海外金融政策概観(2010年下期)

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FRBやBOEを中心に趣味成分が高いですが、海外中銀のペーパーや講演などをフォローするのだ。

2010年下期

2011/03/31「フィラデルフィア連銀プロッサー総裁の出口政策論(予告編)」
2011/03/29「昨日の訂正」
2011/03/28「2月BOE議事要旨、景気先行きにはまだ慎重」
2011/03/25「バーナンキ議長が会見を実施へ/3月FOMC声明文は景気見通しを大きく引き上げ」
2011/03/24「BOE議事要旨からクイックメモ」
2011/03/23「英国のインフレ更に拡大と」
2011/03/16「FOMC声明文メモ:今回は先行きの政策のアナウンスは全くなし」
2011/03/14「コチャラコタ総裁の労働市場に関する講演はQE2の縮小も拡大も示唆せず」
2011/03/11「BOEは金利据え置き/ブラード総裁の量的緩和に関する講演」
2011/03/09「BOE2月議事要旨ネタの続き」
2011/03/08「BOE2月議事要旨ではGDPの落ち込みに対するインプリケーションが話題に」
2011/03/04「ECBサプライズの4月利上げ示唆攻撃!!!」
2011/03/03「バーナンキ議会証言続き、景気認識の部分ではインフレ加速のリスクに一応言及」
2011/03/02「3月1日バーナンキ議会証言より、金融政策に関する説明はLSAPの意義を強調」
2011/02/25「コチャラコタ総裁の11月講演から(その2)リザーブの効果に関して」
2011/02/24「2月BOE議事要旨クイックメモ、更に利上げ票増える」
2011/02/21「1月FOMC議事要旨から、次回会合で議論がどう進展するのでしょうか」
2011/02/18「コチャラコタ総裁のQE2に関する説明(11月講演)実質金利の引き下げを重視」
2011/02/16「英国物価が4%に/イエレン講演より(その3)グローバルインバランスの説明は無理筋」
2011/02/15「イエレン講演より(その2)FAQの説明も結構無理無理気味な部分が」
2011/02/14「イエレン副議長のQE2の説明は結構ロジックに無理がありますね」
2011/02/10「BOE1月議事要旨(その3)経済のスラックが小さいかもという重要な議論について」
2011/02/07「バーナンキ議長のプレスクラブでの講演、景気は強気だけど失業と物価を強調」
2011/02/04「バーナンキ議長のプレスクラブでの講演からクイックメモ」
2011/02/03「BOE1月議事要旨(その2)金融市場及びグローバルな一次産品価格上昇に関して」
2011/02/02「BOE1月議事要旨より、利上げの正式な検討を行っています」
2011/01/31「コチャラコタ総裁講演(その2)金融政策の説明は極めてフラットです」
2011/01/27「FOMC声明文から、今回は反対者なしと」
2011/01/25「ミネアポリス連銀コチャラコタ総裁講演(その1)、多分この人はタカ派ではないです」
2011/01/24「ダラス連銀フィッシャー総裁講演、バランスシートのこれ以上の拡大には消極的」
2011/01/20「プロッサー総裁講演、QE2はQE1のようには効かないのではないかとの見解」
2011/01/19「プロッサー総裁講演、物価に楽観的、金融政策のフリーダム議論を主張」
2011/01/18「プロッサー総裁講演、景気にはやや強め、労働市場に金融政策の寄与は小さいと」
2011/01/17「フィラデルフィア連銀プロッサー総裁講演から(イントロ)」
2011/01/12「バーナンキ議長議会証言から、やはり説明は無理筋っぽく/BOE議事要旨の補足」
2011/01/11「バーナンキ議長議会証言から、国債買入プログラムの正当性を説明する証言」
2011/01/07「12月FOMC議事要旨から、景気認識に関する部分&昨日の補足」
2011/01/06「12月FOMC議事要旨から、相変わらず国債買入は「金利の低下」アプローチとな」
2011/01/05「12月BOE議事要旨より、景気認識はやや強めも下振れリスク警戒」
2011/01/04「12月BOE議事要旨より、グローバルなディマンドプルインフレに関する言及が」
2010/12/21「11月BOE議事要旨、国債買入に関する定量的な議論は皆無&物価見通しでガチンコ勝負」
2010/12/15「12月FOMC声明文では景気判断を引き上げつつ物価雇用判断を引き下げ」
2010/12/02「11月FOMC議事要旨より(その4)」
2010/12/01「11月FOMC議事要旨より(その3)」
2010/11/30「11月FOMC議事要旨より(その2)」
2010/11/25「バーナンキ講演(その3)為替市場を通じた世界経済の成長速度調整とな」
2010/11/24「追加緩和決定時のFOMC議事要旨よりクイックメモ/バーナンキ議長講演(その2)」
2010/11/22「バーナンキ議長のECBでの講演:追加緩和に関するロジック」
2010/11/19「ホーニッグ総裁のQE2反対の論点整理(その3)」
2010/11/18「ホーニッグ総裁のQE2反対の論点整理(その2)」
2010/11/17「カンサスシティ連銀ホーニッグ総裁のQE2に反対する論点整理(その1)」
2010/11/16「米国のQE2が面白いことになっている件について」
2010/11/15「トリシェ総裁の定例会見から」
2010/11/11「米国市場で短期先物が来年3Qの利上げを織り込みに」
2010/11/04「FOMC長期国債買入拡大を決定と」
2010/10/29「NY連銀が国債購入規模予想のアンケート調査をするとは・・・・」
2010/10/28「量的緩和の規模が少ないと言う観測報道で米国金利が上昇とな」
2010/10/26「10月15日のバーナンキ講演は買い材料と言うほどのものでもないようですが」
2010/10/25「BOEの物価目標がターゲットなのか裁量なのか訳判らん状態に(10月議事要旨より)」
2010/10/18「9月FOMC議事要旨からは状況がこのままなら追加緩和実施という流れが示される」

2011/03/31

○これはまた凄い題名の講演で(フィラデルフィア連銀プロッサー総裁)

http://www.philadelphiafed.org/publications/speeches/plosser/2011/03-25-11_shadow-open-market-committee.pdf

題名見た瞬間に水道水盛大に吹いた(^^)。

ということでネタにしようと思ったら気がついたら時間が無いので明日に続くでござるの巻ですが、具体的にどういう出口政策を実施しようかという話をしております。で、その内容および手順ですが。

・出口政策の基本的なフレーム

(1)FF金利の引き上げおよびリザーブへの付利とディスカウントウィンドウを活用した金利コリドアによるFF金利のコントロール

(2)リザーブの「顕著な」縮小

(3)FEDの資産構成を「短期物」で「国債」中心の金融危機前の状態に戻す

(4)明示的なインフレターゲットの導入(失業率とのデュアルマンデートよりもより物価に重点を置くという意味)


・具体案

(1)利上げの実施とMBS償還再投資の停止

(2)(読んでいてイマイチ言いたい事が判らんかったが)利上げの追加によるバランスシートの縮小および保有資産の売却の検討

(3)資産の入れ替えを売却なども使って実施

という感じだったと思いますが、明日にでも続きを(汗)。

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2011/03/29

○昨日の訂正であります(汗)

さて、昨日BOEの議事要旨ネタを書いたのですが、いつもよりも下調べ成分が不足していた事から(大汗)思いっきり勘違いした解釈をしていた部分がございましたので謹んでお詫びして訂正致したく。

箇所としては「賃金上昇とインフレ」の関係の所なのですが・・・・・

昨日こんなん書きました。

>『It was unlikely that any increase in inflation expectations would lead to a sustained increase in inflation itself without also being associated with a pickup in wage growth.』

>賃金の上昇を伴わない状況でインフレ期待が上昇するというのは不確かでしょとは確かにさいでございますわな。

・・・・・で、ここの部分でございますが、ちゃんと訳しますと、「賃金の上昇を伴わない場合、インフレ期待が上昇したとしても、インフレそのものの継続的上昇にはつながるかどうかは不確かである」という事でありまして、つまりは足元の物価上昇の継続がインフレ期待の上昇を招いたとしても、それが賃金の上昇を伴わない場合には継続的なインフレに繋がるかどうかが微妙、という話でありまして、昨日引用した1月以降の賃金改定の動向を更に確認していきたい、という議論に繋がるという話になると思われます。

つーことで、昨日のあたくしの解釈はインフレ期待とインフレがごっちゃになった説明になっておりましたので、謹んでお詫びして訂正すると共に、ご指摘いただきました読者様におかれましては誠に恐縮至極でございまして、改めて感謝を申し上げさせていただきたいと存じますです、はい。

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2011/03/28

○BOE議事要旨から(続き)

http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/mpc/pdf/2011/mpc1103.pdf

・原油価格上昇の経済に与える影響について

『The international economy』のところでそういう話がありまして。

『There were several channels through which persistently higher oil prices could affect the UK and global economies.』

ということで原油価格上昇の経済に与える影響に関してですけどね。

『First, dearer oil would add directly to consumer price inflation via increases in the prices of fuel, energy and energy-intensive goods and services, though whether that would lead to more generalised inflationary pressure would depend on whether it caused employees to push for higher pay increases.』

まずは原油価格の上昇が直接的に物価に影響を与えるという話ですな。

『Second, the downward adjustment to real incomes would be likely to depress spending outside the oil-producing regions, dampening global growth and, therefore, the prospects for UK exports.』

これは原油価格上昇が原油産出国と消費国の間の実質的な所得移転になるという論点で、その結論としてはグローバルの成長を阻害して英国の輸出の押し下げに繋がるという話。

『Third, volatile oil prices and persistent geopolitical tensions in oil-producing regions added to the general sense of uncertainty over economic prospects, and could adversely affect household and business confidence, as well as discouraging the holding of risky assets among financial investors.』

原油価格の変動が大きかったり、産油国の政情不安が持続するという状況によって、経済の見通しに不確実性が高まり、その結果として家計や企業のコンフィデンスに悪影響を与え、リスク性資産への投資意欲に悪影響を与えますという話ですな。

『Finally, it was possible that higher oil prices would also be associated with an adverse impact on global productive capacity, including in the United Kingdom.』

原油価格の上昇はグローバルな生産能力に対してマイナスの影響を与えるとな。

ということで、どうも原油価格上昇は経済に対してマイナスと言う話が連呼(当たり前ちゃあ当たり前ですが)しておりますな。


・インフレ期待の上昇と賃金動向に関して

インフレに関する辺りではこの辺がほほうという感じでした。第23パラグラフから。

『It was unlikely that any increase in inflation expectations would lead to a sustained increase in inflation itself without also being associated with a pickup in wage growth.』

賃金の上昇を伴わない状況でインフレ期待が上昇するというのは不確かでしょとは確かにさいでございますわな。

『Whole-economy regular pay had increased by 2.3% in the three months to December by comparison with a year earlier ? that growth rate had changed little in recent months and remained below its pre-recession average. There were some early indications that private sector wage settlements had increased at the beginning of the year. But the coverage of the available data was at this stage limited and heavily influenced by previously agreed multi-year settlements, including those linked to actual inflation.』

ということで、英国の場合は1月に賃金改定があるようなのですが、現状ではその上昇程度とかはまだ一部しか見えていないようですな。

『It was likely that private sector settlements would increase during 2011, in part reflecting a recovery in productivity, although they were likely to stay significantly below the rate of inflation. Wage freezes in the public sector were expected to weigh on pay growth in the economy as a whole.』

ただまあ英国の賃金上昇は実際のインフレ率より低く、更に公的セクターにおける賃金上昇凍結が経済全体の賃金上昇率を高くしないでしょうという見通しになっています。

・・・・・ということですので、まあインフレ期待が賃金ルートから上昇していくという見通しになっていない、という事なのですが、よくよく考えてみたら実際のインフレ率よりも賃金上昇が低いという流れって国民厚生的にどうなのよという気もするのでありますけどどうなんでしょうかね。


・経済のダウンサイドリスクとアップサイドリスク

『The immediate policy decision』のところからですが、先日ネタにした以外の部分で経済のダウンサイドリスクとアップサイドリスクの部分を。

『Inflation had risen to well above the 2% target as a consequence of higher energy and other commodity prices, increased VAT and the past depreciation of sterling. The Committee’s judgment remained that inflation was likely to fall back in the medium term, as the impact of those factors dissipated and as a margin of spare economic capacity persisted. For some time, the Committee had set monetary policy so as to balance substantial opposing risks to that medium-term outlook for inflation.』

ということでまずダウンサイドから。

『The key downside risk was that continued weakness in activity, relative to the supply capacity of the economy, could cause inflation to fall below the target in the medium term, once the impact of the factors temporarily raising it had faded.』

いつもの経済の余剰が経済のダウンサイドリスクになるという話ですな。

『It was too early to assess the extent to which activity had recovered since the slowdown in growth at the end of 2010. Evidence from the latest business surveys on output and employment prospects pointed to some recovery.』

でまあ4Qの経済が落ちているというのがやはりそのダウンサイドへの懸念を高めたという感じなんでしょうな。

『But it was unclear whether demand growth would be sufficient to erode spare supply capacity as the economy underwent a necessary rebalancing away from public and private consumption and towards net trade and investment.』

『On the one hand, there were some signs that the improvement in the net trade position that had been expected following sterling’s depreciation was becoming more apparent. But on the other, the most recent concurrent indicators of consumer spending and sentiment had deteriorated sharply. And it was possible that they presaged a more sustained period of weak spending growth, perhaps as the impacts of the fiscal consolidation and near-term above-target inflation on household finances became more readily apparent. The net impact of these two forces on overall demand growth remained a key uncertainty.』

で、まあポンド下落による輸出への好影響というのもありますが、一方で足元での物価上昇や財政再建による消費支出やセンチメントへの影響もあり、これらの影響がどちらに出てくるのかというのを見極めたいと。

一歩アップサイドの方ですが。

『On the upside, the period of elevated inflation could persist for longer than the Committee expected. That might happen if the expected persistence of inflation above the target in the near term caused expectations of higher future inflation to become ingrained, leading businesses and households to set higher prices and wages.』

こちらもいつもの話ですが、インフレの数値が高い状態が続き、インフレ期待の上昇や企業の価格設定や賃金の上昇などに繋がるとインフレが加速する話ですな。

『Inflation had risen to 4% in January, and would very likely rise further over the coming months: there was a significant risk that inflation would exceed 5% in the near term. How much of the increase in January related to the pass-through of the increase in VAT was as yet unclear. Information on inflation expectations from household surveys had been mixed on the month, while measures derived from financial markets had changed little. And, while there were some signs that private sector wage settlements had picked up at the beginning of the year, they provided only very tentative evidence of higher pay pressures.』

『Inflation might also persist above the target if externally generated inflation pressures continued and were not offset by exchange rate movements, or if there were further pass-through from the past depreciation of sterling.』

この辺は前月と同じ話をしていますが、現状では1月の賃金改定がそこまで大きくなっていないようですし、サーベイデータや市場データからのインフレ期待上昇はそこまででもなさそうな感じですな。

つーことで、物価は上昇基調なのですが、景気に関しては先行きの下振れリスクが拡大しているというイメージ(2月、3月と先行き見通しの話が徐々にダウンサイドリスク警戒になっている感じがします)となっていて、益々やることが難しくなっているBOEの政策はどうするんでしょという感じでありまする。

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2011/03/25

○FOMC関連ざます

・バーナンキ議長が定例的に記者会見を実施とな

バーナンキが年に4回記者会見をするそうです。
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20110324a.htm

『Chairman Ben S. Bernanke will hold press briefings four times per year to present the Federal Open Market Committee's current economic projections and to provide additional context for the FOMC's policy decisions.』

ほうほう。

『In 2011, the Chairman's press briefings will be held at 2:15 p.m. following FOMC decisions scheduled on April 27, June 22 and November 2. The briefings will be broadcast live on the Federal Reserve's website. For these meetings, the FOMC statement is expected to be released at around 12:30 p.m., one hour and forty-five minutes earlier than for other FOMC meetings.』

今年は4月、6月、11月のFOMC後に説明大会ということですから、次回はQE2を今後どうするのか、その次は実際の今後の運営に関して、というような流れになりますかそうですか。

『The introduction of regular press briefings is intended to further enhance the clarity and timeliness of the Federal Reserve's monetary policy communication. The Federal Reserve will continue to review its communications practices in the interest of ensuring accountability and increasing public understanding.』

まあ現状のように連銀幹部の皆様がフリーダム発言をする中でバーナンキ議長が会見するという事ですが、フリーダム発言も政策論議という意味では大事ではありますけれども、うまく仕切らないとノイズ増幅になる悪寒もしますのでお手並み拝見という所ですな。


・3月FOMC声明文ネタ

声明文が出た時に一応メモしましたが再度整理ね。

http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20110315a.htm(今回)
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20110126a.htm(前回)

今回の声明文の特徴としては「景気に関する部分を大幅に上方修正」「金融政策に関する部分は見事に同一文」というコントラストかなあなどと思うのですた。

ということで第1パラグラフと第2パラグラフだけネタにするのであった。

第1パラグラフ

『Information received since the Federal Open Market Committee met in January suggests that the economic recovery is on a firmer footing, and overall conditions in the labor market appear to be improving gradually. 』(今回)

『Information received since the Federal Open Market Committee met in December confirms that the economic recovery is continuing, though at a rate that has been insufficient to bring about a significant improvement in labor market conditions.』(前回)

回復のトーンを強めて、かつ労働市場の改善に関しても従来の「不十分な改善」からトーンを強めています罠。

『Household spending and business investment in equipment and software continue to expand. However, investment in nonresidential structures is still weak, and the housing sector continues to be depressed.』(今回)

『Growth in household spending picked up late last year, but remains constrained by high unemployment, modest income growth, lower housing wealth, and tight credit. Business spending on equipment and software is rising, while investment in nonresidential structures is still weak. Employers remain reluctant to add to payrolls. The housing sector continues to be depressed.』(前回)

この辺の説明部分は前回対比あっさり味になっていますが、基本的には同じ話をしているように読めますがどうでしょ。

『Commodity prices have risen significantly since the summer, and concerns about global supplies of crude oil have contributed to a sharp run-up in oil prices in recent weeks. Nonetheless, longer-term inflation expectations have remained stable, and measures of underlying inflation have been subdued.』(今回)

『Although commodity prices have risen, longer-term inflation expectations have remained stable, and measures of underlying inflation have been trending downward.』(前回)

逆に今回はインフレに関する説明が詳しくなりました。で、その中であたくしがほほーと思ったのは、従来「基調的なインフレが下方トレンドを継続している」という話をしていたのが、今回抜けた所ですかな。もちろん商品価格の上昇という部分を詳しく行っているのもポイント。

第2パラグラフ。

『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability. Currently, the unemployment rate remains elevated, and measures of underlying inflation continue to be somewhat low, relative to levels that the Committee judges to be consistent, over the longer run, with its dual mandate.』(今回)

『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability. Currently, the unemployment rate is elevated, and measures of underlying inflation are somewhat low, relative to levels that the Committee judges to be consistent, over the longer run, with its dual mandate.』(前回)

失業とか基調的インフレに関して前回と今回が使っている動詞が違う(前回がbe動詞だったのですが今回は「remain」とか「continue to」になっていますわな)のが違いですかにゃ。

『The recent increases in the prices of energy and other commodities are currently putting upward pressure on inflation. The Committee expects these effects to be transitory, but it will pay close attention to the evolution of inflation and inflation expectations. The Committee continues to anticipate a gradual return to higher levels of resource utilization in a context of price stability. 』(今回)

『Although the Committee anticipates a gradual return to higher levels of resource utilization in a context of price stability, progress toward its objectives has been disappointingly slow.』(前回)

今般のエネルギー等の価格上昇による影響が一時的ですよ、という話をしている部分が追加されましたが、今回はしらっと経済の改善に向けた動きが「disappointingly slow」という部分が抜けたのであります。

・・・・・ということで、経済に関する部分がかなーり改善してましたな、というメモでした。

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2011/03/24

○BOE議事要旨が出たのでクイックメモ

毎度お馴染みのBOE
http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/mpc/pdf/2011/mpc1103.pdf

まあとりあえずざっと読んだのですが、今回は当然ながらインフレが進んでいる件についての話が延々とございました。特にインフレ期待の今後の変化とか、そうは言っても賃金とか上昇しないと基調的な物価は上昇しないんじゃネーノとか、まあそんな話があるのですが、詳しく読んでいないのでまたそれは後日。

で、今回もまた現状維持が5票、利上げが3票(0.5%上げ1票の0.25%上げ2票)に資産買入拡大1票となりまして、その顔ぶれも同じだったのですが、まあとりあえずクイックメモという事で今日は現状維持主張の人たちの意見の部分であります所の第31パラグラフから。

『Other members concluded that an increase in Bank Rate was not yet appropriate. While the recent information on the prospects for UK net trade had been encouraging, it was not yet clear that the weakness in output growth seen in the latter part of 2010 would prove temporary, particularly in light of the latest indicators of a further weakening in consumer spending.』

やはり昨年4Qの経済指標の落ち込みを受けて、とりあえず経済がここから先更に落ち込むか、回復軌道に復するかを確認したいという事なんでしょうね。

『There remained differences of view between these members on the likelihood of the upside risk associated with an increase in inflation expectations materialising.』

ただ、インフレリスクの顕在化に関しては現状維持派の人でも遺憾が分かれると。

『Some thought that this risk remained limited, given that the near-term outlook for inflation could be explained by reference to changes in energy and other commodity prices, VAT and the sterling exchange rate. Others thought that this risk had risen, given further upwards revisions to the near-term outlook for inflation, and that the case for an increase in Bank Rate had strengthened in recent months. Overall, the uncertainty created by both developments in the oil market and the recent indicators of household spending and confidence meant that there remained merit in waiting to see how those factors evolved before altering the stance of monetary policy.』

ただまあこの辺りの問題が直ぐに顕在化するという訳でもないので、リスク認識はリスク認識としてまだ様子見をした方がメリットがあるでしょう、という事ですが、まあ上記のようなあたりをポイントとして注視しているという話っすね。

『The Committee would learn more over coming months about the effect of the recent increase in the standard rate of VAT and, therefore, also about the other forces affecting inflation.』

ということで、恐らくはもう少し様子を見る、という事になったのでしょうけれども、先般出た物価のデータが更に上昇でござるとなっているのでまあ中々大変ですなと思われます。詳しくはまた週末にでも詳しく読んで見ます、と自分にまた宿題をorz

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2011/03/23

○英国のインフレ加速とな

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=a5OKlMUAkvVc
2月の英インフレ率:4.4%に上昇、予想以上−08年10月来の高水準 (1)

これはまたアチャーな状態。今後の金融政策運営が中々厳しいですなあとか思うのですが、こんな講演があるので題名に釣られて読んでみようかと思っておりまする。(と予告編をして自分に縛りをかける)

http://www.bankofengland.co.uk/publications/news/2011/021.htm
The MPC's Policy Dilemma
Speech by Charles Bean

本文はこちら。
http://www.bankofengland.co.uk/publications/speeches/2011/speech479.pdf

今度ネタにしますです、はい。

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2011/03/16

○とは言っても一応FOMC声明文

http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20110315a.htm(今回)
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20110126a.htm(前回)

激しく斜め読みだけしましたが、第1パラグラフでは景気の現状に対して、『economic recovery is on a firmer footing, and overall conditions in the labor market appear to be improving gradually.』という表現で、景気回復についての現状判断を引き上げ、労働市場に関しては1月に「顕著な改善」という表現だったのが、「緩やかに改善している」という形にややペースを下げる感じになりましたが、まあ1月に出た指標が強すぎでしたからこんなもんかと。

あと、基調的なインフレに関しての判断も上がっていまして、今回は『Nonetheless, longer-term inflation expectations have remained stable, and measures of underlying inflation have been subdued.』となっているのですが、この部分の内基調的なインフレ(後半部分)に関しては、前回までは「下方トレンドを辿っている」との表現でしたが、今回は「抑制されている」と、下方トレンド終了でござるの巻とこちらは中々結構な話になっておりますわな。


第2パラグラフではインフレに関して、足元の資源価格上昇の影響を、『The recent increases in the prices of energy and other commodities are currently putting upward pressure on inflation. The Committee expects these effects to be transitory, but it will pay close attention to the evolution of inflation and inflation expectations. 』としまして、資源価格上昇が現在物価上昇圧力として作用しているが、FOMCはこれらの影響は一時的であると認識している、という事でとりあえず一時的な影響としたものの、その次の文にありますように、今後のインフレおよびインフレ期待に与える影響を注意深く観察する、とございますので、全く気にしないってえ話でもないというのはまあバランスが取れていると思います。

で、金融政策決定内容に関しては第3パラグラフにありますように、今回の会合では現状の政策を継続するという決定だけで今後の政策に関する示唆は特に無かったです。4月に持ち越しという事になるんでしょうかね。

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2011/03/14

○コチャラコタ総裁の「労働市場と金融政策」に関する講演はQEの現状維持を示唆(か?)

http://www.minneapolisfed.org/news_events/pres/speech_display.cfm?id=4627(概要)
http://www.minneapolisfed.org/news_events/pres/kocherlakota_slides_March3_2011.pdf(スライドショー)

・・・・・ということでスライドショーまで含めて読んで見たのですが、結局これがまた内容が高級(のように見える)でワカランチ会長という泣ける状態でありまする。なお、基本的に引用は概要(Executive Summary)の方から参ります。

どうも今回の講演のキーワードの一つ目が『nominal rigidities 』という奴でして、

『In the 1970s, the United States experienced high inflation and high unemployment simultaneously. That experience made clear that accommodative monetary policy may not always be an appropriate response to high unemployment. In the intervening thirty years, macroeconomists have engaged in a careful reconsideration of the exact role of monetary policy.』

で、まあここの一部だけ切り取ると「緩和的な金融政策は高失業率下における金融政策として必ずしも適切ではない」という事になるのですが、別に今回はこういう話をしている訳では有りません。

と言いますのもその次に・・・・・

『In this speech and the accompanying notes, I ask two questions. First, what can policymakers learn about the current level of u* from the aggregate data on unemployment and vacancies? Second, what other data can be useful in informing policymakers about the current level of u*?



『The main conclusion of this research is that the primary role for monetary policy is to offset the impact of what economists term nominal rigidities - that is, the sluggish adjustment of prices and inflation expectations to shocks.』

ということで、名目的硬直性とか言うようですが、何かよー判らんですが、金融政策は価格やインフレ期待などがショック(上方下方共に、という事だと思います)に対して調整するのが遅れる、というのが名目的硬直性という事らしい(すいませんあたくし経済学専攻してないもんでよく判らないです)ですけど、それによる経済のインパクトを抑えるのが金融政策の第一の目標である、という話をしているようです。スライドショーでも何となくそんな感じの話がありました。

で、それが労働市場とどういう話になっていくのかというのがその後。

『With that conclusion in mind, my slides define the natural rate of unemployment to be the unemployment rate u* that would prevail in the absence of any nominal rigidities. To offset nominal rigidities, monetary policy accommodation should track the gap between the observed unemployment rate and u*. The challenge for monetary policymakers is that u* changes over time and is unobservable.』

その名目的硬直性とやらが無い時の自然失業率を測定する事によって、現実の失業率が自然失業率とどのように乖離しているかを見る事ができて、その結果として名目的硬直性がどういう状態にあるのかが判るので、それに対応した金融政策を実施する事ができる。即ち、金融緩和は自然失業率と実際の失業率の間のギャップを埋めるような度合いで行えばよいという事のようですな。

ただまあ最後の文にありますが、その自然失業率がそもそも時間の経過と共に変化しうるものであり、直接観測できるものではない、というのが金融政策運営上の課題になるというお話をしています。

『In this speech and the accompanying notes, I ask two questions. First, what can policymakers learn about the current level of u* from the aggregate data on unemployment and vacancies? Second, what other data can be useful in informing policymakers about the current level of u*?』

ということで、ではそもそも自然失業率を算出できるのかねという話になるようで。

『In answering the first question, I apply the canonical Diamond-Mortensen-Pissarides model (for which the three won the Nobel Prize in Economic Science in 2010) to the aggregate data on unemployment and vacancies. I find that the model and data do not provide a definitive measure of u*. Unemployment insurance benefits have increased since December 2007. Firms expect higher taxes and higher input prices. It is possible that these changes in labor market conditions may have been sufficiently large to generate a big increase in u* in the past three years.』

もはや訳の判らん世界です(汗)。この辺の話はスライドショーを見た方が良かったりします。

『However, it is also possible that low job creation is largely attributable to nominal rigidities that are generating low demand. In this case, u* will have changed little since December 2007. In the notes that accompany the slides, I show that the resulting possible range for u* is large: from as low as 5.9% to as high as 8.9%.』

で、結論としてはその自然失業率は5.9%から8.9%の間とな。

『In terms of the second question about auxiliary information sources, I proceed more heuristically. The basic intuition is that u* is low if high unemployment is being generated by low demand. Hence, I look for information about the current level of demand. I find that business surveys and the current data on inflation both point to u* being low relative to the current unemployment rate.』

ということで、上記のレンジではあまりにも広すぎで他の補助的データで計測するとどうなのよ、という話なのですが、結論は自然失業率が現在の失業率よりも低いという事になるようで。

『I conclude that the current accommodative stance of monetary policy is appropriate. However, the Federal Open Market Committee will need to remain vigilant to the possibility of changes in the gap between the unemployment rate and u*. 』

結論としては「現状の緩和的な環境は適切」という話になりまして、まあ現状でこの話をしていると言うことはQE2の縮小という話はコチャラコタ総裁からは出てこないでしょうなあ、というのが結論だと思います。

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2011/03/11

○BOEは金利据え置き(メモ)

詳細(=議事要旨)は後日出るので今回は結果だけ。
http://www.bankofengland.co.uk/publications/news/2011/023.htm
News Release
Bank of England Maintains Bank Rate at 0.5% and the Size of the Asset Purchase Programme at £200 Billion

まあ2月の議事要旨を先日ネタに致しましたが、4QのGDPが委員会の予想よりも悪かったという事実が重くて、景気の先行きが微妙になっている中で利上げするのかという話はできません罠、というのは2月の議論から見て予想される所だったと思われまして、今回の決定は市場予想通りという感じだったようですわな。

では今後はどうなるかと言いますと、基本的には景気の上向きが確認(=4Qの落ち込みが一時的であると確認)されれば普通に利上げする(でも利上げサイクルに入る訳ではない)でしょうし、一段のポンド安進行が起きた場合にはポンド下落を何らかの手段で止めたくなるでしょうから、やるやる詐欺スキームで何かやるのかもしれませんな、と思ってまふ。


それはそれとして2月24日に実施されたセントルイス連銀ブラード総裁の量的緩和政策に関する講演から少々。

http://www.stlouisfed.org/newsroom/displayNews.cfm?article=915
FEBRUARY 24
St. Louis Fed’s Bullard Discusses Quantitative Easing, Global Inflation, and Commodity Standards

講演に関してはこちらのページに要旨があって、中のPDFバージョンはスライドショー形式になっています。スライドショーなので結局のところ要旨を見てもまあそんなに変わらんかったです、というか要旨部分を読んだ後にスライドショー見たら結局のところ要旨見るだけで十分だったということに気がつきましたので、皆様におかれましてはまあ上記URL先の要旨だけよんでおけばヨロシアル。


○ブラードさんと言えば量的緩和が必要という話を真っ先に平場でした人だけに

あたくしだいぶ後からヒーヒー言いながらブラードさんのペーパーを読みましたけれども、昨年のQE2導入前に「時間軸政策を採用するとデフレ均衡に陥るリスクが高まるので量的緩和政策を導入すべし」という趣旨のペーパーを出して話題になった訳ですな。URLにあるように出たの7月28日でござるある訳ですよ。

http://research.stlouisfed.org/econ/bullard/pdf/SevenFacesFinalJul28.pdf
Seven Faces of "The Peril"

このときの文章に関しましては昨年の8月16、24、25日に泣きながらヘタクソ解釈をしておりますのであたくしのヘタクソ解釈でよければ過去ログをどうぞですぅ。


・・・・とまあそういう人が量的緩和政策の話をしているので読んでみた訳ですが、基本的にブラードさんの今回の講演ではそんなに斬新な話がでているわけでもないですけれども論点は面白いです。あと、講演のお題にある「Commodity Standards」っていうのは「なんかの商品本位制」みたいな意味でして、そういう文脈で「本位制よりもインフレーションターゲットの方が良い」という話をしているのですが、この部分は今後の政策運営として話をしているのか、はたまた一般論で話をしているのかは文脈では微妙に判らなかったですので、このペーパーだけで「量的緩和の次の政策としてインフレターゲット導入を主張」という風に読むのがちょいと微妙な気もせんでもないであります。

あ、それからそれから、肝心の事書き忘れましたが、ブラード総裁はQE2の今後について「経済状況が改善しているので、今後はQE2の規模を減らすかどうかという議論をするのが自然な姿」とあっさり味で出口政策の話をしているというのもありまして、その話が出てから最後にコモディティースタンダードのネタがあるので、今後の金融政策として意識しているのか単に本位制議論に釘をさしているのか、というのがちょっと判らんかったということでありまする。

『In his presentation, “Quantitative Easing, Global Inflation, and Commodity Standards,” Bullard first explained how the Fed’s second round of quantitative easing was a substitute for ordinary monetary policy easing, concluding that quantitative easing “is an effective tool when the policy rate is near zero.” He then examined whether U.S. monetary policy analysis should focus on a global output gap rather than the U.S. output gap. Finally, Bullard briefly discussed the merits of commodity standards and inflation targeting, stating that “inflation targeting is a better choice in the current environment.”』

ということで論点をいくつか拾ってみます。


○量的緩和政策はゼロ金利制約の下では伝統的金融政策に似ているという話

『Regarding the motivation for QE2, Bullard highlighted the disinflationary trend in 2010 and added that the “Japanese experience with mild deflation and a near-zero nominal interest rate has been poor.” Given the near-zero policy rate environment, Bullard said that “asset purchases can substitute for ordinary (interest-rate targeting) monetary policy.”』

そこにある日本の経験がどうのこうのというのが前回ネタにした講演にありました「ゼロ金利と望ましくないインフレ率の均衡状態」というものでありまして、QE2の実施は「ディスインフレ的な圧力に対して実行したもので、これは通常の金利ターゲット政策の代替として機能した」という説明になっているのですが、前回の講演で話していた論議と微妙に違っているような気がせんでもない所でありますが、今回はスライドショー形式で細かい話が読み取れないので判断保留。

『Bullard stated that ahead of the November FOMC meeting, the policy change had been largely priced into markets, and the financial market effects were conventional. In particular, he said, “real interest rates declined, inflation expectations rose, the dollar depreciated, and equity prices rose.” Bullard added, “These are the ‘classic’ financial market effects one might observe when the Fed eases monetary policy in ordinary times.” Bullard concluded that “quantitative easing has been an effective tool, even while the policy rate is near zero.”』

量的緩和政策を実施するというアナウンスによる市場の反応は伝統的金利操作による金融緩和によってもたらされるものと同じものであって、その効果としては「実質金利の低下」「インフレ期待の上昇」「ドルの下落」「株価の上昇」を挙げています。つまり量的緩和は金利がゼロの下では伝統的政策と同様の効果を上げるツールとして機能した、という結論になっています。

まあここではやはりブラードさんも「実質金利の低下」と名目金利の低下には触れない所がコチャラコタ総裁と同じでして、まあ効果を主張するのならどう見てもこちらの方がスマートという事でしょう。


○今後は量的緩和を減らすとかいう話が「自然な議論」でしょとの指摘

で、その続き。

『Since QE2 was announced, the economic outlook has improved, Bullard noted. “The natural debate now,” he said, “is whether to complete the program, or to taper off to a somewhat lower level of asset purchases.”』

ほほう(^^)。


○グローバルインフレに関して:グローバルな生産ギャップの影響を考慮という話

次のお題は『Global Inflation: Should the U.S. Consider Global Output Gaps?』というものでして、ここの論点が面白かったです。

『Bullard noted that some critics suggest the Fed is encouraging global inflation, which may imply that the Fed is not appropriately weighing global conditions. He noted that “the Fed is charged with controlling U.S. inflation, but perhaps global inflation will drive U.S. prices higher or cause other problems.”』

ということで、「米国のQE2政策がグローバルインフレーションを引き起こしている」という毎度お馴染みの批判に対しての反論を述べているのですが、その中でブラード総裁が指摘する興味深い論点として、その最後の文にあるように、「グローバルインフレが米国の物価を必要以上に上昇させたりその他の悪影響を与える事が有り得ます」ということで、こんな話をしています。

『Bullard highlighted the different recovery speeds and inflation trends of advanced and emerging economies.』

いわゆる「two-speed-recovery」という各国の中銀の方々が指摘する話でもあり、グローバルインバランスの話でもありますが・・・・・

『During the global recovery, advanced economies have experienced moderate growth and a deflationary trend, while emerging economies have experienced strong growth and an inflationary trend. “Inflation is a threat especially for countries with quasi-fixed exchange rates with the dollar,” he said, noting that “those countries are choosing to import U.S. monetary policy to some extent.”』

その回復力の違いによって先進国のデフレーショナリーなトレンドと新興国のインフレーショナリーなトレンドが発生しているのですが、その中でブラードさんは「インフレは準固定な為替政策(=ドルペッグ的な政策、ということですから中国とかも含まれるのでしょう)を取っている国にとって最も脅威である、なぜならこれらの国は為替政策によって米国の緩和政策を幾分か取り入れているからです」と指摘していてまあその通りですなという感じです。

と、為替政策の話をした後はグローバルな生産ギャップの話。

『Much monetary policy analysis focuses on the U.S. output gap, Bullard noted. He then posed the question of whether the U.S. should focus on a “global output gap.”』

『He raised the possibility that a global output gap might give a better indication of global conditions and cited studies that suggest it might give a better indication of future U.S. inflation.』

米国国内だけの生産ギャップよりも、グローバルな生産ギャップを見た方が米国の将来のインフレを予測する時に有効ではないかという話ですな。

『“U.S. policymakers often say the U.S. output gap is large; this is interpreted as putting downward pressure on U.S. inflation,” Bullard said. In contrast, “the global output gap is probably much narrower or even positive; this would then be interpreted as putting upward pressure on inflation.”』

つまり海外のインフレが米国のインフレに影響を与える可能性を考えると、米国の生産ギャップが大きいからインフレ圧力を下げるという議論だけしているのは片手落ちになる可能性がある、という事を指摘していると思われます。

でね、まあここを読んでて「ほほー」と思った訳ですが、この前ネタにしたBOEの議事要旨でも「経済の余剰生産力がインフレ押し下げに寄与する程度は各種の要因によって異なってくる」という議論がありましたし、一方で日銀でも前回の決定会合の声明文で「需給ギャップ」に関する文言を削除(ただし月報では文言は残りますが)していまして、各国の中銀も「国内の生産ギャップだけを見ているとインフレトレンドを読み間違える可能性がある」という点を意識しているのではないかなあと思った次第でございます。

『Bullard said that his past criticisms of gap-based analyses of inflation dynamics still apply. For example, he noted that “empirical relationships between gaps and inflation are shaky.” “Still,” he concluded, “the idea of ‘global output gaps’ is one way to frame the recent criticism of the Fed and promote fruitful debate.”』

「経験的なギャップとインフレーションの関係は揺らぎやすい」とブラードさんは指摘しておりますが、グローバルギャップの議論に関してもこれからの論議が必要という話のようですな。


○商品本位制よりもインフレターゲット

『Commodity Standards and Inflation Targeting』というお題の所から少々。

『Although commodity standards were last discussed when U.S. inflation was high and variable, Bullard noted that today, inflation is quite low. He added, “Tying the currency to commodities when commodity prices are highly variable is questionable.”』

そらそうやとしか申し上げようが無いですが、米国では商品本位みたいな意見も出てたりするのねという方がへーと思いましたが。

『While a commodity standard forces accountability on the central bank, “it did not always work because governments sometimes changed the rate between the commodity and the currency,” Bullard said. “Inflation targeting is another way to force more accountability to the central bank and anchor longer-term expectations. Make the central bank say what it intends to do,” he said, “and hold the central bank accountable for achieving the goal.”』

いわゆる商品本位制は必ずしもワークする訳ではなく(政府が本位通貨の比率をいじってくる可能性がある為)それよりもインフレターゲットの方が良い、という話をしていますが・・・・

『“Inflation targeting,” Bullard concluded, “is the appropriate modern alternative to historical commodity standards.”』

というまとめになっていて、まあ別にブラード総裁は今後の政策フレームとしてインフレターゲットを設けるという話をしている訳ではなさそうに読めますがどうでしょうかね。

ということで、まあ足元の政策インプリケーションとちと違う話が多いですが、この中で足元の政策インプリケーションを読みますと、「経済が改善しているので今後の政策論議の中でQE2の縮小の話がでるのは自然」「米国内の大きな生産ギャップだけではなくてグローバルなギャップを見る必要があるのではないか」というような部分ではないかと思われまして、ブラードさんのイメージとしては出口模索的なイメージであり、物価に関して先行きは上向きの見方になっている、という所ではないかと存じます。

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2011/03/09

○BOE議事要旨より(続き)、今後の上下要因に関する話とか政策の話とか

『The February GDP growth and inflation projections』の所から。

第24パラグラフより。

『The Committee reached its policy decision in the light of its projections to be published in the Inflation Report on Wednesday 16 February. Expansionary monetary policy, combined with further growth in global demand and the past depreciation of sterling, should ensure that the recovery in the United Kingdom was maintained. But the continuing fiscal consolidation and squeeze on households’purchasing power was likely to act as a brake. Abstracting from the effects of snow, growth around the turn of the year appeared likely to have been somewhat weaker than expected at the time of the November Inflation Report.』

景気回復を促進する要因は(1)緩和的な金融政策(2)将来の世界的な需要の拡大(3)これまでの英国ポンド安、抑制要因としては(1)財政健全化に向けた動き(2)家計購買力の減退、との事のようですな。で、昨日引用しましたが足元の景気動向は11月のインフレーションレポートでの予想よりも大雪要因を差し引いてもやや弱いという状態。

で、先行きの見通しに関しては(引用割愛しますが)『remained highly uncertain』としていまして、民間需要に関して上下のリスク要因を並べています。その結果としてMPCメンバーの見通し分布は上下に広がっている、という話になっていますがその結果はインフレーションレポートのファンチャートの通りであります。

第27パラグラフより。

『Inflation was likely to pick up to between 4% and 5% in the near term, and to remain well above the 2% target throughout 2011, boosted by the increase in VAT, higher energy and import prices, and some rebuilding of companies’ margins. The projection for the first half of the forecast period was markedly higher than in November, due largely to the recent increases in the prices of commodities and other imported goods and services. During 2012, inflation was likely to fall back as those effects waned and the downward pressure on wages and prices from the margin of spare capacity persisted. The extent of that fall was likely to be moderated by companies continuing to rebuild their margins and some upward drift in inflation expectations.』

ということでインフレ見通しですが、目先に関しては4%〜5%という落涙を禁じ得ない数値の予想になっていまして、2011年中も2%ターゲットを大きく上回った状態が続くとなっています。で、各種要因がどうのこうのという部分があって、2012年の間には徐々にこれらの要因が外れてターゲット近辺に戻るという予想。しかしながら、企業のマージン確保の動きはインフレ期待が上昇した場合には継続しますねとやはり上方リスクという感じでしょうか。

で、中期的なインフレ予想はこれまた『highly uncertain』となっていまして、その中で経済の余剰生産力に影響を与える要因も列挙しています。第28パラグラフから。

『The prospects for inflation in the medium term were highly uncertain. Continued strong global growth might lead to further upward pressure on commodity and other import prices. The degree of spare capacity and its impact on inflation would depend on: the strength of demand; the impact of the recession on potential productivity; the performance of the labour market; and the sensitivity of wages to labour market slack. The profile for domestically generated inflation would also depend on the extent and pace of any rebuilding of companies’ margins. And inflation would be higher, the more that elevated outturns caused expectations of inflation to rise and that fed through into wage and price setting.』

ということで、真ん中の辺りにありますように、spare capacityの影響によってインフレが低下していくという従来のBOEのロジックに対して見直しも必要かも知れませんねという話になっておりまして(そらまあ足元でドンドンインフレ進行しているのですから致し方ない面もありますが)、この辺りは物価の見通しに関する根本的なロジック部分ですので、今後どういう評価になるのか注目したいです。


で、この議事要旨出た直後にちょっとだけ『The immediate policy decision』の所をネタにしましたけれども、金融政策決定の所に関して。

第31パラグラフと第32パラグラフに「インフレの今後の2つの重要なリスク」が示されています。

『As had been the case for some time, there were two key risks to this broad profile. The first was that weak growth and persistent spare capacity might cause inflation to fall to well below the target in the medium term. The main news about this risk over the past month had been the fourth-quarter contraction of GDP. Even after making allowance for the probable impact of the adverse weather conditions, growth had slowed during the second half of 2010. That apparent weakness could prove temporary, but could also be an early signal of a worsening outlook for growth and hence medium-term inflation. Monthly indicators for January gave conflicting signals: business activity surveys had generally been upbeat, but consumer confidence had declined sharply.』

下方リスクとして従来の「経済の余剰生産力がインフレをターゲット以下に押し下げるリスクがある」という話がありますが、1月議事要旨と違うのは今回は4QGDPの数値が悪く、その結果としてこのリスクが高まっているという認識になっている事ですな。

『The second risk was that the period of elevated inflation would persist for longer than the Committee expected. That could occur if externally generated inflation pressures continued and were not offset by exchange rate movements. One possibility was that the recent further increases in commodity prices, which in many cases had been associated with strong growth in emerging market economies, would continue. Committee members differed in the comfort they drew from the profile of commodity futures prices when assessing the likelihood of that outcome. Second, it was also possible that accommodative monetary policies in emerging market countries could result in higher inflation in those countries. That too could influence UK prices unless offset by exchange rate movements. A third possibility was that there might be further pass through from the past depreciation of sterling.』

やたら長いですが、MPCの予想よりもインフレが長く続くことが上方リスク要因としてございます。で、それはどうなったら起きるかという話が延々とありますが、基本的には「ここまでに起きたインフレが継続し、それが為替市場の動き(つまり英国ポンド上昇)によって相殺されない場合」という事でありますが、ではそれが起きる可能性としては何があるかとい話をしてますな。(1)新興国の需要が継続して拡大して商品価格が更に上昇すること(2)新興国の緩和的な金融政策(昨日引用しましたが要するに中国ですかねえ)が新興国のインフレを加速させること(3)これまでのポンド安の影響が更に物価に上乗せされること、というような話ですな。


で、まあ利上げ提案があった件はスルーしまして(前に引用したから)、利上げに賛成しなかった人の議論内容が第37パラグラフにありましてですな。

『Of those members not favouring a rise in Bank Rate, some thought that the case for an increase had nevertheless grown in strength. The Inflation Report projections implied that inflation was roughly as likely to be above or below target in the medium term, and those projections had been conditioned on a path for market interest rates which assumed an increase in Bank Rate around the middle of the year. Given the potentially disruptive impact of reversing any immediate change in Bank Rate, there was merit in waiting to see indicators of how the economy performed at the start of the year to help assess whether or not the decline in GDP in the fourth quarter presaged sustained economic weakness. A rise at this juncture could damage household and consumer confidence, which remained fragile.』

前半の部分にありますように、そもそも市場がインプライする政策金利のパスを前提にした予想をした結果が2月インフレーションレポートですので、まあそういう意味では利上げへのハードルは下がっているようですが、まあ足元では若干弱い指標も出ていますし、早期に利上げしてまだまだ脆弱なコンフィデンスに悪影響を与えるのも如何なものかという感じでしょうか。

となりますと、まあ1Qのトレンドが見えてくるようになるとか、1月分の指標がことごとく良好とかでないと中々利上げはしにくいと思うのですが、問題はここまでの議論にもありますように、ポンド安がインフレをもたらした面もこれまたありますので、ECBが利上げしてポンドの為替レートが安くなってしまうとインフレ加速要因になってしまいますから、ECBが4月に利上げした場合には追随せざるを得なくなるかも知れないなあという所でしょうかね。

以上、趣味のコーナーでありました。

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2011/03/08

本日は趣味ネタですいません。

http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/mpc/pdf/2011/mpc1102.pdf

○まあ端的にまとめますとですな

2月はインフレーションレポートもありまして、まあそっちはこれまた量が多いので思わずスルー気味なのですが(おいおい)、その前振りとなるお話をしているのでまあここら辺を読んでおけばヨロシアルと勝手に規定して読んでみた訳ですな。

で、各項目に関するあたくしの超簡単まとめは以下のような感じ。

・金融市場

利上げ予想が拡大している。英国の金融環境そのものは改善している。

・世界経済

世界経済は拡大している。グローバルインフレに関する考察を行っています。

・マネー、信用、需要、生産

4QGDPの落ち込みについての考察で意見が分かれています。幾つかの可能性があるという事で、一時的なものなのか先行きの落ち込みを示唆するのかという両面から考察しています。基本的には経済見通しが下がっています。

・供給、コスト、物価

インフレの現状についての考察が延々と続きます。インフレ期待の拡大に関する話と、経済の余剰生産力に関する考察がありますが、こちらは基本的に物価見通しが上がっています。

・2月インフレレポートに関して

上記にあるように、経済見通しを引き下げてインフレ見通しを引き上げています。

・金融政策決定に関して

先日ネタにしたような気がしますが、利上げ主張3名に買入拡大1名となっています。先行きのリスクに関しては例によって(1)余剰生産力がインフレを押し下げる圧力、(2)物価が高い状態がMPCの予想より長く続き、インフレ期待の高まりからインフレサイクルに入ること、を「キーリスク」としています。で、そのどちらに関してもリスクは拡大しているという困った状態な訳ですな。

まあそんな感じで、今回は経済見通しを微妙に下げて物価見通しを上げているという大変にチャーミングな状態になっているのですが、そういう中で金融政策判断はこれまたキャットウォーク状態ですわなあとか思うのでありまする。

・・・・・と、これだけ書くと話が終わってしまいますが(汗)、幾つかのネタを引用致したく。


○グローバルインフレの一因に中国が寄与しているアルねという話

『The international economy』の所ですが、殆ど物価というかグローバルインフレに関する話をしているのですが・・・・・

第9パラグラフから。

『The rebound in world demand had been associated with a notable pickup in global inflation, with the IMF’s measure of global CPI inflation rising from just over 1% in mid-2009 to almost 4% by the end of 2010. This was close to the post-2000 average, but masked considerable heterogeneity, with inflation in excess of 6% in a number of emerging market countries being offset by lower inflation in the United Kingdom’s main trading partners, the euro area and the United States.』

世界的にはインフレが上昇しているが、地域で見ると新興国での上昇率と先進国での上昇率が異なる、という話ですが、この件は先の方でも似たような話が出てきてほほうと思ったりするのです。

第10パラグラフから。

『Much of the rise in global inflation had reflected a rise in commodity prices, many of which had increased by around 50% since the middle of 2010. Temporary supply reductions were likely to have contributed to the increase in the price of some commodities, most obviously agricultural commodities. But in other cases, such as energy and metals, demand increases were likely to have been important. Some commodity prices could rise further if the global economy continued to grow robustly. Especially at risk were commodities for which there were constraints on production or storage capacity. Where available, however, commodity futures prices for delivery in the medium term were generally no higher than current spot prices.』

一部の商品では一時的な供給の減少によって(農産品とかですかな)価格が上昇している面もあるが、基本的には需要の拡大が寄与しており、これらの価格上昇は世界経済の拡大が続けば更に価格上昇するでしょう、という話をしています。それから最後の文の所で昨日ネタにしました商品価格に関する日銀レポートにありました、現物価格と先物価格の逆鞘現象についても言及していますな。

第11パラグラフから。

『The depreciation of sterling had led to substantial increases in UK import prices. More recently, rises in global prices, particularly reflecting higher commodity prices, had added further upward pressure. Accommodative monetary policy in some emerging market economies, particularly where the authorities had been reluctant to permit their exchange rates to appreciate, was likely to have contributed both to the rise in commodity prices and perhaps also to the rise in global prices more generally.』

英国ポンドの下落が輸入価格の顕著な上昇に寄与しているという話と、最近は更に世界的に商品価格の上昇によって世界的に価格上昇圧力が高まっているという話をしています。

で、その後半になります「Accommodative monetary policy in some emerging market economies〜」以下の部分ですが、まあ極めて簡潔にこの部分を意訳すると「中国が緩和的な金融政策とドルペッグによる通貨安政策を採っているからグローバルインフレが拡大しているアルよ!」ということです罠。

・・・・ということで、まあ先進国的には全般的にこういう論調が高まっているものと見られる次第でありまして、徐々にグローバルインバランスは先進国VS中国の罵り合いの様相を呈しつつあるのではないかと懸念される所でもありまする。


○4QGDPの落ち込みに関して

『Money, credit, demand and output』の所から。

まあこのMPC議事要旨読みも1年以上になってきまして(確か1年半くらいかなあ)、漸く過去の書きっぷりとのイメージ比較とかが出来るようになったのでありますが、この部分ってかつてはマネーの話が最初にあって、マネーの動向についてああでもないこうでもないと書いてあるのが仕様だったんですよ。

ところが、まあある意味当たり前ちゃあ当たり前なのですが、最近はGDPの話とか経済の需給動向とかの話が最初に来るようになりまして、今回に関して言えばマネーの話って第18パラグラフの半分程度というこのコーナーの最後の部分に申し訳程度についているという感じになっています。まあ注目材料は完全にシフトしたなあという感じを受ける訳です。

で、こちらは引用すると長くなるので割愛しますが、話の筋はこんな感じです。

・4QのGDPの落ち込みは12月の大雪の影響を加味してもやや大きい

・その理由は3つほど考えられるが、(1)データの統計上の振れの問題(1月のCIPS/Markit活動指数が強かった事から何らかのデータ要因があったのではないか)、(2)年末に成長が一時的に落ち込んだ(元々大雪の影響が無くても落ち込むとONSは予想している)という一時的要因という見方の一方で、(3)この結果はより長い期間に渡る経済の停滞を示す可能性がある、という見方を紹介しています。


○インフレに関しては苦しい説明が続く

『Supply, costs and prices』のところは要するに物価上昇の話が延々と続くのでありますが、先行きの見通しは当然ながら上昇していまして中々泣けますので第19パラグラフを引用するだよ。

『Twelve-month CPI inflation had risen to 3.7% in December, up from 3.3% in the previous month. In line with the usual pre-release arrangements, an advance estimate for twelve-month CPI inflation in January of 4.0% had been provided to the Governor. A detailed breakdown was not available but it seemed likely that increased petrol, furniture and household goods, catering, and alcohol prices had contributed to the rise. More generally, it was difficult to identify how much of the VAT increase had been passed through in January, complicating the interpretation of month-by-month developments in CPI inflation around the turn of the year. The near-term outlook for inflation had risen markedly relative to the November Inflation Report following further rises in commodity and other import prices.』

