
uncertainty, they help insure against the risk that a weak economy is contributing
to hysteresis effects.』
需要サイドの政策って要は金融政策ですが、シクリカルな問題への対応に加えて、弱い経済が構造問題になる(これまた昨日引用した「不景気が長引いて構造失業率が高まる」件)のにも対応していますと。
『Indeed, while in normal conditions uncertainty would imply a higher degree
of caution for fear of over-shooting, at present the situation is different.
The risks of “doing too little” - i.e. that cyclical unemployment becomes
structural - outweigh those of “doing too much” - that is, excessive
upward wage and price pressures.』
でまあここが最初の威勢の良い所で、先行きの不確実性が高い中で金融緩和政策は緩和のし過ぎのリスクよりも緩和が足りないリスクの方が大きいとキタコレなのですが、冷静に考えたら前段で構造改革の話を思いっきりしていて、どう見ても物価に下押し圧力を掛ける話をしているのですからある意味順当な説明でもあるということが言えたりもします。まあそこまで考えて言ってるのかどうか知らんが。
『At the same time, such aggregate demand policies will ultimately not
be effective without action in parallel on the supply side.』
で、サプライサイドの政策も併用すべきと。
『Like all advanced economies, we are operating in a set of initial conditions
determined by the last financial cycle, which include low inflation, low
interest rates and a large debt overhang in the private and public sectors.
In such circumstances, due to the zero lower bound constraint, there is
a real risk that monetary policy loses some effectiveness in generating
aggregate demand. The debt overhang also inevitably reduces fiscal space.』
でもってインフレが低くて金利がゼロ金利制約にあって過剰債務問題がある中では、金融政策の需要サイドへの効果が低下するリスクが実際にあり、おまけに過剰政府債務で財政出動余地も限られるという話ですな。
『In this context, engineering a higher level and trend of potential growth
- and thereby also government income - can help recover a margin for manoeuvre
and allow both policies regain traction over the economic cycle.』
だから潜在成長力を引き上げると政策対応余力が出ますとは言うのは簡単なのですが・・・・・・・
『Reducing structural unemployment and raising labour participation is
a key part of that. This is also particularly relevant for the euro area
as, to list just one channel, higher unemployment in certain countries
could lead to elevated loan losses, less resilient banks and hence a more
fragmented transmission of monetary policy.』
構造実業率を下げて労働参加率を上げるのはそのキーとなるパートということで、これが改善しない国があるとユーロ圏の分断は続くと中々大きく出ています。
・金融政策の対応に関して
次の小見出しが『Boosting aggregate demand』ですが。
『On the demand side, monetary policy can and should play a central role,
which currently means an accommodative monetary policy for an extended
period of time. I am confident that the package of measures we announced
in June will indeed provide the intended boost to demand, and we stand
ready to adjust our policy stance further.』
需要サイドは主に金融政策という話はまあヨロシとしまして・・・・・・・・
『We have already seen exchange rate movements that should support both
aggregate demand and inflation, which we expect to be sustained by the
diverging expected paths of policy in the US and the euro area (Figure
7).』
ここでまず最初に地雷を踏みに行っていますが、この「欧州と米国の金融政策の方向性が違うから為替市場がユーロ安になっています」という話は理事会後の会見などでも言及しているので通常クオリティは通常クオリティなのですが、思いっきりこのように需要と物価に対して結構な動きのユーロ安とか露骨に言うのは結構な地雷臭なのですけどねえ。
『We will launch our first Targeted Long-Term Refinancing Operation in
September, which has so far garnered significant interest from banks. And
our preparation for outright purchases in asset-backed security (ABS) markets
is fast moving forward and we expect that it should contribute to further
credit easing.』
ABS買入はまだやるやる詐欺のような気もしますし、これらの施策が本当の所どんだけ定量的に効いてくるのか微妙な気もしますがまあ良いとしまして。
『Indeed, such outright purchases would meaningfully contribute to diversifying
the channels for us to generate liquidity.』
これらの買入は流動性を作ることによっても効果を出す(キリッ)と仰せで、この辺りから徐々に「量的緩和導入」の期待を持たせるような話が出てくるのであります。
しかし流動性言うのならそもそも何でマイナス金利政策を導入して超過準備を保有することにペナルティーを課したのかと小一時間問い詰めたいのだが、マイナス金利撤回して大規模QEに切り替えた方が政策発動余地も高まるし、マイナス金利による市場のシュリンクも避けられると思うので早よ方向転換しなはれとは思いますけどねえ。
・物価の部分は初稿からの差し替えで量が多くなっています
『Inflation has been on a downward path from around 2.5% in the summer of 2012 to 0.4% most recently.』
続いて物価の話。
『I comment on these movements about once a month in the press conference
and I have given several reasons for this downward path in inflation, saying
it is because of food and energy price declines; because after mid-2012
it is mostly exchange rate appreciation that has impacted on price movements;
more recently we have had the Russia-Ukraine geopolitical risks which will
also exert a negative impact on the euro area economy; and of course we
had the relative price adjustment that had to happen in the stressed countries
as well as high unemployment. 』
ここなのですが、講演直後にアップされた原稿からここの説明が変わっていまして、一々手打ちするのが面倒なので前のテキストを打ちませんが(あたしゃ23日土曜日に印刷したので読んでいるのは基本的に初稿の方)、ここの部分は物価下げの理由の方の説明になっていますけど、初稿ではここの部分は「中長期的なインフレ期待を下げないように非伝統的な政策を今後も必要があれば実施します」という話になっていて、中長期的なインフレ期待の低下に対応という文言が入っていましたが、そこで話が終わって財政の話になっていたのですよね。
『I have said in principle most of these effects should in the end wash
out because most of them are temporary in nature - though not all of them.
But I also said if this period of low inflation were to last for a prolonged
period of time the risk to price stability would increase.』
『Over the month of August financial markets have indicated that inflation
expectations exhibited significant declines at all horizons. The 5year/5year
swap rate declined by 15 basis points to just below 2% - this is the metric
that we usually use for defining medium term inflation.』
『But if we go to shorter and medium-term horizons the revisions have been
even more significant. The real rates on the short and medium term have
gone up, on the long term they haven't gone up because we are witnessing
a decline in long term nominal rates, not only in the euro area but everywhere
really. The Governing Council will acknowledge these developments and within
its mandate will use all the available instruments needed to ensure price
stability over the medium term.』
ということで物価に対する言及部分が凄く長くなっていまして、こちらでは「中長期的なインフレ期待の低下リスク」というような直接的な表現は無いのですが、その代わりに低インフレの長期化の話とか、BEIの推移も注意深く見るとか、実質金利の話とか、思いっきり「インフレ期待の低下に警戒」という文脈に繋がる話をこれでもかと行っていますので、初稿部分(初稿はここの部分が3行コメントだった)から見ると随分と強調した格好になっています。
・で、財政の話でのっけから凄まじい地雷を踏み抜きに逝っている件
『Turning to fiscal policy, since 2010 the euro area has suffered from
fiscal policy being less available and effective, especially compared with
other large advanced economies.』
他の先進国と比べても財政出動余地が無くて苦労しているということですが・・・・・・・・・・・
『This is not so much a consequence of high initial debt ratios - public
debt is in aggregate not higher in the euro area than in the US or Japan.
It reflects the fact that the central bank in those countries could act
and has acted as a backstop for government funding.』
>the central bank in those countries could act and has acted as a backstop for government funding.
>the central bank in those countries could act and has acted as a backstop for government funding.
>the central bank in those countries could act and has acted as a backstop for government funding.
>the central bank in those countries could act and has acted as a backstop for government funding.
>the central bank in those countries could act and has acted as a backstop for government funding.
な、なんだってー!!!!
ということでここ読んでてコーヒー吹いたのですが、「米国や日本は中央銀行が政府債務のバックストップとして機能することが可能かもしれないという事実があるので欧州よりも財政赤字拡大の余地がある」ってそれお前米国や日本はは財政ファイナンスをしていますって言いたいのか、ECBも財政ファイナンスをすれば財政の発動余地が高まりますと言いたいのかのどちらか(または双方)って話じゃねえかドイツ様と話はついているのかこのオッサンとしか申し上げようがない超地雷案件というかそもそもそれECBの設立法を盛大に無視してねえかという話。
『This is an important reason why markets spared their fiscal authorities
the loss of confidence that constrained many euro area governments’ market
access. This has in turn allowed fiscal consolidation in the US and Japan
to be more backloaded.』
でまあここで話は「だから市場の信頼を勝ち取るために財政健全化が重要」という話をしているので、前記の大地雷部分はただのサービスフレーズなのかも知れませんが、まあ前記の部分やら、その前の財政発動余地がどうのこうのな部分とセットで見ると「ECBは財政ファイナンスで域内国債を買う気満々なのでお前ら財政出せや」という話をしているように取れますので、リップサービスにしても何ぼ何でもこれは地雷というか毒ガス級の話じゃねえのと思いますけどねえ。
『Thus, it would be helpful for the overall stance of policy if fiscal
policy could play a greater role alongside monetary policy, and I believe
there is scope for this, while taking into account our specific initial
conditions and legal constraints.』
でまあこんな話をしていまして、金融政策だけでは無くて財政政策の発動余地もあるとか言い出したらそらまあ財政ファイナンスして国債購入方式の量的緩和発動キタコレとかいう話にはなる罠と思いますが、最後にお為ごかしのように「while
taking into account our specific initial conditions and legal constraints」とか言ってるのがドラギインチキクオリティでして、ドラギ先生が気合が入っているのかただのリップサービスやるやる詐欺なのかによってここら辺の解釈が異なってくるわけですよ。
つまりですね、気合が入っているのであれば「我々の初期条件や法律の制約があるけれども、それは上手い事スルーして財政ファイナンスするからもっと財政出せ」という話をしているようにも見えますし、単なるインチキリップサービスなのであれば「とまあ威勢の良いことを申し上げましたが我々は初期条件や法律の制約に縛られますから財政ファイナンスなんてできないので各国で財政改革をもっとやって効率的な財政運営しないとECBだけでは大変なんでそこんところヨロシク」という話をしているようにも見えるという代物であるというのがこの一連の盛大な地雷説明のアタクシ的な解釈。なおドラギのおっちゃんが何か変なもんでも食ってヤケクソモードになって居る可能性も無いではないですが(−−;
『These initial conditions include levels of government expenditure and
taxation in the euro area that are, in relation to GDP, already among the
highest in the world. And we are operating within a set of fiscal rules
- the Stability and Growth Pact - which acts as an anchor for confidence
and that would be self-defeating to break.』
で、そうは言っても財政状況は宜しくない中でStability and Growth Pactに沿って財政をという話をしていて、結局何を言いたいのかがちと混戦気味ですが・・・・・・・・
『Let me in this context emphasise four elements.』
財政に関する論点を4つにまとめるとな。
『First, the existing flexibility within the rules could be used to better
address the weak recovery and to make room for the cost of needed structural
reforms.』
ここも味わいがあって、要は今の所まだ発動余地のある財政を構造改革のコストに対応する為や、より効率的な景気対策に使えという話で、無駄な財政打ってるんじゃねえという話ではあると思いますが、わざわざ「within
the rules」と言っているのは「ルールの柔軟性の中を突いて財政ファイナンスしまっせ〜」と無理矢理読めば読めない事もない辺りが誠にアレ。
『Second, there is leeway to achieve a more growth-friendly composition of fiscal policies.』
これも同様ですなあ。
『As a start, it should be possible to lower the tax burden in a budget-neutral way. [14] 』
成長すると税収が増えるので税金の負担を下げても財政中立的に運営することが可能(キリッ)というのは低成長が定着する中でそんな美味い話があるかいなという気が全力でするのでこの時点で何だかなあという感じですが、脚注を出して来る辺りがまたイカサマチックでよろしい。
『This strategy could have positive effects even in the short-term if taxes
are lowered in those areas where the short-term fiscal multiplier is higher,
and expenditures cut in unproductive areas where the multiplier is lower.』
『Research suggests positive second-round effects on business confidence
and private investment could also be achieved in the short-term. [15]』
んな都合の良い話があるかいなとは思いますが。(経済が高成長ならば話は別だがそもそもゼロ成長なのにそんな上手い話あるのかよという意味ね、為念)
『Fourth, complementary action at the EU level would also seem to be necessary
to ensure both an appropriate aggregate position and a large public investment
programme - which is consistent with proposals by the incoming President
of the European Commission. [16]』
で、EU全体としての取り組みもという話ですな。
・次の構造改革の話は引用割愛である
次が『Reforming structural policies』でして、最初に『No amount of fiscal
or monetary accommodation, however, can compensate for the necessary structural
reforms in the euro area.』ということで構造改革しろという話で、労働市場に関しては昨日引用した「労働規制の緩和」というデフレ圧力的なネタに加えて、労働者のスキルを引き上げるための失業者や若年層への教育とか、労働生産性を引き上げるための方策とか、そもそも単純なコスト勝負をしたらユーロ圏が新興国に勝てるわけがないのでより付加価値の高い産業へのシフトとかそんな話をしています。
・まとめは引用だけしておくですがここも微妙な地雷が
『3. Conclusion』から。
『Let me conclude.』
へえへえ。
『Unemployment in the euro area is a complex phenomenon, but the solution
is not overly complicated to understand. A coherent strategy to reduce
unemployment has to involve both demand and supply side policies, at both
the euro area and the national levels. And only if the strategy is truly
coherent can it be successful.』
『Without higher aggregate demand, we risk higher structural unemployment,
and governments that introduce structural reforms could end up running
just to stand still. But without determined structural reforms, aggregate
demand measures will quickly run out of steam and may ultimately become
less effective. The way back to higher employment, in other words, is a
policy mix that combines monetary, fiscal and structural measures at the
union level and at the national level. This will allow each member of our
union to achieve a sustainably high level of employment.』
需要サイドの緩和的な政策と供給サイトどいうか構造サイドの構造改革が必要と。
『We should not forget that the stakes for our monetary union are high.』
しらっと地雷臭がしますが・・・・・・・
『It is not unusual to have regional disparities in unemployment within
countries, but the euro area is not a formal political union and hence
does not have permanent mechanisms to share risk, namely through fiscal
transfers. [18] Cross-country migration flows are relatively small and
are unlikely to ever become a key driver of labour market adjustment after
large shocks. [19] 』
『Thus, the long-term cohesion of the euro area depends on each country
in the union achieving a sustainably high level of employment. And given
the very high costs if the cohesion of the union is threatened, all countries
should have an interest in achieving this.』
ということで、最後の所ではマネタリーユニオンの掛け金が高いですと仰せなので何ですねんと思いますと、その後が上記のように「色々な統合を進めないといけない」という話になっていて、まあユニオンの皆様としては当然となる各種の統合(ここでは労働規制の統合しろやゴルァ的な話ですが)の話って各国にお持ち帰りになるとそれはそれで政治的に色々とアレな案件ですがなと思うので、最後でもしらっと今回は地雷を踏みに逝っている感じで中々なオモシロ講演でした。
なお最後に『The text has been updated to reflect new comments on inflation
made during delivery.』ということで、初稿の部分からの追加は先ほどご紹介した部分です。
まあこの地雷を盛大に踏んだ案件ですが、実際にどこまでECB理事会の中で意見が集約されているのかがさっぱりワカランのでドラギ先生の飛ばしなのか先行きの政策を盛大に示唆しているのかが全く分からんというのが実に解釈に困る所でありましたな。
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2014/09/02
○ドラギ総裁のジャクソンホール講演は良く良く見ると色々と地雷案件
http://www.ecb.europa.eu/press/key/date/2014/html/sp140822.en.html
Unemployment in the euro area
Speech by Mario Draghi, President of the ECB,
Annual central bank symposium in Jackson Hole,
22 August 2014
先日頭出しだけしたのですが、この講演真面目に読んでみると言っている話のパーツパーツは筋が通っているのだが全体的な整合性が微妙に怪しい代物に仕上がっておりまして、確かに(あたくしもとりあえず斜め読みした時にネタにした)政策対応をどうすべきか云々部分だと金融政策と財政政策のセット打ちが必要みたいな話があるのですが、それ以外の部分の説明が何とも微妙っつーか何っつーかなので、前半部分も鑑賞という所で。
・最初のユーロ圏の説明はまあ普通だが後部分から見ると微妙な話がある
てな訳で前半が『1. The causes of unemployment in the euro area』なのですが、そちらではユーロ圏における失業率上昇が2段階で起きて、一発目がリーマンショック、二発目がユーロ圏のソブリン危機という形で起きましたという話をしています。
でまあその辺は極めて普通の説明なのですが、結論は当然ながら「ソブリン危機を起こすと政策の発動余地がなくなって死ねる」という話でして・・・・・・・・・
『The sovereign debt crisis operated through various channels, but one
of its most important effects was to disable in part the tools of macroeconomic
stabilisation.』
ソブリン債務危機が起きるとマクロ的な安定化策が取りにくくなるという話で。
『On the fiscal side, non-market services - including public administration,
education and healthcare - had contributed positively to employment in
virtually all countries during the first phase of the crisis, thus somewhat
cushioning the shock. In the second phase, however, fiscal policy was constrained
by concerns over debt sustainability and the lack of a common backstop,
especially as discussions related to sovereign debt restructuring began.』
財政面から見ると、2回目(ソブリン危機)の時には財政制約があって財政政策によって経済安定化とか雇用の確保が出来ませんという話で。
『The necessary fiscal consolidation had to be frontloaded to restore investor
confidence, creating a fiscal drag and a downturn in public sector employment
which added to the ongoing contraction in employment in other sectors.』
なので財政の堅固さによって投資家の信頼を得る事が重要ですよという話をしているので、後半の部分の記述を見て財政ヒャッハー(まあ確かにそういう余地があるという話をしているのだが)というだけを見てヒャッハーというのもどうなのかねという希ガス。
『Sovereign pressures also interrupted the homogenous transmission of monetary
policy across the euro area. Despite very low policy rates, the cost of
capital actually rose in stressed countries in this period, meaning monetary
and fiscal policy effectively tightened in tandem. Hence, an important
focus of our monetary policy in this period was - and still is - to repair
the monetary transmission mechanism.』
ということでソブリン問題でユーロ圏の分断が起きて金融政策の政策波及メカニズムが機能しにくくなるのがケシカランという話ですな。
『Establishing a precise link between these impairments and unemployment
performance is not straightforward. However, ECB staff estimates of the
“credit gap” for stressed countries - the difference between the actual
and normal volumes of credit in the absence of crisis effects - suggest
that that credit supply conditions are exerting a significant drag on economic
activity. [2] 』
ということでソブリン危機になったらおしマイケルという話をしているのですが、後の方で微妙な話があるのでちと引用しておきました。(なお後の方の微妙な話は時間の都合上明日送りになるのでした、汗)
・循環問題が構造問題になるとかその手の話
次が『Cyclical and structural factors』という話ですが。
『Cyclical factors have therefore certainly contributed to the rise in
unemployment. And the economic situation in the euro area suggests they
are still playing a role. The most recent GDP data confirm that the recovery
in the euro area remains uniformly weak, with subdued wage growth even
in non-stressed countries suggesting lacklustre demand. In these circumstances,
it seems likely that uncertainty over the strength of the recovery is weighing
on business investment and slowing the rate at which workers are being
rehired.』
つーことでユーロ圏の現状は宜しく無くて、ストレスの無い国でも賃金は弱いわ需要は弱いわで、循環要因による影響もあるという話ですが、ここから先は構造的な話をして、構造の話→ユーロ圏の改革が必要というのが基本ロジックになるのですよ。
『That being said, there are signs that, in some countries at least, a
significant share of unemployment is also structural.』
でまあ最初がユーロ圏の失業がシクリカルからストラクチャルになっている部分という話をしておりまして・・・・・・・・・
『For example, the euro area Beveridge curve - which summarises unemployment
developments at a given level of labour demand (or vacancies) - suggests
the emergence of a structural mismatch across euro area labour markets
(Figure 3).』
要するに労働需要(あるいは労働力の余剰)と失業率のプロットで、図表の方は上記URL先をご覧下さいという所ですが・・・・・・・・
『In the first phase of the crisis strong declines in labour demand resulted
in a steep rise in euro area unemployment, with a movement down along the
Beveridge curve. The second recessionary episode, however, led to a further
strong increase in the unemployment rate even though aggregate vacancy
rates showed marked signs of improvement. This may imply a more permanent
outward shift.』
詳しくは図表見てちょという所なのですが、最初のリーマンショックの時には失業率の上昇と労働需要の低下が同時進行で起きたのですが、その後のちょっと回復→またソブリンキタコレの流れの中では労働需要が戻る中でも失業率がサガランチ会長になっているという状況を示していまして、つまり労働需要が戻っても失業がそのままという状態になっていて、最初はシクリカルな需要ショックで起きた失業の増加がその後構造的な問題になってきているという話になっています。
・要因は「ジョブの破壊」と「スキルのミスマッチ」というのが最初に来ます
『Part of the explanation for the movement of the Beveridge curve seems
to be the sheer magnitude of the job destruction in some countries, which
has led to reduced job-finding rates, extended durations of unemployment
spells and a higher share of long-term unemployment.』
つーことで原因の説明として最初に出てくるのがジョブの破壊ということで・・・・・・・・
『This reflects, in particular, the strong sectoral downsizing of the previously
overblown construction sector (Figure 4), which, consistent with experience
in the US, tends to lower match efficiency. [3] By the end of 2013, the
stock of long-term unemployed (those unemployed for a year or more) accounted
for over 6% of the total euro area labour force - more than double the
pre-crisis level.』
図表6というのにありますが建設セクターがその前のバブルでヒャッハーだったのがあばばばばーになってしまったのでそのセクターの雇用吸収が大きかった所ほど死んでいると。
『Another important explanation seems to be a lack of redeployment opportunities
for displaced low-skilled workers, as evidenced by the growing disparity
between the skills of the labour force and the skills required by employers.
Analysis of the evolution of skill mismatch [4] suggests a notable increase
in mismatch at regional, country and euro area level (Figure 5). As the
previous figure shows, employment losses in the euro area are strongly
concentrated among low skilled workers.』
もう一つが低スキル労働者の失業が高いという話で、つまりはスキルのミスマッチがという話。
『All in all, estimates provided by international organisations - in particular,
the European Commission, the OECD and the IMF - suggest that the crisis
has resulted in an increase in structural unemployment across the euro
area, rising from an average (across the three institutions) of 8.8% in
2008 to 10.3% by 2013. [5] 』
これらの要因なども含め、構造的失業率が危機の後上昇している、という話でしてこれはユーロ圏だけではないとな。
・労働市場の改革が必要という話の部分が言いたい事は分からんでも無いが微妙な仕上がりになっています
で、恐らくこの次の『Nuancing the picture』の部分が今回の失業云々に関するお題に対する一番の読みどころになっていて、まあこれは精読すると(お話としては)オモロイかも。
『There are nevertheless two important qualifications to make here.』
まずは最初に話として留保がありますのでということで。
『The first is that estimates of structural unemployment are surrounded
by considerable uncertainty, in particular in real time. For example, research
by the European Commission suggests that estimates of the Non-Accelerating
Wage Rate of Unemployment (NAWRU) in the current situation are likely to
overstate the magnitude of unemployment linked to structural factors, notably
in the countries most severely hit by the crisis. [6]』
構造失業率の推計には不確実性があり、リアルタイムでは判らないという話をしておりまして、その例として現状のNAWRU(賃金が上昇しない程度の失業率水準)は特に金融危機の影響が大きかった国における構造失業率を過大評価させる可能性があるとの指摘を紹介しています。
『The second qualification is that behind the aggregate data lies a very
heterogeneous picture. The current unemployment rate in the euro area of
11.5% is the (weighted) average of unemployment rates close to 5% in Germany
and 25% in Spain.』
これはユーロ圏での話ですが、ユーロ圏の域内で状況に差があるという点ですな。
『Structural developments also differ: analysis of the Beveridge curve
at the country level reveals, for example, a pronounced inward shift in
Germany, whereas in France, Italy and in particular Spain, the curves move
outward.』
先ほどの失業と労働需要の関係に関しても国によって違いますと。
・労働市場改革というか解雇規制を減らしたり賃金水準の弾力化が必要みたいな話をしているのですが
で、その後。
『In Germany, for example, the inward shift in the Beveridge curve seen
over the course of the crisis follows a trend that began in the mid-2000s
after the introduction of the Hartz labour market reforms. Its relatively
stronger employment performance was also linked to the fact that German
firms had instruments available to reduce employees’ working time at reasonable
costs - i.e. the intensive margin - including reducing overtime hours,
greater working time flexibility at the firm level, and extensive use of
short-time work schemes. [9] 』
とまあこの辺から労働市場改革をしろという話に入るのですが、まずはドイツでのハーツレーバーマーケットリフォーム(というものらしい)による賃金の弾力化とか解雇規制の弾力化(金払って解雇するのを緩和する)によって効果が出ているという話でして・・・・・・・
『Even within the group of countries that experienced the sovereign debt
crisis most acutely, we can see a differential impact of labour market
institutions on employment. Ireland and Spain, for example, both experienced
a large destruction of employment in the construction sector after the
Lehman shock, but fared quite differently during the sovereign debt crisis.』
で、例は同じくストレス食らった国のアイルランドとスペインの比較になります。
『Unemployment in Ireland stabilised and then fell, whereas in Spain it
increased until January 2013 (Figure 6). From 2011 to 2013 structural unemployment
is estimated to have risen by around 0.5 percentages points in Ireland,
whereas it increased by more than 2.5 percentages points in Spain. [10]』
図表6というのを見てちょなのですがアイルランドとスペインの失業率の問題があって、アイルランドは失業率上がったけどその後徐々に落ち着いているのにスペインは上がって更に上がるとなっていますよという図表があって、その先に説明があるけれども横にあるグラフが「賃金の水準」という事でまあお察しな展開になるのですよ。
『This diverging performance can in part be accounted for by differences
in net migration. But it also reflects the fact that Ireland entered the
crisis with a relatively flexible labour market and adopted further labour
market reforms under its EU-IMF programme beginning in November 2010.』
移民比率の問題も一部にはありますが、アイルランドではEUとIMFによる労働市場改革が2010年11月から行われているのが違いです(キリッ)とな。
『Spain, on the other hand, entered the crisis with strong labour market
rigidities and reform only started meaningfully in 2012.』
スペインの労働改革は2012年に始まったばかりと。
『Importantly, until then, the capacity of firms to adjust to the new economic
conditions was hampered in Spain by sectoral and regional collective bargaining
agreements and wage indexation.』
スペインでは物価上昇で給与の物価スライドが起きているという話ですが、しかしそれがケシカランという話になりますと労働市場的にはそれで雇用が確保できるのかも知れんがどう見てもデフレ圧力です本当にありがとうございましたという話なんですけどねえ。
『Survey evidence indicates that Spain was among the countries where indexation
was more frequent - covering about 70% of firms. [11] As a result, as Figure
6 shows, nominal compensation per employee continued to rise in Spain until
the third quarter of 2011, despite a more than 12 percentage point increase
in unemployment in that time. In Ireland, by contrast, downward wage adjustment
began already in the fourth quarter of 2008 and proceeded more quickly.』
ということでさっき申し上げた表の右側ですが、アイルランドでは賃金がこの間低下していますという話っすな。
『The upshot was that, whereas the Irish labour market facilitated some
adjustment through prices, the Spanish labour market adjusted primarily
through quantities: firms were forced to reduce labour costs by reducing
employment.』
賃金調整によって雇用確保できましたという話なのですが、それってまるでジャパンの話であって、つまりは欧州の「労働市場改革」って賃金デフレ圧力からいわゆるデフレ均衡的なリスクを高めているだけのような気がするんですけど、物価安定目標というECBのマンデートとの整合性はどうなっているのかという点については(恐らくそこはツッコまれると答えが出来ないので)講演中には触れていないのですよね。
『And due to a high degree of duality in the Spanish labour market, this
burden of adjustment was concentrated in particular on a less protected
group - those on temporary contracts. These had been particularly prevalent
in Spain in advance of the crisis, accounting for around one third of all
employment contracts. [12] 』
でまあその結果スペインの場合は非正規労働者などに雇用者数調整の形で労働コスト削減の皺寄せが来るという話をしていますが、でも米国だってこのリーマンショック以降の間って賃金の上昇自体は弱いですけれども、別に賃金水準自体がマイナス推移していた訳ではないのに雇用の回復が進んでいる訳でして、労働市場改革が進むと話が上手く行く、というのは講演での説明的には何となく説得力があるような気もせんでもないですけれども、冷静に考えると本当にそれで良いのかという気がだいぶする訳です。
まあドラギ総裁としては労働市場改革を含め(後の方で出てきますが)EUの経済統合とか財政統合とかそういうのを進めていきたいという中でのロジック展開だと思うのですが、どうも話が一点突破的で全体としての整合性(デフレ圧力どうすんのとか)についてのデザインは無いなあという感じがするのよね。
『To sum up, unemployment in the euro area is characterised by relatively complex interactions.』
ということで最後ですが。
『There have been differentiated demand shocks across countries. These
shocks have interacted with initial conditions and national labour market
institutions in different ways - and the interactions have changed as new
reforms have been adopted. Consequently, estimates of the degree of cyclical
and structural unemployment have to be made with quite some caution. But
it is clear that such heterogeneity in labour market institutions is a
source of fragility for the monetary union.』
ということで、労働市場改革で雇用法制も一本化していかないとマネタリーユニオン(要するに通貨だけ統合している状態)というのは色々と脆弱性があるんですよ(だからお前ら労働市場改革して解雇規制や賃金調整を緩和しろ)というのは判ったのですが、そもそもそれはデフレ圧力にも程があるとか、いわゆる格差拡大ですよね政治的に大丈夫ですかとか、まあそういう意味では結構微妙なテイストというか地雷テイストのある前半部分になっている、ということであります。
以上の内容を踏まえて改めて先日ざくっと引用した『2. Responding to high unemployment』を読みますと、金融政策と財政政策をもっと実施云々という話とまた違った味わいを感じるのですが、惜しい事に時間と量の関係で明日送りになるのでした(超大汗)。
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2014/08/28
○ブラード総裁とロックハート総裁のインタビューから少々
米国のMarketWatchのGreg Robb記者(いつもFOMC後の議長記者会見で登場してくる一人)がジャクソンホールでインタビューしていたようで、月曜に記事が出ておりましたぞな(汗)。
ブラード総裁
http://www.marketwatch.com/story/feds-bullard-europe-is-biggest-risk-to-outlook-2014-08-23
Fed’s Bullard on Europe, asset sales and Yellen’s speech
ロックハート総裁
http://www.marketwatch.com/story/feds-lockhart-not-convinced-economy-ready-to-lift-off-2014-08-24
Fed’s Lockhart on timing of lift off, ‘highly valued’ markets and more
ということでまあ簡単に(そんなにインタビュー自体も長くは無いが)参ります。まずはブラード総裁から。
・ブラード総裁は景気見通しに強気で政策運営はタカ的と
http://www.marketwatch.com/story/feds-bullard-europe-is-biggest-risk-to-outlook-2014-08-23
最初の説明の所から。
『JACKSON HOLE (MarketWatch)-For a few months now, St. Louis Fed President
James Bullard has been saying the first rate increase by the U.S. central
bank should come at the end of the first quarter 2015.』
とありますように、利上げ時期に関してタカ的なのは今に始まった話ではありませんがね。
『That puts him ahead of the consensus of the Fed’s policy committee,
which sees a rate hike after midyear. But Bullard is often ahead of his
colleagues. He was one of the first Fed officials to spell out the need
for bond-buying to support the economy. Former Fed Gov. Laurence Meyer
ranks Bullard as the Fed official who moved markets most in 2013.』
とありますように、この先生新しいテーマに突っ込んで行くのが好きなお方ですが、まあ市場を動かした云々よりも昨年の場合はスタイン前理事の方が影響が大きかったとは思いますがそれは兎も角。
『Bullard sat down for an interview on the sidelines of the Fed’s Jackson
Hole summer retreat. A few highlights: Bullard thinks the economy is on
track for 3% growth in the second half, he’s worried about the European
economy. On the exit strategy, Bullard said that unlike many of his colleagues,
he would be prepared to sell assets from the central bank’s balance sheet
and he is worried that Congress might object to the Fed paying interest
to excess reserves that the banks are holding at the central bank.』
ということで本職のFed担当記者の方がまとめてしまっているのでこれで終了という説もありますが、それで終了してしまうとアレなので少々引用を。
経済物価見通しに関しては強いという話なのですけれども、ではどんなもんなのかいなという話の質疑から。
『Bullard: Data ebbs and flows and it is hard to read. I think the tracking
estimates that I’ve seen for the second half of the year are over 3% still
even given the data that you’re describing, so I would say we are still
in pretty good shape. We are basically on track for what we expected at
this point.』
3%成長を見ているのでまあそもそも強めですわな。
『I think the important thing about inflation is that it has come up off
its lows, where it was, and it has come up some. And I certainly wouldn’t
expect it to go up in a straight line. So I think that story about inflation
coming back to target is very much intact.』
でまあ物価に関しても先行き見通しはFOMC参加者の平均よりも強めの見立てになっています。そうなりますとこういう質問が飛んで来まして・・・・・・・・・
『MarketWatch: Some Fed officials have said inflation can go over 2% for
some period, that that wouldn’t be a problem because we have spent so
much time below target. What is your sense of that?』
これはコチャラコタ総裁が言う「プライスレベルターゲットを意識して(暫くの間低インフレだったのだから)インフレの上振れを容認すべき」という見解に対してどう思いますかという話っすな。
『Bullard: I actually have inflation going above target in 2015. But part
of that is predicated on the momentum in the economy continuing. So we
will see if that develops. But that is the way we’re envisioning it in
St. Louis. So we’ll see, but that is what we’ve penciled in for our forecast.』
見通しとしては2015年は2%を上回るとの事で強気強気。
『MarketWatch: You’ve said that before in a speech in June. But you didn’t
say how long inflation would get over 2% before you got nervous.』
ほうほうそれでそれで?
『Bullard: The way we have it is that it would go to 2.4% by the end of
2015 but then it would be back down at 2%. Of course that is based on some
kind of optimal policy assumptions. But no, I don’t think 2% inflation
is a cap on inflation. I think you are supposed to hit that on average
over time, and various shocks are hitting the economy and that is making
inflation bounce around. But on average you should hit your 2%.』
つーことで物価に関しては来年は2.4%まで上昇してその後2%に向けて下がるという想定(ブラード総裁の想定する金融政策運営を前提にしているので、つまりは足元では物価に上昇モメンタムがあって、金融政策の適切な出口政策によってその後落ち着くという見立てなんですな)で、ただ2%は別にシーリングでもハードターゲットでもなくて景気サイクルの間に平均して2%ならヨロシという説明もしていますな。経済物価動向の見立てに関しては合っているのかどうかは知らんが理屈の筋は通っています。
で、リスクについてですが。
『MarketWatch: What could make you more dovish?』
なるほどこういう言い方で質問するのか。
『Bullard: I think the biggest risk right now in the global economy right
now is Europe. I am trying to understand the latest data there and the
potential for further slowdown. I think this was supposed to be a year
of recovery there. They’ve got some geopolitical risks weighing on that
economy and I think it would be unfortunate if they didn’t get a year
of growth here. So we’ll see where it goes. There again, I think the tracking
forecasts for Germany and some of the other countries are still positive
for the second half of the year, so we will see if that is the way it materializes.
But it is making me a little bit nervous that they are supposed to be coming
out of recession and maybe they are going back into recession, so hopefully
that doesn’t happen.』
ということで欧州の減速リスクた、地政学リスクに起因するリスクなどに注意しているそうです。
で、出口政策運営ですけど、バランスシートをどうするのという質問がありましてその答え。
『Bullard: I think the minutes say the committee wants to get the balance
sheet size to the lowest practical level and that we want it to be all
Treasuries eventually. And it is not very explicit on how fast that is
going to happen.』
まあミニッツではいずれ縮小して国債だけにするがその時期と規模は明示していないですから。
『In my own view, I’d like to see us discontinue the reinvestment [of
proceeds of maturing securities] at some point. I’d actually prefer to
do that before raising rates so then it wouldn’t be a big deal for the
balance sheet but at least the balance sheet would be going in the right
direction and we could say, don’t worry, we are going to get it back to
normal. I don’t really see much purpose at keeping it at a very high level
for such a long time. I really don’t think that is necessary and I think
we could gradually let it go back to normal.』
償還再投資に関してはビックディールではないから利上げ前に行う方が宜しいと、資産規模を大きいままにしておく必要もないでしょうとか割とタカ。でもって資産売却するんですかという質問の答えですが。
『Bullard: I think selling has been unpopular in the committee but I think
it is a perfectly reasonable way to run policy and if you did it in a managed
way, then I think it would be a perfectly good thing to do-and it would
help us get the balance sheet back to normal faster.』
売却はFOMC全体の中では少数派だけど「perfectly reasonable」ですってよ!!
『It would be a tighter policy so you wouldn’t want to do that unless
you felt confident that you could put upward pressure on longer-term rates.
But I think the economy has improved and we probably can afford to do that.』
長期金利などが上がるという理由であまり好まれていない手法かもしれませんが、経済が改善してくれば売却による金利上昇も無問題になるでしょうとかキタコレにも程があるブラードのおっちゃん。
さらにこんな質問が(次のロックハートでも出てくる質問)。
『MarketWatch: Your predecessor as president of the St. Louis Fed, William
Poole, has said he’s worried that there will be blowback from Congress
on one key aspect of your exit plan, paying excess reserves to banks. He
said that if rates go up 1%, the Fed will be paying banks $30 billion.
