内田眞一 副総裁

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内田さんの略歴(日銀Webより)

昭和37年8月22日生 東京都出身

昭和61年3月 東京大学法学部卒業
昭和61年4月 日本銀行入行
平成22年7月 新潟支店長
平成24年5月 企画局長
平成29年3月 名古屋支店長
平成30年4月 日本銀行理事
令和4年4月 日本銀行理事(再任)
令和5年3月20日 日本銀行副総裁

(前職:日本銀行理事)

詳しくはこちら→https://www.boj.or.jp/about/organization/policyboard/dg_uchida.htm


2025/06/13「金融学会講演(その5)決済とCBDCの話は面白かった」
2025/06/12「金融学会講演(その4)損益シミュレーションの問題点はストレスシナリオの数字を出せるようなバランスシート状況ではないこと」
2025/06/11「金融学会での講演(その3)以前のインチキ説明を業務の観点で、というのはインチキ/財務問題の説明もインチキですねえ」
2025/06/10「金融学会での講演(その2)オーバーシュート型コミットメントは強力なものではなかったとか今更言うのは酷い」
2025/06/09「金融学会での講演(その1)立派な話をしているのは良いんだがそれ今の政策運営と違くないですかねえw」

2024/11/21「国際預金保険機構関連の会議でのあいさつでNBIFについて言及しているが短期のオープン市場にも目配りを」
2024/08/14「内田副総裁函館金懇会見(その2)詭弁を使って逃げ道は用意しているがベタ降りの印象はぬぐえませんな」
2024/08/13「内田副総裁函館金懇会見(その1)講演で為替が円安にぶっ飛んだのでトーン調整をしている姑息さがもうね」
2024/08/08「内田副総裁函館金懇挨拶:株式市場に完全降伏とかコミュニケーション完全に壊しましたな」
2024/06/04「金研国際コンファランスでの内田講演は黒田緩和のレビューはしないというのが露骨に出ていますな」
2024/05/28「金研国際コンファランスでの基調講演で植田総裁の真逆なタカ講演を実施(市場は内田さんの方に反応しました)」

2025/06/13

〇内田副総裁講演は決済システムに関する話がオモロイので現世利益関係ないけど

まあさすがにこのシリーズ最終回にしようかと思いますが。
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/ko250607a.htm
【講演】
業務からみた日本銀行
日本金融学会2025年度春季大会における講演
日本銀行副総裁 内田 眞一
2025年6月7日

まあ決定会合前の雑談という事でお暇な方は以下お付き合いいただければってな感じです(滝汗)。

・ということで決済システムに関してです

今回の講演、『6.デジタル社会の中での決済システムと中央銀行業務』という見出しのコーナーと、『8.中央銀行業務と決済システムの未来像』という見出しのコーナーが結構面白いんですよね。何故か知らんが章立てがワープしているの何なのって感じですがw

『6.デジタル社会の中での決済システムと中央銀行業務』って小見出しから参ります。

・DX化による決済の変化について

『決済のデジタル化』ってのが最初の小見出しです。

『図表9をご覧ください。ここからは後半パートに入り、日本銀行の業務と政策が、デジタル化などの環境変化によって、どう変わるのか、あるいは変わらないのか、考えてみたいと思います。』

てなことではじまりはじまり。

『わが国は、キャッシュレス比率が低いと言われます。この点は、各国で定義も異なり、厳密な比較は難しいのですが、わが国の場合、銀行口座での引き落としのほか、振込の割合が大きいのが特徴です。これは1973年から稼働している全銀システムによって、これらが極めて便利にできていることが背景です。』

第3次オンライン(だいたい昭和の終わりから平成の話だが)への完全移行から先さらに便利になった感はある。

『また、冒頭でご説明したように、わが国の銀行券残高は、低金利になる前で比較しても、他国よりも多くなっています。これには、現金を持ち歩いても安全であることや、そのもとでコンビニエンスストアを含めてATM網が発達しているという背景があります。もともと人々がどのような決済手段を使うかはその人の自由です。』

んだんだ。

『もっとも、日々の買い物を含めて、経済のデジタル化が進展する中で、人々にとって便利で安全な決済手段を選択できるように、それにふさわしい決済手段が提供されることは重要です。そして、決済システムが全体として、デジタル社会の中で高い安定性と効率性を発揮するために、中央銀行がどのような形態の「支払完了性のある決済手段」(中央銀行負債)を提供すべきか、設計していく必要があります。』

ここで中銀デジタル通貨の話が出てきまして、小見出し『中央銀行デジタル通貨』に進みます。

『この点に関連して、中央銀行自身がデジタル通貨(「中央銀行デジタル通貨」<CBDC>)を発行するというプロジェクトが、各国で進められています。欧州では、欧州中央銀行(ECB)が、2023年に「デジタルユーロ」に関する調査フェーズを完了し、準備フェーズに移行しています。また、イングランド銀行は、「デジタルポンド」について、設計フェーズの進捗レポートを公表しています。中国では、国内26都市や香港で「デジタル人民元」のパイロット実験を実施中です。』

『一方、米国では、2022年から23年にかけてCBDCに関する市中協議を行いましたが、銀行協会などから強く懸念する声が寄せられました。また、トランプ大統領は、今年1月、CBDCの発行等に関する政府機関の取り組みを停止・禁止する大統領令に署名し、FRBのパウエル議長も2月の議会証言で、自身の在任中のCBDCの発行を否定しています。』

CBDCについては一時エライい勢いでブームなのかって状態でしたが最近は落ち着いていますよね、寧ろこの「何で落ち着きましたのよ」という背景を知りたいですなアタクシ的には。

『わが国では、2020年に日本銀行が「中央銀行デジタル通貨に関する取り組み方針」を公表し、技術的な検証を進めています。2023年からは、パイロット実験に移行し、「実験用システムの構築と検証」を実施するとともに、民間事業者の技術的な知見を活用するため「CBDCフォーラム」を設置し、幅広い関係者に参加いただいて、様々なテーマで議論しています。政府においても「CBDCに関する関係府省庁・日本銀行連絡会議」が設置され、制度設計の大枠の整理に向けて検討が進められています。』

とは言え数年前とはだいぶ勢いが違う感が否めません。

『CBDCは、デジタル社会のもとでのわが国の決済システムの将来像を決める重要なインフラになりうるものですから、これを発行するかどうかは、こうした内外の情勢を踏まえたうえで、国民的議論の中で決める必要があります。ご説明した通り、各国の対応も分かれています。ただ、CBDCを発行するにせよ、しないにせよ、デジタル社会の中で、現金のような「支払完了性のある決済手段」を誰がどのように提供するのが、決済システム全体の安全性と効率性につながるのか、考えていくことは必須です。』

「現金のような「支払完了性のある決済手段」を誰がどのように提供するのが、決済システム全体の安全性と効率性につながるのか、考えていくことは必須です」という所にまあ論点が有るわけですが、

『具体的な仕組みとしては、まず、必ず必要になる個人との接点(インターフェイス)の部分は、いずれにしても、基本的に民間の事業者が担うべきだと思います。個人の多様なニーズに応えることは公的機関である中央銀行には難しいからです。その中で、利用者にとって便利なインターフェイスや、それを生かしたイノベーションが生まれるのだと思います。』

ってさらっと流していますが、この点って言うのは利便性とかイノベーションの話ってのは実はオマケの話でして、問題は「通貨発行の二重構造」に関わる部分になるわけですけれども、CBDCが預金通貨を駆逐してしまう事になった場合、信用創造とかそういうのが無くなるわけで(預金銀行が今のノンバンクと同じ構造になる)、これは通貨発行構造のデザインの問題になるのですが、議論がおっぱじまった当初は兎も角、最近は「通貨発行の二重構造」は維持し、CBDCはその構造を阻害しない程度のものとする、ってのが一般的な理解になっているかと思われるのですが(例えば昨年の植田総裁のこの講演→https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2024/data/ko240305a.pdf 「中央銀行デジタル通貨について知っておきたいこと── FIN/SUM(フィンサム)2024における挨拶 ──」の最初の方をご参照いただければと)、ただまあそうだとしたらわざわざCBDC作らんでも民間の預金通貨でエエンチャウノという気はだいぶします。

一時のブーム的な動きが下火になったのはこの通貨発行の二重構造への影響を考えた場合にどうなのか(しかもものが通貨なだけに「やってみたら金融システムが大混乱のでやっぱ止めますテヘペロ」とかいうのは基本的に許されるものではないでしょうからね〜)という辺りにあるんじゃないかとワシは思うざます。

まあそれは兎も角としてCBDCの続き。

『そのうえで、考えられるバリエーションには、結構大きな幅があります。決済手段というものは、そのほとんどすべてが、最終的には中央銀行につながっています(「すべて」と言い切らない理由は、最終章で述べます)。問題は、人々が「現金と同じような機能を持つ」と認識する決済手段は、どの程度直接的な「支払完了性」を有する必要があるのか、その「支払完了性」をどう担保するのか、ということです。』

今の時点では一般人(ワシもワシも)は預金通貨による決済をもって「支払完了」としております(現金は現金でありますよ為念)訳ですな。

『この点、CBDCは、中央銀行の負債ですので、現金と同等の「支払完了性」があります。』

はい。

『CBDCを発行しない場合には、民間が提供するその決済手段と中央銀行負債をどう結びつけるのか、また、現金のようにいつでも受け渡し可能であるようにオペレーションの頑健性や広範な利用可能性をどう確保するかなど、技術的な側面を含めて検討する必要があります。』

って話ですが、まあ今の時点でこの預金通貨による通貨発行の二重構造が効率よく大規模に回っていますので、発行しない場合は別に検討もへったくれれも無いので、これは発行する場合の話だとは思いますが、この側面から今テストやっている、というお話です。


・国際的な決済システムの進化に向けたお話

次が『国際的な視点』の話。

『決済の未来像を考えるうえでは、国際的な視点が欠かせません。実を言えば、現在の国際的な決済システムには多くの不満が寄せられており、これをいかに便利で安全なものにしていくかは、未来の問題というより、現在の喫緊の課題です。』

海外送金の際にコルレス銀行がどうのこうのでデポ先がどうのこうのでとか懐かしい話だ(20世紀脳)。

『例えば、各国では、外国からの労働者が母国に送金する際の手数料の高さや時間の遅さが問題になっており、2020年以降、G20のアジェンダには「クロスボーダー送金の改善」が掲げられてきました。』

まあわかる。

『この点は、既存のコルレス銀行を中心とするシステムの運用を改善していく方向性として、決済システムの稼働時間の拡大、国際送金電文フォーマットの標準化などの方策が検討・実施されているほか、新たな可能性として、例えば各国のリテールの即時送金システム(ファスト・ペイメント・システム。日本では全銀システムやことらがこれに当たります)の相互接続といったことも模索されています。』

まあわかるんだがここは効率性と安全性のトレードオフの面があって、リテールの即時送金システムの接続とかうっかりやってしまうと、どこかの国で発生したシステム上の問題が世界中に波及して一国だけの問題に留まらない、みたいなことが起き得る訳でして、そこは大型船には防水区画を区切って浸水即沈没にならないようにするのと同様に、効率性を捨ててもウォール作って安全性を高めておかないといかんのじゃなかろうかとは思います。

『また、金融機関間の資金決済や貿易にかかる決済など、より大口の資金決済の分野では、先進国のグループや新興国を中心としたプロジェクトなど様々な試みが進行し、成果を競い合っています。そのひとつ、BISが主催し、多くの民間金融機関と、日本銀行を含むいくつかの中央銀行が参加している「プロジェクト・アゴラ」では、分散台帳技術(DLT)を使った共通プラットフォーム上に、商業銀行預金と中央銀行預金の両方を載せて、それらを組み合わせて、安全かつ効率的なクロスボーダーの決済を行う、という新しいタイプの決済インフラが構想され、実験プロジェクトがはじまっています。』

この分散台帳技術は何度聞いても今一歩腑に落ちない面があるので一度じっくり理解をしたいです。

『こうした国際的な決済システムを巡る取組みが競うように進展していることは、経済安全保障の観点と切り離せません。』

と、さらに話が大きくなりまして、

『ロシアのウクライナ侵攻を受けて、各国で経済制裁が発動され、その実効性を担保するため、Swiftなど国際的な決済ネットワークからロシアの銀行を排除する動きになったのは記憶に新しいところです。またやや異なる観点ですが、サイバー空間には国境はありませんので、サイバー攻撃が大規模化、組織化されるもとで、一国の決済システムの安全をどう守っていくのか、その際の中央銀行を含めた公的部門の役割は何か、考える必要は年々大きくなっています。』

そうですね。

『例えば「デジタル通貨」が発行された場合、中央銀行が発行するにせよ、民間が提供するにせよ、サイバー攻撃の対象になりやすいと考えられます。』

そらそうよ。

『これに対抗するためには、相応のコストと技術を集める必要があります。』

発行しなければ良いんじゃないでしょうか(←頭が固くて使い物にならない老害ジジイの典型発言)

『米国は基本的に民間のイニシアティブで進めていく方向に見えますし、欧州は、官民でCBDCエコシステムを構築する計画です。ECBが、CBDC発行の理由として、「ユーロエリアの戦略的自律性(strategic autonomy)と通貨主権(monetary sovereignty)を高めること」「ユーロ決済における非欧州系の民間決済事業者(private, non-European payment providers)への依存度を下げること」とはっきり述べていることは、この問題が国内的な事情を超えて、経済安全保障的、国際競争的な側面をもっていることを示唆しているように思います。』

まあユーロ圏は「共通通貨で財政が別だし何なら法制度だって別」という事情があるので・・・・・


・決済デザインに関する将来の話のコーナーもこれはこれで面白いですよ

ということでさっきの見出し6の部分が終わるのですが、次が『8.中央銀行業務と決済システムの未来像』です。

・銀行券に関して

『銀行券の未来』って小見出しの所ですが。

『最後に、中央銀行業務と決済システムの未来像について、思考実験を行ってみたいと思います。デジタル化が大きく進む中で、銀行券はどうなるでしょうか。』

アタクシはたぶんこの業界の人では珍獣の方に入ると思う現金決済おじさんなのですけどwww

『この点まず申し上げたいことは、日本銀行は、現金に対する需要がある限り、現金の供給について責任をもって続けていくとコミットしている、ということです。中央銀行が現金供給に責任を持つ中で、銀行の支店網やコンビニエンスストアを含めたATM網など、現金が流通する経路が維持され、人々にとって現金を使うことが便利であり続けることは重要で、それによって、今後の現金の使われ方は変わってきます。』

ふむふむ。

『スウェーデンでは、現金流通残高の対GDP比率が0.9%まで低下しています6。これはデビットカードや個人間送金システムが便利だということが主因ですが、銀行の店舗網などの関係で、現金の利用が不便になったことも一因と言われています。』

ほほう。

『このため、2021年には、金融機関は、現金の引き出しや受け入れ拠点を整備しなければならない、という趣旨の法律が制定されました。』

ほえー。

『こうした問題意識は、他の欧州諸国でもみられ、例えば英国では2023年の法令に基づき、財務省がATM等の配置に関する距離基準を設定しています。スイスでは、中央銀行と財務省が、金融機関・警備輸送会社・小売業界・消費者団体等を招いたラウンドテーブルを共催し、現金を巡る課題と共に「現金は将来にわたって必要である」という認識を共有しました。』

へーへーへー。

『さらに、欧州諸国はそうではありませんが、偽造などによって、銀行券を使うことの便利さや安全性が低いことが、キャッシュレス化が進む要因になっている国もあります。』

こういうケースだとかつては米ドルが通用する、みたいな世界ですねw

『一方、当然のことながら、現金の供給体制の維持にはコストがかかります。現金供給には、日本銀行だけでなく、金融機関、コンビニエンスストアなどのリテール事業者、現金を運ぶ警備輸送会社など、多くの関係者がかかわっています。この体制を維持していくためには、これらの関係者にとって、銀行券の供給が、それぞれの顧客のニーズに応えて、サービスを維持していくメリットがあるものであり続ける必要があります。』

と来てからの「決済の経路依存症」の話です。

『この「顧客ニーズ」と言う点では、私は、決済には経路依存性があり、現金は対面での決済としてとても便利なので、現金に対する需要は簡単にはなくならないと思っています。』

まさに経路依存症のジャンキージジイがここにおります(汗)。

『日本銀行としては、そうしたニーズがある限り、いかに安全かつ効率的に現金供給の体制を維持していくか、責任をもって考えていきたいと思います。「デジタル化」や「キャッシュレス化」は、社会・経済の効率性を高める効果を持ちうるものだと思いますが、そのプロセスは利用者の自由な選択の中で進むのが望ましいと思っています。』

ということでして、一時期クッソ大流行したようなCBDCに全部置き換わる位の勢いの話ではなくなっておりますな、というのは伝わります。


・「CBDCが発行されるとマイナス金利が簡単にできる」という無邪気な見解を砲撃しているのはワロタ

でまあその次の小見出しとその次のも面白くて、まずは『架空の世界1:現金のない世界』って話。

『銀行券が存在するのであれば(仮に決済に占める比率が低下したとしても)、これまでお話ししたような中央銀行の業務のやり方や政策のメカニズムは、変わりません。「支払完了性」のある決済手段の唯一の提供者として、資金供給などの業務によって、金利操作を行い、日々の決済を完結し、最後の貸し手として機能します。』

ですな。

『このメカニズムが変わる可能性があるのは、以下のような2つの構造変化が起こった場合です。いずれも架空のシナリオです。こうしたことが起こると予想しているわけではありませんが、架空の世界を想像してみることは、現在をより良く理解するうえで有益です。』

ということで、

『ひとつめは、現金が全く存在しなくなる場合です。』

からの、

『よく「CBDCが発行されれば、マイナス金利を付すことができるので、金融政策運営は大きく変わる」と言われますが、正確には少し違います。』

某東京大学の某経済学部長だった大先生もこんなことを言ってましたなあそういえばw

『まず、CBDCが発行されても、現金が残る限り、名目金利のゼロ制約は残ります。マイナス金利を付されない逃げ場がある限り、CBDCにマイナス金利を付すことには限界があります。』

そらそうだ。

『また、逆に現金がなくなるのであれば、CBDCを発行しているかどうかはあまり関係ありません。』

それもそうですよね、つまり・・・・・

『民間が提供するデジタル通貨であっても、何らかの形で金融資産の裏付けがある以上、中央銀行は金融資産の価格(金利)に影響を与えることで、金利のゼロ制約を破ることができます。例えば、民間提供のデジタル通貨が中央銀行の当座預金と完全に紐づいている単純なケースでは、当座預金の付利水準の変化によって、民間デジタル通貨にマイナス金利を付すことができます。そうした意味で、「マイナス金利を可能にするためにCBDCを発行する」という発想は、中央銀行にはありません。』

一時この「CBDCを発行すると金融政策運営は大きく変わる」というトンデモが流行して、いやそんなこと言い出したら逆に誰もCBDCを支持しなくなるじゃろ、とCBDC要らないんじゃネーノ派のワイも思ったことがあります。