近いタームのインフレ見通しは11月インフレレポート作成時と比較して顕著に上昇しましたとは泣けます。

第20パラグラフから。

『The available measures of inflation expectations were imperfect and had to be interpreted with care. Surveys of near-term household inflation expectations had risen in recent months, but that was consistent with the change in the Committee’s own expectation for near-term inflation. Evidence from firms was more limited, but was also consistent with some increase in their near-term expectations. Some of the survey measures of longer-term household inflation expectations had picked up in recent months. Medium-term inflation expectations derived from financial markets had shown no discernible trend over the past year as a whole. Lack of liquidity obscured the signal from shorter-term financial market measures, but three to five-year measures had moved in line with the longer-horizon measures which the Committee regularly monitored. Overall, there was little evidence that medium-term inflation expectations had risen above a level consistent with the inflation target. That said, financial market measures of uncertainty about medium-term inflation had been elevated for some time.』

引用が長くてすいませんが、要するに期待インフレ率の推移に関してああでもないこうでもないと話をしているのですが、家計の長期的な期待インフレが引きあがっているが、企業のそれはそこまで大きくなく、更に金融市場から算出される3年から5年程度の期待インフレ率の推移はインフレターゲットのレベルから逸脱していないという話をしておりまして、まあとりあえず長期的なインフレ期待の顕著な上昇はまだ見られていませんという話をしているのでしょう。

ただまあこれだけああでもないこうでもないと書いてあると言うことは、その間に相当「いややっぱまずいんじゃネーノ」的な議論が続いていたのでしょうなあという感じです。


経済の余剰生産力の影響に関する考察に関しては同じコーナーの第22パラグラフから。

『Evidence about the scale of spare capacity remained mixed. Survey measures of capacity utilisation continued to point to a relatively limited amount of spare capacity and, consistent with this, surveys also suggested that some companies intended to invest to expand their capacity. But the level of labour productivity remained well below pre-recession trends, consistent with a greater degree of spare capacity than implied by the surveys.』

一部のサーベイでは余剰生産力の影響が小さく、企業によっては生産拡大への投資を行っている向きもあるが、労働生産性などから見た場合には経済の余剰生産力が依然として大きいことを示しています、ということで、従来からの「先行き物価が戻りますよ」の根拠になっている部分に関しては今回は思いっきり「mixed」という表現になっていますな。

で、今後の注目は1月の年次賃金改定という話が第23パラグラフに。

『Earnings growth had remained subdued. Whole economy AWE regular pay had increased by 2.3% in the three months to November compared with a year earlier, and remained below its pre-recession average. The start of each year was an important period for pay settlements. The Bank’s Agents’ annual survey of pay intentions suggested that settlements might rise modestly in 2011. In part that could reflect a recovery in productivity. Trends in earnings over the year would depend also on the contributions of bonuses and regular pay drift.』


○例によって時間切れ

誠に恐縮ではございますが、この先のインフレレポートの話と、政策決定に関する話は時間と量の都合で華麗に明日送りとさせて頂きたく存じますすいませんすいません。

でですな、まあ今回のMPC議事要旨を見ますと、景気見通しに関して4QGDPの下げを結構気にしているという感じを受けた訳でありまして、そう考えると4Qの落ち込みが一時的なものかという点を見極めてからじゃないと動きにくいかなとも思われる次第でありまして、そーなると順当に5月という話なのかもしれませんけれども、実際問題として物価の上昇が継続しているというのもありまして、政策判断は難しいと思われます。既にご案内のように、センタンス委員は2月MPCで従来の25bp利上げから50bp利上げに主張を変化させているように、まあ物価と言う面で見た場合にはかなりマズーな状況になっている訳ですから・・・・・・

ということで今日も今日とて完全に趣味のコーナーでどうもすいませんでした。

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2011/03/04

ECBのは寝起きで読んだので超手抜き引用なのはお許しを。あ、そこの貴方、昨日の夜10時前に結果が出てた筈だよって突っ込みをしないように(^^)。

○ECBアナウンスとトリシェ総裁の会見

http://www.ecb.int/press/pr/date/2011/html/pr110303.en.html
3 March 2011 - Monetary policy decisions

MROおよび預金ファシリティ、貸出ファシリティの金利は同じとな。

http://www.ecb.int/press/pr/date/2011/html/pr110303_2.en.html
3 March 2011 - ECB announces details of refinancing operations with settlement from 13 April to 12 July 2011

『The Governing Council of the European Central Bank (ECB) has today decided to continue conducting its main refinancing operations (MROs) as fixed rate tender procedures with full allotment for as long as necessary, and at least until the end of the sixth maintenance period of 2011 on 12 July 2011. This procedure will also remain in use for the Eurosystem’s special-term refinancing operations with a maturity of one maintenance period, which will continue to be conducted for as long as needed, and at least until the end of the second quarter of 2011. The fixed rate in these special-term refinancing operations will be the same as the MRO rate prevailing at the time.』

『Furthermore, the Governing Council has decided to conduct the three-month longer-term refinancing operations (LTROs) to be allotted on 27 April, 25 May and 29 June 2011 as fixed rate tender procedures with full allotment. The rates in these three-month operations will be fixed at the average rate of the MROs over the life of the respective LTRO.』

MROの固定金利+フルアロットメント攻撃は7月12日実施のオペまで継続で、LTROも同様だけど金利は期間に対応するMROの平均金利ってのも継続ということのようでござるが、もともとユーロシステムの短期金融市場はだいぶ不勉強なのであまり余計なことは書かない(汗)。

http://www.ecb.int/press/pressconf/2011/html/is110303.en.html
Introductory statement to the press conference

冒頭の第2パラグラフ(最初はご挨拶)でキタコレという事で。

『Based on its regular economic and monetary analyses, the Governing Council decided to leave the key ECB interest rates unchanged. The information which has become available since our meeting on 3 February 2011 indicates a rise in inflation, largely reflecting higher commodity prices. 』

金利は据え置きましたは良いとしてインフレが上昇と指摘とな。

『The economic analysis indicates that risks to the outlook for price developments are on the upside, while the underlying pace of monetary expansion remains moderate.』

基調的なマネタリーの拡大が緩やかなペースの元で景気と物価のリスクはアップサイドとな。

『Recent economic data confirm that the underlying momentum of economic activity in the euro area remains positive; however, uncertainty remains elevated. The current very accommodative stance of monetary policy lends considerable support to economic activity. It is essential that the recent rise in inflation does not give rise to broad-based inflationary pressures over the medium term.』

とは言えこの辺では現在の緩和的な金融政策の効用を説明していますし、中期的に見た場合に全般的なインフレ圧力に繋がっているという訳ではないとも説明しているように見えますが。

『Strong vigilance is warranted with a view to containing upside risks to price stability. Overall, the Governing Council remains prepared to act in a firm and timely manner to ensure that upside risks to price stability over the medium term do not materialise. The continued firm anchoring of inflation expectations is of the essence.』

「Strong vigilance」キタコレ。この文言が来ると利上げ近いですよのお知らせというのがECBの伝統芸能でありまして、「物価安定に対する継続している上方リスクの観点から強力な警戒が正当化されます」(何と言うヘタクソな訳orz)というお告げではありますし、更に最後の文では「prepared to act in a firm and timely manner」と仰せと。


・・・・・・という事でブルームバーグニュースより。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=ahD8_hJERkFc
トリシェECB総裁:4月利上げの可能性示唆、「強い警戒」に言及 (2)

だそうでありまして、インフレ警戒モードキタコレとなりました次第で、BOEが先かと思っていたのですが、この調子ですとECBが先を越しそうというお洒落な事態に。Weber辞任ネタがあったからタカ後退だと思ったのですけど、やはりトリシェはトリシェだったということでございますかね。

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2011/03/03

○昨日のバーナンキ議会証言ネタ続きである

経済見通しのところを見ないと意味無しにも程があるので(汗)。
http://www.federalreserve.gov/newsevents/testimony/bernanke20110301a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/testimony/bernanke20110301a.pdf

『The Economic Outlook』の第4パラグラフから。

『While indicators of spending and production have been encouraging on balance, the job market has improved only slowly. Following the loss of about 8-3/4 million jobs from early 2008 through 2009, private-sector employment expanded by only a little more than 1 million during 2010, a gain barely sufficient to accommodate the inflow of recent graduates and other entrants to the labor force.』

消費や生産の改善は全般的に良いものの労働市場の改善は遅いとな。

『We do see some grounds for optimism about the job market over the next few quarters, including notable declines in the unemployment rate in December and January, a drop in new claims for unemployment insurance, and an improvement in firms' hiring plans. Even so, if the rate of economic growth remains moderate, as projected, it could be several years before the unemployment rate has returned to a more normal level.』

先行きに関してはやや楽観するものの正常な状態に戻るには「several years」掛かるといつもの話である。

『Indeed, FOMC participants generally see the unemployment rate still in the range of 7-1/2 to 8 percent at the end of 2012. Until we see a sustained period of stronger job creation, we cannot consider the recovery to be truly established.』

まあ大体従来どおりの話(ってここで急に従来と違う話をされても困るが)ですな。

で、第6パラグラフから第9パラグラフ(が最後)までがインフレネタなのですが、その中で商品価格上昇関連の話が第8と第9パラグラフにあります(その前まではいつもの話)。

『Although overall inflation is low, since summer we have seen significant increases in some highly visible prices, including those of gasoline and other commodities. Notably, in the past few weeks, concerns about unrest in the Middle East and North Africa and the possible effects on global oil supplies have led oil and gasoline prices to rise further. More broadly, the increases in commodity prices in recent months have largely reflected rising global demand for raw materials, particularly in some fast-growing emerging market economies, coupled with constraints on global supply in some cases.』

商品価格の上昇は直近ではMENA地域の問題、より広い観点では新興国などの急成長に伴う世界的な原材料需要の拡大と、一部にはそれに対する世界的な生産拡大の遅れによるものとな。

『Commodity prices have risen significantly in terms of all major currencies, suggesting that changes in the foreign exchange value of the dollar are unlikely to have been an important driver of the increases seen in recent months.』

商品価格の上昇は米ドル建てだけではなく全ての主要通貨対比で観測されており、したがって最近数か月で見られる商品価格の上昇が主にドル安によってもたらされたと言った考え方は適切ではない。と「QE2のせいで商品価格が上昇しやがった」批判に対して反論しているのでありますが、毎度毎度あたくし申し上げておりますように、QE2の効果に「ポートフォリオリバランス効果」を挙げて「株価が上昇しましたよ凄いでしょう」という話をしているのに商品価格の上昇はうちのせいでは無いという話をするのは少々虫が良すぎるのではないかと存じますがね。

第9パラグラフから。

『The rate of pass-through from commodity price increases to broad indexes of U.S. consumer prices has been quite low in recent decades, partly reflecting the relatively small weight of materials inputs in total production costs as well as the stability of longer-term inflation expectations. Currently, the cost pressures from higher commodity prices are also being offset by the stability in unit labor costs.』

商品価格上昇の消費者物価に対する影響についての話をしていますが、全体の生産に対する投入原材料価格のウェイトが相対的に低いこと、長期的なインフレ期待が安定していることなどでその影響は小さく、足元でのより高い商品価格上昇は単位労働コストの安定によっても相殺されていると仰せで。

『Thus, the most likely outcome is that the recent rise in commodity prices will lead to, at most, a temporary and relatively modest increase in U.S. consumer price inflation--an outlook consistent with the projections of both FOMC participants and most private forecasters. That said, sustained rises in the prices of oil or other commodities would represent a threat both to economic growth and to overall price stability, particularly if they were to cause inflation expectations to become less well anchored.』

この商品価格上昇が一時的で相対的に緩やかであれば現在のFOMCや民間の見通し(CPIは緩やかにしか上昇しない)と合致する動きになるでしょうが、原油やその他の商品価格上昇が持続的になった場合には、経済活動に悪影響を与えると同時に、物価の安定性にも悪影響を与えます。特にその価格上昇によって現在十分にアンカーされているインフレ期待のアンカーが弱まった場合には物価安定に悪影響をもたらすでしょう。

という事で、まあ一応インフレに関してはリスクシナリオとしてのアップサイドリスクに言及しているのですね。というのは把握したが、昨日引用したように金融政策に関する話ではその辺りのリスクに対応してどうのこうのというトーンは読めなかったような気もするだわさ。

『We will continue to monitor these developments closely and are prepared to respond as necessary to best support the ongoing recovery in a context of price stability. 』

つまり、物価上昇のアップサイドに繋がるリスクシナリオ、特にインフレ期待の上昇に関しては今後十分に注意して、先行き問題があったときには対応しますって言ってるのですから、こちらの方ではQE2終了どころか先行きの出口政策とかバランスシート縮小の示唆もしているのでございますな。

なのでまあ昨日読んだ後半の意味が判った感じがするのですが、要するに前半の経済見通しでインフレのアップサイドリスクに関して言及して(議会対策の面もあるでしょうが)いる分、後半は従来どおりの資産買入プログラムの重要性についての言及を行ってバランスを取ったという感じなのでしょうな。

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2011/03/02

○バーナンキ議会証言を金融政策の所だけ斜め読みしてみました

http://www.federalreserve.gov/newsevents/testimony/bernanke20110301a.htm

もしかしたら景気見通しを斜め読みした方が良かったかなという感じでございまして、金融政策に関しては毎度同じ話をしておりましたが、斜め読みした手前俺様メモ代わりに記録しておきます。

『Monetary Policy』から。

『As I noted earlier, the pace of recovery slowed last spring--to a rate that, if sustained, would have been insufficient to make meaningful progress against unemployment. With job creation stalling, concerns about the sustainability of the recovery increased. At the same time, inflation--already at very low levels--continued to drift downward, and market-based measures of inflation compensation moved lower as investors appeared to become more concerned about the possibility of deflation, or falling prices.』

ということで、デュアルマンデートの双方ともに改善をしたり下振れリスクが無くなって来たりしているという認識を示しながらも、ここまでの改善はまだ十分な改善に至るまでではない、と金融政策の最初の部分でまずはきっちりとこの部分をかましています。というかここにこうあるのですから景気見通しに関しては(読んでないけど)景気は回復して下振れリスクは少なくなったものの、デュアルマンデートに関する部分については改善ペースが遅いです、という話をしたのでしょうなあと想像できますにゃ。

『Under such conditions, the Federal Reserve would normally ease monetary policy by reducing the target for its short-term policy interest rate, the federal funds rate. However, the target range for the federal funds rate has been near zero since December 2008, and the Federal Reserve has indicated that economic conditions are likely to warrant an exceptionally low target rate for an extended period. Consequently, another means of providing monetary accommodation has been necessary since that time. In particular, over the past two years the Federal Reserve has eased monetary conditions by purchasing longer-term Treasury securities, agency debt, and agency mortgage-backed securities (MBS) on the open market. The largest program of purchases, which lasted from December 2008 through March 2010, appears to have contributed to an improvement in financial conditions and a strengthening of the recovery. Notably, the substantial expansion of the program announced in March 2009 was followed by financial and economic stabilization and a significant pickup in the growth of economic activity in the second half of that year.』

文章は長いですが、要約しますとQE1完了までのお話であります(要約しすぎ)。

『In August 2010, in response to the already-mentioned concerns about the sustainability of the recovery and the continuing declines in inflation to very low levels, the FOMC authorized a policy of reinvesting principal payments on our holdings of agency debt and agency MBS into longer-term Treasury securities. By reinvesting agency securities, rather than allowing them to continue to run off as our previous policy had dictated, the FOMC ensured that a high level of monetary accommodation would be maintained. Over subsequent weeks, Federal Reserve officials noted in public remarks that we were considering providing additional monetary accommodation through further asset purchases. In November, the Committee announced that it intended to purchase an additional $600 billion in longer-term Treasury securities by the middle of this year.』

で、去年の8月に景気の先行き不透明および物価の下振れリスクに対応してMBSの償還再投資の実施および国債買入の復活検討のアナウンスを行いまして、その後QE2(ちなみにバーナンキなどの執行部は基本的にQE2という言葉は使ってません)の実施をしましたよ、というのがここの文章の要約である。

『Large-scale purchases of longer-term securities are a less familiar means of providing monetary policy stimulus than reducing the federal funds rate, but the two approaches affect the economy in similar ways. Conventional monetary policy easing works by lowering market expectations for the future path of short-term interest rates, which, in turn, reduces the current level of longer-term interest rates and contributes to both lower borrowing costs and higher asset prices. This easing in financial conditions bolsters household and business spending and thus increases economic activity.』

ここはパラグラフを途中で切りますが、長期国債の大量購入という非伝統的金融政策は、金利操作という伝統的金融政策と似ているアプローチですといういつもの説明をしているのですが、まず最初に金利操作に関する効果の話をしていまして、その中で「金利の引き下げ」効果の中に「先行きの金利パスに関する期待に変化を与えることによって長期金利の引き下げを行う」というこの前の議会証言でも話していた事(なので今回のを読んで重複になるなあorzとか思いながらメモにしているのですが^^)なのですな。で、この前同じ事書いたと思いますが、それは単純な金利操作では無くて「時間軸政策」に関する部分の効果であって、その場合はコミットメントを伴う話になるのではないかと思うのですよね。

まあその部分が従来から実施している声明文での文言(for an extended periodとかfor some timeとか文言をいじる奴)だという話だと思うのですけれども、単純な金利操作単体をconventionalな金融政策扱いするもんじゃないのかねとゆー気がするんですが、これって中央銀行の世界的には一般的な理解なのでしょうか???何か違和感があるんですけどね。

『By comparison, the Federal Reserve's purchases of longer-term securities, by lowering term premiums, put downward pressure directly on longer-term interest rates. By easing conditions in credit and financial markets, these actions encourage spending by households and businesses through essentially the same channels as conventional monetary policy.』

実際は金利上昇したじゃネーノという突っ込みに対する説明は次のパラグラフに(^^)。

『A wide range of market indicators supports the view that the Federal Reserve's recent actions have been effective. For example, since August, when we announced our policy of reinvesting principal payments on agency debt and agency MBS and indicated that we were considering more securities purchases, equity prices have risen significantly, volatility in the equity market has fallen, corporate bond spreads have narrowed, and inflation compensation as measured in the market for inflation-indexed securities has risen to historically more normal levels.』

長期国債買入やるお!とアナウンスしたら株価は大きく上昇するわ市場のボラは下がるわ社債のスプレッドは縮小するわ物価連動債市場で計測される市場のインフレ期待は従来の正常レベルに上昇するわもうウハウハですよ皆様!との事です。

が、それは「国債買入やるお!」とアナウンスした効果であっても買入の定量的な効果と違うんではないかという疑問は物凄い勢いでするのですがねえ、というのはいつもあたくしが書いておりますのでまあ読みなれておられるかと存じますが。

『Yields on 5- to 10-year nominal Treasury securities initially declined markedly as markets priced in prospective Fed purchases; these yields subsequently rose, however, as investors became more optimistic about economic growth and as traders scaled back their expectations of future securities purchases.』

これまたこの前の議会証言と同じ説明をしていますが、買入やるぞなもしという話があった時は金利が下がりましたけど、その後経済状況が改善してFEDの買入が減るのではないかという期待が市場参加者に広がったので金利が上昇したとあくまでも買入の金利に与える効果をポジティブ(低下方向)に説明しているのですが、これまたこの前も書きましたように実質金利とかで勝負した方が良いと思うのだが。

大体からして景気や物価の先行きがマズーだから長期金利が下がるのであって、買入効果の力技で金利そのものを押し下げるというのは、FEDがCEを実施した時のように、市場の流動性リスクプレミアムが非常に大きくなっていて、そのプレミアム部分を下げるとそれだけで名目の金利がどどーんと下がるというような状況で無い限りは、今の市場規模の中で買入で名目金利に効果を与えるというのは中々難しいのではないか、というのが、QE1とQE2だったり、日銀の包括緩和による2年債購入が示した結果なのではないかと思うのですけれどもどうなんでしょうかねえ。

なので、FEDがここに拘って説明を続ける意味が良く判らんのですが、何でここまで名目金利がどうのこうのの話に固執するんでしょうかというの誰か教えてちょ。


『All of these developments are what one would expect to see when monetary policy becomes more accommodative, whether through conventional or less conventional means.』

などと場末であたくしがうじうじと申すまでも無く、「これらは金融環境が緩和的になったという効果です(キリッ)」と流す逆さ絵おじさんクオリティ。

『Interestingly, these market responses are almost identical to those that occurred during the earlier episode of policy easing, notably in the months following our March 2009 announcement. In addition, as I already noted, most forecasters see the economic outlook as having improved since our actions in August; downside risks to the recovery have receded, and the risk of deflation has become negligible. Of course, it is too early to make any firm judgment about how much of the recent improvement in the outlook can be attributed to monetary policy, but these developments are consistent with it having had a beneficial effect.』

ここではまあこれらの効果の宣伝ですが、デフレ入りのリスクは無視できる(negligible)ようになったと仰せなのですから、逆さ絵おじさんとしてはドヤ顔状態という所なのでございましょうか。

まあ何ですな、QE2批判とかもあるから頑張って宣伝しないといけないという面があるので同情を禁じ得ない部分は多々ありまして大変だなあとは思いますが、このロジックで説明していると金利の部分でややこしい事になるような気もせんでもないなあと思います。

最後のパラグラフは「先行きは以前から申し上げておりますように常に政策の見直しを行います、ああそれから我々は必要になったら緩和政策を引く事は簡単にできますよ(キリッ)」という説明を(特に後半を)延々と行っているのでした(^^)。

『My colleagues and I continue to regularly review the asset purchase program in light of incoming information, and we will adjust it as needed to promote the achievement of our mandate from the Congress of maximum employment and stable prices.』

『We also continue to plan for the eventual exit from unusually accommodative monetary policies and the normalization of the Federal Reserve's balance sheet. We have all the tools we need to achieve a smooth and effective exit at the appropriate time. Currently, because the Federal Reserve's asset purchases are settled through the banking system, depository institutions hold a very high level of reserve balances with the Federal Reserve. Even if bank reserves remain high, however, our ability to pay interest on reserve balances will allow us to put upward pressure on short-term market interest rates and thus to tighten monetary policy when required. Moreover, we have developed and tested additional tools that will allow us to drain or immobilize bank reserves to the extent needed to tighten the relationship between the interest rate paid on reserves and other short-term interest rates. If necessary, the Federal Reserve can also drain reserves by ceasing the reinvestment of principal payments on the securities it holds or by selling some of those securities in the open market.』

(キリッ)の部分長過ぎ。

『The FOMC remains unwaveringly committed to price stability and, in particular, to achieving a rate of inflation in the medium term that is consistent with the Federal Reserve's mandate.』

ということで、当該部分全引用という手抜きにも程があるメモでありましたが、基本的に前回の議会証言と金融政策に関する部分に変化は無く、更に冒頭の部分や、途中での書きっぷりを見ますと、先行きの金融政策というかQE2のおかわりがあるかどうかという点についてはdata-dependentですよという話であって、特に決め打ちをさせるような話ではないですな、という所でしょう。

ただ、基本的に言えば「デュアルマンデートに対して現在の回復速度が十分ではない」という話をしている事からして、一部のタカ派先生の言うような「国債買入の縮減」や「バランスシートの縮減」というのをするという感じではなく、更に国債買入プログラムの有効性に関して今回もこれでもかと(やや無理気味の説明も含めて)行っている事を勘案しますと、少なくともバランスシートの維持は必要で、どちらかといえば買入ペースを落としながらも拡大をしたいというニュアンスを感じましたがどうでしょうかね。


#ということでメモとかいいつつ引用大会で長くなってしまいました

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2011/02/25

時に、先週金曜にネタにした後の続編が無かった件がありますなあっはっは。

○コチャラコタ総裁の指摘するQE2の話の続き(超虫干しネタシリーズ)

昨年11月22日の講演でありますので何を今更ネタですが。
http://www.minneapolisfed.org/news_events/pres/speech_display.cfm?id=4571
http://www.minneapolisfed.org/news_events/pres/kocherlakota_speech_11222010.pdf
Monetary Policy, Labor Markets, and Uncertainty

先週金曜にネタにした時はQE2による国債買入の目的を「実質金利の低下」におき、国債の買入による政策効果発生のパスを(1)国債買入の拡大によって発生する時間軸効果の強化による長期金利への影響、(2)長期国債のリスクプレミアムの縮小を促して金利を下げるというより直接的なパス、という2点を(11月22日時点では)示していました、という所まで引用しました。で、その続きの部分を少々。

『In this way, the change to the asset side of the Fed’s balance sheet provides stimulus to the economy. But what about the liability side of its balance sheet?』

つまりリザーブ拡大の効果はどうなのよ?という話であります。

『QE creates more reserves in banks’ accounts with the Fed. The standard reasoning is that this kind of reserve creation is inflationary.』

一般的な理解ではリザーブ拡大はインフレーショナリーということで、その経路はというのが続きます。

『Banks are only allowed to offer checkable deposits in proportion to their reserves. Economists view checkable deposits as a form of money because, like cash, checkable deposits make many transactions easier. In this sense, bank reserves held with the Fed are licenses for banks to create a certain amount of money. By giving out more licenses, the FOMC is allowing banks to create more money. More money chasing the same amount of goods?voila, inflation.』

で、まあ上記の標準的な考えが現在は当てはまりませんよ、という話がこの先に続きます。

『Given some of the criticisms of the Fed that have been voiced over the past three weeks, it is important to understand that this basic logic isn’t valid in current circumstances. Banks have nearly $1 trillion of excess reserves. This means that they are not using a lot of their existing licenses to create money. QE gives them $600 billion of new licenses to create money, but I do not see why they would suddenly start to use the new ones if they weren’t using the old ones.』

まあこの辺は当座預金残高30兆円攻撃を経験しているニポーンの皆様はご案内の通りではございますが、現状では国債の大量購入を行ってリザーブが拡大しても、実体経済に回るマネーは急には増えませんがなというお話ですわな。

『Some observers have expressed concerns that $1 trillion-which will shortly become over $1.5 trillion-of excess reserves represent what they term “kindling” for some future inflationary fire. I believe that these concerns are misplaced for two reasons.』

kindlingってのをあたくしのデイリーコンサイス英和辞典で訳語を見ると「火が点く」みたいな意味のようでござんすが、大量の超過準備が存在する事によってインフレに点火して火がボーボー状態になるという懸念についてはそうじゃないですよと仰せのようですな。

『First, the Fed has several tools with which to combat incipient inflationary pressures. Most obviously, it can raise the interest rate on excess reserves as a way of deterring banks from creating money with their licenses.』

最初の理由は、FEDはインフレ圧力が初期のうちに対応することが出来るツールを持っていますよというまあホンマカイナという気もせんでもない理由であります。

『Second, in recent public statements, Chairman Ben Bernanke has explicitly and firmly committed the FOMC to maintaining low inflation. To use his exact words, he said that he has “rejected any notion that we are going to try to raise inflation to a super-normal level.”』

バーナンキ議長は明確かつ強固にFOMCは低インフレを維持することをコミットしており、インフレをスーパーノーマルなレベルに引き上げようという考えを拒否すると表明しています。という事で、まあ2点とも精神論っぽい気もするのですが、よーはこれらの事によってインフレ期待がアンカーされるという話をしたいんでしょうかね。まあこの辺りの認識がどう変化する/しないのかも気になるのでこの辺の話を最近またアップデートされていたら注意したいですな。

『As I mentioned before, I do not currently vote on FOMC decisions. I did express support for the FOMC’s decision at the recent meeting. As I have said on prior occasions, I believe that there are good reasons to suspect that the ultimate effects of any amount of QE are likely to be relatively modest. Nonetheless, the FOMC’s decision seemed to me to be a move in the right direction.』

この時点ではコチャラコタ総裁はFOMCの票決権は持っていなかった(今は持ってる)のですけれども、明確にQE2の方向性については支持を表明していまして、かつQEの効果については緩やかであるという認識を示していたという事でして、まーこの辺りを見るとコチャラコタ総裁ってタカ分類ではないでしょうな、と思われます。

それから、QE2の説明の前段でのデュアルマンデートの話では、失業率よりも物価に対するウェイトが高そうな話をしてみていたり、引用した部分の後半では労働市場における長期失業者問題を指摘していたりということで、まあこの講演量そのものは多くないと思うので(本文10ページ強)お暇な方にはお勧め。

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2011/02/24

○5対3対1とな(BOE議事要旨クイックメモ)

BOE2月MPCの議事録キタコレ。
http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/mpc/pdf/2011/mpc1102.pdf

斜め読みなのでまた後でちゃんと読むけど。

『The immediate policy decision』の所から。

『The near-term outlook for inflation was markedly higher than at the time of the November Inflation Report and inflation was likely to be between 4% and 5% for much of 2011. Nevertheless, the Committee continued to expect inflation to fall back thereafter as the temporary impact of various factors waned, and the margin of spare capacity in the economy continued to dampen inflationary pressures.』(第30パラグラフ)

何か目先のインフレ予想数値が更に上昇していますな。12月MPC時点では「春先にも4%になるかも」とかだったのですから足元でまあ上がる上がるという感じでありますが、それでも「一時的な要因が剥落した後は経済の余剰生産力がインフレ圧力を弱める」という話をしているのが何かもう物悲しくなってきます。

『Most members agreed that the balance of risks to inflation in the medium term relative to the target had moved upwards in recent months and that the case for withdrawing some of the current exceptionally accommodative monetary policy had consequently been strengthened.』(第34パラグラフ)

ということで、3人が利上げを主張。

『For three members, the case for removing some monetary stimulus at this meeting was compelling. For those members, the upside risks to the medium-term inflation outlook from global inflationary pressures and the possibility that inflation expectations would move up outweighed the downside risks to inflation associated with uncertainty about the strength of the recovery and the possibility of persistent spare capacity.』(第35パラグラフ)

ということで、世界的なインフレ圧力およびインフレ期待の高まりによる中期的なインフレ上昇方向へのリスクが、景気回復のペースの遅さや引き続き存在する経済の余剰生産力によるインフレ低下リスクを更に上回るようになっているとご認識のようです(日本語がヘタクソなのはあたくしの語学力と脳味噌の出来のせいです)。

『In part, this reflected a concern that the level of demand consistent with achieving the inflation target might be lower than previously thought. Two of those members favoured only a small tightening in policy, given the uncertainty about the economic outlook.』(第35パラグラフ)

んでもって、その上方リスク拡大によって、インフレターゲットの水準に到達するのに必要な需要の水準が以前考えていたよりも低い水準になる事が想定されますので、これらのメンバーのうち2名は経済の先行きに不透明感がある中であっても小規模の引き締めが必要であると主張。

『The third member concluded that a larger reduction in the degree of monetary stimulus had now become appropriate. That member thought that there was mounting evidence that firms were able to pass on cost increases to the prices they set and noted also that nominal domestic demand had been growing for some time at near to the top of its typical range prior to the recession. In that member’s view it was significantly more likely than not that inflation would overshoot the inflation target in the medium term.』(第35パラグラフ)

3人目のメンバーはより規模の大きな緩和の除去が必要と主張。その根拠としては、企業が原材料等価格上昇の転嫁をするようになっているという事が明らかになっており、更に国内の名目需要もリセッション前の水準に循環していたうちの高い水準まで拡大しているといいう事。このメンバーの見方によれば、インフレが中期的な水準からオーバーシュートする可能性が更に顕著に高まったとの事。

・・・・・てな訳で中々胸の熱くなるような展開になっております。で、金利据え置きが妥当と主張する意見とかまで引用すると後半のお題ができなくなるのでこの辺にしておきますが(おいおい)、票決はこうなっています。第39パラグラフから。

『Regarding Bank Rate, six members of the Committee (the Governor, Charles Bean, Paul Tucker, Paul Fisher, David Miles and Adam Posen) voted in favour of the proposition. Three members of the Committee voted against the proposition. Andrew Sentance preferred to increase Bank Rate by 50 basis points. Spencer Dale and Martin Weale preferred to increase Bank Rate by 25 basis points.』

金利に関しては据え置き6対0.5%利上げ1(センタンス)対0.25%利上げ2(デールとウィール)。前回との違いはセンタンスの利上げ幅が拡大したのと、デールが新たに利上げ派に加担した事。

『Regarding the stock of asset purchases, eight members of the Committee (the Governor, Charles Bean, Paul Tucker, Spencer Dale, Paul Fisher, David Miles, Andrew Sentance and Martin Weale) voted in favour of the proposition. Adam Posen voted against the proposition, preferring to increase the size of the asset purchase programme by £50 billion to a total of £250 billion.』

国債買入に関しては据え置き8対買入50bilポンド拡大1(ポーセン)でこちらは変化なしです。

ということで、実質5対3対1という大変にお洒落な展開になったBOEはどうするどうするという感じでありまする。

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2011/02/21

という前振りは兎も角として1月FOMC議事要旨から。

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20110126.htm(HTML版)
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/fomcminutes20110126.pdf(PDF版)

今回は本編の他に経済見通しのコーナーもあるのですが、そちらを読む体力はありませんでしたので(大汗)、議事要旨本編ネタである。

○構造的失業要因の分析

今回のFOMC議事要旨は冒頭部分に延々と「年次の決定事項」というのがあって、色々なオペレーションやら何やらの実施要綱らしきものの採決をやっていまして、本編に入るまでが長いのですが、その本編の最初の所に資産買入の実施ラップの報告がありまして(11月以降の国債買入は236bilでして、そのうちMBSの償還再投資が69bilで新規買入が167bilで、デュレーションが5年半、あと80bil/月のペースが必要とな)、その次に『Structural Unemployment』というお題の項目がございまして、まあそのまんまですが構造的な失業に対するFRBスタッフによる分析報告部分がございます。

『A staff presentation on structural unemployment summarized a broad range of economic research on the topic conducted across the Federal Reserve System. Among the factors cited that could affect the level of structural unemployment were demographics, changes in the intensity of job search and worker screening, differences in the geographic locations of potential workers and vacant jobs, and mismatches in characteristics between potential workers and available jobs. Most of the research reviewed suggested that structural unemployment had likely risen in recent years, but by less than actual unemployment had increased.』

構造的な失業に関するスタッフのリサーチから指摘される構造的失業の要因ですが、あたくしの読解によりますと、人口動態、労働者の求職やスクリーニングのインセンティブの変化、潜在的な労働者と新規求人の存在する地域的な違い、労働者に求める企業のスキルのミスマッチなどという事ですが、結論としては「これらの構造的要因はここ数年高まっているが、足元での実際の失業率上昇に比べれば小さい」というまあそうですなという物になっています。

それに対してFOMCメンバーの議論はこうなっています。

『In discussing the staff presentation, meeting participants mentioned various factors that were seen as influencing the path of the unemployment rate. Several participants noted that estimates of the contributions of the individual factors depended importantly on the approach taken by researchers, including the models used and the assumptions made. Participants noted that many of the factors that contributed to the recent apparent rise in structural unemployment were likely to recede over time. Some participants stressed that certain determinants of the unemployment rate, such as mismatches in the labor market and firms' hiring practices, were both difficult to measure in real time and not directly affected by monetary policy. Others emphasized that in the current situation, monetary policy could still play an important role in reducing unemployment.』

「複数名(Several)のメンバーはこれらの分析はアプローチするモデルなどに大きく依存していると指摘している」というのが2番目の文にございますが、これは即ち「計測数値が過大評価かもしれませんね」という話なのでしょうなあと思いますが(^^)、その次の文にあるように「これらの引き上げ要因は先行き減退するでしょう」という指摘になっていまして、更にこれらの要因はリアルタイムの計測も難しいので直接的に金融政策の参考にはしにくいとの指摘もありますわな。

つまり、構造失業率が上昇しているので金融政策が失業率低下に効かないのではという一部からの指摘に対して(最後の文にもあるように)そうではないですよと反論したという結果になっているのでしょうな。うんうん。


○連銀スタッフの景気現状認識からほほーと思ったところのメモ

『Staff Review of the Economic Situation』は項目別に読み込んで見たのですが、これをまともにネタにするとエライコッチャになりますので箇条書きに。結論だけ見たい人はここの項目の最初のパラグラフを見ればヨロシアル。

・景気回復はより頑健なものになっている
・消費、企業支出は更に強くなっている
・鉱工業生産は堅調
・雇用は緩やかな拡大だがペースは弱く失業率は高止まり
・住宅市場は厳しい状態が続く

ということで、まあ読んでてへーと思ったのはこの辺。

個人消費に関する部分から。

『The available data suggested that consumer spending was supported by gains in personal income in the fourth quarter of 2010. Moreover, household net worth appeared to have risen in the fourth quarter, as the large increase in equity prices more than offset further declines in house values. Consumer credit started to increase again in October and November after having generally declined since the fall of 2008. 』

個人消費拡大のファクターとして、所得の増加のほかに株価上昇による家計のネット資産への好影響(住宅価格下落の悪影響をオフセットする)の指摘があるのと、消費者信用が10月以降増加に転じているという指摘がほほうという感じですな。

企業在庫に関する部分から。

『Inventory-to-sales ratios toward the end of 2010 were close to their pre-recession norms, and most purchasing managers surveyed in December reported that their customers' inventories were not too high.』

在庫投資は自動車セール関連の反動で減っているという話の後にこの指摘がありまして、ほうほうそうですかという感じでありまする。


消費者物価に関して。

『Measures of underlying consumer price inflation remained low.』

という基調の話はまあいつもどおりでして、その後色々と分析がありますがそこはスルー致しまして。

『However, consumer energy prices moved up sharply in December, and prices of most types of crude oil increased during December and into January. The prices of nonfuel industrial commodities also continued to rise over the intermeeting period. In December and early January, survey measures of households' long-term inflation expectations stayed in the range that has prevailed for some time.』

ということで、原油価格や商品価格が上昇しているがインフレ期待はアンカーされている、という結論になっています。ただし、この後の方で世界のインフレに関する話がありまして、そちらは上昇しているという話です。

で、その後に金融環境に関する現状分析がありますがそこの部分は全部スルー。


○連銀スタッフの先行き見通し

『Staff Economic Outlook』ですが、前半の経済見通しの所から。

『Because the incoming data on production and spending were stronger, on balance, than the staff's expectations at the time of the December FOMC meeting, the near-term forecast for the increase in real GDP was revised up. However, the staff's outlook for the pace of economic growth over the medium term was adjusted only slightly relative to the projection prepared for the December meeting. Compared with the December forecast, the conditioning assumptions underlying the forecast were little changed and roughly offsetting: Although higher equity prices and a lower foreign exchange value of the dollar were expected to be slightly more supportive of economic growth, the staff anticipated that these influences would be about offset by lower house prices and higher oil prices. In addition, the staff's assumptions about fiscal policy changed little--the fiscal package enacted in December was close to what the staff had already incorporated in their previous projection. In the medium term, the recovery in economic activity was expected to receive support from accommodative monetary policy, further improvements in financial conditions, and greater household and business confidence. Over the projection period, the rise in real GDP was expected to be sufficient to slowly reduce the rate of unemployment, but the jobless rate was anticipated to remain elevated at the end of 2012.』

手抜きで一気に引用しましたが(おいおい)、箇条書きであたくしの読解力による解釈をしますと、

・景気は予想より強く実質GDP見通しを引き上げた
・しかし中期的な回復見通しペースを更に上向きにする程ではない

となっていまして、更にそれらの要因として足元の景気に関しては、株価の上昇とドルの下落が上向き要因として作用して、住宅価格の弱さと原油価格の上昇による下向き要因を打ち消している、という話をしていますな。

そして今後の景気をサポートする要因としては(1)緩和的な金融政策、(2)金融環境の更なる改善、(3)家計や企業の信頼感回復、を挙げています。

で、インフレの見通しに関してですが、経済のスラックが云々といういつもの話をしていまして、商品価格上昇に関してはヘッドラインのインフレを引き上げるけれども来年にはその影響は減衰するでしょうという結論になっていますが引用割愛。


○FOMCメンバーの景気物価見通しから少々

『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』ですが、基本的な見通しは上記にある連銀スタッフと同じですので、まずは読んでてほほーと思った小ネタを。

消費のところなんですけどね。

『The incoming data indicated that households stepped up sharply their purchases of durable goods, particularly automobiles, last quarter. Spending on luxury goods also increased, and the pace of holiday sales was better than in recent years. 』

耐久消費財やら年末商戦やらの話の中に「贅沢品の消費も増えていますね」という話があるのがちとお洒落ですなあと思ったであります。

あと、トレジャリーのイールドカーブが立ったという話があったのもお洒落。

『Yields on longer-term nominal Treasury securities were little changed, on balance, over the period, but they had increased quite a bit in recent months, leaving the Treasury yield curve noticeably steeper. Some participants noted that a steep yield curve is a typical feature of an economy in recovery, and that much of the steepening appeared to have occurred in response to stronger-than-expected economic data.』

景気がよくなっている時期にはイールドカーブがスティープするのは当然ですというお話ではございますが、えーっとお前ら長期金利を下げるって話をしてなかったっけという気はせんでもないのですがまあいっか。


インフレに関する部分ではいつもの話をしているのですが、その中でほほうと思ったのは最後の部分。

『However, the importance of resource slack as a factor influencing inflation was debated, and some participants suggested that other variables, such as current and expected rates of economic growth, could be useful indicators of inflation pressures.』

経済のスラックがインフレを抑制する云々の議論は重要ですが、それ以外のファクター、例えば足元や先行きの経済成長ペースなどもインフレ圧力に関する指標として議論すべきではないか、という指摘を数名(some)のメンバーがしていまして、つまりこれは「何とかの一つ覚えのように経済のスラックが中長期的なインフレを抑制するというだけを言っている場合ではないのではないか」という指摘をしていたのではないかと思われますがどうでしょう。


それから、基本的な景気見通しはさっきの連銀スタッフの説明と同じですが、その中で先行きの経済へのダウンサイドリスクやディスインフレやデフレ入りのリスクが消えていきていると仰せになっているのがほほうという感じです。

『Accordingly, participants generally agreed that the downside risks to their forecasts of both economic growth and inflation--as well as the odds of a period of deflation--had diminished. 』

で、上下のリスクに関する説明がありますがその部分に関して箇条書きしますと、下方リスクは(1)欧州ソブリン問題のスピルオーバー、(2)米国の財政再建の影響、(3)住宅価格の弱さ、となっているのですが、上方リスクに関しては思いっきり直球豪速球で「家計消費の強さが国内最終需要を押し上げる」という具体的にも程がある内容となっていました(^^)。引用は割愛。

インフレのリスクに関してですが、読んでてほほーと思ったのはこの辺。

『Some participants expressed concern that in a situation in which businesses had been unable to raise prices in response to higher costs for some time, firms might increase them substantially once they found themselves with sufficient pricing power. 』

その前で原材料価格の上昇に関して今の環境では消費者物価への価格転嫁は行われないでしょうという話をしているのですが、仮に価格転嫁ができるようになった場合には、その影響はかなり大きなものになるのではないかという指摘をしている人がいるのにはほほうという感じを受けました。

あと、FEDのバランスシートがインフレ期待を高めるという指摘をしている人も数名(some)いまして、その理由としては「FEDが金融緩和を適切にコントロールできなくなるのではないかという点」と言っているのがチャーミング。

『Finally, some participants noted that if the very large size of the Federal Reserve's balance sheet led the public to doubt the Committee's ability to withdraw monetary accommodation when doing so becomes appropriate, the result could be upward pressure on inflation expectations and so on actual inflation. 』

プロッサーが思いっきりこの点を指摘していて、先般バーナンキの講演やイエレンの講演などで「そんなことはありません(キリッ)」と応酬していましたが、プロッサー以外にも主張している人がいたとな(^^)。


○金融政策決定に関しては「資産買入の効果がわからん」という大滝秀治状態の委員がいるとな

『Committee Policy Action』のところですけど。

『While the information received over the intermeeting period increased members' confidence in the sustainability of the economic recovery, the pace of the recovery was insufficient to bring about a significant improvement in labor market conditions, and measures of underlying inflation had trended downward. 』

と、回復への確信は高まったが依然として労働市場の顕著な改善には繋がらず、基調的なインフレは下落基調となっている、といういつもの話がありまして、今回はご案内のように全員一致で現在の資産買入を継続するという決定をしていますけど、その後の方にお洒落な話があります。

『A few members remained unsure of the likely effects of the asset purchase program on the economy, but felt that making changes to the program at this time was not appropriate. 』

何となくこれは2名くらいなのかと思いますが、少数(A few)のメンバーは資産買入の効果が依然として不透明だという指摘をしております。で、この人たちと思われる人たちは更にこの後の方でこんなことも。

『A few members noted that additional data pointing to a sufficiently strong recovery could make it appropriate to consider reducing the pace or overall size of the purchase program. 』

景気が良いのでペースの減額や全体サイズ縮小の議論も有りえるキタコレ。

ただまあ最終的には「そんなに公表文書でのニュアンスは変えないほうがよかろう」という結論にはなったようですな。

『With respect to the statement to be released following the meeting, members agreed that only small changes were necessary to reflect the improvement in the near-term economic outlook and to make clear that the policy decision reflected a continuation of the asset purchase program announced in November.』

ということで票決は全員一致でしたとさ。


○どう見ても会見実施なんでしょうな

票決の後にこんな話が。

『Next, the Committee turned to a discussion of its external communications, specifically the importance of communicating both broadly and effectively. FOMC participants noted the importance of fair and equal access by the public to information that could be informative about future policy decisions, and they considered approaches to address this issue. Several participants noted that increased clarity of communications was a key objective, and some referred to the central role of communications in the monetary policy transmission process. A focus of the discussion was on how to encourage dialogue with the public in an appropriate and transparent manner. The subcommittee on communications agreed to consider whether further guidance in this area would be useful.』

となっていますが、正直言って「some referred to the central role of communications in the monetary policy transmission process」とか実際に今始めたら議論が更にカオスになるだけ(そもそもメンバーの中で見解が一致して無いでしょ)だと思いますがね。

#と駆け足で引用大会でどうもすいません

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2011/02/18

○コチャラコタ総裁のQE2に関する目的、効果(超虫干しネタシリーズ)

と小見出しだけ書いたが上のほうの駄文を添削してたら時間が無くなったorz

昨年11月22日の講演なのですけどね。
http://www.minneapolisfed.org/news_events/pres/speech_display.cfm?id=4571
http://www.minneapolisfed.org/news_events/pres/kocherlakota_speech_11222010.pdf
Monetary Policy, Labor Markets, and Uncertainty

PDFで本文12ページとそんなに長くないですし、ポイントをQE2の効果および狙いと、労働市場の構造的問題に関する認識という2点にほぼ絞っているので読みやすいと思います、つーかコチャラコタ総裁の講演テキストはどれを読んでも非常に良くまとめられていて、あたくしのような英語能力がアレな人でも理解しやすくて大変にヨロシカです。

で、時間が無いので今日はQE2の効果と狙いに関する部分だけ駆け足で引用します。コチャラコタ総裁がQE2のおかわりに関してどういう意見を出してくるのかというのはこれから追々判ってくるとは思いますが、ベースとなるロジックは以下のようなものだと理解しておくのが吉ではないかと存じますので。

本文5ページ以降になります。

QEを導入した経緯(経済状況)を説明して、QEに関しては「金利操作を用いなくてもバランスシートを使うことによって緩和を実施するもの」と定義しています。

『But the FOMC does have another policy instrument available: its balance sheet. As of the beginning of this month, the FOMC had a portfolio of roughly $2.3 trillion. Over 2 trillion of those dollars are invested in Treasury securities or government-backed securities issued by Fannie Mae, Freddie Mac, and other government-sponsored enterprises. At its November 3 meeting, the FOMC announced that it plans to buy $600 billion of long-term Treasuries in the open market by mid-2011. In exchange for those securities, it will credit the sellers’ accounts at the Fed with more reserves. This kind of action is known as quantitative easing, or QE.』

で、そのQEを実施する事によって動かそうとしているものは「実質金利の引き下げである」と説明しています。

『The main goal of QE is to lower the long-run real interest rate. Just to be clear, by real interest rate, I’m referring to the interest rate net of expected inflation. More specifically, suppose that the interest rate on a 10-year bond is about 2.5 percent and that people expect inflation to be around 2 percent per year over the next 10 years. Then, the real interest rate is about 0.5 percent per year for the next 10 years.』

で、その実質金利の引き下げによって経済に対しての効用としては、(1)借入金利の引き下げ、それによる企業の資本的支出や雇用の拡大、(2)株価や住宅価格などの資産価格の上昇、それによる家計の支出の拡大、などを一例として挙げ、それらの効果が物価の引き上げや失業の低下に繋がります、と波及ルートを説明しています。

『A low long-term real interest rate stimulates an economy in a number of ways. It spurs consumer spending by allowing consumers to borrow and refinance more cheaply. It makes capital expenditures and hiring more profitable for corporations. Stock prices and house prices rise because those assets become relatively more attractive as investments. Households with these assets become wealthier and demand more consumption. All of these effects should lead to less unemployment and upward pressure on prices.』

ではそのQEが実質金利を引き下げる、というルートはどのようにして実施されるのか?という事ですが、そのルートとして2つがあるとコチャラコタさんは指摘しています。

『How does QE go about lowering long-term real interest rates? QE is a sufficiently novel monetary policy tool that different economists may well give different answers to this question. In my view, QE lowers long-term real interest rates in two distinct ways.』

で、その先を引用するとエラク長くなってしまうのですが、基本的にはその2つのルートは、(1)QE政策は「extended period」で示されている時間軸部分を強化する(FOMCの将来の金融政策パスへの期待を更に低金利継続方向で強化する)ものであり、それによって長期金利への働きかけを行うというルート、(2)長期債の購入によって既存の債券ポートフォリオのリスクを引き下げる事によって金利の低下を促す、という話をしているように読めましたけどどうでしょう。引用するので違ってるなら教えて下され。

『The first is that QE is a form of nonverbal communication about the FOMC’s future plans. Here’s what I mean. The November FOMC statement says that the committee will keep the fed funds target range exceptionally low for as long as economic conditions warrant. The statement also predicts that exceptionally low fed funds rates are likely to be warranted for an “extended period” of time. In this way, the statement provides explicit communication about the FOMC’s future plans for short-term rates and so also shapes the level of current longer-term interest rates.』

『QE provides a significant supplement to this explicit verbal communication. The use of QE indicates that the FOMC is likely to keep its target interest rate lower for an even longer period of time. Indeed, one could readily argue that buying $600 billion of Treasuries is a much more convincing form of communication of the FOMC’s plans than any words could ever be.』

という所までがコミュニケーションポリシーの部分。

『Thus, QE lowers long-term real interest rates by signaling the FOMC’s intentions about future short-term rates. However, QE also lowers long-term real interest rates in a second, more direct, way. The holder of a long-term Treasury is exposed to interest rate risk, because the value of that bond fluctuates as interest rates vary. When the Fed buys $600 billion of long-term bonds, the bond portfolio of the private sector is now less exposed to this kind of risk. As a consequence, private investors will demand a lower premium for holding other bonds that are exposed to interest rate risk, and all long-term yields fall.』

というのが直接金利下げますよという話ですな。で、この次は「では超過準備の大きさがどういう風に作用するのでしょう」という「負債サイドはどうなのよ」という話が続きますが時間がございませんのでまあそのうち。

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2011/02/16

○英国の物価4%ですかそうですかという話など少々雑感

12月位のMPCでは来年の春にも4%近くに接近とか予想していたのですが、更に物価上昇が加速でござるの巻。

http://www.bbc.co.uk/news/business-12462901
UK inflation rate rises to 4% in January

『The UK Consumer Prices Index (CPI) annual inflation rate rose to 4% in January, up from 3.7% in December, as the effects of the VAT rise were felt.』(上記URLより)

ということでBBCニュースの記事をほっほーと読んでおりましたが、まあ利上げをすると経済がしょんぼりしちゃいますし、一方で物価上昇をどうすんのというのもあって、中々難しいですな。まあBBCの論調だけ見ていると(ってBBCだけ見て判断しちゃいけませんですので何ですが)「とは言え早期利上げをあまり前のめりで実施するのもどうなのよ」という論調になっているように見えますので、もう少しだけBOEには余裕があるのかなあなどと思いました(が、他の報道機関が大騒ぎしてたりするかもしれないのでよー知らんがの)。

1月のMPC議事要旨にありましたように、経済の余剰生産力のある中では基調的な物価に低下圧力が掛かりやすいので云々というロジックが足元の賃金動向などを見るとやや崩れつつあるというのが英国の場合は遺憾なのでございますが、あたくしの勝手な妄想をベースにすると、英国って日本や米国などよりも金融とかの比重が大きいイメージが勝手にありまして、金融って設備的な意味での余剰生産力という概念は製造業よりも相対的にも低くて結局労働力の問題です罠と思いますからあまりそのスラックがどうのこうのというのが割と柔軟に調整が効くのかなあなどと思うのれす。それから、英国金融業そのものは物凄い勢いで国有化状態とかにされたりしていてヘロヘロはヘロヘロですけれども、グローバルに金が回りだすと英国金融業界というのは何だか知らんけれども金が通過するような構造になっているようで、おこぼれが落ちるというメリットが得やすいみたいですから、そーゆー点からも意外に英国経済の方が(グローバルに金が回っていくという前提の下では)戻りが良いのかも知れませんなあとか思いました。

いやまあ思っているだけなので根拠も何もないけど。


それから更にどうでも良いがスウェーデン利上げとな。
http://www.riksbank.com/templates/Page.aspx?id=46061
Repo rate raised by 0.25 percentage points to 1.5 per cent

声明文を見ると更に利上げをやりそうですな、うんうん。


○昨日端折ってしまったイエレンさんのFAQの所ですがやはりネタに

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/yellen20110108a.htm(HTML版)
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/yellen20110108a.pdf(PDF版)
The Federal Reserve’s Asset Purchase Program

最後の『Will the Asset Purchase Program Have Adverse Effects on Foreign Economies?』のところの理屈も中々強引で泣けるので引用。

『My final FAQ relates to the concerns that some observers have expressed over the potential for the Federal Reserve’s asset purchase program to have adverse effects on foreign economies.』

米国のQE2が他国を踏みつけにする政策でしょという批判に対するお答えですが、まあ最後の最後にはヤケクソのような説明(と言う風にあたくしは思いますが、雨公クオリティーだと本当の本当に「俺様USAは世界の中心でヒーローであるから俺様の景気回復は世界の為なのでお前らも協力せえ」と思っているのではないかという悪寒はマリアナ海溝よりも深く感じておりますが・・・・)をしていますが、一応その前段階の話も。

『One specific concern is that these securities purchases might drive down the value of the U.S. dollar, thereby diverting demand from our trading partners.』

ドル安政策を実施しているからケシカランという論点に対して、なのですが、そもそも金融緩和政策の効果にドルの緩やかな下落で輸出拡大という話をしている時点でまあ答えが苦しい罠と思ったら案の定苦しい説明であります。

『Although purchases of longer-term securities are a less conventional means of conducting monetary policy than the more familiar approach of managing short-term interest rates, the goals and transmission mechanisms are actually very similar, and there is nothing special about these asset purchases that would make them especially likely to weigh on the dollar.』

ちょっと違いはあるけれども、資産買入も普通の金利操作と同じですから、普通の利下げをしているのと同じですよそんなに大騒ぎするもんでは無いですよとな。

『In fact, the evidence available to date suggests that the asset purchases have had only moderate effects on the foreign exchange value of the dollar. This point is illustrated in table 3, which reports the change in U.S. dollar exchange rates against four other currencies (the Canadian dollar, pound sterling, euro, and yen) on each of the four dates referred to in table 1. These movements in exchange rates are not particularly large when compared with the fluctuations that can occur in any given week or month. Indeed, as shown in figure 6, these exchange rate movements are very modest in the broader context of developments over the past several years.』