Aren’t you worried populists on both sides of the aisle will oppose that?』
プール総裁とかマジナツカシスですが、プール総裁の指摘として利上げプロセスでIOER引き上げるとFEDから支出がバカスカ出る事になって議会あたりがギャースカ言い出す可能性がある件についてどう思いますかと。
『Bullard: I’ve worried about that. I’ve talked to people in political
circles about that. For now, they don’t seem to be focusing on it. But
I am worried that when we actually get to that juncture and we start doing
that we will face political opposition on both sides of the aisle and that
would be very difficult for the Fed because we are relying on that tool
as a major part of our exit strategy. So that argues for some kind of sales
program or at least allowing the runoff of the balance sheet so that you
start to get it back to normal sooner. Otherwise you are just paying a
heck of a lot of interest that you don’t really have to pay.』
で、ブラード総裁もその点を懸念しているとしていて、今のところは金利がこの水準だし入ってくる利息の方がプラスだから大丈夫だが今後はマズーというリスク意識を持っていて、その点もバランスシートの正常化を早めるべきという考えになっているとの事でこらまたタカタカしています。
『MarketWatch: What would the Fed’s defense be to criticism about paying interest to banks?』
『Bullard: We’re doing it because we’re trying to meet our mandated objectives
for monetary policy and we think that this is a good way to do it. But
I think the optics are very difficult to defend and might get us into trouble
here.』
てな感じで、政策として適切に行っていても「銀行に利息を払ってケシカラン」という批判に対しての説明というのは政治的イシュ―化すると難しくなるという認識を示しています。以下もうちょっとありますが割愛。
・ロックハート総裁は「pragmatic moderate」で「silent majority」なのね
http://www.marketwatch.com/story/feds-lockhart-not-convinced-economy-ready-to-lift-off-2014-08-24
これまた最初の説明の所から。
『JACKSON HOLE, Wyo. (MarketWatch)-To find out where the silent majority
at the Federal Reserve stands on an issue, it is a good idea to see what
Dennis Lockhart, the president of the Atlanta Fed.』
さすがGreg記者。
『Lockhart describes himself as a “pragmatic moderate” at the central
bank, looking to balance the views of the inflation-fearing hawks and the
growth-promoting doves.』
ほほう。
『With the central bank inching closer to the first rate hike since 2006,
Lockhart sat down to give his views on the economy, the balance sheet and
bubbles. Some highlights: Lockhart thinks it is too early to know if the
economy is on track after a horrible first quarter and he is open to asset
sales to shrink the central bank’s $4.4 trillion balance sheet.』
ということで、Greg記者の言う「FOMCのサイレントマジョリティー」の見解としては、FOMCとしては足元の経済物価情勢が1Qの落ちこみから戻ってオントラックになったかという判断をするのには今後の指標などを見極める必要があるという説明をしておりまして、バランスシートの縮小時に資産を売却する件については「オープン」となっています。
であと補足しますと、オープンとは書かれていますがまあニュアンスとしては「全く売らんと言ってる訳ではない」程度に見えましたし、ここの纏めにないのですが、資産市場の一部で好ましくない価格形成が起きている点については思いっきり認めているのがほほうという感じでした。
見解は議長と同じだそうでその辺りを。
『MarketWatch: As a moderate on the Fed, you must be under a lot of pressure
these days. Getting pulled in all directions?』
『Lockhart: To the extent that someone who is not defined as either a hawk
or a dove, or an extreme dove, is part of a debate with points of view
that range from-“We should go to lift off early because there is relatively
little effective slack” to those who say “we should go longer because
there is considerable slack,”-if you think of that as being pulled in
one way or the other I suppose it is just that I am part of that flow of
debate.』
ということで経済におけるスラックの程度に関する部分がFOMCでの参加者の見解の差になっていますということでして・・・・・・・・・
『MarketWatch: Are you more dovish than Janet Yellen?』
『Lockhart: I think I align pretty well with Janet.』
ほほう。
『What I have been saying here in interviews is that I am still looking
to mid-2015 (for the first rate hike). Using a simplistic categorization
that my staff came up with, I am more of a U-6er than a U-3er…』
ということで、以下はU3カテゴリーとU6カテゴリーの失業がどうのこうの的な話をしておりますがその辺飛ばしまして纏めのところを。
『Lockhart: I am trying to make the point that it is early to draw conclusive
notions of what is really going on. The first quarter was horrible. Second-quarter
GDP growth was quite strong, but final sales was 2.3 [percentage points]
of the 4%. So there was a big inventory component there.』
2Qは強かったけど在庫の寄与も大きかったよねと。
『The third-quarter tracking estimates are around 3% which is what I am
expecting as a run-rate growth rate, but they are tracking estimates. In
the first quarter, we were looking at tracking estimates that turned out
to be tremendously off what the ultimate measured results were. So I just
think you have to be a bit tentative, at this particular point in time,
in concluding that we’re on the track that we need to be on to get to
lift off at mid-2015 or earlier.』
ついこの前今年の1Qの落ちこみが「想定外」だったのだし3Qは年率3%成長との想定だがそれを確信できるほどではないというお話。ただし経済がオントラックだたら2015年半ばまたはもうちょっと早くても出口政策着手というのですから、まあイエレン議長の講演や前週のミニッツなども含めまして利上げ着手は遅いぜヒャッハーというのは少々話に無理があるかもという認識に米国市場がなるのもまあノーマルな反応。
『So I just want to let more time pass, more data come in, more accumulation
of evidence that the track we think we are on, we are in fact on.』
ということでもう少し様子見とのことです。で、ブラード総裁にもぶつけられた質問のうち利息を払ってどうのこうのに関しては「私は政治分析をする人ではないので知らんがな」で逃げていますが、バランスシート規模のマネージに関する質問の答えは以下の通り。
『Lockhart: I think it is going to be a very gradual reduction in the balance
sheet assuming a kind of moderate pace of growth and assuming no reversal
in the economic performance.』
ということで、資産縮小で悪影響の無いようにということですのでブラード総裁よりはずっとマイルド。
『I think the game plan is and should be a gradual reduction in the balance
sheet that will start with ending reinvestment (of proceeds of maturing
securities.) I am not one who wants to rule out asset sales but I think
we’ve communicated that in all likelihood we are just going to let the
balance sheet run off through maturities and that is going to take a while.』
資産売却を別に排除はしないけどとはいってますが、まあこのニュアンスは基本的に「売らずに済ませられるものなら売らないに越したことはない」という感じですよね。
最後にバブルの質問があってここがほほうという感じでしたので引用します。
『MarketWatch: I would be remiss not to ask you about the state of financial
markets as you hold a conference of the topic annually. Are there bubbles
forming, frothiness to be concerned about?』
バブルまたはフロスの兆候は?
『Lockhart: I think it is hard to deny that there are certain markets that
are highly valued. I think the real question is, is that so widespread-underpinned
by excessive leverage-that we are flirting with another systemic event.
And I am not there. But I would not deny that we have some highly valued
markets.』
ということで、これ7月FOMCミニッツと同じですけど、明らかに「一部の資産市場における利回り追求的な行動による異常な価格形成がある」というのは認めていて、「ただその不健全な価格形成が金融システムリスクなどに繋がる物ではないので今の所利上げなどの対応をする必要なし」という認識なんですよね。
『MarketWatch: You are not worried about with rates so low, there is a misallocation of credit?』
『Lockhart: I try to frame this as whether there is something that monetary
policy should address, in which monetary policy is the right tool to address
it, because we are taking really severe systemic-scale risks. I am not
in that arena in my thinking at this stage.』
ということで、まあシステミックリスクでは無いので今の所は金融政策攻撃は要らんとはいってますが、こういう認識がFOMCの中心的見解だとすると利上げってそんなに引っ張れないという意識は強くなるかもしれませんな(今直ぐにスタンスがどうこうとは思いませんので念の為)ということで。
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2014/08/27
○FOMC議事要旨ネタの続き(引っ張ってスイマセン)
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20140730.htm
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20140730.pdf
・昨日の訂正および補足(利上げ着手時の金利について)
昨日引用した出口政策に関する部分ですけど、読者様からご指摘頂きまして微妙に訂正を。
『Almost all participants agreed that it would be appropriate to retain
the federal funds rate as the key policy rate, and they supported continuing
to target a range of 25 basis points for this rate at the time of liftoff
and for some time thereafter. However, one participant preferred to use
the range for the federal funds rate as a communication tool rather than
as a hard target, and another preferred that policy communications during
the normalization period focus on the rate of interest on excess reserves
(IOER) and the ON RRP rate in addition to the federal funds rate.』
ここの所なのですが、あたくし後半の「one participant」以下の所の「1名はFF誘導目標をハードターゲットにするよりもレンジにすべき」という部分に釣られまして前半の部分を「最初の利上げはFF誘導目標25bp」と解釈したのですが、良く良く考えたらこの部分は「continuing
to target a range of 25 basis points」なのですから25bpのレンジでの目標にして利上げするという話で、その期間は「at
the time of liftoff and for some time thereafter」なので、最初の利上げは「FF誘導目標金利は25−50bpのレンジ」となりそうですなすいませんすいません。
恐らくこれは(昨日引用した)この先の部分での説明にありますように、当初は短期市場金利の誘導が上手く行くかどうかが微妙な所があるというのが背景にあって、誘導もできないのにピンポイントの数字を出すのはコンフィデンスの問題になるという認識があるんじゃないのと思われまして、ただまあ利上げ後の状況を見ながら短期市場金利の誘導がそれなりに出来るようならいずれはピンポイントという事になるってえ話なんでしょうね。
なお言い訳をしておきますと、あたくし的には最初の利上げは過去の日銀の「量的緩和解除」みたいなイメージで「最初は実質的にFF金利誘導レートをバンドから25に上げると最初のインパクトが小さくて良いんじゃネーノ」という事を考えていたので最初は25だろうと思っていたのですが、25-50への引き上げですと25にするよりも最初の利上げタイミングを遅らせることができる(FOMC1回分だけ)と思うのですが、最初からひょいと金利が上がるのもどうなのかねという感はあるのでどうなんでしょうかね。まあ問題はその後の利上げペースになりますけど。
まあ初回が25-50だとすると9月のプレコン付FOMCで25-50に引上げをして以降のFOMCで利上げすれば年末のFF金利は75-100になるので直近のSEPでの執行部ベースでの数値と思われるドットからすると妥当な線になるのではと思います。
・FOMC参加者の討議部分から
『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』から。
全体感に関しての部分を引用しますぞな。
『In their discussion of the economic situation and the outlook, meeting
participants generally viewed the rebound in real GDP in the second quarter
and the ongoing improvement in labor market conditions as supporting their
expectations for continued moderate economic expansion with labor market
indicators and inflation moving toward levels the Committee judges consistent
with its dual mandate.』
ということでマンデートに向けた経済の進展は継続しているという認識は継続強化という所ですな。
『Although most participants continued to view the risks to the outlook
for economic activity and the labor market as nearly balanced, some pointed
to possible sources of downside risk, including persistent weakness in
the housing sector, a continued slow rise in household income, or spillovers
from developments in the Middle East and Ukraine.』
リスクに関しては概ねバランスだそうですが、数名はダウンサイドリスクを見ていると。
『Participants noted that inflation had moved somewhat closer to the Committee's
2 percent longer-run objective and generally saw the risks of inflation
running persistently below their objective as having diminished somewhat.』
物価に関しても低インフレ継続のリスクは低下したという認識で、まあ声明文でもそのように示されていましたからビックリという程ではないですけれども、普通に強めの話になっています。
で、以下は需要項目別の話ですが例によって長くなるので引用しませんけど、消費は強めだが数名の委員は消費者態度が依然として慎重な事を指摘、住宅投資に関してはスローという話ですけど、その住宅投資の中で「先行きの収入期待が弱い事や、学生ローンの負担が大きい事によって初回住宅購入層の住宅購入意欲が下がっている」という指摘があるのがオモロイです。で、企業マインドや企業活動は強くて、労働市場は強いという話になっております。
で、その労働市場に関して更にこのような記述が。
『Participants generally agreed that both the recent improvement in labor
market conditions and the cumulative progress over the past year had been
greater than anticipated and that labor market conditions had moved noticeably
closer to those viewed as normal in the longer run.』
「greater than anticipated」だの「noticeably closer to those viewed as
normal」だの大変に威勢の良い認識が示されておりますので強いですな。
『Participants differed, however, in their assessments of the remaining
degree of labor market slack and how to measure it.』
ジャクソンホールの前振りキタコレ(違)。
『A few argued that the unemployment rate continues to serve as a reliable
summary statistic for the overall state of the labor market and thought
that it should be the Committee's principal focus for evaluating labor
market conditions.』
『However, many participants continued to see a larger gap between current
labor market conditions and those consistent with their assessments of
normal levels of labor utilization than indicated by the difference between
the unemployment rate and estimates of its longer-run normal level.』
労働市場のスラックに関してどのような捉え方をしているのかという点について少数名のようですがやはり失業率をメインに見て判断という人もいるというのが示されていてほーという感じで、もっとこの点は普通に「総合判断」なのかと思いましたが、ちょっと穿った読み方をすると労働市場のスラックを言い訳にしてハトハトしている執行部に対するカウンターという事なのかもしれませんなとは思います。
『These participants cited, for example, the still-elevated levels of long-term
unemployment and workers employed part time for economic reasons as well
as low labor force participation. Several participants pointed out that
the recent drop in the unemployment rate had been associated with progress
in reabsorbing the long-term unemployed into jobs and reducing part-time
work, suggesting that slack was diminishing and could be reduced further
as employment opportunities expanded.』
ただまあ総合的に見るという人の中でも複数名(Several)は足元の失業率低下は他の指標の改善も伴っているので、労働市場のスラックは解消に向かっており、今後の雇用拡大によって更に改善するという主張もありまして、存外ハトハトではないというのが見て取れます。
でですね、この議事要旨で何となく伝わる(とアタクシが勝手に解釈する)ニュアンスからすると、恐らくイエレン議長の労働市場に関する認識についてはFOMCの中心的な見解からするとかなりハト側に寄っていて、さすがにジャクソンホールでそこまでハトハトな事を言うのもFOMCでの議論からズレていてミスリードになるという意識であのジャクソンホール講演になったんじゃないでしょうかねえと思うのでありました。
次は賃金について。
『Labor compensation was still rising only modestly. Many participants
continued to attribute the subdued rise in wages to the remaining slack
in the labor market; it was noted that the elevated level of relatively
low-paid part-time workers was holding down overall wage increases.』
賃金の伸びはまだきわめて緩やかで、スラックがのこっているからでしょうという話ですが、低賃金とかパートタイムのとかの賃金がアガランチ会長なのも平均賃金の上昇を抑えているという指摘もあります。
『Several other participants pointed to reports that wage pressures had
increased in some regions and occupations that were experiencing labor
shortages or relatively low unemployment.』
複数(Several)の参加者は一部の地域が職種で賃金上昇圧力が観測されると指摘。
『However, a couple of participants indicated that the pass-through of
labor costs has been more attenuated since the mid-1980s and that wage
pressures might not be a reliable leading indicator of higher inflation.』
ほほーと思いましたが、2名はそもそも賃金コストの上昇を価格転嫁する動きが以前と比較して弱いので、インフレ拡大のインディケーターとして賃金上昇圧力を使うのってどうなのよという指摘をしているのがオモロスと思いました。
で、物価に対して。
『Inflation firmed in recent months, and most participants anticipated
that it would continue to move up toward the Committee's 2 percent objective.
Many of them expected that inflation was likely to rise gradually over
the medium term, as resource slack diminished and inflation expectations
remained stable.』
とまあ物価に関してはイイハナシダナーな見立て。
『In support of their assessments, several reported results from various
statistical models of inflation and inflation expectations. Most now judged
that the downside risks to inflation had diminished, but a few participants
continued to see inflation as likely to persist below the Committee's objective
over the medium term. Several commented that the upside risks had not increased.
However, a few others argued that the recent tightening of the labor market
had increased the upside risks to inflation and inflation expectations,
particularly in an environment in which the economic expansion was expected
to strengthen further.』
ということで、物価の見立てに関しては見解がそこそこ割れているようで、先行きに関して低物価が継続するリスクを示している人はいるわ、労働市場のタイト化によってインフレおよびインフレ期待のアップサイドリスクを示している人はいるわと、思いっきり見解がバラバラなのが味わい深いです。
で、以下は先週寝起きで引用したファイナンシャルスタビリティーの話と金融政策運営の話ですのでパスします。
・声明文でのニュアンス変更に関する議論でちとビックリ
『Committee Policy Action』の所ですけれども、最初の方は声明文どおりの話をしているのでまあ良いとしまして途中に興味深い説明が。
『Members discussed their assessments of progress--both realized and expected--toward
the Committee's objectives of maximum employment and 2 percent inflation
and considered enhancements to the statement language that would more clearly
communicate the Committee's view on such progress.』
「more clearly communicate the Committee's view on such progress」の積りで文言を変更したそうな。
『Regarding the labor market, many members concluded that a range of indicators
of labor market conditions--including the unemployment rate as well as
a number of other measures of labor utilization--had improved more in recent
months than they anticipated earlier.』
ほうほうそれでそれで?
『They judged it appropriate to replace the description of recent labor
market conditions that mentioned solely the unemployment rate with a description
of their assessment of the remaining underutilization of labor resources
based on their evaluation of a range of labor market indicators.』
な、なんだってー!!!
『In their discussion, some members expressed reservations about describing
the extent of underutilization in labor resources more broadly. In particular,
they worried that the degree of labor market slack was difficult to characterize
succinctly and that the statement language might prove difficult to adjust
as labor market conditions continued to improve. Moreover, they were concerned
that, despite the improvement in labor market conditions, the new language
might be misinterpreted as indicating increased concern about underutilization
of labor resources.』
ここで7月30日の声明文出た時の反応を思い出しますと、この「some members」が示した懸念の通りの反応を市場が示したと思われる訳でして、スラックが残っているという点を指摘した部分を「ハト派的」と解釈した人って結構多かったと思うので、まあ見事にこの人たちの懸念が大当たりとなっていますなっつーか、だからこそ(また同じ話ですが)ジャクソンホールでイエレンさんがハトハト話が出来なかったという事になるのかも知れませんなあと思いました。いやあの文言を見て「労働市場の改善がFOMCが従来予想していた以上に堅調に推移しているんですよヒャッハー」とは読めんわなという事でここの議論内容には(まあその前でそういう話にはなっていますけど)ビックラでありましたとさ。
『At the conclusion of the discussion, the Committee agreed to state that
labor market conditions had improved, with the unemployment rate declining
further, while also stating that a range of labor market indicators suggested
that there remained significant underutilization of labor resources. Many
members noted, however, that the characterization of labor market underutilization
might have to change before long, particularly if progress in the labor
market continued to be faster than anticipated.』
でまあここで更に追い打ちが掛かる訳でして(^^)、多く(Many)のメンバーは今回声明文での労働市場の状況に対する文言は状況の改善が続けば近いうちにまた変更になるでしょうという話をしていまして、これはどう見ても7月30日のFOMC声明文における労働市場の「スラックが残る」の表現がミスリードにも程があったというのが示されていると思われるのでここもまたタカじゃねえかという話になるんですよ。
で、インフレに関する文言。
『Regarding inflation, members agreed to update the language in the statement
to acknowledge that inflation had recently moved somewhat closer to the
Committee's longer-run objective and to convey their judgment that the
likelihood of inflation running persistently below 2 percent had diminished
somewhat.』
まあこちらの文言に関しては特段大きな揉め揉めは無かったようですが、先行きの見通しに関してはやはり2%を大きく下回る状況が続く懸念を示す人が居る一方で上振れリスク意識がいるという見解の隔たりは大きく、まあそういう意味では今後FOMC参加者の皆様から色々と情報発信が出るのでしょうが、その情報発信がいい感じで動物園状態になりそうで、各地区連銀総裁や理事のスタンスがどうなっているのかとか、その変化があるかとかを丁寧に見ていく必要性は更に高まったという事で宜しいんじゃないでしょうかね。
・・・・・と考えると日銀見てる場合じゃないですななどという事はございませんので念の為申し添えます(ニヤニヤ)。
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2014/08/26
○FOMC議事要旨ネタである
つーことで議事要旨ネタで寝起きで読んだ分の続きです(汗)。
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20140730.htm
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20140730.pdf
・今回も出口政策の戦術についてのお話
最初の所で前回の議事要旨と同様に『Monetary Policy Normalization』というのがあったりしますのでまずはこれを鑑賞ですが、前回はおーと思いましたが今回は政策インプリケーションというよりは最早手順問題の話になっていて、そういう意味では方向性がどうのこうのという話ではない気もします。
『Meeting participants continued their discussion of issues associated
with the eventual normalization of the stance and conduct of monetary policy,
consistent with the Committee's intention to provide additional information
to the public later this year, well before most participants anticipate
the first steps in reducing policy accommodation to become appropriate.』
continuedってあるのはここの所この話をしているという意味な。
『The staff detailed a possible approach for implementing and communicating
monetary policy once the Committee begins to tighten the stance of policy.
The approach reflected the Committee's discussion of normalization strategies
and policy tools during the previous two meetings.』
ということで・・・・・・・
『Participants expressed general support for the normalization approach
outlined by the staff, though some noted reservations about one or more
of its features. Almost all participants agreed that it would be appropriate
to retain the federal funds rate as the key policy rate, and they supported
continuing to target a range of 25 basis points for this rate at the time
of liftoff and for some time thereafter.』
殆どの参加者は正常化着手時にFF誘導金利を政策ツールにして、最初の利上げ時には政策金利を25bpにするのが適切とのコメントになっています。実はあたしゃもしかして最初に50bpに引上げというのもあるかなと思っていたのですが、初回は0-25のレンジから25にするという事のようです。
『However, one participant preferred to use the range for the federal funds
rate as a communication tool rather than as a hard target, and another
preferred that policy communications during the normalization period focus
on the rate of interest on excess reserves (IOER) and the ON RRP rate in
addition to the federal funds rate.』
ただし2名の別意見があって、FF誘導金利をレンジのままで置くという見解と、超過準備付利金利とオーバーナイトリバースレポファシリティの指値金利をFFレート誘導目標と共に(正常化のプロセスの期間中については)フォーカスすべきであるというお話ですな。
『Participants agreed that adjustments in the IOER rate would be the primary
tool used to move the federal funds rate into its target range and influence
other money market rates. In addition, most thought that temporary use
of a limited-scale ON RRP facility would help set a firmer floor under
money market interest rates during normalization. Most participants anticipated
that, at least initially, the IOER rate would be set at the top of the
target range for the federal funds rate, and the ON RRP rate would be set
at the bottom of the federal funds target range.』
まあ何ですな、これ超過準備が大量に残った状態が前提になっているからだと思うのですが、本来IOER金利って短期市場金利のフロアになる筈なのですが、現実問題としては超過準備がアホほどあって、しかも準備預金制度の外側にある人たちの金がアホほどあるので、IOERの金利が短期市場金利のフロアとして機能しない(準備預金制度の外側の人の資金運用ニーズが高いから)ので、RRPを導入した筈で、なんかIOERとRRPでコリドアというのは妙な気はするんですけどね。
つまりですね、基本的には短期市場金利のコリドアを作りたかったら常設の預金ファシリティと貸出ファシリティ金利でコリドアを作るものであって、上限はIOERではなくてディスカウントウィンドウの金利だろと思う次第なのですが、まあ米国の場合はそんだけ準備預金制度の外側にある当座預金残高が大きいちゅうことでしょう。
『Alternatively, some participants suggested the ON RRP rate could be set
below the bottom of the federal funds target range, judging that it might
be possible to begin the normalization process with minimal or no reliance
on an ON RRP facility and increase its role only if necessary. However,
many other participants thought that such a strategy might result in insufficient
control of money market rates at liftoff, which could cause confusion about
the likely path of monetary policy or raise questions about the Committee's
ability to implement policy effectively.』
数名(some)の参加者はRRPレートをもっと低い水準即ちFFレート誘導として考えるレンジよりも下に置くべきという話までしておりまして、さすがに他の人たちはその話に対して「んな事をしたら短期金利の誘導が上手く行かない(=金利が低い所に張り付く)のでFEDに金利コントロール能力が無いと思われると不味いだろ」という話をしています。
『Participants generally agreed that the ON RRP facility should be only
as large as needed for effective monetary policy implementation and should
be phased out when it is no longer needed for that purpose.』
ということで、どうもRRPファシリティはできれば使わないで済ませたいというのがFOMC参加メンバーの見解みたいですが、そもそも論として超過準備がアホほどあって、しかも超過準備付利制度が短期金融市場のフロアーとしてあまりワークしていない(これは預金保険とかの関係も確かあった筈、つーかワークしていれば今だってIOERは0.25%なのですからもっと実効FFレートが高くてヨロシなのですが)訳で、そんな中でRRPファシリティを使わずに済まそうというのは調節技術的に難しいと思いますので、何かこの調子で正常化という事になった時に暫くは面倒な事になるかもですね。
『Participants expressed their desire to include features in the facility's
design that would limit the Federal Reserve's role in financial intermediation
and mitigate the risk that the facility might magnify strains in short-term
funding markets during periods of financial stress.』
でもってRRPファシリティですが、何でそんなに使いたくないかと言うと、これを投下すると当たり前ですが準備預金制度の外側にいる短期の資金運用の人たち(MMFとか)が大喜びしてここで運用してくるので、そうなるとMMFの資金を短期資金繰りの当てにしている人たちの首が締まるからイクナイという話をしている訳ですが、おまいらその一方でシャドウバンキング規制でMMFの規制がどうのこうのとかやっているという状況なんだからシャドウバンキングの資金を安全資産に回すようなインセンティブが起きるこの制度ってシャドウバンキング規制的にみたらイイハナシダナーじゃねえかと思いますけどねえ。
というかですな、そういう意味で言えば短期金融市場における最大の資金運用先が短期国債であるというジャパンの市場に対してお前らと同じようなシャドウバンキング規制のポリシーを適用するって話がおかしくねえかという風に思う訳で、IOSCOやらバーゼル委員会の皆様に対して小一時間問い詰めたい次第でございます・・・・・・って話が脱線しましたすいませんすいません。
『They discussed options to address these concerns, including methods for
limiting the program's size. Many participants noted that further testing
would provide additional information that could help determine the appropriate
features to temper the risks that might be associated with an ON RRP facility.』
てな訳で、まあ基本的にはこのRRPファシリティは青天井にはならないみたいですけど、さてそうなった場合に短期金利のコントロールってちゃんとできるのかよというのは甚だ疑問の残る所ですけど、まあ金利上げられないとなったらRRPファシリティの拡大をする事になるでしょうから何とかなるとは思いますが、一方で準備預金制度の外側に運用資金がアホほどある事を前提にした短期金融市場のファンディングに対しての悪影響で今度はFF金利は低いけどオープン金利がエラク上昇するみたいな事態になるリスクもあるんですなあとか、まあそんな事を思いつつこの辺りを読むのでした。
『Participants also discussed approaches to normalizing the size and composition
of the Federal Reserve's balance sheet.』
ここからはバランスシートのサイズの話。
『In general, they agreed that the size of the balance sheet should be
reduced gradually and predictably. In addition, they believed that, in
the long run, the balance sheet should be reduced to the smallest level
consistent with efficient implementation of monetary policy and should
consist primarily of Treasury securities in order to minimize the effect
of the SOMA portfolio on the allocation of credit across sectors of the
economy. A few participants noted that the appropriate size of the balance
sheet would depend on the Committee's future decisions regarding its framework
for monetary policy.』
最終的には縮小するもののまあ基本的にはあまり過激な縮小(売却)はしないでという話になるんでしょうなとは思います。
『Most participants supported reducing or ending reinvestment sometime
after the first increase in the target range for the federal funds rate.
A few, however, believed that ceasing reinvestment before liftoff was a
better approach because it would lead to an earlier reduction in the size
of the portfolio.』
利上げの前に償還再投資を止めるか止めないかの見解の相違ですが概ね利上げまでは償還再投資継続と。
『Most participants continued to anticipate that the Committee would not
sell MBS, except perhaps to eliminate residual holdings. However, a couple
of participants preferred to sell MBS in order to unwind the effect of
the Federal Reserve's holdings on mortgage rates relative to other interest
rates more rapidly than would occur as a result of repayments of principal
alone. Some others noted that, given the uncertainties attending the normalization
process and the outlook for the economy and financial markets, it could
be helpful to retain the option to sell some assets.』
MBSに関してですが、2名の参加者はFEDのMBS購入残高があるという状態はクレジットアロケーションに介入しっぱなしという状態であって、正常化の際にはそれは好ましくないので売却せえという話をしておりましてほほーという感じですな。またそのほかにも「正常化の時の状況によっては資産売却の可能性を残しておくことが吉なのでは」という話をしていてそらまあそうだなと思うのでありました(売る可能性がある、と思わせるだけでも正常化という意味では引き締め効果になるでしょ)。
『Participants agreed that the Committee should provide additional information
to the public regarding the details of normalization well before most participants
anticipate the first steps in reducing policy accommodation to become appropriate.』
ということでここから先は「出口政策に向けたコミュニケーションについて」というお話。
『They stressed the importance of communicating a clear plan while at the
same time noting the importance of maintaining flexibility so that adjustments
to the normalization approach could be made as the situation changed and
in light of experience.』
まあそらそうですが正常化着手後の初期反応では色々とややこしい事になりそうですな。
『Participants requested additional analysis from the staff on issues related
to normalization as background for further discussion at their next meeting.
A few participants also suggested that the Committee should solicit additional
information from the public regarding the possible effects of an ON RRP
facility, but some others pointed out that the Committee would continue
to receive such feedback informally in response to its ongoing communications
regarding normalization. The Board meeting concluded at the end of the
discussion of approaches to policy normalization.』
ふーんと思ったのはレポファシリティなどを打ち込んだ市場への効果についてもっと大々的に意見を募集するのか、オフサイトヒアリングベースでやるのかという話をしている辺りですけど、まあ前回対比で随分量が増えたこのコーナーは次回のFOMCでも思いっきり議論されそうですなということで。
・連銀スタッフの経済状態および金融市場の見立ては「金融安定のリスク」認識部分に注目である
まずは『Staff Review of the Economic Situation』ですけど、一々引用しているとクソ長くなるので盛大にパスしますが、全体的に物価がやや上昇、労働市場は全般改善、鉱工業生産は上昇、消費は資産効果も含めて想定よりも強い上昇、住宅投資は上昇、企業の固定資産投資は上昇、政府支出は下げ、輸出増えて輸入減って貿易赤字縮小という話をしておりまして、その次が物価について。
『U.S. consumer prices, as measured by the PCE price index, increased at
a faster pace in the second quarter than in the first and were about 1-1/2
percent higher than a year earlier.』
ということで上昇キタコレですが・・・・・・・・
『Consumer energy price inflation rose in the second quarter, but retail
gasoline prices, measured on a seasonally adjusted basis, subsequently
moved lower through the fourth week of July. Consumer food price inflation
also increased in the second quarter, reflecting the effects of drought
and disease on crop and livestock production; however, spot prices for
crops moved down in recent weeks, and futures prices pointed to lower prices
for livestock in the year ahead. The PCE price index for items excluding
food and energy also rose more quickly in the second quarter than in the
first and was 1-1/2 percent higher than a year earlier.』
ヘッドラインについてはエネルギーと食糧に関連する一時的な要因があるようですが、コアについてもやや強いという話になっていますな。
『Near-term inflation expectations from the Michigan survey were little
changed, on net, in June and early July, while longer-term expectations
declined. Measures of labor compensation indicated that gains in nominal
wages and employee benefits remained modest.』
賃金の伸びが相変わらずmodestな話をしておりますが、しらっとミシガンサーベイによるインフレ期待について「ロンガータームが下がっている」というのが入っているのがほほーという所です。
で、この次は海外経済に関してですが、まあここはやや上昇という話をしている訳ですけど、日本の話も出ているので引用だけしておく。
『Recent indicators suggested that foreign economic activity strengthened
in the second quarter: Chinese GDP accelerated substantially, and Mexican
data suggested a pickup there. Real GDP growth remained strong in the United
Kingdom, and data for both Canada and the euro area showed improvement
relative to the first quarter. By contrast, household spending in Japan
dropped sharply following the country's April 1 consumption tax increase.
In many advanced foreign economies, inflation picked up in the second quarter
from very low rates in the first, although second-quarter inflation in
the euro area remained well below the European Central Bank's objective.』
で、金融市場に関する部分(『Staff Review of the Financial Situation』)ではファイナンシャルスタビリティーの話がまたまたキタコレです(その前の部分については「全体として見ると緩和しているが、住宅モーゲージ関連は依然タイト」という認識になっています)。
『The staff's periodic report on potential risks to financial stability
concluded that relatively strong capital positions of U.S. banks, subdued
use of maturity transformation and leverage within the broader financial
sector, and relatively low levels of leverage for the aggregate nonfinancial
sector were important factors supporting overall financial stability.』
最初の部分ですけれども、金融市場の状況がどうのこうのという話をする前に「金融機関の資本は以前より充実しているし、金融機関および非金融機関のレバレッジや期間ミスマッチの拡大などはかつての金融危機前の状態よりも遥かに小さいので金融安定化については堅固です(キリッ)」という話を入れている辺りが何ちゅうかまあ微妙ですな。
つまりですね。
『However, the staff report also highlighted that low and declining risk
premiums, low levels of market volatility, and a loosening of underwriting
standards in a number of markets raised somewhat the risk of an eventual
correction in asset valuations.』
ということで、金融市場(あるいは資産市場)の動向という意味では、リスクプレミアムの縮小とかボラの低下とか、貸出あるいは債券引受の与信基準のユルユル化などが発生しており、資産価格のバリュエーションが変化した場合のリスクが高まっている、という指摘をしておりまして、これは即ち「市場の価格形成的にはちとマズーなのだが、まあ金融機関も非金融機関も今の所堅い運営をしているから大丈夫でしょう」という話になっていまして、それって本当の本当に大丈夫かおいおいおいとゆー話になっている訳ですよね。
従来はこの辺りに関しては「一部の価格形成などに若干利回り追求的なサムシングがありますけれども、全般で見た場合に金融市場や資産市場などにおける金融不均衡の問題は無いと見られる」という表現になっていましたので、ここの部分の表現が結構警戒的になりやがったなあという話で、寝起きで引用大会をやった部分でFOMC参加者の議論で金融安定化云々の話が出たのはまあそういう背景ですよねというのが判るという事で。
・結構細々と引用していたら時間がががががが
お前場また寝坊したのかなどというようなツッコミはあろうかと存じますが、時間と量の関係でこの先の『Staff
Economic Outlook』と『Participants' Views on Current Conditions and the
Economic Outlook』という部分が時間切れですいませんすいませんすいません続きは明日(大汗)。
○そういやECBドラギ総裁のジャクソンホールも話題になったようで
http://www.ecb.europa.eu/press/key/date/2014/html/sp140822.en.html
Unemployment in the euro area
Speech by Mario Draghi, President of the ECB, Annual central bank symposium
in Jackson Hole,
22 August 2014
まあ良く考えたらジャクソンホールのお時間だと欧州市場ちゃんは終わっていたという事なのかも知れませんが、週明けになって妙にドラギ総裁講演で欧州は金融緩和で財政拡大ヒャッハーという市場反応になっておりますな。
でまあ時間切れという位ですからこのネタもまた明日間に合えば投下する訳ですが、例によって例のごとく威勢の良い話をするのがドラギクオリティという感じですが、そんなに盛大にヒャッハーという反応をするもんかねという所でもあって、まあ地合いだからという事でしょうが少々反応のし過ぎのような気もします。
ただまあこの辺の説明はドラギのおっちゃんの本領発揮という所ですよね。
中段の小見出し『2. Responding to high unemployment』から。
『So what conclusions can we draw from this as policymakers? The only conclusion
we can safely draw, in my view, is that we need action on both sides of
the economy: aggregate demand policies have to be accompanied by national
structural policies.』
各国の構造改革をしながら需要を喚起する政策が必要ですと。
『Demand side policies are not only justified by the significant cyclical
component in unemployment. They are also relevant because, given prevailing
uncertainty, they help insure against the risk that a weak economy is contributing
to hysteresis effects. Indeed, while in normal conditions uncertainty would
imply a higher degree of caution for fear of over-shooting, at present
the situation is different. The risks of “doing too little” - i.e. that
cyclical unemployment becomes structural - outweigh those of “doing too
much” - that is, excessive upward wage and price pressures.』
こういう辺りがドラギ総裁のお得意攻撃キタコレでして、「労働市場の状況を見た場合に、需要喚起政策のやり過ぎによって賃金や物価の上昇圧力を過剰に高めるリスクよりも、需要喚起政策が足りなくて循環的な要因によって悪化した状況が定着する事によって構造的な要因になってしまうリスクの方が遥かに大きい(キリリッ)」というもうドラギのおっちゃんらしい威勢の良さです罠という所で。
『At the same time, such aggregate demand policies will ultimately not
be effective without action in parallel on the supply side. Like all advanced
economies, we are operating in a set of initial conditions determined by
the last financial cycle, which include low inflation, low interest rates
and a large debt overhang in the private and public sectors. In such circumstances,
due to the zero lower bound constraint, there is a real risk that monetary
policy loses some effectiveness in generating aggregate demand. The debt
overhang also inevitably reduces fiscal space.』
更にサプライサイドに関する政策も必要だし、ゼロ金利制約もあるのだから金融政策だけでの需要喚起だけでは足りないリスクもありますから財政は必要ですよねああでもデットオーバーハングの問題もありますけど、という感じで、まあこの辺が「財政も出せと言ってるからヒャッハー」の原因だと思うのですが、これ威勢が良いとも言えるけど、良く良く考えたら「金融政策に全部ケツを持ってくるんじゃねえ」というメッセージでもあるという事が綺麗にスルーされている感はありますな。
『In this context, engineering a higher level and trend of potential growth
- and thereby also government income - can help recover a margin for manoeuvre
and allow both policies regain traction over the economic cycle. Reducing
structural unemployment and raising labour participation is a key part
of that. This is also particularly relevant for the euro area as, to list
just one channel, higher unemployment in certain countries could lead to
elevated loan losses, less resilient banks and hence a more fragmented
transmission of monetary policy.』
とまあそういうことで、締めを良く見ると構造改革とかの重要性の話をしているのですが、その前の部分のインパクトがヒャッハーの為に地合いとして食いつきたかった市場が食いついたという所でしょうかねえ。
#ということで簡単に頭出しだけでした(汗)
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2014/08/25
○ジャクソンホールイエレン講演であるがハトはハトですな
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/yellen20140822a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/yellen20140822a.pdf
本文16ページありますが、説明の中で過去の金融政策の話とか現在の金融政策の枠組み(ガイダンスの話とか)を長々と説明している部分があって増量されている部分がありまして、そんなに読むのはキツくはないかもです。
・最初の所では「ハト」と「労働市場重視」がわかります
でまあ冒頭。
『In the five years since the end of the Great Recession, the economy has
made considerable progress in recovering from the largest and most sustained
loss of employment in the United States since the Great Depression.1 More
jobs have now been created in the recovery than were lost in the downturn,
with payroll employment in May of this year finally exceeding the previous
peak in January 2008. Job gains in 2014 have averaged 230,000 a month,
up from the 190,000 a month pace during the preceding two years. The unemployment
rate, at 6.2 percent in July, has declined nearly 4 percentage points from
its late 2009 peak. Over the past year, the unemployment rate has fallen
considerably, and at a surprisingly rapid pace.』
とまあここまでは足元までの労働市場の改善について威勢の良い話ですが、
『These developments are encouraging, but it speaks to the depth of the
damage that, five years after the end of the recession, the labor market
has yet to fully recover.』
ハトキタコレ。
『The Federal Reserve's monetary policy objective is to foster maximum
employment and price stability. In this regard, a key challenge is to assess
just how far the economy now stands from the attainment of its maximum
employment goal.』
ではそのゴールに対して今はどうなんでしょうか?
