田村直樹 審議委員
トップページに戻る
審議委員一覧に戻る
田村さんの略歴(日銀Webより)
昭和59年3月 京都大学法学部卒業
昭和59年4月 (株)住友銀行入行
平成24年4月 (株)三井住友銀行 執行役員 投融資企画部長 (株)三井住友フィナンシャルグループ
リスク統括部 部付部長
平成29年4月 (株)三井住友銀行 常務執行役員 リテール部門副責任役員 (株)三井住友フィナンシャルグループ
常務執行役員 リテール事業部門副事業部門長
平成27年10月 (株)三井住友銀行 常務執行役員 広報部、経営企画部、関連事業部副担当役員
平成29年4月 (株)三井住友銀行 常務執行役員 リテール部門副責任役員 (株)三井住友フィナンシャルグループ
常務執行役員 リテール事業部門副事業部門長
平成30年4月 (株)三井住友銀行 専務執行役員 リテール部門統括責任役員 (株)三井住友フィナンシャルグループ
執行役専務 リテール事業部門長
令和4年7月24日 日本銀行政策委員会審議委員
(前職:三井住友銀行専務執行役員、三井住友FG執行役専務)
詳しくはこちら→https://www.boj.or.jp/about/organization/policyboard/bm_tamura.htm
2024/09/17「田村委員の金懇会見はトーンは穏当だが言ってることは真っ当だしそこそこ抜刀しています」
2024/09/13「田村委員の金懇は基本的に通常運転すが今日銀に必要なのはこのような真っ当な説明」
2024/09/17
〇田村審議委員金懇会見は穏当な中にも抜刀モードありということで
順序というのがあるから仕方ないのですが、本来読む意味のある田村さんの金懇会見ネタを本来は書くべきでして、まあさっきのポンポコリンとかどうでもよかったんですよねすいませんすいません。
https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2024/kk240913a.pdf
田村審議委員記者会見
――2024年9月12日(木)午後2時30分から約35分
於 岡山市
しかしまあこの会見、1%ってのに皆さん見事に釣られていましてその話ばっかりなのが何とも
という感じですが・・・・・・・
・うーんなんじゃこの質問
幹事社の質問の後の先頭打者がいきなり凡ゴロを打つのはいただけません。
『(問)二点お願いしたいんですけれども、一点目については、講演の中で市場の利上げのペースについて織り込みがちょっと遅いので、このペースだとなかなか中立金利を1%まで引き上げるのは難しいのではというご趣旨だと思うんですが、』
えーっとすいません、市場の織り込み通りに政策金利を上げ下げしないといけないという法はどこにもないのですが、何で市場の利上げ織り込みが日銀のメインシナリオ対比足りないからそっちに合わせなきゃいけないんですか??
『そうなると、次の利上げ、再利上げのタイミングは、年内あるいは年度内の可能性もあり得るのかについて伺いたいのが一点目です。(後半割愛)』
これ田村さんが言いたいのは「日銀のメインで言っている説明をそのまま真に受ければ、見通し期間の後半のどこかでは物価安定目標が達成されているから、そのあたりで政策金利は少なくとも中立金利と思われるレンジの下限くらいには来ている筈なんだが、市場の織り込みは全然足りませんねえ」って話でしょ。
『(答)まず、最初の年内あるいは年度内に次の利上げがあるのかという点につきましては、先行きの金利のパスや金融緩和の度合いを調整するペースについては、今後の経済・物価・金融情勢次第であり、予断は持っていませんが、欧米とは異なり、ゆっくりとしたペースになる可能性が高いというふうに私としては思っています。(後半割愛)
』
ということで質問に対して全然正面から回答していないんですけど、まあ質問が間抜けなのでそう返すしかない、ってのと、今回田村さん講演テキストの方ではいつもの抜刀斎、と言っても言ってることは別に過激派でも何でもなくてただの正論なのですが、その話をしているので、それ以上威勢の良い事言わなくてもエエンチャウノ的な感じはこの「ゆっくりとしたペース」って辺りに出ているな、と思いますな。
・1%にホイホイと引っかかる皆様
ちなみにこの凡ゴロヒッターの後半の質問もなんかピントがずれていて残念。
『(問)(前半割愛)二点目は、展望レポートの見通し期間の後半に、1%まで短期金利を引き上げるべきではないかということをおっしゃっていると思うんですけれども、この具体的な時期をもう少しイメージがもしおありであれば、と思います。例えば、見通し期間の後半といっても、2025
年度の後半から 2026 年度までとかなり長いので、いつ頃までにこの 1%に到達すべきなのかっていうのがもしイメージがあればお願いします。
』
そんな先のことはなってみないとわかりませんが金懇挨拶でご説明した通りで、物価安定目標が達成できている状態で大幅な金融緩和状態になっているのは物価の望ましくない上振れを引き起こすリスクがあるからそれじゃいかんでしょ、ということに尽きますが何か??ってなもんですがそんなファンキーな物の言い方をすると以下同文w
『(答) (前半割愛)二つ目のご質問の展望レポート[の見通し期間の]後半、1