ということで、Table3というのがあるのですが、これは上記の文章にありますように、初回の資産買入プログラム実施に向けた時期ドルの主要通貨ということでカナダドル、英国ポンド、ユーロ、日本円に対する為替レートの変化を並べて「ほらそんなに大きくないでしょ」という話をしているのですな。

・・・・・えーっとですな、「このようにFEDの資産買入アナウンスメントなどはドル下落にそんなに影響は大きくないですよ」という話をしているのですが、そもそもこの時期はまだ金融不安とかがあった時期でありまして、その時期の為替相場の話をしてもそれはインチキ成分が激しく強いのではないかと思うのでありますよね〜。


で、次の論点。

『A related concern raised by some observers is that the Federal Reserve’s asset purchases may induce excessive capital inflows to emerging market economies (EMEs)--inflows that in turn could put unwelcome upward pressure on the currencies of those EMEs and perhaps even contribute to asset price bubbles. 』

QE2のお金が新興国のキャピタルインフローを招いてバブルを引き起こすという論点なのですが・・・・・・

『As shown in figure 7, net private capital flows to Latin American and Asian EMEs (reported as a share of the aggregate GDP of those EMEs) were substantial in the second half of 2009 and the first half of 2010 but were not obviously outsized compared with levels prior to the crisis. A similar pattern is evident in figure 8, which depicts the net inflows since 2007 into mutual funds investing in EME bonds and equities.』

ということで世界的な金融的なフローの説明をしていますが。

『In each case, the strong inflows over the past year or so reflect a recovery in the wake of the large outflows that occurred during the crisis. In fact, the stock of claims on EMEs has only returned to its pre-crisis trend.』

ということで、最近のキャピタルインフローは金融危機による落ち込みの戻りであって、危機前のレベルに戻ったに過ぎません(図も大体そうなっている)ですよってえ話をしているのですが、そもそも金融危機発生直前と言うのが金融バブル時代であって、そこまで戻っちゃイカンだろうという気がするのですが・・・・・・

『Accommodative monetary policies in the advanced economies, including the Federal Reserve’s asset purchases, have likely played some role in widening interest rate differentials and encouraging capital flows to EMEs. But this role should not be exaggerated.』

QE2の資本フロー効果が過大宣伝されているとな。

『Other factors--including a reversal of the capital outflows from EMEs during the financial crisis and the EMEs’ longer-term favorable growth prospects--likely have also been important. Moreover, it would be a mistake to portray these capital flows as an unmitigated negative for the EMEs. A rebalanced global economy in which EMEs depend more on domestic demand for their growth will likely involve ultimately stronger and more sustained capital flows to these economies.』

新興国の成長期待とかもありますし、成長にインバランスがあるからキャピタルフローによって新興国の資本需要を満たすという効果もありますよ、というのはまあ幾分強引な部分もありますがそらまあそうでしょうと思いますけど、前半の説明はちょっとどうなのよ、という気がしましたです。


つーことで、全般的に無理筋な説明が多いのですが、これはつまり一時のどこかの中央銀行みたいなもんで、政策効果や政策の目的などに関しての意思を固めにくい状態になっているから、その分だけ説明が強引になるという事を示唆しているのでしょうなあというところだと思いますです。

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2011/02/15

ではイエレン副議長ネタで。

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/yellen20110108a.htm(HTML版)
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/yellen20110108a.pdf(PDF版)
The Federal Reserve’s Asset Purchase Program

後半のFAQから少々。まあ執行部の考えているロジックも中々苦しいなあという感じが致しますです、はい。

○そもそもQE2は空振りだったのではないかという疑問について

『Addressing Some FAQs about the Asset Purchase Program』の最初から。

最初の質問が『Has the Program Been Effective in Promoting the Economic Recovery?』という奴なのですが、それに対しての説明をしています。

『Is the program actually proving effective? My short answer is yes.』

んでもってその理由を説明しているのですが、最初に巻末にある(本文見てちょ)図表で説明して「ほーら金利が下がったよアセット価格は上昇したよ」という話をしているのですが・・・・・・

『Table 2 depicts financial market responses during three key phases in the rollout of the program: (1) August 10, 2010, when the FOMC announced that the Federal Reserve would begin reinvesting principal payments on agency MBS and agency debt by purchasing Treasury securities; (2) the period between August 11 and November 2; and (3) November 3, the date on which the FOMC meeting statement announced the commencement of the program.』

えーっと、それって買入「前」の話なんですが・・・・・

『As shown in the table, the initiation of the securities purchase program at the November FOMC meeting occasioned only minimal market response. The reason is that it was largely anticipated by investors, having been the subject of extensive public discussions by Federal Reserve officials during late summer and early autumn.』

で、その買入が既に織り込まれていたから11月の買入決定時には市場へのインパクトが小さかったと仰せで。

『Importantly, as expectations of the program gradually became embedded in asset prices during late summer and early autumn, the 10-year TIPS yield dropped nearly 1/2 percentage point over the period between the August and November FOMC meetings; moreover, equity prices rose and corporate bond spreads narrowed.』

TIPS利回りは名目債以上に下がった(=期待インフレ率が上がった)とか、株価が上がったとか社債のスプレッドが縮小したとかアナウンスによって効果が出ましたよと。

『Over that period, of course, asset prices were also responding to economic news and some favorable corporate earnings reports, but the overall pattern of the financial market data bolstered my confidence in the effectiveness of the Federal Reserve’s securities purchases in providing additional monetary policy accommodation.』

この説明はわかりますが、では何で国債買入でないといけないのか、他の緩和策でも良いのではないか、という事への説明にはなっていない気がする訳で、そういう意味からもQE3のハードルって高い(時間軸政策なりの別の方策でも良いという話になるので)かなあとも思われる訳で。

『Indeed, market rates might well have backed up significantly following the November FOMC meeting if the Committee had decided not to move ahead with the program.』

そらまああれだけ散々織り込ませたら後戻りできないでしょうけれども、何か11月のFOMC前には市場に向けて「お前らどの位織り込んでいるのかアンケート」を取るというテイタラクになっていたという状況はとてもとてもここの講演での(キリッ)という感じではなく、ブラインダー元副議長の指摘する「自分の尾を追う犬」状態になっていたように思えますがねえ。

で、それだけではアレという事でさすがにその後の金利が上昇した話をしています。

『As shown in figure 4, longer-term Treasury yields have risen substantially over the past couple of months since the FOMC initiated this round of asset purchases.』

で、その図4というのには長期金利の上昇の折れ線グラフがあるのですが、その中に目盛り線として「雇用統計」というのと「財政パッケージ」というのが入っておりまして、金利上昇の理由は(1)経済のデータが良好だった、(2)オバマ政権の減税策効果への期待およびそれによる財政赤字拡大懸念、(3)それらからFRBが買入を縮小するのではないかという市場の期待が発生したこと、としています。

『I believe that this increase in Treasury yields likely reflects a number of significant factors, including incoming information suggesting a somewhat stronger economic outlook and the fiscal package that was announced by President Obama in early December and approved by the Congress about two weeks later; that package will not only support economic growth next year but will also increase the amount of federal debt issuance.』

『Also, investors appear to have scaled back their expectations about the extent to which the FOMC will engage in further purchases beyond those already announced; however, the effect of that reassessment on market rates tends to bolster the view that the Federal Reserve’s securities purchases do indeed affect yields in the direction indicated by analytical and empirical studies.』

まあそういうような事で、「金利を下げると言って長期国債買入しているのに全然長期金利下がらないどころか上昇してるじゃないか」という突っ込みに対する答えになってはいるのですが、まあ正直だいぶ無理筋な気がする。イエレンさんも説明していますけれども、結局の所、「名目」の長期金利をコントロールする為には要因が多すぎて、昨日引用したような1950年代での研究成果を持ち出して市中流通量をコントロールすればどうのこうの、というのは無理があると思いますです、はい。


○インフレとリザーブに関しては(キリッ)が結論とな

次の質問は『Will the Asset Purchase Program Lead to Excessive Inflation?』ですけれども、単純に言いますと「失業率の高止まりに見られるように経済のスラックが存在するので基調的なインフレ圧力は生じにくいですよ」というのが基本的な話で、その部分はまあ特にツッコミ所は無いような気がします(求人と求職の構造的なミスマッチが拡大しているのでは、というような面白い論点はあるので読むのはお勧めだが)のでスルー。

『Inflation and bank reserves.』という部分なんですけどね。

『A second reason that some observers worry that the Fed’s asset purchase programs could raise inflation is that these programs have increased the quantity of bank reserves far above pre-crisis levels.』

というリザーブの大きさがインフレを起こすのでは的な話ですが。

『I strongly agree with one aspect of this argument--the notion that an accommodative monetary policy left in place too long can cause inflation to rise to undesirable levels.』

ほほう。

『This notion would be true regardless of the level of bank reserves and pertains as well in situations in which monetary policy is unconstrained by the zero bound on interest rates.』

ゼロ金利制約の無い時にはその議論は正しい(が今はそうではないので問題無い)とな。

で、その後は「だから経済が健全なペースで回復した場合は現在の緩和的な政策を徐々に縮小しますよ、FOMCの声明文でもそうかいてますよね(キリッ)」という説明をしていまして、どさくさに紛れてプロッサーさんをDisる話が。

『In contrast, I disagree with the notion that the large quantity of reserves resulting from our asset purchases poses some special barrier to removing policy stimulus when the right time comes.』

どうみてもプロッサーさんに喧嘩売ってます本当にありがとうございました。

『The FOMC will be able to increase short-term rates by raising the interest rate that we pay on excess reserves--currently 1/4 percent. That ability will allow us to manage short-term interest rates effectively and thus to tighten policy when needed, even if bank reserves remain high.』

ま、確かに「実際にその時にならないと判らない」話ではありますが、この辺の論点に関しては、以前引用したプロッサーさんの指摘する懸念に対して「大丈夫だから大丈夫なのですよ(キリッ)」という話にしか見えませんな。で、その後延々と各種ツールの話をしてまして、その結論部分はと言いますと。

『In short, the range of tools we have developed will permit us to raise short-term interest rates and drain large volumes of reserves when it becomes necessary to achieve the policy stance that fosters our macroeconomic objectives--including the objective of maintaining price stability.』

まあ気合の世界ですな。


○金融のインバランスに関しては注目してるのね

『Will the Asset Purchase Program Result in Adverse Financial Imbalances?』という所なのですが・・・・・

『A reasonable fear is that this process could go too far, encouraging potential borrowers to employ excessive leverage to take advantage of low financing costs and leading investors to accept less compensation for bearing risks as they seek to enhance their rates of return in an environment of very low yields.』

低金利の長期化が資産への過剰投資を生んでバブルの発生に寄与するという懸念に関してですけど・・・・・

『This concern deserves to be taken seriously, and the Federal Reserve is carefully monitoring financial indicators for signs of potential threats to financial stability.』

これに関しては真剣に考えるべき懸念であり、FRBはこの件に関しては注意深く観察しています、というのは割と意外っちゃあ意外ですが、まあ住宅バブル発生に関する批判が飛んでくる件を考えるとそうなのかもね。

で、どういう指標を注目しているかというのを延々と説明してまして、まあ結論は「現状でそのような不均衡が発生する兆候はありません」という当然の結論ではありました。ただまあ最後に「不均衡だからと言ってそれを直接金融政策に割り当てるわけでは必ずしもないですよ」とは説明していますが、その辺に関してはめんどいので引用割愛します。


○海外(というか新興国)に対して逆効果かという質問に関しては・・・・

『Will the Asset Purchase Program Have Adverse Effects on Foreign Economies?』という質問に対する答えなのですが、これが何か途中からは開き直りモードになっているように見えて中々香ばしいのですが、例によって時間が無くなった(雪だし)ので最後の所だけで勘弁。最後はもう開き直り状態に見えますが・・・・・

『However, given the moderate exchange rate effects that we believe the Federal Reserve’s asset purchases have had, it seems likely to me that, as seems to be the case with conventional monetary easing achieved by lowering interest rates, our decision to purchase assets will not hinder foreign growth.』

何ででしょということですが。

『In particular, given the importance of the United States in the global economy, it is hard to believe that any foreign country would gain if our economy were to fall back into another recession. Over the longer term, the health and vitality of the global economy will depend importantly on the sustained, vigorous recovery in the United States that our asset purchase program is intended to support.』

何っつーかね、俺様は世界の中心なんだから俺様の景気回復は世界のためになるのでお前らはドルがちょっと位下がっても文句言うなゴルァ!!と読んでしまったのはあたくしの僻みですかそうですか(^^)。

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2011/02/14

さてさて、3日も休むとニワトリ頭のあたくしは市場の話は華麗にスルーして今更ネタですが1月8日のイエレン副議長の講演ネタでございます。

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/yellen20110108a.htm(HTML版)
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/yellen20110108a.pdf(PDF版)
The Federal Reserve’s Asset Purchase Program

○まず全体の雑感

『In my remarks today, I will discuss the rationale for the decision by the Federal Open Market Committee (FOMC) in November to initiate a new program of asset purchases, and I will address some frequently asked questions (FAQs) regarding the program’s economic and financial effects both here and abroad. The purpose of the new asset purchase program, like all of the monetary policy actions taken by the FOMC since the onset of the global financial crisis, is to fulfill our congressionally mandated objectives of promoting maximum employment and price stability.』

ということで、11月の国債買入プログラム実施の「理論的根拠」の説明をしますよというのと、最近うるせー質問に対してのお答えをしますよという話であります。

PDF版で本文20ページもありやがる講演なのですが、説明が細かいので長くなっている部分がございまして、では全体的にどうなのよという話なのでありますが、まあ読み方にもよるのですけれども、あたしゃーツッコミ所を探しながら読んでいる口ですから説明の粗というか強引さが目立つなあと思うのですな。

ただまあこれは裏を返して考えますと、そもそもの時点で国債買入プログラムの実施においてその政策の波及効果とか目的とかに関しての議論を全然詰めずに気合の世界で実施してしまったという弊害ってえ所がそういう強引さに表れているとも思えるわけです。一方でCE政策に属する各種貸出プログラムやMBSの買入に関してはあまり連銀幹部の発言にズレが無いので、そういう意味からしてもCEはFOMCの中でもコンセンサスが出来ていたのに対して、国債買入に関しては初回にしても(初回に関してはAIG問題で財務長官が立ち往生状態になったのでもう行くしか無かったという感じでの実行でしたけれどもね)今回に関しても「気合の見切り発車」状態で行ってしまい、さて発車したのはいいけれども目的地はどうなのよというミステリートレイン状態になっている、という所なのでしょうな。

てな事を考えますと、まあ海外からの傍観者としてのあたくしがデュアルマンデート的に考えた場合には6月でのQE2の終了というのはちと考えにくい所なのですが、そうは言いましても現状がミステリートレイン状態になっている中で政策が継続できるのかという気もするわけです罠。つまりはFOMCメンバーがこの国債買入で考えている効果とか波及経路とかが全然一致できていないという訳ですから、時間の経過と共にミステリートレインはドンドンと先に進んでしまうのですからして、見解の不一致が更に拡大でござるの巻となるのかもという感じで。

ま、そうなりますと6月に向けてはQE2のおかわり以外にも時間軸の強化とかのような政策フレームの変化というのも考えられるかもしれませんなあという気がするのですけどどうでしょうかね。あくまでもニワトリ頭のあたくしの妄想ですけれども。


と、前振りが長くなりましたが本文のネタ所から少々。


○政策効果に関する説明に無理がある件について

前半の『The Rationale for the Asset Purchase Program』ですけれども、最初の経済環境に関する説明部分はめんどいので割愛しますが、要するに現状の経済状況および先行き見通しに関しては不十分な改善ペースですよという話でして、特に失業率はNAIRUを大きく上回っており、基調的な物価に関してもディスインフレ傾向ですよというお約束の話をしています。

で、その次の本文4ページ目からの『The Design of the Asset Purchase Program』が中々いい感じでインチキな香りのする説明を交えているのがチャーミングなのですな。

・長期国債の買入を行って残存量に影響を与えることによって金利を下げるという理屈

で、11月に導入した国債買入の理論的かつ経験的な根拠に関しては「長期金利を下げる事によって金融緩和効果を出す」と仰せなのです。その部分を引用。

『In my judgment, both theoretical analysis and empirical evidence suggested that such purchases could provide effective stimulus by keeping longer-term interest rates lower than they would otherwise be.』

で、その基調となる理論が「資産価格と資産現存量についての関係」という話をしていまして、買入を実施したら名目長期金利が華麗に上昇というのが2回やって2回とも起きているという現実を目の当たりにしたので、最近あまりこの理屈見なくなったと思ったのですが、確かイエレンさんは以前もこの話してたわなと。

『The underlying theory, in which asset prices are directly linked to the outstanding quantity of assets, dates back to the early 1950s. For example, in preferred-habitat models, short- and long-term assets are imperfect substitutes in investors’ portfolios, and the effect of arbitrageurs is limited by their risk aversion or by market frictions such as capital constraints. Consequently, the term structure of interest rates can be influenced by exogenous shocks in supply and demand at specific maturities. Purchases of longer-term securities by the central bank can be viewed as a shift in supply that tends to push up the prices and drive down the yields on those securities.』

たぶんそれは1950年代のような資本市場の時代では有効であっても、現在のような状況では有効性が落ちているのではないかと思うのですけれども・・・・・・・

『In the context of such an analytical framework, the effect of an asset purchase program also depends on investors’ perceptions of the future path of short-term interest rates as well as their perceptions of the timing and pace of the central bank’s eventual unwinding of its asset purchases. Thus, central bank communication may play a key role in influencing the financial market response to such a program.』

でまあ恐らくこれは先のほうでさすがに「でも金利上昇したじゃん」というツッコミに対する説明をしているのですが、その説明の頭出し部分にもなっていると思いますけれども、「資産買入プログラムの効果は投資家の将来の短期金利政策の経路の予想と同様に、資産買入プログラムの将来の縮小タイミングおよびペースの投資家の予想の経路に依存します」という説明をしています。ここで唐突に出るのがアレなので最初読んだときに???と思ったのですけどね。


・実際に買入をする前の金利低下を効果として宣伝するという中々アレな説明

んでまあその続きの部分(この辺は本文5ページ目)の説明が中々お洒落。

『Recent empirical work provides a rough gauge of the quantitative effects of longer-term securities purchases. For example, event studies have investigated the short-term response of asset prices to announcements by the Federal Reserve and the Bank of England regarding their respective asset purchase programs. And regression analysis has been used to estimate statistical models that embed predictions from a specific theoretical framework.』

何か回帰分析しただの何だのとか書いてありますが、「announcements」って何ぞねというのがその次に。

『Table 1 summarizes the response of selected financial variables on four dates associated with the Federal Reserve’s first round of asset purchases.』

ということで、巻末の表を見るのですが、表は引用しませんのでそれを見てちょという話になるのですが、第1回の買い入れを実施した時の「金利引下げ効果」を10年の財務省証券利回り、10年の物価連動国債利回り、30年のMBS利回り、10年のBBB格の社債利回りの変化に関して並べているのですが・・・・・・

『On November 25, 2008, the Federal Reserve announced that it would purchase up to $600 billion in agency mortgage-backed securities (MBS) and agency debt. On December 1, Chairman Bernanke provided further details in a speech. On December 16, the program was formally launched by the FOMC. On March 18, 2009, the FOMC announced that the program would be expanded by an additional $850 billion in purchases of agency MBS and agency debt and $300 billion in purchases of Treasury securities.』

・・・・・・ということで、MBSとかに関しては実際に買い入れを実施した後の変化に関しても並べていますが、よくよく見ると金利が低下しましたという話は買入の実施を最終的に決定した09年3月のところで終了していまして、実際に買入が始まった09年3月以降の10年財務省証券利回りの華麗な上昇に関しては見事にスルーしているという「実証分析」でありまする。

つまりね、これって実際の長期国債買入の効果じゃなくて「買入しますよ」というアナウンスの効果でありまして、それなら追加緩和政策と称して他の政策やっても同じジャンという突っ込みを受けた時にどう説明するんでしょうか(MBSの買入は話が別ですのでこの際は措いて考えてください)と思うのですよ。

『As is evident from the table, these announcements were generally associated with a substantial decline in the 10-year Treasury yield and the yield on 10-year Treasury inflation-protected securities (TIPS) as well as in rates on agency MBS and corporate debt.』

そらそうなのだが、この効果は「資産買入プログラムの効果」ではなくて「資産買入プログラムを実施するというアナウンスメントの効果」としか言えないと思うのでございまして、何と言う無理筋な理屈というか最早屁理屈の世界に見えるのですよねえ。


・資産買入の波及チャネルについては良いのだが量的説明が無茶な件

資産買入のチャネルは(1)クレジットコストの軽減、(2)(ポートフォリオリバランスによる)アセット価格上昇による企業や家計のバランスシート効果、(3)「緩やかな」ドル安による輸出拡大、ということのようですが、まあそんな感じなんでしょう。

『Turning now to the macroeconomic effects of the Federal Reserve’s securities purchases, there are several distinct channels through which these purchases tend to influence aggregate demand, including a reduced cost of credit to consumers and businesses, a rise in asset prices that boosts household wealth and spending, and a moderate change in the foreign exchange value of the dollar that provides support to net exports.』

というのはいいのですが、その説明が何だかなあ状態。

『The quantitative magnitude of these effects can be gauged using a macroeconometric model such as FRB/US--one of the models developed and maintained by Board staff and used routinely in simulations of alternative economic scenarios.』

でね、巻末の図3ってのがあるのですが、この説明がワケワカメなのよ。

『Figure 3 depicts the results of such a simulation exercise, as reported in a recent research paper by four Federal Reserve System economists.』

まあ脚注のペーパー嫁ということなのでしょうけれども、それは読んでいませんのですが誰か読んでいる人いたら教えてちょ。

『For illustrative purposes, the simulation imposes the assumption that the purchases of $600 billion in longer-term Treasury securities are completed within about a year, that the elevated level of securities holdings is then maintained for about two years, and that the asset position is then unwound linearly over the following five years.』

図3に絵がありますが、まあ前提となる国債買入のペースとその後の残高減少ペースの話を上記のように置いていますと。

『This trajectory of securities holdings causes the 10-year Treasury yield to decline initially about 1/4 percentage point and then gradually return toward baseline over subsequent years.』

えーっと、実際には長期金利って「gradually return toward baseline over subsequent years」などというペースでは動いていなかったように思えるのですけれども・・・・・

『That path of longer-term Treasury yields leads to a significant pickup in real gross domestic product (GDP) growth relative to baseline and generates an increase in nonfarm payroll employment that amounts to roughly 700,000 jobs.』

ちょっとまて何じゃその効果の説明・・・・・

『It should also be noted that this exercise is performed as a deterministic simulation and hence does not capture the potential benefits of the asset purchase program in mitigating downside risks to economic activity and inflation.』

更に「資産買入プログラムが経済活動やインフレのダウンサイドリスクを軽減した効果に関してはこのシミュレーションでは考慮していませんよ」とまで言う説明って何なんでございましょうかと。


で、今般の買い入れも同様に効果があって、600億ドルの買入が3百万人の雇用を創出します(キリッ)という話をしているのですが、そもそも上記の説明の市場金利のパスが無茶振りにも程がありますし、そもそも国債買入から雇用創出に向かう因果関係が微妙なのでありまして(そもそもの金利低下が追加緩和のアナウンス効果だけの話であれば国債買入ではなくて例えば時間軸政策の強化でも良いのではという話になりますわな)、何かもうこの辺の説明が元々ツッコミ所を探しながら読んでいるあたくしからするとインチキ説明にしか読めないのですれどもどうなんでしょうか。

『I would also like to note that the same research paper analyzed the macroeconomic effects of the FOMC’s full program of securities purchases, including the first round of purchases that was initiated in late 2008 and early 2009, the modification of the reinvestment policy that was announced last August, and the second round of purchases that was initiated in November. Those simulation results indicate that by 2012, the full program of securities purchases will have raised private payroll employment by about 3 million jobs.』

更に図々しい事(とあたくしが思っているだけですが)にはこの買入を実施しない時と比較して実施した場合には物価指数も1%上昇するのですという話も。

『Moreover, the simulations suggest that inflation is currently a percentage point higher than would have been the case if the FOMC had never initiated any securities purchases, implying that, in the absence of such purchases, the economy would now be close to deflation.』

ということで「理論的な説明」の部分が終了しているのですが、結局参考文献となっております所のサンフランシスコ連銀謹製のペーパーを読まないとワケワカメという事になるのでありますが、当然ながらまだ読んでいないし意味が判るかどうか正直不安ではあります。特に説明の後半部分は完全にこのペーパーベースなんでしょうなあと思うのでありました。

Chung, Hess, Jean-Philippe Laforte, David Reifschneider, and John C. Williams (2011).
“Have We Underestimated the Probability of Hitting the Zero Lower Bound?”
Working Paper 2011-01. San Francisco: Federal Reserve Bank of San Francisco,
January.

#後半のFAQは明日以降にでもヒマがあったら

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2011/02/10

○ああそういえば今日はBOEのMPC

ということで、議事要旨ネタがすっかりスルーのままでしたが、超駆け足で引用大会だけで勘弁してくんなまし。

http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/mpc/pdf/2011/mpc1101.pdf

CPIの現状認識と先行きに関してというのは18〜20パラグラフにあります。

『CPI inflation had risen to 3.3% in November from 3.2% in the previous month. In line with the usual pre-release arrangements, an advance estimate for twelve-month CPI inflation of 3.7% in December had been provided to the Governor ahead of publication. A detailed breakdown of the inflation data was not yet available, but increased food, petrol and utility prices were likely to have contributed to the increase on the month.』

食品、原油、公共料金引き上げがCPI上昇に寄与したとのことです。

『Also in line with the pre-release arrangements, the Governor informed the Committee that producer output prices had risen by 0.5% in December, causing the twelve-month inflation rate to rise to 4.2%. An estimate of producer input prices had also been provided, showing a rise of 3.4% in December, an increase materially larger than the average market expectation: the twelve-month inflation rate had risen to 12.5% from 9.2% in November. Increases in food and energy prices could account for the majority of the rise on the month.』

生産者物価指数(投入も産出も)上昇していて市場予想よりもかなり高く、これまた食品とエネルギー価格上昇によりますと。

『Recent developments in the prices of imported commodities and other goods indicated that the most likely near-term path of CPI inflation might be higher than the Committee had thought at the time of the November Inflation Report. It appeared likely to rise above 4% in coming months. The latest reports from the Bank’s Agents suggested that it was also possible that the pass-through into consumer prices of January’s VAT increase would be greater than previously expected.』

ということで近いうちにCPIは4%に達するでしょうという話なのですが・・・・

『These factors represented further shocks to the price level whose direct impact on inflation should dissipate over time.』

という一文を入れているのがチャーミングですが、どう見ても無理無理理屈だなあとか思うのでして、やはりこの後は「輸入物価上昇圧力が持続したり企業の価格転嫁が進んだりすると厳しいかもね」という残念な指摘が。

『But they were a source of concern if imported price pressures were to remain elevated or if businesses were more able or willing to pass on cost increases than might have been expected given the shortfall of demand relative to supply capacity. They were also likely to exacerbate the risk that expectations of above-target inflation would become engrained, affecting wage and price pressures.』

で、その後サーベイの話をしているのですが、そこはスルーして賃金のところのまとめになっている第23パラグラフが今回は結構なポイントだと思うのよね。

『Taken at face value, the strength of employment growth shown by the LFS data over the past year or so had been surprising. Given the large reduction in productivity relative to its pre-crisis trend that had occurred during the recession, businesses might have been expected to be able to increase output during the recovery without taking on many additional employees.』

で、ポイントはこの後。

『If the LFS measure was accurate, then the past strength of employment growth might indicate that the degree of spare capacity in the economy was less than the Committee had assumed, or else was more unevenly spread across different businesses and sectors.』

LFSの統計が正確ならば、ここまでの雇用の伸びが示すことは、経済の生産余剰力の大きさが政策委員会の推量していた程度より小さかったと言うこと、または企業や業種によるばらつきが大きい事を示唆します。

『The downward pressure on prices stemming from the margin of spare capacity would then be commensurately less. But in that case, consideration would also need to be given to the implications for income and spending growth. The Committee would seek to analyse this issue further in the context of the projections prepared for its February Inflation Report.』

その場合、経済の余剰生産力による物価への下方圧力は同様に低い可能性があります。しかしそのケースでも所得や消費の伸びへのインプリケーションへの考慮は必要です。政策委員会は2月のインフレーションレポートの公表に向けて、これらの論点についての分析を更に深める所存です。

・・・とヘタクソな訳をつけてみましたが、この部分というのは、従来MPCが詫び状の説明根拠にしております「中長期的には物価はインフレターゲットに落ち着くんですよ」という理屈の根幹に関わる問題であるとあたしゃ認識していますので、まあさすがに今回いきなり引き締めという訳にはならないでしょうけれども、インフレーションレポートでこの辺りの考察に関するトーンの変化が生じた場合には、財政健全化策が景気に与える悪影響を見ながらもかなりナローパスな舵取りを求められるのではないかと存じます。

まあ今日は結果しか出ないので、更にマニア的興味をそそられるBOEちゃんなのでございます。

本当は金融政策の検討でリスク検討をしている部分もオモロイのですが、時間と量の関係上割愛。まあ24パラグラフ以降はマニア必見かと存じます(そんなマニアが何人いるのか知りませんが^^)。

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2011/02/07

バーナンキ議長のワシントンのナショナルプレスクラブでの講演をもう少し(金曜は正直寝起きでしたから)。

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20110203a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke_speech_20110203.pdf

○実はこの講演の主張は「財政構造改革」だったりするのでは??

えーっとですな、この講演なんですけれども、本文は10ページ(PDFの方で換算)構成なのですが、6ページ目の半ばから最後まで、ということで、実はこの講演の半分は「財政の維持可能性の為には歳入および歳出の構造改革をしていかないといけません」という話が延々と続いております。

先般バーナンキ議長が議会証言をした時にもこの財政ネタをしていたのですけれども、そのときは最後の所にちょろっと入れていたという感じではございましたけれども、そらまあ議会証言をする所で延々と「財政構造改革をするのが大事だからお前ら努力せえ」と言ったら「説教しやがるのかヴォケ」と反発されるでしょうからそこは抑え目にしたのかなあとか思ったのは考えすぎですかそうですか。

ということで、その部分もまあ色々と引用するというのもあるのですが、それはまあ金融政策的にはあまりネタにならないので割愛します。基本的な部分は前回の議会証言での話をより詳しく丁寧に話をしているのですけれども・・・・・

・足元での財政赤字拡大はリーマンショック以降の金融危機克服に必要だった
・とは言え、このままの状況が続くと財政赤字がドンドン拡大する
・更に問題なのは、今後米国では高齢化とヘルスケア問題によって構造的に財政支出が拡大するという構造的な要因がある
・したがって、このままの状況を放置すると、財政の維持可能性に対する投資家の疑念から長期金利が急上昇したり、金融の混乱を引き起こしたりというような深刻な問題が生じる

てな話を丁寧に行っていまして、したがって歳入と歳出の両方の構造改革が必要、という話になるのですが、もしかしてバーナンキ議長が本当に言いたかったのは金融政策の話よりこっちだったのではなかろうかと思うのでありました。


○景気に関しては実は強め

『The Economic Outlook』の所なのですが。

『The economic recovery that began in the middle of 2009 appears to have strengthened in recent months, although, to date, growth has not been fast enough to bring about a significant improvement in the job market.』

と一発目に労働市場が改善しない程度の景気回復という話をぶちかまして、ハト派的なテイストを醸し出しております。更にその次が・・・

『The early phase of the recovery, in the second half of 2009 and in early 2010, was largely attributable to the stabilization of the financial system, the effects of expansionary monetary and fiscal policies, and a strong boost to production from businesses rebuilding their depleted inventories. But economic growth slowed significantly last spring as the impetus from inventory building and fiscal stimulus diminished and as Europe’s debt problems roiled global financial markets.』

ということで、09年から10年前半に掛けての回復の要因は「金融システムの安定」「拡張的な金融財政政策」「在庫復元に伴う生産拡大」でしたが、財政刺激および在庫復元サイクルの一巡に加えて欧州財政問題における金融市場の動揺から10年の春から景気は顕著に減速しました。

と言う感じで頭の部分で一旦ぶちかましておくのがバーナンキクオリティなのであるが、その後の話が明るかったりするのですな。

『More recently, however, we have seen increased evidence that a self-sustaining recovery in consumer and business spending may be taking hold. Notably, we learned last week that households increased their spending in the fourth quarter, in real terms, at an annual rate of more than 4 percent.』

と、最近は消費者と企業支出の自律的な回復が進んでいるって話を。

『Although a significant portion of this pickup reflected strong sales of motor vehicles, the recent gains in consumer spending look to have been reasonably broad based. Businesses’ investments in new equipment and software grew robustly over most of last year, as firms replaced aging equipment and as the demand for their products and services expanded.』

更に、最近の消費拡大は自動車販売要因以外の裾野も拡大しているし、企業の生産拡大への支出も拡大している。と結構威勢の良い話が。

『In contrast, in the housing sector, the overhang of vacant and foreclosed homes continues to weigh heavily on both home prices and residential construction.』

てな事で住宅セクターの弱さを指摘するのですが・・・・

『Overall, however, improving household and business confidence, accommodative monetary policy, and more-supportive financial conditions, including an apparent increase in the willingness of banks to make loans, seems likely to lead to a more rapid pace of economic recovery in 2011 than we saw last year.』

その住宅セクターの弱さはあるけれども(ってhoweverって前文に掛かると解釈したのですけど違ってたらごめんなさい)、「改善を続ける家計や企業の信頼感」「緩和的な金融政策」「より景気にサポート的な金融環境、そこには銀行の貸出態度の改善も含まれまますが」というような要因によって、11年は昨年よりもより速いペースでの景気回復を見込みます、という風になっておりまして、この部分を見ると結構景気の先行きには強気なのですな。


○一方でデュアルマンデートの部分に関しては慎重に

『While indicators of spending and production have, on balance, been encouraging, the job market has improved only slowly.』

と、労働市場に関する説明の部分では頭からまたぶちかましております。

『Following the loss of about 8-1/2 million jobs in 2008 and 2009, private-sector employment showed gains in 2010. However, these gains were barely sufficient to accommodate the inflow of recent graduates and other new entrants to the labor force and, therefore, not enough to significantly reduce the overall unemployment rate.』

これは(そういやネタにしてませんが)昨年11月にコチャラコタ総裁が『Monetary Policy, Labor Markets, and Uncertainty』というお題で講演をしている中でも指摘されているのですが、最近の労働市場の問題点として、長期失業率の上昇と、若年労働者層の失業率の高さを懸念していまして、その話に通じる所ではございます(というか労働市場に関するコチャラコタ総裁講演ネタはどうも論点整理の為に一度ネタにした方が良いですかね)。

『Recent data do provide some grounds for optimism on the employment front; for example, initial claims for unemployment insurance have generally been trending down, and indicators of job openings and firms’ hiring plans have improved.』

と、足元では良い兆候はありますが、と言いつつ・・・・

『Even so, with output growth likely to be moderate for awhile and with employers reportedly still reluctant to add to their payrolls, it will be several years before the unemployment rate has returned to a more normal level. Until we see a sustained period of stronger job creation, we cannot consider the recovery to be truly established.』

ということで、当面の生産拡大が緩やかで、企業が雇用拡大をする意欲が弱い中においては、失業率がより正常な水準に戻るまで「several years」掛かりますという話をしていますが、前回の議会証言ではこの部分が『At this rate of improvement, it could take four to five more years for the job market to normalize fully. 』ということで、ちょっとだけ時間が短くなったのがチャーミングだったりするのでありまする。

インフレに関する部分は金曜に引用したので割愛します。


○その他少々

講演の最初の所を読んでおりまして(;∀;)イイハナシダナーと思ったところですけれどもね。

『Your job is not easy, but it is essential. Virtually every American is affected by developments in the economy and in economic policy. But contemporary economic issues can be highly complex, and few nonspecialists have the time or the background to master these issues on their own. The public must therefore rely on the diligent reporting, clear thinking, and lucid writing of reporters determined to go beyond dueling bumper stickers and sound bites to help people understand what they need to make good decisions, both in their personal finances and at the polls. These are weighty responsibilities, and the journalists I know take them very seriously.』

何と申しますかね、市場関連とか金融政策関連とかで碌でもない与太記事やら与太解説やらを飛ばしまくる報道機関の皆様に置かれましては、バーナンキ議長の言葉を耳かっぽじって聞けやという感じでございます。

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2011/02/04

○バーナンキ議長講演とな

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20110203a.htm
The Economic Outlook and Macroeconomic Policy

何かスピーチ部分だけだとそんなに長くは無いが、あたくしの貧弱な英語力では今朝の今朝いきなり詳細読むと言う訳にもいかんので、『Monetary Policy』のところだけ超斜め読みしましたけれども、従来の話及び一般的な話しかしていない気がする、ということでそこの部分からちょっとだけ。

『In sum, although economic growth will probably increase this year, we expect the unemployment rate to remain stubbornly above, and inflation to remain persistently below, the levels that Federal Reserve policymakers have judged to be consistent over the longer term with our mandate from the Congress to foster maximum employment and price stability.』

まあ現在の金融政策は適切というのはある意味当たり前ですかな。で、資産買入政策の説明ということで、資産買入政策の効果に関していつもの説明をしています。金融政策に関する部分の3番目のパラグラフを手抜きでまる引用。

『Although large-scale purchases of longer-term securities are a different monetary policy tool than the more familiar approach of targeting the federal funds rate, the two types of policies affect the economy in similar ways. Conventional monetary policy easing works by lowering market expectations for the future path of short-term interest rates, which, in turn, reduces the current level of longer-term interest rates and contributes to an easing in broader financial conditions.』

この部分までは伝統的な金融政策の効果に関する説明をしているのですが、金利引下げによる金融緩和が「将来の短期金利のパスに対する人々の期待を引き下げることによって、現在の長期金利を引き下げる効果として働き、幅広い金融環境の緩和に寄与する」と説明してて、それっておめえ時間軸の話じゃないの(だって長期金利って短期を下げたからと言ってもその時に仮に「打ち止め」感が出たらもう下がらないかもしれないし、短期金利を上げても長期金利が下がったりする事案は年柄年中ですよねえ)と存じます次第でありまして、この辺りが、バーナンキのFRBの中で現状の金融政策に関する効果とか狙いに関するコンセンサスとか取れてないんじゃないのかねと思われる所ではございまする。

『These changes, by reducing borrowing costs and raising asset prices, bolster household and business spending and thus increase economic activity. By comparison, the Federal Reserve's purchases of longer-term securities have not affected very short-term interest rates, which remain close to zero, but instead put downward pressure directly on longer-term interest rates.』

実際に買入を開始したら金利が上がりましたなあという件については後ほど説明がありました。だからコチャラコタ総裁みたいに「実質金利」を持ち出した方が説明に無理がないと思うのだが。で、この前の議会証言でもそうでしたが、資産価格の上昇による家計の経済活動の活発化(=つまり家計のバランスシート改善)も言及してますわな、というかそっちがとりあえずワークしてますしね。

『By easing conditions in credit and financial markets, these actions encourage spending by households and businesses through essentially the same channels as conventional monetary policy, thereby supporting the economic recovery.』

ということですが、昨日の米国債券市場は
http://www.bloomberg.co.jp/markets/index_americas.html

米国10年国債 3.545 +0.068
米国30年国債 4.661 +0.042
(2月4日朝の数値です、為念)

長期金利上昇ですかそうですか(^^)。

つーことでその次のパラグラフで実際の市場の動きについて更に説明。

『A wide range of market indicators supports the view that the Federal Reserve's securities purchases have been effective at easing financial conditions. For example, since August, when we announced our policy of reinvesting maturing securities and signaled we were considering more purchases, equity prices have risen significantly, volatility in the equity market has fallen, corporate bond spreads have narrowed, and inflation compensation as measured in the market for inflation-indexed securities has risen from low to more normal levels. 』

資産買入の効果の説明なのですが、「MBSの償還再投資の実施および、今後の追加の購入の示唆を行った昨年8月以降、株式市場のボラテリィティーが低下して株価が顕著に上昇し、社債のスプレッドが縮小し、インフレ連動債によって示される市場のインフレ期待が上昇した」と効果の説明をしております。

『Yields on 5- to 10-year Treasury securities initially declined markedly as markets priced in prospective Fed purchases; these yields subsequently rose, however, as investors became more optimistic about economic growth and as traders scaled back their expectations of future securities purchases.』

さすがに実際の長期金利が買入実施後に上昇した話は記者相手ともなると言及せざるを得ないものと見られまして(議会証言では完璧にスルーしていた)、「経済の見通しが改善し、市場関係者が将来のFRBが国債の買入を減らすと想定するようになった為」という理由付けをしておりますわな。

『All of these developments are what one would expect to see when monetary policy becomes more accommodative, whether through conventional or less conventional means.』

ということで、これらの市場動向は伝統的な金融緩和の実施の時と同様の動きですと説明しているのですが、まあそこまで説明するなら名目金利の話じゃなくて実質の話をすりゃ良いじゃんと思うのですが、何かこう苦しいロジックで話を進めるのが不思議でなりませんです、はい。

『Interestingly, these developments are also remarkably similar to those that occurred during the earlier episode of policy easing, notably in the months following our March 2009 announcement of a significant expansion in securities purchases. 』

2009年3月の買入と同様の動きをしているんですよ、と思いっきり開き直っておりますが、ここでの説明でも資産買入効果に社債のスプレッド縮小とかホンマカイナ的な部分がありますし、先般の議会証言でもそうなのですが、国債買入プログラムの効果と各種貸出ファシリティーの効果を敢えてごっちゃにして説明しているのが何とも微妙なテイストではございます。

『The fact that financial markets responded in very similar ways to each of these policy actions lends credence to the view that these actions had the expected effects on markets and are thereby providing significant support to job creation and the economy.』

はあはあそうですか。で、その次のパラグラフは「内容に関しては適宜見直して必要なときには金融緩和を縮小することが出来ます(キリッ)」といういつもの話をしていますが割愛。

んでもって経済のところまで引用してるとキリが無い&そんなに新しい話はないのでインフレの所だけ引用すると。

『On the inflation front, we have recently seen significant increases in some highly visible prices, notably for gasoline. Indeed, prices of many commodities have risen lately, largely as a result of the very strong demand from fast-growing emerging market economies, coupled, in some cases, with constraints on supply. Nevertheless, overall inflation remains quite low: Over the 12 months ending in December, prices for all the goods and services purchased by households increased by only 1.2 percent, down from 2.4 percent over the prior 12 months. 』

足元ではガソリン価格が顕著に上昇しており、新興国の力強い需要の伸びと、一部要因としては供給能力が伸びない事によって、国際商品価格が上昇していますが、ヘッドラインの物価上昇率はそれほどの上昇とはなっていませんとな。

『To assess underlying trends in inflation, economists also follow several alternative measures of inflation; one such measure is so-called core inflation, which excludes the more volatile food and energy components and therefore can be a better predictor of where overall inflation is headed. Core inflation was only 0.7 percent in 2010, compared with around 2-1/2 percent in 2007, the year before the recession began. Wage growth has slowed as well, with average hourly earnings increasing only 1.8 percent last year. 』

基調的なインフレを確認するために使われる食料とエネルギーを除く物価を見た場合、その伸びは更に低く2010年は+0.7%に留まりますと。で、賃金の伸びも弱いと。

『These downward trends in wage and price inflation are not surprising, given the substantial slack in the economy.』

ということで、いつもの話ですが、大きな経済のスラックがある中では、現状のような物価や賃金の伸びの弱さは不思議なことではありません、と締めていまして、まあ引き続きインフレの部分に関しては特にインフレ懸念無しという事ですな。雇用に関する部分はニュースでも報道されていたと思いますのでめんどいからスルー。

つーことで、質疑応答の詳細でもあると面白いかもしれませんが、まあこれを斜め読みする限りにおいては(つまり詳細に読んでないので読み落としがあったらゴメンチャイなのでありますが)現状の金融政策の妥当性を強調すると共に、デュアルマンデートの物価および雇用に関する見通しとしては、先行きの改善のペースが遅い事を強調していますので、まあ普通にQE2継続は継続で、おかわりがあるかどうかは正直判らん。このトーンだと普通におかわりがあってもおかしくは無いのですけどねえ。

ただし、金融政策の効果に関する話については、コチャラコタ総裁の説明とバーナンキ議長の説明に微妙な齟齬があるように、FOMC内部できちんと纏まっているとは到底思えないのでして、まあおかわりするにしても内部の意思を固めるのは難しいかも知れませんなあと思う次第ではございます。

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2011/02/03

○BOEネタである

http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/mpc/pdf/2011/mpc1101.pdf

今回は中々読み物としては面白かったのですが、正直英国経済がどうこうしても日本の経済やら金融政策に対するインプリケーションがあるのかと言われますと答えに困る次第でありますので、要するに中央銀行野次馬見物人としての趣味の世界ですというご認識でひとつよろしくです(何を?)。

構成はいつもと同じで金融市場の話からになるのですが、実質的に最初のパラグラフになる第2パラグラフの記述が中々微笑ましかったので意味は無いが引用。

『As was typical during the Christmas and new year period, the level of activity in financial markets had been relatively low. So the asset price movements that had occurred within the month were to be interpreted with some caution.』

年末年始は板が薄いから市場のインプリケーションを見るのには注意が必要と(^^)。

で、金融市場に関しては以下こんな感じです。

・BOEの利上げ期待が高まり、OISでは8月に25bpの利上げを織り込むが、長期金利の変化は僅か(第3パラグラフ)

・ユーロエリアのソブリン債市場には引き続き債務懸念によるストレスがある(第4)

・国内の年末の銀行のファンディング市場には動意ない。ユーロ圏のソブリン債と同様にユーロ圏の銀行のファンディング市場では銘柄間のスプレッドが拡大している。ただし一般企業にはその傾向は概ね見られない(第5)

・英国株価は4%上昇、FTSE指数は2007年のピークの1割下まで戻る。米国やユーロ株はそこまでの水準には戻っていない。この要因の一部は英ポンドの下落によるが、多くの要因は企業収益と配当が拡大する期待による(第6)

・英ポンドの実効レートはあまり変化せず(第7)

ということであります。でですな、世界経済に関する所で、インフレに関する構造的な部分への言及が出てくるのですな。

第8パラグラフから。

『The data released during the month had remained consistent with continued firm growth in the global economy, albeit uneven across countries. And, as in previous months, there were continued signs that global demand was putting upward pressure on commodity prices.』

global demand was putting upward pressure on commodity pricesということで、世界的な需要の拡大が商品価格の上昇圧力をもたらしているという話。

第11パラグラフから。

『Indicators had remained consistent with robust growth in emerging economies, which provided almost a quarter of UK goods imports. China and some other countries had tightened monetary policy during the month, in response to heightened inflationary pressures, which could feed through to higher export prices. Unless offset by a movement in the sterling exchange rate, such heightened inflationary pressures could lead to higher UK import prices.』

英国の輸入の4分の1を占める新興国の経済拡大による物価上昇圧力に関しては、英国ポンドの為替による調整が無い場合(つまり、英国ポンドの為替レートがポンド高にならない場合、という事ですな)には、英国の輸入価格上昇に繋がるというお話であります。

となりますとね、英国のインフレ圧力を緩和するという観点では英国ポンドの上昇を容認するというスタイルになる可能性もあるなあとはこの部分だけ取り出すと感じられる次第でありまして、そーゆー辺りからも利上げをするかどうかは兎も角として、ややホーキッシュな姿勢を見せてポンド安にしない方がヨカロという感じになっているかもしれませんなあとは思います。ただし、それをやっちゃうと従来の英国の輸出回復のサポートになっていた英ポンド安が逆回転する訳ですから捌きが難しいですわなあとか思います。

第12パラグラフから。

『Oil prices had risen by almost 8% in sterling terms since the Committee’s previous meeting, while industrial metals prices had also risen. Since July 2010, oil and other commodity prices had risen by around a third or more. It was possible that demand and supply pressures could lead to further increases in the prices of some commodities and exert further upward pressure on UK import prices.』

原油価格やら商品価格の話の見通しはまだまだ上昇するという話が前半の分ですが、後半にはディマンドプルのインフレ圧力が今後も商品(主に原材料ですな)価格の上昇圧力が掛かり、英国の輸入価格に上昇圧力が掛かるでしょう。

ということで、世界経済に関する部分ではディマンドプルの国際商品価格上昇に関するインフレ圧力について結構しつこく言及していまして、まあさよですなという感じですが、この辺りを読んでいても「インフレ圧力」連呼っぽくてホーキッシュなイメージを受けるのでありましたです、はい。

ちなみに、世界経済に関しては(1)米国の景気回復はかなり確りしている、(2)ユーロ圏は全体としては緩やかな回復だが国によって差が有り、ドイツは強いが周縁国では財政再建に伴う需要の低迷が数年続き、更に債務問題への懸念が金融市場や経済に混乱を与えるりすくも、とこちらは弱めです。ちなみに日本への言及はございませんのが残念です(まあしょっちゅうです)がシャーナイナイ。


ということで、経済認識部分だけで時間切れになったのはちょっと失敗なのですが(寝坊したため)、この先もインフレの話がうじゃうじゃ出てくるのと、昨日申し上げた「経済の余剰生産力が物価押し下げ圧力になる」という基本的な認識部分に対して見方を変える必要があるかも的な話など、本質的な部分を見ると足元のGDP如きではそう簡単にハトにはなれなさそうな記述が続くという内容なので明日以降に続くということでよろしくです。

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2011/02/02

○また時間配分を間違えたので本日は予告編(BOEネタ)

時間配分を間違えたっつーか単に最近寝起きが悪いので頭が動き出すのに時間が掛かってキーボードのタイピング速度が遅い(基本的にキーボードのタイピング速度ってその時の頭の回転速度に依存しますよね^^)のでありますがorz

いやね、先週BOEの1月MPCの議事要旨が出ていたんですよね。

http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/mpc/pdf/2011/mpc1101.pdf

でまあこれを読んだのですけれども、ここの議事要旨の文言だけ見ていると来月のMPCでインフレーションレポートの改定と共に利上げするんじゃないか位の勢いで鷹が狂喜乱舞するの巻という内容でありまして、これは早い所ネタにしないと乗り遅れるがな!!!!