『Judgments concerning the size of that gap are complicated by ongoing
shifts in the structure of the labor market and the possibility that the
severe recession caused persistent changes in the labor market's functioning.』
労働市場のギャップを判断する事は難しくて、それはリセッションが労働市場に与える構造的変化や労働市場機能に対する永続的な変化によるものですと。
『These and other questions about the labor market are central to the conduct
of monetary policy, so I am pleased that the organizers of this year's
symposium chose labor market dynamics as its theme.』
「central to the conduct of monetary policy」とまで仰せですが、では物価はどないですねんというのはだいぶ後の方に出てくる。
『My colleagues on the Federal Open Market Committee (FOMC) and I look
to the presentations and discussions over the next two days for insights
into possible changes that are affecting the labor market. I expect, however,
that our understanding of labor market developments and their potential
implications for inflation will remain far from perfect.』
ふむ。
『As a consequence, monetary policy ultimately must be conducted in a pragmatic
manner that relies not on any particular indicator or model, but instead
reflects an ongoing assessment of a wide range of information in the context
of our ever-evolving understanding of the economy.』
金融政策は「ultimately must be conducted in a pragmatic manner」とな。
ということで本論が始まりますが、小見出しが『The Labor Market Recovery and
Monetary Policy』、『Interpreting Labor Market Surprises: Past and Future』、『Implications
of Labor Market Developments for Monetary Policy』という風に繋がりますです。
・金融政策ガイダンス文言における労働市場
『The Labor Market Recovery and Monetary Policy』の所ですが、労働市場が悪いので大規模緩和を行いました云々の事実説明話が続いた後に金融政策のガイダンス文言の話(もまあ事実説明ですけど)があってそこが味わいがあるのでネタにしますね。
『The FOMC's current program of asset purchases began when the unemployment
rate stood at 8.1 percent and progress in lowering it was expected to be
much slower than desired. The Committee's objective was to achieve a substantial
improvement in the outlook for the labor market, and as progress toward
this goal has materialized, we have reduced our pace of asset purchases
and expect to complete this program in October.』
今のQE3導入とその後のTaperingについての説明で、10月に買入拡大終了ということですな。
『In addition, in December 2012, the Committee modified its forward guidance
for the federal funds rate, stating that "as long as the unemployment
rate remains above 6-1/2 percent, inflation between one and two years ahead
is projected to be no more than a half percentage point above the Committee's
2 percent longer-run goal, and longer-term inflation expectations continue
to be well anchored," the Committee would not even consider raising
the federal funds rate above the 0 to 1/4 percent range.2』
でまあこちらがガイダンス文言な。
『This "threshold based" forward guidance was deemed appropriate
under conditions in which inflation was subdued and the economy remained
unambiguously far from maximum employment.』
ということで「スレッショルドベース」のガイダンスと仰せなのですが・・・・・・・・・・・
『Earlier this year, however, with the unemployment rate declining faster
than had been anticipated and nearing the 6-1/2 percent threshold, the
FOMC recast its forward guidance, stating that "in determining how
long to maintain the current 0 to 1/4 percent target range for the federal
funds rate, the Committee would assess progress--both realized and expected--toward
its objectives of maximum employment and 2 percent inflation."3』
この辺りまでご覧になって判ったと思いますが、この調子でイエレンさんの今回の講演では事象の説明の部分がやたらめったら丁寧というか長いので、分量だけは多くなっているという感じです。まあ整理には良いのですけどね。
という話は兎も角として、ここの部分が先般ガイダンス文言を変更した話ですよね。
『As the recovery progresses, assessments of the degree of remaining slack
in the labor market need to become more nuanced because of considerable
uncertainty about the level of employment consistent with the Federal Reserve's
dual mandate.』
えーっと、労働市場が改善する中でスラックを計測するのが微妙になって来ましたとはこれはこれは。
『Indeed, in its 2012 statement on longer-run goals and monetary policy
strategy, the FOMC explicitly recognized that factors determining maximum
employment "may change over time and may not be directly measurable,"
and that assessments of the level of maximum employment "are necessarily
uncertain and subject to revision."4』
いやまあ確かにそうかも知れんがスレッショルドベースでフォワードガイダンス出しておいて「雇用の最大化という状態は経済の状況によって変化するし直接計測が可能な訳でも無い」という理由を出してガイダンスをホイホイ変えてしまうというのはどうなんでしょうかねえと思います。
『Accordingly, the reformulated forward guidance reaffirms the FOMC's view
that policy decisions will not be based on any single indicator, but will
instead take into account a wide range of information on the labor market,
as well as inflation and financial developments.5』
ということで、結局スレッショルドベースのガイダンスはその場しのぎの内容でしたという話なのですけれども、そう言わないで「このように進化しました(キリッ)」という内容にするのが何ともまあという所です。
・労働市場のアセスメントの話はもうやたら丁寧というかクソ長い
『Interpreting Labor Market Surprises: Past and Future』がまあメインなので長いんですけどね。
でまあ基本的な話は「循環要因」VS「構造要因」の話になっていまして、幾つかの指標についてその循環VS構造の話をしています。
まずは労働参加率。
『Consider first the behavior of the labor force participation rate, which
has declined substantially since the end of the recession even as the unemployment
rate has fallen. As a consequence, the employment-to-population ratio has
increased far less over the past several years than the unemployment rate
alone would indicate, based on past experience. For policymakers, the key
question is: What portion of the decline in labor force participation reflects
structural shifts and what portion reflects cyclical weakness in the labor
market? If the cyclical component is abnormally large, relative to the
unemployment rate, then it might be seen as an additional contributor to
labor market slack.』
なんかここでも判りますように、ざっくり話をしようとすれば1行で済むマクラの部分で1パラ使って説明しやがるのがイエレン講演クオリティ。
『Labor force participation peaked in early 2000, so its decline began
well before the Great Recession. A portion of that decline clearly relates
to the aging of the baby boom generation. But the pace of decline accelerated
with the recession.』
労働参加率は2000年から低下している(=構造要因)が、リセッションで加速(=循環要因)したと。
『As an accounting matter, the drop in the participation rate since 2008
can be attributed to increases in four factors: retirement, disability,
school enrollment, and other reasons, including worker discouragement.8』
労働参加率の増加の要因だそうな。
『Of these, greater worker discouragement is most directly the result of
a weak labor market, so we could reasonably expect further increases in
labor demand to pull a sizable share of discouraged workers back into the
workforce. Indeed, the flattening out of the labor force participation
rate since late last year could partly reflect discouraged workers rejoining
the labor force in response to the significant improvements that we have
seen in labor market conditions. If so, the cyclical shortfall in labor
force participation may have diminished.』
ということで、労働参加率については基本的に今後の労働市場の改善で改善していく(構造要因よりも循環要因の方が大きい)という見立てが基本になっています。でこの後もうちょっと突っ込んだ話がある(disabilityとschool
enrollmentの話です)のですが引用してると終わらないのでスルーしましてその次に参ります。
『A second factor bearing on estimates of labor market slack is the elevated
number of workers who are employed part time but desire full-time work
(those classified as "part time for economic reasons"). At nearly
5 percent of the labor force, the number of such workers is notably larger,
relative to the unemployment rate, than has been typical historically,
providing another reason why the current level of the unemployment rate
may understate the amount of remaining slack in the labor market.』
ということで、次の「労働市場のスラックを測定するファクター」としてフルタイムで働きたいけどパートタイムで働いている人という層についてですが、この数が現状ではかなり多いという説明になっていまして、こちらに関しても労働市場の現状についてイエレンさんがハトハト状態であるという事を示していますな。
『Again, however, some portion of the rise in involuntary part-time work
may reflect structural rather than cyclical factors. For example, the ongoing
shift in employment away from goods production and toward services, a sector
which historically has used a greater portion of part-time workers, may
be boosting the share of part-time jobs. Likewise, the continuing decline
of middle-skill jobs, some of which could be replaced by part-time jobs,
may raise the share of part-time jobs in overall employment.12』
でまあここがほほーという感じですが、パートタイムジョブの拡大には構造的な部分もあって、産業構造がサービス業化していくとか、中程度のスキルの労働がパートタイムに置き換わるようになっていくとかそういう部分もあると。
『Despite these challenges in assessing where the share of those employed
part time for economic reasons may settle in the long run, the sharp run-up
in involuntary part-time employment during the recession and its slow decline
thereafter suggest that cyclical factors are significant.』
しかしながら全体として見た場合には構造要因よりも循環要因の方が極めて大きい、と結局の所循環要因でござるという話をしておりますので同様に基本的な労働市場の見立てはハトなんですけどね。
その次が労働市場のフローという話。
『Private sector labor market flows provide additional indications of the
strength of the labor market. For example, the quits rate has tended to
be pro-cyclical, since more workers voluntarily quit their jobs when they
are more confident about their ability to find new ones and when firms
are competing more actively for new hires.』
離職者が増えるというのは労働市場が活発だという事ですっつー話ですな。
『Indeed, the quits rate has picked up with improvements in the labor market
over the past year, but it still remains somewhat depressed relative to
its level before the recession.』
これまた「改善しているけどまだ水準は弱い」攻撃です。
『A significant increase in job openings over the past year suggests notable
improvement in labor market conditions, but the hiring rate has only partially
recovered from its decline during the recession. Given the rise in job
vacancies, hiring may be poised to pick up, but the failure of hiring to
rise with vacancies could also indicate that firms perceive the prospects
for economic growth as still insufficient to justify adding to payrolls.
Alternatively, subdued hiring could indicate that firms are encountering
difficulties in finding qualified job applicants.』
で、足元で改善する中で新規雇用も上昇していますが、まだ伸びが弱い点については、先行きの経済への確信が足りないとか、必要なスキルの労働者が確保しにくいとかの理由がありそうですと。
『As is true of the other indicators I have discussed, labor market flows
tend to reflect not only cyclical but also structural changes in the economy.
Indeed, these flows may provide evidence of reduced labor market dynamism,
which could prove quite persistent.13 That said, the balance of evidence
leads me to conclude that weak aggregate demand has contributed significantly
to the depressed levels of quits and hires during the recession and in
the recovery.』
でまあ毎度のように循環と構造の話をしておりますが、基本的にはやはり循環要因が大きいという話になって
おりますの。
で、ここでへーと思ったのは「労働市場モデル」の存在。
『One convenient way to summarize the information contained in a large
number of indicators is through the use of so-called factor models. Following
this methodology, Federal Reserve Board staff developed a labor market
conditions index from 19 labor market indicators, including four I just
discussed.14』
というようなモデルがありそうで、この脚注14に
http://www.frbkc.org/publicat/research/macrobulletins/mb13Hakkio-Willis0718.pdf
というリンクがあるがまだ読んでいない(汗)。
『This broadly based metric supports the conclusion that the labor market
has improved significantly over the past year, but it also suggests that
the decline in the unemployment rate over this period somewhat overstates
the improvement in overall labor market conditions.』
ということで結論はやはり「失業率で見られる以上に労働市場のスラックは存在する」という話でした。
・物価と労働市場(つまり賃金)
『Finally, changes in labor compensation may also help shed light on the
degree of labor market slack, although here, too, there are significant
challenges in distinguishing between cyclical and structural influences.』
ということで賃金キタコレ。
『Over the past several years, wage inflation, as measured by several different
indexes, has averaged about 2 percent, and there has been little evidence
of any broad-based acceleration in either wages or compensation. Indeed,
in real terms, wages have been about flat, growing less than labor productivity.』
でまあ過去数年間は賃金は概ね2%程度の上昇を示していましたので実質では概ねフラットですと。
『This pattern of subdued real wage gains suggests that nominal compensation
could rise more quickly without exerting any meaningful upward pressure
on inflation. And, since wage movements have historically been sensitive
to tightness in the labor market, the recent behavior of both nominal and
real wages point to weaker labor market conditions than would be indicated
by the current unemployment rate.』
ということで今後賃金が上昇してもそれほどのインフレ圧力にならないという話キタコレですな。
『There are three reasons, however, why we should be cautious in drawing such a conclusion.』
で3つの理由とな。
『First, the sluggish pace of nominal and real wage growth in recent years
may reflect the phenomenon of "pent-up wage deflation."15 The
evidence suggests that many firms faced significant constraints in lowering
compensation during the recession and the earlier part of the recovery
because of "downward nominal wage rigidity"--namely, an inability
or unwillingness on the part of firms to cut nominal wages. To the extent
that firms faced limits in reducing real and nominal wages when the labor
market was exceptionally weak, they may find that now they do not need
to raise wages to attract qualified workers. As a result, wages might rise
relatively slowly as the labor market strengthens. If pent-up wage deflation
is holding down wage growth, the current very moderate wage growth could
be a misleading signal of the degree of remaining slack. Further, wages
could begin to rise at a noticeably more rapid pace once pent-up wage deflation
has been absorbed.』
ほほーという感じですが、「賃金の調整中」という解釈でして、これはまあ米国の場合雇用の頭数は切るけど賃金は下げない(日本は賃金を平気で下げてくるが)というのが仕様になっているので、ここへ来てコストを調整する為に賃金引上げを抑制しているという解釈で、その場合ですとどこかの時点で調整のニーズが無くなってくるので賃金上昇ペースが加速するでしょうという話。
『Second, wage developments reflect not only cyclical but also secular
trends that have likely affected the evolution of labor's share of income
in recent years. As I noted, real wages have been rising less rapidly than
productivity, implying that real unit labor costs have been declining,
a pattern suggesting that there is scope for nominal wages to accelerate
from their recent pace without creating meaningful inflationary pressure.』
こちらは構造的に賃金が上がりにくい系の話で、労働分配率が構造的に低下傾向になっているから賃金が上がりにくいという話で、それなら当面は賃金インフレ圧力という話になりません罠。
『However, research suggests that the decline in real unit labor costs
may partly reflect secular factors that predate the recession, including
changing patterns of production and international trade, as well as measurement
issues.16 If so, productivity growth could continue to outpace real wage
gains even when the economy is again operating at its potential.』
でまあそこには生産構造の変化や貿易による要因(海外の労働者が安くて云々)があるという説があってもしそうなら潜在成長力を上回る成長が続いてもインフレ圧力が起きにくいですと。
『A third issue that complicates the interpretation of wage trends is the
possibility that, because of the dislocations of the Great Recession, transitory
wage and price pressures could emerge well before maximum sustainable employment
has been reached, although they would abate over time as the economy moves
back toward maximum employment.17』
リセッションによるディスローケーションの問題(って要するに色々な所で市場調節機能的な所が弱くなっているので非効率になっているからという事ですかね)によって最大雇用に達する前に賃金や物価がホイホイ上昇する可能性という話ですが、実は今日は時間の都合上ネタにできない7月30日のFOMC議事要旨(そっちはやはり結構なタカ成分でした)でもそんな議論がありまして、これ読んで議事要旨読んだらほほうと思いましたよ。
『The argument is that workers who have suffered long-term unemployment--along
with, perhaps, those who have dropped out of the labor force but would
return to work in a stronger economy--face significant impediments to reemployment.
In this case, further improvement in the labor market could entail stronger
wage pressures for a time before maximum employment has been attained.18』
ふむ。
・金融政策運営のパート:まあ要するにこのお題で見た場合は「賃金動向」っすかねえ
小見出し『Implications of Labor Market Developments for Monetary Policy』である。
最初の説明はパスしましてその直後から。
『However, with the economy getting closer to our objectives, the FOMC's
emphasis is naturally shifting to questions about the degree of remaining
slack, how quickly that slack is likely to be taken up, and thereby to
the question of under what conditions we should begin dialing back our
extraordinary accommodation.』
そらそうよ。
『As should be evident from my remarks so far, I believe that our assessments
of the degree of slack must be based on a wide range of variables and will
require difficult judgments about the cyclical and structural influences
in the labor market.』
でまあそのスラックについても今まで申し上げたように色々と計測するのがムツカシヤと。
『While these assessments have always been imprecise and subject to revision,
the task has become especially challenging in the aftermath of the Great
Recession, which brought nearly unprecedented cyclical dislocations and
may have been associated with similarly unprecedented structural changes
in the labor market--changes that have yet to be fully understood.』
でまあ難しいだの状況見ながら変わるだのという辺りを読むと確かに何か日和っているという風にも見えますけどまあここはこんなもんじゃないですかねえ。
『So, what is a monetary policymaker to do?』
キタコレ!
『Some have argued that, in light of the uncertainties associated with
estimating labor market slack, policymakers should focus mainly on inflation
developments in determining appropriate policy. To take an extreme case,
if labor market slack was the dominant and predictable driver of inflation,
we could largely ignore labor market indicators and look instead at the
behavior of inflation to determine the extent of slack in the labor market.』
労働市場のスラックの計測は難しいのだからそれよりもインフレを重視すべきという見解に対して・・・・・・・・・
『In present circumstances, with inflation still running below the FOMC's
2 percent objective, such an approach would suggest that we could maintain
policy accommodation until inflation is clearly moving back toward 2 percent,
at which point we could also be confident that slack had diminished.』
でもそのアプローチでもインフレが明確に2%に戻るまでは政策を継続するという事になるでしょ(ドヤァ)という事で。
『Of course, our task is not nearly so straightforward. Historically, slack
has accounted for only a small portion of the fluctuations in inflation.
Indeed, unusual aspects of the current recovery may have shifted the lead-lag
relationship between a tightening labor market and rising inflation pressures
in either direction.』
ドヤァと言ったものの、そうは言ってもスラックだけでインフレが決まるものではないという話をしていますな。
『For example, as I discussed earlier, if downward nominal wage rigidities
created a stock of pent-up wage deflation during the economic downturn,
observed wage and price pressures associated with a given amount of slack
or pace of reduction in slack might be unusually low for a time.』
ということで例として挙げているのがさっきの賃金の部分で、従来の賃金上昇圧力が弱い要因がペントアップ要因(貰う側からしたら逆の意味ですが)だとすると最大雇用に達する前にでもインフレ圧力が高まるかもしれませんよと来ていますので、やはり賃金動向を見るのが重要なのでしょうなという話なんですかねイエレンさんとしては。
『If so, the first clear signs of inflation pressure could come later than
usual in the progression toward maximum employment. As a result, maintaining
a high degree of monetary policy accommodation until inflation pressures
emerge could, in this case, unduly delay the removal of accommodation,
necessitating an abrupt and potentially disruptive tightening of policy
later on.』
で、ここでほほーという感じですが、このような場合には利上げ着手が遅れるのでその後の金利上昇ペースが乱暴な物になるという話をしているので、つまり賃金がホイホイ上がるようだとイエレンさん的には緩和を引っ張って後からジャンジャン利上げするのではなく、普通にはやめに着手してその後をプルーデントに上げていくというアプローチを好みそうですね。
『Conversely, profound dislocations in the labor market in recent years--such
as depressed participation associated with worker discouragement and a
still-substantial level of long-term unemployment--may cause inflation
pressures to arise earlier than usual as the degree of slack in the labor
market declines.』
ここもほほうという感じですが、構造要因による問題が大きい中では労働市場からの物価上昇圧力がスラックが大きい状態でも起きるかも知れませんよねと。
『However, some of the resulting wage and price pressures could subsequently
ease as higher real wages draw workers back into the labor force and lower
long-term unemployment.19 As a consequence, tightening monetary policy
as soon as inflation moves back toward 2 percent might, in this case, prevent
labor markets from recovering fully and so would not be consistent with
the dual mandate.』
で、ここではバランスアプローチの話になっていまして、労働市場のスラックが極めて大きい場合には物価がやや高めであっても経済のスラックを解消することを重視する為に緩和的な政策を取るという「バランスアプローチ」の話をしていてきちんと両論併記状態になっているんですな。
『Inferring the degree of resource utilization from real-time readings
on inflation is further complicated by the familiar challenge of distinguishing
transitory price changes from persistent price pressures. Indeed, the recent
firming of inflation toward our 2 percent goal appears to reflect a combination
of both factors.』
ほう。
『These complexities in evaluating the relationship between slack and inflation
pressures in the current recovery are illustrative of a host of issues
that the FOMC will be grappling with as the recovery continues. There is
no simple recipe for appropriate policy in this context, and the FOMC is
particularly attentive to the need to clearly describe the policy framework
we are using to meet these challenges. As the FOMC has noted in its recent
policy statements, the stance of policy will be guided by our assessments
of how far we are from our objectives of maximum employment and 2 percent
inflation as well as our assessment of the likely pace of progress toward
those objectives.』
ということで、まあ結局どうする的な話は決め打ちしないようになっていまして、その辺りはハト成分不足という評価になるかも知れませんが、まあFOMC全体でも先行きどうするのかというのは判断が無茶苦茶難しくて悩んでいるんじゃないでしょうか。だからこそ「There
is no simple recipe for appropriate policy」とか言ってるんですし。
でまあ最後の所は引用だけしておきますね。
『At the FOMC's most recent meeting, the Committee judged, based on a range
of labor market indicators, that "labor market conditions improved."20
Indeed, as I noted earlier, they have improved more rapidly than the Committee
had anticipated.』
『Nevertheless, the Committee judged that underutilization of labor resources still remains significant.』
ということでまあスラックは「still remains significant」だそうな。
『Given this assessment and the Committee's expectation that inflation
will gradually move up toward its longer-run objective, the Committee reaffirmed
its view "that it likely will be appropriate to maintain the current
target range for the federal funds rate for a considerable time after our
current asset purchase program ends, especially if projected inflation
continues to run below the Committee's 2 percent longer-run goal, and provided
that longer-term inflation expectations remain well anchored."21』
これは声明文。
『But if progress in the labor market continues to be more rapid than anticipated
by the Committee or if inflation moves up more rapidly than anticipated,
resulting in faster convergence toward our dual objectives, then increases
in the federal funds rate target could come sooner than the Committee currently
expects and could be more rapid thereafter. Of course, if economic performance
turns out to be disappointing and progress toward our goals proceeds more
slowly than we expect, then the future path of interest rates likely would
be more accommodative than we currently anticipate.』
強けりゃ早期利上げだし弱けりゃ利上げは遅いと普通の話ですな。
『As I have noted many times, monetary policy is not on a preset path.
The Committee will be closely monitoring incoming information on the labor
market and inflation in determining the appropriate stance of monetary
policy.』
『Overall, I suspect that many of the labor market issues you will be discussing
at this conference will be at the center of FOMC discussions for some time
to come. I thank you in advance for the insights you will offer and encourage
you to continue the important research that advances our understanding
of cyclical and structural labor market issues.』
ということで最後の方ほぼ丸引用になってしまいました長くてすいませんすいません。
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2014/08/22
○BOE議事要旨ネタのつづきであります
http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/Documents/mpc/pdf/2014/mpc1408.pdf
MINUTES OF THE MONETARY POLICY COMMITTEE MEETING 6 and 7 August 2014
『The immediate policy decision』の所からネタのつづきでごんす。
・グローバルの全般的な状況についてとリスク資産価格調整に関して
第32パラグラフから。
『The macroeconomic news regarding the global economy had been relatively
limited during the month. The recovery in US growth in the second quarter
had been a little firmer than anticipated. By contrast, another quarter
of materially sub-trend growth in the euro area seemed likely in Q2, and
HICP inflation had fallen further in July.』
マクロ的な経済数値に関しては米国がやや強くて大陸欧州はヘッポコ状態との評価。
『There had been a number of significant geopolitical events regarding
the conflict between Ukraine and Russia and also in the Middle East. The
Argentinian government had defaulted on a debt payment. And a large Portuguese
bank had imposed losses on some creditors and required state support.』
地政学イベントとかアルヘンのデフォルトとかポルトガルのエスピリトサント銀行の話とか。
『The prices of some risky assets, such as high-yield corporate bonds and
equities, had fallen on the month. Although actual and implied volatilities
across a range of asset classes remained low, it was possible nonetheless
that these price falls represented the first steps by investors in a reassessment
of risk appetite and a return of asset price volatility to more normal
levels. Whether or not such a process would be detrimental to sustaining
the expansion might depend on how gradual or abrupt it proved to be.』
ということで、ハイイールド社債や株式の価格の調整に見られるようなリスクの高い資産価格が調整している点については、その一方で市場のボラが小さい事を引き合いに出して、「投資家のリスクアペタイトの見直しによってよりノーマルなレベルへの再評価を行っているのではないか」というような見方を示しているので別にこれらの価格が下がってあばばばばーという認識では無くてどちらかというとガス抜き調整できて良かったね位の認識でいるように思えます。
まあ何ですな、話は脱線しますけど、米国の場合Taperingトークで泡を吹いたのはモーゲージ金利にまで影響してしまったからという所で、恐らく単にリスクの高いセクターでの価格調整が起きただけとなると、これでマクロプルーデンス政策発動しなくてすんだわ位の認識で鼻歌混じりという事になっていたんじゃないですかねえ。
・賃金上昇圧力が(生産や雇用者の伸びに対して)弱い件について
第33パラグラフ。
『Domestically, output growth had remained firm and employment growth firmer
such that productivity had continued to disappoint. Although output growth
looked likely to be a touch stronger than previously assumed going into
the second half of the year, it also seemed probable that output per worker
would recover more slowly, with productivity growth assumed to remain below
its pre-crisis rate throughout the three-year forecast contained in the
August Inflation Report. While employment growth had been strong, wage
growth had been weak. This had been a feature of the UK labour market data
for some time. 』
この「productivity」の話はアタクシがBOEの議事要旨見だしてちょっとしたころから延々と話題になっているネタですな。直近では生産や雇用者の拡大にも関わらず賃金がろくすっぽ上がらんとはどういうことやねんという話ですが・・・・・・・・・・・・
『One explanation was that it would simply take time for the tightening
in the labour market - evidenced by the reduction in unemployment and indications
of skills shortages from business surveys - to feed into pay claims, especially
if perceptions of job insecurity following the financial crisis remained
high.』
生産性はラグを持って改善して来て、しかも長期停滞によって労働市場におけるスキルギャップなどの問題が高まってしまったのでそのラグが長くなったというのが一つの考察。
『Another, not necessarily inconsistent, explanation was that there had
been an increase in the supply of labour that households, especially in
older age cohorts, were prepared to offer at a given wage rate. That might
reflect increased longevity, recent reforms to state retirement and benefit
rules, or concerns about debt levels and pension provision. This would
tend to increase the degree to which output and employment could expand
without generating inflationary pressure.』
もう一つの考察は必ずしもメジャーな考えでは無いようですが、家計からの労働力供給、つまり年寄りなどが労働市場に入ってきて、それが賃金の押下げに繋がっているという話で、では何でジジイが労働市場に出てくるかというと先行きの年金とかへの不安とか家計の借金が大杉勝男だとかそういう事で、もしそういう形なら賃金って中々上がらんだろというお話。
・・・・・・・うむ、どこかの国でも起きそうな悪寒ががががががが。
・中心的なビューはインフレ圧力は弱いという話
第34パラグラフ。
『The Committee’s central expectation - assuming that Bank Rate followed
the path implied by market yields and that the stock of purchased assets
remained at £375 billion - was that inflation was likely to remain close
to, but a little below, 2% for the next couple of years, before reaching
the target at the end of the three-year forecast period. Inflation would
be dampened by the effect on import prices of the recent rise in the sterling
exchange rate. And a modest expansion in supply capacity would help to
slow the rate at which slack was absorbed, thereby limiting the build-up
of domestic inflationary pressure resulting from the pace of output and
employment growth.』
ということで、中心的なビューは引き続きなのですがインフレを抑制する要因(余剰生産力とかの他に為替市場でのポンド高による輸入価格の影響も入れていますな)があるのでインフレ圧力はそんなに強くないよと。
『In the Committee’s best collective judgement, the degree of slack had
narrowed somewhat, and the central estimate was now broadly in the region
of 1% of GDP. There was, however, a wide range of views on the Committee
- on either side of that central estimate - about the likely extent of
spare capacity currently remaining in the economy, and also about its likely
impact, and that of its components, on inflation.』
でまあ余剰生産力自体は縮小してきているという認識ですが、でもまだ物価上昇圧力を高める物ではないと。
『In the view of some members, the degree of spare capacity had diminished
sufficiently that, although some slack still remained, exactly how much
was uncertain enough that estimates of it were becoming a somewhat less
informative guide to the appropriate future path of monetary policy.』
ただ一方で数名の委員はそこは余剰がかなりなくなってきている可能性ねえかとの指摘。となっていますが、ここまで(この先は適切な金利がどうのこうのの話)の所を見ると、中心的なビューに関する説明についてはそんなにタカタカしていないですねというのも割と目に付くところです。
・利上げ派2名の見解
で、昨日は金利をどうしますかという議論の部分について引用しましたが、上記のように物価に関するアセスメント部分はあんまりタカではないのですが、では金利はという事になると現状維持派の中でもハトハトしているの一部で、中心的には利上げに関してそんなに真っ向否定という訳でも無いという辺りがまあタカ派議事要旨と取られた所以だと思いますが、では利上げの人の見解はと言いますと・・・・・・
第39パラグラフ。
『For two members, in particular, economic circumstances were sufficient
to justify an immediate rise in Bank Rate.』
キタコレ、というか2名提案してますが。
『These members noted that the continuing rapid fall in unemployment alongside
survey evidence of tightening in the labour market created a prospect that
wage growth would pick up. They noted that it was possible that wages were
lagging developments in the labour market to some extent. If that were
true, wages might not start to rise until spare capacity in the labour
market were fully used up.』
労働市場のスラックが解消される前に賃金上昇が先に来るのではないかという見通しですな。
『Since monetary policy, too, could be expected to operate only with a
lag, it was desirable to anticipate labour market pressures by raising
Bank Rate in advance of them.』
仮に賃金の上昇が労働需給改善のラグを伴って上昇するというのであれば、金融政策に関しても同様にラグがある訳ですから、プリエンティブに対応しないとホームメードインフレが上に振れてしまうのではないでしょうかという話っすな。
『Moreover, if recent robust GDP growth rates had been underpinned by stimulatory
monetary policy, in addition to a release of pent-up demand driven by reduced
uncertainty and improved credit conditions, then the erosion of spare capacity
would be likely to remain rapid while policy remained expansionary.』
緩和的な金融環境がスラックの改善に効果を出しているのであればなおの事プリエンティブな対応が必要という話ですか。
『In the judgement of these members, even after a rise of 25 basis points
in Bank Rate, monetary policy would remain extremely supportive, and an
early rise would facilitate the Committee’s aspiration that the rises
in Bank Rate should be only gradual.』
extremelyにワロタですが、早めの利上げをしてもまだ緩和的だし、早めの利上げ着手は逆に先行きの利上げペースも緩やかになることを意味するので却って宜しいという説明をしていまして、つまりこのメンバーもタカ的ではあっても別に物価がボンボン上昇するからホイホイ利上げしろという話をしている訳ではなく、利上げ着手が遅れることによって却って調整速度を早くしないと行けなくなる事について警戒している、という点は注目すべき所ですな、うんうん。
『These members further noted that, while there were always likely to be
risks associated with the possible financial market reaction to the first
increase in Bank Rate after such a protracted period, it was unclear that
these risks would be lessened, and indeed possible they would be augmented,
by delaying that increase.』
まあこれはややコジツケ感がありますが、同様に利上げ着手が遅れると金融市場でも将来の利上げ速度が却って早くなるという懸念から市場が望ましくない動きをするんじゃないかとの説明。
ただまあこれって確かにFRBが前回「メジャードペースの利上げ」をする中で金融市場では株高ヒャッハークレジットバブル(は余計でしたが)ヒャッハーとかやっていたという事を考えるとあながちコジツケとも言えない面はありますなという所で。
つーことで久々にBOEネタ趣味コーナー連投でありました(汗)。
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2014/08/21
○寝起きでFOMC議事要旨
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20140730.htm
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20140730.pdf
・利上げタイミング云々の部分は何ちゅうかこう解釈に困る面もありそう
毎度おなじみの手抜き速読法ですが、『Participants' Views on Current Conditions
and the Economic Outlook』のケツの部分を読むヨロシね。
『With respect to monetary policy over the medium run, participants generally
agreed that labor market conditions and inflation had moved closer to the
Committee's longer-run objectives in recent months, and most anticipated
that progress toward those goals would continue.』
へえへえそうだっかロンガーランゴールに着実に近づき続けますかそうですか。
『Moreover, many participants noted that if convergence toward the Committee's
objectives occurred more quickly than expected, it might become appropriate
to begin removing monetary policy accommodation sooner than they currently
anticipated.』
な、なんだってー!!!
・・・・・・・・という事でそら反応するわという事ですが、某モーサテ辺りでは「あくまでも条件付きの早期利上げ論」とか講釈している向きもあったようですけれども、「経済の回復ペースが早ければ正常化着手が早くなる」というのが「条件付き利上げ論ですのでヘーキヘーキ」というのはさすがに無理筋の話で、そもそも上記の話って「犬が西向きゃ尾は東」というのと同じような説明で、問題はこういうのが出て来るというのはそれだけ物価雇用の改善が著しいという認識を持っている人が結構居ますよという事を示したっつーことを意味するって話だという所ですよね。まあ市場ちゃんの初期反応もそういう動きになっていたようですが。
『Indeed, some participants viewed the actual and expected progress toward
the Committee's goals as sufficient to call for a relatively prompt move
toward reducing policy accommodation to avoid overshooting the Committee's
unemployment and inflation objectives over the medium term.』
でまあさっきの記述は兎も角として、こちらを見ますと「some participants」におかれましてはよりタカ派というか正常化着手とっととしなはれ系の話をしているので、まあ前段の話ってある意味一般論ちっくな話でしたけどこちらはより普通に前のめりの話ですわな。
『These participants were increasingly uncomfortable with the Committee's
forward guidance. In their view, the guidance suggested a later initial
increase in the target federal funds rate as well as lower future levels
of the funds rate than they judged likely to be appropriate. They suggested
that the guidance should more clearly communicate how policy-setting would
respond to the evolution of economic data.』
とまあそういうことで、この前のめりな「some participants」様におかれましてはフォワードガイダンスの現在の文言に関しても利上げ着手のタイミングが遅くなるかのような誤解を与えているという話になっているので結構な前のめりですなと思います。someだから2名を超えていると思われますがタカ派寄りの中でどの位この声が強いのかは気になりますな。
『However, most participants indicated that any change in their expectations
for the appropriate timing of the first increase in the federal funds rate
would depend on further information on the trajectories of economic activity,
the labor market, and inflation.』
一方、ほとんど(most)の参加者は利上げの適切なタイミングは今後の状況を見て変化する(つまり今は特段前のめりにはなっていない)という見解を表明しておりますので、まあセントラルビュー自体はそんなに大きな変化があるとも思われませんが、前段であれだけああでもないこうでもないというのが議事要旨として出ているという事は、それなりにタカ派寄りの人が増えてきているという事か、タカ派寄りの人たちの中での早期利上げ開始論が強硬になっているという事か、またはその合わせ技か、というのが想定されますな。
あと大穴で考えられるのは、直近でのフィッシャー副議長の講演などにも見られるように、緩和継続的な発言がFEDの主流派からホイホイと出てきているので、この辺りの議論状況を見せることによって少しバランスを取りに行っているという可能性もあるのですが、まあ素直に考えるとそもそもFOMCでの議論内容は従来からこんな感じなのだが、イエレン議長が個人的にハト派全開なので「イエレン委員」としての発言をするとどうしてもハト派丸出しになる(FOMC後の会見が比較的ハトじゃないように見えるのはFOMCの全体ビューを統括して説明するというFOMC議長としての話をするからですよね、と考えると整合性は取れる)上に、フィッシャー副議長もイエレンさんの意向も踏まえてああいう講演をするから、どうしてもハト派の声の方が強く見えてしまう、という事だと思われますけど。
『In particular, although participants generally saw the drop in real GDP
in the first quarter as transitory, some noted that it increased uncertainty
about the outlook, and they were looking to additional data on production,
spending, and labor market developments to shed light on the underlying
pace of economic growth.』
ここで1QGDPがあばばばばーだった件についてですが、概ね一時的との評価のようですが、一部の委員はこの結果を踏まえてより慎重にデータを見るべきとの主張ですな。
『Moreover, despite recent inflation developments, several participants
continued to believe that inflation was likely to move back to the Committee's
objective very slowly, thereby warranting a continuation of highly accommodative
policy as long as projected inflation remained below 2 percent and longer-term
inflation expectations were well anchored.』
でまあ物価動向に関する話もここで出てくるのがほーという感じですが、数名(several
participants )は足元で物価がやや上昇していますが物価は引き続き上昇力が弱いので低金利政策の長期化は正当化されますという話をしていた、とこちらに出ておりますので(この2パラ前に物価の話がある、後でネタにする)、まあ利上げ云々に関しての議論がそこそこ盛り上がったんじゃネーノ(盛り上がったというののは利上げをする方向でという意味では無くて委員の間での温度差が拡大してという感じがしますが)と思います。
・ファイナンシャルスタビリティーの話とな
今引用したところの1つ前のパラグラフがアタクシ的にはちとビックリしました。
『In their discussion of financial stability issues, participants noted
evidence of valuation pressures in some particular asset markets, but those
pressures did not appear to be widespread and other measures of vulnerability
in the financial system were at low to moderate levels. As a result, they
generally saw the vulnerabilities in the financial system as well contained.』
えーっとですな、まあ結論としては穏当に「一部の金融市場における価格形成に問題が見られるものの全体としてみた場合に金融不安定化に繋がるような事象は観測されませんし先行きの兆候も見られません」とはなっているのですが、前回のミニッツ辺りではこのファイナンシャルスタビリティーネタ自体の扱いが小さくなっていて、スタイン理事退任でいきなりファイナンシャルスタビリティーの金融政策対応云々のネタが消えやがりましたなあと思っていたので、今回こういう形でどどーんと飛び出してきた方にアタクシとしては少々サプライズ。
『Some participants discussed how the Committee might better incorporate
financial stability risks in its discussion of macroeconomic risks.』
Some participantsからのマクプル利上げ論議キタコレ!
『They also suggested that the Committee consider how promptly various
financial stability concerns could be addressed, if need be, and which
tools, including monetary policy and regulatory responses, would be most
timely and effective in doing so.』
とは思いましたが、この結論部分は割と普通の話になっているのですが、一方で対処の中に「including
monetary policy and regulatory responses」などという文言がしらっと入っておりまして、マクプル利上げなんて飛んでもありませんわオホホホホというイエレンさんの主張するラインとは違った話になっているのが中々味わいがありまして、このファイナンシャルスタビリティーに関する論議の部分が今後どういう記述になってくるのかは注目したい所ではあります。
・物価に関して
『Inflation firmed in recent months, and most participants anticipated
that it would continue to move up toward the Committee's 2 percent objective.』
というのが今引用したひとつ前のパラグラフ(逆順に引用してますな^^)です。
『Many of them expected that inflation was likely to rise gradually over
the medium term, as resource slack diminished and inflation expectations
remained stable. In support of their assessments, several reported results
from various statistical models of inflation and inflation expectations.
Most now judged that the downside risks to inflation had diminished, but
a few participants continued to see inflation as likely to persist below
the Committee's objective over the medium term.』
やはりインフレの方が上を向いてくると皆さん元気になるのねという感じの記述になっていますが(^^)、ダウンサイドリスクに関してもかなり薄れたという漢字の人が多いようで、複数名はまだ物価がアガランチ会長となる件を懸念しているようですが、あくまでもa
fewのようで。
『Several commented that the upside risks had not increased. However, a
few others argued that the recent tightening of the labor market had increased
the upside risks to inflation and inflation expectations, particularly
in an environment in which the economic expansion was expected to strengthen
further.』
でまあここもおーという所ですが、複数名(a few)の方は何と物価のアップサイドリスクにも言及という話でして、これはまたヒャッハーという所で、こらまあ思ったよりタカ派内容と評価されるのは当然ですなと言うか、そもそもイエレンおばちゃんが自分の見解を表に出し過ぎで、しかもそれがFOMC全体の議論の中心的見解からハトにずれているから会見とかミニッツとか出ると急に「あれれ?」となるんじゃネーノとは思う訳で、長期金利を跳ねさせたくないのは判るけど、コミュニケーションとしてちょっと今後苦労しそうな気がします。
○BOEネタから少々
http://www.bankofengland.co.uk//publications/minutes/Pages/mpc/pdf/2014/mpc1408.aspx
『Regarding Bank Rate, seven members of the Committee (the Governor, Ben
Broadbent, Jon Cunliffe, Nemat Shafik, Kristin Forbes, Andrew Haldane and
David Miles) voted in favour of the proposition.』
おや?