・そしてどさくさに紛れてしらっと地雷を埋め込んでいるのが面白いのですが

でもってこの続きがどさくさに紛れて面白すぎるネタを突っ込んでいましてですね・・・・・・・

『この「現金がない世界」では、金利のゼロ制約がないため、マイナス金利の付利に限界がなく、したがって、政策金利の引き下げ余地の「のりしろ」を確保する必要はなくなります。』

しらっと言ってるけど、だったら今の「現金のある世界」では「政策金利の引き下げ余地の糊代を確保する必要がある」ってことになりまして、なんということでしょう決済システムの話をしているどさくさに紛れて政策金利の糊代が必要という話をぶっこでいるじゃあーりませんかw

『物価目標は、バイアスのない物価指標であれば、ゼロ%になるはずです。』

まあ確かに物価目標2%の理由として日銀が言ってるのは「名目ゼロ制約があるから糊代が必要」「ボスキンバイアスなどの統計上のバイアスの問題」「となりのパウちゃんもクリステーヌちゃんもやってるから」なので論理的にこうなりますがパッと見るとちょっと刺激的ですねw

『金融政策の運営は大きく変わります。それでも、中央銀行として「物価の安定」などの使命を果たすことができる、という点は不変です。』

まあ今果たしているかいやなんでもないです。


・最後に中央銀行としての適切な政策運営が大事と豪語しておるwww

最後が『架空の世界2:「円」のない世界』という小見出しで、掴みから、

『もうひとつの可能性は、中央銀行としては起こってほしくないシナリオです。』

ということで、

『「円」で表示されない決済手段が決済の主役になることです。』

つまり、

『取引の決済は双方が合意するのであれば、どんな手段でも可能です。それは「円」で表示される資産に限らず、金でも、コメでも、引越しのお手伝いでも、肩たたき券でも、双方がそれで債権債務関係を消滅させることに納得していればかまいません。デジタル社会においては、暗号資産がその対象となりえます。もともと一部の暗号資産の動機には、主権国家に頼らないリバタリアン的な発想があります。』

はい。

『現在、「円」で表示された銀行券や銀行預金の振込が利用されているのは、それがほとんどすべての人が納得する決済手段として認識されているからです。その前提の下で、日本銀行券には法律的にも「強制通用力」が付与されています。ただし、これはあくまで、「円」で表示された債権債務関係を消滅させる弁済手段となる、というだけであって、取引関係に入ることを強制されるわけではありません。「私は金でしか、あるいは暗号資産でしか、売る気はない」と言うことは契約自由の原則により可能です。』

そうですね。

『こうした未来が訪れることは、少なくともわが国においてはないと思います。「円」に連動しない決済手段について、モノやサービスとの関係で価値を安定させる仕組みを作ることは、中央銀行の「物価の安定」と同じ機能を独自に持つということですから、簡単ではありません。中央銀行が価値を安定させてくれる「円」に乗っかった方がずっと合理的です。その意味で、中央銀行がその使命をきちんと果たしている限り、「円」以外の決済手段が決済の主役になることはないでしょう。「中央銀行がその使命をきちんと果たしている限り」。』

アタクシがツッコミをいれるまでもなく、

>中央銀行がその使命をきちんと果たしている限り

って内田さんが繰り返して言っておられますな。まさにその通りなんですが、ところで今って物価もインフレ期待も上振れているかもしれないのですが、堂々と大丈夫と言い続けて超絶大緩和政策しているのって本当に使命を果たしているんでしたっけ???????という疑問は無くは無い、というかある。


・最後のところでも言ってることは立派なのだがところで行動はどうでしたっけというのがありまして

『9.おわりに』ってところですが、

『本日は、日本銀行の政策について業務面に焦点を当てて、ご説明しました。もう一度図表8をご覧ください。中央銀行の政策の源泉は、「支払完了性のある決済手段」(負債)の提供とその裏側で資産として何を持つかにあります。日本銀行はそれを通じて、金利操作を行い、「最後の貸し手」として機能します。非伝統的政策は、こうした業務やバランスシートをどのように、どこまで使えるのかを追求したものとも言えます。』

>非伝統的政策は、こうした業務やバランスシートをどのように、どこまで使えるのかを追求したものとも言えます

といったその後に、

『「政策」を考えるときに「業務」に関する理解は不可欠です。それは、「業務としてできないことが制約になる」といった意味ではなく、むしろ中央銀行業務の持つ可能性を知ったうえで、政策のイノベーションにつなげる、というほうが、私には実感に合います。ただし、「支払完了性のある決済手段」を独占的に提供できることの重みをしっかりと胸に刻んだうえで、という自覚が必須です。万能薬は、使い方によってはモラルハザードを生むものです。』

ただし、「支払完了性のある決済手段」を独占的に提供できることの重みをしっかりと胸に刻んだうえで、という自覚が必須です。万能薬は、使い方によってはモラルハザードを生むものです。

って実に良い事を言ってるんだが、黒田緩和ってそんな重みを胸に刻んでましたって、なんか野放図に万能薬打ちまくった(まあ万”能”だったのかは謎ですけど)んジャマイカと思いますが・・・・・・・・・

『そして、何より、「支払完了性のある決済手段」を与えられた目的は、「人々が安心してお金を使えるようにする」ためであるということを、忘れてはならないと思っています。後者の「使命」を果たせない場合、前者の「手段」は機能しなくなります。歴史は、物価の安定が損なわれて、あるいは、金融システムが崩壊して、自国通貨が流通しなくなる国をたくさん生んできました。』

めちゃめちゃ立派なことを言っているんだが本邦の物価って・・・・・・

『さらに将来に向けては、デジタル化が大きく進展した社会で、主権国家の中央銀行が発行する通貨が一般受容性のある決済手段として機能し続ける保証はありません。支払決済手段を選ぶのは人々の自由である、このことを胸に置いて、中央銀行の業務を運営していかなければなりません。もちろん多くの関係者の皆様とともに。

こうした様々な自戒の念を込めて今日の原稿を用意しました。ご清聴ありがとうございました。』

ということで立派なお話で締めていまして、論点も面白いのですが、残念なのは今の政策運営がこの立派な話と言行一致してましたっけというツッコミをしたくなってくることですなwwwwwwwwwwwwww

#さあ来週は決定会合ですね!




2025/06/12

〇内田副総裁講演をしつこく読む訳ですが日銀バランスシートの日銀財務に対する影響のお話

HTMLバージョンも出てきたのでHTMLバージョンから引用しますね(なぜか半角英数がコピペで認識されない謎PDFだったので)。

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/ko250607a.htm
【講演】
業務からみた日本銀行
日本金融学会2025年度春季大会における講演
日本銀行副総裁 内田 眞一
2025年6月7日

『7.非伝統的な金融政策と中央銀行のバランスシート』の後半、『非伝統的な金融政策と中央銀行の収益』
の部分になります。

『中央銀行は、平常時にはバランスシートの構造上、収益があがるようになっています。』

ってどういう話かというと以下シニョリッジの説明になります。

『もう一度図表7をご覧ください。98年度末、伝統的な金融市場調節を行っていた当時のバランスシートです。負債項目の多くを占める発行銀行券は無利息です。当座預金も無利息でした(この時点では付利制度は導入されていませんでしたし、仮に導入されていたとしても、準備預金ぎりぎりの水準で調節を行うのであればほぼ無利息です)。一方で、資産サイドの国債や金融機関への貸出には利息が付きます。この差額は、通貨発行権を持つことに伴う収益(シニョレッジ)であり、支払完了性のある決済手段を「負債」として独占的に供給できることによるものです。』

ですです。

『この関係は、非伝統的な政策によって、バランスシートが大きく拡大すると変化します。』

はい。

『まず、非伝統的な政策を行っている間は、収益は大きく拡大します。短期金利はゼロ%ないしマイナスですので、負債サイドの利払いは基本的には生じることはありません。』

この辺もうちょっと説明を練ってほしいのですが、「短期金利がゼロ%の時にバランスシートを拡大すれば」というのが表現としては正しくて、非伝統的政策って言ったってバランスシート使わない政策(短期政策金利のフォワードコミットメントみたなやつ)をしてたら別に収益拡大しないし、何なら短期オペだけでバランスシート拡大してたらやっぱり変わらんのですが、まあそういうクソ細かい話はさておきまして、

『資産サイドからは、バランスシートが大きい分だけ、より大きな収益が得られます(日本銀行の場合、当座預金を3層構造とし、マイナス金利部分を最小限に抑える一方、プラス金利部分もあったため、ネットで利払いが発生しましたが、資産サイドの方がずっと大きな効果を持ちました)。図表11をご覧ください。実際、大規模緩和前の日本銀行の経常利益は平均して6千億円程度でしたが、大規模緩和を行っていた時期には、毎年数兆円の収益を計上していました。』

バランスシートが大きくても短期に近い国債買っている分にはまた違うので、結局バランスシート内でどれだけ長短ミスマッチ取っているか(満期変換を行っているか)というお話ではありますわな。

『これが出口になると、当座預金の付利によって利上げを行う一方で、資産サイドは、金利が低い時に買った国債で固定されているため、逆ザヤが発生します。この点、日本銀行のスタッフがシミュレーションを行っています5。』

とありますが本件は昨年末に出ていましてその時にツッコミを軽く入れましたがこの後改めて。

『図表12をご覧ください。その結果は、短期金利・長期金利のパス、バランスシート縮小のペース、さらには冒頭でご説明した銀行券の残高がこの先どうなるかなど、複数の要因に左右されます。』

そらそうですな。

『前提条件として、昨年9月時点で市場が織り込んでいた金利見通しのとおり金利が動くと仮定した場合、青い実線のようになります。この前提では、収益は減少しますが、赤字にはならないという結果でした。ただ、金利がより急激に上昇するなどのストレスをかけると、シャドーのように、一時的に赤字になる場合があります。ただ、どちらのシナリオでも、その後は、負債サイドで当座預金が減少し、資産サイドで国債が高い金利のものに入れ替わっていくにしたがって、収益が回復していきます。』

という話になっていますが、じゃあ例のシミュレーションを見ますと

https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2024/data/rev24j15.pdf
日本銀行の財務と先行きの試算
企画局企画調整課
2024 年 12 月
日銀レビュー 2024-J-15

本文5pに『先行きの収益・自己資本に関する試算 』ってのがありますが、その前提になっているのは、

『(前提)
@ 短期金利・長期金利の推移

短期金利については OIS 市場7におけるインプライドフォワードレート、長期金利については国債のイールドカーブから算出されるインプライドフォワードレート(市場金利が織り込む金利見通し)のとおり推移すると仮定する。』

『また、市場金利が織り込む金利見通しに加え、(a)短期金利は、今後数年程度をかけて 1.0%〜2.0%となり、(b)その際の長短スプレッドは、+0.25%P〜+0.75%P となると仮定した場合の試算値のレンジも合わせて示すこととする8。』

っていうことで、全然ストレスを掛けたシナリオじゃねえだろ、ってのしか示されていない訳で、欧米みたいにインフレが高進してインフレ期待の2%アンカーが上振れするんじゃないかってことで盛大に引き締めを行う、というような前提にはなっておりませんが、何せ日本の場合は欧米のようにもともとインフレ期待が2%でアンカーされている国と違いまして、ゼロ近傍にアンカーされていたインフレ期待を一旦2%に引き上げてアンカーさせる(リアンカリングとか言ってた時期もあったけど最近言いませんなそういや)という器用なことをしないといけなくて、インフレ期待を一旦不安定化させる、というプロセスを踏むだけに、2%で止まらずにインフレ期待が上振れる(というか既に家計のインフレ期待は上抜けてしまってるんじゃないかと個人的には思ってるんですが・・・)というリスクって欧米よりも実は高いんですよね。

そう考えますと、この程度のユルユルで済むのか問題があるわけで、これはこの前もかきましたけど、だいたいからして実質中立金利が0%で均衡物価水準が2%の時に短期政策金利の名目中立金利は2%な訳で、「(a)短期金利は、今後数年程度をかけて 1.0%〜2.0%となり、」ってのがセカンドシナリオになっている時点で節子それはむしろベースラインシナリオレベルやというお話。

でもってこの前提ってしらっと、

『A バランスシートの規模やその推移

バランスシートについては、試算の便宜上、本年 7 月に決定された長期国債買入れの減額計画のとおり 2026 年 1-3 月にかけて国債の月間買入れ額を月 3 兆円程度まで減額し、同年 4 月以降は当該買入れ額から不変と仮定する(図表 9、10 参照)9。また、今後の取扱い方針を公表している資産はその方針に沿って変動し、その他の資産は不変と仮定する。』

となっているので、これ追加の国債買入で金利の高い債券が入って来て収入がアップする、というのを見積もっている計算になっていて、日銀のバランスシートの削減をあんまり進めなくてよくて短期金利もあんまり上がらない、というデフレ均衡とまではいわないけれども、物価安定目標の達成時にそれでエエノンカイナという日銀の損益シミュレーション的には甘甘の設定になっている訳ですな、前も書きましたけど。

でまあ今日はそこを突っ込むのが目的ではないので内田さんの講演に戻りまして。

『このように収益や自己資本の試算は、前提条件次第で変わりますが、いずれにしても、中央銀行のバランスシートの状況によって、「物価の安定」が毀損されることはありません。』

って威勢よく言いきっているのですが、実際問題一番ヤバい筈の「2%に向けてあげて行こうとしている期待インフレが2%で止まらないで上振れてしまった場合」に日銀が行わないといけない施策に対してこんなに巨額のバランスシート抱えたままだとあんまりよろしくないんじゃないでしょうか、っていう話は華麗にスルーしております。

まあ自分から「いやー実はインフレがガチで高進してインフレ期待が2%を超えてどんどん上がったら日銀の財務は大変なんです」とは言いにくいというかまあ言えないってのは分かるんですけれども、だからと言って堂々とここまでいうのもどうなんでしょうかね、ってな風には思う訳でして、この点から考えても「債券市場の金利急騰がどうのこうの」とか言いながらバランスシート縮小を必要以上に慎重に行う事っていうのは、物価上昇レジームになった時に日銀としての適切な政策対応の足かせになるのでもっとバランスシート縮小を頑張らないといけないんじゃないの、ってのがまあワイの思う所ですし、大体からしてこの巨大バランスシートがあって、さっきのシミュレーションで見られたように「モデストな金利上昇シナリオ」じゃないと財務上面倒なことになるって足かせを意識してしまったために今次局面で政策調整がビハインドしているんじゃないかという風にも思ってしまうわけでございます。

でまあ以下続きですが、

『皆様にはご説明するまでもないことですが、管理通貨制度のもとで、通貨の信認は、中央銀行の保有資産によって担保されるものではなく、適切な政策運営によって「物価の安定」を図ることを通じて確保されます。また、そうした使命追求のための「政策遂行能力」に、財務状況が影響を与えることもありません。』

本当に影響が無いのか、というとそれは微妙ですよね。でもFEDの例をもってそこは強弁しておりまして、

『一時的に赤字や(極端な場合)債務超過になったとしても、収益や資本はシニョレッジによる将来の収益で復元されますし、支払完了性のある決済手段を自ら供給できるため、支払いは常に可能です。実際に、FRBやECBを含めて多くの中央銀行が現在赤字を計上しており、その一部は債務超過になっていますが、業務や政策の運営に支障は生じていません。』

それは他の要因も複合しているので、日本のように財政運営はガバガバ、中央銀行の資産は莫大、という状態で全く同じな保証はないでしょ、という話ですが、まあさすがにそこは、

『それでも、多くの中央銀行は、自己資本など一定のバッファーを有しています。日本銀行も自己資本を有しているほか、大規模緩和の過程では、収益の上振れ分の一部を引当金として留保し、出口で損失が発生した場合に備えています。』

『本来、中央銀行の財務構造を理解していれば問題ないことであったとしても、例えば、赤字や債務超過などが発生した時に、市場が「中央銀行が財務リスクを気にして適切な政策の実施を躊躇するのではないか」といった疑念を持つようなことがあれば、政策効果の波及が阻害されます。そうした疑念を惹起させることのないよう、適切な政策運営を行うという大前提のもとで、上記の引当金など可能な手段を通じて、財務の健全性にも配慮していくことは大切です。』

ということで話を締めているのですが、まあ本来は財政運営の中長期的な持続可能性をちゃんと考慮した運営をしろって話がそこに思いっきり加わるんですよね。

という所で今朝はこの辺で勘弁して頂ければと存じます。現世利益とあんまり関係ない雑談ばっかですいませんでした。






2025/06/11

〇引き続き内田副総裁の講演をネチネチと鑑賞するの巻

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/data/ko250607a1.pdf
業務からみた日本銀行
── 日本金融学会2005年度春季大会における講演 ──
日本銀行副総裁 内田 眞一

・「業務」を言い訳にするのはちょっと卑怯じゃないですかねえ

昨日ネタにした「オーバーシュート型コミットメント」の説明部分ですが、昨日はこのコミットメントが「このコミットメントは強いものではありません」とかコミットメントを導入した時に黒田総裁が「強力なコミットメント」と説明しまくって居たものを当時の企画担当理事の内田さんが積極的に否定してくる、という飛んでも無い部分をご紹介しましたが、この説明って小見出しの通りでもう一つ飛んでも無いツッコミ部分があるんですよ。

ということで重複になりますがオーバーシュート型コミットメントの説明の頭のところからもう一度見てみましょう。

『バランスシートの大きさを明示的に使ったコミュニケーションとしては、日本銀行は、 2016年9月にイールドカーブ・コントロールを導入した際に、「消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで」マネタリーベースの拡大方針を続ける、というコミットメント(オーバーシュート型コミットメント)を行いました。』

でもって昨日は、

『先ほど述べた通り、短期金利の操作とバランスシートの大きさは切り離し可能なものなので、このコミットメントは強いものではありません。』

という導入時の説明を思いっきり「あれは嘘です」って言ってしまっているという飛んでも無い部分があったわけですが、

『より直接的なコミットメントとして、例えば、「消費者物価が2%を安定的に超えるまで」長短の金利目標の水準(短期は−0.1 %、 年金利はゼロ%程度)を続ける、と約束することも論理的にはありえました。ただ、これではフォワードガイダンスとして強すぎ、将来の柔軟性を犠牲にする恐れがありましたので、バランスシートの大きさに紐づけたということです。』

しかしながら「金利と分離して運営が可能」だったらバランスシートの大きさに意味は無い、という話になるのでして、だったらそもそもこのオーバーシュート型コミットメントが虚偽説明だったという話になるわけですが、バランスシート拡大した後遺症で今面倒なことになっている(そもそもバランスシートこんなに拡大しなかったら長期金利の急騰(財政配慮を含めて)にビビることなくもっと早くに利上げ出来てたんじゃないのとかまあ色々とツッコミは有るわけですよ)ので、足元の内田さんの説明もかなりインチキ臭いんですけどね。