とか思ったのですけれども、月曜に改めてOISの気配(業者がベンダーに出してる気配とかですが)やらLIBORの推移やらを見たのですけれども、そんなに急に利上げモードになっていないから「ふーん」と思ってまあECB理事会(BOEの次の政策決定は10日ですがECBも暴れそうなので)までにネタにすりゃ良いやと楽勝気分のあたくしだったのですけど、昨日のニュースを見てあっちゃー状態。

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=aqDS8rsOIAmY
英中銀:年内3回利上げ、インフレ阻止で1.25%まで−NIESR予測

『2月1日(ブルームバーグ):イングランド銀行(英中央銀行)は消費者物価の大幅な上昇が定着するのを防ぐため、年内3回の利上げを実施する可能性がある。英国立経済社会研究所(NIESR)が見通しを明らかにした。』

おーのーとか思ってたら案の定昨日の英国債券市場は・・・・

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=aCoqTE3VZiUQ
英国債:下落、利上げ観測が強まる−NIESRの予測修正に反応

・・・・どうもですな、1月MPCの後に出た衝撃のGDPの結果を受けて、経済が怪しいのに早期利上げなんぞあるかヴォケという感じで市場様が推移していたと思われる次第なのですけれども、明日以降ネタにしますけど、上記議事要旨を見ますと、利上げの検討を正式に行っているわ、物価に関するリスク認識は明らかに上方修正されているわ、更に重要だなと思ったのは、従来BOEが「先行きの物価はターゲット範囲内に戻るでしょう」という根拠になっておりました所の、

『the margin of spare capacity had exerted downward pressure on inflation』(第29パラグラフより)

に関してなのですが、この「経済の余剰」に関する部分が、「労働市場のデータを見るとMPCが想定するよりもmargin of spare capacityの程度が小さい可能性もある(第23パラグラフ)」というように、結構本質的な部分で「おや?」と思う部分もありまして、更にインフレに関してはまあ全編これインフレに関する話(そらまあインフレーションターゲットを実施しているのに肝心のインフレ率が3.7%とターゲット数値の2.0%を豪快に上回っているのですから当たり前ですけれども)という感じでして、足元の景気の落ち込みでどうこうという話では無いと思うんですけどね。

ただし財政健全化政策の影響はまだ個人消費などに出ていないというような議論もあるので、さすがに2月のインフレーションレポートを出して何らかの示唆をするのかしないのか存じませんけど、その辺の認識を示してから話が始まるのでしょうけれどもねえ、とは勝手に思います。

ということで、折角ですので(?)「利上げを検討した」という第28パラグラフを引用しましょう。

『The Committee considered the case for an increase in Bank Rate at this meeting.』

キタキタキタキターーーーー

『The domestic and global recovery had proceeded at least as well as expected. And the most likely prospect was for continued growth, despite the downside risks that remained. For most members, the balance of risks to medium-term inflation relative to the target had moved upwards over the past few months, reflecting the recent and prospective buoyancy of import prices and the possible impact of higher near-term inflation on public inflation expectations.』

経済は回復しており、今後もダウンサイドリスクはあるものの回復を続けると見込まれ、更に殆どの委員によれば中期的なインフレ期待の上昇リスクが高まっているとな。

『That would suggest that a lower level of demand might be consistent with hitting the inflation target in the medium term, and so might argue for a withdrawal of some of the current monetary stimulus.』

キタコレ。

『Moreover, an increase in Bank Rate at the current juncture might lessen the risk that a larger increase became necessary at a later stage if inflation persisted above the target. Members noted that a small increase in Bank Rate at this meeting would still leave monetary policy highly accommodative, and would not preclude the Committee from increasing the policy stimulus in future if that became necessary.』

現時点での利上げを行っても、金融政策は十分に緩和的であるとか中々お洒落ですわな。


と、利上げ議論の所だけ出しましたが、ご案内のように政策は現状維持でありまして、上記の説明に対して現状維持をするメリットについての論点も中々興味深いのですが、引用してるとキリが無いので明日にでも。その中で意識されているダウンサイドリスクは、(1)財政健全化政策が今後の消費に与えるマイナスインパクト、(2)ユーロ圏のソブリン問題が英国の輸出先であるEU諸国の需要を大きく減らすリスクや、ソブリン問題が金融システム問題に発展するリスク、というのを挙げておりますです。お暇な方は議事要旨の第29パラグラフを読んで味噌。

ということで続きは明日(お前は下手な民放番組かというツッコミは承認します^^)。

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2011/01/31

んじゃまあ先週末に予告していたコチャラコタ総裁の講演ネタ続きを。

http://www.minneapolisfed.org/news_events/pres/speech_display.cfm?id=4607
http://www.minneapolisfed.org/news_events/pres/kocherlakota_speech_01112011.pdf
『It’s a Wonderful Fed』

○FEDの対応は「貸出」と「金利の引き下げ」に分類されるというお話

つーことで後半の『The Fed’s Responses and Their Benefits』であります。

『The Federal Reserve responded to the Great Recession and the associated financial crisis in a number of ways. These responses fall roughly into two classes.』

FEDの金融危機対応はラフに言えば二つの種類に分類されますよと。

『First, the Fed engaged in a vast amount of lending to firms believed to be in sound condition. It lent through conventional vehicles like the discount window and swaps with foreign central banks. But it also lent through relatively unconventional vehicles like the Term Asset-Backed Securities Loan Facility. I’ll briefly discuss how this lending is distinct from the Fed’s injection of funds into obviously nonsolvent institutions like AIG.』

最初の対応は「貸出」ですが、その貸出というのはAIGへの融資とは別物の方の「貸出」でありまして、金融パニックで「健全だけど流動性不足」な金融機関に従来型の貸出(ディスカウントウィンドウとか)や新設した各種貸出ファシリティを使って実施した貸出の事でして、まあざっくりと言えば「信用緩和(CE)」ですわな。

『Second, the Fed lowered the real interest rate facing borrowers and lenders.』

2番目は「実質金利の引き下げ」 であります。ということで「名目金利」ではなく「実質金利」の下げを強調しているのは読んでいて非常に腑に落ちる整理であります。でもって「実質金利」の説明。

『Here, I should clarify some terminology. By the term “real interest rate,” I’m referring to the interest rate received by lenders net of inflation. Thus, if the interest rate on the loan is 5 percent and lenders expect inflation to be around 2 percent, the real interest rate is roughly 3 percent. Economists generally think that the real interest rate, not the nominal interest rate, matters for economic decision-making.』

ということで、実質金利=名目金利−期待インフレ率という説明をしてまして、名目よりも実質の方が経済活動の決定に対して重要と経済学者は考えますとな。

『Early in the recession, the Fed lowered its target for the fed funds rate. Given that inflation expectations remained stable, this action served to lower the real interest rate. By early 2009, when the fed funds target essentially reached its lower bound, the Fed used large-scale asset purchases to achieve further reductions in the real interest rate.』

つまりこの部分がポイントになる訳でして、インフレ期待が安定する中ではFF金利を下げれば実質金利も下がるのですが、FF金利がゼロ金利制約に引っ掛かってしまったので、FEDは大規模な資産購入プログラムを実施することによって「実質」金利を下げる事になった、という事でして、つまり「QEは期待インフレに働き掛ける政策である」という説明でして、この辺りは特に腑に落ちる所であります。

『I’ll first discuss the lending responses and then talk about the interest rate cuts. I’ll then discuss how I believe economic events would have unfolded had there been no Fed.』

ということでまずは貸出から。


○各種貸出ファシリティの狙いと効果について

『Lending』の所ですが、最初は金融危機の間に市場でどのようなことが起きて、それがどのような問題に繋がるかという説明が続きまして、まあ市場の中の皆様には先刻ご承知の助な話ですので引用は割愛しますが、CEとQEをごっちゃにしている人とかうっかりすると市場の中の何とかストみたいな人でもいる(素でやってる人と、自分の主張に都合の良いようにわざとやっている人がいる)ようですので、そういう人は読んだ方が良かろうかと存じます。まあ要するに流動性懸念によって健全な機関まで巻き込まれるプロセスの説明であります。

で、その問題を回避するために各種貸出を実施する訳ですが。

『I would say that most economists agree about how central banks should respond to financial panics. The crux of that agreed-upon response is that central banks have to be willing to lend freely to solvent firms, against a wide range of good collateral, at some kind of penalty rate.』

金融パニック時の中央銀行の対応は「支払能力のある機関に」「幅広い種類の優良な担保を裏づけにして」「若干のペナルティー金利で」貸出を行うという事ですと。

『This policy is useful for two reasons.』

『First, it provides a source of funds to potential borrowers who are illiquid but nonetheless solvent.』

『Second, it provides a floor to collateral valuation. Private lenders know that they can always use collateral seized from a defaulting borrower as a vehicle to borrow money from the central bank.』

『That baseline use serves to spur private lending.』

つまり、FEDの貸出プログラムは(1)流動性パニックによってファンディングが難しくなる健全な金融機関への貸出を行うことによって、(2)優良な担保の投売りなどによる資産価格のファンダメンタルズから乖離した暴落を防ぎ、流動性パニックの連鎖を防ぐ、ということです罠。

で、その為にこういうことをやりましたよ、という説明をしてまして、その結果としての効果をこのように説明しています。

『There is no doubt that these interventions saved many solvent firms from collapse during the financial crisis. Over time, panic eased and spreads in financial markets normalized. Once that happened, the private sector stopped borrowing from the Fed because it found the Fed’s penalty rates too onerous. As a result, the Fed was able to shut down its special lending facilities in 2010.』

ということで、CEによる各種貸出プログラムは金融市場のパニックが収まると共にスプレッドも縮小したので自動的にプログラム縮小の運びとなりましたという話ですな。

んでもってこの後は納税者に負担が出るかどうかみたいな論点と、AIGへの貸出についての話ですが、「金融パニック時には優良な担保のスプレッドが拡大しているので本源的なリスクは小さいですよ、いや勿論その計測が簡単な訳ではないですが」という説明になっています。で、その中でこの政策のゴールについて述べているので、その部分だけ引用。

『The goal of the central bank’s intervention is exactly to eliminate this panic-driven illiquidity.』

ということで、ここのコーナーでは「貸出を何億ドル実行したからどうした」というような定量的な説明は無く、定性的に『At their peak, the interventions made up more than a trillion dollars of Federal Reserve assets.』という説明が入っているだけでして、即ちCEでの目的は別にバランスシート拡大先にありきではない、という話ですわな。



○実質金利の引き下げについて

『Cutting Interest Rates』の所ですが、んじゃあ何で金利を下げるのかという話の中で「資産価格下落による家計や企業のバランスシート問題」に言及しておりまして、後で出てきますが、このバランスシート問題による景気抑制要因を実質金利の引き下げで軽減する、というロジック構成になっています。

『I’ve talked about how the fall in land prices generated a sharp increase in risk perceptions in financial markets, and how that in turn led to a financial crisis. I now want to turn to what I see as the second key effect of the fall in land prices.』

と、利下げの話のマクラに(引用してないけど)さっき説明した地価(と住宅価格)のバブル発生とその崩壊が金融パニックを引き起こした件を話しましたが、地価下落にはもう一つの宜しくない影響があると仰せでして、バランスシート問題が景気の押し下げ要因になるという説明をしています。

『This fall reduced the net worth of many households and firms.3 』
『3 Household net worth fell by over 25 percent from the second quarter of 2007 through the first quarter of 2009 (Fed Flow of Funds).』

ということで、この下落は家計や企業の「net worth」を引き下げる、ということで、企業や家計のバランスシートを毀損することによって、企業や家計の投資や消費行動を抑制し、物価の押し下げ要因になる、というお話です。

『They responded by forgoing consumption and investment projects. The fall in household demand for consumption and firm demand for investment led in turn to a fall in output and employment,4 and put downward pressure on the price level.』
『4 See Kocherlakota (2010) for a more extensive discussion of the relevant transmission mechanisms.』

詳しくはコチャラコタ総裁の昨年の講演でこの辺を詳しく説明しているようですな。


で、金利を下げた話と、金利が下げられないので資産の買い入れを実施しましたという説明であります。

『The FOMC reacted by lowering its target interest rate from 5.25 percent in August 2007 to a range of 0-25 basis points in December 2008. Since inflation expectations remained stable, the FOMC’s action has the effect of lowering the real interest rate facing households. Households respond by saving less and demanding more consumption. Similarly, firms undertake more investment projects. In this way, the FOMC can partially offset the impact on the economy of the loss of net worth.』

インフレ期待が安定している中でのFOMCの利下げは実質金利の引き下げに作用し、家計の消費を刺激したり、企業の投資行動を活発化させる事ができるので、FOMCは家計や企業のバランスシート調整圧力による経済に対するマイナスインパクトを一部軽減することが出来る、という説明ですわな。

『Lowering rates, of course, may lead to undesirable inflationary pressures within the economy. However, the recent path of inflation shows little evidence of such pressures. On a year-over-year basis, core PCE inflation was running about 2.5 percent in the fourth quarter of 2007. It is now down to about 1 percent.』

金利を引き下げる事によって、望ましくないインフレ圧力が発生する可能性があるという問題がありますが、現在はその圧力は発生していません、という話ですな。

『Indeed, given the ongoing deceleration in inflation and the high rate of unemployment, the FOMC would probably have liked to respond by cutting its target interest rate still further. The problem is that the target interest rate is essentially at zero and cannot go negative.』

ということで金利を下げつくしたので買い入れを実行しましたと。

『Instead, from December 2008 through March 2010, and again beginning in November 2010, the FOMC engaged in large-scale purchases of long-term Treasuries. The goal of these transactions is to lower long-term real interest rates and again offset the impact on the economy of the net worth shock.』

ということで、資産購入プログラムは「実質長期金利の引き下げを行い」「バランスシート調整(ちなみに、さっきからバランスシート調整と超意訳してますけど、net worthですので本当は企業や家計の富とか言うのですかね)が経済に与えるショックを更に軽減する」というのがその目的と効果という説明になっています。

『Thus, the fall in land prices triggered an increase in risk perceptions and a decrease in household net worth. The increase in risk led to a major financial crisis that has been cured, thanks in no little part to actions by the Federal Reserve. The decrease in net worth led to a major recession and ongoing slow recovery. The Federal Reserve’s reduction in interest rates has lessened the impact of the net worth shock.』

FOMCが何もしなかったら資産下落による経済のショックは更に大きくなっていたでしょう、という事でこの「金利引下げ」の部分を締めています。つまり、資産買入プログラムの効果として、期待インフレ率の引き上げとポートフォリオリバランス効果を重視している、というのが読み取れるのではないかと思います。


つまりですな、以下あたくしが勝手に想像するだけなのですけど、コチャラコタ総裁は(先日引用した分になりますが)労働市場の構造的な問題も懸念していますし、更にこの金利引下げに関する話の中ではバランスシート調整の経済に対する悪影響に言及ということで、まあ確かにコチャラコタ総裁の循環的な見通しはやや強めな所もあるのですが、ここら辺での説明は経済に対する構造的な問題を重視している印象がありますので、そーゆー事を考えますとあんまりタカ派にはなりそうな気はしませんね、と言う所です。

で、更にこの金融政策の部分は『George-Meet Clarence』というFEDが無かったらどうなっていたでしょう、というお題の話と、『Did the Fed Cause the Bubble?』という直近のバブル発生は誰のせいなのよ、というお題の話があるのですが、例によって時間が無くなったので、リクエストでもあればまた後日に。

#ということで今日も今日とて趣味の世界でどうもすいません

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2011/01/27

ということで金融政策ネタで本日はアホのように増量企画でお送り致しますが、全編に渡って引用大会ですので量は多いが中身は以下自主規制(-_-メ)。

あとね、今日はさすがに読んでるヒマが無いので華麗にスルーしますけれども、昨日発表されたBOEの1月Minuteを見たら反対が3名になっていて、増えた1名はセンタンス側(=利上げ)になっていますな。そしてその後のデータと言えばCPIは堂々の上昇な上に4QGDPはコケて華麗なスタグフレーションの香りがする英国の金融政策運営がどうなるのかは趣味の中銀見物人的にはとても興味がアルザマス。

#どうでも良いが「FOMC声明文を受けてドル安」という説明は良いのだが、肝心の債券市場は売られているようにしか見えず、為替市場様の反応のロジックは訳判らん(と思ったらブルームバーグニュース日本語版のサイトではドル上昇と書いてあるな)

#ついに「ドル円相場と米国の長短金利差」のグラフがモーサテの説明に出てきたのだが、米国の長短金利差がどういう因果関係でドル円相場に影響するのかおじちゃんさっぱり判らないのですが、もしかして適当にクソ短い期間取って適当に相関しているように見えるものを並べて因果関係があるようなインチキ説明するのって最近の流行なの??

と朝から為替(ではなくモーサテのコメントですかそうですか^^)に悪態ついてますが、正直米債市場の反応の意味もワカランチ会長なのだが勝手な妄想をすると「全員一致」のヘッドラインで瞬間買われたけど景気に関する部分が微妙に上方修正されているのを見て元に戻ったとか、それとも冷静に考えたら別に全員一致でも反対出てもあんまり変わらないでしょという認識になって経済指標への反応が継続したとかなのですか????真面目にサパーリわからんです。

・・・・などと無駄に前振りが長くなりましたが(汗)声明文を読むのだ。


○FOMCは全員一致、景気に関する文言がチマチマと変わっているだよ

http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20110126a.htm(今回)
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20101214a.htm(前回)

・第1パラグラフの景気認識部分は色々と変化しています

『Information received since the Federal Open Market Committee met in December confirms that the economic recovery is continuing, though at a rate that has been insufficient to bring about a significant improvement in labor market conditions. 』(今回)

『Information received since the Federal Open Market Committee met in November confirms that the economic recovery is continuing, though at a rate that has been insufficient to bring down unemployment.』(前回)

経済の回復ペースについて、前回までは「失業率を引き下げるには不十分」だったのが、今回は「労働市場の顕著な改善には不十分」とありまして、顕著なってのが入っているくらいですから改善はしてる(そらまあ失業率そのものは下がりましたからねえ)という話なんですかいな。よー知らんが。

『Growth in household spending picked up late last year, but remains constrained by high unemployment, modest income growth, lower housing wealth, and tight credit. 』(今回)

『Household spending is increasing at a moderate pace, but remains constrained by high unemployment, modest income growth, lower housing wealth, and tight credit. 』(前回)

家計の消費支出に関しては「昨年の終わりに上昇しました」と引き上げましたけれども、高失業率、所得の伸びが緩やかなこと、住宅価格の低迷、クレジット環境がタイトな事によって引き続き抑制されている。という後半の文言には変化が無いでやんすな。

『Business spending on equipment and software is rising, while investment in nonresidential structures is still weak.』(今回)

『Business spending on equipment and software is rising, though less rapidly than earlier in the year, while investment in nonresidential structures continues to be weak. 』(前回)

ここも微妙に変わっていて、企業の設備やソフトウェアへの投資の上昇に関しては「今年(今になると昨年ですが)の早い段階に比べてそのペースは緩やか」という文言がしらっと外れたのと、非住宅部門の建設に対する投資についての表現が「引き続き弱い状態が続いている」から「依然として弱い」に変わっているのが更に微妙なテイストを醸し出していますが、これって一応上方修正になるのかね、よー知らんがの。

『Employers remain reluctant to add to payrolls. The housing sector continues to be depressed. 』(今回)

新規雇用が中々増えませんなあという話と、住宅セクターは引き続きあばばばばーな状態ですよという表現は前回と文言が同じなので前回分は引用しませんですぅ。

『Although commodity prices have risen, longer-term inflation expectations have remained stable, and measures of underlying inflation have been trending downward.』(今回)

『Longer-term inflation expectations have remained stable, but measures of underlying inflation have continued to trend downward. 』(前回)

商品価格上昇への言及キタコレ。

ということで、今回の表現は「商品価格は上昇しているけれども、長期的なインフレ期待は引き続き安定しており、かつ基礎的なインフレは低下トレンドを辿っている」となっていまして、前回の「基礎的なインフレは低下トレンドを辿っているものの、長期的なインフレ期待は引き続き安定している」というのと接続詞が変わりましたな(^^)。


・第2パラグラフ以降は以下同文状態が続く

で終了させても良いのですが、俺様備忘録でもあるので、以下の声明文も引用だけはするのです。

『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability. Currently, the unemployment rate is elevated, and measures of underlying inflation are somewhat low, relative to levels that the Committee judges to be consistent, over the longer run, with its dual mandate. Although the Committee anticipates a gradual return to higher levels of resource utilization in a context of price stability, progress toward its objectives has been disappointingly slow.』

デュアルマンデートへの言及、足元の失業率や基礎的なインフレ率がデュアルマンデートに対してややケシカラン水準にあり、資源の活用が低い中での回復が続くためにこれらの数値の改善は失望的なほど遅いでしょうと思いまっせという部分は前回と同一文言です。

『To promote a stronger pace of economic recovery and to help ensure that inflation, over time, is at levels consistent with its mandate, the Committee decided today to continue expanding its holdings of securities as announced in November. In particular, the Committee is maintaining its existing policy of reinvesting principal payments from its securities holdings and intends to purchase $600 billion of longer-term Treasury securities by the end of the second quarter of 2011. The Committee will regularly review the pace of its securities purchases and the overall size of the asset-purchase program in light of incoming information and will adjust the program as needed to best foster maximum employment and price stability.』

この第3パラグラフでは、政策手段の部分ですけど、保有証券償還分の国債への再投資と新規の国債投資に関して前回は二文で表現していたのですが、今回はIn particularで始まる文章で一文にまとめています。何か意味があるのか無いのか判らないですけれども。

『The Committee will maintain the target range for the federal funds rate at 0 to 1/4 percent and continues to anticipate that economic conditions, including low rates of resource utilization, subdued inflation trends, and stable inflation expectations, are likely to warrant exceptionally low levels for the federal funds rate for an extended period.』

毎度お馴染みのfor an extended periodを始めとしてここの文言も同じです。

『The Committee will continue to monitor the economic outlook and financial developments and will employ its policy tools as necessary to support the economic recovery and to help ensure that inflation, over time, is at levels consistent with its mandate.』

ここも同じですな。で。最後が前回と違う訳でして・・・・・・

・反対者なしですかそうですか

『Voting for the FOMC monetary policy action were: Ben S. Bernanke, Chairman; William C. Dudley, Vice Chairman; Elizabeth A. Duke; Charles L. Evans; Richard W. Fisher; Narayana Kocherlakota; Charles I. Plosser; Sarah Bloom Raskin; Daniel K. Tarullo; Kevin M. Warsh; and Janet L. Yellen.』

ということで反対者がいないのはFOMCプロレス観戦的にはプロッサー先生辺りを捕まえて大滝秀治状態になって「お前の話はつまらん!」と言いたくなる所ですが、今後反対に転じたりすると第5パラグラフにある「to monitor the economic outlook and financial developments」の結果として反対に回りますという話になりますから、その辺の見立てがどうなるのか。経済見通しで来るのか金融環境で来るのか、はたまたインフレ期待で来るのか楽しみでもあります。

ま、レビューとして注目なのは議事要旨でインフレの辺りとかどういう話をしているのかという辺りでして、今後に関してはタカ連中の景況感を示すと思われる落語じゃなかった講演とかが出るのをチェックしていくという作業が必要になるでしょうな、と思います。

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2011/01/25

FOMC前の駆け込みネタである(^^)。1月11日のコチャラコタ総裁の講演から。

http://www.minneapolisfed.org/news_events/pres/speech_display.cfm?id=4607
http://www.minneapolisfed.org/news_events/pres/kocherlakota_speech_01112011.pdf
『It’s a Wonderful Fed』

PDF版の方が読みやすいと思います(表題入れて17ページあるのですが)。正直、最後の『Conclusion』を読んでも何がなにやらという話になるので、これは惜しくも最初から読んだ方がベターな講演でありんす。


○経済見通しの話と金融政策の話の2本立てなのだ

『Introduction』の第2パラグラフを引用しますね。

『My speech today will have two distinct parts. In the first part, I will discuss my outlook for the economy in 2011. In the second part, I will look back in time to the Great Recession of 2007-09. My discussion will parallel the classic Frank Capra movie, “It’s a Wonderful Life.” In that movie, the hero, George Bailey, is granted the miraculous opportunity to see how other lives would have been affected if he had never existed. I will do the same for the Federal Reserve and describe how I believe the Great Recession of 2007-09 would have unfolded if the Fed did not exist.』

FEDが無かったときに2007年〜09年はどうなっていたか、という話があるのですけれども、ネタバレしちゃいますと、「金本位制ではない管理通貨制度の下で、中央銀行が通貨供給を拡大したので危機が深くならなかった」という話をしているのですが、この「通貨供給」の内容が「国債買入」ではなくて「各種緊急貸出ファシリティ」であるということで、そういう意味では「信用緩和政策」と言い出して実施したFEDのバランスシート拡大政策、即ちバーナンキが当初言っていた「我々はバランスシートの負債サイド(=量を幾ら出すのか)を重視するのではなく、資産サイド(=どのような資産の買入を実施するのか)を重視した信用緩和政策を実施する」という当初のFRBの説明に沿った話であります。

あと、金融政策の説明の部分ではバーナンキ議長の議会証言(まあ議会証言だからやや端折っている面はあると思うが)であえてゴッチャにしている信用緩和政策と国債買入(最初の方ね)に関してキッチリ分けて説明しているのは読んでいて違和感無く入って来る講演で、あたくしてきには「ほうほう」と納得しながら読めました。


○経済見通しに関して

あたくしの怪しい読解力によりますと、経済見通しに関しては(1)循環的な部分では「2011年は2010年よりも成長が高まる」ということでこの部分では特に弱い訳ではないが、FOMCの中心的な見通しに比べるとGDP見通しは弱い、(2)雇用に関しては先行き見通しは厳しい、(3)バランスシート調整圧力が景気回復を阻害するという点を強調、(4)ただし物価に関しては割と明るい話をしていて2011年末には1.5〜2.0%というような感じ、ということで、『Outlook』の最後の所を見るとこうあります。

『To summarize: I expect that real output will grow slightly more rapidly in 2011 than in 2010. Household deleveraging and bank asset quality will remain a drag on the recovery. Unemployment will fall-but much more slowly than we would like. Finally, as is suggested by financial market data, I am optimistic that we will see some re-inflation in the coming year.』

でまあここだけ読むとタカに見えなくも無いのですが、あたくしが勝手に纏めた4点に関して少々引用しようかと存じます。

・ブッシュ減税継続要因を加味してもあまりGDPは伸びないと

最初に、

『My bottom line is that, from the point of view of the macroeconomy, 2011 will be a better year than 2010.』

とあるのですが、11月のFOMCでの成長率見通しでは2011年の中心的見通しのレンジは3.0〜3.6%ということになっており、その数値はブッシュ減税継続等の財政要因を加味していない(出る前なのだから当たり前だが)という説明をしていますが、コチャラコタ総裁としてはそれよりも弱めの水準を見ています。

『Even with the December changes in fiscal policy, I would say that I expect that real GDP growth will probably be closer to 3 percent than 4 percent in 2011.』

12月の財政政策分を加味しても、2011年の実質GDP成長率は4%よりも3%の方に近いでしょうという見通しですので、GDP見通しは弱そうですが、その理由としては「バランスシート調整の影響」を強調しているのが日本人的にはしっくり来るのであります。

『I still see two major headwinds in the U.S. economy.』

『The first is that many households will continue to strive to rebuild their net worth positions in response to past-and possibly future-falls in residential land prices.』

『As I will explain in more detail later, I believe that the decline in household net worth, precipitated by falls in land values, was a key factor in generating the severity of the Great Recession. It will remain important in the recovery.』

ということで家計のバランスシート改善が住宅価格低迷および今後の下落で遅れる事によって経済の向かい風要因になるというのが一つ。

『The second headwind is related.』

relatedというかまあ同じ話だったりしますが。

『Many banks in the United States face ongoing issues with asset quality. For example, the FDIC problem bank list contains over 800 banks. Problem banks are less likely to take the risk of lending to small and/or younger firms and other entrepreneurial activity. Instead, they are more likely to preserve capital ratios by limiting their asset growth and allocating their lending staff to working out loans to existing borrowers.』

つまり、銀行の不良債権問題による銀行のバランスシート調整が足かせになって、企業金融が伸びないですね、という話をしていると読みましたがどうでしょう。

『Indeed, as the economy improves, I suspect that this headwind will become even more important.』

経済が回復するとこの向かい風要因は更に重要になってくるとはどう言う事でしょうか。

『In 2010, our information at the Minneapolis Fed indicates that small businesses were reluctant to expand because of ongoing uncertainties about product demand. As a result, their demand for bank financing remained low. In 2011, as the economy improves, I expect loan demand to rise accordingly?but banks with poor asset quality will continue to focus on capital preservation rather than loan expansion.』

ミネポリス連銀のサーベイなどによれば、先行き需要への不透明感から足元での中小企業の資金需要は低迷しているものの、景気が回復するにつれこれら中小企業の資金需要が高まる中において銀行の貸出態度がバランスシート調整要因により回復しない場合、景気回復の足を引っ張る事になるという話ですな、ありそうな話、というか日本の事例を意識してますねコチャラコタ総裁。


・雇用に関して

雇用情勢に関しては厳しい見方です。

『Employment data released last Friday indicated that the unemployment rate fell to 9.4 percent in December from 9.8 percent in November. While any decline is welcome news, I do not think this single data point signals a rapid recovery in labor markets. Employment growth remains disappointingly low?nonfarm employment increased by only 103,000 in December.』

12月の失業率低下は良いニュースですが、これだけで良い話というわけにはいかないです、雇用の伸びは「失望的なほど低く」12月の非農業部門雇用はわずか103千人の増加に留まっていますと。

『I think that it is important to understand how unemployment fell by 40 basis points from November to December, even though employment growth was relatively low.』

ということで、ここから説明が始まるのですが、この部分に関しては11月22日に行われた講演『Monetary Policy, Labor Markets, and Uncertainty』により詳しい話がありまして、こちらの8ページから10ページまで3ページ分丸々使って説明しているのを読むのが吉なのですが、多分こっちまでネタにしている時間は無さそうなのであたくしの気が向くかネタが切れるかリクエストがきたら下記講演ネタもやるかもしれません(エエカゲン)。

http://www.minneapolisfed.org/news_events/pres/speech_display.cfm?id=4571
http://www.minneapolisfed.org/news_events/pres/kocherlakota_speech_11222010.pdf
『Monetary Policy, Labor Markets, and Uncertainty』
↑(これは今回のネタにはしませんので念の為)


で、さっきの文の続きに戻ります。

えーっとですな、雇用統計では「employed」な人と「unemployed」な人の合計であります所の「labor force」に対して失業者がなんぼかという事から失業率が出るのでござんすが、12月に失業率が低下した要因はこの分母である「labor force」が低下したのが要因であり、要するに労働市場から退出した人が沢山いたという効果の方が効いてますよ、という話です。

『In that one month, the labor force fell by 260,000-certainly a large move by historical standards.』

ということで26万人が退出したということですが、更にコチャラコタ総裁が指摘するのは、その労働市場から退出した人の多くが若年者であることです。

『The available data do suggest that most of the unemployed who left the labor force were young. The number of people under the age of 25 in the labor force fell by about 244,000 from November to December. 』

景気が回復したらこの人たちは戻ってくる事を期待したいと。

『My hope?and expectation?is that many of these people will return to the labor force as the economy improves in 2011.』

で、更に今後の景気回復においても失業率の改善が遅れるという見通しに関してですが、問題点として(1)景気回復の立ち上がり時における雇用拡大の受け皿になるのは、新規企業や業歴の若い企業がその中心的な存在になるのだが、先ほど述べたように銀行の不良債権問題のある中でこれらの企業への銀行の貸出態度が厳しい状態が続く事が見込まれることから、これらの企業の資金のアベイラビリティーの厳しさが続く結果雇用拡大が遅れる、(2)失業期間が6か月以上の長期失業者がlabor forceの4.2%という高い水準にあり、これらの人たちは中々再就職が難しい(詳しくは先ほどURLを貼った11月22日の講演に解説がありますが、スキルの低下と新たな仕事に改めて就業する困難さと言った理由です)、という点を挙げています。めんどいので丸引用だわさ。

『Nonetheless, I do not believe that either unemployment or employment will improve rapidly in 2011. Startup businesses and other young firms are a key source of employment growth in the early stages of recoveries. As I’ve mentioned earlier, they are likely to find bank financing more challenging to obtain than usual. As well, 4.2 percent of the labor force has been unemployed for longer than six months. Historically, this group of workers has a low job-finding rate.』

その結果として、コチャラコタ総裁の失業率見通しはFOMCの11月の中心的な見通しよりも悪くなっています。

『The central tendency of the November FOMC forecasts is that unemployment will remain above 9 percent throughout 2011. I would agree with those forecasts. Even more troublingly, I expect too that unemployment is likely to be higher than 8 percent as late as the end of 2012.』


・インフレに関して

インフレに関しては、足元で基調的なインフレが低下している点は問題視していますが、先行き見通しに関しては自分からoptimisticといっていまして、これはミネアポリス連銀のサーベイ調査や市場でのデータなどからインフレ期待がアンカーされている事から先行きは再び望ましい水準に戻る見通しになっています。更に面倒になったのでこの部分思いっきりまる引用。

『Finally, I turn to inflation. Inflation remains extraordinarily low. In the third quarter of 2010, overall PCE inflation?including all goods-was 0.8 percent. Core PCE inflation-stripping away energy and food-was 50 basis points. PCE food inflation was 26 basis points. And all of these figures are annualized.』

『These inflation levels are too low to be consistent with usual formulations of the Fed’s price stability mandate. More troublingly, inflation continued to trend downward in 2010. In the third quarter of 2009, annualized core PCE inflation was 1.5 percent. Hence, in the course of one year, quarterly inflation rates fell by 100 basis points. A further deceleration of the same magnitude in 2011 would drive inflation into negative territory.』

と言う所までが足元の話。

『With that said, I’m optimistic that inflation will actually turn north in 2011. Our Minneapolis Fed forecasting model predicts that, by the end of 2011, inflation will be between 1.5 and 2 percent. We can get another reading by looking at the prices of financial instruments called zero-coupon inflation-indexed swaps. Their current prices imply that, for the coming year, expected inflation will be roughly 1.7 percent.』

基本的にはインフレ期待がアンカーされているのと、景気そのものは引き続き拡大傾向となり、2011年は2010年よりもその拡大傾向が高まる(FOMCの中心的な見通しよりは弱めっぽいですが)のでデフレ入りのリスクはあまり大きくは見ていないという事のようです。


○で、肝心の金融政策は時間切れ

というのがいつものドラめもんクオリティで申し訳ありませんが、決定会合とFOMCネタの後にでもその続きを。肝心の今回の講演のお題の部分に入らないとかトンチキにも程があるのですが。

で、先ほども書きましたように、金融政策の説明に関して特徴的なのは、そのパートを『Lending』、『Cutting Interest Rates』に分けていて、国債買入は後者の方になっているのがチャーミング。ただし、この「国債買入で金利下げ」の説明は名目金利ではなくて「インフレ期待を引き上げて長期実質金利を引き下げる」という説明になっていまして、説明としては無理が無いのですが、肝心のインフレ期待って本当は計測がしにくいものだったりする点はまあ今後の課題じゃネーノと思います。

更に金融政策の説明は『George-Meet Clarence』という「FEDが無かったらどうなっていたでしょう」という話と、『Did the Fed Cause the Bubble?』という話になっているのですが、最後の部分では「あーた高金利の時だって住宅価格の急上昇は起きていたんですよ」というややインチキの香りが漂う説明となっておりまして、しかもじゃあ住宅バブルの要因とか責任を取るべきものがあるとすればそれは誰という話に関しては完全スルー体制というのが微妙ではあります。

ただし、まあそういう話をしていると言う事は、資産バブル抑制の為に金融緩和を見直すべきというようなマクロプルーデンス的なイメージはコチャラコタ総裁の中にはそんなに強くないでしょうなあというのは想像できるかなあと存じます。


#以上、単なる趣味のコーナー状態でどうもすいませんすいません

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2011/01/24

ということでダラス連銀フィッシャー総裁の直近の講演から。
http://www.dallasfed.org/news/speeches/fisher/2011/fs110112.cfm
The Limits of Monetary Policy: ‘Monetary Policy Responsibility Cannot Substitute for Government Irresponsibility’

金融政策は放漫財政のケツ拭きはできませんというお題のようですが、さて・・・

○とりあえずあたくし的まとめ

フィッシャー総裁の講演って真面目に読んだの恥ずかしながら初めてなもんでこれがフィッシャーさんの通常ベースなのかどうか判らんのですけれども、今回の講演は他の連銀のエライ人の講演と比較してやたら読みにくかったです。あたくしが普段見ない単語がやたら多くて、愛用のデイリーコンサイス(高校生かお前はというツッコミはしないように)英和辞典で無い単語があったり、訳の所に<詩>とか注釈付いてるのがあったりとか勘弁してくれという所です。

というてめえの貧弱な語学力に関する泣き言は兎も角として、ヒーヒー言いながら読んだ結論としては、(1)国債買入に関しては財政マネタイズ懸念があるので基本的には望ましくない、というかその時に票決権があったら反対していたという堂々の意見表明、(2)雇用に関しては中央銀行の貢献は限られている、とこれまた清々しい発言、(3)その雇用の話に絡めて、財政政策に関しては財政(というか多分財政支出の)構造改革と企業の成長を促進する規制改革が必要である、というような話がポイントだったかなあと思います。

ということで、今回は経済見通しは無い(他の講演を読めば良いのですが)ので何ですが、QE2に関しては問題ありとの話ですし、労働市場に関して中央銀行の貢献が限られている、という話をしていますので、失業率の低下が遅れるという話を最近強調する執行部とは違いが出そうな感じですなあということで。


○財政マネタイズがどうのこうの

なんか冒頭のご挨拶部分から読みにくいったらありゃしないのですが、そこのケツではこんな事を(^^)。

『Today, I will speak to the truth as I see it. I speak only for myself and my colleagues at the Dallas Fed and not for anybody else on the FOMC or elsewhere in the System. I suspect this will immediately become clear.』

これから話す私の意見は個人的な意見で他の連銀の人たちの意見ではありません、ってのは直ぐにわかると思います(キリッ)。ということですが、その次の『Fiscal Matters』の第4パラグラフから。

『I have been outspoken about the limits of monetary policy as a salve for the nation’s fiscal pathology.[4] The Fed has done much, in my words, to provide the bridge financing until the new Congress gets to work restructuring the tax and regulatory incentives American businesses need to confidently expand their payrolls and capital expenditures here at home.[5]』

で、この脚注4というのは2008年5月28日の講演ということですが、それはまたいずれヒマだったら読みます。で、その次に「FEDは既に十分な施策をしていますがな」という話をしていまして、そこで「11月の国債買入プログラムは票決権があったら反対していました」という発言が。

『The Federal Reserve has held rates to nil. We have expanded our balance sheet to unprecedented levels.』

何でわざわざzeroじゃなくてnilとか言うかねと思うのですが、フィッシャーさんの今回の講演はこんな感じで微妙にお洒落というか難しい言葉(あたくしにとってですが、汗)が並ぶのですが、まあ兎も角として反対云々は次の部分に。

『After much debate―which included strong concern expressed by one member with a formal vote and others, like me, who did not have voting rights in 2010―the FOMC collectively decided in November to temporarily undertake a program to purchase U.S. Treasuries that, when added to previous policy initiatives, roughly means we are purchasing the equivalent of all newly issued Treasury debt through June.』

昨年11月に決定されました来年の6月までの期間新たに発行される米国国債とほぼ同額という規模の国債を購入するというプログラムに関しては、この決定に反対票を入れたメンバー(ホーニッグ総裁)と同様に私は極めて強い懸念を持っています、というように仰せかと存じます。

んじゃあ何が懸念なのかと言う話ですが次の2つのパラグラフにあります。

『By this action, we have run the risk of being viewed as an accomplice to Congress’ fiscal nonfeasance.』

この政策によって、FEDが議会の財政的無責任の共犯者としてみなされるリスクが高まります、という事のようですな。

『To avoid that perception, we must vigilantly protect the integrity of our delicate franchise. There are limits to what we can do on the monetary front to provide the bridge financing to fiscal sanity. Last Friday, speaking in Germany, [European Central Bank President] Jean-Claude Trichet said it best: “Monetary policy responsibility cannot substitute for government irresponsibility.”[6]』

ということで、トリシェ総裁の発言も引きながら、中央銀行が財政マネタイズに引きずり込まれないように自らの矩を越えないようにすべきであるという話をしている訳ですな。で、そうならなかった場合ですが、「恒常的に財政ファイナンスを行う国は破壊的な結末を迎える」とか何とか仰せでして。

『The entire FOMC knows the history and the ruinous fate that is meted out to countries whose central banks take to regularly monetizing government debt.』

『Barring some unexpected shock to the economy or financial system, I think we have reached our limit. I would be wary of further expanding our balance sheet. But here is the essential fact I want to emphasize today: The Fed could not monetize the debt if the debt were not being created by Congress in the first place.』

つーことで、主に財政マネタイズ懸念からの説明に留めていますな。


○雇用に関してはFEDよりも財政や規制の問題の方が重要とな

んでまあその先のほうにそんな説明があるのですが、「金融政策は米国の全ての州で同じだが、各州ごとに雇用情勢は違っています。それは各州ごとに税制や規制に差があって、それが成長を促進したりしなかったりするのです」という話に持って行っておりますです、ホンマカイナという気がするのですがまあ読んでみる。

えーっとですな、実は図表が講演のページ(さっきのURL先)に貼り付けてあるのですが、それをパクるのは遺憾なのでそっちを見てちょという事ですが、1990年以降の各地区連銀ごとに非農業部門の雇用者の推移を指数化したものを並べたグラフをつけまして、(ちなみにダラス連銀のところが一番高くてニューヨーク連銀のところがシンガリです)この差がでるのは金融政策ではありません(そらそうだ)という話をしています。

『That reason has nothing to do with monetary policy. It has everything to do with the taxation and fiscal and regulatory policies of the states. The cost of capital does not explain the different economic performances of the states; the cost of doing business has everything to do with those differences. However well-meaning tax and regulatory initiatives in the laggard states may have been when they were conceived and levied, they have had unintended consequences that have led to economic underperformance and job destruction.』

と言ってますけど、それよりも各州の産業構造の違いじゃねえのかと思うのですけど、まあそれは講演後半(ちなみに後半のお題が『The Recent Election』というおいおいそんなお題かよという物ですが、内容的には財政構造改革と規制改革の重要性を主張するものと読みました)の前振り部分という事なのかなあとは思います。

ただまあいずれにせよ、その辺に関しては金融政策とは関係ないですがなというのはまあその通りですので、その先に「このような問題はFEDでは如何ともしがたいでございますなあ」的な説明が。

『Similarly, the key to correcting the underperformance of the American economy and American job creation does not rest with the Federal Reserve. It is in the hands of those who make fiscal and regulatory policy.』

『The Fed has reduced the cost of business borrowing to the lowest levels in decades. It has seen to it that liquidity is widely available to banks and businesses. It has kept the economy from deflating and it has kept inflation under control. This has helped raise the economic tide. Recent data make clear that the risks of a double-dip recession and deflation have ebbed and that economic growth and job creation are beginning to flow. Yet the ships of job-creating investment remain, for the most part, tied to the docks?or worse, choose to sail for foreign ports where tax and regulatory conditions are more favorable, very much in the same way that Ohio, Michigan, New York and California businesses and workers have navigated to Texas.』

FEDは企業の借入コストを引き下げ、銀行や企業の流動性へのアクセスも容易にして、デフレ入りを回避してインフレを制御可能な状態にしています。で、それが経済の回復に貢献しており、最近のデータによれば景気の2番底懸念は後退し、新規雇用も回復しだしている。と仰せです。

ただ、地域によってはまだ新規雇用が伸びない所がありますね、という話をしていまして・・・

『I don’t believe this has much to do with the Fed. None of my business contacts, large or small, publicly held or private, are complaining about the cost of borrowing, the lack of liquidity or the availability of capital. All express concern about taxes, regulatory burdens and the lack of understanding in Washington of what incentivizes private-sector job creation. All are stymied by a Congress and an executive branch that have appeared to them to be unaware of, if not outright opposed to, what fires the entrepreneurial spirit. Many have begun to feel that opportunities for earning a better and more secure return on investment are larger elsewhere than here at home.』

その点に関してはFEDは知らんがな、というと大げさですが、問題は借入金利の問題やリクイディティーの問題などではなく、税制や規制の問題、それからワシントンが民間の雇用拡大に対するインセンティブに必要な事に対する理解が不足している事である。と中々素敵な説明をしています。

正直何だかなあという感じはせんでもないのですが(中小企業の借入環境がそんなに緩和されていないという話も一方ではありますし、明日にでもネタにしようかと思うミネアポリス連銀のコチャラコタ総裁の講演では「銀行の貸出態度が不良債権問題によって中々改善しないのは今後の景気拡大期に足かせになる」と指摘しているんですよね)、まあフィッシャー総裁はこういう話をしていて、失業率の高止まりにあまり注目しすぎない方がよかろうというスタンスなんでしょうなあと思うのでありました。

財政構造改革や規制改革の必要性がどうのこうのという話の後半部分は割愛します。


○で、今回のFOMCですが

本当はちゃんと色々みないといけないのですが今回は手抜きでブルームバーグニュース記事から。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=avWRIXCkOgcg
【FRB要人発言録】タカ派も米国債購入計画の完遂を示唆

ということで、その中に色々とございますが、フィッシャー総裁は微妙なのかねと思うのであります。プロッサー総裁はどっちなのか良く判らん。まあいずれにせよ6月の国債買入プログラム終了前に買入終了がマジョリティーになるとは思えませんので(というか結局継続になると思っちゃうのは日本の状況に目が毒されているからですかそうですか)そらまあフィッシャー総裁が言うように完遂されるのでしょうけれどもね。

というのを一応おまけにつけましたが、いずれにせよ今週のFOMCで誰か暴れてくれると面白いですなあ(完全に野次馬モードですいません)と思うあたくしなのでございました。逆に全員一致だと意外感が出るのかな??

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2011/01/20

お題「今日もプロッサー総裁シリーズでござる」

連日お前はてめえの英文読みを垂れ流しているだけではないかというツッコミをしてはいけません(−−)

○と言う訳でプロッサー総裁のQE2への評価である

http://www.philadelphiafed.org/publications/speeches/plosser/2011/01-11-11_risk-management-association.cfm
http://www.philadelphiafed.org/publications/speeches/plosser/2011/01-11-11_risk-management-association.pdf

ひたすら引っ張って恐縮なのだが(だって市場ネタが微妙にわけわかんねえですもん)『Monetary Policy』の後半である。

『In November, the FOMC decided to purchase an additional $600 billion of longer-term Treasury securities through the end of the second quarter of 2011. It is no secret that I have expressed doubts about whether the benefits of this policy, commonly referred to as QE2, exceed the costs. These doubts were based on my reading of the economic outlook and the nature of the challenges that the economy faced.』

(;∀;)イイハナシダナー

という事で、いきなり「あたしゃQE2は政策として利益よりもコストの方が高いと思うと言うのはみなさんご存じの通りですな」と言う事ですけど、ではその理由とは何ぞやとゆーのがこの先に整理されています。


○前回のQE1と状況が違うのでQE2は同じようには効かないでしょという話

『The first round of large-scale asset purchases began nearly two years ago, after the Fed reduced the federal funds rate to near zero. That program, completed in March 2010, added roughly $1.75 trillion in agency mortgage-backed securities, agency debt, and long-term Treasuries to our balance sheets. If the Fed completes the full amount of the second round, the Fed’s balance sheet will have more than tripled since mid-2007.』

いわゆるQE1の説明ですな。ゼロ金利制約の後FEDは各種資産の買入を行って、その結果バランスシートは実施前2007年中盤から見ると3倍に拡大しましたと。

『Proponents of the program to acquire Treasuries expect these purchases to lower longer-term interest rates through a portfolio balance effect.』

まあこれはバーナンキ議会証言で思いっきり説明されていました事ですが、提案者(だか支持者だか)の説明はこうなっていますってんですからまあそれは当然。

『That is, as the supply of longer-term Treasuries available to the public is reduced, prices of Treasuries should rise, which means yields should fall. Yields on similar assets are also expected to fall as the public rebalances portfolios away from Treasuries to other similar assets. Just as in conventional monetary policy, lower interest rates would stimulate business and consumer demand and increase exports, thus lending support to the recovery.』

具体的には、長期国債の買入によって市中の流通玉が減るので、その分価格の上昇がおき、金利の低下によって相対的に魅力の高まる事になる他の金融商品などへの投資が行われ、金利商品全体の利回り(つまり全般の長期金利商品の金利が)低下して、伝統的な金融政策(短期金利操作)と同様の効果を発揮するということで、これはまんまバーナンキ議長の先日の議会証言ですわな。

で、ここまでが前振りでプロッサー総裁の評価はこうなります。

『The Fed’s first purchase program worked to lower interest rates, although estimates of the effect vary quite a lot. These purchases were done at a time when financial markets were highly disrupted and asset risk premiums were extremely elevated. But markets are no longer disrupted. Thus, it seems unlikely that we can expect the effects to operate through the same channels as before.』

これは正直あたくしもだいぶ同意する所でございましてですね、QE1というよりもCEと言われた方が効いたのは確かですけれども、そもそも最初の長期国債買入って金利という意味では期待で引っ張った時と、買入アナウンス発表直後だけは長期金利が盛大に低下(10年で2.5%近辺になった)しましたけれども、その後って長期金利は上昇して4%に接近してましたわな、と思うわけです。

つーことで、プロッサー総裁は(1)資産買入プログラムは長期金利の低下には寄与したが、そもそもその効果の測定にはかなり幅がありますがな、(2)当時は市場が混乱していて、その結果としてリスクプレミアムが過大な水準となっていた事から買い入れによって市場の混乱を沈静化してリスクプレミアムを引き下げる事によって金利が低下した、という指摘をしていまして、(2)から導き出される結果としては「足元の市場は混乱しておらず、前回のFEDの資産買入プログラムのような波及経路での政策効果が得られるのかは不確かではないでしょうか」としておりますわな。

『Even if we did, it is not clear to me that a modest reduction in long-term interest rates will do much to speed up the reduction in the unemployment rate.』

これは積読状態なのですが、イエレン副議長が「資産買入で長期金利が下がって雇用が創出された」みたいな相関関係と因果関係を取り違えたのではないかというような強引な話をしていた講演要旨(長いのでまだ積読)があったので、その辺と比較してみたいのですが、「仮に長期金利の低下に我々が成功したとしても、緩やかな長期金利の低下が失業率の低下を加速する為に大きく寄与するのかどうかという点に関しては不透明です」と更にダメ出しをしているのですな。


○財政出動余地の無い中で金融政策を代替的に使うのは藪医者の処方薬みたいなもんだと

次の論点だ。

『Some commentators thought that even if the benefits were limited, the costs were small and the action was worth taking, given the concerns that many had about the state of the economy. Other commentators argued for the policy because the fiscal authorities were unable to act, even though fiscal policy would have been the more appropriate policy tool to address some of the challenges we faced. I view both of these arguments as flawed.』

「効果が限られていてもコストが小さくて実施する価値があるのであればその政策は実施すべきだ」とか、「財政出動余地が限られる中では金融政策が替わりに働くべきである」というような考え方は問題があります(キリッ)との事です。

『It is a serious mistake to view monetary policy as a substitute for fiscal policy. Doctors must diagnose the disease correctly in order to prescribe the right medicine. If the wrong drug is administered, the physician might not only fail to cure the patient, but might also make matters worse. To suggest that monetary policymakers must act simply because fiscal policymakers were unable or unwilling to act is not the proper way to conduct policy.』

藪医者が間違って薬を処方したら病気が悪化するようなもんで、財政政策で適切な対応が可能なのに、財政当局が動けないからという理由で金融政策が対応するのは適切な対応ではなく、金融政策を財政政策の代替品として割り当てようとするのは深刻な間違いでありますとのことです。


○資産買入政策のリスクは後から来るという話

で、その続きですが。

『As to the cost-benefit analysis, the costs of this policy are likely to be seen only in the future, but they must be part of the analysis when the policy is undertaken, not dismissed to be dealt with later.』

資産買入政策のコストというのは後になって出てくるので、資産買入政策のコストは小さいから実施すべきという論点は如何なものかちゅう事を言いたいんでしょうか。

『History tells us that exiting from an accommodative monetary policy is always a bit tricky. It is easier to cut rates than it is to raise them.』

緩和的な金融政策からの出口は扱いにくいものであります。引き締め政策の実施は緩和政策の実施よりも難しいです、というのはまあどこの国でもそうですわなと思うのであります。

『As I discussed earlier, monetary policy must be forward-looking because it works with a lag. This means that the Fed will need to begin removing policy accommodation before the unemployment rate has returned to an acceptable level in order to avoid overshooting, which would result in greater instability in the economy.』

これまたバーナンキ議会証言での「労働市場が正常化するのに4、5年掛かる」発言を意識したのかねという発言キタコレという所で実に面白い。


○巨大な超過準備が経済に流れ出すとインフレが爆発するとな

『So how do we exit from this accommodative policy? While the high level of excess reserves on the Fed’s balance sheet is largely benign now, that will change as banks become more willing to lend. As economic conditions improve and those excess reserves begin to flow out into the economy, inflationary pressures will grow. And given the magnitude of those reserves, these pressures could be significant. This is one reason I feel confident that sustained deflation is highly unlikely.』

まあ小見出しにした通りの話なのですが、「経済が回復してきた時に巨大な超過準備が爆発してインフレ圧力」というのはもしかしたらその可能性はあるかも知れませんねとは思いますが、「巨大な超過準備が銀行の貸出態度を高める」というのはちょっとどうなのよとは思います。ただまあそれはそれとして、プロッサーさんは巨大な超過準備が将来景気回復した場合に起こす弊害への懸念を表明しており、その超過準備がこれから更に拡大するんですよねという指摘もしているのでした。


○そして「FRBは流動性吸収が出来ますよ(キリッ)」というバーナンキ議長を更にdisる

『To prevent inflation from becoming a serious problem, the Fed must be able to remove or isolate those reserves.』

というのはまあ皆さん指摘の通り。

『The Fed is developing and testing tools to help us prevent such a rapid explosion in money to address this looming challenge. But we won’t know the full effect of these new tools until we use them. Nor will we know how rapidly or how high we may need to raise rates. The larger our balance sheet, the greater our challenges to successfully navigate an exit strategy without disrupting the economy and while keeping inflation under control.』

FEDは超過準備を吸収したり隔離する政策ツールを用意してテストを行っていますけれども、実際にこれがどの位の効果を発揮するのかは判らないし、更に言えば、実際にマネーの爆発によって望ましくないインフレ懸念が高まった場合に、どの程度の速度および規模で利上げを行っていけばよいのかもよく判らないです。FEDのバランスシートが拡大すればする程、出口政策の実施にあたって「景気を悪化させないようにしながらインフレの適切な制御をする」という事が難しくなってくるのです。

というような話をしていまして、何気に「FEDは5分で利上げが出来るんです(キリッ)」って言うバーナンキ議長を更にdisっているようにしか見えないのが実にチャーミングであります。


○ということで、今月のFOMCでプロッサー総裁はどの程度の意見をだすのでしょうかね

『The FOMC statements in November and December indicated that we will regularly review the asset purchase program in light of incoming economic information and adjust it as needed to foster our long-run goals of price stability and maximum sustainable employment. I have taken this intention to regularly review the program seriously.』

資産買入プログラムを真剣にレビューをする宣言キタキタキタ。

『If the economy begins to grow more quickly and the sustainability of this recovery continues to gain traction, then the purchase program will need to be reconsidered along with other aspects of our very accommodative policy stance.』

これはこれは。

『We are a year and a half into a recovery, although a modest one. The aggressiveness of our accommodative policy may soon backfire on us if we don’t begin to gradually reverse course.』

景気が回復傾向にある中、徐々に金融緩和スタンスを反対方向に向かわせないと、現在の積極的な金融政策はすぐに裏目にでる結果に繋がるでしょうとはこれまた豪快な。

『On the other hand, if serious risks of deflation or deflationary expectations emerge, then we would need to take that into account as we adjust our policy stance.』

で、最後の最後にサービスフレーズのように「一方でデフレ入りへのリスクや、デフレ的な期待が高まった場合には、適切な金融政策スタンスを検討すべきである」という話をしていますが、まあプロッサー総裁は残念ながら(?)現状では(先日引用したように)デフレリスクは今の所見ていないというお話でしたわな。

で、この後の結論部分は先日引用しましたので、延々引張りましたがプロッサー総裁ネタはこれで終了でございます。

#ただの俺様メモ状態になっておりまして誠に申し訳ございませんでしたm(__)m

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2011/01/19

○プロッサー総裁ネタの更に続きである、まずはインフレに関して

昨日に続きこの講演から
http://www.philadelphiafed.org/publications/speeches/plosser/2011/01-11-11_risk-management-association.cfm
http://www.philadelphiafed.org/publications/speeches/plosser/2011/01-11-11_risk-management-association.pdf

・プロッサー総裁の「望ましいインフレ率」は1.5%〜2.0%と

ということで引っ張りまくっておりますがプロッサー講演の『Inflation』の所。

『Turning to inflation, the headline consumer price index (CPI) has risen about 1 percent over the last year. Core CPI inflation, excluding food and energy, has been just less than 1 percent this past year. While inflation is currently lower than the 1-1/2 to 2 percent level many monetary policymakers would prefer, it does not follow that sustained deflation is imminent or even likely. While I do expect that inflation will be subdued in the near term, I do not see a significant risk of a sustained deflation.』

ということで物価の見通しに関しては「近いタームでは抑制される」けど、「先行きのデフレ入りのリスクはそんなに見ていない」という話をしつつ、その中で望ましいインフレ率を1.5〜2.0%という水準としています。まあそんなに不思議な水準ではないですな。

『Respondents to the Philadelphia Fed’s fourth-quarter Survey of Professional Forecasters released in November and the Livingston Survey released in December also saw little chance of deflation in 2011.』

で、フィラデルフィア連銀の調査でもデフレリスクは小さいという結果が出ています、という話をしているのですが、その次のパラグラフの前振りみたいな話でして・・・・


・中長期的なインフレ期待がアンカーされていれば一時的なデフレも大きな害が無いとな

これはwww

『It is useful to remember that the U.S. saw average consumer price inflation of just 1.3 percent through most of the 1950s and early 1960s. This period of low inflation did not lead to fears of deflation nor did it lead to economic stagnation. Low inflation is not generally a bad thing.』

1950年代の殆どと60年代前半のCPI平均上昇率は1.3%でしたが、この期間の低インフレはデフレーションの懸念も起こしませんでしたし、経済の停滞も招いていませんでした。低インフレ状態は一般的に悪い事である、とは言えないのです。

『Moreover, brief periods of lower-than-desired inflation or even temporary deflation are unlikely to materially affect economic outcomes as long as longer-term inflation expectations remain well anchored and the public continues to see the Fed’s promise to maintain price stability as credible.』

望ましいインフレ率を下回る期間が短い場合、更に言えば一時的な物価下落の状態があっても、長期的なインフレ期待が十分にアンカーされ、FRBの物価維持に対する約束が一般の人たちに対して信頼された状態を維持できるのであれば、恐らくは経済に対する影響はそれほど大きくは無いでしょう。


・ということでインフレ期待とFRBの姿勢に対する信頼が重要とな

『The Fed’s challenges are greater, however, when monetary policy finds it difficult to respond because rates are already near zero. In that case, a loss of credibility resulting in a decline in inflation expectations would lead to an increase in the real interest rate, which would encourage consumers and businesses to save more and spend less.』

FRBが直面する課題は大きな問題であるが、政策金利がほぼゼロとなっている中で実施できる事には制約があります。このような状況で、FRBの物価安定に対する信頼が失われる事によってインフレ期待のアンカーに失敗した場合には、実質金利の上昇を招き、それによって企業や家計の消費を抑制して貯蓄へ導く結果になってしまうでしょう。