年半の間の具体的にどこかというご質問についてですけれども、これについても基本的には、今後の経済・物価・金融情勢次第だというふうに考えております。そういった情勢をみながら、判断していくということになります。』
会見って総裁会見みたいに長丁場だとまた別ですけど、金懇会見の場合そんなに尺が無いので、先頭打者が凡打で倒れるとその後も凡打が続く傾向があって、まあ先頭打者におかれましては死ぬ気で出塁していただきたいものです。
・田村さんが今後注視する点が3つありましたよ
2番打者も思いっきり1%に引っかかっていましたが後半のこれは良かったですね。
『(問) (前半割愛)二点目としましては、7 月、経済・物価情勢はオントラックだというふうにおっしゃっていましたが、7
月時点と比べた現時点での評価と、今後、先行き注視する指標について教えてください。
』
これはまあ良いですよね。田村さんの回答ですが、
『(答) (前半割愛)二つ目のご質問の 7 月時点と比べてどうかという点ですが、7
月会合後に公表されたGDP統計や、消費、賃金、マインド関連の指標なども経済活動が緩やかな改善を続け、賃金・物価も改善している姿を示しています。』
はい。
『こうした状況を踏まえますと、7 月決定会合当時にみていた通りにオントラックで推移していると、1
か月だけですけれども、オントラックで推移しているというふうに考えております。』
ですね。
『もう一つの今後注視する指標についてですけれども、基本的にあらゆる指標を丹念に精査することに加えて、企業ヒアリング結果などの様々な情報も含めて、経済・物価の現状と見通しをタイムリーにとらえていくことが重要だと考えています。そういう意味では、どれか単純にこの指標がこうなったらというようなことは考えていませんが、あえて私が特に注目している事項を挙げれば、一つがわが国の物価の推移と見通し、二つが来年度春闘に向けたモメンタムがどうなっていくか、三つ目が米国をはじめとした海外経済の状況、こういった点が、現在、私の中では注目点です。
』
ほほう。
・金融市場が不安定云々に関する質疑だが田村さんの回答が(当たり前の話ではあるが)極めて秀逸
『(問)午前中の講演の中で 8 月の株価の変動について、その背景にアメリカの景気後退懸念があったと言及されてますけれども、アメリカではこの後、利下げ局面となって11
月には大統領選挙も控えているかと思います。市場が不安定になるリスクが高まる中で日銀として追加利上げに踏み切れるのか、お考えをお願いします。また、今現在ですね、市場の動きは不安定だという認識でいらっしゃるかも伺えますでしょうか。
』
市場の動きは不安定か、というのを一々聞かれる(高田さんも中川さんも聞かれていて中川さんはさきほど引用したようにビビりんちょの回答をしている訳ですが)、というのが内田副総裁金懇講演でのベタ降り講演の大いなる弊害で、これって質問されるたびに「日銀は市場従属」っていう認識が強くなってしまうという最低最悪の弊害が現在進行形で起きてるんですよね。
でもって田村さんの回答ですが、
『(答)まず一つ目の点についてですけれども、そもそも市場は上下に変動するものでして、時には行き過ぎることもあるというふうに考えています。』
いやー素晴らしい!感動した!!
・・・・・というかですね、中央銀行の政策運営を担う人としてはこう言うのが当たり前でして、さきほど引用した某中川さんのビビりんちょがアレという話ではありますが、次が実に素晴らしい、というかセントラルバンカーとして当たり前の発言なんですけど、
『市場の安定だけを優先し過ぎる場合は、経済・物価に応じた適切な金融政策を取れなくなってしまう懸念がありますし、また、経済・物価情勢と市場との間の歪み、ギャップを拡大させてしまうリスクもあると考えています。』
まったくもってその通りで、この点からも内田副総裁の金懇挨拶での言及は中央銀行の副総裁としての見識はどうなっているんだというか、これが置物辺りが言ってるならまあ置物かしょうがねえなとなるのですが、日銀プロパーの副総裁がああ言ってしまうのって、日銀全体が組織として別にセントラルバンカーとしての理念を持ち合わせていないんじゃないのって話に通じてしまうからさらによろしくない訳で、内田さんに置かれましては、少なくとも田村さんのこの発言をリファーするなりして市場従属宣言を上書きした方がエエンチャウのと思います。
まあ抜刀斎の抜刀来ましたという所ですが以下続きまして、
『また、やや長い目でみた場合には、市場はファンダメンタルズに沿った水準に落ち着いていくものだと考えています。ただし、大幅な急変動は望ましくなく、過度に市場がフラジャイルな状況にあるときには、冷却期間を置くことが必要なケースもあるというふうに考えています。』
『今先ほど申し上げたのが基本的な考え方ということで、あとは米国経済がどういう推移になっていくのか、それが日本の経済・物価にどういう影響を与えるのか、というのをしっかりとみていく必要があると考えています。』
『基本的に市場は日々変動するものですが、この金融資本市場の動向や経済・物価に与える影響については、引き続き丁寧に目を配ってまいりたいというふうに考えています。』
こちら「丁寧に目を配ってまいりたいというふうに考えています。」がどうしてもヘッドラインになりやすい(実際そうでした)のですが、文脈を見ていきますと別に市場従属でも何でもないんですよね。ただまああんまり今回は会見での抜刀はしていないな、という位でして。