『一般的に「バランスシートの拡大を続けながら、利上げをする」というのはイメージしにくいので、「緩和を続ける」というスタンスは伝わる一方で、オペレーション的には(業務面から考えれば)、バランスシート縮小(QT )の前に利上げを始めることは可能で、その余地を残したものです。』

というこの部分、ここまでは昨日も引用しましたな。ちなみに海外中銀は「バランスシートの縮小を続けながら利下げを実施」しているのですから、まあこの説明は明らかに「ワシらはお前らの誤解を利用してペテンを打ちましたもんね」って言ってるのに等しいんですけど、まあそれは兎も角としてこの続きがあって以下引用しますと・・・・・

『この辺りの事情は、フォワードガイダンスという「自分を縛って効果を得る政策」の微妙なバランスを示しています。』

とまあドヤ顔(かどうか知らんが)の説明が始まるのですが

『効果と自由度のバランスを取るために、明示的に例外条項(escape clause )を入れておくという例もありますが、「業務」の要素を絡めて対応余地を残すという方法もあるということです。』

いやいやいや、それを「業務の要素」っていうのインチキじゃろという話だし、大体からして業務的にバランスシートは金利と分離できるんだたら、QQEとか言ってバランスシートを拡大したこと自体が初手からインチキでしたって言ってるのと同じになってしまう訳で、この説明は何ぼ何でも無理筋じゃろ、と言わざるを得ません。さらにですね、


・オーバーシュート型コミットメントは初手からイカサマ目くらましでしたとネタバラシとはこれは酷いwwwww

『日本銀行を含めて各国の中央銀行は、当然こうしたことを分かったうえで、』

>当然こうしたことを分かったうえで、
>当然こうしたことを分かったうえで、
>当然こうしたことを分かったうえで、

これは額装して決定会合のお部屋の総裁の席の後ろ辺りにでも飾っておきたい言葉ですなあという感じでして、他の国の中銀からしたらイカサマペテン説明の片棒担ぎみたいに言われるのは心外にも程があるでしょうし、そういうインチキ説明を最も嫌っていたであろうと思われる白川さんやダブル山口さん(過去の2名の「山口副総裁」です為念)などがこの額装を見たら飛びあがって額縁を叩き壊すレベルかとは存じますが、何とですね、

「オーバーシュート型コミットメントが強力なコミットメントだと言ってたのはぜーんぶ嘘ですテヘペロ」

ってオーバーシュート型コミットメントが用済みになった時点で言いだす、というお話でして、まあ何となく今の日銀が屁理屈(「コアコア物価」から始まり2%達成に向けた政策反応関数をホイホイと使い分けて涼しい顔をしている件ね)を捏ね回すバックグラウンドがこういうことなんでしょうな、というのが垣間見れるんじゃないかと思うのよね。でまあしかもそのイカサマに関して(話が分かりにくくなるといかんと思うので重複引用しますが)

『日本銀行を含めて各国の中央銀行は、当然こうしたことを分かったうえで、バランスシートと政策金利の運営、そしてそのシークエンスを考え、コミットメントを実施してきました。こうした意味でも、中央銀行にとって「政策」と「業務」は不可分のものです。』

って業務の話にして誤魔化していますけど、当時のオーバーシュート型コミットメントはその場しのぎの目くらましで、強力なコミットメントとか言ってたのは全部その場しのぎの説明でした、ってのを思いっきり表明してしまう、っていうのは将来コミットメント政策がまた必要になった場合にお前どうするんだよ、と思ってしまいますね。

・・・・・とは言いましても、まあ市場というのもアタクシのような粘着質の変な奴というのは基本的に珍獣の方に多分寄っているのでありまして(そのくらいの自覚はアタクシだってありますわよおほほほほ)、普通は(というか最近は、というべきか)昔の理屈との整合性がどうのこうのとか、展望レポートハイライトを半年以上遡って前回の絵との整合性とか言う人もあんまりいませんので、まあこのような割と衝撃的な「昔のあのコミットメント、当時は強力なコミットメントと言ってたけどアレはその場しのぎの方便で実は強力じゃありませんでした」って説明だって全然金融メディアの話題にならない(ので珍獣がネタにするわけですがw)まあこう言い切ってもセーフ、と高を括っているんじゃないかなあ、とは思いました。てか「金融学会」なんだからこの部分に対してツッコミを誰か入れたのかという方が気になるけど、どうせ金融学会とか言ったって使えねえ馬鹿学者(学者馬鹿ではありません為念)の集まりでしょうから(個人の偏見です)誰もツッコミ入れないんでしょうけどね(入れられるような骨のある学会だったらこんなツッコミどころ満載の説明はせんじゃろうよwwwwwwwwww)。

ということで、この辺の説明は随分と舐め腐った説明しやがって、てなお話ですが、この次に日銀のバランスシートというか今後の収益の問題、というのが出てくるので、本当は今朝はそっちをメインにする積りだったのですが、ついつい昨日の続きのオマケ部分の予定だったところで興奮してw手が踊ってしまいましてこの先を成敗する時間が中途半端になってしまいましたのでまあ先の話はまたいずれ。


・バランスシートの今後に関する問題点は「収益シミュレーションの前提にガチのリスクシナリオが描けないこと」

というのだけ書いておきますが、これは昨年末に企画局が出したバランスシートがどうしたこうしたのペーパーの時に突っ込みましたが、日銀の巨大なバランスシートが問題になり得るのは何のことはないですけど「インフレがオーバーシュートした時に、巨大なバランスシートのストック効果による緩和効果が邪魔をしてインフレのオーバーシュートを止めるのが困難になるケース」でして、その場合ってストック効果を相殺するために強力な利上げを実施しないと行けなくなるので、バランスシートの損益的には期間損益が真っ赤っ赤になるのですが、それが容認できるのか(いくら「時間を掛ければシニョリッジで回収できる」と言っても程度問題があるし、そもそも引き締めた傍から超過準備付利の形で盛大に利払いをするのも財政支出の一種のような気がするんだがその効果ってどうなのよというお話だって超過準備の規模が巨大だと何か悪さをしそうな気がしますし・・・)という話が有るわけですがなというお話。

でもってさらに強力な引き締めをするためにはこのストック効果が邪魔、となった場合に国債売却をすれば良いのですが、その場合は当然ながら過去に買った国債は損失が出る訳で、まあその損失は時間を掛ければシニョリッジで回収できるとは言いましても以下同文な訳でして、まあバランスシートを巨大なままたいして減らせない、という状況はインフレが落ち着いて低位にいるなら問題はたいしたことは(たぶん)無いのですけれども、上振れするような時には甚だよろしくないのでして、その辺の話は確かに正面切って書きにくいというのは分かるのですが、だからと言って大丈夫ですヘヘーンと強弁するのも「全電源喪失はあり得ません(キリッ)」を思い出してしまうのでどうなのよ、とおもいます、ってな話をしようと思っておりました次第です(他にもネタはあるけど)ので一応書いておきます。

ということで今朝はここで勘弁してちょということで。





2025/06/10

〇色々と面白い論点が転がっているので昨日の続きで内田さんの講演をば

まだHTMLバージョンが出ていないので時々数字が認識できない問題がありますがPDFから引用して参ります。

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/data/ko250607a1.pdf
業務からみた日本銀行
── 日本金融学会 2025年度春季大会における講演 ──
日本銀行副総裁 内田 眞一

(ちなみにこの2025も文字列認識しませんw)

本文15ページ(PDFの16枚目)の『7.非伝統的な金融政策と中央銀行のバランスシート』ってコーナーから参ります。

・非伝統的な政策の話をするときにいきなりマネープリンティングしないで頂きたいんだが

最初の小見出しが『(非伝統的な金融政策の効果:資産サイドと負債サイド)』というお話。でもってその冒頭が、

『後半パートの2つめのテーマは、非伝統的な金融政策とバランスシートです。「非伝統的な金融政策」はその名の通り、伝統的な業務運営を超えて、中央銀行業務を拡張することで、金融政策の効果を追求するものです。これはしばしば「バランスシート政策」と呼ばれます。』

ほうほう。

『中央銀行が、「支払完了性のある決済手段」を負債として供給することは、その裏側で、資産を持つことを意味しています。理論的には支払完了性がある負債はいくらでも提供できるので、「どんな資産を、どれだけ持つか」が政策のパラメターになりうるのです。』

支払い完了性(ファイナリティ)のある決済手段云々はこのコーナーの前の方で決済に関する話をしておりまして、でまあ決済の中で中央銀行の負債(銀行券または中央銀行当座預金)は決済の最後の尻が完了できるものなのでファイナリティがどうのこうのという説明でして、その辺興味のある方は読んで味噌という話ではあるのですが、どさくさに紛れて内田さんそれはちょっと読まれ方によっては大変な暴言なんですけど、というのがこれ。

>理論的には支払完了性がある負債はいくらでも提供できるので
>理論的には支払完了性がある負債はいくらでも提供できるので
>理論的には支払完了性がある負債はいくらでも提供できるので

おいこらちょっと待て、それは「マネープリンディング」っていうんじゃないかってな話で、支払完了性がある負債をいくらでも発行して、それで政府の債務をいくらでも引き受ければ紛うことなき財政ファイナンスな訳ですよ。

でもってですよ、昨日ネタにしましたけれども、本文8ページにあった中央銀行当座預金付利に関する説明の中で、

『このことは、その後、技術的な金利操作の手段という意味合いを超えて大きなインプリケーションを持つようになりました。ひとつは、金利操作と切り離して、バランスシートの大きさを決められるようになった結果、資産サイドを使った政策を大規模に行うことが可能になったことです。』(本文8pより)

って言ってるんだから、この「負債はいくらでも提供できる」と合わせて考えたら、中央銀行は財政ファイナンスを何ぼでもできまっせ、という説明しているのと変わらんじゃろ何ちゅう危険な説明をしてるんじゃと小一時間問い詰めたいわけですけど、この次の部分も論点になりうる話でして、


・バランスシート政策があるのであれば「短期金利とは別」という説明はどうなのかよと思いますけどね

>「どんな資産を、どれだけ持つか」が政策のパラメター
>「どんな資産を、どれだけ持つか」が政策のパラメター
>「どんな資産を、どれだけ持つか」が政策のパラメター

さっきの8pの説明の通りで「金利政策と切り離してバランスシート政策を行うことが可能になりました」って言って、この部分で「「どんな資産を、どれだけ持つか」が政策のパラメター」と言ってるんだったら、日銀の保有する長期国債残高に関しては立派(?)な「政策」でありますので、「金融政策運営は短期金利コントロールで行うので長期国債買入に関しては政策意図云々ということではない」という説明とお前話が違うじゃろ、という話でもあります。

短期市場に対しては当預付利を使って超過準備を不胎化することができるからバランスシートは別物、と言ってもバランスシートの資産サイドで持っているものが政策中立なのか、というとそうではない、って自分で言ってしまっているので、つまりは「付利をして短期金利をコントロールしているので無問題」という理屈は短期市場だけ見て説明しているイカサマ説明じゃろってなもんで、いやだからそういう所の説明が「部分部分では筋の通ったことを言ってるけど全体で見た整合性と、過去の説明との整合性がないじゃろお前ら」ってツッコミを入れてしまう要因なんだよな、と思いました。


・どさくさに紛れてマネタリーベース直線一気理論が完全に無視されているのはワロタ

『図表10 をご覧ください。現在の日本銀行のバランスシートです。非伝統的金融政策として長期国債を買った場合、資産サイドで長期国債が増加し、負債サイドでは、相手方の金融機関の当座預金が増えます。その政策効果は、資産サイドで国債を買入れることによって、市中から金利リスクを吸収し、タームプレミアムを押し下げる効果(いわゆる「ストック効果」)が中心であると分析されています。』

からの、

『一方、負債サイドの当座預金残高やマネタリーベース、あるいはバランスシートの大きさには、資産サイドのような直接的な効果があるわけではありませんが、一定のアナウンスメント効果は持つ可能性があります。』

wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

しつこいので久々にこれでも
https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2015/kk1502a.pdf
岩田副総裁記者会見要 旨
―― 2015年2月4日(水)
午後2時から約35分
於 仙台市

『(問) 副総裁は就任前の 2013 年 3 月 4 日の講演で、「日銀当座預金が10%増えると予想インフレ率が 0.44%上昇する」ということをおっしゃったという報道がありますが、これが事実かどうかをお伺いします。また、実際に日銀当座預金残高の推移をみますと、講演をされた 2 年前の水準が44 兆円で、足許の水準が 185 兆円、これは 10%どころか 4 倍以上に達しています。それにもかかわらず、予想インフレ率を表す一つの指標であるBEIは足許で1%を切っている水準です。これは、もともとのご発言自体が誤っていたのかどうか、それとも今でも同じようにお考えなのでしょうか。』(この部分だけ直上URL先2015年2月岩田規久男副総裁(当時)の会見要旨4pより)

・・・・いやはやなんともw

・バランスシートの効果の説明が粒粒では言ってることそうかもしれんが全体の整合性がおかしい

では講演本編に戻りまして、

『大きなバランスシートを急激には縮小できないことは、市場もわかっているので、「しばらく緩和を続ける」というメッセージになりえるということです。』

ということではあるのですが、インフレが急速に進むような場合はバランスシートによる緩和効果が逆に足かせになるわけで、ストック効果の緩和効果がどうのこうのと主張すればするほど、バランスシートが大きいならば、そのストック効果の緩和効果を加味して政策金利水準の設定が必要になるはずなんですが、そういう説明を一切しないで今の政策運営をしているのは如何なものかって話になるんですよね。

『2000年代のはじめ頃、為替市場などで、中央銀行のバランスシートの大きさの比較が材料になったことがありました。この点、リニアな関係を導くことは無理ですが、「緩和スタンスのproxy 」として、緩い関係を見出すことは不可能ではなく、あとはケインズの美人投票的に機能したということでしょう。』

「この点、リニアな関係を導くことは無理ですが、「緩和スタンスのproxy 」として、緩い関係を見出すことは不可能ではなく、あとはケインズの美人投票的に機能したということでしょう」って言っているのですが、さっきうっちーさん「「どんな資産を、どれだけ持つか」が政策のパラメター」って言ってたんだから、バランスシートの大きさ(とその構成)の比較は政策のパラメターなんだからリニアかどうかは兎も角としてその理屈なら意味あるじゃろという話なのですが、なぜかここの説明ではバランスシート規模はあくまでも「緩和スタンスの代理変数」程度であり、「スタンスの表明」にすぎないような説明をしている訳でして、いやだからそこさっきとの話の整合性どうなっているのよ、というお話。

まあ非伝統的緩和政策自体が結局何だったのかというのはまだ評価が固まっている訳でもないのでクリアカットな説明ができない、というのはその通りなんですが、だからといって「粒粒での説明はいいんだが全体として結局なんだったのかという説明が無いどころか話の整合性が無いんじゃが」というのも如何なものかと思います。

・オーバーシュート型コミットメントが強いものではなかったとはこれはまた酷い

でもってこの次ですが、これがまたドイヒーでして、

『バランスシートの大きさを明示的に使ったコミュニケーションとしては、日本銀行は、 2016年9月にイールドカーブ・コントロールを導入した際に、「消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで」マネタリーベースの拡大方針を続ける、というコミットメント(オーバーシュート型コミットメント)を行いました。先ほど述べた通り、短期金利の操作とバランスシートの大きさは切り離し可能なものなので、このコミットメントは強いものではありません。』

>このコミットメントは強いものではありません
>このコミットメントは強いものではありません
>このコミットメントは強いものではありません
>このコミットメントは強いものではありません
>このコミットメントは強いものではありません

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)

さてここで2016年9月の総裁定例記者会見の冒頭発言、オープニングリマークに相当する政策説明の部分を途中から見てみましょう。

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2016/kk1609b.pdf
総 裁 記 者 会 見 要 旨
―― 2016年9月21日(水)
午後3時半から約70分

本文2ページの後半以降になります。

『次に、「オーバーシュート型コミットメント」について説明します。』

『日本銀行は、生鮮食品を除く消費者物価指数の前年比上昇率の実績値が安定的に 2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続するという新しいコミットメントを導入しました。』

『2%の「物価安定の目標」を実現するためには、人々のデフレマインドを抜本的に転換し、予想物価上昇率を引き上げる必要があります。この点、「総括的な検証」でも示したように、わが国における予想物価上昇率の形成は依然としてかなりの程度「適合的」であり、足許の物価上昇率に強く引きずられる傾向があります。』

『こうしたことを踏まえ、予想物価上昇率をさらに引き上げていくためには、金融緩和の継続に関する極めて強力なコミットメントを導入することによって、「物価安定の目標」の実現に向けた日本銀行の揺るぎない姿勢を改めて示すことが必要であると判断しました。』

『もともと 2%の目標を実現するということは、景気変動などを均して平均的に 2%を実現するということですから、2%をオーバーシュートする局面は想定されています。しかし、金融政策には効果が現れるまでにラグがあることを踏まえると、実際に 2%を超えるまで金融緩和を続ける、というのは極めて強いコミットメントです。』(以上この部分2016年9月21日黒田総裁(当時)の定例記者会見要旨より)

・・・・・・・・・・・(゚д゚)

ちなみに「実はもっと強力なコミットメントがありましたてへぺろ」という説明が以下続きまして、

『より直接的なコミットメントとして、例えば、「消費者物価が2%を安定的に超えるまで」長短の金利目標の水準(短期は−0.1 %、10 年金利はゼロ%程度)を続ける、と約束することも論理的にはありえました。』

『ただ、これではフォワードガイダンスとして強すぎ、将来の柔軟性を犠牲にする恐れがありましたので、バランスシートの大きさに紐づけたということです。』

だそうですが、

『一般的に「バランスシートの拡大を続けながら、利上げをする」というのはイメージしにくいので、「緩和を続ける」というスタンスは伝わる一方で、オペレーション的には(業務面から考えれば)、バランスシート縮小( QT)の前に利上げを始めることは可能で、その余地を残したものです。』

って説明をしているんですが、最初の方で話をしている通り「バランスシートは金利と別」って言ってるわけでして、「一般的に「バランスシートの拡大を続けながら、利上げをする」というのはイメージしにくいので」ってのがそもそもペテンじゃろという話だし、じゃあお前2016年のオーバーシュート型コミットメントの説明はペテンだったのかという話になって、まあ色々とダメな説明になっていませんかねえ、という所で誠に遺憾ながら時間が無くなってしまったので今朝はここで勘弁していただきとう存じます。





2025/06/09

〇内田副総裁の金融学会での講演がなんかいろんな論点の展覧会みたいになって面白い件

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/data/ko250607a1.pdf
業務からみた日本銀行
── 日本金融学会2025年度春季大会における講演 ──
日本銀行副総裁 内田 眞一

この講演、いろんな論点の展覧会みたいになっていまして、この前の金研コンファランスで本来学術的なお話をする場所なのに政策運営のために屁理屈捏ね捏ね講演をしていた植田さんの講演とはだいぶ格調が違っている、という感じでして、いや植田さんがこの話をしろよとは思いましたけれども・・・・・・・・・・・