『Ian McCafferty and Martin Weale voted against the proposition, preferring
to increase Bank Rate by 25 basis points.』
2名が25bp利上げ提案キタコレ!!!!
でまあミニッツはこちら。
http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/Documents/mpc/pdf/2014/mpc1408.pdf
MINUTES OF THE MONETARY POLICY COMMITTEE MEETING 6 and 7 August 2014
・フォワードガイダンスはただのガイダンス攻撃キタコレ
こちらの議事要旨は手抜き読みしたければ『The immediate policy decision』を読むヨロシだけど今回は(というかいつも比較的長いのだが)特に長いのでめんどい。
第31パラグラフから。
『The Committee set monetary policy to meet the 2% target in the medium
term, and in a way that helped to sustain growth and employment.』
これはいつも言ってる話。
『The Committee had given guidance in its February Inflation Report on
how it would seek to achieve the inflation target over the policy horizon.
The central message of that guidance remained relevant: given the likely
persistence of headwinds weighing on the economy, when Bank Rate did begin
to rise, it was expected to do so only gradually. Moreover, the persistence
of those headwinds, together with the legacy of the financial crisis, meant
that Bank Rate was expected to remain below average historical levels for
some time to come.』
ガイダンス文言で示している金利パス、すなわち金融危機以来の経済回復をスローにする要因が残り続けている中では利上げを上げるにしても極めて緩やかなペースになるし、政策金利の水準も過去のヒストリカルアベレージよりも低い状態が適切になるでしょう、とまあここまではハトちっくではあるのですが・・・・・・・・・・・・・
『The actual path for monetary policy, even after the first rise in Bank
Rate, would, however, remain dependent on economic conditions.』
なるほど。
『In other words, the Committee’s guidance on the likely pace and extent
of interest rate rises was an expectation, not a promise.』
な、なんだってー!!!!
・・・・・・・・というかですね、ガイダンス文言って所詮ただの「今の見通しではこうです」という話であって、そういう意味では景気物価見通しが盛大に改善すればガイダンス文言そのものがコロッと変わるのは建付け上当然ではあるのですが、ハトな話を並べておいてしらっとこのような梯子外し文言を入れているという諸葛孔明の罠ちっくな文章の作りがジョンブルクオリティー。
ちなみにこの最後の梯子外し文言は前回のミニッツ(ってネタにしてないですねすいませんすいません)では無かった表現というのがこれがまた味わいのあるところです。
・利上げに関する議論から少々
でまあこの先も色々とネタがあるのですが時間と量の関係上(単にFOMCミニッツで時間を食い過ぎただけですが)明日のネタに回しまして利上げに関する話の中から。
第37パラグラフより。
『There were also arguments regarding the current and prospective impact
of Bank rate on the economy, on which these members placed different weights.』
利上げの影響についての議論部分です。
『It was possible that, given the strength of the headwinds faced by the
economy, even the current extraordinarily low level of Bank Rate was not
providing a great deal of stimulus to activity. A premature tightening
in monetary policy might leave the economy vulnerable to shocks, with the
effectiveness of any further necessary stimulus being limited by the effective
lower bound on Bank Rate. In addition, increases in Bank Rate well ahead
of any pickup in wage and income growth risked increasing the vulnerability
of highly indebted households. Finally, an unexpected increase in Bank
Rate might cause sterling to appreciate further, bearing down on inflation
and further impeding UK economic rebalancing.』
これは利上げすべきでないの人たちの主張部分で、利上げしろの2名はまた別の話をしているのですが、現状維持派の見解として利上げはショック耐性を下げるとか、家計の債務負担を引き上げるとかいう話の中で「予期されていない時点での利上げを行うとポンド高が進行してあばばばばー」という言及をしているのが味わいがあるというか露骨というかで、為替に関してはドラギのおっちゃんVS英国中銀という風情ですの。
第38パラグラフより。
『That said, a potential over-reaction in financial markets was not necessarily
a reason to delay an increase in Bank Rate if that were merited by the
economic data.』
とは言いましても市場のオーバーリアクションを懸念しすぎて適切なタイミングでの政策対応を怠るのはオッペケペーのやることであり経済データを見てメリットデメリットを判断すればヨロシとか市場の反応に対してややナーバスな傾向のあるイエレンおばちゃんに嫌味を垂れているようにも見える辺りがこれまたジョンブルクオリティ。
『It was also noted that the longer the expansion continued, the less likely
it became that some of the downside risks to growth and inflation would
appear. This, along with a continued improvement in credit conditions,
would in time diminish the need for such a low level of Bank Rate.』
ということで、まあ現状維持派としても緩和的な金融環境を続ければダウンサイドリスクはより薄まっていくので、クレジットコンディションの改善が続けば今のスーパー低金利を継続する必要もなくなって来るでしょう、という話をしておりますので、まあ普通に正常化を向いているというのは把握しました。
#その他の部分は明日に続きます(と思います)
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2014/08/20
○ドラギのおっちゃん虫干しネタの続き
http://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2014/html/is140807.en.html
Introductory statement to the press conference (with Q&A)
Mario Draghi, President of the ECB,
Frankfurt am Main, 7 August 2014
・物価情勢がうんこである件について
まあ当たり前だが物価がヘロヘロである件について突っ込まれる突っ込まれる。
『Question: When you talk about being unanimous to do more if the medium-term
outlook is too low for inflation, we’ve now got inflation at 0.4%, can
you just explain why that isn’t already too low? Why that isn’t already
something that should be triggering a response from the ECB?(後半割愛、というか昨日やった)』
オッサン前から「中期的な物価見通しが低すぎる場合には必要な行動をすると全員が一致している(キリッ)」って言ってるけど何でこのバカタレな物価水準で行動しないんじゃこのウソツキヤローということですな。
『Draghi: (前半部分は上記質問の後半部分につき割愛)On the other thing:
isn’t 0.4% low enough? Well, it didn’t really come as a surprise because,
as I told you a moment ago, this data is mostly due to the changes in the
price of energy.』
足元で低いのはエネルギー価格の低下によるものなのでサプライズでも何でもありません(キリッ)。
『And if we consider the HICP, excluding food and energy, we would have
0.8%, unchanged from the previous month. But having said that, there is
no doubt that inflation is low and will remain low.』
それを除けば0.8%ですとかいってますが、まあさすがに0.8%というのが低いというのは認めてますな。
『Inflation expectations, however, over the medium to long term, remain
firmly anchored. In the short term, we observed a decline in inflation
expectations because, as is quite natural, they are heavily determined
on the basis of current inflation.』
この中長期的なインフレ期待云々の話はまあ何ぼでも言えるわなあと思いますが、短い期間のインフレ期待は足元の物価上昇率低下を反映して下がっていますがこれは自然とな。
『On a specific point that was raised by a usually accurate market observer,
also if we look at five-year inflation expectations, derived from the break-even
of the linkers, we would observe a 0.5% inflation expectation. This was
a quite interesting point, but at least we think the calculations should
be done differently. We should observe, not one issue, but the overall,
the universe of issuances of linkers with that maturity. And this would
show that the expectations over the five-year horizon are still anchored
at 1%.』
まあ何ですな、自分に都合の悪い数字についても言及する辺りが味わいがあるのですが、債券市場におけるBEIで5年の数値を見ると0.5%だけど、それだけではなくて色々と見ますと(っていうのがインチキ臭いがそれは兎も角)1%程度だと。
『So we haven’t observed any decline on the medium- to long-term expectations.』
そ、そうなのか・・・・・・・・・
『Long-term expectations remain anchored at 2%. Other expectations remain
anchored at the previous levels. Short-term expectations, indeed, have
declined.』
ということで中長期のインフレ期待がアンカーされています(キリッ)という鉛筆舐め舐め要素を入れやすい話をして追加をしない言い訳にしている、というのはまあ冒頭のステートメント通りですし、それしか答えようがない次第ではあるのですが、まあそういう言い訳。
でですね、ちと話は脱線するのですが、ここでのドラギのおっちゃんの説明を見てて思ったのですが、先ほど申し上げたようにここの質疑では足元のHICP物価指数が0.4%増に留まるという点での質問であったにも関わらず、インフレリンカーの5年BEIの話というやや説明上都合のよろしくないネタを自ら持ち出している訳で、これはドラギのおっちゃんが余裕綽々モードなので都合の悪い数値の話も平然と持ち出しているのか、それともおっちゃん本当は追加緩和をやりたいけど理事会的には許さんと特にドイツの石頭辺りが文句垂れるので微妙にこういう数値も交えながら説明をしているのかというのが良く判らん所ではありますな。
まあ普通に余裕綽々モードなんじゃネーノ(恐らくTLTROがどどーんと出た所でドヤる積りで余裕ぶっかましているのではと妄想)とは思いますが、一方で東洋のとある島国の中央銀行では「ハードデータが弱いですが」という質問に対して直接説明しないでああでもないこうでも無いと言いながら自分の都合の良い数字だけここぞとばかりに並べて説明しているという事案があるとの噂もございまして、ドラギのおっちゃんのこの余裕綽々っぷりと比較すると益々味わいというのを感じるのでありました。
その後の質問も中々手厳しい、つーかまあ当初と違いまして最近のドラギ会見は記者のツッコミがいい感じで無慈悲な砲撃になっておりますな。
『Question:(前半割愛) My second question is on inflation. The ECB staff
forecasts have been persistently too optimistic on the inflation outlook.』
「persistently too optimistic」ワロタ。
『What considerations have you given to reassessing how these forecasts
are being made, to get them more accurate in the future? And perhaps related
to that, how big are the risks that we will see another downgrade of ECB
staff inflation forecasts in September?』
何という無慈悲な質問、というかそらまあ経済調査スタッフがエコノミスト的にピュアな予想をしようと致しましても政策企画(以下自粛)。
『Draghi: (前半割愛)On the second question, we’ll certainly keep in
mind your suggestion. And our staff is continuously improving, and we are
really worried and we want to take action on this. And we’re very well
aware.』
仰せの事は我々も充分に承知しておりまして今後とも改善を図りたいと存じますということですか。
『But one has to understand one thing, that the ECB was not alone in overestimating inflation.』
物価見通しに対して下振れていますが物価見通しが強かったのはワシらだけではないという言い訳ワロタ。
『And to some extent, as I’ve said many times, much of the fact that inflation
has been lower than estimated and expected was due, first, to energy prices
and food prices, until the third quarter of 2012 and, second, to the exchange
rate developments thereafter.』
ということでエネルギー価格要因と為替要因が効いているという話をしておりまして、ここで為替要因の話をしているのがそらまあそうですけどわざわざ為替の話をしている辺りも味わいがありますな、うんうん。
・相対物価の域内の調整に関する考察とか、もう少し長い目で見た場合の相対物価調整とかの話
この質疑はアタクシ的にオモロカッタので引用。
『Question: Maybe following up your statement before on inflation again,
does the ECB expect that in the short to medium term there will be inflation
rates going more apart within European countries? Take Germany. Inflation
should rise maybe above the target of 2 %, and this is supported by higher
wages you heard the debate in the last days, while other countries in the
south or periphery in times of very low inflation, so good deflation, maybe,
are tied with ongoing reforms. So this divergence is complicated maybe
for you to interpret, but, is this an expectation of the ECB, as well?(後半割愛、というか2番目の質問に答えてない気がする)』
ECBは物価目標出しているけど域内の国での違いがあるとかの問題ってどうなのという質問でして・・・・・
『Draghi: On the first part, I think your question reveals the complexity
of the issue. We have countries where inflation will have to go above 2
%. And certainly the aim of the ECB, the objective of the ECB and the way
price stability has been interpreted by the Governing Council of the ECB
all throughout its existence, almost all throughout its existence, is that
inflation should go at below but close to 2 %, and we are far from that
objective.』
全体としての2%というのが目標ですので・・・・・・・・
『So any development that would bring this inflation rate towards the 2
% is welcome. But it’s not the ECB business to determine wages for the
world, for the euro area, or for single countries. The wage determination
is in the hands of social partners.』
賃金動向の話はECBでは如何ともし難いというのはまあそうですな。
『For the other countries, the countries that now are having deflation,
the key question -- there’s no doubt that this sort of negative growth
in prices depends on the lack of demand, but also on relative price adjustment.
And then the key question is, is this going to be a short-term affair?
In which case, it would not be a source of deflation.』
域内の各国の物価動向が異なっている点については、「域内における相対価格の調整」であれば問題が無いのだが、そうでないのであれば問題なのでそこの見極めが重要で、足元で起きている現象は域内における相対価格の調整であるとの評価ですな。
『Or is it going to last a long time? And it can last a long time for at
least two reasons. One is that there are self-fulfilling expectations of
continuously falling prices, which lead people to postpone their expenditure
plans and, therefore, cause further fall in prices.』
で、足元の物価上昇鈍化に関してインフレ期待の低下から自己実現的にデフレ的な均衡になるような状態かという点を確認するのも重要ですと。
『We are not seeing this sort of phenomenon at the present time. But there
is another reason. What we define by a relative price adjustment often
is not a relative price adjustment within certain sectors, where simply
people just change prices in their catalogues. Often, it reflects a different
reality where entire sectors are going to be annihilated, are going to
be destroyed, and new productions have to take place, new sectors have
to start their activity.』
でまあそのような状況にはなっていませんと。で、その後ああだこうだと話をしていますが、要するに物価の変化は一つの財やサービスの特定カテゴリー相対価格の変化だけではなくて、消費や生産の変化による財やサービス消費の構成変化によるものもありますぞなという話をしておられるようで。
『And this is a much longer process that doesn’t have to do necessarily
much with expectations and self-fulfilling expectations, but it takes --
it may take a long time, because it takes changes -- it takes movements
of factors, people from one sector to another, and we may well observe
this phenomenon in the so-called deflation countries.』
ほほうという感じですが、このような構成変化が生じる中で物価が低いという状態がデフレ国と言われる国で観測されますという話ですからジャパンの話なのかスイスの話なのか知りませんが、この辺りに関するもうちょっと突っ込んだ説明を一度お願いしたい物ですなあと思ったのでネタにした次第。
『On the other point you made about what the ECB is doing, well, I listed
before why the fundamentals for a weaker exchange rate are now better than
they were a few months ago. I think this is quite relevant. And I listed
a series of factors that I think I should not repeat now.』
為替レートネタキタコレ。
『But the main factor is that basically monetary policies in Europe and
in the United States and in UK are going to stay divergent, are on diverging
path for a long time, and a much longer time in Europe than elsewhere so
I think that’s the point.』
金融政策の方向性がBOEやFEDの出口モードと違うからユーロが下がるんですね分かります、ってどこかの黒い総裁も似た話をこの前していますな、あれは聞かれて答えているので聞かれもしないで答えるのとは違うけど。
でまあここの金融政策の方向性がどうのこうのの部分がネタとしては市場ネタとしてはクローズアップされていましたが、それよりも相対価格の調整がどうのこうのの話の方がアタクシ的にはもうちょっとどういう話なのかをお伺いしたいという所ではございました。
『But, again, let’s not forget: the creation of better financial or tax
conditions are a necessary, but not a sufficient condition for restoring
growth.』
ふーんという所ですがもしかしたらこれが引用割愛した2番目の質問に対する答えかも知れん。この先に3番目の質問に対する答えがありますが引用割愛します(一行コメントですが)。
#ということで超虫干しネタ恐縮でした
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2014/08/19
○すっかりスルーしておりましたがドラギ先生の落語鑑賞会
出たばっかの金曜に冒頭ステートメントだけやったのにすっかりスルーな先々週のネタですどうもすいませんすいません。つーか海外ネタ追いつくのが中々しんどいのだが何か作戦を練らないと(大汗)。
http://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2014/html/is140807.en.html
Introductory statement to the press conference (with Q&A)
Mario Draghi, President of the ECB,
Frankfurt am Main, 7 August 2014
・冒頭のステートメントでは変わった話は無かったですの
でまあ冒頭ステートメントの本当に冒頭部分だけ先々週の金曜に(すいません)ネタにしましたけど、経済と物価の話の部分ってまあ前回6月の会見での説明を踏襲していますなという感じです。
『Let me now explain our assessment in greater detail, starting with the
economic analysis. In the first quarter of this year euro area real GDP
rose by 0.2%, quarter on quarter. With regard to the second quarter, monthly
indicators have been somewhat volatile, partly reflecting technical factors.
Overall, recent information, including survey data available for July,
remains consistent with our expectation of a continued moderate and uneven
recovery of the euro area economy.』
てなわけで、物価が足元弱い事に関してはテクニカルな問題ですよという話で、先行きの回復に関しては冒頭の所の一番最初にもあったのですが、「moderate
and uneven」という言い方をしていまして、前回の説明だと「very gradual recovery」というような表現だったのに対して「uneven」という文言が入ったのが特色で、それ以外はあまり前回と変わった話はないです。念の為引用します。
『Looking ahead, domestic demand should be supported by a number of factors,
including the accommodative monetary policy stance and the ongoing improvements
in financial conditions. In addition, the progress made in fiscal consolidation
and structural reforms, as well as gains in real disposable income, should
make a positive contribution to economic growth. Furthermore, demand for
exports should benefit from the ongoing global recovery.』
毎回の説明ですが物価が弱い件について「実質可処分所得の増大」とポジティブネタにするのは政策ロジック的に見た場合にどうなのかと思うのだが毎度言ってますな。
『However, although labour markets have shown some further signs of improvement,
unemployment remains high in the euro area and, overall, unutilised capacity
continues to be sizeable. Moreover, the annual rate of change of MFI loans
to the private sector remained negative in June and the necessary balance
sheet adjustments in the public and private sectors are likely to continue
to dampen the pace of the economic recovery.』
でまあ労働市場が弱いだのローンが弱いだのバランスシート調整が途上だのという経済の抑制要因の話もこれまた毎度同じです。
リスク認識に関しても同じでして。
『The risks surrounding the economic outlook for the euro area remain on
the downside. In particular, heightened geopolitical risks, as well as
developments in emerging market economies and global financial markets,
may have the potential to affect economic conditions negatively, including
through effects on energy prices and global demand for euro area products.
A further downside risk relates to insufficient structural reforms in euro
area countries, as well as weaker than expected domestic demand.』
地政学リスクも含めて前月の説明とほぼ同じで地政学リスクと新興国た金融市場に関する部分の接続詞が「and」から「as
well as」になった位。
物価に関しても変わらなくてですね。
『According to Eurostat’s flash estimate, euro area annual HICP inflation
was 0.4% in July 2014, after 0.5% in June. This reflects primarily lower
energy price inflation, while the other main components of the HICP remained
broadly unchanged . On the basis of current information, annual HICP inflation
is expected to remain at low levels over the coming months, before increasing
gradually during 2015 and 2016. Meanwhile, inflation expectations for the
euro area over the medium to long term continue to be firmly anchored in
line with our aim of maintaining inflation rates below, but close to, 2%.』
足元は弱いですがエネルギー価格とかの要因でメインの部分は変わっていませんので無問題だよ先行きは上昇するよああそれからインフレ期待はアンカーされてるから無問題という毎度の説明でして・・・・・・
『The Governing Council sees both upside and downside risks to the outlook
for price developments as limited and broadly balanced over the medium
term. In this context, we will closely monitor the possible repercussions
of heightened geopolitical risks and exchange rate developments.』
ということで、物価の上下リスクに関してはバランスしている上に「as limited」ですよというのも前月もいってますが、まあここの認識も同じでして、そらまあこの前金融政策いじったばかりですからそういうしかないですなあという所でもあります。
でまあその他の話も事実関連の計数に関しては兎も角として、内容は前月と同じ話になっています。
ということで質疑応答。
・一発目の質疑からまずワロタ
『Question: You were saying that the TLTROs would enhance our monetary
policy stance. What do you exactly mean by that? And my second question
is whether there is downside risk to your economic scenario having intensified,
looking at the situation in Russia and the Ukraine?』
ということですが、まあ後半の地政学リスクの話はさておきまして、前半の質問が何とも(^^)。
『Draghi: Indeed, the TLTROs will enhance our monetary policy stance in
a sense because they implement a significant expansion in credit.』
え????そ、そうなんですか?????????????
『They’re not really like the LTROs emergency funding. But these TLTROs
are funding, they are to be used to lend to the real economy, to the non-financial
companies, and especially to the SMEs.』
LTROは単なる流動性供給だがTLTROは貸出を伸ばすものである(キリッ)って話ですけど、あーた低利のファンディングだったら別に市場調達で特段問題なく出来るのであって、「よーしパパファンディングが付くからドンドン貸出基準を緩めちゃうぞー」とは成らないと思うのですが。そらまあ貸出金利が下がったりというような効果が出るかもしれないけど貸出がこれで伸びるというのはちょっと・・・・・・・・やるなら金融機関の資産査定をユルユルにすればこうかはばつぐんだ!だと思うのですけど。
『We do expect a sizeable take-up. During the last press conference I think
I mentioned an upper ceiling. Now, market estimates and indications by
individual banks would seem to say that, overall - so not only in the first
two tranches, but also in the periodic operations - a take-up between ユーロ450
billion and ユーロ850 billion should materialise.』
ということで4500億から8500億ユーロとはずいぶんレンジがありますがまあそんだけ出るんだとよ。
『On the other hand, it’s quite understandable because these are funds
that are at pretty long-term maturity with very, very attractive financial
conditions.』
ふーん。
『Also, let me add that the indications coming from the bank lending survey
that, as I just said, show a gradual-show actually I think for the first
time a pickup in demand for loans and a gradual lessening of tightness
on the supply side, would seem to indicate that these TLTROs will actually
happen at the right time when there is demand for them.』
『So in this sense they are, not only enhancing our monetary policy stance,
but they actually would give confirmation to our forward guidance.(以下は後半部分の回答なので割愛)』
なんちゅう説明やと思うのですが、では冒頭説明で(めんどいので引用割愛しましたが)ローンが伸びていないという話をしている訳で、本当にTLTROをやるとローンが盛大に伸びるのかいなというとだいぶ怪しいなと思いますがまあシャーナイナイですな。
・ABSやるやる詐欺に関しての質疑
『Question:(前半は地政学リスクが拡大したら追加緩和するのかという質問ですが割愛)
And talking about the ABS purchase plan, you’ve often said that this is
not something that the ECB can do alone - there are many actors, many institutions
in Brussels and in Basel who are looking after that. But what can the ECB
do on its own if it needs to act on a relatively short timeframe?』
ABS買入に関しては関係者が多いとか言ってるの言い訳だろうという事ですねわかります。
『Draghi:(前半割愛)On the ABS, you’re right. I said that the ABS final
action will depend on the action of many other actors. First of all, we
have intensified preparations on the ABS, the various committees of the
ECB have worked, and are working, on that. And in the last press conference
I kind of listed all the areas that need work.』
「you’re right」と言いながら正しいと言ってるのは元々の言い訳に関する部分を「正しい」と言っている辺りが実にこうインチキ話法っぽくていいですね!!!
『I would only add that we are proceedings with our work regardless of
what the timing is for possible regulatory changes in this area.』
どう見てもやるやる詐欺です本当にありがとうございました。
『And the other news is that we are about to hire - I can’t disclose any
names, because the thing isn’t finished yet - but we are about to hire
a consultant who will help us to design this programme in the best possible
fashion.』
制度デザインするコンサルタントを採用したとかナンジャソラという感じで直ぐに実施する気ねえだろという感じですが。
『And in so doing, it would lead to a reconstruction of a market that has
disappeared with the crisis, also for good reasons. That’s why we are
focusing our efforts on a market which would trade products that are, as
I said on other occasions, simple, transparent and real. Simple, transparent
and real. Simple means readable. Transparent means that you can actually
go through and price them well. And real means that they are not going
to be a sausage full of derivatives, as said in a somewhat more popular
language.』
ということで市場の再育成(リーマンショックでコケたから)とか微妙な話もしていますが、これは最後の方の質疑で更に煙巻きモードの答えになっていく伏線のような気がする(^^)。
で、この質問の次の人も突っ込む。
『Question:(前半割愛、というかそれはそれでオモロイので後ほど)And just
to get back on the ABS question, you gave some more details about the preparatory
work, can you give us a sense, will this actually lead to ABS purchases?
Or is this something that you will be talking about, consulting about,
and may not actually lead to the ECB buying any of these things? Or are
you confident that this will actually result in an ABS purchase programme?
And do you have any better sense when that might be?』
ニヤニヤ。
『Draghi: The second question is, in a sense, either strange or easy to answer.』
ほえ?
『If we were to work on things that don’t happen, we wouldn’t spend our time well.』
仮定法過去キタコレ。
『So the work we are doing is with the expectation that we will take action
in this field. Let me add that a final decision hasn’t been taken yet.
So the final decision is to stand ready with a programme that would help
to strengthen our accommodative monetary policy stance, injecting money
into the real economy.』
結局威勢の良い言い方をしているだけで具体的な話は無しと。
でまあ他にもツッコミが来る来る。実は前に引用した質問とこの質問の間にもう一つテクニカルな質問としてABS買入に関する質疑があったのですがそこは割愛しまして。
『Question: I just want to follow up on the question on ABS purchases and
the first answer you gave on this topic, because it seems to suggest that
such purchases are already a done deal and that it’s not a question of
if, but only a question of when and how. Is that correct? (後半割愛)』
『Draghi:(前半割愛)On the other point about ABS, well, in a sense, you
know, ABS is just a name. And we know that the traditional ABS that were
being traded before the crisis had many -- to be charitable -- many imperfections.
And we certainly would not and could not recreate that sort of market,
because it was considered -- some of these imperfections were actually
considered one of the major roots or the major causes of the financial
crisis. So our effort isn’t simple, because we want to recreate a market
that is limited to a product that is -- as I said before -- simple, transparent
and real.』
『Second, this market can actually -- we do -- I mean, Bank of England
and ourselves believe that this market can restart, but the economics of
this market must work. And what is now one of the major impediments to
this is the present regulation. Having said that, no matter what regulators
will be doing, we want to be ready. And that’s why we’ve intensified
preparation.』
ということで、ダンディールだよなという質問に対しては「いやいや我々の政策の目的は実体経済に資金を回す事(=貸出を拡大させることという意味なんでしょ)ですからそれに沿った適切な政策のデザインが必要でしてねえ」みたいな感じでああでもないこうでもないと説明していく所が実にこう味わいがあるなあという感じです。
・なお他のトピックは「物価動向」と「地政学リスク」とちょっとだけポルトガルでありました
てな感じで質疑は進行していったのですが、今回の質疑応答って質疑応答の中でABS買入の話と地政学リスクの話と物価がアガランチ会長な話に思いっきり話が集中していまして(最初のだけはTLTROが何で金融政策スタンスを強化するのかという中々味わいのある質問でしたが)、特にABSやるやる詐欺の所は微妙に面白かったので先にネタにしたという所ですが、他のトピックに関しては明日にでも続きをする所存(と思います、大汗)。
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2014/08/18
○なおもしつこくフィッシャー副議長講演ネタである(その3)
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/fischer20140811a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/fischer20140811a.pdf
Vice Chairman Stanley Fischer
At the "The Great Recession--Moving Ahead," a Conference Sponsored by the Swedish
Ministry of Finance, Stockholm, Sweden
August 11, 2014
The Great Recession: Moving Ahead
金曜日に飛ばした金融政策と金融監督関連の部分である。まあ今回は多分フィッシャーさん初回みたいな感じなので全般が長いという話だと思うの。PDF版だと11ページ目から18ページ目になります。
・金融監督の話は仰せご尤もだが国際的協調を更に進めたいという部分は少々気になる
『The Post-Crisis Regulatory and Supervisory Environment』という所は金融監督(プルーデンス)関連のお話です。
『The severity of the Great Recession and its ongoing fallout, importantly
including its influence on public opinion, has heightened the focus on
the challenge of avoiding another such crisis.』
今般の金融危機のようなものを再発させない為にはどうするかという話。
『Indeed, financial sector reform proposals by groups such as the Basel
Committee on Banking Supervision, the Financial Stability Board, and the
Group of Thirty were circulating within a few months of the Lehman Brothers'
failure. Since then, policymakers, acting in their own countries and in
coordination with others, have enacted financial sector regulatory reforms
on a scale and scope not seen since the Great Depression.』
『Designing, implementing, and understanding the consequences of these
important reforms are major challenges for policymakers in a post-Global
Financial Crisis world. Most of the initial proposals incorporated some
or most of the following goals: 』
つーことでプルーデンス政策運営の9つの基本的な理念。
『1.To strengthen the stability and robustness of financial firms, "with
particular emphasis on standards for governance, risk management, capital
and liquidity";
2.To strengthen the quality and effectiveness of prudential regulation
and supervision, with higher standards for systemically important firms;
3.To build the capacity for undertaking effective macroprudential regulation
and supervision; 4.To develop suitable resolution regimes for financial
institutions;
5.To strengthen the infrastructure of financial markets, including markets
for derivative transactions; 6.To improve compensation practices in financial
institutions;
7.To strengthen international coordination of regulation and supervision, particularly with regard
to the regulation and resolution of global systemically important financial institutions, later known as G-SIFIs;
8.To better monitor risks within the shadow banking system, and find ways of dealing with them; and
9.To improve the performance of credit rating agencies, which were deeply
involved in the collapse of markets for collateralized and securitized
lending instruments, especially those based on mortgage finance. 』
ということで、金融機関の資本バッファーの拡大、監督の強化、流動性リスクのより厳格な管理、デリバティブ取引の集中清算、システム的に重要な金融機関の監督強化、破たん処理の確立、国際的な監督の共通化、シャドウバンキングなどの監督強化、外部格付けの適切な運用などの話で、まあこれ自体は以前から言われている話ですけどちょうどまとまっているので引用という所で。
で、これらの監督をどうのこうのという話について米国の取り組みについて具体的に色々とありまして、このような取り組みがという説明はこれはこれで面白いのですが長くなるので飛ばして最後の所を引用しておきます。
『In summary, considerable progress has been made in strengthening bank
capital and liquidity; in improving the quality and effectiveness of prudential
regulation and supervision; in developing suitable resolution regimes for
financial institutions; and in strengthening the infrastructure for the
clearing and trading of derivative contracts.』
金融機関の資本や流動性向上、金融監督の機能向上、金融機関の破綻処理方法、デリバティブ取引のクリアリングなどに関しての進展は大幅に進んだとな。
『It is clear that further progress is needed with respect to goals 6-9,
relating respectively to: improving compensation practices; strengthening
international coordination, especially with regard to the resolution and
regulation of G-SIFIs; finding ways of dealing with the shadow banking
system; and improving the quality of credit rating agencies.』
でまあ今後の課題は国際的な協調、特に重要な金融機関の破綻法制やシャドウバンキング規制、格付け会社の規制などという話になっています。
・・・・・・・でですね、まあそれはフィッシャーさん的にはそうですかという話ではあるのですが、現実問題として金融システムのありかたが違っている各国の事情を斟酌しないで「米国様がこういう規制監督をしているからおまえらもそうしろ」的な話が一部目に余る部分もあったりする訳でして、そもそも金融危機だってお前らのおイタが原因だろボケアホカスとは思うので、まあこの辺の話って仰ることは理屈としてはそうですかねえとは思いますが、国際的協調(または米国流の押し付け)を意識するあまり別の制度上の問題が生じそうな気がするんですよねえ。まあ杞憂だと良いですけど。
『That leaves aside the question of the capacity for effective macroprudential
supervision, an issue we will take up as we begin to discuss the optimal
conduct of monetary policy in the wake of the crisis, given the heightened
attention of monetary policymakers to the importance of maintaining financial
stability.』
・マクロプルーンデンスと金利政策に関してが次のネタですよ
で、次は「マクプル利上げという考えに対して」です。
『Issues Facing Monetary Policymakers in the Wake of the Crisis and Recession』というそのまんまの話ですが・・・・・・・・・・・・
・いきなり「フレキシブルインフレーションターゲット」の話
『Prior to the global financial crisis, a rough consensus had emerged among
academics and monetary policymakers that best-practice for monetary policy
was flexible inflation targeting.』
まあ一方でリジットなインフレ目標の話を思いっきり就任前にしていた置物が日本橋本石町に設置されてますけどね!!
『In the U.S., flexible inflation targeting is implied by the dual mandate
given to the Fed, under which monetary policy is required to take into
account deviations of both output and inflation from their target levels.』
これはオモロイというか、前半で米国の成長力が弱いという話をしながら金融政策的にはデュアルマンデートをフレキシブルインフレーションターゲットの文脈で説明するとは中々。
『But even in countries where the central bank officially targets only
inflation, monetary policymakers in practice also aim to stabilize the
real economy around some normal level or path.』
でまあ諸外国のインフレーションターゲットもフレキシブルインフレーションターゲットですよねと。
・量的緩和などの非伝統的政策について
『Much has changed in the world of central banking since the onset of the
Great Recession. With short-term interest rates near zero, many central
banks considerably expanded their balance sheets, for instance through
large-scale purchases of assets or significant liquidity injections. They
also engaged in forward guidance to put downward pressure on interest rates
and support aggregate demand.』
ゼロ金利制約で資産買入や流動性供給、フォワードガイダンス導入などを行っていますと。
『I consider quantitative easing to have been largely successful, and that
data dependent forward guidance consistent with the central bank's expectations
of its future intentions can also be successful. But the use of these tools--particularly
as reflected in the size of central bank balance sheets--will make the
conduct of monetary policy more complicated during the recovery.』
で、量的緩和政策は効果を発揮しているが、景気回復時にはややこしい事にもなりますぞなと。
『In the United States, we have a number of tools to control short-term
rates, despite the large level of reserves in the system. Raising the rate
of interest paid on excess reserves should play a central role in the eventual
normalization of short-term interest rates. An overnight reverse repo facility
could also play a useful part in setting a floor under money market rates.
With these and other possible tools, we will be able to raise rates and
maintain them near their targeted level at the appropriate time.』
ということで、米国では利上げのツールもありますのでヘーキヘーキという話をしているのですが、良く良く考えると買入政策をしている際にはFRBって「バランスシートの負債サイド(大きさそのもの)ではなくて購入している資産の種類などに意味がある」という言い方をしていましたし、そのストック効果で金利を下げているという話をしていたのに、正常化局面においてはそのバランスシートの資産はそのままにして単に吸収オペで短期金利を引き上げるので無問題という話をしているのって、冷静に考えると緩和政策開始前と正常化プロセスでバランスシートの資産部分の扱いに矛盾が生じているのではないでしょうかと思うのですよね。
・・・・・って話って別に今に始まった訳ではないのですが、フィッシャーさんがこうやって懇切丁寧に説明してくれるもんだから却って気が付くというのが諸葛孔明の罠。
・マクロプルーデンス利上げに関して
『Another important question is whether monetary policymakers should alter
their basic framework of flexible inflation targeting to take financial
stability into account. My answer to that question is that the "flexible"
part of flexible inflation targeting should include contributing to financial
stability, provided that it aids in the attainment of the main goals of
monetary policy.』
『The main goals in the United States are those of the dual mandate, maximum
employment and stable prices; in other countries the main goal is stable
prices or low inflation.』
ということですので、金融安定化に問題がある場合にフレキシブルターゲットはその金融安定化に含まれますよという話ではありますが・・・・・・・・・・・
『What can the central bank do when financial stability is threatened?
If it has effective macroprudential tools at its disposal, it can deploy
those. If it does not itself have the authority to use such tools, it can
try to persuade those who do have the tools to use them. If no such tools
are available in the economy, the central bank may have to consider whether
to use monetary policy--that is, the interest rate--to deal with the threat
of financial instability.』
ということで、まあ順当(?)に「まずは金融監督のツールを使う」という話になっています。
『At the moment in the U.S., though there may be some areas of concern,
I do not think that financial stability concerns warrant deviating from
our traditional focus on inflation and employment.』
でこれまた順当に米国の現状では、一部に確かにまあ懸念されるような分野も無い訳で無ないけど金融安定に問題があるとは思えませんと。
『A decision on whether to use the interest rate to deal with the threat
of financial instability is always likely to be difficult--particularly
in a small open economy, where raising the interest rate is likely to produce
an unwanted exchange rate appreciation. So a critical question must be
whether effective macroprudential policies are to be found in the country
in question.』
で、マクプル利上げという判断は難しいのであって、クリティカルな質問はマクロプルーデンス的な監督政策(利上げ以外の)のツールがあるかという話ということですな。
・イスラエルのマクロプルーデンス成功の例
ということで・・・・・・・・
『I had some experience with these issues while at the Bank of Israel.
In Israel, three separate regulators deal with different aspects of macroprudential
policy, but there is no formal financial stability committee. The Bank
of Israel is also the supervisor of banks, so has considerable power over
housing finance, which essentially is available only from the banks. Starting
in 2010, the Bank of Israel adopted several macroprudential measures to
address rapidly rising house prices, including higher capital requirements
and provisioning against mortgages; limits to the share of any housing
financing package indexed to the short-term (central bank) interest rate
to one-third of the total loan, with the remainder of the package having
to be linked to either the five-year real or five-year nominal interest
rate; and, on different occasions, limits to the loan-to-value (LTV) and
payment-to-income (PTI) ratios. Additional precautionary measures were
also implemented in the supervision of banks.』
ということで、イスラエルの例ですが、モーゲージに対する要求賦課資本を引き上げること、住宅ファイナンスのパッケージに対する短期金利連動ローンを3分の1に制限(残りは3年か5年金利にリンクする)すること、LTVがPTIの規制を実施することなどの銀行への規制を実施したそうな。
『The success of these policies was mixed. The limit of one-third on the
share of any housing loan indexed to the short rate substantially raised
the cost of housing finance and was the most successful of the measures.
Increases in both the LTV and PTI ratios were moderately successful. Increasing
capital charges and risk weights appeared to have little impact in practice.』
短期金利連動の制限は借入金利の引き上げを通じて効果があって、LTVとかの規制はやや効果があったものの、モーゲージの資本賦課引き上げはあまり効かなかったそうな。
『This experience led me to three conclusions on the effectiveness of macroprudential
policies. First, we were very cautious in using these new tools because
we did not have good estimates of their strength and effectiveness. Quite
possibly, we should have acted more boldly on several occasions. Second,
use of these tools is likely to be unpopular, for housing is a sensitive
topic in almost every country. And third, coordination among different
regulators and authorities can be complicated.』
でまあこの辺の結論がほうほうという感じですが、ツールの効果は使ってみないと判らないし、下手したら効きすぎる可能性もあるし、住宅問題は政治的にセンシティブだし、複数の監督機関にまたがる規制だと色々と難しい面があるとの教訓を出していまして、さて米国はどうなるんでしょうなあと思うのでした。
『The difficulty of coordinating among different independent regulators
makes it likely that the degree to which macroprudential policies can be
successful depends critically on the institutional setup of financial supervision
in each country. Different countries have structured their macroprudential
policymaking institutions in different ways. In the U.K., the Financial
Policy Committee has been set up within the Bank of England, with the power
to make financial policy--including macroprudential policy--decisions.