・ひたすら1%に引っかかっている質疑ばっかりで残念ですが代表的なのを
この質問、後半はまあ良いのでこの続きに入れますが1%云々は延々とこの質疑ばっかりで、聞く方もなんかもうちょっと別の質問しろよ(この方は別の質問を後半に入れているのでまだマシである)と思いました、まる。
『(問)二点お願いします。一問目ですが、先ほどから出ている 26 年度の短期金利
1%の件ですが、これ少なくともというふうに表記してあるんですが、もし物価の上振れリスクなどが高まれば、更に上がるという理解でいいのか、もし分かればどの程度をイメージされているのかを教えてください。
(後半割愛、というか次で)』
何度もこの質疑が繰り返されていてさすがに如何なものかと思いました。
『(答)物価の上振れリスクがあると、1%よりもっと上がるのか。まず 1%なのかどうかは実際に金利を上げながら、経済・物価の反応をみていって、適切な水準を探っていくということです。』
という回答を何度も行っているのは不憫ちゃあ不憫ですが、ほれほれ記者どもがデコイに引っかかったとほくそ笑んでいるかもしれませんのでその辺は判断保留w
『実際に物価がわれわれのベースの見通し対比上振れることがはっきりしてくると、もう少し金利を上げなきゃいけないというケースもあるでしょうし、あるいは逆に、物価がわれわれの見通しよりも低くとどまっていそうだということになったら、金利は
1%よりも低い水準が適切ということになる可能性もあると考えています。(後半割愛)
』
そらそうよ。
・円高で物価上振れリスクの変化は起きたか
というのが今引用した後半の質問です。
『(問)(前半割愛)二点目ですが、円安による物価の上振れリスクを指摘されていますが、足元では円高にどちらかというと振れていますけれども、その辺り変化してくるのか、それとも、円高に振れても、企業の値上げとかが続いて物価の上振れリスクというのは変わらないのか、その辺りお願い致します。
』
これは良い論点ですが田村さんの回答は、
『(答)(前半割愛)二つ目のご質問の、今円高になっているのになんで円安の物価上振れリスクなのかという点につきましては、まず、160
円台に乗った時と比べれば、円安は修正されていますけれども、今年の前半に輸入物価が上昇して、輸入物価の上昇がラグを伴って消費者物価に効いてくると、ある程度それも織り込んで見通しを作っておりますけれども、企業が仕入価格を販売価格に転嫁するパススルー率、これが高まっている可能性があって、そういう意味で物価の上振れリスクがあるんじゃないかということを午前中は申し上げました。』
ほうほうなるほどなるほど。
『円安の修正によって、上振れリスクは変わってるのかという点については、160
円がずっと続くのに比べると、日本経済にとっては幸いなことだと思うんですけれども、上振れリスクは小さくはなっているというふうに判断しています。
』
ほうほうなるほど。
・コミュニケーションの質疑は抜刀斎キタコレの抜刀モードで大変に結構でした
金懇挨拶で思いっきり抜刀していた件ですが、こちらの質問の方も惜しくも前半が1%ネタになっていますが、後半のこの質疑はよろしゅうございました。というかこの件をもっと深堀りして頂きたかったんですけどね。
『(問) (前半割愛)もう一つが、こちらの講演の中で、市場とのコミュニケーションの改善に絶えず努めていくとされていると思うんですけれども、現状のコミュニケーション、日銀さんのコミュニケーションっていうところにどういう課題があるのか、あるいはどういうふうに改善していくべきだっていうお考えがあればお願いします。』
抜刀斎の抜刀タイム来るか、ということで回答を見ますと、
『(答) (前半割愛)二つ目が日銀のコミュニケーションについてのご質問でしたが、金融政策は金融市場への働きかけなどを通じて経済・物価に波及していくものですので、日本銀行の経済・物価に関する見方や政策運営の考え方について、市場参加者を含む幅広い層に、丁寧かつ分かりやすく説明することがきわめて重要だと考えています。』
ここまではマクラ。
『一方で、日本銀行として、本年 4 月以降、一貫して示してきた、経済・物価の見通しが実現していくとすれば、金融緩和度合いを調整していくことになる、という言葉、』
4月の展望レポートでもそれは入れていたのですが、同時に3月声明文と同様に、
『そして、緩和的な金融環境が継続する、という言葉が、どのように市場に受け止められていたのかを考えた場合、』
どう見てもこの文言はアカンかったです。今回の決定会合では先行きの政策運営にかかわる部分での「緩和的な〜」は消えているのは良くやったと思いますが、ゆうて文言自体は残っているのでまだコミュニケーションとしては腰が定まっていないところがありますよね。変に両論併記するくらいなら「今後の物価安定目標達成に向けた経済物価推移次第」と出たとこ勝負にしちまえば良いのに、なんかとりあえず予告ホームランを打ちたがるのはちょっと改めた方が良いと思いますよね大本営。
『ただマーケットによっても、参加者それぞれによっても様々ではありますけれども、私としては日本銀行の意図とは異なるニュアンスでの受け止めもあったように思います。』
だから為替が160円まで飛んで行った訳です。
『そして、それに対応した日本銀行の情報発信は、タイミングを含め、改善の余地があったと感じております。』