マクラの部分ですが『1.はじめに』から引用しますね。

『図表1をご覧ください。普段、メディアで目にする「日本銀行」は、金融政策の担い手としてのものが中心です。昨年度の報道件数のうち、3分の2は「金融政策関連」でした。それ以外では、例えば昨年7月に 年振りの改刷があり、その前後では「銀行券関連」の記事で盛り上がりました。』

『実際、多くの方々にとって、人生で最初に「日本銀行」に接したのは「日本銀行券」であったのではないかと思います。そして、中学の社会科では、日本銀行は、「発券銀行」「銀行の銀行」「政府の銀行」である、と教えられ、高校にかけて、「金融政策」や「物価の安定」、あるいは「最後の貸し手」や「金融システムの安定」について学んでいきます。』

金融システムの安定とか高校の政経でやったっけとは思いますがまあ気にせず先に進めまして、

『私自身、支店長をしていた頃は、中学校の体育館で、「お金とは何か」の出前授業をしたりしました 。』

(^^)。

『ただ、これらのキーワードを有機的に結ぶこと、例えば、「なぜ、中央銀行はお札を発行して、金利を上げたり下げたりし、インフレやデフレに責任を持つのか」まとめて整合的に説明することは、大人にとっても意外に難しいことです。』

はい。

『中央銀行の政策と業務は一体不可分のものです。通常それは「政策を実現するための手段としての業務」という順番に語られます。今日の私の試みは、逆の順番、つまり「業務」を出発点にして、「政策」につなげていこうというものです。』

ふむふむ。

『私は、昔からこうした視点を大切なものだと思ってきました。実は、私自身が関わったものを含めて、同じような試みは、過去にもいくつかあるのです(ここの数字がコピペ不能)が、時折こうしたことを繰り返していかないと忘れられがちなテーマですので、今日のこの場をお借りしたいと思った次第です。』

ここ(コピぺ不能部分には本当は2という数字がある)に実は脚注2というのがあるのですが、今回のこの講演テキストのPDFバージョン、割と致命的に残念なことがありまして、一部の数字(見出しとか脚注は良いんですが本文の数字だったり表題の数字だったり)がテキストデータになっていない、という謎の状態になっていまして、コピペしようとすると数字の部分だけ認識しないのですが、脚注2は、

『2 例えば、速水優『私の中央銀行論』(2001 年 4 月一橋大学創立 125 周年記念講演会における講演)、日本銀行金融研究所編『新しい日本銀行 その機能と業務』(有斐閣)、白川方明『「法と経済」からみた中央銀行』(2009 年 10 月東京大学法学部における講義)。』(ちなみにここの数字はちゃんと認識される)

となっていますように、実は重要なお話だと思いますし、それこそ短期のオペレーション関連に関する実務の現場から叩き上げております所のアタクシからしても、基本的に金融実務から見ていくってのは大事じゃろ、ということで以下のテーマが多岐にわたって、結構面白いのが幾つかあるので1回で終わらないネタではあるのですが、まあ一応今の政策的にポイントになる日銀のバランスシート政策に絡む部分を今日は拝見しようかと存じます。


・金融政策目的の国債買入は財政ファイナンスではないし財政ファイナンスでないと言い張れば良いだけではない

という訳で『3.政府の銀行』の後半の『(中央銀行と政府の取引)』に話は飛びます。

『日本銀行は、国庫金の管理に付随して、政府の資金繰りの実務も担っています。収入と支出のタイミングのずれによって、政府預金の残高は上下しますが、短期的な資金の不足は、国庫短期証券の発行によって賄います。これは公募入札で金融機関等に売却されますが、例外的に、募集残額が生じたり、国庫に予期せざる資金需要が生じた場合には、日本銀行が引き受けることができます。その場合には、次回以降の公募入札の代金で償還を受けることになっています。』

おーーーーーー。これは久々に聞く説明です。

『また、日本銀行が金融市場調節など自らの必要のために買った国債の償還期限が到来した場合、国庫短期証券で借り換えることができるようになっています。これは、「乗換引受」と呼ばれ、日本銀行側では政策委員会が金融市場調節上支障がないことを確認して議決する必要があるほか、政府側では財政法第5条の例外として国会の議決が必要になります。』

かつて償還乗換は10年国債で行われていましたが1年短国になった話とかそらもう老害なので色々とw

『以上細かい説明になりましたが、これらの業務は、政府に対する信用供与にあたり、政府と中央銀行の関係を考えるうえで重要な論点を含んでいます。このため、日本銀行では、「対政府取引に関する基本要領」を定め、基準や手続きを明確にしています。』

当然ですな、財政マネタイズするのは要するにマネープリンティングなんですから。

『また、こうした「政府の銀行」としての業務とは別に、金融政策目的での国債の買入れがあります。』

はい。

『現在の日本銀行のバランスシートの資産サイドで最大の項目は、「国債」です。これは、2013 年からの大規模な金融緩和において、2%の物価安定の目標を実現するため、金融政策の必要性から買い入れ、保有しているものです。政府による財政資金の調達を支援するためのものではありません。』

ちなみに本文中2013のところが認識されなかった(半角数字が認識されないのかな?)のですがそれはさておきまして、この「政府による財政資金の調達を支援するためのものではありません」につきましてこの直後に内田さんは、

『ただし、この問題は、中央銀行が「金融政策目的であって財政ファイナンスではない」と言うだけで完結するとは思っていません。』

とまあ実に当然ではあるのですが大変に素晴らしい事を仰せな訳でして、ともすればこの論点を逸脱した議論が特に今般では日銀の長期国債買入運営に関する議論の中で堂々と展開する馬鹿民間がいる訳でして、まあその悪態は次のコーナーで行いますけれども。

でもってじゃあどうしたらいいのか、ですけれども・・・・・・・

『出口を含めた緩和政策の全プロセスにおいて、経済・物価との関係で適切な金融政策を行い、これを財政状況への配慮によって曲げることはない、という「結果」が必要です。その意味で、今後の日本銀行の政策運営をもって、示していくべきことと考えています。』

おおおおおおおお!!!!!!!!!何と立派な決意表明でしょう!!!!と思う訳でして、これはすんばらしい、とは思う訳です。

・・・・ええまあ思うんですけどね、その割にはアクチュアルの物価が2%を延々と上回っているのに、今の物価高はコストプッシュなのでいずれ下がると言い続けて「基調的物価」とかいうお気持ち物価を持ち出して大緩和政策を延々と継続している、という実態があるんですがそっちとの整合性はどうなっているんですかってなもんですし、今行っている長期国債買入の縮減だって金利急上昇したらいかんとか言ってるけど、それって財政状況への配慮が入っていませんでしたっけというツッコミをしたくなるわけで、まあ内田副総裁のこの講演自体言ってることは大変に立派なのですが実際の行動がこの格調高いお話に見合っているのか、というのは謎ですわな、と思いましたが如何でございましょうか。


・これは極めて微妙な論点を踏みに行っていてどうなのかと思う

この先に『4.銀行の銀行』ってのがあって、その後半のところに『(当座預金への付利とそのインプリケーション)』という話をしているのですが、ここでの説明は結構際どい地雷を踏んでいると思ったのでネタにしますと、

『しかし、現在では多くの中央銀行が、バランスシートの大きさと短期金利の操作を切り離しています。当座預金に金利を付すという金利操作の方法が導入されたためです。』

とのことですが、

『日本銀行も、 年に「補完当座預金制度」を導入し、超過準備(当座預金のうち準備預金制度に基づく所要準備を超える部分)に対する付利ができるようにしました(当初は臨時措置として導入されましたが、その後恒久化されました)。』

『金融機関は余った資金を日本銀行の当座預金に置くか、市場に放出するかの選択がありますので、裁定行動により市場の金利は日本銀行が付利している水準に近い水準に誘導されます。現在でいえば付利金利は0.5%、市場における短期金利は、0.48 %程度です。』

でまあそりゃそれで良いんですけど、この次の説明が結構な地雷でして、

『このことは、その後、技術的な金利操作の手段という意味合いを超えて、大きなインプリケーションを持つようになりました。』

でもってですね、

『ひとつは、金利操作と切り離して、バランスシートの大きさを決められるようになった結果、資産サイドを使った政策を大規模に行うことが可能になったことです。』

って言ってるんですが、それはそもそも「可能になった」というのは如何なものかという話でもありまして、すなわち日本銀行がバランスシートに資産を能動的に積み上げること、というのは見合いの日銀当座預金を積み上げることでありますので、積み上げる資産が民間資産であれば、日本銀行が民間に信用供与ができることになり、それは中央銀行による財政政策に他ならないし、積み上げる資産が国債であれば、それは財政ファイナンスになりませんか、ってお話になるわけですよ。

中央銀行による財政政策類似政策、というのが民主主義国家における財政運営においてやって良い物なのかどうか、という議論もそうですし、財政ファイナンスに関しては講演のその前の部分で内田副総裁自らケシカランと言っている訳なのですから、ここでいきなり「金利操作と切り離して、バランスシートの大きさを決められるようになった結果、資産サイドを使った政策を大規模に行うことが可能になったことです。」って言ってるのは中央銀行の原理原則から言ってヤバイ話ですよね、としか言いようが無いですよね。

続きを拝読しましょう。

『非伝統的金融政策の中心手段のひとつは、いわゆる「量的緩和」すなわち、国債の買入れによって長期金利を押し下げることですが、これを実行するのには、バランスシートの大きさとは無関係に短期金利をコントロールできることが前提になります。この点、量的緩和を実行している間は、割り切ってしまえば、金利をコントロールできなくても、ゼロ金利でもよいと考えることもできなくはありません。』

という事で実はこの講演最後のところに非伝統的金融政策の話があるのですが、今日はそこまでいく時間が無いのでこのコーナーまでで続きは明日以降って感じなのですが、こういう説明からの、

『しかし、量的緩和からの出口プロセスに時間がかかることはあらかじめわかっているので、その時に、大きなバランスシートを抱えながら、短期金利をコントロールできることが保証されていないと、こうした手段は採用できません。』

って言ってるんだが、出口プロセスの間に時間がかかる、だけではなくて、現状では長期国債の買入がどこからどう見ても財政ファイナンスという規模での買入を継続していて、それを中々減らせない、という状態になっている時点で、「インフレにならない」ことが前提じゃないとあの政策ができなかった、というアホウなことになっている訳ですし、まさにこの量的緩和というかYCC政策というかの副作用が徐々に顕在化してきているプロセスな訳で、そう考えますと「資産サイドを使った政策を大規模に行うことが可能になったことです。」といって大規模に行う、というのはそりゃまあ物理的には行えましたけど、物理的にできるというのとやることが適切なのかというのは別問題な訳で、当座預金付利で何ぼでもバランスシートを拡大できる、というこの説明は物理的な可能性と中央銀行としての適切な政策運営姿勢というのを意図的に混同して説明してるじゃろ、と申し上げざるを得ません。


・いわゆるアンプルリザーブシステムに関する説明はちょっと微妙

『バランスシートの大きさと短期金利の操作が切り離されたことのもうひとつの帰結は、短期金融市場の参加者と中央銀行の取引先の範囲が必ずしも一致しないことで起こる流動性の偏在への対応が可能になったことです。』

とな何ぞやという話だが、

『取引先と非取引先が混在する状況で、伝統的な短期金利操作によって、所要準備預金残高ぎりぎりの水準しか供給しないと、金融市場の多様な参加者に必要な流動性の量に足りない、ということが起こってしまいます。』

大昔の米国の場合はそもそもFF取引の金利(政策金利ではない)ってのは乱高下するもんだったし、大昔の欧州圏の場合はこの対策として資金繰り事故が起きにくいようにするために所要準備預金の水準を高めに置いて(その代わりに所要準備に付利をしたりしていた)運営したりしているので、別にこれはバランスシートでわざわざ対応しなくても制度設計や短期金融市場の設計で割と何とでもなる問題ではないか、と大昔から実務見ているワシは思うので、ここの部分はちょっと????ではあります。

『この問題は、米国FRB のように法律で当座預金取引先の範囲が基本的に預金取扱金融機関に限られている国では以前からあったのですが、近年は各国でノンバンク金融仲介機関(NFBI。保険会社、年金基金、各種ファンドなど)の存在感が拡大し、その影響が短期金融市場に及んでいます。』

って言ってるんですが、それは翌日物ファンディング市場における話とは違くねってことだし、大体からして日本の場合は中銀当座預金へのアクセスが広範に及んでいるので、民間金融機関の短期資金繰りにおいてNFBIがどうのこうのってのそんなに重要か(安定した資金供給主体、としての市場の安定性への寄与自体は大きいと言えるんじゃないか、ってのは思うけど)ってのはよくわからん。

『この状況に対応するには、中央銀行が付利を使って短期金利を操作しながら、市場に必要な量の流動性を供給できることが重要です。』

別に付利使わんでも常設預金ファシリティと常設貸出ファシリティでコリドア作りながら必要な場合には積上調節すれば問題ないと思うんですけどね。

『現在、各国の中央銀行は、バランスシートの縮小を進めていますが、その多くは、伝統的な金融調節方法に戻ることはないでしょう。市場の求める流動性に見合ったバランスシートを維持しながら、当座預金への付利によって短期金利操作を行うことになるだろうと思います。』

まあこれは多分超過準備のデザインがいわゆるアンプルリザーブになっていくだろうという流れにはなっているので仰せの通りの面はあるのですが、じゃあアンプルリザーブが常に良いのかというとそこも良くわからない面もありまして、アンプルリザーブシステムにおいては金融機関のファンディングに一種の中銀プットが入っているような状態になっている、ともいえる訳でして、ソルベンシーが本当の本当におかしくなるまで金融機関のファンディングが回ってしまうファンディング市場がある、ってのも市場参加者の規律を失わせることになるんじゃなかろうか(なので次にプルーデンス的な問題が起きるならこの市場デザインによって兆候が分からない状態で突如問題が顕在化する、みたいなルートがあり得ると思うの)とは思うのでありました。

ということで内田さん講演ネタはこの辺で、あとは関連悪態。






2024/11/21

〇ちょっと旧聞ですが内田副総裁の国際預金保険協会での講演から少しだけ

まあ本チャンはこっちなのですが
https://www.boj.or.jp/en/about/press/koen_2024/ko241114a.htm
[Speech]
Challenges to the Financial System during and after the Pandemic and a Way Forward
Speech at the IADI Annual Conference
UCHIDA Shinichi
Deputy Governor of the Bank of Japan
November 14, 2024

当然のように邦訳の方で勘弁
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2024/ko241114a.htm
講演】
コロナ禍とその後における金融システムの課題と展望
国際預金保険協会(IADI)年次コンファレンスにおける講演の邦訳
日本銀行副総裁 内田 眞一
2024年11月14日

こちらに関しては別に12月の利上げだ的な今の日銀の金融政策をどうこうする話は無かったのですけれども、まあここで内田さんが言ってる話、よくよく日本の状況に引き直すと課題があるじゃんという部分もありましてですね、

・得られた教訓から見ますと不必要な規模の流動性が存在することがリスク対応の障害になりかねませんな

『4.教訓と今後の課題』ってところの冒頭ですけどね。

『では、教訓と今後の課題についてお話しします。冒頭に述べたとおり、経済・金融情勢とそれに伴うリスクについて理解していたとしても、将来起こりうるショックがどのようなものになるか、予測することは困難です。しかし、だからといって、未知の出来事には準備できないということにはなりません。むしろ全く逆で、本日お話ししたエピソードが示しているのは、危機に直面した時に迅速に対応するためには、平時に何をしておくかがいかに大事か、ということです。』

とまあ中々良い事をおっしゃっているわけですが、

『中央銀行の役割』の最初のパラは中銀間スワップの話なので割愛しますが、その次のところなんて中々示唆あるじゃないのと思ったのですが、

『また、中央銀行は、LLR機能を適時に果たすために、日々、金融機関と緊密なコミュニケーションを取って、リスクをモニタリングし続ける必要があります。』

ふむふむ。

『私自身の経験を少し紹介します。2000年代初頭、未だ日本の金融システムが不安定であったとき、私は、日本銀行の金融機関モニタリングとLLR機能の調整を担うチームのリーダーでした。』

ほう。

『我々のチームは、日々の預金流出入にかかる短期的な見通しや利用可能な担保等を含め、個別行の情報をできるだけ仔細に取得するよう努めていました。皆さんもよくご存じのとおり、個々の銀行は全て異なっています。我々は、問題を抱える銀行を救うにせよ、処理するにせよ、それを秩序立って行うための計画を立てる際には、仔細でテクニカルな情報を有している必要があります。しっかりと準備すれば報われるのです。』

って中々良いお話ではあるのですが、これ今みたいに超過準備がアホほどあると、資金繰り管理というものが全然違ってくる、というか問題の予兆に気が付きにくくなるという一面もあるんじゃないかね、と思ってしまう訳でして、今みたいな無茶苦茶無駄に超過準備があって、それを日銀当座預金付利で不胎化する、という事をしていると、ファンディングというよりも日銀当座預金目掛けた運用目的の調達といううのが市場調達サイドの主な動きになるんですよねたぶん。

そうなると、昔でいうバジョット・ルール的な場合に想定される「ソルベンシーはあるんだけどリクイディティーが無い」という現象が平時ではその逆状態のものがあって、何かの時に突如顕在化する、みたいなことになりやしませんかねえとか何とか、まあフワッとしたイメージで恐縮なのですが、ようは資金繰りのところから予兆管理がしにくい、という状態になって、まあ資金繰り回るので危機が起きませんがな(キリッ)という理屈もこれありなのでこの辺りはどっちがどうなのかは難しいのかもしれませんけれども、無駄に過剰な超過準備によって金融機関の健康状態が見えにくくなる、という弊害はあるんじゃないかなと思ったりしましたです、はい。


・NBIセクターがプルーデンス上

ちょっと先に行きまして『金融システムのトレンド』という小見出しのところから。

『コロナ禍やグローバルなインフレの影響に加えて、我々は、底流する金融システムのトレンド、具体的には、グローバルな金融システムの連関性の高まり、ノンバンク(NBFI)の存在感の高まり、デジタル化などにも留意する必要があります。』

ほうほうそれでそれで?