In the U.S., the Financial Stability Oversight Council is a coordinating
committee of the major regulators. And in Sweden, responsibility for macroprudential
oversight and financial stability lies with the Financial Supervisory Authority,
which is separate from the Riksbank.』
ここは各国の監督当局がどういう作り込みになっているかという話。
・で結局結論は「マクプルは監督ツール」である
『Overall, it is clear that we have much to learn about both the effectiveness
of different macroprudential measures, and about the best structure of
the regulatory system from the viewpoint of implementing strong and effective
macroprudential supervision and regulation. And, while there may arise
situations where monetary policy needs to be used to deal with potential
financial instability, I believe that macroprudential policies will become
an important complement to our traditional tools.』
ということで結局結論はマクロプルーデンスの政策ツールが重要ですという話で・・・・・・・・
『Learning how best to employ all of our potential policy tools, and arrive
at a new set of best practices for monetary policy, is one of the key challenges
facing economic policymakers.』
という結論になっていまして、あくまでも利上げではなくて金融監督ツールで金融不安定化に対処するという話になっていまして、まあ利上げでマクプルという話では無かったという事で。
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2014/08/15
○フィッシャー副議長講演ネタの続き
クソ長いとか申しておりますが、まあこの講演、論点が非常に多くて読み物としては非常に面白いのですが、論点が多くて引用してネタにする方としてはしんどいとしか申し上げようがないです(笑)。
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/fischer20140811a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/fischer20140811a.pdf
Vice Chairman Stanley Fischer
At the "The Great Recession--Moving Ahead," a Conference Sponsored by the Swedish
Ministry of Finance, Stockholm, Sweden
August 11, 2014
The Great Recession: Moving Ahead
・供給サイドに関しての話(続き):生産性の伸びは弱い状態が続きそうという見立て
一昨日の続きからなのですが、いきなり引用するとアレなのでまずは再掲。
『How much of this weakness on the supply side will turn out to be structural--perhaps
contributing to a secular slowdown--and how much is temporary but longer-than-usual-lasting
remains a crucial and open question.』
ということで、供給サイドについての弱さの中にどの程度の構造的要因があるのか、というのは重要かつまだ解明されていない問題であるという話をしておりまして、最初の部分と需要サイドの部分に関してはハト派全開というのは良く判ったのですが、ここで供給サイドの話が出てくる所から特色が出て来ます、という話を一昨日引用しまして、
・労働供給に関しては人口動態などの構造要因と景気サイクルの循環要因、長期失業による労働スキルの低下などの構造だが元は循環から来ている要因など、構造要因と循環要因の双方があります
・資本投下(設備投資)に関してはリセッション以降落ち込んだが、直近では金融環境が大いに緩和されており、経済成長自体はプラスで推移する中で中々投資が立ち上がらないという問題があり、長期期待成長などの低下という問題があるのではないか
てな話をしておりまして、供給サイドのもう一つの論点が生産性の話になっています。
『Turning next to productivity growth, Solow's famous result over fifty
years ago was that over eighty percent of growth in output per hour in
the period 1909-1949 came from technical change. Between 1964 and 2003
total factor productivity growth in the United States averaged around 1-1/2
percent, contributing to a 2 percent expansion per year in U.S. GDP per
capita. At this rate, American standards of living would double every 35
years.』
『However, productivity growth in recent years has been disappointing.
Over the past decade, U.S. total factor productivity growth declined to
1 percent, which some argue may represent the real norm for the U.S. economy.
In this view, the long period of rapid productivity growth spurred by the
technological innovations of the first and second Industrial Revolutions
ended in the 1970s and the economy has continued at a lower productivity
growth rate since then, except for a brief burst in the mid-1990s. In particular,
these authors argue that the information technology (IT) revolution of
the past several decades--including the diffusion of computers, the development
of the internet, and improvements in telecommunications-was an anomaly
and is unlikely to generate the productivity gains prompted by earlier
innovations such as electrification and mass production. 』
ということで、だいぶ前からの話をしておりますが、米国の生産性向上のペースが近年鈍化しておりますという話で、この10年では生産性向上が年率1%程度にとどまっていてdisappointingという事で、過去は技術的な大きなイノベーションなどで生産性が向上していたがという指摘。
『Obviously, future productivity growth in the United States and in the world is yet to be determined.』
ということで、では先行き何らかのイノベーション的な話があるかというと米国でも世界でもまだそれは見つからないですなあという事で・・・・・・・・・・・
『Possibly we are moving into a period of slower productivity growth--but
I for one continue to be amazed at the potential for improving the quality
of the lives of most people in the world that the IT explosion has already
revealed.』
>we are moving into a period of slower productivity growth
>we are moving into a period of slower productivity growth
>we are moving into a period of slower productivity growth
アイヤーとしか申し上げようがないですが、生産性が大きく伸びない時期に今はいるのではないかという話で、ただまあIT技術の進歩には期待をしたいようですな。
『Possibly, productivity could continue to rise in line with its long-term
historical average. After all, as the experience of the 1990s shows, productivity
cycles are extremely difficult to predict and, even considering the slowdown
of the past decade, U.S. total factor productivity growth fluctuated around
1-1/2 percent in the postwar period. In addition, the recent weakness could
reflect Reinhart-Rogoff cyclical factors associated with the financial
crisis, and pent up improvements could be revealed once confidence returns.』
生産性の向上はロングタームのヒストリカルアベレージの1%程度で推移するでしょうという見通しで、ただまあ足元ではリセッションの影響もありますのでコンフィデンス回復したらペントアップとか戻るんじゃねえのという話も。
『Finally, fears about the end of productivity gains are based on evidence
from the United States and other advanced economies. Globally, however,
there is tremendous scope for productivity gains reflecting technological
catch up, infrastructure investment, and the potential for human capital
increases due to improvements in education and nutrition, and the incorporation
and inclusion of women into the labor force. These gains should benefit
not just the emerging market economies but also the rest of world more
generally, including the United States.』
ということで生産性伸びないかもねという事ですが、一方で新興国の技術キャッチアップとかインフラ整備、先進国も含めてレーバーフォースの拡大(女性をより労働力化するとか)などによって生産性の向上が図られるかもしれませんという希望的な話をして生産性の話を締めていますが、まあ途中の説明を見ますと中々ハト派バリバリという内容になっていますな。
『At the end of the day, it remains difficult to disentangle the cyclical
from the structural slowdowns in labor force, investment, and productivity.
Adding to this uncertainty, as research done at the Fed and elsewhere highlights,
the distinction between cyclical and structural is not always clear cut
and there are real risks that cyclical slumps can become structural; it
may also be possible to reverse or prevent declines from becoming permanent
through expansive macroeconomic policies.』
ということで供給要因の見立てに関する纏め部分になってまいりますが、循環要因と構造要因の切り分けというのは難しいし、循環要因が構造要因になっていく(長期失業の問題などですな)という事もあり、しかも循環要因と構造要因では適切な対応が異なる部分があるという話で、この「循環要因と構造要因の切り分けは難しくて政策当局者の大きな課題である」という説明は一昨日引用した需要部分での話でも同じ指摘をしておりまして、この点についてフィッシャーさんは所謂どちらかという論には与しないという感じですな。
『But three things are for sure: first, the rate of growth of productivity
is critical to the growth of output per capita; second, the rate of growth
of productivity at the frontiers of knowledge is especially difficult to
predict; and third, it is unwise to underestimate human ingenuity.』
つーことで、生産性の向上が重要で向上の努力が必要という話をしている訳ですが、ただまあここまでの説明を総合すると「米国経済の基調的な成長力はあまり強くなく、今後頑張って強くしていかないと低成長経済が続く恐れがある」というのがフィッシャーさんの認識でして、つまりフィッシャーさんの場合は利上げのタイミングについてはどうなるのかというのは微妙ですけれども(というのは、今回の講演では特段物価上ブレ懸念を示していませんが、潜在成長が弱い経済でインフレ期待がそれなりにあるのであれば、成長がちょっと上に振れると物価は上に跳ねやすくなるので、その点についてどういう認識をしているのかは示していないので判らんということです)、成長力があまり強くないという認識を示しているという事はどう考えても利上げサイクルはゆっくりですし、均衡金利水準も低い所にあるでしょうというハト派全開の経済見立ての披露でありました。
・金融政策とかマクロプルーデンスの話もかなり面白いのですが一旦飛ばして(来週ネタにします)最後の部分
途中については後でまたネタにしますが『Concluding Remarks』から。
『As we continue to move forward in the aftermath of the global financial
crisis and the Great Recession, policymakers around the world are dealing
with new challenges that these historically important events have raised.』
うむ。
『In addition to the difficulties of assessing the relative importance
of cyclical (short-term) versus structural (long-term) factors affecting
the global economy, and in thinking about how to return to higher output
and productivity growth, policymakers are focusing on the uses of monetary
policy in attaining the dual goals of maximum employment and stable prices
and in maintaining financial stability. They need also to strengthen financial
sector regulation and supervision to reduce the probability of another
crisis.』
でまあ最後の一文の所は本日飛ばした部分になりますのでさて置きまして、纏めの所でもこの循環と構造の話をしている訳でして、フィッシャーさんの思いを感じるという所ですな。
『At the same time, and although I earlier foreswore discussion of fiscal
policy, it is clear that fiscal policies can be used both to increase growth
and to deal with potential problems of financial stability. 』
ということで財政政策の役割も言及していて、まあ要するに構造要因に関して金融政策で処方というのは処方が違うのでという事でしょうな。うんうん。
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2014/08/13
○フィッシャー副総裁講演ネタである
昨日は寝起きで超越斜め読み(というか見ただけ)しましたが・・・・・・・・・・・・
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/fischer20140811a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/fischer20140811a.pdf
Vice Chairman Stanley Fischer
At the "The Great Recession--Moving Ahead," a Conference Sponsored
by the Swedish Ministry of Finance, Stockholm, Sweden
August 11, 2014
The Great Recession: Moving Ahead
・出だしの講演だからなのかも知れんが説明がなげえええええええ
ということでこちらの講演なのですが、前半が経済の説明になっているのですが、この説明がまあ懇切丁寧っちゃあ丁寧なのですが、説明がやたらめったら長くて引用してネタにする方としては中々泣ける内容に仕上がっております。
いやまあまとめてしまえば「何か随分とハト派ちっくですなあ」で終わってしまうのですけれども、経済に関するポイントについてああでもないこうでもないと話をしているのでそれはそれで確認する必要がありますな。ということで・・・・・・・・・・・
『Today I will discuss three key aspects of the challenges policymakers
face as they seek to move ahead. These are: (1) The impact of the Great
Recession and the associated Global Financial Crisis on the growth of output,
both in the short term and over the longer term. (2) The reform of the
financial sector--in other words, how much progress have we made in creating
a safer and more stable post-crisis financial environment? (3) The impact
of the crisis on the conduct of monetary policy--in particular, how to
balance the goals of achieving stable inflation and full employment while
also taking into account the need to maintain financial stability.』
『I will leave it to others to address the important challenges facing
fiscal policymakers as they determine the appropriate roles and paths for
fiscal policy at both the macro- and micro-levels.』
『To keep the focus sharp, I will deal primarily with the economy of the
United States. But policymakers around the world confront related challenges
and I will draw also on the post-crisis experiences of other economies.』
てな話ですが、まあ最初の部分になります米国経済の話がやたら長いので以下鑑賞。
・まあ小見出しが『Challenges Arising from the Growth Slowdown』な訳でして・・・・・・・・
でまあ米国経済の話がおっぱじまるのですが、これがまた小見出しで出落ち状態な訳で、要するに弱そうな話をああだこうだとやっているという感じです。
『I begin by reviewing recent global economic developments and the questions
they raise about where we are likely to go from here. There has been a
steady, if unspectacular, climb in global growth since the financial crisis.
For example, based on recent IMF data from the World Economic Outlook,
which uses purchasing power parity weights, world growth averaged 3 percent
during the first four years of the recovery and as of July was expected
to be 3.4 percent this year.』
『The IMF expects global growth to reach 4 percent next year--a rate about
equal to its estimate for long-run growth. This global average reflects
a forecast of steady improvement in the performance of output in the advanced
economies where growth averaged less than 1 percent during the initial
phase of the recovery to an expected 2-1/2 percent by 2015.』
とまあ先進国は回復基調という話を最初にしているのですが・・・・・・・・・
『In contrast, the recovery in the emerging market economies started strong
but has since fallen off, in part, as fiscal policy stimulus has been pared
back.』
ということで新興国に関してはイマイチとの事ですが、更にここからが追撃の如く弱い話が。
『But--and this is no small "but"--the global recovery has been disappointing.』
ということで、講演始まって割と最初の方だと言うのにいきなりこの「世界の回復は失望的」という攻撃キタコレというカマシが来ております。
『With few exceptions, growth in the advanced economies has underperformed
expectations of growth as economies exited from recession. Year after year
we have had to explain from mid-year on why the global growth rate has
been lower than predicted as little as two quarters back.』
さらに追撃が来るのですが、「毎年のように回復見通しの実績が年初に想定するパスよりも弱いという状況が先進国で続いております」とか講演冒頭にしてハト派全開の雰囲気。
『Indeed, research done by my colleagues at the Federal Reserve comparing
previous cases of severe recessions suggests that, even conditional on
the depth and duration of the Great Recession and its association with
a banking and financial crisis, the recoveries in the advanced economies
have been well below average.』
『In the emerging market economies, the initial recovery was more in line
with historical experience, but recently the pace of growth has been disappointing
in those economies as well. This slowing is broad based--with performance
in Emerging Asia, importantly China, stepping down sharply from the post-crisis
surge, to rates significantly below the average pace in the decade before
the crisis. A similar stepdown has been seen recently for other regions
including Latin America.』
ということで、厳しいリセッションの後なので回復が遅れるという事は織り込んでいるにしてもやはり先進国の回復ペースがスローだとか、新興国では当初の立ち上がりは平均レベルだったがその後ダメダメになっていて、アジアとか中国とかラテンアメリカとかあじゃぱーですよとな。
・ロンガーランの成長見通しが低下している件
『These disappointments in output performance have not only led to repeated
downward revisions of forecasts for short-term growth, but also to a general
reassessment of longer-run growth.』
毎年の年後半にしょぼーんという話だけではありませんという件ですな。
『From the perspective of the FOMC, even in the heart of the crisis, in
January 2009, the central tendency of the Committee members' projections
for longer-run U.S. growth was between 2-1/2 and 3 percent. At our June
meeting this year, these projections had fallen to between roughly 2 and
2-1/4 percent.』
なるほどと言う所ですが、2009年のSEPと直近のSEPを持ち出してきて、FOMCメンバーの想定するロンガーランのGDPの望ましい水準の値が低下しているとの指摘キタコレ。
『This downward revision is not unique to our institution or to the United
States. Indeed, the IMF's expectation for long-run global growth is now
a full percentage point below what it was immediately before the Global
Financial Crisis. This reconsideration reflects lower projected growth
for both the advanced and the emerging market economies.』
ということで、これは米国だけの話では無くて世界的に期待成長率が下がっていますという実にこうあちゃーな指摘をしていたりするのですな、うんうん。
『This pattern of disappointment and downward revision sets up the first,
and the basic, challenge on the list of issues policymakers face in moving
ahead: restoring growth, if that is possible.』
ということで、この事実は政策当局者が直面する政策課題を意味しており、それは成長力を回復させることである、それが可能であるならば、だそうな。
『In some respects, we should not have been surprised at the prolonged
hit to output growth following the global financial crisis. As Cerra and
Saxena and Reinhart and Rogoff, among others, have documented, it takes
a long time for output in the wake of banking and financial crises to return
to pre-crisis levels.』
『Possibly we are simply seeing a prolonged Reinhart-Rogoff cyclical episode,
typical of the aftermath of deep financial crises, and compounded by other
temporary headwinds. But it is also possible that the underperformance
reflects a more structural, longer-term, shift in the global economy, with
less growth in underlying supply factors.』
ということで、金融危機の影響によるシクリカルあるいは一時的な大きな落ち込みからの回復サイクルなので時間がかかるという所ではあるのだが、ロンガータームの構造的な問題による可能性もという説明になっておりまして・・・・・・・・
『Separating out the cyclical from the structural, the temporary from the
permanent, impacts of the Great Recession and its aftermath on the macroeconomy
is necessary to assessing and calibrating appropriate policies going forward.』
でまあリセッションの後遺症に関して構造的な部分と循環的な部分を分けて考える事が政策運営において重要ですよという話。
『The difficulty in disentangling demand and supply factors makes the job
of the monetary policymaker especially hard since it complicates the assessment
of the amount of slack, or underutilized productive capacity, in the economy.
Over the longer term it will be possible to disentangle the amount of slack
on the basis of the behavior of prices and wages as the levels of resource
utilization in economies rise, but it would be better to understand why
growth has been so slow without experiencing either a runup in inflation
or a descent into deflation.』
経済のスラックを測定するのも難しくて、ロンガータームで考えた場合には賃金や価格の動向を見ながら判断するという話ですが、それよりも重要なのは「低成長の中でインフレの急上昇もデフレへの低下も起きなかったのは何故ですねん」というのを理解する事ではないかとの指摘が。
・米国経済の向かい風について
という指摘に続いて米国経済の話がおっぱじまります。
『In the United States, three major aggregate demand headwinds appear to
have kept a more vigorous recovery from taking hold. The unusual weakness
of the housing sector during the recovery period, the significant drag--now
waning--from fiscal policy, and the negative impact from the growth slowdown
abroad--particularly in Europe--are all prominent factors that have constrained
the pace of economic activity.』
米国経済の向かい風としては住宅セクター、最近影響が薄れてきたが財政緊縮、海外経済特に欧州経済がダメダメな件だそうな。
『The housing sector was at the epicenter of the U.S. financial crisis
and recession and it continues to weigh on the recovery. After previous
recessions, vigorous rebounds in housing activity have typically helped
spur recoveries. In this episode, however, residential construction was
held back by a large inventory of foreclosed and distressed properties
and by tight credit conditions for construction loans and mortgages. Moreover,
the wealth effect from the decline in housing prices, as well as the inability
of many underwater households to take advantage of low interest rates to
refinance their mortgages, may have reduced household demand for non-housing
goods and services.』
『Indeed, some researchers have argued that the failure to deal decisively
with the housing problem seriously prolonged and deepened the crisis. Growth
in other countries that experienced financial crises, including the United
Kingdom, Ireland, and Spain, has been weighted down by struggling residential
sectors.』
とまあこの辺までは住宅がコケたあと回復に時間が掛かっていますがな的な話で、その影響がどうのこうのという話なので普通の話。
『More recently, many of these factors have abated in the United States
and yet, after encouraging signs of improvement in 2012 and in early 2013,
over the past year the growth of residential construction has faltered
and home sales have fallen off. The sharp rise in mortgage interest rates
in mid-2013 likely contributed to this setback.』
ここでまたほほーという話になるのですが、昨年のモーゲージ金利の急上昇が住宅回復に水を差したという指摘をしているのがまたハト派テイストですよ先生。
次が米国の財政緊縮の影響に関してどうのこうのという話ですが、これは危機の時に拡張的な財政をおこなった(米国だけではなく欧州なども、と説明に入っていますが)事の反動がこのように起きてこのように経済に影響しているという話なのですがここ長いので引用割愛します。
で、世界のスローダウンですけどまあそんなに変わった話をしている訳ではありませんが引用だけ。
『A third headwind slowing the U.S. recovery has been unexpectedly slow
global growth, which reduced export demand. Over the past several years,
a number of our key trading partners have suffered negative shocks. Some
have been relatively short lived, including the collapse in Japanese growth
following the tragic earthquake in 2011. Others look to be more structural,
such as the stepdown in Chinese growth compared to its double digit pre-crisis
pace. Most salient, not least for Sweden, has been the impact of the fiscal
and financial situation in the euro area over the past few years. Weaker
economic conditions in Europe and other parts of the world have weighed
on U.S. exports and corporate earnings; added to the risks that U.S. financial
institutions, businesses, and households considered when making lending
and investment decisions; and at times depressed U.S. equity prices.』
でまあまずはそのまとめ。
『The housing market, fiscal consolidation, and unexpectedly anemic foreign
demand all play a significant role in explaining the weakness of aggregate
demand in the U.S. economy, weakness that could not have been accurately
predicted based on past recession experiences or by the fact that this
recession started with a massive financial crisis.』
上記の3点の影響は米国経済の需要の立ち上がりが弱い事に関する説明になりますと。
『But, turning to the aggregate supply side, we are also seeing important
signs of a slowdown of growth in the productive capacity of the economy--in
the growth in labor supply, capital investment, and productivity. This
may well reflect factors related to or predating the recession that are
also holding down growth.』
ということで、先ほどの説明の中でもあったように思えますが、需要サイドではなくて供給サイドの方に目を転じると、経済の生産力、つまり労働供給、資本投下、生産性の成長力もまた回復力に影響するファクターですよと。
・供給サイドに関しての話
『How much of this weakness on the supply side will turn out to be structural--perhaps
contributing to a secular slowdown--and how much is temporary but longer-than-usual-lasting
remains a crucial and open question.』
ということで、供給サイドについての弱さの中にどの程度の構造的要因があるのか、というのは重要かつまだ解明されていない問題であるという話をしておりまして、最初の部分と需要サイドの部分に関してはハト派全開というのは良く判ったのですが、ここで供給サイドの話が出てくる所から特色が出てきますな。
『Looking at the aggregate production function, we begin with labor supply.』
ということでまずは労働供給に関して。
『The considerable slowdown in the growth rate of labor supply observed
over the past decade is a source of concern for the prospects of U.S. output
growth.』
米国経済の労働供給力がここ10年で落ちていることは、米国の生産力の伸びに対する懸念になっていますと。
『There has been a steady decrease in the labor force participation rate
since 2000. Although this reduction in labor supply largely reflects demographic
factors--such as the aging of the population--participation has fallen
more than many observers expected and the interpretation of these movements
remains subject to considerable uncertainty.』
『For instance, there are good reasons to believe that some of the surprising
weakness in labor force participation reflects still poor cyclical conditions.
Many of those who dropped out of the labor force may be discouraged workers.
Further strengthening of the economy will likely pull some of these workers
back into the labor market, although skills and networks may have depreciated
some over the past years.』
てな訳で、人口動態的なファクターという構造要因と、景気が弱い事によるレーバーフォースからの退出という循環要因があるという指摘に加え、長期失業などによる労働者のスキル低下も問題であるという指摘をしています。
次が資本投下に関して。
『Another factor that may be contributing to a slowdown in longer-run output
growth is a decline in the rate of investment.』
ということで・・・・・・・・
『As is typical in a downturn, movements in investment were important to
the cyclical swings in the economy during the Great Recession. And, as
would be expected given the depth of the downturn, investment declines
were especially large in this episode. However, in the United States, and
in many other countries as well, the growth rate of the capital stock has
yet to bounce back appreciably--despite historically low interest rates,
access to borrowing for most firms, and ample profits and cash--causing
concerns over the long-run prospects for the recovery of investment.』
でまあ米国以外もそうですがという話で、資本投下(というか設備投資)がリセッションの後からの回復が弱くて、しかも直近では金融環境はアホほど緩和されているのに企業が借り入れなどをして投資をしていく動きが弱く、長期的にみて投資の伸びが弱いままなのではないかという懸念があるという指摘でございますな。
で、次が生産性の話になってまとめっぽくなるのですが、惜しくも時間と量の関係上(単に時間切れになっただけではないかというツッコミ不可)
続きは明日。
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2014/08/08
○ECBから少々
http://www.ecb.europa.eu/press/pr/date/2014/html/pr140807.en.html
PRESS RELEASE
7 August 2014 - Monetary policy decisions
『At today’s meeting the Governing Council of the ECB decided that the
interest rate on the main refinancing operations and the interest rates
on the marginal lending facility and the deposit facility will remain unchanged
at 0.15%, 0.40% and -0.10% respectively. The President of the ECB will
comment on the considerations underlying these decisions at a press conference
starting at 2.30 p.m. CET today.』
ということで決定はまあ予想通りの現状維持。
でもって総裁会見。
http://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2014/html/is140807.en.html(今回)
http://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2014/html/is140703.en.html(前回)
冒頭説明の最初の部分だけ前回と比較という毎度の寝起き攻撃。
『Based on our regular economic and monetary analyses, we decided to keep
the key ECB interest rates unchanged.』(今回)
『Based on our regular economic and monetary analyses, we decided to keep
the key ECB interest rates unchanged.』(前回)
さいですな。
『The available information remains consistent with our assessment of a
continued moderate and uneven recovery of the euro area economy, with low
rates of inflation and subdued monetary and credit dynamics.』(今回)
『The latest information signals that the euro area economy continued its
moderate recovery in the second quarter, with low rates of inflation and
subdued monetary and credit growth.』(前回)
今回は「ユーロ圏の等しくない回復」ということで直近のイタリア経済指標があばばばばーであったことを受けたと思われる部分が入っているので、まあそういう意味では問題意識自体は高まっているということですし、大体からして「域内不均衡」をついこの前までアピールして金融緩和政策の正当性を強調していたという事を考えますと、域内不均衡を示唆するようなこの文言が入ったのはその面からも問題意識の高まりという話になると思いますけどどうでしょうかね。
『At the same time, inflation expectations for the euro area over the medium
to long term continue to be firmly anchored in line with our aim of maintaining
inflation rates below, but close to, 2%.』(今回)
『At the same time, inflation expectations for the euro area over the medium
to long term continue to be firmly anchored in line with our aim of maintaining
inflation rates below, but close to, 2%.』(前回)
インフレ期待がアンカーというのは毎度同じ(というか違うと大変)。
『The monetary policy measures decided in early June have led to an easing
of the monetary policy stance. This is in line with our forward guidance
and adequately reflects the outlook for the euro area economy, as well
as the differences in terms of the monetary policy cycle between major
advanced economies. The targeted longer-term refinancing operations (TLTROs)
that are to take place over the coming months will enhance our accommodative
monetary policy stance. These operations will provide long-term funding
at attractive terms and conditions over a period of up to four years for
all banks that meet certain benchmarks applicable to their lending to the
real economy. This should help to ease funding conditions further and stimulate
credit provision to the real economy. As our measures work their way through
to the economy they will contribute to a return of inflation rates to levels
closer to 2%.』(今回)
『The combination of monetary policy measures decided last month has already
led to a further easing of the monetary policy stance. The monetary operations
to take place over the coming months will add to this accommodation and
will support bank lending. As our measures work their way through to the
economy, they will contribute to a return of inflation rates to levels
closer to 2%.』(前回、このパラグラフはまだ文章が続きますが比較の関係上以下は後で)
金融政策スタンスがどうのこうのの部分ですが、ECBはこの辺の説明で語順をホイホイ変えてくるので並べて前回比較がめんどいのですけど、要するに前回も今回も「この前打ち込んだ追加緩和が金融環境の緩和に貢献」「さらにまもなく予定されておりますTLTROをお楽しみに」という話をしている訳です。
でまあフォワードガイダンスがどうのこうのの部分が前回は上記引用部分に続けて話をしているのですけれども、今回は次の次のパラグラフに飛んでいるので、引用はこの先に行います。
『As stated previously, and as a follow-up to our decision in early June,
we have intensified preparatory work related to outright purchases in the
asset-backed securities market to enhance the functioning of the monetary
policy transmission mechanism. 』(今回)
『As a follow-up to the decisions taken in early June, the Governing Council
today also decided on specific modalities for the targeted longer-term
refinancing operations (TLTROs). The aim of the TLTROs is to enhance the
functioning of the monetary policy transmission mechanism by supporting
lending to the real economy. A press release on the modalities for the
TLTROs willbe published today at 3.30 p.m. As announced last month, we
have also started to intensify preparatory work related to outright purchases
in the ABS market to enhance the functioning of the monetary policy transmission
mechanism.』(前回、ここは引用の順序を入れ替えています)
前回はTLTROの詳細を公表しましたが、今回についてはABS買入についてどうなりましたねんと言いますと、これがまた「引き続き勉強中です(キリッ)」という結論になっておりまして、ドラギおじちゃんのやるやる詐欺の本領発揮ですねわかります。
ということでフォワードガイダンスに関連する部分の比較です。
『Looking ahead, we will maintain a high degree of monetary accommodation.
Concerning our forward guidance, the key ECB interest rates will remain
at present levels for an extended period of time in view of the current
outlook for inflation. Moreover, the Governing Council is unanimous in
its commitment to also using unconventional instruments within its mandate,
should it become necessary to further address risks of too prolonged a
period of low inflation. We are strongly determined to safeguard the firm
anchoring of inflation expectations over the medium to long term.』(今回)
『Concerning our forward guidance, the key ECB interest rates will remain
at present levels for an extended period of time in view of the current
outlook for inflation. Moreover, the Governing Council is unanimous in
its commitment to also using unconventional instruments within its mandate,
should it become necessary to further address risks of too prolonged a
period of low inflation. We are strongly determined to safeguard the firm
anchoring of inflation expectations over the medium to long term.』(前回、ここは先ほど引用した部分の前に入ります)
つーことでフォワードガイダンスに関する部分とか、インフレが長期にわたって低位に留まるリスクがある場合に対して対処することについて全員が一致しています(キリッ)という所とかの表現は同じということで、まあ基本的に前回の話と同じです。
でまあこの先が経済物価情勢に関するもうちょっと詳しい話になるのですが、寝起きなのでこの辺で勘弁という事で、今回見た感じですと前回と違う部分でアタクシ的にうーむと思ったのは最初の部分の「uneven」かなあと思いましたがどうでしょうかね。
でまあその認識は認識で良いのですが、じゃあECBでなんか打つ手あるのという話になると、いわゆる量的緩和政策のようなバランスシート拡大政策は預金ファシリティ金利をマイナスにしているのでしんどくて、信用緩和ちっくな物ならできますけれども目の玉飛び出るようなバランスシート拡大は同様に無理ですし、大体からして信用緩和するにもクレジット関連の市場規模がという話でさてどうするんでしょうかねえ(という意味で預金ファシリティマイナスは悪手だったと思う)。
○ちなみにBOEは現状維持
http://www.bankofengland.co.uk//publications/Pages/news/2014/008.aspx
『The Bank of England’s Monetary Policy Committee at its meeting today
voted to maintain Bank Rate at 0.5%. The Committee also voted to maintain
the stock of purchased assets financed by the issuance of central bank
reserves at £375 billion.
The Committee’s latest economic projections will appear in the forthcoming
Inflation Report to be published at 10.30 a.m. on Wednesday 13 August.』
13日にインフレーションレポートが出るとな。
『The minutes of the meeting will be published at 9.30 a.m. on Wednesday 20 August.』
ということでメモでした。
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2014/08/07
○またまた忘れていましたがプロッサー総裁のタカ派芸を鑑賞
http://www.philadelphiafed.org/newsroom/press-releases/2014/080114.cfm
President Plosser Comments on FOMC Dissent
August 1, 2014
Philadelphia Fed President Plosser Gives Statement on Dissenting Vote at the
Federal Open Market Committee meeting of July 29-30, 2014
金曜に出ていたプロッサー総裁による俺様の反対理由表明ですので一応鑑賞。
『The economy has improved significantly this year, and inflation and unemployment
have moved much closer to the FOMC's longer-term goals. However, neither
the pace of the reduction in asset purchases nor its end date has been
modified, nor has the time-dependent language associated with the projected
liftoff of the federal funds rate been adjusted.』
『Thus, I cast a dissenting vote because I opposed retaining the statement
language that reads "…it likely will be appropriate to maintain the
current target range for the federal funds rate for a considerable time
after the asset purchase program ends." I viewed such language as
an inappropriate characterization of the future path of policy and so may
limit the Committee's flexibility going forward.』
ということで、経済物価情勢が改善しており、目標に近づいているにも関わらず、資産買入縮小のペースは変えないし、その上先行きの金融政策運営に関する文言も変えないとは如何な物かということで反対したとのお告げですが、確かにまあプロッサー総裁が上記の所で指摘しているように、資産買入規模の縮小ペースに関しては「経済状況によって変化させる」という話だったにも関わらず、結局タイムディペンデントみたいな形での縮小になっている訳で、このままフォワードガイダンスの文言を継続したら、結局利上げタイミングも経済物価情勢ではなくタイムディペンデントになるんじゃネーノという指摘をしているのですな。
『In December 2013, the FOMC began to taper its asset purchase program,
indicating that it was not on a preset course, but that the pace depended
on the performance of the economy.』
ということでTaper開始の時に「経済次第」と言ってたのはどうしたといういい感じの逆ねじ食らわせ攻撃ですな。
『The Committee also indicated it was likely that it would be appropriate
to maintain the current range of the federal funds rate well past the time
that the unemployment rate declines below 6.5 percent. At the time this
decision was made, the unemployment rate was 7.0 percent, and year-over-year
PCE inflation was 1.0 percent. With the recovery appearing somewhat unsteady
and with the possibility of inflation falling further, caution and patience
seemed prudent.』
当時はまだ先行きに対して慎重に見る必要がありましたが・・・・・・・・
『My own assessment at that time was that the economy would gradually recover.
I projected that by the fourth quarter of 2014 the unemployment rate would
decline to 6.2 percent, and year-over-year PCE inflation would rise to
1.8 percent. Consistent with that view of gradual economic recovery, I
believed that an appropriate monetary policy would require the funds rate
to rise to 1.25 percent by year-end 2014.』
『Moreover, I anticipated continued progress toward economic health in
2015, with the unemployment rate reaching 5.8 percent and inflation running
at 2.0 percent. Consistent with these outcomes, my associated funds rate
was in the neighborhood of 3.25 percent at the end of 2015.』
ということで、プロッサーのおっちゃんの主張は思いっきり経済見通しによるものでして、スタイン前理事のような「プルーデンス的に見た場合の金融不均衡リスクガー」という要素は全然入っていないのは注目すべき所ですし、他のタカ派の方でも特にこの金融不均衡ネタを正面切って突っ込んでくる人はいませんので、即ち経済物価情勢というか物価が強くなって来ればタカ派が元気になって、物価がしょぼーんとしてくるとタカ派もしょぼーんとなる、という形にはなりますが、米国金融市場でクレジットバブルヒャッハーとかやっていてもマネタリーポリシー的には知らんがなという形になるというのがまあ明確ではありますな。
しかし2015年末の適切なFF金利が3.25%近辺です(キリッ)とかどんな利上げを想定しているんじゃこのおっちゃんは・・・・・・・・・・・・
『My views on the appropriate funds rate settings were - and continue to
be - informed by Taylor-type monetary policy rules that depict the past
behavior of monetary policy, which I find useful for benchmarking my policy
prescriptions.』
テイラールール(というか多分その修正版)で金利政策運営を考えるべしとな。
『With the economy having already reached my year-end 2014 forecast for
inflation and unemployment, and appearing to be well on its way toward
achieving my 2015 forecasts approximately a year ahead of schedule, the
funds rate setting remains well behind what I consider to be appropriate
given our goals.』
ほうほうそれでそれで?