これは田村抜刀斎の大抜刀。
『日銀の考え方が市場に適切に伝わるように、市場の受け止めを踏まえた発信内容の調整ですとか、あるいは情報発信のタイミングや頻度の改善など、市場とのコミュニケーションの改善に絶えず努めていくことが重要であるというふうに感じています。
』
(;∀;)イイハナシダナー
2024/09/13
〇田村委員の金懇はベンダーヘッドラインだけ見ていると読み落とす点が多々あるのでご注意あれ
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2024/data/ko240912a1.pdf
【挨拶】
わが国の経済・物価情勢と金融政策
岡山県金融経済懇談会における挨拶要旨
日本銀行政策委員会審議委員 田村 直樹
2024年9月12日
ということで京洛の剣士、田村抜刀斎の登場である(アニメ版と実写版のどちらで再生するかはお任せします)。
・基本的には従来からの主張を継続しているし何なら少し穏健でもあるのですが
とにかく先般の内田副総裁による株式市場従属宣言にしか取られない腹出しひっくり返りワンワン講演が未だに尾を引っ張る中、そのようなワンワンモードは出さずにいつもの抜刀をしておられますが、まあよくよく考えてみたらこの田村さんの金懇挨拶のトーンって本来中銀だったらこのくらいの説明するよね、って話でありまして、この田村さんの説明が最タカ派に見えてしまうってのは日銀の政策委員会がどんだけアレになっているのか、というのを示しているともいえるわけですな南無南無。
でまあ今回ですけれども、いつものようにオリジナル感のある体裁でいろいろと説明をしていますので見ていきましょう。
・消費に関して注目していますね
前回の金懇でもそうでしたが、田村さんは個人消費の話を経済の話の中では注目していますので、個人消費が底堅ければ「オンラインで推移」と来る可能性が高いし、個人消費弱くなってきた場合はその背景次第(物価高が原因だったら実はそっちの対処という話になりえるんですよね)という所でしょう。
ということで『2.経済・物価情勢』の『(1)経済情勢』の途中から(最初は展望レポートの見方を中心にしているのでパス)。
『こうした動きの背景にある個人消費と設備投資の動きについて、やや子細にみていきます。』
ほう。
『まず、個人消費については、物価高を受けた家計の生活防衛的な動きがみられるもとで、食料品や衣料品などの非耐久財消費は、価格上昇分を差し引いた実質ベースで減少傾向となっていますが、個人消費全体としては底堅く推移しているとみています(図表2)。』
ほうほう。
『生活防衛的な動きについては、物価高を受けて低価格商品へシフトするケースもある一方で、メリハリ消費と呼ばれる「使うところには使う」という消費行動も多くみられます。コロナ禍を経て消費者の行動に変化が起きている可能性もあり、統計から窺われるほど個人消費の実態は悪くない可能性もあるのではないかと感じています。』
ということですが、この「統計でちゃんと消費の実態を捕捉しきれていないんじゃないか」という論点は田村さん以外からも指摘があったと思います。需要側の統計と供給側の統計を見ると必ずしも一致しないとか、そもそも捕捉しきれていない部分(特にコロナ以降の変化を統計が捕捉できていない点)があるんじゃないか、という話ですわな。
でもって消費のベースになる所得の話が続きまして、
『所得面については、名目賃金の上昇が物価上昇に追い付かない状況が続いてきましたが、足もと改善がみられます。』
ほほう(じっと給与明細を見ているとワイ目から汗が出るorzorz)。
『今年の春季労使交渉は、中小企業を含め昨年実績を大幅に上回る結果となったこと、日本銀行の本支店における企業からのヒアリング情報でも、人手不足に対応した人材の係留・確保の必要性といった側面もあって、幅広い企業に賃上げの動きが広がってきていることも踏まえると、先行きは、実質ベースの賃金の改善が下支えとなり、個人消費は緩やかに増加していくと見込んでいます(図表3)。』
結局実質賃金プラスってのは欧米でもそうでしたが、上がりすぎた物価上昇ペースが鎮静化していく中で達成されるものでありまして、最近だいぶ言わなくなりましたけど、実質賃金ガーの話を前面に出すのは筋悪だったんですよね。
『更に、消費者マインドにネガティブな影響を与えていた急速かつ一方的な円安がある程度、是正されたことも、こうした動きを後押しするものと期待されます。』
って消費の説明部分の最後にしらっとぶっこまれていますが、この「円安進むと消費者マインドが下がってくる」っての割と重要で、足許で円安是正されてどうなってるのかは(自分の頭の上の蠅を追うのに多忙のため)ちゃんと見れていませんが、少なくとも160円への円安進行の際には円安がマインド系にビビットに悪影響を与えていましたので、その点からも円安是正は大正義であって、円安是正の結果少々株が下がって泡ふいてる場合じゃなかったんですよね。まあ馬鹿政治家どもが馬鹿なのでどうしようもないのですが。
設備投資の部分はパスして「物価の方に参ります。
・物価上振れリスクを指摘とな
『(2)物価情勢』ですがこれまた途中から参ります。
『物価の先行きに関し、私としては、上振れリスクが膨らんできているのではないかと懸念しています。』
キタコレ!!