・・・てな感じでヘタクソ日本語訳をしてみましたが、あたくしの脳味噌の出来がばれるので正直冷や汗モノである(−−;

んでまあインフレ期待に関してですが、今の所これはアンカーされている、というのがプロッサーさんの認識のようです。

『Given that the Fed’s policy rate is now close to zero, a decline in inflation expectations would be unwelcome and could undermine the recovery. Fortunately, this is not happening.』

まあさっきの所にありますように、実質金利が上昇するのはマズーですのでインフレ期待の低下はマズーという事ですが、それは今の所起きていないと。

『Expectations of medium- to long-term inflation have remained relatively stable because people expect the Fed to take appropriate action to keep inflation low, positive, and stable.』

ということですな。


・そして物価見通しは何気に強くねえかこれ

『As the recovery continues, I anticipate that inflation will accelerate toward 1-1/2 to 2 percent over the course of the next two years.』

景気回復が続けば向こう2年間で物価は1.5〜2.0%(つまり望ましい水準)に上昇するという見通しのようで。

『We are already beginning to see acceleration in some commodity prices. Manufacturers responding to our monthly Business Outlook Survey are increasingly reporting rising cost of inputs, including energy and raw materials, and they are projecting that they will be forced to pass on these cost increases to consumers and businesses in 2011.』

ということで、投入価格の上昇がこれから価格に跳ねてきますという見通しのようですが、そう簡単に行くのかねという疑問は少々あったりしますけど、まー商品価格が高止まりするとそうなっていくのかもなので今後のヘッドラインの物価動向は今年の金融政策ヲチャーのネタになるんでしょうな、と思うのでした。

『As we begin the new year, many forecasters are revising their outlooks to incorporate the latest economic data and the anticipated effects of the tax package approved by Congress in December. Although most forecasts assumed that some tax package would be approved, the details are now being factored into many models. My own view is that the tax compromise’s biggest impact derives from the reduction in uncertainty about tax rates for consumers and businesses over the next couple of years. Unfortunately, fiscal challenges still loom large for the new Congress and the economy.』

ということで後半にプロッサーさんの予想する今後2年間に関してというのがありますが、ブッシュ減税継続によって将来の増税に対する個人や企業の感じる不確実性を大きく減らすことになるでしょうというような事を仰せのようで。まあ物価は上向きで見ているっぽいですな、うんうん。


○プロッサー総裁ネタの更に続きである、金融政策がオモロイのである

そしてメインイベントは『Monetary Policy』の部分である。

・「金融政策に関する健全な議論は大事である」というフリーダム発言をしますよ宣言キタコレ

『Let me now turn to some observations on monetary policy.』

さあさあ来ましたよ。

『The last couple of years have been an extraordinary time for policymakers. We have been forced to react with speed to new challenges that have sometimes been outside the usual frameworks we rely on for policy guidance. That does not mean that economic models are no longer helpful; they most definitely are. But because of the unusual environment, there is less consensus among economists about the right answers to some of the most difficult and challenging questions.』

最近の金融政策運営にあたっては従来のフレームワークを越える事が起きていますが、これは従来の経済モデルが役に立たないという事では決してございません。しかしながら現状の環境は異例なものであり、この困難かつ挑戦的な課題に対する正しい政策の処方箋に関してのコンセンサスは経済学者の間でもコンセンサスが従来より取りにくくなっています。

『As a result, it is not surprising that the debate about what constitutes the most desirable policy is vigorous, with bright and talented people on every side.』

その結果として、あるべき政策についての議論が活発化するのは驚くべき事ではありません(キリッ)。

『That is as it should be, in my view. I am fond of quoting the American journalist Walter Lippmann, who said, “Where all men think alike, no one thinks very much.” Healthy debate is necessary for informed decisions and results in better policy decisions.』

・・・・・・・(;∀;)イイハナシダナー

つーか、引用されているウォルターリップマンさんの言葉ですけど、相場に相対する者としてだけではなく、サラリーマン人生うん十うん年(以下保身の為全面的に自主規制)。

『These debates have gone on inside the Fed, just as they have gone on in the media and in the economics profession. Some have suggested that it is counter-productive for policymakers to express differing opinions, as it confuses markets and creates uncertainty. I find such arguments misdirected.』

という事で、フリーダム議論によって市場に不確実性とボラティリティーを高める、という論点から難ずる人もいますが、と先般引用しました12月のFOMC議事要旨にあった論点を意識したような話をしておりますが、その論点は誤っています(キリッ)という話をしているのでありまして、従いましてプロッサー先生のフリーダム議論で今後はお楽しみ下さい、という事になろうかと存じます(^^)。


・フリーダム議論が重要であるという理由

基本的には「金融政策の透明性を確保する事が結果としてFRBの金融政策に対する信認を維持することに重要である」という話なのですが、2つの説明をしています。

『First, the uncertainty is real. It would be disingenuous and misleading to suggest otherwise. The central bank owes the public clear communication and as much transparency as is feasible. For policymakers to project a false sense of certainty would fail that test and deeply trouble me.』

不確実な状況の下、コミュニケーションポリシーとして、政策に関する議論は出来る限り透明にすべきであって、その辺りをエエカゲンにするのは不誠実であってミスリードだとか仰せのようですな。

『Second, for monetary policy to be successful, policymakers, and the Fed as an institution, must earn the public’s confidence. Confidence is important in preserving the Fed’s credibility, which is something that is hard to earn but easy to lose.』

次に、金融政策が効果を発揮するには、金融政策に携わる人間および機関としてのFEDは一般公衆の信頼を得なければいけません。信頼はFEDの金融政策に対する信認を維持する事にとって大切であり、それは築き上げるのは難しく失うのは簡単なのです。とこれまた(;∀;)イイハナシダナーですが、更に次の部分は微妙にこう何と申しますか耳が痛い指摘であったりするのでございまして。

『One way to undermine confidence and credibility is to fail to communicate the difficult choices we face and the thoroughness of our debates.』

信頼と信認(この辺テキトーに訳しているのだが、non-nativeのあたくしはこの辺りのニュアンスが金融政策のテクニカルタームとしてどういう感じなのかなというのは気分的には判らんでもないけど、実際はどういうニュアンスなのかってのは強い人に教えていただきとう存じます次第)を損なう方法の一つとしてあるのは、困難な選択を迫られたときに議論の無い中で選択を行い、そのコミュニケーションに失敗することです。

『Unanimity is not the natural state of affairs in life - nor is it inside the halls of the Federal Reserve. For policymakers to feign unanimity only serves to undermine the institution’s transparency.』

全員一致というのは人生においてもそうそうある事では無いのと同様に、FOMCのミーティングの中でも同様なのです。金融政策に携わる者が全員一致を見せかけるというのは、中央銀行の透明性を損ねるだけの結果となるのです。

・・・・・・(;∀;)イイハナシダナー

というか何か読んでいて目から微妙に汗が出てくるのですが(^^)、まあこれはこれで一種の正論ではあるのですが、そうは言いましても金融政策として機関決定したら、それはそれこれはこれというのも重要ではないかと思われる次第であります。

つまりですね、こういうフリーダム発言横行状態というのは議論としては健全であって、建設的な議論が続けば結構な事なのですけれども、例えば「時間軸政策」のような期待に働き掛ける政策を実施する場合、また現在のQE2みたいにある意味気合の世界で期待に働き掛ける政策を実施する場合においては、議論の活発化は期待形成においてはやはり「不確実性とボラティリティを高める」という弊害もある訳でござんして、その観点からしますと今後のFRBの金融政策の方向性にもまた影響を与えそうな論点でございます。

で、この後QE2の評価がおっぱじまりましてこれがまたオモロイのですが以下明日以降に続くのだ。

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2011/01/18

○プロッサー総裁ネタの続きである

昨日に続きこの講演から
http://www.philadelphiafed.org/publications/speeches/plosser/2011/01-11-11_risk-management-association.cfm
http://www.philadelphiafed.org/publications/speeches/plosser/2011/01-11-11_risk-management-association.pdf

・景気に関して基本的にそんなに腰折れとか見ていません

まずは『The Economic Outlook』のところですが、こちらに関しては激しく端折りましてプロッサーさんの見通しのところだけ引用。

『When the final estimates are released, I expect that GDP growth will be between 2-1/2 and 3 percent for 2010 and will pick up to 3 to 3-1/2 percent annually in 2011 and 2012. My forecast for 2011 changed only modestly during the past year, and I remain confident that the economy is on track for continued moderate recovery. As with all forecasts, this projection carries some risks. But for now, I expect moderate growth overall, with strength in some sectors more than offsetting weakness in others.』(フォントの関係で改変箇所あり)

ということで、2010年のGDP成長率は2.5〜3.0%で、2011年と2012年は3.0〜3.5%成長になるでしょうという予想でして、「私は引き続き経済は継続的な緩やかな回復の軌道に乗っており、先行きのリスクはあるものの、一部のセクターの強さが他のセクターの弱さを打ち消す強さを示し、全体的には経済の緩やかな回復を見込んでいます」という比較的強めっぽい見通し。

で、この後に各項目別の説明があるのですが、引用すると長くなるのであたくしがへぼい英語力で読書した要旨のみ書きます(ので確認の為に本文見てちょ)。

住宅、商業用不動産は引き続き弱いが景気全体の足を大きく引っ張らない。

企業の設備支出に関しては夏の弱さから脱却して先行きも明るい、企業マインドも改善しており、健全なペースで設備投資の拡大が続く。

GDPの7割を占める消費支出は緩やかな拡大をしており、消費者信頼感は好転しており、販売業者の見通しも明るい。リセッション時に価格が下落して個人部門のポートフォリオ悪化に繋がった住宅価格や株価の回復によってより強い消費支出がもたらされるでしょう。

という感じで、基本的に景気には強気っぽいです(というか強気じゃなかったらタカ派的な発言も飛び出さないわけですけれども^^)。


・労働市場に関して

『Unemployment』の部分なのですが、厳しい事は認めつつも(昨日引用したように冒頭部分で「物価の安定によって雇用の最大化が達成できる」と言っているので当然なのですが)最後の最後に「そうは言っても金融政策で雇用に関して出来る事は限られていますがな」というのがあるのがチャーミング。こちらは該当部分全部引用という荒業(手抜き)に出るのでした(汗)。

『The private sector added over a million jobs in 2010. Unfortunately, the pace of employment growth hasn’t been strong enough to have much of an effect on the unemployment rate. However, recent data have been somewhat more encouraging. New claims for unemployment insurance have been trending down, as have continuing claims. In December, the economy added about 100,000 jobs and payrolls were revised up in both October and November. In addition, the unemployment rate fell from 9.8 to 9.4 percent in December. I expect this number may bounce around in the near term, but the unemployment rate will gradually recover as hiring improves enough to allow the unemployed as well as those people who have left the labor force to find jobs.』

いきなり一段落まる引用という手抜きにも程がある状態ですが、労働市場は改善していて先行きに関しても改善しますよってトーンになっているかと存じます。ただし失業率の改善が遅いという点に関しては・・・・・

『I wish I could forecast a faster improvement, but it will take time to resolve the difficult adjustments now under way in the labor markets. 』

より速いペースでの改善を見込みたい所ではありますが、現在労働市場では困難な調整が進行中であり、その解決には時間が掛かると仰せです。

んでまあどういう事かと言いますと・・・・・

『Many workers may be forced to find jobs in new and unfamiliar industries. For instance, the contraction in the real estate sector and in sectors closely related to residential construction, such as mortgage brokerage, means that many workers will likely need to find jobs in other industries or fields and that will take time.』

『The productivity gains occurring in other sectors also suggest that many workers may need updated skills to find their next job. This may be particularly relevant for the long-term unemployed.』

具体例を出していますが、労働市場における困難な調整というのは、労働者が新しい種類や分野での職で働く事を余儀なくされており、その結果慣れない仕事をする事によるスキルの低下によって発生する生産性の低下や、そもそも職探しが難しくなる事によって生じる長期失業者の増加という事だと説明しています。

ちなみに失業問題に関して構造的な問題がどうのこうのという話や、長期失業者の増加に関しては連銀の他の人や、FOMC議事要旨でも議論になっているネタだったりしますけど、日銀も年末にこんなのを出している(ネタにするの忘れた)のでご参照ありたしという事で。

http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/rev10j21.htm
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/data/rev10j21.pdf
米国の構造失業率を巡る最近の論点


で、話を戻しましてまあそういう説明をした後の結論がこうだったりするのがチャーミング。

『Monetary policy cannot do much to help these types of adjustments in the labor markets even if we wish it could.』

まあそらそうなのですが身も蓋も無い結論だったりするのでした。で、その次のインフレーションに関する部分と金融政策に関する部分が中々長い上にオモローでありますが、例によって時間がなくなったので(段取り悪いですかそうですか)続きは明日以降(汗)。

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2011/01/17

○フィラデルフィア連銀プロッサー総裁の講演から(1回で終わらないのでシリーズネタ予定)

FOMCメンバーの地区連銀総裁と言えばタカ派であらされるカンサスシティ連銀のホーニッグ総裁様の票決と意見が毎度のお約束でしたが、票決に参加する地区連銀総裁はローテーションになっていまして、今年から入れ替わりで入ってくる地区連銀総裁の皆様のうちの1名がフィラデルフィア連銀のプロッサー総裁。

という事でフィラデルフィア連銀のページにあるプロッサー総裁の講演リストを見るのだ。
http://www.philadelphiafed.org/publications/speeches/plosser/

直近の講演はこれですな。
http://www.philadelphiafed.org/publications/speeches/plosser/2011/01-11-11_risk-management-association.cfm
http://www.philadelphiafed.org/publications/speeches/plosser/2011/01-11-11_risk-management-association.pdf
(下がPDFバージョン)

で、お題が『Economic Outlook and Challenges for Monetary Policy』ということで、これからFOMCで投票するということもあるのか中々気合の入った内容になっておりまするが、まずは手抜きにも程があるのですが最初と最後を読むのだ(中身は明日以降)。

・物価安定重視の政策スタンスで原理原則重視のイメージです

冒頭の『Introduction』の所から。

『The goals of monetary policy are set by Congress in the Federal Reserve Act, which states that the Fed should conduct monetary policy to “promote effectively the goals of maximum employment, stable prices, and moderate long-term interest rates.” I have long believed that the most effective way monetary policy can contribute to maximum employment and moderate long-term interest rates is by ensuring price stability over the longer term. Price stability is also critical in promoting financial stability.』

ということで、FEDのマンデートのうち「最も重要なのは物価の安定である」というのを明確に打ち出していて、「物価の安定によって雇用の最大化と長期金利の安定推移が生み出される」という指摘をしていますので、「デュアルマンデート」を打ち出して失業率が下がらないから金融緩和継続ですよ的なFRBの執行部の説明とはちと違いますなあという所です。

で、その金融政策遂行の為にはFEDは何をしますかという事ですが。

『The Fed seeks to achieve these objectives by influencing the cost and availability of credit through its decisions about interest rates and the supply of money. These decisions are the primary responsibility of the FOMC - the Federal Open Market Committee - the group within the Fed charged with setting monetary policy.』

ということで、民間金融のコストとアベイラビリティーを金利およびマネーの供給変化によってコントロールしますよって話でまあ原理原則論っぽいテイストが。

『Since monetary policy affects the economy with a lag, the FOMC must be forward-looking in setting appropriate monetary policy. Therefore, I want to begin my remarks with a review of the nation’s economic recovery and my outlook for growth and inflation. I will then offer some observations on current monetary policy, including the Fed’s current program of large-scale asset purchases.』

「金融政策の効果波及には時間的なラグがあるので、適切な金融政策運営にあたってはフォワードルッキングで政策を実行していかないといけません」というのはどういう事かと言うのはこの先にあるのですが、まあ今日は時間が無いのでご興味のある方はこの先読んで味噌という感じです。ちなみに小見出しは『The Economic Outlook』、『Unemployment』、『Inflation』、『Monetary Policy』と続くのですが、景気見通しを読まないと話が始まらない面があるのですけれども、中々オモローなのはインフレの所と金融政策の所だったりします。


・いきなりワープして結論部分を(^^)

というのは明日以降にしますが、思いっきり端折りまして『Conclusion』から引用(^^)。

『In conclusion, our nation’s economy is now emerging from the worst financial and economic crisis since the Great Depression. A slow but sustainable economic recovery is under way, and I expect annual growth to be in the 3 to 3-1/2 percent range over the next two years.』(3-1/2の所はフォントの関係で改変しました)

景気は緩やかながら持続的回復を続けており向こう2年間の成長率は3〜3.5%となるでしょうとな。

『As the economy continues to gain strength and optimism grows among businesses, hiring will increase. The unemployment rate, however, will decline to acceptable levels only gradually. The shocks and dislocations we experienced from the financial crisis were significant, and it will take some time for the imbalances in labor markets to be resolved.』

労働市場に関しては雇用の拡大は続くものの、労働市場の構造問題の影響もあり失業率の低下には時間が掛かるでしょうという事ですが、その点は本文で詳しく説明していますです、はい。

『The Federal Reserve remains committed to promoting price stability over the intermediate to longer term. This is the most effective way in which monetary policy can contribute to economic conditions that foster maximum sustainable employment and economic growth. Finding the right path for monetary policy in such challenging times will require thoughtful deliberation. We should acknowledge the debate as a healthy process that adds to transparency and enhances credibility.』

この中身に関しても本文の金融政策のところでヒジョーに面白い話があったりするのですが(^^)、要するに現在の各委員フリーダム発言状態はこれはこれで建設的かつ健全な状態であって、引き続き活発な論議をすべきである。ということですので、益々のフリーダム発言が期待されます(^^)。

『As we move forward, I will continue to monitor incoming economic developments and update my economic outlook as necessary. Should evidence suggest that monetary policy is not consistent with our longer-term goals, then I will support an appropriate adjustment to policy.』

先行きの金融政策運営に関しては、景気の動向を見ながら適切な措置を実施するという事ですが、これは本文を仔細に読みますと(仔細に読まなくても判るのですけれども^^)「現在の資産買入によって発生した大量超過準備が景気の回復に伴って経済に流れ込んで来た時には、その時に発生するインフレーションの制御が非常に難しくなるリスクがあります」という話を思いっきりしているという事から致しまして、ホーニッグ総裁の跡目相続という感じになるのかなあとは思うのですけれども、今回のFOMCでいきなりホーニッグ状態になるのかはよくワカランチ会長ではございまする。

という事で本文は明日以降で(^^)。

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2011/01/12

○バーナンキ議会証言関連その他少々

http://www.federalreserve.gov/newsevents/testimony/bernanke20110107a.htm(HTML版)
http://www.federalreserve.gov/newsevents/testimony/bernanke20110107a.pdf(PDF版)

金融政策に関連するところは大体昨日引用した部分なんですがあと少々。

・昨日駆け足で引用したのでもう一度詳しくQE1の効果について読んでみる

昨日引用した部分でも「低すぎるインフレは家計の購買力を引き下げる」というようなだいぶインチキ臭い議会向け説明要素があったり、「資産買入で長期金利が引き下げられた為に株価などの資産価格が上昇したり、クレジットの環境が幅広く改善したり」という説明があったのは何なんでしょという感じでございましたわな。

で、昨日は急いで引用したので再掲になるのですが、どうもバーナンキ先生はQE2ではなくてその前の緩和政策に関して「資産買入は短期金利引下げと同じ効果のある政策波及効果がありますよ」という話をしている部分を改めて。

PDF版の本文4ページのケツの辺りから。

『By contrast, securities purchases by the Federal Reserve put downward pressure directly on longer-term interest rates by reducing the stock of longer-term securities held by private investors.3 』

『3. More specifically, the Fed's purchases should tend to reduce term premiums, a component of the yield to longer-term securities. Longer-term interest rates are also influenced by market expectations of the future path for short-term interest rates, which in turn depend on the outlook for the economy and so for the target federal funds rate.』

もうね、この時点で既に説明がインチキっぽいのですけれども、実際問題として長期金利って長期債買入アナウンスの瞬間に低下したけどその後は長期債買入実施前よりも高い水準で推移していた訳でして(下がったのはQE2への思惑が高まった以降ですわな)、「民間セクターの長期債券保有を減らす事によって金利に低下圧力を掛けました」というのが成功したのはMBSなどの買入の方であって、長期国債の買入ではないのですから、この説明って現在の国債買入を正当化する説明になっていないのですよね。何と言うインチキ。

ただまあさすがにそう突っ込まれると困るので脚注3のように「買入はタームプレミアムを下げる傾向がある」みたいな話をしているのですが、こんなの長期金利の動きの要因分解をする時の置きで何とでもいじれる数字であって、何かもう後付で尤もらしいクオンツ(苦笑)分析をして操作する世界じゃネーノと思う(1回3000億円だけ実施したCP現先オペがCP市場のリスクプレミアムを引き下げましたとかいう分析をしたどこぞの中央銀行がいましたが)次第でございます。

『These actions affect private-sector spending through the same channels as conventional monetary policy.』

ということで、金利引下げの話をしているのが何だかなあと思うのですが、まあバーナンキ議長辺りのイメージとしては、これらの資産買入によるポートフォリオリバランス効果が起きて、資産価格などが上昇するという政策波及ルートを本当の所は本命として考えているのではなかろうか、とは思いますのがその次の文章。

『In particular, the Federal Reserve's earlier program of asset purchases appeared to be successful in influencing longer-term interest rates, raising the prices of equities and other assets, and improving credit conditions more broadly, thereby helping stabilize the economy and support the recovery.』

でですな、ここまで読んで判るのですが、FEDの資産買入に関してその政策波及ルートに特にリザーブ拡大とかマネタリーベースの拡大とかの話が無いという点に関してはQE1における資産買入拡大を行った時の説明であります所の「FRBの資産買入は中央銀行のバランスシートの資産サイドに注目したものであり、いわゆる量的緩和とは違う(だから議長や理事はQEナントカとは言っていない筈)」という理屈はキープしておりますなあって所ですな。


・しかし良く考えたら「経済の回復が不十分」なだけでこんなに買入実施するのかよ

で、その次も再掲ですがQE2の実施理由。

『In light of this experience, and with the economic outlook still unsatisfactory, late last summer the FOMC began to signal to financial markets that it was considering providing additional monetary policy accommodation by conducting further asset purchases. At its meeting in early November, the FOMC formally announced its intention to purchase an additional $600 billion in Treasury securities by the end of the second quarter of 2011, about one-third of the value of securities purchased in its earlier programs. The FOMC also maintained its policy, adopted at its August meeting, of reinvesting principal received on the Federal Reserve's holdings of securities.』

まあQE2実施の理由は物価低下圧力の軽減と失業率の高止まりという事なのでしょうけれども、よくよく考えますと別に経済に下方ショックがあった訳でもないのに国債6000億ドル購入をするとか冷静に考えたら過剰反応にも程がありませんかという気がするのでありまして、何かこうその前に変に期待を煽りまくった結果引くに引けなくなって量が増えましたというテイストも漂いますなあと思います。

つーかね、QE1の時に実際問題として長期金利の低下ができていない(まあ屁理屈を動員すれば「タームプレミアムの縮小」とやらは出来たという結論になるのでしょうけれども)訳で、まともに金利ルートで効いたのってリスク資産の買入とか担保政策とか(と財政による金融機関救済)の方だったと思うのでありまして、QE1の時と同じような説明でダイジョウブカヨと思うのであります。


・とどさくさに紛れて物価ターゲット話

『The FOMC stated that it will review its asset purchase program regularly in light of incoming information and will adjust the program as needed to meet its objectives. Importantly, the Committee remains unwaveringly committed to price stability and, in particular, to maintaining inflation at a level consistent with the Federal Reserve's mandate from the Congress.4 』

『4. Most Committee participants judge that, in the longer term, inflation in the range of 2 percent or a bit less appropriately balances the risk that adverse economic shocks could tip the economy into deflation against the benefits of low and stable inflation. An inflation rate modestly above zero also reduces the probability that monetary policymakers will be constrained from easing policy when necessary by the zero lower bound on nominal interest rates. Many central banks around the world have come to similar quantitative judgments about the long-run level of inflation that best fosters growth and stability.』

恐らくは議会向け成分がこの辺にも入っていると思われるのですが、FOMCの考える望ましいインフレ率は「2%またはそれよりも若干程度低い水準」というのがしらっと説明されていまして、「世界的にも長期的に緩やかにゼロ以上の水準の物価上昇率が経済に望ましいと各国の中央銀行は意識を共有している」という話をしているのですが、ここでバーナンキ議長が割とピンポイントの数字を出しているのは「ほほー」という感じです。


・以下議会向けの説明が

『In that regard, it bears emphasizing that the Federal Reserve has all the tools it needs to ensure that it will be able to smoothly and effectively exit from this program at the appropriate time.』

必要な時には直ぐに出口政策が可能なんです(キリッ)という事ですが・・・・

『Importantly, the Federal Reserve's ability to pay interest on reserve balances held at the Federal Reserve Banks will allow it to put upward pressure on short-term market interest rates and thus to tighten monetary policy when needed, even if bank reserves remain high.』

そらまあそうなのだが、リザーブの水準が高い場合には預金ファシリティーが市場金利の下限としてワークしない場合もあるので(つーか今でも実効FFレートは預金ファシリティーの金利よりも低いかと)、やはりリザーブそのものが極めて多いと利上げも大変だと思いますけどね。

『Moreover, the Fed has invested considerable effort in developing methods to drain or immobilize bank reserves as needed to facilitate the smooth withdrawal of policy accommodation when conditions warrant.』

タームデポジットファシリティという売手みたいなもんで吸収すると。

というのは良いのですが、実はこの時にそれなりに政策金利上昇パスを進めて行った場合に、ある時点でFEDの保有する長期国債が逆鞘になると思うのですが、そういうときってどうするんでしょうかねえと思いますが。まあ財政で穴埋めするしか無いのですけどね。

『If necessary, the Committee could also tighten policy by redeeming or selling securities on the open market.』

まあ最終兵器ですが最終兵器だけに金融市場がエライコッチャになるでしょうなあ。


・この説明は議会向けだがオモロイ

次のパラグラフから。

『As I am appearing before the Budget Committee, it is worth emphasizing that the Fed's purchases of longer-term securities are not comparable to ordinary government spending.』

我々の実施する長期債券購入プログラムは「財政支出」ではないんです!!という話。

『In executing these transactions, the Federal Reserve acquires financial assets, not goods and services. Ultimately, at the appropriate time, the Federal Reserve will normalize its balance sheet by selling these assets back into the market or by allowing them to mature.』

我々は物やサービスを購入しているのではなく、金融資産の購入を行っているのであって、しかも最終的には適切な手段でこれらの金融資産の売却または満期償還によってFEDのバランスシートを元の状態に戻せるのですよ(キリッ)という所でしょうか。

『In the interim, the interest that the Federal Reserve earns from its securities holdings adds to the Fed's remittances to the Treasury; in 2009 and 2010, those remittances totaled about $120 billion.』

しかもこの政策を実施している間はFEDの証券保有の利息収入で財務省に納付金も払っていますよって話をしてこれまた長期国債保有の正当性の説明になっているのがチャーミングですが、民間債務買っているのではなくて国債買っているのだったらその利息収入がどうのこうのというのも元は政府の払った利息だから微妙ですな(^^)。

とまあそんな感じで、議会向け成分が入っているのですが、説明は結構無理筋な部分もあるかなあとか思うのでありました。



○ちょっと前の話の追加です

BOEの議事要旨に関する引用で「何が何だかワケワカラン」と申し上げた部分があったと存じますが(大汗)、その部分を解説して頂きましたので(どうもありがとうございます)さっそく受け売りコーナー(^^)。

あたくしが何が何だかわからんと泣きを入れた部分はこちら。

『The extent to which commodity price increases would affect UK inflation would depend in part upon what caused them and hence upon the behaviour of the sterling exchange rate. If higher commodity prices signalled a rise in generalised inflationary pressure in the world economy, it was possible that the sterling exchange rate would appreciate to offset the effects of that pressure on domestic inflation. But it was less likely that there would be an offsetting appreciation of the exchange rate if, because of supply constraints, world prices of commodities rose relative to those of finished goods and services.』

国際的な商品価格(というか素材材料的な価格と読んだ方が判り易いのですが)の上昇が英国国内のインフレにどの程度影響を与えるかという程度については、その商品価格上昇の原因と英国ポンドの為替レートの動向によります。

商品価格上昇が世界経済における一般的なインフレ圧力の上昇(=モノに対する貨幣価値の下落)を示しているのであれば、(英国ポンドの価値をきちんと維持する事による)英国ポンドの上昇によって英国国内のインフレ圧力の影響を相殺することも有り得る
でしょう。

しかし、商品価格上昇が最終財やサービスの価格に対して供給制約の為に上昇するのであれば(インフレが素材材料に対するディマンドプルで起きているのであれば、供給制約はそう簡単に解消できず、上記の一般的な貨幣価値の下落と問題が違うので)それを相殺するような英国ポンドの上昇が為替市場で起きる可能性は低いでしょう。

というお話だったようです。ご教授頂きまして誠にありがとうございましたm(__)m

そして、議事要旨の中で「素材材料について新興国を中心とした世界的な需要の高まりによる価格上昇圧力」という面への言及がありました事を勘案すると、よーするに素材材料の価格上昇が英国国内のインフレに跳ねてくる可能性について言及しているのかなあ等と思うのでありましたです。

#人のふんどし引用と重複が多くてどうもすいません

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2011/01/11

バーナンキの議会証言から少々。オモロイのだが短い中で色んなネタを詰めすぎです。

http://www.federalreserve.gov/newsevents/testimony/bernanke20110107a.htm(HTML版)
http://www.federalreserve.gov/newsevents/testimony/bernanke20110107a.pdf(PDF版)

○内容に関してざっくり感想をとりあえず

景気に関しては回復を続けており、特に消費者支出や企業投資に関しては「自律的な回復」という話をしていたりするのですが、その一方で特に雇用に関してはこれでもかとばかりに「回復が遅れている」という話を連発しており、物価に関しても厳しい話をしています。

で、金融政策に関しては資産買入(QE2ですがQEとは言わないのがチャーミング)に関する説明を延々と行っていまして、まあ議会様からああでもないこうでもないと言われる昨今でございますので、資産買入は大事なんです効果があるんですという話を結構頑張って行っています。

それから最後に財政健全化および財政支出の構造改革を行うべきというこれは議会向けの切り返し攻撃が入っているのも中々お洒落な所であります。

つーことで、まあ特に内容的にビックリするような話はそんなに無いとは思うのですけれども、議会向けの国債購入プログラム正当化説明に色々と微妙(というか一部インチキ)な成分が入っているのが味わい深い所です。


○金融政策に関して

とりあえず景気の部分をスルーして中盤の『Monetary Policy』の所から参ります。

・雇用の回復が遅れると言う話

その前に景気の部分でこれでもかと雇用の回復が遅れている話と今後も中々回復しませんよという話があるのですが、その流れで金融政策のところの冒頭はもういきなり雇用の回復が遅れるという話を。

『Although it is likely that economic growth will pick up this year and that the unemployment rate will decline somewhat, progress toward the Federal Reserve's statutory objectives of maximum employment and stable prices is expected to remain slow.』

回復が遅れますよという話はいつものネタですわな。

『The projections submitted by Federal Open Market Committee (FOMC) participants in November showed that, notwithstanding forecasts of increased growth in 2011 and 2012, most participants expected the unemployment rate to be close to 8 percent two years from now. At this rate of improvement, it could take four to five more years for the job market to normalize fully. 』

で、ここがヘッドラインにもなった「雇用市場の正常化には4-5年掛かるかもしれません」という部分でして、まあこれは単体で読むと時間軸強化っぽい文言なのですが、まあそれよりも(この議会証言全体のトーンから勘案すると)現在実施している国債買入をやったとしてもこのように雇用市場の環境は厳しいのですから、国債買入を急に止めるとか有り得ませんよ、っていうような事を強調したいのではないのかなとも思われる部分でございます。


・物価に関しては「極めて低いインフレの弊害」を説明するのですが・・・・

でその次が物価。

『FOMC participants also projected inflation to be at historically low levels for some time. Very low rates of inflation raise several concerns: 』

で、その幾つかの問題ですが・・・・

『First, very low inflation increases the risk that new adverse shocks could push the economy into deflation, that is, a situation involving ongoing declines in prices. Experience shows that deflation induced by economic slack can lead to extended periods of poor economic performance; indeed, even a significant perceived risk of deflation may lead firms to be more cautious about investment and hiring.』

うじゃうじゃ説明していますが、要するに低インフレだと経済ショックによってデフレ入りする危険性が高まりますよ、で、デフレだと企業の投資や雇用が慎重化しちゃいますよという話のようで。

『Second, with short-term nominal interest rates already close to zero, declines in actual and expected inflation increase, respectively, both the real cost of servicing existing debt and the expected real cost of new borrowing. By raising effective debt burdens and by inhibiting new household spending and business investment, higher real borrowing costs create a further drag on growth.』

現在政策金利がほぼゼロとなってこれ以上引き下げができないので、インフレの低下は債務者に対する実質的な借入コストの増大を意味し、企業や家計の投資行動の消極化や、起業における借入コストの増大を招き、経済によろしくないと。

というのはまあ良いとして、3番目の説明が議会向けテイストを感じる部分でございまして、えーっとそれで説明良いのかという気がせんでもない部分。

『Finally, it is important to recognize that periods of very low inflation generally involve very slow growth in nominal wages and incomes as well as in prices. (I have already alluded to the recent deceleration in average hourly earnings.)』

極めて低いインフレの継続によって名目賃金や名目所得の上昇も物価と同様に極めて低い上昇に留まりますよというのはまあその通りなのですが・・・・・

『Thus, in circumstances like those we face now, very low inflation or deflation does not necessarily imply any increase in household purchasing power.』

・・・・・・????? 実質購買水準はうっかりしたら上昇するんじゃないの???

『Rather, because of the associated deterioration in economic performance, very low inflation or deflation arising from economic slack is generally linked with reductions rather than gains in living standards.』

経済のスラックによって生じた極めて低いインフレあるいはデフレは、経済のパフォーマンスが低下するので生活水準も低下しやすいですよ、と仰せなのですが、その場合は名目ではなくて実質の経済成長をするのかどうかに依存する話であって、まあ「家計の購買力の低下」だの「生活水準の低下」だのというような議会向けのネタを散りばめて説明しているのでしょうけれども、何かここはインチキ成分が入っているような気がするだわさ。


・金融緩和政策の説明が更に微妙なテイストを

で、その続きとしてここからが金融緩和政策が適切な政策ですよという説明の部分になるのですが、のっけからそこの説明が怪しげになるのが議会証言クオリティ。

『In a situation in which unemployment is high and expected to remain so and inflation is unusually low, the FOMC would normally respond by reducing its target for the federal funds rate. However, the Federal Reserve's target for the federal funds rate has been close to zero since December 2008, leaving essentially no scope for further reductions. 』

まあ確かに2008年12月の声明文とか見ると失業率が急上昇して物価上昇が急速に弱まっているという話をしていますなあと思いつつその次。

『Consequently, for the past two years the FOMC has been using alternative tools to provide additional monetary accommodation. Notably, between December 2008 and March 2010, the FOMC purchased about $1.7 trillion in longer-term Treasury and agency-backed securities in the open market. The proceeds of these purchases ultimately find their way into the banking system, with the result that depository institutions now hold a high level of reserve balances with the Federal Reserve.』

信用緩和の話を華麗にスルーしているのが何とも。この時の長期国債購入って正直言って不発にも程があったと思うのですけれども・・・・・

『Although longer-term securities purchases are a different tool for conducting monetary policy than the more familiar approach of managing the overnight interest rate, the goals and transmission mechanisms of the two approaches are similar. 』

いやまあ信用緩和政策は金融機関救済と議会でブー垂れるのがいるからその辺の話題を避けるというのは判るのですが、また「長期国債買入は金利引下げ政策ですよ」という話をするのも諸刃の剣だと思うのですけどねえ。

『Conventional monetary policy works by changing market expectations for the future path of short-term interest rates, which, in turn, influences the current level of longer-term interest rates and other financial conditions. These changes in financial conditions then affect household and business spending. By contrast, securities purchases by the Federal Reserve put downward pressure directly on longer-term interest rates by reducing the stock of longer-term securities held by private investors.3 These actions affect private-sector spending through the same channels as conventional monetary policy. In particular, the Federal Reserve's earlier program of asset purchases appeared to be successful in influencing longer-term interest rates, raising the prices of equities and other assets, and improving credit conditions more broadly, thereby helping stabilize the economy and support the recovery.』

ということで(めんどいので切らずにどどーんと引用するという手抜きプレイですが)、FEDによる債券購入によって長期金利の引き下げに効を奏して、それによって株価や他のアセットの価格も上昇させましたというのはさすがに説明に無理があると思うのですけれども、それよりも気になるのは今回の議会証言でもまた「長期金利引き下げ」の話を前面に押し出している事でして、この説明の続きの部分の脚注で「長期金利は市場の経済見通しなどにもよって変化する(ので景気回復期待が高まると長期金利が上昇する、と言いたいのでしょう)」というヘッジクローズが入っているのですけれども、もうちょっとポートフォリオリバランスを前面に出すような話をした方が無難な気がするのですよね、と思います。

ということで、さっきの引用の中にある3という部分なのですがね。

『3. More specifically, the Fed's purchases should tend to reduce term premiums, a component of the yield to longer-term securities. Longer-term interest rates are also influenced by market expectations of the future path for short-term interest rates, which in turn depend on the outlook for the economy and so for the target federal funds rate.』

ということで一応ヘッジは入っているのですが、あまり「長期金利低下」を連呼しない方が良いとは思うのですけどねえ・・・・・

で、QE2実施は「この経験を踏まえ、経済の見通しや失業率の水準が満足のいくもので無い事から、去年の夏の終わり以降に新たな緩和策実施を示唆し、11月に緩和策を実際に行いましたよ」という事になっていまして、これまた違和感が。

『In light of this experience, and with the economic outlook still unsatisfactory, late last summer the FOMC began to signal to financial markets that it was considering providing additional monetary policy accommodation by conducting further asset purchases. 』

何かね、CEの説明とQEの説明を意図的にごっちゃにしているような気がするんですけど・・・・

ということで、金融政策がらみの部分は概ねこんなもんです、明日補足するかもしれません。

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2011/01/07

○FOMC議事要旨ネタ続き

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20101214.htm(html版)
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/fomcminutes20101214.pdf(pdf版)

・景気に関しては若干引き上げているものの、循環的には良いが構造的な問題は厳しい見方継続

というのは声明文の時に明らかでしたけれども、議事要旨にもその辺りの言及が。

『In their discussion of the economic situation and outlook, meeting participants saw the information received during the intermeeting period as pointing to some improvement in the near-term outlook, and they expected that economic growth, which had been moderate, would pick up somewhat going forward. Indicators of production and household spending had strengthened, and the tone of the labor market was a little better on balance. The new fiscal package was generally expected to support the pace of recovery next year.』

と、ここまでは明るい話。

『However, a number of factors were seen as likely to continue restraining growth, including the depressed housing market, employers' continued reluctance to add to payrolls, and ongoing efforts by some households and businesses to delever.』

こうやって見ますと、循環的な回復と財政刺激によって景気は拡大するものの、その一方で住宅市場や雇用者所得の伸びが弱い事や家計や企業のバランスシート修正などが成長を抑制するってえ話をしているのですから、モロに構造要因が残存するという話。

『Moreover, the recovery remained subject to some downside risks, such as the possibility of a more extended period of weak activity and lower prices in the housing sector and potential financial and economic spillovers if the banking and sovereign debt problems in Europe were to worsen.』

更にダウンサイドリスクがどうのこうのというのは昨日引用した所にも同じ話(これは冒頭部分だから最初にまとめが1パラグラフで書いてあるのだから当たり前ですが)をより詳しく記述した部分がありましたね。

『In light of recent readings on consumer inflation, participants noted that underlying inflation had continued trending downward, but several saw the risk of deflation as having receded somewhat.』

消費者物価に関してはダウントレンドが継続しているものの、数名の委員は「デフレのリスクが幾分か軽減している」という認識を示したというのはホンマカイナという気がするのですが、ただのQE2効果自画自賛なのか良く判らんです。まあ商品価格とか上昇してますからヘッドラインのインフレは高いっすからねえ。

ということで、構造要因が足を引っ張り、更に経済のスラックが改善されてこないという中での循環回復ですからどう見てもFalseDawnです本当にありがとうございましたという感じなのですが、まーそーは言いましても日本だって何度も回復ワッショイとかやってた訳ですから、雨公様におかれましても偽りの夜明け祭りは目先続くでしょうなという所ですか。


・ホーニッグさんの反対理由

お約束のホーニッグさん。

『Mr. Hoenig dissented because he judged that economic conditions were improving, and that the current highly accommodative stance of monetary policy was inconsistent with the Committee's long-run mandate. Mr. Hoenig noted that the economic recovery was shifting from transitory to more sustainable sources of growth and was picking up momentum.』

直球ストレートで景気回復ですと、しかもその回復もよりサステイナブルになっているとな。

『In his assessment, maintaining highly accommodative monetary policy in the current economic environment would increase the risk of future imbalances and, over time, cause an increase in longer-term inflation expectations.』

これはいつもの理由。

『Mr. Hoenig also was concerned that the eventual orderly reduction of policy accommodation would become more difficult the longer the first step in that process was delayed. In Mr. Hoenig's view, the Committee should begin preparing markets for a reduction in policy accommodation.』

今回この理由が入ったのが新しいっすな多分(違ってたらごめんなさい)。最初の出口が遅れると秩序だった出口政策が困難になるという話で、これに関しては「15分で引き締め可能」とか豪語するバーナンキさんよりもホーニッグさんの見解の方が妥当だと思います。「今」がその時期かというとそれは違うと思いますが。

『Accordingly, he thought the press statement should indicate that sufficient monetary stimulus was in place to support the recovery.』

前回も「長期間にわたる高いレベルの金融緩和継続はFOMCの目的達成に対してリスクがあるという点を声明文で指摘すべきだ」というような話をしていまして、まあ今回もその流れの話でしょうな。


・昨日の補足

昨日引用したコミュニケーションポリシーに関する部分なのですけど。

『Several meeting participants mentioned the communications challenges faced in conducting effective policy, including the need to clearly convey the Committee's views while appropriately airing individual perspectives.』

このindividualがFOMCメンバー個人を指すのか、個別の案件(物価とか雇用とか)を指すのかよく判らないでうにゃうにゃと訳してみたのですが、早速読者様からご指摘を頂きまして大変に勉強になりましたありがとうございますm(__)m以下受け売りで恐縮(^^)

ここの接続詞のwhileは「〜の一方」という意味になりまして、「委員会のビュー」と「その一方で」という繋ぎになりますので、そうなると「委員会」と対比させるindividualは「委員会の委員個人」と解釈する方が自然な解釈と思われます。つまり、「FOMCメンバー個人個人の見通しを適切に述べつつ、FOMCの委員会としてのビューを明確に示す必要があるのではないか」というコミュニケーションポリシーに対するお話ということでして、確かに足元ではFOMCメンバーの個々人のビューがはっきり伝わってオモロイのはオモロイのですが、QE2実施前後などは特にそうでしたが、FOMCメンバーの発言で微妙に政策に対する思惑がぶれて市場が揺れたりしておりましたし、この辺りに関しては「ここからここまでが個人のビュー」「これはFOMCが委員会という機関で決定したビュー」というのをより明確化した方が、コミュニケーションとしては良くなるでしょうという感は致します。

昨日は「力技よりも時間軸の方が良いのではないか」とか書いた訳ですが、確かにこうやってここの部分を読んでみますと、各委員が結構言いたい放題モードなので、どこからどこまでがFOMCのビューなのかが良く判らんという部分がありまして、そーゆー中で時間軸のような期待形成に働き掛ける政策フレームワークにシフトするというのは却ってミスコミュニケーションの拡大になるリスクもあるなあと思うのでありました。

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2011/01/06

さてさて、昨日はまだ頭が年初(いつも頭が寝ぼけているだろというツッコミは謹んで却下致します^^)でございましたので完全スルー体制としたFOMC議事要旨でございますが、微妙な論点があったので取りあえず「FOMCメンバーのビューおよび政策決定」に関する部分から少々。

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20101214.htm(html版)
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/fomcminutes20101214.pdf(pdf版)

紙に出すときはPDFを等倍印刷した方が読みやすいのですが、引用する時にはHTMLの方が使いやすいので基本的にHTML版の方から引用をするでござるの巻。なので、基本的にはFRBスタッフの経済見通しなどの話は必要があったら後日追加しますが、今回は後半の『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』部分から引用します。

○今回の議論の白眉はやはり「長期金利に関する論議」ではないかと

「長期国債買入で長期金利の低下を図る」と言って華麗に長期金利が上昇した件に関してはFOMCプギャーとか思っていたりもする(不謹慎)あたくしと致しましてはひじょーに興味のある所なのですが、1パラグラフ分のスペースを使って足元の長期金利上昇に関する議論がございました。

『Interest rates at intermediate and longer maturities rose substantially over the intermeeting period, while credit spreads were roughly unchanged and equity prices rose moderately.』

この辺りに関する詳しい話はスタッフのビューに色々とありますが、前回のFOMC以降で長期金利が「かなりの」上昇を示している一方で、クレジットスプレッドは概ね変わらず、株価は緩やかに上昇している(ので名目長期金利の上昇は金利上昇以外の金融環境悪化には繋がっていないと言いたいのでしょう、というかスタッフの経済ビューのところでその辺りは「クレジットスプレッドは拡大していないし企業の資本市場へのアクセスは悪化していないんですよ」と強調しているのがチャーミング)と仰せですな。

『Participants pointed to a number of factors that appeared to have contributed to the significant backup in yields, including an apparent downward reassessment by investors of the likely ultimate size of the Federal Reserve's asset-purchase program, economic data that were seen as suggesting an improved economic outlook, and the announcement of a package of fiscal measures that was expected to bolster economic growth and increase the deficit over coming quarters. It was noted that the backup in rates may have been amplified by year-end positioning, as well as by some reported mortgage-related hedging flows.』

つーことで足元までに長期金利が上昇した要因について幾つかの要因を指摘しているのですけれども、(1)FRBの資産購入プログラムの規模に対する市場の期待が低下した、(2)足元での経済指標が景気見通しを引き上げるものであった、(3)ブッシュ減税継続などの財政刺激策が、目先数四半期に渡っての経済成長押し上げと財政赤字拡大を期待させるものであった、という点に加えて(4)年度末におけるポジション調整の動きや、MBSのヘッジ絡みの売買が金利上昇を加速させた可能性、というのを指摘しています。

でね、話をまあここで止めておけば良いのにとあたくしなんぞは思うのですけれども、その次に何と申しますが物凄くのけぞるというか脱力する議論があるのよこれが。

『A number of participants indicated that, because the backup in rates appeared to importantly reflect changes in investors' expectations about the size of Federal Reserve asset purchases, the backup was consistent with purchases helping to keep longer-term yields lower than would otherwise be the case.』

ちょwwwwwwwwお前それはwwwwwwwww

・・・・えーっとですな、どういう話をしているかと申しますと、「a number of」って言ってるんですから多くのFOMCメンバーが認識しているのは、「足元の長期金利上昇は主に市場参加者がFRBの今後の資産買入規模に関する予想の変化(つまり資産買入規模が今後増えないとか現状の予定をコンプリートする前に終了するとかいう予想に転じたということ)を反映したものである」ということである、てな話をしているのですな。

何かその時点でどうなのよというツッコミがあるのですが、その次の部分(文章的には同じ文のカンマ以下部分ね)が更に(;゚д゚)な訳でございます。

つまり、そこの部分を読みますと「ということは、足元の金利上昇は『FRBの資産購入プログラムが他の手段よりも長期金利を低位に維持する事の助けとなる』ということに整合的である(事を示していると多くのFOMCメンバーが指摘した)という中々こう脅威の指摘をしているのですよね。

この部分の何がおそロシアかと申しますと、そもそも「FRBの長期国債買入規模を拡大させるor拡大するであろうという期待を市場に持たせる事によって長期金利を低下させる」という力技にも程があるロジックをFOMCメンバー(今月から一部入替になりますが)の多く(a number of participants)が持っているということでありまして、どう見てもそれは無茶にも程があるだろと存じます次第。即ち、資産買入プログラムが景気や物価に対して好影響を与えるというものであって、市場参加者もその認識を共有しているのであれば、資産買入の拡大は景気見通しの上方修正に繋がるものであり、それによって長期金利が上昇する方が先に来るでしょ(というか現に来ていると思うのだが米国の金融市場では)と思うのでありまして、そこの所よりも「足元の金利上昇は資産買入規模への期待がしぼんだ事によるものである」という点を強調しちゃうと、「資産買入拡大」→「市場参加者の景気やら物価やらの見通し上方修正」→「長期金利上昇」→「長期金利上昇を抑制するために資産買入を更に拡大」という無間地獄というか要するに米国債券市場のボラティリティーの拡大を巻き起こす話になると思うのですよね。

それにですね、どこかの段階で積みあがったFRBの国債買入の残高が足元の米国連邦政府の財政赤字拡大とリンクして「中央銀行による財政ファイナンスとなって維持不可能になるのではないか」という制御不能な財政マネタイゼーションという発想にいきなり転換した場合にはどうしようもない状態になってしまうリスクがある訳でございまして、この手の「市場の期待」って言うのは必ずしも線形で動くものではなく、どこかの閾値を超えるといきなり非線形にジャンプするものであるというのが市場現場労務者10ウン年のあたくしが思うのでありまして、必ずしも「FRBが長期国債を何億ドル買うから長期金利が何ベーシス下がる」というような定量的な話にはならないと思うのですよね。

でも、何かここの部分を見ておりますと、FOMCメンバーの多くはそーゆー部分を割と楽観的に「定量的にこれだけ買うから長期金利はこれだけ下がる」みたいなナイーブな話をしとりゃーせんかと微妙に薄ら寒いものを感じる次第なのでござる。


いやまあね、長期金利を下げる云々といっておっぱじめた部分があるし、足元での長期金利上昇先行モードが景気の足を引っ張る事を懸念してこの手の話をわざわざ公表文書に掲載する事によって長期金利の上昇を抑えるというような思惑で威勢の良い事をあえて入れている、という考え方も出来るのでこの辺りは微妙なのですが、少なくとも字面を裏も表も無く読むと、「この人たちマジで長期国債買入の額を調整することで長期金利をコントロールできると思ってるか?????」とおそロシアな物を感じる次第。

でまあこっちのロジックに固執すると何か長期金利上昇抑制のためにQE2のおかわりを実施とか平気でやりそうで、その度に米国長期金利のボラが更に上昇というような非常に香ばしい展開も想定されますので、まあ何だかなあと思うのです。


○長期金利低下に固執するよりは時間軸強化の方向が政策としてのリスクもコストも小さいと思うのだが

で、実はこのパラグラフはまだ一文残っておりまして、その部分が救いになるかもしれないと思うのですよ。ということで上記の続きでこのパラグラフの最後の部分ですが。

『Several meeting participants mentioned the communications challenges faced in conducting effective policy, including the need to clearly convey the Committee's views while appropriately airing individual perspectives. 』

金融政策のコミュニケーションポリシーに関してより有効な政策を行うに際する新たなチャレンジに直面している(って何か訳が怪しくてすいません)という事を数名のFOMCメンバーが指摘していて、そこにはFOMCの個別(なのかメンバー個人個人なのか良く判らんが、普通は個人個人のビューは細かく出さないのがお作法だと思うので個別案件ということかいな)の見通しに関して明確に伝達する必要があるのではないかという論点が含まれるという事です、とかヘタクソにも程がある訳をしてみたのですが、ニュアンスとしては「FOMCの政策スタンスをより明確な方法で示す」という話ですから、時間軸の明確化のような話になるのではないかなあと思うのですよ。


でね、まあそういう意味では時間軸の強化っぽいネタはこの章やその次の『Committee Policy Action』の章のあちこちに散りばめられてはいるのですが、ここの指摘というのはそれらの辺りに関しても「景気認識やら見通しの中での表現で伝えるという示唆方式ではなく、より明確化したほうが良いのではないでしょうか」という論点なのではないかなあと思うのでございまする。

んでもってどの辺が時間軸っぽい話の部分かと言いますとこれがまたこの2章だけでも幾つかあるのですが、まずは全体としての経済活動の先行き見通しに関するパラグラフから。

『Regarding their overall outlook for economic activity, participants generally agreed that, even with the positive news received over the intermeeting period, the most likely outcome was a gradual pickup in growth with slow progress toward maximum employment. 』

つーことで全体的な見通しとしても「中心的な経済見通しは緩やかな成長であり、それはFRBの目的である雇用の最大化に対して遅い進展しか示さない」と言う事で、即ち現在の極めて緩和的な金融政策の長期化を示唆しているという訳ですな。

更に『Committee Policy Action』の冒頭でもこんな話がありますが、まあこの辺りは声明文にも反映されておりましたかな。

『Members noted that, while incoming information over the intermeeting period had increased their confidence in the economic recovery, progress toward the Committee's dual objectives of maximum employment and price stability was disappointingly slow. In addition, members generally expected that progress was likely to remain modest, with unemployment and inflation deviating from the Committee's objectives for some time.』

ということで、前回のFOMC会合から足元までの回復のペースは「dual objectives」に対して「disappointingly slow」であり、先行きの見通しに関しても当面(for some time)の回復ペースに留まり、FRBの目的とする失業率や物価上昇率に対して乖離していると仰せですな。

んでもって、前半の景気認識部分を引用してないですけれども、まあ足元の景気回復に関してはFOMCの予想よりも良いですよという話をしておりますが、その部分を踏まえながらも当面の金融政策は継続しますよという話をしていまして、時間軸が短期化するのを防ごうとしているなあというのも見えて参ります。同じく政策決定論議の部分から。

『While the economic outlook was seen as improving, members generally felt that the change in the outlook was not sufficient to warrant any adjustments to the asset-purchase program, and some noted that more time was needed to accumulate information on the economy before considering any adjustment.』

景気見通しは改善しているものの、その改善は資産購入プログラムの規模修正を正当化するには不十分であり、数名のメンバーは資産購入プログラムの修正を検討する前により多くの景気改善の情報を必要とする為に時間が掛かると指摘しました。

『Members emphasized that the pace and overall size of the purchase program would be contingent on economic and financial developments; however, some indicated that they had a fairly high threshold for making changes to the program. 』

FOMCメンバーは資産購入プログラムの実施ペースや実施総額は経済状況や金融環境次第であることを強調したものの、数名のメンバーはプログラムの変更を行うための敷居はかなり高い事を示唆しました。

つー感じで、声明文に示された「景気見通しは改善しているけれども物価や雇用に関しては下げている」というある意味器用な説明で「景気回復ムードに水を差したくないし、その一方で時間軸を短くして長期金利の更なる上昇を招くのは避けたい」という印象を思いっきり受けた訳ですが、今回の議事要旨におけるFOMCメンバーの議論部分を見ておりますと、声明文を読んであたくしめが感じたような話をしているんだなあと思ったのでございました。