『まず、金融システムの連関性がグローバルに高まり、ショックがより速いスピードで国境を越えるようになるにつれて、前述のとおり、中央銀行や監督当局は非常に限られた時間で状況を把握し、流動性を供給することが求められるようになっています。特に、日本のように、金融市場が時差の関係で他地域より早く開く法域にとっては、国際的な協調が極めて重要です。』

まあ今はアホみたいに超過準備だしてるから円貨は気にしなくていいけど問題は外貨っすな

『次に、NBFIの存在感の高まりにも留意が必要です。NBFIがグローバルな金融仲介のほぼ半分を占めるとするレポートもあります。金融資本市場は、ごく最近も経験したように、NBFIの戦略や行動に度々影響されています。NBFIは、中央銀行マネーに直接アクセスしていないことが多く、当局は、預金取扱機関と比べて少ない情報しか有していません。しかしながら、NBFIと銀行セクターの関連性が深まるにつれて、ノンバンクに問題が発生した時には、金融市場を介し、金融システム全体に影響が及ぶ可能性があります。』

という状況なので米国だと(あれはあれでちょっと保護しすぎのような気もせんでもないですが)ONRRPという常設ファシリティを作ってみたり、コロナショックにおいてMMF向けCPお助け臨時措置を突っ込んでみたりとインターバンクというかFEDワイヤーの向こう側にいるオープン市場に向けた措置を講じたりしているのですけれども、ジャパンの場合は何せマイナス金利政策をぶっこんだ後になってリテール証券決済のインフラであるところのMRF向けのマクロ加算措置を後から慌てて入れました、という程度にはオープン市場に対して塩対応な訳でして、今だって(本来であれば幅広い参加者がリスクフリーの短期運用手段として安心して使えるはずの)短期国債市場が毎度悪態ついているような惨状を呈しているのに華麗にスルーなされておられる次第でして、NBFIの存在に関して重要という認識あるなら当預付利でコールが0.22-0.23%だからそれでヨシ!って言ってるのはどうなのかねとは思いますが、まあ過去から積み上げた超過準備タワーの取り崩しをするのにもショック出せないとかいう理屈もわからんことはないけど、特に短期金融市場が市場としての体をなすためにはアホみたいに積みあがった超過準備をもっと減らすという観点での施策を考えた方がよろしいんじゃないですか、とポジトーおじさんw

でまあその後はデジタル化の話で、

『最後に、デジタル化やIT技術の進展は、これまでも、金融機関のビジネスやリスク管理に影響を与えてきましたが、コロナ禍によってリモートワークやオンライン会議等が急速に増加し、デジタル化はさらに加速しました。ソーシャルメディアの普及やオンラインバンキングの高度化により、預金移動のスピードの速さや規模の大きさは劇的に高まっています。金融機関も、当局も、ソーシャルメディア等を通じて情報が短時間で拡散することを踏まえ、突然の預金流出に備える必要があります。同時に、オペリスクやサイバーリスクへの目配りも重要です。』

一方で貯蓄から投資というお話もありまして、もちろんそんなのバランスの問題ではあるのですが、預金金利をクソ低位に圧迫させるようなことをしない方が良いような気もせんでもないがよくわからんw

『これらのトレンドは新しいものではありません。我々は、既に問題を認識し、その対応策についても議論してきました。こうしたトレンドは今後も続きます。我々も取り組みを続けていかなければなりません。』

とまあそんな訳でちょっと雑感というかポエムで恐縮でありました。





2024/08/14

〇やっぱり内田副総裁会見の続きをば

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2024/kk240808a.pdf
内田副総裁記者会見
――2024年8月7日(水)午後2時30分から約45分
於 函館市

・円安が是正されたので「金利パスが変わる」はさすがに話が飛躍してませんかねえ

4ページの質疑から参りますね。

『(問)(前半割愛)あと講演の中で、7 月 31 日に指摘されたその上振れのリスクが小さくなっているということですけれども、今の段階でその金利のパスに変化があったと考えてらっしゃるのか、その点について教えてください。』

というのに対する回答なのですが、

『(答)(前半割愛)そのうえで、円安修正、すみません為替自体はもちろん日々の動きにコメントすることは適切ではないと思いますし、いつも言っていることですが、為替相場はファンダメンタルズに沿って安定的に推移することが重要だというふうに思います。そのうえで申し上げますが、見通しとの関係というご質問ですけど、』

からの、

『見通しとの関係ではですね、円安が修正されたことが、ある種懸念していた輸入物価(注)の上昇による上振れ、消費者物価の上振れリスクをその分だけ減らした、少なくしたということは事実だと思います。』

そもそもその対応で利上げしたんでしょ。

『ただ当然、為替は動いていくものですので、それ自体が経済・物価見通しあるいは物価のリスク、更には確度といったものをですね、どう変えていくのかは、まだ市場が動いている過程にあるわけですから、この段階で確定的なことは言いづらいということです。』

だったら利上げのパスは変わらないはずなのですが、

『現時点だけ、その変化だけをとらえれば、書いた通り、その分だけ上振れリスクは小さくなったと言えると思います。』

上振れリスクは小さくなったといってもそもそも見通し通りに推移すれば今後も政策金利の調整を行う、というスタンスだったはずなのに、

『もともと、これは前年比でみるか、流れでみるかによって違うのですけれども、流れでみると、ドルベースというか、契約通貨ベースも一緒に上がってるんですけど、少なくとも前年比でみる限りは、契約通貨ベースはほぼゼロですので、今 9.5%でしたっけ、ちょっと間違っているかもしれませんが、輸入物価が上がっているものは、専らこの間の円安が原因ということです。』

『その部分が修正されれば、その分だけ、そのリスクは減るというのは、これは計算上その通りですので、そういったことが起きたということもですね、当然ながら他の条件を一定とすれば、パスには影響するということになると思います。』

しねーよ何言ってんだよ、という話でして、これ円安の物価上振れリスクが高まったら利上げパスが早まる、というのはあっても、リスクが高まらないから利上げパスが遅くなる、というのは「見通し通りに経済物価情勢が推移すれば徐々に政策金利を修正していく」という金融政策運営方針で言ってることと違う話をしているんですよね内田さん。

まあいつもの黒田時代から続く「その場しのぎの屁理屈」な訳なのですが、さらに更問追撃が来まして、


『(問)講演の中で市場の変動の結果として、当然、金利のパスは変わってくるということを言及されていますけれども、今回の変動を受けて、7 月末に描いていたパスに比べて、今回は変動を受けて、今後のあり方のパスというのは比較的ゆっくりになっていくというとらえ方でよろしいのかということが一点と、あとビハインド・ザ・カーブに陥ることは少ないでしょうということを書かれているのですが、以前の総裁の会見では金利の引き上げが遅れると、後に大きな幅で引き上げが強いられる可能性があってということで、ビハインド・ザ・カーブに懸念を示されているかと思うのですけど、その認識の違いについてどのように感じているか。』

ですよねー。言ってることが1週間でこんなにコロッと変わるとか天変地異でもあったのかと。

まあこの回答も流れるような内田副総裁の屁理屈を鑑賞できますのでどうぞ。

『(答)前者についてはですね、書いていることは割と正確に書いたつもりなのですけれども、変動そのものというよりは変動の結果として、見通し、上下のリスク、それから確度、こういったものが変われば、それは当たり前のことですけれども、金利のパスが変わってくるということです。』

といっておいて、

『現時点でですね、これを評価することは難しいです。』

難しいのに何で決め打ちしたんだよオイコラ。

『難しいという意味は、これは最初から二番目の質問にお答えした通りですが、現にまだ不安定な状況にあるわけです。先ほどの為替の質問もそうですし、株価の質問もそうですけれども、株価も為替相場も不安定な状態にあるので、これが落ち着いていく中でですね、いろんな評価をしていかなければいけない。』

じゃあ数日の値動きでいきなり断定調で利上げを滅茶苦茶先送りするような言い方をなんでするのかと言いますと、

『逆にそういう不安定な状況であるときには、当然リスクを考えないといけないわけです。』

どうよこの屁理屈。だったら普通は「このような不安定な状況が続いた場合には経済物価に対する下押しリスクも考慮していく必要が起こりえるので、状況を注視していきたい」位の話をするはずなのに、不安定な状況が長々と続く前提みたいな決め打ち発言をしている訳ですな。

『そのことが二番目の質問につながってくるわけであって、そういう状況でも、ちょっと例えが良くないかもしれませんけど、今回の欧米のようなケースだったら、これは利上げせざるを得ないのですね、危なくても。1 回 75[bps]上げたり、毎回75[bps]上げてるようなケースだと、これはやらないといけないのですけど、われわれそういう状況には全くないわけです。つまり時期を選べるわけですね。』

円安上振れリスクで利上げしておいて「時期を選べる」とか何言ってるんだ。

『ですから総裁の申し上げていることと基本的に同じことを言っているのですけれども、一定のペースで上げていかないと、ビハインド・ザ・カーブになるわけではないので、』

一定のペースって1年に0.25%でも一定のペースだがそれで本当にビハインドにならんとでもお思いなのでしょうかねえ。

『当然ですけど、待てば後の方が重たくなるのはそれはそうだけれども、それがすごく急速な利上げにつながってしまうようなパスを想定されてる方は、もともと市場にはおられないと思うんですね。』

いやいやいや、あの調子でハトハト音頭踊ってて円安がじゃんじゃん進行したらエライことになっていただろうよ。

『リスクがあることですから、必ずそうなるわけじゃないですけど。そういうことなので、ある意味緩やかなパスで利上げをしていくことができる状態っていうのは、時期を選べるので、いろんな状況によって、これは一つのアドバンテージなわけです。』

などと言ってクソ粘りしていたら円安進行がやばいことになって今回の利上げに至った、というのをすっかりとぼけているのが内田屁理屈クオリティ。

『そういう意味でですね、条件が満たされていくのであれば、ゆっくりとではあるのですけど、上げていく必要があるということをですね、総裁会見では申し上げたわけであり、全く同じ論理の中で、不安定な状況のときに利上げをするということはないということは申し上げられるわけです。』

不安定なら利上げしない、では不安定じゃなければ利上げできるというこの逃げを打っている訳でして、これ結局この後になって円安進行再燃とかすると、内田さん「あの時点ではこのような考えでしたが状況が変わりましたので判断も変わります」と堂々とスタンスを翻してくるのはほぼ必定って感じでしょ。

『当然その不安定な状況がいつ解消するか分かりませんし、不安定な状況がもう解消しましたっていうふうに 100%晴れるということもないわけですから、そのリスクを感じながら政策運営をしていかなければいけない、そういうことを考えれば、何度も言いますが私の個人としてはですね、利上げについて慎重に考えるべき要素が生じたというふうに言わざるを得ないと思っているということです。』

まあこうやって市場に対してハトハト音頭を踊っている訳ですが、不安定なのが100%晴れるとかそういう話があるかよアホウというところで、昨年の氷見野副総裁の金懇会見にあった、『ただ、いろんなものをみていくといったときに、全部青信号が灯るということも実際の経済ではないわけですし、全部赤信号という状態もないわけで、実際には経済の動きの中でいろんなシグナルが混じって観察される中で、どこかで判断していく必要があるということだというふうに思います。』(2023年12月6日氷見野副総裁大分金懇における記者会見より)というのはどこに逝ったんだという話で、内田さんこれ「個人としては」で逃げを打っておいてやたら強いメッセージを出しているのってもうねという感じですな。


・そもそも見通し通りに推移しているんなら政策金利の調整が続くのではないかというツッコミ

ちょっと先(9ページ)になりますが、

『(問)繰り返しで恐縮なのですが、市場変動が下振れリスクになることは明白ということなのですけれども、そのうえで確認させて頂きたいのは、そうした市場変動を受けても、経済・物価が日銀の見通しに沿っているという判断になれば、今後も淡々と利上げを進めていく方針に、これ自体は変わりはないということでよろしいのか。つまり、市場が大きく変動することをもって利上げを躊躇するということにならないということで、確認ですが、よろしいのかお願いします。』

さきほどまあ上記のように市場が不安定なら利上げしないだの円安が是正されたからリスクがさがっただの小理屈を捏ねていた訳ですが、そもそも論で質問していてこれは大変に良い質問でございますな。さてどう回答するのでしょうかといえば、

『(答)これは、講演の方が正確に書いているので、その通りに言いたいと思いますけど、市場の変動の結果として、見通し、上下のリスク、見通しの確度が変われば、パスは変わってくるということですので、当然そこに影響があります。それが一つです。』

市場変動って基本的に変な金融ショックでもあれば別ですけど、基本的に経済情勢に対応して市場変動するんですから、そもそも論として見通しとかリスクが変わらないのに市場が引っ張って状況を変えるってのは金融面単独で何かが起きる、ということはむしろ金融緩和によるバブル発生とその崩壊みたいなことでもない限り仰せのような話にはならんじゃろ、という事なんですよね。

まあこれその場で聞いてて瞬間的には内田さんのこの答えで「ほうほう」って思ってしまいそうですけれども、よくよく考えてみたらそんな訳でこれも屁理屈オブ屁理屈。

『もう一つ、そのうえでなんですけれども、「そのうえで」と書いてないから読みづらいかもしれませんが、大きなパスはそれで決まる。そのうえで、わざわざ不安定な時期にやらなくてもいいくらい、ビハインド・ザ・カーブになるリスクは小さくて、緩やかなパスが想定、もともとされているのであると書いているわけであるので、』

「わざわざ不安定な時期にやらなくてもいい」と「不安定ならやらない」じゃあ全然意味が違うだろ、ということでこれ金懇のこの部分どうなっていたかといいますと、

『こうした市場の変動の結果として、見通しやその上下のリスク、見通しの確度が変われば、当然金利のパスは変わってきます。もともと、欧米の利上げプロセスとは異なり、わが国の場合、一定のペースで利上げをしないとビハインド・ザ・カーブに陥ってしまうような状況ではありません。したがって、金融資本市場が不安定な状況で、利上げをすることはありません。』(同日におこなれた金懇挨拶より)

・・・・・・このテキストの書き方から今の説明みたいな留保条件モリモリの話になるかよ、というところでして、まあ完全にこれ内田さん二枚舌使っているのですが、まあしいて言えば確かにこの会見での説明通りの話です、と言い切ってしまえば「あ、そうですか」となるような日本語の書き方(なので英文テキストの方が誤魔化しが効きにくいので表現がどぎつくなっている)になっているのが屁理屈大王クオリティ。

『そういう意味で、今の答えは、正確に申し上げると、リスク、確度、もちろん見通し自体が変われば当然ですけど、そういったものに影響すれば変わるし、そこについて一定程度留保が残るとしても、わざわざ危ない時にやることはないという意味では、今申し上げた要素が確実に変わっていなくても、それは当然要素になり得るということです。』

どう見てもそういうニュアンスに取るのに無理がある金懇テキストでしたけどねえ・・・・・・・

『従って、条件が満たせばというのは、その条件を満たせばというのは何かっていうことを真剣に毎回議論しているわけであり、皆さんにご説明しているわけなので、当然ながら、「こうであればこうです」というふうに一言で答えられるくらいであればですね、それは決定会合であれだけ議論を重ねる意味はないわけだから、それについては、一言で答えるのは難しいけれど、あえてかたちを言えば、今言った、二つの要素が市場変動との関係ではあるということですね。』

一言で答えるのが難しい割には随分と金懇テキストの方では明快な決め打ちをしておりましたが何なんですかこの屁理屈は、という感じで、まあ立て板に水というか実にこう流暢な屁理屈展開に感心してしまうしかありません、マネしたくはないですがwwwww


・コミュニケーションについてさらに

『(問)(前半割愛)あともう一点がですね、今日もそうなのですけれども、政策変更やですね情報発信によってこのマーケットが大きく反応するっていうことが続いています。この状況は望ましいことではないと思ってるんですけれども、副総裁のお考えと、もしこれがやはり望ましくないのであれば、何か改善すべき点があるのかどうか、その辺りの考えをお願いします。』

これで自分たちの説明が不十分あるいはブレブレであるなどというのを死んでも認めないのが内田クオリティなのですが、じゃあどういう回答をするのか鑑賞してみましょう。

『(答)(前半割愛)マーケットの反応についてはですね、確かに大き過ぎる反応はよろしくないというふうに思いますし、私どももコミュニケーションには注意していかなければいけないというふうに思います。』

と言ってますが、

『重ねて言いますけれども、中央銀行のコミュニケーションは、いわゆる政策反応の考え方、政策反応関数を示すということと、これは大きく変わってはいけないので、基本的には分かりやすくするために排除というか、省略されてる部分はやっぱりあるので、その中でのニュアンスの違いはどうしても出てきます。』

これはなかなか斬新な説明で、どういうことかというのをアタクシなりに解釈しますと、「2%物価安定目標の達成」という大きなものは変わってないのだが、達成に至るメルクマールはコアCPIだったりコアコアCPIだったり賃金だったり賃金の持続的上昇だったり基調的物価とかいうものだったりサービス価格だったり、という事がコロコロと変わってゴールポストが動いているようにしか我々のような素人には見えないのですが、内田理論によればゴールポストは動いていなくて、単にわかりやすくするために省略している部分が状況に応じて変化しているだけである、というかなり強引な理論になっている訳ですな。

などと書いておりましたらちゃんと以下説明があるんですけどねw

『これは日本銀行に限らず出てきてしまいますけれども、大きな考え方はきちんと示していく必要があると思いますし、そこはこの間、ぶれてないというふうには思います。』

『ただそこに代入するというか、われわれがどう経済・物価をみているのか、それから市場がどうみているのかっていうところのですね、ギャップというのは常にこの間もありましたし、』

一応自分たちがゴールポストを自分に都合よくホイホイと動かしている、という自覚はあるようですねwwwwwwww

『今回のような大きな変動のときには、そこは大きく出てくるわけであって、そのことがですね、政策が読みにくいとかそういったことにつながっていくのだとすればですね、そこは更なる努力が必要だというふうに思います。』

って言ってるけどこれ理解しない市場のアホウが悪いと思ってるでしょwwww

『もう一つですね、そこがなかなかきちんと伝わらない理由っていうのが、先ほど申し上げたパスが緩いからっていう面はやっぱりあるんですね。つまり、時期を選べるっていうことはイコール、人によって、今回の方が、次回の方が、前の回の方がいいってことが選べるわけです。』

って言ってるんだが今回って「上振れリスク」を利上げの要素に入れている訳で、本当に利上げパスが緩いのかは実は議論の余地があるように思えます。

『また悪い例を申し上げて申し訳ないけど、アメリカが 75[bps]とか連続で上げている時に、次回上げるわけないということには絶対ならないわけですよ。50[bps]か 75[bps]かは分からないけど。』

『われわれのようなケースっていうのは、もっとずっと緩いペースで考えているので、今回絶対やらないとおかしいよねっていう話を市場の人がみんな納得するっていうことにはどうしてもならないんですよ。そういう意味で分かりにくいということはあります。』

と言って、

『ただ、逆に申し上げるとですね、そういう話なので、そのことによって大きく反応するほどのことでは本当はないんです。本当はと申し上げたのは、[反応は]あるんですけど、市場ですから当然あるのですが、今回のケースについても、ちょっと正確には覚えてないのですけど、10 月まで[の利上げ]だったら確か100%織り込まれていたわけであって、その違いなわけですよね。』

お前は何を言ってるんだという話で、これまでずっとハトハト音頭を踊っていて、3月のマイナス金利解除の前からずーっと「でも緩和的なのが続く」というのを延々と言って(まあその結果円安が加速したわけですが)いたのに対して、今回やっと「段階的な利上げ」の方向性を明確化した、というスタンスの変化(本来はマイナス金利解除の時点で変化していないといけなかったことなのですが)を出したから反応したのを完全に無視していますね。内田さんのことだから当然これ分かっててすっとぼけている訳でして、問題は単品の利上げではなくて、「今後もちゃんと政策の調整をしますよ」ってのが今まで有耶無耶(やるとは書いてはいるけど隙あらば総裁にハトハト音頭を躍らせて利上げ観測を盛り下げていた)にしていたのが変わったためであって7月か10月か、の話じゃないんですよね。