『第一に、人手不足の影響です。企業の人手不足感は、短観で確認してもかなりの高水準にありますが、人手不足が供給制約となり、一部の業種では、供給不足・需要超過の状態にあるという印象を受けています(図表7)。』
ふむふむ。
『例えば、客室稼働率を抑制せざるを得ないホテル業界、ドライバー不足に悩むタクシー業界、製造業でも人手不足で設備をフル稼働させられない企業もみられています。こうした状況が、想定以上に物価を上振れさせる可能性もあると考えています。』
他にもいろいろと例がありますよね。遅くまで営業できなくなった飲食店とかもそうだし。
『第二に、中小企業を中心に賃金の価格転嫁は容易ではないとの声も引き続き聞かれていますが、昨年よりも高い賃金上昇が見込まれる中で、人件費の価格転嫁が想定以上に進む可能性があることです。』
今までが転嫁遅れていた面もありますな。
、
『第三に、足もとある程度是正されたとは言え、年初以降、円安が進んだこともあって、一度は落ち着いていた輸入物価が再度上昇基調にあることです。』
はい。
『輸入物価の上昇を企業が製品価格に転嫁する際のパススルー率(コスト上昇分が製品価格にどの程度転嫁されるかの比率)が近年高まっており、消費者物価への影響も従来対比高くなる可能性があると考えています。』
とまあそのようなご指摘でありました。では金融政策運営のパートで抜刀ぶりを鑑賞しましょう。
・長期国債買入の話を先に切り分けておこなっていますね
次のコーナーが抜刀もとい金融政策関連のパートでして、『3.金融政策運営』の最初は『(1)2024年7月の金融政策決定会合』です。最初は決定事項の説明なんでかっ飛ばして途中から参りますが、
『日本銀行は、600兆円に迫る規模の国債を保有していますが、日本銀行の国債保有残高を名目GDP比で欧米と比べると段違いに規模が大きいことが分かります(図表10)。』
と、決定事項の後に長期国債買入残高の話をしています。田村さんはその前に長期国債買入に関して『過去行ってきた大規模な金融緩和からの不連続な変化を避けるために続けているもので、能動的な金融政策手段として用いているものではありませんが』って言っているので「今後の金融政策運営」の話をする前のところに持ってきているのは細かい芸ではあるのですが、ちゃんと分けているの流石ですわと思いました。
でもって長期国債買入の話ですけど、
『満期が到来した国債は償還されますので、国債の買入れ額を償還額以下に減額すれば、保有残高は減少していきますが、決定した減額計画のペースでは、日本銀行のバランスシートの正常化、すなわち、これ以上の削減を行わなくてよいという水準まで国債保有残高を減少させるまでに、かなりの期間が必要となってしまいます。』
連休2回あるからこの辺の計数もちゃんと整理しておこうかなと。
『一方で、市場に混乱を与えることを回避しながら国債買入れの減額を進めるには、この程度の減額ペースにとどめることが適当であるというのが現状です。』
とのことですが、この後田村委員が指摘しているんですけど「利上げの織り込み度合い」というのに対しまして、国債金利がクッソ低い事も影響していると思われるのですな。ちなみに田村さんは国債市場のフォワードレートではなくてOIS市場のレートを使ってフォワードレート計算して織り込み度合いを計算しているのですが、国債市場の金利が日銀の買入によってクッソ低い水準に抑圧されているのは、他の金利デリバなどに対してもテナーが長くなってくると影響しやすくなるんじゃなかろうか(OISを振り回している身じゃないので詳しくはないが)と思われます(だいたいからして参加者層から想像したら国債金利の影響あるだろと思うんだがどうですかね)次第でありまする。
つまりですね、現状の国債買入減額ペースが遅くて、国債市場の金利が「政策金利の先行き見通し織り込みに日銀買入による押し下げ効果が乗っかったもの」になっているのが自己実現的に市場の先行き金融政策見通し織り込みに影響を与えているんじゃないですか説は積極的にアタクシは提唱していきたいので、このあたりは田村さんもっと踏み込んだ考察を頂きたいところではあったな、とは思うのであります。
それに国債買入減額ペースが遅いと日銀当座預金残高も減らないので短国市場に代表されるように金利のベース部分である短期ゾーンの実金利にも影響あるんだし。
とは言え田村さんこの先ではこんな抜刀をしております。
『現在、国債市場の機能度は、一時より改善したとはいえ依然低い状態にありますが、こういった日本銀行が国債を大量に保有することに伴う副作用は、日本銀行のバランスシートの正常化が進む過程では、しばらく残り続けてしまうことになります(図表11)。』
しばらくどころの騒ぎではないです今日の新発3Mとか(いちいちコーナー作らんけど)新発WIの売参が入札前日の昨日の引けでいきなり2毛5糸強の0.075%とかいうとんでもない値付けをされていて、バランスシートの正常化がクッソ遅いんで何とかしてくださいよろしくお願いします。