個別の需要項目に関する部分も引用したいところですが、まあ長くなるので華麗にスルーでございますが、特に物価と雇用に関する部分で「雇用の改善に時間が掛かる」「経済のスラックが残存し、雇用者所得の伸びが低い状況ではコア物価の上昇は緩やかなものに留まる」といういつもの話を強調していまして、まあその辺りからも時間軸の強化みたいな話がでていますなという感じです。

つまりですな、前半でご紹介したような「長期金利を力技で押し付ける」的な発想で今後も政策運営のスタンスが決まっていくのか、それとも今回に関しては力技的な話をしているものの、将来的にはその辺りの話から足抜けして「時間軸の強化」方向でのスタンスにしていくのか、という辺りが今年のFED野次馬ヲチャーの積りのあたくしとしての注目でございまして、仮に前者の「力技での長期金利押し下げ」に固執するようであれば、米国は長期金利だけでなく短い所まで含めてボラは益々上昇するでしょうし、後者になれば徐々にイールドカーブの手前の方が落ち着いてきてもおかしくは無いと思うのですが、米国の場合はまだ「投資対象無いから国債買うか」みたいなステージになっていないのでその辺は微妙かもしれませんなと思うのでありました。


○景気の上振れ下振れリスクに関してですが「え??」と思った場所が

さっきの『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』での先行き見通しに関する部分に戻りますが景気の上振れと下振れリスクに関して。

『A few mentioned the possibility that growth could pick up more rapidly than expected, particularly in light of the very accommodative stance of monetary policy currently in place. It was noted that such an acceleration would likely be accompanied by significantly more rapid growth in bank lending and in the monetary aggregates, suggesting that such indicators might prove to be useful sources of information. 』

どう見てもホーニッグさんですという感じですが、「a few」と書いているのですからホーニッグさん以外にも(少数意見扱いですが)この論点の話があるのねというのが微妙にチャーミングではございますが、足元の景気加速が予想より強く、異例の緩和的な金融政策が銀行貸出やマネタリーのより急速な拡大をもたらす可能性があるという上振れリスクの話をしてますわな。まあ少数意見ですけど。

『Others pointed to downside risks to growth. One common concern was that the housing sector could weaken further in light of the considerable supply of houses either on the market or likely to come to market. Another concern was the ongoing deterioration in the fiscal position of U.S. states and localities, which could lead to sharp cuts in spending and increases in taxes.』

ただまあ他の人たちはダウンサイドリスク意識ということで、住宅市場の低迷継続と連邦政府および地方政府の財政問題に起因する公的支出の縮小や増税が経済に与える悪影響を懸念している、という所まではまあさいですなという感じなのですけど。

『In addition, participants expressed concerns about a possible worsening of the banking and financial strains in Europe, which could spill over to U.S. financial markets and institutions, and so to the broader U.S. economy. 』

先日ご紹介した12月頭に実施されたBOEの議事要旨で思いっきり同じネタがありましたけれども、ヨーロッパの周縁国の債務問題が英国の銀行セクターの資金調達のコストやアベイラビリティーに悪影響を与えて英国のクレジット環境の悪化に繋がるというのはまあ話として思いっきり判るのですが、米国にそんなに問題拡大するのかよってのはひじょーに疑問なところでして、何でこういう話になっているのかは微妙に気になる所であります。まあこの時点ではソブリンが飛ぶみたいな話もあったので、その辺りで懸念が大きくなっていたと言う事なのかも知れませんが。

まあ基本的に「リスクはダウンサイド」という事かと思います。


てな感じでとりあえずFOMCメンバーの議論の中から一部引っ張ってきてああでもないこうでもないと申し上げましたが、あたくしの妄想成分も入っていると存じますので、この辺違うんじゃないのというようなお話がありましたら是非是非(^^)。しかしまあ読んでて思うのは「QE2の評価に関してメンバーの見解が固まっていないな」というところかと思いますです、はい。

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2011/01/05

昨日の続き
http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/mpc/pdf/2010/mpc1012.pdf

○景気に関しては案外強気だがユーロ圏ソブリン問題の下振れリスク警戒

第13パラグラフから。

『The Q3 data were mildly encouraging because they indicated that growth had been driven by final demand, rather than by stockbuilding. That suggested that the recovery might be more securely based than if growth had been driven primarily by a temporary boost from the working out of the stock cycle.』

ということで、景気の拡大が在庫復元だけではなく最終需要の伸びによって起きている事を示す指標がでているのが「mildly encouraging」と指摘していますな、うんうん。

『Nevertheless, the range of available business surveys had indicated, on balance, that activity growth might slow a little in Q4 and Q1 to slightly below its historic average rate. Within that aggregate rate, it was possible that manufacturing growth would remain relatively robust but that services sector growth would be more modest.』

ただまあ先行きに関してはややスローになると。

でまあ需要項目別に詳しい話がその後にあるのですがそこはスルーして第16パラグラフ。

『A more significant risk to the outlook for UK activity arising from recent developments within the euro area was the possible impact that a prolonged period of financial market tensions might have upon domestic demand within the United Kingdom. It could hamper the ongoing process of balance sheet strengthening by the UK banks, which could in turn put renewed pressure on the cost and availability of credit to UK households and companies, especially if it were associated with a further withdrawal from UK lending markets by some euro-area banks. It could also lead to a reduction in spending as the result of a fall in household and business confidence.』

ということで、最近のユーロ圏での金融市場の動揺が長引いた場合に、英国の需要に悪影響を与えるという話と、英国の銀行の資金調達に悪影響が起きた場合に国内の民間セクターの資金調達に悪影響を与えるという論点であります。で、この問題はリスクを高めているという話を金融政策決定に関する議論の第28パラグラフでも強調していますが、まあそっちの引用はこの後で。


○金融政策決定におけるリスク認識

基本的には毎度お馴染みの如くなのですが、「前回のMPC以降に特に予想の変化が大きくは起きていない」(第25パラグラフ)、「目先に関してはインフレの更なる上昇を予想する」(第26パラグラフ)「しかしながら経済の余剰生産力が当面の間継続する環境においては、一時的な要因が弱まってくればインフレはターゲット水準に向けて低下するでしょう」(第26パラグラフ)という話は継続しています。

で、第27パラグラフではいつもの指摘。

『The key consideration for the policy decision was whether recent developments had altered the Committee’s view of the balance of risks to the prospects for inflation in the medium term. As had been the case for some months now, there were two opposing key risks.』

先に低下リスクの話がありますが、いつもの「財政再建と経済の余剰生産力」問題に加えて、今回は先ほど引用したユーロ圏問題の長期化リスクに言及していますがさっき書いたので引用だけ。第28パラグラフから。

『On the downside, there remained the risk that private sector demand would not pick up sufficiently strongly to offset the fiscal consolidation and to erode the substantial margin of spare capacity that existed in the labour market and within firms. The persistent underutilisation of resources could then cause inflation to fall significantly below the 2% target in the medium term.』

ここまでは今までと同じ。

『Recent developments within the euro area had heightened that risk. A persistent period of financial market distress could depress activity in some of the peripheral euro-area countries and hence the demand for UK exports, although this direct effect was unlikely to be large. It could, however, also adversely affect business and consumer confidence both at home and overseas, pushing down on demand. And it could affect UK banks’ ability to raise funding, leading to a deterioration in the cost and availability of credit to households and firms. The likelihood of these events occurring was hard to judge, but their impact could be large.』

で、アップサイドに関しては昨日引用した世界的なディマンドプルインフレに関するリスクが新たに加わっているのですな。第29パラグラフから。

『On the upside, there was the risk that a prolonged period of above-target inflation could cause inflation expectations to rise, making it more costly to bring inflation back to target in the medium term. Recent developments had heightened this upside risk. CPI inflation had risen again in November.』

ここまでは今までと同じ話ですが、足元のインフレ拡大でこのリスクも拡大と。

『There were also signs of increasing inflationary pressures from strong growth in the world economy. Commodity prices had risen substantially over recent months, which could herald a prolonged period of deterioration in the UK terms of trade. And there were some signs that UK households’ inflation expectations were edging up. Nonetheless, available indicators of businesses’expectations and those inferred from financial markets had remained stable. And it was encouraging that earnings growth had remained moderate.』

所得の伸びがモデレートなのがインフレスパークしない意味でencouragingとな。


○ポーセンVSセンタンス

毎度の反対意見ですが、ポーセン先生は今回「サーベイのインフレ予想が上昇している事よりも金融市場の示唆するインフレ率(は上昇していない)事の方が有益なデータである」とのご主張です。めんどいので第31パラグラフをまる引用。

『One member continued to take the view that a further expansion in the Committee’s programme of asset purchases was necessary to prevent inflation undershooting the 2% target in the medium term. For that member, recent inflation outturns could be explained by the various price level shocks that had occurred and contained little news about inflation in the medium term.』

『Financial markets provided a more valuable guide to inflation expectations than did surveys of households, and measures backed out from them had remained broadly consistent with the inflation target.』

ほほう。

『That was consistent with continuing subdued growth in earnings. Looking ahead, consumption growth was likely to slow, reflecting in part the impact of the fiscal consolidation. It was likely that there was a significant margin of spare capacity and that this would persist for some time. In this member’s view, that would probably act to push inflation well below target in the medium term in the absence of further measures to stimulate demand.』


で、センタンス先生は思いっきり「景気が良くなっている一方でインフレリスクが拡大している」「経済の余剰生産力がインフレを押し下げる力は実は弱いのではないか」というこちらも直球攻撃です。第32パラグラフから。

『Another member continued to take the view that it was appropriate to begin to withdraw some of the exceptional monetary stimulus that had been provided by cutting Bank Rate to 0.5% alongside the Committee’s programme of asset purchases.』

『Demand had continued to recover at home and abroad, and a wide range of measures of UK nominal demand had grown at above typical pre-recession rates. Private sector activity had expanded steadily over the past year, which augured well for the economy’s ability to continue to grow in the face of the prospective fiscal tightening, although the pattern of that growth might prove to be volatile.』

景気は良いとな。

『Meanwhile, inflation had remained above the target. Strong global growth was putting upward pressure on commodity prices, and there was little evidence to suggest that spare capacity was exerting significant downward pressure on UK inflation.』

ほほう。

『In this member’s view, a gradual withdrawal of monetary stimulus by raising Bank Rate was justified by recent economic developments and would help to reinforce the expectation that inflation would fall back to the target.』

ま、どちらが正しい(両方とも間違っているのかもしれませんが)のかとかはこれから見ていく話ですが、足元でヘッドラインのインフレが上昇して春には4%に近づくという英国が振り上げた量的緩和政策の拳をどう収拾する(しないかもしれませんが)のかは見ものでございます、などとすっかり野次馬的不謹慎発言ですな。

なお、今回のMPC議事要旨でもそうなのですが、量的緩和政策の「定量的効果」に関する議論らしき部分は一切無く、その辺りは華麗にスルーの方向だというのは把握しました(^^)。

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2011/01/04

BOEの12月MPC議事要旨より。

http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/mpc/pdf/2010/mpc1012.pdf

○当然ながらインフレ関連の言及が多いですわな

いきなり第19パラグラフでございますが、目先の英国のインフレ見通しは更に上方修正されて「2011年の春には4%近くに上昇」という素敵な話がありましてパラグラフの途中から引用するだよ。

『Inflation had generally been a little higher than the Committee’s central expectation in recent months. In the near term, it was possible that some firms might raise prices in anticipation of the increase in VAT to 20% in January 2011. The prospective VAT increase would raise measured CPI inflation over the year ahead and would be likely to keep inflation above the target for several quarters. Some utility price increases had been announced for December, which would also be likely to add to inflation in the near term. The MPC noted that inflation was likely to rise further over coming months and could well reach 4% by the spring, somewhat higher than the November Inflation Report central projection.』

とまあ中々お洒落な予想になっているのですが、世界経済に関する論議の部分で世界経済に関してディマンドプルのインフレの話とかがあるのがこれまたほほーという感じだったりします。

第7パラグラフから。

『The data released over the month had pointed to continued firm - if regionally unbalanced -global growth and there were additional signs of global pricing pressures, particularly evident in markets for commodities.』

グローバルには商品価格上昇に見られるような追加的なインフレ圧力が見られるとな。

第9パラグラフは米国の話なのですが、米国経済に関しては普通の話をしていますけれども、最後にこのような指摘がありますわな。

『Recent announcements of further monetary and fiscal stimulus were likely to boost the outlook for activity and inflation.』

最近発表された金融および財政の刺激は経済活動とインフレの見通しを引き上げることになるかもしれませんとな。

第10パラグラフはアジアの話で、アジア経済が強いという話の中に日本も入っている(一時的な政策効果であると書かれていますが^^)のが素敵ですが、それはそれとしてアジアのエマージング諸国におけるインフレ圧力に関する指摘部分が。

『There were signs of increasing inflationary pressures in some emerging economies and monetary policy had been tightened in several over recent months, including China and India.』

というような話のあと、第11パラグラフでは商品価格が上昇しているという話をしていまして、その中で新興国におけるディマンドプルインフレ発生の可能性に関して指摘しているように見える部分があるのですにゃ。

『It was possible that these developments signalled a persistent increase in the prices of commodities relative to those of finished goods and services, given the potentially limited ability to increase supply in response to increases in demand, especially from emerging economies. If so, it was possible that there could be further upwards pressure on commodity prices if demand pressures intensified.』

とまあそんな感じでインフレ圧力に関する言及が多いのはCPIが絶賛ターゲット超過状態が続いているからある意味当然の指摘なのですけれども、日米とは全然違う状態となっているので読んでて中々興味深いものを感じますです、はい。


○物価見通しに関して

もうちょっと長い期間の物価見通しに関しては、毎度お馴染みの「経済の余剰生産力が物価上昇圧力を抑える」という中心的な見通しは変えていない(第20パラグラフ)のですが、その不確実性に関して第21パラグラフに書いてあるのですが、イマイチ後半部分の意味が判らない(字面は判るのだが意味が判らないというのがBOE様というかジョンブル野郎の仕様でありまして、正直読みやすいのか読みにくいのか非常に良く判らんのですよね、毎回しつこく読んでいると行間を埋められるようになってくるのですが・・・・)ので引用だけしますです(汗)。

『Further increases in global demand relative to supply - to the extent that they were not already fully reflected in market participants’ expectations - might lead to upwards pressure on global commodity prices for some time. 』

将来のディマンドプルインフレに関しては市場も完全には織り込んでいないので暫くの間商品価格の上昇圧力になるかも知れませんとな。

『The extent to which commodity price increases would affect UK inflation would depend in part upon what caused them and hence upon the behaviour of the sterling exchange rate. If higher commodity prices signalled a rise in generalised inflationary pressure in the world economy, it was possible that the sterling exchange rate would appreciate to offset the effects of that pressure on domestic inflation. But it was less likely that there would be an offsetting appreciation of the exchange rate if, because of supply constraints, world prices of commodities rose relative to those of finished goods and services.』

・・・・・ここの部分が単語の意味は判るのだが言ってる事の意味が判らないという素敵な部分ですので誰か教えてくださいませ。結局為替レートの影響の話をしているように見えるのだが、話が為替ドリブンなのかグローバルインフレ圧力と英国内の余剰生産力によるギャップによって為替市場に影響がという話をしているのかが良くワカランチ会長なのでありんす。いやまああたくしの英語力(と知能)が足りないだけなんですがね。


で、物価見通しに関しての重要なファクターとしては世間様のインフレ期待と賃金の動向という話をしていますが、その中でサーベイによる家計のインフレ予想が上昇している事と、企業のサーベイやマーケットからインプライされるインフレ予想が安定している事を指摘してまして、家計サーベイが2年先あたりまで上昇していることをやや懸念しているようでもございます。第22パラグラフから。

『The household surveys suggested that expectations for inflation one year ahead had risen over recent months; that was broadly in line with the Committee’s own central view of near-term inflation prospects. More worryingly, however, measures of households’ expected inflation two years ahead had also edged up. But longer-term measures had remained more stable.』

『And there was less evidence of a significant rise in measures inferred from financial markets or in survey-based measures of firms’ inflation expectations, which might matter more immediately for price-setting behaviour.』

でも賃金が上がらないから大丈夫でしょという指摘は第23パラグラフの頭です。

『An increase in inflation expectations was unlikely to raise inflation in the medium term unless it resulted in a sustained rise in pay growth. The outlook for pay would also depend upon the behaviour of productivity as the economy recovered, the degree of slack in the labour market and the extent to which firms were willing to grant higher pay increases in order to retain employees with valuable skills.』

と、ここまで書いたところで(前半でしょうもない雑談に時間を食ったせいで)時間がなくなってまいりましたので(大汗)、誠に恐縮ですが続きは明日。FOMCの議事要旨ネタもあるというのに(というかそれ以前の問題として短観とか日銀政策決定会合議事要旨ネタを華麗にスルーしているのですが・・・)誠にすいませんすいません。

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2010/12/21

以下虫干しネタですが、明晩には直近のMPC議事要旨が出てしまうので慌てて引っ張り出すのがBOE11月MPCの議事要旨ネタであります。

http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/mpc/pdf/2010/mpc1011.pdf
すいませんこれ出たの1か月前でした(滝汗)。

○資産買入プログラムに関する政策効果や波及ルートに関する議論がすっかりスルー状態

11月MPCの議事要旨見てて思ったのですが、BOEの論議の中で資産買入、というか自分たちで思いっきり言及している「量的緩和」に関しては何かこう思いっきり華麗にスルー状態になっているんですよね。

スルー状態のためにあまりこう引用しようにも引用する場所が無いのが困り物なのですが(汗)、要するに今の政策は「緩和的な金融政策である」という括りで纏めちゃっていまして、金利操作の余地が無い訳では無いと思うのですが、その部分でなぜ金利操作じゃなくて資産買入なのかという話がすっかりスルー状態になっているのがある意味不思議ちゃんなBOEクオリティーなのであります。

まあBOEのスタンスにおいては、政策金利を0.5%から下にしても有害微益であるというのは説明されているので、だから量的緩和政策をするんですよ、っていうような話になると思うのですけれども(つまり政策金利の引き下げの代替として量的緩和政策という名目で国債買入を実施している)、何か最初の時と話が違ってねえか(当初はもっとマネタリーベースがどうのこうのみたいな話をしていたと思うのだが・・・)という感じがする所ではございます。

例えば、第12パラグラフから20パラグラフまでが『Money, credit, demand and output』ちゅう小見出しのコーナーなのですが、以前はこの部分で国債買入でマネーがどうのこうのみたいな話が一部ではあったのですが、最近はすっかりこの辺りでは量的緩和政策の直接的な効果がどうのこうの的な部分は無くなっている次第でして、いつの間にやら「量的緩和は短期政策金利のゼロ制約(実際には0.5%なので名目上のゼロ制約に達していないが)による代替としての緩和拡大でございます」的な話になっているんですなあという感を深くするものでございまする。


○インフレ見通しのリスクに関して

11月のインフレーションレポート向けの議論部分『The November GDP growth and inflation projections』の第31パラグラフと32パラグラフに今後のインフレ見通しのリスクやら撹乱要因やらに関しての言及がございます。

第31パラグラフより(以下引用部分はunicodeフォントの関係で一部改変部分がありますが、元の文章の意味には変化がないようにしておりますので念の為)。

『There were substantial risks to the inflation outlook. Inflation would be affected by future developments in commodity and other traded prices, the degree of spare capacity and its impact on wages and prices, and the evolution of inflation expectations.』

インフレのリスクの中にマネタリーがどうのこうのという話はすっかり無いですね。

『Continued strong growth in some emerging economies might lead to further upward pressure on the prices of commodities and other imported goods and services, so pushing up companies’ costs. The degree of spare capacity and its impact on inflation in the medium term would depend on: the strength of demand; the persistence of the reduction in productivity; the performance of the labour market; and the sensitivity of wages to any labour market slack.』

最初の部分で挙げた要因が上下のリスクのどっちに効いているかの説明ですが、マネタリーがどうのこうのだのBOEのバランスシートがどうのこうのだのという話がまるっきり無いのはある意味清清しい。

『Inflation might fall further than expected if the degree of spare capacity was larger or if it had a greater impact. But inflation might remain higher than otherwise if the current period of above-target outturns caused medium-term expectations of inflation to rise, or if the effect of sterling’s past depreciation had not yet worked through fully.』

インフレ期待に関しても、足元でのターゲットを超えたインフレが中期的なインフレ期待に与える影響と、これまでの英国ポンド相場下落の影響に関してというのはありますけれども、こちらにもマネタリーだのなんだのという話は無いですな。


第32パラグラフより。

『There was a wider than usual range of views among Committee members over the likely effects on inflation of these various factors.』

へいへいさいだっか。

『On balance, the Committee’s best collective judgement was that, conditioned on the assumption that Bank Rate followed a path implied by market interest rates and that the stock of purchased assets financed by the issuance of central bank reserves remained at £200 billion throughout the forecast period, the chances of inflation being either above or below the inflation target by the end of the forecast period were roughly equal. The most likely outcome was that inflation would fall below target by 2013, but the risks around that most likely path were judged to be skewed to the upside.』

ということで現在の政策パス継続における見通しに関してとそのリスクに関しての説明でございます。


○Posen委員(と思われる人)の反対理由

んでまあ第33パラグラフ以降に『The immediate policy decision』というのがあって、そこでインフレに関するアップイサイドとダウンサイドのリスク認識に関して延々と論議が繰り広げられているのでそこもオモロイのですが、ただまあそこでの話そのものに関しては従来より繰り返されている話なので引用を割愛(単に量が多いのと今更ネタなので割愛しているというのもありますが^^)しまして、ポーセンさんと思われる人の現状維持反対理由が大39パラグラフにありますので引用。

『One member continued to take the view that it was appropriate to expand the Committee’s programme of asset purchases. The recent inflation outturns could be explained by reference to the various price-level shocks that had occurred, which suggested that measures of underlying inflation would be well below the target. The risk to inflation expectations was limited, given muted nominal wage growth, the prospective impact of fiscal consolidation, and the Committee’s mandate and independence.』

あたくしのエエカゲンな英語力によりますと、ポーセンさんは「現在の物価上昇は各種のプライスショックによって起こっているものであり、基礎的なインフレはターゲットを下回って推移している」「抑制された賃金上昇、今後の財政再建政策の進行、BOEのマンデートおよび独立性、という元でのインフレ期待上昇のリスクは限定的である」と説明しているようですな。

『In this member’s view, international evidence from past recessions suggested that underlying productivity growth was unlikely to have declined by much and there was undoubtedly a significant degree of spare capacity in the economy.』

世界の過去のリセッションが示唆しているのは、基礎的な生産力は大きく低下しそうになく、その結果としてかなりの程度の経済における余剰生産力が残る事になる(のでインフレは抑制される)といいう事が疑いなく明確である、ということだ、とかヘタクソな翻訳ソフトのような書き方でどうもすいませんすいません。

『The Committee’s central projection for growth optimistically assumed only a limited impact of the planned fiscal consolidation on consumption and the risks to growth lay to the downside of that projection.』

で、MPCの見通しは財政再建策のマイナスインパクトを過小に見積もっているという指摘も。

『Collectively, these considerations suggested that further asset purchases would be necessary to avoid inflation falling well below the target in the medium term.』

んでもって、後の方にありますが、ポーセンさんは政策金利は据え置きつつ、資産買入の規模を£50Bil引き上げるという提案をしています。


○Sentance委員(と思われる人の反対理由)

逆側に毎度反対しているセンタンスさん(ポーセンさんはこの前の会合から資産買入拡大方向の主張を開始)ですが、折角ですので第40パラグラフを引用。

『Another member continued to take the view that it was appropriate to begin to withdraw some of the exceptional monetary stimulus that had been provided by cutting Bank Rate to 0.5% alongside the Committee’s programme of asset purchases.』

いつものことですが、資産買入規模は維持しながら利上げ(25bp上げ)するという提案です。

『In this member’s view, recent news had strengthened the case for altering policy sooner rather than later: the economy had grown robustly during the third quarter; surveys pointed to continued growth in the final quarter of the year; job creation had continued; and strong global growth was placing upward pressure on commodity prices.』

ということで、理由が思いっきり景気見通しでして、その点ではPosenさんと真逆になります。

『According to the Committee’s latest projections, even after allowing for the effects of fiscal adjustment, the central projection for economic growth was in the range of 2-1/2% to 3-1/2% per annum, and inflation was set to rise further above the target before falling back.』

つーことで物価見通しも当然ながら先行き下がらないんじゃないかという見方。

『In this member’s view, monetary policy should be used to reinforce the expectation that inflation would fall back to the target through a well-communicated policy of gradually increasing Bank Rate.』

で、利上げをする事によってインフレ率がターゲット(2%)に収まるようにインフレ期待を制御すべきであるという話で、それがよりよい政策コミュニケーションでありますみたいな話をしておりまして、この辺り思いっきり直球ストレートで景気見通しの違いとか物価見通しの違いになっているのは中々清清しいところでございまする。

とまあそんな感じで思いっきり趣味の虫干しでどうもすいませんでした。

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2010/12/15

柄にも無く後半部分を昨日の夜ヘコヘコ下書きしてウダウダと書いた(あたくしの英語力だと声明文読みは時間が掛かるアルねorz)ため、前半のFOMC声明文コピペ部分と併せて分量だけは本駄文史上最大級となりました(というかどう見ても2日分の書き物です本当にありがとうございました)が、内容があるかどうかは知りません(−−;)

ではまずはFOMC声明文から。

http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20101214a.htm(今回)
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20101103a.htm(前回)

○景気認識は若干引き上げつつ物価と雇用の部分は引き下げるという器用な声明文

まあ大体こういう技巧的な動きをしだすのはミスコミュニケーションへの第一歩だというのは趣味の日銀見物人(ストーカーではありません)を暫くやっているとひじょーに痛感するのですけれども。

でですな、今回はごちゃごちゃと変更があったのは景気物価に関する認識を書いております第1パラグラフの所でして、第2以降はまるっきり同じ(一部違うけど)という結果になっておりますので、第1パラグラフを良く見るのですけれども、小見出しに書いたように今回は景気認識を引き上げながらもFRBのマンデートの物価と雇用の所に関しては言及が厳しくなってくるという器用なパターンに。

・景気の総括認識

『Information received since the Federal Open Market Committee met in November confirms that the economic recovery is continuing, though at a rate that has been insufficient to bring down unemployment. 』(今回)

『Information received since the Federal Open Market Committee met in September confirms that the pace of recovery in output and employment continues to be slow. 』(前回)

景気回復のペースについて「continues to be slow」だったのが「recovery is continuing」と入れているので景気認識引き上げなのですが、返す刀でそのペースを「insufficient to bring down unemployment」と失業を引き下げるには不十分なペース、という雇用の先行き見通しに関する厳しい見方を示すという器用なプレイをしています。

・家計消費

『Household spending is increasing at a moderate pace, but remains constrained by high unemployment, modest income growth, lower housing wealth, and tight credit.』(今回)

『Household spending is increasing gradually, but remains constrained by high unemployment, modest income growth, lower housing wealth, and tight credit. 』(前回)

おじちゃん頭が悪いから良く判らんのだが、「gradually」から「at a moderate pace」って判断上がってますのかな??んでもって後半部分のそうは言ってもこれこれこういう要因で拡大は抑制されていますという部分は同じっすね。

・企業の支出、雇用行動

『Business spending on equipment and software is rising, though less rapidly than earlier in the year, while investment in nonresidential structures continues to be weak. Employers remain reluctant to add to payrolls. 』(今回)

この部分は前回と全く同じ。

・住宅セクター

『The housing sector continues to be depressed. 』(今回)
『Housing starts continue to be depressed. 』(前回)

更におじちゃん頭が悪いので判らんのだが、今回何で「Housing starts」が「The housing sector」になったんだろう、どういう意味があるんだか良く判らんです誰か教えてください教えて下さい。

・長期的なインフレ期待および足元のインフレに関して

『 Longer-term inflation expectations have remained stable, but measures of underlying inflation have continued to trend downward. 』(今回)

『 Longer-term inflation expectations have remained stable, but measures of underlying inflation have trended lower in recent quarters.』(前回)

最近の数四半期(で訳は良いのか?)において足元のインフレ率が低下しているという前回の話に関して、今回は「have continued to trend downward」と思いっきりダウントレンド形成でっせという話をしておりまして、ここの部分を下げているってえ感じでございます。


○第2パラグラフ以降は前回とまるっきり同じ

第2パラグラフは例の「FRBは法的に定められたマンデートを実施する訳だが、その目的に向かう経済の動きは「disappointingly slow」という話ですわな。前回と全く同じ文言でございますが一応引用。

『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability. Currently, the unemployment rate is elevated, and measures of underlying inflation are somewhat low, relative to levels that the Committee judges to be consistent, over the longer run, with its dual mandate. Although the Committee anticipates a gradual return to higher levels of resource utilization in a context of price stability, progress toward its objectives has been disappointingly slow.』(今回)


第3パラグラフは「そういうことでFRBは資産買入を実施するお(^o^)」という部分ですが、これは前回と表現が違う部分は事実上ありません。前回新たに実施した政策を今回も継続しますよ、という部分は表現違いますが、それは完全にテクニカルな部分ですのでこのパラグラフも今回分のみ引用するだよ。

『To promote a stronger pace of economic recovery and to help ensure that inflation, over time, is at levels consistent with its mandate, the Committee decided today to continue expanding its holdings of securities as announced in November. The Committee will maintain its existing policy of reinvesting principal payments from its securities holdings. In addition, the Committee intends to purchase $600 billion of longer-term Treasury securities by the end of the second quarter of 2011, a pace of about $75 billion per month. The Committee will regularly review the pace of its securities purchases and the overall size of the asset-purchase program in light of incoming information and will adjust the program as needed to best foster maximum employment and price stability.』(今回)


第4パラグラフの「金利は0〜0.25%」「exceptionally low levels for the federal funds rate for an extended period」というのも前回と同一文言だす。

『The Committee will maintain the target range for the federal funds rate at 0 to 1/4 percent and continues to anticipate that economic conditions, including low rates of resource utilization, subdued inflation trends, and stable inflation expectations, are likely to warrant exceptionally low levels for the federal funds rate for an extended period.』(今回)


第5パラグラフの「レビューを続けて必要ならばいろんなツールをだすよ」も同一文言。

『The Committee will continue to monitor the economic outlook and financial developments and will employ its policy tools as necessary to support the economic recovery and to help ensure that inflation, over time, is at levels consistent with its mandate. 』(今回)



○長期金利上昇に関する言及なしとな

てえことで、まあ今回は「景気認識を引き上げつつ物価と失業に関しては厳しい見方を示す」という器用な事をしておりまして、いやまあ確かに足元の経済指標としてはそういう器用な展開になっているのも事実としてあるとは思うのですけれども、これって「QE2は(実施前からの期待分の効果も含め)効果を発揮してますよ(キリッ)」という話をしつつ、「でもQE2は当面継続するお(^o^)」という器用な説明をするという技になっているとまあ意地の悪いあたくしは読むのでございまして、足元はこれで無事なのかもしれませんけれども、そのうちこの分裂気味になっている説明に無理が生じてくるというのは趣味のにちぎんかんさつにっきを書いておりますあたくしが思いっきり予想する所でございます。

まあ政策実施の正当化の効果が出てますよってな説明をしつつも、でも肝心の失業と物価はいかんのよってえ話って「結局QE2は効いてるのか効いてないのかどっちですねん」と突っ込まれだすと話がややこしくなるとは今申し上げましたが、これは恐らく足元でクリスマス商戦ヒャッハー減税継続ヒャッハーとか言ってつい先日は景気底割れ懸念で地獄の一丁目懸念とか言ってた連中と同じ人とは思えない相場を展開している雨公どもが「ちと待てこの景気本当に持続的回復するのかよ」という話になった時(ならなければOKだが長期金利上昇にバランスシート調整とかやっているのに大丈夫かという希ガス)にFRBは益々のインチキ説明が必要になるでしょうな、と思います。

それとですな、小見出しに書いたように、今回は長期金利上昇に関する話が何かあるかもしれないという期待が多分米国債券市場ちゃんの方にはあったと思う(無かったらFOMC声明文出てから長期金利絶賛大上昇とかしないと思う)のですが、まあ長期金利上昇に関してはノーコメントというどこかの中央銀行の梯子外しプレイを髣髴させるような梯子外しプレイが炸裂するという華麗なる展開。

資産買入の政策波及効果のルートとして「金利の低下」というのを挙げていた筈だというのに長期金利は華麗に上昇するし、2年とかユーロドル金利先物とかの中短期やら足元に近い金利まで華麗に上昇するという大変に素敵な展開を示しており、更に言えば声明文における物価の認識は上記のように厳しいものでありまして、「実質金利の引き下げ」という話を持ち出そうとしても物価上がらず長期的なインフレ期待も上がらずに(短期的な部分をスルーしているのが唯一の言い逃れの救い)名目金利だけは華麗に上昇というのであれば、名目も実質も金利低下ルートでの資産買入政策が成功していませんというおそロシアな話になっていますねえ、という事になると思うのざますが、その部分を完全にスルーというのも中々お洒落な話ではございますな、と思うのでした。

つーことで、今後は益々FRBの説明が七転八倒モードになるのをニヤニヤしながら眺めたいと思うのでありました。


○おまけでホーニッグさんの反対理由に「経済のインバランス拡大」が新たに入る

第7パラグラフのお馴染みホーニッグさんの反対理由ですが、今回は「将来における金融のインバランスを拡大するリスクがある」というのが「将来における経済と金融のインバランスを拡大するリスクがある」と変わっているのがほほうという感じです。前回のはめんどいので今回分だけ引用しますね。

『Voting against the policy was Thomas M. Hoenig. In light of the improving economy, Mr. Hoenig was concerned that a continued high level of monetary accommodation would increase the risks of future economic and financial imbalances and, over time, would cause an increase in long-term inflation expectations that could destabilize the economy.』(今回)

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2010/12/02

では虫干しネタモードですがFOMC議事要旨ネタの昨日の続きから。

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20101103.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/fomcminutes20101103.pdf

○景気見通しに関する雑感続き

『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』から

昨日引用した第27パラグラフにありますように、FOMCでの経済見通しというのは前提としている条件がもしかして委員の間で違っている可能性があるという話をしましたが、これって日銀の展望レポートでもその傾向がありますわなという所だったりします。

つまりですね、足元での金融政策が適切で喫緊の政策変更の必要性が無いという場合はこの点ってあまり問題にはならないのですが、今般のように金融政策の変更が行われるような状況下においては、全員の意見が一致していれば別ですけれども、そうじゃない場合は経済見通しの前提としての金融政策の「置き」が委員によって違ってきますよね、という話になりますわな。

日銀の展望レポートが出る前の誰かの会見でもその点の指摘があったと思う(咄嗟に思い出せないので過去ログみてちょ)のですが、包括緩和政策の効果を展望レポートでどの位まで「置く」のかというのは委員によってイメージが違ってくると、その結果として出てきたリスク認識とか見通しの数値とかの集計ってどういう意味を持つのよというのは中々微妙な気がして参ります。特に足元では非伝統的政策を実施しており、政策効果に関して未体験ゾーンでもあるので、普通の利上げ利下げと違って政策効果の置きが難しいと思うのですよね。

と言う事になると、BOEのインフレーションレポートにあるような「現在の政策を継続」「市場が現状で織り込む政策パスの場合」というような明確な置きの方が政策インプリケーションを出すのには便利ではあるのですが、これもまた良し悪しの面がありそうな気がします。

てな事を昨日の最後に書きましたけれども、一応再掲。

まあそれはそれとしまして、景気の現状に関しましては、この時のFOMC声明文にも明記されているように、物価と失業に関しては改善が失望的な程遅いというのがございますわな。

第28パラグラフから。

『In their discussion of the economic situation and outlook, meeting participants generally agreed that the incoming data indicated that output and employment were continuing to increase, but only slowly. Progress toward the Committee's dual objectives of maximum employment and price stability was described as disappointingly slow. 』

どう見ても緩和政策の長期化確定です本当にカムサハムニダ。

んでもって更に経済の先行きを抑制する要因についてつらつらと指摘しているのが益々緩和政策長期化のイメージを強くさせる訳で。

『Participants variously noted a number of factors that were restraining growth, including low levels of household and business confidence, concerns about the durability of the economic recovery, continuing uncertainty about the future tax and regulatory environment, still-weak financial conditions of some households and small businesses, the depressed housing market, and waning fiscal stimulus. Although participants considered it quite unlikely that the economy would slide back into recession, some noted that continued slow growth and high levels of resource slack could leave the economic expansion vulnerable to negative shocks. In the absence of such shocks, and assuming appropriate monetary policy, participants' economic projections generally showed growth picking up to a moderate pace and the unemployment rate declining somewhat next year.』

ということで、先行き抑制要因は並ぶわ、ネガティブショックに弱い状態が続くという指摘はあるわと中々こう残念な見通し。

『Participants generally expected growth to strengthen further and unemployment to decline somewhat more rapidly in 2012 and 2013.』

まあ先についてはそういう話なのですがねぇ。


○低金利の効果に関して:商業用不動産の安定化

第29パラグラフ以降は各需要項目に関する現状認識と見通しの話になるのですが、その中で不動産セクターに関して「低金利が商業用不動産価格を安定させる事に寄与する」というような指摘をしていますので、その部分でありますところの第30パラグラフを(長くないので)まる引用。

『Participants noted that the housing sector, including residential construction and home sales, remained depressed. Foreclosures were adding to the elevated supply of available homes and putting downward pressure on home prices and housing construction. Some participants saw disputes over mortgage and foreclosure documents as likely to delay the eventual recovery in housing markets. Commercial real estate markets also were weak, and the availability of credit for commercial real estate transactions remained limited, but low interest rates were helping stabilize prices.』

最後の部分ですな。その前には競売関連の書類不備問題の与える悪影響に懸念なんちゅう部分もあって不動産関連は引き続き残念という感じっすな。


○金融環境は威勢の良い話が多いっす

その先には失業の状況が良くない話とか、その失業の長期化問題やら、労働者のモビリティー低下による構造的な失業率上昇問題への考察とか中々オモローな部分もあるのですが、金融政策的なインプリケーションという点ではまあそんなに目新しい話でも無いので割愛しますが、第31パラグラフの部分はこれはこれで興味はありました、が引用しないので皆さん勝手に見てちょ。

金融環境部分の第32パラグラフをめんどいのでまる引用。

『Participants saw financial conditions as having become more supportive of growth over the course of the intermeeting period; most, though not all, of the change appeared to reflect investors' increasing anticipation of a further easing of monetary policy. Most longer-term nominal interest rates declined, real interest rates fell even more, credit spreads tightened, and equity prices rose, in part reflecting better-than-expected corporate earnings reports. Inflation compensation rose noticeably, returning to a level more typical of recent years.』

追加緩和期待で金融環境が良くなったって話は連銀スタッフの現状報告部分でもこのような指摘がございましたわな。

『Participants noted that credit remained readily available--in debt markets and from banks--for larger corporations, and there were some signs that credit conditions had begun to improve for smaller firms that obtain credit primarily from banks. Banking institutions reported signs of improving credit quality. Improvements in household financial conditions were contributing to better performance of consumer loans. However, banks continued to report elevated losses on commercial real estate loans, especially construction and land development loans. Participants noted the risk of losses at financial institutions stemming from investors putting mortgages back to sellers if the quality of the loans was misrepresented when the mortgages were sold into securitization vehicles.』

クレジットアベイラビリティーの部分に関しては改善の話もあり、不動産関連を中心とする不良債権の部分の足引っ張り要因もありということですが、全体的には改善ということのようですわな。


○物価見通しに関してと賃金に関して

第33パラグラフから。

『Measures of price inflation had generally trended lower since the start of the recession; the same was true of nominal wage growth. Most participants indicated that underlying inflation was somewhat low relative to levels that they judged to be consistent with the Committee's statutory mandate to foster maximum employment and price stability.』

という部分は声明文でもその趣旨がありましたわな。んでもって物価の見通しですが。

『While underlying inflation remained subdued, meeting participants generally saw only small odds of deflation, given the stability of longer-term inflation expectations and the anticipated recovery in economic activity. They generally did not expect appreciably higher inflation, either.』

デフレ入りリスクも高インフレのリスクも小さいと。

『While prices of some commodities and imported goods had risen recently, business contacts reported that they currently had little pricing power and that they would continue to seek productivity gains to offset higher input costs. Small wage increases, coupled with productivity gains, meant that unit labor costs were lower than a year earlier.』

ここはまあそうですなと思いましたが、「投入物価が上昇しても下流の物価に転嫁しにくい状況が続いている」→「企業内で投入物価上昇を吸収するために労働コストを下げる」という流れは、つまり賃金が上昇しにくい事に繋がる訳で、そうなると更に上流段階における物価の上昇を下流段階の物価に転嫁しにくくなる状況が益々高まる訳で、それって何かデフレ均衡入りコースの香りもしますなあという感じがしました。

『Many participants pointed to substantial slack in resource utilization, along with well-anchored inflation expectations, as likely to contribute to subdued inflation for some time. 』

というのはいつもの決め文句です。で、この後は少数意見ですけど。

『A few participants expected that continuing resource slack would lead to some further disinflation in coming years. However, a few others thought that the exceptionally accommodative stance of monetary policy, coupled with rising prices of energy and other commodities as well as rising prices of other imports, made it more likely that inflation would increase, within a year or two, to levels they judged consistent with the Committee's dual mandate.』

ということで、資源活用のスラックがディスインフレのリスクを拡大するという指摘と、異例の金融緩和政策が商品価格や輸入価格の上昇とセットになった場合にインフレを引き上げるのではというリスクの指摘が、双方とも「A few」の委員からあったというのがほほーという感じでございまする。


と言うところで。第34パラグラフは議事要旨出た日の朝にインチキ翻訳したのでそれはそれで改めてご覧下さいませ(^^)。

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2010/12/01

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20101103.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/fomcminutes20101103.pdf

○連銀スタッフの経済見通しに関して

第25パラグラフと第26パラグラフの『Staff Economic Outlook』ですが、その中で追加緩和政策実施の期待によって反応した市場動向について「経済の追加的な刺激となる」という認識を示しているのがチャーミングであります。第25パラグラフの途中から。

『In light of asset market developments over the intermeeting period, which in large part appeared to reflect heightened expectations among investors that the Federal Reserve would undertake additional purchases of longer-term securities, the November forecast was conditioned on lower long-term interest rates, higher stock prices, and a lower foreign exchange value of the dollar than was the staff's previous forecast. These factors were expected to provide additional support to the recovery in economic activity. 』

今回の市場の反応自体はもともとのスタッフ見通しよりも景気刺激的でしたという話で、おまけみたいなもんなのかも知れませんけれども、逆に言うとQE2実施後の足元における市場の反応は(株式市場以外は)この逆に行っている訳で、それはQE2の効果を減じる作用があるという認識は連銀は当然の如く持っているでしょうから、当然ながらQE2推進派としては足元での動きに関しては火消しモードに入る、というのはそうなんでしょうね、という所です。

インフレに関しては第26パラグラフにありますが、この辺りを見るとどう見ても緩和政策長期化という答えになると思うわけで、QE2が途中で打ち切りとか有り得んと思うのですけどね。

『The staff's forecast continued to show subdued rates of headline and core inflation during 2011 and 2012. However, the downward pressure on inflation from slack in resource utilization was expected to be slightly less than previously projected, and prices of imported goods were anticipated to rise somewhat faster.』

資源の低活用状況がもたらすインフレのダウンサイドリスクは輸入物価の上昇が従前の予想よりも幾分速くなると予想される事から低下、とはゆうてますが、最初の部分で思いっきり2012年までのインフレが抑制されるという見通しを継続と仰せですわな。

『As in previous forecasts, further disinflation was expected to be checked by the ongoing stability of inflation expectations.』

先行きのディスインフレに関してはインフレ期待の安定性を確認しながら予想という比較的普通の話をしていますわな。


○FOMCメンバーの先行き見通しの前提とする条件が違う件について

というのをウダウダ書こうと思ったのだが気がついたら時間が無いので引用だけですが(明日続きを書きます)、『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』の冒頭になります第27パラグラフの部分から。

『In conjunction with this FOMC meeting, all meeting participants--the six members of the Board of Governors and the heads of the 12 Federal Reserve Banks--provided projections of output growth, the unemployment rate, and inflation for each year from 2010 through 2013 and over the longer run. Longer-run projections represent each participant's assessment of the rate to which each variable would be expected to converge, over time, under appropriate monetary policy and in the absence of further shocks. Participants' forecasts are described in the Summary of Economic Projections, which is attached as an addendum to these minutes. 』

>under appropriate monetary policy
>under appropriate monetary policy
>under appropriate monetary policy

・・・・・これってね、よくよく考えると先行き見通しを考える際の政策パスが、各メンバーがappropriateと考える政策パスになってしまうと思うのですが、それを前提にして集計した経済見通しっていうのにどういう政策インプリケーションを見出せば宜しいのでしょうか、というのがひじょーに悩ましいのですが。

と言いつつ、SEPの方まで熟読した訳ではないので、その辺の状況について認識違いをしていたら申し訳ないので、熟読している人教えてジェネラルなのでございますm(__)m

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2010/11/30

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20101103.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/fomcminutes20101103.pdf

○冒頭の金融調節部分から少々

最初の『Developments in Financial Markets and the Federal Reserve's Balance Sheet』からで、2パラグラフ目(特にMinutesには番号が振られて居る訳ではなくて、あたくしが物は試しに便宜的に最初から通しで振っています。以下同様)の後半に長期国債の買入に関する案の説明がありましてですな。

『The Desk judged that if it continued reinvesting principal payments from the Federal Reserve System's holdings of agency debt and agency MBS in longer-term Treasury securities, then it could purchase additional longer-term Treasury securities at a pace of about $75 billion per month while avoiding disruptions in market functioning. The Manager indicated that implementing a sizable increase in the System's holdings of Treasury securities most effectively likely would entail a temporary relaxation of the 35 percent per-issue limit on SOMA holdings under which the Desk had been operating; whether, and to what extent, the System's holdings of some issues would exceed 35 percent would depend on the specific securities that dealers choose to offer at future auctions.』

証券購入に際して市場機能に混乱を与えないでどうのこうのってえ話をしているのですが、現実問題として長期金利ターゲットのような事をやる、というスタンスで、かつ前回の信用緩和政策のように、実質的に市場機能の代替を中央銀行が実施することによって市場機能不全状態を緩和し、機能回復を図る、というような物であれば話は全然別なのですが、実際に普通に機能して特に問題となるようなオーバーシュートが起きている訳でもない市場に対して「長期金利の低下を促す」というスタンスで中央銀行が入っていくという行為は、その行為そのものが市場機能に対する介入であって、市場機能に混乱を与えないでどうのこうの、という話っていうのは何となく観念の世界というか座学の世界というか、微妙に怪しげな話のような気がせんでもない。

まあ単純に「買い過ぎでスクイーズが掛かるような流れにするのはまずかろう」というような話かもしれませんけれども、MBSの金利低下だってかなりの部分力技の世界だったと思われますので、このロジックは気になる。

更に気になったのはこの次の部分。

『Finally, the Manager summarized the implications for the Federal Reserve's balance sheet and income statement of alternative decisions that the Committee might make about the size and maturity distribution of the SOMA's securities holdings.』

ほほう。

『Participants discussed the Desk's tentative operational plans; they also discussed the potential effects of an expansion of the System's holdings of longer-term securities on financial markets and institutions and on the economy, and the channels through which those effects could occur.』

おお!と思ったのですが、この部分はここで終了しておりまして、内容に関しては将来議事録が出た時にならないと読めないのでしょうな。残念無念(その後のいろいろな話のなかで一部片鱗らしきものは見えるのだが、連銀スタッフがどのように考えているのかは是非みてみたいっすね)。


○ポートフォリオリバランスおよび長期金利低下について

いつもはサラサラと流す(流さないとしんどいから^^)『Staff Review of the Economic Situation』も今回は比較的真面目に読んでみたのですが・・・・・

第6パラグラフより。

『Real personal consumption expenditures (PCE) rose at a moderate rate in the third quarter. Rising equity prices likely resulted in some further improvement in net worth over the same period. 』

株高が実質個人消費支出の緩やかな上昇に寄与(この後「でもまあ伸びは悪い」とか「コンフィデンスが良くない」という話をしているのは念の為申し添えます)するという話をしていまして、ポートフォリオリバランス効果が個人消費に前向きな効果を与えるという話をしているのにほほーと思いました。

一方で次のパラグラフでは住宅市場の説明があるのですが・・・・

『Activity in the housing market remained exceptionally weak. Although sales of new and existing homes turned up in August and September, the still-low level of demand suggested that the payback for the earlier boost to sales from the homebuyer tax credit had not yet faded.』

という現状認識でして、

『Moreover, despite further declines in mortgage interest rates in recent months, other factors continued to restrain housing demand, including consumer pessimism about the outlook for jobs and income, the depressed rate of household formation, and tight underwriting standards for mortgages. 』

ということで、モーゲージ金利の最近の低下にもかかわらず、他のファクターで住宅の需要を抑制されていますよという指摘があったりします。ではモーゲージ金利の低下はどの辺りに効果がありますかという話はまた別のところであるのですが、この流れを見ると少なくともQE2実施前に期待で動いていた市場の効果っていうのは、長期金利が低下するパスよりも株価が上昇するパスの方が直接的というか素早く効いているんじゃないっすかねえという話ではございます。

なお、まあどうでも良いのですが、住宅市場抑制の要因について以下続きがありますので引用しておきますです。

『In addition, the moratoriums recently announced by some banks on the sale of properties they had seized in foreclosures were likely to damp home sales further in the near term. Starts of new single-family houses rose somewhat in August and September, but the pace of construction was still noticeably below the already-depressed level of the preceding year. New homebuilding appeared to be weighed down by the backlog of unsold existing homes and tight lending conditions for acquisition, development, and construction loans.』

不良債権化した不動産の競売による供給増加も住宅市場抑制の要因になっているとかいう話をしているようです。

でですね、第19パラグラフになるのですが、『Staff Review of the Economic Situation』の部分でモーゲージ金利に関する指摘をしているのですが、そちらではモーゲージ金利の低下でリファイナンスは活発に行われているけれども、新規住宅取得に向けた買入はそんなに増えてませんよという話をしていまして、よーするに長期金利低下による住宅市場への影響は、住宅市場そのものというよりはモーゲージローンのリファイナンス活動による効果の方が大きいという感じになるのではないかと思われる次第。

『Residential mortgage refinancing activity moved up in late September and early October, from an already high level, as the average interest rate on fixed-rate mortgages fell further over the intermeeting period. In contrast, the level of applications for mortgages to purchase homes remained anemic.』

というような所で時間が例によってなくなったので続きは明日なのですが、このあたりの連銀スタッフによる現状認識を見た場合、QE2の政策効果としてのパスは長期金利の低下よりもポートフォリオリバランスに重点を置いて説明した方が良いのではないかという気が思いっきりするのですが、足元では長期金利の話がメインっぽくなっているように見えるわけで、ミスコミュニケーションの元になりゃせんかと生温かく見守る次第でございまする。

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2010/11/25

○バーナンキ議長の先週金曜の講演:為替調整による世界経済の持続的な成長ねえ

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20101119a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20101119a.pdf

今回の講演の多分メインテーマはPDFだと本文8ページ以降になるのですけれども、まあネタ的にはふーんという感じなのですが、金融政策的なインプリケーションとしてはそんなに直接的なものは無かったりしましてね。

世界経済の回復が新興国と先進国でそのペースに大きな違いがあるという話を最初にしていまして、その差異によって金融財政政策にも差異が出てきますよ、というのがマクラにありましてその次がワロタ。

『Notably, in recent months, some officials in emerging market economies and elsewhere have argued that accommodative monetary policies in the advanced economies, especially the United States, have been producing negative spillover effects on their economies. In particular, they are concerned that advanced economy policies are inducing excessive capital inflows to the emerging market economies, inflows that in turn put unwelcome upward pressure on emerging market currencies and threaten to create asset price bubbles. 』

まあ端的に言ってしまえば俺様が満を持して投入した長期国債購入政策に対して新興国の連中がバブルの輸出だふざけんなと抜かしやがって誠に遺憾の極みに存じますという事ですね、わかります(^^)。

で、その資本流入に関するデータを説明しながら、確かにまあ足元では債券や株式などの市場への資金流入は増えていますねというような話をしたあと、でもそれって成長期待の違いとかそういうことに起因する(ので先進国の金融緩和どうこうだけじゃないでしょ)という話をしているだわさ。

『To a large degree, these capital flows have been driven by perceived return differentials that favor emerging markets, resulting from factors such as stronger expected growth--both in the short term and in the longer run--and higher interest rates, which reflect differences in policy settings as well as other forces. As figures 6 and 7 show, even before the crisis, fast-growing emerging market economies were attractive destinations for cross-border investment.』

で、そこから先の説明がどうみても新興国の為替介入批判です本当にありがとうございましたという流れになっているのが味わいの深いところでありまする。

『However, beyond these fundamental factors, an important driver of the rapid capital inflows to some emerging markets is incomplete adjustment of exchange rates in those economies, which leads investors to anticipate additional returns arising from expected exchange rate appreciation.』

>incomplete adjustment of exchange rates
>incomplete adjustment of exchange rates
>incomplete adjustment of exchange rates

『The exchange rate adjustment is incomplete, in part, because the authorities in some emerging market economies have intervened in foreign exchange markets to prevent or slow the appreciation of their currencies. The degree of intervention is illustrated for selected emerging market economies in figure 8. 』

でまあその図8ってえのは何かと申しますと、

『The vertical axis of this graph shows the percent change in the real effective exchange rate in the 12 months through September. The horizontal axis shows the accumulation of foreign exchange reserves as a share of GDP over the same period. 』

ということでして(図を貼り付けるスキルは無いので上記URL先に行って見てくんなまし)、GDPに対する外貨準備の増加率と実効為替レートの変動についての図なんですが。

『The graph also illustrates that some emerging market economies have intervened at very high levels and others relatively little. Judging from the changes in the real effective exchange rate, the emerging market economies that have largely let market forces determine their exchange rates have seen their competitiveness reduced relative to those emerging market economies that have intervened more aggressively.』

しかしこれってドルペッグとか通貨バスケットペッグしている国まで捕まえて説明しているのも何だかなという感じではござる。しかも従来の話ではなく、最近の話をしているあたりが微妙に中国様に配慮してるんだかしてないんだか判らんですが、妙な味わいを感じるところでございます。

でまあそんな事象の説明および資本流入に関する別の論点(そもそも資本流入によって資本不足の新興国へのバランス調整をしているともいえませんかねえ的な話)をその続きでした後に、「世界経済の各国間の成長速度などの調整は完全に市場で決定された(つまり意図的な通貨安介入をしない)為替市場を使って行われるのが望ましい」的なお話が始まるのです。

『It is instructive to contrast this situation with what would happen in an international system in which exchange rates were allowed to fully reflect market fundamentals. In the current context, advanced economies would pursue accommodative monetary policies as needed to foster recovery and to guard against unwanted disinflation. At the same time, emerging market economies would tighten their own monetary policies to the degree needed to prevent overheating and inflation. The resulting increase in emerging market interest rates relative to those in the advanced economies would naturally lead to increased capital flows from advanced to emerging economies and, consequently, to currency appreciation in emerging market economies. This currency appreciation would in turn tend to reduce net exports and current account surpluses in the emerging markets, thus helping cool these rapidly growing economies while adding to demand in the advanced economies. Moreover, currency appreciation would help shift a greater proportion of domestic output toward satisfying domestic needs in emerging markets. The net result would be more balanced and sustainable global economic growth.』