なので、

『ですから、そのことによってかたちが大きく変わるということは本来ないはずなんですけれども、』

といううのがそもそも詭弁で、

『われわれの政策反応関数を象徴するのではないかとか、いろいろなことがそこからプラスとして読み込まれていくということは、これ実際にはあるので、そういったところはですね、より丁寧にその部分を説明していくという努力は必要だなというふうに思っています。』

お前らの説明は丁寧なんじゃなくてブレブレだわ、と言ったところで内田副総裁の会見の鑑賞会は(時間も無くなって来たので)この辺で。


2024/08/13

〇内田副総裁記者会見:講演で為替がぶっ飛んだのでせっせと修正を入れる辺りが姑息にも程がある

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2024/kk240808a.pdf
内田副総裁記者会見
――2024年8月7日(水)午後2時30分から約45分
於 函館市

本件木曜に出ておりまして出遅れにもほどがあるのですが、主な意見の方を確認しておきたかったというのもあるのでこっち後回しになりましたすいませんすいません。

・あの講演を見てこういう質問するのか・・・・・・orz

実質最初の質疑(最初は「本日はどうでしたか」なので)の質問だが、あの講演テキストとその後の市場の反応を見ている筈なのになんでこういう質問するのアホなのこの人。

『(問)7 月の利上げの後ですね、金融市場で株安と円高が進んでいます。市場ではですね、米国経済の減速が主因ではないかという見方も少なくない一方、日銀の利上げが引き金になったという声もあります。追加利上げと金融市場の変動の関係についてお伺いします。併せて、7 月の利上げのタイミングが妥当であったのか、この点についてもお願い致します。』

まあ回答は別に引用するまでもないので引用しませんが、これは無いわと思ったので晒してみました。まあ次の人はちゃんとこういう質問をしているのですが・・・・・・・・・


・強い表現(ただし諸葛孔明の罠付き)で利上げを否定した件について

次の質疑である。

『(問)二点お願いします。今回このタイミングで、市場が不安定な状況で利上げしないと、明確なメッセージを打ち出された理由について教えてください。』

『あともう一点、今朝の講演で当面現在の水準での金融緩和を続けるとおっしゃっていますが、この後の追加の利上げに向けた条件、必要なデータは何になるのか、当面ということは年内に更なる利上げというところは可能性としてないのか、併せてお答え頂けますでしょうか。』

当然ながらこの質問になるわという話ですな。まあ三百代言話法なので「あの時と今は状況が違う」の一言でひっくり返せる仕掛けにはなっているのですが、この回答でもひっくり返すことが可能な設計なのが分かりますわよ、ということで鑑賞しましょう。


『(答)これも関連した質問かなというふうに思いますが、中央銀行のコミュニケーションというものは通常二つのファクターというか要素で構成されています。』

第一の力第二の力、みたいになんか二つ出すの日銀好きよね(しかも詭弁で)と思うのですが、さては内田さんの趣味ですかこれはwww

『皆さんよくご存じの通りですが、一つは政策運営の考え方、いわゆる政策反応関数と言われるものと、そこに代入する経済・物価情勢の見方、この二つをコミュニケーションして、市場は市場でそれぞれ考えたうえで、市場金利というのは決まっていくという性質にあるわけです。』

あんたら政策反応関数コロコロと変えてるじゃん・・・・・・・・

『その中で、一つ目のその考え方については、条件付きではありますけれども展望レポートに書いているわけです。そうした中で、今回、急激な国際金融資本市場の変動というべきですかね、変動が起こったわけですから、その影響を注視して、そのことを政策に反映していくということは当然だと思いますので、このタイミングで申し上げた理由は、まさにその経済金融情勢が大きく変化する、あるいは変化するかもしれない大きな要素が生じたためということになります。』

とありますように、これって再度円安に振れたらあっという間に反故になるんですよね。さらに、

『そのうえで、当面とはいつまでかというのはですね、書いた以上当然聞かれると思って書いているわけではありますが、これはですね、例えば今の市場というのが、どういうふうに落ち着いていくのかっていうのはまだはっきり分からないわけです。』

つまり落ち着けば反故になる。

『私の考え方を述べさせて頂ければ、基本的には、例えば株価であれば、企業収益とか、日本の経済、あるいはアメリカであればアメリカの経済ですが、こういったものを反映して、いずれ落ち着いていくというふうに思っています。』

『ただ変動が急激であったこと自体は事実です。引き続き、きわめて不安定な状態にあるわけですから、その帰趨は、これはよく注視して、緊張感を持ってと申し上げましたけれども、みていかなければいけないというふうに思います。』

であれば、上記のように「足もとの金融市場情勢が極めて不安定であり、十分に警戒を持って状況の推移を見ていく」といえば良いんだし、もっと強く言いたいなら「金融市場の動向によっては我々の見通しに変化が生じ得る」というような言い方をすればいいだけであって、「利上げをしない」とかいう必要ないんですよね本来は。

これは植田日銀の悪癖なんですけど、植田さんにしろ内田さんにしろ、政策がらみのメッセージが一々露骨に強い表現をする(ハトでもタカでも)のが良くなくて、まあ植田さんにしろ内田さんにしろ頭が飛んでもなくよろしいので、馬鹿に分かるようにコミュニケーションしないと、っていう一種の親切心でこういう表現を使っているんだろうなあというのは想像できるのですが、馬鹿向けにコミュニケーションするから表現が毎度どぎつくなってしまい、そのたびに市場(特に足元の円金利市場)が極端に振れるようになってしまうのですな。でもってその極端ムーブを打ち消そうとして反対側にどきつい表現をする、という増幅作用が起きているのが今の市場と日銀の対話になっていまして、もう見てらんない(と言っても弾が飛んでくるので見ている訳ですが)という感じではあります。

でですね、この続きがですね、

『そのうえでですね、そういう意味でお答えとしては、今後の経済・物価・金融情勢次第であるということになりますし、』

ズゴー

『何より当然、決定会合で9人の委員の中で議論したうえで決定していくべきものでありますから、その範囲内で私の個人的な意見ということになってしまいますけれども、』

お前さあ、展望会合の直後の金懇で(平審議委員ならまだしもだが副総裁ともあろう立場の人間が)断り入れないで「個人的な意見」を言うなよしかもあんなどぎつい表現で。

『私個人としてはですね、そういう意味で当面がいつまでかということはともかくとしてということになりますが、これまでよりも慎重に考えるべき要素が生じているということではないかというふうに思っています。』

と締めていますが、9月決定会合までですら1か月半あるし、次の展望レポートの10月会合までほぼほぼ3か月あるわけで、その間延々と金融市場が混乱を続けるとでも思ってるのかよという話で、「利上げを当面しない」っていうのは、利上げをするチャンスが基本的に金融政策決定会合であることから、2か月3か月のスパンの話なのに対して、上記説明を見ますと単純に「足もとの金融市場が落ち着くかどうか」という話をしている訳で、明らかにこれ金懇講演テキストを受けて為替市場が盛大に円安にぶっ飛んでしまったのを見て「こりゃ薬が効きすぎた」と思って表現を修正してるだろ、とまあそういうお話な訳ですよ。なんだかねー。


・説明が明らかにトーンダウンしているので更問が飛ぶのでありました

次の質問は更問です。

『(問)二問関連して質問させて頂きます。講演で、先ほどの緩和のところの、現在の水準のくだりは講演の中で二回、現在の水準で金融緩和をしっかり続ける必要があると考えているのは当面、これ二回強調されていますが、この意図っていうのは、同じことを二度強調しているというのはやはり、前の質問にも関連するかもしれないですけど、9 月であったり 10 月は、緩和は取りあえずかなりしないのでないかというような、織り込むようなメッセージのようにもとらえられるのですが、その辺をどうとらえたらいいのかというのが一点目です。』

そら聞きますよね。

『もう一点は、前回の金融政策決定会合から 1 週間での今回、副総裁の講演、会見なのですが、市場の中で総裁と副総裁の意見が違って、これが結果的に市場とかのコミュニケーションに誤解を生むのではないかみたいな見方をしている人もいますが、その点について総裁と副総裁の考えは、意見は整合的なものなのかどうか、その辺の見解をお聞かせください。』

イイヨイイヨー。

でもって回答。

『(答)まず一点目ですね。二回書いたのは文章の流れ上、最初に書いて、それから詳しく敷衍するかたちでその後文章がつながっていますので、流れの中で全部説明しきった後にもう一度結論を書いたということですので、それ以上の他意はないですけれども、』

『結論部分になっている、あるいは「先取りすると」と結論を先に書いているという意味では強調していることは間違いありません。当然、皆さんもそこを見出しに取ったでしょうから、それは強調していると思って頂いて結構です。』

ほうほう強調していると。

『そのうえで、次回会合以降の話は、これは当然政策委員会で話すべき話であって、私が今どうだと申し上げるべきではないし、実際この後状況がどう変わるかにもよりますけれども、正直個人的にはですね、慎重に考えるべき状況にあるというふうには思っています。』

申し上げるべきじゃないのに何で申し上げてるんだこのデコスケという話ですが、個人的にはだったら最初に個人的にはと断れという話ではありますな。

『そのうえで、総裁とどうかという話については、一問目、二問目でしたっけ、にお答えしたことを繰り返すのがよいと思うのですけれども、総裁会見でもですね、当然ですけれども、「見通しに沿って展開していくのであれば」という条件をつけたうえでお話を申し上げているわけです。』

『いわゆる政策反応関数が条件付きであることは、9 人のボードメンバーが全員一致で決めていることですから、そこについての違いはないわけです。そのうえで、総裁会見より後の段階で、今回の市場の急激な変動が起きているわけですから、そのことをその政策反応[関数]に入れれば、当然のことながらより慎重に考える必要があるということが起きているということですので、総裁と私の間に考えの違いがあるということではなくて、状況が変化したということだとご理解頂ければと思います。』

市場の急激な変動に一々反応して状況が変化したと大騒ぎするのって中央銀行として如何なものかと思う訳ですけどね、リーマンショックとかコロナショックみたいなのがあって変化しているなら話は分かるけど、今回の変化って少なくとも円安修正はお前らの意図してた話だろという訳でございまして、もう酷いわという感じです。

以下色々と質疑応答が続いていますが、てめえの講演で円安にぶっ飛んだことを明らかに意識して、講演テキストで言っていたスーパーハトハトモードを明らかにコンディショナルモードに変化させた言い方をしていまして、まあ何ちゅう姑息なという感じなのですが、時間が無くなって来たのでこの辺で勘弁(必要なら続きやりますがまあ要らないような気もしますので)。


2024/08/08

〇コミュニケーションをまた崩壊させて度し難いアホウ以外の感想がないのだが(内田副総裁函館金懇)

という訳で金懇テキストですが

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2024/data/ko240807a1.pdf
最近の金融経済情勢と金融政策運営
── 函館市金融経済懇談会における挨拶 ──
日本銀行副総裁 内田 眞一


あとで引用するので英文ちゃんも(英文はあくまでもオマケ扱いで正本は日本語)
https://www.boj.or.jp/en/about/press/koen_2024/data/ko240807a1.pdf
Japan's Economy and Monetary Policy
Speech at a Meeting with Local Leaders in Hakodate
UCHIDA Shinichi
Deputy Governor of the Bank of Japan
(English translation based on the Japanese original)


・途中まではただの7月展望レポートのご紹介です

『1.はじめに』では

『日本銀行の内田でございます。本日は、道南地域の各界を代表する皆様とお話しする機会を賜り、誠にありがとうございます。皆様には、日頃から、函館支店の業務運営に多大なご協力を頂いております。この場をお借りしまして、改めて厚く御礼を申し上げます。意見交換に先立ちまして、まず私から、わが国の経済・物価情勢と、日本銀行の金融政策運営について、ご説明したいと思います。』

とあって、『2.経済情勢』に入るのですが、今回も

『図表1をご覧ください。はじめに、経済情勢です。わが国経済は、一部に弱めの動きもみられますが、緩やかに回復しています。振り返りますと、昨年前半にかけて、コロナ禍からの経済活動の正常化を受けて、高めの成長を続けました。その後、一部自動車メーカーの生産停止等もあって、いったん成長率はマイナスとなりましたが、景気の改善基調は続いています。先行きも、潜在成長率を上回る成長が続くと予想しています。』

『図表2をご覧ください。企業部門では、業況感は良好な水準を維持し、企業収益も既往ピーク水準にあります。そのもとで、短観の設備投資計画をみますと、昨年度は前年比+9.9%で着地し、今年度も+10%台の増加が計画されています。人手不足への対応などでソフトウェア投資が増加しているほか、研究開発投資を一段と積み増す動きが目立ちます。こうした将来を見据えた案件が引き続き投資を押し上げるほか、工事の人手不足などで先送りせざるを得なかった案件も積み上がっていますので、高水準の設備投資が続く可能性が高いと思います。』

という内田さんだけがこれをしているのですが、スピーチでしゃべる原稿というかカンペそのものを出してきています。

ちなみにこれは豆ですが、例えば先日の中村審議委員の札幌金懇では
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2024/data/ko240606a1.pdf
わが国の経済・物価情勢と金融政策
── 札幌市金融経済懇談会における挨拶要旨 ──

なんですけど、今回の内田さんの函館金懇は
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2024/data/ko240807a1.pdf
最近の金融経済情勢と金融政策運営
── 函館市金融経済懇談会における挨拶 ──

と「挨拶」であって「挨拶要旨」ではないので、もう完全にこれがカンペと化して読んでおりますって状況ですな。(中村さん以外の政策委員の金懇も日銀に出てくるのは「挨拶要旨」ですのでご確認あれ)

でもってこの辺のおしゃべり部分は7月展望レポートの趣旨に沿った話をしていますので、まあどうでもよい(と言っても最初から読んでいきましたので「ふーん」と流し読みしておったわけですがw)のであります。

まあ展望会合の後にやる総裁副総裁の講演類なので展望レポートに沿った説明をする、というのはこれはこれで平常運転なのでまあ平常運転ですなというところです。


・しかも物価の構造変化とか堂々と言ってるんですよね

でまあその説明の部分ですけど『3.物価情勢と労働市場の構造変化』を見ますと、

『次に、物価情勢についてお話しします。図表5をご覧ください。赤い線の生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、振れを伴いつつもプラス幅が緩やかに縮小しており、直近の6月で 2.6%となっています。内訳をみますと、水色の「食料品」や、青色の「その他の財」では、既往の輸入物価上昇に伴うコスト転嫁の影響が残っていますが、これが和らいでいく中で、緩やかにプラス寄与を縮小しています。』

からの、

『一方、ピンクの「サービス」も、プラス幅がやや縮小しているようにみえますが、内容面では、賃金上昇がサービス価格を緩やかに押し上げる構図が徐々に明確になってきています。』

とかいうのを思いっきり言ってて、

『図表6をご覧ください。こちらは、消費者物価の「サービス」を構成する個別の品目について、前年比でどれだけ価格が上昇したか、それぞれの上昇率ごとに集計したものです。』

でたなサービス価格。

『左のグラフ、昨年4月時点では、大きな山はゼロ%付近にありました。+10%のあたりにもう一つ山がありますが、これは外食など、原材料コスト上昇の影響を受けた品目であり、コストプッシュの一環でした。サービスのうちでも人件費の割合が高い品目の価格(濃い青色)は、ゼロ%付近に集中していました。』

『一方で、右のグラフの通り、最近(本年4月)では、この濃い青色を含めて、価格分布の山は、+2%を中心とする形になっています。』

とまあ説明に都合の良いものをホイホイと出してくるこの日銀クオリティという感じで、だったら最初からサービス価格に注目しています、といえば余計なもんみなくて済むんですが、ってなもんですが、この説明だって都合がいい時だけ出してくるのが日銀(あるいは内田副総裁)の三百代言クオリティと言って差し支えないものな訳ですな。

まあこうやってインフレ期待が変わったという話をしようとしておるわけでして、この辺りまでの説明って普通に「物価目標達成に向けてドンドン状況が良くなっています」って話ですわな。



・労働市場の話ではお前そんなこと言ってたっけという堂々の歴史改竄が行われていまして

さらに『(労働市場の構造変化)』でも流れるように説明をしていまして、三百代言おそるべしと言ったところなのですが、どさくさに紛れておっさん何言ってますねんというのがあってクソ笑いました。

本文5ページ(PDF6枚目)の冗談もとい上段のあたり。

『私自身は、この 10 年ほど、「日本経済に変革をもたらすドライビング・フォース(原動力)は、人手不足しかない」と言い続けてきました。』

・・・・・いやお前ら異次元緩和行ったときに言ってたのは「インフレ期待の引き上げ」だろうが何嘘八百言ってるんだというお話なのですが、わざと言ってるのかそれとも脳内ファンタジーで勝手に歴史が改ざんされているのか、という話になりますと、あくまでもワイの考察するところ、置物大師匠のような方の場合はファンタジー脳なので未だに自分のマネタリーベース直線一気理論が正しいとか、そもそも昔言ってた話をすっかり脳内で無かったことにしているとおもうのですが、内田副総裁の場合は自分でそんなこと言ってなかったのに後出しで言ってることくらい先刻ご承知の助でこういう事を堂々といってると想像されますのでおそロシアとしか申し上げようがないですね。

でまあそのコーナーですが、締めの部分が、

『もちろん、失業を生みにくいとはいえ、変革に摩擦はつきものです。また、個々の企業や個人、さらには、地域によって、受ける恩恵や影響は異なります。言葉を選ばずに言えば、これまで人手に余裕があったから可能であったサービスは、市場メカニズムの中では供給されなくなります。』

『昔は、都市部以外の地域でも駅を降りるとタクシーが待っていたが、今は呼んでもなかなか来ない、といった声がありますが、都市部の需給環境が変わり、お客さんが容易につかまるのであれば、当然の帰結です。』

『この先も人手は足りないことを前提に、地域の機能をどう維持していくのか、都市部と周辺部との関係をどう構築していくのか、市場メカニズムでは満たされないニーズをどう補完していくか、考えていく必要があると思います。皆さんの周りで起きている各種の変化は、この図表の水色の棒の帰結なのかもしれません。少なくとも、何もしなければ、元に戻ることはありません。』

元に戻ることはありません、と思いっきり構造変化が不可逆である、と言い切っていまして、まあこの前の金研国際フォーラムで「ディスタイムイズディファレント」って思いっきり言ってたのと同じ話をしておるわけです。


・・・・・とまあそういうことで、ここまでの部分を見ますと思いっきり「2%物価目標に向けた構造変化が起きているし、しかもその構造変化には不可逆の部分もあるのでこのまま定着ですよ」と全力で威勢の良いことを言っているんですな。ところが皆様ご案内の通り、