・長期国債買入がやりすぎにもほどがあったのではないかというのをはんなりとご指摘
でその続きですが、
『私としては、大規模金融緩和からの正常化のためにはこれからの手綱さばきが極めて重要であり、その道のりはまだまだ長いと考えています。』
いやもうバンバン減額してください(陳情)、というのはさておきまして、
『また、将来、万が一再び、量的な金融緩和を検討せざるを得ない状況となった際には、こうした出口論も含め、その効果とコストのバランスを慎重に検討する必要があると改めて感じています。』
これは要するに「今般のバランスシート拡大は調子に乗りすぎで、後処理する方がエライ面倒な事になっているんだがちょっと物考えて非伝統的政策の導入をやれやバカチンどもが」というのをぶぶ漬け話法で説明されておられるわけですな、しらっと抜刀しておられます。
まあこの先の方がさらに抜刀斎な訳ですけれども。
・1%が注目されていますが実はテキストを見るともっと抜刀しているんですよね
次の小見出しが『(2)見通し期間の金融政策運営』でメインイベントの抜刀祭りですな。
『主たる政策手段である短期金利の操作に話を戻したいと思います。』
ということで切り分けていますね。でもってですねえ・・・・・・
『今後、消費者物価の基調的な上昇率は徐々に高まっていき、2026年度までの展望レポートの見通し期間の後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移するというのが私どもの見通しです。』
はい。
『こうした見通しが実現していく場合、2026年度までの見通し期間の後半には、政策金利である短期金利は経済・物価に対して中立的な水準、すなわち名目の中立金利まで上昇していることが必要と考えています。短期金利が経済・物価に対して中立的な水準を下回っていると、物価を必要以上に押し上げてしまうからです。』
「短期金利が経済・物価に対して中立的な水準を下回っていると、物価を必要以上に押し上げてしまうから」「2026年度までの見通し期間の後半には、政策金利である短期金利は経済・物価に対して中立的な水準、すなわち名目の中立金利まで上昇していることが必要」という説明になっています。
これ今回の講演テキストって以下の部分でワイが勝手に指摘するので違ってたらごめんやでなのですけれども、わざとマイルドに見えるように作りこんでいる部分があって(だから最初のところでワシ「何なら少し穏健」と書いたのです)、この部分も「中立金利」じゃなくて「1%」の方をベンダーなどが拾って、記者会見でも1%云々という話が注目されていたんですが、これ多分田村さんわざとやってて(とワシが思う理由は後述)、「1%」とすることによってベンダー的な反応をマイルドにしていますが、よくよく見れば今後の金融政策運営の一発目に「見通し期間の後半には物価安定目標が達成されている状態なんだかから「中立金利」まで上がっているのが当然である」というまあそれが当然ではあるのですが、そういう話をしている訳でして、物価が安定して2%で推移している時の名目中立金利が1%の訳ないじゃん(実質中立金利▲1%ってナンジャソラな訳で)と考えると、実は田村委員は冒頭から抜刀斎モードとなっているんですよね。
というのは1%という数字で目くらましされているのですがちゃんと覚えておきましょう。
・中立金利が最低でも1%だろうという話をしているのだが1%に食いつかせることによって穏健に見せる話法
でまあその続き。
『中立金利は、概念的には、経済・物価に対して中立的な実質金利の水準である自然利子率に、予想物価上昇率を加えたものですが、自然利子率は直接観察できるものではなく、その推計値は手法によって大きなばらつきがあります(図表12)。なお、現在、名目金利から予想物価上昇率を差し引いた実質金利ははっきりとしたマイナスで、自然利子率のいずれの推計値をも下回っており、現在の短期金利の水準は緩和的な環境、すなわち、経済や物価を押し上げる位置にあると言えます。』
これは大本営も言ってますが、こういう言い方をしないで「緩和的な金融環境が続く」という説明で誤魔化そうとするから大本営のコミュニケーションが上手くいかないんですがその点についてもご案内の通りで田村抜刀斎の抜刀が後程行われております。
でもって例の1%がここで出てきます、上記の続きが、
『この中立金利について、私は、最低でも1%程度だろうとみており、したがって2026年度までの見通し期間の後半には少なくとも1%程度まで短期金利を引き上げておくことが、物価上振れリスクを抑え、物価安定の目標を持続的・安定的に達成する上で、必要だと考えています。』
まあ極めて理詰めだし、展望レポートの見通し、すなわち大本営を含む日銀の公式見解が見通し期間の後半には物価安定目標が達成されているって言ってるんだから、この説明って極めてフェアな説明であり、本当は抜刀じゃないんですけど、大本営がクソみたいな緩和アピールばっかりするから抜刀斎が抜刀しないといけなくなるわけですな、南無三。