面倒なので(おいおい)1パラグラフまとめて引用しちゃいましたが、要するに現在のように国、地域ごとに経済成長のステージが違うときには、当然ながら金融政策が違ってくるのであって、その結果として新興国の為替が強くなる事は先進国と新興国の間の成長ステージのバランス調整に寄与し、結果として世界経済の持続可能性の高いバランスの取れた成長に寄与する、という話をしているように読めますな。

『Given these advantages of a system of market-determined exchange rates, why have officials in many emerging markets leaned against appreciation of their currencies toward levels more consistent with market fundamentals?』

このように為替市場による調整という結構なものがあるのに、何で新興国の連中は自国通貨上昇に文句を垂れるのでしょうかとバーナンキ様はご不満のようです(^^)。

『The principal answer is that currency undervaluation on the part of some countries has been part of a long-term export-led strategy for growth and development. This strategy, which allows a country's producers to operate at a greater scale and to produce a more diverse set of products than domestic demand alone might sustain, has been viewed as promoting economic growth and, more broadly, as making an important contribution to the development of a number of countries.』

新興国が引き続き輸出ドライブで成長をするために為替が安くあるべきだと考えているって認識、というかまあそらそうですが。

『However, increasingly over time, the strategy of currency undervaluation has demonstrated important drawbacks, both for the world system and for the countries using that strategy.』

で、何がケシカランかというと(1)通貨による調整をしないと新興国と先進国の成長速度のアンバランス状態での世界経済成長は持続可能じゃない(2)為替のフレキシビリティーを認めている国と認めていない国がある状態だと、世界経済の成長アンバランス状態の調整負担が為替のフレキシビリティーを認めている国に一方的に掛かる(3)いわゆる国際金融のトリレンマ問題という点になるのですけれども、量が多くなってきたので引用割愛。本文11ページから12ページになりますので念の為。

で、まあ為替の柔軟さを更に拡大する事によって、グローバルインバランスの調整を行うというような話が更に続くのですが、まあ大体似た趣旨の話が続き、更に米国でのインバランス調整の話をしているのですが本日はこの辺で。

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2010/11/24

○FOMC議事要旨(のほんの一部):政策波及ルートは金利低下・資産価格上昇・ドル安とな

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20101103.htm(HTML版)
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20101103.pdf(PDF版)

Minuteだけは紙に打ち出したときにHTMLバージョンの方が読みやすい(PDFは1枚に2段組で書いてあるのでイマイチ使いにくい)ので、基本的にHTML版を読みつつという所です。

でね、真面目に読むのは週末(前に読めれば読むが)と言う事に致しまして、簡易バージョンで追加緩和政策に関する政策効果だのなんだのという話がありまして、まあそこを見たければ『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』の最後のパラグラフを見るあるヨロシ。PDFだと8枚目になるみたいです。つーか今日はそこしか見てない(汗)。

『Participants generally agreed that the most likely economic outcome would be a gradual pickup in growth with slow progress toward maximum employment. They also generally expected that inflation would remain, for some time, below levels the Committee considers most consistent, over the longer run, with maximum employment and price stability.』

景気は緩やかな回復を続けるものの、物価上昇は暫くの間マンデートに示される水準を下回って推移するでしょうとな。

『However, participants held a range of views about the risks to that outlook. Most saw the risks to growth as broadly balanced, but many saw the risks as tilted to the downside. Similarly, a majority saw the risks to inflation as balanced; some, however, saw downside risks predominating while a couple saw inflation risks as tilted to the upside. 』

経済見通しのリスクに関しては、概ねバランスとしながらも多くの人がダウンサイドリスクに寄っているとし、インフレのリスクに関しては多数はバランスとするも、数名はダウンサイドリスクが拡大しているとし、2名はアップサイドにリスクが寄っているとしているという事ですか。

というのが経済に関する認識の部分でして、その次が金融政策に関する部分キタコレ。

『Participants also differed in their assessments of the likely benefits and costs associated with a program of purchasing additional longer-term securities in an effort to provide additional monetary stimulus, though most saw the benefits as exceeding the costs in current circumstances. 』

キタキタ。で、この次に注目するあたくし。

『Most participants judged that a program of purchasing additional longer-term securities would put downward pressure on longer-term interest rates and boost asset prices; some observed that it could also lead to a reduction in the foreign exchange value of the dollar.』

バーナンキ講演(先日ネタにしましたが後で続きを紹介します)では「米国はドル安政策を取っているわけではありません(キリッ)」「それよりも世界的な政策協調という観点から自国通貨安政策を続けている新興国、特に中国はケシカラン(キリッ)」などと仰せでありましたが、ここで思いっきりドル安に関して数名とは言え思いっきり言及しているのがチャーミングではございます。まあ黙ってればとも思いますが、こーゆーのをしらっと出すのは結構な事でございます。

ということですね、ここで長期国債の購入に関する直接的に期待する効果について言及があるのですが、思いっきり「長期金利の引き下げ」「資産価格の上昇」とあって、一部の委員からは「ドル安」というのもありますよ、という事になっておりますが、実際問題としてその後長期金利ってどうなっていまちゅかねえと思いますと大変に心温まる物を感じる次第でございまして、まあ勿論結果はこれからの話ではございますが、「長期金利コントロール」というのは資本市場が大きくなかった昔なら出来たのかもしれませんが、現在の米国金融市場の環境では難しいのではないでしょうかと思われる流れにはなっていますわな。


『Most expected these changes in financial conditions to help promote a somewhat stronger recovery in output and employment while also helping return inflation, over time, to levels consistent with the Committee's mandate.』

ということで、この「長期金利の引き下げ」「資産価格の上昇」によって金融環境の緩和がもたらされ、それによってインフレを目標とするレベルへ引き上げることによって、生産や雇用のより強い回復をもたらす事を期待する、というのが政策波及効果のパスとして上げられているのですが、肝心の長期金利が以下同文。

『In addition, several participants argued that the stimulus provided by additional securities purchases would help protect against further disinflation and the small probability that the U.S. economy could fall into persistent deflation--an outcome that they thought would be very costly. 』

数名のメンバーは追加の証券購入が更なるディスインフレの進展や、可能性は小さいもののデフレ入りする可能性を防ぐことになるでしょうと指摘としているのですが、その後に反対意見の論点がうだうだと書かれているのだ。

『Some participants, however, anticipated that additional purchases of longer-term securities would have only a limited effect on the pace of the recovery; they judged that the economy's slow growth largely reflected the effects of factors that were not likely to respond to additional monetary policy stimulus and thought that additional action would be warranted only if the outlook worsened and the odds of deflation increased materially.』

数名(さっきはseveralでこっちはsomeなのでこっちの方が少数意見だと思われ)のメンバーは追加の長期国債購入が景気回復に対する効果が極めて限定的ではないかと予想していると言う事ですが、その人たちは景気の回復ペースが緩やかな事は追加の証券購入による政策効果によってもたらされるものとは別の要因で起こっているのであって(つーことは「長期金利を下げたり資産価格を上げたからと言っても実体経済の回復が必ずしも促進されるわけではない」ということでしょうな)、追加の金融緩和政策を実施する事が正当化されるのは、デフレ入りの可能性が顕著に高まった場合に限るのではないか、という事を指摘しているんですな、と読みましたがどうっすかね。

『Some participants noted concerns that additional expansion of the Federal Reserve's balance sheet could put unwanted downward pressure on the dollar's value in foreign exchange markets.』

さっきはドル安に関する効果の話をしている人がいる部分がありましたが、こちらでは別の人たちと思われますが、FEDのバランスシートの拡大が「望ましくないドル安圧力」となる事を懸念しているという話が。

『Several participants saw a risk that a further increase in the size of the Federal Reserve's asset portfolio, with an accompanying increase in the supply of excess reserves and in the monetary base, could cause an undesirably large increase in inflation. However, it was noted that the Committee had in place tools that would enable it to remove policy accommodation quickly if necessary to avoid an undesirable increase in inflation.』

FOMCは各種のツールによって望ましくないインフレが起きた場合に緩和的な政策を引く事ができるという点は認識されているものの、FEDのバランスシートと超過準備の拡大が「望ましくないインフレの大きな拡大」をもたらすリスクを幾名かの(someより多い)メンバーが指摘しているという部分も「ほほー」という感じです。

ということで、正直言ってここのパラグラフしか読んでいないので(前後はざっくり斜め読みしたが)何なのですけれども、政策波及効果に関する話は雑だし、というから雑だからなのかも知れませんけれども、本当に大丈夫かという意見が出ていてその部分が結構なスペースを占めているのが目についたでございまする。


○先週金曜のバーナンキ議長講演ネタの続きをしようと思ったのですが

例によって例の如く時間がなくなってきた(事前に作れというツッコミは却下^^)のでほんのちょっとだけ。

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20101119a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20101119a.pdf

月曜に紹介した部分が追加緩和政策の波及経路とかの話なので、金融政策マニア的な読みどころではあるのですが、その後に為替政策の話が出てきて、まあ講演そのものもそっちの話の方が多いってえ話をしたかと存じます。

でですな、そのメインイベントの部分をやりだすと結構長い(切り取る場所が難しい)ので、月曜に引用した部分の続きでも為替市場の話をしているので、その部分から引用。講演本文7ページ(PDF版ベース)から。

『The foreign exchange value of the dollar has fluctuated considerably during the course of the crisis, driven by a range of factors.』

ということで、以下直近まで進行したドル安に関連して、新興国の皆様を中心に「米国がドルのデバリュエーション政策を取っているからだ」という批判が飛んでいる事を意識した話が続くのだ。

『A significant portion of these fluctuations has reflected changes in investor risk aversion, with the dollar tending to appreciate when risk aversion is high. In particular, much of the decline over the summer in the foreign exchange value of the dollar reflected an unwinding of the increase in the dollar’s value in the spring associated with the European sovereign debt crisis. The dollar’s role as a safe haven during periods of market stress stems in no small part from the underlying strength and stability that the U.S. economy has exhibited over the years.』

主な理由は、ドルがリスク回避の安全資産として買われていた部分の巻き戻しですよ(だから今回の追加緩和のせいではないよ)という話をうだうだとしているように読めますがそれでよかですかね。

『Fully aware of the important role that the dollar plays in the international monetary and financial system, the Committee believes that the best way to continue to deliver the strong economic fundamentals that underpin the value of the dollar, as well as to support the global recovery, is through policies that lead to a resumption of robust growth in a context of price stability in the United States.』

我々は米国ドルが国際通貨としての重要な役割を果たしていると言う事を完全に意識しておりますので、ドルの価値をしっかりと留めるために一番重要なことは米国の経済ファンダメンタルズを強い状態に維持して、それによって世界経済の回復をサポートしますよ、で、そのことは米国が物価安定の元で力強い成長の再開をもたらすような政策を実施する事によって達成されますよ。

などと逐語訳風の頭の悪い訳文にもなっていない訳文で誠に申し訳ありませんが、まあこういう事によって新興国などからの「米国はドル安政策を取ってケシカラン」という批判に対するお答えをしているのですが、その一方で上記のFOMC議事要旨のような議論がありまして、何ともうしますかはいはいワロスワロスという感じが非常にするのでございますけれども、この後の為替に関する話を見ますと、ここの部分はバーナンキ議長的には政治的ポーズというよりは大真面目に話をしていると思われますです、はい。


あと、あたくし的にはどうでもいいかなとは思いましたが、一応ヘッドラインとかにも出ているので、「金融政策だけでは限界があります」という話をしている部分を訳も何もつけずにベタ引用します。上記の部分の続きで、今回のバーナンキ講演における足元の金融政策に関する話はここまでとなります。

『In sum, on its current economic trajectory the United States runs the risk of seeing millions of workers unemployed or underemployed for many years. As a society, we should find that outcome unacceptable. Monetary policy is working in support of both economic recovery and price stability, but there are limits to what can be achieved by the central bank alone.』

『The Federal Reserve is nonpartisan and does not make recommendations regarding specific tax and spending programs. However, in general terms, a fiscal program that combines near-term measures to enhance growth with strong, confidence-inducing steps to reduce longer-term structural deficits would be an important complement to the policies of the Federal Reserve.』

ということで♪引用大会で恐縮でした。

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2010/11/22

では本題のバーナンキ講演(先週金曜日分)から。

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20101119a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20101119a.pdf

○何かロジック構成がシッチャカメッチャカになって来ているのですが

とりあえずざざーっと全部読んでみましたが、最初は『The Two-Speed Global Recovery』という小見出しで、まあ要するに世界経済の回復で新興国と先進国の回復速度とその水準に違いがありますねという話をしていまして、その次に米国経済の話をしています。

でもってその次が『Monetary Policy in the United States』ということでPDFファイル版だと本文4ページ辺りからになるのですが、ここでは今回の金融政策に関する波及経路やら効果やらについての話があってこれが中々どうなのかよという感じになっています。まあ具体的に言えば先日引用したカンサスシティ連銀ホーニッグ総裁のツッコミに対する答えに全然なってねええええという所でしょうか。まあ一番オモロイのはこの辺りになりますので、お時間の無い方は本分4ページから6ページまでを読むのが吉。

その後、「我々は必要なときには異例の緩和政策を終了するツールがあるんです(キリッ)」という話がございまして、その後今般の金融政策(で、その中で「今回の政策について量的緩和というのは適切ではない」というチャーミングなフレーズもあるのですが)における為替問題に対する話をしています。

で、その先が多分今回のスピーチのメインテーマになっているのですが、『Global Policy Challenges and Tensions』っていう部分で新興国などの一部からの「FRBはバブルを輸出して通貨安政策をしてケシカラン」という指摘に反論しているのですが、まあ1行で言ってしまうと「新興国が自国通貨を今まで安く抑える政策をしているのが良くないのです(キリッ)」という事でして、途中から殆ど中国名指し状態なのが大変お洒落。

その次は実はもう斜め読み状態だったのですが『Improving the International System』って所では世界経済のリバランスが自由な為替レートを通じて行われるというようなまあ美しい話をしているのですけれども、何か微妙感の漂う内容となっています。

という事で、まあバーナンキ議長的には後半を読んで欲しいのでしょうが、あたくしは前半から読むのでございます。


○経済に関わる前半部分はまあサラサラと

冒頭部分のここは・・・・

『Accordingly, the essential challenge for policymakers around the world is to work together to achieve a mutually beneficial outcome--namely, a robust global economic expansion that is balanced, sustainable, and less prone to crises.』

なんつーかお前が言うな感が非常に高いのですが、後半部分では先ほど申し上げたように新興国、特に中国相手にいい感じでキレ気味な部分があって、中々香ばしい所ではございます。

まあそれは兎も角、米国経済に関してですが、金融政策のインプリケーションとしては、足元の経済状況に関して「望ましくない状況である」という点を明確に指摘したことでございますかな。まあ先日金融緩和措置を実施したのですからそれを正当化する話になるのは当たり前っちゃあ当たり前ですが、昨今QE2減額というような意見も出ている中ですので、この辺りはきっちりと指摘した、と言う事なのでしょう。

本文2ページ以降がその辺りになります。

『In the United States, the recession officially ended in mid-2009, and--as shown infigure 3--real GDP growth was reasonably strong in the fourth quarter of 2009 and the first quarter of this year. However, much of that growth appears to have stemmed from transitory factors, including inventory adjustments and fiscal stimulus.』

ということで回復はしているけれども、一時的な財政刺激と在庫回復によるものであるという話をして、まず最初にデュアルマンデートの失業に関連する指摘を。

『Since the second quarter of this year, GDP growth has moderated to around 2 percent at an annual rate, less than the Federal Reserve’s estimates of U.S. potential growth and insufficient to meaningfully reduce unemployment.』

ということで、足元のGDP成長は失業率が減るのに不十分であると思いっきり指摘していますわな。

で、その後行数を使って失業率の高止まりの問題に関して説明しているのですが、その中で(久々に見ましたが)長期間の失業者に関する問題を指摘していまして失業が長期間になる事による弊害の説明をしているのが印象的ではありました。引用は割愛しますが。

その後は物価に関する部分でして、本文3ページからですが。

『Low rates of resource utilization in the United States are creating disinflationary pressures.』

ということで、資源の利用が低いことがディスインフレの圧力になるという話をしていますが、ここの部分に関しては事実の指摘に留めて、毎度の決まり文句で締めています。上記部分の先を引用。

『As shown in figure 5, various measures of underlying inflation have been trending downward and are currently around 1 percent, which is below the rate of 2 percent or a bit less that most Federal Open Market Committee (FOMC) participants judge as being most consistent with the Federal Reserve’s policy objectives in the long run. With inflation expectations stable, and with levels of resource slack expected to remain high, inflation trends are expected to be quite subdued for some time.』


で、その次が米国の金融政策に関する部分ですわな。

○追加緩和実施の政策目的は実質金利の引き下げとな

各国の金融政策対応に関しては回復の速度が違うから対応が違ってきますと言う話をさらっとした後に米国金融政策の話になるのですが、最初の部分では追加緩和はリスク対応みたいな話をしているのかこれは??という感じの部分が。

『Let me address the case of the United States specifically. As I described, the U.S. unemployment rate is high and, given the slow pace of economic growth, likely to remain so for some time. Indeed, although I expect that growth will pick up and unemployment will decline somewhat next year, we cannot rule out the possibility that unemployment might rise further in the near term, creating added risks for the recovery. Inflation has declined noticeably since the business cycle peak, and further disinflation could hinder the recovery.』

とまあこの辺を読むと追加緩和実施は今後の失業拡大や物価低下のリスクに対応して実施みたいな話をしているのですが、その次に「インフレ期待を引き上げて実質金利を下げる」というお話が始まるのだ。

『In particular, with shorter-term nominal interest rates close to zero, declines in actual and expected inflation imply both higher realized and expected real interest rates, creating further drags on growth.』

9月のFOMC議事要旨でも指摘されていた話ですな。

『The Federal Reserve’s policy target for the federal funds rate has been near zero since December 2008, so another means of providing monetary accommodation has been necessary since that time.』

短期名目金利の目標が下げられないから他の手段が必要と。

『Accordingly, the FOMC purchased Treasury and agencybacked securities on a large scale from December 2008 through March 2010, a policy that appears to have been quite successful in helping to stabilize the economy and support the recovery during that period. Following up on this earlier success, the Committee announced this month that it would purchase additional Treasury securities. In taking that action, the Committee seeks to support the economic recovery, promote a faster pace of job creation, and reduce the risk of a further decline in inflation that would prove damaging to the recovery.』

えーっとですな、これって丁度あたくしが先日ご紹介したホーニッグ総裁がモロに指摘しているQE2の効果に関する疑問に対して完全スルー状態じゃないですかああああという所で、先日ホーニッグさんの講演をご紹介した時にあたしゃ当然ながらFOMCの主流派はホーニッグさんのツッコミに対応する(屁理屈でも何でも良いから)ロジック構成があるのかとか思っていたのですが、おそロシアなことに全然無いのかよという所です。

つまりね、上にある部分って「この前の国債およびMBSの買い入れが上手く効果を発揮したから今回も国債の買い入れを行って失業の低下や物価の上昇を促すんです(キリッ)」という話をしているとしか読めないのですけれども、(1)ホーニッグさんの指摘するように金融市場の状況が違う中で同じように効果が出るのか、前回は金融市場の機能不全解消をする事によって効果を出したのではないか、という点についてもスルーしていると共に、(2)そもそも前回の長期証券買い入れによって物価も上がらなかったし失業も下がらなかったんじゃないですか、というツッコミにも全然答えになっていないという訳ですな。

いやまあ気合の政策って奴だと言うのは判っておりますが(^^)、もうちょっと物の言い様ってのは無いのかなあと思うのでありました。


○資産購入政策の波及ルートは金利引き下げって言い切って平気なのかよ

んでその次。本文5ページの後半から始まります。

『Although securities purchases are a different tool for conducting monetary policy than the more familiar approach of managing the overnight interest rate, the goals and transmission mechanisms are very similar.』

長期資産購入は金利ルートで効果を出すとか思いっきり言い切って平気なのでしょうかと思うのですけれどもねえ。

『In particular, securities purchases by the central bank affect the economy primarily by lowering interest rates on securities of longer maturities, just as conventional monetary policy, by affecting the expected path of short-term rates, also influences longer-term rates.』

と、思いっきり長期金利引下げの話をしているのですな。

『Lower longer-term rates in turn lead to more accommodative financial conditions, which support household and business spending.』

いやまあそれはそうなんですが。

『As I noted, the evidence suggests that asset purchases can be an effective tool; indeed, financial conditions eased notably in anticipation of the Federal Reserve’s policy announcement.』

何かね、どさくさに紛れて前回の資産購入が上手く行っているという話をしていますけれども、金利ルートで効いているのはMBSの方であって、トレジャリーに関して本当に金利下がったのかよという話になると激しく怪しい(そもそも金利が下がったのはQE2期待への思惑が出だした頃であって、物価上昇率が下がりだしたから長期金利が下がったのではないかという気がするし)のですけれども。

で、足元QE2実施してから金利が絶賛上昇していますが、その件に関しては華麗にスルーして「金融環境はFRBの追加金融緩和が実施されるという予想によって更に緩和的になりました」という話をしているのはもう何かだいぶヤケクソの香りがするんですけどねえ。


○量的緩和と呼ぶのは不適切とな

ここはオモロス。

『Incidentally, in my view, the use of the term “quantitative easing” to refer to the Federal Reserve’s policies is inappropriate.』

今回の政策内容と「量的緩和」と呼ぶのは適切ではありません!!!だそうで(^^)。

『Quantitative easing typically refers to policies that seek to have effects by changing the quantity of bank reserves, a channel which seems relatively weak, at least in the U.S. context.』

少なくとも米国では、という但し書きを入れるのは英国あたりに喧嘩を売っていると読まれると困るからという事なのかもしれませんが(^^)、銀行のリザーブを拡大する事の政策波及効果のチャネルは相対的に弱いとな(ニヤニヤ)。

いやあこれは何ともという感じですなあ(^^)。


○波及チャネルは長期金利低下とポートフォリオリバランスとな

ではどのような波及チャネルなのかと言いますと・・・・

『In contrast, securities purchases work by affecting the yields on the acquired securities and, via substitution effects in investors’ portfolios, on a wider range of assets.』

ということで、長期金利の低下と、いわゆるポートフォリオリバランス効果だという話をしているのですが、はてさてその経路がちゃんとワークするのか、もしワークしなかったらFRBはどうするのか、というようなことに関しては今後ともニヤニヤしながらヲチしていきたいと思います。

ということで、本日はこの講演に関して金融政策のロジックだのをヲチするマニアとして見た場合のメインイベント部分(バーナンキ議長的には後半がメインだと思う)のコア部分を引用したのでございます。まあこの後も「中央銀行単独では限界がある」みたいな部分もあったりしますが、それはまた後日。

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2010/11/19

http://www.kansascityfed.org/speechbio/hoenigpdf/nabe-hoenig-10-12-10.pdf

○QE2のリスクその2:財政政策の領域に踏み込むことによるアカウンタビリティ問題

講演7ページ目から。

『Second, we risk undermining Federal Reserve independence.』

ということで、FRBの独立性を傷つけるリスクがありますがなという事ですが、まあこの論点はよく言われている話でして、そんなに変わった話をしている訳ではありませんが。

『QE2 actions approach fiscal policy actions. Purchasing private assets or long-term Treasury securities shifts risk from investors to the Federal Reserve and, ultimately, to U.S. taxpayers. It also encourages greater attempts to influence what assets the Federal Reserve purchases. When the Federal Reserve buys long-term securities - such as the $1.2 trillion in mortgage backed securities it purchased during the financial crisis - it favors some segments of the market over others.』

QE2は財政政策の領域であって、長期国債や民間債務の購入は投資家のリスクをFEDに付け替えるものであり、それは最終的には納税者に付け替えているのと同じ、という話と大量の資産購入は価格形成への介入になるという話ですかな。

『And when the Federal Reserve is a ready buyer of government debt, it becomes a convenient source of cash for fiscal programs. During a crisis this may be justified, but as a policy instrument during normal times it is very dangerous precedent.』

更に、財政マネタイズ的な政策は危機の時点では正当化されるが、正常時に実施する事は危険だという歴史的な例もありますよとか言ってるようで、まあ基本的には財政政策に踏み込む問題の論点列挙という感じですにゃ。


○QE2のリスクその3:インフレを引き上げた後にちゃんと着地させられるのか、あるいは財政赤字とバランスシート

と言う話をしているように読んだのですが、それで理解合ってますよね???

『Third, rather than inflation rising to 2 or 3 percent, and demand rising in a systematic fashion, we have no idea at what level inflation might settle. It could remain where it is or inflation expectations could become unanchored and perhaps increase to 4 or 5 percent.』

QE2で何が起きるわ判らんという話のようですが、これって昨日引用した「QE2のストラテジーが曖昧な問題」というのともイメージが繋がるのかもしれませんなあと思いましたが。

『Not knowing what the outcome might be makes quantitative easing a very risky strategy. It amounts to attempting to fine-tune inflation expectations-a variable we cannot precisely or accurately measure-over the next decade.』

『And why might inflation expectations become unanchored?』

で、そのインフレ期待がアンカーされない(のでファインチューニングに失敗するリスクがありますよという話)理由は、巨額の財政赤字とFEDのバランスシート拡大によるものだという話をしていますが、多分この点に関してはFOMCの主流派は「財政は再建方向だし、バランスシートを縮小するツールもあるし、それに現状の大きな財政赤字にFEDのバランスシート拡大でもインフレ期待はアンカーされているよね」という所だと思います。

『The budget deficit for 2011 is expected to be about $1 trillion. Even if the Federal Reserve were to purchase only $500 billion-and this amount in itself is a source of considerable uncertainty-that would appear to monetize one-half of the 2011 budget deficit. In addition, the size of the Federal Reserve’s balance sheet-now and over the next decade-will influence inflation expectations. Expanding the balance sheet by another $500 billion to $1 trillion over the next year, and perhaps keeping the balance sheet at $3 trillion for the next several years, or increasing it even further, risks undermining the public’s confidence in the Fed’s commitment to long run price stability, a key element of its mandate.』

ただでなくさえ財政赤字は大きいわFEDのバランスシートは大きいわなのに、今後このように更に拡大しますよという数字を並べて、これは一般のインフレ期待に影響を与えるでしょう、という話をしている訳ですなこの部分は。

『While QE2 might work in clean theoretical models, I am less confident it will work in the real world. Again, I will note that the FOMC has never shown itself very good at fine-tuning exercises or in setting and managing inflation and inflation expectations to achieve the desired results.』

QE2は机上ではワークするかもしれないけれども、私は実際にワークするかに対してあまり自信がありませんって、QE2机上の空論呼ばわりキタコレ。

『Given the likely size of actions and the time horizon over which QE2 would be in place, inflation expectations might very well increase beyond targeted levels, soon followed by a rise in long-term Treasury rates, thereby negating one of the textbook benefits of the policy.』

インフレ期待の引き上げに成功したとしても、その場合はインフレ期待が長期金利の上昇に即座に反映するので、その場合は経済にマイナスの効果を与えるでしょ、という指摘が最後にしらっと入っているのでありました。


と言うところで時間がなくなってしまいましたが(大汗)、以下は「それよりも正常化を進めるべきである」というホーニッグ総裁のホーニッグ節が更に続き、ゼロ金利長期化の弊害についてのホーニッグ節が続くと言う展開ですが、それはまあ後ほど引用するかもしれませんし、引用しないかもしれません(^^)。

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2010/11/18

以下昨日の続き。
http://www.kansascityfed.org/speechbio/hoenigpdf/nabe-hoenig-10-12-10.pdf

講演5ページの小見出しが『New Risks and QE2』でして、まあここからがホーニッグ総裁の本領発揮なのですが、まあこの論点整理はこれはこれで興味ありますので、だらだらと引用していこうかと。

『I believe there are legitimate reasons to be cautious when considering this approach. A meaningful evaluation of QE2 must consider not simply whether benefits actually exist but, if they do, how large they are and whether they are larger than possible costs.』

QE2の効果だけではなくコストについても考えましょうという話が始まるのですが、まずはそのコストの前に効果に対するツッコミが入ります。


○長期国債の大量購入で長期金利が本当に下がるのか、効果があるのかという論点

まず最初の突っ込みはこの点でございまする。

『Based on recent research and the earlier program of purchasing long-term securities-known as LSAP-I think the benefits are likely to be smaller than the costs.』

前回の長期国債買入(LSAPですな)の効果に対する研究をベースにすると、QE2は効果よりもコストの方が大きいと思われますということです。で、そら何ですかという話ですが、5000億ドルの長期債購入は金利を10〜25bp引き下げただけに留まっており、その点での効果はどうなのよ、という論点です。以下引用。

『Some estimates suggest that purchasing $500 billion of long-term securities might reduce interest rates by as little as 10 to 25 basis points. The LSAP program was effective, in part, because we were in a crisis. Financial markets were not functioning properly, or at all, during the depths of the financial crisis. In such a situation, it is reasonable that central bank purchases would be useful and effective. However, currently the markets are far calmer than in the fall of 2008. The financial crisis has passed and financial markets are operating more normally. One could argue, in fact, that with markets mostly restored to pre-crisis functioning, the effect of asset purchases could be even smaller than the 10 to 25 basis point estimate.』

LSAPそのものには効果があったけれども、それは金融市場が不十分あるいは全く機能していないという状況下で、中央銀行が資産買入を行うという事が効果的で有効だったという事であり、現状の金融市場は危機モードを脱却しており、論者によってはそのような金融市場の状況では長期国債買入の金利引下げ効果は前回のLSAPよりも低くなるののではないかという人も居ますよと。

『I would also suggest that even if we achieved slightly lower interest rates, the effect on economic activity is likely to be small. Interest rates have systematically been brought down to unprecedented low levels and kept there for an extended period. The economy’s response has been positive but modest.』

で、更にホーニッグさんとしては、金利を若干引き下げる事に成功したとしても、それが経済活動に与える影響が大きくないのではないかという指摘をしている訳でございますな。既に金利は異例の低金利政策を「for an extended period」継続している事によって低い水準にあり、金利引下げの効果は勿論プラスだろうが小さいのではないでしょうかっつー事ですな。


○長期国債の大量購入でポートフォリオリバランスが起きるのかという論点

ホーニッグ総裁は「経済の不確実性を高め、金融のインバランスが発生するリスクを高める」というような反対理由で低金利継続とか資産購入に対する反対をしているので、この論点で来るのですかそうですかという感じなのですが。

『In fact, right now the economy and banking system are awash in liquidity with trillions of dollars lying idle or searching for places to be deployed or, perhaps more recently, going into inflation hedges. Dumping another trillion dollars into the system now will most likely mean they will follow the same path into excess reserves, or government securities, or “safe” asset purchases. The effect on equity prices is likely to be minor as well.』

長期国債の大量購入の資金は結局の所、主に超過準備や国債などの安全資産への購入に回り、株価への効果は相対的に小さいんじゃネーノということのようで、今回のQE2実施時に効果として期待されている「ポートフォリオリバランス効果」に対して懐疑的な見解であります。

まあこの点に関しては、日本の場合最初はポートフォリオリバランスは効かなかったのですけれども、不良資産問題がある程度片付いて政府のコミットメントが行われるようになった辺りからはもしかして効いていたのかも知れませんので、この辺りは微妙っちゃあ微妙な気がせんでもないですけど、確かにまあ目先的にこのポートフォリオリバランス効果ってどうなのよと言われるとホーニッグ総裁の主張の方がしっくり来るにはしっくり来るのは日本病ですかそうですか(^^)。

『There simply is no strong evidence the additional liquidity would be particularly effective in spurring new investment,accelerating consumption, or cushioning or accelerating the deleveraging that is hopefully winding down.』

ということで、結論はFEDの国債購入がポートフォリオリバランスやら消費拡大やら、デレバレッジの動きに対するクッションの効果を出すかどうかに関する強いエビデンスは無いでしょ、という指摘をしています。

『If the purported benefits are small, what are the possible costs?』

ということで、効果が小さいでしょうという話をした後にコストの話になります。

○コストその1:QE2のターゲットが無い事による弊害

いきなりこの部分がゴシックになっておりましてですな(^^)。

『First, without clear terms and goals, quantitative easing becomes an open-ended commitment that leads to maintaining the funds rate too low and the Federal Reserve’s balance sheet too large. The result is a further misallocation of resources, more imbalances and more volatility.』

明確なターゲット、例えば失業率が何%になったらとか、物価上昇率が何%になったからとか、10年金利が何%になったから、というような明確なゴールの無い状態でのQE2実施は、その政策がオープンエンドになってしまい、その結果としてFRBがFF金利を低すぎる水準に維持し、バランスシートを大きすぎる状態にする事によって、資源配分の不適正や大きなインバランスやボラティリティーの拡大をもたらしますという話です。

『There is no working framework that defines how a quantitative easing program would be managed. How long would the program continue, and what would be the ultimate size? Would purchases of long-term assets continue until the unemployment rate is 9 percent or 8 percent or even less? Would purchases continue until inflation rises to 2 percent or 3 percent or more? Would the program aim to reduce the 10-year Treasury rate to 2? percent or 2 percent or even less?』

『Without answers to these and other questions, QE2 becomes an open-ended policy that introduces additional uncertainty into markets with few offsetting benefits.』

で、その手の明確な出口の指針が無いと、一般的に市場や経済主体は緩和的な政策が非常に長く続くと考えることになるでしょうと。

『As central bank assets expand under quantitative easing, what will be the exit strategy? In the midst of a financial crisis, we may not have the luxury of thinking about the exit strategy. In current circumstances, however, we must define an exit strategy if the objective is to raise inflation but contain interest rate expectations. If history is any indication, without an exit strategy the natural tendency will be to maintain an accommodative policy for too long.』

そして、バーナンキ議長などFOMC主流派が主張する「FEDは適切な時に引き締めに転じる能力もそのツールもある」という点についても懐疑的でありまして。

『While I agree that the tools are available to reduce excess reserves when that becomes appropriate, I do not believe that the Federal Reserve, or anyone else, has the foresight to do it at the right time or right speed. It may work in theory. In practice, however, the Federal Reserve doesn’t have a good track record of withdrawing policy accommodation in a timely manner.』

最後の一文、
>the Federal Reserve doesn’t have a good track record of withdrawing policy accommodation in a timely manner.
ってのは中々厳しい指摘で、つまりバーナンキ副議長時代にお前さん何やっていましたっけということだと思ったのはあたくしの読み方に問題がありますかそうですか(^^)。


という事で時間が無くなったのでコストその2以降は明日も続く(^^)。

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2010/11/17

○カンサスシティ連銀ホーニッグ総裁のQE2に関する論点整理(その1)

http://www.kansascityfed.org/speechbio/hoenigpdf/nabe-hoenig-10-12-10.pdf

10月12日の講演ですので、9月のFOMCの議事要旨が出てQE2ネタでクソ盛り上がり(インフレ期待を高めるために物価水準ターゲットや名目GDPターゲットも検討材料みたいな部分に大反応してましたわな)が始まる直前というか当日というタイミングでございましたわな。

で、最初に景気に対する認識があるのですが、当然っちゃあ当然なのですが、ホーニッグさんは景気に関しては「ペースは遅いものの回復傾向」が続いているという話をしています。ただし失業率に関してはホーニッグさんと言えども現状に関しては良くないという話をしています。本文3ページ目から。

『The issue is, of course, that while private jobs are being added within the economy, it is not enough to bring unemployment down to where we all would like to see it. Unemployment remains stubbornly high at 9.6 percent.』

失業率の水準は望ましいと考える水準に対して十分ではないとな。

『With such numbers, there is, understandably, a desire and considerable pressure for the Federal Reserve to “do something, anything” to get the economy back to full employment. And for many, including many economists, this means having the Federal Reserve maintain its zero interest rate policy or further still, engage in a second round of quantitative easing - now called QE2. Some are even suggesting these actions are necessary for the Federal Reserve to comply with its statutory mandate.』

このような状況においては、FRBに対して何かをしろというプレッシャーが掛かりますし、低金利の継続と新たな量的緩和、つまりQE2の実施がマンデート達成に必要だと考える人が多いでしょ、ってな話をしているように見えますな。

で、QE2の論点整理が始まる訳ですが、まずはQE2で期待されている政策波及経路とその効果に関する論点整理をしている項が次の小見出し『Interpreting the Policy Mandate』という所でございます。

最初にFRBの法的に定められたマンデートについての話がありまして、その政策のゴールはあくまでも長期的なものであって、金融政策の効果が波及する期間や、その間の変化によるラグなどのこともあるので、短期的な目標を追求する事については慎重であるべきだ、という話をしております。

『The FOMC's policy mandate is defined in the Federal Reserve Act, which requires that: "The Board of Governors of the Federal Reserve System and the Federal Open Market Committee shall maintain long-run growth of the monetary and credit aggregates commensurate with the economy's long-run potential to increase production, so as to promote effectively the goals of maximum employment, stable prices, and moderate long-term interest rates."』

ここの文をまとめて書いてあるのを久々に見たので思わず引用してしまった、今更の話で正直スマンカッタ。

『There is, within the Act, a clear recognition that our policy goals are long-run in nature. In this way, the Act recognizes that monetary policy works with long and variable lags. Thus, the FOMC should focus on fostering maximum employment and stable prices in the timeframe that monetary policy can legitimately affect - the future. The FOMC must be mindful of this fact and be cautious in pursuing elusive short-term goals that have unintended and sometimes disruptive effects.』

短期的な目標を追求しすぎると時に混乱を招くという話ですな。で、その次にQE2に関する政策経路についての話になりますが、基本的には(その時点で)一般的に認識されているのは「長期国債の追加購入」ですよね、という話をしまして(その部分の引用はスルー)、では長期国債の追加購入ってどうよという事で、長国買入の政策効果を論じています。本文4ページから。

『Proponents of QE2 argue that it would provide a near-term boost to the economy by lowering long-term interest rates while raising inflation. These benefits would arise from the purchase of U.S. Treasury securities, which would lead to lower U.S. Treasury and corporate rates. These lower interest rates would then stimulate consumer and business demand in several ways, including encouraging mortgage refinancing that could lead to increased consumer spending, boosting exports through a likely lower exchange rate, and fostering higher equity prices, thereby creating additional wealth. Such a move is said to be consistent with the FOMC’s September 21, 2010 announcement, which stated that it was “prepared to provide additional accommodation if needed to support the economic recovery and to return inflation, over time, to levels consistent with its mandate.”』

QE2の実施を支持する人の主張によると、QE2は長期金利の引き下げとインフレの引き上げによって景気を刺激するという論議をしており、米国財務省証券の買入によってそれが実施されるのですが、金利の引き下げの波及効果としては、金利低下による消費者や企業の消費需要拡大、為替レートの引き下げを通じての輸出拡大、モーゲージ金利の低下によるリファイナンスの進展や株価の上昇による消費支出拡大というような話がありますね、ってな指摘でありまして・・・・

『Such easing, it is hoped, would bring inflation back up to something closer to 2 percent, a rate that many judge to be consistent with the Federal Reserve’s mandate. In addition, higher inflation would increase demand as consumers move purchases forward to avoid paying higher prices in the future.

So, with these purported benefits, why would anyone disagree?』

ということで次の章からが『New Risks and QE2』というホーニッグ節爆発のコーナーになるのでありますが、肝心の本文に来る前に時間が無くなったので明日に続くのでございまする(いつもの事ですがどうもすいません)。

ただまあ何ですな、多分この辺りに関するツッコミはツッコミでQE2というか国債買入推進のバーナンキ議長をはじめとするFOMC主流派の方も考えているようで、先般の声明文でもそうですし、9月のFOMC議事要旨で読める議論でも長期金利がどうのこうのという話をあまり強調しないようになっていまして、特に9月の議事要旨では「短期的な期待インフレ率を引き上げる」というような論点も出ていた事から、逆にQE2ヒャッハー相場となって商品は上がるわトレジャリーの10年超のイールドカーブのスティープニングは始まるわ、「カレンシーウォー」だの「ダラーデバリュエーション」だのという言葉は踊るわという現象が起きていたのはご案内の通りであろうかと存じます次第でございまして、恐らく(前回の長期国債購入でもそうでしたが)長期金利の話は国債買入の進展次第ではどさくさに紛れてその話をフェードアウトするというバーナンキ先生得意の荒業が進行する可能性もあるでしょうな、と思うのでございました。

以下明日に続く。

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2010/11/16

○QE2が面白い事になりつつある件について

足元では2年債の動きも興味津々ですので、ブルームバーグ様におかれましては米国2年債(TickerコードのGT2かCT2でよかです)の数字も入れていただくと有り難いのですが(まあモーサテで判りますけど)・・・・

http://www.bloomberg.co.jp/markets/index_americas.html

東京のだいたい朝6時の数字(上記URLより)

米国10年国債 2.924 0.133 97.453
米国30年国債 4.393 0.105 97.688

・・・・(つд⊂)
・・・・(;゚д゚)

昨日の夜見てた数字と何か随分違う気がするのだが・・・・

えーっと何だかまた金利が上昇しているのですけれども、これは一体全体何がどうなっているのでしょうかという所ですわな。いやまあQE2ヒャッハー相場でインフレ期待が上昇という事にすれば一応話としては通るのですけれども、単に勢いで上昇していると申しますか、その前のQE2盛り上がりの世界の中でトレジャリーロングの壮大なポジションが積み上がってしまった巻き戻しが起きてそれが雪崩みたくなっているという感じはしますが、実際のところはあたくしトレジャリーの専門家じゃないですからワカランチ会長。

でまあこの長期金利上昇ですが、先般ご紹介した9月のFOMC議事要旨(や他の連銀の偉い人の講演)の中でも「米国のモーゲージ金利が低下し、30年MBS金利がヒストリカルローまで低下したことによって、住宅ローンの借り換えが(可能な人は)進み、家計のバランスシート改善や消費回復に寄与している」という話になっておりまして、まあ大丈夫なんですかというのもありますし、QE2ヒャッハーで商品価格は上昇する中でしらっとドル高になっているのもお洒落な展開(まあドル全面高で日本的にはウッシッシですけれども)となっておりますわな。

という事で、市場金利だけ先にじゃんじゃん上昇して景気に悪影響を与えるわ肝心の物価はコストプッシュするものの景気が良くならないので結局企業のマージンで吸収する破目になるわというお洒落な展開が(なので行き先はデフレ均衡だったりするのですが)進展しつつある香ばしさに落涙を禁じ得ません。

ま、QE2ネタで引っ張りまくってポジションを無駄に積み上げさせたFRBの捌きにちょっと問題があったような気はする訳でして、前回の国債大量購入の時はまだ金融機関が飛ぶだの何だのという状況であって、危機の中でポジションアンワインドというか投げを止める為に国債購入のするする詐欺で投げモードになるのと止めさせていたけれども、AIGの問題などでガイトナーが立ち往生しそうになったのでFRBがお助け特攻したという流れでしたので、そーゆー意味では前回の国債購入やるやる詐欺(結局やりましたが)での引っ張りは無駄なポジションのつみ上がりが起きなかったとも言えるのですが、今回は何せ状況が金融危機とかでも何でもなく(物価と失業率はうんこですが)通常の取引が通常に行われている中だったのでちゃっかりポジションが積み上がって香ばしい展開になった、とか今勝手に考えてみたけどどうっすかね。

という事で、この流れだと「QE2やったけど何か金利上昇して景気は良くならないわ川下の物価は上がらないわ失業は改善しないわ」→「QE3催促相場」→「QE3やったけど(以下同文)」となるとか、最後はどこかで臨界点越えて爆発するとか、何かこうバーナンキ先生のお髭(先生の髭に粘着質ですかそうですか)が危機に瀕するような流れが起きそうですが大丈夫ですかねえ。

いやまあ「ポートフォリオリバランス」と「市場のインフレ期待(ホンマカイナという突っ込みはあるが)」というようなものは進展しているので、FRBとしては開き直るのかもしれませんけれども、これって本当の本当にFRBが想定していた流れなのかなあと思いますと、そうでは無いのではなかろうかっつー気がする次第でありまする。

いやまあ中長期債をあの勢いで買えばそのうちMKTに玉が無くなるからそうそう売りまくりって訳にも行かないような気もしますけれども、やはり「中央銀行が長期金利を力技で制御する」というのはあくまでも机の上の話なんですかねえ(もしやるならば会計制度などをいじって投資家のインセンティブ構造を変える方が話が簡単ですわな。そうなった場合に長期金利市場がインプライするものは変わってくると思いますけれどもね)という所ではなかろうかと存じます。

と、これだけ書いたら明日からQE2大勝利の展開になるかもしれないというのが市場様のおそロシアな所でございます、って最後の最後にヘッジクローズを入れるのに余念の無いあたくしはチキンにも程がありますかそうですかあっはっは(あほです)。

しかしこれは何と申しますか・・・・
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=avc.nSBjV83g
FRBに資産購入の中止を要請−23人のエコノミストらが公開状

そもそも失業率を直接どころか間接操作するのも大変なのにデュアルマンデートになっているという所の無理が低成長になって出てきましたっすかねえという所ですかな。

で、話は更に飛びましてこの辺りの論点も含めて、先日(って10月12日なんですけどね)カンサスシティ連銀のホーニッグ総裁(毎度FOMCで反対票を投入する人)がQE2に反対する論点を比較的コンパクトに説明した講演があって、これがまあ良い論点整理となっているのでそのうちご紹介するかも知れません。

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2010/11/15

○トリシェ総裁の会見(ちょっと前の奴)から少々

虫干しネタで恐縮至極。
http://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2010/html/is101104.en.html
Introductory statement with Q&A

Jean-Claude Trichet, President of the ECB,
Vitor Constancio, Vice-President of the ECB
Frankfurt am Main, 4 November 2010
(unicode使わないので一部フォント形式が変わっております)

ということで今更先々週の話ですが(汗)。

・ステートメント部分を少々

ステートメントの部分までやってるとキリが無いですし、まあ今更という所ですので、勝手にあたくしが箇条書きにしてみる。

・景気は引き続き回復しているが不確実性は拡大
・現状の金利は適正、金融環境は引き続き緩和的
・インフレ期待はアンカーされている
・経済のリスクは若干ダウンサイド、商品エネルギー価格上昇や金融市場動向がリスク
・一方でグローバルな貿易は予想されていたよりも強い拡大を示している
・物価のリスクは若干のアップサイド
・財政再建の必要性は「明らかな必要性がある」

死ぬほど端折っているので肝心なところが抜けていそうだがまあ勘弁してつかーせ。


・米国は通貨切り下げ政策を取っているわけではないと理解していますとな

でまあQ&Aなんですけれども(紙に打ち出すと実質9ページのうちほぼ7ページが質疑応答)特に欧州圏の財政問題に関する質疑が多くて、にわか勉強のあたくしには何かイマイチ良く判らん(訳でもないが前後の事情をきちんと把握していないので話を読んでいて理解するのに時間が掛かる)のでその辺は華麗にスルーしますが、ひたすら質問するサイドが「財政再建策についてどう思うか」とか「債務リストラクチャリング計画に関するドイツなどの主張についてどう思うか」というような質問が飛んで、それに対して「さっきも答えたがノーコメント」みたいな応答が延々と続いているように読めてしまいましたです。

あと、通貨に関する質問でもそんな感じなのですが、通貨戦争がどうのこうのという点に関しては明確に違いますよってえ話をしているのですな。

『Question: Just to go back to the US decision very briefly. Would you still say that the US favours a strong dollar after the Fed decision yesterday? It did push up the euro by 2 cents, so how would you describe that, I mean does that qualify for a brutal move almost?』(2番目の質問は割愛)

『Trichet: On your first point, I never comment, as you know, on moves on the market on a day-to-day basis or minute-by-minute basis. Second, I have no indication that would change my trust in the fact that the Federal Reserve Chairman and the Secretary of the Treasury, not to mention the President of the United States, are not playing the strategy or tactics of a weak dollar. I have no reason not to believe them, and again I trust their statement that it is in the interest of the United States to have a strong dollar, strong vis-a-vis the other major floating currencies, including the euro. And I fully share this view.』

ということで、「米国は通貨安競争を仕掛けている訳ではない」という話をきっぱりと行っているのですが、これはある意味で牽制でもあるんでしょうなあとは思います。で、後の質問で(めんどいので引用しませんが)「じゃあ日々の動きは兎も角として最近の対ドルでのユーロ高についてどう思うか」と質問されたら「さっき話した以上の話は特にねえよ(超意訳)」という答えもございましたです。

ちなみにちと話はズレますが、米国のQE2のインフレへの影響に関する質問に対しては「ノーコメント(=これから状況の推移を見ていきます)」としていますが引用割愛。


・非伝統的政策の終了前にも利上げは可能という話

これはへーと思ったんですけどね。

『Question : (最初の質問は割愛)My second question relates to the repeated warnings that we have heard in recent weeks against keeping interest rates too low for too long. Are you ready to repeat that warning now and can you explain what is behind these warnings? Would the ECB consider raising interest rates before inflationary pressures actually call for such a move? 』

『Trichet: As regards your second question on interest rates, I can only say once again that you know the extent to which we are never pre-committed. Our doctrine is that we take decisions that are appropriate, taking into account that we have to deliver price stability over the medium term. I also said, and that it is very important, that there is no correlation between non-standard measures on the one hand and our own interest rates on the other. We can move interest rates without necessarily having totally ended the non-standard measures. We have always made that point and I will continue to do so. That said, taking everything into account, as we always do, we consider the present interest rates to be appropriate.』

非伝統的政策が終了する前に利上げをする事が可能ですとは「ほほー」という感じですが、まあECBの場合は国債買入がそもそもマネー供給というよりはお助けオペでありますし、LTROとかMROの固定金利フルアロットメントというのはさっさと終わりにするのはそんなに技術的には難しくない話ですからそうなのかもしれませんな。


・EURIBOR上昇は市場機能が正常化してきている証拠だと

ホンマカイナという気がするのですが・・・・・

『Question : (最初の質問は割愛)And, second, a question with regards to money market rates: the three-month EURIBOR is actually now above the ECB benchmark rate of 1%. Aren’t you, on the other hand, discouraging interbank lending if you continue to offer banks three-month loans at 1%?』

『Trichet: On your second point, we consider that the unlimited supply of liquidity is there. As I also explained last time, the banks are asking for all they need, because there is no limit, either on the main refinancing operations, or for the one-month window, or for the three-month window. So, because we did not change our rates (neither the MRO nor the deposit rate was changed), what we have observed in the market is that the positioning of EONIA, the very short-term rates, is dependent on the decisions of the banks themselves. It is a kind of equilibrium which depends on what the banks themselves are asking for, and you can see that it goes up and down from time to time, very much depending on the demand from the banks themselves. So, there is no particular signal there. The only important observation I would make is that it shows that we are in a normalising process, and that is an important element. But again, from our part, there was no signal at all - no monetary policy signal. This normalising has been taking place under our eyes, and we will see what happens later on. That is the observation I would make, and I have to say that, for me, a normalising is something positive. It also indicates that perhaps the EONIA means more today than it meant before, because before perhaps only a very small fraction of the institutions had access to this very low interest rate refinancing.』

長いのを思いっきりそのまま引用しちゃいましたが(汗)、どうも「だって今でもMROやディスカウントウィンドウはフルアロットメントで実行してるから問題ないっしょ」と言いつつ、EURIBORが上昇しているのは市場の正常化の進展でありポジティブですよという話をしているように読めてしまったのですが、しかしながらそれはマーケットにストレスが掛かっているという事なのではないのかっつー気もせんでも無いのですが、ユーロ市場のインターバンクまで詳しくないのでよー知らんですけど、読んでて何かちょっと違和感を受けた箇所でありました。

#とか書いたら実はあたくしが読み間違えだったらアホウですが


ということで、他にもネタがあるような気がする(というかある)のですが、時間と根性とあたくしの英語力(ECB関連の文書は普段あまり読む癖をつけていないので、正直言って英和辞典片手にヒーヒー読んでも字面は判るけど意味判らん状態なのでございます、勉強不足でどうもすいません。ちなみに脱線すると英語は学校の勉強だけのドメドメのあたくしの場合、BOEとかFOMCのMinuteとか読む速度上がるのに1年位掛かるというアホです)の問題がございますのでこの辺で勘弁。

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2010/11/11

・金先が順イールドっぽくなっている件について

これまた一昨日の雑談の続き

昨日の夕方6時くらい(エエカゲンな取り方ですいません)のユーロ円金先ですが、2010年12月限から順に各コントラクトを利回りに引きなおすと0.330%、0.325%、0.325%、0.330%、0.335%というような数値になっておりまして、微妙ちゃああ微妙程度の変化ではございますが、順イールドっぽくなっているのがチャーミング。

足元で米国様の短期物の先物とかが素敵な動きをしていて、QE2ちゃんが炸裂した先週木曜の高値(金利で言えば低いという意味)からここもと物凄い勢いで期先のコントラクトが売られて、どう見ても来年3Q(つまり国債買入終了と共に)に利上げです本当にありがとうございましたという価格形成になっていまして、米国ちゅうのは何と言うデジタルな反応をするんじゃこいつらアホじゃねえかと言う大変に素敵な展開になっているのが何となく影響しているのかなあとも思われますが、追加緩和の追加緩和期待で金先がどうのこうのというのは何処へやらという所でございます。

#先日の総裁会見では「TIBORなどのターム物金利が包括緩和の影響で低下しています(キリッ)」と麿は仰せでございましたがね(ニヤニヤ)

まー金先に関しては米国のアホウ展開というかある意味神展開となっている動きの貰い事故みたいな面もあるかとは思いますが、足元でGCレートがもうちょっと低くて短国が0.11%割れで0.10%接近とかやっていたら雰囲気はちと違っているのではないかという気も思いっきりする所ではございまして、何だかなあ感はするのでございます。


○金融市場だけ先に走り出しましたなあ

ふむふむなるほど。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920000&sid=a7fq9jGKR9pQ
米国債:下げ幅縮小、NY連銀の購入額発表で−30年債入札は不調

『30年債は同年限の入札を嫌気し、下落する場面もあった。米財務省が実施した160億ドル規模の30年債入札で、最高落札利回りは4.32%と、市場予想の4.288%を上回った。応札倍率は2.31倍と、2009年11月以来の低水準。』(ブルームバーグニュースさんの上記URLより)

いやあ30年4.3%とか実に香ばしい展開でございますが(さっきブルームバーグのインターネットページを確認したら30年は前日比0.01%金利低下して4.238%のようですな)、結局前回の国債大量購入と同じパターンになりつつあるように見えるのが素敵な所でございます。

まーFRBとしては「30年金利の上昇は期待インフレ率の上昇によるものですから良い金利上昇」ってな形で正当化しちゃうのかもしれませんけれども、先ほど申し上げた短期物の先物の極端な振れっぷりとか(何ぼなんでもあの動きはおかしいと思うが)、国債購入絶賛拡大実施→QE2ヒャッハー相場で商品市場フィーバー→インフレ期待で長期金利上昇というような大変に素敵な速さで市場が反応しているわけでして(当たり前ちゃあ当たり前ですが)、金融政策が実体経済に効く速度と、期待で動く金融市場の速度とのギャップによって、期待した効果と違う結果が出てくるのではないかというような懸念が益々してくるのでありまして、バーナンキ大先生が髭を剃ってお詫びするのか、議会証言かどこかの講演辺りで髭を毟られるというような神展開になる悪寒も益々高まるのでございます。