・利上げの説明を見ますと今まで前面に出していなかったことまで言っているという諸葛孔明の罠

『4.日本銀行の金融政策運営』ですが、最初の方は長期国債買入規模の減額計画の話、政策金利引き上げの話をこれまた今回の決定の説明通りにおこなっていますので、

『(短期政策金利の引き上げ)』の部分、途中から急に変なことを言い出す形になっていますので、最初から続けてみていきましょう。

『次に、短期の政策金利の引き上げについて、ご説明します。図表 13 をご覧ください。景気は、緩やかに回復しており、先行きも潜在成長率を上回る成長を続けると考えています。もとより、個人消費には、物価上昇の影響が表れていますし、1〜3月の成長率は自動車生産の影響もあってマイナスになるなど、弱い動きもみられています。そうしたこともあって、3月にマイナス金利政策を終了したのちも、短期の政策金利(赤い線)は、0〜0.1%という低い水準に設定していました。』

で、

『これは、現実の物価や物価の予想が上がっていることも考えますと、実質ベース(青い線)では、かなり低い水準で、極めて緩和的な状況です。経済や物価が見通しに沿って展開していくのであれば、それに応じて、この金融緩和の度合いを調整していくことが適切になります。』

と来まして、

『先週の金融政策決定会合では、今春の労使交渉の結果が賃金に反映されてきていることなど、前半でご説明したような経済・物価の状況は、見通しに沿って推移している、と判断しました。』

賃金が強かったし見通し通りにオントラックで推移しているから利上げした、と言ってさらにこの先の説明がかなりとんでもない話をしていまして、

『また、図表 14 をご覧ください。左のグラフの通り、2年以上にわたって物価が2%を上回っており、今年度の見通しでも上回ると予想されます。』

この部分って今まであんまり前面に出していなかった話なんですけど、

『このことは、わが国経済やここにおられる皆様の生活に直接影響を及ぼしており、政策判断において、重要な要素だと考えています。』

おwwwwwwいwwwwwwwwwww

今まで延々と2%を上回っている間「基調的物価ガー」とか言って実際の物価上昇の話を散々ネグっていたくせに利上げした瞬間にこれを言い出すとかお前ナメトンノカとしか言いようが無い訳ですよ。

『そうしたもとで、右のグラフにあります通り、一度は落ち着いていた輸入物価が、円安の影響などから再び上昇しています。』

ときまして、例の「為替円安が物価の上振れリスクになりかねないので利上げしました」という方の話になるのですけど、

『その消費者段階への影響については、企業の行動がデフレ期とは異なってきていることも踏まえて点検していく必要があります。』

というのは以下にありますが、

『デフレ期には、企業はコストが上がってもできるだけ価格に転嫁しないように行動したため、輸入コストの上昇が消費者段階に伝わる程度は緩やかでした。ここ数年は、輸入コストの上昇幅が大きかったこともあって、消費者段階の価格に転嫁されました。また、それが人手不足の中で賃金上昇につながり、基調的な物価上昇率を押し上げました。このように企業の賃金・価格設定行動が積極化していることを踏まえますと、為替の変動が物価に影響を及ぼす程度やスピードは高まっていると考えられます。』

構造変化によって輸入価格上昇が持続的なインフレ圧力になりやすくなった、とかいう説明をしていまして、

『2年前のように輸入物価が 50%上昇しているわけではありませんが、円安とそのもとでの輸入物価の上昇は、消費者物価を上振れさせるリスク要因です。』

とまあそんな状況だから利上げしました、という話な訳で、

『以上のように経済・物価見通しがオントラックであることを確認したうえで、リスクの観点からも、消費者物価が2年以上にわたって2%を上回って推移する中で、円安を受けて輸入物価が再び上昇に転じていることを踏まえて、0〜0.1%よりも 0.25%程度の金利水準の方が、よりリスクに中立的で、適切であると判断したということです。』

っていう話なので、まあつまりは足元の個人消費云々という話よりも、物価をめぐる構造変化が起きているなかで、物価をめぐるリスクバランスが以前のように隙あらば下振れの世界から大きく変わっている、という俯瞰的というか中長期的というか壮大なというか、かなり大きなビューのもとで利上げしました、って説明だし、今回の内田さんの説明って「アクチュアルな物価が2%を超えて長期間推移していること自体も望ましい事ではない」という趣旨の説明をしているので、何気に踏み込んでいる部分もあるんですよこれがまた。


・しかしこの威勢の良い話が怪しくなりましていきなりのジャガーチェンジである

とまあそんなこと書いてあるのに、上記文章って実はこの直後に

『もちろん、0.25%という水準は、名目金利としても、また特に実質ベースでみれば、極めて低い水準ですので、引き続き、極めて緩和的な金融環境によって、経済を支えていきます。』

と怪しい空気になって締められている辺りからちょっと様子がおかしくなるわけでして、その次の段落がご案内のように、

『先行きにつきましては、結論から申し上げますと、内外の金融資本市場の急激な変動がみられるもとで、当面、現在の水準で金融緩和をしっかりと続けていく必要があると考えています。』

>当面、現在の水準で金融緩和をしっかりと続けていく必要がある
>当面、現在の水準で金融緩和をしっかりと続けていく必要がある
>当面、現在の水準で金融緩和をしっかりと続けていく必要がある

・・・・・・・お前は何を言ってるだという話でして、その直前で散々「上振れリスクがあるので金融緩和の度合いを調整するのが適切だから調整した」って言ってるのに、その直後に「金融緩和を現水準でしっかり続ける必要がある」って支離滅裂にもほどがあるわけで豹変にあきれるしかありません。

英文の方ではこの部分、

『As for the future conduct of monetary policy, in a nutshell, I believe that the Bank needs to maintain monetary easing with the current policy interest rate for the time being, with developments in financial and capital markets at home and abroad being extremely volatile.』

ということで、フォーザタイムビーイングは政策金利いじりませんって言ってるわけでして、これは海外投資家とかいう単細胞生物から見たら「当分利上げをしない、と突如足元の相場を見て腰砕けになった」と思う、というかまあ国内も思うのだが、笑ってしまうのは「with developments in financial and capital markets at home and abroad being extremely volatile」って言ってるんだがそのエクストリームリーボラタイルなマーケットは誰が作ったんだよという話で、1週間前の説明を思いっきりひっくり返すような言い方をしているし、まあその前からもずっとそうですけど、政策運営にかかわる説明が足元の何かに過剰反応してハトかタカにブレブレメッセージを出してしまっているのはお前ら日銀だし、自分でボラ作っておいて「エクストリームリーボラタイル」とか何を言ってるんだという話で、控えめに申し上げましてもその場で腹掻っ捌いて津軽海峡に身投げしてこいとしか申し上げようがないこのクソ情報発信はひどすぎるとしか言いようがありませんな。

でもってこの続きですが、

『この点、展望レポートの中で、「金融政策運営については、先行きの経済・物価・金融情勢次第であるが、以上のような経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく」という考え方を示しました。』

と来まして、

『この考え方は、その前提「経済・物価の見通しが実現していくとすれば」という条件が付いています。』

三百代言キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

『そして、この点で、ここ 1 週間弱の株価・為替相場の大幅な変動が影響します。』

・・・・・・いやお前さあ、今回の政策変更について「足もとの消費動向とかよりも先行きのリスクバランスを考えた」ということで凄い俯瞰的かつ中長期的な話をしていたのに、いきなりたかが1週間の株式市場と為替市場に反応してるとかアホなのかと。

いやもちろんそのバックになんか戦争とか災厄とかあるのなら反応しても良いんですけど、今回面倒だから引用しなかった前半部分の本文2ページ(PDF3枚目)下から6行目に『私自身は、米国はソフトランディングする可能性が高いと思っています。』って言ってるわけで、そう思ってるなら益々こんなビビッドな反応をした講演をする必要があるのかという話ですよ。

しかも今回って「リスク対応」とは言ってるけどそこに円安による輸入物価上昇の影響がセカンドラウンドエフェクトを出して物価の上振れにつながるってロジックがあるんだから、円安が是正されたことに関してはリスクでも何でもなくて、むしろ望ましい方向に進んでいるので歓迎すべき話で、懸念も糞もあったもんじゃないでしょ、というお話な訳ですよね。

ということですから、これは「足もとの株安にビビりました」と降参宣言をしているのに等しい、とまあ普通はそのようにメッセージを読み取るわけでして、「日銀は株価が下がると本来行うべき金融政策を行わない」と解釈された日には、お前らは中央銀行としての責務を何だと思ってるんだという話で、かなりの重症レベルの中央銀行ということでして、これは亡きロバート・ムガベ大統領もニッコリという悲惨な低レベルの中央銀行ですよ、ってのをこともあろうに中央銀行プロパーの副総裁が言っているんですからこれはたちが悪いというか罪万死に値するレベルの説明な訳ですな。

そんなこと言わなくても「足もとでは米国でのやや過剰とも言える景気後退懸念の影響も含めて内外金融市場が大きく動いていますが、この状況については今後物価目標達成に向けた悪影響となるかどうかを時間をかけて注意深く分析していきたいと思います」程度でも早期追加利上げの牽制できるじゃろ、と思う訳でして、なんでお前らは一々タカでもハトでも強すぎる決め打ちトーンで説明をおっぱじめるのかという話でもあります。まあ端的に言ってお前らもう見てらんないから大蔵省日銀局に格下げされとけと。


・株価は重要って中銀が正面切っていうのは見識を疑う

でまあその説明をくどくどとしているのですが、

『金融資本市場では、最初にお話しした米国の景気減速懸念を契機に、世界的に急速なドル安の動きと株価の下落が生じています。特に円ドル相場は、これまで円安方向で大きなポジションが積み上がっていたことの巻き戻しがあり、変動幅が大きくなっています。また、わが国の株価は、円安の修正もあって、他国に比べても下落幅が大きくなっています。』

で?

『株価は、基本的には企業収益や経済の先行きの見通しを反映して形成されるものであり、この点、わが国企業の収益は歴史的な高水準にあります。これは単なる円安の恩恵といったものではなく、より本質的な収益力の強化によるものです。』

じゃあ問題ないじゃん、と思うjのですが、

『もちろん、株価の変動は、企業の投資行動や、資産効果などを通じた個人消費、ひいては経済・物価の見通しに影響するものであり、政策運営上重要な要素です。』

単に官邸とかいう木偶の坊に言われたから政策運営上重要なんでしょ、と言いたくなりますが、重要な要素って言い切るの流石にヤバくないかというお話で、これって1987年のブラマンの時に既に資産バブルの動きは始まっていたのに、ブラマンでビビって金融政策、経済政策(金融行政)の引き締めが完全に後手に回って取り返しがつくまで35年くらいかかっている壮大なバブル崩壊を巻き起こしたときから何も進歩していない説明にしか見えませんし、日銀って組織は反省という行為をしないのかと情けなくなるわけですな。

『また、為替相場の面では、円安が修正された結果、輸入物価を通じた物価上振れのリスクは、その分だけ小さくなりました。図表 14 の緑の線にあります通り、輸入物価の上昇は、契約通貨ベースではほぼゼロ%ですので、円ベースでの上昇は、ほぼこれまでの円安によるものです。この点で円安の修正は、政策運営に影響します。』

って言ってるのも間抜けな話で、その結果1週間前に言っていた「見通し通りに推移すれば淡々と政策調整を行う」を反故にしたらまた円安が進むし、現に昨日は148円台に乗った(結局147円近辺でしたっけ)りして早速円安が息を吹き返している訳で、馬鹿なのかとしか言いようが無い。


・挙句にこれである

でもってその次がご案内の通り、

『こうした市場の変動の結果として、見通しやその上下のリスク、見通しの確度が変われば、当然金利のパスは変わってきます。もともと、欧米の利上げプロセスとは異なり、わが国の場合、一定のペースで利上げをしないとビハインド・ザ・カーブに陥ってしまうような状況ではありません。したがって、金融資本市場が不安定な状況で、利上げをすることはありません。』

って話なのだが、そもそも為替円安で物価上振れリスクも意識して利上げしておいて、「ビハインド・ザ・カーブに陥ってしまうような状況ではありません」もあったもんか、ってなもんでして、まあこれ内田さん的には「欧米のようなペースで利上げしないとビハインドになるようなことはないといっただけで、ビハインドのリスクがないといったわけではない」という説明をすると思うのですが(会見はヘッドラインしか見てないからこの点誰か質問をしたかは知らんけど)、まあ普通にこの部分だって「ベタ降り」としか見えませんよね。

英文だと、

『If the outlook, the upside and downside risks to the outlook, or the likelihood of realizing the outlook change as a result of these market developments, the path of the policy interest rate will certainly change. In fact, in contrast to the process of policy interest rate hikes in Europe and the United States, Japan's economy is not in a situation where the Bank may fall behind the curve if it does not raise the policy interest rate at a certain pace. Therefore, the Bank will not raise its policy interest rate when financial and capital markets are unstable.』

なのですが、そもそも金融資本市場が不安定だから利上げしないってアホの極みで、市場なんて基本的にunstableな訳だし、(動かない市場は市場じゃないでしょ)中央銀行は通貨価値の安定のために必要なことをすべきなんだから、通貨価値安定のために金融引き締めが必要なら金融資本市場が不安定な時だって必要な政策をとらないといけない筈で、まあとにかくこれ切り取ってみれば不見識の極みな説明ばっかりしてるんですよね。

『先ほど申し上げた通り、私自身は、米国経済はソフトランディングする可能性が高いと考えていますし、わが国の株価が上昇してきた背景には企業の収益力の強化があると思っています。両国の経済のファンダメンタルズが大きく変わったとは思えませんので、米国の単月の指標に対する反応としては、大きすぎると思っています。』

じゃあこんな強い「ベタ降り」メッセージ出すなよ。

『もっとも、最近の内外の金融資本市場の動きは極めて急激ですので、その動向や経済・物価に与える影響について、極めて高い緊張感をもって注視し、政策運営において適切に対応してまいります。繰り返しになりますが、当面、現在の水準で金融緩和をしっかりと続ける必要があると考えています。』

現在の水準、が余計にもほどがあるわけで、見通し通りに推移したら実質金利のマイナスがまた深まるから利上げして調整するのは然るべき、と言ってた説明との整合性全然取れていないですよね、という話で、まあこれはひどすぎるコミュニケーションでして、ちょっとお前その場で腹かっさ(以下同文)


・なおこれでまた円安に飛んだりすると三百代言クオリティが炸裂するのは言うまでもありませんのでご注意を

上記の説明、まあメッセージは明らかに「ベタ降り」だし言ってることも中央銀行副総裁としての見識を疑うフレーズがちりばめられている、というとんでもない過去最悪に近いクソ講演なのですけれども、なんだかんだと変な留保条件はちょいちょい入れているのでして、為替に関しても「今は円安が修正されたので懸念した物価上振れリスクが後退した」と言っているだけなので、またぞろ為替が155円だとか言い出したらあっという間に再度のジャガーチェンジをすると思いますし、その時は「あの時点での為替と今の為替は違うんだから言う事が違って当たり前」位のことを平然と説明すると思います(だから最初に「イカサマジジイ」というのを入れたわけです)ので、まあ面白いからちょっと米国で強い経済指標がここからバンバンと出てきてドル円再度160円に向かっていくと滅茶苦茶笑えることになりそうなので(日本経済にとってはただの災厄だが)もう頭きたんでそっちでお願いしますわ、というところですな。


とまあそんな感じですか今回の金懇挨拶。



2024/06/04

〇内田副総裁の金研国際コンファランスの基調講演の中身の方をちょっと読んでみますとですな・・・・

あ、HTML版の本文がアップされていますね、ということで基本的にHTMLから引用します

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2024/ko240527b.htm
【講演】
わが国における過去25年間の物価変動
日本銀行金融研究所主催2024年国際コンファランスにおける基調講演の邦訳
日本銀行副総裁 内田 眞一
2024年5月27日

なおモノホンはこちらですがめんどいので基本日本語から、英文引用した場合(結局しませんでした笑)はこちらからです
https://www.boj.or.jp/en/about/press/koen_2024/ko240527b.htm
[Speech]
Price Dynamics in Japan over the Past 25 Years
Keynote Speech at the 2024 BOJ-IMES Conference Hosted by the Institute for Monetary and Economic Studies, Bank of Japan
UCHIDA Shinichi
Deputy Governor of the Bank of Japan
May 27, 2024

とりあえずこの前は冒頭と最後の例の「This time is different」のところだけ読んで「これは植田総裁の冒頭挨拶を思いっきり粉砕に掛かっている鬼講演」という感想を述べさせていただきましたが、あの日の債券市場の反応に関しても植田さんのあいさつでは碌すっぽ反応しなかったくせに内田さんのこの講演出た(のは昼休み)後の後場寄りから債券市場華麗に下落した、という植田さんにとっては無慈悲な反応を示していたのはご案内の通り。

でもって目先の市場というか目先の金融政策修正おかわりに関してはあの講演って最初と最後だけ見てりゃ無問題なのですが、もうちょっと金融政策のロジックについて考える場合は中身も読んでおかないと、ということで時間たってしまいましたが中身の方を鑑賞の巻です。


・原因の原因に言及しないとか途中の政策で「ほかにやりようがあったのか」を言及しないのですね

『2.日本のデフレの原因』って見出しの部分ですけどね。

『資産バブルの崩壊と慢性的な需要不足』ってのが最初の小見出しでして、

『そのためには、まず、1990年代にまでさかのぼって、日本のデフレの原因を探ってみる必要があります。デフレが生じた背景として、実体経済面では、日本経済が、「成長トレンドの低下」と「慢性的な需要不足」という2つの事象を経験した点が挙げられます(図表2)。』

からの、

『そうなった原因は複合的なものですが、最も重要な要因は、1990年代初頭の資産バブルの崩壊だと考えられます。』

というのには全く異論はないのですが、この先って

『バブル崩壊後、金融システムの混乱や、企業部門における痛みを伴うバランス・シート調整のプロセスが生じました。企業は、過剰設備、過剰雇用、過剰債務への対応を余儀なくされました。こうしたもとで、企業は、次第にリスクテイクに慎重になり、新興国の台頭に伴うグローバル化の潮流に対応して、自らの事業展開を迅速に変化させることができませんでした。貯蓄投資バランスをみると、企業部門はこの頃から貯蓄超過に転じました(図表3左パネル)。また、企業は限られた資金の大半を海外投資に振り向けました(図表3中央パネル)。この結果、国内資本ストックの蓄積および労働生産性の上昇率が低下し、潜在成長率が下がりました(図表3右パネル)。』

ってサラサラと説明しているのですが、そもそもバブル崩壊がなぜ起きたかといえばバブルをじゃんじゃん発生拡大させたその前のマクロ政策の行きすぎが問題なのですから、それって資産価格は上がるわおまけに物価まで上がっているのに短期政策金利をゼロ近辺に維持して、財政は垂れ流しという政策を依然として続けている今にだって話が通じる可能性大ありなのに、そこは完全にスルーするのがお茶目ですね。