とはいえ、海外主要国と異なり日本の場合はゼロ近傍のインフレ状態という均衡状態からの遷移によって物価安定目標を達成しようとしているだけに、もともと物価安定が達成されている状態すなわち望ましい均衡状態の経済状態の例があった海外主要国と異なる点として「前例がない」というのがあるがゆえに、
『ただし、長きに亘ってほとんど金利がない世界が続いてきたわが国においては、経済主体が金利にどのように反応するか、予断を持たずに注意深くみていく必要があります。したがって、2026年度までの見通し期間の後半の1%の水準を念頭に置きつつも、「物価安定の目標」の実現する確度の高まりに応じて、段階的に短期金利を引き上げつつ、経済・物価の反応を確認し、適切な短期金利の水準を探っていく必要があると考えています。』
となるのも当然で、この辺りを田村委員のようにちゃんと説明する、というのは今の大本営に求められていることなんじゃないですか、と思うのよね。
・コミュニケーションがぐだぐだになっている点について田村抜刀斎盛大に抜刀の巻
この次が実に良い。
『8月入り後、わが国の株価や為替の変動が大きくなりました。この背景には、経済指標の下振れを受けた米国の景気後退懸念を契機に、世界的にドル安と株価の下落が進んだことがあるとみていますが、日本銀行の金融政策を結びつける声も聞かれています。』
まあ無関係ではないわな。
『直前に行われた政策修正が早すぎたという主張がある一方で、遅すぎたとの主張もみられます。』
遅すぎというか、3月4月に緩和アピールをし過ぎて為替をぶっ飛ばしたのが最大の悪手でしたが、その点について盛大に人斬り抜刀斎となるのがこの次の部分。
『日本銀行の政策を少し振り返りますと、本年4月以降、経済・物価の見通しが実現していくとすれば、「金融緩和度合いを調整していくことになる」という考え方は一貫していました。しかし、そのことが過不足なく市場に伝わっていたのか、市場の受け止めに対してより適切に対応する術はなかったのか、後付けにはなりますが改めて振り返り、市場とのコミュニケーションの改善に絶えず努めていくことが重要であると感じています。』
これは人斬り抜刀斎ですわ。
『また、金融資本市場の動向や経済・物価に与える影響については、引き続き、丁寧に目を配ってまいりたいと考えています。』
最後にこれを入れて中和していて、ベンダー見てるとこの部分拾ってたりしていますが、どっからどう見ても市場従属の話をしているわけではないのは文脈を見れば明らかなのですが、ベンダーヘッドラインだけ見ていると田村委員の金懇挨拶のトーンを読み間違るリスクがあるな、と思いました。
・市場の織り込み云々のところでインチキグラフを出して中和しているのはワロタ
その次もおもしろくて、
『現時点の市場が予想する短期金利の引き上げペースは緩やかです(図表13)。』
ってあるのですが、この図表13の芸の細かさにクソ笑いましたアタクシ。まあ先にテキストの方を読みますが、
『もちろん、経済・物価の進展次第ではこういった引き上げペースに止まる可能性はある訳ですが、このペースの短期金利の引き上げでは、見通し期間の後半においても短期金利は中立金利に届かず、懸念している物価の上振れリスクを更に高めてしまう、あるいは、後になって急ピッチの利上げを余儀なくされる可能性も否定はできません。そうしたリスクを避けるため、私としては、金融市場の動向にも十分に配意しつつ、経済・物価の反応を確認しながら、適時かつ段階的に利上げしていく必要があると考えています。』
まあそういう訳で市場の織り込みが足りん、との指摘ですが、先ほどワイが申し上げた仮説としては、日銀の国債買入が依然として過大で、国債市場において将来の政策金利を含めた金利見通しを過大な国債買入が歪ませており、それが自己実現的に市場の織り込みを過小にしているようになっているのではないか(だって何とかスト調査だってたぶんポジション取ってる中の人たちだって12月1月は利上げありうべしってのが最大予想の筈なんですよね、金利形成がそれをちゃんと織り込めていないだけで)と思うんです。
でまあそれはさておきましてこの図表13、網掛けの部分があって、そこに「見通し期間(24〜26年度)の後半」ってあって、さらに「消費者物価の基調的な上昇率が「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移」って堂々の記載があるのですが、図表13をパッと見ると「見通し期間の後半とか書いてあるけどなんか後半というよりは終盤じゃないのこれだと」と思ってしまうんですよね、というかワシも最初「はて?」と思いました。
しかしですね、これグラフの横軸を見てみますと、途中で横軸(すなわち時間)のスケールが変わっている、という面白グラフになっていまして、これって足元株式市場が無駄に振れているもんだから、あんまり刺激を与えないようにしようとして、わざとこのインチキ横軸を作ったな、ということで芸の細かさに気が付いた瞬間に爆笑の発作を起こして腹筋が崩壊してしまいました。