『In addition, the economy today is very close to achieving the central
tendency outcomes for 2015 reported in the December 2013 Summary of Economic
Projections. Specifically, the central tendency projection for unemployment
at the end of 2015 was 5.8 to 6.1 percent, and that for inflation was between
1.5 and 2.0 percent. From this perspective, we are nearly 18 months ahead
of where the Committee thought we would be just seven months ago. Consistent
with these projections for 2015, 14 of 17 participants indicated that the
federal funds rate should be above zero, with a median value of 75 basis
points. Yet the Committee's statement does not appear to reflect what was
once thought to be appropriate policy based on the behavior of unemployment
and inflation. 』
プロッサー総裁的には現在の「物価と雇用のゴールに近づいても政策金利は低く抑えるのが適切」というFOMCの中心的な考え方がそもそもケシカランという話であって、テイラールール的に運営せえという話なのですが、どこでその話をしてたか忘れましたが、イエレン議長は副議長時代から何度かその辺のテイラールールと実際の金融政策運営の話をしていまして、「経済に大きなスラックがある内は、いわゆるテイラールールのような形で求められる政策金利水準は過大推計になる(スラックがある分だけテイラールールよりも低くないとイクナイという理屈)」という話をしておりますので、この辺りに関する認識部分でFOMCの中心的な考え方(というか執行部の考え方)との乖離があるというのもポイントになるかと思われます。
『Thus, given the clear progress we have made toward achieving our long-term
goals over the past year, and the progress and momentum that appears to
be building in the economy and in the broader labor market, I no longer
believe that the forward guidance language in the statement is appropriate
or warranted.』
ということで反対をしているという話で、タカ派ゆうてもプロッサーさんの他にラッカーさんだのフィッシャーさんだのジョージさんだのが居まして、この人たちのこの手の説明を良く良く再確認する必要はあるのですが、基本的に(前のスタイン理事とは違いまして)このタカ派のセンセイ方の説明って概ねプロッサーさんが今回示したような話に近い話をしているとあたしゃ認識しております。
つーことで、今後の利上げタイミングやそのペースに関しては、「実際の物価推移」というのに加え、「経済のスラック」に関する指標、と言いましても直接スラックを計測できる訳では無くて色々な指標を見ながら判断するという話になりますが、その辺りの指標とされているもの(最近は賃金に関しての話が多いようですな)の推移というのが、イエレンチームが正しいのかタカ派軍団が正しいのかという話のポイントになるとは思います。
でですね、更に余談ちっくになりますが、そういう意味では延々と「経済の余剰生産力ガー」と言い続けていた英国中銀様におかれまして物価がホイホイ上昇してきて割と豹変してきたりするという先行事例がありまして、そらまあ経済の構造が米国と英国では全然違うので必ずしもそれがそのまま使える話で無いのですけれども、最近ちとネタ採用していなくてアレなBOEのここ暫くの議論を再度じっくり確認しておくというのも米国の今後の経済指標から金融政策運営を見る中での参考になるかも知れませんなあと勉強する気を新たに起こす今日この頃でした(勉強する気は起こったが勉強するとは必ずしも言ってません^^)。
○題名に釣られたが一般的な話でした
http://www.ecb.europa.eu/press/inter/date/2014/html/sp140804.en.html
Mario Draghi: Central bank communication
Opinion piece by Mario Draghi, President of the ECB,
published in Handelsblatt on 4 August 2014
Edited transcript of Mario Draghi’s speech at PR Manager of the Year Award (15/07/2014)
7月15日にスピーチした内容についてドイツの新聞のハンデルスブラットに掲載されたので絶賛掲載したようなのですが、ドラギのおっちゃんが「中央銀行のコミュニケーション」というお題で話をするとはやるやる詐欺の極意と奥義みたいな話かと思ったら別にそんな事はありませんでした、と超斜め読みで読んだだけなのでそう思ったのですがどうですかね。
後半の方から。
『In the first case, the main challenge for the ECB was to reconcile three
attributes of central banks that do not immediately fit together: being
very powerful and independent yet unelected. The best example of a country
that had done this successfully was Germany. Its answer was to uphold the
Deutsche Bundesbank’s independence but to constrain its powers within
a narrow mandate. And the contours of that mandate were not set by the
central bank itself, but by legislators, who themselves were democratically
elected.』
『This model has worked because, by sticking closely to its mandate, the
Bundesbank has gained the trust of the people. It has cultivated this trust
by actively communicating the rationale for its mandate and its plans to
achieve it. This inspired the ECB’s founding fathers to give the ECB an
equally clear and narrow mandate oriented towards price stability. And
we have established trust by clearly communicating that mandate and, of
course, delivering it.』
ブンデスバンクでのモデルを基に物価安定に関するECBのコミュニケーションも基本がつくられたそうですよ。
『This task is more complex for the ECB, however, than it was for the Bundesbank
in the past or the Fed today. Building trust among the 335 million citizens
of the euro area is a major communication challenge. We are communicating
in 18 countries using 15 different languages. In all these countries, citizens’
expectations are different.』
ただ、ドイツ一国と欧州全体という違いがありECBの与えられたタスクはより複雑になっていると。
『For example, my predecessor as ECB President would tell me that if he
took a walk in Frankfurt, people would often ask him “when are you finally
going to raise interest rates?” But if he took a walk in another major
city just a few days later, people would ask him “when are you going to
lower interest rates?” We deal with this plurality by making use of the
inherent advantage of having a Eurosystem of 18 national central banks
- that is, having communications departments in each country that make
our messages heard and understood in the local context. But this remains
a continuous challenge.』
でまあ合議体としての利点をコミュニケーションポリシーの中で生かしていくとかそんな話をしておりまして、まあ特段変わった話をしている訳ではありませんでしたという所ですな。以下は「非伝統的政策をしているので更にコミュニケーションは重要」という話になっていますが引用割愛します。
まあこれですが、話自体は前に行われたものですがECB理事会の直前にドイツの新聞がしらっと出してECBのサイトにも出てくるという流れに何か意味があるのかも知れないし単に新聞サイドが理事会の直前だからここで記事にしたらウケるだろうと思って出しただけなのかも知れませんので、あまり深く意味を考える必要はないのかもしれませんけれども・・・・・・・・・
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2014/07/31
○FOMC声明文はあたしゃキタコレと思ったんですけどねえ・・・・・・・
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20140730a.htm(今回)
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20140618a.htm(前回)
んーっとですね、確かにまあこの声明文だけをもって利上げ予想時期を前倒しする必要は無いと思いますが、この調子で見方が強くなって行くとその後の利上げ(またはバランスシート調整)ペースって微妙な気もするんですけどねえ・・・・・・・と何も見ないで声明文比較だけした時に思った(だからドル高はFOMCだと思ってたら実はGDPだったというのでほーという所で)のですけどねえ。
・第1パラグラフ:経済に関する文言がやたらと強くなっている件について
『Information received since the Federal Open Market Committee met in June
indicates that growth in economic activity rebounded in the second quarter.』(今回)
『Information received since the Federal Open Market Committee met in April
indicates that growth in economic activity has rebounded in recent months.』(前回)
ということでまず総括判断部分で「リバウンド」の状況について現在完了形から過去形になりまして、「本年2Qの経済はリバウンドしました(キリッ)」という言い切り型に。
『Labor market conditions improved, with the unemployment rate declining
further. However, a range of labor market indicators suggests that there
remains significant underutilization of labor resources.』(今回)
『Labor market indicators generally showed further improvement. The unemployment
rate, though lower, remains elevated.』(前回)
従来は「労働市場は改善しているけれども失業率が高い」となっていたのですが、ついに失業率改善を受けて失業率云々では無くて「顕著な労働資源の余剰」というような話になっていまして、労働市場のスラックみたいな形に表現が変わっていますな。でまあこれなんですけど、そもそも失業率が自然失業率よりもそれなりに高いという状況は労働市場にスラックがあるという事を意味する訳でして、失業率がまだ高いというのをこう言い換えているという話ではあるのですが、ただまあこういう「総合的判断」文言に変わったという事は、何らかの状況変化の場合に梯子を盛大に外される可能性があると思うのですけどねえ。
『Household spending appears to be rising moderately and business fixed
investment is advancing, while the recovery in the housing sector remains
slow. Fiscal policy is restraining economic growth, although the extent
of restraint is diminishing.』(今回)
『Household spending appears to be rising moderately and business fixed
investment resumed its advance, while the recovery in the housing sector
remained slow. Fiscal policy is restraining economic growth, although the
extent of restraint is diminishing.』(前回)
ここでは企業の固定資産投資について「拡大を取り戻した」という表現が「拡大している」に替わっておりまして、ここの判断も引上げになっています。
『Inflation has moved somewhat closer to the Committee's longer-run objective.
Longer-term inflation expectations have remained stable.』(今回)
『Inflation has been running below the Committee's longer-run objective,
but longer-term inflation expectations have remained stable.』(前回)
あたしゃここを見てヒャッハーと思ったのですが、物価に関しては今回思いっきり「ロンガーランの目標に若干近づいている」という表現になっていて、しかもこの後で説明しますが第2パラグラフの中で従来あった「物価がマンデート水準よりも低い状況が長期化するのは懸念だがね」という表現がバッサリ削除されていまして、そこって結構大きな問題だと思うのですが意外に市場が反応しないのねというところではあります。
・第2パラグラフ:先行き見通しを引き上げるわ物価に関する文言は強くなるわ
『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster
maximum employment and price stability.』(今回)
『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster
maximum employment and price stability.』(前回)
ここはいつもの話。
『The Committee expects that, with appropriate policy accommodation, economic
activity will expand at a moderate pace, with labor market indicators and
inflation moving toward levels the Committee judges consistent with its
dual mandate.』(今回)
『The Committee expects that, with appropriate policy accommodation, economic
activity will expand at a moderate pace and labor market conditions will
continue to improve gradually, moving toward those the Committee judges
consistent with its dual mandate.』(前回)
今回の先行き見通しですが、先行きの経済についての改善ペースは「moderate」のままなんですけど、どさくさに紛れて今回労働市場とインフレがマンデートに向かって改善する動きについて入っていた「improve
gradually」という文言が外れていまして、普通に「マンデートに向かって改善する」という文言になっておりまして、何気に先行き見通しのベクトルの傾きが変化してねえかと思うのですが。
『The Committee sees the risks to the outlook for economic activity and
the labor market as nearly balanced and judges that the likelihood of inflation
running persistently below 2 percent has diminished somewhat.』(今回)
『The Committee sees the risks to the outlook for the economy and the labor
market as nearly balanced. The Committee recognizes that inflation persistently
below its 2 percent objective could pose risks to economic performance,
and it is monitoring inflation developments carefully for evidence that
inflation will move back toward its objective over the medium term.』(前回)
前半のリスクバランスの話は前回通りで変わらないので良いとしまして、その後の物価に関する文言がここで大きく変化していまして、先ほど申し上げた通りに「インフレがマンデート水準を下回って長期間推移するリスク」に関する文言をバッサリと削除してきまして、ディスインフレリスクは無くなりました(ドヤッ)となっているのはおーという感じで。
でまあそれはそれで結構な話なのですが、そもそも論として雇用重視で緩和的な政策を継続できる背景には「そうは言っても物価がアガランチ会長なので少々吹かしてもヘーキヘーキ」というのが背景にあった訳で、肝心の物価部関する部分が普通になってきますと、さて今後の正常化の際に本当の本当にメジャードペースで大丈夫なのか(前回はそれでクレジットバブルヒャッハーとなっている訳ですし)という話になる可能性もある(なるとは言っていませんので念の為)訳で、まー今の所急にその辺を懸念する必要は特段無いでしょうし、最近の情報発信からして目先は賃金推移でも見てれば良いのでしょうけれども、賃金上昇率がそれなりに回復していく中で物価が更に上に振れるような場合には正常化のペースについての市場の想定が一気にシフトする可能性もあるんじゃネーノとは思いますけどどうなんでしょうかねえ。
まあFOMCの中ではより「物価重視」に寄っている人もいる(ただし来年の投票メンバー的にどうかというとどちらかと言うとコウモリ派のローゼングレンもウィリアムスもバランスアプローチであまり物価物価していない)ので、物価重視の人たちも大人しくしている前提であるディスインフレリスクへの気配りの方がスコーンと抜けると議論の焦点が徐々に変わってくる感じはあるのですが、まあ実際どうなのかは中の人でも無いので判らんぞなという所です。
・第3パラグラフ以降は基本同じ文言である
第3パラグラフ以降(3が資産買入ペースの話、4が先行きの資産買入、5が金利のフォワードガイダンス、6が先行きの利上げペースに関する文言で7が票決)は最後の票決の部分の7パラが違う(つまり反対票あり)以外では買入の額が違う(Taperしているのだからその違いはas
is expectedである)だけ違って後は同じ文言だと思いました(思いましたと言うのは透かし読みと音読で確認しただけで差分ツールのような高級なものをおじちゃんは持っている訳ではないので人力差分計測状態なので自信はあるが保証は致しかねます)。
ということですが増量の為(じゃなくて後で自分が見るときに便利なので^^)今回分だけ引用しておく。
第3パラグラフ(長いので途中で段落分けします)
『The Committee currently judges that there is sufficient underlying strength
in the broader economy to support ongoing improvement in labor market conditions.
In light of the cumulative progress toward maximum employment and the improvement
in the outlook for labor market conditions since the inception of the current
asset purchase program, the Committee decided to make a further measured
reduction in the pace of its asset purchases.』(今回)
『Beginning in August, the Committee will add to its holdings of agency
mortgage-backed securities at a pace of $10 billion per month rather than
$15 billion per month, and will add to its holdings of longer-term Treasury
securities at a pace of $15 billion per month rather than $20 billion per
month. The Committee is maintaining its existing policy of reinvesting
principal payments from its holdings of agency debt and agency mortgage-backed
securities in agency mortgage-backed securities and of rolling over maturing
Treasury securities at auction.』(今回)
『The Committee's sizable and still-increasing holdings of longer-term
securities should maintain downward pressure on longer-term interest rates,
support mortgage markets, and help to make broader financial conditions
more accommodative, which in turn should promote a stronger economic recovery
and help to ensure that inflation, over time, is at the rate most consistent
with the Committee's dual mandate.』(今回)
第4パラグラフ
『The Committee will closely monitor incoming information on economic and
financial developments in coming months and will continue its purchases
of Treasury and agency mortgage-backed securities, and employ its other
policy tools as appropriate, until the outlook for the labor market has
improved substantially in a context of price stability. If incoming information
broadly supports the Committee's expectation of ongoing improvement in
labor market conditions and inflation moving back toward its longer-run
objective, the Committee will likely reduce the pace of asset purchases
in further measured steps at future meetings. However, asset purchases
are not on a preset course, and the Committee's decisions about their pace
will remain contingent on the Committee's outlook for the labor market
and inflation as well as its assessment of the likely efficacy and costs
of such purchases.』(今回)
第5パラグラフ(長いので途中で段落分けします)
『To support continued progress toward maximum employment and price stability,
the Committee today reaffirmed its view that a highly accommodative stance
of monetary policy remains appropriate. In determining how long to maintain
the current 0 to 1/4 percent target range for the federal funds rate, the
Committee will assess progress--both realized and expected--toward its
objectives of maximum employment and 2 percent inflation. This assessment
will take into account a wide range of information, including measures
of labor market conditions, indicators of inflation pressures and inflation
expectations, and readings on financial developments.』(今回)
『The Committee continues to anticipate, based on its assessment of these
factors, that it likely will be appropriate to maintain the current target
range for the federal funds rate for a considerable time after the asset
purchase program ends, especially if projected inflation continues to run
below the Committee's 2 percent longer-run goal, and provided that longer-term
inflation expectations remain well anchored.』(今回)
第6パラグラフ
『When the Committee decides to begin to remove policy accommodation, it
will take a balanced approach consistent with its longer-run goals of maximum
employment and inflation of 2 percent. The Committee currently anticipates
that, even after employment and inflation are near mandate-consistent levels,
economic conditions may, for some time, warrant keeping the target federal
funds rate below levels the Committee views as normal in the longer run.』(今回)
・タカ派芸人プロッサー先生の反対票キタコレの第7パラグラフ
『Voting for the FOMC monetary policy action were: Janet L. Yellen, Chair;
William C. Dudley, Vice Chairman; Lael Brainard; Stanley Fischer; Richard
W. Fisher; Narayana Kocherlakota; Loretta J. Mester; Jerome H. Powell;
and Daniel K. Tarullo.』(今回)
『Voting for the FOMC monetary policy action were: Janet L. Yellen, Chair;
William C. Dudley, Vice Chairman; Lael Brainard; Stanley Fischer; Richard
W. Fisher; Narayana Kocherlakota; Loretta J. Mester; Charles I. Plosser;
Jerome H. Powell; and Daniel K. Tarullo.』(前回)
プロッサー先生は反対ですのでこの次に。
『Voting against was Charles I. Plosser who objected to the guidance indicating
that it likely will be appropriate to maintain the current target range
for the federal funds rate for "a considerable time after the asset
purchase program ends," because such language is time dependent and
does not reflect the considerable economic progress that has been made
toward the Committee's goals.』(今回)
資産買入プログラムが終了しても相当の期間はFFレートを低位に維持する、という文言はタイムディペンデントであって、経済が顕著にマンデート水準に向けて改善しているという現状にそぐわないという理由で反対していますが、要するに「お前らもっと早く正常化着手せえやゴルァ」と仰せになっている訳ですな、うんうん。
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2014/07/29
○来年の投票権がある2名の連銀総裁が共演(?)していた件ついて(ただしちょっと前の話)
アトランタ連銀ロックハート総裁
http://www.frbatlanta.org/news/speeches/140711_speech_lockhart.cfm
Thoughts on Liftoff
Dennis Lockhart
President and Chief Executive Officer
Federal Reserve Bank of Atlanta
Global Interdependence Center
Sixth Annual Rocky Mountain Economic Summit
Jackson Hole, Wyoming
July 11, 2014
シカゴ連銀エバンス総裁
http://www.chicagofed.org/digital_assets/publications/speeches/2014/07-11-2014-charles-evans-monetary-policy-rocky-mountain-summit-jackson-hole-wy.pdf
Monetary Policy Strategies & Accountability
Sixth Annual Rocky Mountain Economic Summit
Hosted by the Global Interdependence Center (GIC), Jon M. Huntsman Business
School at Utah State University and the Bronze Buffalo Foundation
Jackson Hole, Wyoming
July 11, 2014
ということで、7月11日の話で恐縮ですが、来年のFOMC投票権のあるアトランタとシカゴ
(あとはリッチモンドとサンフランシスコね)連銀総裁がコンファレンスで金融政策運営に関して
お話を(しかも場所はジャクソンホール^^)しておりましたので少々。
なお、ロックハート総裁の講演本文の冒頭に、
『I plan to focus my prepared remarks before the conversation with John Silvia and my colleague,
Charlie Evans, on the question that is increasingly commanding the attention of Fed watchers,
financial markets, and Fed policymakers. In its most succinct form that question is, "When is liftoff?"
I will share how I, as one policymaker, am approaching that policy question.』
ってありますので、まあお二方の講演が並べてなのかどうか知りませんが、そんな感じで展開したんでしょうな。
○ロックハート総裁は「利上げ着手は来年後半」
http://www.frbatlanta.org/news/speeches/140711_speech_lockhart.cfm
http://www.frbatlanta.org/documents/news/speeches/140711_speech_lockhart.pdf
でまあロックハート総裁の講演については最初にエグゼクティブサマリーがあるのでそちらからまずは引用するだよ。
『Key points』って所ですね。
『Atlanta Fed President and CEO Dennis Lockhart, in a July 11 speech in
Jackson Hole, Wyoming, discusses the timing of liftoff, or the raising
of the federal funds rate.』
ほうほうそれでそれで?
『Lockhart ties a liftoff decision to the economy's proximity to achieving
the FOMC's two monetary policy objectives, price stability and maximum
employment.』
ということで、基本的には「バランスアプローチ」説を唱えております。
『Lockhart says inflation has been running below 2 percent, the FOMC's
target rate, for quite a while, but very recently inflation numbers have
been firming.』
足元では物価が強含みになっているとな。
『Lockhart believes the recent firming of price data removes some downside
risk, but we should be seeing other indicators of the absorption of economic
slack, especially wage growth.』
では物価について強気かというとそうではなく、最近の動きは物価のダウンサイドリスクを低めたものの、特に賃金の上昇ペースなどから見られる経済のスラックがあって、そちらを注目すべきとの話ですから、この辺の話は先般ネタにしたウィリアムス総裁の指摘でもありますし、まあ雇用統計の賃金部分は今後注目されるだろうなあという所で。
『Lockhart feels a number of troubling employment phenomena have been at
work, including the drop in prime-age participation in the labor force
and the number of people working part-time for economic reasons.』
でもってデュアルマンデートのもう一つの雇用に関しては「a number of troubling
employment phenomena」とのことですな。 ただし(ここでは書いてませんが)本文の方には直近(7月頭の)雇用統計は「That
said, the report that came out on July 3 was certainly encouraging.」ってな話をしています。
『Lockhart cites two risk considerations. He feels we have to contemplate
the risk of a prolonged overshoot of 2 percent inflation and is also looking
at financial system stability as a potential risk. But he is not overly
concerned.』
最初これを見た時に「2%を下回る方か」と思ってしまいましたが、良く良く見るとオーバーシュートと言っていまして(汗)、本文読みますとやはり「2%を上回って推移する点」についてのリスク認識という話でした。
でまあこれまためんどいので本文引用割愛しますが、2%を上回って推移するリスクについては「インフレ期待がどこからどう見てもアンカーされているので無問題」という説明になっていまして、そういう点ではコチャラコタ総裁のようなプライスレベルターゲット的にオーバーシュート問題無しという話では無いので、物価がホイホイと上昇してきた場合にはちと見方が変わるかもしれませんが、基本的に「経済のスラックがある、特に賃金」という話をしていて、その認識に変化を生じさせるような事案が起きない限り特段ケツに火が点くような事にはならない、とまあそういう風に思いますがどうでしょうかね。
あと、ファイナンシャルスタビリティーに関しては折角なので引用しておく。
『I am also monitoring the risk situation as regards financial system stability.
With equity indexes at or near historic highs, financial market volatility
very low, and evidence of "reach for yield" behavior, concern
about financial system and market instability has been building. In the
thinking of some observers, the potential for a rash of damaging financial
system instability can be associated with a continued low-rate environment.』(本文より)
『Again, while remaining watchful, I'm not overly concerned that financial
market conditions today map to systemic risk concerns with high potential
for spillover to the real economy, the Main Street economy, if you will.
My emphasis on "systemic" and "spillover" is intentional.
I see a difference between some degree of fragility in financial markets
due to investors widely carrying "risk-on" positions and the
realistic chances of a broad, systemic meltdown that engulfs the broad
economy. I think the latter should be the Fed's and FOMC's greater concern.』(これまた本文より)
ということで、利回り追求の動きがある事については認めているのがほうほうそうですかという所ですが、じゃあそれが金融不安定だのシステミックリスクだのという話になるかというと、それに関しては特段大きな問題になり得る状態とは認識していない(まあ認識してたらのんびりしてられませんが)との話になっていまして、ここの説明のニュアンスが実際どうなのかは若干気になりますが、まあ多分今後もこんな感じで「特に問題ない」という話になるんじゃネーノとは思います。
エグゼクティブサマリーに戻りまして、
『With all factors considered, Lockhart maintains the view that economic
conditions that would justify a liftoff decision will arrive in the second
half of next year.』
ということで、ロックハート総裁の見立ては来年の後半に利上げ着手というのが結論になっています。
○エバンス総裁の方はプレゼン資料なので何ですが
http://www.chicagofed.org/digital_assets/publications/speeches/2014/07-11-2014-charles-evans-monetary-policy-rocky-mountain-summit-jackson-hole-wy.pdf
プレゼンの3枚目に『Long-Run Strategy for Monetary Policy (January 2012,
reaffirmed thereafter every January)』ってのがありまして、
『Balanced approach to reducing deviations of inflation and employment from long-run objectives.』
ってのがあって、Balanced approachの所に下線が引いてありまして、ロックハート総裁と同様に「バランスアプローチ」という話をしていまして、この辺は物価に偏った話をしていなくて、FRBの公式見解に沿った説明になっていますな、うんうん。
でまあ4ページ目の所が『Persistently Low Inflation and Wage Growth』というお題になっていまして、これまた「賃金の上昇」という部分についての説明が入っていまして味わいがあります。どう見てもこれ賃金の推移に今後やたら注目が集まりそうですね。
でもって利上げ時期に関してはこのプレゼンだけだと微妙なのですが・・・・・・・・・・・・
7〜9ページに『Bull’s-Eye Accountability for Fed’s Dual Mandate』ってのがあって、そのチャートを見ると2015年や2016年には概ねマンデートに近いという話になっているのですが、その次にある10ページに『Why
Has Achieving Dual Mandate Been So Hard?』というのがありましてそこに、
『Deleveraging in the aftermath of the financial crisis
Global risks
Unusually restrictive fiscal policy
Monetary policy constrained by zero lower bound』
ってのが並んでいまして、最後の14ページ目に『Interest Rates are Low Globally』というのが止めのように打ち込まれている所を見ると、まあエバンス総裁は利上げ着手を急ぐ必要なしという話をしているんでしょうなあというのは想像できるところですが、じゃあ全然利上げしないかと言うとそうでもなく、まー普通に来年後半のどこかでというような話じゃないかとは思います(他のスピーチとか持って来れば良いですねすいませんすいません)という所で。
つーことでこの二つを並べてみると、賃金の動向が結構重要だなというのと、多分利上げ着手は来年後半だけど、さて来年後半とはいつでしょうというのが幅があって何ともではあります。ただまあ当初イエレン先生が口を滑らせた「Taper終了から半年程度」というよりはどう見ても長そうですなあという話ですが、それほどのサプライズでも無いでしょうなという所で。
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2014/07/23
○ウィリアムスSF連銀総裁は雇用重視+住宅市場に注目&物価は懸念せず&マネタリーの効果の話はスルーとな
SF連銀は来年のFOMC投票権があります(他はシカゴ、リッチモンド、アトランタ)のですが、イエレン議長が副議長になる前はSF連銀総裁であったことからお察しのようにSF連銀って基本的に現執行部ヨイショの系統でして、SF連銀のペーパーとかも今の政策効果に関するペーパーとかが中々味わいのある我田引水ちっくなものとかが散見されまして(幾つかありますが過去一番話題になったのは「国債これだけ買入を行ったので雇用がこれだけ増えました」という桶屋理論を出したペーパーですかねえ)、どこかの中央銀行のレビューシリーズ(銃声)。
ということでちと前のネタですいませんがウィリアムス総裁の講演から。
http://www.frbsf.org/our-district/press/presidents-speeches/williams-speeches/2014/june/accommodative-monetary-policy/
http://www.frbsf.org/our-district/press/presidents-speeches/williams-speeches/2014/june/accommodative-monetary-policy/Accommodative-Monetary-Policy-Savior-or-Saboteur.pdf
Accommodative Monetary Policy: Savior or Saboteur?
Presentation to the Utah and Montana Bankers Association Sun Valley, Idaho
By John C. Williams, President and CEO, Federal Reserve Bank of San Francisco
For delivery on June 30, 2014
何でこうURLが長いのよと毎度思うのですが、リンクは途中までの所で貼っておきます(画像の体裁がおかしくなるから)ね。
なお今更6月末の講演を何故ネタにするとかいうツッコミはしないようにお願いします(汗)。
・経済についてはまず現状までの回復を強調する
『Economic outlook』って所から。
『First, the economic outlook. In a nutshell, the U.S. economy is looking
a lot better these days. There have been some glitches; most notably, gross
domestic product (GDP) shrank in the first quarter. However, the evidence
points to transitory factors being the main culprit there, such as the
terrible weather that afflicted large portions of the country. With that
behind us, I expect a rebound to moderate growth in the second quarter
and for the rest of this year.』
ということで1Qの落ち込みは一時的な天候要因などによるもので今後は回復軌道に乗るとな。
『Looking past the first-quarter drop, I expect real GDP growth to run
above 3 percent for the remainder of the year. That’s in no way blisteringly
fast, but it is enough to keep the labor market moving in the right direction.』
てな訳で、この先の方でも説明しているのですが、基本的に年後半から年率3%成長のペースになって、2015〜2016年もそのペースでの回復という予想になっています。
・一方で雇用に関しては改善を評価しつつ自然失業率までの低下が欲しいとな
『Indeed, despite the bad news on GDP in the first quarter, the employment
data have been outright encouraging. Nationally, we’ve added an average
of about 200,000 jobs per month, pushing the total number of jobs back
above its pre-recession peak.』
雇用は強めで推移していますが・・・・・・・・・・
『This is an important milestone, and I’m optimistic about the outlook-but
I should stress that the labor force has grown quite a bit since the recession
started; we would need to surpass pre-recession numbers to get back to
a normal labor market. A labor market working at full speed has reached
what economists refer to as the “natural rate” of unemployment-that’s
the lowest rate we can reasonably expect in a well-functioning, healthy
economy.』
完全失業率に下がるまで盛大な緩和政策を続けていたら金融政策の効果のラグを考えるとどう見ても金融緩和やり過ぎにならないかという点については物価の話の所で一応説明はある。
『Obviously, that number will never be zero-in a dynamic, ever-changing
economy like ours, people will get laid off and quit jobs, and new people
will enter the workforce. I put the natural rate at around 5-1/4 percent.
So with the current unemployment rate at 6.3 percent, there’s still a
way to go before we’re at full employment.』
完全失業率を5.25%で見ているような。
・回復に関して住宅市場を注目とな
ちょっと飛びまして今後の回復に関するファクターにバランスシート調整を挙げていまして、そのバランスシート調整の中では住宅市場を挙げています。
『A key contributor to the improving economy is strengthening balance sheets,
both for households and the banking sector.』
ほうほうそれでそれで?
『As house prices have climbed over the past few years, the number of borrowers
underwater has come way down. Combined with the increase in jobs, that
means fewer mortgages are going into foreclosure.』
住宅価格上昇で担保価格が愛の水中花状態になっている物件も減ったし雇用が改善したから支払い不能であばばばばーの債務者も減りましたとな。
『Banking conditions more generally continue to improve.1 Banks in our
District are better capitalized and more liquid, earnings have risen, and
loans are growing.』
銀行の財務も改善と。
『I know that there are concerns about narrow interest rate margins and
the impact of the eventual rise in interest rates, particularly among community
bankers. There’s no doubt that narrow interest margins have held down
banks’ earnings, but as banking conditions and the overall economy continue
to strengthen, I see earnings recovering as well.2 Now, some banks, looking
to increase income, have added to their holdings of longer-term assets.
This increases their interest-rate risk, which remains a focus area for
our bank supervisors.』
でまあここで銀行のスプレッドがナローになっているので金利がイベンチュアルに上昇した時に銀行の財務状況に悪影響を与えるのではないかという懸念に対してお答えしますとの事ですが、説明としては「状況が改善して収益状況が良くなっているのだからヘーキヘーキ」という話にしかなっていないと思いますが、最後に一応金融機関の金利リスク拡大の認識は一応しているという話をしていますな。
・先行きの見通しの纏め
『Let me wrap this all into a forecast for the next few years. I see real
GDP growth averaging a bit above 3 percent in 2015 and 2016, which should
be enough to generate relatively strong job growth. I expect the unemployment
rate to gradually decline, hitting about 6 percent at the end of this year,
falling below 5-1/2 percent by the end of next year, and reaching my estimate
of the natural rate by the first half of 2016.』
ということで、2016年前半に自然失業率近くの水準まで失業率が改善するという見通しです。だから利上げをどうする的な話はスルーしていますが。
・インフレに関する言及が超あっさりワロタ
で、この経済に関する部分の最後の最後にやっと物価に関する話が出てきます。
『I’ll also say a few words about inflation.』
a few wordsとな。
『Those of us born before the 1970s reflexively worry about high inflation,
but the problem for the past few years has actually been inflation that’s
persistently low.』
昔と違って今は低インフレが懸念であるキタコレ。
『The inflation rate the Fed follows most closely-the personal consumption
expenditures price index-has been running at about 1-3/4 percent over the
past year. This is below the Federal Open Market Committee’s preferred
2 percent longer-run goal.』
ふむふく。
『This isn’t all that surprising in light of the fact that the economy
is still running below capacity and wage growth has remained modest. As
the economy moves closer to full employment, I expect inflation to edge
up gradually towards 2 percent.』
でまあその要因としては経済に余剰生産力があることと、賃金の上昇が緩やかであることなので、経済が完全雇用に向かっていけば徐々に物価も2%に向かって上昇するでしょう、とまあこれだけの説明になっていまして、完全雇用に向けて金融政策吹かし続けたらインフレがスパークしませんか的な話はありませんな。
・金融政策への懸念にお答えするそうですがマネタリーベース直線理論の皆様聞いてますか〜というのがワロタ
次が『Addressing some common concerns』なのですが、そこの説明が中々ワロエルというか異次元政策と称して(自分らは称していませんでしたっけ)マネタリーベース直線理論を提唱(最初のうちだけ)していたどこぞの中央銀行の皆さん聞いていますか〜という内容で味わいがあります。
『I said I’d like to address some of the issues I hear, most of which
have to do with concerns about, and criticisms of, the Fed’s actions over
the past six years or so.』
『As a brief refresher, the Fed’s monetary policy stance has been very
accommodative since the economy fell into recession in the wake of the
global financial crisis. We lowered the federal funds rate to near zero
back in December 2008, we’ve been pretty explicit about where we think
those rates are headed, and we’ve engaged in several large-scale asset-purchase
programs, commonly known as quantitative easing, or QE.』
というのは前振りでして・・・・・・・・
『We often say, when describing these measures, that extraordinary economic
times call for extraordinary economic measures. And that’s true. But I
don’t want to give the impression that “extraordinary” means “radical”
or “unprecedented.”』
異例の緩和は実施しているが、ラディカルだったり前例のないというような印象を与えることは好まないとな。
『Some of the unease around the Fed’s policies probably stems from that misunderstanding.』
FEDの金融政策が大き過ぎる的な不安が起きるのは誤解からであるとな。
『But these policies weren’t dreamed up on the fly. They’re different,
and they’re unconventional, but they’re not outside the natural realm
of central bank theory or practice.』
非伝統的ではあるが従来の規範に沿ったものであると。
『In normal times, the Fed buys and sells securities in order to keep the
federal funds rate at its target level. This, in turn, affects other interest
rates-such as those on car loans, mortgages, and bonds-which affects other
financial conditions and, ultimately, the spending decisions of households
and businesses. With short-term interest rates close to zero, however,
the Fed shifted the emphasis to buying longer-term assets, in order to
bring down longer-term interest rates. So what we have is still essentially
standard monetary policy, adjusted to reflect the reality that short-term
interest rates are near zero.』
置物副総裁先生聞いてますかぁ〜という感じでございまして実にこう味わいがありますが、FEDの資産買入は名目ゼロ金利制約における伝統的な短期金利操作の代替として長期金利に働き掛ける為に実施しているものであるという事でして、当座預金残高を80兆円にすると予想インフレ率が2%に上昇する(なお当座預金残高は現在153兆円ですけど)という定量的な理論は一ミリも存在していない訳で、米国のような政策を実施して云々という説明は一体なんだったのかという話ではあります。
まあこれはSF連銀もアレでして、かつては先ほども申し上げたように「これだけの資産買入が雇用にこれだけの効果があった」とか平気でレポートだしておいて、ここにくると(出口政策においてバランスシートを維持するという際にかつての買入効果的な説明を適当に都合よくすり替える必要があるからですけど)金利の話だけしてくるとかインチキにも程があるのですけどね。
・緩和のやり過ぎよりも早すぎる正常化を懸念とな
次の懸念にお答えする小見出しが『Enough is enough?』です。
『Although there’s general consensus that the measures we took in the
immediate wake of the crisis were necessary, critics of the Fed’s policies
believe that we’ve been too accommodative since then, and that after 2010,
we should’ve stepped back and let the economy move on its own. I often
hear that the economy’s recovering, so why is the Fed still intervening?
Or, in other words: “enough is enough.”』
ということでその次に・・・・・・
『Ending accommodative policy prematurely would have been a major mistake. 』
というのがあって、あとはまあQE3までの経緯の話をしていますがその辺はスルーしまして、
『When you break a leg, you don’t just snap the pieces back into place;
you leave the cast on until the bone heals. Otherwise, you risk doing even
greater damage. And in this case, the economy wasn’t ready to walk on
its own. Not doing anything, or not doing enough, would just have led to
more pain and the need to take even stronger measures down the road.』
要するに経済にまだ問題(バランスシート調整とか労働市場の長期失業などの問題)があるから緩和解除を急ぐ必要はないという話。
『I was recently in Japan, which offers a real-life example. They shied
away from sufficiently aggressive policy and the Japanese economy remained
mired in deflationary stagnation for 20 years. Only now are they starting
to put more forceful policies into place, and, happily, they’re working-but
those policies are much more forceful than they would’ve been had they
been instituted 15 or 20 years ago. In keeping with the patient analogy,
you can keep the cast on for a few weeks and let it heal, or you can go
without and require extensive surgery later. So if we take the longer view,
the Fed’s actions are in line with people who prefer a light policy touch:
we’re essentially doing less now to avoid having to do more later.』
ということで日本の話だすかねという所ですが、まあ言ってる事は分からんでもないがファイナンシャルインスタビリティーとかインフレスパークとか起きたらどないすんねんとは少々思うのだがその辺の話は華麗にスルーですの。
・緩和的な金融政策はゾンビ企業の延命や財政問題の先送りをサポートしているのではないかという批判について
次の批判にお答えの小見出しは『Is accommodative policy an “enabler”?』である。
『The second concern I hear is that the Fed’s policies are papering over
holes in the economy, falsely propping up failing businesses, and, for
lack of a better term, enabling congressional and White House inaction.
The argument is that, by keeping the economy on an even keel, we’re allowing
businesses that would otherwise fail to limp along and Washington to put
off making difficult decisions.』
そういやジャパンでは最近そういう指摘無くなりましたなあと思いますが、本件に関してはまあ当然の如く「緩和的な政策によってのサポートが重要」というような当たり前の説明をしているのでめんどいから引用はしませんが、最後にわざわざこう言っているのが味わいがあります。
『The “enabling” argument is largely driven by an underlying concern
that the Fed has somehow lost its independence, or that it’s becoming
too active a player in the economy.』
ニヤニヤ。
『But nothing could be further from the truth.』
ほほう。
『We hold our independence as sacrosanct, because it’s necessary for us
to make the best policy decisions we can. If we step out of our assigned
role, we could endanger that independence, and that would fundamentally
alter our ability to do our jobs.』
sacrosanctってなんじゃらほいと思って英和辞典引いたら手元のデイリーコンサイスによると神聖不可侵のとかそういう単語だそうで微苦笑を禁じ得ません。
・バランスシートのマネジメントが出来るのかという点
次の疑問にお答えが『Can the Fed manage monetary policy with such a large balance sheet?』でして・・・・・
『The third concern I hear, and it’s one of the most frequently voiced,
is that the size of the Fed’s balance sheet poses inflationary and other
risks as we seek to normalize the stance of monetary policy. I’m very
cognizant of this issue, as is everyone at the Fed, and it’s one we take
seriously.』
ただまあそのマネージについては次の「ツールがあるか」という質問のお答えの方になっている感じでして、説明は主にコミュニケーションになっています。つまり・・・・・・・
『We’re also going to be very clear in our communications when we eventually
bring rates back to normal. Making that communication work won’t necessarily
be easy, as the taper tantrum reminded us last year.』
どうも昨年のTaperingトークでの金利急上昇が盛大なトラウマになっているっぽいですな。
『But we’ve put a lot of thought and effort into ensuring that, once it’s
appropriate to normalize the stance of monetary policy, we can raise interest
rates as needed, communicate our intentions to the markets, manage the
balance sheet over time, and bring us back to full employment without undue
inflationary pressures. So I understand the concerns, but we are aware
of them, we’re planning for them, and we’ve got the tools to manage them.』
てな話をしていまして、要は出口のコミュニケーションで金利を跳ねさせないという事のようです、出来るかどうか知らんけどな。
・ツールはあるのかという点はどう見てもただの気合です
『Has the Fed run out of tools?』についてですが、まあこれは「つーるはあります!」と言うしかないですけど。
『The fourth fear people express is that the Fed has run out of firepower.
This is one I really want to be clear on, because the biggest mistake a
central bank can make is to throw up its hands and say it can’t get the
job done.』
ほほう。
『The economists Christina and David Romer wrote a must-read paper showing
that this kind of policy apostasy has historically been catastrophic-from
the Great Depression to the inflation of the 1970s, any time a central
bank decided its policies couldn’t hold up in a fight led to disaster.9
The most obvious example they cited was during the Great Depression, when
Fed policymakers lost confidence that aggressive monetary policy would
work. Some thought that monetary policy was already so accommodative that
it couldn’t do any more than it already had. Others thought the source
of the crisis was the irresponsibility and excess leading up to the stock
market crash, which they didn’t think monetary policy could address. Either
way, their inaction contributed to the depth and length of the Great Depression.10』
中央銀行がコントロールできないと思われたらおしマイケルなのでそうなってはイカンという話で、それは判るのだが以下の説明を読んでも本当に大丈夫なのかは判らんぞなという所で。
『Likewise, the Romers noted that the Fed failed to intervene sufficiently
to combat inflation during much of the 1970s-again, in part because policymakers
didn’t think that monetary policy could address spiraling inflation. Because
they didn’t act, inflation took years and a deep recession to get under
control.11』
まあ問題になるのはツール云々よりも出口の判断タイミングであって、それが早いと問題だけども遅すぎたら結局何をやっても一旦はインフレがスパークするなりバブルが爆発するなりの問題が生じるでしょうと思うのですけどね。
『I see the historical precedent as strong support for the Fed’s actions
over the past seven years, and as a cautionary tale for the future. Adam
Smith wrote that all money is a matter of belief, and in this case, the
same goes for policy. It’s crucial to understand both the power and limits
of the tools at your disposal. Not believing in their strength is effectively
relinquishing responsibility; and once you relinquish responsibility, you’ve
failed in your mandate.』
ということで結局「大丈夫だから大丈夫で、大丈夫と思われなくなったら大変」という話だけしているようにしか見えないのですが・・・・・・・・・(−−;
・金融政策に関して
最後の最後の所で『Implications for current monetary policy』という小見出しが。
『I am aware that not everyone is a fan of the Fed or of accommodative policy.』
ここまでの説明もそうですし、ここを見ても判りますように基本的にウィリアムス総裁はやはり話の中心的なトーンの背景には「緩和政策は重要」というのがあると思いますし、経済の見通しも強いとは言え労働市場の完全雇用とか住宅市場動向とかバランスシート調整とかの話をしていて、まあ基本は緩和継続派です罠というところですの。
『I’m not deaf to criticism, and reasonable people disagree on policy
all the time. But the bottom line is, it has worked. And the asterisk is
that it’s not permanent. We won’t raise interest rates for some time,
which is the real marker of tightening policy.』
とは言え永遠に金利を上げる訳ではないという話をしているのはまあ当然ですが、一応この辺でバランスは取った格好になっていますね。
『However, we’ve already considerably reduced the pace of our asset purchases,
which will likely end this year. We’re moving towards normalization, and
as the economy continues to improve, we’ll take off the cast; when it’s
able to move on its own, we’ll take away the walking stick.』
ただし何時とは言っていない。
『The events of the past several years demanded strong policy action, and
we were right to take it. But it doesn’t reflect a fundamental shift in
our goals or strategy.』
という事ですが、まあこの話の流れを見ると判りますように、ウィリアムス総裁のロジックの弱点は物価が想定外の上昇を示した場合にありまして、基本的にはスラックがあるから物価上昇しないという話になっているのですが、実際はそうじゃありませんでしたとか、潜在成長率が下がって物価が上昇しやすくなっていましたとかいうような状態だった場合にはいきなりタカ転換する可能性もあるなあと、まあそんな事を思うのでありました。
#てな訳で趣味の虫干しネタでどうもすいませんすいません
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2014/07/16
○イエレン議長議会証言関連はメモだけ置いておきますね
http://www.federalreserve.gov/newsevents/testimony/yellen20140715a.htm
Chair Janet L. Yellen Semiannual Monetary Policy Report to the Congress
Before the Committee on Banking, Housing, and Urban Affairs, U.S. Senate, Washington, D.C.