でまあこの中にISバランスの話がありますが、これとて「企業が貯蓄超過に転じました」なのですけれども、その反対側で財政をバカスカ打っていた訳でして、それが企業の貯蓄超過にマクロ的にはつながっている話でありまして、そう考えると当時財政をバカスカと打ちまくって居たのが本当に適切だったのか(=と書くと財政出すなと言ってるのかとツッコミをされそうなので言っておくと「出すにしてもやりようがあったのでは」という意味ね)というお話になるわけですよ。

この講演もそうなんですけど、多角化レビューのこの前のワークショップでのスタッフ報告の紙芝居でもそうなんですけど、今回って金研国際コンファランスではありますが、内田さんの基調講演のお題が「過去25年」ってなっているから多角化レビューの一環のとりまとめみたいな感じのするお話になっているんですけど、読んでて非常に気になるのは、(1)現象面の説明はしているのですがその間の政策対応に関しての詳細な評価がない、(2)そもそも原因についての考察を敢えてしていないし、人口動態などのいうなれば対処不能な話をメインに持ってきている、(3)1番と同じちゃあ同じですけど、金融政策運営に関しての説明が雑で、本来はツールキットごとに、そのプロコン評価をすべきところを多角化レビューWSでの紙芝居では「非伝統的金融政策」、今回の内田さんの基調講演では「高圧経済アプローチ」で一緒くたにしているというかなり雑なくくり方をしている、というのが気になるわけですよ。

つまりですね、非伝統的政策ったってフォワードガイダンスあり大規模資産買入あり、資産買入の中にも長期国債の他の物の買入あり、加えてマイナス金利があって、長期金利ペッグ政策もあったわけで、この中のツールキットの中でプロコン考えたら結果的に見たら本来やる必要がなかったんじゃないのか、という政策があるはず(まあマイナス金利と長期金利ペッグと満期のないリスク性金融商品の買入ですけどね)なのですが、そういう検討を一切したくありません、という気概が多角化レビューでも満艦飾だったのですが、内田さんのこの講演も物価の話がメインとはいえ、政策に関して「高圧経済アプローチ」(後で出てきます)で一緒くたにして政策ツールの評価をしない、ってのが日銀大丈夫かというか、これ将来に禍根を残す(効いたことにされてまたマイナス金利だの長期金利ペッグだのやられたらたまらんわ、ということですな)んじゃなかろうか、と心配するところではあります。

『こうした中、自然利子率(r*)は、他国対比で、より早くかつより大きく低下しました。よく知られているとおり、r*を計測することは容易ではなく、足元の推計値も、モデルによって、-1.0%から+0.5%の範囲でばらついています(図表4)。ただ、いずれにしても、わが国のr*は低く、かつ、趨勢的に低下してきたことは確かです。そうでなければ、この20〜30年間に起きた事象を説明することはできません。』

まあ自然利子率の話は話として面白いのと、政策先にありきの後付け屁理屈に強力な効果を発揮するという便利な道具でありまして、国際コンファランスで学者相手だからまあこの自然利子率の話はしてくるかなと思えばやはりしておりました。


・労働市場の構造で説明するのはなんかそれ妖刀っぽい理屈ですよね

次の小見出しが『人口減少・高齢化と自然利子率の低下』でして、

『バブル崩壊に加え、人口減少・高齢化もr*の低下に影響した可能性があります。人口動態がr*に及ぼす影響は理論的にも単純ではありません。r*は、一人当たりGDP成長率に関連付けられることが多いですが、労働投入の変化と経済規模の変化が同じペースであれば、人口減少がr*を低下させるわけでは必ずしもないはずです。もっとも、従属人口比率が上昇すれば、一人当たりGDP成長率は低下することになります(図表5)。』

ということで少子高齢化が自然利子率の押し下げに寄与した、という話をして構造問題に持って行っているのですけれども、だったらお前ら2013年に「物価はいついかなる時も貨幣的現象だから金融政策で2%の物価安定目標を達成するのは世界標準の金融政策」とか言ってたのは何だったのかと小一時間問い詰めたい訳です。

『この従属人口比率の問題に対する解決策は明らかで、長く働けるようにすることです。この点、シニア層は昔よりもはるかに健康であるわけですが、2010年代に入るまで、このことは一般的にならず、シニア層の労働参加率は、2012年頃になって、ようやく上昇し始めました(図表6)。その時期、QQEやその他の政策による積極的な経済刺激のもとで、わが国は、バブル崩壊後初めて、人手不足を経験するに至りました。つまり、それ以前は、企業がシニア層の労働力に頼る必要が必ずしもなかったということです。』

って説明しているんですけど、単純に「働かないと生活厳しい高齢者が増えただけ」とかそういう可能性はないのかと思う訳でして、高齢者の労働参加率が趨勢的に増えているのを「金融緩和などの政策による経済刺激によるもの」って単純化して良いんですかねえ、と申し上げたいわけで、この説明も全然ロバストには見えない。(図表6というのは最初のHTMLのところにある図表のPDFへのリンク踏んで見に行ってください)

『ご存じのとおり、日本は高齢化が最も進んだ国の1つです。2019年に日本がG20の議長国を務めた際にも、「高齢化」は優先的な検討事項の1つでした。出席者たちが様々な角度から議論してたどり着いたのは、当然とも言える結論ですが、高齢化の影響は複雑だ、ということでした。シニア層がライフサイクルに応じて貯蓄を取り崩すのであれば、r*は上昇するはずですが、一方で、人々がいわゆる長生きのリスクを強く意識する場合には、若いうちからより貯蓄し、老後も取崩しペースを抑えることになります。私は、人口減少・高齢化自体が問題であると言いたいわけではありません。むしろ、人口減少・高齢化に起因する問題に対して、社会がうまく対応できなかった、あるいは、対応が緩慢であったようにうかがえる、ということです。』

とこのように滔々と説明しているのですが、これって「物価は常に貨幣的現象だから以下同文」と言って「期待に直接働きかけるためにその裏付けとなる異次元の金融緩和を行う」と称してQQEをおっぱじめたことと全然違う話をしている訳でして、いや今更何をゆうてますねんという感じなのですが、

『わが国では、人口問題はネガティブな意味合いで議論されることが多いように思います。企業は、需要サイドに注目して、国内市場の縮小を心配する傾向が強かったですが、一方で、人口減少は労働力の減少も意味します。もっとも、こうした労働供給サイドの含意は、デフレ期には、あまり意識されてきませんでした。これは、企業にとっては、ある意味当然のことで、自社の雇用を過剰だと考えていたからです(図表7青地部分)。この点については、後ほど触れたいと思いますが、ここでは、労働市場が鍵であるとだけ、申し上げておきます。』

ということで「労働市場が鍵」ということで「ワシらのせいじゃないもんね」という話をしている訳で、いまさら何を言い出しておりますのやら、という話ではありますな。


・高圧経済アプローチにマイナス金利だの長期金利ペッグが必要だったのかという点は丸無視ですかそうですか

でまあこの先いろいろとあるのですが時間が無くなってきましたのでかっ飛ばしまして、いきなり『4.デフレ的な状況からの脱出』にワープしますね。

『こうした状況から抜け出すためには、2つのことが必要でした。第1に、デフレのそもそもの原因、すなわち、需要不足とその結果として生じた過剰な労働供給という問題を解決しなければなりません。第2に、メニュー・コストの閾値を超えること、より根本的には、デフレ的なノルムを克服しなければなりません。』

相変わらず「メニューコスト」を一般的な経済学での使い方と違う使い方しているの何なんでしょと思うのですがその辺はかっ飛ばした部分にありますので興味のある方はご覧あれ。

『前者に関しては、QQEやその他の緩和的な金融政策手段が、政府による様々な施策と相まって、経済に強力な刺激効果をもたらし、女性やシニア層を中心に500万人以上の新規雇用を創出しました(図表20)。これらは、基本的には、高圧経済の戦略です。』

でた高圧経済。

『図表21が示す通り、QQEの時期の労働市場では、雇用者報酬の前年比が概ね2〜3%で安定的に推移していました。その内訳をみると、感染症拡大前までは、雇用者数の伸び(青棒グラフ)がけん引するかたちでしたが、その後は、女性やシニア層による追加的な労働供給の余地が限られるもとで、賃金の上昇(白棒グラフ)がけん引するかたちに変わりました。このように、感染症拡大以降、労働市場の構造は変化したと考えられ、この先も賃金は上昇していくとみています。』

というのは良いんですが、この説明って結構雑な話でして、じゃあ裏を返せば少子高齢化が継続していないとデフレに戻ってしまうんでしょうか、ってなもんでして、労働市場の構造が変化したからデフレ脱却という説明は、少子高齢化人口減少を是認しているって言われかねない妖刀の理屈なんですよね。

でもってこの次がまたアレでして、

『また、このことは、裏を返せば、2013年にQQEを始めたときには、日本経済にはまだ大きなスラックが残っていたことを意味します。』

は??

『その当時は、女性やシニア層からこれほどの規模の追加的な労働力が供給されることは、予想されていませんでした。』

おいこらちょっと待て何今更後出しじゃんけんで「僕悪くないもん」になるんだよ。

『もちろん、この事実は、わが国の人口動態についての課題に対処するうえでは、好ましいことです。また、別のタイプのスラック、いわば隠れたスラックとして、顧客に対する過剰なサービスを、企業が無償で提供していたということも挙げられます。これは、個々の企業に雇用面の余剰があってこそ可能になったことです。日本銀行は、10年間にわたって経済に高圧をかけ、ようやくこうしたスラックはなくなっていきました。』

何ちゅう屁理屈という感じですし、そもそも「高圧経済アプローチ」が正しかったとしても、それはQQEやらマイナス金利やら長期金利ペッグやらを行ったことに対して費用対効果を考えたときに正しかったかという設問の回答にはなっていない訳で、通常の低金利政策の長期化(と何なら長期国債の多めの買入)でよかったんじゃないか、という話を丸無視しているんですよねこれ。

それってこの前の多角レビューのWSでの日銀スタッフ紙芝居でもそういうのがあって、「非伝統的緩和」ですべての政策を一緒くたにして効果があった、って説明になっていて、何のための多角化レビューやってるんだよと小一時間問い詰めたいしょうもない紙芝居出しやがってコノヤローと思ったわけですが、この内田さんの説明も政策ツールのプロコン分析を全然しないで「高圧経済アプローチを10年(ふつうそんなに掛からんので高圧経済じゃなくて単に人口減少と一段の少子高齢化による構造変化が効いただけではないでしょうかねえ)かけてスラック解消」とかいう屁理屈も根っこは同じでして、この雑なレビュー何とかしてくださいってなもんです。

まあそんなわけで、これ結局のところ黒田緩和の問題点を指摘する気がない、って話につながる(それこそ今の円安は長期金利ペッグが出口になって起こす弊害なのにそれを絶対言おうとしないのが今の日銀)のですからして、そこがベースにあるとお前ら正常化プロセス大丈夫かってのと、どこかで通貨安爆発しないかってのが不安になって来ますな、というのがこの内田講演のもう一つの含意だと思いましたがどうでしょうかしら。

ということで本日はここで勘弁。


2024/05/28

〇内田副総裁のキーノートスピーチが思いっきり植田さんの逆のトーンで見事な公開処刑を実施しているというおそロシア

本ちゃんはこちら
https://www.boj.or.jp/en/about/press/koen_2024/data/ko240527b1.pdf
Price Dynamics in Japan over the Past 25 Years
Keynote Speech at the 2024 BOJ-IMES Conference
Hosted by the Institute for Monetary and Economic Studies, Bank of Japan

UCHIDA Shinichi
Deputy Governor of the Bank of Japan

だが引き続き手抜きで邦訳で参りますサーセン(一応先に英文読んだんですよアタクシも!!!と見栄を張る)
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2024/data/ko240527b1.pdf
わが国における過去25年間の物価変動
「日本銀行金融研究所主催2024年国際コンファランス」における基調講演の邦訳
日本銀行副総裁 内田 眞一


・「今回の変化は構造変化」と言ってるわけでもうその時点でやる気満々

今回の内田さんの講演、邦訳見てもちゃんと最初に出した問題提起を最後に回収する、という綺麗な構成になっておりまして、相当練って作ってるなというのが分かるのですけどね。つまり最初の章『1.はじめに』の最後が、

『大きな論点は、現在の物価を巡る動向の変化が、不可逆的なデフレからの構造変化を意味するのか、あるいは、単に世界的なインフレによってもたらされた一時的な現象にすぎないのか、ということです。本講演では、この重要な問いに対し、私なりにお答えしてみようと思います。このことは、日本銀行の金融政策運営の先行きのみならず、日本経済の将来にとっても示唆を与えるものであると考えます。』

ということで講演をおっぱじめまして、最後の最後が『5.まとめと今後の展望』になるんですけど、その後半部分が結論な訳ですよ。本文10ページ、PDFの11枚目になります。

『それでは、今日の基調講演の冒頭で、私自身が提起した問い、すなわち、わが国で現在みられている傾向は不可逆的なものなのか、にお答えしたいと思います。』

『すでに述べたとおり、これまでの状況を変えるためには、2つのことが必要です。デフレのそもそもの原因を解消することと、デフレ的なノルムを克服すること、です。』

でもって、

『1点目については、自信を持って「イエス」と答えられます。労働市場の環境が構造的かつ不可逆的に変わったためです。』

ほほう。しかしこれって労働市場ガーってのを言い訳にしますと過去の日銀が頑張っても構造的に無理があったので無理でした、という過去ダメだった件に関する巧妙な言い訳にもなっているというのが流石としか言いようのない日銀屁理屈クオリティでして、いやそれわかってたんだったらなんで金融緩和一本足打法をしようとしてたんだよアホなのかと言いたくなりますわな。

『この先、女性やシニア層から多くの追加的な労働投入を期待することには無理があります。』

ちょwwwwワイ何歳まで働かなけりゃなりませんのん。

『日本の女性の労働参加率は、米国の労働参加率を超えています。もっとも、正確に言えば、女性がフルタイムでより長い時間働けるようにすることや、企業が人手維持のため定年延長することなど、まだ労働供給の余地は残されています。これらの取組みは、適切かつ必要なものですが、今回お示しした大きな姿を変えるほどの規模で行うことは難しいと思います。』

難しいんでしたら会社に入ったころに夢見てた55だか60歳になったら夢の年金ジジイ生活を見せていただきたいのですが、蜃気楼のように遠ざかるわ年金は(書いてて泣きそうになったので以下略)

と、思わず愚痴になってしまいましたがw要するに労働需給の構造は不可逆的に「労働供給不足構造」に転換した、ということでして、労働需給面から賃金が上がらんという世界には戻らんというお話のようです。


『2点目の、デフレ的なノルムの克服については、答えはそこまで明白ではありません。』

ほうほうほう。

『世界的なインフレがもたらしたコスト・プッシュ圧力が減衰しても、企業は現在の価格設定行動を続けるでしょうか?その鍵は、やはり労働市場です。』

ちょwwwwwwwwwwwwwwwwwなんでも労働市場なのかよ

『労働市場の構造変化が持続する限り、企業は、働く従業員を保持し、惹きつけるために、充分な利益と賃金を生み出すビジネス・モデルを構築しなければなりません。』

『価格設定戦略においても、企業は、労働コストに変化があれば、需要への影響も考えながら、メニュー表を速やかに書き直す必要が生じます。』

何ちゅうか巧妙な話のもって行き方に騙されている気がせんでもないが字面をパッと見すると説得力があるのが諸葛孔明の罠。

『「社会的なノルム」は解消に向かっています。この動き、そして長らく待ちわびた構造変化をもたらしている主な推進力は、人手不足です。』

全部それかよ!!!っていうかじゃあ人手不足社会じゃない他国でなんでインフレ2%だったのかと考えるとなんかこの説明も怪しさを感じますが、確かに現実的な意味では言ってることがご尤もに聞こえてしまうのがさすが内田さんとしか言いようが無い(良くも悪くもw)。

『人手不足は、個々の企業の変革と経済全体のダイナミズムをもたらすでしょう。そして、人手不足による変革のプロセスは、失業の増加につながる可能性が相対的には低いことから、他のプロセスと比較して、より低いコストで移行が進むと考えられます。』

ということで、まあ微妙に妖刀の香りが漂いますがまあそういう説明になっていまして、これが回答な訳ですよね。つまり・・・・・・・


・「ゼロ金利制約との戦い」も終焉が見ているということは利上げする気満々だし何なら50まではホイホイ上げるでしょこりゃ

でもってこの次。

『この 10 年間、QQE や YCC およびマイナス金利政策のもとでの経験を経て、日本銀行は、今年3月に、これらの一連の非伝統的な政策手段がその役割を果たしたと判断して、短期政策金利の操作を通じて2%の物価安定の目標を目指す伝統的な金融政策の枠組みに戻りました。』

『このことは、ゼロ金利制約を克服したことを意味します。引き続き、インフレ予想を2%にアンカーしていくという大きな課題は残っていますが、デフレとゼロ金利制約との闘いの終焉は視野に入りました。』

マイナスをゼロにしただけなのに「ゼロ金利制約を克服」ってこりゃまたエライ大きく出ていますが、これはすなわちゼロから利上げも視野に入っているから「デフレとゼロ金利制約との闘いの終焉は視野に入りました」と言ってるわけでして、結局はさらに金利をあげないと、というか一般的に50までは上げないと(本来なら100だけど)ゼロ金利制約は残るわけで、まあこれは普通に正常化やる気満々と。


・敢えて死亡フラグとして名高い「This time is different」を使う理由とは????

『最後に、この言葉で締め括りたいと思います。「今回こそはこれまでと違う(This time is different)」。』

で終わるわけで、これ本ちゃんですと、

『So, I would like to conclude my speech with this phrase: “This time is different.”』

な訳ですけど、当然内田さんのことですからこの「This time is different」って死亡フラグの典型ワードで、普通はこれを大真面目に使うのではなく、一種の皮肉だったり、茶化し系のギャグだったりで使うもんだとアタクシなんぞは思う訳ですが、それ以外の使い方としては「死亡フラグをわざわざいう位自信満々だぞ」とマジなんだか空元気なんだかはさておきアピールするにも有効な言葉ではありますわなこの「This time is different」は。

でですね、まあ内田さんのことですから当然先刻そのようなことは全部合点承知の助でこの「This time is different」というキャッチー面白ワードをぶっこんでいる訳でして、まあ今回は「それほどまでに自信満々ということにしておりますので政策の修正は近いぜよ」というメッセージであるだろうな、と解釈するわけですなアタクシとしては。

そしてさらにこっちの方がやばいのですが、これって朝一の植田さんのハトハトオープニングリマークから見たら水と油くらいに親和性のないトーンな訳でして、あえてこれをぶっこんでくるというのはどういうことかと考えますと、朝一の植田さんの講演でうっかりハトハトからの円安にでもなられたら困るから内田さんがこういうある意味末代までの語り草にされてしまうリスクを背負ってでも「This time is different」をぶっこんで、植田さんのハトハトを中和、といえば綺麗ですが、こんなんどう見ても植田さん公開処刑だろということでして・・・・・・・・・・・・