・ということで田村さん「持ってる」説を提唱しておきます
まあ何ですな、その辺はメッセージをアホどもがアホアホ解釈して市場に変なハレーションが起きないように中和しておくか、ってことでこのようなイカサマグラフを出しているんだとアタクシは解釈しましたけれども、田村委員の金懇の日である昨日はご案内の通り別の要因でジャパニーズ株式市場上昇祭りヒャッハーとかやっていた訳でして、田村委員の講演で株式市場暴落みたいなことも起きなかった、という意味では田村さん実は「持ってる」人なんじゃなかろうかと思いましたのでそんな説を提唱しておきましょう(フラグ建築ではありません)。
・最後に金利上がっても別にそんなに民間に対してマイナスじゃないよというド正論登場
最後の抜刀コーナーはそういうネタです。先ほどの続きになりますが、
『短期金利を引き上げていくことの各経済主体への影響についても考えておきたいと思います。』
以下はド正論の話で一々ワイが茶々を入れるまでもないですしそもそもノリノリで書いてたら時間がアレになって来たので簡単に流しますすいませんすいません。
『大雑把に言えば、借入超過主体が金利を支払い、貯蓄超過主体が金利を受け取るため、短期金利の引き上げによって、借入超過主体は負担が増加し、貯蓄超過主体は受取利息が増加するということになります。』
はい。
『したがって、家計であっても住宅ローン借入のある家計とない家計、企業でも借入のある企業とない企業、あるいは、借入があってもそれを上回る貯蓄を保有しているかどうかなどによって、短期金利の引き上げの影響は異なります。加えて、短期金利の引き上げが経済に波及する経路、更には、金利だけではなく、利上げに繋がった経済・物価の状況変化にも目を配る必要があると考えています。』
さいですな。
『例えば、家計の貯蓄・負債状況を世帯主の年齢別にみると、40歳代以下の世帯は負債の方が大きく、50歳代以上の世帯では貯蓄の方が大きくなります(図表14)。したがって、様々な前提を捨象して考えれば、平均的には、利上げは40歳代以下の世帯にとっては負担が増え、50歳代以上の世帯にはプラスが大きいという傾向になります。』
ふむ。
『ただし、金利引き上げの影響を考えるうえでは、@短期金利の引き上げが住宅ローン金利にどの程度反映されるかは、貸出を行っている金融機関の判断によるほか、多くの場合、毎月の返済額が急には上がらない仕組みが設けられていること、A住宅ローン保有世帯は勤労世帯が多く、賃上げの恩恵を受けている世帯も含まれていること、といった側面があることも考慮に入れる必要があります。』
なるほど。
『50歳代以上の世帯は大きな貯蓄超過となっており、預金金利の引き上げ――どの程度引き上げられるかは金融機関の判断によりますが――による受取利息の増加が想定されます。老後に備えて預貯金の元本取り崩しには抵抗感を覚える家計も、安定した受取利息が増加すればマインドの改善に繋がる可能性が高いと思います。』
そう来たか。
『企業についても、長らく資金フローは貯蓄超過となり、借入を減らして手元資金を積み上げてきたこともあって、無借金ないしは実質無借金の企業の割合は増加しています(図表15)。このため、過去と比較すれば、短期金利の引き上げの影響に対する耐性は高くなっていると考えられます。』
次は企業。
『また、先ほど申し上げた見通しの通り、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まっていく中で潜在成長率を上回る成長が実現していけば、堅調な企業収益が支払利息の増加の影響を軽減させることも期待されます。』
そしてこの次にしれっとこの話を入れ込む。
『更に、次元の異なる話ですが、金利が上昇し、金利の持つハードルレート機能1が発揮されるようになれば、企業が生き残るためには、その金利負担を賄うことができる儲かるビジネス、言葉を換えれば付加価値の高いビジネスに経営資源を集中させていく必要に迫られ、結果として、ビジネスの新陳代謝が促され、生産性が上昇するということも期待されます。』
しれっと抜刀していますがこの次でもさらに抜刀。
『この他にも金利上昇の影響は、政府においても生じることとなります。一般論として申し上げれば、財政運営に対する市場の信認をしっかりと確保することが重要であると考えています。』
どさくさに紛れて抜刀していますが、こういうのは極めて正論なのであって、総裁副総裁を含めもっと言うべきなんですよね〜
『以上のような影響を含め、政策金利の変化が与える影響を今後も丁寧に確認し、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営してまいりたいと考えています。』
ということで以下は岡山県経済の話になるので時間も押してきたので今日はここで勘弁していただきとう存じます(中川さんの会見は田村さんの会見と共に週明けにも)。