何にせよちょっと捌きが難しくなりました罠>FRB

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2010/11/04

お題「FOMCで30年金利スティープですかそうですか」

早起きするつもりでしたが30分程度しか早起きできませんでしたorz

#今後米国の長期債買入が48兆円で日銀の買入がこれに対して少ないのでこれからも円高が進行するとか言ってる人は、米国が長期債購入する前に日銀が恒常的に長期債買入を行っている時に何で円安が進行し続けなかったのかの合理的な説明をすべきだと思いますねえ、モーサテのコメンテーターさん(−−)

とついまた悪態を書いてしまったがそれは兎も角声明文声明文(^^)。

今回の声明文
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20101103a.htm

前回の声明文
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20100921a.htm

○物価水準と失業率の水準がマンデートより悪いのが追加緩和の理由

まず声明文を前回と比較して斜め読みした感想ですが、今回の追加緩和に際して景気認識については全体的な認識こそ下げたものの、個別の需要項目などに関する認識には変化がありませんでした。つまり今回の追加緩和は「景気認識が下がったから追加緩和」でも「リスク認識が下がったから追加緩和」でもなくて、純粋に「物価と雇用というFRBのマンデートとされるものの水準が悪いので追加緩和」という話ですな。

いやまあ直球ストレートっちゃあ直球ストレートなのですけれども、景気認識に基本的な変化が無くて物価水準と失業率の水準の改善が遅いから緩和というのも時間的な整合性としてどうなのという気もしますし、一方で言えば日銀的には微妙に痛い緩和でもございますわな。まあ今回あんまり景気認識を下げないで包括緩和とやらを実施したのでFRBが追加緩和を決定した理由が日銀に対する強烈な嫌味になるというのは嫌味成分がだいぶ減ったなあとは思いますけれども(^^)。

ということで駆け足で前回声明文との比較をしつつ。


○景気認識は良くみると殆ど変わっていない:第1パラグラフ

『Information received since the Federal Open Market Committee met in September confirms that the pace of recovery in output and employment continues to be slow. 』(今回)

『Information received since the Federal Open Market Committee met in August indicates that the pace of recovery in output and employment has slowed in recent months.』(前回)

生産と雇用の回復の遅れをコンファームしました、とこの部分が下がっています。

ところが、この後の部分がこれまた殆ど変わっておりませんのでベタ引用。

『Household spending is increasing gradually, but remains constrained by high unemployment, modest income growth, lower housing wealth, and tight credit. Business spending on equipment and software is rising, though less rapidly than earlier in the year, while investment in nonresidential structures continues to be weak. Employers remain reluctant to add to payrolls. 』(今回)

家計支出、企業の設備投資、賃金に関する部分などは前回と同じです。

『Housing starts continue to be depressed.』(今回)
『Housing starts are at a depressed level. 』(前回)

住宅着工は引き続き低水準にあると若干下げています。で、この後に変化がございましてですな。

『Longer-term inflation expectations have remained stable, but measures of underlying inflation have trended lower in recent quarters. 』(今回)

物価に関する話とインフレ期待に関する話は第2パラグラフにあったのですが、今回第1パラグラフに移っています。第2パラグラフが今回大きく変化してまして、物価水準と失業率の水準がケシカランという話をしていますので、現状認識に関する部分を前に持っていったのだと思われます。

『Bank lending has continued to contract, but at a reduced rate in recent months. The Committee anticipates a gradual return to higher levels of resource utilization in a context of price stability, although the pace of economic recovery is likely to be modest in the near term. 』(前回)

前回まではこの部分はこういう話をしてまして、しらっと抜けたのが銀行貸出に関する部分。物価の見通しに関する部分は今回変化しましたので第2パラグラフの比較も含めてという話かと存じますです。


○物価水準と失業率水準が悪く、回復のペースはdisappointingとな:第2パラグラフ

『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability. Currently, the unemployment rate is elevated, and measures of underlying inflation are somewhat low, relative to levels that the Committee judges to be consistent, over the longer run, with its dual mandate. 』(今回)


わざわざ最初に「FOMCは法的に定めたれた使命によりまして、雇用の最大化と物価の安定を追求しています」と当たり前の話を入れているのはまあ決意表明みたいなもんでしょうか。我々の意思が強いんですよ(キリッ)って所っすな。

で、現状のレベルに関する部分ですが、物価に関する記述に加えて失業率に関する記述が入りましたな。前回の該当部分は第2パラグラフの先頭になります。

『Measures of underlying inflation are currently at levels somewhat below those the Committee judges most consistent, over the longer run, with its mandate to promote maximum employment and price stability. 』(前回)

で、先行き見通しですが。

『Although the Committee anticipates a gradual return to higher levels of resource utilization in a context of price stability, progress toward its objectives has been disappointingly slow. 』(今回)

今回の追加緩和に至る決定の元になったのはここですよ、と言う事だと思うのですけれども、「progress toward its objectives has been disappointingly slow」ということで、FOMCのマンデートに向けての回復が失望的な程に遅いとはキタコレという感じでございますが、まあ景気認識そのものが変わっていないので、今回の追加緩和をするにあたってはこの辺りの話を強調するという格好にするわなという所でもございます。前回までの声明文はこうなっていました。

『With substantial resource slack continuing to restrain cost pressures and longer-term inflation expectations stable, inflation is likely to remain subdued for some time before rising to levels the Committee considers consistent with its mandate.』(前回)

ということで、ここのトーンが大きく変わっていますので、まあ今回の決定はこの辺に関する認識の変化が理由ですよ、と読むのが自然ではないかと存じます。


○より強い景気回復と望ましい水準への物価上昇を促す為と来ましたか:第3パラグラフ

第3パラグラフは追加緩和政策に関する文章です。

『To promote a stronger pace of economic recovery and to help ensure that inflation, over time, is at levels consistent with its mandate, the Committee decided today to expand its holdings of securities. 』(今回)

ここに失業率に関する言及が無いのはお洒落というかチャーミングでありまして、そらまあバーナンキ講演とかでも確かその辺の指摘はあったと思いますが、金融政策で直接的に失業率をどうこう出来るものでは無いという認識に立っている筈でございますから、ここでの追加緩和の目的の中に失業率の話が無いのは当然ちゃあ当然ですが、何気にチャーミングですなあと思いましたです。なお、バーナンキ講演によりますと物価のほうは金融政策で動かせますよと言ってますので、まあこういう言い方になりますわなとゆーことで。


○買入額が微妙に少ないような気がするんだが:第3パラグラフ

『The Committee will maintain its existing policy of reinvesting principal payments from its securities holdings. In addition, the Committee intends to purchase a further $600 billion of longer-term Treasury securities by the end of the second quarter of 2011, a pace of about $75 billion per month.』(今回)


6000億ドルの購入という話だと多いように見えますが、よくよく見ると期間がオープンエンドでは無くて、かつ月割りすると750億ドルという事で、月1000億ドルがコンセンサスじゃ無かったのかなあと思ってたのでちょっと少なめのような気がするざます。総額を多めに見せるためにエンドを半年後ではなくて「来年の6月末」という事にして総額を6000億ドルと多めに見せるというのは中々お洒落。

『The Committee will regularly review the pace of its securities purchases and the overall size of the asset-purchase program in light of incoming information and will adjust the program as needed to best foster maximum employment and price stability. 』(今回)

今後のペースや規模は状況に応じて見直しますよという話は前回の資産買入プログラムを突っ込んだ際にも同じ文言が入っていまして、まあお約束の文章ちゃあお約束の文章でございます。前回は買入プログラム導入当初には「必要があれば追加緩和も示唆ですよ!」という認識だったのが、経済状況と金融環境が改善されて出口の意識を市場ちゃんがするようになった時には「必要があれば出口って意味ですよねえ」という認識になったという中々便利な文言でありまする。

ただ今回に関しては、追加緩和決定の理由が物価と失業率というそうホイホイと改善するようなものではないですから、どちらかといえば「期限が来ても延長ですかねえ」とか「効かないようなら額が増えるんですかねえ」というような認識を市場ちゃんがするのでしょうなあと思われる次第。


○30年債が売られていらっしゃると思えば:第3パラグラフおまけ

http://www.bloomberg.co.jp/markets/index_americas.html

東京4日朝6時半頃にリロードした時の数値はこんな感じでした。

米国10年国債 2.570 -0.016 100.469
米国30年国債 4.040 0.113 97.156

米国30年債がまた4%台になって益々カーブがスティープしているのですが大丈夫なのでございましょうかねえ・・・・・30年MBS金利の歴史的な低水準が住宅ローン借り換えによる家計のパランスシート改善やら消費刺激やら住宅市場へのサポートやらになっているのでは無かったでしたっけと思うのが微妙なのでありますが・・・・・

何でじゃろと思ったらこういう事のようで。
http://www.newyorkfed.org/markets/opolicy/operating_policy_101103.html
Statement Regarding Purchases of Treasury Securities

『The Desk plans to distribute these purchases across the following eight maturity sectors based on the approximate weights below:』(NY連銀の上記URLより)

ということですが、図をコピペするのは苦手なのでそれはURL先をご覧頂くとしまして、今回は10年超のゾーンも買うという事にしたのですが、その買う量がそんなに多くないから期待はずれってえ所だったのでしょうかねえと存じますですが、よー知らんので詳しくは本職の人に聞いて下さい。


○FFレートについては現状維持で「for an extended period」も同じと:第4パラグラフ

『The Committee will maintain the target range for the federal funds rate at 0 to 1/4 percent and continues to anticipate that economic conditions, including low rates of resource utilization, subdued inflation trends, and stable inflation expectations, are likely to warrant exceptionally low levels for the federal funds rate for an extended period. 』(今回)

前回はこの部分に償還再投資の話が入っていますが、それは今回は前のパラグラフに移動しているだけですので、ここの文言に関しては前回と同様ということで宜しいかと。


○今後も状況を注視して必要な措置を取る云々も同じです:第5パラグラフ

『The Committee will continue to monitor the economic outlook and financial developments and will employ its policy tools as necessary to support the economic recovery and to help ensure that inflation, over time, is at levels consistent with its mandate.』(今回)

ここは前回と同じです。


○ホーニッグさんの反対理由:第7パラグラフ

もはやお約束となっているホーニッグさんの反対ですが。

『Voting against the policy was Thomas M. Hoenig. Mr. Hoenig believed the risks of additional securities purchases outweighed the benefits. Mr. Hoenig also was concerned that this continued high level of monetary accommodation increased the risks of future financial imbalances and, over time, would cause an increase in long-term inflation expectations that could destabilize the economy.』(今回)

追加の資産買入は効用よりもリスクの方が大きく、かつ将来に渡る金融の不均衡を発生させ、更に長期的なインフレ期待を引き上げることによって経済の安定を損ねる、というのが理由となっています。

でですな、先日ホーニッグさんが講演してて、追加緩和に関するリスクに関する話をしてましたので、その辺も読んでおかなければ(前後してコチャラコタさんとかの講演もあったり、ロックハートさんやらラッカーさんの講演要旨みたいなのが出てたりしているので実は宿題が山のように溜まっているのだ、汗)と思うのであります(一応ホーニッグさんのはリスクに関する話の部分だけは斜め読みしたが)。

前回の理由はこんな感じです。

『Voting against the policy was Thomas M. Hoenig, who judged that the economy continues to recover at a moderate pace. Accordingly, he believed that continuing to express the expectation of exceptionally low levels of the federal funds rate for an extended period was no longer warranted and will lead to future imbalances that undermine stable long-run growth. In addition, given economic and financial conditions, Mr. Hoenig did not believe that continuing to reinvest principal payments from its securities holdings was required to support the Committee’s policy objectives.』(前回)

決定事項が前回と今回は違うので反対理由が微妙に違いますが、基本的には「メリットデメリットを比較した場合にメリットが少ない」というのと「将来に渡る金融の不均衡を発生させる」というのは同じでございますな。

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2010/10/29

○これは酷い

時間が無いのでニュースURLだけ。

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=aISVTyn8TvIg
米FRBが国債購入規模予想で政府証券公認ディーラーに調査(Update3

『ニューヨーク連銀は、プライマリーディーラー(政府証券公認ディーラー)を対象に調査を実施。「国債購入が発表され、6カ月間で完了した」場合の名目と実質の10年物国債利回りの変化を推定するよう求めた。プライマリーディーラーは購入額がゼロ、2500億ドル、5000億ドル、1兆ドルの4つの選択肢から回答する。』(上記URLより)

おいおいおいおいおいおい・・・・そんなの大規模ヒアリングしてどうするんだよ。

何かこう市場との対話とか期待のコントロールに失敗しつつあるという感じがするのでありまして、これはバーナンキ議長がお詫びに髭を剃る日も近いのではないかとガクブルの展開でございます。

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2010/10/28

○米国金利上昇とな

ほほう。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920000&sid=aS8G3LXT8Hz0
米国債:10年債、6日続落−追加緩和が小規模にとどまるとの観測で

ブルームバーグによりますと米国10年債が2.720%で30年債が4.056%とゆーことのようで、30年が4%抜けちゃいましたなあ(とりあえず寸止めで粘っていた)というのもありますし、10年も2.7%とは随分戻りましたなあという所でございます。

でまあそれはそれで良いのですが、記事にありますように『30年債利回りは続伸。2年債利回りはほぼ変わらず。良好な経済統計の内容を背景に、FRBの金融緩和策では追加購入する国債の規模がトレーダー予想を下回るとの見方が広がった。』(上記URLより)ということで、何でもWSJとかにその手の記事が出たとか言ってましたけど、こりゃFRBの捌きが難しくなって来ましたなあという感じがするざます。

つまりですな、元々金融緩和期待で米国長期金利が低下してきたのは良いのですけれども、9月のMinuteが出る前後からその追加緩和ネタが「通貨(切り下げ)戦争」だの「プリンディングマネー」だのという扱いになってインフレ期待のような物が盛り上がったと思うので、実際に国債買入を大規模に実施したら瞬間は買われるにしてもその後ってやっぱ「プリンティングマネー」「財政マネタイズ」というネタで長いところの金利は上昇しても不思議じゃないと思っていたのですが、昨晩の米国債市場の結果からすると追加緩和の規模が小幅だとそれはそれで売られるという事なのでしょうか。

何か単に足元の経済指標がそんなに悪くないので、ここもと実は景気悪化の方を織り込みすぎていた反動が来ているだけなのかも知れませんが、金融緩和というか国債の買入の規模に関してもマーケットがどの程度の期待をしていて、規模によってどのような反応をするのかという点に関してFOMCの市場コミュニケーションがどのようになるのかをニヤニヤしながら眺めたいと思いまする。

一応あたくし基本的にメインで考えているのは、米国はそうは言ってもFOMC議事要旨などにあるように、長期金利(30年のMBSとか)低下によってゲロゲロの住宅市場の支えになっているというような認識でいると思われますので、長期金利(特により長い所)の金利をホイホイ上げるわけに行かずという事なので、そんなに派手派手に国債買入をぶち上げて「プリンティングマネー」の発想が先に来て市場だけ金利上昇で走っちゃうというのを避けるから、そんなに急にでかい規模での国債買入を打ち込まないかなあとか漠然と思っていたのですけれども、上記のニュースのような感じで「小規模だったら失望売り」が30年金利の辺りまでどどーんと来るのであれば、小規模というのも難しいのかなと思い出しまして、益々来週のFOMCが楽しみになって参りました。


まあいずれにしても「国債買入が大規模」→「期待インフレ率が市場だけ先行して盛り上がって長期金利上昇」→「長期金利上昇が景気の足を引っ張る」→「実際のCPI上昇率が回復する前に景気悪化でデフレの罠に」とか、「国債買入が小規模」→「期待インフレ率が上昇しない」→「引き続きCPI上昇率低下でデフレの罠に」などという神展開を見せていただきまして、バーナンキ大先生におかれましてはお詫びに髭でも剃って頂くという神展開になる事を妄想して止まないあたくしは性格に問題がありますですかそうですか(^^)。

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2010/10/26

○出遅れまくりだが先週(追記:先々週です)のバーナンキ講演を斜め読みしてみた

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20101015a.htm(html版)
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20101015a.pdf(pdf版)

お題は「Monetary Policy Objectives and Tools in a Low-Inflation Environment」というものなのでワクテカして斜め読みした(これがまた本文15ページもございまして結構長い)のですが、そんなに面白いネタがなくて若干拍子抜け(いやまあもちろんあたくしが肝心な所を読み飛ばしてしまった可能性はあるので判っていたら教えてくんなましという所なのですが、汗)だったりするのれす。

で、講演のマクラの部分も妙に長いのですが、そのマクラの最後に今回の講演の流れが書かれております。

『In the remainder of my remarks I will discuss these issues in the context of current economic and policy developments. I will comment on the near-term outlook for economic activity and inflation. I will then compare that outlook to some quantitative measures of the Federal Reserve’s objectives, namely, the longer-run outcomes that FOMC participants judge to be most consistent with its dual mandate of maximum employment and price stability. Finally, I will observe that, in a world in which the policy interest rate is close to zero, the Committee must consider the costs and risks associated with the use of nonconventional tools when it assesses whether additional policy accommodation is likely to be beneficial on net.』

という事で、まず最初に経済見通しに関する説明があって、その次にFEDの今後のいわゆる量的緩和政策に関する政策ツールに関する説明があるのは良いのですが、最後にあるのが微妙にチャーミングなネタで、ゼロ金利制約の元での非伝統的な金融政策による追加緩和のメリットデメリットに関する話というどこかの麿総裁のような話をしているのが何だか微妙だったりしますわな。うーむ。

で、講演のページ数を見ると予想がつくのですが、今回のこの講演は割と項目別の中身に関しては細々と話をしている感じですので、そういう意味ではバーナンキ議長の現状認識に関する整理にはなると思います。基本的には従来の講演やFOMC議事要旨などにあるもののまとめみたいな話でそんなに新しいネタはなかったように思えます。

・経済見通しに関して

『The Outlook for Growth and Employment』ってのが3ページ半ほどあるのですが、これを大体一言でまとめると「雇用の改善に時間がかかるので経済の回復には時間がかかりますなあ」という所ですな。あと金融環境の改善に関しては景気にサポートという話をしておりますが、特にその恩恵は直接金融市場へのアクセスができる大企業が受けているものの、銀行の貸出態度も改善しているので、クレジット的に借入に値する債務者であれば、中小や個人でもやや状況が改善してますなというな話をしています。

ただまあ個人消費の所など、幾つかの場所で折に触れて「個人消費やそれに連なる最終需要の更なる回復は雇用・所得状況の改善に依存します」という話が出てますので、まあ基本は雇用所得状況ですなあという事ですわな。


・物価見通しに関して

『The Outlook for Inflation』という所ですが、雇用の改善が遅れてリソースのスラックが大きいのでインフレは抑制されるでしょうという毎度の見通しです。それだけで終わると何ですので、先般ご紹介したFOMC議事要旨にあった「雇用のミスマッチ解消が進まないのは労働者のモビリティーが低下するという構造的な要因があるのではないか」という指摘に関してダメ出しをしているのがチャーミングなのでそちらから。

『In gauging the magnitude of prevailing resource slack and the associated restraint on price and wage increases, it is essential to consider the extent to which structural factors may be contributing to elevated rates of unemployment.』

ということで、構造的要因が失業をどの位引き上げているのかという点を認識するのは重要、というのがあるのですが、そこれああでもないこうでもないという話をしている部分は華麗にスルーして(おいおい)結論を。

『Overall, my assessment is that the bulk of the increase in unemployment since the recession began is attributable to the sharp contraction in economic activity that occurred in the wake of the financial crisis and the continuing shortfall of aggregate demand since then, rather than to structural factors.』

ということで、あまり構造的な失業の増加要因という考えには与していないというのが結論だったりします。


・金融政策ツールに関してですが、現状の物価と失業が望ましくない水準と言及

『The Objectives of Monetary Policy』のところですが、これまた理念的な話をああでもないこうでもないとしておりまして、「デュアルマンデートの実現にあたっては一つの目標にフォーカスし過ぎないようにしないといけません」などとどこの日銀かというような話もしらっとしているのがチャーミングです。

『The Federal Reserve has a statutory mandate to foster maximum employment and price stability, and explaining how we are working toward those goals plays a crucial role in our monetary policy strategy. It is evident that neither of our dual objectives can be taken in isolation: On the one hand, a central bank that aimed to achieve the highest possible level of employment in the short run, without regard to other considerations, might well generate unacceptable levels of inflation without any permanent benefits in terms of employment. On the other hand, a single-minded focus by the central bank on price stability, with no attention at all to other factors, could lead to more frequent and deeper slumps in economic activity and employment with little benefit in terms of longrun inflation performance.』

まあこの辺りは基本的に当たり前の話をしているのですが、ふーんと思ったのは(ある意味当たり前なのだが)「より重要な事ですが、金融政策担当者は長期的な物価上昇率を決定する能力はあるが、長期的なサステイナブルな失業率を決定する能力は乏しい」とか言っているのも「ほうほう」と。昨今の日銀法改正がどうのこうのと言ってる人たちが「日銀のマンデートに雇用の最大化を明記すべき」という話をしていますが、バーナンキ議長のこの部分に関してはどのようなご感想をお持ちなのかお聞きしたいもんで。

『Although attaining the long-run sustainable rate of unemployment and achieving the mandate-consistent rate of inflation are both key objectives of monetary policy, the two objectives are somewhat different in nature. Most importantly, whereas monetary policymakers clearly have the ability to determine the inflation rate in the long run, they have little or no control over the longer-run sustainable unemployment rate, which is primarily determined by demographic and structural factors, not by monetary policy.』

それがつまりどういうことかと言いますと・・・

『Thus, while central bankers can choose the value of inflation they wish to target, the sustainable unemployment rate can only be estimated, and is subject to substantial uncertainty. Moreover, the sustainable rate of unemployment typically evolves over time as its fundamental determinants change, whereas keeping inflation expectations firmly anchored generally implies that the inflation objective should remain constant unless there are compelling technical reasons for changing it, such as changes in the methods used to measure inflation.』

まあだからそっちに関しては努力しないというのではなく、コミュニケーションのツールとして「Summary of Economic Projections(要するに展望レポート^^)」を出してますよという話をしてますわな。

でその説明の後に、現状の物価水準と失業率の水準が望ましくないという話をしているのが今回の講演で注目された所になるんでしょうなあ(=望ましくないので追加緩和が必要=11月のFOMCで追加緩和確定、という話)という所なのでそこを引用するだよ。

『In contrast, as I noted earlier, recent readings on underlying inflation have been approximately 1 percent. Thus, in effect, inflation is running at rates that are too low relative to the levels that the Committee judges to be most consistent with the Federal Reserve’s dual mandate in the longer run.』

まあFOMC声明文でも出てましたけどね。

『In particular, at current rates of inflation, the constraint imposed by the zero lower bound on nominal interest rates is too tight (the short-term real interest rate is too high, given the state of the economy), and the risk of deflation is higher than desirable.』

ということで、短期名目金利が下げられない中での物価低下がどうのこうのという話はFOMC議事要旨の中にもありましたが、ここでは「実質短期金利が高止まりしていてデフレリスクが高まっている」というのが示されているのが新しいちゃあ新しい話で、先般のFOMC議事要旨で実質短期金利がどうしたこうしたという話をしていたのはバーナンキ議長だったんでしょうかねえというのを思わせてくれる部分だったりします。

・・・・で、余談になっちゃうのですけれども、上のほうで「中央銀行は長期的な物価水準を決定する能力があります(キリッ)」って話をしているのですけれども、一方で先般の9月FOMC議事要旨では「インフレ期待を引き上げる為に名目GDPターゲットや物価水準ターゲットなどの政策オプションも検討課題」みたいな部分があった訳でして、もしその話をバーナンキがしているのであれば、ジャクソンホールでの講演などで物価水準ターゲットに関してケチョンケチョンの扱いをしていたのにどうした事ぞという感じでありまして、物価に関しては結構バーナンキ議長が懸念してさてどうしたもんだと悩んでいるのではないかという感が致しますわな。

失業率に関してはこのように。

『As of June, the longer-run unemployment projections in the SEP(引用者追記:Summary of Economic Projectionsの事です) had a central tendency of about 5 to 5-1/4 percent--about 1/4 percentage point higher than a year earlier--and a couple of participants’ projections were even higher at around 6 to 6-1/4 percent. The evolution of these projections and the diversity of views reflect the characteristics that I noted earlier: The sustainable rate of unemployment may vary over time, and estimates of its value are subject to considerable uncertainty. Nonetheless, with an actual unemployment rate of nearly 10 percent, unemployment is clearly too high relative to estimates of its sustainable rate. Moreover, with output growth over the next year expected to be only modestly above its longer-term trend, high unemployment is currently forecast to persist for some time.』

だからどうするという話は無いのですが、足元の失業率が高すぎるというのと、先行きに関しても暫くの間は失業率が高止まりしやすいという話をしているので、必然的に金融緩和が必要ですよという話になるんでしょうな。


・『Monetary Policy Tools: Benefits and Costs』とは何ぞね

最後の部分がそういう小見出しでして、今回ナンジャソリャというのがこの部分。

『For example, a means of providing additional monetary stimulus, if warranted, would be to expand the Federal Reserve’s holdings of longer-term securities. Empirical evidence suggests that our previous program of securities purchases was successful in bringing down longer-term interest rates and thereby supporting the economic recovery. A similar program conducted by the Bank of England also appears to have had benefits.』

と言う話はまあ良いのですが、期待インフレ率を引き上げて長期金利は引き下げるなどという都合の良い政策が出来るのかというツッコミは勿論ございます。まあ結論としては、どっちも実施というのは無理でして、恐らく長期金利の動きの方が判り易いですし、直ぐに市場が反応しちゃいますから、そっちが上昇する方を懸念して長期国債の買入が小出しになるとあたくしは予想するのですが(そして小出しの結果期待インフレ率は上がらずに日本化が進行してバーナンキマズーの神展開を妄想)まあそれは兎も角。

『However, possible costs must be weighed against the potential benefits of nonconventional policies. One disadvantage of asset purchases relative to conventional monetary policy is that we have much less experience in judging the economic effects of this policy instrument, which makes it challenging to determine the appropriate quantity and pace of purchases and to communicate this policy response to the public. These factors have dictated that the FOMC proceed with some caution in deciding whether to engage in further purchases of longer-term securities.』

ということで微妙な日和見姿勢が見られますな。

『Another concern associated with additional securities purchases is that substantial further expansion of the balance sheet could reduce public confidence in the Fed’s ability to execute a smooth exit from its accommodative policies at the appropriate time. Even if unjustified, such a reduction in confidence might lead to an undesired increase in inflation expectations, to a level above the Committee’s inflation objective.』

あれだけ威勢の良い話をして市場の期待を煽っておいて、今更どの口が「あまり買入を増やしすぎると出口政策が困難になるリスク」とか言うのかという感じではございますが、まあそこでお勧めなのは「長期国債買入」ではなくて速攻で出口政策が可能な福井の俊ちゃん謹製の「リザーブターゲット」ですよ(^^)、というのは半分冗談ですけれども、まー微妙にこんなヘッジを入れているという時点で今回は派手派手な政策をいきなり出すのではなくて小出しスキームになるんだろうなあという気がせんでもないです。

一応、「我々は出口ツールを持っていますよ(キリッ)」というのはありますので最後に引用しておきますです。

『To address such concerns and to ensure that it can withdraw monetary accommodation smoothly at the appropriate time, the Federal Reserve has developed an array of new tools. With these tools in hand, I am confident that the FOMC will be able to tighten monetary conditions when warranted, even if the balance sheet remains considerably larger than normal at that time.』

ということで、本当は今日は市場雑談も書こうと思ったのに時間がなくなったのでこの辺で勘弁ということで(大汗)。

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2010/10/25

お題「もはやターゲットなのか裁量政策なのか訳が判らない件について」

今朝のモーサテの解説者が変な宗教の説法(オバマ教??)みたいで鬱陶しいにも程があるのでチャンネル変えたんだがさすがに6時前に変えたのは初めてだわwww

という話は兎も角、今日はBOEの議事要旨から。

http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/mpc/pdf/2010/mpc1010.pdf

○経済認識に関する論点

まあ毎回この人たちは論点が平然と変わるのですが・・・・

基本的に今回は「景気認識に変化をもたらすような経済データの変化は無い」という線の話になっているのでというのもあるにはあるのでしょうが、従来の資産買入政策の効果に関する話とかをすっかりスルーしているのがある意味チャーミングですな。まあスルーしているので引用のしようもないからアレですけれども(^^)。

・クレジット環境

でですな、今回景気認識部分で妙にスペースを取っていたのが「クレジット環境」の部分でして、マーケットのクレジット環境は改善しているけれども、中小企業や個人などの直接金融市場へのアクセスが厳しい人たちに対しては銀行のクレジット態度が依然として厳しいという話をしていまして、どうもそれが先行きの景気に対する悪影響ですなあという話をしています。第14パラグラフから第15パラグラフ辺りになりますが。

『Bank credit availability remained tight, reflected in the continued weakness of money and credit data. But there had been some indications of a more general improvement in credit availability for larger businesses with access to capital markets.(具体的なサーベイデータの部分割愛) It was therefore possible that many firms would be able to finance additional investment if they desired.』

『Households and small businesses unable to access capital markets and dependent on bank finance had seen less, if any, improvement in credit conditions. But it was mildly encouraging that September had been another month of strong bank term-debt issuance.』

・ポンドの下落による経済への影響

この件に関しても毎度毎度話が微妙に変わるのですが、今回はこうなっているのでございます。第18パラグラフから。

『It was possible that the anticipated boost to activity from sterling’s depreciation would take longer or be weaker than previously assumed, or that the drag to UK trade from the weak demand for exports of financial services might be more pronounced. Net trade was estimated by the ONS to have subtracted from GDP growth in the second quarter, and had yet to add convincingly to growth despite the substantial past depreciation of sterling. Exports of services were difficult to measure, however, and survey evidence on them remained more positive than the official data.』

何かポンド下落の経済への影響に関して微妙な評価になっているような気がする。以前はこのポンド下落が景気に対してフォローという話を思いっきりしていたのですけれども・・・・・


○CPIに関して

前回は「先行き見通しが異例なほど不確実」という話をしていたCPIですが、今回は「企業の余剰生産力の大きさと賃金やマネーが伸びないので物価上昇は抑制されるでしょう」という話をしているです。まず第19パラグラフから。

『Twelve-month CPI inflation had remained unchanged at 3.1% in August. Within that, the price of airfares had risen by almost 25% over the previous year, contributing almost 1/2 a percentage point to aggregate CPI inflation, perhaps reflecting higher fuel costs and capacity pressures within the industry. Following the usual pre-release arrangements, an advance estimate of CPI inflation for September, also of 3.1%, had been provided to the Governor ahead of publication.』

つーことで英国のCPIは毎度のように「一時的要因」が色々と出て全然下がらないという中々お洒落な展開になっているようですが、その次のパラグラフを見ると輸入価格の上昇がCPIの上昇にも繋がっているのですが、生産投入価格と産出価格の上昇にもつながり、しかも投入価格の方が上げが大きいというのはこりゃ交易条件の悪化という話になるんですか、よー知らんが。第20パラグラフから。

『In line with pre-release arrangements, the Governor informed the Committee that producer output prices had risen 0.3% in September, so that the twelve-month inflation rate had eased back a little to 4.4%. Producer input prices had risen by 0.7% in September, taking the twelve-month inflation rate to 9.5% from 8.7% the previous month. Much of the increase on the month had reflected increases in the prices of imported materials. Upward revisions to the implied import price deflator in the National Accounts, along with monthly data, suggested that imported costs might have risen more rapidly than the Committee had assumed at the time of the August Inflation Report, so that CPI inflation in the near term might be higher.』

ただまあこの後はマネーの伸びが弱いとか、余剰生産力のスラックが大きいというような指摘をしていまして、特に「足元では企業が需要回復に対する期待があるので、雇用や設備に対して依然として余力を持っているのではないか(需要回復した場合に生産を直ぐに拡大できるようにする為に)」という認識を示しまして、要するに物価は中期的に見た場合には抑制されますよという結論にしているのですがその辺は引用を割愛します。


○今後の金融政策は「中期的なインフレに対するリスクバランスの認識が重要」とな

とまあそういう話をした後に金融政策に関する議論の部分になるのですが、何かもう毎度毎度「一時的な要因が無くなれば中期的には物価はターゲットに下がるでしょう」という話をしているのですが、毎度毎度新しい「一時的要因」が出てくるのはどうした事ぞという気はするんですけどね。第27パラグラフから。

『CPI inflation had remained unchanged at 3.1% in September. The prospective increase in VAT in January 2011 would affect measured CPI inflation for twelve months, and would probably keep inflation above the target for a period. The temporary impact of higher energy and import prices on inflation remained hard to calibrate. But it was likely to have been accentuated by recent movements in the prices of oil and other imported costs.』

で、その結果として。

『CPI inflation in the near term could be higher than the Committee had previously expected.』

となるのですが・・・・

『The Committee’s central view remained that, as the impact of temporary factors dissipated, the persistence of weak underlying price pressures was likely to cause CPI inflation to fall back towards the target.』

という話になっておりまして、そうでございますねえ(棒読み)という展開になっておる訳でございますが、今後の政策運営に関しては今回こんな話をしています。第28パラグラフから。

『What was crucial for the policy decision was whether recent developments had affected the Committee’s view of the balance of risks to the prospects for inflation in the medium term.』

中期的なインフレに対するリスク認識が金融政策決定に対して重要ですとな。

『As in previous months, there were two opposing key risks: on the one hand, whether the prolonged period of above-target inflation would cause inflation expectations to drift up, making it more costly to bring inflation back to target; and, on the other, whether private demand would grow insufficiently rapidly to replace the waning boost from the inventory cycle and public spending, resulting in a persistent underutilisation of resources that could cause inflation to fall materially below the target in the medium term.』

この話はまあ前回のMPCでも同じ話をしていますが、上方リスクとしては「実際の物価がターゲットを上回った状態が続いた場合に、期待インフレ率が上昇する」という話で、下方リスクは「民間需要の伸びが弱く、その結果生産余剰力が物価の著しい低下をもたらす」という話なのは同じなのですが、今回のMPC議事要旨の特色としてはその下方リスクの生産余剰力に関する話を景気認識の方でスペースを割いている(引用すると長くなるので割愛しちゃいましたが、第22〜24パラグラフの辺りで長めのスペースを取っています)ので、まーそーゆー意味では足元で続く物価上昇率の高止まりとバランスを取っているという話になりますし、その後での説明では下方リスクに関する話がこれまた長くなっています。

上方のリスクに関してはさらっと「特に変化は無い」という話になっているのですが、下方リスクに関する認識は細かく話をしています。第30および31パラグラフから。

『It was possible to draw different inferences about the medium-term prospects for private demand growth from the latest data. On one view, the recent recovery in private final demand, and particularly consumer spending, was encouraging. It was a possible indication that the headwinds to the economic recovery from the fragility of the banking sector and the forthcoming fiscal consolidation - while substantial - might weigh slightly less on activity than previously thought likely. That view was supported by the recent evidence on the access to credit of large firms, and on bank funding conditions. Recent asset price movements, including lower medium-term interest rates, and the most recent depreciation of sterling and recovery of equity prices, should also act to bolster demand.』

銀行セクターの脆弱さと財政再建の負の影響を大企業のクレジットアベイラビリティーの拡大や資産市場の上昇、ポンド安などが打ち消すのではないかという明るい話で、足元の数値はそれに整合的ではないかという話ですな。

『On an alternative view, however, real disposable income growth had been weak and the apparent recovery in consumer spending might be dampened as the impact on household incomes of the fiscal consolidation became more readily apparent. Moreover, the continued absence of a noticeable positive contribution to growth from net trade might indicate that the tailwind to growth from sterling’s depreciation would be less pronounced than assumed in the recent Inflation Report projections. Recent asset price movements might simply have reflected market expectations that further intervention by the authorities might be necessary.』

ということで、可処分所得の伸びが弱くて、消費支出の回復が弱く、更にこれからの財政再建によって家計所得が下がってくるでしょうという下向けの話ですわな。

つーことで、今後の金融政策に関しては「先行きの民間最終需要がどう伸びていくのか」が焦点になるという話でございますわな。


○経済状況からしたら緩和だが足元CPI推移は引き締めですからねえ

てな感じで引用しましたが、まあその辺は全て仰るとおりですなあという所ではあるのですけれども、問題になるのは足元のインフレ率が延々とBOEのインフレーションターゲットを大きく上振れて推移している事でして、インフレターゲットの政策フレームからしたら引き締めを検討しないと行かんでしょという状況なのにどちらかと言えば緩和の拡大を検討しないといけない経済状況というのが実にチャーミング。

てな訳で、今回のMPCではさっき引用したように「中期的なインフレに対するリスク認識が重要」という「中期的な視点」を持ち出してインフレターゲットとの整合性を何とか取るというような論理展開で金融政策運営に関する議論をしているという所でございますが、まあこれってもう「ターゲット」でも何でもなくてただの「裁量的金融政策」じゃないですかねえというか、それこそ「中長期的な物価安定の理解」の世界の話ですなあという所ではございますわな。

で、32パラグラフが最後の議論結果になるのですが。

『Committee members differed in the significance they ascribed to these developments on the overall balance of risks to the medium-term outlook for activity and inflation since the August Inflation Report.』

『Most members felt that the balance of risks had not altered sufficiently to warrant a change in the policy stance at this meeting. On the one hand, they continued to believe that the economy contained a considerable margin of spare capacity and, therefore, that demand could expand significantly before widespread capacity constraints put upward pressure on inflation. On the other hand, there were concerns about the risks to inflation expectations from the persistent and prospective above-target inflation outturns.』

これはさっきと同じ話で上下リスクの話ですが、現状ではバランスに変化無しというのが殆どですよと。

『The risks to inflation in either direction remained great, and these members stood ready to alter the policy stance in either direction as the balance of risks became more decisively tilted in one direction or the other.』

どちらのリスクも大きいというのは前回も同じです。

『Some of those members felt the likelihood that further monetary stimulus would become necessary in order to meet the inflation target in the medium term had increased in recent months. But, for them, the evidence was not sufficiently compelling to imply that such a course of action was necessary at present. The analysis and projections prepared for the November Inflation Report would give the Committee an opportunity to re-evaluate more thoroughly the outlook for activity, the margin of spare capacity and inflation in light of all the news.』

前回は「今後は景気を刺激しながらインフレをトラックさせる政策が必要になるかもしれないという指摘をする向きがあった」という話がありましたが、今回はまともに「現状ではまだそのエビデンスは不足していますが、今後は追加の金融緩和が必要ではないか」という話をしているので、まあそーゆー意味では追加緩和の可能性が高まったという話でしょう。

で、その追加緩和の必要性を「in order to meet the inflation target in the medium」と中期的なインフレをトラックさせるという話にしているのは何かまあ現在の政策フレームでは仕方ないのですが、理屈としてなんかこうチャーミングというか何と言うか。


○ポーセン委員の追加緩和提案理由

最後に第34パラグラフにポーセン委員(とはこちらには書いてませんが、追加緩和を提案したのがポーセンさんでしたので)の追加緩和(金利は0.5%で維持するものの£50Bilの追加資産購入の実施を提案)理由。

『For one member, the accumulated evidence since the Committee had completed its £200 billion programme of asset purchases suggested that a further expansion in that programme was now warranted.』

『In this member’s view, the current degree of spare capacity in the economy was sufficiently large that monetary policy could afford to encourage more rapid growth without risking an undesirable increase in underlying inflationary pressures. Absent such additional stimulus, inflation would fall well below the target in the medium term. And the stability of measures of inflation expectations and wages over several months indicated that the likelihood of their rising sufficiently to cause an overshoot of the inflation target in the medium term was smaller than previously feared.』

ということで追加の資産買入が必要という話なのですが、まあ要するに「景気下方リスクがあるから追加緩和が必要」と言ってしまえば話はスッキリするのですが、政策のフレームワークがインフレーションターゲットなのでこういう論理展開にしないといけないんでしょうな。

#殆ど引用で増量してしまってどうもすいません

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2010/10/18

お題「FOMC議事要旨を見れば普通に追加緩和ですなあという今更ネタ」

どもども、何か米国欧州は金融相場祭りみたいですなあ。で、何で日本の株だけ蚊帳の外なんでしょ??

えーっとですね、延々と追加緩和やるやる詐欺で期待を煽りまくっているのですけれども、何だか大丈夫なんですかねえという気はするんですけど、まあとりあえずは議事要旨ちゃんから本日は少々と言う事で。

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20100921.htm(htm版)
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/fomcminutes20100921.pdf(pdf版)

○FOMCスタッフの景気見通しを下げと

前半のスタッフの経済認識に関してもまあ何だかパッとしない話が続くのですけれども、その辺りは面倒なので華麗にスルーしまして、『Staff Economic Outlook』という見通しのところからまずは。

『In the economic forecast prepared for the September FOMC meeting, the staff lowered its projection for the increase in real economic activity over the second half of 2010.』

スタッフは2010年後半の経済見通しを引き下げとな。

『The staff also reduced slightly its forecast of growth next year but continued to anticipate a moderate strengthening of the expansion in 2011 as well as a further pickup in economic growth in 2012. The softer tone of incoming economic data suggested that the underlying level of demand was weaker than projected at the time of the August meeting. Moreover, the outlook for foreign economic activity also appeared a bit weaker.』

一応先行きの見通しの基本的な「回復」という線は維持しているのですが・・・・

『In the medium term, the recovery in economic activity was expected to receive support from accommodative monetary policy, further improvements in financial conditions, and greater household and business confidence.』

ということで、先行きの回復に関しては「緩和的な金融政策のサポートを受けることによって期待されます」という辺りからもうアレですし、「更なる金融環境の改善と、家計や企業の信頼感の大きな改善」つーのも必要だという話をしている訳で、まあこの辺りからも追加緩和11月にはやるという話になりますなあという所で。

『Over the forecast period, the increase in real GDP was projected to be sufficient to slowly reduce economic slack, although resource slack was anticipated to still remain elevated at the end of 2012. 』

2012年末までの実質GDPの伸びはリソースのスラックを埋めません(のでインフレは亢進しません)という話ですな。で、インフレ見通しに関しては「特に変化は無く、引き続きリソースのスラックによってインフレは低位に推移するでしょうという話ですが引用は割愛します。


○委員会の経済見通しに関して

『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』のまずは頭の部分から。

『In their discussion of the economic situation and outlook, meeting participants generally agreed that the incoming data indicated that output and employment were increasing only slowly and at rates well below those recorded earlier in the year.』

ということで生産と雇用の回復は鈍化しており水準も低いと。

『Although participants considered it unlikely that the economy would reenter a recession, many expressed concern that output growth, and the associated progress in reducing the level of unemployment, could be slow for some time.』

サイドのリセッション入りの可能性は無さそうだが、生産の回復と高水準の失業率の改善は当面遅いでしょうとな。

『Participants noted a number of factors that were restraining growth, including low levels of household and business confidence, heightened risk aversion, and the still weak financial conditions of some households and small firms. A few participants noted that economic recoveries were often uneven and were typically slow following downturns triggered by financial crises.』

『A number of participants observed that the sluggish pace of growth and continued high levels of slack left the economy exposed to potential negative shocks. Nevertheless, participants judged the economic recovery to be continuing and generally expected growth to pick up gradually next year.』

何てえ感じで、先行きは改善という見通しは変えていないのですけれども、景気に対する信頼感の弱さとか、リスク回避姿勢に関してとか、まあ景気の足を引っ張るものは多いですなあという事で。んでもってその先に項目別の話が出てくるのですが、その辺をスルーしまして見通しのまとめ部分。

『A number of participants noted that the current sluggish pace of employment growth was insufficient to reduce unemployment at a satisfactory pace.』

多くの委員は最近の不活発な雇用の成長が、失業が満足なペースで減るのには不十分とな。

『Several participants reported feedback from business contacts who were delaying hiring until the economic and regulatory outlook became more certain.』

んでこの先に「ふ〜ん」っていう指摘が。

『Participants discussed the possible extent to which the unemployment rate was being boosted by structural factors such as mismatches between the skills of the workers who had lost their jobs and the skills needed in the sectors of the economy with vacancies, the inability of the unemployed to relocate because their homes were worth less than their mortgages, and the effects of extended unemployment benefits.』

ほほーって感じですが、モーゲージの借り換えが出来なくなって人間の移動がしにくくなるので雇用のミスマッチが解消されないので失業が下がらないという構造問題というお話で、これはふーんって感じですが、つまりどっかの国が推進する持ち家政策は如何なものかという話ですね、わかります(違)。

『Participants agreed that factors like these were pushing the unemployment rate up, but they differed in their assessments of the extent of such effects. Nevertheless, many participants saw evidence that the current unemployment rate was considerably above levels that could be explained by structural factors alone, pointing, for example, to declines in employment across a wide range of industries during the recession, job vacancy rates that were relatively low, and reports that weak demand for goods and services remained a key reason why firms were adding employees only slowly.』

んまあそうは言ってもその辺の構造的な問題だけの話じゃないですよ、という当たり前の話が続いていました(^^)。で、その次がインフレの話。

『Inflation had declined since the start of the recession, and most participants indicated that underlying inflation was at levels somewhat below those that they judged to be consistent with the Committee's dual mandate for maximum employment and price stability.』

イイハナシダナー(;∀;)

だけだと何なので一応申し上げますと「殆どの委員は足元のインフレ水準がFOMCの最大雇用と物価安定という政策目標に対して幾分か低いレベルにあると指摘しました!!」ですからね(;∀;)

『Although prices of some commodities and imported goods had risen recently, many business contacts reported that they currently had little pricing power and that they anticipated limited, if any, increases in labor costs. Meeting participants noted that several measures of inflation expectations had changed little, on net, over the intermeeting period and that analysis of the components of price indexes suggested disinflation might be abating. However, TIPS-based inflation compensation had declined, on balance, in recent quarters. While underlying inflation remained subdued, participants saw only small odds of deflation.』

とまあそういうことで、デフレの可能性は低いとしながらも、物価が伸びないですねえという話が色々と出てくるの巻ですな。


○先行き見通しで「現在の状況のままでは追加緩和が必要」という人が多いとな

で、この部分の最終パラグラフがキターって奴でして、パラグラフの中に小見出しネタが4つくらいあるという中々の濃い部分(なので速読したい人はそこだけ見とけという話になるのですな^^)。

『Participants discussed the medium-term outlook for monetary policy and issues related to monetary policy implementation.』

で、さてどうなんでしょうという所で。

『Many participants noted that if economic growth remained too slow to make satisfactory progress toward reducing the unemployment rate or if inflation continued to come in below levels consistent with the FOMC's dual mandate, it would be appropriate to provide additional monetary policy accommodation.』

ということでですな、remainedとかcontinued to comeとか言っている訳ですから、経済状況が現在のままで推移すれば追加緩和が必要というのが「多くの委員から」指摘されているという事で。

『However, others thought that additional accommodation would be warranted only if the outlook worsened and the odds of deflation increased materially. 』

othersですから一人では無いようですが、更なる悪化がなければ追加緩和要らないんじゃネーノという指摘ですわな。


○長期資産買入は「インフレ期待に効果を与える」というロジックが急に来たので

おまいらついこの前まで長期資産の買入の政策効果を「金利の引き下げ」って言ってませんでしたっけと非常に引っ掛かる部分がその次から始まるのであります。しかしこの辺の理屈の飛躍ってどうなのよと非常に疑問に思うというか、その場限りで適当な屁理屈繰り出しているだけじゃないのかという気がするのですけれどもねえ・・・・

『Meeting participants discussed several possible approaches to providing additional accommodation but focused primarily on further purchases of longer-term Treasury securities and on possible steps to affect inflation expectations.』

しつこく同じ事を書きますが、従来は長期資産の購入に関して「金利の引き下げによって効果が出る」という言い方をしていまして、更に言えばFEDのバランスシート拡大に関して「バランスシート拡大そのものはインフレ期待に対して与える影響は不透明(なので出口政策の際には急速にバランスシートを縮小させる必要は必ずしもない)」という理屈を振りかざしていた筈なのですが、このFOMCではしらっと皆様が「長期国債買入でインフレ期待を引き上げる」という話をおっぱじめています。これは何とした事ぞという感じですけれども・・・・・

『Participants reviewed the likely benefits and costs associated with a program of purchasing additional longer-term assets--with some noting that the economic benefits could be small in current circumstances--as well as the best means to calibrate and implement such purchases.』

で、インフレ期待に効果を与えて副作用の小さいのは長期国債の買入とな。


○短期的な期待インフレ率を引き上げて実質短期金利を低下させるという理屈が出てきました

で、その次に期待インフレ率で短期実質金利を下げるという話を。

『A number of participants commented on the important role of inflation expectations for monetary policy: With short-term nominal interest rates constrained by the zero bound, a decline in short-term inflation expectations increases short-term real interest rates (that is, the difference between nominal interest rates and expected inflation), thereby damping aggregate demand. Conversely, in such circumstances, an increase in inflation expectations lowers short-term real interest rates, stimulating the economy. 』

ということで、ゼロ金利制約のある中では金融緩和効果を出すには期待インフレ率を引き上げて実質短期金利を下げるという話をしていて、それはそれで単体の理屈としてがご尤もなのですけれども、これってよーするに「長期資産の買入によって金利を引き下げる事によって効果を出す」という話をこのまま継続していると、実際に長期国債の買入を行った時に長期金利が上昇した場合(前回買入を実施した時にもアナウンス直後には金利が低下しましたけれども、結局のところ長期金利水準は上昇しましたよね)に言い訳がつかなくなるので、今回ドサクサに紛れて「買入対象資産の金利を引き下げて緩和効果を出す」という話を引っ込めたんでしょうなあという風に思うのはあたくしの意地と性格が悪いからですかそうですか(^^)。

まあこのロジックそのものはそれはその通りですなあという所ですが、長期資産の買入プログラムに関する従来の説明をしらっと放棄しているように見える所がとってもチャーミングなところです。まあ要するに「とりあえず効きそうだからやってみるけれども、本当はどうなんでしょ」という風には内心思っているのではなかろうかってえ気がします。


○短期的な期待インフレ率引き上げの他の手段としての物価水準目標や名目GDP目標

何かね、CNBC(本物のほう)辺りでは「FRBがプライスレベルターゲットを示唆(なので超強力緩和キターーー)」みたいなお祭りのコメントが散見されておりました次第なのでちょっとビックリ(従来バーナンキもコーンもケチョンケチョンに否定している政策オプションだから)なのですが、文脈をちゃんと追うとこの先に出てくる政策手段に関してはあくまでもお話の域を出ないと思うのですけれどもどうでしょう。

『Participants noted a number of possible strategies for affecting short-term inflation expectations, including providing more detailed information about the rates of inflation the Committee considered consistent with its dual mandate, targeting a path for the price level rather than the rate of inflation, and targeting a path for the level of nominal GDP.』

『As a general matter, participants felt that any needed policy accommodation would be most effective if enacted within a framework that was clearly communicated to the public.』

いやまあ確かに可能性が無いとは言わないという所がどこぞの麿総裁と違うテイストなのですけれども(つーかその方が自分の手足を縛らないから普通ですわな)、ここまでの流れから読むと普通に「これはあくまでも一般論の話」という感じに見えますけどね。何故かというと最後にこの一文が入っていましてですな。

『The minutes of FOMC meetings were seen as an important channel for communicating participants' views about monetary policy. 』

ということで、現在のコミュニケーションポリシーはこれでこれでワークしているという話をしているように思えるのですけどにゃ。


○9月FOMCでの金融政策決定に関して

『Committee Policy Action』のところから。

『In their discussion of monetary policy for the period immediately ahead, nearly all of the Committee members agreed that it would be appropriate to maintain the target range for the federal funds rate of 0 to 1/4 percent and to leave unchanged the level of the combined holdings of Treasury, agency debt, and agency mortgage-backed securities in the SOMA.』

まあここまでは良いとして。

『Although many members considered the recent and anticipated progress toward meeting the Committee's mandate of maximum employment and price stability to be unsatisfactory, members observed that incoming data over the intermeeting period indicated that the economic recovery was continuing, albeit slowly.』

一応景気回復は遅いながらも継続するも、現状の経済状況はunsatisfactoryとな。

『Moreover, the data had been mixed, with readings early in the period generally weaker than anticipated but the more-recent data coming in on the strong side of expectations. In light of the considerable uncertainty about the current trajectory for the economy, some members saw merit in accumulating further information before reaching a decision about providing additional monetary stimulus.』

ということで、some membersが足元の景気のconsiderable uncertaintyに対応して追加緩和を示唆する文言をステートメントに追加するメリットについて指摘したと。

『Several members noted that unless the pace of economic recovery strengthened or underlying inflation moved back toward a level consistent with the Committee's mandate, they would consider it appropriate to take action soon.』

several members様におかれましては「景気回復ペースが強くなったり、足元の物価上昇が改善しないのであれば、追加の金融緩和を早急に行うべき」と指摘していまして、つまりさっきもありましたけれども、「経済が現状のままなら追加緩和する」という話になるので、そーゆー意味では11月の追加緩和って結構ダンディールに近い話ですよね。

とは思うのですが、じゃあ何で9月に緩和しなかったのかというのが不思議な話ですし、9月には結局後にあるようにステートメント文言をいじるだけの「追加緩和やるやる詐欺」モードにしたのは何でじゃろとは思うのですが、要するに何をやるのかとかどの程度の規模をやるのかという話が結局まとまらなかったのかなあ等と思ってみたり、実際にはまだ半々に近い状態になっているのかもとか、まあ色々と妄想だけはしてみるのであります。

『With respect to the statement to be released following the meeting, members agreed that it was appropriate to adjust the statement to make it clear that underlying inflation had been running below levels that the Committee judged to be consistent with its mandate for maximum employment and price stability, in part to help anchor inflation expectations.』

ということで、全員の意見が一致したのはステートメントに「足元のインフレはFOMCがデュアルマンデートに合致すると判断する水準よりも低い状況である」という点を入れる部分だということのようですな。

『Nearly all members agreed that the statement should reiterate the expectation that economic conditions were likely to warrant exceptionally low levels of the federal funds rate for an extended period. One member, however, believed that continuing to communicate that expectation in the Committee's statement would create conditions that could lead to macroeconomic and financial imbalances.』

extended periodに関してはいつもの人が反対しているのでここはまあいつもどおり。

『Members generally thought that the statement should note that the Committee was prepared to provide additional accommodation if needed to support the economic recovery and to return inflation, over time, to levels consistent with its mandate.』

generallyつーのは(※ホーニッグを除く)って事ですかな。

『Such an indication accorded with the members' sense that such accommodation may be appropriate before long, but also made clear that any decisions would depend upon future information about the economic situation and outlook.』

という事で、最後は「このような声明文を出しますという議決をした」云々の話になるので引用は割愛します(ホーニッグさんの反対理由もあるのですがそっちも割愛)。

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