July 15, 2014
最後の数パラグラフだけ引用しておく。金融政策運営に関するフォワードガイダンスの説明に続く部分から引用ですよん。
『Of course, the outlook for the economy and financial markets is never
certain, and now is no exception. Therefore, the Committee's decisions
about the path of the federal funds rate remain dependent on our assessment
of incoming information and the implications for the economic outlook.』
この直前がフォワードガイダンスの説明で、ガイダンスではそう言ってますがあくまでも先行き政策は経済のパフォーマンス次第ですよというまあ当たり前の話をしています。
『If the labor market continues to improve more quickly than anticipated
by the Committee, resulting in faster convergence toward our dual objectives,
then increases in the federal funds rate target likely would occur sooner
and be more rapid than currently envisioned. Conversely, if economic performance
is disappointing, then the future path of interest rates likely would be
more accommodative than currently anticipated.』
従ってまあこういう説明になるのですが、ここと(引用していないですけど)経済見通しの部分が強気というのの合わせ技でタカ派的な〜というのはちょっと解釈に無理があると思いますが、もしそれでタカ派的と米国金融市場が捉えるという事でありますと、それは米国金融市場がかつての「QE−Infinity」でヒャッハー状態と同様のゼロ金利インフィニティー状態になりつつあるという事の証左かも知れません(ただし米国2年金利とか見ていると利上げは普通に織り込んでいるので、正確には「利上げペースが死ぬほど遅い」という認識なのでしょうとは思いますが・・・・・)が実際の市場の中の人に聞かないとその辺はニャンとも。
『The Committee remains confident that it has the tools it needs to raise
short-term interest rates when the time is right and to achieve the desired
level of short-term interest rates thereafter, even with the Federal Reserve's
elevated balance sheet. At our meetings this spring, we have been constructively
working through the many issues associated with the eventual normalization
of the stance and conduct of monetary policy. These ongoing discussions
are a matter of prudent planning and do not imply any imminent change in
the stance of monetary policy. The Committee will continue its discussions
in upcoming meetings, and we expect to provide additional information later
this year.』
正常化のツールはあるので大丈夫です(キリッ)関連の話ですな。 で、次の小見出しが『Financial
Stability』なのですが・・・・・・・・・・
『The Committee recognizes that low interest rates may provide incentives
for some investors to "reach for yield," and those actions could
increase vulnerabilities in the financial system to adverse events. While
prices of real estate, equities, and corporate bonds have risen appreciably
and valuation metrics have increased, they remain generally in line with
historical norms. In some sectors, such as lower-rated corporate debt,
valuations appear stretched and issuance has been brisk.』
低金利政策が利回り追求の動きが起きるリスクが有る点は我々も認識していますが、現状では特段問題になるような金融不均衡の動きは起きていません(キリッ)とな。
『Accordingly, we are closely monitoring developments in the leveraged
loan market and are working to enhance the effectiveness of our supervisory
guidance. More broadly, the financial sector has continued to become more
resilient, as banks have continued to boost their capital and liquidity
positions, and growth in wholesale short-term funding in financial markets
has been modest.』
レバレッジドローンを注目というのは話として入れていますが、他に特段問題がどうのこうの的な話は無いですし、この小見出し部分はこれで終了という辺りがあっさり味でマクプルで金融政策とか知らんがなとBISに盛大に喧嘩を売っているのがお洒落ですな。
で、最後に『Summary』でボトムラインを。
『In sum, since the February Monetary Policy Report, further important
progress has been made in restoring the economy to health and in strengthening
the financial system. Yet too many Americans remain unemployed, inflation
remains below our longer-run objective, and not all of the necessary financial
reform initiatives have been completed. The Federal Reserve remains committed
to employing all of its resources and tools to achieve its macroeconomic
objectives and to foster a stronger and more resilient financial system.』
ということでボトムラインの説明は雇用の改善はまだ不十分で物価はマンデートよりも下で推移しており、金融改革も必要とか、まー基本的なところではやはりいつものハト的イエレン議長という所ではないかと超斜め読みしただけではそう思いますけどね。
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2014/07/15
○FRB関連小ネタを少々
小ネタというのはつまりあまり本格的なネタでは無いということでメモメモなのですが、先般のタカ&ハト対決(まあ実際は同日に講演が出ただけの話ですが)から。
・ラッカー総裁のポイントは「いずれインフレが加速するリスクがある」である
http://www.richmondfed.org/press_room/speeches/president_jeff_lacker/2014/lacker_speech_20140708.cfm
http://www.richmondfed.org/press_room/speeches/president_jeff_lacker/2014/pdf/lacker_speech_20140708.pdf
Economic Outlook, July 2014
July 8, 2014
Jeffrey M. Lacker President Federal Reserve Bank of Richmond
Charlotte Plaza Uptown Hotel, Rotary Club of Charlotte
Charlotte, N.C
リッチモンド連銀ラッカー総裁は毎度のタカ派なのですが、今回も講演の纏めを最初に書いてくれているので便利便利。
『Highlights』って所から。
『The Fed’s hybrid public-private structure is a product of debates a
century ago over the balance of centralized versus decentralized powers
in our banking system. This structure has at times helped insulate the
Fed from electoral political pressures that can induce an excessively short-run
focus. 』
『The Fed’s lending authority was originally provided as a means of regulating
the supply of money - thus, monetary stability has always been the Fed’s
primary mission. 』
『My forecast is that GDP growth will be between 2 and 2-1/2 percent for
the remainder of this year and next, on par with what we’ve already seen
in this recovery.』
『This forecast is below rates typically observed in recovery periods,
in part because of lower productivity growth, slowing population growth
and declining labor force participation. These changes are likely to be
persistent.』
『Inflation has been higher in recent months, and is likely to move back
toward the FOMC’s 2 percent objective.』
『It will be important to withdraw monetary stimulus at an appropriate
time to prevent inflation pressures from emerging and to keep inflation
near 2 percent. 』
ということで纏めの部分(実際は箇条書き)を引用しましたが、こちらにありますように(まあ今に始まった訳ではないですが)ラッカー総裁の主張における「早期利上げ」はあくまでもインフレの高進リスクに対しての早期利上げの必要性という話になっております。
本文の方では金融政策に関してこのように説明しています。
『I will wrap things up now with a few remarks about monetary policy. The
federal funds rate has been near zero for over five years and the size
of our balance sheet has risen more than fivefold since 2007. We're continuing
to expand our balance sheet, but we've been gradually reducing the pace
of expansion and are on track to end asset purchases before the end of
the year. That will leave us holding well over $4 trillion of government
and mortgage-related securities.』
というのが現在の話でTaperingはしてますがバランスは大きいままですと。
『By expanding our balance sheet, we have flooded the banking system with
reserves. At some point the economy will have improved enough that banks
could increase lending substantially, leading to rapid deposit growth and
mounting inflationary pressures.』
と言い続けて早何年という感じなのですが、巨大なバランスシートは経済が強くなる中のいずれかの時点でインフレ圧力に転じるという説明ですが、まあ今回に関しては上記まとめにありますように足元で物価が徐々に上昇しているのでやや鼻息は荒いのかもね。
『In order to prevent those pressures from emerging and to keep inflation
averaging 2 percent, we will need to begin withdrawing monetary stimulus
at the appropriate time. One way to do that is to begin raising interest
rates.』
キタコレ。
『According to material published as part of the FOMC's economic projections
in June, most FOMC participants believe that the federal funds rate will
most likely begin rising sometime next year. It's also worth pointing out
that most participants expect inflation at or below the FOMC's 2 percent
target next year. This is consistent with the FOMC's past practice of raising
rates pre-emptively, before undesirable inflation pressures actually emerge.』
いつものラッカー節ですな。
・・・・・・・ということで、タカ派ラッカー総裁ですが、マクプル利上げの話ではないので、物価が上向きになると元気になるのですが下向き出すと鼻息が弱まるというのが仕様(ただしタカ派はタカ派だが)なのでその辺は留意が必要です。
・コチャラコタ総裁の最近の主張は「プライスレベルターゲット」ですが・・・・・・・・
http://www.minneapolisfed.org/news_events/pres/speech_display.cfm?id=5348&
http://www.minneapolisfed.org/news_events/pres/kocherlakota_speech_July8_2014.pdf
Monetary Policy Report to the Minnesota Business Partnership
Narayana Kocherlakota - President
Federal Reserve Bank of Minneapolis
Minnesota Business Partnership
Minneapolis, Minnesota
July 8, 2014
同じく7/8の講演ですが、前半は概説というかFOMCの説明みたいなものまであるので、少々長いのですが、物価と労働市場に関して現在のFRBのパフォーマンスを以下のように説明しています。
『Low Inflation: Why It Matters』という所ですが、まあ題名見れば判るように物価が下で推移という話をしていまして、本当は色々と引用する所ですが手抜きで結論部分を。
『So, when inflation is high compared to the Fed’s target, like it was
in Williston, we know that demand is pushing hard on available resources.
The converse is also true: Inflation is low compared to the Fed’s target
when the demand for goods and services is too low to fully use the available
resources in society. The low inflation in the United States tells us that
resources are being wasted.』
その前に延々と説明があるのですが、物価がマンデートを下回って推移しているので、その結果需要が減ってしまってリソースの余剰が生じているという話ですな。
『What exactly are these wasted resources? There are multiple answers to
this question-when demand is too low, lots of resources are left unused.
But the biggest and most disturbing answer is our fellow Americans. There
are many productive people in the United States available to work more
hours, and our society is deprived of their production.』
ということで・・・・・・
『This key point is generally underappreciated. I’ve said that the FOMC
is undershooting its price stability objective and is expected to continue
to do so.』
キタコレ。
『But we should all keep in mind that this outcome-and especially the forecast
for continued undershooting-typically means that the FOMC is also underperforming
on its other objective of promoting maximum employment.』
つまり物価が下振れた状態が継続しているのは良くないという話をしていて、その為に何をするかという話で最近コチャラコタ総裁が好んで話す「プライスレベルターゲット」の話になります。
『Should the FOMC Make Up for Past Inflation Misses?』って小見出しの所ですがね。
『In addressing this question, I’ll compare two possible approaches: the
standard approach of inflation targeting and the more novel approach of
price level targeting. Let me note before I begin that I won’t take a
stand today on which of those approaches is better. My goal is simply to
initiate a policy conversation about future-indeed, possibly far-off future-monetary
policy choices.』
でまあ説明が続くのですが盛大にその辺を端折りまして、要するに物価のトレンド線に戻すためにはより高いインフレを許容すべきという話(つまり2%トレンドで物価上昇というラインに戻すためには前の3年位が1%だとしたらその後が2%定常だと足りないままだよね、という話)をしております。
『How should the FOMC respond to this shortfall in the price level? If
the FOMC simply targets a 2 percent inflation rate after 2018, then the
price level will be permanently 2.2 percent lower than was expected in
2012. This approach to policy-which is the standard one followed by most
leading central banks around the world-is called inflation targeting.』
『But there is an alternative: The FOMC could target a slightly higher
inflation rate for a few years after 2018 in order to make up for the shortfall
in the price level. This latter policy approach is often termed price level
targeting.』
ということでして、コチャラコタ総裁的にはプライスレベルターゲットを念頭に置いて一時的な高めのインフレ上振れも許容すべきという話をしているのですが、その件って以前話題になった時にバーナンキかイエレンか忘れた(って過去ログにありますが^^)のですが「理論的には面白いのだが物価の上振れをある程度の期間容認するというのはインフレ期待をアンカーさせなくなるリスクがある」という観点で棄却している講演があった筈なので、この考えってFOMC内部ではどういう話になっているのかは興味深い所であります(議事要旨には今の所でて来ていない)。
つーことですのでまあコチャラコタのハト派は今のところは割と根性入っているのですが、この人急にコロッと変わる可能性があるので注意が必要ではあったりします(^^)。
あと、時間が無いので割愛しましたが、労働市場に関しては「失業率は良いけれども他の指標を見るとまだまだ過去の平均に戻るような状態からは程遠い」という説明をしていてこちらもハト派という感じでございます。詳しくは『Maximum
Employment』以下をご参照くらはい。
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2014/07/14
○副議長の方のフィッシャーさんのプルーデンス講演である
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/fischer20140710a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/fischer20140710a.pdf
Vice Chairman Stanley Fischer
At the Martin Feldstein Lecture, National Bureau of Economic Research, Cambridge, Massachusetts
July 10, 2014
Financial Sector Reform: How Far Are We?
・金融分野の改革というお題である
『Although the recession in the United States that started in December
2007 ended in June 2009, the impact of the Great Recession, which began
when Lehman Brothers filed for bankruptcy on September 15, 2008, continues
to be felt in the United States, Europe, and around the world.1 After the
bankruptcy of Lehman Brothers, policymakers, working through the G-20,
quickly reached agreement on the macroeconomic policies needed to minimize
the damage done by the crisis. For their part, central bankers and supervisors
of financial systems, working through the newly established Financial Stability
Board (FSB) and the newly enlarged Basel Committee, rapidly developed a
program for reform of the financial sector and its supervision.』
『In this lecture I will ask how much has been achieved so far in implementing
the ambitious financial sector reform program that was widely agreed at
the early stages of the global financial crisis. From among the range of
topics in which financial sector reforms have been instituted since 2008,
I focus on three: capital and liquidity for banks and other financial institutions,
macroprudential supervision, and the problem of too big to fail (TBTF).
』
ということで、銀行の資本および流動性への賦課に関する話と、マクロプルーデンシャルな監督というのと、Too
Big To Failの問題という3点についてのお話であります。で、最初はマクラで2007年からの金融危機についての話をしているのですが、その次に『The
Financial Sector Reform Program』という小見出しの所がふーんという所で。
『Several financial sector reform programs were prepared within a few months after the Lehman Brothers failure. These programs were supported by national policymakers, including the community of bank supervisors. 』
ほう。
『The programs--national and international--covered some or all of the
following nine areas:2 (1) to strengthen the stability and robustness of
financial firms, "with particular emphasis on standards for governance,
risk management, capital and liquidity"3 (2) to strengthen the quality
and effectiveness of prudential regulation and supervision; (3) to build
the capacity for undertaking effective macroprudential regulation and supervision;
(4) to develop suitable resolution regimes for financial institutions;
(5) to strengthen the infrastructure of financial markets, including markets
for derivative transactions; (6) to improve compensation practices in financial
institutions; (7) to strengthen international coordination of regulation
and supervision, particularly with regard to the regulation and resolution
of global systemically important financial institutions, later known as
G-SIFIs; (8) to find appropriate ways of dealing with the shadow banking
system; and (9) to improve the performance of credit rating agencies, which
were deeply involved in the collapse of markets for collateralized and
securitized lending instruments, especially those based on mortgage finance.』
ということでリーマンショック直後から始まった金融セクター改革の骨子は上記の9トピックという事で、(1)金融機関の経営強化、(2)プルーデンス政策としての規制や監督の強化、(3)規制や監督の有効性を高める方策、(4)金融機関の破たん処理、(5)デリバティブ取引などの市場整備、(6)金融機関の補償制度(取引保護の事ですかね)、(7)G-SIFIsのようなグローバル機関への規制監督、(8)シャドウバンキングへの規制、(9)格付け会社のパフォーマンス改善、という風になっていますが、(9)の最後の所の「which
were deeply involved in the collapse of markets for collateralized and
securitized lending instruments, especially those based on mortgage finance.」というのはワロタです。
・マクロプルーデンス政策と言っても金融政策では無くて規制と監督でのマクプルとな
でまあ最初の金融機関への資本だの流動性規制だのに関しては、賦課資本の話とか資本性調達の話とか流動性規制(LCR規制)とかの話がありますが、まあ通常の話をしておりますのでそこはスルー致しましてその次の『Macroprudential
Policy and Supervision』の所から。
『In practice, there are two uses of the term "macroprudential supervision."8
The first relates to the supervision of the financial system as a whole,
with an emphasis on interactions among financial markets and institutions.
The second relates to the use of regulatory or other non-interest-rate
tools of policy to deal with problems arising from the behavior of asset
prices.9』
ということで、いきなり「non-interest-rate tools」とか言っていますように、基本的にどうもフィッシャーさんのマクプル的な説明はあくまでも規制と監督という話になっていますが、こちらの2番目にありますように「資産価格の動きから発生する問題に対応するために「規制やその他の金利以外のツール」を使う事に関連する」というのがマクロプルーデンシャルな監督という話になっている訳で、そもそもマクプル利上げという話ではない所から入るのが何ともお洒落。
でまあここから先が「資産価格の過剰な上昇による望ましくない事態にどう対処するのか」という話になるのですが、1パラ飛ばして次の所から引用。
『The issue of how monetary policy should relate to asset-price inflation
had been on the agenda of central bankers for many years before the Lehman
Brothers' failure.11 The issue became more prominent in the United States
in the 1990s and the first few years of this century, and temporarily culminated
in the Fed's "mopping-up" approach, namely that monetary policy--meaning
interest rate policy--should not react to rising asset prices or suspected
bubbles except to the extent that they affect either employment and/or
price stability.』
かつては問題が起きたらお掃除すれば良くて、その前に金利引き上げをして対処するという必要は無いですよというFEDビューがありましたが・・・・・・・
『Operationally, this approach was much more likely to lead to action after
the bubble had burst than as it was forming.12 The policy was tested in
the bursting of the tech bubble in 2001 and appeared to be successful as
the economy recovered from 2002 onward.13 However, the mopping-up doctrine
did not include the second element of the macroprudential approach--the
use of regulatory and supervisory measures to deal with undesired asset-price
movements when the central bank interest rate was judged not to be available
for that purpose.』
うむ、この説明は中々味わいがあるという所で、FEDビュー敗れたりなのではなく、FEDビューに欠けていたのは「資産バブルに対応した規制や監督の手法を使うという点」であるという実にこう味わいのある指摘になっていまして、つまりスタイン前理事がまた泡を吹きそうという事ですね判ります。
『At present, the word macroprudential is used primarily in the second
sense--of the use of regulatory and supervisory noncentral bank interest
rate tools to affect asset prices. In this sense, the use of the word takes
us back to a world that central bankers thought they had left by the 1990s.14
』
ということでマクプルとは予防的な金利政策運営の話ではないようですよ(^^)。
『Now, from etymology to economics: I want to review my experience with
macroprudential policies--in the second sense of noninterest regulatory
and supervisory policies--as Governor of the Bank of Israel to draw a few
key lessons about the use of these policies. To set the background: There
was no financial crisis in Israel during the Great Recession.』
で、イスラエル中銀の前総裁ということでイスラエルの事例に関する話が以下始まります。
『As domestic interest rates declined along with global rates, housing
prices began to rise.15 This is a normal part of the textbook adjustment
mechanism and is expected to encourage an increase in the rate of homebuilding.
The rate of building increased, but not sufficiently to meet the demand
for housing, and prices continued to rise.16』
金利が低下すると共に住宅価格の上昇がイスラエルでも起きましたし、それはまあ理屈の上では起きる話ですと。
『The banks are the largest financial institutions in Israel and dominate
housing finance. The supervisor of banks reports to the governor of the
central bank. Starting in 2010, the supervisor began to implement a series
of measures to reduce the supply of housing finance by the banks.』
イスラエルでは住宅セクターに対する銀行の果たす役割が大きいようですな。
『Among the measures used were increasing capital requirements and provisioning
against mortgages; limiting the share of any housing financing package
indexed to the short-term (central bank) interest rate to one-third of
the total loan, with the remainder of the package having to be linked to
either the five-year real or five-year nominal interest rate; and, on different
occasions, limiting the loan-to-value (LTV) and payment-to-income (PTI)
ratios.17 Additional precautionary measures were implemented in the supervision
of banks.18』
ということで、住宅バブルに関して銀行の果たす役割が大きいという事で、モーゲージの資本賦課とか、貸出規制とかLTV規制とか住宅ローンの総量規制(イスラエル中銀の銀行貸出全体の3分の1にしろとかそんな感じに見えますがさすがにイスラエルの金融市場とか知らんので参考文献を後で読むかもしれない)とか、まあその手の規制を行ったそうな。
『The most successful of these measures was the limit of one-third imposed
in May 2011 on the share of any housing loan indexed in effect to the Bank
of Israel interest rate. Competition among the banks had driven the spread
on floating rate mortgages indexed to the Bank of Israel rate down to 60
basis points, which meant that mortgage financing was available at an extremely
low interest rate. The term-structure was relatively steep, so that the
requirement that the remaining two-thirds of any financing package had
to be indexed to a five-year rate--whether real or nominal--made a substantial
difference to the cost of housing finance. In addition, increases in both
LTV and PTI ratios were moderately effective. However, increasing capital
charges had very little impact in practice.』
なんか説明読んでもイマイチ具体的に何がどうなったのかが微妙(不勉強でスイマセン)ですけれども、まあ要するに住宅バブルに対応するために金利操作をした訳ではなく、銀行に対して貸出規制や資本賦課の規制などを実施することによって住宅関連の与信が無駄に膨張しないようにしたようですな。で、恐らくその総量規制ちっくなもの(のような気がするが間違っていたらすいません)が一番効いたようで。
『There are three key lessons from this experience. First, the Bank of
Israel did not have good empirical estimates of the effectiveness of the
different macroprudential measures. 19 This problem is likely to be relevant
in many countries in large part because we have relatively little experience
of the use of such measures in recent years.20 Policymakers may thus be
especially cautious in the use of measures of this type.』
あまり経験の無い違ったマクロプルーデンシャルな手法を使うのには慎重であるべきとな。
『Second, measures aimed at reducing the demand for housing are likely
to be politically sensitive.21 Their use requires either very cautious
and well-aimed measures by the regulatory authorities, and/or the use by
the government of subsidies to compensate some of those who end up facing
more difficulty in buying housing as a result of the imposition of macroprudential
measures. Indeed, it often appears that there is a conflict between cautious
risk management by the lenders and the desire of society to house its people
decently.』
『Third, there is generally a need for coordination among several regulators
and authorities in dealing with macroprudential problems of both types.』
そらそうよという話だが、住宅セクターの需要を減らすような政策の実施には政治的にセンシティブなので注意しないといけませんという話で、政府による政策の強力なども必要であると。
『In discussing these two approaches, I draw on a recent speech by the
person best able to speak about the two systems from close-up, Don Kohn.22
Kohn sets out the following requirements for successful macroprudential
supervision: to be able to identify risks to financial stability, to be
willing and able to act on these risks in a timely fashion, to be able
to interact productively with the microprudential and monetary policy authorities,
and to weigh the costs and benefits of proposed actions appropriately.』
コーン元FRB副議長の提唱する話とな。
『Kohn's cautiously stated bottom line is that the FPC is well structured
to meet these requirements, and that the FSOC is not. In particular, the
FPC has the legal power to impose policy changes on regulators, and the
FSOC does not, for it is mostly a coordinating body.』
英国のFPCのケースと米国のFSOCのケースという話で、英国の場合は金融規制監督権限がBOEにあって、プルーデンスウィングとマネタリーウィングという形になっているのですが、米国の場合は監督権限はFRBには無いのが問題という指摘をコーンさんはしているようで。
『After reviewing the structure of the FSOC, Kohn presents a series of
suggestions to strengthen its powers and its independence. The first is
that every regulatory institution represented in the FSOC should have the
goal of financial stability added to its mandate. His final suggestion
is, "Give the more independent FSOC tools it can use more expeditiously
to address systemic risks." 23 He does not go so far as to suggest
the FSOC be empowered to instruct regulators to implement measures somehow
decided upon by the FSOC, but he does want to extend its ability to make
recommendations on a regular basis, perhaps on an expedited "comply-or-explain"
basis.』
『Kohn remarks that he does not hold up the U.K. structure of macroprudential
supervision as ideal for all countries at all times and further notes that
the U.K. system vests a great deal of authority in a single institution,
the Bank of England. This element is not consistent with the U.S. approach
of dispersing power among competing institutions.』
でまあ説明の所は流しますが、米国と英国の現状の建付けの差異に関してのコーンさんの説明を紹介しておりまして・・・・・・・・・
『These are important, and difficult, issues. Kohn's proposals clearly
warrant serious examination. It may well be that adding a financial stability
mandate to the overall mandates of all financial regulatory bodies, and
perhaps other changes that would give more authority to a reformed FSOC,
would contribute to increasing financial and economic stability.』
ということで、最後にフィッシャーさんの結論になるのですが、コーンさんが指摘するような「FRBへの金融監督一元化」というのも考慮すべきではないか、というのが結論になっております。
・・・・・・・・てなわけでお気づきのように、フィッシャー副議長の金融バブル抑制に関する考え方および経験値は明らかにイエレン議長の提唱する形の「規制監督で対処」という話になっておりますので、そういう意味ではやはり先般来の流れのようにFRBはTapering実施の時に事前対処型っぽい金融政策のスタンスを見せましたけれども、そのTaperingの果実は収穫するにしてもその後の政策に関しては再びFEDビューに大きく舵を切ったという感じだと思います。
しかしですな、フィッシャーさんのイスラエルでの経験の話とかどこからどう見ても米国市場でこれから起きるかもしれない何らかのバブル(クレジットと何かのハイブリッドみたいになりそうな気がするのですけれども)に対処するのに対して大丈夫かという所でありまして、そもそも規制は万能ではなく、基本的にその規制をすり抜けて色々な不具合が発生する、という教訓に対しての謙虚さに欠けるような気がするので非常にその辺オソロシスな感じなのですけどねえ。
#TBTFの話は時間の都合上パスだがネタが無ければ続きをやるかも知れません
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2014/07/11
○FOMC議事要旨ネタの続き:概ねネタが無いのがネタではあるがFEDビューへの傾斜は目立つかな
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20140618.htm
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20140618.pdf
・全員一致だから当然なのかもしれないが・・・・・・・・・・・
基本の手抜き速読方法は昨日の寝起き攻撃でお示しした『Committee Policy Action』という小見出しの直前パラグラフを読むのが吉でして、何故かというと基本的にその前の『Participants'
Views on Current Conditions and the Economic Outlook』というのは経済の全般的な現状認識と先行き見通しの後に項目別の話、物価の話と来て、その後に金融政策運営に関する論点(現在だとフォワードガイダンスと資産買入)という順になるのでという所です。
でまあそれが昨日ネタにした部分(冒頭部分は別ね)なのですが、その次に読むのは小見出しの『Committee
Policy Action』となります。
・・・・・・・・・・・なのですが、これがオソロシスというか全員一致だからという事なのかもしれませんが、実はこの前の回のFOMCと、この6月FOMC議事要旨のどちらもそうなのですが、2回連続でこの『Committee
Policy Action』の部分ですが特段の議論らしき部分が無いというのが特徴です。
全員一致になるにしてももうちょっと何か金融政策の話でもあるのかとは思いますが、先行きの部分に関する話では昨日ネタにしたようにマンデートのどこに注目をするのかという話になっているものの、足元の金融政策に関しては淡々とTaperingを実施して様子見地蔵というのが気持ちが悪いまでに見解が揃っているようで、『Committee
Policy Action』以降の部分って基本的に声明文で書いてある説明と同じ事を「メンバーはこのように認識しましたですお」と書いているだけで、声明文読んでいるのとあまりカワランチ会長というのが2回連続となっているのが何なんでしょという所です。
・今回もスタッフからの金融不均衡の話は無いと
『Staff Review of the Financial Situation』において金融不均衡に関する論考や観察に関する言及は無かったりしておりまして、こちらはイエレン体制になってからの影響かねとかつい思ってしまいますが、まあ一応議論の中にはその話もあるようでして以下続く。
・金融環境に関してのFOMCでの認識はと言いますと・・・・・・・・
『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』の真ん中ら辺にあります。
『Favorable financial conditions appeared be supporting economic activity.
While information about mortgage lending was mixed, a number of participants
reported increases in C&I lending by banks in their Districts, a pickup
in loan demand at banks, or better credit quality for borrowers. In addition,
small businesses reported improvements in credit availability.』
こちらは貸出とかモーゲージの話で緩和傾向にはあるという認識。
『However, participants also discussed whether some recent trends in financial
markets might suggest that investors were not appropriately taking account
of risks in their investment decisions.』
という事で、金融環境に関する論点の中で市場がサーチフォーイールドでリスク認識がヒャッハーになっていないかという話。
『In particular, low implied volatility in equity, currency, and fixed-income
markets as well as signs of increased risk-taking were viewed by some participants
as an indication that market participants were not factoring in sufficient
uncertainty about the path of the economy and monetary policy.』
数名の指摘ではあるのですが、低金利インフィニティーでウヒョーとか金融市場がなってねえかとの指摘。
『They agreed that the Committee should continue to carefully monitor financial
conditions and to emphasize in its communications the dependence of its
policy decisions on the evolution of the economic outlook; it was also
pointed out that, where appropriate, supervisory measures should be applied
to address excessive risk-taking and associated financial imbalances.』
ただまあこういう結論になっておりますように、スタイン理事退任前のようにマクプルの観点で金融緩和をもっと抑制気味というような論点は仮定の話でも出てこない(ちなみにスタイン以外でタカ派とされている地区連銀総裁の場合は基本的に「インフレ上ブレ警戒」でのタカであってマクプルのタカではない点はポイントでもあります)で、あくまでも「金融規制でインバランスに対応」となっているのがFEDビューへの本家返りという所ですし、先日のイエレン講演でBISビューをケチョンケチョンにしていましたが、まあFOMCの流れもまたFEDビューに戻った感じがしますよね。
『At the same time, it was noted that monetary policy needed to continue
to promote the favorable financial conditions required to support the economic
expansion.』
という纏めになっておりまして、どう見てもゴルディロックスヒャッハーです本当にありがとうございましたという所ではございます。
なお、他の部分ですけれども、基本的に今回はあっさり味な印象が強いなあと思いますがネタに困ったらネタにするかもしれません(笑)。
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2014/07/10
○FOMC議事要旨を寝起きにて
例によって寝起きのやっつけで読んでいるので後日補充しますよん。
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20140618.htm
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20140618.pdf
・今回の出落ちシリーズはそのまんま「金融政策の正常化」とな
議事要旨出落ちシリーズはある回とない回がありますが、今回は最初の所に思いっきり『Monetary
Policy Normalization』という小見出しがあるのでまあそれを読めという事ですねわかります。
『Meeting participants continued their discussion of issues associated
with the eventual normalization of the stance and conduct of monetary policy.』
ほうほうそれでそれで?
『The Committee's consideration of this topic was undertaken as part of
prudent planning and did not imply that normalization would necessarily
begin sometime soon.』
最初に一々「この議論は早急な正常化を意味するものではなくむしろ慎重に正常化を行う」と入れている辺りが正常化ヒャッハー相場をやられても困るという話ですな。
『A staff presentation included some possible strategies for implementing
and communicating monetary policy during a period when the Federal Reserve
will have a very large balance sheet. In addition, the presentation outlined
design features of a potential ON RRP facility and discussed options for
the Committee's policy of rolling over maturing Treasury securities at
auction and reinvesting principal payments on all agency debt and agency
mortgage-backed securities (MBS) in agency MBS.』
出口政策においてバランスシート規模を維持しながら市場金利の引き上げを行うという件については現在色々と実施しているリバースレポとかタームデポジットとかで対応しますという話でまあ市場は好感するらしいのですが、まあ確かにアウトライトで売却しないという点では市場が喜ぶのも理解できるのですが、実際問題としてその「不胎化されたバランスシート」にどういう意味があるんじゃろという気もしますが、割と米国の債券市場ちゃんはフローよりもストックビューを信用しているのかも知れませんね、つーか米国の場合は日本と違ってフローに関してはガチガチに数字が出されていて、テーパリングヒャッハー相場の時も別に柔軟な対応とかしないというプレイをしているので、日本のように輪番の日程当て大会とか区分割が急に変わってどひゃーみたいな事案が発生しないのであまりフローで一喜一憂する余地が無いのかもしれませんが、よー知らんけど。
『Most participants agreed that adjustments in the rate of interest on
excess reserves (IOER) should play a central role during the normalization
process. It was generally agreed that an ON RRP facility with an interest
rate set below the IOER rate could play a useful supporting role by helping
to firm the floor under money market interest rates.』
出口で利上げをするときには超過準備付利金利の引き上げを政策の中心的な役割づけにして、リバースレポの実施によって流動性吸収するのがメインになるでしょうというのは順当な話。
『One participant thought that the ON RRP rate would be the more effective
policy tool during normalization in light of the wider variety of counterparties
eligible to participate in ON RRP operations. The appropriate size of the
spread between the IOER and ON RRP rates was discussed, with many participants
judging that a relatively wide spread--perhaps near or above the current
level of 20 basis points--would support trading in the federal funds market
and provide adequate control over market interest rates. Several participants
noted that the spread might be adjusted during the normalization process.
A couple of participants suggested that adequate control of short-term
rates might be accomplished with a very wide spread or even without an
ON RRP facility.』
調節技術上の話にだいぶ近い話をしてやがりますな。超過準備付利金利とリバースレポの金利の適切なスプレッド水準はどの位だったら短期金利のコントロールが出来ていると言えるでしょうとか中々アレ。
『A few participants commented that the Committee should also be prepared
to use its other policy tools, including term deposits and term reverse
repurchase agreements, if necessary. Most participants thought that the
federal funds rate should continue to play a role in the Committee's operating
framework and communications during normalization, with many of them indicating
a preference for continuing to announce a target range.』
でまあ他のツールも使うという話は兎も角として、正常化しても基本的には「FF金利の誘導目標」というのが政策金利としての指標になるっぽいですな。
『However, a few participants thought that, given the degree of uncertainty
about the effects of the Committee's tools on market rates, it might be
preferable to focus on an administered rate in communicating the stance
of policy during the normalization period. In addition, participants examined
possibilities for changing the calculation of the effective federal funds
rate in order to obtain a more robust measure of overnight bank funding
rates and to apply lessons from international efforts to develop improved
standards for benchmark interest rates.』
とは言いましても実際に始めてみないと判らない所もあるので更に研究しましょうとかそういう結論はまあそうですねとしか申し上げようがない。
『While generally agreeing that an ON RRP facility could play an important
role in the policy normalization process, participants discussed several
potential unintended consequences of using such a facility and design features
that could help to mitigate these consequences.』
リバースレポの副作用は何ぞやとな。
『Most participants expressed concerns that in times of financial stress,
the facility's counterparties could shift investments toward the facility
and away from financial and nonfinancial corporations, possibly causing
disruptions in funding that could magnify the stress.』
これは米国の短期市場における状況からこうなる訳ですが、そもそもリバースレポに関しては準備預金制度の外側の人たちが絶賛参加できるようになっているのですけれども、そうしないと(日本と違って)準備預金の外側の人の金が代々木ゼニウナール状態なので短期金利が企図通りに上昇してくれないのですけれども、ではめでたく短期金利が上昇した場合というのは、一種のクラウディングアウトのような状態になってCPとかの市場にストレスが掛かるんじゃネーノという話。
『In addition, a number of participants noted that a relatively large ON
RRP facility had the potential to expand the Federal Reserve's role in
financial intermediation and reshape the financial industry in ways that
were difficult to anticipate.』
結果として短期市場においてFEDが巨大な金融仲介機関になってしまう事の影響(長期債の買切りと短期資金調達を両サイドで盛大に実施しているんですから)とな。まあアタクシが思うにそれは市場の長短ミスマッチの解消に繋がっている(FEDが長短ミスマッチを盛大に取るのだから)という気もしますが(皮肉な話だが)。
『Participants discussed design features that could address these concerns,
including constraints on usage either in the aggregate or by counterparty
and a relatively wide spread between the ON RRP rate and the IOER rate
that would help limit the facility's size.』
リバースレポについて付利金利とのスプレッドとか1社当たりの応募限度額とかの設定をするというのも手だという話だが正直微妙な気がします。
『Several participants emphasized that, although the ON RRP rate would
be useful in controlling short-term interest rates during normalization,
they did not anticipate that such a facility would be a permanent part
of the Committee's longer-run operating framework.』
一部の委員になりますが、リバースレポに関してはあくまでも今回の出口政策という特殊な物の為であって常設ファシリティ―にするのは如何なものかというのはまあ言いたい事は分かる。
『Finally, a number of participants expressed concern about conducting
monetary policy operations with nontraditional counterparties. 』
なるほど。
でもってこのコーナー長いのだが次は償還分再投資に関する話。
『Participants also discussed the appropriate time for making a change
to the Committee's policy of rolling over maturing Treasury securities
at auction and reinvesting principal payments on all agency debt and agency
MBS in agency MBS.』
ほうほう。
『It was noted that, in the staff's models, making a change to the Committee's
reinvestment policy prior to the liftoff of the federal funds rate, at
the time of liftoff, or sometime thereafter would be expected to have only
limited implications for macroeconomic outcomes, the Committee's statutory
objectives, or remittances to the Treasury.』
まあ大体この手の「連銀スタッフのモデル」というのはインチキの香りがプンプン漂いますが、それはそれとして「償還分の再投資の停止を先にしなくてもヘーキヘーキ」という結論とな。
『Many participants agreed that ending reinvestments at or after the time
of liftoff would be best, with most of these participants preferring to
end them after liftoff. These participants thought that an earlier change
to the reinvestment policy would involve risks to the economic outlook
if it was seen as suggesting that the Committee was likely to tighten policy
more rapidly than currently anticipated or if it had unexpectedly large
effects in MBS markets; moreover, an early change could add complexity
to the Committee's communications at a time when it would be clearer to
signal changes in policy through interest rates alone.』
てなわけで多くの委員は基本的に償還再投資の停止は利上げ時期またはその後がヨロシとの事。
『However, some participants favored ending reinvestments prior to the
first firming in policy interest rates, as stated in the Committee's exit
strategy principles announced in June 2011. Those participants thought
that such an approach would avoid weakening the credibility of the Committee's
communications regarding normalization, would act to modestly reduce the
size of the Federal Reserve's balance sheet, or would help prepare the
public for the eventual rise in short-term interest rates.』
事前に償還再投資止めろという人も数名いるようで、この人たちは元々そういう話をしてたわけだし、そもそもバランスシートの縮小というのを実施するのが正常化という話をしているんだからバランスシートの縮小という意味で速めに実施しろというのと、市場がこの償還再投資停止を見て利上げに備えてくれるから良いのではないかという話だが後者の理論はまさに地均し論なので微妙。
『Regardless of whether they preferred to introduce a change to the Committee's
reinvestment policy before or after the initial tightening in short-term
interest rates, a number of participants thought that it might be best
to follow a graduated approach with respect to winding down reinvestments
or to manage reinvestments in a manner that would smooth the decline in
the balance sheet. Some stressed that the details should depend on financial
and economic conditions. 』
いずれにせよ償還再投資に関しては正常化の過程のどこかでは必ず実施するというのが結論になっている(バランスシートの正常化はいずれ行うので)というのはまあ味わいがありまして、一部の論者は確か「償還再投資は相当期間続いてバランスシートは利上げ後も維持される」という話をしていたやに記憶していますが、さすがにそれは無いというのが判明しているのはほほうという感じです。
『Overall, participants generally expressed a preference for a simple and
clear approach to normalization that would facilitate communication to
the public and enhance the credibility of monetary policy.』
ということですが後の方でまた別の意見対立がある(後で書きます)のが味わいががががが。
『It was observed that it would be useful for the Committee to develop
and communicate its plans to the public later this year, well before the
first steps in normalizing policy become appropriate. Most participants
indicated that they expected to learn more about the effects of the Committee's
various policy tools as normalization proceeds, and many favored maintaining
flexibility about the evolution of the normalization process as well as
the Committee's longer-run operating framework.』
出口政策のプリンシプルに関して年後半に出すというのと、そこに「well before
the first steps in normalizing policy become appropriate」とあるのがまた芸が細かい。
『Participants requested additional analysis from the staff on issues related
to normalization and agreed that it would be helpful to continue to review
these issues at upcoming meetings. The Board meeting concluded at the end
of the discussion.』
でスタッフは引き続き研究せえとな。
・とりあえず10月にTaper終了のようですな
例によって例の如く『Participants' Views on Current Conditions and the Economic
Outlook』のケツ&『Committee Policy Action』の前をまず読むのが超速読法。
『While the current asset purchase program is not on a preset course, participants
generally agreed that if the economy evolved as they anticipated, the program
would likely be completed later this year.』
それは前から言われておりますが。
『Some committee members had been asked by members of the public whether,
if tapering in the pace of purchases continues as expected, the final reduction
would come in a single $15 billion per month reduction or in a $10 billion
reduction followed by a $5 billion reduction.』
市場観測によると10月に終了(端数部分は前に寄せる)という話のようだと。
『Most participants viewed this as a technical issue with no substantive
macroeconomic consequences and no consequences for the eventual decision
about the timing of the first increase in the federal funds rate--a decision
that will depend on the Committee's evolving assessments of actual and
expected progress toward its objectives.』
10月でも12月でもそれは細かい話でそこがどうなったからと言って利上げタイミングに影響がある訳でも無し、という事で約6か月発言は無かったことになっているのが非常にお洒落感を漂わせております。まあ朝令暮改プギャーとも言えますが、褒めて言えば様子を見ながら慎重運転ということですねわかります(ニヤニヤ)。
『In light of these considerations, participants generally agreed that
if incoming information continued to support its expectation of improvement
in labor market conditions and a return of inflation toward its longer-run
objective, it would be appropriate to complete asset purchases with a $15
billion reduction in the pace of purchases in order to avoid having the
small, remaining level of purchases receive undue focus among investors.』
市場もそう言ってる事ですしこのまま無事なら10月は15ビリオンで行きましょうとな。
『If the economy progresses about as the Committee expects, warranting
reductions in the pace of purchases at each upcoming meeting, this final
reduction would occur following the October meeting.』
・複数のオブジェクティブという以上仕方ないのではありますが・・・・・・・・・
というのが資産買入に関する部分ですな。では金利の話はというとその1つ前のパラグラフになりますがここの記述は微妙に味わいがある。
『During their consideration of issues related to monetary policy over
the medium term, participants generally supported the Committee's current
guidance about the likely path of its asset purchases and about its approach
to determining the timing of the first increase in the federal funds rate
and the path of the policy rate thereafter.』
ということでガイダンスの話ね。
『Participants offered views on a range of issues related to policy communications.』
それに絡んでコミュニケーションの話とな。
『Some participants suggested that the Committee's communications about
its forward guidance should emphasize more strongly that its policy decisions
would depend on its ongoing assessment across a range of indicators of
economic activity, labor market conditions, inflation and inflation expectations,
and financial market developments.』
『In that regard, circumstances that might entail either a slower or a
more rapid removal of policy accommodation were cited.』
ほうほう。
『For example, a number of participants noted their concern that a more
gradual approach might be appropriate if forecasts of above-trend economic
growth later this year were not realized.』
『And a couple suggested that the Committee might need to strengthen its
commitment to maintain sufficient policy accommodation to return inflation
to its target over the medium term in order to prevent an undesirable decline
in inflation expectations.』
『Alternatively, some other participants expressed concern that economic
growth over the medium run might be faster than currently expected or that
the rate of growth of potential output might be lower than currently expected,
calling for a more rapid move to begin raising the federal funds rate in
order to avoid significantly overshooting the Committee's unemployment
and inflation objectives. 』
なんかまあ委員によって見ているポイントが違っていて、インフレ期待を下げてはいけないからもっと物価の所を強調しろとか、経済が強い中なので物価や労働市場が過熱しないようにコミュニケーションしろとかポイントが割れているのが実に味わいがある訳で、まあ直近でもハト連銀とタカ連銀が見事に逆の講演を同日に実施していますが、各連銀高官からの発言が思いっきりノイズになりそうな感じではあるなあと思いました。
#他の部分は後日で勘弁
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2014/07/07
○ECBの会合がしらっと減らされるとな
雇用統計ヒャッハーの間にECB理事会もあったので今更ですが(汗)。
http://www.ecb.europa.eu/press/pr/date/2014/html/pr140703_1.en.html
PRESS RELEASE
3 July 2014 - ECB to adjust schedule of meetings and to publish regular
accounts of monetary policy discussions in 2015
『・Frequency of Governing Council monetary policy meetings will change to six-week cycle
・Reserve maintenance periods to be extended to six weeks to match new schedule
・ECB intends to publish accounts of its monetary policy discussions from January 2015』
ほうほう。
『The European Central Bank (ECB) is today announcing that Governing Council
meetings dedicated to monetary policy will change to a new six-week cycle,
from January 2015. Non-monetary policy meetings will continue to be held
at least once a month.』
ということで、しらっとECBは定例理事会の会合日程を従来の毎月から6週間ごとに変更と相成りました。通常の会合は別途毎月以上のペースで実施です。なお2015年からです(急に変更されたらOIS市場が死亡しますから決めてもそう簡単に変更できない)。
『Reserve maintenance periods - during which banks are required on average
to hold minimum reserves with the Eurosystem - will be extended to six
weeks, from four weeks, to match the new frequency of monetary policy meetings.』
んでもって金融政策の変更サイクルに合わせて準備預金の積み期間を6週間にするというのが何か事務的に微妙な気がするんですが、まあ元々細々としたオペをするのではなくて積み期間に合わせてざくっとオペを打つのがECBなので金融政策サイクルと積み期間のサイクルを合わせるというのもあるのですかね、よー知らんけど。確か昔の記憶だとECBの金利変更は基本的に積み期間に合わせて適用するというのがあった(積みの進捗操作をしないように)のですが昔の政策変更確認すると必ずしもそうでも無さそうではあるのですが、まあ基本的に金融政策と準備預金適用期間を合わせるというのは従来からの発想なのでそういう事なんでしょう。
『At the same time, the ECB announces its commitment to publish regular
accounts of the Governing Council’s monetary policy meetings, which is
intended to start with the January 2015 meeting. The publication of the
accounts will be timed so that the account of the previous meeting is published
before the date of the next one.』
でこちらがおーという所ですが、ECB理事会の議事要旨を公表することにした(公表タイミングは次回の定例理事会の前までに)ことでして、従来色々と大人の事情によって議事要旨は出さんぞなという話だったのが転換しやがったなという所です。
『The revised meeting schedule will be finalised at the 16 July Governing
Council meeting and posted on the ECB website immediately thereafter.』
新日程は7/16の通常理事会で決定されて公表しますのでよろしゅうにという事ですが、この「6週間ごと」というのは要するに市場のクレクレうぜえという事で毎月やるのを止めたというのであり、議事要旨公表に関しては良く判らんけど従来のトリシェ時代からのお得意の「会見で金融政策方向性を示唆」というのが最近のドラギマジックの使い過ぎで「政策反応関数が判らん」とか「お前はまたやるやる詐欺か」とか言われる様になってECBと市場とのコミュニケーションが出来ているのかどうかが謎という状態で、まあ緩和継続する分にはそれでも回るでしょうが、いずれ緩和からのEXITという話になった場合に今のコミュニケーションでやっていたらどんだけ混乱するのか中々チャーミングな事になりそうなので、議事要旨でも出すっぺ出すっぺという事になったんでしょうかねえ、よーわからんけど。
それからTLTROの詳細公表ですが。
http://www.ecb.europa.eu/press/pr/date/2014/html/pr140703_2.en.html
PRESS RELEASE
3 July 2014 - ECB announces further details of the targeted longer-term refinancing operations
『The Governing Council of the European Central Bank (ECB) decided today
on further technical details of a series of targeted longer-term refinancing
operations (TLTROs), announced on 25 June 2014. The TLTROs are designed
to enhance the functioning of the monetary policy transmission mechanism
by supporting bank lending to the real economy.』
ということで、下の方に説明があって実施要綱へのリンクがありますが、基本的な部分は当初の説明にあったような内容だと思うのですが、細かい部分に関しては実施要綱を詳しく読むかという所でございまして、実はそこまで読みこめていないので(汗)読んだらまたネタにします。
○先般のイエレン講演に関連してFOMC会見虫干しネタ(すいません)
http://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20140618.pdf
Transcript of Chair Yellen’s Press Conference
June 18, 2014
・金融政策運営は「バランスアプローチ」を強調
もうだいぶ前にネタにした件なのでアレですが、冒頭の方で質問した人が「インフレが最近強いようですけど緩和続けてインフレが上振れても雇用が弱いんだったら緩和継続するようだけどその許容範囲はどのへんなの?」という質問があったのですが、中盤にフォローアップの質問が。
『GREG IP. Madam Chair, Greg Ip of the Economist. This is partly a follow-up
to Steve Liesman’s question. How would the Committee respond if inflation
did temporarily move above target in the near term before you achieve full
employment? Your colleague John Williams and the IMF have both suggested
that the Committee might consider allowing inflation to temporarily overshoot
because that might achieve a faster, larger improvement in employment.
Second question is: Will financial stability considerations play a role
in when and how fast the Committee normalizes interest rates?』
で、最近はインフレがオーバーシュートするのも許容すべきという考えが示されているけどそこはどうよ?という質問に加え、もう一つの質問がファイナンシャルスタビリティーと金融政策という質問ですな。
イエレン先生の答え。
『CHAIR YELLEN. So with respect to the question of overshooting, let me
start by saying that inflation continues to run well below our objective,
and we’re still some ways away from maximum employment. And for the moment,
I don’t see any tradeoff whatsoever in achieving our two objectives. They
both call for the same policy-namely, a highly accommodative monetary policy.
So, at best, overshooting of inflation or the thought that we will reach
our inflation objective before we have attained maximum employment, I suppose
I would see, at most, as a risk that we could face somewhere down the road.』
現在はそのようなトレードオフの問題は生じていません(キリッ)って答えになってNEEEEEE!
『Symmetrically, it’s also conceivably a risk that we would reach our
maximum employment objective before we’ve actually attained our inflation
objective. So there are different ways in which we could conceivably-or
there could conceivably arise policy conflicts or tradeoffs somewhere down
the road.』
ほうほうそれでそれで?
『Now, quite some time ago, the FOMC adopted, and we reaffirmed just in
January, a statement on our longer-run goals and policy strategy. And what
that statement said is that, first of all, whenever either inflation or
employment are away from their preferred or mandate-consistent levels,
it will always be the FOMC’s policy to make sure that we get back to those
target levels over the medium term. But a principle that’s embodied in
that statement is that the Committee will follow a so-called balanced approach
in deciding on its policies.』
バランスアプローチキタコレですな。
『And, essentially, that means that when we see some conflict between achieving
the two objectives, that we would consider in deciding on a policy just
how far we are from achieving each of the objectives. And if the distance
from achieving an objective is particularly large, it would be consistent
with a balanced approach that we would tolerate some movement in the opposite
direction on the other objective. But balanced approach is the general
policy strategy I think we’d follow.』
ということで、「マンデートに対するコンフリクト」という話におけるバランスアプローチの話をしておりますが、ここで説明が終わっていて何とファイナンシャルスタビリティーに関する話をしないでスルーする所がお洒落な所でありまする。
・改めてファイナンシャルスタビリティーに関して
でまあこんな質問がちょっと後に。
『PEDRO DA COSTA. Hi, I’m Pedro da Costa from Dow Jones Newswires. Thank
you very much. Since we are currently having a World Cup, I thought it
would be valid to ask a question about the world. And I’m surprised-a
little surprised at the optimism of your forecast given some, you know,
the darkening outlook overseas. You’ve got conflict in the Ukraine, escalation
of war in Iraq with implications for oil prices that potentially have global
economic impact. You have-excuse me-a European recovery that’s still fairly
weak, and emerging markets that are slowing down sharply. Do you think
the U.S. can be a lone engine of economic recovery globally?』
こちらは海外経済に対するリスク認識の質問ね。
『And if I could just follow up very quickly on Greg’s question, because
you talked about the two sides of the mandate, but you didn’t quite answer
the financial stability part. Do you think-is financial stability currently
preventing the Fed from being more accommodative than it would like? And
if not, when do you expect that to happen, if at all? Thank you.』
でまあ海外に関しては答えの後半の方にあって「色々と注目する点はあるがリスクは今の所そんなにないです」という話をしているのですがそれは省略しまして前半部分をば。
『CHAIR YELLEN. So, let me-I’m sorry I didn’t answer the last part of
Greg’s question and the last part of yours. Let me start there. With respect
to financial stability, we monitor potential threats to financial stability
very, very carefully, and we have spoken about some-I’ve spoken in recent
congressional testimonies and speeches about some threats to financial
stability that are on our radar screen, that we are monitoring. Trends
in leveraged lending and the underwriting standards there, diminished risk
spreads in lower-grade corporate bonds-high-yield bonds-have certainly
caught our attention. There is some evidence of reach-for-yield behavior.』
ということで利回り追求のサムエビデンスはあると言ってますが、レーダースクリーンとか言ってる時点でまあ喫緊の課題とは考えていないのが見え見え。
『That’s one of the reasons I mentioned that this environment of low volatility
is very much on my radar screen and would be a concern to me if it prompted
an increase in leverage or other kinds of risk-taking behavior that could
unwind in a sharp way and provoke a sharp, for example, jump in interest
rates. And we’ve seen what effect that can have on the global economy,
and I think it’s something that it’s important to avoid.』
ほうほうそれでそれで?
『But broadly speaking, if the question is, to what extent is monetary
policy, at this time, being driven by financial stability concerns, I would
say that-well, I would never take off the table that monetary policy should-could,
in some circumstances, respond. I don’t see them shaping monetary policy
in an important way right now.』
ファイナンシャルスタビリティーの観点から特段金融政策が反応する必要なし(キリッ)とな。
『I don’t see a broad-based increase in leverage, rapid increase in credit
growth or maturity transformation, the kinds of broad trends that would
suggest to me that the level of financial stability risks has risen above
a moderate level. And we are using supervisory tools and regulations both
to make the financial system more robust and to pay particular attention
to areas where we’ve spotted concerns, like leveraged lending, which is
very much a focus of our supervision.(以下海外に関する応答部分割愛)』
でまあ問題も懸念するようなレベルでは無く、その辺は規制で対応という話をしていますな。
・株価とファイナンシャルスタビリティ
この次にこんな質問も。
『PETER BARNES. Peter Barnes with Fox Business, ma’am. Can I-just to follow
up a little bit on what Pedro asked about. Specifically, what about equity
markets? I mean, right now, today, the S&P 500 is on track to close
at a-another record high. You have said that you have not seen any evidence
of bubbles in equity markets, and that they have been trading within historic
norms. Is that still the case today? Thank you.』
『CHAIR YELLEN. So I don’t have a sense-the Committee doesn’t try to
gauge what is the right level of equity prices. But we do certainly monitor
a number of different metrics that give us a feeling for where valuations
are relative to things like earnings or dividends, and look at where these
metrics stand in comparison with previous history to get a sense of whether
or not we’re moving to valuation levels that are outside of historical
norms, and I still don’t see that. I still don’t see that for equity
prices broadly.』
ということで、株価に関しては色々な指標を見ているという話をしていますが、過去のヒストリカルから見て特段の問題が発生しているとは思わない、という説明をしていまして、まあこういうしかない面はありますけれども、大体2003年のVaRショックの前の日本の金利市場においても当時の福井総裁が債券市場に関して「債券市場はバブルではないか、ついでに日銀の国債買入がバブルを助長してないか」という質問に「知らんがな(意訳)」という答えをしていたのを思い出す訳でありまして、死亡フラグで無いことを祈りたいと存じます。
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2014/07/04
○リスクバンク利下げ&微妙なフォワードガイダンスとな
ほいな(URL全部にリンクを張ると恐らくレイアウトがおかしくなると思いますので、リンクに関してはURLの途中までで下記URL先に飛ぶようにしています、以下同様)
http://www.riksbank.se/en/Monetary-policy/Forecasts-and-interest-rate-decisions/Repo-rate-decisions/2014/Repo-rate-decision-on-2-July-2014/
Repo rate decision on 2 July 2014
ブルームバーグによる市場予想が0.5%への下げだったのでそれに対して低いのですが
声明文はこちら。
http://www.riksbank.se/en/Press-and-published/Press-Releases/2014/Repo-rate-cut-by-half-a-percentage-point-to-025-per-cent/
Repo rate cut by half a percentage point to 0.25 per cent
Date 03/07/2014
『Economic activity continues to strengthen in the Swedish economy. However,
inflation is lower than expected and it is now assessed that underlying
inflationary pressures are clearly lower than assessed in April. The Executive
Board of the Riksbank considered that an even lower repo rate is required
for inflation to rise towards the target of 2 per cent. The repo rate is
now being cut by 0.5 percentage points to 0.25 per cent, at the same time
as the repo-rate path is revised downward substantially. Increases in the
repo rate are not expected to begin until the end of 2015.』
ということで経済は見通し通りだが物価が弱くて先行きの見通しも弱いので利下げが適切と判断となっていますが、最後の一文にある「レポレートの引き上げは2015年末までは始まらないだろうと「予想される」」というのが微妙なフォワードガイダンス文言でして、ほほーという感じなのでメモだけ置いておくがまあ細かい話はスルー。
○イエレン講演関連
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/yellen20140702a.htm
Chair Janet L. Yellen
At the 2014 Michel Camdessus Central Banking Lecture, International Monetary Fund, Washington, D.C.
July 2, 2014
Monetary Policy and Financial Stability
・単に今回はBISビューをこき下ろすのが目的のような希ガス
最初の『Balancing Financial Stability with Price Stability: Lessons from
the Recent Past』のところですけどね。
『When considering the connections between financial stability, price stability,
and full employment, the discussion often focuses on the potential for
conflicts among these objectives. Such situations are important, since
it is only when conflicts arise that policymakers need to weigh the tradeoffs
among multiple objectives.』
複数目的のトレードオフとは言いますが・・・・・・・・
『But it is important to note that, in many ways, the pursuit of financial
stability is complementary to the goals of price stability and full employment.』
complementaryと来ていますので金融安定化はおまけみたいな扱いですのう。
『A smoothly operating financial system promotes the efficient allocation
of saving and investment, facilitating economic growth and employment.
A strong labor market contributes to healthy household and business balance
sheets, thereby contributing to financial stability. And price stability
contributes not only to the efficient allocation of resources in the real
economy, but also to reduced uncertainty and efficient pricing in financial
markets, which in turn supports financial stability. 』
ということで、そもそも雇用が堅調だったり物価が安定していたら金融安定化は果たせます(キリッ)とこれはどう見てもFEDビューですな。
『Despite these complementarities, monetary policy has powerful effects
on risk taking. Indeed, the accommodative policy stance of recent years
has supported the recovery, in part, by providing increased incentives
for households and businesses to take on the risk of potentially productive
investments. But such risk-taking can go too far, thereby contributing
to fragility in the
financial system.1』
まあ単純FEDビューと違うのは一応「緩和的な金融政策はリスクテイク行動に対して強い影響がある」という話をしているのですが・・・・・・・・・・・・
『This possibility does not obviate the need for monetary policy to focus
primarily on price stability and full employment--the costs to society
in terms of deviations from price stability and full employment that would
arise would likely be significant. I will highlight these potential costs
and the clear need for a macroprudential policy approach by looking back
at the vulnerabilities in the U.S. economy before the crisis. I will also
discuss how these vulnerabilities might have been affected had the Federal
Reserve tightened monetary policy in the mid-2000s to promote financial
stability. 』
ということで次の章に参りますがまあ基本BISビューこきおろしが続きます。
・2000年代半ばのレビュー
次が『Looking Back at the Mid-2000s』という小見出し。
『Although it was not recognized at the time, risks to financial stability
within the United States escalated to a dangerous level in the mid-2000s.
During that period, policymakers--myself included--were aware that homes
seemed overvalued by a number of sensible metrics and that home prices
might decline, although there was disagreement about how likely such a
decline was and how large it might be.』
ほうほう問題は警戒していたんですかそうですか。
『What was not appreciated was how serious the fallout from such a decline
would be for the financial sector and the macroeconomy. Policymakers failed
to anticipate that the reversal of the house price bubble would trigger
the most significant financial crisis in the United States since the Great
Depression because that reversal interacted with critical vulnerabilities
in the financial system and in government regulation.』
ただしバブル崩壊がこれだけの金融危機になる事に関しては予想ができませんでしたとな。
『In the private sector, key vulnerabilities included high levels of leverage,
excessive dependence on unstable short-term funding, weak underwriting
of loans, deficiencies in risk measurement and risk management, and the
use of exotic financial instruments that redistributed risk in nontransparent
ways. 』
ということで、金融危機を大きくした要因として「大きすぎたレバレッジ」と「短期ファンディングへの過度な依存(資金ポジションの長短ギャップの拡大)」を示していましてそれはそうなのですが、金融政策でマクプルという話の場合はその現象が起きる前提としてのゴルディロックスヒャッハー環境に関しての件なので、まあ最初からBISビューを一顧だにしないという感じなのよね。
『In the public sector, vulnerabilities included gaps in the regulatory
structure that allowed some systemically important financial institutions
(SIFIs) and markets to escape comprehensive supervision, failures of supervisors
to effectively use their existing powers, and insufficient attention to
threats to the stability of the system as a whole.』
でまあ公的セクターでもジニーメイとかファニーメイとかフレディ―マックとかそういうのがと。
『It is not uncommon to hear it suggested that the crisis could have been
prevented or significantly mitigated by substantially tighter monetary
policy in the mid-2000s. At the very least, however, such an approach would
have been insufficient to address the full range of critical vulnerabilities
I have just described.』
これは斬新な搦め手からの攻撃で中々味わいがあります。
つまり「金融引き締めがバブル崩壊を生んだ訳でない」という所からはじまり、「金融引き締めがバブル崩壊を生んだ訳でない」→「金融引き締めを行っても金融危機を大きくした要因となるようなレバレッジの拡大や短期ファンディングの過度な依存は解消されない」→「だからマクロプルーデンスは金融政策でやるよりも規制でやるべきである(キリッ)」という理屈ですが、それはどう見ても屁理屈にしか見えないと思うんだがどうですかねえ。
『A tighter monetary policy would not have closed the gaps in the regulatory
structure that allowed some SIFIs and markets to escape comprehensive supervision;
a tighter monetary policy would not have shifted supervisory attention
to a macroprudential perspective; and a tighter monetary policy would not
have increased the transparency of exotic financial instruments or ameliorated
deficiencies in risk measurement and risk management within the private
sector.』
さっきの→で展開された屁理屈が上記引用部部分です。
『Some advocates of the view that a substantially tighter monetary policy
may have helped prevent the crisis might acknowledge these points, but
they might also argue that a tighter monetary policy could have limited
the rise in house prices, the use of leverage within the private sector,
and the excessive reliance on short-term funding, and that each of these
channels would have contained--or perhaps even prevented--the worst effects
of the crisis. 』
まあさすがに屁理屈に無理があるのは認識しているのでしょうが、反対者の見解を何か極端な例にしているように見えます。つまりここでは「よりタイトな金融政策は危機を防ぐことが出来るという考えもあるが、金融政策を過度にタイトにしたら経済活動に悪影響を与えるでしょう」として斬っているのだがそもそも反対者の反対ポイントはそこでは無いので、この説明もかなりインチキ臭い。
『A review of the empirical evidence suggests that the level of interest
rates does influence house prices, leverage, and maturity transformation,
but it is also clear that a tighter monetary policy would have been a very
blunt tool: Substantially mitigating the emerging financial vulnerabilities
through higher interest rates would have had sizable adverse effects in
terms of higher unemployment. In particular, a range of studies conclude
that tighter monetary policy during the mid-2000s mighthave contributed
to a slower rate of house price appreciation. But the magnitude of this
effect would likely have been modest relative to the substantial momentum
in these prices over the period; hence, a very significant tightening,
with large increases in unemployment, would have been necessary to halt
the housing bubble.2 Such a slowing in the housing market might have constrained
the rise in household leverage, as mortgage debt growth would have been
slower. But the job losses and higher interest payments associated with
higher interest rates would have directly weakened households' ability
to repay previous debts, suggesting that a sizable tightening may have
mitigated vulnerabilities in household balance sheets only modestly.3 』
七面倒なので一気に引用しちゃいましたが、要するに「金融安定化の為に金融政策を引き締め的にすると確かに過剰レバレッジとかは解消されるかも知れんが景気があっかするから良くない」というのをああでもないこうでもないと説明しています。どう見てもFEDビューです本当にカムサハムニダ。
『Similar mixed results would have been likely with regard to the effects
of tighter monetary policy on leverage and reliance on short-term financing
within the financial sector. In particular, the evidence that low interest
rates contribute to increased leverage and reliance on short-term funding
points toward some ability of higher interest rates to lessen these vulnerabilities,
but that evidence is typically consistent with a sizable range of quantitative
effects or alternative views regarding the causal channels at work.4 Furthermore,
vulnerabilities from excessive leverage and reliance on short-term funding
in the financial sector grew rapidly through the middle of 2007, well after
monetary policy had already tightened significantly relative to the accommodative
policy stance of 2003 and early 2004. In my assessment, macroprudential
policies, such as regulatory limits on leverage and short-term funding,
as well as stronger underwriting standards, represent far more direct and
likely more effective methods to address these vulnerabilities.5 』
でまあこちらは実際の米国の話で、レバレッジの急拡大は実際は危機の直前に起きており、その時点では既に金融は引き締めに転じていましたといっていまして、だから危機予防には金融引き締めを使うのは難しいという話ですが、それは引き締めが時既にお寿司だったという事への反証には成って居ないような気がするのですけどねえ。
次の『Recent International Experience』という小見出しですけどね。
『Turning to recent experience outside the United States, a number of foreign
economies have seen rapidly rising real estate prices, which has raised
financial stability concerns despite, in some cases, high unemployment
and shortfalls in inflation relative to the central bank's inflation target.6
These developments have prompted debate on how to best balance the use
of monetary policy and macroprudential tools in promoting financial stability.』
近年の海外の例で不動産バブル懸念対応の例キタコレ。
『For example, Canada, Switzerland, and the United Kingdom have expressed
a willingness to use monetary policy to address financial stability concerns
in unusual circumstances, but they have similarly concluded that macroprudential
policies should serve as the primary tool to pursue financial stability.』
カナダやスイスや英国などは金融政策を予防的に使う可能性を示しているけれども、一方でマクプルは規制で行うという行動もしていますよ!と説明していますな。
『In Canada, with inflation below target and output growth quite subdued,
the Bank of Canada has kept the policy rate at or below 1 percent, but
limits on mortgage lending were tightened in each of the years from 2009
through 2012, including changes in loan-to-value and debt-to-income caps,
among other measures.7 In contrast, in Norway and Sweden, monetary policy
decisions have been influenced somewhat by financial stability concerns,
but the steps taken have been limited. In Norway, policymakers increased
the policy interest rate in mid-2010 when they were facing escalating household
debt despite inflation below target and output below capacity, in part
as a way of "guarding against the risk of future imbalances."8
Similarly, Sweden's Riksbank held its policy rate "slightly higher
than we would have done otherwise" because of financial stability
concerns.9 In both cases, macroprudential actions were also either taken
or under consideration.』
ということで、各国の例を出していますが、基本的にはマクプルでの金融政策発動がメインなのではないってな説明をしていて、まあ普通にBISビューをこき下ろす方向の説明になっていますな。
『In reviewing these experiences, it seems clear that monetary policymakers
have perceived significant hurdles to using sizable adjustments in monetary
policy to contain financial
stability risks.』
ここがさっき申し上げた部分な。
『Some proponents of a larger monetary policy response to financial stability
concerns might argue that these perceived hurdles have been overblown and
that financial stability concerns should be elevated significantly in monetary
policy discussions. A more balanced assessment, in my view, would be that
increased focus on financial stability risks is appropriate in monetary
policy discussions, but the potential cost, in terms of diminished macroeconomic
performance, is likely to be too great to give financial stability risks
a central role in monetary policy decisions, at least most of the time.』
ということでバランス取れたアプローチが必要とはフォローしていますがここまでの流れからして明らかに「マクプルは規制で」になっています。
『If monetary policy is not to play a central role in addressing financial
stability issues, this task must rely on macroprudential policies. In this
regard, I would note that here, too, policymakers abroad have made important
strides, and not just those in the advanced economies. Emerging market
economies have in many ways been leaders in applying macroprudential policy
tools, employing in recent years a variety of restrictions on real estate
lending or other activities that were perceived to create vulnerabilities.10
Although it is probably too soon to draw clear conclusions, these experiences
will help inform our understanding of these policies and their efficacy.』
ということで中心的な役割は果たせませんというのが前提とかBISビュー完全砲撃になっていますが、BISビューの論点に乗って反撃している訳でも無いのでまあこの説明も微妙というか屁理屈っぽい感じはしますが、イエレンさんSF連銀総裁の頃から自分らの政策ビューの正当化をするときの理屈がかなり屁理屈成分が高いというかああいえばこういう的なのが得意な人なので、こんなもんちゃあこんなもんかも知れません。
で、以下の部分は昨日引用した部分になります。
・ということで
まあ今回の講演ですが、要するにBISビューをこき下ろすというのが一つの目的だったと思うのですけれども、今朝(米国昨日)の雇用統計が強くてヒャッハーというのを見ますと、何かイエレンさんにおかれましては雇用統計が強いであろうからして、またぞろ金融市場が早期利上げヒャッハーとなって金利が馬鹿上昇されると困るから敢えてBISビューをケチョンケチョンにするようなトーンの講演をしたんじゃないかという気もせんでも無くて、まあ金利が上がると困るからという基本思想は把握したという所かもしれませんね。で、どうも経済物価情勢が弱い時には微妙にタカ成分のある話(3月の会見)をして、一方で経済物価情勢が強くなるとハト満載の話(先般の会見やらこの講演なども含め最近の情報発信)をしている感もあって、バランス取ろうとして変な決め打ちをしたくないという事なのかも知れませんね。
しかしまあ何ですな、このおばちゃん一々講演での話が「ズバリ言うわよ!」状態になっているのがヒジョーに気になる所でして、情報発信の中でバランスを取って金融政策の先行きに下手に決め打ちをされないように工夫しているような感はあるのですが、前任の逆さ絵おじちゃんみたいにああでもないこうでもないと言いながら適当に両論併記してみたり、説明するにしても微妙に言語明瞭だが曖昧というような感じにするのではなく、一々その時のテーマをズバリと言ってしまうので、その部分だけ取るとタカになったりハトになったりという感じに見えてしまい、市場の方がそのうちどう受け止めれば良いのかで混乱しだすんじゃないかという懸念がだいぶありますなあとあたしゃ思うのですがどうでございましょうかねえという所で。
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2014/07/03
○イエレン議長金融政策のマクプル否定キタコレ(か?)
今朝はモーサテで画像と音声が出ていましたのでこだま師匠の「往生しまっせ〜」ばりのベシャリの一端が聞けましたが。
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/yellen20140702a.htm
Chair Janet L. Yellen
At the 2014 Michel Camdessus Central Banking Lecture, International Monetary Fund, Washington, D.C.
July 2, 2014
Monetary Policy and Financial Stability
でまあ寝起きで超斜め読みしているのでマクプルと金融政策の部分だけしか引用しませんので詳しくは後日続きをするかも知れませんが。
・冒頭からぶちかましキター
『In my remarks, I will argue that monetary policy faces significant limitations
as a tool to promote financial stability: Its effects on financial vulnerabilities,
such as excessive leverage and maturity transformation, are not well understood
and are less direct than a regulatory or supervisory approach; in addition,
efforts to promote financial stability through adjustments in interest
rates would increase the volatility of inflation and employment.』
>monetary policy faces significant limitations as a tool to promote financial stability
と、いきなりスタイン前理事が卒倒しそうなぶちかましキタコレでして、しかも同じ文で
>efforts to promote financial stability through adjustments in interest
rates would increase the volatility of inflation and employment
とまでぶちかましておりまして、どう見てもBISビュー完全撃破に向けた砲撃をしている所が実にイエレンおばちゃんらしく、最近はすっかりイエレン先生本領発揮というか、これはやはりスタイン理事が抜けたのがでかいのではないかとか外野としては思いたくなりますな。
『As a result, I believe a macroprudential approach to supervision and
regulation needs to play the primary role. Such an approach should focus
on "through the cycle" standards that increase the resilience
of the financial system to adverse shocks and on efforts to ensure that
the regulatory umbrella will cover previously uncovered systemically important
institutions and activities.』
ということでイエレン議長にとってのマクロプルーデンスとは金融政策における対応ではなく規制監督であるという事になりますので、こらまあ煽り気味に言ってしまえばバブル待ったなしという話になりますぞな大丈夫っすかねえという所で。
『These efforts should be complemented by the use of countercyclical macroprudential
tools, a few of which I will describe. But experience with such tools remains
limited, and we have much to learn to use these measures effectively. 』
でまあカウンターシクリカルな規制ではなくサイクルに沿った規制というものが重要であるという話で、恐らく中身の方ではその手の話があるのでそれはそれで良く読んで置かないといけませんので後で読みますが、寝起きの頭で超速攻読みする分には足元の金融政策運営という現世利益の部分しかみませんぞなということで。
『I am also mindful of the potential for low interest rates to heighten
the incentives of financial market participants to reach for yield and
take on risk, and of the limits of macroprudential measures to address
these and other financial stability concerns.』
一応次のパラグラフでフォローはしていますけど。
『Accordingly, there may be times when an adjustment in monetary policy
may be appropriate to ameliorate emerging risks to financial stability.
Because of this possibility, and because transparency enhances the effectiveness
of monetary policy, it is crucial that policymakers communicate their views
clearly on the risks to financial stability and how such risks influence
the appropriate monetary policy stance. I will conclude by briefly laying
out how financial stability concerns affect my current assessment of the
appropriate stance of monetary policy.』
ということで一応は金融不均衡への目配りがという話はしているのですが、その前のパラグラフであんな話をしているとまあ何言ってもお為ごかしにしか読めませんけどね、ということで本文は概ねスルーして最後の方を。
・やはり「マクプルは規制」
小見出し『Promoting Financial Stability through a Macroprudential Approach』から引用。
『If macroprudential tools are to play the primary role in the pursuit
of financial stability, questions remain on which macroprudential tools
are likely to be most effective, what the limits of such tools may be,
and when, because of such limits, it may be appropriate to adjust monetary
policy to "get in the cracks" that persist in the macroprudential
framework.11 』
『In weighing these questions, I find it helpful to distinguish between
tools that primarily build through-the-cycle resilience against adverse
financial developments and those primarily intended to lean against financial
excesses.12 』
ということで、ちょっと飛ばして『Leaning Against the Wind』というBISビューを象徴する言葉を小見出しに使っている所に参ります。
『At this point, it should be clear that I think efforts to build resilience
in the financial system are critical to minimizing the chance of financial
instability and the potential damage from it.』
時間と読み込みの関係上この間にある部分を飛ばしていますが、要するに最初の所で話をしているカウンターシクリカルでは無いような規制ツールを使うのが有効ですという話をしていて、BISビューへの砲撃準備キタコレとなる訳です。
『This focus on resilience differs from much of the public discussion,
which often concerns whether some particular asset class is experiencing
a "bubble" and whether policymakers should attempt to pop the
bubble.』
「some particular」アセットクラスのバブル、とか言ってる時点で金融政策ツールでマクプルやる気が全然ねえなというのがわかりますが。
『Because a resilient financial system can withstand unexpected developments,
identification of bubbles is less critical. 』
『Nonetheless, some macroprudential tools can be adjusted in a manner that
may further enhance resilience as risks emerge. In addition, macroprudential
tools can, in some cases, be targeted at areas of concern.』
ということでイエレンさんの言うマクプルのツールってまあ基本規制なので、規制の方が特定のバブルに対応できます(キリッ)的な話をしていましてスタイン前理事卒倒の展開キタコレですな。
『For example, the new Basel III regulatory capital framework includes
a countercyclical capital buffer, which may help build additional loss-absorbing
capacity within the financial sector during periods of rapid credit creation
while also leaning against emerging excesses. The stress tests include
a scenario design process in which the macroeconomic stresses in the scenario
become more severe during buoyant economic expansions and incorporate the
possibility of highlighting salient risk scenarios, both of which may contribute
to increasing resilience during periods in which risks are rising.13 Similarly,
minimum margin requirements for securities financing transactions could
potentially vary on a countercyclical basis so that they are higher in
normal times than in times of stress.』
でまあ以降は例えばこのようなツールはこのような部分に有効みたいな話をしておりまして、要するに個別アセットクラスでのバブルについては対応可能です(キリッ)という認識を思いっきり示していますが、その手の規制って色々と掛けても結局バブルになる時はその外側でバブルになるんですよねえと思われまして、しかも規制をガチガチにすればするほど却ってその外側に出るパワーが高まるような気がしますけれどもねえと思いますので、再度煽るとこのイエレン体制だとまたバブル&バーストが起きそうな悪い予感しかしてこないのですが副議長の方のフィッシャー先生がどう出るのかを見て行きたいと思うのでありました(フィッシャーさんはマクプルの人とは聞いていますので)。
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